運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1981-02-13 第94回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月十三日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       足立 篤郎君    上村千一郎君       小渕 恵三君    越智 伊平君       鴨田利太郎君    後藤田正晴君       近藤 元次君    塩崎  潤君       瀬戸山三男君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    宮下 創平君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       阿部 助哉君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    大原  亨君       岡田 利春君    中村 重光君       野坂 浩賢君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       神田  厚君    林  保夫君       辻  第一君    寺前  巖君       松本 善明君    河野 洋平君  出席公述人         国際基督教大学         教授      渡辺 保男君         埼玉大学教授  暉峻 淑子君         全日本労働総同         盟副書記長   高橋 正男君         大阪大学名誉教         授       木下 和夫君         税制経営研究所         所長         法政大学講師  谷山 治雄君         東京大学教授  佐藤誠三郎君  出席政府委員         内閣官房副長官 瓦   力君         総理府総務副長         官       佐藤 信二君         行政管理政務次         官       堀内 光雄君         防衛政務次官  山崎  拓君         経済企画政務次         官       中島源太郎君         国土政務次官  大塚 雄司君         法務政務次官  佐野 嘉吉君         大蔵政務次官  保岡 興治君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         文部政務次官  石橋 一弥君         厚生政務次官  大石 千八君         農林水産政務次         官       志賀  節君         通商産業政務次         官       野田  毅君         運輸政務次官  三枝 三郎君         郵政政務次官  渡辺 紘三君         労働政務次官  深谷 隆司君         建設政務次官  住  栄作君         自治政務次官  北川 石松君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     近藤 元次君   正示啓次郎君     宮下 創平君   不破 哲三君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     越智 伊平君   宮下 創平君     正示啓次郎君   辻  第一君     不破 哲三君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件について公聴会を行います。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十六年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようにお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず渡辺公述人、次に暉峻公述人、続いて高橋公述人順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、渡辺公述人にお願いをいたします。
  3. 渡辺保男

    渡辺公述人 ただいま御紹介いただきました渡辺であります。本日は、行政改革補助金につきまして述べさせていただきたいと思います。  お話順序といたしまして、まず、今日、行政改革ということが叫ばれております背景はどういうものであろうかということについてお話しいたしたいと思います。  次に、行政改革を当面推進するに当たっての基本的な考え方、視点というようなことについてお話しいたしたいと思います。  第三に、そういうこととの関連におきまして、補助金制度につきましてどういうふうに考えたらよろしいであろうかということをお話ししたいと思います。  そして最後に、行政改革実現するためにはどういうような点に留意すべきであろうかというようなことについてお話しいたしたいと思います。  以上、ほぼ四点にわたってお話しいたしたいと思うのでありますが、まず第一に、今日、行政改革が世人の関心の的となりつつあります。そこで、このようなことの唱えられております背景はどういうものでありましょうか。それを四つにわたって述べさせていただきたいと思います。  第一は、財政硬直化という現実であります。第二は、わが国社会都市型社会あるいは成熟化社会になりつつあるという現実であります。第三は、わが国社会が急速に高齢化社会になりつつあるという実態であります。それから第四は、国民政府に対する批判が次第に厳しくなっているという現実であります。  まず、第一の財政硬直化現実でありますが、このことは私がここで改めて申し上げるまでもなく、わが国経済はかつての高度成長から安定成長へと転換を余儀なくされております。  今日、中央地方を通じまして財政状況は決して楽観を許さなくなっております。ここで財政政策の適否については述べることはできませんが、もはや、かつてのように、税の自然増収に多くを期待して施策を推進するということは、つまり、高度成長の惰性によって施策を推進するということは不可能となっております。しかも、変転やまない国際状況対応し、かつ、後から述べますような国内情勢に対処するためには、限られた資源を有効適切に使用することが不可欠となっております。そこで、市政のあり方について検討を加え、施策評価を与えることが必要となっておるかと思うのであります。  第二は、わが国社会がいわゆる都市型社会成熟化社会になりつつあるということであります。  都市化の進展、生活水準の上昇、自由時間の増大あるいは第三次産業の優位、さらにはマスコミュニケーションの発達、価値観多様化等々によりまして、わが国社会はもはや農村型の社会ではなく都市型の社会に移りつつあります。このような事態を前にいたしまして、もはや画一的な行政政府主導でのみ強行的に遂行していくということは次第に困難になりつつあります。そこで、新たな行政仕組みを考え直さなければならなくなりつつあるという認識が高まりつつあると思われるのであります。  第三は、わが風の社会が急速に高齢化社会になりつつあるという実態であります。  わが国行政施策として、これからはいままでにも増して、社会保障政策重要性あるいはその経費の負担あるいはその施策運営仕方等等にわたって検討が迫られつつあるということは言うまでもないのでありますが、同時に、組織の中におきましても中高年齢者層が増大しつつありまして、それへの配慮ということももはや無視できないような状態となっていると思うのであります。  第四は、わが国におきまして国民政府に対する批判が次第に厳しくなりつつあるという実態であります。  いま急に始まったわけではありませんが、俗な言い方をいたしますと、いわゆる親方日の丸とか公費天国とかあるいは臭い物にふたをするというよう海政府批判の声が高くなっております。行政国民血税によって担われていること、さらに家計が決して楽ではないこと、あるいは企業ではいわゆる減量経営がとられていること、このような実態があるにもかかわらず、政府はそれだけの厳しい内部努力をしてきたのであろうか。政府が新たに国民負担を求めるには二つのことが絶対に必要ではないであろうか。つまり、負担が公平であるということ、もう一つは政府が清潔であるということ、そういうことによってのみ初めて政府国民から信頼を受けるのでありますが、果たして現実がそうであろうか。政府に対するこのような批判が次第に無視できなくなっていると申せるのであります。そのためには徹底した綱紀粛正が必要であり、また、政府がみずからえりを正して内部努力を行い、行政改革に対処することが大事であるということが認識されていると思われるのであります。  以上挙げましたような要因によりまして寸今日改めて、行政改革がなされるべきであるという声が高まっていると思うのであります。  そこで次に、それでは行政改革の今日における基本的な考え方というものはどういうものであろうかということについて述べたいと思います。  現在、行政は公益、公共福祉実現のために国民生活を規制し、あるいは多元的な利害関係を調整し、さらにサービスを提供しております。そこで、現代の国家におきましては、行政の果たす役割りがきわめて重要であることはここに改めて申し上げる必要はないわけであります。しかしながら、行政あるいは政府責任を持つべき領域あるいは範囲はどこにあるのであろうか、こういうことを先験的にあるいは論理的にあるいは一義的に確定することは著しく困難であります。そういう政府あるいは行政責任領域あるいは範囲は、社会経済の動向とかあるいは国民一般価値観等関連において、国民のコンセンサスの中で具体的に設定されるはずのものであると思われるのであります。一ところで政府は、時代変化に機敏に対応していく、つまりレスポンシブであるということ、かつ、究極的には国民地域住民責任を果たさなければならない。レスポンシブルでなければならない。したがって、不断行政あり方検討されるべきものであります。その意味で、行政をそのようにするための行政改革は常時継続して行われるべきはずのものであります。しかも、行政改革は狭い範囲に限られるものから広い範囲にわたるものまで、その範囲が多様であります。しかし、各時代の節目には行政全般にまでわたる大規模な点検が必要とされるのでありまして、それに応じた力点の置きどころがあるということが認められるのであります。  もとより政府におきましても、敗戦後の歴史をとりましてもそれなりの対応はしてきたわけでありまして、たとえば、敗戦直後の根本的な変革とかあるいは占領の終えんとかあるいは開放経済への対応とかあるいは高度成長への対処等々において行政改革が行われ、また最近では、放置すれば肥大する官僚機構を抑制するためにいろいろの方式が編み出されてきたのであります。つまり、総定員法の制定と定員の計画的な削減あるいは各省庁の一律的な部局の削減、さらにはスクラップ・アンド・ビルド方式とか、あるいは補助金特殊法人や許認可の整理等々がなされてきたのであります。その点の努力を認めるのにやぶさかではないのでありますが、しかし、必ずしもそれが十分に徹底して行われてきたとは言いがたいのであります。最近の方式はどちらかと言えば、いまある制度運営を前提としました、いわば総量規制的な考え方に立っていたと思うのであります。それでは、いまのような制度運営が温存されてしまう結果になるのではないだろうか。むしろ、時代が変わってきているのでありますから、もっと行政あり方自体を考え直し、行政仕組み自体に反省を加えるべきではないだろうかというような発想の転換が必要とされていると思われるのであります。  そこで、当面の行政改革方向を考えるに当たりましては、すでに、昭和五十四年七月の行政管理基本問題研究会の報告にもありますように一まず行政簡素化効率化が挙げられると思われるのであります。既存行政各部門の見直しを行い、不急不要化したものあるいは重複したものを整理簡素化し、さらに、この行政上の余力を真に重要と思われる行政分野に積極的に生かしていくことが必要であると思われるのであります。これは政府の持てる資源に制約があります以上、施策の内容、主体、手段等々にわたり検討を加え、評価を行い、しかも、それは単に削減のための削減ではなく、それにより真に新たに必要なものに対処していくためであるというふうに言えると思うのであります。  そこで次に、環境の保全であるとか福祉の充実であるとか、あるいはエネルギーの問題であるとか等々恒わたり、変化する時代の要請に対応して新たな行政分野を適切に把握し、それに積極的に対応していくことが必要であります。そのためには、新規制度施策の選択に当たっては優先順位あるいは整合性を明らかにし、かつ、後々の負担についても十分配慮し選択していくことが肝要であるかと思うのであります。  そして次に、このような変化に柔軟に対処するためには、それに見合った弾力的な行政の体制を整備することが必要であるかと思われるのであります。そのために、たとえば総合調整機能の強化であるとか、省庁あり方であるとか、あるいは政府と民間との関係であるとか、あるいは中央地方関係であるとか、こういうようなものを根本的に見直し、あるいは予算制度であるとかあるいは公務員制度であるとか、こういうようなものにわたっても検討を加え、さらに、情報のあり方であるとか国民監視、チェックのシステムを考える、こういうようなことがなされなければならないと思われるのであります。  そこで第三に、このようなこととの関連におきまして、補助金のことについて一言触れたいと思うのであります。  補助金は、今日、国の一般会計の約三分の一を占めており、その大部分は社会保障教育公共事業等々についての補助であります。したがって、その整理は、言うにやすく行うにははなはだかたいものであります。−補助金制度一定行政水準を維持するために必要な制度であるということは認められるにいたしましても、そのあり方につきましては、たとえば昭和五十四年十二月二十九日の閣議決定に見られますような「昭和五十五年度以降の行政改革計画実施について」とか、あるいは財政制度審議会の建議にありますようなその方向に沿って、少なくともその趣旨に沿った検討が必要であるかと思われるのであります。つまり、既存補助金等等については、その意義、効果等について抜本的な見直しを行って、すでに目的を達成した、あるいは社会的、経済的な実情に合わなくなっているもの、あるいは受益者負担など他の措置によるべきものがないかどうか、あるいはすでに地方自治体の事務とした方がよいものがあるのではないか、また、余りに零細にわたりその効果が乏しいものがあるかどうか等々にわたって整理を進める必要があるかと思われるのであります。そして、その他の補助金につきましても極力減額、統合あるいはメニュー化、終わりの時期の設定等にわたって合理化を図ることが肝要であるかと思われるのであります。  また、新規補助金等々につきましても、これを厳しく抑制することとし、どうしても必要なものにつきましては、それに見合った既存補助金等整理するなり、そのような措置が必要かと思うのであります。そして、そういう新規補助金等につきましては、原則として、一定の年月が済みましたらそれで終わるという、終わりの時期を設定するようにする、そして、その時期の到来に当たりましては、補助金などの存続の必要について厳しく見直しを行った上、どうしてもやむを得ないと認められるもののほかは整理するというようなことが必要であるかと思われるのであります。このようなことはすでに政府の方針となっているわけでありますので、要はその実行あるのみであります。  元来、補助金制度は、中央地方関係あるいは官僚機構政党関連利益団体との関係等々にわたり、深くわが国政治行政構造あるいは体質というべきものに組み込まれてしまっているのであります。したがって、この制度改善は、このような体質構造そのものに勇気をふるってメスを入れる決意がない限り実効が乏しいと言わざるを得ないのであります。  最後に、行政改革実現するための道といたしまして、ここで三つのことを指摘いたしたいと思います。第一は、政治リーダーシップであります。第二は、行政各部協力であります。第三は、世論バックアップであります。  まず、政治リーダーシップ。つまり、行政各部にはさまざまな利害関係がかたく結びつき、既得権を擁護しようとしております。そういう現実の中で行政改革を断行するためには、まず何よりも内閣総理大臣、各省庁大臣、さらには政党が、大局的見地に立って強いリーダーシップを発揮することが不可欠であります。このように、政治行政との関係を整序し、政治行政をリードしていく姿勢あるいはその決意がない限り、総論賛成各論反対に終わることは必至であります。  第二は、各省庁協力でありますが、各省庁政府全体の立場に立って、蛮勇をふるって行政改革の課題に取り組むことが期待されるのであります。そして行政改革は、決して中央省庁だけの問題ではなく、地方自治体にも及ぶものであります。そのためには、行政実態に即した、行政各部を説得し得る改革案が作成されなければならないことは言うまでもありません。行政はすべて企業と同じ論理で割り切れるものではありません。と同時に、行政国民血税によって担われておるのであります。との行政特異性に立脚した改革実現こそ国民の待望するものであると思われるのであります。  第三は、行政改革を推進するに当たっての世論バックアップであります。行政改革は、残念ながら、官僚機構自体内部から自発的に自生的に発生することは、望むべくしてなかなか望み得ないのが現実であります。したがって、国民納税者立場に立って行政あり方関心を持ち、それに厳しい監視の眼を離さないことが、行政改革を推進する重要な原動力と思われるのであります。したがって、世論不断批判監視、そのバックアップがあって初めて行政改革が実を結ぶと言わざるを得ないのであります。行政改革が単に財政再建あるいは増税のための方便に使われ、単なる数字合わせに終わることのないことをわれわれは強く望むものであります。行政改革は、まさに政治及び行政体質構造改善にほかならないからであります。  以上をもちまして、私のつたない意見の開陳を終わらせていただきます。(拍手)
  4. 小山長規

    小山委員長 大変ありがとうございました。  次に、暉峻公述人にお願いいたします。
  5. 暉峻淑子

    暉峻公述人 おはようございます。ただいま御紹介いただきました暉峻でございます。  きょうは、私は、生活のやりくりに大変苦しんでいる国民を代表いたしまして、増税を絶対に取りやめてほしいということを二つの観点からお話ししたいと思ってここに伺いました。国会議員の皆様は国民の代表ですから、何よりも国民生活を大切に思っていてくださると私は信じております。それで、どうぞ国民生活はどんなに苦しいかということを御理解いただきたいと思います。  私は、この一年間にほぼ五十団体のグループの人たちと、増税の問題について話し合う機会がございました。新聞の投書欄にも毎日見られますように、国民増税をやめてほしいと一人残らず思っております。一部の財政学者政治家は別かもしれませんが、まじめに汗を流して毎日の暮らしを立てている国民は、増税には絶対に反対なのです。これは、ただ私どもがお金を払いたくないという気持ちだけからではありません。すでにこの五年間に、税金社会保障費用支出額は大体二倍半から三倍にも上がりましたけれども、それに比例して私たち生活は一向によくなっておりません。この上に増税になれば、私ども生活は苦しくなる一方だと思います。大蔵省は、増税をしなければ福祉行政サービスも低下すると言って、私たちをおどかしております。しかし、どうせ増税によって苦しむのだったら、むしろ私どもは、財政支出削減によって苦しんだ方がよっぽどましたと思っております。増税をしても財政削減しても、どうせ私たちは苦しいのです。そしてしわ寄せはどうせ弱いところに来るのです。それならば、増税によっていよいよ放漫財政を引き起こし、坂道を転げ落ちるように増税路線を突っ走るよりは、むしろ私たち増税を拒否して、財政のむだをこの際すっかり洗い落とし、財政構造を変えて健全な姿になった方がまだ苦しみがいがある、つまり後世の役に立つというふうに考えております。  いただいた時間が短うございますので、以下、資料を差し上げてあると思いますので、この資料によってお話をしたいと思いますので、ぜひごらんくださるようにお願いいたします。  まず、一ページ目の第一表を見てください。これは石油ショック、オイルショックの前の昭和四十八年を一〇〇として——このグラフ実質動きです。冬日の貨幣額ではありません。これを見るとおわかりになりますように、大体、実質経済成長率は、四十八年から五十四年までの間に一二五という動きを示しておりますけれども国民消費支出の方は一〇九くらいにしか上がっておりません。恐らくこれは、企業の上げた利益に対して、労働者の方に配られた、つまり賃金というのが大変低かったということだと思います。「エコノミスト」の述べておりますところでは、千五百五十七社、証券一部、二部上場会社経常利益率というのは、総資本に対しての経常利益率ですが、大体四・〇三になっておりまして、史上二番目と言われるような利益を上げているらしいんです。それに比べますと、国民暮らしの方はさっばりよくなってないということです。これを見てくださるとわかりますように、消費支出は一〇九ぐらいになっておりますけれども、その細い線で書いてあります食料費住居費被服費教育費というのは、実質で全部低下しております。これは生活の本当に根本になる最も必需的なものでして、こういうものが四十八年水準にさえ復帰し切れずに実質消費の上で低下しているということは、大変国民生活が苦しくなっているということです。  それでは、なぜ一〇九に上がったかといいますと、ここには、余り線がたくさんになるので煩わしいと思って書きませんでしたが、交通、通信、光熱水医療費自動車関係費等が逆に上がっておりますので、平均としては一〇九ぐらいになっているというところでございます。  それでは、なぜこんなふうに消費伸びないかということを、第二表を見ていただきたいのです。これは消費支出に対して非消費支出伸びが大変伸びているというグラフです。実収入が白い棒線でして、非消費支出——消費支出というのは言うまでもなく税金及び社会保険料ですが、この非消費支出伸びが非常に大きいわけです。それで、非消費支出が実収入に対してどういう比率でふえてきたかというふうにいいますと、これがその黒い折れ線グラフで、ものすごい伸びで実収入に対して非消費支出の分の、つまり税金社会保障費用伸びていることが、これでおわかりかと思います。国民生活白書にも、なぜ国民消費伸びないかというと、実収入から税金社会保険料を引いた、つまり可処分所得、これがなかなか伸びないので国民消費伸びないのだというふうな解説をしております。  続いて第三表を見ていただきたいのですが、これは国民がいまみんな中流になったというふうに、中流意識の幻想が振りまかれておりますけれども、実際にこれを見ますと、全体を一〇〇%と考えますと、この中でごらんくださればおわかりになりますように、年間収入が二百八十万以下の世帯がすでに三〇%もあります。三百二十万以下の世帯は四二・六八もございます。それから三百六十万以下の世帯が五二%もあるわけです。つまり、国民は決して中流ではなくて、半分以上の人人が年収三百六十万以下のところにあるということが、これでおわかりくださると思います。  これだけ格差がある上に、その下の第四表を見てください。これは住友商事が調査しておりますもので、これは世界全体との比較なんですが、ここではアメリカと日本の物価、サービス料だけの比較を出しました。これを見ますと、いろいろな品目、日用品の物価が、日本を真ん中に一〇〇として考えますと、アメリカの方がはるかに低いということがおわかりになると思います。  それで大蔵省は、貨幣の購買力、つまり、同じ金額でどれくらいの日用品、生活必需品が買えるかということをいつも除外して、たとえば年金の比較なんかでも、日本は厚生年金の平均がほぼ八万二千円です、アメリカは八万三千円、イギリスは五万五千円というふうに言いますが、こういう物価の比較、つまり日用品を購買し得る貨幣の力で考えますと、この年金額を修正してみますと、アメリカの八万三千円は実に十八万円になります。イギリスの五万五千円の年金は九万三千円になります。スウェーデンの七万六千円は十二万八千円になります。フランスの五万一千円は八万円ほどになります。こういうふうに税をかけるときに、貨幣の購買力を抜きにして、ただ為替レートだけで日本の国民負担率は低いというふうに言っていただくと、国民は、これは大変実態から離れているものですから納得できないわけでございます。  次の第五表をごらんください。これは東京都区部の五十五年——これは総理府のものの家計調査を東京都が委任を受けてやっておるものなんですが、計算が東京都区部の方がうんと早く出ますので、それを使いました。いま五十五年十月まで出ておりますが、これは消費者物価指数の総合指数がほぼ一四〇になっているのに比べて、五十五年の四月から電気、ガスがほぼ五割上がりました。この光熱費の指数がどんなに飛び抜けて上がって私どもを苦しめているかということを、これでごらんいただきたいと思うのです。  それで、これは光熱費ですが、その下の第六表を見ていただくとわかりますように、これは公共料金全体が、低所得層と高所得層でどれだけ負担率が違うかということをあらわしたものでございます。それで、低所得層の公共料金の負担率は消費支出の一九・七八を占めております。実額で言いますと三万九千九百三十五円です。高所得層は実額では四万二千八百七十八円なんですが、負担率はわずか九・七八%にすぎません。この内訳を見ますと、一々読むのはやめますが、低所得層が米、電気代、ガス代、水道料、診療代、入浴料、電話、電報料等で負担をしている負担に対して、高所得層の方は大体全体にその半分しか負担をしていないわけですね。これは低所得層が、公共料金が高くなるとどんなに生活が苦しいかということを示しているわけでございます。  それから、次のページを見てください。これは不動産研究所が全国市街地土地価格指数というのを発表しておりますが、昭和三十年を一〇〇にしますと、木造建築費は四五六・〇です。それに比べて消費者物価指数は八一八・二です。次を見てください。宅地の方は六二〇四という指数を示しております。これでは、公共料金はもちろんですが、家を建てるときに低所得層がどんなに苦労するか、家を持つことは不可能であるということが、これによっておわかりになると思うのですね。  それで、国民暮らしはよくなった、よくなったと言われますけれども、大平総理が委託しました政策研究会の家庭基盤充実研究グループの出しました報告を見ますと、表向き、貨幣額でだけは家計は伸びておりますけれども、いわば家庭基盤、生活基盤というふうに言われております住宅とか環境、コミュニティー、物価、雇用、福祉国民の財産の形成、それからインフレによる生活計画の破壊、こういう、生活がその上に乗っかっている土台については、むしろ経済成長に反比例して崩れていっているわけです。ということは、国民暮らしはプラス・マイナス・ゼロで、さっぱりよくなっていないということなんですね。  第八表を見てください。これは持ち家を持っている人の可処分所得、さっき言いました、実収入から税金社会保険料を引いたものですが、これはほぼ三十一万円です。ところが、給与住宅に住んでいる人は二十九万円、これはわりあいいい企業人たちが給与住宅に住んでいるからです。その次、民営借家、公営借家に住んでいる人たちの可処分所得は七八・二、七七・二というふうに、持ち家を持っている人の大体七、八割、借り間に入っている人は七割という数字です。これを見ても、貧乏な人は借家、借り間に入っており、お金持ちの人は持ち家とか給与住宅に入っている、こういう上下の格差がよくおわかりになると思います。  それから、第九表を見てください。これは出典を示すのを忘れましたが、国民生活実態調査の五十四年版です。これは市街地に住む人々なんですが、上に大きな数字でI、II、III、IVと書いてありますのは、第一分位、第二分位、第三分位、第四分位でして、第一分位が一番貧乏で、第四分位が一番お金持ちなわけです。第一分位の、持ち家二戸を持っている人は一二・一%にすぎないし、第一分位は、モルタル木賃アパートには五〇・四%住んでおります。それから給与住宅には三・三、公団、公営には三二・三、住んでいるということです。それに比べて、中間層を飛ばしまして、第四分位の比較的豊かな人は、四五・一%が持ち家一戸を持っております。これは第一分位の人がたった一二・一%しか持ち家を持っていないというのに比べて大変対照的でございます。給与住宅にも五二・二、第四分位の人は入っております。公団、公営には一四・〇入っているということになります。  それから次、第十表を見てください。これをごらんくださるとおわかりになりますように、法人経営者世帯を一〇〇としますと職員世帯は八〇・五、常用労務者世帯は六三・二、臨時、日雇い労務者世帯はわずか四三・一という、これは消費支出の格差でございます。実額で言いますと、法人経営者世帯は三十万四千二百五十五円、職員世帯は二十四万四千八百四十六円、常用労務者は十九万二千三百七十五円、臨時、日雇いは十三万千七十円、こういう数字で、中流階級に十人中九人がいるというのがいかに実態と離れた幻想であるかということがおわかりになると思います。  その次、これは賃金センサスから引っ張ったものですけれども、十一表を見てください。これは零細企業、中小企業の従業員、つまり、企業規模十人から九十九人までの企業に勤めている人々の賃金を棒グラフの斜線であらわし、千人以上の大企業に勤めている人の賃金を真っ白の棒線であらわしてあります。そうしますとこの賃金格差は、中小企業の人の十九万二千二百円に対して大企業は二十八万千四百円。それから賞与の格差を見ていただきたいと思うのです。中小企業、小規模企業に勤めている人はわずか五十二万千九百冊、これは年間を通しての賞与でございます。それに比べて大企業の人の賞与は年間を通じて百三十五万三千五百円です。これは製造業男子労働者の五十歳から五十四歳の年齢の人の全平均をあらわしたものでございます。  これによって私がいま申し上げましたことは、経済が成長した成長したと言いますけれども国民暮らしは、生活基盤が反比例して崩されていっているということが第一、それから税金社会保障費用がここ五年間急速に大きくなったために消費支出伸び切れていないということが第二、それから、国民は中流ではなくて、これだけ大きな階層格差があるということです。それに、もしいま大蔵省政府が考えている消費税がかかったら一体どういうことになる、でしょうか。  第三枚目を見てください。この三枚目は、大蔵省がこういう試算すらしたことがないというふうに言うものですから、家計支出の中から現在どれだけの間接税がかかっているかということを私の方で試算したものです。これは内閣官房編集の現行法令輯覧と税務研究会の税法便覧、これを参考にして一々はじき出しました。これは家計支出の中から拾える費目、確実に計算できる費目だけを計算いたしました。たとえば外食費のように三千円を超えると税金がかかるという場合は、家計調査では幾らの外食費であったか、一人当たり幾らのものを食べたがが出できませんので、そういうものは一切除いてあります。  最後の小計のところを見ていただくと、これは、その現在払っている間接税が大体わかったものだけ、これは全体の二分の一ほどですが、四千二百七十円です。これに所得税、他の税金社会保障費用を加えますと、合計、実に四万五千二百十三円を、私たちは毎月払っているわけなんです。  最後のページを見ていただきたいのです。これは家計支出の中から拾えた費目にはマル印をつけ、拾えなかった費目にはバツ印をつけました。このバツ印のものを個人の家計簿、つまり生協でつけている家計簿や勤労者がつけている総評の家計簿等から拾いますと、これは拾えた間接税のちょうど二倍になります。そうしますと、直接税と間接税は、現在同じ金額をわれわれは払っているわけです。間接税の方は御承知のとおり低所得層にもかかってきますし、ここでマル印をつけた費目は、ぜいたくな階級が使っている費目ではないのです。低所得層の家計支出にちゃんと出てくる費目なんです。これを見てくださっても、どんなに今度の消費税が低所得層を苦しめるものであるかということがわかると思います。  私は大蔵省に行きましてこういうものを試算しているかというふうに聞きましたら、全然試算してないと言っていました。ただ、食費は大体、全体の消費支出のウエートから見てこれぐらいだから、まあ食費にはかけるのはやめようかというような大まかな、ただ目の子勘定でやっているだけだということです。ところが、食費にかけないと言っても、びん詰めとかパック詰めとか、いまは食べ物だけが、たとえばどろのついた大根だけがマーケットに並ぶということはありませんので、輸送費等も含めて間接税が低所得層にかかってくることは明白なんです。  私はこういう実際の資料をここにお出ししまして、これはまだお出ししたい資料の本当に十分の一ぐらいにすぎないのですが、これを科学的に見てくださって、とんだ政党もどんなイデオロギーの人も、国民生活を本当に大事に思ってくださるならば、消費税をかけてはいけないということがこれでおわかりくださったと思います。  それから、最後に一言、防衛費というのは福祉と大体反比例するのです。防衛費に今度大分お出しになるようですけれども、私が一番心配なのは、いまシビリアンコントロールのことが非常に言われていて、だれそれがこう言ったとか法律に抵触するということが言われて、それも大事かもしれませんが、私は、防衛費がふえることは国の予算に対するシビリアンコントロールがなくなるということだと思います。といいますのは、かつても、沖繩の基地の撤去費とか戦闘機を買った費用とか、そういうものについて国会が、その実際の費用の提出を大蔵省に迫りましたが、大蔵省はこれを拒絶いたしました。そういういままでの例を見てもわかるように、防衛費がふえればふえるほど、シビリアンコントロールは予算の面で届かなくなるということです。この重大なことにぜひ着目してほしい。  それから、福祉というのは国民全体が望んでいるもので、福祉をふやしますと、これは国民暮らしが大体同等になりまして、国民の合意を得る上に大変いい状態になります。お金持ちと貧乏人とが極端に開きますと、あることを国民に相談しましても、お金持ちの人と貧乏の人は意見が反対になるに違いないのです。けれども暮らし一定になるとコンセンサスは大変得やすくなる。そういう意味で、福祉ということは、民主的な政治ということにはコンセンサスを得るという意味で欠かすことのできないことです。けれども、防衛費というのは、いま言ったようにシビリアンコントロールも得られなくなるし、もともと財政の民主化が一番おくれているのに、その上になお非民主的な要素をこれ以上国の予算に持ち込まれては、私どもはたまらない。だから、福祉予算をふやして本当に民主的な国民生活というものを保障して、すべての問題について国民の合意が得やすいように、そして民主的な社会実現してくださるように、これが私ども国民暮らしを代表するものの意見でございます。  以上で終わります。(拍手)
  6. 小山長規

    小山委員長 どうもありがとうございました。  次に、高橋公述人にお願いをいたします。
  7. 高橋正男

    高橋公述人 おはようございます。  政府の五十六年度予算案は、かつてない大衆増税福祉停滞型予算であり、われわれが要求してきました政策制度にほとんどこたえていませんので、反対の立場意見を述べます。  われわれは大衆増税によらない財政再建、雇用安定と物価抑制による国民生活の安定を図る観点から、物価対策、所得税減税、行財政改革の推進等に焦点をしぼってこれから主張をいたしたいと思います。  まず第一に、政府予算案は、経済政策の一手段であるべき財政再建が自己目的化し、福祉社会保障など国民生活を犠牲にした予算編成となっており、勤労者、国民の期待とに大きなギャップが生じていることです。  五十六年度予算の基本課題は、わが国経済を真に安定成長軌道に乗せ、雇用と物価安定など国民生活の維持向上を図ることです。したがって、五十六年度経済は内需拡大を中心とした成長率目標を五・五%以上とし、消費者物価上昇率を五%以下に設定すべきだと考えるわけであります。  国債の減額については、赤字公債の解消を昭和六十年前半ぐらいまでの期間に行う計画とし、五十六年度は国民生活に高負担を強いる二兆円減額措置は避けるべきである。  大衆増税を行う前に、行財政改革を断行し、不公正税制を是正するとともに、民間の活力を伸ばし安定成長を維持することにより、税の自然増収を図るなどによって財政再建を達成すべきだと思います。  行財政改革を怠り、安易な大衆増税によって切り抜けようとする態度は、国民的に許されるものではありません。  われわれはナショナルミニマム年金構想を進めるためにも、気の毒な人々の老齢福祉年金並びに障害福祉年金の引き上げを図るなど、福祉社会保障の充実、福祉の計画的な向上を図るよう求めるものであります。  第二に、物価対策の充実について述べます。  今年一月の東京都の消費者物価上昇率は、前年比で六・八%に達しました、われわれの試算によれば、もしこの一月の全国の消費者物価指数が東京都のそれと同じ水準に達し、三月まで横ばいで推移したと仮定いたしますと、五十五年度平均消費者物価上昇率は七。七%になります。政府の計画が六・四%でありましたけれども、それを昨年の十二月に改定したわけでありますが、それでも七%目標、これを大幅に上回り、八%に迫ることは必至の情勢であります。実質賃金は昨年の二月よりマイナスを記録し、われわれ働く者の生活はかつてない深刻な事態に直面をしています。したがって、われわれは政府に対し、次の物価対策を講ずるよう強く求めるものであります。  一つは、自、社、公、民四党で合意し、五十五年度予算措置しながら、五百億あるわけですが、今日三十七億程度しか使途されていない物価調整財源を、生鮮食料品の価格安定策、さらには豪雪地帯の物価安定施策等に有効に活用していただきたいことであります。  二つ目は、すでに予定されている一連の公共料金の値上げについて、政府国民生活に与える影響の大きいことを考慮し、極力値上げ幅を圧縮すること、あるいは実施時期の繰り延べなどの措置を講じていただきたい。  三つ目は、円高が続いているわけでありまして、輸入品の国内における価格動向調査を定期的に、実施し、その結果を公表するとともに必要に応じ適切な措置を講じていただきたいということであります。  四つ目は、土地、住宅対策を抜本的に改定し、潜在需要の顕在化の政策を促進していただきたい。  五つ目は、物価安定政策会議の充実を図って、この政策会議と連携をとる、新たに物価を監視するため、労使なり学識経験者で構成する中央物価監視委員会、仮称でありますが、それを設置し、地方のモニター制度を改組いたしまして、所要の査察調査権を持つ地方物価監視委員制度の発展強化を図っていただきたいと思うわけであります。  第三は、所得税減税の実施について述べます。  すでに指摘したように、消費者物価上昇率が政府見通しより大幅に上昇したため、昨年一年間の実質賃金はマイナス〇・九であります。戦後初めての賃金目減りとなり、このままでは五十五年度平均の実質賃金も大きくマイナスとなることは確実であります。  われわれは、八〇年賃金闘争において、国民経済との整合性を考慮し、きわめて控え目な要求を行いました。物価安定と雇用確保を優先させ、経済の安定化を一層確実なものにするための観点から行動し、生産性の向上に努力してきた結果が、第二石油危機の影響を軽微なものにとどめたのであります。にもかかわらず、政府の失政と、追い打ちをかけるような大衆増税によって、労働者国民生活は一層脅かされようとしているわけであります。  かかる状況のもとでは、政府は所得税減税を直ちに実施すべきであります。周知のとおり、所得税の課税最低限が五十二年の税制改正以来据え置かれているため、実質負担が増大しているからであります。  われわれの試算によれば、年収三百五十万円の世帯、夫婦子供二人でありますが、住民税を含めた税額は、五十五年度で一三%上昇した反面、税引き後の手取り賃金はわずか六・二%しかふえていないということであります。いわば賃金所得の伸びよりも税、社会保険料負担の方が大きくなっているのであります。五十六年度についても、われわれが一〇%の賃上げを獲得した場合でも、税、社会保険料負担は一七・四%増となるのに対し、手取り賃金は九・一%にとどまる計算となり、このままでいけば一層実質増税は強いられることになるわけであります。  この実質増税により、所得税の自然増収分だけで自然増収全体の六一・七%を占めるとともに、租税負担率においては二四・二%と押し上げ、政府の目標より高いものとなっています。われわれは所得税の課税最低限度を直ちに引き上げるよう強く求めるものであります。  加えて、配当所得等に対する優遇措置、税の捕捉率の改善、不公正税制の是正、三K赤字解消のための政策強化を強く求めます。  第四に、行政改革の断行について述べます。  われわれは再三にわたって、政府に対し行政改革の断行を図るよう要求してきました。われわれの主張は、思い切った行政改革によって行政簡素化効率化を推進し、国民に対する税の増徴を行わずに財政再建を軌道に乗せることを基本とするものであります。  今日の財政欠陥の改善が重要な国民的課題であることは言うまでもないが、高度成長時代を通じて肥大化し、むだを蓄積してきた行財政の全般にメスを入れることをあらゆる措置に優先させなければなりません。出るを制する努力を行うことなく、入るをはかろうとする安易な増税路線を容認することはできないからであり、これが国民の声でもあります。  政府予算伸び率を一けた台にとどめたと言うが、財政欠陥を改善するためにいかなる努力をしたでしょうか。予算伸びの大宗をなす当然増経費にはほとんどメスが入っておらず、伸び率をいかに抑えても、行政のむだや不公平な税財政仕組みなどをそっくりそのまま温存されているのでは、何ら財政欠陥の問題解決にはならないのであります。その意味でも、行財政改革の断行はもはやゆるがせにできない政治的課題であり、国民的課題であって、五十六年度予算国民の声を無視したもので、これにこたえていないと言わざるを得ません。行政改革は歴代の内閣が重要政策課題として掲げてきましたが、いつも政府、官僚の抵抗を排し切れず、かけ声倒れに終わってきたもので、まさに政府責任は重大であると思うわけであります。  石油ショック後の厳しいエネルギー制約下で、わが国のセキュリティーを確保するための効率的な財政あり方などを検討することは、今日的に大きな意義を有することではありますが、行政がそのときどきにおいて簡素で効率的なあり方を求められていることを考えれば、決してこれも新しい論議ではないのであります。  行政の受け持つべき分野、官業と民業の役割り分担、国と地方との関係についても、その方向はすでに明瞭に打ち出されており、何をなすべきかについて改めて臨調の意を受けなければならないということではないはずだと思うわけであります。  つまり、今日残されている課題は、改革を阻んできた要因を解明して、それを取り除く手だてを明らかにすることと、言い尽くされてきた課題を具体的に実行するための方策を示して、一歩の後退も許さない政府責任を明瞭にすることなのです。そのためには、行政改革を阻んでいる予算編成のあり方や、中央集権的財政運営あり方などに鋭いメスを入れていくこと、わが国の民主主義を行政面からより揺るぎないものにしていくため、行政に対する監査、監督の強化、情報の完全なる公開の確保などを図るべきであり、これこそが第二次臨調の国民的意義として積極的にとらえなければならないと思うわけであります。  行政改革に対する国民の声はかつてない高まりとなっています。この国民の声にこたえるには国会議員から範を示すべきであり、議員の定数是正とあわせ、削減することをあえて提言するものであります。  最後に、中高年雇用対策の強化等について述べます。  高齢化社会の到来はきわめて重要な政治課題であって、活力のある社会実現するには、国民の英知を結集し、完全展用の達成に向け、今日より全力を挙げてその対策を強化しなければなりません。  そこで、五十六年度予算において地方雇用開発委員会の委託研究調査費を増額し、成果を上げるよう指導強化を図るとともに、われわれが提唱している雇用創出機構を設置するようその対策を講じていただきたいわけであります。  次に、六十歳定年法案の早期制定、及び働く意思と能力のある高齢者に六十五歳まで雇用を保障するために、各種給付金の改善、職場環境改善施策に対する優遇措置、高齢者雇用率の遵守、高齢者雇用保障臨時措置法の制定を図ることが必要だと痛感するわけであります。  最後に、障害者雇用率についてさらに引き上げ、環境改善、職業訓練システムの充実など、雇用拡大に一層の対策を強化していただきたいということを申し上げまして、私の意見を終わります。(拍手)
  8. 小山長規

    小山委員長 どうもありがとうございました。     —————————————
  9. 小山長規

    小山委員長 これより各公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下創平君。
  10. 宮下創平

    宮下委員 三公述人のお話を承りましたが、時間の関係がございますので、各公述人に対して一間程度御質問申し上げたいと存じます。  まず、渡辺公述人でございますが、行政改革についていろいろ背景、それから基本的な考え方、あるいは補助金行政改革の問題点等、非常に網羅的に、組織的にお述べいただいて、大変参考になりました。  私も行政改革というのは非常にむずかしいことだと思うのですが、特に昭和四十年ごろから、総定員法というものに基づきまして定員削減計画をやってまいりました。または、一省庁一局削減というようなことでスクラップ・アンド・ビルドをやってきた。この定員削減と一省庁一局削減、それから、先生のおっしゃられた総量規制的な行政改革が比較的成功してきたと思うのですね。今日わが国が直面している問題は、このような方法、従来の手法で乗り切れるかどうかという御指摘、これはごもっともだと思うのです。いまこそ行政実態を問う行政改革あり方が問題である。さらに突き進んで言えば、補助金その他を含めて政策的なあり方が問われているんじゃないか、こう思うのです。  そういう意味で先生の御指摘もごもっともでございますが、高度成長期には税の自然増収がございましたので、減税をやってまた歳出増加もやったという、両方できたよき時代であったのですが、いまやそういうことが不可能な、安定成長といいますか、低成長時代になったわけでございまして、大胆な行政改革の発想の転換が私は必要じゃないか、こう思うわけです。  しかし同時に、私は考えてみると、実際に行政改革をやる省の方々、まあ役人に対する不信感もございますけれども、それぞれの行政がそれぞれの目的を持っておってやっておるのですから、それで、そういうものをどうしても改革しようとすれば、一省庁一局削減とかあるいは定員削減という総量的な、形式的なやり方が最も受け入れやすい現実的なやり方であったことも事実だと思うのですね。そういう点について、これから第二次臨調が発足いたしますが、さらに御意見を承ることができれば幸いだと思います。  それから、国と地方関係でございますが、私は、地方自治体行政改革もきわめて喫緊な課題だと思うのです。財源的な、地方財源の付与とか、いろいろそういう角度から行われておりますが、現実に、国家公務員の場合は定員削減計画によってずっと横ばいで来ましたけれども、この間、地方公務員は数十万人の増員が行われております。もちろん、行政の性質が違いますから一概に論ずることはできませんが、そういう点、中央地方を通ずる行政改革あり方をもっともっと突っ込んで考えなければならないと思うのですが、こういう点に対する所論をお伺いしたいと思います。  それからもう一点、政治リーダーシップということが言われておりますけれども、第二次臨調がスタートしました。これにいかに取り組んでいくかというのが政府あるいは政党の役目でございます。そういう点の御指摘もございましたけれども、実際にこれをやるのはやはり行政官庁、政府リーダーシップのもとにおいて行政官庁がやるわけですから、ただ政府リーダーシップがあればいいというだけにとどまらない問題もございますので、そういう点もひとつ現実的な対応が必要じゃないか、こう思います。渡辺先生のは以上でございます。  それから、暉峻公述人の所論に対して、細かな統計的なデータをいろいろ駆使されまして、国民生活がいかに圧迫されているか、したがって増税は反対だという所論を展開されておるわけでございますが、私は暉峻公述人に対して特に申し上げたい点は、増税をやるよりも財政支出削減で苦しんだ方がましだというようなお言葉がございましたけれども、私は、税の問題を考える場合にはやはり歳出の方を込みで考えなくてはいけないと思うのですね。暉峻公述人最後に、防衛費反対あるいは社会福祉予算をふやせということをおっしゃっておられますが、負担サービス関係をいまほど、問い直さなければならない時期はないと思うのですね。  私から申し上げるまでもなく、財政の機能の中には資源配分機能と所得再配分機能、それから景気調整機能という三つが大別してあると思うのですが、私は、その歳入面を通じて生活を擁護すると同時に、歳出面における所得の再配分機能、これは非常に重視をして、きめ細かく税収と歳出、これを比較検討して、どちらを選択するかという賢明な選択をしなければならないと思うのです。税の問題のときには増税反対、歳出をふやせ、こう言いますが、また、歳出の方になりますと歳出カット反対、こういうことではなかなか収支が合わなくなるおそれがございます。高度成長時代は、先ほど申し上げましたように、それが財源的に可能であったわけでありますけれども、いまやそういう時代でなくなっておりますから、ぜひともそういう全体的な視野で公正に見ていただきたい、こう思うのですが、それに対する所見をお伺いしたい、こう思うのです。  それから、高橋公述人に対してでございますが、いろいろ項目的に触れられておりますけれども、一点だけ財政再建問題についてお伺いしておきたいのです。  先ほどの公述人のお言葉の中に、二兆円減額は避けるべきではなかったかという論旨の御説明がございましたが、私ども財政再建というのはいま最大の政治課題と考えておりますけれども、これは本当に、単に財政エゴとかそういうことだけでなしに、将来あるいは中長期的に見て、国民生活あるいは国民福祉という観点から、この財政再建が必要だということを訴えておるわけでございまして、二兆円減額を避けて、そして歳出の膨張を来すということになれば、ますます財政の膨張、硬直化を来すということにもなります。それから、公債の累増はインフレを招く、ということは大衆にはね返ってくる。それからまた、財政の弾力化を回復しておかなければいかぬ。景気調整機能ということを先ほど申し上げましたが、これから多難な経済を乗り切るために、主導権を握るために、財政の弾力化を図るあるいは硬直化防止ということが必要だと思うのです。そういう点の認識を正確に国民の皆さんに持っていただきたいと思うのですが、安易に二兆円減額は避けるべきであったという所見に対しては、私は大いに異議がございますので、この点について再度御意見をお伺いしたい、このように思います。  以上でございます。
  11. 渡辺保男

    渡辺公述人 私に対する御質問は三点あったかと思いますが、順序を少し不同にさせていただきまして、お話しさせていただきたいと思います。  最後の点から入らしていただきたいのでありますが、行政改革実現するためには政治リーダーシップが不可欠であるということをお話しいたしましたが、政治リーダーシップだけではできないのでございまして、あと二点をお話ししたわけでございまして、つまり行政各部がそれに協力するということと、世論バックアップということであります。したがいまして、この三つが一緒になって連動して動かないといけないのではないか、したがいまして、どれか一つだけではなかなか実行できないのではないか、こういうふうに思っております。  それからその次の、行政改革中央地方を通じて行われるべきではないか、こういうことでありますが、これにつきましても全くお説のとおりでありまして、そのとおりであります。  今日、国の行政というのは大体三つのルートを通じて地域住民に及んでまいります。第一は、国が国の出先機関を通じて仕事をしていく。もう一点は、国が公社、公団、事業団等々特殊法人などを通じて行っていく。第三は、地方自治体を通じて行っていく。こういう三つのルートがあるかと思うのであります。  いずれの場合におきましても、地方自治体が、法令に根拠あるなしにかかわらず、地域住民と国との間にいろいろのことをしておるわけであります。また、地方自治体がみずから仕事をいたします場合でも、それにつきましては、法令とかあるいは補助金とかいろいろな国からの援助を受けて、あるいは指導を受けてしているわけであります。したがいまし三行政改革をする場合には、行政を受ける地域住民から発想して考えていく、こういう発想も必要かと思うのであります。  国民は同時に地域住民でもあります。そこで、国の中央政府だけの行政改革ということではできないのでありまして、やはり納税者といたしましては、地方自治体がそういうような政治構造行政構造の中で、そのあり方について地域住民関心を持つことも必要であり、また、地方自治体がこの期待にこたえるということも必要であるかと思うのであります。そういうわけで、私は、御説のとおり、行政改革中央地方を通じて行われなければならないものであるというふうに思っております。  最初の第一点の、行政改革を実効あらしめる現実的な方法は何かというお話でございますが、実はそれがわかれば大変便利なのでありますが、これまで、お話にもございましたように、また私も述べましたようないろいろな手法で、行政改革をしてきたわけであります。やはりまた、それがそれなりの意味を持つ現実性というのがあったわけであります。しかし、それだけでは、このいろいろ変化する時代には流動的に対応できなくなっているんではないかというふうに私は思います。  そこで、行政実態に即しました方法というものがこれから研究され、開発されていかなければならないと思うわけであります。と同時に、私は、やはり中央地方あるいは政府と民間等々いろいろな関係、そういう仕組み自体をここでもう少し根本的に考え直して、そういう大きな枠の中で再構成をしていくという発想がいま非常に必要なのではないかというふうに思っております。  御質問に十分お答えできないわけでございますが、以上で終わらしていただきます。
  12. 暉峻淑子

    暉峻公述人 私への質問は、質問というより御叱責だったように思うのですけれども、私が、税は余り取ってくれるな、そして、だけれどももらいたいものはもらいたい、そういりのじゃだめだというのが第一番のおしかりで、第二番目が、財政というのは所得の再分配の機能を持っているんだから、納めるのがいやだというのではしようがないよというような、そういうおしかりだったと思います。  でも、私は、二つともそうじゃないと思うのですね。国民は払うのはいやで、もらうものはたくさんもらいたいという、そういう時代はもう過ぎたと思います。なぜそういうことを国民がかつては思っていたかというと、それこそ、それは大蔵省政府がそういう幻想を国民に振りまいたのですね。五十一年から五十三年までの国債を出すときに、これで景気は浮揚できると言って、後のしりぬぐいをわれわれの方に増税という形で持ってくるというような話は、そういうときは全然なかった。ただ、国債を発行すれば景気が上向いて、自然増でそれはいずれ帳消しになるというふうに、私たちは聞かされていたのですね。ですから、そういうことが私たちに、いま言われたように、何かお金のなる木がそこらに立っていて、黙っていれば幾らでもお金は降ってきて、福祉はどんどん幾らでもやってもらえるという、そういう誤った情緒を国民に植えつけたと思うのです。ですから、それはやはり大蔵省政府がそういうものを、まるで打ち出の小づちのようなもので財政運営できるというふうに、国債を出すときにしきりにそういうことを振りまかれたのが大変いけなかった。  それからもう一つは、税収の自然増というのがあります。今度も自然増があったのに、また何か消費税を大きくするとかあるいは電電公社とか競馬会から納付金を納めさせるというようなことで、税金がたくさんまたよけいなところから入るということがわかったら、財政のカットの速度が大変鈍りましたね。ああいうのは大変いけないので、私たちがなぜ納めたくないかというと、納めても、これが健全な財政構造を阻害しないのなら納めてもいいのです。国民生活の方に返ってくるのならいいのです。でも、いまのままだったら、砂糖に群がるアリのように、ふえた収入に対してはわあっとみんながもぎり取りに来るだけのことであって、これは国民生活をよくするということに来ないということを私たちは知っているからです。ですから、まずそういう構造を正してください。そうしたら、私たちは、貧しい人や不幸な人がいて、そのために税金を納めるということは少しもいやではありません。税金を納めるときに、不幸な人が私たちの周りにいればわれわれも幸せになれないということは、私たちはよくわかっています。国民は、働いている人間は、みんなそれを知っています。ですから、福祉教育のためにお金を納めるということは喜びであって、決していやではないのです。ただいやなのは、納めて財政の枠が広がると、利権に群がるアリのように、何だか私たち関係のないところにお金が流れていく。それがいやだから、私たちは、それが改まるまでは増税はいやだということを言っているわけです。  それから、不公平な税の取り方、不公平な税の使い方、これを本当に改めてください。そうすれば、税金に対する国民考え方は、いま言われたように、無責任にただもらうものだけはいっぱいもらいたい、そういうことは言わなくなると思います。  以上です。
  13. 高橋正男

    高橋公述人 財政再建については、われわれも財政再建をやらなければならない、そういう考え方は先生方とも同じだと思う。  問題なのは、その再建の方法なわけであります。二兆円減額というのは、これは財政法でも決まっているわけではないし、国会で決議されているわけでもないと思うのです。方法は緩やかに解消するようにやっていったらどうなのか。したがって、何といっても今年度の場合は一兆円程度の減額をやり、そうして昭和六十年度に入っても、長期にやったらどうなのか。まず日本の経済安定成長路線に乗せて自然増収を図るべきじゃないのか、われわれはこういう考え方に基づくものであるわけです。  したがって、財政再建というのは、本当に再建する前にいろいろなことをやっていただきたい。一つは、先ほども申し上げましたように、行財政改革をやっていただきたいし、不公平税制の是正もやっていただきたい。そうして、膨大に抱えている国債についても国民負担していかなければならないわけでありますから、やはり国民に説得性のある改革をやっていただきたい。決してわれわれも、いま今日、国民も、このような赤字公債を膨大に抱えているわけでありますから、これに対して再建しないという立場でもありません。われわれも再建をしていきたいというふうに考えていることを申し上げておきます。
  14. 小山長規

    小山委員長 次に、阿部助哉君。
  15. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 社会党の阿部助哉でございます。皆さん、大変御苦労さまでございます。  まず、暉峻先生にお伺いをしたいのでありますが、大変に私たちも参考になります資料をおつくりいただき、御説明いただきまして、大変感謝をいたしております。  いま政府は、九日に景気対策の閣僚会議か何か開いて、何かわかるのは公定歩合の引き下げというようなことだけがわかる、あとはさっぱりわからぬのであります。ところが、いま先生のお話にございましたように、大企業の方は、一番大きな会社で一兆八千億も借入金がありますから、公定歩合を仮に一%下げると百八十億も負担が楽になる。そうすれば、二%ぐらいの法人税が上がってみたって九十億もうかるという計算になってしまう。ところが、いま先生のお話のように、勤労者の方の生活は、税金だ、社会保障の掛金だということで大変重い。ただその不公平だけじゃなしに、勤労者の中にもまた、一番所得の低い層が一番負担が重いという資料を見せていただきました。いまこういう段階で政府は景気対策で閣僚会議を開いておるが、そこに一番こうしてもらいたいという二つ三つ、順番で、先生はどのような問題からまず政府は手をつけるべきであるとお考えになっておられるか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  16. 暉峻淑子

    暉峻公述人 大変むずかしい問題だったと思いますが、私は結論だけを申しますと、景気を上向かせるということについて、いままでの政府のやり方で、やることはもう手をみんな尽くしたのじゃないかというふうに思います。  それでは何が残っているかというと、それは土地問題です。土地問題に対して、いまのように野放しに地価を上げることをしないで、これにある規制を加えて、土地が産業のためにも国民の住宅のためにもどんどん出てくるようになれば、経済の成長の仕方はまた違ったパターンをたどると思います。  土地問題というのは何がタブーなんでしょうか。国民は本当に理解できない。勤労者が何十年も何十年もかかってためたお金を、わずか、本当に畳何畳の部屋ぐらいで消されてしまうのですね。こういう不公平な状態に対して、これは革新政党の方も余りきちんとしたことを言ってくださらないと私は思うのです。土地問題です。公共事業費だって土地問題にどれぐらい食われているかということで、税金をむなしくそこに流し込んでいるのですね。そして貨幣はそこに滞留してしまっているわけですし、経済の循環過程に対してもずいぶん障害になっていると思います。  それからもう一つは、繰り返して言いますが、ただ国民暮らしが苦しいから国民生活を上昇させてほしいというだけではないのです。国内の需要を一定にして、しかも経済循環がスムーズに行われるためには、私たち消費する生活必需品を私たちがしょっちゅう買えるようにしてほしい。つまり、国民生活を安定させてほしいわけです。企業の投資というのは、利潤が上がらなければ投資いたしません。しかし、食べたり着たり飲んだり寝たりということは、利潤が上がる上がらないにかかわらず一定の需要が必ずあるわけです。これが滞りなく、いつもいつも需要があるようにしていただくためには、生活を苦しくしないということなんですね。どしゃ降り輸出をすれば外国からも非難をされる。それから投資もあちこちに隘路ができてきている。そういうときに、いつもいつも一定の需要、そして変わりない需要、そしてその需要が上がれば国民生活水準も向上し、福祉も向上するという、そういう需要というものを本当に大事にしてほしい。それは個人消費というものだと思います。  以上です。
  17. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 先生は先ほど、防衛費と福祉は反比例する、こうおっしゃいました。今度の予算案を見てまいりますと、何といっても赤字公債発行下で防衛費の増大ということ自体が、私は財政法の精神からいって問題がある、こう思うのでありますが、それはまあそれにしまして、女性の立場からして防衛費の増大というもの、これに対して、もう少しお考えをお聞かせ願いたい。
  18. 暉峻淑子

    暉峻公述人 簡単にお答えいたします。  NHKの世論調査を見ますと、女性は、防衛費とか軍備というのに、各年齢層を問わず全部反対でございます、男性の方はいろいろあるのですけれども。女性は、戦争に対しては本当に本能的に反対です。ですから、少なくとも戦争の危機をあおるような、そういうことにわれわれの税金を使ってもらいたいとは全然思いません。  防衛問題というのは国民の合意じゃないということを、本当に肝に銘じていただきたいのですね。福祉は合意です。これは政党を見ても、自民党から共産党まで、福祉に反対なさる政党はないと思うのですね。合意でないということは、防衛費についてわれわれは、そういうもったいないお金の使い方をするのなら、ことしは国際障害者年ですから、そういう方にもっともっと使ってほしい。弱者を大切にする社会は本当にいい社会です。私たちにとってもいい社会です。この防衛費の増大については、今後もし庫出し税とかなんとかを政府が考えていられるとすれば、これはアキレス腱になると思いますね。防衛費をふやしてまた増税をしようというような、そういう議員並びに政党を、私たち女性は絶対に支持しないと思います。このことを本当に覚えておいていただきたい。
  19. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 渡辺先生にお伺いします。  先ほど、四つですか、財政硬直、都市型の問題、高齢化そして政府批判、そういう中で、政治が信頼を受けるのはやはり公平と清潔である、こう二つお話しになった。私も全く同感であります。しかし、現実社会は、いまの千葉県の知事に見られるように、あるいはまた、世の中のいろんな不幸な出来事を見るにつけても、やはり政治の公平、清潔、信頼を得るという点が何よりも大切なところにきておると私も思います。  ところで、その公平、清潔という二つの問題のどこからまず手をつけるべきなのか、一番何が緊要なのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  20. 渡辺保男

    渡辺公述人 負担の公平あるいは清潔な政府をつくる一つの決め手というものは、私はないと思います。やはりいろいろなものが連動して行われなければいけないというふうに思うわけであります。でありますから、たとえば選挙にお金がかからないというようなことから、あるいは行政においてはいろいろありますチェックシステム、監視システムが十分機能しているとか、あるいはその他いろいろのことがやはり一緒に動くことが必要であると同時に、また、国民納税者意識を持って自分たち政府監視するということも必要であるかと思うのであります。そこで、一つの決定的なものは何かということはなくて、やはりいろいろのことが一緒になって動かないとできないのではないかというふうに思っております。  それとの関連で申しますと、制度の上におきましては、ある意味で日本は制度としては非常によくできているものがあるわけであります。ただ、それが本当に制度をつくった目的どおりに運営されているかどうかという点があるわけであります。でありますから、いまの制度がだめだから新しい制度をつくるということも場合によっては必要でありますが、同時に、いまの制度を十分使いこなしてみる。ことに行政に対する監視というような面につきましては、会計検査院もありますれば、あるいは行政監察もありますし、そのほか各省庁でいろいろ行っている分野があるのであります。あるいは行政相談とか苦情処理とか、いろいろあるわけであります。どうかそういうのを十分使い切って、それが本来の目的を達成するようにするということが、この点についてはまず必要ではないかというふうに思っております。
  21. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 終わります。
  22. 小山長規

    小山委員長 次に、中村重光君。
  23. 中村重光

    ○中村(重)委員 三公述人の方から、いまの予算にずばりメスを入れていただく貴重な御意見を伺ったわけです。  時間がありません。したがいまして、暉峻公述人に見解を伺いたいのですが、高速化する現代社会でせかせか度あるいはいらいら度というのが非常に高まってきて、社会の病理現象を誘発しているというように私は思うのです。人間というのは、有用の用だけでは存在できない。空気も欲しい。自然の空気も欲しいし、緑も欲しいということになる。つまり、技術者あるいは科学者が無用と言うものであっても、これは必要であるというように考えるわけなんですが、これを財政再建であるとかあるいは予算の支出の面から見てみますと、狭い日本、なぜそんなに急ぐという交通標識もありますが、新幹線であるとか、あるいは本土と四国の間に計画は三本、橋をかける、そうした大型プロジェクトというのを、高度成長時代であればいざ知らず、この低成長下において、選挙対策とかいろいろあるのでしょうけれども、そういうことを強引に推進をしていかなければならないのか。大型プロジェクトよりも生活環境の整備ということに重点を置いていくということでなければ、いろいろ御指摘がありましたような公平な政治、さらにまた、個人消費を高めていくといったいろんな面において、大事なことが陥没をしていくということにならないのかどうか。これらの点に対してお考え方はいかがであろうか、その点をひとつ伺って、ほかをお尋ねすると時間がなくなりますからこれで終わりますが、いかがでしょうか。
  24. 暉峻淑子

    暉峻公述人 先ほども述べましたけれども、このことについては余り言われておりません。ジャーナリズムやなんかでも言われておりませんので、ぜひ御配慮いただきたいことがございます。  戦争のために私たち国民は、もう大変、がつがつ飢えていたわけですね。がつがつしていた人間は物が欲しい。ただ物さえあればそれで幸せになれるというふうに国民全体が考えていた時期があると思います。そのころは、消費物資が豊かであれば何でもいいということで、いま言われた環境とか生活基盤の問題というのは余り皆考えなかった。けれども、いまはもう曲がり角に来ておりまして、どんなに生産力が大きくなって物だけがあふれていても、環境それから環境のはね返りである住宅、そういう生活がその上に乗っかっている土地、それから水、空気、そういうものが全く顧みられなくて、逆にわれわれの生活を侵していくというか侵食していくという方向にあるということに、国民もいま気がついていると思います。私は、そういう生活基盤を充実することこそ財政の役目だと思うのですね。景気浮揚、フィスカルポリシーみたいなものは、日本のように企業体質の強いところではそんなに重点を置かなくてもいい。むしろ、いま商品経済の法則で利潤というものですべてが動いていくこの世の中で、守らなければいけないのは価格を持ってない土、土壌です。汚染されない土壌、環境、緑、空気という、利潤の問題では片づかないそこを、私たち税金を納めますから財政の力でしっかり守ってほしいという、これが財政の一番大事な使い方だと私は思います。  それで、いまは、原子力発電の問題にしても他の大きな大型プロジェクトに対しても、技術の進歩、それから物理、化学の進歩、そういうものは全部エコロジー、生態学というものの立場に立って進歩というものを考えなければいけないというふうに、研究者も学者もみんないま反省しております。それについては、ただ国民所得が上がればいいとか景気がよくなればいいというのは、いかにも部分的な、せつな的な商品経済的な発想なんですね。われわれは生活をする人間ですから、生活というのは総合です。商品経済ばかりが発達していても、環境がだめならばこれはだめです。ですから、生活立場では、そういう失われたものが非常に強くわかるわけですね。ですから、私は、ほっておけば、商品経済のこういう社会では、いま言われたように、利潤追求ということで物だけたくさんつくる、それからセメントと鉄だけがどんどんいろいろなものを壊していくというふうになるのですから、財政生活立場から、そういう利潤率の発想に立たず、せつな的でなく、商品経済的でなく、私たち生活基盤を守っていくことに大きな支出を割いていただきたいと思います。
  25. 小山長規

    小山委員長 次に、草川昭三君。
  26. 草川昭三

    ○草川委員 私は、取りまとめて渡辺先生と暉峻先生に御質問を五点申し上げたいと思います。  まず、渡辺先生に四点ほどありますが、第一番に、先生は国民政府に対する批判が厳しくなった、こうおっしゃられました。特に増税に対する納税者というのですか、タックスペイヤーというのですか、そういう方々の意識が盛り上がったのではないだろうかというように私もお伺いをしたわけでございますが、このような日本の動きというのは、他の先進諸国の国民性と比べて一体どのように先生は御判断なすっておみえになるのか、これが第一です。  第二番目に、渡辺先生としては特に合理化行政改革の問題について強い御指摘があったわけですが、土光さんを会長とするところの第二臨調についての先生の御期待なり、いまのあり方で果たして先生の御関心を呼ぶような結論が出るのかどうか、見通しについてお伺いをしたいと思います。  第三番目に、都市化あるいは成熟社会が進んで、画一的な行政はだめで新たな行政が必要だというようなお話がございましたが、この発想を延長いたしますと、地域的に新たな行政上の地域格差というものを拡大しないのかどうか、先生の御意見をお伺いしたいと思うのです。  それから四番目に、高齢化社会に向けて中高年齢対策が大変必要だということをおっしゃっておられますが、全く同感でございます。しかし、日本の企業というのは終身雇用制になっておるわけでございますので、その終身雇用制の問題点と先生の高齢化社会における中高年齢に対する配慮の問題点、この点についてお伺いしたいと思うのです。  最後になりますけれども暉峻教授がたくさんの資料を出されまして、大変興味があるのですが、ちょっと私わからなかったのでお伺いしたいのですが、第八表に、住宅の所有関係別可処分所得という数字を出されました。持ち家、三十一万だと思いますが、三十一万円の可処分所得、給与住宅二十九万。これは給与住宅というのは私、社宅だと思いますが、それから民営借家というので、持ち家の方々は可処分所得が大きくて借家の人が少ないという一般論は、ここでおうかがいできると思うのです。  昭和五十四年の総理府の家計調査年報の中に、住宅ローンの返済世帯という資料があるのです。住宅ローンの返済世帯の可処分所得というのが実は三十四万七千円になっておるのです。持ち家より多いわけです。なぜ住宅ローンの返済世帯の方の可処分所得が多いのかというのは、実は共かせぎがあるのではないだろうか、だから三十四万で持ち家より大きいのではないかという、別の統計年報があるわけです。  ですから、できたら私どもとしては——持ち家というのは、労働者にとって、働く勤労者にとっては大変な望みなんです。持ち家を持ったけれどもローンの返済で非常に困っておるというのをもう少し浮き彫りにすることがこれからの国民的な問題点ではないだろうかという気が私はするので、先生の御意見をお伺いしたい、こう思います。
  27. 渡辺保男

    渡辺公述人 御質問が大変大きな問題も入っておりますので、いまどれほどお答えできるか疑問ておりますが、まず第一の、日本における納税者意識と先進国の納税者意識との関係でありますけれども、先進国が歴史的にタックスペイヤーズ、納税者の意識は確かに強い面もあるかと思いますが、同時に、福祉政策が浸透してまいりますと受益者意識が強くなりますが、そういう面があるかと思います。  ただ、わが国の場合は、歴史的に長いものに巻かれろ式の気持ちがあると同時に、逆に政府に対する甘えと申しますか、そういうものも否定できないわけでありまして、政府に対する批判は同時に政府に対する甘えというものの裏返しの面もあると思うわけであります。しかし、昨今におきますような状況の中で、国民の間に税金の問題が非常に大きくなってまいりまして、さらに、単に納税ということだけではなくて、それがまたどういう分野に使われているかということについての関心も高くなっているのではないかというふうに私は思うわけであります。  それで、国破れて忠臣出で家貧しくて孝子出づという昔からの言葉がございますが、いまのような財政が窮迫してきている、これについてはいろいろの御指摘もあったわけでありますが、さらに日本が国際社会及び国内の状況変化対応していかなければいけないという困難な時代になりましたからこそ、逆に、まさに、そのために、国民がこの際納税者意識を強く持つことが必要ではないかと私は思っております。  それから第二点の、第二次臨時行政調査会への見通してございますが、私は率直に言って、期待している点が少なくないのであります。ただ、もし企業の論理のみで行政を律するということがありますと、やはり行政企業との違いというものがあるわけでありまして、そういう行政の面にどれほど地についた改革が出るかどうかという点を私は危惧しているわけであります。もちろん、行政は非常に多面的な分野にわたっておりますから、企業の論理で割り切れる点もないわけではありませんけれども、しかし同時に、それとは違う分野も少なからずあるわけであります。そこで、行政企業の論理のみで片づけるということはいけないのではないかというふうに思っております。  ただ、私が前に申しましたように、行政というのは税金でなされているわけでありますから、それを担っている政府はやはりそういうコスト意識を持って、つまり国民の間における納税者と同じような考え方で、やはり大事な税金を預かっている、そういう発想はやはりこの際強く持っていただきたいというふうに思っているわけであります。  それから第三の、都市化が進展し、あるいは地方自治の時代というふうに言われますと地域の格差が拡大するのではないかというお話でありますが、まさにそういうことになりますから、同時に、どういう点について中央政府はテークケアするか、あるいは地方自治体はどういう分野について独自性を発揮するかという仕分けが必要ではないかと私は思うわけであります。  そういう場合におきましても、やはり地方時代というのは、地方自治体がそれぞれ自由なことをするというわけではないのでありまして、自治は同時に連帯を持つわけでありますので、自治と連帯ということで相互に助け合ってやっていく、自分たちの地域社会のことと同時に他の地域社会のことを考えながら行っていく、こういう自治と連帯の発想がないと地方時代は実を結ばないのではないかというふうに思っております。  それから最後に、高齢化社会の到来について、雇用対策の問題でありますが、私はちょっとこういう労働政策について、専門の分野でありませんので申せませんが、公務員の分野だけに限って申させていただきますと、私が申し上げるまでもなく、学歴も高くなっておりますし、平均年齢も高くなっております。これまで日本の公務員制度におきましてはいわゆる終身雇用、年功制的な色彩が濃いわけでありましたが、それが人件費の高騰であるとかあるいは勧奨退職を通じることによる退職金の高騰とか、いろいろの点が批判されております。こういう場合に、財政的な観点だけではなくて、同時に、現在いる職員が本当に働きがいのあるようなものにしていくという配慮が必要ではないかと思うのであります。でありますから、もちろん財政的な配慮も必要でありますけれども、同時に、公務に従事している者が安定して喜びを持って働けるような、そういうインセンティブを公務員制度の中で実現していくということが大変必要ではないかと思うのであります。でありますから、それは採用であるとかあるいは昇進であるとか退職のようなものについてもいままでのようなあり方でいいのであろうか、あるいは給与の体系についてもいままでのようなものでいいのであろうか等々、いろいろな点にわたって十分な検討を加えていく必要があるかと思うのであります。  公務員制度は、一国の教育制度あるいは社会制度の投影であると同時に、逆にその国の社会制度教育制度を規定していくものでありますので、公務員制度あり方というのはきわめて重大なことであるかと私は思っております。したがいまして、こういう分野についてこの時期に、中高年齢者対策を含めまして、公務員が安定して喜びを持って働き得るような体制について十分御検討いただきたいというふうに思っております。  お答えにならなかった点がございますが、御容赦いただきたいと思います。
  28. 暉峻淑子

    暉峻公述人 いまの御質問なんですけれども、そのとおりでございまして、持ち家を持っていても形式的に家を持っているというだけで、ローンの支払いというのは、いま特に勤労者の家計にとっては大変な重圧になっているわけですね。このこともよく御承知かと思いますが、総理府の家計調査というのは、六カ月で世帯を交代しまして、八千世帯というのをごちゃまぜにして平均を出してしまいます。それに対して東京都は、同一の世帯をずっと追いかけまして、その家計が一体ローンをどれぐらい払っているかというのを、二百世帯だったと思いますが調べたことがあるのですが、それによりますと、収入の大体二五%を住宅ローンに払っているんですね。これはもうとても大変なことです。  それで、私は今度大変がっかりしたのは、鈴木首相の演説を聞きましたらば、住居環境を整備して何か国民生活に資するというようないい言葉があったのですけれども、それとは反対に、公庫の住宅資金の方はいろいろ制限をつけられたり削られたりなさったわけですね。いまでさえ公庫はただ資金を供与するというだけであって、住宅そのものを国や地方自治体が建てて、これに国民を住まわせるという形をとっていない。お金だけ貸してくれるということで、そこにも問題があるのに、それに対してさえもカットをされたということは、国民は、幾ら健全な家庭といいましても道路で寝るわけにはいかないのですから、住宅の問題にもっともっと大きな援助の手を差し伸べてほしいと思います。  それから、なぜ二五%も払ってもみんなが住宅を欲しがるかといいますと、これはインフレ恐怖です。インフレヘッジとしてやはり土地しかないのですね。ヨーロッパの国々はインフレに対して金をインフレヘッジにしますが、日本の習慣としては、金のかわりになっているのは土地です。ですから、生活不安から、払えないかもしれないと思っても、ともかく、しゃにむに土地を買ってしまう、これはお金持ちで買うわけじゃないという、そこもぜひ御理解いただきたいと思います。  それから、ここに出しました表は、貧乏人は家が持てないということを一口で言いたくていろいろな角度からの表を出したわけですが、お金を借りるにはある資格が必要ですので、本当に貧乏な人は実はローンも借りられないのです。貧乏人が借りているローンの中身は、学校に行く進学ローン、それから医療費に使ってしまうための病気のためのローンです。土地、住宅のローンは最下層の人は手も出ないという、そういう人々も現実にいるわけでございます。土地重課税を廃止しようがなどという話もときどき出ますが、土地を売りに出したことで莫大な利益を上げた人には容赦なく税金を課して、その税金をそっくり、ほとんど低利の住宅ローンに回したらいいと私は思うのですね。そうしたら、土地でもうけた人の土地の上に住宅を建てる人が、その土地のもうけで住宅を建てるわけだから全く公平なので、やめるなんというのはとんでもない。だから、土地の利益を住宅に還元するということにすると、国民生活上少し公平になるのではないか、そういうふうに私は考えたりしております。
  29. 草川昭三

    ○草川委員 どうもありがとうございました。
  30. 小山長規

    小山委員長 次に、神田厚君。
  31. 神田厚

    ○神田委員 それぞれ大変貴重な御意見をありがとうございます。  まず最初に、渡辺先生にお伺いをいたしますが、行政改革の問題は、突き詰めて言えば、最終的には政治リーダーシップ行政の各省各部局の協力国民バックアップだ、こういうふうにお述べになりまして、まことにそのとおりだと思うのでありますが、第二次臨調の設定というような中で、果たしていま出されている行政改革というのは本当にこのときに実現できるだろうか、この辺のところはどういうふうにお考えでございますか。
  32. 渡辺保男

    渡辺公述人 せっかく出現したわけでありますので、どうかぜひ実現していただきたい。そのようになるために、三点御指摘がございましたように、また私自身が述べましたように、やはり蛮勇をふるって政治リーダーシップを発揮していただくし、行政各部協力し、また世論バックアップしていくということでする以外にないのではないか。やはり生まれたものはこれを育てる以外にないのではないかというふうに私は思っております。
  33. 神田厚

    ○神田委員 大変むずかしい問題で、なかなか言われてもできないことだったのですね。ですから、これを確実に実行さしていくというのには、やはりそれなりのもっと新しい観点からの踏み込みが必要だというふうに考えているわけでありますが、私は、やはりいまおっしゃいました政治リーダーシップにしろ、総論賛成各論反対、さらに各省につきましても、自分のところはだめだというようなエゴイズムがあり、さらに世論バックアップといいましても、どうもこれもかけ声はいいのですけれども、それを実行させるまでの大きな力になかなかなっていかない、こういう問題点があると思うので、何かひとつ、どうでしょう、新しい工夫のようなものがお考え及びますでしょうか。
  34. 渡辺保男

    渡辺公述人 やはり大事なことは、審議の過程をできるだけ国民に知らせ、そして政府が提案を受けた場合、実行する場合は問題ないわけでありますが、実行しない場合は、なぜ実行しないか、どういう点が実行できないかという点を国民に明らかにする。少なくとも、答申を受けて言いっ放し、聞きっ放しということではなくて、政府政府のお考えがあるかと思いますが、それはなぜ実行できないのか、それを国民の前に明らかにする、私はそういうことをまず実現したらどうかというふうに思っております。そういうことがなくてうやむやに終わるということになってしまいますと、膨大なお金を使い、膨大なエネルギーを使ったせっかくの提案が宙に浮いてしまい、残念であるというふうに思っております。
  35. 神田厚

    ○神田委員 暉峻先生に二点御質問申します。  一つは、先ほど来御指摘いただいております土地問題でございます。この土地問題は非常に大事でありますが、これもなかなか思うような形でいい政策がとられてない。大変鋭い御指摘がございましたが、土地政策に対して何か御意見をお持ちでありましょうか。それが一つであります。  それからもう一点は、福祉と防衛の問題について御意見がありました。女性はすべからく戦争には反対だがら、防衛費に対する問題については非常に問題があるという御指摘だと思うのでありますが、それでは、日本の置かれている国際的な状況の中で、防衛費と防衛政策については先生はどういうふうなお考えをお持ちか。この二点についてお聞かせ願いたいと思います。
  36. 暉峻淑子

    暉峻公述人 土地問題でございますけれども、同じ自由主義経済の国でも、日本のように土地問題を野放しにしている国というのはないと思います。たとえばイギリスや西ドイツでは、土地の私有権は認めておりますけれども、これに対して使用制限、この土地はこういうこと以外には使ってはならないという使用制限を非常に厳しくかけております。これは所有権をそういう意味では骨抜きにしていると言ってもいいので、皆様もロンドンなどにいらっしゃると、ごみごみした本当の中心街にぽかっと一画空地があいておりますね。あれは、そういうところの各所に、この土地には、土地の私有は認めるけれども何にも建ててはいけないという使用制限をかけているわけです。日本の場合、私有権に切り込むことがむずかしければ、使用制限ですね、いま用途別制限というのが名ばかりありますけれども、そういうものをもっときめ細かくかけていくことで、土地の値段は相当下がるのではないかと思われるところがございます。これは建設省でも私はずいぶん話し合ったことがあるのですが、所有権と使用制限という問題で、ぜひ国会でもう一度議論していただきたいと思います。  それからあとは、よく言われることですが、長期間にわたって土地を持っている人、しかもそれが、現在で言えば三百平米以上ぐらいのものを持っている、遊閑地的な土地に対してもっともっと重い税金をかけたらよいと思うのですね。これは、小さな土地にまでかければ国民の合意は得られないと思いますが、ある一定生活権というものを守った上の余分な土地に税金をかけることは、国民の合意が得られると思います。  それからもう一つ、福祉と防衛の問題ですけれども、これは毎日の新聞にも防衛反対、防衛賛成という両側からの論戦がずいぶん行われているわけでございますね。でも私は、本当に素直に考えて、戦争というものは、一方が力を持てばもう一方が対抗してまた力を持つという、無限の抗争関係が出てくることはもうわかっているのですね。だから、防衛を大きくしたからそれだけ安全になるかというと、そういうことは言えない。あるいは、あそこは防衛力を大きくしたから、それこそ日本に向けての沿岸地域にはもっと何かいろいろな軍備を配備しなければならないというふうに、危険をあおることだってある。だから、どれがいい、どれが悪いということは、それぞれの人間がそれぞれ言っているのであって、ことに軍備なんというのは秘密条項ですから、あちらの国はこれだけ持っていると言っても、その情報は確実かどうかという保証は何にもありません。アメリカの国務省とペンタゴンとの間でさえ、ずいぶん軍備についての数字の違いがあるというデータを見たことがあります。ですから、あの国が軍備をこれだけ持っていると言っても、そしてそれに対してこちらが適切がなんということは、抽象的な言葉でただ言えるだけであって、その数字についての科学的な論拠は何にもないと思うのですね。  いつか園田外務大臣が中東諸国を回ったときに、日本は平和憲法を持っている国だというそれだけのことで、経済的な交渉の上でもその他の面でもどれだけやりやすかったかしれないということを言われているのを私は聞いたことがあります。軍備を持たない不安ばかりがかき立てられて、軍備を持たないことで外国との経済的な貿易関係も友好関係もどれだけいい思いをしているかしれないというメリットについては、このごろ特に余り言われなくなったことを残念に思っています。これは諸外国に行きますと、学者仲間でも貿易関係の人でも、日本は戦争をしない国だから安心してこういうことをお話ししますとか、こういう取引をいたしますという言葉をしばしば聞くのですね。そうでなければ、何か軍事的な支配の下心があって海外協力に来ているのじゃないかという疑いの目で見られるのですが、幸いに平和憲法があるということで、そういう疑いを免れて仲よくできていることがずいぶんあると思います。ですから、これも繰り返し言われていることですが、軍備よりは平和外交とか学者の交流とか民間の協力関係とか、そういう形で、戦争をしようとしてもできないような状態に置くことが大事だと思います。  それから、御存じかどうか、申し上げますけれども、たとえば私の大学は地方国立大学なんですが、これが毎年海外に、在外研修に教授、助教授、講師、助手を派遣するのに、その枠が年間たった五人しか来ないのですよ。そのうち二人が一年で、三人は二カ月です。こんな貧しい文教政策というのはあるのでしょうか。私たちが外国に出ていけば、外国の学者たちともいろいろと共同研究をしたり、お互いの国のことをよく知り合って、相手方を敵国になど回したくない、そういう国民感情がお互いに芽生えます。そういうことにお金を使わないで、軍備に二千億ふやして一体どれだけ安全になるのでしょう。  私は、そういう自分の知っている身近なこと一つ考えても、そういう形で日本の安全が保障されるとは思わないから、やはり軍備には反対いたします。
  37. 神田厚

    ○神田委員 考え方はいろいろございまして、たとえば日本の固有の北方領土にソ連軍が軍備配備をしている、ソ連みずからがそういうことを認めているというような状況もございます。そういう中で、いま福祉も大切ですけれども、安全保障という面から当然防衛の問題も、非常に重要な優先課題としてこれを取り上げていかなければならない、私はこういうふうな考え方を持っているわけであります。  ところで、高橋書記長さんにお尋ねいたしますが、高橋書記長さんの所属する同盟が長年、北方領土の返還運動をしてまいりました。このたび、北方領土の返還の記念の目がつくられることになりました。そのことにつきまして、今後国民運動としてどういうふうな形でこの運動を発展させていったらいいのか、この辺のところをひとつお聞かせいただきたいと思います。  もう一点は、同時にいま大変話題になっております武器の輸出の問題がございます。この武器輸出禁止の法律をつくれという主張もございますし、法律に至らずとも、いまの貿管令等の運用でこれをやれというような意見もございますし、それぞれいろいろございます。この問題につきましては、日本の産業経済、雇用の問題にまで深く立ち入っていけばいろいろ影響が出てくる問題になっておりますけれども、この点についてはどういうふうにお考えでございますか。この二点を伺いたいと思います。
  38. 高橋正男

    高橋公述人 同盟といたしましてずっと北方領土返還運動を続けてまいりまして、北方領土の目という記念日が設けられたわけでありますが、本来固有の領土でありますから、国民全体の世論の喚起を図りながら、それぞれ各層の参加を得てまいっておるわけであります。今後も各地方自治体の方に要請をいたしまして全国的に、また国際的に、実はことしの九月ですか、AFL・CIOやICFTU、要するに世界自由労連の代表を招いて、国際的な世論の喚起に努力する考えであります。  次に、武器の輸出の問題であります。私は、武器輸出禁止法ですか、その必要性は認めるわけでありますけれども、実は五年前に、ある大学の教授と武器の定義について論争したことがあるわけであります。武器というのは、完成品ならだれしもがわかるわけでありますけれども、部品については本当にその判定がむずかしいわけであります。特にコンピューター関係やそういうものも今日武器に連動するようになった時代でありますから、武器を使うというのは紛争であり戦争でありますが、紛争や戦争ということになると、その武器というのは広範囲になるわけです。要するに戦略物資、兵たん部門もすべてそういうものになるわけでありますので、この辺、私は、武器輸出禁止法の必要性を感じながらも、慎重にやっていかなければならぬ。繊維品でも化学製品でもすべてが関連するわけです。たとえば化学製品で言うならば、毒ガスなんかについては、それはそうでないのだけれども、肥料として出されるのですけれども、それが反応で兵器になる。ですから、この辺の判断は非常にむずかしいのではないか。昔は竹やりだって兵器だった。兵器というのは人を殺傷するものですから。そういう点については、この国会でも十分慎重に論議していかないと、拡大解釈されますと日本の産業が非常に低迷するのではないかという危惧もあるわけです。そういう点について、三原則もありますし、貿管令もあるわけですから、そういう中で、ひとつこの法案については、それとの関連を配慮しながら慎重に対応していただきたいことをお願いします。
  39. 神田厚

    ○神田委員 続きまして、特に先ほどもお話がございました中で大事なのは、物価問題についての政府施策が非常に不十分だという御指摘がございました。この物価対策をどういうふうに充実をさせていくのか。あるいは雇用の問題につきましても、雇用政策についてもなかなかうまくやられてない、こういうふうな御指摘がございましたが、もう少し具体的に、物価対策と雇用対策の問題につきましてお話を伺いたいと思うのです。
  40. 高橋正男

    高橋公述人 物価対策は本当に大変なわけでありますので、政府もやっておるようでありますけれども、四党合意で五百億、私はむだにばらまきをやれということではないのです。本当に七・七%から八%に迫ろうという消費者物価、いままで歴代の内閣でそういうことはないと思うのですね。やはり物価調整減税もやってきたと思うのです。働く者の実質賃金がマイナスということは必至の情勢でありますから、そうなれば当然物価調整減税なり所得税減税というものが台頭することなんですが、実はわれわれも物価抑制運動をやっているわけであります。モニター制度というのがありまして、いま全国に各省庁にまたがっているわけでありまして、一万八千人ぐらいいるわけですけれども、これは行政管理庁からも指摘されたように、機能を発揮してないわけですね。したがって、中央には中央物価監視委員会をつくりまして、物価安定会議というものがあるわけですから、そういうことと連動してひとつやっていただきたい。地方には、各自治体にも物価監視委員会というものをつくって、このモニター制度をそこに移行して、査察権や調査権を与えて、全国民的な運動としてやらなければいけないのではないか。消費者物価の上昇率についても、地方ごとにばらつきがあります。一生懸命地方自治体消費者物価対策をやっているところは低い。こういうことなんですから、これはもう地方自治体もひとつ積極的に運動を展開していただきたい、このように考えているわけであります。  それから、雇用の問題です。本当にいまから高齢化社会の受けざらをつくっていかなくちゃいけないと思う。われわれは、昭和六十年までには六十歳定年を一般化するというのはまあ当然なことなんですが、その後に来る高齢者の働き場所ということについては総合的に考えていかなければならないと思うのです。特に、高齢者というのは医療費のかかる率も多いわけであります。労働を生きがいとして働いている人は病気にかからないというデータもあるわけであります。したがって、われわれは、昭和七十年までに六十五歳の雇用保障制度という高齢者の雇用保障制度、これは定年延長じゃないわけでありますが、そういう制度をつくっていかなければならないだろう。反面、生きがい労働として政府はシルバー人材センターとかつくられておりますけれども、実はこれも予算が少ないわけであります。六百万から七百五十万に上がったと思うのですけれども、少ない。高齢化社会というのは、出生率もきわめて少なくなっているわけですね。五十四年度で一・七七ぐらいですか。そうしますと、十五年、二十年たつと日本の活力というものが低下するわけですね。高齢化社会というのは、明るい、経験の豊かな、公正な社会の到来というようにイメージを変えて、そこから新しい政策を出していきたい、われわれはそのように考えて運動を展開しているわけでありますけれども、やはり高齢者雇用保障法というものを私はぜひ国会で制定していただきたい。これは企業に対しましてそういうきつい罰則というものは設けないで、労使、さらに学者、そして行政、この四者が一体となって、高齢化社会を迎えての雇用保障というものの対策を講じていかなければならないのではないか、そのように考えているわけです。
  41. 神田厚

    ○神田委員 続きまして、財政といいますか、減税その他の問題で、所得減税の断行ということで、これを実行すべきだというお話がございました。同時に、課税最低限の引き上げを強く要請をされておりますが、その辺のところをちょっと詳しく御説明願いたいと思います。
  42. 高橋正男

    高橋公述人 税制改正を五十二年にやられた際、子供二人、夫婦の四人家族で課税限度が二百一万五千円だと思うのです。五十三、五十四、五十五年、この三年間を見ますと、実は消費者物価が一六・五%伸びているわけですね。ですから、一年に給与所得者は実質大体二兆円ぐらいずつ増税されているわけであります。ですから、もう実質賃金が大幅にマイナスになっているわけであります。したがって、減税というのは、われわれが主張するのは、労働四団体でも話し合って、私の方から試算したものは出したわけであります。当然、一六・五%も物価が減るわけにいかない。したがいまして、その半分程度をめどにして、たとえば基礎控除、配偶者控除、扶養控除、特別控除と四つの控除があるわけですが、それを二万円程度アップして、いま二十九万円ですから三十一万円といたしますと、課税最低限二百二十万六千円というふうになるわけであります。一そうしますと、大体九%ぐらい最低限度がアップされるわけであります。  そうしますと、財政的にはどうなのか。財政的には、われわれの試算によりますと大体三千億弱であります、そういうことになりますと、所得税の自然増収が、五十六年度において大体二兆五千億から二兆六千億といわれているわけです。自然増収が四兆六千億から五兆円近いのじゃないか、これは消長によって違いますけれども。そういう点からいくと、その自然増収があるわけでありますから、これは財源がないということはないではないか、こういうことになるわけでありますので、ぜひともこれは日本の労働者全体として、本当に所得税の課税限度額を上げてほしい。これは労働四団体、といっても政策推進会議全部が大体上げてほしいという強い要望でありますので、これはぜひとも二百二十万六千円ということにしていただきたい。そうでなければ、日本の経済の発展のために一生懸命努力して働いてきた労働者、特に、昨年の賃上げにおきましても控え目な要求をやって、そして生産性の向上に努力し、今日の日本の経済を支えてきたわけでありますから、ぜひともその辺め実現を強く要請したいと思うわけです。
  43. 神田厚

    ○神田委員 それでは、最後行政改革の問題で高橋公述人にお聞きをいたします。  行政改革の問題も、労働団体が非常に熱心に取り組んでまいりました。いよいよ第二次臨調が発足し、新たに労働界から一名追加をされまして、合計二名の代表がここに入っているわけでありますが、この第二次臨調の果たす役割りと、それを中心として今後の行政改革をどうい今ふうに推進していったらいいかという問題について、お話をお伺いしたいと思います。
  44. 高橋正男

    高橋公述人 国会の承認をまだ得てないようでありますので、ひとつよろしく承認方をお願いしたいと思うのです。特に先ほどの先生方からも、行政改革の断行を強く要請されている。われわれも、いままでずっと行政改革の断行を求めてきたわけであります。  行政改革というのは、やはり新しい時代でありますから、私は、まずいままでの行政機構というものは総見直しをすべきだろうという考え方なんです。国民へのサービスの拠点というのはやはう直接地方にあるわけでありますから、ひとつその点に重点を置いて、地方分権化を推進してほしいということなわけであります。特に国家公務員と地方公務員、これは国民にとっては中央政府であり地方政府でありますから、その差はないのですけれども、何か国家公務員の方が上位で偉いようで、地方公務員は下のようだ、この辺の意識から改革していかないと、国民にとって大変なことじゃないのかというふうに私は思うわけであります。  そして、中央の出先機関というものもあるわけであります。それがやはり地方とダブっているわけですね。陸運局なんかもそうだと思うのですが、財務局も一部そういう面があるわけであります。そういう点について、行政改革というのは、大衆増税や新しい税の増収の前にまずそれをやることが先決じゃないか。国民だって、そこまでやったんだから、税が高くなっても説得力がつく、理解力があると思うのですね。  われわれといたしましては、民間の労働組合のすべて、金属労協なり、さらにはJAFという他学エネルギー労協もあります。政策推進会議もありますから、同盟とそういう人々と一緒になって、第二次臨調委員バックアップするために小委員会なり研究委員会、これは行政経験者や学者等の支援を得て、本当に行政改革を断行するためにはどうなのか。そして国民各層の支援を得て、行政改革推進国民運動本部というものも政党の皆さんからもひとつ御支援をいただいて、そして国民運動に発展さして、情報公開じゃないわけでありますけれども、本当に国民に作業の進展状況を公開して、どこに陸路があるか。それは昭和三十九年にやって、歴代の内閣が皆行政改革断行をうたいながらできなかったということでありますから、今回の場合はあくまでも国民に訴えながら、合理的な、近代的な行政改革をひとつやっていきたい。そうでなければ財政再建も大変なことになるのじゃないか、そういうふうに私は考えているわけです。
  45. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  46. 小山長規

    小山委員長 寺前巖君。
  47. 寺前巖

    ○寺前委員 御苦労さまでございます。  予定されておった時間が大分おくれているようでございまして、公述人の皆さんもお疲れのようでございますので、出ておらなかった話などをちょっと聞かせていただきたいと思います。  一つは、先ほど高橋公述人の方から、三K赤字について政策的強化をという御発言がありました。それで私、消費者の問題、物価、福祉の問題をかなりいろいろ聞かせていただきましたが、日本の社会の中で都市と農村という関係から見た場合に、農村におけるところの状態というのは、労働力として都市へ集中してくる、農村は破壊されていったというのが、戦後の日本の高度成長の中で一つの大きな特徴だと思うのです。農村におけるところの、支えておった生産が米中心のものであっただけに、米が余ってくるという状況の中で一層この問題が大きな位置を占めてきた。  先ほど暉峻公述人の方から、福祉というのは貧乏人と金持ちのここのところのバランスを改善すること、それが民主主義なんだというお話がございました。都市労働者と農民との関係も、そういう角度から見てみる必要があるのじゃないだろうか。そういうことを思ったときに、三Kに対する赤字という問題をどう処理していくのかという問題については、やはり政策的に非常に大事な問題だと思うのです。  そこで、せっかくの機会でございますので、暉峻公述人高橋公述人に、この三Kの問題に対する見解といいますか、日本の農業の問題に対しての見解をひとつお聞かせをいただきたい、これが一つです。  それからもう一つの問題は、いま防衛費の問題が話題になりました。われわれは、すべての法治国家の中における中心として憲法を中心に据えるわけですが、憲法の前文は、明らかに国際紛争を武力で解決しないのだ、この立場から憲法の九条もあり、いろいろ諸施策がそこから出てくると思うのです。そこで、この憲法の精神に照らしてみたときに、今国会に出されている予算は、要するに一般の言葉で言うならば、福祉伸びよりも防衛費の伸びの方が大きくなった。最大じゃいないか。後年度負担ということを入れてきたらもっと恐ろしい数字になってくる。内容も内容ながら防衛費の占めている位置が非常に高くなってきた。さて、このような防衛費の伸びは、憲法の精神に照らしてみたときにどうなんだろうか。まして、中には三%までという声が制服組の中からも出てきている。これに対してどういうふうにお考えになるのか。これが防衛費の一つです。  それから、防衛費問題をめぐってのもう一つは、いま話が出ましたが、武器の輸出の問題です。この憲法の精神に照らすならば、日本の国から諸外国に対して、そこの武器をもってその国を強化、してやったり、あるいはそこの軍需工場を証してやったり、あるいは投資という形で、あるいは技術の協力という形でもって、あるいは港湾をつくるという問題をめぐったりして、要するに日本国憲法の精神に照らすとするならば、武器の解釈は、軍用そのものを強化するということをやってはならないという方向で提起していくべき性格なんではないだろうか、私はそういうふうに考えるのですが、この点について、暉峻公述人高橋公述人にお願いしたいと思います。  最後に、渡辺公述人にお願いしたいのは、総論賛成各論反対ではぐあいが悪いという御指摘がございました。行政機構の改革をやっていく場合に、たとえば国立の病院なんかは、看護婦さんがいなくて開かれていないというところがある。あるいはまた、基準監督官のごときは、十年、二十年間に一回調査にはいれたらいいというようなことで、国民が必要とすることを保障するところに行政の過疎があります。ですから、行政改革という場合に、過疎と過密という問題をこの分野においてもメスを入れてみる必要があるのじゃないだろうか、国民立場から考えて。一般的に行政改革をやるとか、あるいは補助金を減らすという、総量、総額、それだけではいかない要素を持っている。渡辺公述人が提起された、総論賛成各論反対ということにならないように勇断をふるえという御指摘は、何かを想定して提起しておられるのだろうと思うから、その想定しておられることを御提起いただきたい、  以上、お願いしたいと思います。
  48. 暉峻淑子

    暉峻公述人 大変重要なむずかしい問題を御質問くださったわけで、うまく答えられるかどうかわかりませんが、農業の問題については、私は二点、問題があると思います。  第一点は何かといいますと、日本のいまの資本主義経済社会というのは、何といっても能率性というか効率性、利潤を上げるのにいかに効率よくやるかということが経済を動かしている一番の基本なんですね。そういう目で見ますと、農業というのは自然を相手にしてやっている産業ですから、工業のように能率性が上がらないことはあたりまえだと思うのです。これはもう小学生でも知っていることですね。ですから、効率性に向かってすべてのものが走り出していくならば、自然を相手にしている農業の部門が置き去りにされるということは当然のことです、ですけれども、食糧の自給率という問題もありますし、農業が日本の国から消えていいということにはならないと思います。ですから、そういう意味で、私は、ただお金がかかるからとか、むだだからというふうにして切り捨てていく発想には反対で、農業というのは、やはりどこの国でも手厚く保護をしているわけですから、日本でも農業は保護すべきものであると思います。  ただ、農業の保護が、現在は農協というものと農林省との癒着関係というもので、必ずしも農民のだめになっていないというところがあると思うのですね。それで、農民の方も農協を通して裏口からというか、政治を動かして、国民世論の上で納得ずくで農業保護をやるという形になっていないという、ここが問題だと思います。ですから、私は、農業の保護には賛成ですが、いまのように農協中央会を通して米議員と結びついて、何か国民全体をつんぼさじきに置いた形で農業に対してお金が出されるという、この形は改められるべきであるというふうに思います。  それからもう一つ、これは発想を変えるのですけれども、能率性とか効率性というところでいけば、すべての資本あるいは労働は工業に向かっていくと思うのですけれども、いまのような工業というのは、さっきも話が出ましたが、生活基盤とか環境というものを破壊していっております。これは国民生活に、とって、国民所得は上向いても、果たしてプラスになるかどうかということは、私は大変疑問だと思っているのですね。それに対して、農業というのは自然を相手にして、自然と共存しつつ、つまりエコロジーの立場で自然に対して働きかけたり、自然から今度は返してもらったりという、やったり取ったりということを自然と人間との間でやりながら、自然を破壊しないでともに共存していくという産業の一つの形であると思います。私は、そういう意味でも、農業がなくなってはいけないというふうに思っているわけなのです。農業がうまくいかないということは、産業自体のあり方が私たち生活基盤を破壊しつつ、環境を破壊しつつ国民所得を上げという方向に行っているわけですから、それに対するチェック機能としても、私は農業というものをやはり見直してほしいというふうに思っております。  それから、工業の生産物を輸出するかわりに、貿易上の均衡を保つために主としてアメリカから農産物を多量に輸入してというのは、アメリカに不平を言わせないために輸入をして日本の農業を滅ぼしていくというこの形についても、いわば農業はそういう意味では工業の犠牲者になっているわけですので、農業を保護するというときに、ただ農業にただのお金をくれてやるというのじゃなくて、そういう犠牲的な関係に置かれた農業に対する国全体の立場というものをやはり考える必要があるかと思います。  それで、大蔵省財政の支出を切りたいときに、公正にそういう情報を出さないで、切るのに都合のいい情報ばかりを出すというのが、福祉でも農業でも国鉄でも、特徴だと思うのですね。大蔵省はそれでいいのかもしれないけれども国会議員はそれじゃだめだと思います。国会議員は、やはり全体を把握して決めてくださるのが国会の役目ですから、その点についてぜひともよく勉強していただきたいというふうに思うわけです。——いまのは失言です。勉強してくださっていますので、なお御理解を賜りたいと思います。  それから、防衛のことは、さっきのシビリアンコントロールの問題と大変関係するのですけれども、防衛費がふえて民主化が進んだということはないのですね。だから、防衛費をふやすことは民主政治、民主社会に対するチャレンジだと思っていいと思います。軍備とか防衛ということは情報公開をされることがない。されてしまえば敵に筒抜けたから、これは秘密があたりまえですね。だから、そういうものの予算がふえることは、制服組が力を大いに持つということですね。しかも、軍備はこれで終わりということはありません。たとえば下水道の設置なら、まあこれで整いましたということはありますけれども、軍備というものはもう切りがないのですね、そして、敵を破壊し、民主政治を破壊するものですから、やはりそういう軍備というものの予算を決してふやすべきでない、むしろ削減してもらいたい。  それから、行政改革の問題がしばしば出ておりますけれども、本当に一番簡単なのは、行政改革をやるためには税金をふやさないことです。そうしたら苦しくなって自然に行政改革はできる。それで、財政が苦しくなれば何のための財政かという議論が起きて、優先順位がついていきます。そうしたら、どこがむだだなんて言わないで、国民生活上一番大事と思うところから財政が配分されればむだなところにはお金が自然に回らなくなるから、黙ってほっておいても切れていくものなのですね。ですから、増税をして財政の規模が水ぶくれしていく限り行政改革はできないし、軍備もまたそこにつけ込んで広がっていくと思います。だからここで大事なことは、もう増税しない、財政をふやさないということです、ここ何年間かは。それがすべてを解決する一番簡単明瞭な行き方だと思います。
  49. 高橋正男

    高橋公述人 簡単にお答えいたします。  この農業政策の問題については、国会でもっと論議していただきたいということを要望しておきたいわけです。私たち都市産業労働者として秋田、宮城、その辺の農協、農業委員会の人々と懇談をしているわけです。その中で一番感じるのは、今日の農村の崩壊といいますか、そういう事態に対して危機感がないということですね。もっと農民の自主努力というものが必要だろうというのが第一点であります。  それから、三K赤字の中で米の問題ですが、確かに昨年の夏は冷夏でありまして、減産、まあ凶作というような事態でありましたけれども、日本の米の消費量というのは大体一千万トンぐらいだと私は予測しているわけであります。それが大体千三百万トンぐらい平年は生産される。それで、これを韓国なり開発途上国へ輸出しますと——政府の買い上げ価格がトン当たり大体二十九万から三十万。ところが、輸出するとなれば十万ぐらい、ひどいときになると五万ぐらいでありますから、どんどんどんどん食管赤字がふえるわけであります。これをどうやって解決するのか。率直に言うと、コミュニティー農業をつくり、転作へ移行していかなければならないのじゃないか。その場合に、農村はたしか四百六十七万世帯ぐらいだと思うのです。専業農家が大体百万前後です。そうすると、兼業農家は専業農家を犠牲にしているというふうに一面われわれもうかがえるわけであります。そういう点を考えると、やはりこの農村の保護というのを考えていくのが当然だと私は思うのですけれども、農民自身ももっと近代的な農業へと進めなければならない、進んでいかなければならないと思う。その場合は、食管制度見直しも当然必要だろうし、農地法の見直しも必要だろう。土地の流動化を図ることがまず必要ではないのか。そういう点について、いま土地というのを一つの資産として保有しているわけであります。したがって、住宅とか宅地の問題もその需要量が非常に高目になっている。やはりその辺に隘路があるわけでありますから、これは抜本的に改善していかなければならない。  防衛の方は、これは総合的なセキュリティーの一環だというふうに考えているわけです。防衛も、福祉国民生活を守る一つの役割りを果たすと思うのです。しかし、日本は軍事大国になんかなれっこないのです。とするならば、国連でどういう対応をするかという問題に持ち込むのが当然ではないか。国連に持ち込んだにしても、国連も余り力がないわけです。イラン・イラクのとおりであります。そうしますと、やはり日本はアメリカとの通商摩擦のように、防衛費に努力しないでアメリカにどんどんどんどん自動車や鉄鋼を輸出すれば、それは総合的にアメリカの場合は考えるわけであります。そうすると日本にそういう圧力になる。こういう相関的な問題もあるわけでありますから、この問題についてはやはり国民合意を求めながらやらざるを得ない問題だ。したがって、福祉国民生活を守るという総合的なセキュリティーの一面としての防衛の役割り、そういうものも位置づけておかなければならないのじゃないか、前の先生と若干違うようでありますけれども、私はそういう考えを持っていることを申し上げて、終わります。
  50. 渡辺保男

    渡辺公述人 ただいま御指摘がございましたように、私は具体的にどれということを申し上げる勉強はしておりませんので、御質問どおりにお答えすることはできないのでありますが、御指摘がありましたように、行政を一律的に削減等々いたしますと、本当に必要な分野についてもあるいは必ずしもそうでもないような分野についても一律的に行いますと、どうしても御指摘のように過疎の問題が出てくるわけであります。でありますからこそ行政実態に即して、地についた改革案がぜひ欲しいというふうに思っております。  そして、この行政運営におきましては、やはりコストがあるわけでありますから、それについて厳しく自制いたしまして、同じ経費でもそれのやり方によってはもっと有効に使えるのではないかとか、いろいろな観点から見直しをしていくことが必要ではないかと思っているわけであります。  そういうことになりまして、一たん動き出しますと、どうしても直接関係者にとりましてはいままでのに手を加えるわけでありますから、当然反対が起きてくるわけであります。しかし、それを全体の中に位置づけ、整序した形で行っていくというのは、先ほどお話ししましたようないろいろな政治リーダーシップも必要でありますし、それぞれの分野における世論バックアップとか、そういう各部門の協力とか、そういうようなことが必要であるかと思うのであります。  時間が十分ございませんで失礼でございますが、終わらしていただきます。
  51. 小山長規

    小山委員長 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  この際、一時間休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  52. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十六年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようにお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず木下公述人、次に谷山公述人、続いて佐藤公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、木下公述人にまずお願いをいたします。
  53. 木下和夫

    ○木下公述人 ただいま御紹介いただきました木下でございます。  それでは御下命によりまして、昭和五十六年度予算案について私見を述べさせていただきます。  昭和五十六年度一般会計予算の編成に当たりましては、昨年末閣議におきまして、第一に、経費の徹底した節減合理化に努め、特に一般歳出を極力圧縮することによりその伸び率を一けたにとどめる。第二に、公債発行額は前年度当初発行予定額より二兆円減額し、十二兆二千七百億円とするという基本方針が決定されたと承っております。このような政策前提のもとに税制改正の内容が検討されたものと存じますが、税の自然増収が約四兆五千億円と見積もられたわけでありますから、縮減することが不可能な歳出項目、すなわち国債費及び地方交付税の合計約十四兆四千億円余りを除いたいわゆる一般歳出を三十兆円余りまで縮減して、一般会計歳出総額を四十五兆二千億円余まで抑え込むことができたといたしますれば、租税の増収のための一切の措置は全くその必要がなかったわけでございます。すなわち、国債費及び地方交付税を除きました一般歳出の抑制には限界があるということで、さきに申し上げました三十兆円余りが、政府案では三十二兆円を超えることとなりました。そのため、不足分はこれを税収及び税外収入の増収措置で埋めなければならなくなったものと解釈をいたすわけでございます。繰り返して申し上げますれば、歳出抑制の努力が所期の効果を上げ得なかったことこそが、昭和五十六年度予算における増収措置を採用せざるを得ない基本的原因であると存じます。  さて、新年度予算編成において政策前提となりました公債発行額二兆円減額の方針につきましては、私は異論はございません。もちろん、公債を減額しさえすれば財政再建が可能となるとは一概には申せません。しかし、公債、特に特例公債の発行が巨額となり、それが継続するということは、財政の固有の機能でございます資源配分機能を著しくゆがめ、財政を硬直化させることになり、その意味で、公債発行の減額それ自体もこれを積極的に評価すべきであります。また他方、税の増収措置には限界があるわけでありますから、公債発行減額の方針を堅持すれば、歳出の縮減合理化を促進させる強い要因となるはずであります。したがって、公債減額の方針は、財政再建期間を通じて堅持さるべきであると考えます。  ところが、明年度政府予算案を点検いたしますと、財政構造改革のため歳出全般にわたる思い切った歳出の削減合理化とはなされていないというべきでありまして、あらゆる経費の根底からの洗い直しや、すでに目的を達成したと見られる施策の打ち切り、さらに、各種施策の厳しい検討は、残念ながら、まことに不十分であると考えます。確かに、歳出の大幅削減を行いますことは、既得権擁護の立場からの反対が強いでありましょうし、また、政府の中長期の経済運営の観点から言って、GNPの成長率にマイナス効果を及ぼすような歳出削減には、ある限界が存在することも否定できません。しかし、そのような配慮を行うといたしましても、新年度の予算案においては、いかなる理由によるにせよ、歳出の縮減合理化について、たとえば財政制度審議会の建議などを参考にいたしますと、明らかに不十分であると言うべき幾つかの項目がございます。  たとえば、いわゆる行政改革の推進について申し上げれば、果たして新規増員が厳しく抑制されたかどうか、また、行政減量経営という観点から行政の簡素効率化が積極的に推進されたかどうかに、大きな疑問があります。  また、補助金等整理合理化について申しますれば、総額で六千五百億円ふえることになると言われておりまして、社会保障や文教施策との絡みで減額しにくい項目があるとは申せ、既定の補助金等の抜本的な見直しや減額、統合、メニュー化、サンセット方式による終期の設定等における合理化はまことに不十分であると思います。  さらに、社会保障につきましては、まず医療費支出の適正化のための重要な検討課題である現物給付、出来高払い方式検討は全く行われておりません。また同時に、医療費の適正化のための有効な施策が織り込まれないとすると、将来増大する給付を賄うことが困難になりますのに、そのための施策は不十分なままに残されております。  他方、児童手当制度につきましては、児童養育費に関する基本的考え方についてかなりの混乱があるのをそのままにしておいて、年功序列型の生活給の性格を持つ賃金体系との関連や他の児童福祉施策との優先度の比較等の面からの基本的な再検討も放置されたまま残されております。  さらに、社会保障制度の全面にわたる所得制限につきましては、社会的に救済すべき真に給付を必要とするものに対象を限定するなど、給付の効率化、重点化を図り、かつ、一般納税者との間の社会的公正と所得階層間の公平を確保することを主眼として所得制限を強化すべきであると考えますが、わずかにその一部について行われているにすぎません。  さらに同じように文教施策において、教科書無償給与制度に関しましても、基本的には保護者負担の導入を検討すべきでありますのに、これも全く手がつけられておりません。  このように、いわゆる福祉の中の不公平が依然として残されたままでございます。  歳出予算案のうち若干の項目について以上のとおり意見を申し述べましたが、歳出の縮減合理化努力の成果はきわめて不満足な状態にとどまっていると判断せざるを得ず、このことが税による増収措置の規模を予想外に大きくした原因となっているというほかはないのでございます。  昭和五十六年度の税制改正案につきましては、以上申し述べましたような制約条件のもとで、現行税制の枠組みの中での増収措置を図らざるを得ないと存じます。  さて第一に、現行税制において中核的な地位を占めております所得税制度は、その課税最低限、累進構造のほか、総合課税の徹底化のためのいわゆるグリーンカードシステムの創設等をあわせ考慮いたしますと、形式的には、確かに先進諸国に比べすぐれた制度となっております。しかし、実質的には、課税所得の把握について所得の種類別に相当の格差があり、一般に給与所得等に比べてその他の所得はなかなかつかみにくいと言われて久しいのであります。この問題は、税務行政上の欠点というよりも、むしろ申告納税制度のもとにおいて自主申告を行う納税者自身の問題であると考えますが、実はこの問題こそ、わが国における課税の不公平の最も中心的かつ基本的な問題であります。  今回の税制改正に関連いたしまして、納税環境の整備が図られると聞いておりますが、このような措置だけで問題が解決するとは期待できますまい。したがって、所得税を増収の対象とすることは新たな不公平を拡大するおそれがあり、この意味で、明年度の税制改正におきましては増収措置を所得税に求めることを避けるのが適切であると存じます。  次に、増収措置を求める税目といたしましては法人税が考えられますが、百十数万社に及ぶ法人のうち、利益を計上し、納税している法人はその約半数にすぎないと承っております。このような状況のもとで法人税の増率を行うことは、第一に、赤字法人には何の関係もなく、むしろ納税法人に対してその経営努力にペナルティーを課する結果となること。また第二に、欧米諸国ではスタグフレーション対策としていわゆる供給管理重視の立場から、企業の設備投資を刺激し、生産性を高める目的で、むしろ法人税負担を軽減するための措置を採用しつつあること。さらに第三に、法人税は企業にとって他の生産要因への支払いと並んでコスト要因であり、生産物価格の引き上げや生産要因の価格引き下げ等の形で消費者や勤労者などに転嫁されるおそれがあること。これらの諸点を考え、私は、法人税の税率引き上げには必ずしも賛成いたしかねます。しかし、さきに申し上げましたように、どうしても巨額の歳入不足が避けられないということであるならば、改正案程度の二%の税率引き上げならばやむを得ないと判断をいたしております。  また、法人税の所得計算に関連をいたしまして交際費課税が強化されることは、近年における巨額の支出交際費への社会批判を考慮すれば妥当な措置でありますし、また、金融機関の貸し倒れ引当金の繰入率の引き下げも、貸し倒れの実態から見て異論はございません。  なお、中小法人の軽減税率の適用範囲を引き上げることは妥当な措置だと考えます。  また、酒税の税率引き上げにつきましては、酒類が嗜好飲料であること、酒類の価格上昇に伴い税負担率が低下している等の点から、これを承認したいと存じます。  物品税につきましては、昭和四十八年以来課税対象の見直しが行われておらず、近年あらわれてまいりました物品の中には、新規に課税物品として取り込むべきものが増加しておりますので、これらの主要なものについて、負担の激変緩和のための暫定税率を適用して増収措置を講ずることに異論はございません。  さらに、流通税関係において、印紙税につき定額税率、階級定額税率及び最高価格帯の見直しを行うこと、及び有価証券取引税について資本市場への影響に配意しつつ若干の増率を図ることは、いずれも、明年度の歳入状況を考えればやむを得ない措置であると存じます。  以上、個別税目の改正について申し述べましたが、財政再建に踏み出すべき昭和五十六年度予算案について論議を行う場合の最も重要な問題は、次の二点にあると考えます。  すなわち第一には、明年度予算だけを取り上げて論ずるのではなく、いわゆる再建期間の全体において明年度予算を位置づけ、さらに望むべくんば、昭和六十年度以降の財政の姿をも展望しつつ判断を下す必要があるということでございます。  第二には、人口構成の急速な高齢化の進行に伴う社会保障、特に年金、医療のあり方について、また、社会経済の変動に伴う教育産業に対する政府役割りあり方について、いかに対応していくか、また、そのために増大する国民負担をどのように配分するかという問題を、財政構造の根本的見直しという観点から論議を深めることであると考えます。  以上で終わります。(拍手)
  54. 小山長規

    小山委員長 どうもありがとうございました。  次に、谷山公述人にお願いいたします。
  55. 谷山治雄

    ○谷山公述人 ただいま御紹介にあずかりました谷山治雄でございます。  昭和五十六年度予算全体につきましては、軍事費の増額や社会福祉の制限や増税、いろいろ問題がございまして、このような視角で予算の編成が行われておりますことは、今後国民生活に大変大きな影響を与えますので、大きな問題であろうと存ずるわけでございます。ただ私は、私の研究の対象は主に租税、税金問題でございますが、時間の関係もございますので、主として税金の問題、とりわけ日本国民の税負担の問題と所得税の問題を中心に私の意見を述べさせていただきたいと存じます。  まず、従来、財政当局あるいは税制調査会等の論議を通じまして、現在の増税政策合理化する大きな根拠として国際比較という問題が一つございます。要するに、日本の国民の税負担率は非常に低い、こういう評価が一つございます。この問題について一つ申し上げたいことと、もう一点は、所得税の減税が四年間行われない結果どういう問題が起こっているかということを、単に物価調整減税という視角だけではなしに、むしろ憲法に沿っての減税、言うなれば合憲減税と申しますか、言葉は適当であるかどうかわかりませんが、憲法に合致した減税と申しますか、そういった問題に焦点を当てて申し上げてみたいと存じます。  まず第一に、国際比較の問題でございますけれども、果たして日本の税負担が低いかどうかという問題がございます。もちろん国際比較と申しますのは、為替レートとの関係やいろいろな国民生活水準や所得水準やあるいは租税制度の差異やらいろいろな問題がございますので、私の結論的な意見から先に申し上げますと、国際比較というのはあくまでも参考にすぎないのでありまして、租税制度を考える、税制改正を考える場合には、国民生活実態なり国民経済実態なりからしかるべき租税政策あるいは税制改正が必要であろうと存ずるわけでありますが、それを一つ前提といたしまして、これから若干、数字を並べて申し上げてみたいと存じます。  まず、マクロ的な観点でございますが、昭和五十六年度の税収予算によりますと、国税、地方税を含めましたわが国の税負担率は国民総生産、GNPに対して一九・四%という数字になるわけでございます。これが欧米先進国に比べて低いという問題があるわけでございますが、実は租税構造の面で非常に特徴的なことは、わが国の場合にはヨーロッパ諸国のようないわゆる一般消費税に該当する税金がございませんので、これによって税負担率にかなり違いが出てくることは当然のことでございます。もちろん私は、現在の段階で一般消費税の税金に反対でございますし、これから申し上げることが一般消費税の導入を決して合理化するものではございませんけれども、一応数字の上で申しますと、たとえばこれは一九七八年度、昭和五十三年度の数字でございますが、西ドイツの場合はGNPに対する税負担率が二四・九%になっているわけでございます。このうち、いわゆる一般消費税、正式な名前は付加価値税でございますが、付加価値税のGNPに占める割合は五・七%でございますので、それを差し引きますと、西ドイツの税負担率は一九・二%と相なるわけで、日本よりも若干低くなる見当になってまいります、同様にフランスの例を引きますと、同じく昭和五十三年度、一九七八年度の数字でございますが、GNPに対する税負担率は二三・二%となっておりますが、このうち付加価値税のGNPに対する比率は九・一%でございますので、それを差し引きますと一四・一%となり、日本の税負担率よりもはるかに低くなってまいります。イタリアの場合も、同様に計算いたしますと一五・七%と、やはり日本よりも低くなってまいりますので、マクロ的な観点から申しますと、日本の税負担率は決して軽くはないという結論に到達せざるを得ないと私は思うわけでございます。  一般消費税の欠如につきましては、そのかわり日本の場合には生活に関する物価が大変高いわけでございますので、これについては購買力平価その他の観点がら別途検討をする必要があると存じますが、要するに私の申し上げたいととは、財政当局が盛んにおっしゃっておられる国際的な税負担が低いという数字には承服しかねるという、そういう観点もあるのではないかということを第一点で申し上げてみたいと存じます。  次に、ミクロ的な観点から申し上げますが、時間の関係上細かい数字は極力省略させていただきたいと存じますが、たとえば所得税について国際比較をいたしますと、年収三百万円の夫婦子供二人のサラリーマンを例にとりますと、現在日本の所得税、住民税の負担率は三・九%という数字がございます。同じように西ドイツと比べますと、これは為替レートの関係もございますが、一応財政金融統計月報という資料に基づいて申し上げるわけでございますが、同じ収入のサラリーマンは八・七%という負担率になり、日本の約倍以上になるわけでございますけれども、一方、西ドイツの場合には、扶養控除がないかわりに児童手当が無税で入ってまいりますので、これを扶養控除として考えまして児童手当を所得税から差し引きますと、実に〇・二%の負担にしかなりません。つまり、日本の同じ年収のサラリーマンの二十分の一近くにしかすぎないことになるわけでございます。  同様の比較はほかのものにもあるわけでございまして、たとえばOECDで昨年、「世界の典型的な労働者の税負担率」という統計を出しておりますけれども、これを見ましても、日本のサラリーマンの所得税の実質負担率は決して軽くはな。い、むしろ重いと言ってもいいわけでございます。  こういうように、国際比較というのはいろいろな角度からできるわけでございますので、国会でもぜひひとつ、いろいろな角度から国際比較について御検討をいただいて、これが絶対という比較は私はないと存じますので、いろいろな角度からひとつ御検討を願って、国際比較から見て日本の税負担は低いという断定はぜひ避けるようにしていただかなければいけないのじゃないか、かように考えているわけでございます。  次は、国際比較の問題から離れまして、日本の税負担実態の方から申し上げてみたいと存じます。  まず第一に私が強調いたしたいことは、御承知のように昭和五十三年度以来所得税の減税を中止している結果、どのような問題が起こっているかということを、別の一つの角度から申し上げてみたいと存じます。  御承知のように、現在、夫婦子供二人の課税最低限は二百一万五千円という数字になっておるわけでございますが、これは言うまでもなく給与所得控除を含めましたサラリーマンの課税最低限でございまして、万人に共通する課税最低限というのは、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の基本的人的控除であるわけでございます。これは御承知のように一人当たり二十九万円でございますので、夫婦子供二人で百十六万円という数字になります。一方、昭和五十二年度の生活保護法による生活保護費を見ますと、東京都の例で、四人世帯で百十四万一千三百六十八円でございまして、このときには夫婦子供二人の人的控除よりも多少下回っておったわけでございます。ところが、御承知のように、今回の昭和五十六年度予算で申しますと、東京都の四人世帯の生活保護費は百六十一万九千七百十二円、百六十二万円になってまいりますので、これは現在の基本的人的控除をはるかに上回る水準ということになってまいるわけでございます。そうなりますと、生活保護を受ければ無税で、一定収入が入る生活保護程度の所得を得ると税金がかかる、こういう問題になってまいりました。これはヨーロッパでもポバティートラップという言葉で呼ばれておりまして、貧乏のわなというような意味でございますけれども、非常に重要な問題であると存じます。  御承知のように、憲法二十五条に基づきます国の社会保障の義務を具体的にあらわしたのが生活保護法でございますので、所得税の基本的な人的控除につきましては、少なくとも生活保護費程度の水準までは上げるような努力をしなければいけないのじゃないか。そこで、私は合憲減税という言葉を申し上げましたけれども、憲法に合致するような減税が必要ではないか、かような主張をしたいわけでございます。  ついででございますが、給与所得者の課税最低限も現在二百一万五千円でございますけれども、現在のように生活保護費が年率八・七%の水準で上がっていくと仮定いたしますと、昭和五十八年度には生活保護費の水準は百九十一万三千八百円、約百九十二万円になりまして、まさに給与所得者の課税最低限に接近をしてくることに相なるわけでございます。  そこで話を戻しまして、時間の関係もございますので要点を申し上げたいと存じますが、仮に現在の基本的人的控除つまり基礎控除、配偶者控除、扶養控除の四人家族で百十六万円を生活保護費の百六十二万円の水準に到達させるためには、課税最低限を四十六万円引き上げなければいけないことになるわけでございますけれども、これを仮に所得控除という方法ではなくて税額控除という方法でやり、しかも低所得者層に適正な方法でやるといたしますと、所得税の税率を一〇%と仮定いたしますと、四十六万円の課税最低限引き上げは四万六千円の税額控除引き上げが必要だということになってまいります。一人当たり一万一千五百円という税額控除になってまいります。  さて、話を変えまして、物価調整減税、そういう角度からこの問題を別途考えてみますと、これも時間の関係上簡単に数字を申し上げますけれども、年収三百万円の夫婦子供二人のサラリーマンは、減税をしないことによりまして所得税の負担率が一・九%から二・五%に上がることに相なります。もしこれを仮に昭和五十五年度の一・九%の水準に据え置くといたしますと、結論から言いますと、一人当たり四千七百円の税額控除による減税が必要でございます。同じく年収五百万円のサラリーマンで申しますと、五・四%の負担率が六%に上昇をいたしますので、これも負担率を同じように抑えますと、一人当たり一万五十円の税額控除が必要になってまいります。  さて、以上のように、一つの考え方は、生活保護費の水準に近づけるという問題が一つございます。もう一つは、物価調整減税を考えるという問題がございます。  以上の観点から考えますと、相当規模の所得税の減税が必要になるわけでございますけれども、どのくらいの財源になるかということを私なりに、現在いただきました大蔵省の税収予算に基づいて計算いたしますと、いわゆる納税者の本人が四千四十四万人、配偶者が千六百万人、扶養控除を受ける者が三千八百三十三万人で、合計九千四百七十七万人のいわゆる控除対象者がいるといたしますと、仮に五千円の税額控除で四千七百三十八億円の財源が必要である。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕 一万円の税額控除であれば九千四百七十七億円の財源が必要である。足して二で割るというのは決して科学的なお話ではございませんけれども、足して二で割れば約七千億円程度の減税が必要である、こういうような数字になってまいると存じます。  そういうわけで、私の申し上げたいことは、やはり生活保護費を基本的な人的控除がはるかに下回っている、そういうことを反映して、労働者、サラリーマンを初めとした国民生活が非常に苦しい、そういう現状があるわけでございますから、もちろん財政再建という大きな問題がございますけれども、所得税の減税につきましては、昭和五十六年度の予算並びに税制改正におきまして格段の努力をお願いしたいと考えるわけでございます。  時間の関係で、あと二、三申し上げて終わりにしたいと存じますけれども、さて、税制全体を考えてみますと、個々の税制改正についていろいろ問題がございますけれども、一つの問題点は、不公平税制の是正につきましては、これは大蔵省当局から範囲が非常に狭く限定をされておりますので、引当金とかあるいは支払い配当の軽課措置であるとか受取配当の問題であるとか、範囲を広く考えまして、不公平税制の是正につきましては一段落したというのでなくて、さらに一歩突っ込んで是正には当たっていただく必要があるのではないかと考えます。  第二の点でございますけれども、大変これは例が悪いのでございますけれども昭和二十二年に、ずっと昔のことでございますけれども、非戦災者特別税という税金がございました。どういう税金がと申しますと、簡単に申しますと、要するに戦災を受けなかった人が一定税金を納めることによって戦災者を救済しようという税金であったわけでございます。もちろん、その中身はいわば大衆課税的な性格が強かったわけで、私もそれには反対であったわけでございますけれども、しかしながら、考え方といたしましては、現在の財政再建を考えます場合に一つの経済的道徳的な観念として、終戦直後の非戦災者特別税のような考え方も導入していいのではないか。つまり、過去の高度成長と赤字国債政策のもとでのいわゆる資本の蓄積、利潤の増大、そういったものにかんがみまして、ここでそういった富める者から税金を取って貧しい者に回すという、そういう終戦直後の非戦災者特別税のような、一つの経済的道徳的な考えに基づいた課税というものを考えてもよろしいのではないかと考えているわけでございまして、具体的に申しますと、個人、法人を問わず、言うなれば一種の蓄積の国民への還元と申しますか、あるいは平等化といいますか、そういった観点をぜひひとつ御検討を願いたいと思うわけでございます。  最後に申し上げたいことは、私もそういう数字に関する専門家ではございませんので何とも申し上げられませんけれども昭和五十六年度の税収予算を見ますと、法人税、物品税等を中心にしまして、大変自然増収の見積もりが過小であると見受けられるのでございまして、自然増収の見積もりを低目に押さえるということは財政当局にとってはそれなりに理由があると思いますけれども、いかんせん、昭和五十四年度の税収予算に比べますと低過ぎる感じがいたしますので、そういう意味では、増税を一層進めていくということについてはやはり非常に疑問があるわけでございます。  以上で私の公述を終わりたいと思います(拍手)
  56. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、佐藤公述人にお願いをいたします。
  57. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 佐藤誠三郎でございます。  近年国際情勢が不安定化している、またソ連の軍事力が全世界的に、そして東アジアにおいても著しく増大しているということを背景にいたしまして、安全保障の問題が最も重要な政治課題の一つとして浮かび上がってまいりました。もちろん安全保障というのは総合的かつ多面的なものでございます。防衛力のみで日本の安全を確保し、国民生活を安定させるということができないことは申すまでもございません。しかし、現在の国際情勢は理想的なものからほど遠く、したがって国家の独立のためにも、国民生活を守るためにも、防衛力の整備が最低限度必要であるということもまた、申すまでもございません。しかも、率直に申し上げまして、これまでのわが国の安全保障政策の中で最も欠陥の多い手薄な部門が防衛力の整備計画であったということを、私は申し上げなければならないと思います。  そこで、以上のような観点から、私は五十六年度予算案の中で、とりわけ防衛関係経費について私見を申し述べたいと思います。  御存じのように、現在の政府の防衛政策は、昭和五十一年に閣議決定されました「防衛計画の大綱」に従って作成されております。「防衛計画の大綱」と申しますのは、東西関係及びわが国をめぐる国際関係が基本的に安定している、悪い方向へ向かっての大きな変化はないということを前提といたしまして、また、日米安保条約が円滑に機能しているということを前提にいたしまして、その上でわが国が独立国として備えなければならない必要最小限の防衛力の水準を示したものでございます。  当時と比べまして現在、東西関係ははるかに緊張しておりますし、中東も、さらに東アジアにおいても、国際関係は決して改善方向に向かっておりません。特に中東において情勢は著しく厳しくなっております。このような情勢の変化がありながら、閣議決定後四年以上たった現在、なお「防衛計画の大綱」が、表面的な員数合わせのレベルでも、実現からほど遠い段階にあるというのが実情でございます。このことは、私は率直に申し上げまして、これまでの政府の怠慢であったと言わなければならないと思います。  防衛庁は、内部資料といたしまして、一昨年の七月に五三中期業務見積もりというのをつくりました。そして、昨年の八月にこれを見直しております。五十六年度予算案の中の防衛関係経費は、この五三中期業務見積もりを前提にしてつくられていると私は理解しております。  私が特にここで強調しなければなりませんのは、この五三中期業務見積もりというのは五十九会計年度までを見通した計画でございますが、これが仮に全部実現されたといたしましても、まだ「防衛計画の大綱」の水準までにはかなりの距離がございます。特にわが国の安全保障上きわめて重要な海上自衛隊の兵力と航空自衛隊、この二つの点において「防衛計画の大綱」が前提としている水準を大幅に割り込んだものでございます。  このように非常に控え目な中期業務見積もりの水準から考えて、五十六年度予算案がどのような内容を持っているかということを少し検討してみたいと思います。  五十六年度予算における防衛関係費は、全体として約二兆四千億でございます。これは人件費の問題もございますけれども、前年度に比べて七・六%のアップということになっております。これをさらに内容別に見ますと、正面装備関係が四千五百八十六億で、前年度に比べ一七・七%と相対的には大きく伸びております。さらに、後方支援関係経費が七千九百七十億円、前年度比八・六%のアップになっております。これに対して、人件、糧食費関係は前年度化四・〇%の上昇に抑えられております。私は、限られた防衛予算の中で言いますと、このような配分は適当なものであろう。現在の自衛隊において弱いところ、不十分なところはいっぱいございますが、最も不十分なところは正面装備でございます。そして、緊急に充実されなければならないのも正面装備でございます。その点で申し上げますと、来年度の防衛関係予算の配分はほぼ妥当なものと言ってよろしいかと思います。  そして、もしこの予算案どおりに執行されますと、五十五年度及び五十六年度の両年度において中期業務見積もりは、正面装備に関する限りほぼ三〇%実現される。すでに申し上げましたように、中期業務見積もりは五十五年度からの五カ年の計画でございますので、最初の二年間で約三〇%が実現されるということになります。そこで、残りの三年間にこれを一〇〇%実現するためには、正面装備に関してだけでも今後なお一層の増額が、少なくとも今年度と同じ程度の上昇率で行われる必要があります。  しかも、私がさらに強調したいと思いますのは、中期業務見積もりというのは、正面装備を中心とする業務見積もりでございます。防衛力というものは、正面装備だけで有効に機能するものではございません。そのほかにさまざまな施設、努力が必要でございます。そういうものが全体として、一体となって有効な防衛力が実現するわけでございます。その意味では、正面装備の充実のみではとうてい不十分であります。  特に、わが国の防衛力の現状を考えますと、次の諸点が緊急に整備されなければならないと私は考えます。  第一は、防衛施設の抗堪性を強めることであります。特にレーダーサイト、航空基地、ミサイル基地等に信頼できるシェルターが用意されなければならないと思います。このような費用が中期業務見積もりの一覧表の中には少しも出ておりません。この点は特に強調しておきたいと思います。  さらに、有効な自衛力の発揮のためには、指揮通信能力が十分強化されなければなりません。近年、防衛マイクロ回線網が次第に整備されておりますが、なおそれはきわめて初歩的な段階にとどまっております。高速で高機能で、かつ多重化された防衛マイクロ回線網の整備が緊急の課題であろうと思います。  第三点は、後方支援体制の整備でございます。とりわけ補給、整備、輸送能力を強化することが緊急に必要であろうと思います。わが国の自衛隊の弾薬その他の備蓄の水準はまさに寒心にたえないという水準にとどまっております。  第四番目は、自衛隊の、特に陸上自衛隊における充足率の向上でございます。現在、御存じのように陸上自衛隊の充足率は約八六%でございます。この充足率はきわめて不十分なもので、陸上自衛隊全体が十八万人というふうに限られておりますので、そのさらに八六%、つまり実質は十五万人強のレベルにとどまっております。現在の自衛隊員に対する給与その他の待遇が現状のままでとどまっている限り、この八六%という充足率を著しく上げるということはきわめて困難であります。その意味で、充足率の向上のためには自衛隊員の給与その他の待遇の改善が不可欠であろうと思います。  さらに、このことと関連いたしまして、予備自衛官制度も現状よりさらに充実されなければならないというふうに考えております。諸外国の例を見ますと、どこでも、少なくとも常備兵力と同程度の予備兵力を持っております。たとえばイギリスの場合ですと、常備兵力は十六万四千でございますが、予備兵力は十八万人に達しております。西ドイツの場合には、常備兵力三十三万五千に対して予備兵力は実に八十万という状態でございます。ところが、日本の自衛隊の場合、常備兵力十八万、これももちろん達成率八六%でございますが、これに対して、予備自衛官制度というのがございますが、これはわずかに四万二千六百人でございます。この四万二千六百人というのは、五十六年度の予算において千人の増員が認められた、その数を含めての数でございます。しかも、予備自衛官の訓練日数は、わが国の場合、年わずかに五日でございます。諸外国の場合、それは少ない場合でも十日、普通は二十日前後を義務的な訓練日数に充てております。その意味でも、わが国の予備自衛官制度がいかに不備なものであるかということが御理解できるだろうと思います。  さらに私は、研究開発費の増額が、しかも急速な増額が不可欠であろうと思います。来年度の研究開発費は総額約二百五十億円であります。これは今年度に比べまして二十五億円の増額、約一〇%のアップになっております。一〇%でも増額されたことは大変結構でございますが、わが国の国情に合った兵器、しかも専守防衛というわが国の基本防衛政策に合った兵器、しかも水準のきわめて高い兵器を整備するというためには、わが国が独自に兵器の研究開発に取り組む必要が絶対にございます。そして二百五十億円という金額は、その現実的な必要、要請から見ますと、余りにも少ない費用であると言わざるを得ません。  以上のような、私が特に強調しました点は、ほとんど中期業務見積もりの一覧表には出ていないものでございます。そして、このような出ていない部分が十分に充実されないと、たとえ、いかに陸上自衛隊の師団がそろい、航空自衛隊の戦闘機が最新式のものが整備されたとしても、それは見かけだけのものになります。そういう必要最低限度の正面装備が十分に機能し、日本の安全、国民生活の安全を守るためには、いま私が申し上げましたような隠れた経費の隠れた部分の充実が絶対に必要でございます。  以上のような隠れた部分の充実も含めて中期業務見積もりを期間内に達成するためには、五十九年度までには、これが現在の中期業務見積もりの一応の終わりの年度でございますが、防衛費をGNPの比率にして一%程度にまで上げなければならないだろう。もちろんこれは、GNPの伸び率をどう考えるかによって多少変わりますし、GNPの中での比率を問題にすること自体は余り意味がない、問題はあくまでも実質の内容でございますが、しかし、一応の基準として必要な経費を概算いたしますと、少なくとも中期業務見積もりの終わる五十九年度までには一%に達することが、正面装備の一通りの充実のためにさえも不可欠であります。いま私が申し上げましたような、意味のある防衛力を整えるためには、恐らくさらにもう一段の努力、私の非常に雑な計算では、大体においてGNPの一・五%程度が必要ではないか。逆に申し上げますと、それ以上は必要ではないというふうに考えております。その意味で、昭和五十一年に「防衛計画の大綱」で示されました、当面GNPの一%以内という防衛費のシーリングは当面はやむを得ないと思いますが、長期的には再検討の必要がある。  さらに言いますと、「防衛計画の大綱」自身が、この数年間の国際情勢の変化を前提としているものではございません。ソ連の軍事力の急速な増大や、中東における国際関係の著しい不安定化を前提としないでつくられたものでございます。その意味で申し上げますと、「防衛計画の大綱」自身の見直しも、将来の課題としては当然政府及び国会において真剣に取り組むべきものであろうと思います。  ただし、私は、現在はあくまでもまだその段階に達していない。現在の課題というのは、残念ながら「防衛計画の大綱」を実現する手前の中期業務見積もりを実現する第一歩である、そういう水準に現在あるのだ。しかも、この「防衛計画の大綱」というのは、世界の他の国々と比較した場合に最も控え目な防衛力である。こういうのが日本の防衛力の整備の現状であるということを繰り返し申し上げておきたいと思います。  以上で、私の意見の開陳を終わらせていただきます。(拍手)
  58. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 どうもありがとうございました。     —————————————
  59. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 これより各公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨田利太郎君。
  60. 鴨田利太郎

    ○鴨田委員 初めに、木下先生にお伺いします。  第一問としまして、税制調査会が昨年十一月に中期答申を出したが、今回の政府の税制改正は同答申の考え方に照らしてどう評価されるかにつきましては、先ほどの先生からのお話によりましてもわかりました。先生のお話を聞いておりまして、要するに税の増収もやむを得ないだろう。しかし、次に問題は、国民に税負担の引き上げをお願いする前に歳出の徹底した節減合理化を行う必要があると思うが、この点について今回の予算を先生はどう評価しておるでしょうか。  私が思いますところは、明治以来、本当に政府財政再建に取り組んだ例は三回あります。それは、明治天皇の威光を背にした松方財政、次に浜口総理とがっちり組んだ井上財政、そして最後がGHQの銃口のちらつく中でのドッジ・ラインの節減。こういう中におきまして、相当の勇断をふるわないと——いまの日本の状態を見ますと、たかりとばらまきの民主主義の中にどっぷりつかっておるいまの日本にどういうふうにしたらそれが実現できるか、この点もまたお聞きしたいと思います。  そしてまた、アメリカでは新しくレーガン大統領が、向こう三年間減税することによって国民の活力を生み出すのだ、こういうふうなことを言いました。また、それを実現しようとしていますけれどもわが国はGNPに対するその歳出比率が非常に高くなっておりまして、税収入が一〇・七%に対して、わが国の歳出は一七・二%になっておる。これを縮める方法としては、アメリカの場合のような減税の仕方では無理なんじゃないか、活力がなかなか出てこないのじゃないか。しかし、国民は減税を求めているわけでございますので、その点どういうふうに整合性を持っていったらいいのだろうか。国民が納得しながら、要するに活力を生み出す増税をしていったらいいのだろうか、こういうことでございます。  それからまた、あとは不公平税制の是正でございますけれども、それは制度の不公平、それから制度の執行の不公平、こういうふうに分かれてくると思いますけれども、これを徹底的にしなければなかなか財源は確保されないと思います。しかし、増税を行わなくてもいい、こういうふうな意見もまた、そこに出てまいります。それで、その件について先生のお考えをお聞きしたいと思います。  それから、財政再建法について一つお伺いします。  西ドイツでは、政府が所得税の減税案を国会に提出すると、野党のキリスト教民主同盟が国債依存度を下げるからだめだと言って反対をします。国柄が違うわけであります。国債をどんどん出せば、必ずこれはインフレになります。そのインフレの恐ろしさというものを日本人は少し知らな過ぎるのじゃないか、ここでもってはっきりと国民にそれを訴えていく方法というのはどういう方法がいいのだろうか、そういうふうに思いますと同時に、財政再建法というものを西ドイツはつくっているわけでございます。また、それで成功したわけでございますけれども、日本の場合にはどうなんだろうか。先ほど先生は、六十年以降の国債返済につきましても見通しを立てた方がよいというような御調を承りましたので、それについてお聞きしたいと思います。  それから、谷山先生にお願いします。  私は先ほど聞いておりまして、付加価値税は税金じゃないんだ、こういうふうにおっしゃいますが、やはり付加価値税も回り回って私たちのふところから出ていく金でございます。そうしますと、GNPに対する税は、付加価値税を税として見た場合に、西独、フランス、日本を比較すれば日本は非常に低くなっておることは、先生は御存じありませんか。私は付加価値税は税であると思うのでございますけれども、その点ひとつ改めてお聞きしたいと思うわけでございまして、年収三百万円の夫婦子二人の給与所得者の所得税の負担率を考えますと、日本の場合には六万六千円、アメリカの場合には二十二万四千円、イギリスの場合には五十六万八千円、西ドイツが二十六万二千円、フランスでは七万円、こう計算されております。  もう一つ、最後佐藤先生にお聞きします。  GNPに対する日本の防衛費。現在非常に緊迫した社会の中におきまして、私たちは専守防衛を完備していかなくちゃなりません。先生は大体一%まではいいんじゃないかとおっしゃっておりましたけれども、一%で果たしていいかどうか、その辺のところの問題。  それから、民間防衛をどういうふうに考えていったらいいのだろうか。スイスなんかでは各個人個人の家にちゃんと銃を備えつけておきまして、一年に一回ずつ国民が全部訓練をするわけでありまして、わが国も、いかに平和国家といえども、自分の国は自分の手で守る、この原則を国民にしっかり知らしてやらなかったら、いかに専守防衛を唱え近代化装備をしましても、やはりこれ旭日本の国を滅亡に導くことになりますので、この点ひとつお聞きしたいと思う次第でございます。
  61. 木下和夫

    ○木下公述人 それでは、ただいまの鴨田先生の御質問にお答え申し上げます。  第一に、昨年の十一月に政府税制調査会がいわゆる中期答申を出しました。その中期答申の観点から見て、五十六年度の税制改正のあり方と申しますか、あるいは案件になっております諸問題はどのように評価をするかという御質問であったと思います。  御承知のとおり、昨年十一月の中期答申は、昭和五十九年度までに税制としてはどういう措置を講じるかを具体的に検討いたしまして、幾つかの前提を置きました。その前提の一番大きなものは、歳出削減合理化というものを積極的に進めるということでございますが、その場合、一般会計の歳出をGNPの伸びを上回らない程度に抑えるという一種の歯どめをつけたわけでございます。これは昭和五十六年度について申しますと、目下のところ名目GNPの伸びは九・一%と相なっておると思いますが、大体この辺に歳出の増加を抑えることはできましたけれども、私はなお引き続いて歳出削減努力をしていただきたいと思います。  それから第二の前提は、国債、特に公債、特に特例公債を年平均二兆円程度減額するという再建計画の一つの前提でございますが、これは財政の建て直しをやりますために、先ほど公述の際申し上げましたように、そのこと自体が直ちに財政再建につながるものではございませんけれども、歳出を抑制するという有力な刺激として必要であり、かつ国債を減額することは財政の硬直化を防止するという意味できわめて必要な政策前提であろうと思います。  さらに中期答申は、歳出総額に対する国税の収入の割合を八割程度というふうにみなしておりますが、私自身はもっと厳密には九〇%あるいは九五%であってしかるべきだと思います。諸外国の例を徴して米国は九三・四%、イギリスは約八〇%、西独が八〇・四%、フランスは九二・八%というふうな数字を並べましても、これは十分意味のある数字でございますが、八割ということを一応財政再建期間のめどとして考えた。これはやはり税の増収措置にも一種の限界があるだろうということからの一種の妥協とお考えくだすっても結構でございます。そこからはじき出されました数字、国民総生産の三・一%というのが所要の税収でございまして、そのうち約一%は憤然増ということで期待されるので、ネットの増加が二%という計算になったわけでございます。  私はこの中期答申の作成には参加をいたしましたので、十分この辺は議論を詰めましたし、今日もこの議論に大筋としての間違いはないと思いますし、今回の税制改正の考え方はこの答申に沿うものとみなしております。  第二番目に、それでは今回の歳出削減合理化はどの程度うまくいっておるかという御指摘でございますけれども、これは先ほども例を挙げて申しましたが、私は思い切った歳出の削減合理化には成功していないというふうに、考えております。その圧力がいわば増収措置ということになってはね返ってきておるという感じがいたします。  それから第三の御質問は、このようなかなり大きな規模の増税経済に悪い影響を与えないかという御指摘でございます。しかもそのときに、米国などでは、供給サイドの経済学というものから供給管理という方向へ需要管理から話が移っていって、特に法人の設備投資を刺激する、貯蓄を刺激するさまざまの措置のために減税すら考えられておる。これは米国だけではございませんで、ヨーロッパ諸国もそのような方向に進んでおるのに対してどう思うかという御指摘でございますが、確かに公債を二兆円減額いたしましたことは、不況の意味がございます。これは昭和五十五年度と比較をいたします限りでは、公債というのはインフレ的でございますから、それを減らすということは反インフレ的、言いかえればデフレ的な要素があるということは否定できません。しかし、これは経済運営及び予算編成の基本方針として決まったことで、先ほど申しましたように、私はこれを支持しております。  あと、さまざまの御意見があり、財政による有効需要の側面から見て、ケインズ経済学的な意味から言うとどうも不況色が若干あるのではないかという御指摘は財界その他から出ておりますけれども、私は、増税の内容を点検いたしまして、景気に対して強いデフレ効果を持つとは思っておりません。しかも、増収措置はすべて歳出として国民経済の中に支出されるわけでございますから、この面においてのデフレ効果というものはない。そうしますと、残ります問題は、二兆円公債発行減額が、強いて言えばデフレ効果の最も主要な原因であると思います。ただ、御存じのとおりわが国の現在の財政は、景気調整の役割りを担わせるには余りにも脆弱な体質まで低下をしております。ここで財政に対して景気調整の負担を負わせるということはできない相談でございまして、残る問題は、恐らく金融政策その他で不況対策を講じていく、いわば経済政策全体として講じていくということがわれわれに残された課題であろうと考えております。  それから、最後の御質問は不公平税制の問題にお触れになりましたが、私は、日本の税制上の不公平としばしば言われますけれども、むしろ課税面における不公平が非常に目につくと思います。税制の面におきましては、たとえば社会保険診療報酬の所得計算の特例というものが五十四年度に改正されまして、少なくとも現在のところは五千万超について五二%の控除率を適用しておりますが、これはほぼ実態に近い状況までいっているのではないか。もちろんこれは今後見直さなければなりませんが、その是正の一歩は大幅に進められたと解釈をしております。  それから、株式の譲渡益の課税などが非常に緩やかであり過ぎるという御意見もございますが、これは現実の問題としては執行上の困難が非常にございます。現在のところは年に二十回以上でございますか、特定の金額以上を超える取引があったものについて申告納税をすることになっておりますが、これをもっと厳重にする方向に進むべきだと思います。ただ、その場合は、利子配当課税の総合課税のために先般法律が通りましたいわゆるグリーンカードシステムに似たようなものをあらゆる資産についてやる、とにかく株式についてもこういうことをやらなければなりません。具体的な問題といたしましては、たとえば無配の株式については名義書きかえをしないという方が相当いらっしゃると思いますが、そういうものをどのようにしてとらえるかというような細かい問題が、今後煮詰めなければならない問題として残されていると思います。  このような問題以外に、税制上の不公平と言うときに、しばしば法人税における不公平ということが論ぜられますが、私ども考え方では、不公平には二種類ございます。大体似た所得あるいは課税標準の人たちには大体同じような税負担をかけるという、いわゆる水平的公平の問題、それから、所得やその他が非常に違っておる場合には高い方にはたくさんの税負担をかけるという垂直的な公平の問題、この二つがあろうかと思いますが、とにかくわが国では、現在不公平と言われている問題の中で、特に水平的な不公平というものが非常に強く打ち出されておる。たとえば、給与所得と営庶業の所得の間に税負担の差があるではないか等々の問題でございまして、この問題は、私はむしろ水平的不公平の問題として世の中の関心が集まっていると思います。  ところが、法人における不公平の議論というのは公平論の中心テーマではない。言いかえれば、公平というのは租税負担能力を基礎にして申しますから、最終的に租税を負担する人のレベルで議論をしなければならないと思います。そうすると法人税は、先ほども意見として申し上げました中に触れておりますが、何らかの形で転嫁をするということは多くの方が認められております。たとえば生産物の価格の上昇として転嫁をするという可能性は大いにあるわけでございます。したがって、法人税そのものを大法人とか中小法人という形で公平論から議論をするということは、少なくとも租税理論的には意味がない。むしろ個人を中心にして公平論を議論すべきであるというふうに私どもは考えておるわけでございます。それは基本的には、租税の負担は最終的には個人が全部負担をするのだという基礎に立っております。  そこで、不公平税制と言われますけれども、私は、現在のところの不公平というのは課税の不公平であり、しかも申告納税制度を前提にして申しますと、自主的に申告をする納税者の問題というふうに考えております。往々にして役所が発表いたします資料には、税務行政上の隘路、困難があると言っておられますが、それは確かにございましょう。しかし、税務行政が調査をどうするというような問題よりも、基本は、申告し納税する納税者個人の問題というふうに考えておるわけでございます。これを何とかして是正しなければ、とうてい不公平税制のそしりは免れない。そのためにはどんな方法があるかということを考えていただきたいと思うわけでございます。もちろん、そのように所得をガラス張りにするというようなことはわが国の国情に合わないという議論もございましょう。特に、商売などをやっております方々に接触をいたしますと、妙味のない税制というものは真っ平御免だ、働く意欲も起こらないという話を聞きます。もしそれが事実でございますれば、不公平税制を改めて公平に持っていくという努力に対して、私どもは水をかけられたような気持ちになる。何かいい方法を考えなければいけないと思います。それで、この方法をどのような形で推し進めるかはこれから検討をしなければいけませんが、制度と執行面のギャップと仰せでございましたけれども、この責任を執行だけの責任に押っかぶせるという考え方は私は持っておりません。  最後に、財政再建法の問題について御質問がございましたが、確かに西独の場合はうまくいっております。うまくいっておりますが、わが国の場合、こういうようなものをつくって何らかの長所があるとすれば、歳出の削減、あるいは削減ができないという場合にはこれだけの歳入の増収措置を講じなければならないという、歳出入の両側面にわたる判断を求めるのに非常に客観的あるいは十分な御議論ができるという意味で、あるいは国民がこれを納得するという意味で財政再建法をつくるならばメリットがあろうかと思います。しかし、現在のところ、わが国でどのような歳出とどのような歳入というものを対称的に置くかという具体の問題になりますと、なかなかこれは事務当局も困っておられる問題でございますので、私は直ちにはこれを期待することはなかなかむずかしいのではないかと思っておりますが、できますればこういう法律が完備して、そして国民の前にはっきりと歳入歳出両面の問題が明らかになるということが望ましいと考えております。  以上でございます。
  62. 谷山治雄

    ○谷山公述人 お答え申し上げます。  私が先ほど申し上げました主要なポイントは、いま日本の税負担を論ずるに当たりまして国際比較ということが盛んに言われて、統計が出ているわけでございますけれども、これはもちろん間違いということではなくて、非常に一面的であるということを私は先ほど申し上げたわけでございます。たとえば日本の税負担率が低いという場合には、先ほど申しましたように、日本にはいわゆる一般消費税という税体系がございませんで、そのかわり、非常に高い物価という状況国民が置かれている。そういうことを考えて税負担率を論じませんと、ただ数字の上だけでもってGNPに対する負担率が日本は欧米に比べて非常に低いということを論じますと、日本の税負担率は大変低いということから議論が出発して、いわゆる増税合理化されることになりますので、その点が一つ重要ではないかということを先ほど申し上げたわけです。したがいまして、日本に一般消費税がもし仮に不幸にして導入された場合に税負担率がどうなるかといいますと、これは恐らく相当程度欧米諸国に接近をするということになってまいりますけれども、その場合に、それでは現在の物価高とか、あるいはEC等からウサギ小屋なんという批判もございますが、そういうような生活状態でどういうふうに問題になるか、そういう総合的観点から論じませんと一方的になるのではないかというのが、私の先ほどの付加価値税に関する議論でございます。  それから、第二の所得税の問題でございますが、これは時間の関係上、実はお答えしますと長くなるわけでございますけれども、先ほど先生の示されました数字は恐らく大蔵省等が作成した数字であろうと存じますが、給与所得者に関しましては、御承知のように制度がまるで違います。日本の場合には給与所得控除という制度で縛られているといいますか、それしかない。ところが、アメリカとか西ドイツとかフランスを見ますといわゆる実額控除制度というものがあるわけで、俗に言う必要経費の算入ということが認められているわけでございます。  そこで、ここでは、時間の関係もございますし、手元に資料もございませんので簡単に申し上げたいと存じますけれども、もし国際比較をミクロの段階でするならば、たとえばアメリカの給与所得者については住宅ローンの利子控除がございますし、あるいは転勤その他の費用の控除がございますし、あるいはまた、固定資産税や小売売上税の税額相当分の控除がございますし、いろいろな控除があるわけでございますから、一つの例として、日本のサラリーマンの場合には給与所得控除から税額を算出して、さらにいろいろなベネフィットといいますか、住宅取得控除であるとか、そういう控除を引いて最大限どのくらい税額が安くなるかを考えてみる。同様にアメリカ、西ドイツについても考えられ得る一切の控除を差し引いて、それで日本と比較してみる。そういうような比較をいたしませんと、ただ大蔵省の数字のように概算控除だけを計算して、日本のサラリーマンの税金は安いという比較は、私は間違いとは言いませんけれども一面的ではないか、そういうことを申し上げているわけなんで、ぜひ先生方の方で大蔵省の方へお命じになりましていろいろな資料をお寄せになって、いろいろな角度から国際比較というものを御検討願いたい。そうしませんと、ただ低い、増税してもいいんだということでは国民は浮かばれないだろうというのが私の意見なんでございまして、ひとつさように御了承願いたいと存じます。
  63. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 お答えいたします。  まず最初の、防衛費が一%でいいかという御質問でございますが、私がすでに申し上げましたように「防衛計画の大綱」というのは、日本にとって必要最低限の、ぎりぎりのものである。これを昭和五十一年度に策定しながら、現在までその実現が、正面装備に関してさえも十分どころか、はるかにその以前の水準にあるということは政府の怠慢であると申しました。もし政府があのときに、一%未満というのを一%にきわめて近い水準の防衛支出を続けていたならば、現在はすでに、少なくとも正面装備に関する限り「防衛計画の大綱が」、全部とは言いませんが、かなりの水準まで実現していただろうと思います。そのことは、わが国の安全にとってきわめて望ましい状態ができつつあるということになっていたのではないかと思います。  ところが、もし来年度予算においてGNPの一%まで防衛費を上げるということにいたしますと、来年度のGNPの見込みは二百六十五兆円程度でございますから、二兆六千五百億円という防衛費になります。これは今年度の防衛予算二兆二千三百億円に比べますと、実に四千二百億円の増額でございます。もちろん、この額も諸外国の水準から比べればまだまだきわめて低い。たとえばフランスと比べますと、日本の防衛費はフランスの半分以下でございます。ですから、諸外国の水準から比べればきわめて低いものでございますが、それでも前年度に比べますと実に一九%のアップになります。  財政再建がきわめて重要な課題であるときに、防衛費だけ単年度で一九%上げるということが果たして実現できるであろうかということを考えますと、実現可能性という面で、とりあえずは一%に徐々に近づいていく。しかし、それだけでは不十分である。長期的には一%の水準についての見直しが必要である。そもそも五十一年に行われた閣議決定自身が「当分の間」ということでございますし、その間に国際情勢はかなり変化しておりますので、見直しをしても閣議決定の精神そのものに反するというものではないと私は理解しております。  それから御質問の第二の点でございますが、民間防衛の問題をどう考えたらいいか。私は、防衛問題というの位政府だけがやるべき問題ではない、国民がそれぞれに努力をしなければいけないという御質問の御趣旨は、そのとおりであろうと思います。しかし、現在の日本で何が必要か。それは民兵をつくることではない。練度と士気とにおいて低く、きわめて初歩的な装備の民兵をつくることではないと私は思います。現在の日本で何よりも必要なのは、士気と練度の高い、少数ではあるけれども精鋭な専門家集団をつくることである。そして戦争を未然に防止する。そして、もし不幸にして発生した場合には可能な限り水際で侵略を防止するというのが、わが国がまず何よりも努力しなければならない点であるというふうに私は思います。  その点から申し上げますと、可能な経費とエネルギーの中での配分順序の問題といたしましては、私は率直に申し上げまして、いま先生が御指摘になったようなタイプの民間防衛、スイスで実現しているような国民皆兵といった意味での民間防衛は順序が低いものであろう、その前になすべきことがまだ多くあるというふうに考えます。  ただし、日本の家庭がそれぞれに、生活必需物資をある量備蓄することは絶対に必要なことであろう。これは何も軍事的な意味での有事の発生のみでなくて、地震等を含む大規模災害のためにも、そういう備蓄体制というものが各家庭単位で十分に行われるということは、国民生活を守るという意味できわめて望ましい。そういう意味で申し上げますと、たとえば地下室の建設等を現在よりもはるかにやりやすいようにする配慮が法的にも必要であろう。建築基準法その他をこの観点から改正するということは真剣に考慮されなければならないというふうに考えております。  以上、お答えいたしました。
  64. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 次に、野坂浩賢君。
  65. 野坂浩賢

    ○野坂委員 公述人の皆さん、大変どうも御苦労さまでございます。お疲れでございますが、きわめて簡単に御質問を申し上げたい、こう思います。  初めに、木下先生と谷山先生にお願いいたします。  木下公述人のお話をいろいろと承りました。いま私が聞きたいと思いますのは、五十六年度の予算について二つの点がある。一つは二兆円の国債の減額、もう一つは経費の節減問題、これが目玉だったけれども十分でなかったというお話であります。  お話しのように、国民はこの予算を見て、財政再建のやり方は四つあるというふうに思っております。一つは、経済企画庁長官であります河本さんがよく言いますが、景気を発展させて自然増収でやるんだ。それから二番目は、先生もおっしゃるように経費の縮減、圧縮、抑制、こういうことをやれもう一つは、この二つを絡み合わせるんだ。もう一つは、いわゆる増税を行うということに方法としては考えられるだろうと思うのですね。政府は、いろいろ渡辺さんは言っておりますけれども増税で賄ってきた、一兆三千億となった。木下先生は暫定税率としてはやむを得ぬというようなお話でありましたが、一番問題になるのは、そういう経費の節減ということがやられていないということが強く主張されたわけでありますから、いま政府が考えておる一般消費税ですね。先生も最後に指摘されましたように、この五十六年度予算だけで見なくて、将来をやはり展望して見なければならぬ。そのときにやるべきことをやる。経費の節減、不公平税制の是正、こういうものをやっていかなければ国民は乗ってこない。したがって、そういう意味を含めて、いま庫出し説とか一般消費税ということが言われておりますが、そういうことを精査をして、見直しをして、洗い直してやらない限りは国民の合意は得られないではないかというふうに考えるわけですが、どうお考えでしょうか、お答えいただきたいと思います。  それから谷山先生にお尋ねをしますが、自然増収というものに過小見積もりがあるのではないか。お説のように、今度の補正予算を見ますと、約一兆円の補正予算を組みました。七千三百億円にわたります所得税の増収もいたしました。中期財政計画を見ましても、渡辺大蔵大臣はこう言いました。公務員の給与のアップを一%しか考えておりませんので非現実的であります、こう言っておりますね。補正予算というものは当然考えておるということなんです、内幕は。そうしますと、自然増収は先生が見て、四兆五千億を見ておりますが、どのように見ていらっしゃるのか、こういうことが一つ。  それから、富の再配分ということをお話しになりましたが、富の再配分の中で、もちろん不公平の是正というのは、大きく言ってクロヨンとかトーゴーサンピンとかいろいろ言われておりますが、そのことを中心にして引っ張り出す方法、捕捉をする方法、そういうことがあれば具体的にお示しをいただきたい。  それから、これは谷山先生にもう一つ伺いますが、木下先生もお話しになったのですが、法人税を、ミクロ的に見るとその税負担が物に転嫁をするのではないかというお話がありましたけれども税金を法人税として払わないために、たとえば給与の引き上げや雇用の増大や、そういうこともある程度、税金を払うならといって考える企業だってありますね。そういう意味で、いまの法人税の二段階制というのを三段階制ということに考えたらいかがなものか、その点についてはどうお考えだろうかと思います。  もう一点は、労働時間の問題ですけれども、欧州の労働者はわれわれに対して、ウサギ小屋とかあるいは働き気違いとか、同じようなレベルまでと言う。日本の場合は二千百時間ですね。アメリカの場合は千九百三十四時間ですか、欧州、フランスや西ドイツの場合は約四百隙間も違う。こういう点と、今日の経済大国にまで発展をした要因を考えて、週休二日制というものは考えていかなければならない時期に来ておるのではなかろうか。そして正常な競争という国際的な要望もこれあり、国内の勤労者の皆さんの要望も強い。こういう中で、もう大勢としてはそこに踏み切るべきではないだろうか。そうすればもっと雇用の創出もでき、そしてGNPもある程度上がってくるということも言い得るではないのか。将来の経済の動向から見て、労働時間の問題についてはどうお考えかということです。  それから、最後佐藤先生にお伺いしますが、防衛論をお話をいただきまして大変参考になりましたが、いまの業務見積もりを一年繰り上げというような問題もいろいろございますが、ここに資料はありませんけれども、私たちが試算をした中では、五十八年にGNPの一・〇五%にまで達するじゃないか。閣議では一%以内ということになっております。午前中の公述人の中で暉峻先生は、防衛問題について、防衛というのは無限の抗争になる、むしろ危険をあおることになっていく、これでいいというものはない、したがって、みんなが、国民が合意をする社会保障等は、それは合意するからやるのだが、平和憲法の中でわれわれが役立たせるものは経済協力をして、日本は戦争しないんだというような憲法があるのだから、それによって安心して経済協力も受けられる、こういうお話をされたわけであります。先生は将来は一・五%もというようなお話もありましたが、それについて、どこを削減をしたらいいのか、たとえば社会保障とか文教とか公共事業等もありますが、どこを圧縮しようとお考えになっておるのか、その辺をお伺いをしたいと思います。
  66. 木下和夫

    ○木下公述人 それでは、野坂先生の御質問に対してお答え申し上げます。  前段でお話しになりましたことは、私の述べました意見に対しての御賛成がと思われます部分の御陳述でありましたので、それは省略いたしますが、今後歳出節減に徹底的な努力を傾けるということを前提にいたしますと同時に、さらに、税制上不公平がある幾つかの問題点について強力にその是正に取り組むということを前提にして、なお大幅な財源不足ということが生じますかどうか。これは一にかかっていまの二つの点の努力のいかんによろうと思います。したがって、どちらになるか、私には想像はできません。いわば可能性を二つ出して、この場合にはこうというようなお話を申し上げる以外にないわけでございますが、歳出の節減合理化がどの程度行われるかのめどがおよそ立って、それでもかつ財源の巨額の不足を生じる場合には、何とか現行税制の枠内で処理する方法がないものかをまず最初に考えるべきだと思います。  そのときに中心は、現在の所得税で課税の公平を図るような措置を強力に推し進める。その間に、これは恐らくグリーンカードよりももっと強い、いわば所有する資産や所得についての厳重な調査や公開ができるようなシステムをつくらなければなりませんが、これが一体社会の人々に受け入れられるかどうかについて若干の危惧がございます。そうしますと、現行税制を外れて別途に税制を考えるという場合に、考えられますのは、個人の所得、法人の所得及び消費支出という三つになるわけでございますから、個人の所得、法人の所得で増収措置がとれないならば、やむを得ず消費支出にいかざるを得ないという判断になろうかと思います。  もちろん、一般消費税(仮称)というものは、いまは問題を取り上げるような機会でもございませんが、いわゆる一般消費税というのは分類上の税の性質を示した言葉でございまして、固有名詞ではございませんが、この中にはおよそ四つか五つくらいの種類があろうかと思います。大きく分けまして、単段階で課税をする。これは庫出し製造の段階と卸売の段階と小売段階という消費税が考えられます。これは一つの段階で課税をする。それから、他方におきましては多段階で課税をする。これは御承知のヨーロッパの付加価値税あるいはヨーロッパにかつてございました取引高税というようなものでございます。この中から納税者の納得を得られるような税というものを考える以外に道はないのではないかと現在のところ思っております。しかし、この種の消費支出に対する課税は一切だめだというようなことでございますれば、これは一切あきらめなければなりません。  そうすると、私が心配しておりますのは、昭和六十年以後の日本の財政運営というのは、特例債の償還が始まります。六十何年かになりますと国債整理基金特別会計の残高はゼロになる可能性がございますが、一体どのようにすればいいかということについて、私はただいまのところ成案はございません。
  67. 谷山治雄

    ○谷山公述人 大変広範な御質問でございますので、時間の関係もあると思いますので、ひとつ要点をお答えさせていただきたいと存じます。  まず第一点は、自然増収の問題でございます。これはもちろん言うまでもございませんが、経済状況がどういうふうになるかということに依存いたしますので、あくまで予測の域を脱しないわけでございますけれども、それにしましても、昭和五十六年度の税収見積もりにおきます自然増収は、法人税と物品税におきまして特に過小であるということを非常に痛感をするわけでございます。  もう細かい数字は一々申し上げなくてもよろしいかもしれませんが、昭和五十五年度におきます法人税の自然増収一兆六千億円に対しまして今回一兆二千億円と、四千億円少なくなっているわけでございます。ところが、その中身を見ますと、法人所得の伸び率といいますのは、昭和五十五年度については一二%増、今回一〇%増ということで、そんなに大きな差がございませんので、私は、なぜこのように四千億に近い過小見積もりが出てくるのか、非常に不思議に思っているところでございまして、これは卸売物価等の上昇が今年度は昨年度よりも緩やか、上昇しないので、恐らくそういうことでもって自然増収の見積もりが過小になっているのではないかと思うわけでございます。先ほど先生も御指摘になりましたように、昭和五十五年度におきまして相当大幅な自然増収が出てまいりましたし、昭和五十四年度におきましても、所得税、法人税合わせますと一兆五千億円程度の当初予算に比べての増収が出ておりますので、今回の五十六年度の自然増収見積もりは非常に少ない。法人税につきましては、昨年と同額までいかないにしても相当程度の自然増収を見込んでよろしいのではないかと私は考えているわけでございます。  それから、物品税につきましても非常に目立つわけでございまして、昨年は当初予算に比べて二四%、約二千三百億円の自然増収を見積もっておるわけでございますが、今回は千百億しか見積もっておりません。これは物品税の構造から申しますと、どちらかと申しますと消費支出伸び率よりも弾性値が多少高くなるというふうに考えられますので、私は、この物品税の自然増収ももう少し多いのではないだろうかと考えているわけでございます。  そういうわけで、もちろん所得税も問題がございますけれども、法人税、物品税両方を通じますと、少なくとも四千億円かそれ以上の自然増収の過小見積もりがおるのではないだろうか。もっともこれは、言うまでもございませんが、過去に二度、当初予算より下回る税収実績だったという例もございますので、財政当局とすれば慎重を期するということはそれなりにわかりますけれども、しかし、それにしても少し過小見積もりだという感は否めない事実でございます。これは経済見通しの関係もございまして、予測ということになるのでむずかしい問題ではございますけれども、やはり何か、今回一兆三千九百億円の増税合理化するために過小見積もりしたという感が率直にいたしますので、その辺はひとついろいろな角度から御検討をお願いしたいというふうに考える次第でございます。  それから次に、第二の問題でございます税の不公平の問題については、先生御指摘のようにフローの面から、所得の面からの不公平が一つと、もう一つはストックの面、つまり財産の面からの不公平がございます。言うまでもございませんが、所得における不公平というのは、結局は財産における不公平ということに帰着をするわけでございまして、先ほどの木下先生のお話もございましたように、フローの面における不公平ということももちろん大きな問題ではございますけれども、ストックにおける不公平ということは非常に大きな問題になっているのではないか。こういう席上で大変俗流的なことを言うようで申しわけございませんけれども、たとえば昨年、二億数千万円もするマンションが十一戸売り出されて即日完売になる、しかも買った人のほとんどがローンを使わない、こういう事実を見ますと、私は、財産というものが一方に偏在をしているのではないか、そういうことを感ずるわけでございます。富の再配分につきましては、所得の面、フローの面での不公平の是正はもちろん大切でございますけれども、同時に、ストックの面、蓄積の面での再配分も非常に必要ではないだろうか。  そこで、時間の関係もございましょうから二つだけ申しますと、一つは現在の企業、とりわけ大企業と言ってもよろしいと思いますが、非常に大きな蓄積があるわけで、たしか四年前だったと思いますが、和光証券という証券会社の調査によりますと、第一部に上場している会社の含み資産、つまり時価評価の資産と帳簿価額との差額が百二十兆円ある、そういう資料が出ているわけで、それだけの膨大な蓄積をしている。そういうことに着目をして先ほど非戦災者特別税という例を申し上げたのでございますけれども、そういうような蓄積に着目した富の再配分ということも考えてよろしいのではないか。  それからもう一つ、個人の問題につきましては、これも御承知のように、所得二千万円以上になりますと財産目録を提出することになっているわけでございます。これは御承知のように罰則のない義務でございまして、出さない人もかなりいるということでございますが、所得二千万円の人を中心にする財産調査を徹底的にやって、そういった蓄積に対する課税というものを考えたらよろしいのではないか。こういういわゆる財産税につきましては、執行上の不合理ということが理由になりまして、とりわけ書画、骨とう、宝石類等のいわゆる不表現資産に対する課税がむずかしいという理由でいつもたな上げになっているわけでございますが、財政再建、同時に国民生活の安定、両方とも必要な時代でございますので、一歩踏み込んだ富の再配分についての税制度についてお考えを願う必要があるのではないだろうか、かように考えます。  それから、第三点でございますが、法人税の問題は、先生の御意見は三段階程度にしたらどうか、そういう問題でございます。御承知のように、アメリカの場合には五段階の法人税率になっているわけで、最低一七%から最高四六%の税率になっているわけでございます。私は、アメリカのまねをしろとは申し上げませんけれども、もう少し段階を考えることは当然必要ではないかというふうに考えております。これが三段階がいいか、四段階がいいか、あるいはアメリカのように五段階がいいのか、それはまた、いろいろ御判断があると思いますが、もっと段階をつけることは大変結構だというふうに考えております。  それに関連しまして、法人税を転嫁するという問題がございます。実は租税論の観点から申しますと、すべての租税は転嫁する可能性を持っているわけでございますので、転嫁という問題を絶対的に考えますといかなる税制改革も不可能になる、こういうことになりますので、転嫁の問題は転嫁の問題として、税制改革の問題としてはその問題は一度考慮する必要はありますけれども、絶対視する必要はないのではないだろうかと考えます。  なお、それに関連いたしますけれども、法人税の累進課税は、所得の規模の大きいような企業、資本の規模の大きい企業に非常に不利であるし、そういう累進課税をすると会社の分割等で租税回避が行われる、そういう意見がございますけれども、会社の分割による租税の回避というのは、タックスヘーブンに対する立法がすでに例がございますので、そういう技術的な方法でもって防止はできますし、また、経済効果から申しますと、むしろ大企業集中を防ぐという意味で効果があるわけでございますから、これは税の面とは別でございますけれども、累進課税というのはそういう意味で技術的にも可能でありますし、また、経済効果からいっても、集中をある程度排除するといいますか、防ぐという意味ではむしろ経済民主主義に合致するのではないだろうかというふうに私は考えております。  それから、第四番目の御質問でございます。これは税の問題ではございませんけれども、週休二日制というお話がございました。確かに私も、何回かヨーロッパへ参りますと、統計ではあらわれません生活の差というのをひしひしと感ずるわけでございまして、御指摘のように、また、ECの委員会で言われましたように、確かに働き過ぎということでございますので、週休二日制は官庁、銀行いろんな問題があると存じますけれども、私の個人的な見解としましては、そういう週休二日制という労働時間制はぜひ早急に実施していただきたい。これによって雇用が促進されることは言うまでもないと存じます。  最後に、以上の御質問の総括でございますけれども、結局、私の考えますには、日本の経済をどのように発展をさしていくかという観点の御質問が一つ基底にあると存じますけれども、従来の高度成長に対します反省というのは、どうしても輸出増強、設備投資、この二本を柱にした高度成長であって、これがいろんなオイルショックで挫折をしたり摩擦を起こしているわけでございますから、私としましては、消費の向上を中心とする経済発展ということをもっと重視すべきではないだろうか、そういう意味では先生の御提案に賛成でございます。  以上で一応お答えにしたいと存じます。
  68. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 お答えいたします。  御質問の趣旨は、もし中期業務見積もりを実現するとすると、五十八年度中に防衛費の割合はGNPの一・〇八%ぐらいになるんではないかという御質問を前提となさいまして、その上で、戦争はしないという平和憲法の精神に基づいて、安全保障は主として経済協力を中心にしてすべきである、そして防衛力の増強は軍拡の悪循環を引き起こす、もし増強する場合にどこを圧縮したらいいのかというのが御質問の御趣旨だと思います。  私は、試算について細かいところは、意見が必ずしも同じではございませんけれども、中期業務見積もりを達成するためには、一%まで防衛費をふやすことは不可欠だろうというふうに考えております。その点では、先生の御指摘はそのとおりであろうというふうに思っております。それが五十八年に一・〇八になるのかどうかという細かい点については、必ずしもそこまで私は正確に意見が同じだとは申し上げられませんけれども、大まかな見通しとしてそうであろうというふうに思います。  平和憲法で戦争はしないという精神というのは、きわめて重要なものでございますし、私は全く賛成でございます。そして経済協力ももっと充実すべきである、その点も全く異議はございません。ただし、最初に申し上げましたように、経済協力だけでわが国の安全が保障されると考えるのは明らかに偏っているというふうに私は思います。それは、自衛力だけでわが国の安全が保障されるというのが偏っていると同じように、偏った考え方だというふうに私は考えております。  それから、防衛力の増強が軍拡を促進するということは、これはきわめて一般的、抽象的にはそういうことが言えなくはございませんけれども、現在の日本をめぐる国際情勢を考えますと、私は率直に申し上げまして、それは論点の筋違いであろうというふうに思います。  まず、事実問題といたしまして、一九六〇年代後半からアメリカを中心とした西側諸国は、日本を含めてですが、軍事費、ただし日本の場合は防衛費ですが、その増額に対してきわめて消極的でございます。ほぼ同じ水準をたどってまいりました。つまり、事実上軍拡をストップしたわけであります。西側がこのように軍拡を事実上ストップしたにもかかわらず、ソ連はこの間一貫して、ほとんど直線的に軍事力を増強してまいりました。その結果が、七〇年代後半における東西の軍事バランスの、西側に不利な形での変化となって表面化したわけでございます。つまり、少なくとも過去十五年ないし二十年の経緯を見れば、西側の軍事費増額に対する自制的態度は、ソ連の同じような自制的態度を呼び起こさなかった。この事実をまずわれわれは認識しなければならないというふうに思います。  第二に私が申し上げたいことは、ソ連との間に本当に名誉ある国際関係、そして平和な国際関係を樹立するためには、わが国がもう少し自衛力をつけた方が望ましい、その方がソ連にとって日本が交渉し得る相手になると私は考えたいのです。私は、ソ連との間にも友好な関係が樹立さるべきであると考えております。現在の日ソ関係ははなはだ望ましくない状態にあると思っております。そのためにも自衛力のある程度の増強が不可欠である。それなしに名誉ある国際関係をソ連との間につくることはきわめて困難だというふうに私は考えております。  ですから、自衛力を強化することは、戦争をしたいためではなくて、戦争を避けるためにするのだ、自衛力の強化が戦争への道につながるというのは、私は論理の飛躍であるというふうに考えております。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕  以上を前提にいたしまして、それでは、将来防衛費をふやす場合にどこを削るべきかということでございますが、そういう具体的な問題の前に、現在の予算の中で、あるいはGNPの中で防衛費の占める割合がどの程度であろうか、来年度予算において防衛費はわずかに五・一%であります。それは社会保障費の一八・九%、公共事業費の一四・二%と比べますとはるかに小さな額であります。そしてGNPに対する割合は恐らく〇・九一%にすぎない。これはソ連、中国のような社会主義国は言うまでもなく、他の西側先進諸国と比べてもきわめて少ない割合であります。もし来年度直ちにGNPの一%まで防衛費が上がったとします。そうしますと、それは現在ここに提出されております予算に対して二千五百億円の増額になります。この二千五百億円の増額というのは、一般会計予算三十二兆円の中のわずか〇・八%弱にすぎません。もし、私が申し上げた程度の規模の自衛力の増強が、国家の独立と国民生活の安全のために絶対に必要なものであるとすれば、一般会計予算額の中のわずか〇・八%弱のものが捻出されないわけはないというふうに私は考えております。
  69. 小山長規

    小山委員長 次に、草川昭三君。
  70. 草川昭三

    ○草川委員 公述人の皆さん、大変御苦労さまでございます。私は、木下先生に問題点を二、三点にしぼって簡潔にお伺いをしたいと思いますから、よろしくお願いを申し上げます。  先ほどのお話の中で、景気刺激を財政に求めるには財政の基盤が非常に貧弱ではないだろうか、こういうお話がございました。そこで、今度の予算を見ましても、一般歳出を一〇%以下に圧縮をいたしておるわけでございます。いわゆる政策目的が非常に優先になっておるわけでございまして、景気刺激等の問題がいわゆる財投にずいぶん逃げておるのではないかという問題提起を私は持っておるわけでございます。  そこで、財投のあり方と本予算との関連が今後どのようになるのかということをまずお伺いをしたいわけでございます。特に財投原資というのは非常に不安定要因というのがあるわけでございますし、特に年金財政等も考えますと、いずれは現在のような制度というものは限界に来るわけでございますので、ひとつ財投のあり方関連をして先生のお考えはどうか、これをまず第一にお伺いをしたいわけです。  第二は、先生も税の負担の問題についていろいろお話がございましたが、いわゆる公的年金だとか社会保障負担を合わせまして、租税負担率は一体将来どの程度を限界と見られるのか。これはヨーロッパ等にもずいぶんいろいろな例があるわけでございますが、そのような問題を含めてお話をお伺いしたいと思います。  それから三点目に、先生のお話の中では、目的を達したと思われる施策というお話がございましたが、主として何を指されるのでしょうか。あるいはまた、福祉の中にも不公平なものもあるのだというようなことがございましたが、これは所得制限等で若干の問題提起がここのところ出ているわけでございますが、一体何が具体的に不公平な問題点として御指摘されようとなすったのかお伺いをしたい、こういうように思います。
  71. 木下和夫

    ○木下公述人 草川先生の御質問は、三点に要約できると思います。  第一は、財投の問題と本予算との関係でございますが、従来財投について私が感じておりました印象は、かつて一兆円予算という時代がございまして、一般会計に持っていきにくいものを、一般会計を余り大きくしないために財投に振りかえをして、そして金利の負担、利子補給をやっていくというようなやり方で財投がふえてきたという歴史的経過を私は強く印象づけられておりますけれども、これは原資から見ましてどうしても公的資金でございますので、住宅とか生活環境の整備とか厚生福祉あるいは文教、さらには中小企業、農林漁業等のいわば公的資金の低利融資というところに集約をされるべきであり、いわゆる一−六分類で申します諸項目でございますが、そのほかに、公共的にやるべき国土保全とか道路とか地域開発等々についてもやはり財投をうまく運用していくということが、これは一般会計予算と並んで、当然国の施策として図られるべきことだと思います。  その中で、昭和五十六年度の財投計画をおおよそながめて見ますと、原資の伸びというものも余り期待できない。しかも、御承知のとおり相当金額を国債の消化に充てるわけでございます。そのために、さまざまな施策に対する融資の金額は必ずしも順調にふえておりません。その増加率をごらんになればおわかりになるように、それほど大きな幅でふえているものは少なくて、むしろ減少したものもあるというようなこともあわせて考えることができると思います。したがって、本予算と財投の関係は相互協力と申しますか、そういう関係でながめていかなければなりませんが、ただ、現在のところは、ことしも恐らく補正で公債を引き受ける金額がふえることになろうかと思いますけれども、来年度も、こういう困難な財政状況でございますので、財投でもってこれを消化していくということにならざるを得ないという感じを持っております。  それから、年金その他の資金の運用でございますが、これは理屈から申しますと、自主運用ということが抽象的な言葉としては望ましいことでございますけれども、実は実際に自主運用をするということは、その当局にとって非常にむずかしい問題でございますので、これはいわば話し合いのもとに、それぞれの利害関係者が集まってその運用の適正化を保持していけば、私はそれで十分ではなかろうかと思っております。  それから、第三番目の問題から先に言わせていただきますが、福祉関係の問題であったと思います。福祉の中の不公平という言葉を私、使いました。それは御指摘のとおり、まず所得制限が一番大きいと思います。しかし、医療制度の中にもあると思います。たとえば、老齢であれば、所得の金額いかんにかかわらず無料というようなことが推し進められれば、まさにそれは私は、福祉の中の不公平ではないかと思います。  それから、失念いたしましたが、第二番目の問題は、社会保険料及び租税負担と合わせまして適正な負担率というものがあるのかというお話でございました。実は適正な負担率というものは恐らくないと思います。それは一にかかって社会保障制度状況、それから一般歳出の状況によって決まるわけでございます。しかし、私どもは、税の問題だけからこれを攻めていきますと、将来の社会保障の動向、老齢化の進行等をながめますと、財政再計算が年金について行われました資料だけからも驚くような負担の増加が出てまいりますけれども、そこまでいかないうちに何とか処理をしたい。そのために選ぶ方法は、恐らく給付を抑えるか社会保険料を上げるか、あるいは第三番目はその両方を何とか妥協させるという方法ではなかろうかと思いますが、いまから将来を見通しまして第三の方法を選ぶ以外に道はなかろうと思います。したがいまして、御質問にありますように、負担の最高限というようなものを私はただいまのところ考えておりませんので、これは一般施策社会保障の今後の状況いかんによって弾力的に考えていかなければなるまいと思っております。  以上でございます。
  72. 草川昭三

    ○草川委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  73. 小山長規

    小山委員長 次に、寺前巖君、
  74. 寺前巖

    ○寺前委員 御苦労さまでございます。  木下公述人に、ちょっと私、聞き漏らしたのかあるいは誤解をしているかもわかりませんので、最初にお聞きをしたいと思います。  一つは、行政簡素化について、いま政府のやっているやり方では本当にやる気があるのかどうか疑問だという御指摘があったと思うのです。私はそういうふうに聞いたわけですが、行政簡素化にもいろいろありまして、たとえば、労働基準監督署に行きましていろいろ工場の問題を聞いてみると、いや、人手がなくてやれませんという話になって、十年、二十年に一回行けたらいいかどうかの監督です、こう言うわけです。あるいは国立の病院に行きますと、看護婦さんがおらない、医者がおらぬから、部屋敷、ベッド数を減らさなければならない。こういうところでは、簡素化ではなくして充実化ということになると思うわけですね。ですから、行政の機構改革あるいは行政の問題ということになってくると、かなり現実的に過密過疎を分析してやらなければならぬと思うのですが、公述人が御指摘になった、いまのやり方に疑問があるという問題点は、何を想定して現実的提起をしておられるのかをお教えいただきたいというのが一つです。  それからもう一つは、教科書の話で、保護者負担をやるようなお話に聞こえたのですが、これは一体どういうことなんだろうか。国際人権規約を批准するときにも、日本の教育費、特に高等教育に対する問題として、それは無償ですべて教育を受けさせるようにすべきだという問題提起がされていると思うのです。ところが日本の現実は、やはり父兄負担が多いとか、いろいろの問題もあります。そういう状況の中で、国際的に進めでいっている方向と、現に公述人が提起される問題というのは、どこにこの問題があるんだろうかお教えをいただきたいというのが質問です。  それから次に谷山公述人に。先ほどから木下公述人も、あるいは谷山公述人も、税の負担の公平という問題に対する見方について、垂直型やら水平型やら、あるいはまたストック云々という問題、いろいろな角度から御指摘になったわけですが、現実のいま政府が出している予算案との関係で、税の負担が公平ではない、一番公平でないここのところにメスを入れてこういうふうに改善をすべきだという、率直なメスの入れ方をひとつ御指摘いただきたい。それによってどういうふうに国民に影響を与えることができるかというふうにお教えをいただいたらありがたいと思います。  それから佐藤公述人ですが、先ほどから防衛費の問題について、中期業務見積もりの状況をいろいろな関係から見て、もっとしっかりやれ、将来展望も変えていく必要があるじゃないかという御指摘がございました。私は、立場は違いますけれども、ちょっとお聞きをしたいと思いますのは、現実に日本の防衛予算の中に組まれている、先生が御指摘の海上とか航空をもっと強化しなさい、正面装備をもっと強化しなさい、十何%のアップにはなってきているけれども、こここそが中心だ、そういうふうに聞いたわけです。そうすると、現実に指摘しておられる問題点は、私はちょっと幾つかの点で疑問を感ずるのです。  一つは、航空の問題で中心的に配備されてきている問題からいうと、F15、P3Cなど、これはかなり日本の政界の中で疑惑を持たれた飛行機なんですね。これが正面装備の問題として大きな位置を占め、そして後年度負担をたくさん持たなければならない予算の配置になってきている。現実予算として組まれてきている問題から見たときに、この疑惑がらみを含んでいることに対してどういうふうにお感じになるのか。  それから第二番目に、御存じのようにアメリカ側から、ヨーロッパ、中東で事があった場合には日本は三海峡を封鎖せよという問題をかなり前から提起されてきていますし、現実にその路線の方向に動いていると思うのです。三海峡といえば、それは直接日本海の話じゃなくして、日本海から太平洋へ出でいく段階の話だ。今度の予算の中にもC130Hという飛行機、これは輸送機だけれども、改装して機雷封鎖の装備をする。これが新しい装備の問題として出てきているわけです。これは全くそういう意味から言うと、三海峡封鎖の要請に基づくところの行為として見ざるを得ないわけなんです。果たしてこういうものが日本の自衛、専守防衛の範囲内における任務なんだろうか、これについてはいかが見解をお持ちなのか、率直にお聞きしたいと思います。  以上でございます。
  75. 木下和夫

    ○木下公述人 寺前先生の御質問にお答えいたします。  第一に、行政改革の推進ということがどの程度行われたか大きな疑問があるということを私が申し述べた点についての御質疑でございますが、先ほど先生は、定員の不足を告げておる公務の職場の例示がございました。私は、公務の人員の不足を告げておる職場をほかにも存じております。たとえば税務関係の職員などは、私は大いに不足しておると思います。しかし、余っておるぞというようなことをこの席で申し上げるということは、私は避けます。これはかなり主観的にもなりますし、その職場をここで指定して言うということはきわめて問題がありますので、足りないところを申し上げることにはやぶさかではございませんけれども、余っておるところは私は多々あろうと思います。  私が申し上げた趣旨は、新規増員が厳しく抑制されたのであろうかどかということが第一点でございます。これは定数の純減を見ますと、昭和五十五年度は七百七十名の純減をやっておりますが、五十六年度につきましては百一名にしかすぎない。確かに経済における雇用状況の見通しというのは楽観を許しません。したがって、直ちにこれを大幅に削減しろとか、あるいは定員増をゼロにしろとまで、私は要求はいたしません。しかし、五十五年度と五十六年度を比べる限り、これも理由はございますでしょう、医科大学関係職員とか看護婦さんとか、御指摘の問題もございましょうけれども、もし行政減量経営ということが今日うたわれるならば、やはり相当思い切ったことをやらなければ物にならない。そして、一般的な議論としては賛成論が多いわけでございますけれども、具体的な問題になりますとなかなか皆さんの意見が合致しないということに、何か先生方の間でメスを入れる方途を探してほしい、こういう意味でございます。  それから、教科書無償給与制度に関して、私は、先ほど申し上げましたように、基本的には保護者負担の導入を検討する必要があると思っております。それは無償給与制度を全廃するとか、すべてを保護者負担にしてしまえという焦った考え方を主張したのではありません。ただ、国際的に進めている方向と逆行するという御指摘でございますけれども、私は、そのようなことが国際的にすべての国で承認を得られて、その方向にいわば約束ができておる、どういう具体的な事実がいわば国際的な約束事として成立しておるかどうか不案内でございますので、これは後日調査をいたしまして勉強し直しますけれども、ただ、父兄の所得いかんにかかわらず、恐らく数千円の段階の教科書の負担ではないかと思いますが、いまそのぐらいの負担ができないような所得の状況であるのだろうか。真に困っておる人には、これは無償で給与するという制度を維持してちっとも構わないわけでございますけれども、所得の大きな人にまでそういう制度をとっていいのかという疑問を提出したというふうにおくみ取りいただければ幸せでございます。  以上でございます。
  76. 谷山治雄

    ○谷山公述人 ただいま先生から、不公平税制のどこを直したらいいか、問題にしたらいいか、予算との関係でずばり言え、そういうお話でございましたけれども、なかなかずばり言うのはむずかしいことでございまして、いろいろな問題があるわけでございますから、ずばりにはならないかもしれませんが、こういう問題があるということを予算との関係で申し上げてみたいと思います。  まず第一点は、先ほど申しましたように、財政当局や税制調査会の方で不公平税制の是正は一段落した、そういう評価をしていることが実は不公平税制の是正にはならないということでございますので、この機会に、そういう一段落したという観点ではなくて、不公平税制というものを企業及び資産所得を中心に全般的に洗い直してみる、そういうことがまず第一に必要であろうと思われます。  それに関連しまして、今度の税制改正で問題になりましたことは、従来の議論を通じましても、いわゆる政策減税と称するもの、特に企業に対する政策減税というものは非難が多いから整理するというのが政府の方針であったと思うわけでありますけれども、今回は、いわゆる投資減税というものを新設するということをやっているわけでございます。全般的に、いま増税をしているのになぜそのような減税をしなければいけないのか、これは税制の問題としては非常に大きな問題になるわけでございまして、省エネルギーとか石油代替エネルギーの利用とか、もちろん非常に重大な問題でございますので、私はそういう重大性を否定するわけではございませんけれども、そういうような問題は、言うなれば、たとえば財政について言えば、補助金その他財政支出を通じて行うべきであって、税制を余り乱用と申しますか、よく言えば活用でございますが、税制を余り利用すべきではないというのが、従来の不公平税制に関する議論の一つの基軸であったわけでございますので、私は省エネルギーや石油代替エネルギーの政策の必要性はもちろん十分に認めるわけでございますけれども、それをいきなり投資減税という形でもって、しかも数百億円の減税をやるということは、私はやはり、今回の税制について言いますと非常に不公平であるというふうに考えております。  それから次の問題は、今度の予算について申し上げますと、もちろん酒税、物品税等の増税があるわけでございまして、酒はもちろん非常に嗜好品ではございますけれども、同時に、生活必需品の一部とみなしても差し支えないわけでございますので、たとえばビール一本晩酌をすると九千二百円負担が増になるということが、果たして公平という観点から見て適当であるかどうか、そういう問題がございますし、また、物品税等も新しく課税範囲を拡大するわけでございますけれども、これも新聞等で指摘されておりますように、金持ちはもうとっくにそういうものは買っておるのに、これから買おうとする人間に増税をするという、そういう指摘があるわけでございまして、これもやはり公平という観点に立てばいろいろ問題があると存じます。  それから、あと二つでございますが、所得税の問題は先ほど申し上げましたので、ここでは省略をいたしますが、所得税の減税を放置することによる言うなれば不公平の拡大、こういう問題も当然あると思いますが、これは先ほど申し上げましたので、この点は省略をさせていただきたいと思います。  最後の点は、法人税の増税でございますが、一律二%の引き上げというのは一見公平に見えますけれども、しかし、これは増税の率から言いますと公平ではないわけでございまして、つまり、税率四〇%の段階で二%の引き上げというのは五%の増税率でございます。ところが、税率二八%の段階での二%の増税というのは七%の負担率の増加でございますし、ましてや、生活協同組合その他のように、二三%の税率を二五%にするというのは九%の増税率になるわけなんで、そういう点から言いますと、中小法人とか生活協同組合とか、そういう点にむしろ法人税の増税率が高くなるという、そういう問題があるわけでございますので、二%というのは一見公平に見えますけれども、実は公平ではないという点がございます。  この辺は、先ほどの野坂先生でしたかにお答えいたしましたように、法人税その他全体を通じまして、何が一体公平であるかという実質公平の議論をいたしませんといけないわけで、私は、今度の税制改正につきましては、率直に申しまして、そういう実質的な公平に関する議論といいますか、あるいは政策がほとんど欠如しておる、公平に見せかけて実は公平ではないという問題があるのではないか、そういう点を感じますので、そのものずばりとはいかなかったかも存じませんが、以上でお答えにさせていただきたいと思います。
  77. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 お答えいたします。  第一の御質問でありますが、F15要撃戦闘機及びP3C対潜哨戒機の決定、購入に関しては、政界に疑惑が見られるのではないか、こういう疑惑が見られるような機種について購入するということについてどう考えるかということでありますが、私は寡聞にして、F15、P3Cについて疑惑があったということを存じ上げません。そこで、疑惑がないものについて問題はないと考えております。  さらに、それだけでなく、最近のソ連の東アジアにおける戦闘能力、航空能力の増大を考えますと、従来航空自衛隊の主力要撃戦闘機でありましたファントムは時代おくれになりつつあります。その意味で言いますと、F15を購入するということはきわめて適切かつ必要な処置であろうと思いますし、また、ソ連の潜水艦能力の増大を考えますと、P2Jという、現在までのところ自衛隊が持っております対潜哨戒機は明らかに旧式でございまして、P3Cを購入するということは、これも必要かつ正当なものであろうと考えております。そしてF15もP3Cも、F15は要撃用の戦闘機でございますし、P3Cは潜水艦を探知するという能力に特化した高度な対潜哨戒機でございますので、専守防衛という本来の精神にきわめて適合的なものであろうというふうに考えております。  それから、御質問の第二番目でございますが、アメリカ側が三海峡を封鎖するということを日本に要求している。そして来年度予算に計上されておりますC130H輸送機二機の購入というのは、これは輸送機でございますが、御指摘のように、転用すれば機雷を搭載するということもできるということでございます。  私は、アメリカ政府が公式に三海峡封鎖を日本政府に要求したという事実は存じ上げておりません。何か秘密のことがあれば、それは私は知りませんが、私が一般に新聞その他で読んでいる限りでは、正規にそういう要請があったということは、私は存じ上げません。ただし、一般論として、日本が、日本の安全がきわめて深刻に脅かされたときに、三海峡を必要な場合には封鎖する能力を備えることは、どの国にも脅威を与えない、そして日本自身の対ソ抑止力として有効なものだろうというふうに思います。私はそういう事態が起こらないことを強く願っております。しかし、そういう能力を持つこと自体が、特に特定の国、ソ連ですが、に脅威を与えるということは、私は、ソ連が侵略的意図さえ持っていなければあり得ないというふうに考えております。  それから輸送機でございますが、これまで自衛隊が持っておりましたC1というのは、これは非常に性能の低いものでございまして、C130Hというのは、私は二機では足りないのではないかと率直に考えているわけであります。非常に限られた小規模な自衛力を有効に使うためには、日本のように細長い島国であるという条件を考えますと、輸送能力を高めることが自衛力を小さな規模に抑えるために不可欠であります。その意味で言いますと、輸送能力の強化というのはもっと充実されてしかるべきものであるというふうに考えております。
  78. 寺前巖

    ○寺前委員 終わります。
  79. 小山長規

    小山委員長 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十八分散会