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1981-05-14 第94回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月十四日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         秦野  章君     理 事                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 中村 啓一君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 町村 金五君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君    政府委員        外務大臣官房審        議官       栗山 尚一君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省条約局長  伊達 宗起君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局防        衛課長      澤田 和彦君        防衛庁防衛局運        用第一課長    萩  次郎君        外務省北米局外        務参事官     松田 慶文君        外務省欧亜局審        議官       堂ノ脇光朗君        外務省国際連合        局外務参事官   小宅 庸夫君        大蔵省主税局国        際租税課長    真鍋 光広君        大蔵省国際金融        局短期資金課長  村本 久夫君        国税庁調査査察        部調査課長    谷   始君        運輸省航空局監        理部国際課長   大金 瑞穂君        海上保安庁警備        救難監      野呂  隆君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関す  る千九百七十四年十月十六日にモントリオール  で署名された議定書締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○航空業務に関する日本国フィンランド共和国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府シンガポール  共和国政府との間の条約改正する議定書の締  結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付) ○千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名さ  れた所得に対する租税に関する二重課税回避  のための日本国政府フランス共和国政府との  間の条約改正する議定書締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際電気通信衛星機構の特権及び免除に関する  議定書締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○条約法に関するウィーン条約締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○業務災害の場合における給付に関する条約(第  百二十一号)付表I(職業病の一覧表)の改正  の受諾について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオールで署名された議定書締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国フィンランド共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府シンガポール共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件、千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件、以上四件を便宜一括して議題といたします。  四件につきましては、すでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 松前達郎

    松前達郎君 最初に航空関係国際民間航空条約改正議定書並びに日本フィンランド航空協定に関連してお尋ねをしたいと思うのですが、国際民間航空条約改正議定書というのは、これについては加盟国数字を直す、訂正するということですから、そういうふうに理解しておりますが、これはそのとおり、それだけの問題でしょうか。
  4. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) ただいま、先生御指摘ありましたとおりでございます。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、これについてはそう大して問題ないと私ども思っておるわけです。  それでさらに日本フィンランド航空協定、これは新たに締結をする協定である、こういうふうに理解をしておるわけですが、この種の協定わが国外国の間に一体どのくらい結ばれているのか、その点ちょっとお知らせいただきたいというふうに思います。
  6. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) お答え申し上げます。  今度御承認をいただこうとしておりますフィンランドとの航空協定を含めまして、二国間の航空協定は三十六件でございます。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 各国とそれぞれ航空協定を結んでいくというのは、相互友好関係その他の点でこれは結構な話だと私は思うのですけれども、結んだ以上外国航空機がわが国に乗り入れてくるという問題があるわけなんですが、こういう協定をするときに、空港のいまの、そうじゃなくても国際空港そのものが過密化されているような状況だというふうに聞いておるわけですが、そういったような問題も含めて検討されてきているのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  8. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 航空協定締結するに際しましてはいろんな多数の国から航空協定締結希望が表明されておりますが、ただいま先生おっしゃいましたように、その国との間の航空需要、それから全般の相手国との交流関係、それからわが方の航空企業乗り入れ計画、そういった要素を全部総合勘案いたしましてどういう国と航空協定を優先的に結んでいくのがよいかということを判断して決めております。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと国際空港事情ですね、これはたとえば、この東京付近だと成田国際空港、その空港の機能といいますか、受け入れ可能な一日の便数とか、そういうものについてもある程度検討しているのかどうか。
  10. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) その点につきましては、運輸省の方におきましても当然のことながら考慮の一つ要素といたしまして検討してやっております。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 その点十分打ち合わせしておきませんと、今度どんどんふえていった場合国際空港が不足をするという状態になりかねない。ですから、これは運輸省担当だと思いますけれども国内空港の資格を国際空港に上げていくという問題も含まれてくるし、そうなりますと、やはりそれ相応の設備等の整備が必要だと、こういうことになってきまずから、外務省の方でこういう条約協定をどんどん結んでいくということは、これはいろんな意味で、先ほど冒頭に申し上げたような意味で結構だと思いますけれども、いざ結んだ以上それに対応できるような実情にあるかどうか、この辺もひとつ十分検討しながら今後進めていただきたいと思いますし、対応できるというならそれで結構だと私は思います。  それからもう一つさらに租税関係ですね。あるいは脱税等二つ議定書についてですが、これは内容を伺ってみると、それぞれの国の政治的な事情、政策的な問題、あるいは国内的な法改正その他を含んで、それに伴った改正であると、こういうふうに理解しているのですが、そのとおりでしょうか。
  12. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) そのとおりでございます。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、これもその両国間の問題、日本とそれぞれの国の問題ですから、その国との話し合いの中でそれぞれの国内法に照らし合わせた改正をするということであれば、これも私は問題がないのじゃないかと、かように思っておるわけであります。  そこで、航空にちょっと関連する問題でお伺いし、またその他一般的なこととしての問題をここでお尋ねしたいのですが、たとえばいま日米間の問題というのが、この前の総理訪米以来、非常に大きな問題になりつつあるわけであります。この数年来、経済摩擦とかいろんな問題が日米間で提起をされる中で、関係がどうも多少ぎくしゃくした状況になろうとしていたという事実があるわけですね。今回の日米会談で、アメリカ側が、西側陣営の極東における大きな存在としての日本、これに対してどうもたがが緩んできたのじゃないか、そういうことからたがを締めにがかろうと、こういう一つプログラムに基づいた外交政策がとられてきていると私は思っておるわけです。  また同時に、近く行われるサミット、これでも恐らくヨーロッパにおける西側陣営に対してアメリカがたがを締めてくるのじゃなかろうかと、これは予測をされておるわけですが、西側の方ではすでに防衛費の増加について各国間の調整が行われている。これは新聞報道にありました。三%でしたかアップをするということを合意していると、ただし条件はついているようですけれども。そういうふうな調整がもうすでに行われている。これはサミットに向かってのアメリカからの圧力といいますか、要望に対する事前の何というのですか、防御といいますかね、それだと私は思っているのですが。  しかしいずれにしても、アメリカは強いアメリカというのを目指して、これはレーガンさんが大統領になったときに真っ先に言った言葉ですが、強いアメリカを目指す、アメリカ再建プログラム、この中にどうやら日本がすっかり抱き込まれたような感じを私は持っておるわけです。今後さらにハワイでの日米安保事務レベル協議が行われ、また同時に、大村防衛庁長官訪米によるワインバーガー国防長官との会談、こういうものが計画をされて、これは持たれるようになっておるわけですが、そこらでどうやら防衛分担の具体的な要求ですね、これが要求されてくるというふうに私は考えておるわけなんですが、レーガン大統領は、首脳会談が終了した後に、インド洋太平洋に関して、もし日本が海、空の防衛能力を向上させることができるのなら、アメリカに余裕が生じてインド洋太平洋へのアメリカ軍の展開が容易になるだと、こういうことを言われておるわけですね。  したがって、大きな目で流れを見てみますと、プログラムのとおりにどうも今後進んでいくような気がしてならないわけであります。まあ今後軍事力増強具体的要請というのが必ずアメリカから提起されてくるはずである。さっき申し上げました二つ協議会談を通じて行われてくるのだと私は判断していいのじゃないか、こういうふうに思っているのですが、そういう一連動きというものについて外務大臣はどういうふうに見ておられるか、お尋ねいたします。
  14. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 松前さんがおっしゃったように、西側一員ということは、これはもう前の大平政権のころからはっきり言っていたことでございまして、アメリカへ行きまして共存共栄という言葉を使いましたり、あるいは同盟という言葉を使ったということがあったわけでございますが、西側一員としてたがが緩んでおるのでこの際締めてという感じがあるのじゃないかということをいまちょっとおっしゃいましたが、私どもは、イランの人質の問題、あるいはアフガンに対するソ連の軍事介入の問題、こういうことにつきまして西側一員という立場を自覚しまして、日本としてとるべき態度ということを自主的にやっておるわけでございまして、この態度を云々されるということは私はないというふうに思っておりますし、また日本として、今度アメリカに行きましたので何か新しい任務を負うとか役割りを負うとか、そういうようなことは何も考えておらぬわけでございまして、いままで西側一員としてしっかりした態度をとってまいりましたので、これはさらにそれを再確認し続けていくという気持ちでございます。  それから防衛の問題でございますが、NATOの三%という話は大分前からこれは出ているのでございまして、カーター政権の時代からも出ている話でございます。NATOの国々によってもできるという国と、なかなかこれは大変だという国、いろいろあること、御承知のとおりでございますが、日本につきましては、今度は総理が参られて一連首脳会談を通じて、向こうから具体的な要請というものは実はなかったわけでございます。一般的な努力の期待ということはあったわけでございます。  私もこの前三月に行きましたときもワインバーガーさんと話したのでございますが、まあ六月には事務レベル会議がある、あるいは大村長官ワインバーガーさんと会われることもあるだろう、そういうときに具体的な中業の問題等話が出るということはわかりますので、そういうときにいろいろ協議をされて期待表明されるということがあるのじゃないか、ということを私は言ったわけでございまして、その点は今度行ってまいりましても、特に新しくアメリカ戦略に組み込まれて云々ということはないわけでございまして、従来の日米の枠組みというものを変えて新たな軍事的な意味を持った話し合いをしてきたというようなことは、これは本当に実際にないわけでございますので、日本としてはそういう態度で臨んでまいるつもりでございます。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 外務大臣そういうふうにおっしゃるのですが、全般的に見ますと、幾つか例を挙げてもいいですが、どうもアメリカ外交戦略というものに巻き込まれた感じがするわけなんですね。例を幾つか挙げますと、たとえば自動車問題にしても、アメリカ側日本に対して自動車の輸入規制をするとは言っていないにもかかわらず、日本側から自主的に規制を申し出る。恐らくアメリカの世論あるいは新聞等の論調を見ても、この自動車問題についてはアメリカ側努力が足らないのだということに対する論評などがあるわけですね、それを日本側から自主的に申し出た。アメリカとしてはひょうたんからこまが出たような感じで、非常に喜んだのじゃないかと私は思っている。ですから、このプログラムにしても、それと前後して同時にJカーという新しい車を発表する、これはアメリカの新しい小型車、経済車ですね、こういうプログラムがもう組まれているわけですね。ですから、その中にどうも入り込んでしまったのじゃないか、こういうふうに思うのですが。  また同時に、もう一つ、たとえば航空関係、さっき話が出ましたので、日米航空交渉一つ例にとっても、このバランスの問題、これは二十日からまた航空交渉が開始されると思うのですが、こういう問題一つ挙げても、たとえばアメリカの五社が国際線の再建をするんだということで強硬な申し入れをレーガン政権に行っている。そのやさきに今度さらに、やさきといいますか、プログラムの中で、今度の日米航空交渉が行われている、こういうことなんですから、常々日本は独自のわが国立場、これはいろいろ国によって立場はあるでしょうが、わが国立場に立った独自の外交を進めるのだというふうなことをおっしゃっているにもかかわらず、どうもそのペースに巻き込まれている、そういう感じがしてならないわけなんです。  現在、航空交渉ですね、その内容日米航空交渉についてどういうふうな進捗をしているのか、あるいは進展しないで、そのまま意見が対立したままになっているのか、今後それに対してどういう主張日本がするのか、これについて、担当はこれはどこなんですかね、外務省、ひとつその点考え方を教えていただきたい。
  16. 松田慶文

    説明員松田慶文君) お答え申し上げます。  御指摘の日米航空交渉は、かなり以前からわが国米国政府との間で種々交渉してまいりましたが、なかなか意見が合致いたしませんで、五十二年三月以来中断されておりましたが、昨年交渉再開の機運が醸成されまして、昨年の九月、そしてことしの一月と非公式協議を経まして、そして本年四月東京において正式な航空交渉が再開されたことは御存じのとおりかと存じます。  この交渉におきましては、大きく分けまして二つ論点がございました。一つは、日米間の権益の不均衡をどのように是正するかという問題でございます。第二点は、日米間の航空政策相違点に基づく問題の調整という問題がございます。  この二点に関しまして米側から、従前の非常にかたい態度を変えた、やや柔軟な提案が出てまいりてきております。それは乗り入れ地点路線権等々につきまして、多年のわが国主張をある程度取り入れた提案でございます。他方、これとあわせまして第二の論点、すなわち航空政策に基づく一番大きな問題は運賃自由化の問題でございますが、この点は私ども航空運賃体系公共料金制度のもとで認可制になっておる点もございまして、なかなか一致点が見つかりません。こういうことで、去る四月の交渉は、鋭意努力いたしましたがまとまりませんで、引き続き第二回の交渉を来る五月二十日よりワシントンにおいて再開することと相なっております。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 その点、かねがね非常に意見が違っている、アンバランスが中にあるということですね。だからこれについては、これはなかなか、さっき申し上げたようなアメリカ国内動きもあることですから、相当強硬に申し入れなければならないと私は思っているわけで、その点もひとつ理解しながら進めていただければと思うのです。  そこで、日米会談の問題に戻りますけれども、結果から見て、今回の日米会談アメリカ筋書きどおりだと私は判断しておるわけですが、アメリカ側ヘイグ国務長官が予期以上の成果である、こういう発言をされていると報道されておるわけです。この会談ストーリー事前に私はつくり上げられていた。たとえば、共同声明そのものも、これは一夜にしてできるわけじゃありません。ですから、当然その会談以前からお互いの協議のもとに練られてきているはずである。ですから、総理会談終了後、首脳会談が終わった後で、自分の意思がこの中には反映できてないという不満を漏らされておるというのも、これは当然として起こることであろうと私は思っておるわけであります。  で、ちょっと表現が悪いかもしれませんが、この会談、この一つのシリーズにおいて鈴木総理は、共同声明のためのどうも役者にしかすぎなかったのじゃなかろうかという感じを私は持つわけなんですね。ここで重要なことは、この役者がシナリオを読んでいなかった。ですから、どうもそこのところに食い違いができてきた。しかもこのストーリーの演出は外務省であって、監督外務大臣である、こういうふうなことになるのじゃなかろうか、たとえが悪いかもしれませんが、私はそういうふうに考えているわけなんです。ですから、監督意思総理主張、こういうものが共同声明に取り入れられない、こういうことになるわけなんですが、外務省も、防衛庁あるいは軍事力担当する方々と同じように、ちょっと表現が違うかもしれませんが、シビリアンコントロールができていないのじゃないか。もっと言いますと、外務省が出過ぎているというふうな意見すらあるわけなんですが、日本の代表というのは一体外務省なのか、総理なのか、この辺がやはり大きな問題だと、今度の日米会談を通じて私は思っておるわけなんですが、それと同時に、防衛問題一つ挙げても、どうも外務省防衛庁のハネムーンがこのプログラムの中に初めから組み込まれている、こんな感じも持たざるを得ない、そういう感じを持っておるわけです。これについて外務大臣一体どういうふうにお考えでしょうか。
  18. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 今度の会談首脳会談一連会談、私も総理のお供をして行ってまいったのでございますが、いま共同声明等お触れになりましたが、これはつくりましたのは一切私の責任でございます。私も随時、事務当局から相談を受けて共同声明というものを作成したわけでございますので、責任は一切私でございます。総理がおっしゃったというようなことは新聞に何かちらちら出たことがあるのですが、私はまだ総理にお会いしましてお話を聞いておりませんので、よく総理のおっしゃったことというのは承知しておりませんが、スムーズに何とかして会談をうまくやろうということで、いろいろ向こうと連絡をし、舞台回しをやったということはまさに外務省でございまして、いろんな御批判を受けることがあれば、これは外務大臣責任ということでございます。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 外務大臣がその会談に際して、会談の進行をスムーズに行うということは、これは大変な役割りであり、その点は重々わかるわけですけれども、この中で最近盛んに論議されている同盟問題というのが新たに出てきているのですね。この同盟という言葉安保を通じてかねがね演説その他で用いられている、こういうことは確かにそうだったかもしれませんが、文章として共同声明アライアンスという言葉を使うということですね、これについていろいろと論議をされた中で、どうも政府は次第に考え方を変えてくる。これは外務大臣見方総理見方が多少食い違っている面がありますね。外務省との見方と言ってもいいかもしれませんが。それに対して、こう解釈するとか、こういうつもりで使ったということではこれは済まないのじゃなかろうか。文章に残っているわけですね。しかも、字句の勝手な解釈というのは通用しないので、これは国際的な問題としても通用しないのじゃないかと私は思っておるわけなんです。  この前の委員会でも申し上げましたように、アライアンスという言葉は、二つまたはそれ以上の国家相互援助防衛のために形成する連合である、こういうことですから、アメリカが言うように日米同盟というのは当然軍事的な意味を持ち、その軍事的な意味だけじゃなくて、さらに経済、教育あるいは学術、科学技術、こういった分野での協力体制、これを含めて総合的に同盟というのだというふうに解釈をしていいのじゃないかと私は思うのです。この前は、そうじゃなくて、軍事的な意味合いというのはほとんどない、こういうことで総理もおっしゃっておったわけですが、本来、同盟というのは集団防衛的なことを意味するのであって、二つまたはそれ以上の国家ということですから、この同盟を結べば、当然その集団防衛というのが俎上に上がってくるわけなんですが、その点についての外務大臣のお考えと、それからさらにシーレーン防衛という問題について言いますと、これはアメリカ肩がわりであることは間違いないのですね。これははっきりとアメリカ側がそういうふうに言っている。このシーレーン防衛というものについてもまた政府内部でもってどうも意見が統一されていないし、千キロとか二百キロとか、いろいろ数字は出ておるようでありますけれども、具体的にこのシーレーン防衛というのをどういうふうに展開していこうというのか、これについては防衛庁お見えになっておると思いますが、防衛庁からお答えいただきたい。この二つについて伺います。
  20. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 「同盟関係」という言葉を使いましたのは、この前も御説明したように、大平総理も五十五年、去年、おととし向こうへ行って使っている言葉でございますし、これはわれわれこの中に入れましたのは、アメリカとの関係民主主義自由主義というものの共同価値観を持った両国関係の広い関係がますます八〇年代は重要になっていく、いままで日本が繁栄してきましたのもこの日米関係があって、それが基本になって繁栄してきたのでございますし、今後ともこの日米関係の重要さということは、これはますます重要になっていくのだという頭で、経済の問題とか、文化の問題でございますとか、政治の問題でございますとか、そういうものを広く含めて、日米関係の緊密な連帯ということを頭に置いて使ったわけでございます。もちろん日本アメリカの間には日米安保条約がありますことは、これはもう厳然たる事実でございますので、そういうことを前提にしておりますことが中に入っているということは、これはもう間違いない、だれもが否定することではないわけでございます。そういう関係同盟関係と、広い関係同盟関係という言葉で表明したわけでございまして、そういう言葉を使ったから、何か日米関係の中に新しい枠組みをつくって、そしてそれが従来の枠組みを変えて、新しい枠組みをつくって新しい軍事的意味を持たせるのだ、そういうような意味でこの言葉を使ったのではございませんで、安保条約の五条関係は、御承知のように、憲法からしましても個別自衛権であることは間違いないのでございまして、これを集団自衛権とかそういうものに直していこうとか、そういう意図は毛頭ないわけでございます。
  21. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) シーレーンの防衛につきましては、従来から防衛庁が申しておりますように、周辺海域につきましては数百海里、航路帯を設ける場合についてはおよそ千海里を海上自衛隊の防衛力整備のめどとして行っております。したがいまして、今回新しく出たという問題ではなくて、かなり以前からずっと海上自衛隊の目標ということで整備を続けてきているものでございます。
  22. 松前達郎

    松前達郎君 そうすると、整備するからにはその具体的な目的がなけりゃいけませんね。防衛という言葉で一言で言えばそれっきりなんですが、具体的に何を対象にして防衛するのか、その点をお伺いしたいのですが。
  23. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 海上自衛隊の防衛の目的には二つございます。一つは周辺海域における防衛と言っております。もう一つは海上交通路の保護、確保ということを言っております。その二つがございまして、前の周辺海域というのはその周辺海域の防衛に該当する部分でございますが、海上交通路の保護という面でシーレーンを設けたときにはおよそ千海里をめどとしたいということでございます。  それで、航路帯、シーレーンというのは平時からあるものではございませんで、大体日本の海上交通路の主要なルートを見ますと、有事は南西航路と南東航路二つに集約されるであろう、したがって、その南東、南西二つの航路帯につきまして、何とか日本本土から千海里ぐらいの船団の護衛ないしはシーレーンの確保という能力を海上自衛隊が持てるような能力を持ちたいと、そういうことでございます。具体的には対潜能力、それから対空能力、それから対艦船能力、こういうふうになるかと思います。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、ここで空域防衛力の問題が出てくるわけですね。対潜の場合はP3Cとかそういうものを使って警戒をする、P3Cそのものは攻撃能力を持っているわけですから。そういうことでP3Cを中心に、あるいは護衛艦を中心にやれるかもしれないけれども、空の防衛については、やはりこれはやるとなると大きな問題が出てくるのですね。たとえば防空戦闘機そのものの航続距離の問題、そういう問題も出てくるわけですね。  そこで、どうもずっとそういう議論を聞いてみますと、やはりどうも目的がはっきりしているのじゃなかろうか。まあ対潜となると、アメリカの潜水艦から防衛するわけじゃなくて、当然これはソビエトが想定されてくる、対空についてもそうじゃなかろうか、そういったことだろうと私は思っておるわけです。その点、もしかそこで防衛をする、攻撃を受けそうになった場合、シーレーンの日本の領海からずっと離れている海域で何らかの攻撃が加えられるおそれがある場合には、その攻撃をしようとしている相手を見つけて、それを自衛隊が攻撃することもあり得ると、そういうことになるわけですか。
  25. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 海上自衛隊と航空自衛隊の対象とする防衛態様によると思いますが、航空自衛隊は、前から防衛局長などが申しておりますように、大体レーダーサイトの届く範囲ということで、本土から二百海里ないし二百五十海里ということでございます。それで、先生お尋ねの件は、南方の方に出ます航路帯の問題だと思いますが、航路帯方面は日本列島はもちろん大陸からもかなり距離が離れておりますから、空から戦闘機による攻撃ということはまず考えられないだろうということで、どうしても潜水艦ないしは水上艦艇というのが主体になるであろうと思われます。したがって、それに対処するのはどうしても海上自衛隊が中心になるということでございます。  実際いざというときにそれに対して攻撃を行うのかどうかという問題でございますが、これはそのときの態様いかんによりますけれども総理大臣が御決意されて、国会の御承認があって防衛出動ということになれば、わが国の船舶を守るための行動ということは当然とられることになると考えます。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 運用第一課長は、どうもその問題の専門じゃないということだと思いますけれども、その点はいずれ機会を見てまたお伺いすることにして、次に日昇丸について。  これも日米関係一つプログラムの中における予期しないできごとだったと私は思うのです。だから、これは政府も大変あわてたのじゃなかろうかと思うのです。この日昇丸についてきのうあたりからどうも海上自衛隊が記録をとったのに公表しなかったとか、いろんな問題があるのですが、日本政府としての事実調査ですね、これについて一体どの程度進行しているのかという問題。大体加害者が調査をして被害者がそれに従うというのはおかしな話ですから、やはり被害者の方が調査した結果を当然ぶつけていくのがあたりまえなんじゃないか。ところが、アメリカに気がねしたか何か知りませんが、アメリカ側の調査を待ってなかなか日本側の調査が出てこない。中間報告を見ても、アメリカの提示はかつてからのアメリカ主張とそんなに変わっていない。演習をしていたんだということだけは認めたということになりますね。この辺について、これは海上保安庁も調査をされている、私自身も現地へ行って調査しましたけれども日本側の調査というのは一体アメリカにぶつけてあるのかどうか、これについてお伺いしておきたいと思います。
  27. 松田慶文

    説明員松田慶文君) 御案内のとおり、日本側の調査は海上保安庁が担当していらっしゃいます。その膨大な調査結果はいま鋭意まとめられつつございまして、きわめて近い将来公表をされるものと承知しております。その時点において、政府といたしましてはこれを米側に手交することを考えております。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 ある外国外交官が私に、これは衝突でないかもしれないということを言ったのです。私は、それが正しいかどうかわかりません。仮想標的艦として使ったのじゃないかということを言っている人もあるのですね。だから調査しないと、そういうことを言われてもそれはそうじゃありませんということは言えないわけですね。ぶつかったというにしては余りにも日昇丸側の被害が大き過ぎて原潜側の被害が少な過ぎる、そんなような感じを私は持っているのですが。しかし、その事実は調査の結果でアメリカ側からの発表がない限りこれはわからない。ということは、あの衝突後もアメリカ側は演習を続けていた、潜水艦から発射するミサイルですとかあるいは海から投下するソナー、そういうものがどうも投下されたのじゃないか、それは証言からはっきり出てくるのじゃないかと思うのです。そんなふうに考えてみますと、やはりこの日昇丸の当て逃げについては日本側としても早く調査して、その結果をアメリカに堂々とぶつけていくべきじゃないか、かように思うのですが、その点ひとつ今後十分調査した結果が出た場合、アメリカ側にもその旨を、被害者として加害者に向けて対策あるいは今後の問題等も含めて申し入れる必要が当然あるのじゃないか、そういうふうに思うのですが、その点をお伺いして私の質問を終わります。
  29. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 今度参りまして、国務長官に会って日昇丸事件の話をしたわけでございまして、日本側でも海上保安庁が生存者から証言を聞き、調査をしている。海上保安庁のそれがまとまればすぐにアメリカにも連絡し、アメリカの言っていることともし違うことがあれば、それを違うことだということでやはりはっきりしないといかぬ、それで最終的なアメリカの報告をなるべく早く発表してもらいたい、その際、それまでに日本の調査の結果もはっきり向こうへ知らせるということを言ってまいりましたので、海上保安庁からもらえば、これはそのままアメリカに伝えるつもりでございます。
  30. 戸叶武

    戸叶武君 きょうは、ローマ法王のヨハネ・パウロ二世が狙撃されたので、重傷という報道はなされておりますが、どの程度の重傷か、アメリカレーガン大統領程度のものか、もっと重体か。また犯人は外国人二人というふうに新聞には伝えられておりますが、それはキリスト教とアラブとの対立が原因になっているかどうか、その点はまだ定かではありませんが、その経過と真相について伊東外相から承りたいと思います。
  31. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 政府委員が来ておりますので、政府委員から御答弁申し上げます。
  32. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) ローマ法王に対します狙撃事件は、東京時間でけさ早朝に起こったわけでございまして、私どももまだ事実関係を確認中でございます。わかっておりますところによりますと、犯人はトルコ人であるということでございまして、またけがの状況は、腹部に銃弾が当たりまして、生命には危険はない、当初思われたよりも比較的軽傷であるというふうに伝えられております。  ローマ法王は、先日日本に来日されたばかりでございますし、また総理訪欧の際には、場合によっては会談されることも予想されていたわけでございますので、非常に日本政府としましてもこの事件を遺憾に思っておりますし、鈴木総理から早速お見舞いの電報を出した次第でございます。
  33. 戸叶武

    戸叶武君 まあトルコ人ではないかというのが大体わかったようでありますが、私は今回の事件というのは、突発的なことでなく、このキリスト教世界とアラブ世界との対立の根というものは非常に深いのでありまして、そのことを無視しては私は中東問題の解決はあり得ないと思うのであります。このことが中東からアフリカにおける混乱状態を助長させはしないかということを心配するものでありますが、ここで私たちがいま日本に来たところのポーランドの自主管理労働組合のリーダーのワレサ議長の訪問中に起きた出来事として、ワレサさんはいわゆる華々しく傑出した指導者かどうかはわかりませんけれども、やはりポーランドの大地が生んだ、民族の苦悩が生んだ、耐え忍びながら武器なき戦いをもって、第一次大戦後においてポーランドが祖国を復活したが、第二次大戦後においてはドイツから、ナチスからあのようなひどい虐殺をされ、それを守ってくれると思ったロシアの方からも強制労働をさせられて奴隷同様な状態にポーランドの栄光というものを消されていった最大の被害者であります。その起こりというものは、ルーズベルト、チャーチル、スターリンの戦争末期における米英ソ三国の話し合い、戦時中における他国の主権を無視した、そうして他国の領土を分割したウィーン会議におけるメッテルニヒのやり方以上に冷酷無情な、一つのいままでの国際条約の新しい芽をつまむ私は不合理な戦時謀略協定がそのままヤルタ協定の名において、米英ソが組めるならばお互いに対立はしてもそこに話し合いの余地がある、他に対してはこれに従えと言わんばかりの最も悪質なヤルタ協定であったと私は思います。その最大の被害者が、戦争における最大の被害者であるポーランドであるということも皮肉な一つの出来事であります。  領土問題というものに関して、日本は領土問題の返還ということだけに力こぶを入れて、自国の領土問題だけにこだわっておりまするけれども、自国だけでなく、ベルサイユ体制が崩壊していった原因というものも、この他国の領土を、他国の主権を無視して勝った国が奪い取るというようなやり方、賠償によって勝った国が破れた国をいじめつけるというようなやり方、そういうものの矛盾から、私はベルサイユ体制が音を立てて崩壊していったと思うのです。言えば、戦争と戦争との間の暗い、いやな谷間の時代でありまするが、ベルサイユ体制の崩壊というあの事実の教訓を受けて、国際平和機構をつくり上げようとして国際連盟をつくり上げてそれが崩壊したという経験にかんがみて、それと同じようなことをしでかしているヤルタ秘密協定を、次の平和条約の条件にはそういう矛盾したものがあった限りにおいては、米英ソにすべてを任せろというやり方では任せ切れないものが世界にはうっせきしていると思うのであります。  そういう意味において、このことはわれわれの要求というのでなく、本当に虚心に米英ソ三国が国際連合を国際連盟以上に国際平和維持機構として完成せしむるならば、他国の手前勝手の権謀術策の謀略、いや、謀略と言っちゃいかぬが、もっと悪質ですから。こういうやり方を無視しておって、実際上において次の平和条約の前提条件が崩れているのに平和条約というものが締結できるかどうか、そういうことを私はこの機会には考えるべきであって、日本における領土問題に対しても、サンフランシスコの会議で吉田さんがこう言ったからとか、あるいはソ連が不可侵条約を無視して進駐したからとか、北方領土の問題は、自民党の学なき、一つの露呈している貧弱さ、下田条約を原点として北方領土デーをつくるというようなばかげたやり方、あんな徳川幕府が崩壊する腰抜け外交の時代、ロマノフ王朝が崩壊するような寸前にその崩壊を導いたような卑屈な、黒船強圧外交に屈した下田条約は何ら今日、今後における世界秩序の原点にはなり得ないということはわかり切っていることだと思うのです。自民党的感覚で、四島返還という目的さえ達成すればというような小ざかしい考え方で、次の世界平和秩序をつくり上げるという意欲を失っておってどうして領土問題の解決があり得るか、そういうところから問題は発足しますが、外務大臣はどのようにこれを考えておりますか。    〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕
  34. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先生、国際連盟から国際連合をずっと引かれまして世界の平和秩序の問題を言われたのでございますが、その中で、最後に下田条約を原点にして領土問題の四島返還ということを決めているということに対して御批判をいただいたのでございますが、これはサンフランシスコの平和条約締結するときの経緯、経過というものは先生も十分御承知だと思うのでございますが、敗戦、そして占領という時代を経てあれを、条約をつくるというような、そういう環境の中で日本は千島を放棄するということを行ったわけでございますが、しかし、その中でも、日本としましては、一回も外国の領土になったことのない四島は、これは従来の固有の領土である、それを平和的に外国との条約で認めたのは下田条約だというその原点、下田条約の原点で世界に日本の領土であるということを認めた四島ということが一番妥当じゃないか、政策的に妥当じゃないかという判断をしましてこれはやったのでございまして、いろいろ先生から下田条約そのものの御批判があったわけでございますが、日本としましては、一回も外国の領土になったことがないということの原点をここに見つけ、そして四島の返還をいまもやっているということでございまして、いろいろ御批判は、それはそれでお伺いいたしますけれども、私どもはこの四島の返還ということに何としても全力を挙げて取り組みたいという考えでございます。
  35. 戸叶武

    戸叶武君 私はいまこの領土問題に入っていくのはまだ早いと思っていままで黙っており、それから憲法改正なんというのは鈴木内閣をつぶすのにはもってこいのことですが、平和憲法が定着している今日、もはや戦場に子供たちを送るまい、若者が再び銃をとるまいという決意が国民の中に浸透している限りにおいて、奴隷じゃあるまいし、麻薬を注射されながらベトナム戦争に駆り立てられたアメリカの黒人の中からそのむなしさを感じてヒッピーが出たように、ニヒリズムが戦争によって発生をしているのは、アメリカの大学、若者たちだれに聞いたって、戦場へ行くかと言ったら、だれだって行こうというやつはいない。アメリカを戦場にしたら大変だ、犠牲が大きい、なるたけアメリカより遠くの地帯において問題を起こして、新兵器を開発したからという名で韓国なりあるいはベトナムなり中東なり、まあプリミティブなナショナリズムと宗教的な麻薬がその中にまぜられているような状態のところに、近代化の進まない排他的なショービニズムの中にもぐり込んで、現在の戦争というものも武器、弾薬を供給しながら、兵器を供給しながらアメリカもソ連もやっているようです。自分のところではやらぬというやり方です。こんなメッテルニヒの亜流であるキッシンジャーさんの権謀術策がいつまでベトナムに通じましたか。  また、今日中東を訪れても、またかという顔でどこでも相手にされなかった原因は何か。イラン革命の発端というものは、二百人なり三百人なりのイランにおける情報機関、大使館というものを根城として情報策動の余地を与えたところから発端が起きたのであって、その内容の真相はフランス及びインドその他において、その最終的な問題は別として、具体的に公表されておるのであります。日本だけは伝わっていない。特に外務省の方にはまだ伝わっていない。こういうような原因があって一つの問題が起きているんです。  そういうときに石油の中に埋没して、イランのシャー、旧の国王と、五万人の近代装備を持ったアメリカのメジャー及びCIAなんかと結んでいるところの王様と日本の皇室との親戚づき合いみたいなもの、国情が似ているからやりたいなんということを中曽根君あたりは石油に目がくらんで中東の苦悩を知らないでやったが、いまごろ、あれをやっておったらどうなったんですか。通産省は石油の問題、また日本の政治家も石油の問題、石油の問題に埋没してしまって、石油の問題をめぐっての石油の生産地におけるいろいろなもがきというものを、苦悩を理解しないで行ったところに、私はあの精鋭をもってしてもついに大衆の突き上げによって、アメリカでもめんどうを見ない、パナマでも困ると言う、最終的にはエジプトへ行って恨みをのんで王様が死んでいかなけりゃならないという、何という非情な運命の中にいま中東は置かれているかということをそのとき感じたのですが、アメリカは、ソ連がイラン高原に軍事的に介入したのがいけないと言う。ソ連では、保護国的な実績があるのだから、イラン革命の火が、戦火がこちらへ延びちゃ大変だという形で、問題はやっぱり一つのそれに対するそれなりの対処があったと思うんです。  しかしいずれにしても、他国に対する軍事的介入は反対という線では、ソ連はやはり自分の独善的な行為においては、フランスの共産党がそれを支持したが、その後ひどい目に遭って、いまフランス共産党も、やはり自国の民衆の受けとめ方というものを基点とし、世界の常識を基点として国際外交に対処しなけりゃならないということはわかってきたと思うのです。そういう点からいきまして、私は非常に、今度トルコの問題がいま起きましたけれども、トルコに対しての問題は、ビザンチン帝国をあれだけにぶち破ったトルコが、何がゆえにとにかくダーダネルス海峡から地中海に出、インド洋にまで陸地を求めていくところのトルコに対するロシアの進出、このことに対処できない混迷の中に、トルコが外交防衛に対して一見識がなくて滅んでいく状態を耐えかねて、ケマル・パシャ・アタチュルクの少数軍部と大学生たちを中心とした青年トルコ党が革命を断行して、他国のかいらいになる王様をマルタ島まで追放して、共和制をしかなけりゃならないというところへ行ったんですが、私は、やはりこの海の出口は、バルテックから大西洋に出る道はイギリスとドイツ、ヨーロッパ各国との摩擦があってなかなか出られない、やはり黒海からダーダネルス海峡を経て地中海、インド洋へ、もう一つ日本海へ、これが下田条約においてでもアメリカより荒っぽい形において、ロシアが千島を占領したり、つまらぬ黒船を持ってきておどかして、アメリカ以上に手荒い方法で、トルコで破れているということはわかっていながらも、野心家たちの二面作戦で、ついに英仏連合軍において破れていったのがロマノフ王朝崩壊の原因です。  日本だってあの黒船外交に恐れおののき、腰抜け外交をやったところに、その後、井伊直弼が殺され、また、そのロシアの失敗、無理、不条理を指摘した幕末の外交官の竹内下野守なり松平石見守なりが、ロシアの天文台に、ペテルスブルグに掲げられてあったイギリス製の地図が樺太の五十度以南は日本領に書かれているのであって、あなたの国の天文台が世界的に共通に掲げている地図には北緯五十度以南は日本になっているじゃないかと言われて、ついにロシアも屈せざるを得なかったという事例もあるので、破れたといえども幕末の崩壊期にあっても、腰抜け外交と言われて安藤老中は要撃されても崩れ行く中にもそれだけの気魄があったが、一体日本外交アメリカやソ連に対してはなぜ言うことも言えないで、小商人的な取引でもって、これは日本の領土であることも下田条約で認めていた。そんなへっぴり腰外交でもって国際的な新しい世界新秩序をつくり得る気魄というものがどこにありますか。徳川幕府の連中でも責任を持って、そうしてやつらに一杯食ったというときには、ペテルスブルグに入って、天文台の地図を証拠にして立証するだけのことをやったので、やはりいまの問題は、安政元年のいわゆる下田条約ですか、あんな形で日本が卑屈な態度でもって国際的なスケールのもとにおける新秩序を要求することができるか。武器で戦うのじゃない。いまワレサたちが宗教や何かを乗り越えて、大地にぬかずきながら黙々として武器なき抵抗によってヤルタ協定の清算を求めていくところにまで来ているときに、世界の先進国と誇っている日本人の外交の何という腰抜けのぶざまなざまか。こんな気魄のない外交をやっていて一体外交というものが存在するのか、それから承りたいと思います。  なぜあの戦後、昭和二十年二月十一日におけるヤルタ協定を基点として、あの問題をわれわれが解消しろとかなんとかというのじゃなくて、ソ連やアメリカが頂上会談をやる場合にみずからの良識と責任において次のグローバルな時代における世界新秩序はこのようなものがあっては新秩序にならない、ベルサイユ体制の崩壊に似たような崩壊が来るから、われわれの良識によって、責任においてこれを解消するというぐらいなことの知恵を少しソ連にもアメリカにも恥かかないようにつけたらどうですか。黒船におどかされて、アメリカよりも荒っぽい、しかもトルコのあのダーダネルス海峡の問題から破れていくところの帝政ロシアの崩壊期になって、東へ西へと二面作戦をやってきた帝政ロシアの崩壊のざまを見れば、ロシアだってヨーロッパヘ、中東へ、あるいは日本に恫喝、恫喝がきくから、なめられているから、日本は腰抜けだから、下田条約を原点としてなんてへっぴり腰の外交をやるから、なめられている。なめられているということが一番悪いことで、少し領土でも返せば何とかなるだろうというような、あめしゃぶらせて子供をだますのじゃあるまいし、民族の魂を失った外交に私は外交は預けられないということを国民が今度は特に感ずるのじゃないか。  いまこの最高責任は首相にあるけれども日米同盟ということの現実にする対応の姿勢として、憲法改正は行わないが、この点でまずアメリカ側の了解も得なけりゃならないという苦慮の中に、外務省の官僚の人たち及び外務大臣、苦慮に苦慮を重ねてやったことだと思いますが、責任はあなたがとると言う。もっともです。しかし、責任内閣総理大臣が持つべきです。きょうは内閣総理大臣を呼ぶのじゃありませんけれども、主権者は国民ですよ、国民の合意を得られないような条約など、協定などというものはすぐ吹っ飛んでいきます。四島だ二島だの小細工の競り売りじゃない。いまわれわれが次の世界の新秩序をつくるために、必要な文明史観と哲学を持たなければ、世界的な、日本だけのことでなく、アメリカのためにもソ連のためにも東西南北、世界のためにも、これだけの見識を持って対処しなければ、アメリカとソ連だけが安全地帯にあって、力のバランスの上に立って、最終会談で妥協しましょうなどという田舎芝居のような頂上会談は御免です。そういう意味において、日本外交は、原爆の受難を受けているんだから、日本だけでなく、世界の人々をこのような悲惨な目を遭わせたくないために、私は、ソ連に対しても、アメリカに対しても堂々と物が言えるような政府をつくってもらわなけりゃ日本の国はもちません。国民が怒っています。責任伊東さんがとるという。この批判の中には自民党のいろんな対応の状態があるでしょうが、政党の視野の狭さといままでの官僚の限界とでは問題が片づかない。主権者である国民がどうこれを受けとめるか。こんな腰抜け政府に、未来に対する一つの世界的な視野を持たない、新秩序をつくり上げようというだけの意欲のない、もろい、政治外交はゆだねられないという私は回答が間もなく出てくると思います。  どうぞ、ワレサさんは素朴であるが、大地に祈りながら黙々として行動を起こしております。コペルニクス的な転回です。コペルニクス的な転回は、キリスト教徒かキリスト教徒でないかというような争いでなくて、何が真実か、何が本当か、何が真理かということを、海底調査に従事しながらアレキサンドリアの文化にまで接触した新しい真理の把握者が、勝手に弾圧をしてくれ、真実をわれわれは伝える、権力や抑圧によって真理を曲げることはできない、研究だけを書いて、その後では十字架に上げられないように、バット・ノー、しかしそれはそうでないという否定の言葉だけを反語的にやれば弾圧はできないだろう。これだけのコペルニクスは、ローマ法王が俗権と結んでヨーロッパにおける真のルネッサンスを阻害したときに、平然としてセンター・オブ・イグノランス、キリスト教の世界につくり上げたところの大学も無知の中心であって権力に迎合するだけだという。今度のパウロ二世か、これは、やはり大地にぬかずいて祈りを上げて、コペルニクスの言ったことをローマ法王庁でも認めたです。  認めようが認めまいが、コペルニクスやガリレオのことは、真実は消えないというだけの気魄で、ヨーロッパの堕落した、西洋没落への転機をつくったところのゆがんだルネッサンスに対し一撃を与えたのですが、私は素朴なポーランドと、素朴な、いままで幾たびか王道、覇道と言いながら、専制的な覇者政治によってゆがめられてきた中国とに、もっと道義的な生命力、永遠の生命力を科学に結びつけてじみちに世界秩序をつくり上げようというコペルニクス的な転回が行われたときに、このような道義力を失い、精神力を失い、そんな者がいつまでこの世を支配することができるか、私はコペルニクス的な転回はこれは西洋の没落の予言でなく、東洋たると西洋たるとを問わず、新しい世界秩序に対するもっと私は烈々たる一つの精神を持って築かなければ、アメリカの顔を見たり、ソ連の顔を見たりしてなるたけそれぬようにというような、ダレス的な封じ込め外交以外に、外交大統領でなく、おれがやるんだと言ったダレス兄弟にひん曲げられてきた外交をなぜ日本は取り戻さないのか。あの環境においてやむを得なかったという、苦労人の伊東さんは吉田さんにも言うであろうが、環境はわれわれが変えるんだ、自分自身が環境を変える熱意がなくて、だれが変えていくんだ。唯物史観的な物の考え方でなく、エコノミカル・デターミニズムでなく、人間が歴史の中から生まれ、人間の意欲によって歴史は変わっていくんだ、意欲なきところの、魂なきところの人間によって世界の変革はできない。新秩序は武器じゃない、魂だ、道義力だ。  これを簡単に、言うことだけ言えば、伊東さんは間へはさまって責任をとることばかり考えないで、責任をとるなんていつでもできるんだから、腹切ってから腹切りましたと言えば済むんだから、そんなことじゃなく、もっと内閣総理大臣に、国会に対して責任を持ち、国民に対して責任を持つようなリーダーシップと見識を発揚してもらわれんことをお願いすることであって、この際は、私は率直に言って、素朴だけれども、今度変なへっぴり腰しないで鈴木さんが貫いていけば、鈴木さんは鈴木さんなりのやはり存在の意義があると思うんですが、伊東さん、あなたあんまり急ぎ過ぎちゃいけませんから、あくまでも調整役なんだから、もっとしっかりとした見識のあるリーダーシップを持った政治指導者を日本につくり上げてくれることをお願いし、答弁は簡単でよろしゅうございます、意は通ると思いますが、鈴木さんに責任を持って今後言動をやはり明確にして、国民の納得のできないような、外務省総理大臣との間にまざまざと違いが見えるような、楽屋がすっかり見えちゃって、田舎芝居にも上演できないようなこんなばかげた芝居というのは芝居にならないので、もうしまいということになるのですが、どうぞひとつそれに対する御回答を願います。
  36. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先生の外交に対する提言というのはえりを正して私伺っておりました。毅然として自主外交をやれというお話、そのとおりだと私は思います。拳々服膺いたします。  国民の合意がなければ外交はできないということをおっしゃった、私もそれはわかるのでございますが、過去の例、私自分で体験したのは、同盟できましたとき国民は歓呼の声であれを迎えたわけでございますが、結果がよかったかどうかということはもう御承知のとおりでございますし、小村寿太郎さん、これは歴史で知っていることですが、ポーツマス条約を結ばれて帰られたときは焼き打ちに遭った、国民の信頼、支持は得られなかったというようなことだけれども、結局考えてみれば、あの外交というものは必要だというのは後で歴史がそれを見直しているということも事実でございまして、外交のむずかしさというものを私は十分踏まえながら、いまの毅然として自主的にやれということは拳々服膺いたします。  それから責任問題をおっしゃいましたが、先ほど御質問者は、今度の共同声明、その他舞台回しということで御質問ありましたので、共同声明をつくったり舞台回しをしましたことは外務省がやりましたので、私の一切の責任でございますということを申し上げたのでございまして、私はそんな、それ以上に偉いような者でございませんので、その点はひとつ、そういう意味で申し上げたわけでございます。  それから、舞台回しあるいは共同声明等に対する御批判は私は御批判として承っておきますが、私どもは、実は日米首脳会談というものをなるべく成功裏に、西側一員として従来の日米関係が大切だということで何とかうまくということでやったのでございまして、いろいろ御批判がございましたら、それはそれで甘受をしてまいります。  繰り返しますが、毅然として自主的にソ連にもアメリカにも言うべきことは言えとおっしゃることは、私はそのつもりで今後もやるつもりでございます。
  37. 田中寿美子

    田中寿美子君 やっぱり日米共同声明の方にちょっと引き戻しまして、前回も私は日本アメリカ同盟日米両国間の同盟関係ということの問題について外務大臣意見をただしました。私は、日米安保条約そのものが軍事同盟的性格を持っているのである、そしてそれをさらに一歩進めることを表明したのではないか、というふうなことをお尋ねしましたときに、外務大臣は、これまでの日米安保から一歩も出てはいないと、しかし、そういう安保に軍事同盟的な性格のあることはお認めになりましたがね。その後衆参両方の委員会やあるいは外務当局の意見の発表などで、外務大臣はあのときあくまで日米安保条約というのは片務的なものであるということをおっしゃった。ところが、外務省当局がこれに不満の意を表し出した、この外務省首脳というのはどなたを意味しているのか。  そして、きのうは政府の統一見解みたいなものを出されたということですけれども、すでに外務省当局も同盟関係に片務的なということはあり得ないと、安保条約も双務的なものであるというふうなことを言っているようですが、その辺を伊東外務大臣はどういうふうにお考えになっているのですか。
  38. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私、ここで田中さんにお答えした後は衆議院の委員会にもどこにも出ていませんので、私が意見を言いますのはきょうがあれから初めてでございますが、ここでこの前お答えした中で、今度アメリカ話し合いをして日米安保条約を変えて、性格を変えていくというような新しい枠組みをつくるとか、新しい軍事的な意味を持たせるとかいうようなことはないということをお答えをしたわけでございますが、その点は前と同じでございます。何ら変わっておりません。  それから安保条約自身についてでございますが、五条で防衛のことが、日本が外部から侵略を受けたときのことが書いてあるわけでございますが、あれはまさに片務的でございまして、日本アメリカが攻められてもそれを救いに行く、助けるとか、そういうことはできないことはもうあの五条ではっきりしておるわけでございますので、これはその意味で片務的な条約と申し上げたのでございます。それも変わっておりません。  その後、外務省の首脳が双務的ということを言ったじゃないかということでございますが、これはこういう意味でございまして、私と何も考え方は違ってないのでございますが、防衛の義務についてはいま申し上げましたとおり憲法からも個別自衛権しかないのだということははっきりしておりますが、日本が区域、施設の提供をしている、そういうことで、アメリカもその提供を受けて日本防衛、極東の平和、安全のためにそれを使っているのだ、そういう意味で、アメリカが全部負担しているという意味じゃなくて、そういう面では日本もこれは、ことしの予算では十億ドルになりますけれども、そういう負担をしているので、そういう意味から言うと双務的だという意味のことをあれは言ったのでございますが、個別自衛権、五条ということに関しましてはこれは片務的であることは間違いございませんので、私が田中先生にお答えしたことと外務省首脳ということで新聞に伝わったこととの間には本質的な、何も基本的な違いはないと私は考えております。
  39. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは外務省当局の方から、まあ首脳のお一人ですから、いまの問題ですね、伊東外務大臣との間に話し合いはもう全く一致した考えを持っているということなのか、あるいは首脳が漏らした不満というのはどういうところにあったのか、御説明をいただきたいのですけれども
  40. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) それは、首脳がだれであるかというようなことは、これはちょっと、私も新聞記者の諸君と会談をするときに使われる言葉でございますので、それがだれであるかというようなことはひとつ御勘弁を願いたい。道義上御勘弁を願いたいのでございますが、いま申し上げましたことはこれは間違いございません。私とみんな、外務省のいわゆる首脳部と話し合いをしまして、何もそこに食い違いがないわけでございまして、私も五条で、憲法論で片務的と言いましたときに、アメリカも施設、区域の提供を受けているから利益を受けているのだということをつけ加えればよかったのかもしれませんが、これは当然のこととして、私は憲法の問題、個別自衛権ということで、五条の関係で申し上げたのでございますが、事務当局と私との間で区別というものはないわけでございまして、あれは不満を漏らしたとか何とかいうことじゃございませんで、正確に言えばこういうことだということをあれは言ったわけでございますので、全然違いはございませんから、その点は御了承願いたいと思います。
  41. 田中寿美子

    田中寿美子君 自民党の安保、国防、外交、商工合同の何か会議の席上で、日米同盟関係というのに軍事が含まれているのはあたりまえだということを外務大臣も言われたというように報道されておりますが、そうすると外務当局の考え伊東外務大臣との考えはぴったり一致しているというふうに見てよろしいかどうか。そうして、そうであれば共同声明の草案をつくるときに、もちろん伊東外務大臣もその草案をごらんになったと思いますが、総理大臣にはその辺は十分お目にかけなかったのか、それとも外務大臣や外務当局の総理大臣へのブリーフィングというか、あれが不十分であのように鈴木さんが突出していったのか、それはどういうことですか。
  42. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) きのう私が出て、直接私が言ったのでございますから申し上げますが、それは日米関係民主主義、自由というものの共同価値観の上に広い意味同盟関係だということを言ったのです。それには政治、経済、文化等、広いものがある。また日本アメリカの間には、これは安保条約がありますことは、もう数十年前からあることでございまして、これはもう厳たる事実でございます。安保条約経済的なことも書いてありますし、軍事的なこともこれは書いてあるわけでございますから、安保条約がもうあるということをもって、これは軍事的なものが日米関係にあるというのは、これはないという方がおかしいので、あることはもうはっきりしているわけでございますから、それを私は、日米関係の中にはそういうものがあるのだということをきのうも説明をし、ここでも先生にたしかそういうことをお答えをしたはずでございます。でございますので、政府部内ではそういうふうに、日米安保条約がある、客観的な事実として安保体制というものが存在しているということは、これはもう意見が一致しているわけでございます。  総理がおっしゃったことは、これは今度の「同盟関係」という言葉を使ったことによって日米関係の枠組みを変える、日米安保体制の枠組みを変えるとか広い意味の枠組みを変えるとか、そういうことで新しい軍事的な何か負担を負うとか、そういう軍事的な意味を持たせて言ったのじゃないということが総理のおっしゃる意味でございまして、総理も当然安保体制というものがあるということは、これはもう御承知なわけでございまして、そういうふうに私ども総理とは全然考え方が変わってないわけでございまして、直接私が総理に申し上げるということではなかったわけでございますが、あのブリーフィングのときにはいろいろそういう関係安保体制が客観的にあるということを踏まえて、しかしこれは新しい軍事的意味のものでございませんということをブリーフィングしたのだろうというふうに思っております。
  43. 田中寿美子

    田中寿美子君 総理は、レーガン大統領との第二回目の会談で、第一回目はレーガンさんの方に言いまくられて、そしてもう共同声明の素案もできてしまっていて、二回目に後から念を押して、日本の財政状況だとか非核三原則だとかアジア諸国の反応がどうとかというようなことを言いわけのようにおっしゃって、自分は言うだけのことは言ったというふうに言っていられるけれども、その前にすでに共同声明同盟関係ということを出してしまっているわけですね。それで、何と言われようと、明らかに一歩現実が、安保体制の現実をお互いに世の中に公表していって認めさせていくというふうに進んでいったというふうに私は思います。  しかし余り、時間の問題もありますので、そこでこの八項の「適切な役割の分担」の問題なんですけれども、これも外務省防衛庁とが食い違っているらしくて、それで大変調整をしたということが報道されておりますがね、これも鈴木総理が十分説明を受けないままに、シーレーン千海里まで、アメリカがもしスイング作戦を強行するようなことがあったときには、日本が千海里までの周辺海域を守るというような役割りを分担したのであるというような説明をプレスクラブでなさったわけですね。それで、このことの意味するもの、これは外務省はそういうふうに総理に教えてあって、そして防衛庁はこれは大変だと、一千海里までも海上自衛隊の航路帯ですか、を広げていくということになったら、いまの自衛隊の力では間に合わないというようなことで、それで外務省防衛庁とがその食い違いの調整をされたというふうな報道を見ているわけですがね、この辺は両方から御説明を伺いたいのですが、外務省の方とそれから防衛庁の方とですね。
  44. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 事務的にお答えする前に、私ちょっと総論的なお答えを申し上げますが、総理は国会でも何度も日本の自衛隊の整備目標というものに触れられて、航路帯千海里、周辺数百海里ということは日本でも国会で何回も言っておられるわけでございまして、これは何も新しいことを総理が言われたわけじゃないのでございます。  それからもう一つ、私ども考え方では、日本というのは、日本を守るという個別自衛権でございますから、その守る際に周辺数百海里、航路帯千海里というものを頭に置いて装備の整備を考えていますということを言っているわけでございまして、そういうことが、防衛計画の水準ということはそういうことを目標に達成ということはしておりますので、そういうことができれば、そこにいままでアメリカの艦隊がそれを防衛するということが、しておったとすれば、日本日本を守るためにそれをやれば、その分だけはほかへ回れるのじゃないかと、こういう意味のことでございますので、総論として私はそれだけお答え申し上げておきます。
  45. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務省防衛庁と両方で話し合いをなさったそうですね。
  46. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) お答えいたします。  いま先生おっしゃいました周辺海域数百海里、航路帯を設けます場合にはおおむね一千海里程度といいますことは、防衛庁といたしましてもずっと以前から海上防衛力、わが国周辺海域の海上交通の安全を確保しますための海上防衛力整備の目標としまして掲げてきたものでございまして、国会でもしばしば答弁を申し上げているところでございます。したがいまして、いま外務大臣からお答えいたしましたことと防衛庁考えておりますことと相違は全くございません。
  47. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務省当局。
  48. 松田慶文

    説明員松田慶文君) 外務省考え方は、先ほど外務大臣が明確におっしゃったとおりでございます。
  49. 田中寿美子

    田中寿美子君 日本が周辺海域、まず空域を防衛庁が守るのはどういうことによって守ろうとしているか。それからシーレーンの方ですね、一千海里というようなことになった場合に、守るというのはどういうことをするということになりますか。
  50. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) 一千海里といま先生おっしゃいましたが、私、先ほど申し上げましたように、それから外務大臣からも御答弁申し上げておりますように、周辺海域数百海里、それから航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度と申し上げているわけでございますが、何を守るかとおっしゃられますと、これは有事の際にわが国の安全に、防衛のために必要な範囲内におきましてわが国の船舶を、わが国に対する武力侵略を行われました場合に、その相手の、たとえば潜水艦からの攻撃から守るわけでございます。
  51. 田中寿美子

    田中寿美子君 航路帯を設ける場合にというのは、だから非常事態が起こった場合という意味で、ふだんからそこのところに海上自衛隊が哨戒機などを飛ばして回るというようなことを意味はしないのですか。
  52. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) 航路帯を設ける場合といいますのは、いま先生おっしゃいましたとおり、わが国に対します武力侵略が行われまして、わが国の生存に必要な船舶、わが国の船舶が脅かされるという場合に設ける場合でございますから、非常事態といえば非常事態、いわゆる有事の場合でございます。平時からそういう遠くへいつも飛んでいくということを考えているわけではございません。
  53. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、平時には何もしないでいて、いきなりそういうことがあった場合に——有事を想定していらっしゃるわけだから、そういうことがあった場合にさっとそこに出ていって、そして防衛するという能力はいまの自衛隊にあるのですか。
  54. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) 私先ほど申し上げましたように、自衛隊といたしましては、従来から有事の場合に、わが国周辺数百海里、航路帯を設けます場合におおむね一千海里程度の範囲内で、海上交通の安全を確保できることを目標に、海上防衛力の整備を進めているわけでございます。ですから、今日現在ということであれば必ずしも十分ではございませんが、これを目標に海上防衛力の整備を進めております。したがいまして、これが整備されますれば、いま申し上げました範囲内ではある程度の防衛といいますか、守ることは可能であると思います。それからまた、平時から海上自衛隊は、こういう国の防衛の場合に備えまして日夜訓練を行っているわけでございます。
  55. 田中寿美子

    田中寿美子君 だから、それを整備するために、それでは六月にハワイで開かれる事務的な会議ですね、そこのところではやはりそういう問題についても話し合いをし、そして防衛庁はそちらに向かって準備していくと、これは防衛計画の大綱の中の計画でございますか。
  56. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) いま御質問のハワイの会談につきましては、まだ議題とかそういうことにつきましては決まっておりませんので、御説明を差し控えさせていただきたいと思いますが……。  それから、防衛計画の大綱でございますが、防衛計画の大綱には、いま申し上げましたような具体的なことは記述してございません。しかし、いま申し上げましたように、海上自衛隊といたしましては、わが国防衛に必要な海上防衛力の整備の目標といたしまして、従来からたびたび申し上げております数百海里、航路帯を設けます場合にはおおむね一千海里程度の中での海上交通の安全確保を目標として整備を進めてまいっておりますので、当然防衛計画の大綱でもそういう整備を目標としているわけでございます。
  57. 田中寿美子

    田中寿美子君 だから、その有事の際を想定されて、そしてそれだけの防衛をしようとすると、防衛というふうに言われるから、防衛でいいですけれども、その場合に、いまの防衛費では賄い切れないのではないでしょうかね。だから、防衛費GNP一%でやれるものですか。
  58. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) これはまずできるかということにつきましては、いま申し上げましたとおり、防衛計画の大綱に定めます防衛力、この場合海上防衛力でございますが、この水準が達成されますれば相当程度できるものと期待しております。そして、防衛計画の大綱でございますが、これは現在防衛庁は、いわゆる五六中業というものの計画の作成作業を開始しております。この五六中業の計画を作成するに当たりまして、防衛計画の大綱に定めます防衛力の水準を達成することを基本として防衛計画の大綱を作成するのだと、こういう作業の開始につきまして、先般四月二十八日でございますか、国防会議に報告して御了承をいただき、これによりまして作業を開始しておりますので、現在まだ作業開始しましたばかりでございますから、いま先生御質問の経費がどのくらいになるかというようなことは現段階では御説明いたしかねるわけでございます。
  59. 田中寿美子

    田中寿美子君 GNP一%以内ということを日本は公言しているけれども、それではそのような広い海域に向かっての防衛はできないだろう、多分もっとたくさんの財源を必要とするだろうと私は想像いたしますが、その話はもうここで切って、外務大臣ね、緊急展開作戦をもしアメリカがやった場合に、日本はここのところを分担します、役割りを分担いたしますというようなことを事務レベルでは話し合っているわけですよね。話し合っているわけで、レーガン政権としては大変日本はいい国だ、同盟国と呼ぶに値すると思って喜んでいるでしょうけれどもヘイグ国務長官が湾岸諸国を回って歩いたとき、アメリカがそういう作戦隊をつくろうとしたときにも、協力するという色よい返事をそう簡単にみんなしていませんよね。サウジアラビアですらそういうことは言っていない。それから、ヨーロッパのNATO諸国もこの間の国防相会議でペルシャ湾岸の防衛のために、ワインバーガー国防長官があそこで西側多国間の共同部隊をつくってほしいというような提案をしたのに対して、みんなNATONATOの守備範囲がある、ヨーロッパと大西洋と地中海までだと言って断っているわけですね。ですから、スイング作戦なんというものをする必要がある、アメリカはいつかそういうことをしなきゃならないときが来るというふうに考えて固めようとしているわけだけれども、まあ喜んでそれに応じたのは日本だけ。ちょっとこれは、今度鈴木さんも六月になったらヨーロッパに行くわけですね、そのときにやっぱり日本はここを引き受けましたので、あなた方もというふうにもっとこの点は勧めるおつもりなんですか。
  60. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま、田中さんの御質問でございますが、首脳会談でも私とヘイグさん、ワインバーガーさんと総理、私も一緒にいましたが、その際に、いま田中さんのおっしゃったようにスイング作戦で出ていくと、そこを日本があとは埋めていくよというような話は、これはそういう具体的な話は出なかったです。でございますので、いまそれを日本が引き受けてきたというようなことをおっしゃいますけれども、そういうことは私の知る限りでは全然ございませんでした。ここで日本が周辺数百海里あるいは航路帯のことを総理が言われたのは、これはあくまで日本防衛していくという、個別自衛権の範囲でできることはひとつ日本を守るために一生懸命やろうということを言われたことは確かでございますが、出ていくからその後は引き受けてくれとか、わかったとか、そういうことは田中さん、なかったのでございますので、私聞いていまして、おやと、そんなこと、どこであったのかと思って聞いているのですが、なかったです。
  61. 田中寿美子

    田中寿美子君 いえ、テレビで記者団に対しての説明でそういう話をしていられるのですね。ですから、私はもう終わりますけれどもアメリカのそういう戦略的な作戦の中にやすやすと喜んで入っていくようなことは慎んでいただきたいと思います。
  62. 稲嶺一郎

    ○理事(稲嶺一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後零時四十分に再開することにいたし、休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      —————・—————    午後零時四十一分開会
  63. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  64. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに、首脳会談の事柄について、明日の質問の関係もありますので若干触れさせていただきたい、こう思います。  午前中にも、共同声明についての問題点が再び議論されたわけでございますが、何といっても今回初めて共同声明に盛られた「同盟」という言葉の用い方について、さまざまな反響を呼んでいることは事実でございます。果たして、総理の言われるとおりの解釈でいいのか。また、昨日の外務大臣の自民党外交調査会での御発言等、その辺の食い違いというものが鮮明に浮き彫りにされたような印象を持つわけであります。こうなってきますと、その同盟の持つ中身について、その受けとめ方が政府部内においてもさまざまな議論を呼んだのではないのかなという、そういうことが受けとめられるわけであります。恐らく、共同声明については、淺尾局長が述べられておりますように、一項目、一項目慎重に米側と検討した上で最終的なまとめをしたと、このように伝えられているわけであります。恐らく、その時点でも相当言葉遣いというようなものについても配慮があったであろうというふうに思えてならないわけです。にもかかわらず今回、従来は全くなかった「同盟」という言葉があえて用いられる、なるほど、言葉遣いの上では、大平さんのときにもしばしば言葉としては用いられたという経過はわれわれも知ってはおります。しかし、こうして一つ文章として明文化されてまいりますと、この持つ影響というものはやはり考えなければならない、こんなふうに実は受けとめておりますし、一昨日の外務委員会でも、私も若干この点に触れましたけれども、その時点では総理外務大臣の答弁は全く同じであったわけです。昨日の段階になりますと、それがどういうふうな考え方の違いになったのかわかりませんけれども、私どもとしてもその辺が非常に気がかりでありますので、再度その辺を整理をしていただいて、率直、簡明にひとつこの解釈の仕方、受けとめ方について、こうだという御答弁をいただければありがたいと思います。
  65. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げますが、「同盟関係」というものの持つ言葉意味でございますが、おととい、たしかここでお答えを私はしたわけでございまして、それは、日米関係というものが日本外交の基軸であり、それで今日まで日本の繁栄ももたらされたわけでございますが、この緊密な連帯関係を八〇年代にますます重要なものとしてこれを保っていくというために、日米の広い関係、政治、外交、あるいは経済、文化というような広い関係の領域にわたって緊密な連帯を保っていく、民主主義自由主義という基礎の上に、共同価値観の上にそれを建てていくのだ、構築していくのだ、こういうことを申し上げたのでございます。しかし、日米間には安保条約というものがあることはこれは客観的な事実で、安保体制ということがあることはこれは客観的な事実でございますから、その中には経済関係もあれば軍事関係のものもあるということ、これはそのまま厳然たる事実でございますので、そういうものも含めた広い意味日米関係の緊密連帯化を図っていくということで「同盟関係」という言葉を使っていますということを申し上げたのでございまして、何も、特別新しい枠組みをつくってそこで新しく軍事的意味を持たせるとか、そういうものではございませんという意味のことを、たしか、表現は、言葉そのものは違うかもしれませんが、そういう意味のことを申し上げ、さっき田中さんがおっしゃったように、安保体制というものはあるということを外務大臣もおととい認めたとおっしゃった、そのとおりでございますということをさっきお答えしたのでございます。でございますので、私自身は、おとといここで申し上げたことときのう自民党で言いましたこと、またきょういま渋谷先生にお答えしていること、これは、気持ちとしては全然変わっていないわけでございます。
  66. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま述べられたことについては、確かに、そのもの自体は総理の答弁と変わっておりません。要するに、政治的に、外交的に、経済的に、文化的にこれからも緊密な協力を継続していくんだ。大要、そういう意味合いを持つものであって、軍事的意味合いを持つものではない。しかし、客観情勢というものを考えてみた場合に、果たしてそれでいいのだろうか。特にレーガン政権としては対ソ脅威論というものを一貫して今日までとり続けておりますし、それを背景とした軍備力の増強、強いアメリカというものを標榜する、そういう前提としてそういうものを描いている、これは隠れもなき事実であるわけでございます。となれば、われわれ、単純に、字引きか何かに書いてあることを、ぼくも調べてみたんですよ、そうすると共同の行動をやはり日米間においてはとるということになれば、しかも同一の目的に向かって共同の行動をとるということになれば、これは果たして政治、外交経済、文化というふうに限定されていいのだろうか。裏返しにしてみると、今回の首脳会談前にもアメリカ側の相当強力な日本に対する願望というものが防衛力増強ということによって表明されているわけですね。こうした絡みの中で、私たちが、いや、軍事力増強ということには立ち入らないのだという甘い判断で果たしていいのだろうか。  いままでも私申し上げてきました。確かにアメリカ側としても、憲法の枠内であるとか非核三原則だとか専守防衛だというそのことは十二分にわかっておりますと、そういう制約を押しのけてもということを前置きにいたしまして、要求するものではない、けれどもがつくんですよね、けれどもが。現状としては自衛力そのもの自体がもう非常にレベルに達してない等々その表現の仕方はいろいろございます。それはまた、もう一歩突き進んで考えてみると、現状では満足がいかない。したがって、米国と共同歩調をとっていただくためにはというような未来展望に立っての日本に対するそういう要求というものが非常に色濃く込められており、そして、その集大成とも言えるものがこの日米共同声明によってあらわされたのではないだろうか、そういう印象がどうしてもぬぐい切れない。説得力が果たしてそれで国民に対してあるだろうかというもう一つの疑問が、私のみならず恐らくここにいらっしゃる議員の方々全部がそういう気持ちをお持ちになるのではないだろうか。恐らく自民党の方々の中でも、むしろもっとストレートに説得力のある言い方をした方がいいのじゃないかなんというような議論があったやに伺っておりますけれども、そうではない、何かそこがもやもやとしちゃって、隠蔽されたようなかっこうになっている。それは私が少し早とちりしているのか、全然違った判断に立っているのか、その辺はどういうふうに整理したらいいものか。  もう一つ、なるほどこれは共同声明ですから条約そのものではないと言ってしまえばそうかもしれません。しかし、考えてみると同盟条約というものもあるわけですね、それはいまおっしゃられた日米安全保障条約というものが背景にあるということになれば、これは連動しているわけですから、そういったものがやっぱり拡大されていく危険性というものはないのかというような問題がやっぱり浮き彫りにされてくる。同盟条約ならば、これは明確に、これもちゃんと私調べてきました、それは定義を間違えては大変なことになりますから。これはまあ後に回すにいたしましても、同盟の受けとめ方というのはそうあらねばならないし、あるいは全然新解釈というのかな、新しい解釈というものを政府によってここで改めておとりになるのか。そうすると、一切のそういう字引あたりに掲載されてある解釈の仕方というものも、これはまた考え直さなくちゃならぬ、まあ変な言い方でございますけれども。そんなふうに発展しかねない。だから素直に、率直に考えてみた場合には、確かにいままで言われてきたように、安保条約安保体制そのものは片務的な役割りであるかもしれぬ。しかし、同盟ということになれば、やっぱりどう考えても双務的な、そういう役割りを持つ意味にとれるのではないだろうか。米国側としては恐らくそういう解釈に立ってこの日本共同声明というものに合意をしたのではなかろうかというふうに、あるいは繰り返しになるかもしれませんけれども、その辺、お帰りになってからこの二、三日来、政府部内においてもいろいろその辺の解釈や判断の仕方によって亀裂が生じているということが伝えられておりますときだけに、さらにやっぱりここで明快にしておいていただく必要があるのではないだろうか、というふうに思うわけです。
  67. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま渋谷さんの御質問でございますが、いまおっしゃった点はおとといもここで先生方にお答えをしているのでございますが、確かにソ連の軍事力増強とかアフガンヘの軍事介入でございますとか、そういうソ連の動きに対して憂慮の念を示したということは、これは一緒、そういう認識は確かでございますが、しかしその対応は、これはそれぞれの国の国情、国力ということがございますので、それはそれぞれの国が自主的に考えることだというふうに思っておりますし、また今度もそういう対応までにつきまして、対ソ問題をいろいろ相談する、協議するというようなことはなかったわけでございます。まずその点ははっきり申し上げておきます。  でございますので、いままでも対応としまして日本がいろいろソ連のアフガニスタン侵入に対しましてとった行動そのものとアメリカのやったこととは全部一緒ではない、同じものもありますけども一緒ではないというようなことでございまして、対応策というのはそれぞれ国によって私は違っていいと思うわけでございます。  それで、日本は軍事的にそういうことで何かできるのかと、そういうことを話してきたのじゃないかというような意味の御質問でございますが、日米の枠組みを何か変えまして新しく軍事的な意味を持たしていくなんということは、同盟関係と変えたということから起こってくる問題じゃ全然ございませんし、また安保条約防衛、書いてありますあの五条でございますが、ああいうものを双務的に、あれは片務的でございますが、双務的に直す問題でございますとか、そういうようなことの話も全然出ませんし、また日本が新しい軍事的な役割りを分担するとかいうことも何も首脳会談で話したわけではないわけでございまして、あくまで防衛の問題は、これは日本日本としてどうやって最小の自衛力で日本を守っていくのだということを日本として判断すべき問題でございまして、今度、首脳会談をやりましてもそういうことを何もアメリカと約束をするとか新しい分担を引き受けてくるとかいうようなことは全然なかったということ、これはまあおとといも申し上げましたが、事実そのとおりでございます。
  68. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 伊達さんね、条約局長という御専門のお立場から同盟条約といった場合にどんなふうに解釈されるのか、その定義はどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  69. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  同盟条約というものにつきまして国際法上明確な定義はございません。ただ、国際の歴史、つまり外交史などにおきまして、過去におきましていろいろと同盟条約と称せられるものが結ばれたことは事実でございまして、国際法辞典などを見てみますと、「同盟条約」という項目がございまして、これをまあ定義と申しますか、一つの説明をしたものはございます。それは、ちょっとここで拾い読みをしてみますと、「固有の同盟は、戦争にあたって、共同の敵にたいし、連帯的軍事行動をとり、相互に支援するものである。」と、また、「現実の敵国または仮想敵国にたいして、または将来受けることある武力攻撃に備えて、相互に武力援助を行ない、講和も相互の同意によって行なうことを約束するものである。」というような説明がございます。  これは私が考えまするに、かなり過去における戦争というものがまあ合法化されていたというか、そういう時代におきます各国の間で行われたことを抽象いたしましてこういうようなものが同盟条約と言われるのだろうということで、古典的な「固有の同盟」とはということで言っているのでございまして、ただ、そうかといってそれだけに限られるものでもなかろうというような気がいたします。
  70. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまお述べになったことについて、もっと私これは常識的な解釈になるんだろうと思いますが、第三国に対する攻撃または防衛のために相互に援助を約する条約と、ですからいまおっしゃったことは全部それは集約されると思うのですね。いま大変古典的とおっしゃったけれども、戦争が合法化されるかどうかは別問題といたしまして、それは戦争を前提として防衛力の増強という、あるいは戦争を事前に抑制するためにという、最近はそういうような考え方が先行しているようでございますけれども、しかし防衛力の増強というものは必ずしも戦争抑止には結びつかないという私自身は一貫した考え方を持っているわけです。バランスが崩れた場合に起こり得るという可能性は十二分にありますでしょうし、そういったことを想定しつつ、防衛力の強化、拡大、絶えず攻撃を受けたときの想定をしながら、事前にあるいはもし踏み込まれた場合には、どういう考え方に立って、相互における共同防衛的な役割りというものを果たすというのがやはり同盟の持つ、いま伊達さんが述べられたような、これが本当の意味じゃないかというふうに私思うんです。  しかし、今回の共同声明をつくるに当たって、相当英知をしぼって、知恵者もたくさんいらっしゃるわけですから、それはそういったこともいろんな古典的なことにまでさかのぼって検討を加えられ、要するに万遺漏なきを期されたはずだと私思うのです。にもかかわらず、これだけの非常に強い反響があるということを予想されたのでしょうか。あるいはきわめて安直に、ただ政治、経済外交、文化というようなことに集約されたものとして、短絡的にそういうものをこれからも協調体制を促進する一環として「同盟」という言葉を使っても何ら抵抗はないだろうという、そういうような考え方の上に立って用いられたのか。この言葉一つというものは大変影響力を持つ場合が多いことはいまさら申し上げるまでもございませんけれどもアメリカの受けとめ方、それは確かに一つ一つ突き合わしていけば、お互いふん、ふんと、あるいは暗黙の了解ということもないではございませんでしょうから、その辺もう一遍整理をして、いま伊達さんが述べられたことを踏まえつつ、なおかつここで念を押しておきたいと私思うのでございますが、そういう意図的なことはアメリカ側としては全く、断じてないというふうにわれわれは理解してよろしいのでしょうか。
  71. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私ほかの委員会でも御答弁したわけでございますけれどもアメリカ側の認識と日本側の認識について差異はございません。したがって、アメリカ側として意図的にいわゆる、先ほど条約局長が述べたような攻守同盟というかっこうでこの「同盟」を入れるという意図というのは当初よりなかったわけでございますし、また、私たちとしても、安直にこの「同盟」という言葉を使ったわけでなくて、そういう点について将来誤解が生じてはいけないということも踏まえまして、アメリカ側との話をする際に、ここで言っている「同盟関係」というのはまさにこの共同声明に述べられているもの、それ以上出るものではない、軍事的な側面について言えば、安保条約という存在がある、しかし、それ以上の軍事的側面を持っているものではない、ということを再三にわたって確認しておりますし、首脳会談が終わった後に、アメリカ側のいわゆる高官というものが背景説明を何回かしておりますけれどもアメリカ側がここに言っている「同盟」に対する理解というものは、日米間の政治、経済、文化、社会、非常に広範な連帯関係というものをうたっているのであって、安保条約という裏打ちはあるけれども、まさに緊密な協力関係という重要性を確認したからこそこういう言葉を入れたのだという説明をしております。
  72. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただもう一つ、ここであえて申し上げる必要ないと思うのですが、いままではいろんな表現の仕方については、たとえば安保体制や友好関係を堅持しというようなそういう言い回しであったろうと記憶をしているわけです。そういったことがなぜこう言葉遣いの上で変わっちゃったのか。それでもう十分意味が通るはずではなかったのか。それをあえて「同盟」というふうに切りかえたのはという、もう一つやっぱりそこにわれわれが素直に受けとめられない、そういう感じがする。それはいまも私が前段で申し上げたことと「同盟」とは同意義語のこととして受けとめられたのかどうなのかというもう一つの疑問が出てくるわけですね。いままでは確かに安保体制だとか、日米友好関係というものは堅持し、これからも両国は互いに協力をしながら世界平和のために貢献云々なんというようなことが言われてきているわけです。今回は初めてなんですよ。それだけにまた反応というものは非常に強く出ているわけです。大丈夫か、大丈夫か、大丈夫かという、それは私ならずともそういうふうに受けとめるのが普通じゃないか。淺尾さん御自身がやっぱり当事者としていろいろと御苦労なさったお立場から、いま私が申し上げたような疑問については別に差しさわりはないだろう、従来使われていた言葉を「同盟」に変えても何ら支障がないだろうと、こういう御判断だったのでしょうか。
  73. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 経緯的に申し上げれば、一昨年の故大平総理訪米あるいは昨年五月の同じく故大平総理訪米の際に、大平総理がホワイトハウスにおいてあいさつされた中で、日米関係同盟関係であるという言葉を使っておられることは御承知のとおりでございます。かつ、昨年主としてイラン、アフガンを契機といたしまして、日本側西側一員としてアメリカと連帯しあるいは西欧諸国と協力してやってきたということもこれまた歴史の事実でございます。今回この共同声明の中に「同盟」という言葉を使いましたのも、日米関係がまさに、先ほど申し上げましたような政治、経済を含め、さらに安保条約に裏打ちされているという広範な関係にあるという認識について両者が一致してこの「同盟」という言葉を使ったということでございます。
  74. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その認識が、ここでお答えになったように、そういう認識のもとと言われてしまえばそれ以上踏み込めない面もあろうかというふうに思うのでありますが、恐らくこの問題については六月に予定されている事務レベルといった方がいいのか、実務者会談といった方がいいのか、大村防衛庁長官との話し合いがどんな展開を示すかということで一つの証明が成り立つのではないだろうか。われわれとしてはそれを注意深く見守っていく以外にはないかもしれません。そこで一体どういう結論が出るのか。しかしその背景になるものは、これは日米共同声明であるということを考えますと、相当やはり強い要請というものが前面に打ち出され、われわれがいままで想像してきたことを上回るような、そういうことが起きはしまいか。日米会談が終わった直後、アメリカにおける名のある報道機関がそれぞれの見方をしている。その集約されて言われていることは、鈴木総理は、紛れもなく防衛力強化ということについて深い理解を示した、というふうな取り上げ方をしているわけです。大体共通しているのです。これは一社だけじゃないのですね。そういうことがある。それは恐らくレーガン大統領初めあるいはワインバーガー国防長官、あるいはブッシュ副大統領等々のその後における、あるいはコメントを与えたかどうかわかりません、どういう言い回しであったかは、それはいまわれわれとしても知るよしもございませんけれども、紛れもなくそういうような共通した受けとめ方でもって、日本側アメリカのいま意図している方向に立って全面的に協力を惜しまないと、こういうような感じになっているのです。ですから、その辺が認識の違いということになって済まされるものではないだろうと私思いますし、老婆心ながら、将来考えつつ、この「同盟」というものはやはり一つの大きな意味合いを持つものではないだろうかということで、あえてきょう冒頭にこの問題を再び取り上げてみたわけであります。  もう一人同僚議員がやりますので、条約も少々入りませんとなりませんので、きょうは私は航空協定について若干触れてみたいと思うのですが、午前中も日米航空協定については答弁がありました。運輸省としては——運輸省来ておられるでしょうね、運輸省としては、これからの詰め、これからの日米航空協定の展望、外務省からは先ほど大まかなお答えがありましたが、当事者としてどんなふうにいま受けとめておられますか。
  75. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) お答え申し上げます。  私どもといたしましても、やはり現行の日米航空協定には種々の面で米側に有利な形の不均衡が存在するという考え方を持っておりまして、この考え方に基づき、昭和五十一年から五十三年にかけまして数度の交渉を行ったわけでございますが、双方の見解はかなり離れておりまして、その後中断しておったところでございます。  先生御案内のとおり、その後、昨年九月に米側の申し入れによりまして非公式の協議が行われ、さらに本年一月にはホノルルで再度非公式協議が行われました結果、米側からわが方に対しまして全体をパッケージとして解決する提案をしてまいったわけでございます。この提案は、輸送力、運賃、チャーター、こういった面での自由化を目指すものでございましたけれども、他方、路線あるいは以遠権等の問題につきましては、従来からのわが方の要求をかなり取り入れたものとなっておったわけでございます。引き続き本年四月に東京航空協議が行われ、この場におきまして私どもの方から米側に対して反対提案をいたしたわけでございますけれども、なお双方の見解にはかなり隔たりがございまして意見の一致をまだ見るに至っておりません。  これらの協議を通じまして双方の立場はかなり理解し合えたというふうに私ども考えておるわけでございますけれども、やはり若干の点につきましてまだ双方の見解の調整を要する点が残っておるわけでございます。  具体的に申し上げますならば、まず路線権につきましては、これは当然のことながら双方の権益の均衡というものを図った形で今後交換が可能になるように詰めてまいりたいと考えております。  それから輸送力、運賃、チャーター、こういった面での自由化を米国は推進しようとしておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、日米双方の航空企業の企業力の格差であるとか、あるいはわが国におきます国内の空港能力の制約であるとか、さらには環境問題であるとか、こういった面を考慮いたしますと、これをそのまま受け入れるということは、これはむずかしいのではないかと思っておるわけでございます。したがいまして、この五月の三十日から次回の航空協議の開催が予定されておるわけでございますけれども、こういった諸点につきましての日米双方の意見調整等を図るということが必要になってくるわけでございます。現在、外務省とも御相談の上でこの対応につきまして鋭意検討を進めておるところでございますけれども、今後とも均衡のとれた日米航空関係の実現を目指すという基本的な立場で粘り強く交渉を続けてまいりたいと、このように考えております。
  76. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 利害が大きくかけ離れている、落差がひど過ぎるという、ここでなかなか話がまとまらぬというのは、長いのですよね、話し合いを始めましてから。アメリカアメリカとしての権益をどうしても一歩も譲らぬ、日本には日本事情があるということでなかなか折り合わない。果たしてそうした均衡のとれた状態で日本側の要求というものも、まあ多少の不満は残るけれども大枠においてはこれはもう満足すべきだというところまでいくのか。  それから、特に自由化の問題については、これは日本としては乗れないんでしょう、これははっきり申し上げて。企業としてはもう非常に厳しい側面を持っているわけでございますから。しかし、アメリカとしてはそのことを何とか実現の方向へということになると、どこまでいっても平行線をたどってしまうのじゃないか。路線の問題もしかり。もう以遠権の問題は本当に長い間かかっているわけですよね。どっちもどっちだって言えばそれまでなんですけれども、多少は前進したようなことはいま御答弁の中でありましたが、まとまる可能性、気配というのは多少はあるのですかね。
  77. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) お答えいたします。  確かに先生御指摘のとおり、日米では、いま航空政策の重点の置き方というものにかなり相違がございます。これは事実でございます。ただしかし、私どもといたしましてもやはり日米航空関係、米国は日本航空企業にとりましても非常に重要な市場の一つでございますので、この安定的な発展を図っていくということは私どもにとっても至上命令であると考えておるわけでございます。したがいまして、合意に達する可能性は私どもはあると信じまして交渉を続けておるわけでございますし、また御指摘の自由化につきましても、確かに自由化によってもたらされる弊害はこれはあり得るわけでございますが、同時に自由化によってもたらされるメリットもある。したがいまして、この両方のメリットの調整というものが私どもにとって課せられた検討課題であると考えておりますので、こういった点を踏まえてやはり粘り強く交渉を続けていくという考え方で対応してまいりたいと思っております。
  78. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 伊東さんね、日米間にわたる経済問題、まあこの共同声明にも政治だ、経済だ、外交だというふうに協調しようと、まことに結構だとぼくは思うのですよね。けれども、ともあれ自動車を初め、遠くは繊維の問題を初めとして、まだ日本側にとってもちょっと不利な問題もあるかもしれません、いろんな問題がありますし、知っておりますが。そのほかにこの航空関係の問題、いろいろと障壁が横たわっているのですね。これはなかなかいままでもすんなりいかない。またいろんな突き上げがある。それは国内事情もあるでしょう。どうなんでしょうかね、この日米経済協力というのは非常に大きな軸になっていくであろうことは私も決して否定はいたしません。そうあってほしいと思います。にもかかわらず、最も重要な案件と言われている自動車にしろ航空の問題にしろ必ずしも、いま友好だ、協力だというふうに表向きは笛や太鼓を鳴らしながら言われているけれども、実質面に入ってきますと非常に障害が多過ぎるのじゃないか。本来ならばこういった問題についても日米首脳会談の折に、一つの突破口として、具体的にどうするこうするというのは実務者レベルでやるにしても、大枠においてまとまるような方向への話し合いというものがあってもしかるべきではなかったのかというふうに思えてならないわけですが、いかがなものでしょうかね。
  79. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日米首脳会談でいろんな問題を取り上げたのでございますが、航空協定につきましては、この問題そのものとして実は取り上げておらなかったのでございます。  おっしゃるように、経済関係余り大きな問題は残ってないのでございますが、私は航空協定というのは日本の以遠権、路線権の問題等含めて、これは昭和二十七年でしたか、たしか最初できたのは、日はたっておりますし、これは日本側から見れば大きな一つの問題だというふうに考えますので、これは運輸省当局と一緒に一生懸命やっているところでございますが、やはり日本側としてはこういう大きな問題があるということで、向こうにこれは今後とも力強く話していくという問題の一つだというふうに考えることは同感でございます。
  80. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 では最後に一点だけ申し上げて終わりますが、今回フィンランドとの間に航空協定が結ばれるわけですけれども、将来ぜひこの協定結びたいというところで残されているところは、たしかスペインもまだ入っていなかったと思いますね。何カ国か予定されておりながらまだ結ばれていない、それはあとどのくらい日本としていま考えておられますか。
  81. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) お答え申し上げます。  現在、わが国に対しておおむね三十カ国程度から航空協定締結の申し入れがございます。ただ、先生ただいま御指摘のスペインにつきましては、これは航空協定をすでに締結いたしておりますが、三十余りの国から協定締結の申し入れがございます。  この点につきましては、これは私ども運輸省としてのみではなくて、外務省とも御相談の上で今後の協定締結についての考え方を整理してまいるわけでございますけれども、私どもといたしましては、やはり相手国との間に相当な輸送需要のあること、それから、これは最近は幸い余り例はございませんけれども、ハイジャックの防止関係条約がございますが、これに対して相手国が積極的な姿勢を持っておること、さらに、これは外務省の御判断も当然伺うわけでございますけれども、その相手国との経済的、文化的あるいは社会的、政治的な一般的な関係、こういったものを考慮いたしまして、逐次その協定締結を進めてまいりたいと思っております。  これも先生御承知のとおりでございますが、わが国国内空港空港能力というものにはかなり限度がございますので、この全部を一度に認めていくということは空港能力の点から言ってもかなり困難な問題があろうかと考えております。
  82. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 最初に、フランスの大統領がミッテラン氏になりまして、この問題につきましては当委員会でも先日、政権についてはまだ見通しというわけにもいかないというようなことで打ち切られておりますが、御案内のように、フランの暴落が金融界に大きな動揺を与えているということ、これは世界的な経済的不安も与えているというように思うわけでありますが、十二日、パリ証券取引所の理事長が銀行あるいは機関投資家、個人投資家などに冷静に対処するよう異例の声明まで発表したといわれましたが、その午後、売り注文が殺到しているという状況であるということが報じられております。ドル高円安ということも、十二時のNHKのニュースでは二百二十一円ぐらいまで下がっていったという知らせもありました。フランが十年来の安値であり、フランスの新政権としてもこれは大きなショックであろうと思います。一日三%も急落をしているというそういう状況の中で、わが国に及ぼしてくる影響性というものを考えていかなきゃならないのじゃないかと思います。これは急には、いますぐ手のひらを返すような状態じゃございませんが、この問題が今後どのように進んでいくかということも想像できないわけです。であるがゆえによけい心配をしなければならない。この点についてお考えを聞かしていただきたいと思います。
  83. 村本久夫

    説明員(村本久夫君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおりフランス・フランにつきましては十日の大統領選、その結果が判明をいたしました今週以降におきましてかなりの低下をいたしております。  若干数字を申し上げますと、その前の八日の金曜日一ドル当たり大体五・三三フランであったというものが、昨日では五・五二ということで、御指摘のとおり大体三%強のドルに対する切り下げとなっております。  そうしたフランの低下、これは特にヨーロッパの近隣の諸国、そうしたところにも影響を与えておりまして、ドイツ・マルク等も八日に比べまして二%弱の低下と、そういうような状況になっております。  一方、円に対する影響でございますけれども、円につきましてただいま御指摘ございましたように、きょうの午前の、お昼の最後の終わり値と申しますか、二百二十一円三十銭ということになっております。ただ、これを同じような基準で八日のわが国の円の終わり値、これが二百十八円六十銭でございましたけれども、大ざっぱに計算をしてみますと、一・二%ぐらいの低落だと、そういう意味におきましては、やはり近隣の諸国あるいはフランスそのものに比べまして、これまでのところ影響は比較的軽微である、しかし何がしかの影響といいますか、そうしたものが、これはフランスの大統領選の結果だけとは申せませんで、いろいろ為替相場に及ぼします影響、米国金利がこのところ非常に高目に推移しているというようなことも影響するわけでございますけれども、まあ結果といいますか、数字はそういうような、ただいま申し上げましたようなこととなっております。  今後の特に私ども円レートに対する影響につきまして強い関心を持っているものでございますけれども、今後の見込みにつきましては、おっしゃるとおり、フランスの今後政局あるいは経済政策、そうしたものがどのように打ち出されるか、すでに最近におきましてもいわゆる中央銀行が市場に介入をいたします場合の金利、これを十二日からフランスは従来の一三・五%を一六%に引き上げるとか、あるいは非居住者の預金に対する準備率を従来五%課していたものをこれをゼロにして、いわば外国からお金が入ってくるのを促進すると、こういうような政策をとっております。しかし、こうしたものを含めまして、今後どういうふうに展開をしていくか、これにつきましては、日本、遠いところにあるとは申せ、最近のように国際関係が非常に緊密化しているという状況のもとにおきましては、そうしたものの波及ということも考えられるわけでございまして、私どもといたしましても、基本的にはフランスの問題であるということはございますけれども、それがどういうふうに推移をし、円レート等にどのように影響してまいるか、そうしたことを十分注意をして見守り、それの状況に応じたことを考えていかなければならない、このように考えておる次第でございます。
  84. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いま御答弁がありましたように、その準備率の問題にしましても、これは日本経済のきょうの新聞あたりにもいま答弁になったようなことが全部出ております。ともあれ、わが国としても冷静に判断をする以外にはないと思いますが、六月に行われてくるフランスの総選挙の行方もこれは十分に見守っていかなければならない、こういうふうなことを考えますと、かなり長期化していくのじゃないだろうか。しかも御承知のように、企業の国有化の問題だとか、そういうようなもの、それを含めた問題等絡んでいきますと、相当長期化していくというふうに見通さなければならないし、それだけの対応のあり方というものも考えなきゃならぬと思うのですがね。そういうようなことで影響性がないとは言えない、相当大きく及ぼしてくるということの認識を一段と強めていかなければならないと思いますがね、その辺について念のためにもう一度、そのあり方というもの、対処のあり方というものを正確にお答え願いたいと思います。
  85. 村本久夫

    説明員(村本久夫君) ただいまお話ございましたように、現時点でこれが特にフランスの政治あるいは経済がどのように推移をしていくかということ、ミッテラン大統領当選の直後ということもございまして非常に見通しが困難でございます。それだけに私どもその時点で起こりますいろんな出来事に対応いたしまして、それが日本に及ぼす影響、特にそうしたものを注意深く見守り、それに対応をいたしましたことを適時適切にやってまいりたいと、そういうふうに考えております。
  86. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 この問題はそれぐらいにしておきまして、条約の方に入っていきますが、対フランス、シンガポールの今回の租税に関する条約改正議定書、このことにつきましては、その他の諸国に対するこれまた全部ひっくるめてのことになると思いますが、公正なる税収対策というものの面から、わが国としての財政再建のためにも、また国際間におけるいろんな企業問の製品の価格をめぐる税の調整のためにも重要な条約であり、そういう段階に来ていると、こう私は思いますが、その辺の考え方を御説明願いたいと思います。
  87. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) お答えいたします。  租税条約自体は、国際間の経済取引あるいは文化の交流といったものを円滑にし、かつ拡大していこうというところに主眼がございまして、直接税収を確保するという観点よりは、そういった円滑な交流なり拡大といったものを期するために税が障害となってはいかぬということで設けておるものでございます。換言いたしますれば、国家間の税収の割り振りといったものに主眼があるわけでございます。しかしながら、いやしくも租税条約が乱用されて、税収を通脱するといいますか、逃すというようなことがあってはならぬわけでございまして、その点はかねがね注意してやってきておるつもりでございます。
  88. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 申し上げることもありませんが、近代におけるわが国の企業の国際化が急進展をしております。そういう中で、特に七〇年後半といいますか競合が激化してきている。米国もそうでありますが、EC諸国との貿易関係を見ましても、相当な過去にも問題点がございます。そういう中で、トランスファー・プライシング、移転価格の操作といいますか、この問題についてどんなふうに受けとめておられますかね。
  89. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) トランスファー・プライシング税制は、日本語では移転価格税制と言っておりますけれども、先生御承知のとおり、まず企業間の特殊関係といいますか、たとえば親子であるような関係にあるような特殊関係を利用いたしまして、それらの間での取引について価格操作を通じて所得を移転すると、それによりまして企業全体としての租税の軽減を図るといったことを目的とする取引を否認するといいますか課税しようという制度でございます。  この点につきましては、アメリカ初め主要先進国それぞれ六〇年代から七〇年代にかけまして制度を導入あるいは整備をしてきております。私どもといたしましても、わが国としても、この点につきましてはやはり勉強しなければいかぬ課題であるというふうに考えまして、諸外国の制度であるとかあるいは執行状況につきまして引き続き検討を進めていきたいというふうに思っております。
  90. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 この問題が明確に解決しませんと、国際間の係争といいますか、そういうものが尽きないと思うのです。したがいましていまお話がありましたけれども、米国とかあるいは西ドイツ、英国、フランスあたり、これらの移転価格操作というものの法ができているわけですね。わが国は、言うならばOECDの一口に言えば作業部会と言いますか、その動きに並行じゃなくて、それに随行していくみたいな考え方考えなきゃならないのだというような考えは、ちょっとおくれているのじゃないかと思います。いまその研究中、調査中であるというようなお話ですけれども、この辺に関して、いつごろのめどを立てておやりになろうとしているのか、明らかにしなければならないと思いますね。そういう意味で、この法体系というもののあり方を、その本法の中で本法の中の一つの条文としての考え方というものをしていくべきじゃないか、こう思いますがね、どうですか。
  91. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) 先生御指摘のとおり、この税制自体はやがては導入しなければいかぬものだというふうに考えております。ただ、先ほど御説明が足りなかったのでございますけれども、現在の法人税法の中にも、たとえば寄付金の条項でございますとか、一応トランスファー・プライシングを特に目的としたものではございませんけれども課税できる体制は一応ございまして、私ども考え方としましては、先ほど申しましたように、一方で各国の制度あるいは執行状況といったものを調査するとともに、現行の制度も活用して、不正な租税回避等があった場合には、これをつかまえていくというようなことで対処したい、両面から対処したいというふうに思っております。
  92. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 日本の物品税なんというようないろいろな税法のあり方がややこしいのと諸外国は違います、そういう関係もあるでありましょうけれどもね。またこれを逆用して日本の親会社が米国など海外の子会社に通常より安い価格で商品を引き渡すというようなケースが大分出てきている、その中でいろいろな問題も起きてくるという、こういうどっちに利点があるかということ、それらも利点がどこの国にあって、わが国はどうであるかという、いろいろな問題点においては違うでありましょうけれども、ともあれこういう現実に起きている状態については、どう思っておりますか。
  93. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) トランスファー・プライシング、あるいは私どもでとっておりますタックスヘーブン対策税制といったものに共通する問題でございますけれども、企業が海外に所得を移転するという場合には、多くの場合は軽課税国といいますか、海外に所得を移転したことによって税金の節減ができるというケースが多うございます。税率がほぼ同じである先進諸国との間では、もちろんトランスファー・プライシングはあり得るわけでございますけれども、いま直ちに私どもの目から見て非常に大きな問題があるというふうには思っていないわけです。  そこで問題をまず当面の問題でございます軽課税国、タックスヘーブンといったものに限定いたしますれば、この点に関しましては、御承知のとおり五十三年の税制改正におきましてタックスヘーブン税制を導入しておりまして、そちらの方で留保金、海外に留保したあれを親会社の所得に加算しまして課税するということで執行を現に行っておりまして、そちらの方で把握ができておるというふうに考えております。  御指摘の残りの部分でございます先進国といいますか、ほぼ日本と変わらない税率の国との関係でございます。そこで、まあ若干問題が起こっておりますのは、たとえばアメリカとかで日本の支店、海外支店、アメリカに設けました支店等に課税する、トランスファー・プライシングを理由として課税するということにつきまして、それの第二次的調整といいますか、アメリカ課税したものを日本調整しろという話が起こるケースがあり得るわけでございます。この点につきましても、それではアメリカ課税したから日本ですぐ税金をその分だけまけてやるかという話になりますと非常にむずかしい問題もあるということでございまして、そういった点も考えながら検討してまいるということで対処したいというふうに思っております。
  94. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 タックスヘーブンのお話がございました。それで、しかも五十三年度に租税特別措置法の改正で、この問題については動き始めました。この問題についてはその法のもとに動いているわけでありますけれども、これも暫定法じゃなくて、本法の中に当然繰り込めていかなければならない、国際情勢の日本立場というものから考えていって、当然本法で考えていくべきだと私は思うのです。先ほどもトランスファー・プライシングの問題につきましてもやっぱり本法で考えていくのかどうかなんという答弁がございませんでしたけれども、当然その中から日本のあり方というものをこの際真剣に、それが処置に対する対応策としてのあり方じゃなかろうかと思うのです。  それから、ちょっと触れられたようですけれども、米国での日本の自動車メーカーが税制違反があったということで取り上げられた問題が、いまだに調査中とか係争中とかとも言われておりますが、こんなふうなことはどんなふうにいまなっておりますかね。
  95. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) まず第一点でございますけれども租税特別措置法ではなくて本法の方で措置すべきではなかったか、あるいはトランスファー・プライシングについても、導入する際は本法で処理すべきであるというふうな御意見でございます。  それについて若干御説明申し上げますと、タックスヘーブン税制を租税特別措置法に入れるにつきましては、やはり本法にすべきかどうかということを真剣に検討いたしたわけでございますけれども、結論としまして、租税特別措置法の方に入れました理由は、第一には、先ほどちょっと申しましたけれども、海外の法人の留保所得、これを内国法人の所得に加算するという、言ってみますれば、本来の課税のあり方としてはやや人工的と申しますか、頭の中で考えた理念的なものということもございます。そういったものを本法で書くかどうかという点につきましては、ややこの場合には特別措置法の方が似つかわしいのではないかという点が第一点でございました。  第二点は、こういった海外での企業活動といいますか、子会社を利用した企業活動をつかまえていく、把握していくという問題でございまして、いろんな意味で流動的な税制であり得ると、たとえば、先方の税制が変わる場合もありましょうし、新たに軽課税国として指定すべき国が入ってくるかもわからないといった問題もございます。それから制度自体としても、一つ制度をつくると、またそれから逃れていくというふうな工夫をなされる可能性もあるというふうなこともございます。つまり、制度が今後改善される、改善整備される可能性がなお残っておるというふうなこともございまして、制度の完熟を待って本法に入れるといった趣旨もございまして、租税特別措置法にしたという次第でございます。  第二点の自動車の米国での課税に関しましては、この点につきましては国税庁の所管でございますので、いま私が十分御説明申すだけの材料がございませんので、恐縮でございますけれども……。
  96. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 あなたの知っている限りのことを言ってください。
  97. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) 自動車につきましては、数社がアメリカで移転価格税制の対象とされて課税になるということになっております。この点に関しましては、何といいますか、時効中断といいますか、なお税金を払ってないのが実情でございまして、争っておるということでございます。現在日本アメリカとの税務当局間の相互協議といったものをやっております。なお、時間はかかるかと思いますけれども、そういった状況協議をしておるということで御了解願いたいと思います。
  98. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大臣はいまのような事情を御存じでございますか。
  99. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) どうも私はその方の詳細を知っておりませんで、申しわけありません。
  100. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 もう一つだけ伺いますが、フランスの追いかけ税ですか、この問題が今回の改正で、いままでは二五%であったけれども、今度は五%になった。こういうふうな追いかけ税になった。フランスという国は付加価値税だとか、もうあらゆるものの税が進歩しているようでありますが、その中でそういうふうな形に変わっていきますと、どの辺にどのような、早く言えばプラス面が大蔵省としては出てくるか、その辺のことを伺いたい。
  101. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) 御指摘のとおり、これまで追いかけ課税二五%であったものを、フランスの方が、言ってみますれば税源を譲歩したといいますか、日本に譲り渡したというふうな形で二五から五%に下げたということは、私はフランスが、言ってみれば、公平な立場から考えてみずから譲歩したということであろうと思います。それの影響と申しますのは、やはり第一番目に言いまして、税源を日本国にその分だけ譲り渡したということになりますから、税収の面でもそれなりにプラスになっておるということでございます。  それから、やはりフランスヘの企業進出というものが、何といいますか、誘発されるといいますか、従来よりも有利になるというふうなメリットがあるというふうに考えております。
  102. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 新条約の発効によりまして税収の方はどんなふうになりますか、その辺のところを日本とフランス、日本シンガポール、この点について御説明願いたいと思います。
  103. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) 実はたとえばフランスを例にとりますと、フランスで日本の法人の支店が所得を上げまして、そこでフランスでその分につきましては法人税が課税される、残りの物について五%の追いかけ課税があるわけで、理論上はそうでございますけれども、果たしてそれが計数の上で金額的に幾らかということになりますれば、海外に多くの支店網を持って活動しておる会社といいますのは、単にフランスだけに支店を置いておるというケースは少なく、各地に支店網を整備しましてやっておるということでございまして、法人で一本で申告がございますので、そういった意味で、残念ながら金額的には申し上げるわけにいきませんけれども、ただ、税収の面ではプラスになるというふうに考えております。
  104. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 支店と本店とのチェックの方法ですね、たまたま大分問題になったこともございます。支店でごまかして本店を潤わしていったというようないきさつなんかも過去にはございます。そういったようなチェックのあり方というものを厳重に当然なさっていられると思いますが、改めて問題を提起しておきたいと思います。  それから企業進出、日本人の渡航した数の問題なんかも、大蔵省から出された資料と私の手元にあるものと大分の差があるわけなんです。これは、私のは日本人の渡航目的のための出国者の数を法務省から取り寄せたものですが、この違いなんかもありますが、こういった点からもう少し質問をしたいと思ったのですが、私の与えられました時間がもう過ぎてしまいましたので、まだほかにも念を押しておきたい点があるのですけれども、その辺のことについて御答弁を願いたいと思います。
  105. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) 第二点の方の海外渡航者の話につきましては、外務省にお願いいたしますことといたしまして、第一点の海外支店の経理といいますか、税務上の操作等について十分目を光らしておけという御指摘でございますが、私どもとしてもその点は大いに留意していかなきゃいかぬと思っております。  支店の第一義的な調査権限はそれぞれ所在地国にあるわけでございまして、私ども、たとえば日本を例にとりますと、日本に出てきております海外企業の支店につきましては私どもの税務調査を行っております。日本から海外に出ていった支店に対してはその国の税務調査が行われるということで、第一義的にはそれでチェックがなされておると思います。しかしながらそれだけでは足りないということでございまして、国税庁といたしましても海外調査というものにつきましては非常に力を入れております。  なお、十分な体制にまで今後つくり上げていかなきゃいかぬという問題が残っておる面はございますけれども、海外調査というものは大いにやっていくという方針でやっております。
  106. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) 日仏間の渡航者の数でございますが、法務省で作成しております資料は渡航先としてフランスが挙がっている場合でございまして、最近の旅券制度によって渡航先国を特に明示しないで、欧州に渡航された日本人がフランスにも立ち寄るというのが、実際そういう実態がございますので、正確な数はなかなか把握できないという状態でございます。  私どもが承知しておりますのは、フランスに滞在する在留邦人は一万を超している、約八十の本邦企業が進出しているということと、本邦に滞在するフランス人につきましては、フランス人約二千人弱である、約五十社のフランス企業の支店が進出してきているということは存じております。  実際の渡航者の数につきましては、フランスに行った日本人の数は恐らく三十数万人と見られております。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 淺尾さん、最初にちょっと事実関係だけをお尋ねしておきたいのですが、日米共同声明が発表される前に総理に最終的な確認はいただいたのでしょうか。
  108. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) もちろんでございます。
  109. 立木洋

    ○立木洋君 最終的な確認をいただいた時間はいつでした。
  110. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 正確にいまここで時間まで記憶しておりませんけれども、ニューヨーク滞在中に総理大臣にそれまでの作業の結果をお見せして御説明申し上げ、さらにワシントンへ移ってからもその後の変化については随時御連絡しております。
  111. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、どうも新聞の報道によりますと、総理が第二回日米首脳会談の前に共同コミュニケがもうすでにできてしまっていたと、それで私としてはもっとつけ加えたい部分があったのだということを言われたということが出されておりますが、大臣このことについてどのようにお考えでしょうか。
  112. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私も新聞でそれは読んだことがございますが、総理からそういう話を私は聞いたことはないのでございます。  ただ、共同声明の出し方というのは、大体の場合、首脳の御意見も入れて、なるべく早く、首脳会談が終わればすぐに発表できるようにというふうなことでやっている場合が多うございますので、これは今回に始まったことじゃないわけでございまして、いろんな点を考えて、国民の皆さんになるべく早く知らせるという意味でそういうことをやっております。    〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕 ですからこれをやります場合には、首脳、総理にも意見も十分聞いてやることでございますが、そういう方法と、もう一つは、あれはちょうど田中総理がソ連に行かれたときには、終わってから案文をつくって発表したことがございます。そのときに国会で問題になりまして、誤訳が三十何カ所あるとか言って、国会で大分御質問が出てもめたことが実はあるのです。あれは会談が終わってから、それではということで両方でつくって至急やって出したという結果でございますが、二通りあるわけでございまして、どちらがいいかということはいろいろ御議論があるところと思いますが、大体の場合は今回と同じようなことで、事前に十分に総理、首脳の御意見を聞いて、両方で協議をしてつくるということをやっておりますので、私は従来のやり方と別なことをやったわけじゃないのでございまして、何かいろいろ皆さん方から御批判でもあればこれは十分承って、また私が落ち度がありましたら、これは私の責任でございますから、甘受していきますということを午前中から申し上げているわけでございます。
  113. 立木洋

    ○立木洋君 まあコミュニケのつくり方をいま御講釈いただいたのですが、いろいろあるかと思うのですね。私もわからないわけではありませんが、しかしいまのお話を聞いていますと、総理がそういうふうなことを言われるのは意外だと、いろいろなやり方があるので、私の方に文句が言われるならば、それはそのときは聞いてもいいがという、そういうニュアンスですか。
  114. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) それは何か人の悪い御質問でございまして……
  115. 立木洋

    ○立木洋君 いや、私は人がいいんですが。
  116. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私はそういうことを申し上げたのじゃなくて、総理からはそういうことを私は何も聞いてない、きょうもお会いしましたが、そういうことは聞いてないで、新聞で書いてあったということを見ただけでございますので、私はやり方は従来どおりやったわけで、首相にも担当の方から御説明は事前に申し上げているということでございます。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 いや、これは内容とも関係があるので、内容の面でちょっとお尋ねしたいのですが、きょうも大臣は、「同盟」という問題に関して言いますと、これは軍事的な意味が全くないわけではないと、これは日米安保条約がいままでもあったわけだから、しかし新たな枠組みが加わったということでは決してないのだと、そういうことを再三言われました。ところが、「同盟」という問題で一番重要なことは、一つは私はやっぱり第八項だと思うんですよ。ここでの役割り分担という問題がどういうふうになっているかということが問題だろうと。  そこで、端的にお尋ねしますが、この両国で、極東の平和と安全における役割り分担という問題に関して言えば、日本も極東の平和と安全に関する同盟でいわゆる軍事的な意味合いを持つならば、極東の平和と安全の問題に関しても軍事的な役割りを持つというように理解していいのでしょうか。
  118. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 軍事的には安保条約の運用でございますとか、あるいは安保条約その後ろにあります憲法の個別自衛権とか、そういうものを何か変えて新しいことを、軍事的な役割りを持つというようなことは一切何も向こう話し合いはしてないわけでございまして、この関係は従来と同じでございます。
  119. 立木洋

    ○立木洋君 いや、私は話し合いをしているかしていないかの問題ではなくて、この第八項の役割り分担をどう理解しているかという問題なんです。  一昨日、私大臣にお尋ねして、この極東の平和と安全の問題に関して、第七艦隊がペルシャ湾、中東に行くということに関してその役割り日本側が担うのかと言ったら、いやそういうことではない、しかしもちろん結果としては、これも大臣が言われた言葉を言えば、日本がみずからの国を守るということでしっかりやれば結果として米軍もほかのところへ行けると、こういうことを述べたわけですね。そうすると、いままで第七艦隊というのは極東の平和と安全のために日本海周辺で軍事的な役割りを果たしていたわけですね。だから、この軍事的な役割りを果たさなくて別のところに行くことができるというのは、言うならば軍事的な役割りをも日本側が担うという意味ではないですか。
  120. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) それはたしか御質問がスイング作戦か何かで向こうへ行く、その穴埋めのためにそういうことをやるんだということじゃないかというような御質問がたしかあったように私記憶しているのですが、そういうことじゃありません、周辺海域あるいは航路帯千海里というのは日本日本をみずから守るための努力でございます、これは極東の平和とか、安全とか、そういうことに新しいその軍事的な役割りをするわけじゃございません、日本を守るための努力でございます、日本防衛でございますというその結果としてそういうことが出てくるかもしれません、ということを私は申し上げたのでございまして、日本が極東の平和、安全のために新しく軍事的な意味を持った役割り分担するということではないということは、これはもうはっきり申し上げます。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 ところが大臣、外務省の首脳がこう言っているのですよ、これは外務省の最高首脳ではありませんが、外務省の首脳が言っているのを聞きますと、極東の平和と安全について日本も軍事的に役割りを担うということを方向づけたものと、こう述べているのですが、最高首脳はいかがお考えでしょうか。
  122. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 新聞でどう言ったかということを私はよく知りませんし、本人が言ったとおりに新聞に書いてあるのかどうかもその辺はわかりませんけれども、いま極東の平和、安全についての日本の軍事的役割りというのは何も新しく変えてこれから分担すると、そういうものじゃございませんということを、そういうことはできないのですと、軍事的役割り日本防衛をする以外は、ということを申し上げたのでございまして、もう立木さんも御承知のとおり、安保条約には地位協定があるわけでございまして、施設、区域は提供するということがあるわけです。あるいはアメリカ日米軍が極東の平和、安全を守るために事前協議でその使用ということがあるわけでございまして、それはいますでにもう何十年もあるわけでございまして、これはもう客観的な事実、それ以外のことは何もございませんと、こういうことを言っているわけでございます。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、御自分でお話ししていることに矛盾をお気づきになっていないようですが、淺尾さん、日本の今度P3Cが入ってきて対潜哨戒やる場合には、日本防衛のための哨戒を行うものですか、極東の平和と安全のために哨戒を行うのですか、この軍事行動は何のために行うのですか。
  124. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) あくまでも自衛隊の飛行機でございますので、日本の安全のために行うものでございます。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 そしたら、哨戒を行われる潜水艦は日本向けに行動するという標識を立てて来る潜水艦にだけ行うのですか。その潜水艦が極東のために軍事行動を行っていると、日本向けに軍事行動を行っているのか、極東向けに軍事行動を行っているのかというのは、あなたどこで分けてこれは極東向けだから哨戒はしないと、そういうことになるのですか、淺尾さん。
  126. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 自衛隊の対潜哨戒機が行動するという目的はいままさに私が申し上げたことでございます……
  127. 立木洋

    ○立木洋君 それは主観的にはそうなんですよ。客観的には違う。
  128. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私としては、主観的にしろ客観的にしろ、自衛隊の哨戒機の目的ないし行動というのは日本の安全以外にはないというふうに考えております。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 大臣ねこっち向いてくださいよ、あんたいやがらないで。  主観的には日本防衛のためだ防衛のためだと言うのですよ。私はそれが大変な矛盾だと言うのです。現に第七艦隊がいままで果たしておった軍事的な役割り、それを日本がしっかりそのところを守ればほかのところに行くことができますと、そしてP3Cが入ってくる。あれはP3Cだって五十年段階何と言ってました。いままで日本周辺の対潜哨戒をやるのはP2Jで、これは日本が自衛隊がやるので、P3Cというのは、アメリカがやっているのはこれは哨戒は極東全般をやるのですということまで言っておったのですよ。ところが、今度P3Cが入ってくる。もちろんこれは日本に入ってきて日本の自衛隊がやれば極東のためにやりますなどとは言わないのですよ。ところが、現実に相手の潜水艦というのは何もこれは日本向けだけに来ておるのか、極東向けに来ておるのかというのはわからぬですよ。何も旗立ててくるわけじゃない。それを哨戒しておるという軍事行動は、まさにいままでアメリカが担っておった役割りをもP3Cが、日本のあれが哨戒をして、米軍の間とガイドラインで話し合いしていけば、これは明確な軍事的な役割り分担じゃないですか。大臣それでも違うと言うのですか。それでも違うと言うならば、私は大臣ちょっと見損なったということになりますけれども、いかがでしょうか。
  130. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) やはり日本の自衛隊は日本防衛するためにある、それ以外は言いようのないわけでございまして、淺尾君が答弁したとおりでございます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 私は客観的に見れば、まさに今度極東の平和と安全における重大な軍事的な役割り分担に一歩踏み込んだと、まさにこれは片務的だと言ったりあるいは日本の自衛のためだなどと言いながら、現実には客観的にはもう分担が進んでいるのですよ。これはもう明確です。私はこのことだけをはっきり申し述べておきたい。それはそれしか言いようがないと、まさに大臣が言われたとおりなんです。主観的にはそうなんですよ。客観的にはそうではない。これ以上話を、この問題で進めては時間のむだになりそうですから、私は次に話を進めます。  アメリカに大臣おいでになって、米原潜が当て逃げ事件を行った中間報告を受け取られた。現時点であの中間報告をどのように評価なさっていますか。
  132. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 立木さん、さっき私の言ったことを何か言われましたが、それ以外ないわけでございます。日本の自衛隊は日本を守る以外にないわけでございますので、それはもう明確に申し上げておきます。立木さんと私はそこは意見が違います。  それから、中間報告をもらったわけでございますが、これは私は、あくまで中間報告というふうに思っておりまして、日本の調査の結果もアメリカに出しますので、それもアメリカでよく見てもらいたい、最終報告をなるべく早く出してもらいたいということを向こうヘイグ国務長官にも話してきたわけでございまして、最終報告がどの時点かで必ず来る、向こうもそれはやるということを言っておるわけでございます。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 海上保安庁の方、調査の結果が最終的な状況にまで進行しつつあると思うのですが、完成できたのでしょうか、どうでしょうか。
  134. 野呂隆

    説明員(野呂隆君) 海上保安庁といたしましては、日昇丸乗組員の方から事情を聴取いたしまして、それを取りまとめまして早急に公表いたしたいと、かように思っています。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 いつごろになりますか。
  136. 野呂隆

    説明員(野呂隆君) すぐに発表できると思います。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 きょうじゅうにでも……。
  138. 野呂隆

    説明員(野呂隆君) はっきりは申し上げられませんが、できるだけ御要請に沿うように、現在準備しております。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 最終段階になっているから大体問題点はおわかりだろうと思うのですが、そのアメリカの中間報告に照らしてどういう点に重要な問題点があるというふうにお思いになっているか。その重要な問題点だけを、ちょっと要点だけを短時間で結構ですから、ひとつ説明していただきたい。
  140. 野呂隆

    説明員(野呂隆君) 中間報告で不明な点でございますが、たとえば衝突の位置の問題、それから衝突直前における米原子力潜水艦と日昇丸との相対関係、あるいは衝突時の衝突の態様、それから事故後におきます米原子力潜水艦及びP3Cの捜索状況、こういう点が不明でございます。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 私の質問があれで、簡単にと言ったから余り簡単になり過ぎたのですが、位置と言ったらどういう点が矛盾になるのか、そこを内容のある簡単さで……。
  142. 野呂隆

    説明員(野呂隆君) それでは具体的に若干申し上げます。  衝突の位置につきましては、米側の中間報告とそれから日昇丸乗組員の供述をまとめましたものとを比較してみますと、三・五海里の差がございます。また、アメリカの潜水艦は、衝突後約五分間日昇丸を視認しておりまして、その間に日昇丸は遭難の徴候がなく、船橋で一人の船員が静止したままの状態で立って潜水艦の方を見ているのを視認したと、こういうふうになっておりますけれども、日昇丸側の証言によりますと、衝突後遭難し、かつ援助を求める旨のNC旗を後部マストに掲げ、左右両舷の救命いかだを降下し、また、乗組員等は船尾から次々と海中に飛び込んでいると供述しておりますので、相当の混乱があったと、こういうふうに推定されます。また、その他P3Cの捜索状況につきましても、中間報告によりますと、捜索海域を一〇〇%捜索したと、こういうことになっておりますが、捜索の方法、あるいは捜索の時間、あるいは捜索に関連する詳細な情報、こういうものが不明でございます。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、お聞きのとおりだと思うのですね。実際、中間報告では、私に言わせると、それはきわめて不誠実きわまるのではないだろうかというふうに言わざるを得ないような内容だと思うのですよ。これは、海上保安庁にしても、あるいは防衛庁の方の話を聞いても、もっと、時間がわかっているんだったら前もって言ってくれたらよかったじゃないかと言って、防衛庁の方も言っておりました。そういう中間報告に対して、ですから、私は、先ほど、現時点でどのように評価なさっておられますか、と。まあ海上保安庁、運輸省の方からおおむねの話は外務省の方にももう話は伝えてあるということなので、それを踏まえた上での中間報告に対しての評価を聞きたかったのです。その点一言だけ。
  144. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 内容につきまして、これがどうだというような、いま、簡単にして詳細と言いますか、御説明あったのですけれども、そういうことは私がニューヨークにいますときは頭に、記憶になくて向こうからもらったわけでございます。その後、海上保安庁にあれも伝え、海上保安庁から、なるべく早く中間報告か最終報告か別にしましてもらいまして、それをひとつ疑問があればまたアメリカに言ってやるということで、これはもう相手方にはっきりそういうことを言ってきたわけでございまして、きょう、あすか、近し機会にということを海上保安庁が言っておられるわけでございますが、国会に提出されると同時にもらって、そして、向こうのものと照合し、質問することは質問し、やっぱり納得のいくような最終報告を出してもらうように、これは日本として努力します。  中間報告を出してくれた、よこしたということに対して、私は向こうの誠意は評価しております。内容の問題は、これから海上保安庁のものとつき合わせて、そしてこれからやるつもりでございます。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 向こう側の中間報告に対して、大臣、お帰りになってから、アメリカ側に何事か、物を申されましたか。
  146. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私自身はまだ……。
  147. 立木洋

    ○立木洋君 いや、外務省として。
  148. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外務省として、どの点どの点と言ってまだ向こうに言ってありません。これは、海上保安庁からやはり正式なものをもらってから言ってやるつもりでございます。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 裁判の終わるまでなどと言ったら長くなりますし、だけれども、本当にやっぱり国民がこの問題について徹底的に疑惑を解明して再びこういう事態が起こらないようにというのが願いですから、この点に関しては、先ほど海上保安庁の方ももうすぐというお話もありましたので、これは至急アメリカ側にもいまの問題点をきちっと申し述べて、事実を解明するようにやっていただきたい。  その後いろいろ問題が出るでしょうが、しかし、私はここで特に要望しておきたい点、二点だけ申し上げたいのですが、やはり願いは、何といっても、事実を解明してそれで終わりではなくて、再びこういうことが起こらないということが問題だと思うのですね。それで、先般も、秋田沖における演習の問題が問題になりました。大臣お聞きのとおりですが、私いろいろ調べてみますと、私は、こういうふうな演習や訓練というのは中止すべきだというのが本来私たちの主張ですけれども、しかし、少なくとも次の二点、第一点は、日本のいわゆる客船や貨物船の航路の最も激しい、何といいますか、行き来の激しい航路帯と言いますか、こういう地域、こういう航路帯を含む地域、海域。それからもう一つは、調べてみますと、日本では近海に漁場が大体二十四カ所余りあるのですね。それから、さらに沖合い等々を含めますと十三カ所ふえますから、三十七カ所ぐらいですか、いわゆる近海、沖合い等々にはそれだけの漁場があるわけです。これは年じゅうじゃありませんよ。たとえば、ここは一カ月間だとか、ここは二カ月間だとか、そういうふうになっているわけですね。そうしますと、先般も問題になりましたように、非常に集中的な、決められた短期間にそこが漁場となるために漁船が集中する。だから、そういう漁期にある漁場は、やはり演習や訓練はやらさない。この二点を、アメリカ側ともよく申し入れをして協議をしていただきたいということ、ぜひとも、こういう問題がやっぱり国民の中にありますから、漁民の要望もあり、いろいろ船員の方々の要望もあるので、このことはぜひ話し合いをしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  150. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは、日本近海における演習の問題でございますので、これは、おっしゃることは私はわからぬじゃないことでございまして、防衛庁とよく相談しまして、できるだけの御要望に沿えるような時期に場所にそういうことができるかどうかということで、防衛庁とこれはよく私の方は、いま出ました御意見外務省からも防衛庁に伝えます。
  151. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、本当にしっかりお願いします。外務省の最高首脳として日本外交を預かっているわけですから、そういうやっぱり漁民や、そういう人々のみんなの要求がしっかりと外交に反映させられるように、再びこういう事故が起こってからでは遅いわけで、重ねてお願いを申し上げておいて、条約についての質問をさしていただきたいと思うのですが……。
  152. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ちょっと済みません、委員長。  いまの立木さんのお話は、私は演習の話と、こう承っていたのですが、違いますか。
  153. 立木洋

    ○立木洋君 演習訓練。
  154. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 近海で演習をやると、それはたとえば日本防衛庁と米海軍がこの間秋田沖で演習をするというようなときの話だと思って私はお伺いをしたわけでございますが……。
  155. 立木洋

    ○立木洋君 そうです。
  156. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) わかりました。そういう前提でございますれば、これはわからぬことではございませんから、防衛庁に、なるべく漁民その他の要望が通るように、外務省としても話すつもりでございます。
  157. 立木洋

    ○立木洋君 租税条約に関してお尋ねしたいのですが、最近の海外の子会社や海外取引などを利用した企業の国際的な脱税がふえているというふうなことがいろいろ問題になっているようであります。この問題に関する実態ですね。それから、その後、先ほど同僚議員からも問題が提起されましたように、タックスヘーブン税制が施行されたり、あるいは専任調査官などを置いて、こういうような国際的な脱税の状態というのが多少なりとも改善されてきたのかどうか。そういう脱税の実態、その後の改善の方向がどうなっているのかという点について、最初にお尋ねしたいのですが。
  158. 谷始

    説明員(谷始君) 最近の海外取引の増加、企業の海外進出の拡大というものが非常に顕著でございまして、税務調査に際しましては、海外取引を利用した不正というものを特に従来から十分留意して調査をしてきております。特に、海外子会社を有するような大きい法人、こういう大きい法人につきましては毎年のように実地調査を行う、延べ数百日というふうな日数をかけて調査しておりまして、重点を置いて調査をしておるということでございます。  その結果でございますが、海外取引に関連します不正所得というのが、昨事務年度でございますと、約六十億円というものを把握いたしております。タックスヘーブン対策税制、御承知のように五十三年に導入されまして、これに基づく申告というのが、五十四事務年度では、親会社の数で二百二法人、子会社の数にいたしまして九百二十二法人でございますが、百十億円という所得が親会社の所得に合算されて申告をされております。これにつきましても、そのタックスヘーブン対策税制というものの本旨に従いまして、十分留意して調査をしていくということでやっておるわけでございます。現在調査が始まったばかりでございますので、まだどんなふうに見るかというところまでは至っておりませんけれども、そういう申告の状況でございます。  それから、国税庁としての対処策でございますが、まず、わが国企業の海外事業所の実態あるいはその所得の把握ということにつきまして、米国を中心に年間約三十人程度の調査官を派遣をしておりまして、調査に派遣をするということをやっております。  それから、租税条約に基づきまして、情報交換というものを相当の国、約三十ぐらいでございますが、やっておりまして、情報交換の活発化ということも努力しておるところでございます。  それから、国税調査官の外国語、貿易実務、そういったものの研修の充実ということもやっておりまして、ことし幸いに、国税庁に海外調査、国際調査担当の企画官という制度も設けていただきましたので、さらにこれらの施策を充実してまいりたいというふうに考えております。
  159. 立木洋

    ○立木洋君 谷さんとおっしゃいましたか、百十億円といったら、これは大変なものだと思うのですよ。私もちょっとお聞きしたところによりますと、国内では脱税が一件当たり二千百六十六万円ぐらいだと。ところが、それが百十億ということになると、一件当たりの脱税金額というのが約三億だというのですよ。これは大変な額だと思うのですね。いま大蔵省は、財政を締めなければならないということで、財政再建ということで大変な状況で、四苦八苦やられておるわけですが、こんな莫大な税金が海外でそういう脱税されておるというようなことになれば、これは当然対策というのは強化していかなければならないだろう。  それで、いろいろ調べてみましたのですが、たとえば、日本における最もそういう関係で、東京の国税局の方では、海外から日本に来ておる外資ですね、あるいは海外の法人、こういう面についてはある程度調査体制だとか、そういう防止体制等々については体制があるけれども、しかし海外においてはほとんどそういう体制がないと。で、外国の例を見てみますと、現地にいわゆる専任官を派遣して、現地でそういう防止体制を組むというふうなところも、アメリカを初め、先進資本主義諸国ではやられておるというふうに聞いているわけですね。そういうような大変な脱税状態というのが日本にあるわけですから、そういうものも、海外の先進国の状況も学んでそういう脱税体制を防止するという、現地専任官等々を派遣するような、そういう問題については検討されているのでしょうか。
  160. 谷始

    説明員(谷始君) 二つお話がございまして、タックスヘーブン対策税制に基づく百十億の合算申告というのは、まあそれは脱税されておったということではないのじゃないかと思います。タックスヘーブン対策税制が導入をされなければ、それは向こうは税金がかからない、あるいは軽課税国でございますから、いわば合法的に税金かからないわけでございますけれども、税制導入の結果、それが合算して申告をされたと、自主的に申告された金額でございまして、私ども、その百十億の申告というのが正しいかどうかというのを調査をしているという状況でございます。  それから第二点の、私どもの海外調査体制でございますけれども、御指摘のように、国内におきましては、海外から日本に参っておる法人、個人の調査のために、たとえば東京国税局にそういう部門がございます。で、一方、わが国の法人の海外所得につきましても、調査の際に最重点を置いて調査しておるということは先ほど申し上げたとおりでございますが、この組織といたしまして、たとえば御指摘のように、アメリカでは海外調査専門の部局がございます。かなりの数の人間を海外に派遣しておるというのは事実でございます。私どものところでは現在、海外に常駐しておりますのは、アタッシェがアメリカに二人ということでございますけれども、年間相当数の調査官を派遣するということをやっておりますし、それから国際租税セミナーというものを税務大学校につくりまして、毎年五十人ぐらいそういう専門的な素養のある者を養成しておるというふうなことをやっております。確かに、いま体制が十分かと申し上げますと、まだまだこれから徐々に拡充しなきゃいかぬとは思っておりますが、精いっぱいがんばっていきたいと思っております。
  161. 立木洋

    ○立木洋君 直接的にはそれは脱税という言い方がどうかという問題はありますけれども、しかし、現実にタックスヘーブンの形でやられればまあ大差ないような感じがあるわけですね。  それで、いま言われた専任官の問題と、それからもう一つは移転価格操作という問題が問題になってきているわけですが、この点については、企業の輸出価格等々がどういうふうに実際になっているのかというふうなことを実態を調査をして、そういう移転価格操作を防ぐというふうな新規税制も導入すべきではないか。これらの問題に関しても、たとえば国際的には、OECDなんかでもいろいろの勧告がなされているような話も聞きますけれども、こうしたような、先日の新聞でしたか、外務省もOECDの勧告に賛意を示されるような報道がありましたが、この点についての検討はどういうふうになっているのでしょうか。
  162. 真鍋光広

    説明員(真鍋光広君) お答えいたします。  移転価格税制につきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、やはり真剣に検討していかなきゃいかぬというふうに思ってます。かたがた、現行法制のもとでも対処できる面もございますので、そちらの方も重視させていきたいというふうに考えておるわけです。  先般新聞に出ました多国間条約の件についてお尋ねだと思いますけれども、この点につきましては、要するに国際課税の重要性というものは、まあ企業の国際化といいますか、国際的な取引の展開につれまして、主要先進国共通の関心事となっておるわけでございまして、そういった問題意識を先進国の協議の場でございますOECDで取り上げて、技術的にこれを深めていこうということでございまして、その中のアイデアの一つといたしまして、多国間条約、執行面で多国間の条約みたいなものができるかどうかというふうなアイデアが、アイデアの一つとしてあることは事実でございます。ただ、何分まだアイデアの一つとして出てきたにすぎません、果たしてこれがどういうふうにまとまるものだか、あるいはほかの方向に展開していく、そこのところはいまのところ全くよくわからないというのが実情でございます。いずれにしましても、わが国としても今後に向けてさらに検討していかなきゃいかぬ問題でございますので、OECDでの検討に参加してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  163. 立木洋

    ○立木洋君 最後ですが、結局、今度の租税条約によっても、いろいろ日本課税権が規制されるといいますか、あるいは実質税収が少なくなるわけですし、そして実際には日本の企業が海外に進出していくことを助ける。ところが現実にはこういうふうな所得の不適当な申告といいますか、あるいは価格操作等々による言うならばペーパーカンパニー等々の通過によっていろいろとそういう脱税的なことが行われている。現実には海外でいろいろ問題になるだけではなく、日本においても現実にいま財政再建で重大な中で、こういう事態がそのまま放置されているということは何としてもやっぱり早急に改正されなければならない点だろうと思うのです。この点そういう事態が速やかになくなるようによく検討していただきたいということを最後に要望を申し述べて、私の質問を終わります。
  164. 木島則夫

    ○木島則夫君 「同盟関係」が日本にどのような責任役割り分担を具体的に行わしめるか、これは今後行われるハワイ会談などを通して具体的に当然出てくるであろうと思います。この「同盟関係」の解釈内容については、疑義は当然ただしていかなければならないことは事実でありますけれど、大事なことは、これまで積み上げてきた日米関係、またこれからも大事にしていかなければならない日米関係を損なわしめてはいけないということを前提としなければいけない、こういう態度を私どもは率直に申し上げておきたいと思います。  それにしましても、日米首脳会談の結果をまとめた共同声明をめぐって政府内部での受けとめ方の相違がありまして、首相の報告が揺れ動いたというこの事実は、やっぱり日本外交の姿勢、基本姿勢に関する問題につながるという意味で、私はやはり率直にこれをお聞きしたいと思うのです。同盟が軍事の面を持っていることは、外務省当局がおっしゃるように、日米安保条約があるのだからこれはもうあたりまえの話だと私は思うのです。これを何か糊塗しようとする、そして押さえ通すことができないということになると、政府の統一見解というような形でニュアンスを変えて軌道修正をされる。もっとこういう問題は私は率直であっていいと思うんだね。こういう態度こそ、共同声明でうたっている日米の「同盟関係」、つまりパートナーシップに傷をつけることになり、安全保障についての国民のコンセンサスづくりに対して私は水をかけることになって、それが政治不信、こういう悪循環を繰り返していく。ことに日本の歴代の政府がとってきた安全保障に対する基本姿勢というものは、いつもおずおずとしながら、つまりアメリカに対してはいいことを言ってきた、しかし国内に帰ってくるとその報告は何か国内向けに、両面をいつも使い分けながら、結果してそれをなし崩し的に行ってきたという、大変こそく的な面があったように私は思うわけでございます。同盟関係にある日米が平和と安全についてこれこれこういうふうに話し合った、日本の平和と安全についてはこれだけの役割り分担が必要なんだということを日本も率直に認めた、しかし日本には憲法とか財政あるいはこれまでの感情、国民感情の経緯などがあるので、できることとできないことははっきりしているのだということをもっと率直に国民の前に報告をしていただいて、そして御議論を願うという態度こそが私は基本的な政治のあり方ではなかろうかと思うわけでございます。で、佐々木委員長が今度ヨーロッパを訪問して帰ってまいりました。日本とは立場が違うことは当然でありますけれど、西側が一致結束して、軍事の面でもその力を増強しながら、片方で平和戦略を積極的に推し進めながら世界の安全、平和に立ち向かっていると、これは私はごく常識的な姿ではなかろうかと思う。もちろん、さっきから言っているように、日本でできることとできないことがあることは当然でございます。  そこで、外務省が、これはあくまで報道を通して私が理解をしていることでございますけれど、共同声明の作成の過程や首相の報告に対して外務省が反発をなさっている、私はむしろこの態度こそ当然な態度だと思うんですね、外務大臣。そして、私は非常に外務大臣としても積極的に前向きなここでの日本外交への取り組み、御発言などから見て、やはり当然軍事面が入るべきなのに、それをことさらないようにないように言いくるめてくるような、そういうことに何か耐えられないと言っちゃオーバーな言い方かもしれないけれど、やりきれなさをきっと感じていらっしゃったものと私は思うのですね。  そこで、率直に伺いたいのだけれど、どうなんでしょうか、もっと率直に報告をすべきであったのではないか。こそく的なこの種の報告こそ日米関係のパートナーシップに誤解を生じせしめる、そして西側一員としての日本立場をも信用を欠くものに結びつけていく危惧がありはしないだろうか。さらに、さっきからも申し上げているように、このことが日本の平和、安全保障への国民のコンセンサスづくりについてのまとめに水をかけることになりはしないだろうか、つまり政府の安全保障政策を含めた外交の姿勢ですね、大臣。私は、今回のこの軌道修正、大揺れ、何かこういうものが、せっかく共同声明で成功した成功したと言ってお帰りになった、この鈴木首相を初め政府に対して世界の不信を買ったのじゃないかと思う。率直にこの点をただしたい。  で、明日私は直接本会議の質問で総理に細かい点ではただしますから、きょうはこの一点について伺って、首相のお答えをまってしかるべく委員会で後日問題を煮詰めていきたい。その前提として、日本外交のあるべき姿、私がいま言った安全保障を含めての日本外交がこんなことで一体いいのかどうか、西側一員としての責任分担は私はこんなことじゃできないと思う。そして、日米パートナーシップと言っておきながら、あっちへ揺れこっちへ揺れ、とどのつまりは落ちつくところに落ちつくという、一体こんな姿勢でいいんですかね、外務大臣。私は先が思いやられる。この辺はっきり外務大臣の率直な日本外交のあるべき姿という点でお聞きをしておきたい。いかがでしょうか。
  165. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いろいろ御批判がございましたが、日米関係で話し合ってきたこと、共同声明に盛られていることにつきまして、これは何も政府部内で意見が分かれているとか不統一であるとかということはないわけでございまして、私も奇異に感ずるのでございますが、総理の言っておられることは、それは何もこの「同盟関係」ということによって日米の枠組みが変わるとか、あるいは新しい軍事的意味を持つものでないという意味のことで言っておられるわけでございまして、日米関係の中に安保体制というものがあることは、これはもう客観的な厳然たる、それも何十年も前からあることでございますので、これはもう当然ということで、その上に立って新しい軍事的な意味の負担をするような枠組みを話してきたのじゃないということが総理考えておられることでございまして、この点は総理も私もみんな一致しているところでございます。  で、外務省のいわゆる首脳が話したということは、私は本人にも聞いたのでございますが、何も首相や私と別な意見を持っているわけでもなし、それを批判しているという意味でもなく、あたりまえのことを言ったのでございまして、安保体制というものがあるのだということが一点と、私が安全保障条約につきましては五条で、これは片務的な、憲法その他の関係で片務的なものだと、日本が不当に攻められたときに日本アメリカも一緒に守る、アメリカが攻められたときに日本が守るということはこれはできないのだということで、片務的だということを私は国会で説明をしたのでございますが、首脳がしゃべったといって新聞に出ておりますのは、またアメリカも施設、区域の提供があって極東の平和、安全を守るために利益を受けているのだということを説明したのであって、これは私もそれは当然そこまで説明すればなおよかったのかもしれませんが、何も意見が違うことはないわけでございまして、アメリカへ行ってきて話したことはそのままでございます、総理もそのまま言っていられる。何もアメリカには甲と言って日本に帰ってきて乙と言ったというようなことは毛頭これはないわけでございますかち、その点はひとつ誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。ただ、新聞紙上いろんなことを言われた、あるいはそういう意味の御質問を受ける、日米の今度の首脳会談舞台回しをしました私に何か落ち度があればこれは一切私の責任でございますということを申し上げているわけでございまして、特に日本防衛を含めた外交関係が揺れているとか、そういうことは一切ないということだけはもうはっきり申し上げておきます。
  166. 木島則夫

    ○木島則夫君 私は明日直接質問をする機会がございますから、総理にも私からその辺の疑念ははっきりと申し上げておきたいと思いますけれど、これほどお帰りになった報告が問題になる、つまり軍事の面はないのだ、ないのだ、ないのだということをことさら強調なさる、そして外務省の首脳がいや軍事の面もあるのだと、こう言われる、そうすると、そこで政府の統一見解なるものが出てくる。これは新聞がお取り上げになるのは自由だと思う。しかし、こういう日本の扱われ方がアメリカやヨーロッパにどういう影響を及ぼすか。それはやっぱり出たところは政府だと私は思うのですね。ですから、さっき申し上げた日本の安全保障を含めた基本の外交政策というものについてもっと自信をお持ちになったらどうかということを申し上げている。その点で私は外務大臣総理の認識の差があったとはっきり思う。その点ありませんか。これはあした私は総理にお尋ねをしてその辺の真偽はきちっとしたいと思うのだけれど、それではこういう扱われ方、そしてその扱われた原因というものがやっぱり首相の御報告なりにあったとするならば、これは私がさっきから申し上げているようないろんな心配、危惧につながらざるを得ない。こういうことに対してもう一度ひとつ外務大臣、率直に聞かせてください。
  167. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げます。  総理と私とで今度の共同声明あるいは防衛に対する考え方、全然違いがありません。
  168. 木島則夫

    ○木島則夫君 結構です。    〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕
  169. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 外務大臣、きょうはお元気ですか、よくなりましたか。この前大分遠慮したものだから。  この前、外務大臣に承りました。今度は、首脳会議が終わっていままでの日米関係に軍事問題も含めて変化はないのかと、こうお伺いしましたら、変化はないと、こう言われましたね。そのとおりですね。
  170. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そのとおりでございま
  171. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そのとおりではなはだ結構だと思いますね。私は日米安保条約締結時代に自民党の代議士をしていて、それで外交委員をしていましてね、それでこの安保条約締結前後の事情をよく知っているわけです、締結ですね、新安保条約締結したわけですから。旧安保条約が変えられるときの事情をよく知っているわけですけれども、とにかく片務的と誤解される面はもちろんこれはあるわけですね。とにかく大体占領下で占領の実態をそのまま法文化したようなものが旧行政協定であったわけですからね。ですから、それを新安保条約ができて徹底的に改めればよかったのだけれども、多くしっぽが依然として残っている。ですから、私らは安保条約の改定をするなら行政協定の徹底的な相互性をもっと、相互性といいますか、対等性を求めたわけですけれども、それがどうもそうでない。この前の委員会で外務当局に基地の数と、それからたとえば軍票の使用権なんというものは依然として残っておるわけですけれども、これは紙の上のものだけだというのですが、しかし電波とかそれから電力に対する特別な使用権、それから基地などはすでにもう相当多くの基地を依然として持っておる、そういう状態なんですね、それで、その基地の数とそれからこの電波の問題について資料を出すように要求しておいたのですが、まだ私のところに届いておりません。これは非常に重要なことですから、直ちに私のところに届けるようにひとつ外務当局に御指示を願いたいと思いますね。
  172. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先日当委員会で宇都宮委員から御要望がございました資料は目下取りまとめ中でございまして、取りまとめ次第御提出いたします。
  173. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それがありますると、きょうはそれについてもう少し詳しく御質問したかったのですけれども、きょうはそれがありませんから何ですけれども。  いずれにしましても、あの条約相互性というものはどこにあるかと言いますとね、それは日本が攻撃を受けた場合、日本のあらゆるところに攻撃を受けた場合には、アメリカ軍は、武力攻撃を受けた場合ですね、アメリカ側が武力をもって対応するのだということを内容としたものですね。それからもう一つは、アメリカの方ですけれども日本アメリカが多くの基地を持っている、そのアメリカの基地に対する武力攻撃は日本に対する攻撃とみなす、こういうところで相互性があると、そういう安全保障条約です。ですから、普通の相互防衛条約とはなはだ違うわけですね。そういうものなんですから、これは片務的であるということはしばしば言われるのですけれども、そこら辺に言われる根拠はありまするけれども、しかし決して片務的ではないと、多くのものを提供していますし、それから提供したところに対する攻撃、これは本来アメリカに対する攻撃が日本の施政権下になされるという意味相互性を持っていると、こういうことです。  それで外務大臣安保条約というものに対して現在どういうふうに考えられますか。これは軍事同盟ですか。
  174. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 安保条約の中は先生も御承知のような軍事の面も多分にあり、それから経済面も入れておりますので、純粋な軍事条約ということを言えるかどうかという問題がありますが、それは多分に軍事のことが多いのですから、そういう性格が非常に濃い条約というふうに思います。
  175. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それで、私どもは一貫して、この安保条約が存在しているけれどもそれはもう抑止力として作用すべきであって、もしも安保条約が現実に発動されるような事態になっては大変である。ですから、私ども安保条約が成立した当時の仮想敵といいますかね、アメリカ人が主として脅威と称したものは中国だったわけです。中国の脅威が盛んに言われたのですね。朝鮮戦争がありまして、そして北は侵略国だ、その侵略国を応援したのは中国だと、国連も北朝鮮と中国を侵略国というような規定をしたこともありました。それで中国の脅威が盛んに言われたわけですね。しかしながら、もしも中国が本当に日本を侵略して、そして安保条約が現実に発動する、こういう事態になりますと、これはもう日本国民にとっては決定的な不幸をもたらすことは間違いない。勝利を得るものはアメリカであって、被害を受けるものは日本である、こういうことですね。ですから、私ども安保条約が存在していてもそれは現実に発動することがないように努力する。これを私の二十年来の外交努力の中心にしておりまして、そして日中関係のみならず米中関係さえ非常によくなっておるわけです。ですから、抑止力として一定の武装勢力とか、あるいは相互援助条約的なものとか、日本安保条約的なものとか存在することはいいのですけれども、それが現実に発動する事態というものは、これは全力を挙げて外交当局は防がなきゃならぬ、こう思いますが、どうでございましょうかね。
  176. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは全然同感でございまして、これは安保条約が抑止力になって平和がずっと保たれるということを期待するわけでございまして、現実に条約が発動してということの事態は、これはもうアジアの平和がひいては世界の平和にとっても大きな問題になるわけでございますから、外交努力というのは、現実にこれを運用しなくても済むように、平和ということについてもう最善の努力をするということが日本外交の役目だというふうに思っております。
  177. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 今度の日米会談で非常に問題になったのは、レーガンが政権につきましてタカ派と言われている政権ですね、それが日本にいろんな軍事的防衛力増強の要求を持ち出すだろう、それを首脳会談でどう決定されるのかということが非常に問題だったために、一体軍事同盟なのかどうかというような議論が蒸し返されておるんだと思いますが、この今度の会談における軍事条項といいますか、軍事関連事項というものは一体どういうことでありましたか。
  178. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 首脳会談で出ましたのは、防衛の問題の一般論で実は話が出たわけでございます。各地域の問題で、いわゆる国際情勢の認識の問題ということがございまして、それについて両首脳が話し合いをされるということが前提にございまして、アメリカ側は一般の予算を削減するという中で防衛費というものをふやして防衛努力をするのだという一般論の説明がございました。そして鈴木総理からは、日本の国会でおっしゃっていると同様な憲法上の制約、専守防衛、軍事大国にならぬ、非核三原則あるいは国民のコンセンサス、特に財政再建の話をされまして、日本としてはそういう非常にむずかしいいろんな前提があるのだ、そのもとに努力をしているのだ、というお話があったわけでございます。それに対して向こうレーガン大統領からは、それは理解する、そしてアメリカは強制あるいは圧迫と言ってはなんでございますが、強制してあるいは憲法上できないようなことまで日本にやってくれということは言わないというような話でございまして、それはヘイグさんとの話し合い、それからワインバーガーさんとの話し合いでも同じ一般論でございまして、具体的な要求というものはほとんどなかったわけでございます。でございますので、具体的な要求というものでも、要請、期待というものでも何かあれば、こういうことがアメリカが要求されたんだけれども、こういうことはできないと言ったのだというようなことを皆様方にも御報告することができるわけですが、そういう具体的な事項についての要請はなかったということで、一般論で防衛の話があったということが実相でございます。
  179. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 よく日本新聞なんか見ますと安保ただ乗り論というのがありますね。ただ乗りはいかぬ、どうにかしなければいかぬという議論なんでしょうけれども外務大臣はあの安保ただ乗り論というものをどういうふうに考えられますか。
  180. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは向こうへ行きまして今度は余り出ませんでしたが、私三月に行ったときは国会で、特に上院、下院でこういう話が出たわけでございますが、安保条約というものは極東のこれは安全平和といいますか、そういうものに、あるいは日本防衛もでございますが、抑止力になっているということでございまして、極東が平和であるということはやはりアメリカにとっても非常にこれは利益のあることでございますし、また具体的にとってみましても、日本ではやっぱり施設、区域の提供をし、そして負担もことしは大体十億から十一億ドルになりますが、日本も負担をしているということは、やはりアメリカにとってもこれはアジア、極東の平和を保てるのだというような大きなメリットがありますし、またそういう十億か十一億ドルになる日本が負担をしておるということも、これはアメリカにとってはメリットでございますので、何もただ乗りをしておるのじゃなくて、こういう効果があるじゃないかというのが私の意見でございます。
  181. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 日本の国民として聞きますとね、何かただ乗り論なんていうものは無銭飲食みたいではなはだ感じがよくないわけですね。それで、私どもはずっと経過を知っていますからなんですけれども、まあ大体力によって日本は占領されたわけです、実際言いますとね。その後、占領の実態をそのまま認めるような行政協定というものができたわけなんですけれども、その行政協定のときには駐留費を日本が負担していましたね。その後、行政協定が存続するにもかかわらず紙上の権利になって、日本が払わなくなりました。なりましたけれども防衛分担金という制度があって、それでお金を負担していたわけですね。で、まあ防衛分担をお金で計算することはむずかしいけれども、そういうものを要求するという空気はアメリカに存在しているんですか。
  182. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 今度の話し合いでそれに該当するような、アメリカはこういうところでこういう活動をするのだから、それに対して分担金をというようなことは、一言もございませんでした。
  183. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 アメリカの国会方面では、主として財政的理由からそういう空気があると聞いていますが、外交当局はどうですか、そういうことを聞いていますか。
  184. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 在日米軍の経費の負担につきましては、従来からアメリカ日本がより負担してほしいという期待の表明があるのは事実でございます。それ以外に防衛分担金というような趣旨で負担してほしいというのが政府間で話があるということはございません。
  185. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 アメリカのつまりいろんな飛行機があるわけですが、この潜水艦哨戒用の飛行機を買えというような話はあるわけですか。
  186. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 今度行きまして、そういう具体的な要請とか何かは一切出ませんでした。
  187. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私どもが現在非常に心配しておりますのは、やっぱり米ソを中心にする核の増強競争といいますかね、核戦争というものは要するに先制攻撃が一番有利なんですから、お互いに抑止力と言ってこうやっていますけれどもね、量が極端に大きくなっておると同時に、質的にも大変変わってきて、特に宇宙衛星なんかと関連していろんな危険な様相が出てきているわけですね。それで、アメリカもソ連もとにかく軍事予算が相当大きくなっておる。一九七八年あたりにすでに五千億ドル、こういうことで、五千億ドルという数字はちょっとつかみにくいですけれども、当時の世界の総貿易量が大体一兆ドルですからね、まあ輸入なら輸入片道だけ計算した総量ですけれども、一兆ドルですから。一九七八年の段階ですでに世界の総貿易量の半分が軍事費に使われておる、そういう状況である。それが最近のいろんな報道を見ますと、アメリカは大体二、三年後には三千億ドルぐらい使うだろうと。その当時は、つまりソ連が大体千二、三百億ドル、アメリカも大体その程度ということだったわけですけれども、最近のいろんな諸情報を見ますとそういうことを言っている。これは何といいますかね、いざ爆発したときにはどうしようもない地球上の情勢になるごとは間違いないわけですね。こういう情勢に対して、政府は今度は首脳会談をされましたときに、レーガン大統領に何らかの忠言をされましたか。
  188. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その問題につきましては、むしろレーガン大統領の方から先に話が出まして、特にソ連との認識の問題のところで出たわけでございますが、ソ連と力の対決、それだけで考えていくのじゃない、やはり話し合いということは自分たちも必要と思うと、そこの中に防衛の問題あるいは通商の問題等出たわけでございます。あるいはヘイグさんと私が話したときは、ヨーロッパで戦域核の問題はことしじゅうに話をソ連と始める、グロムイコ外相にも九月に会うから自分の方からも話すつもりだということで、その問題につきましてアメリカも、これはアメリカとソ連が一番問題でございますから、ソ連に話をしていく用意ありということでございましたから、それは非常に結構だということで話をしたわけでございます。
  189. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 今度の共同声明の中に、非常に何といいますか、ちらっとですけれども、軍縮をすべきであるという提案を首相がされたということを聞きましたが、これはどうでございますか。
  190. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 共同声明のとおりでございます。
  191. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そして話し合いの中ではどうでございますか。
  192. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 軍備管理のときにそういう話が出たわけでございまして、特に核でございますとか、あるいは通常兵器とか、そう分けての話ではございませんが、軍備管理の中でそういう話ということでございます。
  193. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 実は昨日、衆参両院の議員が各党超党派的に集まりまして、現在の世界情勢は軍拡競争に血走っていてはなはだ危険である、これに何らかの歯どめをかけなければいかぬと、これは特に日本のような国家は地域的にも非常に狭いところに人口、産業が密集していて、一つの、たとえば核爆弾なら核爆弾の効率が余りに高過ぎる国家であるから、とにかく平和を維持するという基本姿勢が必要であり、そのためには現在の軍拡競争のようなものははなはだ危険である。つまり、生き残る可能性の非常に少ない民族になるわけですから、だから、現在の軍拡競争にブレーキをかけるべきであるという意味で、現在与党の五十人を中心に入会を正式に申し込んだ方が百三十三人おりますけれども、そういう議員連盟ができたということをあなたにお伝えし、あなたの基本的な平和的姿勢を私は激励したい、こう思うわけでありまするけれども、この議員連盟の成立に対してあなたはどういうふうにお考えになりますか。
  194. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私も新聞で拝見しましたが、国会の方々がそれぞれの見識でそういうものをおつくりになって協議されるということは結構なことだと思います。
  195. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それではもう時間がまいりましたから、これをもって終わりますけれども、どうも御苦労さんです。御健康を心から祈ります。
  196. 山田勇

    ○山田勇君 条約質疑をする前に、少し日本側の報告書の問題についてお尋ねをいたします。  先ほど海上保安庁の方は時間の問題的な発言でございますが、局長の方ではこの報告書をもう入手されておりますか。
  197. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 運輸省が国会に提出すると同時、あるいはその直後に私たちの方にもそれが届くことになっております。
  198. 山田勇

    ○山田勇君 プレス関係が一時半で二時の運輸委員会、運輸委員会開催前にはぼくも資料要求として要求したんですが、出せないということで、これはもう二時を過ぎております。当然その詳細の報告は入手されていると思ったんですが、私も運輸省の方に資料として要求をしたのですが、いまだに届いておりません。  それで日昇丸事件にもちょっと触れてお尋ねいたしますが、先日の外務委員会で三時から第一回会談ということでしたが、正式には四時から行われたそうですが、その後アメリカ側から外務省の方に何か会談後の報告的なものは来ておりますか。
  199. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ございません。
  200. 山田勇

    ○山田勇君 いま大臣ちょっと席を立たれたのですが、私きょう相馬さんとも電話でもお話をさしていただいたのですが、御承知のとおり、外事紛争処理委員会というものをつくるのが解決方法としてはまずこれが第一点、第二点は直接海軍長官の決裁ないしロング米太平洋軍司令官の解決と、直接問題を持ち上げて処理する方法、その二点しかないということを、リード大佐、海軍の法務官でございますが、相馬弁護士に伝えたそうでございます。  そこで、私としましては、まあ外事紛争処理委員会にこれをかけますと、後三人の法務官を含めてまあいわば裁判的な形式の中でこの問題を処理していくことになるわけですが、それでは相当期間かかるのではないかというふうに思われております。足らない書類等がまだ弁護士側にもあったそうで、急遽いま作成をしてそれを海軍の方へ渡すということですが、こうなってきますと、政治的な判断によってこの解決が、かなり早いテンポで補償の問題は解決するのではないかというふうに思うのですが、局長いかがですか。
  201. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) アメリカ側は、海軍長官の発言その他から、この補償問題は事故責任の問題と切り離して、迅速にして公平な解決をするということを言っておりまして、私たちも早急に解決されることを期待しているわけでございますが、われわれの方からいつどの時期で解決されるかということをいま申し上げるまでには事態は至っておりません。
  202. 山田勇

    ○山田勇君 この後の問題ちょっと大臣帰ってきてからやりますが、航空協定についていまの間に聞いておきます。  フィンランドの方から昭和四十六年以来、種々の機会に定期航路の開設が望まれていたようですが、きょうまでおくれた大きな原因というのは何ですか。
  203. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) お答え申し上げます。  フィンランドとの間には、当初フィンランドの方は昭和四十六年ごろ以来、種々の機会に航空協定日本と結びたいということを言っておりまして、わが国の方といたしましてはこのフィンランドの希望というものを勘案いたしまして、国内の航空事情、当時成田の空港開港までの間国内の空港事情というものが非常に逼迫しておりまして、新規の外国企業の乗り入れを認めるというような余裕が国内の空港事情からございませんでして、そういうような国内事情がございましたので、フィンランドの先ほど申し上げましたような希望にかかわりませず、これに応じるということができませんでございました。その後、御案内のように国内の事情も変わってまいりまして、他方、日本フィンランドの間の航空航路開設を適当であると判断される程度の航空需要というものもあるというふうに判断されるに至りましたので、今般協定締結に至ったと、こういう次第でございます。
  204. 山田勇

    ○山田勇君 これはフィンランドではないのですが、カナダCPエアラインとのいまの航空協定はどうなっておりますか。
  205. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 現在日加間の航空協定について特に問題があるというふうに承知しておりません。ただ、航空当事者間で、便数その他について常時話し合いが行われているということでございます。
  206. 山田勇

    ○山田勇君 カナダの方の要請は、週四便を五便ぐらいという要求だと思うのですが、以遠権の問題等でまだ折衝しているはずですが。  そこで、いま現在、日米航空協定に基づいて、アメリカ側の新しい航空新路線といいますか、そういう申請を出しているアメリカ航空会社は何社ございますか。
  207. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 一番大きいのはユナイテッドエアラインですが、シカゴ、ポートランドをコターミナルにして日本に乗り入れるということでございます。
  208. 山田勇

    ○山田勇君 ウエスタンエアラインは正式に申請しておりませんか。
  209. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 政府の方にはまだ、少なくとも外務省の方にはそういう申請は参っておりません。
  210. 山田勇

    ○山田勇君 では、次の日米航空会議でこのユナイテッドの新路線ということは考えられますか。
  211. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) アメリカ側はユナイテッド航空日本、本邦乗り入れについて早く実現したいということを言っておりますが、私たちとしては、日米航空交渉全般の中でその乗り入れ問題も解決していきたいというふうに考えております。
  212. 山田勇

    ○山田勇君 大臣お帰りになられたので、局長から御説明があったと思いますが、先ほど来言っておりますように、ロバート・F・リード大佐は、この問題の解決としては二点しかない。一点は外事紛争処理委員会に諮るか。それか、レーマン海軍長官に直接この問題を上げるか、それかロング米太平洋軍司令官に上げるかという、その二点しかないということですが、御承知のとおり、外事紛争処理委員会というのは、裁判形式を持ちますものですから、この裁判に上げますと、非常に補償問題が長期にわたるということは否めない事実でございます。そういうところから見まして、これは政治的なお力をいただかなけりゃいかぬという形の中で、直接米太平洋軍司令官なり米海軍長官に、この問題を大臣の方から早期解決という形の中で要請をしていただけるかどうかということです。金額的な問題については一人百万ドルまでの枠がある、それ以上は議会の承認が要ると、先日局長の方からもおっしゃられたとおりでございますが、要求金額としては十分足りる額でございます。後はその方法だけが残っているように思うわけです。  これはね、大臣、私こういうことは余り委員会では言いたくないのですが、この生き残った十三人を、まあ各種いろいろな団体が利用しようとしている傾向もあるわけなんです。そう言っていただければわかると思うのです。ですからそういうことは絶対やっちゃいかぬというし、まあぼくも相馬さんに、裁判をやるかやらないか解決を見ないものに、余りあちらこちらの会合に出て軽率に発言はすべきでないし、さしてはいかぬということは申し上げてはおるのですがね。変に、変な方の政治のバランスといいますか、力に利用されがちなんですね。純粋な乗組員たちですから、わからないままにそういう傾向があります。ですから、そういう意味においても早期に解決することも、日本国民の感情としても納得のいくことです。ですから、そういう意味で、特に大臣の御配慮を、この補償問題ということについて御配慮をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  213. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) おっしゃったことにつきましては、これは弁護士さんと当然御相談せにゃならぬことでございますが、弁護士さんと相談しまして、それで外務省としてはできるだけのこれは御協力を申し上げます。
  214. 山田勇

    ○山田勇君 終わります。
  215. 秦野章

    委員長秦野章君) 以上で質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  速記をちょっととめておいてください。    〔速記中止〕
  216. 秦野章

    委員長秦野章君) それでは速記を起こしてください。  まず、国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオールで署名された議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  217. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、航空業務に関する日本国フィンランド共和国との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  218. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府シンガポール共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  219. 秦野章

    委員長秦野章君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約改正する議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  220. 秦野章

    委員長秦野章君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、四件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  222. 秦野章

    委員長秦野章君) 次に、国際電気通信衛星機構の特権及び免除に関する議定書締結について承認を求めるの件、条約法に関するウィーン条約締結について承認を求めるの件、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)付表I(職業病の一覧表)の改正の受諾について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。伊東外務大臣
  223. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ただいま議題となりました国際電気通信衛星機構の特権及び免除に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  インテルサットと呼ばれております国際電気通信衛星機構は、昭和四十八年二月に恒久的な機関として設立された国際機関であり、現在百五カ国が加盟して広く国際的に電気通信業務を提供しております。  この議定書は、インテルサットの任務の能率的な遂行のため、インテルサット、その職員、インテルサット加盟国の代表等が享受する特権及び免除について定めるものであり、昭和五十三年五月十九日に主なインテルサット加盟国により作成され、昭和五十五年十月九日に効力を生じました。  わが国がこの議定書締結することは、インテルサットの任務の能率的な遂行に資するとともに、わが国とインテルサットとの協力を深めるものであり、有益であると考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、条約法に関するウィーン条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  条約法、すなわち、条約締結、適用、終了等に関する国際法の規則は、従来、主として国際慣習法として形成されてきましたが、戦後における条約数の増加及びその内容の複雑化に伴い、条約法の法典化及び漸進的発達の必要性が認識されるに至り、国際連合の主催により、昭和四十三年及び昭和四十四年、二会期にわたって全権代表会議がウィーンで開催され、昭和四十四年五月二十三日にこの条約が作成されました。この条約は、昭和五十五年一月二十七日に効力を生じております。  この条約は、国家間の条約締結、効力発生、適用、解釈、無効、終了、運用停止等に関する規則について定めたものであります。  わが国がこの条約締結することは、二国間及び多数国間の条約締結、適用等に関連して生ずる諸問題の円滑な処理に資するばかりでなぐ、国際社会全般の法秩序の発展及び安定化に貢献するものと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、業務災害の場合における給付に関する条約(第百二十一号)付表1(職業病の一覧表)の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国が昭和四十九年に批准しました業務災害の場合における給付に関する条約は、その付表1に職業病の一覧表を掲げております。職業病の範囲は、産業技術の進歩及び医学上の知見の進展に伴い変化するものであり、昭和五十五年六月に開催されました国際労働機関の総会は、このような進歩及び進展を踏まえこの付表I改正を採択したのでございます。  この改正は、すでに掲げられている項目の一部を修正するとともにカドミウムによる疾病、騒音による難聴等を含む十四の項目等を新たに追加することを内容とするものであります。  わが国がこの改正を受諾することは、充実したわが国業務災害補償制度を確保するとともに労働問題の分野における国際協調を推進する見地からも有意義と認められます。  よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上速やかに御承認あらんことをお願い申し上げます。
  224. 秦野章

    委員長秦野章君) 以上で趣旨説明は終わりました。  三件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十八分散会      —————・—————