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1981-07-14 第94回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年七月十四日(火曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         井上 吉夫君     理 事                 北  修二君                 坂元 親男君                 鈴木 正一君                 川村 清一君     委 員                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 下条進一郎君                 鈴木 省吾君                 田原 武雄君                 高木 正明君                 初村滝一郎君                 宮田  輝君                 村沢  牧君                 鶴岡  洋君                 中野 鉄造君                 下田 京子君                 田渕 哲也君    国務大臣        農林水産大臣   亀岡 高夫君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        農林水産政務次        官        野呂田芳成君        農林水産大臣官        房審議官     矢崎 市朗君        農林水産大臣官        房審議官     高畑 三夫君        農林水産大臣官        房企画室長    野明 宏至君        農林水産省経済        局統計情報部長  関根 秋男君        農林水産省構造        改善局長     杉山 克己君        農林水産省農蚕        園芸局長     二瓶  博君        食糧庁次長    石川  弘君        気象庁予報部長        期予報課長    菊池 幸雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和五十六年産生産者米価に関する件)     —————————————
  2. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産政策に関する調査のうち、昭和五十六年産生産者米価に関する件を議題といたします。  まず、政府から説明を聴取いたします。石川食糧庁次長
  3. 石川弘

    説明員石川弘君) 諮問案につきまして御説明をさせていただきます。「諮問」と「諮問についての説明」を朗読しました後、試算について御説明をさせていただきます。  諮 問  昭和五十六年産米穀政府買価格について、米穀需給均衡を図るための対策が行われている需給事情に即応して生産費及び所得を考慮して決定することにつき、米価審議会の意見を求める。  昭和五十六年七月十三日  農林水産大臣 亀岡高夫  諮問についての説明  米穀政府買価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産の確保を図ることを旨として定めることになっており、その算定については、昭和三十五年以降生産費及び所得補償方式により行ってきたところであります。  米穀政府買価格につきましては、昭和五十三年産以降その水準を据え置く等近年の米穀需給事情を考慮した決定を行ってきたところであります。また、一方で水田利用再編対策及び米消費拡大対策中心とする各種施策を通じて米需給均衡を回復するための努力が続けられております。  しかしながら、最近の米需給実情は、昨年の冷害等の影響で同年産米が大幅な減産となりましたが、前年産米持越量が十分ありましたので、これを活用することにより全体としての需給につきましては特段の支障は生じておらず、また、基調としては、米の生産力が高い水準にある一方で米消費の減退がなお引き続いているため、依然として過剰傾向を脱するに至っておりません。このため、本年度から第二期に入る水田利用再編対策におきましては、昨年度に引き続き転作等目標面積を大幅に拡大せざるを得なかったのであります。また、米の管理に係わる財政運営も、国家財政が深刻な状況にある中で、極めて困難な局面に直面しております。  今後の米の管理におきましては、以上のような事情に対処し、米需給均衡の回復に一層努めるとともに、各般の面にわたり合理化努力を強めていく必要があるものと考えられます。  本年産米穀政府買価格につきましては、以上の事情にかんがみ、現下の米穀需給事情に即応し、生産費及び所得補償方式により算定することとしてはどうかということであります。  以下算定内容について御説明をいたします。  まず、一ページにございます算式は、従来同様の算式でございまして、この分母当たりますのがことしの米を決定いたします前三年平均の十アール当たり反収でございます。いわば五十三年、五十四年、五十五年の反収がこの分母でございます。その分子にありますものはこの五十三、五十四、五十五の十アール当たり評価がえ生産費でございます。これに六十キロを掛けましたものが求める価格になるわけでございます。  第二ページをめくっていただきまして、そういう計算方式によって算定をいたすわけでございますが、算定の1.求める価格というのは、後ほど申し上げます算定の結果としまして一万七千二百四十九円と出るわけでございます。以下、基準価格とか、あるいはウルチ軟質類一等裸価格というものはこれをもとにして算定するわけでございますが、まず、1.の求める価格の出し方につきまして、四ページ以降の算定要領によって御説明をいたします。  まず、四ページの十アール当たり平均生産費算定の出し方でございますが、ここにございますように、五十二年、五十四年、五十五年の各年の平均生産費を出すわけでございますが、これは、御承知のように、ここ数年いわゆる必要量生産費方式というものをとっておりまして、この平均の仕方といたしましてこの上から四行目あたりに書いてございますが、米販売農家は、米生産費調査の各年産米の米の販売農家を六十キログラム当たり生産費高低順に並べ、生産費の低いものからの累積販売量が、各年産米の総販売数量の、五十三年にあっては八六、五十四年にあっては九〇、五十五年にあっては一〇〇になるところまでの販売農家をとったということを書いてあります。これは五十三年で申しますと、ことしの予約限度数量が七百六十万トンでございますが、五十三年に流通いたしました米の総量が八百八十六万トンくらいでございますので、これを割りました数字が八六、要するに八百八十六分の七百六十という数字がこの八六でございます。同様に五十四年産米につきましては、五十四年産米が八百四十五万九千トンございましたので、これで七百六十を割った数字がこの九〇、八百四十五万九千トン分の七百六十でございますが、これが九〇という数字でございます。五十五年は御承知のように冷害で、この収穫して流通しました総量が六百五十七万九千トンでございますから、これで七百六十を割るということは一〇〇を超えるということでございます。一〇〇を超えるということは調査対象農家のすべてをサンプルとして使う、要するに、一俵以上販売農家調査農家でございますから、一俵以上売っているという販売農家、そのすべてをサンプルとして使って生産費平均して出すということでございます。  以上のような姿でまずその平均生産費を出すということが基本でございます。その場合に、御承知のように、評価がえをいたしますが、その評価がえの仕方につきまして(1)以降で書いてございます。  御承知のように、家族労働につきましては、いわば現に働いていらっしゃる労働の時間は、これは調査で出てくるわけでございますが、これをどのような賃金水準評価がえをするかということが問題でございまして、御承知のように、都市均衡労賃によって評価がえをするというのが従来のルールでございます。これをどのような形で評価がえをするかということは、過去におきましても米の需給事情その他によりましていろいろ曲折があったわけでございますが、先ほども述べました理由の中で述べましたように、現状は、実は大変厳しい需給事情かと思います。もちろんこれは単年度におきます冷害等要素にしました単年度需給というようなこともあろうかと思いますが、米をつくり出します力と申しますか、生産の力と需要との間ということになりますと、やはりどれくらいの強さの生産調整をして需給均衡させているかということが問題でございます。御承知のように、かつて第一次過剰と言われました昭和四十六年ないし七年におきましては、生産調整数量は、四十六年で申しますと二百三十万トン、四十七年で申しますと二百十五万トンでございましたが、現在の第二次におきます生産調整数量は三百二十万トンでございまして、ここの規模を大変大きく上回っておりまして、それに要する費用も、四十六、七年は大体二千億でございましたが、現在の生産調整に伴う財政負担は三千億を超えているというような実情もございます。このようなことから私どもは、やはり需給状況としてはかっての第一次過剰期に比べてもなお非常に問題のある需給事情ではなかろうかということを考えておりまして、当時の考え方と申しますのは、この都市均衡労賃算定いたします場合に、単純に労働者の数での平均ということではございませんで、これに米の販売数量比率というものを加味をしました評価の仕方をいたしております。この考え方によりまして、いわば米の生産されます比重を加味した全国賃金平均の仕方をしたというのが四十六年ないし四十七年にとられた方式でございます。今回はそういう意味で、まああるいはそれ以上の条件ではございますが、そういうものを織り込みました米販売数量ウエートによる賃金算出方法をとりました結果、ここにございますように、直接労働評価でございます男女込みにつきましては、一時間当たり九百四十八円八十九銭、間接労働評価でございます男子の評価につきましては、一時間当たり千二百二十二円五十二銭という数字が出てきているわけでございます。  五ページの上に書きましたのは、その評価の仕方についての諸手続でございますが、御承知のように、都道府県別賃金のとり方につきましては、全国数字とは異なりまして、三十人以上規模全国平均賃金の出し方しか数字がございませんので、これを五人以上千人未満に修正する手法を書いてあるわけでございまして、それは、一つ規模修正でございますし、一つは三十人以上、都道府県別賃金集計につきましては期間が現在の近時点計算方法がございませんので、ここに書いてあります四月ないし三月という算定を最近時点の六月ないし五月への期間修正をしたということでございまして、これはテクニカルな問題でございます。  それから、その次に、その現物給与に当たるものを加えることと通勤手当に当たるものを引くという手法は従来と全く異なる方法をとってはおりません。  その次の六ページでございますが、物財雇用労働費につきましては、従来とりました手法を全く同様にとっておりまして、五十三年、五十四年、五十五年の各年の生産費調査によりましてとりました数字に、この下に書いてございます最近時点、五十六年の一月ないし五月の平均まで修正をいたします変化率、ここに書いてございます五十三年産米につきましては一一六・五九と、五十四年産米につきましては一一六・〇五、それから五十五年産米については一〇六・六七という変化率を掛けまして数字を求めているわけでございます。これにつきましては、従来と全く同様の手法をとっております。  また、副産物の価格につきましては、ここにございますように、わらあるいはくず米の価格変化によりまして従来どおり手法修正をいたしまして計算をいたしております。これは減額になる要素でございます。  それから、その次の七ページの上の資本利子でございますが、資本利子につきまして、まず現実に借り入れております借入金につきましては、これは五十三年産米に行いました米の生産費補完調査もとにいたしまして、その資金別にその後の金利水準の変動をそのままあらわしておるわけでございまして、前年産米におきます借入金金利が七・四三でございますが、その後の金利移動が相当ございまして、いわゆる借入金については六・二二という数字を使っております。  もう一つ比率としては大きい自己資金でございますが、自己資金は、御承知のように、現実に支払われるものではなくて、家族労働費あるいは後ほど申します自作地地代と同様に結果的には農家所得になる性質のものでございます。これをどのような数字を使うかということにつきましては、従来もいろいろな方法がございましたが、今回私どもがとりましたのは、一つは昨年の金利水準、これはほぼ定期の金利水準というような考え方に近いわけでございますが、五・三五という数字がございました。最近におけるいろんな需給事情等を考えますと、自己資金評価をすべて定期的な金利で見るということについてはいろいろ論議がございます。たとえば今年の乳価の算定におきましては、この自己資本金利見方を御承知のように農協普通預金金利であります二・五%に評価したという事実等もございまして、この間一挙にその金利見方について大きな変革をすることもいかがかということもございまして、この計算といたしましては、前年の五・三五と農協普通預金金利二・五の中間の地点、これは単純に平均いたしますと三・九三ということでございますが、それに近い金利四%、これはたまたま生産費調査においてわれわれが使っております自己資本見方と一致するわけでございますが、その四%として算定することといたしております。  その次の物件税及び公課諸負担につきましては、これは従来どおりでございまして、生産費調査に出てまいります数字をそのまま使いまして計算をするわけでございます。  次に、八ページでございますが、地代でございますが、地代につきましては、御承知のように、昨年の米審の答申の中でいわゆる統制小作料の廃止ということもございまして、この地代をどのように見るかという論議があったわけでございますが、七日の前広の米価審議会におきまして政府としましては四つの考え方をお示しをしましていろいろ御論議をいただいたところでございますが、結果的には委員の大宗の方々がこの地代見方に——いま申しましたのは自作地地代でございます、自作地地代見方につきまして継続性というようなものを考えた上で従来使っておりました水準を考えることが最も妥当ではないかという御結論をいただいておりますので、自作地地代につきましては、昨年米価に織り込みました評価額、十アール当たり五千六百六十四円というのをそのまま使っております。小作地地代につきましては、現実生産費調査にあらわれております数字をそのまま使っているわけでございます。  それから、その次の下のこれは分母当たります十アール当たり平均収量でございますが、これは各年の米販売農家の十アール当たり平均収量平均しまして五百二十キログラムと出ておりますが、昨年の米価算定当たりましてはこの五百二十キログラムに当たりますところが五百三十一キログラムとなっております。  以上の要素を使いまして出しましたのが、恐れ入りますが二ページへ戻っていただきまして、求める価格であります一万七千二百四十九円でございます。  それからもう一度九ページをお開きいただきますが、九ページで運搬費というものを算定をいたしております。運搬費につきましては、米生産費補完調査の結果によりましていろいろ算定をいたすわけでございますが、その間における物価等の上がりにつきまして、材料費とか農機具とか、そういう賃借料といった現実に支払われますものについては物価によって修正する、労働費につきましては、先ほど申しました家族労働費見方によって修正するという形を使いまして百六十五円という運搬費計算をいたしております。  再び二ページにお戻りいただきまして、その上から二番目の基準価格でございますが、この求める価格にいま申し上げました運搬費百六十五円を足しましたものが基準価格と言われるものでございまして、これはいわば米の一−三等、一−五類の全体の基準価格になるものでございます。  その次、3に書きましたウルチ軟質類一等裸価格といいますのは、後ほど申します各種格差なり等級間あるいは類別格差というものをつくり出しますためのいわば中心となる価格でございますが、このいわゆる基準価格にまず一−三等の一−五類平均と三類との格差、これは計算をいたしまして三十五円を引きまして、それに一−三等の平均一等との格差、これは一等裸価格でございますから、一等格差百七十円を加えまして、それにこれは軟質でございますから、歩どまり加算、これは歩どまり加算の四十円というのは動かしていませんが、その歩どまり加算額十九円を引きまして、そこに補整と書いてありますのは、そうやって計算されたものが前年価格を若干下回る数字が出ますので、ここで前年同額にするという意味補整をいたしておるわけでございます。この基準、いわば中心価格を使いまして、いわゆる米価と言われるもの、普通米価と呼ばれておりますものはこの4でございますが、ウルチの一−五類、一、二等平均包装込み生産者手取り価格、これがいわば米価と言われているものでございますが、これを計算をしてまいりますと、一、二等の三類と一−五類の平均との差、五十一円を足しまして、今度はこれは一等ではございませんで、一、二等平均ですから、一等と一、二等の平均との格差を引きます。それに歩どまり加算を加えまして、包装代百九十三円、これは昨年は百九十一円でございますが、若干の値上がりを想定しまして百九十三円を足しましたものがいわば基本米価、2は基準米価といっておりますが、いわば基本米価といっているのはこの4でございまして、この価格でございます一万七千六百八十九円へ前年に比べて十五円高さが上がっておりますが、これは等級別の出回り数量が変わって、比較的品位の高いものの量がふえるということで、こういう数字になるわけでございます。  次に三ページに、こういう価格等級間、類別間でどのようになるかということで書いてあるわけでございますが、いわば類別格差、一類について三類より四百円高い、二類について二百五十円高い、四類は二百円引き、五類六百円引きといういわゆる類別格差は変えておりません。それから等級間格差でございますが、一等と二等の間の三百二十円、それから二等と三等の間の千円といういわゆる等級間格差も従来どおり据え置いておるわけでございます。  以上の算定を使いました個別、具体的な数字としまして、十ページ、十一ページに横表がございまして、原生産費が幾らで、それを評価がえした数字がどの程度になっているかということを各年別に書いてございますが、これは参考にお読みいただければ結構かと思います。  以上をもちまして説明を終わらせていただきます。
  4. 井上吉夫

  5. 関根秋男

    説明員関根秋男君) お手元に資料をお配りしてあると思いますが、昭和五十五年産の米の生産費につきまして御説明をいたします。  一ページに結論部分として要旨が記載をされております。昭和五十五年産水稲平均生産費、第二次生産費でございますが、次のとおりになっております。十アール当たり平均生産費は十五万八千三十五円でございまして、前年と比べますと六・二%の増ということになっております。六十キログラム当たり平均生産費は一万九千三百九十一円でございまして、前年対比一二・二%の増でございます。十アール当たり所得は七万三千八百八十五円でございまして、前年対比では九〇・二%になっております。一日当たり家族労働報酬は四千九百七十二円でございまして、前年比八六・六%でございます。  以上が結論部分でございますが、二ページ以下にその内容について説明をいたしております。  この生産費の中で大きなウエートを占めますのは二ページの(1)に書いてございますが、費目の構成というのがございます。労働費が四一%、農機具費が二八・二%、肥料費七・四%、賃借料及び料金五・三%、この四費目合計で八一・九%ということに相なっております。それぞれの費目につきましてどういう状況であるかということを(2)以下で説明をいたしております。  労働費について見ますと、労働費は五万二千六百八十一円でございまして、前年を二・六%上回っております。この上回りました原因は、十アール当たり投下労働時間が機械化が進みました関係で減少をいたしておりますけれども、五時間ほど減少をいたしておりますが、反面で労賃単価がかなり上昇しましたことによりまして差し引き二・六%の上昇ということになったわけでございます。  次の農機具費でございますが、農機具費は前年に対しまして一三・二%の上昇でございます。これは主として高性能機械を導入をしたと、それから更新に伴います償却費の増加によるものでございますが、水田利用再編対策などによりまして一戸当たり水稲作付面積減少いたしましたために十アール当たり負担が増加したことが影響しているわけでございます。  次の肥料費でございますが、肥料費は前年よりも二・一%上昇をいたしております。これは稲作農家良質米指向等によりまして施用量自身は控えられましたわけでございますが、肥料価格がかなり上昇したことによりましてトータルとして上昇したということになったわけでございます。  それから、その次の賃借料料金でございますが、賃借料料金は前年と比べますと二・六%上回っております。これは十アール当たり収量減少をいたしましたために作業に委託しておる量自身は減ったわけでございますけれども賃借料及び料金単価上昇したことによるものでございます。  それから農業薬剤費でございますが、農業薬剤費は前年に比べますと九・八%上回っております。これは御承知のように、昨年冷害に伴いましていもち病が多発いたしまして農薬投下量がふえた、こういうことに加えまして農薬価格上昇したことによるものでございます。  それから光熱動力費でございますけれども光熱動力費は前年と比べますと二七・七%上昇をいたしております。これは主として軽油、灯油等値上がりによるものでございます。  それから地代でございますが、地代は前年と比べますと三%上回っております。  以上が生産費上昇しました主な費目についてのその原因内容でございます。  それから二番目といたしまして、水稲作収益性でございますが、昭和五十五年産水稲の十アール当たり収益は十五万七百三十三円でございまして、前年と比べますと〇・七%下回ったことになっております。これは前年に比べまして政府買い入れ価格上昇はあったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、冷害等によりまして十アール当たり収量減少したと、そういうことによるものでございます。  それから十アール当たり所得でございますけれども、十アール当たり所得は七万三千八百八十五円でございまして、前年と比べますと九・八%下回っておるわけでございます。一日当たり家族労働報酬は四千九百七十二円で、先ほど申し上げましたように前年を一三・四%下回ったということになっております。  以上が水稲作収益性でございます。  なお、ただいま申し上げましたいろいろな数字についての詳細は四ページ以下の統計表、それから六ページ以下の経営概況及び収益性のところに数字的なことについては記されておりますのでごらんをいただきたいと思います。  以上が生産費の概要でございます。
  6. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 以上で説明聴取を終わります。  これより本件に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 村沢牧

    ○村沢牧君 政府の資料によっても、五十五年度米の生産費は六十キロ当たり一二・二%もアップをしており、逆に農業所得は一七%も減っておる。加えて農民が冷害等で苦しんでいる実態を大臣は十分承知しながら、ことしの米価を上げてくださいという農民、農業団体の切実な要求を無視して、五十六年米価を捉え置き諮問をしたということは全くもってけしからぬことであります。大臣は一体何を考え、何を根拠にして捉え置きなどという諮問をしたんですか。
  8. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) まあ、大変なおしかりでございますけれども、最近の米の事情、特にこの需給関係等を見ますと、昨年は不作ではあったわけでありますけれども、当面の需給操作には特段の支障はないと。また、基調としては米の生産力が高い水準にある一方、米消費の減退がなお引き続いておるということでありまして、やはり依然として米の過剰傾向というものを脱するには至っていないと、こういうふうに申し上げてきておりまするし、当分そういう態勢が続くものと考えておるわけであります。また、米の管理に要する財政負担につきましても、国家財政がきわめて厳しい状況の中で、過剰米の処理、まあ本年も予算では八百数十億の巨額に達するわけでありますが、過剰米の処理、さらには三千数百億をかけております水田利用再編対策費の増加等、まあこれからも大幅な増高がそういう面で見込まれるなど、大変困難な局面に当面しておると、こういう情勢であることは先生も御承知のとおりでございます。  今後の米の管理につきましては、以上のような事情に対処いたしまして、米需給均衡を回復するための努力を重ねますとともに、各般の面にわたりまして、合理化努力を強めていく必要があるものと考えられます。昨年の冷害凶作、豪雪、ひょう害、凍霜害等の災害によりまして、農家が非常な困難な情勢にあるということも十分承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、その方面に対する対策は強力に国会の御協力もちょうだいをいたしまして講じてきたところでありますけれども、米をめぐる事情につきましては先ほど来申し上げたとおりでございますので、本年の米価算定当たりましては、米の需給均衡を図るための対策が行われておる、この需給事情に即応して、まあ昭和三十五年以来採用しております生産費及び所得補償方式により算定することにして、そうして試算を行って米価審議会諮問をいたしたと、こういう経緯でございます。  私の気持ちを申し上げさしていただいた次第でございます。
  9. 村沢牧

    ○村沢牧君 米価は、食管法によって、米の再生産を確保することを旨として、生産費所得補償方式で決めなければならない。しかし、ことしの諮問米価は、据え置きという方針を先に出して、算定方式を後で考えた逆算米価であります。だから、物価や労賃が現実に上がってるにもかかわらず、米価はたったの十五円しか上がらない。大臣、こんな考え方米価の決定方法でいいのか。これは食管法に反するという暴挙であるだけでなくて、農民を余りにもばかにしたやり方ではないのか。大臣の見解を求めます。
  10. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) まあ、私といたしましては、やはり、とにかく米の過剰によって先ほど申し上げましたように需給事情が非常に今後の農政展開並びに農家の農業経営に大きな問題をはらんでおると、こういうことにかんがみまして、それでやっぱり需給調整を図ってまいりますためには、かつて昭和四十六年、四十七年、膨大な過剰米を抱えましたときに米価算定に採用しました手法をこの際とらしていただくと、ある意味におきましては四十六、四十七年以上に厳しい米をめぐる情勢であると、こういうことでもございますので、この方式を採用するということも、まあ今後の日本の農業を発展さしていく一つの大きな方向であると、こう考えでこのような試算米価をとらしていただいたと、こういうことでございます。
  11. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣の考え方は、日本農業を発展をさせることではなくて、日本農業を縮小再編成をし、さらに破壊に導くものであるというふうに私は断ぜざるを得ませんが、このことについては後ほど指摘をいたします。  そこで、算定方式を変えないで、昨年の算定方式をそのまま使ったとするならば、五十六年の米価は幾らアップになるんですか。数字だけで結構です。
  12. 石川弘

    説明員石川弘君) 昨年どおりということの意味でございますが、都市均衡労賃——製造業の五人以上千人未満の労賃を使う、
  13. 村沢牧

    ○村沢牧君 数字だけでいいです、あとは、細かいこと聞きますから、時間がないから。
  14. 石川弘

    説明員石川弘君) それから、資本利子を去年の金利をそのまま使う、この二つを前提といたしますれば一一・七%の上昇でございます。
  15. 村沢牧

    ○村沢牧君 逆算方式の不当性については後ほど指摘をしてまいりますが、昨年どおり計算をしたら一一・七%のアップになる。先ほど統計情報部から発表がありましたように、米を生産するすべての経費が上がっているのです。にもかかわらず、算定方式を変えて据え置きをするなんてということについて、大臣は一体どのように責任を感ずるんですか。農民や農業団体に対して申しわけないというふうに思いませんか。
  16. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 非常に厳しい中でこういう決定をしなければならない、また、こういう決定をすることが、ひいてはやがては、そういう事態が将来なるほどと、こう思う時期が来るものと、こう私自身としては確信をいたしまして、つらいことではありますけれども、非常に農家の方々に御協力を願うという、このようなことで御協力を願わなければならないということ、そのことに対しては非常につらい気持ちを持つわけでございますけれども、つらい気持ちを持てば持つほど、やっぱりこの辺で、日本農業を本当に近代化し発展をさしていくためには、ことしだけでも協力をしていただかなけりゃならぬのではないかと、このような悲痛な気持ちを持って実は諮問案をつくらしていただいたと、こういうことでございます。
  17. 村沢牧

    ○村沢牧君 農林水産省は、食管法の規定の一部に、その他の経済事情もしんしゃくして米価を決めるという規定があるのを、余りにも拡大解釈して身勝手な方針をとっているわけです。一体、米をつくる農民の経済事情はどのように配慮したんですか。農業所得は五十四年も五十五年も著しく減少しておる。さらに農外所得も、あるいは出かせぎ所得の伸びも大変大きく落ち込んでおるんです。そのために農民は苦しんでいる。一体、自分だけの経済事情をしんしゃくしているのであって、農家、農民の置かれている実態というのはどういうふうにしんしゃくしたんですか。——大臣だよ。次長に質問するんだったら、後からやるよ。
  18. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 農家経済につきましても、農林水産省といたしましてはあらゆる点から検討いたしたわけでございまして、五十五年度は確かに、御指摘のように、冷害により水稲による農家所得は大きく減退をしてきておることも承知をいたしております。  また、過剰傾向にある農産物につきましても、その価格が停滞をし伸びが低いということに加えて、生産資材費の上昇したことによりまして、そのコスト増になったことから、農業所得が大きく落ち込んでいることも承知をいたしております。農家経済をめぐる事情には厳しいものがあることは承知をいたしておりますが、農外所得の伸びもこれは事実でございまするし、農業共済金の支払い、あるいはその他の災害対策による資金の融通等も加えまして、農家所得としては前年よりも四%ほど上回っておる。なお勤労者世帯との比較では、農家農家所得、世帯員一人当たりの可処分所得のいずれの面におきましても実は一割程度高い水準にあることもこれは統計の示すところであるわけでございます。  今回の諮問に当たってこのような農家経済の状況も念頭に置きながら、たとえば物財、雇用労賃においては必要な物価調整を行っておりますが、米価水準農家経済の実態のみに応じて決めるというものでもございませんし、食管法の規定に基づいて米の需給事情を踏まえながら生産費及び所得補償方式という従来の線でやったわけでございます。  今日の米の需給事情としては、昨年の冷害にもかかわらず五十六年から水田利用再編第二期対策として五十三万一千ヘクタール転作を強化するなど、大幅な過剰基調にあることは先ほど申し上げたとおりでありまして、米価が他作物との収益性格差に関係をしてきているわけでございまして、他作目への転作、転進に影響するものという立場から見ましても、農家経済をめぐる事情が厳しいからといって米価の引き上げによってこれに対処するという考えが果たして本当に農家を愛するゆえんなのかどうかと、こういうことを考えまして試算の線を採用をした、こういうことでございまして、私としては、厳しい、苦しい中で八〇年代の農業を建設してまいる、発展さしてまいるという基礎づくりの一つとして、この忍びがたきを忍んでいただくということも必要ではありませんかという気持ちでこのような決定をさしていただいた、こういうことでございます。
  19. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣の答弁を聞いておっても、そういう答弁が農水大臣の発言かと疑わしくなるような答弁なんですよ。きょうは大臣のいらっしゃる時間が非常に短いんです。ですから私はこれ以上追及して質問することができないのは残念だと思いますが、最初に大臣にお願いしておきますが、答弁もひとつ簡潔にやってください。同じことを何回も言わなくてもわかっていますから……。  そこで、米が過剰だから米価を上げることができないということを盛んに宣伝をしております。私は米の現状について後ほど次長以下事務当局に詳細に追及してまいりますけれども、大臣、結論的に言って、余っている米というのは五十年から五十二年のいわゆる過剰米だけではないのか、この過剰米もだんだん減っている。食べれる米は余ってない。五十七年度米穀年度に繰り越す米、すなわちことしの十月には食べれる米は八十万トンぐらいしかないんだよ。ことしも冷害が心配されておるけれども、大臣、来年米が不足になるようなことは絶対ない、そう責任持って言い切れますか。さらに、備蓄は食べれる米を備蓄に供するということは先般の食管法の審議の際にも大臣も答弁になったところ。しかも備蓄は二百万トン程度必要だというんです。一体備蓄に必要な量、食べれる米は確保しているんですか。結論でいいです。
  20. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 今年は去年のようなことのないようにとひたすら祈るわけでありますけれども、もし仮に昨年のような冷害、凶作があったといたしましても、国民の食糧に関しては絶対に心配は要らない、こういう食糧庁の米の需給操作というものに確信を持っておることを私ははっきりと申し上げたい、こう思う次第でございます。
  21. 村沢牧

    ○村沢牧君 その食糧庁の見解が過ちであるということは後ほど、午後私は指摘をしてまいります。  そこで、米価と行政改革、第二臨調とは一体どういう関係を持っているのか。財界主導の第二臨調は、米価に対しても、あるいは農業政策に対しても過保護論を展開して、農業補助金や農産物価格の抑制を示唆してまいった。大臣はこのような動きに対して、あるいはこのような宣伝をどのように受けとめてきたのか。米価を初め農産物価格の決定方法は、その多くのものが法律や規則に基づいて決められるわけなんですが、大臣としては臨調と法律とどちらを優先していくんですか。
  22. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) これはもう申し上げるまでもなく、食管法改正の御審議の際にもたびたび申し上げてきたところでございまして、生産米価は、食管法第三条によりまして、生産費及び物価その他経済事情をしんしゃくをして再生産を旨として決定をすると、こういうふうに法律に明記してあるわけでありますから、私といたしましては、この法律に基づいて決定をするということで、そのほかのことは考慮はいたしておりません。
  23. 村沢牧

    ○村沢牧君 そこで、今日までこの第二臨調を中心としていろいろな提言がされてきた。しかし、私は財界主導の農政では日本農業はまいってしまうと思うんです。日本農業を守り、発展をさしていくためには、大臣はときによっては毅然たる態度をとらなければならないというふうに思いますが、その決意をお持ちですか。
  24. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 私は、ここでも私の発言が穏当を欠いて大変おしかりを受けた、あの経団連における一時間に及ぶ何か農政についての考えを話せと、こういうことでございましたので、私は思うところを率直に話をいたしたわけでございます。われわれ自由民主党が展開をしてまいりました総合農政というものの基本考え方及び自給力の向上をしなければならない点、そういうやはり農政の筋と基本というものをきちんと実行をしてまいると。それによって一億国民の生産を気持ちよく農家の諸君にやってもらうことのできるような農政をつくっていくのが私どもの考えであるということをはっきりと申したわけでございまして、財界から左右されるとか、そういうみみっちい話は私は全然考慮をしておらないと、こういうことをこの委員会でも申し上げたわけでありまするし、いまでもはっきりと申し上げさせていただく次第であります。
  25. 村沢牧

    ○村沢牧君 ぜひそういう決意を持ってこれからの臨調の答申にも対処してください。  そこで、この臨調の答申は、食管の売買逆ざやの解消に努める、こういうことになっていますが、大臣としてはこの答申をどのように解釈し、いかなる対応を示そうとするんですか。
  26. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 売買逆ざやを解消するために今日までずいぶんと、当委員会でも御報告してまいりましたとおり努力をいたしてきておるわけであります。現在の逆ざやは六十キログラム当たり千二百八十三円ということでございます。したがって、中間答申は、そうしたこれまでの努力を踏まえた売買逆ざやを解消するという方針を示したものと、こう私は受け取っておるわけでございます。したがって、何でもかんでもこれを一遍にもう解消してしまえと、こういうふうに指摘をされておるものではなく、私どもが年次計画でやっておりますことを一応認めながら解消しなさいと、こういうふうにしていっていいと、こう私は受け取っておるわけでございます。したがいまして、今後の売買逆ざやの取り扱いに対しましては、具体的にそれじゃどういうふうにその辺のことを、いま申し上げた点を十分検討をいたしまして、これまでの取り扱いの経緯でありますとか、生産、流通、消費、各般の面に及ぼす影響、財政事情などを十分に総合的に判断をして適切に対処しなければならないかと、こう考えておる次第でございます。
  27. 村沢牧

    ○村沢牧君 食管法の規定でいけば、生産米価と消費者米価をそれぞれ異なった原理で決める。そこには逆ざやがあってもやむを得ないことである。ある面では当然のことだ。しかし逆ざやをなくするということは食管法の根幹をなくするということなんです。一体大臣は逆ざやはどの程度あっていいと認めるのか、全然なくしてしまうのか。もう一つは、逆ざやを解消するなら生産米価を抑えて解消するのか、消費者米価を上げて解消するのか、両方やるのか、その二点について大臣の見解を示してください。
  28. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 現在米価審議会でも、そういう点を含めていろいろ御議論をいただいておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、確かに食管法によりましても生産米価とそれから消費者米価というものを決定する手法並びに根拠条文というものは異なっておることも承知をいたしておりまして、逆ざやを全くなくすべしという論と、やっぱりある程度のものを置いておかなければいかぬのではないかという論もあることも事実でございます。したがいまして、そういう点をもう少し慎重に検討をしてみたいと、こう思っておる次第でございます。
  29. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣は食管法を守りますね。食管法を堅持するというのなら大臣のいまの答弁は出ないわけですね。両方の論がある。逆ざやをなくするという論もあるし、あるいは残そうという論もあると。そうじゃないんだ。大臣の見解を聞くんです。食管法を守っていけば逆ざやがあってもやむを得ないことなんです。同時に逆ざやをなくするためにはどうするかということなんです。もう一遍お聞きしたい。
  30. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 私は、食管法は、これはもう忠実に守らなければならない責任を持っておることは十分承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、逆ざやにつきましても、米価審議会等いま開催をいたしておるわけでございますので、慎重に考慮をして結論を出したいと、こう考える次第でございます。
  31. 村沢牧

    ○村沢牧君 米価審議会の意見を聞いて食管法を解釈するんじゃないですよ。大臣の意見を聞いているんだ。  そこで、時間がないから次へ進むけれども米価諮問をする場合に政治加算つかみ金三百億なんということが、政府の首脳が言ったとか、与党の首脳が言ったとか、これがあちこっち言われて、責任のなすり合いをしていると。全くみっともないことなんです。農林水産大臣としては基本米価を据え置いて政治加算でかっこうつけようとするんですか。またつけてもらいたいというふうに思っているんですか。
  32. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 今日までの経緯の中に、そういうことを党とも、省内においても話したことは一度もございませんので、ましてやその数字につきましては私どもは全くあずかり知らないと申し上げるほかない経緯であったことをお許しいただきたいと思うんです。
  33. 村沢牧

    ○村沢牧君 なるほど大臣は知らなかったと。しかし大臣としては政治加算を期待をしているんですか。
  34. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 私は諮問米価を試算するにつきましては、農林省のあらゆる知恵を動員し、あらゆる資料を分析をし、そうしてこれが八〇年代の日本の農業を確立してまいると。特に米作農家の口を確保していくために最良のものである、こういうふうに確信をして提案をいたしておるわけでございますので、審議会に諮問をいたしてありますので、これが最善のものと、こう私としては信じて出しておるということを申し上げたいと思うわけであります。
  35. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣、過去においてもそうなんだけれども米価は据え置いて政治加算で決着をする、その政治加算は自民党がつけてやったと、そう言うけれども、その財源は自民党の財源じゃないんですよ。国家の財政なんです。そんなうぬぼれ的なことを言っちゃ困るんですよ。そんなことによってもはや農民や国民はごまかすことはできない。そんな政治加算の余裕があるとするならば基本米価に入れるのが当然だと。大臣は、いま言ったような見解だとするならば、農林水産大臣として総理・総裁に、政治加算をするなら基本米価に入れる権限を私に与えてください、そういうふうにひとつ言うべきだと思うが、どうですか。
  36. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 私は、何回も申し上げますけれども、農林水産省の持てるあらゆる努力をいたしまして試算、諮問案をつくらしていただいたわけでございますので、私としてはこれが最善であると、こう信ずる以上はこの線でまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  37. 村沢牧

    ○村沢牧君 そこで、先ほど私は冒頭指摘をしたように、今回の諮問米価は、これは食管法に基づくこの生産費所得補償方式でやるのではなくて、算定方式を変えた逆算米価である、このことをはっきり私は言い切ることができると思うんです。算定方式を変えることによって米価はどういう数字でもはじき出すことができるんです。十五円アップするというような算定方式について私はまじめに論議をする気持ちになれない。さりとて黙っていたんじゃこれは将来に悪例を残すことになりますから、後ほど午後に食糧庁に対して強く指摘をします。  そこで大臣にこの際伺っておきたいことは、地方労賃を採用して昨年よりも賃金を低くしたり、なくなった統制小作料をまた持ち出してみたり、資本利子を引き下げたりするような算定方式のこの改悪を正当なものだとあなたは思うんですか。
  38. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) これは何も逆算したわけじゃございませんで、私どももいろいろ米をめぐる事情が戦後最悪の状態だと、こう認識をいたしまして、このような米をめぐる環境が最も悪い時期に先輩はどういう手法を用いたんだろうということで、かつて一兆円近い古米処理をした経験もあったわけでありますので、その時代を振り返ってみました結果、四十六年には二百三十万トンの生産調整、四十七年には二百十五万トンの生産調整、そのときに用いた米価算定手法、これを見習うことは、これは私どもとしては四十六年、四十七年以上に実は今年は、五十六年は生産調整をよけいにやっておるわけであります。四十七年が二百十五万トンに対して今年は二百九十五万トン、来年はこれに二十五万トン多い三百二十万トン、再来年もそのくらいやらにゃいかぬ、こういうことでございますので、ことしはそういう意味において非常に、四十六年、四十七年以上に米をめぐる情勢は厳しいと、そういう厳しい中であるから、やっぱりその当時使った手法を今年も使うということは、まあ理解をしていただけるのではないかと、こういうことで、昭和四十六年、昭和四十七年の米価算定手法を使わしていただいたと、(「法律違反だ」と呼ぶ者あり)こういうことでございます。
  39. 村沢牧

    ○村沢牧君 私の持ち時間がぼつぼつ参りますので、あと一問で質問を終わりますが、大臣、こんなごまかしの算定方式を使って、いまこちらでお話があったように法律違反をして米価を据え置くなんということは全くもって邪道なんだ。大臣が食管法に基づいて計算をしていくとするならば、いま農協が要求している二万四百九十八円もこれは当然のことだ。そこで、せめて大臣がこの米審が終わった後で、大臣が決めることですから、これだけ世論の盛り上がりも大きいし、大臣のとっている見解が余り正しくない、そこで米価を上げていくという決意にひとつ立ってもらいたいと思う。  そこで大臣に申し上げるけれども、あなたは大臣に就任する前は日本農政の発展のために先頭に立ってがんばってこられた、私もある面ではそれを認めます。そして、みずからも農政通だと自負している。あるいは、ぜひ農水大臣は一遍やってみたいということを言われたというようなことが新聞では報道されている。ところが、あなたが大臣に就任されてからは一体何をおやりになったんだ。米の減反面積は拡大をした、農作物自給率は三四%のものが三〇%になるという方針を示した、畜産物価格は据え置いた、繭糸価格相引き下げた、そしてまた米価は引き下げようとしている。こうした結果、農業所得は低下して、農民は冷害物価高に苦しんで、まさに日本農業は縮小再編成の道を歩み出しているんです。加えて、財界の圧力によって日本農業はさらに危機に陥れられようとしている。あなたが日本農業を守ろうとする気持ちはわかるけれども現実は逆の方に行っているんです。いまこそ日本農業を発展させるために勇気を持って、決意を持って、毅然たる態度を持って、せめてことしの米価は米審の後に若干でも引き上げる、そういう決意を持つべきだと思うが、最後に大臣の農政に対する見解と日本農業を守る決意、米価に対する考え方を重ねて伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  40. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) いま村沢委員からいろいろ御指摘をちょうだいしたわけでございますが、基準糸価の点も触れられたわけでありますけれども、あのようなことをやりました結果、どうしても放出できなかったいわゆる輸入生糸の売り渡し、これもきのう実は実施いたしたわけでございます。やはりあのとき決心をして基準糸価を適正にさしていただいたと私どもは考えておるわけでございますが、その結果、市場も動き、そうして各業界も本気になってやっぱり態勢をとるということによって、基準糸価を超えて相場が動いた、こういうことで昨日、割り当ての生糸を蚕糸事業団から二千俵以上放出をすることのできる環境になったと、私はこの辺にやはり政治家の判断と決意というものがあるんだろうと思うんです。  まあ、本当に農家の皆さん方からごらんになれば鬼のような農水大臣と、こういうふうにあるいは言われるかもしれません。しかし、そういう真実を訴えて、そうして協力を求めてまいるということであってこそ、そこから私は真の発展の基盤が大きく芽生えてくるのではないかと、こんなふうな気持ちで実は試算米価をはじかしていただいたわけでございまして、農林水産当局といたしましては、私どもといたしましては、今回、今時点においてはやはり農林水産行政のとるべきこれ以上の方策はないのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  41. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 時間も限られておりますので、私は二問だけ大臣にお伺いをいたしたいと思います。  率直に申し上げまして、私も今回の諮問案の中で算定要素の取り方などどうしても納得のいかない点が幾つかございます。また、据え置き米価にするために都合のよい算定要素をとったんではないかといったような批判もわが党の中でも数多くあることもまた事実であります。食管法の規定にも、「其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」とある以上、需給事情や財政事情米価に反映させることはやむを得ないといたしましても、昨年もまた大変厳しい情勢下にあったわけでありますし、ことし、特に先ほど来御説明がございましたように、算定要素を大幅に改定してまで据え置き諮問をしなければならなかった理由は何なのか。先ほど来いろいろ御説明ございましたけれども、その中で何が一番大きな理由なのか。需給事情なのか、財政事情なのか。私は財政事情もまた非常に大きな理由の一つではないかと思うわけでありますが、その点について御意見をお伺いしたいと思います。
  42. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 需給のバランスをとるということが日本農政の最大の私は基本であると、こういうふうに考えておりまして、今回の諮問米価をつくります際にもやはり需給の情勢と需給事情というものを重点的に考えさしていただいたわけでございます。
  43. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 そういう需給事情の非常に厳しいことはわれわれも十分理解するわけでありますけれども、昨年は御案内のように異常気象の影響もありまして農業所得は一六%も減り、生産費は逆に一二%も上昇しておる。特に中核農家に対する打撃が大変に大きいものがあるということが言われておるわけでありますが、こういうことを考えますと、先ほど大臣は、諮問案は自分がしたんだからこれを変えるつもりはないとおっしゃいましたけれども、最終的には米価審議会の意見を聞いて決定するということでございますので、何とかこれからも再生産が可能な適正米価を決定していただくように御努力を願いたいと思うわけでありまして、この点を強く要望いたしたいと思います。  と同時に、ことしはゼロシーリングという大変特殊な状況下にあるということもわれわれとしては見逃してはならないと思うわけでありまして、価格政策も非常に大事でありますが、それと同時に、規模拡大や基盤整備により生産性の高い農業を築き、技術革新の成果を十分に生かすことのできる中核農家を育てていくということも非常に大事でありまして、そのための生産政策あるいは構造政策にもこれからもっともっと力を入れていかなければならないのではないかと思うわけでありまして、したがって、適正米価にしていただきたいということはやまやまでございますけれども、そのための財源につきましては、たとえば生産者、消費者の両米価を連動して考えるとか、あるいは管理経費を節減するなどの方法によりまして食管会計の内部で調達していただき、公共事業や非公の事業等の他の政策経費に影響を及ぼさないようにお取り計らいを願いたいと思うわけであります。この点につきましての御意見をお伺いしたいと思います。
  44. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 生産米価、消費者米価連動というお話もありましたけれども、私は、法律が別々な条文で、別々な書き方、表現も違っておるわけでございますので、やっぱりこれはその法文の精神上別々に取り扱うべきであるという感じがいたします。やはり消費者も生産者もその辺につきまして非常に鋭敏に、神経質にいま見ておるわけでございますので、やはり先ほど来よくわかるような決め方をすべきであるということも言われておるわけでありますので、その辺については私は連動という、消費者価格生産価格と連動して考えるということにはにわかに賛成しがたいと考えております。  と同時に、食管のいわゆる中身というものはできるだけ赤字というようなものを速やかになくす。これは需給のバランスをとることによって私は可能であると、こう考えるわけでございます。消費者と生産者のいわゆる逆ざやというものは、先ほど申し上げましたように二千億とないわけでございますので、過剰米を全部処理をし、倉敷料等、その金利等、過剰米の分を支払いがしなくてもいいように食管会計がなれば、これは私は非常にそれらのことは国全体の財政にも大きくプラスしてくるということは、すなわち積極的な農政展開の面にそれを将来使ってまいるということも可能なわけでございますので、できるだけそのようにしてまいりたい。  と同時に、私は、来年度ゼロシーリングの中で予算を組まにゃなりませんが、やっぱり基盤整備は何としてもこれは農業をやる農業者にとっての私は精密機械工場だと、こういう認識を持っておりますので、この農家の持っておる農産物をつくる精密機械工場である農地の基盤整備に対する対策というものは軽視してはならない、こういう気持ちでやってまいりたいと考えております。
  45. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いま皆さん各委員からいろいろお話ありましたけれども、またきょうはたくさんの方がいま傍聴に来ておられますけれども、この大臣の諮問したことについては、大臣だけがそういう意見であって、恐らくこの人たちはみんな先ほど諮問のあったような意見ではなかろうと、このように私も思います。私もそういうふうに思っているわけですけれども、まず最初に大臣にお伺いしたいんですが、臨時行政調査会の第一次答申がこの十日に総理大臣に提出されたわけです。行政改革は国民の注目するところであり、政府が行政の実行に臨む最初の試金石である、生産米価問題であることは、これは言うまでもないと思いますけれども、臨調の答申によると、農業関係が大変厳しい、非常に厳しい状況にあるように内容を私は理解しているわけです。  そこで大臣に、この第一次臨調の答申、これに対してのまず所見をお伺いしたいと思います。
  46. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 部会案あるいは今度の答申が出されるまでいろいろと農業をねらい撃ちされているのではないか、するのではないか、農業軽視じゃないか、財界主導型ではないか、いろいろ批判があったわけでございますが、出た答申を見まして、私は、私ども自由民主党が戦後ずっと引き続いて政権を担当し、その中で総合農政を展開をしてまいったその本筋というものについてはこれを認められたと、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。  したがいまして、その本筋、前にもこの委員会で答弁申し上げましたように、筋のある答申があることを期待すると、こう申し上げてきましたが、私は一応筋の通った答申であると、こういうふうに理解を、受け取り方をいたしておるわけでございます。  しかし、一つ一つどもがやりつつあった事柄、この食管の改善というような問題につきましても、食管法を御審議いただく際にもたびたび申し上げてまいりましたように、人員の節減でありますとかあるいは経費の節減でありますとか、あるいは過剰米の早期処理でありますとか、いろいろなことをいたしまして、そうして食管の健全化を図る努力もいたしてきておるわけであります。その食管に対しても、もっと馬力をかけろよと、こういう御指摘をちょうだいしたと、こう思うわけでございまするし、水田利用対策等につきましても、二期対策はこれはもうスタートをいたしておると。これは法律によってではなく、農家の協力と団体の協力と都道府県、市町村の協力によって実行をしておりますので、この点については大きな変化を与えられたのでは農家に対する約束が違うと、こういうことになりますので、この点は私どももよく説明をいたしまして、その点が認められたわけでありまして、第二期、第三期という、そういう二期は大体計画どおりやるべきではあるけれども、三期、四期ということになった際にはやはり生産調整が根づくような、補助金がなくとも根づくような方法も考慮していかなければならぬぞと、こういうふうな受け取り方をしておりまするし、農業基盤整備につきましては先ほどお答えいたしたような気持ちでその効率的な面を十分努力してまいると、こういうことによって、私は、私どもの日ごろやろうと思っていたことをより注意、提言を受けたと、こういう受け取り方をいたしておる次第でございますので、これらは予算編成に当たりまして十二分に実現をしていきたいと、こう考えております。
  47. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 筋の通った、要望どおりというか、理解のできる答申であると、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、そこでこの答申の中ですが、六月の二十二日の第一専門部会報告によりますと、いろいろありますけれども政府米の売買逆ざやの解消と、過乗米処理の合理化に努めるとか、それから自主流通米への補助金を少なくするとか、それから、水田利用再編対策についても経費の節減に極力努めると、いろいろございますけれども、これを受けて十日の第一次答申の中で、新たに補助金は各省庁ごとに一割削減と、こういうふうにはっきりと緊急方策が示されてきたわけです。  言うまでもなく、農林水産省は全補助金の一五%、全体で十四兆五千六十七億円のうちの二兆六百十二億円ですか、一五%になるわけです。これ最大の補助金を受けているというところになるわけです。  そこで生産米価の据え置きを諮問した上にこの補助金の削減を断行するということになると、日本農業の将来は、先ほどからもいろいろ言われておりますけれども、農業従業者はもちろんですが、食糧安保ということを考えてもこれは非常に憂うべきことではなかろうかな、こういうふうに思うわけでございます。このことについて大臣の見解はどうなのか、お伺いいたします。
  48. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 補助金の問題につきましても十分今日までも私どもといたしましてはその補助金の効率化、補助金の合理化、そういう面については年々努力をし実施をいたしてきておるところでございます。したがいまして御指摘を受けた線につきましては、十分重点的に効率的に日本農政の進展のために十二分に役立つ方策に充当をしてまいるというような構えで現在いろいろと来年度予算編成のための準備作業をいたしておるところでございます。補助金のメニュー化とかあるいは統合化でありますとか、いろいろ工夫をいたしまして落ち度のないように農家の方々に迷惑のかからぬように努力をしてまいりたいと考えております。
  49. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いま申しましたように、臨調の答申では何点か、たとえば、米価の問題については逆ざやの解消とか、自主流通米の助成の縮減とか、もろもろございますけれども、これは考えれば財界主導型の答申と私は考えざるを得ないわけです。  その理由は、先ほど申しましたけれども、また多くの農実行政に対する厳しい注文が出されているわけです。これは事務当局で結構ですけれども、来年度予算編成に向けてこういう注文について、答申について農業関係団体の理解を求めなければいけないと思いますけれども、どういうふうに理解を求めていくのか、具体策はどうするのか、この辺をお伺いいたします。
  50. 石川弘

    説明員石川弘君) 補助金全般のことでございますが、農業団体からもいろいろ要請がございます。これら、大臣もお答えいたしましたとおり、やはり重点的に補助あるいは価格政策、いろんなあるいは基盤整備のような事業をやってまいるわけでございますから、その点政府考え方はもちろん、生産者団体その他関係者の意向も十分熟知してやるべきことと考えておりますが、現在まだそういう作業を進める途中でございますので、いまの御意見も十分伺いまして今後やっていきたいと思っております。
  51. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 作業を進めていると言ったってもう予算、そろそろ編成に当たってこの場へ来て、いまきょうは米の問題ですけれども、実際に答申が出て、そして大臣は、先ほど話のあったように、それを尊重してやります、そうすれば当然この予算にかかわり合いが出てくるわけです。これをどうしようかというのは事務当局でやらなければならない。それについてそんな抽象的な答弁では私は納得いきませんけれども、もう一度農業団体についてこういう方法で理解を求めていくと、また予算編成については事務当局としてこういう形で具体的にやっていきたい、もうすでに私はやっていると思うのだけれども、その辺についていかがですか。
  52. 石川弘

    説明員石川弘君) 各年の予算編成に当たります際に、毎年のことでございますが、各団体その他からも要請がございます。それから、そういう要請に対してわれわれもいろんな形でその意向を反映するようなことも考えているわけでございますが、こういう予算編成、この米価が終わりますと予算編成に入るわけでございますから、従来にも増してそのような努力をして関係者の意向が十分反映されるようにしてまいりたいと思っております。
  53. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、米の問題についてお伺いしますが、政府は米麦価に対する基本姿勢は例年以上にいろいろな事情がありますけれども、抑制する意図があるように私は受けとめております。その理由としては、米の過剰、米の過剰といっても、先ほど村沢委員の方からお話ありましたけれども、過剰といっても四百四十万トン残っていると、こういっても実際にこの秋が来れば五十三年度米は古が三つつく古古古米になるわけです。これはもう食糧に供するかどうかこれはわかりませんけれども、とにかく来年に持ち越されるのは八十万トン、これはわずか一五カ月、こういう状況にあるわけです。そこでさきの通常国会の論議においても、五十六年度の米麦、この価格の決定については食管法の規定に従って適正に決定をすると、これは大臣何回もここで言っているわけです。私は増税なき財政再建、このスローガンに対してはこれはよろしいかと思います。こういう国の事情ですからそれは結構だと思いますけれども、しかし、今回の米価の決定に対する政府の態度というのは今後ますます離農を促進しというか、離農を助長し、農民いじめの姿勢であると、こういうふうに私は思えてならないわけです。こういうことについて農林大臣はどのような根拠でこの米価の据え置きを諮問したのか、納得のいくような説明をお願いしたいわけです。
  54. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 先ほど来何回か申し上げてきておるところでございますが、米をめぐる需給事情というものが政府始まって以来のよくない情勢にあるということは鶴岡委員も御理解いただけることと存じます。とにかく生産調整を六十三万一千ヘクタールの大きなたんぼに、米をつくりたいと、氷なら一番よくできると、収入も上がると、そういうことを承知の上で米をつくってくださるなと、米をつくったような所得にはならぬかもしれませんけれども、その間の所得の不足になる部分は生産奨励金でがまんしてくださいと、協力してくださいと、そういう手法を用いて、しかも膨大な国費をそこに投じて初めて需給のバランスを保っておると、そういう情勢をつくりつつあるわけでございまして、これを今後どういうふうにして定着をさせていくかということを考えますと、やはり米というものはとにかく食べてもらえないという一方に大きなまたマイナスの面があるわけですね。これはもう本当に喜んでみんなつくっただけ食べてもらえるということであれば農林大臣もこんなに苦労しなくとも、米価においてもこんなにあれしなくともいいわけでございますけれども、事実は事実でございまして、米が過剰であると、いま食糧にならないじゃないかと御指摘を受けた五十年、五十一年、五十二年産米、そういうものも処理をしようとすればもう一兆円に近い国費を要すると、こういうようなこともございまして、米をめぐる事情はやっぱり厳しいという認識を米作農家の皆さん方にも持っていただかないといかないと。私は率直に事実を申し上げて、そうしてこれだけの生産調整に本当に黙々としてどろまみれになりながら苦労を増しながら生産調整にも協力をしていただいておる農家のことを考えれば考えるほど、やっぱりこれらの矛盾点を一日も早く解決をして、そうして積極的な農政展開の方に国費がぐんぐん流れていくような事態にしていかなければならないと、そういうことを言い、かつ努力していくことが私ども農林水産省にいる者の役目の一部ではなかろうか保と、そんなふうに考えて実は諮問案をつくらせていただいたと、こういうことでございます。
  55. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 先ほど質問ありましたけれども、今回の米価の据え置きという諮問は、これは財政事情がそれとも需給事情がということですけれども、大臣の答弁だと需給事情だと、またいまの答弁でも米は食べてもらえないと、これは事実であるし、事実は事実だからこういうふうにしなきゃならない。それでは、農家の方にとってみれば何が事実かというと、生産米価水田利用再編対策の発足とともに五十三年、五十四年と二年間を据え置かれ、本年も据え置かれることにいまなろうとしているわけです。  五十六年の七月十日発表の農林水産統計速報、これによると、五十五年度産米の生産費を見ると、五十四年から比べると、農機具費は前年を一三・二%上昇と、これは事実ですよ。それから肥料費は前年を二・一%アップしていると、これも事実。労働費は前年を二・六%上がっている。それから農業薬剤費、これも九・八%上がっている。光熱動力費も前年に比べると二七・七%上がっている。そういうことで五十五年産米のいわゆる十アール当たり生産費は六・二%アップという、こういうことになるわけです。米価生産費を比較するとこれもおわかりのとおりです。こういうふうになって、その上昨年冷害で減収になった、これも事実です。大臣がそういう事実だと言うけれども、こちらだって生産者の立場になればこういう事実があるわけです。それにもかかわらず据え置きと、先ほど諮問したのは逆算方式だと、私も恐らく逆算方式だと、こういうふうに思っているわけです。この実態について事情もいろいろありますけれども、そちらも事実、生産者側にしても事実、こういう状況でもしこれを強行するというようなことがあると、私は先ほど申しましたようにもう米はつくらないと、もうどうしようもないと、こういう状況が来るんじゃないかと、あきらめの状況がここで出てくるんじゃないかと、こういうふうに思うんですけれども、実際に物価は上がる、何は上がる、農機具は上がる、材料費は上がる、そう言っていて、そうして二年も三年もこういう状況にあるということは私は納得がいかないわけです。この点についてどういう見解を大臣ほお持ちになっているのかもう一度お伺いいたします。
  56. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 物材費関係は計算の中にちゃんと織り込んであるわけでございます。ただ労賃、家族労働賃金評価がえの面と資本利子の面を去年よりも、昭和四十六年、四十七年に採用いたしましたいわゆる米の需給のバランスが大きく崩れたときに用いた手法とでも申しますか、それを採用させていただいたと、こういうことでございまして、その物財費関係等についてはちゃんと計算の中に採用してあるということを御理解いただきたい。
  57. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 採用してあることはしてありますけれども、私は納得がいかない、こういうことを言っているわけです。  それで、時間がございませんので、細かいことは午後から同僚の中野委員が質問いたしますけれども、あと二点だけ。  一点は、この算定要素の点ですけれども家族労働費、これを地方賃金に改悪していますけれども、これはこれまでとってきたいわゆる都市均衡賃金考え方の中でも最低の水準であり、基本にかかわる重大問題であると私は思います。諮問内容全国平均賃金に改定すべきであると、こう主張をしたいわけでございますけれども、この点について——たとえばこれも御存じだと思いますけれども賃金単価からいきますと東京は一二六、全国平均を一〇〇にして。大阪が一一四、新潟が七三、秋田が五九。それで、労働者の数のウエートからいきますと、東京が一七・三%、大阪が九・一、新潟が一・九、秋田が〇・七。米の販売量からいくと、東京はゼロ、大阪が〇・一、新潟が七・八、秋田が七・〇と、こういうことになっているわけです。まあこういうところをどういうふうに数字を合わしたのかわかりませんけれども、いずれにしてもその都市均衡賃金を考えてやるべきであるにもかかわらず、今回は地方賃金を重点に置いてやったと、こういうことは私は差別主義じゃないかなと。それは秋田の中で労働をし、生産をし、そして秋田の中で生活をしている、しかも買う物がテレビにしても生活必需品にしても何にしても、賃金と同様に半分で買えればそれはいいけれども、何にしたって東京の価格で買わせられる、買わなきゃ生活できない、しかし賃金はそういう賃金計算される。私はこれ非常に納得がいかないんですけれども、こういうふうにしなければならないこの理由は何なんですか。  それと、先ほどちょっとお話ありましたけれども、四十六年、四十七年の当時といまはもっと苦しい状況にある、過剰米もある、国から金を出しているその会もよけいになっている。こういう話がございましたけれども、それにしても、そうすると十年一日のごとし、全然日本農業は前進をしていないと、こういうことに私はなるわけでございますけれども、この点についてどう考えておられるか。
  58. 石川弘

    説明員石川弘君) どのような算定方法で都市均衡の労賃を出すかということにつきましては、御承知のように、たとえば製造業の規模みたいなことでコントロールする仕方もございますし、あるいはただいま採用いたしましたような米の生産量というものを頭に置いてやるという方式も過去においてとったことがあるわけでございます。  私どもこういう方法をとりますときに、たとえば五人から九百九十九人という製造工場というものはどういうものか、これは企業全体の規模でございませんで、一企業の規模でございますから、かなり大きな、まあ日本有数の大企業がほとんどこの規模に入ってまいります。しかもいま先生おっしゃいましたように、労働者の頭数で割りますと、どうしても大都市周辺のものが反映されるわけでございますけれども現実に農業労働が行われております地域の賃金規模をもっぱらそういう大企業の、しかも大都市の規模だけでやるということについてはむしろ逆の疑問があるという説もございまして、たとえば乳価等につきまして、北海道で生乳が生産されます場合に、北海道のそういう賃金を使うという手法も十分いままでもとっていたわけでございます。ただ私どもとすれば、四十六年ないし四十七年にそういう手法をとったということは、やはり全体のそういう家族労働の高さをはかるのであれば、むしろそういう米が生産されている地域において形成されている労賃がやはりある程度は反映される。これは決して地方だけで計算するわけじゃございませんで、結果的にはたとえば兵庫県あたりで計算をいたしますれば、あのあたりは結構米生産もあると同時に、そういう雇用労働もあるわけでございますから、そういうものをバランスさせて全国平均値を出したという手法でございまして、全くの新規の手法ではなく、過去においてもある程度採用され、かつ、そのことの合理性につきましてある程度御納得がいただける線はこういうところではなかろうかということで、今回のいわゆる販売量ウエートを加味しました全国の製造業労賃の考え方を使わせていただいたわけでございます。
  59. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 時間が来ましたので、終わります。
  60. 下田京子

    ○下田京子君 大臣、なぜ据え置き諮問を行ったのかという点でですね。米をめぐっての情勢がいろいろ厳しいという御説明ございましたけれども、いまのお話聞いていて、私どうしても納得できないんです。端的にお尋ねしたいんですけれども、一番問題にされているお米の過剰問題なんですけれども、昨年とことしと比較して一体どうだったかという点でお聞きします。  一つ変化ないと見るのか。二つ、過剰が一層深刻化していると見るのか。三つ目、冷害等の影響で一定緩和されてきていると見るのか、いずれの御認識に立たれているか、はっきりお答えいただきたいと思います。
  61. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 私は米をめぐる環境は非常に去年と比べてむしろよくないと、こういう感じを持つわけでございます。
  62. 下田京子

    ○下田京子君 何を根拠にしてむしろよくないと言われるのか。とすれば、大臣が先ほどから話しされておりますが、自信と確信を持って出された諮問に対する説明、お読みします。昨年は米の需給の現状についてどう述べているか、いろいろ述べていまして、「なお、深刻な供給過剰の事態にあります。」と、こう述べています。ことしは先ほど次長からも御説明がありましたけれども、「依然として過剰傾向を脱するに至っておりません。」と、こう述べております。この諮問説明をそのまま率直に受けとめるならば、昨年の方がより深刻であったということは明らかだと思うんですが、違うんですか。
  63. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) その後に「第二期に入名水田利用再編対策におきましては、昨年度に引き続き転作等目標面積を大幅に拡大せざるを得なかったのであります。」、「大幅に」ですね、この辺がやっぱりことしもむしろそういう意味においては去年よりも情勢は深刻ですよと、こういうことでございます。
  64. 下田京子

    ○下田京子君 昨年とことしでお米の過剰傾向がどうかという点では昨年の方が厳しかったというのはお認めですね。
  65. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 過剰傾向というものはやはり水田利用再編対策の仕事をした結果でありまして、その水田利用再編対策もやはりこれは過剰対策の一環でございますから、それらもあわせてやはり過剰問題というものをきちんととらえてまいりませんといかないと、こういう私ども考え方でございます。
  66. 下田京子

    ○下田京子君 過剰そのものは昨年の方がより深刻であったというのは諮問説明でこれは明確で、いま大臣がおっしゃっております。その陰には減反という政策があるからなんだと、この点ですけれども、とすれば、いまのその減反が五十六年、七年に比べれば面積がふえて、で、大変苦労をしているから、だからという話でいろいろありましたが、いまの論法でいきますと、昨年はさらに四万六千ヘクタールですか、面積にして、大体数量で二十五万トンと、こう言われているかと思うんですが、ふえますでしょう。さらに十年全体ということになれば七十六万ヘクタールの転作云々ということが出てきますよ。とすれば、今後転作面積がふえるごとにどんどんとその米価は据え置いていく、算定要素はいじっていくということを意味するものに通じる、こう言わざるを得ない、こう思うんです。で、大変その点が問題であると思うんですが、転作面積がふえることに米価算定要素をいじって引き下げるということを今後もおやりになるおつもりですか。
  67. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 私どもといたしましては、生産性を高め、米の消費拡大の努力をいたしておるわけでございますから、一面において、できるだけ計画以上に生産調整をせずともいいような努力というものを私どもはやっていかなければならない。そのために米の消費拡大という問題についても予算も計上し、全力を挙げておる次第でございます。
  68. 下田京子

    ○下田京子君 質問に大臣お答えになってませんでしょう。転作面積をふやせば、そのことを最大の理由とするならば、据え置き、またさらに厳しく進められるという論調になってしまうんです。これはごまかしですよ。で、お米が今後どういうふうな状態になっていくかという点では、むしろ全体に日本の農業の再建をどう目指すかということになると思うんです。  ずばりお聞きしたいんですけれども、大臣、六月五日の閣議了解で、五十七年度の概算要求についてはゼロシーリングをお決めになっておりますね。そのとき大臣は、いろいろいまお話されているような、真に日本の農業を発展させていくような方向で何か発言されていますか。
  69. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 私はあのときの閣議では発言はいたしておりません。
  70. 下田京子

    ○下田京子君 一番私はそこに問題があると思います。あの時点で発言されてないけれども、もし発言されるとすれば、いや発言するお気持ちがあればきちんと言うべきでなかったかと。新聞報道によりますと、他の大臣はそれぞれ述べてますね。自治大臣は、とにかく来年度予算一円も伸ばしちゃいかぬと、こう言っているけれども、地方にしわ寄せはしないでほしいと、こう言っていますし、建設大臣は、景気浮揚や公共事業を頭に入れてもらいたい、こう言っておりますし、科学技術庁長官は、科学技術研究費の削減は困ると言っておりますし、また、文部大臣は、文部行政というのは人でやるものだから人減らすなど、こう言っているんですよ。ですから、ゼロシーリングと言って、その中で予算全体、農林水産予算の方の伸びの話については全然注文つけないでその枠を決めている。私は、いろいろ言われるけれども、そこに大きな問題があるんじゃないかと思うんです。しかもそういう中で防衛予算は七・五%別枠、金額にして二兆六千億円、伸び額にして一千八百二億円です。当然この場で、大臣、軍事費を削ってでも日本の農業必要なんだと言って主張すべきじゃなかったですか。どうですか。
  71. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) やっぱりそのときの雰囲気というものもございまして、沈黙は金なりということもございまして、私はむしろ意識的に発言を実は飲み込んだわけでありまして、そのときは発言はいたしておりません。
  72. 下田京子

    ○下田京子君 発言してないということは、閣議了解で来年度の概算要求はゼロシーリングだということを認めたことになる。一言も発言しないで認めだということになる。まさに大臣の責任はそこにあるんです。沈黙は金なりだとかじゃないんですよ、いいですか。しかもですね、昨年の九十一国会で食糧自給力強化に関する決議がされていることは言うまでもなく御承知だと思うんです。来年度の予算ゼロシーリング決めておいて、どうやって農業の再建とか食糧の自給向上やるんですか。これはもう最大の問題ですよ。しかもその軍事費特別枠の問題も黙って認めたことになる。黙ってたということは認めたことになるんです。いま軍事費を伸ばしていくことが果たして平和につながりますか。生命の糧、国土を守る食糧政策、あるいは米価にこそお金を回すべきだということを一言主張すべきではなかったんですか。  しかも、いろいろ申されておりますけれどもね、いま過剰傾向はむしろ端的に言って昨年とことしては低いんですよ。しかも、財政事情でいけば、これまた予算全体ではことしは二兆円も国債減ってますでしょう。食管への一般繰入額だって一・四%とまさに農協農政始まって以来一番低くなっているでしょう。いまのその問題にしている売買逆ざやにしたって、これまた五十一年当時は三千六百六十七億円だったのが、ことしの見込みでも一千六百三十四億円でしょう。こうやって減っているわけですよ。やっぱり問題はこのゼロシーリングというところからきて、本当にじゃあ日本の農業再建のためにいま、大臣そのときは沈黙していたけれども、今後本当に具体的な再建の道をどうやろうとしているのか。本当に借金の中で苦しむ農民が自殺に追い込まれないような、そういう方向をきちっといま打ち出せるんですか。とすれば、米価据え置きというのは撤回すべきだ、こう思うんですが、再度答弁を求めて質問を終わります。
  73. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) まあ、ゼロシーリングで日本の財政再建をやることが内閣の至上命令であるということを決めるに当たりまして、おれのところは別だよと、こういうことを各閣僚が発言しておったんでは、その内閣において強力な目的を果たすことはむつかしいと、まあこういうふうに判断をし、そのゼロシーリングの中においてもやはり世論のパックを受け、そうして財政当局の理解を受け、そうしてまあ臨調からも筋の通った答申を受けるということを実行していくことの方がより私は責任者としてなすべきことと、こう考えてあのような態度をとった次第でございます。まあ自後そのような各種努力をさせていただいて、あのような先ほど申し上げたように答申をちょうだいした、こういうことでございます。これからも、予算編成に当たりましては全力を挙げてやってまいりたいと、こう思うわけでございます。  また、米価審議会に出しました諮問案につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、行政当局として、政府といたしましてはこれが最善の方策と、こういうことで出さしていただいておるということを重ねて申し上げる次第でございます。
  74. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、この米価についての政府の態度、方針、こういうものは矛盾とごまかしに満ちておると思うんです。といいますのは、生産米価の据え置きを今回諮問するというのは食管法に定められた生産費所得補償方式をなし崩しに転換しようとするものだ、こういう気がします。しかしながら、現在の米の需給事情とかあるいは財政事情から考えた場合に、やはり米価を上げられる現状にないこともこれまた事実です。私は、今回の生産米価の問題は単に米価の問題にとどまらず、食管制度あるいは農業政策の根幹に対して一つの大きな問題を提起しておると思うんです。現在の米の需給事情というものが米が余っておる、これはいままでの農業政策や食管制度によってやってきた政府が米の需給調整に失敗したということをあらわしておることにほかならない。  それから財政事情についても、高度成長の時代はどんどん税収がふえたから、この日本の自民党政府の農業政策の行き詰まりというものは表面化せずに来たわけです。ところが、現在は財政が非常に窮迫しておる。こういう中で、いままでの自民党流の農業政策というものは完全に行き詰まってきておる。だから、今回のこの米価というものを食管法や生産費所得補償方式から見る限り、政府のやり方というのは矛盾とごまかしてはないか。私はむしろ問われなければならないのは農業政策の基本であり食管制度の基本ではないか、このように考えるわけですけれども、大臣はどう考えられますか。
  75. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) まあ、戦後の日本の政権を担当さしていただいたわれわれ自由民主党、その自由民主党が行ってまいりました農政につきましては、その大筋においては私は田渕委員と見解を異にいたしておるわけでございます。  と申しますのは、見方によって違うわけでありますけれども、私どもとしては事食糧に関して一億国民にそう心配をさせたということは全くないと、終戦直後を除いてはもうほとんど不安を持つように至らしめたということは一度もないと、この事実をもってしましても私どもの食糧政策と申しますか、農業政策というものは、いろいろ紆余曲折、試行錯誤を繰り返した面は確かにあるわけでございますけれども、急速にこれだけの高度成長、経済成長を遂げる中で生産性の低い農業者をやっぱりぐんぐんとリードをして、そうして食糧供給に遺憾なからしめたということは、私は私どものやり方についてはそう大きな失敗はなかったのではないか。ただ、その食糧の消費の見通しという面において一つの過ちは、これはもう私も率直に認めないわけにはまいりません。そういうことで米の過剰という問題が起きたわけでありまして、この点についていま大きな苦労をいたしておるわけでございます。    〔委員長退席、理事坂元親男君着席〕 したがいまして、米価だけの問題じゃなくて農政上の問題であるという御指摘もあったわけでありますが、その点については私も同感と、こういうふうに申し上げたいと思います。
  76. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、食管制度の成果というものを全面的に否定しておるわけではありません。食管制度がきわめて大きな役割りを果たしてきたと思いますけれども、少なくとも米が過剰の状態になってきた、それから財政的な困難な要因がふえてきた、そういう中で十分対応し得なくなってきておるということも事実だと思うんです。  過去のことを言っても仕方がありませんけれども、これから政府が私は進めようとされております水田利用再編対策についても非常に大きな疑問を持っております。減反、転作政策について疑問は二つあるわけですけれども一つは減反政策によって農家そのものの生産性向上のための規模の拡大に逆行するという結果になる。特に生産性の高い米作に適しておる地域における農家において減反が強制される。これは生産の高い農家規模の不利益を押しつけることになるし、米の生産費をそれだけコストを高くすることになる。  それから、もう一つの問題は、転作の場合にいわゆる奨励金を出しておるわけでありますけれども財政負担というものさやがてこれは国の財政事情から応じ切れなくなるだろうと思うんです。五十六年度においても三千四百億円。それだけではなくて売買逆ざやというものがある。米の場合は一トン当たり二万一千円ですけれども、小麦の場合は一トン当たり十一万八千円。米に比べて五倍以上の売買逆ざやを生ずるわけです。大豆はどうか。大豆は食管制度というものは適用されておりませんけれども価格補てんは一トン当たり二十万五千円。私はこういうことを考えた場合に、米作をどんどんやめて小麦や大豆に転換すればするほど、国の財政負担というものはどんどんふくらんでいく。私はこの二つの面から見て、現在の水田利用再編対策は完全に行き詰まると思うんですね。この点はいかがですか。
  77. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 水田利用再編対策、五十三年度からおおむね十カ年の長期事業ということで進めておるわけでございます。これを進めておりますに当たりまして値、転作を契機といたしまして経営規模の拡大と水田の高度利用の促進というものを通じまして、高い生産性を有する農業経営の展開を図るという考えでやっておるわけでございます。    〔理事坂元親男君退席、委員長着席〕 このために転作をやります際にも、単に畑作物をつくってもらうということだけでございませんで、やはり地域ぐるみの計画転作というような形、さらに第二期からはこの上に地続きの団地、連担団地を仕組んでいきたいということで、団地化加算制度等も新しく取り入れたわけでございます。そういうことで、農用地利用増進事業の活用など等によりまして、中核農家への農用地利用の集積を進める、その際には、ただいまお話もございましたように、転作します大豆なり表なり、そういうものの団地化といいますか、集団化というものもやりますとともに、さらに稲作営農の面についてもやはりこの中核的農家への農用地利用、集積というというようなことも考えて、ともどもにやはり経営規模の拡大を図って、生産性の向上に努めていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、第二点の財政負担の問題でございますけれども、やはりこの水田利用再編対策を実施していきます際に、水田利用再編の奨励補助金等を交付をいたしております。これは何といいましても、やはり稲作はわが国農業の中心的地位を占めてきておるわけでございまして、これを他作物へ転換させていくということで、きわめて大きなやはり構造的変化を伴うわけでございます。農業者の理解と協力を得ながら進めていくということが何としても必要なわけでございまして、そういう観点から稲作所得と転作作物の所得のギャップというようなものも埋めていくと、その際に、先ほど申し上げましたように、定着性を高める角度で計画加算なり団地化加算ということで、生産性の高い転作営農ができるように工夫もいたしておるわけでございます。しかし、まあこの転作作物に要します財政負担、これはお米を食用として売買する場合の財政負担よりも大きいわけではございますけれども、いわゆる過剰米が発生しましてこれを処理する場合の負担よりはかなり小さいというふうに考えております。だから、このままでいいということではなしに、今後とも構造政策なり生産対策なり、価格流通対策等、種々の施策を総合的に推進いたしまして、転作作物の収益性を高めて、次第に奨励補助金依存を脱却する、脱却し得る、そういうような足腰の強い転作営農を育てていきたいというふうに考えて努力をいたしておるところでございます。
  78. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に大臣に一問お伺いしますけれども、将来の米価水準、目標ですね、大体どういう米価水準を目標とされるのか。それから日本の米作農業についてのビジョン、こういうものについてお伺いをしたいと思います。
  79. 亀岡高夫

    ○国務大臣(亀岡高夫君) 非常にむずかしい問題でございます。絵はすぐかけるわけでありますけれども、そこに到達するまでの手法は、米作の場合は非常に困難な要素を含んでおることも田渕委員、御承知のとおりでございます。それはやはり第二種兼業農家を初めとする現状から将来中核農家中心にして本当に信頼関係で結ばれた農村の地域社会を中心として田の、水田の集中化、経営の集中化を図っていくような方向にリードしなければならないと、こう思うわけでございます。その点につきましては、団体、行政庁、市町村、県等とも十分連絡をとりつつ、その方向にリードしなければならないということで昨年制定をしていただいた農用地利用増進法というものによって、混乱と摩擦をできるだけ少なくしつつ水田地帯のいわゆる構造、体制の合理化、近代化を実現をしていかなければならないと、これが私は水田農家の将来に対する大きな対策であろうと、こう考えます。と同時に、価格の問題は、その間においてやはり労働生産性並びに土地生産性というものが相当向上してくるわけでありますから、そういう中から、いわゆる需要と供給の中から一つの方向が実現して芽生えてくると、そういうことを期待をいたしておるわけでございます。そういうことになるまでには、五年かかりますか、私は十年以上を要するのではないかと、こう考えておるわけでありますが、私はそういう意味において日本の農業というものは大いに希望を持つことができると、こういう見方をいたしておるわけでございます。
  80. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 本件に対する午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  81. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十六年産生産者米価に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  82. 村沢牧

    ○村沢牧君 米価問題に入る前に一点だけ農業災害に関連をして質問をしておきます。  この春以来の霜の害、ひょう害によって農産物が多くの被害を受け、関係農民は政府に救済対策を要望してまいりました。本日の閣議において政府の方針が決定したようでありますが、被害の実態、政府の対応策について明らかにしてください。
  83. 矢崎市朗

    説明員(矢崎市朗君) 本年の五月の末から六月の上旬にかけまして、東北、北関東、東山等の地域を中心にいたしまして降霜、降ひょうによる被害が発生をいたしました。野菜、果樹等を中心でございますが、統計情報部の調査によりますと、被害見込み金額が約百六十億円ということになっております。  そこで、農林水産省といたしましては、すでに農業共済金の早期支払い等の指導をいたしておるわけでございますが 被害が甚大であることにかんがみまして天災融資法を発動することといたしまして、本日の閣議で政令が決定されたところでございます。これによりますと、融資総額は二十六億円を予定いたしまして、特別被害地域に指定することができる都道府県として青森、福島、群馬、長野等の七県を指定されておるところでございます。  なお、政令の公布及び施行は七月十七日を予定いたしておりまして、これによりまして被害農業者の天災融資に対する資金需要には十分に対応してまいる予定でございます。  なお、今回の災害に伴いまして自作農維持資金の融資枠の確保につきましての要望もございますが、これにつきましては現在関係県の被害の程度あるいは農業者の資金需要等につきましていろいろと実情を聴取しているところでございまして、これにより適切な措置を講ずるべく目下検討中でございます。
  84. 村沢牧

    ○村沢牧君 わかりましたが、被害農家の要望にこたえるように、今後さらに積極的なる対応を要請しておきます。  次に、米価に入りますが、ことしの米価算定は食管法の規定によって算定されたものであるとは言いがたい、先ほど私は大臣にも指摘をしたところであります。つまり、今日まで農林水産省の進めてきた価格決定のレールの上を走っているものであって、まさに仕組まれたものであるというふうに思います。そのレールは農政審答申であり、食管法の改正であります。農政審の答申は農産物価格の方向性として需給の調整機能を挙げていますが、こうした方針に基づいて三月の畜産物価格を据え置き、あるいは五月の繭糸価格の引き下げを行う。そして、今回は生産米価に関連をさせようとしているのではないか。こうしたレールの上でことしの米価据え置き、このことは最初から方向づけをされていたというふうに思いますが、どうですか。
  85. 石川弘

    説明員石川弘君) 米につきまして需給という問題が大変大事でございまして、基調といたしましては、先ほどから申し上げておりますとおり、相当大規模生産調整を必要としている。一方、消費が減退しておりまして、その過剰傾向が何としても縮まっていない。結果的には、本年から大変厳しい二期転作をせざるを得ないという実情にあるわけでございます。  そういうことでございますけれども、こういう需給事情というものをやはり生産費所得補償方式の中にも反映させまして米価を決定するということにつきましては、実は先ほどから申し上げておりますとおり、四十六年、七年、その他過去においてもこういうことをやっているわけでございます。もちろん農政審答申の中でも、そういう需給事情というものを十分反映して価格決定を行えというような趣旨がございますけれども、これはやはりそういう需給均衡いたしませんと、結果的には農業者の生産したものが十分消費者に喜んで消費していただける実情にはないし、結果的には農家の手取り等にも大きく影響するというようなことになるから、それをおそれての農政審での御指摘であろうと思っております。  それから、米価政策の中で、たとえば答申にございますように中核農家というものにうんと比重をかけて算定をしたらどうかというようなことも米価政策の中であり得るわけでございますけれども、私ども現実の問題といたしましては、直ちにそういう特定の比較的規模の大きい農家の再生産確保ということに割り切るには、さらに詰めるべきことが多いということでございますので、いままでとおり必要量方式という形で相当の農家数を対象とし、かつその生産費を用いるということで今回の算定をしているわけでございます。
  86. 村沢牧

    ○村沢牧君 農政審答申に基づいて今後の農政が進められていくというふうに思うわけだけれども、農産物の価格政策に需給調整の役割りを果たさせようとするこの方針について、単に米価だけでなくて、今後の価格政策について農林水産省としてはどのように考え、どういう方針を持っておりますか。
  87. 石川弘

    説明員石川弘君) 特に米価につきましては、いわゆる完全な需給均衡価格というような市場原理を使いました法則ではなくて、現行の生産費所得補償方式という形で米価算定いたしているわけでございますが、そういう意味で、いわゆる需給均衡というものが市場価格というような意味でございますれば、私どもそういう意味需給均衡価格の必要はないと考えているわけでございます。したがいまして、現在やっておりますように生産費所得補償方式、いわゆる食管法三条の二項の規定を使った算定をやるわけでございますが、そうかと申しまして、そういう算定します要素の中に需給の問題を完全に外して考えるというわけにはいかぬ。そういう意味で、現行の食管の制度の中で、そのときどきに必要な需給要素を反映させながら価格決定をしていく。若干歯切れの悪い言い方になろうかと思いますが、農政審答申で言っておりますのも、いわゆる自由な価格形成ということを求めているのではなくて、農家所得の確保とか、まあいろんな要素を加味しながらも、やはり需給の問題を離れた形で価格形成が行われます場合に、往々にして過剰あるいはその過剰に対してこれを処理するための負担というようなものが累積をするということを懸念をいたしておると考えておるわけでございまして、私ども他の価格政策においても、価格政策というものをとります以上は、それは何らかの意味で普通の自由な価格形成からある種の隔離をするわけでございますから、そういうことをしながらも、一面需給均衡ということが持ちます、やはり農家にとっては本当に消費者に必要な物が生産されて、それが消費者に適切なものとして受け入れられる、そういうことを目指して米以外についてもやる必要があろうかと思っております。
  88. 村沢牧

    ○村沢牧君 米価を据え置いたりあるいは引き下げることによって米の需給の調整を図ろうとすることには大変無理があると思う。なぜならば、生産を減らすつもりで米価を下げても、結果的には兼業農家の米づくりは減らない、また専業農家所得は低下して農業が衰退をしていく、このことは現実が物語っている。農産物は天候や土地条件によって支配をされるので、価格が上がったからといって急激に生産を増大させるわけにはいかない。また需要の面から見ても、米価が上がったからといって米を食べるのをやめるわけにはいかないし、あるいは逆に米価が下がったからといって大量に食べるということもできない。したがって、需給調整を米価の面だけに頼ってやるということは大変な誤りだと思うが、どうですか、
  89. 石川弘

    説明員石川弘君) まず、生産米価の観点から申し上げますと、実はこの米価算定の歴史も大変長い歴史がございまして、生産費所得補償方式を採用いたしました三十五年以来いろんな形で、あるときには生産を刺激的に、あるときは生産を抑制的に運用したわけでございますが、よく言われます最も生産刺激的な米価というのは昭和四十二年にとられました算定方式でございます。この算定方式は、その時点においてやはり需給均衡ということよりも、どちらかというと生産を刺激してというニュアンスがあったかと思いますが、そういうものの結果、やはり生産は相当大幅に刺激されて、御承知のようにその後数年にして七百万トンを超える過剰が生まれたというような事実もございます。その後四十六年、四十七年という、農家の方々にとっては大変厳しい算定方式がとられた時期がございますが、これを機にいたしまして、御承知のように、一時は単年度需給均衡に大変近づくという事態が起こりました。たまたま、御承知のような石油ショック、その他の世界穀物事情等もございまして減反を緩めるやら、あるいは算定方式に何らかの改善も加えたというようなこともございまして、再び過剰を迎えたわけでございますが、やはり私はこのような過去の経過を見ましても、米価というものがやはりそういう生産を刺激したりあるいは抑制したりすることに若干の要素としてやっぱり動いている。先生がおっしゃいますように、自由な価格ではございませんから、このことだけではなくて、あるいは限度数量の問題だとか、あるいはいま行っております水田利用再編といったその他の施策と相まってではございますが、やはり価格にそういう需給を動かす大きな要素があることは否めないと思っております。  ただ、先生も御指摘のとおり、たとえば非常に規模が小さくて、たとえば三反未満というような農家で、ほとんど農業の収入では生活ができないという層につきましては、すでに現在の米価におきまして合理的に生産いたしましたとしても、所得が確保ができない。それにもかかわらず稲作は続けられておるというような事情もございます。  したがいまして、価格だけが唯一の手段ではございませんが、そういういわゆる零細な農家層におきます米生産の問題につきましては、けさほども大臣から申し上げましたように、現在とっております構造政策とか、そういうものを使いまして極力効率的な生産の担い手の方に集中をしていくというようなことが必要かと思っております。
  90. 村沢牧

    ○村沢牧君 米価が米の需給の調整に影響を来すことは、全面的に否定するものじゃありません。一部はあるでしょうけれども、しかし、需給の調整は多くのものが構造政策であり、その他の農業政策であるわけで、こういうことはいま次長も認めておるところですけれども、そうだとするならば需給調整を図らなければならないから米価は据え置くんだと、需給調整を前面に出してこれを米価据え置きの根拠にすることは、これは適当でない、そのように思いますが、どうなんですか。  それで、ちょっとお願いしておきますが、時間の関係もありますので、答弁は簡潔にお願いします。
  91. 石川弘

    説明員石川弘君) 私申し上げましたのは、そういう全体の施策を通じて需給均衡を達成するわけでございますが、御承知のとおり生産費所得補償方式といういまの算定方式の中では、いわゆる現実に支払われますものはすべて算入をするという方式でございますから、そういう需給を調整するような要素を若干でも出しますものはいわゆる評価がえをする場所でございます。そういう場所でやはりそういう需給事情というものを若干なりともいままでも調整してまいりましたし、そのことが結果的には米の生産をコントロールすることに大変役立ってきたということを申し上げたいわけでございます。
  92. 村沢牧

    ○村沢牧君 次に食管法との関係なんだけれども、さきの国会でわれわれの反対にもかかわらず食管法は改正をされた。この改正食管法は、これから基本計画において政府の買い入れる米の数量を決めなければならない。その際、米価を上げておけば政府財政負担が多くなる。さりとて政府の買い入れ数量を少なくして自主流通米をこれ以上ふやすわけにはいかない。そこで、米価もだんだん抑制していこう、こういう計算も出てくると思いますが、改正された食管法と、運用の面と、今回の米価の扱い、将来の米価についてはどういうふうに考えますか。
  93. 石川弘

    説明員石川弘君) 食管法審議の際にも長官から御答弁いたしましたように、新食管法におきます基本計画といいますのは、どういうところにどのような需要があるか、これは単に食用だけではありません。加工用等も含めて、それが品質別等も含めてどういうような需要があるかということを明らかにすると同時に、それに対して各年、国として生産者の方にどのような生産をしていただくかということをお示しするものでございます。それ以外に、御承知のように、たとえば年度をわたりまして備蓄をどうするかとか、あるいは消費拡大をどうするかということも書いてまいりたいと思いますが、これを決めます際に米価を抑制的にするとかあるいは米価を刺激的にするとか、そういう性質の要素はこの中には書き込む余地のないところだと考えております。
  94. 村沢牧

    ○村沢牧君 もちろん政省令によって米価を抑制するなんということは書けないに決まっている。書けないけれども、やっぱり米価が高くなってくれば政府の買い入れる数量を減らしてくる、あるいは自主流通米をふやしたり等級別格差を大きくして競争させる、そういうことによって生産米価は必然的に下がってくる、そういう要素を持つというふうに思うんですけれども米価の決定の方針と食管法の関係とは、これは無関係ではない、そのように指摘せざるを得ないんですが、どうですか。
  95. 石川弘

    説明員石川弘君) 量と価格ということは、無関係ではないといえば無関係ではないわけでございますけれども、少なくとも新食管法で基本計画に書かれるべきことということの中には、私がいま申し上げましたように価格水準をどうするとかという、そういうことを誘導するような要素は書く項目がございません、あの中には。
  96. 村沢牧

    ○村沢牧君 それは知っているんだよ。
  97. 石川弘

    説明員石川弘君) そういうことでございますから、したがって私ども価格決定の際においては、こういう価格で三条の規定を使って米審等に諮問をして価格を決定していくわけでございますから、そういう形で価格を決定していきたいと思っておりまして、これは前の食管法の御審議の際にもありましたと思いますが、こういう基本計画なるものがそういう価格を誘導するような意味での計画ではないと考えております。
  98. 村沢牧

    ○村沢牧君 食管法の精神と明文規定を、忠実に厳正にこれを守っていくとするならば、米価は再生産をすることを旨として生産費所得補償方式で決めなきゃいけない。しかし、今回の諮問米価はそういう形になっておらない。  先回の国会で食管法審議の際に、当委員会は、「米穀政府買価格の決定に当たっては、従来どおり法の定めるところにより、米穀の再生産を確保することを旨として定める」こと云々という附帯決議をしておるんです。当委員会で決議したこの精神に対して、今度の米価算定に当たってはどのように反映しているんですか。
  99. 石川弘

    説明員石川弘君) 本年六月四日の当委員会の附帯決議の第四に、「米穀政府買価格の決定に当たっては、従来どおり法の定めるところにより、米穀の再生産を確保することを旨として定めるとともに、」という附帯決議をいただいております。私ども、そういう附帯決議の趣旨に従いまして今回の米価諮問もいたしているわけでございます。  要は、先生のおっしゃいます今回の算定方式の中で、たとえば家族労働費評価等を変えましたことについて、必ずしもこの趣旨に合わないんではないかという御指摘かと思いますが、私ども従来においても、需給事情が非常に過剰が重大になりました事態におきましても採用したことのあります算定要素算定しているわけでございまして、御指摘の附帯決議の趣旨に沿っている諮問ではなかろうかと考えております。
  100. 村沢牧

    ○村沢牧君 この附帯決議の精神に沿っておらないんですよ。そのことを後ほどだんだん指摘してまいりますけれども。  そこで、食糧庁や大臣は、今回のような諮問方式あるいは算定方式も過去においてやったことがあると、たびたびこういう発言をしているんですけれども、過去においてやって、いいことだったら踏襲してもいいけれども、悪いことを、農民から、農業団体から批判を受けているようなことをあえて踏襲しなければならない、そんな理屈にならないと思うんですが、どうですか。
  101. 石川弘

    説明員石川弘君) 実は四十六年ないし四十七年にこの方式を提案いたしました際にも強い御批判があったことを承知をいたしております。しかし、やはりそういう厳しい算定方式であったかもしれませんが、その後におきまして米の需給均衡はかなり達成に近づいてきた。御承知のように一次過剰が終わったと判断された時期がございました。  したがいまして、やはりそういう厳しい算定方式がとは思いますが、米の需給均衡に近づくと申しますか、それを達成するためにくぐり抜けなければならない非常に重大な一つの時期だと考えておりまして、私どもこういう算定方式と申しますか要素をとりますことには、いろいろと内部で検討もいたしてみたわけでございます。  たとえばこういう形でなく、先ほどちょっと御指摘がありましたような、むしろ階層というようなことと申しますか、本当に米の生産に依存する層の生産費というようなものを抽出することも内静で論議はいたしましたけれども、やはりそういうところに踏み切るにはまだまだいろいろと論議を尽くすべきところがあると、むしろ従来採用しましたような方式の中で何とかそういう関係者の理解が得られる方式がなかろうかというようなことで採用したわけでございます。
  102. 村沢牧

    ○村沢牧君 米価算定するに当たって内部で論議をすることは当然のことなんだけれども、しかし食糧庁は、本年度米価を据え置く、その方針、前提の上に立って論議をし、そのためにはどういう算式がいいのか、どういう要素がいいのか、そのことを検討したにすぎないと思うんです。あなたは最初から米価を据え置くという方針はなかったと、そういうふうに言えますか。と同時に、あなたたちが適当と思われる、正しいと思われる算定方式を採用したらこういう形になったんだと、そういうふうに言えるんですか、どちらですか。
  103. 石川弘

    説明員石川弘君) 今回の算定当たりましては、非常に長い時間をかけておりまして、その間に初めから特定の結論を得るようにという指示は全く受けておりません。私どもとすれば、いろんな組み合わせを考えながら算定をしてみたわけでございます。
  104. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣の過去における発言を見ても、食糧庁のあなたたちの態度を見ても、ことしの米価は据え置くんだと、上げる気持ちはさらさらなかった。ここに「米をめぐる事情」という農林水産省が発表した資料がありますけれども、この中身を見ても、これが農林水産省の資料かと疑いたくなるような資料ですね。まさに、いつも大蔵省が出している資料と全く同じなんです。ですからあなたたちは、米価をこれだから据え置きしなければならないということだけ取り上げて、この資料をあちこちに配っているわけですね。一体、こんな資料何でつくったんですか。
  105. 石川弘

    説明員石川弘君) 米価につきましては、いろいろ関係者の間で論議がありまして、その周辺事情につきましては、極力コンセンサスを得ておくことが米価の問題を解決するのに役立つと考えております。  私ども、いま御指摘のように、財政当局がつくったような資料ではないかという御指摘もあるところで受けましたけれども、やはり私ども米価を担当いたします者が最もそういう意味で的確なデータを持って説得する必要があると。たとえば、この中で農家にとって不利なようなことを書いてあるではないかというような御指摘も間々ありましたけれども、たとえば家族労働の問題一つ取り上げましても、見方によっては都市労働者を上回るという数字も出しながら、あるいは従業者一人当たりというのは現段階ではまだ農村の方が低いというような数字も出しておりますから、そういう意味で、一方的にどちらに導こうという趣旨で書いたものではございません。
  106. 村沢牧

    ○村沢牧君 いずれにしても、この資料を見れば、あなたたちが当初から米価を据え置きたい、そのために参考資料として出したんだと、だれが見たってそうとれるんですよ。これは農水省のやることじゃないんだ、こんなことは。  次の問題ですけれども、米は過剰基調にあるから米価を上げるわけにはいかない、先ほど大臣がもう言っておるんです。過剰基調にあるということは、ことし、明年過剰であるというのか、それとも将来過剰になるおそれがあるというのか、どっちなんですか。
  107. 石川弘

    説明員石川弘君) 私ども基調と申しておりますのは、どちらかと言いますと、いまの日本の米の生産をする能力と需要の構造と申しますか、要するにつくろうと思えばつくれる能力と、それから現に消費をされるであろう需要との間に大きな乖離があると、そこに一番問題意識を持っておりまして、先ほどから申し上げましたように、生産調整をさらに強めなければならないというような姿ということが一つのそのメルクマールになろうかと思います。
  108. 村沢牧

    ○村沢牧君 それでは、五十六年度米穀年度における米の持ち越し量、これは約八十万トンという食糧庁の数字も出ている。五十六年度における米の生産量は幾らか、そして五十七年度の消費量の見込みは幾らか、その数字を発表してください。
  109. 石川弘

    説明員石川弘君) 五十六年度におきまして潜在生産量、要するに、つくろうと思えばつくれると考えられます数量は千三百七十五万トンでございます。それに対しまして総需要量と申しますのは千七十万トン程度と私ども考えております。しかしながら、御承知のように昨年の冷害ということもございまして、その総需要量千七十万トンと同じ数字生産を予定はいたしておりませんで、千八十万トンが生産の予定の数量でございます。その結果、生産調整を要する数量が二百九十五万トンとなっているわけでございます。
  110. 村沢牧

    ○村沢牧君 そうすると、八十万トン繰り越して、五十六年に千八十万トン生産ができる。消費はどのくらい要るんですか。
  111. 石川弘

    説明員石川弘君) これは年度での量でございますが、これは消費といいますのは、総消費量は千七十万トンを見込んでいるわけでございます。その中で農家消費等と申します、農家の消費とその周辺にありますものを三百二十万トン、それから政府米と自主流通米を合わせました需要量が七百五十万トンと考えているわけでございます。政府の買い入れ量は四百八十万トン、予約限度数量は七百六十万トンでございます。
  112. 村沢牧

    ○村沢牧君 いろいろ数字を並べましたが、八十万トン繰り越して、そして五十六年千八十万トンできる、合計千百六十万トンですね。それで消費が千七十万トン。そうすると残るところは幾らですか、九十万トンしかないじゃないですか。
  113. 石川弘

    説明員石川弘君) ちょっと時点が違いますんで、もう少し別の姿で申し上げます。
  114. 村沢牧

    ○村沢牧君 別って、米穀年度で言ってください、じゃ、ぴしっと。
  115. 石川弘

    説明員石川弘君) はい。米穀年度で申し上げますと、ことしの四月一日に政府が持っておりました米の数量……。
  116. 村沢牧

    ○村沢牧君 いや、十月ですよ。十月末の、ことしの。
  117. 石川弘

    説明員石川弘君) 十月末でよろしゅうございますか。——十月末に持っているであろう米の量は現在七百十五万トンと考えておりますが、その中で五十年ないし五十二年産米が二百五十万トン……
  118. 村沢牧

    ○村沢牧君 そんなこと聞いているんじゃないよ。だからぼくは、五十年、また過剰米を後から聞きますよ。いいですよ、過剰米後から聞くから。  あなたたちが言っているように、五十六米穀年度から五十七年米穀年度へ持ち越し量は八十万トン、そうでしょう。それに対して五十六年度生産できる米が千八十万トン、でしょう。そうすると合計千百六十万トンになる。消費する量は、いろいろ入れても。全部入れても消費量は千七十万トンということでしょう。それじゃ九十万トンしか残らぬじゃないか、五十七年度分は。仮に冷害が何にもなくてもこういうことなんだ。間違いありますか、それ、違っているんですか。
  119. 石川弘

    説明員石川弘君) 先生おっしゃいます年度末の持ち越してございますれば、いまもう一度申し上げますが、ことしの四月一日からどのように減っていくかということを申し上げますと……
  120. 村沢牧

    ○村沢牧君 そんなこと聞いているんじゃないよ。だから、十月末には幾ら持ち込せるんだと。
  121. 石川弘

    説明員石川弘君) ですから、四月から十月末までどのようにいくかということを申し上げます。  いまおっしゃいましたのは、私ども五十四年、五十五年産米をもって操作しても八十万トンないし九十万トン年度末に持ち越すということを申し上げておりますんで、それにつきましては四月一日に五十四年産米を六十万トン、五十五年産米を二百九十一万トン持っておったわけでございます。これから十月一日までの政府の売り渡し予定数量を引きまして、五十五年産米、これは若干五十四年産米と五十五年産米の入れかわりはあるかもしれませんが、大半五十五年産米で八十ないし九十万トン持つということを申し上げているわけでございます。これは全体の需給という問題じゃなくて、現に持っているものがどのように減っていくかという観点からも八十ないし九十万トンは持ち越せるということでございます。
  122. 村沢牧

    ○村沢牧君 それで、八十万トン、九十万トン持ち越すと。食管法審議の際に食糧庁は、米の備蓄量は二百万程度必要だと言っている、しかもそれは食糧に供給することができる米だと。備蓄なんかと比べてみて、全然ないじゃないですか。
  123. 石川弘

    説明員石川弘君) いま申し上げましたのは、五十四年産米と五十五年産米で八、九十万トン持つと申し上げました。これは大災害の後の二年目にしても、なおかつ五十四年と五十五年産だけで、八、九十万トンを持てるということでございます。したがいまして、こういう大災害の後になおかつ前年産米を二百万トン以上持つということになりますれば、平常時には二百万トンが必ず過剰で飛び出すような需給操作をせざるを得ないわけでございます。ですから今度の米穀年度末の姿は、今後いろいろな災害が起こってまいります場合も、災害の翌年にどれくらい持ちこたえられるかという数字を申し上げているわけでございまして、したがいまして、この時点で二百万トンを持つというような形になっているとすれば、大災害の後にしてもなおかつ二百万トン持つということでございますから、逆に災害なかりせば、それをはるかに上回る数字を持つというような計画になりまして、これでは大変大きな過剰処理をしょっちゅうしなければならない。私ども法案審議の際にもいろいろ申し上げましたのは、そういう意味で災害の後で、持ち越し量が減るのは、これはこういう形としてはやむを得ぬわけでございますが、その場合でも何とかしのげる方法として積み上げ備蓄等の手法を考えたいということを申し上げているわけでございます。  それから参考までに申し上げますが、そういう意味では五十四年産、五十五年産以外に、ことしの米穀年度末に三百五十万トンの米、その中でも特に五十三年産についてはさらにその中に百万トンの保有をしているわけでございます。
  124. 村沢牧

    ○村沢牧君 それでは、五十六年、ことし冷害があったとするならば、冷害の程度にもよるけれども、これは持ち越しする星ももちろんなくなってくるし、備蓄なんということは全然考えることできないじゃないですか。どうなんですか。
  125. 石川弘

    説明員石川弘君) 私ども備蓄を考えます場合に、災害の頻度ということをいろいろ考えて見ております。いままでは、災害の頻度のことを考えれば考えるほど備蓄量が多くなるわけでございますが、戦後の食管のいろんな運営の中でも、どちらかといえばそういうものが積み重なって、災害が積み重なって持ち越し量が少なくなるというよりも、平年作以上になって積み上がってきたというのがいままでの管理の歴史でございます。  私どもそうは言うものの、万が一のことに備えていろいろ備蓄方策を考えているわけでございまして、いま申し上げましたように、この八十、九十に、さらに五十六年の生産調整におきましてはこういう災害の事態も考慮しまして、四万六千ヘクタール、約二十五万トンの生産が単年度需給を上回りますように計画を組んであるわけでございます。合わせますと、これも必ずそうなるということではございませんが、百万トン程度のものを年度末に持って操作をできるという態勢にしてありますんで、過去におきまして昨年のような大規模な災害が二年連続したことは全くございませんが、その程度のことが来ました場合でもなおかつ単年度需給はできる。もちろんその後どうするかということになりますれば、万が一の話そういうことが起これば、当然生産調整を緩めるとかいろんなことが必要でございましょうが、そういう意味で私どもはいまの持ち越しの規模というのは大変大きい規模であると思う。むしろ過去六百万トンないし七百万トンが積み上げられまして、一兆数千億の過剰処理が必要となったということは、どちらかといいますと政府が予想しています以上に生産は実は伸びており、かつ消費が減退したことの積み重ねでございますから、この新しい備蓄を考えます際にも、そういう万が一のことを考えますと同時に、やはりそれがまたしても第三次過剰を積み出すような要因になってはいかぬと思っておりますので、その辺がこれから考えます新備蓄の一番大事なところではないかということで、現在検討しているところでございます。
  126. 村沢牧

    ○村沢牧君 だって、万が一災害にならないという保障はどこにもないわけです。あなた、食糧庁次長、ことしは大丈夫だと言い切れますか、言えないでしょう。そうすれば、単年度五十七年何とかできるかもしれぬけれども、そのうち備蓄も全然なくなっちゃう。ですから、水余った余ったなんて、そんな宣伝すべきじゃない。  そこで、関連して伺うけれども、従来政府考え方は、いわゆる過剰米五十三年度米は供給に供しない、つまり配給しない、そういう方針をとっておったんですけれども現実には五十三年度米をどんどん出している。五十三年度米を放出する理由とその数量、販売の方法、五十三年度米がいままで何トンあって、いままで何トン放出したのか、それを明らかにしてください。
  127. 石川弘

    説明員石川弘君) 五十三年産米はことしの四月一日現在で百十九万トンの保有をいたしております。百十九万トンのうち十九万トンは低温倉庫に保管されました品位の高いものでございます。私ども五十三年産米を操作の対象として特に量として考えたことはございませんが、本年の米の操作の中で御承知のように、昨年は災害がございまして、量としては確保いたしておりますが、米の品位ということにつきましては、やはりどうしても災害年は低いという事態がございます。特に今回の操作の中で比較的四類、五類という米を大きく操作に使わざるを得ない、五十四年産を使わざるを得ないというようなことがございまして、実は五十三年、五十四年と米が大量に余っておりました中で比較的需要者側の要求というものをそのままつなぐような、どちらかというと品位の高い米がほしいということであれば、それをどんどん出すというような操作をしてきたわけでございます。こういうように米の量が充足いたしておりましても、品位の問題、品質の問題でいろいろ問題が出てきた場合に、どのように操作するかというようなことをいろいろ考えてきたわけでございますが、都道府県あるいは関係の業者の方から、自県にたとえば保管をしております低温保管の五十三年産米というのをぜひ使いたい、食味その他においても決して悪くはないということで使いたいというような要請も出てまいりました。私どもそういう意味で量を補うというよりも、そういう質的な問題を円滑に解決したいということで、最近都道府県等にそういう要請があるならば、そういう要請の範囲内で五十三年低温古米について配給の用に供することとするということをしたわけでございます。現在申し込んでおりますのは、現段階では五万トン程度と聞いておりますけれども、これは若干さらに動くかもしれません。そういうことで五十三年米をまず使ったわけでございます。  それから全然別途の話として、従来からいわゆる二年古米を過ぎましたものにつきまして、徳用上米原料、これは業務用でございますが、徳用上米の原料として使うということが行われておったわけでございます。その徳用上米原料として五十三年産の常温のものについても、これは価格が相当安いわけでございますが、そういう販売をするということがございますが、これは月間三千トン程度でございまして、量としては微々たるものでございます。
  128. 村沢牧

    ○村沢牧君 いろいろ説明あったんだけれども、五十二年度米は百十九万トン持ち越した、それでこの五十六米穀年度末には五十三年度米は幾ら残るんですか。もう数字だけでいいですよ、説明は。
  129. 石川弘

    説明員石川弘君) 私どもは十九万トンの低温保管米は量としては使われるんではないかと想定はいたしておりますが、先ほど申しましたように、現実いま申し込まれております量は五万トン前後でございます。
  130. 村沢牧

    ○村沢牧君 そうすると、十九万トンと五万トン、二十四万トンを五十三年度米を放出して、あとは残っていくという理解でいいですね、繰り越していくと。
  131. 石川弘

    説明員石川弘君) 多分そういうような状況米穀年度末を迎えると思います。
  132. 村沢牧

    ○村沢牧君 過日の新聞では、五十三年度米は百万トン出していくんだという報道がされているんですけれども、これもあながち新聞記者がうがった見方をしているわけじゃないと思う。食糧庁かどっかそういう数字が出ていると思うんですがね。これは十月末にならないとわからぬから、その論議はやめましょう。  それでは、いわゆる過剰米の処理計画、これは五十六年度末の過剰米は一体幾ら残るんですか。その見込み数量と過剰米は五十年から五十三年までの米である、その年度末の数量明らかにしてください。数量だけで結構です。
  133. 石川弘

    説明員石川弘君) 五十六米穀年度末に五十年産ないし五十二年産で二百五十万トン、五十三年産米は先ほど言いましたもし百万トンでございますれば百万トンでございますから、合計三百五十万トンに……
  134. 村沢牧

    ○村沢牧君 ゆっくり説明してください。
  135. 石川弘

    説明員石川弘君) 五十年産から五十二年産で約二百五十万トンと考えております。それから五十三年産米、先ほど言いました百十九万トンのうち十九万トンが動くと考え、動くといいますか、そういう低温古米が使われると考えまして想定いたしますと百万トンでございますので、総計約三百五十万トンと考えております。
  136. 村沢牧

    ○村沢牧君 今度は予算の面から聞きましょう。  本年度予算の中でこの内容明らかにしていることは、五十四年に六百五十万トンの過剰米があったと、五十四、五年で二百三十四万トン処理して五十六年の当初には四百十六万トン残っておりますと。それで五十六年に百二十万トン工業用、輸出用、飼料用で処理するので五十六年度末には二百九十六万トン残りますと、こういう数字を出しているんですけれども、このとおり行きますか。この二百九十六万トン残るとすればその残った米の年度別の数量言ってください。
  137. 石川弘

    説明員石川弘君) ちょっと恐れ入りますが、いまの御指摘はその三百五十万トンの中身を年産別にという御趣旨でございますか。
  138. 村沢牧

    ○村沢牧君 ことしの予算編成のこの計画の中では、五十六年度末には二百九十六万トン過剰米が残りますと、こういうことを出しているわけですね。そのように行くのかどうか、それ以上もっと、そんなに残らないかどうか。二百九十六万トン残るとすれば、年度別の五十年度の米は幾ら残って、五十三年が幾ら残りますというその見込みについて明らかにしてください。
  139. 石川弘

    説明員石川弘君) 予算書に書いてありますのは会計年度末の数量でございます。いま私が申しましたのは……
  140. 村沢牧

    ○村沢牧君 だから会計年度末のことを聞いているんです。
  141. 石川弘

    説明員石川弘君) ですから、会計年度末のあの予定数量には達成すると思っております。
  142. 村沢牧

    ○村沢牧君 それじゃね、五十六年度末、来年の三月には二百九十六万トン過剰米が残っている、五十年から五十三年の米が残っている。それじゃ年度別の内訳を示してくださいよ。
  143. 石川弘

    説明員石川弘君) 五十六年度末の年産別の残り量は五十一年産米を九十三万トン、五十二年産米が九十五万トン、五十三年産米が百八万トンという想定をいたして計算をしていたわけでございます。
  144. 村沢牧

    ○村沢牧君 だって五十三年度米が百十九万トンあったと、それを十九万トン引いた、五万トン引いた、今度もまた出してきましたと言えばこれは残らぬじゃないですか、百八万というのは。どういう計算で出てくるんですか。
  145. 石川弘

    説明員石川弘君) 古米処理は年産の古いものから処理しているわけでございますから、五十三年産米が処理の順序として一番遅いのと、それから現在……
  146. 村沢牧

    ○村沢牧君 それはわかっているけれども、あなたの言う数字が先ほど言った数字とくっつかないということなんだよ。五十三年度産が百八万トンなんて残らなくなる。出しているんですか、現実。じゃ、伺いますよ次長。
  147. 石川弘

    説明員石川弘君) ちょっとお待ちください。——先生が御指摘になっておりますのは予算上、予算の積算のときにどのような形でなるかということをわれわれが積算をしておりまして……
  148. 村沢牧

    ○村沢牧君 いいですよ、わかるように言いますよ、待ってください。  五十六年度の古米の処理計画は工業用に三十万トン、輸出用に四十万トン、飼料用に五十万トン、計百二十万トンを処理しますということになっている。食糧用に処理するなんということは計画になかったんです。それを食糧用に処理しているんですから、この過剰米だって二百九十六万トンなんて残らないでしょう。それを言っておるんですよ。
  149. 石川弘

    説明員石川弘君) 古米処理と申しますのは、食用に充てられないという場合に古米処理にしていいということでございまして、五十三年産米を全部古米処理すべしという制度ではございません。現に、私どもの五十三年産米の一部、ごく一部でございますが、そのごく一部を食用に充てるようなことをしておりますのは、先ほどから何度も申し上げておりますように量を補おうということではございませんで、むしろ私どもは当初五十四年産ないし五十五年産で操作ができるという前提をしておりましたけれども、要するに需要者のサイドからある種の米について、これよりも自分の県の倉庫にあるこういう低温古米を使った方が消費者の方々からも喜ばれるんだというそういう強い要請がございまして、ごく一部についてやったわけでございまして、五十三年産米を何か食用に大幅に向けて需給数量を落としているということではございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  150. 村沢牧

    ○村沢牧君 私はそんなことを言っているんじゃなくて、このように処理していけば、皆さんが過剰米たくさん持っていますと言ったってある分は食糧に回しているんだから、そんなに大々的に宣伝すべきものじゃない。と同時に、いわゆる過剰米は食糧に供給することのできる米じゃないんですよ。ですから、米が余った、余った、余るんだというようなことを宣伝し過ぎると思うんですよ。本当にあなたは来年絶対大丈夫だと、過剰米を食糧用に供給しなくてもこの単年度需給、供給図ってさらに五十七米穀年度から五十八米穀年度に繰り越す米が十分持っていると言い切れますか。
  151. 石川弘

    説明員石川弘君) 私どもは、御承知のように主食用でございますれば、買いますときに二十八万ないし九万という価格で買ったものを過剰処理をいたしますればどうやりましても十万程度、御承知のようにたとえば工業用にしましても十四万とかあるいは十一万と、輸出にしましても十万とか、えさにいたしますれば三万とか四万という価格で処理をいたしまして、その結果、かなり大きな財政負担、国民の税金を使うということになりますから、そういう意味で私ども、五十三年産の中に需要者サイドからも決していやがれないでむしろ喜ばれて使えるものがあれば極力、これも若干値段は安くなりますけれども、主食用に回すのがやっぱり必要ではないかということで操作をしているわけでございます。  それから、先生がおっしゃいました、ことしの年度末について十分持っていけるかということにつきましては私どもは確信を持っております。
  152. 村沢牧

    ○村沢牧君 そこで、米は過剰基調にある、だから現在はそれほど楽観を許せない状況であるけれども、やっぱり過剰になりそうだ、そういう説明も先ほどからしているんですけれども、一体あなたたちはこの水田利用再編成のために年間三千億以上の金を投入して何のために転作をしているんだ。つまり、五十五年が五十三万五千ヘクタール、五十六年は六十三万一千ヘクタール、五十七年から五十八年には六十七万七千ヘクタールに減反をする、そして将来は八十万ヘクタールまで持っていこうとする、これだけ持っていく、しかし過剰になるんだということはどういうことなんだ。それじゃ、この三千億以上の金を使ってやっても米の需給調整というのは単年度できないんですか。そうなるとすれば、水田利用の転作なんということは考え方おかしくなってくる。どうなんですか、それは。
  153. 石川弘

    説明員石川弘君) 私は過去の四十六、七年の歴史を見ましても、やはり大変つらいことではございますが、こういうことをした結果、単年度需給に近づいてきたという実績を持っております。したがいまして、私どもいま三千億、相当大変大きな財政負担をしていることもそういうことを達成するための手法としてやむを得ないんだと、何かこういうことをやって永遠に過剰ができてくるというものではなくて、現実にやはり生産のサイドなり需要のサイドなりに変化が起こって需給均衡に近づくということを期待しておるわけでございまして、決してこういう方策をしながらいつまでたっても需給均衡をしないということには考えておりません。
  154. 村沢牧

    ○村沢牧君 食糧庁の次長にそのような答弁を求めても無理だと思うんです。  審議官、あなたの方ではこの水田利用再編成をやって面積を拡大し、なおかつ国費も投入している、ということは、米が過剰にならないように、過剰基調にならないようにやっているんじゃないですか。これをやっても過剰になるんだ、過剰基調だと言うならば、一体何のためにこんなことをするんですか。
  155. 高畑三夫

    説明員(高畑三夫君) 水田利用再編対策につきましては、米の需給均衡を図りつつ、需要の動向に安定的に即応し得るような農業生産構造を実現するということを目的に、まあおおむね十年の長期的な事業として五十三年度から実施しておるわけでございます。  その基本的な考え方といたしましては、潜在的な米の生産力につきまして、米の毎期ごとの需要量に見合った米の生産をし、オーバーする分につきましては、転作等地への転換を図るという仕組みできております。したがいまして、もちろん第二期対策、五十六年度から三年間実施しておるわけでございますが、毎年度需給均衡を図りつつ、長期的にも需給均衡が図られるような目的で進めておるわけでございます。  したがいまして、転作を毎年度実施いたしました結果として、単年度需給が得られるということをめどに実施するわけでございますが、やはりこの水田利用再編対策の実施期間中におきましては、潜在的な米の生産力が第二期対策でございますと、まさに六十七万七千ヘクタール分あるということでございます。これにつきましては転作奨励金を交付いたしまして、理解と協力のもとに転作等を進めていただいておるわけでございますが、基本的にそういうやはり状況で単年度需給を進めていくというのが水田利用再編対策のねらいであるというふうに理解しております。
  156. 村沢牧

    ○村沢牧君 だから農蚕園芸局の方では、単年度需給を進めていくために水田利用再編政策をやっているんだと。にもかかわらず食糧庁の方は、米は過剰だ、過剰基調になる、今後も過剰になるんだ、と言っているんですね。全く合ってないじゃないかと思うんです。  そこで審議官、この水田利用再編成対策というのは、これは食糧の問題もあるけれども、ある程度日本の農業を転換をしていくという構造政策的な性格も持っていると思うが、その辺はどうなんですか。
  157. 高畑三夫

    説明員(高畑三夫君) 水田利用再編対策は、米の需給均衡を図るという目的と、同時に、従来日本農業の稲作を中心とする農業生産構造を需要の動向に安定的に即応し得るような農業生産構造に転換していくと、再編成していくということをあわせ目的としておるわけでございます。したがいまして、米の生産、それから転作営農、ともども生産性向上を図りつつ、いわば転作を含む農業生産構造がそういう需要の動向に対応し得るような生産構造に持っていくということがねらいであるというふうに考えております。
  158. 村沢牧

    ○村沢牧君 それで、この水田利用再編成対策は米を確保することだけじゃなくて、生産調整するだけじゃなくて、日本農業を再編成をしていくという構造政策的なものを持っている、そのように私は理解をします。  そこでこの財政問題について伺うんだけれども、この財政再建のもとに食糧管理費がいつもやり玉に上げられている。先ほど私が指摘をしたこの農林水産省のこの資料によっても、食糧管理費は九千九百四十八億円である、こういうふうに大変なことだと言っているんですね。それじゃこの食糧管理費の内訳はどうかと。いま話があった水田利用再編成対策費が三千四百二十八億円だと。食管特別会計繰入金が六千五百二十億円だ。これで九千九百四十八億円になっているんですね。構造政策を進めるための水田利用再編成対策だとするならば、食糧管理費の中に一緒にくるめて、これだけ食糧管理費がかかっています——そんなことを食糧庁自身がみずから宣伝することじゃないんです。どういうふうに思いますか。
  159. 石川弘

    説明員石川弘君) 食糧管理費という大ぐくりをいたしております歴史的経過につきまして申し上げますと、要するに生産調整なかりせば食糧管理負担が膨大になると、要するに、一定のものを転作しますことはそのまま食糧管理費の軽減につながるということでございまして、実はこれは最近は逆ざやが小さくなってまいりまして、転作単価がそれよりも大きく、大きくと申しますか、総体的に大きくなりましたのでこういう形になっておりますけれども、転作を始めましたような時点では食糧管理費の減よりも転作費用の増が小さいというような形でございまして、やはり食糧管理の一環として、要するに、万が一水田利用再編なかりせば食糧管理費が膨大になるということで食糧管理費という一番大きな枠組みの中の一つに入れているわけでございます。ただ、こういうのは予算の枠組みの問題でございまして、私どももいろいろな場合に食管の繰り入れの問題とその水田利用再編の問題は別個に説明をいたしておりますんで、これは食糧管理費という予算の大ぐくりのときの伝統的手法と御理解いただきたいと思います。
  160. 村沢牧

    ○村沢牧君 じゃ予算の構成をしていく枠組みの問題だと。そうだとするならば食糧庁の、農林省の資料の中で食糧管理費が一兆円もかかって大変でございますと、あなたはそんな宣伝することはないじゃないですか、大蔵省が言うのは別として。あなた自身がそういう考え方を持っているから米価を抑えようとしているんだよ。  それで、食管会計繰入金は六十五百二十億円。その内訳は米だけに見ると六千五百二十億円のうち米は六千二百六億円だ。その内訳は、管理費が五三%、売買逆ざやが二六%、自主流通米が二一%になっているんです。米を政府が全量管理をしていく食管法の規定、その責任があるとすれば管理費出すの当然でしょう。売買逆ざやは二六%だ、全体の米の管理費の中で。これをどこまであなたは、食糧庁としては縮小していくんですか、臨調も解消しなさいと言っているんですけれども。二六%といえば政府財政から見れば、御承知のとおり一般会計予算四十六兆七千億円、そのうちの千六百三十何億ですか、わずかに〇・〇〇三%じゃないか、国民の食糧を管理する金が。このくらいのものを残したっていいじゃないか。どういうふうに思うんですか。
  161. 石川弘

    説明員石川弘君) そういうことは、私どももいろいろと理解を得るために、よく三K三Kと一くくりで申されますが、食糧管理費についてどのような形になっているかということを御説明する際に、全予算の中での農林予算の比重だとか、あるいはその中での食糧管理費の比重といったものも数字にあらわしてPRをしているところでございます。先生のいま御指摘のように、特に国家の総予算の中の食糧管理費の比重というのは相対的には減少の一途をたどってきている、そういうことについてもPRいたしておりますし、たとえば逆ざや一つとりましても、売買逆ざやが五十年には二七・六%ありましたものが、いろんな、生産米価あるいは消費者米価、いろんな形の決定の中で徐々に縮小してきて現在七・八%に至っているというようなこととか、そういう意味で私は必要なものは必要であるという主張をするためにもこういう資料を出しているわけでございますが、たとえば先生いま御指摘の管理費が国内米管理勘定の中の五三%を占めているというのはある意味じゃ異常でございまして、この五三%の管理費が必要だということは、六百数十万トンといったような過剰米を持っていると、かつては御承知のように食糧管理費の中で一番大きいものは金利でございます。農家には支払いまして、その支払い代金というのは食糧証券という借入金で借りているわけでございますが、売れずにずっと持っているわけでございますから、その金利だけで、たとえば昭和五十年の食管の金利が五百三十億程度でございますが、五十五年の食管の金利は千二百億を超えると……
  162. 村沢牧

    ○村沢牧君 簡単にしてください。
  163. 石川弘

    説明員石川弘君) これも管理費を持っているということでございまして、私どもは、先生御指摘のように、食管というものが必要であり、必要なものの管理費は要るというPRも必要でありますと同時に、やはりそういう過剰米を持つことによって巨大な財政負担を持っているということも事実でございますから、こういうものについて極力合理化をしなければいかぬという趣旨で、こういう資料をつくっているわけでございます。
  164. 村沢牧

    ○村沢牧君 ですから、食糧管理費の内訳はこうでございますと、だんだん減っておりますと。そういう次長の答弁だったら、財政負担が大変だから生産米価上げることはできませんなんということは出てこないじゃないか。あるいはまた、管理費がたくさんだから生産米価を抑えていく。そんな理屈がありますか、生産米価を抑えていく。管理費と農民とどういう関係があるのか。——ですから、あなたたちは、米が過剰だ、財政負担が大変だと言って盛んに宣伝して、だから米価は据え置きしなきゃならぬと言っているが、理屈にならないじゃないか。
  165. 石川弘

    説明員石川弘君) たとえば管理費でも、現在、申し上げましたように、食管というのは過剰という問題がありませんと、私は、非常に健全な、たとえ売買逆ざやが若干あろうが、自主流通助成がある程度あろうが、それからみずからが管理するのですから、必要な管理費を持とうが、これは十分世の中に説明できることだと思っております。したがいまして、食管のいまいろいろ言われます最弱点はやはり過剰の問題、過剰になっているから三Kはこうだというものの典型に使われるわけでございますから、私どもはやはり食管の運営につきまして過剰を起こさないような形にしたいというのが私たちの気持ちでございます。
  166. 村沢牧

    ○村沢牧君 時間がそんなにありませんから、次は算定方式に入るんですけれども、私は、率直に言って、この算定方式内容がどうだこうだということは論議する気になれないですね。こんな、最初に据え置きを決めていて、それをくっつけるような方式を幾らまじめにやって、論議したって意味がない。しかし、あなたたちは大きな間違いを起こしているから、そのことについて指摘をします。  まず、必要量生産方式でもって算定するということですけれども政府は、昭和五十三年からこの必要量算定方式というのを農民団体の反対を押し切って進めた。このときは米を抑制するために使われた方式である。しかし、ことしは生産費算定の対象になる年、つまり昭和五十五年の産米が、作況指数が八七という、こういう指数になっているわけですね。つまり、必要量の生産を満たしておらない。したがって正確な必要量生産費計算できない。にもかかわらず算定方式を改めないということはどういうことなんですか。
  167. 石川弘

    説明員石川弘君) 先生御指摘なのは、五十五年につきましては要するに一〇〇を超える数字が出るはずだということだと思います。一〇〇を超える数字が出るということは、私どもは、生産費調査の中で一俵以上販売しているものを生産費調査で使うわけでございますが、普通ならば、そういう一番ある意味じゃ生産効率が低いもの、要するに、コストの高いものでございますが、そういうものを使わないというような数字が出るはず——はずかどうか知りませんが、一〇〇ならばそういうものをすべて使うということでございまして、要するに、生産費調査の総対象戸数のありとあらゆる生産費平均して出すというのが一〇〇という意味でございますので、私は、必要量生産費方式という方式自身は十分成り立ち得ると考えております。
  168. 村沢牧

    ○村沢牧君 方式は成り立つけれども現実に合っていない。米の生産費のすべてのものを使うとするならば、農業団体が言っているように、平均生産費にしたらいい。必要量生産費を改めなければいけないんじゃないですか、どうなんですか。
  169. 石川弘

    説明員石川弘君) その平均の出し方でございまして、その平均を出しますときに必要量比率がききますとき、要するに、生産の量が予約限度数量をオーバーしておりますときは低い順序、効率の高いと言いますか、能率の高い方から並べましてその比率販売数量がそれに至るまでの農家で切るということでございますが、今回の場合は一〇〇でございますから全農家サンプルを使ってそれの平均を出したということでございます。一〇〇を割っております場合はそれでのけられましたものの残りと申しますか、八〇なら八〇のラインの中を平均するということでございますから、これは先生と私若干考え方が違うかと思いますが、平均という考え方は成り立つんではないかと思っております。
  170. 村沢牧

    ○村沢牧君 平均は成り立つけれども、だって、それじゃ五十六年産米算定するのに五十五年度分の平均は成り立つ。五十四年、五十三年の場合には平均は成り立たないじゃないですか。ことしだけ平均が成り立って三年間を平均してやるんでしょう。じゃ、前としたって平均にすべきじゃないか。それができないところにこの方式の誤りがあるんですよ。これは時間がないからこれ以上論議しません。  その次は地方労賃のことです。この過剰問題を背景にしたここ数年間でさえ製造業五人以上千人未満の全国平均賃金評価しておったけれども、単年度米が不足したことし地方労賃制度を取り入れる、これは全くもって現実に逆行するんです。まさに政府の御都合主義であって米価据え置きのための手段としか言い得ない。なぜ地方労賃を入れたのですか。
  171. 石川弘

    説明員石川弘君) 実は先生おっしゃった単年度という五十五年の事情ということは、私どもも頭に置いているわけでございますが、先ほど申し上げましたような生産の構造という観点に立ちますと、第二期という形で三百二十万トンという、ことしは御承知のように災害のために若干緩和いたしました二百九十五万トンでございますが、そういう非常に強い調整を要するという事態に着目いたしました場合、やはり従来の算定方式の中で使われている、従来よりも要件は私は厳しいと思っておりますので、そういう物の考え方をとるべきではなかろうか。また、それをとらない場合には、かつて、その結果、需給均衡に近づいたという、それよりも緩やかな形になる。そういうこともございまして、これを算定いたします際にいろいろな意味での苦悩はいたしましたわけでございますが、やはり四十六、七年に考えられた物の考え方というのは現時点においても妥当するのではなかろうか。  それから、これは地方労賃というお言葉でございますが、これは、あくまで全国平均を出します際に、労働者の頭数でやるのか、米の販売量を加味して計算をするかということでございまして、これはやはり一種の都市均衡労賃でございます。
  172. 村沢牧

    ○村沢牧君 それなら、次長の答弁を逆に解釈すれば、二百九十五万トンの調整をしなければならないからこの地方労賃を入れたんだと。地方労賃を入れれば米の生産調整は緩和するんですか。こんな地方労賃を入れなくたって二百九十五万トンの調整をしなければならないでしょう。水田利用再編の方で方向を出しているじゃないですか。減反面積はどんどんふやしていくじゃないですか。だからそんなものは理屈にならないと思う。  そこで、こうした労賃を入れて算定方法を変更した結果、一時間当たりの労賃は昨年の計算どことしの計算と比べてどういうふうになる、かなり低くなるというふうに思いますけれども、その数字を言ってください。数字で結構です。
  173. 石川弘

    説明員石川弘君) 昨年の方式をそのまま延ばして計算していくことに比べますれば一九・五%のマイナスでございます。
  174. 村沢牧

    ○村沢牧君 金額にしてください。——それでは時間がないから進みますよ。答弁できますか。
  175. 石川弘

    説明員石川弘君) 後ほど正確に申し上げますので。
  176. 村沢牧

    ○村沢牧君 いま、昨年と比べて労賃が一九・五%下がると言う。しかし、次長。この不況の中と言われながら、製造業の賃金は五十三年が五・九%上がっている、五十四年は七・四%、そして五十五年は八・一%上がっているんですよ。なぜ米を生産をするこの労賃だけこんなに下げるんですか、こんなばかけた評価がありますか。
  177. 石川弘

    説明員石川弘君) これは先生よく御承知のように、労賃が落ちるという言葉でいまおっしゃいましたけれども、これは家族労働費評価に使いますときの評価がえの単価の話でございまして、いずれにしても労賃という趣旨ではございませんで、米価の中に織り込まれる農家所得部分がどうなるかというのの一つ算定要素としての単価の変わり目を申し上げたものでございます。一時間当たり単価は百四十四円五十六銭の下がりでございます。
  178. 村沢牧

    ○村沢牧君 いろいろ言い回ししたって去年の計算方式変えたと言ったって下がるんですよ。一時間当たり百四十四円五十六銭ですか、下がるんだよ。ほかの製造業の方のは一時間当たり下がったものはないんですよ、先ほど指摘したとおり。なぜこれだけ下がるんですか、下がらなきゃいけないんですか。それが農業の発展を願い、農民の生活を向上しようとする農林水産省の態度なんですか。
  179. 石川弘

    説明員石川弘君) 先ほどから申し上げておりますように、生産費所得補償方式の中で、いわゆる物財費等現実に支払われますものにつきましては、従来どおりそういう物価のスライド等を入れて計算をするわけでございますが、この家族労働費、それから自作地地代自己資本利子と言われますものは、現実に支払われるものではございませんで、それを総合したものとして一定の評価がえをいたしたものを使うわけでございます。どれに合わせて評価がえをするかという場合に、従来都市の勤労者の労賃をとります際に五人以上一千人未満の製造業労働者全国労働者の頭数割りでやったものをですね……
  180. 村沢牧

    ○村沢牧君 そんな同じ答弁何回もしてくれなくたっていいですよ。いずれにしても、家族労働費であっても、みずから賃金を払っているものでないにしても、労賃というのは、米を生産する賃金ですよね、間違いないでしょう。やっぱり米の生産費の中で労賃というのは大きなウエートを占めているし、それは米を生産する賃金と同じことなんです。だからほかの製造業の賃金が上がっているときに、米の製造をしていく人の賃金だけなぜ下げていくのか、全くもってこれ納得できないんです。答弁ありますか。算式説明じゃないですよ。
  181. 石川弘

    説明員石川弘君) 賃金と言いますれば、農村の地域で現実に成立している賃金はこの水準よりもはるかに低いわけでございます。現実の農村の地域で支払われます賃金はこの評価がえ水準より低いわけでございます。それをどう評価がえするかというときに、先生がおっしゃいますように、昨年の評価がえの対象に比べれば低いということは事実でございます。しかし、その賃金がどういう賃金と考えられることが世の中で妥当であるかということについてはいろいろ論議がありまして、従来においてもこういう評価を使ってきた実例がございます。私どもはそういう中で、大変それは物を下げて計管するということは苦しい計算ではございますけれども、そういういろんな事情を織り込みます場合にこういう評価もあえてせざるを得ぬという事態もあるということを御理解いただきたいと思います。
  182. 村沢牧

    ○村沢牧君 算定方式についてもう一つ伺っておきますが、小作料のとり方ですね、これは統制小作料をとった、しかし、統制小作料というのは五十五年九月三十日をもって完全にこれは廃止されている。廃止されている統制小作料をなぜとったのか、やっぱり小作料も、この統制小作料というのは標準小作料や笑納小作料に比べて著しく低い。したがって、小作料を使用する場合においてはやっぱり笑納小作料を対象にすべきだと、統制小作料をそのまま踏襲するということは米価抑制をねらっているもの以外の何物でもない。その辺の見解はどうですか。
  183. 石川弘

    説明員石川弘君) これにつきましては、昨年の米価審議会におきまして早急に検討するようにということで、部内におきましてもいろいろの学者の意見を聞きながら検討いたしておりました。そういう中でいま考えられる手法といたしましては、現実に支払われます実納小作料によって評価してはどうかという意見があることも事実でございます。あるいはそういうことのほかに、たとえば標準小作料を使ってはどうかというような御意見もあります。それから全く違った形としまして土地資本利子として評価する考え方、この場合には、一つは、御承知の固定資産税評価額というのが有力な考え方、それからもう一つは、暫定的な手法として現在の自作地地代に算入している水準、これは統制小作料があるとかないとかではございませんで、これも御承知のように、自作地地代というのは、本来現金で払われるものじゃないものをどう評価するかでございますから、その水準をそのまま使ったらどうかという四つの意見を出しまして、七月七日の米価審議会において御審議をいただいたわけでございます。いろんな御意見がございましたけれども、集約して申しますと、いわゆる笑納小作料とか標準小作料を使うという手法をとりました場合は労賃の評価をいまのように都市均衡労賃評価するのはいかがかと。と申しますのは、いま成り立っておりますような比較的高い笑納小作料というものは、労賃部分がいま評価しておりますような家族労働費のような高いものを支払って成り立つような地代でないではないか、ですから笑納小作料を取れというのであれば労働費評価も変えるべきであるという非常に強い御意見がありました。そういう……
  184. 村沢牧

    ○村沢牧君 労働評価変えたんじゃないか、いま。地方労賃にして変えたんじゃないか。
  185. 石川弘

    説明員石川弘君) いや、変えるというのはそうじゃありませんで、農村雇用労賃等を使うんならわかるということでございます、それは大変な引き下げ要素でございますから。そういうようなのが非常に大きな意見でございました。  それからもう一つ、逆に土地資本利子として評価するということにつきましては、固定資産税評価額でやればいまの五千円水準統制小作料よりも低い数字が出てくるわけでございますが、そういうこともこれまた理屈の上では言えるかもしれないけれども現実評価の仕方に問題があるということで、こういう新しい考え方については米審の先生方なかなか御意見の一致がございませんで、大勢はこれが将来ともずうっと使われるという性質ではないけれども、暫定的には前年と同額の自作地地代を算入するのがやむを得ないんではないかということで意見の集約を見たわけでございます。したがいまして、私どもも米審の先生方の御意見の集約するところを使いましていま申し上げましたようないままで使っておりましたいわゆる水準と申しますか、これは統制小作料ということじゃございませんで、それによって形成されております水準を使ったということでございます。
  186. 村沢牧

    ○村沢牧君 時間が参りましたから私の質問終わりますけれども、私は午前中、大臣に対する質問、それからいま食糧庁次長に対する質問を通じて、あなたたちが米価据え置きのために宣伝をしている米の過剰の問題あるいは財政問題、このことは米価を据え置くためにことさらに大きく宣伝している問題である。しかもまだ米価を据え置くということを方針を決めておいて、算定方式を変更して逆算をするいわゆる逆算米価、どうしてもこれは納得できないわけです。米審の答申もあるでしょうが、どういう形で出てくるかわかりませんけれども、しかしその答申が出された後において国会の意見等も十分尊重して適正な米価にするように強く食糧庁にも要請しておきます。  以上をもって終わります。
  187. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 昨年の四月に国会において食糧自給力強化に関する決議がなされたわけであります。また、十月、農政審が行った答申におきましては食糧の安全保障ということが強調されたわけでありますし、その反面この答申では価格政策については、価格の持つ需給機能を重視した運用を行っていくことが肝要であるとも述べられておるわけであります。さらに今回、第二臨調の答申では、米の売買逆ざやの解消に努めるなど、食糧管理に関する提言がなされております。その他財界あるいは労働組合からもさまざまな農政に対する批判あるいは意見が出されておるわけでございますが、こうした時期に今後の農政の展開に当たって価格政策というのはいかなる役割りを果たしていくのか、どのようにあるべきかという基本的な考え方につきまして、これは次官にひとつお答えをお願いしたいと思います。
  188. 野呂田芳成

    説明員野呂田芳成君) 今後の米価政策の運用に当たりましては、食管法の規定に基づきまして国民の必要とする米の再生産を確保することを基本とし、価格の持つ需給調整機能や所得維持機能等に配慮しながらその適切を期してまいりたい、こういうふうに考えております。
  189. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 そこで、この価格政策の最大のものは何といいましても現在議題になっております米価の決定でございます。今回政府が米審に諮問をしました生産米価算定方式としては、従来同様生産費及び所得補償方式を採用しておるわけでございますけれども、先ほど来いろいろ議論がございましたように、算定要素の一部を変更して据え置き米価にしておる、というよりも、据え置き米価にするために都合のいい算定要素をとったんではないかとさえ言われておるわけでございます。  そこで、その内容について二、三お伺いをいたしたいと思うわけでございます。  まず、家族労働費についてでございますが、これはいわゆる四十六年、四十七年に採用した方式を今回とった。十年も前に二年間採用した方法が今回とられたわけでございますが、これをとった何か合理的な理由があるのかどうか。たとえばその当時と現在と需給事情が似ておるとか、その他の経済情勢がどうだといったような点につきまして御説明を願いたいと思います。
  190. 石川弘

    説明員石川弘君) 四十六、七年と現在とを対比いたしてみますと、いろいろと事情の違いはあろうかと思いますが、一つは米を生産する能力という面で申しますと、生産調整数量では四十六年が二百三十万トンでございます。それから四十七年が二百十五万トンでございます。それに対しまして現在は、これは五十六年で申しますと若干緩めてはおるわけでございますが、二百九十五万トン、第二期対策平均水源としては三百二十万トンということでございまして、生産調整数量ではやはり現在の方が苦しいということが言えるかと思います。  それに伴います財政負担で申しますと、四十六年は千八百四十億の資金を生産調整に費やしておりますが、四十七年は二千二十九億円、まあ粗く申しますと二千億というくらいの水準が投入されておりますが、現時点では五十五年は予算の段階で三千三十四億、これは実行ではこれをまた上回ったわけでございます。それから五十六年は予算面でも三千四百二十八億ということで、まあ粗っぽく言いますと三千億水準の調整のための資金を導入せざるを得ない。  それからもう一つ、過剰米の処理、このことはむしろ過去に起こったことの始末ということでございますから、これもこれが最大の理由というわけではございませんが、財政負担として考えますと、四十六年は過剰米処理に要しました経費が三百二十二億でございます。四十七年が六百十七億でございますが、これに対しまして、五十五年が四百十八億、五十六年が八百四十七億、これは五十七年になりますと、これにさらに四百億程度上積みせざるを得ませんから、千二百億というような水準になろうかと思います。古米の在庫の量で申しますと、四十六年は五百八十九万トン、四十七年は三百七万トンでございますが、五十五年が御承知のように六百六十六万トン、五十六年が四百四十万程度ということで、これも決して容易ではない事態でございます。  私ども、これはこういうことを採用します場合に、やはり非常に大変なことでございますので、当時の一人当たり可処分所得というようなものも一応見たわけでございますが、四十六年はまだ農家の可処分所得の方が一般勤労者より若干低い段階、九四%ぐらいの可処分所得比率でございましたが、四十七年はおおよそ一〇〇でございます。五十四年が大体一一〇を超えております。五十五年概算でも一〇九ぐらいでございまして、これは決してこれだからいいという趣旨で申し上げるのではなくて、検討の過程でこういうことも考えてみたわけでございますが、やはり現状というものは大変米を生産する力という面では四十六年にまさるとも劣らぬ事態ではないか。確かに単年度の問題といたしますと、昨年の大きな冷害がございましたのでその辺につきましてはむしろいろいろと考えるべきことはあると思いますけれども、米をつくるそういう力という面で申しますと、まだまだ米に対する依存の強い形ではなかろうかと判断いたしましてこのような方式を採用したわけでございます。
  191. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 確かに過剰米という点から言いますと、四十五年は七百二十万トン、過去最大の過剰米があったわけであります。昨年はまたそれに次ぐ六百六十六万トンという過剰米があったということが言われるわけでありますが、先ほど来いろいろ議論がありましたように、昨年の冷害によってことしの秋にはそれが三分の二ぐらいになる、しかも食用にたえる米は多く見積もっても百十万トンぐらいだと、こういうことで、現象的には四十六年、七年の状況とは相当事情が違うというふうに思うわけでありますし、さらにこの生産調整の量が非常に多いということにつきましては、確かに現在の生産調整の量は当時よりも多いわけでありますけれども生産調整の量が多いためにこういう方式をとるんだということになりますと、これから先この潜在的な生産力というのはやはりまだまだふえていくでありましょうし、米の消費は減っていくということになりますと、この生産調整の量は決していままでよりも減らすというふうなことは少なくとも当面は考えられないということになるわけでありまして、生産調整の量が現在程度の場合にはそれでは常にこういう方式をとるのか、これからも毎年こういう方式をとらざるを得ないのかということについてはいかがでございましょうか。
  192. 石川弘

    説明員石川弘君) 過去におきます米価算定方式と申しますか、方式ではございませんで、算定に使われます要素のとり方につきましては、御承知のように、私、四十六、七年にこういう考え方をとったと申しましたが、その後におきましてやはりその要素を変えております。  先生いま御指摘のように、たとえば三百二十万トンなら三百二十万トンという調整をしている間は全然動かさぬのかというような御指摘でございますが、やはり米の需給を見ます場合にそういう一本調子でやっていくこと自身がむしろ問題である。たとえば算定方式を一度変えてちょっと有利になりますとその有利なのをずっと続けた結果が累積しちゃったとか、そういうことはやはりその辺の事情をよく見ながら判断すべきことだと考えておりまして、私ども今回これをとりましたということが今後未来永劫にとか、あるいはかなり長い期間こういう方式ばかりを使うかどうかということについては、全くそういうような、何と申しますか、予断を持って考えていることではございませんで、やはりそれはある意味で毎年の生産の構造なり、毎年の需給事情なりということをいろいろ頭に置きながらこの要素を考えていくのが正しい要素考え方だと思っております。現に過去のこの要素等の動きを見ておりますと、二年とかあるいは三年というような周期をもちましていろんな要素を組みかえてきているというのは、そのときどきのそういう生産状況なりあるいは需給事情なりというようなものをある程度反映させながら運営してきたからではないかと思っております。
  193. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 私は逆に、毎年こういうふうに算定要素をそのときどきの事情に応じて変えるということの方が非常に大きな誤解を与えるんではないか。需給事情原因でこういう算定方式をとらなければならないんならば、需給事情が一体どういう形になった場合にこういう方式をとる、ある一定のルールに基づいてとられるならばまだ理解ができるわけでありますけれども、その時々の事情によってされるというために、たとえば諮問米価を前年同額にするためにこういう算定要素をとったんではないかといったような意見が出るもとになるんではないかと思うわけであります。  次に、自己資本利子につきましても、これも従来ずっと定期的な預金の利子をとっていたのが、ことし突如として普通預金と定期預金との平均値をとる、これも何か金利情勢その他で客観的な原因があるのかどうかをお尋ねしたいと思います。
  194. 石川弘

    説明員石川弘君) ちょっとお答えする前に、ちょっと先生にお断りをいたしたいわけでございますが、私どもが五十四、五十五年産中心に操作すると言っておりますのは、五十二年産米以前は食べられない米だという意味ではございません。われわれが現在外国に輸出しております米の大半は、実は五十二年産米でございまして、五十二年産、五十三年産米も十分食用に供する米でございますので、私が先ほどから御説明しております持ち越し百万トン等というのは、それが食べられるという意味ではございませんで、五十三年、五十四年産も十分食用に供せられる米でございます。  お答えに入りまして、そのいまおっしゃいました、最初の算定要素を動かすことから不信を招くんではないかというような御指摘であろうかと思いますが、たとえば御承知のように、麦の場合にパリティといったような、ほとんど自動的に計算できるという手法をとった手法もございます。ところが、御承知のように今度は麦をパリティだけでやりました結果、なかなか生産が伸びないということで、あのパリティの外側に生産振興奨励金をつけたと、まあそういうようなこともございまして、人知の及ぶ限り、いろんな計算方法算定すればそういうことも可能かとは思いますけれども、実際問題としては各要素をとめて、まあいわばコンピューターに入れれば答えが出るというような方式をいたしますには、まだまだ価格政策上の算定要素は多い。特にその中でむずかしいのは、需給を調整する問題がなかなかそういう係数化できない、よく需給調整係数というようなものを掛ければいいじゃないかということでございますが、これを編み出すことは至難のわざかと思っておりまして、私どもそういう指数を変えますことによる不信感というのは、極力除かなければならぬと思っておりますけれども、いまの生産費所得補償方式の中では、やはりある程度はこういう過去に使いましたいろんな実例等も見ながら、その指数を、あるいは要素を変えましたことについて関係者の御納得を得るように努力をするというのが、実は精いっぱいではないかという気持ちでございます。  もう一つ、御指摘の自己資本利子の変更について合理的な理由があるかということでございますが、皆さん方から御指摘なされるものは、いずれも要するに評価にかかわる部分でございます。この家族労働費もしかり、先ほど御指摘の自作地地代しかりでございまして、どう評価するかというときの客観的要件というのは、やはり有利に働くようになる場合と、不利に働くようになる場合がございまして、なかなか万人に御理解いただけるというものがないわけでございます。たとえば、定期預金金利というようなことをもし決めたといたしましても、現在の金利情勢でございますと、その動きの幅はかなり大きゅうございます。そういうことでたとえば米価水準がたちどころに上がったり下がったりするというのも、かえって御理解しにくい面もございます。で、私ども自己資本利子をどう見るかという場合に、自己資本利子が利子の中の七割ぐらい占めるわけでございまして、大変大きい要素でございますんで、従来どちらかというと定期的なものをとってそういう利率にある程度の幅を持たせながら運用するというような考え方もございましたけれども、同じ農産物の自己資本利子を考えます場合に、御承知のように、ことしの春の乳価の決定の際に、それは固定的なといいますか、長期的な、定期的なもので考えるのはおかしいではないかと、むしろ普通預金的な出し入れ自由のものというようなものも考えるべきではないかというふうなこともございまして、農協普通預金利子二・五を採用したということがございます。私どもも過剰とか、そういうような観点の中で、むしろそういうことも一つの論点であるということを考えたわけでございますが、やはり現在の五・三五という水準から考えますとかなり大きな変動でございます。そういうもの——それでは五・三五がいいじゃないかと言われましても、たとえは乳価に採用したような普通預金の金利みたいなものとの関連では、米は定期でいいんだというようなこともなかなか主張しづらいと、まあそういうことでこのあたりが折半したような数字水準、三・九というような数字が出てくるわけでございますが、そういうものを一つのよりどころにしながら、いまの農家経済調査算定しておりますときの自己資本利子、これは伝統的に四%という水準を使っておりますので、その辺もにらんで今回は四%というもので想定をし、御理解を得たいと思ってるわけでございます。したがいまして、その合理的かどうかというのは、まあ定規で引くような意味ではなかなか判定しがたいところでございますが、いま申し上げました要素をお考えいただきますれば、それほど大きく動かそうとしたんではなくて、むしろ乳価等に比べますればそういう変化の小さな数字を使って算定をしてるつもりでございます。
  195. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 私は、諮問米価算定に当たって、何もすべて機械的にやれというようなことを言ってるわけではないわけであります。特に需給事情あるいは財政事情等を反映するということは、これは食管法の規定にもあるわけでございますから、そういうこともやむを得ないと思うわけでありますけれども、ただ、客観的に見てやはり適正に評価決定すべき算定要素自体を変えて、需給事情、財政事情等によってそういうものを変えるというやり方、これはどう考えても余りフェアな方法ではないんではないかと、いたずらに行政に対する不信を招くだけではないかというふうに考えておるわけです。  まあ、適当でないかもわかりませんけれども、たとえば人事院勧告を出す際に、財政事情が非常に厳しいから、その都度人事院勧告の算出の方法を変えるというふうなことはあり得ないわけでありますので、そういう点から考えましても、この米価だけはそういう方法をとってるというのはいかがと思うわけでありまして、やはり生産費というものは一定のルールによってきちんと算出をして、その上で経済情勢等を勘案する。できればそれも先ほどお話もありました需給調整係数とか財政係数とか、そういうものが考えられるならばなおさら結構だと思いますが、そういう客観的な算定の仕方をするということが、農民の方々にも理解していただける道ではないかというふうに考えるわけでございます。  時間がありませんので次に進みたいと思いますが、自作地地代の取り扱いについてでございますけれども、これは先ほども説明ありましたように、前年同額を今回は考えておるということで、むしろ今回変えてない例でありますけれども、私は基本的に考えて、この自作地地代と小作地の地代というものが異なるという、異なった算出方法をとってる、すなわち、自作地については去年までは統制小作料、ことしはそれと同額、小作地については笑納小作料という違った地代をとっておるということは、これはおかしいんではないかと思うわけであります。で、先ほどの御説明にもありましたが、小作地で笑納小作料をとってるのは、これは小作人が経営規模の拡大によるいわゆるスケールメリットを目指して小作地をふやしていくんだから、家族労賃については都市均衡労賃よりも低いもので評価をした上で笑納小作料が算出されているんだと、こういう御説明でございますが、それならば小作地の労賃はどうか、小作地においては、地代は笑納小作料、家族労賃については、これは都市均衡労賃というものを、とっておるわけでありますから、これは米価算定は一本でありますけれども、あえて小作地と自作地とに分けて考えれば、小作料の差額だけ小作地の米価の方が高いということになるわけでありまして、これは大変おかしな話ではないか。  いま農地の流動化ということを大いに進めようとしておる。小作地がどんどんふえようとしておる時期に、小作地がふえれば、そのことだけで米価が上がってくるという結果になるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  196. 石川弘

    説明員石川弘君) 御質問の趣旨、必ずしも正確にとらえていないかもしれませんが、私、先ほど小作地で成立している地代をとったんでは、家族労働費が、そういう評価がえをしたような高い労賃が払えないと申しましたのは、こういうことでございまして、要するに、いま一町歩なら一町歩の土地を持っている、それに対してあと一反継ぎ足すというような形で借りた部分で経営を考えましたときに、そこでたとえば、現実に支払います二万数千円というような地代が払えるのは、決してそのことによって高い、労賃評価として現在米価算定方法に使っておりますような都市均衡労賃を払うという前提では、そんな二万何千円払えるわけがないというのが計算上明らかに出るわけでございます。それはどういうことかというと、こういう二万数千円を払うというときの農家がそれでも借りるというのは、自分が自分に支払います賃金水準はそういう高いものでなくてもいいと、要するに、たとえば農村で現実に使われる雇用労賃の水準でも取れればそれでいいということで支払われる地代でございますから、そういうものを使いまして、実は小作地の全体の規模というのは七%か八%でございますから、あとの九十何%のものを全部それで評価しろというのであれば、いわば農民の心理として、自分は勤労者として都会の労働者、勤労者の労賃とバランスしてくれというよりも、地主として二万何千円欲しいんだということをより強調するんであれば、賃金のときだけはおれは工場労働者と同じような賃金でなきゃおかしいんだという主張は、同じ米を一つとって相矛盾する主張じゃないかというのが、要するに、自作地地代——小作地に現実に成立しております比較的高い地代水準を自分の全部の土地に使うのはおかしいという議論のもとでございます。  私ども、そういう意味では、そういう言い方に対しまして、農水省は、大いにこれから経営規模拡大して、そういう、何と申しますか、農地流動化を促進しなきゃいかぬのだから、現実に成立している高い地代を使ったらいいじゃないかという御主張があるんですが、これは結果論として申し上げますと、もしどんどんどんどん小作の面積がふえて、要するに、たとえば自作地が五〇で小作地が五〇なんという水準を考えますれば、それは現実地代水準がそういう形が成立すれば、米価算定にそのまま入るわけでございますが、私は、そういう事態のときにはそんな高い水準地代が本当に成立するのかどうかとか、あるいはそういうことをしても、農業経営をやる場合に、そのときの賃金水準を都市均衡並みに評価しろというような主張が本当に通るだろうかという、そういう意味でいろいろ今後論議が出てくるだろう。ですから、私どもは、この問題を単に去年と同じような水準を横へ持ってきたというんじゃなくて、この自作地地代問題に本気に論議をしていきますと、要するに、家族労働費評価の問題に頭を突っ込んでくることになるんじゃないかと。その辺は、今回の米価にはとても解決できるほどの問題じゃございませんので、たまたま七日の審議会でも、大方の委員の方々が現在の水準を踏襲するよりほかなかろうという御意見でございましたので、踏襲したわけでございます。私どもそういう意味では経営の拡大みたいなことを否定しているわけでもございませんし、それから賃金水準が現在の暫定的な考え方でなぎゃならぬという主張をしているわけでもございませんが、申し上げたいのは、そういう、この問題は入り込んでいきますと、米価算定方式基本論に及ぶという点で慎重な検討を要するということでございます。
  197. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 時間が来ましたんで、これでやめます。
  198. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 午前中来のいろいろな質疑答弁を聞いておりまして、本年度諮問米価について、これはもうとうてい納得のいくものではございません。米価据え置きを正当化するためのこじつけの答弁、そういうようにしか私には聞こえないわけですけれども、端的に申しまして、御承知のように生産資材を初めとする諸物価及び労賃のアップに加えて、大規模減反、さらには昨年夏以来の冷害、そして霜害、雪害、こうした自然災害による農作物被害等々、未曾有の危機に直面している稲作農家の経営と生活の実態をこれはもう完全に無視した結果である、このように私は断ぜざるを得ないわけでございますが、こうした農業所得について見ても、五十四年度においては五・四%、五十五年度においては、五十五年四月から五十六年二月までの十一カ月で見ても一七%の減収となっております。  昨日から始まった米審が御承知のように冒頭から動議が発せられる等で審議も混乱し、日程も当初の予定より一日延長した、こういった結果を招いたのもこれはもうその原因はこのような実情を無視してあえて据え置き諮問を行った政府にその責任があるのではないか、こう思うわけですが、いかがでしょうか。
  199. 石川弘

    説明員石川弘君) 午前中大臣からもお答えいたしましたように、われわれといたしましては今回のこの諮問をいたすにつきましても先ほどから何度も申し上げております需給事情その他の要素をいろいろ勘案したわけでございます。先生御指摘のように農家の方々の立場からすれば、昨年の害冷以来非常に条件の悪い中で置かれておられますことについても十分理解はいたしておりますけれども、米の需給状況がいまのような状況の中ではなかなかそういう米価を上げていくというような形で事柄を処理することが長期の見方からして非常に問題があるんではないか、むしろ私どもいろんな算定方式を使いながら、いろんな計算方式をしながら、しかも特に全く新しい手法というんではなくて、過去におきますいろんな算定方法の中から、現在のような、端的に申しますと四十六、七年に考えられたと同じような方式の中で何とか御理解願えないかといってつくり上げました諮問案でございます。先生御指摘のように昨日の朝もいろいろ生産者の方々からの御発言もございましたけれども、最終的には米価審議会においてよく審議した上で決めるということで御納得をいただいて審議を開始していただいておるところでございます。
  200. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いまも申されました算定方式をいろいろ苦慮して、考慮したあげくのことだとおっしゃいましたけれども、その算定方式なるものがこれはなかなかまた納得いかないわけでございますが、政府の毎年の米価がいかに欺瞞的なものであるかということはこれはもういま始まったことじゃないわけでございまして、なぜならば、ことしの諮問米価は一万七千六百八十九円となっております。しかし、昭和五十五年産米政府買い入れ価格と同じ方法によって算定した場合の本年産米政府買い入れ価格を昨年と同じ方法で試算したならば、これが何と一万九千四百五十六円で、一一・七%値上げしてもこれはおかしくないわけなんです。同じくこれを五十二年産米政府買いれ価格と同様の方法によって算定すると二万五百九十四円で、一八・三%のアップと、これやってもおかしくないと。さらに、四十二年産米政府買い入れ価格と同様の方法で算出すれば何と二万八千百九十円で、六一・九%の上昇となるわけですけれども、こういう同じ生所方式といいながらも、かくも一貫性を欠いた結果になっておりまして、こういうようなばらつきのひどい結果をもたらしていること、これ自体が欺瞞的と言われても仕方のないもんじゃないかと思うわけですが、また先ほどからも言われておりますように、何とも御都合主義の最たるものであると、こういう批判も出ておりますけれども、いかがお考えですか。
  201. 石川弘

    説明員石川弘君) 先生いままさしく御指摘になりましたように、米価算定のいろんな方法の中で最も有利だと目されております四十二年方式算定をいたしますと、先生御指摘のとおり実に六割もアップするという数字も出てまいります。しかし、この四十二年方式といいますものは、その時点において農家所得を確保するという面にはプラスに働いたと私思いますけれども、この四十二年方式の直後から米の大過剰を導き出しまして、実は第一次過剰をつくり出したという意味では、私どもにとってまことに反省すべき算定要素ではなかったかという一面もございます。これはそのときどきに——四十二年というのはどちらかというと生産増強的なニュアンスがあったんだとは思いますが、その直後から過剰傾向が出てまいりまして、四十六、七年方式というのが生まれましたのも、やはり米価算定方式につきましてそういうプラス要素だけを重ねていく場合にいろいろと問題があると。私そういう意味ではそのときの方式がいいとか悪いとかというよりも、そのときの事情に忠実な方式というのがやはり必要なんではないかなという意味で申し上げたいわけでございます。先ほど先生御指摘になりました各年度方式によるといろいろ数字が違うということは御指摘の数字のとおりでございます。私ども算定をいたします場合に、いろんな形の算定要素、私ども方式としましては生産費所得補償方式という同じ方式でございますが、その中で入れられます評価要素としての家族労働費のとり方なり、あるいは自作地地代のとり方なり、あるいは資本利子のとり方なり、それ以外の要素としても、たとえば生産能率向上分を返すという方式ども入れたこともございますが、やはりそのときどきにこういう要素を厳密に見直すことがこの生産費所得補償方式をもたせるゆえんではないかと、こういうところを硬直的にいたしますと、方式自身が批判の対象になるのではないかという意味で、今回は大変厳しい要素という御批判も十分わかるわけでございますが、今回のような要素のとり方をさせていただいたわけでございます。
  202. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 どうも納得しがたいわけなんですが、この近年の米価抑制がいかに矛盾したものであるかということは、先般の農水省発表の米の生産費調査による原生産費と決定米価の比較を見るとこれは明らかであります。すなわち、昭和五十三年度までは決定米価原生産費、当然第二次生産費を指すものですけれども、それを上回っておったわけであります。五十四年、五十五年度においてはこれが逆転いたしました。ことに五十五年度の場合は冷害の影響もあって、第二次生産費が決定米価を大幅に上回っておるわけでありますが、基本的には政府による米価抑制という政策がこのような結果をもたらしていると私は思うわけであります。これでは先ほども申しましたように生所方式という算定方式は一体何だということにこれはなるわけでありまして、看板に偽りがあると言われても仕方がないわけでございますが、この疑問にどうお答えになりますか。
  203. 石川弘

    説明員石川弘君) 統計情報部で一定のルールに基づきまして行っております生産費調査は、そのルールに基づきまして出した数字でございます。そのルールといたしまして、一俵以上の米を販売している農家につきましてサンプルを取って、計算をいたしますときの自作地地代あるいは自己資本利子といったようなもの、これも一応利潤的部分ではございますけれども、これは生産費の中に含めまして、第二次生産費の中に入ってきているわけでございます。特に自作地地代等につきましては、先ほどもちょっと御説明しましたように近傍類地という、米価算定していますよりもむしろ高い要素まで入れて計算をするということでございまして、私どもとすれば、そういう一俵以上の平均で、かつ自作地地代がそういう形で入っている計算ということでございますので、実は米価算定しております部分よりある意味ではこちらの方が高い。たとえば自作地地代なんか高い。しかし労賃なんかはわが方が都市均衡評価しますから高いという。そういう意味の食い違いがございます。そういう意味で、いままでは先生御指摘のように二次生産費でもバランスをする、まあ一次を超える数字であったわけでございますが、最近それを割り込んできているということは、やはり算定方法としては米価にとってきつい米価算定方式をしている結果だと思います。しかしそれでは、それじゃそういう米作がなくなっているか、あるいは米の生産が減退しているかということにつきましては、生産力は依然として強いし、生産が行われていると。これは農家にとりましてはむしろ二次生産費まで含めた感覚ではなくて、あるいは一次生産費という形でペイをしていれば、それでもなお稲作を続けるということかなというような気持ちもいたします。  それから、たとえばこういう生産費調査を見ますと、階層——これは平均で出してございますが、階層別数字を見ますと、かなり前の段階から非常に規模の小さい方にとってはすでに費用が上回ると、一次生産費の段階でも上回るというような階層がございます。逆に言いまして階層規模の大きい方はいまの生産費でもかなり余裕があるという階層もあるわけでございますが、それにもかかわらず、なかなか米作から離れるということではなくて、むしろ販売量も余り変わっていないというようなことを考えますと、そういう意味で米の生産というのは、こういう費用ということだけじゃない要素に支配されることもあるんではないかなという気さえしているわけでございます。  私が申し上げたいのは、そういう意味で、従来御指摘のように二次生産費を下回らないような米価水準であったものが、いま御指摘のように必ずしも二次生産費というところで農家は行動しないんではないかという考え方もございますけれども、そういうようなところまで来ているということは、米の生産について、逆に言いまして相当厳しい環境でかつ生産が持続されているというところにむしろ問題があるんではないかとさえ考えるわけでございまして、私どもも先生御指摘のように、こういう生産費米価の関係というのは逐一見てまいりますし、その場合に、このような平均生産費だけではなくて、階層別の生産費もどうなっているかというようなことを見ながらこれから米価の決定に十分心を配ってまいりたいと思っております。
  204. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 じゃ、次に参りますが、午前中来、もういろいろ論議されておりました、今回の米価据え置きの最大の理由といたしまして米の過剰ということが言われておりますが、米が非常に余っておると、だから米価を抑制しようと、一応のこれは理由はそれで理解できるといたしましても、しかし、では米の過剰責任は、これは政府需給計画の誤まりに起因するものじゃないかと、こう思うわけです。しかも稲作農家はこれは大変な犠牲を払いながら政府目標を上回るところの減反協力をいままで行ってきたわけなんですから、このことをどういうようにお考えになりますか。
  205. 石川弘

    説明員石川弘君) 年々の需給の計画を立てます際に、生産をどう見、需要をどう見るという、その両方の見通しをぴしっとやってくる必要があるわけでございますが、残念ながらわれわれとしましては、需要を見ましたここ数年の見方については、残念ながらわれわれが見ているよりも米の消費の減退のスピードは多かったように思います。そういう意味で、需要を強く見なきゃいけないということで、御承知のように第二次の水田利用再編の段階で需要について厳しい見方をしてきたわけでございます。それから生産につきましては、これは一応はこの程度の生産があるという前提で生産の見通しをしていたわけでございますが、先ほどから災害等のお話もございますが、過去の数字を見ますと、災害というような形で計画を下回りましたのは、最近の十年間を見ましても四十六年とか五十一年とか昨年の五十五年という数少ない年次でございまして、逆に生産量を上回るような、これは好天で上回るというようなことは、これはだれの責任ということじゃございませんが、結果的には予定したものを上回る、ですから両側で、生産ではオーバーし、消費では減ということで二重に働いたのがこの過剰の問題だと思います。  そういう意味で、これはどちらに責任があるとかないとかという論議よりも、何とかしてその需給均衡を早期に達成することが生産者にとっ保てももちろんみずからの物を有利に売る条件ができてくることでございますので、こういう形にできるだけ的確にやるようにということでわれわれも計画をいたしておりますし、つい先月御審議をいただきました新食管法の中でも、効率の高さで需給基本計画というふうなものもつくって、そういう毎年毎年の需給というものを厳しく見詰めてプランニングをしていくということをお願いいたしておりますのもそういう趣旨がと思います。したがいまして、私どもやはりそういう生産者に一方的に押さえつけるのではないかという御指摘でございますが、一方におきましても、政府として大変大きな財政負担、これは国民全体の負担でございますが、財政負担をしながら過剰米の処理というようなこともあわせて行っているわけでございますので、こういう事情を十分御理解いただいた上で転作に協力していただきながら、かつまたこれからの米価なりあるいは食管の運営にも御協力していただくということをお願いしたいわけでございます。
  206. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それと、この過剰と財政逼迫ということが大きな理由になろうかとは思いますが、この国の財政が逼迫している現状下にあっては、これは当然国民全体がお互いに耐えるところはこれは耐え、忍ぶところはこれは忍んでいかなければならないし、これは道理であります。しかし、財界等が最近特に近年の農業に対する批判を強めておりまして、特にこの米価についても据え置けとかあるいは引き下げろとか二段米価を導入すべきだと、こういった注文をつけておりますけれども、しかし、それならば自分たちみずからが生産している生産資材等の価格をまず値下げすべきものではないかと、こう思うわけでありますけれども政府はこのことについて財界に対し具体的にどう指導してきておられるのか、実効ある措置をとってほしいものと私は考えるわけでございますが、いかなる手だてを講じておられますか。
  207. 高畑三夫

    説明員(高畑三夫君) 農業生産資材の価格の安定につきましては、農産物の生産費上昇を抑制し、農業所得の安定確保のためにはきわめて重要であるというふうに考えております。御案内のように、農業生産資材、具体的には肥料農薬、農業機械といったものにつきましての価格は、全農とメーカーとが交渉いたしまして、そこで決められた価格基準となりまして、いわゆる商系等も含めました小売価格が形成されていくという仕組みになっております。従来から、先ほど申しましたような考え方で、行政といたしましても、これら農業生産資材の価格形成につきましては、肥料価格安定等臨時措置法などに基づきまして、全農とメーカー等との価格に関する交渉等につきましても指導してまいってきております。  当然、メーカーの団体なりあるいは御指摘のようないわゆる経済界等につきましても、農業生産資材と農業生産生産性向上なりコストの低下ということにつきましては理解を得るように機会をとらえて言ってきておりますが、具体的にはそのような生産資材の価格の形成に当たりまして指導してきておるというわけでございます。今後とも適切に指導してまいりたいと思っております。
  208. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いまのお答え聞いておりましても、全然実効あるようなことはいままでやってないわけなんですね。その証拠に、どんどんそうした生産資材、肥料初め上がっていっておるわけなんですが、片やこうしたお米の値段については抑えつけられる、非常にこれは片手落ちのような気がしてならないわけなんです。  それと、私こんなこといまさら言っても始まらないわけですけれども、米審のあのメンバーの方々見ても、常に大体毎年余りかわらない、しかも生産者の方はあの中に五人しか入っていらっしゃらない。こういうところにも実に矛盾を感じるわけなんですけれども、これでいいとお思いですか。
  209. 石川弘

    説明員石川弘君) 米審の委員の構成につきましては、長い間のいろんな経緯がございまして、現在の生産者側委員が五人、消費者側委員が五人というほかは全部中立の委員の方ということに形成されているわけでございます。米審の審議は、私いろんな審議会の中でも非常に特異だと思いますが、決して頭数で表決をしていくというような手法ではございませんで、生産サイド、消費サイド、これは意見が往々にして対立しがちでございますが、その中にあって中立委員がその双方の意見を十分勘案しながら審議をしていくという風習がございまして、したがいまして多数決で引っ張っていくという形ではございませんので、いままでの伝統ある審議方法が非常にまあ巧みな方法ではないかと思っております。
  210. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 米審は生産者の方が五人、消費者の方が五人、そうしてあとは中立だといっても、その中立の方といえども少なくともこれは生産者じゃないわけでして、言いかえれば消費者なんですね。そういったような意味からも、多少これもひとつここらで考えるべきじゃないかと思うんですが、それはそれといたしまして、米価抑制策を講じようとするこの背景には、やはり構造政策を推進する上からもこの抑制策が必要であると、このように政府は考えているんじゃないか、こういう疑義を持つわけです。しかし、これはもう余りにも、もしそうであるならば、これは農家のみを犠牲にして事を解決しようとするほかの何物でもないと思いますし、また先ほどから申しました、その資材価格を抑制することなく米価のみを抑制しようとすることも同じく弱い農民を犠牲にして事を解決しようということにほかならないと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  211. 石川弘

    説明員石川弘君) 何か特定の米専業的農家群を米価で積極的に誘導するというような手法で考えているんではないかという御指摘かと思いますが、いろんな議論の中の一つとしましてよく言われます二種兼、特に米の販売比重が大して大きくないという方々を切り捨てるためにも、たとえば米価水準を極端に抑えれば切り捨てられるのではないかという論議がございますが、数字の実態から見ますと、実はそういう米の依存度の低い方は価格のいかんにかかわらずやっぱりつくるものはつくっていると。逆に低米価というようなものを極端に押しつけますと、案外二種兼が一番強くてやめなくて、米の比重の高い人がまいるのではないかという逆の議論も出てくるようでございまして、私どもはそういう意味で米の価格政策だけで構造政策がうまく展開できるとはなかなか考えにくいと。そこが米問題のどうも一番やりにくいところではないか。ほかの作目についてかなりそういう手法でうまくいく場合もあるんですが、米の場合に、二種兼の比重が高くて販売性が余り変わらぬというところにどうも米問題のつらさがあるように考えております。  いろいろ別途の構造的な政策もやらなければいけませんし、その場合に米価水準が無関係ではないと思っておりますけれども、今回の私ども必要量生産費方式というのは、特定の階層に打ち切るという政策ではございませんで、必要量を生産していただく限りにおいてはその生産費を償うという方式でございますから、この償う場合の償う水準がどういう家族労働均衡するかという意味では厳しい案にはなっておりますけれども、これをもって直ちに何か特定の階層だけに集中するというためにやっている施策とは私どもも考えてないわけでございます。
  212. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 じゃ次に参りますが、農業基本法の第十一条に、農産物の価格政策について定期的な見直し作業を行いこれを公表することをこれは義務づけております。この基本法が制定された昭和三十六年以来、この見直し作業を行ったのは昭和四十年と四十五年のこれは二回でありました。しかし、この場合でも四十年には徹底した見直し作業が行われ、閣議決定までいったわけですけれども、四十五年の場合はこの点必ずしも徹底したものではなかったと聞いております。  そこで、昨年の秋まで約一年半ぐらいの期間をかけて行われた農政審によりまして、この農政全般の見直し作業の中ではこの基本法第十一条を受けた作業に準ずるほどの価格見直し作業が行われたと、こういうように仄聞しますが、同じやるならばもっと徹底して行って、その結果を詳細に公表するくらいの意気込みがあっていいんじゃないかと、こう思うわけでございますが、どうしてそういうことにならなかったのか。また、近い将来いま申しました十一条を受けた徹底した作業を行う用意があるのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  213. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) 先般の農政審議会におきます検討では、価格政策につきましても農業基本法制定以降におきまする運営を振り返りまして、農産物の価格の安定、あるいは価格の持つ需給調整機能といったようないろんな角度からの検討を行ったわけでございます。  で、一昨年の六月に最初に総会を開きまして、まあ部会と専門委員会を設けまして、部会につきましては価格政策については三回、それから専門委員会につきましても十二回にわたって検討を行いまして、その結果につきましては答申の第四章に「農産物価格政策の方向」というふうな形で取りまとめられまして公表をされておるわけであります。これらにつきましては、その周知というふうな点についても私ども努力いたしておるわけでございますが、いわばこの検討が農業基本法十一条の定期的な検討、そういったものに実質的には相当するものと考えておりまして、今後こういったような基本方向を踏まえて農産物価格政策の運用を行ってまいりたい、さように考えておるわけでございます。
  214. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 なぜこの基本法第十一条にかかわる規定についてお尋ねするかと言えば、米価については農産物の価格全般の中にどう位置づけるのか、また農家所得は中長期的にはどう確保されるべきかといったことが明確にならなければ、これは生産農家としてはとても将来が不安になってしようがないんじゃないかと、こう思うわけでありますし、またそこいらの将来像というものが鮮明にならなければやはり後継者の確保にもいろいろなこれは支障を来す原因にもなるのではないかと、こういうふうに私考えるからでありますが、また一面、そうでなければ、米価だけを取り上げて云々するということでは余りにも短見的視野からの場当たり的なものになってしまうのじゃないかと思いますが、この点についていかがでしょうか。
  215. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) 農産物の価格政策の機能につきましては、言うまでもないわけでございますが、その過度の変動を防止することによりまして農産物の生産と消費、あるいは農業所得なり消費者家計の安定を図っていく、それから農産物価格の持つ需給調整機能を通じまして農産物の生産と消費の動向を望ましい方向に誘導していく、そういったような基本的な機能があろうかと思います。  で、そういったような機能を踏まえまして、やはり価格政策といたしましては農産物の価格が過度に変動することを防止していく、あるいは需給調整機能を重視していく。それからただいま所得との関係のお話もございましたが、これからの状況といたしましてはやはり消費支出もいままでのようには伸びない。それから農産物の需給関係というふうな点から申しましても高度成長期のような上昇を期待することはなかなかむずかしい。そういたしますと、やはり基本的にはいろいろな構造政策、これは先般の国会におきまして成立をさしていただきました農用地利用増進事業の活用によりまして、これからも農業に本当に取り組んでいこうというふうな農家規模の拡大あるいは作業単位の拡大、いろいろなそういった生産性を上げていくような方向での努力というものをいろいろやっていきまして、そういうことを通じて長期的な観点では所得の確保を図っていくというふうなことが大事であろうかと思います。まあ各種の農産物の価格について、これはいろんな形で価格政策がとられておるわけでございますが、それぞれの農産物の事情によりましてやり方が違うわけでございますが、そういったような構造政策なりあるいは生産政策と相まって農業所得の確保、向上を図っていくということがこれからの課題ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。
  216. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 非常に答弁が長くなりましたけれども、要するに、これからはちゃんとこの十一条にうたってあるように定期的にこうした見直し作業というものはやっていかれますか。簡単に。
  217. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) 農産物価格政策に関する問題につきましては、毎年農業に関して講じた施策、それから講じようとする施策の中で検討いたしましてその結果を公表いたしておりますし、それからまたその結果につきましては、農業の動向に関する年次報告の中で総合的に検討してその結果を公表いたしておるわけでございます。その際には農政審議会の意見を聞きましてその取りまとめを行っておるわけでございまして、これからもこういう形で毎年やってまいりたいというふうに考えております。
  218. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次に労働報酬との観点から若干お尋ねいたしますが、米審会場において、米審委員の資料要求に対し農林省が回答した資料、すなわち委員要求資料をいただいたわけでございますが、この中で、稲作単一経営農家のうち中核農家の一戸当たり農家所得と一戸当たり勤労者世帯の比較では、もちろんこれは全国平均でございますが、昭和五十四年度においては、勤労者世帯を一〇〇とした場合、稲作経営農家は一三六・九と、こうなっております。したがって、この数字を見る限り農家所得状況はきわめてこれは良好であると、こういうように思いますが、しかし、これを就業者一人当たりの総所得で比較してみるならば、勤労者の一〇〇に対して農業就業者は逆に六九・六ということになっております。この実態をどういうように受けとめられますか。
  219. 石川弘

    説明員石川弘君) 私どもいろいろとPRに使っております資料でも、一人当たり所得なり、一人当たりのたとえば家計費なりというようなものでは、ここ数年来、大体五十年に入りましてから農家の方が高いということは数字でわかっておりますが、一方、いま先生御指摘のありましたように、就業者一人当たりにしますと農家の方は、だんだん近づいてまいっておりますが、やはりある程度勤労者世帯よりも低い水準にあるということを考えております。これはやはり勤労者の場合主人が勤めてというのが大半の姿でございますが、農家の場合は就業者、これは御主人だけじゃなくて夫人も働いているというようなことでございますので、こういう比較をいたします場合にはやはり就業者当たりの総所得というものは勤労者よりも若干低く出る、このことは先ほども申し上げましたように農家と勤労者がどちらがいいかというような一般的比較をするときにやはり両方の要素を見なければいかぬ要素だと考えております。このお配りいたしました数字も戸当たり所得比率農家が高くて就業者一人当たり所得農家が七割前後という数字になっておりますし、ここでは割り算をしてございませんが、たとえば一人当たりの農業所得、これは農家は四・八人でございますから、五百三十五万円という総所得を一人当たりで割りますと百十一万六千、それに対して勤労者は、世帯員が三・八三でございますから、ここにございます収入を同じく三・八三で割りますと百二万一千円ということで、実は一一%ほど、いわゆる戸当たり、一戸にいます世帯員一人当たりの総所得は高い。それから家計費で見ましても、この家計費三百七十二万一千円を四・八で割りました七十七万五千円と、二百六十六万九千円を三・八三で割りました六十九万七千円の間にはやはり九%程度の差がある、そういうことでございまして、これは農家の就業の形態からいって私はこういう数字が出てくるのはある意味ではやむを得ぬのではないか。逆に言いまして、それでは就業者一人当たり所得のところで均衡しなければ農家が不利だと考えるかどうかにつきましては、これはいろんな判断があろうかと思います。私はこういうものの均衡の場合に戸当たりで見るだけではまずいと思っておりますので、わが方の資料にわざわざこういう就業者当たりを含めておりますのは、その戸当たりだけを見まして、一戸当たりとかあるいは一人当たりだけを見まして農家が過保護だというような表現には必ずしもくみし得ませんので、むしろこういう数字も出しまして農家の実態、やはり就業者みんなが働いて一定の収入水準を上げているのだという意味でこういう資料も出しているわけでございます。
  220. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では、稲作農家の一日当たり家族労働報酬について昭和五十年から五十五年までどう推移しているのか、また五十二年を一〇〇とした場合に五十三年、五十四年、五十五年はどうなっておりますか。
  221. 関根秋男

    説明員関根秋男君) 一日当たり家族労働報酬は、昭和五十年産につきましては六千九百五十三円、五十一年産は五千八百二十四円、五十二年産は七千八十九円、五十三年産は六千八百四十八円、五十四年産は五千七百四十二円、五十五年産は四千九百七十二円となっております。  五十二年産を一〇〇といたしました場合には、五十三年産は九七、五十四年産は八一、五十五年産は七〇でございます。
  222. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いま申されたこの数字からも明らかなように、これは先ほど来私が申し上げている抑制米価の結果を如実に示すものであろうかと思います。このような結果に対して稲作農家は、他産業従事者にあってはそれこそ週休二日制になっても賃金だけはこれは保障されるわけですけれども米価だけは保証されないという率直なこういう疑問を持ってくるわけでございますが、この疑問にどうお答えになりますか。
  223. 石川弘

    説明員石川弘君) ただいま統計情報部長からお話しました数字はいわゆる家族労働報酬でございます。農家所得になりますものは、この家族労働報酬を出します場合には、各費用、要するに収入から費用を引きまして残りを家族労働報酬にするわけでございますが、その場合に、たとえば先ほどから米価で申し上げているような自作地地代部分とか、自己資本利子というのは実際は収入になるわけでございますが、こういう場合は費用として控除されております。したがいまして、農家が真に手取りをいたしますものはこの家族労働報酬以外に、地代自作地地代とか、自己資本利子というものは入るわけでございます。したがいまして、いま申し上げました家族労働報酬の落ち込みよりは農家所得という概念で見ましたときに落ち込みは少のうございます。若干の落ち込みをしておりますのは、交易条件が要するに過剰の中で農産物一般に交易条件が悪うございますから値段は上がりにくくて資材が上がるという中でこういうものが伸び悩んでいるあるいは若干低下しているということは事実でございますが、こういう家族労働報酬の落ち込みほどは実はひどくないわけでございます。しかし先生御指摘のように、およそ一般に農産物価格が低迷ぎみであり、かつ資材が上昇するという中では農家所得自身が伸び悩むというのが実情でございます。したがいまして、私ども米価その他を算定いたします場合にもそういう要件も加味しなければならないわけでございますけれども、しかし米価にはそういう農家所得の確保という面も大変大事でございますが、それ以外の要素としてやはり各種の勘案要素経済事情、これは需給の問題であるとか、若干最終的には財政の問題も含めまして、そういう勘案要素が必要でございますので、このような算定をせざるを得ないと考えているわけでございます。
  224. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いま最後にお答えがありましたように、私はこの米価は財政事情需給均衡等を考慮して決めるというほかに、やはり稲作農家所得確保という性格をこれは持っているはずだと、こう考えます。しかるに、ことしの場合は労賃評価全国一律平均から都道府県別の米販売数量により加重平均して算出される全国平均に切りかえられたわけです。この算定要素昭和四十六年と四十七年にもこれは採用されたわけですが、いずれにせよこのような恣意的な操作によって昨年まで使用されてきた算定要素に比べ二〇%も下回る労賃評価水準を示しておりますが、これが果たして許されるべきものだろうかと、私は非常にこれは残念でならないわけですけれども、こうした考え方の背景には、しょせん農村は農村で、またその各地方は地方における労賃水準というものがあって、それが保障されさえすれば事足れりという、こういう考えが根底にあるのではないか。しかし、これは大変な間違いでありまして、農村あるいは地方の賃金水準は農産物の価格水準がどう決定されるかということにこれは大きく影響されてくるわけでございます。農産物の価格が高い水準で決定されれば農村や地方の賃金水準も上がり、逆に農産物の価格水準が下がればその地方の労賃水準も下がるわけでありまして、農水省が本当に農家の立場に立って真に都市と農村における所得保障ないしは生活水準が公平に確保されるべきものと、こういうふうに考えておられるならば、今回のように全国一律の平均賃金から、これより低い地方賃金水準米価をはじき出して価格抑制を図ろうとするようなことはなかったんじゃないかと、こう思いますが、このこうした考え方は農水省の本来の使命と申しますか、これに逆行するものじゃないかと思いますが、いかがなものでしょうか。
  225. 石川弘

    説明員石川弘君) 今回の私ども算定は、いわゆる地方で形成されています地場賃金というようなことではございませんで、実は五人以上九百九十九人といいますと、司本のほとんどの大企業が中へ入るような規模賃金でございます。これは企業の大きさじゃございません。一つの工場で九百九十九人以下であれば出るわけでございますから、そういう賃金というのは実は地場賃金的じゃなくて全国のいろんな一つのAならAという会社の賃金水準というのは出てくるわけでございます。それが実はどういう形になるかということを計算しますときに、いままでは工場の労働者の数の分布で割っていったものを都道府県別にやりまして、そこの比重を掛けますときに米の販売数量を加味したと。けさもちょっと申し上げましたけれども、たとえば兵庫県なんというところは工場も多いしお米の生産も大きいと、そういうところもございます。それから工場の数が比較的少ないというところもあろうかと思います。決して特定の田舎か町かということじゃございませんで、これをやってみますと、地域によって実は賃金水準が比較的高くて、そういう高い賃金水準と今度つくりますわれわれが想定します賃金が非常に接近する地帯もございます。それは地域によりまして現在のたとえば北の方とかあるいは南の方で今度考えられる想定水準でもわれわれが原生産費に使っています水準よりもはるかに高い水準が出る場合もあります。そういうものを全国おしなべていろいろお米の生産の比重を掛けながら集計したのがこの水準でございますので、いわば村と都市というような意味ではございませんで、そういう結果的には日本の大企業の大方を網羅したようなところで、それは大きいのもありますし、もちろんこれは五人以上でやっておりますから小さいのも入ってくるわけでございますが、そういうことでつくられる水準であるわけでございまして、決して特定の田舎の安い賃金と比べたということではございませんで、そういう集計をいたします場合に米の生産の量というものを算定要素に加えて集計をしてきたということでございます。
  226. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 もう時間がありませんので先にいきます。  次に冷害との関係で米価を考えてみたいと思いますが、まず、ことしのこれから向こう三カ月ないし四ヵ月の気象予測をお尋ねいたしたいんですが、気象庁の方来ていらっしゃいますか。——ことしの稲の収穫時までの天候をどういうように予測されておりますか。
  227. 菊池幸雄

    説明員(菊池幸雄君) 今後の天候の見通しということでございますが、お答えいたします。  まず、梅雨がさしずめ問題になると思いますけれども、もう御承知のように一部の地方では梅雨明けが発表されておりまして、現在梅雨は明けつつある段階でございます。梅雨が明けましてから八月半ばまでは昨年とは違いましてことしは暑くなると、そう予想しております。しかし、八月後半には北日本を中心に低温や局地的な大雨のおそれがあると、そういうように見込んでおります。  月の平均気温で言いますと、七月は北日本では平年並みかやや低く、中部日本では並み、西日本その他の地方になりますけれども、ここは平年並みかやや高い見込みでございます。それから八月の平均気温は、北日本では平年並みかやや低く、その他の地方では平年並みと、そう予想しております。現在九月までが予報されておりますけれども、九月に入りますと関東から西の地方では残暑の厳しい日がありますけれども、北日本では秋の訪れが早いであろうと、そう考えておるわけであります。  以上のような見通しでございますので、ことしの夏は昨年のような低温にはならないだろうと、そう考えております。  以上でございます。
  228. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いまの気象庁の予測を踏まえて、いますでにこれまでの異常気象が、この六月に霜が降っただとか雪が降っただとか、東北、北海道ではそういう異常気象が起こっておりますけれども、こうしたことによって稲の分けつが大変おくれているというような情報も耳にしておりますが、農水省としてはいまのお話のような天候予測との絡みで、今後どういうふうに稲の作況を予測しておられるのか、現況とあわせてお尋ねいたしたいと思います。
  229. 高畑三夫

    説明員(高畑三夫君) 本年の稲作につきまして、御指摘のように五月中旬以降の低温の影響がありまして、北日本を中心水稲の成育の遅延が見られることは事実でございます。  地域別に見ますと、田植えにつきましてはほぼ平年並みということでありました。その後の成育につきまして平年の成育ステージと比較いたしますと、北海道におきましては六ないし九日程度、東北地方では三ないし七日程度、北陸では二日ないし七日程度の成育のおくれというのが七月十日現在で情報をとりました状況でございます。  もっともこれらの地域におきましても六月末ないし七月上旬ごろから天候が回復ぎみに推移いたしております。したがいまして、今後成育の回復が期待されるという報告を受けております。ただいま気象庁のお話にもありますように、七月から八月にかけまして昨年のような低温は来ない見込みという予報もございますので、そういう回復の期待をしておるというところでございます。  今後の見通しにつきましては、現在、全国的には水稲の生育の前半の段階ということでございます。したがいまして、収量への影響はこれからの天候の推移いかんということでございますので、まだ現時点で的確な予測はむずかしいというふうに考えております。いずれにしましても、現段階では北日本を中心に生育の一部のおくれが出ておるわけでもございますし、天候の回復の過程でいもち病等の発生も懸念されますので、現地の実態と気象情報を的確に把握しまして、気象の変動や生育状況に応じた適切な肥培管理等、技術指導に万全を期してまいりたいと考えております。
  230. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 ことしの作況を考慮しても米の需給には余り支障は来さないということを先般からよく耳にしておりますけれども、食糧の安定供給に責任を持っている農水省としては、米不足に対する不安を与えてはならないとする立場はこれは理解できますけれども、しかしすでに全国至るところで青田刈りとかあるいは早場米地帯におけるやみ業者の買い占めが行われているといった情報を頻繁にキャッチしております。普通のウルチ米で一俵二万三千円とか二万七、八千円とか、モチ米に至っては一俵三万五千円といったやみ値相場の情報を耳にいたします。これでは政府米についても限度数量の相当分を十分集荷できるかどうか、ちょっと心配になってくるわけでございますが、万一これが失敗するというようなことになればこれは大変なことになるわけでして、それこそ食管法の崩壊に拍車をかけるようなことになりはしないかと、こういう心配も出てくるわけですが、単にこういう事態になった場合、その責任を集荷に当たる農協やあるいは米を出荷する生産者側に転嫁することだけではこれは済まないのではないかと、こう思います。本当に集荷について、また、食管を守るということについて責任を感ずるならば、やはり基本米価を上げることで対応をするということこそ、それこそ基本ではないかと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  231. 石川弘

    説明員石川弘君) 巷間非常に高いやみ値で米を集めるというお話があるわけでございますけれども、御承知のようにいろいろな情報が流れておりますが、たとえばやみ相場といっておりましても一体何俵の米が動いたという情報すら全くないわけでございまして、あの種の情報に私ども大変迷惑いたしておりますのは、幾らの米をどれだけ動かしたということじゃございませんで、御承知のように昨年からことしにかけまして需給がこういう形で単年度、特に五十五年産米の量が少なかったということから、農協等は十分集荷をし、自主流通も円滑に流し、政府米もおかげで、何と申しますか、いわゆるやみ米というものの流通量が少ないことから政府米も前年以上に売れているという実績がございまして、そういうかつて比較的流れておりましたやみのそういう量が少ない、そういう中で不正規な流通をする者がほんの少数、扱うものの金額が高いというようなことから、何かたとえば良質米は幾らでも高く売れるんではないかというようなことも言われる方あるんですが、私どもはやはり相当の量のものを円滑に流すためには、いまたとえばおっしゃいました良質米といえども政府が相当の自主流通助成等をやって流さなければ農家の手取りも確保できない。そういういわばやみ相場みたいな話をなさることは、たとえば農民の方にとっても、一方でたとえば自主流通助成なんか過大ではないかという批判もある中で、決していいことではないということで自重も求めておりますし、それから農協を初めといたします集荷の団体も、今回新食管法におきまして指定集荷業者の地位が法律的な地位で明らかになるわけでございますから、そういう制度も十分遵守してやるという方に指導をしてまいっておるわけでございます。特にそういう一部に浮ついたような話もありますので、関係集荷業者等も集め、あるいは販売業者等も集め、そういう端境期におかしな行動をすることのないようにという指導をいたします一方、私どもはそういう早場米の集荷を極力適切にやるようにということを集荷団体にも指導いたしておりますし、食糧事務所その他のわが方の出先機関も使いまして、そういういかがわしい情報があります場合には適確にそういうものを撲滅するということをやっておりますので、決してそういううわさというようなことで事柄がこれ以上拡散することのないようにきちっとやっていくつもりでございます。
  232. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 最後に、もう時間が参りましたので、簡単にお尋ねいたしますが、いずれにいたしましても、ことしの米価、つかみ金が出されるとか出されないとか、そういったようなうわさも飛び交っておりますけれども、そうした何かわけのわからないような密室でこのような重要な決定がなされるということは私はもう絶対これは納得がいかないわけでして、そうしたこそくなつかみ金というような名目ではなくて、堂々と基本米価の値上げという形で対応すべきじゃないかと思いますが、このことについて簡単に御答弁をいただきます。
  233. 野呂田芳成

    説明員野呂田芳成君) 先ほども大臣が御答弁したとおり、米価審議会の答申を得る前につかみ金で政治決着をするというようなことを、私どもが決定したり予定したりするということは絶対にあり得ないことでございまして、ひとつ御了解いただきたいと思うんです。  で、基本米価を引き上げろというお話でございますけれども、先ほど来、需給バランスの大変な深刻さは四十六、四十七年の段階よりもさらに深刻である、その結果の財政に及ぼす影響も非常にきついということで御了解を得るべく御説明してきたところであります。もし、これを放置しておきますと、食管会計の崩壊につながりかねないし、その結果は農民の生活を破壊することになりかねないわけでございますので、私ども基本米価につきましては引き上げるということは考えておりません。いずれにしましても、いま米価審議会で鋭意審議中でございますので、この答申を得て適切なものを決定してまいりたい、こういうふうに考えております。
  234. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 終わります。
  235. 下田京子

    ○下田京子君 ことし、据え置き米価を出すために大きくいじった部分は、稲作の労働評価のことと、それから自己資金金利の部分だというお話がありましたけれども、他の委員からずっといろいろお話があって、お答えいろいろ聞いておりましたけれども、とにかく納得できない部分がもうほとんどでありますよね。私は第一に聞きたい点なんですけれども、まず昨年と同様の計算方法と、そして計算要素でもってやった場合には、ことしの基準米価は一万九千四百五十六円で、現行比一一・七になるとそれは二千三十八円の増額になると、こういうことでよろしいんですね。
  236. 石川弘

    説明員石川弘君) 昨年と同様のということはお断りいたしましたように、労働費評価について五人以上千人未満の都市近郊労賃、金利につきまして自己資本金利を五・三五%で計算すれば、先生御指摘の数字のとおりでございます。
  237. 下田京子

    ○下田京子君 で、その際にその自己資金金利の部分を除いて五人以上九百九十九人の労働費の部分だけで見た場合にはそれでは基準価格はどのくらいになりますか。
  238. 石川弘

    説明員石川弘君) 価格は後ほど申し上げますが、伸び率としましては一〇・四でございます。
  239. 下田京子

    ○下田京子君 その数字は私がもらっているのでありますけれども、一万九千二百二十円、これで間違いないでしょうか。
  240. 石川弘

    説明員石川弘君) その数字でございます。
  241. 下田京子

    ○下田京子君 最初から答えてくださいよ。そうしますと、これは千八百二円賃下げになったということになりますよね、これが第一。これを同じように計算して一時間当たり賃金にしますとどのくらいになりますか。——これね、今回、委員要求資料で出ているんです。千百七十八円六十六銭、間違いないですね。
  242. 石川弘

    説明員石川弘君) 千百七十八円六十六銭というのと五十六年の間の九百四十八円八十九銭の差でございます。これは五十六年ベースで上げていったものからの差でございます。
  243. 下田京子

    ○下田京子君 ちゃんとそう聞いていますよ。資料にも出しているんですからそのぐらいの数字は言ってくださいね。私はこの数字をなぜお聞きしたかといいますと、数字をぽんぽんと言うのは非常に簡単なんですけれども、実感としてどうなのかという問題なんです。ことしの労賃の評価がえの話は、一時間当たりにしますと九百四十八円八十九銭でしょう。昨年は幾らかというと、千九十三円四十五銭ですね。つまり名目で一三・二%ダウンしていますね。さあそれではことしどうかということでいま聞きましたらば、ことしは賃上げになっているわけです。それが千百七十八円六十六銭ですから実質で一九・五%も下がったということになるわけです。この数字はさっきからいろいろ言われておりますけれども、次長さんも、それから政務次官も、いいですか、全部上がっているんですよ。生活切り詰めなければならないんですよ。そういう中で稲作の労働評価を何だかんだ理屈つけてもとにかく二〇%近くダウンしているんです。農家の方にわかるように説明してください。
  244. 石川弘

    説明員石川弘君) 労働評価にかかわります部分は、先生はいま賃金ということの賃金ダウンというたとえでおっしゃったわけでございますけれども、これは、その労働をどう評価するという場合に、どの賃金水準と比べるかという問題でもございます。私が先ほどから申し上げておりますように、たとえば農村で現実に支払われておりますような農村雇用労賃とバランスするというような議論もあろうかと思いますけれども、都市近郊労賃という思想では、一定の規模労働者賃金水準とどのようにバランスさせるかということが従来からやられてきたわけでございます。その場合に、五人以上九百九十九人という規模といいますのは、日本の工場労働者の中では大半のものが含まれる賃金水準でございますが、それをどう積算するかという場合に、先ほどから何度も申し上げましたように、四十六年というような事情の中で算定しましたような、そういう米の販売数量要素に入れた形で集計をすると、先生おっしゃいますように、従来の方法より下がるということについては、これは間違いございません。しかし、どういうものとバランスさせるかという場合に、そのバランスの仕方が著しく当を失しているかどうかという問題でございまして、私どももこういう計算をするには胸の痛い思いをいたしますけれども、過去の四十六年ないし七年にそういう手法をとりながら米の均衡に向かっていった、これは米価だけではございません、いろんな手法を使いながら向かっていって、その後一時的ではございますが、米の需給均衡を達し、要するに、生産されるものが十分消費されるという好ましい条件をつくり出したわけでございますので、そういう意味の御指摘は重々わかりますが、こういう算定をさせていただいたわけでございます。
  245. 下田京子

    ○下田京子君 どの賃金と比較するかということは議論があるにしても、私が聞いているのは、昨年に比べてとにかく稲作労働にかかわる評価が二〇%下げられたというのは事実なんです。いいですか。そういうことをどう説明するんですかと聞いているんです。答えになっていません。  そこで、よろしいですよ、答えになっていません。問題は、稲をつくる際に、その労働というか、評価が経済的な事情でもってどうこう変わるということはいずれにしても問題であるというのが一点なんです。これはどの労賃と比較して云々の前の話ですよ。昨年に比較してすべてが上がっているときに、ここの部分だけ下げて胸が痛むなんて、御自分の賃金は上がっているでしょう。そんな話はありません。  そこで、次に数字を出してみたいんですけれども、その都市近郊労賃の評価がえの話で、生産費所得補償の話のところでそういう形でやってきて、先ほど来からの話を聞いてますと、一つはこの稲作の労賃にかかわる部分とあるいはまた自己資金の利子の部分とあるいは地代の部分というのは所得にかかわる部分なんだからいじっていいんだよという論を言っているんですよね、さっきからのお話聞けば。そうしますと、本来生産費所得補償というその生産費の方は見ているんだと、じゃあ所得の方は勝手にいじってカットしていいのかという議論になるんですよ。これはだれが考えたって筋通らないでしょう。  しかも、さっき統計の関係の方から数字が出ましたが、私も改めて申し上げますけれども、一日当たりの八時間のその結果がどうだったかという家族労働の報酬ですね、この生産費調査、これは数字的に出ているわけで、五十二年が七千八十九円でしょう。五十三年が六千八百四十八円、五十四年が五千七百四十二円、五十五年で四千九百七十二円。これは生産費調査ですから、結果なんですよ。振り返ってどれだけ補償されていたかということなんです。それが五十二年を一〇〇とすれば五十五年は七〇しか補償されてない。それだけ下げられてきたということは事実でしょう。  もう一つです。さっき次長さんおっしゃいました、つまりどの賃金と比較するかということですが、製造業五人以上の平均賃金と米にかかわる労働報酬を比べてみます。そうしますと、五十二年は米の労働報酬は製造業五人以上の平均賃金に比べて八一・五%しか満たされてません。五十三年には七四・五%、五十四年になるとさらに五九・一%、五十五年の数字は出てないんで労働省に聞いて推計で計算しましたところが、何と四七六%。製造業五人以上の平均賃金に比べてお米の労働報酬というのは半分以下、こういう実態なんです。こういう状況の中で、製造業労賃との格差がどんどん広がっているということなんです。これらを踏まえて皆さんにわかるように、生活をどうするのか、農業の再生産をどう確保していくのか、その点からお答えください。
  246. 石川弘

    説明員石川弘君) 先生が御指摘の家族労働報酬といいますのは、先ほど私が申しました農家にとっては所得になります地代あるいは自己資本利子というものを先に引きまして、その後から出すのが家族労働報酬でございます。したがいまして、先生御指摘のように、先生いま八時間とおっしゃいましたが、一時間当たりで申しますと、たとえば五十年ぐらいの規模から申しますと、一時間で家族労働……
  247. 下田京子

    ○下田京子君 時間がないからいいですよ。そういう数字細かくやってったら時間がございませんでしょう。私が言っているのは……
  248. 石川弘

    説明員石川弘君) いや、誤解があるといけませんから申し上げますのは、家族労働報酬だけが手取りではございませんで、所得といいますのはそれ以外に農家地代をもらったはずという形でもらい、資本利子も支払いませんがもらったはずということで所得に入れているわけでございます。それで申し上げますと、五十年から五十四年の中で一時間当たり千百八十七とか千八十二、千二百八十五、千三百二十六、千二百十七という数字がございまして、私が先ほど申しましたように、家族労働報酬の落ち込みほど大きくないと、確かに停滞はいたしておりますが、落ち込んでいないということを申し上げたわけでございます。したがいまして、それは苦しいことにつきましては間違いございません。これがどんどん上がっているわけじゃございませんから。それはやはり、先ほど申しましたように、農家所得という観点からは厳しいことでございますが、米の需給という事情もやはり米価算定いたします場合に勘案せざるを得ない。特に、そういうことで過剰になったことが農家にとりまして自分の生産物が過剰になって売れない。売れないものがたまることが——たとえばいまの食糧管理というものは農家に過保護ではないかというようないろんな疑惑も出てくる。そういう意味で私は決して楽だとは申し上げませんが、そういう状況も勘案して米価を設定せざるを得ないということを申し上げたわけでございます。
  249. 下田京子

    ○下田京子君 いまのようなことを繰り返し言っていますから、具体的に実感として、後でまた転作の条件の問題で言いますけれども農家はいま借金がふえている、手取りが少ない。でもって、全体で農家所得では上がっているじゃないかなんて議論、言っているけれども、実際に就業一人当たりでいけば、さっきもちょっと他の委員に御説明になったけれども、それは労働者との対比でいけば落ち込んでもいる。そういう状態ですから自殺者が相次いで出るんですよ。後継青年の確保なんてことを幾ら言ったって出てこないんですよ。それは実感なんですよ。数字じゃないんです。しかも、いま厳しいとおっしゃっているでしょう、お認めになっているでしょう。それをなぜ、経済事情云々と言うけれども、米の需給が云々だと言って、過剰傾向が潜在的にあるからだと、それは農政の問題じゃありませんか。稲作労働評価をどうするかというのは、一時間当たりどうあろうとそれはきちんと、変えるべきものじゃありません。しかも、これは財界のように利潤を目的としてやっているんじゃないんです。いま所得所得、他にも所得あるよと言うけれども所得の重要な部分がいま家族労働であるということもはっきりしておるじゃありませんか。そのことを私は繰り返し指摘し、いまのような考え方でこの稲作労働評価をいじる気になったらどんどん変わる。希望の持てる農政なんてことはとても見出せないということを重ねて指摘しておきます。  で、次に、なぜそれほどまでにそれでは需給均衡云々ということで議論を出されるのかという問題なんです。そもそもその背景にあるのは、やはり農業団体、また多くの皆さんが指摘しているように、財界からの強い指摘が私は背景にあると思うんです。つまり、生産費所得補償方式と言いながらその内容を次々と改悪してきたじゃありませんか。しかも、家族労働の部分をもう五回も変えているわけですよ。本来、食管法に基づいてその米価はどう決めるかといえば再生産を確保するでしょう。経済事情云々あるけれども、最終的には再生産の確保というところが基本でしょう。それから、消費者米価の方は家計の安定というこの二重価格でしょう。ところがどうですか。岩佐経団連評議員会の議長さんが言っていますよ。二十年前に食管会計を見直すべきだったんだと指摘した。二十九年ぶりに食管の法が変わりましたが、同時にその食管が通った後、六月の十九日に今度はどういうこと言っているかというと、経済同友会「日本農業の活力化のために」ということで指摘していますよね。この指摘がどうかといえば、一部読みますと、食糧管理制度の根本的改廃について議論を尽くせ、と言っているんです。そして、過渡的な措置として「従来の生産費所得補償方式に固執することなく、需給均衡価格原理の徹底、米価算定方式の変更が必要である」。まさに経済界の指摘とぴったりの説明を午前中から繰り返しておやりになっているんです。まさにこういうことで財界からの攻撃に合ったものじゃないかと思うわけですが、このことについてどう答えますか。
  250. 石川弘

    説明員石川弘君) 先月御審議をいただきまして、食糧管理法の改正をしていただきました。これは私どもが年来悲願としておりました食管法の持っております一つの弱点と申しますか、戦後統制色のものをそのまま盛っておりまして、御承知のように、不足なときにこれを公平に分けるという原則が第一に貫かれておりますため、現在のような需給事情に十分対応できない、そのことが消費者の方々の需要にもこたえにくいという要素もございまして、過不足両用に対応するということ、それから万が一不足します場合にそれにも対応できる——過不足両用ということでございますが、そういうことと需給基本計画、供給計画といったような需要供給の指針をつくること、それと、関係流通業者の地位を明確にするとともにその責任を明らかにして米の流通に遺憾なきを期するということをやったわけでございます。これは先生も御承知のとおり、財界から全く違った提案があったことは事実でございますが、私どもは諸先生方の御協力を得てそういう法案を提出し、通過をさしていただき、来年早々これを施行するわけでございますから、財界がどうこう言って食管の考え方をどうこうするんでないことは、この法案を政府が提案し、御審議いただいて、いまそれを実行に移そうとしている一事をもっても明らかではないかと思います。
  251. 下田京子

    ○下田京子君 どう議論をしようと言われている中身が同じであるということははっきりしています。  私は次に、背筋がぞっとするような思いになったのが、今度の臨調なんです。第二次臨調の答申なんです。食管だけじゃなくて、農業全体に対しての攻撃が出てきている、こういう思いなんですが、これに対して日本農業を守るという立場から、当然政府あるいは農水省は反撃すべきでないか、まずこの点は政務次官にお聞きします。
  252. 野呂田芳成

    説明員野呂田芳成君) これまで、中間答申が出されるまでの間、農水省挙げまして事務折衝を重ねてきた結果がああいうことが出されているわけでございまして、決して拱手傍観をしておったわけではない、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  253. 下田京子

    ○下田京子君 じゃ、具体的にお尋ねしますが、臨調の中で大きく言えば三つ、さらに金利の部分なんか入れますと多方面、総合的にいろいろ問題を出されているんですが、農業基盤整備の問題についてお聞きします。  新規事業は極力抑制しなさい、特に圃場整備事業については助成を融資に切りかえよと、こう言っているわけです。しかし、その実態はどうなのかといいますと、これは皆さんの方からいただいている資料によりますと、昭和三十八年に圃場整備事業に使った農家負担額は、十アール当たり一万七千五百円でした。それが、五十五年は二十一万三千円と、この間実に十二・二倍に上がっております。同じこの三十八年から五十五年の間に十アール当たりの稲作所得はどう変わっておりますでしょうか。——これ、ことしの七月に出ている委員の資料にあります。時間がないから私、自分で申し上げます。  この数字を言いますと、三十八年に稲作所得十アール当たり二万七千八百四十円だったものが、五十五年には七万八千八百八十五円で、実に稲作所得の方では二・八倍なんです。片や農家負担が十二・二倍です。ですから、全体にかかるうちの四分の一弱しか所得がないと、こういう実態なんです。これで農家はさらに融資なんということに切りかえられましたら、一体どうなりますか。
  254. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) 基盤整備事業が年々事業費の単価が増高してまいっておりまして、これに農家の稲作所得に限りませんが、農産物収入を中心とする農家所得が追いつかないという実態は確かにございます。ただ、負担金の償還期間等のことを考えますというと、直ちにそれだけで比較はできないかと思うわけでございます。現在の補助制度について、さらにこれを融資に切りかえるようにという臨調の御指摘がございますが、ただ頭から全部を切りかえろというようなお話ではなくて、現在の制度の中でも一部融資が適当なものについては融資制度を活用するというようなものもあるわけでございます。こういったものをさらに一層活用できる余地があるかどうか、そういうことを検討して、できるだけ補助から切りかえることができるものはそういうことも検討したらという御指摘であるわけでございます。私ども個別に実態をよく調べまして、そういった点について今後検討を進めてまいりたいというように考えておるわけでございます。全面的な融資への切りかえというようなことは、これは事柄が補助がやはり中心で補助になじむ事業でありますので、そういうことは考えておらないところでございます。    〔委員長退席、理事坂元親男君着席〕
  255. 下田京子

    ○下田京子君 全面的に融資に切りかえるかどうかというのは別にして、融資でやれという臨調の答申を受けて、その方向は検討していくという話になっていますね、いまのお答えですと。これはかなりいままでをもう路線ががっと変更になっていますね。かつて農水省はどうだったかというと、毎年のように、いま私が数字挙げましたように、農家負担が十二・二倍にもなっていますでしょう、所得の方は三倍にも満たないような状態なので、圃場整備事業の国庫補助率を引き上げよ、引き上げよといって概算要求をしてきたんですよ。ことしは全く路線変更で、融資はもう入れるよと、何をどういうふうにするか、全面的にするかどうかはこれから検討する、まさにこれこそ臨調が言ってきた線をやろうということになっているんじゃないですか。これは大問題ですよ。水田のいまの問題とあわせて再編利用の話だって、当面は枠組みの中で節減合理化をやれと、しかし三期以降になったらばこれは転作奨励金カットなんだと、こう言っているんですよ。食管の話になったら、生産米価は据え置いて消費者米価を上げろと言っているんですよ。金利でやれと言っていますけれども金利もまさに利率を上げると言っているんですよ。そういう方向でぐっと押されていくなんてことになりましたら、これはもう大変な問題だと。政務次官、臨調で言われている方向でおやりになるんですか。農業つぶしですよ。
  256. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) いまの圃場整備事業に伴う農家負担の問題につきましては、従来確かに補助率の引き上げというようなことを要求してまいった経緯もございます。それなりに改善されている面もあるわけでございますが、ただ負担ということになりますと、農家負担もありますが、国庫の負担の点も考えなければならない、今日補助率を上げるというようなことは現実的ではないというふうに私ども考えておるわけでございます。  そこで、先ほどの融資への切りかえの問題でございますが、方針を転換したのではないかという御指摘でございますけれども、現在でもむしろ事業の性質が個人的な施設にかかわるもの、融資になじむようなものもございますし、圃場整備の中でも客土のような事業はむしろ融資でもいいんじゃないかというような面もあります。さらには、事業を早く完成したいものは補助よりもむしろ融資に依存した方がいいというようなことで、かなりの部分が融資に乗っているものも現実にあるわけでございます。
  257. 下田京子

    ○下田京子君 〇・二%部分です。
  258. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) そういったものを今後ともどういった面が可能か、融資が可能か、事業の早期効果発現というようなこととも絡み合わせて私どもは検討してまいりたいと、このように考えているところでございます。
  259. 下田京子

    ○下田京子君 最後に一言。  現在も融資を入れているからだよという話ですが、私が根本的に聞いているのは、臨調の指摘の方向で行ったら農業つぶしになりますよと、それに対して問題をきちんと言うのか言わないのかと、こう聞いているんです。それを答えてほしかったわけです。  時間がありませんので最後に、御答弁いただければ助かりますけれども、臨調が全体的にやってきているのは、いままで財界や一部労働界が農業過保護、過保護でだっとやってきたことを、総まとめのような形で出してきているんですよ。これがもし本当にやられていったらば農業はつぶされてしまいますよということを申し上げているわけなんです。で、圃場整備の問題だって、転作条件の整備やなんかしなきゃならないし、転作奨励金のカットなんてことになったら、片や価格が保証されていない、米のやつは据え置いてなんていったって、だれも米以外のものは何もつくりようがないじゃないですか。そういうことで全体的な農政の確立というのはどうあるべきかということで、きちっといま政府、特に農水省こそ物を申すべきじゃないでしょうかと、こう言っているわけです。    〔理事坂元親男君退席、委員長着席〕
  260. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) ただいまの御指摘の点は十分私どももわかるわけでございまして、何も農業つぶし、そのことのために臨調が指摘をした、あるいはそれに応じて私どもが作業をする、検討するというわけではございません。やはり現在の農政の中で、具体的なたとえば圃場整備事業なら圃場整備事業という中で、財政負担も軽減しながら事業の効率も上げる、そういった調和点というものが見出せないものかどうか、一層全体の効率化を図るというような観点から、そしてしかも農業自身が打撃を受けることのないように配慮をしながら、できるものはできる範囲でやっていくということでこれに対応したいと考えているところでございます。農業の大事なこと、それから農家負担の苦しいこと、圃場整備を今後ますます前進させなければいけないこと、そういったことについては十分承知しておりますし、努力してまいりたいと考えております。
  261. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 第二臨調の第一次答申の中に、食糧管理の問題あるいは水田利用再編対策の問題さらにその他の農業助成の問題、いろいろ触れられておりますけれども、この内容はわが国の農業にとってはきわめて厳しい内容だと思います。しかしそれだけではなくて、私はこの本質というものは、いままで政府が進めてきた農政の基本的な転換を求めておると思うんです。午前中農林大臣は、これはきわめて筋の通った答申だというふうに言っておられましたけれども、次官はこれについてどう考えられるのか、またこれを最大限に尊重して実行されるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  262. 野呂田芳成

    説明員野呂田芳成君) 午前中大臣が答弁したことが農林省の基本方針でございます。今後答申の内容につきまして慎重に検討を加えながら、政府としての方針決定を待った上で適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  263. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私はこの答申が出てきた原因というのは、主として財政的な問題だと思います。特にこの第一次答申というのは、五十七年度予算というものをどう編成するか、増税なしで財政再建路線を行うためにはどうすればいいか、そういう発想から出てきておるわけですね。だから財政的な立場からいうときわめて当然でありますけれども、一方農業政策という立場から考えた場合に、私はきわめて問題が多いと思うんです。というのは、これだけの補助金のカットとかあるいは価格の決定方式の変更とかいろいろやりながら、日本の農業をどうして維持していくか、これはいままで政府がずっとやってきたことを大きく転換するものでありますから、私は日本の農業に対する新しいビジョン、新しい農業政策のビジョンというものがはっきりしなければ、私は農民はこれは不安でたまらないのも当然だと思うんです。この点はいかがですか。
  264. 野呂田芳成

    説明員野呂田芳成君) 今回の答申は、食糧管理制度とか水田利用再編対策とか農業基盤整備の問題とか農政全般にわたって広範な方策が示されておりますけれども、いままでも、先ほども申し上げたとおり私どももずっと折衝を重ねてきたわけであります。ただいまも御指摘ありましたような予算のゼロシーリングの問題とあわせて、内容は大変厳しいものがありますけれども、まあしかし総合農政の路線においては、大体大筋において私どもが考えていたことと一致する面も多いわけでありまして、そういう観点から私どもは今後もさらに慎重に検討を加えながら対処してまいりたいというふうに考えております。
  265. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私はいままで長年にわたってやってきた自民党政府の農政というものは、必ずしも評価できないと思います。なぜかというと、あれだけ多額の補助金をつぎ込み、また食管制度も含めてたくさんの国家の財源を使いながら、日本の農業の体質というものはそれほど強くなっておりません。やはり農業政策の基本は、日本の農業の近代化、体質の強化をいかに図るか、いかに国際競争力というものをつけていくか、それが目的であるはずであります。ところがあれだけたくさんの国家の財源を使いながら、余り効果が上がっていない。これはなぜかというと、自民党政府が本当に農業というものを真剣に考えていなかった。それなら何をやったのかというと、私は党利党略ばかり考えておったからこうなったと思うんです。本当はもう少し早く本来の意味の農業政策の確立をすべきであった、農業政策の転換をすべきだったと思うんです。その時期がおくれておる中で、今度は財政的な制約の方が早く来てしまった。だから、今回の臨調の答申も、これは現在の農業政策のビジョンとかあるいは日本の農業の体質というものの準備ができていないままに、補助金のカットとか価格政策の見直しをやらざるを得ない羽目になっておる。だから私は、農家の人が非常に不安を感ずると思うんですね。この点はいかがですか。
  266. 野呂田芳成

    説明員野呂田芳成君) まあ、自民党に対する御指摘は別といたしまして、農林省としては、すでにこの委員会でも真剣に御討議いただいたように、去年の暮れに今後十年間の農政の基本方向というものを示しまして、十年間の路線をきちっとしたつもりでございます。  また、いろいろ議論のあります農産物の需要と生産の見通しにつきましても示しているとおりでありますから、こういう問題は第二次臨調の答申のいかんにかかわらず、私どもとしては農林省がこれから進むべき憲法として遵守してこれを実施してまいりたい、そういうふうに考えているわけであります。
  267. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、臨調の中に米並びに麦の価格決定の問題について触れておりますけれども、まず米価については、臨調の答申の中に「政府米の売買逆ざやの解消に努めるとともに、品質別需給の動向を踏まえつつ、今後の品質格差の取扱いに適正を期する。」、このようにうたっておるわけです。この売買逆ざやの解消ということについては、消費者米価をどうするかということともちろん大きな関連があるわけです。しかし、消費者米価をそうむやみに引き上げられる状況にはありません。とするならば、これは必然的に生産米価の抑制を意味することになる。それから、品質格差の適正化ということも進めるということもあわせて考えると、私は、これは従来の生産費所得補償方式というものについて何らかの変化、変革というものが必要になる、このように考えるわけです。  それから、麦価についてもここにありますけれども、「国内麦買入価格については、現行の固定的な算定方式の見直し検討を進める」云々とあるわけです。麦価の算定方式の変更については、先般の食管法改正でも検討されたけれども、結局は見送られておる。しかし、この臨調の答申は、その算定方式も見直せということを言っておるわけですね。今後、政府はこれをどうされる方針ですか、お伺いしたいと思います。
  268. 石川弘

    説明員石川弘君) 最初に御指摘の米の売買逆ざやの解消のために努めるとか、あるいは品質格差の問題でございますが、これは御承知のように、売買逆ざやにつきましては、生産米価、消費者米価、いずれも違った原則で決定されておるわけでございますが、そういう決定の際に政府が売買逆ざやをどの程度持つのが適正かという観点から生産、流通、消費のいろんな事情を見ながら、その縮減には努めてまいったわけでございます。現在、七・八%の売買逆ざや率でございますが、これをどのようなテンポでどのような形に収斂をしていくか。あるいは、一定のものは絶対必要であるということであれば、どういう売買逆ざやが限界かというようなことは、これからの生産米価なり消費者米価の決定の中で具体的に決定することではございますが、これをどういうスピードでどのようにやるかということを指示されておるわけではございませんで、従来われわれが米価審議会の議を経ながらやってきたその方向について、臨調としてもそういう方向を認めながら、それが円滑に行われることを期待しているのではないかと思います。  それから、もう一つの品質格差につきましては、御承知のように五十四産の米価から政府買い入れ価格に品質格差を入れました。御承知のように、その後、特別自主流通というようなことも使いながら、いわゆる自主流通市場で形成されます品質差というものを米価に反映するという形を考えながらやっておるわけでございますが、これは発足後間もないことでございますので、そういう自主流通制度の運用等を見ながらやっていくことでございます。このことは先生いま算定方式にも及ぶのではないかということでございましたが、品質の格差というのは、これは必ずしも米価という形ではございませんで、米価が決められました標準的な米価をどのように品質差に応じて価格差をつけていくかという手法でございますので、直ちにこれが算定方法に及ぶものではないと考えております。  それからもう一点の麦の問題につきましては、内外麦の価格をプールした形で財政負担が増高しないようにということが書かれておりますが、その前提として麦価算定方式に触れられておることも事実でございます。これも食管法改正の際に御説明いたしましたように、麦につきましていまのパリティという硬直的な方式と、特に「下らざる」というかんぬきをかけることの意味につきまして、私どももいろいろ論議があったところでございますが、関係生産者団体その他の理解を得るにまだ至らない状況でございましたので、これを改正法案から落としまして、さらに理解を得るようにということを考えているわけでございますが、といいましても、これは法律だけでやることではございませんで、現在のパリティ方式の中でも、パリティによって算出される部分と、御承知のように生産振興奨励金で付加された部分もございまして、今後麦価の改定に当たりまして生産振興奨励金に当たる部分につきまして生産性向上メリットを若干減額するというような措置もとりまして麦価算定方式の適正を期するということを考えているわけでございます。したがいまして、いま御指摘の点につきましては、特に目新しいというものではなくて、むしろわれわれの従来の食管制度の運用の中で改善に努めてきたことを、その方向といいますか、そういうものを指摘なさっているものと理解しているわけでございます。
  269. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、米の価格の問題でも麦の価格の問題でも、本音とたてまえがだんだんずれてきておるような気がするわけです。先ほど岡部委員からも質問がありましたけれども、この算式というのを見てみますと、この中の変数というのは−Cと−Hなんですね。それで問題はこの需給状況需給状況がこの−Cを決める要素の中で多少は反映されると思うのです。必要量生産費の問題とか、あるいは多少は反映されると思いますけれども、そんな大きくこれに反映されるものではないわけです、本来は。それから、−Hについても、これも需給状況というものが多少は反映されますけれども、そんな大きく反映されるものではない。特にこの現在の過剰米在庫がどれぐらいあるかというのは、この中の要素にはどれにも入ってこないわけですね。それから国の財政事情もそうです。それにかかわらず、過剰米在庫の状況とか国の財政事情というものを米価に反映させようとするから非常に無理があると私は思うんです。家族労働費にしても、これは需給状況とか国の財政とは無関係の変数であるはずなんですね。そういうものをいじって需給事情とか財政事情に対応させるというところに一つの私は虚構があるのではないか。だから、どうせやるなら、岡部委員の言われたように、ちゃんとそれもこの変数の中に入れて、算式の中に入れれば、もう少し納得のいく説明ができるのではないかと思うのです。  それから麦のパリティ方式にしてもそうですね。生産奨励金というものをつけて、それで、それはもうパリティに無関係だというような言いわけをしなければならない。言うならば本音とたてまえとがかなりずれてきておるわけです。私はやっぱり、ずれてきたならずれてきたで、そういう方式に改めればいいと思うのです。現在米の値段を決めるにしても、需給状況とか、過剰米在庫とか、財政事情を抜きにして決めるというのは私は非現実的だと思うのです。だから、そういうものも含めて、私は農家の人の理解や納得が得られるような方式を考えていくのがこれからのやり方ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  270. 石川弘

    説明員石川弘君) 生産費所得補償方式を使いましてしばらくたちました昭和四十年ごろに指数化方式というもので二年間算定した時期がございます。こういうのも、いま先生御指摘のように各種の変数を使うことによって、要するに、算定要素を変えますことによる不信感をなくそうということもあったかと思いますけれども、結果的に申しますと、そういう指数を使ったり、指数のたとえば一番問題になりますのは需給調整係数といったものを使います場合に、これがなかなか大方の方々の同意を得ていただくような、合意を得ていただくような数値が出てまいらない。そういうことから、結果的には先生御指摘のように、どちらかというと現実支払いをされますものについては、これは数字ではっきりとまりますので、それを動かさないで、要するに、評価にわたりますところを動かしてそういうものを反映さしてきたというのが一つ米価算定の歴史ではないかと思います。これはある意味では巧みだという言い方ができますと同時に、逆に申しますと不信を招くという要素もあるわけでございます。私ども片っ方に麦のようにパリティという数字だけで算定ができるものを片側に持ち、片側にこういう評価要素を相当持つ算定方式を両方持っていま運営しているわけでございますが、どうもいずれについてもなかなかこれといって割り切るような姿にならない。したがいまして、先ほど申しましたようにこういう方式をとります場合には、やはりその評価要素について極力関係者の納得のいくような説明をしたいわけでございますが、何分これはこの数字の使い方次第で上がったり下がったりするということでございますので、上げたいと思う立場の方にとっては高かったものを下げるのはなかなか合意を得られない、それからその逆はまた逆であるということで、このあたりがこういう算定方式を使いまして現実計算をいたします私どもの悩みでございます。しかし、先生御指摘のようなこともここ数年来の算定の中でいろいろ私ども現実生産者の方々からも聞いておりますので、極力この種の評価要素に客観性を持たせるような努力はしてまいりたいと思いますけれども現実に申しますと、たとえば先ほど言いました自作地地代一つとらえましても笑納小作料で笑納水準と言えば三万円水準、それからたとえば固定資産税評価額水準と言えば三千円水準という実に十倍の差の開いた大きな違いがございますので、いまからこれは相当時間をかけることになろうかと思いますが、そういうことの不信感がなくなるように、かつまたそのことが現実的に適用できますようにいろいろと検討さしていただきたいと思います。
  271. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に過剰米の問題についてお伺いしますけれども、過剰米処分に伴う財政負担は今後七年間に約一兆三千億円要ると言われております。そして五十七年度は大体五十六年度の二倍、一千六百億ぐらいは必要だと言われておりますけれども、これはゼロシーリングが言われておる中でどのような措置をされるのかお伺いをしたいと思います。
  272. 石川弘

    説明員石川弘君) 食管の財政問題の最大の難点がこの過剰処理に要します経費の繰り入れでございます。これは御承知のように特別会計法で例外をつくりまして、単年度の損失を七年に分けて、分割して繰り入れることができるようにしてございまして、計画的に繰り入れるようにという法律の規定になっております。私どもこの一兆三千億——今後の推移で見まして一兆一千億前後になろうかと思いますが、そういう一兆三千億かかるということになっておりましたこの過剰米処理につきまして、先ほど御説明しましたように昨年は四百億台、ことしは八百億台、約四百億台ずつふえるような負担を持っておりまして、これを極力——まあ従来の形でございますと真ん中にピークが行きまして後ろに下がってくるようになるんですが、こういうゼロシーリングの中では極力その負担を後年度に持っていかなければ予算が組みがたいことになるんですが、逆に後ろに山を持っていくということは期間中の金利負担が大きくなるという弱点もあるわけでございます。この辺を十分勘案しながら何とか食糧管理特別会計の予算が組めるように、それからそのためには損失が極力少ない方がいいわけでございますから、先ほども申し上げましたようにいろんな、いわゆる五十三年以前産米の処理につきましても極力圏損の少ないような処理方法で組み立てをしていく、このこと一つとりましても、たとえば輸出をしようと思いますと、恒常的輸出国との協調が要るとかいろいろ問題がありますが、そういうことも頭に置きながら損失の総額を減らし、かつ単年度の繰り入れ額が極力予算編成上障害にならぬようにという組み方を考えていきたいと思っております。
  273. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に、臨調答申に「過剰米処理の合理化に努め、」という言葉がありますけれども、具体的にどういう方法があるのか、輸出のお話も出ましたけれども、輸出などの今後の見通しはどうかお伺いしたいと思います。
  274. 石川弘

    説明員石川弘君) 私いま申し上げましたように、まず国損の総額を減らすというのは損失の少ない順にてん補をするということでございますから工業用を最優先し、その次輸出、最後に最悪の場合えさということでございます。しかし、これは先生も御承知のようにおのずと用途に限度がございます。工業用等につきましては、極力米を使いました製品開発をします場合に若干有利な払い下げもして用途を開くということもやっておりまして、若干その要素に基づいた処理の増がございますが、これはそう大きなものではございません。輸出につきましては、当初の輸出計画を相当上回った輸出を現実にいたしております。しかし、これには御承知のような恒常的輸出国との調整がございまして、これもしんぼう強い調整をしながら少しでも輸出で処理できるものは多くするということで、まず総額を減らすということが一つ、それと過剰米処理のスピードが若干上がりますと、それだけわれわれの管理経費が助かりますものですから、その辺のことも十分加味してやっていきたいと思っております。
  275. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。  暫時休憩いたします。    午後五時十六分休憩      —————・—————    午後五時二十五分開会
  276. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会