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参考人(
岡田隆郎君) どうあるべきかということを考えるにつけましては、これまでどういう点で
公団と居住者の団体が信頼
関係を持ってきたか、そういう経験があるか、その中でそれをどう生かしていくことが好ましいか、こういうふうに考えますので、若干過去の経過の特徴点を見さしていただきますと、
住宅公団ができ始めたのは
昭和三十年代でありますが、だんだんあちらこちらに団地自治会ができたというようなことで、
昭和三十年代の後半あるいは
昭和四十年の入り口でありますが、細かい話というか実例の話になりますが、
公団当局が集会所の料金を大幅に上げるというようなことで大変いろいろ疑問が出ました。そういう中で
公団と各団地でいろいろ話し合っていてもらちがあかないというようなことで、私
たちは一層力を強めまして、また
公団も、現場で一々営業所や支社に来られても全体の
制度の問題である、どうか本社の方で自治会
協議会と
公団で話し合ってくれ、こんなふうなことがありまして、
昭和四十年代の初頭から結果的には毎年、これは非常に具体的なんですが、隔月の第四水曜日の夜に
公団の理事者の皆さんあるいは管理担当の
職員の皆さんと私
たち全国の代表が懇談会を持つ。私
たち交渉と申しておりましたが、任意団体ですから呼び名は何でもよろしいですが、懇談会を持つということをずっと続けてまいりました。
そういう過程で、集会所の料金の問題もそれぞれ
立場がありますから円満に一致したかどうかは別としまして、住民としての意思統一はそこを通じて
公団にお伝えしたというようなことがありまして、それ以後いろいろ団地内の共用部分の維持管理経費に当たる共益費、これがまた平均しますと三年に一回ぐらい団地別に積算され、いろいろこういう物価、公共料金の値上げの反映等もありまして料金が改定になる、値上げになる。こういう時期には団地ごとの話し合いもあり、またこれも一定のルール、基本の問題がありますので、
制度的な問題はでは本社でやってくれというようなことで、共益費
問題等を通じて
昭和四十年代の前半は、この話し合いが非常に現場ではいろいろな感情問題が入ったりぎくしゃくすることもあったとしても、全体としてはこの
公団自治協加盟団地はそこで意思を統一して
公団と話し合っていくというようなことで、お互いのいい意味の信頼
関係がずっと築かれたことが歴史的にございます。
そういう延長上に、たとえば
住宅の狭さ、昔の団地は2DKで団地サイズというようなことで狭くて困るというようなことで私
たちいろいろ要望を出しまして、テラス
住宅の増築の方針を出していただくだとか、あるいはまた
環境整備の一環として自転車置き場を団地内に自治会の希望する場所につくってもらうようになるだとか、そういったたぐいの日常的な住民の要望を
地方ごとあるいは全国的にまとめて全体のものとしていく。その過程ではときには国会にも請願し、あるいは
建設大臣にもお願いをし、そういうものを反映させていただきながら
公団に善処していただいたという経過がずっとございます。
そういう中で、私
たちも正直言って自負しているのですが、自治会がなくして
公団の円滑な管理はないというふうに考えております。つまり、
公団の皆さんも日常そこに住みついておられるわけじゃありませんし、いろいろ人減らし等で現場の管理も御苦労があります。そういう中で一人一人が管理事務所に行っても留守も多いですし、そういう中で自治会が補修のアンケートをするとか
環境整備の要望アンケートをするとか、こういうものをまとめて自治会ごとに話し合う。それが営業所、支社、本社とこうくる。こういうことがあって便利だと、俗に言えばそういうことでもありますし、私
たちの側から言えば、これが本当に自分
たちの住んでいる地域を納得のいく、そして住んでよかった、子供
たちも安心して育てられる、こういう団地をつくるには、
公団に
家賃を払っているんだからもう勝手にやれ、共益費を払っているんだから汚したって
公団が掃除すればいい、こういうことじゃない、話し合って合意の上でやっていくということが住民の自治の責任でもある、こういう意味でそういういい慣例がつくられた経過があります。
そういう点で、結論的に申し上げますと、新
公団が
発足していくとすれば、これからの集団
住宅の管理のあり方がそういう住民参加といいますか、住民と
公団当局、あるいは大きく国民の意見を反映させた国会の御意向などを受けながら、これからの集団
住宅の管理の典型をこの六十万世帯なり私
たち公団自治協なりのところで、日本の
住宅政策の中にひとつ胸を張っていけるようなそういう典型をこれからもいままでの経験を生かしてつくり上げることが大事なんではないだろうか。そういう点ではどうしても
公団当局あるいは
建設省と住民代表との話し合いといいますか、形態は何でもいいんですが、実態的な話し合い、そこでの意思の疎通というものが図られていく。このことが一層発展していく中で、私
たちは結果として自分の要望も実現することにもなりますが、
公団は公的財産でもあります、そういう財産を維持し、次に住みかえる人の、後に入る人のためにも、国民の財産を守り良好に維持するという点から言っても、やはり集団
住宅の管理の典型をこの公的な
住宅の中で、数十万を擁するこの大
規模な実績の中で、しかも住民と
公団との交流の実績が十数年ある、このことを生かして新
公団の中でそういうシステムができればこんなにすばらしいことはないんではないか、こういうふうに考えております。