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1981-04-23 第94回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月二十三日(木曜日)    午前十時六分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      秦   豊君     宇都宮徳馬君  四月二十二日     辞任         補欠選任      谷川 寛三君     中山 太郎君  四月二十三日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     板垣  正君      永野 嚴雄君     梶原  清君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         秦野  章君     理 事                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 松前 達郎君                 宮崎 正義君     委 員                 板垣  正君                 梶原  清君                 中村 啓一君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 町村 金五君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君    政府委員        外務大臣官房長  柳谷 謙介君        外務大臣官房審        議官       栗山 尚一君        外務大臣官房審        議官       関  栄次君        外務大臣官房外        務参事官     渡辺 幸治君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中近東ア        フリカ局長    村田 良平君        外務省条約局長  伊達 宗起君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        環境庁自然保護        局鳥獣保護課長  中村  廉君        外務省欧亜局審        議官       堂ノ脇光朗君        水産庁海洋漁業        部国際課長    中島  達君        資源エネルギー        庁石油部開発課        長        照山 正夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約  を改正する千九百八十年の議定書締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○南極海洋生物資源保存に関する条約締結  について承認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国  政府中華人民共和国政府との間の協定締結  について承認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本国政府オランダ王国政府との間の文化協  定の締結について承認を求めるの件(内閣提  出) ○日本国政府ギリシャ共和国政府との間の文化  協定締結について承認を求めるの件(内閣提  出) ○アフリカ開発銀行を設立する協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○一次産品のための共通基金を設立する協定の締  結について承認を求めるの件(内閣提出衆議  院送付) ○東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター  を設立する協定締結について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付) ○国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関す  る千九百七十四年十月十六日にモントリオール  で署名された議定書締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○航空業務に関する日本国フィンランド共和国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国政府シンガポール  共和国政府との間の条約を改正する議定書の締  結について承認を求めるの件(内閣提出衆議  院送付) ○千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名さ  れた所得に対する租税に関する二重課税回避  のための日本国政府フランス共和国政府との  間の条約を改正する議定書締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百八十年の議定書締結について承認を求めるの件、南極海洋生物資源保存に関する条約締結について承認を求めるの件、渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案、以上四件を便宜一括して議題といたします。  四件につきましては、すでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 若干お聞きしてみたいと思うんですが、私は田舎の市長をしただけで何にも知りませんから、私の考えが間違っていて、方角違いだったら、大臣ひとつ遠慮なく御指摘をいただきたいと思います。  第一に質問したいのは、外務大臣アメリカへ行かれましてから、帰ってきて、国際認識においては一致したというようなことを方々で言われたように新聞で拝見いたしております。私はこれにちょっと疑問を感ずるのでありまして、なるほど化粧文句外交辞令を並べれば一致したということは言えるでしょうけれども、しかしレーガン政権の真意は、要するに戦争抑止力としての軍備増強といったようなものを強力に前面に押し出している。これは何もレーガンさんがタカ派だからということではなくて、私はこれはアメリカ人のほとんどの考えじゃないかと思うのであります。  一つだけ例証を挙げますと、私が市長時代に、アメリカの駐日大使だったライシャワーさん、あの方に来ていただいたことがあるのですが、そのときに、長野の駅へ着きますとヤンキー・ゴー・ホームの大合唱で、私はそこで、せっかく市長が呼んだのに失礼じゃないか、しかし君たちも騒ぐにはそれだけの理由があるんだろうから、ひとつ代表を五、六人出してくれ、おれがライシャワーさんに会わして直接皆さんの話を伝えさせるようにするから、ということで騒ぎはおさめまして、代表の人を駅長室へ、ライシャワーさんのところへ私が連れていきまして、この人たちがいろいろ言いたいことがあるそうですからお聞きになっていただきたいと言ったら、喜んで聞いてくれましたが、その若い人たちは公式的に、アメリカ軍備増強するのはけしからぬ、日本に増強するのはけしからぬというきわめてありふれたことを話しておったんですが、そのときにライシャワーさんの言われたことを私いまでも強く記憶しているんです。私自身も実は大学に席を置いたときは皆さんに劣らない反戦運動のリーダーだった、それで一生懸命やってきたんだが、いま考えてみると、もしアメリカ海軍力がもっと充実したようなものだったら日本指導者も恐らく戦争はしかけなかったのじゃなかろうかということを強く信ずるようになってきた、だから軍備充実ということはあくまでも戦争抑止力として非常に大きな、最大眼目なんだ、おれを反戦主義者からそういうふうに変えたのは君たち自身じゃないか、と言われました。  ですから、私は、何もレーガンさんが特にタカ派的な色彩だからということでなくて、アメリカ全体がそういう考え方だと思うのです。ところが、これに対して、鈴木首相は、ASEAN諸国を回ってきたときに、これもやっぱり新聞で読んだだけです。私、新聞で出てきたのしか知りませんから。新聞で、ASEAN諸国、至るところで日本軍事大国にはならない、これはまあいいと思うのです。いいと思うのですが、そこへつけ加えて、日本に軍事的な投割りを期待するということは間違いである、おれはこれを率直にアメリカに伝える、こういうふうに新聞には書いてある。そうすると、果たして、おいでになって、日米の会談というのは非常な食い違いがあるので、外務大臣の言われるように、国際情勢認識は一致したと言えるのかな、アメリカ質問に対して、日本回答にならぬことを言っておったのじゃこれは話にならぬじゃないかと思って、実は質問通告したわけなんです。ところが、おとといの新聞を見ますと、防衛大綱を六十二年度末までには何とかするという回答をお示しになるようであります。これはどうなのか、事実でなかったら事実でないとおっしゃっていただきたいのですが。  もちろん、そうしますと、私は、防衛大綱そのものデタント時代につくられたものですから、そこに幾つかの議論があろうかと思いまするが、しかし、一応アメリカ側のあれに対する回答にはなって、そこにこれから、それを基礎にしていろいろ議論されるんでしょうから、一応質問に対する回答にはなったと、こう思うのです。ですから、質問をやめようかと思っていたところが、宮澤官房長官が、これはあくまでも一%の枠内で十分できるというような、私に率直に言わせれば、まことに不必要なコメントをされておる。後でも申し上げたいと思っておるのですが、八〇年代の日本外交の一番基本は、米ソ戦うべからずというのが私は基本だろうと思うのです。そういう戦いを避けるためには、もし戦争抑止力のために軍備充実が必要だという判断になれば、何も一%にこだわる必要はちっともない。一%以下で済むならそれも結構、一%上になったってそれはやむを得ないし、そう言ったのではないかと思うのだが、一%以内でおさまると、おさめると言ったのかおさまると言ったのかよくわかりませんけれども。で、また質問する気になりましてお尋ねするわけですが、これは大臣、一体どういうことなんでございましょう。
  4. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 米ソ戦うべからずという、私も同じ認識でございまして、この前行きましたときも、米ソが全面的に対決して核戦争になる、これはもう世界の破滅だ、戦うべからず、平和友好関係米ソは維持すべきだということを私も言ったのです。その点は一緒認識でございます。  それから、総理日本の軍事的な役割りはできないと言われたのも、これも日本憲法上、専守防衛個別的自衛権ということから言えば当然のことでございまして、これは南の方も、ASEANの方も日本軍事大国になっているという昔の危惧を持つ人々もいるわけでございますが、日本のいまの専守防衛軍事大国にならぬということは、やはりASEANでは私は評価を受けているところだというふうに思うわけでございます。  それで、日本防衛力の問題でございますが、日本防衛力につきましては、これは先生おっしゃったような防衛計画大綱というものの水準にもまだ達していないというわけでございまして、これは閣議決定をやって大綱をつくりまして、軍事費については一%にとどめるのだということを閣議決定でやっておるわけでございます。その範囲内であれを整備していこうということでございますので、私は、閣議決定をしてどうということをアメリカへどう言うかということを、まだ決めたわけではございませんが、総理のお気持ちは、防衛計画大綱というものがあるのだ、これにはまだ達していない、それで、その閣議決定は大体一%にとどめるのだということを決めておりますので、その範囲のものをまず、そこまでいっていないのだから、その範囲のものを早く充足するのだという意味だと私は思うのでございまして、日本で公に決められた大綱というものはあれ一つでございますので、それをひとつなるべく早目に達成したいというのが総理のお気持ちだ、こういうふうに見ております。ただ、これをいつ、どういうふうに決めるかということはまだ決まっておりませんので、もしもそういうことをまた何か決めるとすれば国防会議なりでおやりになるかと私は思うのですけれども、いまはそういうことを検討している段階でございます。しかし、それはあくまで防衛計画大綱の枠内で大体一%にとどめるということになっておりますので、その枠内でまずひとつ努力をしよう、こういうことだと私は思っております。
  5. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 そうするとちょっと違ってきたな。一%というのは枠というふうなお考えなんですか。その一%以内でおさまるだろうという、単に見通しをお話になったのか、それとも一%以内にとどめるといった枠をおはめになったのか、ちょっといまの枠はわからぬ。
  6. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) それは、閣議決定があの防衛計画大綱を決めますときに、付表にはいろいろなものをつけて、そして防衛費は一%にとどめようということをあれは一緒に決めているわけでございます。それは、やっぱりそれを尊重してやっていく、こういうことでございます。    〔委員長退席理事稲嶺一郎君着席〕
  7. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 微妙な問題ですからこれ以上お聞きいたしませんけれども、これは十分御検討になっていただきたいと思います。  それから、そういった問題の起こるのも、憲法九条が一番もとになるのですが、私は、憲法九条はあれは実に名文だ、格調が高くて、私自身が読んでもほれぼれするぐらい、またその心情もよく理解できる、日本人としてよくわかる。しかし、その憲法九条が日本から外へ、外国へ行ったときに、一体どういう理解をされているか、こういったようなことについて、外務省はお調べになったことはあるでしょうか。これは事務的な問題です。
  8. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは、もう憲法ができまして年数がたっておるわけでございまして、この間もASEANに参りましたときに、シンガポールだけ、もっと軍備をやったらいいじゃないかということを言っておりましたが、あとの国は、日本はそういう憲法でそういう立場だということをみんな了解しております。アメリカも、その問題については、日本にはそういう憲法があって個別的自衛権だということは、どの場合でもみんな向こうはそれはそうだと理解をしておるわけでございます。国連なんかでも日本平和憲法というものが高く評価されているということは確かでございます。
  9. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 大臣が接する範囲の方は恐らくそうだろうと思う。私も、なるべくよそへ回ってきたときには、この問題は興味あるものですからいろいろ当たってみて、外交関係とか、そういったような関係は知ってはおる。しかし、単に知っておるというだけでありまして、私らが理解するような理解の仕方にはほど遠いわけだ。いわんや外交関係に従事してない一般の市民の人たちはほとんど知らないといって過言でなかろうと思う。知っている人もそういう、あるということは知っている。それは大臣が接する向こう外務大臣とかそういう偉い人は別に、一般の感情として話してみると、まあ言葉を飾らぬで言えば、エクスキューズだと言うんだね。ある人なんか非常にひやかして、これは日本憲法九条というのはコンビニエントなものだ、便利なものだというような言い方で、私ども理解しているものとほど遠い理解の仕方だということは、これはちょっと争われないと思うんです。そこで、これからいろいろやるときに、外国一般的に理解されないような理論で理論武装してみてもなかなかむだな努力の方が多いじゃないかという感じがするんですよ。  私は、安全保障日本外交国連中心だということもこれまでよく聞くわけですが、国連というものをせんじ詰めてみれば集団安全保障だ、集団安全保障に対してそれを中心にやるのだと言いながら、では、その国連武力機構に対しては憲法九条があるから一切協力せぬ、看護婦さん程度、お医者さん、軍医さん程度ならとかどうとかという議論があって、これでは外国人エクスキューズだとかコンビニエントなものだというふうに言われたって仕方がないじゃないか。私は、やっぱり一種逃げ外交になっているような気がする。憲法九条をただ振りかざして、憲法九条がこうだからこれだけしかできぬというのは逃げ外交になっているのじゃないか、こういうふうに思うんです。逃げ外交だっていいですよ。日本町人外交とだれかが言ったが、逃げ外交だって小さい国の間は逃げ外交で結構だったが、どうもそうはいかなくなってきているのじゃないか、こういうふうに思うんです。  そこで別に質問したいわけなんですが、しかし、私も実はアメリカ戦争防止、つまり、あくまでも八〇年代の外交中心日ソ戦うべからずという戦争防止ということに一番の基本を置くならば、アメリカの言い分も私は十分大きな理屈が一つあると思う。軍事力の失われかけたバランスを再構築することによって戦争を抑止するのだということもりっぱな考え方で、これに対して協力できることはできるだけ協力すべきだと私は思うんです。しかしそれだけが外交ではないわけなんで、芝居で言えばおどし役もあればなだめ役もあるというもので、それを実に上手におやりになっているのがドイツでありフランスであるのじゃないかと、私はわきから見ていてそう思うんですね。そこで、シュミットさんなんか、カーターさんがふきげんな顔をしておったって何も構わず飛び出していってブレジネフといわゆる東方外交というか、宥和外交をどんどんお進めになる、日本ハト派なんか顔負けのような宥和外交をおやりになる。ある雑誌で見たんですけれども、あれは恐らくシュミットさんのおたくの家庭だと思うんだが、そこへ前のブラント首相ブレジネフさんが来て、仲よく三人で談笑している、いわゆる公式の握手しているなんていうのじゃなくて、家庭的な団らんの中で三人が話をされている写真を見て、いや実によくおやりになっているなというふうに思うんですよ、そういう宥和外交というものを。今度やはりアメリカとの間に若干きしみがありまして、例のヤンブルグ天然ガスの問題が出てくる。これに対して日本も最近対ソ外交というものが変わってきましたですね。私は、ソ連アフガニスタン侵攻に対するアメリカソ連制裁案日本が同調して、そして対ソ制裁策に踏み切って、向こうからはグロムイコ外相が来るというのを断るというような、そういうことによって不快感を示すということで一種の対話を拒否した時代が大平さんのときにありましたですね。私は、あれを見て非常に拙劣な外交だと思った。戦時中の、蒋介石政権相手にせずと言った近衛さんのやり方と似ておって、相手にせずというのは、あれは外交じゃないと思うのだ。外交というものは最後最後まで相手とのパイプをつないで、そして戦争抑止に対してもう最後最後まで抑止するのが外交なんで、来ちゃいかぬ、話もせぬというのじゃこれは外交じゃないと私は思うのですが、最近そういう姿勢が大分変わってはきた。変わってはきたけれども、私は、ヤンブルグ天然ガス計画というものは、ドイツは、自分の国のエネルギー政策からきているとは思うけれども、半分はやっぱりソ連との間に太いパイプを置いておこうというお気持ちではないかと思う。そうすると、いま日本でも盛んにシベリア開発の問題が最近出てきているようだけれども、その中で、物によってウラジオストクの港を直すなんというのはちょっと危ないからこれは敬遠してもいいけれどもパルプをやるとか石油探鉱をやるなんというような計画はやはりパイプをつなぐために半分は幾つかのパイプを持っておるということがこれは大切なことなんです。こういうことに対するお考えはどうでしょうか。
  10. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 最後におっしゃったシベリア開発の中で、たとえばパルプの問題とか石油探鉱の問題とか、こういう政府信用供与は全部やめたということではないので、おっしゃるようなことにつきましては森林開発とかそういうものについては信用供与をやる、ケース・バイ・ケースでやっておりますので、全部ストップということではないので、これは互恵、向こうにも役立つだろうけれども日本にも役立つというものについてはこれは認めてやっているということでございますので、その点はひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。  それからグロムイコさんは来ると言ったことはないんです。グロムイコさんが来るのは、平和条約の交渉の番になっているのです。平和条約というのは領土問題も当然頭に置いた平和条約でございますので、こっちは園田さんが二年前外相のときに行って交渉された。後は、今度は向こうが来る番になっているのですけれども、これが来ていない。ですから、グロムイコきんが来るといったのがこけたというわけではないのです。それはそういうことはないのですけれども、しかし、一般的におっしゃるような措置をやったことは確かでございます。それで、これは何も日本がどうしたということではなくて、これはあくまでソ連態度から出たことでございますので、やはりソ連は、片っ方では平和攻勢とか何かいろいろ信用の醸成とか言いますけれども、やっていることは違うことをやっているのじゃないか。やはり第三世界に入ったということはこれはやっぱり非常に大問題だと私は思うわけでございまして、そういう意味一つ措置としてこれはとったわけでございます。  ただ、夏目さんのおっしゃるドイツフランスとはその点は若干違っておるということも私はよく知っております。特にドイツはこれはソ連と本当にそばでございますし、ドイツに言わせれば、東独の千三百万人でしたか、あれは人質になっているようなものだというようなことをよく西ドイツでは言うのでございまして、また日本ともいろいろ立場が違うこともある。日本は領土問題というまた別な問題がある。まあいろいろございますので日本判断でやっていることでございますが、この問題につきましては向こうがどういう態度で出られるか、この間も信用措置の問題を言ってこられたのですけれども向こうからきたのですけれども、そう言うからにはもっと信頼できるような態度をとるべきじゃないかということを言っているわけで、私どもも、日ソの間というものは隣人として隣国として非常に大切なので、何とかこれを平和友好の、長期的にそういうことができるように、それが、もうこれは領土問題があるものですから、それを懸案事項ということを認めて話し合いを続けていくということが私は相互信頼の根底ではないかと、こう思うものですから、いまは日本としての態度をとっているところでございます。
  11. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 まあ大変むずかしいことではあるに違いないが、いろんなパイプを通すという意味でひとつお伺いを願いたいと思うのですが、もう一つお聞きしたいのは、いまおっしゃったように、戦争になればもうこれは日本よりまず第一番の戦禍を受けるのはドイツですからね、ドイツはもうその点神経質だろうと、日本の方はのんびりしているけれどもドイツはそれは実に神経質で、東独の、何というのですかあれは、ホーネッカーといいますか、ことしの一月にドイツの国土を二度と戦火にさらしてはいけないということを相呼応して演説しているような状況で、そのドイツ東方政策宥和政策というのは私もよくわかるのですが、そのドイツが、では軍事的な努力をどうしているかというと、御存じのように、SS20に対抗してあのパーシングやるの、何というのですか、戦域核というですか、戦域核のあれを約五百基余り、まあこれはNATO全域についてですが、八三年度までに配備をやってしまおうという決定、これなどはたしか私の記憶では、去年の正月ごろソ連からものすごいおどしがかかりましたですね。そういうことをやるならもう欧州の戦域についての、SALTIIIについては一切交渉に応じないというようなソ連がものすごいおどしをされたのですけれども、あの配備決定をドイツが音頭をとってやってしまった。これなんかはまあ考えようによっては、日本ならただの一基やるといったってでかい騒ぎになるところを、強硬な対ソ強硬策を一方でおやりになっている。これは私は非常に参考にせにゃいかぬところだと思う。  日本ではハト派だ、タカ派だというと、あいつはハト派だ、あいつはタカ派だと、こういうふうに色分けしてしまう。ところが、ドイツへ行きますとハト派タカ派がみごとに一つになっている。日本ではハト派というのは、おまえはハト派だからもう軍備増強するなんていう議論はけしからぬということになるし、タカ派の方へ行くと、対ソ宥和策なんて何言ってやがんだいというふうに、二者択一の問題として日本では取り扱われている。大変私は残念な傾向だと思うんです。これは私もこの前NATOへ行きましたときにいろいろ聞いてみたんですけれども、彼らはもう平然として、そんなこと当然じゃないですかと、要するに外交というものは最後最後まで戦争回避するために全努力をやるのだけれども、防衛というのは万一のときに備えて万全を期するのだからそんなことはあたりまえの話だと。むしろドイツ東方政策なり宥和外交がある程度の成功をおさめているのは、実は背後に強力な軍備充実があって初めて発言権が強くなってくるのだということを言っておりましたし、それは私はまことにそのとおりだと思うんです。  日本も、ですから外国に通用しないような議論でもってやっておってはいつまでたっても日本自体が発言権も強くならぬし、ひいては米ソ戦うべからずというのに対する貢献度もきわめてないということになりかねないのじゃないかと、こういうふうに思うんです。日本では、タカ派ハト派に分かれているこの状況は大変異常な状況だと私は思うのですが、どんなものなんです。御意見をお聞きしたいと思います。
  12. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまのドイツの状態も私ども聞いております。片一方で東方政策やりながら、非常な軍備をやっている。ゲンシャー外務大臣に会いますとまず話が出るのは、ゲンシャー外務大臣が言うのは防衛努力のことを必ず私に言うのでございます。ドイツはそういう努力をしていることはよくわかるのでございますが、日本の置かれた立場は、これはやっぱり国民の皆さんでつくったというこの憲法があるわけでございますので、この憲法をやっぱり厳格に守っていくということをこれは日本としてやらなけりゃならぬし、この憲法の性格というものはみんなに理解してもらって、日本はやっぱりできることできないことがあって、経済力で平和のために役立つということはこれはできるが、軍事力では制限があるのだ、できないのだということを世界理解してもらうということが、これは特異な立場でございますが、その努力をすることがやっぱり必要ではないかなと。そのかわり、経済力で南北の問題とか、どうしても国際的な平和を守れる、社会不安、政治不安を特に第三世界等で起こさぬようにしていくということがやはり日本の国際的な役目でなかろうかと、私はそういうふうに感じております。
  13. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 そこら辺は意見の問題ですから、この問題は切り上げます。  次に、中国のプラントの問題でちょっとお聞きしたいと思います。  まあこうなってくると、後から、おれがあのときああ言ったじゃないか、こう言ったじゃないかというような議論が出がちなもので、それが最近の新聞、雑誌にもたくさん出ているのを私もいろいろ読ましていただいた。しかし、その中で若干うなずけるなと思うのは、すでに、いわゆる何といいますか、調整ショックというんですか、ああいう形で大型プラントをどしどし進めるというのは疑問があるというような声が一九七九年の暮れにはもう出ているようですね。そして一月でしたか、全国人民代表会議というんですか、で何らの報告がされておらない。あれだけのものが何ら報告されてないということは、非常に冷たい目で見ておるということなんでしょうが、これが八月になりますと、もうある雑誌の論文によると、最高指導者をも含めて非常な激論が政策担当者の間で行われておる。その一つの例としては、何というんです、この人、何という方だったかな一まあいいや、一々あれしませんが、人民日報にも大分詳しく出ておるようです。で、そうして、そういういきさつがあって、現実問題として内部、向こうの政策担当者の中で相当の議論が行われてきて暮れまできて、そして日中閣僚会議がございましたですね、十二月ですか、その終わった直後にキャンセルがばばっと流れ始めてきておる。  私は非常におかしいと思うので、外務省の中でやはりこの中国の動きというものを詳しくトレースして、そういうことがある程度予知できたならば、日中閣僚会議だってもう少しその問題について真剣にお話になるチャンスがあったんだろうと思う。この問題に対して、外務省はそういうものを予知というか、あらかじめそういう気配を感じたとか、そういうようなことはあったのですか、なかったのですか。
  14. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) 中国の経済の現代化を実施するために、一九七八年、三年前からでございますけれども、非常に野心的な現代化計画に着手したわけでございますけれども、その現代化計画が予定どおり推進できるかどうかということについて中国首脳部、中国政府の中でかなり真剣な議論が続けられたことは先生御指摘のとおりでございます。中国のプラント輸出、大型プロジェクトの輸出商談がまとまりましたのは七八年の十二月ぐらいでございまして、御記憶のとおり七九年の二月にはプラントの契約の中国側の政府承認が得られないというような話もあったわけでございますけれども、この点については中国側において内部で再検討の結果、プラント契約の承認ということになったわけでございますけれども、結果的に見ますると、七九年あるいは八〇年を通じて中国の経済政策のあり方について真剣な議論が続けられたということだと思います。  率直に申しまして、昨年十二月の日中閣僚会議の時点においては、日本の大型プロジェクトの輸出の問題を含めまして契約どおり推進されるという前提で立っていたわけでございますけれども、十二月の中旬ごろに中国の共産党の非常に高いレベルの会議がございまして、そこで非常に真剣な議論をした結果、いわゆる調整政策について一つの非常に大きな決断をした。それを踏まえまして、本年の一月二十九日、日本の大型プロジェクトについて、宝山を含めまして日本側業界に対して通告があったということでございます。  先生御指摘の、中国の経済政策の実施あるいは中国共産党内部の問題について外務省としてどの程度フォローしていたかということでございますけれども、その点については、いわゆる調整政策の実施ということ、中国経済の現状からしまして、そういうことが可能かどうかということについては私ども非常に関心を持っていたわけでございますけれども、先生御指摘のとおり、日中閣僚会議においても、この問題については中国側から特に意見がなかったということで、少なくとも契約のあったものについては順調に推移していくのであろうという前提で考えていたわけでございます。ただいま申し上げたとおり、この調整政策の決定というのは中国の内部においても非常にむずかしい、かつ真剣な討論の結果到達した結論であろうということでございます。ただし先生も御案内のとおり、この大型プロジェクトの契約中止問題については、民間レベルの話し合いあるいは中国の関係者との話し合いを通じまして、中国側といたしましては契約中止通達についてはこれを撤回するということで、中国側としても事態について改めて見解を明らかにしたわけでございまして、今後は日中間の事務レベルでこのプロジェクトの実施についてさらに詰めていくというような段階でございます。
  15. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 いまちょっとよく、聞き違えだったかどうだったか、撤回したというのは何を撤回したんです。キャンセルを撤回したことじゃないでしょう。
  16. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) 一月二十九日に中国側から日本関係者に対して、契約の中止それから船積みの中止等について通達があったわけでございますけれども、契約分についてはすべて引き取りますということを通達してきたということでございます。
  17. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 そこで、そうですね、いっぱい聞きたいことがあるのだが、大体新聞に書いてあるとおり二十八億ドル見当ということを向こうが申し出ているようですけれども、朝日新聞のあれを見ますと、向こうの何というんですか、担当省というか担当の役人、冶金工業省というんですか、そういう連中が朝日新聞社の記者の質問に対して、いや日本から融資してもらって継続するなんということは全然考えていなかったと、私らは中止一方で計画してきたのだけれども、しかし一番上の鄧小平さんがそういうことを言い出したのだからというような答えが、これは新聞記事ですからどこまでだかわかりませんけれども、キャンセルしておいて突如として鄧小平さんがあれしたのは何か私は不自然な感じがするので、何か日本のだれかがやっぱり政治的な配慮をということをサゼスチョンしたというか、扇動したと言ったら悪いかもしれぬけれども、言ったのじゃないかと勘ぐらざるを得ないのだけれども、それはどうなんです。
  18. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 非常に機微に触れたような御質問でございますが、日本側がだれか、これは扇動という言葉は何でございますが、そういう意味の何か日本側が続けてやったらどうだとか、金の世話するとかいうことを言ったので変わったのじゃないかという意味にとれるような新聞も出たことございますけれども、そういう事実はないんです。最初、問題になって新聞に大きく出ましたとき、これは相当重大問題だなということを感じたのでございます。それで、実情がわかりませんものですから、大来政府代表が行って向こうの実情を聞いてくる、調べてくるということで行ったのでございますが、向こうの責任者に会ったときも、できれば続けたいのだということはもうこれはありありしている。できれば続けたいのだが、どうしてもだめなら国際慣例に従って賠償するとか、そういうことがあったのですが、希望は、できるだけ何とか方法があれば続けたいというのが向こうの希望であったことは、これは確かでございます。それで、日本側としましては、私も国会で何回も答弁したことがありますが、これはもともとは日本側は民間でやったプロジェクトの契約でございますから、民間が向こうと話して、十分詰めることがまず大事じゃないか、ただ、政府としましてはこの問題で日中関係に傷をつけるようなことはしたくない、それは十分政府としても考えなけりゃならぬという私は抽象論でいつも答弁をしたわけでございますが、詰めて詰めてみて、そしてどういう問題が残るかということで、向こうからも二度来ましたし、恐らく行くのは来週ですか、来週、日本側からも各省の担当者が向こうへ参りまして、向こうで、二度来た結果、向こうでも相談しておりますので、またこっちからも行って打ち合わせをするというようないま取り運びになっておりまして、どういう最後の結論になるかいままだちょっとわかりませんが、私の気持ち最後はよく詰めてもらって、残った問題をどうするかということをこれは向こう政府もこっちの政府考えて、そして日中関係に本当に傷の残らぬようにしていくということが大切でなかろうかという態度でおるわけでございます。いま向こうは民間と契約したプロジェクト全部はすぐ動かすという考えではないようでございまして、資材は来ておると、しかしそのうちですぐに運営できるものというものはこうこうじゃないかというようなことを仕分けをしたり、具体的にそういうことをいま話している最中でございます。
  19. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 時間がありませんので、私の考えを申し上げてお聞きしたいと思うのですが、実はこれは中国は初めてじゃないんで、ソ連に対しても例のあれは一九五〇年代ですか、相当の借款を、第一次五カ年計画というものを中国がおやりになって相当の成果を上げて、引き続いて第二次の五カ年計画、一九六〇年代ごろからおっ始めようというときに、これは日本とは全然別な事情でこうなっちゃったんですけれども、しかしやはりあの大躍進という政策が失敗して大型のプロジェクトが軒並みに崩れたという状況は同じなわけなんです。  これは、私思うに、今度のやつも外務大臣は温かいお気持ちのようですから、それで何がしかのことをしてプラントが成功したとする。私に言わせれば、必要な金さえあればりっぱな製鉄所、君津製鉄所に劣らない製鉄所もできましょうし、石油化学の工場だって金さえ融通すればりっぱなものができるに決まっているんです。ところが、めんどうなのは、たとえできても日本と違って、それを下支えする経済基盤ができていない。つまり、部品一つ――日本では部品は電話をかけりゃすぐ持ってくるけれども、全部自分でつくっていかなきゃならない状況なのでありますから、せっかく工場をおつくりになったとしてもちょうどっこに回っていかない。いわんや中国はまだこういうふうに政権がぐらぐらしているところへもってきて、経済官僚のビューロクラシーがとてもできていないのですからね。たとえ順調にいってできたとしても、またその後の運営がきわめて問題で、それは朝日の新聞記者が向こうへ行った、やはりその答えの中に、原油を外国から買ってきて、そしてつくってみても高い物についちゃって果たしてうまくいくのか自信が必ずしもないというような意味のことを答えておるようですけれども、さもありなんと私はつくづく思うんです。  金を貸すというのは、これは金さえあれば簡単なことなんですが、できたあげくにちょうどっこに動かないということになると、飛ばっちりはこっちへ返ってくる、金を貸した方へ返ってくる。これはもうソ連がいい例です。いろんな議論はありますけれどもソ連としては相当の経済協力をしたのだけれども、いまはくそみそと同じように、後にできたものがちょうどっこに動かないと、何だ、こんな高い物を押しつけやがってという、必ずその恨みがこっちへはね返ってくる。これの方が私は恐ろしい、こういうふうにつくづく思うんですよ。  ですから、いま大臣があくまでも民間ベースで詰めて、詰めて、詰めてとおっしゃったが、そのとおりひとつ詰めて、詰めて、詰めれ、そして後うまくいかないのですからね、私に言わせりゃ、わかっているのだから。金が貸せるというのもむずかしいんだ、金を下手に貸すと恨みがこっちへ来るんだから、値切ったっていいからくれちゃった方が私は早いと思う。そんなような乱暴な議論だけれども、十分ひとつ、金を貸したがために逆恨みされないような手立てを十分にひとつ考えてやっていただきたい、こう思うわけです。
  20. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 夏目さんおっしゃるとおりで、工場だけつくったけれども動かないということでは、これはもうえらいことなんで、いまも向こうはプロジェクトであれ全部をすぐ動かそうということでなくて、本当に夏目さんおっしゃるように、動かせるか動かせないかというものを選んで、向こうもいろいろ話を持ってきているわけでございますので、おっしゃったように借款なり寄付なりしたけれども、逆恨みを買うというようなことはこれは本当に気をつけなきゃならぬことでございますから、その点は十分慎重に考えてまいります。
  21. 夏目忠雄

    夏目忠雄君 終わります。
  22. 戸叶武

    戸叶武君 私は、この十日から一週間ほど突然日中友好議員連盟の代表として北京を訪れ、北京飯店にだけ私はとどまって、趙総理、鄧小平氏及び一九六〇年私が安保反対闘争のカンパニアの総団長として行ったときに、調印した外交部会や文化交流の長老である雲南の楚図南氏、若手の孫平化君や肖向前君も出て、いま中国に何か私は、われわれが想像するのと違う変化が起きているのじゃないか、ただ製鉄所のプラント契約を破棄するというような形のショック現象よりももっと根の深い問題が起きてくるのじゃないか、その真相を本当に腹を割って知りたいというので、だれにも、新聞記者諸君にも私だけは会わないようにして、そして帰ってきましたが、先ほど夏目議員も中国の問題にも触れ、またいまの政治のあり方に対しても、みずから挺身して、とにかくもっと自由な、もっと屈託のない発言がなされないと、議会主義というものは滅びてしまうし、特に参議院の存在はなくなってしまうという考えから夏目さんも自民党には珍しい行動にもこの間出ておりますが、私は、いまの議会制度の危機であり、いまの国会あるいは内閣、そういうもののファンクションはどういうものかという根本的な論議に入る前に、われわれが抱いていて問題を提示しなけりゃならない問題が、日本の政治家及び日本のマスコミにおいてはマンネリズム化してしまって、依然として同じような現象面だけをとらえてコペルニクス的な百八十度転回という発想がどこにも起きてないのを見て、これと比較して中国にそんなことが起きようとしているのかということに私は気づいたときには、日本もこれはグローバルな時代における政治のあり方、日本だけでなく世界の変化に対応するところの日本外交なり防衛なり政治そのものの考え方を変えなけりゃならないということに気づくのではないか、内から創造力が発酵しないいまの日本の教育制度、官僚制度、政治みんなふん詰まって臭いものだらけになってしぼって、国民の不信感を買って不気味な現象がいま日本にあらわれておりますが、中国は一体どこへ行くのかというような疑念を日本で抱いている前に、日本自体がグローバルな時代に対応するだけの外交なりあるいは防衛なりに対する模索をし、苦悩し、そうして新しい発想がなぜ出てこないのかということに対して気づかないが、気づくと日本人は人まねがうまいと言われる、人まねがうまいだけじゃないんですが、変わることが早いと思うんですが、あれほど四千年の文化伝統を持ちながらも停滞が目立ち、革命が起きたかと思っても革命自身の中にソ連なり何なりの影響は受けて、中国の独自性はどういう形か出てはいたけれども、何か特異な存在で、これが本当に中国の未来を決定づけるだけの路線の定着であるかどうかというのに私は疑念を持っていたんですが、アッと驚くタメゴローじゃないが、やはりコペルニクス的な百八十度転回がいま苦悩のどん底から起きている事実を見て、いままでの先入観念で共産主義とか社会主義とかあるいは新中国とかあるいは友好商社貿易とか右往左往してきた人々が現象面だけをとらえて象の耳をさすってうちわがわりにしてみたり、そういう基本概念で律せられないことがいま中国に起きているということを私は予感したのであります。  これは日本だけの問題じゃない。中国が変われば日本が変わる、日本が変われば中国が連動的に変わると思って相手の変わり方を見詰めているだけでなく、みずからの主体性のないところに変化に対応する姿勢と発想は躍動しないと思っていたのですが、今度は政府もモーションがのろいけれども、のろのろのろとほうぼう動き出して、いち早くその前に大来前外務大臣、その前の園田外務大臣、いまの伊東大臣、お忙しい体でも忙しく世界じゅうに触れてみないと百聞一見にしかずで、カレント、流れをくみとることができないと思いましたが、ちょうど伊東さんも健康で方々を駆けめぐってまいりましたが、駆けることが健康法の一つだという気はテレビで聞きましたけれども、やっぱり百聞一見にしかずでここで勝手気ままな憲法改悪論なんかをやってみたってそんなことは役に立たないし、国民の反撃を買えば吹っ飛んじゃうんです。問題は、国民が政治から遠ざかってしまった、あきれて遠ざかってしまった、この国民の合意をどうやって得られるかということ以外に政治の不信を取り戻すことはできないと思うんです。伊東さんなんかは一生懸命で努力はしているが、何といったって自民党の閣僚だから、わけのわからない連中の言うことでも一応はそれを聞かないとやっぱり外務大臣はやっていられなくなるのだから、何だかわかったようなわからないような面もあるが、大体はわかってきたんだと思うんです。そこいらに伊東流の軍学があるのだと思いますが、やはり一つの、私はまじめな池田さんのときから言ったんだが、乱世には乱世の戦術と哲学がある。孫子の兵法なりあるいは荘子の哲学なりを見ればいかにこの市民の中に生まれてきたところの戦法なり哲学というものは、砲兵せん滅戦やれば勝利を導くなんという陸軍大学で教わったようなわけのわからない哲学のない戦法は、日本をして無条件降伏にまで導いてしまった。砲兵せん滅戦で中国で成功したのは一つもない。相手に活路を与えることによって、せん滅などということでなくて、だれだって死にもの狂いの戦いとなれば戦いになるので、自分の前途に、未来にどこかに活路が見出される道以外に道はないんです。戦争かデタントかというマスコミの回答を待てば、だれだってデタントです。戦争と言うやつはない。だが理想と現実とは違う。そう言ってみても現実に戦争があるんだからそれに備えなけりゃならない。火の用心、戸締まり用心。このごろは何だか防衛庁なんかでいろんな新語を発明していますが、言っていることと内容はさっぱり陳腐にして鼻持ちならない。  ところで、今度アメリカに行く前に鈴木首相が西欧諸国を訪ねてからオタワで開かれるサミットヘの道を歩もうというんですが、歩んでいる間に鈴木さんもなかなか動物的勘の発達した方で、練達の士だから何かいい考えも道中で私は得られると思うのですが、これからの日程はどういうのですか。どうも総理大臣外務大臣も国会ではさっぱりお目にかかる機会が少なくて、政府だけが野放しで野放し外交をやっていられるのじゃ国民の合意を得るのにははなはだマスコミ相手にいろいろなとやかくのあれはあるけれども、体でわれわれは受けとめられないのですが、これからの日程を承った上で、ひとつ伊東外務大臣並びに首相、首相はここにいないけれども、どうも鈴木さんじゃきのう言ったことときょう言ったことは大まじめで変わっているのだから頼りないからひとつ伊東さん、道案内役の伊東さんに日程とどういう方向づけをやって巡礼をやるのか道順を、日程をまず承りたいと思います。
  23. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 総理と私の日程でございますが、総理は来月五月四日出発されまして、七日、八日はワシントンでレーガン大統領を初め首脳会談がございます。それから帰りにカナダでトルドー首相と会いまして意見の交換をしてくるという日程が決まっております。  それから六月に入りますと、まだ日はぴっしゃりは決まっておりません、また相手のだれに何日会うというのも、いま現在ではまだでございますが、大体六月の上旬の終わりの方でございましょうか、から中旬にかけましてヨーロッパへ行かれまして、七月のカナダのオタワのサミットでお会いする首脳とは全部会われる予定でございます。ただ、フランスで選挙が今度始まりますので、選挙後日程がどうなりますか、いまちょっとわかりませんが、大体各首脳と会われる予定でございます。それから、七月にはまたサミットに出られるというところまで総理の日程は決まっているわけでございます。  私は、五月には総理のお伴をしてアメリカ、帰りカナダに参ります。それから、六月にはやはりヨーロッパに行き、それからマニラでASEAN外相会議がございます。これには拡大外相会議アメリカ、カナダ、豪州、ニュージーランド、みんな外相が出る予定でございますので、私もそこに行く予定でございます。七月にはオタワ・サミットにお伴をするというような予定をいま組んでいるわけでございますが、いま先生おっしゃるように、なるべく百聞一見にしかずで各国の責任者と会って意見の交換をする、あるいは親しくなるということは、これは非常に大切なことでございますので、努めてそういうことの努力をしなけりゃいかぬというふうに思っておるわけでございます。
  24. 戸叶武

    戸叶武君 トインビーがその文明史観において、やはり異なった文化、異なった考え方、宗教あるいは民族というものも、お互いに融れ合っている中においてそこにお互いを理解する度が深められ、そこからまた新しいものが生まれるという一つの文明史観を展開しておりますが、既存のカテゴリーや観念で物を、古い形の陳腐な法治国家の憲法論学者のようなやり方をやっておったのじゃ、いまの世の中じゃ間に合わないのでありまして、歩きながら考え考えながら歩く。そして、ダイナミックな形においてカレントに触れて、タイミングを逸せずに対処するという直観力と決断、これがいまの文明社会において欠けている一つの面じゃないかと思うので、そういう点においては、空飛ぶ外務大臣のいき方はもっともな次第で、参議院は衆議院よりも外務委員会で拘束することもなく、とにかく世界じゅうの人々に触れ合いながら、もっと考え方、発想の転換を促して、グローバルな時代に対応できるような一つの主体、性をつくってもらいたいという念願で、いままでうるさい国会議員が集まっている中では一番参議院の外務委員会は、待ち遠しいが、伊東さんが早く大きく成長するように待ちわびていたのであります。  それだけに私は、この激動変革の時代において、すべて予算の分捕りにきゅうきゅうとして、そうして所得税は取らぬと言っているけれども間接税によって、公共料金の値上げによって働く人、貧乏人からは惜しみなく金をふんだくるような政府のやり方に対して、不満を持ちながら労働組合の人も中小零細企業の人も協力をやっているが、今度の中国のプラントの問題、それはどういうふうにいまの段階でとりあえずまとめ、今後の具体的な見通しはどうなっているか、それを承りたいと思います。
  25. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) 中国プラントのお話については、先般来訪いたしました周建南副主任一行と事務レベルの協議を行いました。先ほど御説明いたしましたように、中国側は本年一月二十九日に通告してまいりました。石油化学プラント類のすべてを引き取るという意向を明らかにいたしました。そのプラント。プロジェクトの建設継続について、その必要な資金をわが国政府から低利融資で供与してほしいという要望を寄せてきたわけでございます。  このプラント問題については、解決策を得るまでにはさらに詰めるべき問題が多々ございまして、今後事務レベルで中国側と引き続き話し合っていくということになっております。大臣から先ほどお話がございましたように、来週にもできれば事務レベルのグループを北京に派遣いたしまして、いま申しました話し合いを続ける一環といたしたいと、かように考えている次第でございます。
  26. 戸叶武

    戸叶武君 いま渡辺参事官の御答弁は、すでに新聞等においても伝えられておりますが、あのとおり最初のショックとは違って、あるところまで具体的成果が出てきたのでしょうかどうでしょうか、その辺はまだもやもやした点がありますが、中国と日本との具体的な調整段階における成果について、お話しできる部分は、簡単でいいですが、具体的に説明願いたいと思います。
  27. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) ただいままでのところ、中国とのプラント問題に関するお話し合いについては、大来政府代表の訪中以来、政府レベルあるいは民間レベルでかなり精力的な話し合いが行われているわけでございますけれども、それについて具体的な成果ということでここでお話しすることはございません。  ただ、先ほど申しましたように、一月二十九日付で先方から連絡のございました、プラントの建設中止、設備の船積み中止あるいは未発注設備の発注中止というような通告については撤回するということで、一つの局面が開かれたということは申し上げることができるかもしれません。
  28. 戸叶武

    戸叶武君 今度の日中関係の、信義をもってとうとしとするという道義国家的な様相をもって善処してきた中国としては、一般から見て、通俗的に見ても不信義と思われるような結果を招いたのですが、それを責めることよりも、それを中国が窮地に立ってどう打開しようとしているか。それに対して中国からはもうこっ恥ずかしくて自分の方から、自分の方の間違いであったとはいうものの、こうしてくれとも言えないでおったら、惻隠の情もだしがたく、財界の土光敏夫さんなりあるいは中国を愛する元外務大臣の藤山愛一郎さんなりが中国側の首脳者と会って、そうしてここに道ありということをお互いに話し合ったことが、あるところまで、外務省、通産省、大蔵省というような形だけでなく、一つの明るいめどを開くきっかけになったのじゃないかと思いますが、外務大臣はそれをどういうふうに受けとめておりますか。
  29. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 政府としまして、私はまあ外務大臣として何回も、先ほど夏目さんにお答えしたように、これはまあ民間の契約であるからできるだけ詰めなさい、詰めて詰めて最後にどういう問題が残るか、しかし、この問題で日中関係に傷は残したくないよ、努力をしようというようなことを私は国会で述べたのでございますが、一方民間の方々が、いま先生おっしゃったような方々も中国へ行かれて向こうの話を聞き、そしていろんな考え方を、私どもに意見を言っていただいているということはこれはもう確かでございまして、これは政府だけで考えることじゃないので、むしろ最初は民間の企業が考えてもらうことでございますから、私どもとしましては、民間の経験を積んでおられる方々の御意見は十分にこれは聞いて、政府も民間もこれは一緒になって、どうやったら解決できるかということをいま検討している、相談し合っているというところでございます。    〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕
  30. 戸叶武

    戸叶武君 日中経済協会会長の土光さんなり、国際貿易促進協会会長の藤山さんなりのそれなりの功績というものは、やっぱり私は高く評価してよろしいのじゃないかと思うのです。こういうふうに政府とか政党だけの単独なプレーでなくて、財界も、あるいは国会における友好議員連盟も超党派的な立場から、日中関係の行き詰まりを打開しようというこの取り組みの姿勢ができたことは、災いを転じて福となすで、そこに初めて私は、日本と中国との心の協力が可能になってきたからこそ、ざっくばらんな話を中国側でもいまならできるという形で、こう言ったら何か非礼じゃないのか、やることはやらないでいて注文だけをつけるなんということは無礼なのじゃないかというような懸念を捨てて、私は、いまの窮状打開の道を探っているところに新しいこの外交一つの試みが日中間においては起きたと思うのであります。  日本における超党派外交といい、あるいは国土防衛の問題、領土問題で持っていっても何が何やら、派閥の駆け引きや政党の駆け引きや――議運の人、国対の人も苦労しているのだろうけれども相手にどっかでひっかけられやしないかというばかりの、揚げ足取りをされるのじゃないかというような警戒心ばかり旺盛で、何が国のために大切かということを忘れられている風向きがあるが、それをここで新しく打開しようという模索が、中国でも日本でも恥ずかしいことは恥ずかしいけれども、ここで言っておかないと後で言えないからというところまで来たと思うので、これは私は、日中の歴史の中においてこんな外交、いわゆる表面的な外交辞令じゃなく、ざっくばらんに腹を割って話し合おうというところまで来たところに、私は新しいアジアにおけるルネッサンスの近代化の芽が発芽したのじゃないかと思うのです。  そこで、外務大臣にお願いするのでありますが、いまの中国側における近代化に重点をしぼって、いろいろな意見はあっても、統一と団結以外にこれを打開する道はない。しかし統一と打開というものを力で押しつけるのじゃなくて、十分話し合ってそこに納得ずくの上で新しい一つの指導体制を確立していこう、そうして集団指導に移っていこう、鄧小平が主席をねらっているじゃないかとか、何がゆえに華国鋒が引っ込んだのか日本人にはわからないというような、ざっくばらんな見方をした人がありますが、外国、中国は民族をたっとんでいる国であり、時にはたっとび過ぎて形式に流れ過ぎるところもありますけれども、今度は相手を殺さずに、相手を傷つけずに、そして新体制をつくろうという配慮がなされているところに、同じ集団指導の確立といっても、いままでとは違った私は試みが模索されていると思うのであります。  フランスにおけるレジスタンスの統一戦線が崩れた後におけるドゴールが出現した時分は、ミスターフランスとしての英雄像を持っているドゴールが、祖国のためなら命は要らないという献身的なものは持っているが、政治に対して何を考えているかさっぱりわからぬ。しかし、その男が小党分裂による――いま日本流に訳すると、自民党の派閥における政権たらい回し、あるいは社会党その他におけるような派閥人事の横行、このなっていない、政治でない政治、こういうものに、何が国のために大切か、人類のために、世界のために大切かということを、左からアンドレ・モロアなり、あるいは学究からは、パリ大学の国際法の教授のルネキャピタン、その学究がフランス革命の革命の本場にあって言っていることは、平和裏に市民革命を発展させたイギリスの議会政治の方が流血を経たフランスの人民主権の暴力よりもはるかにすぐれていると指摘している。国民主権というが、後ではナポレオン帝政をつくったり、ナポレオン三世を出現させたり、山師のような男だったが、こういうパッショネートに行動に走るが、思慮を欠き、そうして国民の英知によってもっと、何が目下フランスにおいて大切なことかというのに焦点を合わせるような具体的な回答が政治の中から出てこない。それを引き出さなければ、政治の本当の責任体制はできないのです。イギリスの議会政治から見てもはるかにおくれているというような形で、ドゴール体制は幾変転かしましたが、ドゴール体制によって必ずしも定着はしないが、あの試みの中に、いわゆるファッシストの反動的な動きというよりは、それを乗り越えてフランス人の人民が主権者と称するけれども、責任を持って自分たちの力で政治を一体どうやっていこうとするか、明快な回答を望むということだけははっきりしてきたと思うんです。  いまの日本はイギリスの議会政治だなんと言っても、自民党の政権たらい回しでもって依然として一党独裁のファッショ政権です。官僚は従属し、企業はこれになれ合い、金さえ持てば政権はとれる、選挙は腐敗させても国会を占領することができると言っている間に国民は政治からそっぽを向いてしまった。危険な段階です。不気味な妖雲が漂ってきております。あの絶対多数の中にあぐらをかいた、かつては小数党から身売りした犬養が五・一五事件で白昼首相官邸で話せばわかると言っているけれども、そのときにはピストルをぶっ放されて話さないうちに死んじゃった、こういうことがいつ起きるかわからないような前夜を思わせるような妖雲がいまの世界にはたなびいている、これ以上がまんできないというような国民の憤りが低流には流れているこのときに、再び戦争への道を歩むようなへたなラッパを吹くやつは犬に食われて死んでしまえですが、とにかく、はったりが横行し、ずうずうしいやつ、悪いやつらでなけりゃ国会にのさばることのできないような権謀術策が弄せられている。  これでは道義がどこにあるのかわからないというときに、いろいろな権謀術策もされ、政敵も殺し合いをしたようなロシアに負けないような粛清もされたような中国において、忽然としてルネッサンスでも西洋的なルネッサンスとは違うもっと未来には光を与えるような文運復興、そうして新しい時代に対応する追いつきをしなけりゃならないという謙虚な形において、私は道義の復活というものが中国に起きてきた、中国にまさかと思うところから起きてきた。  ポーランドのような暗いところから海外に出て海底測量に従事したコペルニクスが、イタリアの退廃の中からルネッサンスが生まれた中においてアレレキサンドリアあたりの文献からヒントを得て地球は丸い、動いているのだという地動説を出して――何かことしあたりやっとローマンカソリックにおいてもこれを認めたというか、カソリックの法王の認める認めない、権威のいかんに問わず真理は常に真理であって、国民、全世界の人々はすでにそれを信じている、こういうばかげたことで歴史がおくれさせられているが、そういう西洋的なルネッサンスのまねでなくて、やっぱりニーチェのツァラトゥストラや、あるいはこの西洋文明の没落を予言したシュペングラーの東方に対するひとつの期待をかける、第一次大戦以後における西洋の行き詰まり打開の精神なりが、新しく私は、ポーランド何考えているかわからないようなところでも、イランのようなところでも、何か変化が生まれてきた。  中国は四千年の眠りから覚めて、文化道統の中には一貫したもっと道義、生命力というものが持続しているのだ、文天祥以来の正気の気がみなぎっているのだ、易姓革命からあって、王朝はかわっても中国人民の中に流れている、心の中には未来よかれ、明日をもっと希望のあるものにしようという伝統が流れているのだ、それを近代的な意義においてこれは生かさなきゃならないというところにまで来たというところに、私は、日本の形式に堕して紀元節がどうだとか、北方領土の日がどうだなんと言っているのはちゃらんぽらんで統一がなくて哲学がなくて話にならぬと思うのだが、少し今度は外務大臣、文部省や改憲論者のこちこち頭を、北京ですらも変わったのだから、ちょっと見てきたらどうですかというふうに伺いを立てて、閣僚の洗脳を、イデオロギーの洗脳じゃない、みずからこっ恥ずかしくなってこれは大変だってあわて出して駆け回らなくちゃならないようなコペルニクス的な百八十度旋回はコペルニクスの本を読むんじゃない、海底にもぐって海底測量をやりながら、アレキサンドリアの文献を持ってきて、退廃の中から生まれてきたところのルネッサンスよりも健全なポーランドに帰って貧乏の中に僧院の下積みでコペルニクスは死んでいったか知らないが、真理は常に永遠に生きるのだ、権力で弾圧されようが、ときにはいろいろあろうが、そこに道義力の躍動というものがあるのだ、そこヘマルクスやレーニンのことは触れないけれども、気がついてきた中国の文化人というのはさすがだと私は思う。  エジプトにおいても、モハメッドまではキリスト教と預言者は同じであるが、そこから分かれていながらも、ユダヤの民は選民意識が強くて、近所の連中をエジプトから解放させた後にモーゼの十戒を裏切りて近所、隣をやっつけて、しまいには近所、隣の恨みを買って、エルサレムの土地から離れなけりゃならなくなった、ああいうまねはしたくない。アラブの大義というものは、ローマ法典にあらわれているような私有財産のみをとうとしとするような個人主義的なものでないとうそぶいておりますが、しかし、四千年の文化道統の眠りから覚めるのが容易でなくて、二千年足らずの文化しか持たない日本が近代国家としてエジプトよりも成功をおさめたのはどこに秘訣があるかということをいま目下研究中だといいまして、何かその秘訣を教えてくれと、私にあそこのカイロ大学の学長であった国会の議長から去年の二月には質問が発せられましたが、そのことに気づけば私はエジプトの近代化も間もないから、私からよけいなことは言えないと言ったが、中国でも変な果てしない中ソ論争の空転の中から何も生まれてこなかったということに気づいて、そういうイデオロギー論争よりも現実の国民をどうやって飢えさせないか、もっと未来に光を与えさせるか、その問題に対して具体的な回答をなし得るような積み上げ方式や、歴史の年輪を積み上げて前方へ持っていくことが一番正しいのだ。意見はいろいろあるであろうが、それには統一と団結を崩さずに政権争奪だけに興味を持たないで、そうしてわれわれがみずからの反省の中にアジア的ルネッサンスのモデルを中国からつくり上げようというような意気込みで出発したところに、苦悩の体験の中から哲学が生まれ、歩みながら自分たちの錯誤を発見して、そこの原点から出直しをやろうという意気込みと、漫然としてアメリカがどうの、ソ連がどうの、ソ連の第五列、中国の第五列、アメリカの第五列、アメリカにもそんな人間はいない、中国にもそんな人間もいない、ソ連にもそんな危険人物はいないような人格の持ち主とうろちょろのハツカネズミが政治を動かしているのでは、日本は物質文明の中からもう私は崩壊の一途をたどっていく見本になるのじゃないかと思うのですが、外務大臣どう、その心配はないですか。私の杞憂でしょうか。
  31. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) どうもむずかしくてお答えに困るのですが、中国が非常に近代化ということで大きな実験、試行錯誤と言っちゃ何でございますが、それこそコペルニクス的転回を図るように思えるような大問題と取り組んでいるということは、私もそう思っておりまして、いまの政権はどうとかいうことの前に、私はいまの政権が近代化に取り組むということであれば、それを助けて中国が安定していくことを日本としてもこれは期待し、それが世界の平和にもアジアの平和にも非常にこれは大切なことだというふうに思っております。
  32. 戸叶武

    戸叶武君 私は四十年前に京都大学で哲学を勉強していた呉杰君という中国政府の留学生としては最高の人物にめぐり会って、特に繆斌事件で朝日の私らの友人だった田村君が、繆斌という妙ちくりんな、重慶と南京の間をうろちょろする信用のない情報屋を過大評価して、そうして和平ができるようなことを緒方さんたちも信じてしまったことがありますが、その事件の余波で弾圧を食らったときの留学生の一人に呉杰君はおったんですが、昭和十八年の中央公論の六月号に「中国の道義、生命力」という論文を、いわゆる石原完爾さんたちの東亜連盟に共鳴するような日本優位に立って中国を目覚めさして率いてやるのだという思い上がった考え方に反撃を加えた論文の書き主が呉杰君です。いま中国の名門校である復旦大学の経済学の主任教授は呉杰君といって――呉服屋の呉に木の下に四つ点があるのですが、この連中と、そのころから、四十年前から話し合ってきた青年とわれわれは、西欧のルネッサンスを過大評価しちゃいけない、アジアではキリスト教社会と反キリスト教社会との戦いのるつぼやあるいはローマンカソリックの宗教の名による苛斂誅求に耐えかねた中央ヨーロッパのボヘミアにおけるフスの反乱やイギリスのウイリックスの抵抗や、いろいろな、あるいは民族主義と結びついてのショービニズムの発生や排他的な国家主義というものがあのような阿修羅の世界をつくり上げたが、あんなことはルネッサンス本来の精神ではないじゃないか。宗教やイデオロギーと結びついて国民の生活に直接関係のない魔物にとりつかれて阿修羅の世界を現出しているのだ。それでなく、本来の文芸復興を促して、その中からアジアには平和共存の体制を、アジアは一つであるが、多彩に満ちている。おのおのの立場理解しながら、双方の長所をとり合いながら戦争は避けて、お互いに相手を深く理解し合ってそこに融和をつくり上げなきゃならないということを話し合って研究してきたのですが、それが今日中国で去年あたりから口にされている、中国においては本物のルネッサンスをつくるのだという動きが上海その他から出ているのです。それがいまの中国におけるこの調整段階におけるあのプラントの中止のための対策だけでなく、もっと本質的な、中国が信義を外国に貫くことは、特に外国から軽べつされないようにするには恥も外聞も忘れて正直に自分たちの失敗は失敗だと言い、自分たちは白紙からこれから積み上げていくのだというところにまで来たというところは私は大きなコペルニクス的な転換だと思うのです。それを見ないで、いま議会の論議を聞いておっても、国会は政府の従属機関じゃないのです。なのに政府の御意見を承るための、ときには刺激的な揚げ足取りやはったりで、そうしてジャーナリズムに迎合しようとする風潮や、場合によっては政府にお世辞を使うということだけの、見識の躍動が国会になくて、どうやったらテレビに出るだろうか、どうやったら新聞に載るだろうか、人民に向かって孤独に耐えて、人民から袋だたきに会っても預言者は郷土にいれられずというだけの孤独に耐えてもわが道を行くという気慨を持った政治家が一人もなくなってしまうというようなときに、中国では大衆とともに苦悩し、大衆とともに模索し、恥を天下にさらしたこの機会に、本当に自分たちからもう一度顔を洗い直して出発を、当初、原点から始めなきゃならないというところにまで最高の指導者までも思い詰めてきたというところに、私はこれが本当の哲学だ、哲学はカントやヘーゲルから学ぶのじゃなくて、おのが姿の醜さを鏡に映してみたときに、しまった、こんな悪い顔におれはなるとは思わなかったと言ってこっ恥ずかしくなってみずからを改めてくる姿勢の中に私は本当の哲学が生まれるのじゃないかと思っているのです。  いま文明史観と哲学を持たない民族は亡びるのですよ。このエコノミカル・デターミニズムの中に、唯物史観というか、エコノミックアニマルの、大衆の中に鼻持ちならない状態で日本民族がふん詰まりになっている状態を、先生と言われるやつは裁判官から国会議員から学校の先生、医者まで、みんな相手のことだけは悪口を言うけれども、みんな同じような、モラルを失い、道義を失い、信義を失ってだれからも信用されない。先生と言われるほどのばかでなしと言って、まじめな人はやはりばかをよそおって竹林の七賢人にでも逃げようというときに、まだ官僚の聡明な人は日米賢人会なんか続けて骨を折っておりますが、それはいいでしょう、責任持とうとしているのだから。だけれども、いずれにしても私はどこかから衝撃を受けなけりゃいま日本人の土性っ骨をたたき直すことはできないのじゃないか。戦争は悪習を生むだけです。革命は、反革命を誘発するだけです。恐慌と戦争と革命への悪循環の中に進歩があるように錯覚した西欧的な文明の悪因縁の中にアジアを埋没させることはできないというだけの信念を、少なくとも世界平和機構である、曲がりなりにでも国際連盟がベルサイユ体制で崩壊し、いまこの国際連合が、米英ソのインチキ秘密条約、他国の主権を無視して他国の領土を勝手に奪ってしまったようなヤルタ協定のみずからの清算なくして、ソ連だけじゃない、なれ合いでアメリカもイギリスもこんなばかなことをやっておって、ベルサイユ体制と同じく、こんな矛盾した、力を持っているやつが道理に合わないようなことを平気で押しつけるというようなことを、おのが姿の醜さを恥じて、新しい国際秩序がもっと虚心に、ベルサイユ体制が音を立てて崩壊したがごとく、ヤルタ体制はみずからの力でこれを改めていくというところまでふん抜けないと、これは、中国問題も今後のポーランド問題も片づきませんよ。  必死のところまで追い詰められていった、背水の陣を持っているところのこのポーランドなり中国は、いままでの革命のカテゴリーから離れているのです。力を持ったやつが相手をひねり倒すというような権謀術策の外交や政治からは飛び離れたものになっているのです。東の中国、西のポーランド、不気味なポーランド人は、それほど働かないとか、一般的な教育が普及してないとかいろいろな欠点があるけれども、あの酷烈な自然の中に忍耐強く耐え忍んできて、栄光あるポーランド国を西欧諸国から奴隷国家にまで――ナチスにおいては虐殺され、ロシアにおいては強制奴隷労働を強いられ、そのあげくには、戦争が済んだらヤルタ協定によってポーランドの存在というものは全く認められないような形にまでされてしまった。この中から、私は、絶望はしない、粘り強い、何かわけのわからない神がかりかと思われるような不思議な抵抗力が生まれてきたというのは、そういう圧政の中における、矛盾の中における人類の爆発の一形態だと思うのです。中国はいままで、廖承志のお父さんの廖仲トウは暗殺されたけれども、国共合作をやって。ソ連とでも手を組まなければ軍閥を倒せないという必死の形においての中国のヤングチャイナの動き、それが兄弟党であるソ連に裏切られ、日本ドイツその他の帝国主義のまねをして、二十一カ条をたたきつけて親日から反日へ転換させた。  個々の部分的な質問よりも、このとうとうと流れている無言の中における歴史の忠告、これを謙虚に受けとめて、中国は遅まきながらいま出直そうとしている。日本は依然として悔いることがない、無条件降伏の原点である時代おくれの明治憲法なんかを、無条件降伏で進むことも退くこともできないで野たれ死にしたような憲法世界の流れに逆行した超国家思想から生まれた悲劇です。それだけが高文試験で後は勉強しないで、高等文官の特権にあぐらをして、在学中だけ何とか試験答案をよく書いて秀才と言われれば、後は何になってもいいというので、いまの裁判官、いまの弁護士――弁護士にもいい人がいるから区別しなくちゃならないけど、とにかく法治国家の思想のよろいを着て、一体何が正しいかということの一番問題点を掘り下げていくものがなくなってしまったじゃないですか。教育が根源にあるんです。それに気づいて中国では四〇%の軍事費を削減し、とにかくアメリカソ連に手を出したらおれの方でも黙っちゃいないぞと言うからにはまあ信用してもいいのじゃないか。そうすればソ連も手を出さなくなるだろう、どっちも力の外交だから、力の均衡を保つというんで、結構な次第で、おれの方はそれによってむだな軍事費にして人民から浮き上がってしょうがないから、四〇%の軍事費の削減、それによって教育を立て直そうというところに来ているんだが、どうもいま――どうですか、外務省の方は大丈夫ですか。軍事費の問題がこの二、三日えらいいまの総理大臣、鈴木さんあたりで言っていることとやっていることは筋は立っているような立ってないようなあれですが、ヨーロッパに行ってドイツフランスを見てくることも結構ですが、ちょっくら隣の中国で四〇%の軍事費を削減して教育費なりあるいは社会保障の方面なりに充当しようという最も有効な考えを発揮しておりますが、やっぱり戦争米ソは絶対にありません。できないです。やるとしても自分のところじゃやらないから、なるたけ新兵器を発明したからヨーロッパの方で、中東の方で、朝鮮の方へ行って潜水艦やなんかもぐらしてきますけれども、自分の国を戦場にすることは国民もがえんじないような戦争アメリカソ連だけじゃなくだれが好みますか。やってごらんなさい、やるのなら、一騎打ちで。ソ連に行ってアメリカも、アメリカに行ってソ連も。やりゃあしない。こんなばかげた奴隷を使っての戦争、ポーランドの農民に鎖をつけて日露戦争の前線の二〇三高池に機関銃を持たせて立ち向かわせた帝政ロシア、いまのソビエトとは言いませんが、こんなことをやったから帝政ロシアも崩壊し、帝政ドイツも崩壊したのじゃありませんか。もっと歴史の教訓を生きて、身をもっていまの流れに沿うて、私は自分をひねって人の痛がるのもわかってくれるだけのやっぱり情を持たなけりゃ人は動きません。  アメリカへ行って、さっき夏目さんもいろんな角度から私らと違うけれども問題を率直に投げつけておりますが、タカ派と言われる強硬論者も大学へ行くと、おまえ戦場に行けと言ったらだれも賛成するやつはいない。日本でも何か青年商工会議所が志願兵制度をやって、失業者を、職がないやつに職をやって戦場へという意味なんでしょうが、おれは戦争に行かないから、そのかわり金は出すからという、アメリカのお金持ちと同じような考え方で、奴隷であっても戦争はしません。ヒッピーが生まれたのは、ベトナム戦争において意議なき戦いで麻薬を飲ませられながら黒人が先頭に立てられて大歓迎を受け、帰ってきたら失業者とほうられてしまった。このむなしさの中に麻薬の習慣からヒッピーが生まれたのであって、その退廃の中から、いまレーガン政権の副大統領のシンパの石油の財閥のせがれが、人間としての虚脱状態のニヒリズムの中から一種の大統領暗殺のヒロイックなやっぱり西部劇に出てくるようなテロリストとなって出てくる。こわいのは、ほかじゃない、自分の中に生まれているウジです。青年に希望を持たせないニヒリズムに陥れてしまったこの虚脱状態の中に文明の崩壊があるんです。ギリシャでもローマでも奴隷を使っての戦争で栄えた国は皆滅んでしまいました。カルタゴだってそうです。トルコだってそうです。私は、こんなことばか金を使うよりも、外務省の情報機関を整備して、東南アジアでも何でも至るところに情報網をつくって――情報というのは、動向をキャッチして、世界の人々の願い、心、悲願、そういうものを取りまとめて、戦争はもうできないのだと、そのためにみんなしてどういうことを考えるかということをかち取るだけの役割り外務省がしなけりゃ、みんなメジャーと軍需産業に振り回されるような、これを相手にした場合、一番金になると思われるようなエコノミックアニマルの野獣の世界から脱出はできなくなると思うのです。せめて外務省だけでも健全に、もっと世界の人々の心の動き、要望、それをキャッチするだけの外国公館なりあるいは大使館なり、領事館なりを整備して、何も謀略機関としての二百人、三百人も、イランに情報機関という名のもとに、五万人もの――メジャーとアメリカの財閥が近代兵器で武装させた王様をかいらいとして、イラン革命の発火点をつくるようなまねをする必要はないが、やっぱり情報化時代というのは、情報をキャッチして謀略をやるということでなくて、あらゆる人々の悩み、あらゆる人々の希望、要望というものを正確にキャッチして、東西南北の十字路に立って、日本がデタントヘか戦争へかの道はデタントヘの道以外にないという信念を持って、国際世論を背景として歩む以外に、私は、日本外務省の存在は必要ないと思っている。  そういう意味において、いま刻々に動いている自民党という枠の中、あるいはタカ派の青嵐会なりなんなり、タカ派をやらなけりゃ、もう自民党を逃げ出すというわけにもいかないし、自分たちの存在が圧殺されるという恐怖感から脱出して、どうやって日本を救うか、アジアを救うか、世界を救うか、東西南北の悩みにこたえるだけの日本は歩みをするか、外交の進路を決意させるためにも、私は、外国公館の整備、充実、もっと活動のできるような、人間はそれほど多くなくってもいいから、二百人から三百人から押し込むと結局キッシンジャーのようないろいろなことをやってみたくなるから、下手の考え休むに似たりで、余り変なことをやることよりも、人の気持ちをくみ取って、人類の心を心として政治をやるような機構の充実、今度は太平洋にも小さなところに大使館をつくるということだが、そういうことはどんどんやっぱり熱心にやって、つまらないものを――軍事費といったって、三、四年たてば買いかえです。だんだん膨張するだけです。軍需会社を設けさせるだけです。  中国の軍閥を太らせるためには大倉財閥がかん詰めに石ころを詰めてそして送って得た金で財閥になったという話もあるし、武器を輸送した船をわざと役に立たないのを撃沈させてフィリピンの志士たちを絶望させた前例もあります。ろくなことは考えませんよ。どうです、外務大臣伊東さん、これはあなたに、やっぱり自民党の党人であるし、鈴木内閣の閣僚であるし、言うことは無理な注文かもしれないが、問題は国会の議員がもっとマージャン賭博なんかやめて、三年間ぐらいはとにかく賭博禁止令でもやって、そして粛正をたれなければ、いまの北京では外国人にマージャンは売るけれども、ばくちで夜昼かけマージャン――かけなければマージャンなんかやったってつまらない。まず国会議員、県会議員、新聞記者、それから役人、労働組合の幹部、こういう者から三年でも範をたれるとまともな考えが出てくると思いますけれども、こういう中国における道義力の、伝統を継承して新しい革袋に盛っていくのだという意気込みに対して、理屈では白髪三千丈の詩の表現もあるのだからかなわないけれども、やっぱり日本はささやかだけれども、三年間マージャン賭博禁止令を出しますというぐらいなことを国会議員、県会議員、役人、新聞記者――と言ってもむずかしいから、新聞はなかなか私も、これは情報とるのにはいろいろなやくざともつき合わなくちゃならないだろうし、何だか変なやつも担当しなければいけない。戦争中でも、とにかく海軍省と警視庁と法務省のクラブが一番自由でマージャンの花盛りでしたから、これはなかなか、戦争に負けるのもあたりまえですが、やっぱりそういうことは無理な注文かもしれないが、気合いだけでもかけて、せめて一年でも、日本でも、三日坊主だったと後で言われるかもしれないけど、北京の先取りをしないと、日本だけが、堕落した国家の見本が隣にありますというふうになる。アメリカあたりにばくち場で栄えている、火事ばかり起こしている都市がありますが、浜幸さんなんかが権威者のようでありますけど、ああいうところに次ぐ――ばくち打ちというか、かけの名人が仁義、道徳を説いても、こいつはいただけないんで、ただ広告料が上がるからテレビでも新聞でも広告は載せるんだけれども、国民はいただかないと思うんです。しかし気づかないのは自分だけで、取り巻きがやっぱりうまくおだてているからみんなそれでいいと思うのだと思いますが、やっぱり人間は生まれながらの性格と――人間だからやっぱりどっか俗人的なところがなくちゃ困るでしょうから、聖人君子みたいなことを言えなくても、この危機突破には何か気合いがかかってこないと、全部が緩ふんで露出狂でどうにもならなくなってしまうと思うんですが、どうですか。外務大臣外務省あたりからでも始めますか。いや、隗より始めよで、どっからでもいいんだ。いまのことは答弁は要しません。  とにかく平和維持機構としての国の持っている専門機構の唯一の機関である外務省が、ずるずるずるっと軍事費膨張の方のやはり片棒担ぎの方へ回ったんじゃ、平和がくしゃみしちゃって、もうかぜ引いちゃって治らなくなっちゃうと思うんですが、どうぞそういう意味において、多少はやはり東西南北の火消しのまとい担ぎじゃないが、火の粉の降る中でまといを担いでいく心意気がなけりゃ、日本の立て直しは困難と思いますから、この際公言しておきたいのは、今度は中国は私は真剣だと思うんです。真剣だ真剣だと言って、真剣勝負を年じゅうやっていられないし、三度も四度もうそは言えなくなりますから、言っているうちにやっぱり私は真剣味が加わってくると思うのであります。そういう意味において、いままで革命という名で一つのルネッサンスという表現というか、道義力の復活、リバイバルというか、この古き伝統に新しき機運を盛り上げようという意気込みが出てきたところには、さすがに古いものもいいものも持っているから、あれだけの文化を古い時代においてもつくったんだから、新しい時代にはもっと偉大なものがつくれるという構えが私はやはりできてくるものかと思うのですが、ひとつ中国とも、まあドイツフランスを訪ねるのも結構ですが、いま気合いのかかってきつつある、苦悩の限りを尽くしてもがきだした中国の方へもちょいちょい外務大臣も、隣なんだから、四時間で北京まで飛んでいくのだから、ひとつ総理大臣も行ってきた方がいいと思うんです。あなたたちが行って、イラン、イラク問題だけでなく、やっぱり日本だけでなくECの国々、中東の国々、世界のあらゆる首脳者と会って、そうして日本外交を模索しながら決定しようという、この歩みながら考えてきた伊東哲学は私はあっぱれだと思うのです。だから、それをそのままつぼめないで、時まさに落花の候ですが、新芽が吹いてくるんですから、北京は一週間の間に、リラの花が咲いているだけだったのが、栄養失調のような、植え方も悪いし肥料も十分でない天壇の桜も咲き、百花らんまんとして春が急に一週間足らずの間に来ました。プラーグの春よりも北京の春の方が本物だと思います。プラーグでも春を待っていると思います。待ち切れないでいるのがポーランドだと思います。東の日本、太陽が一番早く上がってくる、光は東方よりの日本が朝寝坊をしていたんじゃ話にならない。私はいつも四時起きです、二十年来。昼間は少しぐらい居眠りが出るのはあたりまえの生理現象ですが、夜は九時には寝ちゃう。やはりみずからを習慣づけることによって、サマータイムなんかヨーロッパではみんなやっています。日本だけです。休むのはいい、レクリェーションはいい、しかし、働く根性を失った日本というのはもう取り柄はないですよ。根性を失った日本人は魂が幽霊になっちゃいます。空飛ぶ円盤よりみじめです。という意味において、外交の中に土性骨を入れる者は――十字路に立ちすくんで立ち往生をしてしまったあの大平さんの遺志とかなんとかと言って、このごろはやたらにどういう遺志だったとかこういう遺志だったと言うが、遺志は答えず、雨降らば雨にぬれていくし、ほこり立てばほこりにも汚れていく、孤独にも耐えて、大衆に理解されなくても、立ち往生して死んでいっても、その精神がどこにあったかということは永遠に生きるんです。  西太后が地下宮殿の中に埋まっていたが、その地下宮殿は最近まで発掘されなかった。そんな窮屈な地下宮殿なんか必要ないんだ、観光にはいいでしょうが。いまのままでいくと日本も――日本の官僚は聡明な秀才です。ばかさが足りない。それから哲学が足らない。高文までの秀才。これじゃ博物館に陳列するのにはいいが、地下宮殿の方へ、あちらへという形で永遠にその精神を生かすことはできないのじゃないかと思うんです。私は官僚というものの組織なしには近代国家の運営はできない。フランスにおける官僚の中からもジスカールデスタンのような人も生まれる。もっと偉大な人が生まれるかもしれない。官僚じゃなかなかいばれないから、局長ぐらいで、ひとつおやじでも早く死んでしまえば代議士にでも出た方が早く大臣になれるという計算をする人もある。あるけれども、そういう人が、自民党にも優秀な二世もずいぶんいます、官僚もいますけれども、ひもつきじゃ何にもならない。やっぱりこの国のために、アジアのために、日中のために、世界のために何を日本が貢献し得るかという、グローバルな時代におけるみずからの進路をやはり方向づけるだけのステーツマンが日本から生まれなければならない。  それには外務大臣というのはいい試験場です。つらいと思うんですが、体が丈夫でなければ、脳みそだけじゃできなくなってしまう。空飛ぶ怪人です。伊東さんあたりはもう相当――今度の新聞辞令なんかじゃ田中六助氏やあなたは内閣改造でははじかなければならないなんて大新聞で書かれておりますが、これはどこかからか出した謀略でしょうが、どんな侮辱を受けても陰謀を受けても不動な姿勢で、おれががんばらなければ日本はどうするんだ、日中がよくならなければ世界はだれを相手にしてくれるんだと。日中は近くて異質な文化を持っているんです。その相手立場を侵さないで、相手からもいいものを発酵させ、みずからも相手を誘発させるような切瑳琢磨がこれから必要じゃないか。ソ連に行けばソ連の第五列となり、中国に行けば中国に対して跪座していくような、四人組のときには四人組を礼拝し、その次にはまたその次と、全く昔の遊び女のような政治家が多いのじゃ杉田二郎に笑われる。  私はこういう点において何が友好かという問題は疑問を感じているぐらいですが、どうぞそういう意味において、私は社会党の中にもりっぱな人が出てくると思うし、野党の中にも今度行った人にはずいぶん私は変わってきた人もあると思う。ばか話をしながら、おいしい物を食べながら、ぼくは西太后が精力を保つために鳳凰の首の肉を食べたというので食べたが、あれは鳳凰じゃなくて鶏かアヒルの肉でしょうが、いずれにしてもそんなことはどうでもいい。何か私はいまのままでは、議会で議論しても揚げ足取りか、どうやったらテレビに撮ってもらえるかとか、どうやったら新聞に書いてもらえるかとかということばかり気にして、選挙区の方ばかり向いて、ふところの方はどうやったら選挙に金がかからないようにするかということを考えるよりも、どうしてもこれはだめだから、せめてコネを得なくちゃならないと言って、国会の会館を根城として株や何かを操作しているやつがあっても、国会は不可侵のところと言って不可思議なところで、裁判官よりも不可侵なところで、何が何やらわからない。裁判官は、裁くことが自分の使命と思って裁かれる身のつらさというものを一度も経験しないであいまいにしているが、今度は世論が許さぬというので何とかなりそうかもしれませんが、やはり、特に一番大切なのは、日本では外交の問題、国の運命を決定さえする問題ですから、外務大臣あたりはよほど土性骨があってしっかりしないと、外務省をまくらとして討ち死にするようなつもりで外交転換を試みないと世界の潮流から置き去りを食うと思いますが、その決意だけは外務大臣から直接聞かなくちゃならないが、どうですか。
  33. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外交の重要性ということを御教授いただいたのですが、私もそのとおりだと思います。どうやって平和を守るか、どうやって戦争をしないようにするかというようなことを真剣に考えて、それを政策に、外交に生かしていくということがこれは非常に大切なことだということはおっしゃるとおりでございまして、その意味でも、先生もちょっとおっしゃった情報というものはこれは非常に大切ですから、各国からいろんなルートで情報もとり、それを解析をして、その上に立っていま言われたような戦争に巻き込まれない外交をやっていくということは、これはもう本当に大切でございますし、外務省にいる人みんなこれは天職と思ってやっておるわけでございますので、いまお教えをいただきましたが、これはまあそのとおりでございます。日本の進路を誤らぬように真剣に取り組んでいく決意でございます。
  34. 戸叶武

    戸叶武君 外交官も動くのにはやっぱりそれなりの金も必要ですよ。飛行機にも乗らなくちゃならないし、北京だって四時間で行けるんでしょう。東京と大阪みたいなものですよ。ヨーロッパだって、一つのヨーロッパ共同体というものの成果、ああしたのはロバート・シューマンのやはり鉄と石炭の販売に関する一つの共同体の案が、まず一番むずかしい農業問題から取っ組んでいって成功をおさめ、いまだにいろんな問題はありますけれども、そこで今度は、二十八日にはECの議会の議長である婦人の方が、議長が日本を訪ねてくるので私たちは議長公邸でこれを迎えるのですが、彼女自身はやはり未来は、EC諸国で一番問題になっているのは環境整備の問題です。西ドイツのライン沿岸その他の大学都市においてグリーンパーティーが起きたのも、子供の教育も相当やり、教育ママであると同時に、教育をあるところまで子供たちにやりなりながら環境をよくしなけりゃならぬという、おやじさんよりも、家庭と生活を守っていく婦人連中が主体となって青年と組んでグリーンパーティーの運動を起こして、社会民主党の足らざるところを補強していましたが、パーティーとしてはどうか知りませんけれども、ああいう住民闘争が婦人の手から一番最初に起きてくると思います。いまのような一つの、環境整備というは名ばかりで不整備、大企業の圧力を受ければぐずぐずっと崩れていって、四回もアセスメントの法案をつくってみても流れてしまった。何が何やら、環境庁というのは何のためにつくられたのか。あそこにはまじめな各省の精鋭が集められているが、政府の政治的見識の不足、財界の圧力の中に環境整備や公害の問題がいいかげんにされているところに、今後は市民闘争の突破口が開かれるかと思うんですが、シモーヌ・ベイユ議長は、ジスカールデスタン氏が最もフランス代表的な、レジスタンス以来の婦人政治家として尊敬している方であるし、ヨーロッパ諸国の、むずかしいあのEC議会を取りまとめていく能力がある人ですが、やっぱりこのサミットでも当然問題になると思いますが、そういうものが日本でどうなっているかをべっ見していきたいというのが、遠慮深いながら彼女のやはり――まあ市川房枝さんが生きている間にといって私はシモーヌ・ペイユにも説いたんですが、来てみると――きょうは質問は私もやりませんけれども、実際、環境庁の人たちなんか何が何やら、夕べあたりも徹夜で、とにかくこれから先もうどうなることかわからないようなてんてこ舞いをしている人に、お役人の人に、不安定な状況、流動的な状態のもとにおける質問は気の毒で私はできないからきょうはやめますが、外務大臣もひとつそういう問題を、外交といっても、やはり各国における国を代表しての情報キャッチにおいては外務省が比較的正確に物を把握していなくちゃならないし、国際会議の動き、動向というものをもキャッチしているのですから、そういう点に対しては、やはりサミットに備えるためにも、今度鈴木さんがヨーロッパに行くにしても、エネルギーの問題と軍備の問題だけを頭に考えて行ったらとんだ間違いであって、何を考えているのだろうかといって、不思議な国の総理大臣が来たもんだわいといって、ろう細工にでも、見せ物にされちゃかないませんから、ひとつこの環境整備の問題も真剣に取り組んでいくのだという一つの具体的な事実だけでもやっぱりつくっておかなかと、こっ恥ずかしくって今後国際会議には出られなくなるのじゃないかと思うんですが、外務大臣、その点はどうですか。
  35. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 総理がヨーロッパへ行かれ、あるいはオタワ・サミットにも出られる問題でございますが、これはいまおっしゃった防衛とかあるいはエネルギー、そういうものだけではだめだぞ、もっと広い意味の経済問題あるいは文化の問題とか社会問題とか、そういうものを頭に置いていろいろやらなけりゃならぬとおっしゃることはわかります。それがどういう形のものがいいかということは別にしまして、サミット等でもやっぱり広い視野に立って世界の経済というものを、あるいは政治というものを考えていくという、そういう態度が必要だということはわかります。それが具体的にどういうものになるかということは別にしまして、御注意になりましたことは十分心して行きます。
  36. 戸叶武

    戸叶武君 この際、いろんな法案も山積しておりますが、やはり松前君がラッコやオットセイやなんかの問題、渡り鳥の中国との協定の問題なんかでも、後でじっくりこれはまだ時間があるからすると思いますが、きょうだけでも問題点だけを私にかわってひとつ指摘しておいてもらえますか。私だけの指摘ではいけないのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。  それでは、いま中国との問題の関連からやりますが、渡り鳥協定はすでにソ連やなんかともできておるのですが、中国との渡り鳥協定は今度初めてで、日本はできておりますけれども、中国と日本との関係は非常に密接です。しかし、いままでの鳥類保護なり魚の保護なりはどうもアメリカ人の趣向が主になって、たとえば魚でも人間に一番近いからイルカをとっちゃだめだと言ってえらい抵抗を生じたりしているのですが、あるいはネコをもっと保護しろ、犬を保護しろと言うが、アメリカで血統図をつけて売り買いのできるようなシャムネコやあるいはペルシャネコはアメリカの金持ちの婦人にみんな買い取られてしまっているんです。そういう人たちは動物保護と同時に、そういう血統図をつけるとそれがえらい小遣い銭かせぎにもなるんですよ。フランスあたりもそうですし、イギリスの犬もそうでしたが、日本では犬やネコ、馬なんというものを相当昔から大事にしますが、たとえば渡り鳥のツグミなんかというのはわっと押し寄せてくるとき、ツグミを保護しなければならないのはシベリアの方なのに、日本では害もある。益鳥でもあるが、害鳥でもある。たまにはかすみとりぐらいでかすめ取ってもおいしいものだし、食べても一向差し支えない習慣になっているのだが、全部が何か外国の趣向によって左右されて鳥獣、犬ネコ、イルカの類に至るまで保護選定がなされている傾きがありますが、もう少し日本でも主張すべきものは主張し、これは珍しいもので保護しなければならないとか、これは日本でどうなんだということをもう少し掘り下げた一つの鳥獣保護も必要じゃないかと思いますが、どうですか。
  37. 中村廉

    説明員中村廉君) 鳥獣の保護に関しましては御承知のように鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づきまして、この保護あるいは狩猟につきまして保護、規制等しておるわけでございますけれども、野生鳥獣の保護そのものにつきましては、わが国に約五百ぐらいの鳥類――数字で言いますと五百になっております。その中でかなりの生息数を持っているもの、これにつきまして狩猟を認めることにしております。それは三十種認めておりまして、それの生息の動向に即しまして必要であれば規制をするということでございます。したがいまして、狩猟につきましてはやはり適正な生息環境とそれにふさわしい生息数を管理するというような前提でもってこれは保護しますし、また一方保護している鳥類につきましても、これは被害があればその対応としてその生息数を減ずるような措置をする、有害鳥獣駆除と言っておりますけれども、そういうような措置もとるということで、できるだけ適正な管理をするように努めてまいっておるところでございます。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 鳥が益鳥か害鳥かというんで、スズメなんかは初め、中国で政権が確立したときにまず貧民窟、売笑婦をなくさせたり、つばを吐くことをやめさせたり、いろんないいことをやりましたが、ハエ退治なんかもよくやったものだなと思ったが、一番私がひやかして、三大躍進の時代にも土炮の方式の鉄をむだに使うだけでこんな旧式な方法じゃだめだよということを言ったことと、もう一つは、スズメは一体益鳥か害鳥か研究したのかいと言ったらいやしませんでしたと言って、とにかくスズメに稲穂を食べられる、スズメを退治しなくちゃならないというので、人海作戦でみんなしてあれはスズメが長く飛べないから、下でわあわあはやし方をやってそして退治しちゃった。退治してからよく考えてみたら今度は害虫がわいてあっ、害虫をスズメが食べてくれたので、スズメはやっぱり益鳥だった面もあるのだなというような、これが行き過ぎというので、やっぱり全体主義国家のいつも誤りやすいのは画一的な運動で、人海作戦で行くところにばかの一つ覚えでやるとえらい失敗をするので、それを改めるところにまた中国のよさもあるんでしょうが、そういうところで、やっぱり私は水面の利用、湖や川における鳥の飼育利用、それから昔はツルは千年、カメは万年と言うが、いまではカメはほとんど祭るようにしなくなった。カメはあれはエーゲ海の方のきれいな海のあたりから来た風習が中国にまで伝わったのですが、ツルは大事にしているが、カメの方はいつの間にかこのごろは消えているようです。そういう点でいろんなその国における変化があるし、鳥だけじゃなく、これはあれにも関連がありますが、やっぱりウナギや、昔はスッポンなんか、カメなんかでも泥濘の中の、墓場からにょろにょろによろとはい出すから中国人も余り食べなかった。このごろはウナギは日本のかば焼きといううまい食べ方があるそうだというので、それはまた復活するかもしれません。そこいらは固定して見ないでいくことが必要だと思います。  どうか鳥の問題にも、とりあえずやはり応急処置としてやっていながらも、独自性を発揮して自主的なものを失わないような、すべて西洋流の片づけ方に鞠躬如としてそれに従っているのはみっともないから、そこいらは日本と中国だからざっくばらんに話し合って両方のために実益になるようなモデルをつくって世界から見てもこっ恥ずかしくないような一つの鳥類保護の方式もつくり上げてもらいたい。  ほかに私はきょうはいろんな問題があって、理事も心配しておったのですが、きょうは私は質問というよりは中国において一個の道義革命が起きている。空転のむなしさを感じて、中国人というのは実益的ですからね、非常に相手の悪口だけを言うのじゃなく、自分で、孫平化君なんかも、おれも学生運動からいって左向きだったんだけれども、いまから言うとこっ恥ずかしいんですけれども、とにかく建設的でない左翼を排して、そしていま中国において何が必要かという問題に対していろいろな意見があってもみんなの意見を積み上げながら統一と団結を崩さないで派閥闘争や政権争奪なんてつまらないことにうろちょろしないで、とにかく新しいヒューマニズムの上に立ったルネッサンスをつくるという、みごとじゃないですか。私は四十年前に本当に心の友とした呉杰君がいまごろどこかに消えてなくなっているかと思ったら、三十六年ぶりで手紙が来、それが一つの新しいニューリーダーのトップに立つなんということ、そういうものを引っ張り出すところが中国のまたコペルニクス的転換の可能な民族である。ポーランド以上にやっぱり東と西からコペルニクス的な百八十度旋回が起きてきているというのをひとつ見本にして、日本の方は実際まだ完成じゃないけれどもやっているぞというところだけの気合いをどこかでかけるのでないと、具体的事実以外に人を動かすことはできないと思うので、それは無理な注文だが、やっぱりいまの大臣じゃ伊東さんなんか比較的良心的だから希望がつなげるので、これを言うと余り伊東さんを苦しめちゃって、また新聞辞令で今度の内閣改造で吹っ飛ぶのは伊東だろうということになっちゃうかもしれないけれども、どうぞこれからひとつそのくらいの気合いを持っている政治家でなければ日本を救えないということだけ、きょうは気合いかけにひとつやったんで、まあこれは気合いをかけるというのは自分にも気合いをかけるんですから。これは一生懸命で、社会党の中で孤立してもあいつは変わり者だと言われても、明日はよかれという祈りを上げながら、やっぱり天地に祈りをささげて文天祥の正気の歌でも歌ってやはりこれに相和して、古き時代の道義的生命力と新しき時代の精神とを融合させるような、東洋流の楽観的なもっと夢を見る、やはりひとつ大衆が喜ぶような社会主義でなけりゃだれもつまむやつもいないですよ。どうぞそういう点において、きょうは皆さんには御迷惑をかけたけれども、特に理事には心配をかけたけれども、私はいま本当に今度ほどうれしいことはなかった。本当に老、壮、中が一緒に融合して議論をして、そうして相手を排除して自分が何とかのさばり出そうというようなずうずうしいやつらは恥ずかしくて引っ込んでいってしまうような状態です。  時間が参りましたので、これでもって結びといたします。どうぞよろしくお願いします。御迷惑をかけました。
  39. 秦野章

    委員長秦野章君) 午後一時四十分に再開することとし休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ―――――・―――――     午後一時四十四分開会
  40. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。   休憩前に引き続き、質疑を行います。   質疑のある方は順次御発言を願います。
  41. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 案件に入ります前に、本日もまた若干原潜にかかわる問題をお尋ねをしたいと思います。  昨日、米海軍が日昇丸の乗組員の方々と事情聴取ということで面談をされたようでございます。その際に、やはり一つのポイントになりましたのは、十日の日の、応答要領というのが正しい言い方なのか、補足説明と言った方がいいのか、それはともかくとして、その中に一番疑義をはさむ問題について目下調査中であるということは、明らかに米国側の認識の仕方というものと乗組員の証言というものが大きく食い違っているという点が浮き彫りにされたような感じがしてなりません。米国は米国の立場がございましょう。また日本は、それなりに有力な一つの決め手ともなるべき乗組員の証言があるわけでございます。果たして、そうした事実の誤認について調整がとれるものかどうなのか。まあ、報告がおくれている経過の中には、そういった究明に手間取っているということも考えられないわけではございませんけれども、果たしてそうした問題がどう整理されて、われわれが納得のいくような、期待し得るような回答というものが果たして得られるであろうか。これがやはり将来、将来と申しますか、今回の問題解明に当たっての大きなネックになるのではないだろうか、こう思えて仕方がありませんけれども、その点については外務省としてどのように判断をされておられるのか。これはむしろ政治的な判断がございますので、伊東さんから直接お伺いした方がよろしいのじゃないかと思いますね。
  42. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私どもステートメントをもらったわけでございますので、あのステートメントでは、いま渋谷さんおっしゃるように、衝突があった後の救助の努力とか、そういうことはどうもよくわかりませんので、あのステートメントだけでは国民が納得できるような説明でないということでございますので、その点、通報のおくれた点、事故の原因ということ、まあ損害賠償の問題がございますが、そういう点を国民に早く納得するように調査をしてもらいたい。そうして、事後処置、補償その他の問題もきちんとやって、日米安保体制、日米の信頼関係、そういうものに傷がつかぬようにということを向こうに要請をしまして、いま向こうに調査をして早くよこしてくれということを言っているわけでございまして、きのうの事情聴取の内容は外務省は聞いておりませんが、日本側としては海上保安庁が調査をしているわけでございますので、海上保安庁の調査が日本側の正式な調査と、こう思って私どもは取り扱うわけでございますが、そういうものと向こうの調査というのが歴然と食い違っているというような場合は、これはどうもおかしいじゃないかというようなことは当然言って、最後まで真相究明には当たるつもりでございますが、アメリカ側も調査したことの真実はそのまま伝える、うやむやにしたり隠蔽したり、そういうことは考えないということを再三にわたって大使も言っておられますので、なるべく早い機会にこの真相というものがはっきりすることをわれわれは期待しているわけでございます。
  43. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、いま申し上げた問題についても、どうも不安を残すような印象がぬぐい切れない。かてて加えて、いまお述べになりましたように、マンスフィールド大使を通じまして真相は隠さずに報告をする、まことに結構だと私は思うのですけれども、ただそこでもう一つやっぱりひっかかる問題が出てきはしまいか。真相といいましても、まさしくありのままに何もかも報告がなされるのか、果たしてその報告の内容に関して軍事機密に触れるようなことまで報告の対象としてなされるのか、その辺はどのように判断をしたらよろしいものか、いかがでしょう。
  44. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私どもよく向こうと話していますとき、軍事機密まで全部日本側に知らしてくれとは言っておりません。言っておりますことは、ひとつ調査をしてもらって真実がわかるように早くしてもらいたい、しかしそれは国民がやっぱり納得するようなものでないとだめだということを言っているわけでございまして、これは軍事機密だ、これは軍事機密だと言って、国民に全然わからないようなものをわれわれにもらって、これで納得しろと言われても、それは納得ができないこともございますので、私はやっぱり常識を持った者はそういうことかと言ってわかり、納得できる範囲の調査報告でなければ私は困るし、またそういうものを期待しているということでございます。
  45. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 米艦艇の行動というのは常に何か目標を掲げて行われている、こう見ることがやはり常識であろうと思います。そうなりますと、たとえそれが訓練を目的としたものであるにせよ何であるにせよ、何らかの、大小の違いはあるかもしれませんけれども、何らかの形で軍事機密にかかわり合いを持つ行動というもの、これはやはりそのように受けとめることが普通じゃないか。ですから、真相を包み隠さずありのままという、それは一体どこまでを指しているのか。いま伊東さんは軍事機密のことに関してまでは要求はしておりませんと言いますけれども、立ち入って考えてみますと、そこまであるいは場合によっては究明をしなければ真実というものが明らかにされないのではあるまいか、こういう感じがしてなりませんが、それでもなおかつ国民の納得し得る回答というものに期待が持てるようなものが寄せられると、その中身に問題があるだろうと私は思うのですけれども、何だかそれに触れてくるようなことが考えられはしまいか、いかがでしょう。
  46. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) おっしゃるように、中身次第だと思うんです。中身で国民の、われわれも読むわけでございますが、国民の皆さんがその説明を聞いて、それはもう何かベールがかかっていて何だかわからぬというようなことでどうも納得できぬというようなことであれば、私はこの問題はどうしても国民の間に、日米の間にはっきりしたものがわからぬ、もやもやになってしまうということになると信頼関係が損なわれるということを私は一番心配しますので、内容をもらっていませんからまだわかりませんが、それはやっぱり大多数の国民を納得させるような内容の報告を期待しているわけでございます。
  47. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私自身日米友好というものを傷つけたくない、そう思う一人でございますし、しかるがゆえに明快な答弁というものを期待しなければならない。その際、いまおっしゃるように、もし納得し得ない、期待に相当遠く離れた内容であったという場合には、次善、次の段階としてやはり手を打たれることまでお考えになっていらっしゃいますか。
  48. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私は、やっぱり納得のできる説明を聞くということでないと、この調査が終わるとは言えないと思うわけでございます。ただ、いままでも原潜の行動とかいろんなそういうものは向こうは説明をしないということになっておりますから、それはおのずとその点は限界があることはわかりますが、しかし、そういうことを聞かなくたって、どうして救助がおくれたかとか、あるいはどうして通報がおくれたかとかというような、どうして原因がこういうことになったのかということの説明ができないことはないと私は思うことがございますので、まず内容を見て、その上で判断をしますが、私としましては、やっぱり大多数の国民の皆さんが、ああ、こういう理由でこれはできなかったんだなとか、やっぱり納得する説明がないとそれはいかぬと、こう思っています。
  49. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにせよ、この問題をこれ以上問いただしましても、報告を待たなければということになろうと思うのであります。  次に、ジョージ・ワシントン号の行動について、これは米海軍が発表したのかどうか、私わかりませんが、一部新聞で公表されております。その航跡を見ますと、ごらんになったと思いますが、鹿児島県の沖合いを通過して甑島列島を通過し、そして韓国の鎮海に向けて航行中であった、こう言われているわけです。あの線の引き方がどういう認識に立っての線の引き方をしたかわかりませんけれども、あの引いた線を見る限りにおいては、明らかに日本の領海を通過している疑いが非常に濃厚ではなかろうかという印象を実は受けたわけでございます。これは従来からの政府の繰り返しの答弁を伺いましても、領海に立ち入るということは絶対あり得ない、米国側の言い分を信頼する以外ないというのが答弁の一つのよりどころであったわけです。しかし、その確認する方法もない。しかも、確認する方法もないままに、公海上とは言うものの、先般も私、申し上げましたとおりに、領海からそう離れていないわけですね。これまた考えようによっては十分領海内を通過したということが考えられはしまいか。  さて、そうなると、問題になりますのは、核搭載の原潜が通過したということになると、当然事前協議の対象になるということがこれまたしょっちゅう行きつ戻りつしながらも何となく割り切れないままに今日に至っているということが言えるのではなかろうかと思うのです。すでにラロック証言がこれまた国会、衆参両院においてもしばしば問題提起ということでなされてまいりました。しかしそれは一私人の証言であってアメリカ政府代表するものではない、信憑性に足らないと、こういうことで、いままではそういうことはあり得ないということを主張されてきたのが政府のとってきた態度であったろうと思うのです。しかし、いままでの長い経験の上から、ラロック証言というものはある意味においてはやはりあり得るかなというような印象をこれまた与えるような面も多々ある。核の積載可能な艦艇についてはすべての艦艇は核が搭載されている。日本を初め他の国の港に立ち入ったときでも、核を外すことは絶対あり得ない、こういう証言でございますね。それがまたぞろ蒸し返しになって、今回の問題と符節を合わせるように、何かまたありはしまいかとなると、この非核三原則の問題と日米安保というのものが、一体その接点というものをもう一遍洗い直してみる必要があるのじゃないか。非常にあいまいとして割り切れない、明快さを欠くというようなことがまたここで表面化してきているというような問題があるように見えて仕方がありません。日米首脳会談を前にいたしまして、こういった問題、将来日米間の信頼というものを失わない上からも当然整理してかかる必要があるのじゃないか。今回のジョージ・ワシントン号はそういう意味においては日米に対する一つの問題提起といいますか、波紋を投げかけたといいますか、そういうふうに判断される事件ではなかったのか、こう思えて仕方がないのでありますが、その辺を整理して御答弁いただければ大変ありがたいと思います。
  50. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま御指摘のありました新聞報道の点で、まず事実関係について申し上げますと、けさの一部の報道で、このジョージ・ワシントン号が韓国の鎮海に向かっていたのではないかという報道があった、それは私たちも承知しております。  そこで、二十三日、本日でございますけれども、在京の米大使館を通じまして照会しましたところ、在日米海軍では、報道されているような内容を公表した事実はないということを申しております。したがいまして、まずそれを申し上げまして、それから第二の、ラロック証言、これは渋谷委員御承知のとおり、ラロック証言が起きたときにも、日本政府としてはアメリカ側に問い合わせたわけでございますが、その結果、当時のインガソル国務副長官の方から、アメリカ政府は安保条約に基づくアメリカの義務というものを忠実に遵守しているのだという回答を得ているわけでございます。  今回の場合、衝突事件は公海で起きたわけでございますが、いま御指摘のような領海に入っていたのじゃないかという御指摘でございますが、私たちとしては、日米関係については、歴代の大統領が繰り返して安保条約に基づく特に事前協議についてはアメリカ側の義務は忠実に履行しているのだと、こういうふうに言っております。やはり日米関係というのは信頼関係に基づくということでございますので、この信頼関係に基づいて、いやしくもアメリカの大統領ないしアメリカの高官が再三にわたってアメリカ政府立場、すなわち安保条約に基づくその義務を忠実に履行するということを言っている以上、これは私たちとしてはやはりその信頼関係の上からいって、領海内に兵器が持ち込まれたということはあり得ない、万一そういうことがあれば当然事前協議の対象になるというふうに考えています。
  51. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃるとおり、アメリカ側の方から信頼を損ねるような表明というものはされるわけはないであろう、これはもう当然考えられることだと私は思うのです。ただ、いま申し上げたようなラロック証言について考えてみましても、あり得べからざることがありはしまいかという、これは確認された問題でもございませんので、推定という域を一歩も出ることはないであろう。しかし、推定でありましても相当信憑性に富むものではあるまいかというふうに考えるのも、これは一つの自然の成り行きではなかろうか。米国側が、みずから日本の国の領海を侵犯しております、核弾頭を積んだまま通行しておりますなんということを言うはずもありませんし、当然、日米安保条約の原則に従って、信頼関係を損ねるような不利益なことをアメリカ自身が発言することは毛頭考えられない。けれどもという、やはりその疑問がわれわれから払拭できないという問題を考えてみた場合に、やはりこの非核三原則の問題と日米安保条約とのかかわりあいというものがどういうところでその接点があるのか、その辺が非常に明確さを欠くということからいろんな疑惑が出てくる。したがって、あるいはこれは非常にとっぴなことを言うようであるかもしれませんけれども、今回総理が訪米された際に、改めて、再確認という意味を含めて、当然共同声明か何か出されるのじゃないかというふうに考えられるわけでございますけれども、そういった際に、明確にこの非核三原則というものを盛り込むというようなことなども一つの新しい方法として、一歩前進というか、そういうことになりはしまいかということも、ちょっと新しい展開を考えてみた場合に、友好関係をさらに持続するという、そうして信頼関係をさらに強めるという上からも、明確にそういった取り交わしというものがあれば、あるいは共同声明というようなことで、両国がそれぞれの立場に立っていままで以上にはっきりさせるということが望ましいのではないだろうかというふうに思うのでありますけれども、その点、伊東さんどうでしょうか。
  52. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) まだ共同声明をどうするかということにつきましては相談はしていないわけでございますが、私はこの間もロング長官にすぐこの非核三原則のことを話したわけでございます。そこで、司令官も、それは従来も尊重しているし、今後も尊重しますという話がございました。私お供して行けばヘイグ国務長官と話をする問題はいろいろございますが、当然その問題も私は話すつもりでございますが、共同声明の中にどうするかということにつきましては、これはまだ何とも決めておりませんので、どういうふうにするか、今後の問題として検討はいたします。
  53. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 こうした事件が起こったと思う間もなく、これ見よがしというのは言葉が過ぎると思うのですけれども、きょう昼のニュースを見ておりましたら、青森沖、何キロ先かわかりませんけれども、領海から約三十キロという地点だそうでありますが、ソビエトのミサイル駆逐艦が実弾演習をした。その周辺には日本の漁船が十隻余り操業していた。一番近いところでは二キロ離れていたところでそういう光景を目の当たりにした。従来は、何か、そういう演習がありますと、公海上でありましても、漁船に被害があってはならないという配慮もあって、あらかじめ通報がある。今回はその通報がなかった。何か、一連のジョージ・ワシントン号と符節を合わせるようにして今回のソビエトのミサイル巡洋艦の実弾演習が行われた。この事実関係は確認されていますか。
  54. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) ただいま御質問のございました点につきましては、事実関係はまだ正確には把握しておりません。ただ、私どもが承知しておりますところでは、昨日夕刻、津軽半島の沖合いにおきましてソ連艦船による射撃実験が行われたということを防衛庁より通報を受けております。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 防衛庁は事前にそうした通告を受けたというふうに連絡はありましたか。
  56. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) 今回の事件につきましては、ソ連側より事前に通告があったという事実はないというふうに承知しております。
  57. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 伊東さん、いかがでしょうね、こうしたようなことがエスカレートなんかされたのではもう日本の近海で操業すらできないという不安が増幅していくのじゃないだろうか、大変遺憾な問題だろうと思うのですけれども、これが明確になった場合にどのような措置をとられますか。
  58. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 事実関係をもう少し調べた上で、外交上の措置をどうとるかとらぬかというふうなことは、それを見てから検討いたしますが、これは公海でございますけれども一般の船舶は普通は航行するようなところでございますし、漁船も、これは恐らく二百海里の中ですから、当然あると思われますので、そうしたことが事実どの程度行われましたかわかりませんが、なぜそういうところで演習があったのかというのはちょっと理解に苦しむという感じがするわけでございます。  ただ、渋谷君のおっしゃったとおり、エスカレートして、日本の近海で、日本の周辺でいまのようなことがいろいろ行われるということにならぬように、これは日本としても十分注意しなきゃなりませんし、事実を見た上でどういうことを考えるかということをしようと、こういうふうに思っております。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても、こういったことが連鎖反応的に起こるということになりますと、大変厳しい環境に日本が追い込まれはしまいか、新しい一つの不安材料というものが提起されているような感じがしてならないわけであります。したがって、一日も早く調査の結果というものを出していただいて、そして、従来にまさるとも劣らない、災いを転じて福となすような方向へ一刻も早くやってもらいたい。決してそれは後退するような、ただアメリカの主張のみをこちらが手をこまねいて見ているということではなくて、あらゆる角度からアクションを起こしながら、米国側に誠意ある回答を求めるという、そういった努力がどうしても必要である。もう刻々お約束の三十日以内というその時間も迫ってきておるわけです。アメリカ側も、あるいは善意に解釈すれば苦慮しているかもしれません。どうすれば一体日本国民を納得せしめることができるか、そういうことで一段のこの点については持続的に鋭意努力を払っていただきたい、このように伊東さんに要望しておきたいと思うのですよ、よろしゅうございましょうか。
  60. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) きのう――おとといも大使館の方へ督促を実はまたしたわけでございます。渋谷さんと全然考え同じでございまして、極力最善の努力をいたします。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは、本題に入らしていただきます。  きょうはもうあと時間もそうありませんけれども在外公館の新設問題にかかわる点について若干申し上げてみたいと思います。  かねがね私が当委員会はもとより、予算委員会等においても提言を交えて主張してまいりました、多様化する国際情勢に取り組むに当たって、日本外交布陣というものが強化整備されていかなければならない、これは衆目の一致するところであろうというふうに思うわけであります。しかし残念なことに、外務省がすでに策定いたしました西ドイツ並み、イタリア並みの体制、中身はともかくといたしまして、そこまでできるだけ早いい機会に――たしか私の記憶では五年ぐらいと記憶をしているわけでございますが、しかし、行政改革の問題これあり、大変厳しい事態の中でこれを進めなければならない。先般予算委員会におきましても、外務大臣、行政管理庁長官そして鈴木総理と、それぞれの立場から外務省の今後の体制の整備について意のある答弁を求めました。外務省については、あとう限りこれからの外交が円滑に強力に推進されるその一環として強化していくことには異存がありません、こういうことでございますけれども、しかし、現状を考えますと、大変ほど遠い、もう十年か二十年ぐらいかかるのじゃないだろうかという感じがしてならないわけでございますが、そうした行政改革の問題を踏まえつつ、どうでしょうか、いままで策定された目標どおりに外交布陣の体制強化というものが強力に推進できる自信がおありでございましょうか。
  62. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 渋谷委員にはこの間予算委員会でもこの問題を御提起いただきまして、非常に御激励をいただいたわけで、その際総理及び行管長官からも、非常に厳しい状況であるという前提の中で、なおかつわれわれにとって力強い御答弁をいただいたわけでございます。  仰せのとおり、行政改革ということが政府の大きな課題となっている時代であることは私ども百も承知しておりますけれども、臨時行政調査会設置法の第一条には、「社会経済情勢の変化に対応した適正かつ合理的な行政の実現に資するため、」云々ということがうたってあるわけでございます。私どもは、この「社会経済情勢の変化」の一つの重要な変化は、やはりわが国の国際環境の変化であろう、こういうふうに感じておるわけでございまして、一方では多様化し複雑化した国際環境、他方ではその中におけるわが国の役割りへの期待の高まりということで、わが国の外交体制を将来にわたって整備充実する必要があるということはまさにこの「社会経済情勢の変化」、それに対応してどうするかという大きな問題の一つだろうと心得ているわけでございまして、そういう意味では臨調の委員の方々、関係者の方々、あるいはまたそれを受けてこれを取り上げられる政府の要路の方々が、この設置法の一条と一致しないような御提言なり御決定をなさるものとは万々予想してないわけでございます。  そうは申しましても、現実になりますとなかなかこれは予算折衝、定員折衝が苦しいことは御指摘のとおりでございまして、現在、先般御承認をいただきました五十六年度の予算においても、予算定員におきましても、これは最後大臣折衝まで伊東大臣を先頭に立てて実は努力して、純増八十という結果を得たわけでございますけれども、渋谷委員かねて御承知のとおり、私どもが昭和五十四年に三千四百人という本省、在外の定員を昭和六十年までに五千人にしたいという六カ年計画でございますが、そのためには毎年平均しますと二百数十名の増ということがなくては達成できない。そういう意味でこの八十名の増にとどまったということは、関係省庁が皆非常に厳しい削減を受けた中で特別な配慮をいただいたという点については、これは私どもはそれなりに評価しておるわけですけれども、目標から見るとこれを下回るということもまた事実でございます。ただ、私ども現時点におきましては、六十年までに少なくとも五千人というこの目標は引き続き掲げ続けるつもりでございまして、今後の毎年の予算定員折衝の中で、何とかこの目標に少しでも近づいていくような方向づけを打ち出していきたいという気持ちでおる次第でございます。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回もそうでございますけれども、逐年在外公館というものがふえこそすれ減る傾向にはないと私は思うのですね、兼館を含めて。そうすると、それに伴う人員の配備というものが当然問題になる。いまおっしゃったような計画に基づいて毎年二百数十名の増員がかなえられれば目標どおりにいくのではあるまいか、なかなかその目標も達成できない、しかも増員いたしましても、やめる人もある、そういうバランスをどう一体とりながら目標に近づけていかれようとしているのか。すでにつくられた、策定された構想というものを、いま直ちにこういう実情だからすぐ変えるというわけにはいかないにいたしましても、やはり将来においてもう一遍手直しを加える必要が出てきはしまいかという感じがしてなりません。いまの現状のままの行き方が続く限り、外務省の悲願である人員の充足はおろか、ますます機能的に麻痺してしまうような方向へ行きはしまいかということを心配いたしますけれども、その点は政治的配慮を踏まえて伊東さんからもひとつ確信のある方向性というものをやっぱりお示しになる必要があるのじゃないだろうか、こう思うのですが。
  64. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外務省外交体制の充実という問題はこれは本当に私はもっともっと早くからやるべきだったという感じを強く持つのでございますが、たまたまいま行政改革という問題にちょうど際会したわけでございますが、ことしの予算をやりますときも、党の三役まで実は参りまして一札を取りまして、この問題に長期的に取り組んでくれというようなことまで最後は私やったわけでございますが、なかなかむずかしい情勢があることは私はわかりますが、その中でやっぱり減らすものは減らす、どうしても必要なものはふやすということでやっていかなければ私は本当の行政改革じゃないと思うわけでございますので、外務省としては一丸になって長期的、来年だけで片づく問題じゃございませんので、これは少し長い目でこの問題に取り組んで、先ほど午前中も御質問がありましたが、情報収集なんということは大切なことでございますし、小館、五、六人の小さな公館がたくさんあるわけでございますから、こういうものをなくして本当に外交がしっかりやれるということに私はしていかなければいかぬというふうに考えております。
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私がかねがね申し上げておりますように、ただ人さえふやせばいいというわけにはいきませんので、質的にも当然それに並行して有為な人材を登用するということ、ですから非常にやっぱり困難なことをいま進めていかなきゃならぬという瀬戸際に立たされていると思うのですね。かてて加えて資源外交はどうだ、平和外交を促進するのだ、それはもう防衛論議よりもその平和外交を優先させるべきだと、こういう花火は幾らもぽんぽんぽんぽん上がるわけですけれども、それを具体的に現場においてだれが推進するかということになりますと、議員が一々外へ出てやるわけにいきません。やはり外務省の出先がその衝に当たらざるを得ないということになるのは、これはもう当然のことであります。ただ手をこまねいて、しかも資源のない日本が将来をやはり考えてみた場合に不安材料がたくさんあるわけです。そういった解消をする上からも、いろんな国々との交流を図りながら親密の度を加えつつ、そうしたかかわり合いの中で世界平和への一つの手がかりをつくっていく、足がかりをつくっていく、これは当然のことだと思うのですね。しかし、残念なことに依然としてそれが遅々として進まないということになりますと、どうしても日本外交というのは主体性がない、アメリカ追随ではないかというような批判をまた受けざるを得ない、そういうおそれが出てくるわけであります。やはりその独自の立場に立って思い切った外交を推進するとするならば、まずその辺から体制強化を図らなければ論多くして具体性が少しもないというそしりを免れないであろうというふうに思えてならないわけであります。これはいま具体的にどうこうしろなんて言ってみたところで、いろんな壁があるわけです、いろんな拘束があるわけですから、直ちにとはいかないにしても、やはり思い切ったここで政治的な判断を加えてそして進めていかないことには策定された構想にはほど遠いということになる懸念があることをここで申し上げておきたい。ぜひそれは推進してもらいたい。  それから、兼館がたくさんあるのですね、アフリカあたり特にそうだ。その兼館の機能というのは大体中心大使館がそれぞれの仕事をやるのだろうと私は思うのですけれども、兼館の役割りというのは実際あるのですか。
  66. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 数字で申し上げますと、現在実館として開いている大使館が九十九、兼館が五十二でございます。総領事館、領事館についても若干の兼館があるわけでございますが、この五十二の兼館、兼轄大使館も恐らくいろんな種類のものがあると思います。いわゆるミニステート、人口の非常に小さい国のような場合は、何か必要なときに近隣国の兼任大使が出かけて処理をするという程度で大体間に合う、ほとんどすべての国がそういうやり方をやっている、そういう兼館もかなりあると思います。中にはできれば早い時期に実館を開きたいと私ども思っている、そういう意味での現在兼館になっているところもございます。その後者の方が実は非常に大事でございまして、兼任大使は年に二回とか三回とか機会をとらえて出かけましてそこで処理をするとか、一、二名の館員が駐在してその館の間をつないでいるというようなことでございます。そういう意味では実は兼館は、その私が申し上げました部分の後者の方の兼館はなるべく実館に切りかえたいと、それはそのとおりでございます。ただ、率直に申しますと、実は私どもいろんな緊急課題を抱えているわけですが、いまの緊急課題のいわばナンバーワンは、すでに実館を開いているところで超小規模の館がかなりある。四、五名という、私ども七名以下を小規模と呼んでおりますけれども、その中でも四、五名は超小規模とでも呼びますか、そういう館がかなりある。そうなりますと、実館は開いたもののなかなか館としての機能を果たせないでいるとか、健康管理もできないで病人が出るとかいう実情がございますので、そういう超小規模の実館をもう少し充実する、あるいはその周辺にあるやや大き目の館を拠点公館として応接要員をそこに少し置いておくとか、そういう体制を整備するのが恐らく一番の緊急課題じゃないかと思っておりますものですから、現在兼館のところに新たに実館を開いてもこれがまた三、四名の小規模公館ではまた同じ問題が出るということもありまして、これも大事ではございますけれども、より最大緊急なものとしては超小規模公館の充実ということに充てておりますので、近年この館数の増加よりも定員の増加の方により力を注いだのもそこに原因があるというのが現状でございます。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私の持ち時間がもう過ぎているので、最後に整理して申し上げたいと思いますが、いままさしくおっしゃったとおりだと私は思うのです。それは同感です。けれども、人が足りないと、こういう問題がすぐもう反動的に起こるわけです。これがもう日本外交の一番の大きな隘路ではないだろうかというふうに思うんですね。  先般もアフリカ開発銀行の問題に関連して舌足らずの質問で終わってしまったのですけれども、いま脚光を浴びておりますアフリカなんかに視点を求めて考えましても、まさしくいまおっしゃったとおりなんです。これじゃもう機能も発揮できない。実館を開設したいのだけれども、それすらもできないというまさにもうどうしようかという、そういうようなせっぱ詰まった事態に追い込まれている、これが外務省であろう。恐らく伊東さんもそういう実情については官房長からもるる説明を聞いて深い理解を示しておられるとぼくは思うのです。しかし、いま日本の置かれた立場というのは私から何も事改めて申し上げるまでもなく、非常に重要なその関頭に立たされているだけに、そういったやはり機能が十分発揮できるような方向というものをいち早くやっぱり築いていかなければならないであろう。遅きに失しているのですよ。これはまあ過去をたずねれば吉田内閣から、吉田さんからもうずっと今日まで少数精鋭主義だなんということを貫いてきたその弊害がいまになって大きな重荷になっているということを指摘せざるを得ない。それは少数精鋭主義も結構だと思いますよ。しかし、人間の能力には限界があるわけですから、やはりある程度有為な人でもって、人数でもって固めるということは、これは当然必要な事柄であるわけです。ですから、非常に遅きに失している。しかし、だからといってどうにもならぬと言って手をこまねいていることもできないということを再度ここで私は申し上げておきたい。  それともう一つ、特に瘴癘地なんかで勤務している方々を中心とする給与体系、若干ずつではありますけれども上がってきていることは確かに私も認めます。しかし、果たしてそれで満足かどうかということになりますと、それは際限のない問題になるかもしれませんけれども、しかし、私から言わしめれば最低保障ぐらいはやっぱりやってあげないと、国内にいる場合の生活というものと、やはり外へ出てときには命を的にして取り組まなければならないという外交活動の中で、やはりある程度の保障というものをしてあげないと、十二分な活動というものは、希望をもって、勇気をもってやることはできないのではないだろうかという点もございます。やはり、日本外交官として毅然として襟度を持って対外的にも折衝できるという、そういう内容のあるものを与えてあげないと、特に若い外交官は窒息してしまうのじゃないか、絶望感を持ってしまうのじゃないか。だから中には自殺する者も出てくるというようなことの事例もあるわけですから。それらを全部一括して最後伊東さんの答弁を求めて、本日のところはこの程度にしておきたいと思います。
  68. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 前段の資質の問題はもちろんだけれども、質もやっぱり量に転化しなければならぬと、そこまで来ているじゃないかということは、私も同感でございます。先ほども申し上げましたが、時期がちょうど行政改革と重なるわけでございますが、これは外務省一丸となってやるつもりでございます。  それから、瘴癘地に勤務する職員のことを考えてやらなけりゃいかぬということ、襟度を持って働けるようにしなけりゃいかぬということは、これはもうお説のとおりでございまして、私も中でよくそういう注意はしているところでございまして、今後ともこれは努力をしてまいります。
  69. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 午前中、同僚議員から中国のプラント問題の話が出ておりましたけれども、このことにつきましてちょっと触れておきたいと思うのですが、時間の関係もありますので、要点だけを申し上げて質問をしたいと思います。  大体五年間で総額二十億ドルを上限とするプラント建設機材融資策を明らかにしたようでございますが、先ほども御答弁がありましたように、来週早々長谷川アジア局参事官を団長として、大蔵、通産、経企等の各省この関係者が来週中に行くと。それで、この方々が、報道によりますと、今月末をめどに大体調査をして、この目的を果たそうと、こういうふうに言われておりますが、この点について御説明を願いたいと思います。  それから、その次は、五月の連休明けに谷牧副首相が訪日をされるということでありますが、その一連の問題解決のための来日だということは、これは私はそう思って見ているわけですが、その辺のことについても大体いつごろになるのか。連休明けといいましても、大臣も訪米問題等もございますし、そういう問題も含めての考えの中から御答弁を伺っておきたいと思います。  さらには、どうしても日中友好進展を図るためには、両国間の総理が、鈴木総理は訪中をされ、趙総理は訪日をされて、そしてその友好関係を進展をさせるということが一番重要なことじゃなかろうかと思います。こういうことを考えまして、伊東外務大臣は鈴木総理と大体いつごろ訪中するような話があったかどうか、またされたかどうか、その辺のことも伺っておきたいと思います。  それからもう一つは、第一回の日中閣僚会議のときに、第二回はわが国の方でやるというふうな話をされておるようでありますが、この辺の時期はいつごろなのか、この辺も伺っておきたいと思います。重ねてぼんぼんぼんぼん言ってしまいましたけれども、ほかの法案のことをやらなきゃなりませんので、なるたけ明快に短くお願いします。
  70. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) お答え申し上げます。  第一点でございますけれども、一月の末に中国側からプラントの建設中止等についての通告が関係業界に寄せられて以来、対中プラント輸出問題について民間レベルあるいは政府レベルで話し合いが続けられてきたわけでございますけれども、先生御指摘のとおり、来週に事務レベルの話し合いが北京でさらに続けられるということになろうかと思います。けさほど御報告申し上げましたように、中国側は話し合いの過程を通じまして、一月末の中止通告については撤回するということを申してまいっておりまして、それに伴いまして、ただし工事の継続に必要な低利融資について日本側の配慮を要請するという形になっているわけでございます。この点につきましては、なお多々詰めるべき問題もございますので、先ほど申しました事務レベルの話し合い、さらには民間レベルの話し合いも続こうかと思いますけれども、そういうことを重ねてまいりたいというように考えております。  谷牧副総理の来日については、究極的にそういうことになるというように想定しておりますけれども、その時期につきましては、いま申しました事務レベルの詰め、あるいは民間レベルの話し合いを踏まえまして、外交チャンネルを通じて決めるということで、その時期についていま確定的に申し上げるという段階ではないのではないかというように思っております。
  71. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 二つございますが、日中閣僚会議、これはこの前秋に北京でやりましたときに次回は東京でということで、これは両方で合意をしているのでございますが、時期についてはまだその後具体的にいつごろ、どういう議題でどういうことを、これはまだ実は相談はしておりませんので、いまここで大体いつごろということまでお答えする段階にまだ至っておりません。  それから、鈴木総理の訪中、趙紫陽総理の訪日、これは両方で招請をしまして、趙首相も喜んで伺う、あるいは総理も中国を訪問するということで、両方でこれは合意はできているわけでございますが、その後また日程等、大体いつごろということで鈴木総理の場合に中国に連絡する、あるいは趙紫陽首相の場合に中国から日本に連絡があるとかという段階にはまだ至っておりません。いずれ相談する機会があると思うのでございますが、今日の状況はそういうことでございます。
  72. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いずれにしましても、むずかしい問題だとは思いますが、これが大きな一つのきずなになっていく、大臣もきずなということを演説の中にもおっしゃっております。そういう面でやはりなるべく早く実行されるということを要請しておきたいと思います。  次に、中国の残留孤児の問題でございますが、これも日中閣僚会議においての話し合いが出ておりますけれども、そして、先般四十数名の中から十八人の肉親が探し当てられたということ、厚生省によりますと、まだ関係親戚、関係親族を求めているのが千二百名ぐらいはあるといわれておりますが、東北地区全体の在留孤児は一万人ぐらいだとも推定されているわけでありますが、これらの人たちの問題を、政府はどんなような責任を持って最終解決に――これは息長くしなきゃならない問題だと思いますけれども、相当の考え方努力を払わなきゃならぬと思いますが、この辺について大臣のお考えを伺っておきたいと思いますが。
  73. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 中国の残留孤児の方のことは本当に気の毒な状態でございますので、去年暮れに日中閣僚会議をやったときに、私は厚生省からリストをもらいまして、向こう外務大臣に正式な議題として提起しまして、中国側でもこれを好意的に探すという約束をしてくれたのでございます。一方、先般は孤児の人が親探し、親類探しに見えたわけでございまして、帰った中の数人から私に直接手紙が来たのでございましたが、親が見つかった人は何とか早く日本の国籍を回復して帰りたい、それから、見つからなかった人も、一回目は残念だったけれども、何としても探し出すのだというような、本当に胸を打たれるような手紙を私直接もらったのでございまして、今後ともこれは、日本としましては、中国がこれに理解をしてもらわなければいけませんので、中国の理解を得ながら、日本側は厚生省が主でございますが、外務省もそれに協力しまして、なるべく早く探してあげるという機会をよけい持つことの努力をいたします。時間がたてばたつほどこれはわからなくなりますから、なるべく早くそういうことが何としても行われるようなふうに私どもとしても努力していきたいと思っております。
  74. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 申し上げるまでもなく、早く言えば当初はほとんどの方が開拓民として異郷の地に駆り立てられたような状態であったと思うのです。その人たちが中国の冷淡な扱いじゃなく、温かく今日まで人間としてはぐくまれてきているということもあわせて考えていかなきゃならない問題だと思っております。そういう意味からいきましても、いま大臣のおっしゃったように、ひとつその方針を強く進めていって、いっときも早く処置をしてあげるように希望をいたしたいと思います。  渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国政府中華人民共和国政府との協定でございますが、一つだけお伺いしますが、第三条の一項、二項、三項それぞれに伴う費用についてどのような措置をとられるのか。この説明によりますと、予算措置がしてないということなんですが、少なくともこういう協定を行うのに予算措置をしてないというのは、ちょっと私は理解に苦しむものですから、この点一点だけお伺いをしたいと思います。
  75. 中村廉

    説明員中村廉君) 第三条に基づきます渡り鳥の研究に関する資料の交換あるいはこの共同研究、こういうことにつきましてはせんだって、三月三日にこの条約が北京で調印されました際に、環境庁と中国の担当部局であります中国政府の林業部との担当者の間におきまして、今後この協定が発効された後に、定期的に渡り鳥保護のための会議を開こうというような話が出ております。私どもといたしましては、この会議が開かれました後に、その話の中でこの資料の交換あるいは共同研究等の中身につきましてよく詰めてまいりまして、環境庁といたしましても従来まで渡り鳥の調査につきましての蓄積もございますし、それから今後の調査につきまして共同で研究していきたいという考え方も持っておりますので、そこらあたりを詰めました上、この実施につきまして確保できるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  76. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 まだそのほかありますが、次へ飛んでいきます。  オットセイの保存に関する暫定条約、このことにつきましてお伺いしますが、これは暫定、暫定でずっと続いてきて、今年度を入れますと十八年間ぐらいになるわけですが、いずれにしましてもオットセイの獣皮の処分によって得る国庫収入と、それから政府が出しているその出資金とアンバランスになってきているのじゃないか。  もう一つは、獣皮の価格が非常に今日は値下がりをしているというふうなことから考えますと、この問題はこの時点で少し真剣に考え直していかなきゃならないのじゃないかと、こういうふうに思うわけですが、この点御説明を願いたいと思います。
  77. 中島達

    説明員(中島達君) ただいま御質問のございましたおつとせい委員会に対するわが国の分担金でございますが、昨年の分担金の額は百三十五万六千円でございます。  それから、これに対しまして、御高承のとおり、日本アメリカ及びソ連から毛皮の配分を受けておりまして、その収入があるわけでございます。この収入は年によって若干の変動はございますが、最近においては大体七千万円程度の収入があったわけでございます。ただ、昨年につきましては、先生御指摘のように、毛皮の市況が大分低落をしておるということがございまして、大体三千万円をちょっと上回る程度に落ち込んだわけでございます。  こういたしますと、この分担金とのバランス上は、まだ何といいますか収入の方が少ないということにはならないわけでございますが、何分にもオットセイにつきましては、この条約によりましてわが国でもいろいろな調査をやっておるわけでございまして、そういった面の予算がまた別途かかっておるわけでございます。分担金とこういった調査の予算を加えますと、従来七千万円程度の販売収入に比較をいたしまして、この支出の方につきましては大体これまた七千万円ということでバランスをしておったわけでございます。ただいま申し上げたように、昨年につきましては毛皮の価格が低落をしたという事情もありまして、御指摘のようなアンバランスを生じたということでございます。今後この毛皮の市況といったものがどういう動きを示すか、これはなかなか見通しがつかないわけでございますが、いずれにいたしましても、この条約が今後終了するまでにわが国の年来の主張でございます海上猟獲の妥当性を各国に認めてもらえるよう鋭意調査に今後一層熱を入れまして研究を進めてまいりたいと、こういうふうに思っているわけでございます。
  78. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 暫定、暫定の問題、わからないわけでもありませんけれども、いま御答弁がありましたように、その方向で進められていくことを要望しておきます。  まだグリーンピースの問題、ファンデーションの問題等が、いま世界の中にも日本の中にもいろんな影響性、波及性というものがありますけれども、この問題につきましても少しく質問をしようと思いましたけれども、時間が参りましたので、南極の方に参ります。  この条約の目的は、南極海洋生物資源の合理的な利用と、また保存を含むという点から、この条約締結によって将来オキアミ漁が規制されるような事態が起こらないとは思えないわけです。こうした場合に国内法の漁業法とか、水産資源保護法等の改正等ということも当然考えられてくると思うのですが、こういう面についてお伺いをしたいと思います。
  79. 中島達

    説明員(中島達君) この南極海洋生物保存条約におきましては、発効した後、委員会で御指摘のございましたような南極の一定の漁業資源につきまして保存措置が決定されるということは当然見通されるわけでございます。その際、これが科学的な根拠に基づく合理的な内容であるということであれば、これはわが国としても受諾せざるを得ないというわけでございまして、この場合にはその内容に応じまして現行の漁業法及び水産資源保護法に基づきまして、一定の採捕等の制限禁止等の措置をとるということで対応をするというふうに考えておるわけでございます。
  80. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間が参りましたので、もう一つだけ伺ってやめますけれども、オキアミの売上高及びその費用のバランスでございますね、こういうことを考えますと、これは決して利益の上がっている問題ではございませんし、しかもあれは幾らですか、十二億かな、二十億かな、補助してまでやっているわけです。これはまたそれぞれ北転船問題等の育成なんかも含まれておることでございますから当然のことと言えば当然であり、その救済策としてはそのやり方以外にないのだというように思いますけれども、現在では赤字が、とんとんであるかマイナスになっているのだというふうに私は受けているのですが、こういうことについての将来性の考え方というのはどんなふうにお持ちになっていますか。
  81. 中島達

    説明員(中島達君) このオキアミの漁業につきましては、現時点におきましては、先生御指摘になられましたように、これは母船式の漁業あるいは単船式の漁業、いずれにつきましても赤字を出しているというのが現状でございます。これは御承知のように、一つにはこのオキアミの開発に乗り出してからまだ日が浅いということでございまして、そのためこの利用面の開発がまだまだ必ずしも十分ではないということが一番大きな要因ではないかと考えているわけでございます。いずれにいたしましてもオキアミというのは、人類に残された最大の漁業資源の一つということで、一説によりますと毎年七千万トン程度漁獲しても資源の再生産維持には影響がないと言われるほどの非常に大きな資源でもあるわけでございます。こういったことに着目をいたしまして貴重な動物たん白資源ということで、今後ともますますその利用面の開発に力を入れていかなければならないと思っておりまして、そういった暁にはこのオキアミの漁業につきましても、これは収益性の点から見ても相当改善をされてきてりっぱに成立をしていくものだと思ってもおりますし、またそういうようになるように利用面の開発その他に十分力を入れていくという所存であるわけでございます。
  82. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間が過ぎてしまいましたので一言だけ。  いまお話がありましたように、たん白資源というものについての研究というものはまだまだ相当不足しているということをデータをもってお話を進めていきたいと思いましたけれども、時間が来ましたのでやめますけれども、大きく開発をするということに重点を置くと国内法というものも相当考えていかなきゃならないじゃないかということを申し添えておきます。
  83. 立木洋

    ○立木洋君 まず、アメリカの原潜事件の問題からお尋ねしたいと思いますが、局長、アメリカであらゆる艦船が事故を起こした場合に適用される法律というのは、どういう法律が適用されるのでしょうか。
  84. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) もし損害賠償という問題でございますれば、アメリカの中で一つは海事請求処理権限法というのがございますし、それからまた外国請求法、こういう法律があるわけでございます。
  85. 立木洋

    ○立木洋君 いや、賠償の請求ではなくて、事故を起こした場合に、たとえば救助をしなければならないとか、報告の義務だとかそういうふうな内容を規定しておるアメリカ法律、どういう法律が適用されるのでしょうか。
  86. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 一つは公船法に基づいて各国がそれぞれ公船法の要求している点を満たすように立法その他をつくれというのがございまして、アメリカの場合は海軍で規則があるわけでございます。
  87. 立木洋

    ○立木洋君 いわゆる一般的に言われている公海に関する条約、あれはそれぞれ国内法で日本日本なりの国内法がありますが、これがアメリカのあらゆる艦船に適用される、つまり海軍規則の基本になる条約というのはどういう法律ですか。淺尾さん、まああなた賠償請求の問題では海事請求の問題に関する法律、いわゆるタイトル一〇ですよね、あれについてはよく御存じだけれども、先日もあの内容について当委員会で説明された。このアメリカのあらゆる艦船が事故を起こした場合の適用される法律というのは公海と公海水域というタイトル三三、これが適用されるのですよね。間違いありませんか、どうでしょうか。
  88. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ちょっと私、御質問の趣旨がよくわからないのですけれどもアメリカの軍艦が衝突した場合の救助義務については、先ほど申し上げましたような合衆国海軍規則九二五号というのがございまして、それに基づいておるわけでございます。
  89. 立木洋

    ○立木洋君 公海と公海水域というタイトル三三という法律アメリカには国内法であるわけですが、これには、つまりいかなるものであれアメリカ合衆国の船舶に関する規定があるのですよ。これを具体的に海軍の規則として述べられたのがいまあなたがおっしゃった内容なんです。だから、公海と公海水域という法律そのものがアメリカの場合には、日本みたいに公海に関する条約で、日本の船員法ですか、というのがあるのと違って、法体系が船員法あるいは自衛隊法とは全く別個ですよ。アメリカの場合にはそうではないのですよ。いわゆる公海と公海水域というものがアメリカの艦船、いわゆる海軍の船舶も含めて全部適用される、そういう体系になっているのです。それはあなたは勉強されておって十分御承知ではないかと思うのですが、これは私が調べたところ間違いないということであります。この公海と公海水域の中で事故が起こったときの報告の義務というのはどういうふうな内容になっているか、あるいはつまり救助の義務、こういうものがどういうふうになっているのか、あるいは救助を怠った場合の罰則、こういうものがどういうものになっておるか、淺尾局長、御存じでしょうか。
  90. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) まず、私の方から合衆国海軍規則について申し上げます。  それは、そこに決めてあるのは「艦長又は場合により艦上にある先任士官は、自己の艦船又は乗組員に重大な危険を及ぼさない限りにおいて次の措置をとる。」ということで、いろいろなことを決めておりますが、まず「援助を必要とする旨の通報を受けた場合には、当該艦長又は先任士官に対して合理的に期待される限りにおいて、可能な最高速度で遭難者の救助に赴くこと。」。bが「海上において生命の危険にさらされている者を発見した場合には、その者に援助を与えること。」。cが「遭難した船舶又は航空機に対し、すべての合理的な援助を与えること。」。dが「他の船舶と衝突した場合には、当該船舶並びにその乗組員及び旅客に対し援助を与え、また、可能なときは、当該船舶に対し自己の身分を通報すること。」ということになっておりまして、さらに二項において、「この条に基づいてとられた措置については、海軍作戦部長その他適当な上官に対して速やかに報告しなければならない。」、さらに、「この条に基づいて与えられた援助又は行われた修理に係る経費の収支は、海軍経理部長の指示するところにより処理しなければならない。」、こういうふうになっているわけでございます。  あとほかのお尋ねの点はちょっと条約局長の方から……。
  91. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 公海条約の第十二条に、人命救助といいますか、の点について規定があるわけでございますが、それを受けまして、アメリカでは、ただいま先生御指摘のように、第三三編の三六一条から三六八条にかけまして、公海条約第十二条と同趣旨の法律を定めているわけでございます。ただ、アメリカ政府の所有する公船、軍艦も含めまして、パブリックベッセルというものにつきましては、同じく米国法典の四六編、パート四にシッピングというのがございまして、この三三編三六一条から三六八条までは、公船については適用除外となっております。そこで、軍艦等公船につきましては、特に海軍につきましては海軍規則がございまして、先ほど北米局長から報告いたしましたように、九二五条というのは、やはり同じく、その内容は公海条約第十二条ないしはアメリカ一般船舶に適用があります三六七条というものと同趣旨のものが決められているわけでございます。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 いま伊達さんが言われたのはまさにそのとおりだと思うのですね。  さっき淺尾さんが読み上げられた内容というのも、適用除外と言われながら、その精神は、いま読み上げられた三六一条からの内容とここに述べられている義務規定というのはほとんど変わりない内容が、規定としては述べられているわけです。  なぜそのことを言うかといいますと、つまり日本政府として、アメリカがそういう事故を起こした場合、国際的な条約に基づいてどうかという点を見ると同時に、アメリカの国内法、当然海軍の艦船がどういう法律に基づいてどういう措置をしなければならないのかということを十分承知した上で対応すべきである。そういうことを十分に知らなくして対応するということでは困ると思うんです。たとえばこの公海と公海水域の中の事故報告義務の中では、いかなるものであれアメリカ合衆国の船舶が事故に遭ったり、あるいは事故を受けた場合、その船の船長は事故が起こってから五日以内あるいはその後できるだけ早くその船長が署名した報告を手紙として当局に送らなければならない。これは私はいま要旨を述べたのです。淺尾さんはこの間、重要な要旨は省いて述べられましたけれども、私は重要なところを省いて述べておりませんから。  それから、たとえば衝突を起こした場合の援助の義務、衝突を起こした場合は、船長ないし責任者は、他方の船がそれ以上の援助を必要としなくなったことを確認するまでそこにとどまり、彼らを救うために必要とされる援助を与え、また、他方の船の船長または責任者に自分の船名、登録してある港あるいは所属先の港か地名、出港してきた港と場所及び目的地の名前を告げる義務を負う、これを怠った場合には、怠慢によって引き起こされたものとみなされる、という趣旨のことですね。それから、援助を怠った場合には、これは罰則規定まで明確に述べられている。これと同様の趣旨の内容が、先ほど言われたセクション七〇〇の九二五ですよね、ネービー・レギュレーションにその内容が述べられてある。ここでは明確に、遭難している者が――先ほど読まれたからもう全部読みませんけれども、遭難している者が援助を求めることを認知したならば、可能な限り迅速にそれを救わないとならないと。それから遭難の危険にあることが発見された場合、危険にあることですね、それも救助しなければならない。それから、遭難の船舶あるいは航空機に対しても十分な援助が与えられるべきであると。そして、可能な場合には当人の所属が相手の船に告げられなければならない。これは全部義務規定になっていると思うのですが、このネービー・レギュレーションの内容はいかがでしょうか。
  93. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 義務規定というふうに私たちは理解しております。
  94. 立木洋

    ○立木洋君 ではこのネービー・レギュレーションのこの規定は、たとえば原子力潜水艦と言われる核弾頭ミサイルを積載しているポラリス型なんかには適用外であるというふうな規定がこのネービー・レギュレーションの中にはあるのでしょうか。
  95. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私の承知している限りでは、この九二五を特定のアメリカの艦船には適用しないという規定はないというふうに承知しております。
  96. 立木洋

    ○立木洋君 だから、いま言われたように、私も調べてみましたけれども、このネービー・レギュレーションの中には、いわゆるいかに核を積載しておる原潜であろうとも、これは適用されるものである、いま述べられている内容というのはすべてこれは義務規定として書かれてあるということは、これは明白だと思うのですね。ですから、私は、この点に関しては、まさにアメリカが補償責任という点について先般述べられて、このことは、この補償責任を速やかに海軍が行うということは、その艦長あるいは乗組員の個人責任及び責任をあらかじめ認めるということではないという限定をつけているわけですが、これは、私は、まさに日本政府が当然アメリカの国内法の立場から見ても明確にアメリカのあれの責任である、過失である、重大な誤りであるということをはっきり踏まえた立場で今後交渉していくべきではないかと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  97. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私、法律を全部は知っているわけではないので、その点はお断りしておきますが、いまの問答を聞いておりまして、そういうふうに法律を解釈するということであれば、これは私も当然そうだと思って聞いておりました。向こうも責任だということをはっきり言っておるわけでございますから、これは日本としても、それは向こうも認めていること、当然の責任としてこの補償の話が出るということはあたりまえであります。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 やっぱり、そこのところが私は非常に大切な点だと思うのですよ。乗組員の証言が、きのう、アメリカ当局、アメリカの調査官がいろいろ聞いたという状況が新聞等々にも報道され、すでに全文報告がされているかどうか、午前中の大臣のお話ではまだ全部を聞いたわけではないがというふうに述べておられましたけれども、あの中では、明確に、アメリカの原潜も、あるいは飛行機も、われわれがこうした遭難に遭ったという事態が認知でき得る状況にあったと考えられるということをすべての乗組員が一致して述べているわけですね。そうすると、この法律に照らしてみても、この乗組員の証言に照らしてもこれは明確に相手側の重大な過失であるということははっきりしていると思うのですが、大臣どのようにお考えでしょうか。    〔委員長退席理事稲嶺一郎君着席〕
  99. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 乗組員の証言というのは、私はまだ海上保安庁からこういうことだということは正式に聞いてないわけでございます。海上保安庁は、これは一括してどの段階かでお知らせするということでまだはっきりわかっておりませんので、それをはっきり伺わない段階で、それをもとにして、それを正しいのだ、それ以外のものは一切正しくないのだというふうな断定をすることは私はいまこの場でははばかりますが、日本側としましては、日本で調査したものを海上保安庁がこれで正しいということであれば、それをもとにして向こうと交渉するときはやるわけでございます。
  100. 立木洋

    ○立木洋君 大臣は、先ほど法律の内容についてはよくわかりませんが、いまの問答を聞いておってというふうにお述べになったですね、大臣。だけれども、そうすると、アメリカの国内法に基づいてもアメリカの原子力潜水艦が救助しなければならなかったことは当然のことであって、それを放置したというのは義務規定から見てもおかしいではないかというアメリカ法律の観点からの指摘というのは、いままで米側には外務省としては何も行っていないわけですか。
  101. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そういう法律を引いて第何条でこう書いてあるのじゃないかということでは話しておりません。ただ、アメリカの説明ではどうも腑に落ちない。公海における条約とかあの規定から言えば、これは当然救助に努力するということを国内法でつくるものがある、それはいま言いました海軍の規則があるわけでございますから、これはどうも向こうの説明だけでは腑に落ちない。浮上したが雨と霧で見えなかったということだけで、説明は十分でない、こういう努力はしたというようなことをもっとはっきりしてもらえないと納得いかぬということで話をしました。法律第何条違反じゃないかとか、そういう形では私は言っておりません。
  102. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、この間マンスフィールドさんとお話しになって、大使の説明に大臣が大分感銘を受けたという新聞の報道がありました。これは事実かどうかわかりません、新聞でそういうふうに報道してあったんですから。私は、外交というのは、一面確かに東洋人的な感覚で言いますと、本当に腹をぶちまけ合って、そうしてざっくばらんに心と心を肝胆相照らして話し合う、そうして腹蔵なく話し合う中で知る、そういう何といいますか、感性的な話し合いということも、これは私は非常に一面大切なことだと思うのですよ。私は何もそれを否定しているわけじゃないけれども、しかしもう一面、つまり外交というのはある意味ではきわめて冷徹で、きわめて理性的に、そうして一分のすきもなくやらなければならないということも、これはまた私は道理のあることだと思うのです。それを忘れて、そうして感じの上だけで交渉をやったのでは、やはりうまくいかないと思うのですよ。そういうこと、これはもう釈迦に説法かもしれませんからこれ以上申しませんけれども、私はそういう意味では、アメリカの国内法がどうなっているのかということももう一遍大臣よく御検討いただいて、そうして本当にこういうふうな措置をとったことが法的に照らしてみてもどうだったのか。これは明確に私が先ほど指摘しましたように、アメリカの法に照らしてもアメリカの過失というのは、これは明白なんですから、そういうこともはっきり踏まえた交渉を要望したいと思いますが、その点いかがでしょうか。
  103. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) おっしゃることはよくわかります。いま向こうが言ってきていることがこの法律どおりやったけれどもわからぬと、こう言うのか、その点ははっきりしない。要するに救助しようと思って浮き上がってみたが何も見えなかったということでございますので、この法律のとおりあるいはやってだめだったのか、その辺のところがあれの説明だけではわからぬわけでございますので、それではっきりしてくれということを私は向こうに納得するように説明してもらわぬと、調査してもらわぬと困るということを言ったわけでございまして、向こうの調査の結果早くということで待っておるわけでございますが、それが出てくれば、立木さんおっしゃるように、それはこういう調査の結果こういうことをやったと言うけれども、この条文に照らしてみれば違うじゃないかとか、これはもうはっきりその場合はもちろん言うことでございまして、さっぱりまだその点がわからぬというものがあるものですから、それで実情をまず言ってくれ、こういうことで実情の把握、説明ということを求めた、法律違反であるかどうかとか、そういうことは実はやらなかったのでございます。
  104. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、前回中間報告をできるならば求めるように努力したいとおっしゃって、結局中間報告はできないという米側の話だったわけですが、    〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕 アメリカ側がどういう理由でこの中間報告はできないと言って拒否されたのでしょうか。
  105. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは私何度も中間報告を言い、最後に困難だということを言ったのはマンスフィールドさんであり、その二日前にロング司令官が困難だということを言った。その理由は、向こうは事故の原因あるいは通報の問題あるいは人命救助の問題、そういうことを法律に従って調査をしている、そしてその調査の結果、責任者の問題、処罰の問題とかいろんなことが出てくる可能性がある、そのときに審判といいますか、裁判といいますか、そういうものに予断を与えるというようなことを中間的に言うことはこれは法律上むずかしいのだ、やはり調査ができて、ちゃんとして証拠をそろえて、そしていまのような責任を問うとかそういうことになるので、中間的にまだ最終的な調査のできないうちに説明をするということはこれはむずかしいという理由で、両方とも中間報告はむずかしい、もう少し待ってくれと。しかし、それはアメリカの大統領が言うように、両方で必要なことを十分満たすような進展が出ることを期待をしているという大統領の親書があったということでございます。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 その裁判に予断を与えるという理由というのは、私は全く解せないわけですよ。問題は、今回の場合でも、たとえば海軍として補償責任を負って、そして補償を行うと、この問題に関してはつまり異例的な措置をとったわけですね。その場合にわざわざ、先ほども言いましたように説明がつけ加えられているのは、これは個人の補償責任並びに責任を認めたということではないのだという限定つきで海軍として補償措置をとるということまでやっているわけですね。だから私は、裁判があっても、たとえば事実関係、一体あそこで何をしておったのだろうかという事実関係日本側に報告するということ、あるいは現実にあそこにぶつかって向こう側がどれぐらいの被害があったのかという具体的な事実、そして何時何分に接触して、どういうふうにぶつかったのか、それでそれからどこに帰港したのか、この事実関係ということについては中間的に知らせを求めるということもできるでしょうし、相手側も述べるということは私はできるのではないか、本当に誠意があるならば。外務省は、補償責任請求の問題に関しては、異例な例外的な措置をとられたというのは、これはアメリカ側の誠意だというふうにおとりになったようだと新聞には書いてありましたけれども、それならば事実関係を明確にする、明らかにできる範囲内で日本側に直ちに知らせると、ここまではわれわれは事実関係が明白になったということを本当に誠意があるならばやったっていいではないかというふうに考えるのは、これは国民の感情だと思うのですが、いかがでしょう。
  107. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま立木さんおっしゃるように、訴訟、たとえば損害賠償のことや何かが訴訟になって長引いたりなんかすることは、日本側の関係者に迷惑をかけるおそれがあるということで早急に交渉を始めることを可能にするように措置をしたと、こういうことを言って、その後でこの措置は艦長及び乗組員一人一人の責任問題を何ら予断するものではないということをわざわざつけてきたわけでございます。なぜこういうものがついているかという、これはわれわれの考え方でございますが、いまこういう証拠だこういう証拠だと、こういうことだったといって恐らく中間的に出せば、それがまたその後でどういう証拠が出るかわかりませんけれども、ある段階の早い段階で中間的にそういうものを出せば、あとのこういう人たちの責任問題についてそれを判断する人が予断を持ってするおそれがあるから、それは一人一人の責任というものは非常にこれは法律で、法治国ですから重要なんで、予断をそういう判断をする人に与えちゃいかぬのだ、だからその点はもう少し正確に最後まで調査をしてその真実は知らせるから、隠すことはしないから待ってくれと、こういうことでございますから、これはまたこれで私は論理が一貫している考え方だというふうに判断をしているわけでございます。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、その点になるとどうしてもかみ合わないので、これはまた別な機会に譲りますけれども。  それで淺尾さんね、先ほどあなたがおっしゃった合衆国の海事請求権に関すること、あそこの、これはそういうのをお持ちかどうかわかりませんが、七六二二のところの(d)のところにこういうふうな記載があるんですね。「請求者によって支払いが受領されると同時に、この項の請求権の解決あるいは和解は終了し、いかなる他の法律条項にもかかわらず完了となる。」という記載があるのですが、となると、請求権は、この支払いを受け取ったら他のいかなる法律条項にもかかわらず完了となるとなって、いわゆる裁判まで免除にされるというふうな危険性があるような感じを受けるのですが、ここの条文はどのように理解しますか。
  109. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) それはまさに損害補償に関する点を御指摘になっていると思うのですけれども、要するにアメリカ考え方は、まず行政救済でいきましょう、行政救済でそこで合意ができればこれはもう裁判に持ち込まない。ですから当事者がそこで行政救済に同意しなければ裁判に移行できるわけでございます。これは何もアメリカに限らず、そこで当事者が行政救済で満足すれば裁判にいかないということになっているのはアメリカだけではないというふうに私としては理解しております。
  110. 立木洋

    ○立木洋君 その点で若干いろいろな報道の指摘がありますように、今回のこの事態を明らかにする上で、外務省の姿勢が後退しているのではないかというふうな新聞幾つかの指摘もあります。それから、今回の本当の意味でこの補償責任を忠実に果たそうということに何も国民はけちをつけたり文句を言ったりするという感じを持っているのではなくて、これをやることによっていわゆる原因がどこにあったのか、問題がなぜ起こったのか、原因の究明がうやむやになったりあいまいにされたり、そして結局はわからないという状態になる危険性があるのではないかという心配があるわけですね。こういうことは絶対にさせないというふうに大臣はお考えなのか、今後のこの問題に関してのその点についてのいままでいろいろ外務省の姿勢についての意見が出されておりますし、この点についての大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。
  111. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) アメリカ側は損失補償をなるべく早く話し合いをしようということをやったわけでございまして、われわれはこれは一つの誠意と見ておるわけでございますが、これをやったからあとの原因でございますとか人命救助、通報とか、そういうものがうやむやになるということで本件は決着をするんだと、そういうことは毛頭私は考えたことがないのでございまして、質問されまして、おやおやそんなことかなと思って、むしろ私は意外に思うぐらいで、毛頭そんなことは考えたことはないです。
  112. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、本当にいまの大臣の御発言が忠実に守られることを期待しつつ、次の機会に改めてこの問題については質問を重ねていきたいと思います。  時間があと二分しかありませんので、渡り鳥の問題で二点だけお尋ねしておきたいと思うのですが、今回、先ほども同僚議員から質問がありましたけれども、結局この渡り鳥保護のいろいろな国際的な体制が補強されていくということは私たちもきわめて賛成であります。またそのラムサール、ワシントン条約などにも加盟した。それから各国あるいはソ連アメリカ、豪州等との間でもいままでもこういう協力体制が結ばれてきたというふうになっているわけですが、しかし、実際そういう条約締結されても国内的に環境を整備したり、国内法の上で充実させるだとかあるいは予算措置を取るだとかいう点ではきわめてその立ちおくれが目立っているということをいままでも常々感じてきていたわけですが、この点についてどのようにしていこうというふうに考えておられるのか、これは環境庁に一つお伺いしたいのと、それからもう一つは、外務省としてもいままでもソ連と豪州といわゆるこういう問題について協定が結ばれておりながら依然として発効しない。だから、今回の中国との渡り鳥条約についても、条約を国会で批准してもらえばそれで結構だということで済ませるのではなくて、やはり後々までに十分に目を行き届かせていくという、そういう姿勢が必要ではないかと思いますが、この二点それぞれお答えいただいて、私の質問を終わります。
  113. 中村廉

    説明員中村廉君) 第一点の点につきましてお答え申し上げます。  鳥獣保護の施策のことでございますけれども、これはこの協定でもねらっております渡り鳥保護を進める上でこれは国内体制、取り締まりももちろんでございますけれども基本的にはその生息地を保護する、これを強化をするということで、これは五十三年に法律改正をいたしましたけれども、そのときもそういうような趣旨でもって保護充実ということを考えております。またそれに即しまして特に渡り鳥の生息地、渡来地等で重要なところにつきましては、国といたしましてもいままでより以上に積極的に取り組もうということで努力をしておるところでございます。  また予算措置につきましても、厳しい財政事情ではございますけれども、この三年の中で約六割近く増大して現在二億三千万ほどでございますけれども計上しておる。今後これらにつきましてもより充実するために努力をしていきたいというふうに思っております。
  114. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) ただいま御質問のございました豪州及びソ連との渡り鳥条約の批准後の発効手続の問題でございますが、豪州との間の渡り鳥条約につきましてはきわめて近日中、二、三週間中に双方の国内手続も終わりまして、これを発効せしめるべく批准書の交換までこぎつけたいと思っております。  それからソ連につきましては、ソ連との間の条約は御案内のとおり一九七三年に調印されまして七四年に国会の御承認を願っておりますが、ソ連との間で条約を発効させるに先立ちまして、絶滅に瀕している鳥類の実態につきましてまず調査を行い、それらにつきましてそれらの絶滅のおそれのある鳥類につきましてリストを交換することになっております。ただ、その手続が非常に時間を取っておりまして、なるべく早くこれを完了さして批准書の交換にまでこぎつけたいというふうに考え努力しているところでございます。
  115. 木島則夫

    ○木島則夫君 きのう党首会談がございました。その折私どもの佐々木委員長から、いろいろの問題点を踏まえまして総理とのお話し合いをしたわけでございます。  特に、外交の面につきましては、世界の緊張激化の中でレーガン新大統領との首脳会談がきわめて重要な意味を持っているので、政府はこの会談を単なるセレモニーとして終わらせることなく、実のあるものにするために、従来のようにただアメリカ側の、要求にこたえるだけではなくって、日本として世界の平和と安定にどのように寄与できるかを含めて、国際社会における日本の自主的なあり方を鮮明にし、同時に日米協力のあり方を明確にすべきであるという基本を踏まえまして、防衛力の整備についてはこれはもう厳然として憲法がある、財政の枠がある、そういう中で世界戦略の推進と相まって着実に防衛力をふやしていく、着実に進めていくということ、それから、経済協力については、これは戦略地域重点ではなく、全般的にその拡大を充実しながらこれにこたえていかなければいけない、また、日本が果たす世界外交の中での政治面については、インドシナ難民救済を初めとして東南アジア、あるいは東アジアの緊張緩和と政治的、経済的安定のため積極的な役割りを果たしていくのだという具体的な御提言と御要望を踏まえてお話をしたわけでございます。この点については結構でございます。  その中で外務大臣、むしろ総理の方から積極的な御発言があった問題といたしまして日本と中国との関係がございました。これはお聞きだろうと思いますけれど、総理はこのようなことをおっしゃっているわけですね。開かれた中国を維持、発展をさせることが必要なのだと、こういう意味のことをおっしゃっているわけでありますけれど、これもうちょっと敷衍をしていただくと、これはどういうことになるのでありましょうか、伊東外務大臣
  116. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私は、きのうの党首会談の結果とか総理の言われたことというのは新聞で見るだけで、まだ直接お話はする暇がないものですから伺っておりませんが、いま木島さんのおっしゃった開かれた中国路線――中日といいますか中国路線といいますか、の維持、発展と、こういうことはよく開かれた中国という言葉が使われておりますのは、中国の経済が開放経済といいますか、外国との関係が非常に緊密になってきた。前の閉ざされたといいますか、閉鎖されたといいますか、そういう経済よりも外国等に開かれた市場経済とまでは、完全な市場経済とは言いませんけれども、そういうものを加味されたような経済体制を考えておられる。あるいは経済近代化とかそういうことのために西側というものと協調重視といいますか、そういう関係が最近の中国の経済政策、近代化政策にはあるわけでございまして、それを私は総理も開かれた中国路線というふうに言われたと思いますけれども、私は大体開かれた中国路線というのはそういうふうに考えておりまして、そういうことは私はアジアの安定のためにも、世界の平和のためにも、中国はそういう態度で近代化ということに取り組むということは非常に結構なことではないか、私はそう思っております。
  117. 木島則夫

    ○木島則夫君 前回の当委員会において、私は一つのたとえ話で、ソ連という強打者を前にして、もはやアメリカ人だけで九人のチームを編成することは不可能になった。当然自由主義陣営を代表するわけですから、アメリカがバッテリーを受け持つ、これはまあ当然でありましょう。内野はNATOに守ってもらう。外野はだれにするかという話になったときに、当面ソ連と対決の関係にある中国をもってこれに当てると、こうでもしない限り相対的にアメリカの力が低下してきた西側の体制というものを守ることはなかなかむずかしい。こういうたとえ話を私はこの間申し上げたわけであります。その外野を守ってもらうその中国が必ずしも近代化に向かっていまその歩みが順調にいっていない、経済問題でがたがたしている。その四つの近代化を推し進めている鄧小平、この人の路線が近代化を推進をしていこうと、こういうことであります。この開かれた中国の維持、発展、このことが必要であるということは、いま外務大臣もおっしゃった、西側にとって日本と中国は非常に重要なのだという意味を含めた中国を指すのだろうと私も思うわけであります。したがって、いま外務大臣日本と中国との間の経済問題、特に大型プロジェクトの問題で少しがたがたしている、ぎくしゃくしている。アメリカ側からすればそういう問題はあるけれど、大局的に見た場合、鄧小平路線をひっくり返すような中国の事態が起こったときに、中国がまたあらぬ方向に行ってもらっては困る。そこで、日本としても経済協力、そのほかで中国とうまくやってもらいたいという要請が私は日米首脳会談においても必ず一つの話題として出てくるであろう。これがアジアの安定につながり西側の体制をがっちり守るゆえんなのだということにつなげての中国の開かれた体制、この維持が必要だという鈴木総理のお言葉に私はどうも結びつけたいのでありますけれど、伊東外務大臣、どんなふうにおとりになりますか。
  118. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私はこの間、ヘイグさんとブッシュさんと話したときに、御両人に話したのですが、アジアの平和にとっていま日中は非常にいい、日米もいいと、米中関係にかげりが差すというようなことがあっては困る、アジアの平和、大きく言えば世界の平和のために米中は従来の友好関係を維持してもらわなけりゃ困るということを私は言ったことがございます。そのときは日中はもう友好親善関係がある、日米もある、米中にいろんなことがあっては困るということを私は言ったのでございまして、アメリカ側から日中の経済問題について云々という話は、私は全然そういう話は出ないだろうと思っているのでございますが、むしろ日中の関係は、これはアメリカがどうということじゃなくて、日本がやはり日中のそれこそ子々孫々にわたる友好ということを考えれば、当然これは日本と中国の間で友好関係に傷がつかぬようにこれを解決するというのは、日本と中国のこれは関係でございまして、第三国がそのことを云々してくると、まあアメリカとおっしゃいましたが、アメリカが云々してくるということは私はないと思うのでございまして、そんなことよりも日本と中国で片づける問題だ、こういうふうに思っております。
  119. 木島則夫

    ○木島則夫君 当然日米首脳会談で中国を含めたアジアの安定ということは議題になるだろうと思いますが、経済問題でいま確かにぎくしゃくはありますけれど、やっぱり大局を見た場合に、そういうものを乗り越えて、日中の永遠の友好というものがやはり世界平和のために寄与をするのだと、しかしそれがどうもアメリカの思惑のように日、米、中のチームワークのより濃い関係ということになったときには、またアジアにおけるソビエトとの関係というものがこれは複雑に絡んでまいりますので、その辺をやはり慎重に日本としてもやってもらわなければ困ると、こういうことにもつながってこようと思います。外務大臣、どんなふうな御見解をお持ちでございましょうか。
  120. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ソ連グロムイコ外相に会いましたときも、この間ポリャンスキー大使も日、米、中が結託していると、こういうことの表現があったわけでございまして、私はそれは全然違う、そんなことを日本は全然考えてない、それは日米、日中というのは、それぞれ別だ、日本は軍事的には外国に協力するというふうなことはできないのだから、日中は日中で軍事面を除いた経済の協力をしているのだ、軍事協力などはできないのだということを話して、日、米、中の結託なんということはこれは主として防衛面で向こうは使った言葉でございますが、そんなことは日本考えていない。日ソ日ソ、日中は日中、日米日米だということで、私はグロムイコ外相にもポリャンスキー大使にも言いまして、この間ポリャンスキー大使はそのことはすぐモスコーへ伝えるというふうなことを言っておりました。これはいわゆる、防衛面の、軍事面でそういう誤解を与えないように日本はしなけりゃいかぬというふうに考えております。
  121. 木島則夫

    ○木島則夫君 大河原大使が一時帰国をされるということでありますけれど、一時帰国をされるそのことが一つの大きな、何というか日米自動車問題の解決に前進をもたらす要素になるのか。つまり、議会の動向とかアメリカもいろいろ思惑があろうと思います。レーガン大統領がこぶしを振り上げたけれど、一体本気になってこれをやる気があるのかどうか。アメリカ議会筋がどういうふうな本意を持っているのだろうか。アメリカとしては、たてまえとすれば自由貿易を標榜している限りルールに違反もできないという、アメリカとしても痛しかゆしの面があろうと思います。ですから、今度大河原大使がそういった情勢をきっと報告をされると思うのでありますけれど、このことを機会にして日本の自動車問題に取り組む態度というものが一つの明確な形を整えるのかどうか、この辺はどんなふうに理解をしたらよろしいのでしょうか。
  122. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 大河原大使は金曜の晩に来まして火曜の午前には帰る予定でございます。こっちへ一時帰朝で帰ります目的は、総理向こうへ行かれます場合に、向こうの空気――経済の問題でございますとか防衛の問題でございますとかいろいろございます、そういうアメリカの空気を、考え方総理に報告をし、総理が行かれる場合の心づもりをするということが大きな目的でございますが、その中に一ついま木島さんのおっしゃった自動車の問題の報告もございます。これは大河原大使がこっちへ帰ってくるまでにヘイグさんにもお会いしました。あるいはブロック通商代表、ボールドリッジ商務長官、それから上下院の有力者にもお会いして向こうの意向等も持って日本に帰ってくるわけでございますが、大河原大使が火曜日に帰るということを申し上げましたが、それまでに日本でいろいろ基本的なあるいは具体的なことを決めて大河原大使が持って帰るというようなことにはならぬだろうというふうに私は思っております。大河原大使が来ましていろんな報告はする、それもまた自動車問題の解決のための一つ大きな参考にするということは考えられますが、火曜日に帰りますまでに何か日本の具体的な案を持って帰るとかそういうことは私はないと、意見を参考にわれわれは聞くと、こういうことだと思っております。
  123. 木島則夫

    ○木島則夫君 確認をしておきますけれど、日本の自動車問題に対する政府基本的な態度、もう一回確認さしていただきます。
  124. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これはアメリカと、私行きましたときにもこれから話し合いを続けようということで最後に合意をし、両国とも自由貿易という原則は何としても守ろうと、この二つを合意してきたのでございまして、その後国会からも先生方向こうへ行かれる、あるいは向こうからも向こうの情勢を説明に来るチームも来るということで動きがあったわけでございますが、これからいよいよ総理向こうへ行かれるまでに向こうの感触も十分調べながら日本としての態度を決めるということでございまして、まだいまの時点でこういうことをするということは決まってないというふうに私は理解をしているわけでございます。しかし、いつまでもというわけにいきませんので、これはもう来週ぐらいからいろんな具体的な動きになるだろうと思っておりますが、どうやったら自由貿易を守れるかということを頭に置きながら、アメリカの自動車産業に対する対応策あるいは日本側の自動車業界におけるいろんな意見を聞き、調べ、それを勘案して最後日本側の腹を決めるという段取りでございまして、いますぐここでどうするということまではまだ決まってないわけでございます。
  125. 木島則夫

    ○木島則夫君 大河原大使が帰られて、自動車問題を初め日本の防衛分担、そういうものをアメリカ側がどういうふうに受け取っているかという空気をひとつ探りたいという大変大事な御発言がございました。  自動車については、いつまでもほうっておけないので、来週あたりから具体的に固めをしていくんだ――固めであったか何であったかちょっと私聞きとれなかったのでありますけれど、そうしますとやっぱり大河原大使が帰られて、アメリカの空気を日本政府として受け取って、具体的にある目安をつくって交渉に臨むということでなければならないはずですね。その目安というものがどんなものであるのか、ひとつ基本的にその目安を聞かしていただきたい。余り手の内をここでおっしゃっていただきたいとは私は申し上げてない。
  126. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは交渉じゃなくて、アメリカも交渉じゃないということを言っているわけでございまして、交渉ではございませんで日本側がどういうことを考えるかということでございます。どういうことを考えるかということで、自由貿易が維持できるかどうかということになるわけでございまして、まず交渉でないということが一点でございます。  それから、大河原大使が来て向こうの意見、向こうの空気をこっちへ伝える、そこで直ちにそういう具体的な何か案ができるか、また、大河原大使の向こうにおけるいろんな空気を聞いて、だれかがまたアメリカへ行って、直接こちらが行ってまたその感触を探るということをする段階があるか、その辺の段取りはまだはっきり決めておりませんので、大河原大使が金曜の晩帰ってきますから、土曜、日曜、月曜ぐらいのところでそういう段取りとかの相談はすることになろうと思います。ただ、大河原大使が来ただけで、日本側の具体的ないろんな案ができるかどうかということになりますと、私はまだちょっと来週の火曜日まではそういう具体的な案ができて、それを大河原大使が持って帰るとかいうことにはならぬのじゃないかと、私はこういう予想をしております。
  127. 木島則夫

    ○木島則夫君 一つのポイントは、日本が何らかの自主規制という具体案を示したときに、アメリカの議会がそれでも法規制というものを推し進めてくるのか、あるいはそれが少し後退をしていくのかというような、それをまた日本の業界がどういうふうに受けとめるかという問題であろうと思いますけれど、そうしますと大河原大使がこちらへ来られる、もう一回日本から向こうに行くというようなことも考えられるのですか。
  128. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) まだはっきり段取りを決めたわけではございませんが、そういう場合もだれということじゃなくて、だれか行く必要があるかどうかそういうことですね。大河原大使が金曜の晩帰ってきますから、そこで恐らくいろいろ相談して決めるということになろうかと思っております。
  129. 木島則夫

    ○木島則夫君 アメリカの空気がどういうものであるかといういま外務大臣のお話がございましたけれど、実は総合安全保障閣僚会議の席でもアメリカが、日本アメリカを含めた西側が日本をどう評価をしているかという正確な受けとめ方が必要だというようなお話があったやに伺っております。外務大臣は、恐らくアメリカに行ってもぎくしゃくしたことはないだろうというようなニュアンスをこの委員会でもお述べになっておりますけれど、どうなんでしょうか、まだまだ日本が経済大国であって防衛分担も足りないじゃないか、経済援助といっても必ずしもそうじゃないじゃないかというようなことで、その辺の評価を日本政府はどう受けとめていくかということも一つの私は大きなポイントであろうと思いますけれど、外務大臣どんなふうに考えていらっしゃいますか。
  130. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私がこの委員会で、いま木島さんのお話でございますと、私が言ったということでございますが、私は基本的には、今度総理が行かれてレーガン大統領と首脳会談をされる、それは一番大きな目的は世界国際情勢認識についていろいろ話し合われるということは、これはもうまず何よりあると思うわけでございます。その認識のもとに経済問題でございますとか防衛の問題とかいろいろ私は出るだろう、こう見ております。もう一つは、首脳同士が非常に個人的に親しくなられる、これは非常に大切なことでございまして、レーガン大統領はサッチャー、シュミットさんやなんかにも会っているわけでございまして、いつでも何かあれば電話で話せるような親しみを覚えるということになることも一つの大きなねらいだと私は思っておるわけでございますが、その場合に経済問題として何が出るかということになりますと、これは世界経済あるいは両国間の問題になるかもしれませんが、世界経済でございますればエネルギー、失業の問題とかインフレとかそういうことが話題になるかもしらぬ。二国間の経済問題ということになりますと、いまは自動車を除いてほとんど問題はないぐらいに日米間の経済関係は非常に良好になっているわけでございまして、この自動車問題を総理の行かれる前に何とか大筋をということで解決をしたいというのがみんなの努力関係者の努力でございますので、これがもし大筋の話し合いがついていれば、そう日米間、二国間の経済問題では大きい問題はないのです。  でございますので、今度は防衛問題ということになる。防衛問題につきましては、私がこの前行きましたときの話でも一般論として防衛力強化の努力をしてもらいたいという一般的な話が出まして、具体的といえば米駐留軍の経費の増加ということが出たぐらいでございまして、あとは一般論でございまして、総理がおいでになって向こうと話し合いをされる場合にも、もっと立ち入って数字に入るとかそういうようなことは、そう具体的な話し合いはなくて、やはり防衛努力一般論ということになるのではなかろうかと私は予想しているのでございまして、そういう場合に日本としては総理がいつも言われる憲法がある、専守防衛ということで日本はやるのだと、そのほかの地域で軍事的な協力とかそういうことを当てにされても日本はできない、日本のできるのは外交努力あるいは経済努力、政治的な役割りでカンボジアの問題でございますとかいろいろそういう問題と取り組むのだ、そういうような話に私はなるのではなかろうか、日米関係がぎくしゃくしたような話し合いになるとか、あるいは向こうへ行って何か重荷をしょって帰るとか、約束を日本がするとか、そういうことは私はないのではなかろうかというふうに思っているわけでございますが、その前提は自動車問題が片づいているということも前提でございますし、問題になっております原潜の問題も大体事故の原因の報告も来て、大筋はもう行かれる前に大体わかっているというような、一部はもう決着をするというふうになっているというようなことが、いま私が言ったような、ぎくしゃくせぬでいけるのじゃないかという前提でございますが、その前提は何としてもちゃんとしてくれというのが私の考え方でございます。
  131. 木島則夫

    ○木島則夫君 やっぱり自動車問題というのは、私これは非常に大きなウエートを持つと思うのです。しかし、時間がありませんからこれ以上申し上げませんけれど、原潜に対する私ども態度というのは、こういう事故が起こったことは大変不幸であり、これからもこういう事故は絶対起こってもらいたくない、これはもう同じであります。しかし、こういうことがあったから安保体制がすぐいけないのだというような、そういう態度は一切とらない、つまりなぜ通報がおくれたか、人命救助ができなかったか、そういう問題と安保体制とを峻別をして現実的な解決を図ってもらいたい、こういうことでありますが、外務大臣も同感でございましょうか、いかがですか。
  132. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 同感でございます。
  133. 木島則夫

    ○木島則夫君 せっかく条約案件、法案がございますので、そちらの方に移ろうと思います。  外務省の機能の充実と行革との関係についてちょっと伺っておきたいのですが、ますます複雑になっていく国際情勢に対処していくためには外交体制の足腰の強さ、つまり外務省の機能の充実と申しますか、定員の増強が必要でございます。これについては外務省でも昭和六十年までに定員五千名の実現という構想を打ち出して努力をされているようでございますが、一方で、政府では第二臨調を発足さして、内閣を挙げて行革に取り組もうとしている、こういった状況にございます。具体的には公務員の新規採用の削減であるとか一時中止とかの声も聞かれるわけです。そうなってくると、外務省の機能の充実と行革との関係は一体どうなってくるのかということでございます。従来は定員削減には一応応ずるものの、それを上回るような定員増によって拡充を図ってきていたわけでありますが、今度の行革は従来のようなわけにはいかない、この辺をどうするのか、この外務省の機能充実と行革とは全く別の問題なのかどうなのか、この辺はっきりさしていただきたいと思います。
  134. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 外交機能を充実、強化しなければならないという御指摘はまことにそのとおりでございまして、私どもは三本柱と呼んでおりますけれども、質の面の改善、強化、人材の育成、専門家の育成、そういう側面、それから量の増大、それから省力化あるいは機械化の推進、それを三本柱と呼びまして努力してきてまいっているわけでございますが、いまちょっと御指摘もありましたように、私どもが抱えている定員面における目標もなかなか順調には進まない。各方面の御理解を得て相当な配慮は得ておりますけれども、私どもが最小限必要だと思う水準が見通せるようになったかというと、まだ見通し得ないというのが率直な実情でございます。  いま第二臨調のお話がございまして、先ほども渋谷委員にも説明したのでございますけれども、第二臨調の法律の第一条では「社会経済情勢の変化に対応した適正かつ合理的な行政の実現に資するため、」「臨時行政調査会を置く。」と、こういうことになっておりますので、この調査会におきましても、社会経済の情勢の変化、その中にはわが国の置かれている国際環境の変化に対応してどういう行政体制があるかということも慎重な御検討の対象になると思いますし、これは私どものいろいろ考えておりますことと考え方として違った方向が打ち出されるとは実は思っておりません。ただ、外務省といたしましても、第二臨調というものは、これは政府全体としての大事業でございますから、外務省としてもこれには全面的に協力するという基本姿勢はもちろん持っております。ただ、その中で、たとえば定員問題、公務員の新規採用問題ということになりますと、これが一律になるのか、あるいはそこに行政需要の強弱によっていろんな色がつくのか、その辺の具体的なことはまだ何も伺っておりません。調査会発足したばかりでございます。私どもも機会を得て私ども考え方をよく臨調の場にも申し上げ、それを理解していただいた上で適正ないろいろ御提案があることを期待している次第でございます。
  135. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務大臣、一言だけで結構でございますが、日本外交、特に平和外交を推進する意味で、外交面のいろんな意味での組織強化ということが必要であろうと思います。それと行革と、これは二律背反的なものであろうと思いますが、私はある意味で、その辺は実情に即してやはり外務大臣なり外務省が率直に御意見を申し上げるということがあってほしいと思いますが、大臣、いかがですか。
  136. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いよいよそういう問題が具体的になってくれば、やはり外務省としては率直に意見は申し上げるつもりでございます。
  137. 木島則夫

    ○木島則夫君 オットセイとか、あと、渡り鳥とかいろいろ用意をして、お答えもきっと用意をしていただいたと思いますけれども、時間がございませんので、子女教育問題についてだけ触れさせていただきます。  この子女教育というのは、在外職員の抱える大事な問題の一つだと思っておりますけれども、子女を日本の学校に進学させるために単身赴任を余儀なくされている職員も多いと聞いております。この在外職員の子女教育のバックアップについてどのようにされているのか。赴任地で教育をする場合と日本で教育をする場合、ともにひとつ御説明をいただきたい。時間がないので簡潔にお願いします。
  138. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 子女教育の問題は、いろんな各方面から取り上げなければなりませんし、外務省だけで処理のできない、文部省その他各方面の御協力を得る必要がある問題でございます。一つは、現地における日本人学校の充実でございます。日本人学校、全日制のものが現在七十校ございますが、それから日本語を主とした補習校が七十七校ございます。そういうものの充実強化が一つの側面でございます。  二つ目は、在外勤務者に教育上必要な経費のための子女教育手当というものを設けて、適切なその面からの措置をするということでございますし、特に、最近教育環境が非常に悪いところにおける職員、日本人学校が開けないとか、開かれていないところにおける職員は特に経済的負担が重いということがございますので、この分については一定の限度額の範囲内で実費支給ということでこの負担の軽減を図るということをやっております。  第三番目が、帰国後の子女の教育問題でございまして、これにつきましてもいろいろ教育相談室を設ける等いたしまして、帰国後の不安をなくす努力、あるいは赴任するに当たって今度は逆に現地における教育事情をよくお話しし、その方がまた帰ってこられたときの教育にうまくつながるようないろいろアドバイスをするというような措置をとっております。  それから四番目に、やむを得ない理由で日本に残留させた職員の子女のための施設、これは外務省に関しましては子弟寮というのを一つ市ケ谷に持っているわけでございますけれども、これは外務省の職員に限らず、在外におられるすべての子女共通の問題でございますので、その点は、いろいろ、外国から帰られた方が語学はできるけれども国語が苦手だというような方に対する受け入れ側の配慮ということにつきましては、最近、各方面の相当な理解を得ましたので、大分改善されたと思いますけれども、なお一層の改善の必要は痛感している次第でございます。
  139. 木島則夫

    ○木島則夫君 最後に一言。残余の問題やりたかったのですけれども、時間がございませんのでこれは私は放棄をいたします。  ただ、紛争地域、そのほか危険なところで勤務をする方々の生命、身体の安全、こういったことについても十分な御配慮を払ってひとつやっていただきたい、このことは要望として申し上げて質問を終わります。どうもありがとうございました。
  140. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 いよいよ、外務大臣、五月の初旬には首相とともにアメリカに行かれまして、レーガン政権日本政府の首脳とが話し合われるわけですね。いろいろな問題があるのでしょうけれども、その中で、やはりアメリカソ連との国際的な対立が厳しくなってきておる、それで、その中で演ずる、安保条約アメリカと結んでいる日本役割りというような問題について話が出ると思うわけでありますが、この前もそういう問題について御質問申し上げたのですが、きょうは、まず朝鮮半島の問題、この問題について質問いたしたいと思うわけです。  私は、全斗煥大統領が就任式を行う、そういうときに伊東外務大臣が行かれたわけです。そして向こうの新しい全斗煥政権の当局といろいろ話し合われたわけでありますが、朝鮮の緊張緩和、この問題につきまして話し合われたと聞いております。新聞でも拝見しましたが、私は、この朝鮮半島の緊急緩和の問題というのは日本の安全にとって非常に重要な問題であります。お互いが相手を脅威と思って鋭く対立しているという状態である。特に韓国側におきましては、依然三十年前の朝鮮戦争の記憶が絶えず蒸し返されるといいますか、そういうことで、現在三十八度線、あの国境線に厚い万里の長城のようなものでもつくっている、こういう状況である。状況は非常に厳しいのですけれども、しかし、あそこでもし戦争が起こりますと、これは、日本の安全、それから日本国民の生存のための経済的な輸出入その他の活動が非常な障害を受けることは明らかです。ですから、対立していてもいいけれども、その対立がだんだん緩和の方向に向かい、そしてあそこで万一にも戦争などが起こらない状態を日本外交は積極的につくる努力をしていく、これはきわめて当然なことなんですね。それを外務大臣はこの前韓国に行かれましたときに言われたということを聞きまして、私は、日本外相としては当然の発言であり、韓国政府は常々親善を望んでいる、そして日本政府もいろいろな形で援助等を与えておる、その政府がきわめて真剣にこれを聞くというのは当然であると思いますが、必ずしもそうでなかったということを聞いていますけれども、これは答弁できる範囲において、一体、韓国政府は緊張緩和に対する日本政府努力に対してどういう評価をしたのかということを承りたいと思いますね。
  141. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私、三月二日、三日でございますか、大統領の就任祝賀式に行きましたときに、向こうの外務部の長官と、あと総理、副総理、大統領とも会いましたが、特に外務部の長官、外務大臣といろいろ話した中で、日本としましては、南北の間に三十八度線でこれは非常な緊張があるということは、それは認める、韓国も非常に防衛努力しておられるということも、これは認める、アメリカの韓国駐留軍も、今度は米韓の共同声明でやられたということも認める、非常に努力をしておられるということは認めます、ということを前提にしまして、しかし、朝鮮半島全部が何としても平和であるということが、アジアの平和、日本の平和にとっても大切なことであると日本考えますと。全斗煥大統領も、ことしの一月十二日の演説で、同じ民族――同じ文化を持つ、同じ言語を持つ民族が二つに分かれているということは、これは好ましくないので、平和的にこれが統一ができるということを本当に希望している、そのためには、自分が平壌に行っても、あるいは北側の指導者が京城へ来ても、どっちでも交流をして、そして話し合いをしていくということが大切だ、という非常に格調の高い演説を一月十二日にされ、大統領の就任式でもされたわけでございますし、やはり私は韓国の人々もそういうことを希望しているのだろうというふうに思いますし、この朝鮮半島に平和が来るということについては、これは本当に大切なことなのだから、日本としてもそういう南北の自主的な話し合いができるような、そういう環境づくりに努力をしたいということを、国会でも演説もしました例も引いて、韓国に私は話したということでございます。  それで、韓国側がそれをどう評価したか、どう受けたかということは、またこれは韓国側の向こうの感じでございますので、いまここで申し上げるのは差し控えますが、また、六月には向こうの外務部の長官も日本に来るということを言っておりますので、外相会談がありますので、引き続き私は、いまのような考えを述べて、朝鮮半島全部の平和ということがいかに大切かということを、やはり考え方として述べるつもりでございます。
  142. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 確かに体制の違い、社会主義と自由主義というのですかね、あるいは共産正義と資本主義というのですか、そういう体制の違いが存在している、それが憎悪の根底にある、そういうことを特に最近になるとアメリカの人なども言い始めているわけです。ただ、私どもは、第二次大戦後、ずっとアジアの情勢、朝鮮、中国の情勢等を見ておるのですが、アメリカ人も一時は、とにかく北朝鮮と中国というのは非常に危険な国であるという認識ソ連よりも危険であるというような認識で、私らがこの問題を議論すると言っていましたが、しかし、現実に中国と日本との関係が非常によろしい、そして、中国と日本との関係がいいということが、結局はアメリカと中国を和解さしている。のみならず、現在のアメリカソ連に対する世界戦略から言いますると、中国という国が六千キロ以上の国境でソ連と接している。そこでは数十個師団の兵力が対抗している。われわれは中ソ関係が悪くなることを少しも望んでいるものじゃないですけれども、しかし、そういう関係が、もしソ連の脅威があるとすればどのくらい日本の安全に役立ち、また、アメリカソ連に対する世界戦略においては有利な立場を与えているかということははかり知れない。ですから、単にイデオロギーが違うからといって硬化した姿勢でいると非常にばかばかしいことになるということは、現在の中国とアメリカ関係を見れば明らかであります。私は、中国と日本との関係というものは、単に戦略的なものであるとか防衛上のつまり有利不利というようなことで決すべきものではないとは思いますけれども、しかし、その点からだけ言っても非常に重要であると、こういうふうに思うのです。  ところで、北朝鮮と中国との関係、これはわれわれは絶えず注意していなけりゃならぬ問題です。というのは、私どもは何度か北朝鮮にも参りまして、あそこの国の基本的な性格をある程度まで理解しているつもりですけれども基本的にはやっぱりアジアの国ですからね。それからまたアジアの第三世界の一員であると、第三世界のできたら多少のリーダーシップをとる国になりたいと、そういう気持ちを持っているように思います。ですから、本来ソ連と中国といずれを北朝鮮がとるかということになりますと、今度は、参議院の田議員が北朝鮮に行った印象では、とにかくわれわれはソ連と中国に対しては全く等距離であるということを強調していたようですけれども、しかし、これは情勢が緊迫してくると、兵器その他でソ連の援助を受けなけりゃならぬという配慮があるわけであって、私が注意しなけりゃならぬと思うたものは、あの北朝鮮の首府の平壌、あそこに、現在は北京に行っているようですけれども、カンボジアのシアヌーク殿下ですね、シアヌーク殿下が――私も平壌でシアヌーク殿下と会ったことがありますが、この人と金日成との関係は非常にいいんですね。これは注意すべきことです。それで、アメリカはどういうわけかシアヌーク殿下を非常にきらいまして、ロン・ノル政権というのをつくったわけですけれども、これがインドシナの現在の不幸の一つの原因であると私は思いますが、シアヌークと金日成というのは非常にいい。私は、金日成と二人であそこの人造湖の上でいろいろ話したことがありましたが、そのときに、中国の南方でできるリーチとかライチとかいう果物を出してくれましたが、その果物はだれが送ってきてくれたかというと周恩来なんだ。亡くなった周恩来、当時の中国首相が、ひとつこれは金日成さん、君とシアヌークさんと一緒に食べてくれと、こう言ったと言ってましたよ、金日成自身が。ですから、私は、シアヌーク、金日成それから周恩来ラインというものは当時しっかりあって、現在もそういう線が続いているという気がします。  御承知のとおり、シアヌークとソ連というものは、これは非常に悪いのですね。例のロン・ノルのクーデターが起こったときにたまたまシアヌークはモスクワにおりまして、そしてモスクワの当局はそのことをシアヌークに知らせない、空港でタラップに乗るときにこういう事件が起こったと知らせたなんということで、それはシアヌークは少なくとも当時はソ連に対して恨み骨髄に徹していた、そういうことなんですね。そういう人と金日成・周恩来ラインがあるということは、やっぱり相当注意して見ていなきゃいかぬのじゃないかと思います。それですから私は、北朝鮮というものはソ連の方にはなかなか行きにくいと、しかしこれを無理に今度は向こう戦争の雰囲気で追いやると中国の朝鮮半島に対する立場というものは私は非常に困難になると思いますよ。私はアメリカのリーダーがそこら辺のことをよく理解してソ連がもし危険であるとするならそうであるほど北朝鮮の問題をもう少し真剣に考えなきゃいかぬと思います。  私どもソ連に対する考え方というものは常にかみつくオオカミだとは必ずしも思っていませんけれども、やはりアフガンに対するあれだとか北方領土に対する問題だとか納得のいかない点もいろいろあるわけでありますから、この朝鮮半島の状態、いまの南北対立の状態が極端になって、そして北朝鮮が非常に強くソ連寄りになる、中国がいろんな意味でやりにくくなるというような状態は、私は朝鮮問題に対する日米会談の際に日本側から当然主張されてもいい問題だろうと、こう思いますけれども外務大臣はいかに考えられますか。
  143. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) アメリカとの首脳会談で国際情勢ということでいろいろお話し合いがあるのでしょうが、アジアということになりますと、中国、朝鮮半島、カンボジア問題、これはアフガニスタンもインドもアジアということであれば、そっちの最近のパキスタン、インドの関係等の話も出ると思います。その場合に、総理も常に言っておられますように、北朝鮮を含めた朝鮮半島全部の緊張緩和につきまして日本としてはそういう国際環境ができるように努力をしようということを総理も言っておられるわけでございますので、韓国との友好関係の維持発展ということはもう前提でございますが、朝鮮半島全部の国際緊張の緩和、そういう環境をつくり出そうというような恐らく御意見だろうと思っておりますが、どの程度、どう触れられますか、いまわかりませんが、この朝鮮半島がアジアの平和にとって非常に大きな問題である、その後ろに中国もあればソ連もあるということで非常に複雑だということ、私も先生とその点は同感でございます。ただアメリカは北朝鮮――朝鮮民主主義人民共和国につきましては非常に厳しい考えを持っているということだけは、これは確かでございます。
  144. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 ですから、なかなか軍事問題を論ずるにしても国際的な情勢に対する解釈、何が脅威なのかという解釈、これによっておのずから違ってくるわけでありまするから、やはり軍事問題に入る前に一体日本は何を脅威とするか、日米安全保障条約日本が一番必要とするものは何かということもこれは考えなきゃいけませんね。アメリカアメリカ世界戦略の立場から日本にどの分野を分担してもらおうかということを考えるかもしれませんが、とにかくこれは安保条約そのものは、結局終戦後の無武装な状態における日本自体の安全というものを中心につくられたものであり、それから安保条約改定後においては、日本の基地ですね、――アメリカの基地、日本にあるアメリカの基地、それに対する攻撃を日本に対する攻撃とみなすという形で条約に相互性を与えているものですね。ですからその基地は、しかし極東の範囲とかいろいろ言われておりまするけれども、とにかくアメリカの政策に従ってそこの分担が、そこを根拠に活動するということが行われてきたし、今後も行われるのでしょうが、そこら辺に日本アメリカ立場の違いがもちろんあります。ですからやっぱり日本の政治家としてはしっかり言うべきことを言わぬと、何かアメリカ空海陸のですね、日本の武装勢力は単なるしっぽみたいになってしまうということになりますから、この辺はひとつ十分お考えになってお話し願いたい、こう思いますね。
  145. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日米首脳会談でも、おっしゃるとおり、日本としてはこう考える、それが正しいと思うという主張はやはりこれはアメリカに対しても堂々と主張して、そういう主張ができることは本当の友人関係だと私は思うわけでございまして、十分そこは総理にも申し上げますが、注意していこうと思っております。
  146. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私はアメリカ人は非常に率直だと思うのです。ですからこうもやもやわけのわからぬいいかげんなことを言うよりも、やっぱり率直なことを言う、日本の主体性は、客観的に理解し得る国益に基いて率直なことを言う、それから世界の平和を維持するという立場からきわめて率直なことを言うということは、私はそこら辺たまたま議論になったり、場合によっては激しい言い合いになったにしても、決してこれは長い目で日本の損害にはならぬと、こう思いますから、ひとつ伊東さんの正直な、率直な愛国的心情をもってしっかりやっていただきたい、こうお願いする次第です。  今度のこの会はいろいろな法案を、条約を審議しているわけです。きょうは幾つか可決されるのでしょうが、海洋に関する問題が大分あります。私はこれについて余り知らぬわけですけれども、ただ海洋の問題がありますから、これで思い出して御質問申し上げたいのは、海洋法の問題が第三世界諸国中心に十年近く前からいろいろ問題になり、三、四年前には一つの結論が出そうになっていたわけですね。それがいまちょっといろんなむしろ大国の都合で進展が阻止されているという状況にある。私は、そういう海洋法の論議が相当詰まったころ日韓大陸棚協定というものが締結されたわけですね。朝鮮問題が出たついで、海洋問題が出たついでにちょっと御質問申し上げるのですけれども、日韓大陸棚協定締結された。それで日韓大陸棚協定というのは、当時、ちょうど第一次石油ショックがありまして、石油が一滴でも欲しいという状況と、それからまた、韓国とのいろんな政治的状況の中で結ばれたものであります。私どもは、どうもあれは韓国の第一鉱区に指定されていたのですけれども、当時の海洋法の傾向から言うと、当然日本の経済水域になるところである、それが石油不足を理由にして非常に忙しくこの協定が結ばれた、おかしいじゃないかということでいたのですけれども、しかし、石油が出れば無意味なことはないわけです。問題は、日本の当然経済水域になるところを共同開発にしたというところに問題がありますけれども石油が出ればこれは無意味ではないわけですが、石油もなかなか出ないだろうと。掘削もなかなか困難であろう、公害のおそれがあるだろうというようないろんな問題があったわけですけれども条約が可決されまして、すでに海底の開発が行われているわけでありますが、現在の海底の開発状況というもの、その見込み、それをきわめて簡単にひとつ御説明願いたい。
  147. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) お答え申し上げます。  日韓大陸棚の共同開発の区域でございますが、一昨年の秋から物理探査を開始いたしまして、昨年、そのうちの第五小区域及び第七小区域の両区域につきましてそれぞれ一本ずつの試掘を行っております。その結果はまだ、いわゆる油ガス徴と申しますが、油あるいはガスの存在を示す徴候はなかったということになった次第でございます。  現在は再び物理探査作業を行っておりまして、また今年度試掘を実施していくという、そういう状況でございます。
  148. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 いままで試掘井はどのくらい掘られましたか。
  149. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) 昨年、第五小区域について一本、第七小区域について一本、合計二本でございます。
  150. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 これは多少見込みのある結果は出ましたか。
  151. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) それぞれの二本につきましては、いわゆる油ガス徴、つまり石油あるいは天然ガスの存在を示す徴候はございませんでした。
  152. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 特にあれは第五鉱区と第七鉱区だったと思いますが、そこは特に有望としてやったんですか。
  153. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) 日韓共同開発区域は全体で九つの小区域に分かれているわけでございますが、そのうち第五及び第七の小区域が面積も広うございますし、日本側の企業及び韓国側の企業、開発権者、それぞれ最もその中では有望な区域、小区域であるというふうに判断をいたしまして、そこを現在重点的に物理探査及び試掘を実施していると、こういう状況でございます。
  154. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そこが有望と見た根拠は十分あったのだと思いますが、他の区域は有望じゃないのですか。
  155. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) ちょっと言葉があるいは不正確でございましたが、第五と第七は面積が広うございます。その中に、したがいまして有望と見られる構造の数も多いわけでございます。他方、第一から第二、第三、第四、それから第六というところは面積が非常に小さうございます。それから第八、第九の小区域は水深が深いということで、現在の総合的な評価といたしましては第五と第七が評価が比較的に高いということでございます。
  156. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 日韓大陸棚協定では石油が出た場合、大まかに言うと、半分を分け合うということになっているわけですね。  それから中国と何か近ごろ渤海湾あたりでやっていますね、あの協定はどうなっていますか、石油
  157. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) 御質問の中国との関係でございますが、これも中国の沿岸におきまして石油開発を行う、これに日本が協力をするという形で、昨年の五月に渤海湾における石油開発につきまして日本側の企業と先方、これは石油公司の海洋分公司というところでございますが、ここと契約が成立いたしまして、現在共同作業を渤海湾について行っているという状況でございます。
  158. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 この分け方はどうなっていますか。
  159. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) ごく簡単に申しますと、生産されました石油の四二・五%を日本側が取得するということになっているわけでございます。
  160. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 時間が来ましたが、ちょっと一問だけ。  中国の石油を掘る場合に、日本の資材を提供して掘っていますね、それでその日本の資材、提供した資材というものは、やっぱり石油で返されるわけですね、四十何%以外の石油で返されるわけですね。
  161. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) 日本側がまず探鉱作業を日本の負担において行います。その費用につきましては、成功いたしまして生産された油のただいま申し上げました四二・五%の中から回収をするということでございます。
  162. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 終わります。     ―――――――――――――
  163. 秦野章

    委員長秦野章君) 委員の異動について御報告いたします。本日、永野嚴雄君及び中山太郎君が委員辞任され、その補欠として梶原清君及び板垣正君が選任されました。     ―――――――――――――
  164. 秦野章

    委員長秦野章君) 他に御発言もないようですから、四件に対する質疑は終局したものと認めます。  日本国政府オランダ王国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件外八件を便宜一括して議題といたします。  九件につきましてはいずれも質疑を終局しておりますので、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、日本国政府オランダ王国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  165. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国政府ギリシャ共和国政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  166. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、アフリカ開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  167. 秦野章

    委員長秦野章君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、一次産品のための共通基金を設立する協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  168. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  169. 秦野章

    委員長秦野章君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百八十年の議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  170. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、南極の海洋化物資源の保存に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  171. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、渡り鳥及びその生息環境保護に関する日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  172. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  173. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、九件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  174. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  175. 秦野章

    委員長秦野章君) 次に、国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオールで署名された議定書締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国フィンランド共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国政府シンガポール共和国政府との間の条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件、千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名された所得に対する租税に関する二露課税回避のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件、以上四件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。伊東外務大臣
  176. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま議題になりましたことの趣旨説明をいたします前に、条約法律案を通していただきましてありがとうございました。  ただいま議題となりました国際民間航空条約第五十条(a)の改正に関する千九百七十四年十月十六日にモントリオールで署名された議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際民間航空機関、ICAOは、昭和十九年に作成された国際民間航空条約に基づき、国際民間航空の安全なかつ整然たる発展を確保する目的で設立された機関でありまして、国際連合の専門機関の一つとしてきわめて活発な活動を行っております。現在の加盟国数はわが国を含めて百四十六カ国に達しております。  この議定書は、ICAOの加盟国数の増加に伴い理事会において加盟国がより適切に代表されるようにするため、理事会の構成員の数を増加することを目的とするものでありまして昭和四十九年十月に招集されたICAOの第二十一回総会において作成されたものであります。その主な内容は、国際民間航空条約第五十条中理事会の構成員の数「三十」を「三十三」に改めるというものであります。この議定書は、八十六の締約国の批准により、客年二月十五日に発効しております。  わが国は、昭和二十八年に国際民間航空条約に加入して以来、積極的にICAOの活動に参加しておりまして、現在も、理事国として国際民間航空の各分野における国際協力のために努力しております。  わが国は、この議定書の趣旨に賛成しており、この議定書締結することは、ICAOにおける国際協力を増進する上で有益であると考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国フィンランド共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国とフィンランド共和国との間の定期航空路開設に関しましては、昭和四十六年以来フィンランド側より種々の機会にその旨の希望が表明されてまいりましたが、近年に至り、両国間の貿易、投資等の経済関係の緊密化に伴い、航空運輸需要がほぼ直通航空路を開設するに足る状況になったと判断され、政府は、両国間の伝統的友好関係にもかんがみ、協定締結交渉を行うこととし、昭和五十五年四月以降フィンランド共和国政府との間で本件交渉を行ってまいりました。その結果、同年十月協定案文につき最終的合意に達しましたので、同年十二月二十三日ヘルシンキにおいて、わが方山口駐フィンランド共和国大使と先方トゥオヴィネン外務次官との間で署名を行いました。  この協定は、わが国とフィンランド共和国との間の定期航空業務を開設することを目的としておりまして、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、わが国が署名した航空協定としては三十六番目のものでありまして、わが国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。  この協定は、両国の友好協力関係の強化に資するとともに、両国間を直結する航空路を開設することによって、拡大しつつある貿易経済関係に伴って増大している両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国政府シンガポール共和国政府との間の条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国とシンガポールとの間には、昭和四十六年一月二十九日に署名された所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための条約締結されておりますが、近年シンガポール経済が著しい発展を遂げたことを踏まえ、昭和五十四年にシンガポール政府からこの条約の内容を同国経済の現状及び税制面における同国の最近の政策に沿ったものに改正したいとの申し入れがありました。政府としても、シンガポール政府からのこの申し入れを機に現行条約の見直しを行うことは有意義なことであると考え、この条約を改正する議定書締結についてシンガポール政府と交渉を行いました結果、昭和五十六年一月十四日にシンガポールにおいて、わが方本大臣と先方ダナバラン外務大臣との間でこの議定書の署名を行った次第であります。  この議定書は、本文六カ条から成り、これによる主な改正は、次のとおりであります。すなわち、使用料についての源泉地国免税主義を改めて源泉地国において十%を超えない率で課税することができるようにすること、芸能人等が公的資金によって活動することにより取得する所得については活動地国において常に租税を免除するようにすること、学生、事業修習者等の受領する一定の報酬についての滞在地国における免税限度額を引き上げること、みなし外国税額控除制度の内容をシンガポールの最近の税制を反映したものとすること等であります。  この議定書締結によりまして、わが国とシンガポールとの間の二重課税回避の制度が拡充され、両国間の経済関係が一層緊密なものとなるとともに文化交流を初めとする人的交流が一層円滑に進められるようになることが期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第でございます。  最後に、千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国とフランスとの間には、昭和三十九年十一月二十七日に署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための条約締結されておりますが、締結以来すでに十数年を経過したことから主にフランス側の税制改正に伴って条約の一部を改正する必要が生じました。このため、政府は、この条約を改正する議定書締結についてフランス政府と交渉を行いました結果、昭和五十六年三月十日にパリにおいてわが方井川駐フランス大使と先方ミドモール外務省在外フランス人局長との間で署名を行った次第であります。  この議定書は、本文十六カ条から成り、これによる主な改正は、次のとおりであります。すなわち、わが国の居住者たる一般投資家がフランスの法人から配当を受け取る場合には、当該投資家に対して当該配当支払法人が支払った法人税の一部還付を受ける権利を認めること、国、地方公共団体または中央銀行が取得する利子等については源泉地国において免税とすること、いずれかの締約国またはその地方公共団体の公的資金等により実質的に賄われる芸能人または運動家の活動によって生ずる所得につき活動地国において免税とすること等であります。  この議定書締結により、わが国とフランスとの間の二重課税回避の制度がさらに整備され、両国の経済交流及び文化交流が一層促進されることが期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上四件につきまして、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
  177. 秦野章

    委員長秦野章君) 以上で趣旨説明を終わりました。  四件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十三分散会      ―――――・―――――