○
参考人(
工藤芳郎君) きはうは会期末で大変お忙しい中を
参考人として
発言の機会をいただきまして、
委員長初め
理事、
委員の諸
先生方に対しまして厚く感謝の意を表したいと思います。
本
法案は、団地居住者あるいは公団で働く職員の皆さん、さらに一般の
国民それぞれの立場から重大な関心を持って
審議を見守っておるわけでございます。私は、御紹介賜りましたように、団地の居住者の立場から
考えなり
要望をさせていただきたい、かように
考えておるわけでございます。
最近、私
たちの
全国公団住宅自治会協議会でさまざまな会議を持っておりますが、その中でも
住宅公団二十五年有余にわたる実績を持っておるわけでありますが、衣がえをするということで非常に感慨無量だというふうな
言葉もあちこちに聞こえているのが現状でございます。
さて、本件につきましては衆議院
建設委員会でもすでに御
審議をいただきまして、十項目にわたる附帯決議が全会派一致でなされているところでございますが、なお次の諸点につきまして不確実なところもあり
要望したいことがございますので、
発言をさしていただきます。
まず第一点は、新公団の業務内容が拡大されるというわけでございますが、そういたしますと、新たな
事業に伴う借入金などによる金利の負担などの増高が、既存の団地居住者に新たな事由に基づく家賃の値上げや共益費等の値上げとなって負担増をもたらすのではないかと心配をしております。これは御存じのように、多角経営を行う場合、大手私鉄などに見られるわけでありますが、鉄道部門のほかに不動産、観光、ホテル、さまざまな
事業部門を持っておりますと借入金の金利の負担は、各
事業部門の固定資産の割合によって案分をするというような事例がすでにあります。今後新公団が新しい業務を拡大してまいりますとそういったことになるのではないか。したがいまして、
法案を見せていただきますと、第五十三条において一応区分の経理が定められておるわけでございますけれ
ども、
住宅部門と都市
整備業務とを截然と区分をされまして、都市
整備業務等から発生する金利等の費用が
住宅部門への負担増とならないように、法律または施行規則あるいは会計規則などで明記をされておく必要があるのではないかと存じます。
なお、同様の
趣旨から、今日
日本住宅公団の長期借入金残高は、今
国会の質問等によって議事録を見せていただきますと、五十四年度末現在で六兆千六百二十六億、これは国鉄の長期債務、たな上げ分を除きますとこれを上回るものだというふうに
理解をいたします。支払い利息も五十四年度実績で四千四百六十億、一日当たり十二億二千百九十万円にも上るというふうに伺っておるわけでございまして、いわば第二の国鉄のような経営事態に陥って、これが原因となって新設団地の高家賃がさらに進む、あるいは既存団地の家賃値上げが起こるというようなことがあってはならないわけでございまして、この点を強く望むわけでございます。
第二番目は、
先生おっしゃいましたように、いろいろな管理部門が委託をされるというようなことも伺っております。新公団の発足により管理水準が低下することのないような十分な管理体制をぜひともおつくりいただきますよう
要望する次第でございます。
次に、
日本住宅公団の高、遠、狭ということがございましたが、この点については、こうした実態を含めまして公団の経理内容を公開し、広範の
国民の協力と参加の
もとで新公団を発足させるべきだと
考えるわけでございます。御存じのように今日情報公開は世論の趨勢でございますが、民間企業におきましても消費者、住民への対応は非常に急速に進んでおります。
私も
全国消費者団体連絡会の代表
幹事をさせていただいておりまして、いろいろな企業の
皆さん方、役所などと接触することがございますが、たとえば一九七七年に経団連の総合
対策委員会、企業の社会性部会におきまして、「企業、経済団体の広報活動のあり方」というのを発表されております。その中の対地域社会コミュニケーション活動の基本姿勢についての四つの原則というのがございますが、その第一には、企業機密の名による閉鎖主義が住民の不安の原因となり、それが企業不信へとつながる、生産活動の実態は可能な限り公開すべきである、こういうふうなことがうたわれておるのが現状でございます。
これに基づきまして、最近では電気
事業審議会などでも電気
事業の内容の公開などがかなり具体的に進んでいるのが今日の実情でございまして、新公団あるいは現在の二つの公団が統合されるこの段階で経理内容の公開をすることが企業のためにとってもまた
国民にとってもぜひとも必要ではないだろうかと思うわけであります。御存じのように、
政府特殊法人であります国鉄、電電公社などは毎年度監査報告書を公開しているのが現状でございまして、こういう点もあわせお
考えをいただきたいと思うわけでございます。
次は、公団が創立以来果たされました功績、私
たちはこれを高く評価するわけでございまして、今後ともこの功績を承継されまして、
住宅に困窮する勤労者のための
住宅を大量に
建設する新公団として引き続き発展を望むということでございます。
次は、同時に公団が今日抱えております長期未利用地、新築空家、保守管理中の団地、仕掛かり中の団地等々の実態を明らかにしていただきまして、その
対策についても新公団発足までに
国民の前に明らかにしてほしいと思うわけでございます。これは
国民的な
要望であろうかと思います。特に
宅開公団の果たした役割りやその経営実態は、私
たち日本住宅公団に居住している者は
もとより、多くの
国民が案外知らないということをよく聞いておりますので、この点についてもよろしくお願いをいたしたいと思います。こうしたことが私は今回の統合の契機となりました行政改革という観点から見ましてもぜひとも必要なことではないかと存ずるわけでございます。
次は、今後新公団により
建設されます団地のことでございますが、市街地再開発等によるものが中心となる、このように伺っておりますが、こういたしますと、高家賃団地が当然予想されるところでございます。これに対しては格別な高家賃抑制策を具体的に示す必要があるのではないかと
考えます。
参考までに現状の市街地高家賃団地の実態をちょっと御紹介をしておきますが、東京都の北区にあります王子五丁目団地というのがございますが、これは五十一年度管理開始の当時でありますと、家賃が三DKで五万七千三百円から五万九千六百円でございました。五年目に当たります今年度五十六年度の家賃は、この四月から八万二千二百円から八万四千四百円という幅でございます。仮に二十五万円の月額給与所得者の所得と家賃とを対比いたしますと、二九・六%というふうになるわけであります。これは平均でございまして、私
どもの調べによりますと三十数%になる方も相当いらっしゃるというふうに伺っております。こうしたこともございまして、この団地では最近の調べによりますと、二千百七十六戸ございますけれ
ども、その六九・二%に当たる千五百戸の
方々がこのわずか五年間で転居をされてしまったということを聞いております。これでは勤労者の
住宅とはとても言えませんし、住居の安定が保てないのでございます。新公団によって
建設されます団地がどうかこうしたような事態にならないように、
住宅は建てればいいというものではないわけでございまして、本当に安定した住居として
建設されますよう強く
要望する次第でございます。
次に、家賃の問題について触れさせていただきますが、現状におきましても、御存じのように値上げの事由、値上げの基準あるいは基準の運用のルールといったようなものが、公団
住宅の家賃につきましては
公営住宅などと比べますとその客観性が乏しい、つまり客観的な基準が明確に定められてないわけでございまして、こういったところから社会的混乱も生じております。本
法案の
審議の経緯におきましても、衆議院段階では社会党修正原案にも示されましたように、こういったルールの策定と合わせまして少なくとも公団と団地居住者——私
たちは現在公団
住宅自治会協議会というのを組織しておりますから、私
どもでよければ喜んでその場に応じますが、この居住者との協議の場をつくるということが私はぜひとも必要なのではないかと思うわけでございます。
衆議院段階では附帯決議に同
趣旨のことが盛り込まれましたが、参議院段階ではこの公団と居住者との協議の場という点はぜひとも挿入をいただきますことが、今後の公団と居住者との管理上の円滑な運用にきわめて有効であると
考えるわけでございます。団地居住者といたしましては、こういった場をつくっていただきますれば、家賃問題だけではなくて、
環境の
整備、修繕、共益費といったような問題につきましても、団地というものは御存じのように
国民共有の財産として私
たちは
理解をしております。その保全という立場から公団に対する積極的な協力をする用意を持っております。現在、家賃裁判という事態もございますけれ
ども、どうか新公団発足の機会に、公団と居住者代表との協議、話し合いの場が一定のルールの
もとに再開されますことを強く
要望するわけでございます。
最後に一点だけ、修繕の問題について実態だけ簡単に述べさせていただきますが、私
ども全国公団住宅自治会協議会が昨年、加盟団地自治会に対して調査を行いました。御回答をいただきました団地が百九十六団地自治会がございますが、修繕
要求の実態を見ますと、老朽化が進んでいるというのが客観的にあるわけでありますが、三十一年から三十五年に管理開始された団地の場合は八〇・三%が老朽化を訴えております。三十六年から四十年開始では二七・〇%、四十一年から四十五年では五・八%、四十六年から五十年では老朽化問題はございません。その他団地の居住
状況について苦情を訴えた
方々が、これは居住
状況といいましても公団の管理上の問題でありますが、三十一年−三十五年の管理開始の場合は八八・五%、三十六−四十年管理開始が九四・六、四十一−四十五年が八六・五、四十六−五十年、九二・九と、これは新しい古いにかかわらず苦情がございます。
どういう苦情がということを二、三御紹介しておきたいと思いますが、一番多いのが排水の問題でございまして、五七・九%、それから塗装の問題が……