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1981-03-18 第94回国会 参議院 公害及び交通安全対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月十八日(水曜日)    午前十時四分開会     —————————————    委員異動  三月十八日     辞任         補欠選任      田中寿美子君     本岡 昭次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  昇君     理 事                 山東 昭子君                 増岡 康治君                 坂倉 藤吾君                 沓脱タケ子君                 中村 鋭一君     委 員                 石本  茂君                 梶原  清君                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 関口 恵造君                 内藤  健君                 森下  泰君                 高杉 廸忠君                 戸叶  武君                 小平 芳平君                 中野 鉄造君                 江田 五月君                 美濃部亮吉君    国務大臣         国 務 大 臣        (環境庁長官)  鯨岡 兵輔君    政府委員        環境政務次官   福島 茂夫君        環境庁長官官房        長        北村 和男君        環境庁長官官房        審議官      石川  丘君        環境庁長官官房        会計課長     廣瀬  優君        環境庁企画調整        局長       藤森 昭一君        環境庁企画調整        局環境保健部長  七野  護君        環境庁自然保護        局長       正田 泰央君        環境庁大気保全        局長       三浦 大助君        環境庁水質保全        局長       小野 重和君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        林野庁指導部長  黒川 忠雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全並びに交通安全対策樹立に関  する調査  (公害及び環境保全対策基本施策に関する  件)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから公害及び交通安全対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、田中寿美子君が委員を辞任され、その補欠として本岡昭次君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 公害及び環境保全並びに交通安全対策樹立に関する調査を議題とし、公害及び環境保全対策基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 きょうは、さきの当委員会表明をされました長官所信に基づきながら、これに関する少し詰めた論議をいたしてみたいと、こう思っているところです。  この所信によりますと、さまざまな経済社会活動が無制約に行われて、大気あるいは水、あるいは自然などの環境を破壊する、あるいは国民の健康や生命、生活を損なうことがあってはならぬ、こう基本認識が述べられておりまして、まさにその意味では同感であります。ただ問題は、ここで言う無制約に行われるという、その制約範囲が一体どうなのかという観点等は相当論議のあるところだと思います。ただ、野放しにやられるということにつきましては苦い経験を持っておるわけですから、当然の話ですけれども制約考え方によってどう具体化をされ、明らかになってくるかというのは一つ基本的なことでして、そういう点があるわけですが、いずれにしましても、大綱的に基本認識という立場ではきわめて重要な問題でありまして、この基本認識というのは、単に長官環境庁という立場での問題ではなくて、鈴木内閣全体の完全な意思統一に基づいて表明をされているものだろう、私はこう理解をするのですが、その辺は内閣全体の認識に果たしてなっているかどうか。この辺の釈明をひとついただきたい。
  5. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 鈴木内閣のみならず、たとえどんな内閣であろうとも、私はこれは当然のことながら考えなけりゃならぬことだと思います。われわれは経済活動をやっています。そして、それはとどまるところがあってはならぬ。人口もふえるわけですし、欲望も無限ですし、とどまるところはありません。けれど、経済というのはおよそ——釈迦に説法でまことに恐縮ですが、手段であって、目的というのは、幸せな生活といいますか、健康な生活だと思います。それで、経済というのはしばしば足元を見てその大きな目的を失いがちなものじゃないでしょうか、やはり当面の問題ですから。そういうのを注意して、決して最終の目標ということを見損なわないように考えていくということが基本考えでなけりゃならぬ。これは鈴木内閣でなくてもどこの内閣でも、およそどんな政治でも政治というものはそういうものじゃないかなと私は思いますが、いかがでございましょう。
  6. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 まあ一般的に述べればまさにそのとおりでありまして、だれも異存がないところですね。ところが、現実問題としては、そこが一致をしておりながら、具体的には公害で大変悩まなきゃならない、こういう現実があるわけですね。とりわけ日本の場合には、その認識は少なかったとは思うんですが、現実問題として大変な後悔をしなけりゃならぬ、取り戻さなけりゃならぬ、こういう立場で進んできた歴史を持っておるわけですね。そうしますと、考え方基本というものは変わらないのになぜそういうような状態になったのかという、この反省は、たとえば閣議の中で行われておるんだろうか。ここを私は問題にしたいと思うんです。その辺はもう少し突っ込んで説明いただけませんか。
  7. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 当然のことでございますだけに、閣議でこれが話題になったということはありません。閣議の中で話題になったということはありません。けれども、閣僚の間でまあ私なんかが話題を提供して、そういうことが話になったことがありますし、また私が長官に就任するときに総理から言われたことはまさに先生が言われたようなことで、一生懸命経済をやらなきゃならぬ、そのときに環境ということを忘れては大変だから、二度と再び過ちを繰り返さないようにしっかりお願いしますと、こういうふうに言われておりますので、鈴木内閣の方針も当然のことながらそこに大きな留意がなされていると私は思います。
  8. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 ただ、いま環境行政という立場から物を見ていきますと、いま長官が大変な努力をいただいて、たとえばこの新聞記事によりますと、「「撃ちてしやまん」アセス長官」というふうな記者席記事なんかがあるわけですね。ところが現実問題、環境庁がいろいろないままでの知見を集約して環境庁なりのアセスを法制化しようと思って努力をしてきた。ところが、それに対して幾つかの異論が出てきて現実問題いままだ提案がされない、こういう状況にありますね。しかも政府の、関係の方々がいろいろそれについて論議を出しています。そうしますと、もともとでも理解の仕方によって、ずいぶん結果に対して意思統一がばらばらじゃないのだろうかと思われる節というのがうんと出てきているわけですね。この辺は長官、結局きちっとどこかで責任を持ち、明確に判断をして推進をしていく立場というものをつくり出さなければいかぬのじゃないのでしょうか。ということになりますと、確かに長官環境行政について鈴木総理からよろしく頼むと言われた、その言われたことが環境庁一つ姿勢の問題として、責任を持っていこう、そしてそれを進めようと、こうなっていることは間違いないのですが、それに鈴木内閣全体、他の各省庁も協力をする姿勢というものがきっちりつくり上げられる、このことなくしては今日何にも進んでいかないことになるのじゃないでしょうか。その辺のところは、長官が一生懸命に関係のところをお歩きになったり、総理のところへも直談判に行かれたというふうにこの記事によると書かれておるのですが、その辺の感触はどうなんでしょうか。
  9. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 実はけさも八時ごろからずっといまの十五分ぐらい前までこのアセスメント仁どに疑念を抱く人のその疑念を解くために努力をしできたんです。先生、私は大変なときに環境庁を預かったことになったなあと実は思います。先生方の多年の御努力によって環境問題に関係する法律幾つぐらいあるかなと思ってずっと並べて見ましたら、これはちょっと勘定して、番号がついていませんけれども、二十五、六ありますが、昭和三十年代の後半から四十年代、四十七年、五十年になるまでの間にざあっといろいろなものができた、公害基本法を初めとして。いまなぜ大変なときに長官になったかと言いますと、もうお察しのように、第一が油の問題でしょう。日本経済もなかなか容易でない。この間私はフランスヘ行って参りましたが、フランス日本よりもちょっと国土が広いんですね。西ドイツはちょっと狭いですね、イギリスもちょっと日本より狭い。日本も狭い狭いと思っていましたが、それらの国々と比べて必ずしもえらい狭いわけじゃないが、全然可住面積が違いますな。向こうは八割ぐらい使えるのにこっちは二割そこそこということですから、この中でこれだけの経済をやっていくのは容易でない。しかも、先ほど申し上げましたように、これが停滞していていいものじゃない。伸びなきゃならぬ。しかし今度は油でやられているということで、いまいろいろな問題でもってもう夢中になっているわけですね。どうしてもこの環境というものを忘れがちなことは事実です。これは何も政界だけじゃない、世間挙げてそうです。そんな先の心配をするよりは、いまの心配の方が大変だということでございますので、そのときにいまのことも心配だが考えなしにやっていると、またもと過ちを繰り返しますよと言って説得して回るのは、これはなかなか容易なことではないです。そういう中でいまやっているわけですから、先生が御心配のような御懸念は私はわかります。それだけに私も一生懸命になっていますので、どうぞひとつ御協力をいただきたい、切にそう思うわけであります。
  10. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私は、そういう御苦労が本当に実りあるもめになうていくためにもう一遍きちっとしなきゃいかぬのじゃないのだろうか、そういう気がしてならぬものですからこういう質問をしているわけなんですよ。  本来、長官がこの環境行政に関する最高責任者として座られている。長官を任命した内閣自体がそれを援護する、そしてそこに人間の将来求めていくべき姿を見つけ出して、それに協力をしていこう、こういう大筋になるわけですね。ところが、現実にはそのことが幾つかそれぞれの事業を進めていく段階の中では、何か対立をするもののように受けとめられて、明らかに調和といいますか、接点といいますか、それがあるわけですから、それはもう当然の話なんですが、事業を進める方の側から言えば何かしら対立をするような立場に立って論議が展開をされていって、どうも長官がやろうとすることについて何かスムーズにいかない問題の方が多く聞こえてくる。これでは困るのじゃないだろうか、もう少しその辺を解決する手段というのはないのだろうか。とりわけこの所信の中で、環境庁としてはいわゆる環境汚染未然防止、これを第一義にすると、こう言っているわけですね。さらに快適な環境づくり、まさに積極面がこれからの課題ですよと、こういうふうに言っている。この認識基本にあれば、私は、そう対立をしないで話ができていくのではないのだろうか、こう思うんですが、実際には、いま長官が苦労されているお話がありましたが、なかないそこの認識具体化をされてくるとどうにもならない。何かこの辺、環境庁としてのもう少し環境行政にかかわる権威の示し方、こうしたものが検討されることはできないのだろうか。これは設置法の権限と範囲、この中で法律的には一つは縛られていますね。ところが、この設置法に基づく問題にしても、果たして環境庁として全部中身まで含めて完全にやり切っているのだろうか。そろいう点から見ると、形は環境庁責任を持っているようでも中身としてはそこまで突き進んでいない、いわゆる事務的に処理をされている、こういう面が非常に多いのではないだろうかというよろな感じがするのですが、長官はその辺をどういうふうにお感じになっているでしょうか。
  11. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 話は後先になるかもしれませんが、やはり大きな開発などをするような場合には、環境庁意見はきわめて重みがありますから、そういう言い方はちょっと乱暴かもしれませんが、われわれの方で首を縦に振らないとなかなか進みません。その意味では十分ブレーキの役目を果たしているのですが、ただ、いまの状態は先ほど申し上げましたようなことですから、自動車でたとえればアクセルをいっぱいに踏んでいるわけですから、アクセルをいっぱい踏んでいるときに、わきからブレーキを踏むようなことはやめてくれと、ブレーキなんか要らないというような声はもうちまたにあふれている。それは私は認めざるを得ない。それだけに苦労するわけでございます。現に、今度衆参両院予算委員会総括質問はおかげさまで終わったわけですが、財政再建をどうする、ちまたは不景気で困っている、これに対してどういうふうに金利をするかなんというような話はずいぶんありましたが、忘れてならないのは再び公害を起こしてはならないことだよなんという話はほとんどなかったですね。質問にも。これはどういうわけだったろうかなあと。やはりいまはそういう時代、そしてまた、それは必要なことなんでしょう。当面、油なんかの問題でも、六十五年までには電気も油に依存しないで、油に依存することは五〇%にしようと、いま七十何%。原子力発電にしても五千万キロワットですか、そのうち三千万キロワットはめどはついたが、あとの二千万キロワットは何にもめどがついてない。それを六十五年までに稼働しようというのは、これはできない相談でしょう。しかし、できない相談と言っていたのでは大変なことになるからというので夢中になっているときに、環境をどうするなんと言うと、いかにもよけいなことを言っているように思われる世の中です。いまは。それは私は仕方のないことだと思います。だから、大変なときに長官に就任したなと思うんですが、先生方の御協力をいただいて、再びあの過ちを繰り返さないように、それから、目的手段を取り違いしないように。電源立地にしても何にしてもこれは全部手段ですから、目的は健康な幸せな生活ということですから、それを取り違えないように、ここでがんばらなければがんばるところはないと思いまして、まことにつらいですけれどもがんばりがいのある仕事をやっていると思っているわけですから、再度お願いいたしますが、どうぞひとつ御協力をお願いいたします。
  12. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 長官の言っている精神条項は私もよくわかるんですよ。ただ具体的に、たとえば端的な例を申し上げますと、いま話にありましたように、大規模開発問題等についてはへ当然環境庁がうんと言わなければ進んでいかない。確かにその面はありますね。それは事前評価のかかわりで、もう少しこうしたらどうかといままでも意見を言っていますね。それは確かにそのとおりです。  ところが、下水道関係、これは昨年の予算審議めときにも私は申し上げたのですが、たとえば、いま下水道関係というのは流域別下水道、いわゆる流総関係ですね、これが軸になって進められる。この中で、環境庁が一部改善も命じましてゴーサインを出しているのは——これは昨年の資料で申しわけないのですが、十五県二十流総ですね。昨年の四月九日現在です。結局、全国的に流総計画というのはずっとある。その中で環境庁協議を受けて、それに対する環境庁の見解、いわゆる回答を出して、その後建設省承認をしたというのは、昨年の段階で二十なんです。しかも、十五県です。ところが、具体的に流総に基づくいわゆる流域別下水道事業というものは、これは六十六カ所、昨年の段階で。これを地域別にずっとながめていきますと、環境庁相談なしに事業実施が行われているところの方が圧倒的に多いんです。これは少なくとも下水道法に基づいて流総に対して環境庁意見を求めて、それに基づいて建設省承認をするという、この立場からいきますと、事業の方が先行しておる形に対して、どこにも環境庁がひっかかっていないということになりますね。これらは一体、長官、どういうふうにお考えになりますか。
  13. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 細かい点は局長から答えさせますが、個々水質規制はやっているわけです。しかし、お話しのように、小さな下水道をやろうとする場合には、大きなまず計画を立てて、それでやうてくれればいいなあと私は思いますよ。思いますが、そういうことなしに個々のやつを先にやりますと、私のところは実施官庁でないだけに、われわれの方には何の話もなしに個々のものをへ単一にある町が浄水場をつくってやったり、あるいは町を連続してつくって、共同処理場をつくったりというようなことをやりますが、これは確かに私どもの方に何の連絡もなしにやっているんです。そういうものをやるのだったら川の流域全体としての計画を立ててやってくれたらいいなあとは思っていますが、そういうふうになっていないことは、お話しのように、若干私も遺憾に思うんですが、細かい点は局長から答えさせます。
  14. 小野重和

    政府委員小野重和君) 御指摘のように、流域別下水道整備総合計画を立てないで個別の公共下水道流域下水道事業が進められているというケースは相当にあることは事実でございます。私どもといたしましては、流総、これについては協議を受けることになっておりますので、流総計画をまず立てて、その上で個別の事業を進めるということが望ましいと考えておるわけでありますが、法律論ということになりますと、下水道法には、流総計画が立てられている場合にはそれに適合するようにと、こういうような表現になっておりまして、違法とは言えないかと思いますけれども、私どもとしては、流総計画を立てた上で個別の事業を進めることが望ましいと、こういうふうに考えております。
  15. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私は、法律にこう決まっているから、それが違法であるかどうかという論議をしているのではなくて、現実問題として、流総という総合的な流域全体の計画の場合には環境庁相談をするのに、そのことを構成する個別の流域下水道ですね、これはほとんどのところが、市が二つも三つも、あるいは町村が五つも六つもというところが圧倒的に多いんですね。長官はそれを小さいと、こう言われるんですが、私は小さくない。しかも、そういう個別の事業をやる場合に、これまた建設省との関係では、それに伴うアセスをやっているわけですね。ところが、法律的には、その事業実施計画に基づいては、これは環境庁意見を必要としないいわゆる法体系になっているゆそうしますと、総体の場合には相談に乗るんだが細かいやつは相談に乗らない。ところが、細かいのがどんどん積み重なっていけば、当然大きなものの計画を構成することになりますね。そういう立場環境庁が物の言えないというかっこうのままで果たしていいんだろうかどうだろうか。そのことについての検討を環境庁としては明確にすべきじゃないのだろうか。法体系がこうなっているから私のところは関係ありませんと、こう言っているところに環境行政問題点というのがあるのじゃないのか、こういう指摘を私はしているんです。これは法改正につながるかもしれません。しかし、実質的に運用の面では、私の質問に対する答弁としては、実質的には環境庁相談にあずかっていくようにしますという答弁はしている、いままでに。それは現実問題そういうふうになっているんだろうか。  ただ、いま問題になっています愛知県の境川の流域下水、これは土地収用法をかけて強制収用しようと、こうして問題になっているんですよ。そうした問題等については、環境庁は全然相手にされていないわけですね。だから、法律的になっていないからそれでよろしいですよと、こう言っていていいんだろうか。  しかも、確かに小さいところの下水処理場ができて、それが水の方に出されてくる基準がいわゆる示す基準値よりも低ければそれでいいじゃないかと、こういうんですが、いま行われて問題が出ているのは、そういうものを建設されたときに補償ができるかできないかの問題でそれぞれ異論がある。でき上がったもの、そこから排水をされる水の量に関係なしに、質に関係なしにいま建設の問題について問題が出ているんです。当然それは環境庁としても判断に加わるべきじゃないだろうか、そういう方向を指し示していくべきではないのだろうかという論議を私はしているんですが、どうなんですかね。
  16. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 私の考えていることをちょっと申し上げて、後で局長から補足してもらいたいと思います。  たとえば多摩川という川がずっと流れていますね、そうすると、そこに工場なんかがある場合にみんな規制してますよ。しかし、多摩川全体の下水道、そういうものの計画を立てるときの広域なものは、これは環境庁相談をすることになっているんですね。ところが、そういうもののないままに、個々にその近所にある幾つかの町が単独で、もしくは合同でいろいろやる場合には、実施官庁じゃないからというので私の方にその相談は、いま先生言われたように、ないわけですね。本来言えば、大きな計画があって、そしてその下の計画が出てくるというのが本来なんで、先ほどそうしてほしいものだと言ったのはそうなんですが、大きな計画のないまま単一の町や幾つかの町が連合したり、個々にいろいろやるのはこちらに何にも連絡がないので、大きな計画をやって、それから町のやつをやるようにしてくれれば、いままでの考えていたことがずっと動いてくるのですが、そうじゃないからいまは困ったものだなと私は思ってますと、こういうことをお答えをしたのです。
  17. 小野重和

    政府委員小野重和君) 特に私が長官の補足をする事柄は余りないのでございますけれども事業実施段階の問題でございますので、これは下水道当局がそれぞれの地域の実情に即した計画を立てられて事業を進められるということを私どもは期待しているわけでございます。私どもとしては全体の計画について協議を受けることになっておりますので、そういう全体の流総計画が円滑に進みますように期待しているところでございます。
  18. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) いま局長から答えたとおりでございますので、全体の計画を立てて、それで小さいところをおやりなさい、そうでなければ全体の計画の中に環境庁意見が入るということが何にも意味をなさないじゃないですかということは、御注意もございますので早急に検討して進めてみたい、こう思います。
  19. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 いま長官の言われましたように、もともと流総計画は早く樹立をして、それに基づいて細部の事業計画を進めていくように、それが仕組みなんですね。ところが総体計画がなかなか立たないから現実問題として事業が先行している。こうなっていますから、それは言われるとおりでありまして、早く総体計画を立てなさいよ、これはいいんです。それは一つの問題です。ところが現実問題この下水道なんというものは、いいですか、終末処理場がどこにつくられるのか、しかも、その終末処理場機能自体は一体どういうふうな設備でどう処理をしていくのか、そのことがはっきりしていきませんと、たとえば後それが大気にどう流れるのか、水の方にどう影響するのかというのはわからないんですね。たとえば流総全体のときにどこに処理場を設けますか、あるいはどこにどれだけの水を流しますかというのはなかなか出てこない、それが具体化をしてきますのは事業計画なんです。肝心のたとえば終末処理場を持ってくる地域、そこでどれだけの水が出た場合にどれだけの影響を与えるんだろうかということは、そこで初めて環境庁アセスについての目を向けなきゃならぬ時点だと思うんです。正直に申し上げると。総合計画も必要なんだが、そういう意味合いで事業計画環境庁がいわゆる環境立場から整理を、意見を言う、こういう機会をやつぱりつくり上げないとこの水の問題というのはきちっと整理できないのじゃないだろうか、これを言っているのです。だから、確かに長官が言われるように、総合計画を立てて、そうして細部のものをやってくださいよ、これは一つの流れです。しかし、その細部のものについても環境庁はそこまで口の入れられるような対応というものを持っていきませんと、環境行政の点からいって問題があるのじゃないか。ところが事業実施の主体のところでは、そんな段階環境庁に文句を言われたら困る、これがあるわけですね。だからこういう事業先行の問題がどんどん行われていく、私は、これはちょっとおかしいのじゃないか、こう思うんですよ。その辺をもう一遍見直すということはできぬのでしょうか。
  20. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 御趣旨はよくわかりました。大きい計画が立ちにくい、また、むずかしい隘路などがあったりする場合には、そんなもの待っていられないからというので個々の町あるいは町が連合して処理場をつくっていくというようなことが現実に行われている、それに対して環境庁が何にも言えなければ、アセスの問題にも関係してくるではないか、だから、現実の問題を考えれば個々の問題にも環境庁意見が入れられるようにする必要があるではないか、もともと大きい計画を立ててやるのがあたりまえだ、それはわかるが、現実の問題はこうなんだから、そのことについて考慮をする必要があるのではないか、お話よくわかります。よくひとつ検討してみたいと思います。
  21. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 いまこの国会に環境庁としては、この所信にもありますように、いわゆるアセスの法制化とそれから湖沼法ですか、提出をされる予定になっておる、こうあるのですが、その辺の今日の進行状況はどうなっているのでしょうか、改めて。
  22. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) アセス並びに湖沼の総合法、その進行状況はどうかという御質問でございます。  端的にお答えいたしまして、なかなか逆賭しがたいものがある、もう一段のわれわれ努力をしなきゃならぬと、こう考えてせっかく努力を重ねているわけであります。
  23. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 環境庁が提起をしておる法案はどういうかっこうに今日なっておるのですか、中身じゃなくてその提出に至るいきさつの問題は。まだ詰めなきゃならぬと、こう言っているのですが、どこをどう詰めるのですか。私は今日までこの委員会に所属をしておりまして何回かこの論議をやってまいりました。そうして、それぞれ各省庁の意見がなかなか合わないので意見調整にひとつ時間をかしてもらいたいというのがいままででありましてね。それがやっと昨年の段階で整理ができたと思っておるのです。公式の立場は。ところが、その公式の立場で整理ができたものがどこかへ雲隠れしちゃった、そういうふうに理解しているのですが、間違いでしょうか。
  24. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 雲隠れしていないのです。国会にも提出予定にしているんですから、すでに。ただこれが先生方に御審議いただけるという段階に達していない。というのは政党政治ですから、自由民主党の中でなお懸念ありと、こういうことでいろいろ話がありますので、その懸念をいま汗を流してときほぐしているわけであります。やはり政党政治ですから、そこを通ってそして先生方の御審議をいただく。しかし国会には出すんですよ。国会には提出して御審議をいただきたいということにはなっておりますので、われわれの考えは、去年の五月の二日ですか、各省庁の合議が終わりまして、そのときから法案はもうできているんです。だから私が長官になったときにはもう法案はできていた、できて二カ月ぐらいのときに私は長官になったんですから。そういう状態であります。
  25. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうしますと、ずばり言いまして環境庁は法案を提出したと、いわゆるその取り扱いをめぐって各党の調整がつかないからつるされているんだと、こういうことなんですか。大分事実が違うようですがね。
  26. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 各党の調整がつかないのじゃないんです。御案内のように、去年の五月二日にできましたときにはまだ国会開会中でございました。だから出して出せないわけではなかったんですが、自民党の中にちょっと待ったという異論がありまして、自民党の政調会長預かりになっていたことは御承知のとおりであります。そこで、つい先ごろまで自民党の政調会長預かりになっておりましたが、その預かりを外してもらいまして、いまは鋭意御検討いただいているというわけでございます。各党の間の調整がつかないというものではないんです。
  27. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうしますと、結果的に自民党が預かっているわけですか。
  28. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) そういうことになりますね、いまのところ。
  29. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 いかに政党政治とはいえ、自民党が預かる権限があるんですか、公式的に。
  30. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 国会に提出法案としてもう登録はされているんですから、やはりいかに政党政治とはいいながら一党によってという御意見よくわかりますがね、すべての法案そうでしょう。そうして、これはわが党内閣というわけですから、わが党内閣として出すべきものでない、わが党内閣という以上は、国会に出せば自民党としては全力を挙げて通していただくということに努力しなきゃならぬ。そのためには自分に懸念があったんじゃそういうことにならないから、そこで自分が懸念がないように、もう少し鯨岡から話を聞きたい、こういうことでございましょう。そこで、私は一生懸命汗を流して話をしているという段階でございます。
  31. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 どうも、私みたいに素人じゃわからぬのです。その辺が。(「知り過ぎている」と呼ぶ者あり)いえいえ、全然わからぬですね。それは確かに与党である自民党の協力がなければそれは長官として法案を通過させる自信がない、言いかえればそういう話になりますわね。しかし、逆に言いますと、いままでずいぶんもめにもめてやってきまして、それで何回か、聞くところによれば自民党の環境部会等で論議されてきている。そして、詰めに詰めて、やっと去年その辺の調整が終わった。そういう段階で、再びこれがまた問題があって、そしてまだ話を詰めなきゃならぬ、こうなりますと、一体、法案制定に対してどうなつているのだろうかなと(率直に言って疑問を持たざるを得ないんです。これはもういままでの論議の中でも、当初の環境庁案が幾つかのかっこうで変転をしていますね、中身自体。また今度文句が出ているということによって、またまたそれが引っ込んでいくのではないのか、こういう心配も出てまいりますね、逆に言いますと。その辺は長官は提出をする方ですから、これ以上もう絶対にと、こういうふうにお答えになるのでしょうけれども、しかし、ここまで論議をし、詰めに詰められてきて、しかも最終的に踏み切る、再びまた問題がこじれる、この辺はどうもすっきりしないのですがね、なぜなんですか。
  32. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) よく六回目だとか、五回目だとか言われるのですが、これは私は正確でないと思うんですよ。なぜかと言いますと、政府案ができ上がってからは五回も六回もたっているのじゃないのです。アセスメント法というものをつくらなきゃならぬということを言い出してから五回も六回もなっていますが、法案がまとまったのは、申し上げたように、去年の五月でございますから、強いて言えば去年の五月二日ですからね。それからこれだけ重要な法案が出せるというものじゃありませんから、国会へ提出はしなかった。だから正確に、最も正確に言えば今度初めて御提案申し上げると、法案をまとめて御提案申し上げるということでございます。  そこで、法案はまとまったんです。政府の方は。政府の方はまとまって、それなりに自民党のスクリーンも通ったんですが、重要な法案なだけに、自民党の方では一部懸念がある。全体としてアセスをすでにやっているのですから、今日アセスをやらないでどんな仕事だってできないのですから。アセスをやっているのだから、これを国会の御審議をいただいて権威と信用あるルールにしようということについては異存はないが、内容に多少の懸念がある。まあ、たとえ話で言えば、ブレーキとしてよけいなところがあるのじゃないか、そうすれば経済の発展に支障を来すのじゃないかというような懸念があって、この懸念があったんでは、国会に提出しても、われわれが一生懸命になって野党の先生方にもお願いをして通してくださいということを言えないから、もうちょっとわれわれで合点がいくまで鯨岡説明せよと、こういうことですから、一生懸命説明しておりますので、いましばらくひとつお待ちをいただきたい、こういうわけでございます。
  33. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 まあ、なかなか長官、うまく答弁をしていますけれども、実際には環境庁試案なるものが何遍か出たことは事実でありましてね、これは法案ではないと言えばそれまでの話ですよ。しかし、本来法案になるべき骨組みは、もう条文まで整理をされまして提起されてきて、そのことでもって話し合いが進められて詰められてきたことは事実でありましてね。それはその職にある方々の専門用語では通るかわかりませんけれども、一般的にながめておれば何だと、こういう話になってくる。これはこう、流れ流れきたことだけははっきり言っておかなければならぬ、実質的には。しかし、それだけの論議が積み重ねられてきて、なおかつ、いまの話なものですからね。しかも、この中身については、私どもは私どもなりに、こうあるべきだということについては、たびたび指摘もしてきたはずでありまして、それが含まれているか含まれていないかというのは、これはあけて見なければわかりませんけれども、いずれにしても早く——毎年所信表明の中には、制定に努力をいたしますと、こうなっているのですがね。私、ずっとここにおりますからよくわかっているのですが、毎年言っているのですよ。言っていてこれが実現をしない、これじゃやっぱり困っちゃうんですわ。だから、その辺にも、先ほど申し上げました、環境庁という、環境行政責任を持ってやっていくところのいわゆる権限というのが弱まっているのじゃないのだろうか。環境庁長官がうんと、こう言って、よし、これでなければならぬということになったたときに、もう少しそのことが貫けるような姿勢というものがやはりなければいかぬのじゃないだろうか、こういうふうに思うんです。  この所信の中に、一番最後に、「環境行政の推進に当たっては、十分に国民の声に耳を傾けていかなければ」ならぬと。いままでもそうなんです。これは鯨岡長官もそうおっしゃられる。この環境庁に対する国民の今日起こっておる声について、長官はどういうふうに受けとめられておりますか。
  34. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 御質問の趣旨が必ずしもよくのみ込めないのですが、私は、国民は環境庁のやっている仕事に対してかなり大きな期待を持っていてくれると、こう思っています。  それで、これは先ほどもその一端を申し上げたのですが、今日のことを心配する役所じゃないんです。この役所は。それは今日のこともありますよ。たとえば認定業務とか、それから公害による被害者に対する補償とか、今日のことはありますが、その大半は大仰に言えば政治哲学に立脚したこれから先の心配ですから。そうすると、今日的なことでないだけに忘れられがちですが、静かに考えてみれば、これでいいんだろうかなということを考える国民は、環境庁に対してしっかりしてくださいよ、あなた、しっかりしないと大変なことにまたなりますからというような声は頻繁にあらゆる形をもってわれわれの耳に入ってきております。国民の声はそんなふうに考えております。
  35. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 まさに期待は大いに持っている、ただ期待にこたえる体制が果たしてできているのかどうか、ここが問題なんです。  これは昨年の七月、五十五年の白書について、環境政策の問題をずっと集中をして、白書の出た後、これについて論議を掲載をしています。これは「かんきょう」という雑誌ですね。企画調整局ですか、川崎さんが白書についての説明をしている。この中に、言うならば二つの特徴的な意見、片方は「公害行政不要論」、片方は「公害行政後退論」、こういう二つの特徴で実はとらえています。まさに意見としてはそうなんだろう、しかし、この中に大変問題がたくさん出されているんです。この論文の中に。これが環境庁基本的な一つの流れになっていることについて私は総論的にはこの論について否定するものではないのです。ただ、ここでいま考え方については大変大きな問題がある。たとえば「社会、経済情勢が変化し、科学が進歩しているにもかかわらず、十年一日の如き公害行政が行なわれることの方がむしろ問題である。」、こういう指摘ですね。これは確かにここに書いてあるのはそのとおりです。「このような社会、経済の変化等に対応して、環境政策としてとられる行政措置が変化していくのは当然のことであり、行政の内容が変ったからといって、ただちにそれを行政の後退というのは、見当違いといわねばならない。」、こう結んでいるんです。そうしますと、私は、ここで言っていることは至極もっとものように思えるのですが、たとえばこの委員会で大変な激論を闘わしてまいりましたN02の基準の問題ですね。これをゾーン設定にしました、四—六ですね。このゾーン設定のときにも論議をしましたように、また、一方では公害防止技術というものもどんどん進化していきまして進歩している。片方では防除技術というものが進歩しておるにもかかわらず、当然いままで示しておった基準、それを基準以下に抑えるような技術というのはやっぱり進んでいくわけですから、本来なら、基準そのものについてここでいろいろと検討をし直すなんというようなことは、むしろこれが最善だというふうに決めた線は、それではどうしても技術的に不可能というなら別にいたしまして、そのための努力をすることによって引き下げることができるというのなら、なぜゾーン設定のように、しかも基準値を引き上げるような作業をしなきゃならぬのか、この辺の問題点はいまだに環境庁姿勢の問題として、いわゆる後退論として当然指摘をされる問題になっている。したがって、環境庁に対する国民の期待というのは非常に大きい。ところが、現に国民の立場からながめてみて、たとえば巨大開発その他それらに対して大変不安を感ずる。不安を感じたときにこれはお互い将来をみつめているんですね、将来をみつめて不安を感じている。その不安に対して環境庁がどういうふうに対応してくれるだろうか、これはまた大きな期待なんです。ところが、そういう問題に対してむしろ今日までそれらの期待にきちっとこたえるような行政の対応になってきたのかどうだろうかというと、大変これは問題があるのじゃないでしょうか。  いまはN02の問題を私は言いました。あるいはもう一つの例を挙げますと、いま問題になっています大隅開発等の問題もあるんですね。いわゆる志布志湾の問題等につきましても、あそこは環境庁立場からいうと、いわゆる公園の管理が明確に環境庁責任になっておる地域のところについては、これはまあ物が言えますね。ところが、そこから一歩枠を出た場合には、景観その他の問題についても問題ありというふうに思いながら、実はそのことに対する環境庁としての発言力、いわゆる発言をすること自体が許されない、こういうようなかっこうになっておるのじゃないでしょうか。そうしますと、国民の立場からながめますと、たとえば国立公園、国定公園等は、とりわけこれは景観の問題を中心に置きつつ、しかも自然保護という立場に立って指定をしている、その景観の面からいってきわめて変化をするんですが、そういうことについても、これはいわゆる環境庁の行政的縄張り以外のところになると物が言えない、これじゃ環境行政について将来を見て、しかも、将来を完全なものにしていこうという立場からいきますと、きわめてまだ不足をすることになる。そうしたことが国民の目からながめてみましたときに、果たして環境庁というのはわれわれの期待にこたえてくれる環境庁なのか、どうも余りこたえてくれないのじゃないか、こういうことになりはしませんでしょうか。これは例を出せば幾つかあるんですが、その辺はどうなんです。
  36. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 個々の例をお挙げになりましたが、それに一つ一つ答えよということではない、それはまた別にお話があるのだろうと思いますから、その際にお答えをいたしたいと思いますが、何でもかんでもこのままにしておけと言う人も世の中にはいます。もしそういうことを言うとすれば、それは無理だと思います。先ほども申しましたが、三十七万平方キロしかなくて、二割ぐらいしか可住面積がなくてこれだけの経済成長をやっていて、人口もわずかずつではありますがふえて欲望は大きいと、こうきているるですから、それで世界的にいろいろ貢献しなければならない役目もふえてきているわけですから、何でもかんでもこのままにしておけといったってとてもできることではないし、それは無理なことだと思います。そうかといって、いままでのものなんか全部壊しちゃったって構わない、経済でもってそこら辺をほじくり返しても構わないということを言う人がいたならばこれまためちゃくちゃな話で、そんなものはだめであります。そこでよくよく考えて、われわれが子孫に残すべき景観その他はできるだけ子孫に残しながら、現在の人の生命、健康を維持し、将来にわたってもそこに住む者の生命、健康を維持していくためにはどうしたらいいかということでわれわれはいろいろなことをやっているわけであります。アセスメントだってやはりそうなんでございまして、どこにでもここにでも環境庁が口を出さなければならぬというふうにも考えませんけれども、あらゆる仕事についてはアセスメントなどきちっとやって、いま申しましたようなことを十分に満たして、国民の今日的要望でない将来にわたっての要望を満たしていかなければならぬ、それに努力するのが環境庁の仕事である、こう考えて日夜奮闘いたしておるわけであります。
  37. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 したがいまして、長官、そういうような姿勢を貫いていこうとすれば、どこへでも口を出すというか、そのことがやっぱり留保されていなければだめだろう、環境については。私は口を出せるんですよと、したがって、問題が発生をするようなところについては環境庁は必ずくちばしを入れられるんだと、この権利が保有されないと問題があるのじゃないのだろうか。それらについて、環境庁は余り要らぬことを言うなという観点で受けとめられている間は、ちょっと長官のいまの意気組みと現実問題との食い違いというのが大きく出てくる。だからこれを何とか詰めていきたい。だから、もう少しそういう意味合いで環境庁が権限行使の場を拡大ができるようにしないといかぬのじゃないだろうか。決して環境庁は産業の発展あるいは社会の発展について、長官もたびたび言われておりますように、それにストップをかけるとか打ち壊わすとか、そんな考え方は毛頭ない、目的は一致をしている。ただ、観点としては人間の住みよい環境づくりのためにという、そこの点を中心にして物を考えている。それだけに各方面に環境に関しては物の言える立場というものをつくり出していく、今日の段階ではそれがきわめて不十分じゃないだろうか、こういう気がしてならぬわけです。ぜひそれは強化をしてもらいたい。長官幾つか関連の法案を調べられたようですが、そういう意味で私は関連のところをもう一遍見直してみる必要があるのじゃないか、こういうふうに思うのです。  とりわけ、たとえば瀬戸内法なんですが、この瀬戸内法が、四十八年臨時措置法ができましてから、そして後継ぎ法も審議してつくられました。しかし現実問題として、瀬戸内海はこの瀬戸内法ができてから海岸の埋め立て等は相当数ありますよね。私の手元に持っております数字からいきましても、いわゆる関係する各県での埋め立て免許の件数は、たとえば四十八年十一月から五十四年の十一月までの間に合計で千三百五十七件も環境庁承認をしているんです。環境庁承認をしているということがいいか悪いかということはきょうは論議をしませんけれども、少なくとも問題になっている瀬戸内にいたしましても、せっかく法案をつくって、大いに埋め立てについてはこれは世界の瀬戸内海なんだからなるべく自然景観を残していこうじゃないかという立場を踏まえてあの法律ができ上がっているわけですね。ところが、それにもかかわらず埋め立てが承認をしただけで千三百五十七件もその間にある。という話になりますと、これは一体環境行政はどうなっているのだろうかなと、こういうふうに言わざるを得ぬのです。正直申し上げまして。ぜひこの辺は国民の期待にこたえるような環境行政というものを明確にしてもらいたいというふうに思うのです。  そこで次の課題に少し、これも実際には個別の問題になりまして、専門的にはもう一遍また関係の主管の省庁に来ていただいて論議をしないといかぬのですが、実はこれはどこの委員会にかかるか知りませんが、広域臨海環境整備センター法案が提出をされましたですね。いわゆるフェニックス計画です。これは当然環境庁相談にあずかってきたと思うのですが、このセンター法案に対して環境庁はどういう姿勢でこの法案についての相談にあずかってきたのか、その辺を少し説明をいただきたい。こう思うのです。
  38. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 概略申し上げて、あとは局長から答弁きせますが、われわれが生活していくとどうしてもごみが出る。そしてそのごみは焼くか埋めるかするしかない。なるべくごみを出さないようにするということがまず先決ですが、それでも出る。その出たごみは焼くか埋めるかするしかない。焼くにしても埋めるにしても、いずれも環境問題から言えば問題があるわけですが、そこでできるだけ環境を害さないようにして焼く、そして焼いた残り、どうしても出てきた物は埋める、それはしようがないから埋め立てるということでございますから、そういう面で相談も受けました。そうすると、ごみを今度運んでくる道はどうだというようなこともいろいろ検討いたしました結果、あとはどこの海へどういう規模の埋立地をつくるのかという具体的なものが出てきてからわれわれの方としては考えるということで、総体の大まかなこういうふうにしてやっていくのだということについては、われわれは相談を受けておおむねの了承は与えております。
  39. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうしますと、個々具体的事業計画が出てこないと環境庁としてはということになっているわけですか。
  40. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) 当然この法律が制定されましてから後の具体的な議論に関係してくることは当然でございますけれども法律の仕組みといたしまして、このセンターによるいわゆるフェニックス計画が進められるに関連しまして、環境庁はどういうふうな関与になってくるかという点を現在わかっているところで御説明をしたいと思います。  フェニックス計画は、いわゆる広域臨海環境整備センターというものが策定する基本計画によって進められるわけでございますが、環境庁は、この基本計画を策定する際主務大臣がこれを認可いたしますけれども、その場合には環境庁長官協議するということになっております。したがいまして、坂倉先生指摘のように、基本計画段階環境庁長官協議がなされるというのが第一点でございます。  それからフェニックス計画を実施するのはいわゆる港湾の区域内でございますので、フェニックス計画が実施されるに当たりましては港湾計画というものにこれが取り込まれて位置づけられるという段階が必要でございます。この段階におきましては、環境庁長官は港湾審議会等の場において意見を述べるということが可能でございます。それからさらに進みまして、フェニックス計画に基づきまして、海面埋め立てということが実施をされるわけでございますが、その際には港湾管理者の長が行う公有水面埋立法による免許に際しまして運輸大臣が認可を行うという場面が出てまいりますが、その場面においても公有水面埋立法に基づきまして環境庁が関与するという形で当庁の関与が決められている次第でございます。
  41. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 結局、環境庁は、事業計画、いわゆる事業に着手をされることが具体化をしてきた段階意見を述べる、こういうことになりますね。おおむね、いまの説明からいきますと、いわゆる計画樹立をされてきた段階で。ところが、その前にこの計画自体に対する認識としてはどういうふうにお持ちになったんでしょうか。
  42. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) ただいまお答えしましたように、基本計画段階からさらに港湾計画に取り入れられる段階及び埋め立てが行われる段階に当庁は関与いたしますが、基本的な考え方としましては、先ほど大臣から御答弁がございましたように、この法律の中に、フェニックス計画を推進するに当たって基本的に「環境の保全に留意しつつ」という文言を法律の中に入れてもらっております。したがいまして、私どもとしましては、これが単にごみの埋め立て、廃棄物の埋め立てというような廃棄物の処理の観点からのみならず、同時にまた、それが環境保全という面からも十分配慮されたものであるということが法律上の要請として入れられておりますので、その線に立ってこのフェニックス計画に関与をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  43. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私は、今日、やっぱりそれ以上の観点というものをきちっと環境庁は持って相談にあずかるべきではないのか、こういう気がするんです。それは何かといいますと、環境庁立場からながめてみたときに、いわゆる高度成長期、六〇年代、これはまさに人に健康上の影響が幾つか出てくるまで野放しの状況、ざつくり言って。これが続いたわけですね。これは大変だということで、七〇年代に入って、いわゆる四日市の公害裁判その他いろいろな闘いの積み重ね、こういう問題があるわけですが、それに基づいて、結局野放しになっておったものが、大気やあるいは水等に出されておったものがそれぞれの発生源のところでなるべく対策を講じようじゃないかということになって規制が進められてきて、廃棄物にのいままで野放しに出ておったものがある程度整理をされる効果を示している。そして被害等についても救済措置、同時に被害を出さないような対策というのが進められてきた。そして今日に至ってきている。こうなるわけであります。  ところが、この過程で一番私どもが問題にしなきゃならぬことは、今日の社会生活を営んでいく形自体がこれはもう明らかに大量消費、大量生、産、ここから出発をしているというふうに見ざるを得ない。いま問題になっています。たとえば空きかんの問題だとか、あるいはパックの問題、使い捨ての風潮ですね。こうしたところに廃棄物がきわめて多く出てくる原因をやはりつくっている。むしろ今日省エネ等を含めまして資源の再生産、こういう観点に目が向きつつあるわけですね。これをもっと促進をしていくことの方が必要なんじゃないだろうか。そういう観点からいって、このフェニックス計画自体を環境庁としてはきちっととらえてもらわないと問題がある、こういうふうに思うんです。その辺の観点は残念ながらどうも欠けておるのではないだろうか。言うなら、今日の流通を含めて生産、消費という機構自体をもう少し見直しながら、国民生活によい環境をどうやってつくり上げていくのかという観点から問いかける、指導する、こういう立場環境庁の任務としてあって当然じゃないのだろうか。これは設置法による環境庁の任務としても、国民に対するそういう指導といいますか、簡単に言えば、そういう役割りが持たされておるはずでございます。この辺はどうもいまの説明を聞く限りにおいては不十分じゃないだろうか。私は、いまからでも環境庁姿勢というのは基本的にその辺を踏まえてもらいたい、こう思うんですが、どんなものでしょうかね。
  44. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 御説はよくわかりますし、私も全く同感であります。しばしば申し上げるようですが、そして、また聞きようによっては泣き言でも言っているようにとられがちなんですが、いまは環境庁環境などということを——国民はそうじゃありませんよ。国民はそうじゃないですが、現実経済を推進させる人たちには、環境庁は余り味方じゃないですよ、邪魔ですよ、どっちかといえば。何かというとストップかけてみたり、注意をしたりするんですから。また、それが役目ですから。私はしないわけにいきません。ですから、この基本計画を立てるときだって、当然埋め立てするときには公有水面埋立法があって環境庁意見を無視してできないんだから、それでいいじゃないか、基本計画のときには環境庁よけいなことを言わないでもらいたいなという気持ちが私はあったと思うんです。相談を受けている過程で。私は、そうでないと。いま先生の言われたような考えがありましたから、「環境の保全に留意しつつ」ということを基本計画を立てるときだって入れなきいということで、それを入れさせた経過などもあるんです。ですから、私は何でフェニックスと言うのかなと思って考えていたんですが、何がフェニックスなんだろうかよくわからなかった、初めは。ところが、いま先生が言われたように、資源を何回も使っていよいよ使えなくなったものは今度は地面としてまた生き返るぞという意味でフェニックスだというふうに私は聞いてもいるし、考えてもいるのですが、もしそうだとすれば、基本計画のときから環境問題というものに留意しながら基本計画を立てる。公有水面埋立法があるのだから、そのときに口出しすりゃいいじゃないか、それまでは黙っていろと、そういうわけにはいかぬ、こういうことでやってまいった経過がございます。
  45. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私は、そこまで進められて、そして当初入っていなかったその「環境の保全に留意しつつ」という言葉を入れたんですよという、それは確かに私はいいと思うんですよ。ところが、問題はどういうかっこうで廃棄物を少なくしていくかというところまで詰めていきませんと、これはやっぱり問題があるのじゃないだろうか。だから、そのことをやっぱり度外視して注文をつけられないようなことじゃ、これは困るなというのが一つであります。しかも、特に今日までこのフェニックス計画は、焦点としてとらえられてきたのは、いわゆる首都圏、近畿圏ですね、ここを中心に置いて論議をされてきました。しかも、厚生省と運輸省のなわ張り的な争いなんかも、いままで経過がこうあるわけでございますね。やっと両省の調整がついて法案提出と、こういういきさつになっている。ところが、この事業が行われていくということで今日まで発表されておりますね。発表されております資料というと、これは数字なんかも全部公に出ているのですから、そういう数字等を見ていきますと、たとえばこれでいままで計画になっている数字に基づいて東京湾が仮に埋め立てられますと、一日に日量で約千五百トンのいわゆる汚水の浸出というのが明らかに想定をされる。これはもう計算で成り立っているんです。あるいは大阪湾では日量約一千トンの汚水の浸出というのが想定をされる。こういうようなことが今度はこの首都圏、近畿圏だけではなくて、この法案によれば、北海道だけは外しまして、あとは二つ以上の都府県が組めば、港湾を持っているところは必ず事業計画を立てられることになりますね、すると日本の海というのは一体どうなるんでしょうか。片方でのいわゆる廃棄物を少なくしていく立場努力というのがうんと進んでいかないと、環境庁はその都度チェックはするとは言いながら大変な事態を迎えることになるのではないでしょうか。その辺の将来を見つめてという長官の希望からいきますと、私は、将来を見つめると大変な心配をせざるを得ない、この計画の進行は。私も海岸部に住んでいまして港なものですから、防潮堤なんかは運輸省の所管でやってもらっておるんです。ところが、そういうところに仮にこの廃棄物のいわゆる埋め立てが行われるということになったときに一体どうなるのだろうかということを考えてみましたときに、それが二つ以上の県で全部組めばこのセンターを設置しまして、受け皿ができて、そこで計画ができて、そして取り組める。これはしかし、それこそ大変な状況になるのじゃないでしょうか、海の問題は。
  46. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) ちょっとすみません。二つ以上の県が組むとどういうことになるということですか。
  47. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 センターができるんですね、二つ以上の都府県によってセンター設置ができる。それが保証されるのですけれども、それでいわゆる廃棄物処理の港湾埋め立ての事業計画ができることになるんです。結局、それは矢板でもってさくをつくりまして、その中に廃棄物を運んできて入れていこう、それから上の方は陸上の残土でもってさらに重ねていこう、こうなるんです。ところが、海岸へ向けてこう掘っていくわけですから、当然その計画の中には容量、それから何年ぐらいでどうなるかという計画が含まれる。そういう計画が二つ以上の海岸の都府県で組まれていくということになりますと、これは大変なことになるんじゃないでしょうか。だから、そういう重大なセンター法だと思うんです。そういう観点で環境庁がこれに対するいままで協議姿勢として持ってきたのかどうかというのが私がきょう言っておるところなんです。どうもそこまで突っ込んでいないのじゃないだろうかという気がするのです。  このフェニックス計画は、これはことしですからまだ新しいのですが、厚生省の奥村さんが非常に詳しく書いておる。これは「産業と環境」ですが、この中に数字なんかも全部挙げられています。しかし、これは大変な実は問題なんです。つくった後も行われていくのにきわめて心配の多い問題です。しかも東京なんかは、仮に想定をされる位置にその計画が進行するということになりますと、そこへ持ち込むいわゆる廃棄物の運搬の過程で、これはコンテナあるいは十トン車、こういうことになりますが、相当な量のものが通路に向かって集中をしてくるでしょう。いままでも交通の関係は大変です。ところが、この収集の集約をするところになったら、この数字で全部どれだけ運び込むか皆わかるわけなんで、計算をしますと。私はきょうはそこまで細かく言いませんけれども、そうした問題まで踏まえて環境庁というのはきちっと姿勢を正していかないといかぬのじゃないか。それが所管が厚生省、運輸省ということなものですから、何か横から環境庁が物を言っておるようになる。私は、これは日本環境行政にとって一番基本的な問題だと、こういうふうにまで思っているんです。その辺はどうも姿勢が弱いような気がするものですから、もう一遍ひとつ。
  48. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 先生姿勢が弱いとおっしゃいますが、あるいは弱いと言えば弱いかもしれませんが、われわれは埋め立てというものに対してそんなに簡単に考えているわけじゃないんです。要らないものは海に持っていって埋めればいいだろうというのは、これはきわめて簡単な考えですよ。資源が生き返るという意味で不死鳥と言うのでしょうが、これはきわめて簡単な考え方です。しかし、もっといい考え方があるかといえば、いまのところ見当たらないでしょう。  先ほども申し上げましたように、われわれが生活すれば必ずごみが出る、それをなるべく少なくしなきゃならぬということは言うまでもない。それから使えるものはもう一回使え、いよいよ使えなくなったら原料としてもう一回使えということもどんどんやっていかなきゃならぬことでしょう。しかし、これは当面環境庁が所管している事項ではありませんけれども、そういうことも十分やってもらわなきゃならない。そしていよいよだめになったものは焼く、焼いても今度は灰が出ますから、最後に残ったものが出る、それはもう埋め立てるしかない、こういうことになってまいります。ここに美濃部先生もおいでですが、東京湾なんか、私も東京が住まいであり選挙区でありますがね、どこまででもどこまででも東京湾は埋めていいものだとは私は考えておりません。それからそれを運び込むときに、その沿道がどのくらい迷惑をしたかということもよく知っています。だから、とてもいい、うまいことを考えたなとは思いません。けれどもこれから先どんな知恵が出てくるかわかりませんが、当面それしか考え方がないとするならば、環境庁としては万全の悪影響のないような形でこれに関与しながらそれを協力してやっていく以外にはない。協力というのはおかしいですが、監視しながらやっていく以外にはないじゃないか。やるのは環境庁がやるのじゃないですから何も協力をする必要はないのですが、監視をして環境を害さないように。先生のお言葉の中に出てまいりましたが、海のところに壁をつくってその中に埋めるんでしょうが、埋めると何かじくじく汚いものが海の中に流れていくぞと、そんなことはあっちゃ因りますから、その壁なんかもよほど流れていかないようなものにしてもらわなきゃ困る、私はお話を承りながらそう考えていました。  結論を申し上げますと、そんなにいい考えだと思わない、あたりまえのことですよ、要らなくなったら埋めればいい、ただそれだけのことです。けれども、それしか方法がないとするならば万全のことを講じて、土地が狭いのですから、少しでもその土地で生まれ変わるのならばいいだろう。そういう意味でフェニックスというならフェニックスでもいいですが、環境庁としては、申し上げましたような態度で対処していきたい、こう思っております。
  49. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 考え方にそう違いはないんですね、考えている形は違いますが。ただ私はこの計画を遂行するということに目が向き過ぎてしまって、いわゆるごみの資源化あるいは自然に還元をしていくという形、こうしたものが軽視をされてしまうのじゃないか。  それからもう一つ心配は、世の中が正常に動いておればいいんです。いわゆる性善説の立場を取り上げていくとすれば余り問題はない。ところが、御案内のように、公害の問題で大変なことになっていますのは、そうは言ってもはみ出す部分がたくさんございますね。性悪説をとるわけじゃないんです。ないのですが、現実問題としては決められたことも決められたようにしないで問題を起こす例が残念ながらたくさんあります。そうしたこと等を考えていきましたときに、国民全体の生きていく姿勢の問題について、もう少しきちっとした体制を築き上げる努力をしていきませんと、出口だけ広げてしまいますと大変危険な状態が起こりはせぬだろうかという気がするわけなんです。  ごく簡単に申し上げますと、たとえば埋立地が予定をされる、そこには管理型汚泥の問題と、いわゆる安定型汚泥の問題を区分けすることになる。いわゆる管理型というのは産業廃棄物を中心にいたしまして有害物質が含まれるであろうと想定をされるものですね、その辺の整理はある程度できる。ところがその管理型汚泥のところについて持ち込まれる廃棄物ですね、これはどこでどうチェックをするんだろうか。たとえばどこどこの、産業廃棄物についてはこれは別の法律がありますから、それに基づいてここへ廃棄処分しますよ、!埋め立てのところに持っていきますよ、その品物はこうこうこういうものですよと、こういう仮に、書類を出す。その出した書類と実際のものとが合っているかどうかということ、これは大変必要なことですね。しかも、管理型廃棄物の場合には相当有害物質も含まれるであろうということが想定できるわけです。私は相当厳密にこれをチェックする機能を持たなきゃならぬと思う。そうしますと、このチェック機能をそれぞれきちっとやっていくだけの体制というのはこういう計画の中でできるのだろうか、これがまず一つ疑問です。しかも、港湾の中へ埋め立てるんですから相手は塩水です。さくをつくりますけれども、そのさくは今日の工法の中で一体どういう、絶対に遮断のできるさくというのは保証されるんでしょうか。ほと、んどは鉄、いわゆる鋼管ですね、鋼管でもってさくをつくるというのが精いっぱいのところでしょう。コンクリートのやつではやっぱりにじみ出上る、こういうことがあって鋼管になった。そうすると、塩水と鋼管ですから当然時期が来ればさびてくる。どういう埋め立ての方法をするんだろうか、これはまた大変な問題であります。だから幾つかの観点で、この計画というのは進行していく過程の中で大きく問題を発生させていくことになりはしないか。場合によっては、いままで公害防止のために努力をしてきたことが一ところに集められてそこが発生源になって大変な環境破壊を起こすようなことになりはしないか、そういう心配を持っているのがこの法案だと私は思うのですよ。だから、これに環境庁が関与をしてきて、確かに文字は入ったけれどもなかなかこれは安心できない法案だなと。だから、そのことが安心のできるようにチェックをしていく幾つかの具体的な課題、これは環境庁に整理をしてもらわなきゃいかぬ。いまでも、たとえば工場ですね、発生源のところでは問題がたくさんあるんです。庁内処理としましてね。ですから、国民に対する生活態度といいますか、生活のいわゆる文化自体をどういうふうに構成していくのかというここの考え方一つは転換をする時期に来ているということがあります。これは、いわゆる大量消費型からもう少し私は形を変えたものに頭の中から変えていかなきゃならぬ、そういう時期に来ているだろう。それをどういう観点から変えていくのかといえば、やはり環境庁が音頭を取りながら、むだなものを何でも使い捨てでやったらいいじゃないかというような感覚を変えさしていくような音頭を取るように環境庁はやっていくべきじゃないだろうか。これは特に廃棄物が出てきた段階でね、私はそういうふうな気がします。  そして、いまたとえば再生利用の問題等について考えてみたときに、この再生利用というものについて、一体どれぐらいの率で今日廃棄されるものの中で再生利用が図られているんだろうか。いま全体の廃棄をされるべきでものの中で整理をさ、れ再生されておるものはどれぐらいになっておるのか。大体私の手持ちのところからいけば八%。これをもう少し具体的に、たとえば行政の中で少しそこに目をつけて、さらにそれをもっと整理をしていって二四%くらいまで引き上げているところもある。だから、そういう努力もこれから太いにやっていかないと、これはもう環境破壊に通じていくことになるのではないか。ここのポイントを外してしまいますと、これはもう変なことになってしまうので、そうしたところまで突き進んでやっていただくような立場というものを、新しい物のリサイクルの創造です。そこまで目一をつけて環境庁というのは指導していかないといけないのじゃないか、こういう気がするんです。その辺具体化をしていく検討を始めてくれますか。
  50. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) いまの先生のお話は、私は二つに分けることができると思います。  後先になりますが、一つの方は埋め立てそのものが非常に危険を伴うことだ、さくをやるといったって鉄でやれば塩水だから傷むだろうし、セメントだったらにじみ出るだろうし、中に入れるものが有害であるとどんな壁だって危ない、だから、中に危なくないものを入れる、危なくないということがわかるものを入れる、危なくないか危ないかということをちゃんとチェックするようなことをしないとだめだと、こういうお話でございます。よく承りまして、できるだけそういうふうに、いまでも埋め立てばそうやっていると思いますが、十分にひとつ考え関係方面とも連絡をとっていきたい、御注意をありがたくいただきます。  それからもう一つの問題は、何でも構わないから余れば、要らなくなったら捨てちゃえばいいのだというのはもったいないじゃないか、もう一回使えるものは使ったらいいじゃないか、全く私はそのとおりに思います。私どもがやってきた中で私がこれは過ちだったかなと思うのは、かつて使い捨て文化なんということが決して悪いことじゃないように、消費をどんどんすれば生産がどんどん上がって世の中が景気よくなるのだなんといったこともありましたよ。これは本当に間違ったことを言っちゃったという憾じが私個人はしておるわけでございます。このごろはずいぶんわかってきたように思いますが、それでも全体としてはまだ十分でないことは言うまでもありません。そこで、環境庁はそういう点にも努力をせよと、こういうお話でございますが、いたします。いたしますし、現にいたしております。空きかんの問題などは、もうテレビなんかに出させていただける機会があったり、あるいはラジオなんかでもそうです。それから書き物でもそうですが、いま百億本の空きかんが出ておる。その百億本の空きかんのうち相当多くの部分が埋立地へ行っているんですよ、もったいないじゃありませんか。電気が足らない足らないと言っていながら、アルミニウムなんか電気のかたまりだと言われているくらい。それをもう一遍炉に戻さないで埋立地へ持っていってしまうなんというのはもったいないじゃありませんかということを盛んに言うておりますので、そんなものかとわかっていただける面も、ごく少数でしょうが、あります。今後も続けていきたいと思いますし、空きかんばかりじゃありません。すべての財貨について、もう少しもったいないということを考えて、もう一回リサイクルするようなことを国民が考えるように御協力をいただきながら努力していきたいと思います。同時に、関係方面では、必ずしも賛成しないか知りませんが、何といいますかね、何回でも使えるような、なかなか壊れないような物を、安けりゃ安いほどいいですが、すぐ壊れちゃってごみになるようなものでない貨物をあらゆる面でつくるように、その物はそのときは多少高くても、結局その方が節約になるのじゃないか。これは環境行政から大分離れますが、しかし、ごみになってくると私の方に関係しますから、そんな宣伝もいたしておるわけであります。
  51. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 次に、これは私どもが前々から言っておったことなんですが、化学物質による環境汚染の問題も未然防止の観点からその対策の充実を大いに図ろうと、こういう表明をいただきました。化学物質にかかわる問題というのは所管庁もたくさんあって、これまた大変なことだろうと思いますがね。この辺、この化学物質による環境汚染の問題についての基本的な環境庁姿勢というのはどうなんでしょうか。
  52. 七野護

    政府委員(七野護君) 環境庁におきます化学物質の対策についてという御下問でございますが、基本的なことをお答えさしていただきます。現在使用されております化学物質は数一万点にも上ると現在言われておるわけでございまして、これらの物質が環境中に放出された場合の安全性を確認いたしまして、化学物質によります環境汚染未然防止を図るということはまことに重要でございまして、それが環境庁におきます基本的な姿勢であろうかと、かように考えております。  そこで、現実にどういうような方策が行われているかということでございますが、もうこれは先生御案内のとおりでございます。まず、新規に製造、輸入されます化学物質につきましては、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、俗に略しまして化審法と称しておりますが、これによりまして所要の安全性審査がなされております。環境庁長官は、環境保全の見地から、この化審法の適切な運用が図られますよう主務大臣に対し要請等を行うことができるということにされております。  次が、環境庁のプロパーの仕事と言っちゃ語弊がありましょうが、環境庁におきましては、昭和四十九年度以来、環境中、特に水質であるとか底質であるとか、個々に残留いたしております化学物質を早期に発見いたしまして適切な対策に反映させるために、化学物質環境安全性総点検調査、ちょっと長たらしいですが、化学物質が環境中にある、それを総点検しょうということでございまして、四十九年度から実施いたしております。現在まで約三百物質の調査が完了いたしてございます。  さらに、追加さしていただきますと、化学物質対策の重要性は、これはもう当然国際的にも強く認識されておりまして、OECD、それからWHOなどでも各種の活動は活発になされておりまして、環境庁といたしましても、これらの活動に協力しているところでございます。  以上、概略をお答えさしていただきました。
  53. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 いま合成洗剤問題が御承知のよう、に社会的に幾つ論議を呼んでいるわけですね。これは結局、いまテレビ等ながめていますと、合成洗剤であるけれども、無燐化、燐が低減をされればという観点で合成洗剤はどんどん宣伝をされている。この中に有害物質等はないんですか。これは調べられたことはありますか。たとえば洗剤を通じていわゆる水に影響する、こういう問題についてはどうでしょうか。
  54. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 局長から答えさせますが、燐は富栄養化の原因になるということで、滋賀県の県知事など大変お骨折りになりまして、それから住民の方々も御協力いただいて、これは大分徹底してきたようなんですが、燐が入っていなければ、いわゆる洗剤という、化学洗剤でいいじゃないか、粉石けんにしなくてもいいだろうというようなことで、いまでもテレビなんかに何か酵素が入っているとか宣伝がありますね。あれもいけないのじゃないかなという動きがあるんです。われわれの方で、一体、人体への影響、これも公害基本法にいうところの公害になるか、事業活動によって起こるところの健康、生命に被害があるのか、そういう意味でいまのところ、私のところで調べているのじゃないですけれども、厚生省あたりが調べているのですかな。通常の使用では特に問題がないというのが当局の意見なんです。いまのとにろは。私もそういうふうに聞いてその気持ちでいるんですが、局長からまた何か補足することがあったら答えさせます。
  55. 七野護

    政府委員(七野護君) 環境庁といたしまして、環境中に合成洗剤がどの程度あるかという調査はいたしたことはございます。ただ、長官からもお答えがございましたように、合成洗剤につきましての人体に対する安全性、これにつきましては環境庁が実施したわけではございません。これはもう数年来関係の各省庁が実施いたしておりまして、その結果は長官から御説明があったとおりと私たちも承知しております。
  56. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 水居はないのか。
  57. 小野重和

    政府委員小野重和君) 健康に対する影響というのは、いま長官あるいは部長がお答えしたとおりというように私ども承知しておるわけでございますが、そのほか生活環境といいますか、水生生物に対する影響いかんどいう問題が別途あるかと思います。これにつきましては、私どもとしましては、現在の環境水中に占めるぐらいの濃度であればさしたる問題はないだろう、こう考えておりますけれども、今後環境水中の濃度、これについてはさらによくトレースしてまいりたい、かように存じております。
  58. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 どうも頼りない回答なんですがね。有害だというふうにわかったものを、これは幾つかそれぞれの学説等もあってむずかしいところもありますね。少量ならいいとか、ここまでいくとだめだとか、幾つか量の問題あるいは質の問題でも論議のあることは承知しています。しかし、前々から言っていますように、有害であるかどうか、小量か大量かというような論議じゃなくて、有害か無害かという疑いのあるものについて、なるべくそれをはずしてしまう努力というのはできればどんどんやはり進めるということがきわめて重要な課題だと思うのですね。長官が言われましたように、洗剤問題は、これは石けんが一番いいんだと。石けんが一番いいのだというなら大いに石けんにしようじゃないかという運動をもっと広げていくべきじゃないでしょうか。各県なら各県で、これは環境庁も調べられておるのですが、まだまだ全然取り組みすらもなされていない県も二つ三つあるようですね、名前は挙げませんけれどもね。それから、取り組んでいるのもかっこうだけのところもあるようでして、まだまだこれはこれからの課題になっておると思う。その前に、なぜじゃ合成洗剤が問題なのかということについては、私はやはり率直に提起をしていくべきだろうと思うのです。たとえば臨界ミセル濃度等の問題も、いまではそのこと、自体が問題になってきておる。たとえば、物質がある一定の濃度でその目的とする効果がなぐなってしまうのか、あるいは少しでも残留しておれば最後までそれが働くのか、こういう問題等はきわめて大きな課題ですね。たとえば人間の体内に入ったときに、ある一定の濃度希薄をされることによって完全に無害になるのかどうか。どれだけ薄められてしまってもその働きが最後まで持続をする場合、これらの問題がどう影響してくるかということはもう明らかなんです。そういうようなものについても、明確にしていく、はっきりしないところははっきりしませんよというかつこうよりも、むしろどこに問題があるかということを積極的に打ち出していく、こういう努力はしていくべき課題じゃないか。これは行政当局としては大変むずかしい注文を私はつけているかもわかりません。物事を明確に、問題を全部並べていって、こうこうありますよというのはいいけれども、判定をしていくような方向で提起をしていくのは往々にして行き過ぎが出たりなんとかいうようなことで、大変むずかしい課題を私は提起しているかもしれませんが、少なくとも人の健康あるいは生命を守るという立場、それから人間の快適な環境をつくり出していくという立場からいけば、そういうことをあえて私は環境行政の中で真剣に考えて取り上げてやっていく姿勢というものを大きく期待をしたいと思っておるのです。これには幾つかの工夫がありましょうし便法があると思う。ところが、いま環境庁の中でそうした問題をではどこで検討をいただけるのだろうかと思うと、機構上なかなかむずかしいですね、長官。どこかでそういう問題を環境庁の中で検討願えるようなことはできぬでしょうか。そういう仕組みがっくれないでしょうか。
  59. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 石けんがいいのかもしれませんが、先生、やっぱり洗たくの効率からいってああいう洗剤の方がいいということになって、それが当面健康には影響ありませんよということで毎日のようにテレビなんかで宣伝していれば、どうしたってやはり洗剤を使いますね。だから、先生おっしゃったように、洗剤が本当にいいのなら本当にいい。あらゆる面からいって人間生活に、生命、健康、それはもちろんの話だが、すべての点から水局長の言ったような面の心配も、ないならない、あるならある、はっきりさせよ、これが一番大事なことだと思います。このことについては私どもの方で、やはり水居なんかも心配しておりますし、企画局の方だって考えますし、そういう洗剤についての機構はありませんけれども、そういうことの研究を怠っているわけではない。それからまた、本当にこれを科学的に研究するのは厚生省でしょうから、厚生省の方との連絡を密にしてやっていくということなんですが、洗剤の問題はこれはだめだ、こんなものは使っちゃだめなんだといってせっかく買ったやつを返すよといって持っていけば、売る方ではこれは悪いんじゃないんだから受け取らない、道路に置いた。警察が困っていたら、あしたになったらなくなつちゃった、みんなだれかが持っていっちゃった。そういうようなことですから、まだこれが危ないということをだれもわかっていないのですね。また危なくないか危ないかもわからないのですから、われわれもよく自信を持って言えないんですが、せっかくのお話でございます。確かに危ないと言っている人もいるんですから十分検討を、機構がどうであろうと、注意して厚生省と連絡の上やっていきたいと、こう思います。
  60. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 長官、洗剤の問題だけで私はいま申し上げたわけじゃないのですがね。ただ例として洗剤の問題を出しました。洗剤の問題に関する限りからいきますと、たとえば燐の問題は、私は、合成洗剤そのものの製造を禁止しろというのを三年も前にこの委員会でやったのです。そのときに燐の問題も論議になりました。ところが燐の問題については、当時はどういう見解だったかといいますと、生物にとってはある一定の燐はむしろ必要じゃないか、こういう論議ではね返してきておったのですよ、正直言いまして。ところがいろいろ運動が進んだり研究が進んだりすることによって、やっぱり燐はなくした方がいい。いわゆる燐除去の方向というのが出されてきた。これは洗剤工業界の力、そのときの判断というものも幾つかございます。今回またこの合成洗剤の問題に名前を変えたり、新たなかっこうが出てきております。きょうは、そこまで言いませんけれども、業界の動きも一つはございます。しかし、大体指摘をされてきたことが幾つか証明をされてまいりまして、そして、もう石けんの方がいいというのはだれでも否定ができない事実になってきている。ところが実際には材料がある。無燐化の工夫もしてきた。そこへいくまでのつなぎの間はこれをというようなかっこうになっている今日の状況、端的に言えば。これはちょっとお粗末過ぎるというふうに私は思わざるを得ないのです。ですから、その辺で、それは時代の流れ、それから研究の成果の問題、幾つ制約条件はあるでしょう。あるでしょうけれども、少なくとも問題が提起されたことについて、なるべく早く私は環境庁なりの結論というものを求めざるを得ない。特に所信の中でも総合的な立場を踏まえての検討、特にエネルギー問題等について長官が述べられていますね。こうした問題も研究し検討していくことは大いに結構なんですが、そのことが事実を追認していくようなかっこうじゃ私は何のための検討か研究かと言わざるを得ない。少なくとも環境行政、あるいはよりよい環境をつくっていくだけの指針という立場から言うならば、相当早くやはりこのことの急ぎをして、そして前導をしていきませんと価値観が薄れてしまうということに相なります。ぜひその辺を、いままでも努力をされていることについては一定の評価をいたしますが、その努力が実りあるものにぜひしてもらいたい。そして、環境庁立場から言えば、関係する各省庁、これは試験研究の問題等環境庁がいわゆる研究費等については予算相談にあずかっているわけですし、しかも、法案から言えば委託費は環境庁責任を持って配分を決めているわけでしょう。そういう立場から言えば、もっと私は督励ができるだろう。産業界の言い分に余りこだわって研究が進まない、こういうようなことに誤解をされることになったら大変だということだけきょうは申し上げておきたい、こういうふうに思います。  具体的な課題については余りきょうは突っ込んでやりませんでしたが、質問いたしましたのは、どうかひとつ環境庁が国民の期待にこたえられる、胸を張って環境行政が進められるように、名実ともに長官の双肩にかかっていますので、発言は大いに馬力があるようでありますから、ぜひそれを現実的にあらわれるように、まさに強化をしていただきたい、こういうことを申し上げて、ちょっと早いですが質問を終わりたいと思います。
  61. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 幾つか具体的な御注意、御提言もいただきましてありがとうございました。その他はもっぱら御激励をいただいて感謝にたえません。これからも一生懸命やりますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  62. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  63. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから公害及び交通安全対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害及び環境保全並びに交通安全対策樹立に関する調査を議題とし、公害及び環境保全対策基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 午前中の質疑にも何回か出ておりましたが、アセス法の行方ですね、これは毎年の例で、環境庁長官所信表明として国会に提案をいたしますと言ったり、国会へ提案すべく努力をいたしますと言ったりしていたわけですが、昨年は、五十五年五月二日ですか、閣議に報告もして法案ができているわけでしょう、それが提案できないのですか。それとも、見通しはどうなんでしょうか。
  65. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) お答えいたします。  去年の五月二日に政府案は最終的にまとまったわけであります。したがいまして、その前に出したいと言ったのは、出したい気持ちはもちろんあったのですが、政府案がまとまっておりませんでした。そこで、去年の五月二日に政府案はまとまりましたけれども、五月二日では常識的に言って御審議をいただいてそれを何とかするといっても、これは実質上無理な話でございます。そこで、今回国会に提案する法案として政府は登録をさせていただいているわけでございます。実質上まだ先生方のお手元に渡って御審議をいただくということになっておらないのは残念なことでございます。鋭意そうなるように努力いたしておることは午前中お話し申し上げたとおりであります。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう努力をなさっていることも、再三、長官からお話があったし、また新聞等にも報道されております。ことしは法案がもうあるわけですから、内容についての意見は別としまして、法案としてできているわけですから、当然国会へ提出すべき段階にあるわけです。そうこうしているうちに三月も終わりますからね。長官がいまおっしゃった、五月じゃいかにも遅かったと去年のことを言われますが、やがて五月にもなりますからね。いっごろをめどにしでおられますか。
  67. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 先生おっしゃるように、そうこうしているうちに三月も終わり、四月も半ばに来、またそれが終わるということになれば去年と同じじゃないか、そうすれば、去年は五月二日だったから、常識的に遅いというのだから、ことしもまただめになっちゃうのじゃないか、そういう心配はないわけではないので、そこで、できるだけ速かに先生方の御審議が願えるような形にしたい、こういって努力しているのですが、具体的に自由民主党の方では二十日ぐらいまでに自由民主党のとにかく審議を終わってみようと、こういうことでやっているように承っておりますので、期待をいたしておる次第でございます。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 三月二十日、あさってですね。  それで、何といいますか、自由民主党の関係の審議をしておられると思いますけれども、そういうことで当面の責任者としての長官は非常に責任感じておられるのじゃないかと思うんですね。どうなろうと、法案が提出されようと提出されまいと、一つくらい別にどうということないという立場にはないわけですね。環境庁長官としてその衝に当たっているわけですから、ことしの取り組む意気込みというか、決意というか、そういうものはいかがでしょうか。
  69. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 効果があるかないかは別として、私がかなり努力していることはお認めいただけたようなお話しぶりでございまして、もし仮にそうだとすれば、もう当然意気込みはお察しいただけると思いますが、私は、今度国会に提案されないようなことになると、極端なことを言えば、あるいはですよ、あるいはもう来年もだめだというふうに考えておりますので、何としても御審議をいただきたい。これは環境庁のメンツとかなんとか、そんなことを考えているのじゃないんです。これはあの痛ましいわれわれは過去に経験がある。そのために命を失った人もいます。それから、それで苦しんで今日まで苦しみ続けている人がいます。それを考えれば、今日ほど重要なときはない。なぜかなれば、経済の停滞が気になりまして、これを何とか打開しなければならぬということで夢中になっているのですから、それは重要なことです。それが重要なればこそ公害基本法に言われるように、事業によって公害が起こるのですから、それがわれわれの対象の公害ですから、そうすれば事業が活発になってくるときほどこの問題について考えなきゃならぬ、こう思いますので、私なりに、そしてまた、私の役所は全部そのつもりで努力をいたしておるわけであります。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官がそれほど努力をしなければ法案一つ国会に出せないというところは、どう考えられますか。それも、みんながそういう法案じゃ困る、そういうものを提案されたのじゃ困るという、そういうこともあり得るわけですが、しかし、この場合は提案すべきであるという大多数の意見もあるわけですね。それから、第一、総理もやると言っているのですね。鈴木内閣として、総理もやると言い、長官ももういままでにない努力をすると言う、どうしてそんなに努力しなきゃならないのですか。また、それはどわかり切ったことができないというのは、どういうわけなんでしょう。
  71. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) それほど環境庁が挙げて努力しなきゃならぬ、こんなわかり切ったことがと先生はおっしゃるわけです。まさにそのとおりだと思います。そのとおりだと思いますが、それだけに問題があるわけだと私は思います。  と申しますのは、先ほども申し上げましたように、油の問題ですよね、主として。わが国のように油に依存することが多いことはこれから許されない。油に依存しないでエネルギーを確保しなきゃならぬ、経済はますます発展しなきゃならぬ。こういうことになってくれば、その方面で努力する人たちの御苦労はこれまた並み大抵のことじゃないと思います。そういう際に、まあ、たとえ話であるいは適切じゃないかもしれませんが、自動車にたとえれば、私はアクセルじゃないですから、ブレーキですから、ブレーキ心配なんかすることないんだよ、いまはアクセルが大事なんだからということで、一生懸命になってアクセルをふかしているときにブレーキ。私に言わせれば、アクセルが丈夫ならば丈夫なほどブレーキも丈夫じゃなければならぬのじゃないかと言いたいところですが、ブレーキはちょっと邪魔になるなというふうに考えるのも私はわからないじゃない。わからないじゃないがその考えは間違っていますということでやっている。そこに骨折りの原因、焦点がある、こういうふうに思うわけなのでございます。  午前中も申し上げたんですが、これはやはり国民的な関心を呼ぶために、私は返答に窮して器量を下げるかもわかりませんでしたが、予算委員会なんかのときに、どうしてもう少し野党の方からも質問がなかったかなと思って残念に思っているのですが、もう終わってしまいまして、これはまことに残念至極なことなんです。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 予算委員会は参議院ではまだ続いておりますから、衆議院が終わったわけですが。  長官が、アクセルだけでブレーキは要らないなんという暴論ですね、そんなことで車が走られたらたまらないわけですね。それは暴論であるということを一生懸命説得なさっていらっしゃると思うのですが、一番の障害は何ですか。そんな暴論が通るわけはないです。自由民主党でですね。アクセルだけでいいんだ、ブレーキは要らないなんて、そんな暴論が通るわけはないですが、なおかつ障害がありますか。また、ことしできなければ来年も、将来もだめだろうという意気込みはよくわかりましたがね、何らかの障害が考えられますか。
  73. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 先生の御質問は、障害はどの方面からかということですか、それとも障害の中身は何かということですか。どの方面からか、それはたくさんあると思いますが、代表的なものを挙げるとすれば、先ほどからるる申し上げたように、エネルギー問題に御苦労なさっておられる方々、もっと端的に言えば発電所などをつくろうとなさっておられる方々は、午前中も申し上げましたが、そしてまた先生御承知のとおりで、いま五千万キロワットという原子力発電というものはまるで至上の命令のように、これがなかったらば大変なことになる、私もまたそう思います。それで、そのうち三千万キロワットはいま稼働しているのと準備のあるのと合わせて、残りの二千万キロワット強は全然めどがついてないわけですから、それで発電所をつくらなきゃならぬと、こういうことを言っているのですが、やはりこの間の例にもあるように、総論ではそれは必要だろうと言うのですが、それをあなたの町につくると言ったときに、やはりそこに問題がありまして、いろいろ何といいますか、心配なさる運動がありますね。そういうことによっておくれるという心配がそうでなくてもあるのにそこへもっていって、またこのアセスなんというものをやったらそ、の心配がますます増加する、こういう御心配、私はこの御心配に対して要らざる心配だと思ってないです。その道の人はそれなりに御心配なさるのは当然のことだと思います。ですから、それに対して私はいろいろお話をして、御心配はごもっともですが、あなたのおやりになることは結局は経済の問題ですから手段でございましょう、目的は国民の幸せですから、エネルギーはうまくいったけれども、病気になりました、死んじゃいましたというのじゃしょうがないですから、その辺のところをよくひとつお考えいただきたい。こういうことでお話し合いをしているわけでございます。
  74. 小平芳平

    ○小平芳平君 この法案が必要だということを私が述べるまでもなく、また長官がいま御説明してくださるのと同じ意見を私も持っているわけです。それは発電所の計画にしましても、場合によったらいままで以上にめんどうな手続とかいうものが必要になるということも言えましょうし、また見方によっては、とにかくルールができるわけですからスムーズにいくという見方もできましょうし、そういう点の議論はここではいまいたしませんけれども、そういうことで、どちらかというと、いま長官が説明なさったような暴論に屈することなくやり抜いてほしいということを希望いたしておきます。  それから、現在の公害対策基本法では典型七公、害というものを列挙しておりますが、そういう列挙されている典型七公害の中でも地盤沈下についてはいまだに規制法すらできていないということであります。これはやはり歴代長官所信表明で、規制法をつくる努力をいたしますとか、そういうことを述べたこともあったし、それから地盤沈下に対する法案は検討法案として上がったこともあるわけですが、ことしは検討法案にも入っていないし、それからこの所信表明でも、「地盤沈下、騒音などの各種公害についでも、その対策の一層の充実に努めてまいりたいと思います。」となっておりますが、この法案、地盤沈下についての規制はどう思っておられますか。
  75. 小野重和

    政府委員小野重和君) 地盤沈下対策ということになりますと、地下水のくみ上げの規制ということになるわけでございます。そういうことで地下水規制に関する総合的な対策をどうするかということになるわけでございますけれども、いままでは関係の省が提出予定法案ということでそれぞれ自分のところでやるというようなことでいたしましたので、これではいけないということになりまして、去年の五月から内閣審議室が中心になりまして、関係省一庁全部で、内閣審議室を含めまして七省庁になるわけでありますが、その会議を開いて検討いたしておるわけであります。  しかしながら、この問題はなかなかむずかしい問題でございまして、現在ビル用水あるいは工業用水につきまして地下水の規制をやっておるわけでございますが、地域的にはいろいろ問題がありますけれども、全国的に見ますると、地盤沈下が鈍化傾向にあるということもございますし、また地下水問題になりますと、単に地盤沈下ということだけでなくて、その利用をどうするかという利用を含めた対策ということも必要ではないかというような、いろいろな議論がございまして、まだ関係六省庁の間の協議が調っていない、こういう状況でございますが、これからも鋭意調整の努力をしてまいりたい、かように存じております。
  76. 小平芳平

    ○小平芳平君 その内閣審議室でまとまる可能性があるのですか、それが一つですね。  それから地盤沈下は環境庁の何局、何課で扱っていらっしゃるのですか。
  77. 小野重和

    政府委員小野重和君) 何とかまとめるように、これは内閣審議室が中心になっておりますけれども努力したいと思っております。  環境庁では、私の水質保全局の企画課が担当いたしております。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 水質保全局の企画課が担当しておりまして、その地盤沈下対策ということは、典型公害には挙げてあるけれども、それほど重要視していないわけですね。大気とか水質とか局があるのですが、局もなければ課もないわけですから。  それで典型公害にどうして入れたか、間違って入ったんだくらいに思っているのじゃないてすかね。  ところが、その地盤沈下はいろいろ監視、測定、地下水の規制、それから公共施設や家屋、農地等の復旧対策も必要にもなりましょうし、総合的な、対策が必要なんですね。きわめて総合的な対策が必要になる。したがって、佐賀県などからも、早く国が立法措置をとってほしいという要請が出ているわけです。それにしてはどうも、内閣審議室の方で急速に進めてくれればいいけれども、その可能性がなければ環境庁もちょっと手を抜いておられないということになりませんか。
  79. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) まことに申しわけないのですが、先ほど先生からいろいろお話がありましたアセスの問題で、早くなるか遅くなるかこれはわからぬ、あるいは事業が早くなるかもわからぬ、遅くなるかもわからぬ、けれども重要じゃないかと、こういうお話がありました。私も全くそのとおりだと思います。地域住民の理解協力を得なければどんな事業もできませんから、そのためには国会の先生方の審議を経た信頼と権威のあるルールづくりをしたい、こういうことでせっかく努力をいたしておりますので、何をやっているんだというふうにお考えでしょうが、いましばらくお待ちを願いたいと思います。  それから地盤沈下の問題ですが、私ごとを申し上げて恐縮なんですが、私は東京都会議員をしておりましたときに、東京の地盤沈下は非常に激しかったんです。一番下がったところで一年間に十八センチ下がったところがあります。これは大変だというので、そのことを騒ぎ立てまして、それから東京はわりあいに工業用水道がおかげさまで進んでまいりました。東京は一番日本じゆうで地盤沈下の激しいところでしたが、それがずいぶん少なくなりました。また、いま水局長から話がありましたように、全国的にも大分鈍化してきたことは事実であります。けれども、これを法律で一遍に規制することがなかなかできないのは、結局は、水局長も言いましたように、水をくみ上げることが原因ですから、飲み水のためにくみ上げているところがあるのです。それから農業用水のためにくみ上げているところがあるのです。これをいけないと言えばかわりの飲み水がなければだめだし、かわりに畑にまく水がなければだめです。そういうことが十分にできていないうちにこういう法律ができたら困るということももっともだと思いますが、まあ鋭意検討してこの法律をつくりたいとわれわれは考えておるのです。しかし、法律ができないでも、いま千葉県あたりでは、きょうも私はそれの決裁をしてきたんですが、工業用水道ができたから、この地区はもう水のくみ上げは絶対しては相ならぬということを決めた。きょう、いまこのお昼休みの時間に決裁してきたのですが、そういうふうにやって進んでおりますが、何といっても抜本的には法律をつくることがいいことはわかり切っていることでございますので、その方面にいま局長の言ったような努力を積み重ねていきたい、こう思っておるわけでございます。
  80. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 関連。  ただいま地盤沈下の問題について同僚議員からの質問がありましたので、私は関連してお尋ねいたします。  私は佐賀県の出身でございますが、現在、これはちょっと古い資料で申しわけないのですけれども、佐賀県の白石平野、ここが地盤沈下地域、三百平方キロメートルという日本でも全国一の広範囲にわたっておるわけでして、この三百平方キロメーターの中にはゼロメーター地帯が二百七平方キロある、こういうような大変な地域でございます。ただいま長官からここのところ沈下傾向は鈍化しているというようなお話もありましたけれども、これには多少地域的な格差があるのではないかと思いますが、この白石平野のごどきはいまだに鈍化は余り認められていない。こういう状況でありまして、現に、もう御承知かと思いますが、この杵島郡福富町にありましたシェル石油の佐賀油槽所がこの三月いっぱいで、地盤沈下が原因で閉鎖することになりました。こういうような地盤沈下のために撤去を企業が余儀なくされるというような事例は全国的にも少ないのじゃないかと思いますけれども、こうした沈下の主要原因、これはいまもお話があっておりますように、地下水のくみ上げ、これが原因である、こういう定説になっておりますけれども、まだまだ説明のつかない面も少なくないのじゃないか、こう思います。  そこで、環境庁は新年度から筑紫平野地盤沈下広域調査地域と指定して、三カ年計画で本格的に調査を始める、こういうことになっておりますけれども、その目的はもちろん総合的な地盤沈下防止対策を立てるということであり、また各地域の沈下防止計画、地下水の流動状況とか、そういう規制策、防災事業などを挙げでありますけれども、こういうことはいわば至極あたりまえのことを言っているにすぎない、とりたてるほどの目新しいアイデアは見当たらないような気がするわけですけれども、何となく政府側の打つ手というものがこの地盤沈下対策については特に手ぬるい、なまぬるいというような感を深くするものでございます。  先ほども申しましたように、この三カ年計画ということで調査が終了して対策ができ上がるまでにはさらにまた数年を要するのではないかと思いますし、この間には沈下というものはもう停止することなく進んでいくわけでして、こういうことを考えるときに、先ほど同僚議員からの質問もあっておりましたように、何となく私たちから考えるときに、この環境庁、国土庁、そういった関係省庁の足並みがそろわないためにその地盤沈下防止法などの特別立法というものがもう以前から言われておるにもかかわらずなかなか日の目を見ない、こういうような感を深くするものでございます。この点についてどういうような今後のお考えがあるか、これが第一点。  それと、いま一つは、先ほども申しましたように、全国屈指のこの佐賀県の広範囲にわたる地盤沈下というものは、まあ工業地帯の関東あるいは名古屋方面、こういつたようなところとはまたちょっと違った特別な事情があることも考えられるわけでして、こういう地域事情を考慮した対策のあり方についてお答えをいただきたいと思います。
  81. 小野重和

    政府委員小野重和君) 佐賀県の白石平野の問題につきまして具体的な御質問でございますが、確かに地盤沈下が相当著しい地域でございます。五十四年で三・三センチ——これはある地点をとらえているわけでございますが、下がっておりますし、五十三年は渇水の年ということもありますが、十・三センチ下がっているというようなことで、ゆるがせにできない問題であることは重々承知しておるわけでございます。  この原因でございますが、これは主としてやはり私どもは農業用水のくみ上げだろうと思っております。しかし、そのほかに工業用水用のくみ上げもある程度あるようでございます。  いずれにしましても、これは総合法制というお話もございましたが、個別、具体的に、総合法制ができなくても対策は立てなきゃいかぬ、講じなければいけない問題であると考えております。もう御案内かと思いますが、県条例の規制部分もありますし、それから工業用水道事業もすでに終わっているようでございますが、問題は農業用水ということになっているわけであります。先ほど先生からもお話がありましたが、私どもといたしましては、まず緊急に調査をしなきゃいかぬということで、広域地盤沈下対策調査というものを五十六年度から始めることにしておりますが、これはその地区別に、あるいは用途別にどういうような地下水のくみ上げの規制をすべきであるか、たとえばこういう地域では何割地下水のくみ上げをやめれば地盤沈下はとまるのかというような、そういう非常に具体的な調査でございます。そういう調査を一方ではまず私どもの方といたしましてはいたしたいということでございますが、結局、基本は地下水くみ上げ規制をすれば農業ができなくなる、こういうことでございますので、やはりこれは農林水産省の方でございますが、土地改良事業といいますか、灌漑排水事業、これをどうしてもやらないと抜本的な対策にならない、こういうことであります。  この地域につきましては、、筑後川の下流の農業用水事業が四十七年に着手されておるわけでございますが、完成までに相当時間がかかるようでございます。これを促進することが一番大事なことじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  82. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 特別立法についてのお考えはどうなんですか。
  83. 小野重和

    政府委員小野重和君) 特別立法の問題でございますが、一般的な立法ができれば一番いいわけでございますが、これは先ほどもお答えしましたように、なかなかむずかしい問題がありまして、現在、政府部内で検討中でございますが、この佐賀県の問題につきましては、立法措置ということもさることながら、やはり具体的な事業、特に土地改良事業を進めれば——ほかから水が来ればいいわけでございますから、それをまずともかく促進するということがもう決め手であるというふうに思いますので、必ずしも特別立法の必要はないのではないかというふうに考えております。
  84. 小平芳平

    ○小平芳平君 何か局長、余りはっきり聞き取れないですがね、肝心なところが。聞くところによりますと、要するに立法化する場合に内閣審議室はもうお手上げだというのですね。もう各省で勝手なごとを言って、ちょうどアセスと同じじゃないですが、あるいはそれ以上に各省の関係が入り乱れていて、とても内閣審議室あたりでまとめられるわけのものじゃないというような意見も聞いたことがあるのですが、環境庁としては、ここでまとめて立法化できる、しばらくお待ちくださいということでいいんですか。
  85. 小野重和

    政府委員小野重和君) ちょっと私、御質問の趣旨を取り違えまして、佐賀県についての何か特別の地域立法というようなふうに受け取ったのでございますが、この地盤沈下に関する特別立法と、こういうのが御質問の御趣旨というふうにちょっと私は取り違えておりましたので恐縮しております。  いずれにしましても、地盤沈下に関する特別立法といいますか、総合法制でございますけれども、これは関係各省いろいろな議論がございまして、いままでも調整の努力をしたわけでございますが、どうしてもむずかしいということで、特に内閣の審議室を中心に会議を開いているということでございます。何とか早くこの調整を終えて総合法制化の方に進みたいと思いますが、余り調整がうまくいかなければ環境庁でやったらいいじゃないかと、こういうことでございますけれども、何分にも政府部内で統一をしない限り法案は提出できませんので、内閣審議室ともどもこの調整の努力をいたしたい、かように存じます。
  86. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めのうちは環境庁がやっていたでしょう。やっていたというか、要するに地盤沈下は典型公害である、規制法を出そうと環境庁もそういう意欲に燃えわけですね。ところが、各省でいろいろなことを言うわけですね。こっちの方も立法したいというようなことを言い出す。そこで二年、三年、四年、五年と月日がたってしまうわけだ。役人がなわ張り争いをやっている間にも地盤は沈下するところはしちゃったわけだ。  そこで、どうして内閣審議室へ預けたんですか、内閣審議室ならまとまる可能性があるわけですか。
  87. 小野重和

    政府委員小野重和君) 地下水規制という事柄を地盤沈下と、こういう公害対策という側面からとらえますれば、環境庁が中心ということはこれは当然といいますか、あり得ることだと思いますが、問題は、そういう地盤沈下という面だけでなくて、地下水の利用、いろいろ各方面に利用しているわけでございまして、利用計画といいますか、そちらの方とも総合的に物を考えなければどうも調整ができないということになりますので、そういうことになりますと、どうも環境庁中心ということよりは、むしろ政府全体の調整ということになりまして、内閣の審議室、こういうところが中心にならざるを得ないというふうに私ども理解しているわけでございます。
  88. 小平芳平

    ○小平芳平君 いつから内閣審議室へ預けたのですか。
  89. 小野重和

    政府委員小野重和君) 昨年の五月から協議を始めております。
  90. 小平芳平

    ○小平芳平君 昨年の五月から始まって、何回くらい協議をしましたか。
  91. 小野重和

    政府委員小野重和君) 非常にしばしばやりまして、十五回やっております。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 十五回にわたって何をやりましたか。
  93. 小野重和

    政府委員小野重和君) その都度の議事録は手元にございませんが、問題の項目でございますが、まず総合法制がそもそも必要なりや否やというような議論から始めざるを得ない。先ほど申し上げましたように、地盤沈下は全国的に見ますと相当の鈍化傾向にございますので、そういうことも踏まえ、果たして総合法制が必要であるかどうか、現在のビル用水なり工業用水の規制でいいのではないか、農業用水等の問題もありますが、これは個別的に対策をとればいいんじゃないかというような議論もあるわけでございますが、あるいはまた総合法制化する場合の目的、これは地盤沈下という公害対策という側面からだけとらえればいいのではないかという考え方に対しまして、やはりいろいろな利水目的があるわけでございますから、利用という点も含めまして総合的に考えなければいけないのではないかというような議論もございます。それから地域別あるいは用途別の公平な規制と、こういうようにするためにどうすればいいかとか、いろいろな問題点があるわけでございますが、そういう点を逐一議論している、審議していると、こういうことでございます。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 私が申し上げたい趣旨は、先ほども申しましたように、地盤沈下は総合的な対策が必要なんですね。くみ上げ規制とか、それから調査とか、また復旧工事とか、とにかくそれで総合的対策が必要だということと、一たん下がったものはまた上がるということは余り期待はできないですね。ですから公害の中でもそういう意味では深刻な公害と言えるでしょうね。そういう意味環境庁ももう公害と、しては内閣審議室に預けたから当分静観というような気持ちかどうかですね。あるいは検討法案と言うのですか、正式には。かつては検討法案として出したこともあったわけですがね、そのくらいの熱意を持っていまでも取り組もうとしているかどうかですね。あるいは立法化するならその見通しはいかがですか。
  95. 小野重和

    政府委員小野重和君) 確かに現在、内閣審議室中心に議論しているのは、地盤沈下という公害対策の面だけでなくて、広い利用面も含めた総合法制ということでございますけれども、私どもといたしましては、地盤沈下という公害対策、これを進めなければならないことは当然でございまして、そういう意味内閣審議室ともども何とかしてこの総合法制化に進めますように力いっぱいの努力をしたい、かように存じております。見通しということでございますが、ちょっといまの段階ではいつまでということは申し上げられませんが、できる限り早く調整したい、かように存じております。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官、これは長官が在任中くらいに結論が出ないかもしれませんがね、やはり熱意がなくちゃできるわけないと思うんですね。何しろ役人の議論はなわ張りが主体であって、そっちの方へ流されてどうにもならないというようなことになっていたのでは、いつまでたっても結論が出るわけがないのですから、いかがですか。
  97. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) るる局長から申し上げましたとおり、まことに申しわけありませんが、大分足踏み状態であることは事実です。ただ、きわめてこれは簡単なことなんです。先ほどの御質問にもありましたように、まだほかに原因があるんじゃないかなという疑いはもちろんありますが、いままでのところ定説は、下からくみ上げるから地面が沈むと、こういうことでございます。したがって、くみ上げることを禁止するということが一番大事なんですが、工業用水につきましては、昭和三十七年法律第九十九号で工業用水法というのができて、「特定の地域について、工業用水の合理的な供給を確保するとともに、地下水の水源の保全を図り、もってその地域における工業の健全な発達と地盤の沈下の防止に資することを目的とする。」、こういうのがあるんです。ですから、この方はちょっと例を申し上げるのですが、先ほどの休み時間に私は決裁をしてきましたが、農業の方はなかなか容易でない。水をくむなと言われたら、畑にまく水はないというところは、これは猛烈な反対をいたします。そこのところを説き伏せるということは、なわ張りということでもないのですけれども、農水省の方としてはとても楽なことじゃないでしょう。そこで交渉に手間取るわけでございますが、そんなことを言っているうちに地面が海よりも低くなってしまったらどうするのだというようなことがありますから、せっかく熱意をもって努力を続けておるわけでございますので、ひとつしばらくの間御猶予をいただきたい。これはわからないことじゃないですから、わかり切るくらいわかっていることなんでございますが、そうしたらいますぐ困っちゃう、どうするというような問題がありますから、これはまた幾日かの期限を置いてやればいいようなふうにも考えます。  先ほどなわ張りというお話がありましたが、私は、少なくともなわ張りというようなことで物を考えるのはやめようということで、あらゆる一切の問題、やさしいものは一つもありません。なかなかむずかしいですが、湖沼の問題にしても、アセスの問題にしても、N02の問題にしてもむずかしいですが、すべてなわ張りというようなことではなしに考えておりますので、この問題も同様でございます。なわ張りということでなしに、何も環境庁の権限なんというのじゃなしに話を進めておりますので、しばらくの間御猶予をいただきたいと思います。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、長官の在任中に結論が出るくらいとはいかないまでも、御努力を願いたいと申し上げたわけです。  それから、いまのおっしゃった湖沼の立法の見通しはどうですか。
  99. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) これも概要について私からお答え申し上げて、細かい点は局長からお答えさせますが、先生方の御心配もいただきまして、水も大分直ってきたとは言えませんが、汚れるのがとまってきたとは言えるのじゃないか。特に瀬戸内海とか東京湾とか伊勢湾とかというやや閉鎖的なところはそれほどじゃありません。ですから、特別立法などをつくって瀬戸内海などはやっていただかなきゃなりませんが、それでも他の水から見れば海は大分よくなってきている。それから川も大分これもとまってきている。ただ非常に困るのが湖、沼なんです。これはもともと閉鎖性といっても全くの閉鎖性。それでも川から流れてきて向こうへずっと流れるようなことがうまくいっているところはいいですが、たとえば霞ケ浦のごとく、どこから流れてきてどこへ流れていくんだかちょっと見当がつかないというようなところはどんどん汚れてしまいましてね、大変なんです。琵琶湖なんかでもそうです。いまや琵琶湖の南の方の俗に南湖と言われている方は、かつてはそのまま水が飲めたのが、いまは水泳ぎも禁止されているという状態、その南湖から水を取って京阪神一千三百万の人たちは、もちろんそのままじゃありませんけれども、その水を飲んでいるわけですから、これ以上汚れたら大変なことになるということでございます。ところが湖は、たとえば諏訪湖にしても霞ケ浦にしても、琵琶湖にしても、、それぞれのところに特徴があります。飲み水の水を主としてやる湖、お魚を養殖するのを主としている湖、あるいはそんなことじゃない、レクリエーションのきれいな湖というような、いろいろ特徴があります。そこで、かくなる上は特別にひとつ法律をつくって、その地区の知事さんにどうやったらよくなるか、そこに置かれている特性を考えながらひとつ検討してみてくれませんか、そして知事さんが案をつくるのには御協力をいたし、知事さんは地域の住民の方々ともよく御相談の上で計画を立てて、それができたならばそれを権威づけて、政府もできるだけの力添えをして、湖の水をこれ以上汚さないように、あるいはこれ以上にきれいにするようにしようというのがこの法律のねらいどころでございます。ところが、やはりそうなってくると、川を管理する建設省、それからその近所にある農地などから汚い水が流れてきたりしますから、それを管理している農水省、それぞれ御意見がありますので、その方とのすり合わせに水局長は大変な苦労をしているというのが現実状態でございますが、これまたわかり切ったことでございますので、先生に御注意をいただいたなわ張り的な根性さえ捨てれば話はわかる、こう思いまして、水局長を先頭にしていま鋭意すり合わせに努力して、一日も早くこの国会で先生方の御審議をいただきたい、こう思っているわけでございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、水質局長、見通しですね、これはさっきの地盤沈下よりももっと目の前の課題でしょう。長官がこういうふうに説明していらっしゃるわけですが、各省との意見調整はもう終わりそうですが。
  101. 小野重和

    政府委員小野重和君) 何分にも水の問題というのは非常に関係するところが多くございまして、たとえば政府部内で外務省と郵政省以外は全部関係があるというようなことでございまして、そういう意味で大変何と言いますか、調整に時間がかかることはやむを得ないことだと思っております。そういうことで、この法律は非予算関連法案でございますが、一応の期限が今月の十三日、すでに過ぎておりますけれども、調整もこれから最終段階と言えるかどうかわかりませんが、それに近い段、階に来つつあるというふうに見ておりまして、一日でも早く政府部内の調整を終えて国会の提出までいきたい、またいけるものと私考えておるわけであります。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、大分時間も過ぎましたので、低周波空気振動については、この基本法にある「振動」には入らないわけでしょう、と思いますが、低周波については具体的な例を挙げてこの委員会で問題提起したこともあったわけですが、その後どうなっておりますか。
  103. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) この問題は局長から答えさせます。
  104. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) ただいま先生最初におっしゃいました公害対策基本法の「振動」の中に、私ども、これは地盤を媒体とする振動に加えまして、空気を媒体とする低周波、空気振動も含まれるということで解釈をしております。その上でいま対策を何らか見つけようとして努力をしておるわけでございまして、これにつきましては五十二年から本格的な調査研究に取りかかっておりまして、一応五十七年までの目標でいま調査をしているわけでございますが、何せ非常にむずかしい問題でございます。規制に入りますにはやはりそれなりの根拠が必要でございますが、なかなか生理的な影響、健康影響、そういうものに対する結論が見出せない、何とかして私ども一日も早くやりたい、基準をつくりたいということでいま努力をしておるわけでございますが、なおそうは言いましても現にいろいろ苦情がございますし、被害を受けておる方々がおるわけでございます。したがいまして、私ども、五十三年からは低周波空気振動の緊急防止対策と申しますか、苦情の大半が工場の施設関係でございますが、たとえば圧縮機、送風機あるいは大型ディーゼルエンジンだとか燃焼炉、ポンプ、こういうものにつきましてかなりいろいろな防止の方法がわかってまいりました。これらにつきましては、私ども、わかった都度、都道府県の方に連絡をいたしまして、かなり最近では、たとえば戸ががたがたいうというようなものさえもう防止できるというところまで、こういう工場施設については指導でかなりな解決がなされておるということを都道府県の方からも承っておるわけでございます。  なお、今後基準の設定その他につきましては急いでやってまいりたいということでございますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、公害対策の典型七公害というようなことを中心に質問いたしましたが、公害対策基本法では環境庁として環境行政を進める上に少し物足りないのじゃないか。この七公害というものを列挙してはおりますけれども、やはり国民生活から見ると日照とか電波障害とか、そのほかちょっと観点が違いますけれども歴史的な遺産とか、いろいろなことがもっと複雑に実際の国民生活は入り乱れているわけですね。したがいまして、七公害を目標にしてこの規制が何にも優先するというときもあったわけですがね。しかし、この七公害の中でもいまだに規制のついていないのもあることは、いまずっと質疑で繰り返したとおりなんですが、それにしても親しい環境に応ずる考え方が必要な時期なんじゃないかということを申し上げたいわけです。  それで、自然環境保全法もありますが、この自然環境保全法はすぐれた自然の保護というようなことが中心でありまして、人間の住む都市の環境、都市周辺の景観、そういうことを必ずしも問題としていないわけですね。ですから、これはいますぐここで結論は出る問題ではないし、また環境庁長官としてのお考えも、ここで賛成か反対かというようなことを問うのも無理なんでしょうけれども考え方としては、この典型七公害と、して狭い意味公害を取り上げ、その規制をし、その過去のもっと美しい状態を取り戻そうとしたときのやり方では、ちょっと時期が合わなくなってきているのじゃないか。かといって自然環境保全法ではすぐれた自然の環境というようなことを問題にしていて、結局、われわれが生活をしている日常生活環境がどう守られていくかということが主眼にならないじゃないか、そういうような点をどう考えられますか。
  106. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) いまわれわれが基本の原則として仕事の上で物差しにしておりますのは、先生方の御審議を経た公害基本法です。いわゆる七公害というもの、大気の汚染とか水質の汚染とか、土壌、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭といったようなものを公害として考えてやっておるわけでございます。いつまでもいつまでもこの七つでいいということはありません。時代の変遷、生活様式の変化によって、あるいは私どもがいま考えておらないものも先生方の御審議を経てこの公害基本法公害の中に入れるという時期もあろうかと思いますが、いまのところは、お決めいただいた七つを公害として考えてやっているわけであります。  日照の問題にしても、電波の問題にしても、それはもちろん生活に非常に影響もあることでございますが、日照の問題は建築の方の法律もありますし、電波の方は電波法もあったりして、一応そちらの方でいまのところやっておるわけでございますので、しばらくの間はそれでひとつやっていく、それから景観などの問題については、これまた先生方にお決めいただいた公害基本法と同時に、われわれの物差しのもう一つの物差しは、自然の環境法律がありますから、これが基本でありますから、これに基づいてやっていこう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、環境庁には統計がないですね。これは何かのときにどなたか発言していたんですが、環境庁には統計がない。生態系を含む環境問題として、現状をまず記録するなり統計で位置づけるなりした上で事前評価が生きてくるのじゃないか。それが現状の生態系とか環境そのものが統計もない、したがって実態も把握できていない、その上に立って何を評価するのかということになるわけですね。そういうような意見に対してどう思われますか。
  108. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) 環境庁全体のことに関連することでございますので私からお答え申し上げますが、御指摘のような自然あるいは生態系等に関連する基本的な情報いかんということでございます。そうしたデータの重要性につきましては、私ども非常に環境行政推進の上に大事なものだというふうに考えておるわけでございます。  御指摘のような問題に関しましては、自然環境保全法の規定に基づきまして、それぞれの日本全国における植生の問題であるとか動物の問題であるとか、あるいは自然景観の問題であるとか、あるいは植物の群落の問題であるとかというふうな、あるいは湖沼の問題だとか、そういう日本全体の自然状況に関しましては五年に一遍のいわゆる緑の国勢調査と称する全国的な調査を実施してまいりまして、ただいまたしか第二回まで行っておりますが、詳細なデータを蓄積中でございます。これらを私どもなりに分析し整理をいたしまして、これからの環境行政を進めていく上の一つの大きな科学的なデータとしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、廃棄物について、これは午前中に質疑があったので詳しいことは省略いたしますが、廃棄物をまず減量することですね。あるいは資源として利用できるものは再生利用するあるいは発電などもですね、発電所ができる場合発電をするということですね。そういうことが現状としても行われております。  それから、環境庁長官坂倉理事の質問に対する御答弁でもおっしゃっておりましたが、非常に熱意を持って語っておられることを伺いました。また、かねがねニュースなどでも見ております。  特に大事なことは資源として利用する、あるいは発電する、あるいは減量する、そういうようなところへ格段の力を入れて推進していただきたい。推進する必要があると思うんですね。これは直接の行政は厚生省が当たっているでしょうけれども、そういう点に力を入れて進めてほしいと思いますが、いかがですか。
  110. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) この問題については午前中も申し上げましたが、これは環境行政というより前に、先生方のお力をかりて、いまわれわれ生きている者が使い果たしちゃっていいものじゃない、子孫に渡していかなければならぬものですから、使い捨てとかいうような考えは大きい間違いなんであって、使うときからもったいないということで使って、一遍使ったら使えなくなるまで何度でも使って、それでいよいよ使えなくなったら今度は原料としてまた使えないかというように国民全体が心がけるように持っていく指導と言っては口幅ったいですが、そういうふうに国民に心がけていただけるように持っていくということは、これは環境というより前に大事なことだと私は考えまして、午前中の答弁でもそうお答えしたところでございます。  しかし、そうやってもこれは最後にはいよいよだめになります。それで今度はリサイクルして、いよいよだめになったときにはどうするか。そうすると、いよいよ今度は環境の方に近づいてまいりますから、私は燃せるものはこれは燃してくださいと言っているんです。それで、燃せないものとか、あるいは燃したかすとか、こういうものは今度はどこかで埋め立てるしかないだろう。そうなってくると、燃せば大気に影響がありますし、埋め立てれば水に影響があったりいたしますから、そこで厳重にこの問題をチェックしていきたい、こんなふうに考えておりますので、もともと先生言われたとおり資源を大事にしようということをわれわれは国民に要求していきたいと、こう思います。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 終わります。
  112. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、環境庁長官所信に対して質問をしたいと思います。  所信表明の第四の項には、「公害健康被害者対策の充実であります。」ということが述べられております。「公害による健康被害に苦しんでおられる方々に対しては、その迅速かつ、公正な保護に万全を期することが、環境行政の重大な責務であります。今後とも、公害健康被害補償制度の円滑な実施を図るとともに、認定業務の促進など水俣病対策の推進に全力を挙げてまいる所存であります。」、こういうふうにお述べになっておられるわけでございます。  ところが一方、こういうことが起こっております。たとえば財界の総本山であります経団連の環境安全委員会がセンターになって、NOXの総量規制つぶし、公害病認定患者の切り捨て、それから補償制度の終えんをねらった動きというのが大変強まっておることは御承知のとおりでございます。  財界のねらいを端的に表現をいたしました経団連の内部文書も、これをちょっと引用してみますと、これは五十四年の四月十六日付の文書でございますが、「基本的な考え方」という点で、こういうふうに書いている。第一に、「制度廃止を目標に、段階的に改善を図っていく。」、二番目は「まず、指定地域をへらす、認定も出来るだけ紋る。汚染に関係ないものは積極的に本制度から排除することにより、全体の所要額をへらす方向にもってゆくことを主眼とする。」、それから「(三)既存の認定患者については、治療促進をはかり、治ったものを認定更新時にはずしてゆく。(四)最終的には本制度は廃止し、残った患者は別途の経過立法ないしは他の制度に引継ぐ。(例えば、健保、労災等、他の社会保障制度の中で救済する)」などと言われているわけでございます。まさにこのようなねらいに基づいて指定地域の解除、新規の患者の認定の制限あるいは既存の認定患者についての等級ランクの引き下げ、そして認定から外すなどの動きが急速に強まってきていることは御承知のとおりでございます。  昨年も私は十一月の本委員会で福岡県大牟田市、大阪市の西淀川区の典型的な事例を挙げて質問をいたしました。環境庁が昨年打ち出したぜんそく性気管支炎の六歳以上に対する年齢制限の導入の方針、これも認定切り捨てとして患者団体あるいは現場で直接主治医として携わっておられる先生方から大変激しい反対を受けたのは、これまた御承知のとおりでございます。  ところが、今回環境庁が認定の際の検査項目にフローボリューム曲線解析、これを義務づけるということ、それから複雑多岐にわたる問診項目を導入することの二つ、これは患者団体が事実上認定制限につながるものではないかと言って激しく反対をしておるものでありますし、また認定審査会や主治医の先生方も大変強い批判を表明しているものでございます。したがって、環境庁長官所信表明に言われております「制度の円滑な実施」、これを図ると述べておりますけれども、まず最初に伺っておきたいと思いますのは、公害患者の救済についての基本的なお考えですね、これを最初にお伺いをしておきたいと思います。
  113. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 御質問の趣旨がよくわからないのですが、公害患者の救済に対する基本的な考え方、これは公害基本法にも言うように、「事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染」など、いわゆる七公害と言われているものによって「人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。」、そういうことによって被害を受けて病気になった方、亡くなった方に対する補償はもちろんですが、病気になった方々に対して病気を治すために全力を挙げていく、それから、そのことによって病気になったんじゃないかなと思われる方に対してその認定作業を急ぐということが基本のことでありまして、おっしゃられるまでもなく、われわれの仕事の一番スタートはそこから始まっているわけでございます。それは私の基本所信表明に言ったところに一字一句偽りはないわけであります。ただ、いま先生のお話がありましたが、どこからかそういういろいろな話が出てくるということ、私は見てないのでよくわかりませんが、いろいろな人から意見を承って、それによってわれわれのやっているところに間違いはないか、あるいは御支持がいただけるものか、常に私どもはそれを反省の材料としていかなきゃなりませんから、そういうふうにやっているのですが、病気の者を切り捨てようなどという考えはあってはならぬ。いままでだって一遍もそういう考えを持ったことは、当然のことながら、ないわけでございます。病気が治った人はいつまでもいつまでも救済の対象にしていく必要もない、これもあたりまえの話で、だから治ったか治らないかというところが問題なのであって、治ったということがはっきりすればこれは対象から外れるのはあたりまえ、それから治りもしない者を対象から外すなんていうことがあっては万ならない。非常にむずかしいところで、われわれは、もしそういう治りもしない者を治ったなどということになったら大変だというふうに毎日自戒しているわけであります。  それから、お話の中に出てきた何やらむずかしい名前の器械ですね。それは何も私どもの方でまだ使うと決めたわけのものではありません。これを使えばいいよという専門家がいます。それから、これはむずかし過ぎてなかなか使い切れまいというようなことを言う専門家もいます。ですから、私らの方ではもう少し検討して、それを使うようにした方がいいのか悪いのか、それはこれから検討していきたい、こう考えているわけであります。
  114. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 長官がおっしゃるように、健康被害を受けている者を無理やりに削ったりランクを下げたりするつもりはないとおっしゃるんだけれども現実には、昨年も指摘をいたしましたように、西淀川の実例でもそうですし、大牟田市の実例でもそういう事態というのが次々に起こってきている。その上でさらに認定作業について従来の医学的検査の項目を改正をして問診項目を新たに導入をしたり、あるいは検査項目を新たに加えようという動きが出てきておるわけでございますので、これについてちょっと聞いておきたい。  一つは、二月の六日に名古屋で開かれた全国認定審査会中部ブロックの会合の際、今度導入をして義務づけようという、フローボリュームの義務づけというこの検査項目の改定ですね、これは課長通知で出す、それから問診の項目は事務連絡の形で出すんだということを言明をなさったようですけれども環境庁としてはこれを出すということに御決定になったんですか。いまの長官のお言葉では検討中というお話でございましたが、いかがですか。
  115. 七野護

    政府委員(七野護君) 医学的検査項目につきまして現在見直しの作業を進めていることは事実でございます。ちょっと内容を御説明いたしますと、この医学的検査項目は、昭和四十五年一月、ちょうどもう十年前の話ですが、当時の厚生省の公害部庶務課長通知によって通知がなされて、それからその通知に従って行ってきております。ところが、この認定審査を実際に担当してもらっておる関係者の方々、主に専門家の先生方ですが、この四十五年当時の通知は、診断に必要な項目で含まれていないものがありますよと、それから実施のむずかしい検査項目も含まれている、さらに疾病によっては必ずしも診断に必要でない検査項目が含まれていると、そういうような指摘も前からなされてきておるわけでございまして、私たちといたしましては、そういうことを踏まえまして専門家の意見を聴取してきておるわけでございます。  そこで、いまのお話でございますが、現在私たちといたしましては、専門家からいただきました報告書をもとに、ことしの一月、二月にかけまして全国五カ所のブロック会議におきまして、実際に認定審査に当たりまする第一線の医療関係者を中心に意見を聞いてきております。その意見を取りまとめておる最中でございまして、それをどういうふうに取り扱うかということにつきまして現在慎重に検討している最中ということでございます。以上でございます。
  116. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、あれですか、現在は決定しているというものではなくて取りまとめ中ということでございますか。
  117. 七野護

    政府委員(七野護君) 現在そのブロック会議その他関係者の意見を聞いております。その意見を取りまとめておるところでございまして、その結果を慎重に検討した上で行政上どういうふうな取り扱いをしていくか結論を出したい、かように考えております。
  118. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、決定をしていないというのであればちょっとお聞きをしておきたいのですが、いま御説明の若干ありました、一月三十日の関東ブロック会議から始まって二月十三日東京ブロック会議まで全国五カ所で認定審査会のブロック会議をやりましたね。この認定審査会の先生方からどんな御意見が出ましたか。
  119. 七野護

    政府委員(七野護君) いま私がお話ししましたように、ブロック会議を一月から二月にかけて行っておりますが、そこで出ました意見は、これはもう第一線で現実に認定審査に当たってもらっている関係者の先生方でございますので、いわゆるそういう先生方の体験を踏まえた専門的な御意見をいろいうの角度からちょうだいいたしております。
  120. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 専門的な御意見をいろいろな角度からちょうだいしたとおっしゃるけれども、これは記者会見では、全体としては強い反対の意見はなかったとか、実施するためにどうするかという立場での質問だったなどと言っておられるんですけれども、大分違いますね。  で、フローボリューム曲線解析は必ず行うべき検査項目に入れるという問題については、これはずいぶんいろんな意見が出ましたね。私どもも聞いておりますが、若手申し上げておきたいので確認をしていただきたいと思いますが、これは四国・九州ブロック、中部ブロックなどでは、いままでの検査項目だけで現在の指定四疾病の診断は十分できる、フローボリューム検査の導入の必要性はないという意見が出た。関東ブロックなどでは、住民の健康調査など予防活動に使うのでは有効であるが、症状のある患者に使うのは適切かどうか疑問であるという意見が出た。東京ブロックでは、新たな検査項目に加える必要がないという意見が大勢を占めた。ある先生からはフローボリュームは診断に使えないという意見まで出たと聞いております。また、フローボリュームの必要性を認めるが必ずやるべき検査にするかどうかは問題があるという意見が多かったので、会議の最後に座長が東京ブロックの会議の総意としてこれを確認する旨の提案を行って了承された。——長官、技術的な問題にわたりますからちょっとお聞きを願いたい。環境庁はこのことを十分肝に銘じておいてほしいというところまで言われたということでございます。  したがって、認定審査会の関係者の先生方からは反対はなかったなどという認識とは大分違うと思うのですが、これは事実ですか。
  121. 七野護

    政府委員(七野護君) いろいろな意見が確かに出ております。フローボリューム曲線解析、これを実施するにつきまして異論はないという意見もございますし、その他それに相反するような意見現実にございます。ただ、細かい点につきましては私がこの場で御説明するのは遠慮させていただきたい、かように思っております。
  122. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 医学的にもいろいろな意見が出されたという中でも、現在の四指定疾病の範囲ではわざわざやらなければならないことはないということの御意見というのが大勢を占めたというのですよ。いわゆる細い気管支の気管支炎ですね、新しく指定疾病を広げるためにこれを新たにやらなきゃならぬと言うのなら話は別だという御意見というのは非常にたくさんありますよ、私どもお聞きをした中でも。しかし、現在の四疾病ではこんなものをやる必要はないという、絶対に検査項目につけなきやならないというのはおかしいという御意見が大勢を占めているわけですね。このことについては、これは昨年の十二月十二日に全国公害患者会の陳情の際にも環境庁はフローボリュームを使わないと診断が間違うということではない、絶対にやらなければ診断がつかなということではないということは認めておられますね。こんなものは医学的な常識から言うたらあたりまえなんですけれどもね。いま指定されている四疾病なんというのは、そんなむずかしい検査をしなければ診断がつかないというような疾病じゃないですよ、こんなのは医学界あるいは医者の常識ですから。だから、そういう点では、新たな疾病の指定をやるというつもりでわざわざこういうことを言い出したんですか。
  123. 七野護

    政府委員(七野護君) 現在の四疾病を広げるという考え方は持っておりません。」
  124. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう一つは、ブロック会議でいわゆる問診項目の導入についても非常に強い批判が出たと聞いておりますが、どのブロックでも共通して出てきている認定審査会の先生方の御意見ですよ。複雑で繁雑過ぎる、主治医の負担が一層過重になる、全面的なこういうものの義務づけでは困る、いままでのやり方でよいのではないかという意見が大勢を占めていると聞きましたけれども、それについてはどうですか。
  125. 七野護

    政府委員(七野護君) この問診項目につきましては、現在でも実際に担当していただいております各主治医で独自といいましょうか、問診表なり主治医から出す報告書の中に問診項目を入れておるわけでございまして、ひとつ統一的な見解を示してほしいという意見はこれも前からあるわけでございまして、私たちといたしましては、そういうことを踏まえまして四疾病の診断をより適切に、より迅速に行うという観点から、この問診項目につきましても御検討を願ってきたわけでございます。以上です。
  126. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 何で聞いているか言うたら、名古屋では、あんたのとこは、問診項目についても事務通達で出すんだと言うているから聞いているんです。新しいあなたの方の提起された問診項目によりますと、これはいま言いましたように、たとえばぜんそくの発作のところで見ますと、発症時の発作頻度や発作好発時期に連続四週間の発作頻度というのが従来の項目ですよ。それを過去一年ごとにされているんですね。治療歴のところでは、当医療機関における最近二カ年の治療状態を記入することになっている。これは公害患者の診療に当たっているお医者さんの話を聞きますと、とてもこんなむちゃな繁雑なことは時間がかかり過ぎて簡単にできない。過去二年間のカルテを倉庫から引っ張り出して記入しなきゃならぬというようなこと。また、その患者が二年間自分のところの医院に通って診察をしているということでなければ書けない。書いても審査会で書類が不備だなどと言われるということになると、書いた主治医の方も患者の方も全く浮かばれないということで大変心配をしてきています。これは医者の側からの意見ですが、患者の側からも二年間も診療を受けなかったら認定申請さえも出せないことになるのではないかという不安が出ているのですよ。その点についてどうですか。
  127. 七野護

    政府委員(七野護君) 先ほどからもお話ししておりますように、この問診項目、これにつきましては、いわゆる診断に私たちとしては役立てる方法でひとつ整理をしたいということでございます。その中で、いまぜんそくの発作のことであるとか、治療歴につきまして御指摘がございましたが、いずれにいたしましても診断に非常に役立つ項目であろう、ことに治療歴の把握ということにつきましては、適切な診断には大いに役立てるのじゃなかろうかということを考えております。
  128. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それからさらに、今度の記載の内容には最近の治療法を記入するという項目があって、薬の投与による治療の内容を記載することになっております。認定審査会のお医者さんたちの中からも薬の投与を一つ一つ、健康保険の請求じゃあるまいし、一々書ける内容かという御意見の反対も出ております。この点についてはどうですか。
  129. 七野護

    政府委員(七野護君) この治療法につきまして非常に詳し過ぎるのじゃなかろうかという意見も確かにあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、私たちとしては、先ほどから御説明申しておりますように、こういう治療歴、治療方法などが診断に役立てるようにひとつこの検診項目を整理したいということを考えておるわけでございます。
  130. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、いままでお聞きをした範囲でも、これはフローボリュームの曲線解析の義務づけとか、あるいは問診項目の導入というのは、五ブロックの会議ではいろいろと反対意見が出たということは事実でしょう。ところが二月の十三日の記者会見で環境庁は大筋では了解された、あるいは通達を出すことについては異議は出なかったなどということを言っておられるのですけれど、こんなことは許されないと思うのです。はっきりしなきゃいかぬですよ、本当に。  もう一つ重ねてちょっと聞きますが、二月の二十日に開かれました日本医師会の公害医療委員会には環境庁も御出席になりましたね、そこでどんな話が出ましたか。
  131. 七野護

    政府委員(七野護君) この日本医師会の公害医療委員会、これにつきまして、環境庁に対してもオブザーバーという形で出席を求められておりまして、二月二十日の公害医療委員会にも環境庁はオブザーバーとして出席いたしております。ただし、この会議は日本医師会の主催でございます。私たちはあくまでもオブザーバーという形で出席をしたわけでございますので、委員会の席上で出された意見、会議の内容につきましてここで説明をすることは遠慮さしていただきたい、かように考えております。
  132. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 説明を差し控えるなら私が申し上げましょう。  日本医師会の公害医療委員会では、環境庁側の説明の後で論議を行って取りまとめが行われたと私どもは聞いております。  そのまとめというのは、フローボリュームの導入、それから今度の新しい問診のやり方、そういった点は医学的な見解が未確立のままで無理に制度化することにはずいぶん異論がある、この制度の早急な実施は現場の混乱を引き起こすということで、環境庁は今後十分検討した上で結論を出すように要望する、できれば事前に日医に連絡をとるべきで、独断でやられては困るという取りまとめがやられたと私どもは聞いております。日医の公害医療委員会のまとめと環境庁への注文はこういうことなんですが、環境庁が独断でやったら困ると日医も言うているのですけれども環境庁独断でこれはやっていくつもりですか。
  133. 七野護

    政府委員(七野護君) 先ほどから何回も申し上げておりますように、現在まだ決定をしたわけではございません。現在は慎重に検討している段階でございます。そういうことでございますので、よろしくお願いします。
  134. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと内容が専門的な問題にもわたりましたけれども、これは現実には、今日では主治医の診断を信用できないのかと、こういう意見、厳しい批判というのまで出ているんですね。日本医師会の公害医療委員会でも出ておりますように、検査項目や問診を無理に導入して現場の混乱を引き起こすよりも、まず何よりも現在やられている主治医の診断報告書、これを尊重し徹底させることの方が先決だと思うわけでございます。これは本委員会でも、この制度発足のときに院の附帯決議でも明確にその点はしております。主治医の意見を十分尊重すべきであるということは、四十九年の九月の保健部長通知の趣旨にも明らかにされているでしょう。ここの指導を強めるべきだと思うのですけれども長官どうでしょうか。
  135. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 段々のお話を承っておりまして感ずることですし、また、前々からこの問題で頭を悩ましておりますから、お話を聞いていてさらにその感を深くするのですが、何と言うても認定というものは正確であり公平であり、そしてまた遅くならないで、慎重慎重と言って遅くなったのじゃしようがないですから、早期の診断、これをお願いしなきゃならぬことです。そしてまた、そういうためには同一の物差しでなければならぬ、全国にちらばっているわけですから同一の物差しでなきゃならぬ、これも求められる要件だと思います。そして、その内容はきわめて専門的でございますから、いろいろなことを言いましても、われわれが勝手に決めるというわけにはまいりません。これは専門家の御意見を承って、最後は決めるのは決めさしていただきますが、それは専門家の御意見にようなきやなりません。こういうことでございます。それで、私なら私のことをいつも診ていてくれる主治医の意見というものは尊重されなければならぬことは言うまでもないと思いますが、同一の物差しということになってまいりますと、それは尊重の範囲を出ないということはやむを得ないことではないかと、こういうふうに考えて、最後にもう一回申しますが、正確であり公平であり、早期な診断、そして認定をやっていきたい、こういうふうに考えておるのです。  ですから、むずかしい名前の何とかいう器械、それなども、部長は違いますが私はまるっきりわかりませんから、それを使ったらいいのか使ったら悪いのかわかりません。しかし、使ったがいいと言う人も中にはいるし、こんなものを使ってもだめだと言う人もいるし、いろいろありますから、もっとよく話を聞いて、それからわれわれの方で慎重に決めたい、こう考えております。いまのところはまだ決めておりません。
  136. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 長官明確にお答えになっておられるのですが、私は、今日、いままでの四十九年の部長通知でそれを徹底させるということで長官のいま言われた基準というのは達成できると思うんですよ。その上に、新たにフローボリュームの検査を義務づけるとか、大変複雑多岐にわたる問診形式を、いわゆる事務連絡とやら課長通知とやらで新たに出すというふうなことをやろうとしているから一定の問題が起こっているわけで、医療団体である日医の公害医療委員会でもこれは慎重に検討してもらいたいということが言われているわけですから、再検討すべきだと思うのですが、その辺もう一遍明確にしておいていただきたい。
  137. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 申し上げましたように、公害によって被害を受けているお気の毒な方々に対しては、一日も早く認定して、決めるべきものは決めなきゃならぬ。それは正確であり公平であり、早期でなきゃならぬ、そういう方針でやっておるのですが、ここにだれかがおりましてね、沓脱先生、こういういい器械が開発されたよ、これをやるとまことに正確でありますよ、それをずっと日本じゅう全部使えば公平にもなりますよ、そして早期の要素も達成されますよと言われれば、正確であり公平であり、早期の診断ということを常に願っているわれわれとしては、そうかなと思わざるを得ません。そこで、そうかなと思ってもこれは専門家に聞かなきゃわからぬことですから専門家に聞いてみます。そうすると、ある専門家は、そのとおりだ、とってもいいものだと言う人もいるだろうし、そんなものは、要らぬことだなんと言う人もいるだろうしいたしますから、それをよく聞いて決めなきゃならぬ。いまのところは決まっておりません。これから専門家の意見をよく聞いて判断をいたそうと考えております。
  138. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 特に私は、日医でも取りまとめられましたように、フローボリュームの検査の義務づけなどというふうなことは、いわゆる医学的見解が確立されていない、両論があるわけですよ。やってもいいと、しかし四疾病ならやる必要はないという、この両論があるわけですからね。そういうときにこれをわざわざ導入するというようなことは必要がないという意見が大勢を占めている。  それからもう一つは、問診、医者がいろいろと患者さんから聞くわけですが、この聞き方だって、二年間のカルテを引きずり出してきて全部書かなきゃ書けないということになったら、これは今日の第一線の医療機関ではなかなか忙しいから簡単にしてもらえませんわ。だんだん認定申請業務さえもこぼれていくということになって、本来残らず公害健康被害を受けた人たちの救済をやることが本法の目的ですけれども、そういう技術的なところで落ちこぼれていくというふうなことになることを非常に恐れるわけです。そういう点で慎重に御検討いただいて、こういう現場に混乱の起こるようなという表現が——これ私の表現じゃなくて日医の取りまとめの中、でも出ておりますし、あるいはブロック会議の中でもそれに類する意見が出ておりますが、そういった点については十分慎重に対処をしていただいて、こんな無用のことをおやりにならないようにぜひ対処していただきたい。そのことを重ねてお願い申し上げておきます。最後にお伺いしましようか、長官
  139. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 御趣旨はよくわかりました。専門的なことでございますから、特に私は何もわかりません。そこで専門家の御意見を承って決めさせていただかなければならぬことでありますが、しかし、これはまた先生御承知のとおり、こういう病気はあなたのせいですよ、あなたがそんな煙を出したからこういうことになっちゃったんだからといって全部向こうから金を出さしていますからね、これは当然のことです。当然のことですが、診断を間違えてそうでない人にまで金を出させるというようなことがもしありとすれば、これまた申しわけのないことでございますから、これは怪しいけれど出しておけというわけにもいかないのでございましてね。そういうわけですから、正確であることを要します。公平であることを要します。そして患者のためには早期であることを要します。そのために専門家の御意見をよく承って間違いのないことをやっていきたい、こう思います。
  140. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと関連をしまして、ついでに聞いておきたいのは、健康被害補償法に基づく公害医療診療報酬ですね。この問題も、本来、公害医療というのは汚染物質を大気の中にたれ流した企業が民事上の責任を踏まえて費用負担をして、治療費が公害患者の健康回復を図る上で必要にしてかつ十分でなきやならぬということになっているわけですが、環境庁はこのために毎年八月には改定をすると当初は約束をしていたんですね。実際には昭和四十九年の九月から法施行がやられてからは、五十年、五十一年と毎年改定をしてきた。五十二年はやれなかった。五十三年の二、月の二十八日に改定をしたわけですが、それ以後今日に至るまでまる三年を超しておりますけれども、いまだに据え置きでございます。この間、私が申し上げるまでもなく、物価、人件費など二〇%以上も上昇をしております。このままで放置をされますと公害患者への治療にも影響が出てきます。  これは私かねて申し上げましたけれども公害の患者さんというのは、発作が起こったときは夜であろうが夜明けであろうが、休日の日であろうが診療をしてもらわなきゃならぬわけです。そういうときに心よく治療をしてもらえるための補償が必要なんですよ。だから、そういう点で患者さんへの治療に対しても悪影響が及びますので、主治医の努力だけではもう支え切れないというところまで来ていると思いますが、改定をすべきではないかと思います。御見解はどうですか。
  141. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) お話の中にありましたように、ぜんそく患者などというのはもう大急ぎでお医者様に来てもらわなきゃならぬということがあります。したがって、お医者様にお世話になることは非常に多いのでございますので、そのための費用等については抜かりがあってはならないと思いますが、結論を申しますと、中医協における社会保険診療報酬改定の動きを見ながら検討をいたしていきたい、こう考えておるわけでございます。  最近は昭和五十三年の三月一日に八%引き上げたというのが最後でございまして、それ以後やっておらないのですが、最近の社会経済情勢から医療費を取り巻く状況、きわめて厳しいものがあります。現行の診療報酬は、いま申しましたように、五十三年三月に定められたものでありますので、中医協における社会保険診療報酬改定の動きを見ながら、私どもの方としては検討していきたい。  なお、公害医療診療報酬体系は特掲の診療費を設げるなど、公害医療の特殊性を考慮して定められているものでありますが、今後とも関係者の意見を聞きながら、実態に即した合理的な診療費を決定していきたい、こう考えておるわけでございます。
  142. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんので、社会保険の診療報酬の動きとあわせてということでございますが、昨日も厚生大臣は、現に中医協ではもう独自に診療報酬あるいは技術料等についての検討がやられている、厚生大臣としても近く諮問をするというふうに言っておられますので、これはまあ健康保険と質が違うわけですけれども、余り大きな違いがあってはならぬということで歩調を合わせるという御意見だと思いますが、できれば年度内にもこの分野については引き上げを決定なさるべきではないかと思うのですが、これは重ねて御要望を申し上げ、もう時間がありませんので、私は窒素酸化物の総量規制についてお伺いをしておきたいと思っておりましたが、これはまた後日に回すことにいたしまして、社会保険の動きがそういうことになっておるということを踏まえて、できるだけ早期に、私は、できれば年度内にと思いますけれども、ぜひ実現をさせるように御要望申し上げたい。最後に長官にお伺いをして終わりたいと思います。
  143. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) こういうことをお願いしているんですからね、こういう患者を診てくださいと先生方にお願いしているんですから、その先生方に対するお礼が全然ほかとのつり合いも何もとれないというようなことでがまんしていてくださいというわけにはまいりません。先生のおっしゃる御趣旨を体して、そういうバランスのとれないようなことでないように努力をいたしていきたい、こう思います。
  144. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 午前中の本委員会坂倉委員質問に対する答弁の中で、長官は、今国会で、予算委員会等で公害行政について言及されることがはなはだ少ないというふうにお答えになったわけですけれども、それはどこにそういう理由があると長官はお考えでございますか。
  145. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 実はそんなことを私が申し上げましたのは、正直言ってよくわからないから申し上げたのでございますが、察するにやはり油の問題等があって、とてもこのままではいままでの経済成長を続けていくわけにいかぬ、何か特別のことを考えなきゃということで、それによって起こるかもしれない公害といいますか、そういうものを、わかっているんだけれども、そこのところを言っている暇がない、忙しくてという社会情勢ではないんでしょうか。だから言わなかったのじゃないかなと私は思うのですが、いかがでございましょう。
  146. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 私も同感でございまして、この国会で目先のお金をどこへ幾らつけるか、金の話ばかり。まあ私も新人議員でございまして、来てびっくりしたのですけれども、百年の大計というよりも、国会というところは銭の話ばかりしているわけですね、朝から晩まで赤字をどうするとかこうするとか。それも大事なことです。それは債券を出して国が国民に借金しているわけですから大変なことでしょうけれども、一方では、特に公害あるいは自然保護等については文字どおり百年先のわれわれの子孫がどうなるかということなんですから、もっともっと関心を持たなきゃいけない、こう思うのです。これまで私が記憶しておりますのは、先ごろの本会議で宇都宮徳馬議員が代表質問におきまして、アセスメント法案を早く成立させることを望んでおきたいということをおっしゃいました。たった一人ですね。それが私は非常に残念なんですけれども長官として、公害行政全般についてもっともっと国民の世論を喚起する、そういう点について十二分に努力をしていらっしゃいますか。
  147. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) まことに私不敏でございまして、御心配なさる方々の目から見てとても十分だというふうにお考えいただけないことは、そうだと思います。まことにそれは残念なことなんですが、私なりに相当一生懸命になってやっているつもりなんです。もう本当に一生懸命になってやっているつもりなんで、ひとつなお足らざるところは御注意をいただきたいと思います。
  148. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 私、鳥類保護議員連盟に加盟させていただいておりまして、環境庁がおつくりになりましたトキの捕獲作戦の映画を先ごろ見せていただいたのですが、あのトキは、その後捕獲作戦に成功したと聞いておりますけれど、その後具体的に現在の状況はどうなっているか、ちょっとお教え願いたいと思うのです。
  149. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) それは担当の局長から答えていただきますが、結論を言いますと、つかまえたときにはおどおどしちゃってどうにもならなかったのですが、大変元気になりまして、まことにありがたいことでございます。
  150. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 現状はただいま大臣が申し上げたとおりでございますが、現在わかっておりませんことは、全体で六羽でございますが、雌雄の関係がまだ鑑定が行われておりませんのでわかっておりません。しかしながら、この六羽が最近捕獲前においてあるいはこの数年間、営巣活動と申しますか、巣を営む活動をやっておりますので、多分に増殖の可能性があると思ってやっておりますが、最近はえさの管理に対応いたします食欲と申しますか、一連の行動が非常に順調のようでございまして、期待をいたしているわけでございます。
  151. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 あれは雄が何羽で雌が何羽というのは、まだ確認されていないわけですか。大変トキが老齢じゃないかと聞いたのですけれど、その生殖能力という点について、環境庁としては、大体年齢等、その生殖の可能性等について研究はしていらっしゃいますか。
  152. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 環境庁でもある程度の年齢の推定はわかっておりますが、とりたてて研究というほどのことはいたしておりません。ただし、先ほど申し上げましたような、この二、三年の営巣活動から見ますると、当然増殖可能な年齢にあると、こういうふうに判断いたしており一まず。これは環境庁のみならず、トキの増殖分科会の専門家の各位もそういう御意見のようであります。ただ、推定といたしましては、相当年齢にばらつきがあるというふうに聞いておりますので、その辺がどうなるかということを感じております。
  153. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 中国でもどうもトキが絶滅したらしいと伝えられていて、そうなりますと、この地球上で日本にいる数羽のトキが最後のトキだということになるわけですから、専門家の皆さんがひとつせっかく努力なすって、たとえばえさにホルモン剤をまぜて与えるとか、これは国民が本当に楽しみにしていると思うんですよ。ですから、ひとつがんばって生殖に成功するように要望しておきたいと思います。  それから、ニホンカワウソですね、これも絶滅したと伝えられて、後に一昨昨年でございますか、NHKの方で野生の状態を撮影するのに成功したと聞いておりますが、現在環境庁の方で把握しておられますニホンカワウソの生息頭数とその場所をお教え願えますか。
  154. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 先生御案内のように、ニホンカワウソは大正の末期の生息分布がわかっておりまして、北海道から九州まで日本全土に分布いたしておったわけですが、   〔月委員長退席、理事坂倉藤吾君着席〕  その後の開発その他の影響で絶滅が伝えられまして、二十五、六年前、昭和二十九年に愛媛県で発見されたということでございます。現在、高知県の調査もとでございますけれど、生息の推定数約四十ないし五十頭、ペアにいたしまして二十五から三十、こういうような状況でございまして、現在、高知県の西部とそれから愛媛県の南部、それから徳島県の海岸区域の一部に生息している状態でございます。
  155. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 そのニホンカワウソを良好な環境に置いてさらにもっと頭数をふやしていこうというようなことについて、何らかのいま対策は講じていらっしゃいますか。
  156. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 現在の生息地域の中で高知県の西部の海岸地域が主要な生息地でございますが、ここに国設の鳥獣保護区を設定してございます。したがいまして、そこで集中的に保護を行っているわけでございますが、特に管理員を重点的に配置いたしまして、羽数を増加する一番ネックとなっておりますのはえさでございますので、このえさの不足を何とか解消したいということで給餌作戦を行っておりまして、あわせてそれに伴いますところのえきの状況によって生息状況を調査していく、あるいは密猟の防止をやるというふうなことで、現地を含めて最大限の努力をやっているつもりでございます。   〔理事坂倉藤吾君退席、委員長着席〕
  157. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 先ごろ町長のリコールが成立いたしました高知県の窪川町でございますね、この窪川町は、いまおっしゃったニホンカワウソの生息地とは地理的には余り隔たってないでしょうかね。——お調べでなければ結構です。
  158. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) それはまだ調べておりません。
  159. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 はい、結構です。  こういう観点から論じた方があるかないかは知りませんけれども、私は同じ高知県内の距離的には、直線的にはニホンカワウソの生息しておる現に環境庁が一生懸命に保護をしていらっしゃる場所と窪川町とは余り離れていないのじゃないかと思います。とすれば、やはり地元の住民の方たちは、ここに原子力発電所が立つかもしれない、その場合に、たとえば、じゃニホンカワウソの生息条件はどう変わるんだろうかというようなことについて懸念を持たれることは当然だと、こう思うわけですね。そういう点でたとえば環境アセスメント法案なんかがここに関連して出てくるんだと思いますけれども、これは後ほどお伺いするとして、もう一つ、ニホンイヌワシという貴重なワシがおりますが、局長、このワシは現在確認しておられます数は、どこに何羽ぐらいいるんでしょうか。
  160. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) イヌワシは現在主として東北地方から中国地方にかけまして、主に山岳地域であることはもとよりでございますが、おおむね生息数六十羽が推定されております。
  161. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 いま六十羽とおっしゃいましたけれども、私が可能な範囲で調べましたところによると、とても六十羽じゃない、もう厳密に言えば二十羽を切っていると、こう言う学者もあるわけですね。現在そのイヌワシの生息に良好な環境というと、比較的山の高いところになると思うのですけれども、そのあたりで、たとえば林道でありますとか観光道路でありますとか、そういった計画がなされている場所はありましょうか。把握しておられますか。
  162. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 兵庫県で一部あるようでございますが、確認いたしておりません。
  163. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 ですから、いまの窪川町とニホンカワウソ、あるいはイヌワシと林道、観光道路等の開発、これは局長、自然保護の観点からも、私は、やはり環境庁は、そういった良好な環境のあるところにたとえば道路がつく、あるいは宅地開発をする、工場ができるということは、いつも気を配っていなきゃいけないことだと、こう思うんですね。これは所管が違うから、おれたちは特別の区域を設定してそこでえづけをしてやっていればいいんだというものでもないと思いますので、その辺はひとつ省庁のかきねを取り払って、いつも気をつけていただきたい、こう思うのでございます。その点ひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  長官、私は何度も言いますけれども、新人でございますのでちょっとお教えいただきたいのですが、政府の提出する法案というのはどういう手順で国会に提出されるのでございますか。どなたでも結構でございます。
  164. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) 提出法案につきましては通常国会に提出する法案についての手順が決まっておりますが、これは予算の案が提出されることにも関連いたしまして、法制局及び内閣官房が主宰いたします各省文書課長会議等の場におきまして、各省の提出したいという希望を持っている法案につきまして検討調整を行いまして、予算関係法案、それから予算関係法案以外の法案というふうに分けまして、さらにそれの提出を予定する提出予定法案と検討中の法案というふうに整理をいたしましたるのを閣議に報告し、かつこれを予算提出と同時に公表をし、あるいは国会等にも配付をするというふうな形で内閣の意思を明確にするということになっております。
  165. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 環境アセスメント法案も、いまお教えいただいた同じ手順で提出されるわけですか。
  166. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) さようでございまして、分類から申しますと、予算関係法案以外の提出予定法案ということで登録をしております。
  167. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 といいますと、いまおっしゃったその手順ですね。文字どおり手順ですから、バイ・アンド・バイにすでに踏むべき手順は踏み終わっておられるわけですか。
  168. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) ただいま申しましたのは、提出を予定する法案を、本来ならば予算関係法案であれば予算と同時に国会に提出して御審議を願うわけでございますが、それが筋と思いますが、いろいろな各省折衝その他の調整がございますので、予算提出の時点においてこういうものを提出いたしたいという予定のもの、あるいはそれを検討しているものとして、これを明らかにするということに目的があるわけでございます。手順を先生がお尋ねくださいましたけれども、そこに登録された法案を現実に国会に提出するためには、各省その他の関係方面の折衝を終えまして閣議の決定を経て国会に提出するということになりますので、環境アセスメント法案は登録をされておりますけれども、現在は党内における調整という過程にございまして、閣議決定して国会に提出するという段階にはまだ立ち至っていないというのが現状でございます。
  169. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 じゃ、閣議決定はしていないわけですか。
  170. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) これは国会提出のための閣議決定はまだいたしておりません。
  171. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 私、いま伺ってもよくわからないのですけれどもね、政党と法案提出との関係はどうなりますか。いまおっしゃった範囲で伺いますと、各省庁とはおっしゃいましたけれども、各党という言葉は私は伺わなかったように思うのですけれども、その辺はどういうことなんでしょうか。
  172. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 政党のことになってまいりましたから私からお答えをいたします。  いま局長が言いましたような政府内の手だては全部終わりました。これは私が長官になったとき、もうすでに全部法案はできていた。そこで、そのことについての閣議での了解はまあ済んでいるわけです。いよいよこの法案を国会に提出して御審議をいただくということになれば、国会開会中の火曜日と金曜日にやる閣議一つ一つ出てくる、いまでも出てきているんです。ぼつぼつと。それは政府・与党は自由民主党内閣ですから、そこで、政府が出すものはまず与党が見て、与党がこぞってひとつこれは政府・与党として応援しようというためには、やはり与党の方々が政策的によくわかって疑問点をちゃんとついて、よしわかった、これをひとつみんなでやってやろうじゃないかということにならなきゃなりませんので、いまのところ、このアセス法案は政府・与党である自由民主党で御審議をいただいているという段階でございます。これが終わりますればすぐ閣議に出まして国会の御審議をいただくということになる段取りでございます。
  173. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 いま長官お話しくださったとおりなんでしょう。でも、われわれの理解は午前中以来の本委員会でも坂倉委員初めお尋ねがありましたですね。それは一口に言えば、一体何をしているんだということだと思うのですよ。  ここに私は今回のこのアセスメント法案の推移の抜粋を持っておりますけれども、五十五年の二月十五日に内閣総理大臣国会答弁、今国会に法案を提出する方向で最善の努力をする旨答弁。三月四日には関係閣僚協議会の設置・開催、政府部内調整についての政調会長の要請を受け内閣官房長官閣議関係閣僚協議会の設置を発言。三月十三日経過報告がありまして、三月二十八日には環境影響評価法案要綱了承、四月十八日環境影響評価法案原案了承の四回にわたり開催。その他ずっとありまして、環境庁、通産省、運輸省、建設省、自治省の関係局長会議を十七回にわたり開催。五月二日、内閣官房長官閣議発言、政府としての法案がまとまった旨閣議発言。五月八日、自由民主党政務調査環境部会、環境影響評価法案を了承。五月十三日、自由民主党政務調査会審議会審議。五月二十日、環境庁長官閣議発言九月十八日、内閣総理大臣全国都道府県知事会議であいさつをいたしまして、全国知事会を初め地方公共団体から要望の強い環境影響評価の法制化について努力する旨あいさつ。十月七日、内閣総理大臣国会答弁政府としては環境影響評価の法制化について引き続き努力する旨答弁。それから、こちらにこれは昭和五十五年三月三日でございますが、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党国対委員長連名の上、環境アセスメント法案については政府において関係閣僚協議会を設置し法案提出の調整に当たるよう要請する、こういう合意もなされているわけですね。  だから、いろいろ御説明いただいても私どもよくわからない。なぜこれだけのことをやっていてまだ提出なさらないのか、できないのか。そうすると、自由民主党で、与党ですからと、こうおっしゃいましたがね。わが党内閣とおっしゃいました。自由民主党の内部で一体何について問題があるとおっしゃっているのですか。
  174. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) いま一連の経過の御説明、そのとおりであります。そこまで来ながらどうしてという御疑問はまた当然のことでありますが、新聞なんかによく出ておりますので先生もすでに御承知のことなんだと思いますが、先ほども申し上げましたように、いま経済がなかなかむずかじい状態になってきている、特にエネルギーの問題がむずかしい。そこでエネルギー開発について一面において一生懸命なわけですね、これまた当然のことなんです。それがアセスメントができることによって遅くなるんじゃないだろうか、いまだってなかなか大変なのにこれ以上遅くなったら大変だという心配が特にエネルギー問題について勉強なさっておられる自民党の方々の中にあるわけで、そういう方々が、ちょっと待てよ、話はわかると。アセスメントについて話のわからない者はいないんです。話はわかる、話はわかるが、当面大事なエネルギーの電源立地などがこれによって遅くなるのじゃないだろうかということで御心配なさっておられる。そこで、われわれはどの点が遅くなると思いますかと承る、そうすると、この点、この点とお話があるわけ。その点大丈夫と私は思いますよと、いや、どうかなというようなことで、どこでもいろいろトラブルなんかあって、それで御苦労なさっておられますわな。その御苦労なさっておられる方々から見れば、話はわかるけれどもこれが遅くなったら大変だ、こういうことでちょっと異論といえば異論があってまだ決まっておらない。いまやっとその方々に御理解をいただきたく全力を挙げてせっかく努力をしておる、こういうことです。
  175. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 長官、先ほどもちょっと触れましたけれども、三月八日に高知県の窪川町で町長リコールが成立いたしましたね。これについて長官はどういう印象をお持ちになりましたですか。
  176. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 私は、話が長くなりますから申し上げませんが、もっと若い時分に私の身に余るような大きな仕事を課せられたことがある。地域住民に関係することでした。ずいぶん苦労いたしましたが、そのときに得た私の経験、ささやかな経験ですが、結局、地域住民の理解とそれに基づく協力がなければ何もできない。そしてまた、それを得られないままにやれば、何か建物の場合なら建物ができても稼働しない、これがその時に得た私の基本認識なんです。  私は、原子力発電所が危ないというふうに思っていません。何とかそのことを御理解いただかなきやならぬ。でも、自分の家のそばにできるんですから不安に思うでしょう。その不安に思う方々に何とかして汗流してこの不安を除いていただくように努力をする、そして御理解をいただくその御理解に基づく御協力をいただく、それがまだ行き届かなかったのかな、ずいぶん骨を折られたんだろうに残念なことだなと、あの事件からそんなふうに感じました。
  177. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 私も原子力発電所は、これはもうどうしてもつくっていかなければ、エネルギー需要はふえる一方なんですから、原発はつくるのはいやだ、それで電気はどんどん使うでは困るわけですから、それはつくらなければいけないと思います。  この間の窪川町のことにつきましては、私は、これはもう個人的な見解ですけれども、自由民主党の領袖が続々と現地に繰り込んで、現地の人たちのほっぺたを札束で張るようなことを言って、調査さしてくれたら地元の皆さんに電気代も安くするとか、ああいうつまらないことを言うから地元の皆さんがリコールを成立させたのであって、国民はやはり正しく理解する、こう思います。  そこで、むしろ環境アセスメント法案が成立してこそ電源立地も非常にうまく整合するんだと。皆さんが抱いておられる、たとえば放射能だとか放射線だとか、そういうものの影響あるいは環境破壊、自然破壊等について、このアセスメントの法案ができれば、はっきりとそこのところをしてからのことになるんだから、むしろこの法案を成立させることが電源立地等についても非常に説得力のあることなんだということをまず長官、自由民主党の何かこの法案ができたら電源立地がどうこうなんて言っている人に理解をしてもらわなきゃいけないと思うんですがね。どうして自由民主党の先生方はその辺がおわかりにならぬのですかね。長官のお話聞いていますと、何かあれこれとか意見があるとか、こうおつしゃっていますけれども、そうでしょう、アセスメント法案ができれば、それはかえっていいんじゃないですか。
  178. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) いいか悪いか、これは私には私の考えがありますから、しかし、これから御審議をいただかなければならない先生方の前で私が申し上げることははばかりますから申し上げたくありませんが、地域住民の理解協力を得なければ何ごともできない。これは原子力発電所だって同じです。そして地域住民の理解協力を得るために、国権の最高機関である国会の先生方の御審議を経て権威と信頼あるルールができるということがどうして悪いでしょうか、こんな安心なことはないでしょう。地域住民からいえば、それができた方が安心できないということはないでしょう。国権の最高機関である国会の先生方の御審議を経て信頼と権威あるルールができた方がむしろ安心できないということはないでしょう。ですから、必ず私はこの道理はわかってもらえると思っていますが、それなのになぜと先生はおっしゃいますが、これは私に聞かれてもちょっと酷なことで、私わからないのですが、しかし、それは多分に骨折っておられるのですから、この電源立地について、先生のお知り合いの方々だってずいぶんそのことで骨折っておられるでしょう、みんな骨折っておるのですから。そして、その骨折っておられる方はなぜ骨折るかというと、みんなが、ああ、やってください、やってくださいと言っているわけじゃないんですから、私のところの隣はいやよと言っている人もいるんですから、それを何かやるのはとても骨の折れることだ、その骨の折れることになおさらそういうふうに加わるのではないかという心配をなさることは、その人の立場に立ってみれば理解できることだと思います。これがわからないやつはずいぶんばかなやつだな、そんなふうに私は思いません。それはもうその人の立場に立てばわかることですから、全力を挙げて御理解をいただくようにしているわけです。
  179. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 どうもその辺が私よくわからない。といいますのは、政府で、しかも閣議総理大臣がこれでいいじゃないか、こう言っているわけですね、政府提出法案ですから。そのときに、文字どおり最後の審判は国民が下すことなんですから、国民が下すということは、国権の最高機関であるこの国会の衆参両院公害委員会——自由民主党の納得なんかどうでもいいじゃないですか。とにかくお出しになって、総理大臣がそれでいいと言っているのだから、閣議も了解していることなんですから、とにかく出して、国民注視の前で当委員会においてアセスメント法案について審議をするというのが民主主義の根本的なルールだと思います。もう何度も言いますけれども、そんなときに一政党の二、三の人がどうこう言うからというものでもあるまい。とにかくここへ出して、委員会で審議をすればいいじゃないですか。これはどうしてできないんですか。
  180. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 筋としては全く先生お話のとおりだと思います。けれども、政党政治でございますから、自由民主党内閣ですから、内閣に傷をつけるわけにもいかないから、よろしいということになって一遍出した以上は、自由民主党がこぞって野党の先生方にどうぞ御理解ください、通してくださいとお願いをする立場になるわけです。自分が十分理解していないのに人にお願いします。頼みますと言うわけにいかないから、前段として自分が理解したいからというのでちょっと待てと言っておられるのですから、これは今度は私ども環境庁が骨を折って、どうぞひとつ与党の先生方理解くださいという努力をするのは、これまたしごく当然のことではないかと、こういうふうに思うわけでございます。どうぞこの程度にひとつ御理解をいただきたいと思います。
  181. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 いや、どうもすれ違いのようですが、この委員会には自由民主党の委員の方もたくさんいらっしゃるわけですよね。ですから、何も与党のそういうことを言っている人たちの声を圧殺しろと言っているのじゃなくて、手順を踏んでここまで運んだものであれば、委員会に出して、委員会には自由民主党の先生方もたくさんいらっしゃるのですから、そこでそういう懸念があれば懸念を問題にすればいいじゃないですか。私は後先が反対のように思うのですが、何でそこまでいろいろ気を使っておられるのか、何でぐずぐずしておられるのか、その辺がよくわからない。いや、もう結構でございます。  総理府が行いました意識調査ですけれども、どういう調査結果が出たのか、簡単に御報告をお願いいたします。
  182. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) 内容につきまして私ども承知しているところを申し上げたいと思います。  総理府のアンケート調査によりますと、環境影響評価について、これが当然必要であるという人々が圧倒的に多くて九割余になっております。それからその環境影響評価を法制度化してほしいと望んでいる人たちは七割を超えております。特にその法制度化のやり方につきましては、大規模な一定の開発事業については法律で行い、その他は必要に応じて地方自治体の条例で行えばよい、こういうふうに答えた方が五割を超えているという状況でございまして、私どもとしましては、こうした結果を踏まえまして、ただいま大臣御答弁のとおり、各方面の御理解を願って法制度化に向けて最善の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  183. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 国民の九割がそれを望んでおり、かく言う野党の委員の私も早く出してください、こういう法案はザ・ベストではないにしても少なくともベターなわけですから、それはいろいろ言い分はあるにしても出してください、こう言っているわけですから、ひとつ長官、いろいろありまして、もう十三日過ぎているのですから、がんばっていただきたい、こう思うんです。  ちょっと後戻りしますけれども電源立地等について産業界、財界から懸念が表明されているということなんですが、今回の法案でそういう心配現実にないですか。
  184. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) そういう心配とおっしゃいましたが、どういう心配かといいますと、おくれるかということですね。私は、おくれるか進むか、それはわかりません。それと関係ないことだと思います。仮におくれるとしても、地域住民が安心して理解でき協力できるのだったらそれで私は効果があると思います。そしてまた、いま仮におくれるとしてもと申しましたが、むしろおくれる要素はない。先生方の御審議をいただいて、国権の最高機関の国会の権威と信頼あるルールができて、それでやっていこうというのですからおくれることはないではないか、こういうふうに思うのです。
  185. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 それは将来のことですから、おくれるかもわかりませんしおくれないかもわからないし、訴訟が起こるかもわからないし起こらないかもわからない。しかし、とにかくこの法案の精神が良好な環境を保全して地域住民の利益を守るという精神においてつくられているわけでございますから、私は、電源立地がおくれるとか、そういう論議はむしろすべきではない、こう思うんです。法の精神から考えまして。  地方公共団体で待ちかねて最近はいろいろ条例等をつくっているところがあると思いますけれども、その現況を教えてください。
  186. 藤森昭一

    政府委員(藤森昭一君) 全国都道府県及び政令都市を加えますと五十七の団体がございます。このうちすでにアセスメントを制度化している団体について申し上げますと、条例を制定している団体が四つございます。それから要綱等によって定めております団体が十六ございまして、合計二十団体。これは全体の三割を超えております。ことに昨年十月東京都が環境アセスメント条例を制定したことは御承知のとおりでございますが、それ以後の動きといたしまして、同じ十月神奈川県が条例を制定いたしました。十二月に千葉県が要綱を制定いたしました。本年に入りましてから、二月に埼玉県が要綱を制定いたしました。三月滋賀県が要綱を制定するというふうに、その制度化の動きは早まっております。こうした団体のほかに現在制度化を検討中の団体は三十三ございます。したがいまして、制度化している団体二十と合わせまして五十三団体が制度化をしているか、あるいは検討中ということでございますので、全体の九割をそうした団体が占めているということでございます。地方団体はこうしたアセスメントの手続につきまして国、地方の整合性のとれた制度化ということを望んでいることもございまして、その見地から国が早く法制度化を実現してもらいたいという要望をいたしておるわけでございまして、御指摘のように、国の法制度化がおくれるということになりますと地方独自の制度化というものが進むことになろうかというふうに考えております。
  187. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 ですから、もうこれだけずっと政府でやってきて、そして国民の九割がそれを望んでいて、地方公共団体も、いま教えていただきましたように、もう国がぐずぐずしているのならわれわれでどんどんつくっちゃおうという方向に行って、地方公共団体も非常に積極的にむしろしりをたたいているような形ですね。これは長官、野球で言えばパーフェクトゲームですよ。もう九回、ツーアウト、ツーストライクですよ。あと長官がストライク一球ぽんとほうればいいわけですよ。やはり環境アセスメント法案を何としても今国会に出していただいて、これを成立させて、百年後に、鯨岡長官のときにこういうりっぱな法律ができたんだ、これで国家百年の環境行政の礎は固まったんだと後世の人が評価するようにひとつ蛮勇をふるってがんばっていただきたい。  最後に、今国会に出す、絶対にやりますという決意をお伺いいたしたいと思います。
  188. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 私は別に気負っているわけでも何でもないのです。絶対にこれは出さなければならぬ、御審議をいただかなければならぬ。ここまでできたものを、先生が先ほどお述べになりましたように、総理大臣が何回もやるやると、亡くなられた大平総理もそういうふうに言われた、そして私もその意を受けてその決意を表明してきている。それで何にも法案もまとまっていないというなら別ですが、御承知のとおりまとまっているわけですから、これが今度出せないというようなことは政治の信用から言ってもいかがなものか、絶対に出したいという気持ちはあるのですが、いまのお話のように野球で言えば九回の裏で、ここでヒットを出せればいいんですけれども三振になつちゃったら大変ですから、一生懸命やっています。どうぞひとつ御協力を願いたい、こう思うわけでございます。
  189. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 ありがとうございました。
  190. 江田五月

    ○江田五月君 長丁場で、しかも答弁にいろいろ神経を使わなければならぬ質問が続いたようでありましてお疲れと思いますが、もうしばらくおつき合い願いたいと思います。  先日は環境庁長官の方からごりっぱな所信表明を伺いまして、そういう方向で大いにがんばっていただかなければならぬ。恐らく国民こぞって長官の手腕に期待をしているところだろうと思いますが、なかなか現実には日本環境というものはいろいろな困難を迎えていると思います。いままでの皆さんの御質疑もそのことをあらわしておるわけですが、多少私は観点を変えて、日本の山といいますか森林、これをいろいろ伺ってみたいと思います。  戦後の高度成長の中で、日本人の生活様式、行動様式が相当変わりました。山がいま大変な状態になっているのじゃないかというようなことが言われる。特にそういう中で松に対する被害というものが非常な勢いで広がりました。昭和五十二年にそうした松枯れに対する対策として松くい虫防除特別措置法が成立をした。これはもう改めて言うまでもありませんが、林野庁の方でいろいろ試験をして、どうもどんどん松枯れが広がっていくのはマツノマダラカミキリという虫が運ぶマツノザイセンチュウという線虫のせいではないかというので、このマツノマダラカミキリを殺すために薬剤を空中から松林にまくということですね。薬剤はスミチオンとかNACとかというものがあるということですが、とにかくそういう薬をヘリコプターで空中からばっと松林にまくわけですから、これはやはり環境にいろいろな影響が出てくることは当然考えられるわけです。そういうわけでこの法案が出されて、いよいよ国会を通るという段階でも、当時の環境庁長官と農林大臣とが、環境に大変な被害の出てこないようによく注意してくださいとか、もし何かいろいろ困ったことが起こったらやめてくださいとかというような合意をおつくりになった。あるいは国会の中でも環境に対する影響というものを心配して、そうした点を含む附帯決議をつけたというようなことであって、マツクイムシの特別防除と言っておるわけですが、この特別防除については、環境庁としても当時は大変な関心をお持ちであったことは間違いないと思います。よもや鯨岡環境庁長官におなりになって、この特別防除について環境庁側としては関心を失ったというようなことはとうていあり得ないと思うのですけれども、ひとつその点をまず確認をしておきたいと思います。
  191. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 江田先生日本における森林だけでなしに地球的規模でいっても、今世紀の末までに森林は四〇%減ると、権威あるレポートにそう書いてある。国内の方でも大分その減り方があります。このごろ林野庁なんかが大分骨折ってくれまして、植林もありますから、世界的な状態よりはずっとパーセンテージはいいでしょうが、お話のマツクイムシ、これは全然われわれは考慮を薄くしているというようなことはありません。だって、あれでしょう、日本を代表する木は何だと聞けば、桜と答える人もいるかもしれませんが、松と答える人、このどっちかでしょうね。桜と答えるか、松と答えるか。桜の方が花が咲くからちょっと多いでしょうね。しかし、それは松と答えたってそんなに外れじゃない。その松がどんどんだめになっていくのですから。私ごとを申し上げてなんですが、私はちょっと東京の離れたところに家を持っていますが、千葉県で十年ぐらいの間に松が全部だめになってしまいました。このことについては非常な熱意を持っておることを申し上げておきます。
  192. 江田五月

    ○江田五月君 松が枯れていくことに対する関心と、もう一つマツクイムシに対する対策として、空中から薬をまくということについての関心とですね、その二つが恐らくあるだろうと思うんですが、いずれに対しても環境庁はテークノートしておるんだということですね、それでよろしいですね。
  193. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) そのとおりでございます。
  194. 江田五月

    ○江田五月君 そこで、どういう関心の持ち方か。まあこの特別防除に関しては林野庁の方からいろいろ報告を受けておるんだという程度のことなのか、あるいは報告を中まで読んできちんと解析をして、そしてときどきは問題点等を指摘して検討しておるんだというようなことまでいっておるのか。あるいはもっと、こういうことをいままでしてきたんだというようなことがあるのか、そこをちょっと伺いたいと思います。
  195. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 基本的な私ども姿勢につきましては先ほど大臣が御答弁申し上げたとおりでございますが、特別措置法ができます際に、先ほど先生お話しになられましたように、特に環境庁の自然保護の面からいたしますると重大な関心を示しまして、これは間違いのないところでございます。この法律の効果あるいはそういった技術的なこと、すべてについて関心を示したわけでございますが、結論といたしましては特別措置法の制定について賛成の意を表したのでございます。しかしながら、いかんせん、マツクイムシの特別防除、その方法が航空機による空中散布ということでございまするから、確かに植物及び動物に与える自然環境の保全の見地からすると重大な影響があるということで、林野庁ともいろいろお話し申し上げ、また今後どうするかということも御相談したわけでございます。そこで、私どもでも一応調査をやってもみました。しかし、なかなかむずかしい調査でございます。そこで、特に林野庁がそういった専門でございますので、先生御案内のような五十二年度から毎年調査をしていただいております。私どもの方ではその報告をいただいて、特にこのままでいいのかどうかという意味合いにおきまして、技術的な開発といったものについて新しい分野はないかどうかとか、そういったことを行っております。林野庁の方でも御解析なさっておりますし、私どもの方でもその解析に基づいて判断をいたしておりますが、大体ベースが地方の解析及び評価の上に立っておるものですから、いろいろな技術の評価がございます。私どものかつての調査もそうでございますが、現在の段階ではやはり長期的に物を見たい。特に私ども自然保護の仕事を行っております。それで自然保護の基礎調査もやっております。しかも、あと二十年間、今世紀が終わるまで調査したい調査項目もございます。特にこういった分野はそうでございます。したがいまして、この空中散布の効果と申しますか、効果というよりは環境に対する影響について見ておりますると、確かに一時的にはいろいろ動植物の影響もあります。しかしながら、数年たって回復するとか、あるいは一年後に回復するとかいう、まさに生態系そのものの動きと申しますか、そういったものも顕著に見られます。したがって、私どもの方では、先生の御質問に対してちょっと先走った話になるかもしれませんが、長期的に物を見ていきたいということで、林野庁の資料に対してはそういう姿勢でもってやろうと思います。
  196. 江田五月

    ○江田五月君 そこで、林野庁の方に少しお伺いをいたしますが、松くい虫防除特別措置法をお出しになるときには、ここにいまその当時第八十回国会の関係資料というものを持っておるのですけれども、発生原因については、鋭意究明に努めてきたところ、その結果、近年——この五十二年から見て近年ですが、ようやくその原因が解明されました。すなわち、線虫類の一種であるマツノザイセンチュウがマツクイムシの一種であるマツノマダラカミキリを介して健全な松の樹林に侵入し、次々に松を枯死させるのであります。また、これを防止するためには、マツノマダラカミキリが羽化脱出してマツノザイセンチュウを健全な松に運ぶ時期に松の樹冠に薬剤を散布してマツノマダラカミキリを駆除する方法が有効であることが明らかにされたのでありますと、こうなって、そして条文の第三条には、いまのこの原因の解明と対策の発見をもとに、「農林大臣は、昭和五十二年度以降の五箇年間において松くい虫が運ぶ線虫類により松林に発生している異常な被害が終息することとなるように」基本方針を定めなければならないと、そういうような規定を置いて、そして五年で終息させる、そういう意気込みで取り組まれたと理解をしておりますが、さあ五年で終息するということは一体どうなっておりますか、五年で終息しそうですが。
  197. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) いま御質問がありました時限臨時措置法でございますが、五年間で終息させるという目標のもとにスタートしたわけでございますが、最近の被害状況を申し上げますと、五十一年、五十二年と被害が減少してきておったのでありますが、五十三年度に非常に爆発的にふえまして、五十四年度もそれを超してふえたというのが現状でございます。五十五年度はまだ九月末までの被害状況しかわかっておりませんが、九月末現在で、五十四年と対比しますと約七割程度に減っております。われわれとしましては、いまその原因がマツノザイセンチュウ、マツノマダラカミキリが運ぶ材線虫だということが四十三年度から六年度までの国立林業試験場のかなり綿密な試験の結果判明したわけでございまして、そういったものに対しまして、もちろん特別防除法で空中散布をやるわけでございますが、空中散布も一つの方法として有効である、あるまとまった森林につきまして空中散布ができるようなところにつきましては、散布する時期等的確にやれば効果があるということをいろいろ確認いたしまして実施に踏み切ったわけであります。  それで、五十三年度に非常に爆発的にふえたという理由につきましては、われわれは、非常に高温で雨が少なかったというのが一番大きな原因ではないかと考えておるわけでありまして、五十二年度からその特別防除によりまして空中散布をやっておりますが、非常に爆発的にふえたのは、たとえば茨城県で七十万立方というような被害が出まして、これが全国の約三分の一を占めているといったような異常な被害になっておりまして、それが空中散布をやっていない個所が大部分でありまして、空中散布をやったところにつきましては防除効果がかなりあったところが多いわけでございます。そういったことが現状でございまして、最初に御質問のありました五カ年で終息できるかどいうことにつきましては、五十五年度は、確かに昨年の九月現在で七割ぐらい、約三〇%減っておりますけれども、当初目標としましたような終息が五十六年度中にできるかということは容易ではないというふうに考えております。
  198. 江田五月

    ○江田五月君 異常気象というようなことがあったことは確かですが、その異常気象が環境庁にとってプラスであったのかマイナスであったのか。立場によって恐らくいろいろな意見がありましょうね。けれども、いずれにしても松枯れの一つの機序が解明されたのだ、こういう対策があるのだ、空中散布をやっていれば、空中散布はいろいろな問題があるだろうけれども、五年間がまんしてもらえば、そうすると松枯れはもう五年で終息できるんだという、それができなかったことは、これは事実なんじゃないですか。容易ではないというふうにいまお答えになりましたが、容易でないどころか、もう終息という、二十万立方メートルぐらいに抑えるということはとうてい不可能と言えるのじゃありませんか。来年になってからやっぱりだめでしたということをおっしゃいますか。いまからだめなようですねというふうにおっしゃいますか、どうですか。
  199. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) 大変むずかしい御質問でございますが、われわれとしては、やはり来年のこと、未来のことを確定的にお答え申し上げるわけにはまいりませんので、まあ容易でないというふうな表現で申し上げたわけでございますが、被害の状況が、先ほど申し上げましたように、五十一年は八十万立方程度まで減少しておったのが五十三年度から二百万立方メートルを超えているというような状況で、五十五年度は、今年度は二百万を切るであろうという見通しでありますけれども、しかし、当初目標にしましたような状態の終息ということは、あと一年間で容易ではないというふうに考えております。
  200. 江田五月

    ○江田五月君 異常気象になると、なぜ一体松枯れが爆発的に増大するのかということですね。恐らく、林野庁のお立場からすると、異常気象になるとマツノマダラカミキリがふえるとか活発になるとか、マツノザイセンチュウがふえるとか活発になるとかというような理由をお挙げになるのでしょうが、そのほかにも異常気象のために、松が気象自体によって弱ったということもあろうかと思いますが、そのことはお認めになりますか、どうですか。
  201. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) 御指摘のとおりでございまして、マダラカミキリが非常に繁殖をするということ、あるいは材線虫がやはり繁殖するということもありますが、それ以外に特に水が少ないという、高温ももちろん関係いたしますが、降水が少ないということは松が弱るわけでありまして、実は材線虫が枯らす原因だということが発見される前に、やはりわれわれはキクイムシ、カミキリムシ類がその原因だというふうに考えて、いろいろ対策も立て研究もしておったわけでありますが、そのカミキリ類、特にマツノマダラカミキリが産卵いたしますのは、健全な木ですと、やにが非常に多いわけでありまして、これは産卵いたしましても卵が死ぬ率が非常に多くて、なかなか繁殖できないということでございまして、いまのマツノザイセンチュウとの共生的な関係といいますか、そういったことで材線虫が松の中に入りますと松が弱ってまいります。そこにマダラカミキリが産卵するというような循環をいたしまして、非常に爆発的にふえていくといったようなメカニズムがある程度解明されておるわけでございまして、必ずしも虫だけというわけではない。松がやはり弱るということも原因の一部ではないかと思っております。
  202. 江田五月

    ○江田五月君 松が弱る原因というのは、高温とか雨が少ないとかということももちろんありましょう。五十三年の異常気象のときにはそういうことがあったでしょう。同時に、大気が汚れてきているとか、あるいは酸性の雨が降ってきているとか、いろいろなことで松は弱るわけで、そういう点から環境庁としても松が弱っていること自体について非常に大きな関心を持たなければいけないということが言えると思うのですが、ちょっとそれはおいでおいで、さて、そこでですね、いま林野庁は空中散布も一つの方法だというふうにおっしゃいましたですね。ということは、これから松枯れに対してどういうふうな対応をしていくのかということとの関連で言えば、空中散布もあるけれども、そのほかのこともいろいろと考えていくのだ、努力をしていくのだということを意味するのですか、どうなんですか。
  203. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) 現在でもマツクイムシの駆除につきまして空中散布オンリーというわけじゃないのでありまして、特に五十六年度予算でいま要求しておりますのも、伐倒して駆除するといったような予算も増額していま要求中でございます。そういった意味で、空中散布する場合に、たとえば養蚕とか魚の養殖とかというようなところが介在しておりますと、空中散布が非常にむずかしいというか、ある被害が起こるということがございますので、そういった点からもなかなかできないところがありまして、あるいは非常に初期の状況で単発的に出るというようなところは空中散布で、また団地になっておれば予防というようなことでやれますけれども、それができにくいところもあるといったいろいろな状況がございますので、空中散布はやれる条件のところでやると一つの方法だと申し上げたわけでございます。
  204. 江田五月

    ○江田五月君 空中散布をやることのできないところというのもたくさんあるわけですね。そして、いまのように非常に広がってまいりまして、それを全部空中散布でやったら、これはもうそれこそ日本じゅうの松林をすべてスミチオンづけにしてしまわなきゃならぬというようなことになる。スミチオンという薬あるいはNACという薬、これはBHCとか昔のパラチオンとかいう、それはどの毒性はないんでしょうが、それでもやはりいろいろな毒性を急性、慢性ともに持っておるわけで、こんなものを日本の松全部にどこもかしこもまがれたら、これは環境庁、たまったものじゃありませんね。どうお考えになりますか。
  205. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 先ほど先生お話しになりました点で、確かに松枯れ及び松の林地における相対的な衰退と申しますか、そういった現象が起こっておるわけでございますが、確かに大気の汚染、そういったものもありましょうが、やはり何と申しますか社会経済の変化と申しますか、そういうことによって松林、林地、そういったものの管理のパターンが変わってきておるということも大きな原因じゃないかと思うのでございますね。したがいまして、長い目で見ると、松といういわば象徴的な木が日本において将来どうなっていくのかという問題が一つあるわけでございますね。  そこで、いまの空中散布による動植物の被害というのが別途ございます。私どもが当初この法律ができますときに重大な関心を示したゆえんのものももちろんそこにあるわけでございまして、まず何はともあれ人体に対する被害、これは厚生省の所管でございますが、一番大きな問題がございます。それから動植物がそれに並んで当然あるんですが、これのやり方、特に空中散布は一般農薬と同様に、まき方と申しますか、時間、地域あるいは気象、そういったものの条件をよく考慮してからやるという技術も相当大事だと思いますね。それから相当広範囲でございますから、当然空中散布によって線虫が死ぬということもありましょうが、いわば薬ですから、それはある程度の一般の目に見えない小さな植物、動物に被害があることも当然でございますね。ですから、それが過度にもちろんならないように、また現状以上にそういった被害が出ないようにということは、林野庁ともこれは担当者ベースでよくお話ししております。
  206. 江田五月

    ○江田五月君 この薬をまくと昆虫とかいろいろな線虫とか一斉にやられてしまう、そういう松林に住んでいるさまざまな小動物あるいは植物にとっては、原爆を頭から落とされたようなものだというような表現をする学者もいるようですが、しかし、それは比較的短期にまたもとへ戻るんだというようなことをおっしゃっている。いまも環境庁答弁の中にそういう趣旨の言葉が出てきた。林野庁の方でも恐らくそういうことだろうと思いますが、そうすると、比較的短い期間でもとへ戻るならば、マツノマダラカミキリもマツノザイセンチュウももとに戻るのじゃないか、もとのもくあみになってしまうのじゃないかという疑問が起こるのですが、これは林野庁はどういうふうにお考えなんですか。
  207. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) われわれがいま空中散布をやっておりますのは、こういう爆発的に非常にふえていく、それが先ほど申し上げましたマツノマダラカミキリとマツノザイセンュウによる蔓延でありますが、マツノマダラカミキリが成虫になって松の材の中から出てまいりまして、一番上の松の葉を食べるわけです。そのときにマツノザイセンチュウが体についておりまして、口を通してその松の中に入っていく。それが入りますと松が弱って枯れてくる。そこへ後でマツノマダラカミキリが産卵すると……
  208. 江田五月

    ○江田五月君 答えは短くしてください。
  209. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) 繰り返しでございまして、そういった中で空中散布によりましてそれを予防するということでありまして、われわれとしましては、被害が本当に減ってきて、やれるのならば伐倒して駆除するといったようなことを併用しなければ、やはりなかなかその防除はできないだろう、だから空中散布はあくまで予防的な措置であるというふうに考えております。
  210. 江田五月

    ○江田五月君 そうですね、空中散布をしたところで、どっちみち伐倒駆除をしなければいけないし、空中散布だけに頼っているのじゃ、それでまた自然が壊れてしまうようなことのないようにするのじゃ、またもとのとおりになっていくわけで、昔からやはりマツノザイセンチュウもマツノマダラカミキリも、一部にはよその国から入ってきたんだというような説もあるようですけれども、大体日本にいたものでしょうし、あるいは少なくともいまではどこにでもいるものですわね。そうすると、そういうものがいながら、しかし激暑型にならずに微春型で推移していくようにしていくためには、ずっといつまでも薬をまき続けなきゃならぬ対策というのは、これは余りほめた対策ではない。幾らスミチオンであろうがNACであろうが、毎年毎年まいておれば、毒性は少ないからといってもやはりだんだんたまっていくわけで、スミチオンの場合には残留毒性というものがかなりあるのだ、一年半だか二年だかたっても、なお五PPmでしたか幾らでしたか、数字はちょっと忘れましたが、かなり残るんだというようなこともある。そこへ毎年毎年また追い打ちをかけていくようなことになると、これは自然の破壊にどうしたってつながるわけで、さて、そこでこの特別措置法は、五年の時限立法、来年の三月三十一日には切れるわけですが、これをどういうふうにされるおつもりですか。
  211. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) おっしゃるとおり、時限立法でありますので、来年の三月三十一日まででございます。この取り扱いといいますか、今後のマツクイムシ駆除をどうするかということにつきまして、われわれ役所の中だけで考えるのもいろいろむずかしい面もございますので、各分野の専門家によりましてマツクイムシ防除問題懇談会というのをただいま開催いたしておりまして、マツクイムシ防除対策全般についての御意見を聞いているところでございます。それがまだいまのところまとまっておりませんが、これは何も特別措置法をどうするこうするという直接の問題を話し合う懇談会ではございませんでして、今後のマツクイムシ駆除についての基本的な考え方をいまいろいろ御意見を聞いているところでございます。これによりまして、われわれは今後どうすれば一番いいかといったことを判断していきたいと思っておるわけでございます。
  212. 江田五月

    ○江田五月君 その懇談会の日程的な見通しですね、これはどういうことになりますか、何月ごろにどういうふうにしてというようなこと。
  213. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) ただいままでに五回懇談会を開いておりますが、遅くとも四月の末ごろまでには取りまとめをお願いしたいというふうに思っております。
  214. 江田五月

    ○江田五月君 その懇談会の結論を得て、もうこれで特別措置法は終わりにするのだということならば、別に何もする必要はないけれども、また続けるのだというようなことになれば、いろいろの関係方面の意見の調整等が要るんでしょうが、その場合に、環境庁長官、続けることになるのかどうだか、ならない方がいいと思いますが、四月末ごろをめどに懇談会でこの検討をするに際して、環境庁の側からの意見の具申というようなものをおやりになるつもりはありませんか。
  215. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) これは詳細は局長から答えてもらいますが、やはり日本を代表する植物ですから、法律をつくってまで防除しようとしたんだけれども、まだ防除ができない。今後も安心できないということになればやはり何かしなきゃならぬと思います。何かしなきゃならぬと思いますが、まだ林野庁の方から私どもの方は相談を受けておりませんし、これから相談を受けて環境庁立場考えていきたい、こう思っています。
  216. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 懇談会にも、環境庁の現役ではございませんが、かつての幹部が出席しておりますので、相談をしながら審議に参加しているということでございますので、今後ともそういうふうにしたいと思っております。
  217. 江田五月

    ○江田五月君 そういうことで間違いのない結論を出していただきたいのですが、いまもお聞きのとおり、四年前に特別防除をやったら五年で終息するんだと言われたようにはなかなかいかないのですね。しかも、この空中散布に伴って必然的に起こる自然破壊というのも、これももとへまた戻るとしても、いつまでも繰り返していたら一体どうなることかというようなこともある。それからまた、まき方がときどき間違うことがあるのかないのか、間違ったと言われるようなことはときどき起こるわけですね。つい最近も何か愛媛の方で余り好ましくないまき方があったというようなことをおっしゃっている方がいらっしゃる、お聞きになっているかどうか。あるいはまいた薬がいろいろなところへ飛んで行っていろいろな影響を及ぼすと。滋賀の方では繭、蚕が育たなくなったというようなことをおっしゃっている人もいる。これは林野庁としては当然知っていることだと思いますけれども、そうしたようなまき方の問題が、人間ですからどうしたってトップで思っていたとおりのことにはなっていかないので、多少横へずれたりするわけで、そうすると余りそうほめたやり方ではないな、もっといろいろなやり方があるのじゃないか。たとえば松は確かに桜に次いでというか、あるいは桜と並んで日本国民の大好きな木ではありますが、しかし、もし日本のいまの自然の大きな変遷の中で、変遷ということを言うのが学問的にどうなのかということもいろいろありましょうが、もし、松はやはりだんだんもたなくなってきたのだ、ツバキとか、あるいは雑木のたぐいとか、そういうものにだんだん変わっていく過程にあるのだというようなことならば、あるいは松を守るために自然破壊を物すごくやらなきやならないけれども、もしそれを杉とかヒノキとかに変えるならば大丈夫だというようなことになるならば、そうしたような日本の国土の木の生え方を大きく変えていくというようなことも政治として、行政として考えていかなきゃならぬことじゃないかというような気もするので、先ほど長期的に二十世紀全般にわたって見ていきたいというようなお話もございましたが、林野庁としても、日本の山をどういうふうにしていくのかについてかなり幅広い、そして先の長い見通しを持ってやってもらわないと、すぐに松が枯れました、薬をまきますというだけでは困るという気がいたします。そういうことで、いままでいろいろな事例を見ておりますと、あるいはこの効果を見ておりますと、ちょっと五十六年の実施は見合わした方がいいのじゃないかというような気もする、そういう意見もあるのですが、林野庁、そういうつもりはありませんか。
  218. 黒川忠雄

    説明員(黒川忠雄君) 五十六年度につきましても、先ほどちょっと申し上げましたが、五十五年度と同じ事業量を計画して現在予算要求をしておるわけでございまして、その他の伐倒して駆除するというような方法は五十五年度よりはふやして要求しておるわけでございます。現在、確かに薬剤散布についてのトラブルというのも全然ないというわけではありませんが、われわれとしては、そういうことは絶対起こさないようにというふうに指導いたしておるわけでありますが、そういった意味で五十五年度の被害が五十三、四に比べていま減ってきておるわけでありまして、ここで予防措置として、五十六年度につきましてもマツクイムシ防除の一環としての空中散布というのは実行したいと考えておるわけでございます。
  219. 江田五月

    ○江田五月君 おやりになるならばせめて五十六年度については特別防除をやる前と後との生態系の変化みたいなものをかなり綿密に調査をしながらやるとか、あるいはまいた場所とまかない場所との違いを相当綿密にきちんと調査をしながら、五十六年度はひとつその後の方向を決める上での資料を豊富に取りそろえるんだというようなこともあわせてやるんだというような、いわば試験をあわせてまくんだというような気持ちでやっていただかなきゃ困ると思うし、そういう意味では、五十六年度の散布は環境庁の方もかなりくちばしを入れながら、林野庁と環境庁とが技術的に提携をして資料を集めながらまくというようなことをお考え願えないかと思うんです。それと同時に、長官、農薬というものについてはかなり環境影響というような観点からのチェックが乏しいような感じがしておるので、ひとつ農薬全般を見直そうというようなおつもりはありませんかどうですか。その点を伺って質問を終わりたいと思います。
  220. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 段々のお話を承っておりまして、なかなかこれから忙しい大変なことだなと思います。マツクイムシで松がやられてしまうことはいやです。これは景観の環境としても耐えられるところではありません。ですから林野庁もひとつせっかく勉強して、日本の代表的な松がなくならないように努力してもらわなきゃなりませんが、そうかといって薬品をのべつまきゃいいんだというものではない。それによって人が健康を害されたらこれはとんでもないことでございますし、また地面へ入れば土壌が汚染されます。そこへ雨が降ってくればそれも水に流れていって水が今度は汚染されますから、それは大変私どもの方の仕事にもろにかかってくるわけであります。時限立法でやりましたけれども効果がないということになれば、これでただやめるということでなしに、やるにしてもどういうふうなやり方、いままでのやり方でできなければどうにかしたやり方をしなきゃならぬ。そのやり方によっては、いま申し上げましたように、いろいろ私の方に直接影響してくるのですから当然これはよく話し合ってやっていきたい、こう思います。
  221. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 私は、今日、鹿児島県の大隅開発計画にしぼって質問をいたしたいというふうに思います。長官がおられませんで非常に残念でございますが……。  大隅開発計画は、私は、時代錯誤の計画であり、欠陥を多分に持っている計画であってどういうふうな事情があろうとも、どうしても廃案に持ち込まなければならない。こういう計画がもし実施されますならば、これは大変なことになるというふうに考えております。  それで、まず時代錯誤の計画であるという点から簡単に申し上げますと、この案の何といいますか、もとは、金丸氏が鹿児島県知事であった時代に鹿児島県開発計画会議というのを発足させました。そして、それとほとんど同時に東京において鹿児島県ビジョン研究会というのを発足させまして、その会長が大来君でありまして、大来君は鹿児島県の開発計画会議の委員にもなっております。そして、この東京の鹿児島県ビジョン研究会というもの、それから鹿児島県開発計画会議というものの審議を踏まえまして四十三年の十月に「二十年後の鹿児島」というのを鹿児島県が発表をいたしました。その「二十年後の鹿児島」というのを受けまして、これがどのくらいの影響を持ったかは若干問題もございますけれども、新全国総合開発計画、いわゆる新全総というのができまして、日本全体の大規模な工業基地といたしまして苫小牧、むつ小川原、志布志の三地域が指定をされまして、その後苫小牧、むつ小川原は埋め立てが実現をしたわけでございます。  それで、この新全総を受けまして、鹿児島県は四十六年の十二月に大隅開発計画、これは第一次と申し上げていいと思いますけれども、大隅開発計画を発表いたしました。この開発計画は二千七百三十ヘクタールの埋め立てをいたしまして、そうして、その埋め立て地の上に食品コンビナート、造船業、金属業、石油精製業、石油化学等を建設するという計画でございます。  しかるに、この案に対しましては住民の猛烈な反対がございまして、この第一次試案は四十七年八月に廃案になりました。県はしかしこの計画を絶対にあきらめたわけではございませんで、鹿児島の各市町村に地域開発調査研究協議会というのをつくりまして、これにはいろいろとからくりがございますけれども、この協議会の賛成を得たと称しまして五十一年六月に第二次大隅開発計画を発表いたしました。この二次案では、埋め立ての面積を約半分、千百六十ヘクタールに削減凄いたしまして、石油化学の建設を外しまして、そのかわり一千万バレルの石油の備蓄を追加いたしました。そうして、志布志を含めたいわゆる三全総というのが五十二年にできたわけでございます。そうして、五十五年六月になりまして、この大隅開発計画をなし崩し的に進めるという意味、当局者はこれを極力否定しておりますけれども、これは総計画一つとして企てられたものであって、志布志湾計画というものを、拡張計画というものをつくったわけでございます。そうして、五十五年十一月になりまして、鹿児島県議会の議決を経て第二次の大隅開発計画というものを正式に決定したわけでございます。  それでございますかち、いまつくられております第二次大隅開発計画というのは、古くは四十二年にその歴史がさかのぼって、いわばこの四十二年の経済状況のもとにつくられた計画であると言っていいと思うんです。そうして、この時代というのは日本列島改造論が盛んでございまして、高度成長論が非常に盛んであって、日本列島を改造して生産力をどんどんふやすべきである、そうして高度成長を実現すべきであるという旗を掲げて日本がどんどんと暴走をした時代でございます。この時代と現在とを比べますと非常に変わっております。高度成長はもはや望むべくもない状態であって、低成長の時代に入った、あるいは安定成長と言っていいかもしれませんけれども、それは万人の認めるところであり、それから、その後市民運動が各地域で非常に盛んになりまして、その地域地域の自然はどうしても守るべきである、それは子孫に伝えなければならないということで、列島改造、つまり自然破壊をしてでも生産力の増強ということを目的にすべきではなくて、これは長官の施政方針にもございましたように、自然破壊は極力慎むべきであるということになっております。それでございますから、この案ができたときと状況は非常に違っておりまして、その意味において時代錯誤の案だと言っていいと思います。  それでは、この計画がどういう点で欠陥があるか。非常にたくさん欠陥があって、いまここですべて申し上げる時間はございません。それでございますから、私は最も重要な二つの点についてこの欠陥を指摘したいと思います。  その第一は、これは志布志の海岸十六キロのなぎさ、白砂青松のこの海岸の破壊であるということでございます。  ここで自然破壊という意味を申し上げてみたいのですけれども、それは自然を直接に物理的に破壊をするという意味と、外部から見た景観がむちゃくちゃになる、つまり外部からの景観が非常に悪化するという二つのものが含まれていると思います。それで、志布志の海岸について申しますと、志布志の海岸それ自体が壊されるということと、それから白砂青松のながめ、たとえば志布志湾の沖に枇榔島というきれいな島がございますけれども、その枇榔島からなぎさを見た景色がめちゃめちゃになるというようなことと、二つの意味があるというふうに思います。  それで、この計画は志布志湾のなぎさを二キロ沖の方に埋め立てるという計画でございまして、さらにべらぼうなことには、志布志湾の海底から土と砂を掘り起こしてそれで埋め立てると、これは実にべらぼうな計画だと言わなければならないと思うのです。二キロ埋め立てるということによって美しいなぎさ、それから白砂青松の松林が相当破損してしまうということは明白でございますし、それから二キロ出て埋め立てた場所に工場を建てる、石油の備蓄タンクを建設する、そのときにこの白砂青松の景色はどうなるか、外から見た景色がめちゃくちゃに破壊される、これも自然破壊の一つだと思うのです。  そうして、最近では、これは正式にどうかわかりませんけれども、出島方式というのを考えておりまして、一キロ海に出て、そこから二キロから三キロ埋め立てるという案でございます。これは埋め立てるのに国立、国定公園法ですか、めんどうくさい法律がありまして、なかなか埋め立てが進まない。これは通達によって一キロ沖まで国定公園であるということが決められておりますから、それをのけ、その向こうは自由に埋め立てられるということからこういう本当にばかな案を考えたんだと思うのです。というのは、いま申しましたように、今度はほとんど枇榔島かすかすまで埋め立てられてしまうと、その上に石油の備蓄タンクができ、工場ができる、そうすれば志布志の白砂青松の景色はめちゃくちゃになるということは言うまでもございません。さらにそれ以上に悪くなることは、つまり一キロ埋め立てていない海面は外海とは関係が遮断される、そうなってくれば、よどんで水が汚くなって腐敗するということは火を見るよりも明らかでございまして、そうなれば、つまり志布志の海岸の美しさというものは全面的に損われてしまうと思うのです。  それから、どちらにいたしましても、埋め立てるには、先ほども申しましたように、海底の土を一億二千万立米を動かして埋め立てなければ、つまり十二キロの長さの二キロの幅の土地を埋め立てることはできないのだそうでございます。そうすれば、志布志湾の海底の地勢というのは非常な変化が起こって、従来の魚類は生息できない、モもちっともつかない、したがって魚類の生息もできない。そういうふうに、漁業を初めといたしまして、海底の砂をそれだけあれするとしますと、海水の汚濁が激しくなって、それがまた漁業に甚大な影響を及ぼす。さらに海底の砂をそれだけとると、地震の影響というのが非常にこわいのだそうでございます。私はよくわかりませんけれども、それでございますから、この埋め立てというものは、白砂青松自体が直接的に汚されるというだけではなしに、海がめちゃくちゃにされる、それから外から見た志布志の景観が破壊されるというふうに二重三重に自然破壊ということになると思います。  それで、国定公園でございますから、普通地域は五十ヘクタール以上は長官が首を縦に振らないと実施できないのだけれども、それ以下なら大丈夫だと、それから特定地域は二十ヘクタール以上は長官が首を縦に振らないとだめだと。これは私は偶然に知ったわけでございますけれども環境庁とそれから建設省と運輸省とで、志布志湾の周辺においては十五ヘクタール以上の埋め立てば許可しないという覚書が四十九年に交わされております。長官御存じかどうかわかりません。古い書類の中から見つけたものでございますが、いまここでお探しに——それはあってもなくてもいいんですよ。それは重要なことではないので、そういうふうにつまり昔の役人たちはとにかく自然を大事にしていたんだということを言いたいのです。それがいまは逆で、石油備蓄が非常に大切であるということは言えるでしょうけれども、それだからといって、そこいら辺の地域の住民の生活環境を悪化させていいということにはならないと思うのです。  それから、もう一つ重大な欠陥があるんです。それはつまり石油備蓄をやると、そのためには一万トン以上五万トン、十万トン、ある場合においては二十万トンのタンカーが入ってきて、そうして油を出したり入れたりしなければならない。そこで、そのタンカーが事故を起こして石油がたれ流されるおそれがあったならばそれこそ大変なことになる。それで一九七八年にアモコ・カジス号というのがフランス沖で座礁をいたしまして二十二万トンの原油が流出して、そうして四千億円に上る損害を出したということがございます。もしこういう事件が日本の瀬戸内海で起こったならば瀬戸内海全部が油づけになる。東京湾で起こりましたならば、これは火災が起こりまして東京湾の周辺は大火事になってしまう。それはもう万が一そういうことが起こったならば非常に危険であるということ。したがって、タンカーの事故に対しましては非常に予防をしなければならないということでございます。  ところで、これは四十九年三月の運輸省の第四港湾建設局企画課でありますか、企画課が十年間、そのころのお金で何千万円か使って調査した結果というものが私の手に入りました。志布志港についてのそれは実に詳細な調査でございます。そして、この調査の結論を申しますと、志布志港は巨大な船が出入する港にはなり得ない、不可能であるという結論なのでございます。専門的でございますから私にもよくわかりません。しかしながら、ごく簡単に申しますと、志布志湾というのは東の方、太平洋に向かっているんですか、太平洋に向かっている港であって、そして深いものでうねりが非常に激しい。それで防波堤をつくっても十分な遮断ができない。そこで、暴風雨のときには避難するよりほかしようがない。それで、この志布志の近くにある港として適当だと思われるのは、四国の宿毛ですか、それと大分県の佐伯湾この二つである。ところが、志布志を出ましてそこの避難港まで行くのには七十二時間かかるというのですね。つまり避難するかしないかを決定しなければならないのだけれども、その七十二時間以前に、台風がどういうふうに進行しているのか、それを知ることは非常にむずかしい。それだから、どうしても避難の途中で台風に遭って座礁、衝突、沈没等の事故を起こす可能性があるというのでございます。  そうして、日本ではもうタンカーの海難は、五十二年に八十一件ございましたし、五十三年に九十九件ございましたというふうに、一年間のタンカーの海難は決して少なくはない。幸いにして、非常な大きな事故でもって瀬戸内海がみんな油づけになるというふうな状況はいまのところはない。いままでには幸いにして起こっておりませんけれども、しかしながら、これは台風だけではございませんで、温帯低気圧、つまりおとといだか吹きました春一番とか、あそこら辺で言う台湾坊主ですね、そういうふうな温帯低気圧というものはつまり、来るか来ないかは数時間前にしかわからないのでございまして、こういう台湾坊主や春一番に遭ったならばとうてい避難をすることができないということでございます。  それからさらに、この運輸省の調査によりますと、ここら辺は非常に波が高いところであって、一年間に大きな船が行動する日はわずか百日しかないと、こういうわけでございまして、この運輸省の調査の結論は、志布志は重要港湾としては失格である、十万トン、二十万トン、五万トンという巨大なタンカーが入るような大きい港には不適当であるということであると思うのです。そういうわけでございますから、ここを埋め立てて石油の備蓄を行い、また多くの企業を誘致する、しかしながら、その問題もまた非常に問題でございまして、苫小牧の埋め立て、それからむつ小川原の埋め立て、それから福井の埋め立て、すべて失敗でございまして、埋め立てて場所はできたけれども、企業が全然来ない。地方公共団体は赤字に非常に悩む、ペンペン草が生えて、福井などは子供が野球場に使うくらいがせいぜいである。それが高度成長のときでさえそういう状況であるのですからして、低成長のときに企業を誘致しようとしたって来っこない。まあ簡単に申しまして、もう時間でございますからこれ以上は申しませんけれども、この鹿児島の第二次大隅開発計画というのは時代錯誤的な計画であって、非常に多くの欠陥を持った計画であるということでございます。  それで、環境庁長官はつまり最後のかぎを握っておられるのであって、運輸省及び建設省は石油の備蓄のタンクをつくりたくてしょうがないのでございますから、環境庁長官にお願いするよりほか仕方がございません。この案の実現に対しては、どうぞ首を縦に振らないで、先ほどもお話があったように横に振っていただきたい。もしこの計画が実現に着手するならばといいますか、工事に着手するならば、それは大変なことになるということ、そうしてそれは非常に莫大な金がかかる、海に捨てるようなものであって財政的にも非常な問題であると思います。どうぞ、どういう態度をおとりになるかここでお返事を迫ることはできないだろうと思いますけれども、私のいまの話、恐らくは御存じなかったことがたくさんあると思いますけれども、こういうことをお聞きになってどうお感じになったか、それを聞かしていただきたい。そうして、環境庁のお役人は、私が参りましたときに、この埋め立てのためには絶対に許可しないと、それから環境庁長官も新聞には許可をしないという意向を申し述べられたと出ておりますが、その点もう一度確かめてみたいと思います。
  222. 鯨岡兵輔

    国務大臣鯨岡兵輔君) 私は前に東京都会議員をやっておりまして、美濃部先生が知事のときにはもうやめてしまったのですが、それでも深い関係があります。私は、先生から質問を受けて、私が答えて、これを鯨岡君に頼むよなどと言われるようなことは生涯あるまいと思っていたんですが、まことにもって感慨無量なものがあります。  るるお話を承りまして、一つ一つについて私の考えを申し述べたいと思います。  やはりああいうところですから、そこの首長である知事さんは、何とかして開発をして県民所得を上げたいとお考えになるのは、知事の御経験もある美濃部先生もよくおわかりのことであろうと思います。そして、こんなことをやって所得を上げたいと思うのだがどうだと公約をして知事になられたのでしょうから、一生懸命になってそのことについて努力なさることは政治家としてわからないわけではありません。また、それに対してわれわれができるならば力をかしてあげたいという気持ちもあります。けれど、私は環境庁長官でございます。私の仕事の中には、言うまでもなく公害基本法に基づいて、公害などが起こってはならない、そのために万般の施策を講じよということが命令されているわけでございますし、特に国定公園として指定しているところをほじくり返して松を引っこ抜いたり、砂浜をなくしてしまったりというようなことをされることは耐えられません。それはだめです一もしどうしてもそれをやるんだということになるならば、国定公園をやめてしまわなきゃなりません。国定公園をやめてしまえば後は知らぬよということではありません。環境庁としてやはりそれなりに考えなきゃなりませんが、国定公園に決めてあるのですから、そういろ、いろなことを言われても、幾ら御協力申し上げたくてもできないことはできないですから、ひとつ十分関係者の方にもお考えいただかなければならぬと、何回もそれは申し上げているわけであります。しかしながら、そのことは開発に対して無理解というのではありません。  そこで、俗に言われている出島方式という、それでやったらどうかなという話があります。それはいろいろ景観を害するようないとはないかなというようなことも言うていますが、そんなことはありません、前々からそこに島があるんだと思えばいいんですなどという人もいるのですが、何せ話だけで、まだ具体的なものは出ていないのですから、具体的なものが出てから——工事なんか始まっちゃだめですよ。具体的な計画でこういうことだということが出てからわれわれは考えてみようと。日本は石油の備蓄もしなきゃならぬ国ですから、どこかへはいずれしなきゃならぬ国ですから、そこで、できるのならばどういうものだろうかということは考えてみょうではないか、考えるに値する。頭から、最初の問題のように国定公園の松を引っこ抜いて砂浜をひっ散らかしちゃうという、それはだめですが、それと同じには考えない、こういうふうに言っているわけであります。  それから、先生、いま外部から見た景色が、島の方から見た景色がと、こういうことで言われていましたが、国定公園は陸地の方からだけ見るので、船から見たり飛行機から見たりする景色は、それもありましょうね、確かにありましょうけれども、いまのところ、それは考えに入れてないのです。やはり陸の中から見るということになっているのでございまして、おっしゃられるとおり、那須の与一みたいに船の上から見たり、こっちの離れた小島から見たり、それから飛行機から見たりということも考えて、それでも景色がいい方がいいと思いますが、いまのところ、そうなっているということをひとつ御理解いただきたい。  それから、国の領海が従来三海里であったのがこのごろ十二海里になったみたいに、国定公園の領海——領海というのはないですが、一キロなんですね。一キロの外へ出たら何をやっても構わないかということですが、そうなりますと、これは埋め立て法がありますから、公有水面埋立法の第四十七条の二というのがありまして、やはり環境問題が関係するから環境庁意見を聞かなければだめだと。こちらがだめと言えばなかなかうまくいかないということがありますから、一キロ離れたらそれじゃ何をやってもいいだろうというわけにはいきませんので、この点も先生のお立場から言えば、御心配なくひとつ考えていただきたいと思うわけであります。  それから、タンカーが来てひっくり返ってしまったらどうすると。これは美濃部先生言われるまでもなく、大変なことですから、そういうおそれのあることは私はいやです。ですから、そういうことは絶対にないようにしなきゃならぬ。それから、志布志港というような、あそこを全部大きな港にしようというんですか、これは私よくわかりません。いま先生鯨岡、初めて聞いたこともあるだろうと言われましたが、それは何か初めてでございますが、運輸省が調べて、大きな船はだめだ、台風なんか来たときにはひっくり返る、こういうことだと専門家が言うのでは、そんな船がひっくり返るような港は、それは困りますから、これはだめになるだろうと、こういうふうに思っているわけでございます。これでおしまいですが、まだ出ていませんので、出てきてからひとつよく御相談して、万々間違いのないことをやろうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  223. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 ちょっと、一キロというのは法律にも何にもないのでしょう。大臣の通達でできるわけなんでしょう。
  224. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) ただいま先生のおっしゃった一キロでございますが、一キロと申しますのは、たしか、この公園計画をつくる際の線引きとしては通達で書いてございますが、自然公園法とか、それから自然環境保全法には随所にこの思想のもとになる一キロメートルという概念がありまして、これは淵源を言うと長くなりますが、一キロメートルというものが、やはり通常、物が建たない地域であるとか、あるいは眺望的に遠方をのぞいてみてどうこう、その他いろいろな理論が構成されておりまして、法律に一キロメートルというのはございます。しかし、そうこう思想が普通地域は特別地域の緩衝地帯という考え方がございまして、それは大体通念上自然保護の管理上一キロというふうになっているわけでございます。その点だけは誤解のないようによろしくお願いします。
  225. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二分散会