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戸叶武君 今度のような問題が起きたのは、
日米だけでなく
ソ連も含めて、私は大きな自己批判もやってもらいたいと思うのです。それは、お互いに
自分の主張のみを強調しないで、相手にも相手の立場立場があってのことでありますから、核戦争はできないということは、
ソ連でも
アメリカでも、一九六二年の十月の二十三日でしたか、あのキューバ事件のとき以来、わかって、最高
首脳者の中においては正面衝突をしないような、奇襲作戦はやらないような、特殊なパイプが通じてあるはずです。にもかかわらず、このようなことが危機の背景には
米ソの対立から生じておるのでありますが、お互いに戦争はできないが、やはり
自分たちの有利な立場を軍事的、
経済的その他においてかち得て、
アメリカはできるだけ
自分たちを支持する力を結集して、その上に立って
米ソとの間の折衝をしようと。やはり、この力の
外交から脱していないところに、その間の谷間にはさまっている
日本において、
アメリカの思っていることに対する受けとめ方と、
アメリカはまた
日本との間の
安保条約の改定以来積み上げてきた、いや、その前からの、すでにダレス
外交以来積み上げてきた関係から、受けとめ方にはそれぞれの違いができてくるのは当然だと思います。恐らくは自民党の一党独裁とも言っていいようなこの機会ならば、自民党はやるぞという形で、大分あちらこちらへ売り込みしている人たちもあるようです。そういう情勢判断が冷静を欠いているときにおいて、最終的に
国民の合意を得ずして、いかなることもごり押しができないことも、いまの複雑な時代の
外交を担当している人は身をもって、いまの
園田さんが言われたように、わかっているはずです。にもかかわらず、この問題が
総理大臣と外務当局との間にギャップが生まれたということは、
政治家としての国の、
国民の納得を得られないか得られるかという上に立って、独自な
日本に
解釈を許してもらわなければ、それが
アメリカと若干の受けとめ方に違いがあっても、
日本の
政府はもちません、そういう表現ではないが、そういう気持ちで鈴木さんもがんばっておるし、また、間にはさまれた、私は伊東
外務大臣もぼろを外に――
日本だけ責めているようですが、
アメリカだって手前勝手な受けとめ方があります。それを出さないために、全責任は私にありますと言ってやめなければならないような羽目になぜいま追い込んでおり、この羽目になってから
日本に押しつけたという印象では、これは鈴木内閣がぶっ倒れるだけでなく、
国民の抵抗を誘発するであろうということは、いまになっては
アメリカの智者だってわかっているはずですが、やはり
アメリカの受けとめ方を中心にして、相手の立場を十分
理解しないで、この機会がチャンスだぞという取り巻き連中の情報によって、惻隠の情を持たない一本調子の
外交、お互いのことですが、これがいまの危機を生みつつあるということにびっくり仰天して、
日本のことは
日本政府で処理すべきものであって、
アメリカ側はこれを押しつけるものじゃないというところへ変化が生じつつあるかのように思われるのも現状であります。
しかし問題は、そこの原点ですが、原点は、いろんな点は省略しますが、
園田さんはわかっていると思いますが、一九四五年二月十一日の、米英ソ三国によって他国の主権を無視して戦争に勝ちをおさめ、戦後において支配力を持続しようというような戦時中の軍事協定、秘密軍事協定、他国の主権を無視して領土の
変更をもあえてするようなことをした。それが米英ソ三国において、こういうことが前提条件になっては次の平和
条約を結ぶ障害になるから、われわれは戦時中だから、勝たんがためにいろいろなことを考えてはいたが、やはり米英ソだけで
世界を支配するというような時代ではない。グローバルな時代にはグローバルな時代にふさわしい
世界新秩序をつくり上げなければ、平和維持機構としての国連も、また各国における協力も得られないという形で、あっさりなぜあの段階において米英ソ三国がそれを、解消宣言なり何なりできなかったものか。その力の、
自分みずからが汚れた
外交の上に事を隠蔽して、領土問題に対しても、吉田さんが触れようとしてもダレスに制圧を受けた。そういうわけですから、戦争中はいろんなことがあり得るでしょう。しかしながら、戦後の
世界平和秩序、
世界の新秩序をつくり上げようとするのに一番の障害となっているのは、米英ソ三国が、あのような間違ったルールが新しい時代に即応したところのルールにはならぬと言って、それを放棄するなり解消するなりの宣言がなぜできないのか。原点は、グローバルな時代にはグローバルな時代にふさわしい
世界新秩序をつくり上げるという苦悩と模索がなされなければならないのに、依然として疑心暗鬼を持ちながら、
アメリカと
ソ連が、
自分たちは原爆の戦場にはなりたくない、もし起きるならば、中間において、異ったすぐれた兵器をつくったから、そこを戦場にすることもやむを得ないであろうというような危険きわまるいまのような
外交をやられていた日には、
世界は不安定の中に私は
一つの危機をはらむと思うのですが、
外務大臣は十分このことを御
承知と思いますが、いまいい機会じゃありませんか。
逆に、領土がすぐに返ってくるとは思えません。思えませんけれども、
アメリカなりソ連なりがもっとお互いに話し合って、疑心暗鬼の中に力と力との競り合いでもってその間にいろんなもろもろの不祥事を起こそうとするような、起こる危機までの封じ込め政策というものに、一貫したもので権謀術策でやられたのでは、
世界の平和に対して障害をなすものは
米ソ二国であり、イギリスはそれに便乗しているに過ぎないと思うのでありますが、どうお考えですか。この機会に積極
外交を打ち出すからには、物見の
外交――
アメリカはそういう大きな問題を持ち出しては収拾がつかなくなるという形じゃなく、みんな腹ではそう思っているのです。力がつかないから、力の
外交でもって押しまくる人に対しては、そのチャンスがやがて来るのじゃないかということ、ポーランドと中国は特に武器なき抵抗をやっている。中国は四〇%の軍事費の削減をやって、
ソ連と事を起こさないでいるのは、
ソ連にはノモンハン事件のような手ひどいやられ方をしました。
日本はノモンハンであれだけひどい目に遭いながらも、無条件降伏まで行かざるを得ないような明治憲法的な軍部優先の憲法によって、無条件降伏で元も子もなくなってしまい、伊藤博文、坊主にならなければならないような目に遭った、動きのとれない
外交の中に、無条件降伏の原点は
日本の憲法であったということを知るならば、憲法改正などは
国民は知っている、できっこない。けれども、
アメリカさんが言うんだから、
アメリカを本当に頼りにしているのだから、
アメリカさんの言うなりに、
自分の独自性は守りながらも、行かなけりゃならないという道行きがいまだと思いますが、この質問が原点です。
私は、
日本がヤルタ協定の解消をわれわれが頼むのではない、
アメリカなりソ連なりがみずから行うこと以外に、やはり私はグローバルな時代における
世界新秩序はできないと思うのです。ただ揚げ足取りだけをやっているのでは、とにかく本音とあれとは違うというような形で、ただ単にやっているのでは、大きな
世界秩序をつくり上げる能力を
政府は持たないのじゃないかと思うのでありまして、
政府はそれだけの意気込みを持たなければ、ただ単なる、いま必要なのは取りあえず
日本自身の責任において物をまとめなけりゃいけないという形において、
政府は断固として
自分たちの考えを貫けるかどうか。私はいま一鈴木さんを問題にしているのではない。一
外務省を問題にしているのではない。やはり
日本自体が、
世界がこいねがっているようなことを率直に
ソ連に対しても、
アメリカに対しても、聞く、聞かないは向こうの勝手だ。けれども、聞かざるを得ないような
世界の人々の心を心として代表して
発言できるのは、
日本政府みずからの自主性を持たなければできない。一気に領土が返るなどとは考えていない。しかし、中途半端な競り合いでは、領土問題などというものは片づかないと思います。細切れ質問じゃありません。私は、
日本の運命はこれによって決すると思いますが、
外務大臣、どのようにお考えですか。