運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1981-03-13 第94回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月十三日(金曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  三月十二日     辞任         補欠選任      中西 一郎君     長谷川 信君      近藤 忠孝君     山中 郁子君  三月十三日     辞任         補欠選任      熊谷  弘君     藤井 孝男君      松尾 官平君     竹内  潔君      穐山  篤君     志苫  裕君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木村 睦男君     理 事                 亀井 久興君                 古賀雷四郎君                 平井 卓志君                 宮田  輝君                 粕谷 照美君                 和田 静夫君                 渋谷 邦彦君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君     委 員                 岩動 道行君                 板垣  正君                 岩上 二郎君                 藏内 修治君                 源田  実君                 下条進一郎君                 鈴木 省吾君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 竹内  潔君                 谷川 寛三君                 玉置 和郎君                 名尾 良孝君                 長谷川 信君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 堀江 正夫君                 増岡 康治君                 八木 一郎君                 山崎 竜男君                 小野  明君                 大木 正吾君                 志苫  裕君                 竹田 四郎君                 寺田 熊雄君                 村沢  牧君                 安恒 良一君                 大川 清幸君                 桑名 義治君                 田代富士男君                 中野  明君                 山中 郁子君                 柄谷 道一君                 前島英三郎君    国務大臣        内閣総理大臣   鈴木 善幸君        法 務 大 臣  奥野 誠亮君        外 務 大 臣  伊東 正義君        大 蔵 大 臣  渡辺美智雄君        文 部 大 臣  田中 龍夫君        厚 生 大 臣  園田  直君        農林水産大臣   亀岡 高夫君        通商産業大臣   田中 六助君        運 輸 大 臣  塩川正十郎君        郵 政 大 臣  山内 一郎君        労 働 大 臣  藤尾 正行君        建 設 大 臣  斉藤滋与史君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    安孫子藤吉君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       中山 太郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       中曽根康弘君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  原 健三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  大村 襄治君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  鯨岡 兵輔君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   石川  周君        内閣審議官    後藤 利雄君        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        行政管理庁行政        監察局監察審議        官        佐々木晴夫君        防衛庁参事官   上野 隆史君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁人事教育        局長       佐々 淳行君        防衛施設庁総務        部長       森山  武君        経済企画庁長官        官房長      禿河 徹映君        経済企画庁調整        局長       井川  博君        経済企画庁調整        局審議官     大竹 宏繁君        経済企画庁総合        計画局審議官        兼物価局審議官  川合 英一君        経済企画庁調査        局長       田中誠一郎君        科学技術庁長官        官房長      下邨 昭三君        環境庁長官官房        長        北村 和男君        環境庁水質保全        局長       小野 重和君        沖繩開発庁総務        局長       美野輪俊三君        国土庁長官官房        長        谷村 昭一君        国土庁長官官房        審議官      柴田 啓次君        国土庁計画・調        整局長      福島 量一君        国庁土地局長   山岡 一男君        法務大臣官房長  筧  榮一君        外務大臣官房外        務参事官     渡辺 幸治君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省経済局長  深田  宏君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省条約局長  伊達 宗起君        大蔵大臣官房審        議官       梅澤 節男君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵省主計局長  松下 康雄君        大蔵省理財局長  渡辺 喜一君        文部大臣官房長  鈴木  勲君        文部省初等中等        教育局長     三角 哲生君        文部省体育局長  柳川 覺治君        厚生大臣官房長  吉村  仁君        厚生大臣官房審        議官       吉原 健二君        厚生省公衆衛生        局長       大谷 藤郎君        厚生省医務局長  田中 明夫君        厚生省社会局長  山下 眞臣君        厚生省児童家庭        局長       金田 一郎君        厚生省保険局長  大和田 潔君        厚生省年金局長  松田  正君        社会保険庁年金        保険部長     新津 博典君        農林水産大臣官        房長       渡邊 五郎君        農林水産大臣官        房予算課長    京谷 昭夫君        農林水産省経済        局長       松浦  昭君        農林水産省構造        改善局長     杉山 克己君        農林水産省農蚕        園芸局長     二瓶  博君        農林水産省畜産        局長       森実 孝郎君        農林水産省食品        流通局長     渡邉 文雄君        食糧庁長官    松本 作衞君        林野庁長官    須藤 徹男君        水産庁長官    今村 宣夫君        通商産業大臣官        房審議官     柴田 益男君        通商産業大臣官        房審議官     神谷 和男君        通商産業省貿易        局長       古田 徳昌君        通商産業省生活        産業局長     若杉 和夫君        資源エネルギー        庁長官      森山 信吾君        中小企業庁長官  児玉 清隆君        運輸大臣官房長  角田 達郎君        運輸省船員局長  鈴木  登君        海上保安庁長官  妹尾 弘人君        郵政大臣官房長  奥田 量三君        郵政省貯金局長  鴨 光一郎君        郵政省簡易保険        局長       小山 森也君        郵政省電気通信        政策局長     守住 有信君        労働省職業安定        局長       関  英夫君        建設大臣官房長  丸山 良仁君        建設省計画局長  宮繁  護君        建設省住宅局長  豊蔵  一君        自治大臣官房審        議官       大嶋  孝君        自治省行政局公        務員部長     宮尾  盤君        自治省税務局長  石原 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君        日本電信電話公        社総務理事    玉野 義雄君        日本電信電話公        社経理局長    岩下  健君    参考人        日本銀行総裁   前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十六年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十六年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十六年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 木村睦男

    委員長木村睦男君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十六年度総予算案審査のため、本日の委員会に、日本銀行総裁前川春雄君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席時刻等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 木村睦男

    委員長木村睦男君) これより昨日に引き続き安恒良一君の総括質疑を行います。  この際、昨日安恒君の質疑に関連いたしまして資料の要請がございました。そのことにつきまして、藤尾労働大臣及び安孫子自治大臣からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。藤尾労働大臣
  7. 藤尾正行

    国務大臣藤尾正行君) 昨日の安恒委員資料要求につきまして、労働省を代表いたしまして私からお答えを申し上げます。  事務的に不行き届きな点もあったようでございますので、このような点について、今後十分注意するよう事務当局に指示いたしましたところでございます。
  8. 木村睦男

  9. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) 安恒委員からの資料要求に対しまして、事務的に不行き届きな点もあったようでございまするので、今後は十分に注意するように事務当局に指示したところでございます。
  10. 安恒良一

    安恒良一君 事務的なことは両大臣謝っていただきましたが、資料要求の件については資料が出てこないそうでありますが、これで時間をとるわけにいきませんので、集中審議の際にその問題はやることにいたしまして、次の問題に入ります。  去る十日、関係審議会に諮問されました老人保健法案要綱について質問します。  この老人医療無料化問題は、美濃部前知事を初め革新自治体が国よりも一歩先んじて行いました福祉政策であります。四十八年に国が後追い福祉の形で追認実施をして現在に至っておりますが、その制度は今日老人福祉向上に大きく貢献をしています。法案要綱の中で最も注目すべき点は、現在原則として無料である七十歳以上の老人医療費を一部患者負担に改めていることであります。これは国民福祉よりも財政優先という政府自民党路線がここにはっきりあらわれているというふうに私は考えますが、いずれにいたしましても老人医療制度を大転換することになります。その目的と真のねらいはどこにあるのか、こういう点について厚生大臣からお聞かせを願いたいと思います。
  11. 園田直

    国務大臣園田直君) 御指摘のとおりに、ただいま審議会にお願いをして審議を願っているところでありますが、その中の老人医療無料の問題、これはおくればせでありますが、私が党の老人対策特別委員長のときに皆様方の御協力を得てつくった制度でございます。その後、これで非常に効果を上げておりますが、また一面、病院老人の方が占領しているとか、あるいは一日に五回も病院を回る老人がおるとか、各所からいろんな言葉が出ております。したがいまして、老人医療に対して医療費負担してもらうと、こういうつもりではなくて、やはり、何とかしていまの制度を続けたいが、こういう弊害がありますから御注意を願いたいと、こういう意味で一部負担という制度考えたわけでありまして、その金額等についてはいろいろ言われておりますが、一般の健保の初診料のような高いものではなくて、本当にそういう老人方々の自制を願うための額である、こう考えております。  老人医療改正をお願いしますねらいは、第一は、高齢化でだんだん老人の方が激増してくる。そこでこれの基本線を、医療というよりも早期検診、予防、健康管理の推進と、こういうことに重点を移していって、そして時代の要求に応じて、高齢者方々老人ではなくて高齢者としていつまでも若く社会の発展に参加されるようにと、こういうのがねらいでございます。
  12. 安恒良一

    安恒良一君 私は、やはり一部負担問題は大問題だと思いますが、これは改めて後からまた総理、それから大蔵大臣にもお聞きしますので、次に入っていこうと思います。  いま言われましたようなねらいがあるということでありますが、そういうような問題を十分果たせる法案要綱になっているかということであります。たとえば、財政対策の重要なポイントでもありますし法案の重要なポイントでもあります一部負担金額水準をどうするか、老人医療診療報酬支払い方式見直しをどうするのか、保険者拠出に対する国庫補助率をどのくらいにするかというのが、肝心の中身がすべて政令にゆだねられているのであります。少なくともこれらの問題は、私は当然法律事項とすべきだと思うのでありますが、どうも政令にゆだねたという意図が、厚生省としては、値上げの必要が認められれば国会審議を抜きに自由に上げられる——もちろん老人保険審議会というのをつくるそうでありますが、これを隠れみのにしてやろうというやり方について私は承知できないのでありますが、この点いかがですか。
  13. 園田直

    国務大臣園田直君) 諮問をしてあります案は御指摘のとおりのようなことになると思いますが、それは隠れみのとして勝手にやりたいということではなくて、審議会等の御意見を聞いてからいろいろ腹を決めたい。したがいまして、そういう重要な問題は法律の中に入れることが御指摘のとおり私は肝要であると、こう考えております。
  14. 安恒良一

    安恒良一君 法律の中に入れるということですから、十分審議会意見を聞いてやっていただきたい。  その次お聞きしたいのですが、老人医療無料制度は、国庫負担は七十歳以上というふうに法律では規定されていますが、都道府県では、二十三都府県はいわゆる上積みということで開始年齢等が早いのであります。これらの問題の扱いをどういうふうにされようとしているのか、厚生大臣並びに自治大臣からのお考えをお聞かせ願いたい。
  15. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの、退職されてから七十までの間、どちらかと言えば一番治療や診断を受ける機会の多い時期にその間隙があることは御指摘のとおりでありまして、これをどうやって埋めてやるか……
  16. 安恒良一

    安恒良一君 質問趣旨と違います。
  17. 園田直

    国務大臣園田直君) それじゃもう一回……
  18. 安恒良一

    安恒良一君 委員長質問趣旨と全然違います、答弁が。
  19. 園田直

    国務大臣園田直君) 済みません、もう一遍お願いします。
  20. 木村睦男

    委員長木村睦男君) もう一度。
  21. 安恒良一

    安恒良一君 いわゆる国の老人医療無料化制度は七十歳から行われることになっている。都道府県単独で、六十五歳以上七十歳未満について公費で負担していますが、それはどうするつもりですか。このことを厚生大臣自治大臣にお聞きをしたわけです。
  22. 園田直

    国務大臣園田直君) おわびをいたします。  いまの問題、これまた大事な問題でありますから都道府県知事、特にそういう実施をしている場所とよく相談をして調整をいたします。
  23. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) 御質問の問題は、経過措置といたしまして、やはり処置せにゃならぬ問題だろうと思うんです。実態に即しまして、この点は厚生省と十分に協議をいたしまして取り計らうべきものだと思っております。ただ、この問題について財政問題も絡んでまいりますので、非常に重要な問題だと考えております。
  24. 安恒良一

    安恒良一君 次に、退職後七十歳までのつなぎをどう改善をするお考えなのか。現在のこの任意継続給付制度及び国民健康保険制度についても何ら手がつけられておりませんが、その点はどうなんでしょうか。
  25. 園田直

    国務大臣園田直君) ちょっと答弁一つだけ早過ぎまして申しわけございません。  いまの問題は、これまた重要な問題でありまして、これは老人保険支払い方式やその他とも関連してくる問題でありますから、これまた十分御意見を承りつつ善処していきたいと思います。
  26. 安恒良一

    安恒良一君 私は、この制度を生かす重要な根幹として、何でも相談できるかかりつけの医者、いわゆるホームドクターを確保しやすいような配慮が必要であると思いますし、プライマリーケア担当医師適正配置をどうするのか。これと同時に、その医師に対する登録人頭払いを採用すべきではないかと思いますが、この点はどうでしょうか。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) 地域医療という問題が非常に必要になってきまして、医療法改正ではその点もお願いするつもりでおりますが、各個人個人の人が、自分の健康と生命について、長くなれた、特別関係のお医者さんが必要であることは当然であります。そうすると、いまおっしゃいましたプライマリーケア問題等も出てまいりますので、これと地域医療とよく連携をして御指摘のようなことが充足されるように努力をいたします。
  28. 安恒良一

    安恒良一君 まだ質問に答えてないです。
  29. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 安恒君、もう一度その席でよろしいからはっきり……。
  30. 安恒良一

    安恒良一君 こっちははっきりしているんだよ。向こうが忘れているんだよ。
  31. 園田直

    国務大臣園田直君) そうです。そうです、私の方が少しきょうは頭が錯乱しておったわけでございます。  人頭払いの問題もこれに重要な関係がありますので、これも十分御意見を承りながら一つの検討をする有力な問題だと考えております。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 いずれも十分に御意見を承りながらと、こういうことでありますから、十分にこれから議論をしていきたいと思いますし、まず関係審議会意見十分尊重をして法律についてお考えを願いたいと思います。  そこで私は、社会保障全体に対する鈴木内閣基本的態度について、総理にひとつ総理哲学をお聞きをしたいと、こう思いますが、御承知のように、ことしの予算を見ますと、社会保障費伸び防衛費伸びを下回る。自民党政府は、軍備の拡充と財政再建のため国民生活を犠牲にする路線を公然と踏み出したと言えると思います。総理は、さきの臨時国会のいわゆる所信表明の中で、「長期的な視野に立って福祉の立て直しを図り、恵まれない人々に重点的に」云々ということで、いわゆる再点検を約束されています。ところが、どうもこの再点検が、いま出ている予算で見ますと、所得制限であったり、もしくは老人福祉医療健康保険制度に一部負担を持ち込む、こういうことが再点検であるのかどうか。  この際、いわゆる社会保障に対する、福祉に対する総理哲学考え方、そしてこの点は、総理の御答弁のほかに、大蔵大臣、それからいわゆる厚生大臣にお聞きをしたいと思います、非常に重要なことであります、
  33. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 多年総評におられて福祉の問題に取り組んでこられた安恒さんから、非常に大きな基本的な問題につきましてお尋ねがございました。  私は、わが国の福祉の施策、社会保障、これは相当急速に前進をいたしまして、今日では先進諸国福祉の面で相当進んでおると言われる国々にほぼ匹敵するような水準に達してきておると、こう思います。そこで、これからは駆け足で先進国福祉政策に追いつこうということでやってまいりましたにつきまして、いろいろアンバランスがあったり、見直しを要する点がいろいろあるわけでございます。そういう観点から私は、一応の水準に達しましたので、この際、福祉政策を見直すことをやりたい。特に、御承知のように、急速に高齢化社会が進んでまいりましたので、そういう状況も踏まえて、さらにその必要性を痛感をいたしておるところでございます。  ただいま安恒さんから防衛費との関連でお話が一つございました。私は、社会福祉関係予算にいたしましても防衛費にいたしましても、ある一定の水準に達するまでは予算伸びていくと思います。しかし、ある水準に達しますと、今度は手直しというようなことで、伸びるというよりもむしろ横ばいというような形で手直しの段階に入る、こういうものだと私は考えるのでございまして、もうどんどんどんどん何の場合でも予算が毎年成長していく、伸びていくというものではない。やはり国際的な福祉水準等もにらみ合わせながら、全体のバランスがとれるように、ある段階へ来たらその見直しをする。恵まれた比較的負担力のある方々には御負担を願う。そのかわりに、経済力の弱い方々あるいはハンディをしょった方方に対してはできるだけ手厚くする、そういうような配慮をすることが本当の意味の私は福祉であり、社会保障であろうかと、こう思うわけでございます。そういう心構えでやってまいる所存でございます。
  34. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、社会保障の始まりというのは、やっぱり働きたくたって病弱で働けない、医者にかかりたくてもお金がなくて医者にかかれない、年をとってともかく生活をしなきゃならないが職場がないと、そういうようなところから、そういう者を救おうということで私はスタートしたと思うんです。日本の場合はおくれておったわけでございますが、戦後急速に駆け足で、いま総理がおっしゃったように、ほぼ先進国並みの社会保障体制というものができ上がった。その中で顕著なことは、たった二十五、六年の間に、人生わずか五十年というものが七十八とか七十三とか、女、男ともに大変な長寿国、世界一の長寿国グループに入った。そのことは、裏返して言えば、非常な老人社会に急速になりつつあるということですから、やっぱり一番の問題は、年金と病気の問題だと、私はそう思っておるんです。したがって、それにはともかくいま言ったように、最近は病気になっても大変な、高度に医療が発達をいたしましたから、かなりの多額の金もかかる。したがって、そういうものについて、自分の私財だけではとてもできないということを、みんなで助け合いでやっていこうという制度でございます。したがって、私は、今後かなりそういう点で金はかかることは避けられないと、そう思っております。しかし、やはりそれは国がそういうものを援助をしていくとしても、しょせんは財源の問題でございますから、財源がなくて国がそれらの負担をするということは言うべくして不可能でございます。  したがって、そういう制度が無理なく長続きするということが必要であって、国は持てないから、それじゃ丈夫な人、あるいは年金の場合だったら、若い人にだけたくさん負担をもうどんどんしょわしていくということも、これもむずかしい、限界がある話であります。したがって、そこらの整合性をとりながら、やっぱり効果のある、むだのない、そして公正な社会保障制度というものをもう一遍頭の中で描き直していく必要があるんじゃないかと、そう思っております。
  35. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま総理から答弁をされたとおりの趣旨の指示を私も受けておりまして、要は、国家財政は今日のような状態ではあるけれども、社会保障水準を落としてはならぬ、そのためには、むだなものは徹底的に省け、次には、本当に困ったところには手厚く、がまんのできるところは少しがまんしてもらうと、こういう効率的、適正化ということを重点にしてやれと、こういう御指示でございますので、そのとおりに予算編成は守ってやってきたつもりでございます。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 総理以下関係大臣の社会保障ないし福祉に対する思想、哲学を承りまして、いろいろ意見のあるところですが、時間がありませんから、最後に一つだけお聞きいたします。  私は、この予算編成というものは単年度ベースで行われるから弾力的に対応ということが必要でありますし、その限りに短期的な視点も取り入れなきゃならぬと思います。しかし、社会保障のような分野は、単年度のバランスというよりも長期的なバランスを考慮すべき問題であり、たとえば人口の問題、社会的な長期的な趨勢、財政経済の展望、双方を見据えて時代の変化に適応していかなきゃならぬと思います。昨年も前総理に私は社会保障についての長期計画が必要だということを問いただしたのでありますが、そういう展望のもとで予算編成は行われなきゃならぬと思いますが、総理の御見解を承りたいと思います。
  37. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御指摘のように、社会保障制度福祉政策、これは長期的な展望に立つということも私は重要だと、そのとおりだと思います。と同時に、当面の財政事情その他の勘案をしなければならない。やはりそこに福祉政策と全体の整合性、そういうものを考えながら施策を進めてまいりたいと、こう思います。
  38. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 時間が参りました。  以上で安恒君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  39. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、長谷川信君の総括質疑を行います。長谷川君。
  40. 長谷川信

    長谷川信君 まず、中小企業問題について関係閣僚の御意見を承りたいと思います。  いま中小企業は非常に冷え切っております。私も現場を回ってみますと、本当にこれはもう大変なことだと思うくらい冷え切っているようでございます。特に繊維、鉄鋼は慢性不況みたいになっておりますし、あと、いま一番いいと言われておる自動車産業の下請でも操業度が六五%から七〇%ぐらい。だから、ほかは推して知るべしでございますし、また、統計というか資料によりますと、家族、従業員ひっくるめますと三千万人を超えておるという、まさに、何といいますか、圧倒的に多い数、そういう状況でございますので、この中小企業対策というものは、これからやっぱり真剣にお願いしなきゃならないと思うのです。ただいろんな統計からしますと、日本の経済は決して悪くない、外国と比べたらかくかくしかじかである、悪くありません。また、統計もそのとおり出ておりますが、本当に何といいますか、たとえば長谷川信と松下幸之助。松下さんが百億の所得で私が仮に五百万か一千万だとしますと、二人足して平均が五十億というような、そういう物の考え方で統計を提示されても、なかなかそういうことは通らないのですよ。  だから、その実態を把握はしていらっしゃると思いますが、中小企業の諸君はストもできないし、また政府に向かって強い要請もできないし、ただ自分の努力と工夫とがまんだけでじっとここまできているのでございますが、私は、放漫経営の諸君が倒産するということは、これはまあ自分の自業何とかである程度仕方がないと思いますが、このままでいったらまじめな諸君まで倒産に追い込まれるような趨勢にいくんじゃないかというふうな感じが私はするんです。そうなったら、これは政治としてもなかなか重大な関心を持って考えなければならぬと思うのであります。  だから、物価が安定しておるということでございますが、このままでいったら税収もかなり落ち込むんじゃないでしょうか、これから取るものについては。だから、鶏の首を絞めて卵を産めといってもね、やっぱり鶏にこの際栄養を与えなければならぬと思うのですよ。卵を産め産めといったって、首を絞めておまえ卵産めと言ったって、それはできるわけないのでありまして、中小企業対策というものはこれから真剣に検討していただきたいと思うのであります。  経企庁長官、ひとつ今後の景気の動向等について、中小企業の分も含めてですが、御説明を賜りたいと思います。
  41. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 景気の動向は、いまお述べになったとおりだと思います。日本がいいというのは、外国と比べていいということでありまして、現状は決して楽観は許さないと、こういう状態であろうと思います。外国が第二次オイルショックの影響を受けまして、余りにも悪い状態になっておる。日本はその影響を比較的うまく切り抜けることができたということでありまして、外国の現状が余りにも悪い。そこで日本が比較的いいと、こういうことになる。こういう認識でございます。特に、中小企業の現状につきましても、いまお述べになったとおりだと思います。  そこで、この現状は放置できませんので、いま関係各省と打ち合わせをいたしまして、緊急に何らかの中小企業対策を立てなければならぬと、こう思っておりますが、それじゃ、中小企業の対策はどういうものが柱になるかといいますと、やはり仕事の量が確保されるということと、それから金融面だとこう思いますので、その点を主眼といたしまして、いま打ち合わせ中でございます。
  42. 長谷川信

    長谷川信君 いろいろいま対策を講じておられるということでございますが、いま長官おっしゃいましたように、やっぱり金融あるいは金利の引き下げだと思うのです。いまの経済の状態、いまの景気の状態でありますと、金利はやっぱり早急に下げた方がよいと思うのですよ。また、下げなければならぬと思うのです。その点、総裁来ていませんから長官から。
  43. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 金融政策につきましては、すでに政府では昨年の九月に基本方針を詰めまして、機動的に運営をするということを決めておりますが、機動的に運営をするという趣旨は、現時点における金利はやはり相当高い水準にありますので、産業界に相当な圧迫を与えております。特に中小企業にとりましては経営上非常に大きな負担になっておりますので、条件が整い次第低金利政策の方向に持っていく、金利を下げる方向に持っていくというのが政府の基本方針でございます。  日本銀行も当然この政府の方針に従いまして金融政策を担当していただいておるわけでありますが、大分条件も整ってきておりますので、金融政策も含めましていま対策を相談中であると、こういうことでございます。
  44. 長谷川信

    長谷川信君 金利の引き下げは、きのう下条さんの質問の中で日銀総裁は最も適当な時期に適当なパーセントを上下するということをおっしゃっておられましたが、その適当な時期というのは一体だれが判断するんですか。大蔵大臣、ちょっと。
  45. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 公定歩合のことをおっしゃったんだと思いますが、それは日銀総裁が考えることです。
  46. 長谷川信

    長谷川信君 日銀総裁は、そのときの人によってかなりやっぱり財政に対する見方、考え方あるいは思想の違う方がいろいろ交代されるわけですね。みんな同じ考え方ということではない。たとえば高橋是清さんのときはあのような政策をとられましたし、あるいはまた歴代の日銀総裁の中でもかなり考え方、物の見方も違う。それによって、金利がかなりやっぱり違ってきた傾向があると思うんですね。だから、いまこれだけ情報化時代になっておりまして、ボタン一つ押すとぱっぱっぱっぱっと出るような時代でございますので、日銀総裁が決めるということは当然そういうことでありますが、もっと景気の動向を端的にとらえて、まあ何といいますか、俗に言えば機械的と申しますか、あるいは即応性のある形をもう少し検討できないものでしょうか。大蔵大臣、ちょっと。
  47. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) もちろん大蔵大臣は日銀を監督する立場にありますから、日銀総裁だけが一人で走り出しちまうわけじゃないんで、それは当然に金融政策の問題については、私も責任者の一人であることは間違いありません。したがいまして、やはり金利政策というものは、そのときのいろんな金融事情とか経済事情、あるいはいろんな物価の趨勢、そういうような、あるいは海外の金利状況、為替レート、その他いろいろなもろもろの事情を総合的に勘案をして、適切にそのときそのときの状況に合うようにしていかなきゃならぬと、そう考えております。
  48. 長谷川信

    長谷川信君 いま大蔵大臣から御説明があったわけでございますが、いまの現状を大臣ごらんになって、これはまあ担当は総裁ということでございますが、いま大臣おっしゃったように、おれが監督して管理しているんだということでございますから、いまの経済の現状、中小企業の現状からして、金利は私はやはり下げるべきだと思うんですよ。その点、大臣の御感想を承りたいと思いますが。
  49. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まあそういう見方もございます。しかし、いつ、どういうふうに下げるかということは別にいたしまして、やはり金利を下げるということは貸出金利を下げろということでしょうから、貸出金利を下げるというのは、特に中小企業の問題になりますと、公定歩合が下がったから中小企業の貸出金利が下がるというわけのものではありません。やはり、中小金融機関というものは大部分が、日銀から金を借りて貸しているわけじゃないんで、預金者の金を預かって、それに必要な経営費を乗せて、そして金融機関は貸すわけですから、やはり貸出金利を下げるという場合には預金金利という問題とも関係があるわけでして、預金金利はそのままで貸出金利だけを下げるといっても、それは長続きする話ではありません。  したがって、これは預金金利との関係ということになってまいります。預金金利の問題は、これは必ずしも物価と連動はいたしません。いたしませんが、やはり物価とあべこべの方向に持っていくということもこれはできない話でして、大局から見ればやはり物価の趨勢というものも頭に入れなけりゃならぬ。そういうようなものも考えなきゃならぬ。  もう一つは、ともかくもう国際的に為替自由化という時代でございまして、海外金利の問題というものも非常に影響があるわけでございますから、そこらのところも横にらみで見ていかなきゃならぬ。いろいろな要素がございます。そういう要素を全部考え合わした上で、どういうふうに決めていくかということだろうと、そう思っております。
  50. 長谷川信

    長谷川信君 いま大臣御説明の中で、公定歩合を下げてもなかなか中小企業までそう簡単にいかないよというお話、これは全くそのとおりなんですよ。これはしかし、いまのこれはやっぱり何とか少し改めていただいて、本当にいま困っているのでありますから、いずれ近々公定歩合が下がるような私は感触を得ておりますが、もし下がったら、まあ早いので半年くらい後でやっと中小企業向けののは連動して下がるというようなことがいままでの経過というか、ことのようでございますが、これはやっぱり早くやっていただくような金融の指導を大臣からひとつお願いしなければ、とてもいまのほんとに冷え切ったこの状況の、せっかく下げていただいてもそれだけの手当てにはならぬと思うのでありますが、その辺のことはひとつ大臣から御説明等を。
  51. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そういう場合には、御趣旨のように極力指導をしてまいりたいと思います。
  52. 長谷川信

    長谷川信君 次に、やはり景気浮揚の中で公共事業の前倒し計画がいろいろ議論されているようでございますが、いずれ近く経済閣僚会議でこの問題も検討されるということが新聞紙上に出ておりますし、また、それが非常に一つの効果的な手段であることは、これはもうみんな世間も承知をいたしているわけでありますが、これについて経企庁長官並びに大蔵大臣から、どんな形でどの程度やっていただくのか、ちょっとお考えを承りたいと思います。
  53. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) やはり景気の現状から考えますと、ことし、五十六年度の予算で盛られております公共事業を、昨年、五十五年度とは違いまして前倒しでやらなければならぬということはこれはもう必要だと、こう考えておりますが、それじゃ、どの程度前倒しをするかということにつきましては、いま関係各省で相談中でございまして、なお数日かかろうかと思っております。
  54. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 公共事業が景気対策に使われるということは、いままでもしょっちゅうあることなんです。ただ、最近における日本の経済規模というものは、GNP二百六十数兆円、その中で、ともかく地方、国を含めた公共事業というのは、五十六年度で二十二兆円ぐらいですか、大体一〇%以下のシェアですね。したがって公共事業が万能じゃないということなんです。公共事業というものはいまや日本の経済の中で非常に小さな、九・〇%ぐらいのGNPの中の割合、役割りしかないわけですから、それだけで景気がうんとよくなったり悪くなったりなんか、操作できるものでも何でもないんです、これは。しかしながら、公共事業もできるだけ景気を持続するために活用することは私もやぶさかでありません。だけれども、公共事業をあんまり前倒しといっても程度問題でして、前半にうんと倒しちゃって後半にはもうほとんど仕事がないというようなことも困る。だからといって、後半で結局公共事業の量を追加してくれと大蔵省に言われましても、それはできない相談なんです。五千億とか一兆円とかという金は日本の景気全体、二百数十兆の中では小さなものだけれども、いま財政再建を一生懸命やっている大蔵省にとっては、それはもう五千億、一兆円という金をつくるということは大変なことなんであって、そういうことも考えますと、やはり前倒しに使って気分的によくすることはいいが、それらのことも一緒に考えてやらないとならないということですね。公共事業だけでそんなに景気がふっと上がるというものじゃありませんから、そのことも知っていただく必要があると思っております。
  55. 長谷川信

    長谷川信君 次に通産大臣、お願いでございますが、中小企業向けのいろんな制度資金がございます。その制度資金の設備投資については、金利はもう非常に安くしてやっていただいているのは御案内のとおりだと思いますが、ただ運転資金が市中銀行よりも非常に高いですね。これはやはり中小企業育成のための機関であると同時に、いまのようなこういうまさに異常な状態のときは、やっぱり若干政府から御検討——何も市中銀行より安くしてくれということじゃないんでありますが、運転資金についてはかなり高額な金利をとっていらっしゃる。だから、制度資金借りるのもいいけれども、利息が高くてどうにもなりませんと言って、いろいろ声も出ておりますが、その辺のことはひとつお考えできませんですか。
  56. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 政府三機関の金利の問題でございますが、私どもいまいろいろ検討しておるわけでございます。中小企業のこれほどの倒産それからその波及効果、頭の痛いことでございまして、したがってどこにどうすれば手っ取り早く救済できるだろうかというふうに考えますときに、やはり金利という問題が大きく浮かび上がります。と申しますのは、これらの中小企業、中堅企業を含めまして製造業で見ますと、ちょうど五八・三%ぐらいが設備投資の資金を要求しているんです。大企業は一二・七%ぐらいでございますから、それほど大きな差がありまして、したがって金利をちょっとでも安くすることがこの五八・三%という中小企業者にいかに体に響くかということを考えますときに、いろいろ考えなければならないなと、いままでのしきたりを打破することができるならばということであれこれいろいろ大蔵省とも折衝しておりますけれども、やはりなかなかうまくいかないところがございます。しかし、頭の中には運転資金もその他設備投資の資金も、そういうことをひっくるめて金利を少しでも下げていきたいという考え、方針は持っておるわけでございます。
  57. 長谷川信

    長谷川信君 総理、いまいろいろお聞き取りをいただいていることと思いますが、先ほど申し上げましたように約三千五百万人くらい、親子、兄弟を含めまして。その諸君が本当にいま冷え込んで冷え込んで、しかもだれにも何といいますか苦衷の持って行き場所がないんですよ。ストをやるわけにはいかないし、総理のところに、官邸にお願いに上がるわけにもまいりませんし、ただ創意と工夫と努力でじっとがまんしているというのがいまの現状だと思うんです。そういう状況でございますので、総理から、いずれ経済閣僚会議等々もお開きになるということを拝聴いたしておりますが、ぜひ温かい気持ちでこの難局というか、この時期を乗り起さしていただきますように、格段のひとつ御配慮をお願いいたしたいと思います。
  58. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 長谷川さん御指摘のように、わが国の経済の中で中小企業の占めるウエートというのは非常に大きいわけでございます。したがいまして、政府におきましては従来からも中小企業対策ということにつきましては特段の配意をしてまいったところでございますが、御指摘もございましたように、最近景気の停滞、落ち込み等もございまして、それが中小企業に大きく響いておる、容易ならぬ状況下にあるということを私も認識をいたしておるところでございます。  そこで中小企業対策としては、先ほど来お話がございますように、一つは仕事の問題がございます。どうしても仕事を与えてやらなければいけない。仕事を少しでも多く中小企業に与えていく。そういうようなことから、官公需等の中小企業に対する発注等も特に力を入れておるところでございます。国及び地方を通じまして官公需は大体五四、五%という水準にございますが、これも何とかもう少しふやしていきたいものだと、こう考えております。  それからもう一つは、やはり金融の問題であろうかと思います。金融の問題につきましては、先ほど来大蔵大臣、通産大臣、企画庁長官等からもお話を申し上げたところでございますが、近い機会に決定をしたいと思っておりますが、総合的な経済対策の中におきましては、中小企業対策を最重点の一つの課題として、またその際におきましては金融政策、安定的、弾力的な金融政策を今後とっていくということ、それによって金利負担を軽減をして、そして冷え込んでおる中小企業の設備投資等もふやすようにしていきたい、このように考えております。  幸いにして卸売物価は大分鎮静化の方向を見ております。物価政策にも配意しながら、今後中小企業対策を政府として総合的にやってまいりたいと考えております。
  59. 長谷川信

    長谷川信君 次に、行革の問題でお聞きいたしたいと思いますが、各委員から本当にこの問題いろいろ各角度からやっているわけでございますが、今日国会の中でこれほど与党も野党も、そして財界も労働界も挙げて私は機運が盛り上がっておる問題は久しぶりだと思うんですね。まさにこれは国を挙げて期待をいたしておると思うんです。それで、なぜそんなに期待をしているかと申しますと、これ総理大蔵大臣、あるいは経企庁長官からもお話がございましたように、民間は二回にわたって石油ショックを本当に血みどろの努力をして乗り越した。そして今日の世界に冠たる日本経済の基礎をつくったんだ。これは各先生方の御説明のとおりなんです。役所の方はいろいろやっていることはやっているんでしょうが、少なくとも政府が減量したというふうな印象を国民に与えておらない。だから、国民はやっぱり、おまえらやれ、おれは知らぬぞということは通らぬぞというのが私は今回の盛り上がった一つの形だと思うんですよ。土光さんもえらい意気込みのようでございますが、総理もそれに負けないで、おれはめったにたんか切らないんだけれども、やると言ったら必ずやるんだと言って、私ども新聞を拝見するたびに、いよいよこれは鈴木総理踏み切られたなと思って陰で拍手を送っているわけでございますが、これは本当にひとつ総理から御検討いただいてやり遂げていただきたいと思うんです。国会だってほとんど大多数の人が賛成ですよ。国民もほとんど大多数の人が賛成。まあ若干の壁があるかどうかわかりませんが、これを乗り切ってひとつ必ずやっていなだきたいと思うのであります。  そこで、この間も自由民主党で財政再建議員研究会というのができまして、いまのこの問題のひとつ後ろ盾になろうというふうなことで御相談があった。私も拝聴しておったのでありますが、わが党の中にもやはり意のある者は、これはもうどうしてもやらにゃということでやっているようであります。だから、そういう背景の中で総理はひとつがんばっていただきたいと思いますが、何回も御答弁をいただいておったようでありますが、この際なお覚悟を新たにする意味におきまして、行管庁長官総理からちょっと御答弁をいただきたいと思います。
  60. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御激励をいただきましてまことにありがとうございます。先般も土光さんと私総理のお供をしてお会いをいたしましたけれども、土光さんも八十四歳の御高齢にもかかわらず、ともかく今度は財界を挙げ、また全国民の皆さんと手をつないで行革をやろう、労は惜しまないと、そういうお言葉をいただきまして、非常にわれわれも感激したところでございます。われわれが土光さん以上の熱意を持っておこたえしなければ国民の皆さんに申しわけないと。いままでややもすれば総論賛成、各論反対で十分なものができなかったうらみがありますが、今回は本当に与党、内閣一体となり、また国会の御協力もいただきまして、国民皆様方が御納得するような行革をどうしてもやり切ってみせようと、こういうかたい決心で臨みたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
  61. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま行管長官からも申し上げたとおりでございますが、長谷川さんも御指摘になりましたように、行財政の思い切った改革をやるべしというのがもう本当に国を挙げての世論になっておるように思います。財界もそうでありますし、労働界におきましても、総評にしても同盟にしてもあるいは中立労連その他におきましても、労働陣営もそれをひとつ進んでやろうと、こういう機運にございます。私どもは、こういう国民の期待にこたえ、この機会にこそ高度経済成長時代に肥大化したところのわが国の行財政を思い切って刷新、合理化を図らなければならないと、このような決意で取り組んでおります。  そこで、第二臨調は問題を後に送り込むために設けたのではないかという御批判が一部にあるようでありますけれども、決してそうでございません。行管長官もしばしば申し上げておりますように、五十七年度の予算編成の中に織り込むべきものはぜひ織り込みたいということで七月の中旬ごろに答申をお願いをすると、こういうことにいたしておるところでございます。また、私といたしましては、答申を受けましたらこれを実行に移すために、政府と与党自由民主党で一体となった行政改革推進本部とも称すべきものをつくりまして、私自身が本部長になり、政府・与党一体になってこの実現に不退転の決意で臨もうと、こういう考えでございます。御協力をひとつお願いいたしたいと、こう思います。
  62. 長谷川信

    長谷川信君 新聞でいろんなことが書いてありますが、その中で、世界の財政の歴史の中で政府の減量を伴わない税金を取って成功したためしがないということが幾つかの新聞で出ておったようであります。私はあの論調を読みながら、なるほどそうだなと思って、イギリスにしてもあるいは数年前のアメリカにしてもあるいはヨーロッパ諸国にしても、もうそういうことで財政が——まあそれだけであるかないかわかりませんが、少なくとも政府減量はやらないで増税をして成功したためしがないということは、これは古今東西の歴史を通じてなるほどそうだなと思うのでありますが、増税論がときどき顔を出すようでございますが、やはりこの機会に、いまの長官並びに総理の御答弁のように、やっぱり政府で減量をして、どうしてもやむを得ない場合はまたいろいろのことが考えられるかどうかわかりませんが、少なくとも減量をせずしてそのようなことは断じてやらないということがやっぱり私は大きな基本の方針でなければならないと思うわけです。その点、大蔵大臣から御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  63. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私も同趣旨でございます。今回の予算におきましても、よく何もやらぬじゃないかと、こう言われておるんですが、それはやらないことじゃなくて、補助金を一つ取り上げても、きのう申し上げましたように、五十三、五十四年度ごろは毎年一兆五千億とか一兆数千億ふえたわけですよ、一八%とかね。今回は四・七。ふえたのはふえたけれども、それでも四・七と、いままでに例のないような伸び率に抑え込んできておるし、一般歳出の規模でももう非常に少ない四・三%というような、非常に小さい二十数年ぶりの緊縮予算にしてあるわけですから、かなりのことはこれはやっておるんです、実際は。やっておるんですが、まだやり方が足らないという御叱正は私も謙虚に耳を傾けていきたい。  それで、総理がいまおっしゃいましたように、さらにこれは財政再建元年でございますから、もうかなり長い、長期にわたって高度経済成長の惰性に乗っかってきたわけですから、それを方角転換するということはかなりの苦痛を伴うことでもあるし、出血することもあるわけです。しかし、それはあえて将来日本の財政体質を健康にして、いろいろな場面に国の財政が頼りになる財政という健康体にしなきゃならない。そのためには、私はやっぱりまず歳出のカットというものを中心にして今後考えていきたいと思っております。
  64. 長谷川信

    長谷川信君 次に、この間わが党の玉置先生からいろいろ国防論のお話があったのでありますが、防衛庁長官、この間マンスフィールド大使が新聞記者会見をしまして、なかなかいまいろいろ中近東の方が忙しいものだから、七艦隊をそちらの方に回さなければならない、したがって対空、対潜についてはおまえの——おまえと言ったかどうかわかりませんが、日本の国は自分でひとつ守るようにしたらどうかと、これは私は新聞しか知らないのでありますが、各社ともそういう書き方をしておったようであります。けさの新聞を見ると、五十七年度哨戒機を買うような話も出ておりますが、いまアメリカの経済の状態もあんなかっこうでありますし、日本はいまこんなような、さっきもいろいろ話がございました中でも、外国と比べれば日本の経済は非常に伸びていることは御案内のとおりであります。したがって、やはり自分の国を自分で守るというふうなことは、今日の日本からいったら、これはまあ国民のコンセンサスもかなり私は最近は上がっておると思うのです。私ども町の中を歩いても、やっぱりそれはそうだなあという応答が非常に最近多くなっておりますね。国会の議論を反映してかどうかわかりませんが、非常に多くなっている。  いまから七百年前、専守防衛で、元寇の役のとき九州でずっとやった。向こうから十万の大軍が攻めてきて、あわやと思ったら風が吹いて、神風が吹いて助かったことがあるんですが、まあ神風が二回、三回吹くわけもないのでありますので、やはりアメリカかどう言うこう言うにかかわらず、これはやっぱり真剣に考えなきゃならない問題だと思うのです。  そういう防衛庁の作戦上、戦略上のことは御説明は差し控えるといたしましても、その辺の考え方、心構え等について防衛庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。
  65. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) ただいまマンスフィールド大使の発言等を引用されまして、わが国の防衛に関する心構えについて御指摘があったわけでございますが、防衛庁といたしましても、わが国の置かれている立場、情勢からいたしまして、国民のみずから国を守るという気概をもととしながら、わが国の防衛力をみずからの手によって高めていかなければならないと考えている次第でございます。わが国の防衛の基本的な方針につきましては、これは先生よく御存じのとおり、みずからの手によって必要最低限の防衛力を備えるということは当然でございますが、一方において日米安保条約を堅持しながらその効率的な運営を図るという点が重要でございます。  そこで、最近アメリカでレーガン新政権が誕生いたしまして、非常に厳しい財政事情のもとでございますが、アメリカ政府としましても国防予算の大幅増大を議会に提案する一方で同盟諸国の防衛努力を期待する姿勢を示している点は御指摘のとおりでございます。わが国といたしましては、平和憲法のもと、専守防衛に基づき、非核三原則を堅持するなどを基本としておりますが、このことについては米側もよく理解しておるものと考えております。そこで、アメリカの防衛努力期待につきましては、先ほど申し上げました日米安保体制を堅持するとの基本的態度のもとで、米国政府との間で十分な意思疎通を図りながら、わが国自身の問題として真剣に対応していかなければならないと考えておる次第でございます。防衛庁といたしましては、このような厳しい国際情勢あるいは西側諸国の行っている努力、またわが国自身の財政事情、国民の理解等を念頭に置きながら、わが国の自主的判断に基づいてなし得る限りの防衛努力を積み重ねていく所存でございます。  実際問題としましては、防衛計画大綱の線に沿いながら、いろいろ不備な点がございます装備の近代化の問題を初め、即応態勢、継戦能力等々の不備な点を補いながら、わが国の防衛がわが国自身の手で着実に前進するように引き続き努力していく考え方でございます。
  66. 長谷川信

    長谷川信君 防衛庁長官、もう一回お尋ねいたしますが、仮に、新聞でマンスフィールドさんが会見をされたように、七艦隊が中近東に行って日本が空っぽになった、いまの対潜、対空の防衛体制で、これは作戦上のことはいろいろお差しさわりがあればなにでございますが、いまの現状でわが国の状態が守り切れるかどうか、答弁、言いづらいかもわかりませんが、できたらひとつ端的にお願い申し上げたいと思います。
  67. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えいたします。  アフガニスタンあるいはイラン・イラク戦争の発生以来、アメリカの第七艦隊がインド洋に派遣されまして、その結果、わが国周辺の機動部隊を中心とする第七艦隊の勢力が一時的ではございますが減少していることは事実でございます。昨年の秋におきましては、これは交代の時期でございますが、半月ぐらいの間機動部隊がいなかった期間もあるということでございます。この点は、インド洋の安全ひいては油の輸送路の安全確保という点につきまして必要な措置であると私どもは考えているわけでございますが、いずれにいたしましても、わが国周辺のあれが一時的にせよ低下しているということは、事実として生じているわけでございます。その点につきましては、アメリカ自身におきましてもいろいろ努力を始めておるわけでございますが、わが国自身といたしましても、わが国周辺の点をみずからの手によって備えていかなければならぬ、そういう観点から防衛計画の大綱の線に沿いながらわが国の防衛努力を進めるという点でいま努力しているわけでございます。  五十六年度の防衛庁予算におきましても、そういった点に配意いたしまして、防衛計画に基づく中期業務見積もりの主要装備の早期実現を期して努力しているところでございます。そのことによりまして、わが国周辺の防衛、特に対潜、対空、そういった点の能力が増強することによって、日米安保条約と相まってわが国の防衛を達成することができると考えております。もとより五十六年度の予算だけでは達成できないわけでございますので、それを足がかりとしながらさらに一層進めてまいりたい、さように考えている次第でございます。
  68. 長谷川信

    長谷川信君 外務大臣にお尋ねいたしますが、近く渡米されるやに承っておりますが、やはりアメリカの幹部とお会いになった際にいろんな話が出ることは当然だと思いますが、いまの防衛問題等についても、日本の基本方針は総理、外務大臣からも何回も承っておりますが、アメリカの大筋の方向としては、やはり日本もある程度自分の国は自分で守ったらどうかというふうなことに、大筋としてはそういうことだと私も思っておるわけでありますが、これから総理、外務大臣、渡米されてレーガンさんあるいは幹部の皆さんとひざを交えて懇談をされるわけでありますが、わが国の心構えとしてどのような考え方で臨まれるのか、お差し支えない範囲で承りたいと思います。
  69. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げますが、いまマンスフィールドさんの記者会見のお話が御質問ありましたが、日本の本土、周辺海域を念頭に置いてわが国の防衛力の整備について努力するようにというようなことの新聞記者会見、私も読んだわけでございまして、あれはアメリカが従来から日本に期待表明をしていた線上にある問題だと、私は本土、周辺海域ということが、これは日本の憲法から見てもらえるなら、個別自衛権あるいは専守防衛ということから考えて、あれはその線だというふうに私は受けとめております。  一方、最近レーガン政権になりましてから、同盟国の役割り分担というようなことをいろいろ抽象的にこれは言われておるわけでございますが、何回もお答えはしているのでございますが、役割り分担と言われましても、できることできないことはやっぱり憲法その他の法令で制約がちゃんとあるわけでございます。専守防衛でございますとか、そういうものはもうはっきりしているわけでございますから、さっき言いました本土あるいは周辺海域ということが従来からも期待表明であり、また日本が考えていたことでございますので、やはりそういうことははっきり方針を決めまして、できることできないことということをはっきり向こうへ伝えるつもりでございます。ただ先生のおっしゃったように、自分の国は自分で守っていくという気概といいますか、そういう外国から侮りを受けないだけの自衛力というものは法令の許す限りで整備すべきだとおっしゃった、それは私も同感でございまして、そういう立場に立ってアメリカ側といろいろ期待表明がありましたときには話し合いをしようと思っておりますが、防衛の問題はそれだけでなく、広い意味の安全保障の問題がございますから、経済的な協力の問題でございますとか、いろんな広い面の話し合いになるんじゃなかろうかと、こういうふうには考えておりますが、まだ議題はっきり決まったわけではございません、向こうへ行って、いま言ったような考え方で話してこようと思っております。
  70. 長谷川信

    長谷川信君 次に、文部大臣にちょっとお尋ねいたしますが、この前も教科書問題いろいろ、かなりいろんな激論——激論というか議論があったわけでございますが、日本の教育、明治維新にちょんまげを切って刀を抜いて何をやろうかと思ったら、当時の政治家は教育をやったんですよ。そして山のてっぺんから谷底まで小学校、もう予算もないし何にもない日本の国が本当に津々浦々まで小学校をつくった。その後、中学あるいは専門学校を各県につくるとか、私は明治の先覚者のあれはまさに本当に頭の下がる思いがする。今日の日本の繁栄は、やっぱり明治維新以来の教育の成果だと私は思うんです。極端に言えば、それ以外何ものでもないと思うんですよ。  昨今の教育を見てみますと、やっぱりいろいろ御批判が出ている。この間も四国で中学生が学校の中で暴力をしたら警官導入、百五十人も動員したと、やる方もやる方だし、入れる方も入れる方だが、そんないまの状態。いろんな新聞に毎日非行の問題が出ておりますが、いま建物はどうやら、戦後やはり六・三制あるいは教育の改革でわが国の戦後の教育の施設については私は百点を上げてもいいと思う。まあどんな山の中へ行ったってりっぱな学校がありますもの。  ただ、問題は内容ですよ。その内容の一つの問題の中に教科書問題が私はやっぱりあると思うんです。この間、私がいろいろお聞きをしましたら、教科書の中でやっぱりいろんなことが書いてあるのをいろんな人がいろいろ御批判をなさっておりますが、あの原本をいろいろ聞きますと、わずか二百五十ページぐらいの本、主として社会科、公民の本であります。高校、中学、小学校——小学校の低学年は公民があるかないかわかりませんが、少なくとも高校、中学、小学校の高学年で七、八冊の公民、社会の教科書が出ているようでありますが、そのうちのどの教科書を見ても、一番大きいところは千五百カ所削除してありますね。少ないところで二百カ所もしくは三百カ所。そんなに削除しないところの方が少ないんだもの、ばらばらとこうあれしましてもね。何でそんな原本を使う必要——文部省がよりによって。私はいろいろ係に聞いたら、そのように書く人がございませんと言っていましたがね。日本国だって学者がこれだけいるんだから、検定のときにわずか二百五十ページの中で千五百カ所も削除するような人にわざわざ金を払って、高い原稿料を払って頼むことはいささかいかがなものかと思うんですよ。  まさに今日の教育は私はそれをやらないと——文部省、その教科書の中の一例で、これは私が読んだんじゃなくてある雑誌を見たのでありますが、親は年をとったらこれは厚生省が養うのがあたりまえなんだというふうな——厚生省と書いてあったかどうかわかりませんが、社会福祉予算政府が養うのがという説明で、子供が親を養えというふうなことは書く書かぬは別としても、やっぱりそれは、親を大事にするとか、兄弟は仲よくするとか、あるいは年寄りはいたわれとか、その種のことはやっぱりいまの教科書の中に入れてどこが悪いのかと思う。そんなことを一つも書いてないと同時に、それと逆のことが書いてあるのが千五百カ所から三百カ所も削除してある。その削除したのが全部一〇〇%そうだということであるかないかわかりませんが、だからその削除しない残ったところだけ継ぎ合わしても、これは学校の本には私はならぬと思うんだな。  私は新潟県でございますが、わが新潟県の小学校、中学校の子供の成績、体力は大体各県並みなんですよ。高等学校へ入るとがたっと落ちて、全国でビリから二番目になってしまっている。いまの教育は社会が悪いとか親が悪いとかと、いろんな議論もございますが、親がいいとか悪いとかと言う前に、本当に悪かったら小学校からストレートで悪くならなきゃならぬわけだ。それが高校になったら急にがたっと下がるということは、やっぱり何かそこに教育上の作用が私はあったと思うんですよ。  これはこの際、文部大臣ね、文部省いろいろ私ども聞いてみましても、答弁がとんちんかんで、どうも私ども理解のできる説明をなかなかしてくれない。いまも後ろの方でちょっといろいろ話したんですが、その教科書出せと言ったら、いやそれは秘密で出せない——何が秘密なんですか、そんなものは。防衛庁の飛行機のプロペラの長さだとか、大砲の弾の長さとか、そんなものと違うんだから、何が秘密でありますか、そんなものは。絶対に出せないと言っている。国会でやっぱり調査権で請求したら、それは防衛だとか出せないもの、これは仕方がありませんが、そういうものを出せないということは私はどうも理解ができない。  これは教科書問題を含めて、いまの教育制度というものは、文部大臣、もう本当に命がけでひとつやっていただいて、私どもがみんな戦争に負けて菜っぱ、大根から芋のしっぽまで食って今日の日本の繁栄をつくったんですから、だからこれがもし将来の子供がだめになって日本の国が低下した、あるいは落ち込んだということになりますと、本当になにしたかいがありませんよ。この繁栄を永続させるには、私は教育の内容の改革以外にないと思う。その辺はひとつ文部大臣から本当に、失礼な話でございますが、命をかけてひとつやっていただくくらいの気概を持って、この教科書問題なんかも、これはもう大臣から真っ先にいろいろ国会に御相談をいただいて、改めるべきはどんどんどんどん改めていただいて、まさに教育元年をことしからひとつつくっていただきたい。財政再建だけが日本のあれではございません。やっぱり教育の再建もやらなきゃならない。教育再建という、元年という意気込みを持ってやっていただきたいと思いますが、文部大臣の御見解と御覚悟のほどを御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  71. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま仰せのごとく、今日の日本の再建、繁栄というものは本当に教育にあると存じますが、しかし同時にまた、今日の戦後におきまする教科書の検定制度というものは、先生御承知のとおり、教科書をつくりますのは教科書会社がつくっております。そうして、それを各方面の教科書の先生にお願いをいたしましてつくります。それを今度は文部省が検定をいたすのでありますが、御指摘のとおりに、教科書の検定におきましては、申請のありました図書、すなわち原稿本と申しておりますが、教科用といたしまして適切かどうかということを審査して、不適切な記述個所につきましては修正を求めましたり、合否を判定するのでございます。この修正を求めます記述の個所は、ただいま先生もおっしゃいましたように、個々の原稿本によりまして違いますけれども、大体二十二社ほどの出版社の原稿本が出てまいりますが、通例数十カ所から数百カ所、特に社会科の教科書のごときは三百ないし五、六百カ所に上る修正をいたしてまいっております。  教科書は、学校教育におきまして主たる教材といたしまして重要な役割りでございますが、この著作に当たりましては、一般の図書とは比較にならないほど細心の配慮をいたしてまいっておりますが、また教科書の扱っておりまする内容は広範囲にわたりまして、それに限られたページの中で記述をしなけりゃならないという非常に限られた問題もございますが、このようなことから原稿本に行き届かない点が数多く見られることになったものであります。  この著作者におきましての、教科書の重要性を認識いたしまして、十分な努力を払うようにいたしたいと考えておりますが、文部省といたしましては、教科書会社が編集体制を充実するとともに、著作者及び編集者が学習指導要領なりあるいはまた検定基準などの趣旨をよく理解いたしまして十分に練り上げた原稿本を提出することを期待いたしております。このことが徹底するように教科書会社を指導してまいっておりますけれども、ただいま先生がおっしゃいましたように、次の世代を担う大事な青少年の教育、これこそは日本の本当の礎でございます。われわれは、今日いろいろと巷間批判を受けておりまする教科書に対しましても、りっぱな教科書をつくってまいりますように、文部大臣といたしましては命がけでこれと取り組んでまいる決意を改めて申し上げます。
  72. 長谷川信

    長谷川信君 命がけでお取り組みいただくということでございますので何をか言わんやでございますが、ただいまの御答弁の中で、いろいろ御説明ございましたが、私が申し上げている主たるものは、検定が悪いと言っているんじゃないんですよ。検定以前の原本が悪いということを申し上げているんです。それは一冊や二冊なら、それは言い方いいか悪いかわかりませんが、ある本、社会科と公民科の本が、いま大臣おっしゃったように最低で三百カ所、多いところで千二、三百カ所から五百カ所も削除してある。それは中にそんなのがないかと言えば、最低でもみんなそうなんですから。私は、書いた人がそれは自民党の方でもいいし、共産党の方でもどなたでも、書いた人はだれにもそんなことは言わないのですよ。そんなことは言いませんが、何で千カ所も五百カ所も削除しなければならないような人に依頼をしなければならぬかということです。日本のいまの学者の中には、全部そんな人ばかりなんですか。もっと、それは字句の間違いぐらいいいとしても、そう削除する——たまに一ページ、字句の違いと若干のものの、まあ五ページや十ページに一カ所、二カ所程度のものはこれはまあまあということでございましょうが、千カ所も削除されている、あるいは三百カ所も削除されている原本を何で依頼をして書かせなきゃならぬか。その辺、この検定のやり方が悪いとは申し上げているんじゃないんですよ。これはまじめに克明に検定をして棒を引っ張ってありますから、ぼくは検定者に文句を言っているわけじゃない。そういう学者に何で教科書の作成を依頼したか、くどいようでございますが、その辺をもう一遍。
  73. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま申し上げましたように、現在、小中の義務教育のをつくっております教科書会社、これは二十三社ほどございます。高等学校を入れますと六十五社ほどになりますが、これはあくまでも私企業といたしましてやっぱり売らんかなということが私は教科書会社の根本のあれだろうと思います。  そうして、各方面の先生に執筆を依頼いたしましてでき上がった教科書、これを文部省といたしましては、検定官がそれを審査いたすわけであります。そのときに、ただいま先生のおっしゃったように、大変苦労をいたしまして、いろいろとそれに対して判断をいたし、削除もいたし、そうしてある程度の段階ができ上がります。  今度は、そのいまの原稿本から今度は見本本に至りまする間におきましても、いろいろとその後におきまする客観情勢の変化やその他によりまして、規定でもございますように、十六条の二号と申しますか、後で修正をいたす場合もございます。  そうして、いよいよ最後にでき上がりました教科書、これを今度は、ただいま申し上げたようにたくさんの出版社がございます。それを教育委員会の方においてどの本を採用するかというのは、これは各教育委員会が選定をいたしまして学校に配布する、こういうことに仕組みがなっております。
  74. 長谷川信

    長谷川信君 次に、農林大臣にちょっとお尋ねいたしたいと思いますが、今回の豪雪、これは百年来の大豪雪で、全く生き地獄みたいな形でございますが、その豪雪の中で特に被害の大きいのは、これは金額的に見ましても、また私ども現場を見ましても、やっぱり森林被害が一番大きいと思うんです。それで、大臣御案内のとおり、いま現在出ておる数字だけで六百八十何億出ておりますが、これが、雪がもう少し減って見えるようになったら、恐らく一千億は軽く突破するのではないかというふうなことが言われておるわけであります。しかし、これはいわば個人災害みたいな形でありますので、農林省としてもいろいろ御苦心をされているようでございますが、なかなかその応対がむずかしいということを私どもも承知をいたしているわけであります。  きょうお聞きしましたら、議員立法で各党協議をして、いろいろ対策を講じようということでございますが、それにしても、予備費を使っても予備費だけでもなかなかおさまるものであるかないかわかりませんし、なかなか困った問題だと思いますが、しかし、これは治山治水の意味から言っても、大臣御視察になって、まるで山が卒塔婆のようだ、裂けて白い木が累々としてこれは涙が出ると大臣おっしゃっておられたそうでありますが、もう意欲を失って、いまの現場の諸君は天を仰いで嘆息をしておりますよ。政府もなかなかいま歯切れのいい答弁もできないのでありますが、現場の諸君は雪空を見て長嘆息をしているというのが現実です。何かうまい方法を考えていただかなきゃなりませんが、まず農林大臣から——。
  75. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 御指摘のように、今回の百年ぶりと言われている大豪雪、それによる折損木、これの被害が激甚に達しておることは御指摘のとおりでございます。農林水産省といたしましても、二月二日に通達を出しまして、天災融資法を発動するという前提のもとにつなぎ融資をして、とにかく早急に豪雪による農業関係の春作準備のそれに万遺漏のないようにということで、通達を出して融資の措置も講じております。相当件数を申し込んできております。  ただ、この折損木につきましては、雪が消えませんと後片づけもできない、被害高もはっきりしない、こういうことでございますので、やはり被害額を確認した上において特別の措置を講ずるべきである、こういうふうに林野当局にも命じておるわけでございます。地域的な問題でもございますので、国会の方、各党の方ともいろいろ御意見、御指導をちょうだいしながら対策を練っております。  いままでにほとんど前例がないと言ってもいいくらいの、先ほど御指摘のような惨たんたる情景なものでありますから、どうして次の植林まで意欲を失わせずに林業家に植林の気持ちを起こさせていくかということが大変大事だと思いますので、寄り寄り検討をいたしまして、各党においてもそれぞれ立法措置等も研究をしていただいておるようでございます。政府といたしましてもその線で御協力を申し上げて、積極的にやっていきたいと考えております。
  76. 長谷川信

    長谷川信君 予算、金がかかるということでございますので、最終的にはやっぱり大蔵大臣のところへ行くということなんでございますが、なかなかこれ大変なことでございますが、しかし百年目の災害で、本当にもう天を仰いで長嘆息をしているというのが現状であると同時に、治山治水の大きな問題でもありますので、いずれその成案ができたら大蔵大臣から——これはもう本当に大蔵大臣は困っている人たちを助けるという、非常に何といいますか、いろいろやっていただいているようでありますが、今回の森林被害につきましても格別な理解ある措置をいろいろお願いいたしたいと思いますが、大臣からちょっと御答弁賜りたいと思います。
  77. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) このたびの豪雪による林業関係の被害につきましては、すでに御承知のとおり、森林の国営保険、それから森林災害共済にかかわる保険金、これらの早期支払い措置を講じました。また、農林漁業金融公庫資金及び林業改善資金等の融資措置も講じております。その他、木材関連業界に対する被害木の利用促進、販路の確保等についてもいろいろなことを農林省でやっていただいておるわけでございます。  いずれにいたしましても、今後とも農林省と林野庁と相談をいたしますが、全国的に見て被害状況が正確に判明をして復旧に取りかかれるのは四月下旬以降じゃないかと、こう見ております。仮に何らかの予算上の措置が必要となるにいたしましても、それは五十六年度の問題にならざるを得ないんじゃないか。できるだけのことはわれわれとしても協力してまいりたいと思っております。
  78. 長谷川信

    長谷川信君 最後でございますが、厚生大臣にひとつお願い申し上げたいと思います。  本年は御案内のとおり国際障害者年でございますが、この機会に政府の国際障害者年への取り組みについて決意のほどを承りたいと思います。
  79. 園田直

    国務大臣園田直君) 今年の障害者年というのは、一番眼目は、障害者の方々社会参加、それから平等というのがテーマでございます。ヨーロッパでは身体障害者を支援をして社会に順応させるというのではなくて、身体障害者に社会が順応しろと、こういうことの意見さえ出ているのであります。したがいまして、これを契機にして身体障害者の年という行事の年ではなくて、これから身体障害者が本当に社会参加ができるような方向に長期計画をつくりいろんな対応策を講ずる、講じなければならぬ。本部長総理大臣で副本部長が総務長官と私と、こういうことでただいま検討しているとこみでございます。
  80. 長谷川信

    長谷川信君 総務長官、お願いします。
  81. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) お答えをいたします。  いま厚生大臣答弁を申し上げたように、政府は推進本部を持っております。そういたしまして、国連の言う国内委員会というものは、特別委員会というものが六十人の委員でできております。この中には心身障害者の代表者の方も入っていただいて、さらにその下に五つの部会ができております。たとえば雇用労働の担当部会とか、あるいは環境とか福祉関係、あるいは医療の問題、そういうふうに五つの部会がございますが、すでに昨年の十一月から審議を始めております。そういたしまして、今年の十一月ごろに企画部会で全体的な方向をまとめて来年にその結論を出していく、そうしてその結論を出してこれからの長期のプログラムをどうするかということにつきましては、この企画部会と、また関連する審議会がございますから、審議会方々と御意見を交えていただいて、ことしが国際障害者年の元年だという気持ちで、これからの将来にわたる障害者の方方の「完全参加と平等」という国際的な理想をわが国においても実現してまいるように努力をしてまいる所存でございます。
  82. 長谷川信

    長谷川信君 時間のようでありますので、以上で質問を終わります。(拍手)
  83. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で長谷川君の総括質疑は終了いたしました。     —————————————
  84. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、中野明君総括質疑を行います。中野君。
  85. 中野明

    ○中野明君 本題に入ります前に外務大臣にお尋ねをしたいんですが、明後日、ソ連のポリャンスキー大使と会談をされることになっておりますが、今回は先方からの申し出ということなんですが、これ、この時期にどういう意図でお受け取りになっておりますか。
  86. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 先般からよく新聞紙上等で、ポリャンスキー大使が何か非公式に総理にお会いしたいとかいうことがあるというようなことが出ていたのでございまして、外交ルートを通しての話は一回もなかったわけでございます。それで事務レベルの人が会いましたときに、非公式でいろいろされてもそれは会談とかいうことは無理なんで、もしも必要があれば、公式に正式なルートで向こうから言ってくるべきじゃないかというようなことを事務的に伝えたらしいんでございます。その結果、外交ルートを通しまして総理にお会いしたいという申し入れがあったわけでございます。ただ、内容は全然わからぬのでございまして、お会いしたいということだけでございますので、総理と御相談申し上げまして、内容がまだわかりませんので、まず私が会って向こうと話してみようということを御相談申し上げまして、それで、いま予算の総括質問の最中だからそれが終わってからにしてもらいたいということを向こうへ返事したわけでございます。そうしましたら、なるべく早く会いたい、場合によっては土曜でも日曜でもいいと、こういう返事だったものですから、それでは日曜にお会いしましょうという返事をしたというのが現状でございまして、どういう話をされるのかは一切まだわからぬわけでございます。ただ、ヨーロッパの方では各国の大使が、ブレジネフ書記長のこの間の党大会の演説の内容の親書がヨーロッパの各国では届けられておるということがございますので、そういうことかなと想像はしているんですけれども、まだ内容はいまのところは一切わかりません。まず日曜にお会いしてみよう、こういうことでございます。
  87. 中野明

    ○中野明君 これは外務大臣、当然わが国としてはチャンスですから、懸案の領土問題その他についてはお話しになるんでしょうね。
  88. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) お答えしますが、十一日行われました自民党の党三役との話でも、やっぱり領土の問題が非常に大きく出ておるわけでございまして、私も去年国連の総会へ行きました翌日グロムイコ外相に会いましてそのことは話しておりますので、向こうからどういう話をされるかわかりませんが、私どもとしましては当然そういうことは話すというつもりでございます。
  89. 中野明

    ○中野明君 外務大臣の会見の内容のいかんにかかわらず、総理もお会いになるんですか。
  90. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ポリャンスキー・ソ連大使が外交ルートを通じまして私に会いたいと、こういう御要請がありまして、いま外務大臣が申し上げたようなことでまず外務大臣がお会いをしようと、こういうことになったわけでございます。その結果によりましていつごろお会いしたらいいか、そういう点はその後でいろいろ考えたいと思っておりますが、できるだけ私もお会いしたい、こう思っております。
  91. 中野明

    ○中野明君 もう一度お尋ねしますが、ただいま外務大臣も申されましたが、領土問題はこれはわが国にとりまして「北方領土の日」もつくった直後でもありますし、非常に全国民関心の問題ですが、この問題を含めて、お会いになるときの基本的な態度をもう一度。
  92. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は前々から申し上げておるわけでありますが、ソ連は何と申しましてもわが国の重要な隣国の一つでございまして、しかも大国でございます。日ソの友好親善関係を発展させていくということが、両国の相互のためだけでなしに、アジアの平和、安定、また、ひいては世界の平和の見地から見てもこれは非常に大事なことだと、こう思っております。したがいまして、私は日ソの友好関係を増進をする、善隣関係を発展させる、こういう観点に立ちまして、腹蔵のない意見の交換をその際はしてみたい、こう思っております。当然、そのためには、この日ソ間の長年の懸案でございますところの北方領土の問題、こういう問題がお互いに虚心にテーブルに着いて今後話し合いがされる、こういうことになることは非常に私は大事だ。この領土問題についてそう短兵急に結論が出るとは私は考えておりませんが、まずテーブルに着く。両国の代表がテーブルに着いて、そしてそういう問題を話し合いながら平和友好条約の締結に向かって努力をする、また、その他の問題についても協力関係についていろいろお話し合いをする、こういうことが真の日ソ友好関係を確立するために必要であると、こういう私は考えを持っております。そういう心構えでお会いをしたいものだと、こう思っております。
  93. 中野明

    ○中野明君 では問題に移りますが、所得税減税、これが議長裁定で非常にいま衆議院でも相談されているところですが、いよいよ経団連も所得税減税を要求したというようなことが伝えられております。先日来の総理答弁を聞いておりますと、余剰金が出たら、余剰金の状況を見守っている、こう御発言で、非常に私、重みのある議長裁定ということをおっしゃっている傍ら、消極的なような気がしてならぬのですが、この議長裁定を重んじられて所得税減税にこたえたいというお気持ちがあるんでしたら、何かの形で、年度末ですしアクションを起こされるべきじゃないだろうか、経費節減ということについて大号令を出されるべきじゃないかと思うんですが、そういうお考えはございませんか。
  94. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私どもは、五十六年度予算の編成に当たりましては、歳出歳入ともに厳しい見直しをいたしまして、そして、現時点におきまして歳出をカットすべきものはカットをする、こういうことでやりました。また、文教あるいは社会福祉関係、行政水準をどうしても維持しなければいけない、そういうものはこれを維持するような措置を講じました。そのために、法人税、酒税、その他の現行税制の枠内ではありますけれども、一兆四千億に近い税の御負担国民の皆さんにお願いをすると、こういうようなことで五十六年度予算案ができておりますことは御承知のとおりでございます。私どもとしては、現時点におきましてはこれが最善の案である、このような立場で国会の御審議をお願いを申し上げておると、こういうことであります。  一方、野党各党の皆さんは、この際、賃金の目減りもしておるということであるから所得税減税をすべきである、こういう強い御主張をされております。そういうようなことで先般の事態に相なり、そして福田一衆議院議長があのような裁定をされた。その裁定の二項目目に、この減税の問題について、自由民主党初め各党がひとつ話し合いをして結論を出すようにと、こういう御趣旨の裁定があったわけでございます。私どもは、あの裁定の内容を誠実に各党が話し合いによってよりよい結論の出ることを私は期待をいたしておりますし、そのまとまった御意見につきましては、権威ある国会の議長の裁定であり、それに基づいて出した各党の結論でありますれば政府としてはこれを尊重してまいる、こういう考え方を先般来繰り返し申し上げておるところでございまして、中野さんおっしゃるように、決して消極的な姿勢をとっているというようなことは全然ございません。
  95. 中野明

    ○中野明君 総理答弁、おっしゃっていることはわかるんですが、ただ、余剰金が出るのを見守ってと、こういうふうにおっしゃっているわけですが、これはふだんのときとは違います。議長裁定が出て、何とかこの議長裁定にこたえたいというのが政府のやはり姿勢でなきゃならぬと思います。よく言われるように、年度末になりますと、どうしても予算というものの制度のこれは欠点でしょう、予算を使い切らなきゃならぬというような意味から、不要の出張が出たり、あるいは余分な物を、急がない物を買ったりして予算を使い切ってしまう、こういうような傾向も間々指摘されておるところでございます。ですから、こういう年度末ですから、改めて、議長裁定を一生懸命国対で相談はしていますけれども、政府側として、何とか財源を捻出したい、こういう意図から、号令をかけて、経費を異常のときだから節減をするようにと、こういう号令を出される気持ちがございませんかということを言っているんです。
  96. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは政府が決めたんじゃなくて、各党間で決めた問題です。総理が言うのは、議長裁定を忠実にやりましょう、と。議長裁定というのは、五十五年度の剰余金によって対応できる場合は各党間で実施について具体的に検討すること、こうなっているんです。これよりも、むしろ総理の場合は、具体的に検討というよりも、そういう余裕があれば、検討でなくて、それは減税についてもいいですよというニュアンスまで来ているわけですね、現実に。ですから私は、議長裁定で、いろいろ思い思いでこれはつくったものかもしれませんが、野党の五党からの要求のようなものにはこの範囲内でこたえますということなんです。しかし、きのうも出たけれども、余剰金を残してけしからぬ、不用額をつくっちゃけしからぬとしかられましたが、できる場合もあるんですよ。きょうはまたきょうで、不用額を使い切らずに残せというふうな話でして、できるだけ不用額を残せと。どっちにしたらいいのか、これは私は困っちゃうんだけれども、私としては、多少しかられても無理して予算を使っちゃいかぬよ、こういうときですから極力節約して不用額を出せと言っているんです、それは。  それから問題は、どれぐらい不用額が出るか。その中でも、予備費の場合は案外わかるんです。三月末ぐらいで幾らぐらいだろうと大体わかる。しかし、その他の不用額というのは、各省庁にいろいろありますから、集まってきますから、これはずっと、六月ころになりますか、もう少しおくれてくる。それから自然増収の問題も、もう少し先にならぬとわからぬわけですね。どれくらい税金が余分に出たか、あるいは出なかったか、これもわからない。そういうようなものを引き算、足し算やるわけですから、その後で結局余剰金というものが出てくるわけです、実際は。ですから、そのときにならないと要するに幅がわからない、結局は。これくらい大きくなるものか、こんなに小さくなるものか、わからない。こんなに大き目大き目にやって引っ込みがつかなくても困るし、こんなに小さく見ちゃってこんなに大きく出たときに何とかまた言われても困るし、それからこれはその時期が来ればわかることですから、その時期には逃げ隠れはいたしませんということを言っておるんであって、これ以上誠意のあることをやれと言われましても、これは一番誠意があって、はっきり総理がもう国会で堂々と国民答弁をしているわけですから、それを信用されることが一番ではないかと、私はさように思います。
  97. 中野明

    ○中野明君 いま大蔵大臣予算を残せとか残すなとかいうようなことをおっしゃっていましたが、ぼくの言っている意味は性格が違います、それは誤解のないようにしていただきたいと思います。結局、こういう国会で議長裁定が出て、異常な事態だから、政府の姿勢として、やはり年度末には、いままでからも指摘されているように、この不用、これは予算制度の欠点でしょう、そういうこともあるのでしっかり改めて、議長裁定が出てから後に厳しく予算を節減するように号令をかけてもらいたい、こういうことでございますので、誤解のないように。
  98. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) はい。
  99. 中野明

    ○中野明君 それでは、行管庁長官にお尋ねをいたしますが、総理初め行管庁長官もたびたび小さな政府と、こういうことをおっしゃっているわけですが、今回のこの予算編成を見まして、行管庁は努力はなさったんでしょうけれども、どうも行政改革による歳出削減よりも財源探しにウエートをかけられたんじゃないかというような気がしてならぬのですが、この点はどうお感じになっておられますか。
  100. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 両方やったつもりでございます。  片方におきましては、いずれ法案を提出いたしますが、住宅公団と宅地開発公団を統合するとか、外貿埠頭公団を同じように地方に移譲するとか、そういうような機構の問題もやりますし、それから法令の整理あるいは財源上の簡素効率化の実現、いろいろ手がけてやってきたつもりでございます。
  101. 中野明

    ○中野明君 機構、制度その他はやられたこともわかりますけれども、歳出削減ということについて非常に今回各方面から指摘をされている、行革が進んでない、こういうことで異論が出ているんですが、それはそれとして、私きょうお聞きしたいのは、特殊法人から国庫納付を考えつかれたようなんですが、独立採算制をとっている電電公社に納付金を課せられたのはどういう理由によるんでしょうか。
  102. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 独立採算制という意味は、恐らく経営をやっていく上について自分の収入で支出をカバーしていくと、そういう運営上のことを言うんだろうと思います。そういう点におきましては、専売公社においても納付金を出しておりますし、あるいは特殊法人では日本銀行も同じように納付金を出しております。開発銀行もやっておるわけであります。そういう点から見まして、独立採算制と納付金が矛盾するものではございません。電電公社の場合にはそういう法律上の規定はございませんでした。しかし、相当多額の収益差額を持っておりまして、しかも業務運営上差し支えないという状態でございましたので、四年間に四千八百億円の納付金で財政窮乏の折から御協力をいただくと、臨時特例の措置として今回やった次第でございます。
  103. 中野明

    ○中野明君 いま専売公社等のことをおっしゃいましたが、電電公社には経営委員会というものが法律で決められているんです。そして、公社法によると、納入金はできないことになっております。そういう点で、もう一つそれに加えまして公社が余剰金を積み立てていると、こういうことなんですが、現金で積み立てているんではなくして、これはもうすでに資産化されている。もともと公社の余剰金というのは加入者に還元すべき性質のものだろうと私は思うんですが、この点はどういうお考えですか。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる収益差額が出まして、それは現金で必ずしも全額持っているわけではございません。確かに建設勘定その他に入っているのもございます。しかし、ただいまのようにそれだけの剰余金、収益差額があることは事実でございまして、しかも経営上差し支えないと、こういうような状況でございますから、この際、財政窮乏の折から、電電公社も国家的な独占を国から享有してやっておるものでもあり、政府関係機関でもございますから、この際には御協力をいただくと、そういう考えでやった次第でございます。そのために経営上差し支えるとか、あるいはいままでの業務計画が縮小するとか、そういうことになってはいけませんので、そういうことの行われない範囲内において実行した次第なのでございます。
  105. 中野明

    ○中野明君 加入者の側から考えて非常に私、理屈に合わぬのですが、国庫納入をしろ、そして資産になっているものですから現金はないと、だからお金は借りろ、お金を借りて国へ納めると、こういう理屈になっているわけなんです。本来、先ほど申しましたように、料金の格差というのが非常に問題になっておりまして、遠距離は世界一高いというのが日本の電話料金の実態であります。これを直さなきゃならぬというのが公社年来の懸案でございましたが、それもろくにできないうちにお金を借りて国へ納入をしてもらいたい、こういうことなんですが、中曽根長官、一体、まあ四千八百億とおっしゃるんですが、公社が四年間で四千八百億納入するんですが、これは元利合わしてどの程度公社に負担がかかるように思っておられますか。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままでの既定の業務計画を行うについては差し支えはないのであります。ただ、会計処理の上から見まして、今回は債券を特別に発行してその特別債券で納付していただくと、そういう会計法上の措置を講じております。まあ、多少そういう面から利子の上で負担が公社にはかかっていると思いますけれども、しかしそれがために遠距離格差を是正するとか、あるいは夜間の割引を実行していくとか、そういうような意味の業務計画には何ら差し支えがない、公社の努力によってもそれは行い得ると、そういうことで、公社にそれほど大きな負担を課したとはわれわれは考えておりません。しかし、公社の皆さんがそういう収益差額を生むようにいままで努力していただいたという点は、われわれも評価しなければならぬと思っております。
  107. 中野明

    ○中野明君 利子は負担してもらわなきゃならぬとおっしゃっているんですけれども、借りたお金ですから、借りたのは払わなきゃなりません。ですから、元利合わせてどの程度になると推定されているんですかということを聞いているんです。
  108. 中庄二

    政府委員(中庄二君) お答え申し上げます。  利子といたしましては、初年度は九十億余でございますが、平年度になりますと三百六十億から四百億ぐらいと。ただ、元本の方でございますが、これは一種の投資でございますので、経営効率の上がるような投資をいたしますればどういうふうな計算になりますか。四千八百億が利を生めば非常にいい金になってまいりますし、不要な投資といいますか、効果の上がらないところへいきますとこれは悪くなりますが、そういう考えになろうかと思いますが、ともかく利子で申しますと三百六十億から四百億程度の間ではないかというふうに考えます。
  109. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 午前中の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開し、中野君の質疑を続行いたします。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  110. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十六年度総予算三案を一括して議題とし、中野君の質疑を続けます。中野明君
  111. 中野明

    ○中野明君 午前中の行管庁の答弁は私の質問に答えてないんですが、元利合わせて電電公社は幾ら負担をせなきゃならぬかという質問です。もう一度お答え願います。
  112. 中庄二

    政府委員(中庄二君) お答え申し上げます。  午前中は、御質問趣旨とぴったりしたお答えではなかったかと思いますが、全体の資金繰りの話と今回の国庫納付に必要な特別債券の増額等の話と二つございますので、ああいうふうな申し上げ方をしたわけでございます。  で、前半の建設財源等に充てます財政投融資の増額というのは、これは全体の資金調達の話だと思います。それから、国庫納付に必要なものはその中の特別債券の増額で内部で行うと、こういうものでございます。まあこういうふうに分けましても、先生の御質問は、金に色目はついておらぬのじゃないかと、資金繰り上から見ると外部資金が増加して負担は増加するんではないか、そういう意味合いで、先ほどの答弁では、初年度は九十億ちょっとと、その後につきましては三百六十億から四百億になるのではないか、そういうことを申し上げた次第でございます。
  113. 中野明

    ○中野明君 全然全体をお答えにならないんですが、これこんなことで時間をとってもしようがありませんので……。  電電公社総裁おいでになっていますか、お答えいただきたいと思います。
  114. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) お答えします。  元利総計で約八千二百億になります。
  115. 中野明

    ○中野明君 総理、いま電電公社総裁がお答えになったとおり、四千八百億の国庫納入を借金をして納めると、こういうことになりますと、電電公社は元利合わせて八千二百億円を負担しなきゃならぬことになっているんです。こういうような非常に理屈に合わぬようなやり方、それも公社には経営委員会というのがございます。経営委員会の権限といいますか、それを説明していただきます。
  116. 玉野義雄

    説明員(玉野義雄君) お答え申し上げます。  経営委員会は、業務運営の重要事項について審議決定すると、こういうふうになっておりまして、重要事項としましては、予算、決算あるいは事業計画あるいは借入金ないしは債券の発行ないしは償還と、こういうようなものが主な事項になっております。
  117. 中野明

    ○中野明君 いま仰せのとおりなんですが、この経営委員会の議決は済んでおりますか。
  118. 玉野義雄

    説明員(玉野義雄君) お答え申し上げます。  納付金につきましては、郵政、大蔵両省の協議で決まりまして、それにつきましては、その経過等その都度経営委員会にお諮りしまして、了承を得ております。
  119. 中野明

    ○中野明君 この法律では「議決を経なければならない。」となっているんですが、議決を経たんですかとお尋ねしているんです。
  120. 玉野義雄

    説明員(玉野義雄君) 最終的に予算に盛り込まれますので、その予算をおかけしまして議決を経ております。
  121. 中野明

    ○中野明君 議決を経ているんですか、ちょっと聞きとれなかったんですが。
  122. 玉野義雄

    説明員(玉野義雄君) これいろんな言葉の使い方がございますが、私の方では報告し、了承を得たと、こういうふうにいたしております。
  123. 中野明

    ○中野明君 解釈を言っているんじゃないんです。事実関係を言っているわけですが、議決を経たですかと、こう申し上げているんです。
  124. 玉野義雄

    説明員(玉野義雄君) 郵政、大蔵両省で決まりまして、それをかけるわけでございますので、了承を得たということでございます。
  125. 中野明

    ○中野明君 じゃ、ここに「議決を経なければならない。」ということを法律でうたっているんですが、これはどういうふうに解釈されますか。
  126. 岩下健

    説明員(岩下健君) お答えいたします。  先生御指摘の経営委員会の議決の一つでございます——これは公社法の四十一条で定めてございますが、これは予算というのがございます。これは夏の概算要求を出します際に、公社としてのいわば次年度の事業計画を、予算という形で経営委員会の議決を経て郵政大臣に提出をするわけでございます。で、郵政省はこれを受けまして、郵政大臣は大蔵大臣と協議、調整して政府案の形で予算をお決めになると、こういう手順でございますので、概算要求の提出という形で経営委員会の議決をちょうだいをしているわけでございます。
  127. 中野明

    ○中野明君 これは非常に重要なことなんですが、概算要求のときにはこの納入金の話はなかったでしょう。
  128. 岩下健

    説明員(岩下健君) 御指摘のように、概算要求時には国庫納付金の話はございません。
  129. 中野明

    ○中野明君 そうしますと、公社の業務の運営に関する重要事項じゃないんですか、この納入金というのは。
  130. 岩下健

    説明員(岩下健君) 国庫納付金は、その金額その他から考えまして、公社の経営につきましては非常に重要な意味を持っているものというふうに考えております。ただ、先ほど申し上げましたように、国庫納付の問題は、十二月の下旬に、政府といいますか、郵政、大蔵両省の間で合意がなされまして、政府関係機関としまして公社はこれに従った対応措置をとるということもまたやむを得ない措置と、こういう判断をしまして決めたわけでございまして、その経過その他につきましては、逐一最終決着のものを含めまして経営委員会に報告をし、了承を得ている、こういうことでございます。
  131. 中野明

    ○中野明君 非常にその辺が私、疑義を持ってしようがないんですが、「議決を経なければならない。」と明らかに法律に決まっているんですから、どうして議決をとらないんですか、もう一度。
  132. 岩下健

    説明員(岩下健君) 公社法の先ほど四十一条と申し上げましたが、十条の誤りでございますが、この十条で規定しております予算について経営委員会の議決を得るというこの趣旨は、先ほども申し上げましたように概算要求の際に議決を得たわけでございます。で、この予算調整あるいは国会に対して提出する、こういう権限は当然のことながら電電公社はございませんで、政府の方におきまして、この予算調整その他につきましてある一つの決定をされるという手順でございます。したがいまして、公社としての事業計画についてこういうことをしたいという、その場におきまして経営委員会の議決を得るわけでございます。  この納付金につきましては、概算要求時にはございませんでした。その後の経過で、大蔵、郵政両省の間の合意としてお決めいただいた。したがいまして、公社としての、どう言いますか、経営委員会の議を経て公社の意思を出すということになじまない、そういった性格のものから、ただいま申し上げた経過をたどったというふうに考えておるわけでございます。
  133. 中野明

    ○中野明君 どうも納得できません。明らかに法律で議決をしろと、こうなっているんですから、どうして議決をしないんですか。  大蔵大臣にお尋ねしますが、議決もしてないようなそういう予算を計上していいんですか。
  134. 松下康雄

    政府委員(松下康雄君) 電電公社側から御答弁がございましたように、公社としまして概算要求の時点で議決を経られました後、郵政大臣がこの公社予算調整の権限をお持ちでございますので、郵政大臣が政府予算の方針の決定されたところに従われまして権限によって予算調整せられまして、それを公社がそれに従うという形で、議決としては最初の公社の意思決定の段階で終わっておりまして、その後の種々の内容変更につきましては、御説明ありましたような報告、了承という手続になっておるものと理解をしております。
  135. 中野明

    ○中野明君 どうも、公社の説明もいまの大蔵省の説明も納得できません。了承と議決というのは一緒ですか、違うんですか。
  136. 岩下健

    説明員(岩下健君) 了承と議決は、言葉の正確な意味においては同じものではないというふうに思っております。
  137. 中野明

    ○中野明君 これ、非常に問題なんですが、もしも経営委員会がこの問題を否決したら一体どういうことになるんですか、大蔵大臣
  138. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) いま法律問題向こうで打ち合わせをしておりますから、その前に、私、お答えをいたします。  私は細かいことはよく承知いたしませんが、一つの政治論といたしましては、今回の措置は国の財政再建に資するための臨時的な特例な措置だと。それで、御承知のとおり電電公社には五十五年度で一兆六千億円の利益積立金がございます。これはもちろん現金で積み立てておるわけでも何でもありませんが、会社でいえばそれだけの利益が上がっておるというわけであります。国際電電というのがございますがね、国際電電というのはKDD——ずいぶんむだ遣いだとか言われて騒がれたんだが、電電公社の方は年間の収入が三兆四千億円、KDDは千四百億円です、そいつの二十分の一ぐらい。それでも三百六十億ぐらいの利益を出しまして、毎年百五十億とか二百億、税金を約半分納めているわけですよ。電電公社の方は一兆五千億から積立金があるが、いままで民間じゃありませんから税金は納めてない。まあ民間でしたら、これはそれだけの利益があれば半分は国に納めなければならぬ。それで、借金をしてでも配当もその中でしなければならない。そういうふうな状態の中で、ともかく電電公社がいままでそれだけの労使協調のもとでみんながよく働いて、非常にまずい体質であったものを年々多くの利益を上げられるようになったと。これは私は非常にりっぱなものだと思って、私は敬意を表しておるわけでございます。そういうようなときに当たって、やはり国の財政も非常に窮乏をしておるのでありますから、電電公社においても年々ともかく千二百億円程度を四年間にわたってひとつ国の方を手伝ってくれないかというお話になりまして、それでひとつ手伝ってもらうことに実はなったわなんです。  でございますから、まあ細かい点についてはいろんな御意見等もございましょうが、電電公社もよくやっておって、遠距離料金は世界一高いとか言っておりますが、近距離料金は世界一安いわけでありますから、いい面もまだまだたくさん残っております。そこで私は、今後とも、要するにともかく生産性を上げてやっていただけばもっといい業績が出るんじゃないか。まあ国鉄のようにお客さんを奪われるという心配もございませんしね。国鉄の場合はもう道路に奪われ、海に奪われ、飛行機に奪われというわけで、みんな奪われておる。なかなか生産性が上がらないという理由の一つがそこにあるが、電電公社の場合は独占業務で、郵便局と競争だといいますが、もう郵便料金値上げすれば電話の方にみんな行っちまうというような時代にむしろなっちゃったというようなことでもございまして、まあひとつこの際は、政府財政窮乏の折から、ひとつぜひとも御協力願いたいということでお願いをして、話し合った結果、まあそんなら認めてやろうというようなことになって決まったことでございますから、まあしさいな点はいろいろあろうかと存じますが、御承認をいただきたいと存じます。
  139. 中野明

    ○中野明君 経緯はいま大臣のお話で大体わかりますがね、そうだからといってどんな方法でも構わぬ、手続は無視して構わぬということにはならぬでしょう。それを言っているんです。
  140. 守住有信

    政府委員守住有信君) 先ほどの前段の方の御質問に対してお答えを申し上げたいと思います。  御承知のとおり、公社法の十条によりまして経営委員会として議決すべき事項というのが定められておるわけでございます。その中で、この臨時納付金の問題につきましては、いま公社当局から御説明がありましたように、それだけを取り出してということでは——、事実上の経営の説明了承ということというふうに理解をいたしておりますが、これが公社予算全体、あるいは資金計画、借入金計画、これは全体として議決を要するということに相なっておりまして、五十六年度予算案におきましても、利子負担におきましては約九十六億の増加、さらに借入金の計画におきましてもこれがふえておるわけでございますので、そういう意味におきまして、その全体としての資金計画という意味で経営委員会の議決を得ておるものだと、こういうふうに理解をしておる次第でございます。
  141. 中野明

    ○中野明君 それはおかしいと思いますよ。議決を得たのは去年の七月でしょう、この話が決まったのは十二月でしょう、ですから私が言っているんです。この状態では経営委員会は全然あってなきがごとし、国会両院の承認で総理大臣の任命になっている経営委員会、これがもう軽視されている、これはもうはなはだしいことでございます。この点非常に重大な疑義があります。しかし、この問題にこだわっておると前へ進みませんので、疑問がある、承服できないということを申し上げておきます。  行管庁長官、あなたが言い出されたんですが、いまさっきから答弁があるように、八千二百億電電公社が負担しなきゃならぬ。これは本来加入者に還元すべきお金なんです。ところが、そういうことを一切考えないで、いとも簡単にこのようなことをなさっているんですが、私、郵政大臣にお尋ねしますが、この納入金をしている期間中にまさか値上げなんていうようなことは言われないでしょうね。
  142. 山内一郎

    国務大臣(山内一郎君) いろいろ国家財政の関係上納付金を出すことに決められたわけでございますけれども、金額も御承知のとおり四千八百億という多額の金でございます。そこで、どうして出していくかという問題でございますけれども、御承知かと思いますけれども、収支差額を直接それに回すということはさせないようになっているわけでございます。収支差額というものは、既定の事業計画に沿って、五十六年度では遠近格差の是正の値引きの方に回す、あるいは日曜祭日の割引の方に回すという、設備の改良等それぞれの計画に沿ってやっていくと、利子だけはいわゆる損益勘定に入りますけれども。したがって、借入金によって納付するという、制度というよりも仕組みをとっているわけでございます。  そこで、納付をしながら値上げというような問題が発生した場合、いま御質問でございますけれども、これはなかなか国民の納得は得られないと思うんです。値上げするなら納付しなければいいじゃないかと、こういうことで、まことに電電公社は非常に御努力を願わないといけないんでございますが、ひとつ十分に御努力をいただいて、収支差額が黒になるようにまず一生懸命やっていただく、それでなおかつそういう赤のような事態となっても、納付金を納めている期間においては先ほど申し上げましたように納得していただくことは非常にむずかしいということで、値上げというのは困難であろうというふうに解しているわけでございます。
  143. 中野明

    ○中野明君 電電公社にお尋ねしますが、この今回の納入金はどういうふうに理解しておられますか、性質。
  144. 岩下健

    説明員(岩下健君) お答えいたします。  国庫の納付につきまして、基本的に電電公社としましては、端的に申し上げまして、財政再建への協力金の拠出というふうに受けとめているわけでございます。つまり、公社自身、先ほど先生御指摘の通話料の遠近格差の是正あるいはサービスの格差の解消、あるいは新しいサービスあるいは技術の導入といった幾つかのこれからの課題がたくさんございます。そういう中にございますが、また一方、国の財政再建の緊要性、緊急性ということを考えますと、政府関係機関といたしまして、国からの強い要請に対しまして協力をするということもまたやむを得ない措置だろうというふうに判断をいたしまして、先ほどから申し上げておりますように、両省間の合意に従いまして、公社が持っております、いわば一つの事業活動力といいますか、これを最大限に発揮するということによって臨時かつ特例的な措置ということで国庫納付をするということで受けとめておるわけでございます。
  145. 中野明

    ○中野明君 これは非常に無理があるんですが、協力金だというふうに理解をしておるようですが、総理、協力金ということになると、これはどうも、そういうふうに総理も受けとめておられるんですか。
  146. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 先ほど来大蔵大臣からここに至った経緯等につきましてはつぶさに御説明を申し上げたところでございます。  私どもは、歳出の厳しい見直しとともに、法人税その他酒税等々の現行税制の枠内ではありましたけれども増税をお願いをする、こういう状況下におきまして、特殊法人と外郭団体で黒字を出しておるというような、そういう経営内容の特殊法人に対しましては、この際財政再建に協力をしてもらう、こういう方針のもとに措置したものでございます。
  147. 中野明

    ○中野明君 それなら、協力金だとおっしゃるのなら利子まで負担させるというのはどうでしょうね。ちょっと私理解できぬのですが、どうですか、大蔵大臣
  148. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) この利益の中から、ひとつ年々、四カ年にわたって千二百億円ずつ御協力をいただきたい、ところが、現金は持っていないということで、その用意したものは建設その他でお金を使わなきゃならぬということでございますから、そこのところはどういう形で調達をしていただいても私の方は構わないのでございます。物を売って調達しても結構でございますし、不用地とか。したがって、ただ向こうはすぐというわけにもなかなか、金繰りに困るということで、社債みたいなものですね、そういうのも発行する。それからもう一つは、いままでどおりやはり財投のお金も毎年借りていますからね。どこの会社でも、民間だったら事業をやって借金のないところはどこもないわけですよ、したがって、そういうような建設にも支障のない程度の金繰りをつけたということだと思うんです。  この利息についても、長期の支払いということで、四年間の利息ならもっと小ちゃいですよ、それは四千八百億ですから。だからその倍にもなるはずないんであって、それはかなり長期に見て計算をしているからなんだと思うんですね。だから短い期間だったら四千八百億に対して四千億も利息かかるわけないわけですから、これは、四年間だけの分なら。一年に一割払ったってもっと少なくなりますわね、これ。したがって、これは生産性の中で吸収をしていただけるものだと、こう思っておるんです。ことに民間——いま私、KDDの話をちょっとしましたが、二十五分の一ぐらいのこれ規模なんですよ。それでも毎年税金二百億円ぐらいのものを、五十四年で百九十九億、五十三年で百五十六億とか納めているわけですから、ですから仮にそうなれば、電電公社二十倍以上、二十五倍の規模ですから、二百億にしたって五千億円ぐらい納めている計算になるわけですね、計算上。しかし、それと同じくびたっとはもちろんできませんよ。できませんが、しかし、やはりこれは独立企業体であっても、私はやり方で、電電公社のやり方でもう少し私はうまくいく方法がもっとあるんじゃないかという気も実はするんです。したがって、今後は真藤総裁、ともかく民間のベテランの総裁を迎えて、そうして労使理解のもとに——私は事業の量というものは、もう電電公社の事業の前途というものは私はこれはいっぱい明るいと思うんですね、だれも競争相手ないんだから。したがって、これについては私はやり方で、近代化の中でもっと収益も上げることができるし、私は、世界に冠たる電電公社で四千八百億ぐらいでびくともするものじゃない、やり方次第であると、こう思っております。
  149. 中野明

    ○中野明君 非常に大蔵大臣乱暴な言い方をされるんですが、協力金でしょう、財政再建に協力をしてもらいたいと言う方でしょう。それが利子ぐらい何だというような言い方をされたんでは加入者は納得できませんよ。これは本来加入者に還元すべきお金なんです。それを財政再建に協力してくれと言うんですから、大変な苦しいところを協力してもらうんだから、利子だけはこっちで払いましょうと言うのが常識じゃないでしょうか。いまのような言い方をしておったら、これはちょっと加入者は納得できませんよ。電電公社の総裁、加入者にどう説明するんですか。とにかく利子もつけて国の方へ協力せにゃいけぬようになりましたと言って、それで納得するんですか。値上げはまた言ってくるんでしょう。総裁どうですか。
  150. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) お答え申し上げます。  現状では私どもまだ少し時間の余裕がございますので、組合とよく相談して、また組合以外の職員とよく相談いたしまして、そういう職員の全員の積極的な協力を得て、これだけの賦課の負担を長い間かかって何とか消していくということを考えるよりほかに方法はないというふうに考えております。
  151. 中野明

    ○中野明君 時間がありませんので、この問題総理にもお願いしておきますけれども、国庫に納入している間に値上げは絶対なさらないように。そしてまた、総理がきのう答弁されておったのと違いますね。電力会社からは取ったらどうかと言ったら、それは将来に備えて値上げを少しでも延ばす方でいいと、こういう答弁でしょう。これと一貫しておりませんよ。これだって繰り越しておけば値上げが少しでも延ばせるんです。そういう点、特に電話料金の値上げは納入期間中はなさらないように強く要望しておきます。総理答弁を……。
  152. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 役不足かもしれませんが、私から答弁をさしていただきますが、電力会社の場合は、純益の半分ぐらい毎年それは税金でちょうだいしておるんです。その残りでいろいろな建設とかいろんな借金をして多くの投資をやるということでございまして、なお余剰がある場合には極力値上げは認めないという企画庁の方針でもございます。  電電公社の方の利用者との問題ございますが、国も利用者でございましてね、国も利用者なんですよ。まあ言うならば電電公社と国とは、独立と言えば、別々と言えば別々だけれども、同じものと言えば同じようなもので、一家みたいなものでありましてね、私はそう思っているんです、実際の話が。国有でもありますし、ですから国の出先というようなものでございますから、利用者と申しましても、国も利用者でもあるし、また出資者でもあるし、結局国にそれだけ協力するということはやっぱり国民に協力したと。国は国民のものでございますから、国民と別なものではないので、その点も御理解をいただきたいと思います。
  153. 中野明

    ○中野明君 また大臣が要らぬことを言うから言わなきゃなりませんが、そういう乱暴な考えがあるから経営委員会なんかをすっぽ抜かして勝手なことをするんです。何のための経営委員会かわからぬのです。  総理、ひとつ経営委員会の機構の改革も含めていまの私の質問に答えてください。
  154. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 確かに今回の場合は概算要求の段階におきましては経営委員会の議決を経ておるわけでございます。(「経てないよ」と呼ぶ者あり)概算要求の場合ですよ、してあるんですが、この予算の最終的な段階におきまして、現行税制の枠内ではあるけれども国民の皆さんに税負担をお願いをせにゃいかぬと、こういうことになりまして、そこで政府一般会計の圧縮、縮減も図りましたし、特殊法人等の方からもできるだけ納付等協力を得ようと、こういうことで後になって実はそういう措置が講ぜられたということで、中野さんから御指摘になりましたように、概算要求の段階では確かに議決は経ておるけれども、最後の段階で政府部内で大蔵大臣、郵政大臣等でああいう話になって、郵政大臣がそれを大局的な立場で判断をされて、それを調整をされたと、最終段階で。こういうようなことで、順序としては確かに御指摘のとおりになっております。  しかしいまのような状況でございますからこれを御了承賜りたいし、五十七年度以降におきましても概算要求の段階できちっとやっていくわけでございます。この点はひとつよろしくお願いを申し上げたい、こう存じます。
  155. 中野明

    ○中野明君 では問題を変えます。  官房長官にお尋ねをしますが、この郵便の個人年金をめぐりまして二年越しに大変もめて、そして最終的に合意を得たんですが、私非常に問題にしたいのは老人の老後の生活、これは老人社会に入りますから老後の生活の安定というのが非常にいま重要なんですが、これはやはり公的年金というのが基本でなければなりません。公的年金が基本になって初めて補完的なものとして自助年金が当然出てくると、こう思うんですが、二年もこのような年金問題で政府とそれから自民党でもめて、結論としてこういう形になってきて、金融懇というようなもの——郵貯懇ですか、そういうようなものをつくられたんですが、その前にひとつ厚生大臣、公的年金とそれから自助年金のこの関係考え方を示していただきたい。
  156. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおりでありまして、自助年金、これも大事でありますが、基本となるものはあくまで公的年金でございます。
  157. 中野明

    ○中野明君 それで、公的年金がまだ各省ばらばら、非常にこれは問題になっているところで、厚生大臣も頭を痛めておられると思うんですが、公的年金の一元化といいますか、社会保障制度審議会総理の諮問機関としてありまして、基本年金構想を建議しておられます。あるいはわが党は二階建て年金を提言しているんですが、これの方をもっと一生懸命やってもらいたいと思うんです。二年がかりで大蔵、郵政とか、あるいは民間と官業とかいってがたがたがたがた悩まれる前に、公的年金についてこれほど力を入れていただかなきゃならぬと私は思うんですが、厚生大臣、公的年金の一元化の問題について決意を……。
  158. 園田直

    国務大臣園田直君) 八本の公的年金それぞれ沿革、環境、相違があります。そこで、これを一本化するのはなかなか困難でありますが、また反面この八本の公的年金がばらばらであるために格差がだんだん出てきておりまするし、その他の弊害も出てきております。  そこで、だれが考えてもこれは将来何とかしてまとめていかなきゃならない。しかしまとめるについては、これを一挙に一本立てにすることはなかなか困難でありますから、その前提として地ならし、いわゆる二階建て構想であるとかいろいろあるわけでありますが、その構想地ならしが必要である。ただし、その二階建て構想の地ならしをするためには変換のための莫大な資本金が要る、その資源をどこから持ってくるか、あるいはどのように調整をしていくか、こういうことではありますが、いずれにしても、その方向に向かって一歩一歩実行を進めていくべき段階であると考えております。
  159. 中野明

    ○中野明君 これは政府部内で郵便年金なんかの問題で二年も続けてもうがたがたがたがたして大騒ぎして、知恵を使い、時間を使い、頭を使ってやるぐらいに熱心になるよりは、いま厚生大臣がおっしゃったように、公的年金の方にもっと力を入れてくれ、それの方が基本じゃないですかと、こう言っているんですが、その考えどうですか。
  160. 園田直

    国務大臣園田直君) おっしゃるとおりであると思いますが、問題は理論的な問題ではなくて、やっぱり現実の問題で、いままでもたもたいたしましたのは、それぞれの八本の年金の財産というか、環境というか、そういうものがばらばらでございまして、よい年金とあすでもつぶれそうな不健全な年金とを一緒にするということが非常に困難で、今日まできたわけであります。しかしそのままやっていけない段階に来たというのが今日だと、こう思いますので、やはり一本二階建てという、こういう方向で一歩ずつ地ならしをしていかなきゃならぬと考えております。
  161. 中野明

    ○中野明君 総理、この問題は厚生大臣がお一人音頭を取られてもなかなかこれはむずかしい問題なんですが、総理の諮問機関の社会保障制度審議会も建議をして総理に進言をしているわけですが、総理が中心になって音頭を取るというお考えはないんですか。
  162. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま厚生大臣から申し上げたように一本化が理想でございますから、その方向に向かいまして、審議会の答申等も踏まえて政府として努力をしていきたいと、こう思っております。
  163. 中野明

    ○中野明君 官房長官、そういうことで郵便年金でごたごたして、俗称郵貯懇と、こう言われているんですが、この郵貯懇という略称は官房長官がつけられたんですか。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 郵貯懇というその便利な言い方は新聞がつけてくれたのでございますが、正式の名前は、金融の分野における官業の在り方に関する懇談会というのが正式な名前です。
  165. 中野明

    ○中野明君 どうも略称の方が通りがいいようですから、やはりうわさどおり官房長官がつけたんじゃないかというような気がするんですが、この懇談会はどういうことをするところですか。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 金融の中で官業に資金が非常に集中しているということが言われるが、果たしてそうであるのか、それはそれでよろしいのか、また自由主義経済体制下での金融の分野で官業はいかにあるべきか、あるいは金利というものはどのように決められるべきか等々の問題につきまして総理大臣の諮問機関として有識者に御検討願いたい、こういうのが目的でございます。
  167. 中野明

    ○中野明君 非常に重要な問題なんですが、そういう重要な問題を決めるのに八月に結論を出せというようなことをおっしゃっておるようですが、これは何か根拠があるんですか、八月というのは。
  168. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 八月と考えましたのは、各省の予算の概算要求が一応八月末が期限でございますし、有識者の方々にお考えいただく時間としては、半年余りございますので、そのぐらいでは結論を出していただけるのではないかと、そう考えた点もございます。  なお、他方で、郵政の方の年金は九月にはスタートしてもらいたいと考えておりましたこともございまして、直接の因果関係はございませんけれども、そこらもありまして八月末と考えたわけでございます。
  169. 中野明

    ○中野明君 これは非常に大事な問題を含んでおりますので、軽々に決まるような問題じゃないと思いますよ。それを八月に結論を出せというようなことで拙速をしますと、これ後悔をするんですが、こういう点について慎重にしてもらいたいということと、それからこれは金利の問題も当然議論が出てくると思うんですが、この金利の一元化という問題についてはなかなか年来の議論のあるところでして、そういうような問題を決めるのに八月までに結論を出せということ団体が、私ちょっと不見識じゃないかというような気がするんですが、その点もう一度お答えいただきたいと思います。
  170. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 確かにむずかしい問題でございますけれども、他方で議論はずいぶん出尽くした問題でもございます。したがいまして、今度大変にすぐれた方々に懇談会をつくっていただいたわけでございますが、その懇談会には各方面からできるだけ自由に意見をおっしゃっていただくようなそういう運営をお願いしてございますので、重要な問題ではございますが、ある意味で各方面ずいぶん議論は出ておりますので、優秀な方々でございますから、各方面の意見を数ヵ月もお聞きになれば一応かくあるべきだという考えをまとめていただけるのではないであろうかと、重重大切な問題であることは承知をいたしております。
  171. 中野明

    ○中野明君 それではこの問題最後にお尋ねをしておきますが、官房長官、郵政審議会とこの懇談会との関係はどういうようにお考えになっていますか。
  172. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、この懇談会は自由主義経済体制下における金融のあり方あるいは官業はどうあるべきか、国の金利政策等々御議論をいただくわけでございますが、郵政審議会の設置は、これはたしか法律にございます、郵便貯金事業等の能率的な運営を図るといった種類の、これが郵政審議会の設置目的でございますので、そういう問題を、何と申しますか、超えると申しますか、そういう問題のもう少し次元の違いました基本の問題をお願いしようと思いまして、郵政審議会審議事項と重複いたすわけではございませんので、次元の違う問題として取り上げていただくとすればやはり新しい懇談会の方がいいのではないかと、こう思ったわけでございます。
  173. 中野明

    ○中野明君 これは当然金利の一元化ということも議論の中に入るということを私も伺っておるのですが、そういうことになりますと、この郵政審議会も金利の問題については真剣な議論を積み重ねてきておるわけです。そういうことで、現在行われている金利の決定方法というのは私は非常に理想的じゃないかと考えている一人なんですが、そういう点について、この一元化をされるということになると、先日来日銀総裁も大蔵大臣も、金利は将来は自由化に持っていかなきゃいかぬのだと、そういうようなことをおっしゃっているんですが、そういう考え方とどうも私は逆行するんじゃないか、つじつまが合わぬじゃないかと思うんですが、その辺どうでしょうか。
  174. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) その金利の自由化というのは、各銀行がばらばらな金利でやっていくんだということじゃないんですね。スタートはいろいろな考え方があったとしても、金融市場において競争が行われるわけですから、その結果は需給の均衡というところでおのずから相場が決まってくる。そういう金利水準がそこで決まるということが本来金利の自由化なんですね、本来は。ところが、この金利というものについて、仮にそういうものが一方にある。ところが、郵政省の方は国家機関で、法定的に、法定というか、まあそうでしょうな、権力をもって値段を別々に決めていくんだということになると、むしろこれはもう自由化の方向と逆な方向になるんじゃないか。それからいま盛んに公定歩合を下げろとか、貸し出し金利を下げろとかといういろいろ議論が行われておるわけですが、そういうときに仮に民間機関等に対して貸し出し金利を下げなさい、そのためには預金金利もこれこれにしなさい、こう言ったと。ところが、国の全体の三分の一ぐらいの六十兆円を超える貯金量を持つともかく郵便局関係ですね、それが、いやぼくの方は別だよと、貸し口はもうちゃんと決まっているんだから、運用部へ持っていけば借りないということはないんで、みんな受け取ってくれるんだから、うちの方はそう簡単には下げられませんでということになりますとね、これは経済が非常におかしくなってしまう。仮に、民間が預金金利を下げて、郵便局が窓口では下げないということになれば、それは国の方へ金は集まりやすいうんと集まってしまうけれども、民間経済が資金が枯渇してしまう、いびつになってしまうというような問題等もありまして、やはり郵便局の資金量が小さなうちはいいが、いまのように全体の資金の三分の一も持つというような状況になりますと、国が金融政策を行う場合においては、これらの郵貯マネーというものもこれはやっぱり国の経済に大きな影響がある問題ですから、一緒になってやっていただくというような方向が必要だというふうに考えておるわけです。
  175. 中野明

    ○中野明君 郵政大臣、この問題についてどう考えますか。
  176. 山内一郎

    国務大臣(山内一郎君) 先ほど、内閣の金融懇でございますが、ちょっとその点も触れさせていただきますが、官業だけというのはなかなか議論がしにくい問題で、官業と民業の両方の関連性とか、そういう点をやっていただくのがいいんじゃないかと、その点は考えておるわけでございます。  それから、いま金利の決め方も、御承知でございますからもう詳しく言いませんけれども、郵政審議会が郵便貯金、金利調整審議会一般の民間機関と、こういうことになっておりますけれども、郵便貯金の郵政審議会で検討していただく場合でも、これは法律で明記してありますから、預金者の利益の増進とか、貯蓄をもっとやっていただくとか、こういう点も考慮しますが、一般の金融機関の利子も配意をすると、その辺で関係をつけながら、いわゆる調整をとりながら国全体としてどうすればいいかということを決められるというのがいま現在の制度であることは御承知のとおりでございます。  そういうやり方をやりますと、両方のことを考えられて非常にいいと思いますが、ここで自由化を突如としてやるということは相当な準備段階を経てやれば別でございますけれども、いまの段階で自由化の方がいいじゃないかというふうな結論を出すことは私は非常に早急である、こういうふうに考えております。
  177. 中野明

    ○中野明君 官房長官、やっぱり両大臣いろいろ立場があって、それぞれの意見があります。大臣同士でもこれぐらい違うんですから、この郵貯懇というんですか、金融懇というんですか、それはなかなかむずかしいんじゃないかと思いますが、そういう点、国民が納得できるようなそういう公正な審議をお願いしたいわけです。それには、やはり公開ということも一つの方法じゃないかと思うんですが、この点はどう考えておられますか。
  178. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まず、人選をいたしますときに非常に苦労いたしましたのは、いろんな意味で両省あるいはそれに関係が直接におありでないような方々にばかりをお入り願って、いわゆる三者構成ということでなく、純粋に中立的な方方ばかりをお入り願ったつもりでございます。  で、公開ということでございますが、何と申しますか、いまやっておりますことは、五人の委員が、今回はたとえば郵政省側の考え方、次回は大蔵省また日銀あるいは金融界等々、その都度その都度ヒヤリングをしていただいておりまして、何と申しますか五人の人たちが自分の意見を固めていくためのヒヤリングということをやっていっていただきますので、その会議自体を公開するということは必要でないのではないかと思っておりますが、最後に五人の方々が結論を出されまして、恐らく何と申しますか答申というようなものにでもなってまいるかと思いますが、これは私としては公開をすべきものではなかろうかと、私は私なりにいま考えております。これは、実はしかし、委員方々に御相談をいたしてございませんのでお約束は申し上げられませんが、そういうことがよろしいのではないかと思って私はおります。
  179. 中野明

    ○中野明君 国民全体非常に関心の高い問題ですので、ぜひ官房長官のお考えのようにしていただきたいと思います。  それでは、次の問題に移りますが、食糧の安全保障についてお尋ねをしますが、昨年の十月末に「八〇年代の農政の基本方向」というものが出されまして、食糧の安全保障ということについて非常に大きくクローズアップしておるわけなんですが、この安全保障について農水大臣に最初所見を伺いたい。
  180. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 一億国民に食糧を安定的に供給してまいるということは、これはもうきわめて安全保障上基本的な重要な問題でございます。  それをやり遂げるためには、国内でできるだけ生産をしてまいるということと同時に、どうしても日本の狭小な国土あるいは営農形態の相違から、なかなか多量な生産を賄うことのできない、たとえば穀物類のえさ等につきましては、どうしても輸入にまたなければならないという問題があります。さらに、小麦等もある程度確保しなければならないということで安定的に外国から輸入を確保してまいる。この両々相まつことが欠くことのできない要素であります。  その線に従いまして、まあ先般農政審議会からもその点は十分怠りなくやれよという答申もいただいておるわけでありますので、その線におさおさ怠りなく万全の措置をとってまいっておる。特に、国内でもっと増産をしなければならない、たとえば小麦等につきましては、少なくともめん類に充当する小麦は全部国内で生産をしよう。また、大豆におきましても、食糧に供する六割は国内で生産をしよう、十年後にはそこまで国内生産を上げていこう、さらに、えさとしての穀物、穀類の品種改良をして、それをやはり水田から確保するようにえさ米等の研究にも十分な手配を尽くしておるということで、昭和五十六年度の予算要求もいたしておる次第でございます。  また、輸入食糧につきましては、一ヵ国からだけにしぼっておきますと、いろいろな異常気象とかそういう問題によって困る場合も現に大豆等で経験しておりますので、できるだけ複数の輸入先を設定をして、そうして輸入食糧の確保を期してまいる、こういう手配をしていくことが食糧の安全保障体制を確立するゆえんである、こう考えて指導をいたしておるわけであります。
  181. 中野明

    ○中野明君 そこで、大臣にお尋ねしますがね、自給力の向上ということをよく言われるんですが、自給率と自給力、こう非常に分けて使っておられるように思うんです。これは総合安全保障会議ができまして、当然そこで食糧の安全保障も議論されていると思うんですけれども、なかなかこれはわかりにくいんですが、総合安全保障会議に入っておられる閣僚の方でちょっとお尋ねしてみたいんですが、輸入関係を扱っておられる通産大臣、この自給力と自給率というのをどういうふうに御理解なさっていますか。通産大臣、ちょっと。
  182. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 率というのは、消費量に対して生産量が幾らあるか、これの比率を出したものが率でございます。力の方は、自給力の方は、いろいろな水資源でありますとか、あるいは開発可能な土地でありますとか、そういう潜在生産力をいつでも動員できるというような、そういう体制をも含めた生産のための基盤並びにその環境と申しますか、さらにはそれを行っていく農家の確保というような問題をも含めて、これを総合的に自給力とこう言っておる次第でございます。
  183. 中野明

    ○中野明君 通産大臣にお尋ねしてみようと思ったんですが、農林大臣がお答えになりましたが、いまのお答えを聞いておってもなかなかちょっと理解しにくいんですね。だから安全保障会議の閣僚の方でもどこまで理解しておられるかと思ってちょっとお尋ねしてみたんですが、この自給力というものの方で自給率よりもこれなかなかめんどうじゃないか、金がかかるんじゃないかと、こういうふうな気がするんですが、大臣、どうですか。
  184. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 自給力を発揮してまいりますためには、潜在しております生産力と申しますか、生産可能な環境と申しますか、そういうものをいわゆる生産に結びつけてまいりますためには、時間とある程度の経費が要ることは、これはもう当然でございます。
  185. 中野明

    ○中野明君 それで、私は自給率を向上させることに力を入れる方が正しいと。自給力というものは非常に漠然としておって、いざといったときにそれが果たしてその想定したとおりにできるかどうかは、これは疑問です。農産物というのは、機械をとめておったのを動かしたらすぐ生産ができるというような性質のものと違いますから、ですから、自給力の強化というようなことを前面に押し出されるよりは、自給率の向上ということを前面に押し出してお考えになるのが正しいじゃないかと、こう思うんですが、どうですか。
  186. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 中野委員も御承知のとおり、国会で御決議をいただいた文、決議の次第は、自給力を強化する、そのために政府は十分配慮して行政を進めなさいと、こういう御決議をいただいておるわけであります。と同時に、いま御指摘になりましたやっぱり率と、必要なものと生産できるものとその比率というものが、これはやはり行政庁としては一つの大きなやはり基本になることは申すまでもありません。その意味におきまして、昨年の秋に閣議決定をしていただいた需要と生産の長期見通し十カ年間の分には、やはり率というものを中心にして私どもは事を進めておるという点を御理解をいただきたい。
  187. 中野明

    ○中野明君 それで大臣、自給率をいまおっしゃったんですが、ところが六十五年度には——現在は自給率が三三%なんですね、それをこれから十年先には三〇%に下げるという計画になっておるんですが、これはどういうものですか。
  188. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 実は、相当な国費を投下し汗水流してやっても、十年後には自給率は、三四%であるものが三〇%に維持することすら容易ではないと、こういうふうに農政審議会からの説明を私は受けたわけであります。実は、私も十カ年の長期見通しをつくるに当たって、せっかく三四%ある自給率を三〇%に下げると、その間の努力はどうなるんだと、こういう疑問を持ちまして、いろいろ委員方々にもお聞きしたわけでございますが、御承知のとおり生産性の低い第一次産業の農業というものに対して、やはり何と申しますか、関心を持ってやる人がだんだん少なくなってくるというようなために、ほうっておきますと、いまのようなままでおきますと非常にぐんぐんぐんぐん下がってしまう。したがって、もっともっと自給力を強化するために政府は農政に力を入れにゃいかぬぞと、国会からも御指摘をちょうだいし、また農政審議会からも、相当な努力をしてもこのようなふうになるんだから、もっともっと、三四が三〇になるんだから、しかも農林水産物資の輸入が年々年々膨大な輸入量を構成しておる。農林水産物資が昭和五十四年で二百八十九億ドルというものを買い入れておるわけであります。そういう事態でもありますので、どうしてもこの自給率を上げようと努力しても三四から三〇になる、この辺のこと、十分分析をし心にとめて行政をやれと、こういうふうに私はあの長期見通しを受け取っておるわけでございまして、御指摘のとおり三四であったものを三四に十年後になって維持することができれば、亀岡農水大臣ああ言っていたけれどもうまいことやったなと、こう言われるわけでありますので、そういう意味で大いにこの数字、三〇にならぬような努力ですね、やっていくことがやはり責任者の使命であると、こんなふうに考えてやっております。
  189. 中野明

    ○中野明君 総理、これ閣議決定もされているんですが、これどうなんでしょうね、食糧の安全保障とおっしゃる限り、現在三四ないし三三自給率があるんです。十年後に三〇に減らしますということを、どう考えても私は安全保障という考え方から言っておかしいと思うんですが、どうでしょう。
  190. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはいま、亀岡大臣が申し上げたとおり計算上そういう結果になるわけでございます。しかし、私は、国民の皆さんに食糧の問題で大変不安があるというようなことであってはいけないわけでございます。  具体的に見てまいりますと、お米はこれは十分できる、それから野菜もできる、それから私は果物も十分賄える。それから問題は畜産でございます。これは飼料、えさを大部分輸入に依存をしておる、それが自給率に大きく響いておるわけでございますが、私は幸い日本は世界一の漁業国でもある。わが国の二百海里水域の中でも私は一千万トン以上の漁獲は可能である、現に、八百万トン以上の漁獲を揚げておる。そういうようなことで、たん白食糧につきましても、畜産こそえさの関係でなかなかむずかしい面がありますが、水産資源は豊富である。こういうようなことを考えますと、有事の際におきましても私は、おっしゃるとおり食糧の、主食糧の供給力というものは相当確保できる。  それからもう一つ大事なことは、土地改良事業を大いにやっておるわけでございますが、私は農林大臣当時から、田畑輪換ができるような土地改良事業を進めにゃいかぬと、こういうことに力を入れてきたのでありますが、いまお米が余る。そこで戦略作物に転作をする、水田利用再編対策というようなことをやっておりますが、田畑輪換ができるような土地改良事業が進めば、いざという場合は水を張れば水田になる、そうすれば日本国民が十分食っていくだけのお米は生産ができると、こういうことも考えられるわけでありまして、私どもはそういう点にも着目をして、そして総合的な農政を進めると同時に、そういう場合に備える備蓄の問題その他も考えながらやっていく必要がある、こう考えています。
  191. 中野明

    ○中野明君 いま総理からもお答えいただきましたが、どうも国民素朴に考えて三〇%しか自給率がないということは非常にこれは不安です。七割は輸入ということに、単純計算をすればそうなるわけです。  それで、この食糧の安全保障を考えるに当たりましては、やはりどうしても農地の必要面積、まずこれを確保せなきゃならぬ、これは当然だと思います。ところが、農地の必要面積についての考え方も非常にあいまいで私心配でならぬのですが、きょうはこの農地の問題にしぼってお尋ねをしますけれども、この長期の見通しでは六十五年五百五十万ヘクタール、ところが三全総では五百九十二万ヘクタール、そして国土利用計画法の国土利用計画では五百八十五万、これ閣議決定されたその農地の必要面積というのがばらばらなんです。これは一体どういう基準で物を考えておられるんだろうか。その点、国土庁とそれから農水省に御答弁いただきたいんですが。
  192. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 八〇年代の農政の基本方向と、いまおっしゃられました三全総とか国土利用法との間に土地利用計画について数字がギャップがあると、こういうお話ですが、農林水産省で決めましたのはあくまでも食糧の自給についての見通しであります。食糧そのものの自給についての見通しであります。農用地面積そのものについての見通したものではないのでありますが、その間に若干の食い違いがございます。しかし、御指摘のように、今後国土利用のあり方についてはなお実態に即して常時検討していく必要があると私は思っております。これが十分なものとは考えておりませんので、御期待に沿うように尽力する考えであります。
  193. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) お答えいたします。  農産物の需要と生産の長期見通しにおきまして、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、国内生産の可能なものは極力国内で生産するものという考え方に立ちまして、延べ作付面積につきまして五十三年の五百六十六万ヘクタールから六十五年の延べ作付面積は六百十五万ヘクタールといたしたわけでございます。その際、耕地利用率の問題がございまして、現在程度の面積であれば一一二%の耕地利用率になるという試算をしたことは事実でございますが、今回の長期見通しにおきましては直接農地面積の積算を出しておりません。この点につきましては、近く改定を予定されております土地改良長期計画もございまして、全国にわたって精査いたして準備作業をいま進めておりますので、この農地面積については今後の壊廃なり造成の可能性等を精査いたしまして面積の設定をいたしたいと、このように考えておる次第でございます。
  194. 中野明

    ○中野明君 非常に心配なのは、農地の面積がいま国土庁長官言われましたけれども、農地っていうことになるとやはりこれベースを合わして、そして計画をなさらないと、各省ばらばらで考えておってもしようがないと私は思うんですが、いずれにしても現状程度の農林省が言う五百五十万ヘクタールを維持するとしても私は非常にむずかしいと、いまの現状から見て。こう思うんですが、ここ数年の農地の拡張と壊廃の面積を見ますと、時間がありませんからこっちから言いますけど、拡張が三一・五七に対して壊廃は五八・一三、三十一万ヘクタール拡張して五十八万ヘクタールつぶしているんです。だからこの調子でいきよると、どんどん農地がつぶれてなくなってくると、こういうようなことに相なるわけなんですが、この点どうなんでしょう。いま官房長も言いましたが、土地改良計画の見直し考えているようなこともあるんですが、見直されるときに何をベースに見直されますか。
  195. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) ただいま先生もおっしゃられましたように、最近の壊廃と造成の傾向を見ますというと、壊廃の方が造成を上回っております。特に高度経済成長時代には年々八万ヘクタール、七万ヘクタールというような壊廃が行われて、造成の方は二万ヘクタール台であったというようなことがございます。ただ最近におきましては、壊廃と造成はほぼ見合うような数字になってまいりまして、依然として減少を続けてはおりますが、大体横ばいに近いような状況になってまいっております。私ども全体の面積につきましては、先ほど官房長からも申し上げましたように、農産物についての需要と供給の長期見通し、これらも一つの基礎に置きながら、同時に実際に開発可能な農用地はどの程度あるか、またそれに要する資金はどのくらい必要であるか、またその整備水準はどの程度に高めていくかというようなことを技術的にも検討し、資金的にも検討して整備水準を、目標を定めてまいりたいと考えております。ただその場合に、私ども今後実際に資金量から見ました場合、仮に壊廃をある程度抑制いたしましても、造成についてはかなり財政面での御協力というか、御理解も得なければならないものというふうに思っておるわけでございます。  それからい一つ、私どもいま壊廃の抑制ということを申し上げましたが、ある程度の乱開発は最近弱まっておりますものの、やはりいつまた、これだけ大きな土地需要のある国でございますので、農地に対する乱開発というようなことも起こりかねない。したがいまして、そういうことを防止するためには現在のいわゆる線引き農用地、優良農用地の確保のための制度、これを十分守っていく、同時に転用についても本当に優良な農用地は確保するというような形で運用してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  196. 中野明

    ○中野明君 もう一度お答えいただきたいのですが、土地の長期計画を見直されるんでしたら、ベースとなっている五百五十万ヘクタール、これをベースにされるのか、三全総をベースにされるのか、その辺もう一度お答えいただきます。
  197. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) 全体の作付面積からいたしますというと、六百万ヘクタール以上の作付面積農用地が必要でございますが、これを実際の農地にいたしますというと、どの程度裏作あるいは三毛作が可能かというようなことで、利用率との関連で実際の農地面積を算定することになります。その場合、いま申し上げましたように、現実は五百五十万ヘクタールを割っているような水準にあるわけでございます。いたずらに過大な目標を掲げることはいかがとも思いますが、一面食糧の安全確保、安全保障という点から言いますというと、私どもとしてはできるだけ多くの面積を必要とするという考え方にも立っておるわけでございます。そこで、三全総もございますし、従来の長期計画の数字もございますが、いま申し上げましたようなこと、財政上の事情というものも検討いたしまして、これから新しいそういう目標水準を決めていくという考え方に立っているところでございます。いずれを固定して目標にするというようなところでまだ決めているわけではございません。
  198. 中野明

    ○中野明君 やはり、ベースがはっきりしないと目標も立たぬと思いますので、その点ははっきりしてやっていただきたいと思いますが、この土地の問題一つ考えても、まだあいまいもことしておる、こういう現状であります。それで私は、食糧の安全保障についてのことで引き続いて、不測の事態ということをやはりある程度考慮に入れなければならぬということを考えますと、食糧というのは、総理も御承知のように、有事の際は完全なこれは安全保障です。平時の場合は政治、経済、外交の一つのやはり裏づけじゃないだろうか。三〇%しか自給率を持ってないということは、やはり外交をしても弱いんじゃないかと、こういう面は言えると思うんですが、農水省の方からこの長期見通しを策定あるいは八〇年代の農政の方向、いろいろ言われておりますが、その中で不測の事態ということ、これはどういう状況を想定しておられますか。
  199. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) 農政審議会におきまして御審議をいただきましたとき、この不測の事態として各種のケースが考えられまして、従来の経験的な点から言いますと三点ございまして、一つは、輸出国の港湾荷役のストとか交通途絶というようなトラブルでございます。第二点は、国際紛争によりまして輸入ができないという問題でございます。第三点は、輸出国自体の不作の場合というような点が従来の経験から言われますが、新しい問題といたしまして、食糧が外交上の手段として用いられる可能性が発生したということも今後の事態として考えなければならないということが一つでございます。第二点は、原油の供給が大幅に削減されるような事態、これが食糧の需給に影響を与えるというケースも考えなければならない。さらに第三番目は、不測というよりも将来の予測を含めた考え方といたしまして、穀物の食糧需要と石油代替エネルギー問題を土地生産物の方に依存するようなことになりました場合の、将来の予測といたしましてのこうした需要との競合の可能性、こうした問題を不測の事態として、あらゆるケースについて検討をすべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  200. 中野明

    ○中野明君 大臣も先ほど申されたんですが、いまやわが国は世界で一番ということですね、食糧の輸入、金額で。世界一食糧を輸入している国と、こういうことになっております。  それで、まず主食である穀類とそれから大豆を含めた豆類、これの国内の生産量と輸入量をちょっと農水省の方で説明いただきたい。
  201. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) お答えいたします。  五十四年度におきます穀類の国内生産量は千二百九十五万トン、これに対します輸入量は二千五百三十万トン。大豆につきましては、国内生産量十九万二千トンに対しまして輸入量は四百十三万二千トンでございます。
  202. 中野明

    ○中野明君 先ほど大臣も言われましたが、このような膨大な輸入、豆とそして穀類を含めますと、いまお話しになったように国内で千三百三十四万トン、そして輸入が二千九百七十二万トンと倍以上であります。すなわち国内生産が三一%で輸入が六九%。だから、日本の国内で穀類と豆類は要するに三一%しかつくってない。そして、六九%が輸入に頼っている。そのうちで、輸入全体の占める量で、六九%の中でアメリカから輸入しているのが四二%、こういうことですので、言いかえれば日本の主食といいますか、日本人が食べている基本的な食糧の三一%を日本でつくって、そしてアメリカで四二%つくられている。日本でつくるよりアメリカでつくっている方が多いと、こういう結果が出てきます。全体で言えば、日本で三一%つくって六九%外国でつくってもらって輸入して食っていると、こういうことなんです。ですから、こういう状態の中で不測の事態が起こったときには、これは非常に大変でございますので、食糧担当官としては長期の見通しの中で有事の際の食糧需給ということについて研究をしておられるわけなんですが、大体輸入が三分の二になったとか、二分の一になったとか、そういうような状況の想定はどういう研究になっていますか。
  203. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) お答えいたします前に、先ほど穀類の輸入量を二千五百三十万トンと申し上げましたが、そのうちトウモロコシ、マイロ等のえさ穀物が千七百六十万トンでございます。したがいまして、主食になります小麦、大豆が中心でございまして、これは七百六十万トン程度ということになっておるわけでございます。  で、いま御指摘になりました不測の事態についての考え方でございまして、これは農政審議会におきましても昨年秋にいろいろ検討をいたしまして、私どもの一つの試算といたしまして、食糧輸入量が現状の二分の一ないし三分の一が入らないというような事態を一つのケースとして考えまして、その際、主要な食糧の八割程度は自給する、主食用の穀物の自給率を八割程度に確保するとした場合の熱量水準国民一人一日当たりのカロリーでございますが、現状程度の耕地規模を前提にいたしますと、二千三百キロカロリーぐらい。現状が二千五百キロカロリーでございますので現状よりも一割ぐらいダウンする。仮に耕地面積を六百十万ヘクタールまで引き上げるならば、二千四百キロカロリー台に達するというような試算をいたしたことがございます。    〔委員長退席、理事古賀雷四郎君着席〕ただこの試算はかなり粗っぽい試算でございまして、農政審議会におきましていろいろ前提条件についての検討を要するのではないかと、そうした事態におきます資材関係その他影響すべき問題点が相当多いので、これらにつきましてはこの答申以後検討すべき問題とされておりまして、農林水産省におきましても現在検討グループをつくりまして、この不測の事態の安全保障についての検討を深めることにいたしております。
  204. 中野明

    ○中野明君 農水省は直接やはり食糧を担当している役所として当然この不測の事態に備えて研究をされなきゃならぬのですが、いまのお話ですとどうも粗っぽくて、少々輸入が減っても変わらぬような言い方にも聞こえたんですが、防衛庁にちょっとお尋ねをしますが、防衛庁が過去に輸入食糧が削減されたことによって国民生活にどういう波及があるかということを研究されて発表されましたが、そのところをちょっと説明していただきたい、カロリーのところ。
  205. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 防衛庁の海幕分析班が研究いたしましたものは、四十七年当時の一人当たりの栄養を研究いたしたものでございまして、その点は大変古くて恐縮でございますが、そのことを申し上げてみますと、食糧の輸入が五〇%になったときに約二千カロリー、それから原油が——原油といいましても農業の生産に回す原油が半分になり、食糧の輸入が半分になるとした場合にはカロリーは千二百二十カロリーというふうに当時計算したものがございます。
  206. 中野明

    ○中野明君 いま四十七年ごろで古いとおっしゃっていますけれども、輸入は先ほど申しましたようにそれからますますふえて、世界一輸入をしているというような状況になっております。ですから、このデータは必ずしも、かえってまだこれよりもひどいんじゃないかと想像できるわけですが、総理大臣、五〇%外国から食糧が入ってこないということになると二千カロリーになってしまう、日本人の一人当たりのカロリー。この二千カロリーといいますと、戦後一番食糧がなくてひどかったとき、あのときが千九百九十八カロリーであったわけです。これはもう大変な騒ぎで、われわれも記憶に生々しいんですが、そういう状態になるというのが半分入ってこなかったときの話ですね。その上に、そういう状態のときには恐らく油も入ってくるのが制限されてくるだろう。そうなりますとまだまだ減って、油が半分しか入ってこぬと千二百になってしまう。千二百カロリーというと、もうこれはちょっと生命を維持することはできないんじゃないか。じいっとしておって千五百ぐらいでしょう。じいっと寝ておって千五百ぐらいはカロリーが要るらしいですから、千二百ということになりますと、もう仕事にも何にもならぬ、こういう状況にあります。それだけに、わが国の食糧の安全保障というのは非常に重要でございます。そういう点で、農林大臣、栄養水準、不測の事態が起きたときの最低限確保すべき栄養水準と備蓄の規模等をどの程度お考えになっているんですか。
  207. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) 不測の事態の栄養水準なり備蓄の規模という御指摘でございます。  先ほど申し上げましたように、農政審議会の答申を受けましてさらに現在いま検討している段階でございますが、これまでの算定したものは、先ほど申しましたような二千三百カロリーという水準を持っておりますが、若干これを下回ることも想定しなければならないのではないかという問題がございます。  さらに備蓄につきましても、現在米なりあるいは飼料穀物、具体的にはトウモロコシでございますが、大豆等につきまして備蓄政策をとっております。米は相当な備蓄量があることは御承知のとおりでございますが、そのほか大豆、トウモロコシ等につきましては、現在予算措置もいたしましてそれぞれ一ヵ月分程度の備蓄政策をとっておりますが、これはそれ以外に民間の在庫も一カ月程度ございます。さらに小麦につきましても二カ月半程度の食管におきまして備蓄をとっております。ただ備蓄政策というのもおのずと限界がございまして、農産物はいわば生きた植物でございますのでやはり古くなりますとこれを置きかえていかなければならないというような、実際の需要との調整を図ってまいらなければなりませんので、石油のような性質のものと異なりますので、おのずとその備蓄政策の中にも限界があろうかと考えております。
  208. 中野明

    ○中野明君 一つ提案しておきますが、この備蓄というのはこれは有事の際に備えて非常に大事なことなんですが、要するに牧草地ですか、この土地が大きな備蓄だということも考えの中に置いていただきたい。畜産をやって牧場を経営していると、いざといったときにはその牧場の農地が使える。普通ただもう公園のように遊んでいるところはなかなかこれはすぐに事になりません。そういう面で、農地も重要な備蓄の一つであると、こういう考え方でひとつ今後物を考えていただきたい。これは要望しておきます。  それから、時間がありませんので次に参りますが、先ほど総理がこの食糧の安全保障で魚も非常に重要な日本人のたん白源であると、こういうふうにおっしゃっておりますが、歴代の総理の中では漁業関係については特にお詳しい総理なんですが、この遠洋のマグロ漁業がいま非常な危機に直面をしております、御承知のところと存じますが。この現状と対策について、農林水産省、お答えいただきたい。
  209. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 御指摘のように、遠洋マグロ漁業をめぐります環境は非常に厳しいものがございます。コストは非常に上がっております。特に燃油が二倍以上になるというようなことで、そのコストアップが非常に響いております。一方、消費の方は、個人消費支出の伸び悩みということもございまして非常に停滞的でございます。したがいまして、在庫がいままでは非常にふえておりまして価格は低下をいたしております。同時に、生産の方を見てみますと、相当資源的に満度まで利用をいたしておるということもございまして、出漁の日数が増大をいたしております。したがいまして、漁獲量当たりの経費もまたそういう面からもふえるというような現状がございまして、遠洋マグロをめぐります経営問題は非常に深刻でございます。  これに対しまして、私たちといたしましては、一つは経営維持安定資金を六百億、それから燃油対策の特別資金としまして一千億を用意をいたしております。特に来年度におきましては燃油対策資金を三分あるいは三分五厘というところまで引き下げることにいたしております。同時に、五十六年度に償還をすべき経営安定資金でありますとか燃油対策資金につきましては、これを二年間償還を猶予をするということを考えております。同時にまた、調整保管等についても所要の指導及び支出をいたしておるところでございます。  しかしながら、やはりマグロにつきまして体質改善といいますか、体質を強化するということはどうしても必要なことでございますので、そういう構造改善のための特別な対策といたしまして、漁業再建整備特別措置法に基づきます政令指定をいたしまして農林漁業金融公庫から低利の融資を行いますと同時に、特定漁業の生産構造再編ということで十億円を計上いたしまして、同額を民間からも拠出することによって体質の改善を図りたいと考えておるところでございます。
  210. 中野明

    ○中野明君 これは非常に大変な問題でして、水産庁長官は対策を一応並べられたわけですが、実際に倒産が相次いで出ております。しかも、これが小口の零細な企業のために共補償していますから、お互いに船同士で補償し合っているものですから、一つつぶれると連鎖的につぶれるというような心配が出てきているわけですが、この遠洋漁業の基地の室戸の例で見てみましても、すでにことしになって——去年からですね、五隻倒産をしております。で、最近入港した船を見てみますと、十一二隻の中で七隻以上が皆一億円以上の赤字、一億九千万から赤字の船もあります。少ないのでも四千万ぐらいで、全部十三隻が皆赤字であります。  特に、最近新聞の報じるところによりますと、エクアドルの沖でマグロに従事している乗組員に金を払わぬというような事件が起こっているようですが、これはどこですか、運輸省ですか、状況をちょっと教えてください。
  211. 鈴木登

    政府委員鈴木登君) お答えいたします。  東京に西商事という会社がありまして、エクアドルの船を三隻チャーターいたしまして、日本人船員を三十六人乗せましてエクアドルの沖合いでマグロあるいはエビをとっておった。ところが、最近非常に不況でありまして、    〔理事古賀雷四郎君退席、委員長着席〕 それが売れないがために三十六名に対する給料の未払い事件が発生いたしました。それを私どもキャッチいたしましたので、三月の七日に船員労務官を立ち入り検査させましたところ、三十六人に対する本年の一、二月分の給与約二千万円の未払い事件が発生いたしました。その後いろいろと中に立ちまして支払うべく督促いたしましたところ、最近約一千万円の支払いをいたしまして、残りが約一千万円ということで現在会社の社長さん方が金策に回っておる最中でございます。
  212. 中野明

    ○中野明君 いま農林大臣お聞きになったとおりです。このマグロに従事している人は、水産庁の長官の話にありましたように、最近非常に航海日数が長くなっております。一番長いのは、私の承知しているのは五百六十一日、一年半以上ですね。それで出て帰ってきたら、また五十日ほど休んだらすぐ行くというんで、大体一割しか陸上におりません。十年乗っておると一年しかおらぬというような、こういう中で働ける限界までやって給料をもらえないとか、あるいはもう倒産だとか、そういう状態に追い込まれておるのに、不思議なことに魚価ですね、これがどうも私納得がいかぬのですが、農林省、この事実はお認めになりますかね、去年の四月からマグロの値段がどんどん下がりまして、いわゆる水揚け価格というのがどんどん下がって、前年対比三七%下がったり二〇%下がったりずっとしているわけですが、ところが小売の方が逆に上がっておるんです。この事実はお認めになりますか。
  213. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) お話のように産地価格は二割ないし三割と下がってきておりますが、小売価格はそのような下がり方を見せておりませんで、一番高かったのが五十五年の一月に百グラム当たり四百四十五円であったわけでございますが、五十六年の一月が四百六円、二月が三百九十五円ということで約一割ぐらいな値下がりになっております。
  214. 中野明

    ○中野明君 水産庁長官、前年対比で見ますと、二〇%から三〇%下がっているのに小売価格は全部上がっております。これはどういうことでしょうか。お調べになったですかね。
  215. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 確かに産地価格でいきますと、十二月が七百七十円ですから、対前年度七一%ということでございます。同じ月の小売価格は四百二円でございますから、対前年比一〇四%というふうになっております。  これの原因でございますが、いろいろとありまして、私たちもこれをいま現在いろいろと分析をいたしておるわけでございますが、一つは産地価格の値下がりが即小売価格に響かないというのが、水産物大体これそういう傾向を持っております。そのかわり産地価格が上がり始めても小売価格はそれほど率では上がっていかないという小売価格段階に一つの何というか、平衡運動のようなことが行われるわけでございます。大体築地から消費者価格までいきますと非常に値段が高くなるわけでございますが、御存じのようにマグロの利用率というのは五〇%ぐらいでございますから、まずその半分は捨てなきゃいかぬ。そこに卸売段階、小売段階のマージンがかさむわけでございまして、これらの経費はわりあい固定的であるということがございます。しかし同時にまた、ほかの魚価が安うございますから、小売はどうしてもマージンをマグロのような高級なものでかせがなければいけないという要素がございまして、小売段階のマージンは高いことは事実でございます。
  216. 中野明

    ○中野明君 ちょっと長官のお話おかしいんですがね。歩どまりが悪いとかなんとかいうことはこれは別問題です。産地価格は下がったんですから、小売価格は当然下がるべきなのに逆に上がっている。経企庁長官は物価問題で国会で年じゅう頭を下げておられるんですが、船員は五百六十日もかかって命がけでとってきて、それで安いから消費者が安く食べてくれているのならばある程度納得できるでしょうけれども、とにかく水揚げ価格は徹底的にたたかれて、そして小売価格は逆に上がっているということでは納得できないわけです。  こういう点、水産庁、一遍お調べになりますか、どうです。
  217. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 現在もいろいろ調べておりますが、さらに一層調査をいたしたいと思います。
  218. 中野明

    ○中野明君 では最後に総理大臣に、非常に現在そういう状況で漁業全般、特に遠洋マグロは要するに油の高騰がもとになりまして大変な状態に追い込まれております。救済あるいは漁業の継続、そういうことについて万全の措置をおとりいただきたいと思うんですが、最後に総理から。
  219. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) わが国の漁業が非常に厳しい環境の中で経営が困難になっておる、中野さんから御指摘のとおりでございます。政府としても経営安定資金でありますとか、燃油対策資金でありますとか、できるだけの措置は講じておりますが、いろいろの対応についてなお一層掘り下げた研究を必要とし、きめ細かな対策を必要とすると思います。最後に御指摘になりました水産物の流通機構の問題、こういう問題はこれは政府としてもいままで立ちおくれになっておる点でございまして、御指摘もございますし、一層努力してまいりたいと、こう考えております。
  220. 中野明

    ○中野明君 終わります。(拍手)
  221. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で中野明君総括質疑は終了いたしました。     —————————————
  222. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、村沢牧君の総括質疑を行います。村沢牧君。
  223. 村沢牧

    ○村沢牧君 最近の経済情勢は、個人消費の落ち込みや住宅建設の低迷によって不況感が漂っておるわけであります。このことは何といっても異常な物価の値上がりによって所得が目減りをしたこと、このことが一番大きな原因であります。現に五十五年度の実質賃金は、昨日も同僚議員から指摘のあったところでありますけれども、予想を上回る物価上昇によって史上初めてのマイナスの伸びとなっているわけであります。消費者物価に対する政府の見通しの誤り、また、物価を抑制することができなかった責任は大きなものがあるわけであります。国民生活を守るためにも、景気を回復するためにも、物価対策はまさに政府の最大の責任であるというふうに思いますけれども、総理、五十五年度の物価の上昇を反省をし、これからの物価対策にどのように取り組んでいくのか、まずその決意、基本的な考え方について伺います。
  224. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 政府におきましては物価対策を最重要課題として今日までできるだけの努力を傾倒してまいったところでございますが、しばしば経企庁長官からも申し上げておりますように、石油価格の予想を超える高騰、あるいは冷夏、豪雪、いろいろな事情からいたしまして、その努力が実らないで、五十五年度の消費者物価六・四%の目標値を超えるだけでなしに七%台と、こういうような状況になりましたことはまことに遺憾であり、国民の皆さんに、特に勤労者の諸君に対して申しわけがない、このように考えておるところでございます。  物価問題は、今後の経済運営の上からいたしましても、また、国民生活の上からいたしましても、非常に、最も重要な問題でございます。五十六年度予算の編成におきましても、この物価対策という費目につきましては、これは相当各費目にわたっておるわけでありますが、物価対策費はその予算の中でも相当計上をいたしておるところでございます。直接的な対策費も経企庁に計上をいたしておりますし、今後の推移によりましては、予備費その他を活用をいたしまして物価対策には全力を尽くしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  225. 村沢牧

    ○村沢牧君 経企庁長官、五十五年度の物価上昇の現状については当委員会でも説明のあったところでありますが、五十五年度もあと半月余りで終わろうとしているわけであります。そこで、経企庁としては五十五年度の物価上昇についての最終的な見込みをどのように判断をされておるのか。ただ仮定の計算だとか前提を置いた計算ならこういうふうになるということでなくて、すでに五十五年度の終わろうとする時期でありますから、改めてその判断を求めたいというふうに思います。
  226. 川合英一

    政府委員(川合英一君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘ございました消費者物価につきましては、現在のところ一月の全国確報と二月の東京都区部の速報が公表されておるわけでございます。そこで、年度についての正式な見通しを言えというお話でございますが、まあこういう状況でございますので、仮に五十五年二月、三月を一月全国の水準から横ばいであると仮定をいたしますと、五十五年度の前年度比上昇率は七・七%ということになるわけでございますし、また五十五年二月が東京都区部速報と同じような前月比〇・四%となっておりますので、三月もその〇・四%と同じ横ばいと仮定いたしますと、五十五年度の前年度比上昇率は七・八%になるというふうに計算されるわけでございます。
  227. 村沢牧

    ○村沢牧君 七・八%——八%近くなるわけでありますけれども、このように大幅に物価が上昇するその要因はなんですか。
  228. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 年の初めには六・四%見当と想定をしておりましたが、それが大幅に予想を上回りました一番大きな原因は、やはり石油の予想外の急上昇、この背景には戦争という新しい事態が発生したわけてありますが、それと異常気象による生鮮食料品の高騰と、この二つが大きな背景になっております。
  229. 村沢牧

    ○村沢牧君 消費者物価指数の分類別による寄与制令、さらに五十四年度末と現状とを比較してそれがどのようになっているか。
  230. 川合英一

    政府委員(川合英一君) お答え申し上げます。  CPIの、企画庁で行っております特殊分類によります全国の数値で、五十五年の四月から五十六年一月まで出ておりますので、そこまでを入れまして推計いたしますと、対前年同期比が総合で八・一%ということになっておりまして、その内訳でございますが、大きく分けまして除季商とそれから季節商品に分かれるわけでございますが、除季商の方が八・五で、寄与度——これは寄与率でございませんで、寄与度でございますが、寄与度が七・七%、それから季節商品の方が前年度比四・五%で、寄与度が〇・四〇ということになっております。
  231. 村沢牧

    ○村沢牧君 五十五年度消費者物価六・四%を設定するに当たって、分類別の寄与度をどのように見込み、それが実績とどのように乖離しているんですか。
  232. 川合英一

    政府委員(川合英一君) お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、政府の物価見通しにおきましては、年度当初、始まります前に、そのときの各種の経済指標を総合的にいろいろ勘案いたしまして、その中の一環といたしまして物価を想定して計算するということになっておりまして、個別物価ごとの積み上げによって六・四という数字が出てきておるわけではございませんで、マクロ的に出てきておる。ただ、公共料金等につきましては、予算関連のものにつきましては積み上げてやってあるということでございます。
  233. 村沢牧

    ○村沢牧君 その予算関連の公共料金はどうですか。
  234. 川合英一

    政府委員(川合英一君) お答え申し上げます。  五十五年度の公共料金につきましては、当初見込みは〇・八程度というふうに考えておりましたわけでございますが、いまのところまだ年度終わっておりませんが、実績見込みで言いますと〇・五程度になるんではないかというふうに推定されております。
  235. 村沢牧

    ○村沢牧君 物価の見違いの一つの要因に原油価格の問題があるというふうに思うんです。一バレル当たりの原油価格を当初見込みではどのくらいに見ており、実績とそれがどういうふうに異なったのか。
  236. 大竹宏繁

    政府委員(大竹宏繁君) 経済見通しをつくります場合に、個々の品目別の物価の推計をいたしておらないわけでございまして、マクロ的な計算で物価水準というものを推計するわけでございます。もちろん原油価格の動向等はいろいろな情報をとりましてその推計の中に入れるわけでございます。五十五年度につきましては、御承知のように、五十四年の暮れにカラカスでOPECの総会がございました。このときは非常に意見が分かれまして、統一した原油価格の引き上げというものが決定をされなかったわけでございます。しかし、相当大幅な引き上げがあるであろうということは予想がされましたし、それに伴いまして一般的な物価上昇が世界的にかなり高いものになるのではないかということから推計をしたのでございます。  大体通例、こういう推計をいたします場合に、国際機関でも同様でございますけれども、世界の工業製品の輸出価格並みの上昇ということで一応推計をしておるということでございまして、幾らと見るかということにつきまして、具体的な数字については、ある国が来年度の原油価格を幾らに見ているかということを外に公表することにつきましては、いろいろ差しさわりもございますものですから、従来から具体的に幾らと見たかということについては公表を差し控えさしていただいているわけでございます。  ただ、結果的に見まして五十五年度におきましては先ほども御答弁のございましたように、イラン・イラク戦争という非常に思わない状況がございまして、当初の見込みよりもかなり大幅に上昇したことは事実でございます。
  237. 村沢牧

    ○村沢牧君 単価が幾らということについてはいま説明のあったことを一応は認めるにしても、どのくらい%で上昇したのか、イラン・イラク情勢があったとしても石油情勢の判断が甘かったのではないか、その点はどうですか。
  238. 大竹宏繁

    政府委員(大竹宏繁君) このときの——このときと申しますのは、先ほどの五十四年の暮れのOPECのカラカス総会の値上げでございましたが、サウジアラビアのアラビアン・ライトを例にとりますと十八ドルから二十四ドルに、バレル当たり上がっております。約三割ぐらいの上昇でございました。そこから余り上がらないだろうということで一応計算をしたわけでございますけれども、事実スポット価格等で見ますと、ほとんど夏まで横ばいできたわけでございます。年初からやや下がりぎみでございまして、夏から九月の初めにかけては三十一ドルぐらいまで下がりました。この辺までは大体カラカス総会のレベルと余り変わらなかったわけでございますが、それがイラン・イラク戦争を境に急激に上昇いたしまして、スポット価格の最高は十一月に四十二ドル七十五というようなところまで上昇したわけでございます。  したがいまして、日本の輸入いたします石油は全部スポット価格で買っておるわけではもちろんございませんが、全体として見ますと、現在の石油価格のCIFの価格が一月で三十五ドル七十ということになっております。したがいまして、五十四年度の平均価格が、これは実績でございますが、二十三ドルでございまして、したがいまして、この間に約十二ドルばかり上昇になっておる、六割に近いような上昇であったというのが事実でございます。
  239. 村沢牧

    ○村沢牧君 次に、一月になって物価が急騰したのは野菜の価格の値上がりが大きかったということを長官も先日言っておられたわけでありますけれども、なるほど一月の野菜の値上がりは四二・一%、しかし十二月には前月比一六・二%に下がっているわけですね。したがって、四二・一%という値上げ率というのは十二月に下がったものの反動が一月にはね返ってきた、そのことは無視することができない事実であろうというふうに思うんです。しかも野菜の寄与度は一月を見てもマイナス〇・三%台ですね、そして前年一月の、前の年の一月の一・八%に比べてはるかに低いわけなんです。また、年間を通じても物価上昇に野菜の寄与する率は低い。何か野菜が大変上がったから物価が上がったんだというふうに言われているわけでありますけれど、これは野菜犯人説というか、こういう考え方は誤りではないか、こういうふうに思いますが、どうでしょうか。
  240. 川合英一

    政府委員(川合英一君) お答え申し上げます。  先生御指摘になりましたように消費者物価の見通しが達成できなかったのは野菜だけではないではないか、おっしゃるように石油等ももちろんあるわけでございますが、野菜の生産は御承知のとおり非常に天候の影響を受けやすいということで、昨年の夏が何十年ぶりかの冷夏であったということで、その寒波の影響あるいは乾燥の影響を受けまして前年比では一月に四二・一%、二月には一一・七%と上昇いたしたわけでございます。そこで、二月のこれは指数は東京では一八八・四と一九〇近い指数が出ているわけでございます。消費者物価の総合の指数が一四〇程度でございますから、野菜の価格水準が全体としてかなり高い水準であったということは御理解いただけると考えるわけでございます。また、五十五年度に比べて先生おっしゃいましたけれども、五十五年度の一−三月というのはやはり異常気象でございまして、一月が指数が一八七、二月が二一一、三月が二〇一というように、台風、長雨等で秋の時期に野菜がやられまして、これも過去何年に見られなかったような高騰をした時期でございますので、その時期と比べてなおかなり野菜が高い水準にあるということで、企画庁といたしましては年度当初は野菜がそういうことで通常並みに戻ってくれるということで期待をしておったわけでございますが、昨年に引き続きましてお天気の影響で上がりまして、目標が達成できなかったというようなことになっておるわけでございます。
  241. 村沢牧

    ○村沢牧君 それでは五十五年度の物価上昇の中で、野菜はどの程度上昇に寄与度を持つんですか。あるいはまた、他の商品と比べてみて野菜の上昇率ですね、それをどのように判断しますか。
  242. 川合英一

    政府委員(川合英一君) お答え申し上げます。  先ほど先生の御質問に対しましてCPIの特殊分類で総合と季節商品というふうにお答えさしていただきましたけれども、季節商品が一四三・七という指数でございますが、野菜は一四三・六ということで、おおむね季節商品と同じような動きをいたしておりますが、ただ、野菜の寄与度ということを、この年度が終わっておりませんので、年度ということでは申し上げられませんが、五十四年四月から五十六年一月までの対前年同期比の寄与度ということで申し上げますと、野菜としては〇・一三ということで余り大きな数字にはなっておりませんが、ただこれは、先ほど申し上げましたように、前年がそういう高い水準にあったということを前提としての寄与度でございますので、さよう御了承いただきたいと思います。
  243. 村沢牧

    ○村沢牧君 以上の説明を聞いておりますと、五十五年度の消費者物価の政府見通しを誤ったことが、総理や企画庁長官が言われるように、単なる石油製品の値上がりやあるいは異常気象による生鮮食料品の値上がり、これだけではない、特に野菜なんか値上がったのでやむを得ないというようないままで答弁をしておるわけでありますけれども、これは明らかに政府の政策の誤りではないか、政府の責任でこういう物価が上がったのだ、そのように指摘せざるを得ないのであります。たとえばいま説明のありましたように、公共料金のアップが当初見込みよりも多い、かなり上がっている。それからことしの一月を昨年の年度末三月と比較をしてみても、上昇率の大きいのは公共料金であり、あるいはまた一般の商品である。野菜については、いま説明のあったように、寄与率は〇・一三、そんなに大きな数字ではないのです。したがって、この物価上昇の責任を問えば、あくまでやっぱり政府の政策が適当でなかった、対策がおくれておった、このように指摘をせざるを得ないのですけれども、経済企画庁長官どうですか。
  244. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま公共料金のお話がございましたが、先ほど政府委員答弁をいたしましたのは、予算関係の公共料金ということで答弁をしたわけでございまして、全体の予算関係以外の公共料金も入れますと、消費者物価に対する影響はおよそ二・二%と、このように想定をしておりますから、公共料金の引き上げが非常に大きな影響を及ぼしたということは事実であります。ただしかし、野菜の影響も相当ございまして、たとえば一月には消費者物価が一・二%上がっておりますが、そのうち一・一%は野菜の上昇による影響でございますし、二月には〇・四%上がっておりますが、そのうち〇・四%以上はやはり野菜の影響になっておると、こういうことでございますので、野菜の影響も相当なやっぱり影響は出ておると、これは事実でございます。
  245. 村沢牧

    ○村沢牧君 しかし、公共料金ですね、このアップ率、寄与率から見て、このいま河本長官が言われた野菜なんてものは大した率じゃないのですけれども、この野菜が大きな原因であったとあくまでも言われるのですか。
  246. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 消費者物価全体に占める野菜のシェアというものは非常に小さいのです。おっしゃるとおりでございます。ただしかし、何分にも四割、五割一遍に上がったり下がったりする、物によっては四倍、五倍になると、こういうことでございますから、占めるシェアは小さいですけれども上がる率は相当大きいと、こういうことでございます。
  247. 村沢牧

    ○村沢牧君 まあ、いずれにしても総理、この物価上昇率の見通しを誤ったということは、やはり政府も重大な責任を持っているというふうに思うわけですね。したがって、政府国民に対して何らかの措置をとらなければならない。これについても昨日来同僚議員の指摘をしているところであります。もし五十六年度もこんなことがあったとするならば、さらに政府の責任はますます重くなるわけでありますけれども、この点について重ねて総理の見解を承りたいと思います。
  248. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 五十五年度の結果につきましては、先ほど来御叱声をいただいておるようなことでございまして、大変恐縮をいたしております。したがいまして、私どもは議長裁定の面につきましても、その各党間の話し合いの結果を尊重して議長裁定の精神に立って対処してまいりたいと、このように考えておるところでございます。  なお、五十六年度予算の編成に当たりましては、先ほども申し上げましたが、物価対策にはさらに一層配意をいたして予算の措置を講じておるところでございます。経企庁長官からるるお話を申し上げておりますように、成長率五・三%、消費者物価の目標値は五・五%程度、これは五十五年度よりも私どもはいろいろな諸般の状況あるいは経済の動向等からいたしましてこれは達成可能である、またこれは達成しなければならないと、あらゆる努力を傾倒いたしましてこれを実現してまいる所存でございます。
  249. 村沢牧

    ○村沢牧君 次の問題に入りますが、エネルギーやあるいは食糧を安定的に確保するために、昨年十二月内閣に総合安全保障閣僚会議を設置したというふうに言われておるわけであります。総理は就任早々総合安全保障会議を打ち出しておったわけでありますけれども、これは自民党の中や官僚の中に異議が出て、安全保障閣僚会議に後退をしたというふうに言われておるわけでありますが、この閣僚会議の性格についてどんな問題をどのように扱うのか、またいかなる権限を持つのですか、お聞きをします。
  250. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今日の世界情勢におきまして、ことにわが国の場合国の安全がいわゆる狭義の防衛のみからでは成り立っていかないということは申すまでもないことでございます。経済、外交含めた広い努力が必要であるわけでございますが、関係各省庁がおのおの与えられました仕事を毎日いたしておりますが、それらの各般の行政を国の安全という観点からとらえて整合的に見ていくということも大変に必要なことでございますので、この保障会議ではそのような考え方に基づきまして、エネルギーもございますし、食糧もございますし、いろいろございますが、そういうもろもろの政策を国の安全の観点から整合的に考え進めていこう、こういう目的を持って会議をつくったものでございます。
  251. 村沢牧

    ○村沢牧君 その閣僚会議は今日までどのような問題を取り上げでどのように論議をし、どのように方向づけをしているのですか。
  252. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今日までのところ資源エネルギー、食糧などが主たるテーマになっておりますが、それらの問題を関係閣僚から現状を説明をいたしまして、そしてこれから展開していくであろう国際情勢の中でわが国がどういうふうにそれらの問題に対処していくべきかという、いわば自由討議をいたしておるわけでございます。  それで、先ほどお答えを申し上げるのを落としましたが、この会議で最終的に物事を決定するということではありませんで、この会議の結果を各閣僚が持ち帰りまして自分の役所の仕事を指揮してまいります上で当然この会議で議論されました方向に基づいて行政をやっていく、最終的には閣議がそれを決定していくわけでございますが、大体そういう形で運営をいたすようになっておりまして、今月も一回会議を開きたいと考えております。
  253. 村沢牧

    ○村沢牧君 私はそのうちの食糧の問題に関連をして以下質問をいたしますが、先ほど中野議員からも質問のあったところでありますけれども、食糧の安定的確保は単なる農業問題や経済問題だけでなくて、政治的な私は課題であろうというふうに思うんです。食糧安保ということが言われるんですけれども、総理は食糧の安全保障についてどのように考えますか。
  254. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 国の平和と安全を確保し、国民生活を守っていくという総合安全保障という観点からいたしましても、食糧の安定的な確保、どういうような状況に相なりましても、食糧はこれを国民生活の安全のために絶対に確保しなければいけない私は最低限の安全保障であると、このように考えておるわけでございます。そのためには食糧の総合的な自給力を高めていく、国内で生産可能なものは極力国内で生産をふやすように努力をする、また国土資源の関係からどうしても一部輸入に頼らなければならないという食糧につきましては、これを安定的に輸入をするということが必要でございます。  そのためには最近は特にいろんな異常気象等の問題のほかに、食糧がとかく戦略物資的な扱いも受けるような傾向がございますので、友好国との関係を緊密にいたしまして、そして安定的に食糧輸入の確保ができるように、またさらに輸入国を分散をする、適正に分散をするということも必要であるわけでございます。そういう対策を進める。ただ、その場合に私どもはそのために国内の農産物を圧迫をする、あるいは農家経済を困難にするというようなことがあってはならない、十分な配慮をするということが必要であるわけでございます。  さらに、備蓄の問題でありますとか、総合的にこの食糧の安定的な確保、国民生活をその面からも不安のないように守っていくというのが、食糧の安全保障対策であると思います。
  255. 村沢牧

    ○村沢牧君 総理、確認をいたしますけれども、総理は食糧の国際分業論的な考え方はとらない、国内の自給率を高めることによって食糧の安全保障を図っていくのだ、農産物の輸入は、国内で不足するものに限って行い、国内の生産が高まっているものについては輸入を減らしていくのだと、このように確認し、理解してよろしいですか。
  256. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 基本的にそのように考えております。
  257. 村沢牧

    ○村沢牧君 昨年はわが国も含めて世界的な異常気象によって農産物が被害を受けた、穀物生産が減少したわけであります。この結果アメリカ農務省の予想によると、本年五月における世界の穀物総備蓄量は、一九七五年以来の低い水準になるのだと、こういう発表をしております。ソ連も中国も穀物が不足である、あるいはアフリカや東南アジア等に至っては食糧危機のところもあるわけです。農林水産大臣はこの所信表明演説の中で、世界の食糧事情は楽観を許さないものがあるということを強調しているのですけれども、世界の食糧事情についての判断を示してください。
  258. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) お答えをいたします。  まず、現時点での世界の穀物の需給状況でございますが、先生おっしゃいますように、昨年一九八〇年は米国の熱波等による飼料穀物等の被害もございましたし、ソ連の連年不作、さらには中国の不作等もございまして、わが国を含めまして世界各地で異常気象による農作物の被害が見られたわけでございます。  ただいま米国農務省の発表を言及なさいましたけれども、一九八〇年の世界全体の穀物生産量、FAOの発表で申し上げますと十四億三千八百万トンということで、一九七九年に引き続きまして不作という状況になっております。特にこれを品目別に見ますると、米、小麦につきましては需給にやや余裕があるというふうに見られますが、粗粒穀物あるいは大豆につきましては世界全体でも減産となっております。このような状況を反映いたしまして、まず在庫の水準でございますが、粗粒穀物を中心にいたしまして低下いたしまして、これもFAOの発表でございますが、穀物全体の在庫率が一九八一年には一四%まで落ち込むというふうに見通されております。価格につきましても昨年の夏に大変上昇いたしまして、最近は冬小麦の作柄がこれまでのところ悪材料がないということからやや落ちついておりますけれども、かなり高い水準で推移しているという状況でございます。  なお、これから中期、長期でどう見るかということでございますが、中期的な視野で見ました場合には、FAOの一九八五年の見通しがございます。これによりますと、世界全体では需給が均衡するものの、開発途上国では不足、先進国では余剰が続くという見通してございます。また、さらに長期的視野で見た場合には、FAOの二〇〇〇年に向けての農業という報告書がございまして、この中では開発途上国等におきまして人口の増加が大きいと、ここに盛られているレポートによりますと、一九七五年四十億人をベースにして考えていた地球の人口が、二〇〇〇年には六十一億になるという現状、あるいは先進国等を中心にしました飼料穀物需給の、需要の増大といったような傾向がございまして、穀物の需給の均衡を図るためには一層の努力が必要であるということが指摘されております。米国政府も二〇〇〇年の地球という報告を出しておりまして、同じような人口増加の見込みを申しております。かようなことから見まして、これらのレポートがその確度がどの程度であるかということは、いろいろ御議論があるというところでございましょうけれども、私ども穀物の需給につきましては、長期的に見まして楽観は許されないというふうに考えておる次第でございます。
  259. 村沢牧

    ○村沢牧君 穀物についていま答弁があったような、二〇〇〇年になったらどうするかというようないろいろな資料も出されております。二〇〇〇年といってもあと二十年足らずであります。世界的に不足することがいろいろな資料を見ても、報告を見ても言われておるわけであります。  そこで、先ほど不測の事態が生じた場合においては、現在のカロリーを維持していくためには耕地面積も五百五十万ヘクタールを六百十万ヘクタールにふやさなきゃいけない、あるいはそれでも穀物の自給率は六〇%程度だというような答弁も聞いておったわけでありますけれども、農林水産大臣、この輸入がとまったあるいは順調にいかなくなったということで、こんなことが、耕地面積をふやすようなことが簡単にできますか。
  260. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) そういう事態にもしなったという際には、やはり裏作といったような耕地の利用率を伸ばすということを十分考えなけりゃなりません。それは昭和二十年代において日本が極端に食糧不足に陥ったときの日本の耕地利用率は一三三%であったわけでございます。現在は一〇六%ということで、もし三〇%の耕地利用率をふやすということにいたしますれば、ある程度の危難は乗り切ることができるということと、やはり米は一番よくできる日本の農産物でございますので、そういう際にはパンをがまんして米を食べてもらうと、こういうことも十分やはり心得ておいていただかにゃならぬと考えるわけであります。そういう意味におきましても、やはり一番よくできる米というものを残さんで食べるというような心構えが必要ではないかと、こんなことも考えるわけでございます。
  261. 村沢牧

    ○村沢牧君 わが国の耕地面積は、無計画な土地政策によって年々減少してきておるわけです。農林水産省の試算によっても、もうこれ以上耕地面積は減らしてはいけないというようなことが出されておるわけでありますけれども、こうしたときに政府は市街化区域内の農地について、宅地並みの課税を行い、宅地を確保しようとしているわけでありますけれども、このことは農地の減少に拍車をかけるものであるというふうに思います。もちろん宅地を確保することは必要でありますけれども、税金をかけて農民を追い出して何とかして宅地にしよう、こんな政策は誤っているというふうに思うんですけれども、農地の減少を食いとめ、食糧自給率を高めるというためにも、この宅地並み課税方針は取りやめるべきだというふうに思いますが、国土庁長官の見解を伺います。
  262. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答えを申し上げます。  昭和五十五年に政府の税調で出した答申案によりますと、また私どももその線に沿って課税をやろうと思っておるんですが、それによりますと、現に農業をやっておる市街化区域における農地に対しては、また将来長く農業をやろうという農地に対しては課税はいたさないと、こういう答申が出ております。ただし、それじゃどこへ課税するか。農業もやらないし、ただ値上がりをじっと待っておる、そして値が上がったときに売ろうとする、そういうのに課税せずに、いままでは、それがおかしくなっているんですが、今度は、昭和五十七年からはA農地、B農地、C農地に対しても、農業をやる意思のある人、やっておる人、将来やるという人には宅地並み課税はかけないと、こういう答申になっております。ただし、ただ持っておってじっと値上がりを待っておるというような人には、これはA農地、B農地、C農地に向かっても宅地並み課税をやるべしという答申があるし、私どももそうやろうと思っておりまして、また、今度国会を通過しました農住組合法なんかにおきましても、農業をやる人にはもちろん課税しない。それから、農業をやる人には農業をやってもらう。それから、宅地のために土地を提供する人は提供と、こう区別して、そして両々相まって宅地の方も供給してもらう。また、農業をやる人には農業をやってもらう。この両方を区別して皆の要求に応じていく、こういう方針でいまやっておるところでございます。
  263. 村沢牧

    ○村沢牧君 農業を継続していこうとする人には、宅地並み課税をかけないという答弁であったわけでありますが、その判断は農地の所有者に任せるということですか。
  264. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) これは、そういう具体的なことになればまたこれからするんですが、たとえば各市町村で審議会を置いて、それでその土地の人に審議してもらう。それで農業をやると、やらぬと。ただ税金逃れのために簡単な果物の木をちょっと植えてそのままほうっておく。これは困りますんで、こういうのは全く、クリの木を植えておるそうですが、そんなのは全く税金逃れの方ですから、そういうものにはこれからやって、いわゆる農業をやる人とそれからやらない人と、それからこれに住宅を建てる人、そういうのを区別をして、税金はそれに対処していく。あるいは金融面でもそれに対処していく。そして、宅地もふやすし、農業をやる人は農業をしっかりやっていただく。これは、農林省も賛成をしておりますので、決して農業をやる人を苦しめるというようなことにはなっていないことを御了承願いたいと思います。
  265. 村沢牧

    ○村沢牧君 自治省、農地に対して固定資産税の評価がえをするということが言われておるわけですけれども、それをどのように考えておりますか。
  266. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) あれは五年ごとじゃなかったかと思いますが、評価がえをいたしております。来年あたりになるんじゃなかったかと。間違っていたら訂正させます。
  267. 村沢牧

    ○村沢牧君 次に、食糧自給率についても先ほども質問もあったところでありますけれども、ともかく政府の閣議決定をした見通しは、総合自給率は現在七三%であるけれども十年たっても七三%、穀物自給率は三四%から三〇%に下がってしまうわけです。まさに先進諸国のうちで最低の自給率であります。この長期見通しは単なる見込みではなくて、農業政策の目標であり、八〇年代農業の基本方向を示すものだというふうに私は思います。御承知のように、昨年四月、国会は与野党とも満場一致をもって食糧自給力強化に関する決議を行ったところでありますが、この長期見通しはこの決議にもこたえておらない。さらにまた、こんな見通しで農業を進めていくことでいいのか、総理の基本的な考え方を改めて伺いたいと思います。
  268. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 先ほども申し上げたわけでありますが、現在三四、これが十年後に三〇になると、おかしいじゃないかという御指摘でございます。しかし、この中を分析いたしますと、食糧用の穀物の自給率は六八であり、これはそのまま維持できると。ただし、国民の食生活から中小家畜——豚でありますとか、鶏でありますとか、そういうものは十年後には相当まだふえる可能性を持っておる。それに対するえさ、そのふえる分、それはどうしても国内生産は十年間の間に困難であると、こういうことでございますので、この分が相当ふえると。したがいまして、主食としての穀物の自給率は六八ということで相当高いわけでありますけれども、えさまで一緒に消費量と生産の比率をやりますと三〇にいかざるを得ないと、こういうことでございまして、そうかといって、これをほうっておくわけにはまいらぬと、こういうことで、農林省といたしましては、えさ米の代替的研究でありますとか、あるいは飼料作物の増産でありますとか、そういう面について自給率を上げるという努力もいたしておるわけでありまして、この点は三四が三〇になる。ほうっておけばもっともっとひどい状態になるやつを、あらゆる努力をしてこの状態に持っていくと、こういうところにあの十年間の長期見通しの趣旨があると、こういうふうにいたしまして、あの長期見通しを一応目標といたしておりますけれども、あれをもっともっと積極的に取り入れて自給力を増すと、これが国会の決議に沿っていくゆえんであるいうことで、農林省挙げて取り組んでおる次第でございます。
  269. 安孫子藤吉

    国務大臣安孫子藤吉君) 私、訂正です。  先ほど五年と申し上げましたが、三年でございますので御訂正いたしておきます。
  270. 村沢牧

    ○村沢牧君 三年目はいつになるんですか。
  271. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 土地の評価がえは三年ごとに行われます。この次は五十七年一月一日現在で評価がえを行うべく現在準備中でございます。
  272. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 国会で決議をいただいておるわけでございますが、これは長期見通しに立ちまして食糧の自給力を高めるように政府は万全の対策を講ずべきであるという御趣旨に受けとめておるわけでございます。  したがいまして、先ほど来農林水産大臣からも申し上げておりますように、国内で生産可能なものは極力これを国内で生産を高めていく、また国土資源の制約からいたしましてどうしても外国からの輸入に依存しなければならないものにつきましてはこれを安定的に輸入ができるように措置していく、その際におきましても、国内の農業を圧迫し農業経営に支障を与えてそれが今後の国内の農業生産の成長を妨げるようなことがあってはいけない、そういう点を十分配慮していく必要がある、こういうこと。  それからもう一つは、優良農地の確保でございますとか、あるいは農業の担い手でありますとかあるいは水資源の確保の問題でありますとか、そういうような潜在的な農業生産力、こういうようなものを大事にして、総体としての農業生産の自給率を高めていく。  こういうことでございまして、今後政府としても一層努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  273. 村沢牧

    ○村沢牧君 穀物の自給率は、昭和三十五年には八三%あったんです。それが現在は三四%になり、やがて三〇%になろうとしております。これは明らかに自民党政府の失政によるものだと私は思うんです。先ほど亀岡農林水産大臣は、十年たっても穀物自給率が三〇%にとどまったら亀岡よくやったと言ってくれなんて言っていましたが、とんでもない話です。日本社会党は、中期経済政策で穀物自給率を第一次が六一%、十年後ですね、第二次で六九%に引き上げてイギリスやイタリア並みの水準にしようという政策を立て、政府にもいろいろ言っているわけなんです。内容については、時間がありませんから申し上げません。どんなに努力を払っても穀物自給率を引き上げることは不可能なのか。もしそうだとするならば、国民に対して食糧の供給を背負う政権の担当者として不適格だと思いますが、どうですか。
  274. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) したがいまして、皆さん方からもいろいろ御示唆のありましたやはり水田の生産力というものを活用して、そうして飼料用の穀物をつくることができればこれがもう鬼に金棒である、こういうふうに考えまして、政府といたしましても、農林水産省といたしましても、昭和五十六年度には国の農事試験場、農業試験場、県の試験場を一体として挙げて飼料米の研究に取り組んでおる次第でございます。こうして水田で、しかも超多収米というようなえさ米を品種的に造成することができればこれは自給率を向上できる、こう確信をいたしまして技術陣を挙げて取り組んでおる次第でございます。
  275. 村沢牧

    ○村沢牧君 いま答弁になったえさ米についても、五十六年度の予算ですべて研究をするというような予算が計上された。すでに民間の方では、あるいは団体は、えさ米をつくろうということで全国各地でかなりこの研究をしているのです。そうすると政府は、えさ米を水田転作の特定作物に指定をして生産をすべきだ。えさ米について流通ができるのはいつなんですか。
  276. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 超多収えさ米の新品種を造成しようということは、昭和五十六年予算で始めるわけじゃございません。このための予算としては五十六年が初めてでありますけれども、すでにもう各地の試験場でこの多収米の造成ということについては研究に相当力を入れてきておるわけであります。したがいまして、技術陣の申すところによりますれば、やっぱり南方系にこのえさ米に適する、多収米に造成できる品種がある。これはしかし非常に脱粒性が強い。せっかくつくっても、さわればぼろぼろと落ちてしまう。こういう品種の間には、やはり奨励品種として政府が責任を持って農家に勧めるわけにはまいらぬ。こういうことで、多収であり、しかも価格的にもえさとしての収益性があるような多収性の品種をつくっていかなければならない。まず三年の時間をかしてほしい、こう筑波の技術者の諸君は言っておるわけであります。三年なんてそんなことを言わずにもっと早くできぬかと、こういうことを言っておるわけでありますが、やはり最小限三年はかかる、こういうふうに言っておりまして、私どもとしてはいろいろ研究体制を、ASEAN等の暖かい方との共同研究にいたしまして、できるだけ短期間に新品種を造成する技術体制というものをつくり上げていくことができないかというようなことも加えて検討をさしておるところでございます。
  277. 村沢牧

    ○村沢牧君 長くかかっても三年間で流通に回せるようにすると、このように理解していいですか。
  278. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) 飼料米の転作につきましては、ただいま大臣からお話し申しましたように、技術的な検討を試験場を中心にいたしまして取り組みますのと同時に、農政審議会の答申におきましても飼料穀物の今後の自給についての検討の宿題が出ております。と申しますのは、仮にこの飼料米というものが生産されましても、収益性の点では御案内のとおりトン当たり三万円程度でございます。現在の主食用の米の買い入れ価格がトン当たり約三十万円弱でございます。そうした状況におきまして、これを農家経営の中に取り込むことには非常に問題がございます。そうした状況におきまして、かつ主食用の米との識別性の問題等の仕組み等につきまして、やはり私どもとしては、省内におきまして検討グループをつくっておりまして、そちらのグループの作業とそうした試験場の技術究明との両方を進めてまいりたい、このように考えておりますので、できるだけ早く結論は得たいと考えております。
  279. 村沢牧

    ○村沢牧君 先ほど私はえさ米を水田転作の特定作物に指定すべきだということを質問したんですが、どうですか。
  280. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) えさ米につきましては、ただいま大臣なり官房長の方からお答え申し上げましたように、収益性の面あるいは一般の米との識別性の問題、それから脱粒するというような技術上の問題のほかに、非常に食用米との間に大幅な価格差があるわけでございます。したがいまして、えさ用ということでありましても主食用への横流れというのが心配でございます。それから、いまなれない麦なり大豆なりという畑作物へ転作してもらいたいということでいろいろやっていただいておるわけでございます。そういう面の転作の推進というのもむずかしくなるのではないかというような問題がございます。したがいまして、えさ米を水田利用再編第二期対策におきましてこれを奨励補助金の対象とすることは考えておりません。
  281. 村沢牧

    ○村沢牧君 次は米の問題ですけれども、五十五年度は冷害によって米が減収して、五十四年度末の在庫を加えてそれに五十五年度の供給量を差し引くと五十六年度に繰り越す米はきわめて少なくなってくる。この米の需給について説明してください。
  282. 松本作衞

    政府委員(松本作衞君) 五十五年産米はお話のように不作でございましたが、五十四年産米を百七十八万トンほど持ち越しておりましたので、これを活用することによりまして五十六米穀年度末におきましては五十五年産米を八十万トンないしは九十万トン持ち越すことが可能であるというふうに考えております。そのほか、五十六年度におきましては昨年の冷害にも配慮いたしまして転作目標面積を四万六千ヘクタールほど緩和いたしましたので、ここで約二十万トンほどのゆとりが出てまいりますので、ただいま申しました持ち越し量等を加えますと百万トンないし百十万トンほどが五十七米穀年度においてゆとりが出てくるというふうに考えておりますので、仮に五十六年産米が相当の不作になりましても、これによって対応することができるというふうに考えております。
  283. 村沢牧

    ○村沢牧君 政府が、いまいわゆる過剰米と称して五十年から五十三年米の米の処理をしようとしておるんですけれども、五十三年産米も主食に回すんですか。
  284. 松本作衞

    政府委員(松本作衞君) ただいま申し上げましたように、原則といたしましては私ども五十六米穀年度におきましては五十四年産米を使っていくというふうに考えておりますが、五十三年産米につきましても一部は品質がいいということで需要がございますので、この活用についても考えてみたいと考えております。
  285. 村沢牧

    ○村沢牧君 いま答弁のあったところでありますが、五十六年度は生産調整をことしよりも十万ヘクタールもふやす、したがって生産量は減少するんだ。万一、昨年のような冷害があった場合、これも気象庁は五十六年も冷害があるんではないかというような警告を発しているところでありますが、米は足らなくなるのではないか。五十六年は冷害などないという、そのことが保証ができるのかどうか。その辺はどうなんですか。
  286. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 気象庁と十分な連絡をとりまして、いろいろ統計的なデータも検討を加えまして、念には念を入れろということで一月の二十六日に次官通達を出しまして、全国の改良普及員並びに農政局を通じて関係筋に対しまして、昨年のような気象であった場合の苗のつくり方あるいは肥培管理等あるいは品種の選定等も十分配慮してやるようにという技術的な指導もいたしておる次第でございます。したがって、もし昨年のような気象であっても昨年のような減収にならぬような点を目がけまして指導をいたしておるところでございますので、これは先生も御承知のように、あの厳しい冷害の中でもやはり実際に反収を上げている農家もいるという報告も受けておりますので、その点は十分注意をしてやっていきたい、そして万全を期していきたい。同時にまた、見方によっては大雪の次の年は豊作でもあるよというような故老の言い伝えもあるわけでございます。これも統計で見ますと、なるほどそういうことも推定できる統計等が出てくるわけでありますが、いずれにいたしましても、技術的に気象に十分注意をして今年の米作の指導をしてまいりたいと思います。
  287. 村沢牧

    ○村沢牧君 米の生産調整については政府は一貫性を欠いているわけなんです。減反は昭和四十六年から進めてきたわけでありますけれども、あるときには強くやり、あるときには緩めてこういうことになった。今回の大幅な生産調整を打ち出したのは、実は鈴木総理あなたなんですね。鈴木さんが農林大臣であった当時、百七十万トン、四十万ヘクタールの減反政策を打ち出して、その際、この計画は十年くらいで三年間固定をします、この計画を実施していただければ米は余ることはありません、大変な減反政策ですから政府としては環境整備やなんかについて十分こたえていくということを約束されておるんです。ところが、その後どうか。三年間固定をすると言ったのを二年間で打ち切って、実は昨年五十五年に四十万ヘクタールを五十三万五千ヘクタールにし、さらにことしから二期対策として六十七万七千ヘクタールにしようとしている。一貫性がないわけですね。農家、農民は政府の政策に協力してきた。一体あのとき約束した公約というのはどうなったのですか。今後需給によってしょっちゅう変わっていくのですか。
  288. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 確かに私が五十二年農林大臣当時、第二回目の転作の方向を打ち出しまして、水田利用再編対策というものを打ち出し第一期の施策を進めたわけでございます。私の時代に計画をし、中川農林大臣の時代にそれを実行に移したと、こういうことでございますが、常に政府としては食糧の需給の動向等を踏まえ、農業団体、農民の諸君に呼びかけまして理解、協力を得ながら進めてまいったものでございます。しかるに、その後御承知のように大変な豊作が続きまして、なお余剰米が累積をする、なかなかこういう状態では食管の会計はパンクしそうになると、こういうような事態から、農業団体におきましてもこの食管制度をあくまで守っていかなければならないということで、自発的な形におきまして、政府の第二期の計画にも上乗せをして農業団体の方から積極的な転作の強化を打ち出されたわけでございます。  そういうようなことで、いま村沢さんからおしかりがございましたけれども、政府は需給の動向を見ながら、また農業団体等と十分話し合いをし、その理解と協力のもとに進めてきておる、こういうことでございまして、政府が独断的に押しつけてやってきておると、こういうことではございません。
  289. 村沢牧

    ○村沢牧君 食糧の自給率を高めなければならないときに政府は食糧管理法改定の検討を始めておるようであります。これはこの国会に提出をするのか、改正をするとすれば、そのねらいは何か、まずお尋ねします。
  290. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 食管法をぜひ今回の国会に提出をさしていただきたいということで、いま準備をさせていただいておるところでございます。  法治国家でありまするから、やはり守られる食管法にしたいなという気持ちでございます。やみとかいろいろなことがございましても、なかなか現実に合っておらないという面等があるわけでございます。ところが、昨年の冷害に当たりましても、石油ショックの際にも、この食管法がありましたために日本は食糧で国民の心配を駆り立てたことは一度もないということで、最近、米価審議会等におきましても、また消費者団体におきましても、食管法は消費者のためにもこれはいい法律にしてほしいと、守ってもらいたいということで非常に強い要請も来ておるわけでございます。生産者のためにも、消費者のためにもこの食管法を存続してまいりますためには、やはり余り経費のかからないように、しかも余り税金を食わないように、しかも法律的にはきちんとそれが守られるという形に少なくとも最小限そこまではしたいと、こういうことで事務当局改正案作成を命じておる次第でございます。
  291. 村沢牧

    ○村沢牧君 歴代農林水産大臣は食管法の根幹は守るということを公約してきたのでありますけれども、食管法の改正を意図する中において根幹とはどのように考えているのか。  それからもう一つ、この改定の中で麦の価格の算定規定を変えようということも検討しておると言われる。これは大変大きな問題でありますが、これについてどのように考えているのか。
  292. 松本作衞

    政府委員(松本作衞君) 従来、食管法の根幹と言われておりますものは、国民の基本的な食糧である米の必要量を確保し、国民経済の安定を図るため、政府が米の需給及び価格を調整し、米の流通について必要な規制を行うことであるというふうに考えられておりますが、今回の改正におきましてもこういった食管法の根幹は守っていくというふうに考えておるわけでございます。  それからまた、麦の価格についての御質問がございましたが、現在の食管法におきまして麦の価格につきましては、その中で昭和二十五、六年の政府買い入れ価格を基準としたパリティ価格を下回らないようにするという規定があるわけでございますが、この規定につきましては、基準とする年次が二十五、六年ということで余りにも古い時代でございまして、その後の生産事情の変化も反映しにくいという問題でありますとか、またその後麦の生産性向上が行われておるわけでございますが、パリティ価格を下回ってはならないという硬直的な規定ではこういった生産性の向上も反映ができないとか、またパリティ価格を基準として、これを、パリティ価格を下限とするというような規定では他の畑作物の価格の規定とのバランスもとれないというような問題もございますので、今後国内産の麦をさらに促進していきますためにも、価格の規定の不合理な点を改めまして、国民的な理解を得ながら麦の対策を進めていく必要があるのではないか、まあそういう点でこの点の見直しをしてまいりたいということで、関係者の理解を得るよう現在努めているところでございます。
  293. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣、食管法の根幹とは、私は、政府が全量買い入れることあるいは直接管理をすること、二重価格制ということが根幹であるというふうに思うんです。この根幹が大分崩されてきておりますし、いまの答弁聞いても納得ができません。  さらにまた、この麦の価格の問題についても、麦を増産しなければならないというときに麦の価格の引き下げにつながるような改定はすべきでない、このように考えますが、改めて大臣の見解を求めます。
  294. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) ただいま食糧庁長官から申し上げたとおりでございますが、まあ具体的に言いますと、三条、四条、これはそのままにしていこう。すなわちいま言いました、とにかく全量管理をしていこうというその基本は変えないと、こういうことはここではっきりと申し上げることができるわけであります。  と同時に、麦の価格につきましては、私も食管法を何遍も読んでみておるわけでありますが、「昭和二十五年産及昭和二十六年産ノ麦ノ政府ノ買入ノ価格ヲ平均シテ得タル額ニ農業パリティ指数(物及役務ニ付農業者ノ支払フ価格等ノ総合指数ヲ謂フ)ヲ乗ジテ得タル額ヲ下ラザルモノトシ」——この「下ラザルモノトシ」というのが農家の諸君の、やっぱり米作農家の諸君の気持ちにグサッと刺さるんじゃないかなと、こんなふうに私は考えておるわけでありますが、そこのところよく説得と申しますか話し合いをいたしましてもなかなか理解してもらえないと、こういう感じを私はいま持っておるわけであります。しかし、まあ国会を通じ農家の皆さん方にわかっていただいて、そうしてすかっとした形で守られる食管法ということになれば、さなきだに農業面に対する内外からの厳しい風潮が一層深刻になることが予想される中において、農家の諸君に本当に安心して農民魂を発揮して農産物をどんどんつくってやるぞという意欲を示してもらう——もらいたいものであると、こういう気持ちで実はいま懸命に話し合いをさしていただいておる次第でございます。
  295. 村沢牧

    ○村沢牧君 食管法についてはわが党も、いま改正するということは時期尚早であるという見解、さらにまた政府考えでいることについて納得できないという意見を持っておりますので、これはその段階でまた論議をいたしたいというふうに思います。  さて、私はいままで食糧問題を中心として論議をしてきたわけでありますけれども、食糧の自給率を高めるためにも、わが国の農業を政治経済の中でどのような位置づけをして発展をさしていくかということにかかっているというふうに思うのです、農業を取り巻く情勢は厳しいと言いますが、外圧あるいはまた国内の情勢の中からどのように位置づけをしていくのか。鈴木内閣総理自身も中川科学技術庁長官渡辺大蔵大臣も農林大臣経験者だ、伊東外務大臣も安孫子自治大臣も農林省出身だ。それから与党では櫻内幹事長も安倍政調会長も農林大臣経験者。鈴木内閣ができたときに、農家農民の皆さん方は、これだけ実力者がそろっているのだから八〇年代農業はうんとよくなるに違いない、こういう期待をかけておったんですが、残念ながら、どうも期待外れのような感がするんですけれども、まず農業の位置づけについて総理から聞きたいわけですが、その前に渡辺大蔵大臣、どのように考えますか、農業の位置づけ。どのように発展をしていくかということ。
  296. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、先ほどから農林大臣が言っていることと同じでありまして、できるだけ国内でつくれるものはつくる。しかしながら、安定的食糧の確保ということでありますから、不足なものは輸入をする。国内でつくるものについては、これはやはり幾ら高くてもいいというわけにいかぬわけですから、当然農作物も商品、またはその性格を持っておる、農業も産業であるということがわかれば、日本の農業はよくなる。私は日本の農業は、これだけの、一億一千万の人口を持って、世界じゅうの人が日本に農産物を売りたいと言っているわけですから、一番近いところにいる日本の農家がそれじゃやれないということはないんですね、これは。やり方だと私は思うんです。じゃほかへ、中因へ行って農業やったらいいかとか、ブラジルへ行ってやったらうまくいくとかというわけじゃないんですから、私はやり方さえうまくやれば必ずよくなると、そう思っております。
  297. 村沢牧

    ○村沢牧君 中川さんどうですか。
  298. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 農業は、大事な食糧——国家安全保障にも関連する食糧をつくっているということ、それから、農民は国家民族の魂であるということ、したがって、この二点から、ただ経済合理性で、国際分業論というようなもので処理すべきではない。やはりしっかりした民族をつくり、食糧の自給率を高めるという崇高な精神で農政をやっていかなきゃいけない。その場合考えなければならないのは、やっぱり国民の必要なものをつくるというところからいくならば、今日過剰な米については、やはり必要なだけつくって、それ以外のものについては、麦とか国民の必要なものに転作をしていく以外ないと、こういうことで、世界にも類例のない転作奨励金という大変な国家支出をして、農民の皆さんにも御協力いただきますが、やはり政府もそれなりの汗を流して、一遍にはまいりませんけれども、長くかけて自給自足の体制をつくっていくように努力をしていくと、こういうことで対処してきたつもりでございます。
  299. 村沢牧

    ○村沢牧君 総理総理の施政方針演説をお聞きしても、農業の重要性は訴え、農業の再編成を図っていくんだということが言われておるわけです。再編成ということは非常にいい印象を受けるわけでありますが、一体、いままでの農業がどういうところがいけなかったのか、どういうふうに変えていこうとするのか。これはひとつ農林大臣でなくて、総理の見解を聞きたいと思いますし、同時に、私が先ほど質問いたしましたように、わが国経済の中でどのような位置づけをしていくのですか。そのことについて。
  300. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、わが国の農業は、単なる経済問題、経済合理主義というようなそういう観点だけでなしに、やはり先ほど来私も申し上げておりますように、国民生活の安全保障の最低限度、これを確保する食糧の生産に従事しておられると、そういう仕事であって、非常に私は大事な仕事である、このように考えておるものでございます。そういう観点からいたしまして、私どもは、日本農業というのはあくまでもこれを維持し、また発展をさしていかなければいけない、農民の生活というものは守っていかなければならない、このように基本的に考えておるわけでございます。しかし、そういう間におきましても、やはり生産性を高めるとか、あるいはできるだけの合理化を図るとかいうことは、私どもは常に努力をしていかなければならない課題でございます。  政府としては、農業の担い手である農民の皆さんの理解と協力を得ながら生産性を拡大し、向上させ、そして安定的な食糧の供給確保ができるように、政府としてもできるだけの努力をこれに加えていきたいと、こう思っております。
  301. 村沢牧

    ○村沢牧君 わが国の農業は、外国農産物の輸入の増加によって大きく変化をしたし、また自給率も低下をされてきたことは事実なんです。この農産物の輸入は、また工業製品を外国に輸出をして、その見返りとして急激に増加してきたことも否定することのできない事実であろうというふうに思います。貿易摩擦が起こっておりますが、工業製品、自動車等の輸出の増加につれて、日本がそんなに工業製品を持ち込むなら、農産物の市場を開放して農産物の輸入を拡大せよというこれは攻撃のあることも事実なんです。しかし、いままで総理答弁になったように、わが国の自給率を高めていくという立場に立つならば、工業製品の見返りとして農産物の輸入を拡大していく、そういう考え方に立ってはならないわけなんですけれども、通産大臣はどのように考えますか。
  302. 田中六助

    国務大臣田中六助君) 農産物を工業製品とすりかえていろいろやるというような発想法は私どもは持っておりません。  いま残存輸入品目二十七品目ございますが、その中二十二は農産物関係でございまして、工業品は五つしかないわけです。そういう姿を見ても私どもの考えがどこにあるかと、私どもも自由貿易主義、あるいは相手側の保護貿易主義というものを排除しなければならないプリンシプル、つまり定義を持っておりますけれども、やはり何と申しましても、わが国の農村というもの、あるいは農産物というものを頭に描いた貿易というものを考えておるということでございます。
  303. 村沢牧

    ○村沢牧君 外務大臣、日本の農産物の輸入のウエートが最も大きいアメリカですね、日米交渉においても常にこの農産物輸入の問題が出てくるわけなんです。特にレーガン政権は、農産物輸出に対して強気な姿勢であるというふうに言われておるわけなんですけれども、外務大臣は、アメリカに限らず、ECその他との外交交渉の中において、わが国農産物の輸入をどのように考えているんですか。
  304. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) 基本的には、総理以下農林大臣あるいは前に農林大臣やられた方々がお答えになったとおりでございまして、その中で外国の農産物との関係考えるわけですが、今度私アメリカへ行きますときに、いま議題の打ち合わせをやっておるんですが、アメリカ側から農産物を議題にしたらどうだということがあったのでございますが、私の方は、農産物の輸入の問題については、一九七九年でしたか、中川農林大臣が、牛場当時の経済担当の大臣とストラウスとの間で、柑橘類あるいはオレンジジュース、グレープフルーツジュース、牛肉の話し合いをガットの場でされて、八四年三月まで数量が決まっておるわけでございます。でございますので、今度特に問題になっているものはないのだから、話し合いができているのだから、八四年三月まであるので、農産物を特に議題にする必要はない、むしろ漁業の方が問題だ。ここでも出ましたイルカの混獲とかカニの問題とかあるわけでございまして、漁業を議題にしようというようなことをいまアメリカと交渉していまして、恐らくそういうことになると思うわけでございます。  いま村沢さんおっしゃるように、一番日本で輸入が大きいのはアメリカでございますので、アメリカとはおととしでしたか、大平・カーター両首脳の共同声明が出まして、農産物の安定供給といいますか、互恵といいますか、そういう立場に立って、これは非常に貿易上も必要なものでございますから、毎年一回、穀物の関係の情報交換をする会議をやろうというようなことで、アメリカとは非常に農産物関係は需給関係情報の収集というようなことがあるわけでございまして、私はいまのところそう大きな農産物の輸入について問題はないと思っておるわけでございます。  ECは、チョコレートでございますとかバターの問題でございますとか若干実はあるんです。ありますが、チョコレートについては実需者が自粛していくというようなことになりました。  いま調製食用脂ということで問題になっておることがございますが、これはニュージーランド、ベルギーでございますが、関係省で何とか、酪農の審議会が今月末ありますから、その前に解決をつけるようにということをいま努力しているということでございまして、基本的にはどんどん外国の農産物を入れて日本の農業が困るということは極力避けるようにという努力をやっぱりやっていく必要がある。確かに、自由貿易ということから言えば、これは残存制限品目なんというのは少ない方がいいのかもしれませんが、これは理屈どおりいかぬわけでございまして、通産大臣もいま言われたように、なかなかそれはむずかしいという意味言われたわけでございまして、その辺のところは、日本の農村をどうやって続けさしていくか。もちろん農村も価格の面等において合理化を図っていくという必要があるわけでございますが、そういうような関係で、外国の農産物につきましては、外交面では考えておるところでございます。
  305. 村沢牧

    ○村沢牧君 自由貿易あるいはガットの制限のあることも承知をいたしておるところでありますが、しかし、どこの国でもその国の農産物を保護するために、輸入制限等も加えている。こういう中にあって、わが国の残存輸入制限農産物は二十二品目あるわけですけれども、これは国内の農業を保護し、自給率を高めるために必要な品目でありますから、この制限を緩和すべきではない、そのように思いますが、どうですか。——大臣、大臣ですよ。
  306. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 先ほど来総理並びに各閣僚からお話し申し上げましたとおり、やはり日本の農業は日本人が守っていかなきゃならぬわけでありますから、この二十二という残存輸入制限品目についてはこれはもう堅持をしていきたい、こう考えております。  と申しますと、ここでちょっと時間をいただいて申し上げてみますと、米国におきましても、残存輸入制限品目としては非常に少ない、一つということでありますけれども、一方、農事調整法という法律によりまして十三品目につき輸入割り当て品目といたしておるわけでございます。そのほか、食肉輸入法という法律によりましてこれまたきちっと輸入を規制をいたしておる。こうしてアメリカはアメリカ自身の農業を守っておるわけでございます。  ECにおきましても、いわゆる残存輸入制限品目はそう多くは、フランスが農業品が十九、デンマークが五、ベネルックスが四、西独が三、英国が一、こういうふうになっておりますけれども、EC自体の中で非常に高額ないわゆる課徴金、輸入農産物、畜産物には課徴金を課しておるわけでございます。  こういう点をやはり相手国と十分に話し合っていくことによって私はこの農産物の貿易関係等についても話し合いのつくことと考えまして、先ほど外務大臣からお話のありましたいわゆる擬装乳製品につきまして、いま外務省を通じて折衝を続けておるところでございます。私どもの考えはできるだけ相手にわかってもらうという努力をすることが私は大変大事である、こう思ってやっております。
  307. 村沢牧

    ○村沢牧君 外国農産物あるいはその加工品が、わが国農業に対して多くの影響を与えていることはいろんな製品に見られるわけでありますけれども、私は当面問題となっておる二つの製品について質問をいたします。  一つは、擬装乳製品であります。一つは、生糸、絹織物についてでありますが、この輸入状況とそれがわが国に及ぼす影響、関係する各省庁から答えてください。
  308. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 擬装乳製品という御指摘でございますが、一つは調製食用脂の問題がございます。五十五年の輸入量は約一万七千トンでございまして、残念ながら前年対比でかなりの増加になっております。ココア調製品自体は大体自主規制が成功しておりまして、前年度横ばいという輸入数量になっております。  この影響はなかなか実は計測しがたい点もあるわけでございますが、調製食用脂につきましては、主として洋菓子、パン等に利用されております。これは従来マーガリン、ショートニングが使われたものが、増産されるあるいは消費が高級化するという過程で置きかわったという過程がございますが、同時に、そのことがやはりわが国のバターの消費に抑制的に働いたということも反面否定できないことはあるだろうと思います。そういう意味で計測いたしますと、やはりこの七割弱がバターでございますから、最高限度その範囲では影響があったという見方はあるわけでございます。  ココア調製品の方は、生乳換算で大体一六万トンくらいの影響があるのではないかと見ておりますが、これは御案内のようにココア関連の商品につきましては、大体輸入が一般的に原料よりもこういった調製品で従来からも流通していた経過があるわけでございまして、これをなかなか切り離して議論することはむずかしいのではないだろうかと思います。
  309. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) お答え申し上げます。  まず、生糸の輸入数量でございますが、五十五年、これは保税を含めますと四万九千五百九十八俵でございます。この中で日本蚕糸事業団がやっておりますいわゆる一元輸入、これが三万八千九百六十五俵ということでございまして、合計の面は対前年八二%、それから一元輸入の分は八四%ということで、前年よりは相当減っております。それから、この輸入の面につきましては、一元輸入制度のもとにあるわけでございますが、中国と韓国、これが主要な生糸の輸出国でございますので、この国と二国間取り決めをやっておりまして、その輸入数量の圧縮に努めておるわけでございます。今後ともこの面の努力は継続していきたいと、かように考えております。
  310. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) 絹糸及び絹織物についてお答えいたします。  五十五年度の絹糸の輸入量は三万六百俵でございます。それから絹織物は二千八百七十三万スクエアメートル。前年比で申しますと、絹糸が八八%、それから絹織物は七九%、それぞれ前年を一〇〇にした数字ですから、かなり減少を見ております。
  311. 村沢牧

    ○村沢牧君 擬装乳製品のことしの一月から十二月までの輸入量の伸び率、それから、これは生乳換算にしてどのぐらいになるのか。生糸については、生糸在庫量の中に占める輸入生糸の割合等について答弁してください。
  312. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 調製食用脂の輸入量は、先ほど申し上げましたように一万七千トンでございまして、生乳換算にいたしますと十五万六千トンというふうに算定されます。これは前年対比では約三二%の増加ということになっております。  ココア調製品は、先ほどお答え申し上げましたように、十六万二千トンという生乳換算になります。この輸入量は前年対比で約四%の増加でございます。
  313. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 現在、事業団の在庫はこの二月末で十四万四千六百俵になっておりますが、このうち輸入脂は十万八千俵でございまして、事業団在庫の全体の七五%に相なっております。
  314. 村沢牧

    ○村沢牧君 このうち乳製品の輸入について、農林水産省それから通産省等々いろいろ意見の食い違いもあって一定の方向を調整したというふうに言われているんですけれども、その辺はどうなっているんですか。
  315. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) お答え申し上げます。  現在私どもEC、ニュージーランド等の輸出国と外交交渉を続けております。この交渉を基礎といたしまして、農林省、通産省、外務省、大蔵省四省の意見調整を図り、できるだけ速やかに合理的な輸入の歯どめ措置を各般の手口を活用いたしまして講じてまいりたいと思っているわけでございます。
  316. 村沢牧

    ○村沢牧君 通産省、いま説明のあった絹織物の輸入、法の網をくぐっていろいろ入ってくるわけですけれども、コントロールもしておりますけれども、余り成果も上がっておらない。今後どのような対策をとっていくのですか。
  317. 若杉和夫

    政府委員(若杉和夫君) お答え申し上げます。  絹糸、絹織物については、大体その七割ないし八割を占める中国、韓国、台湾三国につきまして政府間及び民間ベースの協定を結んでおりまして、それで輸入量の調整、最近は削減という方向で努力をいたしております。  それから、いわゆるそういうところからの迂回輸入、あるいは、通称青竹と申しまして、簡単に染めをして、日本で染めを抜くというような輸入もあったわけでございます。したがいまして、そういうものについては輸入承認制をしくということにしております。  それからさらに、それも無法で破るということがあっては困りますので、ほとんどの国について輸入に際して確認制というものをしきまして、それをわれわれチェックできるという体制にしております。  その三つ、実はそのような措置を講じましてもまだ法を破るということも絶対ないとは言えませんが、そういうものに対しては厳しい措置を講じまして根絶を期していきたいと、かように考えておる次第でございます。
  318. 村沢牧

    ○村沢牧君 ここ数年来、財界、特に経団連等を中心にして農業に対して厳しい提言を行っております。この提言の中では十分尊重しなければならないものもあるわけでありますけれども、しかし、その言わんとするところは、団体によって表現の違いはあっても、無理をして自給率を向上させるべきでない、輸入制限や国の価格政策を撤廃して、自由化政策によって国民の必要とする食糧を確保すればいいのだと、こういうことであります。こういうことは、工業製品の輸出市場の拡大や低賃金政策のために経済的側面だけで見た国際分業論的な考え方であるというように思うのですけれども、これに対しての見解を求めます。
  319. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 大事な問題でございますから、私からお答えをいたします。  わが国の農業は国土、資源の制約もございます。つまり大規模経営等ができない、そういう国土、資源の制約がございます。それからもう一つは、高度経済成長時代に都市勤労者の所得がふえた、生活水準も向上した、ところが農村、農民だけがその所得格差を低い水準に置かれるということはこれは許されない、そういうようなこと等がございまして、価格政策その他の面で日本の農産物の価格は割り高になってきていることは事実でございます。したがって、それだけ国際競争力という面からいきますと非常に低位、弱い立場にあるわけでございます。一方におきまして、先ほど来るるお話が出ておりますように、食糧の安定的な確保ということは、これは日本民族としての最低の安全保障であると、こういうことを総合的に考えますと、国際分業というようなまる裸の政策を私はとるわけにはまいらない、このように考えます。これは日本だけでございません。各国ともそういう農業に対しては適正な保護政策をとっておるわけでございます。しかしながら、一方において、私は常に反省をお互いにしなければならないことは、できるだけ生産性の向上を図る、合理化を図る、そういうようなことを通じまして少しでも国際競争力を高めていくという努力、これも私は必要だと考えるものでございます。私は、そういう観点に立ちまして今後のわが国の農業政策を進めてまいりたい、こう思っております。
  320. 村沢牧

    ○村沢牧君 農政審議会から「八〇年代の農政の基本方向」が出されておりますけれども、これはきわめて抽象的であり、一にかかって政府の施策に期待をしているわけなんです。したがって、この基本方向を実行していくためにはその施策の裏づけがなくてはならないというふうに思うのです。特に、財政再建あるいは行政改革等の問題とも関連をさせて本当にこれが実行できるのかどうか大変心配もし、疑問に思うわけでありますが、そこで、昨日も農林省関係の補助金の問題等について同僚議員から指摘を受けたところであります。整理すべきものは整理をして、そうしてやっぱり新しい農政の方向を見出していくんだと、再編成をしていくんだと、こういうやっぱり決意がなくてはならないわけでありますけれども、最後にその決意を伺って私の質問を終わります。
  321. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 農業に対しましては、先ほど来るる申し上げておるように、いろんな面で保護、助成の方途を講じてきたところでございます。一部に過保護ではないかという批判さえ出ておる面もございます。また、補助金等々ですでにその使命を終わったものもなきにしもあらず、またその補助金の効率化という面から言って大いに改善を要する点もある。そういう点を総合的に勘案をし、本当に補助金が効率的にこういう厳しい財政の中で使われるように、また日本農業の健全な発展に寄与できるように、そういう観点から補助金等の問題は十分再検討を加えていきたいと、こう思っております。
  322. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で村沢君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  323. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、竹田四郎君の総括質疑を行います。竹田四郎君。
  324. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 外務大臣にこれはひとつ御注意いただきたいと思うんですが、この間、わが党の小野委員からジャマイカの円借款の質問に対しまして、当時外務大臣はまだ結論が出ていないと、こういう発言をしていながら——かなり問題としては重要だと思います。日本の外交方針にも影響のある問題であると思いますが、日ならずして報告をすると。私どもは大変国会軽視ではないかという疑いを持つわけでありますけれども、もう少しこの間の園田厚生大臣みたいに率直であってほしいというふうに私は思いますが、どうですか。
  325. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) この間大木委員から御質問ありまして、御注意を受けたことを今後注意しますということを私は率直に申し上げたわけでございまして、大体私も率直な方でございますが、あのとき、世銀の主催で会議があるということでございまして、それに日本が参加する場合にどういう態度でいくかということがまだ決まってなかったことは事実でございます。ただ、ジャマイカは、前に技術協力でございますとかあるいは輸出入銀行のバンクローンや何かやったこともずっとあるわけでございまして、そういう経過があったわけでございますが、世銀主催の会議に出ますときに、それではこれからどうしようかと、ジャマイカからの要請があったことは確かでございますが、いろいろ考えましてああいう結論を出したのでございますが、大木委員からも御注意ありましたことは、私は率直にこれはひとつ気をつけることがあれば今後気をつけますと私は申したわけであります。今後そういう態度でまいりますから、どうぞ率直にお答えしますから、御心配なく。
  326. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 宮澤長官は昨十二日、七月のオタワサミットを対ソ戦略の調整の場にするというレーガン大統領の提唱に呼応して、これまでの経済サミットから、対ソ政策を軸とする戦略サミットにすることに同調する方針を明らかにしたと、こういうふうな発表をしたと報じておりますが、これは一体どういう意味なんですか。そして、これは鈴木内閣の方針なんですか、どうなんですか。
  327. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 鈴木内閣の方針ではございません。  それから、その報道には間違いがございますので、多少長くなりますが説明をお許しをいただきたいと思います、大事なことでございますので。  カナダでレーガン大統領とトルドー首相がそういう話をしたという報道、これはございました。それについて意見を聞かれたわけでございますが、私が申しましたことは、もともと、サミットが最初にランブイエで開かれるときに、このサミットというものは経済問題だけを扱うべきものなのか、政治問題もやるべきかという議論がありまして、主としてジスカールデスタン大統領であったわけですが、政治問題というものは、やはりおのおのの何といいますか、主権に非常に関係をするので、サミットというものは経済問題をすべきであるという御主張があって、したがってアジェンダはその後ずっと今日までそうなってきている。ただ、事実上各国の首脳が一年に一遍集まられるということになると、経済問題だけというのはこれはいかにも少し、せっかく集まるのにどうなんだろうかという意見は当時から確かにあった。ことにアフガニスタンのような出来事が起こりましてからそういう意見がかなり強くなりまして、イギリスのサッチャー首相なども私自身にそういうことをはっきり言われたこともある。ですから、多くの国々であれだけの首脳が集まる年に一遍の機会に、しかもこういう国際政治がアフガニスタン等々非常にむずかしくなっているときに、経済問題だけで一切政治の話は話さないということは不自然ではないかという意見はだんだんに強くなってきているのは事実である。  しかし、それからが私の意見なのですが、ですから、そういう政治の話というものが出るということ、そのこと自身はむしろ防げないといいますか、自然であろうと私は思うが、ただ、その際一つの結論を出そうとか、それをコミュニケに入れようとかということをすればこれは間違いなのであって、自分の国からは国際政治はこう考えられるといったようなことを首脳たちが話をされること、そのこと自身は悪いとは思わない、概してこういうことを申したわけでございます。
  328. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 正式議題でなくて雑談ならそういう話を大いにしてよろしい、ただ、それが決議やコミュニケに入れるのはこれはいけないだろう、こういうことでありますが、どうも私はちょっと違うのではないだろうかと思います。恐らく近く外務大臣は渡米するでしょうし、それから五月には恐らく総理も渡米するだろうと思いますが、当然、このサミットの事前の、何というんですか、打ち合わせというものは私は行われるだろうと思う。そういうときに、いま長官がおっしゃられたようなことが話し合いに出てくる可能性というものは私は大いにあると思う。正式議題にならなくても雑談の中で話になって、それがまたサミットの雑談の中でそういう空気を醸し出していく。私は、これはあくまでも鈴木内閣の組閣以来の方針と相反するし、いままでの日本のサミットに対する方針の大転換をもたらすと思うのですけれども、これは、これから訪米される外務大臣、総理、どのように対処するつもりですか。
  329. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) サミットの議題については、事前に各国から担当が集まって打ち合わすことはやっておるわけでございます。それで、従来政治問題についてはサミットであんまり取り上げなかったのでございますが、去年のベニスサミットから、アフガニスタンに対するソ連の軍事介入ということがありまして、去年のベニスサミットでは政治問題を取り上げたことはございます。今度のオタワのサミットでどういう議題をやるかということにつきましては、これは本当にまだ決まってないわけでございまして、経済問題に終始するか、あるいは政治問題、またその政治問題の場合にどういう政治問題になるかというようなことはまだ決まっておりません、本当に。でございますので、これからそういうことは各国で事前にどう議題にするかということで相談をする、これは率直にそのとおりでございます。
  330. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) このサミットの会議というのは、いままでの経過等を見ておりますと、大分事前に議題その他につきましても相当各国の首脳の個人代表というのが数次にわたりまして会合いたしまして、議題から大体の方向づけということまで準備をするようでございます。私も外務省を通じましてその報告を聞いておりますが、いま外務大臣が御答弁申し上げましたように議題はまだ固まっておりません。そして、その中に政治問題を議題にするという話は出ておりません。特に、今度はECの委員長等も参加する首脳会議でございますから、果たして政治問題を議題とすることがふさわしいかどうか、こういう問題もあるわけでございます。でありますから、この個人代表の会議でこれからまだ議題等についての最後の整理をするということになろうかと思いますが、現在ではそのようなことはないということだけを中間的に御報告を申し上げておきます。
  331. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これからのことでありますけれども、世の中が力の対決ということで世界に大きな割れ目が入る、こういうことのないようにすることが私は日本の大きな政治的な役割りだと、こういうふうに思いますので、ひとつその点は十分御注意をいただきたいと思います。  次に、本題に入りまして、景気の見通しからお伺いをしたいと思いますが、今度は大変在庫調整がおくれてしまっているわけでありまして、当初は、去年の十二月、ここまで来たら後は平らな道だからおまえたちここまではがまんしなさい、こういうふうにして国民を引き連れてきました。そしてことしになりまして一月−三月、もうこれは物すごい急峻な坂にしてしまっているわけであります。そして、恐らく四月になったらいいかと思ったら四月もだめ。じゃ夏になったらいいだろうかといったら、これも最近の諸報道を見るとどうも夏もだめ。少し景気がよくなってくるのは秋口ではないかというのがいまの大体共通したところであります、恐らく、在庫調整がこんなに、在庫調整終わるぞ終わるぞと言ってこんなに長くなったことは私は最近では聞いておりません。一体在庫調整がこんなに長くかかったその理由を聞きたいんですが、その前に、在庫調整は、経企庁長官、いつごろ終わるんですか。
  332. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) お説のように、当初政府が想定しておりましたよりも数ヵ月間おくれておることは事実であります。ただいまのところはおおむね五十六年度の第一・四半期には終わるのではないかと思っておりますが、何分にも業種によりましてばらつきがあるものですから、比較的早く終わるものもあろうかと思いますが、若干おくれるものもあろうかと思います。
  333. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どういう業種が六月に終わって、どういう業種は長くかかるんですか。
  334. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 在庫調整は、先生御指摘のとおり最終需要の落ち込みがございましておくれておるわけでございます。現在在庫調整がおくれておりますのはおおむね素材型の産業でございまして、鉄鋼ですと小棒関係が建設事業が不振ということでございます。アルミ地金を見ますと、輸入の地金が急増したということもございますが、需要が落ちているという事情もございます。一方、アルミサッシは住宅着工がおくれているというような事情がございますし、一方、塩ビは仮需の反動から調整が非常におくれているというような事情もございます。一方、段ボール原紙がおくれておりますが、これは生産活動が停滞して弱含みであるということを反映しているかと思われます。一方、繊維では特に綿糸のおくれが日立つわけでございますが、川上段階での在庫増がなお続いているということでございます。  それぞれのいま申し上げました業種は、一部構造的な不況業種ともダブっておるわけでございまして、長期的には構造的な対策が必要かと思われますけれども、一部の業種はずれ込むといたしましても、ただいま申し上げました業種につきましてそれぞれ理由を申し上げましたが、景気が回復すると同時に在庫調整もおおむね進展していくのではないか、多くの業種は四−六月におおむね終了するのではないかというふうに考えているわけでございます。
  335. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 河本長官、本当に景気がよくなってきたなと思われるときはいつですか。
  336. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私は、大体これまでは、産業の平均の操業率が八五%を超えますと皆さんが大分よくなったなと、こういう感じを持たれるということを言っておったんです。そして九〇%を超えますとまあ非常によろしいと、それじゃひとつ思い切って投資でもやってみようかと、こういう判断をされるであろうと、こう言っておったんですが、昨年のいまごろは大体九三%前後まで最高は回復をいたしました。現在は残念ながら八三、四%見当まで落ち込んでおりますので、やはり一〇%落ち込みますと相当悪くなったと、こういういま感じを産業界の方々は持っておられるであろう、こう判断をしております。ただ第一次オイルショックのときと違いますことは、非常に景気にばらつきがあるということであります。先ほどもちょっと触れておりましたが、大企業と中小企業との間にばらつきもございますが、大企業同士の間にもばらつきがある、こういう点が前のオイルショックのときとの違いであろうかと、こう判断をしております。
  337. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 こんなに在庫調整のおくれた原因、これは十分精査をしていると思うんですが、なぜおくれたんでしょうか。
  338. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これは御案内のように、昨年の十二月にOECD、世界の先進工業国全部の平均の成長率はマイナスである、こういう報告をしておりますが、しかしながら、一九八一年の後半になるとだんだんと第二次オイルショックによる悪い影響も吸収されまして、そして一%ぐらいな成長になるのではないか、来年になりますと上半期が二%、下半期が三%ぐらいであろう、こういう報告が昨年の十二月に出ております。要するに、第二次石油危機のデフレ効果がいま全面的に世界に悪い影響を及ぼしておる、こういうことだと思いますが、わが国も御案内のように第一次オイルショックのときは石油の価格が一挙に四倍に上がりましたけれども、それはバレル二ドル五十であったものが四倍になったわけでありますから、金額的にはそう大きなことはありませんでした。しかし今回は、二年前に十二ドル五十前後であったものが三倍になっておるということでありますから、金額的には非常に大きな数字になっております。二年前に比べまして、現在はエネルギー関係で約五百億ドルの外貨をOPEC諸国に払わなければならぬ、こういうこと。つまり、日本円に換算いたしまして十兆円というデフレ効果、これがいま日本経済全体に悪い影響を及ぼしておる。こういうことでございまして、しかしながらいろんな対策もいま考えておりますので、いまのような状態が長続きいたしますと困りますので、何らかの対策をいま立てなければならぬということで関係各省との間で相談をしておる最中でございます。
  339. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 長官、私はそういうことを聞いたのじゃないんですよ。経企庁が、いつになれば在庫調整は終わりますよ、こういう発表をした。それがそこへ行くとまた次へ行っちゃう。もう三回ぐらい経企庁の発表が事実と違うわけですね。その原因は一体どこにあったか、こういうわけですよ。経企庁の人ですから、十分それは精査して数字もやったし、コンピューターにもかけてやったんだろうけれども、そして予想を出したんだけれども、予想が合わないのはどこかに欠陥があったはずなんです。だから、その欠陥は、一体何を見誤ったから欠陥になったのか、何をオーバーに評価したからそういう欠陥になったのか、そういうものを精査しているでしょう、もう三回も延ばしているんだから、それの原因は何だと私は聞いているんです。
  340. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私が先ほど説明いたしましたのは、全体としての背景を説明したわけでありますが、もう少し具体的に申し上げますと、やはり個人消費がなかなか思うように回復をしない、これは物価問題が背景にあるからだと考えます。それからもう一つは住宅投資が激減をしておる。これも一向に回復の気配はない。これはやはり土地問題それから金融問題等が背景にあろうかと、こう思っております。そういう個人消費、住宅投資の落ち込みを背景といたしまして、中小企業の投資活動がこれまた大変落ち込んでおる、こういうことが重なりまして最終消費需要というものがなかなか回復しない。したがって、在庫投資も残念ながらだんだん延び延びになっておる、こういうことでございます。
  341. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 全然私の質問と合ってないんですよ。長官答弁でなくても局長でもいいですが、なぜそういう見通しを誤ったのだと。いまの長官の話は、在庫投資が多いという説明だろうと思うんですよ。そうじゃなくて、十二月には在庫調整を終わるんだという発表をしておいて、それがだめになった。一−三月に終わると言ったけれども、それがだめになった。四−六に終わるといまおっしゃっているんですが、これもどうもだめになりそうだ。私は、これはどこか計数が狂っていたんだろうと、あるいはどこか見るべきものを見落としていた、それだからこうやっているのです。それは経企庁はそれで結構でしょうが、中小企業はきのうからも話があったが大変ですよ。ここまで登っていったら後は楽になるかと思ったら、また坂道なんですよ。また登っていった、また坂道なんですよ。これじゃ倒産が多くなるのはあたりまえでしょう。そうでしょう、大蔵大臣。だから、そこは経企庁として一体どういう反省をしているかということを聞きたい。
  342. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) ただいま大臣から御答弁申しましたとおり、個人消費の落ち込みというのが予想外であったわけでございます。家計調査で見ますと、昨年実質で〇・六%のマイナスということでございますが、個人消費が落ち込みましたのは、実質賃金が同じ時期にマイナス〇・九%ということでございます。これは……
  343. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そんなことは前からわかっているじゃないの。十二月がため、三月がため、六月がだめということにはならないでしょう。そんなことにはならぬです、そんなもの。
  344. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) その理由は、ただいまも長官から申し上げましたとおり、物価が予想以上に上回ったということでございますし、さらに冷夏、あるいは寒波、豪雪等の影響が、季節的な要因が加わったということでございまして、したがって物価が高くなりました結果、実質消費が落ちたという面もございますし、季節的な要因で消費が落ちたという事情もございます。  一方、もう一つ大きな要因は、同じく大臣から御答弁申し上げましたとおり、住宅需要が一月、季節調整にいたしますと八万四千戸という大変落ち込みでございまして、これはもちろん土地の問題もございますし、建設資材の高騰といったような状況がございます。したがいまして、内需、特に個人消費、住宅が予想以上に実質で落ちたということが大きな要因かと思います。
  345. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私、これをやっていたら時間がありませんけれども、総理、あなたの一番重要な企画庁が、ここまで在庫調整を引っ張っておいて、その原因すらよくわからない。こういうことで一体国民政府を信用しますか。大変なことですよ、これは。中小企業の立場に立ったら、あなた方はあるいは政府の機関は親方日の丸でいいかもしれぬ、中小企業はたまったものじゃないですよ。目の前にニンジンをぶら下げられて駆けろ駆けろ駆けろと言う、どこまで駆けていったらゴールになるかわからぬような経済運営がいまの経済運営でしょう。責任を感じませんか、総理
  346. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほども申し上げましたように、全体としての背景は、第二次石油危機の大きなデフレ効果がずっと横たわっておるということであります。そして、なぜ在庫調整が進まないのか、景気が思うように回復しないのかということにつきましては、最終需要がなかなか伸びないからであると、伸びない理由は中小企業と住宅投資の関係であると、そういうことを言ったわけであります。
  347. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それなら在庫調整が完了するなんということを簡単に言わなけりゃいいんだよ、在庫調整が簡単に終わるというだけで。これは総理答えてください、責任ある答弁をしてください。
  348. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま御案内のように世界は激動期であります。こういう激動期にはいろんな予測せざる原因が重なりますから、経済見通しが正確に当たるということはこれはなかなかむずかしいのです。当たらぬからけしからぬとこう言われましても、それは大変困るわけでありまして、その場合にはやはり事態の変化に即応いたしまして最善の対策を立てていく、これが私は必要なことであろうと、こう思うのでございます。
  349. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 だめですよ、そんなものは、国民承知しないですよ。
  350. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 端的に申し上げまして、消費の伸びが思ったように伸びなかった、こういうことでございまして、それは観測が甘かったとか、そういう御指摘はあろうかと思います。個人消費を初めとして消費支出が思ったより伸びなかった、これは確かでございまして、その点は政府の観測がそのとおりにいかなかった、甘かったと、こういう御指摘であれば、これはそのとおりだと思います。
  351. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 長官、これはずっと景気が悪いからという話ならいいですよ。在庫調整が完了する、いついつ完了する、国民に言っておいて、それがそのとおりにいかないから私は問題にしている。ずっと悪いなら悪いでいいのですよ。来年の三月なら来年三月在庫調整は終わるんですよというならそれでいい。この原因ははっきりしてください。これからもあるかもしれない。あなたは世界は激動期だと言うけれども、これからも激動期だから。何でこういう計測の誤りがあったか、これをはっきりして後で教えてください。
  352. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) やはり、これは繰り返しになりますけれども、物価が政府の当初の計画どおりなかなか下がらなかったということ、そのために個人消費がなかなか思うように回復しない、したがって最終需要が伸びない。それからまた、住宅投資の激減は土地価格がなかなか下がらない、こういうところに原因があるわけでありまして、それじゃなぜ物価が下がらなかったのか、なぜ土地が下がらないのか、これにはそれなりのいろいろの背景があるわけでございます。その点につきまして政府の見通しが狂ったということは、これはもう大変遺憾にも思い、申しわけなく思っておるところでございます。
  353. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまの答弁じゃ私は満足しませんから。だから、どうしてこういう見誤りをやったかということを後で経企庁がはっきり精査をして、そして国会へ報告してくれということです。それでなけりゃこういう誤りを次から次へと犯しますから。
  354. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  355. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 速記を起こして。
  356. 井川博

    政府委員(井川博君) 先生が、在庫調整の時期を見誤った、こういう表現をとられたわけでございます。ただ、われわれといたしましては、在庫調整の時期がいつであるとたとえば見通しで述べたということはございません。しかし、その在庫調整が事実上十二月ごろ終わるのではないか、昨年の暮れごろ終わるのではないか、それが多少延びている。それが一−三月と思っていたのがさらに四−六月まで延びそうだ、これはいまや常識になっているわけです。  どうしてそういうことになったのかということになりますと、長官及び調査局長が申し上げたような理由があるわけでございますが、さらにわれわれの見通しの面でこれを申し上げますと、御案内のように、五十五年度の見通しにつきましては四・八%という成長率を当初見通しましたし、現段階におきましてもこの四・八%というのは大体実現できそうでございますが、中身が違ってきた。その中身の違いはというところで先生の御疑問が出てくるわけでございますが、当初の見通しでは最終消費支出すなわち個人消費、これが対前年比実質で三・七というふうに予定をしておったわけでございます。ところが、それがそういうふうにいかなかった。これは、河本大臣及び調査局長が申し上げましたように、物価がなかなか下がらないというふうなこともございまして個人消費が伸びない。結局は、この間出しました五十五年度の実績見通してはこれが二%に下がる。そうすると、実需が下がるものでございますから、要するに在庫というのは生産と実需との差の問題でございますから、そういうふうに実需が下がることによって調整が事実上長引く。  さらには、次に民間住宅の問題がございまして、当初の見通しでは実質で一・七%アップになるというふうに考えておりましたのが、今回の実績見通しではこれがマイナスになるというふうなことでございます。そういう需要がぐんと下がる、そうすると、予想以上に内需が下がりますと、生産も多少落としておりましたものの事実上そこに在庫というものができていって調整が後へ後へずれる、こういうことでございまして、基本的な原因は石油の問題、直接の原因は実需である個人消費、住宅等々民需がさえないということでございます。
  357. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まだよくわかりませんけれども、これをずっとやっていちゃ私も後の質問できませんけれども、恐らく私は在庫指数の誤りだろうと思います。在庫のあり方が違う、前より違っていた、それを経済企画庁がそういうところを十分に見なかった、こういうところに原因があるんだろう、こういうふうに思います。これは今後ひとつ私はまた個人的にも聞いていきたいと思います。  その次、ことしの経済成長率五・三%、実質でありますが、この内容はどうなっておりますか、主として内需、外需に分けまして。
  358. 井川博

    政府委員(井川博君) 五・三%は五十六年度のGNPの成長率の見通しでございます。このうち、国内民間需要の大宗をなします個人消費、民間最終消費支出という大変むずかしい表現を使っておりますが、これが四・九%に見ております。それから民間住宅を四・三%アップ、それから民間企業設備を七・三%アップということに見ておるわけでございます。  ただいま先生がおっしゃいました内需、外需ということで寄与度で申し上げますと、五・三%のうち四%は内需、特に民間需要で見ております。政府支出につきましては御承知のような財政事情でゼロ。それで外需は一・三%。寄与度で申しますと民間需要が四%、外需が一・三%というふうに見通しておるわけでございます。
  359. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 五十五年度の四・八%は、いまの寄与度で言うとどういうふうになりますか。
  360. 井川博

    政府委員(井川博君) 今年度の四・八%につきましては、先ほど申し上げましたように、当初見通しにおきまして四・八%という見通しを立てたわけでございますが、結果的に言いますと、現段階、五十五年度についてもGNPの見通しとしては四・八になるというふうな感覚を得ております。実は、本日の新聞にも出ておりますが、十−十二月のGNP統計が出まして、これが対前期〇・六というかっこうで出ております。そういたしますと、現在の一−三月が対前期〇・七実現いたしますと、大体四・八%になるということでございまして、今年度四・八%は確実であるということでございますが、ただ、中身につきましては、先ほど申し上げましたように、内需が落ちて外需に依存する姿というふうなかっこうになっておるわけでございます。
  361. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、ことしは五・三%の実質成長のうちの寄与度が民需が四%だ、こう言うんですが、その四%の内訳をもう少し寄与度で言ってください。
  362. 井川博

    政府委員(井川博君) 一番大きいのがやはり個人消費、民間最終消費支出でございまして、これが寄与度で申し上げまして二・五、それから民間企業設備投資、これが一・三、両方で四%のうち三・八を占めるということになっております。
  363. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その個人消費が二・五になるという根拠はどういうところですか。
  364. 井川博

    政府委員(井川博君) 最も大きい理由は、やはり物価の見通し五・五%ということに置いておるわけでございまして、物価が五%台という安定した姿をとりますと、当然のことながら実質の消費は伸びていくということでございます。かつまた、経済運営よろしきを得て、経済全般明るい感覚に持っていくということによりまして、消費性向も伸びていく。したがいまして、物価の落ちつきというのが最大の原因ということになるわけでございます。
  365. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、その意見は半分くらいにしか評価しません。もちろん、正常な状態であれば、物価が下がれば消費が伸びるということはわかります。しかし、大蔵大臣が大型消費税でおどかしたり、物品税をたくさん取ったり、そしてこれから企業倒産がふえようという心配、あるいは将来の老齢社会の心配、こういうものがあれば、そう簡単に、私は物価が少しばかり下がったって金使わないと思う。そういう意味で私は、余り消費は思ったほど伸びていかないだろう。むしろ、やはりそれよりも重視しなくちゃならないのは、民間の設備投資、これについて私はさらに重視をしなくちゃいけない、こういうふうに実は思っているわけでありますが、政府の民間設備投資の伸びというのは名目で幾らになりますか。実質で七・三だと思いますが、名目で幾らですか。
  366. 井川博

    政府委員(井川博君) 五十六年度の民間企業設備の名目の伸びは一〇・七でございまして、五十五年度の実績見通しが一〇・一、大体名目にいたしますと今年度と同じ程度、来年度についても伸びを示すということになっております。
  367. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 経済見通しによりますと、民間設備投資はことしは四十一兆八千億、こういう数字が出ておるわけでありますが、この四十一兆八千億を大企業と中小企業に分けますと、どういうことになりますか。
  368. 井川博

    政府委員(井川博君) われわれのGNPの見通しでございますので、きわめて厳密にはやっておりませんが、大まかに申し上げますと、約六割が中小企業及び個人企業、大企業はそのうち四割というシェアとお考えいただいて結構かと思います。
  369. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀の短観による設備投資の伸びというのは、大企業、中堅企業、中小企業でどういう見通しをしておりますか。これはどちらでお答えいただいても結構です。
  370. 井川博

    政府委員(井川博君) 詳しくはまた日銀の方からお聞き取りいただきたいと思いますが、手元に中小企業と主要企業、これは大企業でございますが、その分がございます。五十五年度につきましては、主要企業が二五%でございますが、中小企業については三・一%、しかし五十六年度につきましては、主要企業五・三%に対して中小企業がマイナス三〇%という数字になっておると思われます。
  371. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 開発銀行の資本金十億円以上の調査では幾らになってますか。
  372. 井川博

    政府委員(井川博君) 実は、調査機関によりまして先生御承知のように対象も違ってまいりますので、ここらあたりの数値が違ってまいります。開発銀行は大体大企業とお考えいただいてよろしいわけでございますが、五十六年につきましては九・九%の伸びという調査が二月調査で出ております。
  373. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私が調べた調査ではあと日経新聞、これが千三百社で八・七%の伸びだと、こういうことであります。そうしますと、日銀短観、これは主要企業が五・三、開銀が九・九、日経新聞が八・七、政府が一〇・七、この一〇・七は中小企業含めてであります。そうしますと、一〇・七の民間の設備投資の伸びというのはできますか。
  374. 井川博

    政府委員(井川博君) 実はこういう調査で私ども注意をいたさなくてはなりませんのは、調査時点によりまして先行きの見通しがいろいろ違ってまいります。たとえば五十五年度大変、先ほど申し述べましたような大きい設備投資の伸びを示したわけでございますが、一番最初の昨年のいまごろの調査でございますと、非常に低い数値が出ておるわけでございます。その後、そういうふうな計画が実施段階に近くなってまいりますと、それを上げていくということで、最終結果としては非常に高い伸びになる。特に主要企業とは違って中小企業、個人企業につきましてはそういう傾向があるわけでございます。しかし、これは今後の経済情勢によることでございまして、今後経済情勢が運営よろしきを得ましていい方向に向かっていくということでございましたら、当然五十五年度で実績見通しで考えております一〇%程度の伸びは十分期待できるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  375. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はこれは逆だと思うのです、まさに。政府の数字が出たときは、恐らくこれは決めた日は十二月の二十一日ごろでしょう。あとの調査は全部ことしの二月ですよ。日銀短観もことしの二月。悪くなっている。それが全体としてよくなるということは私はこれは信じられない。河本さんはこれは責任を持って、これは名目でありますが、一〇・七%、五十六年度に民間設備投資が伸びますか。約束してください。
  376. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 設備投資の調査というのは、景気の上昇期には、調査の回を追うてだんだんふえてくるんです。景気の下降期には調査するたびに減ってくる、こういうことでございまして、非常に調査時点で数字の違いが出てまいります。それから、いまお話のように、大企業それから中小企業合わせまして四十二兆弱の設備投資を想定をしておりますが、これにはやはりそれができるようないろんな客観的な条件というものを政府が整備していかなければならぬと思います。という意味は、いろんな経済政策を経済の実情に応じまして遅滞なくいろいろ進めていくということ、つまり経済の機動的な運営、金融の機動的な運営ということが必要だと思います。
  377. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま大変りっぱなことをおっしゃいまして、金融の機動的な運営とか経済の機動的な運営と、こういうふうにおっしゃっているんですが、全然機動的な運営なんかできちゃいないじゃないですか。そう思いませんか。全然できていませんよ。そういう意味で私はこの一〇・七%の名目の伸びというのは非常に疑問を持っております。特に、先ほどもお話がありましたように、この四十二兆弱の設備投資の六割は中小法人あるいは中小企業者がやるのが占めているわけでありますから、この中小企業者、中小法人が設備投資ができるような条件であれば、これはやるでしょう。一体、中小企業庁の長官に聞きますが、それだけの金がありますか、いま中小企業に。
  378. 児玉清隆

    政府委員(児玉清隆君) お答え申し上げます。  御存じのように、中小企業の自己資金での設備投資ということになりますと、非常に大企業と比べまして劣弱でございまして、借入金の割合が五八・三%ということでございます。大企業の方は一二・七%ということでございますので、やはり借入金の調達が円滑にいくということが前提になろうかと思います。
  379. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまその借入金の調達が順調にいってますか。
  380. 児玉清隆

    政府委員(児玉清隆君) お答え申し上げます。  金額の点につきましては、一応資金需要に対しまして受けて立つだけの枠が十分用意されております。  たとえて申しますと、この一−三の第四・四半期でございますが、これは政府三機関の融資枠で用意いたしておりますのは一兆二千三百億余でございまして、これは対前年度四四%増ということで、枠は十分であるというふうに考えております。
  381. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまおっしゃるのは、それは三公庫だけですね。中小企業は三公庫で全部金を借りておるわけじゃないんです。民間の金融機関から借りている方が多いのですよ。三公庫はごくわずかなんです。どうですか、その点、民間の金融機関全部を含めて中小企業が借り入れられるという条件は順調にいってますか。
  382. 児玉清隆

    政府委員(児玉清隆君) 最近の傾向を見てまいりますと、いわゆる全銀ベースの伸びが若干落ち込んでおります。逆に政府機関に対する借り入れ、これの比率の方が上がってきております。したがいまして、一般の民間金融機関に期待する分は相当厳しい環境にございます。それだけに特に政府三機関の金融による補完機能というものを重視いたしまして、そこでできるだけ借りやすいようにしていくということに心がけておる次第でございます。
  383. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 公定歩合を下げるとかどうとかいう議論がいまされてますが、もし公定歩合が新聞で言われているような〇・七五下がるとすれば、中小企業の設備投資は大幅にふえてきますか。
  384. 児玉清隆

    政府委員(児玉清隆君) これは新聞等で報ぜられておりますような水準で、まあ仮の話でございますが、そういった線で公定歩合の引き下げが実現しました場合にどうかという御質問でございますが、いまの末端金利から考えますと、過去三、四年と比較いたしまして非常に高水準にございまして、それをたとえば昭和五十四年の夏あるいはそれ以前というところまで戻すということになりますと、やはり川上の方で相当大幅に引き下げる必要がございます。
  385. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ少しばかり下げても私は中小企業が楽になる、こういうことは恐らくなかろうと思いますが、次へ進みたいと思いますが、日銀総裁、御苦労さまでございます。  最近の公定歩合に対するいろんな論議というのはたくさんあっちこっちでされているわけでありますけれども、私は、公定歩合政策というのは日本銀行総裁の専管事項であると、こういうふうに思っております。ところが、どうも最近は公定歩合を早く下げろとか何とかという自民党あるいは閣内の閣僚の勝手な発言、こういうものが非常にあると思うんです。こういうことがむしろ私は公定歩合の決定時期をおくらしたり、混乱したり、あるいは公定歩合、金利政策の中立性や、先ほど河本長官が言った機動性、こういうものが大いに失われている、こういうふうに私は判断しますが、総裁どうですか。
  386. 前川春雄

    参考人前川春雄君) お答え申し上げます。  公定歩合は日本銀行総裁の専管というお話でございましたが、正確に申しますと日本銀行政策委員会でございます。法律によって日本銀行に公定歩合の決定権を与えられておりまするので、十分に機動的にその状況に応じて公定歩合の操作をしていくべきものだと思います。とかくいろいろの論議が新聞紙上その他に行われるわけでございまするけれども、引き下げがあるであろうということが報ぜられますと、どうしても借り控えが起こるということが通例でございます。また金融政策、ことに公定歩合の問題は、ある意味で意外性があることがその効果が非常にあるということでございまして、余り早くから論議されることは私ども金融政策を預かる者といたしましては、時に不都合な場合があるということでございます。
  387. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理ね、いま財政政策というのは景気を引き上げるための機動性というのは全然ないわけです。もう機動的に運営されてもらわなくちゃならないのは、私は金融政策だと、こう思うんですがね。私はいま余り自民党及び閣僚がこれについて勝手なことを言い過ぎると思うんですがね。このために金融の機動性、あるいは公定歩合だって本当はもっと早く下げた方がよかったと私は思う。それがもうおくれてしまって、三月の初めがもう三月の中旬、下手すると二十日超えるかもしれないですよ。こういうようなことは厳に慎まなければ金融の中立性、機動性というのは私は保たれないと思うんですけれども、総理はどう考えますか。
  388. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま日銀総裁からもお話がございましたように、この公定歩合の問題は日銀の政策委員会にあるわけでございまして、自民党の三役であるとかそういうところに何らの権限がないことは事実でございます。ただ国民は、新聞にそういうことが報道されるといかにもそれが何らかの力を持っているようなぐあいに錯覚を起こす、これがいろいろ混乱を起こすわけでございまして、私はそういう意味で厳にそういうことのないように、経済閣僚会議に三役も出席いたしますので、そういう機会にこのことを強く注意をするようにお願いをしておるわけでございます。今後も厳重に注意いたします。
  389. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは大蔵大臣に聞いた方がいいと思うんですけれども、公定歩合が下がった方がいいという、国民一般意見は早く下げてほしい、あるいはこの前私ども名古屋の公聴会に行ったときにも、中小企業からは公定歩合を早く下げてほしいと、こういう要請を受けました。しかし、私どもは下げるわけにはいきませんけれども、とにかく一般的にはそういう意見が非常に強い。ただあなたとか総理とか自民党の政調会長とか、こういう人が言うと大変問題があると思うんですけれども、一般的には私、そういうふうに思っております。私が言う分なら影響ございませんから言いますけれども、長期金利が下がらないということが、公定歩合の発動の時期というものに一種の邪魔になっている、阻害要因になっているというふうに私は思うのですが、私の考えは間違いですか。
  390. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 一般論としてはそういうことが言えます。
  391. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀総裁、私の意見は間違いですか。
  392. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 公定歩合を下げますことは金利水準全体を下げることが目的でございまするので、そういう意味におきまして、金融機関の貸出金利であるとかあるいは長期金利、こういうものが下がるということでございませんと公定歩合を下げた意味がない。そういう意味で全体の金利水準が下がるかどうかということを判断することが大事であろうというふうに思います。ただ長期金利と短期金利というのは非常に連関しております。短期金利が下がりまするとそれが影響して長期金利がそれによって下がってくるという場合もございます。そういう場合の方がむしろ多いであろうというふうに思いまするので、長期金利が初めから下がらないといろいろなことが、金利政策全体が発動できないかということになりますと、必ずしも——短期金利が下がることによって長期金利が下がるという場合もあるというふうに思います。
  393. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総裁、この八月あるいは十一月ですか、二回に分けて公定歩合を下げましたけれども、ここでいつも問題になってくるのは、国債の金利のことが解決できないから公定歩合を下げることができないということが大体大きな問題ですね。今度のときには一つは郵政省の金利がそれにならうかならわないかということが一つあるんですけれども、国債を中心とする長期金利が下がらないというのは、大蔵大臣、どこにあるんですか、原因は。
  394. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) やっぱり国債の出過ぎでしょうね、これは。余り出過ぎちゃって、要するに暴落すれば利回りが高くなるという話になりますから、私はやはり国債が少し多過ぎるというように思っております。
  395. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 国債が多過ぎるのが一つ、これは一番大きい原因です。もう一つは、どうも大蔵省が国債の金利を一定の金利にしようと人為的に金利を決めている、こういうことがむしろ大きな原因じゃないですか。最近はなかなかそれもできないんですが、またそれに抵抗している。本当は金利の自由化によって国債が発行できなくなるというのが一番いいんですよ。国債を発行しなくちゃならないから金利を操作する、これが長期金利をいつまでも高い水準に置いておく一番大きい原因じゃないですか。そういう意味で、公定歩合を下げることができないというのは、犯人は大蔵省、こういうことになるんじゃないですか。
  396. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そういうようなユニークな見方もあるかもしれません。
  397. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは郵政省はどうなんですか、今度の金利の問題では。政府日銀筋と金利の引き下げについては話がついたんですか。まだ全然話は出ないんですか。どうなんですか。
  398. 山内一郎

    国務大臣(山内一郎君) 今回公定歩合が下がるであろうというのは私聞いておりますけれども、正式に下がる場合には郵便貯金の金利をどうしてもらいたい、こういうような要請はいまのところ全然ございません。
  399. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、恐らくその辺の調整というものは今度の公定歩合の引き下げには全然関係がありませんか。あるいは大変関係がありますか、日銀総裁。
  400. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 先ほども申し上げましたように、公定歩合を下げても貸出金利あるいは長期金利がその結果下がるということでございませんと経済に対する影響はないということでございまするので、そういう金利を下げてまいりまするためには金融機関のコストであるとかあるいは国債その他の長期債の利回りが下がるということでございませんと実効がないわけでございまするので、そういうことが期待できるということでございませんと貸出金利その他の金利も下がらないということになろうと思います。
  401. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは大蔵大臣、問題がいろいろあると思うのです。銀行の収益問題もあるでしょう。資金がどっちへ集まるということもあるでしょう。これはしかし、公定歩合を下げても長期金利が下がらなければ意味がないんですよ。そういうことになりますと、先ほどの民間の設備投資の特に中小企業部分というのは、幾ら公定歩合が下がっても金を借りたって高い金利になっちゃうわけです。大蔵大臣、その意味では——大変私はユニークな見方をしているとあなたはさっきある意味で私を批判したんですけれども、その辺のあなたの責任というのは私はきわめて重大だと思うんですが、責任を感じませんか。
  402. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 責任を感じておりますから、財政再建をして、ともかく国債を減らすように努力をしていろいろやっておるわけでございます。
  403. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これはまた別の機会にやるんですが、大蔵大臣それじゃ話が飛び過ぎますよ、私の質問に対して。  日銀総裁にお伺いしたいんですが、最近マネーサプライの指数というのが非常に下がってきておりますね。最近では七・三くらいまで下がっているように思うんですけれども、一−三月の銀行の窓口指導枠というのは確かに二一・六%、今度も何か五〇%ぐらいふやすとかふやさないとかというお話があるわけでありますけれども、そういうふうに指導枠を量的にはふやしているはずなんですけれども、マネーサプライ、M2プラスCD、どうしてこれが下がっていくんですか。
  404. 前川春雄

    参考人前川春雄君) マネーサプライはお話しのように一月七・四というところまで下がってまいりました。一つは、マネーサプライが余りふえないような金融政策をとってきたからでございます。その結果こういうふうに——これは第一次のオイルショックのときにマネーサプライがふえ過ぎたということがございまするので、今回は前回の例の教訓を生かしましてマネーサプライをふやさないということを金融政策の眼目としてまいったわけでございます。その結果、マネーサプライがこういうふうに下がってきたわけでございますが、私どもいまの水準がそれでは下がり過ぎであるかどうかということについては、必ずしもそうではないのではないかというふうに思っております。適正な水準というのを何ではかるかというのはいろいろな考え方がございます。全体のGNPの伸びが、昨日発表になりましたのを見ましても、五十五年中、暦年で伸びが七・五でございましょうか、名目で。でございますから、マネーサプライ七・四というのはそれほど低い数字ではないというふうに思います。  それから、昨年の夏ごろ金利選好と申しますか、高利の利回りの金融資産を選ぶ、いわゆるシフトと言いますが、その金融機関の預金からその他の郵便貯金であるとかあるいはその他の金融資産、金融債等にシフトした部分がございます。その結果、M2プラスCDの方がやや大きく落ちているということがございます。したがいまして、いわゆるM3、そういうものを入れたもので見ますると、それほど落ちていないという現象はあるわけでございます。いずれにいたしましても、マネーサプライそのものは経済活動の反映でございまするので、実際のいまの景気の動向等がこれに影響しておるというふうに思います。  もう一つ、マネーサプライの動きは余り短期の期間で見ないでやはり長期の流れとして見ることが必要であろうというふうに思っておりまするので、私どもこのマネーサプライの動き、今後の動向については十分注意して見てまいりたいというふうに考えております。
  405. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 マネーサプライも経済の通常の運営であるならば私はそれでいいと思うのですけれども、しかし去年の一−三月、これはものすごい在庫を抱えたわけですね。金額にしたら十一兆ぐらいの在庫に恐らくなっていたんだろうと思う。その後もいろいろ減産あるいは在庫投資、こういうことで後ろ向きの金が非常に要ったということが普通の状況とは私は違うと思う。正常の状況ならば総裁がおっしゃったように、名目成長率に合わせてマネーサプライをやっていけばそれでいいわけでありますけれども、こういう異常なときには、日銀が締め過ぎていた、明らかに締め過ぎていた。もし締め過ぎていなければ今度の窓口の指導枠を五〇%ふやす——これはふやすんですかどうですか、後でお答えいただきたいのですが、新聞によると五〇%ふやすというんですが、ふやす必要はない。決算資金とか、あるいは納税資金とか、いろいろあるようでありますが、それにしてもそんなに伸ばす必要はない。こういうことを考えてみますと、やはりマネーサプライが少な過ぎた、締め過ぎた。これが恐らく在庫調整を長引かした原因でもある、あるいはそれが今日の景気水準というものを低くしている原因がある。そういう意味では大蔵省と同罪だと、こういうふうに私は思うわけですが、どうですか。
  406. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私ども金融政策は昨年の夏八月以来金融緩和の方向にはっきり転換しておるわけです。公定歩合は昨年の八月と十一月と二回にわたって引き下げました。また預金準備率につきましても十一月に引き下げたわけでございます。  また窓口規制、いまお話しの窓口規制につきましては、昨年の十−十二の枠から緩和をしておるわけでございます。ことしの一−三月につきましては、中小専門金融機関の窓口規制の枠は実質的にはもう撤廃したも同様、つまりそれぞれの金融機関の自主的な枠をそのままお認めしているわけでございます。  ことしの四−六につきましてどうするかというのは現在まだ決めておりません。新聞等にいろいろ憶測の記事が出ておりまするけれども、まだ決めておりません。四〇とか五〇とかいう数字も前年の四−六の増加額に対する増加額でございまするので、あの数字がとかく誤解されるわけでございまするけれども、いずれにいたしましても私どものいまの考え方は、昨年の夏以来の金融政策の緩和政策のその線に沿ったものでございます。
  407. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣、いま政府の電電公社とか国鉄公社だとか、あるいは鉄建公団だとか、そういうような政府関係機関、そういうのが本来ならば電電公社にいたしましても、それから国鉄にしても政保債を出せることができる団体ですが、こういうところが政保債を出すよりも都銀から長期借入金を相当借り入れている。わかりますか、その数字。
  408. 渡辺喜一

    政府委員渡辺喜一君) 財投の対象機関が、現在民間金融機関からの借り入れを行っておることは事実でございます。  ちなみに数字を申し上げますと、五十五年度の予定が九千五百五十一億円、五十六年度が九千六百三十二億円という予定になっております。  なお、このほか政府保証債の発行額につきましては、五十五年度一兆五千八百億円、五十六年度一兆六千億円を予定いたしておるわけでございます。
  409. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 企業の金融機関からの長期借入金の動向は最近どうなっておりますか。
  410. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 御質問の御趣旨は、企業が金融機関から借り入れている借入金の伸び……
  411. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 特に長期借入金。
  412. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 都銀長期——むしろ、ただいま持っておりますのは日銀短観の予測でございますけれども、十二月末でございますと、全産業で申しますと、残高で申しまして前年同期比で昨年の十二月末で六・一%の増、それから五十六年三月末の予測で申しますと、前年同期比でございますが、七・五%の伸びということになっております。
  413. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はいろいろな調査の資料をここに持っておりますけれども、企業の希望額に対して借入額の実績というのはここへ来て落ちております。非常に落ちております。ということは、設備投資をやるにしても非常にやりにくい状況がある。あるいは金を借りにくい状況がある。  事業債の発行状況はどうなっておりますか。
  414. 渡辺喜一

    政府委員渡辺喜一君) 民間の事業債につきましては、担当の者がありませんが、私手元にあります資料で申し上げたいと思います。  五十五年度の上期で四千九百七十億円、それから五十四年度の上期が五千六百八十六億、下期が七千二百九十五億ということになっております。
  415. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 電力債は別でありますけれども、私の調査で見ましても、事業債の発行、これは「公社債月報」、これからとりますと一年前と比べましてかなり落ちている。金がやっぱりこれ、事業債の発行がむずかしくなったということは言えませんか。
  416. 渡辺喜一

    政府委員渡辺喜一君) 先ほど申し上げましたように、五十五年度の上期は前年度の下期に比べてかなり大きく落ち込んでおるわけでございます。それからその後の五十五年度の各月別を見ましても、下期以降も依然として低迷した状態が続いておるということでございます。
  417. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 銀行の収益状況はどんなふうになっておりますか。最近何か総資金の利ざやが非常に少なくなってきている。場合によれば逆ざやも出るような銀行もあり、また逆ざやになる可能性もあると、こういうような報道もあるんですけれども、なかなか預金金利は下がらない、国債は買わなくちゃならない。まあこういうようなことで銀行の収益状況というのは一体どんなふうな状況になっておりますか。
  418. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) お答え申し上げます。  全般的に申し上げまして銀行の収益状況の見通しは相当悪化するということになってございます。一月末の時点でございますけれども、五十五年下期、三月期の経常利益は都市銀行で申しますと、対前期比二四%減、地方銀行で三五%、相互銀行で三三%の減益が見込まれております。
  419. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣ね、銀行はもうからないということになると、もうけるためにはどういうことをしますか。小口融資は経費がかかるからなるべくやめるでしょう。なるべく大口の確かなところにだけ金を貸して、危なっかしいところには、これは少し危ない、手がかかりそうだというところには金を貸さないようになりませんか。
  420. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そういう心理も働くと推測されます。
  421. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと事業債は、もちろん小さなところは事業債はなかなか出せない。銀行の借り入れも希望に対しては貸してくれない。まさに小さなところは危ないから、もうこれはきのうあたりからずっと中小企業の話がありましたけれども、中小企業には金は行かなくなるのは当然じゃないですか。そうすれば、幾ら河本さんが四十一兆八千億の設備投資を振り回したって、銀行は金を貸してくれない、日本銀行は金を締めている、物は売れない、住宅は建てれないということになったら、この景気は一体どうなるんですか。どうするんですか、それでは。総理どうするんですか。こういう状態で、賃金は上げてくれない、減税はしてくれない。
  422. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) いろいろ政府考えて、やることはやらなければならないと思ってます。
  423. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 前川参考人には、御多忙中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。御退席くださって結構でございます。
  424. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 竹田さん御指摘のように景況は必ずしも楽観を許さない。特に中小企業の分野につきましては私どもも大変心配をしております。したがいまして、あらゆる角度からこの景気対策を検討をいま進めておりまして、近い機会に総合経済対策を決定をし、これを推進いたしたいと、こう思いますが、その際におきまする重点は何といっても中小企業対策、これに重点を置いてやってまいりたいと、こう思っております。
  425. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理ね、その中小企業対策って何するんですか。金は貸してくれない、高い金利だ、金の量は少ない、消費は少ない、物は売れない、大きな企業はしぼり取る。何を中小企業対策するんですか。
  426. 田中六助

    国務大臣田中六助君) いまの景気状態をまず前提といたしますけれども、日本だけが不況の波にあるわけではなくて、全世界が不況の波にあるということを一応前提にしているわけでございます。いまこれをどうするかということでございますが、いま前提を言ったわけでございます。問題は経済の有効需要、つまりエフェクティブデマンドというのがないわけです。それは有効需要ということですが、需要と供給によって価格が決まることは皆さんもおわかりでございましょうが、そういう有効需要か刺激されてない。なぜ刺激されてないかといいますと、スペキュレーション、つまり将来に対する期待感をどなたも持ってないということ。たとえば企業家は投資、あるいは、設備投資もありましょうし、また民衆の人たちも将来に対する希望というものがない。したがって、消費に走らずに貯蓄に走っているわけですね。したがって、それは今度は政策になるわけです、そういう前提があるならば、どこに欠陥があるかということを当然政府考えなければいけないことです。したがって、中小企業者に対しましても、たとえば五十五年度の計画を見ますと、設備投資計画でございますけれども、製造業で一・四%マイナスです。それからサービス業で一・五%のマイナスです。それからもう一つは、商業関係がまた大きくて一一・六マイナスです。これはすごく大きいことでございまして、大企業に比べると非常に大きいんですが、これをどうするかということ。なぜならば、全部の中小企業の借金といいますか、投資意欲があってもほとんどが、五八・三%ほどこれは外の設備投資に要る金です。したがって、五八%もあるんですから、一番手っ取り早いのは金利の問題だと思うんです。したがつて、この金利をどうするかということに焦点を合わせれば、いまバンクレートがどうだとか言っているのは、ツーレート——遅過ぎるんです。口の端に上ったときにはそれをやっとかなければいけない。それが悪い方に悪循環をして、それでこういう結果になっておるんですから、私どもは基本概念をまず見つけて、その足らないところ、つまり、中小企業に対してはいま申し上げましたようなことをやる。それから大企業にしてはどうするかと、そういうようなことを一生懸命考えていかなければならないという現状だと思います。
  427. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そのくらいなら私でもその席で言えます。ただ、国民とすれば政府が一体どうしてくれるんだ、どういう方向出してくれるんだ、これを待っているわけですよ。私ははっきり公定歩合を引き下げる政策も、第二次の総合経済政策を出すのがおくれ過ぎた、非常におくれ過ぎた。これが実際に中小企業のところまで及んでいくのは恐らく四カ月から五ヵ月かかるでしょう。それが実態でしょう。いまそれで大騒ぎをしてこれから何か政策をつくるらしいです。これをもしそのまますっといくと、これは恐らく私はまたインフレを導いてくる原因になるだろうと思う。すべてが遅過ぎる、その遅過ぎる一番大きい原因は公定歩合の問題であろうと私は思う。その公定歩合を遅くしているのは大蔵省、国債、こういうふうに言って私は間違いない、大ざっぱに言って間違いない、こういうふうに思うわけであります。  時間がなくなってまいりましたので、若干、まだ決まっておりませんけれども、中小企業の政策だけで、あれですか、第二次経済政策というのは終わりですか、どういうことをやるんですか。この際、国民は待っているわけですからね、ひとつどういうことをやるのか。私の方はこれやりますというのを少し述べてください。
  428. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 目下関係各省の間で相談をいたしておりますので、まだ最終的に決まっておりませんが、やはり金融政策をどうするかということが一つの大きな課題であろう、こう思っております。  それから公共事業の取り扱い、五十六年度の公共事業の取り扱いを一体どうするかということが第二点だと思うんです。  それから第三点は、いま御指摘の中小企業の問題でございますが、中小企業の仕事をどうふやすか。それから、中小企業が金を借りやすくするためにはどうすればいいかと、こういう二点を中心に中小企業対策というものをいま相談をしておるところでございます。  そのほかにも数項目ございますが、数日中には案がまとまると考えております。
  429. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣、公共事業という話がいま出ましたのですが、五十五年から五十六年に繰り越すところの公共事業費というのは総体で幾らありますか。
  430. 松下康雄

    政府委員(松下康雄君) 五十五年度の公共事業の執行につきましては、上期を抑制的に持ってまいりまして九月の末では契約実績が五九・六%でございましたが、これは前年に比べまして七・一%下回っていたわけでございます。ただ、第三・四半期から後、公共事業の契約につきましては抑制方針を解除いたしましたので、その後公共事業の契約率は非常に上がってまいりまして、この一月末の累計では八四・三%と前年の実績をやや上回るところまでまいっております。  そこで、前年には公共事業の未契約繰り越しは全体の五・九%に当たります八千三百十三億円ございましたけれども、一月末ですでにこの率を上回っておりますので、ここまでの未契約繰り越しは出ないのではないか。ただ、まだそれがどの程度になるだろうかというところは私どもも推計をいたしかねております。
  431. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういうところに私は後の危険性があると思うんですね。一部では公共事業の前倒しを今度はうんとやろうという意見があるわけです。繰越分が相当あるんですね。こういう点なんかも慎重にやっていかないと今度は建設関係資材の高騰という問題がすぐ浮き上がってくるということであります。  また、田中通産大臣ね、あなた世界が不況だから仕方がない、こう言っているんですが、きのうもうちの方の大木委員指摘しているんですが、こういう中で円高差益でもうけているの、うんといるのですよ、こういうのはどうするのですか。石油会社は円高差益でこれも大変もうけておりますけれども、さらにここで石油の値上げをやろうなどと永山石連会長言っているわけですわね。こういうのは一体どうするんですか。みんながえらい苦労をしているのに大変なもうけですよ、電力会社なんというのは。これは政府が認めたんでしょう、五〇・何%の値上げというのを。私どもは反対したんですよ、三〇%でよろしいと言ったんですよ。これが大変なもうけでしょう、いま。東京電力だけだって三千億ぐらいのもうけでしょう。こういうものをほうっておいて、世界が不況だからみんな苦しみなさい、こんな議論は私はないと思うのですが、どうですか。
  432. 田中六助

    国務大臣田中六助君) お答え申し上げます。  世界が不況だからということじゃなくて、いま国内の経済問題を考える場合に、私どもちょうど心臓のようなもので大静脈と大動脈二つあって、それがいろいろ医学的にはなるんですけれども、それと同じように国内の経済問題と対外的な経済問題を切り離すことができないような時代になっているわけでございますね。したがって、私が言っておるのは世界が不況だからと言っているんじゃなくて、それだけにかぶせているわけじゃないんです。あらゆるものがつながっておるということを言いたかったわけでございます。  それから電力会社、それからガス会社、それからもう一つ石油会社——石油会社三十五社ぐらいございますが、確かに円高でもうけております。これは上期の計算によりますと、約三千五百億円ぐらいでございます。したがって、これをどういうふうに還元したらいいかということは当然問題でございますけれども、問題の中に問題がもう一つあるのは、三十五社のうち半分は民族系の会社でございます。そうすると油をどうしても民族系と外国資本との関係の会社ではかなり高く民族系の方が買わされているわけです。したがって、むしろ詳細に調べるとわかると思いますけれども、約半分の民族系の石油会社はだんだんむしろ赤字になっているのです。これをどうするかという問題がございます。  それから九電力でございますが、九電力の中間決算、つまり上期の決算状態によりますと、約五百億の黒字、円高がございます。これはちょうど御承知のように二百四十二円で計算しておりますので、電力料金のときにですね。それから三大ガス会社は名古屋と大阪と東京でございますが、これは約七十億の円高差益があります。それで直ちにそれならば電力料金、ガス料金にシフト、何か方法を講じたらどうか、あるいは一般の人に返したらどうかという当然そういう考えは浮かびます。しかし、私どもはやはり不透明な状態が先ほども申しましたように世界にもあります。たとえばいつOPECの会議がどういうふうに値上げをするかわかりませんし、国内の状態につきましても、やっぱり在庫調整が非常に伸びているのは、先ほどから申しますように、いろんな大事なところの欠陥がございます。そういうふうに国内、対外的にも両方とも不透明な状態がございますので、今度は円高じゃなくて円が低くなった損失というものが出るかもわかりません、フロートですから。したがって、一々そういうときに電力料金を上げたり、ガス料金を上げたりとか、今度は違った方向に行くからこれを下げるというようなある程度せつな的な料金の改定をするよりも、しばらくいまの改定料金でずっと長くもたせることができるならば、しかもそれが安定しますから、長くもたせるということは。そういうような方向をとった方がいいんじゃないかというふうに私どもは解釈しております。それからまた、その円高差益でもうけた金はやはり国民の前にさらけ出す方がいいということは当然言えます。したがって、それらにつきましては、何らかの方法で皆さんがわかるように、もうけたときはもうけたときでちゃんとわかるように、損をしたときは損をしたようにわかるような方法、これは私が通産大臣になる前から代々考えておるようなことでございますし、私どもはできるだけオープンに明朗にするためにも何かそういう方法をとったらいいんじゃないかというふうに考えております。
  433. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 もう時間がありませんからここで終わりまして、また次の機会にやりたいと思いますが、鈴木首相ね、私は事態は大変だと思うんですよ、経済的には。あなたは親方日の丸の部類ですから、そんなに心配しなくてもいいんでしょうけれども、本当に中小企業者のいまの状況というのは非常に大変だと思うのです。ここであなたがびしっとしないと、私は政策はどんどんどんどんおくれていくと思うのです。それで一番困るのは中小企業、それからそういうところに働いている労働者だと思うのです。その辺についてあなたの決意をちょっと聞いておきたいのです。
  434. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御指摘のように、いま経済の動きにいたしましても、あるいは物価の動向にいたしましても、非常に微妙だといいますか、非常に流動的な状況に相なっております。先ほど来タイミングを逸しないようにやれと、こういう御指摘、要約するとそこにあるようでございますが、政府におきましても、御指摘のような御注意もございますから、十分そういう点に配慮しながら機動的な措置を講じてまいりたいと考えております。
  435. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 園田厚生大臣にこの前補正予算のときに、所沢にあるところの点字印刷機、発泡インクの印刷機、あれを中央に移してくれるというようなお話があったんですが、これは具体的に決まったのか、あるいは適当な場所をさらに関係者で相談をしてそういう場所に移していいのかどうなのか、その辺についてお話を伺いたいと思います。
  436. 園田直

    国務大臣園田直君) 二月に御発言がありましていろいろ御指導いただきました。私どもでは早速まず担当窓口を社会局の更生課に決めまして対応を急いでおります。そこで場所として適当かどうかわかりませんが、まず点字図書館の高田馬場に目をつけていろいろやったわけでありますが、不適当であります。御承知のとおり、この機械は五十平方メートルの場所を要し、重量が一・五トン、そうすると、既設の建物を使うことは無理かと存じまして、東京都と協議をいたしましてこれの設置する場所等をいま折衝さしております。
  437. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私終わりますけれども、建設関係の方この次にやりますから、ひとつきょうは御容赦をいただきたいと思います。  以上で終わります。(拍手)
  438. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 以上で竹田四郎君の総括質疑は終了いたしました。  本日の質疑はこの程度にとどめます。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時十九分散会