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1980-12-22 第94回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十二月二十二日(月曜日)    午後一時四十分開会   —————————————   委員氏名     委員長         秦野  章君     理 事         稲嶺 一郎君     理 事         大鷹 淑子君     理 事         松前 達郎君     理 事         宮崎 正義君                 安孫子藤吉君                 中村 啓一君                 中山 太郎君                 永野 嚴雄君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 町村 金五君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君   —————————————    委員異動  十二月二十二日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     岩本 政光君      永野 嚴雄君    大河原太一郎君   —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         秦野  牽君     理 事                 大鷹 淑子君                 松前 達郎君                 宮崎 正義君     委 員                 岩本 政光君                大河原太一郎君                 中村 啓一君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 町村 金五君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君    政府委員        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省条約局長  伊達 宗起君        水産庁長官    今村 宣夫君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君   —————————————   本日の会議に付した案件調査承認要求に関する件 ○北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との間の協定有効期間延長に関する議  定書締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国地先沖合における千九百七十七年の漁  業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共  和国連邦政府との間の協定有効期間延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、中山太郎君及び永野嚴雄君委員を辞任され、その補欠として岩本政光君及び大河原太一郎君が選任されました。   —————————————
  3. 秦野章

    委員長秦野章君) 調査承認要求に関する件についてお諮りをいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行うこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  6. 秦野章

    委員長秦野章君) 次に、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。伊東外務大臣
  7. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ただいま議題となりました北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件、それからもう一つ日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の二件につきまして、提案理由を御説明いたします。この二件は、それぞれ別個の案件ではありますが、経緯上も内容的にも互いに密接な関係にありますので、一括して御説明いたします。  昭和五十二年五月二十七日にモスクワで署名されました北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定及び昭和五十二年八月四日に東京で署名されました日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間は、昭和五十二年末及び昭和五十三年末に署名された議定書によって延長されましたが、さらに昭和五十四年十二月十五日にモスクワで署名された二つ議定書によって一年間延長されました。したがって、両協定有効期間は、ともに本年十二月三十一日に満了しますので、政府は、ソ連邦政府との間にこの有効期間をさらに延長する議定書締結するため、本年十一月二十五日以来東京において交渉を行いました。その結果、本年十二月六日に東京において、わが方本大臣先方ポリャンスキー日ソ連邦大使との間でこの二つ議定書の署名を行った次第であります。  この二つ議定書は、いずれも二ヵ条から成っており、それぞれ右に述べました協定有効期間を明年十二月三十一日まで延長すること、両国政府代表者は明後年以降の漁獲の問題に関して明年十一月十九日までに会合し協議すること等を定めております。  この二つ議定書締結によりまして、一方では、わが国漁船ソ連邦沖合い水域において引き続き明年末まで操業することが確保されることとなり、他方では、わが国は、ソ連邦漁船が明年においてもわが国漁業水域においてわが国の法令に従って操業することを認めることになったのであります。漁獲割り当て等実体的事項につきましては、両国水産当局間の書簡にその詳細が掲げられておりますが、今回の交渉の結果、明年のわが方漁獲割り当て総量として本年と同じく七十五万トンを確保しました。他方ソ連邦に対する明年の漁獲割り当て量につきましても、本年と同じく六十五万トンと定めた次第であります。  この二つ議定書締結は、互いに相まって、日ソ両国の二百海里水域における円滑な漁業秩序を確保するものであると考えております。  よって、ここに、これらの議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたす次第でございます。
  8. 秦野章

    委員長秦野章君) 以上で趣旨説明を終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 この両議定書の取り決めに当たっての期間の延期は、昨年と同様の趣旨と内容をもって行われた模様でありますが、違う点があるとするならば、大臣でなくてもよろしいですが、水産庁の方でも、どういうところに前とは少しく違うところがあったか、その御説明をお願いしたいと思います。
  10. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) 今回の交渉で昨年と違うところは、一つは昨年までは何らかの当方の譲歩といいますか、そういうことがあったわけでございます。たとえば昨年はスケトウダラが三十万トンから二十九万トンに一万トンの減に相なっておりまするし、ソ連のとりますイワシサバにつきましては五万トンの増をいたしたわけでございます。今年は昨年と同様スケトウは二十九万トンでありまするし、イワシサバにつきましては昨年と同様五十万トンということでございます。魚種別組成につきましては、当方として従来要望をいたしておりましたスケトウダラ増量はできませんでしたが、ズワイガニそれからツブ等について北海道関係者等の非常な関心のあります魚種について増量をいたしたわけでございます。  操業期間操業水域については全く本年と同様でございますが、操業隻数につきまして、ソ連操業隻数を昨年より十七隻減しまして五百三十一隻ということにいたしたわけでございます。  以上が昨年との相違点でございます。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 ソ連スケトウダラに関しては昨年も一昨年もこだわっておるようですが、そのソ連側のこだわっている面はどういうところにあるんでしょうか。
  12. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) ソ連はこれは昨年もそうでございますし、本年もさようでございますが、スケトウダラ資源状況はきわめて悪いということを主張いたしておるわけでございます。当方としては、スケトウダラ資源についてはそれほど悪いわけではないという主張をいたしておるわけでございまして、ソ連としては、やはり一つ資源的な観点、もう一つは、外交交渉日本が一番欲しいスケトウダラを攻めるのが有利なる結論を得るであろうという、そういう考え方に基づくものであるというふうに思います。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 昨年も私はこの問題について質問いたしましたので、それを重複することは避けたいと思うのですが、いま、ヨーロッパにおいての一番の問題は、石油資源の問題以上に食糧の問題で、これに重点が置かれているような模様でございます。  ソ連だけでなく、フランス等におきましても、日本の四倍も肉を食べたりブドウ酒を飲むというような習慣から変えていかないと、やはり体質上にも悪い影響がある。もっと魚を食べ、あるいは野菜、果物等をとらなけりゃならないというふうに食生活の転換が一方においてはなされていると同時に、ソ連においては大西洋沿岸漁業に手をつけると関係諸国が複雑であって、NATOに加わっている国々及びそれだけでなく刺激するところ多いから、大西洋沿岸における漁業に対してはきわめて受け身の形をとり、むしろ太平洋沿岸における関係日本との摩擦だけであるから、この点は日本の領土問題に対する攻勢あるいはソ連包囲策に対する軍事的同調、その牽制のためにもがんばらなけりゃならぬというような思惑があるように思われますが、これは外務大臣がこの間EC諸国に行って、ポーランド問題を中心としてのNATO諸国緊張ぶり及びソ連のアフガンに対するところの進出以後の警戒、そういうものから、ヨーロッパ情勢ソ連に対しては軍事介入的な面を極力排除してやらなけりゃならないという方向に向かっている模様ですが、このヨーロッパにおけるソ連に対する態勢並びにこの食糧漁業の問題に対する観念をどういうふうに受けとめてまいりましたでしょうか。
  14. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ヨーロッパが、ほとんどのECの国が、ソ連ポーランド軍事介入をするということになれば、ヨーロッパデタントというものは完全に破壊する、破滅に陥る、あるいは軍縮というようなことをいろいろ相談をしているけれども、こういう問題も一切吹き飛んでしまう、本当にこれは世界の平和、欧州の平和安全ということにとっても大変だ、何とかソ連軍事介入というものをしなくて、平穏裏ポーランド問題が終わるようにヨーロッパ考えなけりゃいかぬということを非常に各国とも真剣に考えておられたのでございます。デタントの問題とか軍縮の問題というのがヨーロッパの人の生活そのものだというふうな感じを実は持って帰ったのでございます。  その際に、ヨーロッパ諸国が、まずポーランド内部を鎮静化させにゃいかぬと、それにはまず経済援助の中で食糧を廉価に輸出するということが必要だということでECEC委員会中心になってやっておりましたが、バターでございますとか肉でございますとか小麦でございますとか、そういうものをポーランドに供給しようということを実はやっておりました。  それで、先生御指摘のようにポーランドは、ソ連も同じことが蓄えると思うのでございますが、農業関係が、天候に支配されていることもございますが、案外うまくいってないということで、食糧問題というものがそういう国々の、特にポーランドでは安全保障、そういう面に大きな障害になっているというような認識でございまして、EC諸国は何とかソ連が介入しないように、それにはポーランドをちゃんと落ちつけなきゃいかぬということで、まず食糧ということをやっておったのでございます。その際に、私、不勉強で、畜産水産代替関係がどうということは余り向こうでは聞いてこなかったことで、まことに申しわけございませんが、特にソ連につきましては畜産がうまくいかぬということで、水産に対して非常に熱心であるということは先生も御承知のとおりでございまして、すでに二百海里ということになりましたので、なかなか関係国ヨーロッパでは非常に多いということも、これは事実でございます。太平洋の方ではアメリカ日本ということで交渉相手が数が少ないということは言えるわけでございますが、今度行ってみまして、本当にこの食糧問題というものが非常なああいう飢饉の一つの大きな引き金になっているということを痛感してまいったような次第でございます。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 漁業問題で私が心配している点は、いまの漁業関係担当大臣ソ連側においては非常に慎重です。極東共産党の古い指導者であったコバレンコさんなんかの物の考え方とは違っているようです。やはり手がたく国同士話し合いにおいて問題を摩擦のないように政府責任で片づけていかなけりゃならないという方向へ来つつあると私は思うのであります。にもかかわらず、日本における、要するにソ連仮想敵国として陽動作戦をやっている人は、栗栖弘臣さんのような人はソ連を初めから仮想敵国として、そうして日ソの戦争の危機を説き、またソ連に対する好意を持ち、あるいは持ち過ぎる人はいまにもソ連日本上陸作戦をやってくる、それよりは魚の問題、領土問題をたな上げしても魚の問題あたりで妥協しなければいけないんじゃないかというような、非常に一貫しないソ連に対する動き日本国内自体にあるということは、日本外交をやる上において、政党政派は違っているが、やはり日本のみずからの主体性を確立して他に向かって外交交渉をやるのでないと、相手から虚をつかれる危険性がきわめてあると思うし、ソ連自体がいまヨーロッパ緊張、または極東に対する極端な緊張中東における対立を激化する形において、あちらからもこちらからもというような動きをするならば、ソ連自体内部崩壊を導くおそれがある。ソ連革命の中において非常に苦慮してきたブレジネフさんなり、あるいはレーニン研究所の所長でありレーニン大学の学長であって、マルクス・レーニン主義というものに一貫性を持ってきた長老のスースロフ氏なんかが生きている限りは、そういう冒険政策によってソ連内部から崩壊に導くようなことは私はできないと思うんですが、われわれが国土防衛に対しては責任を持つことが必要であるけれども、いたずらにソ連を刺激し、ソ連をして「窮鼠猫をかむ」ような形にまで追いやるということは、孫子の兵法から見てもとらざるところであり、常に包囲せん滅せんというような愚策でなく、相手の退路を遮断しないというのが乱世における政治哲学であり戦略であります。そういう意味において政府はもっと冷徹にこのソ連関係には対処していくことが必要だと思いますが、あなたはどのようにこの日本外交における主体性を確立しながら、なおかつソ連や何かに対処しようというお考えか、その点を——大体、外務大臣を歴任した方は相当世界の中における日本の進路ということは把握しているようですが、自民党は政権ですから、雑多な要素によって混濁の時代をつくっておりますが、一体どのように方向づけていくつもりでありますか。
  16. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ソ連は隣国の大国でございまして、日ソ外交というのは非常に外交の中でこれは重大な外交でございます。先生いまおっしゃったように、仮想敵国としてこれに敵対をするとか、そういうことを考えているわけじゃないのでございまして、外交努力によって何とか平和を、友好関係を保っていこうというのがわれわれがなさなければならぬことでございますが、一方、経済問題とか魚とか何かで妥協をしてということで非常に甘く考えるというようなこともこれは私は注意せにゃならぬことでございます。先生のおっしゃったような日本外交主体性というものを踏まえまして、慎重に検討し取り組まにゃならぬとおっしゃることはそのとおりでございます。  私、今度ヨーロッパへ行ってまいりまして、日欧対話といいますか、日米米欧というのは比較的近い関係でございますが、日欧というのがいままではどちらかというと対話が薄かったということでございまして、やはり西側の陣営の一員として考える場合に、日欧対話ということが非常に大切だということを考えましてヨーロッパへ行ってきたのでございますが、ヨーロッパの人の対ソ観あるいはエジプトへ行きましたが、エジプト、まあ中東でございますが、あの辺の人の対ソ観、いろいろ意見の交換をしてまいったのでございまして、私は非常に参考になったと思うわけでございますが、先生のおっしゃった西側一員ということははっきり外交の方針に踏まえてやるわけでございます。しかし、そういってもどの地域でもなるべくどの国とも平和友好関係は続けていきたいというような考え方で、この重大な日ソ問題にはひとつ慎重にこの問題と取り組んでまいりたいというような考えでおるわけでございます。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 社会党も、いままでは共産党社会党かわからないような部分があるなどという非難を浴びておりましたが、いろいろな苦労もして大人になった関係か、今回の大会においては相当私ははっきりしたプロレタリア独裁だとか、いまにも革命が起きるような、オオカミ少年のような言動はとらないところへ来たと思うのであります。政治はきわめて常識であり、具体的であり、しかも高いヒューマニズムを掲げていかなければ全世界人々の同意というものは得られないと思うんです。思いつき外交はったり外交、これはいままでの餓鬼大将組には通用することであるが、日本の国民の中においては自民党すらも憲法改正などということをやたらにやるべきではないという自重論が起きてきたのは、明治憲法のような形で軍部独裁を促すような方向に行くならば、無条件降伏の道を行くことになる。そういうことでなく、もっと世界動きに対応しながら矛軟な姿勢を持って国連をして名実とも世界平和機構たらしむるためにも、日本がそのモデル的なものを示していかなきゃならない、絵にかいたぼたもちではないが、ポーランド問題に対してもあるいはイラン革命の収拾に対しても、感情的な独善的な動きでなく、近隣諸国なりECの良識ある人々とも結びついてこれをデタントによって、話し合いによって、そうして納得づくで問題を現実的に処理していく一つの記録をつくり上げなけりゃならぬというところにきておるし、それにはいまの外務大臣なんかうってつけだという評判もありますし、前の、とにかく大来君を推薦したのもあなただということですが、やはり若き日に結んだ知己で、お互いの長所を知って自民党内のむずかしい体制もわきまえた上で、日本をどういう方向方向づけていくかというのには見識と決断が必要だと思います。なかなかあなたたちの補佐がよいのかどうかわかりませんが、いまの総理大臣もあいた目もあり、あかぬ目もありで、さっぱりわからなかったが、このごろやっぱり経済再建のために全力を注ぐというところで力み過ぎるほど力んでおりますが、あれが果たしてどこまで力み抜けるかが問題ですけれども、そこで一つの私たちは観念的な軍事費の動向という問題よりも日本がどうやって一つ世界人々から孤立することなく、ソ連やあるいはアメリカのような力に対する盲信をしようとしても余りないのですから、ないのをするとこれは虚勢になりますから、持っている力でわれわれは平和的にこの日本外交をどう展開するかが今後の課題であって、初めて外交面から広い意味安保体制というものを軍事的だけで考えないで、日本世界における役割りということを具体化することが目下の急務だと思いますが、あなたの前の大来さんの「エコノミスト外相の252日」という本も、なかなかこれは名著です。これ以上に、やはり政治経験を持っている伊東さんは、物を知っているだけにつらい立場にもあるかもしれないが、国のために政治家がみずから挺身しなければだれも国は守れないんですから、その点を簡単に、時間もないようですから結論は短くてよろしゅうございますから、御決意のほどを承りたいと思います。
  18. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 非常にむずかしいことを御質問でございますが、御高見はよく拝聴いたしまして、防衛の問題も狭義にだけ考えないで、もっと総合的に考えろという御意見も、これは私も同感でございます。自衛権ということで、だから侮りは受けない、しかし他に脅威を与えないということで、そういう考え自衛権充実防衛充実ということをやらなきゃなりませんが、当然総合的に考えなきゃならぬとおっしゃることはそのとおりでございまして、どうやったら世界の中で評価され、世界の平和、安定、繁栄に役立ち得るのだ、それがまた日本にはね返ってきて、日本の安全、繁栄につながるのだということは、これはもう私ども外交をやる者としましては当然に考えなければならぬことでございますので、先生の御高見を拝聴いたしまして、拳々服膺しながらやっていかなきゃいかぬと思っております。
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、五十一年前に、ドイツとポーランドから食糧暴動なり革命が起きるのではないかというので、世界経済恐慌のときに、単身、レイモントの「農民」、ノーベル賞をもらったあれをふところにして、十二月にポーランドに飛び込んだときを回想して、ポーランド人々ほど自然の残虐と民族が八つ裂きにされた悲劇を繰り返した人々はないと思いますので、答弁は要りませんが、ポーランドの民衆の苦悩のことをわれわれは理解し、ポーランドだけのこれは問題ではないという形で受けとめて、ポーランド問題に対しては、遠いからというのでなく、遠くても近くても、やはり人類のためにこの問題は協力しなきゃならないということには積極的な協力を惜しまないようにしていただかれんことを期待して、私の質問は結ばせていただきます。
  20. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 本件に入ります前に、二、三お尋ねをさしていただきたいと思います。  臨時国会終了後、外務大臣は中国、また今回EC諸国エジプト、大変な激しい日程の中で、恐らく今後の日本外交をどう推し進めるべきか、激変する国際環境の中で、自分の目で、はだに触れ、それを確認しながらこれからの新しい展開に備えよう、そういう決意のもとに、今回それぞれの国を訪問されたであろうと判断をしておるわけでございます。とりわけEC諸国の各指導階層に会われたときの状況、またその中身については報道を通じてわれわれもいささか承知をしているわけでございますが、日米間の経済摩擦もさることながら、日欧についてもあるいは想像を超える経済摩擦というものが横たわっているのではあるまいか。  先ほども御答弁の中で、日米は非常に緊密なそういう関係を維持しているけれども、とかく日欧関係は疎遠であったと、これは大変率直な私はお答えであったろうというふうに思うのであります。西側陣営に位置するわれわれとしては、今後どういう事態が起こり得るかはかり知れない現在の世界情勢であることを思えば、その辺のきずなを強化する一環として、今後日欧に対する一つの焦点を合わされたということは、それなりの私は評価すべきものがあるであろう。ただ、このお互いの認識と評価というものが食い違っている点もあるであろう。そういう面から、たとえばいまアメリカとの間に起こっております自動車の問題にせよ、あるいは電気製品の問題にせよ、これはヨーロッパにおいても同じようなことが今回表面化したように受けとめているわけであります。いまそれらの細かい問題について触れる十分な時間の持ち合わせがございません。いままで伊東さんがいろんな方々と接触をされ、今後そうしたような問題点を踏まえながら、日本としてヨーロッパに何をこれからなすべきなのか、対応としてどうあるべきが現時点として最も望ましいのかということは、それなりにお感じになってお帰りになったのではないか。その点からお尋ねをしたいと思うわけであります。
  21. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 今度ヨーロッパへ参りましたのは、先ほどお答えしましたように、アメリカとは比較的いろんな面で、人事交流でございますとか政治的な話し合いとか多かったわけでございますが、ヨーロッパとは比較的薄かった。ことしの春、イランの問題で大来外務大臣ヨーロッパへ行って、向こうのECの外相といろいろ打ち合わせたということをですね、ヨーロッパは非常に高く評価しておりまして、いろんな向こうの外相会議の模様等は逐一日本側にその後は連絡をしてくれるというふうなことで、非常に日欧関係がだんだん距離が狭くなってきたということは確かでございますし、日米米欧日欧というこの三極関係がいろんな問題で協調していくことが、世界の平和あるいは経済の繁栄に必要だという考え方を持ちまして私参りまして、ほとんどの国の大統領、首相、外務大臣、全部会って意見の交換をしたわけでございます。  政治上の問題につきましては、余り意見の違いはございませんでした。対ソの問題でございますとか、あるいは中東の和平の問題でございますとか、各般にわたって意見の交換をしたわけでございますが、政治的には余り違いはない。もっとまた密接にお互いに連絡をとろう、話し合いをしよう、西側陣営としてしっかり連絡しようというようなことで、お互いが理解を深めたということでございます。  経済の問題につきましては、行く前からいろいろECとのやりとりがございまして、いろんな意見が向こうから出ていたわけでございますが、私今度向こうへ行って、ECの本部にも行って議論し、特に経済問題がよけい出ましたのはフランスでございました。全般的には自由主義、自由貿易は何としても守らにゃならぬ、特にオランダの総理とかドイツの総理あたりはもうはっきり自由主義というものはどうしても堅持しなければ、自由貿易は守らにゃいかぬということをはっきり言っておりました。EC、フランス、イギリス等でも自由貿易は大切だから守らにゃいかぬ、しかし、それには日本のように一つのセクター、まあ自動車なら自動車とか電気製品とか、そういう部門で圧倒的な輸出をされるということになると、自由貿易を守っていこうということであるが、それが政治問題化してなかなかむずかしい情勢になるということも考えられるので、日本の輸出についてひとつ秩序だった輸出をしてもらいたい。あるいは日本の輸入について、日本の市場というのはどうもヨーロッパから見るとわかりづらい問題がある、流通機構等。もっと関税以外の面でわれわれの商品を受け入れるということを積極的に考えてもらえぬかとか、あるいは日本アメリカに対してはいろんな特権、恩恵を与えているのじゃないか、われわれは差別待遇をしているのじゃないかというような意見もあって、いろいろ実は経済問題では意見が出たことは事実でございます。アメリカ関係ヨーロッパ関係なんというのは何もないので、アメリカに開いたものはヨーロッパに電電の問題でもたばこの問題でもそのまま開きますよ、そんな差別待遇はしていませんよという話をし、日本に対する商品の輸入については、われわれもヨーロッパへ出すように努力しているのだから、ヨーロッパももっと努力することを考えたら、考えてもらう必要があるのじゃないか、何か具体的に障壁があれば、言ってもらえばできることはひとつ協力しよう、輸出についてもこれは通産大臣ともよく相談するが、秩序ある輸出ということは、それはやっぱり考える必要があると思うので、帰ってから、できることできないことをよく相談をするというようなことで別れてきたのでございますが、私は経済問題を政治問題にするということは、これは政治のやるべきことではないと、経済問題は経済問題で解決すべき問題だというようなことを主張したんですが、フランスあたりはもう政治が解決する段階に来ているというようなことで、経済問題については若干意見の違うことがあったことは確かでございます。  しかし、大局的に考えますと、やはり経済が安定して初めて政治も安定するわけでございますので、そういうヨーロッパの苦境——失業者が多いとかインフレとかということに対して、日本ヨーロッパがそういうつらい立場にあるということは理解をしてやる、その上で日本との貿易をどうするかというようなことをある程度の理解を持って考えていく必要があるということを思いましたけれども、やはり自由貿易というのはこれは絶対に曲げられぬ、日本の国是だということで、向こうにもドイツとかオランダとかいろいろ強い味方があるわけでございますから、そういう話をしてきましたが、総括して申し上げますと、今後とも政治問題についていろいろこれからむずかしい問題が出るわけで、予想されるわけでございますから、日本ヨーロッパの距離をもっと縮めようじゃないか、頻繁に会うということを考えよう、もしもポーランドに介入なんということがあれば、事前によく連絡をしてやろうじゃないかというような話をしたり、経済の問題についてもお互いがよく理解し合って自由貿易というものを守っていくようにしようじゃないかというような話をしてきたわけでございまして、私は首脳に会ったということは、それだけでも理解を深める、必要なことだ、向こうのヨーロッパの首脳はしょっちゅう会っているんですから、日本でもヨーロッパとの関係でもっともっとやっぱり首脳外交といいますか、それぞれの責任者が向こうと連絡を密にするということは必要だなということを痛感して帰りました。
  22. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまいみじくもおっしゃられたように、思いついたときが大変だということで、外務大臣なり総理大臣が先頭に立ってヨーロッパを訪問なさる。それがまたいつしか火の消えたようになってしまう。そういうところは断絶というのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、対話が十分なされないところに認識が、いわゆる誤解を生み、そしてなかなか接点というものが生まれてこないという弊害は依然としていまずうっとお話を伺っておりましても残っているんじゃないかと思う。かつて福田さんが総理のときにもこの問題に触れられておっしゃったことがあります。集中豪雨的な日本からの輸出に対しては、産業界に対しても十分その自粛を求めながら、その辺のバランスのとれた自由貿易というその方向に立っての行き方というものを促進さしたいと、こういうふうにおっしゃったことが記憶に残っております。しかし、いまおっしゃられた話を聞いておりますと、まだまだそのしこりというものが根深く残っております。その根深く残っておるものの中には、やはりこの話し合いが非常に足りないという問題もあるでしょうし、また逆にEC諸国日本に対する認識と理解が非常にまだ逆に低いと、その辺がどうもかみ合わないという点もあろうかと思います。しかし、今回いらっしゃって、いろんなものを得られてこられたであろう、いま答弁の中から今後の日欧関係というものを考えてみた場合に、それは経済がどうしても主体になるであろうと思うのでありますけれども、十分バランスのとれた自由貿易という、そういう立場に立っての交流というものは可能であるかどうか、またそれには相当時間がかかるかどうか、この点はどのような感触をお受けになられてお帰りになりましたか。
  23. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) EC日本の間で自由貿易を守り堅持していくということは、私はもうこれは可能だと思いますし、またそうでなけりゃならぬ問題でございますが、それには先生おっしゃったように、両方がやっぱり努力せにゃならぬということでございます。日本もいまのような集中豪雨的な輸出ということは、やっぱり自粛していくということは必要でございましょうし、また向こうも余りにも日本というものに対する知識というか、あるいは努力というか、そういうものが欠けている面も確かにあるわけでございまして、私行って、そういうことを言ったら次の日、漫画に日本外務大臣が来てもっと努力しろと言ったというような漫画をかかれたのでございますが、これはやっぱり両方が努力していくということが必要だ、それさえすれば私は自由貿易を守って両方が拡大均衡、向こうも拡大均衡なけりゃだめだと、こういうことを方々で——向こうの人も言っていました。そういうことで経済繁栄をお互いがしていくということは必要だと思っております。
  24. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そのとおりだと思いますが、私はむしろ今後日本が主体的な立場に立って、向こうに対する努力の足がかりというものを日本がつくってあげるというような方向でぜひ取り組んでいただきたい、向こうは向こうで勝手なことを考えている、こっちはこっちで勝手なことを考えているということでは、いつまでもそれは結論が出ない。むしろ日本側が主体的に向こうの国々の人たちも努力していただきたいというその突破口を、むしろ日本がその足がかりをつくっていただければ、その道はおのずから開けていくんではないか、これはもう答弁要りません、もう時間もありませんから。  それから次に、先ほど来ポーランドの問題について、折々触れられたようでございますが、確かに重大な局面に現在立っていると思うんです。けさあたりの報道によりましてもクリスマスを前にしてのその食糧危機というものは、確かにはるかにわれわれの想像を超えるような状況ではないか、戦後のちょうど日本のような状況というと、それよりひどくはないのかもしれませんけれども、とにかく肉を買うために、もう五時間も六時間も並ばなきゃならぬというような、大変な危機感があるように言われております。そういったことが、いつまでも忍耐がポーランド国民として続けられるものかどうなのか、あるいはその辺をソビエトは十分見据えながら場合によっては軍事介入するぞという、大変むずかしい情勢分析であろうかと私は思うんですけれども、もし万が一にアフガンの二の舞いのようなことになった場合、日本として、けさでございましたか、伊東外務大臣として——官房長官の談話でございましたか、西側陣営と足並みをそろえて、日本日本としてやはり対応というものを十分考える必要があると、こういうふうにおっしゃった。日本が対応を考えると申しましても、それは軍事的な面でどうこうというわけにまいりませんので、結局経済的な制裁を加えるのかというようなところに焦点がしぼられていくのであろうというふうに思えるわけでございますが、いま非常に緊迫したそういう状況の中で、当然そういう対応を迫まられる、万が一ということを常に考えなきゃいけない、ということをいまわれわれが思って見た場合に、政府としては、もし万が一——仮定の上には立てないと言うかもしれませんけれども、それは当然そういうことも想定しながら、そうなった場合にどうするかというのも外交政策を展開していく上から必要なことであろうと思いますので、その辺はいかがでございましょうか。
  25. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 向こうへ行きましたときに、各国で私は必ずその介入の可能性の問題を議論をしたわけでございますが、国によってやはりいろいろニュアンスは違いまして、特にベルギーでNATOの外相会議をやった後は、大体どの国の代表も言うことが同じでございまして、それは、何とかわれわれはソ連が介入しないように努力するのだという基本に立って、いろんな食糧の援助をするとか極力そういうことをやるのだということに大体考えの統一ができたようでございまして、もし万一介入した場合にはどういう措置をとるかということは、NATOに来ている各国の大使の間でこれから詰めるのだと、介入があった場合にはNATOの外相がすぐ集まってその案に従ってどうするか決めるということで、具体的な内容はまだ決まっていない、ただしそういうことを決める際には、日本とも十分に通報し連絡をする、できれば協調をしてもらいたい、というような発言があったわけでございます。  で、実はちょうどアメリカのマスキー国務長官がその会議に来ておりまして、終わった後で会いたいと言って電話がかかってきましたので行きましたら、まだ内容は決まっていない、いまやっているが、アメリカは、と言って口頭で二、三のたとえばと言って話を、こんなことを考えているんだ、決まってはいない、NATOで決めるのだということで話がございましたが、そのとき私は、それは日本としてできることとできないことがある、全部決められて、これやってもらいたいと言われたって、それは日本の特殊事情もあるんだし、できることとできないことはある、事前に連絡は十分にしてもらいたいという話をしたわけでございますが、日本としてはそういう最悪の事態になった場合には、やはり西側一員でございますから、できるだけの協調はしていく、これはいろんな事情で百のうち百全部というわけにはいかぬ問題があります。しかし大綱においてはそう違わぬようなことをやっぱり考えていく必要があるのではなかろうかと私は思っております。ただ、具体性がまだないものですから、どれがどうということは申し上げかねますが、そういうような腹づもりでおるわけでございます。  ただ一点向こうにはっきり言いましたのは、NATOから連絡があってもそれは困る、日本NATOとは、そういう軍事機構とは連絡とかそういうことは考えていないので、イランのときに連絡をしたように、ECの重立った国とかあるいはアメリカと事前に連絡をしてもらうということを考える、NATO日本が直接どうするということはこれはできないということだけははっきり言ってきたのでございますが、西側一員として協力できるものはやっぱり協力していくという態度でやっていくべきだというふうに思っております。
  26. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 なお、エジプトのサダト大統領との会見を通じて、イラン・イラクも持久戦化した様相を見せておりますけれども、そういった問題に対する解決の方途、また中東全体に対する日本からの要請、それらの点についてもお尋ねをしたかったのでございますが、肝心の条約案件、全然審議もいたしませんといかがかと思いますので、残された時間、サダト大統領の件については後日に譲るといたしまして、条約に若干入らさしていただきたいと思います。  今回の条約締結については、おやと思うくらいに実にスピーディーに締結された、本年どおり来年も操業ができるというような状況であるようでございますが、毎年毎年、これはいつも問題になっておりますように、暫定協定、暫定協定と。伺うところによると、どこの国か知りませんけれども、十年協定を結んでいる国もあるということのようであります。そういう背景を考えてみた場合に、やはり次善の策として、せめてこれを二年とか三年というふうに若干でもその期間を延ばすわけにいかないのかどうなのか。また延ばすことで非常に不都合なことができるのかどうなのか。日本政府としてはどんなふうにその点についての判断をお持ちになっているかここで再確認をしておきたいというふうに思います。
  27. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) この漁業協定でございますけれども、日ソ間の漁業関係を安定した基礎の上に置くという観点からいたしますと、期間は長い方がよろしいわけでございまして、これはもう過去数年来にわたりましてソ連に対しまして、この延長を行いますたびに長期間延長ということを主張してまいったわけでございます。いろいろ手をかえ品をかえいろんな案を出しまして、五年の延長とか三年の延長、二年の延長あるいは自動延長方式と申しますか、どちらか一方の国が廃棄しない限り自動的に延長する方式とかいろんな方式を提案いたしましてソ連側話し合いをしたわけでございます。ただ残念ながら非常にソ連側の壁が厚うございまして、今回の交渉におきましてもこの長期延長を強硬に主張をしたわけでございますが、合意をするところとならなかった次第でございます。  まあソ連延長の長期化に反対いたしました理由は、この現在の日ソ漁業協定、この基礎となっておりますソ連の国内法でございますが、最高会議幹部会令でございますけれども、これが暫定措置ということになっていると、特に目下国連の枠の中で行われております海洋法会議の結論もまだ出ていないということで、そのような状況から延長の長期化には応ずることができないというのがソ連の言い分でございまして、ただこのことは裏を返しますと、海洋法の方の結論が出ればまた状況も変わってこの延長の長期化ということも可能な事態になるのではなかろうかと判断はいたしておりますけれども、現状におきましてはそういうことで、今年の交渉においても長期化は要求はいたしましたけれども、合意を見るに至らなかったということでございます。
  28. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回漁業協力費五億円増が見込まれているようでございます。その根拠はどこにありますか。
  29. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) 漁業協力費につきましては、今回の交渉でございませんで、四月のサケ・マス交渉を行いましたときに、三十七億五千万円の漁業協力費を日本側が支出をするということが決まったわけでございます。増額はおっしゃいますように五億円増額になったわけでございます。  日本が現在とっておりますサケ・マスの大部分はソ連の河川に帰っていくサケ・マスでございまして、ソビエトはそういう意味合いにおきまして日本の沖どりは禁止すべきであるというたてまえをとっておるわけでございます。日本は伝統的なわれら先人が血と汗で築いた漁場でございますから、そういう漁獲の実績を尊重すべきものであるという主張をいたしておりまして、クォータと並びましてやっぱり漁業協力費という問題が毎年不可分の問題として議論をされるわけでございます。漁業協力費を増額をしないで四万二千五百トンのクォータを確保できることはもちろん一番望ましいことであると思いますが、ソ連としてそのサケ・マスの増殖について支出した金につきまして、ソ連漁獲するサケ・マスの量と日本漁獲するサケ・マスの量とに案分してこれを分担するという精神で処理をしてきておるわけでございます。したがいまして、今後も、漁業協力費はどういうふうな交渉結果になるか、また来年実施をしてみないとわかりませんが、私としてはもちろん日本の立場としては、サケ・マスのクォータを従来どおり確保すると同時に、漁業協力費については、これのむやみやたらな増額を図るということではない方針で対処すべきものであるというふうに思っておりますが、事は交渉でありまするし、サケ・マスに関係するわが国漁業のウエートというものも非常に大きいわけでございますので、その辺の諸要素を勘案しながら対処をしていく必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  30. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 あと時間もありませんので、簡潔にひとつ御答弁をいただきたいと思いますし、一括してこれから御質問申し上げます。  第一点、この二、三十年来、オケアンにおける魚価というものが全然変わってない。しかし一方、労働賃金が上がっている。したがって、当然労働賃金が上がれば赤字が出るであろう。その赤字の穴埋めにされているのではないかという疑いがないでもないというような話も入ってきているわけです。その漁業協力費の運用の仕方について、これは日本が一々点検しているわけじゃございませんので、一体どういうふうに使われているのか、正当に使われているのかどうなのかという問題が一つ。それは確認のしようがあるかどうかという問題。  それからもう一つは、これはつい先ごろだったと思うんですが、オオナゴ漁について洋上会談に向かった北海道庁の漁業取り締まり船の船長ですか、これは何か無旅券でサハリンに上陸して入国管理事務所から警告を受けた。これはいろいろな経過があったんだろうと思うんです。これは水産庁としては何か警察庁の方でなければわからないという御返事をいただいたんですけれども、当然それは水産庁としてもどういう経過に至ってそういうような不当なことを受けたのかということぐらいの確認はしておいてもよろしいのではないだろうかという点が一つ。  それから民間における漁業ですね、要するに枠外の漁業についてばらばらにいまやっているわけですね。したがって、いろんな不当な条件を突きつけられる。漁業者としてはこれほどひどい仕打ちはないわけです、足元を見られますから。したがって、大手の会社にしても中小の会社にいたしましても窓口を一本にして民間漁業ができるような、そういうような方向というものは行政機関として十分アドバイスをしながら確立をすることができないか、この三つの点について、時間が来ましたのでちょんちょんと簡単に言ってください。
  31. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) 一の協力費の運用の問題でございますが、これは大日本水産会と向こうと話をいたしまして、漁業協力費はどういうふうなものに使うか、日本で機械等を買って向こうへ持って行くわけですが、それについての合意を見ております。したがって、そういう線に従って対処をしておるところでございます。  それから洋上会談のことにつきましては、私どもとしても実情を把握をいたしておりますが、今後はこういうことのないように十分留意をして対処をしてまいりたいというふうに考えております。  それから第三の共同事業でございますが、これは昨年におきましては一定の基準に基づき政府間の交渉が不利にならないように、あるいはまた十分漁業者間で調整ができたものにつきまして水産庁長官承認をしたものについて向こうと交渉をするという一つのルールをつくり上げたわけでございます。共同事業について日本が無秩序にソ連と接触することは私は決して好ましいことではないと思っております。やはり秩序をもって対応しなければいたずらに金ばかり取られて経営が苦しくなるということでございますから、当方との接触の仕方についても十分留意をしていかなければいけませんし、共同事業のあり方についても十分考えなきゃいかぬという点があると思います。来年の共同事業の実施につきましては、それらの点も踏まえて十分対処をしてまいりたいと思います。
  32. 立木洋

    立木洋君 両協定に関連して若干の漁業問題をお尋ねしたいんですが、去る十月、日韓漁業交渉をおやりになって、いままで長年問題になってきましたが、北海道沖合いにおける韓国漁船の操業問題について私は再三水産庁の方に努力をしてくださるように要望したし、当該委員会でも何回かお尋ねしたわけですが、十一月一日からこの操業規制に関して効力を発するということになったわけですが、この操業を規制する取り決めがなされてどういう効果、つまりメリットがどういう点にあるのか、あるいはまたどういう問題が残されているというふうに水産庁の方としてはお考えになっておるのか、その点最初にお尋ねしたいんですけれども。
  33. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) 今回の措置によりまして北海道周辺水域におきましては、規制水域の設定あるいは隻数も千トン以下十七隻ということにいたしましたことによりまして、これは私どもの見方も北海道庁の見方も大体一致をいたしておりますが、従来の漁具被害のおおむね八〇%ないし九〇%は私は解決を見たものであるというふうに思います。幸いにして十一月以降漁具被害は出ておりません。したがいまして、これは従来のような民間同士の取り決めでなくて、政府間の話し合いによって決まったことでございますから、水産庁といたしましても、また韓国の水産庁といたしましても十分これが遵守されるように指導、監督をしてまいる必要がありますし、またそのつもりでございます。  残された問題といいますと、やはり韓国船がオッタートロールの中にも入ってくる地域がございます。地域と入ってくる期間がございまして、完全にオッタートロールの外に出ておるわけではございません。したがいまして、沿岸漁業等におきましてやはり漁具の設置が行われ、またその地域において韓国船が操業するという地域があるわけでございます。これは一言で私たちは安全操業問題と言っておりますが、それらの地域において日本の操業と韓国の操業とが円滑に行われて漁具被害を生じないようにするにはどうしたらいいかという、そういう問題でございます。これにつきましては安全操業、あるいはまた分散操業という問題として水産庁相互間で話し合いをいたしておりますし、また民間取り決め、従来ございますから、その民間協定のうまみも生かしながら対処していく必要があるということで、民間相互間の話し合いも行っておるところでございます。
  34. 立木洋

    立木洋君 長官、いままで最低限日本の漁民が守っておる、そういう範囲内については最低限韓国の漁民にも守ってもらうようにしたいという点で努力していただいてきたと思うんですね。いまの残されておる問題点と言われる、つまりオッタートロールの禁止区域の中の一定部分でもやはり韓国漁船が一定期間操業できるというふうになっておるわけですね。たとえば留萌沖の武蔵堆ですか、あそこにしましてもあるいは襟裳岬の沖あるいは噴火湾、あるいは釧路沖ですか、それから北見大和堆、これらは全部資源的に見ても重要なところではないだろうかというふうに私は漁民の方からも聞いているわけですが、これが一定期間制限はされているものの、やはりそこでの操業が認められておるということは資源の保護という観点から見れば一体どういうことになるんだろうか。少なくともこういうところについてはいわゆるオッタートロールの禁止区域が日本の漁民に対しては引かれている。これは必要があるからこそ私は引かれているんだと思うのですね。しかし、その必要があるからこそ引かれておるにもかかわらず、一定期間とは言え韓国の操業が認められるということになれば、資源の維持という、そういう観点から見ると一体どういうことになるんだろうか、この点はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  35. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) オッタートロールについては、規制されておるわが国の規制をそのまま韓国に守らせるということは、これは理想といいますか、われらの最も望むところであるわけですが、二百海里を引くとか五条二号を適用するとかいうことでありますればそれを韓国にやらせられるわけですけれども、話し合って問題を解決するということになりますと、どうしてもある程度は韓国の操業を認めざるを得ないという立場になるわけでございまして、私たちとしましてはオッタートロール禁止ラインの中の主要漁場については、できるだけこれを守るような努力をいたしたつもりでございますが、北海道の漁民の方々から見ればそれは十分でないし、われらが守っておる規制を韓国が十全に守らないというのはおかしいではないかという御主張は、それは私はもっともなことだと思います。しかしながら、繰り返して申し上げますと、やっぱり話し合いで解決するということになると、こういう結論に到達せざるを得なかったということでございます。したがいまして、その競合する水域につきましては、いま申し上げたような安全操業問題としてこれを十分また今後も話し合うということが一点でございますが、同時にまた韓国の漁獲能力がどの程度今度の措置によってダウンするかという一つの見通しでございます。これはいろいろ見方もあると思いますが、非常に概括的に申し上げまして、私は従来の韓国の漁獲能力の半分ぐらいに落ちていくというふうに見ております。韓国自身はもっと落ちると言っていますが、大体半分ぐらいになるのではないか、そういうことが資源にどういう影響を及ぼしていくかということは今後の問題でございますが、全く締め出してしまうということができないとすれば、次善の策として、いまのようなことによって対処をしていくことはやむを得ないのではないか、というふうに私自身としては考えておるわけでございます。
  36. 立木洋

    立木洋君 長官ね、私がお尋ねしたのは資源の問題なんですよ。いろいろなやりとりの中でそういうふうな経過になったということは、いろいろ新聞の報道を見てわかりますけれども、それは私はいいということで言っているわけではもちろんありませんが、最大限努力するという約束をもっと実現してほしかったという地元からの要望もあるわけですし、たとえば北見大和堆にしても、あるいはあすこの武蔵堆にしても漁業資源という点から見れば非常に漁民の方々が重視して、そこは全然、いわゆるあすこの武蔵堆の周辺地域ではもう周年禁漁ですよね。ところが、もちろん一定の区画というふうに限ってはおりますものの、資源的に見たら一体どうなるんだろうか、もちろんいままで二千トンがごっそり根こそぎやるというふうな状態ではなくなるということを想定に入れているかもしれませんけれども、しかし千トンまででしょう。だけどそうなると、資源的に見ればやっぱり影響が残るんじゃないですか。
  37. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) もちろん一千トン未満十七隻の船が来てやるわけですから、オッタートロールの中に入ってこない状態とオッタートロールの中に入ってきた状態と比べますれば、それはもう資源的に影響があることは確かでございます。同時に、北海道のスケトウの資源状況はどうなっておるかということは、私たちも水研その他を使っていろいろ調査をしておるわけでございますが、北海道の漁民の方に言わすと、もうスケトウは一匹もいなくなるというふうなこともおっしゃるんですけれども、一匹もいなくなるということはないんでございましょうが、資源状況はよくないことは確か。そういう意味におきまして、先生のおっしゃるように資源問題に問題ないのかと言われれば、これは問題はございます。ございますが、しかし、いまのままで置いておいてはこれはいかぬわけでございまして、武蔵堆等につきましても地図をごらんいただければわかりますように、相当部分向こうに追い出したかっこうになっておりますが、だから私は先ほども申し上げましたように、韓国の漁獲能力はどの湿度になるかということは、これは予想にすぎませんけれども、私はいままでの能力の半分程度にはなると思っておりますから、そういう意味合いにおきましては資源状況は改善されるというふうに見ておるわけでございます。
  38. 立木洋

    立木洋君 資源の問題でも確かにそういう問題があるということを認められたわけですが、もう一つは規制ですね。韓国漁船が事実上そこに入ってきて操業しないかどうかという問題なんですが、私は以前対馬の方にいろいろ視察に行きました。日本漁業専管水域に対して韓国の漁船が相当侵犯している。年間通じては、正確な数字はいま覚えていませんけれども、何百件という件数ですよ。それで事実上それは漁業を締め出されて困るからということで日本漁業専管水域の方に入ってきている。いまもちろん長官はわずか一ヵ月間、だからいまのところ何も起こっていないと言われますけれども、しかし、今後起こらないかどうか。実際にその禁漁期間中にそういう区域内で、もしか漁業をしておることを見つけたとしても、日本としてはこれは何も罰則規定があるわけではないし、旗国主義ですから、そうするとつかまえて、拿捕してさあやめろというわけにはこれいかないわけでしょう。それで本国に通告する。本国からは年に一回ですか、来て見回りをするという状況、こんなことで本当にきちっと効果が上がるのかどうかという疑問もあるわけですね。もちろんそれは十分に私は監督をして、そういう事態が起こらないように十分にその監視を強めていただきたいということはもちろん変わりがないわけですが、そういう問題点があるんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  39. 今村宣夫

    政府委員今村宣夫君) その点につきましては、まず第一に、今回の取り決めでは、そういう違反漁船について日本側が通報を韓国にした場合には、韓国として事実であればそれは韓国の水産業法に基づいて所要の措置をとるという取り決めになっております。したがいまして、いままでの民間協定と違いまして、違反事実があれば韓国は水産業法に基づいて相応の措置をとるということでございます。昨年の韓国の自主調整のときの実績等を見てみましても、韓国は約束した操業期間水域はちゃんと守っておるのでございまして、私は韓国は今回の交渉結果に基づいてそれを相当きつく業界を指導いたしておりますから、約束した期間水域については私はこれを守ると思いますが、同時に当方といたしましても監督の強化、監視の強化等につきましては海上保安庁と十分連絡をとって対処をいたしたいと思っております。
  40. 立木洋

    立木洋君 もう時間がないので、最後に大臣にお尋ねしたいんですがね、いまお聞きのような状況で、日韓漁業交渉における残された問題点というのがやはりあるわけですね。今後やはりこれをどう改善していくかということは、一つの重要な問題として、私はお考えに入れておいていただきたいということが一つです。  それからもう一つは、貝殻島のコンブ漁の問題で、これはもう私地元の漁協の方々からも再三お聞きしましたし、また武藤局長さんとも何回かお話し合いをしていろいろお聞きはしているわけですが、これは問題点はまあ三点ほどあるわけですけれども、私は政府の、つまり外交上の政治的な環境をどうしていくかという問題にある程度かかっている部分が少なくないのではないか、それ自体の問題としてはそれは条約的に突っ込んでいきますと確かに大分問題があります。だけども、これは私の感触で言えばある程度解決できるだろうという見通しは私自身は持っておるわけですが、これはつまりいろいろないまの状況とのかかわり合いでという関連が非常にあるのではないだろうかというふうに思っております。その点で先ほどの——大臣が欧州を訪問されて向こう側ともいろいろ話し合いをされたというわけですが、対ソ政策の上でも幾つか参考になった点もあったということをお述べになったんですが、こういうことも含めてヨーロッパからお帰りになって対ソ政策の上で何らかの対ソ政策を変えるといいますか、ある程度こういう点は考えてみたいだとかいうような考えをお持ちになってお帰りになったのかどうか、これはもう漁業関係との関連だけではもちろんありませんけれども、その三つの点お尋ねして終わります。もう時間がありませんから、簡単で結構です。
  41. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 第一点の、韓国との問題にいまだ若干問題今後の問題があるからということで、覚えておけということでございますから、それはまた部内でよく検討いたします。  貝殻島の問題は、先生も御承知でございますから詳しく申し上げませんが、いま北海道水産会が窓口になってやって、民間協定、高碕さんのとき以来のことでやっておるわけでございますが、その中で非常にむずかしい問題が入ってきた。それは領土関係に絡むような問題が入ってきて非常に難航しておるということは事実でございます。来年もまた民間で交渉するということになっておりますが、そういうむずかしい問題が中に入ってきたということをよく知っております。  それから、ヨーロッパへ行って対ソ関係でいろいろ打ち合わせてきたが、いま何か対ソ関係ですぐに変更するようなことがあるかということでございましたが、その点は私どもは従来と同じ考え方でおります。  ただ、貝殻島の問題は、私もこれは貝殻島関係漁業者にとって非常に大変な問題だということはよくわかりますので、いまも北海道水産会の方とはいろいろ相談はしておりますが、今後も民間協定という原則で、われわれ陰になって、親身になって、いま以上にお世話していくことが必要かなというふうにいま考えております。
  42. 秦野章

    委員長秦野章君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  43. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  44. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日はこれにて散会いたします。   午後三時三分散会    ————・————