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1981-03-02 第94回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月二日(月曜日)    午前九時三十二分開議  出席分科員    主査 武藤 嘉文君       越智 通雄君    近藤 元次君       正示啓次郎君    井上 普方君       大島  弘君    川俣健二郎君       川本 敏美君    城地 豊司君       山田 耻目君    神田  厚君       中野 寛成君    瀬崎 博義君       林  百郎君    三谷 秀治君       村上  弘君    兼務 稲葉 誠一君 兼務 大原  亨君    兼務 野坂 浩賢君 兼務 渡部 行雄君    兼務 有島 重武君 兼務 柴田  弘君    兼務 西中  清君 兼務 蓑輪 幸代君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 六助君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         経済企画政務次         官       中島源太郎君         経済企画庁長官         官房長     禿河 徹映君         経済企画庁長官         官房会計課長  横溝 雅夫君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         通商産業大臣官         房長      杉山 和男君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業大臣官         房会計課長   宇賀 道郎君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省立地         公害局長    松村 克之君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         通商産業省生活         産業局長    若杉 和夫君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         資源エネルギー         庁公益事業部長 石井 賢吾君         中小企業庁長官 児玉 清隆君         中小企業庁次長 中澤 忠義君 分科員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部取         引課長     河村  穰君         公正取引委員会         事務局審査部審         査統括官    相場 照美君         科学技術庁計画         局国際科学技術         博覧会管理官  平野 拓也君         科学技術庁研究         調整局海洋開発         課長      高木 俊毅君         環境庁大気保全         局交通公害対策         室長      加藤 三郎君         大蔵省主計局主         計官      千野 忠男君         大蔵省主計局主         計官      日吉  章君         大蔵省主税局税         制第二課長   大山 綱明君         文部省学術国際         局研究助成課長 大門  隆君         農林水産省農蚕         園芸局繭糸課長 武智 敏夫君         農林水産省畜産         局牛乳乳製品課         長       芝田  博君         林野庁林政部林         産課長     山口  昭君         中小企業庁小規         模企業部参事官 中尾 舜一君         労働大臣官房参         事官      山口 泰夫君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         建設省住宅局住         宅政策課長   伊藤 茂史君     ————————————— 分科員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     井上 普方君   山田 耻目君     八木  昇君   神田  厚君     中野 寛成君   三浦  久君     村上  弘君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     新盛 辰雄君   八木  昇君     大島  弘君   中野 寛成君     吉田 之久君   村上  弘君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   大島  弘君     山田 耻目君   新盛 辰雄君     川本 敏美君   吉田 之久君     神田  厚君   中路 雅弘君     三谷 秀治君 同日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     城地 豊司君   三谷 秀治君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   城地 豊司君     川俣健二郎君   林  百郎君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   瀬崎 博義君     三浦  久君 同日  第一分科員西中清君、蓑輪幸代君、第二分科員  稲葉誠一君、第三分科員大原亨君、野坂浩賢  君、第五分科員渡部行雄君、有島重武君及び柴  田弘君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算  〔総理府経済企画庁)及び通商産業省所管〕      ————◇—————
  2. 武藤嘉文

    武藤主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算及び昭和五十六年度政府関係機関予算経済企画庁所管について、政府から説明を聴取いたします。河本経済企画庁長官
  3. 河本敏夫

    河本国務大臣 昭和五十六年度経済企画庁関係予算及び財政投資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁予算額は、百十七億三千二百万円となっており、これは前年度予算額に比べて一億二百万円の減額であります。  また、財政投融資計画につきましては、海外経済協力基金に係る分として、二千六百億円を予定しております。  以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  第一に、経済政策総合的機動的推進に必要な経費として、三十四億五千一百万円を計上しております。  この内訳の主なものは、物価の安定を図るための調整費等であり、生活必需物資需給価格動向調査監視物価に関する適確情報の提供、その他各省庁の所管する物価対策を機動的に実施するための経費として、三十二億一千二百万円を計上しております。  また、経済計画の点検を行い、その推進を図る経費として一億五千九百万円、基本的経済政策企画立案業務充実を図るための経費として、八千一百万円を計上しております。  第二に、国民生活行政拡充に必要な経費として、二十八億四千四百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、国民生活センター活動強化を初めとする消費者行政充実に必要な経費として二十四億九千一百万円、省資源省エネルギー型生活の定着を促進するための経費として二億六千一百万円、総合社会政策体系等開発促進を図るための経費として九千二百万円を計上しております。  第三に、経済社会に関する総合価調査研究充実に必要な経費として、二十億五千一百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、内外の経済産業動向に関する調査分析拡充強化に必要な経費として二億九千六百万円、総合研究開発機構の行う総合的な研究開発の一層の推進を図るための経費として六億七百万円を計上しております。  また、世界経済動向予測に関する研究等経済研究充実を図るための経費として四億九千二百万円、新国民経済計算体系整備活用を図るための経費として二億三千三百万円、電子計算機による情報処理体制整備に必要な経費として四億二千二百万円を計上しております。  第四に、対外経済政策積極的展開海外経済協力拡充を図るための海外経済情報収集分析経済協力行政推進に必要な経費として一億一千六百万円を計上しております。  最後に、海外経済協力基金でありますが、引き続き政府開発援助拡充を図ることとし、そのための事業規模として四千八百億円を予定しております。  この原資は、一般会計からの出資金が一千三百三十億円、資金運用部資金からの借入金が二千四百七十億円、政府保証債が百三十億円、自己資金等が八百七十億円となっております。  このうち、一般会計からの出資金は、大蔵省に計上しております。  以上、五十六年度における経済企画庁予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議のほど、よろしくお願いいたします。
  4. 武藤嘉文

    武藤主査 以上をもちまして経済企画庁所管についての説明を終わりました。     —————————————
  5. 武藤嘉文

    武藤主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位お願いを申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力お願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いを申し上げます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  6. 大原亨

    大原(亨)分科員 きょうは経済見通し、景気問題について時間の範囲内で御質問いたしたいと思います。  最初に、二月の東京都の区部消費者物価が出たと思うのですが、これを伸ばしてまいりますと、本年度消費者物価上昇率はどれほどになりますか。
  7. 廣江運弘

    廣江政府委員 一月まで全国確報が出ております。そして二月は東京都区部が出ておるだけでございますので、まだ二月がどうなるかということはわかりませんし、それから三月はもちろんわからないわけでございますが、先生の御質問に答えまして、仮に一月全国確報のまま指数が横並びで行くとしますと、本年度平均上昇率は七・七%程度になります。
  8. 大原亨

    大原(亨)分科員 少しずつ強含みといいますか、消費者物価が横ばい以上に若干でも上がるということになれば、七・八ないし七・九になるのではないか、こういう見通しがあるようですが、いかがでしょう。
  9. 廣江運弘

    廣江政府委員 年度平均といたしますと、もうすでに大方のところが終わっておりますので、後の指数が多少動きましてもそう大きく振れることはないと思いますが、いまの先生質問にお答えする意味で、たとえば二月の全国は出ていないわけですが、二月の全国東京都並みに前月比〇・四仮に上がるという算定をいたしまして一つ計算をいたしますと、これは見通しというようなものではございません見込みでございますが、七・八程度に上がります。
  10. 大原亨

    大原(亨)分科員 七・八という見通しですが、そのうち国会が進むにいたしましても、衆議院の予算審議が終わるころにはまだこの数字は変わらぬと思うのですが、七二八という数字になりますと、来年度予算の五・五%の消費者物価上昇、それはやはりおさまらないと思いますが、いかがでしょう。
  11. 廣江運弘

    廣江政府委員 いま申し上げましたのは、一つ計算といいますか、単なる算術計算で申し上げたわけでございまして、いま政府は、このところ一月になりまして物価指数を押し上げております野菜を中心にいたしますものに対しまして一生懸命手当てをしておるところでございまして、これからの情勢というのはわからないわけでございますが、徐々に下がってくると思っております。  第一に、現在の消費者物価基調は非常に落ちついてきているのではないかと思います。その理由は、一つには数字にもあらわれておりますが、卸物価が二月に入りまして対前年同月比四%というふうに落ちついてきております。これが必ずや好影響をあらわしてきますし、消費者物価全体を見ましても、季節商品を除きました総合では落ちついてきておるということがそのことを証明していると思います。  さて五十六年度見通しがどうなるかということでございますが、一つには、先ほど申し上げました卸売物価がすっかり落ちついておりますのが好影響をあらわすということはもう申し上げるまでもないことでございますし、五十五年度物価を一番大きく押し上げました石油が、これは先行き見通しにもいろいろ問題もありましょうけれども、昨年のようなことはないだろうと思われますし、もう一つは、五十五年度消費者物価を大きく押し上げましたものに電気、ガスといったものの値上げがあったわけでございますが、こうした大きな公共料金の引き上げというのが五十六年度には考えられないといったような三つの点から考えましても、五十六年度消費者物価が五十五年度のようなことはない、五十六年度には政府経済見通しのとおりにはいくと思っております。     〔主査退席近藤(元)主査代理着席〕  いま五十五年度消費者物価政府見通しよりも大きく上がったから五十六年度がどうかという御質問でございますが、そうした意味におきますげたというのは、三月の指数を見ないといま正確にはわかりませんが、げたの中でも季節商品によって上がりましたものは、これは不規則なものとして考えればいいと思います。基本的にはいまの物価落ちつき基調というのは定着してまいりまして、五十六年度消費者物価は五・五%にはおさまり得る、こういうふうに考えております。
  12. 大原亨

    大原(亨)分科員 河本長官はかなり冷静に対処されると思うのですけれども経済企画庁が去年は六・四というふうに言いまして、そしてそのためにも春闘の賃上げを抑えてくれ、こういうふうを言うなれば間接的な意思表示をしたんですね。ですから低目、低目に言っておったわけですが、結局七%程度というのは七・五%というふうに長官は言っておられますが、それを超えましていまの御答弁では七・八まではもはやいくだろう、こういうことであります。そういたしますと公定歩合の七・二五を超えて、定期預金利子を超えまして物価上昇をいたしておるということになりますし、郵便貯金銀行預金の一年もの以上を全部超えているわけであります。これは言うなれば、インフレ論議をしたことがずっと昔からあったわけですが、定期預金利子一つの目安になるわけですが、日本生活実態購買力実態から見てみますと、二けたではないとは言いながら国民生活から見ると大問題であります。     〔近藤(元)主査代理退席主査着席〕 五・五%と抑え目に表現をいたしておりますが、私はこれはこのままでいけばおさまらないのではないかというふうに思います。  そういう点については、その点を私は指摘をいたしますが、御説明の中で石油の問題、スポット価格は最近少し下がっておるようです。武藤さんはその方をやっておられると思うのですが、下がったと思うのですが、どうなんですか。中近東には本年違った情勢は出てきませんか。これは長官の判断でしょうが、たとえばサウジに違った条件、政変が起きるとかそういう心配はありませんか。
  13. 河本敏夫

    河本国務大臣 中近東情勢がきわめて流動的であって各国それぞれ重要な課題を抱え込んでおるということでございますから、見通しを申し上げることは非常にむずかしいと思うのです。ただしかし、一九八〇年、昭和五十五年はOPEC諸国余剰オイルマネーが千二百億ドル弱に達しておりまして、それが世界経済混乱の非常に大きな背景でありますし、かつそのリサイクルがうまくいってない、ここに混乱の原因があるわけでございます。それからさらに五十六年度、一九八一年度余剰オイルマネーがある程度減ると私ども思っておったのでありますが、年末のバリ島のOPECの総会でさらに大幅値上げが決定をいたしました。この大幅値上げはいま御指摘のございましたように需給関係が緩んでおりますからそれを全部上げにくいという条件はございますが、一九八〇年に引き続いて依然としておよそ千二百億弱の余剰オイルマネーが発生するであろう、このように言われております。OPEC諸国は使い切れないほどの金を毎年確保しておるという情勢でありますが、六月には南北サミットがございまして、そこで先進国それからOPEC諸国、油の出ない発展途上国いずれも代表が出てまいりましてこの問題を議論することにもなっておりますので、そういう観点から、油の出ない発展途上国がこれ以上の油の値上げはやらぬでくれ、むしろ需給関係が緩んでおるのだからできるだけ下げる方向に工夫をしてもらいたい、そういう強い要請が出てくるであろう、私はこう思います。  中東情勢は流動的でございますけれども、油につきましては以上申し上げましたような段階でございますので、石油価格のこれ以上の上昇を何としても防ぎとめるということがいま世界の大きな課題であろう、私はこう思っております。
  14. 大原亨

    大原(亨)分科員 これ以上議論しませんが、私は一昨々年でしたか、イラク王室が倒れまして共和制十周年のときに行きまして帰りにテヘランに寄りました。九月ごろでしたか暑いときでしたが、そのときに、福田内閣でありましたけれども福田総理大臣が急遽中近東総理としては最初に訪問されました。そのときに私はイラクにおりましていろいろな話を聞いたのですが、イラクへなぜ来ないんだ、こういう話を聞きました。つまりパーレビ国王崩壊寸前テヘランへ行きまして、そしてエジプトへ参りまして帰りました。日本の感覚はどうもおかしいのじゃないか、こういう話でございました。  中近東では王室というものは特殊な形態をとっておりまして、少々金がたまりましても、教育費社会保障費をただにいたしましても、不公平や腐敗に対する批判は強いので政局は安定していないというふうな見方が一面あると私は思う。これは議論になりますから時間がありません。  最後には、三月危機で中小企業の問題、いわゆる在庫調整に関連して言われておるのですが、一つ長官に聞きたいのはレーガン政策です。どうでしょう、これは余り成功しないのじゃないか。アンチカーターでぶつけた強いアメリカという方針は私はかなりパンチがきいたと思うのです。しかし、軍事予算の増大の仕方を見ておりましても、あのやり方はだれかが言っておるように敵を外に求める。日本が太平洋戦争のときにやったのですが、鬼畜米英撃滅とやりまして国内を団結させていくというやり方ですね、あの戦法に私はよく似ていると思うのです。これは政府委員でなしに長官ですが、私はそういう感じがいたしました。いまは勢いがいいのですけれども軍事予算というのは経済効率から言いましたら、研究費にいたしましても産業構造にいたしましてもいままでのベトナムの後遺症をますます拡大する関係にある。減税を言っておりますね。これは物すごい減税。一〇%減税を三カ年間やるというのですから莫大な減税行政改革を言っていますね。これがどういうふうにできるか。福祉の切り下げを言っていますね。そういたしますと強いアメリカというのは国内経済では問題があるのではないか、私はこう思うのですが、長官はどうなんですか。これからアメリカ外交が始まるわけです。レーガン外交レーガンもうでが始まるのですが、閣僚の一人として長官どういうふうにお考えですか。
  15. 河本敏夫

    河本国務大臣 最終的には議会の承認が要るわけでありますから、原案のまま通るのかあるいは微調整があるのか、そこらあたりはわかりませんが、おおむね国内では賛成が多数のようでありますから、大筋で通るのではないかと私は思っております。  レーガン政策で私ども感じますことは、アメリカが今回非常な勇気と決断を持ってこの大政策をスタートさせたということであります。まだアメリカという国はこれだけの大政策を実行しようとする若さを持っている、こういうことを痛感いたしますと同時に、これだけのことをやらなければならぬということはそれだけアメリカの状態が相当深刻である、こういうことも痛感をいたします。  ただ、私どもがここで参考にしたいと思いますことは、小さな政府をつくり上げるということで、現在はこの政府予算GNPに対して二三%でありますが、三カ年の間にこれを一九%に減らすということであります。四%GNPに対して予算を減らすということは、アメリカ経済は非常に大きいですから大変な金額になると思います。それだけ小さな政府をつくりながら、なおあれだけ大規模減税をやる、軍備増強をやる、この二つをやろうということですから、なかなか大変だと思います。ただ、軍事費の方は現在の二四%から三年後には三二%まで、これは予算に対する比率でありまして、ふやすということでありますが、予算そのものGNPに対して一九%に減りますから、それの三二%というと六%前後でありまして、現在のGNPに対する軍事費比率から見ますとそんなにふえないのです。予算そのものに対してはふえますけれどもGNPに対してはそんなにふえない。なかなか工夫しているなどいう感じを受けたのでございますが、いずれにいたしましても、思い切った小さな政府をつくって、その中でしかも大減税をやるというやり方は、日本としてもよほど参考にすべき課題であろうと私は思っております。
  16. 大原亨

    大原(亨)分科員 その議論行政管理庁長官関係しておるわけですけれども、小さな政府をつくるという場合に、アメリカベトナム戦争以降非常に高いインフレ、高金利によりまして、設備の投資効率が低いわけですから、経済はもう経済軍事化によってがたがたになっている。インフレが二けたになっているということは、大衆的な生活の中には非常に問題が出てきておると思います。  そこで、私ども日本状況において物価が一番大切だと思っております。福祉にいたしましても、やたらに多いことがいいことではない。資源の効率的な活用を私どもずっと主張いたしましたように、資源の効率的な活用をしながら制度を整合性のあるものにして、そして、ナショナルミニマムと言いますけれども、国として最低限度こういうことをやるのだということについては、安定した政策を出さないと国内がたがたになると私は思います。レーガン政策は、一歩間違えば国内ではそういう方向を持っていると一緒に、小さな政府の場合には経済活動に介入する行政というものを小さくするということなんで、できるだけ自由の原則で自律性を保持するということだと思うのです。そういう行政の質の改革が必要だと思います。  そういうことを考えているかどうかという問題と一緒に、あるいは軍事予算をああいうふうにべらぼうにふやしていくと、ソビエトもいまその問題で非常な壁にぶち当たっているわけですし、ヨーロッパだって独自の見解を持っていますから、日本アメリカに対しては本当の独立した外交で言うべきことは言う、こういうことを政府はやるべきだということを長官の御意見に対しまして私の一つ意見として申し上げておきたいと思います。  そこで、時間も進んでまいりますから、中小企業庁も見えておりますが、中小企業倒産の件数と金額は二月が大体幾らで、三月は大体どういう見通してございますか。
  17. 中尾舜一

    中尾説明員 お答え申し上げます。  中小企業の最近の倒産状況でございますけれども、現在史でのところ二月の数字はまだ出ておりません。一月の数字で申し上げますと千三百七件という数字になっております。  それから今後、二月、三月でございますけれども、最近倒産件数がふえておりますのは、個人の消費の低迷でありますとか、あるいは民間住宅建設の不振などの景気のかげりが中小企業に色濃く出てきているのじゃないかというふうに考えておりまして、例年でも二月、三月の倒産件数は増加するというのが通常でございまして、そういう点からしますと、今後非常に懸念を持って見守っているという状況でございます。
  18. 大原亨

    大原(亨)分科員 三月の倒産は、いままでの件数で一番多いのは千七百件ですか、それとすれすれか、それを超えるんじゃないか。三月危機とか言われているのですが、いかがでしょう。
  19. 中尾舜一

    中尾説明員 非常に厳しい状況にあるんじゃないかと思いますけれども、現時点で幾らになるかということはちょっと申し上げかねます。
  20. 大原亨

    大原(亨)分科員 千六百を超えるという予測を出した人がおりますね。  それで、総合的な景気対策で、住宅の投資を住宅金融公庫の枠等を拡大するというのですが、長官、いまの指摘をされました内需の問題では、結局は設備投資それからもう一つは、一番大きいのは約六割の個人消費支出ですね。これは春闘相場にも影響いたしますけれども物価と春闘相場との関係。それからもう一つは住宅ですけれども、住宅をこれからの景気対策の調整策の柱にしておられますね。その住宅金融公庫の枠を広げただけでいいのですか。そういう状況なんですか。着工戸数が急激に減っておるというのは、そういうことだけで解決できる問題でしょうか、いかがでしょうか。これは非常に深刻な問題じゃないか。政府は住宅基本法を、途中まで出すと言っておったのが出さぬと言っておるそうですが、いま住宅の着工戸数が減っておるというのは、個人の購買力関係いたしますけれども、非常にこれは深刻な問題。この問題がうまくいかなかったら、これからの政策はうまくいかないんじゃないか、こう思うほど中期的にも重要な問題だと思うのですが、金融公庫の枠をふやしたぐらいではどうしようもないんじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  21. 河本敏夫

    河本国務大臣 当面の経済問題の中で、住宅の大幅な落ち込みということが、個人消費の落ち込みと並んで、この二つが非常に大きな課題じゃないかと思っておりますけれども、過去四年間はずっと百五十五万戸ないし百五十万戸で推移しておりましたが、ことしは百二十万戸そこそこに落ち込んでおります。しかも、年初が比較的多くてだんだんと落ち込み方がひどくなっておるということでありますから、住宅関係業者は半分以上が経営が非常に苦しい状態になっておる、こういう感じがいたします。  その原因は幾つかありまして、土地問題とかあるいは建築費が高いとか、金利が高いとか、所得が落ち込んでおるとか、いろいろあるわけですから、住宅金融公庫の資金を少しふやすとか、少々金利を下げるとか、そんなことだけで問題は絶対解決しないほど深刻であります。  以上申し上げましたような四つ、五つの案件が総合的にずっと解決されませんとどうにもならぬ、こういう状態でありまして、当面の一つの大きな課題であろうと思っております。
  22. 大原亨

    大原(亨)分科員 たとえば公共投資を経済企画庁は言っておられるようですが、これは予算委員会でいろいろな議論がありましたが、非常に大切なことを議論しておるのにポイントが外れておると思うのは、建設国債で道路をふやすといいましても、新幹線をふやすといいましても、後に重荷になるようなものをふやしていったのでは、中期的にもその他にも、軍事予算と同じで非再生産的な支出になってしまう、赤字と同じようになってしまうと思うのですね。たとえば上越新幹線なんか、一けたからずっと二けた、一兆六千億円も投資が大きくなっています。もうしばらく税金が上がりますけれども、これは維持管理は三千億円以上の赤字だ。国鉄総裁は十年間ぐらいでバランスがとれる、いつもそう言うのですけれども、そんなことは絶対にない。新潟の人がお百姓さんもサラリーマンも商売人も全部手分けをして毎日毎日新幹線に乗っても黒字にならぬ、こういうふうに言われている、上越新幹線は。それはその場面は財投その他を使いまして鉄建公団でやるものですから、非常な——日本はそういうふうな財投という第二の予算が、大蔵省官房長がこっちに見えておりますけれども大蔵省も悪いのですが、あれを国会に見せないでがたがたに使っている。そのしりぬぐいをしているわけですね。そこで、これは政府がどういう考え方を持ってやるかということによりまして決まってしまうわけですよ。ですから、そういうものをやってもなにだということと、公共投資では、ほとんどその土地の周辺は地代がふえちゃって、公共投資を進めていったら、土地へ払う代金、買収金の方がふえるものですから、そこでこれが地価を高めて土地インフレの原因になってしまう、インフレの原因になってしまう。景気に対する寄与率というのはいろいろな面で住宅が第一でしょうけれども、それがやはり住宅政策は非常に問題があるのじゃないか。いままでは日本経済はかなりうまくいったのですが、これからは大変じゃないかというふうに思うのです。  そこで中小企業庁、公定歩合を引き下げましたら、中小企業についての倒産件数は、それが影響をいたしまして減りますか。
  23. 中尾舜一

    中尾説明員 現在の倒産件数の増加は、先ほど申し上げましたとおり、需要の停滞でありますとか建設の停滞ということで、要するに景気のかげりが中小企業倒産に反映しているという状況でございまして、そういう点から、景気の回復によりまして倒産件数の増加の低減につながるのじゃないかというふうに考えております。
  24. 大原亨

    大原(亨)分科員 景気がよくなれば中小企業倒産が減るというのですが、中小企業というのは目じりのしわだと言うのですね。景気がよくなるよくなると言ったと思ったら後からよくなって、悪くなるぞと言ったら真っ先に悪くなるから、いつもしわが寄る、だから中小企業は目じりのしわだとだれか言っていた。  長官、公定歩合を一%下げますと、七・二五が六・二五になるのですね。それは中小企業金融には影響いたしますか。どの程度影響するものですか。どのくらい時間がたって影響するものですか。あなたは公定歩合の引き下げ論者ということで、あなたの力で公定歩合が引き下がっているのじゃないかと言う人もあるぐらいでありますが、それはいかがでしょうか。
  25. 河本敏夫

    河本国務大臣 公定歩合を下げただけではそんなに大きな効果は出ないわけです。やはり資金の需給関係を少し緩和するということが一番大事だと思います。それから同時に預貯金に連動いたしませんとこれは効果がありませんから、預貯金に連動する、こういうことが必要だと思います。  それから中小企業金融というものは特別の金融でありますから、これはやはり政府もよほどバックアップしないとうまくいかぬのじゃないか、こういう感じがいたします。
  26. 大原亨

    大原(亨)分科員 時間が一分ぐらい過ぎてしまいましたが、やはり総合政策をやらなければならぬと思うのです。ですから、公定歩合を下げるということについて条件があるかないかの議論一緒に、それで物価を刺激したりいろいろなことにならぬかどうかということを含めて総合的に判断される大きな責任がある。しかし、消費者物価上昇状況というものは、一方の不景気な情勢にもかかわらず季節物資を中心に上がっているのですが、上がったものは下がらない、下方硬直というのがインフレの特性ですから。これは政治に対する信頼もあるわけです。やはりどうもいまのままではおかしいぞという不安があれば下がらぬわけですから。上がる一方だという下方硬直性というのがインフレの特性です。  それから、定期預金利子以上に物価が上がる、そういう状況が続きますと、予測以上の——前年度曇りで後年度晴れというような安易な見通しをちょいちょい出しておりますが、そういう状況ではないのではないかというふうに私は指摘をいたしたいと思います。長官の御意見最後に承っておきます。
  27. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまの段階では物価が安定をいたしませんといろいろな政策がやれませんので、やはり当面は物価の安定を最大の課題と私どもは心得ております。  それから、いまの景気の状態は曇りでありますけれども、雨の降る直前の曇り、こういう感じがいたします。そこで、私どものいまの考え方は、こういう状態を何とか後半晴れに持っていきたい、このままほっておいたのではどしゃ降りになるおそれが多分にある。そこでいろいろな対策を積極的に考えていきたいというのがいまの考え方でございます。
  28. 大原亨

    大原(亨)分科員 以上です。
  29. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて大原亨君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  30. 井上普方

    井上(普)分科員 いまも大原さんから住宅問題等々につきましてお尋ねがございましたけれども、私も続いてその問題についてお伺いいたしたいと思います。  このたび新経済社会七カ年計画のフォローアップ昭和五十五年度報告というのを出されました。この中で大分数字が、公共投資は二百四十兆円から百九十兆円まで減らしております。そこで、特にこのような二百四十兆円から百九十兆円まで下げた一番大きな原因はどこにあるのですか、お伺いいたしたいと思います。
  31. 河本敏夫

    河本国務大臣 新七カ年計画は、昭和五十四年度からスタートいたしまして最終年度昭和六十年度であります。公共事業は、当初は二百四十兆円を考えておりましたが、五十四年、五十五年、五十六年と、この三カ年がほとんど据え置きになっておる、こういうことでありますから、残された四年間で大幅に増額することもむずかしい、当初の三年間の据え置きを考え、経済の現状を考えまして、大体百九十兆見当ならばやれるのではないかということで政府部内で合意を見たわけでございます。
  32. 井上普方

    井上(普)分科員 その百九十兆円に抑えたところは今後やはり伸び率を余り変えてない、これはどういう理由でございますか。
  33. 白井和徳

    ○白井政府委員 ただいま大臣からお答えがありましたように、五十四年度は五十二年度に対しまして実質ゼロ、それから五十五年度もゼロ、それから五十六年度も実質の伸び率ゼロと仮定いたしまして、その後実質六・九で昭和六十年度まで伸びたとした場合に、五十五年度をベースにいたしまして公共投資の実質の伸び率五・〇となるわけでございます。
  34. 井上普方

    井上(普)分科員 そうしますと、六・九%の伸び率ですね。
  35. 白井和徳

    ○白井政府委員 五十七年度以降六・九ということになろうと思います。
  36. 井上普方

    井上(普)分科員 そうすると、六・九ということになると、国民総生産は幾らの伸びにし、物価指数は幾らの伸びにしていますか。
  37. 白井和徳

    ○白井政府委員 国民総生産の実質の伸び率は今後五・五%と見ております。それから消費者物価につきましては五%程度卸売物価につきましては四%程度と想定しております。
  38. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで、果たして今後国民総生産が五・五%のときに六・九%の伸びが公共投資に見込まれるかどうか、これはどうして国民総生産とそれとの間に一・四%の差が出てきておるのですか、この点ひとつお伺いしたいと思います。
  39. 河本敏夫

    河本国務大臣 実は、たとえば成長率なども平均五・五%と見ておりますが、年によって実情に合った経済運営をしようということで、五十四年は六・三%成長を目標にいたしました。実質は六・三%以上を超える状態でありましたが、公共事業を相当大幅に延期をいたしましてこれを六・一%にいたしました。五十五年は第二次石油危機が発生いたしまして、相当悪い影響が出ましたので、これを平均よりも低目の四・八%にする、そういう経済運営をしたのであります。それから公共事業も、五十四年七カ年計画のスタートのときには毎年相当大きな伸びを考えておりましたが、経済の実情に合わせて伸び率はゼロ、こういうことにいたしました。  そこで、公共事業の五十七年度以降の伸びはいま政府委員から答弁をしたとおりでございますが、これは計画でございまして、毎年の経済の実情に合わせまして六・九以上伸びるという可能性のあるときにはそれ以上伸びるときもありましょう。しかし、それ以下の年もあろうかと思うのです。毎年の経済の実情に応じてやっていきたい、こう考えておりますが、ただ原則的に申し上げますと、わが国の社会資本投資は先進工業国に比べますと非常におくれておりまして、一番低い水準でございます。いい例が下水道でございますが、そういうことでやはりよその国よりもできるだけ高い水準で公共投資、社会資本投資は伸ばしていかなければならぬ、こう思っております。
  40. 井上普方

    井上(普)分科員 実情に合わせて伸ばしていかなければいかぬ、あるいは抑制しなければいかぬということは私はわかります。しかしながら、目標を六・九%に置いておる根拠それ自体について私は疑問を持つのです。公共事業の伸びを五十七年度以降四カ年に六・九%伸ばすというこの目標それ自体に私は疑問を持つのですが。
  41. 白井和徳

    ○白井政府委員 ただいま大臣から御答弁ございましたように、各年各年の公共事業のあり方というのは、そのときの物価情勢あるいは経済情勢、財政情勢に応じて判断すべきことであると考えております。それで七カ年における公共投資の累積投資額、五十三年度価格で百九十兆円、こう決めたのは、昭和六十年度における経済の望ましい姿、すなわち物価の安定と完全雇用の確保並びに財政再建、この三つの目標を整合性を持ってやるといたしました場合に、中期多部門モデルのシミュレーションの結果、経済審議会でいろいろ検討した結果、百九十兆円というのがおおむね妥当な累積投資額になろう、こう判断したわけでございます。
  42. 井上普方

    井上(普)分科員 そういたしますと、公共事業には各種五カ年計画というのをつくっております。この五カ年計画の達成と六・九%あるいは百九十兆円との関係はどうなりますか。
  43. 白井和徳

    ○白井政府委員 今年度八本の五カ年計画が策定されるということになっておりまして、閣議了解をとったものもあると思いますが、百九十兆円とはおおむね整合性はとれているとわれわれは判断しております。
  44. 井上普方

    井上(普)分科員 ことしから八本でございますけれども、いままですでに決めております道路五カ年計画にいたしましても、一番大きな問題になりますが、これとの整合性はとれていますか。
  45. 白井和徳

    ○白井政府委員 道路五カ年計画は最終年次が五十七年度になっておりまして、現在の第八次道路五カ年計画は、前期五カ年計画との間において整合性がとれた形になっている、かように考えております。
  46. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで、公的資本形成は国民総支出のうちで八・八%ですね。この比重を資本形成は示すわけでございますが、民間住宅投資は六・二%とかなり大きい比重を占めておる。民間設備投資が一五・五%でございますので、合わせますと大体民間設備投資に匹敵する。公的資本形成と民間住宅投資とを加えますと、大体これに匹敵するものであると思う。これで大体三〇%を超える。  そこで、大きい問題がここに出てくるのでございます。特に民間住宅投資につきましては、先ほども大原さんが御指摘になっておりましたが、昭和六十年で時価といたしまして二十五兆四千億円投資が行われることになっているが、現在の伸び率からいたしますと、これはなかなかむずかしいのじゃなかろうか、私にはこのように考えられるわけでございます。昭和五十五年度の十五兆一千億円というのは、一体建設戸数を幾らと見ていますか。
  47. 白井和徳

    ○白井政府委員 五十五年度の建設戸数は百二十万戸台と見ております。百三十万戸前後と大体見ております。
  48. 井上普方

    井上(普)分科員 そうすると、この十五兆一千億が百二十万戸前後と考えてよろしゅうございますか。
  49. 井川博

    ○井川政府委員 五十五年度、今年度の建設戸数でございますけれども、大体百三十万戸弱、われわれの現在の想定ではそういう感じでございます。御案内のように昨年百四十八万、一昨年百四十九万、その前は百五十二万、大体百五十万台で推移をしておりましたのが、ことしに入りまして、特に現段階、非常に対前年落ちておりまして、百三十万戸をちょっと切れるのじゃないだろうか、五十五年度についてはそういう感じでございますが、五十六年についても戸数としてはそう大きくふえない、やはり百三十万戸前後ではなかろうか、こういう感じになっているわけでございます。
  50. 井上普方

    井上(普)分科員 いや、私が聞いておるのは、百三十万戸弱とおっしゃいましたが、その百三十万戸と十五兆一千億とは大体匹敵するのですかということです。
  51. 井川博

    ○井川政府委員 われわれとしては、その戸数を前提にしてその金額を出しておるわけでございます。
  52. 井上普方

    井上(普)分科員 そうしますと、年平均の伸びを時価にいたしまして昭和六十年度までには一一・一%組んでおる。これは根拠はどこにあるのでございますか。
  53. 白井和徳

    ○白井政府委員 まず実質の方で六・六と伸びておるわけでございます。これは先ほどから大臣もお話がありましたように、五十四年度から五十五年度にかけまして実質でマイナスの九・七と落ち込みがあります。これは戸数の落ち込みもあります。特にこれは建設資材が高騰した。それから地価が上がった。金利の影響もある。可処分所得の影響もあろうかと思いますが、この落ち込みからの回復過程にあるとわれわれは見ているわけです。したがいまして、この六・六の内容は、これはマクロでございますので細かくは積み上げ計算でございませんが、大体の想定では、戸数で二・六、規模の拡大で二%、質の改善で二%ということで実質六・六伸びるであろうと考えております。名目値はそれのデフレーターの関係がございますので一一・一、かようになろうかと思います。
  54. 井上普方

    井上(普)分科員 戸数でこれを二・六%の伸び、規模で二%それから設備において、質において二%というのは甘過ぎやしませんか。私はこれを見まして、過去の五十四年につくりました経済七カ年計画の数字と対比いたしますとかなり低目には見ておりますけれども、決してそのような伸びを示さぬのじゃないだろうか、このように考えられるのでございます。たとえばいまのこのうちの規模の二%ということを希望されておるようでございますが、果たして二%の伸びが五十四年と五十五年との間にあったであろうか。実質はどうです。実績はどうでございますか。
  55. 白井和徳

    ○白井政府委員 まず戸数の方でございますと、昭和四十七年に百八十五万戸、昭和四十八年百七十六万戸、こういう非常に高い水準で推移してきたわけでございますが、先ほど申し上げましたように最近では百三十万戸前後ということになっております。しかし、戸数については潜在的な需要があると考えております。先生指摘の質の問題でございますが、住宅の規模の推移を見ますと、四十九年から五十四年にかけまして実質で年率二・四%上昇しております。
  56. 井上普方

    井上(普)分科員 ただいま戸数の伸びは潜在的要求がある、こうあなたが言われる文面、借家が非常にふえておるという現象をどう見られますか。
  57. 白井和徳

    ○白井政府委員 ただいま手元に資料がありませんので……。
  58. 井上普方

    井上(普)分科員 実際に住んでおる住宅よりもむしろ空き家の方が多い。空き家が五%近くになっておるという数字が出ておりますが、これと潜在的要求が強いというのとはどういう関係がございますか。
  59. 白井和徳

    ○白井政府委員 空き家が相当あるということは事実でございます。これはやはり人口移動の問題等も絡んでおると推定しております。したがいまして、家というのは動きませんので、人の移動によって需要と供給の関係は地域的に決まってくるという面があろうと推定されます。
  60. 井上普方

    井上(普)分科員 役人というのはどうもうまいことを言うので、片方においては空き家は五%になってもう国民の住宅需要は大体満足したのだ、これからは質の向上だ、こう建設省の報告書には書いてある。しかし、あなたのいまのお話によると潜在的要求がある、そしてまた地域的に空き家が多いのだろう、こうおっしゃいますが、今後人口移動と空き家との関係をお考えになっておられるのですか、どうなんですか。
  61. 白井和徳

    ○白井政府委員 経済計画ではマクロで計算してございますので、積み上げでございませんので、その辺は詳細には検討しておりません。
  62. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし、潜在的要求があって今後も数の上では二・六%伸びるとおっしゃる。潜在的要求があることは私は事実だろうと思う。あろうけれども、しかしそれを達成できるだろうか。  たとえば昭和五十四年と五十五年とでは、戸数ではすでにマイナスになっている。どこに原因があるのか。これは先ほど来もおっしゃられましたけれども、明らかに宅地の高騰によるものと私どもは推定する。この宅地の高騰を抑制すると申しますか、この方策がない限り今後住宅の建設戸数の伸びは考えられないのではございませんか。いかがでございますか。
  63. 白井和徳

    ○白井政府委員 御指摘のとおり地価の安定というのは、潜在需要を顕在化する基本的な要因であると推定しております。
  64. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで、一体宅地の高騰を抑える方策をやっておるのか。ここにはいろいろと書いてございます。しかし、この書いておる方策を見ましても、こんなちゃちなものでできるわけはない。あなたの方の「大都市地域を中心として宅地需要総見通しを策定し、これをもとに関連公共公益施設整備の促進等による計画的宅地開発の推進、農住組合制度の活用等による市街化区域内農地の宅地化の促進、」これはやらなければならないが、余り行われてない。「市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画の見直しの適切な実施、開発許可の適切な運用」こういうことを言ってありますが、これで解決できるとお考えの上であなた方はこの二・六%の戸数の伸びをお考えになっておられるのか、お伺いいたしたい。これがまず第一。  第二は、規模が大きくなったと申しますが、狭小住宅をたくさん建てている。これで規模の拡大が行われておるとは私どもには考えられないのです。いかがでございますか。
  65. 白井和徳

    ○白井政府委員 御指摘のように地価の安定が住宅計画にとって基本的な条件でございまして、そのためには需要、供給、特に供給の増大を図らなければならないということでございますので、その観点から、ここに書きましたように都市計画法における市街化区域と調整区域の見直し並びに関連公共施設の整備促進、それから特に市街化区域におきます農住組合法の適用等々の施策を適切に運用することによって、できる限り宅地供給を増大させて地価の安定に努めてまいりたいということが政策の基本的な方向ではないかと考えております。  それから質的な改善でございますが、先ほど先生に申し上げましたように、過去の統計でマクロ的につかむと年率二・四の実質的な規模拡大になっておるわけでございまして、この傾向は今後とも続くというふうに考えております。
  66. 井上普方

    井上(普)分科員 五十年当時からミニ開発というのが非常に多くなって、一大社会的な問題にもなっている。このミニ開発がふえたがためにまだ百三十万戸ある、これを支えている一つの大きな原因であろうと思う。五十五年度の百三十万戸のうち、恐らくミニ開発が三十万戸近くあるのではなかろうかと私どもには推定される。これがさらに多くなることは、社会的にもゆゆしい問題でもある。これは抑制の方向にいかなければならない。片方においてはそういう抑制要因を持っておる。  このミニ開発がなぜこのように盛んになるかといえば、地価の高騰に原因があることはもちろんであります。しかも、地価の高騰はますます激しくなる。大臣、これは経済企画庁長官として聞いていただかなければならないのだが、地価の高騰は私は決して国土庁の言っておるような数字ではないと思う。  一例を挙げれば、私は田舎に家を持っておる。昭和四十年当時には、私の宅地は坪一万円だった。ところが五十年になると十五万円になった。五十三年で十七、八万かなと思ったら、このごろ私の付近の売買は二十五万円しているのです。ここ二、三年の間に七、八万円上がっている。ということは三〇%ないし四〇%上がっているということだ。きょうは住宅建設だけ取り上げておりますので、こういう地価の高騰が住宅建設の大きな抑制になっておる。また、現在の経済情勢から言うと、国民は土地を持つことによってインフレヘッジをしようという意向も非常に強くなってきている。こういうような状況の中で戸数を二・四%伸ばす、すなわち三%伸ばすとして幾らですか、百三十万戸の三%だから五万戸近く、四万戸ないし五万戸伸ばすというのは至難のわざであろうと私は思う。五十四年以降すっと下降してきて、五十五年度にはずどんと落ちているのです。これを回復させるにはよほどの手段がなければならぬと思うのでございますが、大臣いかがでございますか。
  67. 河本敏夫

    河本国務大臣 住宅問題の背景はいろいろあります。しかし、やはり一番大きな問題は土地の問題だと思います。先ほど潜在需要はどのくらいあるかという議論が出ておりますが、計算上の戸数からいえば家は余っておるということになりますけれども、実際は戦争直後に建てましてもう古くなって現在では住みにくい、こういう家も相当ありますから、やはり建てかえなければならぬ家は相当あるんだと思います。  そこで、建設省の方で新五カ年計画を今度つくっておられるわけでありますが、やはりこの新五カ年計画見当のことをやろうといたしますと、土地問題に抜本的に取り組まなければむずかしい、こういう感じが私はいたします。残念ながらこの問題は、毎年のように議論になりながら、なお軌道に乗ってないということでありますので、私は五十七年度あたりからは抜本的な土地の見直しが総合的に必要である、こういう感じがいたします。
  68. 井上普方

    井上(普)分科員 土地問題が基本であるのはもうあたりまえの話ですが、そこで、抜本的な土地問題を解決するのは五十七年度でやらなければならぬ、こうおっしゃいますが、経済企画庁としてはその方向はお考えになっておられるわけですか。
  69. 河本敏夫

    河本国務大臣 この問題は国土庁と建設省の両省庁が主管でございまして、両省庁の間で中心に進めておられまして、その間経済企画庁が若干の調整をする、そういう仕組みでやっておりますが、まだ最終的な結論が出ておるという段階ではございません。
  70. 井上普方

    井上(普)分科員 結論が最終的に出るような段階ではないと言うけれども、取り組む姿勢がないのですよ。だから、閣僚の一人として、土地問題がいかに重要であるかをひとつ強調していただきたいと思うのでありますし、また閣僚の一人として責任を持っていただきたいと思うのでございます。  さて、この住宅問題につきまして、いま申し上げましたとおり、この五十五年度報告を見ましても私はむずかしいのじゃなかろうかと思う。年平均伸び率、民間住宅投資は六・六%伸びるんだ、こう言われますけれども、むずかしいのじゃなかろうか、このように思います。また、公的固定資本形成も財政上の問題等々もこれあって、五%の伸びというものもこれまたむずかしいのではなかろうかと私には考えられるのであります。  そこで、これもまた五十六年に見直しましたけれども、恐らく五十七年にもまた見直しが続いて、計画自体がダウンしていくこともあり得ると思います。  もう一つ思いつくままに申し上げますと、大臣、あなたはいま建てかえが必要だ、戦後の建物でこれを直さなければならないと言っておられます。そのとおりです。そこで日本の家というものをひとつお考え願いたいのです。この家は大体耐用年数二十五、六年で住んでおるようでございます。私が西欧諸国へ参りまして西欧諸国の一般家庭へ入ります。われわれよりもはるかに生活水準が高い。家具であるとかあるいは調度品等々見ますと、われわれ日本の勤労者よりもはるかに高い調度品を備えておる。それはそれだけの社会的資本、個人的資産というものを持っているにほかならない。これはどこに原因があるか。考えてみますと、日本人は、戦後特に二十五年と申しますと、耐用年数二十五年、戦後の住宅を建てかえなければならぬということになると、一世代に一遍住宅を建てかえなければならないということになってきます。西欧諸国でございましたならば、住宅を建てると申しますと、大体三世代、四世代使うことができるものが、中の改造は行われるでございましょうが、つくられておる。そこに日本の住宅の質それ自体が個人資産を形成する、ひいては社会資本を形成する大きなネックになっておると私は思うのです。こういうような面からいたしますならば、日本の住宅の質を転換させなければならない時期はいまじゃなかろうかと思います。八〇年代以降はそういう方向に政治家は目を向けなければならないのじゃなかろうかと思うのであります。そうなりますと、地価の問題はもちろんのことではございますが、いかにして日本民族を豊かにし、後世に資産を残すかという点を考えますと、住宅の質ということを中心に考える時期がいま来ておる。耐用年数の長い住宅を建てることが必要な時期がいま来ているのじゃなかろうか。この点に思いをいたしていただきたい。単に住宅戸数の伸びが幾らであるとかというような考え方は目の前の事柄を糊塗するためであって、民族将来のためにはならない、このように考えますので、この点ひとつお考え願いたいのが一つ。  もう一つは、この達成がむずかしいあるいは財政再建がむずかしいということから、昭和四十八、九年のごとく調整インフレ論がもうすでに自民党内において出てきておるのを私は大いにおそれるのであります。この点、インフレがいかに国民生活を苦しめるかということについては私が申し上げるまでもございません。調整インフレ論がもうすでに自民党の中においてもかなり出てきておる。この点大いに私は危惧しておりますので、経済企画庁長官は、先ほども諸施策を行うには物価の安定が当面必要だ、こうおっしゃられましたが、当面じゃなくて絶対に必要なんだということを私は強調いたしまして、時間が参りましたので質問を終えたいと存じます。
  71. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算及び昭和五十六年度政府関係機関予算経済企画庁所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  72. 武藤嘉文

    武藤主査 次に、昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算及び昭和五十六年度政府関係機関予算中通商業省所管について政府から説明を聴取いたします。田中通商産業大臣
  73. 田中六助

    田中(六)国務大臣 昭和五十六年度通商産業省関係予算案等の予算委員会分科会における御審議に先立ちまして一言ごあいさつを申し上げます。  私は、通商産業大臣拝命以来、世界十五カ国を訪問し、今日の世界が当面する問題を目のあたりにするとともに、各国からわが国に対し、強い期待と国力にふさわしい責任の遂行を求められていることを痛感した次第であります。  一方、国内経済運営に目を転じますと、わが国経済は、二度にわたる石油危機を克服し、欧米諸国に比し良好な成果を上げております。  しかしながら、政治的にも経済的にも揺れ動く世界情勢のもとで、資源を持たず、貿易立国たらざるを得ないわが国が、今後とも乗り越えなければならない試練、解決しなければならない課題は少なくありません。  その第一は、エネルギー安全保障の確立、第二は、雇用の安定と持続的経済成長の達成、第三は、世界の国々との安定した相互依存度関係の構築、第四は、産業の創造的知識集約化の推進、第五は、中小企業の経営安定の実現とその育成発展であります。  これらの課題の達成のために、私は全力を挙げてまいる所存であります。  昭和五十六年度通商産業省関係予算案及び財政投融資計画の作成に当たりましても、このような基本的方向に沿いまして、一般会計七千百九十三億三千八百万円、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計五千億四千六百万円、電源開発促進対策特別会計千七百十八億七千三百万円、財政投融資計画五兆四千五百三十三億円等を計上しております。  以下、この通商産業省関係予算案等の重点事項につきましては、お手元に資料がお配りしてありますが、委員各位のお許しを得まして説明を省略させていただきたいと思います。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  74. 武藤嘉文

    武藤主査 この際、お諮りいたします。  ただいま通商産業大臣から申し出がありました通商産業省関係予算重点事項説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 武藤嘉文

    武藤主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  76. 武藤嘉文

    武藤主査 以上をもちまして通商産業省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  77. 武藤嘉文

    武藤主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島弘君。
  78. 大島弘

    大島分科員 本日、私は通産大臣並びに通産省当局に対しまして、同和産業といいますか、部落産業の実態がどうなっているかということを中心にお伺いしたいと思うのでございます。  まず最初に、大臣からお答えいただきたいと思うのですが、いままで通産省の同和産業の行政が果たしてうまくいっておったかどうか、もしいっていないとすれば、それはどこに原因があるのかということをお伺いいたしたいと思うのでございます。
  79. 田中六助

    田中(六)国務大臣 同和対策問題は本当に古くして新しい、私どもが全力を挙げて解決すべき問題だというふうに私は考えております。したがって、まず現地の実情調査、そういうものを詳細に調べ上げて対処しなければそごを来す、あるいは漏れるというふうに考えておりますので、実情調査にはあらゆる角度から万全を期していかなければならない、以前にもそう思っておりましたけれども、いまもそして将来もそうあらねばならないと私は思っております。  昭和五十四年に調査したその資料というもの、これは総理府が中心になってやったことでございますが、その後も私ども通産省にそういう委員会を設けまして、その調査には粗漏のないように事務当局も努めておりまして、各地に調査員を派遣して努力しております。しかし、まだまだくつの上から足をかくような思いを関係者の人はしておると思いますけれども、私ども、私がただいま申しましたような心持ちで一生懸命早期の解決を目指してこれからも努力したいというふうに考えております。
  80. 大島弘

    大島分科員 ただいま大臣から実態調査の把握不十分というお言葉がございましたが、まさにそのとおりだと思うのです。後ほど述べますように、これはまさに当初期待したところの十分の一も実現されてないということが原因で、その原因はどこにあるかといいますと、やはり実態調査がないのだということでございます。このことについては一番最後に大臣にお願いいたします。  その次に、通産当局にお伺いします。  同和地区の産業は、われわれの調査によりましても、大体従業員四人未満の経営が全体の八二%、十人未満を含めると九三・四%、ほとんどが零細企業である。     〔主査退席山田(耻)主査代理着席〕 こういう零細企業の育成について通産省は同和対策としてどのような対策を行ってきたのか、お答えをお願いします。
  81. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 先生ただいま御指摘のとおり、同和事業は大部分が零細中小企業でございます。通産省といたしましては、同対法の第六条にも規定されておるところでございますけれども、対象地域におきますこのような同和中小企業者に対しまして、経営の合理化、設備の近代化、技術の向上、この三つの近代化を講ずるために同和地区の産業振興を行うということを主眼としておるわけでございます。したがいまして、通産省におきます同和対策事業の根幹は、同和地区におきます産業の実態とその発展の方向を十分に把握することによりまして、それをベースといたしまして同和地区の経営指導の充実、各地区の経営指導員の増員を図りまして経営指導を充実するとともに、それをベースといたしまして、高度化資金の融資制度の活用によりまして、企業の経営の合理化と設備の近代化を図ってまいったということが根幹でございます。
  82. 大島弘

    大島分科員 私たちの調査によりますと、現在の経営状況を調べますと、事業の中止、経営不振あるいは何とか持ちこたえているというものが約五〇%ございます。特に高度化事業におきましては実質上百三十三件しか実施されていないということ、つまりいま三要件をおっしゃられましたけれども、いままでの通産省の基本姿勢は、同和対策関係予算の九六%以上を同和高度化事業が占めているというふうに、融資一本の政策ではなかったかということでございます。この点については、同和事業にとっては非常に零細企業が多いから融資だけでは不十分なのです。しかるにかかわらず、いま申しましたように九六%以上の予算が高度化事業に占められておる、こういうことですが、こういう実態につきましてどういうふうに考えておられますか。
  83. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 高度化資金の活用によりまして、従来、組合組織化を通じまして零細同和中小企業者の振興を図ってきたということは御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、このような高度化融資を根幹といたしまして、それとあわせまして県あるいは各指導機関によります経営指導制度というものが非常に重要であるということも痛感しております。したがいまして、五十六年度予算といたしましては、高度化事業以外にも経営指導員制度につきまして指導員を二百五十六名から二百八十一名というふうに増員いたしまして、そのような形で小規模企業に対しましてきめ細かい経営の指導を行うということを考えております。  また、今後の振興の方策をさらに充実するためにも、その方策の策定のために産業振興調査、いわゆる産業の振興のための調査を拡充する必要がございますので、これも本年度の二十六地区から三十七地区、それから高度化事業の促進を図るための調査指導事業につきましても二十四県から三十七県というふうに、高度化事業を支えます各般の指導調査事業につきましてさらに拡充してまいりたい、かように考えております。     〔山田(耻)主査代理退席主査着席
  84. 大島弘

    大島分科員 昨年の十月三十一日の商工委員会によりますと、政府委員が「これまでの経験にかんがみますと、こういった小規模零細企業者の組織化というのが当初想定したほど容易でないという実情にかんがみますと、現行の高度化事業制度がこれらの零細企業者にとって必ずしも利用しやすい制度とは言えない」こう言っております。  そこで、五十六年度予算においては、ようやく長年の懸案であったリース制度を導入される予定でございますけれども、なぜこの特別措置法が制定して十二年もたっていま初めてこの制度を導入したか、通産当局の事務の怠慢ではなかったか、その原因は実態調査の把握の不十分ではなかったか、そういうふうに思うのでございますが、いかがでございますか。
  85. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 同和高度化事業につきましては、昭和四十七年度にその制度が創設されております。その後通産省といたしましても、逐年その事業の金額の増額と同時に事業内容自体も改善するように努めてまいりました。一例で申しますと、これまでの間にも、昭和五十年には小規模向けの工場アパート制度を創設する、あるいは昭和五十二年には商業アパート制度を創設いたしまして、償還期間の大幅延長を図ってきたということはこれまでも実績としてございます。     〔主査退席近藤(元)主査代理着席〕  しかし、先生ただいま御指摘のように、従来までの制度だけでは不十分であるということも事実だということを認識いたしまして、五十六年度からさらにこの高度化事業の利用がしやすいように制度の大幅改善を実施したというわけでございます。  その内容は、組織化が非常に困難な小規模零細事業者の便宜を図りますために、五十六年度予算におきましては高度化利用の図りやすい形といたしまして、工場等のアパート事業につきましてその負担軽減を図るために、償還期間を従来の十五年から最長二十五年まで延長する、大幅に条件を緩和するというふうに制度の抜本的な改善を図った次第でございます。
  86. 大島弘

    大島分科員 いまの点につきまして大臣の所見を伺いたいのですが、特別措置制定後十二年たって、しかも三年延長の期限を残すところあと一年余りというときになって、いまごろようやく長年の懸案であるリース制度が実現されたということについて余りに遅過ぎた、ツーレートという感じはいたしませんか、大臣。
  87. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほども答弁申し上げましたように、古くて新しいこの問題を一日も早く、ただいま私ども政府委員が答えましたように零細企業の方々も含めまして高度化へ向けていかなければならない、あるいはまたその対策をやりましても、工場アパートあるいは商業アパート、五十年、五十二年に制度の改正をしても、まだ何ら具体的にはその心の中にまで踏み込んだような施策が行われてないのじゃないかという反省はございます。     〔近藤(元)主査代理退席主査着席〕 したがって、これを早くやったというような考えはもちろんさらさらなく、やはりツーレートであるという感じは正直に申し上げて否めない事実だと思います。そういう点も含めまして、今後早急にいろいろな問題を解決していかなければならないというふうに考えております。
  88. 大島弘

    大島分科員 次に、事務当局に同和地区産業の公害対策について質疑いたしたいのでございますが、同和産業の主力は、私は和歌山県でございますが、和歌山県なんかは特に皮革産業が大きい、あるいは食肉産業が大きいということでございます。公害対策はもちろん必要なことでございますけれども、この公害対策への投資についての負担という点から見ると、先ほど言ったように九〇何%が小企業じゃなくて零細企業であるという実態を見たときに、こういう公害対策の強化ということはどういうふうに考えておられるのか、事務当局からお答えいただきたいと思います。
  89. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 公害対策投資、公害対策のための費用負担というものが小規模零細企業にとって特に重い負担になるということは御指摘のとお力だと思います。したがいまして、直接生産性の向上につながらないような公害対策投資に対しましては高度化事業上も特別の配慮をしなければならないということで、高度化事業のうちのアパート事業に関します条件改善の中で特に公害防止施設に対します負担の軽減につきましては大幅に改善するというふうに踏み切った次第であります。  これを具体的に申しますと、一般の、従来返済期間が十五年であったものを公害施設につきましては二十五年まで延長するという措置をとることとしております。また、このような高度化事業の融資条件の改善だけではなくて、心しろ零細企業にとりましては公害対策防止技術の開発が必要であるという事態にもございますので、技術面につきましては各県等にございます公設研究機関に対しまして技術開発のための研究費の補助を準備することも、従来の予算にもございますけれども、これをさらに活用してまいりたいと思います。また公設試験場ではなくて事業者自身が技術開発を行います場合の補助の制度も積極的に活用していただきたいということで公害防止技術の開発促進のためのもろもろの制度を今後とも活用してまいりたいと思います。  また、個別企業に対します研修あるいは指導という面も非常に大事でございますので、各府県と連絡をとりながら、同和対策のための委託費という予算がございますけれども、研修指導につきましてはその委託費を活用していきたいということでございます。  このような諸制度を総合的に活用しながら、いま先生指摘の同和地区におきます公害防止対策につきましての費用負担、それから円滑な実施が進みますように私どもとしてもさらに制度の改善も含めまして研究してまいりたいと思っております。
  90. 大島弘

    大島分科員 大臣にお伺いする前にまず事務当局にお伺いしたいのですが、有名な部落地名総鑑、特に安田信託事件等がございまして、この地名総鑑は発覚したものだけでも二百数十社の一流企業が購入している。そして就職試験や何かについてハンディをつけている、こういうことについて、通産省としましては、場合によっては労働省の所管かもしれませんが、何かこういう差別をなくするような指導行政なり通達というものは出しておられるのですか、これは事務当局にお伺いしたいのです。
  91. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 差別図書を購入したような企業に対しまして、従来通産省といたしましては関係各省と協力してその対策に万全を期しておるところでございます。  具体的には、購入企業に対しましては法務省が中心となりましてその差別の実態を把握し、事件再発防止のための実行を各地方公共団体の協力を得ながら進めておるわけでございますけれども、通産省といたしましては、このような悪質な差別図書の購入が今後起きることがありませんように、法務省を中心といたします啓発指導事業に積極的に参加してきたわけでございますが、さらに必要な場合に通産局を通じます個別指導等にも力を注いできたわけでございます。今後とも啓発指導に対しまして協力を行っていくわけでございますけれども、通産省といたしましても関係省庁と共同いたしまして、業界団体に通じます指導通達をすでに発するというような措置も含めまして指導業務を行っているわけでございますけれども、さらに通産省自体といたしましても研修会を催すというような形で業界等に対する厳正な指導を続けてまいりたい、かように考えております。
  92. 大島弘

    大島分科員 いよいよ最後になってきましたので、一番肝心な質問をいたしたいと思います。  特別措置延長も残り一年余りということになっている現在、この積み残した部落産業に対する措置を通産省として今後どうとるのか。たとえば昨年の三月五日の予算委員会第四分科会政府委員は、「われわれとしては、端的に申しまして現在考えております同和対策としての産業政策というのは今後もずっと続けていくべきだというふうに考えておるということでございます。」それから同じく政府委員はこの分科会で、昨年でございますけれども、「今後相当長期間かかってこの問題を実施すべき問題であると考えておるわけでございます。」ということで、あと残り一年余りでこの問題はすべて解決しないということは、これはもうだれが見ても明らかでございますが、通産当局としては残り一年余りという現在、どういうふうに今後この問題について考えているわけでございますか。
  93. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 通産省といたしましては、四十七年の高度化事業を中心といたしまして、従来二百件以上の高度化事業の実施というような組織化事業を中心といたしまして、同和振興事業の推進を図ってまいったわけでございます。通産省といたしましては、この同和対策事業はなお相当期間推進をする必要があると考えております。同対法の規定にかかわらず、これらの事業は実施するということが従来私どもの考えでございまして、同対法自身の取り扱いにつきましては、総理府を中心に現在検討されておるわけでございますけれども、通産省といたしましては、同和地区内の中小企業の振興につきまして、これまでの諸制度の活用も含めまして、あるいはその改善も含めまして、継続的に今後相当期間をかけて実施していくという考えは変わっておりません。
  94. 大島弘

    大島分科員 いまの問題に関連しまして、大臣のお考えを聞きたいのでございますが、いまの事務当局の説明を聞いておりますと、期限が切れても何とか予算措置でやっていこうという姿勢だけしか見えないと思うのでございますが、なくそう差別、守ろう人権という立場をとれば、あと一年余りでこんな問題は終わるものじゃない。教育の問題にしても何にしても、通産行政もまさにそうで、また、さっき言いましたように本当に緒についたというような段階だと思うわけでございます。そういう意味で、この点は大臣からぜひとも発言を求めたいのでございますけれども、大臣はいまの事務当局の答弁に対して、法律改正がなくても予算的措置だけでやっていくというのか、それとも予算措置も法律措置もともに必要だとお考えになっておられるのか、大臣の御答弁をお伺いしたいと思います。
  95. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いま事務当局が答えたとおりでございますが、私といたしましては、この問題は国民全体の協力と理解というものが必要でございまして、そういう観点からすれば、いまの残す一年間では不満足だと思います。したがって、いま総理府を中心にこの延長問題を研究しております。討議しております。したがって、わが省も積極的にこれに参加して延長問題を研究、討議していかなければならないというふうに考えております。
  96. 大島弘

    大島分科員 予算的措置だけだといっても打ち切られるというおそれがありますので、ぜひともこれは法律改正とともに予算措置も含めてこの問題を進めていただきたいと思います。  一番最後に大臣にお願いがございますが、大臣、福岡の産炭地なり何かでこういう同和産業をみずから御視察になったことがございますか。
  97. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私の選挙区にもそういうところがございますので、みずから私もよく知っておりますし、私の旧制中学の親友の人たちもたくさんいますので、友達のうちに遊びに行ったりして、やはり私が見てどうもいけないなという点もございます。したがって、見たということではなくて、友達のうちに遊びに行って、いろいろ飯食ったり休んだりしたような小さいときの思い出も十分ございますし、彼らも、私の友人たちも私の選挙には一生懸命努めてくださっておりますし、私も当然そういう違ったところがあるならば一生懸命努力しようといままでもやってきましたし、皆さんの言い分も十分来ております。ただ、ほかの地区はどうなっておるかというようなことは、行ったことがないことは率直に申し上げておきたいと思います。
  98. 大島弘

    大島分科員 現在は国会開会中でございますから無理かもしれませんけれども、国会が終わりました場合に、私のお願いしたいのは、特に同和地区の多いところ、たとえば福岡県もそうかもしれませんが、大阪府とか和歌山県とか、そういうところをぜひとも現職通産大臣として実態調査をしてもらいたい、こう存ずるのでございますが、いかがでございますか。
  99. 田中六助

    田中(六)国務大臣 国会でも終わったら、ぜひ御指定の場所などに行ってみたいというふうに思います。
  100. 大島弘

    大島分科員 ありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わります。
  101. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて大島弘君の質疑は終了いたしました。  次に西中清君。
  102. 西中清

    西中分科員 最初に大臣にお伺いしたいのですが、去る一月十三日、いわば正月早々でございますけれども、繊維産業再建対策集会が開かれました。私も参加をさせていただいたわけでございますけれども、昨年一年間で繊維倒産は、川下業種を中心として千五百七十に達しております。これは史上最高ということでございましょう。第二次石油ショックに続いて昨年の冷夏、さらにはコストのアップ、需要の落ち込み、いろいろ関連いたしまして、いわば全繊維業界、事情は個々にいろいろ違うわけでございますけれども、厳しい状況で、いわば正月早々集まらなければならないというような、包括的な意味において大変厳しい状況にあるこの繊維産業に対して、いま大臣としてはどういうお考えをお持ちになっており、またいまどういう対策を打とうとしておられるのか、お聞きをしておきたいと思います。
  103. 田中六助

    田中(六)国務大臣 この織物業の不振は、これまた長い間の問題でございます。特に絹業、絹物あたりの問題も根深い問題でございまして、原料高の製品安と申しますか、一元輸入のためにそういう関係者が商売上かなり矛盾を感じておる点もあるんじゃないかと思います。したがって、こういう一元輸入あたりにつきましても、何か構造的なものがありますので、それだけに目に見えておりますので、メスを入れて改善しなければならないんじゃないかということも考えておりまして、農林大臣とも時折そういうことも話しておるわけでございますが、私どもとしては今後そういう構造的なものに大きなメスを入れなければならないというふうに事務方にも指示しておりますし、現在どういう施策が講じられておるかにつきましては事務当局に答えさせていただきます。
  104. 西中清

    西中分科員 私が質問したのは、いわゆるこの日の会合は、絹、人絹だけじゃない、化繊、羊毛、紡績、綿、スフ、染色、縫製その他一切を含めての話で、私は何らかの対策をいま考えておられるのかどうかをお伺いしたわけでございます。
  105. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 基本的には日本の繊維産業の占めるウエート、地域に占めるウエート、雇用に占めるウエートというのは巨大なものでございまして、それを守り育てていくというのが基本精神でございます。  具体的に申しますと、業種によって全部違いましていろいろな対策をそれぞれ適切にとることでございますが、総じて言えば積極策に出るものもありましょうし、場合によっては産業調整的な面で御援助を申し上げなければならない面もあると思います。気持ちとしては前向きといいますか、たとえば輸出なんかでも最近はずいぶん落ちておりますが、積極的な輸出策というのも講じていかなければならぬし、あるいは輸入問題についても適切に対応していかなければならぬ、こういうことで各論になりますと、それぞれ具体的になりますが、基本精神はそういう方針でやっております。
  106. 西中清

    西中分科員 そこで、いま大臣がおっしゃっていただきましたことですけれども、京都では丹後、西陣、こういった関係になるわけですが、絹業界は非常に需要が減退しておるわけでございます。大臣がおっしゃったように、やはり一番根本は一元化の問題、これは放置できない段階に入ってきた。これは毎年そのように言っておるのですが、いよいよこの一元化ということは捨て置けない。現に食管が現状に合わないからということでいま国会でも問題になってきているわけですね。それ以上にと言ってもいいぐらい、いわゆる需給バランスの調整の糸価安定といった目的でつくられたわけですけれども、こういう目的は完全になくなっていると言っても私は言い過ぎではないと思います。  繭糸価格安定法によって国内養蚕農家の保護育成と需給バランス調整を目的とした、そのスタートを切った四十九年当時は生糸の消費量は五十万俵、現在は二十五万俵、こういうように減ってしまっておるわけですね。そして日本蚕糸事業団では現在十四万俵も在庫を抱えておる。さらに価格も四十七年当時は七千百円、これが基準糸価、現在一万四千七百円、こうして大変な上昇ぶりでございます。国際相場は七、八千円、こういうように倍になっていると言っても私は言い過ぎじゃないと思う。糸高ということでこれが消費の減退、絹離れ、着物離れという形になってきておる。だから着物、和装、そういったもの以外のところへ道を開こうとすれば、これは機械を広幅にしなければならぬとかいろいろな問題があるでしょう。それから洋装に転じるためにはそれなりの対応をしていかなければならぬわけですが、糸が高いということでもって国際競争力がない、こういう制度、これは非常に目的を失っていると私は思っておるわけですが、農林省来ていただいておりますね、これはいつまでこういう形で糸価の安定法というのを続けていくつもりなんですか。
  107. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  現在、先生指摘のとおり、蚕糸絹業界は非常に困っておりますが、一番大きな原因は、やはり末端需要が停滞したということであろうと考えておるわけでございます。したがいまして、われわれとしましては需要の拡大をやっていかなければいかぬということで、これも事業団が五十五年度でいいますと約三億七千万円ぐらいでございますが、五十四年度に比べますと約五割ぐらい助成金をふやしまして需要の拡大等に努めているところでございますし、基本的には需給バランスが崩れておりますのでこれを是正しなければいかぬということもございまして、一方ではまた供給サイドを何とか減らしていこうということでございます。  一つは、国内生産は大体四%ぐらい減っておるわけでございますが、どうしても輸入がふえておるということがございまして、主要な輸出国でございます中国及び韓国との間に二国間協定を結びまして、五十四年度には五十三年度から一〇%ぐらい減らす。五十五年度にはさらに生糸については五割ぐらい減らしましたし、通産省所管でございますが、絹糸なり織物についても相当大幅に減らしたということで、基本的には需給改善に努めておるわけでございます。  ところが、先生指摘のとおり、需要の拡大なりあるいは輸入抑制をやりましても、なおかつまだまだ需要の減退の方が大きいというような状況になっておりまして、その間におきまして、一元輸入を含みます価格安定制度の運用下におきまして、いろいろなひずみが出ておることもわれわれは承知いたしております。したがいまして、これをいかにして改善していくかということのためには、基本的にはまずいま言いましたような需給改善をどういうふうにやっていくかということでございまして、現在各蚕糸絹業各界から一元輸入制度撤廃というような意見もございますし、あるいは不足払いを創設すべきだというような意見もございますし、あるいは蚕糸サイドからは、また逆の織物について一元輸入の対象にすべきであるというような意見も出ております。今月末には五十六年度に適用いたします基準糸価も決定しなければいかぬということになっておりますので、それらの制度問題等も全部含めまして早急に検討いたして結論を得たいと考えておるところでございます。
  108. 西中清

    西中分科員 養蚕農家の育成、これは大事な問題だということは十分承知しておる。しかし、こちらを守るということで絹織業者の方が困っておる。この不公平さというものが大変問題だと思うのです。いま食管で麦価の算定基準なんというのはもう昔と事情が違うから変えます、こう言っておる。これと同じだ。これをいつまでもずっと放置しておくということはおかしいと思う。ですからこういう点で、なお私が言いたいのは、いま国営農場なんかをつくっておる。何をつくるかという問題については、政府が価格を保護してくれるたばこの葉、それから養蚕、こういう話が出ておる。こういうことであればいま需給バランスと言うけれども、なお増産しようということになる。そういう整合性のない政策をとりながら、なおかつ法律をそのまま適用していこうとすると、値段はどんどん上がっていくし、国際価格との格差はどんどん広がっていく、こういうことでしょう。これはどうしても見直しをしなければならぬという時期だ。五十二年の質問からずっと続けて毎年やっておるわけですが、いつまでも解決できない理由は何か、その辺はどういうふうにお考えですか。
  109. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  ただいまお話にありました国内生産等につきましては、一部国営土地改良等でやっておりますけれども、これはまさに生産性の高い農家を育成するということを主眼にしてやっておるわけでございまして、先ほど言いましたとおり、需給バランスを全体的に見ますとバランスが崩れかかってきておりますので、いま申されたような問題につきましては、現在鋭意検討して、どういう方向にもっていくかということを考えております。  それから一元輸入制度そのものにつきましては、これまた通産省とも相談しなければいかぬと思っておりますが、農林省といたしましては、現在世界の絹、生糸の需給バランスが非常に過剰傾向になっておる。われわれの掌握しておる数字で言いますと、世界全体で八十五万俵ぐらいの生産量があるわけでございますが、その中で中国が四〇%、三十万俵を超えるというようなこともございまして、仮に日本の養蚕がやられた場合には韓国の養蚕業もやられる。そうなりますと残されるのは中国ということになりまして、そのあたりの建て値制度の問題等もございまして、まさに絹業も成り立つかわりに日本の蚕糸もある程度残していかなければいかぬ、こういうふうに考えておりますので、われわれとしましては、一元輸入制度は必要だけれども、その間においていろいろなひずみが出ておるところについて、何らかの方策を考えて是正しなければいかぬと考えているのが農林省の立場でございます。
  110. 西中清

    西中分科員 いろいろ問題があることは私も理解します。不足払いとか助成金とか課徴金とか、いろいろな考え方がいままで検討されてきたと思います。皆さん方も恐らく御努力はなさっていると思います。大臣、これはやはり実力大臣ががんばっていただかなければ解決しない問題だと思います。現実に、被害というと言い過ぎかもしれませんけれども、国際価格と競争にならない在庫を抱えておる絹業界としては、これは大変な問題なんです。農家はこれをつくれば比較的安定した経営ができる。片方ではこういうふうに苦しんでいる。これはいつまでも捨てておけないと思うのです。したがいまして、農林大臣いらっしゃいませんけれども、どうかひとつ農林省とよく御検討いただいて、できるだけ早く、できれば五十六年度中にこの問題は解決していただきたい、こういうふうに考えますが、決意のほどをお伺いしたいと思います。
  111. 田中六助

    田中(六)国務大臣 実は石炭がそうなんでございますが、日本に石炭が少なくても、日本で生産できるということだけでも外から輸入する場合に非常にメリットがあるわけです。これと同様に、一挙にやるということはどうかと思います。というのは、いま事務当局で言いましたように、日本にあることが、対外的に、中国が一挙に市場を独占して高値にいくというようなことがないことも私の願う一端でもございますので、一挙にということは非常にむずかしゅうございますが、これは大きな不合理でございます。したがってできるだけ早急に、全部とは言わなくてもある程度は是正しなければならないと思います。
  112. 西中清

    西中分科員 第二の問題点は輸入の規制でございますが、これは二国間で協定が行われて決まっていくことでありますし、いずれまた本年の交渉も始めなければならぬと思います。昨年相当御努力なさったことはそれなりに評価いたしております。この在庫の増大を見るときには、今年度もぜひとも十分な規制の方向でがんばっていただきたいと思います。
  113. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 数字はもう申し上げません。御承知のとおりでございます。過去がなりがんばってまいりました。率直に言って、中国、韓国ともなかなか調整の余地が少なくなってきていることもよくわれわれ知っていますが、日本の絹業あるいは蚕糸の安定のためにできるだけ努力してまいりたいと思います。
  114. 西中清

    西中分科員 第三の問題は、当面の問題として実需者の売り渡し量をぜひとも増加させてほしい。これは農水省の方で先物相場が順ざやであること、それから卸売在庫が多くないこと、市場を乱さないこと、基準糸価を割っていないこと、こうした三つの枠をもって判断されておる、こういうことでございますけれども、先ほど来申しておりますように非常に厳しい状況に置かれておりますから、この枠を余りきつく考えないで、本来三万俵というあれもあるわけでございますから、一月、二月は千俵ずつ出されたようですけれども、このままいったって一万二千ということのようです。こういうことに余りとらわれないで、弾力的にもう少し業界のことを考えて増量していただくようにぜひ配慮願いたいと思いますが、お考えを伺いたい。
  115. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、五十四年度分の実需者売り渡し用生糸がまだ二万四千俵ほど残っております。したがいまして、われわれといたしましても、去年の六月以降いろいろ制度を改正いたしまして、最終的にはいま先生おっしゃったような形で現在運用しておりまして、やっとことしの一月、二月でそれぞれ千俵ずつ出たということでございますけれども、まだまだたくさん残っておる。絹業の方々も困っておるというような事態は十分認識しておりますので、先ほど言いました全体的な制度を現在検討いたしておりますので、そういった中でどうすれば要はまるまる出るかということについても工夫をこらしたいということで検討いたしております。
  116. 西中清

    西中分科員 次に、中小企業の問題でございますけれども、非常に環境は厳しい状況でございます。一月は過去最高の千三百十四件、負債額二千二十四億六千五百万円、こういう状況だそうでございますが、二月、三月に向かって最悪の事態になるのではないかという心配もいたしておるわけでございます。この際政府は、実効性のある中小企業対策、景気対策、倒産防止対策をいろいろとお考えであろうと思うのですが、そういった点についてまず包括的にお伺いをしておきたいと思います。
  117. 田中六助

    田中(六)国務大臣 中小企業の対策につきましては私ども頭の痛いところでございまして、いま御指摘のように、一月の倒産件数は千三百十三件から十四件ございまして史上最高でございます。したがって、こういうことにならない前に本当は手を打たなければいかぬのでございますが、残念なことだと思います。しかし、残念ということだけでは済まされませず、早く何とか実現しなくてはいけませんし、そのために近く経済企画庁大蔵省などとも相談いたしまして、経済の節目の対策というものを、企画庁長官に言わせますとあらゆる資料が出尽くしてやろうということでございます。私どもがすでに指摘しておるのは、いまの倒産件数もさることながら、ついせんだって百社に及ぶ中堅企業、中小企業に対するアンケートをとりましたところが、第一が経営不振、つまり販売不振、第二が価格の調整がうまくいっていないこと、第三番目が高金利であるというようなことで、四番、五番もありますが、一から三番までの皆さんの答えが一番重要じゃないかと思いまして、それぞれの対策をすでに経企庁にも報告してお願いしているところでございます。当面の対策といたしましては、五十六年度予算案の中に、約二千五百億円を中小企業対策として一般会計に計上しておると同時に、財投にも三兆五千億くらいでございますけれども、それを計上すると同時に、対策そのものといたしましては、中小企業倒産対策貸付資金の増大、それから倒産防止のための保証制度の拡充、それから中小企業倒産防止のための共済資金の活用、また四番目には倒産防止の相談室の設置というようなもの、その他もちろん中小企業体質強化制度の拡充あるいはこれの活用など、いろいろな点を考えて、予算の限られた枠内で私どもそれぞれの対策をとっておりますし、冷夏対策あるいは豪雪対策についても早急に事業資金の拡大あるいは貸付資金の拡大、いままで貸しておった金の返済の延期というものをやっておりまして、きめの細かいところまで行っているような気がしますけれども、当事者にとってはまだまだと思います。しかし、いま最初に申し上げました三つのこと、特に金利の問題などについても早急に対処すべくせっついておるわけでございますが、金利の問題は日銀専管事項でございますし、問題もございますが、しかし裏面では私ども必死でこの対策には取り組んでおります。
  118. 西中清

    西中分科員 大臣もいま述べられましたけれども中小企業庁が二月に発表しました実態調査の調査結果ですね、これによりましても、問題は、一つは借入金利がほとんど軽減されてないために収益が悪化をしておる。それからほぼ全企業が、現在の金利水準は非常に高いので、およそ大半が一・五%以上の引き下げを求めておる。三番目は、今後の見通しについても、金融機関が選別融資や収益指向を強めているため、資金供給、金利引き下げに悲観的な見方が多い。四番目は、設備投資については約半数の企業が高金利と金利の先安期待から実施を見合わせておる。これは最近の中小企業の設備投資の停滞理由が現行の高い金利水準にある、こういうことが大体統計上出ているようですね。  それから、いまもお話いただきましたけれども中小企業庁、また通産省としてこういった問題についてなお一層の努力をしていただきたいし、いま具体的に申し上げた点についてどういうようにお考えか、お伺いをしておきたいと思います。
  119. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 いまお話ございました百社の緊急調査と申しますのは、私どもが現段階におきますところの生の中小企業者の声を把握する、そしてこれを政策に反映するということが目的でございまして、いま御指摘のようにまず金利の追随率が非常に悪いというのが末端の声でございます。これらを中心にいたしまして、現在金融当局にも十分実態を御説明を申し上げております。それから金融が緩いといいましても、中小企業にとりましてはやはり量的にも選別融資が行われているという面もございます。それから、五十六年度経済の達成のために中小企業の設備投資は重大な意味を持つわけでございますが、これについてもなかなか力が弱いという現況でございます。これらを十分関係方面にも御連絡申し上げまして、それを前提にした有効適切な対策を機動的にやっていただきたいということを現在申し入れをしておる段階でございます。
  120. 西中清

    西中分科員 次に、中小企業庁長官の諮問機関でございます中小企業倒産対策委員会、これが五十四年十二月に倒産対策としての中小企業施策のあり方についてと題する中間報告を行っております。ここにはたくさんの提言があるわけですが、政府もそれに対応してそれなりの御努力はなさっておることも認識をいたしております。ただ、これは別に拘束力を持つものではないと思いますけれども、何点がまだ実施されておらない施策がありますので、この点について伺っておきたいと思います。  一つは、中小企業倒産対策貸付制度の改善についてでございますけれども倒産関連中小企業者にとって緊急に必要になる運転資金は、設備資金などと違いましてあらかじめ計画的に準備したものではない突発的に必要となる資金であり、この資金に担保、保証人を求める、こういうことになりますと、既借入金に目いっぱい充当している等により十分な担保はもうない。実際にはせっかくの制度があっても窓口がふさがれておるというこういった問題について、担保物件とか保証をとるということについてもう少し段階的にでも緩和の方向を検討していただけないかというのが第一点。  第二点は、この資金の返済方式でございますけれども、現行では元利均等払いになっておりますが、倒産関連中小企業者の経済的負担の度合いを時期的に考えますと、倒産初期の方が重い。したがって、返済額については初期は比較的軽くしてあと高くしていくという逓増方式を採用することが望ましいのではないか、こういう点について御検討いただく考えはないかどうか。  第三点は、倒産防止特別相談事業の拡充についてでございますけれども、この制度をより実効あるものにするために商工調停士の推薦があれば優先的に金融機関融資を受けられるようにしてもらいたい、こういう要望もあるわけでございますが、以上三点にわたりましてお伺いしておきたいと思います。
  121. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 いま御指摘ございました倒産対策委員会の中間報告でございますが、これは五十四年の十二月に一応中間的なものとして出されたものでございます。したがいまして、それに盛られました中身というものはファイナルなものではございませんけれども、一応私どもとしてはこれを参考にいたしまして、最も有効適切な制度を早く創設したいということで逐次精力的な検討を行っております。現段階は、先生御存じのように五十五年度から中小企業倒産対策貸付制度という特別貸付制度が恒久化されたわけでございますが、これにつきましても、さらに五十六年度からは貸付限度額を引き上げたい。これは現在中小公庫の場合二千万円の枠でございますが、これを二千五百万円に、それから国民金融公庫の場合は五百万円を六百万円にというような改善をできるものからまず着実に実施したいということで進めております。  御指摘の三点でございますが、まず第一番目の倒産関連で運転資金について無担保、無保証という制度を導入したらということでございますが、これにつきましては、実情は非常によくわかるわけでございますけれども、実は金融制度の基本にかかわる問題でもございますし、当面は信用補完制度の改善あるいは倒産防止共済制度の活用等によりまして、少しでも倒産関連の中小企業者の負担が軽減されるような制度の改善を着実に進めてまいりたい、このように考えております。  それから、第二番日の御指摘の点でございますが、返済の逓増方式でございますが、これは確かに実情に即しまして、こういう景気の悪い局面でございますので、返済については十分配慮を行うようにということを通達その他を通じましてすでに金融機関にもお願いをしているところでございまして、それのさらに徹底を今後進めていきたいと思っております。  それから、第三点の商工調停士推薦にかかわる倒産回避のための資金でございますが、これにつきましては、体質強化資金の適用ということで五十六年度からということで現在予算その他でお願いをいたしておりますが、これにつきましても、現在こういう局面にございますので、何とかもう少し早くやれないかということで内部で検討を現在進めている段階でございます。
  122. 西中清

    西中分科員 もう一つ最後にお伺いしておきたいのですが、地場産業ですね。これは実態調査をしておられるわけですが、各都道府県の企業種全企業にわたって実態を把握するように、詳細な項目については、もう時間がありませんから申しませんが、これは大都会の場合なかなか困難だという声が強いわけですね。東京都の場合、七十七業種九万五千という事業所が現在ほとんど進んでないという実情です。ことしで打ち切ってしまうということになりますと、これは実態把握にはならない。これを基礎として本当にこれからの計画を立てようとされておるわけでございますが、やはりはっきり言うと時間的な余裕を認めるということです。すなわち、言いかえますと調査費についてもその後も補助対象とするような配慮ができないかどうか、こういう点の声が大都会ではあるわけでございます。その点検討の余地がないかどうか、お伺いいたします。  それから、地場産業の地域対策という発想から実施されておるこれまでの各種の中小企業対策と関連をなすものであることは承知しておりますけれども、この大都会において地域的に非常に多くの業種、地場産業が混在しておるいまの問題ですね。これは東京都を見ましても各区でいろいろなのが混在しております。実際に地場産業振興ビジョンを作成する場合、地方と比べてこういう大都会は非常にやりにくいというふうに思います。  そこで、これもやはりもっと大都市側の実情も考慮して何らかの形で、たとえば業種別対策の要素も加味させる配慮をしてあげるべきではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、こういった点についてお伺いをしておきます。
  123. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 第一の点でございますが、いわゆる地場産業の県別の実態調査につきましては、やはり五十五年度限りということでもうすでに実施しておりまして、年度末に差しかかっておるわけでございます。したがいまして、五十六年度においてこれをさらに延長するということはいまのところできないというふうに考えておりますし、もしそういう必要が地域特性として必要であるということであれば、都の方で御努力願って都の単独で補完調査をするとか、そういうことでカバーしていただければと思います。  それから第二点でございますが、大都会の多数存在する業種についての縦割り的な観点を入れられないかという点でございますが、これは私どもも十分実情がわかるような気がいたしますが、すべてについてというわけにはまいりません。たとえば、地場産業の振興事業というものがございまして、これも三本柱の中で助成対象にいたしておりますが、これらにつきましては業種の実態に即して業種的観点も十分織り込みながらやっていくということにしておりますので、御趣旨に沿えるかと思います。
  124. 西中清

    西中分科員 終わります。
  125. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて西中清君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  126. 中野寛成

    中野(寛)分科員 私は、今日まで通産省として大変力を入れてきておられます電気自動車の開発について関連をしてお伺いをしたいわけであります。  その前に、まず現在のエネルギーを取り巻く事情、とりわけガソリンとか軽油等々、今日とそしてまたこれからの将来とを考えますと、今日段階である程度弾力的に活用できるような状態がありますけれども、中長期に考えると厳しいというふうなこと等を考えるわけでありますが、この辺の情勢と、それからこれに関連をいたしまして、今後の省エネルギーの態様、加えましてエネルギーの活用の多様化、このようなことがとりわけ急がれていると思います。また、石油にかわって石炭の改めての活用等々考えますときに公害問題も決しておろそかにはできないわけであります。  そういう観点から、中長期の見通しとその対応について通産省としてどのようにお考えか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  127. 田中六助

    田中(六)国務大臣 電力は日本のそれこそ中枢、心臓部で、食糧で言えば米でございます。したがって、この対策につきましては従来から万全を期して、非常にシビアな予算の枠の中でも、その予算獲得については膨大なものを関連事業にとっておるわけでございます。電気電力関係はちょうど全エネルギーの約三割をいま占めておりまして、これが対策についてももちろん一生懸命でございます。現在のところ油の輸入あるいは手当てにつきましては非常にいろいろ声高く叫ばれておりますが、その需給関係はかなり緩んでおりまして、まあまあのところで、灯油にいたしましても、十月が千六百九十九円だったのが現在はずっと下がっておりますし、またガソリンも下がりぎみで、需要期にしてはまあまあのところでございます。これはしたがって短期的には心配ない。つまり備蓄の方も百町日分あるいはそれ以上の、これは需要期でございますから一日か二日少しは減ったりふえたりしておりますけれども、まあまあのところでございますが、中長期的に見ますとやはりこれは全く安心のできないことでございまして、石油あるいは原子力発電所の増加あるいは石炭代替エネルギーの導入等につきまして、少なくとも代替エネルギー導入につきましては十年後には五〇%まで獲得したい、反面石油輸入量を五〇%に下げるということになるわけでございますが、そういうような見通しとそういうような対策を考えておる次第でございます。
  128. 中野寛成

    中野(寛)分科員 現状につきましては比較的安定した供給がなされていることは、大臣の御答弁のとおりに私どもも思っております。同時にまた、中長期について安心できない状態であることも御同感であります。それだけに、たとえば電力につきましても石油から原子力へ、または石炭の利用へ、その他その燃料の多様化をより一層進めていかなければならないわけでありますが、同時に自動車の問題を考えますときにも、やはりいつまでもガソリン中心の自動車であっていいのかどうか、これらの問題が大変心配をされるわけであります。むしろ発電量の確保を図りながら、発電についてこそいろいろな対応ができるわけでありますから、そういうことを考えますと、これを活用していく方向にむしろ自動車自身も進んでいかなければならないのではないか、こういう考え方で電気自動車そのものの開発も取り組まれたと思うわけでありますけれども、このことにつきまして、この電気自動車の開発の今日的な意義、そして今後の普及について通産省としてどのようにお考えでございましょうか。
  129. 田中六助

    田中(六)国務大臣 電気を利用する乗り物のことでございますが、これは公害が非常に少ないということ、それからもう一つはエネルギーを御指摘のように節約できるというようなこと、これは小さなようでも非常に重大な問題とかかわっております。したがって、私どもは四十六年から五十二年にかけてのああいう計画というか答申みたいなものが出ておりますし、その線に沿ってどんどん進めていきたいというふうに思っております。これからもこの対策については万全の措置を講ずるように私どもは考えております。
  130. 中野寛成

    中野(寛)分科員 いま大臣の御答弁のようにいろいろと計画等つくって進めておられることは私も承知をいたしておりますが、昭和五十二年の四月に普及のために電気自動車普及基本計画というのをおつくりになったわけですね。これによりますと昭和六十一年までに二十万台というふうに計画がなされているわけでありますけれども、なかなか思うように進まないというふうなこともお聞きいたします。そのネックとなっているものは何であるのか、そしてどのように対応し、今後の見通しをどういうふうに立てておられるのか、これについてお聞きをいたしたいと思います。
  131. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 ご指摘のように五十二年に立てました基本計画でございますが、思うように進んでおらないというのは事実でございます。この主たる理由として幾つか考えられますけれども、まず第一にやはり値段がまだまだ高いということが挙げられようかと思います。これは量産ができないということが非常に大きな原因になっておると思います。そういう意味で、同じような車で比較してみますとやはり三倍ぐらいになるというような現状でございますので、これが普及の第一のネックであろうかというふうに思います。  そのほかにも、たとえば一回充電した後の走行距離が現状ですと数十キロ程度ということでございまして、ちょくちょく充電しなくてはいかぬというような不便性というものがあろうと思いますし、また充電に実際かなり時間がかかるわけでございまして、七、八時間かかるというようなことも若干の問題があるということでございます。さらに、この電気自動車用のバッテリー、こういったものも寿命がそう長くないというような問題がございます。そういったことが現在の普及をおくらせている主たる原因になっていると思いますが、私ども先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、四十六年から七年間にわたりましていろいろ研究開発について五十七億円という金額を投じて、大変な大型プロジェクトとしての研究開発をやったわけでございまして、その意味から申しますと、技術水準としましてはそのバッテリーの問題にいたしましてもその他の問題にいたしましても世界の最高水準のところまで来ているのではないかというふうに考えているわけでございます。  今後なお技術開発面その他一層の努力をいたしまして、何とかひとつこれの普及を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  132. 中野寛成

    中野(寛)分科員 なかなか普及に手間取っていること、そのことの理由はわかりました。わかりましたが、いまどういうふうに対応しようとしておられるのか、何をどういうふうにしようとしておられるのか。しなければならぬということは御説明でもわかりました。私どももわかっておりますけれども、通産省としてどういうふうにお取り組みになろうとしておられるのか、それをお聞きしたいと思います。
  133. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 まず第一の点といたしましては、やはり技術開発というものをさらに進めるということであろうかと思っております。そういう意味におきまして大型プロジェクトによります開発の後のフォローアップというものをぜひやっていきたいということでございまして、五十二年以降技術研究組合をメーカー、これは自動車メーカーと電池メーカーを合わせましてつくりまして、技術開発に努めるということで、通産省としてもこれの研究開発費補助を行っておるという状況でございます。  さらに、普及の問題に関しましては、日本電動車両協会という財団法人がございますが、ここを中心にいたしましてリース制度というものを現在やっておりますが、このリース制度を中心にいたしまして、いろいろな広報活動あるいは各種展示会というものの開催を行っておりまして、そういうことを通じまして実際にこの電気自動車をかなり低廉な価格でリースをしながら試用していただくという制度を活用しながら普及を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございまして、こういった事業のために、私どもといたしましては自転車振興会の資金等もかなり多額に投じて努力をいたしておる次第でございます。
  134. 中野寛成

    中野(寛)分科員 もう少し具体的にお聞きできればと思うのでありますが、質問を進めたいと思います。  普及に関連をいたしましてあわせてお尋ねをしたいと思いますけれども、今日まで普及につきましては運輸省や環境庁、そういうところも大変前向きに御検討いただいていることをお聞きをいたしておるわけでございます。とりわけ環境庁として、環境対策の問題からも公害対策の問題からも非常に重要視をされておるように思うわけでありますけれども、環境庁としてこの電気自動車に関連をいたしましてどういうふうにお取り組みになり、かつまたどういうふうにあってほしいというふうにお考えでありますか、お聞きをいたしたいと思います。
  135. 加藤三郎

    ○加藤説明員 昨年の一月と四月でございましたが、環境庁長官が交通公害問題に関する懇話会というものを主宰いたしまして、今後深刻な交通公害をどうやってなくしていくかということに関しまして各方面の有識者から意見を伺いました。  いろいろ伺いました意見の中の一つに、まさにいま先生指摘の電気自動車の問題が出てまいりました。電気自動車は内燃機関自動車に比べまして大気汚染それから騒音等の点で低公害性を有しており、加えて省エネルギーにも寄与するということでございますので、環境庁といたしましては「交通公害防止の観点から、電気自動車の開発の可能性、利用のための方途、さらには、これらを巡る諸問題について検討を開始すべきである。」という御提言をいただきました。この提言を受けまして昨年の五月に環境庁の中に電気自動車検討会というものを設けまして、この検討会に各界の第一級の専門家十三名の先生方に御参加いただきまして検討を開始してきているわけでございます。先ほど申し上げましたように、昨年の五月が第一回でございましたが、これまで六回検討を重ねてまいりまして、この検討会はほぼ最終段階に近くなってきております。したがいまして、そう遠くない時期にこの検討会の検討レポートはまとまり、発表できる見込みでございます。  私どもといたしましては、電気自動車は低公害性を有しておりますので、交通公害防止対策の一環として大いに活用されることが望ましいというふうに考えております。
  136. 中野寛成

    中野(寛)分科員 その検討のおおよその内容とその結果がどういう時期に発表されてどういう役割りを果たせそうかということについて、もしお差し支えなければお聞きをいたしたいと思います。
  137. 加藤三郎

    ○加藤説明員 電気自動車は先ほど来申しておりますように、排ガスがないとか騒音が低いとか公害に非常に寄与する面もありますが、一方で、たとえば電気を起こすときに公害がそもそも発電所において起きはしないかとか、あるいは鉛蓄電池をたくさん使いますので、その辺廃棄物としての新たな公害が起こりはせぬか、そういうような心配も一部にございますので、そういう点も含めましてトータルとして低公害に十分役立つかどうかという点につきまして検討しておるのが一つでございます。  それからまた、現在の電気自動車でも利用できます場所もございますし、そういうこともありますので、現時点の技術をもってしてもどういう場所でなおかつ利用の促進が図れるかといったようなことも検討いたしております。  さらにまた、今後この開発普及の促進を図るためにはどういう対策があり得るかといったことにつきましても検討をいたしておるわけでございます。
  138. 中野寛成

    中野(寛)分科員 検討しておられる省庁が環境庁を含めまして運輸省や通産省ということで大変広がってきておるわけでありますけれども、そのほか各省庁はむしろいまおっしゃった普及ということから考えますと、積極的に電気自動車を使っていただくということがとりわけ大きな効果を発揮するのではないかというふうに思うわけであります。  現在郵便車が五台ですか、地方自治体でも大阪市や横浜市、神戸市、京都市といったようなところが使っているようでありますし、またアメリカの電気郵便車とか西ドイツの電気バスだとかいろいろ聞くわけであります。各省庁でむしろ率先して使っていただきたいことが望ましいのではないかと思うのでありますが、その実態と、それから使おうとしたけれども実はこういうことでまだちょっと踏み切れないのだというものがあるとするならば、それはどういう理由であり、何か解決の方法というものはないものかどうか、これについてどうお考えでございましょうか。
  139. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 私どもも、特に官公需を中心に何とか電気自動車の導入ができないものかということでいろいろ検討もし、各省にもお願いをしているところでございます。先ほど申し上げましたようなリース制度、これはかなり補助金も投入した低廉な価格でのリース制度がございますので、それをひとつ活用していただいて、各省庁あるいは公共団体で使っていただけないかということでございまして、先生ただいま御指摘になりましたように、一昨年におきましては川崎市でありますとか横浜市でありますとか大阪府でありますとか、そういうところで導入をしていただいた。また、昨年度におきましては、郵政省におきまして五台お使いをいただくというようなことで、官公庁を中心にこういった制度の活用も行われております。通産省といたしましても何とか使えないものかということで検討もいたしたわけでございますが、実は通産省は役所の仕事の性質上乗用車中心でございまして、この電気自動車と申しますのは、その性質上は、たとえば配送車のようなものが用途としては非常に向くのではないかという感じのものでございまして、そういったものがないためになかなか導入が現実に行いにくいというような状況にございますけれども、なおこれから筑波学園都市その他いろいろの問題もございますし、ひとつ各省庁にもお願いをいたしまして何とかこれの普及を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  140. 中野寛成

    中野(寛)分科員 いわゆる一般乗用車がないということであります。乗用車として使うにはいろいろバッテリーの問題とかなんとかあるのでしょうけれども、この辺につきましても、むしろ積極的にそういうものが開発できる方向へやはり進んでいかなければいけないのではないかというふうに思うわけであります。  同時にまた、環境の問題で、いまは騒音に関連をいたしまして、新幹線は別にいたしまして各高速道路というのは、それこそ観光バスに乗ったって周囲の景色が見えないくらい高い防音壁をつけまして、そしていま非常に見苦しい高速道路になっているわけであります。実は高速道路に限らず、環境対策としては大変大きな意味を持っているわけであります。そういうことを考えますと、総合的なコストということになりますと、大変大きな意味感じるわけであります。乗用車がないから通産省では使えないというのではなくて、乗用車にそれを活用するためにはどういう方法があるかについて検討をされることの方がむしろ望ましい姿勢ではないだろうかという感じがするわけでありまして、技術開発も含めまして、いまは筑波学園都市の話が出ましたけれども昭和六十年に科学技術博覧会が開催されるわけです。たまたま居住と環境ということがテーマになっているようでありますけれども、大阪の万国博覧会でも会場の中で電気自動車が使われました。この科学技術博覧会等でも、会場等への運行も含めまして、こういうものが一つのPRの方法としても大変効果的ではないかと思うわけでありますが、前向きにあらゆる手段を講じるという意味でこのことについての御検討もなされてはいかがかと思いますが、いかがでございましょうか。
  141. 平野拓也

    ○平野説明員 六十年の科学博でございますが、現在この輸送対策につきましては、この博覧会の実施運営の主体でございます国際科学技術博覧会協会というところで種々検討を重ねているところでございます。  御指摘の電気自動車につきましては、これを博覧会に使います場合に、一つは会場内の観客輸送、それから博覧会協会自体の業務連絡用の車といったような問題、それからあそこは御案内のとおり常磐線の駅から十数キロ離れておりまして、その間をピストンバスといったようなかっこうでバスで大量輸送しなければならぬという問題がございます。その観客輸送に使えるかどうかという三つの観点があろうかと思います。  それで前者の方の場内輸送につきましては、これは先生のお話にございましたように、過去の万博あるいは沖繩博等につきましてもかなり使われておるというようなことで、協会の方の検討の過程におきましても、これは有力な候補として検討されることになろうかと思っております。  それから観客輸送の問題、これはピストンバスでございますが、これもいまの計算でございますと約一千万近い人を運ばなければならぬということでございますから、いまの仮の計算でございますと数百台以上のバスが必要になるということでございまして、これに電気自動車を入れるということになりますと、新しく調達するということになりましてコストの問題が一つございます。  それから、この博覧会は半年間約百八十日でございますので、その後これをどういうふうに活用するかという、その二点が相当な問題になりますので、こういう問題につきましては、当然関係省庁とも十分御相談しながら今後検討していくということになろうかと思っております。
  142. 中野寛成

    中野(寛)分科員 あらゆる機会を利用して電気自動車が活用され、そのことがPRにも普及にもつながり、かつ利用されることによってコストの引き下げにも役に立つわけでありますが、先ほどの乗用車の開発等も含めまして、通産省として各省庁へ、またいまの科学技術博の問題もございますけれども、そういう強力な要請等も含めて通産省の方として積極的にお取り組みになられますかどうか、現在のお考えを聞きたいと思います。
  143. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いま御指摘のように、私どもは電気自動車というのは公害の上にもあるいは省エネルギーという観点からも、これはどうしても普及しなければならないし、ここまでやってきたわけでございますので、将来も一生懸命御指摘の点を含めて努力していきたいと思います。
  144. 中野寛成

    中野(寛)分科員 最後に税制の問題についてお聞きをしたいと思います。  低公害車だということでいま開発途上でもあるということから、物品税とか自動車取得税、自動車税等については軽減措置がとられているわけであります。ところが、この電気自動車は現在の段階においては宿命的にバッテリーが大きな役割りを果たすわけでありますが、電気自動車の重量の三分の一はバッテリーの重さだ、こういうふうにお聞きしているわけであります。このバッテリーの軽量化と、長時間活用できるようにするということがいまの最大の課題であろうと思いますけれども、それまでこの電気自動車に関連をいたしまして、むしろそのバッテリーを除く部分について課税対象とするというふうな御配慮等はなされないものであろうかということも一つの提案としてできるのではないだろうかと思うわけであります。これは通産省サイドとしてはそうあってほしいというお気持ちかもしれませんし、大蔵省サイドとしてはどっこいそうはいかないぞと思われるかもしれませんけれども、両省前向きで御検討をいただければどうだろうか。また、これを減税したからといって、いまの国家財政に、一つ一つ小さいものから洗っていかなければならないのはわかりますが、それほど大きなものではないと思いますが、むしろこういうものを普及されることによって将来日本の電気自動車が海外でも活用される、または日本でもこういうものが普及していくことによって、それこそ財政再建には大きく貢献するだろうと思いますけれども、いかがお考えでございましょうか。
  145. 大山綱明

    ○大山説明員 税制のことでございますので、私からまず考え方を御説明させていただきたいと思います。  自動車重量税でございますが、これは先生御案内のとおり課税の趣旨は、自動車の走行が、たとえば道路を損傷させるとか、そのために補修とか改良が必要である、そういったことからその費用の負担を広く自動車の利用者に求める、こういった趣旨で課税されているわけでございます。  そういった観点からいたしますと、やはり自動車の重量に応じた課税をしていくのが一番適切ではないかということで、全体の重量に対して課税しておるわけでございます。この点はもう先生もよく御存じのとおりだと思います。事実、自動車重量税の四分の一は地方の道路財源にされておりますし、国税の四分の三の部分につきましても、慣行上かなりの部分が道路財源に充てられているというような事情でございます。  こういったような課税の趣旨を考えてみますと、やはり重さに応じた課税ということで、重量全体に対して課税するという現在の措置を維持していくのが私どものたてまえ論といたしましては適当ではないか、こう考える次第でございます。
  146. 中野寛成

    中野(寛)分科員 たてまえ論はよくわかるのです。むしろ政策論をお聞きをいたしたいと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
  147. 田中六助

    田中(六)国務大臣 通産省といたしましては、中野議員御指摘のように育成するわけでございますので、金融面はもちろん税制面でも十分配慮したことを望んでおるわけでございまして、大蔵省とも御趣旨を踏まえて折衝してみたいと思っております。
  148. 中野寛成

    中野(寛)分科員 大臣の前向きの御答弁もございます。大蔵省として、御担当の方がここで前向きにすんなりお答えできる立場でないことはもちろん私どももよくわかりますので、むしろお答えは別にいたしまして、積極的に通産省はお取り組みいただき、かつ大蔵省の御協力、御検討もいただきたい、こう思います。  そのほか、先ほども大臣の御答弁がございましたけれども、ぜひこれは国策としても取り上げて、大きな意味があるわけですし、これからの貿易の問題や技術開発の問題としても大きな意味があろうかと思います。大臣のなお一層の御配慮と御健闘をお願いをして、質問を終わりたいと思います。
  149. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて中野寛成君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  150. 近藤元次

    近藤(元)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管について質疑を続行いたします。村上弘君。
  151. 村上弘

    村上(弘)分科員 国民の重要な栄養源であります牛乳を毎日家庭に配達している牛乳の販売店がここ数年来重大な危機に陥っていることは御承知のとおりであります。昭和五十一年からの五年間を見ましても約一千五百軒が転廃業しています。一日一軒半の平均です。東京の場合、従業員もこの間に二六%減っております。こうした危機の大きな原因の一つが、大手スーパーなどが牛乳を目玉商品にして扱う、これに牛乳販売店が太刀打ちできない、公正な競争にたえることができないというところにあることも周知の事実であります。ところが、二月二日付、東京では二月三日付ですが、朝日新聞の報道を見ますと、こういうスーパーの不当廉売を牛乳販売店が公正取引委員会に申告をしている活動をきわめて一面的に取り上げて、しかもその報道の中で、公取の談として、ほとんどの申告が不当廉売に当たらず何のための申告かわからないとか、ほとんどが不当廉売に当たらず不発情報ばかりなどと語ったとさえ報道されておるわけです。しかし、この販売店の申告に対しては、この国会におきましても、不当廉売の疑いがある、スーパーなどにも注意をしておると繰り返し答弁をしてきております。したがって、もしこの朝日の報道が事実であるとすればきわめて重大であって、公取関係当局はうそをついてきたということになるわけです。今日まで公取など当局の是正措置に期待をかけていた牛乳販売業者は、あの朝日の報道を見て大変ショックを受けた。深刻な衝撃を受けておるわけです。たとえば吹田のある業者は、もうやっていけぬ、いつかは是正されるやろうと思っておった、しかしもうあかん、公取も農水もなんや、いままでのことをみんなすべて否定してしまいよった、いつかは何とかと歯を食いしばってきたのにもう牛乳屋をやめることを考えにゃならぬようになってしもうた、こう言っているわけです。一体公取は、牛乳販売店がやむにやまれず行っているこの申告活動をどう認識しているのか。二月二十日に大阪の公取事務所に大商連の牛乳部会の代表が真意をただしましたが、大阪の公取では、その報道の内容を否定して申告活動の理由や意味もよくわかっていると答えておりますが、中央の公取は一体どうなのか。また、五十四年度、五十五年度における全国的な申告数と、その中での不当廉売の疑いのある件数、これは一体どれくらいか。こういったことも含めてはっきり答弁をしていただきたいと思います。
  152. 相場照美

    ○相場説明員 お答えいたします。  まず第一点が例の二月二日の新聞記事の問題でございます。御指摘のとおり、何のための申告かわからないという記事が確かに出ております。記事が出ました経緯についてちょっとお話し申し上げたいと思っておりますが、私どもの大阪の地方事務所でもって取材に応じた経緯はございます。ただ、申告について、またその取り扱いについての御説明を申し上げたようでございますが、御指摘のような言葉を記者に直接申し上げたという経緯は全くございません。この点だけははっきり否定しておきたいと思っております。  次の問題でございますが、どのように対処するのか、全く無視するのか、こういうことでございますが、私どもの委員長も再々申し上げておりますように、牛乳の不当廉売につきましては私どもも真剣に受けとめております。したがいまして、今後とも私どもとしてはでき得る限り対処していく所存でございます。  次に、第三点が最近の申告件数、それから処理件数ということでございますので、お答えさせていただきます。まず五十四年度の申告、いわば不当廉売だという申告が全国で五百六十七件ございました。このうち、これでもって私どもが不当廉売の疑いがあるということでスーパー等に注意し警告してやめさせました件数が二百九十八件でございます。五十五年度につきましては、最近の情勢を反映してか、非常に申告件数はふえてきております。組合も積極的に申告活動をなさっているというように聞いておりますが、その結果でもございましょうけれども、昨年十二月末現在で五万五千八百二十二件という膨大な申告が出てきております。これは東京だけじゃなくて、私どもの七つの地方事務所すべてについて出てきているわけでございますが、特に大阪につきましては、そのうち三万三千件という大きな数字になっております。  これに対します私どもの対処といたしましては、現在まで、一月末現在でございますが、五百十二件につきまして不当廉売の疑いがあるということで警告し、これをやめさせているという経緯でございます。もちろんこの五百十二件というのは主として東京での処理でございます。と申しますのは、こういった種類の廉売につきましては可及的速やかに対処する必要があるということで、地方事務所でその都度やらしております。そういったこともございまして、五百十二件は、まだ地方事務所からの報告のないものがこのほかに相当含まれているものだ、こういうふうに思っております。したがいまして、申告件数の増大ほど処理件数というようなものは上がっておりませんけれども、処理、警告いたしました件数は、昨年と比較いたしましても倍以上あるいはそれ以上になるもの、こういうふうに考えております。決して私どもとしてこれを軽視しているということではございませんので、念のために申し上げたいと思っております。  以上でございます。
  153. 村上弘

    村上(弘)分科員 新聞に書かれた以上これは消えないわけで、それを正す措置をぜひとっていただきたい。  今日まで牛乳販売店がスーパーなどの不当廉売を問題にしておるのは、何もスーパーの牛乳の値上げをさせようというのが目的ではありません。販売店がスーパーと対等に競争できるようになりたいということです。しかし、現実には販売店の仕入れ価格はメーカーによって一リットル百八十六円三十八銭に固定されているわけです。したがって競争したくてもできないわけですね。  先ほどの朝日の報道によると、ニチイの佐藤取締役はこう言っています。仕入れは百七十五円、それを百九十八円程度で売っている、だから不当廉売には当たらないのだとうそぶいているわけですね。販売店は百八十六円の仕入れ値段、ニチイは百七十五円で仕入れる。これはもう勝負にならぬわけです。こういうふうに仕入れ価格や取引条件の面でスーパーと販売店との間にメーカーが不当な差別をいろんな面でつけている。したがって、公取に要望したいのは、不当廉売の申告だからということで調査をそれに限定するのではなくて、とりわけ三大メーカーのものについては、差別対価やバックマージン、商品外増し添付などの取引条件、仕入れ形態の問題にも立ち入った調査をすべきではないか。すでに長谷川取引部長は、昭和五十二年当時ですが、かなり安く入っておるというふうに考えております、現在調査を準備中でございます、こう答えておりますが、あれからもう四年たっております。こういう問題にいまこそ立ち入って調査すべきことが重要だと思いますが、どうですか。
  154. 相場照美

    ○相場説明員 お答えいたします。  不当廉売という場合に私どもが対処いたしておりますのは、仕入れ原価を割って販売している場合を一応不当廉売の疑いがあるということでこれを是正をさせておるわけでございますが、先生指摘のとおりスーパーと一般の専売店では仕入れ原価そのものに差があるのではないか、これは一種の差別対価に該当し、独占禁止法の規定に違反する不公正な取引に該当するのではないか、こういう指摘が前々からもございますし、私どももそういった見方、そういった形での処理を考えて、実はその実態の把握に努めているわけでございます。かつてそういった調査をするのだということを申した経緯もあるということをおっしゃっておりますが、そのとおりでございまして、私どもそういった実態につきましてさらに細かくその情報の収集に努めている状況にございます。  ただ、一点だけ申しておきますが、スーパーと小売店との価格差、これが先ほども百八十六円三十八銭とおっしゃいましたけれども、表向きの値段そのものは全く変わらないのじゃないかというふうに考えているわけでございます。御指摘のとおり、そこにいわゆるバックマージンと称するものが報奨金その他の名目で出ているのも事実のように私どもは現在把握しております。ただ私ども差別対価と、こういうふうに申します場合に、差別対価の規定を適用いたしまして、不公正な取引だ、こういうふうに認定するに際しましては、そこに価格差そのものに何らの合理性がないとか、あるいは継続的にそういう差があるとか、あるいは競争手段として相手方に被害を与えるとか、こういう意図でもってそういった価格差を制度的に運用しているという場合がこれに該当しようか、こういうふうに思っているわけでございます。私ども現在まで収集いたしております資料の中からは必ずしもそういった形でのものがまだまだ十分に入手できていないというのが状況でございます。したがいまして、私どもといたしましては、今後とも十分にこの点についての情報の収集に努めたい、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  155. 村上弘

    村上(弘)分科員 バックマージンだとか十ケースに一ケースおまけをつけるとか、そういうことが実は恒常化され、制度化されてきているということの意味ももっと見直す必要があるんじゃないですかね。この問題で重要なことは、販売店に対するメーカーの卸価格が昭和五十二年の値上げ百八十六円三十八銭になったまま全く変化がなく固定されておるということですね。実際にはメーカーの原料乳価、買い入れ価格、この方は値上げ以前の価格、たとえば有価証券報告書によって明治の原乳価格を割り出しますと、昭和五十四年百六円七銭でございますね。五十五年三月に百五円三十四銭、こういうふうに下がっておるし、あるいはもっと下回っているんじゃないかとさえ言われておるわけです。ところが、販売店の方は五十三年七月以来そのまま、したがってわれわれだけが仕入れ価格が固定されていると販売店の方は非常に憤慨しているわけですね。全乳連は一月十四日に卸価格の見直しをせよという要求を決めて新たに運動を進めておりますが、こういう問題についても、公取としてもメーカーの仕入れ価格などを調査する必要があるんじゃないか。販売店のみがやみカルテルの疑いもあると言われているあの百八十六円三十八銭にいつまでも固定化されておることについて、一体どう考えるか。その二つの点についてお伺いします。
  156. 相場照美

    ○相場説明員 お答えいたします。  百八十六円三十八銭何がしという数字が固定化しているということはお説のとおりでございます。このように私どもも理解いたしております。なぜこれが固定化しているのかという点につきまして、実は私どもまだ確たる情報をつかんでおりません。もちろん私どもとしてはこれが固定化していることにつきまして重要な関心を持っております。ここに独占禁止法違反行為そのものが介在するならば、私どもとしてもこういったものに対する措置があるわけでございますけれども、現状においてはそういった情報に接していないということでございます。  生乳の仕入れ価格の問題でございますが、これは下がっているのじゃないか、この実態はどうなんだということでございますが、私どもとしては、そういったはっきりした数字を現在までのところつかんでおりませんし、またこういったものの調査ということになりますと、私どもの立場からいたしますならば、ここに何らかの違反の疑いがあるという端緒に接しますれば、これは徹底的な調査ができるわけでございますが、そうでない限り、そういった調査が現在までのところ進んでいないというのが実態でございます。百八十六円あるいはそれの生乳価格の動き、そういったものについての情報は今後とも私どもとしては十分収集してまいりたい、こういうふうに考えております。
  157. 村上弘

    村上(弘)分科員 違反事案としての調査と、いろいろな面での実態の調査と、両面あると思うのですね。そういうこともあわせてやるべきだということを強調しておきたいと思います。  それから、牛乳販売店のみならず、中小零細の小売店が全体として深刻な状態にあります。強大な力を持っている量販店が業務提携や資本提携などをしてますます力を強めて、それを背景にして差別対価だとか不当廉売などをいよいよ進めておる。これが全体の傾向だと思うわけです。御承知のように、わが国の場合は中小零細小売店が果たしている役割りというものは非常に大きいと思うわけです。新聞の販売店にしろ、あるいは牛乳の販売店にしろ、一軒一軒宅配するというのが日本一つの特色だと思うのです。こういう点が文化やあるいは健康の面で非常に大きな役割りを果たしておることも重視する必要があると思うのです。  しかしながら、こういう状態に対してメーカーや大スーパーが猛威をたくましくして、こういう小売店の機能や役割りというものをますます困難に追い込んでおる。したがって、公取はこういう差別対価や不当廉売などの不公正取引の実態をもっと全面的に見直して、深く調査をして、何が不公正な取引なのかということを見直すことも含めて、実態に即した効果的な規制を強化することがいま重要になっているんじゃないか。これは今日の流通面でのゆがみを正して全国の中小小売業者を守る上でも、また日本経済のバランスのとれた発展を保証する上でも重要な意義があると思うわけですね。こういう点で公取はどのように考え、どのようにされようとしておるか、これまでの検討や研究結果などについても、この際伺いたいと思います。
  158. 相場照美

    ○相場説明員 お答えいたします。  流通の問題につきましては、公正取引委員会としてもここ数年積極的に取り組んでいるところでございまして、いろいろな業界について調査を進めているところでございます。ただいま先生のおっしゃいましたいろいろな要素、こういったものも十分に心いたしまして今後の施策を進めていくということで考えたいと思っております。
  159. 村上弘

    村上(弘)分科員 見直しをやっていくかどうかということは、どうですか。
  160. 相場照美

    ○相場説明員 個々具体的な問題、もちろん現在の不公正取引、この法制がそれでいいのかどうかとか、いろいろ適切に対応できるかどうかまで含めまして、現在流通問題についてはいろいろな角度から検討を始めているところでございます。そういう意味でそれが見直しというように言えるかと思っておりますが、そのようなことでございます。
  161. 村上弘

    村上(弘)分科員 ぜひ不公正取引とは何ぞやということの実態や内容の見直しも含めて思い切った方針を打ち出すように努力していただきたいと思います。  中小企業庁にお伺いいたしますが、お聞きのように、牛乳販売店は三大メーカーの管理価格と大スーパーなどの資金力や販売力を背景とした強引な商法のもとでいま深刻な事態にあるわけです。お聞きしますと、昨年の十二月とことしの一月に中小企業庁の組織課長さんや下請企業課長さんが全乳連や東乳商の幹部を呼ばれていろいろと実情をお聞きになったそうですね。東乳商の池田専務理事も、牛乳の取引状況や仕組みなども熱心に聞いてもらった。これまでいろいろ各省庁と話をしてきたけれども、いままでで一番熱心であったというふうに言っておられるわけですが、中小企業庁としてはこういう宅配の牛乳販売店の危機をどういうふうに見ておられるか、そしてどういうように対処すべきであるか、どういうことが可能であるか、そういうことについてのお考えなどもこの際あわせてお聞きしておきたいと思います。
  162. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、牛乳販売業につきましては、特に取引上の問題が生じているということは私どももかねがね聞いておりましたので、まずこういう問題の処理に当たりましては実態把握ということが肝心でございます。したがいまして、いまお話しございましたように、昨年の十二月に全乳連の方々から実情聴取を行いまして、その結果、私どもとして問題意識を持ちましたのは三点ございます。  まず第一点は、スーパーで販売されております牛乳の中には、牛乳販売店が大手乳業メーカーから仕入れる際の卸売価格に比較して低い価格で店頭販売されているものがあるということでございます。これはその背景は別といたしまして、そういった事実関係がございます。  それから第二の点でございますが、これは牛乳販売業によりますところの牛乳の販売量が現在大幅に落ち込んで、いわゆる専業者が非常に苦しんでおるということでございます。  それから第三点は、全乳連といたしまして、先ほど来話も出ておりましたように、スーパーでの牛乳の店頭価格をみずからの手で調査し、そして不当廉売の疑いのあるものにつきまして公取委に申告する等の運動を全国的に展開しておるということでございます。先ほど来の答弁を拝聴いたしておりますと、公取の方もこういった具体的な店頭価格の調査に基づく申告を真剣に受けとめられまして、問題のあるものにつきましては警告を発し、具体的にやめさせるといった例もあるそうでございまして、私どもといたしましても、小売商の立場からいたしますと健全な小売商の発展を図りますためにはやはりそういった公取委員会の活動というものが大きな役割りを果たしていただくということに期待をいたしております。  私どもとしての対応の方向でございますが、全乳連が公取委員会あるいは業種所管省としての農林水産省と話し合われまして、その結果を踏まえて、両省庁とも、私どももその結果に基づいた相談を中小企業育成、助成の立場からお話しをしてみたいと思っております。そして、中小企業庁の役割りといたしましては、やはり中小企業の近代化あるいは合理化についてのいろいろな施策展開に実際的な効果を出すということが大事でございまして、具体的な実情に沿った的確な対応を各省と連携をとりながらやっていく必要がございます。先ほど来ございましたように、まず厳正な独禁法の運用を公取委員会に期待いたしますとともに、業種所管省としての農林省において、こういった問題の構造的あるいは景況的な対策を有効に展開していただく必要がございます。それにあわせて、私どもも中小小売商の助成の立場から、あらゆるメニューがございますので、そういったメニューのうち最も的確な方策をこれに適用することによって対処してまいりたいと考えております。
  163. 村上弘

    村上(弘)分科員 農水省にお伺いします。  毎日毎日一定量の牛乳を消費者に確実に宅配する牛乳販売店の宅配制度が危機にあるということは、牛乳の安定消費、ひいては酪農民の安定生産の柱を揺るがしている、こういうことが言えます。飲用牛乳の総量の中で牛乳販売店の扱い量は、昭和五十一年は五四%を占めていましたが、五十三年は四四%というふうに非常に少なくなってきている。このことは酪農の基礎そのものが不安定になってきておるということを意味するわけで、これは日本の酪農の将来展望にもかかわる重大な問題であるわけです。したがって、宅配制度の危機を打開するということ、この制度を守るということが酪農にとっていまほど大事なときはないと思うわけです。そういう点で、農水省としてはこの宅配制度をどう見ているか。  もう一つは、こういう宅配制度を守る上で価格の混乱を打開する、解決することがいま一番解決を迫られている問題ではないかと思うわけです。今日まで宅配制度の重要性についてはどこも認めるわけですが、宅配重視、宅配見直しと言っても、この卸売価格が固定されておるという状態をそのままにして、また価格の混乱をこのままにしては解決できないではないか、空念仏ではないか、こう言っているわけです。したがって、果たして今日の乳業メーカーの卸売価格は適正なものであるかどうかという問題について、従来のように大乳業メーカーの一方的な価格決定方式では問題が解決しないではないか、関係者が共同のテーブルに着いて民主的に審議をして、合理的な解決方法を探求するということ、そういう場を設けることがいま必要ではないかと思うわけです。かつてわが党の市川議員の質問主意書に対して当時の太平総理が、価格決定のルール化については今後も研究してまいりたいというふうに答えておるわけですが、もう何年もたつわけですね。こういう問題についてもっと具体的に前向きに農水省として努力すべきではないかと思いますが、どうですか。
  164. 芝田博

    ○芝田説明員 お答えいたします。  牛乳小売店の存在、特にその宅配の機能というものが非常に重要であるという御指摘については、われわれも全くそのように考えております。牛乳の消費量が季節や天候によって非常に変動いたします中で、家庭配達というシステムに乗っております牛乳は非常に安定的な消費需要を持っているわけでございまして、これは御指摘のとおり酪農振興上も非常に重要な要素となっているわけでございます。その牛乳販売店のシェアが低下しているという点、われわれも承知しております。そのシェアの低下は御指摘のとおりかなり進んでいるわけでございます。われわれといたしまして、この牛乳販売店の重要性にかんがみまして、この牛乳販売店の危機と申しますか、そのようなシェアの低下を食いとめるために一層の合理化と経営の近代化を進めることが大事だと考えているわけでございます。そのために、五十五年度におきましても牛乳の共同保管配送施設の設置、また販売店の経営指導に対して助成を行っているわけでございます。五十六年度政府予算案におきましても、この点を拡充することといたしておるわけでございます。そのように育成の対策を講じますとともに、先生指摘の価格の点でございますが、この価格の乱れと申しますか、非常に価格が下がっているという点につきましては、この基本的な原因は、われわれといたしましては、生乳の供給過剰がございまして、これが需給の不均衡をもたらしているということにあると思うわけでございますが、それに加えまして、確かに牛乳の流通経路が大きく変化いたしまして、スーパー等の量販店が非常に大きな力を持ってきたことがあるということ、そして、これに対しましてメーカー側の、先ほど申しました需給不均衡を背景といたします販売競争の激化があるということが考えられるわけでございます。そのようなことでございますので、農林省といたしましては、基本的には、安売りを防止するためには一方におきまして生乳の生産を抑制いたしまして、一方におきましては飲用牛乳の消費を拡大いたしまして、需給のバランスをとる、過剰状況の解消に努めるということが大事と考えまして、この面、計画生産という名のもとに生産の調整を進め、また飲用牛乳の消費拡大事業に力を入れているところでございます。  先生の御指摘の価格についての検討の場と申しますか、関係者が集まっていろいろと話し合うと言われる場につきましては、これはすでに業界と申しますかの中には消費拡大部会というものが設けられておりまして、メーカーと牛乳の商業組合、また生産者の団体でございます全国酪農業協同組員連合会等、先生のおっしゃる関係者の団体の代表をもって構成されておりまして、随時このような問題については話し合われる場があるわけでございますが、最近確かにその活動が少し低調なふうにも存じておりますので、このような実情をもう一度調べまして指導してまいりたいと思います。
  165. 村上弘

    村上(弘)分科員 価格問題もそれでやりますか。
  166. 芝田博

    ○芝田説明員 飲用牛乳消費拡大部会と申しますのは、目的はまさに消費拡大でございますが、価格の制度化のことも検討する場ということに目的はなっておるわけでございます。
  167. 村上弘

    村上(弘)分科員 時間が来ておりますけれども、合理的な価格問題について検討する場、そういう場も生かして大いに進めるということを再度要望しておきたいと思います。  最後に、通産大臣にお伺いいたしますが、お聞きのように、牛乳販売店の経営は大変な危機に直面しておるわけです。飲用乳は年間約四百万トン、総売上高、末端価格で約一兆円ですね。ですから相当大きな分野であるわけです。国民生活にとっても、日本経済にとっても、大事な分野であると思うわけです。この問題は、何回となく商工委員会でも、物特、農水などでも取り上げて、この牛乳販売店の危機打開の問題を検討してきておるわけですが、その都度、調査する、あるいは検討すると一応前向きの答弁もあるわけですけれども、この数年間、実効のある打開策がとられておりません。先ほど中小企業庁答弁にも、農水、公取、通産、各関係省庁が力を合わせてということが言われておるわけですが、そういう立場を進める上からも、通産大臣が農水省や公取などとも、それぞれの独自の仕事もあるでしょうが、こういう共通の課題について抜本的な、また実効のある打開策を講ずるように、ぜひ積極的なイニシアチブを発揮していただきたい。非常に切望しておるわけですね。そういう点で、通産大臣の所見なり決意なりをお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  168. 田中六助

    田中(六)国務大臣 小売牛乳業の中小企業関係は現在一万九千四百十軒程度あるわけでございまして、これはだんだん減ってそうなっておる。まだこれから減る可能性もございます。ところで、私どもは、中小企業育成、中堅企業育成という観点から中小企業体質改善資金制度という制度もございますし、この制度をフルに活用いたしまして、同時に政府三機関、つまり国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金などの政府三機関を動員いたしまして、近代化と申しましても、口で言っては簡単でございますけれども、多様化と申しますか、小売牛乳業の多様化あるいはその他の援助をできるだけ一生懸命やって、いま中小企業倒産件数がことしの一月で千三百十三件あるのです。これは史上最高なんです。この中にも牛乳小売業の人も含まれておりますし、頭の痛いことではございますが、先ほども中小企業庁長官の方から説明がありましたように、農林水産省あるいは公取とも十分相談の上、ただ口先だけではなくて、早目に対処していこうと思います。
  169. 近藤元次

    近藤(元)主査代理 これにて村上弘君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  170. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 まず最初に、会津若松市と南会津郡の境にできておる新大川発電所の問題についてお伺いいたします。  これはいまどの程度に進んでいるのか、その進捗状況、それから営業開始時はいつになるのか、その見通し、そしてその発電所の規模、それから生産された電気はどこに送られていくのか、この概要についてお伺いいたします。
  171. 石井賢吾

    ○石井政府委員 お尋ねの新大川発電所建設状況でございますが、本発電所に関しましては、東北電力株式会社が現在会津若松市の阿賀野川水系におきまして、出力二万一千キロワットという規模におきましてダム式発電所を建設いたしておるわけでございます。最初のお尋ねの進捗率でございますが、五十五年七月に着工いたしまして、ことしの一月末で三%程度の工事進捗率であると承知いたしております。東北電力株式会社の計画でまいりますと、この発電所は五十九年三月運転開始を目標にして、現在工事を進めておるところと聞いております。この発電所によりまして発電いたしました電気の全量は東北電力株式会社の供給区域内に供給されると承知いたしております。
  172. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、ここから送電される送電線の計画はどういうふうになって、どこを通って、どういうふうに電気を配っていかれるのか、その辺ひとつお伺いいたします。  さらに、民有地の上を通っていくわけですが、その民有地の上を通る際の電気関係の工作物をつくるのに民家のどういう承諾を得てあるのか、その辺もお聞かせ願いたいと思います。
  173. 石井賢吾

    ○石井政府委員 新大川発電所からの東北電力への供給は、大川線という送電線系統を通じまして東北管内にいたす予定になっております。  それから、ただいまお尋ねの送電線系統の建設にかかわる地元調整のお尋ねでございますが、私ども個別地権者との調整が現在どういうふうに進んでおるか具体的には承知いたしておりません。
  174. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 大川線を通るというと、これは旧大川発電所の線路を利用する、こういうことでしょうか。
  175. 石井賢吾

    ○石井政府委員 そのように聞いております。
  176. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そうすると、これは非常に小さな発電所であって、送電線もそれに見合った送電線だと思いますが、いま承るところによると、二万一千キロの送電線をそこにすぐにつないだだけで大丈夫でしょうか。これは線は全部取りかえるおつもりですか。
  177. 石井賢吾

    ○石井政府委員 新大川発電所から東北電力の白河変電所まで一応六万ボルトで送電しておりますのが現在の大川線でございますが、これを活用するものと承知いたしております。
  178. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それでは、これは何と申しますか、個別に民有地をどのくらい通るのか、ひとつその資料を後で結構ですからお願いいたします。  それから、こういう電線というのは、民有地の上を通すということについて電気事業法の上では当然これはその民有地について補償しなければならないと私は思うのですが、その辺はどういうふうにお考えでしょう。
  179. 石井賢吾

    ○石井政府委員 送電線下の補償に関しましては、昭和三十七年六月に公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱というものが閣議決定されておりまして、これに基づきまして当省では昭和三十八年十一月に各電気事業者に対しまして電源開発等に伴う損失補償基準を定めまして、これによって適正な補償を行うように指示いたしておるところでございます。
  180. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そうすると、それは新設、既設にかかわらず送電線の通っておる線下というものは当然補償の対象になる、こういうふうに理解していいのでしょうか。
  181. 石井賢吾

    ○石井政府委員 この補償基準におきましては、すべての線下の土地に対しまして補償すべきであるということを決めておるわけではございませんで、線下の土地の利用が妨げられている程度に応じまして適正な補償をすべきであることを定めておるわけでございます。
  182. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 線下の土地の利用が妨げられる程度ということは、一体どういうことでしょうか。たとえば高圧線が通っておるためにその土地に建物を建てようとしても建てられない、そしてまた他人に売買しようとしてもそのためにそこは非常に安くなるとか、あるいはこの間の豪雪のような場合には、鉄塔が折れて、その土地の人たちは大変な迷惑をこうむっておるが、これは利用を妨げないでしょうか。妨げないで済むところが一体あるでしょうか。あるならそれをひとつ明示していただきたい。
  183. 石井賢吾

    ○石井政府委員 送電線を張ることによりまして土地の利用が妨げられるという例といたしまして、たとえば十七万五千ボルト以上の高圧線の場合におきましては、その直下に建物の構築が許されないとか、あるいは一定のボルト以上の場合ですとその直下から三メーター以上離さないと農耕してはならないとか、いろいろ電気事業法上の基準に触れるような形で土地利用が制限されてまいるわけでございますので、そういうものを利用が妨げられるというふうに考えております。
  184. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 土地の所有権者のその所有権は地上と地下に及ぶというのは法律の定めるところであるわけです。その所有権の及ぶ地上を通る——幾ら空中とはいえその所有権の一部を占有するということは所有権の侵害になると私は思うのです。所有権の侵害になれば、侵害した分についての補償というのは当然考えなければならない。これはどんな公共事業だって同じでしょう。たとえば土地収用法で収用するほど大事な場合でも、それは補償だけはちゃんと適正な価額で支払わなければならない。しかし、電力会社は、既設の場合、いまだかつてほとんどやってない。もっとも最近になってやったところも少しはあるけれども。この点についてはどう思いますか。
  185. 石井賢吾

    ○石井政府委員 私どもとしましては、先ほど申し上げました基準に従いまして、電力会社が民間の土地を利用いたします場合に適正な補償が行われているというふうに理解いたしておるわけでございます。  全国的な規模で申し上げますと、現にその土地利用の約四割が補償の対象になっておるというふうに承知いたしておりますが、ただいま先生のお話しの所有権が地上ないし空中ないし地下、無限に及ぶということでございますが、社会生活上受忍限度を越えた場合の、ダメージがある場合においては当然補償が行われるわけでございますが、そうでない場合には補償をする必要はないというふうに考えております。
  186. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 大変おもしろい論理を展開されると思っているのですが、たとえば飛行機が瞬間的にその地上を通る場合ならば、これは所有権の侵害とは言いがたいでしょうが、恒久的に施設されておるのが所有権の侵害にならない、しかも、その土地の利用の妨げにならないなどという感覚は、あなた、それはどこから出てくるのですか。それは電力会社の感覚じゃないですか。監督官庁の感覚がそんなことではどうしようもないですよ。現実に補償はされているものと思うかと言うけれども、あなた調査したのですか。調査をされていないからいまトラブルが出てきているんですよ、あちらこちらに。そういう実態を正確に把握しないでどうして監督できますか。その辺はどうなんです。
  187. 石井賢吾

    ○石井政府委員 線下補償に関しましては、いま申し上げましたように三十八年の基準通達によりましてこれを適切に実施すべく電力会社を指導しておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、全線下の土地のほぼ四割につきましては一応補償が行われているというふうに聞いております。  個々の土地所有者、要するに地権者と電力会社の個別の使用賃借契約によりましてこの問題は解決されるわけでございますが、それぞれがそれぞれの受忍の限度との関係におきまして、補償を要すべきかあるいは補償を要すべきでないか、それぞれの地権者の判断と電力会社との協議によって契約上設定されるものというふうに承知しております。
  188. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それでは、四割は補償されていると申しますが、その資料をひとつ後で出してください。どういうふうにその補償がされているのか。  それから、たとえばこれから女川原発なんかができてまいりますと、五十万ボルトくらいの送電線が、たんぼといわず山林といわず通っていくと思うのです。その際は、たんぼや畑あるいは原野については補償の対象にならないとお考えですか、どうなんですか。
  189. 石井賢吾

    ○石井政府委員 具体的には地権者と電力会社との契約関係において処理されるものと思っております。
  190. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それはもちろん契約が成立して、地権者が承諾すれば問題はないけれども、もしそこに契約が成り立たないという場合にはどういう指導をされるおつもりですか。
  191. 石井賢吾

    ○石井政府委員 基本的には、両当事者間の交渉によって解決さるべき性格のものと承知いたしております。したがって、一義的に両当事者がお互いに納得のいくまで話し合っていただき、そこに具体的に損失が発生するというのであれば、当然適正な補償が支払われるべきものであるというふうに考えております。
  192. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そうすると、たとえば新潟県ではたんぼから畑全部、高圧線の下が補償されているという場合、福島県も同じように補償されなければならないというふうに考えます。同じ条件のところで、一方が補償されて一方が補償されないというようなことはあるべきでないと思いますが、その点はどうでしょうか。
  193. 石井賢吾

    ○石井政府委員 いま御指摘のような客観的な状態が同一であれば、同一の措置がとられるのが至当であるというふうに考えます。
  194. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 時間がありませんから少し先に進みますが、女川原発の送電線の通るところの資料を、福島県分だけで結構ですから、ひとつお願いいたします。
  195. 石井賢吾

    ○石井政府委員 私ども、五十六年度の現在、各電力会社の施設計画をヒヤリングいたしておりますが、その施設計画に掲上されている限りについては資料の提出はできます。
  196. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 しかし、営業の申告がされる場合には、予定の計画図というものは全部審査の対象になって、通産省はわかっているはずでしょう。これは通産大臣の許可なくしては営業開始できないのだから。
  197. 石井賢吾

    ○石井政府委員 具体的にどの地点を通過するか、その線下の土地の利用状態がどうなっておるかという詳細については承知いたしておりません。
  198. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 まあそこまでは要求しませんから、知り得る範囲でひとつお願いします。  次に、福島県内にこれからつくられる発電所は一体どのくらいあるか。これもたとえば火力や水力その他いろいろあると思いますが、それについて大体のことで結構ですからお知らせをお願いしたいと思います。
  199. 石井賢吾

    ○石井政府委員 現在、福島県内で建設中の発電所でございますが、水力に関しましては、まず東北電力の第二沼沢、これは揚水発電所でございます。それと同じく東北電力の先ほどお尋ねの新大川発電所、それからこのほかに電源開発株式会社の、揚水でございますが、下郷発電所、この三カ地点百四十八万キロワットが水力の計画で現在建設中でございます。  また、同じく建設中の火力につきましては、常磐共同火力勿来八、九号、これは石炭火力でございますが、一地点百二十万キロワット、これが建設中でございます。  それから原子力発電所に関しましては、東京電力の福島第二発電所の一号から四号まで、これは一地点四百四十万キロワットの規模でございますが、これらが建設中でございまして、合計五地点七百八万キロワットの計画でございまして、これらについては順調に工事が進捗しておるというふうに承知いたしております。  このほかに、電源開発調整審議会の議を経まして、現在着工に向けて地元調整を急いでおります発電所がございます。これは東北電力の原町一、二号でございます。一地点二百万キロワットということでございます。  このほかに計画中、要するに電源開発調整審議会の議を経ておりません計画中のものが三地点ほどございます。東北電力の広野三、四号、二百万キロワット、水力では電源開発の只見、六万五千キロワット、原子力では東北電力の浪江・小高、八十二万五千キロワット等が計画中の段階にございます。
  200. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、いままだ決まってはいないと申します只見発電所の只見の地点ほどの辺でございますか。また、このダムができた場合の水中に没する戸数はどの程度が想定されておりますか。
  201. 石井賢吾

    ○石井政府委員 電源開発株式会社の只見発電所に関しましては、福島県南会津郡只見町におきまして、只見川水系を活用して、六十年運転開始を目標に、現在地元調整を急いでおるところでございます。先ほど申し上げましたように、この出力は六万五千キロワットの規模で、ダム式発電でございます。  これによりまして何月の住居が水没するか、その具体的な内容については承知いたしておりません。
  202. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 具体的内容について承知しないということは……。しかし、それは申請書の中には包括的に出ているのじゃないですか。
  203. 石井賢吾

    ○石井政府委員 ただいま資料を持ってないという意味でございます。
  204. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 わかりました。それでは、それは後からわかり次第お願いします。  時間の関係で次に移りますが、まず、電力料金の公正化という問題です。実は最近、小学校等ではインターサーモという暖房設備をして、そして冬期間だけこの暖房機器を利用しておる学校が非常にふえてきております。これは学校ばかりでなく福祉施設等も入っております。このインターサーモというのは、すでに設計の段階から、それ以外には利用できない。もうその各分が終われば、ほかのたとえば冷房装置に切りかえるとか、そういうことも一切できない。専用線路で設計されておる。ところが、その学校にほかのいわゆる電灯等その他の電気の施設がされておるために、全然使わない夏も基本料金を取られておる。しかも、これは最高の場合の基本料金ですから、大変な額になるわけです。この文部省から出ておる資料の中にも、インターサーモについてこういうことが書かれているんです。「これは蒸気暖房に比べ、建設費の低減、ランニングコストの低減という決定的な利点を有する理由から、電気暖房を採用したのである。」という報告書がここに載っているのです。そういうことで他の暖房機に比べて非常に得するというのでこれを敷設したところが、今度は昭和四十九年六月の電気料金値上げの際に、いままでの基本料金が大変に高くなる、あるいはまたこれに対して学校等に対する特別措置というのが講じられておったのが撤廃される、こういうことで自治体はいま大変な電気料の打撃を受けているのです。これについてひとつ御説明願いたいと思います。
  205. 石井賢吾

    ○石井政府委員 ただいま御指摘のインターサーモを利用いたします学校暖房、これは一つの行き方かもしれませんが、過去にいろいろな措置がとられましたのも、料金改定時の激変緩和として——恒久的な制度としてとった措置ではございませんで、一定の期間経過後は通常の料金体系に従うということになりまして、ただいま先生指摘のような料金水準になっておるものと考えております。  これらにつきましては、一定の季節のみしか使わない機器に対応する電気の供給契約の場合におきましても、それに対する施設というものは常に用意しておかなければいかぬということで、年間を通じて電力供給施設は確保されていなければいかぬわけでございますので、これに相応する年間通しましてのコストが発生いたしております。その関係で、これらの契約に対応いたします電力供給施設のいわば固定費相当額は基本料金としてこれを徴収する仕組みになっておるものですから、冬のみに徴収するということとではなくて、年間を通じて発生するコストを年間にならして徴収しているということが現在の料金体系ではなかろうかと思っております。
  206. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それが現在の料金体系だから問題にしているわけです。前に特別措置を講じておって、なぜそういうような料金体系にしたのか。しかも、施設コストというのは、全然使わないときには二分の一にするということができるわけですよ。ただそれが専用でない、他の電灯等があるためにできないだけであって、そうでないところは、それだけを使っているところは、たとえば夏分使わないとその分は基本料金が二分の一になる、こういうふうになっているのであって、それならば、学校の電線が受電する場合は一カ所で受電するから、それでいつもピークの一番最高時で全然使わないところも使ったようにして取らなくちゃならないという理由にはならないと思うのですよ。だから、親切味があるならば、一本で受電してもそこから今度は二つに分けて、他方は封印するなり何らかの措置を講ずれば——封印しなくとも、設計そのものが全然ほかに利用することができないようになっているのですから、それは何とか考えてもらわなくちゃならぬと私は思うのです。たとえば家庭用の場合は大概暖房だけということはないんですよ。いわゆる夏は冷房、冬は暖房、こういう場合はやむを得ません。これは年間通じて取られるのは当然ですけれども、学校あるいは福祉施設のような場合に、しかも完全にもう夏は使うことができない、またそのことがわかっている、こういう場合に、いつも最高の場合を想定してその基本料金を取るというのは少し過酷じゃないでしょうか。しかもそれは、何もそのためにそれだけの設備を新たにしなくちゃならぬわけではないと私は思うのです。それ以上に何万ボルトも必要とする工場だってあるんですから、何もちょっとした学校やその施設の電気料のために特別な施設をしなければならないということにはなっていないと思うのです。仮になっていたとしても、それじゃその電灯やその他と今度むねを分けて別に受電をしていけばそれは二分の一になるのですから。しかもそうすれば、コストはよけいにかかっていながら実際の電気料はそういうふうに取り扱ってもらえる、こういうふうになるわけで、その辺はひとつもっと利用者に対する愛情というものを持って臨めば、私は何とか考えられるんじゃないか。これは大臣どういうふうに思いますか。
  207. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御指摘のように政治あるいは政策には根本的に愛情がなければなりませんし、十分そういう点を考えてやるべき方針の樹立、そういうものを考えなければならぬと思います。
  208. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 大臣のおっしゃるのは非常に正しいことで、しかし具体的には全然答えていないわけで、結局これはそういう愛情を持って検討するという御意思なんでしょうか。
  209. 田中六助

    田中(六)国務大臣 もちろんそういう意思でございます。
  210. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ちょうど時間になりましたから、これをもちまして終わります。
  211. 近藤元次

    近藤(元)主査代理 これにて渡部行雄君の質疑は終了いたしました。  次に、稲葉誠一君。
  212. 稲葉誠一

    稲葉分科員 日米の経済関係を中心にお聞きをしたいと思うのですが、その前に、アメリカ日本に対する国際収支、これはアメリカとしては輸出で大きな赤字ですね。そうではなくて、アメリカの全体の国際収支は大幅に伸びているのではないですか。百億ドル、百何十億ドルぐらいの黒になっておるんじゃないでしょうか。この点ちょっと説明願えませんか。
  213. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  お示しのように、アメリカの国の全体の国際収支といいますものは黒字になっております。
  214. 稲葉誠一

    稲葉分科員 どのぐらいなんですか。
  215. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 ちょっといま数字を手元に持っておりません。
  216. 稲葉誠一

    稲葉分科員 そのぐらいはあなた、常識だぞ。ぼくの方もあれだけれども。百何十億ドルか何かだと思ったな、国際収支。ちょっと数字違うかな。後で調べてください。  そこで問題になってまいりますのは、日米の間でいまいろいろな自動車の問題、その他の問題がありますね。これは外務大臣——外務大臣じゃない。外務大臣三人いるんだからその一人だ。田中さん、どうなんです。日本アメリカとの間でいま自動車の問題が一番大きな問題だと思うんですが、その他、自動車の問題を含めていまの国際関係の問題点はどこにありますか。
  217. 田中六助

    田中(六)国務大臣 日米間の貿易は、私は日本がちょうど五十五年度で輸出が千三百六十億ドル、それから輸入がそれよりも四、五十億ドル上になっていると思いますけれども、対米関係につきましては四分の一ぐらいの交流が日米間にあるわけです。それで日本は、アメリカに対して八十億ドル前後黒字だと思います。それでいろいろな問題が起こっているわけでございますけれども、私どもは、この赤字解消を目指して努力しなければならないというような観点から自動車問題も実はとらえられ、あるいはとらえているわけでございまして、この方針をどういうふうに具体化するかは、今後の私どもの折衝だと思います。
  218. 稲葉誠一

    稲葉分科員 ただ、日本アメリカに対する関係では、日本の方が八十億ドルくらいの黒字でしょう。アメリカは全体の国際収支としては、たしか百何十億ドルでしたっけかな、全体が黒になって、それがまたふえているんじゃないでしょうか。ちょっといま私は数字を忘れましたが、まあそれはいいです。  それでいま自動車の問題が起きてきて、この自動車の問題で一体どこに責任があるかということを考えると、日本に責任があるというよりもむしろアメリカ自身悪い点が非常に多いのですよ。なぜかと言うと、これはエネルギーの問題から小型の自動車の問題になることは、大分長い前からわかり切っていたんじゃないですか。それが一つと、それから、アメリカの労働者の場合は、いわゆるアブセンスというのが非常に多いんですね。日本の場合はアブセンスが非常に少ない。全部で出勤が九五、六%ですよね。ドイツが八〇%くらいの出勤です。アメリカは非常に悪い。それからもう一つは、アメリカは技術が悪いのですよ。だから、日本がいわゆる一万分の一くらいしか不良品が出ないときにアメリカでは百分の一くらい不良品が出るのですよ。これは事実なんです。  そういうようないろんな状況を並べてみますと、アメリカの経営者が先見の明がなかったというふうなこと、それから労働者自身もまた働かない、技術も下手だというようなこと、それから向上していく意欲が非常に少ないというようなことになりますね。いろんな状況が重なって、これをまるで日本が悪いように言われたのでは筋が違う、こういうふうに私は思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  219. 田中六助

    田中(六)国務大臣 ITC、つまり向こうの委員会の結論は昨年出たわけでございますけれども、それが明らかに五人のうち三人がシロだというふうに投じまして、輸入車によっての被害はないとは言いませんけれども、必ずしもアメリカの自動車業界の失業輸入、そういうようなものにはならないことを言ったわけです。私は、これは非常にアメリカの良識をむしろ出したような気持ちがしておるわけで、アメリカ自身の中にも、重大な機構がそういうふうに認めているということは、先ほど稲葉議員が御指摘のように、アメリカの自動車産業の技術、大型車だけに集中してきた、それで燃費が要るようになって急に小型車が要るから日本のを輸入しているわけで、私もアメリカの人たちには一応そう言っているのです。もっともアメリカは、生涯の一番理想とするのはあのリンカーンとかクライスラーの大きなのを乗り回すのが理想だ、それははっきりと知りませんけれども、そういうことなんですね。それであなたたちが怠っておりながら、国民がそういう時期になって燃料節約ということを意識し始めていろんなことが起こっておることを忘れているんじゃあるまいか。それから労働者の技術のことを余り言うのも変ですけれども日本の技術者は、百人同じものをつくらせたらほとんど百人が同じものをつくる、おたくのところは、百人同じものをつくらせたら四四、五%はだめになるんじゃないか、そういう技術者の訓練とか、それからいままでのつくり方というようなものの反省をしなくちゃいかぬのじゃないかということは訴えているわけです。ただ、私ども今回少しがまんしているのは、ダンフォース、ベンツェンとか、いろいろ上院議員がいま法案を提出して、その結果を待ったり、ルイスさんが座長のタスクフォースの結論がもうすぐ出ますので、そういうものを待ってひとつ正式なことをいろいろ言っていこうかなというふうな考えを持っております。
  220. 稲葉誠一

    稲葉分科員 だから私は、言うべきことはきちんと言った方がいいと思うのですね。アメリカというのはそういう国ですからね。非常にオープンな国ですから、遠慮していて言わないとかえって損をするんですね。それからイエスとノーというのをはっきりしないと過ちを犯しますね、外国に対しては。だから日本人がよくうそつきだと言われるのは、イエス、ノーがはっきりしないんですね。前向きに検討するとか努力するとか、何とかかんとか言うけれども、それをどう訳していいのか、向こうだって困っちゃうわけですよ。イエスと訳しちゃうと、日本ではイエスじゃないわけです。そうすると、相手はうそつきだと言うのでしょう。日本人は、どろぼうやろうというのは最大の侮辱ですわね。アメリカでもイギリスでも、どろぼうじゃなくてうそつきだというのが最大の侮辱でしょう、ユー・アー・ライアーということで。イギリスなんかでは決闘していいんでしょう。それはそうですが、そういうふうにはっきり言うべきことは言った方がいいと思うのです。  そこで、実は私が心配しているのは、これは通産大臣の任務だと私は思うのですが、この前も予算委員会で言ったのだけれども、鈴木内閣には外務大臣が閣内に三人いると言ったら、そうじゃない、五人いるという話が出てきてね。大体五人というのはわかるのだけれども、大来佐武郎さんと二階堂進さんを加えて五人というわけなんだね。宮澤君と田中六助さんとそれから伊東正義さんか、その三人のほかに二人いるというのはどうにもしようがないね。どうにもしようがないというのは、だれが一体責任者で、何を相手と話し合いをするのか、向こうだって困るんじゃないかとぼくは思うんですよね。そこで、自動車業者のことを一番詳しいのは通産省でしょう。そうすれば、実行力のある田中通産大臣にお任せをしていくのが一番いい、私はこういうふうに思うのですがね。  そこで、外務省の経済局というのがあるでしょう。あれと通産省とはどういう関係になっているんですか。これまた、よくわからないんだな。外務省の経済局というのは一体何をやるところなんです。それで、通産省の方がその点については非常に規模が大きいわけでしょう、一番よく事情を知っているのだから。それで、外務省の経済局との間がうまくいかないというか、あれしているというのは困るので、五人もいると称される外務大臣をこの関係については一本にまとめてぴしっといくようにしなくちゃいかぬと私は思うのですが、これは通産大臣が一番適任だと私は思うのですが、どうなんですか、その点については。
  221. 田中六助

    田中(六)国務大臣 予算委員会では稲葉先生の御質問に私は答えずにはぐらかしたようなことで恐縮でございましたけれども、外務大臣が三人おるということでございますけれども、これを私なりにちょっと言いわけをさしていただきたいのですが、私は、エネルギーは国民の皆さん御安心ください、政府備蓄が七日分あるいは民間備蓄が百何日分あって、こうして百十一日分は大丈夫でございますからと言いましても、担当の責任ある大臣としては、やはりそれを各国に、油の出るところ、LNGの出るところあるいは石炭の出るところ、ウラニウムの出るところ、それぞれに行って確かめたかったわけです。それで無理して、余り体の調子もよくなかったのですけれども、あっという間に半年で大体のところは回りまして、ここのボタンを緩く押せばどうなる、ここを強く押せばどうなるという概念を持てただけでも非常に参考になったわけです。それで多少伊東さんにも相談したのですけれども、そこら辺がそう言われているのですが、根本的には私は、ASEAN五カ国も回りまして、あるいはIEAの会議に行きましても、もしも日本がこれから先八〇年代に臨むならば、どの大臣もどんどん外国に行かなければ、ASEANはASEAN諸国五カ国でかたまってしまって、日本はその潮流から外されるというおそれを感じました。それからパリのIEAの会議でも、何かヨーロッパ人だけがかたまる、ECがかたまって日本を外すというようなことではいかぬ、どんどん——ASEAN諸国でもホットラインをどの大臣も相互に持って、民謡をお互いに電話ででも歌うような調子なんですね。だからそういうふうにやっていかなければいかぬから、これからの大臣は、まあ大臣じゃなくても議会のどなたでもそうですが、どんどん外国に行ってやらなければ、日本はいい気になって経済協力ということを言っておっても、うん要らないよ、そのうちになんて言われるようなことになっちゃいかぬということで回ったので、私は、各大臣にもできるだけ外に行ってほしいという考えを持っております。  まあそれは別といたしましても、私どもいま自動車の問題につきましても、その関連の法律にいたしましても全部実は通産省の関係でございます。それから国内の業者との対話、ここまで自動車産業が発展してきて世界に冠たるものになったのも実は通産省が非常に血のにじむような行政指導をやったからじゃないか、これは手前みそになりますけれども、私はそういうふうに思うのです。それで、この交渉につきましても、微に入り細に入り、細かいことまで知っているのは通産省だ。窓口はあくまで外務省でございますけれども、その直接の衝に当たるのは——それは、こういうことがありますからこうしなさい、この問いに対してはこういう答えをしなさいということは、外務省が当面の窓口も、それから全部やると言うならば、そういうことは私ども全力を挙げて怠りなくやるつもりでございますけれども、さあ交渉最中にどうだ、こう言われたときに即答ができない部分もできるのじゃないか。したがって、私は総理からおまえ行けと言われたときに、実は伊東外務大臣にもお話し申し上げまして、そのときはそうかということで、実は予算委員会答弁の中にも私は大体行くでしょう、しかしその日にちについては総理大臣、官房長官、外務大臣と相談して決めたいという答えをしたはずです。そこらの部分まではよかったのですけれども、その後多少ひん曲がったような形でございますけれども、私は本音を言えというならば、通産省の責任者である私並びに私のところのスタッフが、外務省の人の御援助も得てこの交渉に当たった方がいいのじゃないかという気がしております。
  222. 稲葉誠一

    稲葉分科員 いずれにしても、各方面にいろいろやられるのは結構ですけれども、最終的にはやはりまとまって行かないと、ばらばらになりまして足元を見られてもいけませんので、その点はいま大臣が言われたことを信頼申し上げておきます。  そこで、実際問題としてはこれはどうなんですか。七九年の実績が百五十五万台でしょう。大体この辺でというような空気に実際にはなってくるというのは、少し楽観的ですか。
  223. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 いまのところまだ政府間交渉というところまではきっちりいっておりませんので、どういう形で日米通商問題を収拾するかということは、基本的にはいまアメリカの方でルイス運輸長官が委員長になりましてタスクフォースをやっております。タスクフォースの内容は、主として先ほど先生もおっしゃいましたようなアメリカの自動車産業のあり方についてのいろいろな提言なり方法であると思いますが、輸入につきましても何らかの要望というものがくっつくかと思います。それと、その辺の雰囲気も踏まえまして、どういう方法でアメリカと話し合いをするかということでございますが、したがいまして政府間交渉をやるかやらないかという、いわゆる正式の政府間交渉であるかどうかという点につきましてもまだはっきり決めかねる段階でございます。したがいまして、台数を幾らというところまではまだとても話がいかない、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  224. 稲葉誠一

    稲葉分科員 これは交渉の問題ですから、台数の問題などについていまあなたの方から答えるべき時期ではございませんから、それは私もよくわかっておりますので、これ以上聞きません。  問題は、自動車の時代はだんだん過ぎて将来はやはりICの時代になっていくのではないか、こういうことがすでに言われていますね。だから、自動車は大体日本自身のあれも少し下り坂になってきて、アメリカとの関係は、今度はICの時代になってくるのではないかということが考えられますけれども、その点はどうでしょうか。
  225. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 対米関係につきましては、非常に貿易関係が多岐にわたっております。したがいまして、いつでも何らかの問題というものがあることは避けられないわけでございます。先生おっしゃいましたように、自動車につきましていつまでこういう問題があるかということについては確かに疑問なしといたしませんし、今後電子製品とかICの問題が貿易摩擦の問題として登場してくる可能性というものは十分にあるわけでございます。その辺は、いまから私どもとしては準備をしておく必要があろうかというふうに思っております。
  226. 稲葉誠一

    稲葉分科員 それでいわゆるOMAというのがありますね、オーダリー・マーケティング・アグリーメント、これはカラーテレビのときには三年間で結ばれたわけですね。そのために日本の輸出でなくて向こうへ工場を設けて、そこでいまシャープなんかやっていますね。今度シャープはあそこで労働組合をつくるとかなんとかやっている。だけれども、シャープのやっているところはへんぴなところですよ。  それはそれとして、そこで自動車の場合にもいわゆるOMAですね、これは訳すと市場秩序維持協定というのですか、これは結ばれる可能性はないと見てよろしいでしょうか。
  227. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 対米自動車問題についてどういうところでお話し合いを決めるかということにつきましては、方法論としていろいろあるわけでございまして、OMAも一つの方法論ではあろうかと思います。  ただOMA協定といいますのは、実はITCの結論がクロと出た場合にそれにつながって普通はやる方策でございますので、そうしますと現在一応ITCがシロと出ておりますので、OMA協定を結ぶにつきましてはやはり何らかのアクションが別途必要であるという点もございまして、その方法をとるかどうか、いまのところ何とも申し上げにくいという状況でございます。
  228. 稲葉誠一

    稲葉分科員 この前UAWのフレーザー会長が来ましたよね。カーター大統領とUAWとの関係と、レーガン大統領とUAWとの関係とは大分違うのじゃないですか。カーターの方は密接だったけれどもレーガンの場合にはそれほど密接ではないというふうに見てよろしいでしょうか。
  229. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お示しのように、元来アメリカの労働組合は民主党と密接であるということでございます。したがいまして、そういうコンテクストから申しますと、前よりは若干疎遠かなという感じもいたしますけれども、議会への圧力等も含めましてまたいうんな変化もあろうかと思いますので、一概にレーガン政権とUAWは疎遠であるということは言い切れないのではないかと思っております。
  230. 稲葉誠一

    稲葉分科員 それはそういう外国の経済問題ですから公式的に判断するわけにいきませんし、いろいろ物事は流動的ですし、いまそういう段階を前にしていろいろ細かい質問をしても、それにあなた方の方でお答えすることはかえって逆効果になる場合もあるしいろいろありますから、この程度にしておきます。  そこで石油の問題で、去年は私自身もエジプトに旅行し、ことしはバンコクなんかに行きまして、それからあちこち行ったのですが、どこを中心として日本石油取引というものを置くかということです。これは世界各国ずっと置かなければいけないわけですね。メキシコの場合ももちろんそうですね。メキシコの場合は、人によって非常にいい石油が無尽蔵に出ると言う人もいるし、そうでないと言う人もいる。インドネシアにもあるし、それからルーマニアも出ますね。もちろん産油国もある。こういうふうに考えてくると、いわゆるイスラム教の国というのは、いま世界の人口が三十何億ですか、そのうち約九億がイスラム教ですね。だから今後イスラム教の国との間の通商外交というか、それをもっともっと伸ばしていかないといけないのじゃないかというふうに思いますね。これが一つです。  それから、メキシコは形の上では非同盟ですけれども、実際非同盟かどうかは、キューバだって非同盟と言うのですから非同盟にもいろいろあるけれども、メキシコにしろインドネシアにしろ、ずっとアジア・アフリカその他中東を通じて非同盟の国がだんだんふえつつあるということも考えますと、日本は特にソビエトとの関係、サハリンなりシベリアの石油、そういうふうなものでソビエトとの経済関係を深めていくことが、いわば人質論と言うと言葉は悪いですが、ソ連の日本に対するアグレッシブというか脅威というか、そういうふうなものをなくしていくことにつながるというふうに考えるわけですね。ですからこれは余り限定をしないで、広い範囲で石油についての外交、貿易というものを展開していただきたいというふうに思います。  それから特にイスラム諸国に対する研究、これはイスラムといっても中に宗教が二つあるのですよね。なかなかややこしいのでいろんな点がありますから、ことに日本の場合はイスラムの国に対する研究が従来足りなかったわけですね。外務省でも、アラビア語ができるのが去年五十二人ですか、そのくらいしかいませんよね。通産省でいま何人ぐらいいるのか知りませんけれども、そういう国に対する大使館や何かにも通産省から派遣するというようなことも、今後もっともっと考えていく必要があるのじゃないかということも思うので、それについての意見。  それからもう一つ大臣にお聞きしたいのは、石油については日本は備蓄その他の関係から言って心配はないというふうに理解してよろしいでしょうか。
  231. 田中六助

    田中(六)国務大臣 まず第一点でございますが、私ども今回の第一次、第二次オイルショックの教訓といたしまして、まず学習態度としては、やはりたくさん分散をして石油を輸入できるような確保の仕方をしておかなくてはいかぬというふうに思っておりますけれども、私どもつらつら考えますときに、アラブ諸国、つまりアラビア語を話す国がこのショック以前から輸入の半数以上を占めておりますし、これは十年後のいろいろな計画はございますけれども、やはりこれを中枢にしなければならないということであります。したがって、イランの場合でも、イランの国民あるいはイランの政府が望んでおるIJPCなどにつきましても、私どもが何とかこれを実現したいということは、イランだけを見ているのではないのです。やはりこれらの、ペルシャ湾沿岸の諸国がじっと日本の態度を見ているわけでございまして、あれは途中で断念してしまったかというような判定を下されることがどれだけマイナスかわからないという見方も実はしておるわけです。  それから、そういうアラブ諸国を中心にしたいといいましても、メキシコもございますし、インドネシアもございますし、中国もございますが、メキシコなども実は油はたくさんとれますけれども、マヤという非常に重質油の油でございまして、これをまた精製するのにいろいろな問題がございます。中国は予定しておったのが、また自分の国の需要と、それから実際に増産ができないような体制もございます。インドネシアはまあまあのところでございます。したがって、やはり残るところはシベリアの開発でございますが、これは地理的にもよその国と違って非常に近いし、歴史的にも非常にいわく因縁がございますし、できますならばこういう開発を通じて仲よくする方向、これは私は日本としては一つの基本方針としてどっしり重みある政策として持っておかなくてはいかぬというふうに思っておりますし、こういう点につきましても通産省並びに政府のできることはしていかなくてはならぬというふうに考えております。
  232. 稲葉誠一

    稲葉分科員 いろいろお話を承りまして、私もそのとおりだ、こういうふうに思うのです。ことにいまサハリンの石油の開発がずいぶん進んでおりますね。それとシベリアの問題で、経済関係が深まれば深まるほどそれがソビエトの日本に対するいわゆる武力的な脅威——私はないと思います。ソビエトにとってはヨーロッパが四分の三以上大事で、その次が中国ですから、ソビエトの日本に対するいわゆる脅威というのは本当のわずかなものだと私は思うし、ほとんど考えられないくらいじゃないかと思いますがね。そういうことを考えますと、ソビエトとの経済協力関係というものは非常に大事だ、こういうふうに考えておりますので、私はいま通産大臣の考え方に賛成ですね。今後そういう方向で道を誤らないように進んでいっていただきたいというふうに思うのです。  そこで、これはよけいなことかもわからないのですけれども、どうもいわゆる外野スズメというか何かスズメの騒ぐのは、たとえば天谷審議官が行かれましたね。天谷審議官が行かれて、あの人の「町人国家論」なんて本がありますが、話も聞いたことがありますが、なかなか有能な人ですね。行ってきたはいいけれども、そのことを何か官房長官あたりには内容については全然報告しないという話が盛んに出てくるわけですね。そこからも田中さんと宮澤さんとが仲が悪いという話が出てくるので、あなたと宮澤さんとはタイプが違うからしようがないかもしれぬけれども、そういう点もあるのは残念ですね。その話はうそか本当か知りませんよ。だけれども、そういうようなことはないようにして、官邸は官邸でやるのかもわかりませんが、全体を通じて通産省が主導権を握りながら、外務省と仲よくと言うと語弊がありますが、うまく連携をとってこれからも進めていってもらいたい、こういうふうに考えるわけです。  通産省というのは非常に大事な役所だと私は思うのです。私は、大蔵省と通産省というのは初めから仲が悪いというふうに昔聞いていたのですけれども、これは率直な話です。ちょっと時間があるからよけいなことを言っているのだけれども、佐橋さんの本を読んでも、佐橋さんが初めてあのころは商工省がな、入るときの話でも、やはり大蔵省を意識しているんだな。大蔵省を意識してやっていて、なかなか大蔵省とうまくいかない。このごろはそうでもないかもわかりませんが、いずれにいたしましても非常に大事な役所ですから、国内中小企業なり何なりの保護育成ということと同時に、大きく目を開いて、対外的に日本外交、貿易、経済というものをしっかり方向を見誤らないような方向に進めていただきたい。これは希望でございますが、希望を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  233. 近藤元次

    近藤(元)主査代理 これにて稲葉誠一君の質疑は終了いたしました。  次に、柴田弘君。
  234. 柴田弘

    ○柴田分科員 まず最初に、私は大臣に今日の中小零細企業の倒産の問題について伺いますが、御案内のように本年一月の倒産件数は千三百十四件で、五十二年の一月の千二百八十五件を大幅に上回っておる。昨年十月からの倒産件数も千六百件を超えまして、このままいけば今年は戦後最高の二万件近い中小零細企業の倒産が起こるのじゃないか、このように言われております。しかも、最近の倒産は住宅関連あるいは建築業界だけでなくて、食品だとか繊維だとか、紙パルプ、プラスチック等々だんだんすそ野を広げてきているのが現状ではないか、こういうふうに思います。どうでしょうか、中小零細企業の倒産についての大臣の御認識をお伺いをしたいと思います。
  235. 田中六助

    田中(六)国務大臣 中小企業倒産が余りにも多くて、私は本当は内心じたばたしていると同時に、行動を発揮しなくちゃいかぬといつも思っておりますし、陰に陽に閣議でも実は発言しております。ちょうど数字で挙げますと、十月が千六百六十八件倒れておるのです。十一月が千六百三十一件、十二月が千六百五十四件、この一月になりまして、いま委員は千三百十四件と申しましたけれども、十四件でも十三件でも同じでございますが、まあその程度、それから暦年一月−十二月の間が一万七千八百八十四件でございます。そういう膨大な倒産の仕方をしておるのに、これを黙って見ておく法はない。何はさておいても、これは対策を早急に講じなくちゃいかぬのです。特に政府は来年度経済成長率を五・三%と見込んでいるわけですが、御承知のように日本ではちょうど中小企業の件数が五百八十一万件ございまして、それに従事しているのが実に三千四百二十九万人おりまして、出荷率が五三%、そういうことを考えますと、製造業並びに日本経済の活力というものはほとんど中小企業、中堅企業が背負っております。これは大企業が云々されていろいろ批判されておりますけれども、あらゆる観点から、経済成長率におきましても高くなったり低くなったりするのも中小企業者が背負っておるという認識が政府自身にも民間の人たちにも足らぬのじゃないかと思います。したがって、いろいろ言いますけれども、やはりこの対策を講じることが民生の安定にもなるし、日本経済の安定にもなるという認識を——私は実は通産大臣になる以前から商工部会長をちょうど二期やっておりましたのでよくわかっておりまして、何とかして通産大臣をやりたいなと思って、最初から総理にもお願いしたわけで、これははからずもなったのじゃなくて、私はいつもはかってなったのだと言いますけれども、そういうことで自分なりに大いに認識しておるつもりでございます。したがって、この対策にも、ぼうっとしておりますけれども、できるだけ頭を使っておると自分で思っております。
  236. 柴田弘

    ○柴田分科員 中小企業に対する大臣の御認識が非常に深いということで、私も大いに意を強くしております。  それで、いかなる対策を打ち出すかということですが、昨年の九月五日に打ち出されましたいわゆる政府総合経済対策の中で、中小企業庁が五項目の対策を打ち出しました。これは大臣もよく御承知かと思いますが、この五項目が、たとえば金融政策の問題にいたしましても、やはり中小零細企業までは金利の問題の恩恵に浴してない、あるいは公共事業の執行に対する問題、中小企業向けの官公需の問題、いま中小企業は金利が高い、仕事がない、これがやはり一番問題ではないか、こういうふうに思います。     〔近藤(元)主査代理退席山田(耻)主査代理着席〕 この対策が十分に行き届いていない、やはりここに問題があるのではないか、こんなふうに思います。ですから、こういった反省点を踏まえて、政府はまた近々に第二次の総合景気対策を打ち出すということを仄聞をいたしておりますが、こういったことで一体具体的にどんな対策を打ち出されるのか、果たしてそれが本当に、いま大臣がおっしゃったように、中小企業あるいは零細企業の救済策につながるかどうか。私は大いに関心もありますし、またこれは現実に日本経済の基盤を支える中小零細企業の皆さん方にとっても、きわめて関心の深いことではないか、こんなふうに思うわけでありますが、その辺の反省と、近々に打ち出される中小零細企業の具体策について、ひとつ明快にお示しをいただきたい、こういうふうに思います。
  237. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  全般的な問題につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、その補足でございます。  まず、現在の局面をどう見るかということでございますが、やはり極端に悪い条件が重なっておるというふうに考えております。昨年の九月五日に対策が打たれたわけでございますけれども、その後さらに冷夏の後遺症がことしまで持ち越されております。その後、また豪雪の問題もございます。それから、かたがた住宅投資の落ち込みというのもございまして、これは御指摘のように大変にすそ野の広い問題でございまして、中小企業の住宅の中に入れるものといいますと、大変たくさんの商品がありますが、これが全国津々浦々にわたる広がりを持っております。したがいまして、基調といたしまして、かげり現象が中小企業に集中的にあらわれている。そこへ冷夏——業種と申しますのも主として中小企業が多い。それから、豪雪の関係もそうでございますが、やはり北陸地帯を中心といたしまして、中小零細業者関連が非常に多うございます。それから、特に販売部門におきまして、冷夏、豪雪ともに非常に購買力が落ちておりまして、一般の小売商がこれによって痛手をこうむっておるというような状況でございます。  いま申し上げましたようなことを背景といたしまして、有効、適切な対策はどういうものがあるかということで、先般百社につきまして緊急調査を実施いたしたわけでございますが、そこではやはり先行きの景況に対する自信が持てないということが一つございます。それから販売価格の低迷、それから第三日に、金融条件についての非常な苦境を訴える向きが多うございます。したがいまして、そういうものに対する的確なる対応というものが今後検討されるべき景気対策の中身ではなかろうか、このように考えております。したがいまして、現在関係各部署におきましてそれぞれに研究をしていただいておるようでございますが、私どもといたしましても、もし今後景気対策というものが検討されるとすれば、どういう具体的な中身になるかということをいま鋭意勉強いたしております。  御指摘のように、まず金融の問題、これが何といっても大事だというふうに考えておりますが、若干中長期的に考えますと、金融の問題だけで済まない問題もございます。そういった若干構造的な問題で、たとえば設備投資のあり方あるいは組織化の問題、あるいは倒産対策といたしましても、単に目先の、倒産した後の事後処理というだけではいけませんので、これからは、倒産に対するウォッチシステムをどういうふうにやっていくかというふうなことを中心に考えております。
  238. 柴田弘

    ○柴田分科員 具体的にどういう対策を打ち出すかということでありますが、これは当然中小企業に対する貸出金利が公定歩合と連動していく。もちろん第三次の公定歩合の引き下げというものも必要になってくるでありましょうが、先ほど申しましたように、とにかく中小企業までは、どうしてもその金利引き下げの恩恵に浴してない。いま実態調査をされたという話がありましたが、この調査の中でも一・五%程度下げてもらいたいという要望が確かにあったと思う。そういった問題を具体的にどうされるのか。  それからもう一つ倒産防止融資資金の貸し付けということでございますが、これは具体的にどうですか。もう一歩突っ込んで御答弁をいただきたいわけですが、五十六年度から予定されておりました、いわゆる中小企業体質強化資金の活用の中で、この中小企業倒産防止融資制度、これが制度化されるというんですが、これは五十六年度からのものをこの三月に繰り上げて行われる、限度額二千万で七%ないし八%の利子で、国と都道府県が拠出した資金をもって民間金融機関に預託をして中小企業に融資する、このような制度も考えられているんですか。この点、ひとつ具体的にお聞かせをいただきたい。金利の引き下げの問題、倒産防止融資制度の問題、ひとつ具体的に御答弁お願いします。
  239. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 第一点の金利の問題でございますが、これにつきましては、前回二度ほど引き下げがございましたけれども、これのいわゆる末端におきます追随率が非常に悪い。特に中小企業向けの融資についてそれが顕著のようでございます。したがいまして、そういった生の声が、期せずして一・五%以上の引き下げを要望するという熾烈なる声が盛り上がっております。したがいまして私どもは、こういった生の声を関係方面に十分お伝えをしておるところであります。そういうことを十分前提といたしまして、今後機動的にして的確なる金利の改善が図られることを期待いたしております。  それから第二の点でございますが、体質強化資金あるいは三機関の倒産防止のための特別融資という制度がございますが、これにつきまして、特に体質強化資金の改善の一つといたしまして、倒産防止特別相談室で相談を受けました案件で、金融をつければ何とか倒産が回避できるというものについても、従来の体質強化資金の適用範囲を広げたらどうかという問題意識が私どもございまして、現在内部でも検討を現実にやっております。したがいまして、今後もし景気対策が検討されるという段階になりましたら、いち早くこういったものは対象にお願いすべき点ではなかろうか、このように考えております。
  240. 柴田弘

    ○柴田分科員 大臣にお伺いしておきますが、金利の引き下げの問題ですね。要するに先ほど来申しておりますように、いままでの公定歩合の引き下げが中小零細企業まで行っていない。これはやはり一つ問題があると私は思います。やはりこれは早急に第三次の引き下げというものも必要でないか、こういうふうに思いますし、それからいま御答弁いただきましたように、倒産防止融資制度というものは四月からだとか五月からだとか言っていないで、早急に今後打ち出される総合景気対策の中で中小企業対策の一環としてどうしても打ち出していただきたい、こう思っているわけであります。  それからもう一つは公共事業の執行ということで、これはどうしても大企業だけでなくて中小零細企業にも行き渡るようないわゆる官公需の拡大というものも、いま目標は三六・五%ですか、これをもう少し四〇%、五〇%にアップして中小企業の方へ行けるような、これは制度的なものがあるし、いろいろな諸問題があるかと思いますが、そういった問題を整理をしてやっていくべきでないか、こういうふうに思いますが、この三点、御答弁をいただきたいと思います。
  241. 田中六助

    田中(六)国務大臣 三点をまとめてお答え申し上げます。  最初のバンクレート、つまり中心金利である公定歩合の問題でございますが、これは野党の方も言っておりますけれども、公定歩合については軽々に他の、日銀以外の者は発言しないようにというお言葉も野党の一部から出ております。私どもも、実はそういうふうに思いますけれども、私がさっきの答弁で申し上げましたように、もういたたまれない気持ちもあるわけです。したがって、さきの引き下げのときは、確かに中小企業に即刻連動するということが少ないということはアンケートでも出ておりますし、窓口規制がかなり厳しい、そういうことではバンクレートを下げた効果も薄らぐわけでございまして、このたび引き下げるというようなことがありますならば、そういうことのないように、ぜひ私どもも警告並びにそういう窓口に対する規制、むしろ逆の規制ですね、そういうものをやらなければならないと思っておりますし、できるだけ早くその実行も、いつとは、私はどうにもこれはなりませんけれども、できるだけ早く委員御指摘のようなことでやっていきたいと思います。  それから、公共事業の前倒しとか官公需のはっきりした制度の早目の実現、平等の実現というようなこともございますが、公共事業は、私ども腹づもりといたしましては、新年度予算に計上している公共事業の発注を私ども予算が通りますならば直ちに、前倒しも含めた、いつも規格どおりやって少し余すというようなことがありますけれども、そういうことよりも、もう景気が冷え込んでしまってエネルギーがより以上要るというような認識はだれも持っておるわけでございますので、早目にそういう公共事業の実施並びに前倒しというものを先にやって後の効果を見たいというように考えております。  それから、官公需の問題でございますが、これも確かに私ども、三六%という一つの目標がございますけれども、やはり官公需の分割発注ですね、それから事業組合による意見を尊重して、ぜひ官公需が不規則にあるいは不平等に大企業ばかりに行くというようなことのないように十分気をつけて、中小企業対策というものをやっていきたいと思いますし、これは蛇足でございますけれども、私ども倒産対策の貸付制度というものもございますけれども、また中小企業共済制度の拡充、それから保証制度と申しますか倒産防止の保証制度、それから相談室も百二十一件現在ございますけれども、これを百六十一にするとかいうような予算の計上もしておりますので、できるだけ万全を期していきたいというふうに考えております。
  242. 柴田弘

    ○柴田分科員 倒産防止資金制度の問題ですね、これはちょっと答弁が抜けたと思いますので、後でまたお願いします。  それで、私は新しい問題で、中小企業大学校の建設という問題で質問しますが、大臣の諮問機関であります中小企業近代化審議会が、中小企業大学校を全国十二ブロックに分けて開校しなさいという答申といいますか報告をいたしております。すでに東京、関西にあるわけでありますが、あと十ブロックということで、北は北海道から南は南九州まで十ブロック、今度答申がされました。私どもとしては、こういった大学校は中小企業の技術、技能の向上、経営能力の向上、後継者養成教育の充実を目指すという立場から非常に積極的な推進を要望いたしております。そこで、この十ブロックをとにかく五十七年度から八〇年代後半までに整備をしていくんだ、こういうことのようでございますが、大臣としては、こういった建設順位の決定、あるいはとりあえず五十七年度の建設はどういうふうに考えていらっしゃるか。私は、やはり中小企業の密集度を勘案して建設順位を決定すべきである、こんなふうに考えるわけでございますが、この辺のところ、それから先ほど申しました倒産防止融資制度の前倒しの問題、これを今度の総合対策の中でやっていただけるかどうか、簡潔で結構でございますので、御答弁をいただきたいと思います。
  243. 田中六助

    田中(六)国務大臣 長官からちょっと答えさせていただきたいと思います。
  244. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 最初に、中小企業大学校の問題でございますが、これにつきましては、御指摘のように二月五日に答申を審議会の方からいただいております。したがいまして、その答申の線に沿いまして、今後拡充整備お願いするわけでございまして、八〇年代後半までにぜひこういった体制を整備したいということでございまして、その順序等につきましては、今後必要にして十分な条件の吟味をいたしました上、決定されるということだと思います。  それから、密集度の高いところにという一つの御見解でございますし、これはやはりこの評価をいたしますときの一つの考慮要因としてございますが、また別途の意見も実は聞いておりまして、いずれに評価基準を立てるべきかというものも今後の問題として御理解をいただければと思います。  それからもう一つ倒産防止のための制度、いわゆる特別の融資制度の前倒しの問題でございますが、これは大臣から先ほど来、倒産の深刻さについてのお話を申し上げましたとおり、これが倒産対策としては非常に大事なことであるというふうに考えておりますので、もし今後景気対策というものが検討されるということが早急にございましたら、その中の有力な一つの具体的項目として、私ども真剣に取り組んでいきたい、このように考えております。
  245. 柴田弘

    ○柴田分科員 それでは次の問題ですが、先ほども日米自動車問題が議論されましたが、大臣どうでしょうか、日本の自動車産業は、御案内のようにアメリカ、ECとの貿易摩擦が激しくなっております。また一方では、昨年も国内の需要の伸びがたしかマイナスの二・七%だというふうに記憶しておりますが、伸びが低下をいたしております。果たしてこういった状況の中で、今後の自動車産業はどうなるだろうか。ある人に言わせれば、わが国産業の一〇%を占めるこの自動車産業が、いままで高度成長の中でずっときたわけでありますが、今後の安定成長といいますか低成長の中でもう停滞の方向へ行くのではないか。自動車産業成長論ならぬ自動車産業斜陽化論というものがささやかれている向きもあるわけでありますが、今後のこの自動車産業についての御認識、これをまずお伺いをしておきたいわけであります。
  246. 田中六助

    田中(六)国務大臣 この自動車産業でございますが、いま対米、EC、カナダ等でトラブルを起こしているわけでございますけれども、私どもは、本音を吐けというならば、安くてよくてしかも燃料費がかからない車をそれぞれの国民が買ってくださっておるんで、これを議会とか相手側の業者がいろいろ言うのは、まあ商売上言うのは当然かもわかりませんけれども、これほど深刻にあげつらう、かねや太鼓をたたいてまでするのには実は私は抵抗を感じております。しかし、日米関係は特に戦後非常に重大で、日本の貿易量の四分の一あるいはそれ以上をアメリカに依存しておることを思えば、これほど日本経済が繁栄している大きな役割りをしておるのは事実でございますので、アメリカが失業の二十万、三十万の輸入に日本の軍がくみしているのだというような表現をされるとやはり考えなくてはいかぬのじゃないかと思って、ちょうど私はいつも言うのですけれどもアメリカがかぜを引いて寝込んでいる、そのときに、まくら元でからんころんげたを履いて音をさせるのはどうだろう、まあ薬はいかがですか、この重湯はどうですかぐらいは言わなくてはいけない、そういう考えは持っております。したがって、今回日米の自動車産業の交渉があるならば私もみずから進んで出かけていって、日本国内のメーカーには損な点もあるかもわかりませんけれども、どこか合理的なあるいは理性のある態度あるいは評価、そういうものを遂げたいという気がしております。国内の自動車の需要も御承知のように日本の一戸当たりそろそろ二台くらいの車が平均いっているわけで、これは一巡して各家庭もこれ以上いろいろ買ったりすることは少なくなるのじゃないか。したがって、外需も内需も思っておるとおりなことができないのじゃないか。したがってどうするかということは、これから自動車産業が多様化していく何かをやるか、あるいはそういう点についても十分考えた上で対処しなければならない。いま自動車産業の対米、対ECその他の国々との交渉も頭の痛いことでございますけれども、ここまで貢献し、非常に努力、発展あるいは通産省としては行政指導による育成、そういうものをしてきたこの産業がどういうふうにいくかということについても私ども責任がございますし、十分考えていかなければならないということで、いま私もとつおいつどころか十分考えて早目にその対処をしなければならないというふうに思っております。
  247. 柴田弘

    ○柴田分科員 それで、そういった大臣の御認識のもとに今後のわが国の自動車産業のあり方、これについて十分な対応といいますか検討といいますか、これはやはり通産省真剣にやっていかなければならないと私は思いますね。具体的にどうなのでしょうか、これは大臣でなくても、事務当局でもいいのですが、もし何か一つの方策がありましたらお聞かせをいただきたい。
  248. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 ただいま大臣から御答弁しましたように、輸出の面あるいは内需の面、それぞれ問題を抱えておりまして、これからの日本の自動車産業のあり方というのは八〇年代を通じまして非常に問題があろうかというふうに考えておるわけでございます。  そこで、私ども事務的にいま検討中でございますけれども、自動車産業の懇談会というような、私的の機関でございますけれども、とりあえずそういう場をつくりまして、これは業界の方だけでなくて学識経験者も含めまして、これからの短期でなく中長期の問題点というようなものをかなり自由な立場でいろいろお話をいただくというような場を設けまして、そういったところで少し中長期問題について勉強をしていったらどうかなというようなことを現在検討している段階でございます。そういった場を通じまして、これからいろいろございます問題点についての勉強をいたしていきたいというふうに考えている次第でございます。
  249. 柴田弘

    ○柴田分科員 時間がなくなってまいりましたが、いまおっしゃった自動車産業懇談会ですね、業界あるいは学識経験者等を含めて、こういうことだそうでございます。これは近々に発足するということですが、いつ発足されるか。  それから、もう少し中長期展望に立ってというお話でございますが、もし何かあなたの方でこういった問題ああいった問題という具体的な項目別のものがあれば、ここでひとつお教えをいただきたい。  この御答弁をいただきまして質問を終わります。
  250. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 この懇談会でどういう議論をしていただこうかということでございますけれども、先ほどから大臣からお話のありましたような輸出情勢、これは各国とも保護主義的な動きが非常に強くなっておりまして、なかなか従来のような伸びも期待しがたいというような問題がございます。こういった中にありまして、たとえば海外投資の問題というような問題がその中でどういう位置づけになるんであろうかというようなことも、たとえば外向きの問題としてはあろうかと思いますし、また、国内の問題でも需要が一巡をしたという御説明を申し上げましたけれども、そういった中で、これから設備投資の問題にいたしましても、そのほかいろいろの問題にいたしましても、どういうことがそれぞれのメーカーの頭の中にあって、これからそれぞれのメーカーがどう対処していったらいいのかというような、これは何も非常に細かい点について役所が文句を言うあるいは介入するという意味合いではございませんで、むしろ今後自動車業界としてどういうことを頭に置きながら行動していったらいいのかというような問題でございますが、そういった問題もたとえばとしてはあり得るかと思います。いずれにいたしましても、そういった場でひとつかなり広くフリーに御議論をいただいて問題点を検討してまいりたいというふうに思っているわけでございます。  なお、この発足の問題でございますが、まだ人選その他も考えておる段階でございますので必ずしも明確でございませんけれども、できるだけ早く発足するようなことにいたしたいというふうに考えております。
  251. 柴田弘

    ○柴田分科員 ありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わります。
  252. 山田耻目

    山田(耻)主査代理 これにて柴田弘君の質疑は終了いたしました。  次に、三谷秀治君。
  253. 三谷秀治

    三谷分科員 大阪府の八尾市の駅前の再開発事業に関連しまして西武百貨店がここに進出する計画が進んでおります。この種のデパート進出に伴って周辺の小規模な小売業者が大きな影響を受けることになりますが、これについての対策はどうなっておりますか、お尋ねしたい。
  254. 神谷和男

    ○神谷政府委員 百貨店、スーパー等の大規模店舗の出店に当たりましては、基本的には大規模店舗法に基づき届け出を受理し所要の調整を行うという形で対処をいたしております。  御指摘の西武百貨店の八尾ショッピングセンター出店に関連した問題につきましては、すでに五十五年十一月末から十二月末にかけまして五条の届け出がなされておりまして、正式の商調協を経て届け出どおりということで、地元からも勧告の要なしという意見の提出がございました。一応法律に基づく調整を下しております。
  255. 三谷秀治

    三谷分科員 地元の小売業者、関係者がこの進出を納得したものでありますなら、いま書籍販売の業者が西武進出反対対策委員会を組んで問題にする必要はないわけでありますが、七条によります審査の段階では、西武側の売り場ごとの種別とそれぞれの面積が明らかになっておりましたのでしょうか。
  256. 神谷和男

    ○神谷政府委員 法律上は業種ごとの面積というものに関して審査する体制にはなっておりませんが、計画としては地元に説明をされている、こういうふうに了解しております。
  257. 三谷秀治

    三谷分科員 そのことが説明されていないので今日のような紛争が起きておるわけであります。七条による調整といいましても、影響を受ける小規模小売業者の側は食品なり医療なりの専門店でありますから、デパートの進出によって受ける影響をはかり知ることができない。面積しか知らされておりませんから明確につかめないわけであります。そのことがこの地域の業者の反対の一番の原因になってきたと私は思うわけでございますが、これが明らかにならなければ具体的な調整は不可能である。たてまえだけになってしまって実態が伴わないわけでありますから、そういうやり方ではこの紛争は絶えないと思いますけれども、その点はどうお考えでしょうか。
  258. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御承知のように大規模店舗法の考え方は、品ぞろえ豊富なワン・ストップ・ショッピング機能を持った大規模な店舗が全体として周辺の中小小売業に影響を与えていろいろな摩擦を惹起する可能性が強いということから、総体としての大規模店舗、品ぞろえ豊富な、多くの業種を包含した総合的な小売商としての大規模店舗を面積において調整しよう、こういう考え方からこの法律が構成されておりますので、具体的な業種あるいはその取り扱う品物を展示しあるいは販売する店舗の区分け等に関しては、この法律が調整するといったてまえにはなっておりません。  しかし現実問題といたしまして、地元では御承知のように商調協において種々の議論がなされ、事実上の調整の地ならしが行われるわけでございますので、これらの場におきましては、周辺の小売商の代表の種々の疑問にこたえる形で、現実問題としてできる限りの売り場計画その他、その大型店の対応する計画を説明する、こういう形になっておるわけでございます。私ども基本的に、売り場面積を種別に調整するということは現実問題として法律の予期するところでもございませんし、また、今日のように非常に流動的な流通状況のもとにおいて国がそこまで介入するというのは適当と考えておりませんので、そのような調整は現実問題として行っておりませんし、行うような体制であるべきとも考えておりません。ここに起こります問題は、商調協の場において質問に答える形でいろいろと議論されていくことが適切であろうというふうに考えております。
  259. 三谷秀治

    三谷分科員 いまの御説明は事実関係とかなり違っているのです。八尾商調協の結論が出ましたのは、五十四年の二月であります。そして売り場の実態、商品別の売り場の面積などが明らかにされたのがことしの一月であります。ですから、商調協の協議の段階におきましては、単に売り場の総面積あるいは開店日、営業時間、休業日数等が示されただけであります。したがって、そこでは一体どういう品物が入ってくるのかということは一つも明確ではありませんから、単に何百平米の売り場ができるというだけにすぎないわけでありますから、付近の業者などが具体的に意見を述べる、あるいはこれについての賛否の意見を出すというふうな状態にはなっておりません。  そこで、八尾の商調協に聞きましても、総面積が示されたのみで小売り側委員の反対はなかったというわけであります。実態がわからないものに意見の出しようがない、こういうことでありますが、大店法の規定に不備があるのではないでしょうか。実際に調整ということをやるといったてまえに立ちますならば、調整の機能が発揮できるような状態において審議ができるような状態にしなければいけないと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  260. 神谷和男

    ○神谷政府委員 商調協で議論されます際に、先ほど申し上げましたように、売り場面積等は現在の流通分野における状況、特殊性等を反映いたしまして、基本的にはかなり流動的なものでございますが、でき得る限り質問に答えて、中小小売業者等の要請に応じながら審議の円滑化を促進する意味でも対応していくというのが一般的な審議の現実でございます。  ただもちろん、具体的にどの程度のものまでお示しし、あるいはどの程度議論が行われるかというのは、その商調協におきます議論状況を反映しておのずから異なってくるものでございまして、先ほども申し上げましたように、一般的に総合的な大規模店舗の調整という形でこの制度ができておりまして、具体的な業種別調整あるいは個々の売り場の規制というところまでこの法律の予定するところではございませんので、したがいまして、商調協における議論というのは、その案件案件によって御指摘のように精粗あるいはある部分が欠落したりかなり詳しくなったりということはあろうかというふうに考えております。  しかし、商調協における議論がある部門、たとえばどの業種がどうなっていくかというようなところに、どうしても周辺に対する影響の観点から集中すれば、それなりのできるだけの説明をすることによって出店側も審議の促進を図ろうということになるわけでございまして、この面は法律のたてまえとは別に現実問題として対処されておる、こういうことでございます。  しからば、法律上そういうものを規制し得るような形の制度にすべきではないか、現在の大店法の調整は欠陥があるのではないかという先生の御指摘に関連いたしましては、御承知のように国民生活の多様化という状況にあり、かつ流通の合理化をできるだけ推進していくべきであるという一般的な要請と、周辺における中小小売業に対するフリクションをできるだけ緩和し、ミニマイズしていきたい、こういう一方の要請との調和ででき上がっております。その調和点の中に見出されました現在の法制のもとにおいては、私どもは、ただいま行っておるような運営というのが制度上としてはぎりぎりのところではないかと考えております。  もちろん、個々の案件に従いまして実態的な運用でできるだけのカバーができるようなことも考えていくということは行政として常時考慮しなければならないことであると考えております。
  261. 三谷秀治

    三谷分科員 大変御説明が観念的で私どもにはよくわかりませんが、調整をする限りは利害関係者の意見というものが反映できる状態でやっていくということが必要だと思うのです。ですから、いまおっしゃいますような総面積で議論をしておったのでは、実際に影響や打撃を受けます業者というものはその実態がわからぬわけですから、わからぬなりで商調協が審議をするとかあるいは小売業者の意見を聞くとかいったところで、そこではまともな意見、具体的な意見は出てこない。それが従来やってこられました商調協のやり方であって、しばしば各地で問題が起きている。  私どもの地域におきましても、百貨店ではありませんが、ダイエーにしろあるいはニチイにしろ西友にしろ、各都市に進出してきましたが、そこで必ずもめているのは、商調協が承知をしたんだと、こういう言い分なんです。調べてみますと、いろいろ商調協に対して出店希望の大規模業者があいさつをする。あいさつの中にはいろいろな内容が入っておりますが、私どもが横合いから文句をつけると私どものところにも物を持ってあいさつに来る。そういう状況の中で、しかも具体の内容が明らかになっていないままで、商調協でこれは審議が終わった、こういう結論になっている。これではたてまえだけ、形式を整えただけであって、実態が伴っていない。ですから、本当に地域の中小企業意見というものを聞くのでありますならば、どういう店舗がどういう品物でどれだけの面積で出るのか、それに基づいて意見を聞くということをやらなければ、これは全く瑕疵のあるものであると言わざるを得ないわけであります。ですから、この西武の問題にしましても、三百十五坪の書店売り場ができるわけでありますが、これがわかったのがことしの一月二十日です。八尾市で見ますと、既存の書店業者が三十店ありますが、その売り場面積が四百七十坪であります。それに対して西武だけで三百十五坪の書籍売り場をつくるというわけでありますから、これが問題にならないのはおかしいわけであって、問題にならないのは、いま申しましたように書籍売り場を幾らつくるというようなことは全然審議にかけていない。ここのところは一種のペテンみたいだと思うわけです。法律に瑕疵があるのであればこれは是正をしてもらいたい。そしてこの問題は、中小企業の立場も尊重するという社会的な観念が欠けてはいけないと私は思いますが、大臣、どうでしょう。
  262. 田中六助

    田中(六)国務大臣 そういう書籍をめぐるスーパーあるいは百貨店の問題は、実は私の福岡県にもございまして、いまだに片づいておらないのですけれども、八尾市にもあったのかと、私いま感じておるわけでございますが、できるだけ中小企業者が三十数軒もあるならばそういう人たちの意見を尊重することが必要だと思います。したがって、何かうまくいくような方法があるまいか、それは私福岡県のことがございますので身につまされて、これはいまだに片づかずにおるわけで、いろいろあの手この手で調停をやっているわけですけれども、現行法規ではなかなかうまくいかない面がございまして、やはりこれは民間のことではございますし、相互に話し合って、それが幸いにずっと話し合いを詰めていっておりますと、福岡県の場合明るい方向が出ております。そういうことで、ある程度これは時間をかけなければいかぬのじゃないかという気もしますけれども、できるだけ通産局やあるいは間に入り得る人々がその仲介の労をとることは当然必要でございますので、その点の促進方はやってみたいと思います。
  263. 三谷秀治

    三谷分科員 法的な調整が期待できませんから、この場合、行政として何らかの調整を図ることをお願いしたいわけでありますが、もう一つは、この問題がさっき申しましたようにたびたび起きております。ですから、大阪の通産局あたりに行きますと、この種の問題の陳情が枚挙にいとまがないという状態が続いておったわけであります。そういう点からしますと、法律上の不十分さ、これが何といいましても現実には横たわっておるわけでありますから、これを何か是正をするという手段がとれないものであろうか、もう少し具体に被害を受ける業者の意見が反映できるような法的な処置がとれないだろうかということを考えますが、どうでしょう。
  264. 神谷和男

    ○神谷政府委員 基本的には先ほど申し上げましたように、私ども本来、いろいろな計画が余りわからないままに調整が了するというケースはむしろ少なくて、どのような売り方をし、どのような売り場面積でいきたいというようなことをできるだけ地元に説明をしながら地元の了解を求めていくというのが現実でございますので、こういう実態も踏まえながら説明を十分行うよう指導しておるところでございます。  ただ、これを法律あるいはより強い行政介入において個々の売り場面積を規定していくというのは、御承知のように、先生、デパート等をごらんいただきましても、そのシーズンそのシーズンで売り場面積を伸縮自在にやっていくというのが総合的な店舗でございますし、それはまた、一般的に言えば消費者あるいは買い手の要望を反映しているものでございますので、そういう観点から余りリジッドな形で業種別規制に国が介入するということに関しては、私どもは依然として疑問がございます。したがいまして、説明したからこの面積が動いては困る、あるいは指導違反ではないかというようなリジッドな形で御期待を一般の小売業の方がされると、いたずらなイリュージョンを与えることになります。したがって、現在考えておるものはこういうものであるということについてはできるだけの説明をするようこれまでも指導してまいりましたし、今後も指導していきたいと考えております。
  265. 三谷秀治

    三谷分科員 これまで指導してきたとか指導していないとか、そういうところに問題をすりかえてもらっては困るのだ。いま問題が起きているから、この問題を基礎にしてどうするかということをお尋ねしている。  そこで大店法の十条の改善勧告でありますが、この中で「その他の営業に関する行為」というのがありますが、この「その他の営業に関する行為」というのは何を意味するものか、お尋ねしたいのです。地元の業者の諸君などは、巨大売り場を設けるような行為が該当するのではないかというように主張しておりますが、この点はどうでしょう。
  266. 神谷和男

    ○神谷政府委員 まず基本的には、大規模店舗法によりまして面積の調整を行うわけでございますが、その調整の結果あるいは調整された内容そのものに影響を与えるような販売方法と一般的に解するのが妥当かと考えられますので、出張販売であるとかあるいは顧客の送迎であるとか、一定の調整された面積が調整の意図していたところ、あるいは調整で当然前提として一般常識として考えられていたものを変質させるような営業行為というふうに考えられております。
  267. 三谷秀治

    三谷分科員 ここには店舗の規模というものは入らないということですか。
  268. 神谷和男

    ○神谷政府委員 店舗の規模は入らないと解されます。
  269. 三谷秀治

    三谷分科員 そうしますと、結局この法律をもってしましては、こういう場合の対応策がないということになってくるわけでありますが、これで果たして、いま中小企業倒産に瀕しておるというのでいろいろ言われておりますけれども、その権利や利益は守れるでしょうか。  それから、中小企業庁がお越しになっておるようでありますが、中小企業を育成し、かつこれを発展させ、その経営を向上させるに足りる諸条件を確立するという中小企業庁の任務からしましても、このような状態で放置されていいでしょうか。これもお尋ねしたいと思うのです。  そこで、こういうケースについて紛争を解決する手段はほかにないのか。商調法の十四条の二、それから十五条によります知事の調停、十六条の二によります調整の申し出あるいは同条の三によります知事の調整勧告、それ以外にはもう手段はないのでしょうか。
  270. 神谷和男

    ○神谷政府委員 一般的には、大規模店舗法に基づきまして、一種のエントリーの段階においての調整が行われ、その調整以外は、基本的には営業の自由という原則が適用されることになろうかと思います。しかし、先生指摘のように、そのような法律的なたてまえだけで律し切れないいろいろな問題が発生することは否めませんので、先ほども大臣からも答弁させていただきましたように、通産局その他が事実問題として一般的な相談にあずかるとか、あるいは両者の話し合い等によって解決していくというような方法でこれに対処していくのが最も現実的であろうと考えております。
  271. 三谷秀治

    三谷分科員 中小企業庁はどうですか。
  272. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 法律に基づきます一応のルールというのは御指摘のようにございますが、それだけで現実の特殊性までなかなかカバーし切れない場合がございますので、そういうものに対しましては、最終的にはやはり行政指導ということでやらざるを得ないと思っております。いま御指摘の八尾の件につきましても、大阪通産局及び大阪府等の公的機関で十分両者の話を聞きまして、まずは当事者間の十分な話し合いというものが第一になろうかと思います。また、そういう努力を現在やっておりますので、私どもは、またそういうことが円満にいきますように通産局なり大阪府に対する指導をさらに強めてまいりたい、このように考えております。
  273. 三谷秀治

    三谷分科員 先ほど申し上げました商調法の十四条の二による調査の申し出と知事による調査、それから十六条の二によります調整の申し出、同条の三による知事の調整勧告、これについては、大規模小売店舗については除くということが法律でうたってありますが、それでは、これを除きました場合、大規模小売店舗については他の何らかの救済措置があるわけなのでしょうか。
  274. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 いまお話しのございました条文等につきましては、原則として貫かれておりますところでは、相手が大規模店舗である場合これは一応除くということで、法律の明文のいかんにかかわらず、そういった原則で運用をいたしております。もっとも大店舗が開設をいたしまして、その後の売り場の事情変更ということが紛争の要因になりました場合には、これに対処しますためにやはり商調法というものが適用になる余地がございます。したがいまして、先ほど申しました大原則はございますけれども、たとえばの話でございますが、商調法の第十五条にあっせん、調停の条文がございます。これは大規模店舗が実際に運用の段階になりました後の変更等につきまして、それが紛争の要因になったとかいうような場合にはこれについてやるということでございます。  それから、私先ほど申し上げました点は、いま申し上げましたような法律のルールに従った調整なり調停あるいはあっせんのほかに、包括的なきめの細かい行政指導によりまして、話し合いを前提といたしました公共機関による調停と申しますか調整と申しますか、そういうものも最終的な受けざらとして可能でございます。
  275. 三谷秀治

    三谷分科員 そうしますと、いま大阪府がいろいろこの調整に苦慮しておるようですが、何といいましても法的な保障がないものですから結局話し合いという結果になるわけであって、それも決め手がないものですから、なかなか大規模店舗側が受け入れないという状況があるようでございます。先ほど大臣も、九州の例などについてもそういう経験もされておって、一段努力をしてみようというふうなお話でありましたが、この問題について、私は、今後における大店法の内容について検討を加える必要があると思いますが、とりあえずここの問題について御努力願えるでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  276. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほど私の県のことを申し上げましたが、その県の問題を私一生懸命努力して明るい方向に持っていっているわけです。したがって、その県は一つの例でございますけれども、そういう調子で法制の不備あるいはいろいろな行政指導の不備がございますれば十分検討していきたいと思います。
  277. 山田耻目

    山田(耻)主査代理 これにて三谷秀治君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。
  278. 野坂浩賢

    野坂分科員 大臣大変お疲れのようでありますから、途中でちょっと休憩されてもいいと思いますが、しばらくの間お聞きをいただきたいと思います。  中小企業の問題についてこれからお尋ねをしたいと思うのですが、中小企業日本経済における位置づけとしてこういうことが書いてあります。「中小企業は、国民経済の活力の源泉である。」「ところが、昨今の中小企業の景況は、倒産が高水準で推移するなど極めて厳しい状況にある。」こういうことが書いてありまして、「中小企業の最近の景況は、生産の減少、輸出の伸びの鈍化、収益悪化、倒産増加等かげりが目立っている。」とあります。生産の動向一つを見ましても、中小企業は十一月で前年同月比マイナス〇・四、大企業は四・六%の増。設備投資でも、中小企業は製造業が五十五年計画でマイナス一・四、大企業はプラス二七・七、商業でも中小企業はマイナス一一・六、大企業はプラス二・一、サービス業でも中小企業はマイナス一・五、大企業は一一・七、こういうふうに格差がだんだんはさみ状に拡大されてきております。中小企業のこの現状を見て、大臣はどうお考えでしょうか。
  279. 田中六助

    田中(六)国務大臣 中小企業倒産件数は一月で千三百十三件と史上最高でございます。これに象徴されるように、いかに中小企業、中堅企業が現実に困っておるかということを如実に示しておると思います。いま御審議いただいております予算案では二千五百億円の中小企業対策費、財投で三兆五千億円の予定を組んでおりまして、私どもは、これが通ればまた何とか活発になるのではないかと思いますけれども、そういうことを言っておれないような時期でございまして、百社のアンケートにも示されておりますように、第一に売れ行きが不振つまり営業不振ということ、第二は価格の低迷ということ、第三は金利がどうしても高いというようなことが出ておりますし、また金利が下がるのではないかというような期待感もあって、それなら設備投資その他も差し控えようかというようなことにもなっておりまして、いずれにしても、金利のことを言うな、金利は日銀任せだと言いつつも、私は非常に心配になっております。しかも金利を下げても、窓口規制とかいろいろなことがあってこれがうまく連動しない。もしもそういうことがありましたら、そんなことが実現してはいけないという観点から対処しなければならないと思っておりますけれども、そういうことをいろいろ考えますときに、早目に官公需の前倒しとか、官公需を広げるとか、公共事業の前倒しとか、いろいろなことが考えられますけれども予算案との関係などいろいろございまして思うようにいっておりません。私どもとしては、新年度予算においては倒産防止対策貸付制度とか、中小企業の共済制度の拡大とか、倒産防止のための保証制度とか、相談室の数をふやすとか、その他御承知のように中小企業体質強化資金制度等の拡充とか、いろいろなことを考えると同時に、下請代金支払遅延等防止法をフルに活用するように監督、行政指導をやるとか、いろいろやっておりますけれども、何を言おうが中小企業倒産件数は、そら見たか、おまえたちもいろいろやっているよと言うけれども、この件数はどうかと突きつけられますと本当に困るのです。これはやはり大蔵省も、あるいは企画庁も、その他建設省や全政府各省が一致してこの対策に協力してもらう以外にはないというふうに私は確信しておりまして、閣議のあるたびに、実は内部でそういう話をお願いしているわけでございます。しかし、いずれにしても新年度予算にそういうものを盛り込んでおるわけでございますので、一日も早く成立すれば、また明るい段階が来るのではないか。また金利の問題にいたしましても、何月がどうだとを言わずに、早目に対処してもらいたいという気持ちでいっぱいでございますし、そういう点の私どもができる限りの指導や推進は今後ともやっていきたいというふうに思っております。
  280. 野坂浩賢

    野坂分科員 よく現状認識をしておられまして、対応策に苦慮しておるというふうに御答弁があったわけですが、これから質問しようと考えておるようなことを全部言っていただきましたですね。  そこで、倒産件数ですが、たしか十二月までに一万七千八百八十四件程度倒産をしたということですが、これは一千万円以上の会社ですね。それ以下の個人とか、百万円未満とか、百万円から一千万円未満というのを合わせるとどのくらいでしょうか。
  281. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 これはすその広い問題でございまして、全体を的確に把握いたしておりませんが、現在百十カ所の地点についての一千万円未満の倒産調査をいたしております。これは七百件から八百件ということでございます。  ただ、なぜこういうふうに少ないかと言いますと、百十カ所のカバレージが四五%しかございません。来年度はこれは予算をふやしていただきまして、カバレージを大体六五%まで引き上げる拡充お願いしておりますけれども、現段階ではそういった非常に地点が少ないということもございます。  それから、中小零細のものにつきましては、いわゆる店を閉めるという意味倒産だけではなくて、自己廃業と申しましょうか、あるいは転業、そういったケースが非常に多いものですから、一千万円以上のようないわゆる倒産、そういったものと見られるものだけをピックアップいたしますと七百件から八百件という水準でございます。
  282. 野坂浩賢

    野坂分科員 長官、そんな程度じゃないんじゃないですか。いま建設省に行って、どの程度土建屋さんは倒産をしたんだと言って聞きましたら、ことしは一年間で五千九十七件倒産したということになっている。五千万円以上は二十九件なんです。それ以下は全部、五千六十八件は中小企業としての倒産をしておる。ここには持ってこなかったのですけれども、統計を逆算して計算しますと、一千万円以下は四万六千件くらい倒れておるんじゃないか、こういうのが実態です。もうちょっと調査をして御報告をいただきましょうかね。七百件か八百件というようなことではないと思います。
  283. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 若干整理して申し上げますと、負債額が一千万円以上のものが昨年一年間で一万七千八百四十三件、これは中小企業だけでございまして、その中で建設業はちょうど三割を占めておりまして、いまお話がございました五千件強でございます。そして後で御質問がございました一千万円までいかない、もうちょっと零細の倒産件数、負債額が一千万円未満のものということでございましたので、現在やっております私どもの四五%のカバレージの地点調査によりますと、七百数十件から、多いときで八百数十件でございます。これは昨年、たとえば一千万円以上が千六百件台で九月以降すっと高水準でございましたが、そのときも、上がってまいります数字はやはり八百件前後でございました。したがいまして、私もそれでは実態よりも少ないと思います。と申しますのは、何せ一千万円以下の倒産事象というのは数字を網羅的に的確に把握するのはなかなかむずかしゅうございます。したがいまして、私どもが言っております一千万円未満倒産七、八百件と申しますのは、これはいわば百十カ所に限ったものでございまして、来年度以降はこれをもう少し精度を上げたいと考えております。  いずれにしても、中小企業ということで先ほど来お話がございましたように、毎月の件数が千六百件台、年間で一万七、八千件台というのは大変に高水準なものでございまして、それ以下の零細のもの、これも一応部分的にあらわれておるのが七、八百件ということでございまして、いわゆる倒産といかないまでも自主的な廃業その他を含めますと相当な数に上るだろうということは御指摘のとおりでございます。
  284. 野坂浩賢

    野坂分科員 非常に高水準で中小企業倒産が進んでおるということですね。  そこで、いま大臣がお話しになりました中小企業の対策費というのは二千五百億、約一二%程度アップですか、しかし全体の予算規模から見ると〇・五%くらいですね。しかも日本経済の中心だとちゃんと位置づけがしてある。しかし、倒産状況を見たり、いま大臣から、やっておるのだけれども倒産がある、そう言われると困るんだがなというようなお話がありましたですね、その困らないようにする対策をやはり考えてもらわなければならぬ。たとえばこういう各省庁、国の行政機関、そういうところはやはり中小零細企業というのは余り取引がなくて大手になりますね。そういうところへどうやって入るかということも考えていただかなければならぬ。中小企業対策費の官公需対策費というのは一千四百万円ですね。言うならばお相撲さんが塩をまく程度にもならぬですね。目で見えぬですね。これでは官公需の対策ができるだろうかなという疑問がありますね。それから、下請企業の対策費というのは七億七千万予算計上してありますね。これでできるかなというふうに考えざるを得ないわけですが、長官はどうお考えでしょうね。
  285. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 直接倒産と結びつけて予算の効果というのはなかなか測定はむずかしいと思うのです。ただ御指摘のように、倒産を防止する手だてというのは総合的に多角的に展開する必要がございまして、一番基本になりますのはやはり景気対策だろうと思います。全体の景気がよくなりまして仕事がふえるということが一番でございまして、そして実際の企業経営上金融がうまく回っている、その二つが必要条件だろうと思います。その一環といたしまして、いわゆる政府の官公需あるいは下請というものの拡充がございますが、これにつきましては、御指摘のように金額は少のうございますが、現在PRの費用として、あるいは親企業の指導のための費用として大変にこれが大きな武器になっているわけでございます。逐次ではございますが、たとえば官公需の比率中小企業について五十五年度は三六・五%、これは四、五年前の水準から比べますとやはり相当努力の積み重なりだろうと思います。  そういったことでやると同時に、発注の形態についても中小企業も入れるような形に分割発注あるいは同位等級のものの中の競争ということで、非常に大きな鯨がイワシと一緒に競争するということのないような形の発注の仕方をまず考えますし、それから特定品目につきましては特に配慮して、中小企業に傾斜した発注の仕方をする、こういう努力を逐次積み重ねているわけでございます。
  286. 野坂浩賢

    野坂分科員 大臣に御休憩をと申し上げましたら、熱心におるということでありますが、大変ありがたいと思っております。やはりポスト鈴木をねらうだけあって実力者だと思っております。  そこで、隣の分科会の建設関係で、おっしゃるようにそういうことを話してきたわけですね。その点たとえば融資にしても中小企業が大企業より多いんですね。融資の対象の金額を拾ってみますと、中小企業向けは二七%で、大企業向けは七三%というふうに金額では分かれるわけですよね。分割発注その他をやるということで、建設業者についてもそういうふうにやるかということですけれども、そういう通達を出しても、追跡をしてみるとやはりそういう効果が上がっていない。ここではいい話ですけれども実態が問題なんですから。そういう点については官公需の場合に分割発注をしたり中小企業に相当数回すように、鯨とイワシが競争してもイワシが十分に肥え太っていくような体制をとっていただくためには、通産省からの通達として各省庁にお願いをしていただき、各県に直接お願いをしていただいたり、自治省等にもそれを要求して自治省通達を出す、こういうことにしていただけないものでしょうかね。
  287. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 実は昨年は、今年度でございますが、今年度につきまして昨年の七月に国の官公需発注についての閣議決定をお決めいただいております。これは閣議決定になぜしてあるかといいますと、やはり各省庁が連帯責任を負うという意味におきまして閣議決定になっておるわけでございます。ただ、そうは申しましても、現実にはやはり中小企業政策の立場と、それから大企業の効率的な工事の遂行という立場とは必ずしもぴったり一致はいたしません。したがいまして、私どもは各省庁に対しては、閣議決定だけで足りない面もございますので、年度末近くになりますと、実はこの二月四日にまさしく先生指摘のその通達を各関係省に対するお願いということで出しております。それから自治省の方からも、私どもが官公需の率を決めましたときに、国の方でもこういう決め方をしたので、これに準拠して中小企業に手厚く官公需の配分について配慮されたいという旨の通達を出していただいております。今後とも、いま御指摘のようなことで、さらに実行の段階でも私どもが各省に十分注文を出すと同時に、すみずみまで行き渡りますように、ことしからでございますが、自治省とも連携をとることにいたしております。
  288. 野坂浩賢

    野坂分科員 そうですか。ぜひそういうふうにお願いをしたいと思います。  時間もありませんから次に進みますが、下請代金支払遅延等防止法という法律がありますね。これのたとえば公正取引委員会の勧告とか、中小企業庁からきわめて厳しい処分が出たというようなことは何件くらい起こっているのですか。結果、措置だけで結構です。
  289. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 一番末端のいわゆる措置請求を私どもがいたしまして、公取が措置をとりましたのは二十件前後でございます。ほぼ毎年その水準でございますが、少ないときは十件台がございますが、一番スタートのところは、ことしの例で見ますと、四万件の調査からスタートいたしまして、最終的にどうしても措置請求をせざるを得ないというものになりますとその程度の水準に落ちてまいります。具体的な指導の段階になりますと二千四百件とか五百件、そういう水準になります。
  290. 野坂浩賢

    野坂分科員 二十件程度の措置請求がありますね。公取が勧告をしたのが二件程度ですね。そんなものだろうかと思うのです。何十万とある中小零細下請企業の中で、二件や二十件程度で終わるものだろうかという疑問がありますが、世にこの下請代金支払遅延等防止法という法律はしり抜けだ、ざる法だとよく言われますね。私たちが中小企業に入ってみますと、こう言いますね。それを調べてあなた方に言うと仕事がもらえぬようになる、大体三年間ぐらい加工料金、下請代金というものは据え置きだし、賃金はある程度つけていかなければ労働者は集まらないし、資本主義経済、自由経済というものは、自由なのは倒産だけですわいと、こういうやけっぱちというか、そういう言葉をよく聞くのです。それだったら問題点を出せというと、なかなか出せない。だから、名前は絶対言ってもらっちゃ困るというのがどこを歩いても聞く言葉なんですね。そういう点について、この法律を出せば、そのときはいいけれども次からだめになる。これはあなたの方は、わからないようにして、何も言わないで親企業をすぐ調査するのだとおっしゃっても、そのことが徹底してないんですね。この下請代金も、物価も上がりますし、賃金も上がるわけですから、ある程度そういうことを指導してもらわなければならぬ。それは当然指導しておる、こうおっしゃる。変更する場合は、機械設備等があって、それで変更になったんだからやむを得ないということになるだろうと思うんですね。しかし、親企業の皆さんは、あなたの方は設備を改善したから安くできるんだ、こういうかっこうで、金利だけよけい負担をするというかっこうになりますね。だから、中小企業の設備近代化といっても、七年も八年も十六年ももっておるというのが現状ですから、やってももうからないということになるわけですね。この点について、二件や三件ではなしにもっと検査をどんどん言わなくてもして、やはり中小零細企業の方から調べてもらわぬと、親企業のところにいってもちっとも効果が上がらぬ。言ってこなければやらぬのですから。言ってきたら、この次からだめになる。  私のところにある企業がありまして、大手とやってもどうもこれではもうからぬ、だから直接おれは好きなようにやると言ったら、不景気になって倒れたわけです。そこに頼みに行ったら、あのとき君は離れたからもういかぬということでバンザイしました。もう全部倒産しました。  そういうことを見ておりますから、なかなか出てこない。だから、中小零細企業を調べ上げて、そして大手企業のところへ持っていってもらわないと、この法律は全くざる法になってくるんじゃないかという感を深くしておりますが、いかがでしょうか。
  291. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 私の方があるいは若干説明が不足したのかもしれませんが、公取の勧告に至りますのはいわゆる極端な例でございまして、それまでに三段階ないし四段階の指導段階がございます。それで、公取とか通産省の名において指導いたしますとやはり従うのが通常でございます。そして、こういう改善をいたしましたということでレポートが出てまいります。その場合に、さらに追い打ちをかけるということは確かにいたしておりません。そして、それでも聞かない場合にずっと残っていきまして、それが最後の勧告二件とかそういうことになります。本当はこういった勧告の件数が具体的に数字で出るのがおかしいわけでございまして、私どもとしては、本当はもう少し行政指導が効果を発揮して、そういった勧告に至らないうちに、そして下請も被害を受けないうちに改善されるというのを理想としているわけでございます。  その点についてはそうでございますが、おっしゃいますように、なかなか私どもの方に連絡をしにくいという面がございます。私どもの方は、もういっぱい窓をあけて、いつでも匿名でいらっしゃい、そして絶対に迷惑をかけるようなことはありません、それは下請代金法上もちゃんと保証されておりますということは事あるごとに言うわけでございますが、若干下請の方たちの弱い立場もございまして、思い過ごしをなさいまして、もし自分が通報したということがわかればこれは必ず不利益を受ける、まずそれが先に立って、実際には非常に目に余るものもななか全部が来ているというわけではないと思うのです。  それから、私どもが最近力を入れておりますのは、親の方からの調査だけになりますといま御指摘のようなことがございますので、子の方からと親の方からの調査を両方からやっております。したがいまして、全然いじらめられている例がないとかそういうことを申し上げているわけではないのですが、最近は親子の関係は昔ほどひどい関係ではなくなっております。また、親としても子供に余りひどい仕打ちをすることによって全体としての競争力が落っこちることは非常に問題でございまして、やはりある程度パートナーとして扱わない限り大企業自身の発展もないというのが最近目覚めた大企業の意識でございます。したがいまして、私どもも側面からの指導ですべての親企業がいまのような一体感、連帯感を持って零細下請企業に当たるようにという目に見えない、きめの細かい行政指導を強化していきたい、このように考えております。
  292. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間がありませんが、この下請代金の支払い期日というのは、下請が親企業に給付をして六十日以内に払うということになっておりますね。法律はそのとおりですね。
  293. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 そのとおりです。
  294. 野坂浩賢

    野坂分科員 その期日が来たときに、六十日が来たときに、そのときは現金でもいいし手形でもいいということになりますか。
  295. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 現金でも手形でもいいわけでございます。
  296. 野坂浩賢

    野坂分科員 手形でもいいわけですね。
  297. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 はい。
  298. 野坂浩賢

    野坂分科員 そうすると、給付をして、品物を納めて六十日たって百二十日の手形を払ってもいい、こういうことになるわけですか。現金で払えばいいですけれども、支払いの契約によって百二十日の手形を払う、こういうことだってあるじゃないですか。
  299. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 給付してから百二十日でございますから、手形期間が六十日たってからその百二十日と重なるわけではございません。いわゆる給付したときから百二十日以内に、繊維は九十日でございますが、支払われるというのが私どもの指導基準になっております。それから、手形と申しましても割引可能な手形ということがもちろん条件でございます。
  300. 野坂浩賢

    野坂分科員 もうやめなければならぬのですが、それじゃ給付というのはどういうことですか。
  301. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 失礼しました。申しわけございません。私、訂正をいたします。手形の交付日から百二十日ということでございます。したがいまして、いま先生の御指摘……(野坂分科員「私の言ったとおりでしょう」と呼ぶ)そのとおりでございます。
  302. 野坂浩賢

    野坂分科員 その辺が問題なんです。ちょっと見ると、たとえば建設で家を建てるということになりますね。家を建てて親企業の下請をやって給付をする。普通だったら官公庁は出来形払いですからそのときに払ってくれるわけですね。親企業は官公庁から金をもらっておって百二十日の手形を払えばいい、こういうことになってくるわけですよ。そして、しかも割引料ぐらいは見るんじゃなくて、下請が見なければならぬわけですよ。たたかれてけられて、そして支払い日が、家なら家が完成をしてそれから百二十日ということになれば、銀行に割引料を払ってそれで運転資金を回すということになれば、やはりちっとももうけがないということになるわけですよ。だから、これの百二十日というものは、繊維は九十日ですけれども、官公庁並みに現金で払うというようなかっこうにしてもらわなければ、とても中小企業は立っていきませんよ。やはりこの百二十日というものはもっと縮めてもらわなければならぬ。少なくとも六十日程度の手形をもらわなければ、みんな現金で払わなくて百二十日の手形を出せば親企業は非常に助かるわけですから、それだけは運転資金ができるわけですから、それを中小企業に回せと私は言っているわけです。そういうぐあいに考えていただきたい、こう思いますが、大臣どうでしょうな、私の議論は。
  303. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 ちょっと補足させていただきますけれども、親子の関係のいわゆる下請につきましての指導基準というのは、できるだけ現金という線は原則としてございます。特に、下請企業の従業員の給料、これに相当する分は少なくとも現金で払いなさいという基本的な指導、振興基準と呼んでおりますけれども、下請振興基準の方でそういうふうに決めております。  それから、どっちかと言いますと、百二十日あるいは繊維についての九十日手形と申しますのは、法律で言ういわゆる割引可能な手形ということの法律にひっかからないぎりぎり限界のものがこういうものですよということで、一応そういった基準を決めておるわけでございます。したがいまして、それでいいということではございませんで、できるだけそれよりも、ぎりぎりいってもそこまでの長さで、それ以内のできるだけキャッシュに近いものというような基本原則はもちろん私ども置いているわけでございます。もし今後経済状況が少しでもよくなった場合には、やはり百二十日とか九十日というのは一応のものであって、当然吟味した上でこれを短縮する方向に持っていかなければいかぬということは、私どもも十分頭に置いております。
  304. 野坂浩賢

    野坂分科員 これで終わりますが、大臣にお尋ねいたしますが、たとえば例をとりますと、建築業者が下請にお願いする、そうすると大手の企業であれば手形で建設資材も出しますが、しかし中小零細企業の場合は現金を持ってこいと言って現金でたたかれるから、わりに高いものにつく。できてしまって金がもらえるかと思ったら百二十日の手形をもらう。しかも、銀行金利は、割引をするときには自分が払わなければならぬ、こういう結果になる。長官がお話しになったことは、原則は現金なんだ、これは限度いっぱいのことなんだ、だから原則に基づいて支払え、こういうことはわかりますけれども、幾らばかでも、たとえば私みたいな者であっても、百二十日は許容限度があるんだからこれでいこう、それだけ官公庁から金をもらって百二十日間金を回せば金利もつくし、その方がいいというのが人情の常ですよ。私はそう思うのです。だから、これを縮めて、中小企業倒産防止のためにも、運転資金を円滑にやるためにも、利子のつかない金を早くやる。経済力というのは親企業の方が強いですから、そういう意味中小企業の振興のためにはいわゆる行政指導といいますか、百二十日は最高六十日ということにきちんとしてもらいたい、こういうふうに思います。  最後に、中小企業の振興対策も含めて、いまの下請代金支払遅延等防止法、このざる法が実質的に、本当に楽な気持ちで下請企業が申告できるように、そういう点についての配慮方をお願いをして、通産大臣の所見を承って終わりたいと思います。
  305. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いま下請代金支払遅延等防止法がさる法であるという御指摘、現実にはそういうことがかなり多くあるんじゃないかということを認識いたしております。それから、これは全体の景気が大企業も中小企業も含めて不況の波の中にあるということが原因であると同時に、銀行関係のシステムもちょっと変えてもらわなければいかぬと私は思いますのは、大蔵省がたびたび銀行に対して歩積み両建てはいけないと言っておっても、二億貸す場合、はなはだしいものになると一億預金してくれ、それなら二億貸そうとか、そういうことがまかり通っていること自体も、また中小企業の上の方の、ちょっとの親企業がそういうところで金融面に困って、それがしわ寄せとして中小企業にきている可能性もございますし、金融面のことも含めまして、これは一般市中銀行のことでございますが、政府三機関においてはそういうことはないと思いますけれども、そういうことも十分考えて、これは幅広い経済体制のシステムを十分分析し、その対策を講じなければスムーズにはいかぬのじゃないかという気もします。  それから中小企業の対策は、御承知のようにたびたびいま申しておりますように、貸付制度とか保証制度、共済制度あるいは相談室の拡大とかありますけれども中小企業の体質強化制度をどういうふうにしていくか、それから相談室を設けて、これはかなり成功しているのです。昨年も、たとえば数字は百件とすれば七〇%くらいまでうまくいっているんです。それでこれを新年度では百六十一件にふやすのですから、相当聞けるんじゃないかと思っておりますし、網の目のようにいろいろな制度を駆使いたしまして中小企業対策を講じなければ、私ども政府は来年度の成長率は五・三%だというふうにうたっておりますけれども日本を支えておる九九・四%は中小企業者でございますので、私どもはそういう意味でも政府の成長率の目的を達するためにもこれらの対策に万全を期さなければいけない、官公需の分割発注とかその他いろいろなことも講じていきたいというふうに思っております。
  306. 野坂浩賢

    野坂分科員 どうもありがとうございました。
  307. 山田耻目

    山田(耻)主査代理 これにて野坂浩賢君の質疑は終了いたしました。  次に、有島重武君。
  308. 有島重武

    有島分科員 私は、新エネルギーの開発につきまして、特に波浪のエネルギー、海の波のエネルギーですが、それからソーラーシステムの開発等について質問をさせていただきたいと思っておりますが、その前に、中小企業庁長官がいらっしゃるので一つだけ、婚礼写真の問題を伺っておきます。  一生に一度の婚礼写真はだれでも大切に残しておきたいということになっておりまして、この方面の特殊性に応じましてこの業界の協会ができておるそうであります。    〔山田(耻)主査代理退席主査着席〕 この写真技術というのは個人の技術でありまして、大きな業者あるいは中小零細業者に属しておろうとも技術に変わりはない、差はないということになるはずでございまして、最近は労働省それからこの協会両方でもって一つの技術基準を設けておるようでございます。これは基準が二つ違うようなんですけれども、聞いてみますと、この種の写真が変色をする、最近カラーになっておりますから、変色をどうやって抑えるか、あるいは退色と言うんですか、時がたつと薄れてしまう、そういうことがないようにする技術、そういったようなことが重んじられておるようであります。  それで、細かいことは長官御存じあるかないか知りませんけれども、まあお調べください。こういった技術の問題も幾つかの技術基準があるようですけれども、そういったものもひとつよく見ていただきたい、指導していただきたいと思います。  それからここで気になっておりますのは、大手の独占の傾向が見られるということでございまして、全国政令都市などの中でも各省庁の所管の公益法人が経営をしている結婚式場の委託写真業務、この六割方がいわゆる大手の二社、三社によって占められておる。厚生省関係の厚生年金会館なんかは九カ所あって、これはすべて直営だということを厚生省の方からきのう承りましにけれども大蔵省関係の国家公務員共済会館の実態などは、十三カ所のうち七カ所が一社で占められている、こういうようなことを知ったわけなんでございます。中小企業庁長官、こういった事実は御存じでいらっしゃいますか。
  309. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 それぞれ各省所管の共済的な組織の結婚式の写真部がございまして、いま先生お話しのような事実があるということは承知をいたしております。
  310. 有島重武

    有島分科員 民間の会館はともかくといたしまして、公益性が高いこういったような官庁で掌握している会場でございまして、これの大手業者の独占傾向というのは戒めるべきじゃないか、戒めなければならない問題じゃなかろうかと存じますけれども長官いかがですか、指導をしていただけますか。
  311. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 これはいわゆる大と中小との関係で不当に中小の方がいろいろ大企業に侵食されるというような問題でございますと、分野調整というような問題に発展するかと思いますけれども、私どもが承知しておりますところによりますと、結婚式場の写真関係によりますと、現在社団法人の日本婚礼写真協会というものが組織されておりまして、これは大手四社のうち三社、そのほかは千三百社すべて中小零細の写真屋さんでございます。そういうものを中核として、業界みずからの全体の努力によりまして、できるだけ中小の写真屋さんが困らないような形にしたい、私どもそういう方向を念願しておりますけれども、実際の公的機関でどういった写真の入れ方をするか、たとえば直営方式でやるか、あるいはいま申し上げました社団法人のメンバーに委託するか、あるいは任意の中小企業のアウトサイダーに委託するかという問題になりますと、やはり私的な契約という色彩が非常に強うございますので、これを必ず直営でなければいかぬとか社団法人のインサイダーに発注しなければいかぬとか、そういったことは現段階でなかなか行政指導しにくい分野だなと考えております。
  312. 有島重武

    有島分科員 なお御調査いただいて指導できる部分は指導していただきたいし、ここも本当に中小零細というところですから、行政でできる範囲の限度はあると思いますけれども、指導できるところはしてください。  それから、何かこんなこともあったようです。写真業務委託の手数料が高過ぎるなんという声もあるそうで、中には三〇%を超えるところもあるようであります。これも業界の内部で自主的にやることもあろうかと思いますけれども、知っていてそちらからも少し調査をしていただければ、それだけでも相当自粛が起こり得ることじゃないかと思いますから、お願いします。  それでは、新しいエネルギー開発のことですけれども、これは各方面でナショナルプロジェクト、サンシャイン計画だとかムーンライト計画だとかいうところにも上ってきている面と、いわゆる個人ベースのものと、いろいろな実験が行われておるかと思いますが、波浪エネルギーの中で海明というものがございました。昭和五十三年八月から山形県の鶴岡市ですか、沖で波力発電の実験船海明、これは私も見てまいりました。海外からもわりあい実験参加があったようです。各種のデータがあってそれをいま分析、解析しておるということでございますけれども、その後どのようになっておるか、承りたい。
  313. 高木俊毅

    ○高木説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、波エネルギーの研究開発につきましては、昭和五十一年度から科学技術庁の方で取り組ませていただいております。御指摘の波力発電装置海明の実験でございますけれども、これは昭和五十三年度と五十四年度二年間にわたりまして、先生御見学いただきました山形県鶴岡市の由良沖で実海域実験をさせていただきました。現在このデータにつきましては解析中でございますけれども、この研究は、先生質問の中に御指摘がございましたように国際エネルギー機関、IEAの共同研究プロジェクトということになっておりまして、日本のほか英国、アメリカ、カナダ、アイルランドの参加を得て研究を続けてきたものでございます。御承知のとおり、それぞれの国からテーマを持ち込んでおりまして、たとえば英国におきましては実際にタービンと発電機、そういうものをこの実験装置に持ち込んでおりまして、この研究の結果を彼ら自身の手で取りまとめているというのが現状でございます。  今後のスケジュールでございますけれども、私どもといたしましてはなるべく早急に取りまとめていきたいと思っておるのでございますけれども、国際プロジェクトでございますので、そことの協調ということになってまいりますと、IEAがスケジュールを計画しておりますのは、ことしの五月ぐらいに実行委員会と申しますか執行委員会みたいなものを開催したい、こういう希望を伝えておりますので、その時点ぐらいまでが一つのめどではなかろうかと思っております。そこで出ました研究成果を踏まえまして、五十六年度以降の私どもの研究計画の実際における方向を見出してまいりたい、こういうふうに考えております。
  314. 有島重武

    有島分科員 係留の期間は何カ月ぐらいあったのでしょうか。それで、実測の日数というのは何百日があったのだろうけれども、発電機がたくさん積んであって、容量何キロワットくらいのものでやって、総トータルは何キロワット時ぐらいなものであったのか、そういった大ざっぱなことぐらいはもうわかっていますか。わかっていたら教えてください。
  315. 高木俊毅

    ○高木説明員 詳細な資料を手元に持っておりませんけれども、簡単な概要につきまして御説明させていただきたいと思います。  この海明による実海域実験でございますけれども、これは大きく六つの方向で研究をしておったと言えるのではなかろうかと思います。  一つは、実海域における風とか波の特徴を把握すること。これを正確に解析すること。その海明という装置が風や波から受ける力の大きさあるいは動揺特性、波エネルギーの吸収体としての適否だとか係留中の安全性の限界に関すること。これが第二番目の項目であったろうかと思っております。第三番目は、空気室別の発電特性の解析、こういうことになると若干細かくなって恐縮でございますが、私ども、六つほどその研究の項目を主体に考えておったわけでございます。それで六番目といたしましては、水槽実験と実海域実験の相関性、そういうものについても追求していきたい、こういうふうに考えておったわけでございます。  それで、実際に実海域に並べましてどれぐらいのものがとれたかということでございますが、これはアメリカから入る予定でございました発電機が入りませんで、九カ所ぐらいそういう発電機が設けられるような場所を想定しておったわけでございますけれども、実際は八カ所でございまして、一台の定格出力が百二十五キロワットぐらいなものでございますから、八台といたしますと千キロワットぐらいのものでございます。それで発電時間等でございますが、トータルといたしまして五十四年九月から五十五年三月まで約三千時間でございます。それから、総発電量でございますが、これは五月の時点でプレス発表もいたしましたが、六万七千キロワットアワーでございました。そうしますと、平均の最大発電電力は百キロワットぐらいという感じでございますので、千キロワットに対して一〇%ぐらいのものしかとれなかったということでございます。  以上でございます。
  316. 有島重武

    有島分科員 各国でデータをアナライズしているそうですけれども、今後折があったら中間報告をいただきたいと思います。  海明の方は縦波といいますか波の高さで発電をしたということですけれども、私は、かねてから提案をしておりました横波、うねりの方についてはどんな研究をしていらっしゃるのか。これは科学技術庁の方と、文部省の方でもこの種の基礎実験については承知していらっしゃいますか、あるいは補助なんかを出していらっしゃいますか、両方から承りたい。
  317. 高木俊毅

    ○高木説明員 先生の方から昨年の七月でございましたでしょうか質問主意書、先ほど先生指摘のいわゆる波の上下運動に対して水平運動というのがあるのではなかろうか、それについて何らかの体制が組めるのかという御指摘があったわけでございますが、実は私ども先生の御指摘の点は少し勉強してみようということで昨年の八月に勉強会を組織いたしまして、科学技術庁の方で海洋エネルギーに関する勉強会を開催いたしております。この研究会の参加者でございますけれども、これは広く産・学・官の方々に御参加をいただいておりまして、その道の専門家の参加をいただいておるわけでございます。先生御承知のように、波のエネルギーというアプローチでございますけれども、波に対する過去のアプローチの態度というのは、いわゆる船舶関係の方々だとか、あるいは港湾建設の方々だとか、そういう形でのアプローチが多かったのではないかと思うのですが、いわゆる波をエネルギー源として見てアプローチする、そのアプローチに対する理論構成をどうしていくかということ、これが先生の御指摘だろうと私ども考えておりまして、この波エネルギーの要因につきましてはなかなかむずかしいところがございますけれども、私どもなりに理解しながら勉強会をしてみようということで、大学の先生あるいは研究機関の方々の参画を得て、波エネルギーの理論あるいは日本周辺における波エネルギーの包蔵量は大体どれぐらいあるのだろうかというようなことの試算とか、あるいはこれらの波エネルギーを取り出すためにどういう変換装置というのが考えられるかということ等を勉強会の主要議題として現在勉強中だというところが現状でございます。  以上でございます。
  318. 大門隆

    ○大門説明員 文部省でございますが、大学でいまの横波の研究をやっているようには直接聞いておりません。ただ、五十五年度から科学研究費にエネルギー特別研究というのを新しく設けまして、そこで自然エネルギーについての研究を大幅に進めようということで、各研究者から自主的に計画をつくってもらいまして、それで審査を経まして採択しておる。あるいはその中にあるのかもしれませんけれども、直接私はいま聞いていません。ただ、いい計画であれば積極的に取り上げていきたいというふうに考えております。
  319. 有島重武

    有島分科員 大臣、これはお答えをいただきたいというわけではないのですけれども、いまのことでございますけれども、海洋の波浪のエネルギーの中で、従来の通説によりますと、波が高くなったり低くなったりいたしますね。その水を押し上げたり落としたりするエネルギーというのを電気に変えることができないのだろうかということでもって、それが海明の実験でございます。  それで、従来ですと、水のつぶが円運動をしているのだから、縦のエネルギーも横のエネルギーも等しいものであるという仮説の上にやったらしいのですね。実際に本当にそうであるのかというようなことがいまの横波の方のことになるのですけれども一つの学説を崩していくということになりますといろいろな抵抗があるらしいのですけれども、そういったことがいま進みつつある。私の聞いているところではその横波の、いわゆるうねりのエネルギーというのはディメンションが違った一つの大きい潜在力を持っておるというふうに聞いておるものですからこういった質問をときどきいたしておりますけれども、お心のどこかにとめておいていただいて、ひとつこの推進お願いしたい。
  320. 田中六助

    田中(六)国務大臣 波浪を利用してエネルギーをつくるということは聞いておりますけれども、いま横波、縦波の関係は無知でございます。しかし、波を利用することが可能ならば、日本列島は波の中につかっておるわけでございますので、将来の代替エネルギーにとって非常に有効であるし、またこの研究はいま金額はまだわずかでございますけれども、助成のためにはより一層多くの政府資金の援助をやるべきだというふうに考えます。
  321. 有島重武

    有島分科員 では、お願いいたします。  ソーラーシステムの開発でございますけれども、最近これは実施段階にそろそろ入ってまいりまして、公的施設でも地方自治体の建物なんかにソーラーシステムの設置をやっておる。この実績についてお知らせをいただきたい。  また、民間と言うと、これは企業と個人とあるのですけれども、できればそういったところの問題、あるいは今後の民間需要の見通しといいますか、そこら辺について総括的にお話しいただければと思います。
  322. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 ソーラーシステム振興協会の調べによりますと、官公庁、公益法人等の公的施設にソーラーシステムは昭和五十五年六月までの段階で二百四十九件、それからそれ以降国の補助対象に取り上げまして、現在までに二百五十五件補助金の交付を決定しております。  それから、民間ベースでは、約の数字ですが、現在一万五千件まで到達いたしまして、特に昨年、一昨年と飛躍的に伸びて、数字はまだ小さいですけれども、伸び率は三倍、四倍という状況で伸びております。したがいまして、小さい段階で三倍、四倍と伸びてきておりますが、一万五千件にとにかく達した段階で今後引き続き何倍伸びるかというのは非常にむずかしいわけですけれども、これは一にかかってコストにも関係してくるわけでございます。幸いなことにこれは二つの面がありまして、石油の単価がどのくらい上がるか、それから生産コストといいますか設置コストをどこまで下げられるか、この二つが絡んでおりますが、設置コストの方は数がふえれば飛躍的に下がってくると思います。そういう意味でわれわれは非常に強い期待を持っておりまして、かなり大ざっぱに言えば、当面もちろん倍々では伸びていくだろうというふうに考えております。
  323. 有島重武

    有島分科員 現在の技術水準といいますか石油価格といいますか、そこら辺で計算しても、大体七、八年のところでもって償却できるようにはなってきたということでございますね。  それで、この先のことだけれども、それを踏んまえて、ひとつこれはシステム導入を指導していらっしゃる通産省みずからまず庁舎にソーラーシステムをおつけになったらどうかというふうに思うわけだけれども、現在建設中というふうに承っておりますけれども、当然おつけになる御計画ですか。
  324. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 役所の庁費で燃料費その他を出しますので、ある程度効率性というものも考えなければいかぬとは思いますが、通産省は推進の本家本元でございますので、いま検討を開始しておる段階でございます。
  325. 有島重武

    有島分科員 効率ということもあるかもしれないけれども、ぜひともみずからそういうことをやってみて、ソーラーシステムのほかにもいろいろ先導的な事柄があろうかと思いますね。  それからもう一つは、上水道、下水道の中間の中水道というシステムがございますね。そういうような試み、これは何かやっていってよろしいのじゃないだろうか。水の方は省資源の方になりますか、これをお考えいただきたいと思います。大臣、どうでしょうか。
  326. 田中六助

    田中(六)国務大臣 ソーラーシステムを初めいろいろなことを私ども代替エネルギーを国民にこうしたらいい、つまり十年後には油の依存率を五〇%にするためには、代替エネルギーを原子力、LNG、石炭、太陽熱、地熱、波、そういうものをひっくるめて考えておるわけでございますので、まず隗より始めよということもございますので、そういう観点からそういうことの実施については頭を使っていきたいと思います。
  327. 有島重武

    有島分科員 おできになったら見に上がりたいと思います。  こうして石油にかわる新しいエネルギー、これはこれからの問題でございまして、これは二十一世紀になってからの問題というのが主流でございましょう。そうなりますと、二十一世紀となりますとわれわれは生きておっても第一線というわけにはいかないかもしれない。いまの二十代、三十代の方々の活躍の時代であるし、あるいは孫の時代であるというふうにもなるかもしれない。そういう時代を見越しまして、子供たちに新しいエネルギーの時代あるいは省エネルギーの時代、こうしたものを身でわからせていく、そういうようなことが大切なのじゃないのだろうかというふうに非常に思うわけであります。  それで問い合わせてみましたら、北の丸公園にある財団法人科学技術館にはさまざまな科学技術の展示がしてあるそうです。そこで、ぼくは上野の科学博物館は見たことがあるのだけれども、まだここは行ってないので、今度見にいこうと思っています。この中に工業技術院関係のPRコーナーが二十坪ほどあるそうですね。ちょっとさびしいのじゃないかというふうに思います。内容も、問い合わせたのですけれども、余り十分ではないようであります。それで、こうしたことについては、文部省の方ともよく打ち合わせをしながら、社会教育の範囲というものが今後非常に大切になるのじゃないだろうかと思うのです。  どうですか大臣、ドイツのミュンヘンにあります博物館はごらんになったことがあるでしょうか。ドイツ・ミュージアムというのがございまして、最近のコンピューターならコンピューターがある。それ以前のでかい気のきかぬやつが置いてある。非常に原理的なものも置いてある。ラジオや何かにいたしましても、鉱石のものが置いてあって、さわれるようになっているとか、順を追って、いわゆる古きをたずねて新しきを知るというようなことなんですか、あるいは中国人が、井戸水を飲むときは井戸を掘った人のことを考えるとかいうことがあるようですけれども、何といいますか、もう最新のものを教えていくということもいいのだけれども、それに至るさまざまな段階、それをさわれるようにしてある。こういったことについては、エネルギー開発でも、大人の世界の問題も大切ですけれども、うんと幅を広げていく、そのためのこうしたPRというか啓蒙というか、こういったことにも力を割かなければいけないのじゃないだろうかと思うわけであります。ひとつこういったところもまたお願いしたいわけです。  時間が来てしまったからこれくらいにしますけれども、この社会教育、そういうことは学校教育でやればいいじゃないかという面もあるわけですけれども、最新のことを余り学校教育に持ち込めないこともある。社会教育の場でやったことがだんだんにこれは教科書にもなり学校にも流れていく。ですからわりと先駆的な、あるいはそこにさかのぼって非常にプリミティブなものが子供のうちに何か吸収できるような、それが未来を決定していかれるような、そういったところにひとつ力をお注ぎいただきたい、これもお願いをして質問を終わります。
  328. 田中六助

    田中(六)国務大臣 古きをたずねて新しきを知るという言葉もございますし、そういうミュンヘンのミュージアムも、私は実は行ったことがございますけれども、中はながめておりませんので、そういうところも十分ながめ、その他古い中からやはり新しいものを発見すべく何かにつけて努力していきたいと思います。
  329. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて有島重武君の質疑は終了いたしました。  次に、林百郎君。
  330. 林百郎

    ○林(百)分科員 私は、ことしの豪雪に対して、中小企業者の損害をどのようにして補てんをしていくかという政府の対策と、それから同時に、そういう中小企業で働いている労務者の人たちのやむを得ない仕事の休暇、欠勤等に対してどういう対策をとるかという二つの点についてお聞きしたいと思います。  まず、労働省にお尋ねいたしますが、中小企業への救済対策とともに、地域の工場などで働く労働者は、出勤しようにも交通が確保されない、また、自分の家の雪おろしで欠勤せざるを得ないなどの状況であって、これらの労働者はその公休暇扱いとなるわけなんですね。それをどういうようにして救済するか。富山市の例ですが、大手企業の場合、雪のため一時間以上の遅刻者は欠勤扱いとして有給休暇をとらせないというのですね。こういう例も聞いておるわけですが、これは当然有給休暇とさせるべきではないか。また、町内一斉の雪おろしなどのときには、これは特別休暇がとれるように措置をしてやる。こういう自然のやむを得ない災害のために職場に出勤することができないのですから、これに対する労働者の権利について適当な保障をしてやるのが必要だと思いますが、労働省、どうでしょうか。
  331. 岡部晃三

    ○岡部説明員 豪雪地帯におきます除雪作業の実態が大変なものであるということは私どもよく承知をいたしております。ただ、除雪のために欠勤する必要があるという場合には、年次有給休暇を利用いたしまして、使用者もこれに特段の便宜を払うというのが一般的でありまして、現実的な対応と考えているところでございます。年次有給休暇は、全国平均でございますが、現在付与日数が十三・四日に対しまして取得日数が八・二日ということで六割程度しか消化をされておりません。したがいまして、毎年余っていく年次有給休暇というものをこういう場合に積極的に利用するということは一つの年休消化の方法としてもまたよろしいのではないかというふうに考えております。先生指摘の町内一斉除雪というふうな場合につきましても、この場合、使用者の側におきましてその年休付与につきまして温かい配慮をするということはきわめて好ましいことであるというふうに考えるところでございます。
  332. 林百郎

    ○林(百)分科員 労働者にとって有給休暇というのはそれぞれ必要があってやるので、こういう豪雪というような自然の条件でやむを得ず休暇をしなければならない場合に、労働者の普通の場合の当然の権利として確保されている有給休暇をそれて埋めればいいじゃないかということだけでは、これは労働省としては非常に過酷な答弁だと思うのですよ。何とかいい配慮はありませんか。
  333. 岡部晃三

    ○岡部説明員 先生の仰せのところは、除雪のために特別休暇を設けてはどうか……(林(百)分科員「通勤できないのですよ、そうしたら工場がつぶれて、行っても仕事ができないのですよ」と呼ぶ)そういうふうな場合につきまして対応するのは、一つは特別休暇制度であろうかと思います。それで、この特別休暇制度をこの豪雪の場合に設けることについてどうかということでございますが、これは労使が雪害の状況等を考慮しながら自主的な話し合いによって決める事柄であるというふうに考えているところでございます。その際に、やはりこの場合につきましても経営者側が温かい配慮を示すということがきわめて好ましいことだというふうに考える次第でございます。
  334. 林百郎

    ○林(百)分科員 温かい配慮、温かい配慮とばかり言っていますが、そういうふうな指導を労働省がしているかどうかを聞いているわけですね。  私の方で具体的な案を一つ出しますが、たとえば日雇いの労働者、大工さんなどですね、これが雪のために仕事がない上にその損失の補償もないという状況なんですね。私の党の方としては豪雪対策の抜本的強化のための立法をいたしまして、その中で豪雪による事業所の閉鎖あるいは通勤の不能あるいは除雪等による休業を余儀なくされた労働者に賃金を保証するために、現行の豪雪地帯対策特別措置法を改正して雇用保険から豪雪休業手当を支給するように提案しているわけなんですが、雇用保険法では、御承知のとおり六十一条の二で「事業活動の縮小を余儀なくされ、その雇用する労働者を休業させる事業主に対して、当該休業に必要な助成及び援助を行うこと。」こう明記してあるわけですね。法律でもこのように明記してあるわけでありますから、これを適用して雇用保険から支給していく、そうしてこの雇用保険法によりその損失を補償していく、そのために豪雪地帯対策の特別措置法の中に、豪雪のために事業所への通勤の不能というような場合、いわゆる雇用保険法にある「事業活動の縮小を余儀なくされ、その雇用する労働者を休業させる事業主に対して、当該休業に必要な助成及び援助を行う」これを入れるような方法を積極的に考えられないでしょうか。
  335. 山口泰夫

    山口(泰)説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘は雇用安定事業と申しております制度の中の六十一条の二、雇用調整給付金の制度についてのお尋ねかと思います。  この制度は、先生御案内のとおり指定業種に属する事業主が景気の変動等の「経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合」そういうときに行います休業について適用されるものでございまして、豪雪等によりまして交通が途絶して、その結果として、たとえば原料の入手が困難になるとか出荷ができなくなるとかということに伴います休業というのはこの制度の対象になるかと存じます。それでまた、そのような指導も行っているところでございます。  ただ、労働者の雪おろしでありますとか、いま御指摘のような通勤ができなくなったようなことに伴います休業について、この法律で言っております「経済上の理由」というふうに解することは、われわれとしてはちょっと困難であろうというふうに申し上げざるを得ないと思います。  いずれにしましても、制度の対象となります休業の範囲につきまして一定の限界があるということにつきましては御理解をいただきたいと思うわけでございますけれども、そういったことを踏まえながらも、失業の予防という制度の趣旨にかんがみまして、われわれといたしましてはできる限り機動的な運用に心がけていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  336. 林百郎

    ○林(百)分科員 ひとつぜひそれを考えていただきたいと思います。  それから、先ほどお答えになった労働者の監督課長さん、事業主の温かい配慮によって、労使で話し合って、雪おろしでやむを得ず事業所へ行けないような場合は有給休暇として考えてやれ、それは労使の両方の了解によるのだというのですが、労働省の方でもそういうような配慮をしろという指示はおろすわけにはいかないですか、豪雪地帯に対して。
  337. 岡部晃三

    ○岡部説明員 この問題につきましては、各豪雪地帯の現場現場でいろいろな労使の接触の中で解決されていくべき問題であるというふうに考えておるところでございます。もとより、先生のおっしゃることは趣旨として私どもよくわかるわけでございまして、そのような、言うなれば制度の弾力的な運用と申しますか、温かい運用と申しますか、そういうものにつきましてはこれからも心がけてまいりたいというふうに考えます。
  338. 林百郎

    ○林(百)分科員 あなたが心がけろというのではなくて、雇用主にそういうような温かい配慮をしろということを、労働省としても豪雪地帯の雇用主にそういう労働行政の指導をされる意思があるかどうかということ、それから先ほどの事業活動の縮小、やむを得ない休業の中に、豪雪によって材料が入手できないとか、そういうためにやむを得ず休業するというような場合、そういう場合は入るのですね。その二つを答えてください。
  339. 山口泰夫

    山口(泰)説明員 先ほどお答えいたしましたように、経済上の理由というものの一例として、もちろん原材料の入手が困難とか出荷が困難ということのほかに、最初に申し上げました指定業種として業種に指定されているということが一つ条件になりますということ、それからこの制度の運用上、事前にそういう休業の協定を労使で結んでいただきまして、これを安定所の方に届けていただくというような手続上の要件がございますが、そういうことを踏まえた上で、原材料の入手困難、出荷困難というのは、ここで申します経済上の事由に当たるということでわれわれとしては指導しているところでございます。
  340. 林百郎

    ○林(百)分科員 岡部さん、あなたは温かい温かいと言うけれども、温かい指導を下の方へおろす意思があるのかどうかということです。
  341. 岡部晃三

    ○岡部説明員 ただいま申し上げましたとおり、年次有給休暇を利用して、使用者もこれに便宜を払うということは非常に好ましいことでございますので、その点につきましては、そういうふうな形で年休消化を進めるということも一つの方法であるということは、それは指導をいたしたいと思います。
  342. 林百郎

    ○林(百)分科員 それはもうわかっている。それは最初からあなたは答えているので、そのほか有給休暇——有給休暇というのは労働者の当然の権利として確保されているわけなんですから、自然の障害によってどうしても職場へ行けないという人に対しては、有給休暇でなくて特別にそれに対する休暇を与えるような方法を講じてやれないかどうか。それに対する企業主に対する補助についてはまだ後で通産省に聞きますけれども、通産省だっていろいろ考えているわけなんですよ。だから、そういうことが企業主としてできないものかどうか、あるいはなるべくそういうような配慮をしてやれ、やむを得ない事情で通勤できないというような場合に欠勤した場合には、有給休暇ということでなくて、やむを得ない事情で、しかも自然の障害で休んだのだからその給料は保証してやろうというような温かい配慮を加えるようにという指導を、労働省として雇用主に、ことに大企業に対してそういう指導をおろせないものかどうかということを聞いているのです。労働省としてそういう指導を、あなたがここで答弁しているようなことを豪雪地帯の少なくとも大企業に対してはおろせないものかどうか、そういうことを聞いているのです。
  343. 岡部晃三

    ○岡部説明員 先生の御趣旨はよくわかるわけでございます。ただ、特別休暇という形でこれを新設せよということにつきまして、この行政指導ということは、私どもまだそういう方針を打ち出すに至っておりません。その前段階といたしまして、先ほどから申し上げておりますように、まず年休消化から始めまして、あるいはまた特別休暇問題につきましても、そのようなことが行われるならばこれは望ましいことであるということでございますが、年休の方は指導になじむわけでございますが、特別休暇の創設という点につきましてはもう少しお時間を拝借いたしませんと結論は出しかねるということでございます。
  344. 林百郎

    ○林(百)分科員 幾らあなたに聞いてみても——あなたは一体今度の豪雪を行って見たことがありますか。四メートルも五メートルも雪が積もっているのですよ。それを労働者に通えと言ったって、あなた無理じゃないですか。それをおまえは休んだから給料はやらないよ、しかも大企業で相当の利益を上げている会社がそんなことができますか。あなたは一体北陸地方の豪雪を見たのですか、どうですか。現実に見れば、あなたそんな冷たいことが言えるはずがないですよ。まず見たかどうかここで言ってください。それでいいですよ。あなたには全然現状がわからないのだ。
  345. 岡部晃三

    ○岡部説明員 私も雪国の生まれでありますので、豪雪の被害ということにつきましては十分承知しておるつもりでございます。
  346. 林百郎

    ○林(百)分科員 労働省もう結構ですよ。あなたも雪国でよくわかっているなら、そういう豪雪の中で非常に苦労している人たち、ことに勤労者は一番弱い者ですから、そういう者のために労働省は配慮すべきだ、こういうふうに思います。いいですか。  通産省へお尋ねします。御承知のとおり、特に北陸地方は非常に大きな損害を受けているわけです。中小企業庁からいただいたのでありますが、機械設備等の直接の被害が四十五億とか、北陸を除いて百三十六億、北陸三県で間接的な被害は二千億と言われているわけですね。このために工場の大幅な操業率の低下、売り上げの低下、除雪費などのコスト増で営業の維持に非常に苦慮しているわけですが、これに対して政府は何らかの措置を講じられましたか。
  347. 田中六助

    田中(六)国務大臣 あと詳細は中小企業庁長官に答えさせますが、私どもこの被害につきましては、いま村議員御指摘のように、直接被害が百三十六億、間接被害が二千四十二億円というふうに計算しておりまして、まず当面できることは、二月六日の閣議でいろいろなことをやったわけでございますけれども政府三機関の金利、これは普通八・八%でございますけれども、これを六・〇五%から三%にかけての間の金利を適用するように、即効薬としてはそういうようなことを講じたわけでございます。ちょうど中小企業庁長官は現地に行って非常につぶさに調べてきましたので、長官から答えさせた方が適当かと思います。
  348. 林百郎

    ○林(百)分科員 じゃ、どうぞ簡潔に答えてください。通達も持っているので大体わかっていますから……。
  349. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  主として中小企業三機関からの融資、いわゆる災害復旧融資の発動、それから体質強化資金の発動、こういったものが主たるものでございますが、いま大臣からお話しございましたように、特別措置といたしましては金利の低減、こういう措置を図っております。
  350. 林百郎

    ○林(百)分科員 大臣、二月六日の閣議で、昭和五十五年十二月以降の豪雪により被害を受けた中小企業者及び医療関係施設の開設者に対する災害融資に関する特別措置についてという決定がなされましたね。これは大臣十分御存じだろうと思うのです。  そこで、この実情なんですけれども、直接被害を受けたもの、事業所、または資産が七〇%以上の損失を受けたものに対しては融資をする。それから前年同期に比べて三〇%の売り上げの減じたものに対しても融資をする。ただし、特別の場合と通常の売り上げが前年度と比べて減少した場合の貸付金の金利は違っているようですが、こういう閣議決定がされたことは大臣もおわかりですね。
  351. 田中六助

    田中(六)国務大臣 わかっています。
  352. 林百郎

    ○林(百)分科員 それではお聞きしませんが、現実のこの適用について、富山県のある製造業者が昨年に比べて売り上げが四四%の減収があったということで年利率六・〇五%の災害融資を申し込んだところ、富山県の中金の窓口では、これは八百万まで貸せることになっているのですが、半分の四百万しか貸せないと言う。このために限度額八百万の融資がどうしても必要なのに借りられないという事例があるのですが、こういうことは御存じですか。パーセントはちゃんとそのとおり四四%で、三〇%を超しているのですが、限度額いっぱい借りようと思ったところが半分に削られているというのです。何か特別な事情があるのですか。
  353. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 個別の案件でございますので調査してみたいと思いますけれども、資金需要が金融判断として八百万円以上あれば借りられるはずでございます。
  354. 林百郎

    ○林(百)分科員 これは富山商工中金が窓口で申し込んだのですけれども、そういう事例が国会で問題になったけれども、あるかどうか。四四%の損害を受けているわけなんですけれども、八百万円の限度額いっぱい借りようとしたところが、いや四百万円しか貸すわけにはいかない——これではせっかくの閣議決定が実際に生かされない。ただ、窓口を具体的に御調査なさると言うから言っておきます。これは富山の商工中金です。  それから、先ほどあなたの言われました体質強化資金です。この体質強化資金のうちの地域産業対策資金の運用についてですが、富山県の場合は、一月の時点で、当初県としては五十億円の融資枠を決めたのですけれども、現在八十億円を超える申し込みがある。それで、県では二月の補正で対応すると聞いている。国の方でも八十億円の資金枠をこの体質強化資金で確保しているようです。しかし、これが非常に枠を超えていく見通しが強いわけなんで、これについては、中小企業庁それから大蔵省の両省庁とも、どういうふうにお考えになっているか、聞きたいと思います。
  355. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 いま御指摘の体質強化資金の運用でございますが、これからの需要も見込んで、今年度末で融資規模において千百八十四億ぐらいになるだろうと考えております。それに見合う原資でございますが、百七十三億というふうに計算しております。現在積み上がっております累計の原資が百八十五億ございますので、なお年度末に至りましても十二億程度の余裕はございます。したがいまして、これでパンクするということは万々ないと考えております。
  356. 林百郎

    ○林(百)分科員 国の方の資金枠は八十億でしょう。それで間に合いますか。あなたはいま百八十億くらいは原資枠が必要だと……。
  357. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 富山県だけの問題でございますと、県と同額を国の方から流しますので、県が用意いたします金につきましては、国の方は全体が余裕ございますので十分回せると思います。
  358. 林百郎

    ○林(百)分科員 そうすると、富山県の場合を例に言ったのですが、三県全体になりますと国の方の枠はどのくらいになる見通しですか。そしてその保証は、もしこれが枠を広げなければならないという場合に、大蔵省はどういう態度をとるのですか。
  359. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 いま三県の合計額が手元にございませんが、全体としての余裕がございますので、三県でやりました場合も、富山県と同様に全体のふところの中で大体融通ができると思います。  いまの件につきましては、大蔵省とも十分緊密な御相談をしながらはじいておりますので、大蔵省と私どもの方で意見のそごはございません。
  360. 林百郎

    ○林(百)分科員 では念のために聞いておきますが、もしこの国の枠が、これはいま北陸三県と言っていますから——北陸三県だけでとまるわけじゃないと思いますが、それが原資が不足してきた場合は、いま中小企業庁では十分大蔵省と連絡していると言うのですか、大蔵省の方では、不足の場合にはこの枠を広げる可能性も考えておいでですか。どうですか。
  361. 日吉章

    ○日吉説明員 私どもの方といたしましては、個別の資金需要につきましてはつまびらかにいたしておりませんが、よく実態を把握しております通産省の中小企業庁からの情報に基づきまして適宜的確に判断をいたしていきたい、かように考えておりますが、ただいまのところでは、中小企業庁長官がお答えになられましたように、国の方で準備いたしました資金を原資といたしまして十分対処し得る、そういうふうに御連絡を受けております。  その点少し敷衍して御説明申し上げますと、五十五年度におきましては国の出資が八十億でございますが、これは累積して出資がされていっておりまして、全体では百八十五億の原資を持っております。中小企業庁長官がおっしゃられましたように、同額を関係都道府県が出しまして、それの原則といたしましてといいますか、限度といたしまして四倍まで融資できることになっておりますので、合計いたしますとこの八倍まで融資できるというふうな仕組みになってございまして、先ほど中小企業庁長官がおっしゃられましたような融資申し込みというふうなものは、簡単に計算いたしましてもその枠の中で十分消化し得るのではないかというふうに思います。  あとは地域別の配分の問題等があろうかと思いますが、その点は中小企業庁の方で十分的確な御配分をされるのではないか、かように考えております。  なお、五十六年度につきましては、新たに八十億の政府の出資を予定して、現在御審議いただいております予算に計上いたしております。
  362. 林百郎

    ○林(百)分科員 だから、中小企業庁で先ほど富山の対応が八十億——これは富山だけでなくて体質強化資金全体が八十億、まあ積み重ねもありますから百幾らになりますけれども、これは決して富山一県じゃないわけですね。だから、万一枠が不足の場合は、こういうような予想もしないような豪雪だってあるのですから、大蔵省の方も中小企業庁と連絡をとって申し入れには応ずる意思があるようですから、その場合には大蔵省と折衝されてこの枠を広げる——必要が出た場合ですよ、間に合えば結構ですがね、そういうお考えはお持ちですか。
  363. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 先ほども申しましたように、ことしの分の八十億も含めまして、全体といたしまして百八十五億というのが累計でございます。これに見合います融資目標額というものは、三月末までの現在の見込み量をはるかに上回る枠がございますので、十分その中で消化できますので、これでショートするということはございません。
  364. 林百郎

    ○林(百)分科員 じゃ最後に大臣、ただ待たして恐縮でしたけれども、豪雪による中小企業の直接の被害だけでも百三十六億、これに間接の被害、購買が減退したとか、あるいは生産が落ちたとか、顧客が減少したとかいうのを入れますと、約二千億と言われておるのですけれども、この想像もしなかったような豪雪によっての中小企業に対する大きな痛手ですね、これに対しては大臣としては今後どういうように——実態がだんだんわかって、数字も出てきますので、数字の出ないうちにいろいろのことを言っても、これは架空なことになりますが、数字がわかるに従って実情が明確になってきたと思いますが、そういう中小企業がこの豪雪によって受けた被害に対してどういうように大臣としては対処していくお考えか、それを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  365. 田中六助

    田中(六)国務大臣 外分科員指摘のように、直接被害が百三十六億、間接が二千四十二億円というのは二月二十八日現在でございます。したがって、その後いろいろ手痛い打撃を受けているわけで、損害の実情がまだ伸びてくるんじゃないかというふうに思います。  私どもは、先ほどから申しておりますように、まず政府三機関の中小企業、商工中金、国民金融公庫の金利八・八%が普通でございますけれども、これを六・〇五から三%、そういう弾力性のある金利の負担をするということをまずやって、もちろん資金の枠も広げて貸付資金にしているわけでございます。  それからいま御指摘のような中小企業体質強化制度というものをフルに活用いたしまして、これは計算の仕方でいろいろございますが、国と県が負担して、それを市中銀行に預けて利用するわけで、それが何倍にもなるわけでございますので、私どもはそういうものを駆使し、あるいはまた中小企業関係の制度がたくさんございますので、そういう点を早急に、しかも確実に実施していくことを目的として推進してまいりたいというふうに思います。
  366. 林百郎

    ○林(百)分科員 終わります。
  367. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて林吾郎君の質疑は終了いたしました。  次に、川本敏美君。
  368. 川本敏美

    川本分科員 まず私は通産大臣にお聞きをいたしたいわけです。  昨年は中小企業倒産が新記録をつくりましたことは御承知のとおりだと思うのです。昨年一年間の中小企業倒産件数は実に一万七千八百八十四件、これは負債額一千万円以上だけの集計ですけれども、負債総額が二兆七千二百二十四億八千六百万円、こういうような数字に上っておるわけです。その中でも特に木材産業あるいは建設業等の倒産が非常に高い比率を占めておるわけでして、木材産業では昨年一年間に五百六事業所、建設業では五千九十七事業所、合わせますと大体三分の一ぐらいが木材産業と建設業で占めているわけです。このほかにも中小企業で木材産業関係、特に製材とか家具とかあるいは合板関係では、不況のために自主廃業という、倒産じゃないけれども自主廃業というのがどんどんふえてきています。この原因は一体どこにあると思いますか。
  369. 田中六助

    田中(六)国務大臣 原因はどこにあるかということでございますが、やはり大企業、中小企業を含めまして経済活動が非常に鈍いわけです。それはやはり国内では個人消費並びに住宅投資その他投資の停滞というものが考えられますし、対外的には世界の不況、日本国だけじゃなくて世界全体が不況の渦の中に埋まっているような状態でございまして、日本もそれを免れないというようなことでございまして、まず当面私ども何とか個人消費を刺激し、それぞれの個人住宅と申しますか、住宅建設の振興を図らなければならないというふうに考えております。
  370. 川本敏美

    川本分科員 いま大臣は全般的な状況についてお述べになったと思うわけです。いま大臣がおっしゃるように、個人消費を伸ばすとか、あるいはそういうことがなければ民間の活力というのは私は出てこないんじゃないかと思うのですけれども、そういうことのためにはいわゆる物価調整減税が必要だとか、インフレ対策、物価対策が必要だとかいうことで、いま大きく国会でも論議されておりますが、そういうことは別といたしまして、特にこういう中小企業倒産については、通産省は、大企業といいますか、大企業のためなら政府自身が腰を上げて動くけれども、しかし中小企業であれば倒産してもやむを得ないと見殺しにするような態度でおられるんじゃないかと私は思うわけです。一例を挙げますと、自動車産業の貿易摩擦の問題については外務大臣や通産大臣までが出かけていって、あるいはアメリカやEC諸国ともいろいろと話し合いをする。あるいはイラン石化の問題がああいう状態になりますと、政府が資金を出してまでそれを援助をするとか、中国の鉄鋼ブラントの問題でもいろいろ問題になっておりますけれども、そういうことも全部政府間レベルで話し合いに持ち込んでおるわけです。ところが、中小企業国内でこんなにたくさん倒産をしておっても、その倒産を防止して中小企業を救済すると同時に、倒産したらそこで働く労働者が全部失業するわけですから、そういうことについて通産省は一体どのように考えておるのか。これはもうやむを得ないと考えておるのか、あるいは経営者の体質が悪いと思っておるのか、あるいは政府の施策が不十分だと思っておるのか、その辺についてもう一度伺いたい。
  371. 田中六助

    田中(六)国務大臣 せんだって中小企業庁中小企業の百社についてアンケートをとりましたら、まず第一に経営不振、つまり売れ行きがだめだということが一つです。それから価格の低迷ということです。三番目が金利が非常に高いというようなことで、ずっとございますけれども、私は頭の方の三番目まで言うわけですけれども、そういうことをまず考えますときに、売れ行き不振は、いろいろ先ほども言いましたように、個人消費とか住宅建設などもございますが、たとえば自動車摩擦をとりますときに、日本の主要メーカー三社から六社までと思いますけれども、そういうところの直接の従業員が六十二万人おるわけです。それから、それの関連のディーラーから部品その他全部含めますと、これが約五百万人くらいおると思います。それは下請ですね。そうなりますと、やはり日米摩擦という自動車摩擦が及ぼす影響、向こうでは失業者二十万から三十万だというふうにアメリカは言うわけでございますけれども、それならば日本がそれをがまんして、安くて、よくて、燃料が要らない車をアメリカの国民が買ってくれるのに、向こうの政府や事業家がつべこべ言うところはないんじゃないかという気持ちも訴えておりますけれども日本自身に顧みまするときに、自動車産業が不振になっていきますと、いま言ったようなことが行われるわけです。したがって、大企業を私どもはいろいろ言うと言われますけれども、その大企業を守って、その関連が五百万人ぐらい人数がおるとすれば、やはり大企業のそういう守り方も必要じゃないかという気もいたします。これは自動車産業だけじゃなくて、電器の松下とかいろいろなところを含めましてもその傘下、たとえば松下だけでも一万一千二十くらい中小企業者があると言われております。  こういうのを考えますと、大企業に対する施策も大切だが、しかし現在、昨年の一月から十二月まで一万七千八百八十四件という倒産件数は史上最高でございますので、これをほっておくわけにはいきませんし、私どもはいつも頭にあるのは、中小企業よりもちょっと上のところで金融関係がたとえば二億貸すというとき、一億は歩積み両建てをやれ、それで二億貸すというような形になる。そういうことをするから下請企業に対する支払いが遅延するのではあるまいか。だからそういう金融機関にもまず頼まなければいかぬ。しかし直接この一万七千八百八十四件というものの倒産件数は、これをどうして見殺しにするんだということは、御指摘になるまでもなく私どもも頭の痛いことで、どういうことだということであらゆる施策をあるいは検討を開始して、いま負債額が一千万円以上なんでございますけれども、その下の零細企業も、先ほども指摘されましたけれども、五千件以上もあるんじゃないか。それからまだ零細なところは、家族とでっちさんあるいは小僧さんも一人ぐらいで適当にしているのは報告もしない。リサーチしてもわからない。そういうものを含めますと、本当にこの日本の四つの島の甲がそういうもので渦巻いているんじゃあるまいかという気もするわけでございまして、そのために私どもは新しい予算を皆様にお願いしているわけでございますが、その中で中小企業倒産対策の貸付制度の拡充、それから中小企業倒産防止のための共済制度あるいは倒産防止のための保証制度あるいは相談室の拡充、いま百二十一件ございますが、それを百六十一件にして、できるだけ中小企業者の気持ちをそのままくんだ対策をとってみたい。それから体質強化資金の拡充ども考えるし、また官公需の分割発注とか大企業ばかりに行かないように、あるいは公共事業、今度新しい予算が通りますならば、これは企画庁長官とも実はひそかに話しておったのですけれども、先ほどしゃべりましたので仕方がないのですが、中小企業を主体にして、もう直ちに公共事業の前倒しをやろうじゃないかというようなことです。  それからもう一つ重大なことは、アンケートの中の三番目にございます金利負担がどうしても多い。したがって、大幅な公定歩合の引き下げをやってほしいということがアンケートの三番目に出ております。これも野党の人は、金利を下げても連動、窓口でうまくやらないと少しも機能してないということも指摘されておりますので、そういう御指摘はまことに当を得た指摘でございますので、事前に、上げた場合はそういうことは困るよということを私は大蔵大臣にも申し上げておりますけれども、大蔵大臣は、いや下げないよというようなことでございますけれども、いずれにしてもできるだけのことは、この予算の限られた中で、目にちらつくのは皆さんと同じように、九月からずっと連続千六百件台を続けておりますし、一万七千八百八十四件というこの記録から少しでもこれを小さくしなければならないという責任が私にございますので、そういう意味で一生懸命やりつつあるし、やらしてもらおうという気持ちでおるわけでございます。
  372. 川本敏美

    川本分科員 そこで、きょうは建設省おいでいただいておると思うのですが、来年度の住宅の建設戸数の見通しは大体どういうふうになっておりますか。
  373. 伊藤茂史

    ○伊藤説明員 御説明申し上げます。  まず五十五年度から説き起こさないといけないと思いますが、五十五年度の住宅着工でございますけれども、十二月までわかっておりまして、四月から十二月まで九十六万戸になっております。一月−三月がどのぐらいあるかということでございますが、昨年の例ですと大体三十万戸ぐらいございます。今回一月から二月にかけまして公庫の募集をいたしましたが、その募集状況等から見ますと、若干持ち家の持ち直しが見られるんではないかというふうに予想しておりまして、大体百三十万戸が、ちょっと切るぐらいではないかというふうに予測しております。  五十六年度見通してございますが、われわれは五十六年度を初年度とします住宅建設五カ年計画というものを三月の末を目途にいま作業中でございますが、そこではじきました潜在的な中期的な需要でございますけれども、着工統計ベースで大体百四十四、五万ペースの需要があるというふうに考えております。したがいまして、国民の住宅需要を充足するためにはできるだけ早くそういったラインに到達する必要があると考えております。  ただいまの経済状況、十二月に金利が下がりまして大分よくなっておりますが、地価が安定をし住宅価格の安定がもうしばらく続きまして需要がそれに見合って出てくるということになりますれば、百三十万戸ぐらいから次第に上向きかげんになっていくだろう、そしてできるだけ早い機会に百四十四、五万の中期的な潜在需要の線に近づいてほしいというふうにわれわれは考えております。
  374. 川本敏美

    川本分科員 五十六年度の実績についての御説明をいただいて、五十六年度の期待を込めた御答弁をいただいたわけですけれども、いろいろな統計から見ると対前年度比にして九・六%ぐらい実際の着工戸数というのは減少するのではないか、あるいは下手をすれば百万戸を割るのではないかというような意見すらあるわけです。  御承知のように、政府は一九七六年から始まりましたいわゆる第三次住宅建設五カ年計画というのがありますね。この中でも、現在で公営住宅関係で大体二一・七%、公団住宅で三九%が未達成ですよね。私はまずそういう公営住宅とか公団住宅の未達成分を早期に達成をする、来年度に達成をしてしまう。それと同時に、民間木造住宅なんかも建設戸数が、着工戸数がふえるような施策をやってもらわなければいけないと思っておるわけです。そのことに対して建設省、さらにもう一回。
  375. 伊藤茂史

    ○伊藤説明員 ただいま公営住宅、公団住宅につきまして三期の五カ年計画で計画と実績が乖離しておるじゃないか、実績が計画どおりになってないじゃないかという御指摘でございますが、それはそのとおりでございます。  ただ、この点につきましては各公共事業主体の執行能力といいますか、そういうものとも関係がございますし、それから国民全体の住宅の需要の動向といいますか、そういうものも勘案しますと、土地が買いやすいところに建ててもなかなか借家需要が埋まらないというような問題もございまして、これらの点がなかなかしり込みする面もあるということで達成できなかったものでございます。  ただ、五十六年度から始まります五カ年計画では、六十年までに最低居住水準を国民のすべてに確保したいという目標を立てまして、公共賃貸住宅を特に住宅問題が深刻でございます大都市地域を中心に確保したいということで考えております。したがいまして、六十年に最低居住水準を確保するために必要な戸数はぜひとも今後の五カ年間に建設をいたしたいということで、新規まき直しといいますか、新たな決意で臨みたいというふうに考えております。
  376. 川本敏美

    川本分科員 私はこの住宅建設といいますか、そういうものをさらにふやしていくというためには、特段の施策が必要ではないかと思うわけです。そういう中で、先ほど通産大臣のお答えにもありましたけれども、私はやはり一つは木材産業の振興、あるいはこういう中小企業の振興という面だけからじゃなしにですけれども、住宅融資ですね、いわゆる銀行ローンと言われるもの、この年限を木造住宅でも鉄筋でももっとさらに返済期間の延長をするというようなことも一つの方策だと思いますし、あるいは木造住宅なんかの場合、住宅金融公庫あたりのいわゆる融資の坪当たり単価の基準がありますね、そういうものをもっと実情に合わせて基準額を引き上げて融資額を大きくする、融資枠を大きくする、こういうことも私は土地の値段の引き下げ寺とも関係して重大な問題だと思いますけれども、特にそういう零細な、言えば百六十五平米以下ぐらいの居住用住宅、いま御説明あったそういう最低居住水準といいますか、そういう住宅を建てようとする人たちに対しては、銀行ローンのいわゆる金利補給、利子補給というようなことも必要だし、いま行われておるいわゆる住宅建築の場合の優遇税制もさらに拡大をする、こういうような政策も必要だと思います。  また、一方においではいろいろ木材産業や建設業を守るという面からは問題がたくさんあると思うのですが、いまひとつそういう点を私は通産省、建設省でぜひ考えてもらいたい問題だと思うのですが、お答えをいただきたいと思います。
  377. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御指摘のように、私も実は住宅ローンの条件の緩和というものを考えなければいけないというふうに前々から思っております。閣議でもその点は主張しておりますが、まず住宅ローンの金利というものの引き下げ、それから政府の融資といいますかそういうものの助けをやる、それから面積のこともそうですけれども、いずれにしても条件をあらゆる角度から緩和するということですね。それからまた受け付け期日なども決まっておりますけれども、これを通年的にやったらどうかということも私は申し上げておりまして、この住宅ローンについてはまさしく検討の余地が十分あるのじゃないかというふうに考えております。
  378. 伊藤茂史

    ○伊藤説明員 先生お申し出のまず最初の民間のローン返済期間でございますが、これは民間の金融機関が行うことでございますけれども、現状を見ますと、つまり預金の方は非常に期間が短い、ところがこれを中長期に貸すという話になりますので、おのずから限度があるだろうということが一点問題としてございます。それから日本の住宅の場合、木造住宅は質が大分よくなっておりますけれども、耐用年数が五十年とか六十年とかということはとても考えられない。したがって、耐用年数とお金を貸す期間との関係というものも当然考えなければならないわけでございます。したがいまして、延ばすのはなかなかむずかしい。それから二十五年を超しますと、これは計算をしてみればわかるのですが、延ばしましたために月々どのくらい負担が下がるかということは、効果がだんだんなくなってまいります。そして返済額全体が非常にふえてくるということがございますので、消費者側でどういう受け取り方をされるかという問題があろうかと思います。  それから、公庫の限度額を上げるというお話がございました。確かに坪当たり単価というものを押さえて融資率は法律で決まっておりますので、そういうことを考えていまの五百万という限度額が決まっているわけでございますが、限度額を上げますればそれだけ取得能力がついて需要が出てくるという問題が確かにございます。ただわが国の場合、御案内のとおり土地の問題がございまして、土地と上物とを一緒に取得するという消費者に対して、五百万とか一千万というものをどのくらい上げれば取得能力がつくのか、本当に取得能力がつくまで財政援助をする必要があるのかというようなことを考えますと、現状の財政事情からして非常にむずかしい点があろうかと思います。  それから銀行ローンの利子補給ということでございますが、この点は現在の住宅金融公庫の制度そのものが、言うなれば銀行のローンと公庫の融資と両方併用して使うということになっておりますから、結果的に利子補給的な役割りもしている。したがって、住宅金融公庫をどういう住宅需要層に向けていくかということが非常に重要ではなかろうかと思っております。  以上、住宅取得能力を上げるという点でわれわれも検討いたしておりますけれども、むずかしい点がいっぱいあって、これからもいろいろとお知恵を拝借いたしたいと思います。
  379. 川本敏美

    川本分科員 銀行ローンと住宅金融公庫の融資で利子補給の役割りを果たしておると言いますけれども、農林漁業金融公庫で植林等に使うお金であれば三・五%の金利ですよね。それなら私は言えると思うのだけれども、現在の金利でそういう役割りを果たしておるんだと言うのは、これは建設省ちょっと思い過ぎじゃないかと思うので、もう一度検討をいただくようにお願いをいたしておきたいと思うのです。  そこで、もう時間がありませんので話題を次に移したいのですが、林野庁おいでをいただいておると思うのですが、やはり外材の輸入の問題が今日国内の製材とか合板とかあるいは家具とかの木材産業の不振、倒産、廃業というものに大きなウエートを持っておると思うわけです。政府の統計を見ても、特に原木だけじゃなしに製品の輸入量が、北米産を一つの例にとりますと、昭和五十一年の実績に対して五十四年は大体倍ぐらいにふえておるわけですね。毎年対前年度比一三〇%程度ずつふえていっているわけですから、外材の圧力というものが非常に大きな影響を及ぼしていることは事実です。これを林野庁は全然野放しにしている。そして現在国内産の木材の需要量が三〇%、外材が七〇%、こういうようなところまで高まってきている。もちろん外材も必要ですから、私は頭から外材を否定するわけじゃないのですけれども、特に南洋材なんかは競合しませんから必要ないですが、北米産とかカナダ産とかあるいはソ連材等の国内産木材と競合するようなもの、特にその中の製品輸入等については、政府としては国内産業を守る立場から一定の規制があってしかるべきじゃないか、このように思うわけなんですが、林野庁はどう考えておられますか。
  380. 山口昭

    山口(昭)説明員 昨年の木材輸入につきまして見てみますと、丸太は前年に比べまして一六%くらい減りましたけれども、製材は九%くらいふえておるわけでございます。このように製品の輸入量が近年増加するという傾向にありまして、これが国内での競合をますます激しくしているということは否定できないわけでございます。一方、わが国としては必要な丸太を輸入しなければならないわけでございます。また最近の貿易環境全般の動向を考えますと、相手の国と円滑な関係を持続していく必要もあるわけでございます。そういうことから、輸入制限や関税を引き上げるといった強制的な措置によりまして製品輸入を抑えるということはいかがなものかと考えているわけでございます。これに対しましては、相手の国との間で対話あるいは情報の交換、さらには外材の産地国におきます資源の維持培養に対する協力、こういったことを通じまして製材輸入の急激な増加をできるだけ回避いたしまして、同時に必要な丸太を輸入するということを考えていきたいと思っています。また主要な木材につきましては、四半期別に短期の需給見通しを作成しまして、業界にこれを公表しまして、これに即した安定輸入についての関係業界の指導をさらに強めていきたいと思っております。
  381. 川本敏美

    川本分科員 時間がありませんので、前へ進めますが、実は木材産業については、いわゆる輸入その他について、商社は大体通産大臣の所管になっておる、ところが木材については林野庁の所管になっておる。こういうところで一つの大きな問題点があると思う。木材産業や合板については、通産省と林野庁の谷間で今日まで放置されてきておるのじゃないかと思うのです。特に合板業界や木材業界を見てみますと、大臣にも御認識をいただくためにも申し上げたいのですが、いま清水港の静岡合板あるいは大分の佐伯市にある二平合板、その子会社の佐伯合板、こういうところがどんどん倒産をして会社更生法の適用の申請をしているのですが、二平合板、佐伯合板、合わせますと六百人くらいの従業員がいるのです。それで負債総額百六十億。ところが、これに関連しておる商社は静岡合板、二平合板、佐伯合板、合わせて全部大体丸紅です。二平合板や佐伯の場合は三井物産もかんでおりますし、銀行は大分銀行です。こういうところは原木は商社が一〇〇%供給をする。でき上がった製品は商社が買い取って販売をする。だから入り口も出口も全部一つの商社が押さえておるわけです。そして、その間のお金の動きについても、最高では一一%くらいの金利を商社は取っておるわけです。だから商社の方はどんな事態が起こっても損はしていないわけです。製品が安くなれば赤字は全部その合板会社がしわ寄せを受ける。いま合板関係では永大産業もさらに従業員を二百五十人くらい減らそうというような案を発表しておりますが、いまこのような日本の中の大企業である商社が意図的に原木の供給をぱちんと切れば、与信枠と言うんですけれども、与信枠でいままで十一億まで供給しておったのがこの月から六億ですよ、来月からだめですよ、こうなったら倒産する以外に道はないわけです。二平合板の場合も二月三日に丸紅がいわゆる原木の供給を拒否したために倒産しておるわけです。そういう実情から見たら、大企業が中小企業を計画的に倒産に追い込んでおる、そういうことにいま木材産業やあるいは合板関係のところでたくさん倒産が出てきておる一つの原因があると私たちは思うのです。資本の大きいものが資本の小さいものを駆逐するというのは自由経済の原則だ、こう言ってしまえばおしまいですけれども、その点通産大臣としても、そういう中小企業は自分のところの思惑でどうにでもなるんだというような考え方で——静岡合板の場合でも丸紅がそうですよ。最初は重役を送り込んでおったが、その重役をまず引き揚げる、次には与信枠を減らして原木供給量を減らす、そして量後には原木の供給を拒否して倒産に追いやる。全部計画的です。このようなことが許されていいのかどうか、大商社の横暴じゃなかろうかと私は思うわけです。佐伯市ではこれが倒産しますといままでの経済活動が一挙に停滞をしてしまう、佐伯市の灯が消える。市長、市議会を挙げて、市民が九〇%までいま署名運動をして、何とかこれらの会社の更生のために政府も動いてもらいたいということでいま全力を挙げて運動が始まろうといたしておるわけです。中小企業庁も通産大臣の所管ですから、通産大臣がこういう商社に対して、合板業界や木材業界の倒産を守る意味からも、そういうことに対して商社活動に適正な規制を加える、あるいは指導をする、そういう必要があるんじゃないかと思うのですが、通産大臣の御意見をお聞きしたい。
  382. 田中六助

    田中(六)国務大臣 合板並びに製材業者の困っているのは大から小まで、私の選挙区にも小さな木材、製材会社がたくさんございますし、ほとんど困っております。それから、実は合板会社の段谷産業の社長が私の後援会長でございまして、そういう点からも合板がいかに困っておるかということも知っておりましたけれども、いま言った商社のそういうようなことが行われておるということは正直に言って知りませんでしたので、その点の規制というもの、あるいはそういうところの究明というものをつぶさにやってみたいと思います。私も中小企業者の担当の大臣でございますし、御承知のように三千四百八十一万人というこれらの関係の人がおりますし、事業所の数が実は九九・四%なんです。したがって、そういう点から私も一生懸命これに対処していきたいと思います。
  383. 川本敏美

    川本分科員 ちょっともう一回だけ……。
  384. 武藤嘉文

    武藤主査 簡潔に願います。
  385. 川本敏美

    川本分科員 林野庁にももう一度だけお聞きしたいのです。  この商社に対して、これは木材関係ですから、丸紅とか三井物産に対していま通産大臣がお答えになったような強力な指導をするという決意があるかどうか、林野庁にお聞きしたいと思います。
  386. 山口昭

    山口(昭)説明員 一般的に申しまして合板製造業が先生おっしゃったように原木の入手あるいは製品の販売の面で商社と大変深い関係にあることは事実でございます。そういうことから林野庁といたしましても合板製造業の経営の安定を図る観点から、原料をできるだけ安定的に送ってもらいたいという関心を持っているわけでございます。そういうわけで日ごろから商社にもこのような意向を伝えているわけでございます。しかしながら、基本的には倒産の問題というのは個別経営の問題でもございますし、行政として指導をするのにはおのずと限界もあろうかと思います。しかしながら、基本的に原木を安定的に供給してもらいたいということは今後とも申し上げていきたいと思っておるわけでございます。
  387. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて川本敏美君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬崎博義君。
  388. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 まず、公正取引委員会に伺います。  一昨日、公取はようやく新聞業の取引実態調査の結果を発表されたわけであります。この中で、特に注文部数を超えて販売店に本社から送られてくる部数、いわゆる押し紙でありますが、その率、それから拡張販売用の景品いわゆる拡材、それから無代紙の状況、数年間の傾向がどうなっているか、ごく簡単に手短におっしゃっていただきたいと思います。
  389. 河村穰

    ○河村説明員 まず、今回の新聞販売店を対象にいたしました実態調査の結果によりますと、先生最初におっしゃいました押し紙でございますが、この調査では残紙と無代紙ということで出しておりますが、これをトータルいたしましたものが一応押し紙と見られる、そういうことでございまして、その押し紙率は平均しまして三・四%という数字になっております。  それから、拡材、無代紙の提供の状況でございますが、一般的な実態といたしまして、そういう拡材、無代紙の提供による新聞の購読の勧誘という行為が日常茶飯事になっていると答えた販売店が約六〇%に達する、そういった傾向がここ四、五年間増加する傾向にあるというふうな回答をした販売店が六五%強に達しておる、そういう状況でございまして、全般的に申しまして、かなりこういった拡材、無代紙の提供行為が行われておるという実態でございました。
  390. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 千葉県では、新聞販売の自主規制機関であります新聞公正取引協議会千葉県支部が中心になって、一般紙全社の販売店会が連名で、無代紙、大型拡材提供をやめる申し合わせをして、そのチラシを出した、これが昨年の十一月でありました。ところが、その直後の十二月三日から、読売新聞社の拡張団がバスでこの千葉県下に乗り込んで、従来の拡材には見られなかった高級エアポット、時価約六千円を使って拡販に乗り出した。これがその使ったエアポットです。公取は承知しているはずです。昨年の十一月十一日には参議院の商工委員会で、通産大臣も同席のもと市川参議院議員がディジタル時計とか味の素セット、タオルセット等を示しました。大体あのときは数百円から二千円どまりの景品だった。これは六千円。また一段階エスカレートした。これに対抗しようと思うと次は一万円台になってくる。こういう状況であります。そこで、販売店主の方々は私と一緒に十二月六日公取に行って、この事実——このときにはこれを持って勧誘に入った家の住所、名前、またはその拡張団のバスの写真というものを添えて公取に是正を要求したのであります。公取としては、私ども指摘した事実を確認しましたか。
  391. 河村穰

    ○河村説明員 お申し入れの案件につきましては、新聞公正取引協議会の方に通告をいたしまして、自主的に規制するということで定めております規約あるいはそれに基づく規則に基づきまして処理するように通告いたしました。
  392. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 ちゃんと連絡がとれるように、事実が確かめられるように、このエアポットを持ち込んだ家の住所、名前まで言ってあったでしょう。その事実を確認したのかどうか。それを一言答えなさい。
  393. 河村穰

    ○河村説明員 御指摘のような事実があったということでございます。
  394. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 読売の発行本社に対してはどういう措置をとりましたか。
  395. 河村穰

    ○河村説明員 即刻そういった行為をやめるように指導いたしました。
  396. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 それは読売の本社に対してやったということですね。
  397. 河村穰

    ○河村説明員 そのとおりでございます。
  398. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 事実これはとまったのです。先ほどあなたが紹介された実態調査の結果についても、販売店からは、本社派遣の拡張団による違法、強引な拡張は目に余るものがある、これらの行為を中止させ、販売を正常化するため、公取において、業界特に発行本社に対し強力な指導または取り締まりをしてほしい、こういう強い意見が出ておることをあなた方もお認めになっているわけです。やれば効果があることは、この千葉県下の例で一つ示されているのであります。  そこで、あの席上で公取の方から正式に独禁法並びに景表法違反として申告してほしい。販売店側の方々もそのつもりでいらっしゃったのでありますが、実際には正式の申告は出ていないわけです。この読売新聞の違法な、強引な拡販状況を報告に来られた販売店側の発行本社、これは本来読売とは競争相手になる会社なのです。ところが、その発行本社がしばらく申告を見合わすように、こういう説得といいましょうか圧力をかけたと見られる節もあるのです。これは私の感触であります。こうなってまいりますと、報道の自由は民主主義のシンボルであり、断じて守られねばならぬわけでありますし、その報道の自由、民主主義の守護神をもって任ずる新聞発行本社が、一方で不公正な手段を使っての激しい販売合戦を演じる。力の弱い販売店が、何とか法によってこれを是正してもらおう。ところが、そういう営業を守ろうとする自由に対していろいろな圧力がかかる。これでは、片方で民主主義を守ると言いながら片方で民主主義を抑えるのですから矛盾もはなはだしい。大臣、そういうふうにお感じになりませんか。
  399. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私も実は新聞記者の出身でございまして、そういう点まことに恥ずかしいことだと思いますし、そういう販売合戦は悪循環をしてますます世の中を乱すような糧を与えておるようなもので、本当は社会の木鐸としての活動をしなければならない新聞の精神に大いにもとると思います。
  400. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 さて、公取のこの実態調査についてでありますが、当初から、販売店の方から実態を正しく書き込んでいいのだろうか、こういう問い合わせとか、発行本社の方からこういうふうに書いておけというふうな指導が来ている、こういう問い合わせというのが来ておったわけです。公取の努力は多としながらも、われわれの心配したとおり、出ておる数字は過小評価になっておるのではないかと思うのです。たとえば二年前に日販協が集計した調査でも押し紙率は八・三%、約三百万部、こう出しているのです。先ほど御報告になったように、公取の結果では三・四%なのです。今回の調査結果が正確な実態を反映したものと見ていらっしゃるのか、これは大分少な目であると見ていらっしゃるのか、改めていかがでしょうか。     〔主査退席近藤(元)主査代理着席
  401. 河村穰

    ○河村説明員 今回の調査結果は、販売店から出されました数値をそのまま集計した結果でございます。先生指摘になりましたように、アンケート調査票を発送した直後に、販売店の調査票の記入に対して発行本社の方からいろいろ指導をしているというふうな情報も幾つか入っております。それから販売店サイドにおきましても、残紙あるいは無代紙、そういった数値について控え目な数字を出すというふうな事実上の心理的なものが働いておるというふうな推測もあるわけでございまして、この数値が現実の姿をそのままあらわしておるかどうかという点につきましては私どもも若干の疑問を持っておる、そういうことでございます。
  402. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 主査の了解を得て、この写真を大臣に見ていただきたいと思います。——いまお渡し申し上げましたこの写真は、大阪の豊中市螢ケ池にあります樋口新聞店、ここで発生をいたします一日分の残紙の写真なのであります。ビニール袋に包まれたままの姿がくっきり写っているでしょう。この新聞は写真でもはっきりわかりますように日経新聞であります。この新聞店は毎日新聞約八千部と日経新聞約四千八百部を扱っているのでありますが、毎日の方の残紙は約四百部でありまして残紙率五%、公取の調査よりは多い率ではありますけれども、もちろん業界の常識から見ればこれはきわめて少ない方に属します。日経の方は四千八百部で、うち千五百部が残紙でありますから、残紙率は三〇%を優に超えるのであります。小さな販売店の扱い総部数ぐらいに匹敵するのですね。この店の御主人は、本当に解決に努力してもらえるのなら私も勇気を出して事実を報告したい、こうおっしゃって写真を撮ることを許されたわけであります。そして、自分が陰に隠れておったのでは真実味が少ない、証人として写真に入ってもよいとそこに入られたわけであります。なぜ公取がこういう実態をつかめないのか、私は不思議なのですね。公取自身はどうお考えですか。     〔近藤(元)主査代理退席主査着席
  403. 河村穰

    ○河村説明員 今回の調査は全国的、一般的な調査ということで、販売店を対象にした調査を行ったわけでございますが、この調査結果によりまして押し紙といった行為もかなり行われておるというふうにうかがわれますので、こういった点につきましては引き続きまして新聞発行本社、全国の新聞発行社でございますが、それを対象にいたしまして、こういった実態あるいはその背景をなしておると見られる新聞販売店との間の取引契約、そういったものをあわせまして調査を続行する、そういう予定でございます。
  404. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 ですから、ぜひこの豊中の樋口販売店にも調査に行ってもらいたいと思います。  大体公取に従来余り本当のことを言われないのは、言ってもきちっと処置してくれない、残るのは発行本社の圧力を後で受けるだけ、こうなるからなんですよ。やる以上はきちっとやってもらいたい。  では、この莫大な残紙がどうなるのか。いまお渡ししましたのに伝票の写しがありますね。これは新聞残紙商ウエダというれっきとした企業の残紙回収伝票であります。こういう新聞残紙商という独立した企業が存在するような今日になっているのですね。これは一週間に二回回収であります。つまり三日ないし四日に一回です。その一回分の伝票、何とほとんどが日経でありますが、残紙四百七十キログラムと記録されているでしょう。これは二月二十八日ですから直近のものであります。ですから、ざっと一週間で一トンに達する。一月で四トンですよ、トラック一台分。これがたった一つの店で起こっているわけです。全国に何千、何万と販売店があるのでしょう。恐るべきことだと思いますね。このお店はこれで月に七、八十万円の損失になっているとおっしゃっています。  大臣にここで伺いたいのでありますが、通産省の方は省資源・再資源政策推進費として五十六年度予算に三億三百万円組んでいらっしゃる。御丁寧にその中に古紙対策四千二百万円をちゃんと組んでいらっしゃるのですね。一体何のためにこんなものを組んでいるのだろう、片一方でこういうものをほっておいて。矛盾を感じます。省エネルギー対策費として二億三千万円組んでいらっしゃる。しかもこれは室を課に昇格させていらっしゃる。貴重な森林資源を伐採し、莫大なエネルギーと人手をかけてパルプにし、紙にし、そして印刷をし、運搬をして、全く読者の目に触れないまま、またこの残紙回収商によって製紙工場に持っていかれる。ここの御主人がおっしゃいました。これだけ省エネルギー、省資源の叫ばれている中に、政治がこんな大きな浪費を許していていいのだろうかと。本当にそうだと思いますよ。力の弱い庶民が、新聞社の圧力がかかるかもしれない、しかしあえて勇気を出してその事実を訴えていらっしゃるのです。これはもうまさに大臣の所管事項なのです。新聞発行本社のこの大きな浪費をこのまま放置してよいとお考えですか。
  405. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いいとは思っておりませんけれども、公取関係の人数も少なくて微に入り細にわたっての調査ができないのじゃないかと思いますけれども、販売店と新聞本社との関係は公取の所管事項でございますし、この究明をさらに続けていただきたいと思います。  それから、古紙とかそういうものの対策はそういう新聞関係とは別に、本当にそういうパルプ関係が困っておるのが事実でございますし、だからといってそういうような対策を無視できませんし、そういう点は総合的に始終反省も加えて検討してまいりたいと思います。
  406. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 最も有効なこの際の省資源、省エネルギー対策は、まさにこういう全く使われないむだ紙をつくらないことですね。それにこしたことはありませんよ。そのために何億という予算を組んでいるのですから有効に使っていただきたいと思います。  こうした押し紙とか拡材が新聞のコスト高、値上げの一要因になっていること、力の弱い販売店の経営を圧迫していること、新聞の発行、制作、運搬、販売に携わっている労働者の労働条件にしわ寄せされていることは紛れもない事実なのですね。こんなひどいことがまかり通るのは、結局発行本社の力が余りにも強過ぎる、販売店の力が余りにも小さ過ぎる、ここに起因するのです。ほっておけば必ずこういうことが起こるのです。押し紙を断わりますとすぐ店舗の改廃のおどしがかかってくる。さらに抵抗を続けると、そういう店舗に対しては紙止めというのまで起こってくるのです。専門用語であります。これはあらかじめ他の店に配達態勢をとらせておいて、そしてその問題の店に対する新聞の発送をある日突如としてとめる手段なのですね。こんなことまで発行本社はやるわけなのですね。  そういう点で、昨年三月五日の本分科会、ちょうど一年になりますが、私は質問いたしました。そのときには、新聞というものは確かに特殊な商品だ。報道の自由は厳重に守らなければならないし、政府の不当な干渉があってはならないと思うけれども、同時にこれは商品だ。大きい新聞社と力の弱い販売店との間には不当な事例がどうしても起こる。その場合、公取以外に苦情の持っていき場所がない、こういうことでは困る。通産省の一般的任務として中小企業の振興及び指導というものがちゃんとありますね。中小企業庁中小企業に関する相談に乗るということを任務としてちゃんと法律にうたわれているのですよ。したがって、通産省あるいは中小企業庁のどこかの課で緩やかな行政指導でもいいから事態を改善する、それぐらいのことは考えていただきたい、窓口をつくってほしい、こういう要望をしたことに対し、当時の佐々木通産大臣が、「全く新しいケースでございますので検討してみたい」とおっしゃった。きょう田中通産大臣も、改めてこういうことは非常に情けないことだとおっしゃった。そして、去年の十一月の市川参議院議員に対する答弁でも同趣旨のことをおっしゃっている。ぜひ販売店が安心して相談に来れるような窓口をつくってやってください。一応、商務・サービス産業室が窓口になるとおっしゃったけれども、ここは発行本社に対する行政指導の権限は与えられていないので、苦情は聞くが処置がとれない、こういうのでしょう。これでは私どもどうぞ行っていらっしゃいとは言い得ませんよ。ここは実力者である通産大臣のひとつ賢明な判断と努力をぜひお願いしたいと思うのです。
  407. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いままで申し上げた以上別にどうとかという新しい見解は述べられませんけれども、いずれにしても新聞社本社についても、たとえばABCの方式というものが何か無理をしているのじゃないかというような気もしますし、それは広告関係に響くのかどうか知りませんけれども、やはり営業的にそうしなければならないシステムがどこか新聞社本社にあるのじゃないかという、私見でございますがそういう気がしますし、そういうところを問題にして、これは主観でございますけれども、本社関係の人と話してみたいような気もします。  それから中小企業者対策というのも、これは私ども一生懸命やっておる段階でございますし、やはり具体的には本社と販売店とは公取の関係の人が直接調査しなければ、私どもいまの法律の段階では行政指導の中小企業者に対する責めはございましても、具体的に立ち入りとかそういうものにつきましてはあくまで公取の専管事項でございますので、そういう点も努めていただいて、そういう結果報告などを聞いてまた対処してみたいと思います。
  408. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 私が言っているのはそうじゃなくて、他のいろいろな案件でも、当然大企業の下請圧迫等は独禁法上も公取へも行けるのです。だけど、ちゃんと通産省にも各業種ごとに所管課がありまして、そこへ行けば、そんな立入調査とか法律違反とかいう大げさなことではなくて、親会社に対して電話を入れるとか、あるいは担当者を呼んで下請いじめをやめなさいよ、そういう指導をやっていらっしゃるでしょう。それ並みにこの新聞の販売店に対しても配慮ある行政指導ができないかどうか。これは工夫でできると思うのですね。ぜひ御検討いただきたい。重ねてちょっと答弁いただきたい。
  409. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のように、新聞協会は文部省の所管団体でございますし、新聞は特殊な商品でございますのでいろいろむずかしい問題がございますが、先ほど先生指摘のように商務・サービス室を一応窓口にいたしまして、問題の案件に従いながら、公正取引委員会あるいは御指摘のような中小企業の経営問題とか金融問題等々いろいろな問題が中小企業販売店として出てくる可能性もございますので、そういう場合には中小企業庁と相談をするなりいろいろ協議し、ごあっせんをするというような窓口として現在商務・サービス室にいろいろ勉強をさせておりますので、むずかしい商品でございますから十分の成果は直ちに上がり得るとは考えられませんが、具体的問題を持ち込んでいただきながらわれわれも一緒に勉強していきたいと思っております。
  410. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 ぜひ一度大臣も販売店の代表の方々といつか時間をとってひざを交えて懇談をする等、お考えいただいたら結構かと思うのです。  いみじくもいま大臣はABC協会に指導したいとおっしゃいましたね。確かにこれは問題なんです。押し紙がふえている原因は、各社の広告収入が押し紙分を含む部数によって決められている、ここから来るのですね。  新聞協会の調査によりますと、新聞業界の総収入に占める広告収入と販売収入の割合を見ますと、昭和五十二年の上期で販売収入四三・三%、広告収入四四・七%、これが去年の上期になりますと、販売収入四〇・七%、広告収入四六・三%とますます広告収入にウエートがかかっている傾向がわかるのですね。この広告収入の算定基礎になるのが販売部数。この販売部数は日本ABC協会という公益法人発表のものが使われるわけなんです。この協会にいま公益法人の認可を与えていらっしゃるのですが、一体どこが公益性なのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  411. 神谷和男

    ○神谷政府委員 社団法人でございますので、一定の資格、いわゆる構成員となるための資格は限定されておりますが、基本的にその目的とするところは、広告の媒体となる新聞等の部数等を公正に調査確認するというところにその目的がございまして、それにより広告及び宣伝の合理化を図り、もって国民の文化的生活の向上に資することを目的とする、この目的をもって公益性を認定し、公益法人として認可をしておるところでございます。
  412. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 一応通産省が認可した公益法人の発表する数字だというのでこれが一定の権威を持ってくるわけなんですよ。だからそういう点での通産省のお墨つきが出ているということがきわめて重大なんですね。これは大臣、やはりその道の御出身だけに指摘は当たっていると思うのです。私どもも直接ABC協会を調べに行った——調べるといいますか、いろいろ事情を聞きに行きました。あそこには公査員という方がいらっしゃるのですね。新聞の販売部数を公正に調査する意味だと思うのですが、公査員というのがいらっしゃいます。公査員というのはたったの十二人なんです。二人一組で協会に加盟する新聞七十一紙と雑誌五十三誌について立入調査をしているわけです。新聞については在京本社は十四紙だけ、あとの五十七紙は日本全国に散っているので、六組くらいのチームではとてもじゃないが全国の新聞社を入念に調査することは初めから不可能である。ましてや販売店へ立入調査するなどということはとうていできない。一紙につき八ないし十店舗の販売店を選んでやっているが、短時間店頭で店主から聞き取りをやるくらいである。大体同協会の予算を見ましても、三億円の予算があるのですが、公査費というのはたったの一千万円なんです。したがって、予算や人員の関係で実売部数まで考査することはとてもできない。部数レポートはあくまで押し紙などのない販売正常化の状態を前提に発行本社各社からの報告部数を信頼して、それを発表しているにすぎない、こういうことなんですね。だから実売部数というのは全くこれはうそ偽りになってくるのですよ。こういうものが基本で広告収入が決まるから、各社は押し紙でも何でもいいから、要は発行部数をふやせ、こういうことになってきますね。そういう点ではひとつ公益法人として認可される以上、必要以上の干渉はする必要はないと思いますが、しかしやはり国民との関係で一定のABCに責任を果たしてもらうべき分野についてはしかるべき通産省の指導があってもいいのではないかと思うのですね。先ほどの大臣の御答弁を少し具体化していただきたいと思うのです。
  413. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のように広告関係からこの数字が収集され、取りまとめられておるわけでございますので、御指摘のような意識が出てくるということを私も否定できないと思います。しかし他方、御承知のように公益法人とはいいながら、一定の組織、一定の財政のもとで行いますので、ある程度の限界というものが出てくる。できるだけ小さな組織、小さな予算でも真実に近いものを求めていきたいというつもりで公査というようなこともやっておるのだろうと思いますけれども、やはりそこには到達し得る限界というものもあろうかと思います。われわれといたしまして承知しておるところでは、やはり販売店と新聞であれば新聞本社との契約に基づいての部数というものを一応原則としておりますし、その契約の中のどの部分が不公正取引に該当するようなものによって構成されておるかどうかという点までこの社団法人に全部解明させるということは非常にむずかしいかと思います。しかし、御指摘のようにせっかく法人も公査ということをやっておるわけでございますから、予算なり人員の許す範囲内で一生懸命やるよう指導してまいりたいと思います。
  414. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 一つの方法としては、公取もおくればせながら実態調査をやりましたね、そこで一定の押し紙率なども出てきたわけで、だからそういうのもABCに取り入れさせて、一応こういう発行部数があるけれども、別の調査によればこの中にこの程度の押し紙のあることが予想される、こういう注釈つきで発表させる、こういうことも私は一案かと思うのですね。いろいろな知恵を働かせれば実態に近づくことができると思いますね。  最後に大臣に伺って終わりたいと思います。  こうした押し紙とかあるいは不当な景品による拡販が結局は高い新聞ということで読者である国民の負担になってくるわけなんですね。それから先ほども申し上げましたように販売店の経営にしわ寄せされたり、あるいは販売労働者初め新聞発行に関係していらっしゃるすべての労働者の生活をもまた圧迫することになるわけなんですね。こうしたことをやめて新聞販売が正常化されましたら、新聞もいまよりもっと安くできるのではないかというように私も思う。販売店も労働者も営業に、生活に、希望が持てるようになるのではないかと思う。戻しして何よりも大事だと思うのですよ。新聞が記事の内容によってではなく、無代紙や拡材によって販売される、これがエスカレートしてごらんなさい。少々記事は不正確でもいいんだ、まずくてもいいんだ、こんなことになったら、そもそも報道の自由そのものと相反する。報道の自由の墓穴を掘っているようなことになると思うのですよ。また、苦労していらっしゃる新聞記者の皆さんにしても、本当に事志に反することになると思うのです。やはりあくまで記事の内容によって新聞は読者に選択される、これが報道の自由の先兵として新聞の最も正しいあり方ではないかと思うのです。そしていまやこれだけの大きな残滓ということになりますと、資源の節約からいってもゆゆしき事態であります。  実は昨年の七月には東京都杉並区が広報をもって、「エスカレートする新聞の販売合戦」との見出しのもとに、区民にうかつに新聞勧誘に乗らないように、こういう呼びかけまでしているのです。区段階でさえここまでやっているのですね。ひとつ新聞を社会の公器として扱う以上、公取任せにしないで、政府全体が本腰を入れてこの発行本社への行政指導を適切に行って、この販売正常化に大きく踏み出せるようにしていただきたい。大臣のお考えを伺って終わりたいと思います。
  415. 田中六助

    田中(六)国務大臣 新聞が社会の公器であり、また新聞そのものも社会をリードする木鐸であるというふうに長い伝統を持った精神があるわけでございます。その精神を汚さないように、侵さないように、しかもこれがこのままほうっておくと悪循環をして、委員御指摘のようなことにもなりかねないと私も思います。したがって、そういう点を含めまして、機会あるごとにそれらの人々とも話し合いをしてみたいし、折りがあらば、販売店の調査にも自分自身行ってみたいというふうに考えます。
  416. 瀬崎博義

    瀬崎分科員 終わります。
  417. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて瀬崎博義君の質疑は終了いたしました。  次に、蓑輪幸代君。
  418. 簑輪幸代

    蓑輪分科員 私は、織維産業の振興、とりわけアパレル産業の振興について大臣に質問いたします。  繊維産業は、日本の近代化の推進力として明治以来大きな役割りを果たしてきたにもかかわらず、現在では政府の重化学工業重視の政策によって日の当たらないところに追いやられ、深刻な危機に陥っています。この中で政府は、ファッションの多様化に対応できる知識集約化を進めるということで、アパレル産業の振興ということを打ち出しておられます。このアパレル産業の振興策を本当に実のあるものにしていくには、産地の実態をよく踏まえ、地元の関係者、とりわけ実際に産地を支えている多くの中小企業者の要望を十分に取り入れていくことが重要であるというふうに思います。ここでは、全国有数の産地である岐阜アパレルの振興策について幾つかお伺いしたいと思います。  最初に、簡単に岐阜アパレルの実情について述べてみたいと思います。  岐阜アパレル産業の歴史は、戦後間もなく国鉄岐阜駅前に旧北満からの引き揚げ者が中心となってバラック建ての小屋をつくり、衣料を販売するようになったのが始まりで、これが現在の岐阜繊維問屋街を形成するきっかけとなっています。  その後、縫製下請、製造販売へと脱皮し、そのもとで縫製加工に携わる人たちを初めとする関係者の努力と相まって、今日の岐阜アパレルへと発展してきたわけです。  現在、岐阜アパレルは全国屈指の産地となっておりまして、企業数で約二千、店頭販売、出張販売などにより、中部地区はもとより、関東、近畿、九州、北海道などにも販路を広げてきています。岐阜の場合は婦人子供服、紳士服、スポーツウェアなどが中心で、年間売上高は昭和五十四年実績で六千五百億円にもなっています。これは岐阜市の商品販売総額の約五〇%に達しています。また、全国的に見ても生産額で婦人服の二五%を初めとして全体で二二%を占めており、トップレベルにあると言ってもいいと思います。この岐阜アパレルの大きな特徴は、大半が小規模な企業によって支えられているということです。企業形態で見ますと、個人企業が五四・七%を占め、資本金で見ても一千万円未満の企業が五二・二%を占めております。また、縫製加工業の面から見ても個人企業が七八・四%を占め、企業規模でも二百万円未満が七三・五%というふうになっております。  こういう状況のもとで、岐阜ではアパレル産業を今後発展させるために、イタリアのフィレンツェ市と姉妹都市提携を結ぶとともに、ファッション産業として今後進んでいこうということで、ファッションタウンあるいはファッションセンター構想というものを打ち出してきているわけです。通産省でも昭和五十五年の八月から五十六年の三月までの計画ということで繊維等服飾産業高度化街区等建設調査ということで繊維工業構造改善事業協会に委託して、ファッションタウン、ファッションセンターの調査が始められ、ファッションタウンの事例研究として岐阜地区が指定されております。  そこでお伺いしたいわけですが、通産省として今後この問題を検討していくに当たって、一つは地元の業界、専門家などの指向を十分に踏まえるとともに、特に中小業者が大半を占めているという実態を踏まえて進めていただきたいということ。それから二つ目に、今後地元で物産会館等の建設が具体化されていくわけですけれども、これらの建設について十分な援助をしていただく、こういうことを最初に約束していただきたいというふうに思っております。また、ファッション工科大学とかあるいは中小企業大学校というのを設置してほしいという要望も出ているわけですが、この点についても前向きに検討していただきたいと思います。  こういう長期的なこととあわせて、私は三点にわたって以下具体的なことをも要望したいと思います。  まず初めに、岐阜アパレルがファッション産業として伸びていくためには人材養成ということが大変重要になるわけで、地元の方々でもこの問題で頭を痛めておられるというふうに伺ってきました。そこで商品規格や消費者の動向等のデータの集約などを行う研究機関またはセンター的なものをつくってはどうかということなんです。国がつくるのが無理ということならば、地元で各企業が出資してつくられるという場合に、それに援助をしていただきたいということです。  それから二番目に、最近は機械化も進んでコンピューターも入っています。ファッション化に伴う知識も必要になってくるわけですが、こうしたことを修得する研修等の機会が保証されていない。小規模な企業ですから余裕がない。そこで大卒の人が入ってきても大手の方に移ってしまうということにもなってまいります。そこで、従業員が各地の研究所や大学あるいはファッションデザイナー関係の学校へ研修に行く場合に、せめて短期間でも行けるように、国として何らかの援助を行ってほしいということが二つ目です。  三つ目に、岐阜市では毎年二回、一月と八月に岐阜メード総合展というのを実施しています。これは全国から業者を招いて大々的に行っているものです。ことしの一月は問屋、百貨店、専門店の業者ら二万八千人以上が集まって、二日間で商談誓約高は八十五億円を超えたというものです。現在、県と市はこれに援助を行っています。補助を出していますが、この岐阜メードに対して国からもぜひ補助してほしいという要望で、これらの点についてぜひ前向きに検討していただきたいと思っておりますが、その点をお伺いしたいと思います。
  419. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 ファッションタウン構想につきましては、御指摘のように事例研究を含めてやっております。当然のことながら、これは地元の盛り上がりが必要でございますので、地元の人々の御意見というものを十分尊重してまいるのは当然の筋だと思っております。  それから人材養成関係でございますが、情報収集なり情報センターというようなイメージもありますが、われわれは同時にファッションセンターの一つの機能といたしまして人材養成と情報収集ということも当然考えております。そういう意味で、ファッションセンターが地元の御熱意でできるような場合には、われわれといたしましても業界のまとまりによりまして高度化資金の融資その他助成措置も当然検討してまいりたいというふうに考えております。  それから、研修センター、コンピューターの問題あるいは研修の補助という問題でございますけれども、これについては、いまわれわれの方ではまだ現実化しておりませんが、地元の御要望も踏まえて検討の機会はあろうかと思います。  それから岐阜メードでございますけれども、岐阜メードにつきましては私も参りましたし、昨年でございましたか、人材育成基金の中の事業として講師の派遣等の応援もさせていただいております。ただし、この事業自身に直接補助金を出すのは、ほかの例もたくさんありますのでなかなか現実論としてむずかしいのではないかというふうに考えています。  以上でございます。
  420. 簑輪幸代

    蓑輪分科員 いまお伺いした中で、ファッション工科大学とか中小企業大学校の誘致などの問題についてはどうでしょう。
  421. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 ファッション工科大学という——率直に言いまして、地元の自発的なあれでできるならばわれわれつくっていただいて構わないのですが、恐らく先生がおっしゃるのは国が援助して岐阜につくれ、こういう御質問の趣旨だと思いますが、御承知のように、ファッション工科大学問題につきましては、いまアパレル産業協議会というところとか繊維産業連盟等でも、わが国でどういうふうに持っていったらいいかということを検討しておるわけでございます。そういう意味で、国といたしましても一体こういうものにどの程度補助、援助というのができるのかどうかという問題もございます。それから、そういうものをつくる場合にどういう方法でどういう場所につくったらいいかという問題もございます。やはり何よりも業界の自発的な物の方向というものをいま検討中でございますので、それも見ながら検討してまいりたいと思っています。
  422. 簑輪幸代

    蓑輪分科員 ファッション工科大学及び中小企業大学校を岐阜にという要望も強いわけですので、その際ぜひ政府の方でも強力な援助をお願いしたいというふうに思います。  次に移りますが、以前から中小企業事業団法に基づいて設備共同廃棄事業が行われておりまして、すでに十八業種について実施されているというふうに聞いております。  この設備共同廃棄事業を内需衣料縫製品用ミシンについても実施しようということで、日本既製服縫製工業組合連合会などが数年前から取り組みをしておられるというふうに伺っているわけですが、岐阜県でも岐阜県既製服縫製工業組合が設立されて取り組まれているわけです。組合の組織化や工業用ミシンの自主登録も行われています。ところが、計画が打ち出されてから何年もたつのになかなか実施されない。こういう中で、せっかく工業組合をつくったのに廃棄事業以外には役に立たず、上納金や登録料を取られるだけでとか、本当に実施されるのか、不安だとかいう声が出ているということを私は聞いたわけです。そこで、この工業用ミシンの設備共同廃棄事業について現段階ではどこまで進展しているのか、実施する方向で進んでいるのかどうか、いつまでに結論が出る見込みなのかという点についてお伺いしたいと思います。
  423. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 内需縫製業の設備共同廃棄事業についての希望なり検討を業界で進められていることはよく承知しております。われわれとしても常時連絡はとっております。  ただ先生御承知のように、これは場合によっては相当大きな金額になりますし、国としても財政援助といいますか、相当な助成をすることになります。したがいまして、われわれとしてはやはり的確にうまく行われる条件、つまり実施体制とかあるいは監視体制、そういうものが十分行われませんと、ただ業界が希望しているからそうですかと言うわけにも、国の金でございますのでなかなかいたしかねるわけでございます。したがって、いまそういう点も含めまして検討をわれわれとしても進めておるという状況でございます。
  424. 簑輪幸代

    蓑輪分科員 実施する方向ということは間違いないのでしょうか、その点と、それから大体の見通しですね、どの程度までに方向が出そうなのかということも含めてお答えいただきたいと思います。
  425. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 先ほど申しましたように、われわれとしては国の大幅な助成を行うものですから、共同廃棄事業ができるからというわけではなくて、やる以上は、その効果といいますか、的確に目的が達成される条件といいますか、それが整いませんとなかなかむずかしいわけでございます。そういう意味で現在実施体制、監視体制等いろいろな面でなおわれわれとしても疑問がまだあるものですから、せっかく検討しておるところでございまして、したがいまして、いつ実施するかというのはちょっと御勘弁願いたい、かように思うのです。
  426. 簑輪幸代

    蓑輪分科員 時期はわからないとしても、実施する方向で検討が進んでいるというふうにお伺いしておきます。アパレル産業発展のために政府がいろいろな施策を行うのはぜひやってもらわなくちゃならないわけなんで、この点強く要望しておきたいというふうに思います。  それから縫製加工に携わる方々の御要望で一番多いのが加工賃の問題なわけです。岐阜の場合、縫製加工業者は約五千企業というふうに言われています。大半が小規模な企業です。岐阜市が実施した昭和五十五年二月の岐阜縫製加工実態調査というものによれば、縫製加工業者の要望のうちの約七割が加工賃についてということで占められておりまして、その加工賃に対する要望の中でも、七五%が加工賃が安いということで占められているわけです。  私もいろいろ実態を調べてみましたけれども、大変な状況になっております。ある加工業者の例でいいますと、この業者は従業員が二十人以上、外注先もたくさんあるわけですけれども、中くらいというふうに言われています。ところが、その加工賃を聞いてみますと、子供服のワンピースですが、一枚七百五十円で、七年前の八百円と比べて下がっているわけです。また、婦人物のワンピースは千五百円で上がっていない。ほかのものも七年前に比べて下がっているか、あるいは変わっていないという状況です。一方、経費の方は、従業員の給料は上げていかなければなりません。そうでないと人が集まりません。外注の加工賃も二割ぐらいは上げてきている。そのほか物価上昇でいろいろな経費が上がっているというのが実情です。さらに、加工技術、デザインが複雑化して手間暇がかかり、量がこなせない。機械化をしなければついていけないけれども、それもなかなかできないということでもうけが出てこないというふうに言われています。税金払おうにも払えないとか、せめて加工賃を三〇%ぐらい上げてほしいという実情が訴えられております。非常にもっともなことで、実は非常に切実になっているわけです。  ところが、実際には問屋からは加工賃をもっと下げてほしいというふうに圧力がかかってくる。問屋も逆に百貨店や量販店からもいろいろ言われるということで、加工賃を上げるどころでないというのが実情のようです。こうなってくると、弱い立場の者は結局しわ寄せを受けて、そのままというふうになっているのが実際のところです。適正な加工賃が一体どういうものなのかということを検討するところが実はないというのが実態なのです。ぜひこうした実態に対して、せめて何とか安心してやっていける加工賃となるようにしてほしい。そのために、発注元の百貨店や量販店などもぜひ通産省が指導していただきたいという要望が出ておりますが、その点いかがでしょうか。
  427. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 御承知のような厳しい状況下にあることはわれわれもわからぬではありません。ただ、先生御承知のとおり、いろんな取引慣行が複雑に絡み合っていますし、加工賃をどうするかという問題に政府が直接介入するというのは非常にむずかしい問題でございます。気持ちとしては適正な加工賃が取れるようにしてあげたいのはやまやまなんでございますが、なかなか具体的な手段になりますと、われわれとしては下請代金支払遅延等防止法とか家内労働法とか持っています。それからさらに取引条件といいますか、取引慣行というものについてこれまた非常に古くからのおかしな制度も実はございまして、これについては取引近代化協議会というものをつくって、一部にはかなり成果を上げてきております。ただ加工賃自身の水準その他について、われわれとしてもなかなか直接介入はできない。気持ちはよくわかっておりますが、考えあぐねているというのが率直な話でございまして、デパートとかスーパーにわれわれがちょっと繊維の加工賃を上げてやれと言うのも、一体どういうリアクションになるのか。現実問題として事情はわかりますし、側面から取引慣行とかそういう問題ではできるだけやっているのですけれども、加工賃自身の規制というか直接介入というのは非常にむずかしいので、われわれも実はなかなかいい策がないというのが現状でございます。
  428. 簑輪幸代

    蓑輪分科員 大臣にお尋ねしたいのですけれども、ただいま申し上げましたように非常に加工賃が低くて、七年前と比べて同じとか下がっているとかということは実にゆゆしい事態なんですね。それで、いま御答弁もいただきましたけれども、このまま放置しておいていいというふうにはちょっと考えられないわけですし、一方、労働者としてある業者のところに雇用契約を結んで働く場合には、最低賃金法とかいろいろな最低保障といいましょうか、そういうものがありながら、零細加工業者の場合はどうにもならないというのはいかにも——岐阜の業者の方々の切実な要望なんですね。その点何かいい工夫を御検討いただきたいと思うのですが、大臣の方でひとつ何か研究してみるという方向をお示しいただけないでしょうか。
  429. 田中六助

    田中(六)国務大臣 加工賃をどうしろというようなことを具体的に申し上げると、それが商品にはね返って、消費者一般がまた高いものを買わなくちゃいかぬというような悪循環もあるかもしれませんけれども、やはり大もとの加工賃が低いために労働圧迫というようなことになるようなことがありますと、これは私どもの責任でもあり、また行政指導面でもやらなければいけないことでございますので、その点十分勘案して対処してまいりたいというふうに思います。
  430. 簑輪幸代

    蓑輪分科員 ぜひそういう生々しい実態から出てくる痛切な願いですので、御検討いただきたいというふうに思うわけです。  最後に、今日の繊維産業の危機を生み出した原因の一つに、繊維製品の輸入の問題があると思います。これはかなり激増しているというふうに見てもいいんじゃないでしょうか。繊維の内需に占める輸入比率が七〇年には四・七%であったものが、四年間に一七・八%までになったことでも明らかだと思うのです。この傾向というのはその後も続いております。わが国では、こういう状況の中で現状を見ますと、繊維と言えば不況というふうにつながってくるような切実な状況があるわけですので、私ども日本共産党としても、以前から中小企業の圧倒的に多い業種に大きな打撃を与えるような競合品の輸入については、適切な制度的規制を加えるべきだということを主張してきております。  この中でも、大手資本が韓国や台湾などに資本、設備、技術、原料などを輸出して、その製品を逆輸入しているという逆輸入問題についてお伺いしたいというふうに思います。  韓国や台湾からどれくらい製品が輸入されているのかというのを見てみますと、たとえば男子用外衣類、女子用外衣類の例を挙げてみます。この外衣類というのは、七一年に全体でも九百十五キロダースだったものが七九年には七千六百十一キロダースというふうに急増しておりまして、これは八・三倍にもなっております。男子用外衣類で見ますと、韓国からのものは、七五年から七九年の五年間をとってみますと数量で六百六十二キロダースから二千八十五キロダースで三・一倍。台湾は七五年から七九年の五年間で数量をとってみますと、百二十三キロダースから五百八十二キロダースで四・七倍。女子用外衣類というのを見てみますと、韓国の例で、七五年から七九年の五年間で数量で三百六十一キロダースから千九十六キロダースということで三倍になっております。これは通商白書に載っている数字でございます。  アパレル産業との関係で見てみましても、日本貿易月表というので調べてみますと、七六年から七九年の間に男子用のスーツは韓国が一・七倍、台湾が約十倍。男子用のズボンも、韓国が一・七倍、台湾が三・三倍。女子幼児用のドレスでは、韓国が一・二倍、台湾が約四十倍。女子幼児用のスーツでは、韓国が一・一六倍、台湾は輸入がなかったのが輸入されるようになっているというふうに輸入がふえてきているというのが統計上も明らかになってきております。こうした中で一層重大なのは、韓国製品や台湾製品に日本の大手企業がかかわっているということだと思います。  通産省の調査によっても、昭和五十二年版の「わが国企業の海外事業活動」というのによれば、韓国に進出した企業、これは約四四%製品を日本へ輸入していますが、繊維の場合は、韓国と日本で合弁でつくった企業が現地で売るのは一六%、日本へ輸出するのが六八・五%というふうになっています。また東洋経済の「八一年版 海外進出企業総覧」によりますと、織維製品を製造するために海外進出をしている企業は全部で延べ百二十六社あります。そしてこのうちの三分の一は韓国、台湾で占められています。  一つ具体的な例を挙げますと、韓国にレナウンが進出して合弁会社をつくり、紳士服をつくっています。合弁の相手先は和信産業という企業です。投資目的のところを見ますと、労働力の利用というふうになっておりまして、製品の販売先は日本となっているわけです。まさに安い労働力で日本へ逆輸入をするというそのことを直接目的にしてやっているというわけです。  これは韓国、台湾だけではなくて、香港のところでもこういう問題がありまして、ダーバンという紳士服の企業ですが、これが進出してスーツの生産をしているわけです。これも労働力の利用を目的とし、販売先は日本というふうになっています。しかも、これは原材料の仕入れ先も日本、つまり日本から原料を仕入れて、現地の安い労働力を利用し、日本に逆輸入をするという、非常に率直な逆輸入問題がここにあらわれているというふうに思います。  このように、アパレルの面でも韓国や台湾からの輸入がどんどんふえているのが実情で、こうしたものは日本でつくられたものに比べて価格が半分ぐらいになり、安い。不況や物価高の中では安いものに消費者の目が向いていくというのは当然で、そうなりますと国内の産業を圧迫してくるということになるわけです。とりわけそういうのに日本の大手企業がかかわっている、進めているというのが非常に重要な問題だというふうに思います。  幾ら政府がアパレル産業の振興というふうに言っていろいろとやっていただきましても、一方でこういうふうに安いものがどんどんと輸入されてきているということは非常に重大になってくるわけで、本当に国内のこのアパレル産業を振興していくというふうに政府としてお考えの場合には、日本の大手資本が韓国や台湾などに資本、設備、技術、原料などを輸出して、そこでつくった製品を日本に逆輸入するというようなものはぜひ規制していただかなければならない、また規制するのが当然ではないかというふうに考えておりますけれども、この点について大臣いかがお考えでしょうか。
  431. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 率直に申しまして、繊維についての輸入問題はなかなかむずかしい問題でございます。マクロで申しますと、繊維製品というのは、去年の例で言いますと五十億ドル輸出して三十五億ドル輸入しておるというわけでございますから、日本の立場というのは非常にむずかしい。ただ輸入を制限すればいいというものでもありません。  私たちの方の基本的な考えは、とにかく輸入よりもより輸出してがんばろうじゃないかということで、積極的にやっていこうじゃないかということを基本にしています。ただ現実問題として、そう申しましても同じ繊維といっても非常に範囲が広いものですから、ある業種は輸入にかなり押しまくられている、あるものは輸出で押しまくっているということになりますので、必ずしも全部マクロでそういうことでいいとは言えません。したがって、われわれとしては致命的になるおそれがある場合はとにかく輸入の調整をさせてもらうという基本方針で、そのやり方は縮みたいにかなり厳しくやっているものもあるし、行政指導ベースでやっているものもある。全般的に言えば、日本の繊維産業を守るという立場、さらに言えば輸出と輸入というものも考えながら同時に考えていくという立場で、常時ウォッチして適切な輸入対策を講ずる。  それで、韓国とか香港とか台湾等の逆輸入問題についても、おっしゃるとおりの現象があります。ただ先生御承知のように、日本のものもファッション化しておりまして、かなりファッション性の高いものはなかなか現地でもいまできないわけです。だからズボンとか下着とかそういうものをわりと主としてやっております。したがって、日本のファッション業界の生きる道は、やはりそういうところに求めなければならないという問題もあります。いずれにしましても、そういう全般の問題の一環として逆輸入問題についてもわれわれ常時ウォッチして、適切な指導をしてまいりたいと思います。  ただ率直に言いますと、いま韓国はむしろ手を引くというような動きさえあります。どちらかというと中国という頭があるので、これまた頭の痛い、中国の膨大な人間を養うということも一方あるわけでございましょうが、なかなか痛い問題でございます。いずれにしても、御趣旨の線でわれわれは行政運営しているつもりでございます。
  432. 簑輪幸代

    蓑輪分科員 最後に、いま私が申し上げました実態を踏まえて、大臣の御見解を簡単にお伺いして、終わらせていただきたいと思います。
  433. 田中六助

    田中(六)国務大臣 蓑輪さんにお答えしたいのですが、やはり大きく見ますとこれは私ども日本が経験し、また過去のいろんな歴史があるわけでございますけれども、繊維産業はどうしても労賃とかそういうような関係で、日本がイギリスのランカスターを追い上げたように、発展途上国というものはそれぞれ労賃が安くて、軽工業といいますか、重工業に走る前にそこから出発するというパターンがございまして、これを日本は自由主義貿易、日本から売るばかりじゃない、向こうからも買うというようなこともやらなければ保護主義貿易になりますから、全体的にそういう輸出入の問題を考えなければいけないと思います。といってそればかりを考えておったら日本はたまったものじゃございませんし、私どもそういう観点から、繊維産業の育成ということはこれまた長い歴史を持っておりまして、常に不況産業という御指摘がありましたがまさしくそのとおりでございまして、私どもも頭の痛いところでございます。特に繊維産業は非常にバラエティーに富んでおりまして、それは合成繊維からくるものあるいは絹、綿いろいろありまして、それぞれの対策がそれぞれ異なっておるのですけれども、私は日本政府はわりに巧妙にうまくこの対策をやっているような気がしますし、そういう両方の観点を踏まえてこれからも対策を練っていきたいと思います。
  434. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて蓑輪幸代君の質疑は終了いたしました。  次に、城地豊司君。     〔主査退席近藤(元)主査代理着席
  435. 城地豊司

    城地分科員 東京電力が茨城県の北茨城市に建設をずる予定になっている石炭火力発電所の建設の見通し等について、現在通産省が把握している状況について最初説明をいただきたいと思います。
  436. 石井賢吾

    ○石井政府委員 北茨城市の石炭火力発電所立地計画に関しましては、昭和五十四年七月に北茨城市長の市議会におきます誘致表明がございまして、これをきっかけにいたしまして東京電力が茨城県及び同市と十分協議を行いまして、昨年の四月から立地の可能性に関する調査、いわゆる事前調査でございますが、これを現在実施しておる段階でございます。ほぼ一年くらいの所要期間と考えますので、近々のうちには終了するのではなかろうかと思っております。  東京電力といたしましては、この調査結果を踏まえまして、立地の可能性を含めて具体的な計画につきまして地元と十分調整をつけていきたい、かつそれを現実の石炭火力発電所立地計画に結びつけていきたいというふうに考えておると聞いております。
  437. 城地豊司

    城地分科員 それらの状況の中で、いろいろ地元市議会、市長等々できるだけこの石炭火力を誘致するといいますか、建設することに積極的な人たちの動き、それと一つにはやはりこの電源立地の問題ではどこの地域でも問題になっております地元のコンセンサスといいますか、そういうことが問題になるのですが、それら地元の状況について把握している点がありましたら発表していただきたいと思います。
  438. 石井賢吾

    ○石井政府委員 十年くらい前でございますか、こういう石炭火力発電所建設に関しまして一部に反対の声あるいはそれを推進する声がこもごも沸き起こった経緯があったようでございますが、そういう経緯を踏まえまして五十四年に北茨城市長の誘致表明があったという意味におきまして、私ども今後はそれをきっかけにして地元との十分な調整を加えていけば、必ずや御理解を得られるのではないかというふうに期待しておるわけでございます。  現在の立地可能性についての事前調査が終わりますと環境影響調査に入るわけでありますが、これらについて入念な調査を実施し、それについての厳正な審査の上に立って公害を極力防止するような火力発電所の建設がこの地点にできればということで、われわれも期待しておるわけでございます。
  439. 城地豊司

    城地分科員 この北茨城市の関係状況は理解いたしましたが、それとの直接的な関連はないのですが、勝田市、那珂湊市、東海村という北茨城市とそう遠くない地域に水戸射爆場跡地がありまして、射爆場跡地に国営海浜公園をつくるとか、さらに流通港湾をつくるとかいろいろな計画があります。そういう計画の中に、地元の新聞等で報じられたところによりますと、石炭火力の計画があるというような報道が載っておりますが、これらについてどのように把握しておられるか、伺いたいと思います。
  440. 石井賢吾

    ○石井政府委員 現段階で、水戸射爆場跡地利用につきましては国土庁がその利用計画を煮詰めておる段階というふうに承知いたしておりますが、かねて東京電力及び電源開発株式会社がこの地点におきましても石炭火力発電所の建設の希望を持っておりまして、それぞれの社から国土庁等関係のところに要請が出されておるということは承知いたしております。当省といたしましても、こういう地点に電源立地ができるということは、首都圏の供給安定という意味におきましても、かつ茨城県における工場電力の需要に対応できるかっこうの地点ではなかろうかというふうに考えておりまして、この跡地利用計画が決定した段階におきまして、その計画を踏まえまして火力発電所の建設について検討してまいりたいというふうに思っております。
  441. 城地豊司

    城地分科員 電源立地として非常にかっこうの地点だというふうに言われましたが、考え方として、北茨城市と勝田市との間の距離はそう遠くない、六、七十キロの地点の中にあるわけでありますが、そういう中で、しかもどちらも同じ海岸線ということで、北茨城市の方もある意味で進んでいる。そして、それらの中で近いところの勝田市にも——勝田市といいますか、水戸射爆場跡地に同じような系統の石炭火力が建設されるとしたら、一般的にはそんな近いところに同じような石炭火力をという声が出るのじゃないかというように考えるのですが、それらについては通産省としてはどういう御見解に立たれますか。
  442. 石井賢吾

    ○石井政府委員 茨城県における石炭火力発電所立地に関しましては、特に東京電力におきます管内の需給計画上その要否を十分詰める必要があるわけでございますが、私ども現在五十六年度の各電力会社の施設計画を検討いたしておるところでございますが、東京電力に関しましては昭和六十年代半ばにかけまして相当規模の火力発電所あるいは原子力発電所の立地が需給上必要であろうというふうに判断をいたしております。もちろんこの計画が確定いたしませんと確たることは申し上げられませんが、現段階の検討過程におきまして数百万キロワットの発電所の立地がこの管内において必要であるというふうに考えておりまして、これらをどういう手順で実現していくか。いま先生指摘の一地点でも足りるじゃないかということでございますが、その地点において港湾整備との兼ね合いとか関連諸施設の整備のぐあいとか、そういったものをすべて総合しながら一つの石炭火力発電所をつくっていかなければいかぬわけでございますが、果たしてその地点において複数同時に着工できるのかどうか、いろいろ問題があろうかと思います。そういう意味におきましては、今後の調査の結果を待たなければわかりませんが、一応石炭火力発電所の適地というふうにみなし得るところであればできるだけ数多くの地点が地元の理解を得て現実的な計画に結びついていくというのはわれわれの歓迎するところだというふうに考えております。
  443. 城地豊司

    城地分科員 石炭火力の問題につきましては、私どもも松島火力とか磯子火力とかというところを見て、従来の石油よりもさらに公害が少ないというようなことで認識をしているわけですが、最近いろいろな研究者の発表等によりますと、石炭火力は水銀公害が非常に大きいというような発表も聞いておるのです。それらについてはどのように考えられますか。
  444. 石井賢吾

    ○石井政府委員 これまでいろいろな研究をいたしておりますが、一般論といたしましては、土壌に水銀が包含されておりますので、当然その土壌の一環でございます石炭にも水銀の含有が考えられるわけでございます。しかし、これまでいろいろ研究した限りにおきましては、大気に拡散される段階におきまして有意な計数の水銀を見出したという結果はまだ出ておりません。一部に米国の研究所の例を引きましてそれをもって水銀の問題は相当大きな問題があるんじゃないかという御指摘がございますが、私どもとしましては、特に米国におきます石炭火力発電所がきわめて低位の集じん機のみしかつけてないというのに対しまして、わが国の石炭火力の場合には、高性能の電気集じん機はもちろん、湿式の脱硫装置あるいは排煙脱硝装置、こういったものを現在同時に併用させておるわけでございまして、特に水銀のような場合には温度を下げることによりまして回収される率が上がるのではないかというふうな見方も一部ございまして、また最終的に大気に放出される水銀がどのくらいかという具体的な数値の捕捉までには至っておりませんけれども、米国の石炭火力発電所の数値だと言われるものをもって直ちに日本に同じような問題があるかと言えば、大分事情が違うのではなかろうかというふうに思っております。
  445. 城地豊司

    城地分科員 大分時間がおくれておりますから、最後に締めくくりで終わりたいと思います。  北茨城で進んでいる状況でございますが、地元住民の人たちのいろいろな意向をいま無理のない形で聞いているという状況だろうと思います。しかし最近、日本全体の各電源立地なんかの状況を見ますと、必ずしもそういうような形で聞いていないところもあるからある意味でいろいろ問題が多く出ているということなので、ぜひともそれらについては十分地元の意向を聞くような形での通産省の指導もお願いをしたい。  それから、先ほどは御答弁をいただきましたが、北茨城市と水戸射爆場跡地、両方に石炭火力をそれぞれに設置するということが是なのか非なのかという点についてはまだ結論は出ていないと思うのです。ただ、非常にたくさんのその種の発電所が必要である、しかもあの地域は工業地帯で非常に電力も消費するという意味では理解できないでもございませんけれども、水戸射爆場跡地の問題はきょうの通産省だけの問題じゃなくて、むしろ国土庁その他との関係におけるあれだけ広大な地域の利用ということで考えなければならない一面もありますから、一概にだから賛成とかだから反対ということで申し上げているわけではありませんが、さらにそれらの設置についても地元住民の意向を十分尊重できるような立場での指導をぜひお願いをしたいというように考えて、私の質問を終わります。
  446. 近藤元次

    近藤(元)主査代理 これにて城地豊司君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前九時三十分より開会し、通商産業省所管について質疑を続行することにいたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十九分散会