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1981-05-21 第94回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月二十一日(木曜日)    午前十時二十二分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         秦野  章君     理 事                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 中村 啓一君                 夏目 忠雄君                 細川 護煕君                 町村 金五君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        外務大臣官房審        議官       栗山 尚一君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省条約局長  伊達 宗起君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務大臣官房調        査企画部長    秋山 光路君        外務省北米局安        全保障課長    丹波  実君        外務省欧亜局審        議官       堂ノ脇光朗君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (非核原則事前協議に関する件)  (ライシャワー発言に関する件)  (日米共同声明に関する件)  (ソ連に対する経済措置に関する件)  (外交基本姿勢に関する件)  (米国原子力潜水艦による衝突事故に関する  件)  (日米合同演習と漁業問題に関する件)  (対ソ連外交と領土問題に関する件)  (日中関係に関する件)     ―――――――――――――
  2. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会開会いたします。  園田外務大臣から就任のあいさつがあります。園田外務大臣
  3. 園田直

    国務大臣園田直君) このたびは、はからずも外務大臣就任をいたしました。責務の重大さを痛感しております。  去る五十四年十一月に外務大臣の職を離れてからちょうど一年半が経過いたしております。この間国際情勢は一段と厳しさを加えております。私は、この困難な時期において外交に課せられた使命の重要性を認識し、微力ながらこれを全うすべく全力を尽くす所存でございます。何とぞ皆様方の温かい御理解と御支援をお願いいたします。  現下の厳しい国際情勢において、わが国の平和と安全を確保し、自由で豊かな国民生活を保障していくためには、国際社会全体の平和と安定の維持が不可欠であります。このため、わが国は今後一層積極的な国際的役割りを果たしていかなければなりません。すなわち、激動する世界、特にアジアの平和と安定のために、わが国アジア諸国と協力し、政治的役割りを一層積極的に果たしていくべきであります。わが国はまた、世界経済安定的発展にも一層寄与していくべきであります。南北問題の解決についても同様であります。わが国がかような国際的役割りを果たしていくに際し、米国及び西欧諸国と連帯し、これと協調しながら西側陣営の一員としてともに進んでいくべきことは言うまでもありません。私は、このきわめて厳しい時期に外務省を預かることになりました。私としましては、このときこそ全省が一致団結し、外交体制の一層の強化を図り、もって現下の難局を克服し、わが国外交運営の重責を全うせんものと深く決意しておる次第でございます。御協力を重ねてお願いいたします。
  4. 秦野章

    委員長秦野章君) 暫時休憩いたします。    午前十時二十五分休憩      ―――――・―――――    午前十時二十八分開会
  5. 秦野章

    委員長秦野章君) それでは再開いたします。  国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 松前達郎

    松前達郎君 国際情勢、最近どうも、特に日米間の問題が非常にたくさんの問題を抱え込むような状況になりつつあると私は判断をしておるわけですが、特にこの前の首脳会談のいわゆる日米同盟という問題ですね。それからさらに今回はライシャワー教授発言に関しての非核原則の問題、こういう問題がいま出てきたわけであります。  そこでまず最初に、非核原則の問題についてお伺いをいたしたいのですが、非核原則は、本来アメリカの核のかさのもとにわが国アメリカ防衛してくれるのだ、核攻撃を受けた場合は、アメリカがそれに対する処置といいますか、報復といいますか、こういうものをやってくれるのだということを前の委員会でたしか私伺っておるわけなんですが、この非核原則も、伺うところによりますと、非核原則というのが前にあって、その非核原則というのは、核をつくらず、持たず、持ち込まずということに、さらに四番目としてアメリカの核のかさのもとに入っているのだと、入るということを挙げている、こういうふうに言われておるのですけれども、核のかさの下に入るということについては、政府はすでに明言しているというふうに私は理解をしておるわけです。  そこで、日本への核攻撃が行われたときにはアメリカは核で報復すると、こういうふうなことになると思いますが、この点についての政府見解をひとつお聞きしたいと思います。
  7. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 御承知のとおり、日米間に安保条約がございまして、第五条に基づいてアメリカ日本防衛義務を持っております。この防衛義務につきましては、従来からアメリカ大統領が随時この日本に対する防衛義務を誠実に果たしていくということでございまして、その場合はアメリカ側日本防衛を果たすためには通常兵器であれ核兵器であれ、これを使用するということを明らかにしておりまして、私の記憶に間違いなければ、三木・フォード両首脳が会談されたときに、核兵器もその中に含まれるという話があったというふうに私は記憶しております。
  8. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、当然有事の際、日本が核の攻撃にさらされるというふうなことになった場合には、もちろんアメリカ安保条約に基づいて日本に対する核攻撃に対する報復といいますか、それをアメリカが行うと、こういうふうに解釈していいのかどうか、その点をひとつ。
  9. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いま委員の言われたとおりというふうに理解いたしております。
  10. 松前達郎

    松前達郎君 そうなりますと、核のかさの中に入っているわけですね。これは前から言われているとおりですが、そういう核のかさの中に入っていながら、しかも日本核攻撃を受けたときにアメリカ核報復を期待するということであるならば、核の一時立ち寄り、たとえばアメリカ軍艦船核搭載艦日本への寄港と、こういったような問題については当然考えておかなきゃいけない、そういうことだと私は思うのですね。これを事前協議対象として、しかもその事前協議においても、これは総理大臣がみずからきのうあたりも言われたと聞いていますが、すべてノーなんだ、事前協議をしても核の持ち込みは一切認めないのだというふうなことを言われていることというのは、先ほど申し上げたことから考えてどうも常識的に考えられない。これはアメリカ側も恐らくそんなこと考えてないのじゃないかと、こういうふうに私は思うのですけれども、その点いかがですか。
  11. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) アメリカの核の抑止力に依存することとアメリカの核を日本に持ち込むということは別個のことでございます。したがって、アメリカの核の抑止力に依存するということは日本に対して核の持ち込みを認めるということにはならない、ここは別個に考えられるということでございます。
  12. 松前達郎

    松前達郎君 その点何か言葉のあやみたいな感じがするのですけれども、先ほど申し上げたように、核による攻撃を受けた場合の報復措置としてアメリカの核が発動すると、こういうことになれば、これは平時の場合と有事の場合と違うかもしれませんけれども、しかし、いまの核戦略からいきますとこれは平時有事もないのですね。常に準備をしてなきゃならない。そういう時期にもうすでに緊張がきているわけですから、そういったことから考えた場合、当然アメリカ側としては、核を搭載した艦船あるいは航空機等日本に立ち寄るのはあたりまえじゃないか、そういうふうに考えるのが私は当然だと思うのですね。それに対して政府は、いままでずっととってきたのは、一切そういうものは、立ち寄りも認めない、ストップオーバーも認めないということですね。そういうことになるわけなんで、どうもその辺の食い違いがあるような気がしてならないわけなんです。  核攻撃を受けてから事前協議をやるのですか。その点はどうなんですか。
  13. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 事前協議制度三つございまして、その主体は、一つ日本国に対する配置における重要な変更、第二は米国軍隊装備における重要な変更、第三は日本基地とする戦闘作戦行動、こういう三つでございまして、この事前協議制度のもとにおいてアメリカ側日本に対して協議を求めてくるということは、状況がそのいずれかを必要とするという状況ということかと思います。
  14. 松前達郎

    松前達郎君 持ち込みという問題についての解釈の仕方は、後でまたちょっとお聞きしたいのですが、現在の核戦略として、たとえば米ソ間の核の保有の問題とか、いわゆる全般的に言えば軍事力、こういったようなものが均衡を保つ中で平和を保っていこう、要するに核による抑止力というもので平和を何とか保てないだろうかと、こういうふうなことがいま言われているわけですね。こういったことであれば、戦争抑止策としての軍備と、特にいま申し上げたように、西側とソビエトの均衡を保つための中に日本が加担をして、アメリカに加勢をして防衛分担を行っていこう、だれが見てもこういうふうに理解できるわけなんですね。こういったことであれば、政府が言っておりました持ち込ませないという意味、特に立ち寄りとかそれから一時的なものですね、たとえば領海内通過だとか、そういう問題について一切ノーだなんというのは、どうもこれは筋が通らないのじゃないか、国際的に見たらどうもこれはナンセンスじゃないかという感じがするのですが、くどいようですがその点いかがでしょうか。
  15. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 答弁が繰り返しになって恐縮でございますけれども、あくまでも、アメリカの核の抑止力に依存するということと核の持ち込みを認めるということとは別個のことでございまして、アメリカの核の抑止力日本領海、領空、領土の中に持ち込まれなくても、それはアメリカ核抑止力として十分に作用しているというふうに考えております。
  16. 松前達郎

    松前達郎君 その点、どうも私と解釈が違うので、いわゆる核戦略そのもののスケールの大きさですね、それから常日ごろの核戦略体制、こういうものを見たときにはどうもいまの理屈は通らないのじゃないかと私は思うのですけれども、それはそれで意見相違ですから。  そこで、日米間の政府同士取り決め取り決めといいますか共同声明等もこの前行われたわけですね。あるいは条約としては安保条約がある。この内容に関してどうも日米間で解釈ずれがあるのじゃないか、こういうふうに言われておるわけなんですが、これもどうも、前にもこの委員会で私申し上げましたけれども、同盟という言葉についてアライアンスという言葉を使うということ、アライアンスという言葉はこれは完全に二国間あるいはそれ以上の国の間における軍事的同盟が中に含まれている。これはもう実は辞書を引けばそのとおり出てくるわけですね。こういうふうなことに関して、日本側はそうじゃない、これは側面的なものだというふうに政府は言われるし、アメリカはそうじゃない、当然これは含まれているのだと。かねがねそういうふうなことでもうすでにそういうムードになっている。ムードといいますか、そういう了解になっているような発言もあるわけなんですね。ですから用語の問題で非常にずれがいまそれぞれ起きているのじゃなかろうか。たとえばいまの持ち込みの問題にしたって、イントロダクションという言葉、これもアメリカ側解釈それからライシャワーさんの解釈、あるいは日本側解釈が非常にずれている。このずれをやはりこれは国際間の問題であって解釈が違うからといって澄ましておくわけにはいかないのじゃないか。やはりここではっきりとその点を十分検討して合意しておかなきゃいけないことがあるのじゃないかと私は思うのですね。そうしませんと、これまたいつまでもうやむやになって、何か問題が起きるたびにこれを蒸し返さなきゃいけない、こういうことになるのじゃないか。そしてその間に、今度は国民政治不信国民不信感がどんどん増していく、そういうことになるのじゃないかと私は思いますが、その言葉、のずれ言葉というか解釈ずれですね、これについて、これは大臣どういうふうにお考えでしょうか。
  17. 園田直

    国務大臣園田直君) 今度の首脳者会議後の共同声明、今度のこの同盟という言葉外務省総理の間にいろいろあったことが言われますが、これは総理からはっきり言われたとおりに、この解釈それから言葉使い方、こういうことについては総理自分言葉が少し足りなかった、今度の首脳者会議で決めたものが軍事的だ、あるいは防衛の問題だと、こう言われる、それだけではないと、こういう意味のことを軍事的なものを含まぬと、こう言ったので、その後訂正をしておられます。これは政治経済、文化、それから日米安保は当然これは中に入っているわけでありますから、そういうものを含めて総合的な日米関係をさらに親密に、さらに強化をすると、こういう意味であるということで国内の意見は一致をしております。  なお、米国の方も、この日本共同声明に対する若干のさざ波というもので日米間の間に影響があったりそごがあったり解釈相違があるということはないということをはっきり米国の方でも申しておりますが、この問題は、私は日米間の食い違いもなければ総理外務省食い違いもないと、こう思います。
  18. 松前達郎

    松前達郎君 これは大臣ちょっともう十分御承知だと思いますが、私もアライアンスという言葉に対してこだわるようですけれども、この解釈について字引を引いてみたわけです。そうしますと、こう書いてあるのですね。二つまたはそれ以上の国家が相互援助防衛のために形成する連合と、こういうふうな訳がついておったわけですが、いまおっしゃったことで相互援助とかそういうものはもう当然含まれておるわけですが、問題は、その防衛のために形成する連合というのは一体どういうことなのかと、こういうことになろうと思うのですね。それがいままで恐らく議論がずっとされてきたことじゃなかろうかと私は考えておるわけです。  しかし、いずれにしてもこういった言葉解釈というのがずれますと、これはまたその点だけでまたけんけんがくがくといろいろ出てくるわけですね。ですから、この辺はやはりちゃんとしたその解釈、その合意をお互いにしておきませんと、そこでもってずれがあったときには後で必ず問題が起きる。このライシャワーさんの問題あるいは同盟の問題をとっても、どちらもどうもそういったようなことが基本にあるような感じがしてしようがないですね。ですから、その点をひとつ今後は日本文英文に訳すとき、あるいは英文日本文に訳すときももちろんありますが、いろいろな了解を求めるときの口頭でのいろんなディスカッション等も含めて十分慎重にやらなければいけないのじゃないか。もしかこのずれがあったとすれば、これは早急に直さなきゃいけないことであろうと私は思っておるわけです。その点をひとつ今後大臣としてお考えおきいただければと私は思っておるわけですが、いかがでしょうか。
  19. 園田直

    国務大臣園田直君) 言葉使い方相互自分の勝手なように解釈しては後々大変な問題になります。御指摘のとおりであります。今度の共同声明のことに関しては、これはもちろん安全保障の問題も含むわけでありますが、それは日米安全保障条約の枠内であり、これが変貌したものでもなければ逸脱するものでもない。さらに第二回目の首脳者会談で、総理はこの点は絶えず強調しておられまして、日本の憲法、財政それからアジアの中に置かれた立場というものを明確にしてございまするし、それに対してさらにレーガン大統領もコメントをこれに答えておりますから、この問題の食い違いはございません。将来ともあろうはずはないと存じます。
  20. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、言葉ずれなんだといえばそれっきりになってしまうのですけれども、解釈の仕方という問題が非常に重要だということに私は思っておるわけですが、先ほど北米局長が言われた中で核持ち込みの問題ですね、これについて、持ち込みというものについての解釈の仕方がどうも違っている。非核原則に関しては、核持ち込みとは一体何を意味するのかというので、アメリカ側は当然寄港だとか領海内通過というものは持ち込みに当たらない。トランジットとかあるいはストップオーバーというような感じアメリカ側は見ているのじゃなかろうか。ところが、日本側はとにかく日本領海内に入ってくること、これはもうすべて持ち込みなんだというふうに解釈されている。この辺の相違がいま浮き彫りにされているわけですが、日本側解釈として寄港とか通過というのは持ち込みに当たると、もう一遍確認ですけれども、そういうふうに解釈をしておられるわけでしょうか。  それともう一つは、これについては一切非核原則から認めないのだというふうに考えているのか、その点を確認ですけれども、もう一回ひとつ。
  21. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおいて、いわゆる艦船による核の持ち込みを含め核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議対象である、これが日本政府の従来からの見解でございまして、いまも変わっておりません。  それから第二の点の、非核原則を堅持するということは従来からも政府としても申してきておりますし、今後もその方針を堅持していくということでございます。
  22. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、日本側としてはそういうふうに考えている、ところがアメリカの、これは政府筋じゃないでしょうが、ライシャワーさんの解釈というのがどうもそうではないということになるわけなんで、そこで問題になってくるのは、このイントロダクションという言葉なんですね。これはイントロダクションという言葉は一体どこから出てきたのですかね。
  23. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 日本側で核の持ち込みという言葉は使っておりまして、安保条約改定の際にその持ち込みというのはイントロダクションであるというやりとりがございました。そういうところから持ち込みはすなわちイコールイントロダクションだと、こういうことでございます。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、このイントロダクションというこのイントロダクションについては、すでに公式の場所で議論をされたと、たとえば日本の文章をただ事務的に訳してそういうふうにしたのじゃなくて、イントロダクション言葉意味については十分協議されているのだ、協議された上でこのイントロダクションを使ったのだと、こういうふうに解釈していいですか。
  25. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 個々の交渉のやりとりについてまでここで明らかにすることは差し控えたいと思いますけれども、まさにいま委員が御指摘になりましたように、当然その持ち込みイントロダクションであるよという話は当時からあったわけでございまして、さらに私の記憶が間違いなければ、昭和四十三年いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解なるものを国会にお示しし、越えて昭和五十年でございますか、日本側からアメリカ側に対して、この口頭了解というものについて英訳文を付してアメリカ側に照会し、アメリカ側日本了解のとおりであるということが回答が寄せられているわけでございます。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、その事前協議についてという、その外務省から国会に出された文書があるのですが、これはこの中の二番目に「「装備における重要な変更」の場合」というのがあるわけですね。その内容は、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地建設」というふうに書いてあるのですが、この文書英語に訳してアメリカの方に通告してあるわけですか。
  27. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私がいま申し上げたように、国会にお示しした文書をいま御引用になったと思いますけれども、その文書をそれから国会に提出したのが多分四十三年だと思いますが、越えて昭和五十年かと思いますが、その際にアメリカ側に提示しているわけでございます。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 では昭和五十年にこの内容のものをアメリカ側に提示されたと、その提示する場合は当然これは英文で提示されておるわけでしょうが、そのときにこの持ち込みというのをイントロダクションということにして提示されたのかどうか、その点をお伺いしたいのですが。
  29. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私ここにその当時に添付いたしました英訳文を持っておりませんけれども、当然持ち込みということはイントロダクションということというふうに記憶しております。
  30. 松前達郎

    松前達郎君 そこに一つ用語解釈の――公式にこのイントロダクションを使ったということになりますから、当然アメリカ側としては日本語との差があるものを承知しながらそのイントロダクションを読んだわけじゃないと思うのですね。イントロダクションというものを、イントロダクションという文字をそっくりアメリカなり解釈をしている。そこでまたこのイントロダクションというのはどういう意味があるかというのを訳を調べてみると、導入採用というふうな意味があるのですね、導入とか採用。そうなれば当然アメリカ側の考え方の方が、解釈の仕方の方が正しいのじゃないか、こういうような気がするのですけれども、その辺どうも、イントロダクションということにこだわるようですが、その辺からどうも始まってきているような気がするのですが、どうでしょうか。持ち込みイントロダクションと訳してアメリカ側に渡したそのイントロダクションというものは、アメリカ側としては、正規の訳を字引で引けば導入とか採用、こういうものに当たる、そうしますと、当然核の持ち込みというものはアメリカ側理解としては中に持って入ってくる、入ってきて、しかも基地建設するとか、こういうものに当たるのだと。ですから、当然その半面、ただ単にストップオーバー寄港する、通過をするというのはこれに当たらないのだというふうに解釈するのは当然じゃないだろうかと、私はそう思うのですが、いかがでしょうか。
  31. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) イントロデュースという言葉は、英語辞典を引きますとわかりますように、恒久的に持ち込むという意味でなくて、臨時に持ち込むという一時的な意味、ほかの言葉で言えばムーブ・インあるいはキャリー・インという意味を持っておりまして、いま委員が御指摘されたように、イントロダクションあるいはイントロデュースということがすなわち基地建設ということと同じということになるというふうには私たちは考えておりません。
  32. 松前達郎

    松前達郎君 訳はその字引によって違うかもしれませんけれども、私が引いたら、さっきの採用という言葉ももちろん入っておるわけですね。ですから、その辺微妙なところだと思いますが、いずれにしても解釈相違ですね、これがどうも今度の問題の基本になっているし、しかも解釈にどうも相違がある。あるいは文字の解釈だけじゃなくて考え方ですね、これにどうもずれがある。こういうことはもう前々からわかっていたことじゃないかと私は思っておるわけです。ですから、それぞれの関係者の皆さん方の、新聞等にも出ておりますようないろいろな話を総合しても、どうも前からこの問題はくすぶっていたし、どっちもさわりたくない問題であると、暗黙の了解みたいなかっこうで処理してしまおうとか、そんなようなことがどうも前からあったという感じを私は抱いておるわけなんです。ですから、やはりこの寄港とか通過の問題に関しては、この点、アメリカとの解釈が違う、そういう問題についてはもっと詰めて議論をしておかなければいけないのじゃなかろうかと私は考えたものですから、そういうふうにいま質問をしておるわけですが、そのほか、事実の問題があるのですね。  これはいままでは解釈の問題を御質問したのですが、どうも事実関係からいきますと、核搭載のアメリカ艦船日本寄港しているというラロック証言、これは議会における証言が一九七四年の秋に行われている。それからまた同時に、ライシャワー元大使の解釈、さらにその他、たとえば横須賀でアスロックの積み込みが行われている。これは私はつい最近、テレビで見たのですけれどもね、アスロックだと思います。これの積み込みが行われているシーンが映画で紹介をされている。これは五十四年夏のことだと思いますが、そういったことから見まして、どうも日本側アメリカを信用している、信頼しているのだと言うけれども、実際には核搭載のアメリカ艦船日本寄港しているという事実ですね、これが先ほどの解釈の問題と別にあるのじゃなかろうかと、こういうふうに思うのですが、その点いかがですか。
  33. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま御引用になりました朝日新聞その他の記事、これは私たちも報道として承知しております。しかし、そこに書いてありますことは、伝聞に基づくことでございますし、さらに御引用になりましたアスロックそれ自身は非核両用ということでございまして、私たちとしては、日本は従来から核の持ち込みはすべて事前協議対象であるというふうに言ってまいりました。アメリカも例のラロック発言についての日本側の照会に対して、アメリカ政府安保条約並びにこれに関連する取り決めに基づく日本に対する約束を誠実に遵守してきているということから、さらにその際に聞いております歴代のアメリカ大統領日本首相に対する誓約ということから、核の日本に対する持ち込みということは、事前協議がない以上ないというふうに考えております。
  34. 松前達郎

    松前達郎君 アスロックのことだと私は思うのですが、横須賀に入港した艦船が浸水をしてというこれは新聞記事ですね、これはしかし確かに向こうは核魚雷だというふうに言っているわけでしょう。
  35. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) アスロックは、御承知のとおりジェーン年鑑その他でも非核両用でございます。
  36. 松前達郎

    松前達郎君 非核両用ということですが、当然核の搭載可能の魚雷ですね。しかし、いまの現在の核戦略から言って核を搭載しないということはどうも考えられない、そういう面から確認ができないので、これは幾らあれしても、核を積んだか、積んでいるか、積んでいないかと言っても、向こう側は、アメリカ側は何も発表しませんから、当然これは推察にしかならないかもしれませんが、しかしそれができるものが入ってきているということですね。核搭載可能な武器が導入といいますか、船に積まれて寄港している、こういうことになるわけなんですね。そこで日本側としてはいまおっしゃったように、日本の港に寄港することや領海通航を含めて核の持ち込み事前協議対象となると、しかし核搭載の米艦船寄港領海通過もしていない、そういうふうに政府はおっしゃっていると、それはどうしてかというと、アメリカ側の核を持ち込まないという言明を信頼しているのだと、こういうことになりますね、いかがでしょうか。
  37. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 日本側事前協議制度についての見解は従来から一貫しておりますし、またアメリカ側もそれに対して先ほど申し上げましたように、合衆国政府安保条約あるいは関連取り決めについての日本に対する約束を従来から誠実に遵守しているということから、われわれとして事前協議がない限りアメリカ核兵器日本の中に持ち込まれていないということでございます。
  38. 松前達郎

    松前達郎君 いまの事前協議内容については、どうも常識的に見て私はまだ理解できないわけなんですけれどもね、しかしこの一連のいろいろなものが出てきたその流れをずっと見てみますと、これはライシャワー氏の発言ももちろんそうなんですが、どうもアメリカ外交プログラムの一つだと私は考えているのです。  たとえば、防衛分担の問題、これは前にも私この委員会で申し上げましたけれども、数字はちょっと違っているかもしれませんが、大平元総理が、防衛費の一一%アップということについてはアメリカ側と話をしている。ところが、現実にはそれがどうもうまくいかなくて、マンスフィールド大使が間に入ったという話もありますが、九・七%アップで折り合った。ところが、その後、鈴木内閣になってから七・六%と抑え込まれてしまう。この動きに対する一つの巻き返しといいますか、そういうものがどうも計画され、これはちょっとこういうことを申し上げていいかどうかわかりませんが、たとえば外務当局とか防衛当局でアメリカ協議してプログラムが組まれているのだといううわさも聞いておるわけですね。ですから、これは非常にその一連の流れを見てみますと、ライシャワー発言というものがどうやら偶然起こったことじゃなさそうだと、そのライシャワー氏に会談をした日本の方、この方もアメリカ側の戦略その他についてある程度十分承知をしている人であり、アメリカ政府にも明るい人である、連絡もつく人である。そういうことですから、どうもその辺のプログラムがあって、いまそのプログラムに基づいて進行しているような気がしてしようがない。私はそういう気がしておるわけです。  ですから、当然そのプログラムの一環としてタイミングよく日米合同演習をやるとか、自動車問題だってそうなんですね。非常に日本側が譲歩をして輸出に関する自主規制をやる。こういう問題が起きてくるとすぐアメリカが新しい自動車を発表する。こういうことですから、そういった一連の流れを見てみますと、これは前にも伊東前外務大臣に申し上げたのですが、そういった日米間の特に防衛に関する問題のプログラムというものがすでに組まれていて、これがどうもさっき申し上げたように、外務当局、防衛当局で組まれていて、どうも政治家がそんなに加担していない。ですから、シナリオはでき上がっているけれども、役者の方がシナリオをどういう魂胆でやられているかわかりませんので、どうもそこにちぐはぐなことが出てくるのじゃないか。まあ役者という表現は悪いかもしれませんが、そういったことになるのじゃないかと私は思っておるわけです。ですから、その間に板ばさみになったのが伊東外務大臣であり、そういったようなことでこの前の辞任ということになったような気もするわけなんですが、まあしかし、園田外務大臣の記者会見を読ましていただきますと、どうもその裏にはやっぱり園田外務大臣、そういうことを十分御承知でやっていかれるようなニュアンスも私くみ取れておるわけなんですね。たとえば防衛問題にしてもシビリアンコントロールが必要だということです。やはり政治家というのは国民の代表だから、その点は十分見きわめた上でやっていくのだというふうな感じがどうも私は受け取れるのですけれども、まあちょっと私いま申し上げたあのプログラム、スケジュール、シナリオ等は、私式のこれは推察ですが、その点ひとつ外務大臣、どういうふうにお感じになりますか。
  39. 園田直

    国務大臣園田直君) いまのプログラム、スケジュールという先生の御指摘は、私の知る限りにおいてはそうではないと存じております。米国においても、ライシャワー発言に対して有力紙が批判をしておるし、また米国政府は民間個人の、かつての大使の発言であるから、これに関してはコメントを出さないと、こういうことでありますので、これは日米間の裏で行われている一つのスケジュールに乗って行われているものではない。かつまた特に外務省がこの中にかんでいるなんというようなことは絶対ないと存じます。  いまの御発言の御主意は、十分今後体して指導してまいります。
  40. 松前達郎

    松前達郎君 どうも最近新聞等で、新聞の報道ですけれども、防衛費の問題でも、いままでの枠を破って、ちょっともっと上に出ていくというふうな話もぼちぼち、もうすでにプログラムに従って、私の言い方によれば出てきておるわけですね。そこへもってきて今度、防衛に関する会談、協議が行われるわけですね、ハワイでの協議。さらに防衛庁長官とワインバーガーさんとの会談が行われる。そういう、そこが大体仕上げになるのじゃないかと私は思うのですけれども、その辺もひとつ注意深く大臣として見ておいていただければと私は思っておるわけであります。  そこで今度、次は対ソ問題についてちょっとお伺いしたいのですが、対ソ経済制裁、この言葉が当たっているかどうか知りませんが、対ソ経済制裁について、日本アメリカと同じ立場をとるということで同調をして行ってきたわけですね。ところがどうも実態を見てみると、アメリカはこれは農業生産者からの圧力があったのじゃないかとも思いますが、穀物輸出に関しては、実質的な輸出を始める。そしてまた同時に、西側、たとえばヨーロッパの諸国ですね、この諸国では経済はどうも分離して考えているようだと、西ドイツ、その他も対ソ輸出はふえているわけですね。日本だけがそういったような対ソ経済制裁というものについてアメリカの言われたとおり、ずうっとやっていて、その間を縫ってアメリカにも裏切られるし、また同時にヨーロッパの西側諸国にも出し抜かれていくと、こういうふうな現象が最近起きてきているわけですね。一体どうなんだと、政府は果たして、これはまるで言われたらそのとおり、一年じゅう右向け右と言われたら向いているような状況で、果たして大丈夫なのかという感情を私持っておるわけなんです。その点について、私新聞で拝見しましたが、園田外務大臣もいろいろ御意見お持ちだと思いますので、その点についてお考えをお伺いしたいと思います。
  41. 園田直

    国務大臣園田直君) まだ就任したばかりでありますから、具体的なことはまだ申し上げる検討はいたしておりません。しかし問題は、たとえばヨーロッパの諸国の状態を見ても、日本ではこれを単一にヨーロッパの各国足並みそろえてソ連に対決しているというふうに考えておりますが、そのように単純なものではないと考えております。国境を接している西独、これのソ連に対する態度というのはきわめて多様、多面的であります。日本と同じように一番脅威を受け、一番影響があり、一番注意を行っているはずではありますけれども、しかしながら、米ソの間に火花を吹くようなことは断じて避けなきゃならぬという、非常な配慮がなされておる。英国は距離が離れておりますから、大分楽でございますけれども、そういうふうに、それぞれ同じような西側陣営と申しましても、自分の国の立場から、それぞれこれに対する本心とそれから判断とは違うものであると私は考えておるわけであります。  先ほど、政府委員が言いましたが、私は前、この前大臣をやりましたときに、モスコーで日本外交日本安全保障日米関係が基軸であるということを言ったわけでありますが、当時のグロムイコ外務大臣は、正面切ってそういうことを言われたのは初めてだと、こういうことでございました。ただし、私が言いますのは、日米及びその他の国々と日本が足並みをそろえ、心をそろえなきゃならぬことは、先ほど政府委員が言いましたとおりに、足並みをそろえることによって、ソ連に対する抑止力を期待しているわけでありますから、足並みをそろえて事を起こそうということではないと私は存じます。これは非常に大事なところでありまして、事を起こしてはならぬから足並みをそろえると、こういうことでありますから、ソ連に対しても十分注意深く警戒をし、これに対する対応の処置はしなければなりませんけれども、先頭に立って日本西側あるいはアメリカとの間をかけずり回って制裁だ、制裁だと力んでおったら、後ろの方ではそうではなかったというような一面的な外交を繰り返しておるときではない、こういうのが私の判断で、これ以上は軽率になりますから御勘弁を願いたいと思います。
  42. 松前達郎

    松前達郎君 外交問題というのは非常に複雑で、常に動いておりますし、あらゆる角度から検討しながら進めなければならないので大変だと思いますけれども、いま申されたように、やはり余り単純過ぎて、ただ単純でお粗末というわけにはとてもこれはいかないのじゃないか。どうも最近のを見ると、単純でお粗末で、そのわりに明快でないという感じ国民は受けるのじゃないかと思うのですけれども、しかしそれはそれとしまして、裏から見ますと、確かに表と裏はあると思うのです。裏から見ますと、どうもアメリカ外交戦略の中に抱き込まれている感じもしないでもない。ですから、悪い言葉を使うと、アメリカ合衆国日本州になったのではこれはだめなんだということになるのじゃないかと思うのです。この表裏のギャップ、これは当然あるんだろうと思います。あるんだろうと思いますが、しかし国民がやはり知りたいものについて、これはやはりある程度はっきりしませんと、いつまでももやもやした中で外交が進められているというのも、これはよくない。その辺が外務大臣の役割りというのは大変でしょうが、こういうのも役割りじゃないかと私は思うものですから、そのこと、表裏のギャップという間に入って交通整理をしたり、あるいはその他いろいろな面での調整をするというのも大臣一つの役割りだろう、こういうふうに思うので、大変だと思いますけれども、いまお伺いしますと、またさっき私申し上げましたように、もうベテランの大臣でありますので、その点はひとつ私ども大いに期待をいたしたい、かように思います。  それでは時間が来ましたので、私の質問はこれで終わらしていただきます。
  43. 戸叶武

    戸叶武君 今度のような問題が起きたのは、日米だけでなくソ連も含めて、私は大きな自己批判もやってもらいたいと思うのです。それは、お互いに自分の主張のみを強調しないで、相手にも相手の立場立場があってのことでありますから、核戦争はできないということは、ソ連でもアメリカでも、一九六二年の十月の二十三日でしたか、あのキューバ事件のとき以来、わかって、最高首脳者の中においては正面衝突をしないような、奇襲作戦はやらないような、特殊なパイプが通じてあるはずです。にもかかわらず、このようなことが危機の背景には米ソの対立から生じておるのでありますが、お互いに戦争はできないが、やはり自分たちの有利な立場を軍事的、経済的その他においてかち得て、アメリカはできるだけ自分たちを支持する力を結集して、その上に立って米ソとの間の折衝をしようと。やはり、この力の外交から脱していないところに、その間の谷間にはさまっている日本において、アメリカの思っていることに対する受けとめ方と、アメリカはまた日本との間の安保条約の改定以来積み上げてきた、いや、その前からの、すでにダレス外交以来積み上げてきた関係から、受けとめ方にはそれぞれの違いができてくるのは当然だと思います。恐らくは自民党の一党独裁とも言っていいようなこの機会ならば、自民党はやるぞという形で、大分あちらこちらへ売り込みしている人たちもあるようです。そういう情勢判断が冷静を欠いているときにおいて、最終的に国民の合意を得ずして、いかなることもごり押しができないことも、いまの複雑な時代の外交を担当している人は身をもって、いまの園田さんが言われたように、わかっているはずです。にもかかわらず、この問題が総理大臣と外務当局との間にギャップが生まれたということは、政治家としての国の、国民の納得を得られないか得られるかという上に立って、独自な日本解釈を許してもらわなければ、それがアメリカと若干の受けとめ方に違いがあっても、日本政府はもちません、そういう表現ではないが、そういう気持ちで鈴木さんもがんばっておるし、また、間にはさまれた、私は伊東外務大臣もぼろを外に――日本だけ責めているようですが、アメリカだって手前勝手な受けとめ方があります。それを出さないために、全責任は私にありますと言ってやめなければならないような羽目になぜいま追い込んでおり、この羽目になってから日本に押しつけたという印象では、これは鈴木内閣がぶっ倒れるだけでなく、国民の抵抗を誘発するであろうということは、いまになってはアメリカの智者だってわかっているはずですが、やはりアメリカの受けとめ方を中心にして、相手の立場を十分理解しないで、この機会がチャンスだぞという取り巻き連中の情報によって、惻隠の情を持たない一本調子の外交、お互いのことですが、これがいまの危機を生みつつあるということにびっくり仰天して、日本のことは日本政府で処理すべきものであって、アメリカ側はこれを押しつけるものじゃないというところへ変化が生じつつあるかのように思われるのも現状であります。  しかし問題は、そこの原点ですが、原点は、いろんな点は省略しますが、園田さんはわかっていると思いますが、一九四五年二月十一日の、米英ソ三国によって他国の主権を無視して戦争に勝ちをおさめ、戦後において支配力を持続しようというような戦時中の軍事協定、秘密軍事協定、他国の主権を無視して領土の変更をもあえてするようなことをした。それが米英ソ三国において、こういうことが前提条件になっては次の平和条約を結ぶ障害になるから、われわれは戦時中だから、勝たんがためにいろいろなことを考えてはいたが、やはり米英ソだけで世界を支配するというような時代ではない。グローバルな時代にはグローバルな時代にふさわしい世界新秩序をつくり上げなければ、平和維持機構としての国連も、また各国における協力も得られないという形で、あっさりなぜあの段階において米英ソ三国がそれを、解消宣言なり何なりできなかったものか。その力の、自分みずからが汚れた外交の上に事を隠蔽して、領土問題に対しても、吉田さんが触れようとしてもダレスに制圧を受けた。そういうわけですから、戦争中はいろんなことがあり得るでしょう。しかしながら、戦後の世界平和秩序、世界の新秩序をつくり上げようとするのに一番の障害となっているのは、米英ソ三国が、あのような間違ったルールが新しい時代に即応したところのルールにはならぬと言って、それを放棄するなり解消するなりの宣言がなぜできないのか。原点は、グローバルな時代にはグローバルな時代にふさわしい世界新秩序をつくり上げるという苦悩と模索がなされなければならないのに、依然として疑心暗鬼を持ちながら、アメリカソ連が、自分たちは原爆の戦場にはなりたくない、もし起きるならば、中間において、異ったすぐれた兵器をつくったから、そこを戦場にすることもやむを得ないであろうというような危険きわまるいまのような外交をやられていた日には、世界は不安定の中に私は一つの危機をはらむと思うのですが、外務大臣は十分このことを御承知と思いますが、いまいい機会じゃありませんか。  逆に、領土がすぐに返ってくるとは思えません。思えませんけれども、アメリカなりソ連なりがもっとお互いに話し合って、疑心暗鬼の中に力と力との競り合いでもってその間にいろんなもろもろの不祥事を起こそうとするような、起こる危機までの封じ込め政策というものに、一貫したもので権謀術策でやられたのでは、世界の平和に対して障害をなすものは米ソ二国であり、イギリスはそれに便乗しているに過ぎないと思うのでありますが、どうお考えですか。この機会に積極外交を打ち出すからには、物見の外交――アメリカはそういう大きな問題を持ち出しては収拾がつかなくなるという形じゃなく、みんな腹ではそう思っているのです。力がつかないから、力の外交でもって押しまくる人に対しては、そのチャンスがやがて来るのじゃないかということ、ポーランドと中国は特に武器なき抵抗をやっている。中国は四〇%の軍事費の削減をやって、ソ連と事を起こさないでいるのは、ソ連にはノモンハン事件のような手ひどいやられ方をしました。日本はノモンハンであれだけひどい目に遭いながらも、無条件降伏まで行かざるを得ないような明治憲法的な軍部優先の憲法によって、無条件降伏で元も子もなくなってしまい、伊藤博文、坊主にならなければならないような目に遭った、動きのとれない外交の中に、無条件降伏の原点は日本の憲法であったということを知るならば、憲法改正などは国民は知っている、できっこない。けれども、アメリカさんが言うんだから、アメリカを本当に頼りにしているのだから、アメリカさんの言うなりに、自分の独自性は守りながらも、行かなけりゃならないという道行きがいまだと思いますが、この質問が原点です。  私は、日本がヤルタ協定の解消をわれわれが頼むのではない、アメリカなりソ連なりがみずから行うこと以外に、やはり私はグローバルな時代における世界新秩序はできないと思うのです。ただ揚げ足取りだけをやっているのでは、とにかく本音とあれとは違うというような形で、ただ単にやっているのでは、大きな世界秩序をつくり上げる能力を政府は持たないのじゃないかと思うのでありまして、政府はそれだけの意気込みを持たなければ、ただ単なる、いま必要なのは取りあえず日本自身の責任において物をまとめなけりゃいけないという形において、政府は断固として自分たちの考えを貫けるかどうか。私はいま一鈴木さんを問題にしているのではない。一外務省を問題にしているのではない。やはり日本自体が、世界がこいねがっているようなことを率直にソ連に対しても、アメリカに対しても、聞く、聞かないは向こうの勝手だ。けれども、聞かざるを得ないような世界の人々の心を心として代表して発言できるのは、日本政府みずからの自主性を持たなければできない。一気に領土が返るなどとは考えていない。しかし、中途半端な競り合いでは、領土問題などというものは片づかないと思います。細切れ質問じゃありません。私は、日本の運命はこれによって決すると思いますが、外務大臣、どのようにお考えですか。
  44. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御発言でありますが、外交で一番注意をしなきゃならぬことは、目の前に起こったもろもろの現象、徴候、これに惑わされて、その霧の向こうを見失うことがあってはならぬと、こう考えます。  いま国際情勢は残念ながら相当厳しく、米ソの姿が大きく浮かび、対決の方向に進んでおりますけれども、やはり外交の原点は、いま先生がおっしゃったところが原点であって、世界をこの二つの国の勝手気ままにさしてはならない。われわれが願うところは、困難であろうと、問題があろうとも、力によって動く世界を話し合いによって動く世界に移していく、これが平和を願う者の願いであると考えております。したがいまして、米国に対しては提携をする国でありますが、いま米国が言っている強いアメリカ、こういうのは不適当でありまして、信頼されるアメリカ、その信頼されるアメリカにわれわれの仲間が正しい忠言をし、あるいは正しい忠告をしつつ協力をして信頼されるアメリカになるわけである。かつまたソ連に対しても、日米の関係を緊密にしながら抑止力を発揮していくというようなことで、原点はいまおっしゃいましたとおりであって、その点は非常に大きな、これを一歩も狂わしてはならぬことだと考えます。
  45. 戸叶武

    戸叶武君 私はあと十分だけですから、その時間超すことはありませんが、いま当面の問題は、やはり変な揚げ足取りで内閣を変えるとか変えないとかの問題よりも、日本みずからの意思決定によって、国民の合意を得られるような自主性を与えない以上は、アメリカであろうとソ連であろうと勝手なまねをしたって断じてわれわれはこれに応じないのである。われわれは具体的に問題を提示することをいやがって、混迷しておったのでは何にもならない。やっぱり鈴木さんのような人は、国民の納得なしにはできないという考え方が強いが、いまの情報化時代における揺すぶりはやたらに内閣でも変わればその方がおもしろいというような軽挙盲動の徒があるが、これは国事です。私は園田さんがソ連、中国との平和条約を結ぼうとしたときに、孤立無援になって突っ放されたときの、私は、あの何とも言えない泣き顔をよく見つめておりました。しかし、あれを耐えて、とにかく大平氏も支えていき、あなた自身は自分の信ずる、自分じゃない、これ以外に日本の活路はない、日本なくして中国の前進はなく、また立場が違ってもやはり中国を除いてアジア問題の解決もなければ、世界におけるところのアジアの平和への貢献もあり得ないという信念で、私は、あなたは腹切るつもりで突っ込んだと思うのです。あのときに私は、園田外務大臣政治家として育ったと思います。  核兵器非核原則のとき、時代における、あの外務省当局が自主外交を確立しようとして、これ以外に日本外交的武器なしという形で結束したときも、私はやはり小手先細工でなくて、本当に武器なき戦いがこれから始まるものだと信じてわれわれは非核原則に積極的に応じて、フリーハンド論を抑えたのです。どうぞそういう意味において、前の大平さんがこう言ったとか、ああ言ったとかといういろいろなこともあるでしょう。そのことはそのとき。いま日本において何が大切かと言えば、世界に戦争を起こさせないことです。アメリカソ連だってやりたくないのに、お互いに周りの取り巻きが事を構えていこうというようなふざけた体制世界の中に覆い切っております。  どうぞそういう意味において、とりあえずいまの内閣の責任において、私たちは核持ち込みを許さず、アメリカ側はどう受けとめようが、それはアメリカさんの受けとめ方であるが、いまの内閣がぶっ倒れても、日本国民の平和を念願とする精神を私はみずからの責任において果たす、これが最大のステーツマンシップです。小手先はよそうじゃありませんか。私たちは、平和を守るために枝葉末節のあげつらいをやることよりも、政府みずからがとにかくみずから体を張って、国民の心を心として、その段階における具体的な責任をとるという責任内閣制の習慣をつけなければ、徒党を組んでいけば、謀略をもってすれば内閣をぶっつぶせるなんというけちな考えでは私はだめだと思います。どうですか。  あなたは、政治園田さんというのは、派閥も要らない、場合によっては権力の座に上らなくてもいい、日本の柱になろうというだけの気概を持たなけりゃ、日本は属国です。アメリカへ行って戦争やれって言ってごらんなさい、やりゃしませんよ。ソ連だって戦場になることはこわがります。皆よその国の弱いところを突いて、犠牲にして、よその地でまかり間違えば原爆戦争ができても、それをとめ役の方へ回ろうぐらいの考え、そんな水際作戦の封じ込め政策の時代ではなくなったと思います。  そういう意味において、私は、政治家にいま一番必要なのは、体を張って民族のために責任をとることです。後で間違いが少しあったとしても、その責任感のない政治家には政権は一日としても渡すことはならぬというのが国民の声だと思います。これでふざけたまねをすれば、アメリカには気に入るかもしれないが、日本国民から突き上げられてしまって、どこに安定がありますか。日本国民は政治に対して愛想を尽かしているのです。離れているのです。政党やアメリカや他の国の信頼という前に、まずみずからの責任体制を持って、一人や二人の総理大臣なり外務大臣が吹っ飛んでもいいから、日本のこの原点においてこれを責任を持って貫くんだということを私はやるならば、よその国にそれに対して無理押しはできないので、人の顔色を見い見い物を言っているような政治家は、日本のためじゃなく、世界の平和をも維持することはできないと思いますので、どうぞ私は質問よりも、いまもう質問段階じゃないです。土性骨です。責任を持つんだと言うならば、アメリカだって無理押しはできないと思うのです。鈴木さんがどうだの、外務省がどうだの、新聞はいろいろに言います。情報化時代です。これは新聞の勝手です。政治は責任です。いつでも自分から腹を切るだけの土性骨がなくて、その国を富ますことはできない。それが現実的な私は一番手っ取り早い回答だと思うので、もうあなたは承知と思いますが、きれいごとを言わないで、日本政府はこのような責任感を持てということだけをはっきりして、他国民でなく、国民の合意を得られないという形で、国民は操作によって何とでもできる、金と謀略によって何とでもできるというような考え方を変えてもらいたいために、私はコペルニクス的な転換が必要だということを言っているのです。  それは真実は最終的には勝つのです。権謀術策はヨーロッパの暗黒時代を生み、今日まで混乱の時代を生んでいるのです。謀略や宗教やイデオロギーという問題よりも、平和と生活を守り、民族に未来を与える。光を与えない政治は葬式です。国民が立ち上がって、昔の国民のように無条件降伏にまで手出しができなかったようなぶざまな明治憲法を復活させるようなともがらにおいては、本当にコペルニクス的な真理、どんな弾圧を受けても屈しないだけの気迫がないのであって、真理は常に勝つのです。責任を持つ者が勝つのです。それだけの自信のないやつは政治はやるべきでない。このままソ連なりアメリカ流の考え方の中にゆだねることができないから、戦争はやめろということだけ、抽象的な言葉でなくて、日本国民承知しないのです。これで終わりです。回答は一分か二分でよろしい。
  46. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見の数々、詳細に拝聴いたしました。御注意を十分守りながら、全力を挙げて努力をする所存でございます。
  47. 秦野章

    委員長秦野章君) 午後二時十五分に再開することとして、休憩いたします。    午前十一時四十分休憩      ―――――・―――――    午前二時十六分開会
  48. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  49. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに、昨日の鈴木総理日本記者クラブにおけるライシャワー発言に関連した事前協議についての内容、ちょうど岸総理がかつて発言した内容に軌を一にするものがあるなあというふうに感じておりました。テレビニュースでそれを知りました。その後、また一時間置いたテレビニュースでは前言訂正と、こういうことが報道されました。こうした一連の最近の総理自身と言った方がいいのか、政府という全体観に立った見方で申し上げた方がいいのか、こうした混乱というものが国民にとっても大変な疑惑を与えることになりかねない。もちろん国際関係を見た場合でも、一体日本外交はどうなっているのだという不信感というものが増幅していくのではないかということをここ一両日来のいろんな言動を考えますと、私ならずとも多くの方がそういう受けとめ方をされたのではないかという心配が実はございます。  外務大臣就任されてまだ日も浅いとは申せ、何と申しましても過去の豊富な御経験をお持ちになっていらっしゃる園田さんでございますので、その辺の動向というものを十分見きわめた上で今後に対処していかなければならない、日本外交のあり方というものをこの機会にもう一遍整理をしてお取り組みになる必要があるのではなかろうかというような印象すら持つわけでございますが、鈴木総理のそうした昨日の言動を通じて、率直な所感をまずお聞かせをいただきたい、こう思います。
  50. 園田直

    国務大臣園田直君) 昨日の総理の講演並びに質問に対する答弁、これは後で文書で拝見したわけですが、これは最初からずっと一貫して目を通していただければ、鈴木総理の物の考え方には一貫性はあると私は判断をいたしました。ただ、最後に米国側の新聞記者が質問をされてああいう答弁をされた。しかし、それはすぐ本人も訂正をし、官房長官もまた正式に訂正をしております。だから考え方には混乱はないと私は思いますが、いまおっしゃいましたようにこういう時期であり、国民が非常に心配をしたり疑ったりしている時期でありますから、言葉には特に慎重を期してやりたい。もともと御承知のとおり鈴木総理は慎重な方ではありますが、ああいうことがないように、十分補佐の任にあるわれわれが注意しなきゃならぬと考えております。
  51. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 お立場上、それ以上見解を求めることはあるいは過酷かもしれません。しかし、偶然と言えば余りにも偶然と言った方がいいのか、あるいはもともと本音としてお持ちになっている発想というものが、ああした外国記者の方から質問を受けた折にきわめて滑らかに出てしまったということになりはしまいか。これが一点。  いま確かに慎重であることは総理としての立場上、これは当然要求されることであろうと思いますけれども、先般、緊急質問、いわゆる日米共同声明をめぐる緊急質問がございました折にも、いまだに非常に際立った印象として残っておりますことは、この共同声明について研究する余地が残されているというくだりがございます。となりますと、やはり共同声明それ自体には総理として大変不満であったということを立証する一つの言い方であったのではなかろうか。あるいは、それが引き金になって伊東さんがそうした公の面前で詰問されるようなことになれば、これは当然立場上、あるいは外務省としても、いままでいろいろ苦労をして積み上げてきた、これが足元から崩壊するであろうというさまざまなそういう判断に立たれたであろうということが、私たち第三者としての立場から見ましてもうかがい知れるところであったわけであります。  果たして、いまおっしゃったように慎重なはずの鈴木総理がそういった言動、そして昨日のそうした何かやはりわれわれとしてすっきりできないという疑惑を、またその余韻を残してしまったというような事柄については、やはり非常に問題がありはしないか。果たしてそうしたような傷口というものが治されていくのであろうか。きわめて、いまおっしゃったような方向に立って整理されて、一貫した外交姿勢というものが貫けるのであろうかどうか。重ねてということになりますといかがかと思いますが、もしいま申し上げたことについてあえてまた御発言いただければ、述べていただけると大変ありがたいと、こう思います。
  52. 園田直

    国務大臣園田直君) 共同声明のことについては、鈴木総理本人からも、それから政府からもちゃんとした釈明があって、言葉足らずであったということで訂正をされております。  なお、また本人からも、共同声明内容であるとかあるいは解釈日米間の食い違いもなければ、外務省自分との間の食い違いもないと、こう言われている。ただいまおっしゃいました将来検討を要するという一語は、共同声明のつくり方等については今後もっと考えてみる必要があると、こうおっしゃいましたことで、今度の共同声明に対する不満であるとかあるいは解釈ずれ等は一切残ってない。かつまた、鈴木総理は、私前々からわりに御懇意願っているわけでありますが、鈴木総理の哲学、外交に対する方針というのは一貫しておりまして、決して物の考え方が混乱されておるとは私考えておりません。  なお、この共同声明の問題で前外務大臣がおやめになりましたが、この問題は任免者の総理と辞表を出された方の関係の問題でありまして、私がとかく発言すべき問題ではない。私は、こういう事態を踏まえて外務省が一体となって、外交というものはこれは総理がなさるのが当然でありますから、総理外交に手落ちがないように、補佐の任を十分尽くすべきであると考えておるところでございます。
  53. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これ以上どうこうということは申し上げたくございませんが、いずれにしても、言葉が足りないとかあるいは前言取り消し、訂正というようなことであるとか、やはり一国の最高責任者である総理の言動と申しますのは、申し上げるまでもなく、たとえ一言であろうともその及ぼす影響というものが非常に大きいということを考えてみた場合に、今回の一連のそうした過ち――まあ過ちと言えば過ちかもしれませんけれども、許されないことであろうと。また、閣内においても、そうした面については十分その足並みをそろえて日本外交基本に誤りなきよう、基本姿勢に誤りなきよう徹底を図っていただければなあという願望をまず最初に申し上げておきたいと思うのであります。  さて、次の問題は、午前中においてもいろいろと議論がなされましたライシャワー発言の事柄でございますが、まず第一点として、ライシャワー教授の申された内容というものは信頼していいのか、信頼できないものなのか。この点からまず確認をして先へ話を進めたいと思います。
  54. 丹波実

    説明員(丹波実君) 政府といたしましては、言われますところのライシャワー発言内容につきましては、報道で承知しておるというのが事実でございます。ライシャワー教授はいろいろ発言をしておられますが、私たち政府の考え方は、午前中にも外務省からお答えいたしましたとおり、安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおいては、いわゆる艦船による核持ち込みを含めまして、核の持ち込みに該当する場合にはすべて事前協議対象であると、これが政府の従来からの見解であることはたびたび申し上げたとおりでございます。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いや、それは私は知っております。そのことを申しているのじゃございません。ライシャワー教授の言っていることが信頼性があるのかないのか、間違っているのか間違いでないのか。それを冒頭にまず確認をした上でありませんと先へ進めることはできませんと、こう申し上げたんです。
  56. 丹波実

    説明員(丹波実君) ライシャワー発言を全体としてとらえまして、それが間違っている、いないと言いますことは非常にむずかしいわけでございまして、個々の発言をとらえて、報道されておりますところを見まして私たちは判断をしておるわけでございます。  たとえば、まあいろいろな例がございましょうが、艦船の、核搭載艦寄港事前協議対象から外すような口頭了解が存在しておったという点をとらまえて考えました場合に、私たちはそのような口頭了解は存在していないと、こういうことになるわけでございます。
  57. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 相当、すれ違いになるのか、認識の仕方の違いになるのか、まあそれは将来また大きな議論の分かれ道になる点であろうというふうに思うんです。確かにいま丹波さんが答弁されたように、たしか三木総理の時代あたりから今日まで一貫して、いま申されたことの答弁が国会として統一されて述べられてきているわけです。しかし、というのが今回イントロダクション解釈をめぐってまあはしなくも俎上に上ったと。確かに、吉野さんがあれは条約局長のころでしたか、あのときのやりとり、衆議院でのやりとり、私もずっと会議録を調べました。いま述べられたと同じ回答をしているのです。では、一体その誤りというものは安保条約改定の時期にまでさかのぼらなければ明確にならないのか、あるいはそこに何らかの秘密的な申し合わせがあったのか。やっぱり全体をずっとこのライシャワー元大使との会見詳報というものを、何回も何回も私も読ましていただいたのですけれども、どうしてもやはりひっかかってくるものが出てくる。ずっとひっかかってくるものが出てきて、またさらに集約していくと、そのイントロダクション解釈をめぐる問題に突き当たらざるを得ない。しかもライシャワーさんは、この言葉解釈上の違いがあるということをもう明確に言っているのですね。どうしてこの解釈上の違いが一体整理されないままにきたのだろうかという、こちらは一応疑問を持つわけです。さっきも淺尾さんは、一時寄港まで入るんだということを述べていらっしゃいました。ということは、寄港あるいは領海通過というものも入るんだという、そういう認識に入るのですけれども、ライシャワーさんの考え方はもうすでに藤山・マッカーサー元大使との口頭了解の中で明確にその点は裏づけられておるし、またライシャワーさんが大平さんに会ったときにもその点を確認している。ただ、外交上のいろんな仕組みの中で、ライシャワーさんが口頭了解があったという、その言わんとするそのものが、実際には文書として残ってないというところが致命的だと思うのですが、それをライシャワーさんは信じ込んでいるわけですね、口頭了解、いまも生きているというふうに言っているわけです。ところが、外務省としては、そういう口頭了解があったということは全然認知していない、知らないと、これは議論としてはもう全然すれ違うわけですね、しかし、このままに放置していいわけではないと思うのですね。ライシャワーさんの発言というものは、日本の国内においても大変電撃的な衝撃を与えたことは事実であるわけです。このままに、ただ日本政府としてはいままでの政府見解のとおりにずっと答弁する、しかし何回かこういった問題については、もうエルズバーグ発言あるいはラロック発言、あるいはクレーター元海軍長官あるいはハロウェー、当時の海軍作戦部長の、しかも米国議会での証言がある、発言がある、それをあるいはにおわせる示唆が実際ある、そうした一連の関連の中で、あくまでこれを否定的にとらえようとする方が正しいのか。いわゆる、いままで一貫して日本政府が貫いてきた事前協議対象になるという、いわゆる領海通過寄港も認めるわけにいかないのだ、それは事前協議対象になるのだということで一体これが了承できるものなのか。ライシャワーさんは、口をきわめていますわね。また日本政府としては米国の行動については信頼を持っていると、逆に言うとその信頼を持っているというのは、責任の転嫁を全部アメリカ側になすりつけるとまでライシャワーさんは発言をしているわけです。相当自信を持って述べられたであろう。二十一年も前のことですから、その経過の中には大分記憶の薄れる場合もあろうかと思いますけれども、これほど明確に発言をされるということについて、やはり日本としても考えざるを得ないのではないか。考えざるを得ないのではないかという点については、もしアメリカ側がいつまでもそういう解釈の判断に立つとするならば、日本非核原則というものがございますから、持ち込みをさせないという中に、寄港あるいは領海通過も含むのだということを明確に言うべきではないか、話し合いをすべきではないか、確認をすべきではないか、こういうふうになりませんでしょうか。
  58. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ただいま御指摘の点につきましては、累次、従来から国会におきまして政府が御説明しておりますとおり、持ち込みというものが寄港を含むあるいは通過を含むということ、これは従来から交換公文とそれから藤山・マッカーサー口頭了解というものを合わせてみればきわめて明快であって、その点について改めてアメリカ側確認する必要はないということを累次申し上げておるとおりでございまして、この点につきまして、今般ライシャワー発言ございましたけれども、改めてこの際また確認をするというような必要があるというふうには考えておりません。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 外務大臣としてどうでしょうか。いまのこの疑惑は晴れそうにないと私は思うのですよ。影響力が大きいだけに明確にすべきだというふうに思えてならないわけですが、いかがでございましょうか。
  60. 園田直

    国務大臣園田直君) ライシャワーかつての大使がどういう意図のもとに言われたか了解に苦しむところでございます。外務省としてはいろんな資料をずっと追跡をしていますが、口頭了解を与えたという記録はございませんし、かつまた先輩、OB等にも聞いていますが、そういうことはございません。かつまた米国政府の方は、ライシャワー大使の一民間人、一個人の過去の話であるからノーコメントだと、こういうことで本問題については日米両国政府がいままでやってきたとおりで結構であると、こういう意思の表示でございますので、今後とも十分注意をしながらこの問題に対処していくつもりでございます。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ラロック証言のときもそうでしたね。それであのときには急速度に鎮静化の方向へ向かったことを記憶しております。いまと全く同じような答弁のもとに、今回も恐らくそうなるであろうという判断のもとにお考えになっていらっしゃるのじゃないか。また官房長官あたりの発言をずっと整理していま思い起こしてみましても、あえてアメリカ側とこの問題につき再確認をすべき必要はないと。この問題の、では逆に言いますと、なかなか消え去らないこの疑惑について、しからば一体どうすればいいのか、それを示唆したりあるいは裏づけるのじゃないかという事実関係が次から次へ明るみに出てくる、あるいはそれを十分思わしめるようなそういう証言なり発言が続いてくる。ようやく鎮静化したなあと思うと、またそれが蒸し返しになってくる。ライシャワーさんも言っていますね。まあ将来においてあるいは公の職から解かれた人が機会を見ていろいろと発言する人がふえていくであろう、こういうことを申されております。しかし、そうしたことがどういう意図のもとに行われるかどうかということはいろんな見方もありましょうし、それに基づいた日本側としてどう一体対応しなければならないかということも将来において、あるいは将来というか現在、未来にわたって考えていかなきゃならぬ問題が必ずつきまとうであろう。たとえばもうエルズバーグの岩国に核兵器が置かれていたという発言、これも確証がないままそれで終わってしまった、確認のしようのないまま終わってしまった、あるいはラロックの証言についてもそうでございますね。しかもアメリカ国内において当時現職の海軍長官あるいは作戦部長が日本の横須賀を母港として出入港しておりますミッドウェーが核搭載していると、核積載がなされているという示唆に富んだそういう発言が実は議会の軍事委員会でそれがなされている。それに加えて今回のライシャワー発言と、こういうふうに一連の事柄が続くわけです。  なるほどわれわれが軍事専門家じゃないにいたしましても、実際入港する場合に、あるいは領海通過する場合に、もし仮に核積載をしている艦艇が入りたい、しかしそれは事前協議対象には恐らくできないでしょう、アメリカ原則的な政策にもとることになりますので。核の所在を明かすということになりますので。ならば途中で、かつてサブロックの問題についてもございました。この問題も本当に古くて新しい、常に問題にされなければならないというところにこの問題は容易に疑惑が解けないというものがひそんでいるということにもつながるわけでありましょう。そう考えてみても、途中で積みかえてその船が入港する、その場合には認められる、これはいみじくも鈴木善幸さんが官房長官のとき、そういう発言をしているんですよ。これはナンセンスな話ですね、途中で積みかえてならば入港を認める。しかし現在いわれておりますのは、アメリカの全艦艇の約七〇%は全部核積載がなされているというふうにまでいわれているわけです。こういったことが一般論としても考えられるような状況の中で日本の港に入る、あるいは領海通過するそれらしき空母あるいはミサイル巡洋艦あるいは原潜、確認のしようがないままに、ただ米国のことを信頼し切っていっていいものかどうなのか。そういう心配がどうしても残る以上、やはり私は先ほど申し上げたように、持ち込ませずという中にはいま触れましたように、日本のいままで一貫した解釈どおりのことであることを確認する必要がどうしても出てきはしまいか、回りくどく申し上げましたけれども、やっぱりそういう問題がどうしてもわれわれの脳裏から実は去りません。そういう点については、やはり従来どおり米国側を信頼する以外にはないということに尽きるのでございましょうか。
  62. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 核の持ち込みとは何かという意味につきましては、先ほど申し上げましたとおり、安保国会以来一貫した政府見解というものがございまして、そういうものはアメリカ側は十分承知しておるわけでございます。先ほど先生御指摘のラロック発言の問題がございましたときにも、そういう問題を背景にいたしまして、御承知のように昭和四十九年の十月十二日に当時のインガソル国務長官代理から安川大使に対しまして、アメリカ政府見解として米国政府安保条約並びにこれに関連する諸取り決めに基づく日本に対するその約束を誠実に遵守してきているということを明言しておるわけでございます。政府といたしましては、そのようなアメリカ政府見解というものがある以上、先ほど申し上げましたような事前協議制度のもとにおきまして、核を日本の領域内に持ち込む場合には事前協議をしてくると、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ちょっといま理解に苦しむ答弁が返ってきましたね。  外務大臣どうですか、いま栗山さんが言われたことについて何も疑義をはさみませんか。
  64. 園田直

    国務大臣園田直君) 政府委員が答えたとおりに私も解釈をいたします。
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただ、先ほどちょっと断片的になりましたけれども、寄港持ち込みでないということですか、寄港持ち込みではないということ。寄港持ち込み、いわゆる核の持ち込みに当たらないという解釈になるのですか。
  66. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私の先ほどの答弁、あるいは正確でなかったかもしれませんが、私が申し上げましたことは、核を搭載した米国の軍艦が寄港する場合には事前協議対象になるということは、安保国会以来政府がたびたび御答弁申し上げておるとおりでございます。そういう意味で私申し上げたことでございまして、寄港対象にならないというような意味で申し上げたつもりでは毛頭ございません。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 どこまでいってもこれは平行線みたいな感じになりかねないのですけれども、もう一つあの沖繩返還のときにキッシンジャーの覚書があるのですね。御存じでしょうか。これは「灰色の領域」ということで連載をずっと続けてこられた毎日さんの取材によるのですけれでも、これを見ますと、沖繩返還のときに一九六九年五月二十八日付国家安全保障会議覚書というものがあって、これはもちろん極秘にされていたらしいのですけれども、例のウオーターゲート事件の際にそれが外部に出ちゃったらしいのですね。それでもうそれは、簡単に申し上げると、公表されるという羽目になって、それで、その公表された結果その覚書の内容が明らかにされた。その覚書の中には、御存じのとおり、御存じだと思うのですけれども、こんなふうに出ているのですね。「沖繩に核兵器を保存したいとするわれわれの願望を示し、さらに譲歩する場合として、貯蔵と通過の権利を獲得し得るならば、核兵器撤去を考慮する用意がある趣旨を記述したものであった」、これはキッシンジャー当時の国務長官が覚書に述べておられるのですね。ですから、当然この核兵器通過についての権利をそのときキッシンジャーが正面切ってアメリカの当然の権利としてこれは持つべきであると、こういう解釈が成り立つであろうというふうに思いますが、このときのキッシンジャーの覚書はどのように理解をされるでしょうか。
  68. 丹波実

    説明員(丹波実君) いまの先生御提起の問題も、従来からたびたび国会で論議されておるわけですが、私たちは沖繩返還協定交渉を前にして、米政府内部でどのように核問題に対処するかというような議論が米政府内部でいろいろあり得たということについてまで完全に否定する立場にはないわけですが、しかし問題は、佐藤・ニクソン共同声明及びそれに続く沖繩返還協定交渉というものの結果におきまして日本非核原則は堅持された形になっておる、そういう結果になっておるということが一番重要なポイントであろう、こういうふうに理解しております。
  69. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは当然表向きはそうなりましょう、日本の国是というものがあるわけですから。しかしアメリカ側にはアメリカ側としての立場があるでしょう。返還というかつての歴史に類を見ないという、そういう重大な事項を取り扱うに当たってやはりアメリカ側としては何らかの形でその留保条項というものを取り決める必要があったのではないだろうか。特に安保条約の中にも規定されておりますように、極東の平和に寄与するというその絡みの中で、相当極東となりますと範囲が広いわけですから、通過も認められないといういままでの日本政府の一貫した主張というものをのみ込んでしまった場合に、核戦略の上の立場から果たしてそれが機能的に働くであろうかという疑問が出てくるのは当然ではないだろうか。したがって、これはもう厳秘に付されていたものがウォーターゲート事件で公表されちゃったわけですから、もしそれが、ウォーターゲート事件が起きなければこれは表に出ることはなくて、あくまでも暗々裏の中に処理されていくであろう、ごく一部の者しか知らない、そういう取り決めとして今日まできたであろうということが逆に今度推測されないではない。表に出たためにそういうような秘密協定というものがあったということが明らかにされた。ということになれば、今度本土並みということになれば、逆に今度それを考えてみた場合に沖繩がそうであれば本土の場合もやっぱり同じであろうという見解が成り立つということになりますので、この問題は非常に重要である。確かにいま丹波さんおっしゃったように、この問題も恐らく過去において触れられたことがあるはずです。果たしてそのときに十分納得のいく議論がなされたかどうか。やはり疑惑を残したまま今日まできたゆえに、そしてライシャワー発言と相まってまたそれが表面化した、非常に単純に言えばそういう経過をたどって現在また迎えている。だから消えても消えても消えない、消そうとしてもなかなか消えない、それが今回のこういう問題ではなかろうかというふうに思うのですけれども、その点、いまの丹波さんの大変、きわめて割り切ったような答弁で果たしてどうであろうか。明確にそういうふうなこともあるわけですからね。
  70. 丹波実

    説明員(丹波実君) 実は、私自身、沖繩返還交渉の担当官の一人で、すべて物事知っておるつもりでございますが、まさに当時、核つき返還という議論が一部にございまして、これが非常に大きな問題だったことは先生御記憶のとおりでございまして、しかしながら、結果的に安保条約及び諸関連取り決めの本土並み適用ということで日米間に決着がつきまして、核の問題をめぐりまして、別途裏で何らかの了解なり裏取り決めがある、こういうことは全くございません。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに、全くなかった、そういう事実はない、それは知らない、これはもうそう言われてしまえば後それっきりなんです。よっぽど重要な証拠書類でもここに突きつけない限りはそれは何ともならないかもしれません。しかし、いままでの経過の中で、そしていろんな、どうもやっぱりすっきりしないというようなことが積み重なってきますと、こういったこともあり得る問題であろう、われわれとしてはそう判断せざるを得ない。だから、どこまで行ってもやっぱりそれは平行線をたどる以外ないだろうということになってしまうのですよね、はっきり申し上げて。だけれども、先ほど来申し上げておりますように、これもいろいろと、もう衆参両院を通して何回も何回も同じようなことの繰り返しになるでしょうけれども、現実的に考えてみた場合に考えられるだろうかということが一点。  事前協議にしたって、これは一方通行ですから、アメリカ側の方から、さあ核を積載した艦艇がこれから入りますよ、あるいは核を搭載した飛行機が寄港しますよと、これは言えないはずです。となりますと、核を持ち込んだかどうかという確認をするすべは全くない。アメリカ側としては、それは明らかにしない。もう米国を信頼する以外にない。これで、やっぱり将来ともにわたって通せるものなのかな。ライシャワーさんのように恐らく歴代大使の中でも最も親日家と言われ、学者としても社会的なきわめて大きい影響力を持つ方の発言ということになれば、相当内容についてはオーソライズされているというふうに受けとめるのが常識じゃないでしょうか。その意図的なものは何があったかは別問題にいたしましても、この投げかけた波紋というものはやっぱりなかなか消えないと思います。だから私は、いまキッシンジャーのそういう秘密協定の問題も再確認のためにあえて出さざるを得ない。確かにそれは丹波さんが当時かかわり合いを持ったお一人であったかもしれません。しかし、そのかかわり合いを持ったといたしましても、あるいはこれは失礼になるかもしれませんけれども、それはごく限られた一部の者同士の、まあどのレベルで話し合われたかどうかわかりませんよ、全体的には知られない、しかし暗黙の了解ということもあり得る、そういったことがやっぱり取り決められたのではなかろうか。それが延々として今日までやはり波紋を投げかける一つのきっかけをつくるということになっているのではないだろうか、こう見るのが私は常識じゃないかと思うのです。これは事前協議対象になるとは言ったって、実際事前協議というのは少なくとも核の積載、核の搭載については永久に行われないのじゃないでしょうか、どうですか。
  72. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 米国政府が核の存否を明らかにしないということを基本政策としておるということは、ただいま渋谷先生おっしゃったとおりでございます。しかしながら従来からその点につきましていろいろ御質問がございまして、そういうことであれば事前協議は行われないじゃないかという趣旨の御質問が従来からたびたびあった経緯がございます。それに対しまして政府といたしましては、アメリカ側の公式見解というものが別途ございまして、これはすでに国会に御答弁申し上げているとおりでございますけれども、アメリカ政府としましては、一方においてそういう立場というものがあるけれども、そういういかなる国内法も正当に権限を付与された合衆国政府の官吏が事前協議に関する約束を履行することを禁止しまたはこれを妨げるものではない、ということを言っておるわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、当然核の持ち込み、それは艦船であろうとなかろうと、核の持ち込みを行う場合には、事前協議、これはアメリカ条約上の義務でございますから、この義務に基づいて事前協議をしてくるであろうと、こういうふうに考えておるわけでありまして、単に、何もないところでアメリカを信頼するとか、そういう趣旨で御答弁申し上げているわけではないわけでございます。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ですが栗山さん、ミサイル巡洋艦の入港あるいはエンタープライズにしてもそうでございますけれども、日本を母港として出入りしている艦船等艦艇を考えてみた場合に、それは全くいま搭載されていない、積載されていない、こう考えるのが正しい受けとめ方なのか。それらの艦艇もやはり食糧を積んだり燃料をやはり補給したりしなければならない。もし仮にそれが積載されている、緊急のまた行動をしなきゃならぬ、しかも一時入港である、これは非常に時間的に急ぎますね。けれども、どうしても寄らざるを得ない。おろしますかね、核を、核装備を。おろせますかね。どこかもう領海外、公海で待機さしておいて、そこへ運びますかね、これは童話的な話になりますけれども。これはいかに何でもいまおっしゃったようなことは果たして連動しながら素直に受けとめていいものかどうなのか、どうしてもその辺割り切れない。現在出入港している艦艇については全部とにかく核の積載、搭載はないと、航空機を含めて。恐らくいままでの国会答弁をずっと誤りでないとするならばそういうような判断になるでありましょうし、しかし、そのまた反面考えてみると、そういうような非常識なことが考えられるだろうかという反問が出てくる。この辺われわれとしてはどういうふうに整理をしたらいいのか。確かに核の存在というのを明らかにしない以上は、米国側としては事前協議対象であることを知りつつもそれは言うわけにいかない。けれども、どうしても入港せざるを得ない、こういう事態も絶対あり得ないというふうに考えられるのでしょうか。
  74. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私軍事専門家ではありませんので、日本寄港するすべての米国艦船が常時核兵器を積んでおり、そのために、日本寄港しようとする場合には、いま渋谷先生のおっしゃったような事態にならなければならないかということについては、私専門的な知識を持ち合わせませんので存じませんが、私は、日本寄港する米艦船が常に核兵器を必ずしも持っている、常時搭載しておるというものではないであろうというふうに私自身は考えております。しかし、いずれにいたしましても、さっき私が申し上げましたことの繰り返しになりますが、核の存否を明らかにしないということは事前協議ができないということにはならないわけでございまして、その点はさっき申し上げましたように、アメリカ政府は、核の存否を明らかにできないからといって、正当な権限を付与された者が日本政府条約義務に基づいて事前協議をすることを妨げる何物もないのだということを言っておるわけでございまして、核の存否を明らかにしないという政策があるから事前協議はできないのだということにはならないということは、先ほど私が申し上げたとおりであろうと思います。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その辺もいかがかな。米国基本政策として核の存在を明確にできないとするならば、やはり出入国に当たって、事前協議対象であるからこれを日本政府了解を求めなければならない、これは絶対にあり得るはずはないというのが一般的な判断じゃないでしょうか。そうすると、核については、先ほど私が申し上げたことにもう一回触れるのでありますけれども、これはむしろ園田さんから最終的な判断を求めたいわけでありますけれども、少なくとも核についてだけは、非核原則を厳守する以上は事前協議対象となるわけでありますので、永久にアメリカの政策との兼ね合いの中で事前協議というものは行われない、こう理解すべきではないでしょうか。すると、事前協議というのはもう、実際に空文に等しいものになりかねない側面を持つことにもなるわけでありますが、いまの栗山さんの答弁でいいのか。どうしてもやはり存否を明らかにしてしまうわけですから、事前協議対象にする以上は。それはアメリカの政策上できないと私思うんです。それを一体政府としてはどう判断をされているのでしょうか。これも何回も繰り返しの御質問になろうかと思うのですが、こういう機会でありますので、再確認をしておく必要があるであろうと思うわけであります。
  76. 丹波実

    説明員(丹波実君) この点につきましては、先ほどの栗山審議官の答弁に、申しわけございませんけれども尽きておりまして、国会で例のマクマホン法との関係その他いろいろな論議がございましたので、昭和三十九年の十月に、在京米大使館に対しまして、外務省がまさに先生御指摘の問題提起をいたしました。それに対して在京米大使館の方から、先ほど申し上げましたとおり、正当に権限を付与された米国官吏が日米安保条約に基づく事前協議に関する米国の約束を履行することを禁止し、または妨げるような米国国内法は存在しないと、こういう明快な回答を得ておるところでございます。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは私も存じております。存じておりますけれども、少なくともいま問題にしておりますのは、核については、アメリカ側基本政策がある以上これは明確にするわけにいかないわけですから、事前協議対象とする以上はこれは明確にせざるを得ない。だから、そういうことは将来ともにわたってあり得ないと、事前協議対象にはなり得ないというふうに判断するのが常識ではございませんかということを申し上げているのですがね。それはいま丹波さんが言われたことは知っておりますよ。それだけで通ずるものではない問題だと私は思うのです。その点、園田さんの見解をここで再確認をしておきたいというふうに思うわけであります。
  78. 丹波実

    説明員(丹波実君) 日本国の領域の中に核を持ち込む場合には事前協議対象となるということは、日本政府米国政府との神聖なる国家間の約束でございまして、私たちは、そういうアメリカとして事前協議をしてくるようなことを妨げるようなものが存在するとは考えておりません。ちなみに、米国が万々が一核問題について事前協議をしてきた場合には、いかなる場合でもノーであるということは現在の政府の方針でございます。
  79. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もうこれ以上やると水かけ論みたいになっちゃうな。どうもその辺はやっぱり残りますね。どうしてもね。丹波さんとしてはそれ以上はみ出たことがなぜ言えないのかという、これは枠でもないんだな。あたりまえのことをいまお尋ねしているわけですけれども。ということは、そうすると、事前協議あり得ると、核の存在はそのときに明らかになるということも考えられるということになりますか、今度裏返しにして申し上げた場合に。
  80. 丹波実

    説明員(丹波実君) 米国政府として繰り返し言っておりますことは、事前協議をしなければならないような行動またはその他のことをするに当たって、安保条約事前協議をしなければならないようなことに該当することを行うに当たって、それを妨げるような国内法その他の考え方は存在しないと、こういうことでございます。
  81. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ではちょっと観点を変えましょう。そうした問題がまだこれからも尾を引くでしょう。  それから安全保障条約の第六条、それから地位協定の第五条、このかかり合いについての整理というものは十分なされているのでしょうか。
  82. 丹波実

    説明員(丹波実君) 先生の御質問をもう少し詳しく言っていただけたら助かります。
  83. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ではこちらで申し上げましょう。安保条約第六条には、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」云々とありますね。これは御存じのとおりです。それから地位協定については、第五条に、「合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、」その前に船舶、航空機がございますね。「入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入することができる。」というかね合いの問題について、片一方は出入りが自由に認められているのですね、この地位協定では。この辺はどういうふうに整理して考えればよろしいのでしょうか。ここには核も何にも書いてないわけですよ。
  84. 丹波実

    説明員(丹波実君) 先生ただいま御提起の、安保条約第六条に基づきますところの事前協議の交換公文の中の装備の重要な変更という問題と地位協定第五条との関係につきましては、二十一年前の安保国会におきまして論議が尽くされていると私は考えております。そのときの代表的な答弁を御紹介いたします。これは当時の林法制局長官の答弁でございます。   今の第五条は、船の出入りあるいは飛行機の出入りという点についても、入港の許可は要らないとか、あるいは通告をすると、これはどういう港にどういう船が入ってくるかという点において、水先人をどうするとか、あるいはそういう問題から錨地を指定するとかいう問題で、つまり、港の入出港の技術的な見地からこの規定があるわけでございまして、装備についての事前協議、これは全然船の入出港とは別問題の方から規定しているわけであります。それぞれ規定の趣旨が違うわけであります。入出港について通告を要しないから、この装備の重要な変更について協議を要しない、こういうことは全然出て参らないわけでございます。  以上に尽きておりまして、第六条の交換公文の趣旨と地位協定第五条は面の異なることをそれぞれ規定をしておると、こういうことで完全に当時の国会で整理し尽くされておると私は了解しております。
  85. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに国会においては整理をされている。アメリカ側でもそのような理解のもとに整理されている、このように判断してよろしいのでしょうか。
  86. 丹波実

    説明員(丹波実君) まさに地位協定第五条は林法制局長官の言葉をまつまでもなく、出入港に当たってのまさに通告であるとか水先人とか、そういう技術的な観点から規定したものでございまして、核に関する事前協議の問題、これとは面の異なる問題である。これはアメリカ側にも私は明白な了解があると考えております。
  87. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 さてそこで、いままでずっと申し上げてきた、それから過去におけるいろんな国会答弁というものを思い起こしながら、なおかつここで整理をして考えなければならないやはり第一の問題は、日本側としては持ち込みについて寄港領海通過についてもこれを含むと、こういう解釈、判断に立っています。で、アメリカ側もそういう解釈、判断に立っているという何か証明がありますか。
  88. 丹波実

    説明員(丹波実君) ただいまの先生の御質問にお答えするためには、なぜ寄港の場合にそれが核の持ち込みに該当し、事前協議対象になるとわれわれが考えているかということを、申しわけございませんが、若干時間をいただきまして説明させていただきたいと思います。  この点につきましては、申し上げるまでもなく、第六条の交換公文には同軍隊の「装備における重要な変更」と、こういう表現がございますが、ここにおきますところの「装備における重要な変更」といいますのは、まさに「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地建設」を言うということが当時の藤山・マッカーサー口頭了解了解されていることは申し上げるまでもないと思うのですが、問題は、この場合の装備の重要な変更対象は何かということでございまして、交換公文には、配置の変更の問題を受けた後で、同軍隊とは、同軍隊のという表現がございますが、これは何も日本に配置されている軍隊だけを指すものではございませんで、私たちは安保国会以来次の三つの軍隊が含まれておるということを申し上げておるわけです。一つ日本に配置された軍隊である、もう一つ日本の施設、区域を一時的に使用している軍隊である、もう一つは施設、区域をたとえ使わなくても領海、領空を通過している軍隊である、この三つがかぶっているのだ、そのことは交換公文の文脈上明らかである、そういうことから、私たちは寄港事前協議対象になるということを申し上げておるわけでございまして、そういう点については私たちはアメリカの考え方も同じであると、こういうふうに考えております。
  89. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いままでの答弁をずっと私なりに整理いたしますと、核の持ち込みについて、これはかつてはずっとなかったことを記憶しておりますが、今日まで一度もございませんでしたか。事前協議対象となり得べき核の持ち込みというものについては、ありましたか、ありませんでしたか。
  90. 丹波実

    説明員(丹波実君) 事前協議対象となり得べき核の持ち込みが行われたということはなかったと考えております。
  91. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 将来においても全くないというふうに想定できるでしょうか。
  92. 丹波実

    説明員(丹波実君) 核の問題につきまして事前協議対象となるべき行動が行われる場合は、米国事前協議をしてくる、その場合の日本政府の対応はノーである、いかなる場合もノーであるということは累次申し上げておりますとおりでございます。
  93. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、今度外務大臣にお尋ねするのですが、そうした背景を考えながら疑問を残しつつも、ライシャワー発言についての問題点を残しながらも、今度戦略的に見た場合に、多分にお詳しいお方でございますから、戦術的に見た場合に、そうしたようなことが将来ともにわたって、核の搭載、核の積載がある艦艇、航空機、そういったものの出入港というものがないということは、戦略的に見て、戦術的に見ていかがなものでしょうか。あってはならないことを想定して言っているわけではございませんけれども、現実的に直ちに対応でき得るのかどうなのか。アメリカ側ではしきりに言ってますわね、日本が核のかさにある以上は当然のことながら港や飛行場等においてそういう便宜を図るのは当然ではないか、だから核の持ち込みはあたりまえだというような、そういう考え方も非常に強いということを聞いております。それはもっともだと思うのですね。まさか一々グアムだとか遠くの方まで行くよりも、一番近いところで戦略的な展開、戦術的な展開ができれば米側としては最も効果が大きい行動ができるわけでございましょうから、その点いかがでございましょうか、これはむしろ防衛庁に聞いた方がいいのかもしれませんけれども。
  94. 丹波実

    説明員(丹波実君) 御承知のとおり、日本は核の脅威に対しまして日本の安全を維持するために、アメリカのいわゆる俗な言葉で言いますところの核のかさに依存しておるわけでございますが、この核のかさに依存しておるということと、日本アメリカ核兵器を持ち込むこととはおのずから別個の問題でございまして、このようなアメリカの核のかさが働く上でアメリカ核兵器日本の領域内に存在している必要はない。したがって、アメリカ核抑止力に依存することと核を持ち込ませずということが矛盾することはないと私たちは考えております。
  95. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 きわめて明快な割り切ったその御答弁なんですけれども、それならそれでそういう考え方もあるというふうに受けとめざるを得ないと思うのです。ただ、いろんな関連する事柄が多過ぎるのですね。丹波さんもあるいは外務大臣も栗山さんもごらんになったと思いますが、これは数日前かなにかにこういう写真が公表されましたね。いわゆる標須賀平和委員会ですか、映画で横須賀を記録する会の市民グループが、長時間にわたって望遠レンズを据えつけたり、非常に厳重な取り締まりの中をかいくぐってこういうものをカメラにおさめているわけです。これは軍事専門家に言わしめると、まさに核運搬の機器であるとほとんど一致したそういう見解がもたらされています。それは軍事専門家でありませんから私は知りません、というふうにはいきませんでしょう。当然こういうものを知った以上にはもう素早く外務省としても対応されたと思いますが、こういったこともやはりまた疑惑に拍車をかけるような材料になりはしまいかということを心配するわけです。それは岩国の問題も消えていませんよ、はっきり申し上げて。あるいは沖繩もという、そういう問題がまた連動的に起こる。ただわれわれ確認の方法がないですから。先般の「ジョージ・ワシントン」の事故にしてもそうでございますね。私はしきりにその点について領海侵犯をしたのではないかと、どう見ても公海上とは言うものの、きわめて日本領海に近いところで事故が起きている。原潜ですから下にもぐっていますから、ソナーで探知できない領海だってあると私は思うのです。当然原潜ならばもう核を積載していることはこれは常識でございましょう。もう原潜についてはほとんどと言われているのですから。核兵器を積載していることはもう常識とされているわけですから。そういったことが相次いで起こっているわけです。今度は現実、事実関係の問題として、そうしたことといまずっと答弁をされてきたことと脈絡がきちんと通じ合うのかどうなのか。やはり疑惑として残りはしまいかということを重ねて私は申し上げたい。この点についていかがでございましょう。
  96. 丹波実

    説明員(丹波実君) 先ほどからるる御理解願っておりますところの安保条約の全体の仕組みからいたしまして、ポラリス型潜水艦、その他弾道弾ミサイル積載の米潜水艦が日本領海に入ってくるということはわれわれとしては考えられません。考えておりません。
  97. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは、これは外務委員会という公の場所です。丹波さんが一言でもそれを言ったらまた大変な問題になるでしょう。それは国内問題もこれあり、それから対外的な問題も出てくるであろうという配慮もあるでしょう。いまずっと伺っているそれは、丹波さんの言われていることは正論と言えば正論です。ずっといままでのいろんな資料をもとにして、国会答弁等も全部それにかみ合わせながら、非常に公式的な答弁としてはそのとおりだと私は思うのですよ。けれどもそういかないところに今日のいろいろ問題提起がいまなされているのではないだろうか。それはいまお立場上これは事実ですとあなた認めたら、これはまた大変な衝撃を与えることになる。けれども逆に言えばあることもこれは事実だ。  これいかがでしょうね、就任早々大変過酷でございますけれども、いま栗山さんや丹波さんの大変親切丁寧な御答弁をずっとお聞きになっていらっしゃるわけでございますから、それらをずっと整理をしていただいて、日本として一体どういうふうに――これからこういう疑問点についてやはり明確にしなければならない。ライシャワーさんの発言といい、それはいま一私人である、いまではもう一私人だからこれは関係ないのだ、政府じゃないと、こういったことでもうぶった切られてきているわけです。けれども影響力があるというところに問題が、やっぱり前回と違う内容があるわけです。だから実際にこのイントロダクションの問題についても、ライシャワーさんの言っていることは本当に正確なのか。いわゆる日本側理解をしている解釈の仕方がそうなのか。まあライシャワーさんは日本語の非常に堪能な方でございますからね。持ち込みなんということを日本語で言っているわけですから。そこまで理解を示されているライシャワーさんの発言とするならば、これはただごとでは済まされないのじゃないかと、日本語についても通じている。そうすると今度こっち方の単なる解釈で済まされる問題だろうかという、そういうことが起こる。それらをこうずっとまとめていただいて、いま何をなすべきか、何もやらなくてもいい、いままでの政府の一貫した考え方に変わりはない、これでいいのであると、これではちょっと国民理解できないのじゃないかという心配がありますだけに、あえてくどいようですけれども、その辺おまとめいただいて御答弁いただければ、私大変ありがたいと思うのであります。
  98. 園田直

    国務大臣園田直君) はしなくも元の大使のライシャワーの事件でこういう波が起こっているわけでありますが、当時、ライシャワー指摘したマッカーサー大使はその事実はないということを言っているわけでありまして、政府内の記録にも口頭了解を与えたという記録はございません。かつまた、米政府並びに出先の大使と日本側との相談によって、この問題は今日まで日米両国がやってきたことで異存はないと、こういうことでございますから、これはこの点で御理解を願う以外にない。両政府委員が答えたことはこれを詳細にお答えしたことであると考えております。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは、もう時間もありませんので、もう一点重ねて確認をしておきますが、この持ち込ませずという非核原則の柱になる、これについては日本のいままでの従来の解釈に基づく、寄港それから領海通過についてもこれは事前協議対象になるという点については、アメリカ政府としてもそれを確認しているというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  100. 園田直

    国務大臣園田直君) 一番最初に御質問がありましたが、非核原則というのは、核のかさに依存するという前提のもとに非核原則はできておるわけでありまして、これについては米国了解を与えております。かつまた、それに基づいて起こってきますいまの問題についても、日本側の主張は米国はこれを了解をいたしております。
  101. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうすると、重ねてですがね、了解をしているということは、やはり事前協議対象寄港通過も入るというふうに米国側は確認をしている、理解をしている、こう受けとめてよろしゅうございますか。
  102. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本側は事あるごとにその点を明確にしているわけでありまして、米国側はこの日本の言い分を了解をしております。
  103. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 以上で終わります。
  104. 立木洋

    ○立木洋君 午前中ごあいさつがございましたが、外務大臣に最初にお尋ねしたいのは、この核通過の問題に入ります前に、アメリカの原潜の当て逃げ事件、それから今度問題になっております、米艦船が起こしました、はえなわ切断事件ですね、これはきわめて遺憾な事態でございますし、この点について、御承知のような、われわれから見るならばきわめて不誠実な中間報告がなされてきておる、こういう事態について、一連の今度のこの二つの事件について、大臣はどのようにお答えになっておられるのか。これを最後まで究明して、再びこういう事態が起こらないような措置をとるという、そういう強い決意でこの問題に対処されるのかどうなのか。このことを最初にちょっとお伺いしておきたい。
  105. 園田直

    国務大臣園田直君) この原潜の問題は、以前ソ連の原潜が火事で浮上をいたしまして、この場合に日本の自衛艦は直ちにこれに曳航するあるいはいろんなお助けをしたいという申し出をしましたが、ソ連は辞退をして数時間遊よくをしておって、ソ連の軍艦が引っ張りに来た。今度のアメリカの原潜が浮上したことも、米ソが対立する今日、両方が戦略的にそういう態勢をとっておって、両方ともその戦略的な配備を知られたくないということでいろいろあることは、私は両方同じだと考えております。  次に、今度の原潜の問題は、第一は日米安保条約というものその他の問題で、ソ連日本の関係とアメリカ日本の関係は違うわけであります。違うということはですね、問題は、ああいう事故があったということも大変なんですが、事実をよく納得をしないと、日米安保条約並びに日本米国の関係は、片務あるいは両方は別といたしまして、日本国民の生命、財産を守ろうというところから出てきておるわけでありますから、その守るべきはずの日本の漁民がおぼれておるのを知らなかったのか、なぜ逃げたのか、こういうことがまず第一にわれわれは詳細に知らなければならぬところであって、もっと言えば、あれがアメリカの漁民であってもああいうことをしたのか。これに相違があっては日米安保条約の本質にわれわれは疑義を持つし、国民も信頼できない。そういう意味で経過を詳細に知りたい、こういうことであります。  これは昨日マンスフィールド大使と会って話し合いをした結果、艦長から海軍の方面軍司令官へ、方面軍司令官からワシントンに大体調査は送られているはずだ、しかし、これは軍事的な調査だけではなくて、世間、いわゆる新聞その他の疑問を持つ点について、はっきりお答えができるものでなければならぬから、さらに準備をしておるが、なるべく早く報告をします、こういうことであります。かつまた、補償についても、日本側とよく相談をして、適確に早くするようにしたい。  三番目には、今後はこういう問題がないように、こういうことでこの話は進めておりますから、御指摘の点は処置をし、対応策をとっているつもりでございます。  はえなわの問題は、一連の問題ではありますが、これとはやや違っておる問題であります。現に、この事件が起こったのは、大体想像すると、夜間掲灯をつけておるが、そのはえなわの標識灯というのは、これは長いのは三千ぐらい延びておるわけでありますから、なかなか動いておる軍艦から見にくい。しかも、現地の方々の話を聞くと、アメリカの軍艦、それにくっついてソ連の軍艦、それと共同して日本の自衛艦が動いておるのだから、しかもそれは一回じゃなくて二回も三回も四回も行ったり出たりしておるものだから、だれがだれかわからぬというような被災者の意見もあるわけであります。しかし、それはそういうことをやっておっては大変でありますので、このはえなわの問題では、私は就任して以来、ちょうど演習再開の時期でありましたから、当初、演習再開にこのままでは反対だという反対意思を表明しました。その後、こちらからの申し入れによって、防衛庁長官は米側とも相談の結果、このような事件がないように演習場の区域を縮小した。この漁場の濃密なところは避けて、演習区域というのを縮めた。それから、いままでは漁船に会ったら注意しながら演習をやれ、こういうのを、漁船に会ったら直ちに演習は中止をしろ、こういうふうに日米両方に通知をしておる。かつまた、佐世保の方からは適時パトロールを出して、そして漁場の船団のそばで間違いがないようにする、こういうことでございましたから、そういう万全の策があれば結構だと、それじゃ今度は、それにあすのことに迫っておるから了解いたしましょうということで、閣議で発言をして、そして再開ということになったわけであります。  きのう私は、マンスフィールド大使に言ったのは、第一は、そういうことでいろいろあるけれども、補償の問題がまずある、こういうことをやって済まなかったということで。演習そのものが日本国民や漁民を守るためにやったという演習でありますから、それが主人が何やっておろうと構わぬというようなことで演習をやられたのでは、これは終始本末転倒している。そこで、今後二度とこういうことがあってはならならぬから、補償は適確にやってもらいたい。これについては、すでに日本側に具体的に被害と具体的ないろんな補償のための資料を早く調査してやってほしい、こういうことをやっておるから、これについては要求どおりに急ぎますと。それから、二度こういうことがないようにということは、これは正直言って、米国の方もさることながら、日本の私は海上自衛隊の方も少し考えてもらわなきゃならぬので、軍艦、自衛艦に乗っておるか、漁船に乗っておるか、同じ海で仕事をやる船乗り同士であります。海上自衛艦の軍艦に乗っている、自衛艦に乗っている人が、いま潮はどういうふうに流れ、いまマスはどういうふうに動き、いま漁場はどういうふうな状態になるか、知らぬはずはありません。これは知らぬというなら、私は怠慢だと思う。だとするならば、米国から共同演習の話があった場合に、その点をよく説明をして、いまちょうどマスをとる最も大事な時期だ、しかもかつ、演習場が近寄り過ぎておる、したがって、時期の選定、まかり間違っても漁船に支障を与えたり被害を与えたりしないように、かつまた、演習場の区域の設定については、演習場では被害が起きなかったが出入りのときに被害が起こったなどという、そういう危なっかしいことはやめて、時期の設定、演習区域の設定については、まかり間違ってもこういうことがないように十分注意を要する、こういう申し入れをしましたところ、マンスフィールド大使は、全く同意見であるから、これは詳細に本国の方に申し入れると。防衛庁の方にも私は申し入れをいたしております。  そこで再開をしたわけですが、これから先は、明確なことではありませんけれども、どうも演習を縮小して、そして漁場はもう離れてやったと言いながら、その演習場の区域内で五、六隻の漁船に被害を与えたという、不明確ではあるが、情報がございます。そこで私の方では、正式に外務大臣外務省意見として演習中止、万全を期して間違いないからと言うから再開に同意をしたけれども、その万全を期してなお、そういう問題が起こるようであれば、不本意であるから直ちに演習は中止されたい、こういう申し入れをしているところでございます。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 情勢について幾つか述べられた点と、それから起こった背景等について述べられた点については、私は異なっている見解が若干ありますが、それを討論していると若干時間がかかるので、米原潜当て逃げ事件についてもきちっと対処していただきたいし、今回のはえなわ事件の問題等々についても、これは毅然とした姿勢をとって対処していただきたいということを重ねて要望して、次に、先ほど来問題になっております核持ち込みの問題ですが、最初にこれも大臣にちょっとお尋ねしておきたいのですが、ラロックのときも一九七四年、大分問題になりました、もう先ほど来問題になっているように。これは核を積載している船は途中でおろすようなことはない、日本だってそのまま寄港するということのラロック証言というのが大変な問題になって、国会でも繰り返し議論されました。今度のライシャワー大使の発言、これも同様の趣旨ですね。これは二人だけの問題ではなくして、繰り返し、アメリカ側発言等々によりますとこういう問題が出ている。このようなラロック証言や、あるいはライシャワー発言等に見られるようなことが、なぜ繰り返し起こってくるというふうに大臣はお考えになりますか。
  107. 園田直

    国務大臣園田直君) ラロック証言があった後、インガソルと日本側の代表の安川代表が会って話をしておりまして、これに基づいて先ほどから政府委員がお答えするようなことで両方が確認をしたと私は記憶をいたしております。ライシャワー、大学の教授をつい数日前にやめられたそうですが、どういう意図を持っておっしゃったのか、私には全くわかりません。しかし米国側の方から私に発言をして、これは一民間人であって責任ある発言ではないからアメリカ政府ノーコメントだ、かつまた、この問題の処理については、いままで日米がやってきたとおりでアメリカは異存はない、こういう話でございます。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 ラロック証言があった後、これが繰り返し国会議論されて、そしてアメリカに再度やっぱり確認すべきであるということが問題になりましたね。そして問題になって外務省政府の方としても、それはきちっとやはりもう一遍アメリカ側確認いたしましょうということになって、アメリカ確認したのが五十年の三月二十六日だというふうに記憶しておりますが、丹波さん、これは間違いございませんね。
  109. 丹波実

    説明員(丹波実君) いま先生が言っておられますのは、いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解内容を当時文書で行われたのかということが従来国会で問題になりまして、もちろん安保国会以来その文書は存在しておりませんと、こういうことをずっと政府が答弁申し上げたわけですが、それにつきまして、昭和四十三年にその口頭了解内容なるものを整理して国会に提出してくださいという強い要請がございましたので、「日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。」という紙をつくりまして、昭和四十三年の四月二十五日に国会の関係の委員会あるいは関係の議員の方々にお配りしたわけです。そのときは、特にアメリカに、こういうものを出しますということは言ってなかったわけですが、その後まさに先生御指摘のようにラロックの問題が起きまして、一体この四十三年に国会に出した紙は当時アメリカに念を押しておったのかということが論議になりまして、実はこれは外務省了解していることを取りまとめたものです、という議論に対して、やはり国会の方から、アメリカに念には念を入れろということで確認しなさい、という要請がございまして、確認したのが五十年三月の二十六日、そういう意味でございます。  ちなみに、その了解している内容としては三つ挙げておりまして、第一は、「配置における……
  110. 立木洋

    ○立木洋君 いや、いいです。
  111. 丹波実

    説明員(丹波実君) よろしゅうございましょうか。
  112. 立木洋

    ○立木洋君 あのときにはラロック証言との関連で問題になっていて、通過の問題について確認されるのかどうなのか、それが、内容が含まれているかどうかということが非常に大きな問題になったですね。ですから、一九七四年の十二月に政府が統一見解を出し、さらに七五年の一月には楢崎さんの質問書に対するいわゆる答弁、回答書なるものまで明確にされたわけですが、アメリカに対して再確認した場合にはトランジット、いわゆる通過という問題については確認されていたのでしょうか。簡単に。
  113. 丹波実

    説明員(丹波実君) この問題につきましては、昭和四十九年の十月十八日、参議院外務委員会におきまして、立木先生と、当時の松永条約局長、及び山崎アメリカ局長との間で詳細なやり取りが行われておることは、もう先生御自身のことですから御承知と思うのですが、このラロックのときのインガソル、安川さん、それから先ほどの文書の問題につきましても、背景はまさに寄港の問題をめぐって論議が行われておりまして、そういう背景の中で安川、インガソルで見解が表明されたり、あるいは先ほどの五十年の大使館への確認が行われたりしておるわけですから、私たちは当然そういうことが了解されておるというぐあいに考えております。
  114. 立木洋

    ○立木洋君 丹波さん、ごまかしてはいけないのですよ。トランジットという表現を明確に日本政府が使って相手側への文書の中に提示したかどうかということを私は聞いているのです。
  115. 丹波実

    説明員(丹波実君) この点は、先生が問題にしておられますのは寄港ではなくてトランジットでございますか。
  116. 立木洋

    ○立木洋君 トランジット、通過
  117. 丹波実

    説明員(丹波実君) まさにラロックのときも、現在もそうと思いますけれども、寄港であるとか通過であるとかいう問題をめぐって論議が行われておりまして、当時もまさにそういう論議を背景として、アメリカ側にそれはそういう文書が行っておるわけでございますから……
  118. 立木洋

    ○立木洋君 いや、背景はいいんですよ。その言葉を明確に使ったかどうかなんです。
  119. 丹波実

    説明員(丹波実君) 私たちは、当然そういうことが了解の中のものであると、アメリカ了解しておるというぐあいに考えております。
  120. 立木洋

    ○立木洋君 核持ち込みというのは、そのとき、きょう午前中のあれで淺尾さんが答えましたけれども、核持ち込みという表現はどういう英文ですか。
  121. 丹波実

    説明員(丹波実君) 五十年の三月二十六日に大使館から確認を得ましたときに、すでに過去に国会で申し上げておりますとおり、英訳文を添えて出したわけですが、その中で持ち込みという言葉は、英語ではイントロダクションという言葉が使われております。
  122. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカ側に渡したそのときの英文を資料として提示していただけますか。出していただけますか。
  123. 丹波実

    説明員(丹波実君) お出しいたします。
  124. 立木洋

    ○立木洋君 では、後でいただくことにして……。  この問題についてはもう古い問題ですよね。もう何回も、あの四十九年のときも私は松永さんともやったし、山崎さんともいろいろ話し合いを国会では繰り返しやったわけですが、いまの丹波さの説明でも、トランジットということを明確に日本政府が提示をしたということは御回答にならなかった。  大臣、そのトランジットということを、通過ということを日本側が明確にアメリカ側に言ったのでしょうか、そういう言葉を使って、イントロダクションではなくて。
  125. 園田直

    国務大臣園田直君) 過去の事実は私よりも事務当局が精細な記憶をしておるわけでありますから、事務当局からお答えをいたします。
  126. 立木洋

    ○立木洋君 引き継いでないですか。
  127. 丹波実

    説明員(丹波実君) この点は、先ほど申し上げた委員会やりとりの席上、山崎アメリカ局長が、この問題はわれわれとしてはきわめて明らかな問題でありましたので、アメリカと個々の、そういう言葉を使って話し合う必要は認めておりません、という趣旨の答弁をされておりますが、現在の私たちの考え方もこれと全く同一でございます。
  128. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、結局アメリカ側了解しているだろうということであって、その後もトランジットということで明確にアメリカ側日本政府は提示したことはございませんね。
  129. 丹波実

    説明員(丹波実君) この点は、けさからたびたび申し上げておりますとおり、この問題につきましては事前協議に関する交換公文の規定及び藤山・マッカーサー口頭了解からして明らかであるというふうに考えております。
  130. 立木洋

    ○立木洋君 いや、明らかである、じゃないですよ。トランジットという言葉で明確に米側に提示したことがその以後ありますかということを言っている。ないならないんでいいんですよ。あるかないかだけ。
  131. 丹波実

    説明員(丹波実君) 二十一年前以来今日に至るまで、私たちはこの問題は明らかであると考えております。
  132. 立木洋

    ○立木洋君 丹波さんの答弁というのは全く、なかなかうまい答弁をされるので、議事録に残って後で見てみると大分ごまかされたようなことにならざるを得ないわけです。  それから、もう一点確認しておきたいのは、私はラロックのときに、四十九年の十月十八日、先ほどあなたがお挙げになったときに、いわゆる核を積んだ米艦船通過事前協議対象になるという文書日米間にはないということを松永さんも確認されましたが、その後もこの文書はないですね。通過日米間に。
  133. 丹波実

    説明員(丹波実君) そういうことを特定して取り上げたような文書はございません。
  134. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、今度もう一つお伺いしたいのは、アメリカ側の公式の発言国会の議事録、公式文書、何でも結構ですが、いわゆる核持ち込み通過を含むということを明確に表現したものがあるならば出していただきたいのですが、いかがでしょうか。
  135. 丹波実

    説明員(丹波実君) ただいま御指摘のような文書につきましては、私、承知しておりません。
  136. 立木洋

    ○立木洋君 これもないのですよね。つまり、いま丹波さんとのやりとり大臣お聞きになっておわかりのように、日本側からはイントロダクションという表現でアメリカ側に申し入れたことはあると、これは文書も渡して、五十年の三月二十六日、アメリカ側も了承したということになっているわけですね。ところが、通過という表現で日本政府アメリカ側に申し入れたという文書一つもないのです。  それから、核を積載しておる艦船が、つまり通過するということが事前協議対象になるという文書は、日米間にも全く存在しないというんです。アメリカ側は、この核持ち込み通過を含むということをアメリカ側の公式文書、何でもいいから挙げてくれと言ったら、そういうことは一つもないというのです。アメリカ側文書にもない、日本政府からも申し入れたことがない、両方に確認した文書もない。一体それで核通過持ち込みに入りますというのは、これは何で保証されるのでしょうかね。大臣、ちょっとその辺をお伺いしたいのですが。政治的な判断ですから、いいですよ丹波さん、結構です。
  137. 丹波実

    説明員(丹波実君) 事実関係につきまして……。  先生はそのような文書は存在しておらないと言われましたけれども、私たちといたしましては、安保条約第六条に基づく交換公文がまさにそれに当たる文書であると、こういうふうに考えております。
  138. 立木洋

    ○立木洋君 丹波さん、ごまかしてはいけない。あそこにトランジットと書いてないですよ。  大臣いかがですか、どこを探してもこの文書がないのですよ。
  139. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本非核原則というのは、これはアメリカは認めております。かつまた寄港通過についての日本見解の表明については、アメリカはこれを理解をいたしております。
  140. 立木洋

    ○立木洋君 理解しておる、了解しておると言われながら、ラロック証書が出てきたり、そしてライシャワー元大使の発言が出てきたりして、また今後も出るだろうと言われているのですよね。それで、これが両国間の厳正な非核原則、いわゆる核持ち込み通過が含まれるかどうかということは、これは明確な両国間の約束事ですよね、それはアメリカ側了解しているというならば。この約束事が文字としてはどこにもないというのですよ。そんな約束事というのが本当にあり得るのだろうか。あるいは時代が変わり、どんどん変わっていったら、それが一体何の根拠になるのか。日本国会では、何回も何回も大臣が入れかわりそういうことについては発言している。アメリカ側には一つもそんなことを発言した文書というのはどこにもない。日米間にもそういう文書がない。また、日本側アメリカ側に申し入れた文書一つもない。これが両国間の厳正なる約束事だと言えますか、大臣
  141. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本非核原則に基づいた基本的な意見は、表明をしているわけであります。これについてアメリカ側理解を示しておるわけでありまして、ちょうど国会大臣が何か答弁をすると皆さん方から、いまの答弁はこうこうこういう意味であると解釈するがよろしいかと、こう聞かれた場合に黙っておったら、よろしいということになるわけでありますから、そういうことで私は理解をいたしております。
  142. 立木洋

    ○立木洋君 両国間の約束事がそんなことで、大臣、また再び一年半たって園田外務大臣が古巣に帰ってこられた、これはわれわれの質問をまたしっかりと受けとめて明快な答弁をしていただけるだろうと、私はある意味では期待をしていたけれども、いまの発言ではどうも、本当にいまの難局を乗り越えていけるのかどうなのか心配になってきますよ。これは自民党のことですから、共産党が心配しなくてもいいかもしれませんけれども、ここではっきりしておきたいのは、一九六九年十一月二十一日、これは沖繩の返還の前ですね、このときに核持ち込みの問題に関してジョンソン国務次官はどういうふうな発言をしておるでしょうか。
  143. 丹波実

    説明員(丹波実君) 先生はサイミントン委員会の……
  144. 立木洋

    ○立木洋君 サイミントン委員会の前の話。サイミントン小委員会は七〇年の一月ですから、六九年十一月。
  145. 丹波実

    説明員(丹波実君) どういう発言か、私承知しておりません。ちょっと記憶にございません。申しわけありません。
  146. 立木洋

    ○立木洋君 いや、さっき渋谷委員とのお話で、すべてを了解しておりますからと言ったから、明確にお答えいただけるかと思ったのですが、この核持ち込みの問題については、いわゆる核兵器を貯蔵する権利を行使しないことの意味ということを、ジョンソン国務次官が明確に述べているのですが、そうじゃございませんか。
  147. 丹波実

    説明員(丹波実君) ただいまのジョンソンの発言の日付を先生もう一度お願いします。
  148. 立木洋

    ○立木洋君 六九年十一月二十一日。
  149. 丹波実

    説明員(丹波実君) 先生の御指摘の日付は佐藤・ニクソン共同声明の恐らく背景説明を言っておられるのかと思いますけれども、ジョンソンがどういう言葉を使われましたにしても、安保条約上先ほどから申し上げておりますところの枠組みというものに抵触するようなことを念頭に置いて考えたものではないと、私たち当時からその点は御説明申し上げておるつもりであります。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 それからその後七〇年一月二十六日、上院外交委員会、サイミントンの分科会の発言、ここでも明確に述べておりますけれども、ジョンソン国務次官の声明として、われわれも、日本政府もすべての組み合わせを想定したあらゆる可能性を予想し、どちらかの政府が正式に事前協議を求めたいと考えるようなあらゆる状況について正確な事前の了解に達しようとは試みなかった、これは藤山さんが言われている内容と全く同じだと思うのですね。その当時はいわゆる核兵器が発達した状況でないので、いろいろなことが十分にやられていない。だから、今回の藤山さんが記者のインタビューに答えてもその趣旨の発言がされておって、最終的には通過の問題に関してははっきりさしていないことは事実だ。だから、結局この通過の問題に関しては、当初は明確にされていない。それがいつの時点で明確にされたのか、その明確にされたという文書が全くない。ただ単にアメリカ側理解しているだろう、了解しているはずであると述べるだけにとどまっている。これは園田さん、もういままで何回も繰り返し私も言ってきたことです。園田さんもいままで何回も繰り返しそのことについてはお答えになっているけれども、しかしこれは絶対に、先ほど来同僚議員も指摘しているように、国民はいまの事態に関しては納得しないのですよね。ですから、私はここで日本側が正確にトランジットという表現で申し入れた文書がないし、日米双方に通過という問題が事前協議対象になるということの確認した文書もなく、アメリカ側には公式にはそうした文書がただの一片もないということから考えて、今日どうです、外務大臣、あなたの最初のお仕事として、このトランジットが核持ち込みに入るということを日本政府は厳正にお伝えしたいということを伝える意思はございませんか。
  151. 園田直

    国務大臣園田直君) いまこの問題でいろいろ国民の方々、皆さんに心配をかけておりますが、もっと心配かけてはならぬことは、この問題についても、共同声明の問題についても、政府部内で意見食い違いがあるということであれば、国民はもう全く疑惑から恐怖に変わるわけでありますから、私は自分の知った範囲においてお答えをするわけで、常識で私が御返答するわけにはまいりません。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 いや、アメリカ側に問い合わす意思はございませんかということなんですよ。
  153. 園田直

    国務大臣園田直君) 失礼をいたしました。  これはきのう米側から発言があって、この問題は先ほどから言っておりますとおり、いままで日米間で処理してきたとおりでよろしい、こういう発言で私もこれに同意をしておるところでございます。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 これは全くあいまいなままでわれわれとしてはどうしても了解するわけにはいかないので、これはいままで新聞紙上でいろいろ報道されておりますから、委員長、お願いしたいのですが、岸元総理、それから藤山元外相、それから木村元外相、それからライシャワー元大使、これは証人として外務委員会においでいただいていろいろとお尋ねをしてはっきりさしたい、これが一つと、もしかライシャワーさんが日本に来れないというならば、外務委員会国会国民から選ばれた議員ですから、政府が明らかにされないというのですから、われわれ議員として超党派でアメリカに行ってお会いして、一体この真相は何ですかということをお尋ねしたい。そういう超党派でアメリカに行くことを提起したいので、委員長、どうか御了承いただきたいと思うのですが、いかがですか。
  155. 秦野章

    委員長秦野章君) 理事会で相談しましょう。
  156. 立木洋

    ○立木洋君 それでは最後に、これは大臣、この間の原子爆弾被爆者の本会議質問で、私が質問いたしたのを大臣、壇上でお聞きになっておられただろうと思うのですが、あのとき述べました岩国の米軍基地にあるMWWU1部隊、これは核兵器の専門部隊である。そしてこのMWWU1部隊というのが岩国に駐留しておりますということは、二月四日、衆議院の予算委員会政府もはっきりアメリカ側の返事を得て答弁しているわけですから、これがMWWU1部隊というのが岩国の基地にいるということは明確なんですね。ところがあのときに淺尾さんがアメリカ側の回答だとして答えた内容に大変な問題がある。  どう答えたかといいますと、一つはこの部隊は核兵器の貯蔵、搭載の責任は有しない、こう言っているのですよ。ところが私たちアメリカ側からいただいた米海兵隊の核作戦教範というものによりますと、このMWWU部隊という任務を特定して、このMWWU部隊は「(核)兵器を投下部隊に給付、または積み換え部隊に返還するまで、三十日間以内の貯蔵(一時貯蔵)をおこなう」という任務を有すると明記してあるのです。これはアメリカ文書に、米軍の文書に明確に明記してある。ところが、日本側の回答には貯蔵する責任は有しない。アメリカ文書には貯蔵する責任を三十日間以内有しておる。これはどちらが本当なのかという問題が一つある。  もう時間がないから全部言ってしまいます。もう一つは、このMWWU部隊というのは、いわゆる核兵器を整備する「能力」がある、「能力」という表現がしてある。ところがアメリカのこの核作戦教範によりますと任務を特定しまして「空中投下用核兵器の整備、」それだけではなくて「組み立て、試験の任務と職務を果たす」、「能力」ではないのです。「任務と職務を果たす」と書いてある。これはどちらが本当なのかということをひとつ大臣お確めいただきたい。明確な答弁を次で結構ですから、調べた後いただきたい。  それからもう一つは、アメリカ側が出しましたこの中には、核兵器を組み立てる作業所というものの見取り図がちゃんと書いてある。この見取り図がどういうふうに書いてありますかというと、金網で縦横二百五十フィート、七十六メートルですね、金網が張ってある、一重。そしてその中に今度は二百十フィート四方ですね、これは六十四メートル。この二重の金網の中に核兵器を組み立てる作業所というのがちゃんと図解して、このアメリカの核作戦教範の中に明記してある。ところがそれと全く同じ二重の金網、同じ、長さの金網に囲まれた建物が岩国の基地にあるのですよ。これは岩国基地にあるMWWU1専用施設一八一〇、一八一一、規模も形も全く同じなんです。核兵器の組み立て作業所というふうに米海兵隊の核作戦教範に示されている図と全く同じのが岩国にあるのですよ。そしてその岩国には核兵器を組み立てる部隊がある。組み立てる作業所もある。これはラロック証言によりますと、そういうものがあるということは、いま核兵器が存在するか、あるいは核兵器を持ち込む可能性があるということであって、そういう可能性がないところにそんな人員を配置したり、そんな作業所をつくるなどというそれほどむだなことをアメリカはいたしません、と言っているのですよ。これは重大な問題なんですよね。だけれども、これも鈴木総理は、そんなことはアメリカを信頼して、事前協議対象にかかわるから問題ございませんと、本会議の質問ではそういうふうに言われた。私は、この問題については大臣の責任において明確に調査をして改めて御回答をいただきたい、そのことだけをはっきりお答えいただいて私の質問終わります。
  157. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの問題はよく問い合わせて調べます。
  158. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務大臣に対する質問はきょうが初めてでございます。したがって、核の持ち込みについてお聞きをする前に、まず基本的なことについて一、二触れさしていただきたいと思います。  けさの外務大臣就任初の御抱負についての言葉の中に、日本の役割りの大きいことについて触れられておりまして、政治的な役割りはもちろんであるけれど、経済的な役割りも果たさなければいけない、そうして西側陣営の一員として足並みをそろえていくことは決してソ連をやっつけることではなくて、そのことが抑止力として働いていくのだという、こういうことをお述べになったはずでございます。  私どもも確かに安全保障というものは即そのことがデタントであるという考え方に立っております。考えてみますと、七〇年代のアメリカというのはベトナム戦争を抱え、あるいはウォーターゲートが出る、またイランの人質の問題を抱えて総体的に力が弱まった時代であったと思います。ところが八〇年代のデタントというものを考えると、本質的にこれは違ってきているのじゃないだろうか。西側アメリカに何とかして自信を回復をさせてその自信の上に立ってソ連と対等に話をする、そこから平和戦略というものも積極的に展開できるのじゃないだろうかと、こういう認識に立っていると思います。また、私どももそういう認識の上に立って、やはりソ連と対等な自信の上に立って日本の果たすべきその中での平和戦略の推進、あるいは自分の国は自分で守っていくという、こういうことに積極的に努めなければならないということを外務大臣はけさ方おっしゃったのであろうと思いますけれど、私どもの認識といま外務大臣が冒頭お述べになった御認識とはそう食い違いはないと思いますけれど、この辺からまず伺っておきたいと思います。
  159. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃったように私も懸念をしながら外交を進めていくべきだと考えております。
  160. 木島則夫

    ○木島則夫君 そこで、日米同盟関係の基礎になるのは両国の信頼関係だと思いますけれど、間違いございませんでしょうね。
  161. 園田直

    国務大臣園田直君) そのとおりだと思います。
  162. 木島則夫

    ○木島則夫君 首脳会談直後にこれを担当された外務大臣がその共同声明について責任をとって辞任をされたことは、いまおっしゃった両国の信頼関係に全く影響を与えないと言い切るのはこれは無謀であろうと思います。国際常識から見ればこれはもうきわめて私は大きな影響を与えたのだと思いますけれど、この辺の御認識はいかがでございましょうか。
  163. 園田直

    国務大臣園田直君) 前大臣の辞任ということは前大臣のプライベートの問題でありますから、これについての私の意見はお許しをいただきたいと思います。  しかし、問題は、そのような外交上の問題で国内でいざこざの起こったような印象を与えることは、世界の国々に対しても国民に対しても申しわけないことだと存じますので、私はこの点特に注意をして、首脳外交がだんだん強くなってくる今日、総理の考え方を中心にして大臣以下一体になってこれを補弼すべきである、これが国民に対するわれわれの責任であると考えております。
  164. 木島則夫

    ○木島則夫君 総理首脳会談の後の記者会見で、同盟関係には軍事的な要素は全くないと言明をされたのでありましたけれど、その後政府の統一見解といたしまして、従来以上の新たな軍事的な負担を負うものではないと事実上修正をされた。それに対して外相は当初から安保条約の範囲内で軍事的要素が含まれるのは当然であるというふうに認めておりまして、その意味では外相発言の方が私は客観的だったのじゃないかというふうに考えるのでありますけれど、その外務大臣が責任をとっておやめになるというのはこれはどういうことなのか。いまおっしゃったお答えで私は結構でございます。でこの問題といいライシャワー発言といいまして、出てきた形は確かに違っておりますけれど、私はやはり底流に一つの大きな流れがあって、それが深いところで全部結びついている。それは何かというと、アメリカ向けの発言と国内の発言とがたてまえと本音上分けられているということ、そして虚構の上にそういうものが成り立ってきた、そしてその虚構はもうどうしても崩壊せざるを得ないというその端的なあらわれがこういった共同声明の後のいざこざであり、またライシャワー発言であったという認識を私は持つわけでありますけれど、外務大臣の率直な御感想を聞かしていただきたい。
  165. 園田直

    国務大臣園田直君) とかくいままで日本政府並びに日本人というのは、会っているときは調子のいいことを言うが、本心はやや違っておって、国外向けと国内向けの使い分けをするのではなかろうかという疑惑をよその国から持たれておりました。したがって、政府は特にこの点は注意しておりまして、私は、鈴木総理発言も前外務大臣発言も直に聞いたわけでありますが、これはおっしゃるとおりに、伊東さんが心配しておっしゃったことに鈴木総理も同意をして、自分言葉が足りなかった、それはその軍備、軍事それだけでぼんぼんぼんぼん約束してきたものではなくて、安保条約の枠内において日本の憲法その他の立場において、政治経済、文化、防衛、こういうものを含めて両国の関係を密接に緊密化していこう、こういうことが同盟という言葉になってきたのであって、これは総理外務省外務大臣意見相違はないと明確に言われましたので、これは総理の気持ちはよくわかります。  外務大臣就任した私は、そのような誤解をアメリカにあるいは他の国々に与えてはならぬと思いますので、このいざこざはこういうわけであって、決して、総理初め、アメリカで話したことを帰ってきて何かごたごた変えようという意図はありませんということは自信を持って弁解しているところで、これについてはアメリカ了解をしているところであると考えます。
  166. 木島則夫

    ○木島則夫君 そのことで私は申し上げましたのは、いま共同声明の後の国内のいざこざ、それからライシャワー発言といいまして、出てきた形というものは何か違うようではあるけれど、その底流において大きな流れ、よって立つ背景というものは虚構が虚構として存在し得なくなってしまった、つまりもううそがつけなくなってしまった、そこからこういう問題が出てくるのであって、一時的に鎮静をしたところで、こういう態度をとっていく限り、私は、この問題というのは、また火が消えてまた起こる、また出てくる、そういうものであることを非常に心配をするのであります。そして、このことが同盟関係を強いきずなによって結びつけていかなければならない日米関係の信頼というものを逆に私は損ねていくのではないだろうか。そして、せっかく最近議論が高調をしてまいりましたたとえば安全保障の問題、国の防衛に対する真摯なそういう論議、そして、ここから起こってくるであろういわゆる安全保障へのコンセンサスづくりに対して、こういうことが水を差していくことの危惧というものを、外務大臣、私は素人かもしれないけれど、非常に強く感じるわけなんですよ。したがって、きょう新しく外務大臣として外務委員会に御出席になった園田外務大臣外交理念と申しますか、こういうものが国際社会の中で通用していくのだろうか。経済大国としてもう日本世界第二位ですね。そういう立場にありながら、いまのようなこういう行き方が許されていいものなんだろうか。つまり、もっと本音の部分を堂々と前に押し出しながら、できることはできる、できないことはできないのだと、こう言いながら、日本の役割りを、政治の分野においても、また経済の分野においてもきちっと申し上げていく、そのことが必要なんではないだろうかという意味を込めて、外務大臣基本的な外交の姿勢、あり方、そうして国際社会の中でこれだけの地位に立った日本としてのこれからのあるべき外交の姿勢を、きょうは最初にどうしても私は伺っておきたい、こういうことでお尋ねをするわけであります。いかがでしょうか。
  167. 園田直

    国務大臣園田直君) 仰せの数々は全くそのとおりだと存じます。今後も十分そういうことに注意をして諸外国との交際を進めていかなければ信頼は出てこない、こう思います。  今度の首脳者会議で出発直前から鈴木総理が強く決意をしたことは、言うべきことは言う、できないことはできないとちゃんと枠を示す、やるべき責任は果たすと、こういうことで行かれましたが、私は、今度の首脳者会議は、そういう点においてはいままでの首脳者会議で見られないほど首脳者同士が率直に言い合った会談であると考えます。特に日米間においては、今後も注意をいたしますが、お互いに虚偽とかあるいは偽りの上には関係はなくて、十分理解し合って日米関係は進んでおる、それが今度の首脳者会議でますます高くなってきた。今後そういう方針は十分念頭に置きながら、いまの御注意は守りつつ外交を進めていく所存でございます。
  168. 木島則夫

    ○木島則夫君 共同声明の中でも触れられておりますけれど、ソ連の脅威に対する憂慮の念であります。まあソビエトに対する政策というものはいままでどおりの政策をいわゆる継承されるのだろうと思いますけれど、やっぱりたとえば領土問題などを含んだこの日ソ関係というものは、日本の平和と安全にとって私は非常に大事な関係にある国だろうと思うわけでございます。このソ連に対する政策というものはどういうものでなければならないのか、最初でございますのでこの点についてもひとつ触れておいていただきたいと思います。
  169. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が申し上げましたのは、いま総理がおっしゃっている平和外交、この平和外交をそのまま申し上げたわけでありまして、真の平和外交とは距離、密度あるいは感情、やるべき程度に差はあってもよいけれども、すべての立場の国々と交際をすることが大事であると考えております。ソ連日本の一番近い国であって、これに対する影響が大きいことは、これが脅威であろうとあるいはいい意味であろうと、西独と似たような関係にあるわけであります。そこで日本としては、ソ連をことさらに敵に回すことは私は決していいことではない、話のできるところは話をする、しかし、話に応じてならぬところは断固としてこれは拒否する、こういう方針で交際をなるべくしていきたい、こう思っております。
  170. 木島則夫

    ○木島則夫君 日ソ間に横たわる一番大きな問題と言えばこれは領土問題のはずでございます。領土問題を論ずる場合に、これが入り口論となって、解決できなければ話し合いをしないのだという態度ではなくて、私は出口論であっていいと思いますね。ですから、積極的な話し合いの中で同時にこの問題もやはり進めていくという私どもの考えでございますけれど、このソ連に対する領土問題、これは非常にこれからも粘り強く推し進めていかなければいけないわけでありますけれど、新外相としてこの問題をどういうふうに取り組まれていくのか。
  171. 園田直

    国務大臣園田直君) お話はわからぬでもありません。わからぬでもありませんが、言葉の表現が非常にむずかしゅうございまして、これを出口論として、領土はたな上げしてやろうということになれば、いいところだけつまみ食いをされて、大事なところを残されて、あとは勝手にしろと、こう言われることは一番つらいところでありますから、この点は慎重に御意見を承りながらやっていきたいと考えます。
  172. 木島則夫

    ○木島則夫君 領土はたな上げをしてというふうに誤解をされるといけませんが、領土問題が解決をしなければほかの問題も話し合わないのだという態度はとってはいけないという意味でございますので、これも私誤解を招くといけませんので申し上げておきます。  もう一つ経済援助の問題について少し伺っておきたいのでありますけれど、共同声明の中で、政府開発援助の量を大きく拡充、拡大をするという、そこは私も大いに結構なんでありますけれど、重点地域に対する政府の援助を大きく広げていくのだというこのことが、世界戦略の中に日本がひとつ入っていくという、いままでの南北問題解決を中心とした政府開発援助のあり方から大きく変質をしていくものかどうか。この辺は大臣としてまあ就任早々でありますけれど、よろしければひとつお考えを聞かしていただきたい。
  173. 園田直

    国務大臣園田直君) 経済援助、これは日本の大きな責任であって、国家財政厳しい折からでも経済援助に重点を置くことは大事だ。余った分だけ援助するというのじゃ、これは相手には通じません。やはりつらい中に骨身を削ってやることが大事だと思います。だが、経済援助を戦略的な立場からやるということは、これまた一つの弊害が出てくる、あるいは思わざる方向に引きずり込まれるおそれもある、こういうことを考えながら、いまのお言葉も無にしないように慎重にやっていきたいと考えております。
  174. 木島則夫

    ○木島則夫君 これから当委員会を中心に、また外務大臣のいろいろのお考えを伺いながら、私どもの考え方もそれにぶつけて申し上げていきたいというふうに考えるわけでございます。  今朝来議論されております核の持ち込みの問題を中心とした日米関係のあり方でありますけれど、事務当局の方で結構であります。先ほど抑止力持ち込みとはこれを区別して考えるべきであって、決して矛盾をするものではないのだという、こういう御答弁がございましたが、もうちょっとこれを具体的に補足をしていただきたい、御説明を願いたいと思います。
  175. 丹波実

    説明員(丹波実君) 先ほど申し上げました、米国核抑止力への依存と核兵器を持ち込ませずという考え方とは矛盾しないということを、まず一言でそういうことを申し上げたわけですが、この点については従来から政府が申し上げているところでございまして、米国の核のかさ日本は依存をしておるわけでございますが、それは何も米国日本の領域に核を持ち込まなくても核のかさが発動されるときは発動される、そういう体制であることがまさに抑止力になっているのだと、そういう考え方でございます。
  176. 木島則夫

    ○木島則夫君 日本が核のかさに依存をしてその安全を願う、保つということは、あなたがおっしゃったとおりであろうというふうに思います。確かにこの抑止力の中には、戦略核――B52であるとかICBMであるとか核を搭載をした潜水艦であるとか、こういうものが当然含まれるであろうと思います。また戦術――つまり戦術核、戦域核、こういったものも含んだこれはトータルな総合的な抑止力であることは、これは当然でございましょう。B52にいたしましても、これは沖繩の嘉手納に飛来をする、あるいは日本の周辺には核を搭載した潜水艦が遊よくをする、こういうことも現実の問題でございます。しかし、そういう飛行機にしても、また潜水艦にしても、艦艇にしても領海通過をするとき、あるいは寄港をするとき、一々核を外して日本に入ってくるというようなことが現実的に行われるかどうかということは、先ほど来の議論の中でもしばしば繰り返されているわけでございます。  つまりこういうことをするということは、現実それが行われたとすれば、非常に私はマイナスになる、つまりその部分を海上で核の取り外し作業をする、あるいはどっかへ置いてくる、こういうことをする、そのことがマイナスに当然結びついてきはしないだろうか。したがって、核の抑止力にあるマイナス点、こういうものを与えることは当然であろうと思います。しかし、そういうことはあっても全体の抑止力核抑止力には大きな影響はないのだという御説明をしてくだされば、私は納得をするのでありますけれど、核のかさへの依存と持ち込みとは何ら矛盾をするところはない、区別して考えても差し支えないのだという、こういう御説明には私は納得しかねる。つまり、いま私が申し上げたような確かにマイナスだと思うのです。そういうことが行われるということは、事前協議対象となって、寄港も許されないということになれば、それは大きなマイナスにつながらざるを得ない。しかし、それを補って余りある核の抑止力があるから大丈夫なんだというふうに解すべきなのかどうか、この辺をもう少しひとつ具体的におっしゃっていただきたい。
  177. 丹波実

    説明員(丹波実君) 考え方としては、私は先生のお考えと同意見でございまして、特につけ加えて申し上げることはないわけですが、戦略核、戦術核をトータルに考えての核のかさを考えていることは、おっしゃるとおりでございます。それにもかかわらず、戦術核については、戦略核はもちろんそうですが、日本国に持ち込ませないというのは抑止力との関係でどう考えるのだという点につきましては、いろいろな御意見があることも事実だろうと思います。しかし、そういう意見も考えながら、日本国民全体としてはやはり一つの選択をしたと、それが現在の安保条約の仕組みであるというふうに考えております。
  178. 木島則夫

    ○木島則夫君 別の角度から少し伺ってみたいと思います。  この日本非核原則というものは国際的に通用するものとなっているのかどうか、これは国際的に何らかの機関で承認をされているものか、国際的に何らかの拘束力を持っているものかどうか、いかがでしょうか。
  179. 秋山光路

    説明員(秋山光路君) ただいまの御質問の趣旨は国際的に非核原則が認められているかということのようでありますが、これはわが国基本方針といいますか、そういう原則でありまして、必ずしも世界的にこれが通用するとは言えないかもしれません。ただ日本といたしましては従来からこの三原則につきましては総理その他の方々から常に国会もしくはその他の場で常に原則として表明してまいりましたし、また国会におきましても決議がなされておりますので、こういう点については諸外国が認識しておると私どもは了解しております。
  180. 木島則夫

    ○木島則夫君 いま日本非核原則国際的に通用するものかどうかという点で、必ずしもというふうにおっしゃいました。これは米国を除いてということになるのか、具体的にもう少し質問するならば、日本非核原則というものは、アメリカソ連、イギリス、フランス、中国に正式にこれを通知をして、その正式な理解を得ているかどうかという次の質問に私は進んでいかざるを得ないと思うのでありますけれど、この辺はどうなんでしょうか。
  181. 秋山光路

    説明員(秋山光路君) 正式に通報したということはありませんが、従来の日本外交政策の一環としましてこの非核原則を常に表明してまいっておりますので、この点は各国とも理解していると私どもは考えております。
  182. 木島則夫

    ○木島則夫君 理解していると考えるというよりも、やっぱりこういう点はもっと積極的に働きかけをするのが日本の立場とて当然じゃないだろうかと私は思いますね。いままでそういうことを積極的におやりにならなかったのですか。
  183. 丹波実

    説明員(丹波実君) アメリカにも関係することでございます。ちょっと私から補足的に申し上げたいのですが、一つは秋山部長が言われたことの中には、たとえば国連におきますところの日本の代表の演説であるとかあるいはジュネーブの軍縮委員会における演説であるとか、というところでそういう国際的な場におきましてはっきりと表明してきておるということを補足的につけ加えさしていただきたいと思います。  それからアメリカとの関係では、先般の日米首脳会談の結果できました共同声明の第八項、これに総理大臣日本国防衛努力を進めていくに当たって、日本国の憲法及び基本的な防衛政策に従って行うのだということが明確に書かれております。私たちはこの日本基本的な防衛政策の中には非核原則が入っておる、そういうことに対して大統領理解を示したと明記されておりますので、そういう関係から見ても、非核原則アメリカとの関係及びその他国際的な場で明確に認識されておる、こういうふうに私は認識しております。
  184. 木島則夫

    ○木島則夫君 次に、ソ連の核搭載潜水艦が日本領海通過したとすれば、これは非核原則にまず違反をするのかどうかということ、もし通過をしたことがわかった場合は、ソ連にこれは抗議をして善処を求めることができるのか、いかがでしょうか。
  185. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) ソ連との関係におきましても非核原則につきましてソ連側は十分存じておるわけでございますが、昨年の八月ソ連原潜が火災事故を起こしまして日本領海通過するという事件がございましたことは御記憶のとおりと思います。その際にも日本側は、世界の最初の被爆国としまして核の問題については特殊な国民感情を持っているということ並びに日本政府の方針として非核原則というものを堅持しているということは十分に説明いたしまして、もし核を搭載しているのであればその通航は認めないということを伝えたことがございます。
  186. 木島則夫

    ○木島則夫君 いまの問題に関連しまして、ソ連の潜水艦の領海通過を事前にチェックをして通過をするのを阻止する体制ができているのかどうか。これは防衛庁に聞いた方がいいのかもしれませんけれど、きょうは外務当局だけしか来ておりませんから、どうぞ。
  187. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先生の御質問、軍事技術的な面につきましては私から御答弁申し上げる限りでございませんが、基本的なことを申し上げますと、まず、核を積んでいる船であろうとなかろうと、およそ外国の軍艦が日本の港に寄港するという場合には、これは当然国際法に基づきまして事前に日本政府の許可を必要とすると、国際法上そういう制度になっておるということは御案内のとおりでございます。  次に、寄港いたしません、単なる領海内の通過と申しますか、通航というものにつきましては、御承知のようにソ連を含めまして第三国の軍艦につきましては、アメリカの軍艦のような安保条約に基づく事前協議制度というものはございません。しかしながら、一般国際法上には無害通航の制度というものが存在することは御承知のとおりでございまして、無害通航制度につきましては、御案内のとおり昭和四十三年以来日本政府といたしましては、核を搭載した軍艦の通航は、領海内通航は無害通航とは認めないということを表明しておるわけでございます。  この日本政府見解につきましては、これはソ連のみならずすべての第三国も十分承知しておるわけでございまして、したがいまして、そういう核を搭載した軍艦が一方的に無断で日本領海を通航するということは、基本的に国際法のルールのもとで認められていないというのが現状でございます。
  188. 木島則夫

    ○木島則夫君 時折イギリスとかフランスの艦隊が日本寄港しておりますね。これがもし核を搭載していたとすれば非核原則に違反をする、こういうことになるでしょうか。
  189. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 核を搭載した軍艦が日本領海内に入るということについては日本政府としてはノーだということは、これはアメリカの軍艦のみに限らないことでございまして、ソ連の軍艦であろうとイギリスの軍艦であろうと、どこの軍艦であろうと日本領海内に核を積んで入る、あるいは寄港するということは、これは認められないわけでございます。
  190. 木島則夫

    ○木島則夫君 もちろんそうなんですね。そうだとすれば、安保条約を結んでいない両国、たとえばイギリスとかフランス、こういう艦船の核の有無をどうやってチェックできるのかというここでへ理屈も成り立つわけですけれど、この辺非常にむずかしいと思いますね。現実問題として、やはり日本の周りで米ソを中心とする核戦略が水の中で、あるいは高い空の上で火花を散らしている、それがはしなくもこの間原潜衝突事故というような不幸な形で噴出をする。ですから、そのことのやはり熾烈さをまず認識をしなきゃいけないということが私は第一だろうと思うのですね。そして、それをどうやって抑止をしていくかという抑止の方法についてはいろいろここでも話をしてきた。そして、そのやり方についても今朝来ずっとここで議論が行われているわけでございます。  で、私はもう時間がございませんのでまた別の機会に議論をさしていただきたいと思うけれど、当然政府は今後もアメリカ核抑止力に依存をしていく方針に変わりはないと思います。そうだとすれば、仮に有事の際、日本を救援に来たアメリカ軍が核の持ち込みを求めた場合、政府非核原則を盾にこれを断るということになれば、一体日本の安全というものが保たれるのであるかどうか。そのときのお答えをひとつ聞かしていただきたい。つまり、ケース・バイ・ケースによってこれを判断をするというのがごく常識的なお答えであろうと私は思うわけでありますけれど、外務当局はどういうふうにお答えをなさるか。
  191. 丹波実

    説明員(丹波実君) いかなる場合であれ核の持ち込みは認めない、いかなる場合であれ核の事前協議ノーと言うのが政府の従来からの考え方でございまして、そういう政策をとっていても日本の安全は守られるという考え方に立っております。
  192. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務大臣、そうしますと非核原則は残っても国は滅びたということになってもいいのですか。こういう議論が、やっぱり問題の提示がその後はどうしたって出てきますね。どんなふうに考えたらいいのでしょうか。その辺の議論になりますと、どうもたてまえと本音というか、やっぱり虚構が先に走っちゃって、どうしても現実に現実的な議論ができないという、この辺をどうやってこれから現実的に議論をしていったらいいのでしょうか。非核原則は残ったけれど国は滅びた、こういうことになったらどうなるのでしょうか、外務大臣
  193. 園田直

    国務大臣園田直君) 非核原則、憲法、すべて国の生存と発展のためにつくられたものでありますから、その目的は忘れないように現実を熟思しつついろいろやっていかなきゃならぬと考えております。
  194. 木島則夫

    ○木島則夫君 なかなか含みのある御発言であったと思います。  やっぱり国の生存のためには現実的に考えて対処を、対処とまではおっしゃっておりませんけれど、現実的に考えなければならない。これは常識的な私は考え方であろうと思いますけれど、もう一度恐れ入りますがおっしゃっていただけますか。
  195. 園田直

    国務大臣園田直君) 行政はすべてそうでありますけれども、一つの国の将来、理想、それと現実と、こういうものをどのように見分けしながら調和さしていくかということが行政の主眼であると考えます。  そこで、そういう現実の面からどうこうということではなくて、それは基本的な方向を示したものでありますから、余りそれを守るためにつくったもののみを議論をしていると、逆に今度は国の方が危なくなってくるという場合もなきにしもあらずでございます。
  196. 木島則夫

    ○木島則夫君 その先は今後の委員会で詰めさしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  197. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 伊東前外務大臣外交的な見識を持ち、熱心にやっておられたのだけれどもやめられました。非常に残念ですが、今度は園田さんが外相になられまして、私は日本のために一安心しておるわけです。  それで、いま軍事面についていろいろ議論されておる。たとえば国が滅びてしまうとか、いろんな議論がなされていますけれども、いま日本人が非常に心配しているのは、抑止力といいあるいは自衛力といっても、本当に抑止力になるかどうか、それから自衛力といっても戦争による破壊というものを十分に防げるかどうかという、そういう不安が日本人の間にあると思うのですね。ですから今度の外相のやめられるというような問題についても、そういう安全の問題と結びついていますから、特にアメリカ日本防衛力増強を求めてずっときているということが新聞に絶えず出ていますね。みんな国民は知っているわけです。ですから何かあったのじゃないかという不安、これを持っていますね。それから国際常識も相当発達してきていますから、現在、無際限な軍拡競争が行われて、それに日本がとことこ、とことこついていっていいだろうかどうかという問題、それから五千億ドルに達するなんと言われていますが、五千億ドルの軍事費というのは、大体五千億ドルと言われた時代、いまから一年前のその五千億ドルという金額は、これは世界の当時の総貿易量の半分ですからね、大変な経済的数量ですね。そういうものを使って一体意味があるのだろうかという反省も一面においてあるわけですね。  それで今度はその問題なんですけれども、今度は鈴木総理は、アメリカの何でもいいからとにかく日本の武装力を強化しろというような動きに対しては相当な私は抵抗をされたと思って評価しているわけですよ、実際言いますとね。それでそういう鈴木首相のいろんな抵抗ですね、ですからこれは非常に私は全体としてはむずかしい会談だと思います。向こうの言うことを無条件で聞けば問題ないのだけれどもね、それに対して一定の抵抗をするのが当然だし、どんな同盟国でもどんな仲よくたってむちゃなことを言われちゃ困るのですから。それからまた、防衛なら防衛にしても、現実可能なものでなければ困るし、国民がそれを納得しなきゃ困るのですから、いろんな抵抗を鈴木総理がなされたのは当然であると思います。今度の問題というのは、私は鈴木総理の怒りももっともだと思うのは、とにかく相当な首脳会談、レーガンとの首脳会談においてそういう問題について日本の立場を話す、いろんな意見を言ったと、いままでにない率直な意見を言ったと、こういうつもりであるにもかかわらず、それが共同声明等に少しも盛られていない。政治家としてはそこまでやってそれで共同声明に少しも盛られていないというのなら怒りますよ。これはあたりまえですよ。私もこれは怒りますね。ところが、共同声明というものは外務当局によってつくられて、首相に見せるけれども、しかし第二次の首脳会談の前に頒布されてしまって、そして第二次の首脳会談のいきさつを入れる余地がなかったということが言われていますね。それはそうですが、外務大臣。答えたくなければ答えないでもいいです。
  198. 丹波実

    説明員(丹波実君) 私、直接担当している主管課長ではございませんけれども、同じ局にいる者といたしまして……。  世界各国でいろんな首脳会談が先生御承知のとおり行われておりまして、その場合、その共同声明がつくられる場合に、首脳会談が終わってから共同声明がつくられるというのは、私は現実の問題としては非常にまれなケースであろう。たとえば私が承知しておりますのは、一九七二年九月の日中国交正常化、この場合はまさに交渉のチャンネルがなかったわけですから、現場に乗り込んでむずかしい問題を田中総理と周恩来首相が会談して、それを受けてつくった。それから七三年でございましたか、田中総理がモスクワに行かれたときのブレジネフ書記長との会談、これが恐らく日本の最近の例で振り返った場合二つのケースで、あとはほとんどの場合前に用意されている。その段階におきましては、総理外務大臣の御了承を得ておるわけでございます。  ただ、今回の場合には、新聞の締め切り時間とかいろんなことで新聞の側からぜひ事前に配付してほしいと、しかしながら発表されるのは首脳会談が終わった時点ですよと、こういう非常にかたい了解のもとに事前に配付、これはまさに国民の知る権利ということとの観点で私たちはそういうことをやったわけでございますが、それがあたかも首脳会談が終わる前に表になったのだという報道のされ方が私は一つの問題を含んでいるのではないかと、こういうふうに理解しております。
  199. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃいましたが、私はやはり外交というのは逐次変わっていくべきだ。したがって、今度のこういう共同声明がどうこうと言うのじゃなくて、将来は共同声明というのは、大体両国の立場、基本的な政策、こういうのはわかっているのですから大体の基本線はいいけれども、しかし、いざ出すという場合には、鈴木総理はどう言った、これに対して大統領はこう言ったと、こうもうはっきり国民にわかるように具体的に書くのがこれからの共同声明ではなかろうかと私は思います。
  200. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 いま言われたことは私もそう思いますね。やっぱり国民にわからなきゃいかぬ。  それで一番問題なのは、これは外務当局もおられるから、なるべくこういう悪口に類したことは言いたくないですけれども、この新聞もそう信用のない新聞じゃないと思うんです、読売新聞という新聞。「外務省にすれば、今回の日米首脳会談に臨むにあたって、従来の参勤交代的な儀礼外交ではなく、西側の一員として積極的に役割を担うためにも、真の意味での新しい日米関係の構築を考えていた」と、私はこういうことは政治家が、総理とか、外相が考えるべきものだと思いますよ。あるいはそれを支持するその周囲にいる政治的な職務にある者が考えるべきものだと思いますね。それで、そういう外務省、これは言っていることは悪くはないけれども、しかし「真の意味での新しい日米関係の構築を考えて」と、外務省筋がね。それはそれでいいんだけれども。それで「解釈をめぐって大揺れした「日米同盟関係」を初めて共同声明に明記したのも、最初は米国の提案だったものの、日米間はすでに同盟といっていい関係にあり、断る理由はなかったので、国内的リアクションは覚悟のうえで入れた」と言うのですね、外務省が、ここに書いてあるところを見ると。  私は国内的リアクションというものを考慮するのはまさにこれは政治家であると思いますよ。それで鈴木さんが、鈴木首相がいろいろとつまり第二次会談の結果を書きたかったということも、要するに国内的リアクションのですね、結果を考えるからやったことだと私は思う。ところが、そういうことが一方的に外務省見解の国内的リアクションも覚悟の上で入れたと、こういうわけだね。これは私はおかしいと思いますね。私どもは第二次世界大戦に日本が参戦する場合のいろんな経過というものをちょうど学生から大人になりかけた時代に見ていた。それでこのときやっぱり軍部が、これはシビリアンコントロールということは言われますけれども、軍部が相当勝手なことをやっています、ここに書いてあるようなことをやっている。それとともに外務省の一部がその軍部に呼応していろんなことをやった。つまり本来平和の努力をすべき外交官が軍部と一緒になって、それで力がなければ外交はできないとかなんとか言って勝手なことをやった。そいつが戦争を阻止するのじゃなくて、戦争に日本を追い込んでいって、そして日本国民はとにかく士気旺盛で戦った。園田外相なんかも空挺隊で行ったぐらいだからね。士気旺盛で戦い、それで一切の財産を犠牲にしても、税金払ったり何かして、最後は統制経済の中ですかんびんになった者が多い。そういうことをして戦ったけれどもああいう状態になったんでしょう。だから私どもはシビリアンコントロールを無視する、要するに武力とか武装力とか、それからそういうものとひっついて何か外交を力でやっていこうというような勢力というものに対しては非常に警戒するわけですね。いまの外務省、いまの自衛隊にはそれほど力もないから心配がないといえば心配ないのだけれども、しかしながら、過去のそういういろんな問題がありますから、政治をやる者はやっぱり相当な警戒を持って接しなきゃいかぬ。今度の鈴木首相に対するいろんな非難も、私は無所属で何も自民党じゃないのだから擁護する義務もないし、責任もないけれども、日本全体の政治の立場から言って、私は外務省と鈴木首相がもし対立したとすれば、これはもう鈴木首相を国会としては擁護しなきゃいかぬ、こう思っておるのですね。  それで、ここで最後にこういうことを言っている。これも外務当局の意向なんでしょう、「日米安保条約で核のカサに依存しながら、一方で非核原則を国是とし、事前協議で「ノー」という非核政策の矛盾、虚構を事務当局が知らないはずはない。」、要するに事務当局はこういう虚構というものをこの際むしろ内心は真実に近づける、それがいいか悪いかは別として、そういうつもりでいたということもあって、相当に総理と外務当局との間にすき間ができておる。そういうことは本当はあってはならぬことだ、政治の最高指導者と事務外交官僚との間にそういうことがあってはならぬ問題ですけれども、しかし、そういうことがあって、それが外務大臣辞職に及んだわけですからね。これはひとつ外務大臣を辞職までせしめたこのいきさつの真実がそこら辺にあるわけだから、外務大臣、少し腹を据えて、シビリアンコントロールというものは、武装勢力を背広がコントロールするというよりも政治がコントロールすることですよ。同時に、外交なんというのはビューロクラシーが勝手な独走をしないようにきちっと抑えることもシビリアンコントロールのこれは前提ですから、そこら辺の問題について、これは事務当局に聞いてもしようがないんだから、外務大臣に聞きますが、どう思いますか。
  201. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言の趣旨は大事なことでございますから、十分注意をして今後指導してまいります。
  202. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 十分な注意と十分な勇気、これに強さを持ってひとつやってもらいたいと思いますね。  それから、いま核の、非核原則の問題がここに出ましたけれども、日本人は平均的に広範にやっぱり非核原則を支持しています。それはなぜかといいますと、やはり何といっても原爆体験を経た唯一の民族であって、そして原爆の悲惨さというものを民族の皮膚でいわば経験していますからね、だから自分たちがこんな経験するのはいやだ、自分たちの子供にも親戚にも経験させるのはいやだ、それだけじゃないそれだけじゃなくて、こんな残虐なことを他の民族、他の国民にも経験させてはいかぬ、そういうやっぱりいわば道徳的確信というものが民族、われわれの底にあって、あの経験した底にあって、そうして非核原則というものが定着しているわけですね。外務大臣ね、この非核原則のつくらず、持たずそれから持ち込まずと、こういうわけですね、つくらず、持たずということはこれはもう非常に明瞭なんですから、この原則――原則というものは容易に動かないものを原則というのですが、この原則は自民党政権下で、たとえば自民党が多数をとったから変わるとか何とかいうものですか、何かわからぬものですかどうですか、つくらず、持たずということ。
  203. 園田直

    国務大臣園田直君) 私はこの三原則状況の変化にかかわらず、一つの理想として堅持すべきものだと思います。
  204. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そして持ち込まずということだね、さっきからいろいろ問題になっているのは、持ち込まず、イントロダクションというんですか、私、英語よく知らないのだけれども、それがもうトランジットとかあるいはいろいろなそういう言葉と違っているとか違ってないとかいういろいろな議論がありますけれども、しかしとにかく現在の核戦争というのは、起こればやはりお互いに先手取る争いですから、先手取った方が強いに決まっているわけだからね。ですから先手を取られて、それで撃たれる方になりたくないということは、これは当然ですよ、日本政治家としても、国民としても。先手取って撃つところはどこかというと、これは核基地ですよ、核戦力ですよ、先手取って撃つところは。それで横須賀の市民なんかが持ち込まずと、つまり通過しない、そういうことを非常に、通過しない、停泊しないということを非常に願望しているのはつまりあの核戦争の経験を持っている、といって、横須賀市民というわけじゃないけれども、日本民族が、そしてこの非核原則がある、しかし持ち込まずというところがあいまいであるとそこに停泊したり何かするとやっぱり先制攻撃対象になる、だからああいう基地の住民たちが非常に敏感になるということは私はわかるわけですね。だから持ち込まずということも、ただそこをこう通るとか停泊しているとかいうことじゃなしに、つまり核戦力がそこに存在すると先制攻撃対象になるということで、非常に重視している国民がいるのだと、心配している国民がいるのだということは、これはわかっていただかなければならぬですね。それでどうなんですか、私どもは先ほどからずっと持ち込まずということで、すべてのつまりアメリカ以外の、同盟国以外のすべての核装備艦船というものは領海通過できないということですね、そういう場合に通過させないためにはやっぱり一定の対策が要るでしょう、アメリカに対しても、他の諸国に対しても。これは非常にむずかしいことだと思うけれども、外交を担当している以上、もう通過させないという原則を決めた、決めた以上はそれをどこかで破けない、陰の方でいいかげんにならない、本音じゃしょっちゅう通っているなんということにならぬ努力をしなきゃならぬと思いますね。これは当然でしょう。つまりもう何というか、いままで入ったとか入らぬとか、あるいはイントロデュースという言葉はもっと広い意味だとか狭い意味だとか、いろいろな議論をしてもしようがないので、これからは核を持ち込ませないということが必要だろうと思うのですけれども、それに対して何か具体的な行動、外務省としてあり得ますか。
  205. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いまの宇都宮先生の御質問につきましては、先ほど木島先生にお答えしたことと共通の問題だろうと思いますので、繰り返しになりまして若干恐縮でございますが、一方におきまして、日本非核原則というものを堅持しておると、これは先ほども御説明いたしましたとおり、日本といたしましては、国内のみならず、国連その他の場であらゆる国に日本の立場、基本的な立場というものを周知せしめておるわけでございます。他方におきまして、国際……
  206. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 いや、そういう核原則を現実に違反した場合、そういう場合にどうするかという具体的のことを聞いているのです。
  207. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 木島先生の御質問にお答えして、私は法的な制度を申し上げたわけでございますけれども、まず、いかなる国の軍艦といえども自由に日本の港に入ってこれるわけではございません。入ってくるときには日本政府の許可をとらなければならないということでございますから、許可を求めてきたときにそれはケース・バイ・ケースで処理をすると。その場合に核を積んでおる船であれば、それはいかなる国の軍艦であろうといえども、これを日本としては拒否する権利がある。拒否いたしますればその船は入ってこれないと、こういうことだろうと思います。  それから、もう一方の単なる港に寄りません通航、通過通過の問題につきましても、先ほど木島先生に申し上げましたけれども、国際法上の無害通航というものに、核を積んだ軍艦の通航は該当しないと、したがいまして、核を積んだ軍艦の通航は認めない権利を留保するということに日本政府の立場は明らかになっておりますので、先般のソ連の原潜の事故のときにも日本政府はそういう立場をソ連に説明いたしまして、そういう政策に従った対応というものを期待したわけでございますが、あらゆる国の場合にもそういうことだろうと思います。
  208. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 大体わかりました。  だから問題は、どういう原則があっても原則が破られてては困る、しょっちゅうね。だから、破られたおそれがあるわけですよ、それは、何と言って強弁しようとも。破られるおそれがある。破られたとは言わないでも、破られるおそれがある。それに対して私は新大臣に希望しますけど、非核原則をきちっと守り、いまのこの破られるおそれのない処置をしっかりとっていただきたいということを希望いたします。答えてください。
  209. 園田直

    国務大臣園田直君) 大変困難な問題でありますが、大事な問題でありますから十分努力をいたします。
  210. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それから、最近ソ連の脅威ということが非常に言われているわけですね。この脅威論というものはこう波打ちながら、一番初めは、大体朝鮮戦争の直後は、ソ連の脅威よりもむしろ中国の脅威だったわけだ、中共の脅威、中共の脅威と言ってね。それであなたも努力されたけれども、最後に日中平和友好条約というものを結ばれて、日本と中国との関係は現在非常にいいわけですね。しかし、私は今度北京に行きまして、鄧小平さんにも会って一時間ほど話してきたけど、ソ連との関係は、これはやはり依然として非常に悪いわ。  それで、ソ連の脅威といいますけれども、中国とソ連が七千キロの国境で接しておる。で、ソ連日本攻撃するとすれば、それはもう国後、択捉とか小さい島じゃありませんよ、沿海州ね、沿海州に大軍事基地をつくって、陸海空の大軍を集中し、上陸用舟艇を持ってくると、こういう形だろうと思うけれども、しかしそういう作戦をする場合に、中国が日本と非常にいいと、中国と非常に悪いという状況というのは、もうソ連にとっては決定的な不利ということは言えますね。ですから、日中関係というものは、ソ連の脅威ということが言われれば言われるほど大事だと思うのですが、そうして中国は経済から何から非常におくれていましたからね、近代化のために大変骨を折って、日本に援助等を求めていますが、これどう考えられますか。とにかく、ソ連の脅威なんと言う以上、中国の存在というのは非常に重要なんだと。日中の友好関係は非常に大事なんだけれども、一体そういうことと関連しながらいまは安全の問題がいろいろ論議されているわけだけれども、鄧小平さんはこういうことを言ってましたよ。アメリカの朝鮮政策は愚かである、それから、台湾政策は愚かである、それから南アフリカに対する政策は愚かである、それからあすこに、イスラエルに対する政策は愚かである、こう言ってたです。それで金日成は八時間でモスコーに行けるのに、二十年間モスコーに行ったことがない、自分たちは金日成のことを非常によく知っているけれども、とにかく金日成を八時間でモスコーに行かせるようなことをしたら、要するにアメリカの政策は非常に愚かであり、自分たちの安全の問題に対しても大きく、ソ連と対抗している以上は影響するから、そういう愚かな政策をやられちゃ困ると、こういう問題を含んでいますねそういう問題を含めてソ連の脅威との関連における日中関係というものは、あなたはどういうふうに考えられますか。
  211. 園田直

    国務大臣園田直君) これは友好条約締結の後、覇権問題で各委員の方からいろいろ御注意願ったところでありますが、一口にして言えば、中国に必要なものは武器や武力ではなくて、経済と資金である、これが日本の心がけであると思います。
  212. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 現実に中国はいま大分軍事予算を減らしていますね。私は今度は宝山という製鉄工場、日鉄が請け負って、上海の付近でやってますね。これを見てきた。これを見るとやっぱりある時期に、日本の企業というものが中国熱に浮かされたのかなんかしらぬけれども、非常に何というか、無計画に進出したということがありますね。これは日鉄なんかすぐれたコンサルタントを持っているわけだけれども、私は実は驚いたことが一つあるから申し上げておきたい。  それは、あれは宝山という製鉄所の建設地は、黄浦江の少し上流の揚子江沿岸にある十一平方キロくらいな大きなところで、大体年産六百万トンで計画したのをいま三百万トンにしているわけですが、なぜ三百万トンにしたかというと、要するに、金がないからとこう言うんですよ、金がないからと、こう言うわけだ。これは一番わかりやすいのだけれども、いろいろ聞いてみると、どうもそればかりじゃないらしい。それは宝山の製鉄所はオーストラリアから鉄鉱石を入れるのですね。それでどこかからコークス炭を持ってきてやるわけで、一番上流のところに長い、一・四キロくらいの桟橋が出ていまして、その桟橋から鉄鉱石を、コークスを入れることになっている。その桟橋の真下は十三メートルあるんですよ。だからこれは十万トンくらい、鉄鉱石を満載した船がそこに着くわけです。そうすると、非常に近ごろの日本の近代的な製鉄所のようにコストの安い鉄ができると、そういう設定でなされている。ところが、揚子江をずうっと下におりていくと浅いところがある。通れない。だから中国側は仕方がないから生産額全体を三百万トンに減らして、それから、この浙江省の、揚子江の上流から言うと右岸に波止場つくって、そこで豪州から来た鉄鉱石を区分けして、そして宝山まで持ってくるというような計画になっているのですね。これなどは、中国側というのは、私ら行くと日本製鉄の方は非常によくやってくれて感謝していますなんて言っているけれども、どうもコンサルテーションというものが不注意なところがありますね。中国のような安全の上からいっても、それから今後の経済関係からいっても、ソ連だって私は無視することはできぬと思うけれども、大事な国というものに対する投資の問題というのは、やっぱり政府もよほどそれを見、それがうまくいくように監視したり援助したりする必要があるというように存じますけれども、どう思われますかね。
  213. 園田直

    国務大臣園田直君) 全くそのとおりに私も考えて、中国自体にもいままでの考え方に誤りがあるし、日本の方も依然として中国を市場などという考え方は捨ててかかっていかなければうまくいかないと思います。
  214. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 では時間が参りましたから……。どうもありがとうございました。
  215. 秦野章

    委員長秦野章君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時十分散会      ―――――・―――――