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1981-02-28 第94回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月二十八日(土曜日)     午前九時三十分開議  出席分科員    主査 橋本龍太郎君       池田 行彦君    小渕 恵三君       小山 長規君    三原 朝雄君       阿部喜男君    石橋 政嗣君       上田 卓三君    大出  俊君       広瀬 秀吉君    矢山 有作君       山口 鶴男君    横路 孝弘君       鈴切 康雄君   平石磨作太郎君       東中 光雄君    兼務 武部  文君 兼務 渡部 行雄君    兼務 岡本 富夫君 兼務 塩田  晋君    兼務 三浦  隆君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      中山 太郎君  出席政府委員         内閣官房長官 瓦   力君         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  石川  周君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         内閣総理大臣官         房管理室長   関  通彰君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         総理府賞勲局長 小玉 正任君         総理府恩給局長 小熊 鐵雄君         総理府統計局長 島村 史郎君         青少年対策本部         次長      浦山 太郎君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         外務大臣官房審         議官      栗山 尚一君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         中小企業庁計画         部長      木下 博生君         運輸省船舶局長 野口  節君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君 分科員外出席者         内閣官房内閣審         議官      藤沢 建一君         北海道開発庁計         画官      滝沢  浩君         防衛庁防衛局運         用第一課長   萩  次郎君         外務大臣官房領         事移住部領事第         二課長     岩崎 允彦君         外務省条約局法         規課長     野村 一成君         大蔵省主計局主         計企画官    藤原 和人君         大蔵省主計局主         計官      千野 忠男君         大蔵省理財局国         債課長     鈴木 達郎君         厚生省年金局年         金課長     佐々木喜之君         通商産業省通商         政策局経済協力         部企画官    細田 博之君         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     西中真二郎君         労働大臣官房参         事官      田代  裕君         会計検査院事務         総局次長    藤井健太郎君     ————————————— 分科員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     広瀬 秀吉君   大出  俊君     岩垂寿喜男君   横路 孝弘君     山口 鶴男君   鈴切 康雄君     草野  威君   東中 光雄君     栗田  翠君 同日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     鈴木  強君   広瀬 秀吉君     阿部喜男君   山口 鶴男君     五十嵐広三君   草野  威君    平石磨作太郎君   栗田  翠君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     矢山 有作君   五十嵐広三君     横路 孝弘君   鈴木  強君     大出  俊君  平石磨作太郎君     田中 昭二君 同日  辞任         補欠選任   矢山 有作君     上田 卓三君   田中 昭二君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     石橋 政嗣君 同日  第二分科員岡本富夫君、塩田晋君、第三分科員  三浦隆君、第四分科員武部文君及び第五分科員  渡部行雄君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算  〔内閣及び総理府所管総理本府)〕      ————◇—————
  2. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算及び昭和五十六年度政府関係機関予算中、内閣所管について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 きょうは会計検査院法改正問題をめぐって若干の質問をいたしたいと思うのですが、この問題は、あらゆる機会に非常に議論を尽くされてきておるわけであります。本会議の衆参における決議ないし議決も、前後六回にもわたって院法改正をすべきであるという趣旨決議がなされておる。決算委員会あるいは予算委員会における質問もかなり数多く行われておる問題でございますが、一向にはかばかしい展開を見せてない、進展を見せてないということについて、私は、まず質問に入る前に、きわめて遺憾なことである、こう言わざるを得ないわけです。  会計検査院では、これはロッキード、グラマン等航空機輸入問題をめぐる問題の調査会計検査院検査等に当たっての法の不備、そういうものが事態真相解明にとってきわめて不十分なものである、こういう趣旨だろうと思うのでありますが、昭和五十四年の四月九日に院法改正案最終要綱決定されておるわけです。この決定に従って、政府にもその旨、会計検査院法改正の必要ありということを申し出をしているはずであります。そういうことについて、現在その必要性というものは非常に強いものがある、こういう見解に立っておられると思うのでありますが、まず会計検査院藤井さんに、会計検査院のお立場、今日における皆さんのお考えをここで率直にひとつ述べていただきたい、こう思うのです。
  4. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  会計検査院におきましては、会計検査院権限を充実強化すべきであるという衆議院参議院におきまして再度にわたりまして御決議をいただいております。それから、その際におきます政府側答弁におきましても、会計検査院がその検討を速やかに終えて政府に相談してくれというような御発言もございました。そういった関係で、昭和五十三年以来会計検査院法改正作業を行ってまいったわけでございます。  その内容は、国家資金使途に対します検査徹底といいますか、十分に検査をするという見地に立ちまして、主として公庫等融資業務の適否を検査する際に、その融資先に対しましても必要最小限度調査を及ぼし得るというような趣旨でございます。一方、融資先立場を極力尊重いたしまして、いろいろな配慮をいたしております。現在公庫等を通じて行われます貸付額、それが非常に多くなっているわけでございます。会計検査院といたしましては、そういった点で、その使途に対します検査をもう少し十分にしなければならないという立場はいまも変わっておらないわけでございます。また、衆議院参議院の御決議もこの趣旨であろうかというふうに考えているわけでございます。このような理由で、今回院法改正をお願いしているわけでございます。  なお、その改正案につきましては、御案内のとおり、私契約に対する公権力介入じゃないかというような御議論がございます。また、政策金融に対する、何といいますか、その推進支障があるんじゃなかろうかというような御議論もございます。そういった政策論議もございますが、これらはいずれも会計検査院という立場調整を図るためには非常に困難がある、限界があるというふうに考えております。したがいまして、より高い見地から御判断をお願いするために、五十四年の五月ごろ内閣にその調整をお願いしているところで、現在もその立場は変わっておらないわけでございます。  以上でございます。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 会計検査院のお立場はわかりました。私も非常に重大な関心を持ち続けてきたわけでありまして、議院運営委員会等におきましても、憲法上の機関であり、しかも内閣から明確に独立権限を付与されている、そういう立場で、この問題は、内閣から独立した憲法上の機関である会計検査院改正の必要ありというならば、当然それは政府としてはほとんど無条件に近い形で受け入れて、国会に内閣が提案をするということが必要なのであろう、こういう議論議院運営委員会でも述べ、当時の官房長官にそういう要請をした記憶もあるわけであります。  ところが、いまその必要性のあるものの中で今度の法改正をしたいという部分は、いわゆる二分の一出資法人である特殊法人、こういうものの融資先に対する検査をする必要がある、こういうことにかなりしぼられておるわけでありますが、その中でも、大蔵省所管のもの、通産省所管のものが非常に多いわけであります。  いま検査院の方からもお話があったように、どうも私契約に対する権力過剰介入ではないかという観点からの反対が非常に強い。あるいは特殊法人をつくって政策金融をやっておるのに、その政策金種が水をかけられるというか差されるというか、いわゆる政策金融推進が逆に後退してしまうおそれがあるのだというような角度から、どうも大蔵通産あたりからの反対が、まあそのほかにもたくさんあるのです、各省まだ調整がついてないというのはそのほかにもあるのでしょうけれども、そういう観点からの反対だというのでありますが、私は後でこれは長官によく質問したいと思うのですけれども、まず、大蔵省銀行局長おいでですから、そういう点について、あなた方の立場はどういうものであるか、なぜこれをすんなり受け入れられないのかということについて、ひとつあなたの方の所見を述べていただきたいと思います。
  6. 米里恕

    米里政府委員 会計検査院検査権限の問題につきまして、お話のございました融資先への立入調査というものを法制化するというようなことについての私ども考え方でございますが、御議論がございますように、検査院検査徹底という角度から見れば、会計検査院のこういった権限が強化されればされるほど検査徹底が行われるのではないかということは御説のとおりだと思います。  ただいまも広瀬先生指摘のございましたように、私どもには、いろいろそれ以外の観点からこの問題を考えていかなければならないのではないかと考えられる点があるわけでございます。  まず一つは、いまも御指摘のございました公権力の過剰な介入になるおそれが強いのではないかという点でございます。それで、先生よく御承知のとおり、政策金融機関というものが行っております融資というものは、あくまでも政策目的に即して、民間経済活動を支えながら、その自由な経済活動を生かしながら政策目的を達成する、そのために融資を行いまして民間のその分野における経済活動助成、誘導していこう、こういう考え方から政策金融機関を通じて融資を行うという形をとっていることは先生よく御存じのとおりでございます。  これがいわゆる補助金というような性格のものでございますと、直接財政資金が支払われるというようなことであろうかと思いますけれども政策金融機関を通じる融資というものは、あくまでも政策金融機関のいわゆる金融機関的な判断のもとに私契約において助成、誘導が行われるというようなものであろうかと思います。そういった基本的な考え方は、あくまでも民間の自主的な経済活動というものを中心にいたしまして、それをできるだけ自由主義経済体制にふさわしいような形で活用していこう、こういう基本的な考えと思いますが、そういった場合におきまして、その私契約相手先である融資先に対しまして直接検査院立入調査をなさるというようなことは、公権力としてはかなり広範な介入である。  御承知のように、産業界中小企業者農林漁業者というものは政策金融の対象になっておりますのは大変な数がございます。約数百万件ぐらいになろうかと思いますが、そういった活動に対して直接に公権力が及ぶということになりますと、これはかなり広大な公権力の発動ということになりまして、果たしてこういった政策金融機関を通ずる融資というものの性格に即しているかどうかということは、私どもはきわめて疑問があると申し上げざるを得ないわけでございます。  それから、もう一つの問題は、これもいま御指摘のございましたように、政府関係金融機関融資先に直接立入調査が行われるということになりますと、融資先に対しまして非常な畏怖心を与える、あるいは過重な負担がかかるというようなことになりまして、こういった法的権限がつくられますと、どうしても農林漁業者あるいは中小企業者方々融資を避けるようになる。そうなりますと、政策金融が有効に機能するということについての障害が生ずるのではないかということを私どもは心配しておるわけであります。むしろ、現在農林漁業者あるいは中小企業者方々からは手続を簡素化してくれというような御要望まで出ているところでございまして、法改正については重大な影響があるということで、これらの業界から反対要望書まで提出しておられるというようなことでございます。  現在、政府関係機関は、検査院検査に対してできる範囲内での御協力を申し上げておる、いわゆる肩越し検査というようなことまで行われておるという状態でございますので、現在の進め方、システムというもので十分検査院検査は効果が上がるというようなことになっているのではないかというふうに私ども考えております。  今後ともに、政府関係金融機関は、現在のやり方における検査院検査には十分積極的に御協力する意図がありますし、また私どももそのように指導してまいりたいと考えておるわけでございます。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 通産省にお聞きしたいのですが、大分時間がたっちゃって、あと長官質問する時間がなくなるので、通産省立場を簡潔にちょっと説明してください。
  8. 木下博生

    木下政府委員 お答え申し上げます。  いま銀行局長の方からお話がございましたが、通産省関係でも中小企業関係金融機関を所管しておりまして、中小企業関係金融機関の場合には、一般融資の際の審査におきましても、民間金融機関よりも一件ごとに非常に厳重な審査をしているということで、会計処理にふなれな中小企業の間には、むしろもう少しその手続を簡素化してほしいという要望があるくらいでございます。したがいまして、現在行われております以上に政府法的措置によりまして検査をするということになりますと、非常に大きな負担中小企業者に与える、そのようなことになりまして、先ほど銀行局長の方からもお話がありましたけれども中小企業振興のためにやっております政策金融支障を来すおそれが十分にあるということでございまして、私どもとしては本改正については慎重にしていただきたいと考えておるわけでございます。  肩越し検査というようなことで、現実には、そういう金融機関調査をする際に同時に企業検査も行われておりますけれども、この場合でも、金融機関からは相当の説得をしてやっと企業に納得をしてもらった上で検査をしておるというような状況でございます。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 まさにいままで述べてきたとおりのことを皆さんは述べておられるわけであります。問題は政府出資法人特殊法人ばかりでなく公社、公団等一〇〇%政府出資法人あるいは金融機関等民間融資をする、その政策金融趣旨から言って、どこも恐れてしまって政策金融が後退して、あるいは停滞してしまうんじゃないかというようなこと、私契約に対する権力過剰介入である、こういうことを相も変わらず主張されるわけですけれども、その金が一体どこから出ているのか、純然たる私契約なのかというようなことだって、これはもう国の金であり、国民大衆の金であり、税金である。こういうものを使って契約が行われる。そういうようなものを純然たる民間民間の私契約と概念していいのかどうか、そういり点、まず非常に重大な問題だと思うのです。  それに対して権力過剰介入するというようなことにはならぬだろう。国の金を借りる、国民税金を使ったならば、その目的のとおりに正しく使われて政策金融目的が達成されているかどうか、検査に入る場合には、そういうものについて一定の疑わしさというものがなくて、ただもう権限が付与されたからといって行くような趣旨でないということは、会計検査院が提出した要綱にもきちんと四段階の歯どめすらかかっている。それをまだそういうところに固執されているということは、きわめて遺憾な態度だと思うわけです。  そこで長官、もうあなたも、ことしの予算の総括の段階でも質問者もありまして、一定のお答えをいたしております。その中で、渡辺大蔵大臣が答えている部分等についても非常に疑問があるわけであります。商工中金から金を借りる人に会計検査院に調べられるぞと言うと喜ばない、したがって、法律で決めるとそれがひとり歩きしてしまうという問題がある、開銀とか輸銀などは、大蔵省政策のトップですから、会計検査院検査をする、輸銀から金を借りる利用者は大ぜいいるが、そういう場合に、輸銀を使ったものは皆会計検査院調査がありますよといった場合、果たして現在のように利用するかどうか問題だ、会計検査院が、国の経費をむだなく有効に使っているか一生懸命やっていることは大変ありがたいし、国は云々、これは大蔵大臣答弁速記録を写し取ったものでありますが、そういうようなことを言っている。いま同じようなことを事務当局も言われたわけであります。  いま私が言いましたように、これは単なる民間純然たる私契約とは違う、その根本になる金は国民のものである、こういう立場に立って、いわゆる権力過剰介入という問題は、それほどクローズアップして事務当局が言うような形のものであるかどうか。そしてまた、融資先がそういうふうに会計検査院に常時入られたらかなわぬからというので、政策金融展開が思うようにいかぬというようなことを言うことに理由がありますか、私はないと思うのです。  というのは、そういうことで金を借りたくないというのならば、それはそれだけの余裕があるから借りないのでありましょうし、不正をやる、何か目的外に使用するのだというようなこと、あるいは業務方法書なり何なりに決められたものから逸脱した行為をやるということを常時許すのだ、政策金融を利用するというのはそういうものなんだ、かかわっている人たちはそういう思いをするかもしれない。そういう点では私は非常におかしい態度であろう、こう思うのであります。そういう各省調整するのはあなたのお仕事であり、歴代官房長官田中六助さん、それから伊東さん、それからあなたと三代がかっていまだに何の進展も見せてないということについて、官房長官のお考えを聞きたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和五十四年に大平総理大臣が何とか調整をいたしてみたいと申し上げまして以来、御指摘のように、歴代官房長官はこの問題の調整を試みてまいったわけでございますけれども、今日に至りますまで十分な成果が上がっておりませんことを申しわけなく考えております。広瀬委員の言われましたようなお考えは、私は一つの御見識であると存じます。他方で、先ほどお聞き取りいただきましたようなことが大蔵通産当局考えでございまして、会計検査院独立官庁でございますだけに、この調整には非常に慎重にならざるを得ない。簡単に私に任せてくれというようなわけにはどうも事柄はまいらないというようなことで延引しておるわけでございます。  たまたま、昨年の暮れでございましたが、新しい院長がお訪ねくださいまして、自分としては、政府にもまた政府機関にも勤めた経験があるので、そちらの立場経験上わかる、したがって、それらの人々とも話し合って何か説得をし解決を図ってみたいというお話がございました。私も努力いたしますが、ぜひそれはお願い申し上げたいということを申し上げまして、ことしになりましてからも、なおそういうことについてのお話が新院長からもございました。必ずしも十分その方のお話はいまだ進展していないようでございますけれども、そういう関係者お話し合いというものももし進めば大変事態解決に役立つ。それとあわ世まして、私どもとしましても何とか打開をしてまいりたい。ただいまいろいろなことを考えつつございますが、今日までのところ、十分進展がございませんことはまことに遺憾なことに存じております。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 長官、御就任になってから、今度の大村院長がそういう反対を言うような官庁に対して、従前からの関係もあってかなり説得しやすい立場にあるということでまずやってみたということでありますが、長官のところで各省大臣などを、特に反対の強い大臣などを、たとえば大蔵とか通産とか農林とか、そういうような関係の深い、また反対もはででかなり強くしてきたという関係者大臣を呼んで説得に当たられるという作業長官としてはまだ一回もおやりになっておらないわけですか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは終局的には閣僚の御決断になるわけでございますけれども事柄がかなり事務的な性格を一方では持っておりますから、事務当局には内閣官房に来てもらいまして、実は話を何度も聞いておるわけでございます。そのめどがある程度つきませんと、閣僚においで願って終局的に妥協をしていただくというわけにまいりませんものですから、なるべく事務当局の話を丁寧に聞こうということでやってまいっております。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 これはもう長官は十分御承知だと思うのですけれども会計検査院では、各省のいろいろなそういう過剰介入であるとか政策金融が後退するとかというようなことを考慮して、四つの歯どめをかけている。このことだって御存じだろうと思うのです。  調査は、民間会計のうち、当該財政援助に関する会計範囲内に限ることとする。調査等を行うときは、これを関係者に通知すること。調査するときは、検査を受ける政府出資法人の職員の立ち会いを求めて、これを行うものとする。調査等を行う財政援助等相手方決定は、検査官会議で行う。  ですから、べたに一般的に何百万件もあるというような説明銀行局長はいたしましたけれども、そういうところに定期的に毎日のように無条件に行っているということではないのですね。こういう慎重な手続で、疑わしきものについてはここまで検査をしなければ本当の目的が達成されない、会計検査院としての立場から言えば、国の税金が、国費が使われるという問題について完璧を期し得ないという立場で、こういう歯どめをかけながらやっているにもかかわらず、単なる権力過剰介入になるだろうというようなことを依然としておっしゃる。政策金融相手方がたじろいでしまって今度は借りにこないだろう、恐れおののいてしまうと言う。恐れおののくなどということは、それでは最初から政策金融というのは甘い汁が吸えるものだ、不正をやっても見逃されるものだ、こういうことを容認した立場じゃないですか。  そういう点について、いまこそ官房長官が積極的に乗り出して各省調整して、こういう中身のものであるということについて一歩大きく前に進めて、法改正ができるようにすることこそが、政治的道義をきちんとしたいという鈴木総理の最初に就任演説を本会議でなさったときの趣旨にも合致する道であろうというように思うのです。その点で、もっと積極的にこの問題について取り組む姿勢がありますか、そのことをお伺いしたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども政府委員がお答えをしておりましたが、金融を受ける中小企業者あるいは農業関係の人々は、ふだんそういうことに十分なれている人ではございませんから、大変偉いお役人が検査に見えるということが前提になるという場合に、畏怖を抱くあるいは大変に負担に感じるということ、こういう意味のことを申し上げておったと思うのでございます。それはもちろん不正があるからということを前提にしているのではなく、一般に確かにそういうことに比較的無縁の人々はそういう感じを持つという、そのことも一概に無視することはできない要素であろうとは考えております。  しかし、もとに戻りまして、この問題はいかにも長引いておりますので、何か打開を図らなければならないということを実は考えておりまして、もう少し努力をさしてみていただきたいと思います。
  15. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 広瀬君、時間が参りましたので締めくくりをお願いします。
  16. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 時間が参ったようですからやめますが、ぜひひとつ三代目の長官、二度あることは三度あるなどと言いますけれども、せめて三代目の長官ぐらいはこの問題についてやはりけりをつけるぐらいの勇断を、しかも正しい立場に立っているという鈴木内閣の政治姿勢の基本に触れる問題のあかしにもなる問題である、そのように思いますので、ぜひひとつ一歩前に進めていただくようにお願いします。
  17. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で広瀬秀吉君の質疑は終了いたしました。  次に、山口鶴男君。
  18. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 第二臨調も、昨日の参議院の本会議でしたか、国会承認を終わりまして、発足をするようでありますが、行政改革が今日の重大な課題であるということを否定する者はだれもいないと思います。ただ、この場合、国の機構を論議することも必要だと思いますが、同時にこれに準ずると申しますか、従来から言われておりますいわゆる公社、公団というものを一体どうするかということも一つの論議の対象だろうと思います。同時に、さらにこれに準ずると申しますか、認可法人及び公益法人、こういうものの中に、国費が出資金あるいは補助金、補給金等々の名前でずいぶんたくさん出ているわけでございまして、こういった機構に対してもメスを入れると申しますか、論議の対象にすることが必要ではないだろうか、かように思います。  そういう意味で幾つかのお尋ねをしてみたいと思うのですが、総理府とそれから内閣官房でいわゆる認可法人、公益法人、それぞれその実態を把握していると思うのですが、まず、一体幾つあるのかということからお尋ねをいたしましょう。
  19. 関通彰

    ○関(通)政府委員 公益法人の数についてお答え申し上げます。  公益法人のうち、本省所管のものが四千二百でございます。中央官庁の地方支分部局所管のものが千でございます。それから知事が認可いたしましたものが八千七百、それから県の地方教育委員会所管のものが三千四百、合計いたしまして約一万七千でございます。これは公益法人でございます。
  20. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 認可法人は幾つあるのですか。
  21. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 認可法人につきましては、私ども審査権限を特に有しておりませんけれども、一応把握している数は九十九というふうに承知しております。
  22. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 膨大な数があるわけですが、このうち公益法人につきまして、地方自治体が認可いたしたものをここで議論をするのはいかがかと思いますから、それはいたしません。また、支分部局で認可したものをここで議論いたしましても少しあれですから、本省で認可いたしましたものについて議論を進めてみたいと思うのです。  そこでさらにお尋ねいたしますが、認可法人九十九、これに対して出資金、補助金という形で過去三年間どのくらいの国費が出ておりますか、お尋ねをいたします。  あわせて、公益法人、本省認可のものだけでも四千二百あるそうですが、この四千二百のうち、国費の中から補助金、補給金、委託金というような名目で一体どのくらいのお金が過去三年間出ているか、五十六年度予算、五十五年度、それから五十四年度で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  23. 藤原和人

    ○藤原説明員 お答えいたします。  最初に、公益法人に対します補助金等の過去三年間の件数と金額を申し上げますが、五十四年度が六百四十二件、九百三十三億一千万円、五十五年度が六百四件、九百六十三億七千百万円、五十六年度が五百七十五件、九百四十七億一千六百万円でございます。  また、認可法人に対する補助金等の金額でございますが、総額で申し上げますと、五十四年度が四百五十五億七千八百万円、五十五年度が四百五十一億二千二百万円、五十六年度が四百五十一億五千七百万円、こういうことになっております。
  24. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 別に出資金があるでしょう。  それから、公益法人に対しては私の手元の資料とちょっと数字が違うのですが、もう一度言ってください。
  25. 藤原和人

    ○藤原説明員 認可法人に対します出資金の額は、五十四年度が六十億二百万円、五十五年度が六十四億八千八百万円、五十六年度が八十九億一千百万円でございます。  それから公益法人に関する補助金等の金額でございますが、合計で申し上げますと、五十四年度が九百三十二億一千万円、それから五十五年度が九百六十三億七千百万円、五十六年度が九百四十七億一千六百万円でございます。
  26. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 とにかく膨大な国費が支出されているわけですが、問題は、このような認可法人、特に数の多いこういう公益法人、それぞれ各省が社団法人あるいは財団法人として認可をしているわけですけれども、そういうものの名簿をずっと各省出していただきたいということを私はお願いしたのですが、丁寧な資料を出してくる省もあれば、きわめて不親切な資料を出してくるところもある。少なくとも、国の予算の中から補助金あるいは出資金、補給金等々出ているわけでございますから、各省がどのような仕事をやっておるのか、それからその団体の役員は一体どういう方であるのかというくらいのものは、各省きちっと把握をして、そして、私どもが資料の提出要求をいたしましたら素直に出してくるというくらいのことは、あたりまえじゃないかと思うのです。官房長官と総務長官、お二人おられるわけですが、一体お二人のうち、どちらがこの問題を総括的に管理監督する立場にあるわけなんですか。これをまずお答えをいただきたいと思うのです。
  27. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  先生指摘のいわゆる監督権限、こういうものは、御案内のように民法三十四条、六十七条の規定によりまして、各省庁が主務官庁となって設立の許可及び監督指導を行う、こういうことでございまして、総理府は各省庁の公益法人を含めた全体に関することの指揮権限というものはない。  ただし、いま、各省から求められたいわゆる報告資料等は、丁寧なものあるいは不親切なものがあるという御指摘でございます。委員部に御請求のありましたもので総理府で連絡調整をやるということは、これは十分いたしたいと考えております。
  28. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 もちろん監督権限各省庁にあることはもう十分承知でありまして、ただ、内閣のどこかの省あるいは庁が全体像を把握をいたしまして、全体としてそれに対してある程度チェックをしていくということは、これは当然必要ではないだろうかと思うのです。  そこでお尋ねをしたいのですが、この役員をずっと拝見をいたしますと、鈴木総理大臣を初め各閣僚皆さん、国会議員の方、元国会議員の方あるいは各省の事務次官をされた方、局長をされた方等々のお名前がずらっと出てくるわけですが、そういったものをある程度実情を全体として知りたいなといったときに、総理府に言ってきてもそういうことはさっぱりわかりません、こういうようなお話でありまして、これでは困ると思うのですが、いま申し上げた役員の名簿くらいは総理府の方で全体像がわかるというくらいのことをおやりになったらどうですか。そうしてまた、その場合私どもが資料要求をいたしましたら、はい、こうです、というくらいのサービスができてしかるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  29. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  御趣旨はよく理解できますので、今後そのように検討させていただきたいと考えております。
  30. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 検討でなくて、とにかくその四千二百、もちろんこの中には国費の出ていないものもありますし、出ているものもある。五十四年度、五十五年度、五十六年度、資料を拝見いたしますと、約六百くらいの公益法人に対して補助金なり補給金なりというものが出ているようでございますが、少なくとも国がお金を出している公益法人についてくらいは、総理府なら総理府で全体的にきちっと様子がわかるように仕組みというものをひとつつくっていただく、検討するということじゃなくて、せめてそのくらいに限定しても結構でありますから、全体が総理府できちっとわかるというくらいにしたらいかがなんですか。
  31. 中山太郎

    ○中山国務大臣 総理府といたしましては、行政管理庁あるいは内閣官房ともこれからの扱いについて早急に相談をさしていただきたい、こういうことでございます。
  32. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 ここで宮澤さんにお尋ねしますが、結局、各省庁がそれぞれ認可をしまして監督しているわけですね。それだけに各省のなわ張り根性といいますか、そういうものがあるのかないのかつまびらかではありませんが、もしそういうものがなければ、どこか総理府なら総理府で、そういうものを全体的に把握するということについて何ら抵抗があるはずはないだろうと思うのですね。ですから、行政改革をする、そういうときには、公社、公団のみならず、国がお金を出している認可法人、さらには膨大な数に上る公益法人というものが一体どういう状況なのかということくらいは、やはり内閣としてきちっと把握をするという仕組みをつくることが私は必要だと思いますので、いま総務長官は言いましたけれども、これは閣議全体、また内閣全体を考えておられる立場にある官房長官がこういったことについて積極的に進めるというお気持ちがあれば、私は可能だろうと思うのですね。その点ひとつ、官房長官のお考えを聞いておきましょう。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御主張の御趣旨もよくわかりますので、総理府総務長官ともよく御相談を申し上げてみたいと思います。
  34. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 ひとつそういう御相談をしていただくことをお願いしたいことと、それから官房長官と総務長官のお二人で、それぞれの各省に対して国会議員が、国会議員あるいは元議員、元お役人の方々、そういう方々が、役員としてどういう方が入っておって、その数はどうだというような要求をしたならば、ひとつすぐお出しいただくという指導、助言といいますか、そういうものくらいはやっていただけば、少し手間はかかりますけれども各省に「どうですか」とこう言えば、たとえば運輸省などのようにこういう厚いやつを出してきますと、これは役員がみんなわかるわけでございましていいのですが、省によりましてはこういう薄いものを出してまいりまして、役員全体の姿というものがさっぱりわからぬ、予算もどのくらいだか全然わからぬ、こういうことなんですね。少なくとも役員がどういう方々であり、年間の予算は一体どうであり、また法人ですから当然基金があるはずだと思うのですが、基金はどのくらいあるのかぐらいのことは、これは素直に資料として出したらどうか。そのくらいのものは各省で、各省が認可した法人については、資料をきちっと押さえておいたらどうかということぐらいの御指導は、私はすぐできるだろうと思うのですが、これはいかがですか。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこはやはり考え方の問題になるのであろうと思います。統制的なことをする必要はないわけでございますから、それにならない範囲で、情報としてどれだけのことを知っておくべきかということになるのであろうと思いますので、確かに、役所によりまして相当詳しく知っておりますところとそうでないところとあろうかと思いますが、干渉にわたらない範囲で、なるべく、ことに国会で情報をお求めの場合には、それに対応できますように各省にやってもらう必要があろうと思います。
  36. 中山太郎

    ○中山国務大臣 公益法人に関しましては、公益法人監督事務連絡協議会、二十二省庁に関係するものでございますが、これは総理府にございます。今後とも充実してまいりたいと考えております。
  37. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 とにかく各省庁が法人として認可をして、そしてさっき言いましたように、すべての法人ではございませんけれども、たとえば総理府関係の公益法人、五十四年度は百三十九団体に対して八十一億一千九百万円のお金を出している。五十六年度、今度の予算案でいけば百十の団体に対して九十二億八千五百万円の予算をお組みになっておられる。一番数の多い農林水産省で言えば、五十四年度二百九団体、五十五年度百九十九団体、五十六年度二百三団体、約三百五十億ないし三百四十億円ものお金を出しておられる。こういう状態です。  ですから、本来ならば、この四千二百の公益法人を全体としてこのように把握しておられる省庁もあるわけですから、せめて国費を出しているこの公益法人に対しては、少なくとも役員、それからこの年間の予算案、さらには基金の額というものをきちっと各省庁が把握するぐらいのことは、これはまさにあたりまえのことじゃないだろうかと思うのですね。さらに、認可している団体ですから、全体像を把握することも私はもとより必要だと思います。そのくらいのことができなければ、行政改革をやると言っても、公社、公団あるいは認可法人、いろいろその状況を把握をして改革をお考えになると言っても、それだけでは不十分であって、先ほどお答えがございましたような年間膨大な経費を出したおられますこのものについて、それが果たして必要なのかどうかということですね。  最近ある雑誌等を見ますと、野党側が苦心をしてこの法案を提案した。与野党いろいろ話し合いを持って法律ができた。ところが、その中にちゃんと公益法人ができて、その団体に委託金、補助金等が出て、そこにその官庁のお役人が天下りをして多額の給料をもらっておる。一体何のためにわれわれは苦心をして法律をつくったのだろうか。天下りの場所をつくるために法律をつくったようなものだ。というような記事も、あるいはごらんになった方もあろうかと思うのですが、そういうようなことでは、私は納税者たる国民承知するはずはないと思うのですね。そのためには、まず実情を把握するということから始めることが必要じゃないでしょうか。  どうも宮澤さんの先ほどのお答え、歯切れが悪いわけでありまして、そういう意味で、私の趣旨はわかっていただけると思うものですから、もし私どもが要求したら、各省はそれにこたえるだけの資料をひとつ整備するようにしたらどうか。それからまた、さらに閣僚が御相談いただいて、総理府なら総理府で、全体的なものをきちっと把握できるようなシステムをつくるならつくるということが必要ではないかと思うのです。
  38. 中山太郎

    ○中山国務大臣 鈴木内閣といたしましても、行政機構の改革、整備ということが大きな政治の課題となっております。御指摘の点はきわめて重要な問題でございますので、御趣旨を尊重して努力をしてまいりたいと考えております。
  39. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 官房長官、どうですか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃっておいでになります中で、特殊法人につきましては、これは行政管理庁が一応の所管をしておるということでございます。それから認可法人につきましては、そこはそれほど明確ではございませんが、行政管理庁初め各省庁との間で検討する必要があろうと考えますので、それらのことを含めまして、私としても特殊法人、認可法人につきまして努力をいたしたいと思います。
  41. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 公益法人はどうですか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 公益法人は、これは総理府の所管になっております。
  43. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 総理府の所管ではあるけれども、さっき言いましたように、各省がいろいろななわ張り根性と言っては恐縮ですけれども、そういうこともあって、総理府の方としてもこれからひとつ各省と話をしてということですから、官房長官、その辺はリーダーシップを発揮して、全体像をきちっと把握できるように努力をしてください。  時間も余りありませんので、一つお尋ねしたいと思うのですが、この公益法人を拝見いたしますと、大変大きなものもあるわけでありまして、運輸省所管ですが、日本船舶振興会、代表者は笹川さんですけれども、基本財産が百十億、資産総額が一千二百四十四億、年間の予算が七百三十六億という、大変大きな団体です。もちろんこれはモーターボートによるところの益金の一部から入ってくるわけで、国のお金が出ているわけではございません。これは公益法人だと思うのですが、行管の方は特殊法人扱いをしておる、こう聞いておるわけですが、これは公益法人と言うべきものなのですか、特殊法人と言うべきものなのですか、その辺のけじめは政府としては一体どういうふうにしておられるのですか、お尋ねをいたします。
  44. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 ただいまの御質問でございますが、船舶振興会につきましては、特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされている法人というわけでございますので、特殊法人であるというふうに言えると思います。特殊法人でございます。と同時に、モーターボート競走法上「民法第三十四条の規定により設立される財団法人とする。」旨が規定されておりますので、いわゆる公益法人というものでもあるというふうに考えております。
  45. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そういうややこしい存在だということは私も前から承知しておったのですが、こういう形になっているということに対して疑問をお感じになりませんか。もちろん法律をつくったのは国会であって、しかもモーターボート競走法は、私もこの法律の制定の経過を見ましたが、議員立法ですね。しかも衆議院で通りまして、参議院へ行ったが、参議院では否決になった、憲法の規定によりまして、衆議院が三分の二以上の多数でもって可決すれば法律になる、こういった憲法上きわめてレアケースの異例な経過でこの法律はできたということも承知をいたしております。そういう中で、このような法律の中に財団法人とするということになっており、しかも法律に基づいてできたものだから、見方によっては特殊法人なんだ、そういうふうに行管庁が認識をされる、そういう形になっているということは私も承知をいたしておりますけれども、これは当時のあのような事情のもとでできた法律で、もちろん国会に私は責任があると思うのですが、この点をやはり整理をする必要があるのじゃないだろうか。しかも、先ほど申し上げたように特別大きな団体です。しかも、これは公営競技という特殊な行為によって、その益金の一部を吸い上げて運営している団体です。それだけに、私は、国民から見て、特殊法人であるし、認可法人であるというようなぬえのようなかっこうになっておるということは、これはやはり改めるべきだ、こう思うのですが、政府としても当然そういうお考えがあってしかるべきじゃないかと思うのです。どうでしょうか。本来ならば、これは運輸大臣ということですが、これは政治家としての宮澤さんに、宮澤さんは非常に近代的な合理主義者だと承っておるわけでございますから、宮澤さんなどは私と同じように、これはおかしいな、こうお思いになっておるだろうと思うのですが、どうでしょうか。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私、所管大臣でございませんので詳しいことをよく存じません。ただいましかし、御指摘のように非常に長いいきさつのある団体で、そして三十年近くモーターボート競走を運営をしてきておるということで、やはり一つのそういう社会的な存在として定着をしていったということでございましょうから、それはそれとして尊重していいのではないかと考えております。
  47. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 疑問を感じませんですかね。問題は、財団法人それから特殊法人の違いはどうかと言えば、役員が任命制であるか、認可制であるかなんですね。そこにやはり問題があるのではないかと私は思うのです。かつて、担当の運輸大臣の方で、この問題に関して感想を漏らされた方もあったやに記憶をいたしておりますけれども、実は私どもとしてもこの問題につきましては超党派の議員懇談会をつくりましていろいろ検討もいたしております。やはり特殊法人であり、財団法人、公益法人であるというような二面性を持ったぬえ的な団体というものは、この際整理をする努力をしていくことが国民のためではないだろうか、そういう努力をひとつ政府全体としてもやってもらいたいものだということをこの際申し上げまして、時間も参りましたので終わっておきたいと思います。  もしお二人で御感想があれば承っておきましょう。
  48. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 御感想ありますか、総務長官
  49. 中山太郎

    ○中山国務大臣 感想というようなものは、個人的なものでございますので、この席で申し上げるのは遠慮させていただきたいと思いますが、問題が議員立法でできた法律でございます。議会の御意思を尊重して、今後政府も検討をさせていただきたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で山口鶴男君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  51. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 私は、ソ連抑留者問題にしぼって内閣官房長官並びに関係者方々に御質問をしたいと思います。わずか三十分しかありませんので、きょうはごあいさつ程度のものになるかと思いますが、後は詳細は内閣委員会でやっていきたいと思います。  そこでまず、ソ連抑留者というものに対して今日までいろいろ論議がありましたが、一応政府の見解としてどういうふうになされているのか、この点についてお願いいたします。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆるソ連抑留者につきましては、亡くなられた方の遺族あるいは負傷された方については、恩給法、戦傷病者戦没者遺族等援護法等による援護を行っておりますことは御承知のとおりでありますし、また恩給法上は、抑留期間を割り増し評価をした上で勤務期間に算入をするというようなこともいたしております。そういう意味では、現在の法制のもとでできるだけのことをいたしておると考えております。
  53. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 できるだけのことはやっておると申されましたが、実は私もソ連抑留者の一人でございます。  ところが、昭和二十三年十二月二十三日にナホトカから舞鶴に上陸いたしまして復員した際、私の受け取ったのは千円足らずの金です。三年半の抑留生活を終わってきてわずか九百数十円の金、もう帰りの汽車賃と、そして弁当を食べたらその金はなくなってしまった、これで手当てをしたと言えるでしょうか。一時金のわずかちょっと給付をしたからといって、それでこの抑留者の手当てをしたなどという感覚では、私はまことにお粗末だと思うのです。その点はいかがでしょうか。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 五十七万五千と言われる方々が非常な苦労をされたということは、私自身も存じておるところでございます。ですから、そのような御苦労、犠牲に対して国が十分にお報いをしたというふうに考えたことは決してございません。戦争の犠牲というものははかり知れないほど大きくかつ広うございましたから、ある程度のことは過去三十年余りの間に国もやってまいりましたけれども、しかし決して十分なことができる種類のことでございませんで、やはり最終的には一人一人が自分の問題として背負っていかなければならない、それほど大きな犠牲であったろうと考えております。でございますから、いまお話の点につきましても決して十分なことを国がいたしましたと申し上げておるわけではございませんで、この戦争の犠牲というのはある程度の処置を国がいたしましたところをもって、一応国の償いとしては打ち切る、残念なことでありますが、それしか方法がない、いろいろ新しい問題その他の問題等々ございますけれども、またそれを提起することによって新たな不公平感というものを生むという問題もございますので、昭和四十何年でございましたか、これをもって一応国の処置を打ち切るという決定をいたしたようなことであったわけでございます。
  55. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この問題は大変多くの問題を抱えておりますので、これを議論すると大変ですから、いまはちょっとこれをたなの上に上げておいて、次の問題に移って、後からたな卸しをして議論したいと思います。  第二点は、ソ連抑留者は国際法上はどういうふうに位置づけされておるのか、一体これは戦争捕虜としての位置づけをされているのか、それともどういうふうになっているのか、この辺をお伺いいたします。
  56. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  国際法上は、従来から政府が御説明申し上げておりますように、抑留者の方々は国際法上の捕虜ないし俘虜という取り扱いを受けるということになろうかと存じます。
  57. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、国際法上の捕虜というソ連抑留者は、なぜどういう理由で捕虜になったとお考えですか。また、国内法的にはどういうふうに位置づけされているのか、お伺いいたします。
  58. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 国際法上の側面についてお答え申し上げます。  なぜ捕虜かという御質問でございますが、国際法上、御承知のように、交戦国の間で敵軍の権力下に入った交戦国の軍人というものについては捕虜としての取り扱いを受ける、一定の国際法上の規則のもとに人道的な取り扱いを受けなければならないけれども、他方、一定の要件のもとで、捕虜についての相手国の権利と申しますか、そういうものを認める国際法の規則の範囲内において捕虜の取り扱いを受ける、こういうふうになっております。  国内的な取り扱いについては、これはまた別の側面があろうということでございます。
  59. 味村治

    ○味村政府委員 ソ連抑留者の国内法上の地位でございますが、捕虜に関係のございます当時の国内法として問題となりますものに、陸海軍刑法がございます。これにつきましては、昨年の三月四日に内閣法制局長官が当分科会で述べたところでございますが、当時の陸軍刑法には逃走の罪としまして、「故ナク職役ヲ離レ又ハ賦役ニ就カサル者」とかあるいは「敵ニ奔リタル者」、こういった人を処罰するという規定がございました。これらの規定は、捕虜となったことをもって直ちに犯罪とするというわけではございませんけれども、仮に捕虜となることがこういった陸軍刑法の逃走罪との関係などで問題になるといたしましても、これは終戦の詔書が発せられました後で敵軍の勢力下に入ったという人につきましては、こういう人たちを処罰するというのはもともと陸軍刑法の予想しているところではなかったというふうに考えられる次第でございます。  こういったような考え方は、昭和二十年八月十八日付の大本営陸軍部命令第千三百八十五号というのがございますが、これにもあらわれておりまして、この命令は「詔書換発以後敵軍ノ勢力下ニ入リタル帝国陸軍軍人軍属ヲ俘虜ト認メス」と述べております。この命令は、国際法上の問題は別といたしまして、国内的には、当時の戦陣訓等によりまして、帝国軍人としての道義上及び軍律上批判を受けるべき俘虜の取り扱いを受けることは、こういった方々についてはないのだということを明らかにした趣旨であると考えられております。
  60. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 なぜいまの私の質問に対して陸軍刑法を引舟しなければならないのか、全く不可思議であります。これは、普通の一般の捕虜と違って、戦って敗れて、みずからの意思によって捕虜になったのではなくて、天皇陛下の命令によってソ連に抑留されたのであって、それは最後の大陸令第千三百八十五号の三項を言えば、それで足りるわけですよ。それを戦陣訓を持ち出して、生きて虜囚の汚名を受けずという、そのことをなぜあなたがちょうちょうしなくちゃならぬのですか。そういう思想でいるからこの対策がろくな対策ができないのです。あなたは、シベリアの捕虜というものがどんな苦難の道を歩んできたか、御存じですか。戦闘よりひどいですよ。私は、戦闘もやりました。捕虜の方がもっとつらいのです。酷寒零下四十度の中で、指がもぎれ、耳がちぎれ、鼻がなくなる、凍傷にかかって、そうして倒れていった戦友がどれほどいたですか。ところが、それに対して政府の手当てはどうでしょうか。私は、全く血も涙もないのがいまの政府のあり方だと思うのです。そういうことについて、ひとつ政府の見解をお尋ねいたします。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、政府は戦争の犠牲者に対して十分な償いをしたというふうに決して考えたことはございません。ある程度のことはいたしましたけれども、戦争の犠牲というものは、とてもとても償い切れるものではない。しょせんは一人一人が自分で受けとめていかなければならないというほど大きなものでございますので、したがって、政府が十分な償いをしたというふうに私は考えたことはございません。  ただ、昭和四十二年でございましたけれども、これをもっていわゆる戦後の処置を打ち切ろうと考えましたのは、もともと全部政府が見切れることではない、ある程度のことしかできない、そしてまたそれなりにそれなりの公平感といったものもやはりひとつ考えなければならないということで打ち切りをいたしましたわけでありまして、決して犠牲に対して十分な償いを戦後のわが国の政治がやってまいったというふうには、私、考えておりません。
  62. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これを手当てすればさらに不公平が広がる、拡大するといまおっしゃいましたが、手当てしないことが不公平なんですよ。そうでしょう。南方や中国のような、あるいはアメリカのように国際法を重んじて速やかに帰還をさせたところの捕虜はいざ知らず、ソ連は国際法も守らないで、そしてこれを強制労働に付して、まさに日本国が賠償をすべきなのをそれにかわって賠償させたようなやり方をして、そして三年半も四年も抑留されて帰ってきた者に対して何の手当てもしない。一部の軍人恩給の期間にある者は、それは恩給をいただいているかもしれません。しかもその加算年は何年だと思いますか。わずか一年ですよ、加算年は。戦闘の地域にある者は三年の加算があるのです。そういう不公平なことをやって、なぜその手当てをやるのが不公平の拡大になるのですか。  まず、官房長官は、日本の捕虜に対しての対策というものを国際的に見て、そのバランスある対策、いわゆる国際的に人並みの対策をやろうとお考えですか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げたことを繰り返すようになりますけれども、決して十分な償いを国がしたというふうには考えておりません。(渡部(行)分科員「いや、そのことを聞いているのではないです。国際的に人並みにやろうとしておるのかどうかということです」と呼ぶ)そのお尋ね、恐縮でございますが、もうちょっと詳しくお聞かせいただけませんでしょうか。
  64. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 私は、なぜそのことを言うかというと、日本は不満ながらやったということで終止符を打ったというけれども、同じ境遇で戦ったのはドイツですよ。そしてドイツは、しかも自分の国土全土を戦場と化して、それこそ、日本人も想像のつかないような大変な過酷な戦争をやり、そして多くの捕虜をソ連に拉致されたわけです。ところがそのドイツはどうでしょうか。そのドイツでは、当時のアデナウアー首相が、戦争犠牲者の扶助に関する法律、捕虜の親族の扶養補助に関する法律、帰還捕虜に対する援助に関する法律など、一連の捕虜になった方々の補償に関する法律をつくって、相当の手厚い対策をしておるのです。これを一々読み上げるともう時間がありませんので、そこは政府のことですから資料を持っておると思います。読み上げません。ただ問題は、この西ドイツの政治家アデナウアーが連合軍の圧力に抗して、そしてこれを当時の野党の党首であるシューマッハーとはかって、与野党満場一致でこの法律を通しているのですよ。こういう考え方が本当の政治家の考え方じゃないでしょうか。私は法律論争をやろうとしているのじゃないのです。少なくともあなたも政治家だし、私も政治家だ。だとすれば、法律で補い得ないものは政治的に考えるべきじゃないでしょうか。法律をこれからつくってもいいじゃないですか。しかも、すでにヘーグ陸戦条約もあるし、あるいはジュネーブの四条約もあるわけでございますよ。そういうものを考えると、何もいまに始まったことじゃないのです。一九〇七年のこのヘーグにおける陸戦法規というものができて今日まで——しかも、これはできる前にすでに国際的なある程度の慣習として遵守されてきておる。そういう中からこのヘーグ条約やあるいはジュネーブ四条約が成立してきておるのですよ。だとすれば、そういう立場でこの問題と取り組まなければならないのじゃないのでしょうか。その辺をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 西ドイツにおきましては、一九五四年に戦時捕虜補償法というものをつくりまして補償金の支払等々をいたしましたということを資料で存じております。わが国としてそういうことをいたさなかったことは御指摘のとおりでございますけれども、わが国なりに援護法でありますとか、あるいは恩給法でありますとか、ともかくその程度の限りては一生懸命のことをやった。確かに西ドイツの処理の仕方とは違っておったということは、西ドイツの場合を資料によって承知いたしますと御指摘のとおりであろうと思います。
  66. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 時間が本当になくて私も大変困っているのですが、そこで、それじゃ法律的にも考えてみた場合に、果たして日本のとったのが当時における最大の努力であったのかどうか。非常にこっけいな法律の立論をしているのですね。私は、日本政府はなるべく出したくないという立場で物事を考えているからこのようになってきていると思うのですよ。なるべくもう財政からの支出はしたくない。そのかわり軍備の方はどんどんやっているのだけれども国民がいやだというほど軍備は増強しながら、戦争で犠牲になった者に対しては全く出したがらない。一方においては、よけいな憲法違反までして靖国神社法なんか考えておる。まるでこれは主客転倒じゃないですか。  そこで、現在第二次大戦時点で一体国際法上こういう問題がどのように考えられているのか、それを、中央公論に出ておった中原興一郎という評論家の書いたものをちょっと読んでみます。「第二次大戦の時点で、わが国にとっての現行法はどのようなものであったのか。それは、一九〇七年のバーグ陸戦法規と」——これは、ヘーグ条約をハーグと書いてありますね。「ハーグ陸戦法規と一九二九年のジュネーヴ傷病者条約を基本的骨格とするものであった。そして、それに加うるに、一九二九年のジュネーヴ捕虜条約も尊重されるよう期待されていたと言ってよい。何故なら、わが国はそれを批准していなかったが、赤十字国際委員会のイニシアチヴによる照会に対して、相互主義の下に準用する意思を表明していたからである。」こうなっているのですよ。だから、これは批准の以前にすでにそういう一つの慣行がしかれておったということが証明される。また、「現時点に於ける戦時法規の現行法は、何と心得ればよいのだろうか。」飛ばして「国際社会に於いてコンセンサスを得て、現に妥当している法規慣例とは、」「一九〇七年のハーグ陸戦法規と一九四九年のジュネーヴ四条約を基本的骨格として、これに直接間接に関連する諸条約と慣習法とによって肉付けされたものである。」こういうふうに言っているのです。ですから、この法律の解釈も学者によっても相当違っておるわけです。問題は、政府はどちらの側で考えるかなんですよ。どうですか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ソ連がわが国のたくさんの人々を捕虜として抑留をし、苦役等々をさせたという行為そのものが国際上認められております法規慣例に違反をしておったということは、私はもうきわめて明白な事実であろうと存じます。ただ、そのようなわが国の国民に加えられました不法な扱いに対して、わが国が国民に十分な償いをなし得たかということになりますと、それは必ずしも十分なことをなし得なかったということは、私先ほど申し上げましたとおりでございますが、それなるがゆえにソ連の行為を認めたということではさらさらないことは明白でございます。
  68. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、時間がないから少しはしょりますが、外務省調書の中に「引揚問題の経過と見透し」という文面があるのですが、その一部を読み上げますと、「国際法的に捕獲国が敗戦国の俘虜又は残留者を使用する権利は認められていないのであって、之等に対する支払いの要求は来るべき講和会議の一重要項目となるであろう。」と書いてあるのです。一体講和条約にこの問題をどのように主張したのか、そしてその後、なぜこの問題があの程度のことで終わったと解釈するようになりたのか、これが第一点、  それから第二点は、同じく外務省調書「在ソ日本人捕虜の処遇と一九四九年八月十二日のジュネーブ条約との関係」というものについてですが、これは一九五〇年四月一日の文書ですが、前の方は読みません。後の方を読みますと、これは大分よく知っているのですよ。「ソ連の管下に入ったすべての日本人が当初動物以下の取扱を受け、しかも冷酷、無慈悲に酷使され、その結果として岩大な死亡者を出したことは明白である。何人もこれを否定し隠蔽することはできない。」「一九四九年八月十二日のジュネーブ条約は、捕虜に関する国際慣習を簡明し、且つ詳細な諸点を明確にしたもので、いやしくも捕虜をとらえた国は本条約の原則を無視することは許されない。」こう書いてあるのです。それならなぜ捕らえられた日本人がこの条約を守ろうとしないのか、この条約にあわせていろいろな法体系の見直しをしないのか、こういうふうに考えられるのですが、その点はいかがでしょうか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ソ連との間には講和条約というものが締結されておらない状況でございます。  なお、サンフランシスコの講和条約におきましてこの点をどう処理いたしましたかは政府委員からお答えをしてもらいます。
  70. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ソ連が抑留者の方々に対しまして強制労働その他きわめて、当時の先生指摘のような一連の国際法の規則に照らしましてこれに反する取り扱いをいたしたということは、先生指摘のとおりでございます。ただし、この問題の最終的な処理につきましては、御承知のように日ソ間の戦争状態の終結、国交回復をいたしました日ソ共同宣言におきまして日ソ双方の請求権の相互放棄ということで法律的には決着をつけた。当時の状況から言っていろいろやむを得なかったかと思いますが、他方において、日ソ共同宣言の五項におきまして抑留者の方々をソ連から日本に送還させるということとも関連をいたしまして、全体として請求権の問題については相互放棄で決着をつけるということで解決したということでございます。
  71. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 国の権力で捕虜の国際的に与えられた権利まで放棄するということは、その放棄した責任は国が負うのは当然でしょう。その責任も負わないでこういう仕打ちというのはどうしても納得できません。  時間がありませんから、最後に厚生省関係になりますが……。  戦争で一緒に苦しんだ人が内地に帰ってくる、帰ってきて、今度一方の戦友は公務員になった、他方の者は百姓になりあるいは民間の会社に勤めるようになった、ところが、公務員になった者は年金加算がされて、恩給加算がされておるのに、民間の厚生年金、国民年金には全然加算されていない、こういうばかげた話があるでしょうか。同じ国民でありながら、法のもとに平等であるべきなのがこのような差別を受けておる。いわゆる国の官まだけがあるいは役所の人たちだけが優遇されて、そして一般国民は全くらち外に置かれている。この問題は早急に解決しなければならぬのではないだろうか、私はこういうふうに思います。  最後に内閣官房長官に、いま私が一連の質問をしましたが、これについてもう一度素直に見直す考えはないか、もしあなたが見直す考えがないとなれば、今日、全抑協やその他の方々が盛んに請願書なり陳情をやっておる、あるいは議員連盟までつくろうという雲行きである、自民党の諸君も相当多数これには賛成しておる、だとすれば、この賛成した自民党の議員の諸君は全くサル芝居をやっているということになるわけでございますが、その辺を考えたときに、もう一度これを見直すお考えはないかどうか。  以上で私の質問は終わりますが、よろしくお願いします。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常に多数の方が耐えられないほどの苦痛に遭われたことは事実でございますし、また今日そういうようなお訴えがいろいろありますことについては十分それを承らなければならないと考えております。ただ他方で、昭和四十二年に取り決めましたいわゆる了解事項、これとの関連をどう考えますか、この点はやはり慎重に考えてまいらなければならないと思っております。
  73. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 お答えいたします。  この問題は国会でもしばしばお尋ねがございますが、現在の厚生年金、国民年金の保険料に基づく社会保険という仕組みから申しまして、仰せのようなことをいたしますについては大変むずかしい、きわめて困難であるということを繰り返しお答え申し上げております。
  74. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 どうもありがとうございました。
  75. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で渡部行雄君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦隆君。
  76. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 情報公開についてお尋ねしたいと思います。  初めに、スウェーデンでは、スウェーデン憲法の一部を構成する一九四九年四月五日制定の「出版の自由に関する法律」、「第二章公文書の公共性について」第一条で、すべてのスウェーデン人は、公文書すなわち国家または地方公共団体が受理しまたは作成した全ての文書を、意見の自由な交換及び一般民衆の啓発を促進するために、一定の条件のもとで、自由に利用する権利を有する旨規定しています。このように情報公開を法制化している国には、アメリカ、フランス、オランダ、ノルウェー、デンマーク、フィンランドなどの国があります。  わが国におきましても、神奈川県など数多くの地方自治体で、民社党など各政党で、また日本弁護士連合会など民間団体で、それぞれ「公文書公開法案」などを作成ないし検討中で、意欲的に情報公開化に向けて取り組んできました。     〔主査退席、池田(行)主査代理着席〕  政府も、昭和五十四年十二月十一日に、首相が官房副長官に情報公開制度の検討を命じて以来、内閣審議室に担当審議官を置き、具体的検討に着手したわけですが、現在時点で、「開かれた国政」を実現すべく、政府の情報公開に関する施策はどのようになっているかお尋ねしたいと思います。
  77. 石川周

    ○石川(周)政府委員 お答え申し上げます。  従来から、政府といたしましても個別の情報の公示、閲覧等の制度あるいは白書類の刊行等を通じまして公開可能な政府情報の提供に努力をしてきたところでございます。また、公文書の集中保存あるいは公開を行うための国立公文書館を設置する、あるいは一定の外交文書につきましては外交資料館を通じまして公開の措置を講ずるというようなことはしてきたところでございます。  ただいま先生指摘のような背景を受けまして、政府といたしましても改めて情報公開に取り組むということになりまして、総合調整を図るため、この問題につきましての各省庁の担当官で構成いたします連絡会議を設置いたしました。そして、そのいろいろな取り組み体制の整備につきましての検討を経まして、昨年の五月に「情報提供に関する改善措置等について」の閣議了解を行いまして、これを当曲の政府の基本方針として定めたところでございます。自乗、その方針に基づきまして手続の規定の整備、閲覧窓口等の整備につきまして努力しているところでございます。
  78. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 ただいま御答弁がございましたように、昨年五月二十七日、閣議で了解された「情報提供に関する改善措置等について」に基づく各省庁の「情報提供のための手続・窓口の整備」はどのようになっていますか、もう少しお話しいただきたいと思います。
  79. 石川周

    ○石川(周)政府委員 ただいま申し上げました各省庁の連絡会議におきましては三つの部会を設けました。それは手続規定、閲覧窓口、公開基準という三つでございますが、この三部会のうちの閲覧窓口の部会におきまして五月以来鋭意検討を進めまして、十月から一部省庁におきまして、官房の広報課等のそれぞれのところに文書閲覧窓口を設置して国民の利用の便に供するという体制の整備をいたしました。  私どもに報告のございましたこれまでの実情によりますと、昨年十月の一カ月間の利用件数を見ますと約四百三十件でございまして、一省庁当たり約十六件となっております。制度の窓口が初めて開かれたばかりの時点でございますけれども、これからも一層利用されるようにいろいろな意味で努力してまいりたいと思っております。
  80. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 同じく閣議了解に基づきます「情報提供の充実」に関連しまして、公開に適すると認められる主要な刊行物、統計、資料等の目録の作成整備というのは、現在との辺まで進んでいるでしょうか。
  81. 石川周

    ○石川(周)政府委員 当面の一応の目録の整備は、各省庁それぞれいたしたところでございます。ただ、内容におきまして、それが皆様方の納得がいただけるような十分なものかどうかは余り自信はございません。これからそれを充実していく、そういう体制を全省庁的に整備したというところをむしろ評価させていただきたいと思っておるわけでございます。  それから、公開基準の問題でございますけれども、実はこれはなかなかむずかしゅうございまして、プライバシーの問題であるとか役所の中の情報管理の仕組みの問題とかいろいろな問題と密接に関連いたしまして、統一的なはっきりした公開基準というものをまだ明確に策定するに至っておりません。現在のところはむしろ各省庁自身の判断にゆだねているという実情でございます。しかし、それだけで事足れりとは必ずしも私ども思っておりませんで、先ほど申し上げましたような部会の中に、一つの専門の問題につきまして取り扱う部会を設けまして、各省庁に共通する公開基準のあり方等につきまして鋭意検討している段階でございます。
  82. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 目録の作成整備はさらに進めていただきたいと思います。また、情報公開に関する基準のことまでお答えいただきまして、どうもありがとうございました。  また進めさせていただきまして「情報提供に関する国民への周知」に関連しまして、各省庁は、業務に支障のない限り諸施設の見学の希望に応ずるなど、国民に対し、行政についての理解を深めさすべく、どのような努力を払われているのでしょうか。内閣で知れる範囲についてお知らせいただきたいと思います。
  83. 藤沢建一

    ○藤沢説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、昨年十月から各省庁の官房文書課あるいは広報課系統におきまして、閲覧窓口を設置、開設いたしたところでございます。これに伴いまして、私ども内閣審議室におきましても、その開設時に「各省庁における閲覧窓口の開設について」というような要約した資料等もつくりまして、報道関係の方等の御参考に供したりあるいはまた一方で政府広報誌等、たとえば「時の動き」というようなものにこの関係の解説等を載せまして、一般の周知に努めることに努力しているわけでございます。  各省庁の状況につきましては、現在までのところ特に私どもで把握するということはやっておりませんけれども、先ほど御答弁にもありましたように、各省庁とのいろいろな会議等章通しまして、各省庁におかれましてもそれぞれ実情に即して適切な措置をとっていただくということで私どもやってまいっておるわけでございます。
  84. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 今後とも国民への周知をより徹底していただきたいと思います。  また同様に、「今後の検討事項について」の中で言われております情報公開に関する基準の策定につきましてはいまお答えがありましたので、時間の都合上省かせていただきまして、諸外国における法制とその運用実態についての研究などは、その後、どの程度まで進められているのでしょうか。
  85. 石川周

    ○石川(周)政府委員 情報公開の問題は、五月の閣議了解に基づいて私ども鋭意努力していると申し上げましたが、ただいままで御質問のありました現法制のもとにおきますいろいろな意味での努力につきまして御説明申し上げました。  ただいま御質問のありましたのは、むしろもう一つの問題の法制化の問題に絡んでの御質問がと思います。私ども、外国の事例につきましていろいろ勉強いたしておりますが、それは主として情報公開法が各国でどのように設けられ、またそれがどのように運営されているかということにつきまして研究を始めたという状況でございます。  具体的に申し上げますと、政府関係各省庁の担当官におきます研究会というものを設置いたしまして今日まで数回開催いたしております。また、外務省を通じまして海外の資料なども取り寄せるような努力もいたしておりますけれども、情報公開法の問題は、昨年五月の閣議了解後の新しい状況の展開といたしまして、臨時行政調査会の設置ということがございます。そして、この臨時行政調査会で取り上げられる問題の中に、情報公開も含めて情報管理とかプライバシー、そうした情報の問題についての一連の総体としての取り上げが話題になっております。まだ調査会が発足したわけではございませんし、そこで何が議論されるか具体的にまだわからない段階ではございますけれども、そういう考え方がいろいろ議論されている局面になってきておりますので、その動向もよく見守っていく必要があろうと思っておりますし、政府事務方といたしましては、外国の情報公開法の問題について研究会を開いてその実態をできるだけ認識しておきたい。そして、もし将来臨時行政調査会におきまして取り上げられれば、その場におきまして、わが国の実情に即した情報公開に関する法制化の問題について適切な議論が行われるような形に資したいと思って努力しているわけでございます。
  86. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 情報の公開は必要なことかと思いますが、一方、国が執行する行政の中には、税務事務、民生措置事務、医療事務、教育事務など個人のプライバシーにかかわる分野も少なくありません。それゆえ、情報公開の制度に当たってはプライバシーの保護を十分に保護することも必要不可欠であると思います。「知る権利」の保障とプライバシーの保護との調和との関係を、どのようにお考えになっているのでしょうか。
  87. 藤沢建一

    ○藤沢説明員 まさに先生ただいま御指摘のとおり、情報の問題にとりまして、特に国民サイドから考えました場合に、政府が保有しております情報、そういうものの公開と、さらに保護といいますか、そういう面の調和が非常に必要なわけでございます。  それで、プライバシー保護の問題につきましては、先生承知のとおり、従来から行政管理庁におきましても、いわゆる行政機関における情報処理と、それに伴いますプライバシー保護の問題につきまして研究を進めてきたというふうに承知しております。それで、私ども承知いたしましているところでは、行政管理庁におかれまして、本年一月の末にプライバシー保護の問題につきまして今後のあり方といいますかそういう点を研究する、進めるという観点から、加藤一郎先生を座長といたしますいわゆる研究会というものを発足させたというふうに承知しております。そこで、新たな時代に即応しまして、一方では情報公開という要請があるわけでございますが、それとの関連も踏まえながら今後研究が進められていくというふうになっておるそうでございます。  したがいまして、私ども情報公開の問題も鋭意いろいろな面で研究を進めておるわけでございますけれども、外国の例で見ましても、先ほど冒頭に先生からいわゆる情報公開というふうな感じの法律を保有する諸国についてもお話がございましたけれども、私どもいま研究途中ではございますけれども、見ますところでは、たとえばスウェーデンの場合であるとか、あるいはフランスの場合であるとか、あるいはアメリカの場合であるとか、情報の公開あるいは情報の自由というような法律と相並びまして、一方ではプライバシー保護に関する何らかの法制というようなものがとられて、両々相まってこの関係をやっておるというふうに承知しております。そういうことで、プライバシー保護の問題につきましても、情報公開の問題につきましても、政府部内でいま研究を進めているという段階でございますので、御指摘趣旨も十分参考にさせていただきまして、今後調和を十分図るべく研究を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  88. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 情報の公開化に当たりましては、プライバシーの保護のほか、条約及び法令によって明示的に非公開とされているもの、あるいは犯罪の捜査、司法手続の公正な執行及び個人の生命の安全保持のため非公開とすることが必要であるものなど、適用除外事項とされるものがあろうと思うのです。これらは、諸外国における法制度の調査研究あるいは各省庁間の文書の調査分析をもとにして慎重に検討する必要がございます。  これまでに例示したもの以外に、適用除外事項として、どのようなものが考えられるでしょうか。具体的に御説明いただきたいと思います。
  89. 石川周

    ○石川(周)政府委員 情報公開の基準あるいは情報公開法の問題、たびたび御答弁申し上げておりますように、なお検討中、勉強中ということでございまして、非常にむずかしい問題があちこちに絡んでございます。  適用除外事項を具体的に示せという御質問に的確にお答えできる段階にはまだ立ち至っておりません。しかし、一般的に考えられますものといたしまして、外国の例等で見ますと、たとえば国の安全と防衛に関する問題、外交関係、御指摘のプライバシーの問題、あるいは検査、たとえば金融検査、証券検査、そういった一連の、これはプライバシーと同じ問題かもしれませんけれども、そうしたような問題等々、あちこちにいろいろな問題があり得るように思います。それを情報公開の要請と保護すべき問題とどのように調和させていくかは、相当膨大なかつロングランの慎重な検討が必要のように感じております。
  90. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 質問をまたもとに戻させていただきまして、終わりに、スウェーデン、アメリカの情報公開に始まります情報公開の動きは、いまや先進国へと一斉に流れ始めています。しかもそれぞれの国で伝統や国柄に合わせた工夫が大なり小なり施されて、国民の「知る権利」は各国で制度として着実に根づきつつあると思います。わが国における情報公開法制定についての内閣の御見解をひとつ明確に述べていただきたいと思います。
  91. 瓦力

    ○瓦政府委員 お答えいたします。  政府は、各省庁の保有する情報の公開に関し、昨年五月二十七日に「情報提供に関する改善措置等について」の閣議了解を行ったところでございます。情報公開法の問題につきましては、この閣議了解に基づきまして、今後わが国の実情に即して検討を進めることとしておりますが、公務員の守秘義務やプライバシー保護との調整一般的行政手続法の整備との関連など各般にわたり、分野が広く、また外国法制の運用の実態等を見きわめる必要がありますので、各界各層の意見をも参考といたしまして、幅広く慎重にこの問題につきまして対処してまいりたい、かように存じます。
  92. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 情報公開法を制定しましたときに、自分の権利を侵害されたと思われる点に対する救済制度は、具体的にどのように考えられているのでしょうか。
  93. 藤沢建一

    ○藤沢説明員 救済制度についてのお尋ねでございますが、各国それぞれの状況を拝見しますと、国柄に応じまして、それぞれの社会的条件あるいは政治的条件、いろいろな他の諸制度との関連におきましてそれぞれ特色があるようでございます。したがいまして、今後私どもがこの問題について検討、研究を進めていくという場合には、やはり外国の制度等を参考にしながら、わが国の既存の制度あるいは社会的条件というようなものに、現実にマッチしたものを見きわめていかなければならぬ。お尋ねの点はこの制度の根幹の一つになる問題でもございますし、それからいろいろな外国のパターンもあるというようなことで、いまどういう救済制度がわが国で考えられるかという点については申し上げるほどの研究の域に達していない、こういうところが実情でございます。     〔池田(行)主査代理退席、主査着席〕
  94. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 ただいま官房長官がお見えのようでございますけれども、いま情報公開法制定についての質問を実はさせていただいておりまして、各国もいま国民の「知る権利」の要望にこたえて情報公開化の流れにあろうかと思うのですが、官房長官からも一言どうですか。——ごめんなさい。御意見を聞こうと思ったのですが、それはやめまして、これまで各国の情報公開法を検討されて、何か特別に目立った点、日本で特別に参考になるかなというところがございましたら、お述べいただきたいと思います。
  95. 石川周

    ○石川(周)政府委員 研究会を開きまして、関係各省庁の担当官がいろいろ研究をいたしておりますが、まだ的確な資料も十分につかめません。そういう判断をいたす段階にはまだ至っておりません。
  96. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 先ほどちょっと質問したのですが、適用除外事項として、いままで説明がありましたほかにも、たとえば当該情報を得るに当たって、そもそも非公開を条件とされているもの、あるいは行政機関内部で意思決定過程において作成された文書等で、公開により公正な意思決定が妨げられるおそれのあるもの、及び事業執行中の文書等で、公開により当該事業の公正、円滑な執行が妨げられるおそれのあるもの、あるいは法人、団体に関する情報で、公開することにより当該法人に重大な不利益を与えるもの——もっとも、この法人の場合には、法人等の反社会的な行為を未然に防ぐため必要と認められる情報は除かれるかと思うのですが、こうしたようなことが考えられてもいいのではないかと思います。  また、情報公開に伴う費用負担の問題などもあろうかと思うのですが、何か費用負担の問題でもお考えになったことがございますか。
  97. 石川周

    ○石川(周)政府委員 私ども実際に情報公開の促進を図ろうと思いまして、いろいろな壁にぶち当たりましたけれども、その一つがコストの問題でございます。せっかく窓口を整備いたしまして御利用いただく方々の便宜に供しているわけでございますけれども、そこでたとえば膨大な資料についてコピーをとってほしいというようなことを言われますと、お一人の方に応じて、ほかの方に応じないというわけにまいりませんので、そういう体制を全体として考えるということになりますと、全省庁で相当なコストになるわけでございまして、国民の皆様方の便宜と、そのコストとをどのように考えていったらいいかというのが、実は十月から全省庁統一的に行いまして、各省庁にいろいろお願いをしておりますときの一つの大きな問題でございます。  これから情報公開の公開基準等いろいろ勉強してまいりますけれども、その中にコストと、そういう効用という問題につきましても十分に検討させていただきたいと思っております。
  98. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 情報公開は、本当に国民の便益に資すれば大変結構なことだと思うのです。しかし、もう一つには、いま財政改革の流れの中で行財政改革を何とか推進しようとしております。新しい、事務量がふえることによって、どのくらいの費用が大きくかかってくるものか、そんなことも、やはり最低の費用で大変に効率よくいくように十分御検討をいただきたいと思うわけでございます。  そこで終わりに、第二次大戦以後の行政権の肥大化という中で、議会だけでは十分に行政をチェックできなくなった、そんなような危機感が、各国の情報公開法制定への踏み切りにあったのではないかと思うのです。そこで重ねて、情報公開法に向けましての政府の決意のほどを、ひとつ御披瀝いただきたい、こう考えます。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘になりましたように片一方で、議会が国政全体についてチェックをし、コントロールをする機能に限界がある。他方で行政そのものはますます複雑になるということから、情報公開という問題が起こってまいったと思います。そして、そのような情報は、基本的にはやはり国民のものであると考えますので、片一方で、いわゆるプライバシーの問題あるいは公務員の守秘義務、先ほど御指摘になりましたコストの問題等々ございますが、基本的には、やはりこれは国民のものであるという考え方で法律の制定を検討すべきではないかと考えております。
  100. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 質問をこれで終わらせていただきます。
  101. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で三浦隆君の質疑は終了いたしました。  次に、阿部喜男君。
  102. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 この委員会での私の質問の要旨につきましては、あらかじめ御連絡を申し上げておきましたから、すでに検討をいただいているものと思いますし、時間も非常に少のうございますから、まず私の見解、意見を先に一通り述べさせていただきまして、それについて御答弁をいただきたいと思います。  日本国憲法第五章の各条では内閣の責任と権限が定められまして、これを受けて国家行政組織法、そして各省庁の設置法が定められておるところであると思っております。このような設置法によって各省庁の任務と責任と権限が明らかにされておる点も大体間違いはないのではないかと思うのですが、そうした行政機構の組織に対応して、立法府である国会は国会法、さらに衆議院においては衆議院規則、参議院においては参議院規則等をもって常任委員会または特別委員会等を設けて、各委員会の所管事項が定められておりまして、その所管事項は所管に関する請願やあるいは審査を行う、そういうふうな態様になっておると理解をして間違いないでしょうか。
  103. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 そのとおりでございます。
  104. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 そこで私は、郵政省設置法と逓信委員会とのかかわり合いを援用しながら少し質問させてもらいたいと思いますけれども、郵政省設置法によりますと、郵政大臣を長とする郵政省の任務と権限は同法の第三条及び第四条に明定をされております。これに対応して国会法第四十条、四十一条、さらに衆議院規則の九十二条によって逓信委員会は郵政省の所管に属する事項を所管することとなっておりますが、これも間違いはございませんか。
  105. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 そのとおりでございます。
  106. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 ところで、少し内容に入りますけれども、同法第三条第一項第二号に郵便貯金事業、同四号に電気通信に関する事務、さらに第四条第一項第二十二号の二に日本電信電話公社を監督すること、同じく二十二号の五に、無線局の開設、免許などの監督権限が定められております。  これらは明らかに郵政省の所管事務であり、郵政省の権限範囲内でありますから、したがってこれは逓信委員会において審査をするのが本来の姿であると考えますが、この点はいかがですか。
  107. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 本来の姿であるという意味においては、お説のとおりだと思います。
  108. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 したがって私は、政府が法案の作成、提出に当たっては、これらの関係法令を遵守しながら、それぞれの省の任務と権限を尊重し、あわせて所管事項の審査が国会においてやりやすいような配慮を持って法案の作成等をなさるべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  109. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 原則的にそうあるべきという点については、お説のとおりだと思います。
  110. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 そこで、この国会に、財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置法なるものが提出をされております。  その内容は、申すまでもなく日本電信電話公社より四年間で四千八百億円に上る臨時国庫納付金を徴収しようとしております。しかも、この法律案は、特例公債の発行という本来、単独の立法として扱ってきたようなものを審議すべき案件であるのに、ことさらに電電公社やあるいは中央競馬会等の国庫納付金制度を合わせて法案が作成されておりますが、これはいかなる意図に基づくものでございますか。
  111. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先ほど来、阿部委員がるるお述べになったように、内閣から提案する法律案は、通常当該省庁に対応する常任委員会において審議されることを予定しているということは御指摘のとおりだと思います。したがいまして、政府としても提案に当たっては、そのようなことを原則とするという点について、そのとおりだと思います。ただ、法案の内容によっては、それを一本化した方が法案の趣旨あるいは目的、そういう点から、よりすぐれている、明確になるというようなものがありまして、そういうものについて一本化することは、一つの技術的な立案形式として、しばしば従来から行われているととろであります。一般論としては、そのことについては阿部委員もお認めいただけると思いますが、しかし、そういう一本化が無原則に行われていいというものでないことは、そのとおりでございます。  ただいま御指摘の財政特別措置の法案のことでございますが、その前に、私どもとして、かねてそういう問題についていろいろ国会においても御指摘を受けておりますので、内閣法制局として一応三つの基準というものを立てまして、その旨を国会において申し上げております。五十二年の五月二十四日の衆議院内閣委員会で私自身が答弁したのでございますが、それは「第一には、法案に盛られた政策が統一的なものであること、その結果として法案の趣旨目的一つであると認められる場合であります。第二は、内容的に法案の条項が相互に関連していて一つの体系を形づくっていると認められる場合であります。それから第三は、これは実際上の理由でありますが、やはり関連を持って国会の委員会でできるだけ円滑に審議していただくという見地から、原則としては一つの委員会の所管に属する範囲内のものでまとめる。むろんこれは例外はございますけれども、できるだけそういう原則をとる。」こういうことを申し上げているわけでございます。  御質問は財政特別措置法のことでございますが、この点につきましては、私どもとしては、最近における国の財政収支の著しい不均衡に対処するため、当面の財政運営に必要な財源を確保するための臨時措置である。そういうものをまとめるという点において、その趣旨、動機を同じくする、先ほどの基準に当てはめて申し上げますと、第一の基準に当たるということで、実は一本の法案にまとめた次第でございます。
  112. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 官房長官に伺いますが、いま内閣法制局の方から御答弁をいただきましたけれども、言われるところの財源確保の法律案は、電電公社の財政の中から莫大な予算を国庫納付金として出すことになるわけでございます。ところが、電電公社は国庫納付金を納めることだけを目的とした会社ではございませんでして、御承知のように先般、夜間の通話料の割引制度をつくりましたし、また今度、日曜祭日の電話料の割引の制度もつくるということになっておりますし、設備の投資もございます。それらをひっくるめて電電公社の財政は、国民利用者を代表する国会において一体的に審議、決定をされなければならないということの方が大原則であり前提であって、なお、その上に余裕があって国庫納付金が可能かどうかということは、それは私は本来的に対応する逓信委員会で一体的に議論すべきものであり、幾ら国の都合であるからといっても、初めに国庫納付金ありき、それを取るためにどうするかというような、そういう考え方は逆立ちした議論であって、電電公社の財政運営自体がどうあるかということの議論の上に立って国庫納付金の問題が考えられるべきである。そうすると、法案の提出の仕方もおのずから変わってくるはずだと思うのですけれども、この点は政治的な判断として、官房長官どうお考えになりますか。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに言われますように本来、電電公社は国に金を納付するために設けられたものでございません。そういう意味では、財政専売といったようなものとはその意味合いが違うことは御指摘のとおりだとは思います。そうではございますが、電電公社が国民に料金を上げずに十分なサービスをしてくれた上で、なお財政に余裕が何がしかある。こういう財政の時代でございますので、ひとつある程度のものを納付してはくれまいか、こういう発想がこの法律のもとでございますので、そのような財政的観点から、先ほど法制局長官が申し上げましたような原則にも照らして一本の法律にいたしたものでございます。
  114. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 私が申し上げておるのは、一体どちらで審査するのが妥当であろうかということなんでございまして、電電公社は、国民利用者から使用料や設備料等を徴収して運営をされておる公社でございますから、もし利益があれば、本来それは利用者に返すべきでございましょう。しかし、こういう時期ですから、国庫納付金が絶対に悪いと私は言うのじゃございません。電電公社の財政全体を審査をする機関は逓信委員会で審査すべきではないのか。その上に立って、余裕があるならば国庫納付金について判断をする、それが原則ではないのか。それをお尋ねしているのですが、どうですか。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府といたしまして一本の法律にいたしました理由は、先ほど法制局長官からも申し上げたとおりでございますが、この法案そのものを、いかように御審議をされるかということは、一義的には国会で御決定なさるべきことじゃないかと存じます。
  116. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 それで法制局の長官に伺いますが、たとえば、このいわゆる財源確保の法案についても、五十六年度の特例公債の発行があり、中央競馬会の特別国庫納付金があり、日本電信電話公社の臨時国庫納付金があり、五つの内容を持ったものが一本にまとめられております。そこで、いま、どの委員会で審査をするのがいいのかは第一義的には国会でお決めになるべきだと官房長官はお認めになりました。それでは国会の方で、この内容に応じて、それぞれ分けて審査をさせるということはこれは差し支えないわけですか。
  117. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 ちょっと非常にお答えいたしにくいのですが、やはり国会の方で御判断になることじゃないかと思います。実は、その問題についてかつて御質問がありまして、お答えをして、おしかりを受けた記憶がございますので、それは申し上げられません。
  118. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 それでは内閣の方の見解として明らかにしてもらいたいのですが、いま私が申し上げましたように内容は、中央競馬会は明らかに農林水産省の所管に属する事項でございますから、農林水産委員会で審査をされるのが至当であろうと私は思うわけでございます。あるいは日本電信電話公社の臨時国庫納付金は、これは郵政省の所管でございますから、こういう大きな内容を持つ問題については、やはり逓信委員会で審査すべき問題であろうと思います。したがって、国会でそういう判断をして、一本の法律であっても、その内容によっては分割して審査を付託をするということについて、行政府としては御異議はございませんか。
  119. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 異議があるとかないとかいうことを申し上げることがいけないというふうに私ども考えております。
  120. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 もちろん、それでは立法府の問題につきましては、われわれ自体でまたいろいろ議論をし、議運でも検討してもらわなければなりませんが、いま申し上げた趣旨について、それぞれの設置法に基づく各省の所管が明確であり、それに対応する委員会がある以上、法案の作成に当たっては、可能な限りその所管について配慮をして法案を作成をする、そういうことはひとつ官房長官にお約束を願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  121. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど法制局長官が申し上げましたように、一般論としては、そういう配慮を政府としても従来もいたしてまいりましたし、これからもいたすべきものと存じます。
  122. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 次に、官房長官にお伺いしますが、一月十四日付をもって官房長官から関係大臣に対して、金融の分野における官業の在り方に関する懇談会というものを設置したという通知をなさっておるようでございます。宮澤喜一と書いてありますから官房長官に間違いないと思いますが、この文章によりますと、こういう金融の分野における官業の在り方に関する懇談会をつくるに至った経過は「郵便貯金の急増を契機として、いわゆる金利政策の一元化、」ですよ。郵便貯金が急増した、さらに金利政策の一元化をいろいろ考えなければならない、そういう意味で、この懇談会が設置されたようであります。  ところが、郵便貯金に関しましては現行法の中でも、これは郵政大臣の所管に関する事項であり、さらにまた郵政審議会令というものがありまして郵政審議会が持たれております。その会長は、たしか土光さんだったと思うのですが、土光さんは今度、第二臨調の会長に強く、あなたが要請しておるようでございますけれども、そういうりっぱな方を会長にいただく郵政審議会があって、郵政省の所管事項として明確であるものに、なぜ郵便貯金がふえたから、あるいは金利の一元化の問題で、こういう懇談会などというようなものを屋上星を重ねてつくらなければならないのか、これが一点目。  二点目は、郵政審議会という法的な機関があって、そこが審議をすることになっておるのに内閣総理大臣の全く私的な諮問機関を設けて、それぞれの諮問機関が異なった結論を出したときに一体政府はどうなさるおつもりだろうか。いずれに権限があるのか、いろいろ疑問がございますが、こういうものをつくらなければならなかった経緯から、いま申し上げました点についてお答えいただきたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この懇談会を設けるに至りました直接の動機は、昨年の暮れ、予算編成のときにさかのぼるわけでございます。かねてから、ことに昨年そのような傾向がございましたが、自由主義経済体制下において金融の分野で民業と官業がどういうふうなあり方をすべきであろうか。また官業に資金が集中し過ぎるということを、ことに昭和五十五年、昨年、金融界、経済界で議論をする者がかなり出てきておる、これはどういうふうに考えるべきか。また、一般に国の金利政策はどのように決定されるべきであるかといったような問題が、近年非常に議論になってまいっておりましたので、これらの問題自身は郵政審議会の設置目的、すなわち郵便貯金事業等の「能率的な運営を図る」という設置目的を実は超える、もう少し、わが国経済全般にかかわる広い問題であると考えましたので、内閣に懇談会を設けて議論をしてもらいたい、こういうことになったわけでございます。  なお、懇談会と郵政審議会が違った結論を出した場合云々とおっしゃいましたが、問題が非常に違う次元の問題でございますので、同じ問題について違った答えが出るということは恐らく予測をしなくてもいいのではないだろうかと考えております。
  124. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 では官房長官、先ほど私ちょっと申し上げましたように、郵便貯金の急増を契機として金利政策の一元化を図るという目的で設けられておるようでございます。私らは、自由主義経済は自由な競争だと言われておりますから、金利政策だって自由な競争をさせるのが本来の姿だと思っておりますけれども、これはいろいろ意見のあるところでございましょうから、きょうの議論の対象外にします。  さてそうすると、これは目的は郵便貯金の急増ということが契機になって設けられたことは間違いはないわけでございます。ですから郵便貯金をする郵政省の方から再三にわたって官房長官に対して申し入れなり、抗議と言うと語弊がありましょうが、そういうものが出されております。ここに文章がございますが、時間がありませんから読みませんけれども、その中に、たとえば「まことに遺憾である」とか「疑念を抱かざるを得ない」とか「重ねて申し入れる」とかいう言葉が使われております。私は、これは明らかに閣内の不統一だと思っておりますけれども、こういうものを設ける必要はないという郵便貯金を所管する郵政大臣の意向が述べられておるわけでございますが、私は、この機会に、郵便貯金を所管をしておる郵政省として、今日運営されておる郵便貯金事業あるいは郵便貯金の金利の決定のあり方について、今日までの運営の中で大変な支障があったのか、今日のままの運営で国民の負託にこたえ得る郵便貯金事業であると考えておるのか、どなたか郵政省の考えを述べてください。
  125. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 郵政省の金利一元化に関します考え方については、二月の十八日に金融問題懇談会で私ども郵政省のヒヤリングがございまして、私ども考え方を申し上げたわけでございます。  基本的には、郵政省としては現在、金融問題懇談会が設置された経緯は、経済の安定成長への変化に伴いまして金融構造が大きく変化をしてきた、そういった中で国民の金融サービスに対するニーズの高度化、多様化といった現象が見られるということから問題が提起をされているというふうに受けとめております。したがいまして、われわれとしては、この金融懇で官業、それも郵便貯金だけを取り上げるのではなくて、金融制度各般にわたって幅広い検討が行われるべきであるということを申し上げているわけでございます。  その中で金利の一元化の問題でございますが、現在、民間金融機関の預貯金の金利につきましては臨時金利調整法に基づいて日銀政策委員会が金利調整審議会に諮問した上で決定をされております。それから郵便貯金の金利については、郵便貯金法に基づきまして郵政大臣が郵政審議会に諮問した上で政令によって決められることになっております。  郵便貯金は、御存じのように「簡易で確実な少額貯蓄の手段」ということでございまして、郵便貯金法の中で、預金者の「利益を増進し、貯蓄の増強に資するよう十分な考慮」を払いなさいということが指摘されております。同時にその中で「あわせて一般金融機関の預金の利率についても配意しなければならない。」こういうことに法律で決められておるわけでございます。  実際問題としては、預貯金金利については、主として預金者保護の立場から決定される、ただいま申し上げたような形のもの、それから金融業界、産業界立場から決定されるもの、これが併存をいたしているわけでございます。事実上の問題としては、両者が状況に応じて調整をされる。私ども、この種の問題が提起されたときには大蔵省とも十分な意思疎通を図っているところでございます。そういうことで結果的に国民全体の利益も擁護され、国の政策としての適正さが確保されていると考えております。  したがいまして、われわれといたしましては、現行の金利決定方式は適切なものであると考えておりまして、そのことを、さきの懇談会でも、われわれの考え方として申し述べたわけでございます。
  126. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 官房長官、特にあなたに耳にとめておいていただきたいのですけれども、この十年間、国民は非常に零細な預貯金を郵便局に預託する。しかも、それはあくまでも貯金を目的として、老後あるいは進学とか病気のとき、そういう不時の支出を予定しながら、目減りを覚悟で郵便局を御信頼して貯金をしてきております。したがって、その目的があくまでも貯金でございますから、長期にわたって零細なお金を預かる国としては、長期のものについては若干利率を高くしよう。いまで言いますならば、二年以上の長期のものについては若干郵便貯金の利率が高いのです。しかし、営業活動等を目的とする民間金融機関の場合には、二年以下の短期のものは民間金融機関の方が利息が高いのです。これは私は非常に利口な決め方だと思っております。そうあるべきだと私は思っているのです。  ところが、金融政策の一元化という名のもとに、いわゆる企業寄り、営業活動寄りに金融を一本化して、金利までも一本化しようとしている。零細な庶民はほかに方法を持たないから、やむを得ず、わずかな利息を目的にしながら郵便貯金をしてきておる。それをいわゆる営業活動を中心にする民間の金融と同時に並べて一本化しようというような考え方は、そもそも国民を無視した金融政策である。なるほど金融政策の一体化は、行政としては、政府としては、やりやすいかもわかりません。けれども国民は忘れられる、そういう形になるだろうというふうに、私は長年郵便局に籍を置いておりましたから、そういうふうに見ておるわけでございますけれども、そういう意味があるからこそ、郵便貯金というものについて所管する郵政省が多くの不満、意見をあなたのところまで申し入れているわけです。  申し上げたように郵政審議会というりっぱな機関があり、しかも土光さんのようなりっぱなお方が会長をおやりになっている、そこにお任せすればいいではないか。何を改めて内閣総理大臣の私的な諮問機関などを設けなければならないのか。それは民間の金融については大蔵省を中心として所管の省で御検討なさるのが至当ではないか。それをことさらに内閣に、こういう総理大臣の諮問機関を設ける必要はなかったのではないか。  しかし、もう設けたわけですから、設けた以上は十分各界の意見、特に郵便貯金を預かる郵政省の意見は取り入れるべきであるのに、これは一項もくみ入れていない。「遺憾である」とか、あるいは「疑念を抱かざるを得ない」というような、閣内でそういう意見が出るような懇談会をつくって一体何の効果がありますか。しかも、法的に郵政審議会の出した結論というものは尊重されるとなっている。片方では、これは非常におもしろいのですが、尊重し確認するとか確約するとか、何か郵政大臣大蔵大臣が判こを押したのかどうか知りませんが、書いてあります。まことにばかげた行政のあり方だと思います。大体官房長官というお方は、非常に冷静にしかも的確に物事を判断されるりっぱなお方だと私は思っておりますが、これだけはちょっと行き違いじゃなかったんでしょうか。本当に官房長官の本心を聞かせてもらいたいと思います。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま阿部分科員のおっしゃいましたような郵便貯金というものについての本質論、これはせんだっても、この懇談会で郵政省の方々から御主張があったと承知をしておりまして、それも確かに一つの物の考え方であると存じております。したがいまして、そのようなあっちこっちからの御意見、御主張を、懇談会としては公平な立場でひとつ聴取をしてもらいまして、ここ何年か、ことに昨年来いろいろ議論になっていること、そのものが的はずれであるのか、あるいは、その間何がしかの真理があるのかといったようなことを公平な立場から判断をしてもらいたい、こう思っておるわけでございます。  本来こういうものは、よほどの必要がなければ設ける必要の、入り用のないものでございますけれども、いかにも、この問題をめぐりまして昨年ごとに国内で、あるいは政府部内もさようでございますが、意見が激しく対立をしてまいりましたので、一応公平な立場方々判断を出してもらいたい、こう思って設けましたようなわけでございます。
  128. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 そうすると、郵便貯金の運用等については、金利等については郵政審議会に諮問をして郵政大臣がお決めになることになっておるのですが、郵政審議会が公平な結論を出さないから、公平な運営を期さないから、こういうものが要るんだ、こういうような結論になってきそうなんですが、どうでしょうか。私は、さっき申し上げたように、りっぱな郵政審議会というものがあるのですから、郵便貯金の運用や貯金金利等については、その結論を尊重すれば事足りる、こういうものはことさらつくらなくても、民間金融について必要があるならば、それは大蔵省の方で御検討なさるべき筋合いのもので、何も内閣にこういうものをつくる必要はない、これが私の主張ですがどうでしょうか。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の申し上げましたのは、郵政審議会が公平でない云々ということを絶対申し上げたわけではございませんので、郵政審議会は、その設置目的として、郵便貯金事業等の「能率的な運営を図る」これが第十九条に掲げられております目的でございますが、問題になっておりますのは、自由主義経済体制で金融分野で官業と民業がどうあるべきか、あるいは官業に資金が集中し過ぎているという意見は本当であるだろうかどうだろうか、また、国の金利政策はどうあるべきかというようなことは、本来郵政審議会の扱われるべき事項よりは、もう少し、何と申しますか、一般的と申しますか広いと申しますか、そういう問題でございますので、この懇談会で議論をしてもらおう、こう考えましたので、郵政審議会のすぐれた機能、そうして与えられました職責、それについて疑問を持っておるといったようなことではさらさらございません。
  130. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 阿部君、時間が切れておりますので、締めくくってください。
  131. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 締めくくりをいたしますが、いま官房長官お答えいただきました中で、実は郵政審議会は郵便貯金法の十二条と思いますが、郵便貯金の金利の決定に当たっても諮問を受けることになっておるのです。私は聞くところによると、郵便貯金を進めてこれが資金運用部に回り、財投に回る。財投の金がたくさん最近は余っておる。まあ余っておると言うと語弊があります、年度末にならなければわかりませんが、余っておる。そういう政府資金の使い方それ自体の方に問題がある。郵便貯金が集まり過ぎるので問題があるのではなくて、その集まった政府資金の使い方に問題がある。たとえば民間銀行が一番苦にしておる国債を、この余っておる郵便貯金で引き受けても、郵便貯金の預託利率よりも国債の利率は高いんですよ、結構やっていける。それで郵便貯金の運用ができる、国債を引き受けようじゃないか、そういう運用にこそ問題があるのであって、郵便貯金が集まり過ぎるとか、郵便貯金金利の決め方に町違いがあるのではなくて、政府自体の、大蔵省の財政の運用それ自体の方を問題にすべきである、そのことを強く申し上げまして私の質問を終わります。
  132. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で阿部喜男君の質疑は終了いたしました。  これにて内閣所管についての質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後零時三十分開議
  133. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  総理府所管について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  134. 矢山有作

    矢山分科員 きょうは同和対策の問題についてお尋ねしたいと思うのですが、きわめて時間が限られておりますので、直ちに具体的なお尋ねを申し上げたいと思います。御答弁の方もひとつ簡潔にお願いいたします。  まず第一点は、五十三年の十月に同和対策事業特別措置法の延長が行われました際、三項目の附帯決議が付せられまして、その第三項に、差別事象の増発にかんがみ、啓発活動の積極的な充実を図ることとされておるのでありますが、その後もきわめて悪質な差別事件が多発しております。  たとえば、長官のおひざ元の大阪におきまして、昨年の八月十日ですか、旭区内の同和地区の解放会館前の看板に、○○はえた、非人の住みかだ、やつらは大阪のウジ虫である、直ちに強制収容所に送り、毒ガス室に入れろ、彼らにあるものは死のみである云々という落書きがあった。また、ことしの二月二日、同じ地区の保育所の壁に、えた、非人は死ねという落書きがありました。さらにまた、昨年の十二月二日の東淀川区の淡路中学校体育館の壁にも、部落民は国民の敵だ、○○住民を消せ云々という落書きがあったということ。  これらは長官もすでにお聞き及びになっておると思いますが、このような深刻な事態を見て、私は、実は同対審答申に言っております心理的差別の深刻さというものを痛切に感じさせられておるわけでありますが、こういう事実を見まして、啓発活動を含んだ同和対策に対するもろもろの施策というものが一体どれだけの効果を上げただろうかという疑問を持たざるを得ないわけでありまして、今後の長官考え方をお伺いしたいと思います。
  135. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この同和対策の中での啓発活動というものは、総理府を中心に関係各省庁と連絡しながら努力をいたし、さらに今年度の五十六年度にも予算をお願いして、御審議をいただいているところでございますけれども、いま先生指摘のように、いろんな場所で差別に対する厳しい問題が出ております。私もよく存じており、まことに遺憾と思っておりますが、今後こういう問題が一日も早くなくなって、社会全体が同化されるように今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  136. 矢山有作

    矢山分科員 啓発活動予算というのを私ども見ておりまして、十分ではないというふうに痛感するわけでありますし、やはり心理的差別をなくしようと思えばこれは物的施策だけじゃだめなんで、やはりそういった啓発活動というものが強化されてこなければならぬと思います。したがって、予算面の強化と同時に、そういう実際の活動を強めていくということをぜひやっていただきたいと思うわけであります。  そのことに関連いたしまして、実は五十五年三月の衆議院予算委員会分科会でわが党の野坂議員が、部落差別解消の啓発活動をやるということのために人権啓発推進国民会議を設けてはどうかという提言をしております。この提言に対して、当時の小渕長官が、一つの提言として十分検討してまいりたい、こういうふうに答えておるのでありますが、その後検討をされておるのか、検討の結果が出ておるのか、お伺いしたい。
  137. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 同和関係につきましては、啓発活動に重点を置きまして施策の拡充を図ってまいっておるわけでありますが、国、地方公共団体を通じましての努力にもかかわらず、期待されておるような効果を上げ得ない面もある。そこで、昨年の通常国会におきまして、先生お話しのように上田先生、野坂先生から人権啓発国民会議というものをつくってはどうかという御提言をいただいておるわけでございますが、われわれとしても逐年予算の拡充を図りながら、その内容に工夫をこらしてきているところでございますけれども、いろいろ考えてみまして、今後の啓発の進め方あるいは内容、方策等につきましては、やはりここでもう一遍心理学的なあるいは社会学的な専門的な検討も加える必要があるんじゃなかろうか、こう考えまして、御提案申し上げております五十六年度予算案におきましてはこのための研究費を計上し、それらの成果を踏まえましてより効果がある啓発を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  138. 矢山有作

    矢山分科員 私は、いままでの特措法に基づく同和対策のやり方を見ておりまして、重点がその対象地域なり対象地域の住民の皆さんのところにいっておる。その対象地域なり対象地域の住民の皆さん一つの焦点を当てて同和対策事業を進めていくというのはもちろんでありますけれども、しかし差別というのは一般の中から出てくるんですから、したがって、その差別を解消するという施策というのは、やはり対象地域、対象地域の住民外の一般皆さんに対する対策が強化されていかないと効果を上げないということを痛感いたしまして、かつてもこの問題等について文部省等ともいろいろ話したことがありますけれども、やはりこれはぜひ一つ国民運動的なものを起こしていただくということが必要だと思うのです。  そういう意味で、先ほどお答えになりましたように、本格的に研究に着手されておるということについては私ども賛意を表します。しかし、研究、研究で目が暮れるというのは往々にこれまでに見られる傾向でありますから、したがって、できるだけ早くその研究の成果をまとめて一つの強力な運動に発展できるような組織を考え、やり方をお考えいただきたい、こういうふうに特にお願いをしておきたいと思います。  その次に、御案内のようにわが国はすでに国際人権規約を批准しておりますね。そしてこれはもう発効しておるわけであります。ところが、その人権規約には「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」こういう条項があるわけでありますが、先ほど申し上げましたような大阪の差別落書きですね、これはまさにここで言われておる差別扇動に当たると思うのです。したがって、人権規約を批准しておるといったてまえから、そうした差別扇動に当たるようなこういうものを法的に規制をするということをやはり考えるべきではないか、こういうふうに思うのですが、きょうは法務省からも来ていただいておりますので法務省からも御意見を伺い、何でしたらまた総務長官からもお考えをいただきたいと思います。
  139. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 御質問にお答えいたします。  ただいま御質問の条項のことでございますが、これには「国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道」こういうようなことでございまして、直ちに本問題には当たるものではない、そのように理解しておるわけでございます。
  140. 矢山有作

    矢山分科員 これはどうして直ちにそういう問題に当たらぬのですか。そういう悪質な差別落書きは、必ずしも私が先ほど指摘した大阪の地域だけじゃないんですよ。全国的にあちらこちらに出ておるんです。そうすると、この差別扇動というのはもう広い範囲で全国的に行われておると言っても差し支えない状態にあるんですよ。そうすれば、そういう差別扇動的な行為を法で規制するというのはやはり考えるべき問題じゃないですか。簡単にそれは考えてもらっては困る。
  141. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 文言の解釈といたしまして、ここに書いておりますのはもっと大きな意味で言われているのじゃないか、このように理解するわけでございますが、ただ、先生のおっしゃいました御趣旨というのは非常によくわかるわけでございまして、その御趣旨というのを踏まえて、今後の各省庁との関係の検討のときにいろいろ考えさせていただきたい、かように思うわけでございます。
  142. 矢山有作

    矢山分科員 総務長官、何か意見はありますか。
  143. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  いま法務省の方から御答弁がございましたが、所管の法務省で人権の擁護という基本的な原点に立って前向きに検討していただきたい、総理府としてもそのように考えております。
  144. 矢山有作

    矢山分科員 これは法務省、繰り返しになりますが、この部落差別の落書きというのは非常に広範囲にわたって特に最近激しくなっているのですね。それからまた、そのほか、落書きだけでなしに、教育現場における差別であるとかあるいは宗教界における差別であるとかあるいは行政機関における差別であるとか、あらゆるところで広がっている。そういうものが背景になりながらいろいろなところに落書きを書き散らすという形になって出ているわけですから、これはまさに差別扇動が国民的な憎悪感をあおる危険性を持っているわけなんですよ。そういう危険性を持っているのです。その認識を的確にしていただかぬといけない。  この文意からいってもっと広いものだと思うという……。いかにも、差別落書きをやっているのは、差別扇動が狭い範囲に限られて——一地域の住民あるいは狭い範囲の地域の住民の中だけの問題にとどまらぬような情勢になっているということを御認識いただかなければいかぬと私は思うのですよ。その認識なくしてこの問題に正面から取り組むことはできませんよ。どうなんですか。
  145. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  先生のおっしゃいました問題は、この条項にはずばりとは当たらない、私どもこのように思っておるわけでございますが、規定の精神というのは尊重して考える必要があろうと思いますし、今後もその考え方のもとにいろいろ検討を加えたい、かように思うわけでございます。
  146. 矢山有作

    矢山分科員 聞くところによりますと、局長、まだ局長に就任されて目が浅いんだということのようでありますから、恐らく部落差別がどういう状況にあるかという実態を詳細に御存じないのじゃないかと思います。したがって、ぜひ法務省としての責任において差別の実態がどういうものなのかということを早く御調査いただいて、頭に入れていただいて、認識をはっきり持って、そしてこれに対処していくというふうにやっていただかぬと、国会のこの場だけの答弁に終わったのでは意味がないわけです。  特に私がこのことを申し上げるのは、これまでも実はこの問題でいろいろ議論したのです。たとえば部落地名総鑑等の違反文書がたくさん出て、それが売買をされている、そういう差別文書が金もうけの手段にされておる、そういうようなものを野放しにする手はないじゃありませんか。なるほどこれを規制するとなると法律的にむずかしい問題もある。それはわかるが、少なくとも差別文書を金もうけの手段にするというその行為に対して、法的規制はかけられないのかという議論を三、四年前にやったことがあります。研究しておるのだと言いながらいまだに結論が出ない。  さらにそれに引き続いて、こういう差別文書売買をやったりなんかして、あるいは差別的な身元調査なんかをやって非常に弊害になっておるのは興信所関係が多いのです。そこで、こういうものも野放しにしないで、一定の資格を持たせて登録をする、こういう制度がアメリカにもできておるということを聞き及んでおりますので、そういった点も考えられたらどうかという議論もしてきたわけです。そういう議論を積み重ねながらきょうの議論をしておりますので、そういった過去の経過というものを十分御認識をいただいて真剣に取り組んでいただきたい、私はこういうふうに重ねてお願いをいたしておきまして、次の質疑に入りたいと存じます。  特措法の三年延長の際「法の有効期間中に、実態の把握に努め、速やかに法の総合的改正及びその運営の改善について検討すること。」という附帯決議があるのは御存じのとおりであります。それからまた、その当時稻村長官が、法の三年延長で後は打ち切るというのではない、三年間の延長の間に実態調査をし、同和問題解決の基本方向を出すのだ、こういうふうに明確に答弁をしておられる。さらにまた、今日までに千五十五に達する市町村議会の議決によりまして法の強化延長に対する要望等が出されておる。こういう状態の中でこの特措法の強化改正ということをぜひ進めていただきたいと私は思うのでありますが、総務長官としてのお考えを承りたいと存じます。
  147. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  政府は、来年度予算要求の段階予算に要求できるものはすべて要求する、こういう編成方針でやってまいりました。ただし、一部どうしても概算要求の時点でのせ得られないもの、用地の買収で売り手と買い手の間に話がつかない、こういうふうな地域につきましては概算要求ができなかったということはございます。こういう点を踏まえて、先日の予算委員会鈴木総理が答弁申し上げたように、五十七年度概算要求の時点で政府の方針というものを決めてまいりたい、このように考えております。
  148. 矢山有作

    矢山分科員 これは、鈴木総理も五十七年度の概算要求をまとめるまでには結論を出すと言っておられるので、その結論が法の強化改正をやらぬという結論では話になりませんので、残事業に限ってみても相当なものが残っておるということが言われておるのは御存じのとおりでありますし、さらにただ単なる事業の問題でなしに、先ほど議論いたしました根深く残っておる心理的な差別を解消していこうと思えば、これはやはりどうしても総合的な立場からの立法というものが要るんじゃないかということを私は考えるわけです。したがって、ぜひその結論なるものは法の強化改正ということで出していただきたい。  特に先ほど言いました大阪等における非常な悪質な差別落書きなんかを見ていまして、私はこういうように考えるのです。一つには、法があってさえもこのありさまだ、そうすると、この法というものがなくなれば一体どういうことになるんだろうか、これが非常な関心を持たれるところなんです。  それからもう一つは、同和対策事業中心の現行法では、なるほど実態的差別の解消はいささかやった、しかしながらこれもまだ不十分だ。ところが、先ほども言いましたように、心理的な差別の解消ということについては、いまの実態を見るともうほとんど効果がないような状態ではないかと言っていいと思うのです。そうすると、心理的な差別を解消しようと思えば、実態的な差別の解消も必要であるけれども、特に重点を置かなければならぬのは、啓発活動だとか教育だとかそういった部面ですね。それからまた、産業の問題だとかそういった問題を総合的に施策を立てなければならぬ。総合的な施策を立てるためにはそれに対応した法が要るというのは当然じゃないか。  したがって、私どもは法の強化改正ということを言っておりますので、そういう見地から、鈴木総理がおっしゃったように五十七年度予算の取りまとめまでに結論を出すということになると、今国会中にこの法の強化改正をやるということにならなければどうにもならぬわけです。その点どうなんでしょう。
  149. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 現行法は、御承知のとおり五十六年度末まででございますので、われわれとしては、概算要求の時期までに今後の施策の中身を十分詰めてまいりたい。中身によりまして果たして法律が要るのかどうか、要るとすればどのような形になるのかということを詰めてまいることになるわけでございますので、それがもし仮に法律が必要であるということになれば、われわれの手順としては、次の通常国会に御提案申し上げるというような運びになるのではなかろうかと考えております。
  150. 矢山有作

    矢山分科員 それはちょっとおかしいのじゃないですか。五十七年度予算概算要求の取りまとめまでにその法の強化改正が必要かどうかということをやってみる、その時点で必要だということになれば、次の通常国会。ところが、この法律は五十七年の三月まででしょう。それ、間に合いますか。
  151. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 一般に期限切れ法案等につきましては、国会でもそういう状況を御勘案いただいて御審議を願ってきたところでございますので、われわれとしては十分それで間に合うんじゃなかろうか、かように考えております。  また、今国会中に法律案まで詰めるということは、われわれのいま進めている手順から申しましても、また、これからの検討の重大性から考えましても、ちょっとそこまでお約束いたしかねる状態でございます。
  152. 矢山有作

    矢山分科員 しかし、あなた国会の審議の中にまで立ち入って、法の延長ですぐやってもらえるだろう、それはちょっと言い過ぎなんじゃないですか。それは法案を提案されるのはあなた方だけれども、それを審議するのはわれわれの方だから、提案されたものがすぐ通るんだから、それで間に合うだろう、それはちょっと言い過ぎじゃありませんか、その審議の中身まで立ち入るのは。
  153. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 決して御審議の中身についてとやかく申し上げる筋合いのものでないことはよく承知しております。ただ、われわれとして、これから考えますと、はっきり予定されておりますのは次の通常国会でございますので、今国会中に御提案申し上げる運びに至らない以上、時期としては次の通常国会と一応の想定をしておく。さらに、できるだけ早く結論を出すことについては、総理もお約束しておるところでございますが、われわれとしても精いっぱい急いで作業を進めてまいりたい、かように考えております。
  154. 矢山有作

    矢山分科員 あなたの発言は恐らく、現在の同対法をつくったときにも自社公民四党合意でやられた、したがって審議は案外スムーズにいってこれが成立した、こういう経緯を思い出しながら、与野党が一致して法案というものを提出できるという自信をあなたは持たれながら言っておられるんだろうと私は善意に解釈しておきます。そうなら通常国会という議論も成り立つでしょう。  しかし、私が特にこの際強調しておきたいのは、それでは十分な法案の審議にはやはり問題があろうかと思うので、少なくともこの概算要求の取りまとめまでには結論を出すというんだから、あなたの方でも従来この問題をやかましく言われておるから、内々では検討されておると思うので、少なくとも臨時国会くらいには提案できるという考え方でおるべきじゃないですか、どうなんです。そのくらいでなきゃ、それは話になりません。
  155. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 これも国会のことでございますので、われわれとしては……(矢山分科員「あなたが提案する」と呼ぶ)臨時国会が開かれるということを想定で申し上げることは……(矢山分科員「もし開かれたら」と呼ぶ)われわれとしては、仮に法律案が必要ということになれば十分な御審議を願うことは当然でございますので、もし仮に法律が必要となり、しかも臨時国会の時期までに結論を出せるなら、それは当然お諮りしたいという気持ちで作業を進めてまいります。
  156. 矢山有作

    矢山分科員 わかりました。  いまの御答弁は、臨時国会が開かれるか開かれぬかはわからぬが、開かれたらもちろんそれに出すようにしたい、ということは次の国会には出す、こういうことになるわけですわな。そうですね。
  157. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 できるだけ検討を急いでまいりますので、検討ができ、しかも国会の御都合等によって御審議願えるような状況が出ました場合には、当然そのような運びになると考えております。ただ、これはあくまでも法律が必要となったという結論が出た場合でございますので、その点も御了承を願っておきたいと思います。
  158. 矢山有作

    矢山分科員 いままでの議論を通じてみて、法律が必要だというのは結論が出ているじゃないか。鈴木総理の発言も、法の強化改正が必要だという前提に立ってあの答弁をやっておられると私どもは理解しておりますよ。  では、時間の関係もございますから次に移ります。  実は、五十四年の秋に大阪市内の印刷会社の身元調査関係で、当時労働省と法務省との間に見解の相違があった。というのは、一口に言ってしまえば、法務省の方のそのときに出された意見というのは、人権侵犯の事実がないからこの身元調査は人権侵犯ではない、単なる身元調査なら興信所を使うことも支障はないんで、対象が同和地区の出身者でも被爆者でも問題にならぬ、こういうふうな見解を出された。ところが労働省の方は、それはとんでもない話だ、身元調査は人権侵害につながるんだから、行政指導として、それをやりちゃならぬということを指導しておるのに、法務省がそんなことを言われるというのは、その行政指導の根底を崩すことになる、これは心配な話だ、こういうことでやりとりがあったと承っておりますが、その点は今日労働省と法務省との間で、労働省の考え方に沿って調整ができておりますか。
  159. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 御質問にお答えいたします。  結論を先に申し上げますと、労働省と法務省におきましては、いまの点につきまして見解の食い違いはございません。労働省におかれましては、就職に関する部落差別防止の見地から、憲法に定められております平等権の保障あるいはプライバシーの権利、こういう点につきましていろいろ問題を起こすおそれのあります身元調査というものはやめろ、こういう見解だと思います。その点につきましては、私ども、啓発と人権侵犯の調査、処理をやっておりますが、そのうちの啓発という面におきましては、私ども、全く一緒なんでございます。従来も興信業者等に対して繰り返し繰り返し、身元調査というものは自粛するようにということを要望してまいり、啓発をしているわけでございます。  ただ、先ほど申しましたように、私どもといたしましては、人権侵犯の事件の処理というものがございまして、これについてはおのずから問題が違ってまいるわけでございます。人権侵犯事件につきましては、それが人権侵犯に当たるのかどうかという観点から考えなければいけませんので、そういう意味で私ども、部落差別に関する身元調査ということにつきましては、部落差別の意図をもってする身元調査、あるいは調査事項、調査方法、こういうものから見て部落差別につながるおそれのあるような身元調査は許されない、こういう見解をとっておりまして、一貫してそれを貫いておるわけでございます。  ただ、この点が若干誤解されたのではないかと思っておりますが、啓発と人権侵犯事件の処理という点はおのずから違いがございますので、いま申しましたような差異が出てくるわけでございますが、基本的な考え方といたしまして、労働省と法務省には見解の食い違いはない、このように考えておるわけでございまして、この点につきましては労働省の担当官といろいろお話をして、違いがないんだということを再確認しております。  こういう次第でございます。
  160. 矢山有作

    矢山分科員 これは、話を聞いてみると、必ずしも完全に一致しておると言えませんよ。あなたの言う人権侵犯事件として上がってきたものに対して、それが人権侵犯かどうかという判断をする場合と、身元調査が人権侵犯につながるから、身元調査をやってはならぬという姿勢をとる場合とは違ってくる。あなたは自分で、人権侵犯事件と身元調査とは違うんだと言いながらごっちゃにして話しているじゃないか。  身元調査をやってはいかぬというのは、就職のときには能力や適性にかかわりのないことまで調べる必要はありません、それを調べると必ず差別問題等につながってくるんだ、だから身元調査をやりなさんなというのが労働省の指導だ。法務省はその指導で行がにゃいかぬでしょう。ただそれが人権侵犯事件がどうかで上がってきた場合とは区別して考えなきゃならぬ。あなたは、その辺を混同さしちゃいけぬ。  簡単にやってください。あなた長いから、時間が来ちゃう。
  161. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 私ども、啓発といたしましては、いろいろな問題を生じます身元調査はやめるようにということで指導しております。
  162. 田代裕

    ○田代説明員 ただいまの件、お答え申し上げます。  先生指摘のように、最初労働省と法務省の間で見解の相違のあるかのごとく報道もされましたけれども、その後両者で打ち合わせました結果、法務省は人権侵犯事件の被疑があった場合に個々の事件を検討して判断を下しているわけでございまして、私どもの方は、要するに一定の書類をとって採用選考に必要なものを見ておるものですから、それ以外の事項にわたる身元調査というものは就職差別につながるおそれが多分にあるということで、行政指導でこれを禁ずるようにしておるわけでございまして、その点については法務省の指導も全く同じでございます。
  163. 矢山有作

    矢山分科員 まだ言いたいことはあるのだが、時間がないからこれでやめておきます。  そこで、一つだけ最後に、きのうの分科会の質疑で、不十分でどうもむしゃくしゃしているので申し上げますが、企業に対して労働省は、身元調査をやってはいかぬ、それは人権侵害につながるからという行政指導をしておる、ところが、官公庁の職員についてもそれは同じだと私は思うのです。官公庁の職員の場合に、特別な仕事だから身元調査をある程度やっても仕方がないような言い方が一部きのう出てきたので、それはおかしいのじゃないか、やはり官公庁職員として採用する場合、その能力、適性に合致しているかどうかというのは、面接試験を含むその他の試験で判断すべきことなのであって、それ以外に身元調査をどんどんやるというのは、企業には身元調査をやってはいかぬと押しつけておいて官公庁がやるというのはすっきりしないので、やはり官公庁の場合も能力と適性を判断するのは面接を含んだ試験でやって、不要な身元調査はやらないという指導を徹底させなければいけないと私は思うのです。幾ら身元調査をやったって、たとえば警察は徹底した身元調査をやっている、ところがそうして採用した警察官に非行警察官がたくさん出る、身元調査をやって徹底的に調べ上げて採ったから非行する警官はおらぬというのじゃなくて、これは採った後の教養、教育の問題ですから、そこらを履き違えた物の考え方をしておられるのじゃないかということをきのう感じたので、この点労働省としてもう一遍はっきりしたことを言ってほしいと思うのです。
  164. 田代裕

    ○田代説明員 昨日、第三分科会でもお答え申し上げましたとおりに、この考え方民間も公共も同じ考え方でございます。ただ、労働省としましては、指導する範囲民間範囲でございますので、企業に対して要請をすると同時に、国その他の機関につきましても、同様の考え方で臨んでいただけるように私どもの方から申し入れもいたしておりますし、それぞれそのような措置を図っていることだと考えております。
  165. 矢山有作

    矢山分科員 終わります。
  166. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で矢山有作君の質疑は終了いたしました。  次に、武部文君。
  167. 武部文

    武部分科員 いま同僚の矢山委員から、部落差別問題についていろいろお話がございました。私もこの問題だけでございますが、いま聞いておりまして若干重複する点もございましょうが、その点は御了解をいただきたいのです。  総務長官、最初にお伺いいたしますが、きのう出ました毎日新聞の「記者の目」という、約一ページ大の「悪質化する部落差別」という記事をごらんになりましたでしょうか。
  168. 中山太郎

    ○中山国務大臣 拝見いたしました。
  169. 武部文

    武部分科員 私がこれから申し上げたい具体的な例は、ちょうどくしくも、きのうこのことが新聞に出ました。お読みになっておれば大変結構でございますので、そういう点も承知の上でお話をさせていただきたいと思います。  私の地元でも差別事件がたくさんございます。また、悪質な落書き等もございまして、具体的な差別問題に私もタッチしてきた一人であります。  五十三年に特措法が三年延長されましたときの三項目の附帯決議は、先ほどもお話があったとおりでございまして、特に第三項目目の「啓発活動」というのは、当時の決議の中では大変重要な項目でございました。あれから二年、またたく間にたったわけでございまして、その結果を見ますと、差別事件が減るどころかふえておる、しかも傾向が大変悪質の状況になっている。  私は、先般大阪へ参りまして、長官の地元であります大阪でいろいろなことを調べてみました。全く驚き入ったのでありまして、こういう点から、以下質問をしていきたいと思います。  お話もあったように、総理府が取り扱った七九年の差別の件数は四百七件、都道府県が千三百三十六件ですから千七百四十三件、これは係属中のものを含めますとさらにふえるだろう、このように推測されます。また、総理府が扱った件数なり都道府県のその件数が氷山の一角だということは、広島県の表を見ますと、全国の一覧表の中で何と広島県だけで千七百四十三件中四百九十八件もあるということは、広島県はこの問題について非常に積極的にやっておるが、他のところは余り積極的じゃない、だから広島県並みにやっておれば、この千七百四十三件というものはまだまだ大きな数になるということがほぼ推測されるわけであります。  このように、差別事件というのは、ああいう附帯決議が示されたにもかかわらず効果が上がっていない、まさしくこういうことだろうと思います。特に五十一年九月から五十二年一月にかけて四カ月ばかりですが、総理府が調査をされ、五十三年九月に発表されました例の意識調査の報告書、この中の「同和地区の人たちが差別を受けた体験があるか」という調査に対する答えが非常に重要だと思うのです。五〇%から七〇%近くの人がいろいろな形で差別を受けた体験がある、こういう答えをしておるのです。私は、これは非常に大きな問題だと思うのです。  こういう具体的な例の中で、大阪の事件というのはすでに長官の耳にも入っておると思うのですが、具体的なもののプリントを拝見いたしまして、何とも大変なショックを受けました。こういうことが堂々と書かれて、これは大阪の旭区生江町の解放会館に張ってある。便せんで七枚、これを読んでみて全くびっくりいたしました。お読みになったでしょうか。
  170. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ええ。
  171. 武部文

    武部分科員 お読みになっておればもうそれ以上のことは言いませんが、「エタ」「ヒニン」とか、やれ「ウジ虫」だとか、「軍隊を動員してエタ、ヒニン階級の住むところを武力をもって制圧しろ。」、全く大変な言葉が書かれておるのであります。これは特定の地区を名指しして、いわゆる歴史的なあの卑しめの言葉をもってその地区の住民をののしっておる、こういうことになるわけですね。これは厳然たる事実でありますが、私も七十メートルにわたって書かれておるこのプリントを見せてもらいました。特定の町名まで書いてあります。こういうことについて長官はいまどのようにお考えでしょうか。そのことを最初にお聞きした。
  172. 中山太郎

    ○中山国務大臣 まことに残念なことだと考えております。
  173. 武部文

    武部分科員 部落問題を取り扱っておられる政府の責任官庁である総理府、その責任者である総務長官としては、恐らくそのようなお気持ちだろうと思います。しかもそれが長官の地元の大阪であるということです。大阪には他にまだたくさんのこういうような事件が起きておる。私は大阪へ行っていろいろ調べました。具体的に全部言うことはできませんが、こういうことが起きてきた。しかも、その中には、もう何か他を扇動をして、暴動を起こしてまでもやっつけてしまえというような、そういう意図のことが書かれておるわけであります。そうなってくると、ここは中学校ですが、中学校の体育館の壁にまでそういうことがあれば、当然子供たちはそれを見るわけですね。同和地区から通っている子供たちはこれを見る。当然親もそれを見るでしょう。そうなれば、自分たちの子供たちが危害を加えられるかもしらぬ、こういう気持ちを持つのは私は当然だと思うのです。こういう悪質な扇動的な差別事件、こういうものは、少なくとも第三項にあった啓発活動というものが何らの成果を上げていない、そういう結果このようなものが生まれておる、このようにわれわれは見なければならぬと思うのです。  一体、啓発活動というものがあの三項目の中に述べられた後、この二年間にどのような成果を上げておるというふうに長官はお考えでしょうか。
  174. 中山太郎

    ○中山国務大臣 啓発活動予算を計上して、政府としては、ありとあらゆる機会に、同和対策室を中心に各省と連絡をしてやっております。なかなか政府のやる啓蒙開発活動というものの効果が出ないということも、一面、先生の御指摘のような事実が証明しているところだろうと思います。  私も先生の御指摘の大阪の出身でございまして、いろいろな地域でそのようなことが最近発生していることはまことに残念だ。ただ、こういうふうな事件発生の陰に一体どんな理由があるのだろうかということも、政府としては見逃すことはできない。それはやはり、いままでの同和対策事業というものが非常に急激に進んだ地域においてそのような事件が発生しているケースもあるように私は思うのであります。こういうことで、この問題をただいま同和対策室を中心に鋭意資料を集めて研究をやっておる最中でございまして、いましばらくこれらに対する措置というもの、法務省もおりますものでございますから、これから十分連絡をとってやってまいりたい、このように考えております。
  175. 武部文

    武部分科員 この特集の新聞記者の方の記事の中にもございますように、ねたみ意識、これが新しい差別の形態をとっておる、こういうことが指摘をされておりますが、私はまさしくそのとおりだと思うのです。そういうものをあおって、この部落差別に対してのいまのような扇動記事が書かれる、落書きがされる、これは明らかに、ねたみ意識という新しい差別の形というものに便乗した、それをうまく文書に盛り込んで扇動するという、新しき差別事件だと私は見ておる。この指摘のとおりだと私は思います。したがって、この附帯決議の啓発活動というものがやはり効果を上げていない。おっしゃるようにいろいろ努力はされておるでしょうけれども、現実にこういうものが頻発するということは、効果を上げていないということが裏書きされるわけであります。  そこで、啓発活動の重要なことをお認めになるわけですから、たとえば政府の責任者である総務長官の声明なりあるいは談話なり、そういう形でもって啓発活動の問題を国民に明らかにする、あるいは政府の広報をもってもっと頻繁にこの啓発活動をする、こういうようなことをお考えになったことはないでしょうか。そういうことをお考えになりませんか。
  176. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  啓蒙開発活動の具体的な方法については、いろいろと専門家の意見も入れてやっております。  今後とも努力を続けてまいりたい、このように考えております。
  177. 武部文

    武部分科員 確かに長い期間の問題でございますから、一朝一夕にということは、私もそう思います。しかし、事実は事実として、これだけの件数が上がっており、しかもそれはまだまだ潜在的なものであるということになるならば、特措法が出てきてからもうすでに十二年たっているわけでありまして、具体的な問題がこれほど出ておるわけですから、いま私が申し上げたような、総務長官の声明なり談話なり広報なりそういうものをもって、もっともっとひとつ啓発活動を続けてもらわなければならぬ。国民的課題だと言うならば、そういうことが最も必要なことだというふうに私は思いますから、たとえば強調月間を設けるとかこういうようなことも一つの手でしょう。北方領土の日ができたときに、何か月間とかなんとか言っているのですから、ああいうこともあるのですから、強調月間というようなものを検討して、そうしてもっともっと具体的事実を国民に明らかにして、このような差別をやめるように、なくなるように啓発活動をさらに進めてもらいたい、こういうことを特に要望しておきたいのであります。  まことに短い時間ですから、あともうわずかですから次に進めますが、去年の予算委員会分科会で発言がありまして取り上げられました、地方にはすでにつくられております例の人権啓発推進国民会議、これについてそういうものをつくるべきではないかという質問、意見、提言がございましたが、この提言に対して、当時の小渕長官が検討してみようという約束をいたしました。その後、一体この人権啓発推進国民会議というものについてはどうなっておりましょうか。
  178. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 先ほど大臣からも申し上げましたように、われわれ、地方の協力も得まして啓発活動に最も力を入れているところでございますが、必ずしも十分な成果を上げ得ないのじゃないかという反省があります。その一つの方法として、上田先生、野坂先生から、人権啓発国民会議というようなものを設けてはどうかという御提言をいただいておることは御指摘のとおりでございます。  われわれとしても、同和関係啓発につきましての施策の拡充、内容の改善等を検討するとともに、今後さらに抜本的な体制を整備してまいりたい、かように考えまして、五十六年度御提案申し上げております予算案には、今後の、より効果的な啓発活動を進めるためには、どのような方法で、あるいはどのような内容をもって進めたらいいかということを、心理学や社会学の専門家の力もかりまして抜本的に検討してまいりたい、かように考えているところでございます。
  179. 武部文

    武部分科員 あれから一年たったわけですが、そうすると、いまあなたがおっしゃったのは、五十六年度予算の中でいろいろ考えておるが、人権啓発推進国民会議、これは仮称ですけれども、そういうものを設けることを前提として検討しておるというふうに理解していいですか。
  180. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 進め方の一つとして、そういう方法が効果的であるかどうかということも当然検討の対象になろうかと思いますが、設置を前提としてというところまではまいっておりません。
  181. 武部文

    武部分科員 地方には設けられてそれなりの成果を上げておるようでございますから、以下これから申し上げますが、そのことからも、この国民会議のことについては、ぜひ前向きで対策を検討してほしいということを特に要望しておきたいと思います。  矢山委員からも最初ちょっと話があったようでございますが、私はやはり、国際人権規約というものと日本の部落差別というものについては非常に大きなつながりがあると思っています。一昨年の九月二十一日の国際人権規約の発効、この規約の中の人権規約、B規約第二十条の第二項、これは「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で、禁止する。」、こういうふうになっていますね。この人権規約第二十条の第二項の精神は、わが国においては明らかに部落差別問題だ、人権規約そのもののわが国におけるところの関係は、この法の精神からいって部落差別問題だというふうに私は理解をしておるし、間違いなくそうだろうと思っています。したがって、先ほど来、具体的な大阪の学校の例や解放会館の前の差別文書や、いろいろなことを申し上げました。長官も御承知でございますから内容は言いませんでした。この差別扇動に対して、人権規約は非常に厳しい措置をとれということを規定しておるのであります。この大阪の二連の差別文書、差別落書き事件の内容は、明らかに部落民衆の社会的抹殺を求めるようなものであります。部落民衆の社会的抹殺を求めておることがあの字句の中にはっきりと出ておるのであります。これは明らかに差別扇動であって、この人権規約から見るならば、非常に厳しい措置を要求する人権規約から、当然措置をしなければならぬ。先ほど法務省の見解をちょっと聞いておっても、大変悠長な考え方でありまして、私はこの人権規約の規制に対して手ぬるいというふうに聞いておりました。矢山委員もそのように主張しておりましたが、同感であります。したがって、法によるところの規制を含む措置をとる必要がある。具体的にそういう事実があの大阪の文書の中に出ておるわけでありますが、この人権規約に基づく法的な規制について長官はどういうふうにお考えでしょうか。
  182. 中山太郎

    ○中山国務大臣 所管の法務省においてこの問題についてはお答えをさせていただきます。(「法務省はおらぬぞ」と呼ぶ者あり)
  183. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 先ほど矢山先生の御質問に対しても法務省から御答弁申し上げたのですが、必ずしも字句どおりには同和問題に適用される条項ではないことは事実でございますが、法務省におきましても、その精神は同和問題にも十分適用すべきものだという見地から、従来問題になっておりました「部落地名総鑑」というようなもの等の取り扱い等々と相まちまして、必要な規制措置について検討をしておるところでございます。
  184. 武部文

    武部分科員 法務省がおりませんからそれ以上のことを言いませんが、いまお答えになったように、この人権規約の精神は、わが国では紛れもなく部落差別と結びついておるというふうに私は見ておるし、あなたもそういうふうにおっしゃる。だとするならば、いまの法務省のような見解では私は非常に手ぬるいと思う。したがって、担当の総理府としては、いま申し上げたような点にもっと着目をして、ぜひ法務省とも協議をして、この法的な規制措置をとるための努力をひとつしてもらいたい。そうでなければ、この落書き事件、またそういう差別事件というものはなくならないと思うので、担当の総理府として、今後も粘り強く、しかも早急にやっていただく、こういうことを特に要請をしておきたいのであります。  さて、いままでいろいろ述べてまいりましたけれども、結局そういう差別事件が後を絶たない、しかもだんだん悪質になってきておる。私の地元でもそうでありますが、大阪は特に典型的な例でございます。したがって、こういうふうな状態が相変わらず続いておる。したがって、いまの特別措置法ではやはりだめだという意見が出てきておるのも当然だし、その延長なり改正強化、こういう点をわれわれの側から強く政府にも、特に総理府に要望してきたところであります。  先ほどお話がございましたように、地名総鑑の問題にしたところで、まだ隠し持っておる会社がたくさんある、これも明らかであります。したがって、この差別の悪質化と増大、しかもこの地名総鑑は後を絶たない、金もうけのためにそういう差別を利用する、こういう悪質な問題がどんどんふえてきておる。しかもあとわずか一年でこの特別措置法は切れてしまう。こういう状況になってきたわけですから、この後一年のうちにこうした問題の解消は全く見通しが立たない、これはもうだれの目にも明らかだと思うわけです。  したがって、いまの特別措置法というのは、私はこの特別措置法が制定されるときに委員の一人としてタッチしたものでございますが、当時は大変りっぱな法律だと思いました。みんなで努力をしてつくった法律でございましたからいいと思ったのですが、時間がたてばたつほど、また差別の実態が明らかになればなるほど、この特別措置法には多くの欠陥があるということがわかりました。いい点もあるが、現在の日本の差別事件とはやはり本質的に異なっておるものがある。しかもこれは環境改善が中心の法律でございましたから、先ほどのお話のとおり、心理的な差別あたりについてはこの法律はどうすることもできない。部落差別の根源は心理的差別がなくならない限りはだめだ。環境の改善は必要だけれども、それ以前のものがある。ところが、その以前のものがこの法律では解消できないという欠陥を持っておる。これがだんだん明らかになってきたわけでございますから、ぜひこの強化改正ということをやってもらわなければ困る。  この点で、法律の強化改正についての目安は一体どうかという先ほどの矢山委員の質問に室長が答えておりましたけれども、来年の通常国会は全く間に合わぬ、これはもう物理的にいっても間に合わないのであります。したがって、基本的な問題についてはっきりとした態度をこの国会中に政府は示すべきだ。法律がどうのということではなくても、少なくとも総理のああいう答弁もあったわけですから、具体的にこの特別措置法についてはこうこうこういう点について強化をする。基本的な問題、労働、教育、雇用、いろいろな問題がございますが、そういうものもひっくるめてやるという基本的な態度はもう明らかにこの国会中にやるべきだ。なるほど予算の点は五十七年度予算の概算要求の出る八月ごろかもしれません。しかし、基本的な法律に対するところの姿勢というものはこの国会中にぜひやってもらわなければならぬ、このように思うわけですが、強化改正に向けて検討がいまどの程度なされておるのか。そうして、いま私が申し上げたように、この国会中にそういう基本的な法律の欠陥に対する姿勢、改正強化の姿勢についてこたえられる態度があるかどうか、長官にひとつお伺いしたい。
  185. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国会の附帯決議の精神を十分踏まえまして、総理府の同和対策の責任者を中心に、各県からヒヤリングを行い、残存事業量あるいはまた、いろいろな差別の問題等も実態の調査をやっておる最中でございます。  先般鈴木総理が予算委員会答弁を申し上げましたように、五十七年度概算要求の時点で政府としての方針をどうするかということの決断を下されるというふうに私ども考えておりますし、また前回のこともございますので、与党、野党の間でいろいろ非公式に御相談もすでに始まっておるようなことも聞いております。私どもとしては十分国会の御意見も尊重しながら決定をいたしてまいりたい、このように考えております。
  186. 武部文

    武部分科員 いま総務長官の述べられたことは大変大事なことでございまして、この法律が十二年前にでき上がるときの経過を振り返ってみますと、確かに与野党でいろいろ協議をしてあの法律が成立をしたのであります。     〔主査退席、池田(行)主査代理着席〕 しかし、先ほど申し上げるように、いい面もあったけれども欠陥が明らかになってきた。こういうことがはっきりした以上、その欠陥を補うために、法律としてはどうすべきか。また、環境は確かによくなったけれども、さっきから申し上げるように、それ以前の重要な基本的な人権その他の問題がなおざりにされておる。  この法律というものはいま必要だということはもうだれしもが認めておると思うのです。そういう意味で、われわれは、この同和対策事業特別措置法の強化改正についての基本的な改正の案文を用意し、すでにこれを明らかにしておるところであります。私どもの党は、具体的な問題を条文の中に入れて、具体的なものをもうあなた方に示しておるわけであります。したがって、これを十分参考にして、いち早くこれに対しての態度を決めてほしい、このように特に要望しておきたいのであります。  時間が参りましたから、私は、最後に一つ申し上げておきたいと思いますが、あの第二の解放令と言われた同和対策審議会の答申をまとめた東洋大学学長の磯村英一氏、この人が二、三日前に新聞に投書というよりも記事が出ておりまして、私それを拝見いたしましたときに、そこの中に大変感銘を受ける言葉がございました。これも総務長官お読みになったかと思うのですけれども、私は現在の日本における差別問題、このことを考えたときに、この同対審の答申を本当に精力的にまとめられた磯村英一氏の言葉というのは大変含蓄に富んだ言葉だと思っています。その中にこういう字句がございました。同和問題というのはすぐれて社会体制と地域社会の問題である、差別の問題というのは身障者、被爆者の問題につながるのだ、こう言っておられますが、私はこれは全く同感であります。この同和問題というのはひとり部落だけの差別問題ではないのだ、日本におけるところの身障者の人たちやあるいは被爆者の問題とつながっておるということを言われておるのであります。どうぞひとつ、こういう大変英知に富んだ方が言われておるこの言葉、私は日本の差別問題を端的に表現をしておられたと思うのですが、そういう点を中心に据えて、これから、もうあとわずかですから、ぜひとも日本からそういう差別事件が一件もなくなるようなところに向かって大いに努力をしてもらいたい。また、そういう責任がわれわれにはあるわけですから。  たった三十分の時間で意を尽くしませんが、私は大阪に行ってみて全く唖然といたしました。こういう悪質な、扇動的な連中を野放しにするわけにはまいりません。どうぞひとつ法的な規制その他をもって、この差別事件の問題が一日も早く解消するように一層の努力を総理府にお願いをして私質問を終わりますから、いま申し上げた点について総務長官の見解を一言聞きたいと思います。
  187. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生の御指摘の御趣旨は十分理解をしておるつもりでございまして、私どもといたしましては差別のない明るい社会づくりのために今後とも一層努力をしてまいる覚悟でございます。
  188. 武部文

    武部分科員 ちょうど時間になりました。
  189. 池田行彦

    ○池田(行)主査代理 以上で武部文君の質疑は終了いたしました。  次に、平石磨作太郎君。
  190. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 私は旧軍人に対する恩給の問題についてお尋ねをいたします。  旧軍人は、十二年以上の方々が恩給法の適用によって、それぞれ援護処置がなされておるわけです。したがって、十二年に満たない軍人、これは現在恩給法の中では見られておりません。御案内のとおりだと思うのですが、十一年十一カ月といったように、まさに恩給年限に達する、しかも戦時加算を含めて達するといったような、いわばすれすれの方々がたくさんいらっしゃるということ、そのために、同じように戦場で戦って、そして一方は恩給法の適用になるが、ならなかったという方々が全国にたくさんいらっしゃると思うのです。そういう方々から、何とかならぬものだろうか、こういうお話をよく聞くわけです。     〔池田(行)主査代理退席、主査着席〕 それで、このことについて全日本兵の会、こういう会がございまして、この代表者は高知市の寺尾大二郎さんという方でございます。この方が、そういった組織をもって、恩給未適用の軍人の援護について運動を展開しておられる。したがって、いま恩給法が復活をして、そしてそれぞれの手続によって恩給受給者あるいは公務扶助料、こういった方々がだんだんだんだんとお年を召されて亡くなっていく、これも事実である。そのように、ピークの時代から現在の時代に当たっては、だんだんと対象人員は少なくなっておるではないか。そうしますと、国は同じように戦闘に参加をしたこういった方々を、予算の上からいいましても、対象人員が少なくなっていけば、十二年というこの制度を下へ一つおろす、十一年におろす、また十年におろしてくる、こういったようにすそ野を広げて何とかならないものだろうか、こういう切なる願いがあるわけです。これに国としていまの現行法の中でこたえることができるのかどうか、長官のお考えをいただきたい。
  191. 中山太郎

    ○中山国務大臣 きわめて技術的な問題でございますので、政府委員から答弁させていただきます。
  192. 小熊鐵雄

    ○小熊政府委員 お答えいたします。  ただいま、恩給の年限について、現行、下士官、兵が十二年、准士官以上が十二年、こういう年限で決められておるわけでございますが、これを、それに満たない者でもどうにかならないのか、こういう御趣旨の御質問がと思います。  先生承知のように、年金恩給というのは年功を対象とした年金でございます。これは年金すべての宿命かと思いますが、特に恩給の場合は戦前から、戦前のあの苛烈な時期から、下士官、兵十二年、准士官以上十三年ということでやってまいっておるわけでございます。先生のおっしゃった十一年十一カ月というような例に対しては、確かにお気の毒だという気はするわけでございますが、ただお気の毒だという論理だけでこれが動かしていいものかどうか。仮に十一年十一カ月を認めれば次は十一年十カ月の人がお気の毒だということにならざるを得ないと思いますし、そういう論理だけではどうにもならないのじゃないかという気がするわけでございます。  それから、いま先生どんどん減っていくというお話がございますが、これは恩給の理念といいますか恩給の制度とはまた別の話かと思いますが、現実の姿を申し上げますと、現在二百四十八万の受給者がおります。これは毎年減り方もいろいろでございますが、過去五年ぐらい平均しますと、年三万二千人ぐらい平均して減っております。これに対しまして、恩給年額というのは、毎年の公務員の給与のベースアップとか、そういうものに準じて、四%とか五%とか、そういう改善を行っておるわけでございまして、いまのところ毎年毎年恩給年額は増額しておるというのが現状でございます。
  193. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 いまの制度の上からの局長の御答弁でそのことは一応了解はできます。だが、異常な戦争であったということ、そして、もちろん戦争による犠牲といいますか、そういったことは国民たくさんの方々が受けていらっしゃるわけです。そういったようなことも一方にはございます。したがって、昔からあったこの恩給、旧軍人恩給というものは、戦後のいまの時代においてもいち早くこれを復活をして、昔にならってやっておるということはよくわかるわけです。だが、心情論でもって制度を云々ということも、これもなかなかむずかしい問題である。だが、そういったたくさんの方々がいらっしゃって、しかもそういう願いが非常に強い。これは皆さん方も各地へ行かれると思うのですが、私も各地へ行ってみますと、そういった要望がたくさん聞かれます。まさにここのところが政治だ。したがって、そういった方々が、いわば法律とか行政とかいったものはもともと冷たいものですが、そのもともと冷たいものを温かい心でもって何とか施行の上において考えていくということもこれまたあの悲惨な戦争を経験をした国民に対する政治の一つの姿勢ではなかろうか。そしていま日本はこのような経済大国とまで言われるような今日を迎えて、この方々も戦争から帰ってから日本の経済復興とさらに経済発展のためには一生懸命働いた方々です。そしてその方々がずっと年を召されてきた、そしてみずから生計を営むということについては多くの不安が出てき、さらに一方においてはそういった若いときの過去の国に対する大きな貢献、このことから考えたときに、私は、心情的にこういった方々のことについても政府は温かいこたえをすべきではなかろうか、このように考えてのきょうの質問でございます。したがって、私はこれについてさらに検討いただきたいことを強く要請をするわけです。  それから次に、この十二年に満たないそういった方々は、復員をせられてたまたま国家公務員になられた、あるいは地方公務員になられた、そして公共企業体の職員として仕事を持たれたという方々は、その当時兵隊におられたときの期間が他の制度によって、年金制度その他によって期間算入という形でこの方々の戦争におけるところの評価がなされておるわけです。私はここにも大きな——大変結構なことであってこのことを云々言うつもりはございませんけれども、仕事の選択がたまたま公務員であった、仕事の選択がたまたま自家営業であった、仕事の選択がたまたま会社員になった、そして国の制度はそれに向かって、いわゆる公務員として公共に働く方々については戦争中同じように戦ってこられた評価が期間算入という形でなされておる。どうですか、ここの矛盾点は。お答えいただきたい。
  194. 小熊鐵雄

    ○小熊政府委員 ほかの年金との関係については、私、答えるべきあれじゃないかと思いますが、共済年金につきまして恩給年限と共済年金をつないでおるということを先生申されておるのじゃないかと思います。これにつきましては、共済制度というのが恩給制度をそのまま引き継いだ形で設けられたものですから、むしろこれはどっちかというとつながなかったらかえって前を切り捨てるというような形に狂ったのじゃないかと思いますが、そういう形で恩給が共済につながっておる。年金制度は厚生年金制度とかいろいろな年金制度があると思いますが、共済年金制度はそういう形で昭和三十四年から出てきたものですから、それでつながっておる、こういうことでございます。
  195. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 制度の説明はいただきました。そういう制度です。  だが、私がいま申し上げておるのは、それは制度としてそういう形になってきて、期間算入がなされて国庫がそれに対して年金特別会計に特別の補助がなされておるのですよ。そしてこれを考えたときに、もともと公務員であってそして戦争に行った、そして帰ってきて復職をした、これは身分をつないでおる人もおります、あるいは身分が切れてまた再び公務員に返り咲いたいとう方もいらっしゃる、そして昔は公務員をやってなかったけれども帰ってから公務員になったという者もいらっしゃるわけです。だから、制度の上から考えても、新たに戦後公務員になったという方々が全く昔掛けてなかった、あるいは旧令によるものにも入ってなかったとかいったようなものまで全部これは入っておる。そこの点も考えていけば、私はいま前段申し上げたように、制度を十二年から下へ下げられるものなら下げてあげたらどうだろうか。あるいは下げられぬとするのならば、厚生年金、国民年金という形のものに一般方々が強制加入で入っておるわけですから、ここへの期間算入といったような形で何とか救済できないものか、これは総理府がどうかわかりませんが、厚生省だと思いますが、お答えをいただきたい。
  196. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 厚生省の方からお答え申し上げます。  先生に申し上げるまでもなく、厚生年金、国民年金は社会保障制度でございまして、加入者の方々がすべて保険料を納付されることを前提といたしまして組み立てられているわけでございます。そういう制度の中で、ただいまお話がございましたような特定の、たとえば軍歴の期間をお持ちの方だけを特例的に扱うということはなかなか制度の仕組みはむずかしいということで、その点は御理解いただけあのではないかと思います。
  197. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 いろいろお話をしてみますと、制度の目的、と成り立つ根拠もそれぞれ違うわけですから、いまお答えをいただいたような壁には突き当たるのですよ。だが、一片のそういうことだけでこれは一切だめでございますというのでは余りにも冷たいのじゃないか。こういう方々の声にどのようにして現行制度の上でおこたえをしていくかということを考えれば、そこの点で一応期間算入をしてあげよう、ただしこれは社会保障でなしに国家補償的な考え方のもので来ておるから、性質は違うけれども、この分は国が何とか見ましょう、年金会計の特別会計へ国から何がしかのものを、いまの国家公務員共済に入っておるような形においてそれができぬものかどうか。戦争に関係をした方々がたくさんいらっしゃいます。前々から私申し上げた日赤の看護婦あるいは陸海軍看護婦のこと、さらには特務機関の問題や、いろいろな形で戦争のために若い青春をささげた方々のことがたくさん個別にあるわけです。こんな個別にあることに一つ一つおこたえをするということは国も大変じゃないか。そうであるならそういった方々を一切と言ったら語弊がありますけれども、そういう一つの制度の中で救済をしてあげる、このことは私、考えていただいて結構じゃないかという気がするわけです。多少制度の上に無理があっても、そこへ一つの、国家公務員、地方公務員その他に出ておるようなことにならって、無理なことがあっても何とかそこで考えていただくということがこれらの人に対する温かい処遇ではないかというように思うわけです。これは強く要望いたしておきます。  次に、これは昭和十五年、当時軍人として戦闘に参加をした方々、シナ事変の論功行賞として国から賜金国庫債券——これは額面三百円ですが、寺尾大二郎さんのものを預っておるわけです。この国庫債券が皆さんに交付されておるわけです。これがそのままいま、いわば紙切れ同然になっておるわけですが、これの償還についてこれまた非常に要望があるわけですが、この国債償還はできるものだろうかどうだろうか、お答えをいただきたい。
  198. 鈴木達郎

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  明治以来、金鵄勲章等の受章者に対しまして終身年金が支給されておったわけでございますけれども昭和十五年に制度が変わりまして、終身年金のかわりに一時金を支給する、その一時金といたしまして、いま先生指摘の賜金国庫債券というものが発行されたわけでございます。二十年まで発行されております。その後、終戦後、二十年十一月に至りまして連合国の方の指令がありまして、軍人等に対する恩給年金の支払い停止等に関する指令というものが発せられまして、この賜金国庫債券についても無効とすべきという指示があったわけでございます。それを受けまして勅令百十二号というものが出されまして、この賜金国庫債券というものにつきまして無効の措置がとられております。また二十一年には、同じく法律第四号で、軍人以外の民間人に対するこういった形の賜金国庫債券についても同様に無効というような法律が定められております。したがいまして、現在、いまお持ちの賜金国庫債券は無効ということで償還できないという法律になっております。
  199. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 いま御説明をいただいたとおりのようでございます円いままでの経過等はいま御答弁いただいたとおりなんですが、ここでもそういった一つの戦後処理の問題があるわけです。一九四五年十一月二十四日マッカーサーの指令によって、こういったものは一切無効とせよということで、それを受けて昭和二十一年に勅令百十二号が出ておるようです円いまの御答弁がそうなんですが、いろいろとこの人たちの心情を考えたときに、戦争に出ていたということについてはそこには差異はない。そして一方、マッカーサーの指令に基づいて軍人恩給その他すべていけなくなったわけです。だが、その中において復活するものは復活してきました。そして政府のそれに対する施策も現在行われておるわけです。額面三百円というこの金額、これはささいなものです。私の調べたところによりますと、総トータルで大体九億円程度が発行されておるようですが、これは二十円から始まって五百円、六百円と各種にわたっておるようです。この国庫債券が全部無効でございますということでただ処理をしてしまうということもいかがかなという気がするわけです。  そこで、これは参考までに申し上げておきたいのですが、昨年末の東京地裁の判決、これは「戦時中の債券は生きていた」こうなっておる。それはどういうことかと申しますと、昭和十七年から十九年にかけて第一勧業銀行が発行した割増金付戦時貯蓄債券、この九十六枚を計千円で台湾の方が当時日本に在住しておられて買い取ったわけです。そして終戦を迎えて台湾は外国になった。そして現在台湾におる方が、この戦時貯蓄債券は一体無効なんだろうかどうなんだろうか、請求権があるのだろうかどうだろうかということで東京地裁に裁判の訴えを出したわけです。その裁判の結果は、新聞でございますので、私、判決文も見てないからわかりませんが、新聞によりますと、国はこれに対して、もう時効が完成をしたんだ、こういう主張をなさっておるようですけれども、裁判の判決では、時効主張は認められない、したがって第一勧銀は支払い義務があります、こういうように判決が出ておるわけです。  これは第一勧銀の出した貯蓄債券に対する判決であります。ところがこの方は何かといいますと、これは国庫債券、大蔵大臣の署名入りのものです。したがって、大蔵大臣が責任を持ってこうして交付されたものですから、これが不渡りになってしまった、無効でございますというような形にそのままに放置せられるということは、理屈の上から考えたときに、やはり当人たちは納得のいかないことなんです。だから、私はそういう理屈は余り多く申しませんけれども、そういったことがあるということ、そしてこれに対して何らかのことができないか。何らかといっても、これは結局復活をして償還をするということです。これのできない一つ理由があれば、ひとつお聞かせをいただきたい。
  200. 鈴木達郎

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  ただいまの第一勧銀の貯蓄債券の件でございますが、これは要するに、御指摘のとおり時効を援用するかしないかということが争点になっているわけでございます。現在第一勧銀で控訴中というふうに聞いておりまして、まだ結審に至っているというものではございません。ただ、この時効を援用するかしないかという問題と、いまこの賜金国庫債券について申し上げておりますような、この債券自体が法律によってすでに無効となっているという場合とは法的性格をかなり異にするのではないかというふうに考えておるわけでございます。  しからば、その賜金国庫債券の復活というお話につきましては、過去数度請願等でお取り上げいただいておると思いますが、その際の政府の公式的な御返答として申し上げましたのは、確かにこの賜金国債につきましては一部の人に支給されてはおりますけれども、たとえばシナ事変以降そう行き渡って功労のあった人に全部支給されたわけではないということ、それから特に太平洋戦争に関しましては、生存者には全然支給された事例がないというようなことで、かなり一部に偏っている、そういったものを復活するのはかえって不公平を呼ぶのではなかろうかという点が一点。  それから、そういうものは廃止されましたけれども、そのほかに軍人恩給等もろもろの施策がすでに講じられておるので、現段階においてこれを復活するという考えは特段ないというのが、政府の前に申し述べました見解でございますが、現在でもそれと変わりないという状況でございます。
  201. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 無効と時効とは違います。それは当然のことです。請求権があるかどうかが時効の問題なんです。だから、無効と時効とは違うんだから、それはおっしゃるとおりかもわかりませんが、これを無効としたということ、不渡りにしたということ、この無効を復活できるのかどうかということを聞いておるのです。  一方では、戦後日本が講和条約以降マッカーサー指令によって一切いけないと言われておったものを復活をした一つ経験がある、これは幾つかあります。そういうものが一方にありながら、これの復活ができないかを私は聞いておるのです。だから、そこの請求権云々あるいは時効をといったようなことではなしに、そのことをお答えをいただければ非常によかったわけです。  時間が来ましたので、これで終わらしていただきますが、このことについてはひとつ政府の方も十分お考えをいただきたい、こう申し上げて終わらしていただきます。
  202. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で平石磨作太郎君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦隆君。
  203. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 初めに、青少年対策の問題についてお尋ねしたいと思います。  近年校内暴力、家庭内暴力、暴走族、性非行、窃盗事件など青少年にかかる不祥事件がきわめて多く、まことに遺憾でございます。これに対して、青少年の健全な育成のために文部省、厚生省、自治省及び警察、法務省並びに各地方団体などがそれぞれ事件の未然防止のために、また再犯防止のために努力されております。これらの省庁間及び国と各地方自治体との情報連絡等をより密にして、青少年対策を推進することが望ましいと思います。また、そのために青少年対策本部の存在意義も大きいと思います。  そこで、青少年対策の実情と今後のなされようとしている対策について、まず御説明をいただきたいと思います。
  204. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御指摘のように、青少年問題は戦後第三のピークを迎えたわけであります。最初は昭和二十六年の戦後第一回目の青少年の非行の累増、これは戦後の混乱の中に発生してきた理由を持っております。第二のピークは、昭和三十九年の高度成長下における経済的なアンバランスの中で青少年非行が起こったわけであります。第三の波が昨年起こってきたわけでありまして、昨年来の青少年非行というものは、物質的に豊かな社会の中における忍耐の欠如、こういう問題から、いまよければいいという青少年の考え方、これが非常に大きな影響をしておると思います。  こういうことで、昨年夏は鈴木内閣発足後直ちに暴走族が発生をいたしましたので、これの取り締まりのための月間を決めまして、全国各地方自治体に連絡をして暴走族の取り締まり強化、その結果、暴走族は激減をいたしたことは御案内のとおりでございますが、その激減と同時に、今度はお父さん、お母さんをバットで撲殺するというような事件が発生すると同時に、校内暴力が出てきたわけでありまして、去る十二月十九日、一月十六日、関係各省庁の局長連絡会議を開きまして、問題点の原因究明、それから、これからとるべき施策の方向というものを改めて協議をいたしました。  その結果、この問題は根が深い、社会全般の戦後の一つの象徴的な形が青少年問題としても出てきているということに私どもが確認をいたしましたので、二月六日、地方各団体に対しても、地域と学校あるいはまた関係機関との連絡を強化するように特別の指令を発したようなことでございます。青少年対策本部といたしましては、三月下旬あるいは四月上旬あたりに——ただいま一月二十日に青少年問題審議会に対して青少年非行というテーマで改めて諮問をいたしておりますけれども、総理府といたしましても、政府全体として取り組む意味から関係各方面の意見を承る機会を早急に求めて、できるものから積極的に施策を講じてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  205. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 横浜市では青少年健全育成事業の一環としまして、母親クラブ、これが昭和五十三年三百六十クラブありまして、八千百五十二名が参画しました。学童保育として、昭和五十四年度に小学校一年から小学校三年の子供を対象にしまして、いわゆるかぎっ子対策ですが、千三百四十四名ほどございます。そして児童文化クラブ、これは昭和五十三年度に小学校四年から小学校六年の子供たちを対象に三十七教室を開くなどの育成を図りました。また、青少年育成のための施設の確保として、青少年の家を五十カ所、青少年図書館を各区ごとに一カ所、青少年会館、勤労青少年センターなどを持ちまして、また青少年の情操を高めたり野外活動を体験する施設として青少年陶芸センターや赤城山市民野外活動センターなどを現に持っているわけです。いずれも国の補助金はゼロであったり、きわめてわずかなものでございます。これらは大きな効果を上げているものですが、市の財政事情もあってその維持、推進に大変苦労していると地元から聞いております。他の自治体も同様と思いますので、青少年対策のための国庫補助をもう少し広げられるよう検討努力してほしいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  206. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生指摘の点は大変重要な点だと考えております、総理府の青少年の意識調査における結果を見ましても、政府に何を望むかという中には、戸外における健康のためのレクリエーションセンターとかいろいろなものをぜひもっとつくってもらいたい、こういう要望が出ております。  そこで私どもは、青少年非行の発生の濃密な地域と、そういうふうな屋外におけるクラブ活動あるいは体育センター的なものがどのような関連性があるかということを調査いたしました結果、大都会、青少年非行の発生する地点にそれがはなはだ低い状態にあるということを確認いたしましたので、これを五十七年度概算要求までに自治省を初め関係機関と早急に連絡をしながら、どういう方策をすればいいか、具体的な措置をとるようにただいま作業している最中でございます、
  207. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 次に、褒章等の問題についてお尋ねしたいと思います。  初めに、昨日の新聞各紙の夕刊によりますと、十九歳の少年が自己の危難を顧みず人命救助したことについて紅綬褒章が授与されたと伝えております。古くから「身を殺して仁をなす」ということが言われておりますが、これはなかなができることではありません。その意味でも今回の褒章はまことに時宜を得たものと思います。このような善行に対しては今後積極的に顕彰することを考えてはどうかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  208. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御指摘のとおりでございまして、電車内あるいは町で人が事故に遭っておっても知らぬ顔をするという現代の社会風潮に対しては、ぜひひとつこれを是正するということが鈴木内閣の大きな方針でもございまして、今回この紅綬褒章を遺族に授与することに決断をした次第でございますが、すでに関係地方団体にも、このような善行のあった場合にはどんどんと政府に上申してくるように事務的に処置をしているところでございます。
  209. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 次に、戦後のあしき一面としまして、利己的な行為にのみ走り、社会正義の実現を図ろうとする人が少なくなったと言われておりますときに、社会福祉の向上のため無償で奉仕活動を行っているボランティアの人々も少なくありません。このような人を栄典の対象として取り上げるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  210. 中山太郎

    ○中山国務大臣 これからの社会、高齢化社会を迎えてまいります。高齢化社会というものは、すべて政府の手による、すなわち税金によってのみすべてがカバーされるということでは、社会の構成が非常に困難になってくるということを私ども考えました。そこで、ボランティア活動をいかに助成するか。ボランティアは御案内のようにお金を渡してやっていただくことではございません。あくまでも善意の方々の行動でございますので、こういう方々に対して褒章を贈るという制度を今春から実施いたしたい、このように政府はただいま作業しているところでございます。
  211. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 補足説明は簡潔に願います。
  212. 小玉正任

    ○小玉政府委員 御質問大臣がお答えしたとおりでございますが、現状を少し御説明いたしますと、心身障害者福祉、点訳奉仕、交通安全運動等の実践団体の指導者及び非行少年補導受託者、教戒師、保護司、民生指導員等、国または地方公共団体の委託を受けた篤志家のうち事績顕著な者に対しては、現状でも藍綬褒章の授与が行われておるわけでございますが、今後は、先生指摘のようなボランティア活動の分野におきましても、ただいま大臣お答えございました、大臣の御指示もこれございまして、多年継続的に奉仕をして顕著な功績のある場合は、新たに藍綬褒章系の拡充を図っていくべく現在作業を進めている実情でございます。
  213. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 社会の各方面ですぐれた功績を示しながら、しかし人目に立たず苦労し、埋もれている功労者も少なくございません。このような人を叙勲候補者として取り上げる考えはございませんか。
  214. 小玉正任

    ○小玉政府委員 現在、春秋叙勲は、毎回実施要綱を定めまして閣議報告を行い、これに基づきまして実施をしております。  この実施要綱におきまして、まず一つでございますが「その内容が著しく危険性の高い職務に従事する者又は危険性の高い環境において職務に従事する者」たとえて申しますと鉱山保安員等がございますが、こういう方。二つ目に「一般に人が従事することを好まないような環境において職務に従事する者」たとえて申しますと精神病院あるいはらい病院等に勤務する看護婦さんたちでございますが、こういう方々〇三つ目には「人目につかない領域にあって苦労の割に報いられることが少ない者」たとえて申しますと清掃作業員あるいは用務員等でございますが、こういう方々については叙勲年齢を引き下げ、叙勲することとしております。すなわち一般の叙勲年齢は七十歳以上ということになっておりますが、先生指摘のこれらの分野の方々の年齢の基準につきましては、五十五歳以上ということで実施をしている実情にございます。  なお、昨年秋の叙勲におきましては、叙勲者の総数が全部で四千六十名ございましたが、これらの分野に該当する者は約千四百五十名、比率で申し上げますと三六%を占めております。  当局といたしましては、今後も御指摘のようなことを念頭に置きまして、各省庁及び都道府県に対しまして、叙勲の候補者の推薦に際し、これらの分野への配慮につきましてさらに努力するようお願いしているところでございます。
  215. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 戦後わが国は大変な高度経済成長を遂げまして、衣食住万般大変によくなってきたかと思います。にもかかわらず、新聞あるいはテレビその他を見てみますと、いつも大変暗いニュースばかりが出てきているわけです。何かやり切れない、救いのないような気がいたします。そんなことが子供たちあるいは青年たちを暗い気持ちに陥らせたのでは大変困ったことだと思うのです。そういう意味では、褒章制度というものがもっと積極的に今後とも活用されてほしいというふうに思います。  そしてまた、当然のことですが、褒章を国民のだれもが納得し、国民から祝福を受けられそうな人であれば、それを正しく授与されてほしい、こう考えるのですが、いま褒章は、先ほど言いました紅綬褒章以外にも緑綬なり黄綬なり紫綬なり藍綬、紺綬、いろいろとあろうかと思うのですが、改めましてその一つ一つの褒章の意味合いと、現実にいまどのように行われておりますか御説明をいただいて、今日でも生かし得るものでしたならば生かし得る方向へと前向きな検討を進めていった方がいいと思いますし、そういう意味での御説明をいただければいいと思うのです。
  216. 小玉正任

    ○小玉政府委員 褒章は、先生御案内のとおり勲章と同様に国の栄典でございます。内閣の助言と承認に基づきまして天皇陛下から授与されるものでございます。制度といたしましては、明治十四年に創設されて今日に及んでいるわけでございます。  種類といたしまして、本日議題に上がりました紅綬褒章がございます。紅綬褒章は、明治十四年十一月七日に制定されておりまし保て、賜与対象は、自己の危難を顧みず人命を救助した者ということに要約されるかと思います。最近の例で申し上げますと、今回遺族追賞が出ましたが、すぐ直近の前例で申し上げますと、五十四年の十一月に出ております。  次に、緑綬褒章でございますが、緑綬褒章は、やはり明治十四年の十二月七日に制定されておりまして、非常にかたい言葉でございますが、孝子順孫節婦義僕の類にして徳行卓絶な者に授与されるということになっておりますが、戦後は、昭和二十七年以降、この制度の運用は実は見ておりません。  次に、黄綬褒章でございますが、現在の黄綬褒章は、昭和三十年一月二十二日に制定を見ておりまして、一言で申せば、業務に精励し衆民の模範である者ということになっております。黄綬褒章は、現在では春と秋の生存者叙勲と同時に春秋に集めて施行しておりまして、ずっと前はその都度その都度毎月のようにやっていたのでございますが、いまは春秋に集めて施行しているという実情にございます。  次に、紫綬褒章でございますが、紫綬褒章は、昭和三十年一月二十二日に制定を見ております。賜与対象は、学術芸術上の発明改良創作に関し事績顕著な者ということになっておりまして、この褒章の運用も春と秋の二回に分けて集めて運用しているという実情にございます。  次に、藍綬褒章でございますが、これも先ほど大臣の御答弁の中にも出てまいりました褒章でございます。制定は明治十四年十二月七日と一番初めからあるわけでございまして、賜与対象は、公衆の利益を興し成績著明な者または公同の事務に勤勉し労効顕著な者ということになっておりまして、藍綬褒章も先ほどの黄、紫と同じように、春秋の二回に集めまして運用しているという実情にございます。  次に、紺綬褒章でございます。紺綬褒章は、大正七年九月十九日の制定でございまして、賜与対象は、公益のために私財を寄付し功績顕著な者ということになっておりまして、運用は毎月月末に閣議にかけて運用してございます。なお、紺綬褒章の私財の寄付の基準額は、実は昨年、十七ぶりに改定をいたしてございまして、本年度から、従来は基準額百万円であったものがことし一年間、個人の場合ですが三百万、団体の場合には五百万、暫定期間で推移するというふうな措置を講じてございます。  以上、褒章の種類と制定年月目、賜与対象、さらに運用状況について御説明申し上げました。
  217. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 価値観は、何を基準とするかによって時代とともに変わることもあろうかと思うのです。しかし、いつの時代になっても変わらないものもあろうかと思うのです。夫婦が仲よくとか親子が円満であるとか、そういうことは大変すばらしい、平凡なようだけれども大変よいことだ、こういうふうに思います。そういう意味では、子供が親に孝養を尽くすということは、子供が親を殺すなんということに比べればはるかにすばらしいことなのでありまして、特に恵まれない環境下において子供が親に尽くす、あるいはまた母親が恵まれない状況で子供に、あるいは父子家庭で父親が子供に尽くす、それぞれすばらしいことだと思いますし、そうした人たちに生きがいを与えるということもりっぱないいことだ、このように思います。  そこで、もともとの褒章が古い時代に生まれたとするならば、その言葉遣いその他が現代になじまなければ、その趣旨を生かして現代的な表現に改めるということもいいことだと思いますし、特に二番目の孝子の表彰でしょうか、御説明いただきましたけれども、最近ではそれが余り見られないようにも思います。むしろきわめて遠慮して、それを活用しないのかもしれませんけれども、いまは昔に比べると物は豊かになったのであり、昔は大変貧しゅうございましたから、豊かにさえなれば幸せになれるだろうと思っていたのだと思うのですが、昔より学歴もよく豊かになったにもかかわらず、家庭の中が乱れたり、さまざまなことが起こっていると思うのです。すなわち心の貧しさ、心を何とか豊かにしていくということは、いまも、むしろ昔以上に自信を持ってよいことだと思いますので、そうした子供が親に孝養を尽くすということは、むしろ今後積極的にひとつ広めていただきたいと思います。  もう一つ、同時に欠損家庭や何かいろいろな状況があったりして、特に最近では父子家庭で父親が苦しんでいる姿もありますし、またことしは障害者年でもあれば、そういう家庭ではなかなか容易なことではありません。時には親子心中といった悲惨な事実も伝えられております。そんな中にも本当に苦闘の中で生きている親子に対して、何か言葉を改めてでも結構ですから前向きに生かす方法はないものか、少なくとも数をもっとふやそうとするお気持ちはないのかあるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  218. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生の御指摘は、私は現代の社会にとってきわめて意味のあることだろうと考えております。この褒章制度ができてから従来いろいろと褒章をそれぞれの方々政府は贈ってまいりました。ただいま贈ることを遠慮していると先生指摘でございますが、それは恐らく緑綬褒章のことをおっしゃっているのだろうと思います。この古い時代につくられた褒章の言葉そのものが非常に古風な言葉になっておりますけれども、御指摘のように親子の愛情とか、あるいは現代的に言えば交通事故で父親を突然亡くして母子家庭になる、そのお母さんが働く、子供が母親を助けるというような家庭もこの世の中にはたくさんあることを私ども承知いたしておりますが、私どもは、こういうふうな親子の美しいつながり、あるいはまたおじいさん、おばあさんを助けていく孫たちの姿というものを社会のかがみとして広く世に知らせる、またその徳行をたたえるということは日本の社会にとってもきわめて重要なことだろうと考えて、ただいまこの徳行卓絶なる者という言葉を原点としてとらえて、総理府といたしましても目下研究をしておるということをこの機会に申し上げさせておいていただきたいと思います。
  219. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 戦前も、そして戦後もでありますが、学校教育その他でよく体育そして知識あるいは徳育といった三つのことが強調されております。大変よいことだと思うのですが、それにもう二つほど情操と連帯という言葉を入れていただきたいと思うのです。今日では個人としての徳育も不十分であろうと思うのですが、それよりもいま社会の大きな変化の、物質万能と言ってもいいような状況の中に入れば入るほど、情操というものが大変失われようとしております。すなわち、競争社会ですから、しゃにむにということがあるかもしれません。そういう意味でもこの褒章制度は大いに意義のあることだと思っております。  それから、戦後とかく利己本位に走りまして他を顧みないというのが、これまた子供のころからの競争社会の常で、よくあることでございますから、むしろ学校教育の中でも進んで連帯というものが必要だ、いわゆる個人というものが社会の中で生かされているということでの連帯責任というふうなものも必要かと思います。そういう意味では小さい子供から青年にかけて、いま青少年育成国民運動も大きく行われていようかと思うのですが、そうした情操あるいは連帯の気持ちが養えるような国民運動を今後とも強力に進めていただきたいという気がいたします。  それで、現在中央における国民運動の中で青少年等の顕彰も行われているようでございますけれども、その実情について簡単に御報告いただきたいと思います。
  220. 浦山太郎

    ○浦山政府委員 ただいま御指摘がございましたように、毎年十一月に青少年健全育成強調月間という月間を設けまして、この中でいろいろな健全育成の事業の推進を県、市町村等と協力をしながら進めているわけでございまして、その一環といたしまして、善行の青少年の表彰というのを行っているわけでございます。現在のところ、人数は毎年数名程度というように少のうはございますけれども、これまで先生の御指摘のありましたような趣旨を踏まえて、このような善行をいたした青少年を今後とも各県と協力しながら大いに表彰を進めたいと考えております。
  221. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 戦前のわが国がとかく狭い島国的な発想で、わが大和民族だけが優秀であるかのような錯覚に陥って世界の中に孤立した苦い記憶がございます。そういう意味では、小さい子供のうちから世界を大きく見ていくという国際人的な発想はこれまた必要なことだと考えます。そういう意味では、国際交流に関するいろいろなことを青少年向けにもやられているわけでございますが、いわゆる青年の船の運航であるとかそれに類します青少年のいろいろな国際交流の実情について、時間もございませんので簡単にお触れいただいて、また特にことしは国際障害者年でございますので、そういう青年の船なりその他の中にも障害者がどの程度まで加わり得るのか、またことしだけに限らないで、これからも毎年そういう人たちも参加し得るような体制が取り入れられるものかどうかお尋ねしたいと思います。
  222. 浦山太郎

    ○浦山政府委員 青年の国際交流については現在主な事業として四つあるわけでございます。一つは、昭和三十四年度から皇太子の御成婚を記念して行っております青年の海外派遣、これは飛行機を利用して行くものでございます。それから四十二年度からは、明治百年を記念して青年の船を運航しておりますし、昭和四十九年度からは、ASEAN五カ国と日本との共同声明に基づきまして東南アジア青年の船を運航している。それから五十四年度からは、日中の平和友好条約の締結を記念して日本中国青年親善交流事業というのを行っているわけでございます。  いずれも、御指摘のように国際交流が今後大いに盛んになるといったようなことを前提として今後大いに伸ばしていかなければならない事業である、かように考えている次第でございます。それで、これにつきまして、障害者を加える点についてどうかということでございまして、現在、青年の船がビルマ、インド、スリランカというところに航行しておるわけでございますが、この中に障害者を五人ばかり乗船させまして現在運航しているという状況でございます。来年度以降につきましても、当然障害者年等のこともございますけれども一般の青年と同じ形で障害者のこのような青年の船事業に加っていただきまして、十分事業の目的が達成するようにいたしたい、かように考えている次第でございます。
  223. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 締めくくってください。
  224. 三浦隆

    三浦(隆)分科員 時間でございますので御答弁はいいのですが、最近横浜で、野口雨情の赤い靴の童謡にちなんで赤い靴の像を、山下公園、海の見えますところにつくりました。大変に好評でございまして、何かロマンというものが失われておりますので、赤い靴の童謡に引かれて、その像に親子連れで来ている人が大変喜んでおります。ところが、これは市の金でもなく、どこの金でもない、民間の私たちの資金カンパでやっておりまして、像をつくったものの、今度はその維持管理に大変苦しんでいるというふうなこともございます。何か将来そういうふうなものの補助対策的なことも、民間の事業ではございますけれども、あると大変ありがたいなと思います。とかくいま生きがいを失い、夢を失っている人たちも多うございますから、今後の青少年対策の中に、そうした白マンを取り戻させるような運動をぜひとも推進していただきたいというお願いをしまして、質問を終わらせていただきます。
  225. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で三浦隆君の質疑は終了いたしました。  次に、上田卓三君。
  226. 上田卓三

    上田(卓)分科員 中山総務長官も大阪の御出身でございますので、同和問題についてはよく実態の把握をされておられることだろうと思いますし、また本質的な問題についても十分御理解だろう、このように思っておるわけでございます。今国会も、飛鳥田委員長の代表質問初め、予算委員会等におきましても、すでにわが党の議員からも質問をさせていただいておるわけでございます。また分科会においても、何人かの先生方からすでに御質問があったようでございますが、特に来年の三月三十一日で同和対策事業特別措置法の三年延長が時間切れになる、こういうようなことでございまして、非常に緊迫をいたしておるわけでございます。それに関連をいたしまして、幾つか御質問を申し上げたい、このように思います。  さて、実は私、この二枚の写真を持ってまいったわけでございますが、同和地区の住民は死んでもなお差別される、こういう実態があるわけでございます。これは墓石でございますが、ここに草門、草尼、こういう形で、こちらは男で、こちらが女性ということですが、こういう墓石が長野県とか群馬あるいは千葉などにございます。いわゆる同和問題は関西が中心であって関東では余り云々というような認識をお持ちの方もたくさんおられるのではないかと思いますが、決してそうではないわけでございまして、特に差別戒名の問題につきましては禅宗関係のお寺さんに多いようでございます。特に、畜男とか畜女とか、あるいは皮革の革という字を用いたり、人、人によって違うわけですが、あるいは皮という字を書いたり、あるいは畜の場合でも、それを分けて玄田という形でやったり、あるいは下という字を使うのもあれば、上の横一を抜いてトというように書いたものもありますし、あるいは屠殺の屠という漢字を当てはめてあるのもあるわけであります。  そういう点で、われわれの調査によって明らかにしてまいったわけでありますが、これは総理府として御存じなのか、この実態に対してどう対処していただけるのか、お答えいただきたい、このように思います。
  227. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 いま政府としての具体的な対応策は持っておりませんが、その事実のあることは承知しております。最近の宗教界の動向を見ますと、このようなものを改めていこうという宗教界の動きもあるようでございますので、そのような動きも見守りながら、われわれとしての態度考えてまいりたいと考えております。
  228. 上田卓三

    上田(卓)分科員 この事実関係御存じだということですが、いつごろからわかっておりましたか。その後何かやられましたか。
  229. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 そのような墓碑名の存することにつきましては、写真等を拝見したこともありますし、本によって承知しております。
  230. 上田卓三

    上田(卓)分科員 何かしてきたかということです。
  231. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 いままで特に政府として行ってきたことはなかったかと思います。
  232. 上田卓三

    上田(卓)分科員 けしからぬじゃないですか、長官。こういう事実がありながら、担当の省である総理府において、少なくとも同和対策室長が、それを知りながら何もしてこなかったということはどういうことですか。宗教界において、そういう差別問題、特に曹洞宗の町田さんが世界の宗教者の平和会議で差別発言をしたということで、われわれの突き上げの中で、宗教界においても、町田さんの問題だけではなしに全体の問題だという反省の動きがあることは事実です。しかし、それは独自にやることじゃないですか。政府としてなぜ知っておりながら、どうなんですか、長官は知っておったのですか。
  233. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  いま先生指摘の墓標におけるいわゆる差別用語の点については私も話は聞いております。数目前に、いわゆる戦前の長い歴史の日本の宗教の中で、東西両本願寺がこの方々に対していろいろな協力をされてこられた、こういう歴史的背景を踏まえて、東西両本願寺が近い機会に、各宗教団体と同和問題についての一体的ないわゆる差別撤廃に対して行動を起こしたいという申し入れを受けていることは、この機会に申し上げておきたいと思います。
  234. 上田卓三

    上田(卓)分科員 長官、私は東西本願寺のことを聞いているのではないんで、禅宗関係の、いま名前を申し上げた三県の現実に差別戒名の墓石があるわけです。それも最近つくりかえたお墓においても、なおかつそれが存続しているという問題とか、あるいはこれは徳川時代とかそれ以前にさかのぼるというよりも、明治四年の解放令が出た後も、こういう差別戒名が歴然として残っているというところに問題があるのじゃないか。特にそういうことを長官も耳にし、同対室長も知りながら、それに対して何ら手を打たないということはどういうことなんですか。差別事件が起こったら、それはもう解放同盟さんに任せておったらいいんであって、関係の人に任せておけばいいんであって、われわれ政府は関知しないんだ、こういうことですか。大臣、どうですか。
  235. 中山太郎

    ○中山国務大臣 決してそういうことではございません。私も就任して約半年間にいろいろと話を聞き、実情を調べておるようなことでございまして、私どもとしては、差別のない社会ということで、あらゆる関係方面に連絡をいたしております。ただ、墓石等につきましては、御案内のように、その家その家の一つの長い御先祖の魂のこもった場所でございますので、法律とか、あるいはまた政府の行政指導によって墓石の戒名を直ちに変えるということがなかなか困難でございますので、これからはいわゆる宗教団体ともよく相談をさせていただきながら、一般社会にも、そういうふうな意識を高揚してまいりたい、このように考えている所存でございます。
  236. 上田卓三

    上田(卓)分科員 努力もしないで、むずかしい問題と言うのはおかしいと思うのです。確かに宗教上の問題もありますし、法的な問題もあるかもわからぬし、いわんや当人の子孫の方のこともあります。特に私が調べた結果、そのお母さんがずっとお墓にお参りをしてきた。またお坊さんが回向の中でこの戒名を唱えてくる。こういうような中で本当に差別戒名を毎日聞きながら、そのおばあさんは差別の結果、文盲状態にあったわけですから、全然知らないで、それを恭しく拝んでいた。最近、われわれの指摘でわかって、びっくりして、そのお墓を埋めてしまった。こういうようなことも起こっておるようでございますので、政府としても、この問題については早急に、特に具体的な事例ですから、対処していただきたい、このように思います。それは当然宗教団体とも十分話をしてもらわなければならぬし、関係住民とも話をしてもらわなければならぬ、ぜひともお願い申し上げたい、こう思います。  それから次に申し上げたいのは、外国人が外国において、部落差別の報告を学会でしたり、あるいは本を拡販している、差別をばらまいているという実態があるわけでございます。これもたしか二、三年前に国会でも取り上げた問題であろうと思いますので、特に同対室長あたりはよく御存じではないかというふうに思うのですが、ジョージ・デボスという人とヒロシ・ワガツマという二人の学者の共著でございますが「日本の見えざる種族」という本を出版されておるわけでございまして、この出版物をもとにしてポーランドのポドコロツキーという教授が、そのままうのみにして学会で報告をして、学会でもいま問題になっておるわけでございます。特に原本たる共著の「日本の見えざる種族」の中には、こういう文言が入っているのですね。「エタに関する話はいろいろとあり」云々ということから「二人の間に子どもが生まれたが、その子が「白痴」で、皮ふに斑点が出ていたので、その女性が部落民であることがばれた。」これが信じられますか。白痴で、そして皮膚にあざがあったから、その子供を生んだ女性が部落民だということがわかったと言っているのですよ。われわれ、この著者にも抗議をいたしておりますが、こういう本が、指摘された後もなお出回っておるという事実について御存じですか。同時に、この事実があったということについても把握されておりますか、どうですか。
  237. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 そのような文書が、その後も出回っているという事実は承知しておりません。
  238. 上田卓三

    上田(卓)分科員 どうするのですか。外国であるから仕方ないとおっしゃるのですか。
  239. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 どのような形で出版されているものか、あるいは、いろいろな学問的な問題もあろうかと思いますが、もし先生指摘のとおりであるとすれば、それは明らかに誤解に基づくものと考えますので、そのような誤りについては、われわれとしてもできるだけ正しい情報を提供するというようなことに考えてまいりたいと思います。
  240. 上田卓三

    上田(卓)分科員 私は、きのうの外務省の分科会でも伊東外務大臣にこの問題を指摘したわけでございますが、特に日本の部落問題、同和問題については、外国でも非常に関心が持たれておるわけです。また専門的に勉強されている人も確かにあります。正しい認識を持っておる方もあるのです。しかし、また同時に、全然わからない人たちがあることも事実です。  そういう点で、外務省においても、国際人権規約が二年前に批准されたというようなこともあって、いわゆる同和問題の英語で書いた啓蒙書、十八ページぐらいの薄いものでありますが、出されておるわけであります。しかしながら、必ずしも英語圏だけじゃなしに、ドイツ語圏とか、フランス語とか、中国語とか、あるいはロシア語とか、そういうような各国語に翻訳したものをやはり出していく、そして正しい啓蒙が常日ごろ行われてしかるべきではないか、こういうように思いますし、また、間違った差別的な図書については、その関係政府に問い合わせて、しかるべき対応をする。国連もあるわけでございますから、そういう形の能動的な対応が必要ではないかと思いますので、大臣の所見を聞きたいと思います。
  241. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私も実は、いま先生の御指摘お話を聞いてびっくりしたのであります。私も医学の専門家として、そのようなことは医学上あり得ない、これはもう間違いのない事実でございます。現実に外国人によって、そのようないわゆる誤った著述がなされているということについては、日本政府としても十分対処してまいりたい。また、その著者についても改めて警告を発したい、このように考えております。
  242. 上田卓三

    上田(卓)分科員 ぜひとも総理府のこれに対する的確な対処を望みたい。また後刻、その経過等について御報告願いたい、このように思います。  そこで、三年延長の際の附帯決議は、もうすでに御承知のことだと思いますが、三年のいわゆる法の有効期間中に法律の総合的改正を行う。そしてその総合的改正の中身として、まず実態の把握を行うことが一つと、二番目には、いわゆる超過負担をなくするということではなかっただろうか。三番目には、相次ぐ差別事件——差別事件とは書いてありませんが、そういう人権侵害の増発にかんがみ、これに対する対策を強化しなければならぬ、こういうことではなかっただろうかと思っておるわけであります。この三年延長の際にも、差別事件が非常に続発している、ふえてきているということが、内閣委員会の中でも指摘され、また同時に法務省の人権擁護局長がそういうことを証言しておるわけでございますが、この二、三年の間にそれが減ってきているのか、さらにふえているのか、長官、どのようにお考えでしょうか。
  243. 中山太郎

    ○中山国務大臣 具体的な計数のお尋ねでございますので、政府委員から答弁させます。
  244. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 法務省の把握しておる状況によりますと、四十年代に比較しまして五十年代に同和関係の人権侵犯事件という申し出があって取り扱った件数はふえておりますが、最近の数字を見ますと、年度によって多少変動がありまして、最近は必ずしも増加の傾向をたどっているという状況ではないのではなかろうかという傾向も見られます。
  245. 上田卓三

    上田(卓)分科員 件数の問題は、確かに年によって違うということですから、必ずしもふえもしてないし減りもしてないということにもなるのじゃないかというように思いますが、いずれにしても、こういうゆゆしき問題が、こういう法律が存続している中においてさえ、なおかつ続発している。件数は減っていない。  いわんや、私は手元に、ここ二、三年の全国的な、本当に悪質な差別事件二百二十二の事例を紹介した冊子を持っておるわけでございますが、先般も長官にお会いさせていただいたのですが、大阪の淡路中学の、日ノ出の地区住民を消せとか、あるいは旭区生江町の、本当に聞くにたえない、部落民は消せとかウジ虫どもとか、そういう悪質な、この解放運動の歴史の中で、水平運動が起こって来年でちょうど六十年になるのですけれども、過去の歴史の中にもなかったような悪質な、ヒットラーまがいのユダヤ人を地球上から抹殺せよと言うたような、あれに近いものが出てきているということは本当に理解しがたい。措置法がいまや切れようとしている。あるいは片や解放運動というのですか、各界が非常に関心を持って、大きな部落問題を解決せよという動きがある。世界的な動きもある。そういう状況の中で、あるいは大都市部落と言われるところは国の施策によって、ある程度環境改善がなされてきている。にもかかわらず、そういうものが出てきているということは、日本共産党の差別キャンペーン、赤旗とか民主新報によるところの、そういう影響というものが少なからずあると私は思っているので、そういう国民のおくれた意識を増幅さしているという意味では非常に犯罪的だと私は考えておるわけであります。  同時に、少なくとも地方自治体で同和対策事業をされておるわけでありますが、この現在の同和対策の国の法律は、全体の同和対策事業の半分くらいしか補助対象にしていない。あとは地方自治体の超過負担になっている。五十四年度末現在で、自治省調べでございますが、約四千七百億円ほどの同和の債務が残高として残っている。この元利償還だけでも大変だ、こういうような状況があるわけでございますし、とりわけ、こういうふうに景気が悪くなってくると、同和だけがいい目に遭っているのではないか、同和取り過ぎ論という形で出てきておるのは、もう一つの側面から見るならば、やはり特別措置法が定める法律が、地方自治体のやっている同和対策に対して十分な援助をしていないというところに大きな問題が一つありはしないだろうか、こう私は思っているのです。いわゆる地方自治体が大きな負担を強いられている。だから市町村においては、この措置法の延長だけではなしに、法の抜本的な改正をしてもらいたいという要求があるのが一つでございます。  それからもう一つは、地名総鑑に見られるように、一流の大企業が、その労務政策として、あるいは就職の門戸を同和地区から排除する目的で購入している、あるいはそういう差別図書を商売にして企業に売りつける、こういう特に悪質な差別に対しては何らかの法的規制が必要ではないか。確かに一般国民の無知からくる、理解のなさからくるそういうものについては、啓蒙とか教育とか人権思想の啓発というふうな形で、それはそういう分野で私はいいと思うのですけれども、特に犯罪的な、そういう意識的なものに対しては法的規制が必要だ、それがあの三つの附帯決議ではなかったかというふうに私は思うのですが、長官、どのようにお考えでしょうか。
  246. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 地名総鑑等の悪質な文書につきましては、前々から先生方から法的規制をとるべきではないかという御指摘もいただいておるところでございます。法務省を中心に種々検討を進めてまいってきておるところでございますが、残念ながら現在までのところ、有効な規制法を見い出すまでに至っていないという状態でございまして、さらに引き続き検討しておるとこうでございます。
  247. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いま室長がお答えいたしましたが、言論、出版の自由という憲法一つの基本的原則と、こういうふうないわゆる差別の原因となる地名総鑑、こういうものについて政府が直接出版を規制するというようなこととの絡みで、実は同和対策室は大変苦労しておるというように私は報告を聞いております。しかし、決して望ましいことではない、できる限り速やかに、このような出版物がこの社会からなくなるということのために、今後とも格段の努力をいたしたい、このように考えております。
  248. 上田卓三

    上田(卓)分科員 出版の自由のために、差別されて、そして職場を奪われ、結婚差別で自殺に追いやられていいという法はないと私は思うのです。そうじゃないですか、長官。あなたも同和関係の大阪で特に支持者もおありなことを私もよく知っています。また、そういう関係で結婚式にも出られる回数も多いんじゃないかと思うのです。私も国会議員になってから、そういう場が多いのです。同和地区同士の結婚の場合は余りそう問題はない。しかし、そうでない場合に、男性の方の親きょうだい、親戚がたくさん結婚式場に集まってきた。しかし相手は娘さん一人しか来ないという場合がしばしばあるのですよ。これで結婚式できますか。その娘さんのお友だちも何人か来るでしょう。だから男の方の親戚、身内、そういう人たちをこちらに回して、一応はたから見たら何げない、どこにもあるようなめでたい結婚式で終わっています。しかし、私たちはよくわかっていますよ、関係者としては。その結婚式が盛大であれば盛大であるだけ、関係者の心の気持ちというものは、差別された人間しかわからぬと言えば言い過ぎになるかもわかりませんが、そこのところを十分知っていただきたい。  まだ男が部落の出身の場合は、本人同士ということで結婚するケースがあるのです。しかし、地区出身の女性の場合は、もっと過酷な、みじめな状況にある。せっかく相思相愛で子供ができて、にもかかわらず途中から、わしが部落の人間と結婚しているということで肩身の狭い思いをさして、いろいろ親戚の結婚に差し支えがある、就職に差し支えがあるということで、親きょうだいが来て生木を引き裂くような状況もあるのです。ここに資料もありますが、鳥取県で、県の税務課の職員が九年間部落の女性ともう結婚と同じような同棲生活をしながら、親きょうだいがそこへ介入してくる。あるいは同じ鳥取県の東郷町においては、これは教育委員会の同和担当の主事をやっていたのです。片っ方は保育所の保母さんです。娘さんの親のところまで打って、私は何も思ってませんよ、親きょうだいも賛成していますよと、こう言って、結婚式寸前で破談になっているのですね。こういうような実態をひとつ十分に考えていただきたい。  私たちは、何もこういう問題を、生の問題を出さなくても——差別事件がここにあった、そういうことを言うから差別されるんじゃないですか、騒ぐからそういう事件が起こるんじゃないですかと、若干、長官も部落問題を理解をしているようだけれども、やはり理解してない面もあるんじゃないか。われわれにこういうことを言わさなくても、関係者がそういうことを言わなくてもいいような日本の社会をつくらなければいかぬと私は思うのです。そうじゃないですか。端的なことを言えば、大臣とか総理大臣が先頭に立って、皆さん方待ちなさい、私たちがこの問題を解決しましょう、そうあってしかるべきじゃないんですか。差別された人間と差別した人間と、人間同士のいがみ合いをさしていいんですか。それだったら昔のあだ討ちと一緒じゃないですか。法治国家じゃないですか。われわれは糾弾闘争、解放運動をやむにやまれずやっているんですよ。好きこのんでやっているんじゃないのですよ。本来ならば同和予算も要らない、法律も要らない、そういう社会が一番いいんですよ。そういう社会をつくってくれということを叫んでいるのですから。その点ひとつ十分に理解をしていただきたい。  そういう立場から、来年の三月三十一日に法律が切れるのだけれども、法律が切れた途端に部落問題が解決するんだったら、われわれは安心しましょう。しかし、法律が切れても差別は厳然として残るんじゃないですか。その点、長官どうですか。
  249. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生が長い間、部落解放運動に御尽瘁をいただいてきた歴史を私はよく存じております。また松本治一郎先生以下、日本の部落解放闘争の多くの方々の御努力というものが、今日のいわゆる同和対策になって行政の中でもその地位を占めてきたと私はよく認識しております。  また、いまお話のございましたいわゆる同和の方との結婚式のお話も、先生お話のとおりだと思います。私は、法律で、この国民的な考え方というものが一挙に解決できるとは考えておりません、はっきり申し上げて。いままで単一民族と言われた日本人が、外国人と結婚するということがきわめて批判され差別された。それが明治から昭和の戦後まで続いてきたわけでございますけれども、いま今日では、国家公務員それから外務省のいわゆる外交官でも八十数名、外国の婦人と結婚している。いま沖繩に行っても、もう混血児に対する特殊な差別感情はございません。だんだん人間の考え方というものは日々これ変わっていると思うのです。一日も早くみんなが明るく、同化された社会で生きていくということが理想でございますから、今後とも、そのような方向に向かって努力をし続けてまいりたいと私は考えております。
  250. 上田卓三

    上田(卓)分科員 特別措置法の三年延長の際の附帯決議を完全に守るべきではないか、こういうことで署名運動をしておりまして、それが衆参合わせて過半数に八名多い、こういうような状況になっておりまして、自民党の先生方も現在時点では衆参で百一名の方が御署名いただいているのが現状でございます。また、地方自治体においては、関係の市町村が千四十一あるわけでございますが、もうすでに千六十二。これはなぜかといいますと、関係のない地域も署名いただいているということで、それを上回っているというような実態があるわけでございまして、総理も来年度、五十七年度の概算要求までに一定の結論を出したい、こうおっしゃっておるわけでございまして、全国の市町村も国民も非常に関心を持っておるわけでございますから、こういう問題は早く結論を出すということが大事であって、来年の三月までに結論を出せばいいじゃないかというような無謀なことを言う人がおるならば、本当にわれわれの怒りは爆発せざるを得ない、私はこういうように思っておるわけでございます。  どうかひとつ、長官は御理解があるというのですから、今国会中に何とか一定の結論を出して、そうして来年度の概算要求に臨めるようなそういう御努力をしていただけるのかどうか、その決意というものをお聞かせいただきたい、このように思います。
  251. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いま先生の御指摘の点は、ただいま政府関係各省庁でこの法律のいわゆる期限切れに対して、残存事業量の問題とかいろいろな問題を鋭意検討しておる最中でございます。  私どもは、鈴木総理が先般の予算委員会でお答えを申し上げましたとおり、五十七年度概算要求をまとめる時点において政府の方針を決定する、こういう総理大臣の方針でございますから、私どもその方針に従って今後とも努力をしてまいる覚悟でございます。
  252. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 時間が大体切れましたから、締めくくってください。
  253. 上田卓三

    上田(卓)分科員 時間がないわけですけれども、今国会中に何とか結論が出るようにということで御努力願えますか。
  254. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御趣旨を体して努力をしたいと考えております。
  255. 上田卓三

    上田(卓)分科員 結構です。ありがとうございました。
  256. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で上田卓三君の質疑は終了いたしました。  次に、岡本宮夫君。
  257. 岡本富夫

    岡本分科員 総務長官は鹿児島県人会でたびたびお会いしておりますが、明治の元勲の血を引いていらっしゃるのですから、ひとつしっかりした答弁をお願いしたいと思うのです。  私、現在の日本の国情を見ておりますと、この狭い国に約一億三千万の国民が住んでおるし、しかも年々その人口が増加しておる。こういう国情を考えますと、今後の日本の繁栄それから世界平和ということを考えますと、優秀な技術を持った人がどんどん海外へ出ていってその居住した国に貢献をしていく、なお日本人の美徳でありますところの勤勉それから誠実、こういうものをやはり外国に知らせていく必要があるのではないか、こういうように考えるわけでございます。  そこで、そのためには海外へ出た人たちの生命財産の保障、あるいはまたその責めを果たして帰ってきた方々に対して温かく迎えていくというような今後の国策が必要ではないか、こういうように考えるのですが、総務長官はどういうようにお考えになりますか。
  258. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  先生の御指摘の点は、私も全く同感でございます。
  259. 岡本富夫

    岡本分科員 いまも総務長官は賛成していただいたわけであります。したがいまして、きょうはその在外邦人の保護並びに敗戦によって帰ってきた人たちの在外資産の補償、こういうような面について質問をさせていただきたいと思います。  そこで、今国会の冒頭に伊東外務大臣の方針演説を聞いておりまして特に注目されましたことは、海外在留邦人の生命財産の保護に真っ正面から今度は外務省あるいは国が取り組もうとしている姿勢だと思うのです。と申しますのは、この演説の中で、在外公館の機能強化を初め可能な限り措置を講じていくという決意表明があるわけでありますが、これはわが国の海外経済活動の膨張そして非常に不安定な国際情勢、これに対応しようとする外務省の見解だと考えておるのですが、外務省からひとつこの外務大臣の所信演説に対する見解を述べていただきたいと思います。
  260. 岩崎允彦

    ○岩崎説明員 外務省の領事二課長の岩崎でございます。  先生指摘のとおり、外務大臣は外交演説におきまして「経済、文化等の交流増大に伴って近年著増している海外邦人の生命財産の保護の観点からも、在外公館の機能強化が焦眉の問題になっております。」というふうに申し上げたわけでございます。したがいまして、まさに在外公館の機能強化の最大の目的一つが、この在外邦人の生命財産の保護でございます。  具体的には、そのために平素から任国の政治、治安情勢等に関する情報の収集、分析に努めますとともに、一たん緊急事態が発生いたしました場合には、直ちに在留邦人や東京の外務本省との連絡、通信等に努め、また避難活動が始まりました場合にはその手配、指導、それから必要に応じまして任国の当局との折衝、また必要な物資の手配それから避難ルートの交通手段の確保、こういったことに在外公館の総力を挙げて取り組む必要があるわけでございます。  このためには、まず在外公館におります人数、外交官の人数を初めといたしまして、在外公館の機能を強化することが絶対に必要なことであると私どもは認識しておりまして、そのために鋭意努力しております。ひとつよろしく御支援をいただければありがたいと思います。
  261. 岡本富夫

    岡本分科員 そこで、私も外国を回りまして、いままでの大使館の姿というものは非常に不満があったわけです。私は昨年のこの予算委員会で、特に中東の外交について非常におくれておるということを指摘したことがありましたが、今度イラン・イラクの戦争が勃発して危機にさらされたイラン・ジャパン石油の問題があります。私は、ああいった施設というものは、将来の日本のエネルギー確保にとっては非常に必要だと考えておるわけですけれども、イラン、イラクのあの情勢、イラン革命の問題あるいはイラク・イランの戦争の勃発、こういうことが外務省で全然把握されていなかったのかどうか。突然勃発したのでわからなかったというように感ずるわけですが、この点について外務省どうですか。——あなたは答弁できませんか。答弁できなければいいです。  時間がありませんから、そこで通産省に、イラン・イラク戦争におけるところのイラン・ジャパン石油の現況あるいはまた日本人従業員の救出について御説明いただきたい。
  262. 細田博之

    ○細田説明員 いわゆるIJPC、イラン・ジャパン石油化学の問題につきましては、昨年九月以降五度にわたりまして、イラク側の爆撃によりバンダルホメイニの現地の工場が破壊されております。しかし、もう十月時点で日本人は全員引き揚げておりまして、現在その被害の状況についてはよくわかっておりません。今後は爆撃によって生じた被害の状況、復旧及び完成までに要する工事費などを把握していく必要があるわけでございます。目下のところ、わが国としては本プロジェクトを継続支援していくという従来からの基本方針に変更はないわけでございますが、そういう実態把握がまず必要かと考えておるわけでございます。
  263. 岡本富夫

    岡本分科員 この問題は、通産省としても国の方針として進めていこうというふうに受けとめておきます。  そこで、外務省にもう一つ聞きたいのですが、外務大臣の施政演説の中でイラン・イラク戦争について「わが国は繰り返し両国に対し、戦闘を一日も早く停止し、」云々とあって「わが国としてもできる限りの協力を惜しまない」中は飛ばしますけれども、こういう演説があるわけです。それはいかなる協力をするのか、どういう考えなのか、この点も明らかにしていただきたい。
  264. 野村一成

    ○野村説明員 法規課長でございまして、別にただいまの御質問の点を直接所管しているわけじゃございません。ただ、冒頭に御質問ございましたのですけれども、特にイランにおける在外邦人の保護につきましては、中東全域の大使館それぞれが鋭意努力をしまして情報の確認に努めたということでございます。ただ、ああいういま起こっておりますような事態が起こったということはきわめて遺憾に思っておるわけでございます。なお、紛争そのものにつきましては、二国間それから多数国間の場を通じまして、いろいろ鋭意できる限りにおきまして努力を行っておる、そういうことでございます。
  265. 岡本富夫

    岡本分科員 これは大臣にでも聞かないと、全然答弁にならない。こんなのに時間をとったのでは話にならぬから、これは外務委員会ででももう一遍詰めたいと思います。  そこで、先ほど在外公館の機能強化についての一つのはっきりしたことが出されたわけでありますけれども、昨年の臨時国会で、政府は在外邦人の救出のための自衛隊の海外派遣は憲法上可能だというような見解を示した経緯があります。法制局の見解を聞きたい。
  266. 味村治

    ○味村政府委員 先生のおっしゃいますのは、昨年十月十一日の予算委員会のことではないかと存じます。その際に、大内委員の御質問に対しまして内閣法制局長官が御答弁申し上げましたが、それは、必ずしも先生のおっしゃいますように在外邦人の救出のために自衛隊の派遣が常に可能であるということを申し上げたわけではございません。  この問題は、前から実は問題になっておるわけでございますが、その際の法制局長官答弁は「まず、外国にある日本人の生命財産が侵害されあるいは侵害される危険にさらされた場合に、このような在外邦人を救出するために武力行使の月内を持って自衛隊をその外国に派遣することはわが憲法上許されない」というふうに考えているということが第一点でございます。つまり武力行使の目的で派遣することは憲法上許されないのだということが第一点でございます。  それに対しまして、武力行使の目的を持たず、当該外国の要請なり承認——当然承認が必要なわけでございますが、単に平和的手段によりまして在外邦人を救出すること、これを任務といたしまして自衛隊をその外国に派遣するということは、これは武力行使を目的といたしておりませんので憲法上は許される。しかし、自衛隊法上はそのような任務を自衛隊に与えておりませんので、憲法上はそのような武力の行使を目的としない派遣は許されるけれども、自衛隊法上まだその根拠となる規定がない、こういう状況でございます。
  267. 岡本富夫

    岡本分科員 そうしますと、在留邦人の生命財産に危険があったとき、そういうときは、裸で行くわけにもいかない、手ぶらで行くわけにもいかない、こういうことですから、そういう救出のための派遣は憲法違反だ、こういうことですね、もう一度ひとつ。これが一点と、それからもう一点は、在外邦人を救出するということですから、平和じゃないわけですね。平和なときに自衛隊の派遣というのはどういうことか知りませんが……。平和なときに自衛隊の派遣を向こうの承認を得てというんだったら、結局先ほど私が質問した在留邦人の生命財産の危険のために自衛隊は派遣できない、こういうことなんですね、もう一度。
  268. 味村治

    ○味村政府委員 先生がおっしゃいますように、在外邦人の生命財産が危険にさらされているという場合は、かなりその国が混乱しているという場合が予想されるわけでございます。そのような場合に、そのような在外邦人を救出するためにはどうしても武力を行使しなければならぬというような事態でございますという場合には、そのような外国において武力の行使をするということは、私どもは、わが憲法上では武力の行使をするのには自衛権発動の三要件が必要だ、このように解しておりますが、そのような要件が欠けているというように考えておりますので、そういうことはできないということでございます。  ただ、そういうふうに治安が混乱いたしておりましても、場合によりましてはある程度、在外邦人をある港に集結していただくとかあるいは空港に集結していただいて、それで自衛隊機なり自衛艦なりをその国に派遣する、そして武力の行使をしないでただ輸送してくるということも考えられないことはないわけでございます。そういう場合は武力の行使を目的としていないわけでございますから、憲法上は可能であろう、ただ、自衛隊法上はそのような任務が与えられていないということだと承知しております。
  269. 岡本富夫

    岡本分科員 きょうは防衛論議は本論でありませんから、時間がありませんからこのくらいにしておきますが、ちょっとこの際、いまの経済戦争といいますか、今度鈴木総理がアメリカへ行きますが、このときも経済摩擦、特に自動車の輸出問題が非常に問題になってきておるのではないか。通産省の実績をとりますと、そう変わってないのだというような実績を出しておりますけれども、この一月の実績は昨年に比べて三〇%も増しておるというようなことが報道されておるし、それから本日の正午のNHKのテレビの報道を聞いておると、米国の対日収支の赤字、この根源はどうも自動車の輸入であるというような報道もされておるわけでありますけれども通産省の今後の自動車産業に対しての指導方針、これをひとつ明らかにしてもらいたい。
  270. 西中真二郎

    ○西中説明員 ただいま先生から御指摘ございましたように、日米の自動車問題、いろいろ向こうでもかなり激しい動きがあるというふうな状況でございます。  今後の方向ということでございますけれども、わが国の中で、自動車産業は非常に大きなウエートを占めておる産業でございまして、しかも対米輸出の依存度も相当高いという状況にあるわけでございまして、アメリカと申しますのは、日本の自動車産業にとっても非常に重要な市場になるわけでございます。     〔主査退席、池田(行)主査代理着席〕 そういったような観点から、アメリカに対する今後の輸出の成り行きということは、われわれも非常に強い関心を持っておるわけでございますけれども、こういった通商摩擦を放置いたしますと、将来にわたりまして、わが国自動車産業の重要な市場を失うということにもなりかねない危険性もあるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、自動車業界に対しまして、従来から特定市場に対していわば集中豪雨的な輸出を行わないようということでいろいろ指導もいたしてまいっておりますし、あるいはまた先般、ことしの一−三月期の対米乗用車輸出につきましては、これは四十五万台以下になるだろうという見通しを公表したりいたしておるところでございます。  現在、アメリカにおきまして、ルイス運輸長官をチーフといたします自動車問題のタスクフォースというものがつくられておりまして、そこでいろいろアメリカの中でも検討がされておるというふうな状況でございますけれども、そういった動きを注意深く見守りながら的確に対処してまいりたいという段階でございます。
  271. 岡本富夫

    岡本分科員 そうしますと、自動車産業に対する指導はいままでと変わらない、こういうように解していいわけですか。
  272. 西中真二郎

    ○西中説明員 いままでと変わらないというふうにいまの時点で断定するわけにはまいらないと思います。先ほど申し上げましたように、タスクフォースの動き等も十分勘案しながら、今後の方針を考えていくということになろうかと思います。
  273. 岡本富夫

    岡本分科員 本論に入る前に時間がなくなってしまいました。  総務長官、実は終戦時に海外から引き揚げてこられた方々が——これはもっと細かくやろうと思ったのですが、時間がなくなりましたが、財産を海外に残してきた。それを、昭和二十六年の五月十七日の衆議院の外務委員会で、吉田元総理は「日本から賠償をとらないかわりに、在外資産はその所在国においての賠償に充てるということに原則がなっております。」というように答弁されておる。要するに、在外資産を日本の国の賠償に全部充ててしまった。したがって、この方々の賠償請求といいますか、憲法二十九条の三項ですか、財産権というのがありますが、このお帰りになった方々、置いてきた方々に対しての補償、これがまだ残っておるのではないか、こう考えるのですが、いままでどういうふうになされ、またこれからどうしていくのか、ひとつ明らかにしてもらいたい。
  274. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いままでのいろいろな歴史的経過がございますので、政府委員から答弁をさせます。
  275. 関通彰

    ○関(通)政府委員 在外財産の問題につきましては、ただいま先生お触れになりましたように、戦後幾つかの経緯がございましたが、ほぼ最終的には、昭和四十一年の第三次在外財産問題審議会におきまして、国の補償義務、これが主な中心課題でございましたが、補償義務を含めまして御審議が行われ、その答申が出されております。その答申は、在外財産の喪失について、国に法律的な補償義務はないが、政策的な配慮に基づく特別措置として、引き揚げ者に特別交付金を支給することによって在外財産問題に終止符を打つことが適切である旨の答申でございます。  この答申を受けまして、政府では閣議決定をいたしまして、昭和四十二年に、引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律をもって措置してきたところでございます。これまですでにこの法律によりまして、対象者数約三百十二万人に対しまして千六百三十五億円の交付金が支給されております。
  276. 岡本富夫

    岡本分科員 外務省の、五十三年の七月三十一日、終戦時の外交文書、この中で、在外資産の賠償に充てられた部分が公表されておるわけですが、それに対して、これは非常に少額な補償しかできておらぬ、したがってこれはもう一度総理府総務長官、再検討をする必要があろうと思うんです。     〔池田(行)主査代理退席、主査着席〕  いままで私、この問題を当委員会であれしますと、最高裁の判決が出ておるからとか、いろいろなことを言われたことがありますけれども昭和二十八年の最高裁の、農地改革における農地の適正買収価格、これに対しての判決の後、農地報償法を制定して旧地主に給付金を支給しておる。こういうことを考えますと、私は、一番冒頭に申し上げましたように、この在外資産を残された方々、こうして外国から帰ってこられた方々に対して、やはり手厚い補償をしてあげることが、今後の日本の国の行くべき道ではないか、こういうように申し上げて、総理府総務長官も、そのとおりだ、こうおっしゃったわけです。したがって、いままでの二回の交付金というのは、本当にスズメの涙みたいなものなんです。ひとつ、もう一度再検討をお願いしたい。これをひとつ決意を承りたいと思うんですが、いかがですか。役人さんのようなんじゃなしに、少し明治の元勲のような気持ちでひとつ御答弁をいただきたい。
  277. 中山太郎

    ○中山国務大臣 外務大臣が本会議でいろいろと、在外法人企業進出について、大使館を通じて全面的に生命財産の保障をやるという意見を申し述べたと御指摘でございましたが、大東亜戦と申しますか、あの当時と現在との、いわゆる日本の置かれている国際環境というものは、私は相当違いがあるというように考えております。いまは企業進出として海外に行く。そういう企業が進出する、その進出した企業に対する輸出保険制度とかいろいろなものが、最近国会の御同意を得て保障措置がとられておりますが、この大東亜戦争の終戦時は、全く無条件降伏という悲惨な状態の中で、私どもは連合国の命ずるままに戦争を終わらざるを得なかったという中で、政府としてはできるだけのことをやってまいったということでございまして、いま政府委員が答弁いたしましたことと違って、私に対して役人と違った答弁をしろという先生の御要望がございましたが、私は国務大臣としてただいま公務員でございますので、ひとつ政府委員の見解と同一であると御理解いただきたいと思っております。
  278. 岡本富夫

    岡本分科員 どうもそういう答弁では納得ができませんね。と申しますのは、先ほど申しましたように、五十三年の七月三十日、外務省が発表した在外財産の総額三千七百九十五億円、しかもそれは一ドル十五円の換算ですね。それに対して先ほどのような補償では非常に少ない。しかも、この方々は非常に苦労をして向こうで蓄積をし、そしていまお帰りになっておるわけです。したがって、経済大国と言われるようになったわけですから、財政再建のこともありますけれども、日本の国策という面から考えると、先ほども申し上げましたように、もう一度再検討することが大事ではないか。  もう一つ、シベリアで抑留された人たち、この人たちは非常に気の毒なのですよ。アメリカでさえ、一九八〇年七月三十一日、戦時中の一般市民の抑留及び隔離収容に関する委員会の設立法、要するに、戦時中に日本人は敵性国人だということで抑留されたりいろいろされた、この人たちに対する損害賠償をしようというような調査の委員会もつくって、予算をつけてやっている。そのアメリカの温かい姿を見たときに、日本のいまとっておる政策というのは非常にお粗末ではないか、こういうように私は考えるのです。  ですから、この二点から考えて、総務長官、もう一遍、役人と一緒でございますなんて言わぬで、若干政治的な検討課題を残していただきたい、こう思うのですが、どうですか。
  279. 中山太郎

    ○中山国務大臣 貴重な御意見として承らせておいていただきたいと思います。
  280. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 岡本君、質問の時間が参りましたから、締めくくってください。
  281. 岡本富夫

    岡本分科員 そんな貴重な御意見だけじゃお話にならぬ。まして、ことしの所信演説で、在外公館に対する云々で、いままでにない非常に強い正面姿勢をとられたわけですから、この点も考慮して、ひとつ再検討をここで特に要求しておきまして、また来年の予算委員会でもう一遍がっちりやらせていただきますので、よろしくお願いします。  どうもありがとうございました。
  282. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で岡本富夫君の質疑は終了いたしました。  次に、塩田晋君。
  283. 塩田晋

    塩田分科員 総務長官にお尋ねいたします。  北方領土の返還は日本国民の悲願であります。国会におきましてもたびたび返還の決議が行われたところでございますし、総務長官もいち早く北方海域を視察されたということでございまして、また、総理も近く視察をされるということを聞いております。ぜひとも総理には行っていただきたいと思います。私も昨年の八月に現地に参りまして、労働組合を中心とする市民の返還要求大会、現地で納沙布岬大会がございましたのでこれに参加させていただきまして、現地から北方領土を望んだところでございます。私は、この北方領土の返還をぜひとも実現をしたいという立場に立ちまして、基本的な問題について御質問をしたいと思いますので、端的に、率直にお答えをいただきたいと思います。  まず、北方領土と言う場合に、千島列島全島だという説と、歯舞、色丹、国後、択捉の四島という見解、いろいろございますが、一応話を進める前提として、政府がとっておられますいまの北方四島というものを北方領土として、質問を続けていきたいと思います。  そこで、まず、いわゆる北方四島は固有の領土と言われておりますが、わが国の領土であるかどうか、その点についてお伺いいたします。
  284. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御案内のように、一七〇〇年代のいわゆる北方地域というのは、ロシア、日本の両国、いわゆる国境という意識がほとんどございませんでしたが、この領土問題が初めて登場してきたのは一八五四年ごろであったろうと思います。  御案内のようにその年に、一八五四年ごろにはすでにアメリカが、日本との修好を求めるための条約締結にペルリを派遣しております。当時アラスカは御案内のようにロシア領でございまして、米露株式会社というものが存在をいたしておりまして、アメリカの日本に対する通好を求める動きをいち早く察知したロシア帝国が、プチャーチンをいわゆる特使として、修好条約締結のために派遣をしてきておる。こういう事態の中で、一八五四年には日米和親条約というものが締結をされております。  しかし、どうして日露和親条約が年を越したかといえば、その理由の中には、日米間の和親条約の交渉の中には領土問題というものが存在をしなかった。しかし、日露間では領土問題の交渉が相当難渋をいたしております。この択捉島の最終的な帰趨をめぐっても、日露間での激しい外交交渉が行われたわけでございまして、その結果、一八五五年二月七日に、ロシアと日本の間は、この択捉島から南を日本の領土、得撫島から北を、クリール諸島をロシア領ということで、両国が平和裏に条約を締結して領土を認め合った、こういう経過に基づいていると存じております。
  285. 塩田晋

    塩田分科員 そこで、現在の北方領土、これは領土であるということはお認めになりますか。
  286. 中山太郎

    ○中山国務大臣 政府は領土としてこれを認め、すでに昭和四十年代の初頭におきまして、自治省は地方交付税の対象の計算面積に入れております。
  287. 塩田晋

    塩田分科員 およそ領土と言う場合には国家の領域という観念になると思いますが、その中身というものは国の主権の及ぶ範囲、すなわち国家が排他的に支配する空間、これを称すると思います。現在はどのような状態でございますか。
  288. 中山太郎

    ○中山国務大臣 まことに残念ながら、一九四五年の終戦時にソビエト軍がこのクリール諸島を占拠する、カムチャツカへおりてくる、そして択捉から南は占領せずに一時Uターンをしたということが、当時、水津という参謀から報告書が出ております。しかし、米軍が占領する地域としてあらかじめ米ソ間での話し合いがあった、しかしそこに米軍がいなかったということで、ソ連の軍隊がいわゆる歯舞、色丹まで占領したというふうな史実を私どもは存じておるわけでございます。
  289. 塩田晋

    塩田分科員 そういう意味では、現在の北方領土は完全にわが国の領土とは言えない状態にあるということは、お認めになりますか。
  290. 中山太郎

    ○中山国務大臣 わが国古来の領土でございますけれども、私どもはソビエトによって占拠されていると認識しております、
  291. 塩田晋

    塩田分科員 ということは、それはわが国の領土ということでなくして、わが国が返還を求めておる、領土権を主張し得るわが国の固有の領土、地域というふうに考えるのが正当じゃないでしょうか。
  292. 中山太郎

    ○中山国務大臣 詳しい外交上のことに関しますので、政府委員から答弁をさせます。(「外務省は来てない」と呼ぶ者あり)
  293. 塩田晋

    塩田分科員 結構です、時間がないから。  これは領土である、しかし現実には排他的な管轄権の及ばない地域である、したがって他のわが国の領土とは違うということがはっきりしていると思います。  そこで、同じような状況にありますのは島根県の竹島、そして若干状況は違いますけれども、中国との間に問題になっております尖閣列島、これがございます。北海道の一部であるところの北方領土、返還されるべきものとして領土権を主張しておる北方領土、これと同じような状況にあるのが竹島であり、また若干違いますけれども、現実に日本が支配しておる、管轄しておる尖閣列島、これは若干違いますけれども、国際間における係争の地域であるということは、これはもう間違いない事実だと思います。  そこで、防衛庁にお尋ねしたいと思います。自衛隊法は第三条で、「自衛隊の任務」といたしまして「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし」ておる、こういう規定がございますね。そこで、現在わが国の領土であるということを総務長官は言われましたが、その北方領土は残念ながらわが国の主権が有効に及んでいない、排他的管轄権がないということを言われたわけですが、これは直接侵略されている状態ではありませんか。
  294. 萩次郎

    ○萩説明員 御指摘のとおり、北方四島はわが国固有の領土でございますが、現在不法に占拠されております。侵略をされているか否かということにつきましては、「侵略」という言葉の定義もございまして、これは国連でもなかなか「侵略」という定義がはっきりしてないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、北方領土の問題については、日ソ間の懸案として、あくまで平和的に解決すべきであるという立場で国は対処してきておりまして、自衛隊がこれに対処すべき問題であるというふうには考えておりません。
  295. 塩田晋

    塩田分科員 自衛隊に関連しまして、自衛権の三原則といいますか、自衛権行使の三要件というものがあるわけでございます。これは、一つは急迫かつ不正の侵略があること、二つが他に適当な手段がない場合は活動を許される、三番目に侵略に対する防衛行為は自国の防衛上必要最小限度のものでなければならない、この三要件でございますが、これは国会答弁等による政府見解、方針のようでございますが、どの要件でそのような自衛隊はタッチすべきものでないと判断しておられますか。
  296. 萩次郎

    ○萩説明員 自衛権発動の三要件と申しますのは先生がただいま御指摘ございましたものでございますけれども、先ほど私が申し上げましたように、平和的に外交手段をもって行い得る余地があるという点から申しまして、先生がおっしゃいました二番目の、この場合には他に方法があるという点で自衛権の発動ということはあり得ない、こうふうに考えております。
  297. 塩田晋

    塩田分科員 それでは、陸海空各自衛隊の部隊、方面分隊あるいは師団には、管轄区域といいますか、自衛隊法あるいはその政令、規則等に基づく管轄区域といいますか、活動をする範囲というものが定められておるはずです。竹島も同じですが、いまこの北方領土に限りまして、どういう管轄区域が指定され、そして、いま言われた、そこは打っちゃいかぬとか監視するだけだというようなことは、どういう通達を出して第一線に徹底をしておられますか。
  298. 萩次郎

    ○萩説明員 管轄区域というものはございませんけれども、陸上自衛隊及び海上自衛隊につきましては、自衛隊法施行令によりまして、それぞれ警備区域というものが定められております。これによりますと、陸上自衛隊の北部方面隊の警備区域は「北海道」ということになっております。それから海上自衛隊の大湊地方隊、この警備区域は「北部東北ないし北海道」ということになっておりまして、先ほどお話がございましたように、「北海道」とわが国が申します場合には、その中に当然のことながら北方四島は含まれておるわけでございますので、理論的に申し上げれば北方四島も北海道の一部でございますので、当然のことながら警備区域に含まれている、こういうことでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、それぞれ歴史的経緯もございまして、自衛隊の直接の行動の対象とはなっておりませんので、それぞれその区域を警備区域としております部隊についても、北方領土の範囲内は行動の対象としておりません。
  299. 塩田晋

    塩田分科員 その直接行動の対象としてないということを第一線の隊員に徹底する何らかの措置、それは通達という形で出ていると思いますが、時間の関係で、それを後ほど届けていただきたいと思います。
  300. 萩次郎

    ○萩説明員 先生おっしゃいましたような通達、これはいろんな形の通達がありまして、それぞれ長官なり幕僚長なりの通達があって末端の部隊にまで周知徹底しておるのでございますが、これらの通達はそれぞれ一応秘に指定してございますので、ちょっと、残念ながら御提出は差し控えさしていただきたい思います。
  301. 塩田晋

    塩田分科員 この問題は引き続いて、またいずれかの機会に、別のところでも追及をしたいと思います。  次に、総務長官に最後にお尋ね申し上げます。  沖繩北方問題特別委員会の委員長小沢貞孝、わが党の代議士でございますが、また各党の委員さんのお骨折りによりまして、根室地域の振興問題、これを取り上げて力をいただいておると思いますが、この新しく措置をされる来年度予算の内容につきまして、簡単に御説明願います。
  302. 滝沢浩

    ○滝沢説明員 北方領土隣接地域安定振興対策の現状について御説明申し上げます。  北方領土隣接地域安定振興を図るため、昨年の十二月八日に、関係省庁の事務次官会議の申し合わせによりまして、総理府、農林水産省、建設省など十一省庁で構成する連絡会議を設置して、その運営の窓口を北海道開発庁が担当することとして、とりあえず体制の整備を図ったところでございます。  引き続きまして、昨年十二月に連絡会議を開催いたしまして、北海道から、中長期にわたる安定振興対策の考え方と、それから、当面する五十六年度予算要望事項につきまして北海道庁の考え方を聞きまして、今後それを中心にどう進めるかについて意見の交換を行いました。  当面する五十六年度の予算でございますが、北海道開発庁が担当している開発予算のうち、予算の編成段階で考慮し得る開発道路の落石初田牛線とか、中標津空港の整備予算等については編成段階で配慮いたしまして、そのほかの事業については、現在関係省庁において、実施計画の策定の際に北海道から具体的な要望を聞いて、適切に措置するという状況になっております。
  303. 塩田晋

    塩田分科員 長官、この問題につきましては積極的に充実強化の方向で御努力をお願いします。要請いたします。  次に、統計局長にお伺いします。  中国の人口センサスについてでございますが、中国は過去二回大規模なセンサスを行っております。今回、ことしの七月になお大規模な十数年ぶりの国勢調査を行うということを聞いておりますが、これが何らかの事情によりまして一年延期されるということでございます。それはどのような状況からであるかということ。  それから、国連等がこのセンサスに非常に協力をしておる。また日本も協力をすべきじゃないかという立場から、日本がどういう形で中国のこういった大事業に参加できるか、協力できるかということについてお伺いいたします。
  304. 島村史郎

    ○島村政府委員 お答えします。  中国の国勢調査につきましては、中国はことしの七月に実施をする予定でございましたが、これが来年の七月に実は延期になっております。  これは私どもが中国から聞くところによりますと、国連からIBMの機械を二十一台中国に供与するということでございましたが、このIBMの機械が入るのが実は現在おくれております。そのために、それが主たる原因で一年間これを繰り下げたというふうに私どもは聞いておるわけでございます。  今後、この中国の国勢調査について統計回がどういうふうな援助をしていくかということでございますが、これは中国の要請に基づいて実施をいたすわけでございますが、私どもが中国の国勢調査の状況を考えますと、国勢調査をやりますにつきましては、実査面とそれから集計面と二つございますが、実査面についてはそう大した問題はないのではないかというふうに考えます。むしろ集計面のところに非常に大きなネックがあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。この集計面について、さらにプログラマーの養成ということが非常に重要な課題になりますので、来年度、JICAを通じましてコンピューターの専門家を二名派遣いたしまして、これの養成に当たらせたいと考えております。
  305. 塩田晋

    塩田分科員 集計にネックがあるということでございます。プログラマーの養成、これが重要でございますし、日本の技術をこの面で援助するということについて、総務長官、ひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思います。二名の派遣というようなことだけでなしに、向こうは十億ですから、しかも世界人口の四分の一ですから、もっと積極的に力を入れていただきたいと思います。また専門家の派遣等も、二人ということでなしに、もっともっと要望してきていると思いますから、これについて御配慮をお願いします。  次に、同和対策の問題に移ります。すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとりまして、国、地方公共団体が同和対策事業等の特別措置を講ずること、これによりまして対象地域の経済力の培養、住民生活の安定、福祉の向上に寄与することを目的といたしまして同対法が制定をされ、事業が実施されてきておる。国も地方公共団体もその他の団体も、すべての国民的課題として取り組んでおるわけでございますが、同対審の答申が出ましたのは四十年八月、同対法ができましたのは四十四年の七月、そして延長されましたのが五十四年の三月、そして来年三月にはこの期限が参ろうとしております。  このときに当たりまして、国、地方公共団体の責務として同事業を迅速、計画的に推進するよう努めなければならぬ、こうなっております。そしてまた、農林漁業、中小企業の振興、教育、雇用の機会均等の保障、社会保障の充実、人権擁護活動の強化、こういった問題にすべての国民が取り組んで解決しなければならないものでございます。衆参両院におきましても附帯決議がございましたが、その附帯決議の実施状況、これについて簡単に御説明願います。
  306. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 附帯決議は三項目から成っておりまして、第一項につきましては、実態の把握とそれをもとにいたしました今後の施策のあり方を検討しろということだったと思いますが、これにつきましては、現在もう関係各省におきまして、残事業の状況あるいは就労、就学の状況等、いわばハード面、ソフト面の実態把握に努めておるところでございまして、これらをもとにさらに検討を深め、五十七年度概算要求の要求時期までには今後の必要な施策の大綱を策定してまいるということで進めております。  第二点は、地方の財政負担の軽減でございますが、これにつきましても、毎年補助額の増額あるいは補助対象の拡大等々の措置を図りまして、附帯決議趣旨に沿うよう努力してまいっておるところでございます。  第三点は啓発でございますが、これも現在の同和対策の最重点施策の一つといたしまして逐年予算の増額を図り、また内容に改善を加えながらその施策の拡充を図っておるところでございまして、現在御提案申し上げております五十六年度予算案におきましても、対前年度比約三五%増の三億一千二百万円余を計上いたしまして、施策の拡充を図ることとしておるところでございます。
  307. 塩田晋

    塩田分科員 最後に、長官にお伺いします。  諸対策はいま御説明のように各方面にわたって行われておるということでございますが、なお多くの未解決の問題があると思います。この解決のためにどのように取り組もうとされるか、その決意のほどをお伺いしたいのが第一点です。  それから、あってはならない事件が続発しております。長官のおひざ元の大阪市東淀川区の淡路中学校の体育館事件というのは御存じだと思いますが、これについてどのような御認識、そして心境、これに対してどうやるかということについての決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。  そして最後に、来年度は現行法による事業の最終年度でございます。国民の一部にあるところの社会的意識として身についている伝統的偏見をなくするということ、差別の観念、差別の意識というものを根絶するということがなければならないと思いますが、これに対しましてどのような決意で、どのような方策でこの問題を解決しとされておるか、それが可能かどうかということですね。もう法律の期限が来るわけですから、それについてどう考えておられるか。そして私は、同和対策を強化すべきだと思いますが、この差別の物心両面にわたるところの根本的な解決、これに不退転の決意で取り組んでもらいたいという強い要請をいたしまして、質問を終わりたいと思いますが、いま申し上げました三点につきまして、長官から御答弁を願います。
  308. 中山太郎

    ○中山国務大臣 まず第一点のお尋ねでございますが、来年度三月三十一日をもって延長された法律案の目が来るわけでございますが、それにつきましては、かねて鈴木総理が予算委員会で表明しておりますとおり、五十七年度概算要求の時点において政府として方針を決定したい、こういうことで、内閣としては総理の方針を支持してまいる覚悟でございます。  第二点のお尋ね、大阪の淡路地区における差別のいわゆる落書き問題、非常に差別問題が激しくなっておるという御指摘で、これに対してどうするか、まことに私は遺憾なことだと考えております。こういうことがこの社会で行われるということはきわめて好ましくない。いまやこの同和問題という問題は、きわめて大きな国内の問題でもございますし、また一部では、すでに海外でも問題になっておる。こういう問題については一日も早くこのような事態がなくなるように、政府におきましても関係各省と十分連絡をとって処置をとってまいりたいと考えております。  第三点のお尋ねでございます、これからどうしていくか。私どもとしてはこの同化、いわゆる国内のこういうふうな差別に対する意識がなくなるように、一日も早くなくなるように、みんなの精神的な同化を進めるために、これからもますます努力をいたしてまいりたいと考えております。これは法律によって、その日が法律ができたからあるいは切れだからという問題じゃなしに、これはなくなるまで国民全体の意識として持ち続けていくことがきわめて重大である、このように認識をいたしております。
  309. 塩田晋

    塩田分科員 終わります。
  310. 橋本龍太郎

    ○橋本主査 以上で塩田晋君の質疑は終了いたしました。  これにて総理府所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、来る三月二日午前九時三十分から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会