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1981-09-03 第94回国会 参議院 安全保障特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年九月三日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員の異動  九月一日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     立木  洋君  九月二日     辞任         補欠選任      峯山 昭範君     桑名 義治君      柳澤 錬造君     田渕 哲也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 衛藤征士郎君                 堀江 正夫君                 大木 正吾君                 渋谷 邦彦君     委 員                 板垣  正君                 岩本 政光君                 大島 友治君                 梶原  清君                 高木 正明君                 夏目 忠雄君                 成相 善十君                 村上 正邦君                 瀬谷 英行君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 立木  洋君                 田渕 哲也君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  大村 襄治君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        防衛庁参事官   石崎  昭君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  和田  裕君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省北米局外        務参事官     松田 慶文君        外務省欧亜局審        議官       堂ノ脇光朗君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の安全保障に関する調査  (わが国貨物船米国原子力潜水艦との衝  突事故に関する件)  (米国国防予算削減わが国防衛問題に関  する件)  (日米関係に関する件)  (日ソ関係に関する件)  (防衛予算に関する件)  (日米防衛協力研究に関する件)  (日韓関係に関する件)  (外交青書に関する件)  (防衛白書に関する件)  (北方領土問題に関する件)  (防衛計画大綱に関する件)  (防衛準備体制に関する件)  (近隣諸国の潜在的脅威問題に関する件)  (戦域核に関する件)     —————————————
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまから安全保障特別委員会を開会いたします。  国の安全保障に関する調査を議題といたします。  まず、園田外務大臣からわが国貨物船米国原子力潜水艦との衝突事故に関して報告を聴取いたします。園田外務大臣
  3. 園田直

    国務大臣園田直君) 去る四月九日の日本貨物船日昇丸米国潜水艦ジョージワシントン号衝突事故につきましては、去る五月五日に米側より中間報告が提出されたことは御承知のとおりであります。このたび米政府から本件事故に関する最終報告を得ましたので御報告申し上げます。  八月三十一日、マンスフィールド日米国大使が私を来訪、最終報告を手交しました。この報告書において、米側本件事故についての全責任を負うとし、米海軍として遺憾の意並びに陳謝の意を表明しております。また、マンスフィールド大使よりも米国政府としての陳謝の意の表明がありました。政府としては、これを米側誠意と揺るぎない日米友好関係維持発展に対する熱意を示すものとして評価しております。  このような事故がそもそもなぜ起こったのか、なぜ救助活動が行われなかったのか、なぜ日本側への通報が遅延したのか等の問題について、報告書は詳細に記述しておりますが、幾つかの要点を指摘すれば、次のとおりであります。  まず事故の原因につきましては、一連の不幸な出来事の偶発的な組み合わせによるものであり、なかんずく艦長当直士官以下の対応が拙劣で一連の錯誤があったことを挙げ、救難活動が行われなかったことにつきましては、ジョージワシントン号艦長以下が、日昇丸が沈没するほどの深刻な被害を受けていないという重大な情勢判断の誤りを犯し、なし得べかりし救難活動を行わなかったとして米側の非を明確に認めております。  また、日本側への通報の遅延につきましても、前述のとおり、本件事故発生後の事態についての過小評価が尾を引いて、日本側への通報必要性が十分考慮されなかったとされております。  以上を踏まえまして、米側潜水艦艦長ジ号艦長の職から解任し、戒告処分に付するとともに、当直士官についても戒告処分としました。さらに、乗組員三名については、訓戒処分としております。また、今後再発防止のため海軍軍人資質向上を図り、事故発生の際の報告手続を一部再検討するとしております。  最後に補償問題については、米側は満足のいく解決のため引き続き努力する旨述べております。すでに本件の一部については解決済みと承知しておりますが、マンスフィールド大使も残る部分の円満な解決を最優先事項として取り進めるとの米政府意向を明らかにしております。  また政府としても、本件早期かつ円満な解決を期待しており、このため政府としてできることは行ってまいりたいとの立場に変わりはありません。再びこのような事故が再発しないよう強く要請した次第であります。
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で報告の聴取を終わりました。  それでは、ただいまの報告を含め、国の安全保障全般について質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 堀江正夫

    堀江正夫君 ただいま外務大臣から米国原子力潜水艦事故米側最終報告内容及びそれに対応する日本政府姿勢についての御報告がございました。アメリカ誠意ある態度、これを十分にくんで、これをもって政治決着を図ろうという政府態度に対しては、日米関係重要性から考えまして私は至極もっともである、そういう決断をされたことに対して深く敬意を表したい、こう思います。  でございますが、きのう衆議院で外務委員会が行われて、その報道が行われておりますが、一部の報道によりますと、米国海軍規則人命優先に変えてもらうよう申し入れるというような報道が見えております。日本でももちろん自主性を持って何でもやるわけですから、まさか内政干渉とも思われるような、そういうことを大臣がおっしゃったとは私はもう信じられないわけなんですが、その点どうだったのか、まず承りたい、このように思います。
  6. 園田直

    国務大臣園田直君) 米側報告書は相当長文でありまして、しさいに順序を追って申し述べております。そして一つ一つを挙げて、一つごとにその責任米側の全責任であるということを明確にして、誠意を持って陳謝の意を表しております。しかしながら、遺族や関係者方々から言えば、これがどういう解決になりましても、なかなか納得されがたいところでありましょうけれども、これほど米国誠意を持って率直に、しかも全部自分責任であるという表明をされ、かつまた、補償についても逐次進んでおるということから、本件はこれで決着すべきものと考えておる次第でございます。  なお、このような事故が再び起きないようにという申し入れをいたしたわけでありますが、米海軍規定におきましても当然人命が優先するものだという規定はございます。しかしながら、今後やはりこういう事故が起きないためには、一つはこの報告書に書いてあるとおりに、勤務者の技術の問題、これは国内の問題でありますから、さらに練度を向上するということであります。  もう一つは、私はやはり何かあった場合には人命救助を優先的にしてもらいたいということは、これは決して内政干渉ではなくて、私は当然日本外務大臣として希望することはあたりまえのことだと思い、米国もこの点については、規則はそうなっておるが、今後とも軍に対する訓練その他については、何かあった場合には人命を先にすると、こういうことを言っておられるわけであります。
  7. 堀江正夫

    堀江正夫君 いまの問題につきまして、まだお聞きしたい点もあるわけですが、次に移りたいと思います。  やはりきのうの外務委員会で、韓国の経済援助の問題が出されております。いろいろと大臣からも御見解が発表されておりますが、私はこの問題、基本的には全く大臣考えと同じでございます。けれども、どうも新聞で見る限り、ちっと率直過ぎるんじゃないかという気がしてならないわけです。しかし、これについては後同僚議員が御質問することになってますから、私はこの程度でこの問題は控えておきます。  次に、きのうからの新聞見ますと、アメリカ国防費大幅削減をするんだと、八三、八四会計年度で合計して三百億ドルと、そこでいろんな反応が出ておるようでございます。しかし、考えてみますと、八二会計年度においてアメリカは千八百八十八億ドルという国防予算を計上しておる。これは名目一六・五%であり、実質六%の増である。八三年度は二千二百五十億ドル、八四年は二千五百四十億ドルという、言ってみれば日本政府予算総額に相当するような国防費をやっておるわけです。新聞報道ではそれを八三、八四年度を通じて総額で七百五十億ドル削減をする、その中で国防費を三百億ドル減らす、こういうことのようでございます。  そうなりますとアメリカ国防費の減というのは、年計画でいまの計画よりも六%か七%の減になるのかなとこう思います。金額にしますと、大体百二十億ドルから百八十億ドルぐらいの、年度によって違うんでしょうけれども、削減になるんだろうと思います。しかし、そう見た場合においても、対前年度増は大体二百数十億ドル、こういう結果でございまして、このことでアメリカ国防努力を云々する物差しにしようというのは、そもそも大きな間違いであると。同時に、日本自体これは日本の安全のためにいま防衛力をやろうとしているのであって、日本防衛力整備というのは、厳しい情勢下で現在の能力、これをある程度安心できるまで高めなきゃならないと、こういう出発点から出ておる。  こういうことを考えますと、こういうようなことによって、今後の防衛努力というものに対して何ら影響力を及ぼすような性質のものじゃない。かえって、その内容はわかりませんけれども、仮にアメリカがある程度の削減をやる、そのことがアジアに対する、日本に対する軍事的なプレゼンスの変化になってあらわれるとするならば、日本の安全という面からもますます努力しなきゃならない、こういったような面も出てくるんじゃないかと、このように思うわけですが、基本的にこの問題を防衛庁長官、どのようにいま受けとめておられるのかお伺いしたいと、こう思います。
  8. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 米国国防費の八三年度以降の取り扱いについて見直しの検討が行われるようになったという報道は、私も新聞等で承知しているわけでございますが、内容の詳細についてはまだよく把握しておらない状況でございます。いずれにいたしましても、米国といたしましては、財政経済の厳しい事情のために、予算全体の中で相当額の支出を削減することを今後検討せざるを得ない状況になっていることは承知しているわけでございますが、それが国防予算にどういう影響を及ぼすかという点でございます。  いま先生から八三年度あるいは八四年度数字を挙げての御指摘もあったわけでございますが、これまでの米国計画から言いますると、御指摘のように、毎年度国防予算わが国の国の予算総額に匹敵するような巨大なものでございまして、八二年度は相当巨額のものがすでに国会の承認を得ているということでございます。八三年度以降これまでの計画を今後どうするか、これからの問題であろうかと思うわけでございますが、基本的に国防力を強化するという米国の基本的な立場は、今回の措置によってもそれほど影響がないのではなかろうかという気もいたすわけでございます。  いずれにいたしましても、わが国防衛努力は、諸般の事情を考慮しながらも、わが国が自主的に決めるべき問題でございます。五十七年度概算要求につきましても、そういった観点から必要最小限のものを見積もりまして、取りまとめて今回提出した次第でございまして、今回の米国措置によって私どもは何ら影響を受けるものではないというふうに考えておるわけでございます。また、わが国の五十八年度以降の進め方につきましても、現在五六中業の作業を開始しているわけでございますが、同じ考え方で取り組ましていただきたい、かように考えている次第でございます。
  9. 堀江正夫

    堀江正夫君 ひとついまのお考えをしっかりと貫いていただく必要が日本の安全のためにあるんだと重ねて私は申し上げておきたいと思います。  次は、五月の日米首脳会談後揺れ動いた、国民を心配させた日米関係は一応鎮静化しておる、少なくとも表面的にはその関係の修復ができたというふうに一般的に言われております。そして、これは日本共同声明を再確認した、また防衛体制整備については、意見は依然として異なるけれども、今後両国が真剣にこれについて話し合いを継続することで同意をした、そのためだと一般的には信ぜられておると思います。  そこで、日米関係を今後より確実なものにするためには、両国政府の各レベル間で、ハワイ事務レベル会議で提起されたと言われておる問題点等を中心として、より緊密な話し合いが行われなければならないんじゃないか、常識的にはそう思うわけであります。このような意味で、オタワのサミット以後、今日までどのような協議が行われてきたのか。また、一部国防長官来日等も伝えられておりますが、今後どのような協議を行うための計画両国間で話し合われ、あるいは予定をされておるのか、この点について外務防衛当局からお伺いをいたしたい、このように思います。
  10. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 外務大臣からいずれお話があると思いますが、ちょっと防衛庁からお答え申し上げます。  日米間におきましては、先般の私の訪米及びハワイでの事務レベル協議等を通じ率直な意見交換を行い、相互理解を図ってきたところであります。防衛庁といたしましては、その後も引き続き在日米軍及び米大使館随時意見交換を行うとと、もに、国防省等関係者来日機会にも努めて話し合いを行い、相互理解を深めてきているところでございます。  最近の事例といたしましては、日米協議といった特に改まったものではございませんが、ヘイワード米海軍作戦部長来日されまして、一昨日私もお会いしましていろいろ懇談をいたしたわけでございます。また、グレッグ米国家安全保障会議部員が参りまして、わが方の防衛局長会談いたしております。その際に、最近のわが国事情、来年度概算要求あらまし等につきまして米側へ説明しているという事実もあるわけでございます。今後ともあらゆる機会をとらえて米側との意思疎通に努めてまいる所存でございます。  また、先生お話の中に、米国防長官来日云々という点もございましたが、ことしの秋にもカルリッチ米国防長官来日するということになるかもしれないというお話もございますので、そういう機会があれば、そういった機会をまた活用してまいりたいと考えておる次第であります。
  11. 園田直

    国務大臣園田直君) 経過については、いま防衛庁長官から申されたとおりでございます。  私の関係から申し上げますと、いま先生の御意見ではありますが、日米関係、特に防衛をめぐって日米関係がぎくしゃくしたようなことは私はないと存じます。ただ、国内でそういう感じを与えたことは事実でございます。  マニラにおいても私はきわめて率直に日本の実情を申し上げただけであり、その後七月にヘィグ長官とまた会談をいたしまして、この際も率直に意見交換をして、防衛問題その他についても、お互いが理解を進めながら緊密に協力していくということで意見は一致をしております。  今後とも日米間は密接に協議していくべきであると考えておりまして、われわれとしては憲法及び基本的な防衛政策に従って自主的な防衛努力を着実に進めていく所存でありますが、わが国防衛努力進め方については必要に応じ米側にも十分説明し、その理解を深めていくとともに、今後とも緊密な協議を続けていくつもりでございます。
  12. 堀江正夫

    堀江正夫君 国防長官来日、一部の報道でも九月末というふうになっております。この点は具体的に進んでおるんですか。あるいは前にホールドリッジ国務次官補下田会議来日をするんだということを私、訪米したときに聞いたんですが、今度来ているのかどうか、私確認していませんが、来ておるとすればホールドリッジ国務次官補とも外務省はこういうような問題について話し合われる計画があるのかどうか。この辺、もう一度具体的にお尋ねしたいと思います。
  13. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) いまお尋ねのホールドリッジ国務次官補下田会議に来る予定でございましたけれども、来る直前になりまして来られなくなりまして、かわりにその下におりますアマコスト国務次官補というのが参っております。まだ私は会う機会ございませんけれども、私も大磯の会議に参加いたします。あるいはその後の機会をとらえて、日米関係全般についてアマコストと話をし、あるいはすでにグレッグとは日米関係全般について話をしております。
  14. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) カルリッチ米国防長官、まだ訪日の日程等は決まっておりませんが、今秋中に来日するという方向で進んでおるということを申し上げておきます。
  15. 堀江正夫

    堀江正夫君 私はこの八月の初め訪米したわけです。いろんな方とも幅広くお会いしました。表面、日米関係は非常に鎮静化し、修復されていると思います。しかし、根はそんな浅いものじゃないという印象を非常に深くしてまいりました。ひとつ外務防衛当局、積極的にやはりこの問題について今後も具体的な協議をやることによって、相互理解を深めるという努力をぜひともしてもらいたい、心からお願いを申し上げて、次の質問に入りたいと思います。  次は、防衛庁の五十七年度概算要求に関連する諸問題の幾つかについてお尋ねしたいと思います。  まず最初は、行革下防衛努力に対する基本的な御見解を承りたい、こう思うわけですが、先般、内閣委員会が行われました。その席上、行革下防衛予算取り扱いについて、中曽根行政管理庁長官が次のような趣旨のことを御答弁になっておられます。それは、防衛予算ももちろん聖域ではない、しかし現在の国際情勢日米関係等から考えると、防衛の問題は行革と同じようにわが国にとっては重要な問題であるというふうに自分は認識しておる、こういうことでございました。  そこで、防衛庁長官にまずお尋ねするわけでございますが、防衛白書でみずから示されたように、現在の国際情勢をきわめて厳しく受けとめておられる。しかも、わが防衛体制の実態については長官がだれよりも正しく深く把握をしておられる。さらに、長官は侵略があった場合、国の安全と独立を確保するための政治的な直接最高の責任者でもあられる、こういうようなお立場からして、行革下の五十七年度防衛予算について、基本的にどういうような見解を持っておられるのか、どういう姿勢で臨まれるのか、これを承りた  い、このように思います。
  16. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 行財政改革政府が当面する最も重要な課題の一つであり、防衛庁といたしましてもできる限りの努力をしなければならない問題であると思っております。  一方におきまして、現下の国際情勢については厳しいものがあります。防衛庁としましては、防衛力整備に当たりましては、防衛計画大綱を準拠として、できるだけ早期大綱に定める防衛力の水準を達成する必要があると考えております。そういう次第でございますので、防衛庁といたしましては、五十七年度概算要求作成に当たりましては、臨調第一次答申の趣旨を体し、また政府行財政改革に関する基本方針に沿って、防衛関係費につきましても一層の効率化合理化を図りながら、必要最小限防衛関係費を確保してまいりたいと、そういう観点で臨んでいるわけでございます。
  17. 堀江正夫

    堀江正夫君 一部に政府決定によりますところの防衛費増加要求、この問題を取り上げまして意図的に疑問を投げかけておる、こういったような向きもあるわけでありますが、ひとつ防衛庁は確信を持って積極的に政府の先頭に立って、この問題についても国民理解を求める、こういったようないろいろな活動があってしかるべしじゃないか、国家民族のために本当にしっかりやってもらいたいと、これが大多数の国民の念願であるということをこの上とも十分に腹に踏んまえてやっていただきたい、ここで大きな声で叱咤激励申し上げておきますから、ひとつがんばってください。  同じ問題で私は外務大臣にお尋ねしたいわけであります。特に外務大臣にこの問題をお尋ねしますのは、外務大臣としては、もちろん世界日本平和維持のために、より広範な範囲でもっていろいろと施策を進めることをお考えになっておる、このことはもう当然のことだと思います。しかし、これらの外交政策を進められる上においても、一つには米軍事力わが国に対するプレゼンスの低下が否定できない現状のもとで、現在のわが防衛力を見ると、これをカバーをし、自衛の目的を達成するに足るものとはとてものことになっておらないという厳然たる事実、これが存在している。  一つには自由陣営の結束と協力が平和の維持にはぜひとも必要だと、この中でいま米国はみずからも防衛努力をするけれども、同時に自由陣営の重要な国に対して応分自衛努力を強く要請し、その総合力で何とか平和維持を図りたい、こういうようなことを考えておるという問題があります。さらに米国ハワイ事務レベル会談で提示をした日本自衛努力一つの提案、目標というものは、米国日米安保責任をみずから果たす、そのためにもこれだけはぜひとも持っておいてくれなければ困る、こういったような戦略的な要請から割り出された数字じゃないか、このようにも私は思っておるわけであります。このようなこともいろいろ考えるわけでございまして、したがって、私はあえて外交責任者である外務大臣に、行革下の五十七年度防衛予算要求を通じてのわが自衛力自助努力、もちろんこれは憲法制約下でありますが、についての御意向を伺っておきたい、こう思うわけであります。
  18. 園田直

    国務大臣園田直君) 同じ政府でありますが、私と防衛庁長官は任務が違うわけでありまして、防衛庁長官はいついかなる不測の事態においても、日本を安全に守られるという有事のための準備を絶えずされておるわけであります。私の仕事は、防衛庁方々に御苦労をかけないように、有事のことがないように、世界平和と日本の安全のために努力するという、そこに若干のずれはあるわけであります。しかしながら、いまおっしゃいましたとおりに、日本の安全、世界の平和を願うにつけましても、まず必要なことは力の均衡であることは、私も十分承知しておるわけでありまして、日本に力がない、あるいは東側の力が非常に格差があるということではなかなか話し合いもつかないわけでありますから、日本の許されたる限度、いわゆる応分自主努力をすることは長官がおっしゃったとおりでございますから、これに異存があるわけはございません。  ただ私が考えますことは、日本防衛ということではなくて、東西両陣営の軍備増強というものの競争には非常に懸念をしておる一人でございます。これは理屈を抜きにして、両方が軍備増強で競り上げていくならば、火花を散らすおそれがあるというのは、私だけではなくてヨーロッパ各国も心配しておるところでございます。したがいまして、不測の事態が起きないように力の均衡を図って、そして平和を願うことは大事であるが、また一方、その軍備というものは、両方が競争で競り上げていく力の均衡ではなくて、軍縮、軍備管理等によって両陣営が逐次水準を下げながら、でき得れば低い水準で力の均衡を図るとともに、同時に米ソ両方が話し合いに向かっていくべきだ、こういうことを考えておりますが、防衛庁の置かれておる現在の日本立場から、まず力の均衡を図るために日本防衛力の強化を図られることには異存はございません。
  19. 堀江正夫

    堀江正夫君 次に移りたいと思いますが、私はもちろん防衛といえども決して行革下の聖域ではあり得ない、そのようにいつも思っております。防衛庁政府行革の精神に沿っていろいろと工夫、努力をして効率化を図っていくのはあたりまえだと、こう思います。  そこで来年度ですね、防衛庁あるいは施設庁でどのようなことを合理化していくのか、これらについて幾つかの例を示して具体的に御説明をいただきたいと思います。
  20. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 先ほども申し上げましたように、防衛庁といたしましては、五十七年度概算要求を作成するに当たりまして、防衛力整備及び運用の両面にわたる効率化及び合理化に特段の配慮を払っておるところでございます。  具体的に申し上げますと、装備の関係について申し上げますと、FRAM計画による艦艇の延命、F4型等の航空機の耐用命数の延伸、五インチ砲等撤去式器等の転用、あるいは潜水艦の整備間隔の延伸の施行を図ることといたしております。これによりまして艦艇、航空機等の延命を図ると同時に近代化、合理化もいたしまして、総体として経費の節減を図りながら使命が達成できるように配意することにいたしているわけでございます。  次に、部隊等の統廃合につきましては、少年術科学校の廃止と部隊等の統廃合及びシミュレーターの活用等による教育訓練の合理化を実施することにいたしております。いろいろ細かい点はございますが、代表的なものとして海上自衛隊の少年術科学校の廃止統合等を考えているわけでございます。  また、自衛官の増員につきましては必要最小限の範囲内、艦艇等の就役に伴う増員と、廃艦等による減員との差し引きをお願いしているわけでございますが、その点を一層シビアに測定しまして、必要最小限を要求するとともに、即応性向上のために必要とされるぎりぎりの充足率の向上という点に抑制をいたしておるつもりでございます。主な点を申し上げますと以上でございます。  なお、施設庁関係につきましてお尋ねがございましたので、主な考え方だけを私から申し上げます。  基地周辺対策事業の補助金等は、防衛施設の設置運用による障害の防止、軽減、緩和のためのものでございまして、国が原因者の立場において交付する補償的性格を有するものでございます。基地の安定的使用を図るためには、防衛力整備の進展に伴って、周辺対策の充実、強化をせざるを得ないものでありますが、五十七年度概算要求に当たりましては、八月二十五日の閣議決定されました「行財政改革に関する当面の基本方針」に基づきまして、民生安定施設の助成及び周辺整備調整交付金を前年度と同額とする等の抑制を図るとともに、基地周辺対策事業以外の補助金等につきましても、各省庁並みに削減することといたしております。以上が骨子でございます。
  21. 堀江正夫

    堀江正夫君 いろいろと防衛庁努力しておられると思いますが、さらに広範囲にわたって効率化できるものは今後進めるという努力はぜひともお願いしたいと、このように思います。  次に、三十一日に提出された概算要求の問題についてお尋ねしたいと思いますが、まず初めに、来年度の経済成長率、これはもちろんまだ経済企画庁は出しておらないわけであります。したがって、どうなるかわからないということだと思います。そこで、いまある政府としての見通し、すなわち前回出された中期経済見通し、これから見た場合、本年度の要求歳出額二兆五千八百一億円というのは、GNP対比にするとどれくらいになるんですか、それをひとつ教えていただきたい。
  22. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) GNP比率をどう見るかということは、御指摘のように、来年の五十七年度のGNPが一体どのくらいになるかということが決まらないと算定ができないわけでございますが、現段階におきましては、経済企画庁におきましてもまだそこまでの作業はしておらないわけでございまして、したがいまして、私どもの方で来年度の経済見通しをつけるというわけにもまいりませんので、そういう意味から、五十七年度のGNP比率がどの程度になるかということについての具体的な数字を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。
  23. 堀江正夫

    堀江正夫君 いまのある政府の中期経済見通しで、それでは来年度GNPは幾らだってわかっているじゃないですか。それを教えてくれと言うんですが、これは拒否された。その意味はわかりませんが、少なくもこれは数字で計算すればすぐわかるわけなんですね、〇・八七。ことしの〇・九〇二六を下回る、こういう結果になる。こういう事実は余り言いたくないですね。言いたくないけれども、そんなことはだれだってわかっている。言わないで済ませられる問題じゃない。そういうことを深刻に受けとめた上で、防衛庁は来年度予算に取り組んでもらわなければいけない、そう思うから申し上げたわけなんです。もうこれ以上は聞きません。  そこで、本年度の人事院勧告がどのように扱われるか、これは現在もちろん不明でございます。しかし、仮に本年度何らかの形でこれが行われるということになりますと、明年度はこれが平年度化してくる。五十六年度のことを振り返ってみますと、ベースアップ分を除いて九・七%増の概算要求を行った。ところが、結局はこれを含んで七・六一%増、こういうことになって、そうして対米不信感を増大をさしたという苦い経験をわれわれは持っておるわけであります。現在の国際情勢あるいは日米関係のもとで、私は絶対にそういう轍を踏むようなことがあってはならない、こう思っておるわけです。  そこで、長官、ひとつ人事院勧告が本年度何らかの形で採択されたと、その場合の来年度防衛予算に対する長官の基本的な態度姿勢、これをひとつ伺っておきたいと思います。
  24. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 人事院勧告の取り扱いにつきましては、現在政府全体として慎重な検討が加えられているところでございまして、その取り扱いがまだ決まっておらない次第でございます。概算要求をこういった状態で作成したのでございますので、人勧の関係の経費は、今回の概算要求の中に含まれておらない次第でございます。今後、この扱いをどうするか、これは政府全体としての問題であるというふうに考えておるわけでございます。  しからば、防衛庁として一体今後どう取り組む考え方であるかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、今回作成いたしました五十七年度概算要求は、現下の情勢からする防衛関係費として欠くことのできないぎりぎりのものを内容に織り込んだものでございますので、今後の予算折衝におきましても、その趣旨が貫徹できるように最善の努力を払っていきたいと考えておる次第であります。
  25. 堀江正夫

    堀江正夫君 いろんな今後政治的な経過はあると思いますけれども、国の安全を守るための最小限の概算要求、これを達成することによって私はその目的の緒につくことができるんだと思います。ひとつ、いまおっしゃったようなお考え、これでもって貫き通していただきたいと思います。  この要求予算の問題でもう一つだけ承りますが、今年度要求された予算の中で、後年度負担分が非常に大きくなった。五十六年度対比でも九千百八億だ、こういうことで合計二兆二千三百三十四億だというふうに承っております。これは年度別に言いまして、五十八年度以降どのような歳出になるのか、それをひとつ伺っておきたいと思います。
  26. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) 五十七年度概算要求におきます後年度負担額は、防衛庁関係全体合わせまして約二兆二千六百億円ということになっておるわけでございますが、これの後年度負担額につきましては、今後四年間にわたりまして歳出予算化されるものでございますので、現時点でこの年割り額を確定するということはなかなかむずかしいわけでございますけれども、一応の試算を行ってみますと、五十八年度分が約一兆七百億円、五十九年度分が約五千九百億円、六十年度が約三千八百億円、六十一年度が約二千二百億円というように見積もられるわけでございます。これは五十七年度の新規の要求分と、五十六年度以前にすでに成立しております国庫債務負担行為等の後年度の年割り額の分、このしっぽが残っておりますから、そういうものを全部合わせた計数でございます。
  27. 堀江正夫

    堀江正夫君 次に、この予算要求の内容、重点事項につきまして承りたいわけですが、時間がございません。  それで、即応態勢の向上の問題について承りたいと思います。これについてもいろんな問題があるわけです、各般にわたって。ございますが、ハワイ事務レベル会談でも大きな問題点になった。そして、日米間で基本的には合意した。特に現在の自衛隊の大きな欠陥であります陸の人員充足率のアップの問題、これにつきましてひとつお聞きしておきたいと思います。  実は、この問題はいまのような程度では平時まともな訓練もできないじゃないか、いわんや有事即応上大変な欠陥だと、もう何度も私はいろんな委員会で指摘をしてまいりました。一昨年も昨年も防衛庁はこの充足アップを要求されたわけであります。しかし、結局は査定ゼロということで終わってしまいました。これは一つには、非常に率直に申し上げますと、防衛庁の優先順序は決して高いものではなかった。出すことは出すけれども、右を見左を見、余り熱心にやろうという気はなかった。だからこういう結果になったんだと、私はそう思っております。  この充足の基本になる定員の問題は、言うまでもございませんが、これはこの国会、衆参両院で審議をして決めたものであります。ということは、国会がこれによって戦力設定を決定したということにも私はなると思います。したがって、政府はこの決定を達成する責任がある、これは当然であろうと思います。しかし、いままでは決してそのために最大限の努力をしたとは思われない。政府の国会軽視だあるいは怠慢だと言われても、私はこの問題、仕方がないんじゃないかと思います。しかし、今年度は特にこういう厳しい情勢でございます。私は、防衛庁も腹を決めてこの問題に取り組まれるんだろうと、こう信じております。いや、そうしなきゃならぬと思っております。  防衛庁は来年度この問題につきまして、ほかにも大事な問題たくさんありますけれども、何をおいてもやるんだという決意があるのかどうか、はっきりとこの際お聞きをしておきたい、こう思います。
  28. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 陸上自衛官の充足率につきましては、有事に際し緊急に充足し得る職域、部隊等につきましては教育訓練、部隊運営等に重大な支障を来さない限度で充足をある程度下げておくこともやむを得ないことであるとの考え方から、過去数カ年間約八六%で維持されてきておるところでございます。しかしながら、陸上自衛官の定数は陸上自衛隊全体を常時有事即応の態勢で維持することを前提として定められており、部隊の精強性、即応性の維持向上の観点からは、なるべく充足率を高めることが望ましい次第でございます。  昭和五十七年度概算要求におきましては、このような状況を踏まえまして、北部方面隊の第二師団の精強性、即応性を向上するため、約一千三百名の人員充足向上を図ることとし、陸上自衛隊の全般充足率を八六・〇%から八六・七%に引き上げることを計画しているところでございます。御指摘のように、過去数年間人員充足率の向上を要求したのでございますが、なかなか実現しておりません。率直に申しまして、本年度あたりも司令部要員等を割いて、北方の充足率を少しでも向上するように努力しておりますが、もはや限界に来ております。内地の部隊等におきましては充足率が六〇%前後というようなところまで来ておりまして、もはやそういったやりくりは限界に来ていると考えておりますので、北方方面の即応性向上等に重点を置きまして、八六・七%の要求を今回の概算要求に織り込んだ次第でございますので、ぜひともこれの実現を図りたいと私は考えている次第であります。
  29. 堀江正夫

    堀江正夫君 ぜひともかたい決意でこの問題はやっていただかなきゃならぬ問題だと、心底私は思っております。  これに関連して、来年度は定年延長もございますから、募集人員は充足アップをし、あるいは海空の定員増をやったとしてもそうふえないわけですが、近い将来やはり募集人員の増加という問題が起きてくると思います。警察予備隊発足当時志願者がわいわい来ておった。そのときの地方連絡部、こういった基本的な募集体制で本当にいいのかどうか。この問題は政府全体の問題として、私は早急に抜本的な施策というものを考えておいていただく必要があるだろうということを、この際指摘だけしておきます。  同時に、人員の充足率アップということは即応態勢を強化する、訓練の精強化を図る。そうなりますと、いわゆる乙類の装備品、車両、無線機等、これがいまや非常に低く抑えられたままだ。来年度ある部隊については充足のアップはできた。しかし乙類の車両や通信機、これの充足アップができないということになると、本当の意味の即応態勢の前進にはならないわけですね。しかし予算を見ますと、充足アップのために車両、無線機にかけておる金額というものは非常に少ない、私はそう思います。人員充足率のアップに合っておらないんじゃないかと、こう思うわけです。この辺についても、きょうは指摘だけにとどめておきますけれども、ぜひとも考えてもらいたい。  さらに、即応態勢の向上というのは、単に物や人の数をふやす、質をよくするだけじゃない。有事法制、これは五月に中間報告されたわけですが、これをやはりもっと真剣に、前向きに、具体的に、歩一歩整備していかなきゃならぬ問題だと思います。聞くところによりますと、いますぐやる意思はないというようなことも報ぜられておりますが、私はそんなことはないだろうと、こう信じておるわけです。これなんかもぜひともまじめに取り組んでもらわなきゃならぬ問題だと思います。  時間がございません。最後に一つだけ日米防衛研究につきましてお伺いしておきたいと思います。  ハワイ事務レベル会談で、新聞等の報ずるところによりますと、六条事態の研究をやろうという提案があったというふうに承っております。この真偽はどうか知りません。しかし問題は、従来から五条事態に次いでやっぱり六条事態をやろうと、こういうことになっておったんじゃないかと思います。そこで、やること自体にはやはりそれなりに意義がある。そこで、この研究を開始する時期、いつごろから開始するのか、いつごろまでに終わるのか、あるいはこの六条事態の研究の担任はどこになるのか、これなんかを伺っておきたいと思います。  なお、これ私の意見でございまして、あえて御見解は求めませんけれども、六条事態をやること、それはそれなりに意味がある。しかし、現在の情勢から見ますと、本当に意味のあるものにするためには、六条と五条とが同時に発生する、六条プラス五条事態の研究というものこそが本当は必要じゃないかと思ってます。そのこともひとつ意見として受けとめておいていただきたい、こう思うわけであります。御回答をいただいて、これをもって私の質問を終わります。
  30. 塩田章

    説明員(塩田章君) ハワイにおきます会議におきまして、現在までにやってまいりました五条事態の研究が、一つのシナリオについては終わったということで、次のシナリオに入りたいという話は当然出たわけであります。そして、それは両方とも合意をいたしました。  次にどういうことに取り組むかということにつきましては、これは今後の相談でございますけれども、アメリカ側としてはガイドラインの第三項、いま先生の御指摘の六条事態についてやりたいという意向を持っておるということは、かねてから私どもも承知しております。恐らくそういったことで今後相談が進むだろうというふうに思っております。つきましては、日本側といたしましては、現在外務省、私ども、防衛施設庁、そういった関係のところで、日本側としてどういう態勢で臨むかということの下相談をしております。まだその段階でございまして、今後具体的にどういうスケジュールで、どういう態勢で話し合いに入るかということについては、時期も含めてまだ決まっておりませんが、日本側としましてはそういう下相談に入っておるという段階でございます。
  31. 板垣正

    ○板垣正君 私は、まず、昨日の衆議院の外務委員会における外務大臣の御発言に関連をいたしましてお伺いいたしたいと思います。  日韓関係、きわめて重大な関係でございまして、過般外相会議が行われ、近く閣僚会議が行われる。こうした形で、いわゆる全斗煥体制のもとで一年間を経まして、韓国はやはり世代がわりがし、新しい建設の大変な気負いを持って取り組もうとしている。こういうことで、わが国にとりましても非常に大事な関係であろうと思います。そうした中で伝えられるところによりますと、昨日の外務委員会におけるやりとりの中で、金を借りる方が一文も値切らないというのはおかしいじゃないかとか、場合によっては共同声明も出さないというふうな、ただでさえ微妙な日韓関係に、かえって相手の神経を逆なでするような、そういう報道があるわけでございます。この辺につきまして、外務大臣の真意をまずお伺いいたしたいと思います。
  32. 園田直

    国務大臣園田直君) 日韓関係が、隣国であり、特別の関係であり、また歴史的な非常な深い関係があることは、私も先生と同じように認識をいたしております。したがいまして、韓国の実情もおおよそ想像しているつもりでございまして、いろんな問題で非常に苦労をされている。新政権ができてから新しい日韓関係を結びたい、私もそう考えております。その国づくりに協力したいという気持ちは非常に私は考えておるわけであります。  ただ、向こうからおっしゃいますことは、一つは軍事安全保障のためのお金と、こういう話であります。これは憲法の精神、それから各省の内規、国会の諸決議、各委員から出された御意見等に基づいても、日本の経済協力というものは、他国の軍事的なものに対する援助は、これは出すことは不可能でございます。もっと詳しく言いますと、友邦であるASEANの国からトラックの要望がございました。もうトラックは普通の品物でありますが、しかし、それが軍隊用に使われるということでお断りした例もあるくらいでございまして、韓国の実情はよくわかりますけれども、韓国の防衛とか安全保障のために日本の経済協力をお出しすることは、これは日本の政治のあり方、国会、憲法の精神からいって不可能であることは、よく御承知のとおりだと思います。  もう一つは、おっしゃいました金額の問題でございます。これは明年度予算でございますから、ここで私申し上げるわけにまいりませんが、明年度は御承知のとおり政府・与党は行政改革で非常につらい削減を行っておるわけであります。しかしながら、日本は経済的な立場世界平和に協力するという立場から、経済協力についてはぜひ応分の支出を願いたいと考えており、国会にもそう御相談するつもりでおります。総理は、過去五カ年間に経済協力を倍増してきたが、さらに今後五カ年間でこれを倍増する考え方を持っております、こういうふうに言われました。これが仮に明年度予算で国会で御承認をいただいたものと仮定をいたしまして、その大体総額というものはこれは二百何十億であります。二百十億ぐらいであります。そうしますと、二百十億のうちに……
  33. 板垣正

    ○板垣正君 すみません。時間の関係もありますので、きのうの御発言についての真意だけをひとつ簡明に伺いたいと思います。
  34. 園田直

    国務大臣園田直君) はい。それじゃいまのは取り消しますが、その中で七割が二国間の経済協力に使います。その七割のうちの七割がアジア諸国に振り向ける金額でありますから、これからお考えいただくと六十億、一年間に十二億という金は、これは非常にむずかしい。それからまた、日本は総枠でお願いするわけにまいりませんので、積み上げ方式でございます。  そこで私は、日本の方も韓国の実情がわからぬところがあるが、韓国の方も日本の実情がおわかりにならぬ点が多々あると存じます。こういう、できないこととむずかしいことは韓国の方に御理解を願って、その上で今日の国づくりに日本がどう協力していくかという相談になれば、全力を挙げてこれに協力する所存でございます。
  35. 板垣正

    ○板垣正君 私がお伺いしましたのは、そうしたことはよくわかるわけですが、報道されるように、金を借りる方が一文も値切らないというのは非常識だとか、あるいは場合によっては共同声明も出さないんだと、こういうようなことが非常に刺激的に受け取られているわけでございます。そうしたことについては、そういう御発言があったのか、そのとおりなのか。
  36. 園田直

    国務大臣園田直君) 言葉は違いますが、趣旨はそのとおりであります。  第一に、はっきり申し上げておかぬと、できるかのごとき印象を与えて、そして後でできなかったということは、かえって将来韓国の信頼を失うと思うから言ったことで、一銭もまからないというのは、向こうの方で新聞等で見ますると、この要求は一銭も下がるわけにいかぬのだと、こういうお話でありましたから、日本の常識では、頼む方が一銭もまかりならぬというのは私はわかりませんと、こう申し上げました。  それから、共同声明の点は、出さぬと言ったわけじゃありません。共同声明は御承知のとおりに、まあできるだけ両方で話し合いがうまくいったら共同声明、できなければ共同発表、こういうことになるのが当然でありますけれども、前々から決めてかかるべきものではなくて、意見が合わぬ場合に無理して共同声明を出すこともありませんので、いまから決めるべきことではなくて、両方で相談をして会談が終わってから共同声明は出すべきである、こういう趣旨のことを言ったわけであります。
  37. 板垣正

    ○板垣正君 じゃ、御意向は一応了承しておきます。  次に、九月一日に閣議で了承されました外交青書につきまして、特にこの外交青書における国際情勢の認識と役割り分担、それに対する日本の対応、こういう点につきましてちょっとお伺いしたいわけでございます。  要旨でございますけれども、いわゆる西欧先進国、特にアメリカ、そうしたものとの連帯と協調を強めていかなければならないということがございます。さらに「先進民主主義諸国との連帯と協調を強化していく上で重要なことは、先ずこれら諸国との間で国際政治・経済情勢の基本認識を一致させ、それに対処する基本戦略について合意を形成することである」と、こううたわれております。過般行われました日米首脳会議共同声明、こうしたものがまさにここで言われている合意の形成を図られたものと、こういうふうに理解してよろしいわけでございますか。
  38. 園田直

    国務大臣園田直君) 詳細お読みのようでありますから、詳しく説明はいたしませんが、大体そういう筋で申し上げております。
  39. 板垣正

    ○板垣正君 そうしますと、その先にわが国のこれに対する対応ということについて、「重要なことは、わが国が、わが国の国力と国情に相応しい役割を分担し、先進民主主義社会全体の、ひいては世界全体の平和と安定に貢献することであって、平和憲法を有するわが国が果たしうる役割には、軍事面では大きな制約があり、政治・経済面を中心としたものとなることは当然である。」云々ということがございます。さらに、少し置きまして、「軍事面については、わが国米国防衛努力を、先進民主主義社会の平和と安定に貢献するものとして評価する。わが国としては日米安保体制の一層円滑かつ効果的な運営を確保するとともに、あくまでも平和憲法の下、専守防衛の枠内で、国民のコンセンサスを得つつ、自主的判断に基づいて、自衛力整備に一層の努力を行っていくことが肝要である。」云々、こうしたことがうたわれているわけでございます。  これに対する新聞論調等を見ますと、いわゆる総合安全保障的な考えが特に出されてきた。軍事力の役割りは低いんだ、その役割りの位置づけ、またその情勢認識においては一致しているけれども、それに対する対応ということになると、いわゆる憲法の制約、国民コンセンサス、そういうようなことで、それが受け取る側としては必ずしも評価されてないといいますか、何か平和というふうなこと、そういうことをうたい出すことによって、隠れみのといいますか、きれいごとで済ましているんじゃないか。あるいはあえてこの防衛問題軍事的な問題について避けて通っているんじゃないか、こういうふうな評価がいろいろあるようでございます。  実は、私もそういう点で日米共同声明あるいはオタワサミット等々を通じて、国際情勢に対する認識を共通にし、これに対応していくという中において、軍事的な問題というもの、軍事的側面もこれは避けて通れないんではないか。そういう点で印象として、何かわが国防衛問題、軍事問題についてアメリカの非常な圧力がある、日本に対して非常な過大な要求が行われる、そういうことに対して、それは憲法があるんだという姿勢、私は日米共同声明以来の対応としてはもっと積極的な姿勢、積極的に外交を展開していく、そういう面における防衛の問題等についても、これは外交でございます、これは一体をなすものでございます。もう一つ積極的にこれを受けとめていく必要があるんではないか。  これはいまさら私から申し上げるまでもないわけでございますが、アメリカ側が言っていること、これは日本に対して過度なことを要求しているんじゃないんだ、これは四月の二十八日、サンフランシスコにおけるワインバーガー国防長官がどっかで演説をされた中にも、日本にどういう分担を要求しているかというようなことについて、こういうことを言っております。   もちろん、われわれは日本に課せられている  諸制約を承知しており、海外での軍事的責任を  日本に引き受けさせようと主張するものでは全  くない。しかしながら、日本人も認めるよう  に、われわれが認めなければならない事実は、  日本が現在の兵力で自国を防衛することは非常  に困難であろうということである。   米国防衛のみならず、この地域における自  由と平和を防衛するという、共同防衛を実現す  るため、われわれは日本が費している六倍以上  の経済的資産を防衛のために費している。  われわれは、当然ながら、現時点における日  本の自衛能力が明確に必要とされているものに  依然として達していないことを懸念している。云々でございますが、申し上げたいことは、日本が必要以上の防衛体制をとろうとしているわけでもないし、またいわゆる西欧体制の中で、特にアメリカ側が日本に期待しているものも、つまり日本の国がみずからの国をみずからが守るという最小限の体制、それに非常に欠けるものがあるというところに一番問題の根本があるんではないか。その辺においてどうも外交青書でうたわれている、あえてここでいわゆる総合安全保障的な考えを出す、軍事的な役割りというものはもう大きくはできない。もちろん軍事的な役割りということについても、海外に出ていくというふうな意味における日本の軍事的役割りはないとしても、日本自体がいま非常に欠けているみずからの国も守り得ないようなそういう体制を充実させることが、つまりは日本の平和にもなり、アジアの平和にもつながり、一つの国際的な役割りにもつながる、こういう面においてこの青書に対して私ももう少しその辺積極的な表現が欲しかったと思うわけであります。  また現に自衛隊の現職、制服の自衛隊員、こうした幹部の人たちの話を聞きましても、与えられた条件では精いっぱいやるけれども、じゃ本当にあなた方は責任を持ってこの国を守るということができるかと言われると、本当に責任を持って守り得ないと、こういうふうに言われる、そういうことも聞きますが、要するに、日本防衛力がいまだにみずからの国を守る責任を果たし得ない、そういう状況にあるところから、アメリカ側からも西欧の国からも日本防衛努力に対する要請が行われる。それを憲法があるから制約があるんだと、こう構えたことでなくして、やはりそういう面で積極的にこたえていくというふうなニュアンスが出なかったか、そういう点について御意見を承りたいと思います。
  40. 園田直

    国務大臣園田直君) 前段においては、一言にしては力の均衡、これは必要であるということを述べております。私が言うから角が立つので、防衛庁長官日本の置かれた立場において、日本のできる限りの努力をするとおっしゃれば、そのとおり通りますが、私が言うから何か水かけているような感じでありますが、そうではございません。  後段においては、間違いなしに、これに対する対応とそれから安全保障に対する考え方、若干防衛白書外交青書は相違があることは御指摘のとおりであります。しかし、これはおしかりを受けるかもわかりませんが、防衛庁長官外務大臣が同じことを言っておったらこれは大変なことになると思います。防衛庁の方は、いざという場合におくれをとらぬように身構えをされる。その命がけで身構えをされる防衛庁の方が、出番にならぬように努力をすることが外務大臣の仕事だと、こう思っておりますので、若干のずれがあることは私は当然のことであると、私自身は考えておるわけでございます。
  41. 板垣正

    ○板垣正君 次に、防衛庁にお伺いいたしたいと思います。  去る八月に出されました防衛白書について、今回は特に防衛白書の中に「わが国防衛力の意義」、「国家と防衛」、「国家の役割」、「守るべきもの」、あるいは「国民防衛」、「国を守る心」、「国民防衛問題」、こうしたことについていろいろ掘り下げて具体的にまとめられ、私は非常に評価いたしているものでございます。これに対する新聞その他にあらわれた面では、いわゆる心の面まで踏み込んだと、あるいは愛国心を押しつけるものであるとか、こういうふうないろんな批判はあるわけでございますけれども、私はそうした批判だけがすべてではないと思います。やはりいまの時宜に適した問題提起であり、資料の提供であったと思います。  こういう点でまず一点お伺いしたいのは、この防衛白書に対する一般的な反響と申しますか、受け取り方といいますか、そうしたものについて防衛庁の方で掌握しているところがあればお伺いいたしたいと思います。
  42. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の防衛白書は七回目の試みでございます。八月の初めに国防会議議員懇談会の御了承を得まして発表いたしましたところ、マスコミ等からいろいろな御批判が提起されております。また、私や防衛庁に直接国民の中からいろいろな御意見がたくさん寄せられているという状況でございます。  内容につきましては、好意的なものももちろんございますし、また批判的なものもあるわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもは防衛問題に関する国民理解を深めるということを主眼といたしておりますので、各方面から寄せられております御批判につきましては、謙虚にこれを受けとめ、今後の防衛施策を行うに当たりましてぜひ参考にさしていただきたい、さように念願いたしている次第でございます。
  43. 板垣正

    ○板垣正君 次に、防衛白書の中でいろいろな問題がございますけれども、ここでうたわれている中で、防衛計画大綱についての見直しの問題でございます。時間の関係上、この内容を紹介いたしませんけれども、御承知のところでございます。  やはりこれは、急に改めろといっても改められるものではなくして、いろんな情勢を見ながら、見通しのもとで、早期に判断をしなければならない、こうした見解が述べられております。まさにそのとおりであろうと思います。  同時に、政府として、防衛として、今日は一応大綱の水準達成、こういうことでございますけれども、私の感じでは、もうやはりいろんな情勢の中で防衛計画大綱見直しの時期に来ている、そうした心組みで、これからの防衛政策等についても、内々には検討が行われる段階までもう来ているのではないか、そういうふうに感ずるわけでございますし、またそうあってしかるべきではないかと思います。その点についてお伺いいたしたいと思います。
  44. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛計画大綱につきましては、策定当時と国際情勢に変化がございますので、見直しについていろいろ論議があるということは承知しているわけでございますが、防衛庁といたしましては、情勢が厳しくなったがゆえに、現在の大綱の水準をできるだけ早く達成することが現下の急務である、さように考えまして、四月末の国防会議にも図りまして、次の中業において、この線を達成することを基本として作業を進めるという点についての御了解も得た次第でございます。したがいまして、大綱の見直しそのものは防衛庁として考えておらないわけでございます。白書においてその点述べなかったのも、そういった事情に基づくものでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  45. 板垣正

    ○板垣正君 まあ考えていないという、いまの段階ではそうした御答弁しかないと思いますけれども、実際今後前向きで取り組んでいただきたいと思います。  次は、北方領土に関連してお伺いいたしたいと思います。これは防衛庁になりますか、外務省になりますか、今度の防衛白書によっても一個師団の兵力が確認をされているというふうなことで、着々としていわゆる北方四島における軍事基地化が進められているという、まことに重大な関心を持たざるを得ないわけであります。  同時に、これは八月の何日でしたか、たしか朝日新聞のあれだったと思うんですが、ソ連人記者の見た北方領土、こういうことで、現地に行ったソ連の記者に対して日本人の記者がハバロフスクにおいてインタビューを行った記事が載っておりましたが、それによりますと、択捉には現在六千五百三十六名の住民がいる。硫黄をとったり、いろいろな魚の養殖をやっている。あるいは国後には一万二千五百人のロシア人がおるんだ、色丹には五千名の住民がおるというようなことで、人口が毎年三〇%ふえていて、流入を制限していると、ソ連の記者が語ったというわけでございますが、こういうふうに軍事的な面のみならず、北方領土におけるソ連住民の生活状況そうした面における現在掌握しておられる四島の状況につきまして教えていただきたい。
  46. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) お答えいたします。  北方四島は、先生も御承知のとおり、遺憾ながらソ連の事実上の支配下にございまして、しかも外国人は立入禁止区域となっております。そういう状況でございますので、現在の北方四島の状況につきましての情報は、ソ連側の報道によって知り得る限度においてしか私どもは把握しておりません。  今回の先生指摘の朝日新聞の八月二十八日の報道につきましても、そういう観点から関心を持って見ておるわけでございますが、他方、北方四島におきますソ連軍の配備状況につきましては、この記事とは若干異なりまして、防衛庁で御発表になりましたことによりますと、現在一個師団程度の兵員を配備しているというふうに了解いたしております。
  47. 板垣正

    ○板垣正君 次に、関連して北方領土返還の問題でございます。これは、実はきょう九月三日、ソ連が三十六年前に北方領土を含めて占領した、この日としてきょうは自民党におきましても国民大会を結成すると、こういう形で全国遊説が行われるとか、その他いろいろな立場からの国民運動が展開されております。いずれにしましても、一番先頭に立って返還の交渉に当たり、実現を図って矢面に立たれている外務当局のお立場として、こうした国民運動あるいは現地におけるいろいろな、今度は総理も行かれると、こういうふうな動き、こういうものについてどういうふうに外交折衝の中で位置づけておられるのか。  これと関連してあえてお伺いするわけですが、実はきょうの決起大会にも、かねてから鈴木総理が総裁として出席をするという計画が立てられていたわけでございますが、どうも間際になりましてから出席は取りやめると、こういうようなことでございます。外交当局としてやはりいまの情勢においては、そういう自民党が主宰する大会に総理が出るということについては控えた方がいいとか、あるいは国民運動の位置づけ、これはもうとことん国民的な世論を高めると、これが私は一番肝心ではないかと、そういう点で総理も北方領土へ視察に行かれるわけでございます。積極的な姿勢責任ある立場の者こそとるという、そういう点について外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  48. 園田直

    国務大臣園田直君) 北方四島返還の問題は国民の総意であり、国会でも全党の決議でしばしば繰り返されておるわけであります。私は何とかしてソ連の方と話し合う機会をつくりたい、その糸口をひそかに考えておるわけであります。ソ連の方も必ずしも日本を突き放す、敵に回すという考え方でなくて、今度のコブ漁の出漁問題あるいは天然資源のパイプの敷設の問題等で、日本といろいろ糸口をつかみたい。ただ違いますところは、ソ連の方は北方四島をもうこれはないもんだと、たな上げにして日本と話をしたいと、わが方は北方四島に対する見通しがつかない間は話し合いには乗れないと、ここに非常に大きな差があるわけでありまして、今後とも困難でありますが、国民の総意、皆さん方のお力添えを借りて粘り強くやる所存でございます。  党大会に総理がお出にならなかった理由は、私詳しくは存じませんけれども、四島問題で話をすると、ソ連側は必ずしもこれは国民の総意じゃない、政府がつくった官製の返還運動じゃないかと、こういうことをしばしば、これは皆さん方のお耳にも入っておると存じます。したがいまして、やはり国民運動は国民運動として、国民の総意に基づいてやってもらった方がより効果的であると私は考えております。
  49. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日の衆議院外務委員会における日韓問題、韓国の経済要請に対する外務大臣の御管弁がかなり大きく伝えられまして、いまもそのことについての質問が自民党からございましたけれども、私は外務大臣の答弁は至極当然であると、こう思いますし、先ほどの御答弁のように、はっきり言わなければ、相手に気を持たしたんではいけないんだという御趣旨も全くもっともだと思います。その意味において、昨日の外務大臣の答弁はよかったと私は思うんです。たまにはほめなきゃいけない。まず冒頭それを申し上げておく。  ただ問題は、韓国から繰り返して、外務大臣はああ言ったけれども、再度、あるいは再々同じような要求が出てくるという可能はないのかどうか。また同じようなことを言われた場合に、外務大臣としてはどのように対応されるのか、そのことが大変気がかりなことなので、その点をまずお伺いしたいと思います。
  50. 園田直

    国務大臣園田直君) 韓国の方の要請は、まだしばしば出てくるのではなかろうかと判断をいたします。しかしながら、私は、日韓両国がお互いに真の意味において隣国として相互理解をすることが大事であって、お互いに理解をすれば、私の言い分も韓国の方にも理解していただけるだろうし、また韓国の実情もだんだん私わかってきますので、そこから先は相談になると存ずるわけでありまして、そういう相互理解ができれば、その上で今度は数字の相談になるわけでありますが、その数字もつかみ金でやるわけにはまいりません。  第一番に、日本の会計は単年度の会計でありまして、五カ年間かためて国会の承認を受けるわけには私の方はまいりませんので、どうしても単年度になってくる。次には、その協力をまず総枠を決めてというわけにはまいりません。何に使うかということは、両方からミッションを派遣して、それで詳細に打ち合わせをした上で、それじゃこれは幾ら協力しましょう、そういう数字が積み上がってきて最後の数字が出るわけでありますから、この点だけは御理解願う以外に方法はありませんので、何回言われても、私の方では私がやらぬのじゃなくてできないわけでありますから、大臣がかわってもそういうことはできないんだということを韓国の方に御理解を願う。御理解願った上で、韓国のいろんな立場について、どうお力添えができるかということは話が出てくると考えております。
  51. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、経済援助について否定するものじゃありません。たとえば、どこの国であろうと、飢えて困っておるという住民が大ぜいいるという場合に、日本から米を輸出をすると、あるいは経済援助をするというようなことはあってもいいことであると思います。しかし、そのことと政権の延命とは別問題であると、こう思うんです。民衆を救うということに名をかりて、その政権の軍事政策に対して協力をするなどということがあってはならぬというふうに思います。  昨年のちょうど選挙の最中でありましたけれども、選挙の最中のことでまだ記憶に新しいんですけれども、光州事件というのが報道されました。金大中さんはいまだに拘束をされたまま解放をされておりません。それどころか、光州事件の責任をなすりつけられているというような形にわれわれ聞いております。こういった問題はほおかぶりしていいものかどうか、私はよくないと思う。金大中事件については政治的決着が済んでおるというふうに言われておりますけれども、この人が拘束をされている限り決着は済んでいない、こう言ってもいいんであります。金大中さんを釈放するということが実現をして初めて、私どもも民主的という言葉をある程度理解をすることができるわけであります。  ところが、光州事件等では、私どもがその当時聞いた範囲では、死者が百七十名ということをニュースで聞いた記憶がありました。ところが、実際はそんなものじゃなかったらしいということになりますと、これが民主的な政権のやることかどうかという疑問も持たざるを得ない。したがって、この政権が軍事的な目的が明らかである経済的な援助の要請をわれわれに続けてするということは、これはとうてい受け入れられるものではないと思うんであります。  昨日のお話にあるように、借りる方がその要求額びた一文まからぬなどという言い方は、確かにこれは常識に反しています。そのような表現が正しかったのか、そのとおりであったのかどうかわかりませんけれども、もし要求する方がびた一文まからぬというようなことを本当に言っているとすれば、それは俗な言葉で言えばゆすり、たかりになってしまう。そういうことに対して甘い顔をするということは、今後のためにもよくないというふうに私は思います。気がかりなことは、日韓の癒着などという言葉が暗い影を持って伝えられておる。そういう癒着といったようなことが、この種の非常に常識を外れた要求となってきているのではないかどうか、そんなような心配はないのかということも、この際明らかにしていただきたいと思います。
  52. 園田直

    国務大臣園田直君) 光州事件その他は隣国の国内事情でありますから、私がとかく批判すべきことではございません。これが礼儀であると考えております。  金大中事件は、新しい政権ができてから減刑をされておりまして、両国政府間では、これは決着済みということでやっておるわけでございます。かつまた、新しい日韓関係という中には、日本の国会あるいは世間では日韓関係というと日韓癒着という問題がすぐ出てくる。こういうことでは今後本当の日韓関係は生まれないし、あるいは経済協力もなかなかやりにくいという話は私もしましたが、これは韓国側も私より以上に熱心でありま一して、その点は自分たちの方も十分注意をして、断じて韓国側にそういうことはあり得ない、こういうお話でございました。
  53. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 北方領土の問題等についてもお話がございましたけれども、北方領土の返還ということを掲げる以上は、日本の領土であることが明確な竹島問題についても、これまたいいかげんに過ごしていてはいけないと思うんであります。この竹島問題等は、一体日韓の話し合いの中で取り上げられているのかいないのか、今後の見通しは一体どうなのか、日本の方針はどうなのか、この点もあわせてお伺いしたいと思います。
  54. 園田直

    国務大臣園田直君) 日韓問題についてはしばしば御報告申し上げておりますとおり、両国は紛争地域であるということは認めております。かつまた、これは話し合い解決するという方針は決まっておるわけでありまして、たびごとに話はしておりますが、なかなか進展はいたしません。  この問題は、おっしゃるとおりではありますけれども、日本国では、もう伝統があるし目の前に見えている島、一方では、戦後これは韓国のものだということで国民の間に定着をしておる。したがって、これは非常にむずかしい問題であると考えております。
  55. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 竹島の問題がむずかしければ、北方領土の問題はもっとむずかしいと私は思うんですよ。話し合いをと言いますけれども、北方領土の問題については、解決をするのは日ソ両国の交渉が軌道に乗らなければ解決は不可能であると思います。幾ら自民党が決起大会をやってみても、そこに鈴木総理が出ようが出まいが、それは関係ないことですね。そんなことで解決するような問題じゃないです。これはやはり日ソ両国の国家間の外交交渉というものが、ある程度軌道に乗ることが必要でしょう。それが軌道に乗らないでいる限りは、同じような問答を繰り返すだけで、話は一向に進展しないと思うんであります。そこで、北方領土問題を含めて、日ソ間の交渉は一体今後どうやって進めていかれるおつもりなのか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  56. 園田直

    国務大臣園田直君) 北方四島問題を含めての日ソ交渉は、私としてもやりたいと考えておりますが、ソ連の方は北方四島問題は存在しない、こういう立場をとっておられますので、こういう立場をとっておられます以上は、なかなか外交折衝を進めるわけにはまいりません。したがって、粘り強くその点は絶えず主張して、この問題も含めて外交折衝にかかるよう努力をしているところでございます。
  57. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 「日本防衛」という防衛庁の発行した、いわゆる防衛白書があるんでありますけれども、これは一つ一つ読んでおりますと時間の関係でとても間に合いませんから、一言で言いますと、ソビエトを対象にしている。つまり、ソビエトと日本があるいはアメリカとソビエトとが戦争する場合に、日本も一緒になってソビエトと戦うというようなことが前提となっていると言うとおかしいんでありますが、そういう配慮が行われておるわけです。したがって、全編にわたってソビエトの軍事力というものが細々と述べられておりますね。そうすると、一方においては日ソ交渉を進めるとは言いながら、ソビエトを仮想敵国とみなしているんじゃないかと思われてもしようがないんです。その点、一体外務大臣としてはこの防衛白書をどのように受けとめられておりますか、簡単で結構でございますからおっしゃっていただきたいと思います。
  58. 園田直

    国務大臣園田直君) ソ連の国際的な行動並びに極東の軍備の増強、北方四島に対する軍備増強等には非常な懸念を持っていることは、防衛庁と私は、意見が現状認識においては一致をしております。ただ私が違いますところは、いたずらに対決の姿勢を深めることなく、何とかしてソ連とも話し合いを進めていく、そして北方四島問題にめどをつけながら、なるべく早く平和条約を締結するということによって話を進めていくことが、日本安全保障一つであるとも考えております。
  59. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 具体的な問題、一つだけ防衛庁長官にお伺いしたいと思うんでありますけれども、さっきの日韓問題と関連してくるんですけれども、防衛白書の中で、「北朝鮮の軍事態勢と軍備のすう勢」、こういう欄がございますが、その中で北と南と比較した場合に、北の方が戦力がややまさっているんじゃないかということと、「GNPの一五〜二〇%を投入して、軍事力の拡大に努めていると言われている。」という個所があるんです。これは北朝鮮の戦力の分析であります。「言われている。」というのは、一体だれが言っているのか。つまり、これは韓国側の情報なのかアメリカ側の情報なのか、その根拠は何か、そのことをちょっとお伺いしたいと思います。
  60. 塩田章

    説明員(塩田章君) 白書で述べておりますいろんな情勢判断につきましては、いろいろな資料を総合的に判断をして述べておりますので、個々にどの場所はどの資料によってというよりも、私どもの判断あるいはいろんな資料を合わして記述しておるものでございます。
  61. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それならば、われわれの判断によればというふうに明確に言えばいいんです。北の方は「GNPの一五〜二〇%を投入して、軍事力の拡大に努めていると言われている。」と、こういう言い方はまことにいいかげんなんですよ。だれかから聞いたからこういうことを言っていると、こういうことになるんですね。最も無責任なんです。  よく地方新聞で、名刺広告しかほとんど載っけないようないいかげんな新聞があるんです。政治家のところへ来て金をもらいに来ると、その種のインチキ新聞が金がもらえない場合の悪口を言う場合には、この人はこうこうこういうことを言われている、こう書くんですね。つまり、そういうのと同じ手口を、事もあろうに防衛庁が使っておるというんでは、防衛白書もこれはインチキ新聞並みということになっちゃうんですよ。その点は権威ある白書を発行される以上は気をつけてもらいたい、いいかげんなことを書かないでもらう。防衛庁が調べた結果ならば調べた結果というふうにちゃんと自信を持って並べたらいいでしょう。そのことをあえて申し上げておきたいと思うんです。  それから、今度はもう一度安全保障の問題に入りたいと思うんですけれども、この白書によると、朝鮮半島の問題は南北の問題だとわれわれは思うんでありますが、私どもはやはり南北朝鮮の平和的統一ということが一番望ましいと思っている。ところが、この白書にもあらわれているとおり、北の見方は韓国側あるいはアメリカ側、反対側のめがねでもって見ているというふうにしか思えません。それからソビエトに対する見方、北の脅威ということをしきりに強調しておりますが、これはアメリカのめがねでもって見ているというふうにしか見られません。これでは片手落ちになると思うんであります。日本外交アメリカの足跡をなぞるだけであれば、これはきわめて自主性がないというだけではなくて、危険だと思うんです。  日米下田会議というのが持たれて、そこでいろいろと意見が出ているようでございますけれども、この会議の性格は一体どのようなものであるのか、外務省としてはどういう立場でこの会議に臨んでおるのか、その点お伺いしたいと思うんであります。
  62. 淺尾新一郎

    説明員淺尾新一郎君) 下田会議というものはすでに何回か行われておりまして、アメリカの民間機関、今回は日米協会と承知しておりますけれども、それと日本側の民間機関が共催で行っている純粋に民間の機関でございます。それに対する評価いかんということでございますが、私たちとしては日米間の対話というものが政府関係者でなくて、こういう民間の方々を含めて非常に多岐に行われるということは、それなりの効果があるというふうに考えているわけでございます。
  63. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この日米下田会議の中で、アメリカ側のリチャード・ソロモンという人の発言の中に、長距離巡航ミサイルというものを第七艦隊に配備をする、その場合には核の搭載を可能にしている巡航ミサイルであるから、日本の非核三原則というのがあるとまことに都合が悪い、この種の発言があったということでございますけれども、要するに、アメリカ側の意見というのは、このような発言に象徴されているように、日本の非核三原則と日本の平和憲法というものを迷惑がっておる。これを何とか空洞化をするかあるいはなくしてもらうか、どちらかにしてほしいというふうな意向が込められているようにわれわれは感じられてならない。しかし、このことはきわめて重要な問題であるし、アメリカが何と言おうと、この会議でどういう発言が出ようとも、非核三原則と憲法というものは、日本外交方針としては堅持をしなきゃならぬと思うのでありますけれども、こういう下田会議等において出された意見というものが、一体どのように今後作用をしていくのか、影響されるものかされないものか、その点を外務大臣にお伺いしたいと思うのであります。
  64. 園田直

    国務大臣園田直君) 下田会議日本側は各党から出られておるようでありまして、これに対する反論もやっておるようでございます。議員の方はいろいろ御意見があるわけでありまして、日本の議員の方々も全く違った意見をなさる方がいる。いまのような御意見はわれわれは正式に何ら聞いておりません。しかし、どのようになりましょうとも、憲法と非核三原則は堅持すべきことは当然であります。
  65. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 アメリカ日本に対する防衛力増強の要請というものは、かなり執拗なものがあります。アメリカの言うとおりに防衛力をふやしでいくということになれば、行革そのものも実は何のことはない、防衛力増強のための行革であるというふうに受け取られることになるでありましょう。したがって、防衛予算だけが聖域であって、ほかの費用を削っても防衛予算をふやしてよろしいということには、国民の感情からいってとうてい納得しがたいものになると思うのであります。その点、来年度予算でもって防衛庁自身が自粛をして、もし他の省庁が節約をするのであれば、防衛予算アメリカ側の要請がどうあろうとも、これを削減するということが理屈に合うのではないかと思うのでありますが、その点どういう見解をとっておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  66. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛予算行革の実施の関係につきましてお尋ねがございましたので、お答え申し上げます。  政府全体といたしましては行革の問題が最も重要な課題であるということはよく承知をしておるつもりでございます。防衛関係費につきましてもできるだけ効率化合理化をしながら抑制を図っていかなければならない、これが行革の基本であると承知しているわけでございます。  しかしながら、一方におきまして、防衛力整備につきまして必要とされる最小限はやらなければいけない。そういった観点から、五十七年度概算要求に取り組んだ次第でございます。経費の合理化効率化の点につきましては、先ほども堀江委員の御質問に対してお答えいたしましたとおり、装備の点につきましてもあるいは組織の点につきましてもいろいろ工夫を講じまして、できるだけ抑制を図りながら、当面の必要不可欠の部分がやれるようにいたしたいと考えている次第でございます。  また、施設庁関係の経費につきましても、障害除去に関連のある問題、特に民間住宅の防音対策等につきましては、引き続きこれを実施できるように配意しながら、その他の面につきましてはできるだけ抑制を図ると、こういうことでやっているわけでございます。  また、私どもは防衛関係予算を担当しているわけでございますが、そのほかにおきましても、対外援助費でございますとかエネルギー対策でありますとか科学技術の振興でありますとか、行革の中におきましても特に配意しなければならない部門があるやに聞き及んでいるわけでございまして、私どもは防衛関係費につきましても、分に応じて節減を図りながら、必要最小限を明年度予算において考慮していただきたいと、そういう観点概算要求を取りまとめた次第であります。
  67. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 日本の国会の中でも軍縮議連というのが結成をされました。これは超党派であります。したがって、この軍縮議連の性格は、まずできる限り軍備の縮小ということに米ソ両国を含めてやりていってもらおうじゃないかというところにねらいがあるわけであります。しかし、いまの日本外交姿勢でもって危険なことは、一言で言えば反ソ的である、アメリカの側に立ってソビエトを敵視していると、こういう点があるんじゃないかということが見られるんです。  一つの例を挙げますと、先般第二シベリア鉄道の建設労働者が日本に来た際に、青函トンネルの現地を国鉄労働者と一緒に視察をするという日程がありましたところが、外務省の横やりでこれが拒否されたという事件がありました。これは一つの反ソスタイルのあらわれであろうと思いますが、実にくだらないことだと思います。この種のけちくさい反ソスタイルというものが外務省の末端にまで及んでおるということはきわめて遺憾であります。  しかし、それと同時に、アメリカ外交方針にそのままくっついていくということが、果たして当を得たものかどうかということも考えなきゃならぬと思うんです。かつて日本はヒットラーを高く買い過ぎて失敗した例がある。レーガン政権が果たして正しい方向を歩み続けるかどうかということは、これはやはりある程度の距離を置いて冷静に観察をしていく必要があるんじゃないかと思うんです。米ソ両国の対立ということがありますけれども、アメリカの方が挑発的な行動が多いような感じがするわけです。  たとえば、最近のリビアにおけるアメリカの飛行機の撃墜事件、朝鮮半島におけるミサイル事件、いずれもアメリカの本国の周辺で起きた事件じゃないんですね。遠く離れた場所でもって挑発的に行われた事件なんです。言ってみれば、人の家の玄関先へ出かけていって、刀を振り回して踊り踊るようなものです。そしてその家人に向かって、出てきた場合には気をつけろと言っておどしをかけるやくざ的なところが多分にある。何かレーガンさんの顔を見ていると、ヒットラーがひげそって出てきたような感じがするんであります。こういうやくざ的な危険な傾向に一緒になってくっついて回ったんでは、これはもし相手が狂った場合に日本も巻き添えを食うというおそれがあるんです。その点をやはりわれわれは冷静に観察をする必要があると思うし、そのための日本外交方針というものも、妙な巻き添えを食うことのないような冷静な判断というものが必要になってくると思うんでありますが、これは基本的な問題でありますので、外務大臣見解を承りまして私の質問を終わりたいと思います。
  68. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本外交米国の言い分をそのまま後をついていくということは断じてございません。私は真の友人として、米国にあるいは協力しあるいは助言をすることが日本態度であり、しかも、その方向は絶えず世界平和を見つめつつやるべきであるということは御意見のとおりでありまして、今後も十分注意をいたす所存でございます。  青函トンネルの問題については事務当局からお答えをさせます。
  69. 堂ノ脇光朗

    説明員(堂ノ脇光朗君) ただいま先生の言及されました青函トンネルの件につきまして、外務省が横やりを入れてアメリカに追随して反ソ的な政策をとったというような御指摘でございますが、この問題につきましては、すでに事務的にも先生にも御説明申し上げましたが、青函トンネルは本州と北海道を結ぶ大動脈でございまして、国防上きわめていろいろ問題があるということで、関係各省ともお話をした上でそのような御返事をした次第でございます。
  70. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。     午後零時六分休憩      —————・—————     午後一時三分開会
  71. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまから安全保障特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国の安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は先般出されました外交青書、まだその概要でありますが、これについて冒頭伺っておきたいと思います。  去年の外交青書は、防衛白書が二つ出たと言われるぐらい、外交における軍事力の重要性を強調した青書でした。ところが、ことしはどうもそれを基調にしながらも、ややトーンを異にしたかのような印象を受けるわけであります。  そこで、個々の問題については逐次伺っていきたいと思いますが、園田外務大臣から、ことしの外交青書の特徴といいますか、特に留意をして強調した部分という点がありましたら、まずお伺いをしたいと思っております。
  73. 園田直

    国務大臣園田直君) 流動的でかつ不安定な国際情勢の中において、わが国が先進民主主義社会の責任ある一員として、世界の平和と安定のためにいかなる国際的役割りを果たすべきかとの問題を意識において、平和国家としてのわが国の国力、国情にふさわしい役割りのあり方につき論じ、国民理解を得ることが肝要との考え方でこの青書をつくったものでありますが、実質上は、これは私の就任前にできた膨大なものでありまして、そのでき上がった原稿を読んで、私がいろいろ注文をつけて直してもらいましたもので、全文に私の意図がそのまま出ているかどうかわかりませんけれども、私としては、外務大臣としてはいま一番大事なときでありますから、力の均衡も大事であるが、同時に対話、いわゆる緊張緩和の方向にわれわれが努力をすべきであるという点を念頭に置いて書いたものでございます。
  74. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、大臣が就任される前に相当程度でき上がっておったけれども、それに幾つかの点で注文をつけられた。緊張緩和の方向づけなどがその一つであるということですが、ほかに注文をつけられた点はございますか。
  75. 園田直

    国務大臣園田直君) 大体私の方針を示して、正直に言うと私の考え方と各所についての意見を述べて、あとは事務当局に一任して、私は御承知のとおり、メキシコに出発をいたしましたので、それ以外には特別に注文をつけておりません。
  76. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのせいでしょうか、青書の概要が発表になった夕刊などを見ますと、各新聞ともまるで違ったニュアンスでこの問題を受けとめているような感じがいたしました。  そこで、少しく内容に立ち入って伺っていきたいと思うのでありますが、園田大臣といえば全方位外交の旗手とかつてはうたわれ、外務大臣の別名みたいになっていたかと思うのでありますが、最近、特に去年の青書あたりからは一切この言葉が使われなくなってしまった。特にその中で、西側の一員論という議論だとか、外交における軍事力の重要性だとかということが、むしろ強調をされてくる時代に入っているわけであります。そういう点で、園田さんがずうっと言っておられた全方位外交の思想なり考え方は、今日的にはどういうふうにお考えになっているのか。その方針は変節をされたのかどうかも含めて伺っておきたい。
  77. 園田直

    国務大臣園田直君) 鈴木総理は平和外交とい叶う言葉を使って言っておられますが、平和外交とは自分の好ましい国とだけの外交では平和は成就いたしませんので、私が従前から唱えてきた全方位外交と平和外交とは全く同じものであると、こう解釈をいたしております。就任して以来、衆議院でも全方位外交ということは申しておりまするし、昨日も衆議院の外務委員会では全方位外交を言っておるわけであります。  ただし、全方位外交とは等距離外交という意味ではございません。どこの国とも話し合いをしながら、わが国の置かれた立場を基軸にして、平和の方向へ話し合いを進めていく、こういう考え方でございます。かつまた、従来の私の考えは変わっておりませんで、今日やはり平和を願うのに二つの道がある。  一つは、力が非常な相違があってはなかなか話はできませんので、力の均衡ということは大事でありまするから、わが国自衛隊の強化を初め、やはり力の均衡ということも大事である。が、また同時に、その力の均衡とは、軍備増強による高水準の増強であっては、これは非常に危険を伴いますので、軍縮、軍備管理等を主唱をして、なるべく米ソ両国が低い水準で軍備を、力を均衡していくという縮小均衡が大事であって、かつまた、同時に話し合いをすべきである。米国もソ連もその意向はあるし、また話し合いができる素地もあると私は判断をしております。
  78. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうだといたしますと、この青書の趣と少しく違うような感じもしないではないのです。この青書の基調は、やはり去年の青書の中身を基本的には受け継いでいるような感じがいたします。といいますのは、ソビエトの軍事力増強等を非難をするというか、特に、ことしはソビエトの軍備増強については非難をするが、アメリカの軍拡については評価をする、こういう記述に実はなっているわけです。しかも、その中で日本自衛力整備をうたっている。こういうことだと、大臣のお考えとは少しく違うのではないでしょうか。軍拡であれば、全体としての緊張緩和や低い水準の軍事力ということを言われるわけですから、アメリカも含めて、やはり軍拡は好ましくないという対応にすべきではなかったのでしょうか。
  79. 園田直

    国務大臣園田直君) 言葉、文章の表現が的確ではなかったと思いますが、いまおっしゃいましたように、第一には軍事面についての米国防衛努力、それから先進民主主義社会の平和と安定に貢献するために評価すると、こういう言葉を間にはさんでいるわけであります。そこで、これについてわが国憲法その他の枠内で強化をすることにしておりますが、その次には「他方、軍事力整備による対ソ抑止力の確保と並んで重要なことは、長期的により低いレベルでの東西間の戦力バランスを図ること」云々とこう書いてあって、米ソ間のSALT交渉初めその他の対話のことを書いているわけでございます。
  80. 矢田部理

    ○矢田部理君 表現が適切でないというお話ですから、それはそれとして受けとめますが、そういう基本路線に立って、同時にまた、情勢認識について外交青書は次のように言っております。西側間で政治や経済に関する基本認識、基本戦略では一致させなきゃならぬけれども、個々の政策、対応では必ずしも一つになることを意味するものではないと。具体的には、どんなことを想定してこういう記述になったのか。現にそういう個々の政策での違いが、どんな点であらわれてきているのかということを御説明をいただければと思います。
  81. 園田直

    国務大臣園田直君) 東西両陣営の緊迫の度が増してきたこと、世界各国のいろんな事件を見ても、非常に不安定であるという現実の認識については、これは一致をいたしております。かつまた、これに対して力の均衡をやることも、平和へ向かっての一つの手段である。と同時に話し合いと、こういうことを併記しておりますのは、私は基本的な認識、それからこれに対して西欧、西側陣営が足並みをそろえてすき間をつくってはならぬということについては意見が一致しておりますが、ただ、その目的というものは、世界に戦争を起こしてならぬという一つの目的がありますので、力だけで押していく平和というのはあり得ない、こういう考え方であります。
  82. 矢田部理

    ○矢田部理君 あわせてこれは午前中の大臣の答弁である程度理解できたわけでありますが、ことしの青書では平和憲法ということを特に記述をされ、したがって、またそのもとでの軍事力には制約があるということもあり、とりわけ外交の役割りとしては政治、経済面を中心に展開をしていくという総合安保論といいましょうか、そういう基調に立っているかと思うのでありますが、それはそれとして受けとめたいと思うのであります。  対米関係についてもう一、二点伺っておきたいのは、一つにはアメリカが軍拡硬直路線といいましょうか、非常に対ソ関係で強い対応をしていると。その一つに、たとえばSALTIIの批准をたな上げにする、こういうような態度は先ほど言われた軍縮や軍備管理の方向にとっては好ましいことではないと考えるわけですが、大臣としてはいかがですか。
  83. 園田直

    国務大臣園田直君) 平和を望む一つの手段としては、力の懸隔が非常に大きくては話し合いはできませんので、やはり均衡をとることは大事である。しかし、その均衡は軍備増強にはずみがつくと、火花を散らすおそれがあるという懸念を私は非常に持っておるわけであります。したがいまして、青書にもその点書いてございますが、近く国連総会がございますが、明年度の軍縮総会を念頭に置いて、米ソ両国に対しては核を含む軍縮、軍備管理、こういうことによって、お互いに軍備の水準を下げながら平和のためにやるべきであって、まかり間違った危険なことをとるべきでないということは強く言っておるつもりでおります。
  84. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう一点。やはり世界が全体として軍拡の時代に入ったと、そのために軍事支出が各国ともかなりふえていく傾向にあるわけでありますが、その軍事負担のために福祉がかなり圧迫されてきている。アメリカなどは昨日の話にもありましたように、例の軍事予算削減という問題も、国内の財政上あるいは経済上の見地から来ているわけでありますが、全体としてやっぱり軍事費を削減していく、軍事力をやっぱり低い水準に抑えていく、とりわけ核軍縮を進めるという中で、アメリカ国内事情によるにせよ、また額としてはそう大きいものではありませんが、今回の、特に八三年、四年ですか、にとられるであろう軍事費の削減措置については、外務大臣としては歓迎すべきことだというふうに考えておられますか。
  85. 園田直

    国務大臣園田直君) 八三年、四年のアメリカの軍事費の削減は、大統領府では意見を言っておりますが、国防省ではまだ発表しておりません。わが方として正式な通知は受けておりませんが、そういう情報を拝見していることでありますが、やはり米国といえども必要なる平和のための力の均衡、それから軍備費、インフレ、高金利、こういう三つの問題で大変苦労なさっておるなということを私は推察するわけであります。  また、日本における自衛隊の自衛力の強化でありますが、これは大村長官からも先ほど言われましたが、聖域で無制限にやっておるわけではありません。相当厳しい制約を受け、そのために大村長官はいろんな注文をつけられたり、おしかりを受けたりしながらやっておるわけでありまして、日本は諸種の憲法の精神並びに規定の枠内でできる限りの役割り分担をされておるものと考えます。
  86. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう一点対ソ関係について伺っておきますが、昨年の青書を見ますと、「わが外交の基本的課題」という中で、言うならば一行ちょっぴりぐらいちらりとソ連関係に触れています。ちょっと読んでみますと、「ソ連との間においては北方領土問題を解決し平和条約の締結に至るべき適正な関係の確保、」と書いてあるだけなのです。ことしはまだ最終的な青書はでき上がっておりませんから、どのぐらいのページ数になるのかは存じませんけれども、ことしはこの概要を見ただけでも、少しく昨年の表現と違ってきているように考えられるわけであります。  すなわち、相互理解に基づいて対ソ関係を発展させるのは、外交の重要課題だという位置づけをした上で、幾つかの提起をしているわけでありますが、これはやっぱり対ソ関係改善の方向、考え方を出したものというふうに考えてよろしいでしょうか。
  87. 園田直

    国務大臣園田直君) やはり世界の平和は、米ソの関係にあると考えます。それから、特に日本は地域的にすぐ近くの隣国であり、大国であります。したがいまして、日本がソ連と話し合いができない状態というのは、これは平和については不安な状態であると私は考えておりますから、何とかしてソ連の国とも話し合いをしたい、ソ連の方もそういう意図がなきにしもあらずと私は判断しておるわけでありますが、ただ非常な違いは、ソ連の方は日本国民総意の悲願である北方四島問題は、それはないんだ、もうそれはあり得ない、そんなものは抜きにして話をしよう、こういう政経分離。わが方は、北方四島問題についても議論をしなければ、そういう議論はできませんということで、いまなかなか両方がかみ合わない状態にございますけれども、先ほど、いやそれは話し合いしなきゃそういう話は出てこぬという話もあります。これもまた一つの理屈でありますが、そういうことを考えながらどうやって糸口をつかむかと、こういうことで、防衛から言えば別でありますが、私は安全保障という点から言えば、日本とソ連の関係を、友好というか話し合いのできる関係に持っていくことがきわめて大事であると考えております。
  88. 矢田部理

    ○矢田部理君 防衛関係は別で、外交関係話し合いだという言い方だと、なかなかそれ自体もむずかしいと思うんですね。一方で対ソ脅威論を声高に叫びながら、他方では手を握ろうと、話し合いをしようという筋書きは少しく無理筋ではないかと思いますが、いずれにしてもそういう外交青書による規定をした上で、近々開かれる国連総会でソビエトとの外相会談予定しているというふうにも伝えられるわけですが、そのとおりでしょうか。開かれるとすればどんなことをテーマに、どういう糸口を求めて話し合おうとされているのか、その点を伺っておきたいと思います。
  89. 園田直

    国務大臣園田直君) まだ日程決まっておりませんが、ぜひグロムイコ外務大臣と会いたいという希望を持っております。向こうも会うのに反対ではなくて、日程の詰めで、ちょうど国会中でございますので、私国会に何日お許しをいただけるかわかりませんので、詰まっておりません。しかし、できれば会いたいと。会った場合には、いま申し上げたようなことで、相互の理解を深めるために話をしたいと考えております。
  90. 矢田部理

    ○矢田部理君 具体的なテーマ等は考えておりませんか。どんなことを話し合おうということで、日本なりに用意していることはどんな点でしょうか。
  91. 園田直

    国務大臣園田直君) いま申し上げたような方針でいろんな問題を話し合ってみたいと考えておりますが、どういう話をどういうふうにやるかということは御勘弁を願いたいと思います。
  92. 矢田部理

    ○矢田部理君 たとえば、北方領土とか懸案事項があることは事実ですし、当然話題にはなることとは思いますが、同時にまた、経済協力の問題につきましても、どうもアメリカにくっついて対ソ経済政策をとってきた。ところが、西ドイツあたりがどんどんソビエトに乗り込んでいって経済協力をやっている、たとえば、ヤンブルグの問題なんかにしましても。後からしようがなしに日本はくっついていって、下請みたいなことをやらざるを得ないというような実情にもなっているようでありますけれども、経済協力等の話についても外相会談等では考えておられるのでしょうか。
  93. 園田直

    国務大臣園田直君) ドイツのゲンシャー外務大臣に、あなたのところはソ連とは非常にうまくやっておられる、日本もやりたい。だけれども、北方四島の問題があるからあなたのとおりにはいかぬのだと、何とかうまくいかぬものかという話をしているわけでありますが、いろんな経済問題については、その場の雰囲気でソ連の方から出されるかどうかわかりませんが、やはりそういう問題は出てくるものではないかと想像いたします。
  94. 矢田部理

    ○矢田部理君 外交青書、まだまだ幾つかの問題点や聞きたいことがあるわけでありますが、きょうはこの程度にしまして、次に日韓問題について話を進めていきたいと思います。  過日行われた外相会談で、対韓援助問題がその焦点になりました。六十億ドルという余りにも過大な要求、とても受け入れられないということになって、今後総枠六十億ドルなどというとてつもないものではなくて、具体的な積み上げを通して実務者会談の中でやっぱり詰める、その上で回答を出すというような向きの話になったようでありますが、それを受けた形で八月の二十二日に実務者会議が開かれたようでありますが、ここでどの程度話は詰まってきたのか。今後実務者会議等はいつごろ予定をしているのか、どういう問題点がさらに残るのかというようなことについて、まずもって伺いたいと思います。
  95. 梁井新一

    説明員(梁井新一君) 八月二十二日に日韓両国間の実務者会談をやったことにつきましては、先生指摘のとおりでございます。  ただ、この会談におきましては、私どもから日本の経済協力の仕組みと申しますか、経済協力の金額、そういった事実関係を説明いたしまして、また先方から向こうの五カ年計画の要旨を聞いたわけでございますけれども、具体的に今後どうするというところまで話は進んでおりません。
  96. 矢田部理

    ○矢田部理君 九月の十日、十一日に定期閣僚会議がソウルで開かれることになっております。韓国筋のいろんな新聞、東亜日報などでありますが、韓国政府筋の発表を見ますと、この定期閣僚会議で妥結をしたいというようなことを繰り返し言われているようでありますが、この定期閣僚会議までの間に、いわゆる実務者会議なるものは持流れる矛定跡あるのかどうか。その定期閣僚会議で何らかのやっぱり合意が得られる見通しが立っているのかどうか、日程その他から見てどうお考えでしょうか。
  97. 園田直

    国務大臣園田直君) 韓国に対する経済協力の問題でありますが、午前中に申し上げた点は、これは変更のできない点でございます。こういうものを理解していただいて、そしてわが方もまた韓国が直面しておられる状態それから若い世代によって新しい日韓関係をつくろうというお気持ちは十分わかりますので、筋道に乗る話ができてくれば、そこで一つずつ今後はどの問題で幾らという積み上げ方式で話が出るわけでございますので、今度の定期閣僚会議でうまくいけば結構だと思いますけれども、しかしながら、韓国の方ではいまのところ依然として態度は変更されておりませんし、御理解願えれば、それから先に一つずつ積み上げていきましょうという話が出るわけでありまして、定期閣僚会議で総枠が決まるとか、あるいはどうこうということはちょいと無理だと思います。
  98. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうなりますと、定期閣僚会議を経て、さらに日韓首脳会談なるものが取りざたをされているわけであります。この首脳会談はことしじゅうに開く予定なのかどうか。それから、この定期閣僚会議を経て、その後また積み上げをやって、その煮詰めがない間はやっぱり首脳会談は開かれないと、少なくともここでは何らかの結論を出さなきゃならぬ集まり、首脳会談だというふうにも考えられるわけでありますが、その辺の受けとめ方はどういうふうに思っておられますか。
  99. 園田直

    国務大臣園田直君) 首脳者会議が延びたとか何とかという話がありますが、なるべく早く適当な時期に首脳者会談やりたいという話はできておりますが、いつごろやろうというのは、両方の相談には乗っていないわけであります。したがいまして、今後の状況によって決まるわけでありますが、常識的に考えて何らかやっぱり方向が出てこなければ、韓国側に対する礼儀としても、首脳者会談やって両方の首脳が会ったというだけでは意味がありませせから、やはりこれが見通しつくというのは、首脳会議がいつ開かれるかというひとりのあれになると思います。
  100. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、経済援助をめぐる問題点を幾つ指摘をしてみたいと思うのでありますが、最初に朝鮮をめぐる認識についてでありますが、どうも韓国側のマスコミといいますか、新聞などを見ますと、北の脅威と彼らが言っている朝鮮民主主義人民共和国の脅威のことだろうと思いますが、南進問題だと思いますが、あるときは南進の可能性がありと言ってみたり、いや、そんな可能性はないと言ってみたりして、日本政府の認識についての方針が定まっていないというような非難をしている新聞もあるわけであります。  そこで、日本政府として、あるいは外務大臣として朝鮮民主主義人民共和国が南に進攻しようとしているとか、あるいは進攻の準備をしつつあるとかの認識に立っているんでしょうか、それともそういう認識には立っていないということなんでしょうか。
  101. 園田直

    国務大臣園田直君) いままでの例で見ますると、韓国の方では北の脅威を盛んに力説なさるわけであります。これに同意しない、いわゆる心配はありませんとこう言うと、非常に韓国としては不満というか認識不足だということでありますが、脅威があるかないかということは、これは両国間の問題でありまして、われわれがそれを論ずべき筋合いではないと、私はこのように考えております。  ただ、先般の外相会議で認識については一致しました。というのは、南と北の間は緊張緩和しているのではない、緊張は依然として続き激化している、こういう点については認識は一致しております。その先に、向こうの新聞ではちょっと違いますが、私は認識は一致しているが、その緊張が緩和の方向へ進むことを期待するという一言を加えてございます。
  102. 矢田部理

    ○矢田部理君 したがって、必ずしも北の脅威論の立場に立っていないという趣旨だろうと思うわけでありますが、そういう認識だとすれば、この対韓援助の問題は、どちらかと言えば韓国の、たとえば経済成長がマイナスに落ち込んでいるとか、あるいは昨年の米の冷害による不作など、韓国内部の事情経済援助の主な内容ということになりはしないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  103. 園田直

    国務大臣園田直君) 韓国の方で日本の実情を御存じないとは言いながら防衛の問題を出されたり、あるいは実施上非常に不可能な額を出されるということは、その背景にどういう考え方があるのか、実際私もまだ判断に迷っているところでございますけれども、しかし、韓国で非常な困難な状態に直面しておられるということは私も理解をしておるところでありまして、したがって、話し合いの筋道に乗ってくるならばできるだけのお力添えをしたいと心から考えております。
  104. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本政府は、そうしますと総額六十億ドルなんという話は聞けないが、積み上げ方式等々で従来の援助額を超えるような数字が出ればそれはそれで考える、つまり増額の方向で考えるという立場には立っておられるわけですか。
  105. 園田直

    国務大臣園田直君) そういう話まではまだいかぬのでございます。入口のところで、筋論で両方の意見が平行線のところでありまして、なかなか積み上げ方式でいってどう、そうなればこうという話まではいきません。しかし、率直に申し上げて、私は、そういう筋道が通ってくるならば、日本と韓国の関係、特に歴史的関係もありますので、韓国の非常な苦労をされている面を何とかしてお力になることは、できるだけのことはしたいと考えております。
  106. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう趣旨は、つまり増額の方向で考えるというふうにとれるわけですが、その意味するところは、つまり最近は年間百九十億円ぐらいですね、それをふやすという方向で努力をすると、検討すると、こういうことになるんじゃないでしょうか。
  107. 園田直

    国務大臣園田直君) 今後の話し合いでございますから、そこまで申し上げるのは、まだ両国話し合いも進んでおりません。まだ向こうはいや防衛だ、いや額はローレベルは何とかだと、こうおっしゃっているのでございますから、その先こちらが踏み入ってお話しすることは適当ではないと存じますが、私としては筋道に乗ってくれば、特別な韓国の関係も十分考慮しておりますから、これはできるだけのことはしたいと、こういう考え方で、積み上げでいけば増額するとかどうだとかというところまではいっておりません。
  108. 矢田部理

    ○矢田部理君 ニュアンスとして受けとめてはいるわけですが、言うならば減らす話、外相会談や定期閣僚会議でやることはないと思いますので、そういう質問になったわけであります。  そこで、これは再三にわたって確認されているところでありますが、安保とりで論とか、防衛がらみ援助論には立たないということは明確にしてあるわけですね。
  109. 園田直

    国務大臣園田直君) これはもうできないことでございますから、韓国からよほどおしかりを受けるかわかりませんけれども、前もってはっきり申し上げておくことが必要であろうと思って、私はしばしば言っているところでございます。
  110. 矢田部理

    ○矢田部理君 理念として私どもも理解をできるわけでありますが、お札に印がついているわけでもありませんから。実際の援助というのは、そうすると安保がらみであったのかなかったのかというのはどこで区別することになるのでしょう。特に韓国側にいたしましても、生の軍事援助を求めてきているということではないと思うのです。つまり、経済援助の額をふやす理由として、安全保障に果たす韓国の役割りを強調しているんじゃないかというふうに考えられるわけですね。そうなってきますと、言うならばお金の多寡の問題額の問題に帰結することになりはしないのかと。額が巨額ということになるならば、韓国自身も予算の融通が可能でありますから、日本から援助されたものは民生に使うが、本来韓国の予算の中で民生に回すべきものを軍事に振り向けるということも当然あり得るわけなんでありまして、その点で軍事予算がかつてよりも潤沢になるということにも連動していくわけだと思うのであります。理念としての説明はわかりますが、現実的にはどういう仕分け、基準になるのでしょうか。
  111. 園田直

    国務大臣園田直君) まずおっしゃいました金額の問題、これは最後には大きな問題になってくると思います。詳しくは申し上げませんけれども、仮に明年いままでの経済協力の倍増を皆さん方が承認された場合として、わが日本アジア地域に対する二国間経済協力総額は大体二十一億ドルでございます。その中の年間にして十二億ドルなんという金が出せないということは、これはもう明瞭な事実でございますので、そこに一つの限界が出てまいります。やはりアジア諸国に対する問題もございますから、これとの兼ね合いもございます。  それからもう一つは、経済協力をやります場合、御承知のとおりに、一つ一つの問題について両方から協議をして、そしてそれが適当であるかどうか、そして合意したらそれに大体予算をつけると、こういうことになってきておりますから、経済協力で民生の部が幾ら、何の部が幾ら、何の部が幾ら、したがって総額で幾ら、こういうことにはなりませんので、これはそう勝手には軍事の方に回されぬと。  もう一つ、いまおっしゃいましたように、とは言うものの、そういうことで経済協力をすれば、結局はそちらで余裕が出てくるから軍事の助けになるじゃないかと、こう言われますが、これはなかなかむずかしい問題でありまして、たとえば、ソ連に対する経済制裁の問題が議題になりました。その場合に、ヨーロッパ初め各国から、経済制裁というのは本当にできるのかと。第一、われわれはソ連衛星国家と貿易をやっておる。第二番目には、それをやればソ連の国力が強くなってなってきたら何もできないということじゃないかと、こういうことでさたやみになったこともございますけれども、そこは具体的にどう積み上げていくかということでありまして、たとえば教育であるとか、あるいは国民生活のためのものであるとかということを具体的に相談して、結論としてそれがどこへ、余分の金が今度は軍事に回るかと、そこまで言われるとなかなかむずかしい問題でございますけれども、そこまでは私は考えておりません。やはり、本当に韓国の国民のためになるならば、いままで申し上げたような枠内でできるだけのことはしたい。  ただ、これは韓国だけではありませんが、いままで経済協力で大型プロジェクトの問題が非常に多いわけでありますが、これはなかなか問題がありまして、場合によっては最後には大きな工場ができ上がると排日、抗日の一つの原動力になっていくおそれもありまして、かつまた、それは政府一つの強化にはなっても、国民生活に響かないという点もあります。しかし、事務的には大型のプロジェクトをやった方が簡単でありますから、外務省の方もほうっておくとそっちの方にいきやすいわけでありますが、しかし今後はそうではなくて、やはり日本の経済協力国民の税金の中からお許しを得てやるやりくりでありますから、農村の振興であるとか治山治水であるとか教育であるとか、直接国民の方に響くような方向に持っていくことは、これは韓国のみならず、他の経済協力をさしていただく国に対してもそういう方針でいきたいと考えております。
  112. 矢田部理

    ○矢田部理君 安保援助、軍事目的援助はしない、協力はしないということですが、少なくともこういうことだけはやらないという幾つかの基準といいますか、線引きというのはあるんですか。たとえば、軍需工場に転化されるおそれがあるものだとかということも含めて、何かそういう基準みたいなものは外務省考えているんでしょうか。
  113. 園田直

    国務大臣園田直君) これは個々の問題を審査するときに当然出てくる問題でありまして、たとえば午前中も申し上げましたが、ASEANの国からトラックの要請がありました。そこで、一応いいじゃないかということになりましたが、そのトラックが軍隊用に使われるということで、これは取り消した例がございます。そういうふうに、個々の問題のときに私の申し上げた方針はちゃんと貫くようにやる所存でございます。
  114. 矢田部理

    ○矢田部理君 それからもう一つ、この対韓援助に関係して、一つは不況、不作が韓国内でいま深刻だということで、今回の援助増額論の背景になっているわけでありますが、最近の米の輸出を見ますと、この一年で六十七万五千トン輸出しているわけですね。これは国際価格で見ますと六百七十億という大変巨額の輸出を、不作だということで日本はしているわけです。国際価格でこの金額は換算されるようでありますが、これを韓国は国内価格で販売するということに当然なるわけでありますが、そうすると、韓国政府に入るお金は一千百億という、これまた大きな金額になります。この間にもちろん輸送経費等々がかかることはわかりますけれども、相当多額のお金が米代金という形で韓国政府に入ってくる。当然米の販売でありますから、消費者との間ではその年度中に現金で韓国政府にはお金が入る。  ところが、これは日本政府との関係で言うと、十五年間の延べ払いになっているわけですね。韓国政府には一千百億ものお金が入って、日本政府との関係では十五年間の延べ払いになるからすぐ払わなくてよろしい。アメリカも対韓関係では米の輸出をしているわけですが、これは現金決済です。そうすると、事実上延べ払いでよろしいということになれば、現在の援助は百九十億円だと言っておりますけれども、これは一千百億前後のお金を韓国にやっぱり借款として認めている、事実上そういうことになりはしないかというふうに考えるんですが、この点は外務省としてどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
  115. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 御指摘のとおりでございまして、確かに日本から積み出しの価格で計算いたしますと六百七十億円ということでございます。それが韓国の国内で消費者の手に渡る段階では千百億円ということでございますが、その間には先生指摘のとおり海上運賃、倉庫料等々あるわけでございます。いずれにしましても、この金額は韓国に対する援助ということに結果的にはなっておるわけでございます。  しかしながら、これは韓国が食糧事情が非常に困ったときに特段にやっておるわけでございまして、ただいま御指摘数字は、昨年の農作がきわめて悪くて四割の減産であったということから発しておるわけでございます。昭和四十九年から五十四年にかけましては、米の援助は、韓国の農業事情にかんがみまして一切やっておらぬということから見ますとおり、援助ではございますけれども、やはり食糧事情が非常に窮迫したときに限定してやっておる事業でございます。
  116. 矢田部理

    ○矢田部理君 まあ不作、凶作に伴う米の援助ということは私もわからないわけではないんですが、ただ、そのお金の始末が、事実上対韓援助になっているということが一つの問題点であると同時に、非常に金目が大きいということもありますが、もう一つは、先ほど言われましたように対韓援助では、それぞれ円借款ですから、積み上げ方式でいろいろプロジェクトなり目的を定めて、金の使途をそれなりに仕切って渡すわけですが、この米代金の結果としての援助については、全然縛りがかけられていないんじゃないか。韓国は、これは自由に使えるわけでしょう、韓国政府として。そうすると、米の不足ということで人道的配慮ということは私もわからないわけではないんですが、後の代金の扱い問題が、アメリカは現金決済しているのに日本だけ十五年の延べ払い。韓国政府には一千億以上の金が入る。これが一体どうなっているのか、何か縛りでもかけているんですか。
  117. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) これは韓国の食管会計に繰り入れられるわけでございまして、ただ、繰り入れられるにしても倉庫料その他いろいろな支出がその過程であるわけでございます。その食管会計に繰り入れられた資金につきましては、私どもとしてはとやかく制約をつけてはおりません。
  118. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう点で、私は日韓関係幾つかの援助問題について、民間の関係もあるし政府借款もあるわけでありますが、こういう関係で農民のための米の緊急援助ということはわからないわけではないが、どうもお金のその後の使い道その他が非常に不明朗だということを指摘しておきたいと思うんです。その点で、今後の対韓援助問題については、私どもはいろいろな問題があり過ぎるというふうに思うわけであります。  最後に、どうも結論的に見ると、全斗煥体制のきわめて経済的な不安定あるいは政治的な不安定をてこ入れするための援助として、客観的な位置づけがなされるのではないかという心配を実はしているわけであります。経済成長はマイナス成長、大変なインフレと失業、低賃金で、農民はまた凶作でにっちもさっちもいかないところに来ていることは事実です。その経済的な不安定が実は社会不安を呼び起こす、あるいは政治的な不安定につながる。特に韓国の経済の状況を見てみますと、ずいぶん日本もこれまで対韓経済協力をしてきたと思うのでありますが、韓国経済が自立的に発展をしていない。外資依存型になっている問題点が一つあります。それから輸出主導型で、韓国の輸出というのは、ダンピングとまできめつけていいかどうかは別として、やっぱり低賃金に支えられて輸出がある程度伸びてきている。それではやっぱり韓国国民経済の発展がない、非常に脆弱だというところに不安定要因がある。しかも、全斗煥政権に限らず韓国の大きな政権の交代というのは、ほとんどクーデターみたいなことでしかやられていない。その後、官製選挙をやって一応民主的な装いをつくりはしますけれども、言論の自由にしたって政治活動の自由にしたって、きわめて抑圧的な状態にある。金大中事件がその象徴だと思うわけであります。  そういう韓国のさまざまな不安定な状況を、力の政治で支配している全斗煥体制、これのてこ入れとして援助問題が議論されるようなことは断じてあってはならないというふうに私どもは考えているわけでありますが、最後に大臣の所見を伺って、時間が参りましたので私の質問を終わります。
  119. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本の経済協力は基本が決まっております。その基本の上に、一政権の強化ではなくて、真にその国の国民方々のために協力するという方針は貫く所存でございます。
  120. 野田哲

    ○野田哲君 まず、大村防衛庁長官に伺いたいと思うんですが、午前中の堀江議員の質問でアメリカ国防予算削減、八三年、八四年のことでありますけれども、この問題についての長官見解を質問されましたことについて、重要なことですから私もメモしているんですが、長官は何ら影響を受けるものではない、こういうふうなお答えをされているんです。私、大変失礼な表現になるかとも思うんですけれども、この長官の答弁を聞いて、のほほんとしてこういう答えが出たのか、それとも毅然とした形でこういう答えが出たのか、一体どっちなんだろうか、こういうふうに実は首をかしげたわけなんです。  もう一回伺っておきたいと思うんですが、私どもの常識からすれば、防衛白書をつぶさに読むと、ソ連の軍事的な脅威を強調して、この趨勢を放置すれば八〇年代の半ばでソ連が西側諸国に対して軍事的な優位を獲得することになるという情勢認識。それで、西側諸国が結束して国防努力を強化していく必要がある、こういうことを非常に強く強調されているわけです。そして、アメリカ国防努力は目覚ましいものがある、わざわざ一節を設けてアメリカ国防努力を強調されているわけであります。そして、西側の一員として日本防衛力を強化していかなければいけない、こういう立場に立っているわけです。外務省が発表された外交青書の中でも、防衛努力について、「わが国米国防衛努力を、先進民主主義社会の平和と安定に貢献するものとして評価する。」、こういう立場に立っているわけです。政府が明らかにした防衛白書外交青書の中では、アメリカ防衛努力を高く評価して、日本もそれにこたえて防衛努力をしていかなければならない、西側全体が協力をしてソ連の軍事的脅威に負けないような努力をしていかなければいけない、こうなっているんです。  そういう立場に立っておりながら、午前中の大村長官の、アメリカが八三年、八四年で防衛費削減をするということを発表したことについては、何ら影響を受けるものではない、こういう答えが出ているんですが、一体これは本当にそうなんですか。
  121. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) アメリカの今後における国防予算削減の問題につきましては、午前中の堀江委員の御質問にお答えしたとおりでございます。  新聞であらましの報道を拝見しただけで、詳しい内容はまだよく把握しておらないわけでございます。ただ、新聞紙の報道を見た範囲におきましては、八三年度、八四年度についてそれぞれ三百億ドルあるいは四百五十億ドルの削減というようなことが伝えられておるわけでございます。それぞれの年度におきますアメリカ国防予算というのは、二千億ドルを超えると言われておるわけでございますので、わが国の最近の防衛庁予算から言いますと百億ドルを少し超えた程度でありますから二十倍ぐらい。また、わが国の最近の国家予算総額に匹敵するような大きな規模でございます。それにつきまして三百億ドルなり四百五十億ドルを削減する。内容は、どういった点に削減されるのかまだ定かではないわけでございますが、レーガン政権が誕生以来、大幅な国防予算を増額するという基本的な方向においては、そう大きな変化はないのではないかと現在のところ考えておるわけでございます。  また、こういったことがなされるといたしましても、私どもいま取り組んでおります五十七年度概算要求におきましては、国際情勢等も念頭には置いておりますとはいうものの、自主的に判断して概算要求を提出したのでございますので、これを全額実現したいという私どもの考え方においては、そういう意味において変化がない、変更はない、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。  また、私どもの五十八年度以降の防衛力整備につきましては、五六中業におきまして防衛計画の水準を達成することを基本として作業にかかっておりますので、この点につきましても同様に自主的な判断で推し進めてまいりたい、こういうことをお答えした次第でございます。
  122. 野田哲

    ○野田哲君 私が聞いているのは、影響があると考えているのか、影響がないと考えているのかということで、影響はないと考えておられるということであれば、それで重ねてその立場で質問を続けたいと思うんです。これは防衛プロパーの問題ではないと思うんです。  外務大臣、これは同じように何ら影響はないと、こういうふうに考えておられますか。
  123. 園田直

    国務大臣園田直君) いま長官から言われたように、予算削減については大統領府は発表しておりますが、国防省はまだ何にも言っておりません。したがいまして、正式の通知は受けておりませんが、大体これは間違いないだろうと思います。これを見て第一に感ずることは、力の均衡で軍備に努力している米国といえども、高金利とインフレの問題とそうして軍備の問題で非常に、御苦労なさっているなという考え方を抱くものであります。したがいまして、これは防衛長官のあれでありますけれども、日本日本の独自の立場で、日本の置かれた制約下自衛力増強を考えておられますので、これに米国予算のことが関係してふえたり減ったりすることはないと思います。
  124. 野田哲

    ○野田哲君 そういうことであれば私は重ねて伺いたいんですけれども、三年ばかり前から日本アメリカの強い要請に基づいて、いわゆる金丸長官時代の思いやりということで、駐留経費の分担を行っておりますね。いま防衛庁長官は、アメリカ全体の国防予算からすれば、三百億ドル程度の削減は大したことはないんだと、何ら影響はないんだと、こういうふうに言われましたが、それではなぜアメリカの要請に基づいて、本来日本が持っていなかった駐留経費の分担をやっているんですか。あなたのようなことをおっしゃるんであれば、駐留経費の分担を返上しなさいよ。そうじゃないですか。アメリカ予算がどう削減されようと関係ないと言うんなら、これは返上したらどうですか。
  125. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 米国から安保条約に基づいて日本に駐留しております米軍の負担軽減について要請があることは事実でございます。そういった観点から、金丸前長官の代におきまして労務費につきまして地位協定の範囲内で日本側の負担をいたしまして今日に及んでいるわけでございます。また、同じ地位協定に基づきます施設費につきまして、米側の要望のうちわが方で取り上げる問題につきましては、予算に計上する努力を今日まで続けているわけでございます。  今回の先生指摘の今後におけるアメリカ国防予算の節減の問題これはアメリカ内部における財政、金融情勢等からしまして、そういった削減を今回大統領府において検討したということが発表されたことになると思うわけでございまして、私どもといたしましては、駐留軍の負担軽減の問題につきましては、わが国における状況に基づいてあくまでやはり自主的に判断していく問題である。米側予算節減の努力ということと直接かかわりのない問題であるというふうに考えておるわけでございます。
  126. 野田哲

    ○野田哲君 本来アメリカ予算措置していたものを、金丸長官時代から思いやりというような言葉を使って、日本が肩がわりをしているわけでしょう。このことをもってしても、アメリカ国防予算削減が、日本には何ら関係してこないということは言えないはずでしょう。私どもは、防衛問題に関心を持っていれば、きのうの発表を見れば二つのことを考えるんです。  アメリカがあれだけの国防費の大削減を、あなたは大削減じゃないと言われるんだけれども、日本の金額にすれば大変な削減ですよ。これをやれば日本に対して、さらに西側の一員としてそれを肩がわりをする圧力がかかってくるんじゃないか、まずこのことを考える。あるいは逆の意味で、アメリカも財政的にそうそう国防費を増高することができないんだから、西側諸国に対するアメリカの要請も少しは控え目になるかな、どっちになるかな、この二つのことをあの発表を見れば考えるんです。  あなたのように何ら関係ありませんというようなことには、私は常識的に考えてならないんじゃないかと思うんですが、全くそれは関係ないと、今後日本に対してアメリカはさらに防衛力増強、肩がわり、アメリカ予算が窮屈になったから日本でもっと受け持ってくれ、こういう要請もない、あるいはまた弱まる要請もない、こういうふうに受けとめていいんですか、長官とそれから外務大臣両方の認識を伺いたいと思うんです。
  127. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私が申し上げましたのは、レーガン新政権になりまして国防予算を大幅に引き上げようという計画をすでに発表されておった。前政権の時代におきましては、一年度におきましてアメリカ国防予算は千数百億ドルであると、新政権になりますと二千億ドルをはるかに上回るような計画を一たん発表されておった。それを最近になりまして財政、金融、赤字状態を見直して若干下げようかと、こういうことでございまして、これまでに比べれば大幅な増額である点は基本的には変わりはない。  また、堀江先生の御質問が、現在取り組んでおる明年度概算要求との関係についてもお尋ねがございました。これは自主的にやっておるので何ら影響はないと思うと、こういうふうに申し上げた次第でございます。ちょっと言葉が足りませんので、補足しておきます。
  128. 園田直

    国務大臣園田直君) 私も先ほど日本防衛予算がふえたり減ったりすべきことではないと言いましたが、いまおっしゃいました第一番目の懸念は、これは十分われわれが懸念すべきことだと思います。  先般、防衛分担費を増したとき私は前の外務大臣でありまして、やはりそういう話があったときに、私即座にお取り消しを願いたい、米国から要求されて増すべきものじゃない、自主的な判断によってやるべきだということで国会に相談したのは、アメリカの軍事予算削減、それからドルの低下、これによって非常に在日米軍が苦しい思いをしている。そのためにしわ寄せが駐留軍に従事している労務者の賃金にかかわってきておると、一般国内企業とそれから駐留軍に勤務する労働者の賃金の格差がひどいことを忍べないから、そういう意味でお許しを願いたいというんで辛うじて国会から承認を受けてやったことを覚えておりますが、と同様に、削減された分をやはり在日米軍の費用等に少しずつ割り勘で持ってきて、日本でもっと持てなどと言われる懸念があることを心配すべきだとは私も思っております。
  129. 野田哲

    ○野田哲君 防衛白書の問題で二、三伺います。  午前中の瀬谷委員指摘もありましたがへ私は少しこの防衛白書というのは意図的にすぎはしないか。守るべき国家体制とか愛国心とか、防衛庁は行政庁として踏み込むことではないことにまで踏み込んでいるんですが、これはまた後で機会を見て触れたいと思うんですが、国際的な軍事力の評価ですね、悪徳不動産業者の広告のように、ある部分については非常にふくらませ、ある部分については非常に過小評価している、こういう印象を私受けるんです。  具体的な問題で伺いたいと思うんですが、朝鮮半島における軍事力の比較ですね。北朝鮮の軍事力の評価、これ出どこはどこなんですか。瀬谷委員からも質問がありましたが、明確でなかったんです。これはどこですか。
  130. 塩田章

    説明員(塩田章君) 先ほどもお答えしましたように、こういった軍事情勢の判断をするに当たりましての情報は、もちろん防衛庁自身の集めた情報もございますし、そののほか世界各国から出されておりますいろんな資料を集めまして、総合的に判断をしてつくったものでございまして、一つの資料によってつくったといったようなものではございませんので、先ほどそういう趣旨のお答えをしたわけであります。
  131. 野田哲

    ○野田哲君 この前内閣委員会での質問のときには、大体「ミリタリー・バランス」などを主に使っているというお答えがありましたが、北朝鮮の軍事力についても大体「ミリタリー・バランス」からとっておられるんですか、どうなんですか。
  132. 塩田章

    説明員(塩田章君) 内閣委員会でも岡崎参事官がお答えしたと思いますが、「ミリタリー・バランス」も確かに使ってはおります。わが方が使った資料の一つであることは間違いございません。あのときに岡崎参事官もお答えしましたように、逆に「ミリタリー・バランス」をつくっている人も、わが方の防衛白書を使っているかもしれません。そういう各国で出されておるいろんな権威あると言われておる資料を、相互に使っておるということは十分に想像されますし、現に私どもも「ミリタリー・バランス」がその資料の一つであることはお答えしたとおりであります。
  133. 野田哲

    ○野田哲君 大体北朝鮮の軍事情勢についての数字は、ほぼ「ミリタリー・バランス」からとっておられると思うんです。ところが、陸軍についてだけはどうも十万、「ミリタリー・バランス」と違うんですね。「ミリタリー・バランス」では八〇年、八一年五十万になっている。防衛白書ではそれぞれ六十万になっているんで、「ミリタリー・バランス」からとったとすれば、陸上の人員だけ十万ずつ水増しをされているように思うんですが、この点はいかがですか。この根拠はどこにあるんですか。
  134. 塩田章

    説明員(塩田章君) 先ほども申し上げましたように、「ミリタリー、バランス」は一つの資料として使っておりますが、今度の北朝鮮の軍事力を「ミリタリー・バランス」のみによって判断したものではございません。
  135. 野田哲

    ○野田哲君 それじゃほかに何を使っているんですか。
  136. 塩田章

    説明員(塩田章君) しばしば申し上げておりますように、防衛庁自身の資料による判断と、そのほかの資料であります。
  137. 野田哲

    ○野田哲君 少なくとも国会審議における数字ぐらいは、出所を明らかにしてもらわなければ正しい審議ができないじゃないですか。  じゃ具体的に伺いますが、八一年の評価の中で、「第八特殊軍団と称され、後方かく乱、ゲリラ活動、破壊活動等の不正規戦を任務とする部隊がある。この勢力は十万人に近いと言われ、その一部は、しばしば韓国内に潜入している。」、これはどういう資料を根拠にして記載されたわけですか。
  138. 塩田章

    説明員(塩田章君) 先ほども申し上げておりますように、こういった点につきましても一つの資料による判断でございませんので、私どもの総合判断というふうに御理解いただきたいと思います。
  139. 野田哲

    ○野田哲君 一国の、あなた方の方では認知してないかどうかもわかりませんけれども、朝鮮民主主義人民共和国というれっきとした国家がやっていることを、こういう形でゲリラ活動、あるいは国境を越えて「しばしば韓国内に潜入している。」、こういう表現を国家の文書で表現する以上は、責任を持った資料として報告をしてもらわなければ困ると思うんですよ。  じゃ、重ねて伺いますが、八〇年の防衛白書では「戦略的にゲリラ戦を重視しており、そのための特別な部隊を訓練しているとみられる。」、こうなっているんです。今度はそれが一年たつと、一挙にすでに十万の部隊が完成をされていて、実動部隊としてしばしば韓国内に潜入もしている。一年に十万人のゲリラ部隊が忽然としてあらわれるんですか。これは一体どういうところからこういう表現になるんですか。これははっきり答えてくださいよ。
  140. 塩田章

    説明員(塩田章君) この特殊部隊につきましては昨年も確かに触れておりますが、ことしの白書におきまして私どもがこういう記述をしていることにつきまして、先ほど来申し上げておりますように、どういう情報でこういう判断をしたということは、一つの情報ではなくて、総合的判断だということを申し上げているわけでございますが、先生指摘のように、政府として、防衛庁としてこういうことを書くからには責任を持って書いているんだろうなということでございますが、もちろん防衛庁として責任を持ってこういう判断をして記述をしたものでございます。
  141. 野田哲

    ○野田哲君 私が指摘をしているのは、昨年は  「ゲリラ戦を重視しており、そのための特別な部隊を訓練しているとみられる。」と、こういうふうにまさに仮定的に記述をしているんです。それがなぜ一年たつと十万人の完成された実動部隊になっているんですか、その経緯を明らかにしてもらいたいと思うんです。ゲリラ部隊というようなものが、一年で十万人突然地上にあらわれるはずがないんです。
  142. 塩田章

    説明員(塩田章君) 前から訓練をしておりましたが、そういった前から訓練をしておる段階でも、たまにはいわゆる韓国側に潜入したような事例はあったわけでございますけれども、今回そういうことをはっきり確認をいたしましてこういう表現にしたわけであります。
  143. 野田哲

    ○野田哲君 だから、一年前はそういう部隊を「訓練しているとみられる。」、こういうふうに仮定的な表現でやっていたものが、なぜ一年たつと十万人という形で実動部隊になっているのか、その根拠を明らかにしてもらいたい、こういうんです。
  144. 塩田章

    説明員(塩田章君) もし情報の根拠ということであれば、情報につきましては、私ども先ほど来申し上げておりますように、いろんな資料の総合的判断であるということで、個々の情報源について申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  145. 野田哲

    ○野田哲君 ロジックが合わないから私は聞いているんですよ。こういうことがあるらしいと一年前に言っていたものが、ことしになってみるとぼかんと十万人になっている、そんなことが根拠なしに言えるはずがないでしょう。しっかりした根拠を説明してくださいよ。出所を私は聞いているんじゃないんです、なぜこういうことになったんですか。何か根拠があるんですか。
  146. 塩田章

    説明員(塩田章君) 「訓練しているとみられる。」と申し上げておりました当時でも、数字は書いておりませんけれども、相当な数の人数であると判断をしておりました。それで、今回それが十万に近いという判断ができましたので「十万人に近い」という表現を使いましたが、先生の御指摘のように、突然にぼかっとふえたわけではございませんで、去年までの判断の中でも、数字は触れておりませんが、相当な数の訓練をしておるというふうに判断をしておったわけでございます。
  147. 野田哲

    ○野田哲君 そういうあいまいなことでは私どもは納得できません。これはまた機会を見て内閣委員会等で引き続いてやりたいと思うんです。  ソ連のこの評価ですね、地上軍についても、あるいは海上についても、空軍についても、総体的な量だけで比較をしているわけですね。何万人あるいは何師団、海軍で言えば隻数、トン数、それから航空兵力で言えば作戦機の機数、こういう単純な比較は私は国民を迷わすもとだと思うんですよ。  地上兵力について、これも恐らく「ミリタリ三バランス」が基礎になっているんじゃないかと私は思うんですけれども、昨年は中ソ国境四十六師団、四十五万人、ことしは五十一師団、四十六万人、つまり師団は五つふえた、ところが人員は一万人しかふえていない。師団だけ見ればこれは大変な増強があったように思えるんですけれども、人員は一万人です。うちの極東方面について、昨年は三十四個師団、三十五万人、ことしは三十九個師団、三十六万人、これも師団は五つふえて人員は一万、こういうことですね。  つまり、これはどこに問題があるかといいますと、ソ連の陸上兵力については、カテゴリーI、カテゴリーII、カテゴリーIII、こういう分類がありますね。「ミリタリー・バランス」によると、極東地域の陸軍の約半分はカテゴリーIIIだと、こういうふうに言っていますね。カテゴリーIIIであるから、要するに充足率が非常に低いから、五個師団ふえても人員は一万人しかふえない。カテゴリーIIIの部隊をこれだけたくさん配備をしているということは、つまり、それは緊急性がない地域だからカテゴリーIIIの部隊で済ましているんだと。ヨーロッパの方を見ると、これは全部と言っていいほどカテゴリーIのいわゆる即応態勢をとった部隊になっていますね。そういう点を、やはり防衛白書ともあろうものが軍事力の比較をするのであれば、正しくここに説明をしておかなければいけないんじゃないですか、どうですか。だから私は誇大広告だと言うんです。
  148. 塩田章

    説明員(塩田章君) 一般に軍備を表現する場合に、師団、あるいは海の場合、隻数、トン数、空の場合、機数を使って表現をしてきたことは、従来そういうやり方をしておりますし、一般的な表現の仕方だと思います。  その場合に、御指摘のように、昨年五個師団ふえたといいながら実員は一万しかふえていない、これもそのとおりでございまして、その中身は御指摘のように第三カテゴリーのものが多くふえたということをあらわしておるものと私どもも見ております。そういう点は、いま先生おっしゃいましたように、NATOの場合と大分違う、その御指摘は全くそのとおりだと思います。  それをあえてこういう場合に強調するといいますか、説明をしたらどうかという御意見、それは御意見としてよくわかりますが、この防衛白書、ずっと継続性を持って発行してきておりますが、従来から何個師団何万人というふうに表現しております。したがいまして、ことしも五個師団ふえたということを言っておりますけれども、実員では一万人しかふえていないことも、よく数字を見ていただければおわかりいただけると思いますが、ことさら第三カテゴリーのものがふえたという表現は使っておりませんけれども、人数的に言えば師団の数に比べて実員はそうふえてない実情はあらわれておると思います。その辺はどういう表現をしてどういう説明をしていくかということは、防衛白書を出す場合の一つのテクニックの問題ではあります。そういう意味では、先生のおっしゃることはわからぬではございませんが、従前の行き方を今回も踏襲して記述したということでございます。
  149. 野田哲

    ○野田哲君 時間参りましたので、最後に。  私が言っているのは、カテゴリーIIIが半分近くも占めているということは、それだけつまりソ連は極東においては有事体制はとっていないと、こういうことの証明じゃないか。そのことが私は一番大事なんじゃないかと、こういう点を指摘して旧いきたいわけなんです。  最後に伺いたいのは、朝鮮半島で休戦ラインのあたりでアメリカのSR71偵察機がどこかの国から射撃を受けた、こういう問題が起こっておりますが、このSR71、これは明らかに私どもは沖繩から発進したものではないかと思うんですけれども、アメリカからその点について事実確認を受けているのかどうか。この状況について北は否定をしておりますけれども、一体防衛庁それから外務省としては、日本の沖繩から発進しているとすれば、これはまた重大な問題を提起していると思うんですが、どういう認識を持っておられるのか、この点を伺って終わりたいと思います。
  150. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 御指摘のSR71のいわゆるミサイル事件につきましては、東京及びワシントンにおいて事件発生直後外交チャンネルでの連絡、通報を受けておりますが、他方お尋ねの当該SR71の発進と帰投の具体的なパターンについては、その通報の中に含まれておりません。  ただ、先生十分御承知のとおり、お言葉にもございましたとおり、沖繩の嘉手納基地にはSR71がおりますことは、これは事実として確認されているところでございます。
  151. 塩田章

    説明員(塩田章君) 私ども在日米軍司令部からも連絡を受けておりますが、いま外務省の参事官が申された以上のことは受けておりません一
  152. 野田哲

    ○野田哲君 終わります。
  153. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大村長官にお尋ねをいたします。  五十七年度の業務計画に基づくところの概算要求がまとまったようであります。ところが、その内容をしさいに拝見をいたしますと、後年度負担ということで、それが初年度予算に匹敵する額に相当している。なかなかうまいことを考えたものだなと思います。こうしたことが今後認められていくとするならば、もう歯どめがきかなくなるんではないだろうかという心配が実はございます。これは極端な一つの例かもしれませんが、過去に戦争中軍事費が膨張いたしました。ああいったときに使った手法と何か非常に共通性があるような、そういう発想というものがあるのではなかろうか。  これはちょっと言い過ぎかもしれません、時代が違いますし、政治情勢が違うわけでありますから。しかし、考えようによってはそういうような行き方もなしとはしない。これも日米共同声明が示されて以来、アメリカ側の大変強硬な日本に対する防衛力増強という、そういう要請にこたえた、こう受け取るのが一番素直な判断の仕方であろう。しかし、いままで政府は一貫して、あくまで日本防衛というのは自主的な判断に基づいて進めるのである、財政の問題もこれあり。しかし、どうもその辺が素直に受け取れないというところが、今回の概算要求の中に示されたものとして映るのではなかろうか。今後もこういうことが私はあり得ると思うんです。資材もどんどん上がるでしょう。資材が上がれば、とどのつまりそれに伴う費用もまた膨張するわけです。五十七年度七・五%前年度に比較しての伸び率が一応認められた、政府の方針として。ところが、五十八年度以降になりますと、果たして一けた台で済むであろうか、そういう疑問が実は出てまいります。  先ほど大村さんは、今後も必要最小限度の防衛力整備のためには取り組むんだということをおっしゃっている。この委員会等においても、いままでしばしば議論がなされました。一体必要最小限度とはどこに基準を置かれるのか等々。それはヨーロッパの軍事情勢というものの比載もございましょう。あるいは極東地域におけるいろんな激変に伴うところの対応ということもございましょう。どの辺に視点を置きながら、日本の今後の防衛力整備というものを遂行しようとされているのか。今回の概算要求の取りまとめ方を見ておりますと、だんだんふくらんでいくような方向へ——これは米ソと肩を並べるというわけにいきません、もう費用の点では二十倍前後違うわけでありますから、とてもとてもそれは追いつかない。けれども逐次、だんだんなし崩しにそういう方向へ、わが国としてもいつの間にか気がついたら軍拡の方向へ歩調を合わせるようなことになりはしまいかということのおそれを抱くわけです。  今回防衛白書を拝見しました。そしてまた、同時にいま申し上げた概算要求のまとめ方のあり方も知りました。そういったことを通じまして、いま私が投げかけた疑問に対して大村長官として将来を展望しつつお述べをいただければありがたいと思います。
  154. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま渋谷委員から五十七年度概算要求に関連しまして、後年度負担の歳出額が二兆円を超えるではないか、その金額は防衛予算総額に匹敵する金額ではないかという御指摘がございましたが、確かに五十七年度概算要求における後年度負担額は、約二兆二千六百億円に上る見込みとなっております。ただ、これがそのまま対前年度増額になるということはもちろんございません。航空機や艦艇につきましては、今後四年間にわたって歳出予算に計上される、わけでございますし、また弾薬等につきましては二年間にわたって計上されるものである。  現時点におきまして、その年割り額はどうなるか、まだ概算要求の段階でございますので、確定することは非常に困難でございますが、しかし、一応の試算を行えば五十八年度の歳出予定額は約一兆七百億円、いまの二兆円を超える金額でございますと少なくなるわけでございます。もちろん、五十八年度の歳出になりますと、またその年度に必要な後年度負担額というものが新たに起こってまいりますので、そういった点を総合して判断しなければ、財政にどういう影響を与えるか、的確なことをいま申し上げるわけにはまいらないわけでございます。  しかし、歯どめがないではないかというお尋ねでございますが、私ども防衛力整備を、現在防衛計画大綱の枠組みの中で進めることにいたしております。五十七年度におきましては、五三中業の範囲内で進めることにいたしているわけでございます。五十八年度以降につきましては、また五六中業の作業を現在始めておりますので、またその決定された枠組みの中で予算全体が検討されると、こういうことでございますので、やみくもに膨張するということではない、そういった仕組みになっているということもあわせて申し上げる次第でございます。あくまで政府全体として、また国会の御審議と相まって、いわゆるシビリアンコントロールの原則に立って、今後防衛予算に取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
  155. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 長官、大変恐縮ですが、語尾の方がときどきとぎれて聞こえなくなりますので、その辺ひとつよろしくお願いしますよ。  大変公式的な、失礼でございますけれども、答弁であろうというように思います。しかし、このところ防衛大綱の見直し、それもアメリカ側あたりからそういうことがささやかれている。なるほど必要最小限度、これは防衛大綱を基準とするでありましょう。将来展望に立った日本防衛一つの青写真かもしれません。言うまでもなく、最近の世界情勢は激変であります。いつどういう地域にどういうアクシデントが起こるか想像もつかない。恐らく、そういうことをいろいろと想定をしながら、現在許される範囲の中で何が一体可能性があるのか、いろいろと知恵をしぼられたんだろうとぼくは思うんです。  ただ、今回、即応性であるとか、あるいは継戦能力を高めるというようなところに非常に多くの考え方が注がれたようであります。なるほどそれはわからぬでもない。しかし、個々に見てまいりますと一体どうなんだろうと。たとえば、F15を四十三機これから買いつけるわけですね。どうしてそんなに急激にそういうことが必要なのかなと、私は軍事専門家じゃありませんからわかりませんけれども、どうして必要なのかなと。それはF104あたりがすでに耐用年数が来ておりますので使い物にならぬ、それは早急に代替しなきゃならないということも考えられましょう。あるいは対戦車用のヘリコプターを二十二機購入する。これもちょっとよくわからないんですね。対戦車用のヘリコプター二十二機。そうすると、将来もし万が一のことがあった場合に、どこで起こるのか私はわかりませんよ、地上戦というものが想定されて、そういうものの訓練を必要とする上からヘリコプター二十二機の導入というものが必要になったのであろうか。  しかし、そこまでいったら、安保条約の活用というものは一体どうなるんだろうというまた別な面の疑問が起こってまいりますし、対戦車用のヘリコプターを使わなければならないような事態まで一体想定しているんだろうか。あるいは護衛艦にしてもそうですね。大村長官は、空母とは言わなかったようです、あの記者会見の際に。しかし、恐らくのどから手が出るほど空母も必要ではないかというような印象を与える発言ではなかったか。これは私の言い過ぎかもしれません、聞き違いかもしれません。しかし、少なくとも護衛艦にはそれだけの装備をこれから整備する必要があるというようなことも言われております。そうすると、現在の護衛艦では十分にその活用ができなくなってしまう。どういうような仕組みにされるのか、私はわかりません。当然、対潜用のいろんな航空機の塔載等々も考えられるでありましょう。  そういったことを考えていきますと、確かにこの防衛白書を見る限り、どこかを対象にしないと、日本防衛力整備というものが、合理的に国民のコンセンサスを得ながらも一体ついていけるんだろうか。先ほどもちょっと防衛白書の中から出ました戦車、ソビエトは五万両、作戦機が五千機と書いてある。少なくとも極東配備については、その三分の一ぐらいは配備されているのではないかというのがいろいろな資料を見ますと出てくる。とてもとても足元にも及ばないわけですね。どこに一体視点を注ぎながら、どういう発想のもとで日本の専守防衛というものを行おうとしているのか、また新しいそういう疑問が出てくる。  そういう点があるから、今後はレーダーサイトを初め戦闘機網、あるいはP3Cにいたしましても、ふやしていかなければならない。しかし、それにはいま財政が非常に厳しい。できるわけがない。しかも、GNP一%というそういう制約がある。制約というよりも、そういう約束事があります。しかし、そのGNP一%の枠すらも、防衛庁長官の言明のニュアンスをそれとなく受け取りますと、これは当面の目標であって、これではとても日本防衛というものは不可能であろう。恐らく、将来描いている考え方の中には、ヨーロッパ並みに三%あたりまで持っていくようなお考えが、それは下手に出しますと大変な議論になりますから、この辺まで出かかっても出にくい問題であろう。しかし、いま私が申し上げたことだけでも、これからずっとその辺を明確にしない限り、どんどん膨張する方向へ行きはしまいか。  ちょっと質問の中身が長くなりまして恐縮でありますけれども、そういうことについて、もっと意のあるところをわかりやすくひとつ御説明いただければありがたいと思います。
  156. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答え申し上げます。  防衛計画大綱におきましては、小規模限定的な侵略に対して原則として自衛隊で対処し、それを超えるものにつきましては、安保条約に基づく米国の力で補完するというのを基本の仕組みにいたしておるわけでございまして、そういう考え方に基づいて陸海空の防衛力整備の目標を別表で定めているところでございます。その後、逐年努力をいたしておるにもかかわらず、現在の自衛隊の持っている勢力は大綱別表に示す線にもまだ行き届いていないという面が多々ございます。それを早急に埋める必要があるということで、五十七年度概算要求におきましても取り組んでいる次第でございます。  そこで、ただいまどういった点に重点があるのかというお尋ねでございますが、私は、陸海空を通じましてやはり即応態勢、継戦能力を充実することが最も必要ではないかと考えておるわけでございます。すなわち弾薬、ミサイル等の備蓄の増加の問題それから必要最小限の充足率の向上、また通信伝達能力の整備向上、こういった点は陸海空を一貫して図らなければいけない点であろうと思うわけでございます。  また、装備の改善につきましては、先ほどお話のございましたように防空能力、対潜能力を向上する必要がある、そういった観点から必要な艦艇並びに航空機の整備を図らなければいけない、そういったことが出てきているわけでございまして、御指摘のございましたP3Cの整備につきましては、五十二年の国防会議決定によりまして、現有の対潜哨戒機P2J等を更新するため四十五機導入することとなっております。これまで十八機調達しておりますので、今回は残されたもののうち十七機を調達することとし、これによりまして対潜哨戒能力の飛躍的増強を図っていきたいと考えているわけでございます。  またF15につきましては、同様に五十二年の国防会議決定によりまして百機導入することとされておりまして、これまで五十七機の調達が実施されております。残りの機数は四十三機でございます。諸般の事情を考慮いたしまして、五十七年度概算要求におきましては四十三機を一括して調達することにいたしたいと考えているわけでございます。F104などが更新期に来ておりますので、F15をできるだけ早く整備できるようにいたしたいと考えておるわけでございます。  また、陸上自衛隊の対戦ヘリコプターを二十機以上もこの際要求しているのはどういうわけかというお話でございますが、私どもといたしましては、海上から攻撃してきます問題につきましては、水上関係の力、また防空能力等活用してなるべくこれを上陸しないように、着陸しないように阻止することに努めるわけでございますが、どうしても上陸してきましたものにつきましては、またこれを排除しなければならない。そのためにいろいろな工夫を講じているわけでございます。  対戦車の砲でございますとか、ミサイルでございますとか、ロケット砲でございますとか、いろいろ工夫してございますが、最近の諸外国の状況を見ますと、やはり空から戦車に攻撃を加えることが最も有効である。陸上の砲であればせいぜい二千メーターしか届かないのでございますが、空から移動できて、しかも四千メーター以上の範囲の有効な攻撃を持っている対戦車ヘリコプターをわが国の陸上自衛隊においても配備する必要があると考えまして、今回概算要求に織り込んだということでございまして、現下の財政事情でございますので、私どもといたしましては、あくまで大綱の枠組みにおきまして、しかもその中でどうしても当面必要とするものを概算要求にいたしたわけでございます。直接関係のないようなものにつきましては、努めて抑制を図る。そういったことでかなり抑制し、圧縮している面も多々あるわけでございます。  重点の点について説明せいということでありましたので、主な点だけを申し上げた次第でございます。
  157. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、いま大分具体的に御説明いただいたんですが、戦闘機にいたしましても、それから哨戒機にいたしましても、それで十分専守防衛の役割りが果たせるんですか。
  158. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 自衛隊の任務は、申すまでもなくわが国の領域並びに周辺海空域でございます。その任務を達成するために、どうしても必要だと思われます点を概算要求に織り込んだ次第でございます。またその根拠は、防衛計画なりこれまでの中期業務見積りにも織り込み済みの範囲内でやっているわけでございまして、あくまでこれは専守防衛自衛力の充実という観点で行っているものでございます。それを超えるものではないというふうに考えております。
  159. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 領海とおっしゃいました、あるいは領空というふうに言われました。この辺も従来からしばしば議論されてまいりましたように、アメリカ側からの強いこれも要請ということで、グアム島以西フィリピン以北、このシーレーンというものをやはり日本が役割り分担の一環として、哨戒なりあるいは対潜の任務に当たってもらいたいと、恐らくその方向にいくでありましょう、近い将来。そうすると、守備範囲が物すごく広くなるんですね、領海をはるかに出ているわけですから。果たしてそういうことが可能性があるのかどうなのか。  先ほど申し上げたことにまだ十分お答えいただいてないわけですよ。現状としてF15、これが百機、それからP3Cが四十五機ですか、全部充足されますと。これで十分なのかどうなのか。これが必要最小限度なのか。これからまた次の段階、次の段階、あるいは五十六、その先があるでしょう、中業が。だんだん冒頭に申し上げたような方向に至って、だんだんその要求が高まるに従って、日本も西側陣営の責任を果たすその立場から、このぐらいは必要最小限度やむを得ないんだという、そういう発想なのか。そうして、現在開発された近代兵器というものは、恐らく日進月歩だろうと思うんです。いま七四戦車だって古いと言われているんでしょう、はっきり申し上げると。それよりすぐれたものが西ドイツやなんかで出ているということも、ことしの予算委員会で指摘されたことを私は記憶をしております。絶えず追っかけているわけです。なかなか先は越せない。その間にはどんどん資材が高騰する。だから費用が膨張する。そういうようなことが、これから繰り返し続けられていく。  そういう一つの心配ということと、それからもう一つ、いま申し上げた、もう一遍繰り返しますけれども、そういったような状況の中で専守防衛の役割りというのは果たせるのかということなんです。もっとふやさなきゃならぬという発想があるのかないのかということですよ。
  160. 塩田章

    説明員(塩田章君) もし今度のF15を四十三機、P3C十七機の購入で専守防衛の任務が果たせるのかというお尋ねであるとすれば、今回の私どもの要求は、先ほど大臣がお答えしましたように現在国防会議で認めていただいております、Pで言えば四十五機、Fで言えば百機のうちの残り、Pではまだ十機残りますけれども、それをお願いをしているわけであります。  それでは専守防衛の態勢ができるのかという点は、私どもが目指しております防衛計画の大網の線、大綱の線といいますのは、同時に大綱の中に書いてあります考え方ですね、あの防衛体制考え方、これに対してこういうものが要るという考え方であの大綱ができておりますから、その大綱の線にまだ届いておりません。したがいまして、これができましてまだ引き続き、いま五六中業やっておりますけれども、防衛計画大綱の線に届くことをめどにいま作業をしておりますが、それができ上がりませんと、防衛計画大綱考えておる防衛体制というものが整ったとは言えないことになります。また先生が御指摘のように、その時点では日進月歩だから次にまたいろいろ要るではないかというお話、これもごもっともだと思います。その時点におきます軍事技術の進歩というものに対しては、常に対応していくことを考えていかなければならないことも当然私どもとしては考えておく必要があろうかと思います。  ただ、Pについてたとえば申し出げてみますと、防衛計画大綱で海上自衛隊の作戦用航空機二百二十機といいます場合の構想としては、固定翼機が百機であるというふうに一応考えているわけですが、それで先生が先ほどグアム以西フィリピン以北と言われましたが、私どもはそこまで考えてはおりませんで、周辺数百海里、あるいは航路帯を設ける場合にあっては約一千海里程度ということをかねてから申しておりますが、そういう範囲のものにつきましては、固定翼機百機という態勢は、いまの防衛計画大綱の構想に沿った防衛力であると言って私は差し支えないかと思います。  ただ、実際に、いまの四十五機という整備目標は、百機態勢の維持よりは若干実は少のうございまして、固定翼機一応現有勢力の八十機を維持するという態勢でできておる四十五機でございますから、四十五機が全部そろいましても百機態勢にはまだ若干不足するという問題はございます。しかし、全般的に、先ほど大臣が申されましたように、今回のFにしましてもPにしましても、われわれの要求をお認めいただければ、防空体制にしても、そういった対潜能力にしましても、画期的に充実されるということは申し上げることはできるかと思います。
  161. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これは一刀両断的にすぱっと割り切れる問題ではないだろうと思うんです。いろんなこれからの試行錯誤というものも当然加えられて、日本としてこの辺が限度であるという、そしてまた、国民の合意が得られるというこれにはいろんな時間もかかりましょうし、またいろんな反発も受けながら整備をしていかなきゃならぬだろう。ただ、シーレーン確保の上から日本も当然アメリカと歩調を合わしてくれと、押しつけというとちょっと言い過ぎかもしれません。しかし、先ほどもちょっと触れましたように、日米共同声明以来だんだんなし崩しに日本アメリカの言い分のとおり、アメリカの言い分を満足させる方向へ動きつつあるんではないだろうか。そうなりますと、そういうシーレーンの確保についても、将来またあり得る問題の一つになるんではないかという一つの問題。  それからもう一つは、先ほども報道されておりましたが、アフガンがいま異常な緊迫状態だそうです。東西両陣営が非常に急迫したような、そういう状況に置かれているということが伝えられております。それからイラン情勢がああいう状況、ソ連の介入があるんではないかということも伝えられております。将来それがどういうふうに推移していくのか想像もつかないことであります。そういった場合に、東西というふうになりましょうけれども、その軸になるのは米ソであります。これはもう常識でしょう。  そういった場合にアメリカは、当然現在太平洋地域を任務としている第七艦隊が向こうへ行かざるを得ない。相当量削減されるということになると、太平洋はがらあきである。これはもう従来からもしばしば言われている。これがもっと傾斜的に、いまは向こうの方に火がつき始めている。そうすると、そういうような補完的な役割りをむしろ日本がしてくれ、こういうような要請がまた来るであろうし、現在行われている下田会議あたりでも、それが話題になっているようであります。ということになると、くどいようですけれども、繰り返すようですけれども、日本防衛力整備ということは、これは日本国を守るのは日本国民責任においてやるんだ、それはあたりまえでしょう。けれども、それにも限度がある。起きないことの方が当然望ましいわけです。しかし、そのためには一つの歯どめとして、そういったものもこれから整備をする必要がある。けれども、いまもう世界は動いておりますから、動いているそういう中で、日本は平和憲法の制約がある、専守防衛である、非核三原則があるという国是を、これはどうしても一貫して貫いてもらいたいことは当然であります。当然であるけれども、だんだんそういったことが世界情勢の動きの中でやむを得ないんだということで、傾斜的にアメリカと歩調を合わせるような行き方になったらどういうことになるんだろうか。その辺の分析についてはどんなふうにお考えになっていますか。
  162. 塩田章

    説明員(塩田章君) まず現在の時点で申し上げますと、アメリカは確かに日本に向かって対日期待表明をしておりますが、シーレーンにしましても、あるいは先ほど大臣が申されました四つの項目の改善案にしましても、アメリカ側がどこかに行くから穴を埋めてくれというような言い方は決してしておりません。むしろ現在の日本の陸海空自衛隊が持っておるいろんなウイークポイントといいますか、弱点はこういうところではないかという指摘をして、こういうふうにすべきではないか、あるいはシーレーンにしましても、日本の周辺数百海里、あるいは航路帯の場合一千海里、それを日本はやると言っているが、それがいまの自衛隊でできますかと、こういうことを言っているのであって、もちろん日本自衛隊のことでございますから、アメリカに言われなくたってわれわれは百もわかっていることばかりでございますが、アメリカとすればそういうことを言っておるのでありまして、別段第七艦隊がどこかに行くから、だからどういう穴埋めをしてくれ、新しいこういうことも考えてくれというようなことを言っているわけでは決してございません。  問題は、将来それじゃそういうこともあり得るではないかというのがお尋ねの御趣旨かと思いますが、もちろん将来のことはわからぬと言えばそれまでですけれども、問題は要するに、いろんな事態が起こるでしょうけれども、われわれがどういう自主的な立場をもって貫いていくかということに結局はかかるんだろうと思います。私どもとしましては、しばしばかねて申し上げておりますように、防衛計画大綱という一つのめどをもっていま整備をしております。それに向かってこういう国際情勢でもございますから、それを早く達成することがともかく急務だという立場をもって  いま防衛庁としてはやっておるわけでございまして、アメリカも確かにいろいろなことを言っておりますけれども、私どもとしては、自分日本としての立場を貫いて整備をしていくということさえしっかりしておれば、アメリカ日本とは軍事的には共同対処行動をとるというたてまえでございますから、アメリカの言っていることを全く無視という意味で申し上げているわけではございませんけれども、日本日本としての自主的な整備計画を持ってやっているという現在の態度、これを今後とも堅持していけばよろしいし、またその必要があるというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
  163. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ここで重ねて確認をしておきたいと思うんですが、将来においても防衛大綱の見直しということは絶対考えられませんね。
  164. 塩田章

    説明員(塩田章君) 防衛計画大綱につきまして、将来見直すかどうかというお尋ねにつきましては、去年から国会でお答えをしておりますけれども、三つの要件が考えられるんではないか。一つは、もちろん国際情勢の変化、二番目には、国内諸情勢の動向、この場合は財政問題もあります。し、それから国民の世論の動向といった問題も含めて国内諸情勢の動向、それから三番目には、防衛計画そのものの達成度合いと達成状況、そういったようなものを考え合わせて検討する時期が来るかもしれない。いまの時点では考えられない、こういうことをかねてお答えをしておりますが、現在もその考え方に変わりはございません。
  165. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ですから、世界情勢のいろんな変化ということは、いまでも起こっているわけでございますので、いままでの答弁はそのとおりだと思うんです。ですが、あるいは近い将来防衛大綱はその状況に応じて見直さなければならない、そういうことはあり得るんだと、こう受けとめてよろしいわけですね。
  166. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま政府委員から答弁いたしましたとおり、私どもとしましては現在の大綱の基本線達成を最大の課題と考え努力している途上でございますので、近い将来これを見直すということは考えておらない次第であります。
  167. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ところで、いま私はそういう装備の整備という方向に一つの視点をしぼりながら、いままでの議論されたことを私なりに整理をして確認をしてきたわけであります。いろんな矛盾がやっぱり今度の防衛白書を拝見いたしますと出てくるんです。  その一つは、これはうまいことを言ってるなと思うんですね。「自衛隊の力の根源は人にあり」、そのくだりが、ずっとあるんですよ。私は前にもここで指摘をしたことがある。いみじくもここでまた触れておられる。「訓練」という事項につきまして、「例えば戦闘機のパイロットの場合を考えると、訓練空域、射撃訓練場、燃料等の制約が技量の維持向上を困難にさせる問題点となっている」、こういった問題の解消を図らない前に、F15を導入する、あるいはP3Cを導入する、果たしてそれが機能するのかどうかという心配が実はございますね。宝の持ちぐされになってしまうおそれはないのかという問題、その点は十分考慮に入れながら、問題点の解消ということを十分心得つつ、今回の即応性や継戦能力を高める一環として新機種を導入するのである、こういう判断に立って決められたのかどうなのか。  まだ細かいことを言えばずいぶんいろんな問題出てきますよ。この間もここでぼくは問題にしましたね。潜水艦を駆逐する一つの方法として、駆潜艇というのがある。全然話にならないわけでしょう、速力の点から言ったら。ソビエトの原子力潜水艦、水中もぐって三十五、六ノット出るわけです、追いつかない。じゃ、駆潜艇というのは一体何をする役割りなんだろうか、こういう問題も実はある。だから、だんだんそれがふくらんでいくんじゃないかということにかかわり合いを持ってくるんです。そういったことを含めて、そういう矛盾現象というものは、将来、防衛大綱というものにちゃんと盛られている、その線までいくとそういう問題は解消すると判断していいのかどうなのかということがあるわけです。どうですか。
  168. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 御指摘の点につきましては、私ども単に兵器の性能だけではなく、人員の訓練あるいは飛行場その他の設備の充実等を顧慮して、有効に使用されるように努力しているところでございます。P3C、F15につきましては、すでに国防会議の議を経て導入が決定いたしておるわけでございますので、これを逐次導入してまいりたい。先般米国を訪問しました場合にも、私はラングレーの空軍基地、ジャクソンの海軍航空基地を視察いたしました。F15、P3C、それ自身をよく調査してまいったわけでございます。また、ジャクソンビルには海上自衛隊の隊員が約百名受け取りを兼ねて訓練に従事しておりまして、年内にこれを受け取って帰ると、厳しい訓練を続けているところでございます。また、国内におけるライセンス生産に基づく製造も軌道に上っておりまして、導入の計画には支障を来さないように十分配意をいたしておるわけでございます。  また、戦車についてのお尋ねがございましたが、確かに日進月歩の情勢でございますので、次期の戦車をどうしたらいいか、今回の概算要求におきましてもそういった点の開発に要する経費を技術研究本部の予算に織り込んでいると、こういう状況でございまして、諸般の情勢を念頭に置きながら、せっかく血税を投入して導入する兵器でございますので、これが最も有効に活用できるように万遺漏なきを期してまいりたいと、さように考えておるわけでございます。
  169. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それから、さっき答弁いただかなかったと思うんですが、将来、日本防衛費について、GNP一%を超えるような考え方をお持ちでしょうか。
  170. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 対GNP比の問題でございますが、私どもといたしましては、昭和五十一年の閣議決定に基づく、防衛関係費予算総額で一%を超えないことをめどとして予算をつくると、この基本方針は守っていく考え方でございます。  ただ、この閣議決定は、「当分」ということが記されているわけでございますので、今後防衛費の中身のあり方、そしてまたGNPそのもののあり方からいたしまして、この一%という限界がどうなのか、まあそういった点が将来の問題としてはあり得るとは思うわけでございますが、少なくとも五十七年度概算要求におきましてはこの閣議決定を念頭に置いて、その範囲内で防衛予算が編成できるように努力してまいりたいと考えてるわけでございます。    〔委員長退席、理事堀江正夫君着席〕
  171. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま伺っておりまして、やっぱり私が心配してるようなことが将来に起きるんではないかというふうに、これはちょっと思い過ごしかもしれませんけれども、まあ、財政が硬直してる状況の中でそういった方向というものが将来考えられるとするならば、いま財政再建といっても、そんな簡単に一年でできるものとは思いません、何年かかかると思います。そういった、いま財政再建ということが政府の命題でもあるわけですね。大村さんさっき、行革のことも十分踏まえつつ、財政の厳しいということも十分考慮に入れながら、ということをおっしゃった。それで今回の概算要求になった。それはそうであろうと思います、そんなこと考え方に入れなかったら大変なことになるわけですから。しかし、将来において一%という数字が崩れてまいりますと、ますますこの財政の硬直に波及効果を与えていくようなことになりやしまいか。もういまはいずれにしても借金財政でしょう。これから防衛庁は。借金財政、表向きは借金してないみたいなかっこうになってますけれども、実質的には借金財政と変わりがないわけですよ。これは非常にうまい仕組みだと思うんです。もう知らないうちにどんどん金借りて、どんどん兵器を、装備をふやしていく。だから、いままで考えてきた一つ防衛庁の方針というものは、どこかでその矛盾が必ず出てくるであろう。それはどこかで調整をしなきゃならぬ。そういった場合にGNPの問題も出てくる等々の問題、そういうような危険性、危険な道を歩まないというここで私どもが確信を持っていいのかどうなのか、それを再度ここで明確にひとつお答えをいただきたい。
  172. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 現在一%以内という閣議決定が生きておりますので、私ども、できるだけこれを尊重してまいりたいと考えているわけでございます。  過去のわが国防衛予算の歴史を振り返ってみますと、昭和三十年ごろにおきましてはたしか対GNP比が二%近かった事実もあるわけでございまして、その後高度成長でGNP自身がふえますので、防衛関係費もふえましたにもかかわらず、対GNP比が低くなりまして、ここ三、四年の間は一%をさらに下回ると、こういったような状態でございます。そういう関係もございますので、私ども、経費の効率化合理化には引き続き十分配意してまいりたいと思うんでございますが、今後の防衛関係費のあり方と、そしてGNPそのもののあり方の関連でこの比率は決まるわけでございますので、現在の閣議決定はできる限り尊重して、しかも必要最小限防衛関係費は確保してまいりたい、そういう決意でございます。
  173. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 将来この経過をずっとこれから見ていく必要があるであろうと思います。  ちょっと、若干視点を変えまして、これも何回かもう討議された問題の一つでありますが、力のバランスということは間違いなく戦争抑止力につながるのかどうなのか、どういう判断をされているのか。いま軍拡の方向ですね、残念ながら。血道を上げていると言ってもいい状況であります。もうどこまで一体これから続くんであろうという、世界の人類にとってこれほど心配なことはないと思うんでありますが、力のバランスというのは、これはいつかは必ず崩れるんじゃないか、絶対的なものじゃないんじゃないかというふうに考えるわけであります。  そういったような状況の中で、アメリカは中性子爆弾の製造を始めました。際限がない。恐らくソビエトはそれに対抗してさらに量的にも質的にも開発を進めるでありましょう。どこまで一体行くんだろう。非常にわずかな資源というものが、有資源がどんどん平和利用じゃなくて、殺人的な行為の方向へ全部向けられていく、いまそういうレールをまっしぐらに走っているわけです。ところが、これは自由主義国家群と社会主義国家群とのありようは全然違うと思うんですね。財政の問題があり、世論というものがある。それは膨張させるには限度があると思うんですよ。必ずどこかでバランスが崩れてきはしまいかということで、この辺の力の均衡というものは、核兵器を中心としていままでずっと言われ続けてきました。考え直す必要があるんじゃないか。どのようにじゃ考え直したらいいのか。これは軍縮以外にないと思うんです。それは外務大臣も非常に熱意を持っていままで取り組んでこられた。しかし、実際には国連を中心としてもそれは機能していない、残念ながら。来年は、確かに国連の軍縮特別総会があります。あっても具体的にどう一体機能しているかというと、何にも機能していない。もし来年特別総会に臨むとするならば、いま米ソの首脳会談をやらなくちゃならぬ、いろんなそういう問題点がある。日本が果たさなければならない役割りがある。ですから、いま軍拡の方の歯どめをするためには、どうしてもそっちの方へ精力的に日本としてはいままで以上の努力を払わなければならぬではないだろうか。それも私はやっぱり防衛思想に連動する一つ考え方ではないかと思うんですが、それは恐縮ですが、大村さんと園田さんと両方御答弁いただければありがたいと思います。
  174. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) まず軍縮の問題でございますが、わが国は平和憲法の理念に基づき、国際平和の実現のために国連を初めとする国際的な場において実現可能な措置一つずつ積み重ねていくことが肝要であるとの立場をとっているところでございますが、防衛庁といたしましても、このような基本的立場から軍縮の進展のために今後とも可能な範囲で積極的に貢献してまいりたいと考えておるわけでございます。国連の各種会議には防衛庁からも職員を派遣いたしまして、現に御協力をしているところでございます。  また、現在わが国が進めている防衛力整備につきましては、わが国自衛のための必要な範囲内での整備である、いわば平時における最低水準の防衛力を保持しようとするものでございまして、これは決して他国に侵略的、攻撃的な脅威を与えるものではないと考えているわけでございます。わが国はこのような防衛力整備を行い、また日米安保体制を効果的に運用することによって平和と安全を確保する、これはわが国の安全に資するとともに、極東地域、アジア地域、ひいては世界の平和にも貢献することになると、さように考えている次第でございます。
  175. 園田直

    国務大臣園田直君) 力の均衡は話し合いをする足場にはなるものと考えますが、その力の均衡そのものが問題でありまして、これは一つの危険の要素を含んでおるわけであります。それは御指摘のとおり、米ソ両国が軍備増強によって力の均衡を図ろうとすれば、結局は最後に軍備増強による競争が過熱をして、火花を散らす懸念があることはすべての人々が考えておる懸念であります。これはどの国も考えておる懸念でございます。    〔理事堀江正夫君退席、委員長着席〕  したがいまして、私は一方話し合いをする足場をつくるために力の均衡というものは大事だと思いますけれども、その均衡は、先生指摘のとおり、軍縮、軍備管理、こういうものによって両陣営の軍備力を逐次下げながら、低い水準において力の均衡を保つと同時に、話し合いをすることが大事であると思います。いまおっしゃいましたとおりに、なかなか理屈では言いますが、困難な問題であると思いますが、私は絶望いたしておりません。両陣営の状態を見ましても、一方は軍備増強を叫びながら、やはり金利、インフレその他の問題で削減をしなければならぬという状態、またソ連の方もアフガニスタン、ベトナムあるいは各所に非常な軍備を使っておりまして、その軍備増強と相まってこれまた非常なつらさと弱みがあることは私はわかっておると思います。かつまたすでに極限に達してきまして、これを取り巻く各国ともこれをこのままほうっておけば、結局は自分を守るための軍備増強が最後には自分たちの命を縮めるということは思いをいたす段階ははや来たと、こう思いますので、私は明年度の軍縮総会ではいままでの議論から相当具体的な問題に移ってくると考えております。  したがいまして、近く行われる国連総会においては、そのことを念頭に置きながら、米ソ両国に対し、世界各国に対してこの問題を訴える所存でありまして、私は米ソの話し合いは必ず始まる、しかもその話し合いは決して絶望的ではなくて、私はある程度、スピードは別として、話し合いの方向にだんだんと詰まっていく、特にSALTIIなどの交渉というものから始まっていって、私は一つの具体的な問題も出てくるという判断をいたしております。
  176. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その考え方で具体化できる方向へぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。私はチャンスが、ずいぶんあると思うんですね。先ほどもちょっと問題提起がなされましたグロムイコとの会談予定されているようであります。何が話し合われるか私はわかりません。これも一つのチャンスであろうと思います。それから南北サミットが近く控えておりますね、十月に。いまブレジネフが出るとか出ないとかという、これは定かでないようなことが伝えられております。そういうチャンスを生かしながら、そして一つの仕上げといいますか、仕上げまではなかなか道のりが遠いと思うんですけれども、軍縮特別総会に臨む。その根回しと言ってもいい話し合いの場が南北サミットであり、あるいはグロムイコとの対話ではなかろうか。  最近の一つの事例を挙げれば、いま伝えられるところのこれからの外務大臣や総理大臣の日程を考えました場合に、いままで平和を貫くということをむしろ日本の国是として、それを貫いてこられた政府としても、このチャンスを私は絶対逃してはならぬ。あるいはもうすでにレーガンがブレジネフに対して書簡を提出して、首脳会談の意思を表明されたということも伝えられております。その可能性があるかどうかということはこれまた問題かもしれません。なかなかこちらが想像しているような、予測しているようなぐあいには事が運ばないというのが現状であろうと思います。  しかし、具体的にはそういうチャンスがあるわけでありますので、そういういま軍拡の方向へ行く道をさえぎる上からも、やっぱり世界の世論というものを結集する、あらゆる機会を通じて日本はイニシアチブをとっていくことが私は望ましいんじゃないだろうかということを常々考えているものですから、特に南北サミットあたりでは私は非常にいい機会だから、ぜひそれは強力に発言をしてもらいたい、こんないま願望を持っているんですけれども、できれば防衛庁あたりも一緒に行って、同じレベルの段階の人と、やっぱり大ぜいの人と話し合わなきゃならぬと思うんですけれども、その辺の所信をちょっとお聞かせ願いたい。特に南北サミットに限ってもいいです。
  177. 園田直

    国務大臣園田直君) まず、御発言がありました南北サミットヘの総理の出席でありますが、ちょうど考えてみると国会の最中でございます。したがって、総理の出席はなかなか大変だと思いますけれども、私は、先進国の推進役であり、かつまた、開発途上国の期待を一身に負っている日本からすれば、南北サミットは一般のサミットより重大であると考えておりますので、総理もそのお気持ちでありますが、何とかして国会のお許しを得て、一日でも二日でも出席をしたい。その後私がお許しをいただいて残ってやりたいと考えております。  もちろん、この南北サミットは、先般の準備会議で北と南の対決を避けて両方がおのおのの立場から世界の平和、連帯、共存というものを目標にいこうということでやっておりますから、そういうことについても一つの意味があるわけでありますが、ここで軍縮の問題を正式の議題に出すことはなかなか大変かとは考えております。なかなかむずかしいんじゃないかと思っておりますが、しかし、おっしゃるとおり機会はたくさんございます。私とグロムイコ外務大臣会談も、まあ微力でございますからどの程度のことになるかわかりませんけれども、私が一番関心を持っておりますのは、グロムイコとヘイグとの会談が九月に予定されておるはずであります。これからそろそろ話が進むと私は期待しておったわけでありますが、中性子爆弾の問題が出てきましたので、ちょっとひっかかると思いますが、私は、こういうことも一つの米ソ対話のきっかけになってくると、またそういうふうにわれわれは絶えず米側には意向を伝えてございまするし、ヨーロッパの国々も同じ意向だと考えますので、国連総会においては、時間を惜しみつつなるべく広範囲の方々と会って、いまの御発言の趣旨、私の考えている趣旨が具体的にいきますように努力をする所存でございます。
  178. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ちょっと前後して恐縮なんですが、最近というよりも先月の衆議院のどの委員会でしたか、淺尾さんが答えられた問題の中で、戦域核の配備、これがいま具体化しようとしているようですね。欧州では米ソ話し合って削減しようと、その削減された戦域核が極東に配備されたらこれまたえらいことになるんですね。その辺は具体的に何かいま話を聞いていらっしゃるのか、またそういう要請がないのかあるのか。あった場合に日本としてどういう対応をするのか、これが一点、あと時間がありませんので……。  それからもう一点は、あるいはちょっと先ほどもどなたかお触れになったと思うんですが、軍事協力の問題で、日米共同開発を兵器についてしようと、そういういま考え方があるというようなことを報道で知っております。  この二つの点について、政府側としてはどういうふうにその問題を現在受けとめ、事実あるのかないのか、そういうことが将来考えられるのかどうなのか。あった場合にどういうふうに分析をして日本としてはどう対応するのか、この二点について伺って私の質問を終わることにいたします。
  179. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの問題は、米国ではそういうことを研究し、調査をしているという報道は聞いておりますが、正式にも私的にも何らそういう通報、相談は受けておりません。  淺尾局長がこの問題に関して、そういう話があればこれに応ずる用意があるという趣旨の発言をしたということでありまして、これは非常に重大でございますから、局長自身に問い合わしてその記録を拝見しましたが、その発言の趣旨は、極東における戦域核の問題を含め、必要があれば適宜わが方の考え方を米側にも伝えていくこととなろうかとの考え方を述べたものでございまして、話し合いに応ずる用意という意味ではございませんでした。  なお、いずれにせよ、いまは話がありませんが、極東配備について話があった場合には、安保条約上いかなる核兵器の持ち込みも事前協議の対象でございます。事前協議が行われる場合、政府としては常にこれを拒否する所存であることは従来と変わりはございません。  第二項は防衛庁長官の方から……。
  180. 和田裕

    説明員(和田裕君) 第二点の軍事技術協力の点について申し上げます。  確かに新聞等では軍事技術協力ということがよく出ておるんでございますが、この話は、ハワイにおきますところの事務レベル協議、それから大村長官がワシントンに行かれましたときにアメリカ側から一般論のかっこうで出ておりまして、一般論と申しますのは、これまでアメリカの方から日本に非常に高度の軍事技術の提供があったということですが、こういった一方的な技術の提供というのは、これから見直す必要があるのではないか。むしろ双方の相互交流というかっこうに持っていきたいと、こういう一般論がございました。  しかしながら、具体的な技術協力とか、あるいはいまおっしゃられました共同開発ということについては、私ども話を伺っておらない、こういう状況でございます。
  181. 立木洋

    立木洋君 防衛庁長官に最初にお尋ねしたいんですが、先ほどいわゆる防衛予算の中で、後年度負担分の問題が、二兆二千六百億という膨大なものになるというお話がありました。それがこれからの年度別でどういうふうになるかということで、五十八年度が一兆七百億という金額が示されたわけですが、先ほどの同僚議員の質問で、五十七年度はGNP一%に抑えるという趣旨の答弁がなされました。後年度負担が一兆七百億という、五十八年度になると、これは膨大なものですね。後年度負担が単年度で一兆七百億、これはGNPが五十八年度どれぐらいになるかということがありましょうが、大体の伸び率から考えられるわけですけれども、五十八年度一兆七百億という後年度負担をすでにいまの時点で抱えておって、五十八年度予算長官自身、一%で抑えていくという自信ございますか。
  182. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいまお尋ねございました五十八年度の歳出額、確かに約一兆七百億円、いまのところの見込みでございますが、これが五十八年度防衛関係費全体にどういう影響を持つか、これはほかの面も見ないと、いまのところ断定できないわけでございます。  また、GNP自身のあり方もございますので、五十八年度一%を上回るか下回るか、両者の関係もございますので、現在の事態ではっきり申し上げることは困難ではないかと思いますが、まあ強いて感想を言えと言われれば、現在のところ、五十八年度直ちに上回るようなことには、このGNP自身が非常に縮小するとか、そういうことが起こらない限りは、すぐは出てくる可能性がそう大きくはないのではないか、そういう感想です、強いて言えば。
  183. 立木洋

    立木洋君 この問題はまた別の機会でよくお聞きしたいと思うんですけれども、長官はGNPがどうなるかということに主な要素を置かれたように私はお聞きしたんですが、しかし、大臣自身として、GNP一%で抑えるといういままでの閣議の決定を守ることを忠実にやられるのかどうなのかということが大切なんですが、その点についてはいささかぼかしたような答弁だというふうに判断してよろしいですか。
  184. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 一兆七百億円というのは、五十八年度の歳出額の現在の見通せる金額でございますが、これが五十八年度の歳出予算にそのまま計上されるということはなくて、また後年度に四年とか、その中に……
  185. 立木洋

    立木洋君 ちょっとさっき言ったのとは違いますよ、それは大臣
  186. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ですから、これだけでもって判断するわけにはいかないということを申し上げたわけです。それともう一つの要素はGNP、私はGNPだけだということで申し上げておるわけではございません。
  187. 立木洋

    立木洋君 まあきょう同僚議員の質問を聞きながらちょっと感じた点があったので、引き続いてこの問題よくお聞きする機会を設けたいと思います。  外務大臣、しばらくお会いしなかったんですが、この期間いろいろなことがございました。日米共同声明があって、大臣になられてから、第一に大変な問題でしたのは日米事務レベル協議、これは大変でしたですね。いろいろな議論がありました。それからその後、大臣自身がいわゆる十階建て論を批判するという発言もございまして、いろいろありました。その後また宮澤長官が、情勢について日米間では認識の違いがあるという趣旨の発言もなさって、若干後で訂正されたようでありますが、またさらには、防衛庁長官も訪米された後、情勢に対する基本的な認識の一致はあるが、対応に若干の違いがあるという趣旨の答弁がなされた。しかし、私は一連のいままでの動き、これをどう分析するかということは別として対ソ認識、とりわけソ連の脅威という問題についての認識の違いが依然として根底にあると思うんです。私は、非常に大切な問題なので、その点についてのお考えをまず大臣からお聞きしておきたいんです。
  188. 園田直

    国務大臣園田直君) ソ連の世界各所における動向、アフガニスタンあるいはポーランド、ベトナムあるいは南アフリカ等の行動、特に極東における軍備の増強、わが国としては北方四島における配備の増強、こういうものは私も同様懸念を有するものであります。しかしながら、その懸念がどのような方向に発展していくかということは、これは一方的な問題ではございませんので、少なくともこれは日ソの問題というよりも、米ソの問題が大きく影響するわけであって、米ソが依然として軍備競争対決の姿勢を高めていくかあるいは話し合い、緩和の方向へ進むかによってこれは変わってくる。こういう意味で、ソ連に対して非常な懸念を持っていることは事実でございます。
  189. 立木洋

    立木洋君 塩田さんにお聞きしたいんですが、安保事務レベル協議で、私は大変ユニークな名前をもらってこられたらしいので淺尾さんにお聞きしようかと思ったんですが、塩田さんも出席されておったのでお聞きしたいんですが、あそこで米側が述べられたんでは、中東や朝鮮半島はいつ火を噴いても不思議でない差し迫った情勢にあるということが米側から提起されましたが、こういう脅威の認識については共通の認識に立たれたんでしょうか。
  190. 塩田章

    説明員(塩田章君) いつ火を噴いてもという言葉であったかどうかは覚えておりませんが、ヨーロッパと中東と朝鮮半島が最も緊張した地区であるという意味のブリーフィングはありました。
  191. 立木洋

    立木洋君 いやいや、共通の認識に立たれたかどうかです。
  192. 塩田章

    説明員(塩田章君) 私どももそう思います。
  193. 立木洋

    立木洋君 長官、いまの塩田ざんの発言を聞いて私はちょっと遺憾に思ったんですが、長官は前々も、現在でもそうですが、脅威という言葉を使われる場合に潜在的脅威ということを言われますね。これはどういう意味かということはもう明確ですから私は言いませんが、この潜在的という言葉を取り除く必要をアメリカに行ってからお感じになったかどうか。つまり、アメリカの言われておるソ連の脅威という認識と共通の認識に立たれたのか、それとも現在でも依然としてソ連の脅威については潜在的脅威であるという認識に立たれておるのか、その辺いかがでしょうか。
  194. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 現在においても、ソ連の軍事力の増強は、わが国安全保障にとって潜在的脅威の増大であると考えております。
  195. 立木洋

    立木洋君 アメリカは潜在的な脅威とは言いませんね。明確に脅威というふうに言いますね。これはそのとおりですね、違いがございますね。
  196. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の会談で先方の用いている言葉はスレットという言葉でございますから、直訳すればまあ脅威ということになるかもしれません。しかし、内容は軍事能力がこれこれしかじか増大しているということを強調しているのでございまして、中身から言うと、私どもは潜在的脅威の場合に軍事能力そのものを考えておるわけでございますので、主観的な意図は含まっていない、そういう意味では同じことを言っているんじゃないかと思います。
  197. 立木洋

    立木洋君 そうしたら、アメリカ自身も、ソ連の脅威に関しては攻撃する意図は有していないと、ただ単に軍備力の増大だけだというふうにアメリカが述べたということでいいんですか。
  198. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の会談によりまして、米側からは軍事能力が非常に増大しているというお話はかなり出たわけでございますが、その軍事力をいかなる地域に行使するであろうとか、そういうことは一切なかったわけでございます。ただ、これまでと違いまして、相当多い地域に同時に行動できるだけの力を備えてきているんではないかと、またそれを背景に使っていろいろ政治的な影響を行使する可能性が多いと、そういう話があったわけでございます。
  199. 立木洋

    立木洋君 長官、あなたまともにこうした場で、アメリカが感じておるソ連の脅威ということをそういうふうに受けとめておられるとしたら、私は大変な考えだと思うんですよ。これは御承知のように、アレン大統領補佐官が日米首脳会談が始まる前に、ソ連の脅威という問題で徹底して日米首脳間での認識を確立すること、一致をかちとること、これがきわめて重要だとしてあの日米首脳会談がやられたんです。いままでの関係の中では、アメリカ側が防衛予算数字、どれだけふやしてくれという数字を出してくるかとか、具体的な数字を出してこないからといって、甘く判断しておったとかいうふうにいろいろなことが新聞報道されましたが、そうじゃないんですよ。問題はこの脅威ということをどう認識させるか、日本に対して。そのことによってこれほど重大な脅威があり、大変な事態になっているにもかかわらず、軍備増強をやらない、これは日本はけしからぬじゃないかという、こういうキャンペーンをやっていくという姿勢にあったことは明白なんですよ。それがアメリカ自身が、攻撃の意図はなくて潜在的な脅威だと、日本と同じ考えに立ってソ連の脅威を言っていると。そうしたら、日米共同声明が起こってから今日までの事態の中で、ただ単にあなたがおっしゃるように対応の違い、どんどんふやしてくれというから、二階建てるのだったらできるかもしれぬけれども、十階一遍に建てられないんじゃないんです。そこに問題があったのではなくて、いまの情勢の把握にどうだったかという点に基本的な問題があったのです。  アジア局長おいでですね。局長、この間韓国と話し合いなさったときに、韓国が述べられた北の脅威という問題の深刻な進攻状況、これについてあなたは、そういう韓国が述べられておる北の脅威という考え方には共通の認識は持たないということを前回衆議院で述べられておりますが、それは間違いありませんか。
  200. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 恐らくとりで論についての御質問に対するお答えだったと思いますが、私が申し上げましたことは、韓国側がとりで論と主張しておることそれ自身は韓国の主観的な意図としてはわかると、しかし日本側としてはそれと同じ見方を共通にするわけには必ずしもいかないというふうに御答弁申し上げた経緯がございます。
  201. 立木洋

    立木洋君 その後続けて、北の脅威については北の大がかりな進攻はないと考えていると、そのとおり述べておられますね。
  202. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 全面的な進攻ということは考えられないという趣旨で申し上げたつもりでございます。
  203. 立木洋

    立木洋君 大がかりと全面的がどれぐらいの違いがあるか、まあいいでしょう、そういうふうに述べられておる。  ところが、二月に米韓大統領の間で共同声明が交わされました、ことしの二月に。それから、五月二日には米韓の間で安保会議での共同声明が発表されていますね。あれについては、まさに北の脅威、今日の事態の北の脅威の深刻さ、これについては完全な一致を見たという表現がありますけれども、米韓は、いわゆる今日の情勢の脅威という問題についての認識ではまさに完全に一致しておるということを私は共同声明から見ることができるんですが、アジア局長はどうお考えでしょう。
  204. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 御指摘のとおりかと存じます。
  205. 立木洋

    立木洋君 園田さん、これは大切なことなんですよ。つまり、いまの脅威という問題をどうするかというのは、軍備がどんどんふえておるという問題、つまり力の均衡がどうなったか、バランスがどうか、これは一つの問題ですよ。そのことについていろいろ論じられてきた。立場が違ってもそれはある意味ではわかる。しかし、脅威というのが意図を持って、どこに向けられてその脅威が進行していくか。これは長官自衛隊が今後どうするかという行動と直接関係があることなんですから、これは私は後でお聞きしますけれども、この脅威という問題をどう認識するかというのは非常に大切なんですよ。そして、だから私がここで言わんとしたいのは、まさに米韓の間では脅威が完全に一致している、脅威について。日韓の間で脅威のとらえ方が違うんですよ。ところが、米日の間で脅威のとらえ方が完全に一致しているんですか。私は、こんなパズルは解けないと思うんですよ。それだったら、あなたはアメリカと脅威の問題で完全に認識が一致しているというんだったら、韓国との間だって完全に脅威の問題で認識が一致するはずですよ、米韓の間では完全に脅威の問題では認識一致しているんですから。  その問題について、この質問の終わりになりますが、後続ける予定がありますから、また外務大臣には次の機会、八日の日でしたか、大分お聞きする時間がありますので、この問題についてのいまの時点での大臣のお答えだけ聞いておきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  206. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本米国は同盟関係であります。韓国と日本は友邦国ではありますが、同盟関係にはございません。米国と韓国は同盟関係でございます。したがいまして、同盟国同士が北のことについて議論あるいは判決を与えることは、これはあり得ると思いますが、日本は同盟国ではありませんから、脅威とは当事者国がどう考えるかという主観的な問題でありまして、日本がこれに口を差しはさむべき筋合いではない、こう考えておりますから、私との会談では、脅威であるとかあるいは侵略の可能性があるとかという話は一切いたしておりません。ただ、現状認識で南北の間が緩和してない、依然として緊張が続いているという認識については一致をいたしました。
  207. 立木洋

    立木洋君 まあ、いままでの外務大臣と若干違うニュアンスの発言をされたわけですね。しかし、日本のいままでの外務大臣というのは、北の脅威が存在ているかしていないかという認識の問題では、国会の席上ですべて述べてこられたことなんです。それが大きな問題になったこともありますよ。だから、この認識の問題というのは非常に大切な問題で、私はこれ以上園田さんにお尋ねしようとは思いませんが、今度、次の八日の日には長官にはお会いできないから、長官の方に少しいろいろこれから後お尋ねしたいんですが、この脅威という問題は、つまりおそれですね、このおそれに対してどう対処するかということが、防衛研究でもガイドラインでも最大の問題になっているんですよ。それに対してどう対処するか。このおそれの問題についての認識がいいかげんであって、しかもアメリカとの間でガイドラインを結びながらおそれの問題を異なる状態で判断しているような事態、これは大変なことになっていくんですよ。  私は、この脅威という問題が、現実に対して日本がどう対応するかというこのおそれの問題として見た場合には非常に大切な問題があるので、ちょっとお尋ねしていきたいんですが、最初に塩田さんにお答えいただければありがたいんですが、陸上、海上の場合ですね、警戒態勢というのには何段階あるのか、それがどういうふうな名称で呼ばれているのか、その点ひとつお願いしたい。
  208. 塩田章

    説明員(塩田章君) 陸上も海上も現在ありますのは三段階でございます。  名称は、陸上の場合非常勤務態勢、海上の場合不慮事態対処準備という名前で、海の場合は一、二、三ではなくてA、B、Cという呼称を使っていますが、いずれにしても三種でございます。
  209. 立木洋

    立木洋君 これの根拠法ですね、根拠法というか、訓令といいますか、これは何に基づいてそういう段階が決められているんでしょうか。何の何条、いついつ出された訓令の何々とちょっと説明していただけませんか。
  210. 塩田章

    説明員(塩田章君) まず法的な根拠でございますが、これは特に設置法の何条ということではなくて、元来の自衛隊の管理体制の問題でございますから、特にどの条文でという意味での根拠法規があるわけではございません。通常の自衛隊自体の管理体制の問題であります。それからどういう形で出しているかという点につきましては、陸上幕僚長、海上幕僚長の達でございます。
  211. 立木洋

    立木洋君 五十一年でしたか、ミグが来ましたでしょう。あのときに自衛隊が移動した、行動をとったということで、私大変興味を持ってあのテレビずっと見たんですけれども、個々の場面でどなたが何を発言したかというようなことをお尋ねするつもりはありませんが、あれはいま言われた何段階の措置をとられたことになっているんでしょうか。
  212. 塩田章

    説明員(塩田章君) 函館の第二十八連隊につきましては、当初は第一種、つまり一番程度の軽いものであります。あれはたしか九月六日だったと思いますが、八日以降は第三種に入っております。それからその上級部隊であります十一師団は第二種に入っております。
  213. 立木洋

    立木洋君 この一種の命令、二十八連隊ですか、一種の命令出したとき、それから三種の命令出したとき、それから十一師団の二種の命令出したとき、それぞれ一番高いレベルの方はどなたの命令だったのかちょっと……。
  214. 塩田章

    説明員(塩田章君) これはすべてその各部隊の部隊長でございます。といいましても小さな部隊ではございませんが、連隊の場合は連隊長、師団の場合は師団長でございまして、つまり函館の二十八連隊について言えば二十八連隊長が出した、それから第二師団については第二師団長が出した、こういうことでございます。
  215. 立木洋

    立木洋君 そうすると、その命令を出したそれ以上の、もちろん防衛局長もあのときは知らないと言っていましたね。それ以上は全然知らなかったわけですね。
  216. 塩田章

    説明員(塩田章君) 命令権者としてはいま申し上げたとおりでございますが、実態を申し上げますと、当時ああいう事件の起こった時期でございましたので、防衛庁長官から北部方面総監に対しまして、電話、口頭ではありますけれどもいわゆる注意喚起の指示といいますか、口頭指示がございまして、それを受けまして北部方面総監から師団長、師団長から連隊長というふうにそういった指示が伝わっております。そういう意味を受けてやっておりますので、命令権者とは違いますけれど、当時の時点におきまして上級司令部が知らなかったわけではございません。
  217. 立木洋

    立木洋君 いま私がお尋ねしたのは、自衛隊に関するのみだけです。  今度お尋ねするのはガイドラインの問題でちょっとお尋ねしたいんです。ガイドラインの場合のおそれに対する対処ということですね。これは動かなければならないような状態になる場合に、いわゆる七十七条の待機命令よりも早い場合がある、このガイドラインで言うおそれの場合ですね、ということをあなたが前の委員会でお述べになっておりますが、このガイドラインでは、このおそれに対する対処としては何段階ということがいま研究されているのか。それから名称が決まっておるのかどうか、そこらあたりについてちょっとお伺いします。
  218. 塩田章

    説明員(塩田章君) ガイドラインでの防衛準備態勢をどうするかということは、テーマとしては取り上げることになっておりますけれど、現実には研究が余り進んでおりません。したがいまして、名称等にももちろんまだ入っておりません。
  219. 立木洋

    立木洋君 それで、もう一つは五十四年に原局長が述べた答弁では、このガイドラインのおそれの判断をだれがするかという問題については最高レベルだと、言うならば国防会議ということを言われているんですね。ところが、塩田さんが五十六年二月十六日に述べられた答弁では、一番最初の段階からすべて最高首脳といった段階までいくかどうかということは問題があると。だからいわゆるおそれの段階で自衛隊が行動を始める場合、これは最高の段階までいかないで行動が始まることもあり得るというふうに解釈ができるんですが、このおそれの段階というのは最高レベルにいかない場合、だれが判断するんですか。
  220. 塩田章

    説明員(塩田章君) 先ほど申し上げましたように、中身ができておりませんので、どういう段階でだれがということももちろんまだ今後の課題でございますけれど、最高といいます場合には、先ほど先生国防会議とおっしゃいましたけれど、総理大臣、それから総理大臣までいかなくてもいいような段階区分がある場合には、恐らく私はいまの時点で、これ想像でございますけれども、防衛庁長官ということになるんではなかろうかと思いますが、先ほども申し上げましたように、まだ中身ができておりませんので、それは推測でございますから、その点でお含みいただきたいと思います。
  221. 立木洋

    立木洋君 いや、原さんが言ったのは、原さんが言ったと言えばトップレベルあるいは国防会議と言っていいんですよ。私もそういう考えで述べたんですが、しかし、それならばあなた五十六年二月の答弁なさるときも、そういう答弁されたらいいんじゃないですか。あなたが二月の段階で答弁したのは、いや最初の段階から最高レベルにいくかどうかという問題がございますよと言ったら、これはそこまで研究がいっていると、あなたの頭の認識の中にそこまでいっているんだから、そういう答弁が出てきたというふうにしか判断できないじゃないですか。原さんの答弁から変わったということには変わった理由があるというふうに私は思うんですよ。だからあなたがいまの段階で、いやまだ研究がいっていませんからというふうにお逃げになるんではなくて、頭の中にあるならあるとおりおっしゃったらいかがですか。  それで、最初からそうならないならば、いわゆる制服の段階で判断することもあり得る。先ほど自衛隊の場合ですと、これはまさに述べられたように、警戒態勢では三段階ある。これは現実に、グが来た場合に弾薬まで持って移動したんですからね。いざとなったら発砲する事態も起こり得るわけですよ。いわゆる待機命令直前の段階までいっているわけですよ、第三種。その待機命令をどこまでの段階にするか、これはいろいろあるかもしれませんけれども、しかし、そこまでいっているんです、第三段階。準備における、警戒態勢における最高段階までいっているというのは間違いない、二十八連隊というのは。ところが、これは防衛庁長官が命令出したものじゃないんですよ。そういうことがあなたの頭の中にあって、ガイドラインの場合でも当然そういうことはあり得ると、またそういうふうに研究していきたいという意図が反映したものというふうに感じられても不思議はないと思うんですが、いかがですか。
  222. 塩田章

    説明員(塩田章君) ちょっと、おわかりとは思いますけれども、事柄分けて申し上げますと、いま最初に言いました陸海の警戒態勢の話は、要するに警戒態勢の問題でございます。で、別途防衛研究というのをことしやりましたということを言いましたが、ここでも警戒態勢区分については、自衛隊の警戒態勢区分について研究しました。これは言うなれば部内の管理体制の問題でございますから、それは軽いものについては、今後警戒態勢をつくる場合でも、部隊の指揮官にゆだねるケースはあり得るだろうと思っています。これはまだつくっておりませんけれども、そういう警戒態勢と、いま先生お話防衛準備、これはおのずからやっぱり事柄が違うと思うんです。そういう意味で防衛準備についてはまだ、先ほど来申し上げておりますように、自衛隊自身の防衛準備の態勢についても、今度の防衛研究の中では研究はしましたが、段階区分の研究まで至っておりません。それは今後やはりわれわれの課題だと思っています。  それと今度は米軍との間の防衛準備をさらにどうするかという問題がいまお尋ねの点でございます。これはやはり先ほど申し上げましたように、いまの時点ではわからぬ、推測だと言えばそのとおりですが、先生がちらっとおっしゃったように、制服にゆだねるような段階があるとはちょっと考えられない。やはり防衛庁長官あるいはさらに総理大臣ということになるのではなかろうかということを申し上げたわけであります。
  223. 立木洋

    立木洋君 そうすれば事実上五十六年二月十六日の発言をあなたは訂正されたわけですよ。さっき言ったのは、これは有時の場合のいわゆるおそれの場合、いわゆる防衛体制ですよ。これはもちろん警戒態勢ではない。しかし、最初の段階から最高レベルまでいくかどうかわからないというのです。そうでない場合もあり得るかもしれないという趣旨のことを二月十六日述べている。これはあなたの言ったとおり言えば、最初の段階からすべて最高首脳といりた段階までいくかどうか、それはとこう言っているのですよ。これは二つのニュアンスがありますからね。ところが、いまの場合は最高レベルにいくというふうにあなたは訂正されたというふうに判断していいですね。
  224. 塩田章

    説明員(塩田章君) 何べんも申し上げますように、まだ決まったわけではないのでお答えしにくいんですが、最高というのは、防衛庁長官はここにおられますけれども、最高ではないわけでございまして、最高というのはやはり総理大臣ということになりますから、いきなり総理大臣にいくというわけではないということを申し上げたわけです。ですから、私はいまの引用されました私の答弁を変える必要はないと思っております。
  225. 立木洋

    立木洋君 もう時間がないので、その問題もう少しお尋ねしたいんですがあれですが、つまり、このガイドラインで行われるいわゆるおそれの場合、七十七条の自衛隊が行動する場合には隊法で決められておりますね。ところが、ガイドラインで米軍と一緒に行う場合の自衛隊としての行動、これ一緒に行うとしても、やはり根拠法が要るわけでしょう。勝手に自衛隊が動けるわけではない。とするならば、いわゆる七十七条待機命令と、ガイドラインで言われるおそれとの段階区分がまだ決まっていないと言うけれども、いわゆるおそれの段階、七十七条の待機命令が出る段階に至るまでの行動というのは、いわゆるある程度制服で決められていく可能性もあるんではないかという懸念が依然として残ります。  それと同時に、そうなれば一つはそういうふうなことが自衛隊の根拠法がないのだから、ガイドラインでそういうことを研究すること自体がおかしいのではないか。もしか研究して、そんなら七十七条に至るまでの最高の段階、待機命令がもう直ちに出るという前に至るまでの行動が、いわゆる最高レベル長官、申しわけないけれども、最高ではないそうでございますが、そこまでもいかないと、長官までもいかないという制服レベルの行動というのがあり得るとするならば、それは根拠法がないわけだから、そういう研究はすべきではない。その点は長官いかがでしょうか。
  226. 塩田章

    説明員(塩田章君) 七十七条のおそれの以前に、ガイドラインに基づくおそれという段階が出てくるであろう。これはそういう可能性があることは私がお答えしたとおりであります。その際にいま申し上げましたように、段階区分を設けて、それでこの段階にはどういうことをするということを今後決めていくわけですが、その場合に先生はいま根拠法規がないからできないという趣旨のことをおっしゃいましたが、いま私言っているのは、この段階で何をするという場合に、一つ一つの行動については、それは法律の要るものは法律に従ってやるわけです。現行法の規定に従ってやるわけです。ですから、いまのガイドラインに基づく防衛準備の段階をつくること自体について、どっかに根拠法規を設けてつくらにゃいかぬというふうには私どもは思っていません。その段階区分に従って行動するときに、その行動はもちろん現行法に従った行動でなければならない、こういうふうに思っているだけであります。
  227. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 政府委員の答弁のとおりでございます。  また、五十六年二月ですか、あのとき私も同席しておりまして聞いておったわけですが、あのときのお尋ねがシビリアンコントロールの関係で、制服に任せっきりにするのかという点のお尋ねが主であったと思います。それで、やはり最高首脳の総理を含めて、制服に任せっきりにしないでやるようになるだろうということを政府委員が述べたものと私は理解しているわけでございます。
  228. 立木洋

    立木洋君 これに対してさらに反論して質問を続けていけばもう時間がないそうでありますからできませんけれども、しかし、私は先ほど自衛隊が弾薬まで装備をして事実上戦闘が開始されるか直前までいくという段階までいったという、あのテレビというのは、これは単なるテレビの劇映画を見ているようなものじゃないんですよ。現実に日本が直面している重大な事態なんですね。それがあなたがおっしゃるように、そういう問題が想定されて研究されるというのに、一方では現行法に基づいてやると言われながら、制服によって行動が危険な局面にまでいってしまうという現実が現にあるわけですから、この問題の危険さということは、これは今後の問題としてやっていきたいと思うんです。  ただお尋ねしたいのは、その場合に、一番最初に申し上げましたように、アメリカ日本の脅威に対する認識の違い、つまりおそれに対する認識の違いですね、この認識の違いがそれが最高レベルの違いではなくて、制服が現実に直面している場合、アメリカ日本の間で現実に起こってきているこのおそれをどう認識するかということで食い違いが起こってきた場合、これは大変な問題になりますよ。その食い違いが起こってきた場合、私はアメリカの判断が優先されると、いわゆる日米首脳会談から今日に至るまでの経緯を見てくると、ソ連の脅威ということで、事実上アメリカ考え方に対して同調させられて、軍備をふやしていくというふうな方向にくみされていってしまった。こういう経過を見るならば、私はこのおそれに対する判断の中でアメリカ日本の違いが起こった場合には、私はアメリカの危険なそういう対応に日本が事実上組み込まれて、戦争に入ってしまわざるを得ない事態になり得ると、こういう危険なこともあり得るということも私は指摘しておきたいと思うんです。その点について、お二人の大臣から何か御意見があれば聞いておいて、次の機会にまた私は質問させていただくことにしたいと思います。
  229. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) おそれに関連して、アメリカの言うままになるんではないかということをお尋ねになったのでありますが、私どもといたしましては、安保条約は対等の関係に立っていると思うわけでございます。また、ガイドラインの研究もそれを前提に行っておるのでございまして、指揮権はそれぞれ別個に行使されるというかたい前提に立っているわけでございます。なればこそ調整機関の設置ということも研究事項の重要な項目として予定されておる。そういう趣旨を貫いた場合には、お説のようなことは起こらないものと考えております。
  230. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまのおそるべき事態の予測というのは、一方的にアメリカだけではなくて、米ソ両方の態度にあると考えておりまするので、ソ連に対しては話し合いの糸口をつかんで話し合いを進めていきたいと存じますし、米国に対してはわれわれの意向をしばしば伝えたいと考えております。
  231. 田渕哲也

    田渕哲也君 まず防衛庁長官にお伺いをしたいと思います。  本年度防衛白書では、ソ連の軍事力の増強について「わが国安全保障にとって潜在的脅威の増大である」、このように書かれているわけであります。  そこで、私がまずお伺いしたいのは、現在の防衛計画大綱策定の時点、つまり昭和五十一年の十月ですね。その時点ではソ連の軍事力についてどのようにとらえていたのか、まずお伺いをします。
  232. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、防衛計画大綱策定の前から周辺諸国の軍事能力、すなわち潜在的脅威を念頭に置いて防衛力整備を行っている旨国会においても申し上げてきておる次第でございます。したがいまして、大綱策定の前提条件が大きく変化したので手直しが必要であると現在考えておるわけではございません。
  233. 田渕哲也

    田渕哲也君 政府がソ連の軍事力を潜在的脅威であるという言葉で表現したのは、私の記憶によりますと昭和五十四年の二月の衆議院の予算委員会においてからだと思います。それ以前にそういう言葉を使った事実はありますかお伺いします。
  234. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁わが国周辺諸国の軍事能力、すなわち潜在的脅威を念頭に置いて防衛力整備を行っていることは、昭和四十年代におきましても国会等でしばしば申し上げてきたところでございます。ソ連の軍事力について潜在的脅威に当たるということを申し上げましたのは、昭和五十一年が最初であるように考えております。
  235. 田渕哲也

    田渕哲也君 去年の十一月の衆議院の内閣委員会において大村防衛庁長官はこのように言われております。脅威というのは侵略する能力と意図と結びついて顕在化する。現在はそこまでいっていないから、この侵略する能力に着目して潜在的脅威と判断しているわけだけれども、ソ連の軍事力を潜在的脅威であると判断しても、決してこれを敵視することを意味しない、このように言われておるわけです。  そこでお伺いしたいのでありますけれども、敵視しないということであっても、この潜在的脅威というものは、これは大きな要素として防衛計画を立てる場合に影響力を持つかどうか、この点はいかがですか。
  236. 塩田章

    説明員(塩田章君) いま大臣からもお答えしましたように、防衛計画大綱をつくりますときにも、その時点における周辺諸国の軍事力、いまで言いますところの潜在的脅威というものを注目して考えておることは事実でございまして、やはり防衛計画を立てます場合に、そういった意味での周辺諸国の軍事能力というものを着目することは当然であります。
  237. 田渕哲也

    田渕哲也君 現在防衛白書の中では、ソ連だけを潜在的脅威として規定をしておりますね。ほかの国の軍事力についてはそういう言い方をしておりません。現在わが国はそういう判断ですか。潜在的脅威としてわれわれが見ているのは、ソ連の軍事力だけであるというふうに考えていいわけですか。
  238. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 今回の白書について潜在的脅威が記述されているのはソ連についてであります。
  239. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうすると、わが国防衛計画を立てる場合には、ソ連の軍事力のみを念頭に置いて立てるということでいいわけですか。
  240. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ソ連の軍事的能力が増大したことは客観的な事実でございます。これを私どもは「潜在的脅威の増大」というふうに表現をいたしているわけでございます。一方におきまして、わが国は平和憲法の精神に従いまして、平和を維持するための努力を続けているわけでございますので、潜在的脅威があるからといって、直ちにこれを敵国視するということはいたしておらないわけでございます。私どもといたしましては、潜在的脅威の事実は一つの要素として念頭には置いておりますが、それに直接かかわりなく、大綱の基本的な考え方に従いまして防衛力増強に努めるというふうに考えているわけであります。
  241. 田渕哲也

    田渕哲也君 北朝鮮についてはどう見られるのか。朝鮮半島の平和と安定は、わが国の平和と安全にとってきわめて重要である、こういう認識を政府は持っておられると思います。とするならば、もし北朝鮮の軍事力というものが、朝鮮半島の平和と安定にとって脅威であるとするならば、すなわち北朝鮮の軍事力はわが国の平和と安全にとって脅威であるということになると思いますけれども、この点はいかがですか。
  242. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 朝鮮半島の平和と安全が続くことは、わが国にとりましても重要な関心事であります。また北朝鮮の最近における軍事力の増強ということにつきましても、これもまた客観的な事実であると私考えております。しかしながら、これだけを目しまして北朝鮮の軍事力がわが国の平和と安全にとって潜在的脅威であるということを申しますことにつきましては、必ずしも国益に沿うものでない。これは昨年秋の政府としての統一見解でございます。
  243. 田渕哲也

    田渕哲也君 わが国の国益に沿うものでないということは、ちょっと余分なことだと思うんですね。本当に脅威である、潜在的脅威であるかどうかという判断をするということと、どう表現するのが外交上プラスかということと、両方の要素があると思うんです。国益に沿わないということは、むしろ後者のウエートから政治的にそういう表現をしておるんだともとられるわけであります。  私はそこで外務大臣にお伺いしたいのですけれども、ことしの日米首脳会談で行われた共同声明で、在韓米地上軍の維持というものをわが国が評価しております。それから同時に、日本を含む東アジアの安全にとって重要である朝鮮半島の平和維持に努めるというようなことが書いてあります。これはやはり朝鮮半島の平和、安定というものが、わが国の平和と安全にとってきわめてかかわりが深い、だからこそこういうことが日米共同声明で行われたと思うんですね。大臣は先ほど、日韓の間には同盟関係がないから、北朝鮮が脅威であるとかないとか、わが国が言う立場にはないと言われましたけれども、日米共同声明で朝鮮半島や韓国のことに触れておるわけです。これは、わが国の平和と安全に関係があるから触れたわけでしょう。とするならば、北朝鮮がわが国にとってどういう存在であるかということは、日本としての判断は当然持つべきだと思うんです。この点はいかがですか。
  244. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮半島で南北の間に厳しい緊張状態があることは事実であります。なおまた、韓国が北朝鮮を脅威として認識していることは承っております。これについて、情勢判断及びその他について一言で申し上げたいと思いますことは、日米首脳者会談後、プレスクラブで鈴木総理が、北鮮の南への軍事侵略の可能性をどう見るかと、こういう質問がありまして、これに次のように答えております。北鮮は軍事力の整備を図っているが、さきに米韓首脳会談でレーガン大統領は全大統領に対し在韓米軍の駐留継続をはっきり約束された。これは韓国の安全のみならず、アジアの安定のために貢献するものであり、レーガン大統領の決断である。かかる事情のもとで、北鮮の南進は考えられない、こういう答弁をしております。  いま長官からお答えになりましたとおり、私も隣国であり友好国である韓国及び朝鮮半島の平和と安定はきわめて大事であるとは思っておりますけれども、同盟国である米国日本立場が違うことは、これまた当然でありまして、共同声明で述べられた文章は、大統領と総理大臣アジアの平和と安定に対する双方の関心を確認をしたということで、次に中国、次に「日本を含む東アジアの平和と安全にとって重要であるものとして朝鮮半島における平和の維持を促進すること」、こういう文章を出しております。  次に、「総理大臣と大統領は、在韓米地上軍を維持するとの大統領の決定及び本年一月の総理大臣のアセアン諸国訪問に最近みられたように、この関連で日米各々が果しているそれぞれの役割を高く評価した。」、この二カ条で明瞭であると考えております。
  245. 田渕哲也

    田渕哲也君 韓国の問題は後でもう少し触れることにしまして、もとに戻りまして防衛計画大綱の問題ですけれども、やはりわが国を取り巻く情勢の中の潜在的脅威というのはソ連であります。北朝鮮はそれほど潜在的脅威ではないという答弁があったわけでありますから、潜在的脅威というのは、ソ連の軍事力だと言っても差し支えがないと思うんですね。白書にも見られますように、これが非常に増大しておる。私はこれは日本防衛計画を立てる上できわめて重要な情勢変化であると思うんです。政府は、防衛計画大綱はこの水準達成までは見直さないということでありますけれども、防衛計画大綱というのは、それで決めた水準に達成するまでは、その間情勢変化がいかにあろうとも、これ見直さなくてもいいものかどうか、どういう性格のものか、これをまずお伺いしたいと思います。
  246. 塩田章

    説明員(塩田章君) 先ほど来、要するに防衛計画大綱を見直すことがあるとすれば、どういう場合かということを三つの点を挙げて御説明を申し上げているわけですが、やはりそういった各要素の総合的な判断ということになろうかと思います。ですから一つの、たとえば国際情勢が変わったではないかということだけを取り上げて、それだけで大綱を見直すべきかどうかということになりますと、やはり三つの要素についての総合的判断ということで考えるべき事柄ではなかろうかというふうに私どもは思っております。
  247. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうしますと、現在防衛計画をつくる上の大きな要素が変更したけれども、変えなくていいという判断の基礎には、私は現在のソ連の軍事力が増強しておるけれども、それを念頭に置いた上においても現在の大綱の水準を達成すればそれで十分対抗できる、こういう判断を政府は持っておられると解さざるを得ないと思いますけれども、いかがですか。
  248. 塩田章

    説明員(塩田章君) そこのところは条件の第三にも関係するわけですが、現状が防衛計画大綱の水準に非常に離れているという状況におきまして、われわれがやはり何をすべきか、やはり現在の大綱の水準に早く達するということが国際情勢の険しさということを考えても、何よりも急務ではないかということを私どもは申し上げて、そしてそのための努力をしておるわけであります。
  249. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はそれは少しおかしいと思うんですね。たとえば、現在のわが国防衛計画をつくる一つの基本構想というものがなければならない。私は大綱というものはそういうものだと思うんです。そして、その基本構想というものは現在のわが国が置かれておる状態から出てくるものだと思うんです。その一番大きな要素であるソ連の軍事力、唯一の潜在的脅威であるソ連の軍事力がどんどんふえておる状況であるのに、とにかく水準達成が急務だと。水準達成したら、じゃそれに対応できる状態になるかどうかもわからないのに水準達成が急務であるというのは、私はこれは防衛計画大綱としての役割りをすでに喪失しているんじゃないかと思うんです。だから、いまの水準を達成するまでは大綱は変えないんだという考え方は、いまの御説明からではちょっと理解しがたいんですが、いかがですか。
  250. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 大綱におきましては、先生御存じのとおり、平時に十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略事態に有効に対処し得る。さらに、情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときは、円滑にこれに移行し得るよう配意されたものとするということが明確にうたわれているわけでございます。そして、別表で整備目標を掲げているわけでございます。わが国防衛力の現状はこの整備目標、数量的にもそうでございますし、また、その後の兵器の進歩等の状況を見ますると、質的に見ましても非常に隔たりがあるわけでございます。まずこれを達成することが現下の急務である。もしそうでないとすると、さらに情勢が重要な変化をした場合にも十分対処、移行し得ることができない、そういうことになるわけでございます。やはり防衛努力につきましては、長年の蓄積でございまして、継続性が必要である。そういう観点からいたしまして、現在の大綱の水準をまず達成することが急務であると私どもは考えておるわけでございます。
  251. 田渕哲也

    田渕哲也君 私はその説明では納得できないと思うんですね。やはり現在の世界情勢とか、わが国を取り巻く潜在脅威の状況とか、それに対応するためには防衛力をこの程度ふやすことが必要である、そういう国民の合意ができて初めて予算も組めるし、何もできるわけです。ところが、いまの大綱というものは、現在の状況に対応できるともできないとも政府ははっきりわからぬと。ただ、ここまでいってないからとにかくやるんだ、それならそのスピードが問題になるわけですよ。大綱の水準達成をいつまでにやればいいのかというスピードの問題も出てくるわけですね。とにかく水準までいってないんだからやるんだということでは、それは防衛計画の方針でも何でもないんじゃないでしょうか、いかがですか。
  252. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 確かに現在の大綱はいつまでに達成しようという時期の目標は示されておりません。そこで、私ども最近の情勢等も念頭に置きまして、次の五六中業においては大綱の水準まで達することを基本として、この中業を作成しようということで、四月末の国防会議の了解を経てその作業に着手した、こういう現状でございます。
  253. 田渕哲也

    田渕哲也君 大村長官は先日のテレビ座談会で、わが国周辺数百海里、航路帯千海里の防衛は、現在の大綱の水準では不十分だと、こういう趣旨の発言をされておりますが、この点はいかがですか。
  254. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私はその対談の際に、いま申し上げましたような観点から、防衛計画大綱の水準を達成することが急務であると、またこれが実現すれば現状に比しまして海上交通の方につきましても相当な効果が上がるはずであるということを申し上げたわけでございます。それで完璧かと言われますと、またいろいろな観点がございます。また余裕が乏しいというような点もございますから、そういう意味では完璧ではなかろう。しかし、現状に比すれば格段の改善になるであろうということに重点を置いて申し上げたわけであります。
  255. 田渕哲也

    田渕哲也君 現在の大綱の水準達成は、一次の五六中業でやるということですけれども、これの達成できる時期ですね、一般には六十二年度と言われておりますけれども、アメリカからはもっと早くしろというようなことも言われておるようであります。政府としてはこれどう考えておられるわけですか。
  256. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 次の中業は五十八年度から六十二年度でございます。国防会議の了承を得まして、その期間内に大綱の水準を達成するということを基本として作業を開始いたしたわけでございます。その点をワシントンにおける会談でも申し述べたところ、先方の意見としましては六十二年では遅いのじゃないか。何となれば、先方は八〇年代の半ばを一つの大事な時期であると考えておるので、もっと急いでほしいという要望はあったわけでございます。しかし、私どもといたしましては現在作業に着手したばかりでございますから、一体この計画年度内にどういった防衛力整備が図られるようになるか、これは具体的な検討の途上でございますので、そういった点につきましては、現在具体的に言える立場じゃないわけでございます。そういった方針を申し上げている、こういうわけでございます。
  257. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから防衛白書では「国を守る気概」の必要性を強調すると同時に、民間防衛の問題を取り上げております。民間防衛の問題は、戦争という極限状態の中で、国民の生命並びに財産に及ぼす被害を最小限度に食いとめるために必要だと思いますけれども、しかし、政府は本当にこの問題に本格的に取り組むつもりなのか、ただ単に白書の中で言ってみただけなのか、どちらなんですか。
  258. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 民間防衛の問題は重要な問題でございます。政府全体で慎重に検討を進めなければいけない問題だと考えておるわけでございます。そういった観点からいたしまして、今回の白書におきましても若干の記述をいたしたわけでございますが、今後さらに政府全体で取り組んでまいりたいと考えておるわけでございます。防衛庁だけで処理できる問題ではございませんので、関係省庁と緊密な連絡を図りながら検討を進めてまいりたいと、さように考えておるわけでございます。
  259. 田渕哲也

    田渕哲也君 民間防衛を取り上げるとするならば、私は有事法制というものはこれは密接な関係を持ってくると思うんですね。有事法制そのものも、戦争という非常事態の中でも、できる限りいわゆる超法規的と言いますか、無法あるいは無秩序、混乱というものを最低限度に抑える、そして国民の権利義務についてきちんとしておくことだと思うんです。したがって、民間防衛有事法制というものとは関連があるわけでありまして、有事法制というものにも真剣に取り組む必要が出てくると思うんですね。防衛庁では有事法制の研究についての中間報告を発表されましたけれども、これの位置づけがまことにあいまいであります。防衛白書の中でも、今後有事法制研究とは別に、防衛庁において法的措置をどうするか検討するのだというふうに言っておられますけれども、今後はこれはどういうふうに具体的な手続を踏まれるのか、お伺いをしたいと思います。
  260. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 民間防衛有事法制と関連する問題も確かにあるわけでございます。有事法制の研究につきましては、通常国会におきまして中間報告をいたしまして、一部につきましては研究の成果を御報告したわけでございます。残された問題の研究についても引き続き継続して進める方針であります。  ところで、取りまとめて報告しました研究を今後どうするかという点につきましては、これは諸般の情勢、特に国会における御審議の状況、世論の動向、そして関係省庁との緊密な連絡を図る必要もあるわけでございますけれども、そういった点を考慮しながら、できるものから実現に移していきたいということで、現在鋭意努力中であるという次第でございます。
  261. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから、大村長官は、今回の五十七年度予算編成の問題に触れて、防衛費の七・五%増は最低限必要なんだということを主張されております。五十六年度予算編成のときには概算要求九・七%が実際には七・六%になって、アメリカ側が非常に期待外れだということでごたごたしたわけです。私は、このいきさつは、やはり政府並びに与党のアメリカに対する対応の仕方のまずさだったと思うんですね。九・七%が最低限だというようなふれ込みをしておったが、これは概算要求だから減るのが当然かもわかりません。その辺の事情がよくアメリカ理解されていなかったから非常にごたごたした。今回はそういう問題は起こらないのかどうか、長官にお伺いします。
  262. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 昨年の例を引いての概算要求の点についてお尋ねでございますが、もともとシーリングまたはその枠内で要求されます概算要求につきましては、わが国予算制度におきましては、大蔵省の査定を受け変更があるという性格のものであるということは、昨年も説明の際に十分申し上げたつもりでございますが、必ずしも十分徹底しておらなかった、その点は遺憾でございます。今後におきましては、説明の際に、そういうことのないように一層入念を期してまいりたいと思っております。  ただ、ことしの七・五%のシーリングが設定された事情を振り返ってみますと、すでに行革の尊重という大方針が決まっておりました。そういった一段と厳しい情勢にもかかわらず、防衛力整備のためには、その程度はどうしても必要であるということで、大蔵大臣協議で決めたわけでございます。また、この枠内で概算要求を取りまとめる際にも経費の合理化、効率活用、一段と注意を払いながら、陸、海、空各部門の緊要なものだけを、そのほか施設庁関係もございますが、見込んだ次第でございますので、私といたしましては、査定を受けるにしましても、その幅ができるだけ少ないものであることを強く希望もし、またその方向に向かって最善の努力を傾注いたしたいと考えているわけであります。
  263. 田渕哲也

    田渕哲也君 それからアメリカがソ連の脅威というものについて、同盟国並びに同盟国の国民理解を得るために、これは主としてNATO諸国の要請にこたえて、ソ連の軍事力配備の秘密条項について公表する、こういうことを決めたというふうに報じられております。当面はこのNATO諸国に対してということですけれども、わが国に対してはどうですか、何か話があるわけですか。
  264. 塩田章

    説明員(塩田章君) まだ何もございません。
  265. 田渕哲也

    田渕哲也君 外務大臣にお伺いしますけれども、日米の首脳会談におきまして鈴木総理は、防衛努力の増大を求めるレーガン大統領に対して、日本にはいろいろな制約があるから軍事面での協力はできない、しかし総合安全保障立場に立って積極的に経済協力を進めていくと答えられた。特にその中で中国と韓国の名を挙げて、両国は総合安全保障上きわめて重要である、このように述べられております。私は、今回の韓国からの安保がらみの経済援助の強化ということは、このような日米のやりとりを踏まえて出されたものと考えられると思いますけれども、その点はいかがですか。
  266. 園田直

    国務大臣園田直君) 韓国及びASEANについては、先ほどの共同声明に書いてありますとおり、米国は韓国に米駐留軍を維持駐留させるということで安定に貢献をしておる、日本アジアの国々と意思を疎通をして足並みをそろえておるということでアジアの平和に協力をしておる、おのおのその役割りに対しておのおの評価すると、こういう文章になっておりまして、この中で日本の経済協力では、はっきり申し上げますと、紛争国周辺についてはいろいろ経済協力についても若干の力を添えることになっております。紛争国周辺とは日本ではタイ、パキスタン、メキシコの三国でございまして、これには韓国は入っておりません。  なおまた、この共同声明以上に突っ込んで、これは非常に大事なことでございますから申し上げたいのは、韓国に対する日本の役割りであるとか、あるいは韓国の防衛に援助をしようという話は、一切出ていないことをはっきり申し上げておきます。  ちょっといまのメキシコはトルコの間違いでございますから、訂正しておきます。
  267. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は総理の言われる総合安全保障構想というものと、今回韓国が要求をしておる安保がらみの経済援助、これは具体的にどう違うのか、お答えいただきたいと思うんです。
  268. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、韓国の方々日本では不可能な防衛の問題に絡んでおっしゃっておるごと、それから額が明年度予算倍増を皆さん方に承認いただいたとしても、一年間の総額アジアに振り向ける額は大体二十一億ドルでございます。その中で六十億ドルというと一年間に十二億ドルでありますから、これは莫大な金でありまして、とうていこの数字は不可能。どうしてこういうことをおっしゃるのか私はわからぬわけでありますが、いま御質問のところに何かこうあるんじゃないかと。要するに、日本アメリカから韓国の防衛努力に対して力を添えろ、援助せよと言われておって、アメリカには、よろしいぐらいの返事をしておいて、そして自分の方にはできないとこう言っていると、大国と小国に使い分けをすると言わんばかりのお気持ちがあって、われわれでは理解に苦しむようなことをおっしゃっておるのではなかろうか。これでは経済協力の筋道に乗ってまいりませんから、その実態を認識いただいて、正式に経済協力の筋に乗るような話になるべく早く持っていくことが、韓国の要望にこたえる私は道であると考えております。
  269. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は総理の言われる総合安全保障構想というものが、非常に誤解を招きやすいと思うんですね。日本は軍事的な貢献、国際的な役割りが果たせないから、そのかわりに経済力でやるんだということになると、アメリカ側だってどうとるかというと、日本は軍事的な援助を同盟国あるいは西側諸国に対してできないから、そのかわりに経済協力をやると言っておると、だから韓国だって軍事費にGNPの六%も使って困っておるんだから、軍事的な援助をやれとは言わぬけれども、もうちょっと経済援助をしてやったらどうか、こういうふうな考え方を持つのがむしろ自然じゃないかと思うんです。だから、総合安全保障構想なんていう中に、経済援助を含めるからややこしくなるのではないかと思うんです。本来経済援助というものと、安全保障というものとは別なものでなければならないと思うんですけれども、私は総理の言われるこういうものが非常に誤解を生むと同時に、日韓の間の交渉もむずかしくしておるのではないかと思いますけれども、この点はいかがですか。
  270. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御発言の趣旨が、韓国側が考えておられる趣旨ではないかと、これは想像でございます。少なくとも米国は、日本が軍事的な貢献ができないから経済的な貢献をするということは、軍事的な行動ができないから経済的なことによって軍事的援助をやるという趣旨だとは断じてとっておりません。これは確信を持ってお答えをいたします。
  271. 田渕哲也

    田渕哲也君 終わります。
  272. 秦豊

    ○秦豊君 私は、これから政府がいやおうもなく直面しなければならない北東アジアでのいわゆるTNF、戦域核の配備問題、それから、もし時間が許せば日韓の問題に踏み込んでいきたいと思います。  大村長官、御記憶をよみがえらしていただきたいんだが、あなたはワインバーガー氏に会われる前にハワイに寄られましたね。六月二十七日というのが私の記憶です。そのときに、ロング太平洋軍司令官と会談をされたことも覚えていらっしゃる、紛れもなく。そのときの大きな命題がソビエト極東赤軍の展開、その実態の説明、その最後の方にこういうことがあったでしょう。アメリカもまたソ連に対抗をして核戦力の均衡を保たねばならない、まだ結論は出ていないけれども、太平洋地域でのTNF、つまり戦域核の配備について再検討をしているという説明があなたに対してありましたか。
  273. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私が渡米しましたときに、まずハワイに寄りまして……
  274. 秦豊

    ○秦豊君 いえ、あったかなかったで結構です。
  275. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ロング太平洋司令官と会談した際、アジアにおけるソ連軍の増強ぶりに関するブリーフィングは確かにございました。
  276. 秦豊

    ○秦豊君 その中にあったかどうかだけをお答えください。
  277. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) その中かどうかははっきり記憶しておりませんが、アジアにおける戦域核の配備がある程度進んでいる、それに対応する対策についても検討を始めている、まだ結論は出てないと、こういうことでありました。
  278. 秦豊

    ○秦豊君 恐らくそれがアメリカ政府の公式態度の第一です。それから淺尾局長の国会における答弁が若干あり、それから八月三日、午前の国防総省での私と国際安全保障局ジョーンズ少将との会談が恐らくその次に連なっていくと思います。詳細は省きます。  外務省は、いまの大村防衛庁長官は確かに話を聞いた、あの程度まではね。外務省は、アメリカ側からどの程度のアプローチと説明を受けているか、あるいは協議に類した事務レベルの接触があったのかなかったのか、TNFについて。
  279. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務省はアプローチまたは説明を受けたことはございません。
  280. 秦豊

    ○秦豊君 今度ペンタゴンに行ったのは私四回目ですけれども、率直に言わしていただくと、日本の国会で政府側と向かい合っているよりはるかに率直であります。私は、言うまでもなく野党の立場なんだが、野党の議員の質問に対しても、かなり率直に答弁をするというよい行動様式を持っている。そこで、ジョーンズ少将は非常にはっきりしている。アメリカアジア全域についてきわめてダイナミックに調査研究を行っている。日本も東アジアの核のかさの一部に位置しており、当然調査の対象と考えており、調査終了次第北東アジアのTNFについては、日本政府側と突っ込んだ話し合いをすることになる、こういう態度を明らかにしております。これは架空ではない。一野党議員にここまで説明をなし得るということは、アメリカ国防総省や国務省の常として、相当突っ込んだ、まさに裏づけのある構想がかなり顕在化しつつあると見なければいけない。  そこで伺いますが、ペンタゴンに何もまねるという意味で言うんじゃなくて、率直にこれから大きな課題になって、外務大臣防衛庁長官、いやおうなく、これは直面せざるを得ない新たな課題ですよ。過去の核持ち込みじゃありませんよ、これは。これからの命題ですよ。だから伺うんですけれども、防衛庁、北東アジアにおけるTNFというのは一体どういうものによって構成されるとお考えですか。
  281. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ロング大将と会談の際に挙げられましたのは、SS20とバックファイアの配備状況、それに対する対策を検討を始めていると、こういうことであります。
  282. 秦豊

    ○秦豊君 それから長官、ついでに私の伺った意味は、SS20とバックファイア、おたくの白書にもしばしば登場してくる、それに対抗する北東アジアのTNFとしては、どういうものによって構成されるでしょうかねと伺っている。
  283. 塩田章

    説明員(塩田章君) 先ほども外務省からもお答えがございましたが、全然現在のところ、私どもにアプローチございませんので、どういうものが配されるかということにつきましても、いま私どもがお答えすべき立場にはないと思います。
  284. 秦豊

    ○秦豊君 そういう答弁をこの安保委員会でしてもらうと困るんだ、防衛局長。あなたが自治省の局長ならば私は問わない。今度も局長にとどまって、いいですか、防衛局長だ、あなた。そんな答弁ができないでどうしますか、あなた。アプローチがないから答えられません——冗談じゃありませんよ、あなた。SS20、バックファイアをあれほど引用しながら、それに対抗する北東アジアのTNFについて、一言も答えられないとは一体何事か、あなた。冗談じゃありませんよ。そういう答弁をしてくぐり抜けようとしたって許せない、あなた。だめですよ。たとえば、常識的に考えられて、防衛局長、あなた専門家なんだから、どう考えられますか。
  285. 塩田章

    説明員(塩田章君) 防衛局長であるがゆえに、私は推測をもってお答えすべきではないと思いますので、先ほどのようにお答えをしたわけであります。
  286. 秦豊

    ○秦豊君 その計算をした返事は、慎重さは美徳ではないんだ、あなた。ジョーンズ少将ははっきりこう言っているんだ。北東アジアにおける戦域核には、地上発射の改良型つまり改造型、新型のパーシング2型、空中発射、これはB52を想定した空中発射のALCM、潜水艦発射のいわゆるトマホークを含めた巡航ミサイル等々であろうが、その組み合わせについては明言はできない、こう言ってるんだ。これはいまや一般的な常識じゃありませんか。防衛局長であるがゆえに想像の域を出ないことは言えないんじゃなくて、常識的にそういう兵器の組み合わせば考えられるでしょう。いまのジョーンズ少将の考え方についてはあなた、肯定はできますか。
  287. 塩田章

    説明員(塩田章君) まあアメリカ側の現在持っておる、あるいは開発中のTNFが、いま御指摘のような種類のものであることは、それは私ども承知しております。ですからといって、いまのジョーンズ少将の構想を肯定できますかと言われますと、私、ジョーンズさんがどういう構想を持っておるか伺ったこともございませんし、わかりませんが、そういうことじゃなしに、現在アメリカが持っておる、あるはい開発中のTNFはどういうものかということになれば、いまのようなことはそれはそのとおりだと思います。
  288. 園田直

    国務大臣園田直君) 秦先生の速射砲的な的確な質問に私も協力する意味で簡単に答えます。  先ほど、外務省はアプローチ、説明は受けておりません、これは事実でありますが、大村長官会談された内容を電報で受けたことは、これはまた事実でありまして、大村長官の名誉のために追加しておきます。  次に、いまの問題ですが、いまの問題は当然そういう時期が来ると私も予想しております。その場合には、これは核でありますから、当然安保条約によって事前協議の対象となります。この場合には日本としてはいかなる場合もノーと言うのが、これは原則でありますから、これを貫きます。  問題は、第二番目におっしゃった、どういう構成になるか知らぬが、船に積んで、発射可能の兵器を積んだ船が配備されることを非常に懸念をしておりますが、これについても同様の趣旨で対処していく所在でございます。
  289. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣のように答弁をしていただきますと、たとえ不満が残っても誠意が真っすぐ伝わってまいります。これは戦略、戦術をやっているアメリカ国防総省の常識、あるいは私の旧知の友人であるラロック元提督の発言等によりますと、外務大臣がおっしゃったとおりなんです。日本は確かに調査対象の一つだと、ざっくり話し合いをしたいと、やがてそうなります。まさに大臣のおっしゃったとおりです。そうなりますと、ランドベース、パーシング2はレインジが短い、どうしても韓国が欲しくなる。二月の全斗煥訪米は非常に重要です、裏側のそういう意味合いが。これからもっと顕在化してくると思う。日本はまさに外務大臣が的確に早くもとらえられているように、艦船に搭載したトマホークが日本とのかかわりになってまいります。  そこで、これらはラロック提督の証言というより明言ですけれども、いま戦艦ニュージャージーがドックに入っております。目的は、改装をして二百発近い巡航ミサイルSLCMを搭載するためである。いつ就役するか、大体八二年度中である。そうすると、彼の推測というよりアメリカ海軍から聞いた話として、ラロックが述べてくれたところによると、グアム基地を定位置とし、韓国の鎮海を北東アジアにおける前進基地とすると。その場合に、そこで外務省防衛庁に伺いたいんだが、仮に、いまや第二次大戦中の戦艦としてではなくて、巡航ミサイル搭載の新型艦として再生をし再就役をしたニュージャージーが、日本への寄港、たとえば佐世保、沖繩のホワイトビーチ、大胆にも横須賀というふうな要請をした場合には、先ほどの外務大臣の答弁をずっと伺っていると、言うまでもなく、これは核を搭載している戦艦である以上、容赦なく事前協議の対象でしぼり上げる、囲い込む、ノーと言うことが原則であるという政府側の態度は、これは今後とも堅持さるべき方針であろうと私は思いますが、具体的にこのニュージャージーの日本寄港を要請された場合には、日米間の協議において明確に拒否をする方針であるといまから受け取ってよろしいですな。
  290. 園田直

    国務大臣園田直君) 起こるべき事態を予測してお答えすることは、これまた率直過ぎておしかりを受けますが、その方針は変わりはございません。
  291. 秦豊

    ○秦豊君 日本とのかかわりはもう一つあります。それは現にグアム基地に配備されているB52戦略爆撃機の問題です。よくあの爆撃機は台風避難と称して、幾ら気圧配置図を見ても台風ではない時期に、台風避難と称して嘉手納に大挙着陸をする習性を持つ不思議な戦略爆撃機だが、このB52がやがて巡航ミサイルALCMを搭載する新型に換装されることは事実です、換装は技術的に容易ですから。そうすると、これも八二年度中にニュージャージーと並行して日本は嘉手納、つまり沖繩基地とのかかわりにおいてそうなるが、それも同様に拒否の対象と考えていいわけですね。
  292. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 御指摘のとおり、従来から台風避難でグアムのB52が嘉手納へやってまいりました例はございますが、そのときもすべて核の搭載はないということを確認してございます。今後もそういう場合であれば、台風避難ということはあり得ようと思いますが、御指摘のとおり核を搭載した航空機が日本の領域に来るということは、全く私どもとしてはあり得ないことと考えております。
  293. 秦豊

    ○秦豊君 塩田防衛局長、あなたはもう専門家でいらっしゃるから御存じでしょう。この戦域核と戦略核が最も基本的にシチュエーションとして、条件として違うのは、やっぱり戦域核の場合には、ある程度その所在を顕在化しないと抑止を構成しないという特性があることは御存じですね。
  294. 塩田章

    説明員(塩田章君) そのとおりだと思います。
  295. 秦豊

    ○秦豊君 そうすると、さっき外務大臣が言われたように、チェックしやすいわけです。ニュージャージーです、改装されたトマホークを搭載している潜水艦です、あるいはB52ですと明らかになるから、これは日本政府としても、いままでのようないわゆるグレーゾーン、灰色の領域で、あうんの呼吸で藤山、マッカーサーでくぐり抜けるわけにはいかない。だからこれは国民感情としても、今後はその点については、TNFの配備問題が日米間の公式議題になり、具体的な問題に直面した場合には、園田外務大臣の明言が今後とも貫かれていくという受けとめ方を国会を通じて再確認してよろしいですね。
  296. 園田直

    国務大臣園田直君) 結構でございます。
  297. 秦豊

    ○秦豊君 戦域核の問題は、まさにこの段階ではその程度であろうと思います。  午前中の同僚議員の質問に関連しまして、日米共同作戦研究、極東有事事項、第六条事項ですね、これについてさっきから二、三の方が質問されており、答弁は判で押したように、各省庁が下相談中であると。これに変わりはないと思いますが、ジョーンズ氏はそれについてもきわめて明快に答弁されているんですよ。おたくの方は陸将補の志方防衛駐在官から公式なレポートが来ているはずだから、あなたはよもやそれを否定されますまいが、アメリカは明らかに今月から、つまり九月から第六条事項、極東有事協議したいと、こう言っているのだが、そのペンタゴンのスケジュールに比べると、あなた方は関係方面で下相談中、歯車がかみ合わないんですね。どっちかがうそを言っているのか、本当に防衛庁予算編成に忙殺されて準備がおくれているのか、それは私は不信感を持っているわけではないが、ここは国会ですから、その程度のことを秘匿しても仕方がない。ジョーンズ氏は九月と言っているが、防衛庁は依然として下相談中であると言い切るのか。そうであれば、いつごろ協議の態勢に入るのか、あわせて伺っておきたい。
  298. 塩田章

    説明員(塩田章君) 私はどちらもうそを言ってないと思うんです。防衛庁は先ほど申し上げたとおり、現在下相談をしております。いずれ一方アメリカ側からは何らかのアプローチがあるだろう、それはそう思っております。それが九月であるかどうかは、いまジョーンズさんがそう言ったというふうにおっしゃっておりますが、われわれはわれわれの方で下相談をしながら、どういうアプローチがあったときにどう対応するかいまやっているという、そういう段階でございます。
  299. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣ね、日韓問題ちょっと聞いておきたいと思いますが、いまのアメリカの対ソ認識、対朝鮮認識、かなり変わっていると。つまり、今度アメリカに行って一番鮮烈な印象は、いままでは米ソ核全面戦争をどのようにすれば回避できるかという発想がどっかにあった。いまでは近未来において米ソ戦はもはや不可避であると、不可避であるから、どのようにして勝ち残るかという点に重心移行しているというのが私の非常に鮮烈な印象なんです。単にレーガンがプリンクスポリシーの頂点にいるんじゃなくて、アメリカの中にそういう微妙な論調の変化と民意の変化が看取されるところは危険だということを、ランド・コーポレーションとかあるいはラロックたちは言っている。そのことを憂えている。  そこで、最近のアメリカの北朝鮮認識なんですけれども、外務大臣に伺っておきますが、単に朝鮮半島というとらえ方でなくて、北朝鮮のいわゆる脅威なるものは、ソ連の世界戦略、グローバルなソ連の脅威の一部なんだ、未端の端末なんだと、こういうとらえ方をしているように私は受け取ったんですが、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  300. 園田直

    国務大臣園田直君) 米国における勇ましい意見が圧倒的であるということは、私もそう感じます。とかく勇ましい意見は表面に出るものであって、その内部にはやっぱり良心ある常識を持った方もある。  北朝鮮は御承知のとおりにソ連とも親密でありますが、同時に中国とも親密であります。したがいまして、そういう絡み合いで、北朝鮮とソ連とを一貫した考え方でアメリカは思っているかどうかわかりません。ただ、アメリカでは北朝鮮に対する抑止力として努力するという考え方はわかりますが、北朝鮮が対ソ戦略の一環であるということにはにわかに同意できません。
  301. 秦豊

    ○秦豊君 先般終わりました日韓の外相会談ですけれども、そのとらえ方は、また同時に園田外務大臣の認識は、今後の対韓交渉に非常に私はかかわっていくと思いますので、確認の意味ですけれども、韓国側は先般の日韓外相会談をどう言っているか。多くのマスメディアの平均的な見出しは、新しい日韓関係の構築である、こういう論断をしています。日本はこれを日韓修復というとらえ方をしている。たしかそのように私は受け取っていますけれども、新しい日韓関係の構築という意味合いの中に、韓国のマスメディアや青瓦台の周辺は、やはりアメリカの対ソアジア戦略を踏まえた新しい日韓関係の構築という意味合いを私は踏まえていると、そう思うんですけれども、それについては外務大臣としていかがです。
  302. 園田直

    国務大臣園田直君) マスコミでは日韓関係の修復と言っておりますが、私はやはり新しい日韓関係の歴史的な一ページを開きたいというつもりでありまして、言葉の上では両外相は意見が完全に一致しておりますが、内容に至るとややずれがあるような気もいたします。いずれにいたしましても、時間をかけてお互いの理解を深めながら、真にあるべき日韓関係の姿に持っていきたいと私は念願をいたしております。
  303. 秦豊

    ○秦豊君 さっきも同僚議員が言ったんだけれども、日本の論理というのは、総合安全保障構想でも、どっちかと言えば政府の政策としては完熟していない。まだまだ未熟である。私もいつか質問主意書を出してみてびっくりしましたが、余りにもラフなアバウトな答弁で、これが内閣の基本政策の一つかなと思ったぐらいです。民間のシンクタンクの方がよほど勉強している。データも精密である。きょうはその議論はしませんけれども、日韓問題に返れば、外務省に確認しておきたいんですけれども、五月の鈴木・レーガン会談の第一回で、日本の対潜能力の問題とか、あるいは韓国の役割りについても日米意見交換を行ったと。これは日本側の発表じゃなくて、ホワイトハウス高官の背景説明として行われたんですが、この韓国の役割りについての意見交換というのは、どんな内容だったんでしょうか、確認をしておきたい。
  304. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) ただいま秦先生指摘の米高官の背景説明は、米側記者に対する懇談の形で行われたわけでございまして、それをもととしての報道がございますが、要点は三点あろうかと思います。  この米側の背景説明の第一点は、日米双方は朝鮮半島の平和の維持のために引き続き努力することに合意したこと。第二点は、日本側は軍事面ではなく、経済面についての日韓の重要な関係考えているということ。第三点は、日本側は在韓米地上軍の維持継続を高く評価した。以上三本の柱が背景説明の中で言われているものと承っております。
  305. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、ぼくは午前中からずうっと伺っておりまして、こういうことを感じているんですよ。きのうの衆議院外務委員会はかなり園田直氏的レトリックでありまして、ぼくたちはよくわかります。陰影がはっきりしていますから、めりはりが。しかし、非常に不快感を持った方も多いでしょう。たとえば、外務大臣としてあるまじき日本語とか、それはあったかもしれません。私はそうは思いません。むしろ、痛快というより、あなたらしいなと、園田語録がまた豊かになったと思っておりますけれども、しかし、あなたの御答弁を聞いていましても、安保のために出す金はないとおっしゃっても、今度は青瓦台と総理官邸の交渉ではないですよ。シャドーゲストはホワイトハウスなんだ、ペンタゴン、国務省なんだ。米韓一体でやはり対日交渉に当たっている。日韓関係という次元でとらえると視野狭窄に陥る、判断を誤る。向こうは絶対に下がちない、こういう不遜な自信を持って向かってくる。いまの外務大臣が、武道の達人のあなただからよかった、合気の達人の。私はそう思っておるのだが、しかし、しょせんひっきょうするところ、あなたがどのように願望されようとも、どのように表現されようとも、青瓦台は食い下がって、年間十二億ドル分のXを可及的願望に近づけてむしり取ると、言葉は余り品よくありませんが。それまでは追及の手をやめないというぐらいの非常に私は切迫した交渉が今月以降展開されると思います。だから、おっしゃったように首脳会談なんて簡単にいくものじゃありません。積み重ねといっても容易ではありません。だからこそ、断然たる姿勢を貫いていただきたい。  ただしその際に、私は伺っておきたいんだけれども、アメリカは明らかに園田外交に不信感を持つ、不快感を隠さない、特にヘイグ氏のようなああいうキャラクターは。そしていろんな対日ショックを与えるような発言を議会筋を使ったり、さまざまなものを使ってやるかもしれない。その場合にもあなたは、午前中からの答弁であった安保、援助の截然たる分離論は断じて崩さない、納得のいかない不明朗な不透明な援助は一切いたさないという明言を、確言を、もう一度私に対してしていただけましょうか。
  306. 園田直

    国務大臣園田直君) 確かにそのような気配があるような気がしないでもありません。しかしながら、韓国に対する経済援助重要性ということは議論されましたけれども、どれをどれぐらいという話はございません。これを言うと、これはまさに内政干渉であります。幾ら米国であっても、これはできないはずであります。韓国の方が大国と小国を使い分けするとよくおっしゃいますが、そういうことは断じてありません。私は韓国の方には丁寧に丁重に下手から話をしております。ただ性格上、「断じて」だとか、激しい言葉がときどき飛び出すので自分で注意しているわけでありますが、しかし韓国の方に申し上げることは、仮に米国からそういう要求が今後ありましても、これこそ厳しく私ははねのける。これは私の信念でやらないのではございません。私ががまんすればできることなら、それはまた別問題でありますが、私ががまんしてやろうと思っても、日本憲法の精神その他の規約、あるいは国会の決議、予算の編成上からできない相談であるということを御理解願いたいわけであります。
  307. 秦豊

    ○秦豊君 その部分は私も共感します。  防衛庁、残り時間ですけれども余りありませんが、日韓のこの軍事交流と提携をあなた方が一体どう構想しているのかを伺っておきたいんですけれども、どうも最近の動きを見ると、七九年七月の山下元利元防衛庁長官の韓国訪問、あの当時、韓国側と話し合った方向とテーマが次々に現実化しつつあるというのが私の印象です。塩田さん、これは塩田さんの方ですかね、韓国の練習艦隊を、政務次官が行って、年内に受け入れると約束をしてきたようですが、あれは確かな話なのか。年内受け入れとすれば、いつごろ、どこへ受け入れるのか。江田島なのか、佐世保なのか、その辺についてはどうですか。
  308. 塩田章

    説明員(塩田章君) 私の所管ではございませんけれどもお答えいたしますと、現在韓国側から具体的な計画は何も承知しておりません。ただ、政務次官が行かれたときに、その種の話があったことは承っております。
  309. 秦豊

    ○秦豊君 これから防衛大学と韓国の陸軍大学の交流というふうなことも、たとえば相互訪問、相互留学、相互研修という、形を変えていろいろなされると思うんだが、現実にもう韓国の軍士官学校の学生が防大にやってきているんじゃないかな、現実に。すでに交流が始まっているのか、どの程度始めようとするのか、これをちょっと伺っておきたい。
  310. 塩田章

    説明員(塩田章君) 九月一日の夕方、着校いたしまして、現在防衛大学校におります。二日は授業参観、訓練見学等をいたしました。三日はいろんな水泳等のスポーツ大会に参加し、また学生との間の懇談等をいたします。四日は授業参観あるいは体育競技の見学等をいたしまして、五日の朝、離校する、学校を離れる、そういう予定でございます。
  311. 秦豊

    ○秦豊君 もうすでに始まっているわけだが、初歩的に、これは相互留学というふうに拡大をしていくものなのかどうか、これが一つ。  それから将来、これは山下元防衛庁長官が発言をしているんだけれども、将来は向こうの国防長官日本防衛庁長官協議を、不定期か定期かは別として、行いたいという願望を述べ、向こうはもとより歓迎しているという記録があるけれども、記録というか、伝えられているけれども、防衛庁はどう考えているのか。  さらに、時間がないからまとめて質問するけれども、日韓の両軍部による共同訓練というのは全く架空であり荒唐無稽なのか、あるいは基本的な方向としてはあり得るのか。検討を始めているのか、あるいは始めようとするのか、その辺を含めて伺っておきたいし、日韓の軍事交流の最後のところには、行く行くは兵器、部品の共通化というふうなことも命題に上るのではないかという点を一括してお答えを願いたい。
  312. 石崎昭

    説明員(石崎昭君) それでは共同訓練の方を先にお答えをいたします。  日韓の共同訓練は計画もいまありませんし、全く検討をしておりません。
  313. 塩田章

    説明員(塩田章君) 山下長官が行かれましたときに、今後こういうことをやりたいという願望があったことは事実でございますが、現在の時点で防衛庁長官が韓国を訪問する、あるいは向こうの方がこちらに来られる、国防長官が来られるという計画はございません。
  314. 和田裕

    説明員(和田裕君) 日韓の間で兵器装備の共通化というふうな計画は現在のところ一切ございません。
  315. 秦豊

    ○秦豊君 アメリカ国防総省は八二年リムパック、82リムパックと言っておりますけれども、明年ですね、これについてはいま詳細な基本的な計画を策定中である。韓国海軍の参加ということは可能性としてはどうかと言ったら否定も肯定もしなかったわけだけれども、一部では、ワシントンの民間研究所あたりでは韓国海軍が参加するという感触を強く得ている。もちろんよその国の海軍の演習参加について情報がなくても、それはさっきの怠慢のらち外だけれども、82リムパックというのは、そういうふうにまた一つ階級を上って行くのではないだろうかと私は考えているんですが、防衛局長ないし担当参事官。
  316. 石崎昭

    説明員(石崎昭君) リムパック82に韓国海軍が参加するのではないかという観測が行われているということは私ども知っておりますけれど、主催者である米側からはそのようなことは全然聞いておりません。前回と同じくオーストラリア、ニュージーランド、カナダと日米、これがメンバーであるというふうに聞いております。
  317. 秦豊

    ○秦豊君 まだ三分ございますから、外務大臣、この機会にちょっと伺っておきたいんですけれども、レーガン政権の対ソ外交戦略あるいは軍事戦略、トータルな展開ぶりはまだ必ずしも明らかではない。ただわれわれの目に映るのは、いわゆるプリンクスポリシーの頂点にあるレーガンというふうな、つまり素早い拳銃というふうな、あるいは野卑な動きとかあるいはタカ派的な振る舞いとか、こういうふうにイメージされていますけれども、しかし簡単ではないという印象を私は持って帰ったわけです。  たとえば、いま行われているさまざまな接触というのは、やがて一九八二年なら二年のしかるべき時期のきわめてドラスチックな米ソ首脳会談に収斂されていくというふうな観測も印象も私は否めないと思う。したがって、電波で言えばサイクルみたいなもので、ゼロレベルを中心にしてプラス、マイナスのサイクルでワンサイクル。いま高いところ、オクターブとサイクルの高いところでつき合う必要は毛頭ない。だからこそ、私は園田外相の健闘を切に期待するゆえんもそこにあるんで、やはりあくまで冷静な、いつ振り返っても国民合意のぶ厚い裏づけのある防衛構想、政策、対アジア外交、これが私はまことに冷静な妥当な体さばきであろうと思うんだが、この点について外務大臣に伺っておきたい。
  318. 園田直

    国務大臣園田直君) おっしゃるとおりに、米国の政権の政策についても、やはり波があり谷があるとかいうことは、私も同様の意見であります。しかしまた、就任以来たびたび私は話し合いを個人的にも公式的にもやっておりますが、政権ができた直後よりだんだん世界の実情を認識してこられた、もう一つはヨーロッパや日本や第三世界の本心というものがだんだんわかってこられた、こういうことで必ずしも悪い方向にだけ動いておるとは思いません。今後真のパートナーとしての日本の役割りはそういうところにあると思います。
  319. 秦豊

    ○秦豊君 これ外務省に確認をしておきますが、広い意味でとらえれば対ソ経済制裁の中に含まれる問題です。ヤンブルグの話は、どうなったんですか。確認しておきたいんだけれども、通産と外務の間にあった最近の交渉の中で、実際にはだれが見てもヤンブルグ用の大口径鋼管とパイプラインのいわゆる敷設機なんだけれども、それを通産省の窓口はヤンブルグ向けじゃないんだと、実際は一般貿易案件のアイテム、品目だと、したがって、何ら問題を生じない、踏み切ってくれという交渉をなして、外務省側は一応それについては了解を与えたということが伝えられているが、それが事実なのかどうか。  さらに、一度そこまで外務省側を取り込んだ通産省側は、今度はそこまで踏み込んだんだから、今度はパイプライン用の圧送プラントについても話し合いを持ち上げていく、こういうふうなことが伝えられているが、それは事実なのかどうなのか。
  320. 園田直

    国務大臣園田直君) これは私直接関係しておりますから申し上げます。  通産省の申し分を外務省は了解したわけじゃありません。むしろ神経質にならずに、こういう問題は解決した方がいいという方向で私はやってまいりました。輸銀で認めたことは事実でございます。決して対ソ経済措置が変更になったわけではなくて、こういう問題はあたりを見回しながらケース・バイ・ケースで逐次やっていくべきであると考えております。
  321. 秦豊

    ○秦豊君 最後に。  さっきも同僚委員がちらっと聞いたんですが、確かにこれは輸銀が認めた、それはオフィシャルなベースになるんだから、横を見ながらということはヨーロッパというふうに理解しますけれども、私はあながち否定はしないが、これを広い視野でとらえると対ソ経済制裁の緩和措置、つまり、ある期間の外交措置方針の変更というふうになるんじゃありませんか。大臣、違いますか。
  322. 園田直

    国務大臣園田直君) 対ソ経済制裁の変更ではございません。ケース・バイ・ケースであくまで今後とも処理をしてまいります。しかし、こういう問題余り神経質にならずにできるものはやった方がいいという考えしか持ちません。
  323. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時十六分散会