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美濃部亮吉君 私は先日、青森の近所のむつ小川原に行ってまいりました。これは御承知のとおり、三全総の中の巨大開発
計画として十年以前に発足したものでございます。しかしながら、これについてはなお別の機会に詳しく御
質問をしたいと思うのですけれ
ども、私の見たところは完全に失敗であって、どうにもこうにもならない、そうして現地においては安楽死をさせるよりほか仕方がないのじゃないかと言われるほど失敗でございます。そして、この
計画が失敗をいたしましたのは、何にも増してその
計画の立案の時点において、
計画自体に非常に欠陥があったというためであろうと思います。それでまた私は志布志についてお聞きしたいと思うのですが、志布志もまた三全総の中における巨大
計画の
一つでございまして、それが延び延びになって、いま着手しようか、しまいかという時点になっております。そしてこの志布志の
計画にも非常な欠陥があると思うのでございます。それでこれを始めたらば、またむつ小川原の二の舞であって失敗することは必然である、これはどうしても着手してはならない
計画であると思うのでございます。それで、欠陥につきましてはこの前のときに自然破壊であるとか、あるいは海底の土砂をもって埋め立てをする、そのために海底の情勢がすっかり変わって、漁獲高に非常に悪い影響を及ぼすとか、そういう問題が起こるということはこの前申し上げたとおりでございます。そして、この埋め立てをいたしました土地には食品加工工業であるとか、木材工業であるとか、造船業であるとか、金属工業であるとか、あるいは石油の備蓄、石油の精製等の企業を誘置するという
計画になっております、しかしながら、いま高度成長の時代は過ぎて低成長、安定成長の時代に入ったときに、むつ小川原と同じように企業が来っこないと思うのでございます。そして、ここで実現するのは石油備蓄のタンクを
建設するという以外には方法はないというふうに考えております。ところが、この石油備蓄にも欠陥があるということは、この前も申し上げましたとおり、石油をこのタンクに吸い込ませるためのタンカーが台風その他の風雨が来たときに避難をしなければならないけれ
ども、その避難港が近所にないということはこの前も言ったとおりでございます。
さらに、その後わかったことでございますけれ
ども、埋立地、これがいま鹿児島の
計画では考えているように出島方式、つまり沖に三キロ、あそこは二キロですから三キロ以上の埋め立てをして、そこに半地下式のタンクをつくるとかいうことになりますと、莫大な費用がかかる。そこで、運輸省が経団連の
海洋開発懇談会というところに委託をいたしまして、沖の方に、三キロ以上離れたところに埋め立てをして、そこでどういう企業が採算がとれることになるだろうかということを
調査させたところ、その答案としては石油備蓄基地など施設の
建設費が
比較的安い業種の人工島進出は経済的に不利である、一方、人工島の造成技術についてこの報告は、波浪、風、土質など自然条件が厳しいところから、設計、施工面はもちろん、物資や電力の輸送などの点で未解決な課題が残されているという報告がございます。これをもって考えますと、石油の備蓄、しかも半地下というタンクをつくるということ、これはほとんど現在の時点においても不可能である、少なくとも採算に合わないということが言えると思うのです。
それから、さらにこの前申し上げましたことに加えまして、ここには爆弾がたくさんある。つまり、爆弾がどのくらいあるかわからないという
状態でございます。それで、そのことに関する鹿児島の新聞の記事によりますと「旧日本軍の爆弾や砲弾類がかなりの量沈んでいる可能性が高いことが鹿児島
海上保安部の
調査でわかった。これらの爆弾類は終戦直前、米軍の九州上陸に伴う「本土決戦」に備えて大隅半島一帯に備蓄されていたのを、進駐してきた米軍の指示で港湾に捨てられたままになっていたもの。同保安部は、港内をしゅんせつして、沿岸に広大な埋立地を造成しようとする新大隅開発
計画に対し、着工に先立って爆弾類の掃海を勧告する意向を固めており、」これも掃海というと非常に簡単のようでございますけれ
ども、莫大な金額がかかる、莫大の年月がかかる。私が計算したところですと、全部の志布志湾を掃海するには二、三十年の年月がかかるという、これは私の計算でございますからどのくらい本当であるかわかりませんけれ
ども、とにかく非常な時間がかかるということは確かであると思います。こういうふうに爆弾類がたくさん沈んでいるということもまた考慮に入れなければならない。こういうふうに志布志の開発につきましては非常な欠陥がたくさんにあるということでございます。
そこで、私は
環境庁長官にお願いをするのは、これに不賛成である。否定的な態度を最後までとっていただきたいと思うのです、これがもし着手されましたならば、財政上の負担も莫大なものになって、財政再建を言われている今日全くむだな金を使うということにもなりかねないと思うのです。そして、この前御
質問をしたときには、岸から一キロまでは
環境庁もまた意見を述べることができるけれ
ども、それから先になるともう権限も何にもないということをおっしゃいまして、私もそうかなと思って
質問をしないで引き下がったのですけれ
ども、その後調べますとそうではないということがわかったわけでございまして、公有水面埋立法の第四十七条二項には、埋め立てしようと思うときには、
環境保全上の観点よりする
環境庁長官の意見を求めなければならない、とあります。それから第三十二条の二には、第四十七条二項のいま申しましたのを受けまして、埋め立ての面積五十ヘクタールを超える埋め立て及び
環境保全上特別の配慮を要する埋め立てに対しては
環境庁の
長官の意見を求めなければならない、と言っております。そして、この
環境保全上特別な配慮を要する埋め立てとは何かということについて、運輸省、
建設省、
環境庁の担当
局長間で覚書を交換をいたしまして、それは、地形、地質、植生等が貴重な自然海浜であって、特に重要である地域にかかわる埋め立てで十五ヘクタールを超えるもの、畜産農業、食品製造業、石油製造業などいずれかの工業が立地する埋め立てであって、その面積が十五ヘクタールを超えるもの、それから三つ目が、埋め立て自体が周辺水域の潮流を停滞させる等により、著しい
水質の悪化を来すおそれのあるもの、こういうことになっておりまして、十分に
環境庁長官は意見を申し述べる、あるいは協力を求められる機会がといいますか、
法律上の機会があるので、そういう点を利用いたしまして、くどいようでございますが、三全総の
一つとしてできました企画であって、それが現に苫小牧でも失敗をし、そうしてむつ小川原でも失敗をしたという前例が目前にございますので、さらにこれに志布志の失敗を加えるということは前者の轍を踏むものであって、どうしても避けなければならないと思いますので、どうぞこういう
法律を土台にいたしまして、
環境庁長官も反対の態度をとっていただきたいと思います。いかがでございましょうか。