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1981-10-12 第95回国会 衆議院 行財政改革に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月十二日(月曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 小渕 恵三君 理事 海部 俊樹君    理事 藤波 孝生君 理事 三塚  博君    理事 佐藤 敬治君 理事 山口 鶴男君    理事 正木 良明君 理事 大内 啓伍君       天野 光晴君   稻村左近四郎君       小里 貞利君    梶山 静六君       木野 晴夫君    佐藤  隆君       齋藤 邦吉君    塩崎  潤君       塩谷 一夫君    澁谷 直藏君       竹下  登君    玉沢徳一郎君       中村喜四郎君    中村正三郎君       丹羽 雄哉君    橋本龍太郎君       牧野 隆守君    松永  光君       三原 朝雄君    渡辺 秀央君       上原 康助君    沢田  広君       森井 忠良君    安井 吉典君       湯山  勇君    横山 利秋君       鈴切 康雄君   平石磨作太郎君       岡田 正勝君    米沢  隆君       小沢 和秋君    寺前  巖君       東中 光雄君    渡辺  貢君       小杉  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 村山 達雄君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    加藤 圭朗君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 水田  努君         総理府人事局長 山地  進君         総理府臨時行政         調査会事務局次         長       佐々木晴夫君         総理府臨時行政         調査会事務局首         席調査員    山本 貞雄君         警察庁交通局長 久本 禮一君         行政管理政務次         官       堀内 光雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         管理局審議官  古橋源六郎君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁総合         計画局審議官         兼物価局審議官 川合 英一君         沖繩開発庁総務         局長      美野輪俊三君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         大蔵省理財局長 吉本  宏君         国税庁税部長 吉田 哲朗君         国税庁徴収部長 角 晨一郎君         文部省管理局長 柳川 覺治君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生大臣官房審         議官      吉原 健二君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省自動車局         整備部長    宇野 則義君         労働大臣官房長 松井 達郎君         労働省労政局長 吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治省行政局公         務員部長    大嶋  孝君         自治省財政局長 土屋 佳照君  委員外出席者         行財政改革に関         する特別委員会         調査室長    石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十二日  辞任         補欠選任   天野 光晴君     渡辺 秀央君   加藤 六月君     牧野 隆守君   丹羽 雄哉君     中村正三郎君   寺前  巖君     東中 光雄君   正森 成二君     渡辺  貢君 同日  辞任         補欠選任   中村正三郎君     丹羽 雄哉君   牧野 隆守君     加藤 六月君   渡辺 秀央君     天野 光晴君   東中 光雄君     寺前  巖君   渡辺  貢君     小沢 和秋君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  委員派遣承認申請に関する件  行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一  環としての国の補助金等縮減その他の臨時の  特例措置に関する法律案内閣提出第一号)      ――――◇―――――
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一環としての国の補助金等縮減その他の臨時特例措置に関する法律案を議題といたします。  この際、公聴会開会承認要求の件についてお諮りいたします。  本案につきまして、議長に対し、公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、公聴会開会日時、公述人の選定その他の諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  5. 金丸信

    金丸委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  本案につきまして、審査の参考に資するため、委員派遣いたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、派遣地派遣の日時、派遣委員人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  8. 金丸信

    金丸委員長 これより質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  9. 沢田広

    沢田委員 総理がおくれてきております。経済企画庁長官もまだいないようでありますので、大蔵大臣から、若干順が狂いますがお許しをいただきたい。  先般来の予算委員会あるいはこの委員会でわが党の発言があり、質問があってお答えになられました、五十七年度予算の中で結果的に調整しなければならない金額というのは幾らお答えになられましたか、もう一回お答えいただきたいのです。五十七年度調整をしなければならない金額幾らであるか。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この前「財政中期展望」をお示しをいたしておりますが、あれを土台にして考えますと、二兆七千七百億程度が要調整額となります。
  11. 沢田広

    沢田委員 それを現在の法案を出して、補助金カットも入れて四千億ぐらい、それ以外ではゼロシーリングで大体一兆幾ら。なお、一兆円についての中で四千億はクエスチョンマークがついたままで回答が終わっているわけでありますが、これは、人勧を前年度一%しか予算に計上しなかったわけですね。これは、経済企画庁長官もおられないのですけれども、当時の経済計画からいっても一%で済むとはまさか思っていなかったのだろうと思うのですね、当初予算。ただ、当初予算を組むのには予算がむずかしいから一%でとりあえずということで、例年そういうことでしたから、一%しか予算に計上しなかった。その前が二・五%組んで、半分組んでいたわけですね。この一%組んだということの趣旨は、一%で済むと思ったのか、いや、当然後で追加をするんだからいいと思って組まれたのか、その辺だけ、当初予算のときの考え方をお聞かせいただきたい。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、財源の見通しにおいて二%も三%も組めるだけの見込みが立たないということで、厳しい姿勢を示したわけでございます。
  13. 沢田広

    沢田委員 総理が来られましたが、後でだんだん落ちついたころあれしますから。  それで大蔵大臣、結局、財政が苦しかったならば選択の問題ですね、見通しとして一%で済まないということは、これは当時から明確にわかっていたわけですね。われわれも審議の中で、当然一%では済まないんだ、これは普通なら自然増収というのがありますから、自然増収追加予算を組んで措置する、これが例年のやり方でしたから、大体そういうことを信頼していたわけです。大蔵大臣は、財政が苦しいから一%で済ましてしまうんだということは当時考えてなかったのだと思うのですね。いかがですか、その点は。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 物価は落ちつくだろうという見通しはございますが、いずれにしても、いままでの例からすると人事院勧告というのがあって、それが採用されてきたということも事実でございます。予算編成時には物価見通しあるいは勧告等もはっきりしたことはわかりませんし、物価についてはある程度予測はいたしますが、勧告の中身は予測ができない。一方、財政事情も非常に厳しいというような中なので、一%しか計上しなかったというのが事実でございます。
  15. 沢田広

    沢田委員 それを聞いているのじゃなくて、それは苦しいからだと思うけれども、一%ではいままで済んでなかった。二・五でも済んでなかった。だから一%では当然済まない、そういう想定で組まれたのでしょう。一%で済むと思って組んだわけじゃないでしょう。従来が大体追加予算で、補正予算でやっていたわけですから、そういう慣行になって一%しか組まなかった、こういうことじゃないのですか、実際は。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いままでの例からすれば一%では済まないだろうということは一応考えられるところでございます。したがって、われわれは一%でなければならないと言っているわけでもございません。しかし、それ以上に、では何%予算に組んだらいいのかというと、その答えもないということであります。
  17. 沢田広

    沢田委員 予算の総括、総計主義というものから言えば、やはりあるべき成長率、それから物価上昇率あるいは民間の経済伸長率、そういうものを予測して、財政法の精神から言えば当然あるべきある程度のものを組むのが常識だと思いますから、いま一%では済まなかっただろうということも予期していたということでありましたから、それできょうとりあえずこの問題は終わらせます。  次に、五十八年度調整はどの程度になるとお考えですか。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 中期展望では一応四兆幾らという数字が載っておるわけですが、これは五十六年度調整されれば二兆七千億円というものがなくなってしまう、それで予算が組めるということになれば、当然それを土台にしてもう一遍中期展望をし直さなければなりませんので、幾らになるかということはいまの段階では申し上げられないわけでございます。五十六年度のおさまり方次第ということになります。しかし、それよりは少なくなるということは、確実に少なくなると思います。
  19. 沢田広

    沢田委員 五十八年度四兆九千六百億ということが臨調の方に提出した書類として載っているわけですね。ですから、五十七年度二兆七千七百億足らないので今日減額するのに四苦八苦しているわけですが、五十八年度四兆九千六百億ということになりますと、約二兆二千億、これ以上減額しなければいわゆる帳じりが合わない、こういうことになるわけですね。そういうふうに解釈して間違いありませんか。
  20. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実は必ずしもそうはならないと思います。それは五十六年度のおさまり次第だと私が申し上げましたが、そのおさまり次第の中には税収の問題もございますし、それからいま言った歳出カットが完全にその収入の中でぴしゃっとおさまる場合もございますし、必ずしもそこから、四兆幾らから二兆何千を引き算しただけの数字になるというふうには限りません。
  21. 沢田広

    沢田委員 五十六年度税収三十二兆二千八百四十億という見込みでいるのですが、これもこの間の質問ではなかなか厳しい、こういう回答だったと思うのですが、ひとつ大蔵省答えてください。
  22. 矢澤富太郎

    矢澤政府委員 五十六年度税収がただいま明らかになっておりますのは八月末まででございます。進捗率で二五%、したがいまして、年度間の税収の大体四分の一くらいが明らかになっているところでございますが、五十六年度税収予算では二〇・二%の伸び率を見ておりますけれども、八月末までの税収では伸び率は一〇%に達していないという状況でございます。したがいまして、八月末現在までのところで申し上げますと、法人税収の低調を中心にして、税収全体の伸び率は低調でございます。ただ、まだ全体の四分の一しか入っておりませんので、今後どうなるか、そこまでは確定的なことを申し上げることはできないと思います。
  23. 沢田広

    沢田委員 いま言われたように五十六年度の三十二兆、これは前年度より二二・二%増というふうに見込んでいるわけでありますが、これもなかなか困難であるということになりまして、二兆七千七百億はこの委員会を通じて大体これだけ調整しなければならぬだろうということで、ほぼ輪郭ができている数字だと思うのですね。これは各委員質問しました中において言われた数字がほぼその金額、二兆七千億、アバウトな話ですがその程度の条件である。そうすると、五十六年度がわからなければ五十八年度わからないと言いながら、この中で税収は四十二兆見ているわけですね。五十七年度が一四・六%の伸びを見、五十八年度は一四%の伸びを見、そして五十八年度において四兆九千億の調整額が必要である。土光さんもこの資料を受けとめながら、財政再建のためにどういう処方せんをつくったらいいかということで考えたわけですね。もしもとに偽りがあったり、これと違うものを出したんだとすれば、前提資料が違ってくるわけですから、この臨調答申そのものも狂ってくるということになるわけであります。ですから、私は、この臨調に出された資料問題点といいますか、未知数はあるにしても、これを根拠にともかく土光委員会は出発をしたということは間違いないだろうと思うのです。そうすると、五十八年度に四兆九千六百億の調整が必要になる。これは今後どういうふうに考えておられるわけでありますか。
  24. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私がお答えする前に一つ訂正をいたします。  先ほど五十八年度予算の要調整額幾らになるかというときに、五十七年度のおさまりぐあいを見た上でと言うべきところ、五十六年度のおさまりぐあいをと言ったことはちょっと言い違いでございますから、五十七年度のおさまりぐあいに訂正します。  それから、いま言ったように、五十七年、八年、九年の税収というものは一定仮定のもとで計算をされているわけでございまして、御承知のとおり、これらの資料は新経済社会七カ年計画、こういうようなものが土台になって、一定仮定のもとで収入の見積もりをはじき出してあります。  それから歳出の方は、いま言ったように、これは五十六年度予算における制度施策前提として、その運営方針に変更がない、切り込んだりなんかしないという、いままで方式でずっとやっていくんだというようにきて計算すると、これくらいの後年度経費が出てまいりますということを言っておるわけです。給与等についてはよけいに見ておらないわけでございますが、一%、定期昇給そのほか全部をひっくるめて、ふえるものについては一・五%の予備費というものを仮置きしてあるわけでございます。  したがいまして、御質問趣旨をよく理解したかどうか私はわからないのでございますが、五十七年度予算編成でこの要調整額がなくなるということは、これらの歳出部門において、ここに予定された歳出部門を二兆数千億円切り込んでしまうということでございますから、その後の経費伸びは、土台が小さくなりますから、経費も小さくなるということが言えると思います。
  25. 沢田広

    沢田委員 そのとおりです。ですから、五十七年度の五十二兆の予算を大体四十九兆円くらいに編成をしよう、そういうことで二兆幾らを減額する、それを土台にしまして五十八年度を免れば、五十八年度は五十八兆二千六百億で編成中期展望はしていたわけです。だからゼロシーリングがそのまま横並びになったとしても、なおふえる金額は五兆五千億くらい歳出伸びると見るわけです、これは二兆削ったとして。そうすると、その五兆円が歳出伸びるわけですから、結果的にはその五兆円をどういうふうにカットするのか、あるいは歳入で図るのか、その調整が、結果的には四兆九千六百億はそう変わりのない数字になってくる、こういうことになりますね。ですから、五十八年度五十八兆円と歳出を組んでありますが、この中からゼロシーリングで約二兆円削られるわけですね。これはそのまま横並びですから同じです。ですから、五十六兆円から五十五兆円くらいの歳出編成になってくる、そういうことになります。     〔委員長退席海部委員長代理着席〕 ところが、歳入の方で見ると、税金がそのとおりいったとして四十二兆円入るわけですから、結果的には同じように、二兆円の横すべりはありますけれども、二兆円のずれは出てくる、こういうことになりますね。ですから、大蔵大臣の言ったとおりであっても、五十八年度においてやはりどうしても二兆数千億の調整が出てくる、こういうことになりませんか。
  26. 西垣昭

    西垣政府委員 お答え申し上げます。  大蔵大から御説明申し上げましたとおりに、現在の中期展望は五十六年度予算制度施策前提として積み上げたものでございます。五十七年度予算が組まれた暁には、五十七年度予算前提といたしました制度施策前提といたしまして、もう一回中期展望を組み直すことになります。したがいまして、五十八年度の要調整額としてはその数字は変わってまいります。いま先生御指摘のように、恐らく小さくなるだろうと思います。しかしまだ相当残る、そういう姿になると思います。
  27. 沢田広

    沢田委員 だから少なくなる。それはいま概算要求も四十九兆幾らですね。ですから結果的には、歳出の方を二兆幾らか削って、五十二兆円の歳出見込みのものが四十九兆何がしになる。しかし翌年度、五十八年度には五十八兆二千六百億となっている。だから、ゼロシーリングで二兆何千億削ったとしても五十六兆円ぐらいになってくる。     〔海部委員長代理退席委員長着席〕 そうすると、どうしても五兆円ぐらいのずれが五十八年度には生まれてくる。その五兆円というものは今度はどこから出すのですかということをいま聞いているわけですね。そのまま横すべりでいったとしても、そのずれは出てきますよ。いわゆる国債費で八兆七千億と、これも若干変わってきておるようですが、ふえるようですが、七兆八千億から八兆七千億と九千億もふえるわけですね。地方交付税も同じように一兆円ぐらいふえるわけです。一般歳出は、いま言ったように二兆円、二兆円削っても物価スライドその他を勘案してみれば結果的には一兆円ぐらいふえるのですね。こういうふうにして大体これが二兆幾ら減ったとしても、どうしても五十三兆円から五十四兆、五兆円ぐらいになってしまう。歳入見込みは五十三兆見込んでいるわけです。またここでも二兆円どうしても不足してくる、こういうことになりますね。これは間違いないですか。
  28. 西垣昭

    西垣政府委員 いま御説明申し上げましたように、五十七年度予算がこれよりも圧縮された形で組まれるといたしますと、歳出の計の五十八兆二千六百億のところは、その分だけスタート台が小さくなりますので低くなるはずでございます。それから歳入の方は、状況がわかりませんけれども、このままいくとしますと、五十八年度は五十三兆三千億になりますので、歳出が減った分だけ要調整額が小さくなる。その額がどの程度になるかというのは、五十七年度予算の組み方にもよるわけでございまして、後年度の負担が大きくなるような予算を組みますと、そこの歳出の減り方はそれほど大きくないし、後年度の負担が小さくなるような組み方をしますと、そこのところが小さく抑えられる。これは予算の内容いかんによるものでございます。
  29. 沢田広

    沢田委員 後年度負担だけの問題になると思いますか、この二兆円強のものが。後年度負担だけの操作によって操作できると思いますか。
  30. 西垣昭

    西垣政府委員 私が申しました後年度負担というのは、国庫債務負担行為による厳密な後年度負担ではございませんで、予算の組み方によっては、一年限りの予算もございますし、後年度にもそれに相応をしたものがふえていくような予算の科目もございます。そういったものも含めまして、中期展望ではその翌年度予算がどうなるかということを科目ごとに積み上げるものでございますから、予算の組み方によって大きくもなれば小さくもなる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  31. 沢田広

    沢田委員 私の質問は抽象的なものを言っているんじゃないのですよ。五十七年度の分に四十九兆円ぐらいの概算要求が出ていますよと、だから二兆七千七百億の調整額が必要ですね。これはいままでの委員会の、質問でほぼ確定した数字ですね。その二兆七千七百億は、いろいろなものを削って、歳出を五十二兆五千三百億を見込んでいたけれども、それを四十九兆に、部分的な歳入はありますけれども、三兆七千億は歳出カットで何とか間に合わせたい。全部入れても二兆七千億でしょう、もし全部歳出カットで間に合わせたとしても。それが今度五十八年度歳出見込みは、横すべりにいったとして、ほかの計は全然変わらないとすれば、結果的にはその分で五十五兆五千億くらいになりますね。そうすると、片一方は五十三兆だから、同じように二兆円どうしても調整額が必要になってくるでしょう。じゃそれはどこで減らすのですかということを聞いているわけですよ。減らさなければ五十八年度のつじつまは合わなくなるわけでしょう。じゃそれはどこで減らし、どこでふやすのですかと、それの見込みを言ってください、中期展望で立てた以上考えがあるでしょうから。考えがなくて出して、じゃその二兆円は歳出カットでやるのならやるとお答えいただければいいのです。あるいは歳入の増を考えているのなら歳入の増を考えているんだということでいいのです。しかし、一応数字的にはどうしても二兆数千億のずれが出てきます。じゃこういうことについてどうお答えになるのですか。それが、いろいろ新聞なりその他で考えている、大蔵大臣の発言にもちょっとあった、増税ということで考えて二兆円を埋めるということなら、これも一つの考え方ですから。問題は二兆円をどこかにやってしまうわけにいかないんで、その二兆円はどう捻出するのですかということをいま聞いているわけです。いまも全然考えてなくて中期展望をつくったというなら、そんなもの撤回しなさいよ。
  32. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私が冒頭に申し上げましたように、五十七年度歳出カットがかなり進む。それでその伸び方が、わかりやすく言えば補助率その他率を少なくしていますから、その部分は伸び方が少なくなるわけですね。したがって、五十六年当時の施策予算がふくらんでいくというようにはならないわけですよ。そのためにたくさんの法律が出ているわけです。この五十八兆何がしというのは、五十六年当時の制度、その当時の補助率で計算をしているわけですから、実際よりはでっかく――この法案が通ればですよ、そんなにふくらまないわけです。ですから、二兆円などはふくらまないわけですね。もっと小さな数字になるということを最初から申し上げているのです。しかし、仮に小さな数字になった、仮に一兆円だとしても、それではその五十八年度の一兆円、それだけのものは何で、歳出カットでやるのか増税でやるのかというお話に当然なりますね。それはいまだ決まってないのです。それは歳出カットでわれわれは極力やりたい、こう思っております。けれども、それがうまく一兆円程度で済むのか、あるいは二兆円近くまでいくのか、あるいは五千億円ぐらいになっちゃうのか、まだそこがはっきりしないわけですから、そこがはっきりしないというと、答えがいますぐは出せない。まずは五十七年度予算を組んでみなければわからない。(「そんなこともわからないのか」と呼ぶ者あり)それは組んでみないとわからない。土台がわからないわけですから、一遍やり直しになるわけですから、五十七年度のやつでやり直しをしなければならないので、この中期展望をそのとおり当てはめるわけにはいかないわけです。
  33. 沢田広

    沢田委員 今度は五十九年度に話を飛ばしてみますと、このゼロシーリングをもう一回、五十八年、五十九年まで続けるとして考えてみても、六兆八千億の調整額が出てくるわけですね。その中から二兆円削ったとしても四兆円の調整が出てくるわけですね。じゃ四兆円はどこから捻出するのかということを明確にしませんと、この法律案が出てきて、国民なり私たちは、果たしてこの法律案と関連をするこの行政改革一連で、五十九年に国債はゼロにしますと言うが、果たしてその中身の国民に及ぼす影響は何なのだろうか。いま単純に計算しても五十八兆円で二兆円またさらに調整しなくちゃならない。それから、五十九年度にいってもまた二兆円以上調整しなければならない、そういう要件を持っている。しかも、それは五十八年度歳出カットするのか歳入で考えるのかわかりません、五十九年度も、これもまた歳入だか歳出だかわかりません、ただ五十七年度だけはとりあえず歳出カットなんです、これで通りますか、こういう不明確なことで。  その点は、三カ年計画を立ててこの法案を出す以上、三カ年の見通しだけはきちんと出していただかなければ、これは国民に不親切でしょう。これは全然話が通らなくなっちゃうでしょう、三年の問題ですから。その点は五十八年度はどうするのか、五十九年度の国債を、特例公債をゼロにするときにはどうなるのか、それは歳出カットでやるのか、どういうふうにこの措置をするのか、見通しだけは政府の責任として言ってくださいよ。
  34. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはここに書いてあるように、要調整額という数字を使ってあることは、要調整なんですね。歳入でふやすか歳出で減らすか、決まってないわけです。だけどいずれか、まあこれは組み合わせにするか。五十六年度予算は、増税と歳出カットと組み合わせでやったわけですから。五十七年度予算は、組み合わせをやらないで、もっぱら歳出面で切ろうということをいま言って、その法案を出したりなんかしているわけです。それから五十八年度はどうするんだ。やはり要調整ですから、先生のおっしゃるのは、歳出だけでやるのか歳入でやるのか、二つに一つか、どっちかはっきりしろ、こういうお話なんです。ところが、五十八年度の要調整額幾らになるかということは決まってないんですよ。  いま言ったように、ここの引き算をいたしますと、私も最初それは勘違いしたんですが、二兆七千億、そうしたら二兆円要調整額残るじゃないか、ちょっとそう思うのです。ところが現実には、五十七年度予算の組み方あるいは法律の改正等によって、その要調整額は、五十六年度の考え方で予算伸びるというふうにして五十八年度は出ていますが、それは五十六年度の甘い考えじゃございません。五十七年度は、今度は渋い考えでやるんです、計算し直すわけですから。したがって、要調整額はここに示すほどの数字は出ない。それはこの半分になるか、あるいはそれよりもっと少なくなるか、あるいは半分よりもう少しよけいになるか、そこらのところはまだよくわからない。仮にそれが非常に小さな数字であれば、収入の問題とも絡んでくるのであって、ここで一応税収というものが、五十八年四十二兆一千億を見ておるけれども、仮に景気が世界的によくなってこれよりも余分に出るということになれば、それは歳出カットの方も少なくても済んじまうということにもなりますから、いまから全部の問題について増税でやるのか歳出カットでやるのか、三年間言えと言われましても、それはその都度都度にならないといまからは断言できませんということを私は申し上げておるのです。ただ私どもとしては、景気がよくなって増収は大歓迎でございます。増税はなるべくやりたくない、それから収入が、そんな思いがけない金が入らぬならば、できるだけ歳出は切り詰めるということは続けてやらなければならない、そういうことが基本的な考え方でございます。
  35. 沢田広

    沢田委員 非常に抽象的な言葉で、これは私は数字で言っているわけですから、いまの中でたとえば五十八年度減るものがあったら言ってください。国債費八兆七千八百億見込みました。これはほぼ動かない数字でしょう。それから、地方交付税一五・二%の伸びで、これは一五・四、一五・二で見ていますから、これは若干伸び率が、たとえば経済成長率が変わるとしても十兆七千五百億、これもそう変わる数字じゃないですね。  そうすると、一般歳出の三十五兆三千九百億というものを三十八兆七千三百億に五十八年度見た。これは二兆円以上五十七年度で減る。だから、三十三兆円ぐらいになる。そうすると、三十三兆円になったものの金額の絶対価は変わらないわけですから、五十八年度もそのまま横滑りとすれば、三十三兆円ということになります、全然これはもうスライドとかそういうものを認めないでということを考えれば。しかし、これはゼロというわけにはいかないでしょうが、たとえば三十三兆円と仮定をしてみたとすれば、結果的には三十三兆円としても五兆円の開きがこれは出てくるんですね。そのままゼロシーリングを続ける、切るんじゃないですね、続ける、こういうふうに考えてみた場合にです。  そうすると、五十八兆二千六百億という中の数字というものは、国債費地方交付税一般歳出というものが三十三兆で変わらないとすれば、歳入の方でまた今度は逆に四十二兆の税収、一四%は、同じ歳出効果で望むことはきわめて困難ですね。それは大蔵大臣が言うように、横に変動要素が加わるということは、同じように変動要素が加わるわけですから、同じように税収が、たとえば四十二兆円あったとして、あるいは公債の八兆六千百億がそのまま加わったとして、あるいは税外収入二兆五千百億がそのままあると仮定してみても、要調整額数字ずれというものは、どうしても二兆円出てくるでしょう。だからそれは、じゃ歳入で――歳出カットをまたやるというんならいうんでいいんですよ。歳出カットで何とかこれを調整しますというなら、それで筋は通るわけです。話として筋は通る。五十九年度になったら、今度はなお、いまの金額の絶対値を動かさないでいくと、三十三兆ですから九兆円出ますね。そういうことでいくというならば、確かにこの現在の公債が五十九年度ゼロということで――しかし、それまで日本の経済がもちますか。そんなことはもう話であって、実態に全然、いまの絶対値もこの三年間動かさないでやれるなんといったら、これはデフレになってしまうですよ。日本経済そのものがどうにもならなくなってしまいますよ。  だから、その数字の問題として、じゃ五十八年度はどう調整するんですか。方向としてどうするんですか。それから五十九年度は方向としてどう調整するんですか。その方向の見通しがなくて、土光さんもぬけぬけとよくこんなものを出してきたと私は思うのです、わからないで。じゃ土光さんを今度呼んだら、わかっているのか、こう聞きたくなりますね。五十八年、五十九年、じゃ日本の経済をどうするんですか。その方向も全然見当つかないでこの法案を出すというのは、これは見識を問われることになるんじゃないですか。  だから、少なくとも五十八年度、何もこれは隠すこともないんですから、これはじゃ歳出カットでやります、そのつもりです、それならそれで国民はわかるだろうと思うんですね。その辺はきちんと答えてもらわないと、何とか二者選択あるいは複合かどっちかです、こういうことだけでは答えにならないと思うのですね。少なくともこの法案を出す以上は、こういう考え方でいきたいんです……(「三年間の調整額計画を出しなさいよ」と呼ぶ者あり)それはひとつきちんとお答えいただきたいと思うのです。
  36. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 だから、私が先ほど答弁をしておるように、要調整額になっているのです。調整をするんですよ。だから、これは歳入だけで調整するのか、歳出だけで調整するのかと言われましても、それはその都度都度の予算編成時において最終的には決めることでございます。だから、それはもう増税だけでやるんですというごとももちろん言われない。もう歳出カットだけで全部それは埋めます、できればわれわれは歳出カットだけでやりたいという願望を持って、いろいろな制度その他についても改正をお願いしたりなんかやっておるわけですが、最終段階ではそれだけでできるかどうか、それは実際問題としてやってみないとわからぬですね。  したがって、私どもは歳出カットを基準として、極力歳出カットでそれは詰めていきたい。しかし、最終的にはそんなに歳出カットしてしまうと、それはとてもじゃないが因るじゃないか、そんなら歳入をふやしてでも、そんなに切り込むということはやめたらいいという政策判断が出れば、また別な問題もそれは考えられるかもしれない。しかし、われわれは当面歳出カットということに重点を置いて極力歳出カットでできるように努力をしていきたい、こう思っております。
  37. 沢田広

    沢田委員 総理、いままで問答を続けてきました。で、結果的に、五十八年度調整はわからぬ、そうすると五十九年もまだわからぬ、ただ特例公債をゼロにすることだけは棄上命令であるということまでは両方の意見が、大体見通しとして見解が一致する――一致というか、私がそうだというのじゃないのですが、質問に対する答弁としては一致する。  そうしますと、この法律案で五十八年度たとえば増税をやる、二兆円何がしの調整を増税で考える。あるいは五十九年度も同じようにある程度考える。そうした場合、これは三年で出すのはおかしいじゃないですか。これは一年の法律案でいい。もし五十八年度増税をやる場合にこれを減らしておくということは筋が通らぬじゃないですか。五十八年度はまた五十八年度で別に考えるなら、この法律案は三年の法律案にしておかなくて単年度法律案でいいんじゃないですか。五十八年度の情勢に応じて再提出をするか、あるいは別な方法をとるか。三年間だけは、この分だけは凍結ですよ、後はわかりませんというのはちょっと一方通行な話じゃないのかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  38. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはこの法律案にも覆いてあるとおり、われわれは五十七、八、九年、九年にはもう赤字国債から脱却をする、この三年間を財政再建期間ということで極力赤字国債からの脱却ということに力を入れていきたい、そのためにこの期間においては異例なこともやらしていただきたいということで、この法案を出しておくわけでございます。われわれはどうしても三年間に赤字国債からの脱却ということと、それから極力要調整額歳出カットでやっていきたい、基本的にはそういうように考えておるわけでございます。しかし、完全にそれだけでできるかということを言われましても、それはそのときの嫌気の状況歳入状況等もございますから断定的なことは申されませんが、われわれとしては極力まず歳出カットというものを中心にしてやっていきたいということを申し上げておるわけでございます。
  39. 沢田広

    沢田委員 いまはとにかく片っ方は三年拘束する法律を出しているんですね。ところが、一方の財政運営の方は、これは後どういうふうに、歳出カットでいくのか増税でいくのか、まだ不確定要素があります。これは未知数なんですね。これはそうなると、三年拘束というのは一方的な犠牲を、痛みを分けると言うけれども、どういう痛みになるかわからぬが、とりあえずこれだけは三年間縛っちゃいますぞ。三年間の禁錮刑ですよ。片っ方はいつ執行猶予があるかわかりませんけれども、とにかく不明ですよ。こういうふうに浅野内匠頭じゃないけれども、一方には厳しく一方には甘いという、これは吉良上野介じゃないが、あだ討ちにならざるを得なくなってしまうんじゃないかと思うのですね。  そういう意味において、五十八年、五十九年は増税もあるかもしれぬよ、なるべく歳出カットでいくんだけれども、増税はあるかもしれませんよ、そういうことをにおわせながら片っ方の減額だけは三年間拘束しておくということは、内蔵助じゃないけれども、悲憤慷慨にたえないということになりますね。一方は甘くなってしまっていて、一方は国民の方だけはきちっと縛りつけてしまっておくよ。それだったら単年度で出してもらって、単年度審議して、単年度の整合性を図るというのが私は筋道じゃないかという気がします。いかがでしょうか。
  40. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど来、沢田さんと大蔵大臣のやりとりを伺っておるわけでありますが、私は基本的には余り大きな考え方の相通はないように伺っておるわけでございます。  と申しますことは、五十六年度予算編成におきましては一兆四千億の法人税その他の御負担を国民の皆さんにお願いをして、そして歳出カット等も思い切ってやって、それで二兆円の特例公債の減額を前提とした予算編成を行いました。五十七年度予算編成に当たりましては、私どもは、増税のない予算編成をやろう、そして五十九年度までに特例公債から脱却するような予算をつくりたい、こういうことでいま努力をいたしておるわけでございます。その一環といたしまして臨調にお願いをし、五十七年度予算編成に当たって、歳出カット等当面緊急に措置すべき事項の第一次答申をお願いをした、それを法律としてまとめて御審議をいただいておるわけでございます。しかし、これだけで終わるものではないことはしばしば申し上げておるわけでございます。五十八年度以降におきましても、今回の法律の三十六本の改正に引き続きまして、縮減合理化を要するものについては法律をお願いしなければならない、こういうことになろうかと思います。  私どもは、納税者の立場に立ちまして、できるだけ御負担をこれ以上ふやさないように、このいままでの高度経済成長時代に肥大化した行財政縮減合理化、これを徹底的にこの際進めたい、こういう基本的な考え方でいっておるわけでございます。そこに沢田さんは先ほど来数字を当てはめて展望をはっきりせい、こういうことでございますけれども、いま不確定要素がたくさんいろいろございますから、数字を挙げてお話しすることは困難である、この要調整額というものにつきましては、歳出カットあるいは諸般の財政事情税収見通し等々を勘案しながら納税者の立場に立って今後善処していきたい、努力をしていきたい、こういうことを大蔵大臣はるるお話を申し上げておるところでございます。
  41. 沢田広

    沢田委員 これだけで時間とるわけにいかないんで、非常に残念なんでありますが、結局五十八年度は増税もあるかもしれぬし歳出カットもあるかもしれぬ、それから五十九年度も同じように増税もあるかもしれぬし歳出カットもあるかもしれぬ、あるいは両方をやっていかなければならないのがいまの現状なんです、その苦衷を察してください、総理は一言で言えばそう言っているわけだと解釈していいですか。どうですか。
  42. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 繰り返して申し上げますが、納税者である国民の立場に立ちまして、この財政再建という目標に向かいまして、厳しいいろんな諸般の事情を勘案しながら最善を尽くしたい、こういうことであります。
  43. 沢田広

    沢田委員 これは抽象的に言っていることなんで、それも答弁なのかもしれませんが、われわれの期待している答弁にはほど遠い。しかし、そういうことを言わなければならぬという総理の立場は私の言っていることを否定はしなかった、こういうことになるわけですから、大体そういう方向だとわれわれは考えていかなくちゃならぬだろう、こういうふうに思います。  そこで、土光会長さんがこの臨調の答申をなさったのでありますが、中曽根さんから言わせると、スーパーマン的な存在であるとかミスター合理化であるとか、あるいは石川島播磨重工を立て直したとか東芝を立て直したとか、あるいは経団連の会長をやっていたとか、こういうような経緯でこの会長の席についたと思うのであります。その間にも、日本の建設業界の連合会が、これは五月十八日らしいですが、こんなことをやられたんじゃかなわない、公共事業補助金カットには絶対反対だというようなことを言ったり、厚生大臣はちょっと出かけていますが、厚生省は、国民健康保険の国庫助成を四〇%から三五%、それから児童扶養手当を二〇%を県負担、それから福祉年金の一〇%をこれも県負担、そして五十四年度の十一兆円の医療費を総枠として抑える、こういうようなことを事前にいろいろと折衝されてきょう答申になってきているのであります。今度の土光臨調の答申というものは、一言で言えばいわゆる民間会社、日本株式会社の再建方式、こういうような物の発想のウエートが強い。  それを若干言うと、これは経団連の言っていることですが、経団連は財政百姓には増税は絶対だめだ、順序がある、行革をやらなければ増税には応じられない、これはもう財界から始終言ってきたんだ、こう土光さんは言っているのですね。これは経団連が中心になって全国的なバックでやる、主体は経団連でなければならぬ、これも土光さんが言っていること。それから、まず民営化である。たばこ、アルコール、一連の特殊法人も含めてまず民営化である。それから情報公開法、これは私は賛成なんですが、それはやりますよ、こういうふうに答えている。結局は経団連がストでもやらなければだめか、増税なら行政改革をやっていい、やらなかったらどうするか、政治献金も一切やめてしまう、それは話は別だ、こう逃げているようであります。  こういうことで、二月五日の記者会見の席で言われた土光さんの主張を考えてみますと、今度の臨調の答申、これからやっていかれる土光さんの姿勢というものは、いわゆる民間の石川島播磨重工あるいは東芝をやられたときと同じような手法で、何でも減量でやっていこう。しかしいわゆる行政、政治と企業の再建とはおのずから道が違うと思うのですね。ですから、その辺に対する鈴木総理の期待と認識というものにはずれがあるんじゃないかという気がする。  土光さんは、石川島播磨のときも千八百億ぐらい開発銀行から金を借りたり、東芝のときも同じようにそういうものを利用してやっている人なんだ。ですから、財界に対してはこの基本的な観念からいくと増税は絶対だめだ。増税というのは国民の増税ではない、財界の増税なんだ、財界に対する増税というものについては絶対だめだ。だから、とにかく何でも減量経営で首を切っていきあるいは業務量を減らす、こういう民間会社の企業的な発想がその底辺にある。だから、財界主導という言葉がうなずけるという根拠になるわけなんでありますが、その辺について本当に全国民的な立場で土光さんが考えているか。もう八十幾つかのがんこおやじになってきちゃって、なかなか融通がきくというようなものじゃないですよ。この人の明治の思想が今日の土光答申の骨格になっている。  だから、総理はどう受けとめているか今度聞きますが、自立自助という言葉がありますね、土光臨調答申の「自立・自助」という言葉をどういう意味に受けとっておりますか。
  44. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 土光さんは国民の一人として、現在の行財政の肥大化と乱費の傾向を憂えられまして、この際思い切ってそれを縮減して合理的に再建しよう、そういうお考えをはっきり持っていらっしゃいますので、これは国民の大部分の声を代弁してその御主張をなさっているんだと理解しております。財界とかあるいは東芝とか、そういうような局部を代表しているものでは絶対ございません。私もときどきお会いしてお話を伺っておりますが、八十四歳で自分はもう引退していい、またそういう気持ちでもおったところが、こういう事態だからぜひやってくれという、そういう政府側の要請に自分もこたえて、最後に老骨にむちうって国家に御奉公したい、そういう赤誠あふるるお気持ちで実はお仕事にかかっていただいておるのでありまして、まさに全国民が何を望んでいるか、そして国際的に見て日本は何をしなければならぬか、そういう非常に高い見地からいろいろ御判断をしていただいているものと確信しております。
  45. 沢田広

    沢田委員 結果的に、これは評価は別なんだと思うのですけれども、いままで言われている発言その他を見ますと、この前の法人税の値上げが非常に頭にきたということで、経団連その他は行革を先にやらなければ話にならぬ、こういう姿勢に尽きていた。その努力は私も評価しないとは言いませんよ。一生懸命やっている八十幾つかの、普通ならば隠居しちゃって引っ込んじゃってていいはずのものが出てきて一生懸命やっているのですから、この努力には大いに敬意を表するわけですが、努力の方向がどうも狂っているというところに問題があるわけなんでありまして、この点は相互に見解の差があるところだと思いますが、ただそういうふうに私たちは受けとめざるを得ない。日本株式会社の再建というような方向だけで政治なり行政なり福祉なり教育なりという問題を見るわけにいかぬものがあるぞということを、これは総理ひとつよく――そのまま受けとめたんでは大変なことになる。よく言われている角をためて牛を殺すということになるし、民間の活力どころじゃなくなってしまいますよ。これは大変な失敗に終わるだろうと私は思うのです。これは後で数字を挙げてまた申し上げますが、そういうふうな条件になると思いますので、この土光答申の性格というものはどうもそういう方向にわれわれは見なきゃならぬ、こういうふうに考えておりますので、その点は後でお答えをいただきたいと思います。  経済企画庁長官が来ましたからお聞きをいたしてまいりますが、経済社会七カ年計画の七カ年目の昭和六十年度のスタイル、生活水準、国民のナショナルミニマムといってもいいと思うのですが、その水準は、今度の行革と関連して、一応目標は達成するという考え方なんですか、それともその目標は変更するという考え方なんですか、いかがでしょう。
  46. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 達成するという考え方でございます。
  47. 沢田広

    沢田委員 具体的にここに書かれております内容で、全然変更しないということでしょうか。
  48. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この経済社会七カ年計画というものは毎年フォローアップをしながら微調整をすることになっております。ことしも一月にある程度調整をいたしましたが、毎年ある程度調整を客観的な情勢の変化に応じまして進めることにいたしております。
  49. 沢田広

    沢田委員 では、幾つかの問題で聞きますが、まず上水道ですが、これは全国一〇〇%と書いてあります。これはそのとおりと解していいかどうか。一つずつ聞いていきますから、それをひとつお答えください。
  50. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 公共事業は、御承知のように、七カ年計画で二百四十兆になっておるわけでございますが、フォローアップで百九十兆円に、そして一年半達成期間をおくらせる、こういうことにいたしております。したがって、目標は変えませんが、達成年度の若干のずれはやむを得ないものもございます。そういう事情でございます。
  51. 沢田広

    沢田委員 そうすると六十年ではなく、一年半というから六十二年の後半、そうすると七カ年計画はすでに八・五計画に変わった、こういうふうに考えてよろしいですか。
  52. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 全体の目標といたしまして、公共事業につきましてはいま申し上げたようなことでございますが、七カ年計画全体のその他のいろいろな問題がございます。それらについての一般的な考え方については基本的に変更いたす考えは全く持っておりません。ただし、公共事業につきましては、いま申し上げたような若干の、一年半程度のおくれはやむを得ない、かような状況でございます。
  53. 沢田広

    沢田委員 次に、臨調の答申とも関係する分だけ申し上げますと、下水道は五十年で二三%、それを六十年度において五五%にする、こういうことになっております。これの目標は達成できるのかどうか。  あとちょっとほかに問題がありますから言っておきます。  本州-四国の橋は臨調の答申は一ルートにとどめるべきであると言っております。しかし、この六十年の計画では一ルート、児島-坂出ですか、それから大鳴門橋とかいろいろ六十年計画では出ております。それから関西の国際空港も六十年計画には載っかっています。しかし臨調ではこれはやめろと言っております。その点はどういうふうになるのですか、お答えいただきたいと思います。
  54. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  下水道関係の計画、また本四架橋の一ルート三橋、四橋のことにつきましては、すでに臨調答申の線に沿って、出る前からの計画に沿って実施いたしておりますので、一応臨調の線に沿って実施でき得るものと、またそのような向きで進めているところでございます。
  55. 沢田広

    沢田委員 抽象的でわからないのですが、そうすると、結論的には本州と四国の橋は一ルートにとどめる、それから関西の国際空港はやめる、こういうことだと解釈してよろしいですか。
  56. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 空港は運輸大臣の方からお答えがあろうかと思います。  本四架橋の問題につきましては、すでに答申の出る前から答申の線に沿って実施計画がなされておりますので、当面それで答申の線とたがわずに進めていかれるものと考えております。
  57. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 関西空港につきましては、臨調の答申にもございますように慎重に調査を進めるということでございまして、建設を中止するということは書いてございません。したがいまして、現在の財政事情でございますので、われわれは後年度において建設にかかるために必要な基礎的な調査というものを続けていくことにいたしておる次第であります。
  58. 沢田広

    沢田委員 経済社会七カ年計画の中には、いま言ったような高速道路四千二百キロあるいは関西国際空港の建設、下水道、そういうようなことも書いてあります。あとまだほかにあるのですが、六十年の目標、まあ六十一年でもいいのですが、住宅の一戸当たりの建蔽率、これも建設大臣からお答えいただくのですが、八十四平米にする、こういうふうに言っているわけですね、一戸の住宅居住面積を。これも実現はできると考えていいですか、それが一つ。  それから、文部大臣おられると思うのですが、公立小中校の老朽校舎はすべて六十年には解消する、こういうふうに七カ年計画では言っておりますね。この点はいかがでしょうか。
  59. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  新経済社会七カ年計画調整された段階の計画に基づいて、実施する方向でやってまいる所存でございます。
  60. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまの御指摘の老朽校舎の問題は、大体予定どおりいけると思っております。
  61. 沢田広

    沢田委員 次に、「関西新空港については、慎重な調査検討を行う。」こういうことに答申ではなっているわけですね。七カ年計画の方は実施をする、こういうふうになっているわけです。これは、調査検討を十年やっていても二十年やっていてもそれは構わないということになりますが、七カ年の間において片っ方は完成する、片っ方は調査検討をする。ほかにもたくさんあるのですが、幾つかの問題を私は取り上げたのですが、住宅の八十四平米についても、この七カ年計画はこれは到達する、こういうことになっているわけです。あと社会保障の問題があるのですが、厚生大臣がいなくなったので省いたのですが、そうすると七カ年計画は到達すると言っているけれども、いままでの答弁では皆若干ずつ狂いが出てきておりますね。ですから、これは当然毎年フォローすると言いながら、七年後の国民生活の水準そのものをじゃどうするのかということの目標は、大分狂ってきてしまっている。まあ六十一年でも構いませんが、六十一年度なら六十一年度の八カ年計画、六十二年度なら六十二年度の九カ年計画に変えるにしても、じゃどういうものになるのだ。  また、それ以外にも、これは建設大臣に聞くのですが、六十年には歩道、自転車道、歩行者専用道路、こういうものを全国的に整備をします、こう書いてある。これだって、夢物語みたいなものにしか私には感じられない。しかしこの七カ年計画には、そうきちっと書いてある。だとすると、建設大臣にさっきの答弁と同じようにもう一回、これから建てる建設省の住宅は八十四平米以下のものはつくらせない、そういうことが言い切れるのかどうか、あわせてひとつお答えください。
  62. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  百九十兆円の経済社会七カ年計画の基本計画というものは、河本長官からも、変えないでいく、ただ毎年毎年微調整に基づいてフォローアップしていくというようなお話がございました。もとより私たちも、いまその計画に基づいて進められている計画を変えようとは思いませんし、その線に沿ってせっかく努力するべきものと考えておりますので、毎年毎年の微調整問題との兼ね合いはあろうかと思いますが、とにもかくにも計画の線の実現に沿ってやってまいる所存でございます。
  63. 沢田広

    沢田委員 じゃ最後に経済企画庁長官に、厚生大臣がおりませんけれども、これも書いてあることですから。  六十年の社会保障は「現在制度的に西欧なみとなった水準が、基本的には維持されており、対象者の増加に対応して、年金、保健・医療、社会福祉の各分野において、給付の量的規模が拡大し、質の面でも向上しているであろう。」こういうふうに分析をされ、七カ年計画の中で指摘をしております。いま出されている法案とは若干うらはらの関係があるのでありますが、この見解も変える必要はない、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  64. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この七カ年計画の目的は二つございまして、一つは国民生活の充実向上を図っていくということが第一。それから第二は、国際社会に貢献できるようなそういう力をわが国が持つべきこと、この二つを目標にしておるわけでございますが、一昨年の八月にスタートいたしましてからいろいろ客観的な情勢も変わっております。しかしながら一番の根本であります経済成長、これは実質五・五%成長を目標にしておりますが、この路線はおおむね進んでおると思います。それから物価も、消費者物価は五%と想定をしておりますが、これもその線で進んでおると思います。でありますから、客観情勢は変わりましたけれども基本的な路線はおおむね変わっていない、このように考えております。  先般も申し上げましたが、たとえば七カ年計画には一般消費税を導入するというようなことも書いてありますけれども、これも一応現在のところは見送りになっております。しかしながら、一方で税の自然増収が期待できますので、一般消費税の予想増収三兆円を補ってなお余りある、こういう状態でございます。そういうことで、大勢としては一昨年の八月に想定をいたしました線を進んでおりますので、その間の若干の調整は毎年フォローアップをしながら行いますけれども、しかし根本そのものを変えるということは考えておりません。  また、そこで、御指摘の社会保障の一応の目標等も、いまのところは基本的には変える考えはございません。
  65. 沢田広

    沢田委員 それでは、こういう法律を三年間出してその後カムバックするということは、総理、たびたび質問があったけれどもそのとおりに理解していいですか。そういうふうに理解していいわけですね。
  66. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いままで提案いたしておりますこの法律関係につきまして、当面財政措置として臨時にとっております面につきましては、三年後におきましてこれを改善する、こういう方針でございます。
  67. 沢田広

    沢田委員 もしそのことをこの委員会で決議をするということについて、政府なり自民党総裁としては反対はしませんね。そのことを確認するということは了承されると理解してよろしいですか。
  68. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 委員会決議のことでございますから、各党各会派におきまして十分御論議を尽くし、御検討をいただいてその結論を出していただきたい、こう思っております。
  69. 沢田広

    沢田委員 河本さん、もう一つですが、六十年の国民生活の状況、われわれはこの臨調なり何かのいろいろな答申を受けて、国民はこれからどうなるのだろうか、おれたちの先行きはどうなるのだろうかという不安感は、総理もそうなのですが、ぬぐい切れないものがあるわけですよ。年金や老人人口、人口の老齢化が進む、子供は余り多くならない程度でいく、就労人口も減ってくる、政府は行革だと言ったり首切りだと言ったりいろいろとする、勤めも不安だし家庭も不安だし、これからの老い先も不安である。国民がこういう不安感に非常におびえていると言っては極言かもしれませんが、実質上不安感の中にあることだけは間違いないと思うのです。  そこで、六十年の国民生活の状態というのが七カ年計画なりにあります。ちょっと見ますると、寝る時間はあたりまえのことなんでしょうけれども、六十年の生活状態を見ると、大体、年間八千七百六十時間の中で睡眠はおおむね一日七・七時間である。仕事は大体百四十日になります。学校は四時間ずつやって大体一年で百日であるというような一つの国民生活、一人当たりの生活実態が出ているわけです。自由時間が三分の一ですから三千時間ぐらいあるわけなんですが、その中には交際とか趣味とか知識・情報とか休養とかというものが入っております。これは一応別にしましょう。いま言った睡眠時間はいいのですが、仕事の関係で百四十日、一二・八%、こういうふうになっている。そうすると、これを計算しますと、一日八時間働きますと一年間に大体百四十日にならなければならぬ、こういうことになります。学校も四・七となっておりますから、四時間ずつの授業として百日で学校の授業は終わる、こういうことにならないとつじつまが合わないのでありますが、そういうことが六十年代における国民の生活の状況になる。そういうことは言えるわけですか。
  70. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この七カ年計画では、昭和六十年におけるおおよその国民生活はどうなるかということを想定しながらいろいろな参考資料を出しておりますが、やはり一番目標にしておりますのは、先ほども申し上げました二つの目標がございますけれども、その第一である国民生活の充実向上、こういうことをまず考えまして、そして雇用の安定、現在は失業率は約二%強ございますが、これを一・七%に持っていきたいということを中心にいたしまして生活の充実向上を図っていく、こういうことを考えております。  いま御指摘のございました労働時間と学校の勉強時間の問題につきましては、事務当局から答弁いたします。
  71. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 いま先生から御指摘ございましたものは、七カ年計画の参考資料に掲げてある国民生活の六十年度の一応の考え方でございます。  現段階では、われわれといたしましては、若干の数字の細かい点は除きまして、大きな方向といたしましてはこういう方向に国民生活が充実していくことを期待しておるわけでございます。
  72. 沢田広

    沢田委員 非常に望ましいと思うのですが、それのリーダーシップといいますか、そのことはあなたが絵にかいただけでなくて、それを実行し得るように閣議了解事項にはなっているわけですから、各大臣はそれを受けてやっていくわけだ、こういうふうに理解していいですね。
  73. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 先生のおっしゃるとおり、この方向に沿っていろいろな計画がつくられて、実現の方向に向かって努力をしていきたい、かように考えておるわけであります。
  74. 沢田広

    沢田委員 文部大臣、いま言った数字、御存じですかというとはなはだ失礼なんでありますが、そういうことになるのであります。  昭和六十年代における学校教育の実態ということは、大体年間四百十一時間、四時間で百日、こういう学校教育の実態になる、こういうふうになっておりますが、そういう目標に向けてやられますか。
  75. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 計画の目標に従いまして、われわれもそれに基づきまして、ゆとりのある教育といったような指導方針で進んでまいります。
  76. 沢田広

    沢田委員 労働大臣、いま言ったように、仕事の関係では延べでいきますと千百二十時間、これも八時間労働でいきますと百四十日ということになるわけでありますが、どういう方途でこの実現を図りますか。
  77. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えを申し上げます。  まずもって、そういう計画を達成をするということには、これは一定の条件が整っていなければならぬわけです。世界経済の動向でございますとか、あるいはいま現に猛烈な勢いで進んでおりますマイクロコンピューターあるいはロボットの導入でございますとか、こういった要素がどちらの方向に行くか、どの程度の速さで行くか、こういったことがきちっと確定をいたしませんと、それに基づいていまこのようにしたいという願望だけで物を申し上げるということは非常に不見識でございますけれども、そういった条件が一定の方向に行くというように仮定をいたしました場合には、私どもはそのような方向に雇用を前進をさせていく、そうして労働時間その他につきましてもそのような方向に持っていくための努力はしていかなければならぬわけであります。  その第一が、私どもといたしましては、六十年までに労働時間は二千時間以内にどんなことをしてもとどめる、週休二日は達成をする、あるいはこれから出てくるいろいろな問題に対しましてワークシェアリングも考えていかなければならぬ、失業率は一・七というような方向に持っていかなければならぬ、こういうことでございます。  仕事といたしましては、非常にたくさん困難な仕事がございますけれども、私どもの政治姿勢はそちらの方向に努力をするということでございます。
  78. 沢田広

    沢田委員 政治家というのは、ときには公約だなんて言われるときもありますけれども、こういうふうに文章に盛って出した場合にはやはりそれに責任を持つということがきわめて大切なんですね。国民が信頼を置くのは、その言ったことを守ってくれるかどうかということなんであります。だから、一たんこうやって出す以上は単なる夢に終わらせてはならないのでありまして、それをどう実現していくかというところの誠意を示す必要があると思うのです。これは、いま幾つかの例を出したのですが、まだほかにもあるのであります。そういうことで、政府も七カ年計画を閣議で了解をしたならば、それの実現のためにどういう方途を講ずるかということをきちんと整理をして、言うならば計画目標達成のプロセスを提示してもらいたい。  たとえば、一つだけ言っておきますと、昭和六十年度に、勤労者の生活の消費の中で住宅は二万一千円だと書いてある。六十年度の住宅の費用が二万一千円で済むと常識で思えますか。二万一千円の家賃なんということが平均的に確保できるとは思えないのであります。しかし、そういうものも出ているわけですから、それを実施するには土地の問題を解決しなければとても到達しない目標でしょう。  こういうようなことで、いま私が言っているのは、臨調の答申というものと政府がやっている七カ年計画とは水と油ぐらい違いがある、だから、七カ年計画も変えるなら変えなければこれは話にならない、こういうようなことをうたい文句に言っておきながら、一方ではどんどん国民生活が下がってしまう、そういう状況は許されないということの政治的な責任というものをはっきりと感じてもらいたい、こういう意味で申し上げているわけです。  これは総括的に総理、七カ年計画の達成というものと、それから現実の行革の中身というものとのずれをどういうふうに埋めていくつもりなのか、ひとつ考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  79. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど河本経企庁長官からお話を申し上げましたように、わが国の七カ年計画が目標としておりました大筋の方向、これは私は確保されておる。経済成長の面におきましても、物価の面におきましても、あるいは雇用の面におきましても、大体そういう方向に行っておる。情勢は大きく国際的にも変わった面がございます。歳入歳出の面でもいろいろ変化がございました。国民の皆さんの声も聞いて、そして一般消費税のようなものも取りやめた、こういうこともございました。歳出の面では予定の計画を若干ずらさざるを得ないという状況も生まれてきております。しかし、急速に到来しておりますところの同齢化社会、また国民各層の生活の実態というようなものをにらみ合わせながら、この八〇年代以降の国民生活の安定確保ということと、それから国際社会におけるわが国の役割りの増大、これに対応するような方向で努力しよう、こういうことで進めております。  これから臨調からいろいろの答申が出ると思います。それと七カ年計画とは必ずしも私は一致しない点もあろうかと思いますが、新しい情勢に対応しながら臨調の意見等も十分政府としてはこれを取り上げ、そして七カ年計画もフォローアップをしながら、いま申し上げた目標に向かって着実に施策を進めてまいりたい、こう思っております。
  80. 沢田広

    沢田委員 答弁はきわめて不満足でありますが、時間がなくなってきましたから次にいきます。  次に、いままで自民党さんと民社党さんが人勧の問題に関連して、法制局長官に憲法解釈の問題が出ておりました。若干はっきりさせておきたいと思うのです。  まず第一に確認しておきたいのは、いままで両氏が言われたのは少数意見の見解を問われた、こういうふうに理解してよろしいですか、補足意見のね。
  81. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 少数意見ではございませんで、二人の裁判官は多数意見には属しておられると思いますが、追加補足意見の中で申されたことを二人の委員の方が御引用になったものだと存じます。
  82. 沢田広

    沢田委員 では、多数のこの判決については了承をした、しかし自分の考えはこういうものもあるのでということを補足意見として出した。補足の意見というものの法律上の効果はどうですか。
  83. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 あくまでその意見を言われた裁判官がそういう意見を持っているということでございまして、多数意見そのものではございません。
  84. 沢田広

    沢田委員 判決文の法律上の効果はどのようにお考えになっておりますか。
  85. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 最高裁の判決自体としては、あくまで多数意見が拘束力を持っているというふうに考えます。
  86. 沢田広

    沢田委員 その拘束力は、行政あるいは国会も含めて立法、いずれもそれによって拘束をされてくる、当面そういうことになる、こういうふうに解釈して間違いありませんか。
  87. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 行政府としては、当然最高裁の意見を尊重すべきものと考えます。
  88. 沢田広

    沢田委員 それで、この少数論というか補足意見は別なんでありますが、長いこの文章の朗読は省略をいたしますが、結論的に「生存権保障の趣旨から、法は、これらの制約に見合う代償措置として身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件についての周到詳密な規定を設け、さらに中央人事行政機関として準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。」この「準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。」、この解釈はどうお考えになりますか。
  89. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 準司法的機関というのは、人事院が公平審理をするとか勤務条件の措置要求をする、こういうものを普通公平機能と言っておりますが、これらを指しているものと思います。
  90. 沢田広

    沢田委員 単なる公平という意味ではないと私は思うのですが、準司法的というのは文字どおり解釈すれば、司法に準ずるですね。文字どおり解釈すれば、司法機関に準ずる性格の人事院である、そのとおり解釈して間違いないのじゃないですか。ただ単なる公平じゃないだろうと思うのですが、いかがですか。
  91. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 人事院の機能を仮に分類いたしますと、行政的な機能、立法的な機能、それから司法的な機能というものがあるわけであります。無論立法的機能といいましても、これは国会が立法機関であると同じような意味で申し上げているのではなくて、人事院規則という非常に強い力を持った一種の立法をすることができるという意味で申し上げているのです。  それから次に、司法的機能につきましては、先ほど申し上げましたように、勤務条件の措置要求なりあるいは不利益処分の審査をやる、これはあたかも裁判所がそういうものを審理すると同じような似たような立場でそういうものを処理いたしますので、これを準司法的機能ということになっております。
  92. 沢田広

    沢田委員 これは重大な言葉、速記録上も間違いが起きますから。それはそれこそ公平的な役割りなんですよね。いわゆる地方公務員法でいう公平委員の役割りなんですよね。  ここではそう書いてないですね。「公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件について、いわゆる情勢適応の原則により、国会および内閣に対し勧告または報告を義務づけられている。そして、公務員たる職員は、」個別の異議の申し立てを請求する権利を持っている、こうなっているのですから、「法律によって定められる給与準則に基づいて給与を受け、その給与準則には俸給表のほか法定の事項が規定される等、いわゆる法定された勤務条件を享有しているのであって、人事院は、公務員の給与、勤務時間」とこうなっていますね。ですから、いまあなたの言われているのは後段のことが準司法的だと言われておりますけれども、「その生存権保障の趣旨から、法は、これらの制約に見合う代償措置として」、これはいわゆる労働基本権の代償措置としてですが、「身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件について」準司法的な機関の性格を持っている。これは間違いないですね、いま言っていることは。あなたの言われていた公平というのは後段なんです。前の方はそのとおり、この準司法的な性格は生存権保障の趣旨から持っているんだ、こういうふうになっていますが、いかがですか。
  93. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 私もそのところを読んで申し上げているつもりでございますけれども、「これらの制約に見合う代償措置として」これこれについて「周到詳密な規定を設け、さらに中央人事行政機関として準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。」その意味を申し上げたつもりであります。
  94. 沢田広

    沢田委員 私の言っていることに間違いがなければいいんです。  そういうことで、この「人事院を設けている」というのは準司法的な機関、正式に言うと準司法機関的性格、こういうもので人事院を設けている。そうするとこの判決は、まあ法律ですね、この判決はそのとおりだ。そうすると、その人事院から出てきたものは、準司法機関的性格の人事院から出されたものですから、いわゆる類推といいますか、演繹的に物を申せば準司法機関的性格の勧告である、こういうふうになると思うのですが、いかがですか。
  95. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 そこは違うと思います。  先ほども申し上げましたように、人事院は準司法機関的な性格を持っておりますけれども、人事院の勤務条件に関する勧告機能は、私は準司法的機能ではなくて行政的機能だと思います。
  96. 沢田広

    沢田委員 これでいきますと、「人事院は、公務員の給与、勤務時間について、国会および内閣に対し勧告または報告を義務づけられている。」ここまでが準司法機関的性格の中身なんですね。「そして、公務員たる職員は、個別的にまたは職員団体を通じて俸給、給料その他の」是正ですね、「行政措置要求をし、あるいはまた、もし不利益な処分を受けたときは、人事院に対し審査請求をする途も開かれている」、「も」と書いてありますね。これは複合ですね。ですから、あなたの言われている後段の準司法的なという意味じゃなくて、前段も準司法機関的な性格なんですね。「も開かれている」のですから、そういうものもありますよということをつけ加えて言っているのであって、前段もいわゆる人事院というのは準司法的な機関の性格であることは間違いないですね。だから、その準司法的な機関から出されているものの結論は準司法的なものである、これはだれが考えてもそうならざるを得ないんじゃないですか。
  97. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 人事院が準司法的機関として準司法的機能を持っていることは疑いを入れないと思います。しかし、人事院の国会及び内閣に対する勧告は準司法的機能として出されているのではなくて、これはあくまで行政的機能として出されているものだと思います。  つまり、委員のおっしゃる意味は、準司法的機関である人事院が出したものであるから、それを国会及び内閣が最大限に尊重しなければならないという御趣旨であるとすれば、それは私はそのとおりだと思います。しかし、普通の裁判所のようにそれが国会及び内閣を絶対的に拘束をするというような意味で準司法機関としての人事院の機能を言っておられるとすれば、それは私はそうではないと思います。
  98. 沢田広

    沢田委員 もしそうだとすれば、これは判決文の主文に続く理由なんですから申し上げるのですが、そうだとすれば今度は、「その争議行為等が、勤労者をも含めた国民全体の共同利益の保障という見地から制約を受ける公務員に対しても、その生存権保障の趣旨から、法は、これらの制約に見合う代償措置として」ごうごうと書いているのですね。ですから、言うならば生存権保障の趣旨からこの制約に見合う代償措置、これは一方が緩くなれば制約も緩くなるという相対的ものだと思も。制約だけが一方的に優先するのではなくて、もしもあなたの解釈のように行政的なものだということになれば、結果的にはこの法律の代償措置というものもそういう緩みを生じてくる、争議行為も可能である、極端に言えばそういうことになる。  だから、これは準司法的な機関の性格だから労働者もがまんをしなさいよ、そのかわりその使用者である政府もがまんしなさいよ、そういうことが準司法的な機関としての役割りを担っているので、それが行政措置で緩んでもいいんだということであれば、争議権その他において緩んでもいい。生存権の保障は当然あるのですから、また労働基本権を要求する権利はあるのですから、一方を緩めれば一方が緩むという論理になりますね。ですから、この準司法的機関の性格の人事院の出すものは相対的なものであり、相対的に制約するものであると私は解釈するのであります。あなたは片面だけ言っておりますけれども、そうするとその点は、労働基本権のいわゆる生存権を持つ争議権というものは自動的に発生する、こういうふうに私は解釈しますが、いかがですか。
  99. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先日の委員会における答弁でも申し上げたつもりでございますけれども、公務員の労働基本権を制約する場合の代償措置というものとして、人事院の存在及びその権限というものがあるわけでございます。したがって、人事院勧告を国会及び内閣が最大限に尊重しなければならないということは当然のことと解されると思います。  なお、私が行政的機能と申し上げたので若干誤解をされたのではないかと思いますが、行政的機能であるからそれを聞かなくていいとか、あるいは価値の低いものであるというような意味で申し上げたわけではなくて、機能の分類として行政的機能に属するのではないかということを申し上げたわけで、あくまで最大限に尊重しなければならない、それはまさに生存権保障と見合うものであるということについては、委員のおっしゃることと基本的には同じでございます。
  100. 沢田広

    沢田委員 時間がありませんが、最後に。  あなたはこの間の質問で、このことは法律ですね、法律行為と同じなんです、この判決は。それで憲法の問題に触れられて、憲法違反でないというふうなことを言われました。これは補足意見について言われた。しかし、憲法違反でないとかあるとかということはこの理由の中からは――この争議行為そのものが違反だというようなことはもちろん書いてありますよ。それは書いてありますけれども、あの質問に対して、憲法について違反であるとかないとかとは触れてないのですね。触れてない、そのことだけをまず一つ確認しておきたいのですが、いかがですか。
  101. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 私は過日の委員会で二つのことを申し上げたと思います。  第一は、最高裁判決の趣旨によれば、代償措置としての人事院の給与勧告制度が実効を上げるように、国会及び内閣が最大限の努力をしなければならないと解されるということを申し上げたと思います。  それから第二には、御質問に応じてお答えしたわけでございますけれども、人事院の給与勧告を完全実施しないことが直ちに違憲になるかということについて同判決は直接言及していないが、と申し上げました。決して同判決がそういうものについて言及しているとは申し上げなかったと思います。同時に、判決理由全体を総合して考えてみると、そこまでは断定していないと思われるというお答えをしたつもりで、かなり慎重な言い方をしたつもりであります。  なお、この点について若干敷衍をさせていただきますと、多数意見は、国家公務員の給与の財源は国の財政とも関連して主として税収によって賄われるものであって、国家公務員の給与その他の勤務条件は、国民の代表者により構成される国会において論議の上決定されるべきものであるということを強調しております。  さらには、いま問題になっております追加補足意見は、先ほども申し上げましたように、多数意見のうち特に代償措置の意義を強調している裁判官の意見であると思いますけれども、しかし、先ほど来お話に出ておるように、前段と後段とではややニュアンスの違った言い方もしております。そういうものを全部総合して判断したものである。私は決して追加補足意見のある部分のみを申し上げてあのようにお答えしたつもりではございません。
  102. 沢田広

    沢田委員 結論的にこれは、問題は、触れていないという事実関係を確認したかったということで、あとはあなたの解釈をいま言われた。その解釈については私たちは問題がある、こういうふうに言っているわけでありますから、触れていないということだけ確認すれば問題はいいわけですから、とりあえず次に行きたいと思います。  次に、これは総理に、お帰りになるそうでありますから、大変な問題で、どこへ帰るのかわかりませんが、とにかく出るそうでございますから、いろいろあるのですが、専守防衛の問題を若干聞いておきたいのであります。  専守防衛、専守防衛とこういうふうによく言われる。私の言っている表現に間違いがあったら、ひとつ訂正をしていただいて結構なのですが、いま政府の言うのは専守防衛である、こういうふうに言われているのは間違いありませんか。いかがですか。
  103. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 わが国の防衛政策の基本には、専守防衛、これがはっきり貫かれております。
  104. 沢田広

    沢田委員 私はこの防衛問題は専門でありませんのでよくわかりませんし、本当の素人であります。素人でありますから、非常に幼稚な質問をしてまいります。  専守防衛というのは、とにかくもっぱら守ることに重点があるので、攻めることにはない。守る以上はどの程度の期間守ればいいのだという目安はあるのですか、ないのですか。
  105. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  専守防衛は、ただいま総理大臣がお答えいたしましたとおり、わが国防衛の最も基本的な方針の一つでございます。  ただいま何日間守れるかというお尋ねでございますが、これはその侵攻の態様等によって異なりますので、一概に申し上げるわけにはいかないと考えております。
  106. 沢田広

    沢田委員 だけれども、もっぱら守るのですから、一日守れるのか、二日守れるのか、半年守れるのか、一年守れるのか。相手によって違うのはもちろん違うのですが、一定の条件のもとにの想定というものはあられるのじゃないですか。一定前提条件のもとにの一つのものはあるのじゃないですか。それもないのですか。
  107. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  「防衛計画の大綱」におきましては、限定的な規模における外部からの攻撃に対しましては原則として独力で対処する、さらにこれを超える侵攻がある場合におきましても、極力早期にこれを排除することといたしておりますが、独力での排除が困難な場合においては、あらゆる方法を持って粘り強い抵抗を続ける、そして、安保条約に基づくいわゆる米軍の支援を待つというのが「防衛計画の大綱」に示されているところでございます。  そこで、最小限度の限定的な侵攻ということに対して原則として対処するということで、現在防衛力の整備を進めているところでございます。
  108. 沢田広

    沢田委員 抽象的に聞いているわけじゃないのです。一定の条件はあるでしょう。いま言った限定なら限定で結構なのです。限定的にある程度としたならばどういう期間は専守防衛でおられるのですかということを聞いているわけなのですから、早くとかなるべくとか、そういう問題じゃないのですよ。一定の条件はもちろんあるわけですから、一定の条件のもとにおいてはどうなのですかと聞いているのですから、その条件を言ってもらって、この場合にはこれだけの期間がいまの専守防衛の期間です、守り得る期間です、そういうふうに答えてもらえばいいのであって、抽象的に早くとかなんとか、そういうことじゃないのですから、ちょっと防衛庁長官の答弁は答弁になっていないのです。
  109. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛の目的は、日本を守る、最後まで守るというのが目的でございますが、具体的に何日間守ればいいのかあるいは守ることができるのかということになりますと、いま長官からお答えいたしましたけれども、具体的に何日ということは申せないわけでございます。要は、限定的かつ小規模の侵攻であれば日本が独自で対処するだけの力をもってこれに対処するし、それ以上であれば米軍の来援をもって日本を守るということでございまして、その間何日というようなことはちょっと申し上げられる性質のものではないと思います。  ただ、それじゃ具体的に何もめどもなしに言っているのかと言われますと、日本を防衛するための具体的な作戦計画につきましては、御承知のように日米ガイドラインに基づく作戦計画等は現在いろいろなケースについて勉強していかなくてはいけないということで、日米で協議を進めております。しかし、その場合でも、あくまでも抽象的ないろいろな想定によってやっているわけでございまして、具体的にどういうケースについて何日というふうに申し上げられる性質のものではないと思います。
  110. 沢田広

    沢田委員 じゃ具体的に聞いていきますが、昔のあれでいけば籠城するようなものですね。もっぱら籠城するわけですから、籠城する以上は、食糧もなければならないし、石油もなければならないということになるわけですが、現在の食糧に対しては防衛庁等はどういう理解をされているのですか、それから石油についてはどういう理解をされているのですか、この二つの問題だけについてお答えいただきたい。
  111. 塩田章

    ○塩田政府委員 食糧につきましても石油につきましても、国民生活全体のことにつきましては必ずしも防衛庁の所管ではございませんので防衛庁からお答えするのが適当かどうかわかりませんけれども、全般的に申し上げますと、石油を含めあるいは食糧を含めまして年間約六億トンの輸入を現在いたしております。その約六億トンの輸入しております物資がいざ有事の場合にどれだけの程度まで少なくても済むかというようなこと、これは本来は正確に政府として研究しなくてはいけない問題だと思いますけれども、いま防衛庁の試算で申し上げますと、大体一億九千万トンから二億トンぐらいあれば国民生活を維持し、かつ自衛隊の継戦能力も維持することができるのではなかろうか、防衛庁としてはそういう目標を持っておるわけであります。
  112. 沢田広

    沢田委員 時間がなくなったから聞きますが、現在戦車七百九十両。もっと多くなったでしょうね。航空機八百四十機ぐらいになりますか――八百八十機ぐらいになるわけですね。それから、そのほかに潜水艦、護衛艦、装甲車、これを見ますと、ガソリンの使用量、資料をもらいましたが、F4なんかは一時間当たり六キロぐらい使うわけですね。それから七四式戦車になりますと、一時間当たり百七十リットルぐらい使うわけですね。これは一時間四十キロで走ったとしてです。それから七五式自走砲になりますと、これは百四十リットルぐらい使う。それから船の方も同じように二キロから三キロぐらい使う。いまの日本の石油の備蓄は百十九日ですか。これは国民が使うものも全部含めてなのですが、百十九日分ある。電気も全部こうやって石油を使っているわけでありますが、その中でいわゆる自衛といいますか、専守防衛のために使える分量としては、いまの国民生活を脅かさない限りは大変少ないわけですね。そうしますと、これは私の逆算で言っているのですが、大体各飛行機が二十四時間、これは二十四時間半分の飛行機が飛ぶと仮定をして、実際には半分は飛べないらしいのですけれども、一時間半飛ぶと参ってしまうのだそうですが、四百機飛ぶと仮定をしてみて六十万トンぐらいとにかくかかる。そうすると、これは幾日ももたないという計算になるわけなのですが、それ以外に艦艇が動いたり車両が動く、こういうことになると、石油そのものとしては、現在の備蓄全部を使うと仮定してみても大した日数はもてない、全部使ってせいぜい百日くらいということになるわけなんです。計算の根拠は全部国民生活を無視しての計算で言っているわけでありますが、その点は防衛庁としてはどの程度計算をされているんですか。
  113. 塩田章

    ○塩田政府委員 お話にございましたように、全部の飛行機、艦艇が二十四時間フルに動くということは実際上はあり得ないと思いますけれども、いまお尋ねでございますから、仮に自衛隊の飛行機、艦艇あるいは戦車等の車両が全部ぶっ続けに動くと仮定をしますと、現在持っている自衛隊の現時点でのストック、これは年間大体八十万キロないし九十万キロ程度の使用量のうちの大体三分の一ないし四分の一をそのときそのときにおけるストックとして持っているわけでございますが、それをいま申し上げたような条件で仮に全部一斉にとにかく動き回ると仮定しますと、海上自衛隊の場合は数百時間、航空自衛隊と陸上自衛隊の場合は数十時間で現在のストックはなくなります。これは仮定でございますから申し上げたわけですが、その間もちろん自衛隊が一滴もその後の購入をしない、現在持っているストックだけでフルに全部を動かしたという仮定で申し上げますとそんな程度の数値になります。もちろん実際問題としましてはそういうことはございませんし、現在の使用量八十万ないし九十万キロリットルが、有事の場合にどの程度要るかということにつきまして、私ども内々にもちろん検討はいたしておりますが、恐らく年間消費量としましてその数倍程度要るのではなかろうかと思っております。いま仮定の計算で申し上げますと以上のようなことになります。
  114. 沢田広

    沢田委員 ガソリンのない飛行機、ガソリンのない艦艇、ガソリンのない車両、これはおもちゃより悪いということになりかねないのでありまして、とにかく、動かない飛行機、動かない戦車、動かない艦艇、こういうことで専守防衛というものが果たして存在するのだろうかという疑問を持たざるを得ない。  それで、一千海里を輸送船を守るということがこの間の発言の中に出ておりましたが、一千海里で果たして石油の航路は守れるのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  115. 塩田章

    ○塩田政府委員 一千海里の海上防衛につきましては、「防衛計画の大綱」等におきまする日本の防衛の態勢につきまして、一応その程度の防衛ができるようなめどのもとに防衛力を整備したいということで現在整備中でございます。現時点で一千海里の防衛ができるかということになりますと、もちろん現在の自衛隊の力で不足すると私どもは思っておりますが、「防衛計画の大綱」を考えましたときの考え方としまして、一千海里程度は守れるようなものをめどに整備していきたい、こういうことでございます。
  116. 沢田広

    沢田委員 結果的に、さっき覆ったように、いまの日本の備蓄している石油全部、国民生活をすべて犠牲にしたと仮定をしても、一千海里守ってもその先は守れない。とすれば、この専守防衛の中身というものは、石油だけを例にとってみましても、きわめて不安定要素の高いものである。だから、四次防なり三次防なりということでやってきても、言うならば飾り物を多くつくるだけであって、中身としての専守防衛という、一応一歩譲ったと仮定をしてみても、存在の意味はないと言わざるを得ない。いわゆる中身のない防衛論議ということになるわけで、石油がなくて食糧がなくて、それでどうやって防衛をするのか、こういう疑問に、ちっとも回答になってないんですね。  ですから、この点は時間の関係上あとは後の方に譲りますけれども、その辺はもっともらしいことを言われているけれども、それはおもちゃの戦車を買ったり、おもちゃの飛行機を買ったりということ以外の何物でもない、こういうふうに国民的な立場から見ると言わざるを得ないのでありまして、その点は後でまたお答えをいただきたいと思います。  続いて、ちょっと重要なところだけ申し上げますが、土光答申の中では、同和対策問題については触れられていないのであります。(「これは触れるべきだったんだ」と呼ぶ者あり)おっしゃるとおりです。  ところが、同和対策問題については触れていないのですから、触れていないということは、これは改革の措置はしなくてもよろしい、だから当然そのまま延長をされる、こういうふうになって、自民党さんがどう決めるか、この問題は別なんですが、土光さんの頭の中においては、少なくともその問題については触れられていなかった、こういうことで、それはほかの問題と同じようにそれぞれ延長していく、こういう考え方があったと私は考えているわけでありますが、それはそういう方向で善処されることを期待しまして、後で総務長官の方でお答えをいただきたい、こういうふうに思っております。  もう時間がありませんから続いていくのですが、第三予算と言われております自転車振興会、競馬会、それから船舶振興会、こういうものがたくさんいろいろな福祉事業をやっております。いろいろ福祉事業をやっている中のもので、私は、あえてこれは政府に一括納付してもらって、そしてその納付していただいたお金を現在の福祉の問題その他に使っていく、こういうことに考えるべきではないか、こういうふうに思うわけです。  たとえばモーターボートの収益金の扱いとしても、千四百九十六億施行者収入として入っているわけですね。それ以外にまた、造船関係の貸付補助四百四十九億、九十二億、それから、海難防止に九億あるいは公益事業に二百六億、直轄事業に七十一億、協賛事業に三十六億。八百六十四億、こういうような金額がそれぞれ政府の施策と同一な方向で措置されている。  これは政府へ納めてもらって、政府の中で整合性のある施策に展開をしていくべきではないか、こういうふうに思います。自転車振興会、競馬会はもらっているわけでありますけれども、船舶振興会も同様に競馬会と同じような措置、自転車振興会と同じような措置で――自転車振興会は、納付金はありますが、それ以外の剰余金からまだ納めてもらっていません。ですから、それらについでひとつそういうような方向を緊急避難としてやられたらいかがかというふうに思いますが、いかがでしょう。大蔵大臣お答えいただきたい。
  117. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私としては大変ありがたい御提案でございますが、いろいろ制度の仕組みその他が中央競馬会とは異なる点もございますので、ぜひ、私もそういう方途が何か講ぜられないものかと考えておりますので、各省庁とも今後検討いたしたいと存じます。
  118. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 競馬会は御承知のように、五百億、五十六年度限りということで納付いたしておるわけでございます。これは立法されておるわけであります。  続けてということになりますと、競馬会の運営費なりあるいは改善経費なり、そういうものに食い込むこととなりますので、適正な運用を期待することができなくなるということでございまして、五十六年度限りという線を尊重していきたい、こう考えております。
  119. 田中六助

    田中(六)国務大臣 自転車振興会関係でございますが、これは地方自治体が地方自治体の財源としての施行でございまして、これを国庫納付する、競馬と一緒にしろということは、どだい根本から仕組みが違っておりますし、無理な話で、さきの公営競技問題懇談会への諮問につきましても、これは答申が昭和五十四年六月に出ておりますけれども、現在の仕組みでいい、ただ運用をうまくやれというような答申が出ておりまして、私どもはあくまで地方自治体が公営企業並びにその他の企業に割り振って個別に運営していくことがいいというふうに考えております。
  120. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 船舶振興会の交付金についてでございますが、御承知のように、これは一号交付金、二号交付金がございまして、一号交付金は、いわば船舶並びに運輸関係機関の業界育成の資金として使われておりまして、二号交付金は、競艇を開催するに当たりまして、それぞれの社会的な還元をするという意味から、二号交付金が福祉関係に使われております。  つきましては、この交付につきまして、それぞれ地方自治体の意向を聞いておりますし、また学識経験者から成りますところの交付金運用専門委員会審議を得まして交付しておるということでございます。したがいまして、現在のところ、これは地方自治体の財源でもございます関係で、先ほど通産大臣が言っておりましたように地方財源の一部として地方に還元する、そのことが社会還元につながるような運営をいたしたい。要は運営の問題ではないかと思うております。
  121. 沢田広

    沢田委員 特に船舶振興会については、なかなか手がつかない団体だというふうにとかく言われている問題であります。一人の人が百三十幾つかの会長さんも兼ねておられるというような団体でもあります。  やっておりますことは、片一方は福祉を幾らか後退させながら、片一方は幾らかばらまいておる、こういうことでもあるわけでありますから、やはり整合性を図るという立場から見ても、この機会は、納付というよりも借りてもいいですよ、さっき言ったような年金財政と同じように借りるのでも。この三年間はお借りをして、そしてこの行政のバランスを、痛みを分けるという意味において――片一方は華やかにテレビか何かに出て世界は平和にとか仲よくとか何かやっていて、これもギャンブル収入から取った金ですから、市民から見れば、国民から見ればきわめてひんしゅくを買うしろものであります。だから、そういうようなことで行管庁長官にお伺いしますが、何もここにだけ聖域をつくる必要はないのじゃないか、いわゆる第三予算といわれている自転車、競馬、船舶、これらについても聖域はつくらずに、この機会に、財政困難な折にはぜひひとつ借り入れるなり後で返すなりは別として、納めてもらって財政再建に寄与してもらう。それこそ初めてギャンブルとしての役割りが幾らかでも生きるということになるのじゃないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  122. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 公営競技にはおのおのの歴史と背景がございまして、それぞれ各官庁の監督のもとに運営されておるところでございます。さりながら、全般として整合性とかその他の問題もございます。臨時行政調査会におきまして特殊法人を一応見直すことになっておりますから、その際に見直されるものと考えております。
  123. 沢田広

    沢田委員 時間の関係で、不公正税制の関係その他、あと伊藤委員に譲って質問してもらうことにいたします。  最後に、情報公開法が一緒に出なかったということはきわめて遺憾だと思うのですね。これはさっきの土光さんの発言の中でも言われておりますし、政府も言っておるわけで、情報公開法がやはり提出を同時にされるべきであったと私は思うのであります。これも先輩の横山さんから後で質問がされると思いますから、一応とりあえず、なぜ一緒に出さなかったのかだけお答えをいただきたい。  それから実態調査について、大企業等の税の執行、お医者さんなんかワースト十なんて言われているものの中にはたくさんあるわけでありますが、実調をもっと進めれば一人で五千万円上がるというのですね。五千万円上がってくるとすれば、千人増員すれば優に財政再建というものは、優にというと語弊がありますが、しぶしぶでもその一翼を担えるという基盤ができるわけであります。  そういうことで、いま七%ぐらいの実調率ですね。言えば百人のうち七人ということですか。そういうような状況なんですから、もっと実調率を引き上げることによって、税の公正、大企業のいわゆる脱税というようなものも含めて解明をしながら、国民の信頼を取り戻す、そういうことがきわめて必要だと思いますがいかがですか、お答えをいただきたいと思います。  最後に、人事院の総裁来ていただいて申しわけありません。さっきの人事院勧告についての見解、先ほど論旨は言いました。  それから、ラスパイレス方式についてはもう取りやめた方がいいのではないかという結論を申し述べて、お答えをいただいて終わりたいと思います。
  124. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 お答えをいたします。  人事院の性格につきましていろいろ御論議いただきました。拝聴いたしておった次第でございますが、これに対する見解は、私といたしましても、法制局長官が先刻申し上げましたと同一の意見であるということを明確に申し上げておきたいと思います。要は、人事院のいわゆる独立性ということを強調する、そういう点について大変な意義があるのではないかという点を申し上げておきたいと存じます。  それから、ラスパイレスの関係でございますが、これは長年やってきたことでございまするし、それなりに調査技法等も定着をしている事柄でございまして、これにかわるいい方法があるかと申しますと、なかなかやはり論議もあることでございまして、その結論を出すにはむずかしいというふうに思っておりまして、私はいまのところこの官民較差方式というものの調査方式を改めるつもりはございません。しかし、この制度自体も金科玉条で万代不易というものではございませんから、われわれはわれわれとしてよりよき制度というものがあるならばということで、今後もさらに慎重に検討を加えてまいりたいと存じます。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 情報公開につきましては、行管庁といたしましても研究を進めてまいりましたが、今回臨時行政調査会におきまして、部会で正式にこれを取り上げまして、これに対する研究をすることになって、いずれ意見の表明があるものと期待しております。  それから、実調率を高めることの必要性はわれわれも同感でございます。国税の職員は数の少ない中でよく努力されていると思って、評価しております。しかしながら、人員の抑制はやはり今次行革の大眼目でございまして、その枠の範囲内でできるだけ国税当局について配慮をいたしたい、このように考えております。
  126. 沢田広

    沢田委員 終わります。
  127. 金丸信

    金丸委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  128. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森井忠良君。
  129. 森井忠良

    ○森井委員 総理と行管庁長官がおくれておられるようでございますから、総論は後にいたしまして、早速厚生年金等の国庫負担の減額の問題についてお聞きをしたいと思います。  過去二回、二日ほど本委員会は行われたわけでございますが、どうも大蔵大臣の年金の国庫負担を返すという返事は非常に歯切れが悪い。本当に返すのかどうなのか。よく、うそをついておりますと、相手の顔を見るとうそがばれる。うそ発見器がありますと、これまたちょっと警察庁で借りてきますと本当のことがわかるのですけれども、率直なところ、これまで二日間の質疑を聞いておりまして、本当に国席負担の減額分は運用利益も含めて返すのかどうなのか。私は一抹の不安を感じております。本当に返すのですか。もう一回はっきり御答弁をいただきたい。
  130. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは何回も答弁をしておるのですが、国庫負担の繰り入れの減額分につきましては、政府は適用期間後、必ず差額繰り入れをいたします。  そのほかに、いわゆる利息の問題も含めて適切な措置を講ずる責任を負っておりますから、御心配これなきようにお願いをいたします。
  131. 森井忠良

    ○森井委員 法案を見ますと、返すという条件のところが大体五つぐらいに分かれるのですよ。節が五つありますね。一つは、各事業の財政の安定が損なわれないよう、これが一つの節です。二つ目は、特例適用期間後において、これが二つ目。三つ目は、「国の財政状況を勘案しつつ、」これが三つ目ですね、分析をしますと。四つ目として、減額分に相当する額の繰り入れ、これが四つ目。五つ目は、これが問題なのですけれども、「その他の適切な措置を講ずるものとする。」と、五つに分かれるのですよ、いま大蔵大臣が答弁をされましたけれども。  しかも、私いまでもまだおかしいなと思っておるのですけれども、いま申し上げましたものの中で三番目、「国の財政状況を勘案しつつ」というところがありますね。これにひっかかるわけです。実は、当然のことですけれども、社会保障制度審議会と社会保険審議会に厚生大慶が諮問をしておられます。この諮問書を見て私びっくりしたのですけれども、ここの中にはいま申し上げました問題の、「国の財政状況を勘案しつつ」というところが全然入ってないのです。これは私は問題だと思うのです。もっとはっきり言いますと、これはうその、中身をへし曲げて両審議会に諮問をされたのではないかと受け取れる。  こうなっておるのですね。諮問書の別紙についておりますのは、「国庫は、国の財政再建期間(昭和五十七年度から昭和五十九年度)中については、厚生年金保険及び船員保険(年金部門)の保険給付にかかる国庫負担額の一部を減額すること、及び財政再建期間後に、減額分の繰入れその他の適切な措置を講ずること。」これだけになっておるのです。  国の財政状況を勘案するというのは大きいファクターですよね。なぜこれが入ってないのですか、厚生大臣。
  132. 村山達雄

    ○村山国務大臣 お答え申し上げます。  当時すでに新聞紙上でこの法案の骨子が言われたわけでございます。したがいまして、当然二つの要素がございまして、一つは、年金財政の健全性に支障を来すことがないように、それから第二番目は、国の財政状況を勘案しつつ、こういうのがありますけれども、その中身は何かと申しますと、要するに、財政再建期間が終了してから、減額分、それからその他適切な措置というのは何よりも運用利息を考えているわけでございますが、それを必ず返すということ、こういったことで大体おわかりかと思って諮問の方ではそのことは実はのみ込んでおるわけでございまして、社保審におきましても制度審におきましても、私が参りましていま委員がおっしゃったような趣旨のことはつけ加えて御説明申し上げたところでございます。
  133. 森井忠良

    ○森井委員 厚生大臣そう言われますけれども、諮問書は大事なことは全部文書で書かなければなりませんよね。大事な文書に国の財政状況を勘案してということが入ってないということは――私は率直に言いまして、審議をなさった両審議会の先生方は必ず返すものだという前提に立って審議をしておられると思うのですよ。しかし、いま大蔵大臣お答えになりましたけれども、必ず返すという言葉はついてはおりますが、いつどのようにしてというのは全くないわけですね。それこそ、国の財政状況を勘案して、とこうなるわけでしょう。私はこれは許しがたいと思うのですよ。  しかも、後で具体的に金額は申し上げますけれども、この先生方は返すなら三つぐらいの方法があるなというあなた方の説明を聞いておる。財政状況というのは説明がないと私は思うのですけれども、返すなら三つぐらいの方法があるな、それから返す年賦、これも大体三年ないし五年だろう、具体的に試算をされてまであなた方はお示しになっておる。そこにはもう国の財政状況というのは全くない。しかも、見ますと、五十九年の財政再建期間が済んで六十年から直ちに返す。その場合に一回返しか三問返しか五回返しか、これだけぐらいしか試算してないのですよ。それは学識経験豊かな先生方ですけれども、厚生大臣や厚生省が御説明になりますと、なるほどそうかということになる。一番肝心の国の財政状況を勘案してというのが入ってないということは私は問題だと思う。現にこれまで大蔵大臣は、返すことは返すけれども、さっき初めてはっきり必ず返すと必ずがつきましたけれども、いままでは必ずもなかったし、返したいと思いますとか、文章を直したら忘れましたけれども、いろいろな微妙な言い回しになっていました。先ほどもうはっきりしましたから、その点は一応認めるといたしましても、しかし、いつ返すとも、どういう形で返すとも全然言わないわけです。  いいですか、私の場合は社会労働委員会で何年も何年も年金の改善について心血を注いでまいりました。これはもう与野党を問わず言えるだろうと思うのですけれども。真剣に取り組んだものを、どこかもとから、これも後で申し上げますけれども、たとえば物価や賃金スライドの時期をがたっと五カ月も六カ月も後ろへ回すというようなことをしていらっしゃるのですけれども、何のためにいままで五年も八年も苦労したかと言いたいのです。  そう思いますと、やはりこれは再諮問し直すか何かなさいませんと、「国の財政状況」というのは法案の一番のかなめの部分でしょう。先ほど私、四つか五つに分けて節を申し上げましたけれども、これは大変だと思うのです。本当に先生方は「国の財政状況を勘案しつつ」というところについて議論があったのなら、それに対して厚生大臣はどういうふうにお答えになったのか、大変恐縮ですけれども、中身の一部について御報告をいただきたいと思うのです。
  134. 村山達雄

    ○村山国務大臣 社保審、制度審におきまして、いつから、どのような返し方をするのか、その中でサンプル的にひとつ出してみろ、こういう御注文でございまして、その意味で、いわば一度で返せばこういうことになります、三年ないし五年で均等払いならこういうことになります、傾斜払いならこういうことになります。それの意味するところは、要するに国の方が繰り入れ期間を延ばせば延ばすほど国の財政の方も運用収入利息について相当なる負担を負わなければならないということを明らかにする意味で出さしていただいたわけでございます。  したがいまして、私も何回も御説明申し上げておるとおり、年金財政の方から見ますと、運用利益は必ず返してもらうわけでございますので、その点は心配要らない。ただ、心配になりますのは、どれぐらいの繰り入れ期間にするか、こういう点がその当時の財政状況を考えていかなければいけないのではないか。また、その点を考えてやっても年金財政に支障はないのではないか。中心は、その「財政状況を勘案しつつ」というところの一番大きなポイントは、繰り入れ期間をどうするか。両方とも、こちらはどっちみち運用収入は入るわけでございますので、そこの点は両者の利害は必ず現実的には一致する性質の話でございますので、財政再建期間終了後財政当局と詰めていきたい、こういうことで御説明を申し上げておるところでございまして、試算もそういう意味で出させていただいたのでございます。
  135. 森井忠良

    ○森井委員 それでは大蔵大臣にお伺いをしたいと思うのです。  あなたは先ほど、必ず返すと言われましたけれども、いつ、どうやって返すのですか。これはいままでのところ答えははっきりしておりませんが、一体三年間で幾らぐらいの金額になるのか。この点については、大蔵省として当然のことですけれども、つかんでいらっしゃると思いますので、幾らぐらいの数字になるのかも含めて御答弁をいただきたい。
  136. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま村山厚生大臣から証明をしてもらったように、それはお返しをいたします。年金財政に支障を来さないようにしてお返しをいたします。いつからいつだということについては、これも一括払い方式とか元利均等とか五年払いとか、いろいろございますが、要はここにあるように七千四百億円ぐらいの金額になるわけですね。したがって、これをどういうふうに返却するか。年金財政を損なってはいけませんから、年金財政を損なわないように、支障のないようにしながら、しかもこちらも返しやすいという両方の案を持ち寄りまして、どっちにもいいような都合のいいようなことにして、まあ助け合いですから、そういう返済をしたい、そう思っておるわけでございます。したがって、具体的にどれでいつということまでは、いま厚生大臣がおっしゃったように決まっておりません。
  137. 森井忠良

    ○森井委員 大体厚生年金というのは、始まりの意図はよくないのですよ。これは昭和十七年から始まっておりまして、それで本来福祉の目的も万分の一ぐらいはあったかもしれませんが、もともとが軍備調達資金がなかった。だから、そういう形で歴史的な経過は、厚生年金というのは昭和十七年に始まっておるのです。その証拠に、戦争が終わって今日までもう三十数年たっていますけれども、何と厚生年金の成熟度はまだ八%なんです。いかにのろのろとした発展を遂げておるかということはおわかりのとおりなんです。だから私はひょっと思い出すのですけれども、これは昔やった御用金の調達じゃないかという感じがしてならぬわけですね。大体、大蔵大臣けしからぬですよ。借りるくせに、払う方法も何も全然言わずに、とにかく貸せや、こういう言い方ですからね。私が言いますその御用金の巻き上げと余り変わらぬ発想に見えて仕方がないわけです。  とにかく厚生大臣、私がいま持っておりますのは、制度審にあなたの方から提出をされました金額資料です。これはぜひとも議事録で明らかにしておきませんと今後のことがあるものですから、私は明確にしておきたいと思うのです。昭和五十七年度から五十九年度の国庫負担の減額分として厚生省が試算をしたものでございます。  それによりますと、昭和五十七年度は保険給付費が四兆五千五百二十億円、そのうち国庫負担は本来ですと七千四百七十一億円、二〇%で計算しますとこうなるわけでございますが、それを約四分の一減らすものですから五千六百七十一億円、差し引き減額分は千八百億円になるわけです。  これは実は行管庁から聞いた数字と違うのです。行管庁は国庫負担の減額分は今度の特例法案の中で、これは共済その他も入っているものですから、一体厚生年金に相当する部分は幾らかと言ったら、千七百億だと言っている。ひょっとすると、これは国民年金と合計でこうなるのかどうなのか、ここらわからないのですけれども、明らかにしていただきたい。百億の違いがございますので。  いずれにいたしましても、そういうふうにいたしまして千八百億を厚生年金等から減額をされるわけですけれども、これは運用収入相当分を含んだ年度末合計額に直しますと千八百億じゃないのでございまして千八百六十七億五千万円、利子が入りますからこうなるわけです。もっともこの利子の計算は、年度中央でしたものとして試算をしておられるようでございます。  千八百億は五十七年度だけでして、今度は五十八年度は成熟度も進んでくるものですから、したがって少しふえまして、保険給付費は五兆四千五百七十八億、それに対します国庫負担は本来で計算をしますと九千百六十二億、ところが、先ほど言いました約四分の三に減額をいたしまして、正味の国庫負担は五十八年度は六千九百六十二億、減額分は二千二百億、したがいまして、昭和五十八年度の運用収入相当分を含んだ年度末合計額、つまり貸した金額というのは四千二百九十二億七千万円となるわけですね。  それから昭和五十九年度、これは保険給付費が六兆五千四百三十九億、これを国庫負担に直しますと、一兆九百八十五億となるわけでございますが、四分の一減額をいたしまして八千二百八十五億。したがって減額分は二千七百億。運用収入相当分を含んだ年度末の合計額は七千四百二十一億九千万円、とりあえずこういう数字が出てまいります。これをどういうふうにして返すかということが問題になるわけでございます。  つまり、ここまでの試算というのは、少なくとも厚生省と大蔵省違っては困ると思うわけでございまして、大蔵大臣いかがでございましょうか。いま読み上げたもの、これは厚生省の資料でございますが、大蔵大臣も同じ御認識でしょうか。
  138. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 両当局で相談をして出した数字でありますから、間違いございません。
  139. 森井忠良

    ○森井委員 そうだとすれば、三年間で七千四百億余りの借金ができた、これは私のところの武藤政審会長に言わせますと、やみ国債だと呼んでおるわけですね。何もこんなことしなくたって、直接基金から借りても同じなんですね。積立金から借りても同じだし、事実上の国債ではないかという議論でございましたけれども、この議論はさておくとして、これを仮に五十九年度財政再建が終わったとして、六十年度年度の中途で返すといたしますと、また利子がついておりますから七千七百億に上るわけですね。  これ返す返すと口でおっしゃいますけれども、先ほどの中期財政展望その他の議論を聞いてみますと、大蔵省はそれでなくても、いまのところ増税をしないと約束をしておるのは五十七年度だけです。五十八年、五十九年についてはあいまいもことしておる。先ほどのわが党の沢田議員の質問に対しまして大蔵大臣お答えになりましたけれども、これはあいまいもことしておる。増税をしないのかするのか、これは入ってくる金と行政需要、そういったものとあわせて勘案をしたい、こういうことなんですね。  しかし、現実にあなたの方は、もうマスコミでもすでに報じられておりますように、この際、一般消費税あるいはその売上税というものを一応検討しようではないかということで検討を始めたという新聞記事がございます。これはうそか本当か知りませんけれども、きわめて重大な問題です。国会決議で一般消費税は絶対だめだということになっておりますけれども、にもかかわらず、そういうふうな作業に着手しておられるという記事がすでに出ておるわけです。これは共同系の新聞だと思いましたけれども、明らかに出ておって、これはゆゆしい問題です。  この点については根拠を明らかにしていただきたいですが、ともかくそういうときに、七千七百億というのは私は大変な額だと思うわけです。要調整額、これ一つとってみても、二兆七千億も五十七年度で必要だというふうな状況から考えてみますと、しかもなかなか思うように金が入ってこない、中期財政展望その他を見ましても、対前年比一四%の伸びなんというのはいま考えられないんじゃないかということが言葉の端々に大蔵大臣のところから出ております。  したがって、そういった点を考えますと、あなたは返すとおっしゃいましたが、少なくとも七千億、すぐこれは一兆になりますよ、ちょっとほっておいたら。運用利益もどんどんかさんでくるわけですから、余り延ばすわけにもいかない。そうかといって、ようやく赤字国債を脱却して六十年からすぐ返すというわけにもいかない。私はやはり良心的な苛責に大蔵大臣は遭っていらっしゃると思う。しかも私ども追及しますから返すと言わなければならぬ。その点について、本当にお返しになるんなら少なくとももうちょっと突っ込んで決意のほどをお聞かせをいただきたい、こう思います。
  140. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは厚生大臣からお話がございましたように、両省間で詰まっておることは五年で返すか三年で返すか、もう少し延びるか、そのときの財政事情を勘案して保険財政に支障のない範囲内でこちらの都合も聞いていただく、そういうことで返す方法を定めましょうということだけが決まっておるわけでございまして、いま具体的に幾ら、何年度幾らということは決めてございません。
  141. 森井忠良

    ○森井委員 だから本当に言いにくいんですけれども、私どもとしてはこれでは納得できないですよ。先ほど言いましたように、とりあえず昭和六十年度の年央で七千七百億です。これは年度末になりましたらもう八千億になるでしょう。どんどんふくらんでいくんですから。延ばされれば延ばされるほど私はやはり返還は大変だと思う。だとすれば、いまのような御答弁で返す返すと言われましても、これは、そうですかと、しっかりやってくださいと言うわけにはいかない。今度は厚生大臣、どうですか。  それからさっき大蔵大臣、新税の創設について検討していらっしゃるという記事があるんだから、あなたの口から作業しておられるのか、おられないのか、これも明確にしていただかないと困ります。
  142. 村山達雄

    ○村山国務大臣 若干複雑になりますけれども、年金手当ての方は支障がないことはもう御承知のとおりでございます。  一般会計の方でございますと、財政再建期間後どうなるかという問題でございます。少なくともこの大事な三年間に予算を膨張させないで、そしてこれはもう国債とは違いますので引き受けもはっきりしているわけでございますし、それからまた、利払いも翌年からやらなくて済むわけでございます。それから、金利だけの計算をいたしましても、御案内のように現在国債の応募者利回り、それに発行費を入れますれば八%は優に超えているわけでございます、基準金利で申しますと、大体七・五%でございますから。そういう意味で私は財政的にも十分意味がある、金融的にも意味がある。ただ、その期間をどうするかということは、まさに一般財政への影響を見ながら決めていく。しかし、年金財政の方はいかなる場合でも、仮に五年、財政期間が終わってそれからずっと繰り入れがおくれますと、一括いたしましてもいま先生御指摘のとおりに七千七百億でございまして、それからおくれれば、またいまの運用部の運用利益でございますと七・五%つくわけでございます。おくれればおくれるほどずっとついてまいるわけになりますので、年金財政は損をしない。一般会計からいっても収支計算上やはり得ではないであろうか。そして、財政とか経済とかいう問題は、もう森井先生に申すに及びませんけれども、タイミングが一番大事でございまして、この三年間で財政再建をやろう、こういうときにございますので、私は時期的に言っても非常に意味があるし、それから事実上の財政効果も、金融効果も、また起債市場にも好影響を与えることは間違いない、こう思っておるわけでございます。
  143. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一般消費税の問題につきましては、一時税調答申等において検討するという話が出たことは事実であって、一時そういう点勉強はしたことはございますが、ことしに入りまして以来それは全部やめておるそうです。私も知らないことなので、いま事務当局を呼んで、大臣が知らないのにどこかでやっておるのかと言ったところが、事務当局も知らないそうでございますから、それはやってないというのが事実でございます。
  144. 森井忠良

    ○森井委員 やってないというのが事実だとおっしゃいましたけれども、やる意思もありませんね。五十八年度。具体的な記事は、要旨はこういうことだったと思うのです。五十八年度に売上税を新設をする、中身につきましては、ほぼあの評判の悪かった五十四年ごろの一般消費税に似ておりました。これは、所得税減税というものをこれ以上かたくなに断るわけにいかない。そういうことから新たな税をどうしても考えなければならぬ、そうなってまいりますと、所得税減税はする、しかし同時に、いま申し上げました意味で、売上税といいますか一般消費税は導入する、そのための検討作業を始めておる、こういう記事なんです。  調べたらやってないということなんですが、それではお聞きしますが、やる意思もない、国会決議もあることですから。このことをひとつ明確にしていただきたいと思います。それが一つです。  大蔵大臣に対しまして次の質問ですが、先ほど、厚生大臣から初めて運用利回りについて言及がございました。お聞きだったかと思うのでありますが、少なくとも運用収入相当分は利率七・五%、これは昭和五十六年九月現在資金運用部預託金利を見ておるようですけれども、そういうこともありまして、それ以上の話も出てまいりました。やり方によってはもっと年金の積立金はふえるのだという意味の発言もございましたが、そういった運用利回りに対して、大蔵大臣としてのお考えを承っておきたいと思うのです。
  145. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 従来言われておった一般消費税は、やる考えは目下ございません。  それから、運用利回りの点については、どの程度の利息にするかということになれば、一応の運用利回りというのは一つの目安になるだろうと思っております。
  146. 森井忠良

    ○森井委員 次に、厚生省は、先ほども申し上げましたが、大蔵省から払ってもらえる場合にはこういう方式があるというので三つの方式を出しておるわけです。  まず一括払い方式。これは先ほど申し上げましたように、年度中央で、昭和六十年ですけれども、一遍に七千七百億ばっさりお返ししますというやり方です。  二つ目は元利均等方式。これは三年払いと五年払いで計算をしております。中身についてはもう御存じのはずですから申し上げませんけれども、三年払いないし五カ年払い。  それから、三つ目は傾斜方式。これも三年払いと五カ年払いで出しております。  少なくとも厚生省が期待といいますか明確な認識を持っておりますのは、昭和六十年から返すということ、短い場合は一回払いですけれども、一番長い場合でも五年以内だということ、ここまでしか厚生省は出していません。制度審の先生方も、当然のことですが、これ以上長いというのは、先ほど私が申し上げましたような理由からとても入りようがない、こういうことでございます。大蔵大臣ばかりに質問するようですけれども、この点についてもう一度お考えを承っておきたいと思います。
  147. 村山達雄

    ○村山国務大臣 私の方から財政当局と相談いたしまして出さしていただいた計数でございますので、まず私の方からお答え申し上げます。  返す時期の始期につきましては、これはやはり財政再建期間終了後返すのが通常であろう、こういう認識を持っております。  それから、一括払いか、三年払いか、五年払いか、もっと延びるのかという問題は、実はこれは一つの試算を出したのでございまして、いかなる場合でも年金財政には支障が生じない。そのサンプルとして出したものでございまして、一括払いとか三年とか五年というのを社保審なり制度審で決めてもらったわけではございません。ただ、なるべく早く返してもらいなさいよ、制度審の方からこういう付帯意見がついておることはよく承知しております。(「厚生大臣としてはどういうかっこうで返してもらうつもりなんだ」と呼ぶ者あり)その点は、先ほど申し上げましたように早く返して――期間の長短によって年金財政には支障がこない、これだけ申し上げておるのでございます。  したがって、問題は、財政事情を勘案しつつというところの最後の答えは、繰り入れ期間をどうするか、期間をどれぐらいの長さにするか、ここが最後の問題になるということを再々申し上げておるわけでございますが、年金財政には支障がないことになっております。
  148. 森井忠良

    ○森井委員 それは厚生大臣、いま二十八兆もあるのですけれども、いま少なくとも百兆以上の金がないと安定運営できないでしょう。二十八兆では足りないのだ。百兆以上というのが当面要るはずなんです。しかし、残念なことにそれがいまのところない、こういう状況でしょう。あなたの場合はいつ返してもいいと言いましても、これは世の中よく変わるのですよ。世の中変わりますし、特にあなたもまだ厚生大臣の期間は短いです。     〔委員長退席海部委員長代理着席〕  ちょっといやみも申し上げたいと思いますが、総理、一年の間に厚生大臣が三回もお変わりになりましたね。最初あなたと一緒にアメリカに行かれた方がおやめになりまして、あれよあれよという間に――ああその前がありましたね。富士見産婦人科事件で一人おやめになりましたね。そうして伊東外務大臣にかわられたのが今度園田さん。伊東さんがやけをくってやめられましたから、したがって、今度は園田さんが外務大臣になって、そして村山さんが厚生大臣におなりになったわけですね。こういう経過がありまして、私ども議論をする上で相手がくるくるかわるものですから、これは本当に私どもの立場を理解してください、困ったものですよ。しかし、いずれにしてもそういう形で、あなたとされては先はどうなってもいい、いつ返してくれてもいい、それだけ返してもらえるのだからというお気持ち、そういうことで急ぐこともないというお気持ちかもしれませんが、これは制度審、社保審にお諮りになりましたあなたの立場としてはいかぬと私は思うのです。やはり五十九年の財政再建が済んだら六十年には必ず返してくれよ、こうでなければいかぬと思う。計画的にきちっと初年度が払われて、あと三年か五年かというならそれは待ってもいいかもしれませんが、返す始まりの時期というのは明確にする必要がある。だからその点についてどうかということ。  それから、この問題で大分時間がたちましたから、大蔵大臣、あなたの方も借りる以上は、私さっきいやみを言いましたけれども、借りておくが、返すのは適当にやれやということにはならぬと思うのです。少なくとも天下の大蔵省が年金財政から金を借りて、何年たったら幾ら、そしてどういう方法があることくらいは覚悟の上でお金を借りませんと、それこそあるとき払いの催促なしという言葉がありますが、そういう形で軽い気持ちでお借りになったんでしたら問題だと私は思うのです。だから、具体的に厚生省が提起をしております三つの方法があるが、このうちのどれをおとりになるのか、いやこれじゃない、大蔵省としてはまだもっとこういういい方法がある、第四の道があるならそれも含めて提示をしていただきたいと思います。これができなければ、これからの審議というのは非常にやりにくいと私は思うのですよ。
  149. 村山達雄

    ○村山国務大臣 まず私からお答え申し上げます。  森井先生の年金財政に対する御心配、本当にありがとうございます。ただ、御承知のように、この財政再建期間中でございますが、年金の掛金と給付の関係、それからこの減額した国庫補助を入れましても、年間で積立金が大体四兆台でずっとなおふえ続けてまいります。五十六年度末の推定が大体三十二兆でございますが、五十七年度末は四兆またふえます。その次も四兆ずっとふえてまいります。したがいまして、運用の利息収入をもらっておけば、それはそんなに年金財政がどうにもならぬという話ではございません。問題は、今後の基本的な問題としては、おっしゃるような問題意識は私も持っておりますけれども、それは当分先の話でございます。  なお、その始期のいつ返すかという問題につきましては、通常は財政再建期間が済んでから返していただくのが普通であろうと私は思っております。  しかし問題は、その繰り入れ期間をどうするか、こういう問題でございまして、この点はまさに一般財政状況を考えつつやらなければ、せっかく今度やることが一般会計に寄与するか寄与しないかというところ、そこの点が非常にあいまいになるわけでございますので、そこは弾力的に考えていけば、両者の利益は私は必ず一致すると思っておるのでございます。その点はこの制度の仕組みの中でおくみ取りいただきたいと思うわけでございます。
  150. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま厚生大臣が答弁されたのと全く同じでございまして、一応、財政再建期間が過ぎましたときにおいて両大臣で相談をして、そしてこちらの都合のいいとき、向こうにも支障のないとき、そのときにやろう、具体的にそのときに相談しよう、法律どおりでございます。
  151. 森井忠良

    ○森井委員 いまの答弁は、これはひどい答弁ですよ、借金を借りてしまった後それからどうするかということを相談をするということですから。大体、お金を借りろときは、もうお金を最初に受け取ったときに領収書を書かなければならない。それは常識に反します。だから、財政再建が済んだ後で両大臣で相談をするなんというのは、私は納得できません。やはりこの時期に明確にする必要がある。大蔵大臣、あなた、こんなことをしないで国債でもいいじゃないかという話があったら、第一、国債というのは支払いの期日の明示がある、それから利子もはっきり書かなければならぬ、ついこういう本音を漏らされたのですよ、わが党の安井委員の初日の質問に対して。それとのかかわり合いから見ますと、先ほど、はっきりお返しをします、こう言われましたけれども、どうもまたぐらぐらして、いまの答弁では私はやはり納得できない。借りる前に少なくとも明確にしなければならぬ。何のためにわれわれはいまここで審議しているのですか、これだけの問題を。
  152. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはこの法律案に書いてあるとおりでございまして、要は、厚生年金のうち、二〇%を国庫が補助をするという制度になっているわけですね。二〇%補助をする、たとえば厚生年金で言えば。しかし、この二〇%、とりあえず財政が非常に窮乏しているから、そのうちの五%はカットをする。しかし支給はしなければならない。したがって、その部分については厚生年金の積立金の中で、要するに繰り入れをして満杯にして、わかりやすく言えば、立てかえて払っておいてくれませんか、そのかわり三カ年経過後、それについてはどういうような返済方式をとるか、両省で相談をいたしましょう。これは厚生年金財政に支障のないように大蔵省はこれに責任を持ちます。それから運用利益等についても責任を持ちます。ですから、何年で支払いをするか、いつから支払いをするかについては、年金に支障があっては困るわけですから、まずそれは支障ないようにしましょう。それから年限については、五年にするか何年にするか、そこらのところはそのときの財政事情を見ないとなんだから、六十年になってから改めて相談をいたしましょうということが決められておるわけでございます。
  153. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 関連。  いまのお話を聞いておって、私は非常に無責任だと思うのですね。たとえば地域特例に関する問題については、これは自治大臣と大蔵大臣との間で合意文書があるでしょう。起債でもってめんどうを見る、そしてその二分の一以上は特例交付金でもってきちっと返済をします、こういう合意文書が地域特例ですらあるわけですよ。これだけ重要な問題で、三年たったらどういう計画で返済するか、その計画なり、厚生省、大蔵省、両省の間で少なくとも合意文書ぐらいなくて、われわれ審議できないと思うのですね。少なくとも地域特例ですら合意文書があるのですから、厚生省、大蔵省の両大臣の間で、三年たったらどういう計画で返す、この計画を統一見解として示してください。この法案については担当大臣は行政管理庁長官でしょうから、はっきりひとつ、それはやるならやる、できないならできない。できないのだったら審議はできませんよ。はっきりした答弁をしてください。
  154. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは、いま私たちが言った中で私は保証されると思うものでございます。つまりそれは、何年にするかということは財政事情でございますけれども、何年にするかによりましては、向こうは、一般会計の方はずっと金利を払っているわけでございます。そしてそのときどきの運用金利を基準にするわけでございますので、年金の方では、これは困らない。つまり、補助金のかさ上げの仕組みと、それからこの貸し借りというのは利息がついているわけでございます。そして仕組みの中で自動的に保証される、こういう制度でございますので、補助金の方で、後で交付税で半分とかいうことを言う必要は、この制度に関する限りはないものだ、さように思っているわけでございます。
  155. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ともかく、地域特例については大蔵大臣と自治大臣の間で合意文書があるわけですよ。少なくとも、厚生年金のこの問題は本法案の最大の目玉でしょう。最も重要な点じゃありませんか。これに関して、大蔵大臣と厚生大臣との間で明確な返済計画ぐらい合意文書ができていなくてどうしますか。少なくとも、両大臣の間の合意文書ないしは政府としての返済計画に関する統一見解、これを示していただかない以上は、審議はできません。これは審議できません。少なくとも、それを出すということを約束してください。(森井委員「関係閣僚で相談しなさいよ。何なら総理も入れて相談してくださいよ。そんなばかなことはないですよ」と呼ぶ)
  156. 村山達雄

    ○村山国務大臣 問題は、始期の問題、これは相談できると思います、いつから返すか。それから、いつ、期間をどうするか、これはやはり年金財政には支障ないのでございますので、したがって、その問題は財政状況を勘案しなければ……。それならば、いま出すだけの実は実益がなくなるわけでございます。したがいまして、状況によって、やること、現在の仕組みが、一般会計とそれから年金財政との間の利害は調整できる仕組みになっているわけでございます。したがって、いま何年ということを決めろというのは、それは財政状況が違いますので、そのときにこちらが、年金財政は損することはないわけでございます。したがって、いま何年にするとかということはいかがなものでございましょうか。まあ、言ってみますと、一般財政のこの期間中における財政負担を少なくしてやりたい、これが一つ出ているわけでございます。同時に、年金財政は損いたしません、こういうことを言っているわけでございます。  しかし、いま、財政再建後の日本の財政状況がまだわからない中で、それは五年にすべきであるとか、あるいは三年にすべきであるとか、あるいは一括して返還すべきであるということを統一見解として出せとおっしゃっても、それは……(山口(鶴)委員「実益がないというのはどういうんだね。実益がないというのは取り消せ」と呼ぶ)その言葉は取り消します。実益がないという言葉は取り消します。しかし、少なくとも、これはそういう仕組みでできておるのでございますので、そこはぜひひとつ御理解賜りたい、こういうふうに思うわけでございます。
  157. 森井忠良

    ○森井委員 いみじくも、私が心配しておることをあなたはおっしゃったのです。財政状態がよくわからないからいま話ができない、こういうことでしょう。それは大蔵大臣の答弁なんですよ。それは厚生大臣の答弁じゃないんだ、財政状態がどうなるかわからないからいま約束するわけにいかないというようなこと。あなた、厚生大臣でしょう。だから、そこが私は一番心配なんです。それから、紙に書いたって、やることはやりますよとおっしゃいますが、法律では、これはひとり歩きするのですよ。  もうちょっとあなたの注意を喚起したいために申し上げますが、これは総理も聞いておいてください。いいですか。私が先ほど申し上げました法律案の節の中の最後のくだりに、「減額分に相当する額の繰入れ」、その次に、「その他の適切な措置を講ずるものとする」、こうなっているのです。あなたはおめでたいから、その他適切な措置というのは、これは利子、運用利益も含めてのそういう意味だという説明をなさいました。そうじゃないんですよ、これは。下手をすれば、国の財政状況を勘案してというのが前にあるのですから、たとえば給付水準の切り下げだって考えられるでしょう。保険料を引き上げるのも脅えられるでしょう。これも国の財政状況と結びつけますと、その他適切な措置というのは運用利益を払いますという意味にはとれないのです。よろしゅうございますか。これは「その他の適切な措置を講ずる」というのはひとり歩きしたら大変なことになる。いま言いましたように、財政状況とにらみ合わせて、払えなければこれは当然のことですけれども、給付水準を下げるのです。あるいは保険料を値上げをするのです。だめだ、そんな答弁じゃ。とてもじゃないけれども、いまから約束するわけにいかないというふうなものを私どもも審議するわけにはいきませんよ。
  158. 海部俊樹

    海部委員長代理 森井委員に申し上げますが、ただいまの文書の問題につきましては、後刻理事会で取り扱いを協議させていただきますので、質問を続行していただきたいと思います。
  159. 森井忠良

    ○森井委員 それでは理事会を信用いたしまして、その結論を待つことにいたします。  そこで、先ほど私が「その他の適切な措置」ということで心配事を申し上げました。もう一度申し上げますけれども、これは総理から御答弁をいただきたいと思いますけれども、あくまでも財政上との関連でこの「その他の適切な措置」というのは、給付水準を切り下げない、いいですか、総理、給付水準を切り下げない、この問題については保険料を引き上げない、約束してもらえますか、総理総理ですよ。
  160. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 その他適切な措置というのは、先ほど言ったように、運用に、保険財政に支障のないようにする。するけれども、どういうようなことをするのか、どれぐらいの運用利益にするのか、いずれにしても支障のないようにしなければならない。そういう細かいことでその他必要があるものについては何でもそのところでやりましょう、こういう意味に御解釈願って結構でございます。
  161. 森井忠良

    ○森井委員 いまの点に関して厚生大臣、御答弁願いたい。
  162. 村山達雄

    ○村山国務大臣 先ほどるる説明したとおりでございまして、大蔵大臣と同じ意見でございます。  それから、いま総理にお尋ねがございましたが、給付水準なり保険料はどうなるのだ、これは全然関係ございません。今度の臨時措置とは全然関係ございません。これで上げるということはございません。あるいは切り下げるということはございません。
  163. 森井忠良

    ○森井委員 やはり総理、これは大変恐縮ですが、お聞きのような経過で、その他適切な措置というのは、私が心配をしておりますのは、要するに財政再建が終わりましてたちまち六十年の年度中央くらいで返すとなると、もう七千七百億という金が要る。そのときに国の財政状況を勘案しながら適切な措置をとる、こう読んでみますと、私は、先ほどの議論にもかかわらず、これはしつこいようですけれども、ひょっとしたらやはりいまの給付水準の切り下げをする、あるいは保険料の引き上げをする、法律で読めなくもないんですから。しかも、臨調の答申の中には返すということは一言も書いてないのです。返すということは書いてないのです。中曽根長官にもお聞きしたいところですけれども、これは臨調の答申の中でも一言も返すということは触れていません。そういった点を考えますと、やはり総理から所信を承っておきたいと思うのです。
  164. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 この問題につきましては、先ほど来、大蔵大臣並びに厚生大臣からるる申し上げておりますように、これは保険財政に支障を来さないように必ず返す。金利はもとよりのこと、運用益につきましても適正な運用益を加算をして返済をする、こういうことを明確に申し上げておるわけであります。こういう国会の正式な委員会で速記をとり、明確にいたしておるわけでございますから、御心配のないように措置してまいる方針でございます。
  165. 森井忠良

    ○森井委員 かなり経過しましたが、もう一つ心配な点があるんですよ。これをお聞きをしておきたいと思う。  それは、財政再建期間中は国旗負担は四分の三を基準として引き下げるわけですね。ここではっきりしておきたいのは、そうすると昭和六十年度からは国庫負担は、たとえば厚生年金でしたら、もとどおり二〇%に復元をしますね。大蔵大臣、はっきりしてください。この種のものは、たとえば国民健康保険の都道府県移管、これはこれから議論をすることになるし、法案も出されるのでしょうけれども、一連のものが、よくわからない点があるのです。たとえば都道府県に、いま言いましたように国民健康保険等を五%肩がわりをさせるのは、これは行政改革とは絡んでいますけれども、単に三年間じゃないような気がするんだな、あれを見ますと。それで国庫負担については当分厚生年金でしたら一五%といって――当分じゃない、三年間、そしてまたもとどおり二〇%に返すと言うのだけれども、この約束をはっきりしてもらわない限り、私どもは、やはり問題があると思うのです。
  166. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま森井委員の御心配の点でございますが、この法律ではっきり書いてありますように、これは三年間の特例措置でございます。したがいまして、昭和六十年度からはもとどおり二〇%国庫負担をいたしてもらうことに両省一致しているのでございます。
  167. 森井忠良

    ○森井委員 総理、どうも年金といいますと目に角を立てるんですよ。特に、今度の法案とは直接関係はございませんが、例の年金の金額の引き上げの時期ですね、五カ月ないし六カ月延ばされるわけです。これは大変な悪例を残すと私は思うんですよ、財政再建期間中だからがまんせいということで。現役の勤労君じゃないんです。すでに現役を卒業なさって年金を受け取っていらっしゃる皆さんに、現役の私どもが、いま金がないから、たとえば厚生年金で言えば、長年の積み上げをして、ようやくいま八月から、国民年金の福祉年金の場合はようやく八月になったのです、前は一月だったのですが。法律もそうなっておったのです。年々、それは鈴木総理もそうですよ、大平元総理もそう、あるいは福田さんのときも三木さんのときも、みんなが苦労して、こつこつ積み上げてきて、いま言いましたように、年金の物価スライドの時期を一月からようやく八月まで持ってきた。それこそもうとても急な坂を一歩一歩上り詰めてここまで来た。そうして財政再建で金がないからと言って、そういった先輩に迷惑をかけるということは、私ども若い者としてこれは忍びがたい。金額幾らですか。わずかに五百四十六億なんです。平年度に直すともうちょっとふえるかもしれませんけれども、いずれにいたしましてもそういう形なんです。これは平年度金額は同じですね。全部平年度並みだ。そうなってきますと、せめてこれぐらいはもとに戻せないか。後で私申し上げますけれども、私が忍術を使わなくてもこれぐらいの金額はすぐ浮くように対案をお示しいたしますから。  いずれにいたしましても、現役の者が迷惑をこうむるならともかく、すでに卒業をして年金をもらっていらっしゃる方が、時期が来て上げてくれるのだと思ったらさらに延ばされるという、これはどうですか、総理、ぜひおやめになりませんか。鈴木内閣の命取りになりますよ。
  168. 村山達雄

    ○村山国務大臣 総理お答えになる前に私から説明させていただきます。  御承知のように、厚生年金あるいは国民年金は、法律によりますとスライド時期は十一月、一月とそれぞれ決まっているところでございます。おっしゃるように、これまでずっと法律の一部改正をいたしまして特例措置として繰り上げたことは事実でございます。したがいまして、その金額から申しますと、いわば政策増経費に当たるわけでございます。御案内のように、来年度財政再建の年でございまして、ゼロシーリングということであるわけでございます。そういうことを勘案いたしますと、医療、年金、その他当然増経費が非常にたくさんございますので、政策増経費についてはまあ来年一年ぐらいは法律どおりでごしんぼう願えないものであろうか、これが私たちがいま考えておるところであるわけでございます。
  169. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いま厚生大臣がお答えを申し上げたとおりでございまして、厚生省のゼロシーリングの中におきますところのそれぞれの措置を総合勘案した結果、厚生大臣が措置しようとするものでございまして、厚生大臣の答弁のとおり御理解願いたいと思います。
  170. 森井忠良

    ○森井委員 特に、私も舌足らずでございましたけれども、要は、これから年金を受け取る場合に、たとえばサラリーマンが定年になって年金を受け取る年になった、この年からもらえるものであろうとする期待権を裏切って、そしてスライドの時期を変更するというのは私は重大な背信行為だと思うし、今回のこういった措置を認めれば、すべての年金生活者はいつまた自分たちの年金を値切られるかわからないという、ここが一番問題なんです。これは前例になったら大変ですから、これをぜひひとつおやめいただきたいという意味で申し上げたわけです。いかがですか。
  171. 村山達雄

    ○村山国務大臣 繰り返しになりますけれども、厚生年金は平年度化によりまして来年度はいまの概算要求では二・四ぐらい伸びるであろう、それで一般の各省庁を通ずるものは一・八ぐらいの伸びであるわけでございます。これは、何と申しましても来年度はゼロシーリングでみんなが見直して協力してくれ、こういうわけでございますので、概算要求の段階ではひとつ政策増はごしんぼう願えないか、こういうことで概算要求でいま出しておる、こういう状況でございます。(「おかしいんだよ。年金財政心配ないと何回言った」と呼ぶ者あり)
  172. 森井忠良

    ○森井委員 いま声があったように、わかるように説明をしてください。なぜいま荒九月ないし六カ月延ばさなければならないのか。積立金は厚生年金だけで二十八兆あるのですよ。そうして、あなたは大蔵省から借りた金は急いで返さなくともいいとも言ったのです。論理に合わないじゃないですか。わずか五百億ですよ、わずかと言えば語弊がありますけれども。物価スライドの時期を延ばすことによって五百億ほど確かに財政は助かる形になっています。そのうちで国庫負担分は幾らですか、計算をしてみればおわかりでしょう。  そういった点からいきますと、本当にいたいけなお年寄りの年金まで手をつけるというのは、いいものかどうなのか問題だと私は思うのです。これからいよいよ年末にかけて五十七年度予算案が作成されるわけですね。その中で変動があるものと私は期待をしておるわけですよ。もとへ戻してもらいなさい。結局あなたは、年金の自然増を除いて六千三百億ほどなたをふるったと言われますが、そのうち四割以上は国民健康保険や児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当の県肩がわりじゃないですか。本当は六千三百億じゃないのです。隠していらっしゃるけれども、実際は年金のスライド時期を延ばした分を入れますと六千八百億余りになるわけですね。だから、あなたと私が議論するというのはどうも身内で議論するようなもので、社会労働委員会でやってもいいのだけれども、あなたがあえて金のことでぐたぐた言われますとこっちも追い詰められまして、そうですかと言えなくなった。はっきりしてください。
  173. 村山達雄

    ○村山国務大臣 片方は、いま一月からやります拠出年金の分はもちろん年金財政に関係があるわけでございます。福祉年金の方は全額国庫負担でございまして、年金財政には関係ございません。それはもう先生御承知のとおりでございます。これを延ばすということはきわめて私も残念に思うているのでございますけれども、何と申しましても来年度財政再建の年である、したがって、これはまあ先生に釈迦に説法でございますけれども、政策増経費であるわけでございます。当然増が非常に多いということも先生御承知のとおりでございまして、これにつきまして、福祉水準を切り下げないでどうするかということであれやこれやと苦心をいたしまして、今度の健康保険の一種の繰り延べ、これもいわば財政再建期間中における減額措置として考えられる。いまお触れになりましたけれども、個々のあるいは扶養手当、児童扶養手当等について都道府県の一部導入を考えておりますのも、これもいろいろな議論がございますけれども、財政状況を勘案し、それから地域保険であるということ、それからまた規定上、国民健康保険については都道府県が補助金を支出することという規定があること、また昭和五十二年のときに、わが党の行政改革に伴いまして、健康保険のあり方については広域地域である都道府県への移管をも含めて根本的に検討すべきである、こういう閣議了解、口頭了解もあるわけでございます。  それらを総合的に踏まえまして、負担を向こうにおっつけるという意味ではなくて、制度を基本的に考えて、一部持っていただいてはいかがであろうか、こういうことを出しておりますのも福祉の切り捨てになるべくならないように、こういうことで腐心いたしておるわけでございます。何しろ当然増の経費を削るだけでも六千三百億というものでございますので、福祉水準を原則として切らないように、それで臨時措置をいろいろ腐心しておるところでございます。先ほど申しましたあれを十一月、一月からに一年間ごしんぼう願えないかというのも、来年度は少し、一時減りますけれども福祉水準は切らない、こういう原則を立てて、非常につらいところでございますけれどもごしんぼう願えないかという案を出しておるわけでございますので、御理解賜りたいと思います。
  174. 森井忠良

    ○森井委員 いまの御答弁はせっかくですが納得できません。まだ予算案ができたわけじゃありませんから、これは法律改正も要らないわけですから、したがって総理大蔵大臣と相談をしていただきまして、少なくとももとどおりに――前へと言いたいのですよ。大体物価や賃金のスライド時期が七月だ、八月だというのはおかしいのですよ。前の年の数字で改定するんでしょう。本来、少なくとも四月が正しい。それをひどいのは来年の一月まで待てなんというのは、はい、そうですかと引き下がれません。したがって、きょうは時間がないから、この点については私としては大蔵大臣あるいは総理とも相談をしてぜひ復元をしてもらうように、前進とは言いませんからせめていままで並みにしていただくように、この点については強く要求しておきたいと思います。  そこで、総理、本法案の本会議質疑からずっと聞いておりますと、何か日本の福祉は行き過ぎたような、そういう誤った宣伝をあなたもなさったと思うのです。いま日本の水準というのはどうなっているか。たとえば厚生年金に例をとりますと、それは役所がはじいたモデル年金というのは確かに十数万円になっています。十数万円になっていますけれども、平均をすると幾らかというと、まだ平均十万円そこそこなんです。厚生年金でいえば、四万幾らの最低年金を受け取っている人も非常に多いのですよ。平均の年金の受給金額というのは月十万円なんです。十万円で食べていけますか。しかも厚生年金をもらっている人は、いま現役の被保険者から見ればわずかに八%なんです。八%で、百人のうちの八人しかまだ厚生年金をもらっていないのです。あとは何で措置をしておるかといいますと、これはもう福祉年金が一つの生活の糧になっている。福祉年金というのはいま二万三千円と二万四千円なんです。この八月からようやく上がった。おまえ、それは掛金を掛けていないから仕方がないじゃないかという議論があるかもしれませんが、私は、この議論は大きな間違いを犯しておると思う。福祉年金をもらっているお年寄りが若いときに年金を掛けようとしても、国家が年金の制度をつくらなかった。本来ですと深々と頭を下げて、制度をつくらなかったんだから、わずかではあるけれども年金を受け取ってくれ、こう言わなければならぬ。もしそうだとすれば、二万四千円という年金が果たしていいのかどうなのか。  たとえばオイルショック以降、特に総理が例にお出しになりますように、五十年度予算と五十五年度ないし五十六年度予算を比べたら福祉はこれだけ伸びておるとおっしゃいますけれども、個々にはそういう深刻な問題がある。それから、掛金を掛けております国民年金にしても、これもまだ成熟度は非常に遅いのでして、それでも一八%ばかり成熟度はございます。しかし、これは御承知のとおり五年年金と十年年金しかないのです。期限いっぱい掛けてまともにもらっている人はまだ日本国じゅうに一人もいない。これは昭和六十年までいないのだから。現存の国民年金の水準というのは幾らか。五年年金も先ほど申し上げました老齢福祉年金とほとんど変わらない。十年年金が少し高くて三万そこそこ、これがわが国の年金の実態ではないですか。一体、総理の年金に取り組むお考えはどうなのか、本当に日本の福祉は十分間に合っておるのか、総理のお口からしかと承りたいと思うのです。
  175. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 わが国の福祉水準は、全般的に見た場合におきましては、私はそう欧米先進国に見劣りのするものではない、こう思っております。     〔海部委員長代理退席委員長着席〕 ただ、森井さんおっしゃるように、日本の福祉は非常に年限が新しい。昭和四十八年ごろから急速に伸びてまいりました。その成熟度においては、いまだ十分でない点がございます。ただ御承知のように、このような世界的な不況、特に日本の場合は深刻な財政事情というものに当面いたしておりますので、私どもはこの福祉の問題につきましての見直しをさせていただく、国政全般についての合理化削減という中で、福祉につきましても国民の理解を得ながらこれを手直しをするところは手直しをする、こういうことにお願いをいたしておるわけでございます。私は、この三年間の財政再建の期間を通じまして、福祉の問題につきましても全体としてこれを見直しもし、充実すべきものは充実をしていく、こういう考えで進んでまいりたい、こう思っております。
  176. 森井忠良

    ○森井委員 臨調の答申に書いてありますように、なるほど成熟社会になった場合に、真の高齢者の社会になった場合に福祉水準を比較するならともかく、まだその途上にあるときに、早々にその福祉の水準について結論を出すということについてはいかがなものかと私は思っています。  そこで総理にお伺いしたいわけですが、今度の行政改革に絡んで考えますと、いま年金は八つの制度があるわけですけれども、ばらばらという状態が果たしていいものかどうか。総理は年金制度の一元化というものに御見識をお持ちのようでございます。われわれも、いま年金の問題で行政改革をするとすれば、こういうふうに八つも制度が分かれ、そして五つも六つも担当する役所がある。たとえば農林水産省は農林漁業の共済組合を持っておる。文部省は私学共済などの共済組合を持っておる。厚生省は国民年金や厚生年金の制度を持っておる等々、官民八つもの制度があるわけですけれども、行政改革というのならむしろやはり一元化を進めていくべきだ。たちまちすぐやろうとすればできるのは年金省なら年金省、社会保障省なら社会保障省のようなものをつくって、そうして支払い事務だけでも、ばらばらにやっているのですから、そういったものについてもとりあえず直ちに統合していく。その上に立って、言われておりますような、これは官民格差もありますし、国庫負担等を見ますと、今度は官民格差の反対で、民官格差になったりしておる問題もあります。いずれにいたしましてもばらばらです。国庫負担一つとっても、一五%あり、一八%あり、二〇%ありという形なんです。そういった点から考えますと、やはり私は、年金懇、制度審等であらあら打ち上げられておりますような将来一本化の方向というものは当然引き出していく時期に来ている、特に行政改革という点からすれば時期に来ていると思うのです。  そこで、総理が積極的に一本化をお進めになるという見解について、まずお伺いをしておきたいと思うのです。
  177. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 森井さん御指摘のとおり、わが国の年金制度、これはいろいろな歴史的な経緯、これが逐次新しい制度が生まれてまいりました。そういう関係で官民八つの制度にも分かれておる。しかも、その間における負担の割合あるいは給付の水準、それに対する国の国庫負担の問題、いろいろ問題がありますことは御指摘のとおりでございます。方向としては、森井さんおっしゃるように、これらの年金制度を将来一本化して、そしてそれぞれの制度がいままで持っておった特色、特殊な事情というのは、その上にかさ上げをするとか調整をするとかいろいろの工夫をこらす必要があろうか、こう思います。私は、方向としては森井さんのお述べになったとおりであると思いますが、それに向かいまして、いま政府の各省庁におきましては、制度間の不均衡あるいは格差、こういうものをまず是正をする、近づける、その格差を縮めていく、いまそういう改善策を考究中でございまして、その格差をだんだん縮めていって、そうして将来一本化の方向に持っていこう、こういう漸進的な手法を進めておる、こういうことでございます。
  178. 森井忠良

    ○森井委員 一本化の方向については私と余り考え方は違っておりませんが、総理、問題は、たとえば比較的小さい私学共済を文部省から移管をするということになりますと、役所同士の争いというものは大変なものだと私は想像しているのですよ。だから、単におっしゃったような形だけではできない。私は、こういうチャンスを逃したら年金一本化に進む時期を逃すのじゃないかという感じがするわけです。  これは中曽根行管庁長官に御意見を聞いておきたいわけでございますが、できればこの機会ですから、せめて総理の直轄あるいは総理府等に年金一元化推進本部というふうなものを設けて、そうして関係の各省庁がいやでもおうでも一本化の議論を始めるというふうなきっかけをつくる必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  179. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 年金行政が各省にわたっておりまして、おのおのの因縁やら歴史を持って分立している、そういうことは行革の理想から見れば適当ではございません。そこで、第二臨時行政調査会におきましても、そういう行革の観点からいかにこれを処理するかということでせっかく検討を進めておる状態でございますから、その成案を見た上で、政府としては、われわれがかねてから皆様方にお話し申し上げているような線に向かって努力してまいりたいと思っております。
  180. 森井忠良

    ○森井委員 私、この際、特に行革の特別委員会ですから、関係をいたします各大臣から、一本化について、いま総理の意思表示もございましたけれども、いらっしゃる方だけで結構ですから、年金を持っていらっしゃいます各大臣の所信を承っておきたいと思います。
  181. 村山達雄

    ○村山国務大臣 総理がおっしゃったとおりでございまして、基本的な究極的な方向としては一本化の方向で物を考えていく。しかし、御案内のようにそのよって立つ背景、経緯、それから財政状況が全く違うわけでございます。したがいまして、当面の施策といたしましては、やはりおっしゃるように共通の場を与えていただいて、そうしてまず不合理の格差からどのようにしてこれを解消していくか。たくさんの制度の違いを挙げればもう切りがないほどあるわけでございます。それをどこまでが不合理であり、どこまではやむを得ないとして考えるか、その辺から詰めて一本化の方向に進んでまいる、これが現実的な処理の方法ではないだろうか、かように考えておるわけでございます。
  182. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 村山厚生大臣と全く同じ考えでございます。
  183. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  私立学校共済組合の年金の問題につきましては、ただいま担当の大胆並びに総理を初め行管庁長官からお話がございましたけれども、その設立の沿革その他ございまして、これを直ちに一本化するということは事実問題といたしまして非常に困難であるわけでございます。  と同時にまた、われわれが行いました間におきましても、他の年金との均衡というふうなものも十分配意いたしながら実施してまいりたい。この問題につきましては、ただいま行管庁長官からもあるべき方向といたしまして先生の御意見について十分お答えがあったとおりでございます。
  184. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 総理並びに厚生大臣並びに関係閣僚から申し上げたとおり、私も全く賛成でございます。  ただ、非常に困難であるからということで、なかなか実現の方向にすら向かうことができないようなことで何年も何年も同じようなことを繰り返しておる、先が見えているということが言えるわけでありますから、われわれ政府にありましてもできるだけ速やかに、将来的には一本化せにゃいかぬということがわかっているわけでございますから、どこが隘路なのか、どういう点が具体的に一本化を阻んでいるのか、そういう点も大体大まかにわかっているわけでございます。そのわかっていることができないというところに非常にわれわれの責任が問われているのではないかという感じが私はいたすわけでございます。  政府内部におきましても、実現できる方向に努力をいたしたいと思います。
  185. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お説もっともと私たちは痛感いたしておりまして、ぜひ一本化していただきたい。特に国鉄をどうぞひとつよろしく一本化していただきたいと思うております。これにつきましては八年金一本化、その前に、せめて共済年金だけでも一本化ならぬものだろうか、こう思うております。  つきましては、やはり期待利益を損なわないようにして、加盟者全員が理解していただくということも大事なことではないかと思うております。ぜひひとつ一本化を進めていただきますようにお願い申し上げます。
  186. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 基本的には一元化という方向に努力をすべきだと思っております。この点は厚生大臣と全く同感でございます。  ただ、一挙に一元化と申しましても、なかなかいきさつがあるわけでございますから、やはり部門、部門で段階的な努力も並行的に重ねていく必要があるんじゃなかろうかと思っております。  特に、御承知の都市共済等につきましては、いま問題があるわけでございます。この点についても、私どもはどうしても改善策を講じていかなければならぬ、こう考えておるところでございます。
  187. 森井忠良

    ○森井委員 総理、行管庁長官、お聞きのようなことです。幾ら総理が笛を吹かれましても行管庁長官が賛成をしていただきましても――これはやりますと年金が将来にわたってすかっとするという問題もありますけれども、人件費のむだも私は省けると思うのですよ。もちろん、それはきちっとしかるべく働き場所へ行ってもらわなければなりませんけれども、いずれにしても、私はいま非常に大事な時期だと思うのです。中曽根長官は臨調の答申を待って、こうおっしゃいましたけれども、いやがる役所もあるわけですから、私は推進本部という名前を申し上げましたけれども、名称にはこだわりませんが、少なくともこの問題を話し合うそういった機関を早速内閣に設けて、審議を始めるということはあってしかるべきじゃないかと思うわけでございます。臨調の答申を待つということもいいかもしれませんが、これは答申を待つ以前の問題として、すでに総理も言い出しておられることですし、ぜひひとつ早急に発足をさせていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 やはり行政体系全般をいま点検しているときでございまして、各省に関係する部分も多々あるわけでございますから、全般の整合性という面も考えまして、答申を待って断行してまいりたいと思います。
  189. 森井忠良

    ○森井委員 それでは、まだ質問はたくさんしたいと思いましたが、ほかのテーマに入らしていただきたいと思います。  問題は、今度は医療です。医療は大変なことになっておるのですね。臨調一次答申の中でも医療のことがずいぶん書いてございます。しかし、今度出てまいりましたものを見ますと、ほとんどそれに触れられていないと言っても過言でないぐらいです。  まず私は、問題認識の点から申し上げたいと思うのですけれども、医療費は大変ですよ。とにかく年度末で十三兆ちょっと切れるかもしれませんが、見通しとして十三兆も医療費がふえてくるのです。これは毎年毎年ふえてまいりまして、多い年には前の年に比べて四二、三%ふえたこともある。そして今度の場合にも見ますと、厚生省はほうっておけばやはり一二%ぐらい医療費がふえるだろうと簡単に推計をしていらっしゃいまして、そのうちの三%だけを今度カットした。それでも、逆に言えば五十七年度の医療費はふえるのは九%でしょう。これはGNPの伸びよりも、賃金の伸びよりもはるかに高いのです。そういう形で予算を組もうと思っておられるわけです。これはゆゆしいことなんですね。大体十三兆になったのも、先ほど申し上げましたようにもう二割、三割と――三割はございません、失礼しました。二〇%前後がやはり最高だったように思いますが、とにかく二割、二割とふえてくるものですから、あっという間にこの年度末で十三兆という金額になった。ここが私は一番問題だと思います。  それで、調べてみますと外国と違うところがある。よく外国を皆さんが引き合いに出されるわけですけれども、違うのは何かというと、これは薬代です。いまもまだ総医療費の三七%前後が薬代になっている。これは外国の例と比べましてもうんと違っているわけですね。ちょっと資料が古いのですけれども、ドイツの場合が総医療費に占める薬代の割合というのは一九・五%です。繰り返し申し上げますが、日本は三七%ですよ。四割近い。イギリスのごときは九・四%、アメリカが一三・八%です。比較的高いなと思われるのがフランスとイタリアでして、フランス二一・九%、イタリア二二・七%、こうなっているのですね。日本の場合は先ほど言いましたように、多い年には、これは昭和四十八年ですけれども、四六・四%にふえたこともある等々となっていまして、いまも大体三七%前後だと私理解をしておりますが、これをせめて欧米先進国の比較的高い方、三〇%にいたしますと、これは半分出てくるわけです。  単純な計算で申し上げますが、総医療費十三兆としますと、約四割といたしますと、五兆円前後、五兆円強ですけれども、それぐらいの薬代がかかっておる。これを先ほど言いましたように二〇%に抑えますと、これは薬代だけで二兆五千億浮いてくるのです。二兆五千億のうちの、医療費に占める国庫負担がありますから国庫負担をはじいてみますと、国保も政管健保等もありますけれども、大体三割でしょう。三〇%が国庫負担と見てよろしい。そういう計算をしますと、いま申し上げましたように外国並みに薬代を見た場合でも、ざっと七千五百億の金が浮いてくるのです。少なく見積もっても六千億やそこいらは出てくる。いかに薬代の総医療費に占める割合というものが高いか御理解をいただいたと思う。  だから私どもは、どこに原因があるのかということを、しばしば直すことを迫ってまいりました。今度の臨調でも幾つか出ていますね。支払い方式の改善、あるいは薬価算定方式の改善、あるいは医療費の支払い明細書の発行などなど幾つか出ているのです。むしろ行政改革をするとすれば、まず医療費をGNPの伸びの範囲内に抑える。これは無理をして医者にかかるなと言っては因りますけれども、欧米先進国でやっていることがなぜ日本でできないのだろうか。私はやはり厚生省の弱腰だと思うのです。  そこで、まずお伺いしたいのですけれども、休薬価の算定基準、これは御承知のとおり九〇%バルクライン方式と呼ばれております。こんなばかな計算の仕方はない。昭和二十九年、まだ戦後昭和二十年代で、お医者さんが非常に生活も苦しかった。政策目的もあったということでこういう算定方式ができた。とにかく薬価を算定するのに安い方からずっととっていきまして、だんだん高くなっていきます。数量その他を勘案いたしまして、九〇%になったところが初めていまの薬価算定方式、九割なんです。これは、たとえば平均をとれば大体五、六〇%になりますから、実勢価格より算術計算すれば三〇%くらいは高い薬価基準になっていることはわかっている。われわれはしばしばこれを直せと言ってまいりましたが、直していただけませんでした。特に去年、健康保険法の採決に当たりましては附帯決議までつきました。私から野党を代表して確認質問でそれも明確にしました。しかし、間もなくあれから一年たつのです。与えられた時間がありませんからはしょることになりますが、何をもたもたしておったのですか。しかも、ついせんだって、中医協に問題提起は保険局長からされたようです。ひとつ考えておいてくれという言い方なんです。中医協の方が早い。あの診療報酬の改定の六月のときに、すでに何とか研究だけはしておこうじゃないかという雰囲気が出た。ところが、先月の終わりですか、中医協で薬価算定方式について、つまり、ずばりいえば九〇%バルクライン方式についてひとつ審議を煩わしたい、恥ずかしいことに委員の方から、一体これは建議なのか諮問なのかと突っ込まれた。そうしたら、建議でも諮問でもいまのところありません。適当なときに態度を決めますという態度なんです。いいですか。去年健康保険法の審議、そして採決に当たっての明確な決議がある。しかも積年の病根はいま私が指摘したとおりです。外国が二割で済むものを、なぜ日本が四割出さなければならぬのかというここにメスを入れる姿勢が全くあいまいです。  私、いま単純計算を申し上げましたけれども、これだけで外国よりも下げろというならまだ無理がある。欧米諸国の中で特に薬代の割合の高い国、そこまででもいったらどうか、こういうときに真剣な姿勢がない。いかがですか、厚生大臣。
  190. 村山達雄

    ○村山国務大臣 医療費につきましては、本当にGNPの伸びを超えまして非常に伸びておることは事実でございます。最近は、五十三年の実績で一七%伸びています。その後大体九%台にだんだん落ちつきつつあります。  基本的には、いまの薬価の問題もございますし、それからもう一つ、私は三つあったんじゃなかろうかと思うわけでございます。一つは人口高齢化の問題、一つは疾病構造の変化の問題、それから医療の高度化の問題。ようやく疾病構造の変化という問題は、成人病に大体中心が落ちついてまいりました。それからまた高度医療の保険への導入も、これからもありましょうけれども、まず一巡したのではないか。ちょっと屈折点にきている。高齢化はこれから進んでまいるのではないかと思っております。したがいまして、五十三年度までは一七%、さっき委員が言われましたのは、ちょうどオイルショックのさなかの数字でございまして、ここのところ大体九%から八%台に落ちついております。しかし、おっしゃるように、医療費につきましては、特に薬代につきましては非常に割合が高い。ただ、いま委員の挙げられました数字は、外国の方では総医療費分の外来の薬しかわかりません。したがって、こちらが四〇%というのは入院の薬代を含めているわけでございますので、実際は医療費に対する外来の薬代ということで両方ベースを合わせますと、差はかなり縮まってまいりますけれども、おっしゃるとおり、まだかなりの格差があるわけでございます。  したがいまして、私たちは、この薬価につきましては、実勢をいかに的確に押さえるかという問題、それから薬価基準の算定基準について、そのあり方についてどう考えるか、この二つをいま懸命にやっておるわけでございまして、ことしの六月一日からの改定は、御承知のように薬価だけで一八・六%実勢調査によって引き続き下げたところでございます。これは毎年一回は必ずやろうと思っておりまして、やはり実勢をまず押さえるということ、これをどれだけ的確にやっていくか。  それから第二の問題は、いまの薬価基準の算定の仕方を含めて、主として九〇%バルクラインの問題でございますが、これをどうするかという問題でございます。実はこの問題は、薬価を引き下げた六月一日以降も中医協におきまして、四、五回論議が行われておりますが、特にいま実勢調査をこれから始めようとしておりますので、その薬価基準の算定の仕方について、いま中医協の方に諮問をいたしまして、その検討結果を踏まえまして、できるだけむだな薬代というものを抑制してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  191. 森井忠良

    ○森井委員 薬価調査を幾らおやりになりましても、九〇%バルクライン方式がある限りは、これはどうしようもないのです。私が舌足らずだったかもしれませんけれども、問題にしていますのは、まだこの時期に来て、どういう方法がいいか、ひとつ中医協さん審議してくださいという言い方なんです。これは法律的には何も中医協に諮らなくても私はいいと思うのです。幾ら読んでみても、社会保険医療協議会法ですか、この法律を見ますと、算定方式まで意見を聞けとは書いてないように思う。もしあるとすれば政令か何かにあるのかもしれないが、これははっきりしていただきたい。仮にそういうことがあったにしても、先ほど言いましたように、国会の動向等があれば、もうこの時期に厚生省が具体的にこうしますが、いかがですかというものを紙に書いてお出しになる時期じゃありませんか。
  192. 村山達雄

    ○村山国務大臣 中医協の場におきまして、わが省はやはりわが省の見解を十分述べてまいりまして、そして改善の方向に最大限の努力をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  193. 森井忠良

    ○森井委員 いつお出しになるのですか。
  194. 村山達雄

    ○村山国務大臣 この薬価支払い基準のあり方は、もう始まっているわけでございますので、時期を見ながら、こちらの案も積極的に出して、そして妥当な結論を出さしていただきたい、かように思っているわけでございます。
  195. 森井忠良

    ○森井委員 大蔵大臣、見解をお伺いしたいのですが、先ほど言いましたとおり、ほうっておけば医療費は五十七年度一二%伸びるという厚生省の計算です、これは答弁にはっきり出てまいりませんでしたけれども。恐らく薬価の引き下げ等おやりになるのだろうと思うのですけれども、それによって三%ほど下げて九%にするというわけです。しかし、指摘をいたしましたように、これはGNPよりも、賃金よりも伸び率が高いというまた現実があるわけなんです。元厚生大臣として一定の見識を大蔵大臣はお持ちでございます。しかも予算を組まなければならない当事者でもあります。いかがですか、これ。
  196. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 老齢化社会を迎えますから、医療費の額がもういやおうなしにある程度ふえざるを得ない。しかし、そこで、医者がたくさんできれば医療費は競争原理が働いて減るのじゃないかと言うような人がありますが、それは現在のままでは逆になるのじゃないか、食えない医者が出てくるから。だからしたがって、やはり医療費は適正に使われるということがまず第一。それから薬価基準も適正に引き下げる。これも第二番目の問題でございます。そういうようなことがみんな患者側にも診療側にも両々相まって初めて医療費の適正化は実現するだろう、かように考えます。
  197. 森井忠良

    ○森井委員 厚生大臣、畳み込むようで大変恐縮ですけれども、あなたの見解だけちょっと聞いておきたいのです。  中医協に諮ります、中医協に諮りますというのじゃない。九〇%バルクラインというのは現状に即していない、改善すべきだと思うのです。いかがですか、見解は。
  198. 村山達雄

    ○村山国務大臣 率直に申し上げますと、私も非常に問題点の多い算定方式だと思っております。したがいまして、この問題の適正な基準について論議を重ねまして妥当な結論を出したいと私は思っております。
  199. 森井忠良

    ○森井委員 ここにこういう本があるんですよ。これは天下の名著でしてね。「新健康保険制度大綱(案)についてのメモ(日医会長武見太郎)に対する反論 衆議院議員渡辺美智雄」、こうなっているのです。これは恐らく本当に一かどの見識ですよ。これを見ますといいことが書いてある。恐らく千円でもさっと売れるのじゃないですかね。  これを見ますと、その十七ページに「薬価基準の引下げ」というのがありまして、「現在の薬価基準と薬の実勢価格の差は、三〇~四〇%である。中には九〇%の開きのあるものもある。この開きはすべて医療機関の収入になり、かくれた所得になる仕組である。従って薬の多用、過剰投与、薬の買い叩きはなくならない。またこの利ザヤの開きの大きい薬を使うようになる。これも医療費増高の原因である。薬価基準は、日医の反対が強くても迅速に実勢価格に合わせて引下げるべきである。」  ついでにもう一言申し上げておきます。「開業医優遇税制の廃止」です。廃止ですよ、これは。「必要経費の大・小、有・無にかかわらず、一率に受取り社会保険診療報酬の七二%を天引必要経費と認める現行制度は、平均経費率五二%との間に二〇%の架空経費(免税所得)を認めることとなり、社会的不公正を招いている。」  もう多くは申し上げませんけれども、私は渡辺元厚生大臣の言われるとおりだと思うんですよ。気づいていながら、なかなかそれを直すことができない。なぜか。村山厚生大臣、なぜ直せないか。薬については薬の資本の関係もありますが、やはり薬の差益、いみじくも渡辺元厚生大臣が述べていますように、これは医者の差益のもとになっているのです。それは確かにおっしゃるように、今年度一八・六%薬価基準を下げましたよ。しかし、これでもう実勢価格との乖離はなくなったと断定できますか。答えていただきたいと思いますが、恐らく断定できないから、先ほど薬価算定方式は直していかなければならぬ、こうあなたは言われたというふうに理解をしてよろしいのかどうなのか。  それから、やはりこの際本気で医療費を、あなた方が心の中で思って外に出されないでおることを実現しようとすれば、私は日本医師会との関係を清算しなければならぬと思う。たとえばお医者さんの変な悪いことをしたのがおる、これはずいぶんおるわけです。たとえば十全会のように、たとえば所沢の富士見産婦人科病院のように、あるいは近藤何がし病院のようにたくさん、濃厚診療をしたりあるいは虚偽のレセプト等をこしらえて診療報酬を詐取したりいろんなのがおるわけですが、これは臭いなと思っても、すぐに指導、監査ができない仕組みでしょう。第一に、日本医師会と昭和三十五年に締結しましたあの覚書といいますか、申し合わせが邪魔になっている。もうここまで来たら、こういう行政改革で、金がないからお年寄りの年金まで飛ばそうかというときに、何としても医療費はむだを省かなければならぬ。私はぶった切れとは言ってないのです。むだを省けと言っておるのです。むだを省くためには、やはりこの際、厚生省は毅然とした態度でいかなければならぬ。そのためにはとりあえず、あなた方の決意のほどを知る一つのバロメーターとして、踏み絵としてあの昭和三十五年の日本医師会との申し合わせを破棄したいと思うが、この点についてはどうですか。
  200. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま御質問が二つございまして、薬価基準についてどういうふうに考えておるか、それから医師会との申し合わせについて破棄するつもりがあるかどうか、この二つでございます。  おっしゃるように、医療費はここのところ大体GNPのところで落ちついてまいっておりますが、まだやはりむだなものは、医療資源の効率的なあれからいたしまして、どんどん適正なものにしていく必要があると思います。その意味で、何といっても薬代の実勢価格をはっきりつかまえること、それから同時に、実勢をつかまえましても、その算定方式によりましては、実勢価格を基礎にして違う薬価がついてくるはずでございますので、その薬価基準の算定方式についても前向きに検討していくということでございます。  なお、いろいろな適正化につきましては、私はやはり何と申しましても医者と患者の信頼関係を確立することが第一だと思っております。そして、むしろ診療側の方で自発的に本当に自分たちが改革しないと、一部の人たちのために大変な国民の不信を買っているというところの医師会もたくさん出ておりまして、私のくにの方ではもうすでにそういう機運がどんどん出ておりまして、もし不正があれば医師会がみずからやるというのも出ているわけでございます。もとより、これを全部行政機関で追っかけ回すということになりましたら、一体どれだけ人間をふやしていいかわからぬのでございまして、信頼関係が決定的に基礎だと思っております。同時にまた、不正の請求をするような者がありますれば、厳正に処断していくということは、当然そのうらはらとして考えねばならぬところであろうと思うのでございます。そういう意味でそういうものを総合的にやりまして、そして医療費のむだを圧縮してまいりたいと思っております。  それから、医師会との申し合わせの点でございますが、あれはいわば指導について、あるいは監査について、どこから指導に入り、どこから監査に入るかということについての取り交わし事項でございまして、税務の方でも青色申告等について同じような規定があるわけでございます。  今度あそこで一番問題になりますのは、もし学識経験者を推薦しない場合、あるいは推薦しても立ち会わない場合はどうなるかという点が、私は実務的に言って一番大きなポイントだと思いましたが、すでに健康保険法の改正でその点は改正されておりますので、いまのところ全然支障になっておりませんし、われわれは所信に基づいて調査する、指導すべきものは指導し、監査するものは適正に厳正に監査してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  201. 森井忠良

    ○森井委員 お医者さんの中には良心的ですばらしい診療をしておられる信頼のある方がたくさんおられますよ、私の周りにもあるんだから。しかし厚生大臣、あれだけカラスの鳴かぬ日はあっても医師の不正が報道されないことがないというくらいの時代でしょう。国民の医療不信というのは、私はもう極度に達しておると思うのですね。この時期に、普通の監査をするのにまず相手の、利益団体の医師会が立ち会わなければ監査ができない。しかも、いきなり監査してはいけないのです、原則として。何千人か集めて、これは集団指導というのをまずやるのです。いいですか、集団指導というのをやる。その後で、今度は少し臭いなと思う人を呼んで個別指導というのをやる。それでなおおかしいなと思うとき、初めて今度は個別検査というのをやるようになっている。監査という言葉はないのですね、健康保険法で。確か検査という言葉になっているはずなんです。だから、結局つかまえてみれば、あれだけ問題になりながら医師の免許を取り消された人は一体何人おるのか。これはもう非常に少ないのですね。大体同じような数字ですけれども、医師、歯科医師、薬剤師――薬剤師さんはうんと少のうございますが、監査を受けて取り消しになったのは、五十一年が二十六、五十二年が二十九、五十三年が三十、五十四年が三十七、五十五年が三十九ですね。  まず、その指導、監査上の欠陥は、監査をするというのは全部予告です。原則としてこれは医師会が立ち会うのだから。あなたがおっしゃられるように、去年健康保険法の改正のときに、医師会が立ち会わぬと言ったら厚生大臣が独自にできる、都道府県知事が独自にできるようになった。これは率直なところ、妥協の産物でそうなったのです。わしは立ち会わぬという医師会はおるはずはないですから、仲間が監査を受けるのに。だから、この際、私どもも行革はまるっきり全部反対しているのじゃない。いいところを賛成しようとしておるわけです。われわれがやれというところをやらないで、やらぬでもいいことをやるから、私どもはこういうふうにいま議論になっているのです。だから、まず医師会は立ち会わなくてもいいじゃないか、そのためには、法律でも何でもないのだから、日本医師会と厚生省の申し合わせなんですから、これがなぜ破棄できないのですか。  それから、いまいみじくもあなたが言われた点も改正をして、指導や監査をするのに何で学識経験者が要るのですか。こんな監査がどこにありますか。行政管理庁が行政監察をやられる場合でも、いま長官、眠そうだったからちょっと名前を言いましたけれども、それでも原則として予告なし。ちょこちょこ予告があるから私どもきげんが悪い場合もありますからね、あなたのところの行政監察だって。  いずれにしても、これぐらいのことができないと――私は、まだ一般質問でずいぶんと申し上げたいことがありますけれども、きょうは時間が来ちゃったからこの問題にしぼることになりますけれども、せめて医師会の――しかもこれは、きのうきょう私が言い出した問題じゃない。何回も予算委員会等で議論になって、その都度かたくなにあなた方は断り続けてきた。しかし、申し上げましたように、まだ医療費が一二%も上がると読んでいるようなあなた方の役所ですから、薬価算定方式九〇%バルクラインというようなこんなばかなことをいまもってまだやらしておる。不合理がわかっていながらおやりになっているような状態ですから、せめて踏み絵として、つまり厚生大臣村山達雄先生として、せめて医療のむだにメスを入れる第一の仕事として、これを破棄なさるおつもりはないか、こう申し上げておるのです。
  202. 村山達雄

    ○村山国務大臣 私のいままで勉強したところによりますと、やはり医療費の適正という問題について、例の通達、これがそんなに妨げになっているとは私は思わないのでございます。問題は、本当に監査をやるのかやらぬのか、そこにあると思いますし、何といいましても一番大きな問題は、やはり医療費の通知制度、私はこれが最大だと思っているわけでございます。これを励行していただきますれば、およそその患者にみんな当たるわけでございますので、不正のあれがあるのかないのか、あるいは過剰なものがあるのかないのか、この問題が一つ最大だと思いますし、もう一つは審査のやり方の科学性でございまして、御案内のように専門の人をいま大分増強して審査に力を入れております。将来は、やはりコンピューターを入れまして、ちょっとおかしいのはどんどん請求の中でレセプトをはねていくというように電算機を導入していく。審査。それから同時に、そういうものを通じて得られた材料から監査を厳正にやっていくということが一番大事なことである。  しかし、私は先ほども申しましたように、医師を初めから疑ってかかるという制度よりも、本当に医師が国民の期待にこたえている、そういう気持ちにいかにして持っていくか、これが私は最大な問題だと思っているわけでございまして、そういう意味で、私は両方の立場から、診療側の自覚、それから医者と患者の信頼関係、それでそのために当然出てくる結果でありますけれども、監査、審査の充実、医療費の通知のやはり厳正化、さらに不正なものがあったときには厳正に処分をしていく、こういうことを励行してまいりたいと思っております。
  203. 森井忠良

    ○森井委員 最後に一つ。あなた、聞かないことに答弁をするものだから、ぼくはイエスかノーかだけと言ったのですがね。どうも聞きようによっては、聞きようによってではなしに日本語で解釈すると、どうもノーのような気持ちがいたしますが、残余たくさん質問を残しています。また一般質問等のときにお聞きをすることにして、終わります。
  204. 金丸信

    金丸委員長 これにて森井君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  205. 上原康助

    ○上原委員 最初に、総理にお尋ねしたいのですが、去る六日でしたか、サダト・エジプト大統領が突加として凶弾に倒れてしまいました。これは多くを御指摘申し上げるまでもなく、中東和平あるいは中東情勢、わが国の中東外交に及ぼす影響もきわめて大きい面があろうかと思います。そういう観点から、外務大臣がおいでですとなおよかったわけですが、いま外遊中でありますので、サダト亡き後の今後の中東情勢に対する日本政府としての御認識、また、資源問題とのかかわりでもいろいろと外交面においてより慎重さを期さねばいかぬ面も出てくるような気もいたします。これについて日本政府としてはどのように対処していかれようとするのかというのが一点。  そういうさなかにアラファトPLO議長が御来日をなさいます。そういうこととも関連して、国民は、中東問題なり政府がこの面についてどのように対処していかれようとするのか、関心を持っておられると思いますので、総理の御所見をまずお伺いをしておきたいと思います。
  206. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 中東和平につきまして真摯な努力を続けてきておられたサダト大統領の突然のあのような急死、これはまことに遺憾なことであり、また、サダト大統領のような偉大な指導者を失いましたことにつきまして、心から深甚の弔意をささげておるのでございます。  わが国は、中東の問題につきましては過去において余り手を汚しておりません。きわめて公正な高い立場で中東問題、中東の和平ということを考えておるわけでございます。わが国は、イスラエルの生存権、そして一方におきましてパレスチナの自決権、これをお互いに認め合うこと、これが真の中東の和平を確立するゆえんであろう。相互にそれを認め合い、話し合いによって中東の和平に向かって努力をしていく。また、わが国もそういう方向で協力をしていきたい、このように考えておるわけでございます。  アラファトPLO議長が議員懇の御招待で日本においでになります。外務大臣並びに私もお会いすることにいたしておりますが、私は、この機会に、アラファト議長が中東の和平について一体どのような構想を持っておられ、どのようにこれを進めようとしておるのか、その真意もよくお聞きしてみたい。また、わが国はいま申し上げたようにそういう基本的な方針を持っておりますから、そういう点につきましてもわが国の方針に基づいてアラファト議長に対して和平に向かって今後努力をしてもらいたい、こういう点も強く求めていきたい、このように考えておるわけでございます。
  207. 上原康助

    ○上原委員 いまの点はきょうのメーンのお尋ねでございませんので、一応所見だけをお伺いをいたしておきますが、特にこれからの外交問題あるいは防衛問題を考える場合に、中東問題というものを抜きにしてはいかないと私は思うのですね。そういう面で、これまでの日本外交というものを考えてみました場合には、ややもすると、ただ資源、石油を確保するということに重点を置かれて、中東問題に対してのあるいはPLO問題等に対する十分なる理解と認識、国民の協力を求めるという姿勢が欠けておったのではないかという点も指摘できるかと思うのです。そういう面がないように特段の御努力を要望しておきたいと思います。  そこで、私に与えられたテーマは主に行政改革と防衛費の問題とがメーンでありますので、その角度からお尋ねをさせていただきたいわけです。  まず最初に、最近の一連の防衛庁なり政府・自民党の政治姿勢というものを見ておると、どうも先ほどの例じゃないのですが、カラスの鳴かない日はあるにしろ、対ソ脅威論あるいは防衛力増強論、やれ憲法も改悪、改正すべきだとか、靖国神社に集団参拝をするとか、憲法理念というか憲法規定を犯したというか、それを逸脱する政治行為というものが私たちにとっては非常に見える。そのことに国民も非常な疑問と疑念を持っている面もあると私は思うんですね。総理は、総合安全保障体制というかを確立していくということで、基本理念として、一つには軍事大国にならない、また対外政策というものは、日本の高度に発展をした、発達をした経済力というものを主体にして対外協力をやっていく、そういう二つの柱に基づいた総合安全保障体制というものを首相になられた折に相当強く打ち出してこられたのだが、いつの間にかそれもしり切れトンボになって、後ほど具体的に指摘をしたいのですが、八一防白、いわゆる五十六年の防衛自書などを見ると、軍事一色に塗りつぶされていると言っても私は過言でないと思うんですね。  そういう意味で、一体、一次防から四次防まで一応推進をして、その後、防衛計画大綱を打ち出して、一つの防衛構想というものを立ててきたはずなんです。その時点と今日の時点において、どのようにわが国を取り巻く諸情勢が変わってきたのか、また、この防衛計画大綱というものが果たして当時立案をされたような方向で進められてきておるのか、そこいらの点についてひとつ御見解を賜りたいと思います。
  208. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  防衛計画ができましたときと今日の情勢とどのような相違点があるか、また防衛計画大綱はどのように進められているかという趣旨のお尋ねがございました。  防衛計画大綱が策定されましたのは昭和五十一年秋でございます。その後五年ほど経過いたしているわけでございますが、その間におきます世界情勢につきましては、ソ連の一貫した軍事力の増強、また第三世界への行動等からいたしまして、東西間の関係は厳しさを増してきているというふうに私ども考えておるわけでございます。しかしながら、なお話し合いの可能性も残されておりますし、核戦力の行使を含めての大規模な戦争が直ちに起こるというふうな状態ではないと考えておるわけでございます。また、わが国の所在しますアジアの東の地域について見ましても、極東ソ連軍の質量ともに目覚ましい増強ぶりが行われている、あるいは北方四島へ相当規模の陸上兵力が配備されるようになっている、そういったような一連の活発な活動等からいたしまして、私どもは潜在的な脅威が高まっているものと受けとめているわけでございます。  そこで、大綱策定以来わが国がどういう防衛努力を行っているかと申し上げますと、先生御承知のとおり、「防衛計画の大綱」におきましては、平時における備えを固めるとともに、有事におきましては限定的小規模の侵略に対しまして原則として独力で対処する、これを超える場合におきましても粘り強く排除に努めて、そして必要な場合には米軍の安保条約に基づく支援にまつ、こういう基本的な考え方、いわゆる基盤的防衛力の構想に立っているわけでございます。また、別表におきまして、陸海空の兵力、また主要装備についても目標を掲げているところでございます。政府におきましては、この大綱の基本方針に従いまして防衛力の整備を進めているわけでございまして、具体的には現在、五十三年に策定されましたいわゆる五三中業によって整備を図っているところでございます。現在五三中業はその過程にあるわけでございますが、これが完全に実施されたといたしましても、なおかつ大綱の水準に達しない面が多々ある。そういった点からいたしまして、私ども現在、大綱の水準に次の中業期間においてはぜひ達成する必要があるということで、次の計画の準備にもかかっているわけでございますが、主なる計画並びに主な相違点についての状況について申し上げますと、いま申し上げましたような次第でございます。
  209. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官のまじめにお答えしようというお気持ちはわかるのですが、できるだけ私がお尋ねする点だけにひとつ、具体的なことは後で聞きますから。  そこで、私が聞いておるのは、防衛計画大綱をつくる際には前提条件というのがあったはずなんですね。前提条件、それを聞いているわけですよ。水準に達していないとか、極東ソ連軍の著しい軍事力の増強なんて、もうこれは耳にたこができるほど聞かされておるので……。  そこで、まず五項目ぐらい指摘されておりますね。これは五十六年防衛白書の百五十二ページにも皆さんの方でも指摘をしておられる。特にここで指摘をしておきたいことは、この百五十二ページの第四項に触れられている点、「一方、わが国の防衛力は、装備や施設の更新近代化などのための所要経費の増大や人件費などの上界により、これを維持していくだけでも相当の経費を必要とする時期に来ており、後方支援部門の立ち後れの是正や人員の確保あるいは用地の取得難といった問題も生じている。加えて、わが国の経済は、これまでの高度経済成長からの軌道修正が求められており、防衛費を大きく伸ばすことは困難とみられる経済財政事情に対して十分配慮する必要があること。」  四次防までは余り金がかかり過ぎて、高度経済成長政策から低成長に移行するときに、量的には一定の水準まで概成されておるので質的な面をもっと強化をしていくために、防衛費を抑制するための方法としてこの防衛大綱と基盤的防衛力構想というものが出されたはずなんですね。このことが全く無視をされているということ。どうなんですか、そこいらの御認識は。皆さんに後で米ソの軍事バランスが一体どうなっているかということも聞きますけれども、実際に基盤的防衛力構想の基盤というものはもう失ったのかどうか、その点を明確にしていただかないと、ごちゃごちゃのうちに、どうも国会内の情勢も変わった、あるいは昨年の衆参選挙で自民党が多数を占めたというような、そういった政治状況に悪乗りをしたのが最近の防衛力の増加じゃないですか。そこをもう一度原点に戻して議論がかみ合うようにせぬと、防衛論争というものはなかなかうまくいきませんよ、長官。
  210. 大村襄治

    ○大村国務大臣 重ねてお答え申し上げます。  確かに、防衛計画が策定されましたときの情勢、これは内外ともに当時の情勢が反映していたことは事実であると思うのでございます。外部との関係につきましては、先ほど要約を申し上げました。国内の情勢につきまして、確かに財政やそういった点も勘案して進めるということもはっきりうたわれておるわけでございます。  しかしながら、先ほど申し上げましたような大綱の基本的考え方に立脚して、別表で具体的な目標が設定されているということも事実でございます。その目標に対しての不備を補うとともに、いま御指摘の、ただ量だけをふやせばいいのだということではなく、質の改良の点も織り込みまして、毎年度年度予算編成の際に、先生御指摘のような点も含めて検討の上、具体的な防衛努力を進めて今日まで来ておるということでございます。  また、主要な装備費につきましては国防会議の御決定もいただく、その上で予算自身は閣議で決定していく、そして国会の御審議を願う、こういうことを計画の大綱の精神及び別表の範囲内で逐年努力を重ねているところでございます。
  211. 上原康助

    ○上原委員 それじゃ、もう少し私の方から国際情勢の――後で若干聞きますけれども、認識として、一つには、政府の防衛構想というのは、これは私は是認をするわけじゃないのですが、日米安保体制は今後とも有効に維持されていくという前提で立てられていますよね。二点日に、米ソ両国は、核戦争またはそれに発展するおそれのある大規模な武力紛争を回避しようとしている。この点に対する御認識はどうなのかということです。三点目に、中ソ関係は、仮に部分的改善はあっても、対立の根本的解消には至らない。一定の中ソ対立はあり得るという前提で今日まで来ている。このとき、防衛計画大綱をつくる場合の一つの前提としてそういうのが出ているはずなんです。それと、米中関係は、今後とも相互関係が調整が続けられていくであろう。五点目に、朝鮮半島においては、おおむね現状で推移し、少なくとも大きな武力紛争は生じないであろうという、極東情勢あるいはわが国を取り巻く防衛体制の状況というものを一応判断をして、そういう方針をお立てになったと思うのですね。  問題は、この前提となる五つの柱というものが現在はどうなのかということ、あなたのおっしゃることで、極東ソ連軍の著しい防衛力増強ということについては、これは問題がありますけれども、変わってきた。あるいは七九年のソ連のアフガニスタンということも私たちは否定をしない。しないにしても、デタント体制というもの、デタント状況というものが果たして崩れたのかどうか、米ソ二大超大国はあくまでも核戦争を回避をして平和共存体制でいこうという姿勢をとっておると認識しておられるのかどうか、ここいらが明らかにされないままに、ソ連の軍事力が強くなったから、なったからというだけで防衛力を強化させていこうとする、そういうことに対して私はやはり――制服は、防衛力というのはこれは自己増殖しますからともかくとして、いまこそ、そこにこそ政治の力のシビリアンコントロールというものをかけるべきじゃないですか、本気に。あなたが、防衛庁長官までが制服が言うことをうのみにするような御発言はいかがかと思いますよ。そう  いう御認識はいかがなんですか。
  212. 大村襄治

    ○大村国務大臣 国際軍事情勢は、従来から東西間の競争と協調の両面を持って今日まで推移しておるものと考えております。しかし、六〇年代以降、ソ連が一貫して軍事力の増強と第三世界の勢力拡張などを図りました結果、競争関係の面が強くなってきていると思います。特に、アフガニスタンへのソ連の軍事介入、ポーランド情勢等によって東西間の緊張が高まってきている。そういう意味で、最近の国際軍事情勢は流動的で不安定なものがあると言わざるを得ないと考えているわけでございます。  他面、米ソ関係も、防衛計画大綱当時よりも後退しているとはいえ、引き続き話し合いの努力も行われております。また、西側の抑止力強化への努力も行われているのでありまして、東西間の核戦争及びそれに至るような大規模な衝突は現状では抑止されていると考えている次第でございます。ただ、そういった情勢でございますので、わが国が憲法並びに防衛の諸原則に従って必要最小限の防衛努力は払わなければいけない、そういう観点で現在防衛努力を進めている、そういうことで御理解を願いたいと思うわけでございます。
  213. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、必要最小限度の防衛力整備、これは非常に含蓄のある言い回しですよね。すべて必要最小限度の防衛力整備だ、国民向けにそうおっしゃっている。一体、必要最小限度というのは量的に言うとどういう水準ですか。
  214. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  必要最小限度の防衛力は何であるかということでございますが、これはわが国の防衛に必要な最小限度の防衛力ということに相なるわけでございますが、具体的には、防衛計画大綱に定められておる基本的な考え方に立脚しながら同大綱の別表の範囲内で所要の防衛力を進める、これが具体的な必要最小限度の目標ではないか、私どもさように考えている次第でございます。
  215. 上原康助

    ○上原委員 そういう御答弁ではどうかと思うのですが、長官、そうしますと、防衛計画大綱別表に掲げてある、必要最小限度のそれを満たせばいいわけですね、防衛計画大綱をね。その防衛計画大綱別表を達成をすることがわが国を守る必要最小限度の防衛力だ。いまあなたの御答弁を裏返しに言うとそうなる、そういう理解でいいですか。これは明確にしてください。
  216. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  大綱は大きく分けまして二つの部分から成っております。前半が基本的な考え方でございます。後半が別表であります。基本的な考え方に立脚いたしまして、別表を達成すること、これが平時において備うべき防衛力の最小限度である、私どもさように考えておるわけでございます。
  217. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、五三中業では別表はどのくらいを達成できそうですか。
  218. 塩田章

    ○塩田政府委員 五三中業を考えましたときに、五三中業の基本的な整備目標といたしまして、別表に掲げております基幹部隊の編成を完了するということが一つ。そのほかに、科学的、軍事的水準に相応する整備を図っていくといった二つの点がございまして、五三中業の基本的な目標としまして、別表の大綱の水準に直ちに達するということは、それはむずかしいであろう。したがいまして、基幹部隊の整備は少なくとも五三中業の目標として整備したいということが当時の五三中業の目標でございます。
  219. 上原康助

    ○上原委員 基幹部隊の面についてはおおよそ達成できるであろうということは、何回か答弁しておられるのですよ。さっきの防衛庁長官の答弁からしますと、防衛計画大綱別表を達成することがわが国の必要最小限度の防衛力整備になるのだとあなたはおっしゃった。それはいいのですね。そうしますと、必要最小限度の防衛力を整備すればいいと言ってきた以上は、この防衛計画大綱の別表の内容を達成をすることがわが国の必要最小限度の防衛力整備になるのだということになりますよ、これは。
  220. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  先ほど来申し上げておりますように、大綱は基本的考え方と別表をもって構成されておるわけです。その基本的考え方に立脚しながら大綱に定められております目標を達成すること、それがわが国の現在のところ最低限の防衛力の整備の目標である、さように考えておるわけでございます。  またこの際、単に数量を合わせるということではなく、質の改善も図る、これは大綱の基本的考え方の中に、最近の目覚ましい技術革新に照らし合わせてその点は絶えず検討を払うべきであるということが明記されておりますので、量だけではなく質の改善も含めて実施してまいらなければならない、さよう考えておるわけであります。
  221. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、どうも防衛庁長官お答えは余りすっきりしないのですが、それでは専守防衛にならぬじゃないかと思うのですが。  五六中業ではどうなるのですか。防衛計画大綱を満たす前提としていま作成をなさろうとしているわけでしょう。  なぜ私がこのことにこだわるかといいますと、防衛費がどんどん雪だるま式にふえていくのだよね。要するに、基盤的防衛力構想と言いながらも、皆さんの防衛構想というのは所要防衛構想になって変わってきている。これでは国民は納得しませんよ。一体、歯どめがあるのかという新たな疑問が出てきているじゃありませんか。総理もこれはよくお聞きになっていただきたいと思う。  五六中業では達成可能というより、五六中業までつくればわが国の平和時における防衛力の水準というものは一応達成――まず議論をかみ合わす意味で私はそのことを言っているのですよ。防衛技術の発達とか向上とか、そういうことになりますとこれは際限なく続いていくじゃありませんか。一体、平和時における防衛力の水準というのはどこに定めようとしているのか。そのための予算幾らであれば足りるのですか。おおよそのめどを明らかにしてくださいよ。
  222. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  現在、五三中業に基づいて防衛力の整備を進めているわけでございますが、これが実現いたしましても大綱の水準にはまだ到達しないわけでございます。そこで次の五六中業の作成の作業に入る前に国防会議に御相談いたしまして、次の中業期間中に「防衛計画の大綱」の水準に到達することを基本として作業を開始するということにつきまして御了解を得て、現在作業を始めているわけでございます。来年の夏ぐらいまでかかりますとこの作業がまとまるわけでございます。現在作業の過程でございますので、今後の見通しについてのお尋ねでございますが、達成することを基本として作業を進めているわけでございますので、その後のことにつきましてお尋ねでございましても、その点は差し控えさせていただきたい、さように考える次第であります。
  223. 上原康助

    ○上原委員 もう一度だけ念を押しておきたいのですが、そうしますと、防衛計画大綱、いろいろ前段がある、それはわかりますよ。別表というのは上限ですね。そして五三中業、五六中業を通して、一つの目安としてGNP一%程度以内ということは守りますね。
  224. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  防衛計画大綱と中業との関係は、先ほど申し上げたとおりでございます。  ただいまGNPとの関係についてお尋ねがございましたが、対GNP一%を超えない範囲で防衛関係予算をつくるのだという方針は、五十一年の秋でございますが、大綱が閣議決定されますのと若干間を置いて、別個の決定案として国防会議、閣議の決定を経たものでございます。しかしながら、私どもといたしましては、この一%以内という閣議決定が現在なお行われているものでございますので、今後の作業を進めるに当たりましても、現在のところこれを念頭に置いて対処してまいらなければいけない。五十七年度概算要求につきましては、この点に十分注意を払いながら作業を進めている、こういう状況でございます。
  225. 上原康助

    ○上原委員 五六中業策定期間中も一%の目安というものは守れますかと聞いているのですがね、長官。
  226. 大村襄治

    ○大村国務大臣 五六中業は現在作業を始めたばかりでございます。また、対GNPの比率も、先生よく御承知のとおり二つの要素があるのです。対GNPが今後どうなるか、そしてまた毎年度の防衛関係予算の規模がどうなるか、この二ついずれも作業を始めたばかりでございます。また対GNPの方は防衛庁ではなくて、企画庁が中心に今後お進めになるわけでございます。その相関関係もございますが、しかし閣議決定が現在行われておりますので、私どもこれを念頭に置いて作業を進めているところでございます。
  227. 上原康助

    ○上原委員 あなたの本音は、やはり一%ということではどうも先々うまくいきそうにないというお気持ちがあるからそう逃げの御答弁をなさるかもしれませんが、後ほど大蔵大臣にもお尋ねしたいのですが、要するに、防衛計画大綱をつくったときの情勢の基本においては変わりはないとは害いながら、ソ連軍の増強とかソ連脅威論でどんどん防衛費を拡大をしていこう、その板庇が大きく変化というか拡大をされてきたということが言えると思うのですね。  そこで、いま一つは、よくソ連脅威論をおっしゃっているわけですが、たとえば五十六年度の防衛白書の十四ページによりますと、よくソ連軍の増強ということで、「ソ連は、欧州、中東、極東の三地域に兵力を集中しており、いくつかの正面においてそれぞれに作戦し得る態勢をとっているとみられている。」こうありますよね。かつてニクソン・ドクトリンで軌道修正するまで、アメリカは二カ二分の一戦略というものを立てようとした。アメリカでさえそれを達成できなかったのですよ。ここで非常にソ連の、いわゆる一つはNATOでしょう、ワルシャワ、中東、極東三地域において同時に有事が発生をしても、ソ連軍はそれに正面対処していけるだけの戦力保持をしたんだという指摘、これは余りにもオーバーな評価じゃないですか。こういうことが随所にある。これはどうしてそういう認識になっているのか、これが疑問点ですね。  私は、この間も内閣委員会でも指摘をしたのですが、アメリカはなぜ今日の状態に国際的にもあるいは国内的にも、経済力においても、国力においても低下をしたかというと、ベトナム戦争に足を突っ込んだからですよ。その間ソ連は、そういった国力を消費をするような事件というものがなかったものだから、継続的にノーマルにやってきただけのことなんですよ。それをソ連脅威論を言うだけでは、余りにも防衛庁の制服に追随をするような認識の仕方じゃないのか。こういう点、これに対してどうお考えなのか。  さらに、これは新聞でも指摘をされているわけですが、極東海軍力についても非常にオーバーに皆さんは見積もっていらっしゃるんですね。しかし、アメリカ側の指摘というものはそうじゃない。たとえば、ソ連の極東陸上兵力を見るてみますと、防白では五十一個師団だと書いてある。アメリカの報告によると、四十五師団、イギリスの「ミリタリー・バランス」は四十六師団、ソ連太平洋艦隊については防白は八百隻、米報告は七百二十隻、「ミリタリー・バランス」は五面二十七隻、どこを見てもソ連がたくさんあるんだ、ソ連は大変だ大変だと、まるで第二次世界大戦をやったときに鬼畜米英を言ったようなものなんだ。アメリカこわい、イギリスこわい、夜は物も見えなんてぼくら学校で教えられた。そんなばかなことがあるかいと思った。そういうようなソ連脅威論だけを国民に与えて防衛費を増強しようとする、そういった誤った認識の上に立った防白というもの、あるいは防衛力の整備、防衛費というものに対しては、私たちは納得がいかぬ。なぜそうなっているのか。アメリカでさえそういう指摘をやっているのですね。なぜ防衛自警はそういうふうなオーバーな評価をするのか、この点明確にしてください。これを明らかにしないと私は質問できない。
  228. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  ソ連とアメリカの軍事力の比較についてお尋ねがございました。  アメリカがベトナム戦争以降余り努力してない、ソ連は通常の努力をしただけだという御指摘がございましたが、私どもの調査によりますと、ソ連は毎年対GNP一二ないし一三%の国防努力を継続しているわけでございます。アメリカは数%、レーガンになって少しこれを引き上げようとしている。その間に、核戦力におきましてもソ連はアメリカに追いつき追い越そうとしている、また質の面におきましても非常に進歩、向上をいたしているわけでございます。また、通常戦力の面におきましても非常に改善を図っているわけでございます。従来はヨーロッパが主ではないか、こう言われておったわけでございますが、増強をされました陸海空の戦力の三分の一ないし四分の一をそれぞれ極東に配備しているということも厳然たる事実でございます。特に空母ミンスクでありますとか、上陸用強襲艦イワン・ロゴフでございますとか、あるいは一万数千トンの巡洋艦、そういった行動力の多い艦艇、航空機を配備していることも事実でございます。(上原委員質問に答えてくださいよ」と呼ぶ)これはせっかくのお言葉でございますが、通常の努力を払ったにすぎないということにはどうしても当たらないのではないかと私ども考えているわけでございます。そういった現実を冷静に判断しなければならない。そういった点も、わが国の防衛の問題を考える上に一つの要素として、念頭に置いて対処しなければならない。  お尋ねのように、かつてのアメリカのように二カ二分の一の能力を備えているかというお尋ねでございますが、能力はふえてきておりますが、これを行使するのはやはりソ連の責任者の判断でございまして、その点はよくわからないわけでございますが……。
  229. 金丸信

    金丸委員長 簡潔にやって下さい、大臣。
  230. 大村襄治

    ○大村国務大臣 アフガニスタンへの軍事介入、中央アジアにおきましてもあれだけの行動力を持っているという点も事実として認めなければいけない、さように考えている次第でございます。
  231. 上原康助

    ○上原委員 なぜ防白と「ミリタリー・バランス」やアメリカ側の分析は量的に違っているのか、この根拠は何かということをお尋ねしたので、そんなことでは納得できませんよ。
  232. 大村襄治

    ○大村国務大臣 この防衛白書の海上兵力と最近ワインバーガー国防長官が発表しました報告との間に差があるではないか、白書では極東ソ連軍につきまして約八百隻、百五十八万トンと記載しております。今回のワインバーガー国防長官の報告におきましては約七百二十隻以上と書いてあります。八十隻ぐらい差があるじゃないか。この点はよくわかりませんが、私どもの調査によりますると、水陸の両用の艦艇の小規模のものを対象に入れるかどうか、それによって隻数に若干の相違が起こり得るのではないか。しかし、いずれにいたしましても、実質的な戦力におきましてはそれほど大きな開きはないと私どもは考えておるわけでございます。
  233. 上原康助

    ○上原委員 失礼ですが、どうせそういったごまかしめいた御答弁しかしないかなと思ったのですが、それじゃ権威ある防衛庁の白書と言えませんよ。あなた、小規模の艦艇とか言いますが、皆さんの白書にはこう書いてあるのじゃないですか。しかも、防白には、ソ連太平洋艦隊はすでに外洋艦隊として成長しつつある、そんな外洋艦隊になるものが小規模なものを入れてできますか。そういう矛盾点、一体どう説明するんだ。冗談じゃないですよ。そういう答弁でいつまでごまかすの。  それと、あなたはミンスクとかなんとかおっしゃるけれども、「米ソの軍事力バランス」という米議会への報告、例のコリンズ上級専門官の分析、これにはソ連の海軍力について、「ソ連太平洋艦隊の規模は基本的にはここ数年変わっていない。急速な増強が進んでいるわけでもない。七九年六月に空母ミノスクと護衛艦二隻が到着したものの、増強は計画されていないようである。」こう言っているのですよ。これはもうミンスクなんか配備したのは既定の事実であって、これ以上の増強計画はないんだという分析アメリカは。「急速な増強が進んでいるわけでもない。」とアメリカ側の分析は言っている。皆さんの言うのは、もう口を開けばソ連の極東軍の何やかんやとか、あなた、アフガンと日本の情勢と同じですか。それを明確にしてくださいよ。そんなごまかし答弁だから、防衛問題というのはいつまでも議論がかみ合わない。
  234. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  先ほど私は、ワインバーガー国防長官の報告しましたソ連の軍事力の報告の中と防衛白書との相違点について申し上げたわけでございます。トン数の少ないものをわが方は勘定に入れている。アメリカの報告においてはそれが入っていないのではないかということでございます。トン数の少ないものでも、補給その他におきましてやはり貢献するわけでございますので、これを含めるということにつきましても根拠がないわけではないと私ども考えておるわけでございます。  また、コリンズ報告についての指摘でございますが、お尋ねのワインバーガー報告は最近出たばかりでございます。コリンズ報告はたしか去年だと思います。この一年間にソ連の極東海軍は大幅な増強を見ているわけでございまして、重巡洋艦あたりにつきましても最新式のものが配置されておる。そういうことで……(「情報源は何だ」「どうやって調べたんだ」と呼ぶ者あり)いろいろな資料に基づいて調査したものを……(笑声)
  235. 金丸信

    金丸委員長 番外の答弁は要りません。
  236. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官、いろんな雑音もありますけれども、後の防衛予算と関連するから、私は基本的な問題をお尋ねしているのです。あなたは、二時間たてばいいという気持ちで、時間だけやっているかもしれませんが。じゃ、あなた、この一年間で具体的にどれだけふえたの、そんなに大げさなことをおっしゃいますが。そういうことは……(「根拠を示しなさい」と呼ぶ者あり)
  237. 金丸信

    金丸委員長 話のわかるように御説明を願います。
  238. 塩田章

    ○塩田政府委員 ワインバーガー・レポートと防衛白書の違いで御指摘ございましたが、まず陸上部隊の五十一個師団というのと四十五個師団の違い。これは私どもが作成したわけではございませんけれども、私どもの推測するところによれば、モンゴルの所在部隊をカウントしてない結果が、四十五個師団へプラスという形になって出ておるのではないか。モンゴルに約五個師団、現在駐留しておるとわれわれは見ております。その差が出ております。  それから、海軍部隊につきましては、いま大臣からお答えいたしましたが、主として両用艦艇の何トン以上のものをカウントするかということによりまして、私どもとの見方の差が若干出ておりますが、これまた、長官がお答えいたしましたように、本質的な戦力の評価については差はないというふうに私どもは見ております。  情報源につきましては、従来からしばしばお答えいたしておりますが、各種の情報を総合的に判断をしまして、防衛庁としての権威ある判断を下したものでございます。
  239. 上原康助

    ○上原委員 本当にもう嘆かわしいですね、そういう御答弁じゃ。指摘をすれば、どこからか五個師団を探してきて、くっつけてつじつまを合わすというような、そういうことではいけませんよ。  それともう一点、次の質問に入る前にお尋ねしておくのですが、レーガン政権誕生後に、強いアメリカということで、どんどん軍拡に頭を突っ込んでおられる。特に欧州へのいわゆる戦域核配備が非常に新たな防衛戦略として出てきているわけですね。御承知のように、西独あるいは西欧諸国では、戦域核に反対だということで、大規模な反対運動が起きている。こういう一つの国際情勢、社会状況があることは一体どう認識しておられるのか。  これまでもしばしば論議されてきたことであるのですが、有事の際に三海峡封鎖というものがよく出てきている。恐らく五十七年度以降にC130を装備をしたいというのも、それとの関連が私はないとは言えないと思うのですね、宗谷、津軽、対馬。そういうことになった場合に、一体受ける報復処置としてどういうものを想定できるのか。そういった面も、防衛庁というのは果たして分析をし、あるいは米側が、そういう有事の際に三海峡封鎖をした場合はどういうふうな考えを持っているのか、あるいは戦域核というものが配備をされた場合に、一体日本に与える影響はどうなのか。中性子爆弾というもの、これは防衛技術協力関係との関連もあるかもしれませんが、中性子爆弾というものが国内あるいは欧州を対象としていると言ったにしても、私たちはそれは信用できない。当然極東にも、それが一定の実戦、配備された段階においては来ることは火を見るよりも明らか。こういうことに対して、政府としてはどういうふうに対処していかれようとしているのか、御見解を承っておきたいと思います。
  240. 大村襄治

    ○大村国務大臣 欧州の戦域核の問題についてお尋ねがございましたので、お答え申し上げます。  一九七九年のNATO閣僚理事会の決定におきまして、ソ連のSS20の配備に対抗する対策といたしまして、NATO諸国が戦域核をそれぞれ共同して持つようにする、と同時に対ソ軍備管理の交渉を行う、いわゆる二重決議が行われたということは承知しているところでございます。  レーガン新政権になりまして、中性子爆弾の開発をアメリカで行うという決定が行われまして、それに対していろいろな意見が欧州においても行われていることは承知しておりますが、これは米国内の生産決定であり、また、これをどういうふうに使うかについては関係諸国と協議すると米側は申しております。主としたねらいはヨーロッパにあるということでございますが、現在まだその段階でございます。いずれにしましても、わが国におきましては非核三原則を堅持いたしているわけでございますので、戦域核の問題につきましては、防衛の基本方針としまして、核の抑止力につきましては米側に全面的に依存することにいたしておりますので、非核三原則を堅持しながらこの問題に対処していかなければならない、さように考えている次第でございます。
  241. 上原康助

    ○上原委員 非核三原則を堅持するとすれば、当然中性子爆弾も入るのじゃないですか。総理も非核三原則を遵守なさるとおっしゃったわけで、どうなんですか、中性子爆弾。
  242. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 非核三原則を堅持してまいりますから、中性子爆弾は当然日本としては配置等は容認できない、こういう立場でございます。
  243. 上原康助

    ○上原委員 そこで、三海峡問題は答弁しないのだが、これはまた後日にするにしましても、この点だけは私は指摘をしておきたいと思うのです。  最近、核問題についての不安を私たちは非常に感ずるわけですが、このコリンズ報告の分析を見ますと、私は、アメリカ側がこういう分析もなされているということは、政府首脳はぜひ真剣に受けとめていただきたいと思うのです。  「米国の友邦は、中国をのぞけば、核攻撃に対しては痛々しいほど無力である。人口の密集したこれらの国では数カ所の目標が徹底的に破壊されれば、それでその国はつぶれてしまうであろう。この絶対的な弱さが核の拡散を防いでいるのであり、米国の力が防いでいるわけではない。」、皆さんも二言目にはアメリカの核のかさとか核の抑止力とかおっしゃっていますけれども、総理大臣、こういう分析なんですよ。  中国は確かに、北京へ私も行ったことがありますが、地下ごうはたくさんある。いまそういう懸念がなくなったということで、一つの都市になっているようですけれどもね。しかし、戦域核がどんどん配備をされて、もうアメリカは戦略核を使うというあれはないですよ。みずからの国が壊滅的打撃を、第一撃を受けるような防衛戦略からレーガンは変更してきていると私は思うのです。だから他国の地域に、つまりアメリカができるだけダメージの少ない防衛戦略というものに切りかえてきているのがレーガン政権、というよりもアメリカの最近の防衛戦略だと私は見ている。  この指摘のように、核の抑止力がそうしているわけではなくして、人口密集地帯に核爆弾が落ちればいかに壊滅的な打撃を受けるか、そのことが核の拡散を防いでいるので、アメリカの核の力じゃないんだということを、アメリカみずからが天下に公言しているということも政府は理解をしていただきたいのですね。このことについて一体どういう御認識を持っているか。  あなた、もし核戦争になった場合に、国民の生命、財産、国家体制を皆さん防白の中で守ると言うけれども、それで守れますか。こういうことがいまの政府の防衛政策には全く欠落しているということ、この点はどういう御認識なんですか。まず、これからの問題もありますので御所見を聞いておきたいと思うのですが、この点についてはどうぞ総理もお考えを聞かしていただきたい。
  244. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、米ソ、非常に大きな核戦力を保有する国がこれを使用するということになりますれば、人類の破滅にもつながるというようなことでございますから、核兵器の使用については非常な自制もそこに働いておるわけでございます。今日私が心配しておりますのは、その他の国々におきまして核兵器の開発等が行われようとしておるということにつきまして、大変な私は心配をいたしておるわけでございます。  今後、日本は世界における唯一の被爆国でもございますから、核兵器の廃絶、核軍縮を徹底的に推進する、そういうことにわが国が先頭に立って努力をすべきものであるし、国連総会あるいはジュネーブの軍縮会議等におきましても、まずそれには、一番実行の可能性のあるところの包括的な核実験の禁止、そういうような面から一つ一つこの核の拡散あるいは核兵器の廃絶、そういう努力をしてまいりたい、こう思っております。
  245. 上原康助

    ○上原委員 その中身は余りなさそうですが、しかし本当に核に対する軍縮努力、核廃絶ということに真剣にならなければ私はいけないと思いますよ。万々一のために防衛力を整備すると言いますが、一メガトンの核爆弾が本当に落ちてごらんなさいよ。(「仮定の問題だよ、それは。」と呼ぶ者あり)いや、皆さんも仮定でやっているんでしょう、防衛力の整備も。むしろその方が危険なんですよ。核投下ということ、そのことに対しての認識というのがきわめて私は薄いと思う。だから、ああいう分析もあるということはぜひ御理解をいただきたい。  そこで、次に移ります。官房長官、何かお時間があるようですから、予算問題より先に、武器輸出問題についてお尋ねをさしていただきたいと思います。  去る六月二十八日から七月三日まで大村防衛庁長官が訪米なさって、いろいろヘイグ国務長官、ワインバーガー国防長官あたりと話し合ってこられたようですが、そのときに、日米軍事技術協力というのを米側から求められたということが相当報道をされております。その後またいろいろな経緯があるようですが、和田装備局長ですかも、この問題で具体的に詰めをしておる、こういうことでございまして、これは武器輸出問題、まあ先国会でも大変問題になったわけですが、この件とのかかわりもあって非常に重視をされる点だと思いますので、一体米側からどういう要請がなされ、防衛庁なり政府全体としてはこの問題にどう対処していかれようとするのか、御見解を聞かしていただきたいと思います。
  246. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の承知いたしておりますところでは、防衛庁とアメリカ国防省との会談におきまして、防衛技術の日米間の交流につきまして、従来いわばアメリカから日本へという一方的な技術の流れでございましたものを、日本も非常に技術的にいろいろ研究を進めてきておるので、何かもう少し相互的なものに変えてはくれないだろうかという一般的なアメリカ側の期待がある、そういう表明が行われている由でございます。しかし、それが特定の技術あるいは何をどうすることを希望するという具体的なものではございませんので、したがいまして、ただいまの段階で政府として何かの結論を出したということはございません。  それから、ただいま御指摘の武器輸出三原則あるいはそれに関する政府統一方針、これは今後とも守ってまいる考えでございますが、アメリカとの場合に、日米安保条約等々の条約関係とそれらのことがどういう関連に立つかということにつきましては、関係省庁で鋭意検討をいたしておる段階でございまして、したがいまして、この点についても政府の最終的な統一見解というものは結論は出しておりません。それが現在までのところの事実でございます。
  247. 上原康助

    ○上原委員 政府としてまだ統一見解を出していないということで片づけられては困るのです、それは。防衛庁は、具体的な供与品目なり、どういう技術協力をしてくれとか、あるいはどういう物が欲しいのだという要請は受けているわけでしょう、防衛庁長官
  248. 大村襄治

    ○大村国務大臣 具体的な要請は受けておりません。
  249. 上原康助

    ○上原委員 和田装備局長の話によりますと、子機器あるいはレーザー光線に利用できる技術、こういうことについて供与をしてもらいたい、こういうことが具体的に新聞報道ではなされているわけでしょう。また、武器輸出三原則に抵触しないとか、いろいろな面で報道がなされてまいりましたね。これに対して官房長官も、慎重な対処をしていきたい、こういう見解をお述べになっているわけでしょう。どうなんですか、そこいらの点は。
  250. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま官房長官、防衛庁長官からお話ししたとおりでございまして、アメリカ側から、具体的な軍事技術あるいは防衛技術について、これを出してくれとか、そういったお話は一切ございません。
  251. 上原康助

    ○上原委員 では、新聞報道はうそですか。では、一切ないということになると、今後一切軍事技術協力はしませんね。
  252. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 軍事技術協力というのは、非常に定義いかんでございますが、たとえばただいまでも、防衛庁の技術者と、これは技術研究本部の技術者でございますが、それからアメリカの国防総省の技術者の交流というのは行われております。向こうからもこちら側の技術研究本部に参りまして、いろいろ視察をしたり、そこで話し合いをしたりということはございますし、またその逆の交流も行っております。  それから、資料交換取極というものが昭和三十七年十一月十五日に結ばれておりますが、そういったところで技術情報あるいは技術資料の提供というようなこともしております。そういう意味で、非常に広い意味で言いますと、現在でも何がしかの技術の交流は行っております。  これからアメリカが一体どういうようなかっこうで技術交流をしていこうかというような点につきましては、まだ詳細についてはわれわれは承知してない。ただ、私が申し上げましたのは、具体的に、たとえばでき上がった軍事技術につきまして、これを出してくれとかあれを出してくれとか、そういったお話は一切してないというのが実態でございます。
  253. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと官房長官、お時間があるようでちょっと困るのですが、さっきお答えがあったのですが、武器輸出三原則は守るということですね。これは堅持するのかどうか。  すでに御承知のように、五十一年の二月二十七日に三木内閣時代に、武器輸出三原則をさらに強化した政府の統一見解が表明をされていますね。これは堅持するのか。さらに五十六年の三月二十日、衆議院本会議の決議もございます。これはあくまで政府として今後も堅持していくのかということを明確にしていただきたいと思うのですね。  また、通産省は一体どうお考えなのか、この件について通産大臣は。
  254. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  政府といたしましては、武器輸出三原則並びに政府統一方針、並びに国会で決議された方針は堅持していく考えでございます。
  255. 上原康助

    ○上原委員 いま通産大臣のお答えは、通産大臣というお立場でしょうが、それは政府の統一見解として理解していいですね、官房長官。
  256. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのとおりでございます。
  257. 上原康助

    ○上原委員 そこで、まだ納得いきませんけれども、武器輸出三原則と日米相互防衛援助協定、この関係は一体どうなるのか。
  258. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど私が各省庁で検討しておりますと申し上げた点が、そこいらの関連のことでございます。
  259. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、さっきの御答弁と違いますよ、官房長官。いまの時点ではあの統一見解は守るけれども、各省庁で検討する、すると、いま私が質問した日米相互防衛援助協定とどっちが優先をするのか。そういう検討の上では変えるということもあり得るということですか。
  260. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうではありませんで、武器輸出三原則並びにそれに関する政府の統一方針に変わりはございません。で、そのことと、それではいまの相互援助条約あるいは安保条約とどういう関係に立つかということについて外務省と各省との間で見解を統一しておこう、こういうことでございます。
  261. 上原康助

    ○上原委員 あと一点、この件では。これに対しても、防衛庁に資料として要求をしておきたいのです。  日米間の防衛技術資料交換取極というのがたしかなされていると思うのですね。これはどういう取り決めがなされておってどういうことが、いま具体的なあれがないと言うが、恐らくここでなされていると私は思う。資料として提出をしてもらいたい。
  262. 金丸信

    金丸委員長 防衛庁からこの問題について……。
  263. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 いまおっしゃいましたこの資料交換取極は、日米相互防衛援助協定に基づきまして、昭和三十七年十一月十五日に締結されたいわば細目取り決めに当たるものでございます。  その内容でございますけれども、それはまず本文とそれから付属文書からできておりまして、本文の方は、そのお互いにカバーすべき技術資料あるいは技術情報の範囲、それから関係する当局、それからお互いの連絡方法、そういったことを決めたものでございます。
  264. 金丸信

    金丸委員長 和田君、それは資料が出せるのか出せぬのかということだから、出せぬければ出せぬで……。
  265. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 そういった資料につきましてはお出しができるかと思います。ただ、一点お断りしておきたいのは、具体的な技術内容につきましてこれは秘扱いということでなっておりますので、その点は御容赦願いたい、そういうふうに思っております。
  266. 上原康助

    ○上原委員 どうせ防衛庁の資料だからその程度でしょうが、具体的なものが欲しいんでね、出せるだけ出してみてください。  官房長官、どうぞ。あとは政務に励んでください。  次に、予算問題で行革とも関連をしてお尋ねしたいのです。  せんだっての安井先生の御質問でもありましたが、これは最初に大蔵大臣から端的にお答えいただきたいのですが、五十七年度概算要求のゼロシーリング、この基準といいますかを目途としながら、防衛予算については皆さん、聖域ではない。あるいは特別扱いしていないということですが、せんだっての御答弁を聞いておりますと、七・五の要求というものは必ずしも確定をしたものではないし、というような御趣旨の御答弁もあったような感じがするわけですね。一体これは上限とお考えなのか、あるいはまた下限と見ておられるのか、最終的には変更もあり得るのか。まず大蔵大臣のこの件に対する御見解を聞いてから、具体的な点をお尋ねさせていただきたいと思います。
  267. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 今度の概算要求は一応ゼロシーリングということでお願いしたけれども、四つばかりの項目について例外的にある程度認めたわけです。しかし、全体の予算の規模をどうするかということは、明年度経済見通しが出ないと税収のはじきようがない。したがって、われわれは、中期展望のようなことが出るだろうということで、いま頭の中にあるわけですね、中期展望程度のものが。しかし、さらにこれが、暮れまで三、四カ月、三カ月ぐらい過ぎてそれと違いが出てくるということになれば、予算が小さくなることもあり得る、そういうことでございます。  防衛庁の問題についても、これはまず大きくなることはない確率が高いか、概算よりも小さくなる確率が多い、こう見てもらっていいんじゃないでしょうか。
  268. 上原康助

    ○上原委員 じゃ防衛庁にお尋ねしたいんですが、七・五を一応概算要求をなさっている。そこで、これに人件費その他の人事院勧告をされている分を加えた予算額というのはどの程度になるのか、お示しいただきたいと思います。
  269. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  シーリング設定のときにおきましては人勧も出ておりませんので、概算要求におきましても、いまお尋ねの点は含んでおらない概算要求を提出しているわけでございます。  人勧の扱いにつきましては、政府におきましていま関係閣僚の間で協議中でございますので、幾らになるかということは、私からは控えさせていただきたいと思います。
  270. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官、あなたは非常に不親切ですよ、お答えが。五・二三出ているでしょう、勧告は。それを加えたらどのくらいの予算になるかということは、当然皆さん、あなたができなければ事務当局にでも答弁させたらどうですか、その程度は。納得できませんよ。
  271. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  人事院勧告と申しますのは、御承知のように各種の俸給表別に勧告が出ております。それからまた、いろいろな手当についても個々に勧告が出ております。問題は、その俸給表の扱いあるいは手当の扱い等につきまして政府としてどういった方針にするかということがまだ決まっていない段階でございます。この所要額を計算するということは、方針が決まった後におきまして、職種の別に応じ、それから家族構成等に応じまして積み上げ作業をするということが実態でございまして、私どもといたしましては、政府の方針がまだ決まっておりませんので、そういった作業をしておらないということで御理解をいただきたいと思います。
  272. 上原康助

    ○上原委員 それは、ちょっといまの答弁は納得できません。(発言する者あり)
  273. 金丸信

    金丸委員長 矢崎経理局長、いま一回、舌足らずのところを述べてください。――よくわかるようにお願いします。
  274. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  私ども申し上げておりますのは、人事院勧告の扱いについて方針が決まっていない以上は、各省ともそういった所要額を積み上げる作業に入っていないわけでございまして、そういう意味で、私どもは、防衛庁としての正確な所要額というものをまだ計算をいたしておらないということが実情でございます。  ただ、仮に、御注文によりまして、いまの五・二三%という平均の率で算定をすればどのくらいになるかというふうな仮定の計算としてでございますれば、五百七、八十億円の金額が一応は算定をされるということでございますけれども、これはあくまでも積み上げたものではございませんので、平均的な一種の推計というふうに御理解をいただきたいと思います。
  275. 上原康助

    ○上原委員 そうしますとやはり、これは後で人勧のこともお尋ねしますが、大蔵大臣がおっしゃるように、もう少し防衛費とて少なくなるかもしらぬという、なる可能性、可能性とまでは言いませんでしたが、七・五より下回るということは考えられませんね、そういう人件費その他を入れますと。  そこで、いまのように防衛費を特別扱いをしていきますと、一体、先ほども一%問題に明確なお答えがありませんでしたが、五十七年度以降の防衛費の後年度負担分、あるいは五十八年度以降でどういう見通しを立てておられるのか。余りにも過大な防衛費に本当にならないのかどうか。国力、国情に応じてと言いながらも、しかも、あの防衛計画大綱をつくるときの一つの問題として、他の民生に影響を与えないというのも一つの枠になっているわけですね。こういう点については、五十七年度以降の後年度負担、五十八年度以降を含めてどういうふうになっていくのか。果たして一%以内でとまるのかどうか、この点改めて明確にしていただきたい。
  276. 大村襄治

    ○大村国務大臣 五十七年度概算要求に当たりましては、行管の勧告趣旨を尊重いたしまして、防衛関係費につきましても、努めて合理化、抑制を図ることとして概算要求をつくったわけでございます。ただ、艦艇、航空機等の装備品は、性質上、その製造等に多年を要するものが多く、これらの調達のため、財政法に基づく国庫債務負担行為及び継続費として概算要求を行ったものでございまして、この結果、後年度負担額も相当増加することとなったものであります。     〔委員長退席、藤波委員長代理着席〕  そこで、お尋ねの五十八年度以降のあれがどうなるかという点につきましては、今後のGNPの動向、また防衛関係費自身の後年度負担額以外の点等の要因が明らかになっておりませんので、現段階で具体的に見通しを申し上げることは困難でございます。  いずれにいたしましても、御指摘のあります他の施策との関係等も十分配意して、必要最小限の経費予算に計上できるよう努力してまいりたいと考えております。
  277. 上原康助

    ○上原委員 改めて聞いておきますが、この皆さんの概算要求の内容にもありますように、五十七年度の後年度負担分として二兆二千三百三十四億四千二百万、これだけになっていますよね。これを具体的に五十八年は幾ら、五十九年、六十年はどうなるのですか。
  278. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の五十七年度概算要求におきます後年度負担額、これは全体で約二兆二千六百億円ということになっておりますが、これは現時点でその年割り額を確定することははなはだ困難なわけでございますけれども、一応の試算を行いますと、五十八年度が約一兆七百億円、五十九年度が約五千九百億円、六十年度が約三千八百億円、六十一年度が約二千二百億円というふうに推計をいたしておる次第でございます。
  279. 上原康助

    ○上原委員 しかし、これは五十七年度を基準にしてこういう傾向になっていくわけでしょう。五十八年度以降はさらにふえる可能性はないですか。あるわけでしょう、当然。そうしますと、一体、防衛費の後年度負担という逃げ道をつくってどんどん雪だるま式にふえていくという、これはもう一次防から四次防までの比じゃないですよ、こういうやり方というのは。この点、どうお考えなんですか、防衛庁長官。それと、時間の関係もありますので――なぜ私がこの点を言うかといいますと、いまお述べになったのはすでに参議院やその他でも明らかになっている。なぜこのことを懸念をするかといいますと、総理が日米首脳会談でレーガン大統領とお話しになったときに、こういう御発言をしているわけですよ。八四年度以降、いま八一年ですから五十九年、要するに赤字公債から脱却するまでは非常に日本の財政が苦しいので防衛費を増額することは非常にむずかしい、しかしその後、赤字公債から脱却をすれば防衛費の増額も可能だという節の内容のことをあなたは記者会見でもおっしゃっている。これはワシントンの方でもいろいろ質問なり出ているわけですよ。そうしますと、赤字公債発行をゼロにしていくんだということを一生懸命やりながら、その後はなお防衛費については特別扱いをしていくという、そういうことの予見もアメリカ側と話し合ったのじゃないかということに私たちは受け取らざるを得ないわけですよ。国民はたまったものじゃないですよ、あなた。いま児童手当とか教科書の無償配付とか、そういうものさえも五、六十億円まで削って財政再建をやろうということで行革法案も出していらしゃるわけでしょう。そういうさなかに、なぜ防衛費だけはこれだけ特別扱いされなければいけないわけですか。そのことが私たちとしてはどうしても理解ができない。
  280. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私の日米首脳会談におけるレーガン大統領との話し合い、そのことをいまお触れになりましたが、いま引用されましたものは、外務省がブリーフィングをした外務省の文書か何かに載っているということを私、聞きました。しかし、私が言っております真意とは違う。そこで、この前参議院におきまして外務省のアメリカ局長からその経過を詳細に報告をさせました。それによって明確になっておるのでありますが、私は、六十年以降財政が楽になるから、そのときは大いに防衛費をふやそうなどというような、そういう話は一切やっておりません。
  281. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 別枠扱いは防御費だけではないわけでありまして、どうしても必要と思われるものについては、エネルギー、海外経済協力あるいは年金等の平年度化等、みんな別枠扱いをしたわけでございます。  仮に、概算要求で防衛庁が出してきているものをそのまま認めるというようなことで、その中身が五十八年度にえらく後年度負担が集中するというようなことは、これは一%以内におさまらなくなりますから、それはこれからの要求がそのまま認められるわけではございませんので、後年度負担といえども、五十七年は少しだけれども五十八年は急激にふえるというものは、一々中身を聞いて財政当局がチェックをしてまいるわけです。したがって、単年度だけで非常に持ち切れないほどの防衛費を予算に組むなどということはあり得ないということでございます。
  282. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  五十七年度概算要求の債務負担等に基づきます五十八年度以降の後年度負担が若干ふえるということは、先ほど政府委員の御答弁申し上げたとおりでございます。  その後、どうなるか。これはその後の年度のあれを見ないとわからないわけでございますが、過去十年間ぐらいの経過を振り返ってみますと、大きな装備費の調達というのは一年置きになっている、そういう傾向もございますので、そういった点も念頭に置いて、できる限り後年度財政負担の膨張をチェックしてまいりたい、さように考えておるわけであります。
  283. 上原康助

    ○上原委員 せっかく河本経企庁長官がおいでですので、ちょっとだけお答えいただきたいわけですが、先ほど経済見通しとの関係において、防衛費のGNP対一%は堅持すべきでないかということに対して、防衛庁長官は明確な御答弁はないわけですよ。しかし、いまのように後年度負担がどんどんふえていく、まあ大蔵大臣は、いろいろチェックをして後年度負担といえども落とすべきところは落としていくのだということを言っているわけですが、今後の経済伸び経済運営というかかわりからして、防衛費の問題についてはどのくらいが経企庁長官としては目安とすべきと思うのか。また、われわれは、もっと負担増が出てきて相当悪影響を及ぼしていくのじゃないかという考えを持たざるを得ないわけですね、素人考えかもしれませんが。こういうことについては、経済担当大臣としてはどのような御所見を持っておられるのか、聞いておきたいと思うのです。
  284. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 防衛費も国民経済全体の中で整合性を持って進められることが私は望ましいと思っております。昭和五十一年秋の閣議決定は現時点では有効に存在しておる、このように理解をしております。  なお、ことしの一月に七カ年計画を見直しましたが、その際は、昭和六十年度におけるGNPは四百十兆強と想定をしております。
  285. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、大体現在の状況ならば国民生活その他と整合性がとれている、そういうお考えですか。
  286. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の状態は国民経済全体の中で整合性は維持されておると思います。
  287. 上原康助

    ○上原委員 そこで、この問題とのかかわりがありますが、行革との関係においては防衛費なりあるいはその他の、施設庁を含めてですが、どういうふうに抑制策、抑制措置をとろうとしておられるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  288. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  行革の第一次答申の趣旨にのっとりまして、防衛予算概算要求に当たりましても、部隊や組織の編成の点につきましても見直しを加えまして、統合、廃止すべきものは廃止する、そういった観点から進めているわけでございます。     〔藤波委員長代理退席、委員長着席〕 また艦船、航空機等の耐用年数も見直しまして、安全度を慎重に検討しながら延命できるものは延命する、そして、その際に必要な近代化を図るということで、新たに調達することによる財政負担の膨張を極力防止するようにいたしているわけでございます。  今後におきましても、そういったことを念頭に置いて対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  289. 上原康助

    ○上原委員 そこで、提供施設整備費の問題とのかかわりでお尋ねしてみたいのですが、地位協定とのかかわりで四十八年三月十三日に大平元外務大臣が答弁をしているものがございます。「原則として代替の範囲を越える新築を含むことのないよう措置する」ということが、提供施設問題についての政府の統一見解になっておったと思うのですが、それは間違いありませんか。
  290. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 四十八年当時にいわゆる大平答弁があったことは存じておりますが、当時の大平大臣が説明された趣旨は、二十四条の解釈の問題ということではなくして、二十四条の運用に関する方針、考え方を述べたものである、つまり、米軍の施設を縮小する、統廃合するということで移設をする場合に、いわゆるリロケーション等でございますけれども、いままでありました代替の対象になるような施設の面積を超えない、そういうことでもって答弁をされたということでありまして、二十四条の解釈ではなくて、運用としてそういうことを申された、こういうふうに承知をいたしております。
  291. 上原康助

    ○上原委員 その運用は守られておりますか。
  292. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 現在におきましても、リロケーション等をやる場合におきましては面積等におきまして代替の範囲ということで執行をいたしております。
  293. 上原康助

    ○上原委員 代替とかリロケーションということについては私も一応理解をしないわけではありません。じゃ具体的に、たとえば沖繩県の嘉手納基地におけるF15の掩体ごうなのか掩体施設ですね、そういう掩体というのはもっぱら新築なんですね、新規の提供。これなどはどういう根拠に基づいてやっているのか。五十六年度でたしか六機分の調査設計費が計上され、五十七年度もさらに追加がなされていると思うのですね。一体、周辺整備でもなくして、アメリカの軍用機の掩体ごうをつくることまで日本政府が持たなければならないということがどういう根拠に基づいて――これはどう考えても、これだけ財政状況が逼迫をしているというときに、大蔵大臣総理、そこまで思いやりを示さないでいいのじゃないですか。どうなんですか、これ。
  294. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 沖繩の米軍に対する提供施設の整備といたしまして掩体の調査工事があって、またその実施工事費が概算要求されておることは、先生おっしゃるとおりであります。  根拠は何かということでございますが、これは二十四条の二項におきまして、日本政府は無償でもって米軍に対して施設、区域の提供を行うということが善いてあります。  これは、では何も歯どめがないじゃないか、こういうお尋ねだと思いますけれども、いかなる施設を提供すべきかということにつきましては、その施設の重要性、緊要度、それから周辺住民の事情という場合もあるでしょう、それからお金の問題ということもあると思いますが、その他の諸般の事情を考慮いたしまして、基本的には、日米安保条約の目的がスムーズに行われるという観点に立って日本政府として判断をする、こういうことになっておるのでございます。国会の御審議をいただければ、その後で合同委員会に出しまして、所要の手続を踏んだ上提供をする、こういうことになっておるわけであります。
  295. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、もう安保の目的に沿うということになりますと、これは歯どめはありません。地位協定の二十四条二項はそういうことを書いてないですよ。国会の審議を経て国会で多数決で決めれば何でも、条約とか協定とかそういうものは一切かかわりなく通るということに対しては、余りにも歯どめがなさ過ぎるのじゃないですか。  掩体ごうまでつくってあげなければいかぬというこの感覚がどうしてもわからぬですね。総額で幾らぐらいかかるのですか、五十六、五十七、そして今後はどうなるのですか。
  296. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 お答えをいたします。  さしあたり六機の工事費を五十七年度予算に要求をいたしておりますが、今後トータルでどういう整備をするかということは、もちろんわれわれとして計画は持っておりません。  幾らという金額でございますけれども、概算要求の段階でもありますし、二十億台であるということだけ申し上げて、詳細の数字は控えさせていただきます。
  297. 上原康助

    ○上原委員 こういうことまで本当に大蔵大臣――そのほかにもたくさんありますよ。これはどうなんでしょうね。人間の防空ごうをつくるというならまだ話はわかる。余りにも予算のむだ遣いじゃないですか。そんなことまでやるなら、もっと人間のために使ったらどうですか、周辺整備の。こういうことに対しては――まだ自衛隊のものでもない。自衛隊のものをつくれとも言ってないが、これはアメリカ側の要求なんですか、どうなんですか。そこいらも明らかにしておいてください。
  298. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 アメリカの希望等はいろいろ聞いておりますけれども、われわれ防衛庁として自主的に判定をいたしたものであります。
  299. 上原康助

    ○上原委員 もうまさに何をか言わんやですね。本当にこの地位協定の運用問題というのは沖繩国会から大変問題になりまして、いまのように歯どめがなくどんどん拡大――これは沖繩に限ったことでないですよ。三沢飛行場の水道調査の問題とかあるいは横須賀の汚水処理の問題まで全部やってあげている。あるいは北富士、横田、そういうところに余りにも防衛関係を含めてむだ金を使っているということ、この点については大蔵大臣、少し政府全体として御検討をしてみたらどうなんですか。
  300. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 安保条約を有効に機能させるために、ある程度の費用は必要であります。どういうふうに使うかということについては、これは専門家の意見を十分聞いて、私がどうこうということをなかなか言えないものですから、防衛庁、大蔵省、それぞれ事務当局においても打ち合わせをした結果やったものと考えます。  今後われわれは、むだなようなことはやめていただかなければならぬけれども、同じ金を使うのならば、有効に喜ばれるところがいいのじゃないか、さように思っております。
  301. 上原康助

    ○上原委員 私は、地位協定の解釈問題を含めて、きょうの御答弁、納得いきませんが、時間の関係もありますから、そういうむだがあるということを強く指摘をしておきたいと思います。  そういう問題を持ち出すとすぐいろいろな雑音もありますが、やはり国民の側から見て、なぜそこまでアメリカ側に、たとえ安保条約を認めて提供しているといってもやらなければいかないかという素朴な疑問というのは私一人じゃないと思いますよ、これだけ財政改革とかいろいろな面から新たな税金も取ろうという段階に。  次に人勧問題に移りたいと思いますが、先ほどもお尋ねがあったのですが、人事院勧告の件で端的にお尋ねしますが、この人事院勧告を完全実施しなくても直ちに憲法違反にならぬ――あなたと憲法論争したって、あなたの方が専門だから控えますが、そうしますと、これだけ完熟した労使関係の中で人事院勧告が完全実施されなかったということで、該当労働組合なり労働者が何らかの集団行動とかそういう行為に出たというときでも、逆に言うとそれは違法にならないですね。行政措置とかそういうのをとれないわけでしょう。そこはどうなんですか。
  302. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先ほど来申し上げているとおりでございますが、その点も含めて、最高裁の多数意見は特に言及をしておりません。  ただ、補足意見の中に「その代償措置が迅速公平にその本来の機能をはたさず実際上画餅にひとしいとみられる事態が生じた場合には、公務員がこの制度の正常な運用を要求して相当と認められる範囲を逸脱しない手段態様で争議行為にでたとしても、それは、憲法上保障された争議行為であるというべきであるから、そのような争議行為をしたことだけの理由からは、いかなる制裁、不利益をうける筋合いのものではなく、」ということが述べてあることは事実であります。  ただ、その後段の方には、先ほども申し上げましたが、多少ニュアンスの違った言い方もされておりますし、また同時に、これはあくまで追加補足意見でありまして、多数意見にはなり得なかったということも事実でございます。
  303. 上原康助

    ○上原委員 そこで、時間があれば最高裁の判決文を全部引用すればよりわかりやすいわけですが、法制局長官がお読みになったのは、後段の分だけなんですよ、「もつとも」という後から。その前段がより重要なんです。  それはまたさておくとして、しからばILOとの関係、一九七三年十月十五日ですか、政府の意思として労働省が取りまとめて、外務省を経由してILOに提出した見解があるのです。「結社の自由委員会に係属している日本関係事件に関する日本政府の総括意見」ということで、この中でいろいろお述べになっているわけですが、この政府の見解というのは、いまも変わりはないんですね。これは労働大臣ですか。
  304. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 非常に重大な問題でございますから、誤りなきを期しまして事務当局から答弁いたさせます。
  305. 吉本実

    吉本(実)政府委員 お答えします。  ただいまの総括意見でございますが、そこは、政府は、非現業国家公務員は争議行為を禁止されているが、争議行為の禁止に見合う必要な代償措置は完全である、すなわちこれら公務員の給与その他の勤務条件は法律に定めることとされているとともに、社会一般の情勢に適応するよう随時これを変更することとされており、また常時国家公務員の福祉と利益を保護するための機関として人事院が設けられている等の趣旨の報告をILOに通告いたした次第であります。
  306. 上原康助

    ○上原委員 ですから、日本においては争議行為の禁止に見合う必要な代償措置は完全である、こう言っているわけでしょう。完全実施をするから完全であるのであって、完全実施しなければこれは不完全だ。政府がそういう見解を明確にお述べになっている。後の方でも「公務員等の労働条件決定のための機構及び労働条件の実情」「わが国においては、公務員及び公共企業体の職員はストライキを含む争議行為を禁止されている。しかし、争議行為の禁止に見合う必要な代償措置は以下に述べるとおり完全である。」したがって、そういった労働基本権において制約があるのはやむを得ないという言い分でしょう。  そうしますと、昭和四十五年ですか、四十七年からこれまでせっかく積み上げてきた労使関係というものを、いろいろ財政の都合があるということはわからないわけでもないわけですが、ここで完全実施をしないということになると、そのことによって起きる、仮に労使間にトラブルなり争議行為的なことが起こったとしても、そのことを盾にして権力でまた罰するということは、逆におかしくなるのじゃないですか。この点は、これは法制局長官の見解じゃない、あなたは内閣の法律の番人だから、内閣に都合のいいことしかおっしゃらないかもしらぬ。そういう面ではやはり総理大臣、このことについてはいろいろ政府としても御検討なさっているようですが、けさほど乗取り上げられた問題これあり、ILOとの関係これあり、もし関係労働団体が挙げて、そういった成熟してきた勧告に対して、仲裁裁定を含めてですよ、実施をされなかったということによって起きるいろいろな問題についての政治的問題あるいは経済的問題、労使関係という面からすると、私は、やはり完全実施ということをこの際政府としては誠意を持ってやるべきだと思うのですが、この点いかがですか。
  307. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、今日までの良好な労使の関係、これも非常に大事にしていかなければいけない、こう思っております。また、厳しい財政の現状、そしてILOの問題であるとかあるいは最高裁の判断であるとか、いろいろの要素を総合的に勘案をしまして、これからこの問題についての結論をだんだん出していかなければいけない。国会の御意見等も終始伺っております。私は誠意をもちまして給与担当閣僚会議でさらに詰めまして、最終的には結論を私が判断をしたい、こう思っております。
  308. 上原康助

    ○上原委員 さらに、この件との関連で、元内閣法制局長官の御見解も出ているわけですよ、いわゆる「臨調第二次答申に注文する」ということで。その中で「第一に、もし勧告の不完全実施に反発し、公務員団体による争議行為が行われた場合、これに対し従来通り刑事上、行政上の制裁を加えることは、一応、あきらめる必要があろう、」と指摘をしている。法制局長官、あなたの大先輩だよ。あなたの方だけが確定解釈でないと思う。そのほかにもいろいろあります。だから、そういう災いが起こらないように、ひとつ特段の御配慮をお願いしたいと思うのですね。いまのことについて何かありますか。あなたからたくさん聞いたって――もういいです。  そこで、あと定員問題、特殊法人問題もおたずねするつもりでしたが、後の方に譲るとして、最後に、せんだって総理大臣が沖繩を御訪問なさいました。せっかくのことなんで――これはまた今後の行革とも関係あるわけですよ。まだ中曽根長官は一言もおっしゃらないので、私の方が失礼になってもいけませんから、後でお答えいただきたいのですが、政府の今後の沖繩施策ということで、今度の法律には沖繩の特例法の問題、第二次振興開発計画のことに全く触れていないわけですが、触れていないということは、県側なりわれわれが指摘をしたことが十分要を得ているように思うわけです。たとえば格差の問題にしましても、総理おわかりのように、五十一年度六七・七%、五十二年度六七・五%、五十三年度六九・二%、五十四年度六五・三%、五十五年度は七〇くらいいくかと思うと、かえって落ちているのですね、六六・六%。こういう状況で、基地だけは全国の五三%も居座っている。こういう実態をどうごらんになられたのか。  私は、県民要求の要請決議を受けなかった総理の態度あるいは総務長官の態度にも、ただ賛成する側だけの御意見を聞いて帰ってこられたということに非常に不満ですが、改めて、沖繩に行かれての認識と今後の沖繩施策ということ、そして、今後の行政改革とのかかわりにおいてはどういうふうに位置づけようとしておられるのか、この点については、総理、総務長官、行政管理庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  309. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は先般沖繩を訪問いたしまして、復帰後十年、沖繩の振興開発計画のもとに、官民が一体になりまして沖繩の振興、民生の安定のために努力をしてこられたその跡をつぶさに拝見もし、今日まで努力をされた皆さんに対して深い敬意を払ってまいったわけでございます。と同時に、現状をつぶさに拝見いたしますと同時に、関係各方面の代表的な御意見というものを拝聴いたしました。さらに今後の沖繩県の開発、振興に対する政府の施策の重要な参考にいたしたい、このように考えておるわけでございます。  なお、県民会議でございますか、それの申し入れというものは、私にかわりまして瓦官房副長宮が親しく文書もちょうだいをし、御意見も拝聴してまいったわけでございます。
  310. 金丸信

    金丸委員長 いいですか。――上原さん、いいですか。
  311. 上原康助

    ○上原委員 はい。
  312. 金丸信

    金丸委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十三日午前九時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会