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1981-08-20 第94回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年八月二十日(木曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————    委員異動  八月十九日     辞任         補欠選任      安武 洋子君     神谷信之助君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         林  ゆう君     理 事                 藏内 修治君                 矢田部 理君                 柄谷 道一君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 片岡 勝治君                 野田  哲君                 山崎  昇君                 峯山 昭範君                 神谷信之助君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中山 太郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       中曽根康弘君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  大村 襄治君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     長橋  進君        臨時行政調査会        事務局次長    佐々木晴夫君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁参事官   石崎  昭君        防衛庁長官官房        長        夏目 晴雄君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛施設庁長官  吉野  実君        外務省アジア局        外務参事官    渡辺 幸治君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中近東ア        フリカ局中近東        第一課長     渋谷 治彦君        大蔵省主計局次        長        窪田  弘君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査並びに国防衛に関する調査  (臨時行政調査会行政改革に関する第一次答  申に関する件)  (一般職職員給与についての報告及びその  改定についての勧告に関する件)  (国の防衛に関する件)  (国務大臣の靖国神社参拝問題に関する件) ○派遣委員報告に関する件
  2. 林ゆう

    委員長林ゆう君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十九日、安武洋子君が委員を辞任され、その補欠として神谷信之助君が選任されました。     —————————————
  3. 林ゆう

    委員長林ゆう君) 国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題といたします。  まず、臨時行政調査会行政改革に関する第一次答申について、行政管理庁から説明を聴取いたします。中曽根行政管理庁長官
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 去る七月十日、臨時行政調査会から内閣総理大臣に対して「行政改革に関する第一次答申」が提出されましたので、答申に至るまでの経緯、答申概要及び政府における対処方針につきまして御説明申し上げます。  臨時行政調査会は、近年における内外の社会経済情勢の大きな変容に対処するため、行政制度及び行政運営全般について抜本的な改革の方途を提言することをその基本的任務としているものであります。  しかし、財政再建という見地から行財政の建て直しを図ることが現下の急務であるところから、去る三月十六日の同調査会第一回会合において、内閣総理大臣から、昭和五十七年度予算編成に向けて歳出の削減政府機構簡素化行政減量化重点を置いた具体的改革案をこの夏までに提出願いたい旨の要請が行われ、調査会においては、これを受けて二十余回にわたる審議が行われたのであります。  まず、四月十七日の第五回調査会において検討課題を概定するとともに、専門事項調査審議させるため、部会が設置されました。これら部会においては、昼夜を分かたぬ精力的な審議が行われ、それぞれの検討結果を六月二十二日、調査会に対して報告するとともに、これを公表したのであります。  部会報告を受けた調査会は、これについてさらに全般的な検討を加えた上、意見を取りまとめ、冒頭に申し上げたとおり、七月十日に「行政改革に関する第一次答申」として内閣総理大臣に提出する運びとなった次第であります。  この間、調査会及び部会においては、各省庁から行政制度及び運営に関する全般的かつ具体的な説明を求めるとともに、各政党を初め経済団体労働団体地方団体等多くの団体との意見交換並びに福岡、名古屋、札幌等全国都市での「一日臨調」の開催などを通じて、広く国民各界各層意見、要望に耳を傾けつつ、幅広い調査審議が行われたのであります。  次に、このたびの答申概要について御説明申し上げます。  答申は、「行政改革理念課題」「緊急に取り組むべき改革方策」及び「今後の検討方針」の三つの部分から構成されております。  まず、第一の「行政改革理念課題」においては、今後わが国が目指すべき方向として、国内的には「活力ある福祉社会実現」、対外的には「国際社会に対する貢献の増大」の二つを掲げ、さらに、これらの実現に向けての行政改革理念として、「変化への対応」「簡素化効率化」及び「信頼性確保」を提示しております。  なお、今回の答申については、行財政改革への第一関門であり、行政体質改善し、わが国社会経済の長期的な発達を可能にするための本格的療法へつなげていく、いわば緊急の外科手術であるとの位置づけが示されております。  次に、第二の「緊急に取り組むべき改革方策」においては、支出削減収入確保に関する方策として、わが国財政をして赤字公債体質から脱却せしめ、新たな社会経済情勢への対応力を回復するため、昭和五十七年度予算編成に当たって新規増税を行わず、特例公債の発行を減額することを基本方針として、一般行政経費補助金利子補給等特定財源租税特別措置等に関する一般的方策及び国民生活経済活動、中央・地方等行政各般にわたる支出削減に関する個別的改革方策が提示されております。  また、行政合理化効率化に関する方策として、行政体質改善国民負担の軽減を図り、もって行政に対する信頼を回復するため、国の行政部門特殊法人及び地方公共団体における定数の縮減、給与等合理化機構事務・事業の見直し並び許認可整理合理化に関する具体的改革案が提示されております。  さらに、第三の「今後の検討方針」においては、今回の第一次答申作成の経験を踏まえ、行政改革の基本的問題について今後も精力的に検討を続けることとされ、今後の重要検討課題として、「行政課題変化行政の役割の見直し」「行政機構行政運営改革」「国と地方との機能分担及び地方行政改善並びに「官業及び許認可保護助成等政策手段の再検討」の四点が提示されているところであります。  以上が答申概要であります。  なお、調査会の今後の審議予定について申し述べますと、先般、改めて四部会が設けられ、この九月から、行政組織及び基本的行政制度あり方を初め、保護助成規制監督行政あり方等行政改革基本課題について本格的な審議が進められることとなっております。  最後に、臨時行政調査会の第一次答申に関する政府対処方針について御説明申し上げます。  同答申の取り扱いにつきましては、答申直後の去る七月十七日の閣議において、行政合理化効率化推進するとともに、財政再建に関する緊急な課題に対処するため、かねてからの基本方針に基づき、同答申最大限に尊重し、速やかに所要施策実施に移す旨の方針を決定したととろであります。  具体的には、答申趣旨を極力昭和五十七年度予算要求に盛り込むとともに、法律改正を要するものについても積極的に取り組むことといたしております。  このため、各省庁においては一閣議決定後直ちに具体的方策検討立案に着手し、予算関連事項については大蔵省と、行政合理化効率化に関する一般的事項については行政管理庁と協議しつつ、法律事項予算事項等の仕分けを行うこととされ、対処方針立案を進めてまいっているところであります。  政府としては、閣僚レベルにおける協議を含め、目下所要調整を急いでいるところであり、八月末までには、臨時行政調査会の第一次答申を受けた今後における行財政改革基本方針の成案を得て、閣議決定を行う運びといたしたいと考えております。  なお、行政改革は、臨時行政調査会の第一次答申に掲げられた緊急課題にとどまるべきものではありません。同調査会においても、今後、各般の基本的問題について検討を進めることが予定されているところであります。  行政改革は言うべくして実行の困難な課題であります。しかし、わが国社会の活力ある発展の基盤を確かなものとするために避けて通ることのできない課題であると考えます。政府としては、当面する最重要の政策課題として引き続きこれに取り組み、国民の期待する簡素にして効率的な政府実現に最善の努力を尽くす所存であります。
  5. 林ゆう

    委員長林ゆう君) 次に、一般職職員給与についての報告及びその改定についての勧告に関し、人事院から説明を聴取いたします。藤井人事院総裁
  6. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 去る七日、給与に関する本年度勧告を提出いたしました。この機会に、お手元に御配付を申し上げておると思いますが、「給与勧告の骨子」というものがございますので、それに従いまして勧告概要について簡明に御説明を申し上げたいと存じます。  本年度の官民の較差は五・二三%ということでございます。過去三年にわたりまして、五十三年、五十四年、五十五年、民間の景況を反映をいたしまして五%に達しなかったわけでありますが、本年は五十二年度以来の五%以上の義務勧告ということに相なった次第でございます。ただ、この特徴の一つについて申し上げますと、仲裁裁定は本年度の場合五・三八%ということに相なっておりますが、この五・二三というのは仲裁裁定の率を下回る勧告ということに相なった次第でございます。これは過去に例を求めますと一回あるだけでございまして、五十年のことでございますが、仲裁裁定が一一・七八でありましたのに対して人事院勧告は一〇・八五ということでございました。これは過去における唯一の例でございます。本年度は二回目ということに相なったわけでございます。  配分につきましては、こういう給与較差の幅でございますので、当然のことながら俸給表改定重点を置きまして、その他生活関連の諸手当について配慮をするという方向措置をいたした次第でございます。  改定内容について申し上げますと、まず第一に俸給表改定でございますが、本年の場合は、特に民間配分傾向等を見ましても上下均等配分的な傾向が非常に強いわけでございます。したがいまして、この傾向というものは十分尊重しながら、従来公務員の場合におきましては、結果的に、どちらかといいますと世帯形成層並び中堅層というものが若干不利な状況に置かれてまいってきております。この点は、最近は配慮してだんだんとこれらについて重点を置きつつやってきておりますが、ことしもその方針はさらに踏襲をいたしまして、世帯形成層中堅層には重点を置きつつ、大体上下均等配分的な考え方俸給表作成を行うことにいたしております。  指定職俸給表でございますが、これに関しましては、民間の動向についても毎年調査をいたしておりまして、特に民間会社の重役、役員の方々との給与の対比を参考として調べておるわけでございますが、この比較の従前どおりの方式によりますと、従来もいろいろな角度から見てやむを得ず抑制の方向でずっと進めてまいっておりますために、本年度の場合は約二五%程度の開きが出てまいっております。しかし、これは一挙にどうということはとてもまいりません。全体がこういう状況でございますのでそういうことはできませんので、一般公務員並み一般職員並みということにいたしまして五・二%程度改定ということにいたしたいと考えております。  次に手当関係でございますが、これは生活関連手当重点でございますが、特に申し上げておきたいと存じますのは、調整手当改定でございます。  この調整手当は、御承知でございますようにいわゆる物価手当的なもので、大都市関係では何としてもやはり物価等が高い、生活費もかさむというようなことでございまして、したがって、民間の大会社で各地に支店等を持っておりまするところでも、大都市所在職員従業員に対してはそれ相当の配慮をしておるという事実がございます。これは毎年ということでございませんで、大体傾向を見るために三年に一遍程度実情調査をやっておりますが、本年もやりました結果、明らかに、なかんずく大都市、東京、大阪等におきましてその較差が明白に出てまいっておるという結果が出ましたので、これを配慮いたしまして現行の支給割合の八%に一%足して九%ということにいたしたいと存じております。  そのほかは、扶養手当通勤手当それから住居手当等について大体民間とも見合いまする所要改定を行いたいと存じております。  それから筑波研究学園都市移転手当というのがございまして、これは十年前の四十六年に創設をされた手当でございまして、筑波研究学園都市に都内から各研究機関等移転をしてまいる、その移転を円滑ならしめるために特に設けられた手当でございますが、この移転は若干計画よりもおくれまして、大体最近において完了したということで、当初の計画よりも五年ばかりずれておるということがございます。法律のたてまえでは、この移転手当は、十年後にその間の事情、周囲の施設整備状況等を勘案をして、そのまま存置するのか、どういうふうな形で残すのかということについて人事院勧告をしなさいということに相なっております。その期限が本年の十二月十四日ということでございます。ところが、いま申し上げましたように、この移転が大分おくれまして最近に至って完了したということでございますので、今後はやはり周辺の状況なり施設整備状況等をよく見てまいる必要もございますので、この際は結論を出さずに、もう五年ほどこの移転手当はそのまま存続をさしていただいて、それまでに人事院といたしましては種々の状況を勘案した上でこのあり方について勧告をすると。その期限を五年間延長していただきたいというふうに考えております。  それから特別給でございますが、これにつきましては二度にわたって減額をいたしてまいりまして、現在四・九カ月分ということに相なっております。本年も民間の実態を調べましたところ、四・九八カ月分という結果が出たわけであります。過去の例等に徴しまして小数以下二位の分についてはこれを切り捨てておるという措置をずっと講じてまいっておることもございますので、本年度は据え置きのことで措置をいたしたいということでございます。  実施時期は、当然のことながら従来どおり四月一日にさかのぼって実施をしていただきたいということでございます。  以上が勧告のごくあらましの内容でございますが、それと同時に、報告の中で給与適正化合理化ということについての考え方を述べております。これは臨調絡みということだと思いますが、成績主義の一層の推進等を中心といたしまして、臨調でも触れております。われわれ人事院といたしましても、その方向自体は賛成でございますし、従来この線に沿っていろいろの措置を講じてまいったということもございますので、さらにこの線については、人事院としてやるべきことはさらに進めてまいりたいということを申し上げております。  それから最後に、人事行政施策総合的検討につきましては、昨年の報告で、戦後三十余年たった、そういう客観情勢のいろいろな変化対応いたしまして、人事行政制度の全般的、総合的な見直しをひとつ行うべき時期に来たということを申し上げたのであります。本年度からはそれの実行段階に入っておるわけでございますが、本年度はもっぱらいろんな角度からの調査重点を置いてまいりたい、そういうことで最終的には定年制が動き出すことになりまする六十年を目途にいたしまして、それまでに諸般の事情を勘案した上で諸制度整備をしたい、そういう目標で着実にこれから精力的に進めてまいりたいということを経過報告的に申し上げることにいたした次第でございます。  以上、ごく簡略でございますが、給与勧告内容の概略について御説明を申し上げました。以上でございます。
  7. 林ゆう

    委員長林ゆう君) それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 矢田部理

    矢田部理君 きょうは防衛問題それから行革、人勧と、盛りだくさんのテーマがありますので端的にお答えをいただきたいと思いますが、最初に防衛庁に伺いたいと存じます。  去る八月十四日、八月十五日の直前に恒例の防衛白書を発表いたしました。ことしの防衛白書は、レーガン政権の誕生や日本軍事力拡張という最近の趨勢を反映して、きわめていたけだかに防衛力増強のキャンペーンを行おうとしていることがありありと見受けられるわけでありますが、中でも幾つかの点でわれわれとしては注目をしなきゃならぬ問題が出ております。その全体をきょうはやるわけにはまいりませんので、ややつまみ食い的ではありますが、若干の問題点について質問をしておきたいと思います。  その一つは、衆議院の内閣委員会等でも問題に供されているわけでありますが、「わが国防衛力の意義」と称する第一章で、「守るべきものは、」「最大限の自由を与え得る国家体制である」、こういう新しい記述をしているわけであります。もともと自由とか人権というのは、国民がみずから長い歴史の闘いの過程の中で獲得をしてきたものであります。しかもそれを国家が保障すべきものであります。国家が与えたり、上から物を言う性質のものではないはずでありますが、この記述は「自由を与え得る国家体制」だと、あたかも国家が自由を与えているかのような内容になっているわけでありますが、この点、防衛庁長官どうお考えになっているでしょうか。
  9. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の白書におきまして、防衛につきまして、守るべきものとして、自由な多彩な価値観を保障する意味でそういった事柄を守ることを念頭に置いているという趣旨のことを記述しているのでございまして、ただいま御指摘のように国家が与えるというような趣旨ではございません。御指摘のように、そういった自由な多様な価値観実現できるように保障していくという趣旨で申し上げているわけでございます。
  10. 矢田部理

    矢田部理君 同時にまた、他の記述からも想定をされるのでありますが、「自由を与え得る国家体制」という言葉の響きは、あなた方の想定する国家体制というのはいわゆる自由主義陣営自由主義国家体制ということを念頭に置いた記述ではないかというふうにもとれるのですが、その点はいかがでしょうか。
  11. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 白書記述されております自由を保障するような国家体制というのは、文字どおり自由と民主主義を保障するということを念頭に置いているわけでございまして、憲法に示されておりますように、国民一人一人が自由のもたらす恵沢を享受できるような国ということを言っておるわけであります。決して偏った立場で申し上げているわけではないというふうに理解いたしておるわけであります。
  12. 矢田部理

    矢田部理君 全体の記述から見ますと、たとえば防衛白書の3−4というページでは、日本国民が現在のような生活を送るには自由貿易体制が堅持されることが不可欠の要件だというような記載もあります。あるいはまた、2−5というページには、自由な社会体制の中にあって幸福な生活を営むことだというようなことで、長官の若干の説明にもかかわらず、どうも国家体制自身をあなた方が、あるいは防衛庁自身が独断で選定をし、それを守るべき価値として国民に押しつけるという印象がきわめて強いわけであります。  いかなる国家体制を選択するかは、憲法の命ずるところによって国民自身が決めるべきである。ある国家体制を想定し、それを防衛庁が守るべき価値として押しつけるということになりますと、これはファッショ以外の何物でもない、国家至上主義的なイデオロギーの押しつけだというふうに考えられるわけでありまして、これは明らかに国民主権原理に反する。憲法国民主権を踏みにじるものである。いうところの自由主義体制を選ぶのか社会主義を選択するのかは国民自身が決めるべき課題だと、そういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  13. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、昭和三十二年に閣議決定されました「国防の基本方針」に基づいて防衛力整備を図っているところでございます。この基本方針におきましては、第一に平和外交推進、第二に民生の安定、そして第三に国民のみずからの手でみずから国を守る気概に基づく防衛力整備、第四に日米安保体制の堅持、四つを重要な事柄として掲げているわけでございます。その後、歴代政府はこれを遵守しているところでございます。  また、防衛白書はことしですでに七回目でございますが、こういった基本方針について、そのときどきの情勢に応じて国民防衛問題に関する理解を深めていただくという観点から、いろいろな問題点を掲げ、資料を付して御説明しているところでございます。したがいまして、あくまで憲法の枠組みの範囲内において私ども問題を記述しているつもりでございまして、憲法の精神に反するとか、また防衛庁が国のあり方について独断的な提案を試みてこれを国民に押しつけるとか、そういう気持ちは全然持っておらないということを申し上げておきたいと思う次第でございます。
  14. 矢田部理

    矢田部理君 いかなる国家体制にすべきかは国民自身が決めるべきものだ、これが憲法国民主権原理の示すところであると、その点はお認めになりますね。
  15. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 憲法範囲内におきましてこの政策の問題については国民が判断して決めるという意味におきましては、御指摘のとおりだと思うわけでございます。先ほど来部分的に御指摘のございました貿易あり方でございますとか、そういったことにつきましては、それぞれのまた政策の問題でございます。また政府としてはそういった問題について提起しているわけでございますから、それはそれとしてまた御理解願いたいと思うわけであります。
  16. 矢田部理

    矢田部理君 国家体制の選択は国民自身が決めるべきものだということをお認めになりましたから、その点はこれ以上触れませんけれども、もう一点見逃し得ないのは、2−5というところで「国民国家」という項がございます。国を守るのは国民一人一人の責任であると、こういう記載になっているわけでありますが、いま国民には国防の義務ということはありません。憲法国民の義務としてそのことは規定していないことはもう当然過ぎるほどの話でありますが、こういう記載になりますと、防衛庁自身国民一人一人に国防の義務と責任を求めていると、これまた憲法上きわめて重要な問題なのでありまして、そういう趣旨でこれが書かれたとするならば大変なことだというふうに考えるのですが、その点はいかがでしょうか。
  17. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) この点でございますが、その次に記されておりますように、わが国の場合、自衛隊が日本防衛の中核となるものでありますが、真に防衛の基盤をなすものは国民の強い意志であると、そういう意味で責任ということを申し上げたのでございまして、御指摘のような憲法の規定に基づく法律上の責任であるとか、そういうことではございませんでして、一般的な考え方を申し上げている次第であります。
  18. 矢田部理

    矢田部理君 一般的な考え方と言っても、憲法にも法律にもない国防の問題、国防の義務とか責任という問題をこういう記載をするのはとんでもない話なんで、あたかも国防の責任と義務は国民にあるかのような記述は大変けしからぬというふうに言っておきたいと思います。  あわせて、愛国心の問題などについても、もともと人間の心の問題あるいは意識の領域にかかわる問題について、上から防衛庁が愛国心を説く、軍部が愛国心を言うときにどういう問題が起こったかは過去の歴史を見れば明らかなんでありまして、そういう押しつけや防衛庁が愛国心を叫ぶということ自体が大変問題だと思いますが、長官としてこの点はどう考えますか。
  19. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先ほども申し上げましたとおり、「国防の基本方針」にも触れておりますとおり、やはり国民のみずから国を守るという心がけが防衛一つの大切な前提となっているわけでございます。その点につきまして防衛白書において触れるということは、私は必ずしも許されないところではないと思うわけでございます。毎年の白書においてもその点は触れておるわけでございますが、ことしの白書におきましてもこの問題につきまして若干記述をしていると、こういうふうに理解いたしているわけであります。
  20. 矢田部理

    矢田部理君 しかし、押しつけたり国民に説教したりする性質のものでないということは認められますね。
  21. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先ほども申し上げましたように、白書の性格自体が国民の理解に資するためのものでございます。判断は国民がされるわけでございまして、押しつけるような気持ちは毛頭持っておりません。
  22. 矢田部理

    矢田部理君 もう一点、白書問題点について。朝鮮をめぐる軍事情勢等に触れておられますので、その点に移っていきたいと思います。  朝鮮における南北の軍事力を比較をして、七〇年代に入ってから北の軍事力が増強されているというふうに言っておるわけでありますが、しかも軍事力の中身をいろいろな数字を挙げて説明をしているわけでありますが、これはどんな資料に基づいてこういう数字が出てきているのでしょうか。
  23. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) これは各種資料に基づきまして総合的に判断したものでございます。
  24. 矢田部理

    矢田部理君 もう少しまともな答弁しなさい。
  25. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 各種資料と申しますのは、わが国独自の判断を持って独自に集めた資料、これが中心でございます。そのほかに、これは外国の資料でございますけれども、これは提供してくれました国との信頼関係がございますので、国の名前、詳細は申し上げられません。これを総合的に勘案いたしまして、このあたりならばこれは国民をミスガイドしないだろうというあたりを考えましてつくりました資料でございます。
  26. 矢田部理

    矢田部理君 そういう回りくどい説明しなくても、「ミリタリー・バランス」の数字を見れば大体同じじゃないですか。端的に物を言いなさい。
  27. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 「ミリタリー・バランス」と防衛庁の判断がしばしば一致することがございます。ただ「ミリタリー・バランス」そのものも、もとの資料は結局防衛庁がいろいろ各方面からとっている資料と同じでございまして、それで自由陣営の中におきます各防衛当局あるいは専門家同士は絶えずすり合わせを行っておりまして、大体お互いに常識的なところはどこであろうかということをやっておりますので、おのずから数字が一致してくるということは当然でございます。もし間違っている場合は重大な問題でございまして、またお互いにすり合わせを行うと、そういう事情でございます。
  28. 矢田部理

    矢田部理君 きのう防衛庁が私のところへ説明に来たのは、主として「ミリタリー・バランス」からとったんですと、こう言っているんだよ。たまたま一致したんだなんという議論は聞かれた話じゃない。独自の調査網でもあなた持っているんですか。それはそれとして、ただ、これは「ミリタリー・バランス」と防衛白書を比較するとほぼ同じなのですが、あなたの方は一年おくれなんです。それは事実でしょう。
  29. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) それは事項によりまして違うんでございますけれども、今度の白書で出しましたたとえばソ連の師団が四十六個師団が五十一個師団にふえた。これは前回の「ミリタリー・バランス」にはまだ四十六個師団の推定のままでございまして、恐らくことしの秋の「ミリタリー・バランス」ではむしろわが方の判断に歩み寄るだろうというふうに想定しておりますけれども、これは先のことなのでわかりません。
  30. 矢田部理

    矢田部理君 ただ、どういう調査か知らぬが、「ミリタリー・バランス」にも問題なしとしないわけですが、たとえば北の軍事力増強を強調する余り、数字が少しく意図的に操作をされているのではないかという疑いを何点かについて持つわけです。たとえばことしの白書を見ましても、海軍力についてトン数とか何かはいろいろ出ておりますけれども、海軍の数から言えば南が四・八万、四万八千人、北は三万一千と、こう「ミリタリー・バランス」には出ているわけです。ところが、この数字は巧妙に隠されている。そんな点が一つです。  それから二番目には、昨年の白書ですが、「ミリタリー・バランス」によりますと、ほかの年はいつも同じなのに、この年に限って「ミリタリー・バランス」は陸軍の数を北五十六万ないし六十万と言っている。ところが、防衛白書は六十万と高い方をとっている。恐らくアメリカが六十万と発表したからそれに従ったんだろうと私は推定をするわけであります。  さらに、七〇年代と八〇年代との間に一つ赤線が入るぐらいいろんな差を強調しているように思われるわけですが、たとえば八〇年白書を見ますと、韓国の陸軍がその前年七九年までは五十六万人いたのに、八〇年白書では逆に減って五十二万人になっている。つまり、北が大きくなり南が小さくなっているかのような印象づけをしている等々を含めて、少しこの数字に意図的なものを感ずるわけですが、その他どう説明されますか。
  31. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 「ミリタリー・バランス」の数字も白書の数字もこれは年々見直しをいたしまして、アメリカの数字も年々見直しをいたしております。それで、これは年として出入りが始終あるわけでございますけれども、これは意図的な操作ということは全くございませんで、こういう毎年毎年発表するような時代におきまして意図的な操作をいたしますと、数年たてば必ずどこか矛盾が生じてまいります。これはすべて推定でございますので、その年の推定が必ずしもこれ一〇〇%正しいということはございませんで、また翌年変える。これは「ミリタリー・バランス」でも常に変えておりますけれども、われわれ常々心がけておりますことは、その結果長い目で見て国民をミスガイドしたと言われないと、その点だけは心がけております。
  32. 矢田部理

    矢田部理君 ただ陸軍の数だけとってみても、八〇年代に入ってから北は六十万人というかなりのかさ上げになっている。南はずっと七〇年代五十六万人体制で来たのが、そういう数値が挙がっているのに、八〇年代に入ると五十二万人になる。南が数万人も減るような情勢にありますか。何かそれは根拠があるんですか。
  33. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 南のこの数字は、恐らく何かこれは算定の基準を変えたものと思いますけれども、ちょっと私この場に算定の基準、その点失念しておりまして持っておりませんので、必要があれば後ほど御報告いたします。
  34. 矢田部理

    矢田部理君 物知りのあなたにしては大変弱々しい答弁ですが、そういうことで少しく意図的なものが感ぜられるということが第一点です。  それから軍事情勢の認識につきましても、七〇年代の認識は大規模な紛争が起こる可能性はないということを中心にしています。その傾向は八〇年代に入ってからも引き継いではいるわけでありますが、ただ同時に一点だけつけ加えておる。大規模紛争が生起する可能性は当面少ないが、情勢は予断を許さない。これが八〇年代に入ってからの特徴なんです。こういう記述がどういう認識から出てきているのかということが一つ問題なんでありますが、それは朝鮮民主主義人民共和国の軍事力が強化されたからだという説明に恐らくなるんでしょう。ただ同時に、われわれが考えなければならぬのは、南との対比で、あるいは米軍も含めて考えた場合に、あそこにおける力のバランスが大きく崩れるほど北の軍事力が防衛庁の数値によっても増勢されたというふうには考えにくい。その辺で、南北の軍事問題をめぐる均衡をどういうふうにあなた方は考えておられるのか、その点をちょっと伺っておきたいと思います。
  35. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) まず、先ほどの韓国の兵員数でございますけれども、私も別に韓国の軍備体制、兵力が減ったというふうには考えておりません。これは要するに、何らかの基準を変えました見直しでございます。要するに正規兵力、予備兵力、その他のどの部分をどこに移すかということでございまして、防衛庁の判断といたしましても韓国側の兵力が削減されたということは考えておりませんし、私もそのように思っておりません。これは見直しの問題でございますので、見直しの根拠がもし御必要があれば追って御説明申し上げますし、またその見直しの根拠が恐らく今後は推計の根拠になっていくのだろうと思います。  それで、情勢は予断を許さないという判断でございますけれども、これはまさに予断を許さないわけでございまして、従来とも、これは別に書いてあるないを問わずこの判断はもう朝鮮動乱以来一貫しておりまして、これは別に新しい判断というわけではございません。予断を許さないということをむしろ確定的に、これは何にもないとかあるとかそういうことは書き得べきもないことでございまして、予断を許さないというのは一つの常識でございますので、書く年もあるし書かない年もある、そういうふうに御理解いただきたいと思います。  それで、軍事バランスでございますけれども、確かに在韓米軍の引き揚げが中止されました。その結果、米国の抑止力というものが強く働いておりまして、それでアメリカがいる限りこれはかなり抑止作用が働いていると、さように考えます。ただ、軍事バランスの問題として、これは七〇年代に北朝鮮の陸上兵力が非常に増大したものでございますから、この増大を認めるまではほかの海空軍その他の要素を全部除外しまして陸だけの比較で考えまして、北朝鮮の陸とそれから韓国及び米軍の陸とこれ合わせてもほぼ均衡している、バランスしているのではないかというような判断があったんでございますけれども、最近は、これは陸だけの比較といたしますと、北朝鮮の陸の方が米国、韓国両方合わせたものよりも優位であると、さように判断しております。これはバランスの変化でございます。
  36. 矢田部理

    矢田部理君 軍事バランスを仮に見る場合にでも、陸だけの単純比較をやるべきじゃないでしょう。防衛白書でも言っているように、アメリカ軍の存在が意義が大きいという評価をしているわけでしょう。ただ、この米軍の存在についても、数とか兵力とかについては記載をしているが、核の存在を全くネグっている。力のバランスを考える場合に核抜きという話はないんであります。その点で在韓米軍は当然に南朝鮮に核を持ち込んでいるというふうに考えられるし、そのための具体的な資料や指摘もあるわけでありますが、その点、防衛庁はどういうふうに考えておられますか。
  37. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 御説のとおり、軍事バランスというのは全部を考えなければいけないんでございますけれども、そのもととして陸海空及び核戦力の積み上げを行っているわけです。その積み上げの一部分でありますところの陸の戦力につきましてはこのような大きな変化が起こっているということを申し上げたということでございます。  それで、核につきましては、これはかってアメリカの政府当局者が、これは有事の際に核を使う可能性もあるということを言ったこともございます。ただ、朝鮮半島に核兵器が存在するかどうか、この問題は、アメリカの核兵器についての政策はいわゆるノーコンファーム・ノーディナイ・ポリシーでございまして、アメリカが確かに核があるとかないとか言っておりますのは、現在イギリスにございますアメリカの原潜基地についてだけこれは公表しておりますけれども、それ以外については公表しておりません。したがいまして、有事の際使われるかどうかは別といたしまして、朝鮮半島に核があるかないか、これはわかりません。
  38. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカの議会筋なりラロック証言は、当然のこととして、幾つかの核の存在を明らかにする指摘がある。かなり公にもなされているわけだし、かつてアメリカ自身がそれを認めたこともあるわけでありまして、存在そのものは少なくとも否定できないですね。否定できるほどの根拠がありませんね。
  39. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) アメリカの政策はノーコンファーム・ノーディナイ・ポリシーでございますので、否定する根拠はございません。
  40. 矢田部理

    矢田部理君 加えて、日本と違いまして韓国は非核三原則をとっていない。先般のポラリス原潜の寄港に当たっても、韓国の港に向かう途中であるという報道等もあるわけでありまして、こういう原潜等の出入りが自由であるということもお認めになりますね。
  41. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) ポラリスが韓国の港に向かっていたということは公表されておるようでございまして、その点、韓国の港に出入りできる。ただまた、あの段階のポラリスが核を積んでいたかどうかも、これはまた確認のすべがございません。
  42. 矢田部理

    矢田部理君 それからもう一点、第七艦隊は韓国周辺海域もフォローしている。あるいは韓国自身が、もう一点、日本と同じようにアメリカの核のかさのもとにあるということもお認めになりますね。
  43. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) それは原則としてお説のとおりでございます。
  44. 矢田部理

    矢田部理君 以上、幾つか私は指摘をしたのですが、南朝鮮における戦術核の存在、これは個数まで出しているようなデータもあるわけでありますが、その可能性。さらには第七艦隊、アメリカの全体としての核のかさのもとにあるという状況も勘案して軍事バランスを考えた場合に、仮にあなたの言うように、朝鮮民主主義人民共和国の陸軍の数がふえたからといって、情勢は予断を許さないほど事態が八〇年代に入って逆転しているというようなことには全くならないのではないですか。軍事バランスが崩れたなんというものじゃなくて、アメリカも含む軍事バランスは圧倒的に南優位という立場に立っているのではありませんか。
  45. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 先ほど申し上げましたとおりに情勢は予断を許さない。あのように南北合わせて百万近い大軍が対峙している場所におきましては、これは常に予断を許さない状況でございまして、これは別に七〇年代であっても八〇年代でも変わらない情勢でございます。ただ、これは常識でございますので、書く年もあるし書かない年もある。予断を許したものが許さなくなったというふうに逆転したというようにお考えいただくと、これはわれわれの書いた意図ではございません。ただ、常識的な事態を、改めてはっきりしてきたというだけのことでございます。
  46. 矢田部理

    矢田部理君 私は七〇年代の白書をずっと調べているのですが、これは全然書いていないですよ。八〇年、八一年とこういう記述がつけ加えられているから特段の意味があるのかということをただしたわけですが、特段の意味がないのに書いたということになれば、少しくこれまた意図的なものを感ぜざるを得ないわけです。  そこで次の質問に入りたいのは、これは防衛庁と外務省と両方から伺っておきたいと思いますが、朝鮮民主主義人民共和国の軍事力等について、情勢の認識の問題でありますが、日本は脅威とは認識していないというふうに政府の見解になっていると思うのですが、その点は間違いありませんね。
  47. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先生お尋ねの問題につきましては、昨年の内閣委員会において申し上げたとおりでございます。すなわち、北朝鮮の軍事力増強は朝鮮半島の軍事バランスに影響を与えるものであり、ひいては、直接的ではないとしてもわが国に影響を及ぼす可能性があると考えておりますが、他方、本件についてはわが国として総合的見地から判断する必要があり、このような見地からすれば、北朝鮮の軍事力増強がわが国に対する潜在的脅威であると断定することは必ずしも国益に沿うものではないと考える。この種のことを昨年の秋の国会で申し上げておりますが、現在においても変わりはないことを申し添えておきます。
  48. 矢田部理

    矢田部理君 外務省は。
  49. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) ただいま防衛庁長官から御説明ありましたような見解を外務省としても持っております。
  50. 矢田部理

    矢田部理君 いまの認識についてはもう少し議論をしなきゃならぬわけでありますが、つまり潜在的脅威と断定することは国益に沿わない、国益論が一つ入ってきている。ソビエト脅威論を言うときと少しくこの内容が異なっているので、この点はもう少し時間があれば改めて議論をしたいと思っているわけでありますが、それはそれとして、当面朝鮮半島に大規模紛争が起こる可能性はない、考えられない。朝鮮民主主義人民共和国を潜在的脅威があるとは言えない。こういうことだとしますと、その認識は韓国やアメリカの認識とは違っておりますね、たとえばことし行われた十三回目の米韓安保協議では、北の継続的な軍事力増強は韓国の安全保障に深刻な脅威になっているということで米韓の認識が一致したということになっているわけですが、この認識と防衛庁ないし外務省の認識は——日本政府の認識と言ってもいいと思いますが、違っているというふうに承ってよろしゅうございますね。
  51. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 昨年以来、私どもが申し上げておりますのは、北朝鮮の軍事力増強がわが国に対する潜在的脅威であるかどうかというお尋ねに対して、これをわが国に対する潜在的脅威だと断定することは必ずしも国益に沿うものではないというふうにお答えしているわけでございます。韓国の認識、アメリカの認識はそれぞれについてあるということも承知しておりますが、わが国に対する潜在的脅威であるかというと、繰り返して申し上げますように、そうであると断定することは必ずしも国益に沿うものではない、こういうことであります。
  52. 矢田部理

    矢田部理君 だから、それは米韓の認識と違っているというふうに承ってよろしいか、こう聞いているんです。
  53. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先生が言われましたのは、韓国や米国に対する脅威であるかという点でございますが、わが国に対する潜在的脅威であるかどうかにつきましては、繰り返し申し上げているとおりであります。
  54. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、あなたはわが国に対する脅威にはなっていないが、韓国に対する脅威にはなっているという点では米韓の認識と防衛庁の認識は同じなんですか、それとも違うんですか。
  55. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 韓国や米国がどう受け取るか、それぞれの立場であろうかと思います。
  56. 矢田部理

    矢田部理君 いや、韓国やアメリカは脅威になっているという認識をしているんです。その認識と日本防衛庁の認識は、韓国に対する関係では共通なのか、違うのかということを聞いているんです。
  57. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 繰り返し申し上げますように、わが国の問題としてお答えしているわけでございまして、韓国がどう受けとめているか、その点はまた別個の問題であるというふうに考えています。
  58. 矢田部理

    矢田部理君 別個の問題を聞いているんだ。わが国に対する防衛庁の認識はわかった。そこで、次の問題は韓国とアメリカの認識と日本防衛庁の認識は同じなのか、違うのか、こういうことです。
  59. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) その問題につきましては、ちょっと防衛庁としてその立場にございませんので、答弁は留保させていただきます。
  60. 矢田部理

    矢田部理君 その問題は答えられないというわけですか。あるいは認識していないということですか。あるいは何らの見解を持ち合わせていないということですか。
  61. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 当然所管の官庁もございますので、そちらの方からお答えしていただく方がよろしいのではないかというふうに考えております。
  62. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 朝鮮半島には三十八度線を隔てまして南北合計百万人を超える正規軍が対峙しているということで、緊張状態があるということは事実であろうということだと思います。そしてまた、韓国が北朝鮮を脅威として認識していることも承知しております。  ただ北が南に対し侵略する意思を有しているかどうか、あるいは北の南に対する脅威があるかどうかという点については、直接の当事者の主観的判断によるところが非常に大きいわけでございまして、第三国であるわが国としてこの点についてコメントすることは差し控えさせていただきたい、かように考えている次第でございます。
  63. 矢田部理

    矢田部理君 この点も非常に大きな問題ですが、次の質問に移ります。  いよいよきょうから日韓外相会談が開かれる運びになっています。この主要なテーマは、外務省何でしょうか。
  64. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 委員指摘のとおり、本日と明日、日韓外相会談が開かれるわけでございますけれども、この会談はかねてから予定されたのが延期をされたというようなこともありまして、今後の日韓関係あり方について率直な意見の交換を行うということを目的とするものであります。
  65. 矢田部理

    矢田部理君 日韓関係が非常にまずくなった大きな原因として金大中事件がありました。さまざまな自由や民主主義を求める人たちが朴体制のもとに、あるいは引き続く全斗換体制のもとで大変な弾圧にさらされてきた。今日も基本的にはこの問題は解決をしていない。あるいは在日韓国人の方々が、いまもってこの全斗換体制のもとで獄舎につながれている。死刑執行の差し迫った危険を持っておられる方々もいる。当然のことながら、こういうことをも議題にすべきだと考えますが、その点はいかがでしょう。
  66. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 日韓外相会談の議題あるいは内容については、何分にもきょうの午後から始まることでございますので、コメントを差し控えさせていただきたいと思います。
  67. 矢田部理

    矢田部理君 どういう立場で臨むかとか具体的な各論ではなくて、少なくともこういう重要な問題、とりわけ日韓関係のとげとも言われる問題について全く触れずに、これを避けて経済協力だとか軍事問題だとかという議論を展開するのはおかしいというふうに思うわけですが、その点、具体的な内容はともかくとして、日本として何らかの意思表明をする、あるいは取り上げるというような立場ぐらいは少なくともとるべきだと思いますが、見解はいかがですか。
  68. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 金大中氏の問題につきましては、金大中氏の裁判が基本的に韓国の国内問題であるという立場で、しかし金大中氏の裁判の係属中、政府としての関心を伝えてまいったことは御案内のとおりでございます。しかるところ、本年の一月二十三日に金大中氏の裁判が最終的に終結し、確定判決ということで死刑が宣告されたわけでございますけれども、即日韓国政府の高次の判断によりまして刑一等減ぜられたということでございまして、これは日韓友好関係にも資する韓国政府の決定だということで、当時これを評価したという経緯がございます。したがいまして、金大中氏の問題について改めて日韓間で取り上げるということは考えておらないという状況でございます。  他方、政治犯の問題については、外相会談ということではございませんけれども、従来から韓国政府と、これも韓国の国内問題であるけれども、在日韓国人の政治犯の問題というのは、日本と非常に深いかかわりのある方々、親族なんかもおられるので関心の表明はしてきたわけでございます。その一環として、今度の外相来訪中に何らかの関心の表明と申しますか、そういうことを行うということは考えておりますけれども、確定的な点は申し上げられないという状況でございます。
  69. 矢田部理

    矢田部理君 大変納得しがたい答弁です。  日韓関係がこういう問題になってきた一番大きな理由はやっぱり金大中事件、これを韓国の国内問題として処理するわけにはいかない、日本の責任がある。しかも、いわゆる政治犯の釈放の問題もある。どうも金大中氏の減刑を手がかりにして急速に日韓修復を急ぐ余り、これを過去のものに追いやろうとしている政府の態度は大変許せないと。その点で当然外相会談なり、引き続く一連のこれからの定期協議その他でも、この問題は懸案事項として問題を詰めるべきだというふうに考えておりますので、要望として申し上げておきたいと思います。  それから、木内アジア局長が、きょうの外相会談を前にして、韓国に出向いていっていろいろ韓国側の事情を聞いてきております。経済援助についてどの程度の金額が韓国側から示されているのか、要求されているのか、内容を含めて説明をいただきたい。
  70. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 韓国側から経済協力についての要請を具体的な形、その内容、規模等について正式に提示を受けたことはございませんで、アジア局長の木内が参りました際もそういう具体的なお話はございませんでした。  ただ、韓国といたしましては、現在経済的にいろいろの困難に直面しておるということ、それから来年から第五次五カ年計画が始まるということで、わが国の経済協力についてかなり高い、大きい期待を持っているということは承知しているわけでございまして、日韓外相会談においてこの問題が取り上げられるだろうというように一応想定しておりますけれども、話の順序として、先方から取り上げられる。取り上げるなら取り上げるということでございますので、その点についても確定的にお話しできない。具体的内容というのは、ただいま申し上げたように、正式には提起されたことがないので、ここで御説明しかねるという状況でございます。
  71. 矢田部理

    矢田部理君 正式にはもちろんまだ出されていないわけですが、子供の使いじゃないから、韓国に渡れば当然韓国の要求、その背景、理由等について聞いてきているはずだと思います。報道によれば六十億ドルという数値も挙がっていた。二十億ドルから九十億ドルぐらいの巨額の要求、協力要請があるという話もあるのですが、かなり大きな数値が、非公式であれ出ているということは事実でしょう。
  72. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 韓国側の日本に対する期待が相当に大きいというように承知しております。
  73. 矢田部理

    矢田部理君 その協力、援助を求める理由はどこに韓国は求めているんでしょう。
  74. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 韓国側から経済協力に関して正式の提起がいまだないということ。したがいまして、その理由づけについても韓国政府の有権的な説明を受けていないということでございます。
  75. 矢田部理

    矢田部理君 有権的には受けていないとか、公式には言われていないということでは答弁にならないんでありまして、どうも韓国筋の基本的な意見は、あるいは理由は、軍事費に韓国は大きな金を使っている、これが日本にとって北から守るとりでになっておる。その反対給付ないし代償として大型援助を求めてきているのではありませんか。
  76. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) そういうことが韓国の新聞等に書かれているということは承知しております。
  77. 矢田部理

    矢田部理君 新聞だけでなくて、新聞報道はそれの意向を反映して書かれているわけであります。そういう中にあって、日本対応でありますけれども、軍事援助的なものは行わない、安全保障問題とは切り離すとは言いながら、どうもこの大型援助要請に乗る可能性が、いま外務省あるいは日本政府筋で出てきているのではないでしょうか。もしそうだとすると、これは従来の経過から徴して私は大きな間違いを犯す危険性がある。一つは、先ほど南北の軍事問題について言いましたが、どうも日本の援助というのは、日韓癒着の問題もありますし、軍事政権に対するてこ入れという政治的側面が強い。加えて、政府筋の議論からいっても、すでに日韓間の経済協力は民間ベースを主体にするという基準を立ててきている。開発途上国援助に対しても幾つかの基準を立てているわけでありまして、その基準に合わない韓国に今後援助を増額するとか大型協力をやるということになりますれば、言葉づらでは軍事援助ではない、軍事問題とはかかわらない民生援助だという説明をしても、実体は韓国の現政権に対するてこ入れ、総合安全保障の観点から言えば事実上の軍事援助的な意味合いを持ってくる。とりわけそれが円借款ということになればなおさらであります。  こういう背景には、一つには日米首脳会談で役割り分担というのを決めましたこの役割り分担の中には、軍事的意味だけでなくて経済的な役割り分担も含むとも考えられるわけですが、そういうことが一つの背景になってはいないのかというふうにも考えられるわけですが、その辺はいかがでしょうか。
  78. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 韓国に対しましては、従来から韓国の経済社会開発、それから民生の安定に資するということで経済協力を行ってきたわけでございます。今後ともその基本的考え方に変わりはないというように承知しております。  他方、外相会談においてどういう立場で日本は臨むかということについては、何分にもきょうの午後から始まる会談でございますので、この席で論評するということは差し控えさしていただきたい。基本的には、外相会談において韓国側から考え方をじっくり聞いて、それを検討するということに尽きるかというように思っております。
  79. 矢田部理

    矢田部理君 もう時間がないから終わりにしますが、日米共同声明で出てきている役割り分担というのは軍事的意味が主だと思いますが、経済的役割りの分担も含むのかという点だけ伺っておきます。
  80. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 日米共同声明が役割り分担ということで性格づけられるかどうかということについては、私、必ずしも自信ございませんけれども、日本が世界の開発途上国のためにあるいは南北問題解決のために努力するということは、西側の一員としての役割りでございます。その点についてはアメリカもそういうことでありますればこれを評価するという立場であろうと、こういうふうに思います。
  81. 矢田部理

    矢田部理君 私どもは、このアメリカとの関係においてあるいは日米韓の軍事体制が強化されることもやめるべきだし、同時にまた、経済援助という名で韓国の現政権のてこ入れをすることによって逆に朝鮮における情勢を激化させるという問題にもつながるわけでありますから、これは中止すべきだということを強く要求しておきたいと思います。  そのほか、いろいろあるわけでありますが、同時に防衛庁にもう一点だけお聞きしておきたいのは、日韓間の人的交流が各界で非常に強まっているわけでありますが、軍のレベルでもここ急速に往来が激しくなってきている。韓国の艦隊が日本に寄港する問題、士官学校の生徒がこちらに来るとかということもありますが、ここ数年間の制服組の往来の状況について、簡単でいいですが、数と目的について報告いただきたいと思います。
  82. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 過去三年間におきます自衛隊と韓国軍との人的交流は次のとおりでございます。ただ、この人的交流には、たとえば文官の出張であるとか防衛研修所の団体旅行、現地研修というようなものは除いてございます。自衛官の韓国出張は五十三年度十七名、五十四年度十三名、五十五年度十二名でございます。それから韓国軍人の防衛庁訪問は五十三年度七十六名、五十四年度五十八名、五十五年度八十七名でございます。  それで、わが方の目的は現地視察が主でございます。それから韓国の訪問は、もちろん現地視察−向こうから見ての現地視察でごさいますけれども、当庁に対する表敬訪問でございます。
  83. 矢田部理

    矢田部理君 こういうことで、日韓間の制服組の幹部の往来も少し激しくなってきている。加えてもう一つ問題点は、リムパックが八二年に予定をされているわけでありますが、これはいまどんなふうになっているのか。あるいはこのリムパックに韓国の参加が取りざたされておりますが、この点はどういうふうになっているか。
  84. 石崎昭

    説明員(石崎昭君) リムパックにつきましては、従来国会でも御説明してきましたとおり、次のいわゆるリムパック82に参加する予定で米側といま打ち合わせをやっているところでございます。  それから韓国の件ですが、リムパック82に韓国が参加するということは米側からは全然聞いておりません。前回のようにオーストラリア、ニュージーランド、カナダが米国のほかに参加するということは聞いておりますが、韓国参加は全く聞いておりません。
  85. 矢田部理

    矢田部理君 韓国の参加はないということですね。  それから、一連の問題を取り上げてきたわけでありますが、朝鮮問題は私どもにとっても非常に大事な問題だというふうに実は考えております。南北朝鮮の対話と統一の問題、あるいは緊張緩和の問題、そこで南の軍事力増強に手をかすようなことをするのではなく、これはヨーロッパ方面でもそうでありますが、もう一つやっぱり軍縮の流れを私たちはつくるべきだというふうに思います。社会党はそういう立場で朝鮮労働党との間に非核・平和地帯構想、これをまとめて共同宣言を発しました。同時にまた、朝鮮民主主義人民共和国からは、南北の軍隊を十万人程度に減らそうと、相互で勢力削減をやろうというような提案がかねてから何回にもわたって行われているわけであります。こういう動きにも実はなっているわけでありまして、北が増勢したから南にもとか、お互いのやっぱり力における緊張状態を解くための努力を防衛庁なり外務省としてどう考えるか、この一点だけ伺っておきたいと思います。
  86. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 本年の一月、伊東前外務大臣は外交演説で、朝鮮半島の安定確保と緊張緩和のための環境づくりに今後とも積極的に協力していきたい。かつ、南北対話が速やかに再開することを強く希望するということを表明されたわけでございまして、この点については現在も変わっておりませんし、南北対話の問題は、今回の外相会談においても韓国側の考え方をよく知りたいというように考えておりますし、かつ韓国政府といたしましても、一月と六月に二度にわたりまして声明を発し、南北両朝鮮の首脳者会談を提案したことは御承知のとおりでございます。その辺のところの考え方について承知したいというように考えております。
  87. 矢田部理

    矢田部理君 もうこの段階では、軍拡による緊張激化ではなくて、軍縮の方向を遠くアジアでも日本がイニシアをとって具体化すべきだ、明らかにすべきだということを強く要望しておきたいと思います。  外務省、最後になりますが、アメリカがリビアにおいてというか、リビア機を二機地中海において撃墜をしたという報道が昨晩からなされております。これはレーガンの力の政策を端的にあらわすものだ、単なる突発事故というふうには考えられないわけであります。その点で、このリビアの状況はどういうふうになっているのか、かいつまんで報告をいただきたいと思います。
  88. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) このリビア機撃墜事件に関しましては、目下事実関係調査中でございますので、現時点では回答を差し控えさせていただきたいと思います。
  89. 矢田部理

    矢田部理君 調査中で何もニュースは入っていない、現地からの報告はないということですか。
  90. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) 現地からは、たとえばリビア側が、この撃墜事件がリビアの領海内で生じたという報道を流している、そういった情報は入っております。しかし、現在までのところ、リビア政府は公式な態度表明は行っておりません。
  91. 矢田部理

    矢田部理君 できるだけ早い時期にこの状況を把握をして報告をいただきたいと思うんでありますが、特に双方の言い分がかなり食い違っているわけですね。領海内かどうか、どちらが発砲したのか、いずれにしてもレーガンの政策が非常に強い政策、強いアメリカを誇示しようという意図がありありと見えるわけでありまして、特にリビアに対する関係では従来からいろんな問題があるわけでありますけれども、ただレーガンのこういうやっぱり力の政策に、防衛庁も外務省も含めて、日本は乗じるようなことは断じてないように、十分に注意をして対処をしてほしいというふうに思うわけでありますが、その点、外務省いかがでしょう。
  92. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) 先生がいま言われました点につきましては、十分念頭に置きつつ、今後の情勢を見ながら、かつ、事実関係も正確に把握しつつ対処していきたいと思います。
  93. 矢田部理

    矢田部理君 防衛庁それから外務省、結構です。  ちょっと時間がなくなってしまいましたが、行革について、長官がお見えでありますので、まず基本的な問題点を最初に伺っておきたいと思います。  第二臨調答申が出されました。この答申内容を見てみますと、これが行革なのかなと思うような内容になっています。つまり政府が大変な赤字を抱えている。この赤字を埋めるための処方せんでは、およそ私どもが考えておった行革とは違う内容のものになってしまった。しかもその内容は、だれにツケを回すかということになりますと、勤労国民地方自治体にツケ回しをするというような内容にも実はなっているわけでありまして、これはひどいというふうに受けとめざるを得ないわけでありますが、端的に長官の御見解を承っておきたいと思います。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 七月十日に臨時行政調査会から第一次答申をいただきまして、先ほど申し上げましたような経緯と取り扱いをやる考え方であります。第一次答申は、短時間の間にかなり精力的によく努力をしていただきまして、必ずしも全面的に網羅的にできているものではございません。御報告申し上げましたとおり、これを一つの突破口として次への大きな改革の門を開く、そういう意味があるということも申し上げたとおりでございます。しかし、五十七年度予算新規増税なしにかつ特例国債をかなり減らすという目標のもとに実行しているこの進み方は、行革としては一つの行くやり方でございまして、現実問題といたしましてはこういうような現実的やり方で進めざるを得ない、内外の情勢を考えてみますと、こういう具体的なやり方で進めることはいまの情勢ではやむを得ないと、こういうように考えております。  来年の答申、第二次答申が次に出てくる予定でございますが、大体部会割りも終わりまして、いよいよそれが本格的な行革に入っていくその答申が出るであろう、そう期待しているところであります。
  95. 矢田部理

    矢田部理君 これは、行革問題は全般的に時間をかけてやらなきゃなりませんから、もう少し議論をしたいのでありますが、少し今後のスケジュールにかかわる問題について承っておきたいと思います。大蔵省として予算関係、とりわけ法律改正を要するものなどについて臨調答申を受けていま準備中だと、いろんな作業中であるというふうに言われておるわけでありますが、どんな対応、作業をしておるんでしょうか。
  96. 窪田弘

    説明員(窪田弘君) 内閣の御指示に基づきまして、臨調の第一次答申に盛られた事項のうち予算関連の法律事項についていま各省と御相談をし、取りまとめの作業を進めているところでございます。現在の段階では、こういうことになるとか、いつどうなるということをまだ確定的に申し上げられる段階ではございませんで、いま鋭意取りまとめに努力をしているところでございます。
  97. 矢田部理

    矢田部理君 たしか八月の二十五日に大綱というのか、政府方針を決めるために各省折衝その他の整理を急いでいるということでありますが、大蔵省としてどういう項目についていま検討中であるか、その項目をちょっと列挙してほしいと思います。
  98. 窪田弘

    説明員(窪田弘君) 現在検討中の法律事項のうち、主なものは現在の段階では次のとおりでございます。  厚生年金の国庫負担率の引き下げの問題。第二に、第五次学級編制及び教職員定数改善計画の抑制の問題でございます。第三に、公的保険のうち一部のものの事務費の国庫負担を停止するという事項でございます。第四は、地域特例に係る補助率のかさ上げの引き下げでございます。第五は、法定金利の弾力化、この五項目が主なものでございますが、その他なお盛り込むものがあるかどうか、まだはっきりいたしておりません。こういった事項について現在各省と御相談を申し上げておるところでございます。
  99. 矢田部理

    矢田部理君 それは数項目かそれ以上になるかもしれませんが、等々について大蔵省内あるいは各省庁の折衝を通して詰めているということでありますが、それらの個別的な内容については、これは各論にもわたりますし、またきわめて重要な問題も含んでおりますから、別途論議をすることといたしまして、ただそれらのものを一括して財政再建臨時特例法案と、これは仮称でしょうが、というようなものとして法案の一本化を同時に考えているという向きの報道、話があるわけでありますが、その点はどうなっているんでしょうか。
  100. 窪田弘

    説明員(窪田弘君) 法律の形式とか名称その他具体的な形につきましては、法律事項が固まった段階で今後内閣法制局と御相談をしなければならない問題でございまして、現在この点について確たることを申し上げる段階ではないわけでございます。
  101. 矢田部理

    矢田部理君 いや、大蔵省の立場としては、できれば一本化の方向でやりたいという希望なり考え方を持っておられるんでしょう。
  102. 窪田弘

    説明員(窪田弘君) 私どもとしては、できれば一本化していただきたいという希望を持っております。
  103. 矢田部理

    矢田部理君 そこが実は問題なんですね。もともと法律というのは、それぞれ独自の理由と根拠を持って成立するものであります。財政再建というだけの理由で法案を一本化して出すと、四十人学級と法務省に供託した利子をなくすという問題はずいぶん性質の違う話なんであります。国会の審議権という立場から見ても、法律そのものから見ても、一本化論は私たちは納得できないというふうに考えるわけでありますが、法制局として、まだ公式ではないでしょうが、非公式に大蔵省筋などからも相談を受けているようですが、法案を一本化することの是非、問題点、基準みたいなものについて考え方があったら御説明をいただきたいと思います。
  104. 角田禮次郎

    説明員角田禮次郎君) 行革関係の法案を一本化する問題につきましては、ただいま大蔵省の方からも説明がありましたように、まだ法案の内容そのものが折衝の段階でありまして、具体的にどういうものをどうするかということについては、今日の段階で申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますが、御質問の趣旨は、一般的に法案を一本化する場合の基準というものがあるかと、こういう御質問だと思いますので、それについてお答えをいたしたいと思います。  複数の法案を一本化するということにつきましては、これは前例も非常にたくさんあるわけで、ほとんど毎国会そういうことが行われているわけでございます。したがいまして、一般論としましては、一つの技術的な立案方式として一般的に認められているということが言えようかと思います。ただ、そういう一本化が無制限あるいは無原則に行われていいというわけのものではむろんないわけでございまして、この点につきまして、従来から私どもは一つの基準と申しますか、方針というものによって処理してまいってきております。  この点につきましても、国会でしばしば御質問がありまして従来からお答えをいたしているところを繰り返して申し上げることになりますけれども、まず第一には、法案に盛られた政策が統一的なものであるとか、その結果として法案の趣旨、目的が一つであるというふうに認められる場合、あるいはまた、内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形づくっていると認められる場合、こういう基準に該当する場合は一本化というものはできるんじゃないかと、こういうことで処理してまいっております。  ただそれ以外に、いま申し上げた基準とは別に実際上の考慮と言った方がいいかと思いますが、いま申し上げた基準を適用する場合に、むろん例外はありますけれども、原則としてできる限りは一つ委員会の所管の範囲でまとめると。しかし、これは例外は多数ございます。そういうような基準を立てて毎国会処理してまいってきているわけでございます。  今回の行革関係の法案の一本化につきましても、従来から申し上げておるそういう方針及び処理の仕方によって処理してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  105. 矢田部理

    矢田部理君 内閣法制局だから余りしかとしたことは言えないのかもしらぬけれども、目的の同一性あるいは共通性ということは少なくとも必要でしょうが、それだけではなくて、内容についても同じ体系の中でくくれるかどうかというようなことも含めて考慮すべきだというのは、私もそのとおりだと思う。しかし、同時にそれは立法の形式から言えば、やっぱり原則は一本一本やるのが原則なんでありまして、全部例外的な措置だということもこれはっきりさせておかなきゃならぬと思います。  いずれにしても、いま大蔵省検討している数項目などについては、言うならばずいぶん違った性質の法律、目的が財政再建だからといって目的の同一性だけでくくられたんじゃたまったものじゃない、国会は一委員会があればいいというようなことにもなってしまうわけでありまして、その点、法制局としても時の権力の都合でゆがめられることのないよう十分注意してほしいという注文だけつけておきたいと思います。  それから行管庁に、これは時間がなくなってしまったので大変恐縮でありますが、先般行管庁は「行政事務運営の公正確保に係る体制及び手続に関する調査結果報告書」を発表いたしました。これは大変行管庁として努力をされた内容の具体的な指摘があるわけでありまして、その労を実は多とするものでありますが、どうもやっぱり行政改革ということを言いながら、実際は財政再建しかやっていない。本来の行政改革というのは、この公正確保に係る体制と問題指摘に見られるように、行政のダブリやむだを排除する、こういうところに少なくとも問題点一つがあろうかと思うんですが、そういう方面での行政改革の力点がまだそこに注がれていない。その点で貴重な資料を行管庁は提供しているわけでありますが、特に各官公庁、総理府なんか一番悪いわけでありますが、本来は競争入札でやるべきところを、ほとんど金額を超えているにもかかわらず、いろんな口実、理屈をつけて言うならば随意契約でやっている。その問題点が各省にまたがっているわけ、共通の問題点として。  きょうはいろいろ内容について伺う余裕はありませんが、具体的事例でどんなことがあったのかということを二、三行管庁から調査の結果について報告をしてほしい。  それから中曽根長官にお願いをしておきたいのは、会計検査院はいろんな検査の結果を不当事項として公表することになっております。行管庁は、いろんな努力をしているにもかかわらず、抽象的な表現では報告をしますが、具体的な事例や問題点省庁ごとに明らかにしない。これでは国民の監視の目が行政に実は届かないわけでありまして、公表するとその後の調査の協力が得にくくなるとかという現場の声もあるようでありますけれども、こういうものもやっぱり大胆に指摘をして行政の姿勢を正すという方策を講ずるべきだと考えておるわけでありますが、その点、具体的事例とそれに係る公表、具体的な事実の指摘の問題について長官から答弁をいただきたいというふうに思います。
  106. 中庄二

    説明員(中庄二君) ただいま御質問ございました競争契約が可能なのに随意契約をやっているのにどういうのがあるかということでございますが、たとえば映写機の購入でございます。これ、予定価格が予決令で決められております金額を上回りまして二百二十万円のものでございますが、余り高額でないというようなことから安易に随契に移行しているというのがございます。二百二十万円の金額のものでございます。  それからもう一つ、非常にポピュラーな問題でございますが、特定の機器とセットになった銘柄の感光紙といいますか、相当多額のものであるにかかわらず随意契約になっていると。これはほかの用紙も使えるわけでございますが、そういう例で五百七十三万円という例がございます。  そのほかに灯油等の購入、需給が不安定なときでございますれば別でございますが、需給状況の緩和された後においても多額のものが随契で行われている、こういう例がございます。  それからもう一点の、これに関係いたしますが、御質問ございました調査結果の事例の公表の問題でございます。私どもの勧告の効果を上げますために、勧告のほかに調査結果報告書というのをつくっておりまして、これには事例を皆載せることにしてございます。  今回の公正確保の監察につきましての報告書をごらんいただけばおわかりいただけると思いますが、相当の事例、機関名をずばり載せてございますが、ただいま先生御指摘の契約関係につきましては、今回の調査では非常に意欲的に一万六千件の件数、一兆円という金額のものを抽出しまして、まずマクロ分析をいたします。で、これはただいま申しました随契を行っている中で競争契約へ可能なものがどういうのがあるか、こういうのも六百件から千件単位の調査をいたしました。その結果、どういう物品が問題があるかということは事例では載せたわけでございますが、マクロ分析なりの方向重点が行っておりまして、個別の例までのなかなか固めがいかなかったのが実情でございますが、今後とも公表については十分配慮してまいりたいと思っております。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公表するかどうかという問題でございますが、矢田部さん御指摘のように、行政管理庁の仕事と会計検査院の仕事は似ているところもありますが、また違うところもございます。法律的根拠もまた違います。しかし、いままで大体において当該官庁の協力を得て資料を出さしたり、実地調査をある程度やったりいたしまして、そういう非違の問題等を摘出してきたわけでございますが、それをやった後も、その当該官庁にこちらから勧告して是正をさせてその報告を求めている。そういうこともやっております。  そういうようないわゆる行政部内の自浄作用というような性格で行政管理庁の仕事が進められております関係上、公表をしてもいいものと余り適しないものと考えられるわけであります。したがいまして、これはいままでは原則的にはできるだけ公表しないで、官庁内部の仁義といいますか、しっかり直してくれるならば表に出さぬでもいいだろう。そういうことで報告をとる等のことでよく確かめつつ進めてきたわけでありますが、事案によりましては公表することも将来考えていいだろう、いま御指摘を受けましてそのように感じたところであります。
  108. 矢田部理

    矢田部理君 時間がなくなりましたからこの程度で終わりますが、行管の関係は。  やはり会計検査院と制度上あるいは権限上のいろいろな違いがあることは承知しておりますが、密室で問題が処理される、そのことがなかなか行政の自浄作用をおくらせている。やっぱり国民注視、監視の中で行政がガラス張りで進められるという立場から見ても、長官の言葉もありましたが、そういう観点を今度の行革の中にもひとつ込めるべきだと、オンブズマン制度の問題等もありますけれども、その点を要望しておきたいと思います。  最後に、宮澤長官にもおいでいただき、かつ人事院に少しく問題点をお聞きしたいと思ったんですが、この点は山崎委員が後ほどいろいろ詳しく質問になると思いますので、まとめて数点質問いたしまして終わりたいと思います。  一つは、人事院として勧告をした。ところが、この勧告内容が少しく低いのではないか。中小企業の伸びが予想以上に低かったというようなことが根拠とされているようでありますが、その理由の正体はここではお聞きしなくてもいいですが、いずれにしても、勧告をした以上は人事院の存在、存立理由をかけてやっぱりその実施を求めるというのが人事院の態度だと思いますが、そのとおりでいいでしょうか。
  109. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) まさしくいま御指摘になったとおりに私は考えております。
  110. 矢田部理

    矢田部理君 それから各大臣に伺いますが、その実施の責任官庁、責任担当大臣として中山長官の言動はきわめて大きいわけですね。特にやっぱり憲法認識を私は問いたいと思っているわけです。  もともと労働基本権が剥奪をされた、そのスト権の代償として言うならば人事院はつくられたわけであります。臨調とは重みが違うんですよ。臨調法律レベルの制度、当面の財政再建問題は大事だというふうに思います。しかし、これは憲法レベルの問題だという認識の上に立って少なくとも担当大臣として処置すべきだ。当然、早期完全実施を閣内では声を大にしてやっぱり叫び、またその政治的力量を発揮すべきだというふうに考えるわけでありますが、その点どうか。  それから、全体の絵を考えてみますと、一方では人事院が完全実施を求める、臨調は抑制を求める。大臣レベルで言うと、中山さんが少しさえないという説もあるんですが、おおむね総理府と労働省は実施を求める、大蔵省や行管は、これは中曽根さんがおいでになった方がよかったかもしれませんが、やや消極的、大蔵省のごときは足を引っ張る。閣内でわれわれが見る限りでも相当の不統一が想定をされるわけでありますが、宮澤長官においでいただいたのは、給与関係閣僚会議の座長をされておるわけでありますから、そういうさまざまな意見がありながらも、今後やっぱりどういう手順で、どういう方向でこの問題を完全実施に向けて処理しようとされておるのか、長官の見解を最後に伺いたいと思うわけでありますが、まとめて質問いたしましたのでよろしくお願いいたします。
  111. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 私は、給与担当大臣といたしましては、昭和四十五年以来この人事院勧告の完全実施ということによって労使関係が非常に安定した状況に今日まで推移してきた、そういう状況というものはきわめて好ましいいわゆる影響を社会全般に与えている、こういうことで、この好ましい労使関係というものを今後とも維持してまいりたい、これが私の基本的な考え方であります。  私は、客観的に事実を申し上げたいと思うんですが、昨年の人事院勧告が行われた際、今年のような臨時行政調査会というものが国会によって設置をされていなかった時点におきましても、完全実施が困難かどうか、これが大変昨年も当委員会で論議を呼んだところでございます。そういうふうな事態の中で、昨年は十月二十八日に給与関係閣僚会議が、いろいろむずかしい財政事情にありながら財務当局との交渉において最終的に結果が出た、こういうことでございましたが、今年の財政事情は、先生も御案内のように、昨年と比べるとさらに悪い状況にあるということは御案内のとおりであります。  いまもお話がございました、そういう財政事情が昨年よりも悪いという中でさらに臨時行政調査会答申が出ているということで、これをできる限り尊重するという閣議決定が行われた。これは憲法次元とは違うというお説でございますが、私ども閣僚として閣議に参画をしている全員が、全会一致でこの答申というものをできるだけ尊重するということに決定をしたわけであります。  そういう状況の中で、給与関係閣僚会議でいわゆる人事院勧告の扱いについて、今後私どもとしては、先ほど申し上げたような一つの安定したいわゆる労使関係というものをいかに維持していくか、さらに公務員の諸君の生活条件というものをいかに安定させるかということのために誠意を尽くしてまいりたい、このように考えておるところであります。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先般、人事院総裁から勧告の提出がございました日に、即日給与関係閣僚会議を開催をいたしました。先ほど矢田部委員が言われましたように、非常に複雑な現在の情勢を反映いたしましていろいろな意見がこの会議の席上出されまして、しかし、いずれにしても特に例年に比して慎重に検討をする必要があるという点では、そういう意味では全員の考え方が一致をいたしておりました。したがいまして、これからも何回か給与関係閣僚会議あるいは関係の閣僚の懇談会といったようなものを開いてまいらなければならないと思っておりますが、文字どおり慎重に時間をかけて検討いたさなければならないと考えております。
  113. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと一点だけ。  すでに勧告が出されてから少しく時間がたっているわけですが、いつごろまでをめどに、どういう手順、段取りでということをもうちょっと、めどづけその他も含めて、一点だけですが御説明いただけませんか。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 従来、勧告が行われます時期は大体八月の初旬でございますが、最終的な決定が行われますのが十月の下旬あるいは十一月になっておる場合が相当ございまして、今回も、事情が従来よりはさらに複雑困難でございますので、ある程度の時間はかけなければならないものと考えております。
  115. 矢田部理

    矢田部理君 早期に、しかも完全に実施することを強く要望して終わります。
  116. 林ゆう

    委員長林ゆう君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時十三分開会
  117. 林ゆう

    委員長林ゆう君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  118. 山崎昇

    ○山崎昇君 公務員給与問題に入ります前に、官房長官お忙しいようでありますから、三点ほどこの機会にお聞きをしておきたいと思いますが、第一点は、たびたびこの委員会でも議論のありましたように、閣僚の靖国神社参拝の問題が、ことしは出張でおらなかった人一、二名除きまして全員が参拝したというふうに報道されておるんですが、まず、公式に官房長官から閣僚の靖国神社参拝の状況についてひとつお話をいただいて、それに基づいて私の方から質問をさしていただきたい、こう思います。
  119. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 閣僚が、どなたがどういうふうに靖国神社に参拝されましたか、私存じておりません。報道によりますと、八月十五日に多数の閣僚が参拝されたということを聞いておりますけれども、正式には私何も存じておりません。
  120. 山崎昇

    ○山崎昇君 そうすると、官房長官の方としては閣僚がどの人がどうしたかということは把握しておらない、ただ新聞報道で知っている程度だと、こういうことですか。——そこで、お聞きをしておきたいと思うのは、参拝をされた後にテレビに出ましたのは法務大臣と鈴木総理であったわけです。鈴木総理がマイクを向けられて、内閣総理大臣鈴木善幸と書きましたよ、ただ、玉ぐし料は私のポケットマネーで払いました、こういう話でありました。それから奥野法務大臣は、公式参拝がなぜ悪いんだと多少開き直ったような物の言い方で、ただ鈴木内閣が憲法違反の疑いがあると言うからおれは私的に参拝をするんだという趣旨考え方が述べられておりました。  そして、これ新聞報道でありますけれども、全閣僚の出席、欠席一覧表があります。さらにまた、参拝についての意見もここにかなり述べられておりますが、どうも形式は私的参拝という形式のようでありますけれども、実体はもはや公式参拝と言えるほどのものになっておるのではないんだろうか、そしてその区別は何かと言えば、玉ぐし料を自分の金で払うか公費で払うかというだけになってきているんではないんだろうか、こんな気がするんですが、政府の統一見解もあるようでありますけれども、この私的参拝と公的参拝の、もう一遍私は官房長官からきちっとした見解を聞いておきたい。
  121. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これにつきましては、福田内閣当時、当時の官房長官が公にされました基準がございます。法制局から御説明を申し上げます。
  122. 味村治

    説明員(味村治君) 昭和五十三年十月十七日に参議院の内閣委員会の席上におきまして安倍官房長官が御説明になりました統一見解がございます。これを御説明申し上げたいと存じます。   内閣総理大臣その他の国務大臣の地位にある者であっても、私人として憲法上信教の自由が保障されていることは言うまでもないから、これらの者が、私人の立場で神社、仏閣等に参拝することはもとより自由であって、このような立場で靖国神社に参拝することは、これまでもしばしば行われているところである。  そうして次に、公私の別につきまして、   内閣の地位にある者は、その地位の重さから、およそ公人と私人との立場の使い分けは困難であるとの主張があるが、神社、仏閣等への参拝は、宗教心のあらわれとして、すぐれて私的な性格を有するものであり、特に、政府の行事として参拝を実施することが決定されるとか、玉ぐし料等の経費を公費で支出するなどの事情がない限り、それは私人の立場での行動と見るべきものと考えられる。  さらに、先ほど御指摘になりましたような記帳とか、いろいろな問題につきましては、   先般の内閣総理大臣等の靖国神社参拝に関しては、公用車を利用したこと等をもって私人の立場を超えたものとする主張もあるが、閣僚の場合、警備上の都合、緊急時の連絡の必要等から、私人としての行動の際にも、必要に応じて公用車を使用しており、公用車を利用したからといって、私人の立場を離れたものとは言えない。   また、記帳に当たり、その地位を示す肩書きを付すことも、その地位にある個人をあらわす場合に、慣例としてしばしば用いられており、肩書きを付したからといって、私人の立場を離れたものと考えることはできない。   さらに、気持ちを同じくする閣僚が同行したからといって、私人の立場が損なわれるものではない。  このように公私の区別の基準につきまして安倍官房長官が御説明になったところでございまして、現在の政府の見解もこのとおりでございます。
  123. 山崎昇

    ○山崎昇君 それは私も承知しています。いまあなたの説明あったように、当初三木さんが言われたときには、肩書きはつけません、公用車も使いません、玉ぐし料はもちろん自分の金で払います、おおよそ出されましたのはこの三つが中心でありました。  ところが、いま私から申し上げたように、全部の閣僚が、総理大臣以下全部行っている。ただ農林水産大臣は外遊中でありましたから行っておりません。公用車はもちろん全部使っている。玉ぐし料について述べたのは、さっき申し上げたように、総理にマイクが向けられて、総理は自分の金で払いましたと。だから、形の上は私人というかっこうのようになっていますが、実体はもはや公的と言わざるを得ないような状態になっているんではないか。そしてその最も区別の中心は何になってきているかと言うと、ここまで来れば、もう玉ぐし料を自分で払うかどうかというところにもはや来ているのではないんだろうか、こう判断をするのが私は現状からいって常識であろうし、国民もまたそういう目で見ているんではないんだろうか。  だから、重ねて言えば、もし玉ぐし料を払わなかったら、一体、まるまる公的と言われてもやむを得ないようないま状況になっているんじゃないだろうか。内閣で言う憲法違反の疑いがありますなんていうのはどこかへ飛んじゃっているんではないだろうか、こういう感じがします。これは一体官房長官としてどういうふうにお考えになるのか、重ねてお聞きをしたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 玉ぐし料を払わなければ区別がつかぬではないかというお尋ねであったかと思いますが、この問題は、公の負担において玉ぐし料が払われた場合には公の性格を帯びるということでございますので、玉ぐし料を納めていないという場合には、それに関する基準は踏まれていないということに尽きると思います。
  125. 山崎昇

    ○山崎昇君 だから私は、三木さんのときから言われてきたことが全部外されて、もはや残っておるのは玉ぐし料だけでないですか、言うならば。あと、なるほど閣議で決定しておりません、申し合わしたわけでもないでしょう。ですから、形式的に言えば私的になるかもしれない。実体は公的である。その区別の最大のポイントは何かと言ったら、玉ぐし料しかないじゃないですか。それをもし払わなかったら、全く公的と言わざるを得ないようないま状況にあるんではないんだろうか。私はこれはやっぱり深刻に考えておく必要があるんじゃないんだろうかというふうに考える一人ですから、重ねてこの問題を取り上げたわけなんですが、もうすでに終わったことでありますからこれ以上は申し上げませんが、本当に内閣が憲法違反の疑いがあるというなら、疑いのあるような行動をやらぬように閣議なり何なりできちっとしてもらいたいということをあなたに重ねて申し上げておきたいと思います。  それから、第二にきょうお聞きをしておきたいと思いますのは、私も北海道へ行っておったんですが、中川科学技術庁長官が北海道におきます講演で天皇陛下の靖国神社参拝について述べられまして、これはもう北海道新聞でもかなり大きく扱われました。これは政府として中川長官との間にどういうその後報告を求めたのか、あるいはまた政府としてはこれに対してどういう見解をお持ちなのか、まずその点をお聞きをしたい。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この点につきましては、中川科学技術庁長官から私にその後に御説明がございまして、中川長官が言われたこと、それは従来から言ってきておられたそうでありますが、趣旨は、自由民主党は靖国神社の国家護持をすることを公約として掲げているのであるから、早くそれが実現をして、そして陛下も参拝されるというようなことになるということは自分は望ましいと思う、こういうことを言われ、もちろん、しかし現在、鈴木内閣のもとで内閣がとっている方針に自分は反した考えを持ち、あるいは反した行動をするものではない、こういう御趣旨というふうに承知をしております。
  127. 山崎昇

    ○山崎昇君 そこで官房長官ね、私はこの新聞報道を見たときに、いまから三年前でありますが、あるジャーナリストのレポートがここに手元にございます。これは一九七八年の九月号の「宝石」という雑誌に出されましたレポートであります。私は注目すべきレポートだと思いますので今日までこれ大切に保管をしている一冊でありますが、これを見ると、表題は「天皇・改憲・世直し——タカ派集団の目指すもの」というのが表題であります。  中身は相当なページ数でありますから全部言いませんが、一つは、天皇陛下の退位を図るべきである。二つ目には、靖国神社の国家護持がなかなか実現できないから、戦術を変えて、まず第一に閣僚の公的参拝を目指すべきである。そして大きな意味で言うならば憲法改正、その一つは、象徴天皇から天皇の元首化へということ、二つ目には第九条の改正、これらが与党の内部で相当前から準備をされ、特に三年前の終戦記念日を契機にしてかなり具体的に検討されているというのがこのレポートの内容であります。そして、その中に最後に、天皇陛下の靖国神社参拝、これをどんなことがあっても実現をすべきである、こうなっていると指摘をしているわけです。  そして私は、特にこの中で注目しなきゃならぬのは、いまの天皇陛下が在位中にどうしても靖国神社の参拝を実現をすべきである。その理由は何か。それはいまの皇太子殿下は、この文章で言えば、「アメリカ流の教育を受けて育った皇太子が、果たして日本右派総力の悲願である「天皇制復活」「再軍備」「第二次大束亜共栄圏建設」の輿望を担って”大元帥”に変身できるだろうか。」、きわめて皇太子に対して不信感を持つと、こう述べられています。そして最後に、これは遺族会の幹部だそうでありますけれども、「今のうちになんとしても公式参拝を実現しておきたいのです。「今のうちに」とは、「天皇陛下がお元気なうちに」という意味です。はっきり言って私たちは、皇太子殿下に一種の危惧を感じております。アメリカ流の合理主義を身につけられ、日本古来の思考を排されるとか。英霊顕彰に関しても、あまり積極的でないとうかがっております。」、こういう文章が、これが結語に近い文章になってこのレポートというのが書かれております。  私は、これはきわめて危険な方向に行っているのではないだろうか。またしても天皇制度というものを政治的に利用しようとしている状況にあるのではないだろうか、こう私はこのレポートを改めていま見ておるわけなんですが、いま私が部分部分で述べておりますけれども、述べた点について、政府のまとめのかなめであります官房長官としてはどういうふうに考えられますか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 自由民主党の中におきましていろいろな議論があり、いろいろな検討がなされておりますことは、これは政党でございますから当然なことでございますが、政府といたしまして憲法を改正する意図はないということは、鈴木総理大臣がしばしば国会で申し上げておりますことでございます。  なお、靖国神社の参拝につきまして、国務大臣の参拝がこういう性格のものであるということは従来から申し上げておりますが、そのことは陛下の参拝についても同様なことでありまして、陛下が靖国神社に参拝される場合、私人として参拝をしておられると承知をしております。
  129. 山崎昇

    ○山崎昇君 少なくとも閣僚の一人がその講演会でこういう発言をするということは、形の上ではいま鈴木内閣は憲法改正やらない、しかし大臣個々はいろいろなことをいろいろなところで言っております。問題になってくると、最後は、鈴木内閣がそういう方針をとっておりますから私も従うんです、何も本心から従っておるわけではない。私は本当に、そしていま申し上げましたように、政党ですからいろいろな人もいるでしょう。いるでしょうけれども、天皇制度というものを再び政治的に利用してやがては靖国神社の国家護持に持っていきたい、こういうことは許されないことではないんだろうかと思います。  しかし、これはきょうそれだけが本題でありませんから、私は多くのことを申し上げたいのですが、言いませんけれども、内閣はやっぱり私は拳々服膺して本当の意味憲法を守る、国民生活の中に憲法を生かす、これは当然のことでありますけれども、九十九条の憲法遵守の義務というものを名実ともに果たしてもらいたい。国民に要らざる不安を与えたり疑念を与えたり、そういうことのないように私は重ねて願っておきたいと思うんです。  そして、もう一つあなたに、この間NHKで「マリコ」という映画が上映されまして、重光さんが出てまいりました。あの金網の中であのマリコという子供と会って涙を流す場面も出てまいったわけでありますが、この重光さんが捕えられて巣鴨におられたときに、出ましてから「昭和の動乱」という本を書かれた。私はこれもまた読ましてもらった一人でありますが、「巣鴨に於ける反省」という副題がついていまして、きわめて短い一節だけあなたにこれは提示しておきたいと思うんです。それは「憲法のごとき国家の基本法が、フィクションの上に眠り、もしくは死文化された場合に国家は危くなる。如何に理想を取り入れた立派な憲法でも、その国上下の構成員即ち国民がこれを日常の生活の上に活用して、身を以てこれを護るというのでなければ、憲法はいつの間にか眠ってしまう。昭和の動乱は、憲法の死文化にその原因があることは、日本の将来に対する大いなる警告である。」という言葉を使っておられます。    〔委員長退席、理事藏内修治君着席〕  私は、最近の一連の自衛隊の増強もそうでありますけれども、何かしら政府は守る守ると言いながら実態は憲法をないがしろにしている、そういうところに危険を感じている一人なんです。そういう意味で、これは一節だけでありますけれども、改めてこの重光さんの言葉というものをあなたにいま提示したわけですが、これらを聞いてあなたは、内閣としてこの憲法擁護に対して、最近は憲法記念日にも余り行事やりませんけれども、本当に名実ともにこの憲法を守るという決意を述べていただくことにして、ひとまず官房長官に対する質問を終えたいと思うのですが、どうですか。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府といたしまして、憲法を擁護、尊重するために最善の努力を尽くしてまいる所存であります。
  131. 山崎昇

    ○山崎昇君 そこで、きょうの本題であります公務員給与と関連をして、臨調答申等についてお尋ねをしていきたいと思っています。  まず人事院にお聞きをいたしますが、これはもう衆議院でも聞かれているわけなんですが、ことしの勧告に当たって、例年人事院のとっておりますように民間調査を行う、生計費を考える、その他人事院の適当と思われる情勢等を加味しながら勧告をすると、こうなっておりますが、ことしは特にその他の事情で特徴的なことがあるのかないのか。あればその点についてまずお聞きをしたいということと、それから報告の中で、私も今日まで勧告をずっと見ておりますが、労働基本権に触れて勧告を出されたというのは初めてだと私は思うんですが、これは人事院としても異常な決意でこの文書をつくられたのじゃないかと思いますが、その真意等を含めてまず伺っておきたいと思います。
  132. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 私たち、毎年給与勧告に関する仕事をしてまいります際には、いろんな情勢を頭に入れまして、また資料を収集しこれを分析をいたしまして結論を出すというやり方を従来ずっと続けてまいっております。したがいまして、具体的に申せば最近におけるいろんな情勢、なかんずく御指摘になりましたことに関連する臨調等の動き等についても無論大変重要なこととして頭に入れながら作業を進めておるということは当然のことでございます。ただ、給与勧告の仕組みの点から申しまして、この基本的なやり方は従来と変わったところはございません。すなわち、官民較差というものがあればこれを従来方式に従って埋めて較差をなくしていく、これが給与勧告の基本的な立脚点でございますので、その点は従来のやってまいりました方式をそのまま基本的には踏襲をしてやってまいったということでございまして、特にそれ以外の条件その他を新しく加えたものはございません。  したがいまして、本年においてもその意味においては従来の態度でもってやったわけでございますが、ただ、給与をめぐってはいろいろな論議が近時大変盛んなものがある、やかましいものがあるということも事実でございます。特に最近臨調ができまして、ここでいろんな論議がなされておるということも事実でございます。したがいまして、われわれといたしましては、この際はやはり国民に対しても人事院勧告というもののよって発生をしてきたゆえん、その立法の精神、そういうものについてよく御理解をいただくということが大事なことではあるまいかという考え方に立ちまして、いわばおわかりをいただいている方々には一種のそれこそ饒舌といいますか、要らざることというようなお気持ちがあるかもしれませんですが、われわれといたしましては、一般国民の皆さんにも人事院勧告の精神なり趣旨なりというものはひとつ誤りなく御理解を願いたいという切なる要望というものから、特にそういうものに触れたということでございます。
  133. 山崎昇

    ○山崎昇君 そこで総務長官、これは衆議院でも何回か質問が出ていますし、あなたも答えられておるし、それから午前中矢田部委員からも一部指摘をしたことですからダブるわけなんですが、ただ、やっぱりいま人事院総裁から、国民に対しても人事院勧告の持つ意味あるいは労働基本権との関係はわかってもらいたい、こういう趣旨であえてことしの勧告の中に報告の一項として述べられたという話がありました。  そこで少しダブりますけれども、御存じのように、最高裁は四十八年の四月二十五日に「憲法二八条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶものと解す」と、こうまず述べて、しかし、「この労働基本権は、勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであって、それ自体が目的とされる絶対的なものではないから、おのずから勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からする制約を免れない」と、こういう言葉を使って、結論としては、労働基本権について制限するのもやむを得ないという結論で、これについては学者間にもかなりな議論がありますし、私どもこれを容認するという立場にはない、こういうわけなんですけれども、一応最高裁の判決として出ているわけなんですね。その中に、「公務員に対しても、その生存権保障の趣旨から、法は、これらの制約に見合う代償措置として身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件についての周到詳密な規定を設け、さらに中央人事行政機関として準司法機関的性格をもつ人事院を設けている。」と述べられている。  だから、午前中述べましたように、この人事院勧告は、これはもう労働者にとりましては憲法上の権利の問題であって、したがってわれわれがその共通の理解としなきゃなりませんのは、いろんな意見はあるにいたしましても、人事院勧告はそのまま実行するということが、これが私は最高裁判決のやっぱり意味するところであろうし、また労働者をある意味では納得させ得る唯一の道でもあろうと、こう考えるんですが、総務長官としては、まあ担当でありますから、この最高裁の判決やら、あるいは、もう御存じのように、人事院の性格その他からくるこの勧告の完全実施について迷いがないと私は思っているんですが、改めて、私との間にあなたは見解の相違がないと思うんですが、これは勧告どおり実施すべきものであるんだと、こういうふうに理解をしたいと思うんですが、どうですか。
  134. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 先生御指摘の最高裁の判決、十分私も承知をいたしております。また、衆議院でもお尋ねがございましたが、ILOの問題等も認識をいたしております。私は、就任以来この人事院勧告と持つ意味、そういうものを十分踏まえて、昨年も大変財政難の時代でございましたけれども、私なりに誠意を持って努力をいたしたつもりでございます。今年も同様な気持ちで私は誠意を持って給与関係閣僚会議で自分の立場を守ってまいりたいと、このように考えております。
  135. 山崎昇

    ○山崎昇君 そこで、後ほど臨調答申については行管庁長官にもお尋ねしますが、いまの状況からいって、行政管理庁長官の所管ではありませんけれども、人事院勧告については勧告どおり実施すべきものだとあなたもお考えだと思うんですが、どうですか。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は行政管理を主として担当しておる責任者でございますが、臨時行政調査会設置法を成立さしていただきまして、せっかくその答申をいま着々と得ておる段階でございます。私の立場からいたしますと、臨時行政調査会答申最大限に尊重してこれを実施に移すというように内閣が閣議決定をしておるところでございますから、その線に沿って処理していくのが私の任務ではないかと思います。
  137. 山崎昇

    ○山崎昇君 いやいや、あなたの任務を曲げれなんていま言っているわけじゃない。基本的な考えとして人事院勧告というのは勧告どおり実施すべきものでありますと、これが、先ほど来私ども述べているように、また総務長官からも言われているように、筋道ではないんだろうか、この点をあなたに聞いているんです。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法律によりまして人事院勧告につきましてはこれを尊重する、それが尊重されて実施されることが私も望ましいとは思います。しかし、やはり公務員も全体の奉仕者でありまして、いまの最高裁の判決にもありましたように、勤労者も含めた国民全体の共通の利益の前にはまた制約もあり得ると、そういう文章がございましたが、この点はわれわれも注目しておるところでございます。
  139. 山崎昇

    ○山崎昇君 それは違いますよ。それは憲法二十八条に言う勤労者の労働基本権の問題と関連しての判決でございまして、問題をすりかえないでくださいよ。  いずれにいたしましても、いま総務長官から言われておりますように、あなたもまた言いたいんだろうけれどもなかなか言えぬというような顔をしていますが、やはりこの経過からいって、それから昭和二十二年に臨時人事委員会ができて以来三十四年の歴史になるわけですけれども、その歴史の重さからいっても、あるいは憲法上の権利の問題からいっても、臨時にできた臨調考え方だけで曲げるなんということにはならないと私は思う。そういう意味で、総務長官には最後まできちんとした態度をとって、あなたは所管でありますから、この人事院勧告勧告どおり実施についてひとつあなたは最後までやってもらいたい。あなたのそういう決意だということを理解した上で、人事院に、多少技術的になりますが、二、三お聞きをしておきます。    〔理事藏内修治君退席、委員長着席〕  一点は、ことしの勧告は五・二三でありますけれども、どうも私調べてみると、たとえば労働省で発表するもの、日経連で発表するもの、あるいは労働組合で発表するもの等々を見ましても、本年の春闘におきます賃上げというのは七・九ですね、大筋。これは定昇込みになります。しかし、いずれにいたしましても、公務員の場合には定昇込みで七・三九という。四月は約四〇%近い人はもはや定昇は入っての勧告になりますから、三回分だけの定昇で見れば逆に言うと私は七%そこそこではないだろうか、きわめてことしは低い勧告になっておるんではないんだろうか、こうまず一点思います。  それから第二は、人事院はやっぱり何だかんだと言われても、先ほどは特別な事情は考えておりませんという説明でありましたけれども、何かその辺に私はあなた方としては配慮した痕跡があるのではないかと、こう疑っているわけなんですが、その点お聞きをしたいと思うんです。  それから、時間が私余りありませんので二、三続けてお伺いしますが、第二に聞いておきたいのは、ことしもまた俗に言う積み残しというのが物すごく多いんですね。私の調べでは去年は〇・八四、おととしは〇・六、言うならばそういうことで推移をしてまいりましたが、ことしはそんなに春闘がおくれたというわけでもないのにこの積み残しがきわめて多いということは私は問題があるのではないんだろうかというふうに考えます。特に、人事院民間の定期昇給率というものを三%に見ておりますが、あなたの方の出しておる資料を見るというと二・六だと、二・六で計算をすれば五・三三ぐらいになります。そういう意味で言えば、この積み残しの多いということが、〇・一くらい低くあなた方は抑えたんではないんだろうか、こういう気持ちがいたします。これが第二です。  それから第三は、たくさんありますけれども、配分についてことしは本俸が八三・一%、大体四・三五%充てていると、こう言う。民間の賃金を調べてみますというと、本俸は大体八五%ぐらいになっています。ですから、配分については私はほぼ民間と見合うのではないんだろうかという気持ちがしておりますが、民間との関係について少しく御説明願いたい。  それから本俸の改善について、世帯形成時を中心にして配分をしたとあなた方は言っています。しかし、資料等を見ると必ずしも私はそうなってないんではないかという気持ちがあるんですが、これも少しく説明を求めておきます。  それから、もう一つ関連してお聞きをしておきたいのは、初任給が民間の動向が人事院から示されておりません。一体民間は初任給はどういうふうになっているのか。これきょうある程度のことを明らかにできればしてほしいし、そうでなければ資料として提示を願いたい。  それから昨年私はこの委員会で、余りいい言葉でありませんでしたけれども、枠外者というのがずいぶんある。というので、ことしは多少四、五、六について配慮をしたようであります。しかし、それでもなおかつかなりな人が枠外者として残る。これからまた入ってくる。一体将来この枠外者という問題は、これはまあ総合的な見直し論もありますが、どうされるのか、重ねて私は定期昇給の持つ重みというものを考えるがゆえにお聞きをしておきたいと思います。  それから調整手当について東京、大阪、名古屋、横浜、京都、神戸、ここら辺の大都市については八%を九%に一%上げました。しかし、その他については是正されておりません。言うならば、地域の格差というものはほとんど手がつけられてない。特に、昭和四十二年の十二月二十二日、第五十七国会でこの参議院内閣委員会で附帯決議がついて以来、すでに十四、五年になるわけでありますが、この調整手当の地域格差についてほとんど是正されないということは私は納得できない。これは一体どうされるのか、お聞きをしておきます。  次に、扶養手当について奥さんの分だけ上げました。しかし、いまの進学率その他等から言えば、十八歳で扶養手当を打ち切ることは少し私は生活上からいけば無理ではないのか。本来のように、いまのように相当大学在学中の者が四〇%近い数字になってくるということになれば、私はやっぱり大学卒ぐらいまではどうしても被扶養者と見るべきではないかと思いますが、十八歳から二十二、三歳まで一遍に上げるといっても無理ならば、せめて成人を迎えると言われる二十くらいまで引き上げるべきではないかと思うんですが、この点もお聞きをしておきます。  それから、重ねて時間ありませんから聞いていきますが、特別給についてことしもまた端数を切り捨てました。この十何年間すべて端数が切られています。これ足したら相当なものです。この点に関する限り、その年その年では〇・〇八くらい、前の年もまたそれぐらい切られる。十年以上これ切られておりますから、特別給に関する限りは民間との開きは私は相当なものがあるのではないかと思う。これはその年その年で消えるんで余り問題にされませんが、私は重要視をしなけりゃならぬ点ではないか。なぜことしも切ったのか、お聞きをしておきます。  それからその次に、よく議論される一点に生涯賃金という問題があります。これも人事院の見解を私は聞いておきたいと思うんですが、日経連で出しております資料を私ども見ますというと、たとえば五十歳にいたしましても五十五歳にいたしましても、これは行(一)を使っておりまして、いずれも、五十歳の場合には大卒で一等級の五号、五十五歳の場合には高校卒でこれまた一等級五号。しかし、いまの公務員の等級別の分希を私ども見るというと、約二十四万存在いたします行(一)表の適用を受ける職員のうち、一等級に属する者は千二百人ぐらいしかおりません。こういうものをモデルに使って、あたかもそれが公務員全体を支配しているような標準と見るところに誤りがある。  いま私は大ざっぱな数字を申し上げましたが、行(一)職全体は二十四万六千百四十七名、あなたの方の資料で言うと。一等級に属する者は千二百六十三名、わずか〇・五一%。この諸君の数字を持ってきて比較をして、あたかもそれが公務員全体の生涯賃金であるようなこういうやり方は私はどうしても承服しがたい。公務員全体を平均とるというなら、五等級前後をとらなければできませんね。もちろん年金比較するのも結構でしょうし、あるいは退職金比較するのも結構でしょう。だが、基礎数字のとり方がこれほど違ったら、出てくる結果は全く違う。そういう意味で生涯賃金というものについて総裁の見解を聞いておきたい。  少し問題をたくさん並べましたけれども、順次ひとつ回答いただきましてから、改めてまた指摘をします。
  140. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 相当広範な御質問でございまするが、私がまず御答弁を申し上げまして、足らざる点は給与局長から補足して御答弁を申し上げたいと存じます。  最初に、較差の問題に関連しての御質問でございます。ことしの場合、較差は五・二三でございますが、これは山崎先生その他いわば大変この関係にお詳しい専門的な立場から見ますると、ごく大ざっぱに言って少しやっぱり低目じゃないかという感じが一般的であったのではないかという気持ちがいたしておることは事実でございます。ただ、春闘というものが初めの滑り出しが多少はでなように伝えられたというようなこともあったのではないかという感じがいたしますのと、その後いま御指摘になりましたようなそれぞれの関係団体あるいは労働省あたりからの資料発表というものについて見まする場合に、おおむね平均的には一致をいたしておるわけでございますが、当初予測されたほどのことにはなってない。全体としてじみな推移をしたのではないかという点がございます。  それと毎月勤労統計調査、これが非常に端的にそれらの事情を反映するわけでございますけれども、これらのその後における統計の発表を見ておりますと、やはり実勢というものがかなり厳しいというか、じみな推移をしておるということが裏づけられる結果に相なっております。なかんずく、人事院勧告においては、その調査対象として中小企業が数としては非常にたくさん入ってまいりますので、中小企業関係の実勢を反映することになりました結果、こういう較差が出たのではないかというふうな分析を一応いたしております。  なお、これについては今後もさらに詳細に資料を中心として分析検討を続けてまいる準備をいたしております。したがいまして、これについては従来と同じ方式、先刻申したように同じ方式でもってやっておりまして、何ら作為その他の操作はもちろんのことやっておりません。四月の時点における実額でもってそれぞれ比較をしたいという結果がこういうことでございます。  それから配分関係に関しまして、世帯形成時あるいは初任給の関係等については後ほど御説明をいたしますが、枠外者についてこれは前からも御注意がございました。われわれといたしましては、基本的な調査検討に入っていくというたてまえもございます。それから、高齢職員について何らかの給与抑制措置は、民間との対比からみてもある程度やらざるを得ないというようなこととのにらみ合わせもございまして、枠外者についての処遇は若干見送ってまいったことは事実でございます。ただ、その後、据え置いて今日までまいりましたために、かなり滞留者と申しますか枠外者の数がふえてまいりまして、これはやはり当該該当する職員の方々はもちろんのこと、大きく言って人事管理上の面からいっても問題がなしとしないという実態であることは事実でございますので、今回の、ことしの場合は非常に少ない範囲でございますけれども、とうてい放置しがたいと認める者についてはとれについての措置をいたすということにいたしました。  ただ、その他につきましても、これはそのままでずっといくんだというふうには考えておりません。長期検討課題の一環としてその中にも考えてまいりますが、さらにここ一年、二年実勢というものの動き方も見てまいりまして、放置できないような不都合が生じてくるという見通しになりますれば、最小限度これについての措置をすることについては十分考えてまいりたいというふうに思っております。  それから調整手当の点でございまして、これは地域的な給与配分の問題として重要問題でございます。また、これをめぐっては従来からいろいろ御論議もいただきまして、附帯決議その他のこともあるということは十分承知をいたしておるわけでございます。ただ、これにつきましては、大体の傾向と申しますか、そういうものを把握すればよいという考え方でございまして、毎年毎年がその都度調査をやるということはいたしておりませんで、大体三年置きに調査をやっております。それでも傾向はほとんど変わらないということでございますが、現在八%地域である東京、大阪、名古屋等の大都市につきましては、民間の実態というものがほぼ一〇%を超えるということになっております。名古屋が少し低いという結果が出ておりますけれども、大体一〇%を超えるという傾向がここしばらくずっと続いておりますので、これについてはやはり措置が必要ではないかというふうに考えました。ただ、全体の較差自体が五・二三%というようなそういう較差で、較差配分ということに相なりまするために、一挙にこれを一〇というふうに二%ばかり見るということは、全体との振り合いから申しましても少し行き過ぎであろうということで、ことしの場合は一%だけで措置をお願いをいたしたいというふうに申し上げておる次第でございます。  それから特別給の問題でございますが、これは御指摘になりましたように、ことし調査いたしました結果は四・九八カ月分ということでございまして、小数二位以下については従来の方針どおり切り捨てという措置をとらざるを得ませんでしたために、結果的には据え置きということに相なったわけでございます。これは過去においても小数二位については切り捨てを行いました例がたくさんございます。たくさんございまして、その都度御指摘を受けておりますように、なるほどその分については公務員に不利になっておるという現実の姿がございますけれども、これも繰り返し申し上げておりますように、やっぱり特別給の性格というものからいって毎年毎年小数二位というようなところまできめ細かくやっていくととが果たしていいのかどうなのかというような点もございまして、一位を出していままで来ておるわけでありまして、その結果、職員に不利がいっておるという点については、全然われわれといたしまして見て見ぬふりをしているというわけではございません。ございませんですが、毎年毎年一年ごとに一応はけりのついている問題でもございますし、そういう点もあわせまして、ことしの場合はやはり据え置きという措置をとらざるを得なかったということでございます。  最後に、生涯給の問題について私の考え方を申し上げておきたいと存じます。  これについては巷間いろいろ論議をされております。私は機会あるごとに申し上げておりますが、その御論議の中には事実を誤解しておられる、誤認をしておられる、思い違いがあるというような面もかなりこれは多いわけでございます。いま具体的にお示しになりました、ある団体が具体的に発表いたしておりまするそういう資料というものを見ましても、われわれから見ましてもモデル賃金という、それのとり方ということに大変重大なこれは間違いがある。極端なことを言えば、公務員になれば何年かすれば必ず局長になる、次官になると、極端なことを言えば。そういうような計算でもって比較をしているということで、これは現実にはそんなことはありません。あり得ようがないわけです。そういう点については、われわれもそういう機会がありますごとに、その関係団体に出向きまして、この点は誤りです、考え直してくださいというようなことも直接申し入れることの努力はいたしております。いたしておりますが、それと同時にそういう点についての指摘を厳重にいたしておるつもりでございます。  それはそれといたしまして、私は常日ごろ申しておるわけでありますが、生涯給的な考え方というのは、それはそれなりに一つ考え方でございます。したがって、そういうものはおかしいんだというような考え方はしておらない、全体としてバランスのとれたということが技術的にもうまくまいりますならば、それはやっていって私はいいことだろうと思います。ただ、一部で言われますように、民間と比較して退職年金、退職手当等を含めた場合にはどうも公務員の方が上だと、高いと、それだから給与についても手心が加わっていいんじゃないかと、こういう議論がございますが、これは私は間違っておるということを申し上げております。毎月の給与というのは、これはあくまで生活の資でございまして、これはやはり民間のそれこそ給与対応して毎月に支給されるものでございますので、それはそれとして関連を、均衡をとったものとして措置をするが、それはそれでやっていく。それと同時に、退職手当はどうか、年金はどうかとそれぞれの分野において比較検討してしかるべきいい調査方法があって、技術的にもいいものがございますれば、その結果をうまく見て照応した措置をとっていくということは私は結構であるということを申し上げております。結果的に、そういう意味で全体としての生涯給与が均衡がとれるということは私は結構だと思います。  ただ、よく言われておりますように、民間の場合では第二給与的なものを考えて……
  141. 山崎昇

    ○山崎昇君 総裁、悪いんだけれども、時間がないものだから縮めて……
  142. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 簡単に言います。  第二給与的なものを考えて、それは退職手当の基礎にしないとか申しますが、その場合はまた今度、支給率その他の点についても比較検討していかなければ正確な数値とは申せません。そういう点の問題を指摘しつつ、私は誤りのないことにひとつ御理解が願いたいということを申し上げております。全体として均衡をとることは、技術的にうまい道があればそれは結構だというふうに申し上げておるつもりでございます。
  143. 長橋進

    説明員(長橋進君) 御質問の件につきまして、きわめて技術的な話でございますけれども、補足的な御説明を申し上げたいと思います。
  144. 山崎昇

    ○山崎昇君 簡潔に頼むわ、時間がないので。
  145. 長橋進

    説明員(長橋進君) まず、勧告率の問題でございますが、これは先ほど総裁からお話がございました。それは数字それ自体の性格の違いによるということは基本でございますが、ここ最近数年の動きを見ておりますと、アップ率におきましては確かに中小企業は大きなアップがございましたけれども、五十六年について見ますと、五十五年と比較してみまして、大きな企業に比べまして中小企業のアップ率が少なかったと、そういった結果というものが影響しておるんではなかろうかというふうに推測いたしております。  それから積み残しの問題でございますが、これは御指摘のように、ことし人事院の言っておるところによれば民間の昇給率は二・六ではないかと、それよりも多いではないかというようなのがございます。それからさらには、積み残し事業所がことし大きかったのじゃないかというような御指摘がございましたけれども、これは積み残し事業所の多い少ないかということになりますと、それは私どもの調査方法としましては、結局調査時点において支払いを妥結したかしないかという事業所が多いか少ないかという問題がございますし、要するに支払いベースで見るものでございますから、やはり後に妥結を持ち越された事業所が多ければまた後になるということもございましょうし、そういう関係で、若干ことし二五・四%ということで多くなったのではないかと思います。  それから積み残しの計算方法でございますけれども、これはいろいろ御意見もございますけれども、四十二年以来一貫してこういう計算方法をいたしております。将来の課題としては検討してまいりたいと思いますが、現時点においては、やはり一つの定数化したやり方ということでしかとれないのではないかということで、本年はこのように処置したところでございます。  それから配分につきましてでございますが、これは五・二三%うちの八三%分を俸給部分に回しております。その改定後、給与の中で俸給とそれ以外の種目との構成比率がどうなるかということでございますが、これは国の場合俸給分が八三%ということでございまして、民間が八四%でございますから、そう大した違いはないというふうに考えております。なお、較差のうちの俸給分に八三%回したということは、昨年も同様でございました。  それから、世帯形成時から中堅層にかけて重点を置いた配分をしたと言っておるけれども、そのようになっていないではないかという御指摘でございますが、世帯形成時、大体年齢的に申しますと二十七、八歳から、中堅層のところで申しますと三十五歳ということでつかまえていくしかないかと思いますけれども、これは俸給表上の等級別の配分で見ますと、俸給表全体として平均五%のアップでございますけれども、五等級のところが五・〇%、それから六等級五・三%、七等級のところが五・三%という平均を上回るアップ率になっております。それからなお、いま申し上げました二十七、八歳から三十五歳のところでございますが、三十五歳と申しますと五等級の七号俸ということになりますが、そのようなところですと最高の五・五%というアップをしておりまして、大体六等級、五等級、四等級の若い方の号俸のところでございますと、平均を〇・四ないし〇・五上回るような改善をいたしてございます。  それから次に初任給でございましたが、一般の職種別初任給につきましては参考資料に載せたとおりでございますが、事務、技術につきまして平均して民間はどのような状況になったかというお尋ねでございますが、高校卒でございますと、民間の初任給五・二%のアップ九万三千二百六十三円。それから短大卒程度でございますと、五・一%のアップで十万八百六十七円。それから、いわゆる大卒でございますと、対前年五・五%のアップで十一万六千六百八十一円ということになっております。  それから扶養手当の支給範囲の問題でございますが、扶養手当につきまして支給範囲を拡大してほしいという要望は、各省庁それから組合等からもいろいろいただいております。ただ、扶養手当の問題になりますと、私ども検討はいたしておりますけれども、他の諸制度給与法の扶養親族の範囲を参考にしていろいろ決めておるという節も見られますので、影響するところが大きいということで慎重に取り組んでおります。ただ、私ども承知しております範囲では、先生のおっしゃるように、進学率が最近高まりまして、大体高校卒でいいますと三〇%ほどの進学率になっておる。それから民間状況を調べたところによりますと、高校卒までというようなところを調べてみまして、大体五四%ということで、ややその支給範囲が広がっておりますけれども、いま申し上げましたような関係で、なお検討してまいりたいというふうに思っております。  以上でよろしいでしょうか。
  146. 山崎昇

    ○山崎昇君 法律案が出た段階で、私はもっと数字を基礎にして細かにお尋ねします。きょうは大ざっぱに聞いたわけでありますが、改めてまた申させていただきます。  そこで、もう私は十五分ばかりしか時間がございませんので、行管長官にお尋ねをしたいと思うのです。  臨時行政調査会の今回の第一次答申について幾つかの批判がありますが、これについて、きょうは時間がありませんから、私はあなたの見解だけ承っておきたいと思うのです。と申しますのは、行政組織論から私どもひとつ論戦をしてみなければならぬじゃないかと思うのは、あなたが国会に臨時行政調査会設置法を出されましたこの内容といまやっております臨調の作業というのは、私は違うのではないだろうか、こういう気がしてなりません。何が違うかと言えば、問題は、臨調は総理府に設置されました諮問機関です。しかし、その性格を逸脱しまして、第二条に言います所掌事務にないようなことをどんどんどんどんやられる。本来の所掌事務はずっと後に延ばされちゃう。こういうやり方は、行政組織論からいけば私は少しおかしいのではないだろうか。そういう意味で、この点については幾つかの批判が最近出されてまいりました。そこで一体、今度出しました五十七年度予算に関連をする第一次答申というのは、臨調設置法の第二条第一項に言う「行政制度及び行政運営改善に関する基本的事項」とどう関連するのか、この所掌事務を外れて出しているのではないだろうか、この点が一点。  それから第二点は、財政を再建するという目的の方が先行してしまって、いま私から指摘いたしました臨調本来の任務が後回しになってしまう。これは私は、やはり批判をしておかなければならないのではないだろうか、こう思います。努力は努力として認めますけれども、やらなければならないのではないか。  さらに、臨調のいま土光さん以下の動きというのは、私ども見ると、きわめて政治的過ぎるのではないだろうか。たとえば、ああいう方針が出されたときに、与党の内部からも異論が出まして、あわてて今度各政党を回って、諮問機関でありながら事前に意見調整を行う。こういうやり方は、今日まで諮問機関のあり方としてはありませんでした。これも私は、この性格論からいってやっぱり指摘をしておかなければならないのではないか。諮問機関は諮問機関らしく、第一次臨調は、あの佐藤さんは、会長さんは、この点は厳格にやりました。この点が第三です。  それから第四は、今度の一次答申で出ました財政に対する問題なんかは、これはもはや政策そのものについて述べているのではないでしょうか。言うならばいまのやり方というのは、事実上政府政策決定機構みたいになっているんじゃないでしょうか、臨調あり方というのは。これは私どもやっぱり警戒をしておかなければならない。別な角度で言えば、内閣は政策決定機能を喪失しているのではないだろうか。臨調のお墨つきをもらわなければ五十七年度予算編成ができない、あるいは懸案事項の処理ができない、内閣の弱体を逆に言えば暴露しているのではないだろうか。何でもかんでも臨調臨調、こういう風潮というのは、私はやっぱり考えてみなければならぬのではないだろうか。諮問機関をかなり私は逸脱している行為ではないだろうか、こう思います。  それから、さらに時間がありませんから立て続けに言いますけれども、この設置法のときに私は議論できませんで通した一人でありますから、いま責任はあると思うんですが、あの規定の中に内閣総理大臣に尊重義務を課すというようなやり方は、議院内閣制において行政権の最高責任は内閣にある、その内閣を事実上拘束するような規定を設けるということは、諮問機関のあり方としてはどうかと私は思う。そういう点が最近行政組織論から指摘をされてきています。この点についてあなたの見解をきょうは私はお聞きする程度にしておきたいと思う。  さらに、この答申をめぐりまして、自治体からもかなり批判が上がっています。たとえば、広島県知事の宮澤さんにしましてもあるいは岡山県知事の長野さんにいたしましても、哲学の欠如と方法論の逆立ちである、国家財政本位で将来展望がない、地方に対する不信と地方軽視である、地方自治の原則に立脚した姿勢になっていない、これは見出し的に言えばそうなりますが、かなり手厳しい自治体から見て今度の第一次答申に対する批判が述べられています。そして、私は方法論の誤りというこの宮澤さんの考え方一つとして、全国知事会の資料を見ますというと、機関委任事務が物すごくふえている。これをそのままにしておいて、中央で財政だけは地方に肩がわりさしてみたり、あるいは特例をいじくってみたり、そういう形で五十七年度予算編成するなんということは本末転倒もいいところではないんだろうか、こういう私も気持ちがあります。  そういう意味で言うと、何かこの第一次答申をもう全く神様みたいな扱いをしているいまの政府の姿勢に対して、行政組織論から幾つかの指摘が出されておりますから私いま紹介をしているわけですけれども、もう少し諮問機関なら諮問機関らしく厳格に第二条の所掌事務に従ってやってもらいたい。総理大臣が何でもかんでも指示すればいいものではありません。そういう点を重ねて指摘をしておきたいと思うんですが、これに対する行管長官の見解をきょうはお聞きをしておきたいと思います。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、臨調が本旨を逸脱しているのではないかというお話でございますが、逸脱しているとは思いません。臨調法律いまお読みになりましたが、やはり国の行政制度及び国の行政運営と書いてありまして、その中には長期的なものもあれば短期的なものもあると思います。この臨調設置法案を御提案申し上げましたときに、かなり大きく出てまいりました御批判、この委員会でもあったと思いますが、これは隠れみのじゃないかと。臨調ということで、長期に時間をかけて隠れみのにして何にもやらぬのじゃないかという御批判がございましたが、そういうことはございません。また、予算委員会等におきましても、野党の委員の皆さんから、閣僚が一人一人呼び出されまして、おまえはこの答申を尊重するかと言われまして、みんな尊重いたしますと、そういう答弁を申し上げたことを記憶しておるわけでございます。そういう国会におきまする御論議等も踏まえ、また私たちがこの法案を御提出申し上げ御説明申し上げましたときに、趣旨を御説明申し上げ御答弁申し上げましたが、それらの線に沿っていま進行していると私は思っておるのでございます。中間答申を求めて、随時その中間におきましてもどしどし実行してまいりますと私申し上げましたが、それがいま現実的にそのように動いているのではないかと思うのであります。  それから次に、諮問機関の立場でございますが、確かに諮問機関でございます。しかし、諮問機関をつくりました趣旨は、この行政改革という国民の皆さんのほとんど全国民的な強い御要望にこたえまして、この法律をつくっていただき、かつ実行しようと思ってやっておる次第なのでございまして、尊重義務というのは大体の法律でつくられる諮問機関にはあるのでございます。臨調もその一つでありまして、ただ、いまの事態の緊迫性あるいは国民の世論の熾烈性というものから、これに対して行政側あるいは政治当局側が適応するという意味においていままで以上の熱意を持ってこれにこたえておるというのが私たちの真情でございます。したがいまして、臨調側といたしましては客観的に勧告をお出しいただいているわけでございますが、これを受ける側の行政ないし政治当局側といたしまして非常な熱意を持ってこれをいただいて実行している、こういう立場にあるのでありまして、臨調側に罪があるのではなく、むしろもしそういうことで御批判を受けるとすればわれわれ政府側にあるのではないかと思いますが、われわれはわれわれがここで公約申し上げたことを実行しておるつもりなのであります。  それから、地方からのいろいろな御批判につきましては、われわれもよく心を澄まして耳を傾けなければならぬ大事な問題であると思います。長野さんやあるいはそのほかの皆さんの御批判も、確かに虚心坦懐に聞きますれば耳を傾けなければならぬ点もありまして、これが中央政府のエゴにならぬように戒心しなければならぬ点はわれわれもそのように心がけなければならぬと思っておりますが、いま当面現出している諸問題に関しましては、これからどう問題を解決していくかという過程にあるのでございまして、たとえば国保関係の五%負担の問題等にいたしましても、臨調の御指摘は、いますぐというよりも年末までにかけて解決する、そういうような指摘及びわれわれの考え方にあるのでございまして、いろいろ御指摘を受けた点につきましては、公平なる負担の分担をやるようにわれわれは心がけていかなければならぬ、そのように思っております。  それから、財政改革のみに偏って行政改革という本来の趣旨を逸脱してはいないかという御指摘でございますが、この点はわれわれもかなり御批判を受けまして一番戒心した点でございまして、私も、行革は幹であり根である、財政再建はそれが結果的に出てくる花であり枝でありますと、そう申し上げましたが、この趣旨はぜひとも貫いてやらなければならぬと思っております。いよいよ第二期に入りまして、来年にかけて第二次の答申が出てくる次第でございますが、ここでいわゆる行改の幹であり根である一番大事な点が出てくる段階になると思います。それらにつきましても、御指摘の線をよく考えながら進めるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  148. 山崎昇

    ○山崎昇君 もう時間ありませんから、きょうはさっき申し上げましたようにあなたの意見だけ聞いておきますが、あなた自身が認めたように、財政だけに傾斜し過ぎて、本来の任務であります第二条の所掌事務が私はいまのところおかしくなっているのじゃないかという気持ちはぬぐえないものがあります。この点は重ねて申し上げておきます。  本当はきょう午前中、矢田部委員の方から一括審議の問題についても触れられましたし、私もこの中身について少しお聞きをしたいと思いましたが、もう時間ありませんからやめます。また、あなたが大変熱心に情報公開についても検討されているというふうにも聞いておりましたから、本来ならそれについてもあなたにお聞きをしようと思っておりましたけれども、きょう時間がありませんので、これも省略いたします。いずれ別な機会にお聞きをさしていただます。  大変防衛庁に恐縮でございましたが、一点だけ聞いておきます。  先般自衛隊機が相次いで事故を起こしまして、幸い国民には事故者がなかったわけなんですけれども、その後これらの問題について防衛庁としても調査されておるのではないかと思うんですが、その後一体どういう経過をたどっているのか、その点だけきょうお聞きをしておきたいと思います。
  149. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今月に入りましてから防衛庁関係の航空機事故が相次いで発生しましたことはまことに遺憾なことでございます。  八月十日に、陸上自衛隊航空学校宇都宮分校所属のLR1航空機に教官、学生など六名が搭乗し訓練からの帰途、宇都宮飛行場に着陸操作を実施しましたが、十六時五十五分ごろ、同飛行場西側、宇都宮市兵庫塚町に墜落し、乗員六名中五名が死亡し、一名が負傷したところであります。また八月十一日、新田原基地を発進し、四国沖訓練空域で訓練中のF104Jが九時四十五分ごろ操縦不能に陥ったため、パイロットは緊急脱出したが、機体は海上に墜落したところであります。  今回の事故につきましては、民間の方々には死傷者がなかったことは不幸中の幸いでありましたが、貴重な隊員と航空機を失い、国民の財産に損害を与えるとともに国民に不安感を与えたことにつきましてまことに遺憾に存じておるところであります。  事故の原因につきましては、現在徹底的に解明するための努力を払っているところであります。また、今後の安全対策については、いずれの事故に対しましても部隊に対して当面考えられる事故の再発防止のための措置の徹底を図るよう指示したところでございます。  以上が現在までに講じました概要でございます。
  150. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、私は初めに防衛庁関係でちょっとお願いしたいと思います。防衛庁関係は、防衛白書に関しまして二、三質問を行います。  初めに、防衛白書の出された根拠はもちろん防衛庁設置法の中にあると思いますが、それを初め教えていただけませんか。
  151. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 防衛白書の刊行の根拠ということでございますが、直接防衛白書は自衛隊法あるいは防衛庁設置法の第何条に基づくものであるという根拠はございませんけれども、強いて条文を挙げれば防衛庁の所掌事務に関する広報、宣伝という意味でPRのために必要であるというふうなことがその一つであろうかというふうに思われます。
  152. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 実はこの防衛白書が出される前、私たちこの内閣委員会で何回か防衛白書のようなものを出したらどうだという議論をしたことがありました。そのときに、ちょっと根拠が私は第何条か忘れましたけれども、そのときの議論で何かあったような気がしたんでお伺いしたんですが、それは結構です。  そこで、根拠のない防衛白書が強いて言えばということは、逆に言えば防衛白書の根拠は全くないんですか。ないということになれば、またこれちょっと問題が、これは国民に与える影響というのは非常に大きいわけですね。影響の大きい防衛白書が出される根拠が全くないというのは、私ちょっと納得できないんです。
  153. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 私先ほど強いて言えばと申し上げたのは、防衛白書という用語を使ったものはございませんけれども、防衛庁設置法の第五条でございますか、「所掌事務の周知宣伝を行うこと。」というふうになっておりまして、これが防衛白書を発行する根拠であるというふうに思うわけです。
  154. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、私はそれはそれでいいです。そのことについては、また私この次のときに詳細に調べてきてやることにします。私は、その所掌事務の中のそういうふうな根拠じゃなくて、もう少し明確な意味での根拠があったように考えていたわけであります。  そこで大臣、こんなすごいのができたわけですが、これはやっぱり国民に見ていただきたいと大臣も思っていらっしゃると思うんですが、この中で特にここだけは国民の皆さんに読んでいただきたいというところはどこですか、大臣。
  155. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、このいわゆる防衛白書は今回で七回目でございます。私は、この白書を出す意義は、国民の皆さんに防衛に関する問題について理解を深めていただきたい、こういうことにあると思うわけでございます。  そこで、お尋ねのここだけはとおっしゃられましても時間があれば三百ページございますのでお目を通していただきたいと思うのでございますが、今回の防衛白書編成は去年までと大体同じ仕組みにできておるわけでございます。最初に国際軍事情勢、第二にわが国防衛政策、そして第三に防衛の現状と課題、こういうふうな編成になっているわけでございますが、昨年との比較において変わっている点はどうかと申し上げますと、世界の軍事情勢につきまして各地域ごとに詳しく記述されているという点と、それから第二のわが国防衛政策の歩みにつきまして、つまり防衛庁設置以来の主な節々について経緯を詳しく書いておるという点でございます。また、現状と課題につきましては、最近のいろいろな動きにつきまして記述しているという点でございますので、お読みになる方のひとつ御関心の点がどこにあるかによってまた見ていただければと思うわけでございますが、なおまた、この概要をアウトラインにしました冊子も用意してありますので、全貌を把握したいという方はそれをお読みいただきたい、大体そういうふうに考えておるわけでございます。
  156. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、やっぱり「日本防衛」というこの白書は、国民の皆さんに自衛隊をより理解していただくためにこの白書を出したというふうに聞いているわけですね。そういうふうな場合に、やっぱりこれだけは読んでいただきたいと、時間のない方は見出しだけでも見ていただいて、この中のこれだけはというのは普通あるんですよね。私たちいつも質問するときに、たとえば人事院総裁に、人事院勧告の中でやっぱりことしはこういう点に力を入れたとか、いろいろあるわけですが、こういう点に特に力を入れたというのは、大臣どうですか。
  157. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 重ねてのお尋ねでございますから、先ほど申し上げたつもりでございますが、なお要約して申し上げますと……
  158. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いえ、力を入れたところだけでいいです。
  159. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛問題、また防衛政策を理解していただくためには歴史的な視点も大切だと考えましたので、軍事情勢や防衛政策あり方につきまして歴史的な経過、節々を記した点が第一でございます。それから国際的な相互依存関係が深まってきておりますので、国際的な関連において、いわば世界の中の日本という観点からより広い立場から見たという点であります。その他は、防衛問題の基礎的な事項についてできるだけ平易な解説をしたと、こういう三つが特色であると思っております。
  160. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結構です。  いずれにしましても、この小冊子もあるわけですし、これを見ていただければ大体わかるということでしょう、結局は。  そこで、これも重ねてお伺いしておきますが、「国防の基本方針」という、これですね。これ大臣、現在も自衛隊は堅持していらっしゃるわけですか。
  161. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) そのとおりと考えております。
  162. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは局長で結構でございますが、まず「国防の基本方針」について、これはいろいろとあるわけですが、これちょっと詳細、どういうことなのか一遍解説していただけませんか。
  163. 塩田章

    説明員(塩田章君) 三十二年に決められました「国防の基本方針」でございますが、御承知のように四項から成っております。  まずその前文としまして、国防の目的が書いてございます。直接、間接侵略を未然に防止する、もし万一侵略が行われた場合にはこれを排除する、そして国防の目的は、もって民主主義を基調とするわが国の独立と平和を守るということを鮮明にしておるわけであります。  以下四つの項目につきましては、従来しばしば取り上げられているところでございまして、特に申し上げるまでもございませんけれども、一つは、国際連合の活動を支持して、国際の平和、協調を図っていくということ、それがまず一番の基本的な考え方であると。それから二番目には、やはり内政の問題でございまして、民生が安定し、国民の愛国心が高揚しておるということが内政面から言えば国家の安全を保障する一番基礎であるということ。これも、一項が外政面であるとすれば二項は内政面として、私ども当然のことだろうと思います。三番目に、初めて実際の防衛力につきましてどういう考え方防衛力整備していくかということを述べておるわけでありますが、国家の安全を、自衛のために必要な限度におきまして効率的な防衛力を漸進的に整備する、こういうのが基本的な防衛力整備についての考え方であります。それから最後に、現在のもう一つ日本防衛の柱であります日米安保体制につきまして、将来国際連合が有効に外部の侵略を阻止する力を持つまでは日米安保体制を基調としていくんだということを述べておるものと承知しております。
  164. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、いま御説明いただきましたけれども、現在の日本の自衛隊はこの「国防の基本方針」をいわゆる国防の基本としていらっしゃるわけですか、現在でも。
  165. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 「国防の基本方針」について防衛力整備を図っているところでございます。
  166. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま塩田局長から説明ございましたけれども、これは自衛隊として、まず第一項目、いわゆる世界平和の実現のために自衛隊は何をしていらっしゃるわけですか。実際問題として、私たちがいま防衛白書を読んでみまして、本当に世界平和という問題について自衛隊が何をしているか。結局は、この前文からいきましてもそうですが、前文の中にも直接及び間接の侵略を未然に防止するとある。未然に防止するための自衛隊の動きというのは、一体何が動きなのか。実際はその後の、万一侵略が行われるときはこれを排除する、そこに重点が置かれているんではないか。いわゆるこの「国防の基本方針」の中でも、三項目の国力国情に応じ、いわゆる防衛力を漸増するというここに主眼が置かれ過ぎて、実際はもう相当いろんな面で変わってきているんじゃないか、こう実際現実にいま私は読むわけですが、この点はどうですか。
  167. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいまお尋ねがありました「国防の基本方針」の第一の世界平和の実現の点でございますが、これは主として外交努力にまつところが大きいと思うわけでございまして、外務省を中心にその点の努力が払われているわけでございますが、防衛庁といたしましてもこれに協力しているわけでございます。たとえば、国連における軍縮とかあるいは化学兵器の制限に関する委員会等につきましては、防衛庁職員を派遣してそういった問題に協力をしているところでございます。また、この前文にございます「未然に防止」と、次に「排除する」ということの関連でございますが、私どもといたしましては、第三項の「自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備すること」、第四項の「米国との安全保障体制を基調としてこれに対処すること」、両々相まちましてわが国に対する不当な侵略を排除する、いわゆる抑止効果を期待しているわけでございます。万一侵略があった場合にはもちろんこれを排除するということもあるわけでございますが、後者の「排除」にのみ重点を置いているということではないというふうに考えているわけでございます。
  168. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですけど、実際は大臣、そういうふうになっていないんじゃないですか。やっぱり「万一侵略が行われるとき」というところに重点が実際現実の面では置かれているわけでしょう。それで実際問題として、国が侵略されないためのいわゆる行動というものを、これは具体的にいま大臣は外務省の話をおっしゃいましたが、それは別にして、防衛庁として何ができるのか。たとえば防衛白書を見ますと、これはもうソ連の脅威から始まりまして、いわゆる北の脅威というものを徹底的にうたい上げて、こんなことをしていたらこれは平和という問題から考えてみますと逆に戦争になる危険性もあるわけですよ。やっぱり未然に防止するための闘いというのは、そのほかの行動でなきゃいかぬわけでしょう。そこら辺の行動というのは一体自衛隊は何をしているのか。具体的にこういうことがありますと何か言えることはありますか、あるいは具体的に自衛隊としてはこういうふうに行動をすべきだと考えておりますとか。  少なくとも自衛隊を最近少しでも理解しようという動きがわれわれの中にもあるわけですけれども、やっぱりそのためには何といいましても平和という問題を非常に真剣に考えているわけです。そのための自衛隊の行動というのは、われわれ非常に慎重に注目をしておるわけです、言うたら。そういうふうな意味では、ただ単にこういう防衛白書をそのまま見ておりますと、何にも事件のないところへ火薬に爆弾つけて、言うたらちょっとオーバーかもしれませんが、投げ込んでいるような感じのこの白書になっているわけです。しかも、その白書が根拠も何もないということになってくると、これはますます何のためにこういう白書を出しているのかということになります。ただそれだけではないと私は思いますよ、それなりに理解できるところもあるんです。あるんですが、自衛隊として平和のために万一侵略が行われたときにどうするということが先立って、国が侵略されないための闘い、侵略される前の平和的にいろいろな問題を解決するための行動、そういうようなものは一体自衛隊としてはどういうことを考えていらっしゃるのかということ、これはちょっとどういうふうになっていますか。
  169. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 御質問の御趣旨はわかるのでございますが、ちょっと、自衛隊として侵略を起こさせないようにするためにどういうふうに努力しているか、こういう御質問のようでございますけれども、先ほど申し上げておりますように、必要最小限の防衛力整備し、また日米安保体制を効率的に運営して信頼性を高めるということが両々相まって外部から不当な侵略を招かないようにする、歯どめにするという点の意義はあると思うわけでございます。  また、軍備管理問題につきましても防衛庁としましては大きな関心を持っているわけでございまして、今回の白書におきましてはこの点も相当なスペースを割いてそういった問題についても記述をしているわけでございますので、国連等の場を通じましてこの点につきましても努力してまいりたい、かように考えております。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、大臣がおっしゃるのは、どうしても日米安保とかそういういろいろな問題は、万一の場合を考えての自衛隊の行動ですね。そして、その後段の声が小さくなったところは全部外務省を通じて、国連を通じて云々というところになりますね。そういうふうな意味では、やっぱり自衛隊として平和のための行動、本当に世界平和という問題を考えた場合にどういうふうにしたらいいのか、ただ単に自衛隊を増強して、いわゆる兵力を増強していく、それだけで本当の平和というものが保てるのかどうか、これはやっぱりいろいろな問題が私はあると思うんですよ。  しかも、それだけではないんです。先にいかないと時間ございませんのでいきますけれども、この防衛白書の3−2のところ、これはもう本当に問題だと私は思うんですけれども。自衛隊を理解するにしてもやっぱり問題だと私は思うんです。「国を守る心」というところがありますね。これは要するに「国の防衛とは、武力によって国を守る軍事防衛を基本とし、」と書いてある。これだけでも、国を守るというのはただ軍事防衛だけが基本なんですか、実際問題として。そしてその次に、「それに非軍事的防衛を加えた総合的なものであるとして理解されている。」と書いてあるから、少しは総合的なことも考えているのかなと思ったら、その非軍事的なことというのはどういうことかというと、「国民防衛の必要性を強く認識することであり、また一つには平時から、政府地方公共団体等が、防衛関連諸施策について配意するとともに国民の生命と安全を守るため、避難所の建設、警報制度の組織化等を行うことであり、」云々とこう書いてあるわけです、これ。  そうしますと、われわれが考えている総合安全保障などという立場からいきますと、この防衛庁が考えている非軍事的防衛を加えたというこれは全く的外れの、逆に言ったら、防空ごうをつくれとか戦争があったときどうかするとか、そんなことが非軍事的なことで、ちょっとやっぱりこれ、だれが書いたのか知らぬけれども、ちょっとこれ頭おかしいんじゃないの。  われわれ理解するという立場からいっても、ちょっとこれ納得できないと私思うんですよね。わが国が本当に専守防衛という立場から、本当に軍事大国あるいは軍事国家、軍国主義、そういう国にはならないとしても、こういうふうな書き方はこれで本当に国民が「国を守る心」ということで納得するかというと、納得しませんよ、やっぱり。私も全然納得できないですもの、こんなこと。  ですから、私はこういう点は全く防衛庁は一体何を考えているのかと、「国防の基本方針」なんというそれ自身にもいろんな問題はあるわけです。問題のあるそのことについても、結局は「国防の基本方針」からもやっぱり逸脱しているんじゃないか。防衛庁はもう少し、ただ戦うことだけを考えて——それは、国を守るということは私は大事だと思います。大事だし、やっぱり自分の国がどうなってもいいなんてまるっきり考えてないです。にもかかわらず、この防衛白書から見る皆さんの考えというのは理解できない。どういうことなのか、もう少しわかりやすく納得できるように説明していただきたいと思うんですがね。
  171. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 広く国防なり防衛の問題を考える場合には、御指摘のように軍事的な面とそれ以外、つまり非軍事的な面があります点は申すまでもないところでございます。軍事的な面以外は何であるかと申し上げますれば、食糧、エネルギー等広範な範囲にまたがるわけでございまして、そういった面の総合的な安全保障という問題につきましては、最近政府におきましても閣僚会議を設置して広い角度から検討を開始しているところでございます。  そこで私は、この「国を守る心」という表題のくだりでございますけれども、そういった防衛問題を考える場合に、軍事的な面におきましては自衛隊が中核になること、これは当然でございますが、やはり国民がみずから自分の手で国を守るんだと、そういう考え方が前提になるのではないか。その点がないと、いかに精強な自衛隊だけがございましても、本来の活動を果たすことができない。毎年多額の血税を投入して防衛力整備いたしましても、そういった国民の支持がなければ本当の使命が達成できないと、そういった点をここにうたったのでございます。  民間防衛の問題につきましては、それとの関連におきまして直接防衛庁の担当するものではございませんが、諸外国におきましては、やはり国防問題と関連いたしまして、一般国民の間に民間防衛の問題がかなり進められておりますので、そういった点につきましても今後のわが国の参考になる点もあるのではないか、そういう意味記述したものであるというふうに考えているわけでございます。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもわかりませんね。大臣、これはやっぱり一つの総合安全保障というふうな立場から、たとえばいま大臣がおっしゃいましたように、食糧、エネルギー、科学、そういういろんな必要なものがありますね、いっぱい。そういうふうな中の一つの一環として防衛力、軍事力というのがあると、その軍事力を基本にして日本の国を守ると、これならわかるんですよ。これならわかる。ところがそうなってないね。要するに、非軍事的防衛という、非軍事的な部門は私は食糧とかエネルギーとか科学とかそっちの方だろうと、こう思っていたわけです。ところが、そうじゃない、ここに書いてあることは。そうじゃなくて、いわゆるそれは避難所の建設とか警報制度の組織化とか、そんな方にばかりいっておるわけだ。ですから、それだけじゃないんです。ちょっとおかしいと私は思うんですよ。  それから大臣、ここに端的にあらわれている、その次のページの3−4に、いまの「国を守る心」の一番最後のところにこうなっているわけです。「真の愛国心は、単に平和を愛し、国を愛するということだけではない。国家の危急に際し、力を合わせて国を守るという熱意となって現れるものである。」と。これ何にもわからないでぽっと読んでいるとそのとおりかもしれませんね、大臣。しかし、これは書き方が全然逆なんですよね。真の愛国心というのは、やっぱり平和を愛し国を愛するということから始まるわけでしょう。そこから始まって、それを起点にして、その次に国家の危急に際しては国民が立ち上がるというのが考え方でしょう。ここの書き方は、愛国心というのは平和を愛するとか国を愛するということじゃない、それだけじゃないと否定してしまっているわけですよね。だから、文章の構成にしたって何にしたって、ちょっとこれどう考えても——それだけじゃないんです。こんなことを言い出すと至るところにあるわけです。これは暫定版ですか。いや、本当にこんなばかなことないと私は思うんですよ。自衛隊を少しでも理解しようかと思っている私たちが、どうもこれはもう少し何とかしていただかぬと……。先ほどの大臣の説明なんて全く私の質問には答弁はしてないんですよ、私は先に進んでいますけれども。ここら辺のところはどうなんですか。何も大臣でなくて結構です、もう少しわかるようにこれ説明してください。
  173. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) まず、いまのお尋ねの真の愛国心とは何かということは、私ども全く先生と同感でございまして、それだけではないんで、それ以上にこういったことが必要ではなかろうかということを触れているわけで、これを否定しているものでは決してありません。  それから、先ほど来何回か御議論がありました問題でございますが、まず「国防の基本方針」というところでとらえている国防というのは、私どもの考えによれば国防という概念と防衛という概念はおのずから別である。非常に端的に申し上げれば、国防の観念というのは安全保障というふうな言葉と同意義にとらえているんだろうと思いますが、単に軍事力だけでなくて、政治、外交、経済あるいは食糧、エネルギーといったような問題を含めた総合的なものであるというふうなとらえ方をしているわけであります。したがいまして、三十二年に決められた「国防の基本方針」というのは、単に防衛庁だけでどうこうということでなく、日本政府全体として広い意味での国防を考えるに、先ほど防衛局長から御説明があったようなことが必要ではないか、そういった上に立って国のもろもろの安全保障政策といいますか、国防政策が進められる必要があるということをうたったものであろうと思うわけです。  そこで、私どもの軍事力ないしは防衛に対する考え方でございますけれども、この2−5ページ「軍事力の意義」というところで、私どもあくまでも、先ほど来お話のありました総合安全保障の重要性ということに触れておるわけです。しかし、国の安全というのは単なるそういうことだけではむずかしいので、一たん侵略があれば軍事力というものは必要になってくるということから、「軍事力の地位と役割」ということをその次に続けて書いてあるわけです。ここでも、私ども軍事力というのは、まず第一に非軍事的ないろいろな作用というものは当然必要であるけれども、いざ最後のとりでとして軍事力は必要ではないかということが第一点。  それから第二点として、最近の軍事力というのは、核兵器の発達に伴いまして、かつての、何というか、武力行使の手段としてよりはむしろ抑止力としての意義が重要視されるようになっているということについても触れておるわけです。そうして、私どもの防衛力というのは侵略の未然防止、すなわち抑止に重点が置かれている。そのあり方としては、適切な防衛力整備ということと日米安保体制の効果的運用ということと相まって抑止効果に万全を期するというふうなことが私ども政府の考えでございまして、その点については私どもこの防衛白書についても十分触れたつもりでおるわけなんです。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなことを言っているとこれは……。官房長ね、真の愛国心は単に平和を愛し国を愛するということだけではない、それは確かに否定はしていないとおっしゃいますけれども、国を守るということは要するにそういうことだけじゃない、ほかにまだあるんだと。同じ書くにしたって書き方があるわな、これ。やっぱりもう少し一字一句吟味して書くようなあれでないといかぬのと違うの、これ。実際それは意味はわかるよ。官房長の説明意味はわかる。意味がわからぬというのとは違う。初めから意味はわかると言っているんですよ。だけれども、実際言わんとすることはちょっと違うでしょう、やっぱり。同じであっても説明の仕方も違う。国を守るという考え方、本当の愛国心というのは何か、そういうふうな観点からこれを吟味していきますと、やはり軽率というそしりは免れないと私は思いますよ、これ。  それからもう一つの、総合安全保障の問題は前に書いてあるからいいじゃないかなんと言いますけれども、そうはいきません、やっぱりこれは。その前段の、いまの「国を守る心」というところに書いてあることが、本当に防衛庁は国の防衛というものはこういうことだと考えていらっしゃるわけですか。こういうところから本当に国を守る心というのが出てくると思っていらっしゃるわけですか。そんなばかなことは私はないと思うんですよ。現実に軍事的な問題は防衛庁に任せるにしても、それ以外の問題を、「平時から、政府地方公共団体等が、防衛関連諸施策について配意するとともに国民の生命と安全を守るため、避難所の建設、警報制度の組織化等を行うこと」が非軍事的な重要な要素なんです、こういうところから本当に国を守る心というのは出てくるんですか。こんなばかなことは私はないと思うんですよ。もっとほかの書き方があるんじゃないか、同じことを言うにしても。だから、実はこれはこれだけじゃないんです、こういうふうな荒っぽい書きっぷりなんですね。  少なくとも私は、この防衛白書の問題について初めのいきさつ等を私この内閣委員会におりましてよくわかっておりますけれども、初め防衛庁はなかなか防衛白書というのは出さなかったんですよ、何回言ってもなかなか出さなかった。それで第一回出したときでも物すごく慎重だった。字句の一句一句をもう本当に慎重に検討して出した。ところが、この二、三年ちょっと防衛庁考え方が、防衛予算やいろいろな問題でいわゆる優遇されて、それで結局いろいろな面で荒っぽくなってきた。もう少し慎重に国民の皆さんの理解を得られるような書き方をしないといけないんじゃないか。大臣、これを国民の皆さんが読んで、なるほど防衛庁というところは本気で日本の平和、安全というものを考えているんだな、われわれもこれならなるほど納得できるなというふうな書き方でないといけないんじゃないの。  そういうふうな意味で言うと、いまの総合安全保障のことは前の方に書いてあるから、前とこっちとつなげて読めばわかるわなんと言うのは余りに不親切過ぎると私は思うんですよ。だから、そういうことはこれから——この問題についてはいっぱいいろいろあるわけです。きょうはもっと人事院勧告やいろいろやらないといけませんので私これ以上余りできませんが、やはりこういう問題についてもう少し慎重に防衛庁としても今後取り扱うべきだと私は思いますが、どうですか、大臣。
  175. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の防衛白書につきましていろいろ貴重な御意見を出していただきまして、大変ありがたく存じておる次第でございます。  私といたしましても、今回の白書作成に当たりましても、できるだけ客観的にそしてまたわかりやすく、防衛問題に関して国民の理解を得るようにいたしたいと考えましていろいろ工夫、努力をいたしたわけでございます。  総合的安全保障の方は、前の方の章に「国防の基本方針」を含めてかなり詳しく書いてございますので、それを念頭に置いて御指摘の個所も記述されているというふうに私は考えておったわけでございますが、いろいろ御指摘の点もございますので、先生の御意見は今後の参考にさしていただきたい、さように考えている次第でございます。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 防衛庁、結構です。  それでは、人事院勧告につきまして二、三質問をしたいと思います。  先ほどから臨調答申とあわせていろいろと質問が行われているわけでありますが、臨調の第一次の答申では、「公務員給与の在り方については、労働基本権の制約、社会経済情勢、財政事情国民世論の動向等が十分考慮されるべきものと考える。差し当たり、本年度給与改定については、以上の点を踏まえ、適切な抑制措置を講ずる。」と、こういうふうになっているわけでございますが、この点について、初めて人事院総裁、すでにもう何回か同じような質問がありましたけれども、私、改めて聞いておきたいと思いますが、この答申について、総裁、いまのところだけでなくても結構です、全体を含めまして、この答申についてどういうふうな感想をお持ちか、初めにちょっとお伺いしておきたいと思います。
  177. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 臨調の第一次答申が出たわけでございまして、むろん私たちといたしましても大変な関心を持っておりますので、慎重に詳細にわたって考えさしていただいておるわけでございます。ただ、いま御指摘になりました公務員給与関係の問題でございますが、これについては考えるべき要素として四つのものを挙げながら総合的に考えていきなさいと。その中で、私の立場で重要視しておりますのは、「労働基本権の制約」という言葉がこれ第一番に出てきておるということがやっぱり大変意義のあることではないかというふうに受けとめております。  この点につきましては、私が臨調に参って説明をしたからどうからというようなことはむろん申し上げませんですが、五月の初めでございましたが、臨調の方から、総会にひとつ顔出しをしていろいろ人事院勧告意味なりあり方なり従来の経緯なり、そういうものをひとつ話をしてくれというお話がございました。私は、大変いい機会であると思いまして、喜んで参上して、約一時間半ぐらいにわたってるる御説明を申し上げました。私の見たところでございまして、個々の委員さんについて具体的に見解を承ったわけではございませんので、軽々に申し上げることはむろん差し控えたいと思いますが、全体の空気といたしましては、やはり人事院制度と、また給与勧告というものの持つ意義というものは十分わかるというふうに御理解がいただけたのではないかという感想を持ちました。  特に私が強調いたしましたのは、勧告制度について、なぜこれが法律制度として確立されてきておるかという点を中心としながら、この問題はきわめて非常に高度の労働問題なんである。労働問題としてのやはり観点を忘れていただいては困ります。しかもこの勧告は、いろんな経緯があったけれども、ここ十年以上にもわたって内容はそのまま完全実施されて今日まで定着をしておるということで、労使関係の安定という点に寄与している面は非常に大きいのじゃないかと、それは非常に大きく考えてもらわなきゃ困るということに力点を置きまして、この点は御理解がいただけたものだというふうに思っております。  給与勧告の点はそういうことでございますので、われわれといたしましては、現在の制度がある限りは従来の方針でもってそのままやっていくことが筋道であるというふうに考えまして、ことしもいろんな情勢は客観的にございますけれども、やはりいままでと同じようなペースで、同じようなやり方で較差が出ればその較差は埋めていただきたいというための勧告を出すべきであるということで作業を進めて、去る七日に勧告を出したということでございます。  それと、そのほかに、給与の問題に絡みまして、成績主義推進の問題でありますとか、あるいは配分に当たりましての高年齢者層の給与の抑制とかその他の点について人事院に直接関係の深い問題もございます。成績主義その他につきましては、これはお述べになっておることごもっともな筋だというふうに思われるものも多いわけでございまして、そういう点についてはこれは素直に受け取りまして、これについては従来もやってきたことであるけれども、今後もひとつ肩を入れて一生懸命にやっていくつもりであるという検討の結果を出しましたので、それを報告の中にも触れるということにいたしまして、今後の展望の中に取り入れるというような配慮もいたしたような次第でございます。  以上、お尋ねになりました要点ずばりの答えになっておるかどうか存じませんが、一応申し上げます。
  178. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総裁おっしゃる意味よくわかります。  そこで二、三お伺いしておきたいんですが、内閣委員会でこの給与あり方を考慮する場合に幾つかの要素ということで何回か議論いたしております。ところが今度の第一次答申の中で、これいままでにない——総裁は先ほど労働基本権を一番先に書いているからこれは意義のあることだと、こうおっしゃっておりますが、そのあとこれ三つ並べて書いてありますね。社会経済情勢それから財政、国民世論の動向、この三つの要素を並べて書いてあるわけですが、この点はこれはどういうふうに総裁お考えですか。
  179. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) それらの点につきましても、われわれとしては毎年の作業を進めていきます際に、客観情勢その他についてはいろいろなデータを集めて検討をいたしておる次第でありまして、いま挙げられましたような諸点についてもむろん無関心ではございません。ただ、人事院考え方といたしましては、それらのものが含まれたものが官民較差ということの是正、それに尽きるのではないかという考え方をとっておるわけでございます。したがいまして、春闘というこういう現実の姿がずっと恒例になっていままで続いてきておる。春闘の結果、民間で賃金改定その他が行われるということになれば、これは一つの現実の大勢でございますので、その大勢をつかんで、しかもそれを詳細に分析をして、結果が出てくればこれをひとつやっていただく。そのことが、やはり結果的には、いろいろ国民世論の問題にいたしましてもその他の情勢というものもやっぱり含まれて、よく使っております言葉として、そこに溶け込んで生まれてきているものではないかということを考えております。  ただ、財政の問題につきましては、これは私は率直に申して、人事院としては考えの要素の中に、この勧告を出す較差自体の算出の問題、あるいは配分の問題等に当たって、国の財政がどうだからということは私は考える筋合いのものではないんじゃないかという立場をとっております。その点は、やはりそれぞれの責任でもってつかさつかさでお考えをいただく向きがあるわけでありまして、そのために内閣と国会に対して御勧告を申し上げるということにいたしておるわけでございますので、それはわれわれとして、財政がこうだから、国の場合に赤字公債をこれこれ出しているからそのことを配慮してわれわれ自身の勧告を出すか出さぬか、また率をどうするかというようなことについてのめどに、判断基準に入れるべきものではないという方針は、これも従来と変わらず堅持をしてまいりたいと思っております。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その点はわかりました。  それで、次にあと二、三お伺いしておきたいんですが、これは当然こんなことはまさかないと私は思うんですけれども、今回のこの勧告に当たりまして、臨調答申が先に出ていたわけでありますけれども、この臨調答申の動き、あるいは最近のいわゆる世論の動き等、これは勧告に具体的にどういうふうな影響を与えたかということをお伺いしたいわけです。内容そのものに具体的にはあらわれていないかもしれませんけれども、人事院検討する中でいわゆるこの今回の臨調答申というものをどういうふうに踏まえていらっしゃるのか、そこら辺のところはどうでしょうか。
  181. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 基本的な体制といたしましては、従来どおり方針を堅持をいたしまして、較差が出ればその較差はお埋め願いたいとか、それが慣行にもなっておるし、これが積み重ねで労使関係の安定にも寄与しておるんだから、それは従前どおりにお願いを申し上げたいというのが基本点でございます。ただ、そのほかに能率主義の問題でありますとか、あるいは成績本位をさらに導入をすべきではないかというような点、あるいは高年齢者の給与について民間の動向等を踏まえてひとつ適正な抑制措置も講ずるべきではないかというような点については、これは先生もすでに御承知のように、従来から人事院としてできる限りのことはすでにやってきております。やってきておりますが、その線については、今後ともできる限り、人事院として独自にできる部面もございますので、そういう点はひとつ積極的にやっていきたいというふうに考えております。  たとえば成績主義の問題について申し上げますと、具体的な問題としては賞与の中の勤勉手当配分の問題、そこへ成績率をもう少しやはりぴしっとできるように反映をするように各省庁はひとつやってもらうようなことを指導もやっていきたいし、また基準等についても考えていく点があれば考えたいというような点がございます。それから特別昇給という制度がございますが、これが場合によってはまた省庁によっても違いますけれども、余り持ち回りでもってやっているということでありますれば特別昇給自体の本来の趣旨でもございませんので、そういう面は運用等についてさらにもう少し本人の成績に着目した結果が出るような運用をするようにお願いをしたいとか、そういうような点をあわせて考えていきたいという態度でございます。
  182. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは総裁、私毎年同じことを言うて申しわけないんですが、ことしの勧告は八月の七日ですが、これはやっぱりことしも一カ月ほど早くすることはできなかったかという問題であります。今回は特に臨調答申が、これはいつだったか、七月の十日ですか、ですからこの答申の出る前に勧告を出すということも従来の私たちの主張からすればできない相談でもないと私は思うんですけれども、人事院としては相当努力をしてこの勧告になったんだろうと私は思うんですけれども、昨年も申し上げましたけれども、最近のいろいろな社会情勢変化あるいはコンピューターの発達、あるいはそういう調査のいろんな集計のやり方の発達等によって、この人事院勧告というものを暑い真っ最中じゃなくて、暑い真っ最中にはすべて解決しているというふうにならないかと、そういうような意味でもう少し勧告を早くできないかということを何回か申し上げてきているわけでありますが、この点についてはどうですか。
  183. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) この点については従来からもしばしば御指摘をいただいておるわけでございますが、したがって私たちといたしましてもできる限りひとつスピードアップして、早目に結論を出して御勧告を申し上げるということには精いっぱいの努力をいたしております。  ただ、調査をいたしまする対象の問題が一つございまして、この対象をやはり余り簡略にいたしますとこちらが所期いたしておりまする資料が集まらない。また、それだけに納得性も一般に得られないというそういうおそれもございます。したがって、大きい対象というものの大まかな規模というものはこれはやはりそう変えるわけにはまいらない。何しろ民間の全従業員の六割程度は統計的にいって悉皆、全部把握するというような方向の作業をやっているものですから、そこにやはり事務的にいって技術的な限界がございます。ただ、できるだけ早くということで努力は積み重ねておりまして、だんだんと早くなってきております。目に見える早さということでは遺憾ながらなっておりませんですけれども、大体いまや八月初旬ということにはなってきたわけなんです。しかし、この面においてはさらに御指摘どおり改善を加えるべきものは改善を加えて、大いに勉強をしてその点は詰めていくということは積極的に進めてまいりたいと思っております。  ただ、なるべく、われわれの方も大変な作業を給与局中心にやるわけですので、もっといい気候のときが来ればという感じがいたします。いたしますが、何しろ春闘というものがあって、これがやっぱりある限りはその春闘をやはり如実に反映をするということでないと公務員諸君の私は納得も得られないと思うんです。そういう面がございますので、やはりおのずから限界がある。それを調べようと思えば、どうしても調査が六月の半ばまでかかってしまう。それから資料の集積、分析にかかってまいりますものですから、大変夜通し職員の方々には御苦労願ってやっておるわけでありますけれども、この程度のことで精いっぱいである、いまのところでは精いっぱいであるということを申し上げたいと存じます。  しかし、その点については、さらにいろいろいまお話しになったコンピューターの駆使の仕方、その他いろいろな問題がございますので、技術的に可能な問題についてはできるだけ解決をして、一日でもひとつ早く結論が出まするようにさらに努力は重ねたいと思っております。
  184. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは総務長官にお伺いします。  もうすでに、先ほどからもう何回か質問があっておりますので、中身が同じですからどうしても同じになりますけれども、毎回同じことを聞いてまことに申しわけない気がするんですが、何といいましても今回の勧告の完全実施に対する総務長官の決意というのをやっぱり初めにお伺いしておきたいと思います。
  185. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 先生も御案内のように、昭和四十五年以来この人事院勧告の完全実施という慣習が慣熟して労使の関係が非常に安定した状態を維持しておると、それが社会一般に非常にいい結果を与えていると私は考えておりまして、今後ともこのようないわゆる労使間の信頼関係というものを維持するように努力をいたしたいと、これが私の基本的な考え方でございます。  昨年の人事院勧告が出ました際も当委員会でしばしば御意見が出たわけでございますが、昨年も財政事情が非常に厳しいと、こういう中で給与関係閣僚会議は四回開かれまして、十月の二十八日と記憶をいたしておりますが、財務当局が財源難を強く主張いたしましたけれども、結果的には完全に人事院勧告実施されたという結果を生んだわけでございます。  今年は、昨年の状況と比べてみてどうかというと、私は大変財政事情は昨年よりも悪化していると、このように財政当局から報告を受けております。また、この臨調のいわゆる中間答申というものを内閣総理大臣が尊重をするといういわゆる臨調設置法の第三条の規定を受けて、閣議はこれを大幅に尊重するということを決定しておると。そういう中でこの給与関係閣僚会議が今後さらに引き続きこの問題について検討いたしてまいるわけでございまして、私としては誠意を持って努力をいたしたいと、このように考えております。
  186. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大変丁寧な御答弁ありまして、ありがとうございました。  確かに大臣、これは昨年の十一月二十八日の当委員会で公務員給与の問題について質問を私いたしまして、そのときに完全実施の問題をあわせまして最後に大臣が答弁をしていらっしゃいます。もう大臣、これはいまの御見解とそう変わらないと私思いますが、こういうふうに答弁していらっしゃいます。   大変重大な問題でございますので、総務長官としての意見を改めて述べさせていただきますが、人事院勧告というものは、先生も御指摘のとおり、国家公務員の労働基本権の制約の代償機能であるというふうな基本的な考え方に立つております。それで、人事院勧告による国家公務員給与改定勧告が出ました場合には、総理府といたしましても、かねがね完全実施をするという基本的な姿勢を崩しておりませんし、また過去十年近く完全実施をすることが一つの慣熟した姿を呈してきております。国家公務員の方々の生活の安定、また公務員の方々と政府との信頼関係、労使の信頼関係というものがきわめて重大であるという認識に立って、この制度の存する限り、総務長官といたしましては、人事院勧告の完全実施の線で努力してまいりたい、このように考えております。 というのが大臣の答弁でございます。これはいまもこういう考え方には変わりないわけでしょうか。
  187. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) そういうふうな考えを持っております。
  188. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 しかし、先ほどから大臣答弁ございましたように、最近の新聞報道を見ておりますと、非常に厳しい情勢の新聞報道が至るところにあるわけであります。勧告をとるか臨調をとるか、身の置きどころに困る中山ハムレット——いや、これは済みません。そう書いていますね、新聞は。とか、七日の給与関係閣僚会議の席上、長官は労使関係維持と臨調答申尊重の両論に触れ、慎重な対処を求めるにとどまったと、こういうふうな報道もあるわけであります。  先ほどからいろいろ答弁ございまして、昨年の長官の完全実施に対する努力ですね、これはそれなりにわれわれ評価しなければならないと思っております。そこで、そういうふうな意味もあるわけですが、ことし重ねて三度目で申しわけないんですが、再度、完全実施についてどうお考えか、もう一回お伺いしておきたいと思います。
  189. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 何遍申し上げても実は心変わりはいたしておりませんで、先ほど御答弁申し上げたのが私の心の状態でございます。  先般の勧告に対する総務長官談話のことを先生お尋ねのことかと思いますが、談話につきましては総務長官としての心構えというものを申し上げておるわけでございますが、ただ給与関係閣僚会議で私が慎重に対処をしてまいらなければならないと、こう申し上げたのは、給与関係閣僚会議は、御案内のように大蔵大臣もまた他の大臣も入っておられていろいろ公務員給与については御議論がございます。そういう中で私は慎重に対処しなければならないと、こう申し上げたというふうに理解をお願いしたいと思います。
  190. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで中曽根長官にお伺いしたいのでありますが、先ほどからも何遍も大臣も御答弁していらっしゃるわけですが、公務員給与のところの「差し当たり、本年度給与改定については、以上の点を踏まえ、適切な抑制措置を講ずる。」と、こうあるわけですが、との「適切な抑制措置」というのは、これはどういうふうなことなんでしょうか。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その項目の上に書いてありまする三つないし四つの条件等をよく踏まえて、そして特に世論の情勢等もよく考えて適当と思われる処置をとりなさいと、そういう意味であるだろうと思います。人事院規則、国家公務員法を読んでみますと、給与勧告のところにやはり社会情勢変化対応するように勧告すると、社会情勢変化という言葉がたしかあったと思います。そういう意味において、慎重という意味も多少そういう社会経済情勢全般の変化も考えながら適切なる処理をすると、そういう意味にもとられると思います。
  192. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これ大臣ないんですわ、そういう言葉が。社会情勢変化というんじゃなくて、大臣おっしゃっているのは給与の決定の方法の中のあれでしょう、要件としてでしょう。それはここに書いてある。いま大臣おっしゃったその前に書いてある三つか四つとおっしゃった。これは労働基本権とそのほかのことをおっしゃっておるわけでしょう。これは「労働基本権と社会経済情勢、財政事情国民世論」とこうあるわけですが、この給与法で言うのは生計費、民間賃金、その他の事情とこうなっているわけです。  それで、私がお伺いしたいのはいろいろあるわけですが、大臣にこの際ですからちょっとお伺いしておきたいんですが、この答申の文章そのものというのは、これは大臣に特別責任があるわけじゃないと私思うんです。責任はないけれども、解釈する責任はあるわけですな、これ。解釈はせないかぬわけです。そこで、いま給与のところは「適切な抑制措置」とこうあるわけですが、この抑制措置のところを見てみますと、「厳しく抑制する」というのがあります。「抑制する」というのがあります。「極力抑制する」というのもあります。これ、どういうふうに違うんですかね。そのほかまだいろいろあるんですよ、これ。「検討する」というのももう非常にいろいろと出ております。  これ実際問題として用語という面からいきますと非常にわかりにくいあれですが、大臣のいまの答弁を聞いておりましても、「極力抑制する」という意味の中身は非常にわかりにくいですね。これは河本経済企画庁長官給与関係閣僚会議の席上で指摘されたというふうに伝えられているわけですが、「適切な抑制措置」というのは、個々のベアを抑えるというのではなくて、行政のトータルコストを抑えるというのが給与問題の論議だと思うと、これはそういうふうにおっしゃったのかどうかわかりません、新聞の報道であります。そういうふうにあるわけですが、ここら辺のところは、それぞれその言葉そのものの違いということもありますし、意味するところというのは非常にむずかしいと思います。そこで、この両面から大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  193. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 七月答申の中には「厳しく抑制する」という表現、それから「適切に抑制する」という場合、それから「抑制する」という場合、それから「前年度と同額以下に抑制する」と、そういうような幾つかの表現があったと思います。その中で、適切に抑制するという考え方がこの部分では盛られていると思っております。
  194. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから大臣、これ言葉の意味でいくと「極力抑制する」というのもあるわけですね。「極力抑制する」ということと「適切な抑制措置」というのとは、これは同じですか。要するに、どこがどういうふうに違ってくるのか、これはやっぱり言葉の意味をきちっと教えておいてもらいたいと私は思っております。  それからもう一つは、給与の問題の抑制措置の先ほどの大臣の答弁はちょっとわかりにくいので、もう少しわかりやすく御説明願いたいということです。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 労働基本権の代償という意味あるいは社会経済情勢変化あるいは国民世論、財政状況、そういうようなものをよく考えてと、そういうことが上に書いてありますので、そこで「適切」という表現が出てきたものであるだろうと思います。「厳しく抑制する」とか「極力抑制する」という場合には、余りそういう前提条件がなくしてそういう表現がなされたのではないか。したがって、この場合にはよく考えてやれと、そういう意味が込められているんだろうと思っております。
  196. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。  それで大臣、これはしつこいようですが、もう一点お伺いしておきます。  その前提条件、これは以上の点を踏まえて——以上の点というのは、適切な抑制措置の中身も含めて先ほどの四つ、労働基本権の制約、社会経済情勢、財政事情国民世論と四つがあるわけですが、四つは並列に考えていらっしゃるわけですか。それともやっぱり順番に大事だと考えていらっしゃるわけですか。これはどうですか。
  197. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) みんなそれぞれ適切に考える必要があるだろうと思います。
  198. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、みんな適切にということは、大体同じファクターで考えるということですか。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 性格がおのおの違いますから、だから何か目方ではかってどっちが重いとか軽いとかという、そういう量的規制というような考え方でははかれない。おのおの一つ一つがそれだけの価値を持っておる内容でございますから、したがってやっぱりよく深く考えてやるということではないかと思います。
  200. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、やっぱり先ほど人事院総裁がいらっしゃるとき、私この問題を質問しておるときに聞いておいていただければよかったんですけれども、人事院総裁は、これは当然労働基本権というのは四つの条件の中で一番先に書いてあるから、やっぱりこれは労働基本権というのを相当重要視して考えていただくというふうに受け取っているわけでありますし、またわれわれも給与を決定する要素として、いままではわれわれはこういうふうないろいろな条件も含めたらどうかということをずいぶんいろいろなことで言ってきたわけです。この内閣委員会で、給与を決定する際に、たとえば給与法に書いてある三つの要素だけではなくて、生計費とか民間賃金とかその他の事情——その他の事情の中にこういういろいろなものを含めろ、あれ含めろ、これ含めろと、その都度これは言ってきたわけです。ところが、いやそういうわけにはいかないというので、ずっとアウトになってきたわけです。  ところが、今度は突然、労働基本権の制約以外の社会情勢とか財政事情とか国民世論というようなものがばっと入ってきているわけですね。ということは、給与そのものを審議するわれわれとしては非常に納得しにくい問題がここに生まれてきているわけですね。ここら辺のところは、実際これがいまの大臣の答弁のようだと、それぞれ性格も違うからそれぞれ適当に踏まえて抑制措置をとるんだということになると、これはちょっとわれわれのいままでこの委員会で審議してきたこと等から考えても納得できない要素が多いんですけれども、大臣どうですか。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もとより国家公務員法あるいは人事院規則等々が制定されまして、そして労働基本権の代償的意味もあって人事院制度というものがしかれている。これは非常に大きな厳粛な現実でありまして、われわれはこれを大いに尊重しなければならない。それはもう基本的な立場でなければならぬと思います。  さりながら、やはり行政は生き物でありまして、財政事情とかあるいは国民における公平感というようなものもありましょう。すべて総合した上で最終的に政府が判定し国会がお決めになるそういう余地が残されておるわけでございまして、そういう意味においてわれわれは慎重にかつ適切なる処置をしなければならぬ、こう思うのであります。
  202. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、この問題に関してもう一点だけお伺いしておきたいと思いますが、河本さんが、先ほどもちょっと申し上げましたが、いわゆる「適切な抑制措置」という問題について、個々のベアを抑えるというそういうふうな意味ではなくて、いわゆる行政のトータルコストで考える、そうでないといけないんだという議論をしていらっしゃるわけです。要するに、一人一人の人件費を抑えるというふうな意味に考えますと、勤労意欲の減退という問題にもつながってまいります。ですから、そういうような考え方は、これはどうですか、やっぱり間違いですか。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう御意見もあり得ると思いますが、それはそういう御意見として頭の中に入れておいて処理したいと思います。
  204. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 人事院勧告につきましては以上で終わりまして、それではあと行政改革の問題につきましてちょっとだけお伺いしておきたいと思います。  先ほどからいろいろと話もいっぱいございましたけれども、これはこれからのスケジュールですが、大臣、どういうふうなスケジュールになりますでしょうか。
  205. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 当面の問題といたしましては、七月十日の第一次答申を具体化するために、当面政府がやるべきことについてその基本的姿勢を決めたいと思っております。この月末までにそれを閣議決定すべくいま鋭意調整をしておるところでございます。  それと同時に、第一次答申が終わりました臨調側におきましては新しい四部会編成をやりまして、けさほど御報告申し上げましたように、いよいよ次のラウンドに向けて九月から精力的に活動開始いたします。恐らく来年になると思いますが、それまでにおいてももし必要ある場合には随時答申を出していただきまして、その答申をいただいた上でわれわれは七月答申を受けたと同じ心構えをもって実行していくようにしなければならないと思っております。  それで、臨調の皆さん方のいろいろな御議論を拝聴しておりますと、おそくとも第二次答申は来年の春から夏ごろの間にやるような意気込みの模様であります。最終的には五十八年の三月に終わるわけでありますけれども、その第二次答申が終わった後、最終までにどういうような御行動をおとりになるか、これは臨調の皆さんが考え、これから御議論なさることであろうと思って、われわれもそれを見ながら進めてまいりたいと思っている次第であります。
  206. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、もう時間がなくなってまいりましたので、あと続けて二つほど申し上げておきたいと思います。  一つは、いま臨調のこれからの予定についてお伺いしたのですが、今回の第一次答申について、政府として具体的に法案なり、それのいわゆる段取りですね、これはどういうふうになるのか。一遍ちょっとこれもお伺いしておきたいと思います。  それからもう一つは、大臣、今回の法案、これは詳細にきょうは議論する時間がございませんのでその次に送りたいと私は思うのですけれども、日ごろから、いわゆる痛み分けの順番というのがありますね、これは大臣しょっちゅうおっしゃっているわけでありますが、行革に当たってはやっぱり一番先に国会議員がその痛みを受けなければいけない、それで二番目は公務員である、三番目が一般国民であると、こういうふうにおっしゃっているわけでありますけれども、今回の一次答申の中身を見ますと、それが逆になっているような感じがするわけです。ここら辺のことについてはどういうふうにお考えか、この点もちょっとお伺いしておきたいと思います。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法案の問題につきましては、けさほど大蔵省当局から大蔵省側が検討している数点について説明がありました。あれ以外にまだあり得ると思いますが、ああいうようなものを中心に法案をできるだけ集約するように努力しておるというのが実情であります。  それから、痛み分けの順序でございますが、これは、七月十日の答申の中においても、立法府においてあるいは裁判所側、司法府側においても御考慮くださるよう要請するという意味のことがありまして、これは行政府の諮問機関でございますから、立法府やあるいは司法府に触れることは遠慮したのだと思いますが、参考のためにそういうようなことが記されて、適切な処置をとられることを期待するということになっております。  立法府の側におかれましては、各党間の御協議がこれから進められると思いますが、私は一政治家といたしまして、また一国会議員といたしまして、やはり痛み分けの順序は国の先頭に立つ者がまず受けるべきだ、それから税金でいわば養われている公務員が受けるべきだ、国民は三番目が望ましい、これが道理ではないか、そう思っておりまして、できるだけそういう形で物が進められるように努力いたしたい、そう思っておるところなのでございます。
  208. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。
  209. 神谷信之助

    神谷信之助君 最初に、戦域核のアジア配備問題について外務省、防衛庁にお尋ねしたいと思います。  まず大村防衛庁長官にお伺いしますが、六月の二十七日ですか、ハワイでロングアメリカ太平洋軍司令官と二時間近くの会談をなさったようでありますが、その会談の中で、特に戦域核配備問題について話し合いがなされたようでありますが、その内容について、どんなものであったか、まずお答えいただきたいと思います。
  210. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回、私の訪米に際しまして、ハワイに寄りましてロング米太平洋軍司令官と会談いたしました。そのときには、太平洋軍の守備範囲についての、軍事情勢についてのブリーフィングがあったわけでございます。その際、いまお尋ねの戦域核につきましては、米国が現在東アジアにおける戦域核について総合的なレビューを行っているが、まだ結論は出ていない、こういうお話がありました。
  211. 神谷信之助

    神谷信之助君 そのロング司令官の話で、この東太平洋地域での核戦力を増強する必要がある、その準備を進めているという趣旨のお話、そういう見解表明があったのじゃないですか。
  212. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ロング司令官からは、戦域核についてソ連が極東においても若干配備をしているという事柄に触れまして、それに対しまして総合的なレビューを行っているが、まだ結論は出ていない、こういうお話があった次第でございます。それ以上のお話はなかったわけでございます。
  213. 神谷信之助

    神谷信之助君 具体的に、この核戦力のうち一体何を増強しなきゃならぬのかというそういう話ですね。たとえばアメリカの国防報告では、核戦力を構成する内容としてA、B、C、Dと四種類挙げていますね、時間の関係がありますから細かくは言いませんが。そういった問題は具体的には出なかったわけでしょうか。
  214. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛局長が詳しいものですから……。
  215. 塩田章

    説明員(塩田章君) いまのロング司令官の話の際は、御指摘のような核の種類を挙げてどうというような話は一切出ません。ただ、先ほど大臣の言いましたように、総合的なレビューをしているというだけでございます。
  216. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは、外務省の淺尾局長さんにお伺いいたしますが、伝えられるところによりますと、アメリカの国防総省が戦域核の極東配備の問題で、いま言っているレビューといいますか調査といいますか、そういう検討をやっているということですが、そういうことが伝えられてもおりますが、その事実は御存じでしょうか。
  217. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) いま防衛庁長官及び防衛局長から述べられた以上は私たちは承知しておりません。さらに八月四日の本邦の新聞に報道されました国防総省の安全保障局の部長が話したということで、その内容はアジア地域への配備について調査研究を行っているということで、それ以上のことについて外務省としても何ら詳しい情報は持っていないわけでございます。
  218. 神谷信之助

    神谷信之助君 衆議院の七月十五日の安保特委で、淺尾さんはこの問題で、「日本としてアメリカ側からも説明を受けておりますし、日本としても、日本をめぐるアジアの安全保障の上でこの戦域核の配備の問題は非常に関心があるということについては、アメリカ側と再三話をして、あるいはアメリカ側の説明を聞いておるという状況でございまして、」というように御答弁なさっていますね。ですから、その内容から言うと、相当具体的にお話をお聞きになっているのじゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。
  219. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) これはカーター政権のときにヨーロッパにおける戦域核の問題について米ソが交渉するという話がございまして、その際に、アメリカ側として当然ヨーロッパの戦域核の交渉をする際には、ヨーロッパだけでなくて世界全体の戦域核に与える影響というものも配慮しながら交渉していくという態度をとっていたわけでございまして、外務省としても戦域核のヨーロッパにおける交渉といいますか、米ソの交渉がアジアにおける安全保障に影響を与えるであろうということで、わが方からアメリカ側に対して、日本側としてもこのヨーロッパの戦域核交渉というものはヨーロッパにとどまらずアジアに対しても影響があるんだ、したがってその交渉に際しては、全世界的な規模でよく考えて、全世界的な安全保障というものを考えながら交渉してほしいという話をしたことはございますが、それ以上詳しくアメリカ側が説明をし、さらに日本側として極東にどういうふうな配備をするかという話は全然してないわけでございます。  それから、その後御承知のとおり、戦域核の交渉は政権がかわりましてから話がとだえておりまして、ただ最近になりましてから、現在のレーガン政権も戦域核の交渉については本年末までに予備的な交渉を開始する、たとえばヘイグ国務長官が国連の総会に出席してグロムイコ外務大臣と会った際に予備的な交渉も始めるかもしれないというような話は聞いておりますけれども、内容についてはそれ以上まだ全然聞いておりません。
  220. 神谷信之助

    神谷信之助君 私も先般、まあ桧垣先生おられますが、桧垣先生を団長とする調査団でペンタゴンに行きまして、ジョーンズ部長にも話を聞きました。そこでは時間が限られていましたから、強調されておったのはソ連の軍備の増強ですね、その状況が非常に強調されて、もうそれに対抗する措置について日本側に対する期待なんかも述べておられたわけですけれども、ですから、そういう状況から言うと、カーター時代はそういう制限交渉の問題があったりして、それがアジアに回される、それに対抗する必要があるというような問題も起こったかもしれないが、レーガン政権の現在とっている強いアメリカといいますか軍拡路線といいますか、そういう路線から言うと、この戦域核の東アジアに対する配備の問題というのは、カーター時代よりもより一層強まっているといいますか必要になってきているというか、そういう方向をとろうとしているんじゃないかというように、ソ連の脅威論を聞いている、そういう状況説明を聞いている中で私感じたんですけれども、そういう感触を得たんですが、その辺はいかがですか。これは防衛庁でも外務省でもどちらでもいいですから。
  221. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) まず私の方からお答えをいたしますけれども、要するに、カーターのときにはアジアにおいて戦域核を配備するということについて調査も研究もするという話はございませんでした。それが、レーガン政権になってから、先ほど来の御質問あるいは答弁で明らかになっているように、少なくとも調査だけはしているというのが事実です。
  222. 塩田章

    説明員(塩田章君) 全般的に戦域核の問題について東側が優勢になっておるというような意味でのアメリカ側の配慮があるんだろうとは思いますけれども、具体的にアジアの地区の、いま申し上げましたレビューというものが、いま先生のおっしゃったような観点でやっておるんであろうとかなんとかということになりますと、これは推測になりますから、私どもがここの席でそういうことを申し上げるのはいかがかと思います。私どもが聞いているのは、レビューをしておるということを聞いているだけでございます。
  223. 神谷信之助

    神谷信之助君 報道によると、アジア地域への戦域核の配備について防衛庁筋の方は、日米安保の核戦力の、核体制の強化になっていくと、したがって歓迎をしているというそういう報道もちらっと見たことがあるんですが、その点はどういうような感想をお持ちなんですか。
  224. 塩田章

    説明員(塩田章君) そういうことを私ども申したことは覚えがございません。
  225. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、さらに聞きますが、日本がこのレビューの調査対象に入っているかどうか、この点はどういうようにお考えですか。
  226. 塩田章

    説明員(塩田章君) これもまだレビューしておるというだけでわかりませんけれども、日本が非核三原則をとっておるということは十分承知しておる、その前提の上でのレビューであると思います。
  227. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは、淺尾さんにまた次をお伺いしますが、先ほど言いました衆議院の安保特で、「今後も恐らく、先方から説明があれば、極東における配備を含めましてどういう状況になるのが望ましいのかということについては、当然防衛庁と協議の上、日本側の意見というものも必要があれば申し述べる、こういうことになろうかと思います。」というそういう御答弁をなさっていますが、ここで、意見を述べるとおっしゃっているんですけれども、どういう意見を述べることをお考えになっておるわけですか。
  228. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) まず第一に、従来からもお話ししておりますように、ヨーロッパにおける戦域核交渉の過程の中で、ヨーロッパだけでの戦域核の数の制限というものが行われれば、その余った分だけ極東に回されてくるということから、やはり私の考えとしては、全世界的な規模でこれは制限の交渉をしてほしいということでございまして、それ以上はまだアメリカ側が極東においてやっていることは、先ほどからの質疑応答の中にもありますように、調査研究の段階でございまして、どういうふうになるのが望ましいかということ、あるいはどういう意見日本が述べるのかというのは、そのアメリカ側の話がもっと具体的にならないとここでお答えしかねるわけでございますが、いずれにしても、日本の立場というものは、日本への配備についてはこれは当然事前協議の対象になると、核の問題については事前協議の対象になる場合には答えはノーであると、こういうことであります。
  229. 神谷信之助

    神谷信之助君 日本に持ち込まれる、配備されるということになれば事前協議の対象になるし、当然非核三原則の立場からノーと言う、そういう回答になるということですが、それじゃ非核三原則に触れない範囲での意見を求められるという点ですね。たとえば韓国に配備するとかフィリピンに配備するとか、あるいは領海外、こういう問題についてはどういうようにお考えですか。
  230. 塩田章

    説明員(塩田章君) 全くどういうことであるいは来るかわかりませんので、いまどういう場合にどうだというふうにはちょっとお答えいたしかねるわけであります。
  231. 神谷信之助

    神谷信之助君 しかし何でしょう、ポラリス型原潜の事件、あの日昇丸事件ですね。あれから言いましても領海すれすれと言いますか、そういう配備については結局オーケーということを言わざるを得ないということになるんじゃないですか、その点はいかがですか。
  232. 塩田章

    説明員(塩田章君) 全くどういう形かわかりませんし、ああいう潜水艦のような場合、どこに配置するなんということを恐らく言わないだろうと思いますので、明らかにしないという従来の立場は変わらないだろうと思いますし、ちょっといまここで、どういうふうなことをアメリカが言ってきたときにわれわれとしてはどういう応答をするかというようなことを申し上げるにはちょっと早いといいますか、ちょっと申し上げようがないと、率直に申し上げてそんなわけでございます。
  233. 神谷信之助

    神谷信之助君 だけど、いずれにしても、いまの状況を先ほどからお聞きをしているように、カーター政権からレーガン政権になって、そして対ソ脅威論といいますか、それに対抗する措置というか、だから中性子爆弾の問題まで出てきている。そういう状況を考えると、このアジア地域への配備という問題はもう早晩の問題であると。それに対してわが国がどういう態度をとるのかという点は、具体的に出てこなければわからないということでは、どうにもこれちょっと理解に苦しむんですがね。その点どういうようにお考えですか、全体として考えておられるんでしょう。日米安保協議などを通じながらアメリカ側の意図というものはそれなりにお聞きになっていると思うんですが。
  234. 塩田章

    説明員(塩田章君) いままでのアメリカといろんな防衛問題の協議をしましても、核については具体的に話をしたことはございませんし、いまアメリカがレビューしているというものを、将来どういう形で話が来るのか全くわかりませんので、繰り返しになりますけれども、いまの時点でお答えのしようがないということでございます。
  235. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃしょうがないですが、われわれは、いずれにしても結局アジアにおける戦域核の配備について総合的な調査をアメリカがやっているということは、現在の戦域核あるいは戦術核の配備の状況をさらに増強すると、こういう方向であることはもう明らかだと思うし、それ自身核軍拡をさらに一層進める、そういう危険性を持っているわけですから、そういう点については断固としてやっぱりノーと言うべきだと。それが本当に日本の平和と安全を守る道だというように考えるし、それよりもやっぱりいままでの問題については、わが党が国会ですでに明らかにしておりますように、岩国とか嘉手納基地への核持ち込みの問題ですね、こういう疑惑にこたえる誠実な調査をそれをこそやるべきだということを、われわれの立場というものを明らかにしておきたいと思うんです。こういうのにずるずるはまっていくというのは、本当に核戦争へ日本が組み込まれ、そして危険な状況に追い込まれていくということをそのまま野放しにする危険な道だというように考えるから、あえて私はそういうように申し上げておきたいと思うんです。この点は長官を初め皆さんとは見解を異にするということですからお答えいただいても同じことで、その点だけ申し上げて、時間の関係がありますから次に移ります。  その次の問題は、もう四カ月以上経過しております日昇丸事件の最終報告書の問題ですね。これは外務省にひとつお伺いしたいんですが、五月二十日のマンスフィールドと園田外相の会談で、報告書が最近完成をして第七艦隊司令官を経由してワシントンの上層部に渡っているという話がなされた。その後淺尾局長の方から、七月の二十八日ですか、この当委員会で、アメリカ側の最終報告書が最近海軍作戦部長の手に渡っているという事実が明らかにされました。  そこでお伺いしたいんですけれども、これは海軍の作戦部長の手に渡って、あとどこまで行って完了して日本側に提出ということになるんですか。その段取りというのは一体どういうことですか。私はアメリカのそういう機構というのはよく知りませんが、局長はよく御存じだろうと思うんですが、一体どういう段取りになっているんですか。
  236. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) これはアメリカ側の内部の手続でございますので、私といえどもどういう段取りになるかということははっきりしてないわけですけれども、論理的に考えれば、作戦部長の上に海軍長官がおりますし、さらに海軍長官の上に国防長官がいると。それから、この前の中間報告の場合は、やはりレーガン大統領がみずから見て日本側に出してきたということでございますので、そういうようないろんな段階があるんじゃないかと。これはまさに機構の問題として申し上げるわけで、果たしてそういう手続を踏むのかどうか、そこまではちょっと私にもわからないわけであります。
  237. 神谷信之助

    神谷信之助君 こうなると、最終報告というのは大体三カ月もあれば出てくるであろうというのは初め国会でも答弁されているんですけれども、すでに四カ月を超えてそういう状況になっていると。七月の二十八日の段階ではすでに作戦部長のところに渡っているんですね。そうすると、それから言いましてももう一月近くなってきているわけです、局長の答弁の前にもう渡っているわけですからね。それが数日か十日前か知りませんが。ですから約一カ月近くなってくるんだけれども、これ非常におくれてきているんですね。したがって、被害者の皆さんの損害賠償の問題やその他の問題もそれでネックになっているし、国民はあの問題の真相が解明をされてないという状況で不安を持っているわけですが、この辺は局長どうですか、見通しは。今月中には出るとかどうとかというそういう報道もありますけれども、その辺の見通しはどうなんでしょう。
  238. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 私に関する限り、三カ月後に出るであろうというふうに国会で申し上げた記憶はございません。それから今月中に出るかどうか、これは全く予断がつかないわけで、依然としてわが方としてはいつ最終報告日本側に渡されるかという時期についてはわからないわけでございます。ただ、国会でもあるいは新聞その他においても、中間報告が出た後で最終報告が出るまで外務省は何にもしてないんじゃないかと、漫然として日を送っているんではないかという御批判がある。それに対しては、私たちとしては在京アメリカ大使館を通じて、せっかく中間報告が異例の早さで出たんだから、最終報告もできるだけ早く出してほしいということを督促を続けている段階でございまして、アメリカ側も、在京大使館に関する限りは、日本側に言われるまでもなく最終報告が一日も早く出るように努力しているんだと、こういうことでございまして、それがいま私の申し上げられるところでございます。
  239. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、最終報告書が日本側に通知をされた後の問題ですが、中間報告が、海上保安庁の方でいかがでしょう、わが方の調査の結果と中間報告内容というのは非常に食い違いは大きいですね。これが最終報告書で日本側の調査結果と同じような状況になるというのはなかなか考えられない、そういう状況ではないかというように思うのですが、あの中間報告に対して、私の聞いているところでは、外務省は保安庁と協議をして事故の発生状況とか救助活動、通報のおくれなど十三項目の疑問点をアメリカ側にも照会をしておるという話も聞いておりますが、その最終報告書が出て、非常に大きく食い違っているという状態になればどういうことになるんですか。
  240. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 最終報告内容がわからない状況で、仮に最終報告日本側の要請する点と非常にかけ離れた場合にどうするかという御質問でございますけれども、やはり最終報告を見ないとその場合の対応策というものはちょっと考えられないわけでございまして、先ほど御質問のありましたわれわれの疑問のいろんな点については、海上保安庁の質問も含めてアメリカ側に渡しているわけでございまして、われわれの希望としては最終報告でそういうような点をすべて解明していることを期待していると、こういうことでございます。
  241. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、中間報告と大きく変わってくるであろうという期待を持っていると言うんですか。
  242. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) これは一番望ましい形としてそういう期待を持っているわけでございますけれども、全然われわれは最終報告内容は知らされてないわけでございまして、中間報告と食い違っているのかあるいは同じなのか、その点についてここで同じかあるいは違うということをちょっと申し上げるのは差し控えさせていただくし、また実際上相違について議論することはいまできない状況でございます。
  243. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうおっしゃれば仕方ないですが、この事件は国民に非常に大きなショックを与えた事件ですし、そして日本側の保安庁の調査は一定の証言をもとにしてできているわけですから、やはり真相をちゃんと解明をすると、最終報告書の内容がわが方の調査と大きく食い違っているという場合には、これははっきりした態度をとってもらわないと国民は納得しないと思うんです。という点を申し上げて、この問題は終わりたいと思います。防衛庁と外務省は結構です。  次に、人事院勧告行政改革問題について質問します。まず、同僚議員がしばしばきょうは人事院総裁及び総務長官には人勧問題で質問あるわけですけれども、議論を進めるために、重なりますが、ひとつ申し上げたいと思います。  まず人事院総裁にお伺いしますが、ことしの人勧がわずか五・二三%のアップで、昨年と同じように消費者物価の上昇率の七・八%に及ばないと、低い水準ですし、またわれわれが強調しております現行の上厚下薄の給与体系、これについてのいわゆる配分の問題も問題点を持っております。しかし、同時にまた、先ほどもお話ありましたように成績主義の導入がありますね。言葉としてはそれをそのままとりますと、よく仕事をする者に対してはちゃんとそれに報いる措置をとるというように聞こえますけれども、実際には、これが総裁自身もおっしゃったように特別昇給制度がいろんなえさに使われたりいろんなことになる。またやられています。そういう結果を持つ問題があるし、ストレートにわれわれ賛成するわけにいかない。したがって、ことしの人事院勧告についてわれわれは完全実施を要求するという立場には立てないわけです、そういう問題を含んでいますから。  しかし、いずれにしても人事院勧告をした五・二三%のアップ、不十分であるけれども、今日の消費者物価指数の上昇あるいは生活の実態から考えて、これは完全に実施をするのがあたりまえだと、そういう立場をとっているわけです。しかも人事院憲法で保障されている労働基本権の制限に対する代償機関として設けられてこの勧告制度が存在をする以上、人事院総裁としては当然これの、少なくともわれわれが言っている給与改善実施は早急に無条件に行われるべきが当然だというお考えだというように思うんです。その点をひとつ簡単にまずお伺いします。
  244. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 人事院としては立場上、いまお話が出ておりますような基本線に従いまして勧告を申し上げておりますので、この勧告内容どおり早急に実現をいたしますように、完全実施されますように心から念願をいたしております。
  245. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、その次は給与担当の大臣であります総務長官にお伺いするんですけれども、これは、先ほどからも同僚議員の質問に対して、片一方では勧告を尊重して、いろんな値切るような動きがありますけれども、そうじゃなしにちゃんと実施してもらいたいという気持ちと、同時に、片一方では臨調答申を尊重するという閣議決定に賛成をしていると、その辺で、報道によればハムレットと言われるような状況も率直にお見えになっていますけれども、給与担当大臣の立場としては、これはまさに厳正にこれを実施をするというそういう立場を堅持をするのが当然ではないのか。先ほどもちょっと話がありましたが、四つほどの条件を考えて「適切な抑制措置」という表現ですね。だから、これはいろんな読み方がありますし、そういう意味では給与担当大臣としては勧告はそのまま実施すべきであると、給与改善についての勧告はそのまま実施すべきであるというのが原則であり、その立場を堅持をするというのがたてまえではないのか。臨調答申の尊重に賛成はしたとしても、その中身というのはそういう意味ではいろいろなものがある。これはしかし政策上の問題である。片一方の問題は、これは憲法の労働基本権を抑制をするその代償として設けられた勧告制度、いわゆる憲法上の規定から生まれてきた機関の勧告である。こういう点では、もう原則的に言っても少なくとも給与担当大臣はその実施を要求する、断固として要求する立場に立つのがあたりまえではないかと思うんですが、その辺の決意をお伺いしたいんです。
  246. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 人事院勧告制度が労働基本権の制約の代償措置一つとして現存しておるということは、私も給与担当大臣としてその存在の意義を十分認識いたしております。
  247. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、この公務員給与の問題で、改善措置についてその抑制を主張される中には、財政問題が非常に大きな理由になってきますね。しかし、私はこの財政問題というのはもう十年も二十年も前から常にこれ言われてきていると、そういう問題だと思う。そういう条件の中でも人事院勧告制度を行い、そしてまたそれを実現をしてきたというのが歴史的経過だというように思うんですね。昭和四十五年以前は御承知のように人勧を値切ってきたけれども、佐藤内閣の時期に、政府として完全実施のできておらない現状をまことに遺憾に思っておりますという総理の予算委員会での発言もあって、そして四十五年以後今日まで完全に実施をするという方針になってきた。当時の総務長官の山中さんが昭和四十五年の三月二十六日の当委員会で、この議事録を見ますと、こういうようにおっしゃているんですんね。「かりに予備費等において、途中で災害その他予期せざる支出があって、人事院給与の完全実施が困難であるような財源状態に現在の経常予算の中でなったと仮定いたしましても、昨年の官房長官談話にありましたごとく、どんなことがあってもその完全実施の線は昭和四十五年から貫徹する方針である」という答弁をなさっています。  だから、財政事情云々に左右されるんではなしに、これは今後はそういうものに左右されないで貫徹するというのが政府方針だというのを国会答弁でも強調されていますね。だからそういう点で、内閣の継承性から見ましても、私はこの勧告どおり実施というのは政府としてもあたりまえのことだと。それをとやかく言って、先ほどの官房長官の話ですと、十月末か十一月まで慎重に検討しなきゃならないような問題ではないということが四十五年以来確立されてきているんじゃないのかというように思うんですが、この点は長官いかがですか。
  248. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 先生のおっしゃることは一つの私は筋道の立ったお話だと思います。ただ、財政とは関係ないと、こういう御指摘でございますけれども、現実問題としては、昨年の例を見ましても財政難ということで話がなかなかつかない、この財源をどうするかということが政府の一番大きな悩みであったと、こういうことから、私はこの現実を無視してなかなか話がすぐに、官房長官が遅くまでかかるとおっしゃいましたが、これはもうすぐにあした決めるというわけにはいかないと、こういう状態だろうと私は思っております。
  249. 神谷信之助

    神谷信之助君 財政問題がネックだというんですけれども、しかし、一般会計予算ですね、それじゃ人件費といいますか、国家公務員給与財源が一体どういう状況、水準になっているのかという点を見てみますと、たとえば五十一年度予算で見ますと、これは大蔵省の出した「歳出百科」ですね、これで計算してみたんですが、これでいきますと、国家公務員の人件費は一般会計の八・四六%、五十一年度は。それが五十六年度予算では五・八六%というふうに、一般会計予算の枠から言うと公務員給与の占める比率というのは年々低下をしてきている。で、さらに五十一年から五十六年までの一般会計予算の伸び率ですね、五十一年と五十六年を見てみますと九二・六%のアップで、約二倍近く予算の規模というのがふえてきている。ところが、国家公務員の人件費というのは三三・四%で、一般会計全体の伸び率から言うと三分の一の程度ですね。  だから、こういう点から言いましても、これは一つの例です、幾つも挙げることできますが、時間もありませんから申し上げませんが、こういう数字を見ましても、財政問題財政問題と言うけれども、財政問題全般の中でこの国家公務員給与の占める率というのはそう大きくなるんじゃない、あるいは破綻の原因でもないというように思うんです。そういうことを持ち出すというのは私は筋違いではないかと思うんです。この点は給与担当大臣の激励をする立場から申し上げるんですが、いかがですか。
  250. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) そういうふうに国家の財政規模全体と公務員給与の伸び率が違うということでございます。問題は、この財政の困窮というものをどうするかというところから、政府としては一番の大きな問題で、財政再建ということと行革ということを内閣としては一つの大きな政治生命をかけた仕事にしておる立場から言いますと、やはり全体的な問題として考えてまいらなければならない。ただし、給与担当大臣としてはそういうふうな問題点給与関係閣僚会議では十分に主張してまいりたい、このように考えております。
  251. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは率直に、もう一度総務長官に聞きますが、だから給与担当大臣である総務長官としては、人勧をとるか、あるいは臨調答申をとるのかと。どっちを尊重するのかという二者択一を迫られれば、断固としてこの問題に限り人勧を尊重するという立場をとるのはあたりまえだと。もしそうしないということになれば、私はこの労働基本権の問題を考えなければならぬと思うんです。私も値切られておった時代に公務員労働者の一人でしたからね、こんな状態なら人事院というのは邪魔だ、人事院の存在を否定せざるを得ぬかと。そういうことに再びならざるを得ない。私はそう思うんです。その点ひとつ率直なところをお聞かせ願いたい。
  252. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 十分、私の立場といたしまして、給与関係閣僚会議で慎重に誠意を持って努力してまいりたいと考えております。
  253. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、行管庁の長官にお伺いしますが、やっぱり人勧の問題、人勧の尊重なのか、それとも臨調答申を尊重するのかという点についてお伺いしたいと思うんですけれども、行革担当の大臣としては臨調答申を尊重せねばいかぬという、中山長官とは逆におっしゃるかもしれませんけれども、私はしかし、いま言いました憲法で保障されている労働基本権を規制をしているその代償としての人勧のこういう歴史的な経過ですね、これはほかの問題とはちょっと違う、こういう点を含めて長官のひとつ御意見を聞きたいと思いますが。
  254. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり公務員給与の問題は非常に大事な問題でありまして、人事院制度自体が指摘されますように労働基本権の代償的意義もあるということでありますから、やはりわれわれはこれを深く尊重しなければならぬ立場にあると思います。しかし、法体系全般を見、かつ政治、行政の運用というものを見ますと、これは国が生きていて初めて公務員制度も持てるというところもあり、公務員関係に関する法律や、あるいはそのほかを見ましても、やはり最終的には国会が判断をする。国会が判断する前に政府が提案をする。そういう余地も残されておると思うのであります。そういうことを考えてみますと、社会、経済全般をよく判断をしながら国会が判断をするということでございますから、そういう余裕はあると思うのです。だから、基本的には公務員のそういう救済措置というものは尊重さるべきというのは前提でありますけれども、その上に立って、さりながらさらにいろいろ考えて最終的結論は国会において判定をする。そういう余裕ある立場があると私は考えております。そういう立場に立ちまして、党とも相談をして最終的には決定していきたいと思うわけでございます。
  255. 神谷信之助

    神谷信之助君 中曽根長官の答弁、非常に慎重な御答弁ですが、私はその点でこの臨調答申の中身自体、これはもうすでに御承知のようにわが党は反対の立場をとっていますが、この公務員給与の問題あるいは公務員の定数の問題と関連して少しひとつお伺いしたいと思うんですが、臨調答申防衛関係費ですね、これについての記述がありますね、十二ページのところに。これと、それから第一特別部会報告、これはそれの二十一ページですか、この内容は違うんですね。第一特別部会報告では、「防衛関係費については、計画、運用、調達方法の効率化合理化に努める。」とあります。ところが臨調答申になりますと、この「計画、運用、」がなくなって「装備品使用、調達方法等の効率化合理化に努め、」というように変わっていると。これは初めのように「計画、運用、」という表現であると、これは政府防衛計画の大綱を連想さして、それの合理化も求めるんではないかというそういう懸念もあって第一次答申ではその分が削除をされたというようなことも言われているんですが、これ臨調の方でどういうように、その理由はなぜでしょう、削除した理由。
  256. 佐々木晴夫

    説明員佐々木晴夫君) 防衛の問題につきまして、調査会の第一特別部会の表現と、それから調査会での答申内容と表現が異なっていることはこれは事実でございます。御指摘のとおりでございます。  ただ、基本的にこの防衛それから経済協力、こうした国際社会と関連しますものにつきまして、国際的責任を果たすために大変重要な問題であると、そういう認識で部会においても御審議いただいたわけでありますけれども、部会での論議の中で、表現として「計画」それから「運用」の「合理化」云々という表現がいかにもわかりにくいということで、調査会でさらにいろいろと議論をしまして、わかりやすいように端的にこの「装備品使用、」それから「調達方法等の効率化合理化に努め、」というふうな表現を一応用いたということでありまして、意味そのものにつきましては、部会のその中身を一応調査会で承った上で、まあ端的な表現をとったということでございます。
  257. 神谷信之助

    神谷信之助君 ちょっといまの説明だけで私は納得できないですね。やっぱりそういう防衛計画の大綱を連想させるようなおそれがあるというそういう配慮からこの最終の答申では削除されている。それにはかかりませんよという、そういう意味では非常に至れり尽くせりの答申内容ではないのかという疑問を打ち消すわけにはいかないというように思います。  もう一つお伺いしますが、第二特別部会では国家公務員給与、定員関係が議論になったようですが、これで防衛庁のいわゆる自衛官ですね、これの定数、定員問題についてヒヤリングがあったんでしょうか。
  258. 佐々木晴夫

    説明員佐々木晴夫君) 第二特別部会でもって防衛庁からこの自衛官の問題を含めましてヒヤリングをした事実はございます。
  259. 神谷信之助

    神谷信之助君 ヒヤリングをなさった。
  260. 佐々木晴夫

    説明員佐々木晴夫君) はい、いたしました。
  261. 神谷信之助

    神谷信之助君 私も日程表をずっと調べた限りでは、ほかの省庁はあっても、防衛庁の定員問題ですね、自衛官の、ないですね。  それで、これも報道をされたものですが、第七回会合で、五月二十二日ですか、防衛庁の制服が多い、ヒヤリングしないのかというのに対して佐々木次長さんは、問題意識を持てば呼んでもいい、軍の編成の問題は定員削減の対象にしていないというように答弁をされたように見ていますけれども、この事実はどうですか。
  262. 佐々木晴夫

    説明員佐々木晴夫君) 五月二十二日の段階であったかどうかはちょっと記憶をいたしておりませんけれども、そうしたような問答はあったように記憶をいたしております。  自衛官の問題は、御承知のとおり定員削減の対象そのものではないわけであります。これはなぜかなれば、自衛官の定数が法律上定められる事項でありますから、それ自体が、定数が法律で定められておりますので、いまの公務員の定員削減計画の中にはこれは含められておりません。そこで、こうしたものにつきましてどう取り扱うかということが当日議論になりまして、結果といたしまして、第十回の六月二日に防衛庁からヒヤリングをいたしております。そのときには制服の関係を含めまして種々部会で討議が行われております。
  263. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまの説明でも自衛官は法律で定数が決められておるんだとおっしゃるけれども、国家公務員も定員法で決まっていますね、同じように。もちろん削減計画を片一方は持っている。それに入れているか入れていないかというのはいままでの問題です。これから行政改革を進める中に、自衛隊だけはもう聖域で別ですという考え方事務当局自身が持ってそういうことでやってきながら、最後には、六月二日の十回目ですか、ヒヤリングをするということになった。こういう経過を見ますと、まさに先ほどの問題も含めて自衛隊問題というのはもう聖域化される、防衛関係予算、それから人員もそうだというように言わざるを得ないと思うんです。  それで、先ほど行政改革の大綱を長官は今月末までには閣議決定をするという方針を決めるというように言われていましたが、報道では二十五日に閣議決定をするという、そういう報道をされていますが、きょうの報道によりますと、その原案というのが一応できて、そして自民党との折衝といいますか協議に入っているように報道されています。それによりますと、臨調答申の中にもありますが、これまで特別に配慮をすべき職員としていた教官、医師、看護婦、これを含めて五年間で五%の削減をします、その対象外の特別の配慮をするものはそれは自衛官であるということがこの原案で明らかになったと。いわゆる自衛官は削減の対象にしないということ、答申では明記をされていませんけれども、そういう方向が明らかになったというように聞いておりますが、それは間違いございませんか。
  264. 佐倉尚

    説明員(佐倉尚君) ただいま自衛官の話でございますが、先生御指摘のございましたように、自衛官は対象外としております。これは、自衛官の定員は部隊の編成あるいはその装備等の関係において決定されるべきものでございまして、他の公務員とはおのずから定員決定の事情が異なっているというふうに考えられるわけでございます。自衛官の定員が他の公務員と異なって、あるいは陸海空個別に法律で定められているということになっているのも同様の趣旨だというふうに考えております。  そこで、先生御指摘臨調答申に盛られております五年五%の定員削減計画につきましては、現在各省庁と目下鋭意調整中でございます。この中には現在のところ自衛官を含むということは考えておりませんけれども、従来、これは技術的な問題でございますが、削減の対象にしておりませんでした教官、医師、看護婦等も、今回は非常に定員事情も厳しいということでそういう部分も削減計画の中に取り入れるということで考えておりますが、目下各省庁と先ほど申し上げましたように鋭意調整中でございます。
  265. 神谷信之助

    神谷信之助君 だからそういう考え方自身が、まさに防衛庁は聖域だと、軍事関係は聖域化されているということで国民の強い批判があったというようなことですよ。  それで、防衛庁の定員というのが全国家公務員の約四分の一ですか、二十九万五千人に上っているという状況ですね。それから大学、病院以外の一般職員、各省庁の非現業国家公務員を見ますと、この十四年間に約二万四千人減っている。ところが、逆に自衛官の方は二万一千人程度ふえてきています。だから今日、これは防衛問題は意見が違うわけですからなんですが、国民生活に密接な関係を持つそういう部門で削減をしながら、自衛隊は聖域化し、防衛庁予算も聖域化して手をつけないというような問題というのは私は納得することはできない。そういう状況の中でまた公務員給与を値切ろうとする、人勧を値切ろうとするという状態はまさに重大な国民からの不信を招く問題だというように思うんですが、この辺について長官の御意見を聞きたいと思うんです。
  266. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御意見として拝聴しておきますが、やはり防衛問題というのも国家の現時点における大変重大な問題になり、特に国際関係というものを考慮してまいりますと、やはりわれわれもこの問題もある程度考慮に置かなければならぬ問題であるように思います。
  267. 神谷信之助

    神谷信之助君 防衛問題は重要であることはわれわれも同じです。ただ、いまの対米従属の路線を進め核軍拡に手をかすという方向というのは、日本国民を非常に危険な道に引きずり込むものだという点がわれわれと非常に大きな根本的な意見の相違だと思うんです。しかし、いずれにしても、軍事費を削って国民の暮らしに回せというのは、行政改革に対する一般国民の、特に庶民の大きな願いであります。  さらに、公務員給与で是正すべきなのは、高級官僚とか特殊法人役員など、そういう高額な給与だとか退職金をもらっている人たちを一般公務員の水準に戻すべきだというのが給与問題についての一般国民の真の意見ですね。  あるいは、今度の答申で言いますと、最大の欠陥は、この数年来後を絶たないところの不正腐敗、汚職の連続、それに対する歯どめがかからない。そして、この間八月十五日に行管庁の報告も出ていますけれども、そういう報告が出ても実際上わずかなことの改善もなかなか進まない。逆に電電の交際費の乱費あるいは住宅公団の飲み食いによる不正、こういったものに本当にメスを入れられるというところになっていない。これをやってもらいたいというのが、いわゆる清潔な、そして国民の役に立つ行政、これを希望しているのが私は国民の声だというように思うんです。  もう時間が超過しましたから、以上、われわれの、本当に国民の立場に立った行政改革をこそ実現すべきである。衆議院の内閣委員会でも指摘をしましたように、臨調のメンバーの六一%が政府や財界の関係者で占められるというような、そういうメンバーでのまさに財界主導のこういう行政改革、行革の方針については賛成できないということ、反対であるということを明らかにして、一応質問を終わります。
  268. 柄谷道一

    柄谷道一君 去る八月十四日に発表されました防衛白書について、わが党は、わが国の平和と安全保障の確保にとって重要な柱である平和戦略の進め方についてその方向性が具体的に示されていない。この点は適正を欠くのではないか。また、文章の表現技術につきましても若干の問題点が散見されると、こう考えますが、最近のソ連の著しい軍事力の増強がわが国の平和と安全にとって潜在的な脅威であるとの前提に立って、国民合意に基づく自主的な防衛努力と西側陣営との連帯によってわが国の安全を図っていくという一連の分析と、われわれが守るべきものは国民であり国土であると同時に、国民の多様な価値観実現するため最大限の自由を与え得る国家体制であるとしておるその基調につきましては、おおむね客観的かつ妥当なものであると評価いたしております。しかし、当面の重要課題であるアメリカからの防衛努力の要請に対する対応防衛大綱の見直し及び防衛予算と財政との関係等につきましては明確な方向性が示されていないと考えますので、去る七月二十八日の当委員会における質問に引き続いて、若干の質問をいたしたいと思います。  まず第一は、在日米軍の駐留経費の負担問題でございます。  アメリカは日米共同声明第八項の役割り分担を前面に打ち出し、在日米軍経費の負担増、日本従業員の労務費の負担枠を増大するよう求めていると伝えられております。在日米軍の基地従業員労務費については、日米地位協定の解釈上米軍負担とされていることは明らかでございます。五十三年、当時の金丸防衛庁長官がいわゆる思いやり予算として労務費の一部である社会保険料を日本側が負担することといたしました。当時これは拡大解釈ではないかと論議を呼んだところでありますが、一応ここまでが限度であるというのが当時の政府の見解でございました。そして、これを受けて本年度は労務費の約一五%に相当する約百五十九億円を負担いたしている現状でございます。アメリカからの要請に対応して防衛庁はこれにどう対処するお考えであるのか、お伺いをいたします。
  269. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) さきの日米共同声明第八項におきまして、在日米軍駐留経費の負担軽減について一層努力するという一項が盛られております点は御指摘のとおりでございます。この点につきましては、ただいまのお尋ねの点につきまして労務費の扱いでございますので、担当の施設長官からお答えをいたさせます。
  270. 吉野実

    説明員(吉野実君) 労務費につきましては、いま先生若干お触れになりましたけれども、昭和五十三年度から福利費及び管理費を、そしてまた昭和五十四年度からは給与の一部をそれぞれわが国において負担してきているところであります。ところが、これまでとったのはそういう措置でございまして、これがたびたび答弁を政府側からいたしておりますように地位協定上の限度であると、こういうことでございまして、これ以上日本側として負担する考えは持っておらないということであります。
  271. 柄谷道一

    柄谷道一君 再度確認いたします。  五十三年度当時の政府見解は今日に至るも変わっていない、よって現在の政府見解がその限度である、こう理解してよろしゅうございますか。
  272. 吉野実

    説明員(吉野実君) そのときの答弁が変わってはおりません。それで、日本政府としては、地位協定が現在存している以上、それを超えて負担するということは条約上といいますか法律上できないわけでございますから、現在のところこれ以上払う、負担するということは考えていない、こういうことでございます。
  273. 柄谷道一

    柄谷道一君 次いで防衛庁長官にお伺いいたしますが、自民党の三原安保調査会長は、去る七月十八日のNHK政治討論会で、現在の厳しい国際情勢のもとでは防衛大綱は修正し、増強、補強すべきである、これは自民党全体の意見ですでに検討に着手していると、まあ大綱改定に取り組む与党の姿勢を国民の前に明らかにされました。同時に、新聞報道によりますと、三原会長はこの録画撮りの後記者団に、今日の発言は党のしかるべきところと相談し政府にも伝えてある、こう述べたと報ぜられております。防衛庁長官は与党から大綱改定検討着手の報告を受けていらっしゃいますか。
  274. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 自民党において防衛計画の大綱についていろいろな意見があり、その問題の検討を近く始めたいという話があることは聞いておりますが、自民党から大綱について見直し検討に着手したという連絡はまだ受けておりません。
  275. 柄谷道一

    柄谷道一君 それではさらにお伺いしたいわけでございますが、自民党の安保調査会は、新聞の報ずるところによりますと、九月早々にも防衛力整備検討委員会を設置してわが国防衛力整備の基準である防衛大綱の見直し作業に着手する予定である。小委員長も内定した。党主導の見直し作業には鈴木総理、大村防衛庁長官も同意を与えている、こう報ぜられております。この報道は誤りでございますか。
  276. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) そういう意向を持っておられるということは私ども承知しているわけでございますが、なお党内手続等もございますので、まだそういった検討の機関が設置されたという連絡は受けておらないわけでございます。
  277. 柄谷道一

    柄谷道一君 防衛大綱の軍事情勢分析は、読みますところ、明らかに緊張緩和——デタントを基調として貫かれていると思います。しかし、今回発表されました防衛白書は、いわゆる冷戦構造に逆戻りしつつあるということをその基調にしておると思うのでございます。情勢分析について明らかに防衛大綱と防衛白書の分析にはギャップがあると素直に読み取らざるを得ないわけでございますが、その点はどうでしょう。
  278. 塩田章

    説明員(塩田章君) 国際情勢の分析でございますが、五十一年当時と現在とでいろんな点で情勢変化しておるということは事実でございまして、そのことは今度の防衛白書にも現在の判断を率直に述べたつもりでございます。
  279. 柄谷道一

    柄谷道一君 政府は今日まで見直しよりも大綱水準の達成にまず努力すると一貫して答えられてまいりました。しかし、同じ政府の出しました防衛白書は、情勢に著しい変化があると指摘いたしておるのでございます。もちろん、その軍事情勢の分析に基づいて具体的な防衛水準をどうするか、それには経済、財政状態、国民世論の動向、福祉、教育等のバランス、いろいろな面を配慮しなければならないわけでございますけれども、少なくとも情勢分析についてはこれを直近の情勢分析に合致せしめる、それを、与党の見直し作業をまず先行さして、大綱見直しの環境整備を進める、これはまさに手の込んだねらいと私は指摘せざるを得ないわけでありまして、私は、防衛庁みずからがその作業を行い、国会で活発な防衛論議を展開することこそが筋であり、そのことを通じてのみ国民の国際情勢の認識に対する合意が得られるものである、こう思うんでございますが、いかがですか。
  280. 塩田章

    説明員(塩田章君) 今回、先ほど先生がおっしゃいました自民党の方の動きが、何といいますか防衛庁の方のやるべきことをそちらの方に、党の方にというふうな御趣旨のように承りましたが、党の方の動きは私どもはもちろん直接は関係ないわけでございまして、防衛庁といたしましては、しばしば申し上げておりますように、いまの時点で、大きな隔たりのある防衛計画の大綱につきまして、なるべく早く到達したいという線を堅持しておるわけでございます。
  281. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあ政党政治の体制の中で——それでは長官、お伺いしますけれども、この国際情勢変化対応する大綱見直し、それは座して与党の結論を待つと、そういう姿勢でございますか。
  282. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、ただいま防衛局長から御答弁申し上げましたとおり、現在の防衛計画の大綱の水準達成を図ることに全力を挙げて取り組んでいる次第でございます。今後大綱をどうするかにつきましては、これもまた国会でしばしば申し上げておりますとおり、国際情勢変化国民世論の動向、そしてまた大綱の水準の達成状況等を勘案して検討をすべき問題だと考えておるわけでございますが、大綱設定当時の国際情勢と今日との間にかなりの変化があることは事実でございますが、だからといって直ちに検討に着手するというよりは、むしろ、いまの水準の達成に全力を挙げて取り組むことが大切であるというふうに考えているわけでございます。  なお、自由民主党において検討の機関が設置されまして協力を求められました場合には、防衛庁といたしましても、防衛力の現状や防衛庁考え方、現在進めている防衛努力の状況等について御説明するようなことはあり得るものと考えている次第でございます。
  283. 柄谷道一

    柄谷道一君 防衛計画水準をどうするか、これはいま長官が言われたように、幾つかの要因を見て決断しなければならぬ問題であろうし、また、その水準そのものをとりあえず達成したい、これはまた一理があると思うんです、けれども、しかし、その根底にある軍事情勢の分析が、白書と大綱の中に著しい変化、相違があるという事実を放置していいかどうかというところに私の問題指摘があるわけでございます。大綱の情勢分析と白書情勢分析、どっちが正しいんですか。
  284. 塩田章

    説明員(塩田章君) これはどちらが正しいということではないと思います。大綱の方は五十一年時点での分析でございますし、ことしの白書はことしの時点での分析でございますから、どちらが正しいという問題ではないと思います。
  285. 柄谷道一

    柄谷道一君 そういう意味じゃなくて、現在という時点に立てば白書の方がより最近の情勢に立った分析をしておるということは、これそのとおりでしょう。私は、こればかりやっておったら次の問題に進めませんから、これ以上の議論は避けますけれども、少なくとも防衛白書というものを国民に、よく読んで世界情勢、軍事情勢というものを正確、客観的に理解してもらいたい、それが白書を出した目的であり、防衛庁の意図するところであるとすれば、これは同じように、大綱の情勢分析も現状に即してこれを改定して、そして国民の判断を求める、それが政治としてとるべき筋ではないですか、このことを強調して指摘いたしておきます。  そこで私は、自民党内の検討は必然的に対国民総生産、いわゆるGNP対比一%以内の防衛費限度額を一%にこだわらない範囲で拡大する方向で論議が展開されるのではないか、これは私の予測でございますし、新聞もまたこれを示唆する報道を行っております。その場合、六十二年度に大綱水準を達成するには、当面一けた台であるけれども、二けた台の伸び率をやがてとることが必要であり、二、三年後には一%の枠を突破して六十二年度には一・五%程度になるというのが、この調査会や自民党国防部会では共通認識になっていると伝えられております。また、総理も五月十五日の衆議院本会議で、GNPの一%を超えないとする閣議の決定は変えるつもりはないが、これは防衛力整備過程での当面の目標であり、防衛の基本政策とは性格の異なるものであると答弁しておられます。これは微妙な言い回し方ではございますけれども、将来防衛予算が一%を超える可能性のあることを示唆したものとも受けとめることができます。  そこで、この際防衛庁長官として、行革を進めなければならない、財政の健全化を図らなければならないという、片やこの大きな国家課題防衛費の関係についてどのような基本的認識を持って今後の防衛予算に対処していかれようとするのか、明確な御見解をこの際お伺いしたい。
  286. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、五六中業につきましては現在作業を始めたばかりの問題でございます。現段階では、その事業内容等が明らかではなく、また今後のGNPの成長率も流動的でありますので、いまお尋ねのございました六十二年度までの五六中業の対象期間における防衛関係費の対GNP比率がどのような姿になるか、そういった点につきましては、現在のところ、見当をつけることはむずかしいわけでございますので、具体的にどうするということは答弁は差し控えさしていただきたいと思うわけでございます。  なお、政府といたしましては、防衛力整備実施に当たりましては、当面各年度防衛関係費が当該年度のGNPの一%を超えないことを旨としてこれを行うという五十一年十一月の国防会議及び閣議における決定につきましては、現在のところこれを変える考えはないわけでございます。が、これはその決定の中に「当面」とありますように、何ら固定的な期限を予定したものではなく、また内外諸情勢変化に伴って必要だと認められる場合には改めて検討される可能性のあるものであると、さように考えておる次第でございます。
  287. 柄谷道一

    柄谷道一君 端的にお伺いしますが、すると五六中業、いわゆる昭和六十二年まで、もっと短かく言えば財政再建期間中である昭和六十年度までは、いまの答弁を聞いておりますとGNP対比一%を守るということを基調として作業が行われているんではなくて、そのこと自体もはみ出し得る余地があり得るということですか。
  288. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 五六中業の期間は五十八年度から六十二年度まででございます。その間の事業内容をどうするか現在作業中であるわけでございます。また、その期間内におけるGNPがどうなるか、これもまた企画庁の方の今後の作業に待たなければいけないわけでございますので、期間内における対GNPの比率がどうなりそうであるかという判断は、現在のところつけかねる次第でございます。そこで、作業を始めるに当たりましては、現在生きております五十一年の閣議決定は守りながら作業に着手するということを申し上げておるわけでございます。ただ、この閣議決定におきましては「当面」という言葉も付せられておるわけでございます。その点の解釈につきましては、先ほど申し上げたようなものであるということをあわせて申し上げておるわけでございます。
  289. 柄谷道一

    柄谷道一君 「当面」という言葉がつけられている、しかしいまの御答弁を聞いておりますと、五六中業の作業に入るその現時点においては一%の枠内ということを前提として作業に入ると、そこまでは明確に言えますね。
  290. 塩田章

    説明員(塩田章君) 現在の作業はそういうめどを持ってやっておることはそのとおりでございます。
  291. 柄谷道一

    柄谷道一君 行政管理庁長官にお伺いいたしますが、行財政改革によってわが国の財政事情を健全化しなければならない、これは一つ国家的な至上課題であろうと思います。しかし、防衛ということにつきましてもこれはそれ相応の配慮をしなければならぬ、これもまた世界情勢の現実であろうと思うんです。そこで、これ長官としての答弁ということでありますとちょっとはみ出すと思うんでございますが、副総理格でございますから、国務大臣として中曽根長官行政改革という至上課題と今後の防衛予算というものに対する基本的な対応の姿勢をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  292. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛といえども聖域の中には入らない、そういう基本的姿勢を持って臨むべきであると思います。しかし、具体的なケースケースにつきましては、国際関係もあり、あるいはわれわれは日米安全保障条約を締結して相互防衛体制を組んでおる関係もありますから、そういう国際関係も考慮しなければなりませんが、そういう具体的な問題はそれに直面した場合に個々に判断すべきことであります。基本的には、防衛といえども聖域にあらずして行政改革一般と同じ原則でつき合ってもらわなければならない、そういうふうに考えております。
  293. 柄谷道一

    柄谷道一君 防衛庁、結構でございます。  次に、人事院勧告問題について御質問したいと思いますが、まず人事院総裁にお伺いいたします。他の委員から多くの質問が出されておるところでございますが、端的にお伺いいたします。  人事院制度人事院勧告は、公務員の労働基本権を制約する代償として設けられたものである、よって、政府勧告を早期に完全実施する私はあえて少なくとも道義的義務を負うものと考えております。  そこで、今回の人事院報告及び総裁談話の中で、特に労働基本権制約に対する代償措置としての人事院勧告が強調されているわけでございます。いろいろ質問は出ましたけれども、この報告及び談話の持つ趣旨は、財政状況が厳しくとも人事院総裁としては勧告の早期完全実施を強く求める、これがその趣旨であると理解してよろしゅうございますか。
  294. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 趣旨は先生おっしゃったとおりに理解しております。
  295. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは総理府長官にお伺いいたします。  この人事院のただいまのような趣旨に基づく勧告に対して、長官は八月七日に談話を発表されております。その談話を拝見いたしますと、前段では「人事院勧告については、政府は、従来からこれを尊重するという基本的建前に立って処理してきたところであります。」、こう述べておられます。今度は後段では「公務員給与の適切な抑制についても触れている臨時行政調査会の第一次答申を尊重するという閣議決定を行ったところであります。」、こう答えております。峯山議員はハムレットの心境と言われたんですが、日本的に言えばこれは平重盛の心境がこの談話の中に如実にあらわれているわけでございます。  そこで、いままでの答弁をじっと聞いておったんですけれども、こう理解していいですか。二つの要件がある、しかし給与担当大臣としては前段、すなわち慣熟した制度、慣行を守るということを基調に置いて今後対処してまいりたい、このような御趣旨であると理解してよろしゅうございますか。
  296. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 給与担当大臣としての立場を先生からいまお尋ねございました。そういうものが基本としてこの十年間あるわけでございますから、私はその労使のいわゆる安定した信頼感というものを維持してまいりたい、維持しなければならない、それがやっぱり日本のために非常に有益であると思います。しかし、やはり国民のためにいわゆる行政があるわけでございますから、国民が納得するような結論を出さなければならないという考え方国務大臣としては持っておるわけでございます。
  297. 柄谷道一

    柄谷道一君 前段はいいんですけれども、絶えずその「しかし」がつくんですね。  そこで、一つ立場を変えてお聞きしましょう。私は、三権分立という現制度のもとで立法府は司法、特に最高裁大法廷の意思、判断を侵し得るか否か、どうですか。
  298. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 最高裁の判決はそれを率直に認めなければならないと考えております。
  299. 柄谷道一

    柄谷道一君 昭和四十八年四月二十五日、その最高裁大法廷が判決を下したいわゆる官公労三争議に関する判決理由をこの際思い起こさねばならぬ、こう思うのでございます。  この判決は、官公労労働者の争議権と刑事罰をめぐる従来の最高裁の考え方を短年月、すなわち四年ぐらいで変更した、そしてそのことが法の安定性について疑問を生じたという問題や、八対七というきわどい一票差で重要な憲法判断の根本的な判例変更を行ったということが問題とされております。  当時、この問題につきましては国民的な論議を呼んだところでありますけれども、その問題は一応横におくとして、全農林国家公務員法違反被告上告事件に対して、公務員の従事する職務には公共性がある一方、法律により主要な勤務条件が定められ、また同時に、その生存権保障の趣旨からその労働基本権の制約に見合う周到な代償措置制度が設けられているから、国公法九十八条五項は勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からするやむを得ない制約として憲法二十八条に違反するものではない、こう結審いたしておるわけでございます。すなわち、中央人事行政機関として準司法機関的性格を持つ人事院制度により、公務員は労働基本権に対する制限の代償として生活擁護の保障を受けている、これが労働権制約を合法とする柱になっていることは明らかであり、これが司法のしかも最高機関たる最高裁の意思でございます。  こうした視点に立つならば、人事院勧告を完全に実施しないと仮にするならば、公務員生活権擁護の保障を奪うのみならず、公務行政における労使関係を悪化させる、さらには公務能率の低下に結びつく、同時に、違法ストライキを合法化する口実そのものを与えるという結果にすらなるのではないか。私は、こういうことになったのでは、今日まで遵法の精神を踏まえながら健全な労働運動を続けてきた民主的労働組合運動の否定にもつながりかねないと考えるのでございます。単に財政という一視点からこの問題をとらまえるのではなくて、との最高裁の判決の内容を吟味し、今後の健全な官公労における労使関係の構築、そのことにこそ政治としての目を注がなければならない重要な課題である、こう思いますが、この認識は長官間違いありませんね。
  300. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 間違いございません。
  301. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで、総理府長官と行管庁長官にお伺いしたいわけでございますが、私は、ただいま申し上げましたように、人事院勧告行財政改革を短絡的に絡めることは筋違いであると、こう認識いたします。で、行政合理化効率化は、第二臨調答申の三十一ページにもあるように、国、地方を通ずる行政体質改善公務員等の定数縮減、機構事務・事業の見直し民間委譲の推進行政サービスの適正化民間活力の導入等によって行政減量化効率化実現し、総人件費の抑制を図るべしというのが臨調の本旨であると私は読み取っております。また、給与につきましても、公務能率増進の視点から、不適正な俸給表の使用ややみ給与の根絶、信賞必罰制度の履行、成績主義推進、退職手当法等の早期成立を実現するということを臨調は強く求めておりますが、これまた総人件費の適正化ということを意味すると思うのでございまして、私は人事院制度の根幹に対してこのことを否定するのが決して第二臨調の意思ではないと、こう理解するものでございます。これに対する両長官の率直な御見解をお伺いいたしたい。
  302. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第二臨調の目的は、人事院制度の根幹を否定するようなものでは絶対あるべきではないと思います。
  303. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 私も同様でございます。
  304. 柄谷道一

    柄谷道一君 そのような両長官の見解に立たれますならば、私は、質問の過程で指摘いたしましたように、人事院勧告というものは財政事情のいかんにかかわらずこれを完全実施し、かつ総人件費の適正な抑制というものに向かって行革を実現することこそ立法府及び行政府に課せられた最大の任務である、これを決して履き違えてはならぬという点をこの際強調いたしておきたい、こう思います。  そこで、人事院総裁にお伺いいたしますが、私は定年法の審議に際しまして総裁に質問をいたしました。その際総裁は、現行給与制度には多くの問題点があるということを認められまして、中長期的な課題として行政環境の変化行政効率化の要請を踏まえつつ、給与制度を初め採用、昇進等の任用制度、研修制度その他人事行政制度全般について抜本的な検討を行い、昭和五十八年までにその結論を得たいと、こう答弁をされたわけでございます。それは間違いございませんね。
  305. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) そのとおりでございまして、間違いございません。
  306. 柄谷道一

    柄谷道一君 とするならば、今回の報告の中で特に職務給の原則及び成績主義の原則を踏まえた給与体系の確立を特に抽出して強調されている意図は那辺にございますか。
  307. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 先刻も御指摘がございましたように、昨年打ち出しました中長期人事制度の再検討の中には、いまお抜き出しになって御指摘になりました点も当然含まれてまいるわけでございます。したがって、それらの能率の問題、成績本位の徹底というような問題も、それらの一環として取り組んでまいりたいというふうに考えておりますが、いまの点を特にとりたてて柱として立てて申しましたのは、ちょうど臨調答申というものがございまして、そこに成績主義の問題その他のことが打ち出されております。われわれ人事院といたしましても、その点については政府の機関の一つであることには間違いございませんので、趣旨として適切なものであれば、これは当然人事院としてもやるべきことは受け入れて、その線に沿ってやっていくべきことはやるということは、これは当然であると考えた次第でございます。  したがいまして、長中期の場合においても、当然基本的には検討はいたしてまいりますけれども、そのほか当面の問題として成績主義を徹底をしていくとか、そういうようなことについては、中長期の検討の結果を待つまでもなく、すでにも取りかかってまいれる問題もあるわけであります。その具体的な例といたしましては、たとえば特別昇給の制度とか、あるいは特別給、いわゆる賞与における勤勉手当の取り扱いについて成績主義というものをもう少し明確に取り入れる制度的な検討も、これは即刻やっていっていいのではないか。また、一つの基準でもって各省庁に運用をいたしてもらっておりますけれども、その運用のやり方自体について反省を求めるべき点があれば反省を求めていくということで、成績主義の厳正な運用というものを図っていくことによって現在よりも一歩前進した結果が得られるのではあるまいか、そういうことを考えておるのでありまして、それらを積極的にひとつ推進をしていくための努力をいたしたいという目標をそこに掲げることにいたしまして、われわれの一つの努力目標を設定をするということが適当ではないかと考えたからにほかなりません。
  308. 柄谷道一

    柄谷道一君 人事院がいまのような意気込みでりっぱな成績主義制度立案勧告しましても、執行者たる政府対応がなければその実を上げることはできないと、こう思うのでございます。で、成績主義というものは今日までも唱えられてきた問題でございます。初めてぽんと出てきた問題ではない。しかし、それが十分に機能していなかったというところに問題があると思うんですね。  そこで、人事院総裁として、これが機能しなかった原因は一体どこにあるとお考えなのか、また政府に対して何を求められるのか、率直にお答えいただきたい。
  309. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 各省庁成績主義推進ということについては日ごろ腐心をいたしておるところでありまして、これはやはり適正に行ってまいりますことが人事管理の基本でございます。そういうことで努力もしておられることはわれわれとしても評価をいたしておるわけでございますが、具体的にということで御質問でございますので、一つ例を挙げて申し上げますならば、たとえば特別昇給制度というものが現在ございます。これは、定期昇給以外に成績が特に良好である、特に顕著であるという職員に対しましては特別の昇給制度を定期昇給とは別に実施をいたしまして、本人の勤労意欲というものをさらに推進をするとともに、ほう賞的に士気の高揚というものを図ってまいりたいということでやっておるわけでありますが、このやり方について各省庁のそれぞれの御事情はあると思いますが、まず第一に各省庁においてそのやり方が若干不斉一である、ばらばらになっておる向きがあるということが一つ。  それからもう一つは、運用の実態におきまして、いわば特別昇給ということの趣旨でありまするにかかわらず、持ち回りでこれが運用されておる。現在一年に全職員の一五%というものの枠をつくっておりますけれども、その一五%の枠の運用でそれをことしはこれと、あとは残った人の中の一五%はこうだというふうに、いわば持ち回り式に運用されているのではないかと思われるようなところもある。それは、しかし特別昇給の制度の運用の趣旨には反しますので、そういった点は従来までもわかったものについては注意を喚起をして直すべきことは直してもらっております。そのためには毎年給与の監査その他もやっておりますので、そういう際にわかったものについては御指摘をいたしておりますし、また人事担当の職員の方々の会合というものも随時やっておりますので、そういうときにそういうような趣旨の徹底を図るというような努力もいたしております。  これらについてさらに注意を喚起をして、その実施上の効果が上がるように努力をしてもらうようにいたしまするとともに、それと同時に、制度的にいって各省庁がもう少しきちっとやれるような仕組みというものが、やはり人事院制度自体の中で、人事院が決めます仕組みの中でもう少し考える余地があるのではないだろうかというような点は、これは制度の問題としてわれわれ自身でもって取り組んでいかなきゃならぬ問題であろうという認識を持っております。そういうような点をあわせて制度的にも考え、また、かくして出てまいりました制度についてその運用の面についても徹底を図りたい、かような意味で申し上げておるのであります。
  310. 柄谷道一

    柄谷道一君 行管長官にお伺いをいたしますが、制度的な検討は、これは制度人事院でなされるものと思います。しかし、これを執行していくのは政府でございますが、行管庁長官として、ただいまの人事院総裁の見解に対する受けとめる側としての御見解なり決意をお伺いいたしたいと思います。
  311. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調の第一次答申にも盛られている面でもあり、人事院がその線に沿って一生懸命勉強していただいていることは大いに評価をいたします。さらに大いに勉強していただいて、できるだけ早期に結論を出していただきたいと念願しておる次第であります。
  312. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間が余りありませんので、人事院総裁と総理府長官にお伺いいたしたいと思います。それは今後の検討課題として、民間準拠の問題についてお伺いをしたいと思うのでございます。  その第一は、民間における経営合理化努力、生産性向上努力というものをどう評価し、取り入れていくのかという問題でございます。  国家公務員法六十四条では、給与を定めるに当たって考慮すべき要素として生計費と民間における賃金等と示しております。地方公務員法二十四条でも、生計費、国、他の地方公共団体民間給与等を考慮して給与を定めると、こう書いてあるわけでございます。しかし、その準拠すべき民間では、二次にわたる石油ショック以来労使がお互いに全力を挙げて減量経営を断行いたしました。そして、人員の適切な縮減と生産性向上を徹底して、みずから企業体質を強化し、国際競争力を高め、かつその結果として業績を回復させ、賃上げの原資を確保してきたというのが実態でございます。しかし、公務員の場合には、これは当然のことながら市場原理は働きません。そこで、この民間の努力に相対応するならば、やはり官公庁においてもでき得る限りの民間に準拠した努力というものが行われ、これが相並行する中で国民の理解というものが得られていくのではないか。そういう内容、質というものを度外視して、単に数字の横並びだけを検討するということでは、私は国民の理解はなかなか得られないのではないかと、こう思うことが一つでございます。  それから第二は、生涯賃金的視点をどう取り入れて検討の中に入れていくかという問題でございます。  これは中労委の調査でございますけれども、賃上げの約五割程度が退職金、年金に直接はね返らない、いわゆる第二基本給化しているというのが最近民間における実態であると、こう中央労働委員会の資料では示しているわけでございます。問題の是非は一応横におくとして、公務員の場合は定昇を含めればおおむね賃上げの九〇%近くが退職手当や年金に直接連動する基本給の引き上げに充てられていると、これが現実でございます。こういう視点から、これまた国民の合意を得るために、私は、生涯賃金的な視点から広く深く公務員民間というものを対比し、そしてその結論としての勧告が行われる、これはいますぐにやれと言っているんではないんですよ。この二つの視点は今後の人事院の仕事といいますか、給与担当官庁である総理府としても重要な問題であり、これなくして私は国民の合意というのはなかなか得られるものではない、こう思わざるを得ないのでございます。これに対するそれぞれの御見解をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  313. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 大変有益なる御議論を拝聴いたしました。私たちもその全体の方向、お示しになりました方向自体は賛成でございます。その方向の努力をしてまいりたいということを申し上げさしていただきたいと思います。  いまお話が出ておりますのが二点ございました。一つはいわゆる生産性の問題、それから第二の点は生涯給的な視点の問題、二点あったと思います。これについてごく簡略に考えておりますことを申し述べさしていただきたいと思いますが、第一点の公務における生産性というもの、これをいかに理解していくか。民間のいわゆる企業における生産性というものと同じような意味の生産性というものがあるのだろうかという点は、これはいま先生も御指摘になりましたように、市場原理が働くものではございませんので、同じレベルでもってこれに対応して論議することには無理がある面も多々ございます。  たとえば、生産性といいましても、公務の場合においては社会の安寧秩序というものを保持していく、あるいは救貧の対策を徹底をしていく、あるいは教育を行っていく、あるいは公共事業を実施していく、こういうような面でどうしてもやっぱりやらざるを得ない仕事がございます。これもしかし考え方によっては、マクロ的に見てまいりますれば、それによって秩序が保たれ、また交通も整備されれば民間の生産も刺激されていく、大きな目でいけば、それは経済発展につながるという面もございましょう。しかし、これを端的に公務の生産性として率をもって示していくということはなかなかむずかしい面があることは御承知のとおりだろうと思います。  それらの点とともに、もう一つは、これは行管の方の関係もございますけれども、たとえば例を挙げれば、税務職員なんかでも、要するに課税額、課税標準額というものが大変伸びておるのに、それとの対比で見れば職員の数というものはそれほどふえておりません。そういった点もあって、これは逆算した場合は一つの生産効率という面を持っておるんじゃないかという面もございます。  しかし、いずれにいたしましても、いま御指摘の点は、そういう生産性という裏に隠された国民のやはり要望というものをくみ取りますと、やはり公務にも、民間でやっている血のにじむような合理化の努力と、そういうものをやはり取り入れて能率を上げるというところの配慮をもつとしてもいいんじゃないかというようなお気持ちがにじみ出てくるものと思います。それはもう全くそのとおりでありまして、何か公務の場において非能率が通り相場になっておるというような仮に印象を与えておれば、これはゆゆしき問題でございます。したがいまして、その場その場でもって工夫をこらして、能率というものは上げるように、できる限りのことはやっていかなければならないというふうに考えております。  それから、もう一点の生涯給与的な視点でございますが、とれも方向としては、私はそういうことをないがしろにしないで考えていくべきだろうと思います。ただ、その場合におきまして、これも繰り返しになりますが、給与給与、それから退職手当は退職手当、年金は年金というように、それぞれのやはり対比を官民の間にいたしまして、適切な技法があれば、それでもって導き出される均衡をだんだん図っていく、そういうことが正しいやり方ではあるまいかというふうに考えております。そのことは、すでにある程度実現の方途に向かっておるわけでありまして、たとえば退職手当の問題にいたしましても、これはまだこちらで御審議をいただいておりませんけれども、民間の退職手当の実額と対比して、ああいう法案を総理府の方からお出しをしているという点もございます。いまの第二基本給的な考え方、そういったものもわれわれとしては十分のみ込んでおりますけれども、その前にまた、別の意味で支給率の問題とか、あるいはこれもお詳しいと思いますが、加算金の問題とか、そういった問題も、どういうことの組み合わせになるかということを比較検討していかなければならぬ面もございます。  しかし、いずれにいたしましても、いまこれから御審議をいただくことになります退職手当の問題等についても、それの一つの第一歩であるという意味の改正案になっておるというふうに考えております。年金についてもそれぞれの角度から検討いたしました結果、さしあたりやれるものについては、受給資格年齢というものについても民間並みにしていこうというような努力をいたしておると思います。したがって、そういうような方向で長期的に見て、全般的に見て生涯給的な視点を取り入れていくということについては私も大いに考えていかなければならない問題だと思っております。  ただ、これは役所のことになってはなはだ恐縮でございますけれども、その点についてはそれぞれ所管がございまして、その所管の間の調整を図っていくという問題が残されておる。その点は、臨調においてもつとにその点にお気づきになりまして、そういう管理機能の一元化というような問題もこれから御検討いただく一つの目標として掲げられているようであります。われわれはわれわれといたしまして、中長期計画検討の際にはそういう問題もやはり検討の対象として取り組んでまいりたいと思っております。
  314. 中山太郎

    国務大臣(中山太郎君) 先生二点お尋ねでございますが、一点の生涯給与の問題につきましては、ただいま人事院総裁が御答弁申し上げたような考え方と全く同一でございまして、いま私の方から改めて見解を述べる必要は遠慮さしていただきたいと思っております。  もう一点、民間準拠による生産性の問題、これは公務における生産性というものはいろいろ議論があって、具体的な結論というものは統一されて出ていない、これは総裁の答弁のとおりだと私は思います。ただ国民の、納税者の方から見て役人天国だとか、いや親方日の丸だとかという声が国内の方々で起こっていることはこれは現実でございますから、それは民間が努力しているような姿を行政の中においても事務能率の向上の面でやはりしっかりやれというのが私は主権者の声であろうというように受けとめております。  そういう中で、私が最近の民間における動きを見ておりましても、先生御指摘のように、石油ショックを契機として、やはりいかに合理化するか、機械化するかということが民間事務組織の中での最大の問題となって今日登場しております。御案内のように、たとえばオフィスオートメーションのシステムをどんどんと民間は取り入れておる、それに比べて政府機構の方はどうなっておるか、なかなかそれは民間のような血のにじむような努力はされていない。そういう点は真剣に私ども反省をして、国民が納得できるような能率の高い、そうして成績中心主義のやはり管理システムというものを行政機構の中に打ち立てなければ主権者は満足しないのではなかろうかと、このように考えております。
  315. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間が、答弁が長いので、ちょっと超過しましたので質問はこれでやめます。  私は、その他ILO第二回公務合同委員会レポートに示されている公務員のキャリア、すなわち採用、昇進制度、研修、離職、こういった問題とわが国としての対応ということについてもお伺いしたかったのでございますが、時間の関係から、次回にこれは譲りたいと思います。  最後に、私意見として申し上げておくのでございますが、前国会でも、政府は退職手当法が成立をすれば仲裁裁定は完全実施するという意思を一たん定められたわけですね。退職手当法がどうも難航いたしまして、継続審議になりましたのでそれは実現されませんでしたけれども、その思想は、やはり仲裁裁定とか人事院勧告というのは守っていこう、そうして総人件費の面で適正な抑制を図ろうという意思の私はあらわれであったと思うんですね。私は、こういう視点からするならば、総人件費の抑制は行革を通じてやるべし、仲裁裁定及び人事院勧告はそのたてまえを守って完全実施すべし、これが正論であり、筋であると思います。この点を強調いたしまして、私の質問を終わります。
  316. 林ゆう

    委員長林ゆう君) 本日の調査はこの程度といたします。     —————————————
  317. 林ゆう

    委員長林ゆう君) この際、派遣委員報告に関する件についてお諮りいたします。  先般、当委員会が行いました国の地方支分部局及び自衛隊の業務運営並び国家公務員制度の実情調査のための委員派遣につきましては、報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  318. 林ゆう

    委員長林ゆう君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十分散会      —————・—————