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1981-10-09 第95回国会 衆議院 行財政改革に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月九日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 小渕 恵三君 理事 海部 俊樹君    理事 藤波 孝生君 理事 三塚  博君    理事 佐藤 敬治君 理事 山口 鶴男君    理事 正木 良明君 理事 大内 啓伍君       天野 光晴君   稻村左近四郎君       小里 貞利君    加藤 六月君       梶山 静六君    木野 晴夫君       高村 正彦君    佐藤  隆君       齋藤 邦古君    塩崎  潤君       塩谷 一夫君    竹下  登君       玉沢徳一郎君    中村喜四郎君       丹羽 雄哉君    橋本龍太郎君       浜田卓二郎君    松永  光君       三原 朝雄君    上原 康助君       沢田  広君    森井 忠良君       安井 吉典君    湯山  勇君       横山 利秋君    鈴切 康雄君      平石磨作太郎君    岡田 正勝君       米沢  隆君    寺前  巖君       正森 成二君    小杉  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 村山 達雄君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国務大臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         総理府人事局長 山地  進君         総理府臨時行政         調査会事務局次         長       佐々木晴夫君         総理府臨時行政         調査会事務局首         席調査員    山本 貞雄君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁交通局長 久本 禮一君         行政管理政務次         官       堀内 光雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         管理局審議官  古橋源六郎君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         防衛施設庁労務         部長      木梨 一雄君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         環境庁長官官房         長       山崎  圭君         環境庁水質保全         局長      小野 重和君         国土庁長官官房         長       福島 量一君         国土庁土地局長 小笠原正男君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵大臣官房審         議官      佐藤  徹君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         国税庁直税部長 吉田 哲朗君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生大臣官房長 吉村  仁君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         社会保険庁年金         保険部長    小林 功典君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         食糧庁次長   中山  昇君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         中小企業庁長官 勝谷  保君         運輸省港湾局長 吉村 眞事君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省自動車局         整備部長    宇野 則義君         運輸省航空局長 松井 和治君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         郵政省人事局長 奥田 量三君         労働省労政局長 吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 吉田 公二君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治大臣官房長 石原 信雄君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    大嶋  孝君         自治省財政局長 土屋 佳照君         消防庁長官   石見 隆三君  委員外出席者         行財政改革に関         する特別委員会         調査室長    石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 十月九日  辞任         補欠選任   澁谷 直藏君     高村 正彦君   玉沢徳一郎君     浜田卓二郎君 同日  辞任         補欠選任   高村 正彦君     澁谷 直藏君   浜田卓二郎君     玉沢徳一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一  環としての国の補助金等縮減その他の臨時の  特例措置に関する法律案内閣提出第一号)      ――――◇―――――
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一環としての国の補助金等縮減その他の臨時特例措置に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。正木良明君。
  3. 正木良明

    正木委員 おはようございます。  私は、公明党・国民会議を代表して、今回の行財政改革問題について政府に対して質問をいたします。  昨日、もうすでに四人の委員皆さん方から質問が行われました。したがいまして、できるだけ重複を避けつつ、きのうの質疑によって出てまいりました答弁の中で不十分なもの等を含めてお聞きをしてみたいと思います。  一つは、わが党の基本的な態度ということを申し上げておかなければなりませんが、わが党は、きわめて困難な状況にあるわが国の財政というものを再建しなければならぬ、同時にまた、高度成長期にいわば水ぶくれといいますか、非常にぜい肉のついた行政機構を初めとして、それに付随すする業務等について相当簡素化をすると同時に、効率化を図っていかなければならぬ、そのための行財政改革には基本的に賛成をいたしておるわけであります。ただ、その行財政改革が本当に国民のためのものであるのかどうか、これがきわめて重要な点でございまして、国民のためという意味は、いわゆる納税者のためになる行財政改革であるかどうか、この点については、いささか今回の出されました法律案は疑問なしとはいたしておりません。  われわれは、従来から行政管理庁を初めとして、内閣関係省庁、さらには第二臨調等に対して、われわれの要望、要求というものを提示してまいりました。さらにまた、中道四党によってその内容を種々検討して、それを要求もいたしましたし、われわれの考え方を明らかにしておるところでございます。したがいまして、その線に沿っていろいろとお尋ねをしていきたいと思いますが、このように、すでにもう皆さん方にはわれわれの考え方の輪郭、内容というものはほぼおわかりのことであろうと思いますので、できるだけ簡潔に、しかも要点を外さないように御答弁をお願いしたいと思うわけであります。  それでは、昨日の質疑を追っかけるという形で聞いてみたいと思いますが、昨日、この行財政改革、当面の問題としての五十七年度予算の編成に関しての問題が出てまいりました。いわゆる大蔵省が示した中期財政見通しでは、二兆七十七百億円という要調整額、いわゆるその収支見通し数字によって生まれてくる赤字額というものがすでに発表されているわけでございまして、第二臨調も二兆七千七百億円というこの要調整額をどのように処理をしていくか、そのためには、昨日総理がおっしゃいましたように、それを行財政改革でやっていくのか、増税という手段を用いてやっていくのか、まあこの増税というのは大衆増税という意味でございますが、そういうものでやっていくのか、ということであるならば前者をとるのだというお話がございました。  したがって、行財政改革で生まれてくるこの要調整額削減といいますか、要調整額に見合う五十七年度予算におけるところの削減というものについて、これはひとつ大蔵大臣で結構でございますから、その方針、金額等をおっしゃっていただきたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 きのうもこれはお答えをいたしましたが、行革関係とそれから公共事業の抑制、そういうようなもの、ゼロシーリングで各省庁が工夫をしたもの、大体こんなふうに分けられます。  公共事業関係で八千五百億円程度、それから臨調答申関係で約九千億円程度、さらに、ゼロシーリング関係で約六千億円程度、そういうようなものによって要調整額を吸収しようということを考えております。
  5. 正木良明

    正木委員 そうすると、これは二兆七千七百億に足りませんね。これはどうなさるのですか。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 臨調答申によって九千億円、それから公共事業削減で八千五百億円、ゼロシーリングで六千億円、それから概算要求には織り込まれておりません、つまり公務員給与改定に関するものが織り込まれておらないわけでございます。大体それを織り込むと二兆七千億、これは織り込んでいません。
  7. 正木良明

    正木委員 いや、ちょっとぼくは頭が悪いのかもしれませんが、ざっとした計算で二兆三千八百億円になりますね。それで、その公務員給与というのは、やらないならこの埋める額はふえてくるけれども、やるならこの二兆三千八百億から削れてくるのじゃないですか。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 中期展望は、御承知のとおり、いままでの過去の趨勢値を追って、経費は伸びるもの、こう計算してありますから、過去においてベースアップはいたしておりますから、そのようにベースアップも五十七年度もある程度されるだろう、そういうようなことで書かれているわけです。ところが、五十七年度においては、われわれとしてはいまのところ概算要求の中ではベースアップの見込みは考えていない。したがって、当然その食い違いが出てくるわけでございます。いままでの中期展望は、みんなふえるという計算になっておりますから……。
  9. 正木良明

    正木委員 だって、五十六年度は一%しか見ていないじゃないですか。いわゆる給与改定分としては、この収支見通しでは一%しか見ていないじゃないですか。五十七年度も同じく一%しか見ていないじゃありませんか。どうするのですか。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十七年度、八年度は一%というのではございませんで、過去の趨勢値で見ておるわけでございます。したがって、それぞれの部分部分について細かい計算をしておるわけではございません。
  11. 正木良明

    正木委員 ちょっと待ってくださいよ。これはしかし、大蔵省のいままでの説明と全く違いますよ。これは大問題だ。だって、いいですか、これは五十六年度ですが、「五十六年度予算における国家公務員給与改善に伴う財源措置分(一%相当)」、こうしておるじゃありませんか。それはどういう計算ですか。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 中期展望の作成をした実務者の方からお答えさせます。
  13. 西垣昭

    西垣政府委員 数字の話でございますので、私から御説明申し上げます。  一般歳出で申し上げますと、五十六年度の一般歳出が三十二兆五百四億でございます。それに対しまして、私どもが提出しました中期展望一般歳出が、二兆七千七百億五十六年度に対してオーバーする。それでこれを要調整額として調整しなければならない、こういう形になっておりました。それに対しまして出てまいりました要求が、ゼロシーリングをとりましたために、五千七百六十四億ということで、調整額を考える前の、考えなくてもいい程度の水準に落ち込んできているということが言えると思います。  そういうふうになりましたのは、昨日大臣から御説明申し上げましたとおり、臨調答申による削減が、公共事業等を除きまして九千億、それから公共事業分削減が八千五百億、そのほかゼロシーリングのもとで各省がそれぞれ努力をされました結果として六千億というものが削減されて要求されてきております。したがいまして、要求段階におきます一般歳出増加は五千七百六十四億でございますが、大臣が申し上げましたように、この中にはベースアップ分人件費が盛り込まれていないという問題がございまして、その取り扱いによりましては、その分も考慮しながら五十七年度予算を編成しなければならない、こういう数字関係になっております。
  14. 正木良明

    正木委員 それで、ちょっといままた数字が狂っていますが、大蔵大臣は、いわゆる行革関係では九千三百億、そちらは九千億だが、これは概算ですから――概算でも三百億はちょっと大きいわな。これはどっちかに決めたらどうですか。
  15. 西垣昭

    西垣政府委員 約九千億でございます。要求段階でございますので、細かく精査したわけじゃございませんが、約九千億というふうに考えていただいてよろしいと思います。
  16. 正木良明

    正木委員 そうすると、二兆三千五百億という数字が出てくるわけですね。だから、単純に善いますと、二兆七千七百億円という不足額が五十七年度で予想されているのに対して、二兆三千五百億ですと、いささか足りませんね。いささかという数字じゃありませんけれども、この辺をどうするのかということになると、その形というものはもう伏せられてしまって、概算要求とそれから行革による減額分公共投資減額分というものとの対比においてそのことが言われていると思うのだけれども、そうすると、このほかにまだ四千五、六百億円というのは出てくるのですね、この給与費は別にして。西垣さん、どうです。それでなければ、数字はどう考えたって合わないですよ。
  17. 西垣昭

    西垣政府委員 お答え申し上げます。  中期展望で想定いたしました歳入前提といたしますと、一般歳出につきましては、五千六百九十六億増加させる余裕があるわけでございます。それに対しまして、要求段階では、その増加分が五千七百六十四億でございまして、大体いい線まで来ております。ただ、先ほど申し上げましたように、人件費の分が全然入っておりませんので、もしも人事院勧告完全実施して一般会計にはね返る分を試算してみますと、四千億ぐらいになりますので、大体一兆円近い歳出増一般歳出についての歳出増要求になっております。これはあくまでも中期展望前提といたしました歳入増加というものを前提といたしておりますので、歳入状況が変わってまいりますと変わってまいりますが、もし中期展望どおり歳入がありましても、四千億余りのものは削らなくちゃならない。歳入が思ったほど伸びませんとそれ以上に削らなくちゃならない、こういう状況でございます。
  18. 正木良明

    正木委員 いや、そこにはつぼ算がありますよ。それは昭和五十六年度で完全実施をして、なおかつ五十七年度で完全実施をすると、二重に乗っからなければいけないのです。要するに、五十六年度の予算は、人件費の増としては一%しか見ていない。ですから、これに追加をしなければなりません。追加した上で、さらに昭和五十七年度約四千億なら四千億乗せなければならぬのですから、これは当然にこの辺に大きなつぼ算があると思うのです。つぼ算という言い方はまずいかもしれませんが、要するに、そういうことをひっくるめて約一兆円というお話だと了解してよろしいですか。要するに、五十六年度でそれに乗っかっていく、また五十七年度はその乗っかったところから出発しなければなりませんから、約一兆円人件費不足になる。いいんでしょうか。
  19. 西垣昭

    西垣政府委員 いま申し上げましたのは、五十六年度ベア分について申し上げたわけでございます。五十七年度ベア分についてどうするかということにつきましては、今後の問題でございますけれども、五十六年度の扱いでは一%分の給与改善費を計上していたということで、私どもはその関係は、ニュートラルにおきまして計算したものをさっき申し上げたわけでございます。
  20. 正木良明

    正木委員 これは後で――この中期見通し説明に来られたときの話では、給与改定というものはどういう形に進展していくかわかりません。したがって、予算の中で五%も六%も給与改定費を組めば、それがガイドラインとなって、政府が、労使間で当然決めるべき賃金というものが、これはもう民間企業に非常に影響してきますから、介入したという形ととられるかわからないから一%にしたいという説明だった。しかし、それで必要があればそれは補正予算で追加するのですという話があったのにもかかわらず、いま一%しか組んでないから、その一%に固執をして、これは財源がありませんから、一%の範囲内ですから完全実施はできませんというような話になりつつあることは疑いもない事実なんです。したがって、このガイドラインになる、ならぬは別として、少なくともこれを三%なり四%なりぐらいのものは、もう当初予算で見込んでおくべきではなかったかと私は思っておりますが、これは後で詳しくやります。  そこで、総理、きのうも何遍も繰り返されたのでもう簡単で結構ですが、ちょっと横山さんの答弁のときに、昭和六十年特例債ゼロとおっしゃいましたが、あれは間違いですね。昭和五十九年ゼロですね。間違いだと思います。  それで、財政再建というのは、いわゆる再建期間というのは、そのように五十九年に赤字国債をゼロにしてしまうということで達成できるというふうな大体目安だということも中曽根長官もおっしゃっておりましたから、そういうふうに了解しておりますが、それでよろしいですか。
  21. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 当面、五十九年度特例公債依存の体質から脱却をするということを目標に進めております。
  22. 正木良明

    正木委員 ですから、それが財政再建赤字国債がゼロになったら、もう財政再建が終わったというふうに考えていらっしゃるかどうかです。
  23. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、行政財政も常に引き続いて絶えざる見直しが必要である、このように基本的に考えております。  ただ、ここで申し上げますのは、五十九年までに特例公債を発行しないようにしよう、脱却するようにしようというためには、行財政簡素合理化、思い切った縮減合理化をやるわけでございますから、私は、そのこと自体も財政再建の基盤を固めていっているものである、このように考えます。そういう意味で、ただ特例公債発行からの脱却というだけじゃなしに、そこに至る道程の中で行財政の思い切った縮減合理化がなされていかなければならない、それが行財政改革である、こう考えております。
  24. 正木良明

    正木委員 したがいまして、私がお聞きしたいのは、総理がおっしゃっていることは、増税なき財政再建ですね。ですから、そのために行政改革が必要である、その論理はよくわかるのです。ただ、問題は、その財政再建というものが特例債、すなわち赤字国債昭和五十九年にゼロにするということにだけウエートが置かれてしまいますと、そのために、もし歳入の問題についていろいろの問題があり、歳出の問題についていろいろの問題があったときに、それは増税で賄わざるを得ないというお気持ちが、気持ちの中にはあるのじゃないだろうか。  実は、きのう四人の委員皆さん方総理初め閣僚の皆さん方との質疑応答を聞いておりまして、昭和五十七年度予算、これは増税のない予算を組まれることは明らかだと私は思いますけれども、五十八年以降においては、その点については事態の進展を見なければわからない、しかも、増税をしないとはおっしゃらないで、できるだけしない方向でいきたい、こういう点が非常に印象強く受け取れました。このことは、やはりきょうのマスコミ、新聞が一斉に、昭和五十八年度以降の財政再建については増税あり得べしという、いわゆる増税がないということが一〇〇%ではない、増税するかもしれないという部分が残ったというふうな受け取り方をしている。これは、私は、そんなにひねくれた考え方でなしに、きのうの質疑応答を聞いておりますと、私もやはりそういう印象を受けたわけですが、その点どうでしょうか。
  25. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど正木さんも、行財政の改革に当たってやはり納税者の立場で考えなければいけない、こういうことをおっしゃいました。全く同感でございまして、私もそういう心構えで取り組んでおるわけでございます。  そして、五十九年、特例公債依存の体質を改善し、脱却をするということからいたしまして、当面、五十七年度予算につきましては、増税のない、行財政縮減合理化によって予算の編成をしよう、そして特例公債の発行減額もそういう中でひとつやっていこう。次に、五十八年度以降の問題につきましては、これはいろいろの不確定要素がございます。しかし、基本は、納税者の立場からいたしまして、やはり大型の増税などということは避けてもらいたい、できるだけ簡素で合理的な、むだのない行財政を確立することによってやってもらいたい、こういうような納税者のお気持ち、私もそれを痛いほど承知をいたしておりますので、そういう姿勢で取り組んでまいります。  ただ、これは専門家の正木さんももう御承知のように、そのときにおける経済情勢が一体どうなるのか、あるいは税収がどういうぐあいになるのか、また、行政に対する需要がどういうぐあいになってくるのか、いろいろな不確定要素があるわけでございますから、そういう点を総合的に判断をして、心構えとしては、納税者の立場に立って五十八年度以降もやってまいろう、こういうことでございます。
  26. 正木良明

    正木委員 それはわからないではないわけですね。要するに、まだ不確定要素が非常に多過ぎるからという意味でしょう。しかし、実はそういう不確定要素が多いからというのであいまいにしておくと、できることもできなくなってしまう場合がたくさんあるだろうと思うのです。したがって、税収の問題、これは景気とは全く関係の深いものでございますが、これはまた後ほどやりますけれども行革デフレということが実は言われている。  しかし、これを否定する人たちは、二百六十兆になんなんとするような大きなGNPを持っている日本の国で、二兆七千億円ぐらいは大体一%程度だから、そんなに影響はないのだというふうに言う人がいますけれども、しかし、事実これは影響としては、個人消費の低下であるとか中小企業の倒産であるとか、こういう問題として現象的にはもう具体的に出てきている。こういう問題を考えると、やはり行政改革をやりながら一定の税収を確保するような対策というものを常に考えておかなければならぬのだろうと私は思います。それによって、いわゆる大型増税というような形のもの、大衆増税というような形のものを導入しなくて済むようにする、これぐらいの決意はいまの段階になければならぬだろうと私は思うのです。  不確定要素が多過ぎますからどうなるかわかりません、しかし、私の考え方としては増税はしたくないのです、これはもうだれだって増税なんてしたくないでしょう。ただ、そういうふうな次元においてのしたくないという気持ちなのか、もう極力、あらゆる施策を動員して、そうして増税のない財政再建をやるのだという決意とは、おのずからやはりその後の行動が変わってくるんじゃないかと私は思いますので、念のためにお尋ねしたわけですが、どうでしょうか。――大蔵大臣、何か言いたそうにしているから、先に言わせてください。
  27. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま総理のおっしゃったとおりなんでございますが、五十八年、五十九年という年におきましても、問題は、あの予定どおりの歳入がまずあるということが前提ですね。もうこれがなければ困るわけですから。そのために景気が持続される。第二番目は歳出のカット。何ぼできるか。結局その中で、ことし六千億円ぐらいの一般歳出が伸びるということになったわけですね。五千、まあざっと六千億円。ゼロシーリングといっても一・八ぐらいのものが別枠で伸びられる。それと同じものが、計算してみなければわかりませんが、五十八年度でまあ六千億円プラス何千億かですから、まあ一兆円未満でしょう。その程度の中に全部おさまることができるということになれば、それは増税がなくとも予算が組めるということになるわけですから、われわれとしては、五十八年も五十九年もまず歳出の抑え込みということで最大限の努力を払って、もう極力増税を避けるようにまずやってみるということが先決だと思います。
  28. 正木良明

    正木委員 いいでしょう。きのうと大分変わってきました。それぐらいの決意があってやってもらわなければならぬ。  そこで総理、お尋ねしますが、いまの特例債の減額等の問題がございましたが、さて五十七年度、もう一度おっしゃっていただけませんか。どの国債をどのくらい減らすわけですか。
  29. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 どの国債を幾らということは決めてないのです。要するに、五十九年度までに赤字国債から脱却する。七年、八年ということでなくしてしまうということでございまして、その国債の中、つまり特例国債と建設国債と両方あるわけでございますが、われわれとしては、この年度で何の国債が幾らということを、いまの段階で五十七年度の国債の中身まではっきりさせるということは、ちょっと困難だと存じます。
  30. 正木良明

    正木委員 国債減額一兆八千三百五十億円というのは、間違いありませんか。
  31. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 その程度は減額したいと考えております。
  32. 正木良明

    正木委員 一兆八千三百五十億というのは、この中期見通しからいうと、全部特例債の減額になるじゃありませんか。特例債の減額じゃないのですか。
  33. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 平均で割り算すれば、そういうことになっております。
  34. 正木良明

    正木委員 いや、平均で割り算なんかしなくたって、五十六年度の発行額から五十七年度の発行額を引いた額が一兆八千三百五十億円ですから、これは特例債で減額されるんじゃありませんか。割り算なんか必要ありません。引き算です。どうですか。
  35. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 引き算と割り算と同じようなことでございまして、二回引くか三回引くか、三分の一するかという話でございますから。そこでわれわれとしては、はっきり申し上げているのは、五十九年度までに脱却するということでございます。  そこで、じゃ五十七年度の一兆八千三百億は特例国債全部かどうかと言われましても、もう少し予算の査定をやってみないと、ここで確約をするというわけにはなかなかいかない問題が多少残っております。
  36. 正木良明

    正木委員 そうなってきて前の方がだんだんぼやけてきて、しかも五十七年度でもぼやけてくると、審議が非常にむずかしくなってくるのです、別に座るつもりはありませんが。  そうなってくると、私が疑問に思ったのは、だから何遍も念を押したのですが、実はこの中期見通しでは、四条国債、いわゆる建設債は六兆七千九百億円出すことになっているのです。そこで、この中期見通しによりますと、公共投資財源となるべきものを、これは一つはガソリン税を初めとする、公共投資のための目的税を初めとする税収、これが一兆八千三百億円、そのほか負担金等の税外収入、これが七百億円、そして四条国債、すなわち建設債が六兆七千九百億円になって、いわゆる投資部門に充当すべき財源、逆に言うと、投資部門以外には充当できない財源が八兆六千九百億円あるわけでございます。  それで、さっきの話だと、八千五百億円減額でしょう。ということになると、五十七年度で予定されておる公共投資は九兆四千八百億円でありますから、そこから八千五百億円引きますと、六百億円特例債を出さなくてもいけるんです。この税収その他というものがこれだけ確保できるという前提に立つならば、これだけの建設債は発行する必要がないということになるのですが、どうですか。いま言った八千五百億円というのは、都合によって国債が発行できるからということで六百億円ふやしますか、どうなりますか、これは。
  37. 西垣昭

    西垣政府委員 大臣からもお話しになりましたように、来年度予算の枠組みにつきましてはまだ決まっておりません。というよりも、税収の状況もわかりませんし、まだ決まっておりません。そんな中で、具体的に来年度の公債をどうするかということが決まるわけでございます。  それから、先ほどおっしゃいましたのは、中期展望の五十七年度の姿の中で、公共投資がこれだけ伸びなければこれだけ公債を発行しなくてもいいはずだ、だからその分は当然のことながら建設公債が減るではないか、こういう御議論だと思いますが、そういったことも含めまして、五十七年度の公債の規模をどうするかというのはこれからの話でございまして、これから検討するというふうに考えていただきたいと思います。
  38. 正木良明

    正木委員 これからのことがあいまいでございますし、未確定の要素が多いわけですから、確定したものとして議論できないのが非常に残念なんですが、そうすると、未確定ということで、幾つかの選択肢がここで生まれてくるわけです。ということは、ガソリン税を初めとする税収、またその他負担金等の税外収入等が公共投資に与えられる財源としてこれだけ入ってくるという前提のもとに、いわゆる公共投資をゼロシーリングでやるということになってくると、八千五百億円節約されるわけですね。いわゆる中期見通しに比べて八千五百億円減るということです。ということになってまいりますと、これは行革デフレの問題等が別にありますが、それは一応置いておいて、少なくとも六百億円はもう建設国債を発行しなくていいわけです。  この場合考えられることは、六百億円発行しなくても済むんだから、それを発行してしまって、公共投資に六百億円ふやす、こういう考え方がありますね、一つは。もう一つは、そのために私は色分けを聞いたのでありますが、色分けを聞いたときに、約一兆八千三百五十億円という国債発行を五十六年度に比べて五十七年度は減らしますというのは、内容はまだ定かではありませんと言うならば、少なくともこの六百億円は、国債減額一兆八千三百五十億円というこの総額に変わりのない形で赤字債に振りかえることも可能なんです。  私はなぜこんな議論をし出したかといいますと、要するに、赤字債だけを減らしていくという形をとりますと、赤字債を財源とする一般歳出、主として人件費であるとか福祉であるとか教育というものにだけ宿命的にメスが入るのです。そして昭和五十九年度まで六兆七千九百億円という建設債は、この中期見通しでは減らさないわけでありますから、公共投資は安穏としてその財源に寄りかかることができるわけです。したがって、この間に考え方を変えない限り、公共投資はどんどん伸びるけれども一般歳出に属するいわゆる赤字債を財源としなければならない福祉、教育、人件費等々の問題については、これは一方的にメスが入ってくる。この点について何らかの形で措置をしない限り、これから五十七年、五十八年、五十九年と仮に歳出をしぼっていく、徹底的にしぼっていって増税をしないんだという大蔵大臣の決意はりっぱでありますが、その決意から、その延長線上にあるものは何かというと、一般歳出にメスが入らざるを得ないという現象になるのですが、この基本的な考え方に考え直すという気持ちはありませんか。  このことは、実はぼくは第二臨調委員皆さん方に申し上げました。それは大変問題点でありますなと言ったけれども、それっきり何も言いません。ですけれども、これは実際の行政をやっていく皆さん方として、この財源問題との関係を考えない限り歳出は一方的に福祉、教育にメスが入らざるを得ないという問題、考え直せる方途はありませんか。
  39. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そこが実は大問題なんでございます。御承知のとおり、考え方がありまして、建設国債は財産として残るものだから、片方に橋ができ、道路ができて、片方に借金ができて、借金イコール財産、だからこれは耐用年数があることだし、六十年くらいかけて償却していってもいいじゃないか、ある程度出ても、程度問題だが、これは認められるだろうという発想が一つございます。ところが、赤字国債の場合は、これは人間をつくるんだから、その耐用年数だけという考えはなかなか出てこない問題がございまして、要するに、一般に人件費とかそういうように消えてなくなってしまうもの、これについては普通の場合は税収の中で措置すべきものであるという考え方が一つございます。  ところが、御承知のとおり、昭和五十年度から不景気に陥りまして、それで一方は景気対策、一方はせっかく文教や福祉もどんどん毎年よくしてきたんだから、これは続けてやれ、それで結局やってまいりますと、昭和四十八年と昭和五十五年の予算を比べれば、税収は二倍にしかなっておりません。社会保障費は大体三・八倍か三・九倍になっております。文教費も二・九倍くらいになっております。人件費も二・五倍になっております。というように、税収の伸び以上にそういうような消費的な経費の伸びが大きかった。その差額がつまり赤字国債になったわけでございます。ですから、今後さらに赤字国債をふやしていくのかということでなくて、赤字国債はやはり税収の伸びの中で賄っていこう、社会保障、それから文教、人件費、そういうものは借金をして賄うのではなくて、税収の伸び率の中で賄っていこうという考え方からいたしますと、やはり赤字国債脱却するということがまず先決問題であろうということでございます。  それを何年で脱却するかという問題でございますが、六十年から本格的な赤字国債の償還が、五十年発行のものが六十年に回ってくるということになれば、少し余裕を見て五十九年までには赤字国債を発行しなくても済むようにしようというのが今度の財政特例法を背景とした一つの財政再建考え方でございます。
  40. 正木良明

    正木委員 五十九年度に赤字国債をゼロにすることには反対ではないのです。それは私たちは支持をしています。しかし、国債を財源とする場合において、構造的に赤字国債財源とする費目と建設国債を財源にできる費目とあるわけですね。現に財政法第四条によって、それはこっちの方へ回せないものなんです。それはなぜそういうことができたかというのは、いま大臣がおっしゃったように、後代に負担を残すけれども、そのかわりに施設は残るのだ、財産として残るからしんぼうしてくださいというので、それはよかろうということになっているわけですね。それはわかります。わかるのですが、この構造的な問題をどうしたらいいかということを私もいま一生懸命考えておりますけれども、この構造をどういうふうに変えるかということをある程度考えていきませんと、五十九年までも一般歳出の福祉や教育、そういうところにばかりメスが入って、それがぶった切られる形にならざるを得なくなってきますよ。これはもういずれの問題にしたってそうなります。そのために税収を確保したい、そういうものは予算の八〇%を税収にしたい、その気持ちはわかるのです。それじゃ、片方でそういう税収が確保できるような措置が講じられているのかというと、講じられていないということになるわけですね。  したがって、先ほど申し上げた二つの選択のほかにもう一つ選択があるのは、いわゆる公共投資財源となるべき税収その他税外収入と建設債の中で、建設債六百億円未発行でも済むような計算になるわけです、一応いまの計算ならば。これから先どうなるかわかりませんが、いまの現時点の数字における計算からいうと、約六百億円は建設国債を出さなくてもいいのだから、その建設国債六百億円を出しちゃって、そうして税収の部分を一般歳入の方に回す。これを言うと、委員長以下建設族がかんかんになるだろうけれども、これは要するに、逆に言うと、目的税を、道路目的財源等の部分を一般財源に回すということに結果的にはなってくるのですが、こういう選択もしようと思えばできるわけです。そういう形で五十七年度何らかの措置は加えられないのかというのが一つ。  もう一つは、五十八年以降において、この二種類の国債を財源とする費目について何らかの構造的な宿命的な欠陥というものを――欠陥と言えるかどうかわかりませんが、そういう仕組みに何ららか手を加える方法はないか、これから検討してみてくれませんか。検討する約束で結構ですから。
  41. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 せっかくの貴重な御説でございますから、私どもも真剣に検討させていただきます。
  42. 正木良明

    正木委員 そこで、はしなくもいま出てきた問題は、いわゆる消費的という言い方なんだな。確かに、それは投資的なもの、消費的なものというふうに分ければ、それは二者択一を迫られると、消費的なものに入らざるを得ないかもわかりませんが、しかし決して一〇〇%教育や福祉というものは消費じゃありませんよ。ここらでやっぱり考えてもらわなければならないことは、これはある種の投資だと思ってもらわなければいけません。子供に対する投資、教育は子供に対する投資だと考えてもらわなければなりません。そういう点では単なる低所得者対策として福祉を考えるというのは非常によくないと思うのです。低所得者対策として考えなければならぬ福祉もありますが、児童手当の問題については、低所得者対策としか考えていない風潮があるのです。これは非常に不満なんです。  そこで、総理、まず基本的なことをお尋ねします。今度の法律案の中には、一応児童手当の問題については所得制限を引き下げて、そして企業主負担があるものについては所得制限を上積みしていますね。それと同時に、この財政再建期間中というか、この特例法の期間中に基本的な児童手当の問題を検討してみたいというお考えがありますね。これはどういう意味なんですか。
  43. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 児童手当制度の問題につきましては、各方面にいろいろの御意見がございます。しかし、私としてはこの制度はどうしてでも存続をしたいということが前提になっておるわけでございます。ただ、これを存続するにつきまして、どういうように時代の要請なりあるいは厳しい財政事情なりそういうものを総合勘案をして改善を加え、これを存続実行していくか、そういうことをいま考えておるわけでございます。私は、所得の比較的高い方々、こういう方々にはひとつ御協力を願って、児童手当は御遠慮をいただいて、そしてその他の方々にはこれを支給をするというような所得制限、ある程度これは適正な水準であればそういうことも考えてみたい、こういう基本的な考えを持っております。
  44. 正木良明

    正木委員 それはよくわかるのです。それはわかっているのですが、たとえばどこか審議会か何かに諮問をして検討させるとかなんとかという具体的なことはどうなんですか。
  45. 村山達雄

    ○村山国務大臣 この法案でもはっきり出ておりますように、この特例期間の終期までをめどにいたしまして根本的に検討するわけでございますが、児童福祉審議会がございますので、その辺をやはり中心にしまして、そしてまたそれと違う意見を持っている方もありますので、児童福祉審議会を中心にして、各方面の意見を聞きながら、そして最終的な答えを出したい、かように思っているわけでございます。
  46. 正木良明

    正木委員 児童福祉審議会から二年前に児童手当に対してはほぼ完璧というべきような答申が出ているのです。ところが、臨調が、臨調に厚生省の説明が恐らく足りなかったのじゃないかと私は思いますが、ちょっと変なことを言っておるわけです。たとえば「児童手当については、公費負担に係る支給を低所得世帯に限定する等制度の抜本的見直しを行う。」なんという答申を出している。これは説明不足ですよ。土光さんてそんなばかじゃないと思うのだ。そうかと思うと、財制審からまたこれに対して、「社会保障施策全体の中での優先度等を考慮すると、児童手当の意義と目的について、なお、疑問なしとせず、」云々と、ここらから茶々が入って、それであのりっぱな児童福祉審議会からの答申がぐらついてきているのです。そうすると、三年間に検討を加えるという意味が、中央児童福祉審議会からあんなりっぱな答申が出ているのに、実行もしないで、二年もたたないうちに、よそからいろんな文句が出てきたからもう一度審議し直してくださいという、そういう形にならざるを得ないと思うのですが、厚生大臣、どうですか。
  47. 村山達雄

    ○村山国務大臣 もうこれは正木委員よく御存じのように、児童福祉審議会の意見は、むしろいま税の扶養控除まで取り込んで、そして児童手当の中に吸収したらどうかというような意見も含まれているわけでございます。また、さらに極論する人は、これは第三子からでなくて第一子からやったらどうかというような意見もあることも十分承知しております。しかし、一方におきまして、また各種の議論がございまして、わが国の賃金体系はいま家族手当というものを出しておる。家族手当を出すというこの賃金形態は、やはりわが川の慣熟した制度でございます。そしてまた、税の方で生計費の負担のバランスを考えまして、扶養控除制度があることは御無知のとおりでございまして、本人並みの二十九万引いているわけでございます。したがいまして、現在の児童手当の法律の目的がうたっておりますように、家庭生活における経済の安定、あるいは児童の将来の育成、そのために出すんだ、こういう法律の規定になっているわけでございます。そういう法律の規定に照らしてみますと、児童福祉審議会のおっしゃることもわからぬことはございません。また、反対論者の言うことも全然無視するわけにはいかぬのでございます。そういう意味で、今度は本当に臨時措置といたしまして、御案内のような措置をとりまして、所得制限では、これはもう自営者も被用者も一律にやったわけでございます。しかし、その結果として、被用者が四五%ぐらいのカバリングにしかなりませんので、従来の事業主から出していただいている拠出金の範囲内において、それ以上負担をかけようというわけじゃございませんけれども、その中で同じ水準、つまり対象児童の八〇%ぐらいは被用者にもやはり出していただいてはいかがなものであろうか。そうすれば被用者はいままで対象の七〇%は八〇%、それから自営者の方は九〇%が大体八〇%ぐらいになる。全体の児童数は同じになる。こういう措置をとりましたので、そういういろいろな背景がございますので、慎重に検討させてほしい、こういうことを申し上げているわけでございます。
  48. 正木良明

    正木委員 それはわかっているのです。今度の措置は一〇〇%私は首を縦に振るわけにまいりませんけれども、なかなか考えたなという考え方はあるのです。この話は、私の方のそれこそ専門家がいますから、これから一般質問でやると思いますので、これ以上あれですけれども、私が聞きたかったことはそういうことではなくて、再検討するということは、政府の場合は、もう常に廃止の前提としての再検討なんです。そういうことから、この再検討というものがどういう形で再検討されてくるか、どこで再検討されるかというのはきわめて関心が深いわけなんです。児童福祉審議会が二年前にあの答申を出されて、それが実行されていないのに、また、審議をやり直してもらうような形で再諮問するというような結果になるとするならば、それはもう後退かないしはこれが廃止の方向に行かざるを得ないような方向づけをしたものになってしまうのじゃないだろうかということを心配しているわけです。したがって、これは大蔵大臣は金庫番でありますから金を出すことについては徹底的に反対するでしょう。また反対しなければならぬ立場の人ですからね。守る人はだれかと言えば、あなたしかない、厚生大臣しかないわけです。ですから、そういう意味においても、この児童手当の制度を守っていくためには、やはり真剣に構えていただきたいと思うし、その諮問する態度においても、また臨調に対しての説明においても、そういう点についてはいわゆるこれをばらまき福祉の中に入れてしまって、ぶった切った方がいいというような思想で対処しないようにしてもらいたいし、低所得者対策として対処してもらわないようにしてほしい、こういうふうに考えているわけです。  というのは、これはこの前もちょっと申し上げましたが、念のために申し上げますが、生活に困っているから金をやればいいというような単純なことでなくて、これは国家百年の大計から考えて大変なことが起こるということなんです。  これはよく御存じだと思いますが、合計特殊出生率というのがあります。これは再生産率とも言いますけれども、要するに十五歳から四十九歳までの女の人が一生のうちに何人子供を産むかという統計です。これが二・一人を掛けると人口は横ばいになってくる、ないしはずっと下り坂になるのです。これの統計がございますが、この二・一四人であったのが昭和四十八年で、昭和五十三年にはすでに一・七九人、五十四年には一・七七人になっていると統計の報告があります。このままずっと下がって、この出生率が一・六人になったときには、七十年後には日本の人口が九千万人になるというのです。九千万人でもええと言う人があるんですよ。こんな狭いところで九升万人でええがなと言う人がありますけれども、しかし問題は年齢構成でありまして、このときの九千万人というのは、もう全く逆三角形、逆ピラミッド形の年齢構成になってしまう。それは中庸年者の労働力というものについてのいろいろな問題を考えていかなければなりませんが、しかし中心になるのはやはり若い労働力でしょう。これは日本の経済にとって大変なことになる。同時にまた、若い人たちがこのお年寄りの老後を支えていくわけでありますから、そういう人たちがごくごく少なくなってしまうというような状況で、果たして日本の将来はこれでいいのかということになるのです。  そうすると、何で子供を生まなくなってきたのだということに、これはまた探求をしていかなければなりませんが、これは幾つかの理由はあるけれども、しかしその中で、やはり教育費や生活費の増大というものが一つは大きな問題にもなってくる。ですから、欧米ではこんなことをやるところがあるんですよ。もう皆聞いたらびっくりするぐらいのことをやりよります。要するに、低出生率に対して、これからの人口減を心配して、たとえば子育て期間中の妻には掛金の負担なしで一定の年金資格を与えるという、こんなことまでして子供を生んでもらって、子供を育てなければいかぬというような国がもうすでにあるのです。まだ日本はそこまでいっておりませんけれども、そういう関連がこの児童手当にはあるということです。  したがって、この児童福祉審議会の答申の中にそのことを明確に記している。確かに子供は二親の子供ではあるけれども、しかし同時に、その子供の持つ使命は未来の国、未来の社会を担っていくのであるから、「社会の子」とする位置づけとしなければならぬということをこの答申の中で言うています。  ですから、そういう認識から、言うならば、この制度がなくなってしまったり、もうごくごく低収入者にしかこの手当が出てこないというようなことは、今後長期の日本の将来を考える良識ある総理として果たしていいのかどうか。いま児童手当の制度は、ぎりぎりこれ以上下がれぬというところまできているのです。しかも、こんな第三子からというようなことをやっているのは、日本と南アフリカ共和国とモーリシャスとかベトナムとか、そんなところです。実施した国六十六のうち五十七まで第一子、初めの子からです。日本は三番目からです。けちくさい話をしているわけです。しかも、これはあと全部発展途上国ないしは後進国です。未開発国と言っていいぐらいなところです。  そういうことから考えると、日本で実施しているこの制度それ自体が決して完璧な制度ではないのです。その制度をなおメスを入れて削っていこうというのだから、よっぽど物がわからぬか、よっぽど心臓が強いか、よっぽど長生きする気のない人としか考えられぬのでありまして、これ以上のことは、この後次の委員会というか、うちの別の委員さんにやってもらいます。  そこで、年金を年金会計から借りますね。国庫負担金を入れないということは、そしてまた返すというのだから、借りるのと一緒です。これとかさ上げの問題と、借りることばかり今度はやるわけでありますが、これは苦し紛れであって、一〇〇%悪いとは言わぬけれども、問題は本当に返せるのかというのです。大蔵大臣、どうですか、本当に返せますか。財政再建期間というのは昭和五十九年まで、昭和六十年からずっとこの特例期間は外れてくるわけでありますから、まあまあ六十年から返すということがあたりまえのことだろうと私は思っておりますが、ところがこの六十年には、もう大蔵大臣がおっしゃったように、昭和五十年に発行した赤字債の償還をしなければならぬときが来るわけですね。そうしてこの三年間の国債費も大きくなってくるでしょう。同時に、税収を確保するということになってくると、当然それに見合うべき地方交付税というものも大きくなってくるでしょう。こういう経費を予想しますと、本当にこの特例法で言うところの借金が返せるのかどうか、一時借入金は利子をつけて返すということが可能なのかどうか、そんな計算はしたことがあるのか、したとするならば、それはどういうことになっているか、ひとつ教えてください。
  49. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私どもといたしましては、どんな工面をしてもお借りしたものは返さなければならぬ。ただ、年限その他についてはそのときの財政事情等も考えて、それについては御相談をさせてもらいたい、そう思っております。  計数的なことは主計局から説明させます。
  50. 西垣昭

    西垣政府委員 補足させていただきますが、六十年度以降の財政状況はどうなるかというのは、いまから見通すわけにはまいりません。しかし、特例公債の減額食担がなくなるということは事実でございますし、それまでに財政体質を改善する努力を続けることによりまして、大蔵大臣からお答えいたしましたように、何とか措置をすることにしたいというふうに考えております。
  51. 正木良明

    正木委員 この資料、要求しても無理かね、大体出てこないかな。  これは、私の方の政審の事務局がちょいちょいと調べたのです。単純な計算ですから、このとおりになるかどうかわかりませんが、共済も含んで少なくとも厚生年金関係、これが約千九百億、公共事業の特例分の引き下げの問題四百六十億、地震会計等のものがあって二千三百六十六億、これは三年ですから単純に三倍しますと七千九十八億、三年間の利子七・一%、要するに財投の平均的利回りということとして五百四億円でありますから、七千六百二億円、これは六十年から何回分割になるか、一遍に返すのかようわからぬが、そういう金になりますね。  そうして、大蔵省から出ているところの国債の返還額を見ますと、昭和六十年度特例債として償還しなければならぬのが二兆四千八百億。四条債は借りかえするのでしょうから、実際に金は要らぬでしょう。しかし、返してしまうのなら九兆四百億になるでしょう。ただ、返還財源としての積み立てがございますから、これが六十年度で五兆三千百億円あります。ところが、これは六十一年度には二兆七千億円に減ってしまって、六十二年度からはもうありませんわ、ゼロになる。これは大蔵省が出したものだから間違いありませんね。これを返事してもらうということ。  そのほか、いわゆる国債の利払いというもの、これはもうどういうことになるかわかりませんけれども、大体五十九年で十兆に達するだろうと思われるわけでありますが、この辺のものは六十年度にもかぶってくるでしょう。  こういうふうに、非常にかさんでくる財政需要というものが昭和六十年から考えられるのです。非常に大ざっぱな数字しか申し上げられませんでしたが、大蔵省がつくれぬものをつくったんだから、しんぼうしてもらわなければしようがないと思うのです。大ざっぱな数字でありますが、これぐらい財政需要が積み重なってくるのに、実際問題としてこの特例法で言うところの国庫負担減額分、それを六十年以後に返すというめどはあるんですか、何とかなるだろうというのでこの法律をつくったのですか、どっちですか。
  52. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは財政規模も大きくなるし、確かに六十年から返済にぶつかります。ぶつかりますが、今度は毎年一兆八千とか二兆円とかという赤字国債減額というものがなくなるわけですから、その分が楽になるわけですから、あとは何年間に分割するか。六千億、七千億のものを三年間でやるのか、もう少し長くさせてもらうのか。それは、そのときの財政事情によって年金財政に支障のない限度で、こちらにも財政事情から見て余り無理のないような程度で、話し合いの上それは決めさせてもらいたい、そう考えておるわけです。
  53. 正木良明

    正木委員 そうなりますと、話し合いということはだれと話しするのか知らぬが、われわれと話してもなかなかうんと言わぬと思いますけれども。問題は、仮に六十年以降にこの繰り入れ分の返還ということをやる場合に、利子はつけないと延ばせませんぞ。ですから、ここではっきりと、これにはちゃんと利子をつけます、こう言わない限り――大体、こんな借金の仕方なんというのは本当はないのですよ。いつ返しますという約束もなしに、利子何ぼつけますという約束もなしに、法律一本つくってばんと借りて回る。これは本当に御用金的な感じなんだけれども、それはそれとして、これはまた別の機会にやるとして、しかし少なくとも利子をつけない限り延べ払いなんというのはできませんよ。どうですか。
  54. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは厚生大臣からもうるさく――うるさくと言っちゃなんですが、やかましく言われていることでございまして、非常に強い御主張なわけです。当然にそれは運用利益のあるお金でございますから、当てにしているお金でございますから、われわれとしては利子についても十分に考えておる次第でございます。運用と同じぐらいのものは考えなければならぬと思っております。
  55. 正木良明

    正木委員 ありがとう。それをあなたはっきり言うてくれたんで、一応の成果はありましたよ。  それで、今度は地方財政の方だ。私もぎょうさん持ってきて……。  かさ上げの削った分、元利に対して臨時特例交付金というもので埋め合わせをしますということになっていますが、これの大体の概要、正式な見解としておっしゃってください、自治省。
  56. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 減額をいたします。そういたしますと、事業が執行できません。そこで、団体に対しまして起債を認めます。起債の償還が参ります。その際に、その償還につきましては、交付税で措置をいたします。しかし、交付税にまたマイナスが出てまいります。したがって、臨時特例交付金といたしまして国庫がその二分の一を交付税特別会計に繰り入れる、こういう仕組みに相なっております。
  57. 正木良明

    正木委員 ちょっとその前に公取委員長さん、あなた会議があるのに来てもらって申しわけないのですが、どうもこの進みぐあいではあなたのところに入れぬから、帰ってもらって結構です。済みません。  そうすると、こういうことになるんですか、自治大臣。削った分は地方債できちんと認めます、その元利の償還については、半分は国の方から出します、半分は交付税の中で何とかします、こういうことになるのですね。そうすると、これは厚生省よりよほどたち悪いわけですな。半分返すが半分返さぬということになるわけですな。これはどうなんですか。
  58. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 そのときの交付税特別会計あるいは地方財政状況もありまするので、非常に地方財政が悪い場合には、二分の一を超えても国庫が臨時特例交付金を出す。そのときの地方財政状況によってそういう措置も講じ得る、こういう措置をお約束をいたしているわけでございます。
  59. 正木良明

    正木委員 そうして、通常の地方財政状況の場合には、たとえばこれは都道府県と指定都市だけに限られておりますから、県で言うと東京都と愛知県になると思うが、これはいま不交付団体ですな。この不交付団体は、国からも出てこぬのでしょう。そうすると、まるまる地方がその分は負担しなければならぬ。不交付団体の場合には、まるまる地方が負担しなければならぬということになりますか。
  60. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 結論はそういうことに相なります。
  61. 正木良明

    正木委員 さあ、これが問題なんですよね。ですから、知事会あたりが一斉に反対している理由は実にここにあるのであって、不交付団体はまるまる返してもらえない、削られたままであるということが一つ。  もう一つは、半分は特例交付金として国からめんどうは見るけれども、その半分は、いわゆる交付税の枠をふやさずにその中で計算するというのですから、総額からいうならば、それは地方が負担したことと同じことになってくるわけですね。しかもこのことは、どういう計算をなさるかわかりませんけれども、いま予想はつきませんけれども、少なくとも都道府県、指定都市以外に対してもしわ寄せは行くということですね。そうなりませんか。地方交付税全般の枠をふやさないで、その中で半額分に対するものを地方交付税でめんどうを見るということになると、一般の市町村にまでそれが影響してくるということになりませんか。要するに、それだけ枠が小さくなると見なければなりませんから。どうでしょうか。
  62. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 単純に考えれば、そういう影響が全然ないとは申せません。しかし、微々たるものだろうと私は思っております。
  63. 正木良明

    正木委員 微々たるものであるかどうかというのは、被害を受ける方が判断するのであって、被害を与える方が判断してはいけませんよ。いや、傷は軽いから結構ですよ、しっかりせよと抱き起こしたときにそう言うのは、常に被害者なんです。その点は、そういうことでわかりました。このことについては、いわゆる法律案修正の一つの争点がまた生まれたと見なければなりません。  そこで、また次の問題に移りますが、いま非常に心配されていることが行革デフレという問題です。これは、正木というやつは予算委員会にしろこういうところにしろ、来たらその話をしておるなというふうにおっしゃるかもわかりませんが、たとえばもし仮に、いま大蔵省がお考えになっている八千五百億円の減になるということは、昭和五十六年度並みということになってまいりますと、これはどう考えたって、算術計算したって、名目が一緒なら物価上昇率だけ実質が下がるのはあたりまえの話なんです。こういう点について、公共事業が持つ景気対策的効果というものは私は無視できないと思うのですが、これについては何らかの内容を、要するに仕事の内容を再検討して、できるだけこのことによってデフレ効果をあらわさないような方途というものを、大蔵大臣、考えていらっしゃいますか。
  64. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これも程度問題だと私は思うのです。仮に、公共事業費を伸ばすということになれば、その財源獲得をしなければならぬ。そこで、それができないので公共事業費は抑えてあるわけでございますから、本当は、ふやしてやればもっと景気に役立つだろう、抑えたからその分足を引っ張るのじゃないか、こうおっしゃいますが、その抑える部分というのは、一般会計六兆六千億のうち八千何百億という話でございますね。これが二百六十兆、来年は三百兆近いと言われる国民総生産の中での話でございますから、先ごろ河本長官がそれに類した御答弁をされましたが、私としては、全体の中で吸収できるものであって、デフレの大きな要因とか、目立ったような要因になるというようには思っておりません。
  65. 正木良明

    正木委員 相当大胆不敵なことをおっしゃいましたけれども、これは影響が出ない、吸収されるということは、理論的には成り立たぬだろうと私は思うのです、たとえ幾らかであろうと。しかもこれは、心理的に与えていく効果が非常に大きゅうございますからね。それはインフレ政策のときには、物価も上がるけれども景気もよくなる。デフレ政策のときには、物価は安定するかわからぬけれども景気は悪くなる。これは中学校で習う経済の原則ですから。  もし仮に、大蔵大臣がおっしゃるような形のものにするためにはいろいろ方法があるだろうと思うのですが、その前に経企庁長官、この公共事業削減が与えていく景気の問題というのはどういうふうにお考えになっているでしょうか。
  66. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず最初に、公共事業が伸びないということは、物価がある程度上がっておりますから、仕事の量がそれだけ減るわけでございまして、その分だけデフレ効果になるということは、その問題だけを考えますとそういう議論が成り立つと思います。  さて、今度の財政の圧縮による影響の度合いをもう少し広い角度から考えてみますと、第二次石油危機によるいろいろな影響が出てまいりまして、特に大きなデフレ効果が出てまいりましたけれども、それに比べますと数分の一あるいは一けた違いの影響でなかろうか、私はこのように思っております。第二次石油危機の場合には、石油価格が三倍に上がりまして、その分だけ外国へ持ち出しになっておりますし、それにつれて、それ以外の日本が買わなければならぬ資源の価格もずいぶん上がっておりますし、だから大変な負担増になっておるわけであります。しかし、幸いに五十三年後半以降、経済がある程度回復をしておりまして相当な活力を持っておりましたので、それらを吸収して、なお五%前後の成長が続いておるというのが現状だ、このように思います。  それから比べますと、今度の場合はそんなに影響は大きくない。したがって、経済全体の力を維持することができる、景気を悪くしない、こういうことでありますならば、いま大蔵大臣お話しになりましたが、これは十分吸収できる、このように理解をいたしております。  また別の角度から考えますと、財政の圧縮をいたしませんと、この場合には国債の増発とかあるいは増税とか、こういう問題が起こってまいります。国債の増発はいまの段階ではできない。増税ということになりますと、これまた別の角度からのデフレ効果、こういうものも考えなければなりませんので、要するに日本の経済の規模が非常に大きくなっておって、特に民間の部分が非常に大きいわけでございますから、民間の経済の活力を総体として維持していく、これがキーポイントでなかろうか、このように考えております。
  67. 正木良明

    正木委員 総論的には企画庁長官のおっしゃっていることはわかります。しかし、五十六年の後半ないしは五十七年、特に五十七年の経済運営の中で考えていかなければならぬ問題は、確かに全体像としてはそういうことは言えるだろうし、一定の実質経済成長率は維持できるということは言えるだろうと思いますが、問題は、その経済成長を何が支えているかということを問題にしなければいかぬのです。  けさもちょっとニュースを見ましたけれども、稲山団長がECに行っておりますが、手厳しくやられておるようですよ。要するにその経済拡大、経済成長、景気の維持というものは何が支えているかというと、現在のところ外需です。内需がふるわないのです。その大きな景気維持をしておる、経済成長を支えている外需が、あっちでも頭を打ち、こっちでも頭を打って、いわゆる貿易摩擦を起こして、これ以上、日本の経済成長を集中豪雨的な輸出で支えていることがけしからぬというECやアメリカやその他の国々からの議論というものを無視できないだろうと思うのです。  そうなってくると、いまこの経済を維持していく内容というものを内需に切りかえなければならぬというのは、この間の新しい経済運営策ですね。これは、私は考え方としては決して間違っていないと思いますが、具体的にそうなるという確信を持てないよう宏内容であることは事実なんです。そうすると、個人消費の問題、民間設備投資の問題、民間住宅建設の問題、そうしてこの政府公共投資という問題が、内需のためにどうしても必要な要素になってこざるを得ないのです。そうすると、人勧の完全実施の問題であるとか減税の問題であるとか、そうしていま言ったような公共投資の問題が出てくるのです。  こうなってくると、片方にはおっしゃったように、では公共投資を伸ばすために建設国債をもっと出してもいいのか、これはもうできないという、この方には策としては採用できない。しかし、内需を喚起していくという形で景気維持をしていかないといけない、失業がふえる、税収が減ってくるということになるのですから。  そうすると、そのはざまに立って何をすべきかと言えば、名目的な予算額は五十六年度と変わらないけれども、要するに、内容的には、おっしゃったように物価上昇率を見込んだら仕事の量が減るわけでありますから、その仕事の量を減らさないような公共事業に転換するよりしようがないでしょう。少なくともそれは昭和五十九年までの財政再建期間中は、鋭意そこに意を用いていかなければいかぬのじゃないでしょうか。そのことを私はもう何年も前から言うておるのです。  要するに、せっかくの公共事業費、貴重な公共事業費を、用地費で地主のふところへ入れてしまうような公共事業をやっちゃだめです。経済を支える効果なんてほとんどない。地主のふところに入れば、その地主さんから銀行へ預金されるだけというようなことで、波及効果も何も出てこない。いや、それで国債を買えば波及効果が出てくると言う人がありますけれども、それよりも、土地代ができるだけ要らないような公共事業を選ぶべきじゃありませんか。そうして実質的には仕事をふやしていくべきじゃありませんか。そうするならば、そういう二律背反的な条件のはざまの中で、何らかの形で景気を維持したり、また倒産をなくしたりすることができるのじゃありませんかということを、口が酸っぱくなるほど言うております。  たとえば河川改修の問題にしたって、確かに川をつけかえたりなんかするためには新しい用地費が必要であるかもわかりませんが、そういうところでないところがもう山ほどある。しかも、それが今度の災害で大変なことになっている。そういう問題であるとか、古い公営住宅の建てかえであるとか、老朽校舎の建てかえであるとか、老朽福祉施設の建てかえであるとかいうのがあるのです。  しかも、これがいま仕事がなくて困っている中小建設業者を潤していくのです。ですから、そういう経済効果の薄い用地費に予算を使ったり、しかもこのことが結果的には地価を引き上げていく、公共事業が土地の値段を引き上げていくという汚名を着なければいかぬという、こういうことはこの三年間はやめて、そうしてそういうところへ鋭意力を入れていくということで経済的な効果というものを維持していくしかないでしょう。どうでしょうか。
  68. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、一つのりっぱな御説だと私は思います。政府といたしましてもそういう点は考えておりまして、たとえば用地費の比率、そういうものは、五十一年度が二二%ですが、五十六年度は一八%程度に下げてやっておるわけです。しかしながら、これもなかなか極端なこともできませんので、用地費のかからない、治山事業とか港湾とか漁港とかというのは比較的少ない事業です。しかし、そういうようなことだけでもぐあいが悪い。一番かかるのは都市公園ですね、六三%とか、街路の五六・七とか、住宅が平均して二七・七ぐらい用地費率がかかっております。生活関連というのはどうしても用地費と関係が出てくる。生活関連でない山林、治山事業とか、そういうようなものは用地費が少なくて済む。河川なんか、場所によっては、少ないところを拾えばできるのですが、三カ年間そういうところだけに集中してしまうかというのもなかなかむずかしいが、しかしながらいま言ったことは建設省でも十分に考慮をして、せっかくのお金でございますから、景気にも影響を持てるように、波及効果のあるように使っていただくようにお願いをしたいと思っております。
  69. 正木良明

    正木委員 建設大臣、建設省が調査なさいまして、公営住宅の老朽化して建てかえなければいかぬという戸数が出ているはずですが、ちょっとお聞きします。
  70. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 具体的な、数字的なことでございますので、政府委員から……。
  71. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 お答えいたします。  現在、公営住宅の全国のストックは約百八十万戸程度ございます。そのうちで、建てかえなければいけないものが幾らかというのは、詳細は承知しておりませんが、五十六年度の計画でまいりますと、おおむね五万五千戸程度の建設を実施してまいります際、そのうち約一万七千戸程度建てかえ事業として実施いたしたいというふうに考えております。
  72. 正木良明

    正木委員 これは数字がちょっと違うのです。十七万三千戸という報告が、建設省の調査で来ているのですがね。公営住宅、全国で十七万三千戸は、もう建てかえの必要な、老朽化の来た住宅だというふうに言われているのです。これは老朽化したものでありますし、同時に、これは大体庭つき二戸建てないしは四戸建てぐらいの平家建てです。したがって、これは老朽化と同時に、この建てかえをすることによって、これは非常に古い時代、昭和二十年代、三十年代に建った家だろうと思いますから、非常に交通至便なところに用地が求められているわけですね。したがって、ここらを高層住宅に建てかえたりなんかするということは、これはもう土地の効率利用の上からいったってぜひ必要だし、いま土地の入手難のために公営賃貸住宅が建たないというような状況の中では、これはぜひ――反対する人もいますよ。入っている人は反対しますから、これはやはりよく説得をして、そしていい条件を出してこれの建てかえをしたら、これは大蔵大臣、たくさん仕事があります。  河川の改修だって同じことですよ。これだって、いいですか、数字はもう、こっちで調べたものを言ってしまいます。河川の治水施設の整備率は、戦後最大洪水による再度災害の防止という当面の目標に対して、五八%しか達していませんね。そうして、時間雨量五十ミリ相当の降雨に対して耐えられるのは、一八%しかないのです。しかも、そのはんらん区域の人口は五千七百七十万人、資産が五十五年度価格で三百三十一兆円というふうに言われていますね。これぐらい、危ないところで住んでいる人がいるのです。  それは、つけかえをしなければならぬということになると、新しい用地が要りますよ。曲がりくねっているのを真っすぐにするとかなんとかは必要だと思いますけれども、そういう点については、やはり仕事をしようとすれば、あるのです。これは文部大臣にも聞きたいけれども、時間が余りありませんから聞きませんが、この老朽危険校舎の改築だってずいぶんある。まだ屋内体育館がない学校なんてたくさんあるのです。これは全部校庭というすでに確保された用地の中に建てることができる。  ですから、そういう点を考えていただいて、各省ともに頭をしぼっていただいて、そうしてこの少ない公共事業費をできるだけ最大の経済効果が生まれるような形に組みかえていく。これも、ぼくは永遠にと言っているわけではありません。少なくともこの財政再建期間中、相当厳しい査定をして歳出削減していかなければならぬのならば、それはそれなりにやっていただいてあたりまえのことだと思いますけれども、しかしそのことでしわ寄せを受けるような人たちに対して何らかの措置を講じていく、また景気維持ということをそういう点で図っていく、こういう形が経済運営として望ましいと私は考えているのですが、まあ非常に部分的な話で申しわけなかったですけれども、河本長官、どうですか、賛成していただけますか。
  73. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほどの御議論を要約してお答えをいたしますと、いま確かに五%成長をしておるのですけれども、御指摘がございましたように、いまは外需中心の成長になっております。これを内需と外需の均衡ある成長に切りかえていこうというのがいまの政策でございますが、この切りかえを間違えますと景気がまたがたんと落ち込んでしまうということで、その点、いろいろ工夫が必要かと思っております。何しろ外需による成長が四%、内需による成長が一%、こういう見当でございますから、やはりそのバランスをとる過程におきましても、貿易の伸びがとまらないように拡大均衡の方向に持っていく、こういうことを考えながら順次内需が拡大をしていくのを待つという進め方が必要か、このように思っております。  その場合に、私が先ほど申し上げましたのは、たとえば個人消費あるいは住宅、それから設備投資、こういう幾つかの柱がございますので、そういう一つ一つの内需拡大の柱を太くしていく、これはぜひ並行して考えていかなければならぬと思います。  それから、いま議論になっております公共事業は、一般会計だけをとりますと大体GNPの二・五%ぐらいでございます。公共事業全体をとりますとGNPの九%ぐらいになりますけれども、それは財投とか補助事業とか単独事業とか全部入れましてそういうことになるわけでございますが、もし予算編成の段階公共事業以外の分野での内需がそれぞれ拡大できるということになりますと、これは大変結構でございますが、もしそれが大変むずかしいということになりますと、またそこでいろいろな工夫が必要か、こう思うのです。たとえば公共事業に、一般会計では無理だけれども、民間資金をもう少し投入することができるかできないか、こういう問題もその時点において改めて検討するということも必要でなかろうか、こう思っております。  いずれにいたしましても、財政再建というのは、来年の大蔵省の試算を見ますと、五兆円前後の税の自然増収が期待できる、そういう前提条件になっております。したがって、やはり相当景気がよくないとそれは期待できませんので、この点が一番のキーポイントだ、こう思います。同時に、ある程度財政カットをする、この二本立てでございますから、それがバランスがとれるような形の財政経済政策が必要だ、御指摘のとおりだと考えております。
  74. 正木良明

    正木委員 そのとおりだと思いますね。私は、行政改革は決して悪い政策ではないと思います。やらなければならぬものでありますが、まあ世の中のことはいいものばかりということはありませんで、必ずマイナスというか、短所も持っているわけで、政策も同じことだろうと思うんですね。  ですから、この政策はいい政策だけれども、こういうところに問題がある、こういうところに短所があるというならば、その運用の段階において、その短所をどれだけ小さくしていくか、どれだけ補っていくかという努力をしなければならないと私は思いますし、それは政策運用者の大きな責任であり、義務であろうと思っております。だから、あえていろいろな点について欠点を指摘し、それに対して十分な配慮を行いながらひとつ政策運営をやっていただきたいということをお願いしたいわけです。そういう意味から、河本長官はそのことはよくおわかりになっていらっしゃるようでございますから、ひとつ懸命にがんばっていただきたいと思います。  そこで、また建設大臣ですが、住宅金融公庫は、所管は建設大臣ですか。今度の法律では、何か引き上げる余地を残しながら引き上げないというような変な法律になっているのですが、建設省、住宅金融公庫の金利問題についてどうお考えになっているか。局長でも結構ですが、そのかわりに、これは大臣の見解として受け取りますよ。
  75. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 お答え申し上げます。  今回の行革関連の特例法案につきましては、先ごろの臨調答申の趣旨にのっとりまして、特例適用期間、すなわち昭和五十七年度から昭和五十九年度までの三年間におきまして、国の財政収支の改善に寄与するための特例措置を設けるというものでございまして、その一環といたしまして、住宅金融公庫法等の貸付金利の見直しが機動的かつ円滑に実施できるような体制の整備を図るための現行貸付金利の上限を変更することができるということで、この法案を提出いたしたものでございます。  なお、本法案におきましては、公庫の貸付金利の上限を変更する場合におきましては、「居住環境の良好な住宅の建設等の促進」「のために当該貸付金の融通を円滑にすべき社会的経済的必要性と国の財政負担との調和が図られるよう考慮しなければならない。」と規定しているところでございます。したがいまして、将来、法制定後は、公庫の貸付金につきましては慎重な配慮を必要といたそうというふうに考えておりまして、今後の政令作成段階におきまして十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  76. 正木良明

    正木委員 その条文はたった三年間でしょう。五十七年度、五十八年度、五十九年度の三年間でしょう。三年間に上げる見込みがないなら、そんな条文は削ってしまえばいいとぼくは思うんだな。ということは、それが入っているということは、この三年間に住宅金融公庫の金利を上げるかもしれませんよ、要するに上げるだけの道を開いておきますよということであって、上げられはしませんよ、こんなもの。この三年だけ上げられて、この三年間もし上がるとするならば、それじゃもうわしら家を建てるのはやめよう、それで昭和六十年まで待とう、こうなるですよ。これはどういう意味でつけたのか、ようわからぬですわ。  たとえば、われわれもいろいろと調査をし、研究機関との話し合いの中で見通して、こういうことを言っています。住宅金融公庫の金利を仮に一%引き上げると、すでに最盛期に比べて年間三十万戸も落ち込んでいる住宅建設がさらに十万戸近く落ち込むだろう、だから、政府の住宅建設五カ年計画、五十六年度から六十年度の七百七十万戸の達成は絶望的になるだろうと言われています。もし三十万戸の住宅投資が行われておれば、これは去年落ち込んでいるのですが、四兆円近い金が市場に出て、GNPを一・五%引き上げていたはずなんです。それぐらいこの民間住宅建設が去年の昭和五十五年の経済成長の足をうんと引っ張ったということは事実なんです。  仮にこの一%の問題で論じていきますと、一般個人木造住宅で公庫融資五百万を借りて、二十五年元利均等で返済した場合に、年間返済額は四十万五千二百八十八円。一%金利が上がりますと、年間返済額は四十四万五千六百三十二円となって、四万三百四十四円ふえるのです。二十五年間の合計で負担増百万円になると言われているのです。問題は、いま五百万で家の建とうわけはないので、木造の場合、金融公庫が貸してくれる限度額が五百万円だから、五百万円で計算したんですよ。このほかに銀行ローン等がありますから、この金利がふえるということはもう大変なことになる。要するに、住宅金融公庫として低利資金を融資して民間住宅を建設されるという当初の目的を放棄したことになると私は思うのです。  マンション融資の場合ではさらに負担が増すのです。これは一千万円貸してくれますから、一千万円借りて三十五年元利均等で、これは鉄筋コンクリートですから償還期間が長いわけですね、元利均等で年間返済額が六十四万四千四百十二円。一%金利が上がると年間返済額が七十二万四百九十八円になって、八万五百四十四円。三十五年間の合計では三百万円近い金利がよけいかかるのです。建てませんわ。  ですから、要するに、財政事情と言っていることは、もう民間住宅建設が非常に落ち込んでいる現状においては、上げられる道は開きますが上げませんよという法律だと見なければなりませんね、非常に善意で解釈をいたしておりますが。もし仮にそうであるとするならば、こんな法律、三年間上げられないのだったら、やめた方がいいとぼくは思うのですが、建設大臣、どう思いますか。
  77. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  非常に善意に解釈していただいて、大変ありがたい限りでございます。もうすでに正木先生十分御承知のようなバックグラウンドのもとに住宅政策をやってきておるわけでございますが、御案内の行財政改革という大命題の中で、一つのこの問題だけを取り出して云々という状況にありませんので、その点はいろいろと政治的に政策的な配慮をもってこうした形になったものと私は承知いたしておるわけでございます。  御案内のような住宅環境が非常に厳しい中で、なおかつ経済波及効果を考えますと、この住宅の落ち込むことがかえってマイナス要因になるということは、もう先生のお言葉で十分であろうかと思います。そうしたことを考えながら、なお法制定後に政令等にゆだねる場合につきましては、時の経済あるいは社会環境を財政当局とよく話し合って進めてまいる、このような考え方で対処いたしておるところでございます。御理解をいただきたいと思います。
  78. 正木良明

    正木委員 大蔵大臣、どうですか。要するに、ああいう法律をつくった目的、それはどういうふうに運用していこうとしているのか、そういう可能性はあるのかということです。
  79. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは御承知のとおり、住宅公庫は五分五厘ということでございますが、住宅公庫などが政府から借り入れる借入金の最高利率が六・五%を超える場合に、政令で当該超える部分の範囲内で貸付金の区分、種類ごとに貸付金の利率にその超えた部分を加算したいということでできたのです。  極端なことを申し上げますと、極端なことですよ、そういうことはなければ一番結構なことですが、仮に金利水準がヨーロッパ並みにうんと上がって、一〇%、アメリカは一四%ぐらいですね、住宅公庫のお金というのは。短期のプライムで二〇%ぐらいですから。そういうように上がってくると、際限なく、仮に一〇%も金利が上がるというような状態のときには、五・五で動かないということになると、それはもう四・五%も利子補給しなければならない。数千億円という金になってしまうわけですね。そういうような場合、これは極端な話でございますが、非常に金利の変動が諸外国で強いという背景もあって、実はこの準備をしたわけでございます。そういうわけでございます。
  80. 正木良明

    正木委員 理論的にわかります。それは、どんな事態が生まれてくるかということは予測できないという立場に立ちますと、そういう高金利の時代が来るかもわかりません。しかし、大臣、そういうときが来たということを想定してごらんなさい。先ほど申し上げたように、いま家を建てるのに、土地代を別にしてやはり一千万か一千五百万、土地代を入れたらもう三千万、東京ではそんな値段ではもうとても買えますまい。そういう状況の中で、木造の場合たった五百万ですよ。ということは、ローンの方はスライドしてどおんと金利は上がっていくでありましょうから、そっちの方の金は借りられません。もう庶民は家は持てませんよ。そうすると、その五百万くらいじゃ、幾ら安くてもしようがないからというのでもう家を建てなくなるのです。  だから、大事なことは、そういうときが来たときにこっちの利子もスライドできるようにしておきたいという気持ちはわかるけれども、そういうような形になったときを考えてみますと、恐らく家は建ちませんわ。何とか逆ざやを埋めたい、逆ざやを埋めるための財源はできるだけ圧縮したいという気持ちはわかる。しかしそれと同時に、どう考えても昭和五十七年、五十八年、五十九年のこの三年間でそんな高金利時代が来たとしたら、これはもう金融公庫どころの話じゃないですな。恐らく日本の経済活動なんというものは大変なことになってしまうでしょう。経済運営ができなくなるのじゃないでしょうか。  そう考えてくると、少なくともこの特例法というのは三年間の時限立法なんだから、その時限立法の範囲内でそんなことが予想できるのでしょうか。私はそういうことは予想できないし、またそういうことにしてしまうような政策運営や経済運営では困るということは申し上げなければいかぬと思います。そういうことで、この点についてはぜひひとつ再考をお願いしたいと私は思うのです。
  81. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、現在でも七・五%のコストについているわけですから、六・五%を超えているわけです。私どもとしては、これからの経済の情勢等を見なければなりませんが、住宅の問題は、一%の金利でうんと建たなくなる、建つということはいかがなものか、ここらのところはもう少し詰めさせていただきたいと考えております。したがいまして、今度の法案についてこれを再考して削るというようなことは考えておりません。
  82. 正木良明

    正木委員 実は一%ぐらいの値上けじゃ大したことねえやという人は五・五%じゃないのです、もうすでに現行制度が。そうですね。年収八百万以上は高いのでしょう。五・五%じゃないでしょう。どうですか。
  83. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 ただいま御指摘がありましたように、昭和五十六年度から年収、粗収入でございますが、年間八百万円を超える方々に対しましては、いわゆる財投金利、すなわち現在では七・五%でお貸しするというふうに制度を改めております。
  84. 正木良明

    正木委員 だから、大蔵省というところはちゃんとそんなこと、すでにやるべきことをやっているわけですよ。銭を取ることについてはできるだけ厳しく、銭を出さぬことについてもできるだけ厳しく、だから昭和五十六年度は年収八百万円以上には五・五%という優遇金利じゃないのです。だから、ぼくは言っているのです。八百万円以下の人たちは、一%の金利が上がったってこたえる人たちなんです。だから、そういう人たちに金利を上げるということなら、家は建ちませんよ。わかっていただけますか。  ですから、そういう意味において、この問題についてはどうしてもこの法律をとれぬというのだったら、こうしてもらいましょう。五・五%以上この三年間値上げはしません、こう言ってください。
  85. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはせっかくの御提案でございますが、する場合はもちろん政府としてもいろいろ相談をしてやるわけでございますけれども、いまここで私が、三年先のことまで、一切値上げはいたしませんということを公言するということもできないことでございますので、何分よろしくお願いを申し上げます。
  86. 正木良明

    正木委員 ですから、こういう点が非常に弱い者いじめという批判の出てくるところなんです。こういう点はもう思い切ったらいいと思うのです。要するに、いままで所得制限が全くなくて、住宅金融公庫からお金を借りる人は全部五・五%の優遇金利だった。だから、これは財投から金を借りている金利よりもその方が安いわけですから逆ざやが出てきて、財政負担をしなければならぬ。それをできるだけ少なくしようというので、昭和五十六年度から年収八百万円以上については五・五%の優遇金利を外した。これが精いっぱいじゃないでしょうか。  ですから、そういう点について、私はどう考えても、この三年間、そういう道を開いていくということについては非常に残念でございます。したがいまして、これはまた折々その問題についてのチャンスがあるでありましょうから、これは一つの法案修正問題の大きな方針になりましたね、それだけはひとつ御記憶をいただきたいと思うわけでございます。  時間がもうございません。それで、最後に総理大臣中曽根長官にお聞きいたします。行革特別委員会中曽根長官が物を言わなかったというのじゃ、末代までの恥であると思います。  実はもうちょっと時間をとって申し上げたかったことは何かといいますと、今後の行革の展望なんです。恐らく、今度の特例法案は節約できる金額も少ないし、内容も非常に局限されたものであろうと思うのです。したがって、本格的な行政改革といいますか、そういうものは来年の六月に出てくる第二次答申以後になってくるだろうと思いますが、それには当然、あなたがきのうもおっしゃった仕事減らしのために許認可問題も入ってくるでしょう。中央省庁簡素化、機構改革というものも出てくるでしょう。また、出先機関の整理統合の問題もあるでしょう。特殊法人の整理統合ないしは役人の減員という問題もあるでしょう。そのほかいろいろと本格的な行政改革という問題はこれから取り組まなければならぬのでありますが、これについて大体の見通しと日程というものがおわかりになったらお答えいただきたい。中曽根長官、お願いします。
  87. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず、基本的な考え方についてちょっと申し上げてみたいと思うのでありますが、行革については、過去の後始末という部面と、未来に向かって挑戦し改革する、そういう二つがございます。  それで、基本的な考え方としましては、明治以来、日本は欧米に追いつくために、ややもすれば指導とか統制とか監督とか、そういう発想で行政が続けられてきたと思います。大体欧米には追いついて、追い越してきたという部面もかなり出ております。そういう意味から、この辺でいままでの行政の体系を改めるときに来ておると思うのです。  そういう意味において、監督とか許可とか規制とかという部面をできるだけ民間の自由に任せて、創意力、活力を発揮させる、あるいはその指導、統制をやるために、官庁は縦割り行政で日本はやってまいりました、この縦割り行政というものを横にらみに、広い空間的な範囲内に広げていくという部面もまた一つございますし、指導、監督、統制という面から中央集権的な性格が非常に強くて、そのために地方支分部局、出先機関が相当できたり、地方公共団体との関係が非常に複雑にもなってきております。この辺も、中央に返すものは中央に返す、地方に渡すものは地方に渡し、整理する段階に来ているようにも思うのであります。  それと同時に、国際関係が非常に重要になってまいりまして、その部面に対する政策も新たに見直さなければなりませんし、情報化時代あるいは高齢化社会というものがもう目の前に来ておるわけでございますから、それに対応できる行政の体系も整備していかなければならぬ、こういうような考えに立ちまして、今次の行政改革を進めていく予定でございまして、その主な中心線が、来年の初夏に期待される答申に出てまいると思います。  それと同時に、せっかくそういうようなある程度の改革をやりましたのに、またそれが歯どめもなく乱費が出てくるとか、あるいはいろいろな部局ができ過ぎるとか、崩れてはいかぬ。そういう意味において、政府はこうあるべきである、中央と地方の関係はこうあるのが望ましい、官業と民業の関係はこれが正常化した姿である等々の行政ガイドラインとも言うべきものをつくって、将来に対するけじめもつけておく必要があるのではないか、そういうようなことどもが今後出てくる臨調答申の大事なポイントではないかと思っております。
  88. 正木良明

    正木委員 それがどの程度どういう内容であるかということはちょっと細かくはわかりませんけれども、これもやはり相当の勇気と決断の必要になってくる場面になるだろうと思うのです。だから、今度のこの法律案よりも何十倍何百倍もむずかしい問題が胚胎した問題について処理をしなければならぬということになりますから、どうかひとつそれにもしっかり腹を決めてやっていただきませんと、これだけで終わってしまうような、要するにそれは結果的にはできなかった、あの第一次臨調みたいな結果になってしまったということになるのでは、私は何とも国民に申しわけないことになってしまうだろうと思いますので、相当な決意で臨まれるであろうと思いますが、ひとつ総理の御決意を最後にお願いします。
  89. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今回の臨調の第一次答申は、五十七年度予算編成に向かいまして増税のない財政再建を図ろう、当面緊急を要する課題について御答申を願いたい、こういうことでお願いをした結果、答申をいただいた、それを最大限に尊重して一つの法律案にまとめたものでございます。  しかし、私が繰り返し申し上げておりますように、これは行財政改革の第一の着手であって、これから、正木さんが御指摘のように、本格的な全般にわたる行財政の思い切った見直し、改革というものが必要である、また、それを国民の皆さんは強く求めておる、こう考えております。したがいまして、政府臨調だけに任せるというようなことでなしに、政府自体も積極的な姿勢をもちまして、この行財政の改革につきましては今後一層真剣に取り組んでまいる考えでございます。
  90. 正木良明

    正木委員 これをもって終わります。ありがとうございました。
  91. 金丸信

    金丸委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  92. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大内啓伍君。
  93. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、政府に対してできるだけ率直に質問をいたします。   ちょうど一昨々日、サダト大統領が銃弾に倒れられまして、これはくしくも十月六日でありました。思い起こしますと八年前の一九七三年の十月六日、あの第四次中東戦争が勃発をいたしまして、そこから石油ショックが始まり、安全保障の面でも、実は経済の面でも大きな転換が日本と世界に求められてきたと思うのであります。いまこの委員会におきまして、財政再建行革という問題を討議するその一つの起点もそこにあったと、本当に感慨深いものがございました。  私は、今度の第二臨調の答申を拝見し、また鈴木総理の施政方針を拝聴しますと、何のために行革をやるのかということについてるる述べられております。そして、その中で政府が強調し、答申が指摘した最大のポイントは、対内的には活力ある福祉社会をつくるためにこれから行革をやるのだ、あるいは対外的には国際社会に対して貢献し得る国家をつくるためにやるのだ、私ども、これに大賛成であります。この厳しい財政状況の中で、私どもは与野党を超えてこの行革に取り組まなければならぬ、この決意に立って実はこの問題と取り組んでおります。  問題はその先なんであります。この活力ある福祉社会というものを行革の大きな目標にしながら、いまのところ政府からその構想は出ておりません。あるものと言えば、新経済社会七カ年計画程度でありましょう。他方、高齢化社会はいまどんどん進んでおります。  そこで、私は政府にこの際お願いをしたいのは、本当に政府国民に対して行革の協力を求めようとするなら、一体政府は将来に向かってどのような福祉社会をつくろうとするのか、その青写真なり計画というものをお示しになることが非常に重要な課題だと率直に思うのです。私は、いまそれを提示せよと言っても、それは無理な話だと思います。しかし、少なくともそうした福祉社会というものをつくるための計画というものを国民に示す用意がある、その決意はお示しをいただかなきゃならぬと思うのです。まず、行管庁長官からその点をお答えいただきたいと思います。
  94. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ただいまやろうとしておりまする諸般の行政改革で、国民の皆様方に御協力を求め、また場合によっては痛みを感ずるようなこともがまん願わなければならぬということをやります以上は、やはり未来に向かって夢があり、希望がある構図を示すことは政治として当然考えなければならぬことであると思います。  現在、いろいろ諸般の社会保障の体系、たとえば年金の統合や一元化、あるいは今朝来問題になっておりまする児童手当の将来の問題等々、いろいろ個別的に論ぜられておりますけれども、やはり総合的にそれらのすべてを含めて日本のあるべき福祉社会の姿というものを克明に勉強して、それを国民の前にお示しして国民の御批判を受けるということは、民主政治として正しいやり方であると思いまして、そういう点は大いに今後勉強して推進してまいりたいと思います。
  95. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、これは総理が政治生命をかけてこの問題に取り組もう、まさにこのリーダーシップを握られているわけでございますが、そうした将来の社会福祉計画といったようなものをお示しになる決意がおありでしょうか。
  96. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私が所信表明で述べております、新しい時代の求める活力ある福祉社会、これはどういうことを頭の中に描いておるかということをまず申し上げたいと存じます。  私は、日本におけるいわゆる福祉社会というのは、日本の伝統なりあるいは社会制度なり国民性なり、そういうものにしっかりと根をおろしたものでなければならない、このように考えております。それは、個人の自立自助、またそれを基調としたところの社会全体の連帯感、職場におきましてもそうでありますが、近所、隣、家族、そういうものを含めた連帯のこの関係、こういうものを基礎としたところの福祉社会、それに本当に適正な公的な福祉の施策というものが加えられて形成されたところの日本的な福祉社会であるべきだ、こう思っております。  それには日本人の創意と工夫というものが本当に生かされた活力のあるものでなければならない、またまじめに働いた場合におきましては、それに正当に報いられるようなものでなければいけない。こういうような、ただ与えられる福祉政策なり社会保障なり、そういうようなもので老後を終わるというのでなしに、自分の意思、働く意思があり、また働く場所が与えられ、そして正当にそれが報いられるような社会、こういうものが私は活力ある福祉社会である、このように考えるものでございますが、これを私どもは今後の政策の中に体系的に生かしていかなければならないものだ、こう思っております。
  97. 大内啓伍

    ○大内委員 そういう意味で、体系的に示していくとすれば、それは一つの計画として提示されてくることでありましょう。  私は、いま政府が持っておられます新経済社会七カ年計画、この主要な骨格はほとんど破綻してきていると思うのであります。たとえばGNPの伸び率、その弾性値、その税収見通し、あるいはエネルギー事情等々を見ておりますと、この新経済社会七カ年計画というものの骨格はすでに崩れている。したがって、いま総理がおっしゃられたような一つの構想というものを提示していく中で、これは当然改定されなければならぬ。この改定はお考えでしょうか。
  98. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 七カ年計画をつくりましたのは昭和五十四年の八月でございます。その後、第二次石油危機が起こりまして、経済事情、財政事情が相当変わりましたので、昨年の夏ごろから関係各省の間で数カ月間作業をいたしまして、ある程度の見直しをいたしました。つまりフォローアップをしたわけでございますが、そして一月に相当修正をいたしております。たとえば、七年間における社会資本投資二百四十兆、これは百九十兆に修正をする、こういうことが中心でございますが、そういう大幅な修正をいたしております。それはこの一月でございまして、それ以降、若干の経済社会の変化はございますけれども、これは毎年見直すことにいたしておりますから、いまお述べになりましたように、これを根本的にやり直すとかそういうことは考えておりませんで、毎年これまでどおりフォローアップをしながら若干の調整を図っていく、こういうことを考えております。
  99. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、七カ年計画の骨格がいかに崩れているかということを立証することは、そうむずかしいことではないのでありますが、時間の関係で――恐らく河本長官もよく御存じだと思うのです。  たとえば、あの計画の中には三カ所にわたって大衆消費税の導入ということが書かれていますよ。しかし、国会の決議においては、皆さんも御存じのように、この一般消費税の導入に対しては、国会の意思として、すべきではないということがきちっと決定されている。この一つを見たって、これは重大な問題ではありませんか。たとえば昭和六十年に租税負担率は二六・五%、この速度ももう相当変わっています。GNPを見てごらんなさい。一一・七%の速度で進むんだ。いま、みんな一けた台です。その基礎数字はみんな根底から崩れているのに、ただ毎年フォローアップしていけばいいんだ。しかも今度の行革の中では、活力ある福祉社会をつくるんだ、そしてその構想も総理みずからが示していかなければならぬということをこの委員会において言明されているときに、どうしていままでのそうした古い計画にしがみついて、ただ小手先の手直しをしていけばいい。私は、それは責任ある答えではないと思います。もちろん、これは政府の基本にかかわる計画でございますし、河本経企庁長官もこれまでこれを守っていきたいということを言われてきたわけでありますから、そう簡単にいま変更しますとはなかなか言えますまい。しかし、私どものこの意見というものは相当公正な意見だと思うのです。そして、実際にこの七カ年計画を立案してきた方方に聞いても、もはやこれは直す必要があるんだ、本当はこうお考えになっているのです。ですから、どうかそういう意味で、この七カ年計画の見直しという問題についても謙虚に取り組まれますようお願いをしたいのです。総理、いかがでしょうか。
  100. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御指摘の点は確かにあるのですが、たとえば消費税の問題ですけれども、当初は御案内のように一般消費税ということを想定しておったのでございますが、これはもうすでに一昨年の段階で、スタートした直後に、これはやらない、こういうことに決まっております。それでは大きな変化があるではないかという御指摘でございますが、しかし幸いにその後経済が回復をいたしまして税収がうんとふえるようになりました。当時は一般消費税で三兆の増収があると考えておりましたから、現在は自然増収だけで五兆を超えておる、こういう状態でございますから、この問題はそういう形で解決されたと考えております。  それから、税の負担率は昭和六十年に二六・五%、御指摘のとおりでございます。いま、だんだんとそれに近づいておりまして、いまのお話は近づき方が早いではないか、こういうお話でございますが、しかしまだ三、四年ございますので、現在はなお若干の差がございますから、もう少しこれは様子を見なければならぬと考えております。  それからまた、成長率は、確かに物価が安定をいたしましたので名目成長率は下がりました。しかし、実質成長率は計画の基本線どおりずっと続いておりまして、その点は変更はないと考えております。しかしながら、御指摘がございましたように、世界経済も非常に流動的でございますし、またそれに従って日本経済も動いております。そこで、先ほども申し上げましたように、毎年の情勢の変化を踏まえましてフォローアップをしながら調整を図りつつ、これを実行する、こういう考え方でございます。
  101. 大内啓伍

    ○大内委員 ここだけで議論を重ねるわけにまいりませんので、先に進みますけれども、やはり総理自身が新しい構想というものをこれから国民に提示していかなければならぬということもおっしゃっているわけでありますし、それがまさに今度の行革の一つの大きな目標でございますから、その点は本当に謙虚に取り組んでいただきたい、こう思う次第であります。  さて、そこでいろいろなことをお伺いしたいのでありますが、昭和五十七年度の歳出削減というものを一体どの程度やればいいのか、これもある程度議論がなされてきたわけでありますが、少なくとも増税を避けるための歳出削減、これを合理的に決めようとしますと、やはり来年度の、たとえば税収見通しは大体どのぐらいになる、あるいは税外収入、たとえば資産処分とか益金の納付といったようなものがどうなるのか、あるいは臨調の答申で厳しく見直せと言われたあの租税特別措置、あるいは不公平税制の是正といったような面での税の増収をどうするか、さらには国債の減額幅をどう見るのかといったような諸点が本当は確定してこないと、歳出削減程度、規模というものは本当は確定できないことは自明の理であります。ところが、今回の政府のやり方というのは、そういう歳入関係については大体不透明で、そして歳出カットが先行している。今度の政府行革案に対して、福祉の切り捨てではないかという批判の一端が私はそこにあると思うんですよ。したがって、少なくとも政府は、第二臨調要求している租税特別措置の厳しい見直しについては、大体この辺をこれから考えたい、不公平税制の是正についてもこのくらいのことは考えていきたい、そういう項目ぐらいはこの際示さなければ、私は、国民の共感、同意というものはなかなか得られないと思うのです。  渡辺大蔵大臣、この租税特別措置の見直しについてはどういう項目をお考えでしょう。そして、不公平税制の是正については、どういう点をお考えになっていこうとするのでしょう。これが示されなければ、国民の皆さんは、何だ自分の方ばかり切っている、お金が足りないからそのお金をどんどん切るのだ、しかし歳入の努力はちっともやらない、そういう不満だけが出てきて、この政府行革案を評価することになると思うんですよ。そういう意味でぜひ具体的にお答えをいただきたい。
  102. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 臨調答申の中でも、特別措置の見直しということがうたわれておることは事実でございます。したがいまして、われわれといたしましても、税の面からも特に不公正と言われるようなものについてもう一遍見直していこう、こう考えております。しかしながら、特別措置については、大内委員も御承知のとおり、毎回見直してきてまいっておりますので、そう大きな金目のものが出るということは考えられない。一兆円ばかりございますが、そのうち八割は個人関係、二割が会社関係、そのうちの八百億円ぐらいのものが中小企業関係ですから、千二百億程度のものしか残らないわけです。それも大体は政策的に必要と思ってつけられたものでございますから、全部要らなくなっちゃったというわけのものではない。けれども、やはりさらにもう一遍見直しをしていこう、こう考えております。  それから、税の執行面等についての不公平があるというようなことがよく言われておりますので、これらにつきましても調査その他の面を通しまして不公平の是正を図る。  利子配当については、金持ち優遇だというようなことがかねて言われておって、これについてはグリーンカードという制度を導入して、五十九年から総合課税にするということで、それは多少時間のかかることでございますが、一応の路線が敷かれて、その上で走っておるということでございます。  そのほか準備金、引当金等については、これは措置法ではございません。ございませんが、退職給与引当金、貸し倒れ準備金等についても、実際の繰り入れ率と税法上の認められているものとにギャップがあるのだから、もっと現実に合わせて下げてもいいじゃないかという議論がございます。理論的に言うと、学者先生方、お役所もそうですが、これは債務性のものなんで、そう簡単に下げられないという理屈が一応あるのです。ありますが、こういう厳しい財政事情の折でもございますので、現実とかけ離れた繰り入れ率をそのまま認めておくことはいかがなものかということで、これについては検討していきたい、こういうように考えておる次第でございます。  その他、もろもろのものがございますが、ただ税制の方は見直しても、いま程度のことでは大きな金額はとうてい期待できないわけでございます。  それから、税外収入の問題でも、去年電電公社を初めいろいろなことをして、取れるところはもう取ってしまったというかっこうになっておるものですから、それ以上にどこかで、いまのところ大口はなかなか見つからないわけでございます。しかし、小口でもいいから何かないかということで探してもらうことにはしておるわけであります。  しかしながら、いずれにしても大きな収入は上げられないとなれば、間違って収入がいっぱいあるように思われると歳出カットの方が緩んでしまう。これが一番問題なわけでございます。したがって、まずは来年の税収その他もみんなわからないわけでございますけれども歳出の方でどれだけ切れるかということを最大の眼目として、ゼロシーリングを成立させるために今回の法案等も御審議を願っておるような次第でございます。
  103. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、これは単なる額だけの問題ではなくて、やはり政府としての姿勢の問題にもなると思うのです。やはり不公平税制について政府が真剣になってメスを入れる。たとえば交際費課税にしても、あるいは給与所得が青天井の問題にしましても、その他についてメスを入れれば、私ども大蔵省等にもわれわれの考え方数字的にも示しておりますけれども、やはり何千億という単位のものが出る余地というものはなおあるんであります。  ですから、そういう点について、特に不公平税制については何か是正を考えないのですか。どういう項目をいまこれからお考えになろうとしておるのですか。
  104. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 言い落としましたが、交際費課税等についてもさらに検討を深めてまいりたいと思っております。  それから、私が言ったような準備金、引当金等についても検討は進めたいと思っております。
  105. 大内啓伍

    ○大内委員 きのうからけさにかけまして、国債の減額の問題が議論されておりました。大蔵大臣は、中期展望で示されております一兆八千三百億、これをひとつ考えていきたいというお話がございましたが、私はこれをひとつきちっと確かめておきたいのは、この一兆八千三百億という数字は、大蔵大臣としては最低限のものとして考えているのか。それとも弾力的な数字の一つの基準として考えるのか。この辺はなかなか重要なところなんです。たとえば昨年八月に総理は、二兆円の国債減額を打ち上げられました。そして十月の臨時国会で、二兆円の同じ減額を打ち上げられました。私はそのときに、他方において行革の方針というものがなければ必ず増税になっていくという警告をこの席でやったのです。この額をどうするかということはなかなかこれはむずかしいですよ、非常に不確定要素もありますから。  そこで、確かめておきたいのですが、この一兆八千三百億という減額幅は、もちろんこれは三年の平均の数字ですね。しかし、平均の数字でも、中期展望で出したこの数字については少なくとも最低限のものとしてやっていくんだ、いやそうじゃなくて、これは動かし得る数字なんだ、この辺だけははっきりしておいていただきたいと思うのです。いかがでしょう。
  106. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一番はっきり言えることは、五十九年までには赤字国債から脱却します、これはもうはっきり言っておるわけです。あとは一応割り算をすると、平均すると一兆八千三百億円ということになっておるわけであって、これを固定的に考えるかどうかということについては、そのときの経済情勢それから税の関係、そういうものがありますから、余り固定的に物を言ってしまって、また前言を翻すようなことも困る。したがって、よく経済情勢をにらんで、あるときはうんと多くして、あるときは小さくするということもあり得るかもわからない。でございますから、固定的には申し上げられません。ただ、明年度はどうなんだ。だんだん明年度が近づいてきました。暮れになればこれは当然はっきりすることでございますが、いまのところ私といたしましては、一兆八千三百億円程度はぜひとも減らしたいな、そう思っております。
  107. 大内啓伍

    ○大内委員 わかりました。  減税問題についてきょうも議論がありましたけれども、お伺いしたいと思います。  九月に国税庁が出しました昨年の民間給与実態調査、これがございます。これによりますと、民間給与の総額というのは七・三%ふえております。ところが、同じ昨年の所得税の総額はどのくらいふえているかというと、一四・八%ふえている。つまり、給与のふえ方に対して税金は倍ふえているということが国税庁の資料で出ております。また、これを一人当たりの収入に直しましても、収入は五・七%ふえているのに対して所得税の方は一二・三%ふえている。これも約倍であります。中堅所得者の所得税になりますと二〇%くらいふえている。過去四年間の民間サラリーマン、つまり一般に働いている方の平均収入は一八・四%ふえたんだけれども、所得税の方は四八・七%もふえた。いま個人消費の低迷という問題がいろいろ議論されておりますが、これはやはり一つの原因としては、賃金上昇と税負担の関係というものが大きな影響の一つである。したがって、そこに消費マインドの萎縮というものが起こってくる。しかも加えて、昭和五十二年以来所得税の課税最低限の引き上げが行われていない。私は、今日の減税要求というのはそういう一つの背景を基礎としたものであろうと思うのであります。  そして昨日、総理のこの問題についての応答を聞いておりますと、総理は二つのことを言っておるのですね。要約しますと、一つは所得減税をやると一般消費税などを国民にお願いすることになる。そしてもう一方では、しかしできるだけ国民の負担がないような腹構えで臨みたい。ちょっとハムレットのような、どっちに本当にウエートがあるのか、恐らく両方かかっているんでしょうが、総理としては、所得税減税をやるということは一般消費税の導入が不可避だというお考えをお持ちなんでしょうか。
  108. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私の申し上げておることが意を尽くしていなかったかもしれません。それは、いま政府が最大の政治課題として取り組んでおりますのは、行財政の改革であり、財政の再建である。そういう中で減税をするということはなかなか容易なことではない。    〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕 政府としては、この際、財政再建に当たりまして、大衆増税のような国民の皆さんに大きな御負担を願って財政再建をやろうという道はとらない。思い切った行財政縮減合理化でこれを達成しよう、こういう路線をとって、困難な作業でありますが、それをやっておる。そういう意味合いから、減税などということを一方においてやりますと、これは財政再建はなかなかできないことになります、そういう減税ができるような財政再建の明確なめどが立つような状況にならなければ困難でございます、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  109. 大内啓伍

    ○大内委員 大蔵大臣としては、五十七年度はなかなかむずかしいという議論をされておりましたですね。そして五十八年、五十九年についても不確定要素が多いので、なかなかいまそういうことは言えないという趣旨のことを言っておられたのですが、私は、ちょうどことしの二月、大蔵大臣にこの問題について質問しているのですよ。そうしたら、所得税の課税最低限の問題についても考慮すると言っている。ことしの二月二十五日の予算委員会における答弁ですね。  もちろんそれには幾つかの前提がありまして、ある程度削減ができた、あるいは税体系について見直しができた、あるいは五十九年特例公債脱却についてある程度めどが立った、こういう段階においては減税は考えますと言っているのです。ですから、そういう前提は、もちろんいまおやりになっている施策がさらにこれからも続いていかなければならぬわけですから、当然これは達成しなければならぬことなんです。そうすれば、財政再建期間中といえども減税はできるということになるじゃありませんか。大蔵大臣はそう言っているのですよ。いかがですか。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そのような目算がきちんと立てば、そして余裕財源を持てるようになれば、私は減税は決して回避するものではございませんということを申し上げたのは事実でございます。したがって、私としては、できるだけ歳出カットがスムーズに行われるように皆様にも御協力をお願いをしておることでございます。  五十八年度のことについて、増税はするのか絶対やらぬかというような御質問がございまして、それは経済情勢のことでございますからいま何とも申し上げられないと私は答えてきておりますが、しかしながら五十六年度における制度、施策が、いろいろ臨調答申その他がよく理解をされて、歳出カットにきちっとめどがつく、しかも税収は中期展望で認めるような税収が入るということになれば、これは増税の必要はないということになるわけでございまして、問題は歳出カットが本当にできるかどうか、これはやってみないことには、初めてのことをやるわけですから。今回、ゼロシーリングというようなことを、初めてのことをやるわけですから、まずこれで自信を一遍つけさしてもらって、その後の話だと私は思います。ですから、五十八、五十九という問題は、それでできればもちろん増税どころじゃなくて、あるいは所得税減税のめども立たない限りではない、一にかかって景気の問題と歳出カットにかかっておる、こういうことでございます。
  111. 大内啓伍

    ○大内委員 大蔵大臣は、一つの条件が整えば減税を考えたいということは個人的にもいろいろ言っておられましたよね。それから、土光臨調会長は、むしろ行革をやって、一年でも二年でもできるだけ早く減税をやることが必要なんだとさえ言っているのですね。私は、答申の精神の中にはそれが含まれていると思うのですよ。いま一般の国民というものは減税を非常に強く待望していますよ。労働四団体も減税については非常に熱心に取り組んでおられます。ですから、私は本当は、不公平税制に対しても、先ほど議論しましたけれども、本当にどこまで大蔵省として、大蔵大臣としてメスを入れるのかによっては、これは減税財源が浮かんでくるのですよ。ですから、そういう意味でぜひ減税問題については前向きにこれからも取り組んでいただきたい。中曽根長官も恐らく行革の責任者としてそういう問題を十分理解しているはずなんですよ。土光さんとも十分お話しになっているはずなんですよ。総理はいかがでしょう。この減税という問題を、そういう条件をできるだけ整えられるかどうかというのは政府の施策の問題なんですよ。何も客観的な一つの流れだけじゃないのです。政府の施策によってそのことが展開されてくるのです。ましてこれからの経済の中における個人消費の位置というものを考えてみれば、政府としてはそのくらいのことは積極的に考えなければならぬ。ましてや五十二年以来これだけ課税最低限の凍結が起こって、もうサラリーマンや働く人々の中には大きなふんまんが台頭してきている。最高の政治の責任者としても断然そのことは真剣に配慮すべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  112. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま政府といたしましては、歳入歳出全般にわたりまして思い切った見直しを行っておりますことは御承知のとおりでございます。ゼロシーリング、これも恐らくいままでかつてない手法であろうかと思います。さらに、法律によって決められておる補助率、交付金等につきましても、法律まで改正をし、国会の御承認を得て、そして歳出縮減を図ろう、合理化を図ろう、こういうかつてないような困難な仕事に取り組んでおるわけでございます。  一方におきまして、収入の面におきましても、増税を大衆にお願いをするというようなことは避けながら、できるだけ収入面でなし得ることはひとつやっていこう、こういうことも工夫をこらしておるわけでございます。  そういうような歳出歳入両面にわたった、かつてないほどの厳しい姿勢で見直しをやっておりますが、そして、先ほど来申し上げておりますように、五十九年までに特例公債からの脱却、私はこのめどがつきますれば、それはいま大内さんがおっしゃるようなことはやりたい、こう思うわけでありますが、いまそれに向かって全力を挙げておる、こういうことでございます。その点は御了承いただきたい、こう思います。
  113. 大内啓伍

    ○大内委員 防衛庁長官にお伺いをいたします。  私ども民社党は、今日の国際社会の中における日本の責任、また独立国家としての日本の果たすべき役割りという面から見まして、必要な防衛力整備というものはやらなければならない。それは単に日本自身だけの問題ではなくて、国際社会の中に生きる日本の責任である、こういう自覚を持っております。  その前提に立って実はお伺いをするのでありますが、もちろん防衛庁の費用というものは非常に莫大であります。したがって、その必要性を細めながらも、その中身についてはやはり国民の納得を得るような、きちっとしたチェックをやっていかなければならぬというふうにも思っているわけなんです。  そこで、最近ちょっと気になりますのは、十月五日のウォールストリート・ジャーナルに、アメリカの空軍当局者の話といたしまして、いま政府が導入しつつあるF15についての欠陥が大々的に指摘されました。これは長官も御存じだと思うのです。  その中身の概略というのは、一つはエンジンの疲労度が非常に大きい。あるいは長い飛行機雲を出すので探知されやすい。あるいは予定したスピードが出ないといったようなことが指摘されまして、大村防衛庁長官も空幕長に対して、十月六日直ちに調査をさせているようでありますが、その調査結果が出ているのであれば、この際御報告をいただきたいと思います。
  114. 大村襄治

    ○大村国務大臣 ただいま米国の新聞紙ウォールストリート・ジャーナルに掲載されました記事についてのお尋ねでございます。私どもも今週の初めにそういった記事があるということを承知いたしまして、目下米側に照会中でございますが、まだ返事は届いておりません。そこで、現段階において私どもの持っております資料によっての見解を、念のため申し上げさせていただきたいと思います。  まず、エンジンの疲労対策による推力の低下につきましては、部品等の交換率を低減させる施策の一つとして燃料流量を減少させる等の措置がとられておりますが、これらはいずれも基本的性能を低下させない範囲のものであると承知しております。ちなみに、航空自衛隊が取得しておりますF15、現在岐阜の航空基地に二機配備されて、ことしの五月から試験訓練を続行中でございます。それによりますると、所期の性能を十分発揮しているという報告を受けております。  また、御指摘の第二点の、乾燥した砂漠の上空を飛行する場合に、エンジンの排気ガスが遠方から視認されると報道されておりますが、わが国が実施した実用試験等においてはそのような事象は認められておりません。  また、速度につきましては、すでに最高速度二・五マッハを確認しており、これまで実施した実用試験等の結果から見ましても、十分運用上の要求を満たしているものと考えております。  また、F5とF4との比較につきましては、私どもは、これまで得られましたF15に関するデータはすべてこれらの機種を上回っており、また実施中の日米共同訓練等においてもF15の優秀性は十分立証されているものと考えております。  以上、お答えします。
  115. 大内啓伍

    ○大内委員 このF15というのは日本がこれから百機導入する。先般のハワイ会談においては八十機さらに追加を要求されている。これは莫大な買い物であります。もしここに欠陥があるということになれば、これは大変な税金のむだ遣いになる。したがって、防衛庁長官におかれましては、いまアメリカに照会中ということでございましたが、この辺については本当に慎重にその性能調査を十分やっていただきたいと思うのです。ああいう報道がなされますと、やはり国民の皆さん非常に疑心暗鬼になるのです。その点を政府が明確にしておくということがこれからの防衛力整備にとっても非常に重要なことだと思うのです。そのことを強く要望いたします。
  116. 大村襄治

    ○大村国務大臣 十分調査いたしまして、万遺漏なきを期したいと考えております。
  117. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、国際的にいま日本というのはたくさんの要求を受けている中で、もう一つの防衛上の問題は、防衛分担金の増加という問題が出てきていると思うのです。私もつい数日前にアメリカに参りまして、ワインバーガー国防長官あるいはウェスト国務次官補、ジョーンズ海軍少将等等とこの問題について話してきました。アメリカは相当切実ですね。この防衛分担金については、アメリカは施設関係費だけで五〇%アップしてほしい、その他光熱関係その他についても配慮をしてほしい、こういう強い要求があります。しかし、これは大蔵大臣予算上の問題にすぐなってくるわけですね。アメリカのこの要求に対してはどの程度こたえようとされているんでしょう。
  118. 大村襄治

    ○大村国務大臣 要求官庁としての立場でまず申し上げさしていただきたいと思います。  日米安保条約を堅持することがわが国の安全保障体制の重要な骨幹の一つであると考えておりますので、これを円滑ならしめる上からいたしましても、在日米軍の在留経費の負担につきましては、安保条約、地位協定の許す限り、できるだけの努力をしてまいる所存でございます。  そこで、労務経費につきましてもこれまでもいろいろお話があったわけでございますが、これまでにとりました措置が現行の地位協定上の限度と考えております。その範囲内で今後も実施してまいりたいと考えておるわけでございます。また、施設の整備、提供につきましては、安保条約の目的達成との関係を考慮し、また米側の要望等もしんしゃくいたしまして個々に決定してまいる所存でございます。最近の会談等の機会にいろいろ要望が出ていることは承知しているわけでございますが、ただいま申し上げましたような基本的な考え方に沿いながら、今後ともできる限りの努力をしてまいる所存でございます。
  119. 大内啓伍

    ○大内委員 アメリカの要求をまるまる受け入れようといたしますと、やはり地位協定上の問題が起こってまいります。しかし、これは非常な大問題になりましょう。たとえば労務費についても、これ以上負担することはなかなか地位協定上むずかしい。何か特別立法等をお考えですか。
  120. 大村襄治

    ○大村国務大臣 労務費の問題については、現行地位協定の範囲内で処理してまいりたいと考えております。したがって、特別立法は現在考えておりません。
  121. 大内啓伍

    ○大内委員 別の問題でありますが、私はことしの二月、防衛庁長官にポストナイキの問題についてお尋ねをいたしました。そのときに防衛庁長官は、御記憶のとおり、アメリカ製のパトリオット、そしていま防衛庁の抜本で研究しているナイキフェニックス、これを公平にひとつ考えていきたい、ここに速記録がございますが、そういう趣旨のことを私にお答えになりました。私はこれを公平に調査して、どちらに決まってもいいと思う。しかし、公平でないとすれば、それはちょっと私としては問題があるんですね。今度の防衛庁の概算要求を見ておりますと、パトリオットに対する調査費は五億円組まれています。ナイキフェニックスについてわずかに一千八百万です。どうしてこんな格差をつけるんですか。恐らく私の知っている範囲内においては、アメリカから見積もり書をもらうためにはその程度の費用が必要なんだ。しかし、アメリカと西ドイツの間にだってジョイントスタディー、つまり共同研究をやって、この問題についてはある程度答えを出していますよ。西ドイツとも交渉されたんでしょうか。私はこんな例はまず見たことがない。一つの見積もり書をもらうために五億円の調査費を計上して、その性能についてお知らせをいただく。  私は、昨年あの短SAMの問題を追及したときに、あの白煙航跡の問題あるいは全天候性の問題について疑問を提起し、この問題については大内議員の指摘を十分配慮しながらこれから改良していく、そういう意味で、私はやむを得ないことであろうということで、防衛庁の方針をのんだのです。そりときに和田装備局長は、兵器の国産という問題がこれからの日本の防衛問題を考えるときに非常に重要なことなんだ。ですから、多少の価格の問題は別にしても、そういう面での中長期的なメリットというものを配慮していかなければならぬ。  もしパトリオットをポストナイキという形で買いますと、私はこの二月の段階では大体一兆二千億円以上要る、こう言ったのですね。しかし、あのときのレートは二面円です。いま二百三十円です。しかも、いまドイツは、ここに、これは防衛庁の専門家の方はきっと知っていると思いますが、ディフェンス・インダストリー・リポートという、防衛問題では非常に権威のある雑誌の一つです。これを見ますと、このパトリオットを買おうとしていた西ドイツ政府は、財政上の拘束から一九八七年までパトリオットの導入を延期するという方針をここで述べています。なかなか買い切れないです、あれは高いから。NATOの諸国もなかなか買い切れないのですよ。そして日本だけがそれを買おうとしたら、私が指摘したような一兆二千億なんていうものじゃとうていおさまらない。いま防衛庁のシーリングは七・五%で、これが多い少ないと議論している。しかし、このパトリオットを入れれば、恐らく防衛庁の予算要求というのは二〇%を超えちゃうのじゃないですか。一%というGNPの限界は飛び越えちゃうのじゃないですか。それでも五億円の調査費を出して研究するのは、私は大いに研究してもいいと思うのです。しかし、公平にやってくださいよ。防衛庁長官は私にそう約束したのじゃありませんか。私は、どっちに決まったっていいのですよ、公平ならば。どうしてそんな不公平なことをするのですか。
  122. 大村襄治

    ○大村国務大臣 後継ナイキの問題についてお尋ねがございましたので、お答えを申し上げます。  現在、防衛庁といたしましては、現有の地対空誘導弾ナイキ及び基本ホークにつきまして、性能、補給、整備性等の面で、これを長期にわたって維持することは困難であるとの理由から、できるだけ早期に後継システムの整備方針を決定することといたしております。  そこで、この後継につきましては、ただいまお話がございましたとおり、ナイキの後継としては米国のパトリオット及び現有ナイキの改良案であるナイキフェニックスの二つが候補になっております。また、基本ホークの後継としては、このパトリオットのほか、改良ホーク、改善型も有力と考えられております。そこで、五十七年度において行おうとしております研究は、右のとおり有力な後継候補である。パトリオットについて、性能、経費等の細部に関する研究を米国の支援を得て行うほか、ナイキフェニックスについてもシステムの枢要な事項に関し、引き続き研究を行うことといたしております。  そこで、概算要求の経費でございますが、五十七年度においては、パトリオット関係約五億二千万円、ナイキフェニックス関係約一千九百万円。先生、一千八百万円と申されましたが、百万円ほど多いのです。これを要求したわけですが、これらはいずれも過去に予算を認められてきた調査研究とも相まって、防衛庁として公正な立場から、できるだけ早期に次期防空ミサイルシステムを選定する上で、必要な調査研究を行うために要する経費であると考えている次第でございます。  確かに、本年二月の予算委員会の席上、大内委員から、短SAMについて国産という一つの政策を防衛庁は打ち出したが、後継ミサイルについてもこれを貫徹するなら政策として一貫性がある、その辺を十分検討していただきたいとの御発言があり、それを受けまして、私から、その貴重な御意見を重要な参考としながら慎重に検討を進めてまいりたいという答弁をいたしたところでございます。  主要装備の選定におきましては、導入後の維持、補給の点から、また防衛生産基盤等技術力の維持、育成の観点からいたしますと、国産のものが望ましいと考えておりますが、このほか性能、価格、導入可能時期等をも含め、総合的に判断する必要があると考えておりますので、大内委員の御意見を引き続き参考とさせていただきながら、後継ミサイルの選定に当たりましては、この観点から総合的にかつ慎重に検討してまいりたいと考えている次第でございます。
  123. 大内啓伍

    ○大内委員 私の申し上げているのは、できるだけこういう問題は公平にやってほしいということだけではなくて、この委員会はこれから財政再建をやらなきゃならぬというような重要な問題を抱えているだけに、そういう面を十分配慮しながらそういう問題を慎重にお考えをいただきたいということを指摘しておきたいと思うのであります。  私は、歳出削減に関しましてそうした幾つかの点を聞いてまいりましたが、次に国民福祉の問題について、もうこれはすでに相当いろいろな委員の方から聞かれておりますので、簡略に聞いていきたいと思います。  まず、厚生年金等の国庫負担の繰り入れ減額分の後年度負担の問題でございますが、これは財政再建期間が終われば直ちに返すのか、それとも大蔵大臣が指摘しておりますように、やはり財政事情によって弾力的に考えるのか、この一点だけ、厚生年金等の国庫負担の減額についてちょっと伺いたいと思います。
  124. 村山達雄

    ○村山国務大臣 お答えいたします。  これは財政再建期間が済みますと返してもらうわけでございます。問題は、その返す期間をどうするかというところに財政上最大の焦点があると考えるということでございます。
  125. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、たとえば五十九年が終わった段階で直ちに返してもらうというのが厚生省の方針ですか。
  126. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いまのところ、原則的にそう考えているわけでございます。と申しますのは、いずれにいたしましても積立金の運用利子相当分はずっと引き続いて取ってまいりますので、年金財政には支障がないわけでございます。しかし、やはり財政再建期間が済んだら返してもらうというのが普通の常識じゃないだろうか。問題は、やはり最後はその繰り延べ期間がどうなるか。長くなりますと、国の方の財政もいい面もありますし、また金利がかさばって、そこにおのずからチェック・アンド・バランスが働きまして、両者の意見が統一することは間違いない、かように思っているわけでございます。
  127. 大内啓伍

    ○大内委員 大蔵大臣もそれでいいですか。
  128. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 よく相談をいたしたいと思っております。大体そういうことであります。
  129. 大内啓伍

    ○大内委員 大体というのはむずかしいですね。五十九年が終わったら返すということですな。そういうふうに理解をしておきましょう。  もう一つの問題は、児童手当、これもずいぶん議論をされましたから、私は一つだけお伺いをしておきたいと思うのでありますが、今回の政府の出した措置、これは自営業種の場合とそれからサラリーマンの場合と、所得制限について格差をはっきり認めている。これは別の物の言い方をしますと、不公平税制というものを政府そのものが認めたということにもなるのです。こういう格差というのはどういうふうにお考えになっているのですか。
  130. 村山達雄

    ○村山国務大臣 誤解があるといけませんので、私からあらかじめお答えさせていただきますが、児童手当に関する限り、所得制限の金額は変わらないわけでございまして、いま考えておりますのは、収入ベースでございますけれども、四百五十万を三百九十一万にする、その点では変わらないのでございます。ただ、そういたしますと、いわば対象児童のうち、現在自営業者は九〇%カバーしております。八〇%ですか。ところが、被用者の方は四五%に下がる、こういうことになるわけでございます。  そこで、この手当の支給率の公平を図るという意味から、事業主の方にお願いいたしまして、それをやはり被用者についても八割までカバーできるようにひとつ特例給付でお願いいたします。ここには国庫負担は一つも入っていないのでございます。  したがいまして、今度の児童手当は、詰めて申しますと、現在のいわゆる所得の把握がどうであるかこうであるかということは、直接動機にもなっておりませんし、何にもなっていないわけでございまして、現実の支給率の公平という観点からそのような措置をとったわけでございます。
  131. 大内啓伍

    ○大内委員 その国庫負担という面から言いますとそういう議論になると思うのでありますが、現実には、自営業者は四百五十万円であったものが三百九十一万円になる、そしてサラリーマンは四百五十万円が五百六十万円になっているわけでありますから、その所得によって児童手当の格差が生じていることは歴然たる事実だと思うのであります。しかし、その問題はもうずいぶん議論をされましたし、これ以上議論はしますまい。  もう一つの問題は、高額医療費の自己負担限度額の引き上げの問題なんです。これは三万九千円から五万一千円に引き上げた。これは長期療養者にとっては非常に痛いことであります。特にいま差額ベッドあるいは付添看護婦等が、長期療養者にとっては大きな負担になっているわけでありますが、これはおやめになったらどうですか。どうしてこんなことをおやりになるのです。
  132. 村山達雄

    ○村山国務大臣 まず、差額ベッド、それから付添看護料の方からちょっとお話し申し上げますと、去る五月二十三日に中医協で審議いたしまして、今度医療費の改定が六月一日から実施されました。そのときに、やはり差額ベッドの問題、それから付添看護料の問題が非常に問題になりました。そこで、従来言われておったような三人以上の部屋についてはやめる。そのかわりに重症者について、室料の特別加算をいたしました。また、付添看護料につきましても、重症患者については保険の中に、従来の基準看護料のほかに、やはり一人四千円というのを入れたわけでございます。それをてこにいたしまして差額ベッドを解消しようということで、国公立につきましてはすぐに行政指導を始めました。また、その他についても、物によりまして大体一年くらいのめどとか、遅くとも三年とかいうめどを中医協で決めていただきまして、その実施状況を中医協に報告することになっておるわけでございまして、そういう保険外負担については、いま鋭意解消に努めているところでございます。  もう一つの、高額医療の問題でございます。これは御案内のように、患者負担の三割ないし二割のうち、余り高額のものは、これは患者に気の毒ではないか、こういうところから、四十八年に、その高額分につきましては保険負担ということにしたわけでございます。しかし、現在の三万九千円というのはいまから五年前に設定された金額でございます。その後五年間たっておりますので、所得もかなり上がっておりますので、無理のない範囲内でこれはぜひひとつ是正さしていただきたい、無理をするつもりはございませんが、所得の伸びを考えて考えてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  133. 大内啓伍

    ○大内委員 いま差額ベッドあるいは付添看護婦のいわゆる負担の軽減について前向きに検討しよう、これは私は大変結構なことだと思うのです。しかし、高額医療費の自己負担の限度額の引き上げという問題については、これは大蔵省におかれてもなお最終的には慎重にお考えをいただきたいということを要望しておきたいと思います。  住宅金融公庫の金利問題につきましては、午前中も相当微に入り細に入り議論されておりましたので、私もこの問題は非常に重要だと思って質問を準備しておったのでありますが、あえて中身に入って申し上げることは遠慮いたしますが、私ども民社党といたしましても、いまこの住宅問題というのは、特にこの住宅金融公庫の利用者が中堅所得層であるということ、それからもう一つは、七月二十八日に住宅・宅地関係閣僚会議におきましては公庫住宅の融資の改善、さらに一層改善しなければならぬということが確認されていること、さらには八月二十五日の政府・自民党の合意では、この金利については現行を据え置くということを合意していること。それから、もし五・五%が一%引き上げられますと、こういう状況が起こるのですね。たとえばマンションの購入のために一千万円を三十五年で借り入れる人は、金利五・五%の場合は二千二百五十五万円、端数は切り捨てますが、これだけ払えばいいのですね。ところが、六・五%になりますと、二千五百三十七万円支払わなければならない。その差は約二百八十二万円、年間にして八万円以上の出費が起こってくるのですね。これはやはり一般の国民、庶民にとっては非常に大きな問題だと私は思っているのです。  ですから、私どもといたしましても、この住宅金融公庫の五・五%については少なくとも財政再建期間中、三年間は絶対に上げない、そして今度の法律の中にこれを含めているということも、したがっておかしいと思っているのです。こういう決定をやりながらその法律の中に入れてくるなんということは、本当に政府・自民党としても自己矛盾だと思うのです。そのことをひとつ改めて大蔵大臣からお伺いをしておきたいと思います。
  134. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは先ほどもどなたかにお答えしたわけでございますが、公明党にお答えしたわけですが、御承知のとおり七・五のコストで五・五でいまお貸しをしているわけです。この金利負担は莫大な金額になるわけでございまして、政府財政事情からすると、これは国民の税金で補てんをしているわけですから、こういう御時世でございますから、家を建てる方が年間千数百億円の助成を受けるということもそれは結構なことではございますが、それを負担しておる人もいるというのも事実でございます。一方、税金を払わないような方も多少の痛み分けといいますか、何らかの影響があるわけでございますので、こういうことを考えますと、景気の問題にどういう響きがあるか、もう少し詰めてみなければわからぬことでございますが、これを一%まるまるということでなくとも、何かもう少しうまい工夫がないかということで、一応法案には出さしていただきたいというお願いをしておるところでございます。
  135. 大内啓伍

    ○大内委員 何かうまい工夫というのは、何かあるのですか。何か含みがあるのですか。何かうまい工夫というのは、私はぜひ知りたいのですが、いかがですか。
  136. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 何か区分その他でうまい工夫できないかということでいま専門家に研究をさしておるところでございます。
  137. 大内啓伍

    ○大内委員 本当はそういう確信がなくてその法律についての改正をこの国会に提案するというのは、私はちょっと政府としては不見識だと思いますよ。しかも、政府と自民党との間で財政再建期間中についてはこの金利は変えないということをさんざん合意して、新聞にもあらわれて国民の皆さんにも知らしておいて、そして、その法律については変えるのだ、そして、いまお話を聞きますと、いま専門家の皆さんにお話しして何かうまいものがないかどうか、とりあえずまあ出しているだけなんだ、こういう法案の出し方は、私は余り責任ある態度ではないと思います。この住宅金融公庫の金利というのは、これは一般国民にとっては切実なんですよ。渡辺大蔵大臣のおうちはどうか知りませんけれども、本当に切実なんですから、ぜひ真剣に考えていただきたいと思うのです。  中曽根長官にお伺いいたします。公務員削減問題です。     〔小渕(恵)委員長代理退席、藤波委員長     代理着席〕  これは今度の臨調で、言うまでなく、これから五年間に五%。私は、いま国民の実感として――ここにもお役人がたくさんおられるわけですけれども、お役人の数がちょっと多過ぎるんじゃないか、この実感はぬぐえないものがありますね。したがって、行革の一つの大きな問題は、仕事を減らすことによって人が減っていく、そういう順序にはなるわけなんですが、この公務員削減についてもっと思い切った措置というものを、政府は、答申の線にかかわらず考えるべきだと思うのです。  というのは、たとえば第一次計画を見てみますと、これは昭和四十三年から四十六年ですが、四年で五%削減するのです。第二次の場合は三年で五%です。これは順々に言っていけばきりがないのですが、今度の五年の五%というのは一番少ない計画なんです。しかも、純減という問題になりますと、いままでの実質削減率は〇・五%から一番多くて〇・七%です。削減はしたけれども同じようにふやしちゃう。減ったものはたった〇・五%か〇・七%。これじゃ行政改革になりませんよ。だからこそ、純減という問題をいま中道四党は真剣になって皆さんに提案しているのです。  では、どうやってやるか。私どもの一つの考え方では、地方事務官、これは現在二万一千六百六十五人おられます。それから、いままでの採用率の削減を若干やりますと、これは数学的にいろいろございますが、二万人以上は間違いなく減るでしょう。そういうところに本当に手をつけてくれれば、いままでのような〇・五%とか〇・七%なんというそんなインチキなごまかしじゃなくて、本当の公務員削減ができるのですよ。長官、いかがでしょう。
  138. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大内さんの御議論は、傾聴に値する御議論であると思います。ただ、四十二年の第一次の削減計画以来切りに切って、相当切りまくってきたわけで、切り身が相当少なくなってきたということなんでございます。四十二年末の定員で、総定員法がつくられてから凍結されておるものですから、その四十二年以降がちょうど高度経済成長の時代に入りまして、そのためにいろいろな行政がふえてきたわけでございます。特に福祉関係もふえてまいりましたし、国立医科大学を各県に一つずつつくるという大きな仕事も入りてまいりましたし、二百海里の問題も出てまいりましたし、それから各地で飛行場がジェット機化しまして管制要員が非常に要るという問題やら、あるいは不動産関係の仕事が非常に繁忙になりまして登記所が要るとか、そういうようなことが非常に出てきましたのを抑えてきたわけで、それでネットで約一万人弱それでも減らしてきた。そのために一般の各省庁行政職は大体一割前後減らしているわけです、五%じゃなくて。そのかわり大学の先生は約二万数千人ふえておる。これは大学病院も含まれまして、学校関係に各省庁の減らした分をほとんど回して、それでようやく国立医科大学を開設してきている、こういう状況でございまして、当局としては一生懸命実はやってきたわけです。にもかかわらず、いまのような状態でございますから、相当切ってきた上に、さらに五%をまず切りまして、そして今度は増加するのを抑えていこう、こういう考えに立ちまして計画をつくっておるところでございます。
  139. 大内啓伍

    ○大内委員 いま長官のおっしゃっていることを聞くと、相当減らしてきたようなことをおっしゃっておられますが、実際には、長官よく御存じのとおり、この十年間に減らしたのは十四万三千人ですよ。逆にふやしたのが十三万四千人ですよ。ですから、実際には九千人しか減ってないのです。ですから、いま申し上げたような率になっているのです。ただ、これからの問題としまして、恐らく、地方事務官制の廃止とかあるいは出先機関の整理統合とかあるいは許認可事務の大幅整理とかあるいは場合によっては三公社五現業の民営移転といったような問題が起こってまいりますと、これはやはり相当の大幅削減という問題が第二臨調から再び提起されてくると思うのですね。そうすると、いまの第六次定員削減計画というものは大幅に手直ししなければならぬ。そのときは第七次の定員削減計画を策定される方針ですか。
  140. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 現在の六次のものは閣議決定をもって行政措置としてやっておるものでございます。臨調は今後どういう御答申をおつくりになるか、それによりまして、もし改革が必要ならば改革しなければならぬと思っております。
  141. 大内啓伍

    ○大内委員 総定員法は見直されますか。
  142. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまのところ、見直す考えはございません。しかし、臨調の御方針で今後どういう数字が出てくるか等々も見まして、そのとき考えてみたいと思います。
  143. 大内啓伍

    ○大内委員 この問題は、本当はもっと議論をしたいのでありますが、この程度にいたします。  人事院勧告の問題について、これは総理にお伺いをした方がいいのか――これは法制局長官ですな。  きのう法制局長官は、人事院勧告が仮に不完全に実施されたとしてもそれは必ずしも違憲とは言えない、もう少しふくらみのあるお言葉を答弁としてされていたように思いますが、趣旨はそういうことだと思うのですね。  そうすると、一つの問題は、最高裁判決の追加補足の意見の中で、そうした代償措置というものが機能しない場合、つまり不完全実施になった場合ですね、公務員が争議行為に出てもいかなる制裁も受ける筋合いではない、こういう最高裁の意見がありますね。  そうしますと、一生懸命政府としては誠意を尽くしてやってみた、しかし完全実施ができなかった。とすると、この最高裁の補足意見、追加意見というものがまた生きてくる。公務員の皆さんが、その代償措置というものが完全に果たされないならばわれわれは争議行為をやる、労働基本権の代償が代償として成立しないならわれわれは労働基本権を行使するんだ、この気持ちになるのはあたりまえじゃありませんか。ですから、もしそういう方針をとられた場合に、いわゆる違法ストライキというものが必然的に助長されてくる。その段階ではもう違法じゃなくなっちゃうという解釈も出てくるかもしれない。  いま公務員の組合の中で私どもと手を握っているあの鉄労の諸君や郵便の労働組合の諸君は、違法ストライキをやらないために歯を食いしばりてがんばっているんですよ。鉄道をみんなストップさせたときに、その列車を動かし、そして元旦に郵便が配達されないときに、皆さんのお宅に郵便を配達しているのは、われわれと手を握っている労働者ですよ。そういう人たちが、一生懸命、人事院勧告というものを政府が守るんだからわれわれも法律を守ろうと言っているときに、その不完全実施政府自身が、やむを得ないんです。ここから、皆さん、重大な事態が起こってくるのですよ。ここで健全な労使関係というものは崩れていくのですよ。二千億、三千億という問題じゃなくて、国民経済に与える影響というものは非常に大きなものがある。だからこそ、政府が本当に労働組合の幹部の皆さんとお話しになって、われわれはいま財政再建で本当に苦しいのだ、法律上はこうなっている、しかし何とかこれは協力してくれないかというような、そういう話の上に、よし、労働組合もわかったというなら、そういうこともあるいは成立するのかもしらぬ。しかし、そういうことも尽くさないで、いやお金がありません、そのルールを無視することもやむを得ません、最高裁もそのことはある程度は弾力的に認めていますという議論だけでは、まじめに働いてきた公務員の労働者というものは本当に失望してしまう。  私はその辺を考えますと、人事院制度の崩壊というものがそういうところから起こってくる、そのことを私ども民社党は本当に真剣に心配していますよ。官公労でないあの民間の労働四団体だって、だからこそ、この人事院勧告を守ってくれ、これだけ強い主張をしているのじゃありませんか。  これは法制局長官の問題じゃない。これからの日本の労使関係、官公労との間の労使関係、日本の経済の問題の根幹に触れる問題ですよ。いまの国鉄当局をごらんなさい。あの当局と労働組合の熾烈な闘いというものがいまの国鉄の破産をもたらしているじゃありませんか。私は、そのことをもっともっと総理が真剣に考えてもらいたいと思うのです。確かに財政再建国民的課題ですよ。とすれば、総理みずからがその労働組合の幹部と本当にひざを交えて話し合うべきですよ、ただ陳情を受けるのじゃなくて、政府の言い分を言うのじゃなくて。そのくらいの熱意がなくて、どうしてこんな重要な問題についての円満な結論というのが出るでしょうか。総理の御決意を聞きたいのです。
  144. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 人事院の給与勧告の実施についての政府の最終的な決定というものは、いまだなされていないわけでございます。昨日、私が橋本委員の御質問に対してお答えをいたしましたのは、あくまで御質問の趣旨が全農林事件に関する最高裁判決をどう読むかという法律的な問題に局限しての御質問でございましたから、それをお答えしたわけでございます。その点について若干補足させていただきますが、ただいま御引用になりました最高裁の補足意見というのは二裁判官の補足意見でございまして、この方々は多数意見に属してはおられますが、しかし――多数意見と申しますか、最高裁の判示そのものではないわけでございます。これはほかの裁判官の方々はこれに対して何ら注釈も加えておりませんから、そういう意味では直ちにこれが最高裁の判示事項であるということは言いがたいと思います。  それから同時に、この二裁判官は、ただいま御引用になりましたように、代償措置の現実的機能を非常に重視しておられる方でございます。そして、前段では確かに御指摘のようなことを言われております。しかし、後段ではまた「当局側が誠実に法律上および事実上可能なかぎりのことをつくしたと認められるときは、要求されたところのものをそのままうけ容れなかったとしても、この制度が本来の機能をはたしていないと速断すべきでないことはいうまでもない。」ということも言っておられるわけであります。したがいまして、それをもりて前段だけを引用するのも、引用と申しますか、前段だけを主張するのも正確ではございませんし、後段だけを主張するのも正確ではないと思いますが、それらを全部総合して判断して最高裁判決をどう読むべきか、こういう問題でないかと思います。
  145. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 人事院制度、これをめぐっての最高裁判決等、法律的な問題はいま法制局長官から政府側の見解を御説明申し上げたとおりでございます。  いま政府は人事院から勧告を受けました。これを実施するに当たりまして、厳しい財政事情下、さらに財政再建を目指しております今日の状況下におきまして、今日までの公務員諸君の良好な労使の関係そして厳しい財政事情、こういうものを私どもは総合的に判断をし、誠意を尽くしてこの問題に対処しなければいけない、こう考えまして、二次、三次にわたって給与関係閣僚会議を開いて慎重な検討を進めておる段階でございます。したがいまして、その結論を出すまでにはまだ時間を要することだと思います。政府としては、いま大内さんが御心配なさっておるような点も当然十分考えております。また、臨調の答申、今回の行財政改革に当たって国民全体にいろいろ犠牲を、御負担をお願いをしなければいかぬ、痛みを分かち合わなければいかぬというような事情もございます。総合的に判断をしながら、誠意をもってこの問題に対処してまいりたい、こう思っております。     〔藤波委員長代理退席、委員長着席〕
  146. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、単なる法律論だけではなくて、これは日本の重要な労使関係の一つの問題であり、それは単なる労使関係の問題にとどまらず、日本の経済に大きな影響を持つ問題でございますから、政府としてもその辺をなお慎重にお考えをいただきたい。  私は総理に要望したいのでありますが、そういう問題については、形式的な労働組合の指導者とのお話ではなくて、本当に総理みずからが誠意をもって日本の労働者の指導者とひざを交えてお話し合いになるということが私は意外に重要なことじゃないかと思っているのです。それをやっていただけないでしょうか。
  147. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国家公務員あるいは公企体の労働組合の諸君と、個別には会っておりませんけれども、産労懇等の場におきまして、私もしばしば出席をいたしまして、この日本のよき労使の信頼関係、これが日本の発展の大きな基礎になっているという観点から労働者、労働組合の幹部の諸君の御理解、御協力を常に求めておるところでございます。
  148. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、大変残念なことに、日本の労働運動の中にもいろいろな流れがあるわけです。定年制に賛成の方もあるし反対の方もある。自分の退職金を切ることについてもやむを得ないとして協力しようとしている人もいる。ストライキが禁止されていれば、それを一生懸命守ろうとしておる労働者もおる。やはり信賞必罰ということを踏まえて、そういう労働者との間で本当に話し合わなければ、こういう問題は建設的に解決できることではありません。ですから、私は、みそもくそも一緒に話せと言っているのじゃありません。そういうことをちゃんと皆さんが踏まえて、総理みずからが建設的にこの問題を解決されるように、そのリーダーシップを発揮されるように、本当に特に切望しておきます。  私は、地方公務員のラスパイレスの問題についてもいろいろ聞きたいのでありますが、時間的な余裕もございませんので、不公平税制という面から一つだけ、中小企業の相続税の問題をちょっと聞きたいと思うのであります。これは通産大臣であります。  中小企業は、言うまでもなく、いま事業所総数におきましては九九・四%あります。雇用者数は八一・一%、その出荷額は五二・七%に達しております。つまり、日本の経済をいま中小企業は支えている。ところが、いまこの中小企業の経営者のうち、六十歳以上が四分の一になりまして、世代交代がどんどん起こりつつあります。ところが、大体会社形式になっている中小企業は、そのトップがお亡くなりになると事業継続がなかなかできないであきらめてしまう、こういう例があることは御存じのとおりです。なぜかといいますと、こういう順序になるのですね。まず、会社形態を整えている中小企業は個人営業者とのバランスで見られてしまうのですよ。したがって、会社は解散したと想定して清算が行われまして、その資産評価が行われる。そうすると、一定率を掛けまして株数で割って株式の評価をやる、ところがその株式の評価をやるときに、土地がものすごく高騰しているものですから、その株式の評価が異常に高くなってしまう。そのために税負担がたえられなくなってしまう。たとえば、昭和三十年から現在まで土地の価格は三十倍に上がっているわけです。三十年前に若い経営者として中小企業を立てたこの経営者がお亡くなりになっていく。そうすると、その土地の価格は三十倍になって、株式の評価は膨大にふくれる。したがって、その資産を処分しなければならぬというので、みんなつぶれちゃう。農業の場合は、皆さんも御存じのとおり、いろいろな恩典というものが施されている。ところが、中小企業の場合は残念ながらそれがない。そのために、いまこの問題が中小企業者にとっては深刻な問題になっています。  たとえば、農業の場合は生前贈与の特例がありますし、あるいは相続税の納税猶予措置といったようなものもございます。その他もある。ところが、中小企業の場合はそれがないために、そのトップが亡くなった途端に中小企業は倒れていかざるを得ない。せっかく第二世を成長させておきながら、その中小企業が存続できない。これは税金の問題なんですよ。  そして、いま通産省は二つの提案を概算要求で出していますね。一つは、株式評価方法をもうちょっと改善せよ、これが一つ。それからもう一つは、土地の相続税の課税価額を四分の一にせよ、こういう税制改正要求を実は通産省がやられている。私どもはこれは賛成です。通産大臣としては、この問題をどういうふうにお考えでしょうか。
  149. 田中六助

    田中(六)国務大臣 大内委員のおっしゃるとおりに、中小企業は、大内委員はパーセンテージで指摘しておりますが、まさしく事業所にして五百八十一万件、従業員にして三千四百三十万人という関係者が実はおりまして、家族を含めますと日本の人口の膨大な人たちが中小企業に属しておるわけでございます。したがって、これに対する対策は日本経済の安定という意味から大きな問題になるわけでございまして、私どもも十分考えておるところでございます。ただ、御指摘のように農業と一緒にするというようなことは、現実に土地の実情とかあるいは法律の施行とかいうようなことで、同一にはできません。  それから、大内委員のおっしゃるように、私どもこの後継者の問題、それから土地が非常に上がっておるというようなこと、経営難に陥らないようにというような観点から、五十七年度予算におきましては御指摘のように株式の評価、つまり取引のない相場に属する株式の評価ということが一つと、それから土地評価につきまして、四分の一に軽減するという二点を要求しておりますけれども、これはどうしても貫かなくちゃいけませんし、私どもはこれによって中小企業者の後継者の脅威、それから中小企業の、先ほどから申しますように日本経済を支える大きな役割りというものから見まして、ぜひとも実現したい。特に、私ども過去四年間ずっと調べてみますと、土地関係であえいでおるというようなこと、相続税の納税義務者というものが、実は四年間で一・六倍にふえているのです。しかも、その七割、七〇%が土地です。したがって、そういう点から、私どもが五十七年度に要求しておるこの二点については、財政再建の折ではございますけれども総理も申しておりますように、中小企業には特別な配慮をある程度――質的な内容でございますけれども、表向きは来年と同じようにゼロシーリングでございますからその点はあっても、質的に転換してもいいということを言っておりますので、ぜひとも御指摘の二点については実現を期したいというふうに考えております。
  150. 大内啓伍

    ○大内委員 これはもちろん通産省だけではなくて、結局は最後は大蔵省が断を下さなければならぬ問題だと思うのです。大蔵大臣としては、いまの通産省の提案はいかがですか。
  151. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 通産大臣は、中小企業者の意向を代表しましてそういうような御要望をしておるわけです。私もよくわかるのです。わかるのでございますが、やはり税金というのは平等でないと皆さんがなかなか承服しないという問題が一つございます。特に日本の相続税は、確かに諸外国から比べて高いのです。税率が非常にきつい。そういう問題が一つございますが、これは全部がそうなっております。それが一つ。  もう一つは、これは同族会社の話でございますから、要するにいろいろ工夫をしまして、社長だけが株を全部持っているなんということは余りないのですよ。大体子供とか何かに分散をして持っていることがかなり多い。計画的に、そういうふうな法で許してあるものがございますから、そういうこと等もやっておりますし、仮に社長が死んで社長の持ち分についての評価を受ける場合も、妻も二分の一までの相続ならその分は税金から外れてしまうわけですから。評価も時価いっぱい評価しているというわけでもない。したがって、評価方法等について検討はしたいと思います。  それからもう一つは、延納制度、相当低利で長期の延納制度がございますので、そういうものも大いに利用をしていただきたい、こう考えております。  ここで新しい減税項目を五十七年度予算で中小企業だけ立てるということは、ほかとのバランス上非常にむずかしいということでございます。
  152. 大内啓伍

    ○大内委員 中小企業が果たしている役割りというものは、先ほど来私もちょっと一端を触れましたように、これは非常に大きいものがあります。そして、いま通産省から提案されているこの二つの点というのは、私はやはり中小企業を守っていくための最低限の要求ではないかなと思われますので、大蔵大臣は経理の関係も非常に明るいわけでありますし、どうかそういう点について十分配慮をされまして、この中小企業者の相続の問題が円滑にいきますように、ひとつ御配慮をお願いしたいと思うのです。  時間もわずかになりましたのですが、中曽根行管庁長官に申し上げておきたいことがございます。  いままで行政改革の問題についていろいろな決意もお伺いをいたしましたし、また具体策も提示をされているわけなんでありますが、なかなかこの問題が実行されないというケースが過去においてもたくさんあったわけなんであります。現に五十五年行革、これは皆さんも御存じのように、昭和五十四年の十二月二十九日の閣議で決定された、大平内閣の時代のものでございますが、この五十五年行革というものはすでにもう進行しているわけなんです。そして、この行革について、五十五年、つまり昨年の十一月十三日衆議院の内閣委員会において、中曽根長官はこういうふうに答弁されているのですね。第二臨調を隠れみのにはしない、五十五年行革及びわれわれがいま提示しました八項目、これは五十四年の十二月二十九日の行革の閣議決定を指しておりますが、これらについては第二臨調を待たずにどしどし推進してまいります、これが長官答弁です。  ところが、この五十五年行革そのものが実行されてない面がたくさんある。たとえば、文部省主管一法人を削除せよ、その期限は五十五年中に行え、これが五十五年行革です。やられておりません。二つ目、沖繩電力株式会社については、これを民営化せよ、五十六年度末までにやれ、これはまだ期限がありますが、これもその方向でまだ着手されていません。地元の大勢を調べてみましたら、この民営化、賛成です。もう一つ、地方事務官の取り扱い、これは五十五年、つまり昨年の六月までに結論を得よ、こういうことが五十五年の行革で出ています。全くできていません。のみならず、歴代の内閣はごまかし続けました。  具体的に言いますと、昭和五十二年十二月二十三日の閣議決定、ここでは運輸省、それから厚生省、労働省関係については二年以内に廃止します、福田内閣は言明されました。やっておりません。五十四年十二月二十八日、厚生へ労働省関係、これは五十五年六月末を目途に結論を出します、これは大平内閣の決定でした。やられませんでした。今度は鈴木総理、五十五年十一月二十九日、引き続き検討、協議を進めます、だんだんだんだんスローダウンしてきました。  つまり、五十五年行革で決まっているものすらも実行されていない。そして、いま私どもに対してこれからの行革案というものが示され、そしてその決意が示されていても、もしこの五十五年行革のようになってしまえば、われわれが幾ら議論しても始まらない。長官は、こうした五十五年行革それ自体が不実行の状態にあるという状況についてはどのような御所感をお持ちでしょうか。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一〇〇%実行していないというのははなはだ残念でありますが、しかしそれでもかなりのものはやっておるのであります。  たとえば、電電公社からの剰余金の吸い上げとか、あるいは人員の引き続いての整理縮減の問題であるとかあるいは法令の整理、あるいは二年間で許認可一万件を一千件に整理するという問題、これらはいま各省と引き続いてやっておりまして、法令の整理問題や許認可の整理の問題は、ことし分は大体見当をつけてきている、そういう状態にあります。  ただ、お示しの地方事務官の問題は、これは長い間の懸案事項でございまして、この問題につきましては臨調でもいま取り上げておりまして、来年の初夏に行われる答申では最終的な決着をつけよう、こういう考えに立ってわれわれもその資料を提出したりしておるところでございます。  第二臨調を隠れみのにしないということは、私たちの厳粛な公約でありまして、七月十日の答申につきましても今回は八月二十五日に直ちに閣議決定をして、その大事なものは政策の大綱として提示して、いま実行しつつある段階でございます。  今後も誠意を持って努力をしてまいりたいと思います。
  154. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、決して揚げ足を取ったりや何かするものではありません。しかし、地方事務官のこの省とこの省の廃止は五十五年六月なら六月までにやりますというのは、これは五十五年の行革の中で明示されたことなんです。そして、いま長官は、その地方事務官の問題は歴代の内閣を通じてのずっと懸案であった、そして来年はその結論が出る、これは全体の問題なんです。しかし、そのこと自身が、私から言わせれば、結局は隠れみの的な議論になってしまうのではないか。あえて責めるわけではありませんが、決まったものについては本当に勇断をもってやっていく、この姿勢が国民に示されなければ、私は、国民政府行革にはなかなかついてこない、そういう意味で、どうかこの点を真剣にお考えをいただきたいと思うのです。  時間ももうありません。最後に総理にお伺いをしたいと思うのでありますが、御案内のとおり、私どもいわゆる中道四党は、行政改革あるいは行財政の改革について四党の共同提案をいたしております、共同案を要求いたしております。この内容は、もうすでにお配りをしておりますし、御案内のとおりでございます。  この四党の提案に対しまして、総理はどのように受けとめられ、そしてその要求している内容について改善する意思、話し合う意思があるのかどうか、そのことを明確に承っておきたいと思うのであります。
  155. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今回の行財政改革の問題につきまして四党から共同提案の形で申し入れをちょうだいをいたしております。その内容も私よく承知をいたしておるところでございます。その中におきましては、今日まだ国会において審議を続けておりますところの、残された公務員二法の即時実施の問題でありますとか、いろいろ建設的な御提言をちょうだいをいたしておるわけでございます。細部にわたりましては私ども考え方と意見を異にする点もございますけれども、この真摯な、前向きな御提案に対しましては敬意を払うものでございます。十分今後の行財政改革の中に有力な参考意見として生かしていきたいものだ、こう考えております。御協力をお願いいたします。
  156. 大内啓伍

    ○大内委員 終わります。ありがとうございました。
  157. 金丸信

    金丸委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  158. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表して、行革関連の一括法案について、総理並びに関係大臣質問をさせていただきたいと思います。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕  まず第一に総理に伺いますが、今度出ております一括法案は、金額にいたしましても二千四百八十二億円、本会議での一部の議員の発言では、本当に削減するのは百二十二億円だというような内容ではございますけれども、私どもの承知しておりますところでは、今国会の一括法案というのは行革の第一段階、言ってみれば突破口のそのまた突破口で、臨調の答申のすべてを総理としては実行され、さらに、いま出ているものだけでなしに、来年及び再来年にかけて答申されるすべてのものについて実行する、そういう御方針のように承っておりますが、相違ございませんか。
  159. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は常々申し上げておるのでありますが、行財政改革はいまや国民的課題に相なっております。国家の将来、民族の未来をかけてこの行財政改革をぜひなし遂げなければならない、こう考えるものでございます。臨調につきましても、これを隠れみのにするという考えは全く持っておりませんで、答申の出ましたものから逐次これを最大限に尊重して実行してまいる。今回の暫定措置法もその気持ちに沿うものでございます。今後臨調から出てまいります答申につきましては、これを十分尊重いたしまして実行に移していきたい、このように考えております。
  160. 正森成二

    ○正森委員 私は、中曽根行管庁長官に伺いたいと思います。  古来、敵を知りおのれを知れば百戦危うからずと言いますが、この間自由民主党の機関誌と承知しております「自由民主」の九月号を読ませていただきました。そうしますと、そこに党の軽井沢セミナーで中曽根行管庁長官が講演をしておられます。それを拝見いたしますと、こう書いてあるのです。「私は担当大臣を拝命したとき、官庁および政界の大先輩である岸元総理に知恵を拝借しようと思ってお訪ねしたところ「そりゃ中曽根君、日本で行革をやったのは明治維新とマッカーサーだけだよ。平時にやろうと思ったらクーデター以外できないね。それぐらい難しいものだから、そのつもりでしっかりやれ」と励まされましたが、まさにそういう性格があります。」こう言うておられるのですね。つまり、明治維新とマッカーサー以外、平時ではクーデター以外にはできないというので、なるほどそういう性格かと思って張り切ったということが書いてあるのですね。それかあらぬか、安井委員質問でも出ましたけれども総理は常々、一、二の党の反対があっても断固としてやるとか、昨日は、金丸委員長は、少し言葉の表現を変えられましたが、金丸信が強行採決をしなくてもいいような環境をつくっていただきたい、こういう御発言で、これは言いかえれば環境次第によっては強行採決を行うぞという、衣の下からよろいがちょろちょろ見えておるということでありますが、それは結局、この軽井沢セミナーでも、あなたが、クーデター以外にはできないんだということを、三十六本の法案を一本にまとめ、しかもその審議で場合によっては強行採決するぞとほのめかしておる、考えを一にするように思うのですが、担当大臣である中曽根行管庁長官の御所見を承りたいと思います。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国会でございますから、みんなで話し合って、なるたけ理解を得ながら、コンセンサスを得つつ、忍耐強く努力していくことが議会政治のあり方であると思います。  岸先生にお会いしましたときに、激励されました。ただ、岸先生の長い御経験から見て、戦前におきましても、戦後におきましても、行政改革ということは何回か言われたけれども、完全にできたものはない。それはみんないやがることをやるのだから、これは積極的に賛成する人はいない。賛成する人はいても、そういう人は黙っている。反対する人は大合唱をする。そういうものだからなかなかできないのだ。実際、本格的にやったのは明治維新とマッカーサーぐらいのものだろう、そういう比喩をもって激励された。それぐらいむずかしいものだから、おまえも決心を固めて本気でやれ、そう激励されたのでありまして、非常にありがたいお言葉であると思いました。
  162. 正森成二

    ○正森委員 肝心のところはぽかされましたが、あなたが一身をおかけになって一生懸命なさるのは結構ですが、間違ってもクーデターというようなことは考えられないように国会の中でもやっていただきたいということを要望しておきます。  私どもは、行革というのは本来、汚職、腐敗、癒着のない清潔な行政、公平で簡素で効率的な政府というのが、行革にとって、国民が望んでいることであろうと思います。ところが、この国民の願いに反して、国民生活に対してだけはいろいろ厳しい補助金の削減等を行っておられるということで、国民の中に非常に心配あるいは批判が出ているということは、総理も御承知だろうと思います。  そこで、少しお伺いしたいと思いますが、たとえば行革大綱は、補助金カットについて、臨調の答申が国民生活関連部門を中心に、名指しで具体的な削減策を明らかにしたものは極力その実現を図るとともに、その他のものは各省庁ごとに一律一割を削減することを決定しました。こうして補助金カットというのは名指しのカットと一律カットという二つの形をとっております。  そして、一律カットによる削減総額千六百三十六億円を見ますと、そのほとんどが国民生活関連部門に集中しており、厚生省は四百八十二億円、文部省四百二十九億円、農水省四百三十四億円で、国民生活と教育にかかわりの深いこの三省だけで全体の八二%を占めておることは御承知のとおりであります。来年度の五七概算要求を見ますと、とれが国民にとっていかに厳しいものであるかは疑問の余地がないと思います。  そこで、厚生省に伺いますが、厚生省の補助金カットは総額約七千億円前後に達するはずであります。国民健康保険給付費の五%、児童扶養手当、特別児童扶養手当給付金の二〇%、合計二千七百三十億円の負担を都道府県に肩がわりさせるとしておりますが、これらが住民の負担増に波及することは明白と思われます。また、結核療養費、精神医療対策費計百五億円の削減、市町村国民健康保険に対する臨時調整交付金四百四十五億円の削減も医療の後退と住民の負担増を招くものであります。また、がんの予防対策費も四億一千三言万円削っております。保育所措置費を前年度比百二十一億円削り込み、これは保育料の値上げを加速し、共働きの世帯を直撃することになるでしょう。  若干私は評価を入れましたが、事実として厚生省が概算要求でこういう要求大蔵省に提出していることは間違いありませんか。
  163. 村山達雄

    ○村山国務大臣 現在の概算要求はいわば枠の要求でございます。したがいまして、トータルで言いますと二千百億の平年度化増、それだけが認められるわけでございますので、結果的に言いますと、要求額で言いますと、昨年が八兆七千六百億でございますから、それに二千百億を入れたもの、それで要求しているわけでございます。  個々のものにつきましては、それぞれの積み上げ計算その他でやっているわけでございます。
  164. 正森成二

    ○正森委員 ふえた分だけおっしゃいましたが、個々の減った分については私に対して否定の御発言がなかったと思います。  労働省に伺いますが、労働省は、今日、失業の増大傾向がございますが、失業対策専業費を一五  四%、百三億円カットして、一万人の就労者について就労の機会が減少するということになると思いますが、いかがですか。――事務局がちょっと外へ出ておられるようですから、結構です。それでは、来られたら答弁してください。  文部省に伺いますが、文部省では、小中学校の教材費が十九億円カット、校舎増改築、プール建設などの公立文教施設費が四百二十億円カット。四十人学級の計画凍結、これは他の議員も言われました。教育条件が悪化します。学校給食用の牛乳への補助金のカットで父母負担が六億七千万円増加します。私立大学の助成は前年度並みの維持に最低限必要な二百五十億円の増額を五十億円増に圧縮しておりますから、大蔵省のゼロリストの予測では大幅な私学の学費値上げが避けられない状況になるはずであります。  これらの事実が概算要求に入っておるかどうか、お答えください。
  165. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  ほぼそのとおりでございますが、なお、詳細は御必要に応じましてお答えさせます。
  166. 正森成二

    ○正森委員 次に、自治省に伺いますが、自治省にもいろいろございますが、防災対策が急がれておりますけれども、消防施設等整備費補助金が十四億七千万円減額されております。  そこで伺いますが、地財関係費を除いた費用で見ますと、自治省本省でふえた分四億五千万円くらいが消防庁関係予算でごっそり減って、それを足しますとゼロシーリングにちょうどなる、こういう概算要求の編成になっているのではありませんか。
  167. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 自治省の補助金でございますが、消防関係でございますけれども、これは重点的に考慮いたしまして、大体前年度に比較いたしまして八%の減、こういうふうに要求をいたしております。  それから、自治本省の分との比較のお話がございましたが、この交付税等の地方財政対策費は除きまして、そのほかのことで申し上げますと、自治本省の五十七年度の削減額、これは二十三億四千八百万円です。五十六年度の補助額が千百五十二億三千百万円でございますが、そのうち二十三億四千八百万円を減額して要求しております。その率が二%減になっております。ただこの中には、一割一律削減のものと個別検討というものと二種類ございます。そこで、個別検討を除いた分はどれくらいかと申しますと、九%の減でございます。  それから、消防庁の補助削減は八%、こういう形になっておるわけでございます。
  168. 正森成二

    ○正森委員 結局、地方交付税交付金等の地方財政費を除いた自治省本省の費用は、先ほど私ちょっと言い間違えましたが、四億五百万円結局としてふえて、その分を消防庁でへずっている。これは間違いないでしょう。もし間違いがあれば言うてください。  そこで、伺いますが、消防庁では消防白書を出しているようですが、その消防白書では、日本全体で建物の出火件数がどのくらいで、死者がどのくらい、負傷者がどのくらい、損害額がどのくらい出ているか、私に説明してください。
  169. 石見隆三

    ○石見政府委員 昭和五十四年中におきます全国の出火件数は六万三千七百九十四件に相なっております。
  170. 正森成二

    ○正森委員 ほかにもっと開いているでしょう。
  171. 石見隆三

    ○石見政府委員 死者が二千七十人であります。ただ、この死者二千七十人のうち放火自殺によります者が七百六十九名です。それから負傷者が八千百五十七名であります。損害額総額は千三百六十八億円になっております。
  172. 正森成二

    ○正森委員 いま被害額が出ましたが、そのうち建物火災だけのものを見ますと少し減りまして、約三万八千件、死者は千四百五十人、負傷者は七千二百四十一人というように消防白書に出ているはずであります。ところが、それに対して対策を立てるべき消防力基準というのはまだ実現していないんじゃないですか。あるいはそれに対して消防庁が提出した現有車両に対する職員の充足状況というのは非常に悪いのではありませんか。
  173. 石見隆三

    ○石見政府委員 お答えをいたします。  各市町村の消防機関におきまして、消防庁の方で示しております消防力の基準あるいはまた消防水利の基準を参考といたしまして、それぞれの消防機関ごとに地域の実情を踏まえまして、いわば消防の整備目標というものを設定しておるわけであります。この各消防機関ごとが設定いたしました数値と実際の消防施設の整備状況というものを対比してみますと、五十三年四月現在で、消防ポンプ車につきましては八六%、それから小型の動力ポンプ車で六七%、はしご車五五%、化学車五三%、救急車が九七%、消防水利が六三%ということになっております。  また、職員数につきましては、ただいま申し上げました現有の車両を前提といたしまして基準となる要員数を算驚いたしますと、充足率はおおむね七八%程度ということに相なっております。
  174. 正森成二

    ○正森委員 防衛庁に伺いますが、陸上自衛隊の一個師団の兵力はどれだけですか。
  175. 塩田章

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  陸上自衛隊の師団は定員九千人の師団と七千人の師団がございます。それから第七師団だけは六千四百名でございます。
  176. 正森成二

    ○正森委員 いまお聞きになりましたように、陸上自衛隊の兵員は一個師団七千人あるいは九千人ということですが、消防庁が消防白書に言っております建物火災によるものだけでも、死者が千四百五十人、負傷が七千二百四十一人。つまり、九千人師団が毎年毎年全滅しているのと同じだけの被害を国民が受けているわけであります。そして現実に千三百億円の被害が出ておる。これは現実にわれわれ日本国民がこうむっている被害なんですね。  ところが、それに対しては、いま消防庁長官が言いましたように、はしご車にしましてもあるいは化学車にしても、その消防力基準から見ての充足率というのは、ひどいものは五十何%、一番充足率の高い救急車で九十何%。そして、そういうぐあいに少ない車両やはしご車に対して人員の充足率はどうかといえば、せいぜい七八%。つまり、少ないものに対して四台に一台は遊んでおる、人員が配置されていない、こういうことになるわけであります。  そこで、総理に伺いたいんですが、今度の臨調の精神にのっとられるのでしょうが、「国際的責任を果たすための経費の増加は必至である」、こう臨調には書いてありますが、防衛費も七・五%、概算要求で多く要求が出ておりますけれども、こういうものを大きくするということよりも、現実に毎日毎日百五件も火災が発生して、人が死んでいっておる。建物が焼かれて財産が損害をこうむっておる。こういうことについての対策の充足率が非常に低いというような点を充足しないで、それを真っ先に自治省の中で削っていくというのは本末転倒ではないかと思いますが、いかがですか。
  177. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 消防庁の五十七年度予算概算要求、これはまだ私、目を通しておりませんし、承知いたしておりません。これから大蔵省財政当局と自治省、消防庁等で御検討を願う問題でございます。  防衛費の問題についてお触れになりました。防衛費につきましては、これは毎国会御質問があり、答弁を申し上げておりますように、政府としては憲法並びに基本的防衛政策に基づきまして、自衛のための必要最小限度の防衛力を着実に整備をするという一貫した方針に基づいてこれを行っておるものでございます。
  178. 正森成二

    ○正森委員 消防予算についてはまだよく知らないということでございましたが、いま私が指摘したような実情も踏まえて、ただ消防予算に限らず、国民の切実な生命や財産にかかわるものについては、慎重な配慮をされることを切に要望しておきたいと思います。  そこで次に、大企業に関係する補助金について申し上げたいと思います。補助金については、国民に密接な関連のある部分が相当削られております。ところが、私どもが調べたところでは、大企業関係の補助金が案外削られておらないという問題があります。  通産省に伺いますが、一般会計で情報産業の振興、コンピューターを含みますが、そのために出されておる補助金あるいは一般会計費用というのは幾らですか。
  179. 田中六助

    田中(六)国務大臣 コンピューター関係でございますけれども、私ども第四世代産業と申しますか、そういうものにつきましては六十二億円を計上しておりますし、五十七年度ではこれを五十七億円計上しております。
  180. 正森成二

    ○正森委員 その中でも第五世代電子計算機開発費というのは相当大きく伸びているのではありませんか。
  181. 田中六助

    田中(六)国務大臣 第五世代のコンピューターは、伸びておるということよりも、むしろ新年度、つまり五十七年度では約五億円だと思います。
  182. 正森成二

    ○正森委員 私の調べでは、五十六年度の予算は千五百万円でしたから大体三十三倍に伸びております。これらの電子計算機の補助金というのは大体一つの受けざらをつくっておりますが、参加企業が十社のはずであります。一社当たり毎年どれぐらいの補助金になるわけですか。
  183. 田中六助

    田中(六)国務大臣 各社当たりの計算は私、記憶にありませんので、事務当局に答えさせます。
  184. 豊島格

    ○豊島(格)政府委員 全体としてはちょっと手元に持っておりませんが、四世代につきましては六十二億円が出されております。これはコンピューター五社等でございますので、これだけとりますと、十億ちょっとということになると思います。
  185. 正森成二

    ○正森委員 つまり、一社当たり第四世代につきましては十億以上ということになりますね。
  186. 豊島格

    ○豊島(格)政府委員 正確に申しますと、五社等で研究組合をつくっておる、その研究組合に全体として出しておりますから、一社当たりという考え方はちょっとどうかと思っております。
  187. 正森成二

    ○正森委員 五社で六十億余り、つまり一社当たり十二億ぐらい出しておる。  そこで、財投では電子計算機振興ということで開銀融資にどれくらい予算を計上しておりますか。
  188. 豊島格

    ○豊島(格)政府委員 開銀融資につきましては、五十六年度につきましては全体として四百六十億円の融資計画を……(正森委員「五十七年度の概算要求は」と呼ぶ)五十七年度の概算要求は、全体としまして六百十億でございます。
  189. 正森成二

    ○正森委員 これは三二・六%の増であります。  そこで伺いますけれども、日本電子計算機株式会社というのがあるはずであります。主としてこの日本電子計算機株式会社に、いま出ました電子計算機振興のための財政投融資、つまり開発銀行からの融資というのは相当前から続けられておりますが、締めて合計残高は幾らになっておりますか。
  190. 豊島格

    ○豊島(格)政府委員 残高は、大体千五百億程度でございます。     〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕
  191. 正森成二

    ○正森委員 この電子計算関係の補助金をもらっている会社は、主な五社は日本電気、富士通、日立製作所、東芝電気、三菱電機であると思いますが、間違いありませんか。もし間違いなければ、これらの企業の本年三月の売上高と経常利益について答弁してください。
  192. 豊島格

    ○豊島(格)政府委員 大体五社でございますが、プロジェクトによっては沖電気等がそのほかに入っております。  それから、経常利益でございますが、有価証券報告書によりますと、富士通三百二十四億、日立千百七十七億、日本電気三百五十二億、東芝八百二十八億、三菱四百七十一億でございます。ただ、これは会社全体の利益でございまして、要するに電子計算機部門というのはそのうちの一部ということでございます。
  193. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いますが、この日本電子計算機株式会社というのは、株主がこれら日本電気とか富士通とか日立製作所、東芝電気等々で、この会社に財政投融資のお金を貸して、これらの電算機製造会社のつくった電算機を買わせる、そしてそれを必要なところへレンタルで貸し与えるというシステムになっているんではありませんか。
  194. 豊島格

    ○豊島(格)政府委員 そのとおりでございます。
  195. 正森成二

    ○正森委員 つまり、まるっきり親方日の丸ですね。自分たちは莫大な補助金をもらって電子計算機の生産をする。できた電子計算機は非常に高くてなかなか買うのは無理だから、財政投融資の金を自分らが株主である日本電子計算機株式会社に流し込んで、そこに買わせる。そこからレンタルで本当に必要なところへ貸していく。全部それは国の金で賄われているわけであります。  そして、いま通産省も言いましたように、これらの企業は、日立製作所は千百七十七億円、東芝は八百二十八億円、富士通三百二十四億円、三菱電機四百七十一億円というように、莫大な利益を上げております。この利益は五年前に比べますと、大体富士通で三倍、東芝で七倍、三菱電機に至っては七・六倍であります。一方では、本当に零細な子供たちの牛乳の補助金も削ろう、二百cc当たり五円二十銭のものを五円に削るというような情け容赦のないことをやっているのに、一方では千百七十七億円も利益を上げておる、五年前に比べて七・六倍も利益を上げておる、そういうところへ、受けざらをつくっているとはいえ、一社当たり毎年毎年十億を超えるような金を補助金で出しておる。こんなことで、国民が一体等しく痛みを分かつなんというようなことを信用するでしょうか。国民には痛みを、大企業にはもうけを、というのがその実情ではありませんか。  しかも、これらの補助金に対しては収益納付制度というのがあるはずであります。ところが、実際上これだけもうかっておっても、電子計算機の部門ではもうかっていないからということで、収益納付が行われていないのではありませんか。しかも、その収益納付は一つの補助金のプロジェクトに対して収益納付期間は五年間というように制限をして、それから以後は幾らもうかっても納付をしないでもいいという制度になっているために、たとえば電子計算機開発促進費について言えば、六百八十六億円も合計六社に補助金が出されておるのに、もうかってもうかっておるのに、一九七九年限度で二億円しか収益納付が納められていない、これが実情ではありませんか。
  196. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御承知のように、コンピューターは第四次、第五次世代産業というふうに銘打っておりますように、これらは技術先端複合産業のその上の先端を行く産業でございまして、実質的には非常に巨大な金額のかかる産業であると同時に、リスクの大きい技術開発に属するものでございます。しかも、それはアメリカが第一位で日本が二位とはいいますものの、非常にその差は大きなものでございますし、日本の将来の産業を支える大きな役割りをするわけでございまして、収益が上がっていると申しましても、それはまたそこに還元をして使用をしておりますし、会社そのものが非常に――たとえば日本電算機株式会社など、レンタル会社でございますけれども、そういう全体のことからながめますと、日本の将来の技術という点からしますと、やはり日本の政府がある程度の援助をするのは、私は、当然とはいかないまでも、私どもがなすべきことではあるまいか。しかも、世界の各国を見ましたときに、日本のそういう援助は国際比価にしますと非常に低うございますし、私どもはより一瞬の、研究開発のためになさねばならないことをある程度精いっぱいやっているのであって、また零細企業にはそれをやってないじゃないかと申しますけれども、きょう大内委員にもお答えしましたように、製造業の事業所というのは全部で五百八十四万軒あります。そのうち五百八十一万軒が中小企業でございまして、三万軒が大企業でございます。これは逆説的に申しますと、三万軒の大企業が五百八十一万の中小企業を支えておるという見方も成り立つわけでございまして、私どもはこういう点からも、将来を考えれば考えるほど、やはり開発に私どもができることはしなければならないという考えを持っております。
  197. 正森成二

    ○正森委員 私は、技術の進展が必要がないということを言っているのではありません。それは必要でしょう。また、国際的に比べると、日本の場合はまだこれでも研究開発補助金が少ないと言われました。しかし、もしそういう比較をするのなら、現在国民が受け取っている社会保障関係の全体のGNP比は諸外国に比べて非常に低いんですね。そういうように国民はがまんをしているんです。国際的に比較してその水準までいっていないのは、何も大もうけにもうけているこの電子計算関係の会社の補助金だけではありません。ところが一方、国民に対しては、たださえその水準は低いのに、これでもかこれでもかと切ってくる。ところが、物は比較とそして相対的な評価であります。現実に千百七十七億円、電子計算機部門だけじゃないかもしれないけれども、うはうは笑いがとまらぬぐらいもうかって、五年前に比べて七・六倍ももうかっているのにまだ補助金がもらえる、国民は食うや食わずの中で削除される、これでは絶対に同意できないと思います。  しかも、私が指摘しなければならないのは、このコンピューター産業関係の役員を見ますと、東芝電気の元社長で相談役が土光敏夫臨調会長、富士通の取締役副会長赤澤璋一氏が臨調の専門委員、日本電気取締役の亀井正夫氏は臨調の専門委員で第一部会長、日本電気の副社長の曾山克巳氏は臨調の参与というように、ずらりと臨調関係の役員になっておるわけであります。こうして、自分が関係している会社の補助金は削らないで、国民のものだけは遠慮なく削る。これでは、中国のことわざに、まず隗より始めよという言葉がありますが、まず隗よりもうけよということではないか。こういうことをやっておいて、国民が、総理、あなたのなさる行革に、なるほど等しく痛みを分かつんだなというように思わないのがあたりまえじゃないですか。国民には痛みとこぶを、大企業にはもうけをというように考えるのは、私はあたりまえであろうと思います。  ですから、私は、等しく国民に痛みを分かつというのであれば、こういう点についてせめてその補助金を一部分減額するというようなことは当然なさるべきであると思いますが、いかがですか。
  198. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大企業罪悪主観に立ってお話しなすっているように伺うのであります。私は臨調委員の選考に当たった一人でありますけれども、みんな日本の各階層の中から、最も経営に能力のある方、あるいは労働問題について見識のある方、あるいは日本のジャーナリズムや国際関係に経験を有する方々、そういう国民的視野で選んだのでありまして、そのような偏差な考えを持って選んだのではございませんし、臨調委員や参与におなりになった方々も、みんなそういう所属を離れて、国家的見地に立って判断をしていただいたものでございます。
  199. 正森成二

    ○正森委員 所属を離れて国家的見地に立ってやっておられるというなら、文字どおります隗より始めよ、国家的に必要かもしれないけれども、自分の関係しているところは、全部は切れないまでも、せめて一割、二割はカットしようかというなら、これは国民も、なるほど少しは考えているなといってわかるけれども、逆にふやしている部分だってあるじゃないですか。そんなことでは私は大方の国民の納得は得られないであろう、こういうように思います。これは航空機のジェットエンジンあるいはその他の開発のためのYXX等でも同じことでありますが、時間の関係で省略します。  通産大臣に伺いますが、総合安保の一つということで、エネルギー関係予算が非常にふえております。毎年莫大な石油対策費を計上しておりますが、五十七年度の概算要求は幾らですか。
  200. 田中六助

    田中(六)国務大臣 通産省関係予算は全体で、まず五十六年度が七千百億円程度で、五十七年度が七千九百億円程度と記憶しております。  それで、その中の石特関係は全部で五十七年度が五千五百二十三億程度だと思います。その中にいまの石炭会計と石油会計が分かれておりまして、石油税あるいは原油の関税から取るのでございますけれども、御承知のように、石油が非常に緩んだ関係上、それが果たしてそのとおりになるかどうかを懸念している段階でございます。
  201. 正森成二

    ○正森委員 このうち探鉱開発に相当大きな比重が占められ、それは石油公団を通じて行われていると思いますが、石油公団の五十五年度末における投融資残高は幾らになっておりますか。
  202. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  石油公団関係予算でございますけれども、探鉱投融資関係は五十五年度末で出資額が千八百五十二億円、融資額が二千五百二十七億円、合計四千三百七十九億円となっております。
  203. 正森成二

    ○正森委員 いまお答えになりましたように、合計して四千三百八十億円ぐらいであります。  そこで伺いますが、石油公団の規定というのは、探鉱事業が不成功に終わった場合には元本が減免される、つまり返済しなくてもよいことになっているのではありませんか。それからまた、石油公団から金を借りているところは、危険を避けるために一プロジェクト一カンパニー方式をとり、大きな企業が株主になっておる場合でも、独立の企業としてその企業だけで損失が限定されるような仕組みになっているのではありませんか。
  204. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、探鉱融資につきましては非常に危険が伴います。成功率その他も非常に低いわけでございますので、その民間の資金を集め、それに公団その他から相当の融資をするという考え方に基づきまして、プロジェクトについて成功をしなかった場合にはその融資資金を免除することができる規定がございます。  それから、ワンプロジェクト・ワンカンパニーというのは、大体最近の傾向でございます。これは国際的にも最近、メジャーも大体そういう方式をとっておる。これはやはり資金を集めます場合に、有限の責任といいますか、無限の責任を負うということになりますとなかなか資金が集まりません。その資金を調達する点からいいまして、またそういう観点からもワンプロジェクト・ワンカンパニーというのが一般的な傾向になっております。
  205. 正森成二

    ○正森委員 最近、アラスカ石油というのが、これはもう将来見込みがないというて解散したということを聞いておりますが、このアラスカ石油の解散の事実の有無と、それに対して石油公団が元本の返済を免除したかどうか、それは幾らかどうかをお答えください。
  206. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  ことしの六月にこの会社は倒産といいますか、だめになりまして、その元本は一応免除した形になっております。
  207. 正森成二

    ○正森委員 その元本の免除の額は、私どもの調査では十四億二千万円のはずであります。このアラスカ石油というのは、九億円と二億円、合計十一億円借りたわけでありますが、利息を返さなければならないときが来ると、石油公団に一たん利息を返して、その年にまたそれは全額融資を受けたことにする、こういうぐあいになっておりますから、実際上は利息を払ったことにもならないわけであります。そして、うまくいかないということになると、その借りた利息まで一緒に元本返済しなくていいということで、結局、はいさようならということで返さなくてもいいということになっているわけであります。しかも、こういう会社は、事実上財界の首脳がつくっている場合が多い。アラスカ石油の場合では、役員には土光敏夫、永野重雄、平岩外四、今里広記、稲山嘉寛、川又克二、こういう人が取締役に名を連ねているわけであります。これらの人のもとの会社というのは、それぞれ名前を言う必要もないくらい大きな企業で、もうけにもうけておりますけれども、こういうプロジェクトだけはワンプロジェクト・ワンカンパニーで、もうかったときには大いに配当は受けるけれども、もうからなかったときには返さない、元本はもちろん利息も返さない。それは親方日の丸だ、こういうことになっているのです。もし、どうしても国家的事業でこういう探鉱が必要であるということなら、エネルギー公社のようなものをつくって、本当に国と国民に対して責任を負うようにしたらそれはまた話は別だけれども、もうかるときにはもうけて、損したときにはそのままはいさようならというのでは、そういう方向に総合安保だというのでお金がどんどん使われる、国民の福祉は削られるというのであれば、これは決して国民としてこういうあり方というのは納得できないということになると思うのですね。  総理、エネルギーの将来のためにいろいろ配慮しなければならないということは考えられるにしても、こういう石油公団のあり方については、大蔵省の出している歳出百科の中でも一定の批判が行われているくらいであります。ですから、この問題については、国民に納得がいくようなそういう仕組みを考え、将来の運営を考えていく必要があると思いますが、いかがです。
  208. 田中六助

    田中(六)国務大臣 石油の探索というような事態は、御承知のように、リグ船で一本掘るのにも三十億円から四十億円かかるわけでございます。しかもまた、百本に一本当たればいいとさえ普通言われておるわけでございまして、そういう点で私どもが考えなければいけないのは、やはり国家的なプロジェクトで巨大な資金を要し、リスクが多いということを民間だけにやっていいのか。それは掘り当てたら、民間がもうけて云々というふうに言いますか、それは一面の見方でございます。やはり、石油、原油を掘削して当てるか当てないかということは、まさしくこれは国全体の経済に大きな影響を及ぼす問題でございまして、一企業あるいは一カンパニーの問題ではなく、私ども共通に大きな責任もございますし、そういう観点から、石油とかそういうエネルギー関係につきましては、いま始まったことではなく、私ども日本、明治以来ずっとエネルギー関係は、御承知のように石油だけでも九九・八%は輸入、つまり一〇〇%ないと断定していいわけでございまして、私どもの基本方針としては、やはりエネルギー問題につきましてはそういういまの体制をとる。石油公団に対する批判がございますが、いまアメリカが新しい方策をとってレーガンはやりつつありますけれども、これも試行錯誤で、果たしてそれが成功するかどうかは疑問でございまして、私どもはいま考えられ得る唯一のいい方法として石油公団の方式をとっておるわけでございます。
  209. 正森成二

    ○正森委員 エネルギーの重要性について通産大臣からるる説明がありましたが、それほど必要なものであれば、国民の疑惑を招かないように、エネルギー公社のようなものをつくって、国会にもガラス張りにする、もうけを私するようなことのないようにするということをやはりやることも考える必要がある、私はそう思います。  そこで、教育の問題に移りますが、教育の現場で非行や落ちこぼれが非常に多い。その対策が論ぜられまして、それをなくすことは父母の願いであります。文部大臣もよく御承知でしょうが、その一つの解決策として四十人学級というのが出てきているわけであります。現在は四十五人学級ということになっておりますが、いまから三年ほど前に学級規模調査委員会というのが国民教育研究所と日教組の両者で行われましたが、その調査でも、四十四、五人の過大学級を受け持っている小学校教員の九〇・四%、中学校の七六・三%の教師が、生徒数を減らすことが行き届いた教育をするために必要だというように回答しております。その理由として、きめ細かい個別指導ができない、実技指導が困難、理解のおくれがちな子供の指導ができない、こういうことを言うているわけであります。ですからこそ、国会でも四十人学級についての決議もやり、法律も改正されたわけであります。  主要西欧諸国では、文部省に伺おうと思いましたが、私の方から申しますが、大体三十人前後というのがいま常識になりつつあり、実際は三十人を割って二十人台というところも十分にあるわけであります。それに対してわが国では四十五人学級だ。それも守れないで、きのう湯山委員質疑の中で審議が一時ストップいたしましたけれども、四十五人学級を守るのに必要な教員からさえ、五十七概算では五百人の教員を減員しておる。これでは人口密集地帯では四十五人学級も守れなくなる可能性が非常に強いわけであります。  「自由民主」の七月号を見ますと、安倍政調会長が座談会に出ております。この中では、四十七人、四十八人学級にしなければならぬかもしらぬ、こう言うているのですね。こういうことでは全国の父母の願いに反することになると思いますが、文部大臣、いかがです。
  210. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  四十人学級の問題につきましては、政府並びに文部省といたしましては既定計画どおりにこれを遂行いたしたい。ただし、当初は九年間というのを、財政上の諸理由から十二年間ということといたしましたが、今回のゼロシーリングなりあるいは臨調に対しましても、われわれといたしましては、この四十人学級につきまして、財政の非常な窮迫の期間は別といたしまして、六十六年には既定計画どおりの所定の理想方を実現いたしたい、こういうことで進んでおる次第でございます。
  211. 正森成二

    ○正森委員 いま答弁がありましたが、今度の臨調の答申の精神を実行しようと思えば、四十五人学級もなかなか守れないかもしらぬ、四十人学級は遠い先であるということになるだろうと思います。  そこで、防衛施設庁に伺いますが、本会議でも少し質問に出ましたが、厚木基地関係では新たな施設提供としてどういうものを考えていますか。
  212. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 お答えをいたします。  いろいろ数がありますけれども、まず申し上げられますのは、これは五十七年度の予算要求のことだと思いますけれども、隊舎、それから小学校、主なものはその程度と思います。
  213. 正森成二

    ○正森委員 小学校とお答えになりましたが、小学校は何人学級ということでつくっているのですか。
  214. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 三十人学級ということになっておりますけれども、ところによっては二十五人ぐらいの生徒しかいないところもあるようであります。
  215. 正森成二

    ○正森委員 私どもが直接在日米軍の広報部に問い合わせますと、一クラス二十五人ということでつくっておるというように米側は言っております。  岩国には現在家族住宅が建設中だと思いますが、その中にはリトルリーグをつくるための予算八千四百万円を計上されましたか。それは現在できつつありますか。本年度の予算ではありません。
  216. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 岩国のリトルリーグと言われましたけれども、住宅地域に付属しておりますソフトボールのグラウンドだと思います。それは付帯工事として岩国の住宅建設に付帯して行われておりますけれども、それは全部で八千万を超える数字ではありませんで、後から出ますけれども、四千万程度だったと思います。
  217. 正森成二

    ○正森委員 総理、よく聞いていただきたいと思うのです。時間の関係で建設大臣には伺いませんけれども、先ほど住宅金融公庫の利息について法定制を外して将来は上げる可能性を残すという問題が出ましたが、住宅金融公庫のお金を貸し出すための住宅の広さは、原則として百二十平米以下ということになっております。ところが、この米軍住宅を見ますと、皆百五十平米で、二戸当たりの値段が三千五百万を超えております。それだけではなしに、この住宅に入る子供のために、小学校、中学校の子供が野球をするために、リトルリーグの野球場まで付属施設としてつけてやっておる。この野球場にはトイレつきのダッグアウトまでついておる。また厚木では、先ほど言いましたように、日本の子供は、四十人学級はおろか四十五人学級も守れないのに、二十五人学級にするための小学校の教室を建てておるというのが現在のわが国のいわゆる思いやり予算状況であります。この思いやり予算は、昭和五十四年に初めて八十六億円計上され、以来毎年毎年、六一・九%、二一・八%、五十七概算も二九・一%伸びて、合計二百三十四億八千二百万円が提供施設の予算であります。日本の国民に対してはそういう配慮しかしないのに、米軍に対しては至れり尽くせりの配慮をする。そうすると、総理の言う思いやりというのは、米軍に対してはやるけれども、日本の子供たちや親に対してはないんだなというように思うのはあたりまえではありませんか。総理の御所見を承りたい。
  218. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の安全を確保するという観点から日米安保条約を締結しております。これが日本の防衛の柱になっておりますことは御承知のとおりでございます。そういう中で、この駐留米軍の生活環境その他の施設整備を図り、日米安保条約の円滑な運用を図っていくということは大事なことである、こう考えております。そういうようなことから、政府としては地位協定等に基づきましてできるだけのことをやっておるわけでございます。国内のいろいろの施策につきましては、十分この財政再建の中におきまして必要な面につきましてはやってまいる考えでございます。
  219. 正森成二

    ○正森委員 私は、総理のその御答弁では四十人学級はできない、あるいは住宅に困っている日本の国民は十分納得しないであろうということを申し上げて、次に進みたいと思います。  昨年九月二十六日の参議院決算委員会で、監督業界からの献金が問題になったときに、それぞれの大臣が意見を表明しておられます。それを見ますと、たとえば中曽根康弘行管庁長官は、「こういう厳しい時代でございますから、一台閣に列する者は李下に冠を正さずと、そういう精神でまじめにみずから戒めていかなければならぬと、そう思っております。」こうお答えになっておりますが、この御精神には変わりはございませんか。
  220. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ございません。
  221. 正森成二

    ○正森委員 宮澤官房長官はいろいろ言っておられますが、「特に職務権限のありまするところについては十分注意をしなければならない、そういうふうに考えております。」こうお答えになり、質問をされた委員から、「注意すればもらっていい面もあるんじゃなかろうかと、そういうことでしょうか。」という質問を受けて、「注意をしながらもらえという意味ではございません。」こうお答えになっておりますが、それは間違いありませんか。
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 間違いございません。
  223. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いたいと思いますが、予算委員会でわが党の榊議員も聞きましたが、社団法人の教科書協会の会長の稲垣房男氏は、昭和五十一年から五十五年までに表向きは旧石井派の蓬庵会、五十五年からは国民政治協会――自民党の政治資金団体だそうでありますが、ここにそれぞれ献金したことにして、実際は政治家個人に合計一億円以上の献金をしておりました。この献金は昭和四十年ごろから始まり、五十年までは大手七社が夏、冬それぞれ計四、五百万円でございましたが、五十一年からは額もふえ、協会の全理事、監事社十七社が各社の業績に応じて現金を出し、これを会長の稲垣氏がまとめ、代表して、実際は国会の主として文教族と言われる議員に毎年二回献金をしておりました。一回が五十万円から三十万円、年に百万円の議員と六十万円の議員がいたことになります。ほかにパーティー券を買ってもらうなど便宜供与を受けた議員がおられるそうであります。  これらの議員は、稲垣会長がマスコミ等に確認しただけで、自民党では坂田道太元文部大臣、海部俊樹元文部大臣、内藤誉三郎元文部大臣、稲葉修元文部大臣、砂田重民元文部大臣等歴代文部大臣、森喜朗自民党文教部会長、谷川和穗元文教委員長、新自由クラブにも所属したことのある西岡武夫元文教部会長など、自民党の文教族議員がずらりと名前を連ねているだけでなく、読売新聞の報道では、わが党を除く野党議員六名にも献金がされていると伝えられております。  これは政治倫理上重大な問題であり、自民党議員、特に閣僚、文相については、昨年の監督業界からの献金辞退の申し合わせにも反することになると思いますが、いかがですか。
  224. 金丸信

    金丸委員長 だれを要求しますか、正森さん。
  225. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまいろいろ御指摘になりましたが、そういう事実が果たしてあったのかどうか。人の名前をお挙げになりましたが、私は確かめておりませんし、正森さんも本当にその御本人に会って確認した上の話ならともかく、一部の報道をこういう委員会でお出しになることは、私は余り適当ではないと思います。
  226. 正森成二

    ○正森委員 私が求めている答弁以外のこともお答えになりましたが、私のこれからの質問の推移をお聞きになれば、私がこういうことを言うのは一定の根拠があるということがおわかりになると思います。  あなたは、個人がおもらいになったかどうかというのは確かめていないと言われましたが、こう言っているのは稲垣会長だけではありません。本年の八月四日に抗議に来た出版労連と教科書共闘の皆さんに対して、教科書協会の佐久間副会長と日下事務局長が、毎日新聞の報道しているとおりだと確認しているわけであります。毎日新聞の八月四日、五日ごろの報道には、これらの議員の名前が載っております。  それだけではありません。領収書を会計責任者の佐藤比呂志氏が発行して献金を受け取ったと世間から疑惑を持たれた旧石井派の政治団体蓬庵会では、名誉にかけて真実を明らかにするため、稲垣房男協会会長、佐藤会計責任者及び蓬庵会の現会計責任者木戸栄光氏の三人から事情を聴取し、会の会計帳簿、預金通帳を詳細に分析しました。その結果も同様であります。すなわち、蓬庵会には教科書業界から一円も入金していない、領収書は稲垣氏が日下事務局長を通じその知人の蓬庵会の佐藤氏に依頼して取得した、協会が傘下十七社から集めた金はすべて自民党文教族を中心に国会議員十三人以上に稲垣会長が配った、以上が明らかになっており、旧石井派の田中伊三次衆議院議員、中垣国男元代議士から八月下旬マスコミに発表されております。  これでも個人に渡っていないと言われるのでしょうか、私は伺いたいと思います。(「証人に呼ぶか」と呼ぶ者あり)証人に呼んだらいいのですね。
  227. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いろいろ新聞やなんかで、あるいは雑誌で報道がなされることがありましたが、それはそういう話であるということで、正森さん自体が確認なすったかどうかということを私は申し上げているわけです。
  228. 正森成二

    ○正森委員 昭和三十八年教科書無償法が成立してから、小中学校の教科書は国が買い上げ、国民には無償でお渡しすることにしております。当初は七億円だった予算は五十六年度は四百五十三億円、しかも採択決定がございますと、昨日同僚委員質問で明らかにされましたように、代金の九割は前渡しされるために、資本金一億円以下の企業の多い教科書会社にとっては資金繰りに決定的な意味を持つわけであります。また、私が調査したところでは、売り上げに占める教科書販売代のシェアも、高いところでは九割近いものがあります。五割、六割の販売シェアを占めるところはざらであります。  こういう、国と深い契約関係にあり、国すなわち国民の税金で企業が成り立っている会社、しかも教育基本法や教科書無償法で中立性が守られなければならない教科書会社から、職務権限のある大臣や文教委員が毎年毎年六十万円から百万円本金をもらうということは容易ならぬ事態であると言わなければなりません。  法務省に伺いますが、昭和五十四年九月、大阪タクシー汚職の判決が出ました。この判決では、タクシー業界から液化石油ガス税法案について業界に有利になるよう働きかけを受け一回だけ百万円を供与された関谷勝利代議士は、国会議員というだけで国会議員の一般的な職務権限ありとして収賄につき有罪になっているのではありませんか。
  229. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいまのような事件で判決があったことはございますけれども、いまお尋ねの事件とは前提を異にするように思います。
  230. 正森成二

    ○正森委員 タクシー汚職事件についてそういう判決が出ていることが明らかになりました。  教科書問題が与党議員を中心に批判的に取り上げられてから世の脚光を浴び、さらに大蔵省がゼロリストを発表、昨年十月の予算編成期では教科書有償化、すなわち教科書無償法の改正が強力に浮上しております。職務権限が国会議員にあったことは明らかであります。昨年十二月二十八日政府予算案が決定して教科書無償継続が決まったとき、文部省の次官室で行われていた祝勝会に無償継続のお礼に来た稲垣会長は、居並ぶ与党議員や文部省幹部に、教科書の内容について指摘された部分は三年ごとの改訂検定を待たずに直しますと深々と頭を下げております。稲垣会長は、自民党議員に陳情すると決まって、無償継続はいいにしても教科書の内容には問題があると言われたと語っております。これが、この四月の中学社会科教科書公民の全面改訂の真相の一面であります。  文教関係委員は、一方では教科書無償継続をあめにして、教科内容を財界や自分たちの思いのままに改訂するむちをふるい、あげくの果て、お手やわらかに今後ともよろしくということで、国の税金、国民の金である教科書代から見返りの献金を受けているわけであります。  これを正さなくて何の行政改革か。(発言する者あり)行政改革というのは、清潔で汚職や腐敗や癒着のない行政というのを国民は望んでいるのです。それは何にもやらないで、自分たちは、税金であり子供たちの教科書代から献金をもらって、それがこの行革特別委員会で審議されたら、横でうやうや言う。それでも政治家ですか。(「こじつけだよ、そんなのは」と呼ぶ者あり)何がこじつけだ。委員長行革というのはこういう問題についてえりを正すのが当然ではありませんか。  国家公安委員長に伺いたいと思います。  国家公安委員長は、この間榊議員の質問に対して、いろいろ相談を受けておりますが、現段階ではこれを捜査するしないということについては答弁を差し控えさしていただきますと言われました。これは相談は受けておるということですか。それから、捜査するしないは答弁を差し控えさしていただきますということは、将来は捜査するもあるということですか。それについて承りたい。(「品位を持ってやれ」と呼ぶ者あり)金をもらっているのが品位があるのか。
  231. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 相談を受けておるということではございません。  それからまた、この問題については、私も新聞等で承知をいたしておりますが、警察当局といたしましては、一般的に犯罪の有無に応じまして活動することになるわけであります。適切な対処をしているということでありますが、本件につきましてどんな事実を把握しておるか、あるいは今後どういうものを把握するかというようなことについては、答弁を差し控えたい、こういうことで申し上げたわけであります。
  232. 正森成二

    ○正森委員 私は、この問題はそういうことではうやむやに済まされない重大な問題であると思います。  田中伊三次議員がマスコミ等に語られたところでは、八月二十五、六日ごろ田中、中垣両氏の事情聴取を受けた稲垣会長の態度は非常にりっぱで、毎日新聞等に当初私が述べたとおりだ、蓬庵会にも国民政治協会にも一円も入れていない、全部私が先生方に配ったと正直に述べ、ポケットから小さな黒い手帳を出して、五十年当時で文教族十人を含む十三人だ、こういうように言ったそうであります。これは物的な証拠もちゃんと残しておるということであります。  ところが、われわれ政治家としてきわめて遺憾なことに、田中議員らが関係者に詰ったところでは、その後、金をもらった議員二、三人が田中伊三次議員のところへやってきて、田中先生の調べられたとおりです、しかし表向きは金は蓬庵会に入ったことにしてください、そうでないと犠牲者が出る、こう言って頼みに来たそうです。(「重大だ」と呼ぶ者あり)重大であります。自分自身が悪いことをした、犠牲者になるかもしらぬ、だからうそをついてくれということを田中議員のところへ頼みに行っておる。田中議員は、おれを一体だれだと思っておる、命にかけてもうそを言うことはできぬということを関係者に言われたそうであります。  私は、われわれの子供たちの教科書に絡んでこういう問題が起こっているときに、この問題について真実を明らかにする。稲垣会長も一たんは先生方に配ったと言っておる、佐久間副会長や事務局長もそう言っておる。一たん否定したけれども、その後、田中議員や中垣元議員に岡かれたら、初めに言ったのが本当だったと言って、証拠の手帳まで見せようとしておる。そこへ名前を出された議員が二、三人も、あれは本当なんだけれども、本当のことを言われたら犠牲者が出るから黙っておってくれ、こう言って頼みに行っておる。重大じゃないですか。こんなことでどうして……(「二人か三人か、どっちだ」と呼ぶ者あり)それほど聞きたいなら、後で証人申請しますから、そのときに必ず賛成していただきましょう。  また、私は申し上げますが、諸澤文部事務次官は稲垣房男教科書協会会長が常任理事を努めて実力者である真名カントリークラブに昨年十一月二十七日入会しましたが、その購入した会員権価格は三百三十万円と入会金五十万円、三百八十万円と言っております。これは転々と変わっているようでありますが、八月二十五日前後に文部省で関係者が記者会見したようでありますが、その真実を述べてください。
  233. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 御指摘の点につきましては、八月の二十四日夕方の新聞社のインタビューに対しまして、向こうの方から四百万円ぐらいかと聞かれまして、そのくらいだったというふうに事務次官が答えたものでございます。幾日の二十五日の夕方に、また電話で取材がございまして、そのときには応対に出ました秘書役の総務課長補佐が、当時の真名カントリークラブの募集価格が六百万円であったことから、そのことを十分確認しないままに六百万円と説明したものでございます。  そこで、翌二十六日の朝、関係書類を確認いたしました事務次官の指示によりまして、同補佐が電話で三百八十万円と訂正、連絡したものでございまして、新聞の記事はございますけれども、次官の説明は四百万円ぐらいというのと最後の三百八十万というところで額は一定しているわけでございます。
  234. 正森成二

    ○正森委員 ここに八月二十七日付の毎日新聞がありますが、その中では、この経緯を説明しまして、込山進総務課長補佐が、これは諸澤文部事務次官の秘書役をしているそうでありますが、六百万円ということにしてくれなければカントリークラブの信用が落ちるなど営業上困ると言われ、クラブには義理があるので次官には会員権は六百万で、支払いの仕方はこういうふうに説明してほしいと進言した、六百万というのは私の作り話だ、それを次官が信じて、六行方と言ったのだというように説明したと報道されております。これはそのとおりですか。
  235. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 私の確認いたしましたところでは、先ほど申し上げましたように、翌日の夕方の取材に対しまして電話で応対した総務課長補佐が、真名カントリークラブの当時の募集価格六百万円というものが念頭にございましたために、それを十分確認しないでそのとおり答えたというのが事実でございます。
  236. 正森成二

    ○正森委員 官房長は非常にぼかして答えられましたが、新聞にはっきり載っておるところでは、六百万ということにしてくれなければカントリークラブの信用が落ちるなど営業上困ると言われたので、本当は三百八十万か四百万だったのだけれども六百万にしたということのようであります。私は、この秘書が真名ゴルフ場にどんな義理があったのか知りませんけれども、少なくとも三百八十万円という価格が、通常の商取引の価格ではなくてカントリークラブの信用を落とし営業上困るぐらいの異例の価格であったことは明らかであります。ですから、こんなものは通常の商取引でも何でもありません。  そして、十一月二十七日という日は、大蔵省がゼロリストを出したのが十月の八日、十一月の十一日には要保護以外の子供たちに対しては有償にするという方針を大蔵省が決め、財政審の第二部会が了承した日であります。つまり、こういうことをやられたら、教科書会社としては先ほど言いましたように一大事の時なのですね。教科書が無償であるからこそ国から前渡し金を九割ももらう、こういうときだからえらいことだというわけで、文部事務次官に対して会員権を格安の、もしよそに知られれば信用上も営業上も困るという値段で分けているわけであります。  また、文部省というのは教科用図書検定調査審議会の建議によって教科書の定価認可基準というのを決定する権限を持っております。これによって、昭和四十八年以来ほとんど毎年教科書代金が改定され値上げされているわけであります。こういう職務権限を持った公務員というのは、まさに李下に冠を正さずということでなければなりません。ところが、こういう人物がきわめて微妙な時期に二百二十万円事実上値引きを受けておるというようなこと、これを正さなければ本当の国民の信頼を得ることはできないではありませんか。  法務省に伺いますが、裁判官が自分の担当している事件の弁護士からゴルフ用具を受けたということで、その裁判官は訴追を受けました。名誉も地位も失うに至っております。また、この間は法務省の入管局の伊藤審議官というのがゴルフセットをわずかいただいた。お返しをしたようでありますが、それでも責任を負って任意辞職するということをやっております。それは間違いがありませんか。それは法務省としてそういう態度をとらしたわけですね。
  237. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 法務省のお答えの前に私の方から一言発言さしていただきたいと思いますが、事務次官がこの真名カントリークラブの会員権を購入いたしましたのは昨年の十一月でございまして、いま委員の御指摘のような事実関係とは時間的に異なるのではないかと存じます。なお、このゴルフクラブの会員になりましたきっかけと申しますのは、このカントリークラブの川戸社長がたまたま石橋文部政務次官の代議士になる前からの友人でございまして、その関係で政務次官も会員になったわけでございますけれども、政務次官のところにこの社長が参りましたときに、事務次官に紹介がありまして、同クラブの東京駐在員等からの勧誘もあって入会をしたということでございまして、そこの常務理事の稲垣前会長との関係はないものというふうに私は承っているわけでございます。
  238. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ官房長が苦労して答弁をしているようでありますが、私は世間の常識というものをよく考えなければならないと思います。贈収賄罪というのは、職務の公正のみならず、公正らしさもまた保たれるようにしなければならないということでつくられているものであるとも承知しております。  そういう意味から言うと、法務省関係者は、裁判官は法務省関係者とも言えませんけれども、司法関係者は額で言えば十万とか二十万とか零細なものでも、いやしくも法の番人である者がそういうことをしてはならぬということで、厳粛な責任をとっておると私は思いますが、法務大臣、そうではありませんか。もしそうだとすれば、行政官といえども、まして子供たちと深い関係にある文部省の役人たる者が、子供たちの教科書関係の会社からそういう便益を受けるというようなことで国民に疑われるということが絶対にあってはならぬ。そういうことがあれば、それこそ厳粛に身を正すべき必要がある、こう思うわけであります。いずれは国家公安委員長が当面の捜査をする必要があればなさるでありましょうが、法務省関係者の名前も出ましたので、法務大臣の御意見を承りたいと思います。
  239. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先般入管局の審議官について問題がございました。検察当局で調べたわけでございますけれども、起訴には当たらない。しかし、本人が責任を感じましてみずから辞任を申し出たわけでございまして、法の秩序を確立する、いささかの疑惑も国民に与えてはならない、残念ではございましたけれども、これを認めたわけでございました。今後とも法務当局としてはそういう姿勢をとっていかなければならないと思います。  いまだんだんと政治資金の話が出ておりまして、私は、政治資金の問題につきましては、国民の間にこれを公にして国民の判断にそれを求めるという形において行われている。個人におきましては、政治献金も先般の改正で政治団体に繰り入れて、そしてこれを使っていくというようなことになっておるわけでございまして、先ほど来伺っていますと、五十四年までのことのようでございますから、その後において政治資金規正法が改正されまして取り扱いが改められたのだということになっておりますので、これは政治団体の政治資金、これを国民がどう判断するかという問題じゃないだろうかな、こう思っております。  しかし、今後の取り扱いについては、政治団体に繰り入れて個人の分も政治団体の支出にしていこうというような改正が行われたことは御承知のとおりだと思います。
  240. 正森成二

    ○正森委員 いま法務大臣から御所見が述べられましたが、私は本来は文部大臣から自分の部下あるいは関係者についても綱紀を厳正にしなければならぬという意味で御所見があってしかるべきと思いますが、時間の関係上――おっしゃいますか。
  241. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  ただいまの御質問を拝聴いたしておりますと、いろいろな問題を一連のものとして御類推になっておるような気がいたします。これは分解して申し上げたいと存じますが、当初の政治資金の問題につきましては、御案内のとおりに、政治資金規正法によりまして自治省の方に登録をされました、その問題につきましての新聞なり週刊誌の記事でございまして、これは企業と政治団体あるいはまた政党間の問題でございまして、私がここでお答えをする限りではございません。  第二の点でございますが、その蓬庵会の問題につきましては、これは私何らここでお答えをする限りではございません。私は、さようなことはなく、りっぱに推移いたしたものだ、かようにかたく信じております。  第三の次官の問題でございますが、これは、御案内のとおりにゴルフ場の会員権を友人から慫慂されまして買いましたものでありまして、これは正当な金銭の授受があり、そうしてまた、正しい意味におきまする会員権の売買でございまして、そこには一点の疑義はございません。ただ、これを全部総括されまして、いやしくも文教の府にある者がというような、いわゆる聖域であるがための文教行政ということにつきましての御設問でございますが、その点につきましては、われわれ文教のみならず、いやしくも政治に携わり、これらの政策を預かる者といたしましては、十分に今後ともに戒心いたさなければならない。  最後に申し上げたいことは、教科書の問題でございますが、これは検定あるいはその他の正しい手続によりまして価格その他が決定されるのでございまして、これは単なる恣意によって教科書価格というものは決まるものではございません。審議会を通じまして公明な手続によりまして価格は決定されております。  それから、私の方から特に申し上げておきたいことは、この教科書の問題は、今後ともにわれわれの後継者に対しまする最も重大な教育の資料でございます。これにつきましては、あくまでもりっぱなものをつくりたい、公平中正なものをつくりたい、この念願のもとに今後教科書行政を進めてまいりたい、かように考えております。
  242. 正森成二

    ○正森委員 いまの答弁を伺いましても、事の重大性と文部省関係者の責任の重大性というものを必ずしも国民の期待に沿うような形では受けとめておられないように思います。  第一、お金が蓬庵会に入ったということを固執されておりますが、それは蓬庵会の責任者でもある方々がお調べになって、入っていない、政治家個人に渡っているということを言われ、われわれの同僚議員である田中伊三次議員がそういうように調べて言うておられるわけですから、そういう前提をやっぱりお認めになる必要があると思うわけであります。  そこで私は、国民はとにもかくにも真実を明らかにすることを教科書関係では望んでいる、この一点についてはすべての国民は同じ心であると思いますので、委員長に、教科書協会の前会長である稲垣房男氏、教科書協会事務局長日下正衛氏、文部事務次官の諸澤正道氏、蓬庵会の前会計責任者佐藤比呂志氏、この四名を証人として喚問されることを要請したいと思います。
  243. 金丸信

    金丸委員長 ただいまの要請につきましては、後日理事会に諮りまして決定いたしたいと思います。
  244. 正森成二

    ○正森委員 それでは、次に移らしていただきます。  防衛関係について伺います。  防衛関係については、五十七年度の概算要求では約二兆五千八百億円、後年度負担が二兆二千六百億円でございますが、五十七年度に発注される正面装備の費用は幾らでございますか。それは五十六年度の何%増になっておりますか。
  245. 大村襄治

    ○大村国務大臣 五十七年度防衛関係予算概算要求のうち、装備費にかかる新規調達分の金額は一兆三千百八十五億円でございます。五十六年度予算の当該金額は四千九百二十八億円でございますので、二・七倍ということに相なるわけでございます。
  246. 正森成二

    ○正森委員 いま御答弁がありましたように、新規装備の発注額が一兆三千億円を超える、これは前年度の二・七倍に増強しているということになっておるわけであります。  防衛庁には調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令というのがあるはずですが、ございますか。
  247. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令というのがございます。
  248. 正森成二

    ○正森委員 それはいわゆる訓令三十五号というものだと思いますが、その第十節の「利益」のところでは、利益は幾らまで許されることになっておりますか。
  249. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 利益につきまして、具体的な数値でもって幾らということは書いてございませんけれども、実際の運用で一般的に一〇%ということで抑えております。
  250. 正森成二

    ○正森委員 私の持っております訓令三十五号には、原則として一〇%、特に考慮を要するときには一五%というように数字も響いてあります。  そこで、五十七年概算のF15やP3Cの一機当たりのフライアウエー・コスト、初年度部品を除いたものは幾らになっておりますか。
  251. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 御指摘の航空機に関します単価でございますけれども、現在概算要求段階でございまして、その積算に当たりましては、現在概算要求中の取得機数それから経済指標等を基礎としておりまして、今後予算作業の段階におきましてそれらの基礎数字が変更されれば、当然変更されることになるわけでございますが、あえて現段階で単価を申し上げれば、概算要求総額を単純に機数で割った数値といたしまして、F15は百五億円、これは四千五百七億円を四十三機で割った数字でございます。それからP3Cは百十一億円、これは同様にして千八百八十三億円を十七機で割った数字でございます。
  252. 正森成二

    ○正森委員 私が聞いたのはフライアウエー価格ですけれども、それはそれよりも少し安くなりますね。
  253. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 フライアウエー価格につきましては、いま申し上げたように概算要求段階でございますので、これについては申し上げることを遠慮させていただきたい、このように考えております。
  254. 正森成二

    ○正森委員 ここにちゃんと共産党には資料が出ているのです。(「それだったら聞かなくたっていいじゃないか」と呼ぶ者あり)そんなことありますか。共産党には出していたって、ここでは答えないと言っているのだから。行革特別委員会で、審議してこそ値段にあれが出てくるのです。
  255. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 それでは、お持ちの数字を特にお聞きになるということでございますが、現在は概算要求段階であり、今後取得機数、経済指標等の積算上の基礎数値が変更されれば当然単価は変更されるものでございます。したがって、概算要求における単価というものは政府として決定したものではございませんで、政府決定が行われるまでの一過程における数値ということを十分御理解いただいた上で申し上げますと、国産価格でF15のFAC価格が約九十六億円、P3Cは約九十三億円でございます。
  256. 正森成二

    ○正森委員 これは初年度の部品を除いたから安くなっているわけですが、それでも五十五年度の購入価格に比べてそれぞれ二四・七%と一六・三%高くなっております。経団連の防衛生産委員会は適正利益率での確保が不可欠ということで適正利益率を要求しておりますが、F15やP3C等については適正利益率を幾らとして予算案をつくるおつもりですか。
  257. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 適正利益率を幾らかということを申し上げますと今後の折衝に差し支えますので、それは申し上げられませんが、しかし一般的に言いまして、防衛庁が適用しております利益率の平均は五%でございまして、これまで航空機に適用しております利益率というのはそれとほとんど変わっておりません。
  258. 正森成二

    ○正森委員 約五%という数字が出ましたが、私ども関係会社から確かめましたところでは五・七%ぐらいだそうであります。そのほかに利子率相当を見てもらい、一般管理費ということで相当の数字を見てもらいますから、相当ゆっくりした利益率だということになるわけであります。そうだといたしますと、これらの飛行機を一機発注を受ければ軍需会社は五億円を超える利益を得ることができるということになるわけであります。  総理、伺いますが、今度の臨調では国際的責任を果たすための経費の増大は必至である、国際的責任は何かといえば、軍事費と対外援助であるということになっております。それをどうしても出さなければならないということで、この一括法案にも見られるように福祉や教育に大きな犠牲がかかってきているわけであります。ところが、それによって購入されるものには利益が保障されて軍需関係の会社はほくほく顔になっておる。富士重工業というAHlSを今度発注を受ける会社がありますが、その常務の渋谷巌という人は、七月二日の毎日新聞によれば、「(兵器産業にとって)今日ほど恵まれた時期は、これまでになかった。“黄金時代”というところかな」と語っております。軍需会社は黄金時代だと言っておるわけであります。国民にはがまんと欠乏で、軍需会社は黄金時代であるというのでは、これは一体だれのための行革であり、何のための行革であるかということについて国民が大きな疑問を持つのは当然であると言わなければなりませんが、こういう点について総理の御所見を承りたいと思います。
  259. 金丸信

    金丸委員長 その前に、和田装備局長から申し入れがありますから、お答えいたします。
  260. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 いま一機当たり五・七%という数値を挙げられまして、それによりまして大変膨大な利益を上げるというふうに言われましたけれども、先生も御存じかと思いますけれども、航空機といいますのは、機体、エンジン、搭載部品等から成っておりまして、それがまたその下に多くの下請企業を使っております。航空機というのは、御存じのとおり全体で百万点ぐらいの部品から成っておりまして、それは中小企業を多数含んでおります下請企業の協力を得てつくっているものでございますので、利益も同様にいたしまして中小企業の方にそれぞれ流れていく、そういうものでございます。
  261. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 予算の非常に厳しい財政事情でございますから、従来のような考えで査定をすることはできません。われわれといたしましては、よく精査をした上で、利益の問題等についても、もう最小限度のもの以外は認めないという方向でやらざるを得ません。
  262. 正森成二

    ○正森委員 いま私が要求もしないのに防衛庁の役人が答えましたけれども、私どもが調査したところでは、アメリカなどから購入する何万点という部品がありますが、それは購入するときにアメリカ側はたっぷりと利益を計上しておる。それを購入したわが国のライセンス生産する軍需会社は、購入したというだけで五・七%という利益をそれにつけることができる。その上に自分たちが加工した工数についてまた五・七%取ることができる。だから、軍需会社へ勤めている関係者から聞くと、アメリカから購入されたものが高ければ商いほど逆に自分たちの利益が多いということになるのだと言っているのですね。ですから、いまや黄金時代である、こういうように言っているわけであります。  そこで、私は総理に伺いたいと思いますが、結局国民の福祉、教育は切っていく、大企業の補助金はそのままだ、国民には実質大増税で、大企業の不公平税制は結局そのままだということになるのではないか。総理の言う行革の中身というのがそういうようになるとすれば、これは非常に遺憾であると言わなければならないと思います。「行革の痛みをこえて春が来る」こういうスローガンがございますが、これでは下手をすると「行革の痛みの後は戦争だ」ということになりかねません。  六月の朝日歌壇の歌に、「日本を護るなどとは何を言う漁夫の網ひとつ守り得ずして」「戦争に傾きゆかば阻止のデモ二人でやらむと古稀の夫言う」こういう歌が載っておりまして、私は非常に感銘を受けましたが、これが国民の声であると思います。  時間の関係で省略したものがございましたが、私は総理に対して、最後に、国民行革に対する、正しい行革に対する願いにこたえて……
  263. 金丸信

    金丸委員長 時間が来ておりますから、簡潔に。
  264. 正森成二

    ○正森委員 今後、正すべき点を正していただくことを切に切望いたしまして、総理の御所見を承りたいと思います。
  265. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、常日ごろ、わが国は、平和憲法のもとに平和に徹してすべてやってまいる考えでございます。行革に当たりましても、その精神で取り組んでまいります。  また、行財政改革に当たりましては、国政全般について、全体を私はチェックをしてまいる、こういう姿勢で取り組んでまいります。
  266. 金丸信

    金丸委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  次に、小杉隆君。
  267. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、新自由クラブ・民主連合を代表して、行政改革についての質問と提言をいたします。  私たちが五年前に立党して以来叫び続けてきた行政改革が今日ようやく国政の中心課題となり、今国会においてもこのような特別委員会が設置されて審議されるというところまでこぎつけたことにつきましては、私たちにとっては一歩前進であり、それなりに評価をいたします。しかし、いままで私たちの主張を取り上げようとしなかった歴代総理及び政府・与党の怠慢が今日のような財政破綻をもたらしたということを強く反省をしてもらいたいと思います。  さて、ここで行政に取り組む姿勢についてお伺いをしたいと思います。  いまもいろいろな問題が出されましたけれども行政改革の断行にはやはり国民の理解と協力が必要であるということを総理もしばしば言っておられます。  奥野法務大臣は、去る九月三十日に開かれた検察長官会同の席で、行革国民各層が痛みを分かち合う必要がある現在、ささいなことでも国民の不満を醸成しかねないので、法秩序の維持に当たる者としては、国民の間にいささかも疑惑を生じさせることのないよう最善を尽くされたいと述べておられます。  同じ席で、安原検事総長も、悪質な汚職、大規模な脱税、企業犯罪等に対し厳正に対処することで、国民の期待と信頼にこたえるとしております。まことにもっともなことでございます。  しかし、今日、国と地方とを問わず、汚職事件は連日マスコミをにぎわしております。こんなことでは国民の共感と合意を得ることはできません。行政改革というのは、単に金減らしや人減らしではなくて、やはり政治や行政が腐敗から訣別をして、国民が政治や行政への信頼を取り戻すことが私は本当の行政改革を進める前提であると考えております。  行政の最高責任者としての総理の決意を改めて伺いたいのと、法の番人としての法務大臣のお考えもあわせてお伺いしておきたいと思います。
  268. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 小杉さん初め新印連が行財政改革に対して積極的に取り組んでいただいておるということにつきまして、私は敬意を表するものでございます。  いま御指摘がございましたように、行財政改革を進めるに当たりまして一つの一番大事な点は、行政に対する国民の信頼を回復しなければいけない、こういうことでございます。行政官庁の簡素合理化、むだのないそういう体制をつくること。また、綱紀を粛正し、綱紀の振粛を図り、姿勢を正して、そして国民の皆さんから信頼される政府でなければならない、心の通った行政ができるようでなければならない、こういうことを心がけて行財政の改革に取り組んでまいる所存でございます。
  269. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先般の検察長官会同で、いま御指摘のようなことをお話しいたしました。行政の執行に当たる者は公務員でございますから、行政改革、好ましい社会を目指して行政の運営を適切にしていく体制を整える。その場合には、何といいましても、行政運営に当たる公務員のあり方、これが非常に重要な問題だと考えるわけでございまして、全体の奉仕者として公共の利益のために働いていくその姿勢は強調して強調し過ぎることはないと思いますし、特に法務省は法秩序の維持に当たっているものでございますから、関係者がいささかの疑惑を受けるようなこともあってはならないわけでございますので、私は機会あるごとにこの点を強調してまいっておりますし、これからもそういう努力をしていきたい、こう思っております。
  270. 小杉隆

    ○小杉委員 次に、特殊法人等の整理合理化、特に三公社の民営化という問題について触れたいと思います。  世間一般で言われていることですが、あるいは私たちもいままでの経験で十分承知をしておりますところは、官業に比べて民営が経営効率の点においてもあるいは能率向上の点においてもすぐれているということは明らかであります。たとえば交通機関、東京都や大阪などでの都営交通あるいは大阪市営交通と同じ地域でやっております民間の交通と比べましても、民間交通に比べて公営交通の効率が悪いことは周知のとおりでございます。  いま国の財政を大きく圧迫しているものに、いわゆる三K、国鉄、健保、米というものがありますが、このうちの国鉄にも大都市における公営交通と同じような官業ゆえの問題があると考えております。国鉄は毎年料金を引き上げながら、赤字は減るどころか、ますますふえ続けております。料金値上げを続けた結果は、同じ地点間の料金で民間の私鉄をはるかに上回る結果となっております。  運輸大臣にお伺いしますが、東京と小田原の間を国鉄で行った場合と小田急線で行った場合とどのぐらい差があるか御存じでしょうか。
  271. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 東京-小田原間の運賃に格差のあるととは承知いたしておりますが、具体的に乗る列車の種類にもよりましょうしいたしますので、正確には承知いたしておりません。
  272. 小杉隆

    ○小杉委員 東京-小田原間の運賃は、国鉄では千六十円、私鉄では半分以下の五百円であります。かつては国鉄とかあるいは公共の鉄道の運賃というのは民間よりも安かったのが常識でありますが、最近は公共の方が民間よりも高い。しかも、いつも運賃値上げの引き金になっているのが現状であります。現在の国鉄の赤字は年間一兆円、これは一時間にしますと実に一億円という驚くべき数字であります。いま国鉄は三十五万人体制の合理化計画を進めておりますが、これが達成をされる六十年になりましても依然として九千九百億円の赤字が見込まれております。こういう実態を考えてみますと、いまの経営形態ではいかに努力をしても再建は不可能なのではないかという基本的な疑問にぶつからざるを得ません。  そこで、国鉄を含む三公社の民営化という問題についてそれぞれ所管の大臣からお考えをお伺いしたいと思います。
  273. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 まず国鉄についてでございますけれども、現在国鉄は大変な赤字を持っておることは事実でございまして、また莫大な借金も持っております。よくこれを民営化したらという議論はあるのでございますが、これは私たちにいたしましたら、一つの意見としてはそういうことは言えると思うのでございますが、なかなか現実には即しておりません。  まず第一に、それでは現在の国の基幹鉄道としての維持というものが、一民間会社で実際に維持できるかと申しましたら、とてもできるものではない。それじゃ分割論と申しますか、こういう鉄道は電気と違いまして、分割についての条件が全く違うということが一つございます。  それからさらに、現在十二兆円を超す負債を持っておりますが、それはしからば民間に移行する場合どのように処理するか、そういういわば借入金を民間企業として背負い込んでいけるのかどうかというところもございます。  さらには、従業員問題がございまして、国鉄の全従業員を、あるいは分割する、あるいは民営にするということになりましたら、それなりの措置を要するということでございます。  そこで、現在の国鉄の中で一番問題は、いわば親方日の丸的な気持ちが蔓延しておるというところに問題がある。だから民営にしろ、こういう議論が出てくると思うのでございまして、そうであるとするならば、まず現在の国鉄の経営の中にそういう民間企業的ないわゆる経営の手法、制度というものを導入していくべきであって、このことをもって直ちに民営化しろということには、われわれは賛同できないところであります。
  274. 山内一郎

    ○山内国務大臣 郵政省は電電公社、これを所管しているものでございます。電電公社の現在の状況は、いろいろと技術の開発、企業努力、省力化、効率を上げることに全力を挙げまして、全国の電話網につきましてはほとんど完成に近い良好な状態で経営をしているものでございます。  したがって、民営論ということも出て、臨調でも御検討願うことに相なるわけでございますけれども、どういう点が民営になって――電電公社の場合ですよ。あるいは自由競争、競争原理をどういうようにするとか、こういう点でいろいろ問題点もたくさんございまして、たとえば公衆電気事業の役割りの問題、全国的に一括にやったらどうかというような役割りの問題、それから運営体制のあり方の問題、それから国民利用者がどういうふうにサービスを受けるか、こういうようないろいろな点を検討してやらないといけない、こういうふうに私は考えているわけでございます。
  275. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大蔵省は専売公社を持っておるわけでございますが、専売公社についてはいろいろ特殊事情がございます。しかし、臨調の答申の御意見等も聞いた上で対処してまいりたいと存じます。
  276. 小杉隆

    ○小杉委員 いまお答えになったような事情が三公社それぞれにあることも私も承知しておりますし、一概に否定はいたしません。しかし、納税者の立場から考えますと、国鉄はどうしていまのような状態なのか、率直な疑問を持ちますし、また電電公社というのは、郵政大臣は大変自信たっぷりにお答えになりましたけれども、考えてみますと、独占大企業でありまして、しかもハイテクノロジーの一番近代的な有利な業態でありますから、これは黒字になるのは当然だと思うのであります。そのことは申し上げていると時間が足りませんし、またもっと深い議論を次の機会にやらせていただきますけれども臨調の答申でも民営化ということを大変ウエートを置いて言っているわけですから、ひとつこういういろいろな問題はあるにしても、将来を見通した大所高所に立った勇気ある決断をすべきではないかと思いますが、中曽根長官行革の責任者としてこういった問題についてどうお考えになるか。
  277. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 臨時行政調査会でその点はいま非常な勉強をなさって研究されておるところでございまして、その答申については法律でも政府は尊重すると書いてありまして、その結果を見ましてわれわれも慎重に検討をしつつ、かつ尊重してまいらなければならぬと思っております。
  278. 小杉隆

    ○小杉委員 次の質問は、地方公共団体の合理化、効率化対策についてであります。  たとえば公務員の数を比較してみましても、国が八十九万人に対して地方公務員は三百十六万人、そして財政の規模を見ましても、地方は国の二倍以上であります。地方公共団体は全国で三千三百二団体ございまして、国全体が行政改革に取り組もうとする場合に、地方公共団体がこの行政改革に占めるウエートというのは大変大きなものがあると思います。したがって、地方公共団体の行政改革と国の行政改革ということは車の両輪という関係にあると思います。したがって、国と地方とが歩調をそろえて取り組んでいかなければ効果は半減をしてしまうということでありますが、この点に関してひとつ総理のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  279. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘のように、納税者である国民の立場から考えました場合におきましては、国の行政もまた地方の行政国民生活に密着をした非常に重要な仕事であるわけでございます。したがいまして、行財政の改革を考えます場合に、国と地方の各分野にわたりまして全体が見直しをされなければならない。国民の側から見て本当に行政財政がむだがなく、効率的で、そして国民の新しい時代の要請にこたえるようなものにならなければならない、こういう認識で取り組んでまいりたい、こう思っております。
  280. 小杉隆

    ○小杉委員 いま地方も行政改革に積極的に取り組んでおります。特に昭和五十年以降は地方の行政改革が非常に進んできている。しかし、その努力に対して、国の姿勢とかあるいは国の制度や法律が足を引っ張っているという側面があります。そこで、私は幾つかの問題点を抜き出して質問をしたいと思います。  まず第一に、地方公務員の定数についてでありますが、昨日の自治大臣答弁で、最近の地方公務員増加ぶりが御答弁がありました。たとえば昭和四十二年から五十五年度までの十三年間に、国の方は九千人減ったけれども地方の方は八十万人ふえたということですが、これは地方公共団体の仕事がもっぱら住民サービス、住民に密着した教育とか警察、消防、福祉ということでありますから、やはり行政の需要が高まるにつれてふえるのは、これはいたし方ないと思います。したがって、一概に地方公共団体の職員がふえたからといって、これは罪悪視してはならない面だと思います。しかし、そうはいっても定員の抑制を国がこのようにやっている最中ですから、地方自治体の自主性に任せる、自律性に任せるということでは私は不十分だと思いますので、これから地方公共団体の定員をどのように抑制をしていくのか、その点に関して自治大臣からお答えをいただきたいと思うのです。
  281. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 地方公務員の定数につきましては、できるだけ抑制をしていくという態度で強い指導をいたそうと考えております。  お話のございましたとおりに、大体地方公務員のうちの六割というものは、国の法令あるいは通達その他によって縛られている面があるわけでございます。あるいは通牒等によっても縛っておる、こういうのがございます。これが大体六割でございます。三百万人のうちそういうものが百八十万人台である、こういうことでございまするから、残りの百二十万については私も極力抑える努力をすると同時に、国におきましてもそうした中央においてこれを縛っていくというようなことはできるだけ避けてもらいたい、こういう念願をいたしておるものでございます。両々相まちまして、この点についての是正を極力進めてまいりたいと思っておる次第であります。
  282. 小杉隆

    ○小杉委員 いま自治大臣が言われたように、職員の配置基準というのは全部国で主なものは決められてしまっているわけでして、したがって地方が自主的に自治体の定員を弾力的に管理をするという幅は非常に狭められているわけでございます。しかし、そうはいっても、やはり定員抑制について自治体にも協力をしていただかなければいけないわけですが、定員抑制についての昨日までの答弁では、一定のモデルをつくって、それを当てはめてひとつ地方自治体にお願いをしていくというお答えでした。しかし、私は、こういう定員の抑制というのは、そういうふうなスマートなやり方で果たして抑え込むことができるかどうか非常に疑問だと思います。むしろ逆に五%なら五%削減するという目標を示して、それに協力していただくというような姿勢が必要ではないかと思うのですね。  たとえば国がいま五年間で五%実質減を図ろうとしております。八十九万人の五%といいますと、これは地方自治体の三百十三万人に対しますとわずか一・四%の削減で国並みの削減が数の上では達成されるわけですけれども、地方公共団体に対してそういうような一つの目標というものを示すというやり方を、これは自治大臣よりも行政管理庁長官にひとつお答えをいただきたいと思うのですが、国が五年間で五%実質削減を図るという目標を一応設定しましたけれども、地方自治体に対してもそういうふうな努力目標を掲げて協力をお願いするということはお考えになりませんか。
  283. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は考えていいところであります。ただ、地方自治の本旨という点がございますから、地方の固有事務は地方が条例で議会の同意を得ておのずから行うことになっておりますが、自治省に指導していただきたい。  そこで、問題になるのは行政職でございます。警察、消防、教員あるいは看護婦、そういうような者や福祉関係の者は、いまおっしゃったように国からの要請に基づいて置いているものが非常に多うございます。固有の行政職がどれぐらいふえているかと調べてみますと、約九万五千人この十二年間にふえている。国家の場合はそれが二万七千人減っておる。この減った二万七千人の行政職がみんな大学やその他教員あるいは看護婦さん、その他の方へ増員でいっているわけです。それを見ますと、地方、特に市町村の場合に増員が非常に多いわけです。したがいまして、この九万五千人の行政職がふえているということは、いろいろ行政需要も多いとは思いますけれども、こういう時代になりましたから、主としてそれを目がけて減らしていただく。  そこで、今度臨調の答申におきましても、これくらいの工業力で、これくらいの人口の市あるいは県はどれくらいが標準として妥当であるか、そういうモデルをつくっていただいて、それに合わせるように個別的に指導し、相談していく、そういう形も臨調の答申にも書いておりまして、自治省もそういう気持ちになって乗り出してきております。その点大いに期待いたしたいと思っております。
  284. 小杉隆

    ○小杉委員 次の問題は、地方自治体の仕事の中で、民間委託をした方が能率が上がる、あるいは地方行政として支障が比較的少ないと思われるものがたくさんあるわけでございます。  私は、その中で清掃作業の民営化という問題を取り上げたいと思うのですが、たとえば日本都市センターの調査によりますと、ごみの収集について、直営でやった場合と民間委託でやった場合のコストの比較が出ております。これによりますと、直営の場合には一トン当たり一万四千五百十八円かかるのに対して、民間委託であったならば四千五百十八円と、三分の一以下でできるということが結果として出ております。そのほか民営と公営の格差というものは、学校給食などでも指摘をされておりますし、自治省あたりではこういったケースはいろいろな事例を把握されていると思います。  そこで、私どもはこうした民間委託の促進について一体何がいままでネックになっていたのだろうかというふうに考えますと、これはやはり中央官庁、中央省庁の一つの力があるということを痛感いたしました。たとえば、ごみの民営化に対しましては所管の厚生省が必ずしも同意をしていない。一方において自治省では民営化の促進ということを言いながら、所管の厚生省では余りいい顔をしない、こういう一つの実態がこういう民営化を妨げているという点があるわけですが、ここで厚生大臣に清掃作業、ごみ収集を含めたそういう民営化についての考え方をお伺いしたいと思います。
  285. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ごみ収集の民営化につきましては、確かに民営に移管した方がいい場面もあると思います。臨調の答申もありますし、前国会でもフェニックス法案でこの問題は十分論議されたところでございますので、しさいに検討いたしまして、妥当な結論を出したいと思っております。
  286. 小杉隆

    ○小杉委員 厚生大臣は大変前向きの理解ある答弁をしましたけれども、実は私もいろいろな自治体へ行って調べてみますと、どうもいままで厚生省が余り乗り気でないというようなことで、いままで進んでなかったわけであります。  自治大臣に伺いますが、各省庁の所管事項で、これはもう民営化が好ましいと思うことで、その所管の省庁が反対をしているために進まないという点については、私はもっと積極的に自治省の方で働きかけるべきだと思いますけれども、自治大臣の所感を伺いたいと思います。
  287. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 適切な御質問でございまして、私どもぜひそれを促進しなくちゃならぬと考えております。従来各省との関係におきまして停滞しておった問題もありますけれども、これはやはり問題として取り上げまして、各省の責任者との間で十分協議をいたしまして、話を通じましてその実現に努めてまいるつもりでございます。
  288. 小杉隆

    ○小杉委員 それから次は、地方自治体のいろいろな審議会についてであります。いま地方でも行政改革でいろいろな調査会とか審査会、審議会というものを整理縮小をしつつありますが、これまた国の法令で設置が義務づけられているために、これが整理縮小できないという面がたくさんございます。  農林大臣に伺いますが、各都道府県に開拓審議会というのが置いてあります。それから、建設大臣にも伺いますが、地代家賃審査会、こういうものがあります。たとえば東京都の場合、この開拓審議会とか地代家賃審査会というのはもうここ十数年間全然開かれていない。これを整理しようとしても、法律があってなかなか整理ができないというようなことがあります。こういう審議会をどうして存続させておかなければならないのか、整理ができないのか、そういう点をお答えいただきたいのと、環境庁長官には、水質審議会とか公害対策審議会というのがあります。これは恐らくいままでの公害行政の推移に従って、一番最初は水質のことだけがあったのが、最近になりまして中央公害対策審議会ができ、公害基本法ができたりして、それを一括した公害対策審議会というものの義務づけをしたと思うのですけれども、こういう時代の変遷に従って、重複するような審議会は整理統合をすべきだと思うのですけれども環境庁長官のお考えを聞きたいと思います。  それから、厚生大臣にもお伺いしなくちゃいけないのですが、いま乙種看護婦試験委員というのがあります。乙種看護婦試験委員といいましても、いまや乙種看護婦というのは存在しないわけであります。いまは全部正看護婦か准看護婦になっているのでありまして、なぜこんな試験委員が残っているのかと思って調べてみましたら、保健婦助産婦看護婦法という古い法律がありまして、それがあるためにこういう実在しない乙種看護婦の試験委員というものが置かれている。こういう状態でありまして、私は時間があればもっと細かく聞きたいのですけれども、以上代表的な例を取り上げて、各所管大臣にその実態についてあるいはその対策について御意見を聞きたいと思います。
  289. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 開拓審議会につきましては、実は東京だけは農地が大島とか三多摩とかに限られておるものですから、やるべき仕事はまだ残っておるわけであります。ただ、実際に審議会が開かれておらないということでございまして、ほかの都道府県につきましてはそれぞれ農地法に基づく農地業務の仕事を処理いたしておるわけでございます。  したがいまして、東京都だけ仕事がないからといってこの審議会をなくしてしまうということはできないわけでございまして、やはりこれはそれぞれの運営の仕方によって、案件が起きたときにその審議会を招集していただくということにしていただければ経費もかからないということでございますので、その点にはなお一層意を用いて御趣旨に沿うような運営をしていきたい、こう思っております。
  290. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  地代家質審査会は、官制により都道府県ごとに必ず設置しなければならないということになっておるわけでございますが、東京都の場合も十年ぐらい開かれていないということ、これは知事職権で統制額を減額する場合にこの審査会の意見を聞かなければならないということになっておるわけでございますが、御案内のように、日本の社会情勢、経済情勢はいま統制額を減額するという状況でございませんので、これが開かれていないというのは事実でございます。  すでに行政管理委員会あるいは住宅宅地審議会、臨調等々から、この問題につきましては廃止すべきであるというような提言もいただいておりますので、いま言った状況でございますので、すでに存在意義も失っているということで、居住者の環境条件等々を整備した上で廃止することが適当であるというふうに考え、その向きで進めさせていただきたいと思います。
  291. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡国務大臣 お答えします。  時代の変遷によって要らなくなったものはやめたらいい、これは御説ごもっともでございます。ですから、臨調で来年は答申があるでしょうから、それを待ちまして、また待たないまでも、中曽根長官の方にも話をしてせっかく検討いたしたいと思います。  公害対策審議会と水質審議会と二つ言われましたが、それぞれよって立つ法律も違いますし、組織も違います。御承知のとおりでございます。ただ、重複しておるところがないかと言えば、ないことはないと思います。せっかく検討いたしたいと思います。
  292. 村山達雄

    ○村山国務大臣 乙種看護婦試験委員というのはもう有名無実じゃないか、こういうことでございます。よく調査をいたしまして、必要がなければやめていきたいと思っております。
  293. 小杉隆

    ○小杉委員 各省庁にとっては大変細かい問題と思って見過ごしておられるかもしれませんが、これは地方自治体にとっては非常に壁になっているわけです。地方自治体、数が多いわけですから、中央省庁は一つですけれども、それに関連する各自治体のそういった迷惑を考えて、こういうものは速やかに手をつけていただきたいということを私はお願いして、次の問題に移ります。  次の問題は、国民負担の軽減という観点から二つの問題を取り上げたいと思います。一つは車検制度であり、一つは運転免許の更新制度であります。  行政改革の目的というのは、ただ単に役所の機構とか人間とかお金を減らすだけではなくて、やはり国民の負担をできるだけ軽減をする、いたずらなる許認可というものを温存させておくのではなくて、行政サービスをもっと公平に、適正に提供するシステムを確立することだと思います。そういう面でいうと、いま申し上げようとするこの二つの問題は、検討を要する、しかも国民的関心の最も高いテーマであると思います。  まず、車検制度でありますが、いま検査対象車両数というのは、昭和五十五年度で日本全国で三千百六十九万五千台あります。そして、年間車検に該当する車は、新規検査、継続検査合わせて、そしてさらに不合格なものが再検査を受けるものも含めまして二千百十二万三千台ということであります。ユーザーにとりましては、いまや車というのは生活必需品でありまして、この乗用車を二年ごとに車検を受けるために自動車税とか重量税とか、そしてその整備費を含めますと、大体十五、六万円の負担をしなければいけない。  こういう車検についてもいろいろ世論も巻き起こっておりますし、私はやはり、ユーザーの立場、これだけ普及をした車の再検制度というものについてメスを入れる必要があるのじゃないかと思う。  そもそもこの車検制度というのは一体いつ、どういう考えでできたのか、まず運輸大臣から簡単にお答えいただきたいのです。
  294. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 車検制度の検討についてでございますけれども、いま御質問あります前に、実は鈴木内閣が発足いたしましたときから、国民負担の軽減の問題の一つといたしましてこの車検問題を検討しろということで、総理並びに行管庁長官から指示がございまして、そして昨年の十二月に閣議決定いたしまして、本年に入りましてから運輸技術審議会で検討を重ねております。  御承知のように、現在この車検制度の設けられましたのは、公害問題あるいは安全運転ができるようにという、そういう車としての性能をどこまで維持していくかということをチェックするために設けられた制度でございます。したがいまして、この制度を見直しいたしますにつきましても、あくまでもその基礎となりますのはそういう点でございます。  そういたしますと、これは技術的な問題が相当ございますので、本年の三月、運輸技術審議会に技術的な検討をいまさせておるところでございまして、来年早々には結論が出るのではないか。それを受けまして、いわばユーザーが、多くの方々が望んでおられますが、それの整合性のある、そして実価に合った、しかも安全と公害というものが完全に確保し得られるような、そういうものに考えていかなければならぬと思っておる次第であります。
  295. 小杉隆

    ○小杉委員 時間の関係でお答えが短いのですけれども、この車検制度は三十四年前、昭和二十二年に制度化されたもので、いま車の性能とか道路事情を考えますと、三十四年前とはもう格段の差があって、いまや車の安全性についても日本の市は世界一の性能を誇っておりますし、また公害対策も世界で一番進んでいる、道路事情も大変よくなっているというところから考えますと、私は、やはり期間の延長ということを真剣に考えるべきだ。諸外国の例を見ましても、フランスなどは車検制度がありませんし、イタリアは五年、スペインは三年というようなことでありまして、日本が極端に厳しいという印象を否めません。そして、これだけ長い間の車検制度の中で、たとえば陸連事務所と業者との癒着とかいろいろなうわさも聞いておりますし、また日本自動車整備振興会連合会とか陸運賛助会にたくさんの人が天下りをしているというような実態も聞き及んでおりますから、この点についてはぜひ早急に結論を出していただきたいと思います。  なお、いま運輸大臣から運輸技術審議会に諮問中であるということですが、このメンバーを見ましても、学者とかあるいは業界の方がほとんどでございまして、あるいはお役所の人がおりますけれども、本当の意味でユーザーの代表がおりません。したがって、ユーザーの立場ということを十二分に反映するような審議を私は望みたいと思います。  それでは次の問題、運転免許証について申し上げたいと思います。  いまや運転免許証は四千三百万人に及んでおります。これは十六歳以上の免許が取れる人たちの人口の約五〇%ということでございまして、年間、免許更新をする人が千二百万人ということでございます。大臣の中にも免許を持っておられる方がいらっしゃると思いますが、この免許書きかえのときにはほとんど一日を費やす。代書屋へ行って、写真を撮って、二千円の手数料を払い込んで、またでき上がると取りに行く。場所によっては郵送でやってくれているところもありますけれども、こういう一千二百万人という、年間これだけたくさんの国民がこういう手間暇がかかるわけでございまして、こういう点についても、もう少し更新の方法とか手続の簡素合理化という問題、あるいは有効期間を、これもまた三年といわず四年あるいは五年というふうに延長すべきではないかと考えますが、運輸大臣のお答えをいただきたいと思います。
  296. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 これは警察で扱っておりますから。  そこで、運転免許の関係で、従来、免許を受けるのに二日かかるとか、講習を受けなければならぬとか、こういう苦情が非常に多いわけです。これはぜひ改善をしなくてはならぬということで、警察庁内部におきまして検討会を開いて、できるだけ早く即日交付ができるように、それからまた優良な無事故の運転者に対しましては講習なんか受けさせない、そういう形で合理簡素化をいたしたいということで、結論をいま出しつつあるわけでございます。結論が出ましたならば、できるだけ早くこれを実行に移したいと考えております。  それから、免許の更新の問題でございますけれども、いまいろいろお話がございましたが、これは交通安全対策の一つの中心でございまして、運転者管理というものがやはり交通対策上きわめて重要な問題であるわけでございます。したがいまして、アメリカあたりはやはり三年くらい、州によって違いますけれども、免許更新をやっておる。ヨーロッパ大陸は大体そうじゃない。ところが、実際の統計を見ますと、アメリカは交通事故が少ない、ヨーロッパ大陸は多い、こういうこともありますので、やはり交通安全対策の中心である免許の期間の問題につきましてはよく検討しなくてはいかぬ、真剣に検討いたそう、こういうことでいまいろいろと進めているところでございます。御趣旨の点はよく理解をいたします。
  297. 小杉隆

    ○小杉委員 いま国家公安委員長から、即日交付という点がきわめて実現間近ということを聞きまして、私も大変意を強くしたわけですが、更新期間の延長についてもぜひ国民の、特に大多数の国民関係する問題ですから、ひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思います。  最後に、医療費の適正化という問題に触れたいと思います。  時間がございませんので続けてやりますが、いまや国民の医療費は年間十三兆円に達しております。そして医療に関連した国からの支出は三兆九千億円。これから高齢化社会を迎えるときに、年金と並んでこの医療費が国民負担の急増の最大の原因になる。その一方で現在の医療は薬づけ、検査づけといういろいろな問題が指摘されておりますし、医療機関からの不正請求とか、こうしたものに対する国民の不信はきわめて大でございます。臨時行政調査会でも、このような医療の現状に対しまして幾つかの具体的な提案をしております。  そこで、厚生大臣に伺いますが、二つの点でございますが、一つは医療機関に領収書を発行させることを求めておりますが、この件に関して具体的にどのように措置されているか。それから第二点は、いまの支払い方式、いわゆる出来高払い方式ということではこれはどんどんふえていってしまう。諸外国の例も私は承知しておりますが、こういった出来高払い方式が薬づけ、検査づけ医療の根本的な原因と考えておりますけれども、これの改革について検討を始められているのかどうか、この二点についてだけお答えいただきたいと思います。
  298. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いまの二つの問題にお答えす前に、医療費についてどう考えているかということをちょっとお話し申し上げます。  医療費は、何と申しましても効率的に患者のために適正なものでなければならぬと思います。私は三つ問題があるだろうと思います。  一つは、患者のためにいいますと、日進月歩でいま医学が進んでおりますので、それをできるだけ保険に取り込んで、そして近代医学が患者の方に均てんしていく、これが一つあります。  それから第二番目には、何と申しましてもその医療費がどれくらいであるかという市場調査ですね。今度やりましたが、薬価一八・六%下げたわけでございますが、この事実どうなっておるのかという、要するに適正な点数を定めるという問題。  それから第三番目には、いまお話しのような点数そのものは非常に正確なんだけれども、そこで不当なことがあるかないかという支払い問題あるいは領収書を含めての問題でございます。  私は、この問題の基本は、何と申しましても患者とそれから医者の信頼関係の上に立つことが第一である、お互いに不信を持つような制度はこれはいかぬと思っております。私は二十何年間税金をやっておりましたが、かつてやはり非常に問題がございまして、納税者の七割までは全部否認するという時代がございました。それは納税者を疑ってかかる、その姿勢に根本的な問題があったと思うのです。そこで、私はその当たりましたときに、まず信用してかかる、青色申告制度を開くというようなこと、それから何より信用してかかるということで、それでやりました。ちょうどシャウプ税制のときでございますが、そのときに一挙に否認が七割から五%に減りまして、しかも納税額はふえたわけです。
  299. 金丸信

    金丸委員長 簡潔にやってください。時間が参っております。
  300. 村山達雄

    ○村山国務大臣 そういう意味でいいますと、やはり信頼関係が第一であると思います。私は、支払い方式の各国のものをよく知っております。よく知っておりますが、やはり信頼関係の上に立ってこれを検討していく必要がある。  それから、いまのお話の領収書の問題につきましては、先般の中医協でも問題になりまして、この領収書の発行については励行しろということでございますので、直ちに保険局長から都道府県知事に励行するように通達をいたしましたし、また十月には、こういうことで励行することになりましたということを婦人雑誌に全部出しました。これからいま考えておりますのは、日刊紙の方の突き出し広告にも、もう請求すれば必ず出すことになっておりますということを言いまして、この趣旨を徹底してまいりたいと思っておるところでございます。
  301. 金丸信

    金丸委員長 小杉君、時間が参りました。
  302. 小杉隆

    ○小杉委員 時間が来ましたからこれでやめますが、いずれにしても、きょう取り上げた問題は大変具体的な問題が多かったわけであります。私は、理念や理屈を申し上げる前に、やはりできるところから着実にやっていく、気のつかなかったところ、あるいは怠慢でできなかったところ、そういったところをじみちにやっていくということが大切だと思いますので、ぜひ総理大臣以下、いままで指摘した問題について積極的に取り組んでいただくことをお願いして、終わりたいと思います。
  303. 金丸信

    金丸委員長 これにて小杉君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十二日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会