○板垣正君 そうしますと、その先に
わが国のこれに対する対応ということについて、「重要なことは、
わが国が、
わが国の国力と国情に相応しい役割を分担し、先進民主主義社会全体の、ひいては
世界全体の平和と安定に貢献することであって、平和
憲法を有する
わが国が果たしうる役割には、軍事面では大きな制約があり、政治・経済面を中心としたものとなることは当然である。」云々ということがございます。さらに、少し置きまして、「軍事面については、
わが国は
米国の
防衛努力を、先進民主主義社会の平和と安定に貢献するものとして評価する。
わが国としては
日米安保体制の一層円滑かつ効果的な運営を確保するとともに、あくまでも平和
憲法の下、専守
防衛の枠内で、
国民のコンセンサスを得つつ、自主的判断に基づいて、
自衛力の
整備に一層の
努力を行っていくことが肝要である。」云々、こうしたことがうたわれているわけでございます。
これに対する
新聞論調等を見ますと、いわゆる総合
安全保障的な
考えが特に出されてきた。軍事力の役割りは低いんだ、その役割りの位置づけ、またその情勢認識においては一致しているけれども、それに対する対応ということになると、いわゆる
憲法の制約、
国民コンセンサス、そういうようなことで、それが受け取る側としては必ずしも評価されてないといいますか、何か平和というふうなこと、そういうことをうたい出すことによって、隠れみのといいますか、きれいごとで済ましているんじゃないか。あるいはあえてこの
防衛問題軍事的な問題について避けて通っているんじゃないか、こういうふうな評価がいろいろあるようでございます。
実は、私もそういう点で
日米共同声明あるいはオタワサミット等々を通じて、
国際情勢に対する認識を共通にし、これに対応していくという中において、軍事的な問題というもの、軍事的側面もこれは避けて通れないんではないか。そういう点で印象として、何か
わが国の
防衛問題、軍事問題について
アメリカの非常な圧力がある、
日本に対して非常な過大な要求が行われる、そういうことに対して、それは
憲法があるんだという
姿勢、私は
日米共同声明以来の対応としてはもっと積極的な
姿勢、積極的に
外交を展開していく、そういう面における
防衛の問題等についても、これは
外交でございます、これは一体をなすものでございます。もう
一つ積極的にこれを受けとめていく必要があるんではないか。
これはいまさら私から申し上げるまでもないわけでございますが、
アメリカ側が言っていること、これは
日本に対して過度なことを要求しているんじゃないんだ、これは四月の二十八日、サンフランシスコにおけるワインバーガー
国防長官がどっかで演説をされた中にも、
日本にどういう分担を要求しているかというようなことについて、こういうことを言っております。
もちろん、われわれは
日本に課せられている
諸制約を承知しており、海外での軍事的
責任を
日本に引き受けさせようと主張するものでは全
くない。しかしながら、
日本人も認めるよう
に、われわれが認めなければならない事実は、
日本が現在の兵力で自国を
防衛することは非常
に困難であろうということである。
米国の
防衛のみならず、この地域における自
由と平和を
防衛するという、共同
防衛を実現す
るため、われわれは
日本が費している六倍以上
の経済的資産を
防衛のために費している。
われわれは、当然ながら、現時点における日
本の
自衛能力が明確に必要とされているものに
依然として達していないことを懸念している。云々でございますが、申し上げたいことは、
日本が必要以上の
防衛体制をとろうとしているわけでもないし、またいわゆる西欧体制の中で、特に
アメリカ側が
日本に期待しているものも、つまり
日本の国がみずからの国をみずからが守るという最小限の体制、それに非常に欠けるものがあるというところに一番問題の根本があるんではないか。その辺においてどうも
外交青書でうたわれている、あえてここでいわゆる総合
安全保障的な
考えを出す、軍事的な役割りというものはもう大きくはできない。もちろん軍事的な役割りということについても、海外に出ていくというふうな意味における
日本の軍事的役割りはないとしても、
日本自体がいま非常に欠けているみずからの国も守り得ないようなそういう体制を充実させることが、つまりは
日本の平和にもなり、
アジアの平和にもつながり、
一つの国際的な役割りにもつながる、こういう面においてこの青書に対して私ももう少しその辺積極的な表現が欲しかったと思うわけであります。
また現に
自衛隊の現職、制服の
自衛隊員、こうした幹部の人たちの話を聞きましても、与えられた条件では精いっぱいやるけれども、じゃ本当にあなた方は
責任を持ってこの国を守るということができるかと言われると、本当に
責任を持って守り得ないと、こういうふうに言われる、そういうことも聞きますが、要するに、
日本の
防衛力がいまだにみずからの国を守る
責任を果たし得ない、そういう
状況にあるところから、
アメリカ側からも西欧の国からも
日本の
防衛努力に対する要請が行われる。それを
憲法があるから制約があるんだと、こう構えたことでなくして、やはりそういう面で積極的にこたえていくというふうなニュアンスが出なかったか、そういう点について御
意見を承りたいと思います。