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1981-10-16 第95回国会 衆議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十六年九月二十四日)(木 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の とおりである。    委員長 國場 幸昌君    理事 越智 通雄君 理事 東家 嘉幸君    理事 原田昇左右君 理事 森下 元晴君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 春田 重昭君 理事 中野 寛成君       天野 光晴君    石田 博英君       植竹 繁雄君    近藤 元次君       桜井  新君    白浜 仁吉君       竹下  登君    近岡理一郎君       上田  哲君    高田 富之君       田中 昭二君    和田 一仁君       辻  第一君    楢崎弥之助君       山口 敏夫君 ————————————————————— 昭和五十六年十月十六日(金曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 國場 幸昌君    理事 越智 通雄君 理事 東家 嘉幸君    理事 原田昇左右君 理事 森下 元晴君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 春田 重昭君 理事 中野 寛成君       伊東 正義君    植竹 繁雄君       近藤 元次君    桜井  新君       白浜 仁吉君    近岡理一郎君       高田 富之君    田中 昭二君       和田 一仁君    辻  第一君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         総理府北方対策         本部審議官   藤江 弘一君         防衛庁装備局長 和田  裕君         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     澤田 和彦君         防衛庁人事教育         局人事第一課長 山崎 博司君         外務大臣官房審         議官      小宅 庸夫君         外務大臣官房外         務参事官    英  正道君         外務大臣官房外         務参事官    中村 順一君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部海外子女教育         室長      佐藤 國雄君         通商産業省貿易         局為替金融課長 広海 正光君         会計検査院事務         総局第一局長  佐藤 雅信君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 九月三十日  辞任   山口 敏夫君 同日             補欠選任              伊東 正義君 十月三日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     楢崎弥之助君     ————————————— 九月二十四日  会計検査院法の一部を改正する法律案新村勝  雄君外四名提出、第九十三回国会衆法第一二  号)  昭和五十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十三年度政府関係機関決算書  昭和五十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十三年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十四年度政府関係機関決算書  昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書 は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  昭和五十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十三年度政府関係機関決算書  昭和五十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管)      ————◇—————
  2. 國場幸昌

    國場委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、決算の適正を期するため、本会期中において  一、歳入歳出の実況に関する事項  二、国有財産増減及び現況に関する事項  三、政府関係機関の経理に関する事項  四、国が資本金を出資している法人の会計に関する事項  五、国又は公社が直接又は間接に補助金奨励金助成金等を交付し又は貸付金損失補償等財政援助を与えているものの会計に関する事項 以上の各事項につきまして、関係各方面からの説明聴取、小委員会の設置及び資料の要求等方法によりまして国政に関する調査を行うため、議長の承認を求めることにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 國場幸昌

    國場委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 國場幸昌

    國場委員長 次に、昭和五十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、外務省所管について審査を行います。  まず、外務大臣から概要説明を求めます。園田外務大臣
  5. 園田直

    園田国務大臣 昭和五十三年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は二千二百四十八億二千四百九十四万円余でありまして、支出済み歳出額は二千二十二億八千九百二十二万円余、翌年度繰越額は百九十七億七千二百七十七万円余、不用額は二十七億六千二百九十五万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額二千百六十三億三百二十五万円余、前年度繰越額七十四億二百六十一万円余、予備費使用額十一億一千九百六万円余でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、国際文化団体補助金一億五千七百八十四万円余、経済開発等援助費六十八億八千七百八万円余、在外公館施設費三億五千七百六十九万円余であります。  支出済み歳出額の主なものは、エネルギー対策のための国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として十億三千七百三万円余、並びに各種国際機関に対する分担金等として五十六億九千八百三十三万円余。  次に、経済協力の一環としての技術協力の実施につきましては、コロンボ計画等に基づく技術研修員三千二百八十二名の受け入れ及び専門家八百七名の派遣事業のほか、青年海外協力隊派遣開発調査センター協力機材供与保健医療協力農林業協力開発技術協力開発協力専門家養成確保などの事業アジア諸国等開発途上国に対する経済開発援助及び国連開発計画等の多数国間経済技術協力のための拠出等に要した経費一千百五十七億六千七百三十三万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰り越しのものは百九十七億七千二百七十七万円余でありまして、その内訳経済開発等援助費百八十三億二千百二十万円余、在外公館施設費十四億五千百五十七万円余であります。  不用額の主なものは、外務本省の項で国際友好団体補助金を要することが少なかったこと、経済協力費の項で経済開発等援助費を要することが少なかったこと、国際分担金その他諸費の項で為替相場の変動に伴い、経済協力国際機関等拠出金を要することが少なかったこと並びに在外公館の項では、職員諸手当を要することが少なかったこと等のためでございます。
  6. 國場幸昌

    國場委員長 次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。佐藤会計検査院第一局長
  7. 佐藤雅信

    佐藤会計検査院説明員 昭和五十三年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 國場幸昌

    國場委員長 これにて説明聴取を終わります。     —————————————
  9. 國場幸昌

    國場委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 私は、常々世界のすべての国からなくすべきは核と差別であり、守るべきは平和と人権であるということを強く訴えてまいりました。  ところで今日、強いアメリカを志向するレーガン大統領に比べて、世界における人権外交を推進してきた前カーター大統領に対して、わが国はどのように評価し、またそれにこたえて、外国の元首としての最高の栄誉を与えてもしかるべきではないかと考えるわけでありますけれども、この点についても外務大臣はどのように考え、どのような対応をなさろうとしているのか、まずは聞いておきたいと思います。
  11. 園田直

    園田国務大臣 御指摘カーター大統領は、米国の指導者として日米関係の増進に多大の功績を払われた方でありまして、その御行為に対してはできるだけのことをすべきであると考えております。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 具体的に今日何らかの形で敬意を表する、そういう点についてはいかがなんでしょうか。
  13. 園田直

    園田国務大臣 具体的な問題については、一つ方法日本栄典制度の持つ叙勲の問題でありますが、この点についても御発言のとおりに順次そのように努力をしているところでございます。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 御努力中ということは、すでにその手続に入ったと理解してよろしゅうございますか。
  15. 園田直

    園田国務大臣 栄典制度叙勲の問題でなかなか微妙でございますけれども、そういう方向でいろいろやっているところでございます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、今日世界的な軍縮動きというものについて、ここで大臣からのお考えを私は承っておきます。  先日も西ドイツ・ボンで反核デモが熱気を呼び起こして、世界的に報道されたわけでありますし、イギリスにおいては、労働党が核軍縮決議をするという事態が起こっているわけであります。こうしたNATO諸国の核に対する反対、この感情を高めている原因はどこにあるか。このことについての大臣の受けとめ方をまずは聞いておきたいと思います。
  17. 園田直

    園田国務大臣 核兵器に対する脅威というのは、日本では特に広島、長崎の先例があるわけでありまして、特別のものでありますが、他の国々においても本能的な脅威をみんな持っているわけであります。したがいまして、平和について、一方には力の均衡と叫びながら、一方にはこういうものが使われないような対話を願う、一方にはこういうものの廃絶軍縮制限、こういうことを考えるのは、各国を通じた人民の願望でありまして、その一つのあらわれだと考えております。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカ核配備の強化という、そのような政策に対する純粋な反対運動、もっと根本的なものでは、民衆が生き残れるかといういわゆる人間生存原点に立った問題として反対運動が展開されている。そういう時点でとらえるならば、政治家がじっと黙ってこれを傍観する、ただ単に言葉だけの問題として議論していく、そういうことではいけないし、そういうときではない。人間生存原点であるというそういう立場に立って、強い積極的な、着実に実行のできる一つ行動を示していくべきである。いまこそ軍縮水準の歯どめをつくることが緊急な問題である、こういうふうに思うわけであります。  そこで、国連ではイスラエルのイラクに対する攻撃に対する非難決議等もなされておりますけれども、米ソ両国だけに軍縮を求めるという、そういう単純なものではなく、各国に呼びかけて議論を高めるという、そういう行動、さらには核保有国に対しての核実験の自制を求めていくべきである、こういうふうに考えるわけですけれども、外務大臣のお考えを承っておきます。
  19. 園田直

    園田国務大臣 私も御発言のとおりに考えておりまして、核実験禁止というのは前々からわが国各国に呼びかけているところでありますが、今後とも実験の廃止、最終核兵器廃絶を目指して努力をする所存でございます。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 私は常々園田外務大臣行動的な日本外交を推進されているということについては心から敬意を表して、高く評価をしているわけなんです。  それで、高い軍縮水準、いわゆる低い軍備水準の設定は、米ソ間だけではなく、アジアあるいは中東、アフリカなどの紛争地域にとってもきわめて重要、緊要な問題である。そこで、そのために地域地域による地域的な軍縮交渉の実現について何らかの努力が必要ではないであろうか、こういうふうに思うわけであります。  たとえばそれが二国間から始まったものであったとしてもいいじゃないか。外務大臣訪問をされる国々に対しては必ず軍縮を提起していく、できればアジア地域軍縮会議を開くための問題提起をしてもいいのではないだろうか。そういう積極的な取り組みをやはりこの際、日本外務大臣として広く世界に示していくお考えを持っていらっしゃるのかどうか、この点についても聞いておきたいと思います。
  21. 園田直

    園田国務大臣 軍縮核廃絶実験禁止等、これは米ソの両大国に強く要請をしているところでありますが、さらに私は、これは核を持っている大国だけの問題ではなくて、国連に集まる国々、集まらない国々もすべて含んで、すべての国々の責任である、こういうふうに訴えております。  御趣旨はもっともなことでありまして、私、機を見、折を見て訪問先等でもその点は訴えてまいり、いろいろな具体的な問題が起こってくる素因をつくりたいと考えております。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 地域的軍縮会議問題提起をするという、その努力を惜しまないというふうに理解してよろしゅうございますね。
  23. 園田直

    園田国務大臣 地域的軍縮会議あるいはその他の問題等はなかなか日本だけでひとり相撲がとれることではございませんし、他の国々の御意向もあることでございますから、十分相談をしながらそういうことを腹に入れて努力をしたいと考えております。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 私は、外務大臣訪問する、あるいは国際的な会議があるたびにこの軍縮問題は取り上げて、ひとつ広く軍縮の輪を広げていくべきである、こういう提言をしているわけなんです。それにこたえてくれますねということなんです。
  25. 園田直

    園田国務大臣 いまの御発言趣旨十分了解をいたしておりますので、今後折に触れてそういう方向発言をし、あるいは努力をしたいと考えております。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 ブラント委員会の報告で、武器輸出をする場合の一部を南北問題のために拠出をするという考えを訴えているわけでありますが、私はこのようなことからでも始めないと、いまの軍拡の歯どめはかけられない実情である、こういうふうにも思うわけです。  そこで、大臣国連演説等でもりっぱにその所見を述べられております。しかし、効果がどれほど上がったかというと、この点についてもわれわれとしては若干の疑問があるわけでありますし、その意に反してなかなか効果が上がらない。いまも申し上げたように、何かを提起し、そして着実に実行できることから始めなければ、軍縮、いわゆる軍備水準を低めていくということについてはただ単なるお題目になってしまう。それで、具体的に世界武器輸出は、近年先進国から第三世界へ大量に流出をしている、その実態政府はどのように把握しているのでしょうか。あるいはまた、武器輸出規制措置について、国際的に歯どめをかける提案はできないものなのかどうか、国際的な武器輸出に関する申し合わせ等を提唱する考えは私はぜひ園田大臣に持っていただきたいし、そういう機会をぜひつくってほしい、こういうふうに思うのですが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  27. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  各国からの第三国に対する武器輸出実態につきましては、実情の把握はきわめて困難でございます。
  28. 園田直

    園田国務大臣 武器移転輸出、こういう問題があるわけであります。率直に申し上げまして、核兵器最終廃絶とか兵器制限とか、こういうことは案外多数国の支持を受けるものでありますが、一般兵器の転移ということになると、現に紛争を起こしている国々は非常に多いわけでありまして、これは日本が言ったこともありますが、抽象的な言葉は通りますが、なかなか現実の動きとしては出てこない。しかし、これは大事な問題でありますから、絶えず繰り返して訴えることに考えております。
  29. 井上一成

    井上(一)委員 わが国武器禁輸原則、これは私は世界軍縮役割りを非常に大きく果たしているという理解をしているわけなんですが、大臣はどうお考えでございますか。
  30. 園田直

    園田国務大臣 武器輸出の三原則というのは憲法の精神に基づくものであって、日本としては守らなければならぬ問題であるし、また世界国国に先駆けてやっていることであると私は考えております。
  31. 井上一成

    井上(一)委員 外務省日米軍事技術協力問題について、日米の特殊な同盟関係から考えて、メーカーの同意を前提に提供は可能だとの見解をまとめたというふうに報道されているわけであります。これは事実なのかどうか、さらに外務省提供可能とする根拠は一体何なのか、その点についても明らかにしていただきたいと思います。
  32. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答えいたします。  現在アメリカ考えていることは、従来、技術移転についてはアメリカ側から一方的に日本技術提供されてまいりました。それをいわば両面交通にしたいというのがアメリカ側の基本的な考え方でございます。しかし、アメリカ側から特定の技術あるいは具体的な希望ということはまだ来ておりません。  いまお尋ねの、外務省としてこの問題について何か基本的な方針をまとめたのではないかということでございますが、私たちとしては、まず政府として基本的にはアメリカについても武器輸出原則あるいは政府統一見解、これに基づいて対処するという考えでございます。ただ、対米関係につきましては日米安全保障条約等関係もございますので、この点について現在考え方を、関係省庁の御意見もいずれ徴することになりますが、どういうふうにしたらこの間の調和が図れるかということをいま検討している段階でございます。まだ一般的にそういう考えについて部内で検討している段階でございまして、外務省としての考えが固まったというほど前進はしてないわけでございます。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 ということは、関係省庁、たとえば防衛庁なり通産省との話し合いはまだ持っていないということになるわけですね。
  34. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 外務省関連する側面は、主として安保条約とか相互防衛援助協定、それの解釈でございます。したがって、主務官庁から御相談を受けた場合に外務省としてどういうふうに対処するかということでございまして、もちろん防衛庁との間には、先般の装備局長の訪米がございましたことなどもあって一般的な意見の交換はしておりますが、具体的にどういうふうにするかという点についてまでまだ協議が進んでおりません。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 通産省について尋ねたいと思いますが、通産省武器禁輸原則国会決議、この点についてはしかと遵守するという考えに変わりないと思いますけれども、ここで確かめておきます。
  36. 広海正光

    ○広海説明員 お答えします。  通産省といたしましても、今後とも武器輸出原則及び政府統一方針、それから先般の国会決議を踏まえまして、対米関係についても対処する方針でございます。  ただ、先ほど外務省から申し上げましたとおり、条約等との関連というものを外務省検討するやに聞いておりますが、まだ結論が出てないと承知しております。結論が出た段階政府全体としてどう対処するかということが検討されることになろうと思いますけれども、通産省といたしましては、武器輸出原則政府統一方針国会決議を基本といたしまして対処する考えでございます。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 通産省は明確に遵守する。外務省通産とはこの問題については話し合いを持たれてないわけですね。
  38. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 主として防衛庁が主体となる問題でございまして、まだ通産との間で具体的な話はする段階には至っておりません。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 外務省は、軍事転用可能な汎用技術の対米提供武器輸出原則に抵触しないとの解釈、これはあくまでも解釈ですが、そういう解釈をしていらっしゃる、こう思うのですが、そういう解釈をしているのでしょうか。
  40. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 一部にそういう報道がございましたけれども、現在私たち考えているのは、汎用技術ということでなくて、軍事技術、その点について先ほど申し上げましたようなことを検討しているわけでございまして、汎用技術について外務省が特段の意見を持っているというわけではございません。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 軍事技術提供、これまたなおさら問題であるわけでありまして、検討段階だということであれば、検討しているということであれば、検討部分は何なのか。むしろ検討段階でなく説得段階だ、通産なら通産関係省庁に対して外務省説得段階である、時限がもう過ぎているわけであって、説得が終われば結論だ、私はこういうふうに理解するわけです。だから外務省解釈を広くとり、さらには検討段階という形の中で関連省庁説得をしていく、こういうのが実態ではないでしょうか。
  42. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、条約とか協定解釈について意見が当然外務省として求められるわけでございまして、それについてどういうふうに考えるか、それとの関連武器禁輸原則あるいは政府統一見解との関連をどういうふうに考えるかということでございまして、外務省がこの点について各省に説得するということでございませんで、そういう関係省庁と、いずれ相談する段階になるかと思いますが、まだそこまでは至ってないわけでございます。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣にお聞きをしたいと思います。  武器輸出の三原則は、これはもうすでに、私から論ずるまでもなく衆参両院決議になっているわけでありますし、政府政策決定であるわけであります。日米相互防衛援助協定の第一条はあくまでも原則規定である。義務規定ではない。これ自身はいわゆる行政ベースにおける解釈の問題になるわけであります。私は、これらのことを決定するのは政府判断である、しかし、国会決議というものを尊重して判断すべきことが当然である、こういうふうに思うわけです。行政府だけの一方的解釈というものは、判断というものは、これは国会決議を無視したものになる、こういうふうに指摘をしておきたいわけであります。大臣のお考えを聞かせてください。
  44. 園田直

    園田国務大臣 まだ具体的に問題が提起されてないわけでありますが、主管官庁、それから防衛庁等々と具体的な話がありますればその段階検討するわけでありますが、その検討する際、当然武器輸出原則及び国会決議等はこれを十分考えに入れて検討すべきことであることは御発言のとおりでございます。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 大臣通産省武器禁輸原則を厳守する、外務省事務レベルではいろいろ解釈も含めて検討ということなんです。私は、細かいいろいろな問題があるでしょうけれども、もういまはそんな時期じゃないし、そんな行政ベースの問題ではないのだ、むしろ軍縮を下敷きにしたいわゆる政治的な判断が今日必要である、こういうふうに思うのです。行政ベースでの解釈からやはり政治的判断にこの問題は任されたというのでしょうか、政治的判断を待つ段階だ、こういうふうに思うのです。国会決議に反するような判断は、大臣としてはあり得ないでしょうね。
  46. 園田直

    園田国務大臣 国会決議の御意向に従って処理することは、当然であります。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 大臣国会決議を尊重するという力強いお答えであります。十分、事務レベルでも、そういう大臣のいまの答弁を強く認識して、いわゆる国会決議を無視するような、事務レベルでの、行政ベースでの勝手な解釈、勝手な判断は、私は強く慎んでもらいたいということを申し上げておきます。  さらに、御承知のように、一九八八年のオリンピック開催がソウルに決定したわけであります。そのソウル開催を契機に、韓国政府各国に対してオリンピック参加を呼びかけ、外交関係の改善に取り組む方針を明らかにしております。私は、ここでソウルのオリンピック決定に伴う韓国政府のそのようなソフトな姿勢の変化は、韓国を取り巻く国際情勢は今後流動的になると考えるわけでありますが、外務大臣もそのようにお考えになるでしょうか。その点について聞いておきます。
  48. 園田直

    園田国務大臣 オリンピックの開催地が韓国に決定したこと、競争しました名古屋が落ちましたことは、感情的には残念であります。残念でありますが、決定した以上は、韓国のオリンピックというものが成功すればいいと極力願い、かつまた協力する点があれば協力したいと思っておるわけでありますが、このオリンピック開催によって韓国とそれぞれの国との関係がよくなって、そして韓国の外交、国内情勢が安定することを隣国として期待するものでございます。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 将来的なことですから、いま必ずこうであるということは言い切れないと思いますけれども、少なくともソウル決定がもたらした国際情勢は、今後流れていく、いわゆる流動的である、こういう理解をぼくはしているわけなんです。だから、期待をするとかそういうことではなく、外務大臣として——流動的になる、流れるのだ、いまのままの状態ではないのだ、ぼくはこういう認識なんです。その点はどうなんでしょうか。
  50. 園田直

    園田国務大臣 流動的という苦業がなかなかいろいろ解釈できるわけであります。少なくとも韓国でオリンピックが開かれることによって、韓国といろいろな国々との関係がよい方向へ進んでいく、そういう意味において動いていくとは考えます。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 私は、よい方向に、いわゆる流動的——私と同じ認識なんですね。動いていく。それは厳しく動くのか。あるいはやわらかく、いわゆるソフトな動きをよい方向に持っていく。それで、大臣はよい方向に、と。そのことは、緊張が緩和の方向に、緩和されていく、こういうことなんですね。そういうことなんです。そうでしょう、よい方向に動いていくということは。
  52. 園田直

    園田国務大臣 韓国と諸外国との関係がよい方向に進むということは、安定していくという方向へ動く、こういうことでございます。
  53. 井上一成

    井上(一)委員 いや、大臣、私は、よい方向ということは緊張が緩和されることでしょうね、と。それはいろいろな国がありますから、ただ南北の問題ということに限りませんけれども、そういうことを申し上げているので、そういう理解でよろしゅうございますね。
  54. 園田直

    園田国務大臣 韓国にとって一番大きな問題は南北問題だと思います。これによって南北問題がどう動くかということは私には判断できませんが、それ以外の国々との関係はよい方向に動くと存じます。
  55. 井上一成

    井上(一)委員 いま問題なのは、よい方向にというのは、南北を抜きにして韓国の国際情勢はあり得ないのですよ。私は、南北の問題もやはり緊張緩和の方向になる、こういうふうに思うのです。大臣、さっきの流動的な、よい方向に流れるのだということであれば、ではどうして北だけはいまのままになるのですか。あるいはまだ厳しくなるのですか。流れるのですから、どっちに流れるのですか。これもよい方向に流れるのではありませんか。そのためにオリンピックはソウルで開催される。国際的な世論はそれを認めたわけであります。そうでしょう。
  56. 園田直

    園田国務大臣 韓国の大統領は、北に対して対話を呼びかけております。そこへオリンピックでありますから、そういうことも考慮に入れながら南北の問題もいい方向へ流れることを期待をいたします。
  57. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、期待というのと、流れる、大臣の自分の考えですね、期待ではなく、流れると理解するわけですね。考えるわけですね。実際にはどうなるかわからないけれども、私はそういうふうに思う。期待とそこらを大臣、もうちょっとはっきりと、流れるのだから、緊張緩和の方向になるという予測を大臣は持っていらっしゃる、こういうことでしょう。
  58. 園田直

    園田国務大臣 いい方向に流れればよいと思って見ておりますけれども、実際問題はどうなるか、他国の国境線のことでございますから、私が断定するわけにはまいりません。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 大臣もこれは答えがしにくいだろうと思うのですよ、期待だとか。私は、やはりよい方向に流れていくと思う。みんながそういう認識に立ってソウル決定が実現した、こういうことなのですよ。大臣、答弁はしにくいだろうけれども、ここはそういう認識であるということをやはり明確に答えるべきですよ。そして、そのためにわが国はどのようなお手伝いをしていこうか、こういうことじゃないでしょうか。
  60. 園田直

    園田国務大臣 南北の間がよくなることは常々から願っているところでありますが、オリンピックということによってこれがさらに前進するように心から願うものであります。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 さっきから私が軍縮の問題でも取り上げたように、願うこととアクション、行動を起こすこと、これはやはり違うわけですよ。願うことがあって、行動がそれに伴わなければいけない。大臣はそういう行動を——これからできる範囲内の行動がありますよ。できることとできないことがあるでしょうけれども、そういうことについて、南北の緊張緩和のために大臣として行動を、努力をするのだというおつもりはないのですか。
  62. 園田直

    園田国務大臣 私は国連の一般演説においても、南北の間で平和的に話し合いができることを希望する趣旨の演説をやっているわけでありますから、そういうことを願い、かつまた、日本としてできるだけの努力はするのが当然だと考えております。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 さっき言うように、国連大臣が一生懸命やっていただいているということについては評価をし、ぼくも御苦労さまと労をねぎらいたいと思う。いまオリンピックを一つの契機に、南北の緊張が緩和されるという予測の中で、その努力わが国は具体的にどうなさるのですか、どんなお考えを持っていらっしゃるのですか、こういうことを聞いているのですよ。
  64. 園田直

    園田国務大臣 オリンピックが開かれることによって、韓国とよその国との関係、特に北と南の関係がよくなるように願うものであり、かつまた、それに対して日本が力を尽くすことがあればいろいろな問題でやりたいと考えております。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 南の全斗煥は話し合いということも提起されているわけですけれども、朝鮮民主主義人民共和国、通称北朝鮮は軍縮を望んでいるとも言われているわけです。  私は、この際、北との交流もより拡大をしていくことも緊張緩和の一つの策ではないだろうか、こういうふうに思うのです。この点についてはいかがですか。
  66. 園田直

    園田国務大臣 北の方と日本との関係は、いままでずっと発言しておりますような方針で、民間あるいは文化、そういうものの交流はやっていきたいと考えております。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 さらに拡大をしていく、そういう考えはお持ちじゃないですか。
  68. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど大臣が申されましたとおり、民間のレベルにおける交流一つ一つを実現していくということでございまして、現在のところ、政府が前面に出るということは考えておらないわけでございます。
  69. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私は、オリンピック開催を契機に、南北の緊張を緩和していくべきであるし、それを予測してわが国の外交も展開をしていくべきである、それぐらいの中期展望をきっちりといまから据えなければいけないと思う。恐らく外務省は、緊張と均衡ということをよく言葉にされますね、緊張の中での均衡、緊張に均衡するために、北の軍事力優先に対して南をそこまで引き上げていくのだ、そういういわゆる持論で外交を進めるのではなく、むしろもうそのバランスは縮小されながら、軍縮と一緒なんですよ、縮小されながらバランスを、均衡を保っていくべきであるという私の認識なんです。  その意味では、北に向けては交流を拡大していく、南に対してはそれに合うべき対応をしていく、そのことがいま必要ではないでしょうか。そういう考え方に立ってこれからの外交を取り組んでいくべきではないでしょうか、こういうことを申し上げているのです。だから、いまこれをこうだ、ああだというその具体的な策でなく、大臣として将来を、少なくともオリンピックの八八年をめどに日本の朝鮮半島における外交はどう展開をしていくかということをひとつ聞かしてください。
  70. 園田直

    園田国務大臣 たびたび申し上げておりますとおり、軍縮はすべての問題、すべての国に呼びかけているわけでありまして、朝鮮半島における南北でも、できるだけ両方が軍備制限、縮小して、なるべく低い水準で均衡を保つ、そして、その均衡を保ちながら話し合いをするということが私も考えるところでありまして、そういうような雰囲気ができるように努力することはまた日本の務めであるとは考えております。
  71. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、大臣、今度は逆に、南の韓国に対する取り組みを聞きますけれども、アジアで開くソウル・オリンピックを意義のあるものにしていきたい。さっき、名古屋が競争で負けたことは残念だ、私は残念だとか残念でないとか、そんなことを聞こうとは思っておりません。あくまでも日本の外交という問題、それは常に平和であり、人権がきっちりと尊重される、生きることの原点をわれわれは守っていくべきである、こういう持論に立って質疑をしているのです。北とは、いわゆる朝鮮半島の緊張緩和という流動的なそういう予測の中で北との交流を拡大したらどうだ、こういうことを言っているのですが、事務レベルでの答弁は、拡大の意思は表明しない。大臣、南に、いわゆる韓国のオリンピックを意義あらしめるためにも、韓国自身も国づくりに一層の力を入れていくであろう、そのような国づくりに対する協力は、外務大臣異議はないのでしょう。そんな国づくりに異議があるのですか。異論はないでしょう。私は、これは異論はないとお答えになると思いますけれども、異論があれば異論がある、異論がない、それなら北に対しても交流の拡大を図っていくということにどうして異論があるのか、どうしてちゅうちょされるのか、あえて尋ねたいのです。だから、北に対しても南に対しても、わが国のなすべきことをきっちりとやはりここで方向づけをはっきり定着させなければいけない、こう思うのです。
  72. 園田直

    園田国務大臣 オリンピックを契機にいろいろなよい条件が出てくるわけであります。たとえば、韓国から北に出場を要請するとか、あるいはうまくいけば北からも出てくるとか、そういう一つのいい条件が出てくるわけでありますから、そういう条件のもとに南と北の緊張が緩和をし、平和的な話し合いをできる空気ができることを期待し希望するということは、いまの御意見に異存はないということであります。  ただしかしながら、日本は、置かれた環境、外交の方針からいって、北と南は等距離というわけにはまいりません。したがいまして、そういう現実に即しながら、いま言われたような方向努力をします、こう言っているわけであります。
  73. 井上一成

    井上(一)委員 私の指摘した、いわゆる北への交流拡大にも努力するということですね。  さらに南に対しても、国づくりの支援体制というものはオリンピックの意義を踏まえて検討を加えていく。縮小バランスということを私は申し上げました。わが国が隣国の安定、正常を図るために、やはりいろいろと協力をしていく、助言をしていく、このことは必要であるわけです。そういう私が指摘したことに大臣は異論はないということだし、その方向でいくという。  外務大臣、日韓定期閣僚会議がいわゆる中身のない形の中で終えて一カ月余りたつわけでありますね。私は、韓国がアジアのとりでだなんという、そんな認識の中での外相会議というものは、あるいは経済援助なんというものはよろしくない、こういう指摘もしてきました。緊張緩和のために、あるいはソウル・オリンピック成功、意義あらしめる、国際情勢をより緩和の方向に持っていくために、ここで日韓両国の外相会議を、改めて日本外務大臣がそのような立場に立ってならあえて会談を持つというお考えを表明されてもいいのではないだろうか、こういうふうにも思うのです。大臣、いかがですか。
  74. 園田直

    園田国務大臣 日韓の外相会議というお話でありますが、これは隣国でありますから、いつでも会って、用件があればそういう会談は気軽にやって相談すべきだと考えております。しかしながら、いまの経済協力の問題では、まだ相談し合う段階に来ていないと私は判断するわけで、経済協力には基本的な方針がございます。その第一は、いかなる理由があってもよその国の防衛、軍事の肩がわりはできない。これは私の判断ではなくて、できないことになっているわけでありますから。次には、経済協力の基本的な問題は、両国がお互いに案件を出して、それを調査をして、実際にその協力が相手国の民生の安定であるとか国民の生活向上になるとかということを何方で確認し合って、それから大体額が決まって、その額を積み上げてから大体年間の協力が決まるわけでありまして、つかみ金で六十億ドル、五年間でということでは、これまた相談にならない筋合いでございます。したがって、われわれが韓国のことも理解しなければならぬが、韓国の方も日本実情、行政の制度、こういうものを御理解願って、相談できる段階にならなければ外相会議をやってもなかなか相談にならないと思いますから、そういうものもよく考えながら、外相会議は必要があれば開くつもりでおります。
  75. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私は、六十億ドルの経済援助の問題について云々、外相会議をやりなさい、あるいはいままでの事務レベルでの積み上げてきた問題についての議題をその外相会議のメーンに取り組みなさい、さっきから申し上げているのはそういう話じゃないわけなんですね。ソウルでオリンピックが開催されるという一つの事実、これに基づいての日本としての対応、名古屋でやったって日本政府も相当な力を入れなければいけないし、負けたからといって残念やなんという、そんなことで、成功を期待しますなんというようなことで高みの見物、これまたどうかと思うのです。私は、オリンピックの問題を一つの契機にして南北の緊張が緩和されるという事態を、やはり日本の外交もそれに手伝っていくべきである。それは何も六十億ドルを経済援助をするということではないわけなんです。  だから、議題が云々と言われますけれども、スポーツの交流はいま北ともあるわけなんですね。やはり話し合うことからそこに何かが生まれてくる。話し合いの場も持たずに、ただこう考えますあるいは期待します、どうしますと言ったって、なかなか新しいものはつくり出されない。そういう意味から外務大臣に、あえて行動的に外交を展開される園田大臣だから私はこれは申し上げているのです。ほかの大臣ならこんな意見は言いませんよ。いわゆる文化交流、スポーツ振興さらには世紀の祭典、政治的な背景が常にオリンピックにはつきまとっているのですよ。ソ連のモスクワのオリンピックでもそうでしょう。わが国はいろいろな理由でこれは——しかし、いまそんなことを議論するわけじゃない。だから、あえて、ソウル・オリンピック開催が決定されたことを契機に、ひとつ両国の外相会議というものを持たれて、緊張緩和に日本も一役買うべきではないか。大臣、お忙しいでしょうが、もう南北サミットにも出かけられるし、あるいは国会も行革でいろいろ忙しい時期ではありますけれども、国会が終えてから、あるいはいろいろな日程があるでしょうけれども、先方にも、韓国側にもその意があれば、そのことでの話し合いは持つべきである。そのことがやはり流れを緩やかなものにし、相当な状態をつくり出すことになるのですよ。それぐらいのことは園田大臣はやってくださるだろうという、私はむしろ大臣に強い期待があるから。六十億ドルの経済援助のそんな問題で会うなんということは、これは私だって、そんなばかなことしなさんな、いま会えますか、こう言います。その問題じゃない。六十億ドルの問題なんというようなものはもうたな上げもたな上げ、そんなことは一銭も要らぬかもわからぬです。もっともっと日本が韓国に対して協力のできる何かが生まれてくるかもわからない。どうですか、近くで、そんな二日も三日もかからぬですよ。御足労だけれども、御苦労だけれども、韓国からそういうような話し合いの申し込みがあればあえて受けて、外相会談をセットする、臨むのだというぐらいの考えを持ってほしいと思うのですが、大臣、いかがでございますか。
  76. 園田直

    園田国務大臣 御発言の中で、折に触れ、機会をとらえて南と北の緊張緩和ができるように努力しろ、こういう御発言は十分拝承いたしました。ただ、だからといって、オリンピックが決まったからオリンピックで相談しよう、先生が韓国の外務大臣なら私はすぐ会うわけでありますが、現実にはなかなかそうまいりませんので、オリンピックで会おうやということになって、会ったら、すぐ六十億ドルがどうの北の脅威がどうだのということをいまの段階で言われることは必至でございます。したがいまして、向こうの方から相談もないのに、オリンピックが決まったから、おめでとう、会おうやということは、私は行動的だと先生からはほめられますけれども、一方からは出しゃばりだと言って大分たたかれておりますから、その点も十分注意してやりたいと考えておりますが、いまのところ外相会議を韓国に申し出るつもりはございません。
  77. 井上一成

    井上(一)委員 このことだけで議論を進めるとまた時間がなくなります。南北問題については十分な対応をなすべきであるということを私は強く指摘をしておきます。  それから、ちょっと中東問題に入る前に一点聞いておきたいことがあります。  先日来、いわゆるわが国の兵隊が南ソロモン群島のベララベラ島に残留しているのではないかという報道、さらには、それに対しての捜索が行われたように報道をされております。外務省はこの点については十分な報告を現地から在外公館を通して受けているでしょうね。
  78. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ベララベラ島は欧亜局の所管でございますので、お答えさせていただきますが、これは現地からの報告体制は厚生省の方に入るという体制になっておりまして、私どもの方は厚生省の方から折に触れてお話は伺っておりました。それから現地にお入りになる前後等に、わが方の在外公館の方とも若干の打ち合わせ等がございまして、その時点における報告等は在外公館の方から受けた、そのような二重のチャネルで現状は報告を受けていたということでございます。
  79. 井上一成

    井上(一)委員 戦争の痛ましい体験がややもすると忘れられがちな今日、あるいは戦後派世代がふえたという今日、この事件は私は非常に重視をしております。外務省在外公館から外務省本庁に何も連絡がないということはおかしいじゃないですか。在外公館がきっちりとそこでの情報収集あるいはそれに対する対応を当然なされてしかるべきだ。厚生省に入った、厚生省にだけだ、大使は現地を訪れたのでしょうか。あるいはそういうようなことについては本庁に連絡をしなくてもいいのですか。在外公館は何をやっているのだ。もし、生き残り兵というか、一人の人でもそこに生存があるとしたら、これは在外公館役割りなんというようなものは大変なことですよ。どういうことなんですか、大臣
  80. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 先ほど申し上げましたとおり、二重のチャネルで状況は報告を受けていたということでございまして、外務省がつんぼさじきに置かれていたということではなかったわけでございます。
  81. 井上一成

    井上(一)委員 どんな報告を受けたのかと言って聞いているでしょう。どんな報告を現地から受けたのですか。
  82. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 突然の御質問でございまして、手元に資料がございません。早速調べまして御報告申し上げます。
  83. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私は在外公館の情報収集力というものにも定員等の問題で限りがあろうと思います。決して不十分な体制であったとかそういうことをここで指摘するのではなく、すべて厚生省が主管だと厚生省任せで済ませる問題ではこの問題は少なくともない、こういうふうに思うのです。外務省も現地での情報を最大限収集するための努力がなされてもしかるべきである。そういう意味で、もしここに有力な情報が出たとき、あるいは生存の可能性についての何らかの証拠が見つかったとき、即時に対応のできるそのような心構え、心づもり、あるいはそのような体制がやはり必要である。これはもう外務省も、向こうには兼務ですけれどもちゃんと臨時大使、代理大使もいらっしゃることですから、私はそういうことについては十分な報告があったという上での話でございます。  そういうことで、たとえば開発途上国に対する農業指導あるいは林業指導あるいは医療救護班、いろいろな形でわが国の若い青年が献身的な努力を続けてくれているわけなんですね。私はそういうことと並行して、そういうことと兼ねて、やはり現地への対応、体制づくりが必要ではないかというふうに思うわけなんです。大臣、報告を聞いてからの質問になりますけれども、いま私が指摘したようなそういうことも一つの手法であるということですね。どうですか。
  84. 園田直

    園田国務大臣 青年協力隊員等の派遣その他は、いろいろな日本の外交からいっても、あるいは経済協力あるいはその他情報収集、あらゆる意味において一番効果の上がる問題でございます。これは十分検討してまいるつもりでありますが、ただいまソロモン諸島には一名の派遣隊員が派遣されておりますが、このベララベラ島には派遣はしておりません。そこで、ソロモン諸島の政府から要請があれば、十分検討して、こちらも得する——得すると言ったら悪うございますが、ありがたいことでございますから、十分検討してやりたいと思っております。  なお、残留兵の問題、おしかりはごもっともでございまして、縦割り行政であろうとも、所管でないから無関心だということは、これはおしかりを受けるのは当然だと思います。しかし、私、弁解するわけではございませんけれども、厚生省に援護局というのがありまして、これが遺骨の収集、残留兵の捜査。そこで外務省でも、そういう情報があれば、民間情報あるいは新聞情報、あるいはあった徴候というものは、外務省に電報がございますれば同時に厚生省にもそれは打電しておるわけでありまして、厚生省でこれに伴ってこれの捜査をやる、こういう段階になれば外務省がその国と折衝をやるわけでありますが、今後おしかりのないように十分そういうことにも関心を持って、連絡を緊密にして、手落ちがないようにしたいと考えております。
  85. 井上一成

    井上(一)委員 私は、手落ちを責めたり、そういうことじゃないわけですね。要は、一人といえども、もし生存の可能性があるのならば、最大限の、私たちは行政としてはそれこそ努力をしなければいけない、こういうことなんです。そういうお考えをやはりきっちりと聞かしてほしい、一つは。いま大体わかりましたけれども。むしろ外務省サイドが在外公館等を通して、あるいは海外青年協力隊の御協力をいただいて、その情報を持って厚生省が捜索をしていくというのが本来は望ましいわけですね。海外青年協力隊、ベララベラ島には一名もいないということです。これは相手国の要請も必要でありますし、きょう言ってあしたというわけにはまいりませんけれども、園田大臣が、いま海外青年協力隊の果たしてくれている役割りというものも、私同様高く評価していらっしゃるわけですし、相手国の同意があり、要請があれば、捜索も含めて、医療救護あるいは林業指導、どんな形になるかは別として、派遣をする用意があるということでございますね。
  86. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  87. 井上一成

    井上(一)委員 私は、このことについては、ぜひそのように方策を講じて、一日も早く戦後をきっちりとしたものにしてほしいと心からお願いをしておきます。  現地大使の報告は後で聞きます。私は、本当に日本の戦後というものが、この報道だけで知る範囲で、まだ御苦労を願っているその人たちに対して、最大の捜索に対する努力を、外務省もひとつ厚生省に任せずに、先頭を切ってむしろ厚生省を動かすぐらいの力になってほしい、こういうふうに思います。それでは、この問題については後で報告はくれますね。とりあえず、海外青年協力隊の派遣ということの外務大臣の答弁で、今後を期待し、心からお願いをしておきます。  続いて中東問題に移るわけでありますけれども、サダト大統領が死去され、そのことによって中東の情勢は緊迫した様相を呈した、あるいは国際的には政治、経済両面において大きな影響を及ぼすおそれが強いのではないだろうかと、こういうふうにも思うわけです。そこで、大臣政府代表としてサダト大統領の葬儀にも参列をなされ、各国首脳との会談等を通じて中東情勢をどのように把握されてきたのか、あるいは、これはアメリカの中東政策等も踏まえて、どういう認識を持っていらっしゃるのか、まずは聞いておきたいと思います。
  88. 園田直

    園田国務大臣 中東情勢についてはすでに詳しく御承知でありますから簡単に申し上げますが、イランの内政の問題、イランとイラクの問題、それから中東和平交渉の問題と、いろいろ問題がありますが、早急にこれが解決されるという見通しはなかなか困難でありまして、これこそ非常に流動的であると考えておるわけであります。その中で、中東和平交渉の問題、これは少しは動いてきたかなという感じでありまして、いま非常に大事なところへ来た、イスラエルの方もこの前来られたPLOの代表者の方も、これを取り巻く関係国も、やはり中東和平交渉は何とかして片づけなければならぬ、しかもその中東和平、恒久的、包括的な和平というものは、やはりPLOがこの中に、交渉に参加すべきだという方向へ動いてきた、そこへもってサウジの八項目の提案等もございますから、これこそ楽観は許しませんが、少しはいい方向動き出してきたかなという感じが、私が向こうへ参りましたときの実感でございます。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 いままでのわが国の中東政策の中での協力関係というものは、主に経済協力の分野であったわけであります。さらに、産油国にとりわけ強い関心が示されてきた。中でも民間企業ベース、あるいは局間企業の努力に頼ってきたというきらいがあったと思うのです。現段階、いろいろな情勢の変化等も踏まえて、イラン・イラク戦争、いろいろな状態の中で、中東外交政策というものは、いま変化を求めて、あるいは検討を、これこそ検討を加えるべき時期に来ているのではないかと、こういうふうに思うのです。大臣はどうお考えになりますか。
  90. 園田直

    園田国務大臣 この紛争の中にあって中東和平交渉に対するわが国方針は、公正、中正、両方の言い分を聞き、両方に必要なことを要請をして、そして、終局の目的であるPLOが和平交渉に参加する、その前提としてイスラエルはPLOの自決権を認める、PLOはイスラエルの生存を認めると、こういう話し合いの場所をつくることだと考えておりますが、こういう問題について、大体外務省のいままでの方針は正当な線を動いている、今後は起こるべきいろいろ具体的な現象によって逐次具体的な対策を変えるなり確立するなり推進するなりやっていけばいいと私は考えております。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 PLOの問題も後で触れたいと思いますけれども、まず経済援助の問題で、サダト大統領の死去という事態を受けてスエズ運河の第二期拡張工事、いわゆる食糧増産プロジェクトを対象とする経済援助の増額に踏み切る考えを明らかにされているわけなんですが、政府自身がこの段階でエジプト援助を早々と打ち出したということ、私はその理由、根拠を大臣からお話があろうと思いますが、PLOの問題に触れられたわけですけれども、いま私が指摘したことが何を意味するのか、あるいはどのような根拠でこの経済援助に踏み切ろうとなされているのか、この点について聞いておきたいと思うのです。総理の訪問を進言したり、あるいはむしろ政治不安のてこ入れではないのかというふうにも勘ぐられるわけなんです。そこらはやはりきっちりとしておくべきではないか、このことを大臣から答えてください。
  92. 園田直

    園田国務大臣 エジプトに対する日本経済協力は、いま発言されましたいろいろな問題があるわけでありますが、それは踏み切ったわけではございません。  もう一つ申し上げると、サダト大統領が逝去された、あるいは中東が非常に動いてきた、そういうことでいまこれが出てきた問題ではなくて、もう数年前からエジプトの経済協力については両国間で検討されておった問題であります。そこで、だんだんと両国間の調査が出てまいりましたので——率直に言いますと、サダト大統領が来月日本に訪日されることになっておりました。そこで、その訪日されたときにこれを打ち出そうかと数年前からのずっと積み重ねたことを考えておったわけでありますが、大統領が亡くなられて日本に来られなくなりましたので、正直言うとそれを出すきっかけがなくなったというのがいまの実情でございまして、いまの変化に応じてこれが出てきた問題ではございません。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 中東政策の拠点をエジプトに置いた、そういうような感触がこのことによって受けとめられるわけです。反面、われわれが主張しておりましたPLOのアラファト議長が訪日したということとエジプト拠点政策のようなわが国の経済援助のあり方、中東外交政策のあり方、これはどうも余りにもおかしいのではないかというふうに私は受けとめ、むしろアメリカ外交の延長路線上に日本の中東政策は乗っていないということが言い切れるかどうか、あるいはわが国は独自の中東政策を持っている、そしてそれはこのようなものであるということを言い切れるかどうか、大臣、いかがですか。
  94. 園田直

    園田国務大臣 御承知のとおりに、まずイスラエルとエジプトの対立、これは必ずしも足並みは一致しておりません。一致してないから、両国の自治交渉というのがうまくいくかどうかは一つの問題になっているわけであります。また、もう一つは、エジプトとかつては友好関係にあった穏健アラブ諸国との間がうまくいくことも中東和平の一つの要素になっております。その両方の兼ね合いの中にPLOを現実にどうやってうまく交渉の中に入れていくか、こういうことを考えますると、やはりエジプト、サウジアラビア、PLOというのは中東和平の一つの拠点でございます。したがいまして、中東地区の和平については米国とは足並みをそろえてないということを私はしばしば言いますし、米国にも、日本はこの問題では米国とは足並みはそろわないということはしばしば言っておるだけではなくて、米国が中東の現実に応じて本当に和平交渉ができるように行動されるよう、しばしば要請しておるところでございます。現に国連決議、それからPLOの独立国家を含む自決権、こういうこと等を日本は西欧諸国よりも一番先に公式の場面で打ち出しているわけでありまして、もちろん、西欧諸国、米国、エジプト、サウジ、PLO、これがどのようなことを考えておられるか、よく意見は交換しなければならぬが、足並みは決してそろえておるわけではありません。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 エジプトの経済困難を援助していくことについては、そこにイスラエルとの和解に反対するいわゆるイスラム原理主義者の反政府行動、そのことはいつエジプトの社会情勢を変えていくかわからないという一定の不安もあるわけなんです。  私自身は、特に中東の場合、政教分離による経済援助では中東外交としての重みというものは欠けるのではないだろうか、やはりその根源には、いま大臣も少し触れられましたけれどもイスラエルとアラブとの紛争、対立がある、パレスチナ問題の解決あるいは石油問題等が絡んでいる、端的にはパレスチナ問題の解決なくして中東政策なんて成り立たないのだと言っても過言でない、そのことはなおのこと、中東紛争をいかに解決していくか、解決を見出すか、さらには平和を維持していくかを中東政策の基本に置かない限り、中東政策とは言えないのではないだろうか、こう思うのです。そういう意味で中東政策というものをとらえていかなければ誤った方向に行くのではないか。中東紛争の解決、このことを中東政策の基本に置いた政策をやはりわが国はとるべきであるということ、そのための努力がなされるべきである、こういうことなんですが、もう一度大臣から聞いておきます。
  96. 園田直

    園田国務大臣 中東地区に対するわが国の一番大事なことは、いまおっしゃいましたように、中東地区の和平交渉を実現させることだと思います。したがいまして、それに重点をしぼって全力を挙げて努力をするつもりでおります。
  97. 井上一成

    井上(一)委員 いままでわが国の中東政策というものが、非常に言葉がきついようですけれども、御都合主義であった、その場的な対応であった。オイルショックがあれば三木さんが特使として派遣される、あるいは江崎さんが行く、中曽根さんが行く、いわゆる油もうでで中東を訪問する。むしろそれは日本の変わり身の早い適応力で処理をしてきたというのが従来の中東政策ではなかっただろうか。むしろ相手国の考え方を十分理解することなしに日本側が一方的に推し進めてきたきらいがあるのではなかろうかというふうにも考えるわけです。経済協力関係についてうまく展開しない根本的な原因がそういうところにあるのではなかっただろうかというふうに思うのです。大臣経済協力関係がうまく展開をしていかないということについての原因をどのように受けとめていらっしゃるか、この点についても聞いておきたいと思います。
  98. 園田直

    園田国務大臣 中東地区に対する日本の基本的な考え方が、エネルギーの供給源として中東地区を考えておった、石油をうまく供給してもらうために何とか交際しようと考えておったところに間違いがあるような気がいたします。そうではなくて、中東地区の和平というものは、これは世界各地区でいろいろ問題ありますけれども、中東地区のみならず、世界の平和にとって一番大事なところであります。しかも、中東地区を構成するものは産油国のみならず非産油国で非常につらい国もそれぞれあるわけであります。  それからもう一つは、アラブ穏健と一言に言うわけでありますけれども、アラブ諸国をただ単に米国側だソ連側だということで、これを穏健だとか過激だとか決めるところに一つの間違いがあるので、大部分のアラブ諸国というのは米国派でもなければソ連派でもない。自分たちが生きるために、生存するために苦労している。味方にあらざれば敵だ、こういう考え方が間違っておるのではなかろうか。  こういう点を考えて、いまおっしゃいました中で一番大事な点は、やはり相手の安定と繁栄の中にわが日本の繁栄を求める、日本の繁栄の中に相手もまた得をされる、こういう中東地区のそれぞれの国の立場を理解して、中東地区に対する貢献をすることが一番大事だ、こう考えております。
  99. 井上一成

    井上(一)委員 中東に対するわが国の経済援助あるいはプロジェクトの象徴とも言われるのが、イランのいわゆる石油化学プロジェクト、IJPCですね。この事業については、いろいろな問題があって、その継続の可否が問われているわけです。通産大臣は、せんだって私の質問にも、現時点で事業継続は不可能との判断を示しているわけなんです。このプロジェクトは発足当時にも問題がある、油が欲しいあるいはいろんなわが国だけの考え方で、わが国だけの勝手な形の中で進めていった、あるいはそこに何らかの不愉快な流れがあったかもわからない、あるいは進行していく中でいろいろと問題点がありました。私は常にそういうことについて指摘をしてきました。しかし、きょうはここで、その過去のことについて触れるのではなく、むしろ今後将来にわたっての展望を議論をしてみたい。  このプロジェクトがナショナルプロジェクトに格上げをされたときにも私は強くそれを責めましたし、そうあってはいけないということも申し上げたわけでありますけれども、そんなことは気にせずナショナルプロジェクトに格上げをされた。そのことで単なる経済協力という意味とは変わった重みが、ナショナルプロジェクトに格上げをした時点で私はもうそこに生まれた、こういうふうに思うのです。政府として経済的な安全保障の基準というものから判断してナショナルプロジェクトに格上げをする、そうでなければならぬわけですけれども、私は、本当にそうなのか、あるいはそれは誤っているのではないかと強く指摘をしてきたのですけれども、そういうことで、経済的な安全保障の基準として重要なプロジェクトであるという形の中で格上げをしてきた、取り組んできた。いま巷間撤退が三井グループの中でうわさされておりますし、最終的には決まったものでもなし、もう事業の継続というか事業の再開もめどがつかぬという状態でこの問題がたなざらしに上げられているわけですけれども、外務大臣に、私は、日本とイランの外交という、そういう側面からこれは議論をしていきたいと思うのです。  通産通産なりの考え方で継続をしたいという意思をずうっと答えています。三井グループは民間ベースでは採算性の問題で一日も早い撤退、撤収を意志表示しているわけですけれども、外務大臣は、このIJPCの撤退は現状から見てどのように受けとめられるのか、いわゆる中東政策といういろいろな観点も十分考慮に入れた、そういう中で外務大臣の所見を承っておきたいと思います。
  100. 園田直

    園田国務大臣 このプロジェクトの経緯は御承知のとおりでありますが、そういうわけで、これがイランと日本の国との関係、ひいては中東地区との一つのパイプになればよいと願ってきたわけでありますが、その後イランの内政の紛争その他のことがありまして、現段階では外務省としてはこれについての見通しは、私個人は、どうなるかわからぬ、見通しがつかないというのが正直なところでございます。
  101. 井上一成

    井上(一)委員 見通しがつかない、あるいは暗礁に乗り上げた、あるいは不慮のイラン・イラク戦争というそういう新たな事態が発生した、いろんなことで困難な状態にあるということは私は否定もしませんし、そのとおりだと思います。困難な状態であればあるほど、私は、日本とイランとの関係をどのように展開をし、そのことによってこのIJPCの困難な状態を打開することができるかという打開策を見出すべく政府としては努力をする必要があるのではないか。とりわけ外交的な面での打開策というものについて、やっぱり何らかの策を持つべきではないだろうか、こういうふうに思っているのです。この点についてはいかがでしょうか。
  102. 園田直

    園田国務大臣 御承知のとおりのようなイランの情勢であり、他国のことでございますから言葉遣いを非常に慎重に使わなければなりませんけれども、イランの内政、イランとイラクの関係、こういうものがどのようになっていくのか、イランの内政がどういうふうな方向へ進むのか。もっと正直に言うと、一面的な連絡、一方的なパイプではなかなか通用しない段階に来ておりますので、いろいろな方面から情報をなるべく収集をして判断をつけて、これに対してイランと日本との将来の関係、これをどうやってつなぐか、真剣に努力をしているところでございます。
  103. 井上一成

    井上(一)委員 この問題は、日本とイランの両国の協力友好関係をより深めていこうというたてまえでスタートしたわけですと政府は答えているわけなんですよ。そういうことであれば、やはりその趣旨に沿った対応というものが必要であるわけです。もしこれが日本側が撤収ということにでもなれば、両国の友好関係は当初希望したそういう状態にはならぬでしょう。これはもう当然ですね。そのことは中東諸国のそれぞれの国は言うに及ばず、あるいは他の開発途上国までに日本経済協力についての不信感を与えるという側面もあるわけなんですね。こういうことについての配慮は打開策の中で外交的に十分取り入れられているのかどうか。そういうことについて外務大臣はどういう手順を踏もうとしていらっしゃるのか。そのことについても聞いておきたいと思います。
  104. 村田良平

    ○村田政府委員 本件プロジェクトは、確かに先生御指摘のとおり、ナショナルプロジェクトというふうに位置づけられたわけでございますけれども、基本的な性格は民間企業主体の合弁事業でございます。したがいまして、当然民間企業の立場から見まして、あるプロジェクトが経済的に採算がとれるかという点も非常に重要な視点であるわけでございます。  他方、イランの内政あるいはイラン、イラクの紛争という事態がございますので、この先行きがどうなるかということの判断が非常にむずかしいということでございます。もちろん、この企業の将来をどういうふうに取り扱うかということは、他の中東諸国も関心を持って見ておると思いますけれども、しかしながら、現在の段階では当事者同士が話をしておるということでございまして、去る七月に日本の企業の代表が先方に行って話をしておる、また、先般ダビリというIJPCの社長が参りまして、わが国関係方面と意見を交換しておるという段階でございますから、イラン内部の情勢、イラン・イラク戦争、それからそういう当事者の話し合いというものをしばらく見守っていきたいというふうに考えております。
  105. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、イラン・イラク戦争が起こってからもう大分になるわけですし、当事者間の話し合いなんというものはなかなか前進をしません。それならばなぜプロジェクトを格上げをしたか、その理由も聞きたいわけですけれども、もうそんなことの論議じゃない。私の懸念をするのは、両国の外交チャンネルでこれはひとつ前進をさせろ、打開策を講じなさい、そういうことへの対応を、何か採算ベースあるいは資金的なものだけでこの問題を判断しちゃいけない、こういうことなんです。くどいようですけれども、何か方法考えなければ、手探りでもいいからやはり外交の場で、国と国とのレベルでこの問題をひとつ話し合っていかなければ、これは基本契約だって向こうの国会を通っているのですから、当事者間でその基本契約の改定云々なんといったって、これは国会承認事項にならぬ話です。だから、やはり国レベルでこの問題について一度——なかなか難儀な問題だから手を出したがらないわけです。そんな汚れたもの、あるいはそんな難儀なものにかかわりたくない。これは外務省はきれい過ぎる。外務省はあえてどろをかぶるぐらいの、いやがらんと、きれいなことを言わんと、外務省が乗り出してこの問題解決にひとつ働きかけるおつもりはありませんか。そのことが前に戻って、政府レベルに格上げをしたプロジェクトでもあり、そういう姿勢が——結果はわかりませんよ、両国合意の中で撤退ということもあり得るかもわかりません。しかしそういうことをやることが、中東諸国の日本に対する信頼をつのらせることであり、そのことが中東政策のベースでないといかぬ。経済協力はそうあるべきだ。もしひょっとして、そんなことは仮定の問題ですけれども、大勢が変わった、じゃ、またやりましょうかというようなことになれば、それは場当たり的な御都合主義になるわけですから、私は、中期、長期を展望して外務省が、現地大使もおることですから、もっと積極的にこの経済協力プロジェクトに対する取り組みをすべきではないでしょうかという意見を持っているのですが、大臣、いかがでしょうか。
  106. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、できるだけの努力、ありとあらゆる手段を講ずることはもう当然のことでありまして、いろいろな方向を通じて向こうの政府日本においでになるような話があったり遠のいたりいろいろやっておるわけであります。なかなか困難でありますが、今後とも関係省庁とも連絡をし、また外務省は現地の出先あるいはこれに入っておられる方々等の御意見も聞いて努力をしたいと考えております。
  107. 井上一成

    井上(一)委員 私は、中東政策という中からの取り組みとして、この問題を具体的な事例として取り上げて取り組みを求めたわけなんです。それで大臣、向こうからの代表も来るあるいは来ない、あるいはいろいろ事情があって十分なパイプがまだ通じません。私は、さっきも言ったように、油が欲しいときには特使を派遣していろいろなことで友好を深めるのだというようなことを言っておって、今回、これは非常にむずかしい問題だから、来るまで待とう、あるいは当事者でできるだけ話をして煮詰めて、汚れたことには手を出さんでおこうというようなことでなく、いま大臣が最大の努力をするとおっしゃられたわけですけれども、通産と一緒にでもいいですから、外務省もこの問題であえて向こうの政府にアプローチをこちらからしたらどうか、しなさい、すべきではないでしょうか。それはどういうはね返りがあるかわかりませんよ。断られるかもわからないし、そういうようなことがうまくいくかいかないかわからないけれども、そういう努力が、中東諸国に示す日本経済協力の流れ、ひょっとしたらそれは後仕舞になるかわかりませんけれども、そういうことが大事ではないだろうか。この際、そういうことをお考えにならないでしょうか。そういうことを考えて、具体的にそういうことに努力をしていただけぬでしょうか。こういうことを聞いておきます。
  108. 園田直

    園田国務大臣 非常に困難な中にいままでもいろいろ手段を尽くしてきたわけでありますが、今後ともいまおっしゃいましたような努力は最後まで続けるつもりでございます。
  109. 井上一成

    井上(一)委員 関連して、大臣はいまのイラン・イラク戦争、これの見通しはどういうふうに持っていらっしゃるのでしょうか。私は、今回のサダトの死去という不幸な出来事を一つの契機に、早い時期に、近い将来、この問題にも一定の見通しが持てるのじゃないだろうか、そのことは、やはり日本がしっかりと中近東に信頼を与えるような外交をすることによってなされていく、こういうふうに思うのです。
  110. 村田良平

    ○村田政府委員 まず、現在のこの戦争の状況でございますけれども、つい最近の様子を見ますと、アバダンに対するイラン軍の攻勢、それからイラクの南部に対するイラン空軍の攻撃等が若干はございますが、戦線全体としては硬直化しておるという状況でございます。  この戦争をいかにやめるかということで国連の特使あるいはイスラム会議それから非同盟という努力が過去一年間なされておりまして、一番最近の試みはイスラム会議から新しい提案が出ておるわけでございますが、残念ながらこれはイラン側が拒否するところになっておるということで、このような調停の努力が早急に実るということは残念ながら見通せないというのがいまの状況でございます。  本来、イラン・イラク紛争と申しますのはエジプトの情勢とは直接関係のない両国間の理由から起こっておるものでございまして、サダト大統領の死去というのは非常に大きい出来事でございますけれども、このことによって直ちにイラン・イラク紛争に解決の兆しが見られるというふうには判断できないと思っております。
  111. 井上一成

    井上(一)委員 私は、日本の中東政策がイラン・イラク戦争の明るい見通しの引き金になる、日本のやり方一つだ、PLOに対する対応の問題もあるでしょうし、あるいは経済協力の問題もあるでしょうし、いかに中東諸国の信頼を得るかということだ。そういうことで、いま局長が答えた、こういうことをやりました、ああいうことをやりましたということで、これはだめだったのです。わが国はどう対応しようとするのかということなんです。余り時間がありませんから、そのことについても大臣考え、見通しを答えてください。
  112. 園田直

    園田国務大臣 イラク、イラン両方ともわが国は現在のところ外交関係があるわけであります。イラクの方とはわりに話が順調にできる関係にございます。イランの方とはいろいろ話はしておりますが、なかなか話の進展の状況は予測しがたいことがたびたびあるわけでございます。  そこで、先ほどサダト大統領の逝去の話がありましたが、サダト大統領が亡くなったということが直接このイラン、イラクに影響することは少ないのじゃないか、御承知のとおりエジプトとはイラクもうまくいっておりませんし、イランは当然うまくいってないわけでありますから。ただ問題は、中東和平交渉その他の動きが出てくるし、かつまたイラン、イラクに戦闘行為をやめさせたいということはあの地区の国々のすべての念願であり、それが具体的に努力に変わってきておるわけでありますから、わが日本も、いまおっしゃいますとおり、そういう問題についても現地のアラブ諸国の御意向も承りながら最善の努力をするべきであると考えております。
  113. 井上一成

    井上(一)委員 私はあえてここでなぜ外務大臣にこういう質問をしたかといえば、通産大臣は、イラン・イラク戦争の紛争解決のために一役買って出たのだけれども失敗というか成功しなかったのだというような答弁があるのですよ。これは国会で私にそういうことがあったという答弁をしているのだから、外務大臣、あなたは外交ではやはりベテランですから、そういうことについてはしっかりやってくださいよ、そういうことを実は私は申し上げたかったし、通産大臣でも、えらい失敬ですけれども、そういう努力をしたのだということを国会で言っているのですから。  さらに私は、南北サミットに出席をされる外務大臣に、これも経済協力の問題ですけれども、どうせアメリカの要人とお会いになると思うのですよ。それで、SRC、石炭液化プロジェクト、これはカーター時代に西ドイツ、日本アメリカで合意をしたものがほごにされたわけなんですよ。これは、伊東外務大臣が訪米された折にも、この話は持ち上がっていたわけなんです。私は、アメリカが国際的な信義に反するということについては強い怒りを持っているわけなんです。わが国は、五十五年度、五十六年度予算案に、百五十億、七十四億これは計上しているわけなんですね。国会でもそういう承認をとり、そういうような取り組みをしながら、アメリカが一方的にこれをほごにした。もちろん何回か事務レベル会議がありました。あって、わが国がしぶしぶ、これは了解せざるを得ないという、一方的に押しつけられたのだから、こういうことについて、南北サミットで当然園田外務大臣から一言アメリカ側に苦言あるいは日本側の意思が伝えられるでしょうね。これは念を押しておくのは私は当然だと思うのですけれどもね、この問題は。
  114. 園田直

    園田国務大臣 いまの件はまことに残念なことであって、御発言のとおりであります。これは西独、日本アメリカが協議をした結果変更されたものであります。しかし、ただいまの御発言趣旨は十分拝聴してまいります。
  115. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカ側にそういうわが国の強い見解を話されますねということ、議題というのでしょうか、話し合いの中でそういうことは当然出ますね、出てきた問題ですからね。前の外務大臣のときにもそういう話し合いがあったのですけれども、これは事務レベルで、あとはやらないということにおりたわけですけれども、日本はそれはやるべきである、継続すべきだということ、そういう話を南北サミットで出されますねということです。
  116. 園田直

    園田国務大臣 御発言趣旨はわかりますけれども、これは形式的にはすでに決着した問題であります。したがいまして、今後このようなことは困るという話はいたしますけれども、この問題についてのとかくの発言は、すでに手おくれであると考えております。
  117. 井上一成

    井上(一)委員 振り出しに戻すということは無理でしょうけれども、いま言われたように決着のついた問題だけれども、これは一言苦言を呈してしかるべきでありますから、いま言うようにクレームを申すということで、わかりました。当然だと思いますし、アメリカのそういう姿勢を強くただすべきだ、こういうふうに思います。  実は、日ソ問題と難民問題について触れておきたかったのですが、時間がありません。それで、一点だけ、ソ連に対する経済制裁は解除しないのだということを外務大臣は昨日触れられたように私は承知しているのですけれども、外務大臣が、日ソ関係の修復あるいは日ソ経済協力関係一つ話し合い、そういう意味で近い将来ソ連を訪問して、そういう問題について——この間アメリカであるいはモスクワ空港で会われているわけなんですけれども、これは途中であるいは何かのついでにということですが、改めてソ連に対しての訪問は近い将来ということでお考えでしょうか。
  118. 園田直

    園田国務大臣 いろいろな関係からソ連と話をする糸口をつかもうと努力してきたわけでありますが、そのきっかけはできたような気はいたします。  そこで、いつどういうふうに話をするか、まず両方からだんだんと話を詰めて、事務協議、それから外相会議などをやろうかという話をしておりますから、将来はいろいろな問題が出てくるわけでございますが、まだその糸口をつかんだというだけで、その先進んでおりませんから、いま訪ソするなどということは、まだその段階には来ておりません。
  119. 井上一成

    井上(一)委員 最後に難民問題についてちょっと触れておきたいのですけれども、難民条約については外務大臣には大変御努力をいただいて、やっと来年一月一日から発効の運びになるわけですけれども、一方、受け入れ体制というものについての十分な手はずはなされつつあるのでしょうね。
  120. 木内昭胤

    ○木内政府委員 井上委員におかれましては、この問題に大変御理解いただいておるわけでございまして、一時収容施設が飽和状態にあって、その手当てが非常に困難に直面しておるということは遺憾ながら御承知のとおりでございます。明年から施行されます難民条約との兼ね合いでの受け入れ体制については、これまた鋭意努力いたしておるわけでございますが、二百名のレセプションセンターを設けるということで、法務省におかれましてすでに措置をとられつつあるというふうに伺っております。
  121. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、これは直接の所管ではないから、これまた具体的なことについてはもう触れませんけれども、私の予測するところでは十分な受けざらは確保されていない。そんなことではせっかくの難民条約を批准し発効にこぎつけたことも泣きますよ。あるいは国際社会で人権問題について胸を張って外務大臣が演説をなさることはできませんよ。そういう意味で受け入れの、あるいはそういう対応が可能な状態に、いわばこれは予算の問題ですから、そういうことについて外務省は所管官庁に最大限、これこそ大臣としては力いっぱいに働いてもらいたいという強い考えを私は持っているわけです。大臣からのお考えを承って、私の質問を終えます。
  122. 園田直

    園田国務大臣 難民の問題では、残念ながらこれは減少する傾向にはございませんし、むしろ新たな難民がふえてくる状態にあると私は考えております。これに対して資金協力と定住と一時滞在受け入れと三つの問題があるわけでありますが、資金協力では、まあまあ日本も他国にそう劣らぬようなことをやっているわけでありますが、受け入れについては、よその国に比べたら非常におくれているわけでありまして、この点で金だけは出しながら、日本は難民問題に不熱心だというそしりを受けているわけであります。単なるそしりだけではなくて、これは難民を受け入れる人道上の重大な問題で、これが直ちに日本自体の人柄や外交の本質にも影響しますから、今後私はもちろんのこと、関係の方々と協力をして、まず一時受け入れ、それから定住というふうにできるだけ数をふやし、かつ施設をふやすように努力をいたします。
  123. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 先ほど御質問のございましたベララベラ島の調査に関します在外公館からの報告の状況につきまして御報告いたします。  本垰団長以下、まずホニアラに行かれたわけでございますが、ソロモン群島の首府でありますホニアラで、現地の外務部あるいは内務省等との打ち合わせを行ったというようなことに始まりまして、それから現地に行かれましてから設営状況、各キャンプへの隊員の配置状況、いろいろ現地での調査の状況、それから最後にお帰りがけにホニアラに本垰団長が寄られましたときに伺ったお話等、随時現地にございます大使館から電報で報告が来ているわけでございます。  ただ、背後の状況として補足させていただきますと、ベララベラ島は御承知のとおり通信のきわめて不便なところでございまして、電話も通信も施設がないということで、ホニアラまで数百キロあるわけでございますが、隊員の方が船でおいでになりまして、そこで大使館の方に御報告いただく、それを大使館の方から電報で打ってくるというやり方でございましたので、勢いその報告等が頻繁にということにはまいらなかったという事情はそういうことであったわけでございます。  以上でございます。
  124. 國場幸昌

    國場委員長 この際、午後零時五十分まで休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後零時五十五分開議
  125. 國場幸昌

    國場委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村勝雄君。
  126. 新村勝雄

    新村委員 最初に大臣に、日本外交の基本といいますか、その心構えについて伺いたいわけです。  言うまでもなく、日本は武装を捨てて平和国家として再生したわけでございまして、その外交方針は、もちろん平和を基調とし、いわゆる全方位外交、これは福田さんがよく使われたわけでありますが、であるべきだと思います。もちろんこれは、日米の外交を基軸にするということは現実としてあるのでしょうけれども、考え方としては、やはり平和外交しかも全方位ということであろうと思うのですけれども、その考え方、基本的には間違いございませんか。
  127. 園田直

    園田国務大臣 日本の外交の基本方針は、あくまで平和外交に徹し、軍事大国にならず、日本の持てる力を世界各国の繁栄に貢献をする、こういうことでありまして、かつまた、意見が合わない、あるいは対立する国とも話し合いはやっていくといういわゆる全方位外交は、これを貫きたいと考えております。
  128. 新村勝雄

    新村委員 ぜひそうありたいのですけれども、どうも外務省さんの中には、力の外交というか、力の外交にあこがれるような気風があるのではないかという気がするわけです。われわれが外国へ行きまして在外公館、大公使の皆さんと会うと、その言い方にはいろいろありますけれども、力の裏づけのない外交はだめなんだという言い方をよくするわけです。外交といえどもあくまでその背後には力がなければいけない、そういうことを言うわけですけれども、大臣は一体、外務省の中で平和外交に徹せよという指導あるいは訓示をなさっているのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  129. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの情勢が力の均衡であるとかいろいろ流動的でありますから、中にはそういう間違った考え方を持った者もおるかもわかりませんが、十分注意をして今後平和外交に徹する、力によって世界が動く世界をなくすることが外交の使命であると考えております。
  130. 新村勝雄

    新村委員 いまのお話で大変結構、りっぱな考え方だと思いますけれども、外交というのは力の背景がなければ外交の力がないのだということではだめだと思うのですね。やはり外交というのはあくまで外交であって、力あるいはその背後にある軍備などには依存しないということが必要だと思うのです。先日のNHKのドラマで戦前の日本外交の裏面史とも言うべきものをテーマとしたドラマがあったわけですけれども、当時は日本外交はもっぱら軍の鼻息をうかがってやっておった、せっかくりっぱな構想を持ちながら軍部の力によって外交努力が押しつぶされてしまった、そして不幸な戦争に落ち込んでいった、そういうテーマであったわけでありますが、そうであってはならないわけでありまして、外交はあくまで独自の国の方針あるいは世界観に基づいて平和的に展開をされる、外交の次元で展開をされなければいけないわけであります。そういう点からいって、外務省の中に力を背景とする外交というあこがれのようなものがもしあるとすれば、これは大変間違ったことであるし、日本外交のあり方を誤る思想であると思いますので、そういうようなことのないようにひとつお願いをしたいわけであります。  次に、対ソ外交でありますが、外務省の発行した、これはブルーブックというのですか、外交青書には、隣国ソ連との関係を真の相互理解に基づいて発展させることは、わが国外交の主要課題である、こう言っておるわけでありますけれども、残念ながら日ソ関係は、現在いわゆる梗塞状態というかきわめて冷却した関係にあるわけであります。もちろん、これは北方領土の問題というものがあって、これが大きな障害をなしていることは事実でありますけれども、そうかといって北方領土の問題が解決をしなければ日ソ外交は一切前進しない、こういうことであってはならないと思うのですが、大臣の対ソ外交に対する基本的な考え方について伺いたいと思います。
  131. 園田直

    園田国務大臣 ソ連は、日本にきわめて近くて、しかもいろいろな意味においてわが日本生存に影響力の大きい国であります。日米安保条約日本アメリカは特別の関係でありますけれども、あればあるほどこのソ連と話し合いを続けること、相互理解を深めることは、日本の安全のためにも世界の平和のためにも、きわめて大事であると私は考えておるわけであります。西独が、御承知のごとく西側陣営でアメリカと足並みをそろえながらも絶えずソ連の方と交流を深めてやっておるということ、これは私は、やはり私が願う平和のための一つの道筋だと考えております。そのようにしたいわけでありますが、残念ながら日本には北方四島という問題がありますので、この問題でソ連の方もわが方もなかなか話がうまくかみ合わなかったわけで、二年近くも話し合いができなかったという状況にあったわけであります。しかし、意見が対立をしたりあるいは意見が違ったりしたからといって話をしないということは、これはきわめて遺憾でありますので、そういう対立点は対立点として議論しながら、話のできることを話を進める、こういうことで今後話し合いの糸口をつくり、話し合いを逐次進めていきたいと考えておるわけであります。
  132. 新村勝雄

    新村委員 外交の真価といいますか外交の真の使命は、やはり国交のむずかしい場合にこそ真にその真価が発揮されなければいけないわけでありまして、日米関係、これは大変親密な関係にあります。戦後一貫して親密な関係にあるわけでありまして、若干の経済上の摩擦はありましても、これは外交上そうむずかしい問題はないのであります。ですから日米関係においては、これは何も大臣がそれほど腕をおふるいにならなくても、大体好ましい方向を、ずっと軌道の上を進むわけでありますけれども、事一たび対ソの問題となりますと、きわめてむずかしいわけであります。こういうむずかしい局面にこそ、真に外交あるいは大臣の手腕が発揮をされなければならないと思うわけでありますし、そこにやはり日本外交のあり方、使命が問われる点があると思うのですけれども、そういう点でソ連との関係は、必ずしも好ましい状況ではないというよりは、むしろきわめて冷却した状況にあるわけであります。それが北方四島の問題にあることは、これは申すまでもないわけでありまして、われわれ日本国民は一人として北方領土の返還を望まない者はないわけでありますが、同時にまた、その問題に余り——これはもちろん、こだわります。こだわらなければいけない問題ですけれども、しかし外交のあり方としてその問題だけに集中的なウエートが置かれていたのでは、ほかが動きがとれないという状況が出てくると思うのです。  そういった点で、政府はいままで北方領土の問題についてきわめて重視をされていろいろな施策をなさっておりますけれども、それが北方領土の返還と、それから同時に日ソの親善ということ、これがやはり究極の目的でありますから、それを達成するような方向で、やはりこれは常に配慮されていかなければいけないと思うのですが、最近総理が北方領土の視察をされた。それからまた、外務大臣も三回ですか、四回ですか、にわたって北方領土の視察をされております。最近総理が行かれたわけでありますけれども、この北方領土の視察ということが相手側にどういう影響というか、それを与えているのか。あるいはまた相手側のこれに対する反応はどういうものであるか、ちょっと伺いたいと思います。
  133. 園田直

    園田国務大臣 北方四島の問題は、日本国民大多数の願いであり、かつまた国会でも自民党から共産党の方々に至るまで一貫した願いであります。ですから、これは絶えず粘り強く主張しなければならぬと考えておりますが、これが解決しない間は話をしないというのでは、この解決も進まぬわけでありますから、御発言のとおりに、糸口を見つけながら、これに対しても粘り強く主張しながら、話のできる問題は話をしていく、こういうことをやるべきだと考えております。  かつまた、北方四島の視察については、これも総理が先般行かれましたし、いままでに外務大臣、総務長官等が何回も視察をしておりますが、これは日本の領土と主張しているわけでありますから、これを北海道の方から視察に行くということは、これは当然日本の行政の責任者としてあり得ることだと考えます。
  134. 新村勝雄

    新村委員 それに対して相手側はどういう反応を示したかということと、それからここ一両年、北方領土におけるソ連軍の増強ということが言われておりますが、その最近の状況はどういうものであるのか。一たび増強された地上軍あるいは諸施設がその後変化しているのかいないのか、この点ちょっと伺いたいと思います。
  135. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 総理が北方領土を視察されたことに対するソ連側の反応でございますけれども、もちろん公式には何らの反応を示しておらないわけでございまして、いま大臣から申し上げましたとおり、総理大臣にせよ閣僚であられるにせよ、日本の領土であるところの北方領土を視察に行かれるということは当然のことでございますから、公式にソ連から何らかの反応を示すという筋合いにはないわけでございますけれども、一部のソ連の新聞論調等で、これは日本の閣僚の方が行かれたりしたときも、いつもそうでございますけれども、そのような行動はうれしくないというたぐいの論調が出ている、これは他方、事実としてあるわけでございます。  それから、北方領土におけるソ連の軍備の増強状況でございますが、これはおおむね一個師団規模に近づきつつあるという二年ほど前からの状況に特に大きな変化はないと承知いたしております。たとえば二年ほど前に北方領土への軍備の増強を始めました時点におきましては、たとえばテントのようなものをつくってそこを仮設営していたというような状況でございましたものが漸次恒久的な施設にかわりつつあるというような変化はございますけれども、兵力の総体といたしましては最近特に大きな変化はないと承知いたしております。
  136. 新村勝雄

    新村委員 次に、政府は先般北方領土の日なるものを決めたわけですけれども、これは日本国民に北方領土問題についての認識を新たにしてもらって、返還の世論を盛り上げることが目的だというふうに説明をされております。これはそういう効果があれば結構なわけなのですけれども、こういうことがややもすると日本国民の間にソ連に対する単なる敵がい心をあおるだけということであっては、これは領土返還の目的を達成する障害にもなりますし、また、平和国家としての平和外交の姿勢にも疑問を生ずるわけであります。国民世論の喚起というのは、国際親善を進める場合に、たとえば日ソ親善を進めるあるいは日米親善を進める、両国の親善を進める場合に国民の世論を喚起するということならわかるのですけれども、敵がい心を喚起するということになっては実は困るわけなのですね。敵がい心については抑え、親善的な世論を喚起していくというのが平和国家としての政策であり、基本的な考え方だろうと思うのです。  そういう意味からいって、北方領土の日が真に、日本国民に日ソ関係を理解してもらって、領土返還の世論を、敵がい心ではなくて領土返還の正しい世論を盛り上げることに役立つのかどうか。それからまた、ソ連の方から見た場合に、これが反ソキャンペーンだ、こういう受け取り方をされないかどうか。これはもうすでに一定の時間がたっておりますから、その反応はわかると思いますけれども、それらの事情についてはいかにお考えですか。
  137. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 北方領土の日は、御承知のとおり国会の御決議をいただきまして、その御決議を受けて政府として制定したものでございますけれども、その趣旨は、日ソ間の友好関係、これは非常に大事でございます、北方領土問題を解決して平和条約を締結する、そこに日ソ間の真の友好親善関係が生まれるというのが私どもの考え方でございまして、北方領土の日を制定いたしましたのも、そのようにして日ソ間に平和条約が締結され、真の友好親善関係が生まれることを念願してのことであるというのが私どもの気持ちでございます。  ソ連の方も、もちろん日ソ間の善隣友好関係を進めたいということを言っているわけでございますが、片や北方領土問題というようなものは存在しないというのがソ連の言い分でございます。私どもといたしましては、北方領土問題をたな上げにしたままの日ソ友好親善というわけにはまいらないわけでございまして、北方領土問題は日ソ友好関係を進めるために避けて通れないところであると考えているわけでございます。そのような意味におきまして、北方領土の日を制定いたしましたのも、そのような、日ソ関係を前向きに持っていきたいという気持ちのあらわれと考えている次第でございます。
  138. 新村勝雄

    新村委員 領土問題をたな上げということはだれも言っていないし、もしたな上げにすれば、これは半永久的に現状固定ということになる道に通ずるわけですから、たな上げということは適当でないと思います。領土問題に対決をしながら同時にまた日ソの交流あるいは親善にも力を尽くす、こういうことでなければいけないと思うのですけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  139. 園田直

    園田国務大臣 領土問題も含みながらいろいろな問題で話し合いを続けていきたいと思っております。
  140. 新村勝雄

    新村委員 そういたしますと、北方領土の日、これはいま制定の趣旨等も話がありましたし、また、われわれもその理解をしておるわけですけれども、この日の今後の運用といいますか、その日にはどういうことをこれからしていきたい、あるいはどういうことをするのだという構想がございますか。
  141. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 北方領土の日は国内行事でございまして、外務省ではございませんで、総理府の方でいろいろ計画をされるわけでございます。今後の北方領土の日の行事、どのようにするか等々につきましては、恐らく総理府の方でいろいろお考えのところではなかろうかと存じます。
  142. 新村勝雄

    新村委員 外務省には全然お考えがないですか。
  143. 園田直

    園田国務大臣 外務省には考えはありません。
  144. 新村勝雄

    新村委員 これは、所管は総理府とはいっても、外交と非常に密接な関係のあることですね。ですから、それは外務省としてもやはりその北方領土の日の位置づけなり意義なり、あるいはそれをせっかく制定したのであればそれに対してそのときにどういう行事をやっていくか、あるいはどういう行動をとっていく、この日との関連における外務省の構想が全然ないというのはおかしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  145. 園田直

    園田国務大臣 北方領土の日を設けられたのは国内的な問題でありまして、総理府がこれを所管している。所管を言うわけじゃありませんけれども、これは国民の北方領土返還に対する熱意をあらわす行事でございまして、これについて外務省がとかくの意見を言ったり、外務省がその行事に注文をつけたりするつもりはございません。
  146. 新村勝雄

    新村委員 外務省は外交の担当だと言いますけれども、やはりそれは国内の現実に立脚をしなければ外交活動はできないわけでありますから、そういう点から言えば、これは外務省も大いに関係があるし、関係をつけていかなければいけないと思うのですけれども、まあそれはそれでいいでしょう。  次に、同じく外交青書の中に、現在の日ソ関係はまさに冷却あるいは梗塞状態だ、したがって、「ハイ・レベルの人的交流面における慎重な対応などの措置をとってきた。」ということは、ハイレベルの人的交流等は全く考えられない、というよりはむしろやらない方針で来たということ、そういう言い方だと思いますけれども、それでいいのですか。
  147. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 正確に申し上げますと、ハイレベルの人事交流につきましてはケース・バイ・ケースに検討して判断するということでございまして、具体的に申し上げますと、現実の用務を持って日本を訪れたいという方につきましては、ソ連の高官でございましても日本においでになったことがあるわけでございます。実務的な目的を持っての人事交流は人事交流の制限の対象として考えているわけではないということは一般的に申し上げることができると存じます。
  148. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、外交青書の言い方からすると、ソ連とはもう高官の人事交流等はしないのだと、みずから門戸を閉ざすような印象すら受けるわけですね。いま大臣の言われたように、確かに北方領土という大きな問題があるけれども、これはもちろんたな上げにはできない、これは最優先でやらなければならない問題ではあるけれども、それがあるからすべてをやらないのじゃないとはっきりおっしゃっているわけですね。ですから、こういう表現では、これはソ連とはもう交流はしない、そういう意思表示にとられがちなんですが、そこらの真意はどういうことなんですか。
  149. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 政府方針はいま申し上げたとおりでございまして、人事交流につきましてはケース・バイ・ケースに検討して判断をする。その判断の基準の一つといたしまして、現実に用務を持って人事の往来をされる、これは従来はとめてまいらなかったというのが現実でございます。  そもそも、対ソ制裁という言葉を使われることがあるわけでございますけれども、私どもは対ソ制裁とは考えていないわけでございまして、ソ連がアフガニスタンに軍事介入を行った、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入は容認できない、その容認できないということを口で言うだけではなくて具体的な姿勢で示すというのが対ソ措置の基本的な考え方でございまして、制裁を加えるというような意思は毛頭ないことは、この機会に改めて申し上げたいと思うわけでございます。したがいまして、人事交流につきましてもそういうことでございますから、わが方から好んで門戸を閉ざすという趣旨ではないわけでございまして、現実に日ソ間の懸案について話をするというような用向きがございますれば、従来も人事交流は行われてきたというのが現状でございます。
  150. 新村勝雄

    新村委員 閉ざす意思はないとおっしゃいますけれども、政府の公式見解でそう示されておるわけでありまして「慎重な対応などの措置をとってきた。」ということは、これはハイレベルの人的交流はしませんという意思表示ですね。
  151. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ハイレベルの人事交流はしませんということではございませんで、ハイレベルの人事交流につきましては、いま申し上げましたとおり、ケース・バイ・ケースに検討の上で決定していくということでございます。一律に交流をとめるという趣旨では毛頭ないわけでございます。
  152. 新村勝雄

    新村委員 こういう状況がこのまま推移をすれば、これはそれこそ百年河清を待つという状況になると思うのですね。大臣は先ほど、きっかけを発見して交流を深めたいというようなこともおっしゃっておりましたけれども、そういう努力が現在なされておるのか、あるいは日ソ間の交流というか国交、外交関係の前進についての模索をされていらっしゃるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  153. 園田直

    園田国務大臣 お互いの国の人々が交流をするということは、話し合いをし、理解を深めるということであります。日本とソ連の間がここしばらく話がとだえておったことはきわめて残念でありまして、正直に言って日本とソ連の間には意見の違うこともあれば対立することもございます。しかし、人間関係と同じでありまして、意見が対立をすればするほど、合わなければ合わないほど、しばしば会って話し合いをすることが大事であります。どのような理屈がありましょうとも、ごく近くのソ連と日本話し合いをしないでおるということは、日本の平和のためにも世界の平和のためにも好ましいことではないと、現在の状態を私は非常に心配しておったわけであります。  したがいまして、先般ニューヨークの国連総会でソ連の外務大臣と私と会いまして、このままではいかぬから、ひとつ話し合いをやろうじゃありませんか、話し合いをやることは簡単だが、残念ながら日本とあなたの国との間には北方領土の返還というむずかしい問題があって、あなたの方はそういう問題はないとおっしゃる、わが方はいやこれはわが方に返してもらいたい、これは対立しておる、対立しておればおるほど話すことが必要じゃありませんか。そこで、これについては両方で、日本が頼んだわけでもない、ソ連が頼んだわけでもない、お互い相互のイニシアチブによって話し合いを始めようじゃないか、こういうことは非常にいい雰囲気で合意ができたわけであります。  そこで、さてどういう話し合いをするか、こういう相談がありましたから、そこはひとつしばらく会って話をしなかったから、おまえの方が先に物を言え、おれの方から用件を言えということではなかなか詰まらぬから、だんだんやっているうちに事務協議あるいは外相会議、それからさらに話が進めばその上の会議、会談、こういうこともあるじゃありませんか、あとはひとつだんだんと事務レベルで詰めていきましょう、こういうことになったわけであります。  そこで、先般私、エジプトへ参りました。そのとき、急遽飛行機の都合でモスコー経由になったわけであります。わずか一時間モスコーを経由したわけでありますが、にもかかわらず、モスコーの外務省は次官以下幹部が飛行場に出てこられて、そして非常な接待をされて、ソ連の方のわが方に対する気持ちが見られたわけでありますけれども、率直に申しますと、いままでの関係上、君の方から何か言うのを待っているのだ、こういう話、私の方からは、あなたの方から何か言い出しなさい。人間関係と同じでありまして、なかなかむずかしいところがありますが、そういうことを言っておっては永久に話はできないから、ひとつだんだんと私の方も在外大使館その他、あなたの方も事務的な話をして大体話をやろうじゃありませんか、どういう話をしましょうか、できやすい問題から話そうじゃありませんか、そこで、そういう日にちや用件をだんだん詰めていって、大体見当がついたら事務的な協議、それが終わったら外務大臣の会談、こういうふうに進めていきましょう、こういうのが現段階でございます。  そこで、いままではいま事務当局が申しましたとおり資格審査をして日本に来られる、こういうことでは日本の方から外務大臣がおいでくださいと言ったって、向こうだって来るはずはないし、私どもだって安心して向こうに行けるわけではありませんから、そういう話し合いをだんだん詰めていって、そして日本とソ連の間に自然に人が行ったり来たりできるようにしたいというのが外務大臣の願いでございます。
  154. 新村勝雄

    新村委員 ただいまの大臣のお話で、非常に希望を持ったわけでありますけれども、現状のままではこれはたとえば北朝鮮、国交のない国とほとんど同じレベルでしか考えられないほど冷却をしているわけでありますね。こういう状況、これはどうしても捨てておくべきではないと思います。確かに領土問題という大きな問題がありますけれども、その問題をにらみながら国交についても同時に進めるという御努力をひとつぜひとも賜りたいと思うわけであります。  そこで、やはり同じブルーブックの中に「ソ連のように長期的観点から一貫性ある外交戦略で臨んでくる国との外交上最も必要とされるものは、筋を通した確固たる姿勢であり、息の長い冷静な対応である。」これはそのとおりだと思います。ですから、北方領土返還というような大きな問題については、これは確固たる方針を持って、一貫性を持って臨めばいいのでありますから、それはそれとして追求をしていく、そのほかの国交については極力友好的な雰囲気をつくり上げていく、やはりこういう日本外交努力がぜひとも必要だと思うのです。そういう意味では、北方領土の日というような日、これは決まってしまったのだからしようがないのですけれども、ややもすれば日本国民の間に対ソ不信あるいは対ソ敵がい心をかき立てるような企図は平和国家としてすべきではないという気がするわけであります。そういった点についてもひとつ十分御配慮をいただきたいと思うわけであります。  次に、すでに前にも触れられておりますけれども、中東和平、パレスチナ問題でありますが、西側の先進国として初めてPLOの指導者日本の首脳とが会見をしたわけでありますが、これについての外務大臣としての率直な御感想なり、あるいは何らかの成果があったとすればその成果について伺いたいと思います。
  155. 園田直

    園田国務大臣 中東地区というものは、いままで日本では、石油を売ってもらう国だ、こういう考え方から中東地区といろいろやっておって、日本方針がない、ただ石油が欲しいから石油を買いやすいようなことばかり言っている、こういうことの批判を受けたことがあると思うわけであります。     〔委員長退席、森下委員長代理着席〕 しかし問題は、日本外交の基本というのはそうであってはなりませんので、中東地区というのは非常に大事であって、イランの問題を考えてみても、イラン、イラクの紛争考えてみても、いまの中東地区の和平交渉の問題を考えてみても、これが一つ間違うならば、あそこで火花が散って、油田をいっぱい持っている中東地区が世界の争いの勃発点になるおそれが非常に多いわけであります。したがいまして、日本は、中東地区の平和というのは世界の平和につながる、世界の平和こそはみんなが願う願いでありますから、そういう意味で、中東地区の平和というものに日本の持っている力を尽くして貢献すべきだ、こう考えております。  次に、簡単に申し上げますと、イランの内紛の問題、イラン、イラクの戦争と、なかなか流動的で、正直に言って間近に解決のできるものはなかなかございません。しかしその中でも、中東和平交渉、この問題は、みんなが少し努力をすればいい方向へ動くのではなかろうかと、私は今度中東に行って感じて帰ってきたわけであります。  そこで、その中東和平交渉のかぎというものは、第一はエジプトとイスラエルの関係、もう一つは、イスラエルと対立をしておるアラブ諸国とイスラエルとの関係、最も敵対関係にあるイスラエルとパレスチナ代表の、おいでになった議長との関係、もう一つはエジプトと穏健アラブ諸国との関係をどうつないでいくか、こういうふうにいろいろ絡み合いがあるわけでありますが、サダト大統領が亡くなられたことはまことに残念であります。悲しいことであります。鮮烈なる政治生涯を送られたサダト大統領は凶弾で倒れられました。しかし問題は、そういう不幸を転じて幸にすることがわれわれの仕事でありますから、サダト大統領が亡くなられたことを転機として、この和平交渉が少し動くように努力すべきだ。そのためには、まず何といっても当事者であるイスラエルとエジプトとの自治交渉、これが問題であります。これはサダト大統領が亡くなられたからといって後退をしたりひっかかることは余りないのじゃないか。むしろ、みんなが心配して努力するから、ある方向へ進むのではなかろうか。しかし問題は、その自治交渉がパレスチナの自治を認めるかということではなくて、国家独立を含む自治権を認めるかどうかというところまで進むかどうか。進めば、これを突破口にして、サウジアラビアから出されておる八項目の提案というものがたたき台になって、これに最後のかぎであるパレスチナ、PLOを和平交渉の中に入れる、こういうふうにおぼろげながら筋書きを書いてみますると、ここで努力をすれば少し動くのではなかろうか。  これを取り巻くのが西側諸国でありますが、中東においては西側諸国といっても、米国、英国、フランスおのおの自分の利害がありますから、憶測があって必ずしも足並みはそろっておりません。そこで日本の役目は、この対立するPLO、イスラエル、エジプトそれからアラブを足場にしたアラブ諸国との間の調停役をやる、と同時に、この背後にあるという米国に対して、日本と米国は特別な関係でありますから、特別な関係ということは、むしろ遠慮なしに正しいことを言うべき立場にあると思いますから、米国に対しても中東和平のために正しい方向で尽瘁されるように要請するのが日本の役目だと考えております。  一方、具体的には申し上げられませんけれども、私は、アメリカの前大統領フォード、カーター、それからヘイグ、それからイスラエル等それぞれの指導者と会いましたが、帰られた後、現政権に影響力のある前フォード大統領は、サウジアラビアの八項目は評価するに足る、こういう発言もしておられるわけでありますから、非常につらいところもありますが、つらいからといって投げずに努力をすべき段階である、こういうことで、中東和平については日本はできるだけの力を出して、この国々の和平、ひいては世界の平和に貢献すべきであるという決意のもとに努力をしておるところでございます。
  156. 新村勝雄

    新村委員 この問題は、BC十一年ごろからの中東の歴史にかかわるきわめて複雑な、根の深い問題であると思います。したがって、一朝にして解決のできる問題ではないことはよくわかるわけであります。そしてまた同時に、この問題に対処する日本の姿勢がやはり将来の日本の独自の外交を展開する一つの契機になるのではないか、こういう考え方もできるわけであります。  報道によりますと、PLOの議長が、日本側が西側の一員としてできるだけのことをしたいと言ったことに対して、いや日本は西側ではありません、日本は東側なんだ、われわれと同じ立場の民族であるはずだ、国家であるはずだというようなことを返したということが報道されておりますけれども、確かに日本は本来は西側の国ではないですね。本来は東側の国であります。これは地政学的にも民族的にもそうであります。あらゆる文化の関係からしても、欧米の文化を大きく取り入れてはおりますけれども、基本的にはやはり東側の国であるはずでありますけれども、現実は必ずしもそうでない。これはいろいろと終戦後の国際情勢の影響があるわけでありますし、また安全保障という面から、われわれは見解がいろいろありますけれども、とにかく現実としては安全保障の問題等がありまして、西側の一員ということになっておりますけれども、基本的には東側の国家であると思います。そういった意味からいたしまして、対アラブの外交は、やはりアジアの一員としての日本、あるいは東側の一員としての日本ということを基本としながら、同時に対米関係あるいは対ヨーロッパ関係を踏まえながら展開をしていくということだろうと思います。そういった意味からいたしまして、この問題の解決に当たってはひとつ園田大臣のすぐれた外交手腕を発揮されて、独自の日本外交を展開をする一つの契機にしていただきたいとぜひお願いするわけです。  そういう意味からいいまして、いまお話がありましたように、現在のアメリカの首脳部あるいはカーター大統領アメリカの世論を指導する要人とは大臣人間関係もお持ちでありますから、そういうルートを通じてひとつ、日本の立場ということではなくて、やはり民族自決とはどういうものであるかという立場から、パレスチナ問題を解決する指導的な役割りを、アメリカ追随ではなくて果たしていただきたいというのが日本国民の念願だと思いますが、その点に関して、ひとつ大臣のお考えを伺いたいと思います。
  157. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおり、アラブ諸国はイランを除いては、自分たちアジア人であるということを向こうから言われます。正直に言って西欧諸国は、いままでひどい目に遭っているわけでありますから、頼りになるが信用ならぬ、逆に日本は信用はできるが頼りにはならぬ、われわれの力にならぬじゃないかというのが、いままでの偽らざるアラブ諸国の考え方だ、私じかにも聞いておりますし、そう思っております。  そこで、今度PLOの議長と会ったときに、われわれは、日本は西側の一員であるということは、それは新聞の誤報でありまして申し上げておりません。和平交渉については、日米は特別な関係にあるけれども足並みはそろえない、アメリカはイスラエルを支持することによってアラブ諸国を敵に回しているわけであります。アラブ諸国を敵だと言っているが、アラブ諸国が敵になっているわけじゃなくて、アメリカがイスラエルを一方的に支持する、イスラエルのアメリカ製の飛行機がアラブ諸国を爆撃する、だから逆にアメリカがアラブを敵に回している、こういうことであります。  われわれも一緒になってアラブ諸国を敵に回したら大変でありますから、わが日本は御承知のとおりアラブ諸国と緊密に連絡をとっておるわけであります。西欧諸国ともまた違います。フランス、イギリスは過去の歴史があります。おのおの考えがあって中東に対しておりますので、したがいまして、いま御発言のとおり、日本は本当に主導権をとおっしゃいますけれども、経済大国などと日本がうぬぼれて、日本が思うとおりに引きずり回そうなどということは、私は、それは大それた考え方で、日本はまだまだ自分の実力を考えながら謙虚にやるべきで、そのやるべき方向は、中東の地区の国々が平和で安定をして繁栄する、その平和と繁栄の中にわが日本の生きる道も探す、こういうのが日本のやるべきことだと考えますので、いま御発言、御趣旨のとおり、そういう意味において西欧側、米国については正しく認識されるように率直に助言をし、要請をいたし、そして各関係国が意見がまとまって、楽観はいたしませんけれども、この地区の和平交渉がまとまるように努力する覚悟でございます。
  158. 新村勝雄

    新村委員 大臣の抱負をぜひ今後の具体的な施策の上に、そしてまた実際の行動にひとつ移していただきたいということを、特にお願いをいたしたいと思います。  次に、これも大変むずかしい問題だと思いますが、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国との関係であります。これは依然として日本はまだ国交を持っていないわけでありますが、外交青書によりますと、ことしの四月で、人民共和国と外交関係を持っている国が百三カ国、韓国と外交関係を持っている国が百十六、それから両国と関係を持っている国が六十六というふうに記載をされてあります。しかし、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国は、かつて日本が植民地として統治をしたというような苦い経験、そしてまた、半島には迷惑をかけているという歴史の経過もあるわけであります。そういう点からして、これは東西の力の論理、あるいはアメリカ世界戦略、こういったものに、あるいはまた韓国との関係ももちろんございましょうけれども、そういった問題だけではない、やはり日本としての、いわば道義的な責任、朝鮮民族に対する責任もあろうかと思います。そういったこともやはり踏まえて、できるだけ早い解決が望ましいわけでありますけれども、実は午前中のお話を聞いておりましても、いまのところ全く手がかりがないということでありますけれども、これもやはり同じようなことでありまして、このまま手を打たなければ、いつになってもこれは同じですね。ゼロは幾ら積み重ねてもゼロでありますから、こういった点で、ひとつ大臣の民主主義人民共和国に対する考え方、あるいはその見通し、構想等があれば、ひとつお示しをいただきたい。
  159. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ただいまの御発言のとおり、確かに非常に厳しい情勢がございまして、なかなかかみ合わないわけでございます。しかしながら、けさ大臣からも御答弁がありましたとおり、南の韓国も南北対話の推進というものを、緊張の厳しい中でも提案しておるわけでございまして、このような南北の接触が、再び昨年行われましたごとく展開されるならば、何らかの糸口もつかめるのじゃないかという期待が一方ではあるわけだと考えております。
  160. 新村勝雄

    新村委員 大臣はいかがですか。何かお考えはございませんか。
  161. 園田直

    園田国務大臣 現在の平和というものが一つの均衡のもとに保たれておることは、これまた事実であります。その力の均衡の世界から、力で動かされない世界情勢をつくりたいというのがまたわれわれの願いであるはずであります。そういう意味において、現在朝鮮半島においては南北が対立をして均衡を維持している、こういうわけであります。しかしながら、これが自然の姿ではありません。したがいまして、日本は、このバランスを壊さないように注意しながら、北と文化その他の面で交流を図りつつ、北と南が平和的に話し合いができる雰囲気をつくる方向を願って努力をする考えであります。     〔森下委員長代理退席、東家委員長代理     着席〕
  162. 新村勝雄

    新村委員 時間がありませんからあと一、二伺いたいと思いますが、御承知のように名古屋オリンピックがソウルに負けて、半島に開催地が決まったわけであります。この問題について何か外相として御所見ございますか。
  163. 園田直

    園田国務大臣 オリンピックの開催地の候補に韓国が決まったこと、これは、いろいろ問題はありますが、喜ばしいことだと存じます。したがいまして、この韓国のオリンピックが成功するように、できる協力はしたいと考えておりますし、かつまた、このオリンピックを契機に、韓国が北を含むもろもろの国との外交関係がうまくいくようにと願い、それについて日本努力することがあれば努力したいと考えております。
  164. 新村勝雄

    新村委員 スポーツと政治とは別でなければならないわけでありますけれども、何か、名古屋が敗退したということの中には、諸外国、特に第三世界あたりの日本に対する評価、あるいは信認の度合い、これが反映されているのではないかという気がするわけであります。それと同時に、伝えられるところによりますと、きょうですか、国連で経済社会理事会の理事国選挙があるということが報道されておりますが、その中でもやはり日本は大変な苦戦をしておる、票が足りない、危いのじゃないかというような報道がありますけれども、そういうようなことと考え合わせまして、それからまた、昨年もやはり安保理の非常任理事国の選挙で大変日本は苦戦をした、こういうこともあるわけですね。日本はすでに経済の面で世界第二位の大国になっておるわけであります。そしてまた、軍備を持たない。持たないといっても相当の軍備はありますけれども、とにかく平和国家として世界の信頼を、あるいは尊敬を得なければならない立場にあるはずなんです。はずなんですけれども、必ずしもそうでない。先ほど大臣が言われましたように、日本は信用はできるけれども頼りにならない、こういうことが言われるのは果して何なのかということですね。世界第二位の経済力を持ちながら、まだまだ外交の場における、あるいは世界の国際社会の中における日本の地位が必ずしも世界第二位に上がっていかないというのは何であるかということを、やはり日本人は反省をしなければいけないのじゃないかと思うのです。そういう意味で、このオリンピックの選挙あるいは国連の中における選挙において必ずしも日本が十分な各国の信頼が得られないというのはどこに原因があるのか、ひとつ大臣にお答えをいただきたいと思います。
  165. 園田直

    園田国務大臣 外交は個人の交際と同じでありますから、何かあるごとに人のことよりも自分の足元を見て反省することが必要であると考えております。いま御発言趣旨は十分身にしみて今後努力をいたします。  オリンピックの問題は、必ずしも日本に対する不信認ということではなくて、オリンピックは順番で参加国が政治的な形態にかかわらず全部一通りやるというのが大体慣例になっているようでありますが、それが、東京オリンピックをやってからほかのところはまだやらぬうちに日本がまたもう一遍やろうというところに無理があったのではないか。それからもう一つは、私が言ったらおしかりを受ける、名古屋出身の方がおられるかもわかりませんが、名古屋市の中にオリンピック反対運動なんということがあって、地元が一本にまとまらぬということもあるべき姿ではない。今後そういう点も十分注意しながらやりたいと考えております。  二番目の選挙の問題、これは新聞に出ておりまして、日本が偉そうに言っておるけれども、アジア地区で立候補して当選しないようじゃ、これはもう日本は何をやっているかわからぬじゃないか、こういうことで私はここ数日来非常に心配をいたしまして、これがもしひどい目に遭ったらもう国会にも出てこれないと思っておったわけでありますが、幸いに百二十一票、最高点をもって当選いたしましたことを御報告いたします。
  166. 新村勝雄

    新村委員 みごと当選を果たされたことについては、これは御同慶にたえないところです。これを踏まえて、今後は平和国家として世界の信頼と尊敬が得られるような国家になるように、ひとつ大臣の特段の御活躍を心から御期待申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  167. 東家嘉幸

    東家委員長代理 春田重昭君。
  168. 春田重昭

    春田委員 きょうは何点か質問したいわけでございますけれども、最初に中東問題を大臣にお尋ねしたいと思います。これは午前中、そしていまの質問と若干重複する点があるかもしれませんけれども、その点はどうか御了解いただきたいと思うわけでございます。  今回のサダト大統領の暗殺事件で、わが国と中東諸国、またわが国と対エジプト二国間の問題、さらに世界の中東外交というものが、大きな関心を抱いているわけでございまして、大きな変化があるのではなかろうかというふうな意見もございますし、そう変化はないという意見もございます。報道等ではそう変化はないということでされておりますけれども、大臣が葬儀に参加されまして精力的に中東諸国また関係諸国と会談されたその感触からして、このサダト事件に関する中東問題はどのように変わっていくのか、まずお聞かせいただきたいと思います。また、そう大きな変化はないとしても若干の変化はあるだろう、また、こういう問題が心配だ、こういう問題は今後の課題になるだろう、そういうこともあるとすればあわせて御答弁いただきたいと思います。
  169. 園田直

    園田国務大臣 なかなか楽観を許さない状態で、流動的な要素はいっぱいあるわけであります。しかし、サダト大統領が亡くなったことによってこれが非常に困難な状態に陥るということよりも、みんなが注意をして努力をすれば少しでもいい方向へ動くのではなかろうかという判断を現在しているところでございます。  ただし、いっときの油断も許さないという状況でございます。第一は、心配なのはエジプトとイスラエルの自治交渉、御承知のとおりでありますが、この自治交渉で、サダト大統領が亡くなったことによって関係国が非常に心配をしまして、イスラエル総理には相当強い要請をしておるようでございます。イスラエルの総理も、自分の好敵手サダトが亡くなったことによっていろいろ考えられているようで、その点はまあまあいいようでございますが、今度は新しい大統領が果たしてどのような迫力と決意を持ってイスラエル総理と自治交渉をなさるかどうか、ここらあたりが今後を見なければわからぬところであります。  しかしながら、一方、サウジアラビアの八項目の提案その他がありまして、PLOも御承知のとおりに確固たる返事はなさいませんでしたけれども、日本向けだと言う人もおりますけれども、私はお会いして、相当現実的な立場で物を判断されるようになった、イスラエルの方もやや現実的になってきた、こういうことからすると、楽観は許しませんがお互いが努力するかいがあるときではないか、こう思います。
  170. 春田重昭

    春田委員 エジプトにおきましては、この十四日にムバラク副大統領が国民投票で大統領に推薦されたわけでございます。この大統領はサダト路線を継承していくということをおっしゃっておりますけれども、わが国としてはこれにどう対応していくのか、どう見ているのか、お答えいただきたいと思います。
  171. 英正道

    ○英説明員 先般園田大臣が故サダト大統領の国葬に参列されて、エジプト側の首脳と多数会談されたわけでございますけれども、その際に、もう大臣から説明ございましたように、エジプトとしては従来の路線を継承していくという強い決意の表明がございまして、大臣からも、日本としても従来どおり協力を惜しまないということをおっしゃったわけでございます。また先方から、日本との友好関係というものは故サダト大統領も大変に評価しておられて、今後とも継続することを期待しておりますという答えがございまして、私どもといたしましても従来同様、二国間関係の強化のために、政治的のみならず経済協力の面でも、さらに文化協力の面でも鋭意努力していく所存でございます。
  172. 春田重昭

    春田委員 先日、PLOを代表するアラファト議長が訪日されたわけでございますけれども、政府としてはこのPLO議長の訪日を高く評価されているわけでございます。昨日も外務委員会があったわけでございますが、この外務委員会外務大臣は、PLO機関を唯一のいわゆる正統な機関である、唯一正統な政府である、このように非常に前向きな御答弁をされているわけでございますが、従来の政府見解は、代表の有力な機関であるということは認めるけれども、いわゆる唯一正統な機関とは認めていないわけですね。そういう点で従来の見解と昨日の委員会見解が違うわけでございます。聞くところによりますと、本日の閣議では従来の説を大臣はまた持ち出して、変化はないという御報告があったと聞くわけでございますけれども、この点どちらなんでしょうか、明らかにしていただきたいと思います。
  173. 園田直

    園田国務大臣 日本のPLOに対する態度は国連決議に使われた文句そのとおりでありまして、パレスチナを代表する機構がPLOであるという解釈でございまして、これには唯一という言葉は使ってありません。この文句を引用して私、答弁したわけでありまして、それでもなお誤解があってはいけませんので、改めて発言を求めて、PLO議長が来訪されて、日本政府のPLOに対するいろいろな方針は何らの変更はございませんと明確にしておいたのが事実でございます。
  174. 春田重昭

    春田委員 ところで、当初はサダト大統領も来月訪日の予定だったと聞くわけですね。こうしたPLOの議長とサダト大統領を呼ぶことによって、複雑な中東情勢の均衡というかバランスを保とうという外務省の御見解だったみたいでございますが、あのような急死によりましてサダト大統領が来られない。こうなりましたけれども、いわゆるPLOの議長が来たわけでございますから、サダト大統領がああいう形になりましたので、エジプトの要人といいますか、大統領が一番いいわけでございますけれども、大統領も急になったわけで非常に忙しいと思いますので、それにかわる要人等を呼ぶ考え方外務省ではお持ちなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  175. 園田直

    園田国務大臣 いまのようなことが新聞記事に書かれたわけでありますが、これは先生、内情をよく御承知のとおりでありまして、PLOの議長が日本訪問するという話はすでに四年ぐらい前から内々起こっておりました。そして、わが方の当時中近東におりました現在の局長村田大使がこの情報は絶えずつかんでおったわけであります。しかしながら、これは向こうの都合でなかなか実現しなくて、偶然に今度実現したわけであります。  サダト大統領の訪日も、これまた相当前からあったわけでありますけれども、これは大統領の方の都合もありますが、正直言って日本の方の考えもあったわけであります。ということは、エジプトとサウジアラビアその他の穏健諸国との関係が余りよくなくなりました、あのキャンプ・デービッドのイスラエルとの問題以来。そこで、どうも調停を見て、潮どきを見なければならぬというので、これがおくれて、ようやく来月ということで、実は、はかりにかけて、片一方にPLO、片一方にエジプトの大統領、ちょうどおいでになればはかりが五分五分でよかろうなんというのは、それはいまになってから新聞の方が憶測された憶測記事でありまして、実情は全く違うわけでございます。
  176. 春田重昭

    春田委員 そこで、いずれにいたしましても、外務大臣が中東に行かれまして、相当変わってくるだろうということで、一国の首相である総理もやはり中東を訪問する必要があるとお考えになりまして進言されたそうでございますけれども、この辺の総理の中東訪問の時期といいますか見通しといいますか、そういうものはどんなふうに考えているのですか。
  177. 園田直

    園田国務大臣 総理の中東訪問は、私がお葬式に参る前から新聞にちらほら出ておったことは御承知のとおりでありまして、いまごろになると年内は無理でありますが、来年になったら、まずどういうところへ総理が行くかという、いわば外遊計画というものの下検討があるのが恒例でございます。そこで、いろいろありますけれども、中近東、中南米ということだが、まず中東だろうというのがそのときの空気でございました。  今度、私、参りまして、いろいろな情勢の判断から、やはりこの際日本の置かれた立場から、総理がまず中東に行かれることが適当であろう、こういうことをお願いしたわけであります。したがいまして、総理は十分考慮しようということで、ただいま検討中でありまして、いつごろ、どういう目的で、どこの国へ行かれるかという検討まではまだ入ってないのが実情でございます。
  178. 春田重昭

    春田委員 中東訪問が外相としては最優先であろう、こういうことですね。  そこで、先ほどから話題になっております中東和平の交渉でございますけれども、大臣はいわゆる関係紛争国の調停とか、アメリカには当然要求すべきものは言っていく、こういうようなお話をなさっているわけでございますが、それとともに経済協力も必要であると私は思っておるわけです。そういう点で、特に対エジプトの経済協力でございますけれども、この辺はどのようにお考えになっておりますか。
  179. 中村順一

    ○中村説明員 御説明いたします。  私どもといたしましては、エジプトは中東地域の平和と安定に中心的な役割りを果たす国という認識でございまして、経済協力を通じましてエジプトに政治的、経済的に貢献いたしますことは、中東地域のみならず世界全体の平和と安定の維持のために重要であるというふうに考えております。日本は、こういう観点から最近特にエジプトに対する経済技術協力ということを強化してまいりまして、エジプトは現在、アジアの諸国を除きますと、日本の経済技術協力の最大の受取国というふうになっております。今後ともこういう考え方から、私どもといたしましてはエジプトに対する経済技術協力の拡充に努めてまいりたいというふうに考えております。
  180. 春田重昭

    春田委員 経済協力には、いわゆる技術協力とか民間ベースの協力とか、また政府開発援助による協力とかあるわけでございますが、政府開発援助を見た場合、五十五年度ベースでエジプトに対しましては一億二千二百万ドルが借款されていると思うのです。この額は五十四年度よりも約一千万ドル減っているわけでございますけれども、五十六年度以降というのは、政府はこの政府開発援助につきましては倍増の中期目標を立てていますね。そういう点でかなり上積みされていくのじゃないかと思いますけれども、こうした、いわゆるサダト大統領が亡くなったということで特にエジプトに対する関心が強まっているだけに、日本としても力を入れる必要があるのじゃなかろうかと私は思うわけでございますが、五十六年度以降のエジプトに対する政府借款ですね、この辺はどうお考えになっておりますか。
  181. 中村順一

    ○中村説明員 御説明いたします。  先生御指摘の一億二千三百万ドルという数字は、ディスバースメントベースと申しまして、実際にお金が支出された額の統計でございます。通常、私どもは経済協力の統計を見ますときに、実際に支出されたベースというのと約束した額の合計という二つの統計を使っているわけでございますけれども、約束をいたしました額の合計ということになりますと、円借款で申しますとエジプトに対する協力というのは七九年度が三百二十億円、八〇年度が三百七十五億円ということで、着実に協力を伸ばしてきております。五十六年度以降につきましては目下政府部内で検討中でございますけれども、私ども、先ほど私が御説明申し上げました考え方に基づきまして検討を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  182. 春田重昭

    春田委員 その検討しているというのは、要するに増額の方向検討しているのかどうか、その点ちょっともう一遍確認したいと思います。
  183. 中村順一

    ○中村説明員 具体的に現在、先方の考え方等を踏まえまして検討を進めているわけでございまして、基本的な考え方といたしましては私が申し上げましたようなことでございますけれども、具体的な結論というのは、具体的なプロジェクトその他の検討を踏まえまして結論を出すということになろうかと思います。  先ほど数字で御説明いたしましたように、エジプトに対する経済技術協力というものは近年ふえてきております。そういう方向のもとで私どもエジプトに対する経済協力考えてまいりたいと思っております。
  184. 春田重昭

    春田委員 これは大臣の方にお尋ねしますけれども、経済援助という問題はいままでのベースからいきますと、アジア地域は約七割、その他中東地域を含めて三割。     〔東家委員長代理退席、委員長着席〕 中東地域は二国間ベースだけ見れば一〇・四%の実績が上がっているわけですね。そういう面で、いままでかなりアジア中心のアジア重視の中の経済援助がされてきたわけでございます。  今回の事件があったからじゃないですけれども、要するに世界の情勢というものは、いままでのアジアから相当中東方面に変わってきているわけですね、重視されてきているわけですよ。そういう面で、確かにアジア日本の近隣諸国ということで大事ですけれども、そうした配分を、今後五カ年計画あるわけでございますから、そうした中東の方にも重視しながらウエートをある程度かけていかなかったらいけないのじゃないか。従来はいいですよ。しかし、今後、そうした石油問題、また日本企業の中東方面への進出が非常にあるわけでございますから、そうした経済援助問題につきましても、一割じゃなくして上積みしていく、そういう方向考える必要があるのじゃなかろうかと思っておりますけれども、この点大臣、どうですか。
  185. 園田直

    園田国務大臣 いま事務当局から近年特にと、こう言って、アジア地域を除けば最高の協力をやっているところだ、こういうことは裏を返せばいま御発言のとおりだということであります。したがいまして、だんだんふやしてきておりまして、急にふやすことがなかなかむずかしいというか、切りかえもなかなかできないことは御承知のとおりであります。したがって、今度サダト大統領がおいでになったのをきっかけにそれを思い切ってふやそうかと実は考えておったところでありますが、おいでにならなくなったので、どういう口実で、いまおっしゃいましたようにエジプトの本当の国民の生活の向上になるか、こういうことは検討しなければならぬことで、方向はおっしゃるとおり倍増倍増ときたのにかえって減っているじゃないか、こう言うと事務当局は、実質の協力と何とかかんとか、こう言っておりますけれども、私の持っている表を見ても必ずしもいばるほどはふえてない。よく方針は拝承しまして、そういう方向で具体的に努力をいたします。
  186. 春田重昭

    春田委員 私は、対エジプトの政府借款も必要でございますけれども、中東全般としてこれはやはり考えていく必要があるのじゃなかろうか、こういう提言でございますので、どうか前向きな検討をよろしくお願いしたい、こう思っておるわけでございます。  そこで、先ほど若干聞くのを忘れたわけでございますけれども、PLOの問題にちょっと関連しましてお尋ねしますけれども、サウジアラビアの皇太子が八月何日かに発表しました八項目の和平提案、これにつきましては政府としてはどうお考えになっていますか。
  187. 園田直

    園田国務大臣 サウジアラビアの出しました八項目というのはそれぞれ評価をされておるわけであります。情報によりますと、これはアラブ諸国が近い将来一つ決議をして支持するのじゃなかろうか、アメリカの中でもこれは評価すべきだという方も出てきておるわけでありまして、どのように変化するかわかりませんが、やはりこの八項目が中東和平交渉の一つのたたき台というか足場になるのじゃなかろうかと私、想像しているわけであります。したがいまして、この八項目というものをどのように持っていくかということは微妙な問題でありまして、日本としてはこれに対しては評価はしているが、一つ一つの内容についてはまだ発言はしていないわけでありまして、発言しない方が今後の日本役割りからするといいのじゃないか、こう思っております。
  188. 春田重昭

    春田委員 この八項目の中でイスラエルの生存権が出されているわけでございますけれども、この項目につきまして、せんだってのPLOの議長との会談の中で、大臣から、こうした八項目のいわゆるイスラエルの生存権に対してPLOはどう思っているのかとお尋ねになったのですか。そしてお尋ねになったらどういう向こう側の返答があったか、お尋ねしたいと思います。
  189. 園田直

    園田国務大臣 八項目の話はいたしまして、それが一つの足場になると思う、こういう意見を言いましたら、PLOの議長はこれに対して即答はいたしませんでした。必ずしもそれに同意だという趣旨の表情はございませんでしたけれども、いろいろ情報を考えてみますると、アラブ諸国がこれでまとまればPLOの方もそれに反対はされないのじゃないかと想像いたしております。
  190. 春田重昭

    春田委員 まあはっきりした答えは返ってこなかったけれども、別段反対の意思もなかった、こういうことですか。
  191. 園田直

    園田国務大臣 これは私の判断でありますから当たってないかもわかりませんが、むしろ相当渋い態度でありました。
  192. 春田重昭

    春田委員 そこで、もう一点だけお尋ねしますけれども、今後わが国に対する影響という点で石油問題が上がってきているわけでございます。というのは、サダト大統領が亡くなったということで予想される一つの懸念として、反サダト路線というのが結束されるのじゃないか、サウジ内で起こるのじゃないか、こういうことが言われておるわけでございます。現にサダト大統領の葬儀には中東からは三カ国ですか、オーマンとスーダンとモロッコの三カ国だけしか葬儀に参加しなかった、サウジアラビアなんか参加しなかったということが伝えられておりますので、そうした心配のネタもあるのじゃなかろうか、こう思うわけでございますけれども、わが国としてはサダト路線を支持するし、アメリカもイスラエルを支持しているわけでございますから、そうした関係からサウジ産油国のわが国に対する反発が出てくるのじゃないか、その結果石油輸入に支障があるのじゃないか、こういう見方もされているわけでございます。石油の問題は直接通産省でございますけれども、そうした外交情勢の変化に伴って、外務大臣としては石油の問題につきましてはどういう御所見なのか、この辺もお尋ねしたいと思うのです。
  193. 園田直

    園田国務大臣 まず、エジプトとサウジの関係でありますが、外から見たようにこれが全く対決しているという判断をすれば少し誤るのではないか。もう少し甘いというかやわらかい関係にあるのじゃないか。それからサウジと他のアラブ諸国との間、これもなかなか微妙でありますけれども、しかしいまおっしゃいましたモロッコで今度全部集まってアラブ会議をやるわけでありますが、そこらあたりではアラブ諸国は意見がひょっとすればまとまるかわからぬ。これがまとまればエジプトもこれについて少しは動くかもわからぬ。  PLOが渋い顔をされたというのは当然だと思うのです。この八項目の中にイスラエルの生存ということがあるわけでありますから、イスラエルの生存ということは、PLOから言えば自決権と取りかえでなければうんとは言わないという気持ちじゃないかと思いますので、自分の方から先にこれだけ賛成しちゃって自決権はいつになるかわからぬということですから、PLOの議長としては渋い顔をされるのは当然じゃないか、これは一切私の判断でございます。
  194. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、石油の問題につきましては九九・八%が輸入しておりますし、その九九・八%のうちの約七割を中東地域に依存しているわけでございますので、この問題につきましては通産省の所管でございますけれども、どうか外務省におきましてもそうしたことを踏まえながらの対応をしていただきたいと思っておるわけでございます。  そのほか中東の問題につきまして、後からまた質問しますけれども、二十二、二十三日とサミットがございますけれども、そのサミットの合間を縫って六カ国の外相会談があるのではなかろうかということも報道されておりますけれども、そうした計画はされておるのですか。
  195. 園田直

    園田国務大臣 一カ所に集まってのそういう協議はどうかわかりません、これは南北問題その他の都合もありますから。しかし、個々の間でそういう意見が交換されることは想像されるところであると考えます。
  196. 春田重昭

    春田委員 それでは時間の関係で、次に南北サミットの問題につきましてお尋ねしていきたいと思います。  今月の二十二、二十三日ですか、メキシコで南北サミットが開かれるわけでございますけれども、この南北サミットの大きなかぎというのが国連包括交渉の問題でございます。この問題につきましては、南側は早期開始を要求しているのに対しまして、特にアメリカ側が非常に消極的である、反対であるということが言われておるわけでございます。日本外交としてはこの包括交渉問題につきましてどう対応していくのか、お答えをいただきたいと思います。
  197. 園田直

    園田国務大臣 私は、先般の国連総会の一般演説でこの問題を取り上げまして、日本は包括交渉を支持する、したがって国連でなるべく早い時期に包括交渉が開始されるようわれわれは努力すべきであるという日本の態度は公的な場所で表明しておるわけであります。しかし、実情は先生御承知のとおりでありまして、最初は西欧諸国も余り乗り気でなかったわけでありますが、西欧諸国は大体これに足並みをそろえたわけでありまして、いまのところまだわからぬのはアメリカであります。アメリカレーガン大統領の演説を見て、これに言葉が触れてないからきわめて冷淡だという批評でありますが、私は楽観しておりませんが五分五分に見まして、アメリカに対して入るべきであるという要請をするつもりでおります。総理からもそのお考えのようでありますが、これは現地に行ってから五分五分の問題で、見通しとしてはどちらにも偏らぬ見通しが正しいのではないかと思っております。
  198. 春田重昭

    春田委員 アメリカの言い分は、相当石油が上がってくるのじゃないかという見方と、世銀とかアジア銀行、そうした既存の国際機関を利用してやっていけばいいのであるという言い方もしておるわけでございます。そういう点でアメリカは非常に強硬に反対しているので、南側としては日本にその説得役をやってもらいたいような意向があるようであります。大臣は前向きにアメリカ側説得といいますか話し合いをしていく、こういうことでございますけれども、そう理解していいわけですね。
  199. 園田直

    園田国務大臣 最後まで努力をするつもりでございます。見通しについては五分五分。
  200. 春田重昭

    春田委員 それからもう一点、経済援助の問題が話題になるわけでございます。政府系開発援助、ODAでございますけれども、これは今後五年間、要するに昭和五十六年から六十一年までですか、前五年間の実績の倍増の中期目標が課されておるわけでございます。ところが、政府開発援助の量的な面では、国連ではGNP対比〇・七%が一応の目標になっておるわけでございますけれども、日本の場合は昨年度実績で〇・三二%ということで、非常に低いわけでございます。そういう点で、この〇、三二%でございますけれども、これは今回の倍増計画、中期目標を倍増した場合、どれぐらいのGNP対比になるのか、この辺の読みをなさっておるのか、そのあたりをちょっとお伺いしたいと思うのです。
  201. 中村順一

    ○中村説明員 先生御指摘のとおり、日本は従来の三年倍増の中期目標を昨年達成したわけでございます。本年一月、新しい中期目標を設定いたしまして政府開発援助を積極的に拡充し、引き続きそのGNP比率の改善を図り、今後五年間における政府開発援助の実績の総計をこれまでの五年間の総計の倍増以上とするというように努める所存でございます。そのために、今後五年間における政府開発援助に関する予算の総額をこれまでの五年間の倍以上とすることを目指す等の措置を講じているわけでございます。  先生御指摘のとおり、政府開発援助の対GNP比率の国際目標は〇・七%でございますけれども、日本といたしましても引き続きその達成に努めまして、当面は少なくとも先進国水準、たとえばこれは現在八〇年で〇・三七%になっておりますが、そこまで高めることを目指すこととしてございます。  五年後の対GNP比がどうなりますかという点につきましては、円、ドルの為替相場の問題あるいはわが国のGNPの伸び率等不確定な要素が多々ございますものですから、現段階では必ずしも明らかにならないわけでございますけれども、中期目標の中にございますように、引き続きその対GNP比の改善を図るということで私どもとしては努力いたしたいと考えております。
  202. 春田重昭

    春田委員 五年後のGNPの動きがどのようになるかわかりませんから正確にはじくことはできないとしても、いわゆるDAC十七カ国の平均の水準を上回るように、こういうことだったら、自由圏ではGNP第二位の日本としては、いささかさびしい感じがするわけです。総理の諮問機関でございます対外経済協力審議会でも、少なくとも昭和五十五年までにはGNP比率はDAC十七カ国の平均水準程度に到達させるということになっているわけですね。また、新経済社会発展七カ年計画が昭和五十四年から発足しているわけでございまして、これでも速やかに先進国水難に高めるということで書かれておりますけれども、〇・三二%ということで水準に達していない。十七カ国のうちのいま十一番目ですか、非常に下位の方におるわけでございますから、そうした、いわゆる経済アニマルという批判がないような、量的な面の援助額をふやしていかなければいけないと思っているわけでございます。  とともに、いわゆる条件の面でもあります。グラントエレメントと贈与の比率でございますけれども、グラントエレメントにつきましても八六%が国際目標でございますが、日本の場合は七四・三%、DAC十七カ国中の十六番目、しりから二番目という低い位置にあるわけですね。贈与比率におきましては四〇%、DAC平均が七六・二%でありますから大体半分ぐらいしかいっていない。そういう点で非常に批判がきついわけですよ。  量的には少ないし、また条件面では貸付利率が非常に高い、返済期間が短いとか、そうしたエレメント、贈与率においても非常に低いということで、わが国としては、島国である、資源がない、これから国際協調の上に立って日本が生きていこうと思えばこうした経済開発援助というものは相当高めていかなければいけない。来年度の予算におきましても、エネルギーと防御とこの問題につきましては枠外という形になっておりますけれども、まだまだ世界の平均水準まで到達していない。こういう現況からして、政府開発援助につきましては早急に、国内の財政状況もありますけれども、倍増どころか三倍、四倍して世界の中の日本という位置づけができるようにしていかなければいけないと私は思っているわけでございます。そういう点で、この問題は非常にむずかしい問題だと思います。国内の財政状態もございます。しかし、一方ではそうした世界の中で孤立しないためにも、こうした経済援助が非常に必要になってまいりますから、このグラントエレメントにつきましても鋭意前向きの検討をいただきたい、こう思っておるわけでございます。この点どうですか。
  203. 中村順一

    ○中村説明員 先生御指摘のとおり、援助の量の拡大とともに、援助の質の改善の問題も私どもの日本の援助政策にとって大切な課題の一つであると考えております。  先生御指摘のとおり、五十四年の八月の新経済社会七カ年計画におきまして、「援助条件の緩和については、」「無償資金協力、技術協力、国際機関を通ずる協力を拡大するとともに、借款条件については引き続き緩和の努力を続ける。」とございます。私どもといたしましては、援助の質の条件の改善のためには、無償協力、技術協力、国際機関への出資、拠出等、いわゆる贈与部分の拡充がぜひとも必要であると考えております。  日本は五十六年度予算におきましては、無償協力を対前年度比一五%増、技術協力を同じく一八・九%増と大幅に拡充したわけでございますけれども、今後とも引き続き贈与部分の拡大に努めますとともに、借款の条件の緩和にも努めまして、援助の質の改善を図るべく努力してまいりたいと考えております。
  204. 春田重昭

    春田委員 それから、この原資の問題ですが、一般会計と財投が出てますね。そういうことで、借款の条件は三%前後の非常に低率になっていますね。したがって、これからいわゆる量的な面でふえてくれば、当然一般会計の持ち出しが必要になってきます、財投との金利差がありますから。そういう点では、この過去五年間の伸びは、一般会計で見れば一八・二%なんですね。この調子でいったら、とてもじゃないが、今後量的な面で倍増していけば、一八・二%の一般会計の伸びでは足らないのじゃないかと思いますけれども、この辺はどう読んでおるわけですか。また、大蔵省とのその辺の了解といいますか話し合いというものはうまいことついているわけですか。
  205. 中村順一

    ○中村説明員 先生御指摘のとおり、ODAの政府開発援助の拡充を図りますためには、やはり一般会計の拡充というものがぜひとも必要でございまして、大変厳しい財政の折柄ではございますけれども、政府開発援助につきましては、やはり積極的に特別の拡充を図っていくということが必要だと考えておりまして、そのために鋭意努力を今後とも払ってまいりたいと思っております。
  206. 春田重昭

    春田委員 具体的な数字が出ないわけでございますけれども、時間がございませんので、最後に大臣、このように量的な面では十七カ国中十一番目、質的な面では下位の方に近いわけですね。そうした面で、やはり日本世界に貢献できるのは経済援助以外にないわけです。いわゆる軍事協力ができないわけですから、経済援助、この辺が相当大きなこれからの日本が生きる道の一つ方法じゃないかと思うのですね。そういう経済援助をやっていきますと言いながら、中身はDACの十七カ国中の非常に低い位置にあるわけでございますから、こうした面も、国内の財政状況もありますけれども、その辺の整合性を保ちながら前向きの施策をとっていく必要があるのじゃないか、こう思っておりますけれども、大臣の最後の御決意といいますか御答弁をいただきたい、こう思います。
  207. 園田直

    園田国務大臣 これは御指摘のとおりでありまして、現在は別として、明年度の予算で過去五カ年間の倍増をお願いする予定でおりますが、その倍増を先生方から認めていただいた場合、経済協力の額は、数字は少し違うかもわかりませんが、二百十何億ドルぐらいになるわけであります。その額から言うと世界の第四位。しかし、いまおっしゃった経済協力の国際平均〇・七%というGNPの比率からいけば、それだけ伸びても十四位。したがって、その協力のあり方は別として、金額からいっても、経済大国であるとかどうとかという、そう大きなことを言える段階ではまだありません。ただ、だんだんと倍増して、努力をしているということだけ認めていただくということが本当の真意であって、将来はおっしゃるとおりに、GNPの〇・七%以上のものを目指して努力する必要があることは御指摘のとおりでございます。
  208. 春田重昭

    春田委員 続いて、対韓援助の問題につきましてお尋ねしてまいりたいと思います。  日韓経済協力の問題というのは、継続というよりも、現在は中断状態になっているわけですね。午前中の質問でもまだ見通しが立ってないという話でございましたけれども、これは首脳会談は別としましても、事務レベルといいますか、またそのほかの民間主導の日韓協力委員会というのがありますね、こうした話し合いのめども全く立っていないのかどうか。いわゆる首脳会談、外相会談以外のそうした実際の事務レベルの、民間レベルの話し合いの糸口というのは見えてないのですか。
  209. 園田直

    園田国務大臣 経済協力の内容に係るわけでありますが、その内容は、日本が自己満足するものではなくて、相手が本当に役に立つもの、しかも相手の国民が喜ぶもの、こうでなければなりませんので、そういう意味において各方面、民間等の御意見あるいは民間同士の御意見等も十分拝聴して、今後経済協力の具体的な方向を決めていくべきだと考えております。
  210. 春田重昭

    春田委員 だから、その話し合いの糸口というのは、めどというのは全く立ってないのですか。
  211. 園田直

    園田国務大臣 韓国との話し合いは、これは話し合いのところまで行っていないわけでございます。先般の共同新聞発表にも書いてありますとおりに、わが方の「経済協力の基本方針の下に」と書いてあるわけでありまして、わが方の「経済協力の基本方針」とは、一つ国会決議その他によりましても、経済協力が軍事、防衛の肩がわりをしてはいけない、これはいけないということでありますから、できないということであります。  次は、今度は一般経済協力でありますが、これは真に民生の安定とか生活、経済の向上に使われるかどうかということを両方が相談ずくで検討し合って、間違いのないということで案件に金額が決まりまして、それを積み上げたものがその年間の協力であり、その年間の協力から大体五カ年間でどれくらいになるだろうということが下から積み上がっていくわけでありまして、第二番目には、つかみ金で六十億ドルなどということは相談にも乗らぬわけであります。しかも、金額そのものが倍増された場合のアジアに使う経済協力の半分以上になるわけでありますから、この額も無理な相談でありまして、日本経済協力実情、行政の実態というものを韓国におわかり願いたいという相談をしているわけであります。
  212. 春田重昭

    春田委員 相手側の韓国は、もうボールは日本側に投げ返したのだからそれを待っているのだ、こう言っているわけでございます。ところが、わが国としては、向こう側から確たるプロジェクトというかそういうものを示さない限り応じられない、こういうような態度だと思うのですけれども、せんだってある新聞社が韓日議連の金幹事長が来たときに対談しているわけでございますけれども、質問しているわけでございます。その中で金さんが、この五カ年計画のプロジェクトは一応日本に提示している、こう言っているわけでございますけれども、いわゆる実態のあるプロジェクトというのを金さんは言っているわけでございますが、出ているのですか。
  213. 中村順一

    ○中村説明員 韓国のわが国に対する経済協力要請の内容につきましては、これまでの話し合いの過程で、簡単ではございましたけれども韓国側より説明がございました。これによりますと、韓国側としては上下水道事業、教育施設、医療施設等、社会開発部門等のプロジェクトを主たる要請分野として考えている模様でございます。しかしながら、わが国といたしましては、まだ韓国側よりさらに詳細の説明を受けるべく要請してまいりたいというのが現在の状況でございます。
  214. 園田直

    園田国務大臣 私は、交渉中のことでありますから実は申し上げなかったのですが、いまの事務当局の説明、やや事実とは違います。向こうからそういう申し出があったのじゃなくて、外相会議のときに、軍事費の肩がわりはできない、六十億が軍事費の肩がわりなら絶対出せない、それから仮に六十億としても、金が多過ぎますと、これは安い高いの相談ずくじゃなくて、無理なんですと、そこで、今度やるについては積み上げ方式で何に幾ら、何に幾らということでやる、こう言うておるところなんですが、そしたら向こうは、鉛筆書きか万年筆かわかりませんけれども、いま事務当局が言った数字を一晩で並べてきただけでありまして、私が先ほど言ったように、ちゃんとした案件を持ってきて、両方からそれじゃ案件を調査をしようかというような資料ではないわけでございます。
  215. 春田重昭

    春田委員 一説によりますと、六十億ドルというのは、毎年毎年政府借款が行われておるわけでございますけれども、昨年の実績で百九十億、一昨年が百九十億出ておりますけれども、このいわゆる毎年行われる政府借款と違った、別次元の六十億ドルのいわゆる要求であるということも聞くわけでございますけれども、その点はどうでしょうか。
  216. 園田直

    園田国務大臣 経済協力、円借款、政府援助、これ以外のものなら私が相談を受けるべき筋合いではございません。
  217. 春田重昭

    春田委員 そこで、相手側からいわゆる確実なといいますか、まともな、そうした正確なプロジェクトが出ない限り日本側としては応じられない、こういうことではないかと私は思うわけでございますけれども、例年からいきますと、昨年、一昨年の実績からいきますと、交換公文、協定書といいますか、これが締結されたのが一月なんですね。いまはもう十月の中旬になっておるわけでございますけれども、まだいわゆる平行線で、話し合いの糸口さえつかめてない現状からして、非常にこの一月は厳しい、こうなるわけでございますけれども、五十六年度のいわゆる対政府借款がはっきりめどがついてない段階で膠着状態が続いている今日、これはタイムリミットといいますか、大体いつごろまでに話がついたら五十六年度の政府借款が正式に決まるのかどうか。相手が出さないからいいのだ、もう一切こっちの主張をのまない限りこっちからも呼びかけもしないし何もしないのだ、五十六年度の政府借款は決まらなくてもやむを得ない、ここまで強硬な態度なのかどうか。この辺大臣の御感触をお伺いしたいと思うのです。
  218. 園田直

    園田国務大臣 これは両方から話し合いをつける問題ではない。私、先生の御発言全部よくわかります。平素の御発言もよく理解しておりますが、援助する方とされる方と、される方が努力しないで、援助する方が話しかけたり向こうに理解を求めたり、譲り合ったりするということは、どうしても私には納得ができない話であります。  しかしながら、基本的には、正直に言って韓国は隣国であり友邦国であります。しかも、韓国の安定は、どんな言い回しはあろうとも、日本は韓国の安定があった方が日本の安定にも都合がいいわけでありますから、しかも新しい大統領がいろんな困難な問題に直面しながらも五カ年計画の国づくりをやっておられる努力というものは評価をいたします。したがいまして、向こうの方で日本実情がわかられて、防衛費肩がわりはだめだという、それならばわれわれはこういうことで援助を受けたいのだという話があり、かつまた額については、六十億ドルが無理ならば、それならば政府援助、輸銀、民間その他の方法を講じて何とかこれくらいはという相談になれば、それから先は相談でございますけれども、全然日本実情を御存じなくて、そしてその額も、これは専門家が集まって研究したのだから絶対に狂いはないとおっしゃる。確かに専門家が集まられて韓国の都合のために計算された数字ではあるが、日本実情を知られたあれではない。そこで、日本の私の方としては、日本の方々の御意見、国民の意見も代表して、なるべく援助してあげたい、しかも早くしてやりたい。しかし、そのためには韓国の方が日本に対する理解も持たれて、そうして早く話にのるように筋を立てて御相談いただく、こういうことだと思います。
  219. 春田重昭

    春田委員 これはちょっと事務的な問題ですけれども、従来、たとえば政府で交換公文が交わされまして、そして一つ事業計画ごとにどれくらいのお金が要るかということで算出されます。そこで、政府借款は基金の方から出ていくと思うのですけれども、この支払い方法でございます。これはいわゆる契約の段階で一括してぽんと支払うのか、それとも出来高といいますか、工事の進捗状況によって何%ずつか払っていくのか、また、完成した後に払っていくのか、この辺のいわゆる支払い方法というのはどうなっているのですか。
  220. 中村順一

    ○中村説明員 先生御指摘のとおり、実際の資金は海外経済協力基金から供与されるわけですけれども、海外経済協力基金による資金供与は、そのプロジェクトの進捗状況に応じまして、その都度支出されるということになっております。
  221. 春田重昭

    春田委員 最後に、韓国側の借款の問題につきましては非常に大きな関心が持たれているわけでございますので、慎重に配慮せねばならないと私は思うわけでございます。韓国では、五十七年から第五次の経済社会発展五カ年計画と並行して第二次防衛力強化五カ年計画がなされているわけでございますので、その辺のところを明確にしなかった場合、結局いわゆる安保がらみの防衛の方に使われるのじゃなかろうかというおそれがありますので、その辺のところは慎重に対処をしていただきたい、このように要望しておきます。  きょうはいつもと違いまして、大臣が行革委員会の方にも呼ばれているので時間厳守をしてほしいということがございましたので、最後にまとめて申しますけれども、実は海外の子女教育の問題です。  私たち昨年決算委員会で海外に行きまして、ほとんどの大使館からこの問題につきましては要望があったわけでございます。いまから十年前は人数がわずか八千六百名だったのが、五十六年では三万名の教育を受ける生徒数がふえてきているわけでございます。しかし、中身の校舎の問題とか学校の先生の配置とか、そうした問題がたくさん残っているわけでございまして、また帰国子女の受け入れ学校の問題も非常に少ないということで大きな問題になっているわけでございます。  そういう点で、時間がございませんのでまた別の機会を通してこの問題をやりたいと思いますが、いずれにいたしましても、憲法二十六条の解釈では、日本国内では義務教育は無償となっているわけでございますが、海外では憲法二十六条は及ばない、こういうことで、海外でもいわゆる子女教育というのは非常に苦労をなさっている。父兄負担が非常に大きいわけですね。そうした面で、授業料の面、学校の先生の面、また校舎が非常にない、そういう非常に厳しい中で教育を受けているわけでございますので、政府といたしましては前向きにこの海外子女の教育に当たっていただきたい、こういうことでございます。外務省、文部省共管の事項もございますけれども、最後にまとめてこの問題につきまして御決意をいただきまして、終わりたいと思います。
  222. 佐藤國雄

    佐藤説明員 御指摘のとおり、現在海外におります義務教育相当の子供は三万人おりまして、これらの子女に対する海外子女教育というものを拡充してまいってきておるわけでございます。この点は関係当局の、特に財政当局、文部当局の御協力によりまして、また文部省と協力いたしまして、年を追うごとに拡充されてきておるわけでございます。校舎の問題につきましては……(春田委員「時間がないから短く」と呼ぶ)今後とも努力したいと思っております。
  223. 春田重昭

    春田委員 終わります。
  224. 國場幸昌

  225. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、北方領土問題と対ソ交渉について御質問したいと思います。  先般の十月三日の予算委員会で、わが党の吉田之久議員からも同じような質問がなされましたが、その節の総理並びに外務大臣の御答弁を踏まえて質問をしたいと思います。  ことし、二月七日に北方領土の日が設定をされ、そしてまたさらに鈴木総理は、歴代総理大臣の中で初めて北方領土の視察を現地に行ってされた。大変北方問題での国民の関心が高まってきている、こういうふうに感ずるわけでございます。総理自身も、この領土問題が日本最大の政治問題であるという認識をたびたび表明されておる。八月にも、ブレジネフ書記長の日ソの関係を再構築したいというような談話に対して、この日本最大の政治問題を避けて、そして他の問題について話し合おうと言っているのではないか、日ソ友好を願うけれども、領土を抜きにして善隣関係を認めようとしても、国民の支援は得られないとはっきり指摘をされておるわけです。私どもの同僚の吉田議員の質問に対するお答えでも、日ソの友好関係は、ただ単に両国の利益だけではなくて世界平和にも貢献するとして、ただ問題は、日ソの国交を今後増進していく上から障害となっているのは、何といっても北方四島の問題である、こういうふうにはっきりおっしゃっているわけです。そしてさらに、一九七三年の田中・ブレジネフ会談、つまりこれは戦後未解決の問題であるという認識ですけれども、この確認の上に立ったこのときの日ソ共同声明、これに基づいてこの四島問題を解決して、日ソの平和条約を締結する、それが真の恒久的な日ソの友好関係を築くことであって、これがないとむしろ火種を後に残すことになる、そういった認識を示されておりますけれども、全くそのとおりだと思っておるわけでございます。  そこで、外務大臣としても同じ見解とは存じますけれども、これからのこうした対ソ交渉についてどのような方策を見通しをお持ちかをまずお聞きしたいと思います。
  226. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、日ソの間でもできるだけ話し合いをやりたい、糸口をつくりたいというのが私の念願であります。しかしながら、話し合いをしたいということは、領土問題をのけて話し合いをしようということでは断じてございません。これは日ソ間の問題で一番大きな問題、これをのけては一切の話は進まない、それが北方領土問題でありまして、他はことごとく先生のただいまの御発言と全く同じでございます。
  227. 和田一仁

    和田(一)委員 そこで、一番障害になっている領土問題でございますけれども、これはなかなか大変な問題であろうと思うのです。  それで、まず私どもは、国民全体が国論をそういう方向に向かって盛り上げるということ、それを背景とした外交を展開していただきたい、これはもう当然のことでございますけれども、あわせて国際世論がこの日本の主張をバックアップしてくれる、そういう環境を一日も早くつくっていかないといけない、こう考えるわけでございます。  このことに対して、先般私どもの佐々木委員長も訪米をいたしまして、その際ブッシュ副大統領にもこの問題について触れました。そしてこういう立場を理解してもらうと同時に日本への協力のお願いをいたしましたところが、副大統領からも日本の立場を有利にするためにやる、こういう協力のお答えをいただいた。ただ、それを早く政府の方から具体的にアメリカの方へ、詳細について何をすればいいのだ、そういうような話が通ってこないと困る、こういうような趣旨のお答えがあったように伺っておるわけでございますけれども、こういった海外への協力ということについて大臣はどのようにお考えかを聞かせていただきたいと思います。
  228. 園田直

    園田国務大臣 北方四島の問題はきわめて大事であります。かつまた一方ソ連の方は、これはもう根拠のないことであるということで各国に宣伝して回った実例もございます。したがいまして、わが国でもそれぞれの関係国に実情を詳細に申し述べて、わが国発言が妥当であり、これを支持されるように要請する努力をいたしております。かつまた国連総会では、伊東外務大臣、私、引き続いて北方四島返還問題の訴えをやっていることも御承知のとおりであります。特に各国相談しておりますが、関係の深い米国初めそれぞれの国にはちゃんと内々で相談をして、それぞれ支持を得ているわけでございます。
  229. 和田一仁

    和田(一)委員 国際正義が確立されるということが世界平和の基本になければならない、こう思うわけでございます。われわれ日本も何とか国際平和への寄与をしたい、こう願っているわけでございますけれども、その国際正義が踏みにじられているような現状に対して世界の世論を喚起するということは、これは日本としての義務でもある。世界平和を願うならば、そういった不正義が横行しないように積極的に努めていかなければならぬと思うわけでございます。ただ、いまそういった大臣の御答弁を伺ったわけですけれども、現実にソビエトは、これは解決済みの問題である、日本の主張には論拠がない、こういうような全く対立する間柄でございます。私は、ソビエトがこの問題について、これは解決済みだと言っている唯一の根拠はヤルタ協定だけではないか、こう思うわけですが、そういうソビエトの主張の根拠が果たしてどこにあるか。私はヤルタ協定を根拠にそういうことを言っていると思うのですが、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  230. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ソ連は、御承知のとおり、北方領土問題は解決済みということを言っているわけでございますが、その具体的根拠を必ずしも明らかにしていないわけでございまして、御指摘のヤルタ協定等も恐らく念頭にはあるのだろうと思うのでございますが、一連の国際協定等によりというような言い方をいたしておりまして、必ずしも明確にソ連の主張の根拠を明らかにしていない、いわば問答無用で北方領土問題は存在しないのだという立場と認識いたしております。ただ最近、ソ連の政府ではございませんが論調等を見ますと、たとえば千島における日本人と当時のロシア人との活動の歴史というような若干歴史的な文献等を引いての主張を行い始めたというような傾向も見られるわけでございまして、私どもといたしましては、もしソ連がそういうことで歴史的あるいは法律的に具体的にソ連の主張を展開するということになるのであれば、これは日本としても反論の余地がますます出てくるわけでございますので、そういうことになることをむしろ歓迎したい気持ちでいるわけでございますけれども、現在までのところソ連の主張は、少なくとも法的には北方領土問題は存在しないというだけでございまして、その具体的な根拠については説明していないということであろうと存じます。
  231. 和田一仁

    和田(一)委員 そうすると大臣、向こうは解決済みであるという論拠が何によっているかを明示もしないで、ただこれはおれのものだというように突っぱねている。それに対して、固有の領土であるという正当な主張をわれわれはしっかりした歴史的な法的な根拠の上で主張しているわけですけれども、そういった相手に対して、ではどういう説得をされていかれるのでしょうか。この問題をまず解決しないと日ソの友好親善は先へ進まないわけですけれども、その点について大臣、どのようにお考えですか。
  232. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいま日本政府がソ連政府に対して呼びかけておりますことは、北方領土問題を解決して平和条約を締結するための交渉のテーブルに着こうではないかという呼びかけをいたしているわけでございまして、まず北方領土問題を含めて平和条約締結交渉のための話し合いの場に着くということが先決であろう、まずその場所にソ連に出てきてもらうこと、これがまず第一歩となるのではなかろうか、そのような交渉の場を持つことができれば、その場において、われわれとして正しいと考えるところの歴史的、法律的なさまざまな根拠について改めてソ連側に説明する機会も生まれるのではなかろうか、そのように考えているのが現状でございます。
  233. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、いよいよになればヤルタ協定が出てくるような気がするわけです。その場合に、もうすでにアメリカは、五六年にはっきりと日本の立場を理解した覚書を出してもらっているわけですね。私は、当事国である英国が日本の働きかけによって本当に日本の立場を理解して、アメリカと同じようにヤルタ協定について根拠はないのだということをはっきり言ってもらうということだけでも、これは具体的には大変大きなことになる、こう考えるわけです。現に、ヤルタ協定というのは当事国であるアメリカもイギリスも批准をしていない、こういうことからしても、私は英国に積極的にそういう働きかけをすべきだ、こう考えるわけでございます。  先般、沖繩北方特別委員会委員長以下委員の方々が英国にも行かれまして、これは委員の派遣で行かれまして、英国を初め西欧各国を回り、国連にも寄ってこの四島問題の日本の立場をいろいろと訴えてこられた中にも、英国でもこのことをしっかりと訴えてきておるわけですけれども、外務省としてそういうアクションを起こすお気持ちがあるかないか、ひとつ大臣からもお聞かせをいただきたいと思います。
  234. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 御指摘のヤルタ協定でございますが、御承知のとおりヤルタ協定は当時は秘密協定として締結されたわけでございまして、わが国がポツダム宣言を受諾しておりましたときには、ヤルタ協定の中身はもちろん、そういうものがあったということさえ知らなかったわけでございますが、いずれにいたしましても、わが国はヤルタ協定の当事国ではございませんので、いかなる意味におきましてもヤルタ協定に拘束されるということはないわけでございます。  それで、いまも御指摘のとおりアメリカは、このヤルタ協定というものは当事国の当時の首脳者が共通の目標を陳述した文書にすぎない、領土移転のいかなる法律的効果を持つものでもないという立場を明確にしておるわけでございます。  御指摘のイギリスへの働きかけについてでございますが、実は政府からイギリス政府に対する見解の打診を行ったことはあるわけでございます。そのときのイギリス側の回答というものは、いかなる意味におきましてもわが国の立場を否定するものではないわけでございますけれども、英国はその見解が公にされることを望んでおりませんでしたので、それを公にするわけにはまいらないということでございますので、御了承いただきたいと存じます。
  235. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、そういった返答だけであきらめてしまわずに、ソ連が根拠にするであろうヤルタ協定というものが全く根拠のないものであるということをはっきり国際社会の中で認識をしてもらうということが非常に大事だと思うわけです。  そこで一つお聞きしたいのですけれども、サンフランシスコ講和条約わが国は全千島と南樺太を放棄いたしました。それははっきりとわかるわけでございますけれども、その帰属というものはいまだ明確になっていない。この全千島、そして南樺太の帰属について大変不明確なまま今日まできている。ソビエトに帰属しているのだということを一回も決めていない。にもかかわらず現実にはそこにソビエトは現状のような領土権を主張し、さらに固有の領土である四島にまで不法な占拠を今日まで続けている、こういう絡みがあるわけですが、この帰属の不明であるという点について日本外務省はどういう見解をお持ちかをお尋ねしたいと思います。
  236. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 わが国といたしましては、先生御承知のように平和条約二条(c)に基づきまして南樺太と千島の領土権を放棄いたしました。サンフランシスコ条約の当事国である連合国に対して放棄をしたということでございまして、その所属の決定は連合国が行う立場にある。今日までの時点において南樺太及び千島の帰属につきまして連合国が何らかの法的な決定をとったという事実はございません。わが国といたしましては平和条約に基づきまして放棄いたしたのでございますから、その帰属がどうかということにつきましては発言する立場にございませんということは従来から政府が申し上げておるとおりでございます。
  237. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、こういう大事な問題が国際社会の中で非常に不明確なまま、そしてさらに大西洋憲章あるいはカイロ宣言、こういったものでいまやはっきりと領土の拡大ということはやらないというような国際的な考えの中で、戦後ソビエトがこういう状態を起こしておきながら、それもまだ国際的に論議の種にならぬというのは、やはり日本の外交がそういう点について一つ忘れ物をしているのではないかという感じがしてならないわけです。それがそのままになっていて、さらにその先に今度は日本の国有の領土である四島があって、そこも同じように占拠をされてしまった。こういう歴史的な過程を見ますと、やはりこれは国際的な世論を本当に喚起していかないと、この問題の解決というものはよほど大変なものだ、こう考えておるわけです。  そこで、先般、九月に国連総会に出席された外務大臣がグロムイコ外相と会談をしたということで、その内容については新聞あるいは国会のほかの委員会、外務委員会等で御質問もあったと思うのですけれども、改めてその要旨を簡単で結構でございますが、お聞かせいただきたいと思うのです。
  238. 園田直

    園田国務大臣 グロムイコ外務大臣との会談は、二年ぶりにあったわけであります。当初から非常に友好的な環境のもとに会談はいたしました。しかしながら、まず当初は、いまの領土問題で私は鋭く主張いたしました。これについては厳粛なるべき国際信義、田中・ブレジネフ会談及び声明、これに基づいたものを一方的な解釈で破棄して、そして解決済みということは納得できない、これに対して、向こうは全然理屈は言わないで、それはすでに解決済みだ、何回言っても解決済みだ、こう言うだけであります。そこで、問題は、あなたは解決済みと言い、私は当然これは返すべきものだ、こう言っているが、明らかに対立していることは事実じゃないか、そこで、対立している問題は対立している問題として話し合いを続けよう、こういうことが今度の会談の趣旨でございます。
  239. 和田一仁

    和田(一)委員 日ソ関係はここへ来て大変冷たい関係なんですけれども、もともと温かいことは一回もなかったわけですが、特に冷たい。これに対する政府の答弁というものは、こういう関係になった原因はソ連が北方領土に軍備を増強したり、あるいはアフガンに武力介入した、こういったことが一つの原因にもある、ソ連がこの状態を改めた上でないと平和友好関係というものはとうていできないのだというような趣旨の答弁があったと思うのです。こういう関係を取り除くことが先決だ、こういうふうに私は理解しておったのですが、しかし、北方のこの軍備増強も、アフガンへの介入もその後一向に改善されているとは思えません。むしろ増強されている、こういう状態の中で、この前の予算委員会の御答弁の中にも、ハイレベルの事務協議であるとか、あるいは外相間の協議をやっていきたい、こういうようなお答えがあったわけでございますけれども、従来の対ソ外交方針がここへ来て転換したのでしょうかどうか、その辺をひとつお伺いしたいと思うのです。ましてグロムイコは、北方領土問題について日本は幻想を持つべきではない、従来の、領土問題は存在しないとか解決済みであるということよりも、さらに強いような姿勢であると私は思うのです。そういうきわめて強い姿勢であるにもかかわらず、いま申し上げるように、ハイレベルの協議であるとか、外相間の協議を行おうかというようなことをこちらから言うということは、日本は領土問題というものをたな上げにしてでもやりたいという印象を逆に与えやしないかという懸念を私は持っていて、これはソ連の幻想としてもそういうものを抱かせることは大変危惧である、こういうふうに私は考えるわけでございますけれども、大臣、このハイレベルの協議とかあるいは外相間の協議ということについて、われわれがそういった危惧の念を抱くようなことはないと思いますが、いかがでしょうか。
  240. 園田直

    園田国務大臣 日本とソ連の間が冷却いたしました原因はいろいろありますけれども、主として、発言された北方領土の問題、軍備増強の問題、アフガニスタンの問題と、ソ連の方にすべて責任があることは私も同意見であり、これについてはしばしば日本側からソ連に申し入れをいたしております。ニューヨークの会談の際にもこれは激しく私は追及をした次第であります。したがいまして、領土問題を解決して平和条約を締結するという日本の基本方針は何らも変化しておるわけではございません。ただ、だからといって話し合いをしないでほうっておけばこれはだんだん固定化していくおそれがありますから、そういう問題も含めて話し合いをやりたい、こういうわけであります。
  241. 和田一仁

    和田(一)委員 私はその基本的な、田中・ブレジネフ会談、この線でなければならないという見解どおりだと思うのですが、問題は、現地等のいろいろな声の中に、もう領土より魚だというような声も聞こえてまいります。あるいは中には、二島返還がまず先ではないかというような声もあるわけですけれども、国民世論を盛り上げて、そしてそれを背景に交渉のバックアップをしてもらうという中に、そういった意味で国論の分断があってはならない、私はこう思うわけで、四島一括返還、この線は間違いないでしょうね。
  242. 園田直

    園田国務大臣 当然のことであると考えます。
  243. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、国内世論と同時にやはり国際世論というものの喚起が必要だ、こう考えておるわけです。そういう意味では、外務省もその全機能を挙げてやっておられるとは思います。  ここで一つお聞きしたいのですが、先般わが党の小沢議員から、外務省にお尋ねをいたしまして、サンフランシスコ平和条約締結国の中で一体わが国の北方領土をどういうふうに扱っているか、地図がどんなふうになっているか調べてくれ、こういう依頼を出しました。小沢議員の方にその調査のあれが来ております。これは大臣、ごらんになったことございますか。私、いまここにございますが、委員の方でごらんになってない方があろうかと思うので、委員長、ちょっとお配りしてよろしいですか。
  244. 國場幸昌

    國場委員長 どうぞ配ってください。
  245. 和田一仁

    和田(一)委員 サンフランシスコ平和条約でわれわれは全千島と南樺太の放棄をいたしましたが、同時に、そこで吉田全権が受諾演説をしたときに、北方四島は日本の固有の領土であるということを世界にはっきりと申し上げてあるわけであります。そして締結している四十八カ国、それらの国々が一体その後どうなっているか、その国で使っている地図というものを外務省の皆さんに調べていただいた。その報告がいまここにお配りした地図でございますけれども、これをごらんいただきたいと思うのです。北方四島全部を日本の領土であると言っている国は一つもない、こういうことでございますけれども、これはその後外務省の皆さんから関係国にそれぞれこの訂正方をしていただいてあるはずでございます。新聞で私が承知したところでは、エジプトのサダト大統領が、自分の国のエジプトの地図は直す、こういった記事を拝見したこともございますけれども、その後このことについてどのような改善がされているか、わかっている限りで結構ですけれども、お知らせをいただきたいと思います。
  246. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 各国の地図出版社に対しまして、ただいまお話のございましたような趣旨で注意を喚起し、訂正を申し入れるということをやってまいったわけでございますが、その一部の出版社からは肯定的な回答を得ております。ただ、その肯定的な回答を寄せてくれました出版社の場合も、地図というのは何年に一遍か改訂するということのようでございまして、この次に新しい版の地図を出すときには日本からの申し入れは十分考慮に入れましょうということでございますので、いままでのところ改訂された新しい地図が出たというケースにつきましてはまだ報告は受けていないわけでございます。  いまエジプトの例についてお話がございましたが、エジプトの場合は、あそこの教育省で、一種の国定教科書と申しますか、そのような形で出ておるわけでございますので、政府関係機関が直接地図を出版しているということになるわけでございます。それ以外の国、特に先進国の場合は、いずれも民間の地図会社が出版をするということになっておりまして、相手国の政府が直接やるということではないわけでございますので、大使館におきましてはそれぞれの民間の出版社に対する働きかけを行っておる、それで一部の出版社につきましては先ほど申し上げましたようなことで肯定的な回答を寄せてきているというのが現状でございます。
  247. 和田一仁

    和田(一)委員 やはり私は国際世論を喚起していくということが大事だ、こう言っているわけですけれども、国民があるいは学童が日にする、勉強をする地図がこういう現状のままであってはいけないと感ずるわけで、ましてやアメリカやイギリスやこういった国々がそのままで、特にアメリカあたりで印刷する地図というのは影響力が大きいわけですけれども、日本の主張どおりになってないということは大変残念なことで、一日も早くこれは改めてもらわなければならない、こう思うわけでございます。  それで、また戻りますけれども、とにかく解決済みだ、領土問題は存在しない、こう言ってただ一方的に頭ごなしに主張する、そういう国とこれから友好関係を築いていくためにこの問題を解決しなければならない、そのための一つの手法として、なぜあなた方は解決済みだ、問題は存在しないのだ、それをしっかりと突き詰めてもらわなければいかぬ。なぜ解決済みだかをはっきり言わせもしないで、向こうは、ただもう済んでいる、そんな問題はないのだ、ないのだと言う。こっちはとんでもない、これだけでは全く先へ進んでいかない、こう思うわけです。したがって、そこで国際世論の喚起も必要だし、その国際世論を背景にして具体的なアクションを起こしていかないと、これはなかなか糸口もできない、こう思うわけでございます。  そこで、私は、このサンフランシスコ平和条約を締結してもらった四十八カ国、この国々に対して、やはりはっきりとこの問題は日本の主張が正しいという声明を、そういうはっきりした立場を取りつけていただかなければならぬ。しかし、四十八の中にもし、もしそれができぬという国があるならば、それは私はとるべき方法があるのではないか、こう思うわけです。それは何かといえば、国際司法裁判所に提訴すべきだ。日本の立場でソビエトを国際司法裁判所に提訴したらいいじゃないか。こう言えば、外務省は、これはだめなんだ、強制受諾権というものがソビエトに対してはないのだからこれは受け付けてもらえない、こうおっしゃると思うのです。私は、そうでなくて、このサンフランシスコ平和条約締結国に全部日本の立場をきちっとそうだと言ってもらえる、まずそういう立場をとってもらうこと、それができぬという国があるならば、その国に対してはこれは強制受諾権があると思って提訴すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  248. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御承知のように、先生御指摘のサンフランシスコ条約の第二十二条の規定は、条約解釈につきまして当事国の間に紛争がある場合には国際司法裁判所に提訴することができるということで、そういう道がサンフランシスコ条約において開かれておるということは事実でございます。他方におきまして、先ほど先生がおっしゃいましたサンフランシスコ条約当事国を含めましてわが国の北方四島に関します立場について十分の理解と支持を得ていく努力政府として必要であるということについては、先生の御指摘のとおりだろうと思います。ただ、当事国との間に明確な紛争があって、これが先ほど先生御指摘のサンフランシスコ条約二十二条に基づきます国際司法裁判所に対する提訴の根拠になりますような紛争が当事国との間にあるかということになりますると、今日の時点ではそういう紛争というものがあるというふうには認められないだろうということを従来から申し上げておる次第でございます。
  249. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、これは司法裁判所に訴えたらそういった法的に解決できるという意味で申し上げているのではないのです。これは、そういう日本がアクションを起こすという、ひとつ返してもらうための運動として、国際間における日本の立場をはっきりさせる運動としてこういう行動をとらないで、ただ向こうは根拠もなしに、これはもう解決済みだ、問題はないのだ、こう言っている国に対してわれわれの主張をどうやってぶつけていくかということ、それを何もしないで、一体、外務大臣、糸口というのはどうやって発見されますか。これは確かに一日二日でできる問題ではない、長い問題であろうと思いますが、しかしどこかでアクションを起こさないとこれはなかなか糸口も探せない。国際世論は問題解決の糸口だということは多くの識者が言っておりますけれども、ただそれだけでもなかなかむずかしい、何か行動を起こさないとこれは糸口にならぬ、こう思うので申し上げておるので、司法裁判所に訴えたらそこで解決してくれる問題だとは私は思っていないのです。その点いかがでしょう、大臣
  250. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、第一は変わらざる一致をした国民の世論及びこれに対する世界世論の支持、そして政府の粘り強い行動、こういう三つが合わなければならぬことでありまして、いま御発言のそれぞれのサンフランシスコ条約締約国に対するPRをやっておりますが、さらに、PRにとどまらず、これを支持し行動を起こしてくれるようそれぞれの国で一つ一つ行動を起こす必要があると思います。いまの提訴問題についても、それが効果があれば提訴してそこで判決を受けるということでなくて、それが世論支持の一つの手段になるならば十分検討いたします。
  251. 和田一仁

    和田(一)委員 大臣、ぜひこれは検討していただいて、日本がいまそういう立場で真剣にこの問題に取り組んでいるという姿勢を何か形においてはっきりと示していく段階だ、私はこう考えておるわけでございまして、なかなかこの問題は一朝一夕に目鼻、糸口がつけられる問題だとは思いません。したがいまして、私は外務省の全機能を挙げてこの問題には取り組んでいただいていると思いますけれども、この問題について、大臣はもう世界じゅうの国々を相手に外交を展開される大変お忙しい立場であるので、むしろこの北方問題専任の大臣を置いたらいいじゃないかというぐらい、識者の中にはそういう意見すらあるわけでございまして、これからもぜひひとつ、御多忙であろうと思いますけれども、この問題には全力を挙げてお取り組みをいただきたい、こう思うわけです。行革のときでございまして、機構の上でそういうようなことがなかなか実現できるかどうかわかりませんけれども、ほかの問題と並列して、あるいは片手間にということではこの問題はなかなかむずかしい、こう私は思っておるわけでございまして、大臣としてもこういった北方問題だけを継続してやっていける、そういう大臣が必要かどうか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  252. 園田直

    園田国務大臣 そういう大臣が必要かどうかは、これは総理の決めることでありますが、外務省内ではそういう重点的に努力のできるようなことを考えてみたいと思います。
  253. 和田一仁

    和田(一)委員 それでは、きょうは総理府の方にもお見えをいただきましたけれども、国民世論を形成していく上でも、ぜひ四鳥一括返還というきちっとした立場を間違いなく国民世論として築き上げていただくように御要望申し上げておいて、私の質問を終わります。
  254. 國場幸昌

    國場委員長 この際、関連質疑の申し出がありますので、和田一仁君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中野寛成君。
  255. 中野寛成

    中野(寛)委員 日韓経済協力の問題でお尋ねをしたいと思います。  閣僚会議で六十億ドルの開発援助、借款問題がメーンテーマとして扱われて、それが実質上決裂をした形で、ただ新聞発表というものが残されただけで今日に至っているわけであります。もちろん、相手方からの申し入れによってこの援助問題が話をされているわけでありますけれども、その後韓国サイドから何らかの打診その他が行われているかと思うのでありますが、そのようなものについて現在どうなっているのか、まずお聞きをしたいと思います。
  256. 木内昭胤

    ○木内政府委員 九月中旬の日韓定期閣僚会議の後、園田大臣国連総会へ出られまして、それと相前後しまして韓国の外務部長官もニューヨークに行かれたわけでございます。それで、つい数日前に韓国に戻られましたので、あるいは今後先方から何らかのインディケーションがあるかもわかりませんが、現段階ではまだ彼我のやりとりはございません。
  257. 中野寛成

    中野(寛)委員 この問題は、日韓関係にとって言うならばいま一番最大の関心事になっているわけであります。それだけに申し込む方も、また申し込みを受けて協力する方も、お互いに相手の立場というものを十分理解し合いながら話をしていくということでなければならないと思うのであります。ただ、今日までの経過を私なりに見ておりますと、何か売り言葉に買い言葉といいますか、場合によっては外務大臣御自身の国会における御答弁等も、マスコミ等に取り扱われますときには、借金する方が何を言っているかというふうな感じに読み取られるような報道がなされたり、そして、その報道をもとにしてまた韓国サイドでは園田外務大臣がずいぶん悪者扱いをされて報道をされるというふうに悪い方に報道をされる。お互いに韓国には反日感情があり、日本にはこれまた決して少なくない反韓感情があることは事実であります。お互いの国民感情を是正させつつ、大切な、距離的にもそして心情の上でも文化の上でも一番近い関係にある日韓関係というものをやはり向上させていかなければならぬ。そういう中にあって、今日までの経過というのは大変悲しい状態ではないか、このように私は思うわけであります。  ちなみに、きょうの御答弁を聞いておりましても、園田外務大臣の御答弁の中には、単につかみ金で六十億ドルと言われても困るという御答弁がきょうもございました。しかしながら、今日まで新聞報道等を見ておりますと、すでに八項目にわたる具体的な内容が外相会談に並行して行われた実務者会議では提示されている。総額が千二百五十億ドルであり、六七%を内資で賄い、三三%すなわち四百六十五億ドルを外国に依存をするというふうなことも含めて、そして日本に対しては百億ドル。六十億ドルが政府、四十億ドルを民間ベースで、その中身はLNG受け入れ基地だとか、ソウル、釜山での地下鉄計画だとか、いわゆる八項目が並べて紹介をされている。こういうものを拝見をいたしますと、その中身には、たとえば軍事援助的なものは含まれていない、要求をされていない。  しかし、今日までの御答弁等をお聞きしてまいりますと、いわゆるつかみ金で六十億ドル。先般の閣僚会議では入り口論でとうとう終わってしまったというように、公式には内容に入ることがなかったということから外相の今日までのような御答弁になるのかもしれませんけれども、やはり韓国には韓国向けの事情があり、日本には日本向けの事情があることも私は無視できないと思うのであります。そういう意味で、これは政治や外交の、ある意味では常である。外交交渉をやってきた、そしてその中身について相手国に言ったことと帰ってきて日本国民に政府がおっしゃることと違ってもいいという意味ではありませんけれども、そこは政治を進めていく上で、外交を進めていく上で、その表現のニュアンスというものが将来真実を目指すために必要な場合もあり得ることでありましょう。  私どもはそのようなことを考えますと、外務大臣の御答弁等にも十分御注意があってしかるべきかと思いますし、また当然相手国との話し合いについても、日本日本なりに、ベテラン外務大臣はベテラン外務大臣なりに、相手に対する配慮、そして内輪では日本国民に対する配慮、そういうものがあってしかるべきではないか。この辺について大臣の基本的なお考えをお聞きしたいと思います。
  258. 園田直

    園田国務大臣 御発言趣旨は十分私はわかっております。また、いまの御発言もわかっております。私は、外相会議でも、日韓閣僚会議の個別会談でも、いまおっしゃったようなことを発言をしておるわけであります。日本実情はこうこうであるから、出しやすいように考え直してもらったらどうだろうか、金額についても、六十億ドルということはとうてい無理であります、これは私が出す出さぬとか感情の問題でございません。政府援助の総額は明年度の予算で、過去五カ年間の倍増をしていただいたとしても、五カ年間で二百何十億ドルであります。そうすると、それを国連その他に拠金しますと、七割が二国間援助に使える金であります。その七割のうちの七割がアジア地域に使える元金でございます。そのアジア地域に使える金が五カ年間で百五億ドルでございます。その百五億ドルの中から六十億ドルのお金を韓国に出すということは、他のアジア国々には出せないということになるわけでありますから、そういう実質問題からこれだけのことは無理でございます、しかし相談してやれば政府援助あるいは輸銀あるいは民間その他の方法で韓国のおっしゃることもできるじゃありませんか、そういう相当枠を超えた話も私は実際は立ち入ってしているわけでございます。  しかしながら私は、第一番ここでちょっとだけ申し上げておきたいのは、日韓関係を新しい関係に持っていきたい、いままでの関係ではいけない、癒着関係はいけない、何かあるごとに癒着と言われることはいけない、こういうことは両方とも全くそうだと合意をしているわけであります。  そこで、私が言う新しい日韓関係とは、いま先生がおっしゃったから私も率直に言うわけですが、時事通信と思いますが、世論調査を見ますると、日本の国民の一番きらいな民族はソ連になっております。その次が、数字は忘れましたが北朝鮮であります。北朝鮮から二%ぐらい下がって韓国になっております。今度は反対に韓国の方は、発表されませんけれども、韓国の新聞の世論調査によると、日本人ぎらいというのがこれまた多いわけであります。これは先生のおっしゃるとおり、まことに悲しいことであります。日本は過去の実績があります。私は韓国の方にも申し上げました。ドイツとフランスの話をしまして、過去の恩讐を越えて新しい関係を結ぶべきだと思う、それが新しい歴史だ、しかし日本は率直に申し上げられません、率直に言えば、過去のことがあるから大国ぶってだとかあるいは内政干渉をするとかという感じをあなた方に与えます、また、そう言いながら、日本国民は、かつての気持ちから、韓国に何だかこうという感じを持っておる。韓国は、先生御承知のとおりに、李承晩大統領以来、学校の教科書をごらんになったと思います、全部抗日、排日、侮日の教科書であります。それで教育を受けてきた方が今日の指導者の方々であります。これから日韓関係は始まらぬと私は思うわけであります。この過去の恩讐を越えて、日本は隣国であり友邦国である、しかも過去において日本は悪いことをした、打った方は忘れやすいけれども、打たれた方は忘れにくい、これは私も決して忘れてはない、これが私の公的なことであります。しかし韓国の方もそこを御理解願って、こういう意味では両方から反省し合って、教育、文化交流、あるいは国民同士の交流等を深めて、日韓の国民同士が手を握って助け合おうじゃないか、こういうのが新しい関係だと私は念願しておるわけであります。それをできずにいまのままうやむやにやることは、また再び誤った日韓関係をつくってはならぬ。そのために、がんこだと言われても、極悪非道だと言われても、ここはひとつ本当にわかるまではじっくりいったらいいというのが私の基本的な考え方であります。  しかし、問題については、なるべく早く、しかも両方が理解し合って実現しなければならぬなと私は腹の中では十分考えるところでありますが、韓国の実情も先生よく御承知でありましょう。良識派と、もう一つは、日本はわれわれに悪いことをやったのだから、これくらいあたりまえじゃないかと言わぬばかりの方もおるわけでありまして、そういうことをわれわれが言うと新しい問題を起こしますから言いませんけれども、そういうことも十分考慮して、御意見を承りつつ、また私は外務大臣として誤りのない、いわゆる日本経済協力の基本方針のもとにこれを解決していきたいと考えておるわけでございます。
  259. 中野寛成

    中野(寛)委員 いろいろ聞きたいことがございましたが、丁寧な御答弁もございまして、時間がないようでございますから、時期を改めてまた具体的なことをお聞きしたいと思います。  ありがとうございました。
  260. 國場幸昌

    國場委員長 辻第一君。
  261. 辻第一

    ○辻(第)委員 外務大臣はきのうの外務委員会で、国連包括交渉に賛成するようアメリカ説得する旨答弁をされておるところでありますが、けさのテレビ報道によりますと、レーガン大統領は改めて包括交渉には冷たい態度を示したというふうに言われております。簡単なことではないようであります。そこで、アメリカに対して一層強い働きかけをする必要があるというふうに思います。どのようにされるのか。また、アメリカ以外の先進国は包括交渉に賛成をしているようでございます。アメリカに対してこれらの先進国が連係をして働きかけるということが必要であろうと思います。そのための努力をすべきであると思いますが、いかがでございますか。
  262. 園田直

    園田国務大臣 包括交渉についてはアメリカ以外は賛成であると、おっしゃったとおりであります。しかしながら経緯がありまして、西欧諸国も当初は包括交渉には賛成でなかったはずであります。それがだんだんと南北が話し合ううちに理解をされて、西欧諸国は包括交渉入るべし、こういう意見に変わり、アメリカだけが残っている、こういうのが実情であります。わが方は、国連総会の演説でもはっきりいたしましたとおり、包括交渉を早期に開始すべきだということを公的に私は表明いたしております。と同時に、米国に対しても、南北問題の重要性及び南北問題の展望等を話して、よりよきパートナーとして非常に率直に包括交渉に入らるべきだということを要請をし、努力をし続けてきたところであります。  レーガン大統領の演説の中に包括交渉が全然触れられていなかった、どうもこれは包括交渉は反対じゃないかということでありますが、私は、米国は、いや、そうじゃないともまた言えないわけであります。しかし、反対だときめつけることも過早でありまして、まだ包括交渉について米国がノーとははっきり言ってない。私の表明についてもだんだんと理解を示されたのではないかという印象を私持っているわけでありまして、やはりこの南北会議の場所で、いまおっしゃいましたように、南はもちろん西欧諸国とも相談をしながら、お互いに米国に向かって、包括交渉に入るべきだと、米国が入らなければ意味がないわけでありますから、そういう努力は最善の努力をいたします。
  263. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、日韓の経済協力問題で大臣は、安保がらみの経済援助は憲法違反、このように答弁をされてきているところでありますが、この見解は将来とも変わらないのか、これからの内閣を拘束するということなのか、この点についてお尋ねをいたします。
  264. 園田直

    園田国務大臣 日本経済協力が他国の軍事防衛の肩がわりをするものではならぬということは、これは国会決議等もございますので、これは大臣がかわったり内閣がかわって変更されるべきものじゃないと私は解釈しております。
  265. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、韓国に対する経済援助で先ほど言われたような立場をとられる、そういう以上、日韓の軍事関係についても完全に否定をされるのかどうか、お尋ねをいたします。
  266. 木内昭胤

    ○木内政府委員 韓国に対しまして、わが国として、これを軍事協力ができないということは先ほど大臣の御答弁のとおりでございまして、したがいまして、経済技術協力あるいは文化面での協力ということに限定されるわけでございます。
  267. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、どんな形であれ、日韓軍事協議あるいは軍事協力というものは憲法上できないということを確認してよろしいですか。
  268. 木内昭胤

    ○木内政府委員 私が申し上げましたのはいわゆる軍事協力でございまして、それ以外のたとえば自衛官の韓国訪問であるとかあるいは韓国の軍人さんの方々、たとえば若い士官の候補生等が防衛大学を訪問するというような事実がこれまでございまして、これは親善を目的とし、また人物交流という一環で御理解いただけるわけでございまして、軍事協力の枠外の交流関係であるというふうに考えておるわけでございます。
  269. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、いわゆるリムパック82に韓国が参加をした場合、これはアメリカが中心ということでありますが、日韓合同演習ということになるわけであります。外務大臣はそうなることは不適当なこととお考えになりますかどうか、お尋ねいたします。
  270. 木内昭胤

    ○木内政府委員 リムパックの問題はアメリカ日本関係でございまして、韓国という観点からこれまで議論をされておらないわけでございます。現在、防衛庁の方におかれては韓国との絡みでのリムパックということは恐らく念頭に置かれていないのじゃないかと推測いたしております。
  271. 辻第一

    ○辻(第)委員 いまそのようなお答えでしたけれども、韓国軍が参加をするという韓国側の報道があるわけであります。これはことしの六月十一日、韓国紙の毎日経済新聞というのがあるわけでありますが、この中で「今回の朝鮮半島問題協議は、米国側の要請によるもので、朝鮮半島紛争を前提とした米韓合同訓練チームスピリットが漸次大規模化され、来年春実施される環太平洋合同海上訓練には韓国海軍も新たに参加するのと関連、韓・米・日三国安保体制の構築が新しい局面に入ったものと、現地の軍事観測通(複数)は説明している。」この朝鮮半島問題協議というのは、ハワイで行われました日米安保事務レベル協議のことを言っているわけでありますが、このような韓国の報道があるわけであります。  このようなことでありますから、もし韓国が参加をするというような場合、これはやはり日韓合同演習ということになるわけでありますが、外務大臣いかがでしょうか、不適当なこととお考えになりますか。
  272. 園田直

    園田国務大臣 リムパック82に韓国が参加するということは聞いておりませんばかりでなく、本年四月米国、韓国に照会したところ、そういう計画はないということを承知しております。したがいまして、一つのニュースによって、仮定をとらえてこれを云々することは適当ではないと存じますので、そのお答えは遠慮いたします。
  273. 辻第一

    ○辻(第)委員 いまなぜこういうことをただすかといいますと、リムパック80に参加をした豪州の艦隊と自衛隊は、ことしの八月にも日豪合同演習をやっております。結局はリムパック80が契機となったということであります。日韓合同演習もこういうことになりはしないかと懸念するのは当然であるというふうに思うわけでありますが、大臣、あり得ることだと思うのですが、どうでしょうか。
  274. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 必ずしも私の主管する問題全部でございませんけれども、日豪の間で訓練が行われたとしても、これは特にリムパックと関係なく、従来自衛隊としては自衛隊の練度の向上のために第三国の艦隊と演習をしている例がございます。  それから、リムパックにつきましては先ほど大臣から御答弁のあったとおりでございまして、私たちとしては韓国がこれに参加するということは承知しておりませんし、リムパックについては、昨年の通常国会の予算委員会で、議論されたわけでございますが、自衛隊がこれに参加するのはあくまでも主催国米国との共同訓練で、そこで戦技の向上を図る、こういう目的で参加しておるわけでございます。
  275. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、リムパックには韓国がいま参加することはないというようなお話でありましたけれども、一般的に言いまして、政府は日韓合同演習というのは政治的には不適当だという観点に立っていらっしゃるかどうか、あえて聞いておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  276. 木内昭胤

    ○木内政府委員 これまで韓国からわが方に対しまして合同演習という提案もございませんし、現段階でその当否について申し上げることは差し控えさせていただきますが、いずれにしましてもその可否を決定する場合には、これは政策判断の問題かと存じます。
  277. 辻第一

    ○辻(第)委員 いまはその可否を判断するのは政策云々というふうに言われたわけでありますけれども、昭和四十七年四月十三日の衆議院内閣委員会で久保防衛局長が「法的根拠がなければやれないかというと、必ずしもそうではありません」「やはり事実行為」だと述べています。これ自身も問題だと思うのですが、さらに、「しかし、」「政治的な立場から見ると、やはりそれは不適当であるという観点に立っております。」と述べているのでありますが、この点についてはどうですか。
  278. 木内昭胤

    ○木内政府委員 過去において久保局長からそのような御答弁があったかもしれませんが、いずれにしましても、現在この問題につきましては先方からの提案もございませんし、いま白紙の状態でございますので、決めるとすれば政策判断の上に立って御決定いただくということではないかと思います。
  279. 辻第一

    ○辻(第)委員 やはりその点では、憲法上の問題から申しましても日韓軍事演習ということは許されないというふうに考えます。その点を再度強調をして次へ移りたいと存じます。  次に、韓国の練習艦隊が日本訪問をする、まだ公式には申し入れがないようですが、日韓の間で軍事関係を持たない、持てないということだと思うのですが、こういうものにはっきりと否定的な言明をなさるべきではないかというふうに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  280. 木内昭胤

    ○木内政府委員 過去におきまして、韓国の練習艦隊の日本訪問ということが、たしか山下元防衛庁長官が訪韓されたときに話題になったことは私どもも承知いたしておりますが、その後実現されないまま今日に至っております。したがいまして、現在そのような計画があるというふうには承知いたしておりませんけれども、韓国あるいはその他の国々の練習艦隊が訪日するということは、親善というような意味合いのもとに実現されるもくろみであると承知するわけでございます。
  281. 辻第一

    ○辻(第)委員 次に、防衛庁にお尋ねをいたします。  西水道いわゆる朝鮮海峡は二十三海里でございます。現在の日本では宗谷、津軽、対馬、この三つの海峡では領海三海里でございますが、将来領海十二海里をとることになったとき、そのときには、二十三海里しかない西水道封鎖については日韓間で連係あるいは協議というようなことが考えられているのではないか、この点はいかがでしょうか。
  282. 澤田和彦

    ○澤田説明員 いま御質問の対馬海峡でございますが、これは東水道、西水道ともわが国にとりましてのいわゆる重要海峡でございます。したがいまして、わが国の防衛に深いかかわりのある海峡でございますが、いま現在、韓国と壱岐、対馬の間にあります西水道、これにつきましては、わが国の領海、先生御承知のように特定海域ということで三海里にしております。そして韓国の方も、一般の十二海里より狭く領海を設定していると承知しております。したがいまして、この水道の中央部分に相当の幅のいわゆる公海の部分がございます。したがいまして、現在におきましては、もし有事の際にわが国の防衛上真にやむを得ない措置としてここの水道の——いま封鎖といいますと何か全部とめてしまうようなあれですが、私ども通峡阻止と言っておりますが、海峡防備あるいはわが国に武力攻撃を与えている相手国の艦船の通過を阻止するというようなことが必要になった場合におきましても、いま申し上げましたように、わが国の領海及び相当の幅の公海の部分につきまして有効な防衛行動がとれると考えておるわけでございます。  いま先生御質問になりましたような、将来もし両方の領海が広がって公海の部分がなくなってしまったらという御質問でございますが、これは将来の仮定の場合の設想でございまして、私どもちょっとこれにつきまして検討しておりませんので、はっきりしたお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましてもわが国といたしましては、わが国を防衛しますために必要がある場合には、わが国の領海及び公海におきまして自衛のための必要最小限度の行動をとるわけでございます。したがいまして、いま先生おっしゃいましたように日韓共同して対処するというようなことは考えておりません。
  283. 辻第一

    ○辻(第)委員 いま三海里のことを言われて、十二海里のことはまだなっていないので検討していないというふうに言われたわけでありますが、検討されているのじゃないでしょうか。  それから、これまた仮定ということになると言われるかもわかりませんけれども、十二海里になるということになれば、先ほど言いましたように二十三海里ですから、ここでは当然韓国との連係あるいは協議というようなことが考えられるわけですね。もし十二海里ということになってこのような韓国との協議あるいは連係というようなことになれば、これは現在の憲法上からいっても当然できないことであるというふうに考えるわけでありますが、その点はどうでしょうか。
  284. 澤田和彦

    ○澤田説明員 ただいまお答え申し上げましたように仮定の話でございますが、一般的に申し上げれば、わが国は自衛力を行使いたしますとき、一般的にわが国の領海、それから自衛のために必要最小限度の公海で所要の防衛行動を行うわけでございまして、他国の領海、領域に入るということは、憲法上問題があろうかと思います。
  285. 辻第一

    ○辻(第)委員 さらに申し上げますと、一九七七年の九月のアジア公論というのに、元海上自衛隊の幕僚長をされておりました北村謙一さんが「北東アジアの海上安保問題」ということで述べられているわけであります。  その中の部分としまして、日本と韓国の海軍作戦海域は、おそらく重複するものと考えられる。対馬と韓半島間の海域は、もし十二カイリ領海制が取られる場合、ところによっては双方の領海二十四カイリに満たないので、その場合、中間線で領海区分をすることになろう。したがって、軍事的見解を述べると、両国海軍間の協力、協調は、同海域で作戦が行なわれる場合、どうしても必要になる。しかし、両国間の軍事的協力は、両国の国内事情からみて、当分間はその実現が困難であろう。とはいうものの、韓日両国は上で指摘した問題をいかに解決すべきかについて、冷静、かつ現実的な態度で検討、研究しなければならない。 このように書かれているところでありますが、先ほどは検討はされていないと言われたわけでありますが、実際のところは検討されているのではないでしょうか。
  286. 澤田和彦

    ○澤田説明員 先ほど申し上げましたように、韓国との共同対処ということにつきましては、検討はいたしておりません。いま先生御質問のことは、再三申し上げておりますとおり仮定の話でございますが、一般的にあえて申し上げれば、いまの北村氏でございますか、これは個人的にいろいろそういうような意見もあろうかと思いますけれども、自衛隊といたしましては、もし対馬海峡、そして東水道のみならず西水道におきましても、わが国の自衛のためにいわゆる海峡防備を行う必要があると考えました場合には、わが国の領海及び公海部分につきまして防衛行動を行い、これによりまして必要最小限度わが国の自衛を全うできると考えているわけでございます。
  287. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、何回も申してなんですが、日米ガイドライン研究では、いかなる形でもこのようなことが扱われないと確言をしていただけますか。
  288. 澤田和彦

    ○澤田説明員 いま御質問のガイドラインでございますが、先生御承知のように、いわゆるガイドライン「日米防衛協力のための指針」の本文では、現在「日本に対する武力攻撃がなされた場合」の「海上作戦」というところで、海上自衛隊が主体となって実施する作戦の一つとしまして、「日本の重要な港湾及び海峡の防備のための作戦」というのを挙げております。したがいまして、ガイドラインに基づいて行われていますいわゆる共同作戦研究等におきましても、一般的な形で海峡防備のところは触れておりますが、いま御指摘のような対馬の特定の海峡防備でありますとか、まして韓国との共同対処というようなことを取り上げて研究しているわけではございません。
  289. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、日米ガイドライン研究ではそのようなことを検討されていないということでよろしゅうございますね。  次に、外務大臣にお尋ねをいたします。  日本と韓国の間で、先ほど申しました朝鮮海峡封鎖というような問題について調整をすることは憲法上も許されない、こういう見解でしょうかどうでしょうか——大臣ひとつ答えてください。
  290. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいまの先生の御質問の御趣旨、必ずしも十分理解したかどうか定かでございませんが、法律論として申し上げますと、先生十分御承知のように、わが国は憲法上集団的自衛権の行使はできないということになっております。  他方におきまして、個別的な自衛権というものは国際法的にも憲法上も認められておりまして、そういう個別的自衛権の行使に備えて、自衛隊が平時におきまして戦技向上のために種々の訓練を行うということはあり得るわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような憲法上許されておりません集団的自衛権の行使を前提とするような訓練あるいは演習というようなものは、いかなる国との間でも行うことは憲法の趣旨に反しよう、これは従来から政府が申し上げておるとおりでございます。
  291. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、集団自衛権でない場合は、いわゆる朝鮮海峡封鎖なんかについて調整をするようなことはできるということでしょうか。
  292. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、わが国の個別的自衛権の行使に備えて、自衛隊の方におきまして平素から種々の準備、訓練を行うということは、これは憲法上何ら差し支えないことだろうと思います。一般論として私が申し上げましたのは、第三国、これは韓国を含めてのことでございますが、いかなる国との間におきましても、集団的自衛権の行使を前提とするような形での訓練というものは認められないであろう、したがいまして、先生の御質問のような問題につきまして憲法との関係について申し上げれば、これはやはり個々の計画の内容というようなものに即して判断せざるを得ないということでございまして、一般論として憲法上できる、できないということになりまするとお答えいたしかねるということだろうと思います。
  293. 辻第一

    ○辻(第)委員 時間がありません。私は憲法上やはり許されないというふうに考えております。  次に、日韓の軍幹部の交流がふえてきているようでございます。特に韓国から日本へ、昭和四十六年には五件、昭和四十七年には八件、それから昭和五十五年になりますと三十件に激増をしている、このように聞いております。  それで、資料要求をいたしたいと思うのですが、昭和四十八年六月以降から今日までの韓国軍幹部の訪日状況、何年、所属、階級、氏名、目的、訪問先、期日、これを資料として提出をいただきたい。また自衛隊の幹部についても、昭和四十八年七月以降今日まで韓国を訪問された状況について資料として提出をいただきたい、このように要望をいたします。
  294. 山崎博司

    ○山崎説明員 ただいま四十八年以降の自衛隊幹部の訪韓状況、さらには韓国軍人の訪日の状況について資料要求がございましたが、私ども五十年以前の資料については廃棄してございますので、五十一年度以降ということで御了解いただきたいと思います。  それからなお要目については、私ども検討いたしまして提出の準備をしたい、このように考えております。
  295. 辻第一

    ○辻(第)委員 わかっている分で結構です。  次に、核兵器関連して私は質問をいたしたいと思います。  一九八〇年九月十二日に、ワルトハイム国連事務総長が「核兵器にかんする包括的研究」という報告をされております。この「第八章 むすび−「人間社会にたいする絶え間ない脅威」」というところについて、ここに述べてあることについて大臣にお尋ねをしたいと思います。  このワルトハイム国連事務総長の「核兵器にかんする包括的研究」は、本当にすぐれた報告であると私は考えているわけでありますけれども、先ほど申しました第八章の中でも、デンマークの核物理学者でノーベル賞受賞者でありますニールス・ボーア氏の言葉にあります「人間社会にたいする絶え間ない脅威」だということを述べておられるわけでありまして、また「人類が直面している現在の苦境は、たしかに例をみないものである。」あるいはまた「人類が今日のように真の自滅の危険に直面したことはなかった。」このようにも述べておられます。確かにいま世界核兵器、その数量と破壊能力は恐るべきものがあるわけであります。少なくとも四万発ないし五万発というふうに言われておりますが、広島型原爆に直しますと百万発だ、こういうふうにも言われているわけであります。このような本当に深刻な状況になってきておる。それを引き起こしております二つの軍事ブロックの核軍拡競争の悪循環というもの、本当に危機的な状況に達しているというふうにも思うわけであります。  そこで、その中に核の抑止力という問題について幾つか述べてあるわけであります。  まず最初に少し読んでみます。   核戦争によって引き起こされるであろう巨大な破壊をまえにして、全地球的な抑止状態の安定性についての決定的な憂慮が表明されるのは、当然である。その均衡の安定性についての論議は、抑止論の提唱者に大きな困難を与えている点の一つである。永久に核兵器とともに生き続けることが可能であると主張するためには、軍備競争の結果としてあらわれるであろうどのような技術的挑戦とも無関係に、均衡が常時、維持されねばならない。そのうえ、人的ないし技術的な性質の事故が起こってはならないのであるが、これは、ときどき報道される誤った警報やコンピューターの事故などの各種の事件に示されるように、不可能な要求である。遅かれ早かれ、このような事件の一つが真の事故を引き起こし、言いつくせないほどの結果をもたらすかもしれない。 そして、  誤りを犯せば、その結果はあまりにも重大である。誤りを犯す可能性があることは、あまりにも明白である。 このように述べております。  さらに、国連軍縮総会の最終文書でもあります永続的な国際平和と安全保障は、軍事同盟による兵器の蓄積のうえにつくり出すことはできないし、また、不安定な抑止の均衡や戦略的優位のドクトリンによって維持することもできない。 こういう立場を確認しておられるわけであります。  このようにすべての時期を通じて、どんな技術的な突破が行われようとも、それとは無関係に力のバランスが維持されなければならない、あるいはまた、人間によるミスだとか、あるいは技術的な性格の事故が全く起こり得ないということを前提にしてこの抑止力という理論が成り立っている。これを厳しく批判をされているわけでありますが、ワルトハイム国連事務総長のいまの報告の部分について、大臣はどのようにお考えになっているか、お答えをいただきたいと存じます。
  296. 園田直

    園田国務大臣 私は、本会議や予算委員会でもこれに関連した答弁をいたしておりますが、今日の国際社会の平和というものが、やはり核抑止力でも権衡維持されているということは否めない事実であると考えます。  しかしながら、いま読まれました事務総長の発言の後段、これが永久に続くはずはない、こういうミスがあったらどうするか、こういうことは核抑止力というものの理論を長く続けるわけにいかぬという議論には私も賛成でありまして、したがいまして、軍縮国連総会の一般演説においても、私、一方には、いま事務総長が言ったことと同じような意味を言っておりまして、核の拡大均衡を求めて核軍備競争が強まるようなことになれば、かえって平和に対する危険であるという懸念を持っておる、したがって、国際社会をより長期的により安定した基盤の上に置くためには、核と通常兵器の双方から成る力の均衡を維持しつつ、より低い軍備水準で平和と安全を確保し得るよう核軍縮を中心とする軍縮増進のための国際的努力を強化しなければならぬ、同時に、東西の対話、これが必要である、こういう主張を言っておることは、言葉は違いますが事務総長のただいまの発言と私の考え方が逆行するものではないと考えております。
  297. 辻第一

    ○辻(第)委員 いま大臣のお考え方、基本的には事務総長の考え方と一致をする、このようにお話しになったというふうに思うのですが、さらに申しますと、   もし仮に抑止の均衡が完全に安定した現象だとしても、この均衡に引き続き依拠することについては強い道義的、政治的反論がある。人類文明の消滅の展望が、一部の国によって自国の安全保障の増進のために利用されることは許されないことである。その場合は、人類の未来は、若干の核兵器保有国、とりわけ両超大国が認める安全保障の人質にされているのである。そのうえ、核兵器保有国と核兵器非保有国からなる世界体制を無期限にわたって確立することは受け入れられないことである。この体制そのものが内部に核兵器拡散の種子を含んでいる。したがって、結局は、それは自己破壊の源泉をはらんだ体制である。 このように述べられております。  このことは仮に抑止力の均衡が安定したものであったとしても、それは道徳的あるいは政治的にも許されないものである、こういうふうに述べられているわけでありますが、この点についても大臣は御賛成をいただけるのかどうか。
  298. 園田直

    園田国務大臣 核軍備を低い水準に抑えながら権衡を保ちつつ、同じ努力を対話に向けて、究極の目的は核廃絶であるということで私は結んでおりますが、そういう私の結びといまの言葉もこれまた逆行するものではないと思います。
  299. 辻第一

    ○辻(第)委員 さらにお尋ねをしたいと思うのですが、   そのうえ、核抑止論は、ある程度まで、技術と連動して発展してきたものであり、そのため、抑止論を実行するために利用できる手段の範囲がいっそう広く、いっそう複雑に、かつ、いっそう多様化してきたので、抑止論はますます複雑で高度なものになってきたという事実がある。ある意味で、抑止論はさまざまに仮定された核戦争のシナリオのうえに築かれた虚構なのである。 このように核抑止論に対して述べられておるわけであります。  さらに、   あらゆる論拠にもかかわらず、若干の国は、抑止の均衡は安定したままであろうと期待して、その安全保障認識の基礎を核兵器体系におく道を選択している。とくに超大国は、核兵器が超大国間の直接の衝突を抑止していること、および世界の他の地域におけるその影響力を増大させることの両方によって国家の安全保障を支えていると理解している。同時に、双方とも相手側が核優位を達成しはしないかと心配している。検証可能な軍縮措置が存在しないため、この心配は、核兵器庫のいっそうの量的増大と質的開発を正当化することに投影されている。しかし、たとえ双方が核の対等性を追求することで合意しているにしても、核軍備競争の結果、ただでさえ疑わしい抑止の安定性が減少する可能性は十分ある。それゆえ、核兵器保有国の安全保障が、どのような限定的な意味においても軍備競争の基礎のうえに維持されうるものかどうか、きわめて疑わしい。 こういうふうに述べているところであります。まさに核の抑止力というものは非常に危険だということが一層浮き彫りになってきているというふうに考えるところでございます。  さらに、   核軍縮への道が長く困難であるにしても、ほかにとるべき選択はない。核戦争の危険を防止することなしに平和はありえない。もし核軍縮が現実になるものとすれば、恐怖の均衡による相互抑止という行為は放棄されなければならない。抑止の過程を通じての世界の平和、安定、均衡の維持という概念は、おそらく、存在するもっとも危険な集団的誤謬である。 このように述べております。「恐怖の均衡による相互抑止という行為は放棄されなければならない。抑止の過程を通じての世界の平和、安定、均衡の維持という概念は、おそらく、存在するもっとも危険な集団的誤謬である。」この点について大臣はどのようにお考えになるでしょうか。
  300. 園田直

    園田国務大臣 りっぱな論文であると考えておりますが、理想と現実が遊離をするか調整されていくかということが問題でありまして、核の抑止力による均衡というものが破壊できるような世界環境をつくることがわれわれの努力目標であります。
  301. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは大変端的にお尋ねをしたいのですが、ワルトハイム国連事務総長の核抑止力に対する危険性、その誤りということがるる述べられてきたわけでありますけれども、これに対して基本的に御納得いただけるのか、この辺はどうでしょうか。
  302. 園田直

    園田国務大臣 そういう方向に現実の社会が動きますように究極の廃絶を目指して核軍縮を訴え、かつまた低い水準における均衡を保ちながら話し合いを進めていく、その話し合いによって核の均衡というものがなくなるような社会をつくる、こういうふうに考えておるわけであります。
  303. 辻第一

    ○辻(第)委員 ところで、昨年の国連での核兵器使用禁止決議反対をされておるわけでございますが、この反対の理由の最たるものはやはり核の抑止力を前提にして反対をされているようでございます。私は、いま大臣がこの報告について基本的には賛成をされたように感じておるわけでございますけれども、核兵器使用禁止を本当に実現されるような方向で今後進められるべきである、このことを申し上げたいと思います。その点についての御見解を承りたいと存じます。
  304. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  昨年の国連総会におきましてインドから核兵器の不使用ということに関する決議案が出ました。それからまた、ソ連から核兵器の不配備ということに関します決議案が出されました。この二つの決議案に対しまして私どもといたしましては、核兵器と通常兵器の総体のバランスの上に相互の抑止に基づく安全保障が存在しているという現在の国際社会におきまして、核兵器だけをとらえてそれの展開あるいは使用に一定の制限を加えるということはかえって現実の国際軍事パランスを不安定にする、ひいては平和の維持、強化に資さないおそれがある、かつまた実現性にも乏しいという考え方から日本反対をしたわけでございます。
  305. 辻第一

    ○辻(第)委員 最後に、今度またそういうような決議案が出されるならば、反対ではなしにぜひ賛成の方に回られるべきである、私はこのことを申し上げて、ちょうど時間が来ましたので、終わります。
  306. 國場幸昌

  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まず、十四日にアラファト議長と総理、外相は会談を持たれたわけです。その際に、いわゆるファハド八項目についてアラファト議長は同意をしたのかどうか、つまり賛成の意を込めた同意をしたのかどうか。というのは、園田外務大臣もずっと言い続けておられました、これは中東和平交渉のたたき台になり得る、いま来日しておりますアラブ首長国のオタイバ石油相も、早速来月アラブ諸国首脳会議が開かれて、そこでこの八項目をたたき台にして和平の案をつくる、早速来月それが訪れておるわけです。したがって、アラファト議長がこの八項目を同意したのか、あるいは単なる評価をしている場合と意味が非常に違う。この点は大変重要であると思うのです。その十四日の前日の十三日に日パ議員連盟及び各党がアラファトさんと会いました。日パ議連が会ったときには賛成したか単なる評価であったか、その聞いた人によって意見が分かれた。私どもの党が会ったときには明らかに評価と言いました。したがって、この点は非常にあいまいです。しかも重要である。したがって、総理あるいは外務大臣が会われたときに議長はこの八項目について明確に同意ということを言ったかどうか、ひとつその点を明らかにしていただきたい。
  308. 園田直

    園田国務大臣 これは御発言のとおりに、われわれにとってよりも当事者にとってきわめて緊要な大事な問題でありますから、よく注意して事実をなるべくありのままに申し上げたいと思います。外交慣例からいうと、会談の場合にはこちらの言ったことは別として、向こう側の言われたことはなるべく遠慮するのが当然であります。しかしながら、いまのサウジの八項目に同意したかどうか、こういうことは今後にも非常に大きく影響してくるわけであります。  そこで、総理との会談では、総理の方からこの八項目について触れておられません。  それから、私との会談では、これと関連した話でありますが、私が例によって、イスラエルにはパレスチナの自治権を認めろ、パレスチナはイスラエルの生存権を認めろ、この世からイスラエルを抹殺するというようなことではよくない、こういうことを強く要請しました。顔は穏やかでしたが非常に強い口調でそれに対して次のような意見を言いました。イスラエルはこうこうこういう兵器を持って軍事大国であります、軍事力をもって他国にいろいろな脅威を与えておる、われわれは何をもってこれに対抗しますか、われわれのやることを非難されるならばわれわれは何をもってやりますか、それでは軍隊を持って戦いをやってきた過去の歴史の国々はどうなりますか、こういう強い反発をして、イスラエルの生存を認めるということについては、それを言うたら自分たちは裸じゃありませんかと言わんばかりの言葉でありましたから、イスラエルの生存に対する同意は、はっきり同意はしなかった、現段階では拒絶をされた。次に、いま誤解を受けておる、これは聞きようでは非常に間違いの多いところでありますからそのとおりに言いますが、アラファト議長の方からいろいろな問題のときに、PLOの方は平和主義者である、自分たちは平和的な努力をしているのだというところを強調されたくだりで言われた言葉は、サウジのファハド八項目の提案等に対しても、自分の方が賛成してもイスラエルは拒絶したではないか、こういうことの意味でありまして、これに同意であります、こういう言葉ではございません。自分の方が同意してもイスラエルははっきり拒絶したではないか、それくらい自分たちの方は平和的な努力をしているのにイスラエルが拒絶したので、それをどうして自分たちだけ一方的にのむ必要があるか、こういう意味のことでありまして、これは前後の文章、表情その他からいって、私は注意をしながらいまのことにお答えしますが、大事な点でありますから、これは楢崎委員から私の意見が正しいかどうかは本人にも照会された方が間違いがないかと存じます。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、いまの御答弁の後段の方、PLOは賛成したが、イスラエルは賛成しなかったということであれば、PLOは一応賛成したわけですね。
  310. 園田直

    園田国務大臣 賛成しても、であります。私の方が賛成してもイスラエルは拒絶したから賛成しないじゃないか、こういう意味であります。
  311. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、その点はやはりあいまいですね。
  312. 園田直

    園田国務大臣 このやりとりを見て、PLOの議長が八項目を同意をしたと断定するのは過早だと思います。
  313. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、多分そのとおりに外務省はマンスフィールド大使にお伝えになったと思うわけですけれども、次に外務大臣は、これは中東和平のたたき台になり得る、何回もお答えになりました。現にそうなります。外務大臣がたたき台になり得ると言うことは、この八項目はやはり妥当性を含んでおるからたたき台になり得るという外務大臣判断になったと思いますが、どうですか。
  314. 園田直

    園田国務大臣 この八項目は、わが方は評価いたしております。かつまた、この八項目は国連決議の線にそれたものではございません。したがいまして、この八項目というのは、これがこのままうまくまとまればいいなと思っております。
  315. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり日本政府としては妥当である、あるいは評価をしておるといまおっしゃいました。そうすると、これは後ほど官房長官お見えになったときに再度念を押しますけれども、外務大臣としては妥当である、評価する。ということは、これは原則的には支持をするという考えが底流にあるというふうにわれわれは理解をせざるを得ませんが、どうでしょうか。——外務大臣のお考えを聞いておるのですがね、外務大臣、早く退席されるそうですから。
  316. 村田良平

    ○村田政府委員 この八項目はいろんな点を含んでおりまして、その中には先ほど大臣からの御発言のように国連決議の線に沿ったものもたくさんございますが、いわば新しい点というのも含んでおるわけでございます。したがいまして、これらの点につきましては、今後関係当事者の話し合いというものが持たれると思いますし、その際に改めて評価を下すべきである。したがいまして、全体としては評価すべきものであるけれども、個個の点それぞれにつきましてはさらに検討を要する点があるというふうに考えております。
  317. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は全体のことを聞いているのでして、個々のことを聞いてないのです。それじゃ個個のことを一つだけ聞きましょう。この八項目の中でイスラエルの生存権が入っているということは、どの項目からそのような解釈になっておるのですか。
  318. 村田良平

    ○村田政府委員 イスラエルの生存権を含むと通常解釈されておりますのは、第七番目の項目でございまして、域内諸国家の平和裏に生存する権利の確認というところでございます。
  319. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本政府はそう解釈しているのですね。
  320. 村田良平

    ○村田政府委員 この点につきましては、従来国連安保理決議の二四二におきましても、類似の表現がございまして、その点はわれわれそのように解釈をいたしております。
  321. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に、日本政府はPLOがパレスチナを代表する機関であるということは認めておる、唯一正統、まだそこまで行ってないというお答えのようでしたが、まず一九七四年十月二十八日のアラブ諸国首脳会議決議です。これにはPLOをパレスチナ人の唯一合法的な代表として認めておりますね。それから一九八〇年七月二十九日の国連パレスチナ問題緊急特別総会の決議では、外務大臣がおっしゃったとおりパレスチナ五項目でパレスチナ人民の代表であるPLO、こうなっておりますね。それから、ことしの一月二十五日第三回のイスラム諸国首脳会議の宣言、これはまたパレスチナ人の唯一の合法的代表たるPLO、こうなっておりますね。国連のオブザーバーにPLOがなっていますね。これは一つだけなっていますね、パレスチナを代表するものとして。そうですね。日本政府が唯一正統と認めるかどうかは別として、私がお伺いしたいのは、つまり中東を中心とする国際的な認識としてはPLOをパレスチナ人を代表する唯一の機関である、客観的な事実としてはそうお認めになりますね。日本政府の認識は別として、国際的に見て客観的な事実です。
  322. 村田良平

    ○村田政府委員 ほかにパレスチナ人の別の団体がございまして、そのような地位を占めているものがないという意味におきまして、ただ一つの代表と認められている団体であるということは言えると思います。
  323. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まさしくそのとおりであります。そこで問題は、国際的な唯一正統な代表だという取り扱いを受けている、客観的な事実です。日本はそういう認識に立っていない。この差というのは一体どこにあるのでしょうか。——それは先に言っておきます、時間がないから。いわゆる国家としての体をなしていない。簡単に言えばそういうことではないかと思うのですが、そうなんですか。あと一問外務大臣に聞かなくちゃいけませんので、簡単にお願いします。
  324. 村田良平

    ○村田政府委員 唯一正統な代表ということの意味合いでございますけれども、これにはやはり法的側面というものもあるのではなかろうかというふうに私どもとしては考えておりまして、ある民族を代表する唯一正統という場合には通常政府のことを考えている、あるいは政府承認の問題であるという点が基本的なわれわれの態度でございます。加えまして、七四年に先ほど楢崎委員から御指摘になりましたアラブ首脳会議決議の持っております最も重要な意味は、それまで、六七年戦争まで西岸に施政権を行使しておりましたヨルダンではなくて、PLOが今後パレスチナ人を代表して当事者となる、こういう意味でございまして、それが一番大きい意味合いでございますから、いわばこれはアラブの内部の非常に重要な政治問題でございます。わが国からそのことについてとやかく申す、あるいは判断を下すべきことではなくて、むしろパレスチナ人あるいはアラブの中で判断を下さるべき問題である、このように考えております。
  325. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと順序が不同になりますけれども、外務大臣一つ別の問題を聞いておきます。  いわゆる日米の軍事技術協力の問題です。きのうも私は傍聴いたしておりました。詳しい点は、後で外務大臣がおられなくなってからほかの外務官僚に聞きますけれども、外務大臣にぜひ御認識をいただきたいのは、いままでの外務省のこの問題に対する態度は、法的な根拠をあえて言えばMDAであり、地位協定十二条一項ですね。きのう十二条四項と言ったけれども、あれは間違いでしょう、あなた。後ではっきりしますけれども、あれは食言になるんですよ。その二つを挙げられました。ところが、これはMDAの成立の経過からいいまして、きのう何かどなたかちよろちょろと出てきて、いや、それはそうだ、権利義務の関係は明文化されていないけれども一般的な義務があるということをおっしゃっていますけれども、あなたは一九五三年から五四年にかけてのこのMDA成立の経過を知っていますか。これは、時間がないかち外務大臣が行かれてから詳しく申し上げますけれども、いずれにしてもこれは権利義務がないのです、法的根拠と言われているものは。  そこで問題は、たとえば地位協定の十二条であれば何々することができる、MDAでも合意のもとにというような文章になっている。つまり、やってもいいし、やらなくてもいい。根拠とされておる法律はそういうものですよ。したがって、権利義務がないのだから、やるかやらないかは日本政府判断だ、つまり政治判断。いいですか、条約上の義務はないのだから、政治判断を求められたときは当然いわゆる武器禁輸原則、これは国会決議、つまり国是、これが政治判断の基準になる。当然だと思いますけれども、どうでしょうか、外務大臣。この一点だけ外務大垣のお考えを聞いておきます。
  326. 園田直

    園田国務大臣 義務協定でないことは御発言のとおりだと私も思います。したがいまして、その政治的判断日米の個別的関係の義務によるものと考えます。
  327. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、しかし国是があるでしょう。武器禁輸原則という国是があるから、これが政治判断の基礎にならなくてはおかしいではありませんか。
  328. 園田直

    園田国務大臣 その際、武器原則というものが一つの範疇になることは通産省が言っているとおりであります。
  329. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なぜ、エリートをもって任ずる外務省検討に時間がかかるのか。これは、この点の問題が非常に重要であるからでしょう。どうなんでしょう。まだ聞いていませんよ。何も聞いていないのに、何をあなた答えるのか。  つまり、このMDAなり地位協定というものと武器原則の兼ね合いといいますか、優劣は決まっていると私は思うけれども、その辺に何か理屈をつけるために時間がかかっておるのではないかと私は思うのです。私どもから言えば、これは時間をかける必要ない。はっきりしている、義務じゃないのだから。
  330. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま御指摘の点については、条約協定解釈については外務省の所管でございます。したがって、その点についての外務省見解、これを取りまとめるのは当然でございます。しかし、本件については、ひとり外務省のみならず多くの省庁が関係しております。そこで、まず外務省としての法律的な見解を出すということに時間がかかっておりますし、今後各省庁との意見の交換ということに相なって、そして政府全体としての考え方が決まっていくということだと思います。
  331. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣、よろしゅうございます。——外の方は残るのでしょう。  引き続いて、MDAというのは国会でいつから出てきたのですか。それまでMSAと言っておったのですけれども、これは別物なんですか、同じなんですか。——ちょっと待ってください。官房長官が見えられましたので、時間がないそうですから官房長官に先に聞きます。  いまも園田外務大臣にお伺いした問題ですけれども、非常に重要でありますし、官房長官の記者会見の内容にもかかわりますから、一点お伺いをしたいと思います。  官房長官がアラファト議長の問題について記者会見されたのはおとといでございますか、これは記者会見ですから新聞報道による以外にないのでありますけれども、官房長官は、サウジの八項目、これは日本としても今後の中東和平交渉の基礎になり得るものと思うというふうに御自分の考えを述べられたと報道されておりますが、そのとおりでございますか。
  332. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が申しましたのは、この八項目提案なるものは八月八日であったかに現地の新聞で報道されたもので、厳密にどういうものであるかということは別として、一応そういう内容として考えると、これからわれわれが物を考えていく上での仮説になり得るものであると考える、こういう言葉を使いました。その仮説という言葉が、新聞によってはたたき台というふうにも表現されておりますが、私の使いました言葉は仮説という言葉でございます。
  333. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは官房長官として、その八項目が中東和平の場合の有力な手がかりと申しますか、そういう評価があっての上のことと思いますが、どうでしょうか。
  334. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これから関係者が物を考えていきます上の手がかりになるものだと考えております。
  335. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう評価であれば、われわれとしては、原則的には八項目というものは妥当なものとして日本政府は支持の意向だというふうに思わざるを得ないのですが、どうでしょうか。
  336. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 というものとしてわれわれが読みました八項目は、われわれが考えておりますこと、たとえばパレスチナの自決権を認めておる、あるいはイスラエルの生存権の承認を示唆しておるように思える等々、積極的な要素を持っておるように思われますけれども、これを中心に議論をしていくことによってもう少し明らかになる。いまは必ずしも明らかでないといったような部分もございますから、全面的にこれはこれでいいのだと申すのにはわれわれの知識なり検討——あるいはひょっとして故意にそうなっておる部分もあるかもしれません。それでこれから解明しなければならない部分もあると存じます。
  337. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 個々についてはあるいは問題があるかもしれない。しかし、全体的にはこれは和平交渉のいわゆる仮説でもいいですし、そういうものとして評価できるという点は、さっきもおっしゃったとおり間違いないのでしょう。
  338. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この中には少なくともわれわれが考えていることと同じ方向を示唆している部分があると考えます。
  339. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お忙しいのに御苦労さんでした。ありがとうございました。  それでは早速もとの問題に返りますけれども、MSAと言っておったのが、いつからMDAになったのですか。
  340. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 委員御承知のとおり、日米相互防衛援助協定でございまして、これは英語で略すればMDAでございます。MSAというのは、このMDAの根拠になりました、当初根拠になっていたアメリカの国内法、それが相互安全保障法ということでございまして、それを略称するとMSA、こういうことでございます。
  341. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのとおりだと思うのですね。しかし、ずっと、六〇年安保のときも岸さんなり藤山さんなりあるいは赤城さんなり、MSA法ということでMDAを言っていらっしゃるのですね。その辺はどういうことになっているのですかね。政府側が混乱しているのですか。
  342. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私、ちょっとここで権威をもってお答えできるかどうかわかりませんけれども、その当時の国会答弁、全部洗わなければなりませんけれども、MSAというふうに言われているとすると、いわゆるMSAということで、本来はMDAと呼ぶものをアメリカの国内法のMSAということを引用して説明していたのではないかというふうに思います。
  343. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは全然違うのです。いいですか。聞かれる方の野党の方も、あるいは愛知さんも含めて、MSAという言葉を使っているのですね。それはMDAのことを言っているのです。これは間違いないですね。安保条約とMSA協定との関係について、ずっとやっています。このMDAは、もう昭和二十九年からできているのですからね。これは昭和三十五年の論議なんです、MSA協定として。だから、私は政府自身が混乱していたのじゃなかろうかと思うのです。そういうあなたのような認識でこれは取り扱っていませんがね。それをひとつ明確にしておきたいと私は思うのです。  そこで、私がさっきちょっと申し上げましたMDAの成立の経過、これは、いいですか、こういうことになっているのですよ。いわゆるアメリカのMSA法律による日本への援助というものを日本が願って、そして、まず一九五三年九月に、保安庁案として防衛五カ年計画を差し出すのです。そして今度、九月には、吉田・重光会談で、保安隊を直接侵略対抗を任務とする自衛隊に改編するということで、例の池田・ロバートソン会談になる。そして最終的に、一九五四年の一月になって、岡崎・アリソン会談になる。そしてやっと防衛計画を差し出して、それの引きかえにこのMDAができた、一九五四年の五月一日。つまり、義務というのは、この経過から見れば、日本が防衛力を増強する義務なんです。それと引きかえにMDAができた、経過からいって。それからさらに、この地位協定十二条の根元になった行政協定の方は、やはり十二条でしょう。間違いないですね。そこでうなずかれればいいです。うなずかない。じゃ、どこですか。
  344. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 行政協定でも、十二条一項でございます。
  345. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのとおりでしょう。うなずけばいいんですよ、時間がかかるから。  行政協定十二条には、権利という言葉が確かに書いてある。ところが、地位協定になってこれが抜けているのです。だから、地位協定は権利義務の関係がないことは明白だ。  そこで和田さん、あなたが、これは新聞です、ことしの九月二十四日に防衛庁で記者会見した。そして、何ですか、あなたは「民間用として開発された技術で軍事目的に転用可能な両用の技術については武器輸出原則の制約なしに対米提供できる」という解釈をデラウアー米国防次官に言ったのですか。
  346. 和田裕

    和田(裕)政府委員 お答え申し上げます。  民間におきまして、民生用に開発されました民間技術でございまして、これはたまたまアメリカにおきましてそれをどういうふうにお使いになるかわかりませんけれども、そういったいわば汎用性のある技術につきましては、もちろん通産省の方が個別審査されるわけでございますが、基本的には、武器輸出原則の中でも輸出できるように聞いておるということを申し上げました。
  347. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた、それは違うのです。いいですか。ことしの二月段階で一生懸命この武器輸出原則国会で論じた。これは、佐藤さんの四十二年時代のやつを、さらに四十七年に当時の田中通産大臣に私が確かめて、そしてあの五十一年の三木さんの三原則になったのです。田中見解と同じですよ。いいですか。そして、このときの、ことしの二月のやりとりで、田中通産大臣は、ソフトウエアについても、これは武器輸出原則並びに政府方針、そういうものを強調して、行政指導を強く厳にする、それから、いわゆる武器日米の共同開発、これについても同じようにやる、こういう認識なんです、民間用であろうと。だから、あなたはこういう勝手なことを何で向こうで言ってくるのですか。それであなたはそれの根拠に、何ですか、一九六二年十一月十四日に交わされた防衛資料情報交換書簡、これに基づいて、翌日、一九六二年十一月十五日、ペンタゴンと防衛庁の間で、資料交換に関する取り決め、これをやって、これがあるから何でもできるのだ、あなた、アメリカでそう言ったのですか。
  348. 和田裕

    和田(裕)政府委員 御質問は二つあったように思います。  第一点の、どういった根拠で御説明したかという点でございますが、これは実は、行く前に事務的に関係各省庁とも御相談して、打ち合わせたところに基づきまして私が説明した、もちろん、説明したのは私の責任ではございますけれども、そういったことでございます。  それから第二点の資料交換取り決めにつきましての御質問がございましたが、私が申し上げましたのは、資料交換取り決めによりまして防衛庁と国防総省との間で付属書に、個別的な技術につき幸して、こういったものにつきまして情報なり資料の交換をするということが定められた場合には、そういったような技術情報あるいは技術資料については交換することができるという点を申し上げておるわけでございます。
  349. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 はっきりしておるのだ。できる、と。それはできるのです。やらなくてもいいのです。いいですか、もう一遍繰り返しますと、外務省も言っている、この法的根拠はMDAと地位協定の十二条一項、これにまず権利義務がない。それに基づいて一九六二年十一月十四日にいわゆる交換公文ができた。そうしてその交換公文で、ひとつ両政府の間で行うべき細目取り決めに従って、これはそのMDAの一条一項に基づいて細目取り決めをしましょうという書簡ですね、これは。それに基づいていま言ったその資料交換に関する取り決めが翌日できた。  これで最後にします。それでこの資料交換に関する取り決め、これは昨日、これは出せないとおっしゃったね、マル秘だから。それじゃ、私がいまから聞きます。いいですか。  この取り決め自体は非常に事務的なものであって手続的なものを決めておる。そしてその細目については付属書があって、その中にいわゆる交換する具体的な兵器あるいは技術名が明らかにされている。間違いないですね。イエスかノーだけでいい、時間がないから。
  350. 和田裕

    和田(裕)政府委員 交換する範囲につきましては、技術資料それから技術情報ということでございまして、いま先生おっしゃいましたような具体的な武器というものは入っておりません。
  351. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あるでしょう、付属書で。うそを言っちゃいけませんよ、あなた。付属書はないのですか。
  352. 和田裕

    和田(裕)政府委員 いまお尋ねが、イエスかノーかということだったので、付属書があるかないかについては答弁を省かせていただいたわけでございますが、確かに本文と付属書というものはございます。
  353. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あって、その付属書の中に、結局具体的な交換をする武器の、あるいは技術の名前が、武器名なら武器名、技術名なら技術名がはっきりしている。いまの取り決めでは、その件数は五十前後だと、このように推察する。そして、その中には赤外線を含むソフトウエアから軍用食糧まで含まれている。間違いないですね。
  354. 和田裕

    和田(裕)政府委員 お答え申し上げますけれども、再度申し上げますけれども、この資料取り決めを扱っておりますのは技術情報と技術資料でございます。それからその次にどういったものが入っているかということについては、ほかの場所でも申し上げたかと思いますが、申し上げられません。赤外線が入っているかということでございますが、入っておった事実がございます。
  355. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もうこれでやめますがね、あなたはどうも言葉があいまいですな、私も舌が短いけれども。よくわからないんだな。要するに、私が指摘した点は間違いない。それで、これはアメリカとの関係があるから、そのものは出せないかもしれない。しかし、大体のことがわかる程度の説明書は出せると思うが、どうですか、資料として。あなたじゃない、外務省に聞く。
  356. 和田裕

    和田(裕)政府委員 資料交換取り決めそのものは私どもでございますので、私の方から答えさせていただきますが、概要を取りまとめたものを提出させていただきます。
  357. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いつまでに出しますか。
  358. 和田裕

    和田(裕)政府委員 なるべく早く提出いたします。
  359. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どのぐらいですか、なるべく早くというのは。
  360. 和田裕

    和田(裕)政府委員 日数をもって数える程度の期間で出させていただきます。
  361. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日数をもって数える程度とはどういうことだかわかりませんな。
  362. 和田裕

    和田(裕)政府委員 これから作成のかげんもございますので、いまはっきりお約束はできませんけれども、たとえば十日以内とかそのぐらいの日にちで……。
  363. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 来週いっぱいで出せますか。
  364. 和田裕

    和田(裕)政府委員 来週いっぱいですか。
  365. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ注文しておきますが……。
  366. 和田裕

    和田(裕)政府委員 御要望はよく承りまして、そのようにさせていただきたいと思います。
  367. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、要望じゃないんだ。私は十九日と二十日に行特でやりますから、それまでに出してください。
  368. 和田裕

    和田(裕)政府委員 なるべく御希望に沿うようにいたします。
  369. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 上原議員からも要求があっているでしょう。土井議員からも要求があっているでしょう。もう逃れられないのじゃないですか。いいですな。
  370. 和田裕

    和田(裕)政府委員 なるべくそのように……。
  371. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、これで終わります。長くなりまして済みません。
  372. 國場幸昌

    國場委員長 次回は、来る二十二日木曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開催することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会