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1981-02-23 第94回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月二十三日(月曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       足立 篤郎君    上村千一郎君       小渕 恵三君    越智 伊平君       片岡 清一君    鴨田利太郎君       倉成  正君    後藤田正晴君       近藤 元次君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    細田 吉蔵君       宮下 創平君    村山 達雄君       阿部 助哉君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    大原  亨君       岡田 利春君    川本 敏美君       野坂 浩賢君    安井 吉典君       山田 耻目君    横路 孝弘君       長田 武士君    草川 昭三君       正木 良明君    神田  厚君       林  保夫君    米沢  隆君       小沢 和秋君    寺前  巖君       野間 友一君    松本 善明君       田島  衞君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼総理大臣         官房審議室長  石川  周君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 伊従  寛君         公正取引委員会         事務局取引部長 劒持 浩裕君         公正取引委員会         事務局審査部長 妹尾  明君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁長官官房         長       北村 和男君         環境庁長官官房         会計課長    廣瀬  優君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省条約局長 伊達 宗起君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵大臣官房審         議官      梅澤 節男君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省関税局長 清水  汪君         国税庁長官   渡部 周治君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省管理局長 吉田 壽雄君         厚生大臣官房長 吉村  仁君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 松田  正君         社会保険庁医療         保険部長    吉江 恵昭君         社会保険庁年金         保険部長    新津 博典君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省畜産         局長      森実 孝郎君         食糧庁長官   松本 作衞君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         中小企業庁長官 児玉 清隆君         中小企業庁次長 中澤 忠義君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         郵政省電波監理         局長      田中眞三郎君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働大臣官房会         計課長     高橋 伸治君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君  委員外出席者         会計検査院事務         総局次長    藤井健太郎君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     吉井  浩君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社総務理事   小澤 春雄君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団総裁)   仁杉  巖君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     田中 武志君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     片岡 清一君   正示啓次郎君     宮下 創平君   武藤 嘉文君     近藤 元次君   稲葉 誠一君     安井 吉典君   中村 重光君     川本 敏美君   矢野 絢也君     長田 武士君   林  保夫君     米沢  隆君   不破 哲三君     小沢 和秋君   河野 洋平君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     宇野 宗佑君   近藤 元次君     武藤 嘉文君   宮下 創平君     正示啓次郎君   川本 敏美君     中村 重光君   安井 吉典君     稲葉 誠一君   長田 武士君     矢野 絢也君   米沢  隆君     林  保夫君   小沢 和秋君     野間 友一君   田島  衞君     河野 洋平君 同日  辞任         補欠選任   野間 友一君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部哉君
  3. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まず冒頭に、国税庁は、今度この豪雪雪おろしに当たってこの費用雑損控除にされるということでありますけれども納税者にとってみると、もう一つ何かすっきりしない。私の田舎人たちに言わせると、何か今度の新しく五万円を超えた分がすぐこの三月十五日の確定申告雑損控除として認めてもらえるんじゃないかというような錯覚も持っておるようであります。そういう点でこの人たちにもっとはっきりわかるように指導し、税務署で十五日を目指してトラブルの起きないようにもう少し指導してもらいたいと思うのであります。そういう点で、私たち田舎におきましては、日当を払い、その上で晩酌をつけて夕食をごちそうするというのは慣例であります。そうすると、そういう経費対象になるのかどうかという点。  もう一つは、暮れから雪は降っておるわけであります。しかし、雪おろしは暮れ、昨年にもやったけれども、ことしに入ってからも雪おろしをしておる。そういうものもこの対象になるのかどうか。その辺少し明快にして、国民にわかりやすいように指導してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  4. 渡部周治

    渡部政府委員 お答え申し上げます。  雑損控除につきましての改善、いわゆる新しい五万円の足襟度額が設けられることになっておりますが、これは先生承知のように、現在国会に提案されておりまする所得税法の一部改正法案が成立した場合に適用されるわけでございまして、これは昭和五十六年分の所得税から適用になるわけでございます。したがいまして、この改正法案が成立いたしますと、今回の豪雪に関しましては、ことしの一月以降支出されました雪おろし費用等控除対象になるわけでございます。先生承知のように、現在五十五年分の確定申告が行われておりますので、この点につきまして、この五十五年分から適用になるのではないかといったような問い合わせが税務署等にも参っておりますので、私どもは、この新措置はあくまでも所得税法改正が通ってから、また五十六年分からだというようなことの趣旨徹底を現在十分図っておるつもりでございますが、御指摘の点も踏まえまして、今後なお一層PRに努めてまいりたい、このように思っております。  それから豪雪につきまして、雪おろし費用内容はどうだというお尋ねでございましたが、われわれは、雪おろし対価と認められるものであれば、これは雪おろし費用としてお認めしていいんではないかと思っております。あくまでも事実認定でございますが、その支出雪おろしのための対価であるというぐあいに認められれば、雪おろし費用として雑損失対象になるのではないかな、このように思っております。  以上でございます。
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでもう一つは、われわれの農家の場合なんか特にそうでありますけれども、なかなか領収書をとっておくというようなわけには、何かそういう習慣がついていないわけです。そうした場合これは来年に回ってくるわけだから、これから一年間かかるわけですから、その辺は何か記帳するとか、何か証拠があればいいのか。その辺の措置も、もう少しこれは親切にしておかないと、やれ払ったとか払わないとかいうことでトラブルのもとになりかねないので、その辺はいかがです。
  6. 渡部周治

    渡部政府委員 お答え申し上げます。  雪おろし費用等雑損失としてお認めいたします場合の証拠書類でございますが、これは原則といたしまして、その支出額を証明する書類、すなわち領収書を添付していただくか、これを税務署に提示していただくということになるわけでございますが、なかなか一線にはその領収書等一々もらうのが困難だという御事情もあるようでございます。そこで私どもは、一月の末に全国の国税局、税務署に通達を出しまして、この領収書交付を受けることにつきまして困難な事情がある場合には、領収書にかえまして、支払い年月日支払い先支払い金額を記載しました家計簿等によって支払いの事実を確認を行うという取り扱いを認めまして、これによって無理のない運用をしてまいりたい、このように思っておるところでございます。この取り扱いにつきましても十分一線に徹底し、また納税者の方々に周知をするように徹底をいたしておるところでございます。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは次に大蔵省にお伺いしますけれども、公庫、公団に対する政府出資金、こういうことでお伺いするのですが、数々の公団があるわけであります。時間の関係上、動力炉・核燃料開発事業団、宇宙開発事業団、こういうものに対するものにしぼってお伺いをいたしますけれども出資金ということは一体どういうことになっておるのか。  出資でありますから、当然その配当がもらえるとか、あるいはその元本が返ってくるとかいうことになるんだと思うけれども、これはさっぱりわからない。動燃事業団民間会社出資をしておるようでありますが、これはどういう会社出資をしておられます。
  8. 松下康雄

    松下政府委員 動燃事業団に対します五十六年度末の出資額見込み額で申し上げますと、出資の合計は七千二百六十九億円でございます。そのうち政府出資が六千九百八十億円、民間出資が二百八十八億円になる予定でございますが、具体的に民間のどこかということは、ちょっとただいま資料を当たりますので後ほどお答えさせていただきます。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これはどういう名前の会社がということは、会社名はわかりませんか。
  10. 松下康雄

    松下政府委員 民間拠出金出資をいたしておりますのは、まず電力九社がございます。それから電源開発株式会社原子力発電会社、以上電力関係主体でございますが、そのほかに原子力関係の五グループということで民間設立の五つの原子力関係会社がございます。その他若干のものがございますが、その内容まではちょっと手元に資料がございません。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 財政法第四条は例外的に建設公債発行を認めておるわけであります。そして、その対象事業すなわち公共事業出資金貸付金こうなっておるのでありますけれども、この出資金性格というもの、言いかえれば建設公債発行はなぜ許されておるのか、ここに私はどうも疑問があるわけであります。  たとえば橋をつくる、これはいまつくるけれども後世代の人たちのためにもなる。それで資産形成はある程度わかっておる。しかし、ここへ出ておる出資金というのは配当をもらうわけでもなし使い捨てで、これはなくなってしまう。まあ強いて言えばノーハウが残るということなんでしょうけれども、何か使い捨て。そうすると、これが一体建設公債対象として許されていいのかどうか。  もう一つは、出資金というものの性格そのものが一体どうなのか、さっぱりわからない。非常に安直に出資金というものが出ておる。皆さんのところで出資金がある補助費があり交付金があり、もう一つ何かある。その中で一番わからないのが私は出資金なんです。というのは、法律出資金定義があるかと思っていろいろ見たけれども、私、寡聞にして出資金定義は書いてない。これは当然しゃばの常識から言えば、出資金というのは配当をもらうとかなんかというものを対象にし、だからこそ建設公債対象にしておられると思うけれども、どうもこの出資金配当をもらうということを考えておるわけでもない。そうかといって、この金が返済をされるわけではない。金を貸したならば、それは当然利息がついて返ってくるわけでありますけれども、この出資金だけがさっぱりわからないので、そこをひとつ明確にしていただきたいと思うのです。
  12. 松下康雄

    松下政府委員 御指摘のように、この出資金定義性格につきまして、法律規定があるわけではございませんけれども、私ども出資金とは何かと申しますというと、それはやはり一定の事業を営むための資本といたしまして政府が出損しますところの金銭その他の資産であるということでございまして、当然のことでございますが、この出資に伴いまして政府出資法人に対する持ち分を取得するわけでございます。  それでは、どういう場合に政府出資を行うかということでございますけれども、これはやはりその行っております対象事業公共性あるいは公益性というところに着目をいたしまして、そして事業主体経営基盤の安定あるいはその他事業の的確な遂行を図るということを目的として出資を行う場合が多いわけでございまして、このあたり民間でございますと、たとえば出資をいたすということは当然配当取得をする、あるいは創業者利得取得をするという経済的な面に重点が置かれるわけでございますけれども政府の場合には事業を的確に遂行をさせるという、そういう目的が前面に出てまいると思うわけでございます。したがいまして、この利益分配規定でございますとか国庫納付規定があるものもございます。そういうものにつきましては、当該法人利益が出ますと、それは国庫に還元されるわけでございますけれども先生も御承知のように、すべての政府関係機関国庫納付規定があるわけではございません。相当数のものは国庫納付規定を欠いているわけでございます。  ただ、しからばそれでは国が出資をすることの意義、役割りはないのかということになりますと、やはりこれは年々交付される補助金に比べまして、国がその相手の対象事業に対して国としての主体性を持ってこの事業に参加をしていくという、まず姿勢を示す上には非常に役に立つ面があろうと思います。それからそのほか、なおやはり出資を受けて営んでおります事業は、全くその効果が一時的に消滅をするというものではございませんで、やはり事業内容からいたしまして、その効果というものは短時間の間には具体化をいたしませんでも、長期間にわたってこれを継続してまいりますれば、その結果、有形無形資産的な価値のあるものが残ってまいる。その残ってまいるようなものを選び出しまして出資対象としているわけでございます。  そこで、たとえばただいま例として御指摘がございました動力炉・核燃料開発事業団でございますけれども、この事業団におきましては、たとえば動力炉開発ということで、ただいま高速増殖炉開発でございますとか、新型転換炉開発をいたしているところでございます。また、そのほかウラン濃縮技術開発というような事業を営んでおりまして、これらは現在の科学技術の最先端を行く重要な研究でございまして、しかも、その成果が三年五年の短期間で発現するというものではない。もっともっと長期の期間をかけて、この事業を営んでいかなければならない。そしてまた、この事業成果を上げましたときのその効果は、民間一つ企業というようなものに帰属せしめるべきものではございませんで、やはり国全体の科学技術あるいは産業技術基盤として役に立たせる必要がある。そういうところから国が主体になりまして、この動力炉・核燃料開発事業団事業に対して出資をいたしておるわけでございまして、その結果がただいま阿部先生指摘になりましたように有形のものになって残っておらないではないか。それはごもっともでございまして、この出資の中には有形機械設備等になって残っている部分もございますけれども、そのほか経常的な研究開発費として後に物的な資産が残っていないものもございます。  しかし、これはやはり民間でございますれば、それは当然研究開発費無体財産権ということにして繰り延べ経理をすべきものであろうと思います。ただ、それは民間の場合も、たとえば繰り延べ経費は五年以内というふうに、民間では比較的短期の間に成果が出るというものをやっているわけでございますけれども、そこは国の立場でございますから、非常に長期間かかって成果を上げなければならないというものに対して国が出資をいたしております。それらのものは、いま三年五年の間に無体財産権として明確な資産の形になるとは私は申しませんけれども、しかし長い時間をかけて、そして総合的な研究を進めてまいりますならば、やはり結局その成果というものは、一種の民間の場合におきます無体財産権と同様に、全体的な国全体の産業技術基盤になるという効用を持つものであろうと思います。  そういったものでございますので、有形固定資産投資の場合と性格は異なりますけれども、やはり無形資産投資としてこれを出資対象にいたす。そういう経済的な効果のあるノーハウその他の無体財産が残って、それが将来さらに国の経済に対して貢献をしていくということを期待して出資対象としておる、こういう性格のものでございます。
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 公共性があるとか公益性があるとかおっしゃるけれども、大体世の中に公共性公益性のないものがあるのですか。犯罪やなんかの行為なら別だけれども、農民が米をつくるのだって、やはり社会性公益性もあるのですよ。  私は、これに金を出すなど言っておるのではないのです。出資金という形で出される、出資金定義はない。常識から言えば、これは当然配当があるとか何かある。皆さんのいままでのいろいろな国会での答弁を拝見しても、回り回って国民のためになるのなら——それは回り回って何かあれば、風が吹けばおけ屋がもうかるのです。回り回ってやるにしては大変多額な金が出ておる。もう少し正確にすべきではないだろうか。ここへ金を出すなど言っておるのではないけれども、出すならもっと明確な形で出せないものだろうか。  ある意味で言えば、大変悪口のようになるけれども電力会社や何かがこれから発電所をつくる、いろいろなノーハウを活用する、そのためには電力会社や何かの金だけでは足らない、だから政府が金を出す、できたノーハウは結局こういう大企業が活用することになる、これは明確なのです。それが回り回って国民のためになるだろうけれども、とりあえずは、このノーハウを活用するのは大企業になる、これはわかっておる。そうすると、これは補助金という性格を持つのではないだろうか。公益性だ、公共性だという議論だけでは出資金性格は明確になってこないのです。  いま補助金整理だなんてわんわん言われると、出資金というのは別枠みたいになって大変都合がいいかもわからぬ。だけれども、何か最近の予算の組み方、財政そのものが何か原則を外し過ぎるのではないだろうかという点で、もう一遍これを検討する必要があると思うのであります。皆さんが金を出すときには、これは大変便利な仕組みであります。  そこで、もう少しお伺いしますけれども財政法制定当時と四十一年度以降の国債発行以降では建設公債性格に変化が生じておるように思うのでありますが、これは変化をしておるのでありましょうか。もし変化をしておるとすれば、どう変わったのでしょうか。
  14. 松下康雄

    松下政府委員 いわゆる建設公債と申しております財政法四条の規定に基づいて発行しております国債の性格は、終始財政法四条の規定に根拠を置きまして発行されているものでございますので、その四条公債と別にいわゆる特例公債の発行が行われ始めたからといって、四条公債の方の性格が変わったということではないと考えます。
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 財政法四条は原則として公債の発行は禁止をしておる。そして建設公債は、先ほど申し上げたように道路だとか橋だとか建物というようなものは後世代にも残る。だからいまの世代の人たちが全部負担するのはどうかという点もあり、そういう点である程度枠が決まっておるわけです。ところが、いまの動燃に対する出資金というのは、今度の場合も六百六十億も出資金で出す、そのほかに補助金として百二十一億も出ていく。そして貸借対照表を見ると四千億もいわゆる赤字になっておる。それはノーハウは残っておるかもわかりませんよ。しかし、それはなかなか数字で出てこないから、数字の上では四千億という大変な金がここに赤字として記載されなければならない。そういうのが建設公債対象になっていくと、公債発行の限度は切りなく広がっていくのではないか。財政法でなるたけ公債は出さないという方針からいくと、これはある意味では特例公債と同じ性格を持ってくるのではないだろうかという点で、私はどうもこの出資金というのが理解ができないわけであります。  こんなところへ出資金だ、出資金だとやっていく、その金はみんなノーハウに残るかもわからないけれども、形の上では何も残らない。それがいろいろな事業団、特に大企業と関連する事業団にどんどん金が出ていく、それが公債の対象になっていく、どう考えてみてもこれは赤字公債、特例公債と同じことになるのではないだろうか、これを建設公債の枠の中に入れることはどうも無理なんではないだろうかという感じがするのですが、いかがですか。
  16. 松下康雄

    松下政府委員 財政法四条の規定の中には、いわゆる公共投資の財源として国債を発行する場合のほか、出資金貸付金の財源として国債を発行する場合も含まれておりますので、御質問の御趣旨は、そこで言われておる出資金の範囲が本来あるべき姿を超えてみだりに拡大することになっておるのではないかということであろうと存じますが、先ほども申し述べましたように原子力関係の機関の開発研究と申しますものは、仮に民間企業会計で例を考えますならば、やはり研究開発費として無体財産取得するための投資的な経費に分類すべきものであろうと存じます。  ただ先ほど申しましたように、その成果が非常に短い間に出てくるというものではございません。非常に長期にわたって投資をいたしまして初めて成果が上がるものでございますから、その途中の過程におきましては、何か資産性が全くないのではないかというふうに見られる、そういう面があることは否定できませんけれども、私どもの方も、その出資内容としましては、これを有形固定資産無形固定資産というように資産勘定で計上することをいたしませんで、無形固定資産に当たる部分を繰越欠損金の形で表示をいたしておりますので、一見いたしますと出資に非常に大きな欠敏が起こっているような感じがいたします。このあたりから先生指摘のような御疑問が起こってまいるのであろうと存じておりますが、先ほど申し述べましたように、原子力関係研究と申しますものは、国といわず民間といわず、いわば国全体の持っております経済力あるいは知識というものを全部を挙げて総合的に取り組んでいかなければならない非常に重要な将来のエネルギーに関する研究でございますので、これは国が主体になってやっていくべきだ。一、二の特定の民間企業だけの利益になるものではない。やはり将来の国民経済あるいは国民全体の利益になっていくものであると思っております。したがいまして、これらの出捐につきましては、これを出資に持っていくという点は、財政法規定の精神を逸脱しているものとは私は考えません。ただ、開発に非常に長期を要しますがために。現在のような財務諸表、これは企業会計原則の方で考えた財務諸表でございますから、いま申し上げましたような特性を必ずしも適切に反映していない面があるかもしれませんけれども、そういった表記の問題を離れまして基本的には出資であるべきものであろうと思っております。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はこれを研究するなどか、ここへ金を出すなど言ってはいないのです。財政法上非常にあいまいな金の出し方だ。もう一つは、財政法上これを建設公債対象にするのは公債の枠が幾らでも広がっていくという点で問題がある。政府がそれだけ必要ならば政府独自で、民間の資金なんて大したことはないのだからおやりになるとか、あるいは電力会社企業がおやりになるのにこれに補助金として出すならば、またその事業団性格というものがどうかという問題も出ますけれども財政法上はもっと明快になると私は思うのです。ところが、出資金という名の補助金みたいなもの、しかも、それが建設公債対象になっていくと公債の枠が幾らでも広がってくる。特例公債も問題だけれども、やはり財政を考えれば建設公債それ自体だって、これから公債の利息を払っていくという点で、財政の圧迫になるという点で問題があると私は思うのだが、その辺に二つ問題があると思うのです。どうしても国が必要なんだというなら、国がおやりになるということならこれはまた明快にわかるのです。しかし企業が、結局回り回って風が吹けばおけ屋がもうかる式に国のためになりますと言うけれども、第一次的にこれを活用するのは電力資本や何か大企業です。それならば、その人たちがやるところへ補助金として出すということなら、これはまたわからぬではない。どうも出資金という、出資ということになれば、定義がない限りしゃばの常識でわれわれ考える以外にない。そうすると、これは当然配当をもらうとか、出資金の返還を可能にするとかいう何か財産というものがあるだろうというのは常識なんです。だから、その点で二つ問題があると私思っているのです。松下さんおっしゃるように、私はこの研究をしないでもいいとか、金を出すのはけしからぬと言っておるのじゃないのです。出資という名のわけのわからない形で出ていくということが一つと、もう一つはこれが建設公債対象になっていった場合には、この公債発行の枠にとめどなくこれが広がっていくという問題、この二つが私お伺いしておる焦点なんでして、もう一遍。
  18. 松下康雄

    松下政府委員 御質問の関係の調査研究は、国があるいは民間かと申しますよりも、むしろ政府民間とのあらゆる過去の研究成果あるいはこれらの持っております頭脳あるいは資金というものを挙げて取り組むべき大きな重要課題であると思います。そうして、それの現在の進行のぐあいから申しまして、やはりその主体政府であるべきだという考えでございます。したがいまして、政府主体性を持ちながら、しかし、民間にも広く資本、人材の参加を求めていく、そういう形で研究を進めますためにはどういう形が一番望ましいかということを種々検討いたしまして、かような政府関係機関に仕事をやらせながら、政府はしかし自己の主体性を確立してまいるためにこれに出資をしていくという趣旨でございますので、このような類例が、先生の御懸念なさいますように、ほかにもとめどもなくいろいろと今後出てくるというとではない。やはりこういうふうな意味での政府出資になじむべきものというものはおのずから非常に限られたものにとどまっていくであろう、そう考えておる次第でございます。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 限られたと言うけれども、それならば、この出資をしておる団体の名前を全部出してごらんなさい。大変な数なんですよ。皆さんのところでは、さっき言ったように出資金あり、補給金あり、交付金あり、貸付金あり、いろいろの形で援助をしておる。その援助の主体は、大体こういう大きな事業体との問題であって、大変な金が出ておる。皆さん出資しておる団体名と金額、いままで出たのを全部並べてごらんなさい。これは大変な金額ですよ。それだけ大きな金が出ておる。ある意味では私は必要だとは思うけれども、何か大企業政府の資金とがごっちゃになっておるみたいな感じがする。  それともう一つ、先ほどから私が言うように、これが建設公債対象になっておるというのは、私は何としても納得ができないのでして、その辺は再検討をされる御意思があるのかどうか、これを公債対象にするというのは何としても私は納得ができません。その辺もう一遍。
  20. 松下康雄

    松下政府委員 御指摘のように、出資をいたしております政府関係機関は多数に上っております。ただ、その中のほとんど大多数のものは、あるいは初度の設備を賄いますためとか、あるいは貸し付けの原資を増勢しますためとか、かなり明確な基本的資産勘定と見合っておりますので、そのあたりに問題を指摘されますのは、いま先生のお挙げになりました原子力関係の機関のように、一部には固定資産化するものもございますけれども、他の面では繰越欠損の形で出資の一部が残っておるという形のものが問題だと思いますが、それらのものは、先ほど申し上げましたように数も少なうございますし、また、これらが後代波及してまいるものとは考えておりません。  私どもも、ただ出資金補助金の区別というのは、そこの差がぼやけてあいまいになるということは決して好ましいこととは思っておりませんので、たとえばただいま御指摘のありました原子力関係研究機関にいたしましても、出資金のほかに補助金も出してございます。御承知のように一般管理費は、これはいかに考えましても、将来ノーハウとして、無体財産として国の請求権を残しておくというものになじみませんので、これらは補助金として経理をいたします。  将来これが配当なり何なりどういう形が国の手元に残るのかという御指摘でございますけれども、これらの機関が仮に将来ある時期に解散をするというようなことになりますと、それはその時点におきまして別に法律をつくりましてその始末をつけるということになっているわけでございます。仮にそういった事態が考えられますときに、これまで国が出資としてこの事業団に対して資金を交付いたしましたものが累計幾らに上るかということはむしろはっきりと表示をされている方が、それらの事業団自体にとりましてもそういうことを踏まえて日々の研究活動が適正にできる一助にもなろうかというふうにも考えております。  御指摘をいただきまして大変恐縮でございますけれども、四条公債の対象としてこれらの出資を考えるという点につきましては、従来から何度も論議を重ねながらこういう解釈によって行ってまいりましたものでございますから、決して将来乱用するとか、そういうつもりはございませんけれども、いまこの解釈を変えてまいるということは申し上げかねる次第でございます。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 くどいようですけれども、これは杉村章三郎さんの「財政法」ですが、公債の対象にしたのは元本の確保はもちろん、利子その他の収入が予定できる、だからこれは建設公債対象にして、それが返ってくる、こういうことなんです。ところが、皆さんの方は大変いままでは苦しい答弁をしておられるのですね。先ほど言ったようにこれは四十一年二月十八日のこの予算委員会でありますが、要するに回り回ってということなんだな。だから、回り回ってということになると私はどうも合点がいかないんだな。どんな事業だって回り回って何かの効果を発揮するのですよ。だから補助も出す、出資金も出す、しかもそれが建設公債対象というのだけは、これはもう一遍後ででもまた論議しますけれども、私はいまの松下さんの御答弁では納得ができないのですよ。  これはもう少し明確にするのと、もう一つは結局は大企業には大変ないろんな形の補助である、出資である、交付金であるという形で行っておる。それならば大企業自体もそれなりの節度を持ってやってくれないと困るわけであります。その節度がなしに、こうやってやっていく、できたノーハウは第一次的にはまずその大企業がこれを活用する、そして回り回って国民のためだ、こう言われてみたって、それならそれで国の金がこれだけ出ていくならばそれなりの節度を持ってくれないと、国民の血税がこうやって行くのですから、その辺の監視も十分やっていただきたいということをお願いして、私は納得はできませんけれども、どうもあなたとこれをここで何時間やってみたって水かけ論みたいな感じがいたしますので、これでやめますけれども、どうかそういう点でもう一遍、建設公債対象にするとか、そういう問題は皆さんの内部で御検討をいただいて、この問題を終わりたいと思います。  大臣、どうですか。検討するということで……。
  22. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私もこれはなかなかすっきりしないところがあると思いますよ。あると思いますが、それじゃ出資でなくて何か補助金がなんかにしちゃったらいいのか。補助金にしちゃうとこれまたどうもすっきりしないわけですね。ですから、どっちにしたらいいのかよくわからぬけれども、長らく出資ということでやってきているものだから出資金になっておるということで、これはいろいろ考え方の問題もあるし、建設国債が一番はっきりするというわけでもないし、今後よく検討いたします。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次に、厚生大臣にお伺いをいたしたいのでありますけれども、もう数多くの同僚、先輩がここで薬の問題では質問をされました。実は私は、もうどうしようかと思ったのですが、昨年の野呂大臣との経過がございますので、一遍それの締めくくりとしてお伺いをしておきたいと思うのであります。  そういう点で、健康保険法改正の審議の前提として薬価差を問題にいたしました。そしてその参考資料として薬価の実態調査の国会提出を求め、それで野呂大臣は早急な提出を約束されたわけであります。その点で私は、この予算委員会であれだけのお約束をされたのでありますから、当然この予算委員会の審議に間に合うようにこれが出てくるものだろうと信じておった。ところが、大臣がおかわりになったりなんかしたあれもあって、大臣を責めるというのは酷なのかもわかりませんけれども、厚生省はなぜ予算委員会審議に間に合わないで——大臣のお話によると、何か年度末までには御提出なさるようなお話だけれども、それじゃ一体ここの予算委員会の審議というのはどうなんだろうか。予算委員会の性格は大臣は百も御承知のとおりでありまして、この重要な予算委員会の審議に間に合わないということはいささか怠慢のそしりを免れないのじゃないだろうか、大変酷な言い方だけれども、私はそう思うのですが、大臣の御所見をお伺いしたい。
  24. 園田直

    ○園田国務大臣 薬価改定その他の問題について阿部先生から前の国会でいろいろ質問があり、意見を述べられておることを承知いたしております。第一に薬価改定が非常におくれております。これは一年に一回は必ずやるべきものであるが、三年間もやられてない。これが第一に非常に遺憾に思っておるところでありまして、鋭意作業を進めておりますが、年度内にはやるという目標でやっております。  なお、先々般の国会先生の御質問に厚生大臣が答えました審議会の調査の結果、この報告がされてないということを正直に言ってけさ承ったわけでありますが、その経緯は事務当局から一応聞いていただいて、それで御不満であれば私から改めてまた今後の問題を報告いたします。
  25. 大和田潔

    ○大和田政府委員 前回の先生の御質問につきまして、これは中医協におきます医療経済実態調査のことでございますが、これにつきましては、当時先生の御質問を契機にいたしまして中医協の再開にこぎつけまして、その中医協におきまして医療経済実態調査の公表が行われたところでございます。
  26. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それにしても薬づけ医療による乱診乱療の是正のためには薬価差をできる限り小さくする必要があると思うのです。大臣、当然のことだと思いますが、そうですね。
  27. 園田直

    ○園田国務大臣 薬価が実際の値段と厚生省で決めた値段に差がある。そのために医療機関からたたかれる。そこで医療費の差額というものが医療費に加わって薬づけ、検査づけの一つの大きな原因をなしておることは御指摘のとおりであります。したがいまして、これについては薬価改定の方式、九〇%バルクライン引き下げをやるとか、加重平均方式をやるか、あるいはその他の方式をやるか、いろいろ議論があるところでありますが、これは審議会の御意見を承ってさらに検討すべき問題であると考えております。  いま事務当局からお答えをして、おくれたことをおわびしておりますが、その審議会に対する諮問の手おくれから御報告がおくれておるものと私は判断をいたします。
  28. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま大臣は、九〇%バルクの問題や何かの検討をすると言うのですが、これは諮問をするという——私はどうも審議会だとか調査会だというのは余り好きじゃないのですよ。何か隠れみのになっておるだけであって、私は余りこれを好まないのですが、問題は、厚生省自体がどういう腹で、どういう方針でいくんだという、やはり大臣の指導性が最も必要なんだと私は思うのですが、この九〇%バルクだとか二倍の方式だとかいうのは、これは変えるおつもりなんですか、どうなんですか。
  29. 園田直

    ○園田国務大臣 審議会は、薬価のみならず、いま御指摘のように、隠れみのになる可能性は十分ありまして、行政最高の責任者たる大臣の責任が明確になっておりません。  私もやはり審議会というのは一つの参考であって、その参考に基づいて、大臣が自己の責任において行政の最後の決裁をすべきである、こう考えておりますが、いまの九〇%バルクライン、これを引き下げするのか、ほかの方式をとるか、これはまだ正直に言ってここでお答えするのは早過ぎると思いますので、もうしばらく勉強させていただきたいと思います。
  30. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この問題はもう前の、昨年の国会からずいぶんやられておりまして、とにかく遅過ぎても早過ぎるなんていうことはないんだと私は思うのですが、大臣、もう少しその辺、いろんな業界との差しさわり、医者との問題、いろいろあると思うのですよ。しかし、これは国会という最高の場で、もう少し腹を割った——園田大臣ともあろう人が余りそうしないで、ちゃんともう少し腹を割った話ができませんか。
  31. 園田直

    ○園田国務大臣 私がただいま早過ぎると言ったのは、環境が遅いという意味ではなくて、私が判断する勉強が足りない、こういう意味でございます。しかし、何にしても私は、この九〇%バルクラインの問題については、多数の方々から御意見を承っておりますので、これについては検討すべき時期が来ておる、こういう判断をいたしております。
  32. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次に、ME機器の問題についてお伺いをいたしますけれども、ME機器が大変発達してまいりました。それで困難な病気の診断が容易になったとか、いろんな利点も多々ございます。だけれども、またその反面、新たな矛盾も出てきておるわけであります。たとえば、検査料を取るために、死にかかっている患者に二十数種類もの検査をやったなんていう例もございます。ことにCTスキャナーというのですか、大変高い一台数千万円から三億もするような大型機械、この場合には、投資資金の回収のためには検査づけ医療に走りやすい。その代表が富士見病院なんじゃないか、私はこう思うのであります。  この検査づけ医療を防止するために、具体的にどのような施策をお考えになっておるのか。たとえば、地域でもう少しセンターならセンターをつくって、個々の医者がしゃにむに無理をして買わなくたっていいようにすることができないのかどうか。それもまたいろいろな功罪があると思います。みんなお医者さんが使うと、これは売れるから機械の発達もするのかもわかりません。だけれども、ある意味で言えば、このままでいけば大変な過剰投資になってしまって、その過剰投資の資本を回収するためには検査づけをやらざるを得ないという矛盾が起こってくる。そういう点で、厚生省としてはどのような施策をお考えになっておるのか、お伺いしたい。
  33. 園田直

    ○園田国務大臣 高級医療機械が医療産業の一つの手段になり、これによっていろいろな問題が出てくることは御指摘のとおりであります。しかし、救急医療等のためにこれが非常に役立っていることもまた一面あるわけでありまして、したがいまして、開業医の方々が共同で利用できるような方法を講ずるとか、あるいは五十六年度からそういう方法を講じたいと思って予算をお願いしているところであります。かつまた、都道府県が中心になって市町村の中核地帯に、いまおっしゃいました、名前は何と言うか中央センターみたいなものをつけてやる、こういう使い方と、もう一つは、御承知のとおりにこの医療機器に対してME機器などは特別償却があるわけであります。私は税の方は先生ほど詳しくありませんから税のたてまえからはわかりませんが、私の方から言うと、これを一律に税で特別償却するところに問題があるので、やはり私の方で高級医療機器の計画的配置、こういう観点から、助成金にするとか、あるいは船舶振興その他のことに対する私の影響力から、そういうものを医療の観点から、これは金を出してやるべきだ、これは出すべきでないというふうにした方がいいのではないか。こう二つの方法を考えております。
  34. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そのような施策をやる、そのためには多少の補助金がいつでも仕方がないことであります。同時に、大臣は頭がいいものだから私の質問する前にちゃんとおっしゃっておるのですが、そういう点で、このME機器に対する特別償却がことしはいままでの二五%から二〇%に手直しをされてはおりまするけれども、この特別償却なんというものはやめるべきじゃないだろうか。  これは大蔵大臣にお伺いするのですけれども、これはやめるべきじゃないのか。ある意味で言えば、メーカーの方では、これをお買いになればこのように税金がまけてもらえますよ、節税になりますよという、むしろ節税をこの宣伝の具にして売り込みをやっておるのが実情であります。そういう点でお医者さんが本当に必要だということになれば、お医者さんはそれは買いますよ。ただ、節税だなんという欲得に絡んでやるところに検査づけ医療というものが出てくるのであって、私は、いま厚生大臣がおっしゃったように、地域にセンター的なものをつくるならば、それに国、県である程度の助成をする、補助金を出すというなら、これはわかります。だけれども一律にこの特別償却を認めるなんというのはおやめになった方がいいんじゃないかと思いますが、大蔵大臣いかがですか。
  35. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは耐用年数との絡みでして、耐用年数が適正に評価してあればなくともいいのですよ。ただ、医療機械というのは日進月歩、非常に変わってくるわけです。十五年も二十年もといったって、それは物理的にはもつけれども新しい機械が出てくれば、実際は古い機械はいつまでも使わぬというのも普通なんです。ですから、耐用年数が実際的であるかどうか、そこらとの絡みもありますから十分検討させてもらいます。
  36. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、これは十分に検討していただきまして、先ほど厚生大臣もおっしゃったように、地域的に中心のあれをやるならば助成をする、そのかわり小さなお医者さんまで無理してそれを買う、それで償却があるからなんということでやることは医療の邪道だと思うのでして、そういう点でぜひ検討をしていただきたいと思います。  次に、農林大臣にお伺いいたしますけれども、私の出身は、御承知のように日本の代表的な米作地帯の新潟県の蒲原平野であります。農林大臣自体がよく御承知のところであります。  地元を回って農民の皆さんのお話を聞いたり田畑を見るにつけて、私は、日本農業は一体どうなるのだろうかという不安を持たざるを得ないのであります。農林大臣もよく御承知のとおりのそういう地帯であります。  そこで、農林大臣にお伺いしたいのは、今度農政審の答申が出ましたけれども政府はこの答申の線に沿って農政を進められるのかどうか、まずお伺いします。
  37. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 農政審の答申、これに伴う長期見通しというものを閣議決定いたしたわけでございます。これは同時に審議をいたしてもらい、同時に農政審からの結論として政府がちょうだいしたものでございます。したがいまして、この長期見通しを閣議決定したということは、これのうらはらになっておりますところの基本構想というものを十分踏まえて尊重をして、これからの農政の上にこれらの農政審の答申を具体的に実現をしていくことが日本の農民諸君に光を与え、日本農政の進展を図るゆえんである、こう私は考えてやってまいりたいと考えております。
  38. 阿部助哉

    阿部(助)委員 御承知のとおり、昨年の冷害によって米の作況指数は八七に低下をいたしました。米の生産量は九百七十五万トンと二十六年以来初めて一千万トン台を割りました。そして単年度で申し上げますと百十四万トンもの不足となる、こう言われておるのであります。これまでの経験によりますと、冷害というのは大体二年連続して起こることが多い。昭和になりましてからこれでもう過去に四回二年続きの冷害が来ておる。そういうことを考えると、私はことしの国民食糧に不安を持たざるを得ないのでありますけれども、その点、政府の方ではどう考えておるのか。  政府の方では古米、古々米を使えばある、それはそのとおりだと思うのであります。全く味の落ちた古々米を配給するということになれば確かにあると私は思うのでありますけれども、しかし地元へ帰りましても、農協の組合長だとか農民組合の幹部連中は大変不安を持っております。昨年はやみ米屋が横行するとか、各地の農協の倉庫の新しい米はどんどん出ていってしまって、六月にはもう空になります。私のところの、ある意味では日本一の米どころと言われる北蒲原の倉庫が空になるような事態に立ち至っておるわけであります。農協の幹部連中も、こんなことは初めてだ、こう言っておるのですが、私は不安を持たざるを得ない。食糧は大体大丈夫だという自信を大臣は持っておられるのですか。
  39. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 昨年は地球の上で、アメリカでも中国でもあるいはソビエトでもあるいは豪州、南米等、また日本においても、異常気象に基づく不作という年であったわけでございます。ところが、昭和五十三年度はこれまた国際的な大豊作の年でありまして、このときの食糧がアメリカ等で十二分に保有されておったわけでありますが、その保有が昨年の不作によって非常に少なくなってきておることは現実でございます。しかるところ、今年の天候、気象がどうなってまいるかということはいろいろの見方があるわけでありますけれども、非常に悲観的な見方も少なくないわけであります。したがいまして、国際的な需給の立場からはここ二、三年非常にせっぱ詰まってくるということはないけれども、やはり少し長期的に見通せば、これまた容易なことではないなという感じを持っておるというのが国際食糧の今後の需給に対する見方であろう、こう思っております。  したがいまして、冷害の次の年は豊作の年も統計上あるわけでございますが、私といたしましても、その点事務当局、技術会議の方にも検討を命じたわけであります。気象庁の方にも、今年はどうなるかということをやかましく言っておるわけでありますが、はっきりしためどがありません。したがいまして、最悪の事態を考慮して、一月の二十六日に、今年の種の選択、苗代のつくり方等等、米作、麦作あるいは果樹等に対する今年度の準備のための科学的な技術指導というものをやるような通達をすでに出しておるわけでございます。そういうふうにいたしまして、たとえば去年のような天候であったとしても、ことしの収獲高は去年のように引き下げないいわゆる技術指導、経営指導、肥培管理の指導をいたしまして、被害を最小限に抑えるという努力もさせておるところでございます。したがいまして、食糧問題については、今年は余剰米もまた十分保有をいたしておるわけでございますので、今年、来年、再来年はどんなことがあっても主食に対しての心配はない、こういうふうに考えつつ指導をいたしておるところでございます。
  40. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、私が申し上げたように古米、古々米を用いれば、それはいまのところ備蓄はある、余剰米があるわけですからなん一ですが、それでは米の消費は伸びませんよ。最近のわが国では、都会では大体米びつというものがなくなった。農村でも米の備蓄というのはそんなにない。あの大正の米騒動のときでも、これはわかりませんけれども、家庭の備蓄米を入れれば三百万トンぐらいはあった、こう言われておる。ところが今日、災害が起きたってこれは大変なんじゃないかと私は思うのです、家庭に備蓄がないんだから。  そういう点で、私はある意味で日本は功罪いろいろあったろうと思うが、食管の赤字だとかいろいろ攻撃を受けたけれども、あの第一次石油ショックのときに、狂乱物価と言われるほどいろいろな物があれだけ動いたけれども、米だけは安心しておった。米があの狂乱状態に入ったら大変なことだったろうと私は思う。そういう点でこの米の問題は何か起きたときに大変なんですよね。常日ごろは、空気のようにいつでもあるんだとなれば安心しておるようだけれども、なくなったらこれは大変なことになってしまう。  そういう点で農政というものは、皆さんは食糧の安全保障だとかいろいろおっしゃるけれども、いまの日本の家庭備蓄の貧困さというものを考えれば、多少の過剰米というものを云々するけれども、これは余り気にする必要はないんじゃないか。そして、私のところのあの米作地帯でも備蓄米がなくなるなどというのは、一つはやはり適地適産というものを考慮に入れない一律減反政策というものに大きな問題、矛盾があると私は思うのですが、大臣いかがです。
  41. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 含蓄のある御指摘をちょうだいしているわけでありますが、第一次石油ショック、第二次石油ショック、昨年の冷害、国際的な不作、こういう食糧に対する不安要素が非常に多くあったにもかかわらず、日本の場合は主食はもちろん食糧に対しての不安というものを持たずに今日まで来ることができた。これは農家のおかげではないかという先生の御指摘は私も全く同感でございます。  したがいまして、この食管制度というものは、もう本当に消費者のためにも生産者のためにも堅持をしていかなければならぬなという感じを私も持ち、また米価審議会等の意見等をお聞きしましても、消費者代表も食管制度はぜひ守ってほしい、こういう積極的な御発言も出るようになってきておるわけであります。これらをもとにいたしまして、やはり農業でございますから土地条件、気象条件、こういうものを十分に考慮して、その地域地域の特性を十分発揮していくようなことが生産性を高める一つの方法であるということに間違いはないと思います。  先ほども実は新潟の農協の倉庫が空になる。ほかの空にならないお米をつくっておるところも実は現実に今日まであったわけでございます。そのようにみんな空になるほど喜んで食べていただければ、農林水産大臣はそう苦労しなくても勤まるわけでございますけれども、せっかくつくっても食べていただけないというようなお米をつくるのが果たして国民のためになるのか、国家のためになるのかということも考えながら今度の第二期生産調整等についても十分考えて措置をさしていただき、これがやはり生産者団体あるいは自治体等からの御協力もちょうだいできておるゆえんではないか、こう考えておるわけでございまして、先生の御指摘は十分考慮してやっておるつもりでもありますし、今後もそういう進め方で取り仕切ってまいりたいと考えております。
  42. 阿部助哉

    阿部(助)委員 さっぱり私の質問にお答えになっておらぬようでありますけれども、私は、やはり適地適産というのも何ぼか考慮してないと、日本農業はつぶれてしまうのじゃないかという不安を持っておるわけであります。ことに外務大臣もおいでになりましたが、日米の賢人会議、何が賢人なのか私にはわかりませんけれども、賢人会議なんというのが偉そうにやっておりますが、そこの提言を見ても、日本農業を一体どうするのだろう。貿易の自由化だとかなんとかったっておるけれども、一体日本農業を日本の政治、経済の中でどう位置づけるのかというものがはっきりしない。そこで農民の方は、ただ政府の方からネコの目農政と言われるくらい次から次へと農政が変わってきて、そこに先の展望が何も開けていない。一体日本の農業をどうするのかという問題が私は一番大きな問題だと思うのであります。  そういう点で、この日経調の食管制度の抜本的改正の提言は、ある意味で言うと大変明快であります。余り歯にきぬを着せてないから、いい悪いは別にして、おっしゃっておることは大変に明快であります。しかし、こんなふうにやられたのじゃ日本農業は一体どうなるのだろうか。私はもう日本農業はつぶれてしまうと思うのであります。  ことに、今度総理がアメリカに行ってレーガン大統領との会談も決定をしたようでありますが、アメリカの方では、新聞報道によると、食糧の自由化、大幅な輸入の増加を期待をしておるようであります。そういうことになってくると、私は、ますます日本農業というのは一体どうなるのだろうかという不安を持っておるわけでありますが、アメリカへ総理がおいでになるとき外務大臣も同行されるのかどうかわかりませんけれども、この食糧の輸入の自由化という問題に対して政府の基本方針をお伺いしたい。  外務大臣もおいでになっておるのでこれだけで終わりますけれども、もう一つは、日本の防衛努力について何か向こうからは大変強い要請があるかのように昨日来新聞報道がされておるわけでありますが、こういう問題に対して、日本はいままで防衛問題でこれだけ予算委員会で論議をされておるのでありまして、その点で会談に臨む基本方針をまず承りたいと思います。
  43. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 阿部さんにお答え申し上げます。  実は総理の日程が、五月七日、八日はワシントン、そのほかの日程はまだ決まってないわけでございまして、これから詳細に日程は詰めるところでございますが、レーガン大統領との会談は七日か八日がどちらかにやることは確かでございます。  ついていくかということでございますが、予定はお供をする予定でおります。その前に、私は国会のお許しを得れば三月の下旬に向こうへ行きまして、やはり首脳と意見の交換をしてくるつもりでございます。  議題等はまだこれから詰めるわけでございまして、いまの段階では一切決まっておりません。恐らく私が三月の末に行って、五月の総理の行かれるときの議題とかその他の問題の打ち合わせをするのだろうと思っておりまして、そこまではまだ詳細に議題等は決まらぬわけでございます。でございますので、いま先生のおっしゃいました防衛の問題とか農産物の問題とか、どういう段階でどういう話になるかということにつきましては、まだ一切これからの問題でございますが、新政権になりましてから出た話は、農産物のことは、国務長官との話し合いを大使がしたりしました中にもまだ一切出ておりません。でございますので、農産物のことが問題になるかどうかということはわからぬわけでございますが、中川大臣が行かれまして、柑橘類とか牛肉の話は、前に協定というか話し合いをしてこられたわけでございます。これはまだ期限は先までございますので、私どもとしましては、中川農林大臣が行って話されたことはもうそのまま生きておると思っておるわけでございますから、いまさしあたってそれをどうこうするというような考えは恐らく日本側としてはないだろうと私は思いますし、いままで全然その話は出ておりません。  それから防衛の問題につきましては、ヘイグさんと大河原大使が話し合いをしたときは、日本の防衛のことについては話は出ておりません。ただ、大河原大使がワインバーガー国防長官に会いましたときには、確かに防衛の話は出ております。  その触れ方でございますが、要するに、レーガン大統領は経済再建の計画をこの間出した。ほかの方は歳出を削っているが防衛費だけは増加するということで、アメリカも一生懸命努力をしている。今後も努力をして、ヨーロッパ、日本等の同盟国から信頼されるアメリカになるという努力を今後一層やっていくつもりである。また国際情勢を考えれば同盟国、もちろん日本も入ってでございますが、今後とも防衛につきまして最大限の努力をしてもらいたいのだという希望はアメリカとしては持っておるという一般論の話がございまして、具体的にどうかというようなことは、一切その会談では触れておりません。今後協議をしたい、あるいは防衛庁長官の訪米でお会いすることを心待ちにしておりますとか、そういうような一般的な話でございました。  日本の態度でございますが、これは総理もここで何回も言明をしておられるのでございまして、日本としましては、憲法その他国内法の制約があることはもう確かでございます。そういうことを踏まえまして、財政の問題あるいは国民のコンセンサスの問題、その他いろいろございますので、日本としましては、専守防衛ということが基本でございますし、個別自衛権というものが基本でございますので、そういう範囲におきまして、自主的に日本をどうやって守っていくんだということを自主的に日本が考えなければならぬというのが総理も何回もおっしゃいました態度でございますので、私どもも一貫してその態度でアメリカ側と話をするつもりでございます。
  44. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大分時間がなくなってまいりましたので少しはしょってあれしますけれども、一番大事なのは、私がいま申し上げましたように農林大臣、この賢人会議だ、日経調の提言だと、こう見てまいりますと、これは全く経済合理主義です。経済合理主義で一体日本の農業が何とかなるのだろうか。私は、簡単に大臣の所見をお伺いしたいと思うのです。
  45. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 農業はおてんとうさま相手の産業でございますから、経済合理性で幾らうまい計画を立て、幾らうまく実施をし、幾らうまい肥料を使っても、おてんとうさまのごきげんが悪ければ全くゼロということもあり得るのが特徴でございます。こういう農業に対して経済合理性のみで解決を図っていこうということは、私は、そうすれば農業をやる人はいなくなる、こういう感じがいたすわけでございます。しかし、生産性の向上ということはやはり農業者としての社会的使命とでも申しますか、そういうことで品種の改良、技術の開発あるいは規模の拡大等々、施策の面ではできる限り農業者の皆さん方が農業をやりやすい環境を整備をしていくということに全力を挙げてまいりましたし、これからも全力を挙げていかなければならない、そんなふうに考えております。
  46. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうおっしゃるけれども政府の方では、六十五年ですかまでに自給率は今日の三四%から三〇%に減らすという答申ですね。自給率は減らす、自給力は高めるとこうおっしゃるのですが、私どうしてもこれは理解ができない。自給率を減らして自給力を高めるなんというのは、これは言葉で言えば何かわかるようなわからぬような問題で、自給力を高めるためには自給率は当然上がってくると思うのですがね。これはどういうことなのですか。
  47. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 阿部委員十分御承知の上での御質問でございますが、とにかく国民の食生活に対するニーズは、やはりどうしても肉類関係等に旺盛であるということは御承知のとおりでございまして、十年後にも相当鶏肉、豚肉等の需要が伸びるという見方をせざるを得ない。そうなりますと、どうしてもえさというものの需要が多くなる。それじゃそのえさを日本で生産できるかというと、えさの供給は非常に困難であるということで、これを輸入するということで、このえさを除いた穀類の自給率というものはそう下がらないということでございますので、その点ひとつよく御理解をいただきたい。このえさを含めての計算をいたしますと三四が三〇になるということで、これはするのじゃなくてなるということであるところをひとつよく御理解をいただきたい。
  48. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、農林省は少し自主性がないんじゃないかと思うのです。  もう時間がありませんので少し飛ばしますけれども皆さんは、あの答申では中核農家を育成するというのが一つ何か目玉になっておるようであります。あとはみんな何か気に食わないけれども言っておる。しかし、これは昭和三十六年の農業基本法のときに、自立農家を育成する、そうして所得の均衡を図るといううまいうたい文句がありました。これで農民の方はごまかされちゃった、本当言うと。今度は中核農家を育成する。中核農家育成なんてできますか。私は、これはうたい文句で、できないだろうと思う。  中核農家を育成して規模面積を拡大すれば、当然農業からはみ出して、そこから出ていく人たちがおる。しかし、その出ていく人たちには身分保障も何もない。ある意味で言えば、三十六年の農業基本法をつくってから出かせぎという問題が起きてきた。日雇い、出かせぎ、そうして出ていった農民は最も劣悪な労働条件の中で働かされてきたのはもう大臣御承知のとおりであります。何にも身分保障はない。しかも、地下鉄の夜間作業だとかトンネルの最先端の最も危険なところに、最も技術のない農民がこき使われてきたというのが高度成長の歴史だったと私は思う。ある意味で言えば、農民の犠牲の上に高度成長が成り立ったのじゃないかという感じすら私はするわけであります。そのとき、中核農家をつくった、このはみ出していく人たちの雇用問題、労働条件というものは一体どうお考えになって農政を指導されるのですか。
  49. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 まことに実は適切な御指摘である、こう考えます。(阿部(助)委員「ほめてばかりではしようがない」と呼ぶ)いや、本当なんです。いままで農林省はいろいろ計画を立てますけれども、その肝心な規模拡大をし生産性を上げるということになれば、当然その問題が結果として出てくるわけです。それじゃ、その規模拡大の外にはみ出た人は一体どうするのか、こういう問題は必ず起きるわけであります。したがって、農林省としては、いままではできるだけ時間をかけてそういう混乱の起きないようにということと、他産業の成長に伴う速度と合わせてというようなことでバランスをとってきておるわけでありますが、確かに出かせぎ等の面でそういう面があったことは私も承知いたしております。したがいまして、今回の、今後十年間の長期見通しを実現してまいりますための中核農家を育成してまいるという中には、やはり雇用問題を私はやかましく事務当局に対して検討を命じておる次第でございます。亡くなられた大平さんがよく田園都市構想ということを言われたわけでありますが、やはり農村にも雇用の場を十分準備した農村の地域社会というものを建設してまいる。たとえば今後いろいろエネルギー産業あるいは電子産業等々、世界の先進的な雇用の場を日本農村の地域社会の中につくり上げていくという努力、これは農林省だけではできませんので、政府といたしましてそういう立場から、この農業政策の遂行のためにもそういう点十分考慮していただくようにしていかなければならない。特に昨年国会で食糧自給力強化という御決議をいただいたということは、私は、日本の政治の中で農業の位置づけを国権の最高機関の国会にやっていただいた、それを足がかりとして農林水産関係の責任者として施策を進めてまいりたい、そんな気持ちでおりますので、よろしくひとつお願いいたします。
  50. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは政府全体で真剣に考えてもらわないと、農民は本当に棄民になってしまいます。  最後に、時間がありませんので、政府は食管法の改正を準備しておると聞くのでありますけれども、どのような改正をされるのかお聞かせ願いたい。
  51. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 できれば今国会に提案をさしていただきたいということで準備を急がしております。  内容は、現実の面も守れる食管法、法治国家の中で、守れない法律で先ほど来の国民の食糧供給等をつかさどっておる。その法律が守られておらないというのは、やはり立法府におる私といたしましても、また行政官としての私といたしましてもこれはほっておけない、こういう気持ちで事務当局に対しまして、とにかく君らだって行政官じゃないか、守れる法律にきちんとしようじゃないかということで準備をしております。  根幹は変えません。一条、三条の精神は変えません。そして、やはりこれは不作時の食糧が非常に不足しておるときにできた法律でございますので、食糧の不足のときはもちろん、需給のバランスがとれておるときも、あるいは非常に生産超過したときも弾力的に発動できる、生産者を守り消費者も守る食管法にしたい、こんな気持ちでいま準備を進めさしております。
  52. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう時間がありませんので最後でありますけれども、大臣、私は政府自体に考えてもらいたいけれども、農業は決して経済の合理主義の枠の中でうまくいくなんということはありません。しかし私は、寡聞でありまするけれども、私の知る限り、農業が衰えて民族の活力を持った歴史は知りません。農業が活力を持ったときその民族は活力を持ってくるのでありまして、私はいまのような、今日までの政府・自民党の政策、いろんなことを言うけれども、農業は経済合理主義の中でつぶされようとしておる。それで一体日本民族の活力を持った将来が展望できるのかどうか、その点で不安であります。せっかく農林大臣一生懸命やっておるようですから、農業の補助金がどうだなんといったって、大資本の方にはさっき言ったようにあれだけぶち込んであるんだから、余りびくびくしないでひとつがんばっていただくようにお願いをして、私の質問を終わります。
  53. 小山長規

    小山委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  次に、川本敏美君。
  54. 川本敏美

    川本委員 それではまず最初に、私は法務大臣にちょっとお聞きしたいわけです。  法務大臣は、きのう静岡県の相良町で講演されたときょうの新聞に載っておるわけですが、その中で法務大臣が言われたことは、「憲法の平和主義、民主主義、基本的人権の尊重は、立派な思想に基づいているが、基本は日本が再び米国の脅威になってはならないという点にあった」こういう話をされたと新聞に、載っておるわけです。  そこで、ほかのことはさておいて、憲法について法務大臣はいろいろな発言をしておられるわけですけれども、少なくとも基本的人権というものについては、これはやはり国民の持つ崇高な権利だと私は思うわけです。国政の中で最大限の保障をされなければいけない問題だと思う。ところが、法務大臣が言われておるように、これはアメリカの脅威にならないためにアメリカが方便で基本的人権という憲法を日本に押しつけたんだという考え方がありとすれば、これは大変な問題だと私は思うわけです。その点について法務大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  55. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 基本的人権に関しまする規定は、明治憲法にもあったと思います。新憲法ではそれをさらに徹底させて規定しているわけでございまして、新憲法の一つの大きな眼目になっておるものだと考えております。
  56. 川本敏美

    川本委員 それでは法務大臣としては、憲法の中で規定されておる基本的人権については、最大限国が力を挙げてこれは守らなければいけない問題だというふうにお考えですか。
  57. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 憲法に規定しているとおりに考えております。
  58. 川本敏美

    川本委員 そこで私は労働大臣にお聞きをいたしたいと思うわけです。  私は、去る十月の二十一日に社労委員会で安田信託銀行の雇用差別の問題についてお聞きをいたしました。安田信託銀行の差別事件というのはまことに悪らつきわまりない、周到きわまりないものでありまして、簡単に言いますと、大学生や高枝卒業生を新規採用するときに、大学や高枝には指定枝制度を設けて、そしてそこの担当教官やゼミの教官と親しくなって、そして母子家庭だとか心身障害者の家庭だとかあるいは同和地区出身者であるとか、そういう者は推薦させないようにあらかじめ手を打っておけ、こういうことを含めたいわゆる支店長、営業所長に、対する会社の首脳の通達を出して、規則を定めて、そして行ってきたわけです。そして身元調書というのを提出させて、労働大臣がかねがね本籍地等は履歴書には書かせないと言っておるけれども、社内制定の身元調書の中には、いまお手元にお配りしております資料にございますように、大臣ごらんいただいたらわかりますように、本籍地とか家族の状況とか親きょうだいの職業、嫁ぎ先、出生地、成長地に至るまで詳しく書かせるような用紙を配付しておる。さらにテストの中では、たとえて言いますと、島崎藤村というところでは破戒とか千曲川とか夏草とかいう答えを並べておいて、その中で破戒というところに丸をした者は、これは同和地区出身者として不採用にするとか、あるいは面接選考調書というのをつくらせて、そしてそれによっていろいろな面接をやっておるわけですけれども、それでなお頼りがないからということで、最後には興信所による身元調査を行っておるわけです。  その中で、その興信所の身元調査をいま大臣のお手元へわかりやすいようにお配りしてございますが、これは綜合警備保障調査部の資料ですけれども、二枚目をめくっていただきましたら、ここに下に赤丸してあるところにマル特と書いてある。このマル特というのは何かと言って聞きますと、これは特殊部落という意味だ。そしてマル特には、該当なしとか該当ありとか、これは綜合警備保障がはっきり会社に出した回答書ですから。  その次のものをめくっていただいたらわかりますが、これは東亜興信所というところが出したものですけれども、一枚目の上から三行目には「一般に忌避されるような部落ではなく、」こういうように書いてあるわけです。次のページの方は、ちょっと筋の引いたところが間違いで、もう一行上ですけれども、「部落関係(村八分等)に関しては満願寺町一帯何等懸念はなく、」こういうことで、興信所の身元調査をいわゆる同和地区出身者であるかないかということをはっきりさせるために全部行ってきておる、こういうととがいままで行われてきておるわけです。  私はこのことをこの前労働大臣に申し上げましたが、その後労働大臣はどのように措置されましたか、お聞きをいたしたいと思います。
  59. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  これは委員が御存じのとおりでございまして、そういう御指摘を受けましたたしかあくる日だったと思いますけれども、私は安田信託銀行の社長以下責任者に全部出頭を願いまして、そうしてその事実の当否を詳しく聞きました。きわめて適切ならざる措置をとっておるということを指摘をいたしまして、それに対する改善措置、同時にそういった行為に対する会社といたしましての失態をおわびを申し上げるという謝罪状を書いてもらいました。それを先生のところにもことづけを申し上げた記憶がございます。
  60. 川本敏美

    川本委員 十月二十七日付で安田信託銀行の社長山口吉雄さんから労働大臣あてに、いわゆる自己批判書といいますか謝り状といいますか、こういう文書が出されておるわけでして、大臣が私の申し入れに対して直ちに決然としてこういう行動をとられたということについて私は心から敬意を表する次第でありますけれども、その節労働大臣は、このような事態は絶対に続けさせません、絶滅いたします、こういうふうにお約束をいただいたわけです。しかしながら、残念ながらその後も同じような問題が引き続いて発生をしておるわけであります。  実は、中国電力におきましては一九七二年に地名総鑑を購入しながら、法務省の調査に当たっても地名総鑑は買ってない、そういう書類は買った覚えがないと再三再四虚偽の回答をしておいて、そうして最後にはこれを買ってありたことを社長みずからが認めたわけです。これも各支店、営業所に対して徹底的に通知をして、正社員だけでなく準職員や雇用員、常勤嘱託、こういう人たちの採用に至るまで全部この地名総鑑と照合をしてきた。あるいは身元調査要領とか人事事務取扱要則というものを制定して、いま申し上げた同和地区出身者だけでなしに、障害者家庭、母子家庭あるいは定時制や夜学の卒業者、こういう者を全部、いかに本人が能力がありあるいは適性があってもこれを排除してきたということが明らかになってきたわけです。そういう中では、具体的には両親の生い立った場所とかあるいは環境の特殊事情、こういうことまで興信所を通じて調査をさせておるわけです。これは安田信託銀行の場合と全く変わらぬと私は思うわけです。しかし、いま申し上げた安田信託銀行とか中国電力というのはまさに氷山の一角、こんなものは全国の大企業というものはすべて今日まで続けてやってきておるんじゃないかと私は思うわけです。こういう点について労働省は知っておるのか。  あるいは昨年十一月ですけれども、福岡県の社会保険医療協会というところで、いわゆる新しく大学を卒業したS君というのがここの採用試験を受けて、試験に合格をして、あなたはどこそこの病院に勤めてくださいという勤務配置まで決めておきながら、後で高等学校へ行って調べたところが同和地区出身者であるということがわかった、そのために今度は採用を取り消した、こういう差別事件が福岡県で発生しておるわけです。こういうことについて労働省はわかっておりますか。わかっていましたら答弁をいただきたい。
  61. 関英夫

    ○関(英)政府委員 ただいま先生指摘の、まず中国電力の事件につきましては、昭和五十四年十二月に差別図書である地名総鑑の購入事実が判明いたしました。その後、広島法務局を中心といたしまして私どもの出先も一緒になりまして共同啓発約十一回くらい行っております。また職業安定機関単独でも数回にわたりまして啓発活動を行いまして、その過程で、先生指摘のように採用選考システムに当たって身元調査を行うなど、そういった適切を欠く行為が行われてきたことが明らかになりましたので、そういった面につきましても適正な採用選考システム計画を実行するようにということで引き続き強く指導しているところでございます。  それからまた、次に御指摘ございました福岡県の社会保険医療協会に関します問題は、昨年十一月に協会が職員の採用試験を行った際、本年度の大学卒業者二名を採用予定のところ十名が受験いたしまして、学科試験及び面接を行った後二名について内定をいたしました。内定後につきまして身元調査を行いまして、そのうち一名の内定の取り消しを行ったわけでございます。その取り消しを行った真の理由は、同和地域出身者であるということから内定を取り消したというまことに遺憾のきわみでございまして、こういった事実が明らかになりましたので、現在協会の認可をしております県と私どもの出先と一緒になりまして啓発活動を行っておるところでございまして、こういった就職差別事件を二度と再び起こさないように強力に指導してまいりたいというふうに考えて、現在強力な指導を行っている最中でございます。
  62. 川本敏美

    川本委員 いま労働省の方が、これは差別事件だと認めて一生懸命啓発と指導を行っておる、こういう御答弁ですけれども、私は、これは啓発と指導だけで絶滅できるのかという点に問題があると思うのです。  いま言いました福岡県社会保険医療協会については、厚生省の所管の公共団体だと私は思うのです。厚生省はこの問題を知っておるのかどうか、どのような対処をしてきたのか、厚生省の方からお答えをいただきたいと思います。
  63. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘の福岡県社会保険医療協会は福岡県が認可をした法人でございます。ここに起きました事件は、国、地方が挙げて同和対策をやっております最中、想像もできないような差別待遇をやり、取り消された、本人を生きたまま殺すというような残忍なことをしたことはまことに残念なばかりでなく、このようなことをそのまま放置するわけにはまいりません。  そこで厚生省としては、第一は、いろいろ同和問題に対する理解その他の問題を深めるために各職員、公団あるいは各役所の研修会等をやっておりますが、そういうものをさらに推し進めて、全国の国民に同和問題に対する理解と認識をさらに深める、これが第一。  第二番目は、福岡県と連絡をして、福岡県がこの協会の体質改普及びこの問題の処置をするよう強く折衝しているところでございます。  なお、この協会は、社会保険と名前をつけておりますが、いわゆる社会保険の病院ではございません。固有名詞として社会保険という名前をつけておるわけでございます。
  64. 川本敏美

    川本委員 厚生大臣に重ねて聞きますが、歴史的に見ますと、この社会保険医療協会というのは国が炭鉱の施設としてつくったもので、それを財団法人福岡県社会保険医療協会というふうに改組して国有財産を全部払い下げていったという歴史的経過があるわけですから、国とのつながりは非常に深いと私は思うわけです。そんな差別体質を持っておるところに国有財産を払い下げるなどというのは国が差別行政を認めていることにつながると私は思うわけです。  厚生大臣、これは部落差別事件であり、同時に基本的人権を侵害する行為だと私は断定したいと思うのですが、厚生大臣はどのようにお思いですか。
  65. 園田直

    ○園田国務大臣 いわゆる社会保険の病院ではありませんが、御指摘のとおり、国がいろいろな医療行為その他を委託するために県と相談をして県が認可したものであります。この協会が行った行為というのは、御指摘どおり、そのとおりでございまして、私もそのように考えます。
  66. 川本敏美

    川本委員 私の言うとおりに、厚生大臣はこれは部落差別に基づく基本的人権の侵害事件だというふうに思われた。私は、ここのところにはいまも国費の助成も行っておると思うのです。そういうようなことに対しても厚生省が毅然たる態度をもって指導しない限り、啓発と指導じゃとうていこういうことは直ってこないと私は思うわけです。  そこでちょっと大蔵大臣にお聞きしますが、先ほど安田信託銀行の問題を申し上げました。実は今度の地名総鑑を購入している企業を調べますと、その中に商工組合中央金庫あるいは東洋信託銀行あるいは京都中央信用金庫、広島銀行、福井銀行、滋賀銀行あるいは九州相互銀行あるいは大同生命や同和火災や日本生命、こういうように大蔵省所管の保険あるいは銀行が三十四社もあるわけですね。こういう大手のいわゆる保険あるいは銀行等が全部地名総鑑を購入しあるいは同和地区やあるいは障害者家庭や母子家庭や、そういう人たちを差別をしておるというのはけしからぬと私は思うのですが、大蔵大臣、これはそのまま放置されますか。
  67. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私はいま初めて聞いたことでありますが、いま厚生大臣もお答えをしたように、こういうことは常識外の話でありますから、そういうことのないように今後とも関係部局を通しまして趣旨の徹底を図っていきたい。
  68. 川本敏美

    川本委員 趣旨の徹底を図るだけでは私は不十分だと思うのです。  通産大臣おいでですね。通産大臣にお聞きしますが、地名総鑑というのを購入している企業は全国で二百社を超えておると思うのです。これは全部通産大臣の所管の企業ばかりですよね。しかし、これは氷山の一角だと私は先ほど申し上げました。まさにこの二百何社というのは氷山の一角です、ほかの企業もおしなべて同じようなことをやっておるのではないかと私は思う。日本の企業の元締めである通産大臣として、この問題に対して、こういう基本的人権を踏みにじるような差別行為が公然として行われておる、この点について通産大臣はどうしたらいいと思いますか。
  69. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いまの世の中で、民主主義、基本的人権のようなことを標榜している時代にそういう企業があるということはきわめて遺憾でございまして、これからももちろんそういうことのないように行政指導もしていかなければなりませんけれども、私といたしましては、そういう企業につきましては厳重に対処していくと同時に、今後そういうことが全くないように強い行政指導をさらに一層深めていきたいというふうに思っております。
  70. 川本敏美

    川本委員 私はこの際、労働大臣と通産大臣がそういう地名総鑑を購入しておる企業の社長を全部呼んで、そしてただ指導するとか啓発をするとか言われてもどうも私としてはわからないので全部の社長から反省文を出させるというようなことをやる必要があるんじゃないかと思うのですが、労働大臣どうでしょう、やれませんか。通産大臣もお答えください。
  71. 関英夫

    ○関(英)政府委員 大臣の前にちょっと事務的に、こういった事件が起きました場合の処理について申し上げたいと思うのでございますが、先生指摘のとおりに二百を超えるような企業でこういった地名総鑑を購入していることが明らかになっております。そういった場合には、私ども、法務局を中心として関係行政機関と一緒になって指導する、あるいは私どもの出先が単独で指導するという形で指導してまいりまして、その途中で、事実の確認あるいはそれをどう直していくか、そういったことでいろいろと文書も出していただき、指導を重ねてまいりますので、いまここで改めて反省文をとるというような必要は余りないんじゃないか。そういう指導の過程で必要に応じて私ども文書をとっておりますので、まず事務的にお答えする次第でございます。
  72. 川本敏美

    川本委員 そんなばかな話はないですよ。そうしたら、その反省文をとらずにいままでの指導をやってきたから、それだけで、こういう事件は二度と再発しないように絶滅をさせますとこの前労働大臣が言っておる。絶滅することができますか。後もっと続いて一件でも起こったら責任とりますか、鈴木内閣は。
  73. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  私はあなたにこの種の事件は絶滅をいたさせますということを申し上げたわけでございます。でございますから、ただいま安定局長がいろいろ申しましたけれども、私が事ををやりまする以上は私は責任を持ってやるわけでございます。でございますので、謝罪状をとるとかとらぬとか、そういうことを含めまして私が責任を持って絶滅をさせるために有効な手段を必ずおとりいたしますから、どうかひとつこの後のことをお考えをいただきたいと思います。  ただ、ここで、そういうことが起こったら内閣として責任を持つかということでございますけれども、私がやりまする以上は私の責任でございますから、私の進退をかけましても必ずやってお目にかけます。
  74. 川本敏美

    川本委員 ただいま労働大臣から絶滅するために必要な措置をとる、このような御回答をいただきました。私は、その絶滅するための必要な措置がどういうことかということについては後ほどお聞きすることにしたいと思います。  そこで、労働大臣にちょっと申し上げておきたいと思うのですが、先ほど申し上げた福岡県社会保険医療協会で就職で差別されたS君やその家族の人たちが上京してきて、ただいまこの質問を傍聴中なんですよ。これが終わりましたら、本人がじかに、家族の方、お父さんやお母さんも含めて大臣に聞いてもらいたい、その情けない気持ち、くやしい気持ちを聞いてもらいたい、こう言っていますので、後でぜひ会ってこれは聞いていただきたいと思っておるわけです。  このような事件は、先ほど来いろいろ説明してきましたけれども、いままでのところ、啓発を行うとか指導を行うとかいう答弁はいただいておりますし、最大限の努力をするとか特別の措置をとると言っていますけれども、この事件で被害者になった人の救済はそれならどういう形でできるのか。いまのわが国の法制のもとでは被害者は救済することはできない。まして加害者がおるわけですよ。そういう差別をして、そのために安田信託銀行の場合は京都大学生が自殺をしておる。いかに本人が東大を卒業しようと京大を卒業しようと、適性があろうと能力があろうと、こういう問題で差別をして採用しないんですから、それは若い青年が希望を失って自殺に追いやられるのは当然だと思う。そういうことのために大ぜいの若い青年、未来の日本を背負う青年が自殺に追いやられておる。このようなことを一日も早くなくするということが今日わが国の政治を担当するものの責任じゃないでしょうか。憲法で書かれておることがいまだに守られない、そして被害を受けても救済の道がない、加害者に対しても処罰、処分をする方法もない、ただ指導と啓発を行うだけだ、こういうようなことでは、憲法の十一条から十四条に至るいわゆる基本的人権に関する部分については、空文に等しい状態にいま置かれておる。憲法では保障されておるけれども、実体的には何の保障もない。私たちはこういう国でいま生きているわけです。このようなことは、もう一日も放置しておくことはできない問題だと思うのですけれども、どうでしょう労働大臣、雇用差別をなくするための特別立法あるいはILO百十一号条約の批准、こういうようなことについて労働大臣のお考えがございましたらお聞きをいたしたいと思うわけです。
  75. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 私も詳しいことは存じませんけれども、ILO百十一号といいますのは、世間に存在するあらゆる差別全体をとらえて言っておるわけでございます。御案内のとおり、その中でも男女の性による差別というのは非常に重大な問題でございます。こういった問題につきまして、私どもの方でそれにこたえる完璧な措置がいまだにできていないということでございますので、現在法制上の詰めといったようなことをやりまして、そういった基本的条件をなくするための努力を現在やっておるわけでございます。でございますので、そういったあらゆる体制をよく勘案いたしまして、十二分にこれで大丈夫だということになって初めて条約の加盟を行い、そしてこれに対する責任を果たすことができるわけでございますから、責任が果たせないうちに、この段階におきまして私どもがこれに加盟をする、批准をするということをいまお約束するわけにはまいりませんので、必ずその条件をつくりました上で、堂々と加盟に踏み切っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  76. 川本敏美

    川本委員 加盟の時期等、いわゆる条約批准の時期については、ごりっぱな答弁ですけれども一向に明らかにしていない。それでは、先ほど来私が申し上げておる人権侵害、差別事件、こういうことがこの間にどれだけ起こるか知れないわけですから、私は一日もゆるがせにできないと思うのです。  法務大臣、先ほど来お聞きいただいておると思いますが、いわゆる福岡社会保険医療協会等におけるこの種の事件は、部落差別に基づく基本的人権の侵害事件だと私は思うのですけれども、法務大臣はどのようにとらえられますか、ちょっとお聞きします。
  77. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いままで伺った限りにおいては、私もそう思います。
  78. 川本敏美

    川本委員 そこで、法務省人権擁護局長がおいででしたらお聞きしたいと思います。  先ほど来言っておりますように、地名総鑑というのは現在までに何種類出て、それを購入した企業は何社ありますか。
  79. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 御質問にお答えいたします。  いままで掘り起こしましたいわゆる地名総鑑は八種類でございます。そしてこれを購入いたしました企業は二百十七社でございます。ただ、詳細に申しますと、一社で二冊買っているというものは二社と勘定しておりますので、企業数だけを申しますと二百一社でございます。
  80. 川本敏美

    川本委員 そこで、重ねて法務省にお聞きしたいと思うのです。人権擁護局長で結構ですけれども、このような基本的人権の侵害を取り締まるための国内法は、いま根拠法律は何に基づいて基本的人権を守っておるのですか。
  81. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  もとになりますのは法務省の設置法令でございます。それから、具体的には人権侵犯事件調査処理規程でございます。あと一般法といたしましては、刑法にそれぞれ名誉棄損罪、侮辱罪、信用棄損罪あるいは秘密を侵す罪、こういうものがございますし、また民法におきましては、民法一条の信義誠実、権利乱用、あるいは九十条の公序良俗違反というような規定がございますし、さらに民法では損害賠償を求める不法行為についての規定がございます。一応挙げますとそういうことでございます。
  82. 川本敏美

    川本委員 局長、そこに待っていてください。  そうしたら、いまの福岡県社会保険医療協会の事件に関しては、いま言った中で加害者はどの法律によってどう処分できますか。被害者はどの法律によって救済できますか。法務省として告発できますか。
  83. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 直ちに刑罰法規を持ってまいるということについてはいろいろ問題があろうかと思われますが、結局私ども法務省といたしましては、極力その意識の変革を求めるという方向で加害者を啓発し、かつ被害者を救済する、こういうことを考えております。
  84. 川本敏美

    川本委員 労働省はどうですか。この前職安局長は、雇用差別の問題に対する根拠法は同対法三条、四条だと私に言いました。職安局長、その点はどうですか。
  85. 関英夫

    ○関(英)政府委員 社会労働委員会におきまして、先生の御質問に対しまして、就職差別をなくしていくための根拠として三条、四条というような国内法制があることをお答えしたことは事実でございます。ただ、こういった法律そのものは、先生も御指摘のように、憲法十一条、十四条の基本的人権あるいは法のもとにおける平等といったものを敷衍するための国内法だ、こういう意味において申し上げたつもりでございます。
  86. 川本敏美

    川本委員 現実を言いますと、同和対策特別措置法の三条、四条も訓示規定ですね。国民の責務とか、国または地方公共団体の責務というものを明らかにしておるだけで、それは何の中身もないわけです。  そこで法務大臣にお聞きをいたしたいのですが、同和対策審議会答申というのをお読みになったことがあると思うのです。これは昭和四十年に出された答申で、法務大臣も当時から関与されておった。特別措置法の制定の当時も関与されておったと私は思う。  その措置法の五の「人権問題に関する対策」の(2)の「具体方策」というところで「差別に対する法的規制、差別から保護するための必要な立法措置を講じ、司法的に救済する道を拡大すること。」と明確に書かれているわけです。この点について法務大臣はどのように思われますか。
  87. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 昭和四十年の答申を受けて四十四年に同和対策事業特別措置法が生まれたわけでございまして、その間、各党間でいろいろ話し合ったわけでございます。したがいまして、その答申を受けて立法しているわけでございますので、全体としてその答申の趣旨は一応実現されたのじゃないだろうかな、こう考えておるわけでございます。  具体にいまお読みになりましたことが同和対策事業特別措置法の中にどう掲げられているかということになりますと、それはそれだけじゃなしに、現行刑法そのほかいろいろなことを総合的に勘案してああいう立法になったのだ、こうお考えいただいた方がいいのじゃないだろうか、こう思います。  答申の中に立法措置をとるべきだということが書かれておるわけでございますけれども、立法措置をとることがいいのかどうかということも実は議論があって、ようやく四十四年にあの法律が日の目を見るということになったわけでございますので、総合的な各党間の話し合いの結論があの法律だ、こう御理解いただきたいと思います。
  88. 川本敏美

    川本委員 この同和問題と関係はありますけれども、法務大臣に重ねてお聞きしたいのですが、基本的人権の問題については先ほど来質問いたしまして、一連の質問の中で明らかなように、じゅうりんされてもそれを救済する措置もなければ、じゅうりんした方を処罰する方法もない。最前局長の言ったのは、具体的には法律ではないですよね、いろいろな細々したことを言いましたけれども。私は、基本的人権を保障するための単独的な立法措置というものが検討されてしかるべきじゃないか、もうその時期に来ておるのじゃないかと思うのですが、法務大臣どうですか。
  89. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 人権擁護局長が申し上げましたように、刑法の中に名誉棄損の罪でありますとか、侮辱の罪でありますとか、いろいろなことが掲げられておるわけでございますし、またそういうことを基礎にして損害賠償の事件にもなるわけでございまして、そうは言ってもなかなか解決されないものがあるじゃないかという御心配がいまのお尋ねになっていると思うのでございますけれども、法で直ちに解決できる問題と、なかなかそれだけじゃいかないで絶えざる真剣なみんなの努力、自覚、啓発、そういうことにまたなければならないもの等、私はいろいろなものがあるのじゃないだろうかなと思うわけでございまして、これからもお互いにみんなが真剣にそういう問題の解決に心を配っていかなければならない、工夫していかなければならない重大な課題だと心得ております。
  90. 川本敏美

    川本委員 この同対審の答申が出てから十五年たつんですよね。十五年たってなお今日、安田信託銀行でも中国電力でもあるいは福岡の社会保険医療協会でも、こういう事件が続発をしておる。差別事件は年にどのくらいあるか知りませんけれども、法務省の関係だけでも何百件とあると思うのです。あるいはその他の雇用関係の問題だとか教育差別の問題だとか含めると、優にこれは千件を超すと思うわけです。そのような事態の中でなおかつ指導と啓発だけでいくと言っても、それでこういう事件を絶滅できると思いますか。こういう事件を法務大臣は絶滅させることができますか。
  91. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまだにいわれのない部落差別が根強く残っておりますことは本当に恥ずかしい思いがいたします。そうかといいまして、法律をつくったらすぐなくなるか、人を殺したら何年以上の懲役または死刑に処す、こう書いたらそれで全部なくなるか、そういうわけにもまいりませんので、やはりいろいろな手段をみんなで工夫しながら絶滅への努力を続けていくことが大切じゃないかな、国民みんながその気持ちになることが一番大事なことじゃないだろうかな、こう思っております。これからも真剣にみんなで考えていきたい、また法務省としては特段の努力を払っていきたいと思っております。
  92. 川本敏美

    川本委員 法務大臣S私とは同じ奈良県の選挙区ですけれども、この間も御所の法務大臣の地元の市長さんが陳情にお見えになりましたよね。大臣のところにも行ったと思うのです。残事業がまだ四百億あるからとか申しておりましたけれども。特別措置法は来年三月で切れちゃうわけです。それでは、先ほど未言っているような雇用差別の指導も労働省はできなくなる。いろいろな基本的人権も守ることはできない。  そういう中で、やはりこの問題については、この間野坂委員の質問に対して鈴木総理は、来年度の予算を編成する時期までに政府の方針を決めたい、こういうことを言っておられるのですが、法務大臣としてはどう思われますか。特別措置法を強化改正しなければ、やはりいまの実情として基本的人権を守ることもできない。基本的人権については、これはもう法務大臣が守っていただくその元締めですからね。法務大臣からそういう点についてどのようにお考えか、ひとつお聞きをしたいと思います。
  93. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 問題は、部落差別を根絶するということだと考えるわけでございます。その方法として、いま川本さんは川本さんなりの見解を述べておられたわけでございまして、その問題につきましては、また先般総理大臣も十分検討していきます、こう答えておられたわけでございますので、私もそれらの検討にまちたい、こう思います。
  94. 川本敏美

    川本委員 もう時間がありませんので簡単に申し上げたいと思うのですが、私は、法務大臣、検討をしてもろうたんじゃ困る。やはり法務大臣として積極的にこれは延長すべきだとか、意見を申していただかなければ、基本的人権についてわれわれは安心して生きていけないと思うわけです。そういうためにも、私は法務大臣の毅然たるその姿勢——憲法改正問題ではあれだけ発言しておる法務大臣が、基本的人権の問題では発言しない、総理大臣の言うとおりにします、これじゃおかしいんじゃないですか。その点ひとつ法務大臣から毅然たる意見を聞きたい。
  95. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いろいろな意見が各方面にあるわけでございまして、問題は部落差別を根絶するということでございますので、その方向に向かって努力をしていきたい、最善の道を求めていきたい、強くそう考えております。
  96. 川本敏美

    川本委員 最後にちょっと総務長官にお聞きをしておきたいと思うのです。  この間鈴木総理がこの席上で、先ほど申し上げたように、来年度の予算編成前に方針を決めると言われましたが、これは予算編成ということになると、予算要求の時期というのは大体八月だと思うのです。それまでに決めなければ来年度の予算の編成はできないと私は思うのですが、その点、ことしの八月までに内閣の方針を決めるという意味だと私は理解しているのですが、総務長官どうですか。
  97. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  いまお尋ねの件は、先般鈴木総理が当委員会で答弁されましたとおり、本年の八月、つまり来年度、五十七年度概算要求の時期と心得ております。
  98. 川本敏美

    川本委員 それなら、八月までに決めるということであれば、この国会が終わった後、臨時国会が八月までに開かれることはないんだから、そうすればこの国会の終わるまでには内閣としての方針が決められなければ間に合わない、私はこう思うわけです。そういうためにひとつ総務長官、御努力をいただけますか。はっきりした御答弁をいただきたい。
  99. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この国会で法案について政府の方針を決めよということでございますが、ただいま各省におきましても、先生御案内のように、残存事業量の問題とかいろいろ私どもとしては努力をしている最中でございまして、その総理の御趣旨を体して私どもとしては鋭意努力をしてまいりたい、このように考えております。
  100. 川本敏美

    川本委員 終わります。
  101. 小山長規

    小山委員長 この際、安井君より関連質疑の申し出があります。川本君の時間の範囲内でこれを許します。安井君。
  102. 安井吉典

    安井委員 科学技術庁長官の御都合もあるそうですから、先に原子力関係の問題を伺いたいと思います。  政府は、放射性廃棄物対策専門部会のレポートを受けて、高レベル放射性廃棄物の処理について地層処分の方向で検討を進められているということを聞くわけでありますが、私は、もうそのこと自体に非常に大きな疑問を感ずるわけです。というのは、この間十二月に、北海道の下川鉱山でこの地層処分——地層処分と言うと言葉はいいですけれども、地中投棄ですね、それの基礎データを調べる試験を始めるという段階で、地元は大変なことになったし、道議会もストップ状態、こうですからね。そういうような中で、最終的にはあの投棄は認めないということを知事なり町長が言っているわけですよ。だから、地層に処分するといったって、恐らくこの廃棄物を捨てるところは日本じゅうにそうたくさんはないと思います。一カ所か二カ所だと思うのですがね。その選ばれることになったところが、北海道でだめだというのに長野県はこれを受けるのですか。  この資料では、自然科学的なバリアをつくって、自然バリアと工学的なバリアと、そしてガラスを固化してそとに置くんだからというスケジュールを書いてありますけれども、そこに住んでいる住民の納得を得るとか理解を得るなんというようなことは一つも書いてないですよ。現に一番最初の手始めで北海道で行われているそれにしたって、知事や町長の頭越しじゃないですか。だから私はどうも、これは低レベル放射能でさえ、いまミクロネシアであんなに大騒ぎになっていてできないでしょう。高レベルのこういうようなものの処理について、いまのようなそんな態度ではこれは全く失敗するに決まっている、そう思うのですが、どうですか大臣。
  103. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 まず専門部会の報告書についての御言及でございましたが、報告書の表題のとおり、技術的な研究課題についてということで報告をまとめております。先生指摘の試験地域における合意を得るということにつきましては、当然大前提として私ども考えさせていただいているところでございます。  それから、高レベル廃棄物の地層処分の問題でございますが、非常に長期的な観点で私ども研究開発をスタートしたという段階でございまして、まあ四十年先、五十年先をにらんでの地層処分でございますが、当面日本にいろいろ広く分布しております輝緑岩あるいは頁岩、凝灰岩、花崗岩、玄武岩等を対象にいたしまして、どういう候補地があり得るかという調査を始めたというところでございます。  御指摘の下川町におきます試験研究につきましては、こういういろいろな考え得る地層の評価をどのようにするかという、その評価手法を確立するための研究をスタートしたということでございます。
  104. 安井吉典

    安井委員 全体的なスケジュールの中で住民の意向を尊重するということがなければ、これはもう成り立つわけはないし、しかも日本じゅうの原発はこれからもどんどんふえていくわけでしょう。低レベルのやつは海に捨てるわけでしょうが、最後の死の灰をどこに捨てるかというのだから、これは日本民族の運命にかかわる問題ですよ。そういう重大な問題で、いずれはこれは大きな日本全体の政治課題になると思いますよ。そういうようなものの手始めを、地元の知事や町長には全然頭越しに進めてくるというような、そういう態度でこれから臨むとすれば、私は非常に大きな問題だと思います。そういうようなものは絶対許せないと思うのですが、どうですか。
  105. 中川一郎

    ○中川国務大臣 原子力発電が必要であることについては世界的に定着していると思うのです。その場合問題なのは、低レベルの廃棄物とハイレベルの廃棄物をどうするかということでございまして、これは世界共通の悩みでございます。日本も避けて通れない。ただし、低レベルについては、世界じゅうがもう海洋投棄は定着をしている。そこで日本も海洋投棄からまず始めようということでお願いしているわけですが、これはあくまでも、安井委員指摘のように、地元の納得なしにやれるという性格のものではないのです。ましてやハイレベルの処分に当たっては、地元の理解がなくてでき得るものではないことは言うに及びません。  ただ、ハイレベルについて言えば、これはもう三十年か五十年先のことでして、低レベルはかなり量がたまっておりますから現実の問題としてありますけれども、ハイレベルの問題については三十年ないし五十年までは貯蔵をしておく、こういう基本方針であり、三十年先あるいは五十年先にどうするかということについでは、固化をして地層処分という基本方針は持っております。持っておりますが、これを日本じゅうの——北海道の下川町に地元の理解なしにやるなんということは全然考えておりませんで、もしやるとしても地元の理解を得なければならぬ。ましてや下川町でやっているのは放射能が入っているわけじゃない。ただ、熱水がどうなるとか岩石はどういう性質のものであるとかいう地層処分をするときの基礎データを得るものであって、地元に迷惑をかけるものではありませんので、地元の了解なしにやったということは悪いことですが、地元に迷惑をかける性質のものではないという判断からやっております。今後とも、地元の納得ということを最重点にやっていきます。
  106. 安井吉典

    安井委員 その説明は私も何回も聞いているわけですけれども、これは何といったって何十万キュリーでしょう。しかもアメリカのあれだって、五百年から六百年ぐらいたてばかなり放射能が減るだろう、こう言っていますよ。しかし、どんなことがあっても、千年くらいのインターバルでその保管のことを考えなければいけないというような問題ですからね。徳川家康のときに埋めたやつが最近になってやっと少し減ったなというくらいの程度ですから。聖徳太子のとき埋めたやつが——聖徳太子は何年前ですか、大体千年というインターバルはそういうことですよ。それだけに私は、これを下川以外にどこかやると言ってごらんなさい。そこでみんなばっと出てきますよ。だから、日本のこんな狭い国で地層処分をやろうというのは、これは原発をつくるのと違いますよ、大変な問題になると私は思います。そういう基本問題の考え方が、自然科学的な検討だけで問題を進めていくということじゃ間違ってくるということをまず指摘をしておきたいわけであります。  それで、その下川ですが、いま基礎的な研究だと言いましたね。では基礎的な研究だけで、あと第二次の放射能試験のような研究はあそこではやりませんね。あるいはその次に進むということはあの地点ではもうありませんね。
  107. 中川一郎

    ○中川国務大臣 いまのところは全く予定ありません。ましてや、放射線や放射能を現実取り入れての試験ということになれば、地元の了解なしには全くできないわけですから、これをやったから地元に不安を与えるというようなやり方はしない。  それからもう一つは、それじゃ将来あそこに投げるのじゃないかという御心配もあるようですが、私が決めるなんという時代じゃなくて、三十年先、五十年先ですけれども、学問的に言うと、ああいう鉱山のあったようなところというのには地層に穴があいておったり、なかなかむずかしい問題がある。実験をするのにはいいけれども、実際投げる可能性としては非常にむずかしい点が多い。むしろ千メートル単位ぐらいで何もないところに、将来資源もない、掘ってみる必要もない、全く無縁のところを探して投げるということがあり得ても、あそこに投げるということをいまから予測してやるような状況ではない。はっきり申し上げます。
  108. 安井吉典

    安井委員 ですから、いまから予測できないという言い方をみんな心配するわけですよ。では、基礎データだけをやればもうあそこはやらないのでしょう。だから、いまの二年間の基礎調査をやれば、そのやった調査施設を全部取っ払ってください。破壊してください。それなら納得しますよ。
  109. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 現在計画しておりますものは五十五年、五十六年、五十七年——五十七年は早く終わるとは予定しておりますが、二年半ないし三年の試験計画でございます。  それと、それ以降ということでございますが、鉱山そのものがどういう形で維持されているかという関係もあるかと存じますが、いまの時点でそれ以降の計画というものは私ども持っておりません。それから、計画といたしましても基礎データを得るということで一段落いたしますので、それ以降の引き続きどうこうという計画は全く持っていないわけでございます。
  110. 安井吉典

    安井委員 つまり、みんな心配するのは、単なる基礎調査だけであと何もなくて、あとの調査は今度はどこか中川大臣のところの地元でやるとか、そういうことになるのならこれまた別ですよ。あるいはまた自民党の、北海道がだめだというのですから、どこかの県で引き受けるところがあればあれですけれども、これはそういう問題だと私は思うのですよ。そこで基礎調査をやる、それで施設をつくってしまうわけですから、バリアをつくってしまうわけですから、そこまでいって、しばらくいって、じゃあ第二期も、ここはせっかくできているのだからまた次のやつをやろう、そういうことで放射能に適合するものか次次、ずんずんいってしまって、三十年後になったら、そこがやはり最適の場所であったという候補選定になってしまうということをみんな恐れているわけですよ。それじゃ、第一回の試験を終わったら、もうその施設は将来絶対やりませんね。一〇〇%やりませんね。答えてください。
  111. 中川一郎

    ○中川国務大臣 下川においては、いま局長が答弁しましたように、三年間の本当の基礎の基礎だけやって、後はやりません。
  112. 安井吉典

    安井委員 すると、三年たてばいまのすべてのそういうようなものは撤去できますね。
  113. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 設備を撤回するかどうかということでございますが、ああいう設備でございます。特に測定器でございますので、しばらく手入れもせずにほっておけばそのまま使えなくなってしまうという状況かと思います。どれだけの手だてを立てて取り除くのか、あるいはそのまま埋めてしまうのかということにつきましては、もう少し検討させていただきます。いずれにしろ、それを使うということは考えません。
  114. 安井吉典

    安井委員 つまり、そこでコンクリートのバリアもつくるんでしょう。それは残るんですか。
  115. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 バリ了という言葉に相当するようなものは、いまの時点では必要ございませんのでつくりません。要するに、きわめて基礎的な実験で、余り水が方々に流れたりというようなことがないようにというきわめて初歩的な何か手だてはするかと思いますが、いわゆるバリアといったようなものはつくる予定はございません。
  116. 安井吉典

    安井委員 いままでもずっと科学技術庁の皆さんからお話を聞くと、将来の投棄場所にはしません、こう言うんですよ。それが前提ではありませんと言うんですよ。それじゃ、もう一〇〇%そういうことはあり得ませんねと言うと、そんな先のことはわかりません、こう言うんですよ。それはあなただって大臣をいつまでもやっているわけはないので、ことしの秋ぐらいまた改造があるんですか、それはわかりませんけれども、先のことはわかりませんという答えが出るんじゃ、これはみんなやはり納得しないと思うんですが、どうですか。
  117. 中川一郎

    ○中川国務大臣 これは確かに地元の皆さんから見れば、絶対やりませんと言ってもらった方が一番いいと思うのですが、これは日本じゅうからここはやりませんか、あすこはやりませんかと聞かれたときに、いや、ここもやりません、あすこもやりませんと言っていたのではやるところがなくなりますから、考えておりませんというのが一番ずるいというか、妥当な言葉でございますが、正直言って、あの付近は実際投げるに当たっては、資源もある地帯でもあり、それから穴が掘ってあったり、やっかいなところですから、まずまずあり得ない、あすこをお願いするということはない、こう言って差し支えないと思いますので、この点、あすこで試験したからそれをベースにしてあすこへ来るんじゃないかという疑いだけはもう全然持っていただかなくて結構でございます。まずないと言って結構です。
  118. 安井吉典

    安井委員 まずないという、そのまずが要らないんだね。きょうちょっと時間がありませんので、あす以降のいろんな機会がまだありますから、私はもう少し内容について詰めていきたいことがありますから、そういう中でさらに明らかにしておきたいと思います。きょうのところは、ますという頭がついた言い方で一応とめておきますけれども、そのまずという言葉がなくならない限り私は住民の納得というのは得られぬと思います。そのことだけひとつ明確にしておきます。大臣、結構です、中川さん。  次に、農林水産大臣に伺います。  間もなく三月が近づいてきて、いわゆる畜産の季節が来るわけです。したがって、私はきょうは農林水産関係をいろいろやりたいのですけれども、畜産の問題、特に牛乳の問題を中心にして伺っていきたいと思います。  この間も岡田委員その他がここで取り上げていたように、牛乳の生産は六—八%くらいの伸びはしておりますけれども、消費量は伸び悩みだし、乳製品の滞貨が進んでいる。そういう中で乳価の水準は全く据え置き、そんなような厳しい状況の中にあるわけであります。とりわけ配合飼料が四〇%も上がっているわけでありますし、だれがどこから言ったってかなりの乳価の値上げをしなければならないような状況に来ているというふうに受けとめられるわけでありますが、しかしいろいろな情勢もあるわけでしょうね。  そういう中で三月の畜産物の決定の問題に取り組む農林水産大臣の方針を、まだ少し時期がありますけれども、この際考え方の一端をお示しいただきたいと思います。
  119. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 加工原料乳の保証価格につきましては、補給金暫定措置法に基づいて決定をしていくわけでございますけれども、いま御指摘の生乳の生産条件並びに需給事情その他の経済事情を十分考慮して生乳の再生産の確保を旨として決めろ、こういうふうに法律には書いてあるわけであります。そうかと言って現実というものも無視できませんし、十分畜産振興審議会の御意見をお聞きいたしまして三月末までには決めなければならない。諸物価等の値上がり、えさ等の値上がり等もこれあるにつき、心情としては安井委員の御指摘のとおり上げざるを得ないかなという考えも出てくるわけでありますけれども、しかしそういうことをしておったんでは本当に日本の酪農を足腰の強いものにしていくためになるかどうかというような点も十分考慮いたしまして、やはりこの厳しい条件をどうして切り抜けて、せっかくヨーロッパ並みの規模にまで育ってきております日本の酪農でありますから、ここでいろいろと知恵をめぐらして足腰の強い酪農をつくっていくという基本的な考えを基本にして乳価の決定をしていきたいな、そんな気持ちでおるわけであります。
  120. 安井吉典

    安井委員 少し時間が決定時期まであり過ぎますから、一応きょうはその程度のお話を承っておきますけれども、やはり価格の問題は、危機にある酪農や畜産の経営、それの危機打開のために非常に重大な問題の一つでありますから、適切な配慮を願っておきたいと思います。  そこで、もう一つ大きな問題は、牛乳が余っているという問題ですね。そのためには消費の拡大も必要だと思います。しかしその反面、米と違って牛乳は全消費量の三割は外国からの輸入なわけですから、その外国からの輸入が国内産を圧迫して過剰というような擬装された形をつくり上げているという、その問題があると思います。したがって、きょうはその輸入の問題をちょっと取り上げてみたいと思うんですけれども、五十一年以降外国からの輸入が増加の一途にあって、生乳換算にして二百五十万トンぐらいまで達している。そういうような状況で余った余ったと言うけれども、余っているんじゃなくて、外国からの輸入が多いものだからはみ出さされている、そういう形でしかないわけであります。特に飼料用の脱粉やナチュラルチーズ等が大幅にふえてきているわけであります。脱脂粉乳は少し減っているような傾向も最近出ているようですけれども、特にいま問題なのは擬装乳製品と言われているものであります。ココア調製品だとかあるいは調製食用油脂というようなものが、この二つだけ合わせても生乳換算三十七万トンから三十八万トン近くになっています。そのほかカゼインや乳糖などもあるわけですから、そういうものを合わせると生乳換算五十万トン以上になっているわけですね。これは正規のものでないわけですから、もぐりのものでさえそうなっているわけですよ。せめてそこだけでも抑えるということが必要ではないかと私は思うわけであります。特に擬装乳製品と私が言うのは、たとえばいまの調製油脂、これはマーガリンですね。七〇%以上バターが含まれているものは全部事業団が一手買い上げですから、制限されているのをその網をくぐって、六九・九九%以下の含有量であとマーガリンなら、これは調製品ということで関税も安くて自由でどんどん入ってくる。それがどんどんふえているということがいまの大きな問題になっているわけであります。この委員会でもそれからほかの委員会でも、もう何度も何度もこれは取り上げられているのだが、いまだにこれは解決つかない。しかも、解決つかないうちにどんどんふえているわけですよ。  この問題については、農林水産大臣は早く、たとえば七〇%のバター含有量を三〇%に下げるとか、そういうような対案を出して進めているということを聞くわけでありますが、そのとおりですか。
  121. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 私も大臣就任以来、この問題、日本の酪農を本当に足腰の強いものにしていくためには、一時相手の国に十分日本の実情を話しまして、そして話し合いの上で、七〇%以上のバターを含んでマーガリンが三割しか入っていないというものを持ってくる心根が私はどうも合点がいかない。やはり信頼関係をつくっていってこそ、お互いに激しい競争を行いながらでもがまんするところはがまんしていけるのであって、そういう面、世界常識とかなんとか言っておりますけれども、私たち常識としては、七割もバターであとマーガリンは、食物油は三割しか入っていない、そこへもってきて熱処理をすればすぐバターになってしまう、そういうことを政府としては認めるわけにはいかぬからその点を厳しく折衝してみる、こういうふうに実は就任しまして畜産局の方に指示をいたしたわけであります。私も貿易の自由という問題もよく理解しておるつもりではございますけれども、自由貿易をやっていく中ではお互いの信頼関係の上に立って競争をするということが必要だ。その上においてお互いに、いま擬製という言葉が出てくるような中ではなかなかうまくない、この点は畜産局としても十分心得て折衝をしてほしい。また、通産に対しましても、大蔵に対しましても、こういう姿勢で一応折衝をするからということを申し上げ、御協力を願っておる、こういうことでございます。
  122. 安井吉典

    安井委員 この擬装という意味は、まがいものだという意味は、日本から輸入されているこれらの国というのはみんな酪農国ですから、本物のバターやチーズを出したいわけですよ。それに食物油なんか入れたくないわけですよ。だから、それらの国は、たとえばニュージーランドの場合でも、国内向けの製品ではこんなバターマーガリンというものの製造は禁止しているわけですよ、国内向けにはですよ。あるいはベルギーからずいぶん来ているけれども、ECの中でも早くからこんなものは非自由化だということで域内の流通は規制をして、乳製品以外に乳成分一〇%以上を含む加工品には固定関税の上に可変課徴金というようなものを課して自分の国の中ではこれは禁止しているわけですよ。それを日本に出して売ろうという魂胆もおかしいのですけれども農林水産大臣の話はわかりましたけれども、大蔵大臣、外務大臣、通産大臣にきょうおいていただいているのは、農林水産省はその方針でやっているのだけれども、各省が反対していると伝えられているわけです。ひとつ各省それぞれの御意見を承ります。
  123. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま農林水産大臣からお答えになりましたが、私どもも日本の国内の酪農家の困っているという事情はわかっておるのでございまして、この問題につきましていま先生がおっしゃったように、ニュージーランド、ベルギー、まあECと言いますが、主にベルギーでございますが、相手国のこともございますし、どうやってこれを日本と輸出国との間でまあまあというところの解決策が見つかるかということで、農林水産省の御苦心は私はよくわかります。よくわかりますが、相手国との関係がございますので、みんな関係者の間で不満ながらここまででいこうというようなところを何とか見つけたいということで実はやっているというのが実情でございます。
  124. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御指摘の調製食用油脂、これが中心でございますが、私どもは貿易の自由化ということがあくまでたてまえでございますし、そういう観点からこれにライトを浴びせなければいけないというように思っております。もしその品物が一度自由化したものであるならば、これをまた非自由化するというようなことはいろいろ問題がありますし、ガットの問題ももちろんございます。そういう点からあくまで私どもは貿易自由化という観点から問題を処理しなければならないというふうに思っております。
  125. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは実際非常にむずかしい問題で、ともかく関税で輸入を抑えるというようなことになると、内外格差の関係で一七〇%くらいの関税をつくらなければならぬ。実際問題としてそれは不可能ですね。いま関税を下げる話し合いをやってどんどん下げようというんですから、禁止関税をつくるということは国際的に全然認められない。それはむずかしい。それでは関税の分類の変更をしたらどうだというような話ですが、これは国際会議に出ると、専門家の話では正反対の結論が出てしまう。私も農林大臣をやった経験がございますが、やはり一つは国内産が高過ぎるからです。むちゃくちゃに高い。だから、いろいろなものをまぜて持ってきても分類してもまだ採算がとれるという、そこに一つ問題がある。もう一つは、業界が入れるわけですからね。チョコレートなんかの場合もそうだった。やはり業界と話かして、ある程度のものは仕方ないが、どんどんふやす場合には別なことを何か考えるよということの行政指導しかないと私は思うのですね。行政指導でともかく秩序ある程度にしてもらう、そういうことで関係各省でやっていただきたいと思っております。
  126. 安井吉典

    安井委員 各省の御意見が出ましたけれども、農林水産省の方は進めなければいかぬと言うし、ほかは皆反対ですよね。これ湾閣内不一致じゃないんですか。閣内の意見不一致じゃないんですか。これはどうするんですかね。これは昨年の三月二十八日の参議院の大蔵委員会で時の大平総理はこう言っていますね。「輸入乳製品に対する措置、それは政府として日本の農業を守る上から言って相当慎重に配慮しなきゃならぬ問題だと考えております。」こういう言葉が一つあるわけです。これはいつですか、去年の三月ですよ。総理は亡くなったけれども、新しい総理がいるんですからね。きょう総理にでも来てもらいますか。これだけ、四人の大臣の意見が皆違うのですよ。結論はどうして出してくれるんですか。
  127. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 いま大蔵大臣から答弁申し上げましたように、通産、大蔵、農林、外務と事務的にも話し合いを詰めながら、実はニュージーランド等にはすでに話し合いを始めておるわけでございまして、とにかく通産には通産の立場があるということでありますけれども、先ほど申し上げましたように、いかに貿易の自由化ということでも、これは信頼関係のあるところに自由化が成り立つんであろうと思います。その信頼関係のないところで、とてもとても自由貿易なんてものは存続は非常に困難である、この間ASEANに行ってまいりましても、しみじみと私はそういう感じがいたしたわけでありますから、私どもとしてはとことんまで話し合いをする、そして業界の諸君も、とにかく自分の企業がもうければいいという、ややともするとそういう面なきにしもあらずということもございますので、そういう点も十分農林省が中心になりまして進めてまいりたい。特にこの酪農面におきましては、やはり生産性の向上という面においても、日本の酪農家が短い期間に非常に努力をしておるということも農林省としては認めてきておるわけでありますから、その上から言っても、この日本だけを目がけての調製食用油脂というような形で入ってきておるこの体制を改善をしていこう、こういうことで努力をいたしているわけであります。不一致ということではございません。その点ひとつよく御理解をいただきたい。
  128. 安井吉典

    安井委員 これが不一致でなくて何なんですか。農林大臣はニュージーランドまで行って話しているというのでしょう。しかし、通産大臣は反対だと言っているのですよ。自由化だから反対だと言っているじゃないですか。何も一致なんかしてない。正反対の意見がいま出ているだけですよ。統一する見解を示していただきたい。いまの答弁は農林水産大臣の答弁ですよ。政府の答弁を聞かしてください。
  129. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私どもの立場といたしましては、貿易自由化並びにすでに自由化したものを非自由化するということは問題があるということを言っておるわけでございます。しかし、これは問題があるとはいいながら、いろいろ相談しなければならないことでございますし、農林省、通産省、大蔵省、外務省、十分私ども相談をして結果を出さなければならないというふうに思っております。
  130. 安井吉典

    安井委員 それはいつ出してくれますか。政府としての答弁を私は望んでいるわけです。各大臣がばらばらに勝手なことを言われたって困る。政府としての見解を明確にしてほしい。いつまでにそれをお出しになるのか。
  131. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 一応国内の乳価の問題が三月末という法律上の制約、決めがあるわけでありますから、これが一つのめどではないか、こう思います。したがいまして、審議会を開催するごろまでには話は詰めたいということでやっておるわけでございますので、ひとつそれまでお待ちいただきたい。
  132. 安井吉典

    安井委員 それじゃ、三月の末までって、そんなんじゃなしに、これは私が予算委員会で提議した問題ですから、きょうきちっとできないにしても、この予算委員会が終わるまでに政府の見解を明確にしてください。  委員長、どうですか。
  133. 小山長規

    小山委員長 相談しましょう。理事会で相談します。
  134. 安井吉典

    安井委員 それまでひとつ保留しておきます。  最後に、チーズ工場の問題で、これは農林水産大臣だけで結構です。  チーズ工場の問題を一つ伺っておきたいと思いますけれども、輸入を抑える問題やら、それから消費を拡大する問題もありますけれども、ひとつ新しいチーズ工場をつくって、特にナチュラルチーズの需要がふえている状況の中で、新しい需要開拓というのを進めようじゃないかということになっているのに対して、肝心の乳業会社がそっぽを向いて、いまのところは北海道その他では関係農民だけでもやろうというような動きも出ているわけであります。初め農林水産省は、畜産事業団の方から三十八億円を出して、七十六億円ぐらいでの工場建設ということを考えておられたと聞いているわけですが、最近の情勢はどうですか。現在の段階におけるお考えを伺います。
  135. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 安井委員承知のとおり、酪農を奨励しておる国におきましては、やはりチーズを適正に生産をするという部門を持たない国はないわけであります。日本としても、やはり生産者の立場から言えば、そういう体制をとらなければならないというのは当然でありますし、また行政指導いたしております政府としても、そういう体制をつくることが将来の酪農の安定した発展の基本である、こういう考えで業界にも指導いたしまして、御指摘のような案を出したわけでありますけれども、なかなか業界の協力が得られないということで、最近では生産者独自でもという空気も出ておるようでございます。今度つくってもなかなか売れないということでは、これまた大変なことになりますので、やっぱり販売のめどというようなこともつけなければいけない、これにはどうしたらいいかというようなことも具体的な検討をいたしております。その詳細につきましては、もしお許しいただければ畜産局長の方から説明をさしたいと思います。
  136. 森実孝郎

    森実政府委員 補足さしていただきます。  御指摘のように、乳業者と農協との間の話し合いが全く進展しないという残念な状況にあることは否定できない事実でございます。ただ、私どもといたしましては、大臣もただいま申し上げましたように、やはり現実的な方向で国産チーズの増産を進めるということは、酪農の将来を考える上で、飲用乳の建て値の維持と並んで重要な課題であろうと思っております。  そこで問題は、やはり販売できる計画をどうするかということだろうと思います。それに関連いたしまして、生乳取引をどう進めていくか、チーズの種類をもう一回考え直せるかどうか、それから販売の仕方がございます。さらに経営体制、こういった点について生産者と乳業者の間で合意が形成されるよう現在間接的にいろいろ話し合いを進めております。  私どもといたしましては、生産、販売について、チーズの問題に明るい関係者からひとつ現実的な提案を出してもらいたい。この提案を評価して見通しがついたところで、ひとつ必要な援助措置をとりたいと思っております。その意味で、従来の構想と、その内容とか経営もしくは販売の仕方等については違った形になり得るということはあり得るものと思っております。
  137. 安井吉典

    安井委員 そうすると、いままで言われてきたものは、形を変えて、新しい形でスタートさせるような、そういう方向で進めている、そう受けとめていいわけですか。
  138. 森実孝郎

    森実政府委員 私どもは、従来の話し合いは打ち切っておりません。しかし、そのままの構想では無理だということは、事実として認めざるを得ないわけでございます。そういう意味で、実は近近にも各方面から私どものところに具体的提案が出ることになっております。そういったものをあわせて、果たして売れるものをちゃんとつくれるかどうかという形で詰めさしていただきたいと思っております。
  139. 安井吉典

    安井委員 ナチュラルチーズ、これも外国からの輸入のしほうだいなわけですね、自由化ですから。私はむしろナショナルチーズ、日本の農民のつくった原料で国産のチーズをつくるという、そういう新しい方向をニュージーランドでやっているのですから、ぜひ進めていただきたいと思います。  時間がだんだん迫っているようでありますから、あと問題を詰めてまいりますけれども、いずれにしても、大蔵大臣もきょうおられるが、前の農林大臣でもあられたわけだし、防衛費の増額だけに一生懸命にならないで、やはり「大砲よりもバターを」「ミサイルよりもチーズを」という、それを目指すのが日本の正しい政治の方向だと私は思いますから、その点を申し上げておきたいと思います。  最後に、それでは農林水産大臣に、食管法の改正の問題は、いま米穀通帳など、もうすでに一般化している問題だけを取り上げるんだというふうに聞いておりましたら、最近の状況では、麦の価格決定の問題も今度の法律案の中に入れるというお考えで進めているように聞くわけであります。そうなると、これは重大な問題だと私は思うのですが、そのおつもりなんですか、どうですか。
  140. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 実は米価審議会におきまして、麦の価格決定の際に、食管法の第四条ノ二の二項ですか、この点の取り扱いを何回か論議をされてきておるわけでございます。ちなみにこの条項を申し上げてみますと、「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ昭和二十五年産及昭和二十六年産ノ麦ノ政府ノ買入ノ価格ヲ平均シテ得タル額ニ農業パリテイ指数ヲ乗ジテ得タル類ヲ下ラザルモノトシ、其ノ類ヲ基準トシテ麦の生産事情其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ安ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こういうふうになっておるわけであります。  しかし実際、麦価決定の際には、安井先生も御承知のように、このパリティの水準よりもはるかに、奨励金を麦価の中に織り込んで、それよりもずいぶん高い買い入れ価格で運用をいたしておるわけでございます。したがいまして、昭和二十五年といいますと、もういまからずいぶん前でございます。二十五年、二十六年差いうのはもうずいぶん前で、経済情勢も非常な変化もいたしておりますし、農家の皆さん方が、この項を改正すれば歯どめがなくなるじゃないか、麦価がどんどん安くされるのではないかという御心配が、よく言うようにいろいろな議論もある、私はこう思っておるわけでございますが、私どもとしては、そういう面は麦価決定の際にも十分パリティで計算した以上の麦価を今日までずっと続けておるわけでありますから、納得のいく法律ということになれば、こういう点もやはり政府としては、先ほど申し上げましたように、消費者、生産者を両方この食管法で守っていくようなものにしたいという立場からいえば、こういう点もすかっとした、両方で安心できるようなものにすべきではないか、こういうことでやはり一つの提案として出していきたいな、いまこう考えておるところでございます。
  141. 安井吉典

    安井委員 時間になりましたからやめますけれども、いま農畜産物の価格は、米価を初めみんな一応の算式があるけれども、勘案事項があるものですから、それで適当に決めておられるわけですが、麦だけはそれがないわけですよ。その最後のとりでを法律改正の中で抜こうということは、これは大きな問題です。食管法の問題も大したことはないように思っていたけれども、そうじゃない、これは大変な問題だという取り組みを私どももしていかなければならないと思います。そのことだけ明確にして、終わります。
  142. 小山長規

    小山委員長 これにて川本君、安井君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  143. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長田武士君。
  144. 長田武士

    長田委員 最初に、大蔵大臣にお尋ねをいたします。  予算修正問題でございますが、わが党は、本日、党独自の予算修正要求内容をまとめまして公表いたしました。その内容は、所得税減税、物価対策、福祉対策などが柱になっておるわけであります。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 われわれは、どの野党ともこれから協力をいたしまして、何としてでも予算修正をから取りたい、このような決意をいたしております。大蔵大臣は、所得税減税を中心として野党が要求する予算修正にどのように対応するつもりなのか。予算修正問題の具体化ということを踏まえまして、御答弁をいただきたいと思います。
  145. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私は、いろいろな御意見があろうかと存じますが、与えられた条件の中で、また、与えられた日時、短時日の中でこれしかないと思って予算を出しておるわけでございますので、幾らでも御説明をいたしますから、何とか提出した予算を御承認賜りたいという以外は、何とも申し上げようがございません。
  146. 長田武士

    長田委員 国会には予算修正権があることは言うまでもございません。所得税減税について、大蔵大臣はかたくなに拒否をされておるわけであります。私どもはあくまでも所得税減税を要求してまいりますが、大蔵大臣は所得税減税以外ならばある程度予算修正に応じてもよいと考えておるのかどうか、この点をまずお尋ねをします。  次に、政府が予算修正に応じなければ、今国会では武器輸出等の問題もありまして、暫定予算ということにもなりかねません。暫定予算は避けなければならないと私たちは考えておるのですが、この点も踏まえて御答弁をいただきたいと思います。
  147. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいまも申し上げましたように、いま予算の審議の最中でありまして、私がここでそれじゃ所得税減税以外なら修正してもいいですよなんて言えるわけがないでしょう。それはもう御了承願いたいわけであります。  また、暫定予算のお話も出ましたが、これもまた日時がありまして御審議をいただいておるわけですし、皆さんの御質問に対しましても、誠意をもって解明すべきものは解明するように努力をしている最中でございますから、これも暫定予算がやむないとかそういうこともとうてい申し上げられるわけはございません。
  148. 長田武士

    長田委員 アメリカのレーガン政権は、財政事情の厳しい状況の中で減税を打ち出しております。わが国も景気の停滞が続いておりまして、ここで個人消費を喚起する必要に迫られておるわけであります。レーガン政権の減税政策についての所感、さらに私は所得税減税によって個人消費を喚起すべきであると考えておるのですが、この点についてもう一度説明してください。
  149. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私も、非常に興味を持って見ておるわけです。アメリカへ行ったときも、たまたま時間がとれまして、ストックマン予算局長とも会って話もいたしました。ところが、私としても非常に興味がありますから、一方において軍備をふやして、一方で歳出カットをやって、一方において一〇%、三年減税をやる、これは非常にむずかしい課題じゃありませんか、どうしてできるのですかと私、聞いてみた。ところが、それは非常にむずかしい。むずかしいけれども、こう言っていました。国民が、世論が全面的に支持しているのでやらねばならないということで、一体どういう手法でおやりになるのかという話は当時はなかったわけです。この間いろいろなものが出されましたが、あれはやはり国会の承認を受けなければならぬようですね。したがって、出したから全部成立するかどうかということはわからない問題であって、大変むずかしいと私は思っています。  ところが向こうは、あなたのところで予算をつくったそうですが、何が一番むずかしいですかと私に逆に聞いてきたので、私は、そうですね、やはり人件費を下げるなんということは言うべくして非常にむずかしい。法律に決まっているいろいろな制度を大蔵省だけでこれを変更するということは私のところではできない。国会の承認がなければできない。そういうのも非常にむずかしい。総論賛成で各論反対という場面が補助金整理でいっぱいある。ところが、それはアメリカも全く同じだということを言っていましたから、そこでああいうふうなものが発表されたわけで、私はつまびらかに知りませんが、さあどうですか、これは向こうは二年ごとに選挙だそうですから、だから国民が強くそれを支持しているという状態ならばある程度できるかもしれぬし、日本とアメリカでは多少事情も違いますから、やってみないことには、私はここでどうこうという御批判は申し上げるだけの知識は持ち合わしておりません。
  150. 長田武士

    長田委員 大蔵大臣、アメリカ国民が要求しておる、要望しておるということですが、日本国民も要望しておるのですよね、減税を。この点どうですか。
  151. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 アメリカでは歳出カットを大幅にやって、そういうもので財源をつくる、こういうことを言っているのですね。ところが日本でも、一般論としては歳出カットをいっぱいやれとみんな言うんです。私もやってみました。ところが、これが部分になりますと、一つ補助金をだった一割とか二割切るだけでも、それはもう各党から陳情団も来ます。私のところに書類が実はこんなにあります。それほどむずかしい。したがって財源というものを、当然増の経費だけでとてもそれも賄えないという状態なわけですから、問題は負担の水準がどうあるべきか、結局サービスの水準がどうあるべきか、どこのところでだれがどういうふうに持つかという話に最後は尽きるだろう、そう思っております。  所得税減税ということは、本当はだれだってしてもらいたいと思っておりますよ。おりますけれども、しからばそれによって、それじゃ片っ方の歳出の方をばっさり切れるかというと、そう簡単にはいかない。結局どちらをとるかということでわれわれとしては非常に苦労をいたしまして、極力抑えられるものは抑えてきて、どうしても抑え切れないものについてある程度の増税をお願いせざるを得なかったということであります。
  152. 長田武士

    長田委員 私は、当面する景気動向について非常に心配をしておる一人でございます。  そこで、河本長官にお尋ねしたいのでありますが、在庫調整も当初一月−三月期においてほぼ終わるだろうということだったのですけれども、どうもおくれておりまして、恐らく四月から六月期に入るのではないか、このような懸念をされておるわけであります。そこで、政府は三月上旬に経済対策閣僚会議におきまして総合経済対策を打ち出す方針と伺っておるのですが、その大綱を決まっておりますれば簡単に御説明をいただきたいと思います。
  153. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 景気は大分落ち込んでおると思います。しかし、詳しい数字は三月の初めにならぬとはっきりいたしません。そこで、三月の数字を見ました上で関係各省の間で具体的な対応策を相談する、こういうスケジュールでございまして、目下相談中でございまして、最終案はでき上がっておりません。
  154. 長田武士

    長田委員 私は、当面の金融政策も当然その中に入るのではないかと思うのですが、長官、その点どうですか。
  155. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の金利水準は、外国に比べますと相当低いと思いますけれども、しかし二年前に比べますと非常に高くなっておりまして、これはやはり経済全体の足を大きく引っ張っておるということは事実であります。  そこで、昨年の九月に緊急の対策を立てましたときも、金融政策は機動的に運用する。そういう基本方針を決めたのでありますが、現時点におきましても、金融政策を機動的に運用するというその基本方針は変わっておりません。それじゃどのような運用にするかということにつきましては、それは三月の十日過ぎになろうかと思いますが、そのときまでに相談をして決める、こういうことになっておりますが、同時に、公定歩合等の問題につきましては、日本銀行においていろいろ総合的な判断を広い角度からいま進めておられると思います。
  156. 長田武士

    長田委員 私も、金融政策の中で公定歩合の問題が当然大きな問題だろうと考えております。そういう意味で、最近企業の経営、特に中小企業の経営というのも非常に厳しくなっております。そういう意味で通産大臣、公定歩合の引き下げということについてはどういうお考えですか。
  157. 田中六助

    田中(六)国務大臣 経済情勢につきましては、いま河本長官から御説明がございました。企業、特に中小企業は私の担当でございますが、非常に冷え込んでおりまして、昨年の一月から十二月まで一万七千八百八十四件という、これは一千万円以上の負債額でございますけれども、そういう史上二番目の倒産というようなこと、一月も千三百十三件というようなこれまた史上最高というような状態でございまして、私どもは、どういう方法がいいかということは数点あるでしょうけれども、その中に金利の操作ということは十分考えられ得るし、また考えなければならない要素の一つだというふうに思います。
  158. 長田武士

    長田委員 最後になって大変恐縮ですけれども、大蔵大臣、公定歩合の引き下げについて御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  159. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 金利水準の問題でございますが、これは日本は世界的に見て一番安い、先進国の中では安い金利体系です。金利は安ければ安い方がいいのかどうか、いろいろこれはむずかしい問題があろうかと思います。中小企業の設備投資が活発でない、したがって設備投資の金利を下げた方がいいだろうという議論が当然あってしかるべきだと思います。しかしながら、公定歩合を引き下げて、それが貸出金利につながる状態でなければ引き下げてみても余り意味がない。したがって、私は、貸出金利が連動して下がるというような、下げることができる、物価その他そういう環境ができれば、それはそのときの話であろうと思います。したがって、いま公定歩合どうこうということを私から申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。
  160. 長田武士

    長田委員 公定歩合引き下げと非常に関係がありますものが物価の動向であります。五十六年度の物価の情勢は、私は政府の見通しとは逆に非常に厳しいんじゃないかというような感じを強く持っております。  そこで、申請の出ております私鉄運賃それからタクシー料金の値上げの問題、これは申請が出ておりますけれども、河本長官、これに対する厳しい対応がなくてはならないと私は思いますが、この点どうでしょうか。
  161. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 公共料金関係は相当値上げ計画が出ております。この取り扱いでございますが、まず第一番にやはりそういう事業体の徹底した合理化を求めたい、こう思っております。親方日の丸的な考え方は厳にやめてもらわなければならぬ、こう思っておりますが、同時に公共料金は物価や国民生活に非常に大きな影響がありますので、これはできるだけ避けたいというのが基本方針であります。しかし、万やむを得ない分野につきましては、この国民生活に及ぼす影響等を十分考慮いたしまして、幅とか時期をよく今後検討しながら結論を出したい、このように考えております。
  162. 長田武士

    長田委員 私は、石油価格の値上がりによりまして石油製品等の値上げの問題がいろいろ言われておるわけでありますが、そこで電力、ガス料金の値上げも話題になってくるんじゃないかというふうに心配をいたしております。経企庁長官は、電力、ガス料金につきましては、昨年中間決算で差益が出ました、そのときの私の質問に対しましては、円高差益をプールあるいは積み立てをして、徹底的な合理化とともに現在の料金を長く据え置きたい、そういう決意を述べられたわけでありますが、この電気、ガス料金についてはどういうお考えでしょうか。
  163. 田中六助

    田中(六)国務大臣 電力、ガス料金でございますけれども、これは一たん決めたらできるだけ長期的な安定ということを頭に置いておかなければならないと思いますし、もちろん原価主義ということは大切でございましょう。円高差益あるいはまた差損というようなこともございますけれども、そのときどきに応じて、もうけたらすぐ変える、損したらまたすぐ変えるということではかえって安定いたしませんので、そういうことを含めまして、できるだけ長期的な安定料金の確立ということが基本方針でいいんじゃないかというふうに考えております。
  164. 長田武士

    長田委員 それでは、公共料金につきましては極力ひとつ抑えていただきたい、強く要望いたしておきます。  次に、自動車問題について通産大臣にお尋ねをいたします。  日本の自動車輸出につきましては、欧米からの風当たりが日増しに強まっておるわけであります。日米間の自動車問題につきまして、政府は総理の訪米前に田中通産大臣が訪米をして決着をつけたい、このような意向のようでありますけれども、日米交渉の一連のスケジュールがおわかりでしたらお示しをいただきたいと思います。
  165. 田中六助

    田中(六)国務大臣 日米間の経済摩擦、特に自動車の貿易量をめぐるトラブルでございますけれども、総理が五月の初旬に参ります。そのときに当然自動車問題は出るでしょう。したがって、私といたしましては、できるならばそれ以前にこの問題を片づけて、総理とレーガン大統領との会談ではまとまったものが話し合えるようなことにしたいということから、私自身の訪米のことも頭にありますけれども、まだ正式に私が訪米するというようなことは決まっておりませんけれども一つの道行きとしては、そういうことがなければならないのじゃないかという考えを持っております。
  166. 長田武士

    長田委員 私は、この際通産大臣にぜひ行っていただいてきちっと話し合いをつけていただきたい、このように思っております。  私も、さきにアメリカを訪問いたしましたときにSTRの代表に会いました。非常に厳しい態度を示したわけでありますが、やはり日本の小型車の進出によって確かにアメリカ市場が非常に打撃を受けている、この点私は理解するわけでありますけれども、しかし、実際問題を考えた場合、アメリカの小型車が日本にかわって対応できるかということになりますと、ちょっと疑問の点が出ております。そういう点を考えますと、安易な妥協をしてかえってそれがヨーロッパの進出、アメリカの市場にヨーロッパの車が全部進出してしまう、そういう懸念を私は持っております。  そういう意味で私は、訪米前にどうしても決着をつけなければならない、そういう功を焦ったために安易な妥協をしてはならないという感じを持つわけでありますが、通産大臣、もし訪米される場合、その問題についてはどういうふうなお考えでしょう。
  167. 田中六助

    田中(六)国務大臣 自動車問題をめぐる日米間の経済摩擦は、ひいてはECとも関係がございますし、カナダとも関係がございますし、その他の諸国とも関係がございますので、アメリカとだけの解決ということでは済まされないのじゃないかと思います。したがって、全体的な自動車の輸出問題というものを頭に置いて対処しなければならないと思っておりますし、できるだけ向こうの意向もくまなければなりませんけれども、私がいつもこの場でも御答弁申し上げますように、日本の自動車がよくて耐久力があって、ガソリンつまり燃費も少ないというようなことで売れる点もあるわけでございますので、そういう点、日本の主張すべきところはやはり主張しなければならないと思っております。
  168. 長田武士

    長田委員 どうかひとつ、その点しっかりやっていただきたいと思っております。  次に、エネルギーの問題についてお尋ねをいたします。  通産省資源エネルギー庁は、わが国の石油政策、産業政策の指針となります昭和五十六年度の石油供給計画の策定方針を大体決めたようでありますけれども、その大綱についてお示しをいただきたいと思います。
  169. 田中六助

    田中(六)国務大臣 新年度、つまりいま予算審議をいただいております五十六年度につきましては実はまだ正式に決まっておりませんし、長期的な供給目標につきましては、すでにこれまた何度も申し上げておりますように、十年後に石油代替エネルギーを半分使うというようなことで大体の目安はついておりますけれども、五十六年度そのものについては具体的に決まっておりません。と申しますのは、五十五年度の消費量並びに供給量がいまやっと目鼻がついておりまして、それがはっきりすれば五十六年度を正式に決めたいと思っております。  五十五年度の状況につきましては、事務当局に答えさせていただきます。
  170. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま通産大臣から御答弁申し上げましたとおり、五十六年度の供給計画につきましてはまだ具体的な作業は進んでいないわけでございます。  五十五年度の実績について申し上げますと、現在はまだ五十五年度が進行中でございまして確たる数字を申し上げる段階ではございませんが、五十五年の暦年で申し上げますと五百四十万バレル・パー・デーというおおよその見当でございましたが、実績はおおむね五百万から五百十万バレル・パー・デーぐらいの間に落ちつくのではないかということでございまして、いずれにいたしましても計画よりは相当実績としては下がる見込みが現在のところございます。
  171. 長田武士

    長田委員 いま長官からお話がありましたが、年間五百十万バレル、大体その予想のようであります。そうしますと五十六年度ですと、どのくらいの見通しを持っていらっしゃいますか。
  172. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 石油供給計画上の目標といたしましては、五百六十万バレル・パー・デーというのが五十六年度の一応の基準の数字になっておるわけでございます。ただ、先ほどもお答えいたしましたとおり、五十五年の実績が五百四十万に対して五百十万程度ということになりますと、果たして計画どおりの五百六十万バレルということを組むことが国民経済的にいいかどうかという問題に現在逢着いたしておりまして、営々とその問題についての詰めをいたしている段階でございます。  なお、長田先生よく御承知のとおり国際的な動きもございますので、日本の需給関係だけからのアプローチではなかなか当を得ないという問題もございますので、いわゆる消費国の横のつながりということの検討を踏まえた上でないと日本の数字もなかなかはじきにくい、こういう段階でございます。
  173. 長田武士

    長田委員 次に、私は、昨年十一月二十八日に閣議決定をいたしました昭和六十五年度を目標といたします石油代替エネルギーの供給目標についてお尋ねをいたします。  まず原子力発電についてでありますが、現在稼働中のものが二十一基、出力合計一千四百九十五万キロワットとなっておるわけであります。そのほか、現在建設中のものも十一基ありまして、それに電源開発調整審議会を通りまして建設準備中のものが三基、合計十四基分で一千二百九十三万キロワット、これはすべて昭和六十年度までには完成するという目標のようであります。しかし、これらが予定どおり完成する見通しというのはきわめて困難だろうと私は思いますが、この点どうでしょうか。
  174. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私どもは、十年後に石油代替エネルギー、つまり石油依存度を五〇%まで下げるという基本方針を持っておるわけでございます。そして、六十五年度までに電気の需要量を五千百万から五千三百万キロワットと考えておりまして、そのためには、いま御指摘の二十一基の現在の稼働に、建設中あるいは建設しなければならないものを入れて、どうしても三十五基の完成はしなければならないと考えておりますけれども長田議員御指摘のようにいろいろな条件がある。必ずしも悪条件とは言えませんけれども、日本は、御承知のような原子アレルギーのかなり強い国でございますし、その点でかなり思うようにいかない場合が多いのではないかと思いますけれども、いま御審議していただいております五十六年度予算案におきましても、私ども電源立地交付金制度というものを新たに設けまして、四本柱を立てている上に、いままでの電源三法による維持管理費も含めた交付金の制度そのものの実情あるいはPR、いま申しましたような交付金の制度というようなものを設けまして、できるだけ目的達成へ努力したいというふうに思っておりますけれども、大きなことは言えませず、御指摘のようなそごがあって、これを目的どおりというふうなことの断言はできませんけれども、供給目標あるいは総合エネルギー暫定見通しなども含めまして一つの計画でございますが、その計画の実現へ向かって一生懸命努力したいと思います。  ただ、少し明るい見通しがあるのは、いまの全部を含めまして三十五基の原子力発電所についての計算をついせんだってやりましたところが、かなりの線までいけるという見通しが徐々に立ちつつあることは明るい報告ができるというふうに考えております。
  175. 長田武士

    長田委員 どうも自信がないようでございますね。通産大臣、これは一応千二百九十三万キロワット分すべて六十年度に完成したといたしましても、あと五千百万から五千三百万ということになりますね。そうなりますと、二千七百八十八万キロワットしか、これが進んだとしてもないわけなんです。そうしますと、目標でありますところの、いま申し上げました五千百万キロワットを達成するためには、あと二千三百十二万キロワット足りないのですね。そうしますと、百十万キロワットクラスの超大型原子炉を二十一基つくらないと間に合わないのです。この点どうなんですか。
  176. 田中六助

    田中(六)国務大臣 そういう一つの単純計算をしますとそういうことになりますけれども、原子力発電所の稼働力といいますか稼働率と申しますか、徐々にいろいろ研究をし、またいろいろないままでの操作あるいは研究、そういうものを含めまして、徐々に稼働率が上がっておるわけでございます。もうすでに稼働率そのものを平均しますと、イギリスを追い越しておりますし、次はアメリカのいまの稼働率に追いつきつつありますし、あらゆる面で研究あるいは操作の上昇というような面を、六十五年へ向かって私ども、いろいろな研究で操作の向上というものもあわせて考えていきたいというふうに思っております。
  177. 長田武士

    長田委員 平岩電気事業連会長の談話によりますと、発電所の建設は、計画から電調審にかかるまで約五年、電調審決定から着工まで約四年だ、着工から運転開始まで約六年、十五年かかるということを言っておるんですね。そうなりますと、通産大臣、いま申し上げました二千三百十二万キロワットというのはもうすでに電調審を通っていないと、これだけ達成できないんですね。ただ、努力する、努力するはわかりますけれども、実際問題としてこれは物理的に不可能じゃありませんか、どうでしょうか。
  178. 田中六助

    田中(六)国務大臣 許認可の体制あるいは操作の体制、いまの現状でやりますと、大体そういうことになると思います。先ほどもちょっと申しましたけれども、そういう一つの手続方法、その他原子力発電が発足しまして、発電を開始した後の調整とかあるいは送電能力、そういうものにつきましても研究、あるいはもちろんまだこれからやらなければならない問題もございますけれども、ついせんだっての報告研究結果によりますと、五千百万から五千三百万キロワットに達することはまだまだでございますけれども、計算上、大体五千万キロワットまでぐらいにはいくのじゃないかというような報告を受けておりますし、先ほど、自信がないようだと言われましたけれども、正直に申しまして、全くそれをうまくやるというような自信を表明することができないのは残念でございますけれども、鋭意いまその目的に向かって努力し、法制その他の整備につきましても、国会にもまたお願いしなくちゃいかぬのじゃないかというふうにも考えております。
  179. 長田武士

    長田委員 私は、ここで誤解していただかないためにも、原子力を強力に推進しろという意味で申し上げているのじゃないのです。と申しますのは、この供給目標が去年の十一月二十八日に閣議決定をいたしまして、ちょうどまだ三カ月ちょっとなんですね。これだけしか時間がたっていませんのに、もはや訂正しなくちゃならないというような状況に追い込まれております。そういう意味で、私は、政府のこの計画が余りにもずさんであるということを申し上げたいのであります。  次に通産大臣、石炭液化などのエネルギーの問題についてお尋ねをしたいと思っております。  この「石油代替エネルギーの供給目標」の中に「その他の石油代替エネルギー」三千八百五十万キロリットルというのがあります。この中に石炭の液化が二千二百六十万キロリットル入っているんですね。そうなりますと、私は、いま問題になっておりますSRCII、日本、アメリカ、西ドイツのこの三国で超大型の石炭液化実用化プラントをつくろう、研究をしようということでありますけれども、その問題が大きくかかわり合ってくると思います。そういう意味で、この六十五年を目標とする代替エネルギーの計画、これに今度のSRCIIと相当かかわり合いがある、これが重要な前提となっておる、私はこのように考えますが、どうでしょうか。
  180. 田中六助

    田中(六)国務大臣 石油換算にしまして、この石炭液化の部分が二千二百六十万キロリットルあるのは事実でございます。しかも、SRCIIがかなりの、それだけのウエートを占めているわけでございまして、これをどうするかということは、もちろん私どもとしては、日独米の協定に基づいて何ら変更するつもりはございませんし、アメリカの一般教書付属書に、合成燃料公社ですか、そこにそれを委託しようというようなことが出ておりまして、これももちろんやめるということじゃありませんし、そっちに委託しよう、それからまた、この件については日独米で相談の結果そうしようということになっておりますし、私どもは向こうの教書の発表は聞いておりますけれども、それがこうだということの正式の通知を受けておりませんし、ドイツからももちろんそうでございます。したがって、私どもは協定のとおりに予算を計上するのは当然でございますし、いまのところ、私どもとしては計画を変更する腹はございません。
  181. 長田武士

    長田委員 私は警告しろとか言っていないですよ。SRCIIのプロジェクトは、通産大臣、西ドイツ政府も財政難を理由といたしまして出資を渋っているようですね。この点については西ドイツ政府に対しては確認していますか。話し合っていますか。
  182. 田中六助

    田中(六)国務大臣 アグリーメント、つまり協定でございますので、私どもは向こうから正式の問題提起があった場合にこれに応ずるべきでございまして、うわさとか新聞の一部に報道されておるからといって、おまえのところはこうじゃないかというようなことを言ってもいいのでしょうけれども、私どもは正式なルート、しかも正式な協定の変更でございますので、正式な申し入れがいま現在ないわけでございますので、そういう一部の報道とかというようなことで対処するのは差し控えたいというふうに思います。
  183. 長田武士

    長田委員 レーガン米新大統領が二月の十八日に発表いたしました経済再建計画、この中では代替エネルギーの開発計画に対して縮小をうたっておりまして、石炭ガス化、液化計画への政府直接投資の廃止を発表し、エネルギー省から合成燃料開発公社に移管をする方針を発表いたしております。そこで、通産省はSRCIIの事業手続についてアメリカとどのような交渉をしていらっしゃるのか、またこれからしようとされるのか。これについては通産大臣、どうですか。
  184. 田中六助

    田中(六)国務大臣 長田委員も御承知のとおりに、石炭の液化のプロジェクトあるいは液化の方針というものは日本にとっては非常に重大なことでございますし、エネルギーの一つの計画の中にも十分織り込んだ問題でございます。しかも、これは福田元総理とアメリカ首脳とが話し合って正式に決まったわけで、すでに昨年度から日本は予算に計上し、アメリカ、西ドイツもそれを計上してきておるわけでございまして、二年目に入っているのは御承知のとおりでございまして、それならばこれを一方的に破棄する——破棄はしなくても大きな変更を加えるというようなことになりますと、これは国際協定でございますので、十分相互の意見あるいは相互の十分な検討事項としてやらなければなりませんし、向こうから正式の話し合いがあれば私どももそれに応ずることはもちろんしなければいけません。しかし、日本側といたしましては、予定どおりの計画を遂行するという現時点における方針は変わっておりません。
  185. 長田武士

    長田委員 ぜひひとつ努力をしていただきたいのでありますが、SRCIIに関する三国協定では実施主体はエネルギー省になっておりますね。そうなりますと、通産大臣、公社に移管されるようになりますと、手続上ちょっとこれは問題になりませんか。
  186. 田中六助

    田中(六)国務大臣 もちろんこれを公社に移管するということになりますと問題がないとは言えません。もちろん私どももそれを問題にしなければいけませんと思いますけれども、それ以上いま私どもがコミットあるいはコメントすることは、日本の国会でございますので、何か即国会の意思あるいは政府の意思がというような誤解、これが報道されて向こうへ伝えられて、正式の向こうの申し入れもないのにそういうことを一つ一つ言って誤解を招いてはいけませんけれども、やはり私は公社に移管するということはかなりの変更を、質的な変更とは違いましても、やはり形の上でもそういうことになるのじゃないかというふうに思います。
  187. 長田武士

    長田委員 通産大臣、これは国際公約でありますから、どうかひとつ強力に推進をしていただきたいことと、日本から提案をして、西ドイツ、それから日本、そしてアメリカの三者の協議が必要じゃないかという感じが私はするのですが、そういう提案をされる気持ちはありませんか。
  188. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほども答弁いたしましたように、正式の通知がアメリカからも西ドイツからもございません。しかし、もちろんそういう教書で発表するぐらいでございますので、そのうちにアメリカから正式な通知があるでしょう。そうなれば、協定の変更にもつながる問題でもございますので、アメリカ、西ドイツとも十分相談をしなければなりませんし、協議しなければなりませんと思いますけれども、その際におきましても、私どもは日本の主張あるいは日本が協定してきておりました事実についての遂行ということは変える方針あるいは変える考えは現在のところさらさらありません。
  189. 長田武士

    長田委員 いま申し上げましたとおり、このように代替エネルギーの主力でありますところの原子力の問題、それから石炭液化の問題等々についても、目標の達成のためには相当障害があるようであります。そういう意味で、通産大臣、この「エネルギーの供給目標」というのは国民生活にとっても一つの指針でございます。あるいは中小企業国民一般の経済活動にも密接なかかわり合いを持つ目標でございますから、この点は正確を期すということが第一条件であろう、このように考えるわけであります。  先ほどもちょっと触れましたけれども、去年の十一月二十八日に閣議決定したこの目標が、現在もうすでに、三カ月後に用をなさなくなってしまうというような事態を迎えていると私は思います。そういう意味で、どうでしょうか。これからの交渉等もいろいろあるとは思いますが、それがはっきりし次第、この「エネルギーの供給目標」については訂正をして、新しく策定されたらいかがでしょうか。この点、どうでしょうか。
  190. 田中六助

    田中(六)国務大臣 昨年の「石油代替エネルギーの供給目標」の設定もさることながら、一昨年の八月に私どもは「長期エネルギー需給暫定見通し」というものを立てた。そういう二つの重大な問題でございますし、十年先に私どもは石油依存率を五〇%にするということ、これはひいては私どものこれまた重大な基本方針でございますエネルギーの安定供給、それから代替エネルギーの確立、それから省エネルギーという三本柱の遂行のための十年計画でございますし、長田議員御指摘のようにまだ一年ちょっとでございますし、あと残りの時間の方が多うございますし、私どもは現在そういう目標を大きく変更しようという考えはなく、むしろその目標へ向かってあらゆる努力をしていこうということで、ますますいままでの方針を確立する方向へ努力していきたいというふうに思っております。
  191. 長田武士

    長田委員 それでは、時間がございませんから日米再処理問題についてお尋ねをいたします。  この問題に関しましては、共同決定についてでございますが、これは本年六月一日に期限が切れるわけであります。そこで、これについてはどのように改定作業をされるのか、これが第一点。  第二点は、今後アメリカとの交渉で再処理の拡大等について共同決定に関する基本的な見直しをせざるを得ないと私は思います。この点について大臣はどのように考えておられるか。  また、政府は総理訪米などの機会をとらえましてそうした主張をすべきだと私は考えますが、この点についてお尋ねをいたします。
  192. 田中六助

    田中(六)国務大臣 この問題は動燃事業団が大きくかかわっておりますし、それから過去のいきさつもずっとございますし、将来の展望もございますので、事務当局に答えさせていただきます。
  193. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま御指摘のございました日米再処理問題に関します共同決定は、御説のとおり六月一日で切れるわけでございます。そこで、わが方といたしましては、日米両国政府の交渉によりまして、今後この延長問題が順調にいくようにという基本姿勢で交渉に当たりたいと思っておるわけでございます。ただいま申し上げました六月一日以前にも、四月末で切れるという協定を六月まで延ばしたわけでございまして、その後の延長問題もきわめて重要な問題だと思っております。ただ、アメリカはレーガン政権が発足して間もないわけでございまして、DOEと申しましょうか、エネルギー担当部局の人事が必ずしもまだ確定いたしておりません。もちろん長官クラスの人事は決まっておるわけでございますが、次官、局長クラスの人事がまだ必ずしも完全に出そろっておりませんので、私ども交渉をしたくてもなかなか交渉の相手が決まってないという問題もございますので、その点を踏まえながら慎重に交渉を継続してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  194. 長田武士

    長田委員 次に、独占禁止法について、運用についてお尋ねをしたいと思います。  わが党の竹入委員長は一月二十九日の代表質問で、やみカルテルの摘発について情況証拠を積極的に活用すべきである旨、総理にただしたわけであります。これに対して鈴木総理は、「共同行為の存在が合理的に推認できる情況証拠を活用するなど、独禁法の厳正な運用を図っております。」このように答弁をされたわけであります。そこで公取委員長、この総理の発言をどのように具体化されておるのか、お尋ねをいたします。
  195. 橋口收

    ○橋口政府委員 最近の独占禁止法違反容疑事件の一般的な傾向を申し上げますと、五十二年の改正法の成立によりまして課徴金という制度が設けられた関係等もございまして、一般的な審査の事件の進行はいろいろ障害があるわけでございます。具体的な物証を得るあるいは供述を得るということにつきまして、従来に比べましていささかの困難があるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、はっきりした合意なりあるいは暗黙の合意と申しますか、こういう直接的な独禁法違反の事実を証明するような証拠がない場合におきましても、違法なやみカルテルとしての存在が推認されるような状況のもとにおきましてはこれを違反事件として摘発をいたしておるわけでございまして、そういう趣旨を総理が本会議でおっしゃったものというふうに心得ております。
  196. 長田武士

    長田委員 今後とも積極的に情況証拠を活用していくというふうに御答弁されたと理解をいたします。  そこで、情況証拠と関連をいたしまして、同調値上げの問題についてお尋ねをしたいわけであります。独占法の改正によりまして同調値上げに対して報告を徴収する規定が盛り込まれました。私はこの運用についてどうしても納得できないのですね。と申しますのは、同調値上げの中にやみカルテルが逃げ込んでいるんじゃないか、そういうふうに私は思えてならないわけであります。御存じのとおり同調値上げは独占法の違反にはならないのですね。その上、値上げの理由の報告を徴収いたしましても、それは単に年次報告に——こういう年次報告がありますけれども、これに概要が報告されるだけであります。これも一年ごとに報告ですから、たとえば四月の場合なんかもう一年八カ月先になってしまう、そういうようなことで企業にとっては痛くもかゆくもないのです。このようなことを考えてみますと、私は、本当に同調値上げというのは非常に処置としては甘いんじゃないか、そういう感じを強く持ちます。  そこで、私は委員長に了解をいただきまして資料を配付さしていただきたいと思いますので、その点よろしくお願いしたいと思っております。その資料に基づきまして質問を続けます。高調値上げに、よって報告命令を受けた品目は資料(1)に示しましたけれども、そのうち四十五年以降独占法が改正された五十二年までの間にやみカルテルに問われた品目を資料(2)に示してあります。それによりますと、板ガラスは二回、これは昭和四十六年六月と五十年十二月、自動車タイヤ、チューブも二回ありまして、四十五年三月と四十九年九月であります。溶接棒が四十七年の三月、軸受け鋼が四十八年の十二月、それぞれやみカルテルを犯しておるわけであります。これらについては公取は間違いありませんか。
  197. 橋口收

    ○橋口政府委員 お調べのとおりでございますが、(1)の「価格の同調的引上げ理由の報告命令品目」というのがございますが、これは二十三番目としまして魚肉ハム、ソーセージがことしの一月十六日に報告命令を出しております。それ以外はお調べのとおりでございます。
  198. 長田武士

    長田委員 たとえば板ガラス業界は、かねてそのカルテル的体質が指摘されておったわけであります。先ほど説明を申し上げたのでありますけれども、四十六年と五十年、この二回にわたりましてやみカルテルに問われております。五十年十二月の審決では、四十八年四月と十一月、そして四十九年八月のいずれの値上げもカルテルによって値上げされたことが明らかになっております。それは五十二年十二月から五十四年の一月にかけまして、この値上げについては同調的値上げといたしまして報告命令を受けております。そして年次報告に値上げの理由の概要が掲載をされておるわけであります。その内容を見ますと、原材料費、諸経費それから人件費等が値上げの理由とされているわけでありまして、非常に抽象的なんですね。そして四十五年以降に限ってみましても二回もやみカルテルを犯したわけであります。  そういう業界に対しまして値上げの理由の報告だけで済まされてしまうというのは、私ははなはだ納得できない。公取委員長、こういう点どうですかね。
  199. 橋口收

    ○橋口政府委員 普通板ガラスの業界は、三社で総生産の一〇〇%を占めるという典型的な寡占的な市場でございますし、また独占的状態の監視対象品目にも指定をされておるわけでございますから、当然同調的価格引き上げの状態になりますれば、これは公正取引委員会に対して値上げの理由の報告をするわけでございますが、率直に申しまして、いま御指摘がございましたように、過去におきましてカルテルの違反事件としての審決も受けておりますし、業界全体としてできれば同調的価格引き上げの報告も回避をしたいというような心境にあったようでございまして、われわれとしましては、十八条の二の規定を施行するに当たりまして、板ガラス業界におきましては、いわゆる基準的な価格という制度をやめまして、個別的に問屋に対して価格を設定する、こういう制度に制度を変更いたしまして、したがいまして基準価格としての同調的価格引き上げの対象にはならない、こういうような考え方を持っておったのでございますが、これにつきましては十分話し合いをいたしまして、同調的価格引き上げの理由については報告を出してもらったのでございます。ただいま先生がおっしゃいましたように、価格引き上げの幅なりあるいは金額につきましての妥当性について、公正取引委員会としてはこれを批判する立場にないわけでございますから、問題はやはりそういう引き上げが行われます過程におきまして、おっしゃるような相談をするとかあるいは共同行為を行うとか、こういうことがあれば問題でございますから、こういう点につきましては従来も監視をいたしておりますが、今後とも十分監視いたしたいと思いますし、いまお話がございましたように、同調的価格引き上げの報告さえ公取委に出してしまえば免責をされるという考え方があってはならないわけでございまして、これは先生がおつくりになりました資料の真ん中にも書いてございますが、同調的値上げ報告の対象品目でありますフィルムにつきまして、エックス線フィルムは当時は同調的価格引き上げの対象品目になっておりませんでしたが、やはり同じ業者が製造をいたしておる関係等もございまして、寡占的なマーケットにおける価格問題ということで、医療用のエックス線フィルムにつきましての立入検査という強い措置もとったわけでございます。したがいまして、同調的価格引き上げの報告をとりさえすればすべてよしということではございません。また今後そういうことがあってはならないというふうに考えております。
  200. 長田武士

    長田委員 エックス線の話が出ましたけれども、私申し上げておりますのは独占禁止法の改正された以前の話なんです。  板ガラス業界は、五十年十二月九日の審決では、前記三社は、今後会合、電話連絡その他の方法いかんを問わず、板ガラスの価格改定の幅、実施の時期、方法または付帯条件について相互に意思の疎通を図ってはならないとされておるわけであります。  そこで、お尋ねいたしたいのでありますが、報告命令の対象となったのは、五十三年の十二月から五十四年の一月にかけての値上げについては、こういう点を着目して調査されたのですか。
  201. 橋口收

    ○橋口政府委員 これはすべての問題につきまして調査をいたしておるわけでございますが、先生がおっしゃいますような共同行為の存在を立証するような具体的な端緒がなければ、立入検査等を含めた強い措置というのは、これは行政権の乱用等の問題もございますから、なかなかそう容易にはできないわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように板ガラス業界は過去にそういう事例もあり、また寡占的なマーケットでございますから、そういう点があってはならないということで、これは平素から十分調査もし、広く情報を集めておるわけでございますが、この席で申し上げられますことは、五十三年から五十四年の初めにかけての値上げにつきましては具体的な情報を得てない、これが率直なところでございます。
  202. 長田武士

    長田委員 四十六年の五月の勧告では、板ガラス販売担当部長の会であります三十日会というのがあるのですね、そこにおける協議が問題になったわけであります。それが五十年十一月の勧告では、三十日会という名称は変わっています。変わっていますけれども、同じような会合を持って値上げをやっているのですね。公取委員長、報告命令の対象となった五十三年十二月から五十四年一月にかけての値上げについても私は同じようなことが繰り返されているのじゃないか、そういう可能性は十分あると見ております。このような状況から、私は同調値上げの報告徴収だけで済まされてしまうというのははなはだ納得できません。  ところが、板ガラス業界は三社だけで板硝子協会をつくっておるのですね。板硝子協会の事業内容一つには、会員相互間の親睦、連絡というのがあります。事業者団体の活動に関するガイドラインには、情報交換に厳しい指針を出しておるわけでありますけれども、板ガラスの同調値上げについては情報交換の有無を調査されたのかどうか、また、報告命令対象の品目の事業者の団体をどのように監視していくのか、この点あわせて御答弁をいただきたいと思っております。
  203. 橋口收

    ○橋口政府委員 いま先生がおっしゃいましたような営業担当の会合が存在をしていて、そこで会合が行われ、一定期間を置きまして価格の引き上げが行われた、これはまさに先ほど先生がおっしゃいましたような情況証拠の典型ではないかと思います。ただ、私どもの扱いの姿勢といたしまして、一定の会合があり、一定期間を置いて価格の引き上げがあったということだけで直ちに独禁法違反として問擬できるかということになりますと、これはいろいろなケースがございまして、ケース・バイ・ケースでございますから断定的なことは申し上げにくいのでございますけれども、しかしなかなか容易なケースではないと思います。やはりその会合があったという事実が確認をされ、そこで何がしか価格問題について話し合いが行われ、そして一定期間を置いてほぼ同じような率または額の引き上げがあったということであれば、これはまさに情況証拠の中でもかなり黒いということが言えると思いますが、ただそういう会合あるいはそういう組織が存在して話し合いが行われたらしいということでは、これは確かに情況的な証拠ではございますが、それをもって直ちに独禁法違反としては取り上げにくいと思います。  ただいま先生がおっしゃいましたことは、私どもとしては初めてではございませんけれども、重ねての御指摘でございますから、われわれとしましてはさらによく念査をいたしてみたいと思います。
  204. 長田武士

    長田委員 別の角度から公取委員長にお尋ねをしたいと思っております。  独占禁止法が改正されて以来、二回値上げの報告徴収を行っている品目があるのですね。表の(3)に一覧表にまとめておきました。まず調製粉乳については、第一回が五十四年一月二十六日、二回目が五十五年十月九日、自動車タイヤ、チューブについては一回目が五十五年三月二十一日、二回目が五十五年十一月十七日、家庭用合成洗剤、これは台所用でありますが、これについては一回目は五十五年三月二十八日、二回目が五十五年十一月十七日となっておるわけであります。  このように、自動車タイヤ、チューブにおいては八カ月の間に二回やっているのですね。あるいは家庭用合成洗剤も同じく約八カ月の間に二回も報告命令を受けておるのです。公取委員長、私はこういう実態というのは独占禁止法の上から言っても好ましいことではないと思いますが、どうでしょうか。
  205. 橋口收

    ○橋口政府委員 昭和五十五年一年間は、私はやはり異常な時期ではなかったかと思います。ことに五十五年の前半は五十四年の第二次石油ショックを反映しての価格高騰の時期でございましたから、これはやや異常、異例の時期であったと思いますので、われわれの立場でいいとか悪いとかの価値判断をすることはむずかしいのでございますが、今後はこういうことはたびたびはないだろうし、また、あってはならないというふうに考えております。
  206. 長田武士

    長田委員 独占禁止法上好ましいなんて私は思っていないのですよ。委員長もそうでしょう。言う立場じゃないなんておっしゃいますけれども、それだったら独占禁止法がある理由がないじゃありませんか。  そこで、昭和四十五年より独占禁止法が改正された五十二年までの間に、自動車タイヤ、チューブ業界は二回もやみカルテルに問われておるのですね。その上、先ほど申し上げましたとおり、独禁法改正後はわずかの期間に二回も値上げ理由の報告命令を受けております。四十九年九月十七日に勧告されましたやみカルテルでは、日本自動車タイヤ協会の会議室で小売標準価格の値上げを決定をいたしております。したがいまして、同調値上げても報告命令を受けた昨年の七月の値上げも、やみカルテルの疑いを持たれても当然だろうと私は思うのですね。公取委員長、この点どうですか。
  207. 橋口收

    ○橋口政府委員 自動車タイヤ、チューブも、先生承知のように上位三社の占拠率の大変高い典型的な寡占的市場でございますし、ことに首位事業者の力が強い業界でございます。したがいまして、従来の価格行動につきましても、具体的に公正取引委員会として審決を出した例もございますように、従来からともすると疑問とされるような行動があったのでございます。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕  ただ、改正法が施行になりましてからは、全体のビヘービアを見ておりますと、首位事業者が値上げの時期をおくらせて報告対象にならないような価格行動というものも見られるわけでございまして、五十五年は、先ほどもちょっと申し上げましたようにやはり異常な年であったと思うわけでございまして、私がさっき価値判断をしないということを申し上げましたのは、法律規定の趣旨から申しますと、値上げの幅が妥当であったか、あるいは値上げの時期が適当でなかったか、こういう判断を公的にすることは法律規定から許されておらないわけでございますけれども、しかし、確かに一般常識から申しまして一年の間に二回も価格の引き上げがあるということは異常なことだということを申し上げたのでございまして、決して私は値上げが妥当であるとかということを申し上げておるわけではございません。いま御注意がございましたように、自動車タイヤ、チューブ業界も寡占的なマーケットでございますし、従来の経緯もございますから、今後とも十分監視をしていきたいと思っております。
  208. 長田武士

    長田委員 ここにタイヤ業界の大手各社の標準小売価格表がございます。これをずっと見ていきますと、主力製品については各社ともほとんど値段は同じなんですね。もちろん私はやみカルテルだと即断をするつもりはないのでありますけれども、これはどうも同調値上げの報告命令だけで済まされる問題ではないのじゃないか、そういう感じがいたします。カルテルとして調査すべきだと私は思いますが、その点どうでしょうか。
  209. 橋口收

    ○橋口政府委員 自動車タイヤ、チューブは、末端におきましての小売価格は、これは表示価格は希望小売価格というものがございますけれども、大変強く、また大きく値引きの行われている業界でございまして、新車用のタイヤは相手が自動車会社でございますが、補修用のタイヤは一般のオーナードライバー等のユーザーでございますから、これは希望小売価格というものを設けましても、末端におきましては全く価格を表示しない、しかも大幅な値引きサービスを行うということで、むしろ価格につきましては公正競争規約をつくりまして希望小売価格を設けても差し支えないという、いわば業界の秩序づけというものが行われつつあるわけでございまして、一方いま御指摘がございましたようにメーカーの方はできるだけ価格を維持したいという気持ちがございます。したがいまして、一般論で申しまして、先ほど申し上げましたように自動車タイヤ、チューブ業界に対しましては従来から監視の眼をそらせておらないわけでございますし、また今後とも厳重に監視をしてまいりたいと考えております。
  210. 長田武士

    長田委員 さらにお伺いをしたいのでありますが、独禁法違反行為の足場となっておりますのは事業者団体であります。自動車タイヤ、チューブあるいは溶接棒も事業者団体がカルテルの足場となっておるわけであります。しかも、昨年十二月十五日に行われました減産の調査結果でも、公取で出しておりますけれども事業者団体を場として短期の需要動向等に関する情報交換活動が行われていることが見受けられた、このように指摘をされておるわけであります。  そこで、公正取引委員会事業者団体の情報交換活動にメスを入れるなど、情報交換については積極的な法運用といいますか、これが必要だろうと私は考えます。特に昨年の減産調査からくみ取ることができますのは、私は素材産業における情報交換について強い監視が必要であろう、このように考えております。そこで公取委員長事業者団体に関するガイドラインとは別途に、素材産業における情報交換を厳しく取り締まるためには、たとえば素材産業の情報交換に関するガイドライン、こういうものが必要じゃないかと考えますが、この点どうでしょうか。
  211. 橋口收

    ○橋口政府委員 事業者団体の活動の中心を占めておりますのはいま先生からお話がございましたような情報交換活動でございまして、事業者団体の活動のあり方が問われます場合には、情報交換活動に対してもっと寛大であってほしいという団体側の要請もございますし、一方われわれの方で申しますと、事業者団体を場として情報交換を行い、しかも情報交換の内容が構成事業者の経営とか技術とか、あるいは市場動向等の調査に限らず、価格とか数量につきましての情報交換ということになりますと、これは違反の疑いが強くなってくるわけでございます。  いまお話がございましたように、事業者団体の活動に関しましては一般的な独占禁止法の指針というものを明らかにいたしておりますが、われわれがこれをつくりましたのが二年近く前でございますが、その後の運用の実績等から考えますと、この一般的な指針だけで対応できにくい場合というものが幾つかあるわけでございまして、たとえば非製造業、自由業の事業者団体のあり方、あるいは自由業の中でも法的な規制を受けている各種の事業者につきましての団体のあり方、あるいはいま先生がおっしゃいましたような素材産業につきましての団体のあり方等、いろいろ問題があるわけでございますので、私どもとしましてはそういう問題意識を持っておるわけでございまして、先生がおっしゃいましたように、昨年の減産調査の結果としまして、事業者団体に対しましても、また団体を監督されます通産省に対しましても、行き過ぎた情報の交換が行われないように慎重な配慮を要請したのでございます。これが私どもがとりました最近の第一歩でございまして、次にどういう措置を考えるべきか、これはいま先生からも御提案もございましたので十分考えていきたいと思っておるわけでございまして、いまの指針ですべてよしとする考え方はとっておりません。
  212. 長田武士

    長田委員 その点、しっかりひとつガイドラインをつくられることを私は要望しておきます。  そういう意味で、公取委員会がカルテルの摘発に対しまして努力を欠く、まあそんなこともないでしょうけれども、そういうふうに私の目には映るのでございますけれども、同調値上げたけの報告を徴収していれば事足れり、そういうふうになってしまうと、わが国の独禁法運用はそれこそゆがめられてしまうのじゃないか、そういう点を私は危惧をいたしております。どうかひとつ西ドイツのようにどんどん摘発もしていただいてやっていただきたいと考えております。  このことを前提といたしまして、私は同調値上げの報告の徴収について提案をいたしたいと思っております。私が指摘をした三品目とも、第一回の報告命令における値上げ理由は、原料費の高騰がその理由とされておるわけであります。しかし、報告徴収の結果を直ちに公表すれば——実際問題として、二回目の報告ということになりますとそう簡単に報告ができないと私は思うのです、ついこの間報告になって、また次の報告ということになりますと。これによって値上げ抑止の効果が十分発揮できるのではないかというふうに考えております。そこで、必要によって独禁法第四十三条を活用いたしまして速やかに公表することを考えた方がいいのじゃないかと私は思います。私、昨年の四月一日、物価問題等特別委員会で公取委員長にこの質問をいたしました。公表制度を前向きに活用するということを示唆したわけでありますけれども、この点どうですかね、第四十三条。
  213. 橋口收

    ○橋口政府委員 同調的価格引き上げの理由につきまして外部にどういう時期にどういう形で公表するかという問題でございますが、これは御承知のように独占禁止法第四十四条の規定によりまして、国会に報告をいたします年次報告の中にその概要を記載するというふうになっておるのでございます。  ただ、これは改正法律国会における審議の際にも問題になったところでございまして、政府側の考え方としましては、四十四条の規定に基づきます国会への報告のほかに、特に必要があるときは四十三条の規定によりまして外部に公表することもあり得るというのが法律論のたてまえでございます。実際論でございますが、いままで報告を徴収いたしましたのが二十二件でございまして、五十五年度だけで十七件の報告を徴収いたしております。  これは改正法によって創設された規定の運用の問題でございまして、当初はわれわれの事務局もふなれということもございましたし、また業界の方もできれば報告を出したくないというようなこともございまして、まずその十八条の二の規定に該当しているかどうかにつきましての予備的な調査というものに大変手間取るのでございます。予備的な調査を行いまして、この規定に該当するということが確定をいたしまして正式に報告命令を出し、報告をもらい、分析をし、理由を解明するというのは、これは相当な作業でございます。ことに、五十五年はたくさんの品目があった関係等で相当大きな作業でございます。それの取りまとめをいたしまして、その概要を国会に報告するということでいま作業をいたしておるのでございますが、先生の御提案は、一年間に二回も値上げをしたような特殊なケースについて考えたらどうかということでございますから、これは新しい御提案でございます。昨年の物価問題等特別委員会あるいは当委員会における近江前議員の御質問もそういう趣旨でございましたが、二回値上げをしたようなものについてはどうかということは新しい御提案でございますから、これはよくひとつ考えてみたいと思います。法律論は先ほど申し上げたとおりでございますが、実際論との関係もございますから、これは十分ひとつ検討させていただきたいというふうに思います。
  214. 長田武士

    長田委員 どうかひとつ積極的な対応をお願いしたいと思っております。  次にやみ再販の具体的な例についてお尋ねをいたします。  実は兼松スポーツ用品株式会社が発売元となっておりますアディダス社のシューズ、バッグの価格について調べてみました。資料の五番目に示してございます。私が調べたのは二月の上旬でございますが、価格は表のとおりほとんど一致しておるわけなんです。こうした事実は明らかにやみ再販と断定せざるを得ないと思いますが、公取委員長、どうでしょうか、この一番右側にございますけれども
  215. 橋口收

    ○橋口政府委員 アディダス・スポーツ用品につきましては、過去におきましても独禁法違反事件として取り上げて審決を出した経過もございます。御承知のようにブランドイメージの大変強い商品でございまして、ことにこの中のキャリーバッグのブランド性が強いと言われております。いま資料をちょうだいしたばかりでございますから、これにつきましてコメントを申し上げるということは適当でないかと思いますが、これは先ほど来議論のございますいわゆる情況証拠の段階でございまして、問題はこういう状態になっているということだけで直ちに問題ありというふうに申し上げることはできないのでございますけれども、冒頭に申し上げましたように、アディダス・スポーツというのは大変ブランドイメージが強く、また値引きをさせない、それから扱い小売店を限定する、問屋に対してそういうことを要請する、そういう傾向を持ちがちのスポーツ用品でございますから、これは貴重な資料として活用させていただきたいと思います。
  216. 長田武士

    長田委員 私の調査いたしましたことを若干申し上げますと、ある店では、値引きを要請いたしましたところ、実は出荷停止を受けたので、値引きはできないと言っておりました。またある店では、派遣店員がおりまして、価格の監視をしているのかなという感じを私は強く抱きました。私はこのような実態はやみ再販に間違いないというふうな感じを持つのですけれども、公取委員長、もう一度ひとつこの点、御答弁をいただきたいと思うのです。
  217. 橋口收

    ○橋口政府委員 具体的な事件でございますから、ここで私が判断を申し上げるというのは適当でないかと思います。やはり情況的な証拠としましてわれわれが今後審査を進める上におきまして参考にさせていただきたいと思います。  従来の事例等につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、ブランド性の強い商品につきましては価格維持も容易であるし、また販路の設定も容易であるということは一般的に申し上げることができるかと思います。
  218. 長田武士

    長田委員 現在、同じアディダス社のスポーツウエアの発売元でありますデサント社がやみ再販の疑いで立入検査を受けて、審査中のようですね。このデサント社は、昭和五十二年にも立入検査を受けながら不問処分になっておるようであります。やみカルテルだけではなく、やみ再販等、広くこの独占禁止法違反には情況証拠を活用すべきであると私は思いますが、この点どうでしょうか。  それから、あわせて一般的な事例といたしましてお答えをいただきたいのですけれども、値崩れの防止やあるいは価格維持を目的といたしました、先ほどちょっと申し上げましたけれども、派遣店員を出すというような問題ですね、この問題についてもひとつ委員長の御見解をいただきたいのです。
  219. 橋口收

    ○橋口政府委員 デサントにつきましては、いまお話がございましたように五十二年に事件として取り上げたのでございますが、取り上げますと同時に問題のある事項を一切解消したということで打ち切りになったのでございます。ただ、やはりこれもアディダスを扱っておる会社でございますから、そういう意味でブランド性に立脚したもろもろの違反行為の可能性というものはあるのでございまして、そういう点から申しましてすでに手をつけておりまして、やや時間はかかっておりますが、なるたけ早く結論を得たいというふうに思っております。  それから、派遣店員の点でございますが、これは事実関係を私よく承知いたしておりませんが、類似のケースとしましては化粧品の美容部員という制度がございます。これも名店に派遣をいたしまして技術指導を行うといったてまえでございますけれども、中には価格維持をやっているのではないかということが指摘をされておるのでございます。こういう観点から申しまして、ブランドイメージ性が強く、企業体力のあるところは派遣店員を派遣しまして、技術指導のほかにもろもろの指導を行う可能性を持っておるわけでございますから、たしかこの席でも医薬品につきましても御質問がありまして、製薬会社もいわゆるプロパーという職員はその販売活動をいたしておりますが、これはやはり価格維持に関与があるのじゃないかということが一部にはささやかれておるわけでございます。こういう力のある企業が自分の勘定、自分の責任におきまして人を派遣するということにつきましては、御指摘のように再販価格の維持とかあるいは販路の確保、設定につきまして活動する可能性もございますので、われわれとしましては関心を持っておるところでございます。
  220. 長田武士

    長田委員 次に、行政指導と独禁法の関係について簡単に触れておきたいと思っております。  公取委員長は、行政指導と独禁法の関係について問題点を整理して判断基準を明らかにしたいとして、関係省庁と現在協議しているようですね。各省庁と協議されております内容、これはどういうことでしょうか。第二点は、公取委員長は指針、つまり判断基準ですね、現在の段階ではどのような方針でまとめようとされておるのか。この二点についてお尋ねをいたします。
  221. 橋口收

    ○橋口政府委員 行政指導と独禁法の関係につきましては、いま関係省庁とお話し合いをいたしておるところでございますが、これは申すまでもないことでございますが、行政指導は各省庁がおやりになる行政作用でございますから、各省庁が行政活動をされます場合に御留意をいただきたい点を独禁法の観点から申し上げておるのでございますから、これは時間をかけまして十分話し合いをして、できれば御納得をいただくようにいたしたいと思っておるわけでございます。したがいまして、いま折衝中でございまして、結論を得ますのは三月に入ってからであるというふうに考えておりますが、われわれの方の考えております判断基準の概要は、中村委員にも概要をお答えいたしたと思いますが、大きく分けまして具体的な法的根拠、つまり行政作用法という法的根拠に基づいて行われる行政指導の場合と、それから行政作用法と目すべきものがなくて各省設置法、行政組織法に基づいて行政指導が行われる場合とは相違があるというのが第一の前提でございます。  その次の問題としましては、そういう相違を前提とした上で行われる行政指導の内容の問題でございまして、これは価格、数量等に関するものと、それ以外の技術とかあるいは営業時間に関するものとの間にはおのずから扱いに多少の相違があってもよろしいかと思うわけでございまして、そういう点から申しまして、縦横十文字と申しますか、いろいろな角度からいろいろなケースにつきましての独禁法違反の可能性のある事例を挙げて判断の基準にいたしたいというふうに思っておるわけでございます。  ただ、行政指導はケース・バイ・ケースと申しますか、個々の事情によって内容、程度等にも差がございますから、われわれの気持ちとしましては、行政指導を行います場合には事前に公正取引委員会に御相談を願いたいという気持ちを持っておりますし、また私どもの方も積極的に行政調整という名で御相談をしていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。これは最終的には独禁法の運用の問題に帰着をいたしますから、各省庁と話し合いをしまして、いずれにいたしましても三月の上中旬までには結論を得たいというふうに思っております。
  222. 長田武士

    長田委員 時間がございませんので、通産大臣、一つだけお尋ねいたします。  通産省の産業政策局は、資源エネルギー庁あるいは基礎産業局など産業界を所管する部局との間で、国民経済に与える影響が大きい重要な問題や、競争を制限し市場条件の変更を迫るような需要見通し、価格、設備に関する行政指導は、原則として課長以上が内容を文書にして行う、このことを申し合わせだということを報道されておるのですが、これは事実でしょうか。イエスかノーかでお答えください。
  223. 田中六助

    田中(六)国務大臣 一部でそういうことを言われておるようでございますけれども、それは全く事実とは違っております。
  224. 長田武士

    長田委員 それでは、最後にお尋ねをいたしますが、ことしは国際障害者年でもありますし、政府も国際障害者年推進本部を設けまして積極的に取り組んでいらっしゃるわけであります。また、障害者の方々の社会への完全参加という意味からも日常的な改善処置が推進されておるわけでありますが、まだまだ十分とは言えないわけであります。その中で、特にテレビ放送については、聴力障害者の方々から手話通訳の挿入や字幕、スーパーと言いますけれども、そういう挿入など、毎年強い要望が出されておるわけであります。ところが、現在の手話通訳挿入番組は、昭和五十三年からNHKで毎週日曜日に「聴力障害者の時間」といたしまして二十分間、民放では、昭和五十年から日曜日に五分間のニュース番組が放映されているだけにすぎないわけであります。  そこで、郵政大臣にお尋ねをするのでありますが、このような番組の拡大について今後どのように取り組んでいかれるつもりなのか、また、今日要望の強い字幕放送や文字の多重放送などについての技術開発及びその展望をお聞かせをいただきたいと思います。
  225. 山内一郎

    ○山内国務大臣 手話及び字幕の放送につきましては、いま先生の御指摘のとおりでございます。  そこで、今後の問題として、ただこれは放送事業者が放送番組を決めるという放送法のたてまえがございまして、決めていただくわけでございますが、障害者年にも当たりますので、その範囲を拡大をしていただければいいなということを考えているわけでございます。  それから、全日本聾唖連盟から文字多重の実用化についての御要望がございます。いま盛んに研究中でございまして、間もなく答申だけは得られますけれども、受信装置の改造の問題という点でまだ時間がかかりますが、ひとつ極力詰めてやってまいりたいと考えております。
  226. 長田武士

    長田委員 次に、NHKにお尋ねをしたいのでありますが、先ほど話しましたように、NHKでは、毎週日曜日午後六時四十分から七時まで「聴力障害者の時間」といたしまして、五十三年四月から放送を始められておるわけでありますが、視聴者の反応はどうでしょうか。
  227. 田中武志

    田中参考人 お答え申し上げます。  私どもの「聴力障害者の時間」の反応、要望というものにつきましては、ちょうど一年ほど前に京都、神奈川、福島の三地区で一応調査をいたしました。これによりますと、聴力障害者の方でこの時間をごらんになった方は大体八〇%から九〇%あるというような数字が出ております。大体ほとんどの方が見ていただいているのじゃないかというふうに思っております。  なお、番組のモニターにつきましても、大変この番組につきましては好評でございまして、だんだんこの番組の役割りが聴力障害者の方々に定着してきているのではないかというふうに思っております。  なお、この番組の制作に当たりましては、全日本聾唖連盟などの皆さん方とテーマあるいはその他について十分連絡し合っておりますし、また、年一回はこういった方々と番組委員会を開きまして、いろいろ意向の吸収に努めているというのが現段階でございます。
  228. 長田武士

    長田委員 私も、この放映時間について、NHKの一週二十分というのはちょっと短いかなという感じがいたしております。そこで、海外の例を調べてみたのでありますけれども、アメリカあるいはスウェーデン等は非常に時間を長くとっておるようであります。詳細は省きますが、そういう意味で、諸外国でも相当時間をとっておりますし、私は、内容的にも非常に充実しておるということも聞いております。  そこで、諸外国のこのような例にならって、日本の場合でも字幕放送、この実施については私はぜひ拡大していただきたい。そういう意味でもう一度郵政大臣、御答弁をいただきたいと思います。
  229. 山内一郎

    ○山内国務大臣 字幕の多重放送、これは全般的に非常に重要な問題でございますので、極力いまやっているところでございますが、近く答申は得られると思いますけれども、その後においても、先ほど申し上げましたように受信装置の改造とかいろいろございますが、ひとつできるだけ早くできるようにさらにやってまいりたいと考えております。
  230. 長田武士

    長田委員 終わります。
  231. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 これにて長田君の質疑は終了いたしました。  次に、田島衞君。
  232. 田島衞

    田島委員 与えられた時間をできるだけ有効に使いまして、いま審議中の予算案の持つ性格内容が果たして国民のためのものであるかどうかの問題にうんとしぼりにしぼって尋ねたいと思いますが、そこで、政府側の答弁も、できるだけ勇気を持って、うそやごまかし、逃げの答弁じゃなしにお願いをしたいと思います。言うまでもないことでありますけれども、ここに立ってまじめな質問をする者の立場も、国民に対する真剣な義務、責任の遂行であり、同時に、それに対する答弁もまた、国民に対する重大な責任であると感ずるからであります。  そこで、大変お忙しい中を大ぜいの大臣の方々に御出席をいただいておりますので、質問の要旨の順序を変更して、予算と決算に関連してまず先にお伺いをしてみたいと思うのですが、この予算と決算との関係につきましては、先回の決算委員会の際に、総理並びに大蔵大臣に短い時間の中で御質問を申し上げました。決算というものの意義からいって、十分その結果が次の予算編成に生かされなければ意味がないと思うけれどもどうだ、それから、決算にあらわれたところの望ましからざる現象については、次の予算編成に生かせる時間的な余裕のある限りはそれが生かされなければいけない、こういうことを申し上げまして、それに対する総理並びに大蔵大臣のお答えは、要約すれば、そのとおりだ、極力努力をしたい、こういうお答えでありました。そこで、そのような角度からまず御質問を申し上げてみたいと思うわけであります。  五十四年度の決算に対する会計検査院の検査報告を見ますと、ざっとつかんだところで、不当事項で五十二年度が九十三件、六十四億五千三百万、五十三年度が百六十四件で四十五億五千六百万、五十四年度が百五十七件で二百三十億千四百万、計三百四十億二千三百万。なお、改善措置を要求された事項は、同じ三カ年で合計して四千二百八十九億一千四百万。大変多額に上っておるわけでありますけれども、この会計検査院によるところの検査というものは、検査院の報告の中の説明によれば、重要個所の検査対象に対する施行率三二%前後だという。要するに、三二%前後の重要個所の検査でこれだけの結果が出ているということになるわけでありますけれども、そういう不当事項の中で、特に架空名目による旅費、会議費、賃金、超勤等の支出状況は、五十二年度から五十四年度までの決算に見る限りでは毎年度やっている。このことからして、五十一年からはわかっていますけれども、五十一年以前については知る曲もありませんが、一体何年間続いてきたものか、まことに憂慮にたえないところがあるわけでありますけれども、この実態がもし明らかになれば、どれほどか予算編成に対する大きな示唆になるんじゃないだろうか、こういうふうに思うわけでありますけれども、とりあえず、このような五十四年度の決算に対する会計検査院の検査結果が本年度の予算編成にどのように生かされているか、どのように真剣にそれが取り上げられているか、まず、大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。
  233. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 簡潔に申し上げます。  かねてから、決算の結果は予算の編成に反映させるというお約束をしてきたわけでございまして、たとえて申し上げますと、この新年度予算に当たりましても、日本電信電話公社の超過勤務手当等につきましては、勤務の実績に応じ適正に支給することといたしてございます。その結果、五十五年度予算よりも百三十一億円の減額をして九百二十四億円を計上した。あるいは日本鉄建公団につきましても、五十五年度の認可予算からいわゆる空定員というものがございましたが、これらも調査の結果、削除をしたり、調査旅費の削減等も講じたわけでございます。例を挙げていくとたくさんございますが、大きな騒ぎになった問題について御回答いたしました。
  234. 田島衞

    田島委員 大蔵大臣のお答えによると、会計検査院の検査結果あらわれたところについては相当予算編成に考慮されたということでありますけれども、これはなかなかわれわれに着実に、確かにここでこのようにやっておるということをつかみにくいのですよね。やっていると言えば、なるほどそうかと聞かざるを得ませんけれども、実際にそれがそう簡単にできるはずでない性格を持っているだけに、的確にできていると言われると、何か信用できない感じがする。このことの性格の裏に隠されたものというのはそう単純なものじゃないと思うのです。要するに、ばっさり切って済むものではない。なかなか切れないはずのものが裏にあるはずだと思うのです。  仮に昭和五十六年度の一般会計歳入歳出予算経常部門の区分表を見ますと、歳出の中の一般経費、これが四兆二千三十三億ふえておるわけですね。明らかにふえると考えられるものは、先般公務員の給与改定がありましたから、この分がふえることはだれもがわかる。もちろん、それ以外にも物価値上がりだ何だかんだ言いますから、それに伴うところの増額ということも考えられないではありませんけれども、現実にこの数字を見ると、本当に切るものが切られておるのかなという疑いが大きく広がるわけですけれども、その点についてばっとわかるような解明はありますか。
  235. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 切るものは極力切ったり抑え込んだりしておるのですが、それ以上にふえるものもあるということも事実。補助金などでは全体的に見るとそういうことが言えます。  ただいま御指摘の点については事務当局から説明させます。
  236. 松下康雄

    松下政府委員 ただいま、一般会計予算経常部門におきまして四兆二千億の増加になっておるという御指摘がございました。この中で、実は一番大きな増加を示しておりますのは、地方交付税の一兆五千三百八十三億でございます。これに次ぎますものが国債費の一兆三千五百四十四億ということでございまして、その他のいわゆる一般的な歳出につきましては約一兆三千億の増加でございますけれども、これは昭和五十五年度予算の約一兆五千億の増加に比べまして、増加の額、それから増加の傘ともに相当の圧縮をいたした査定になっております。
  237. 田島衞

    田島委員 そのことについてはまた後で振り返って触れたいと思いますが、続いて、決算関係に関連して、まず防衛庁の長官にお尋ねをするわけですけれども、防衛庁も架空名目による旅費の支出が行われているわけですが、一体、何年ごろからどのような経緯で生まれて、それを許容した最高責任者はいかなる職責にある者なのか。言うならば制服さんなのか、制服でない方なのか。大変注目を浴びる防衛庁の中身だけに、できればはっきりとお答えをいただきたいと思います。
  238. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  自衛隊においてそのような指摘を受けたことはまことに遺憾でございます。指摘された直後、所要の改善指導を行ってきているところでありますが、この点、今後とも十分配意してまいる所存であります。  何年度であるか、どういう事情であったか、その点につきましては政府委員に詳しく御説明させていただきます。
  239. 吉野實

    ○吉野(實)政府委員 お答えをいたします。  昭和五十三年度の決算におきまして、航空自衛隊第一補給処におきまして架空の出張をいたしまして二百三十万ばかりの支払いを受けた、それを使いまして会食等部外との必要事項に使った、こういうことになっておりますが、われわれの方といたしましては、架空名目によって支払われた旅費については全額国庫に返納させまして、関係者十余名に対しましては戒告、訓戒等の処分を行ったわけであります。  また、こういうことが一切あってはいけないということでございますので、旅費の不正支出についてそういうことがないように、旅行命令権者を格上げしたりあるいは出張報告を提出させるということによってその防止に努めておりまして、昭和五十三年度以降はそういうことはないわけでございます。  なお、五十三年度以前にあったかどうかということでございますが、われわれの方としてはそれを承知しておらない実情でございます。
  240. 田島衞

    田島委員 そういうことは各自勝手にばらばらやるものじゃなくて、どこの段階がかからは、そういう操作をして黙認しようというふうにちゃんとあるものなんですね。そういうものがなくてやるわけがない。絶対にない。だから、それを許容した最高責任者というのは、立場上、一体だれなのか。さっきも聞いたのですけれども、お答えがない。それがまた、制服なのか、制服でない政府職員なのか、どっちなのかということと、五十年以前は知りませんと言うけれども、五十一年から出ておるということは、じゃ五十一年からだけ忽然としてそういう操作をするようになったということなのか、まことにおかしな話だと思うのですけれども、まず、最高責任者は一体だれなのか。それは制服なのか、政府職員なのか、どっちなのか、聞かしてください。
  241. 吉野實

    ○吉野(實)政府委員 お答えいたします。  先ほど申しましたように、空出張の行われましたのは航空自衛隊の補給処でございますので、補給処長つまり航空自衛隊の制服でございますが、処分を受けたということでございます。
  242. 田島衞

    田島委員 このことについても、ほかとも関連がありますから、防衛庁だけでやっていると時間がかかるので、次に、防衛庁の関係で、物件関係で改善を要求された点があります。  防衛庁の予算については大変論議をされるところでありますだけに、その防衛庁の物件の処理、増減の記帳その他について大変大量の金額にわたるところの不手際があったということは、まことに残念なことだと思いますが、当然それについては十分なる改善の措置が講ぜられておると思いますけれども、長官からお答えをいただきたいと思います。
  243. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  会計検査院の決算検査報告に掲記されました防衛庁関係の不当事項といたしましては、昭和五十三年度三件、昭和五十四年度二件ございました。その中で、航空機部品の調達に関し不要不急のものが一件ありましたが、指摘されました金額は約二千九百万円です。これにつきましては、すでに過大となりました調達分の調達を取りやめる等の措置を講じたところであります。  いずれにいたしましても、このような事案があったことはまことに遺憾に存じておる次第であります。従来から、物品の調達につきましてはその適正を図るべく指示してきたところでありますが、この点につきましては今後とも一層、十分配意してまいる所存でございます。
  244. 田島衞

    田島委員 その次に環境庁長官にお伺いをしたいと思うのですけれども、環境庁というのは、私が説明するまでもなく、大変きれいなものを求める役所であります。だからといって、いまの長官の責任でその時期にあったわけじゃありませんから、現長官にお尋ねするということはいささか気の毒とは思いますけれども、五十六年度の予算編成に携わったのはいまの長官ですから、そんな意味でお尋ねをしてみたいと思いますけれども、一体、環境庁における架空名目による旅費の支出はいつごろから始まったものだとお考えなのか、それから、それを調べてみたことがあるか。ただ、会計検査院の検査の結果を聞かされて、こういうことでは困りますよと言われただけなのか。みずから、環境庁のきのう、きょうについて調べ直されたかどうか、ちょっと聞かしてみてください。
  245. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡国務大臣 これは前の前、三代くらい前の長官のときのことでありますが、天下に周知のことでありましたので、私としてもずっと調べてみました。その結果、前々から、そういうことは、制度の中にも問題がいろいろあったのでしょう。しかしながら、何といっても申しわけないことであることには間違いないので、このことについては会計検査院の御指摘も受けたし、それから、それを受けるまでもなく反省しなければならぬことですし、具体的には、御指摘になった金額について全額国庫返済、これは当然のことです。それから、事務次官以下全部それぞれ減給、戒告、それから訓告十二名、厳重注意十二名なんというような処置を講じでございます。
  246. 田島衞

    田島委員 冒頭にお断りしてお願いしたのですけれども、私の聞くところはなかなか答えていただけないわけでありますけれども、もう事実にあらわれたことについては、お答えいただいたってしようがない。私の方もわかっているんだし、それから、それを全額返したとか返さぬとかという話も、そんなものも聞きたくもない、あたりまえの話。じゃ、わからなかったら返さなかったということになったらどうなんだということでありまして、それが発見されて指摘されたから返しましたといって、いかにも物事済んだような考え方を持たれること自体、大変迷惑だと思います。  そうじゃなくて、私がこの貴重な時間の質問を通じて知りたいのは、会計検査院の検査の結果発見された期間だけなのか、そうじゃないのじゃないか、もっと長い期間にわたってのことじゃないのかということと、それからまた、そういう事実が庁内の一部分のことなのか、それとも全般にわたることなのかどうなのか。これは聞かれる方はいやなことでしょうけれども、聞く方はこのことを一生懸命詰めなければならぬ。詰めるのは、別に責めるためじゃない。一体、財政再建再建と言っている以上は、やはり行政そのものの中にあるむだだとか、過ちだとか、不正だとか、そういうものをどうやってきれいに掃除していくかというのが一番最初にやらなければならぬ責任、それをやるための材料を一生懸命お互いに探しているのですから、協力をしてもらいたいと思うのです。  環境庁の場合は、全庁二十三課三室にわたって同じようなことがやられているということは、これはそれぞれの課と室で勝手に考え出して、おれのところでやってやろうかなといってやったんじゃない。必ずちゃんとそれについての申し合わせというか、協定というか、了解というか、こういう方法でこういうことをやることを黙認するという何かがあったはずだ。なくて、お役所でそういうことはあり得ません。私は地方議会の方が長いのですけれども、いままでの経験からいってもそんなことはない。そんなことを言っても通らない。一体、この二十三課三室に及ぶ、つまり企庁に及ぶ同じようなやり方、手法で架空名目による族費の支出をしていたということの背景は何なのか、何があったのか、どういう労使の協約があったのか、あるいはまた、どういう職責の者のそれを許容する通達があるいは言葉の上でかやったのか、それが知りたいわけです。長官、知らないのか、知っているのか、知っていたら答えてください。
  247. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡国務大臣 これは長い地方議会の経験のある田島さんもよく御承知のとおり、予算を編成する上において多少窮屈なところがあったりして、私は、会計検査院が指摘する前に全然なかったとは思わない。これは常識的に、その前からあったと思う。それから、全課を通じてそれぞれ工夫をしてやっていた、その工夫が無理な工夫であり、また正式にいけばいけない工夫であったということは、私、常識的にもわかることですし、多少調べたこともあります。ただ、これが会計検査院に指摘されれば、いまさらのようにこれはいけないことだということで、現在は全部直した、こういうことであります。
  248. 田島衞

    田島委員 大変率直な建設的なお答えで、その点では敬意を表します。私は、だからといって、別にそれに突っ込んでまた追いかけるなんということはしません、ただ知りたいだけですから。  そこで、大変敬意は表しますけれども、現下の国の財政事情、その財政事情の中でさなきだに税負担に苦しむ国民から、さらにまた税金を取り上げてでも財政を何とかしなければならぬという予算を組んでいる今日、会計検査院が検査の結果、指摘をしようとしまいと、もしそんなにおいがわかっておったら、みずからの自浄作用を発揮するのが環境庁じゃないでしょうかね。長官、どうでしょうか。
  249. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡国務大臣 それは環境庁のみならず、すべての役所がそうでなければならぬ。ただ、この際、非常に御勉強で、知りたいことだということで田島さん御熱心ですから、私、申し上げますが、役所はそれぞれむだなところもたくさんあると思います。それは極力直そうとしているのですが、これはちょっと無理じゃないかな、無理でも、いま一生懸命になって財政再建ということになっているんだからやらなければならぬと思いますが、それにしても、どこの会社だってどこの機関だってそんなことはないと思われるようなことが役所では行われていることもひとつ御認識をいただきたいと思いますので、ちょっと申し上げますが、鉄道運賃だって上がります。これはわれわれが決めて、皆さん方に決めていただいて上がるのですから仕方がない。旅館だってそうです。何でもそうですが、旅費なんというものは、値上がりは一つも勘定に入れてないのですよ、この三、四年。一銭も勘定に入れてない、値上がりは。物価の値上がりというものを一銭も勘定に入れてないでやっているんだから、ある意味から言えば、それは非常に苦しいことなんだということも御認識をいただきたいと思うわけであります。
  250. 田島衞

    田島委員 いま横道へあんまりそれているわけにいきませんけれども、同時にまた長官にも御認識いただきたいのは、物価が上がったからどうだからといって、黙っていてもちゃんと給料を上げてもらえる人たちはいいですよ。一般国民は、物価が上がろうと何がどうしようと、給料も旅費も別に上がりっこない、自分の汗で何とかしなければならぬ。そこらのところを考え違いないようにしていただきたいと思うのです。  さて、次に移ります。今度労働省。  労働省では、働かない者に賃金を払っちゃった。まことに労働省としては奇妙なことをやったわけでありますけれども、この労働省で行われた、働かない者に働いたことにして賃金を払った、一体この責任者はだれなのか。名前は言わぬでもいいですけれども、どういう職責にある者なのか、これを聞かしていただきたいと思います。
  251. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 責任者は私でございます。
  252. 田島衞

    田島委員 労働大臣みずから、働かない者に給料をやったのは私の責任だ、それで済むでしょうかな。この賃金の支給については、ただおもしろおかしく支給したんではない。ちゃんと出勤簿から何から全部づくり直して、作為して、言うならば公文書偽造だ。そこまでやって公金を、要するに国家の、国民の税金を、膏血を、働かない者に働いたことにしてそっぽに経理した。この責任が労働大臣みずからにあると言うのなら、それは私はちょっと引き下がるわけにいきませんな。余りなめた答弁しないでください。
  253. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 私は労働省の責任者でございますから、起こったことについてのあらゆる責任を私は負わなければならぬ、そういうことだと思います。ただし、いまあなたがおっしゃられたようなことは行政上に起こり得ることではありませんで、これは犯罪でございますから、そういったことにつきましてはその責任を糾弾をし、それを正すということもまた、私の責任でございます。
  254. 田島衞

    田島委員 男らしいことは結構ですけれども、男らしいことと間違いとは別でありまして、労働省でこのような架空名目による賃金の支払いがされたときには、大臣は、大臣をされておらないでしょう。何で責任があるのです。
  255. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 歴代労働大臣の責任といいますものは継承さるべきものでございます。でございますから、当然、私が着任以前に行われましたことにつきましても、それを正す責任、あるいは場合によればその責任をかぶる、そういう責任も私にあるということを申し上げて私は間違いではない、かように思うわけでございます。
  256. 田島衞

    田島委員 労働大臣は大変いきがっているようでありますが、それを別に私は聞こうとしているわけではないので、あくまでも聞きたいのは、一体どういう立場の人が指図をしてこういうことをやったのかということが聞きたいのです。その当時大臣でもなかった現大臣に、いや、おれが責任をとってやるよといって大変犠牲的精神を発揮していただこうと思って聞いているのじゃない。物事の筋と目的、趣旨を間違えないようにしていただきたいと思うのです。私が聞きたいのは、その当時、そのような望ましからざる経理をやった責任者は一体だれなのか。そのだれというのも、名前を言えと言っているんじゃない、どういう立場の人なのかということを聞いているわけですから、それをお答えいただきたいと思います。
  257. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 こういうことにつきましては官房長がよく承知いたしておると思いますから、官房長をして答弁をいたさせます。
  258. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 お答え申し上げます。  労働省の関係で、地方の基準局におきまして、ただいま御指摘のありましたような、臨時職員を雇用したような形で架空に賃金を支払いまして資金を捻出し、別途経理をいたしておりましたことはまことに遺憾なことでございまして、私どもといたしましては、そういうことが二度と発生しないようにということで、その後、関係者につきましては厳重に処分するとか、あるいは中には、深夜にわたるタクシー代等もそういう形で安易に支払っているような予算の支出の仕方もございますが、そういう公費と認められないようなものは弁済をするとか、あるいは、その後において絶対に起きないようにということで指示を徹底し、あるいは内部の監査を強化するというようなことをしてまいっておるわけでございまして、形式的といいますか、地方で行われた事実でございまして、そういうアルバイト職員を任用するとか等の責任は、地方の基準局長がいたしておるわけでございまして、そういうことを念頭に置きまして、関係の者につきましては厳重に処分をし、また、それ以後絶対にそういうことを起こさないということで強く指示をいたしたわけでございます。
  259. 田島衞

    田島委員 官房長ですか、いまお答えになったのは。官房長に答えさせなければわからないということについて、大体大臣が責任をとれっこない話であります。厳重に今後そのようなことの起こらないようにすると言うけれども、それがそう簡単にできるのなら前から起こらぬのですよ。そうじゃなくて、むしろ、そういう架空名目による旅費や会議費やらを支出するということが生まれてきた背景があるわけです。その背景の中には、やむを得ないなと人情的に言えば認められるようなこともあるはずなんです。たとえば、おえらい人は交際費を持っている、だけども中堅幹部は交際費のようなものを持っていない。いないけれども、一やはり幹部として、部下職員の冠婚葬祭だあるいは何だということの場合に、それらしいお金もかかる。そういう金をどっからどうひねり出す、それがいつの間にか知恵になってそういう方法もとり得る。私はそういうためだとは言いませんよ、手元を見ていないからわからない。だけども、往々にして、そういうやり方をする場合は、その背景にそういうこともあるのです。だから一面、やったことは確かに間違いだけれども、気の毒だなと思う面もなきにしもあらずなんです。だから、それはそれではっきり出したっていいじゃないですか。見つからなければ、そのまま公然と文書の帳簿類の改ざんまでやってそれを行う。見つかったら、とたんにそれを返して処分をする。まことにおかしなやり方だと思う。  そこで、今度は電電公社の方へ少し話を進めさせていただこうと思いますが、電電公社でももちろん、架空名目による旅費等の支出をやっておるわけでありますけれども、その電電の中でちょっとおもしろいものが顔を出している。それは何かというと、電電の不当事項の説明の中に、はしなくも、労使協定に基づく超勤の一律支給ということが出てきている。これは大変興味あることなんだけれども、一体、電電における超勤の一律支給についての労使協定というのは、どんな内容ですか。内容のざっとしたところをちょっと教えてください。
  260. 真藤恒

    ○真藤説明員 いまの御質問に対しまして事務当局から詳しく説明させたいと思います。
  261. 小澤春雄

    ○小澤説明員 お答え申し上げます。  ただいまの先生の労使関係という文言は、会計検査院の旅費の不正支出額の中にそういう公社からの説明もあった、そういうことで引用されておるわけでございますが、現在、私ども調べましたところでは、空出張あるいは空会議というものを計画して、その現金をプールして、それを労使の関係の手当に使ったという、そういう事実はございません。
  262. 田島衞

    田島委員 それをごまかしというのです。逃げというのです。私以上に知り過ぎているはずです。私らこそ一生懸命調べなければなかなかわからぬ。どだい、こういうものはなかなか表に出さないから。だけれども、一番よく知っているはずの者が何でうそを言う。会計検査院の電電公社についての報告の中で、「本院で検査したところ、労使協定による時間外手当の一律支給分が多額に上ったことなどのため、基準外給与のうちの超過勤務手当予算が」云々、こう出ているじゃないですか。じゃ、これは会計検査院の間違いですか。どっちが間違いなんだ。どっちかがうそをついているんじゃないか。
  263. 小澤春雄

    ○小澤説明員 お答え申し上げます。  電電公社の不正経理に三つございまして、第一が空出張、(田島委員「そんなこと聞いてない」と呼ぶ)先生おっしゃいましたのは、第三の、職員給与の決算処理が真実を欠いておった、この問題についてのただいまの御指摘でございますが、これは空出張、空超勤、空会議とは別の。決算処理に真実を欠いたというこの項でございますので
  264. 田島衞

    田島委員 そんなこと聞いてないですよ。だめですよ、そんな、ただ逃げとごまかしで答弁したんじゃ。聞いていることはそんなこと聞いてないじゃないですか。電電における超過勤務手当についての労使協定というのはどんなものだ、中身をざっと教えると言っている。ほかのことは教えないでいいから、それだけ教えなさいよ。
  265. 小澤春雄

    ○小澤説明員 ただいまの御指摘は、電電公社が全電通との間に支払ってまいりましたプラスアルファのことだと思います。これは、たとえば五十三年度は約一カ月、五十四年度は〇・五支払っております。
  266. 田島衞

    田島委員 あくまでもごまかしの答弁。  会計検査院の報告書の中に、五十四年三月の超過勤務手当実績分四十五億五千七百二万五千五百十二円、それに対して五十四年三月分の労使協定一律支給分五十九億六千百三十七万六千五百一円とあるじゃないですか。一律支給というのは何ですか、これは。超過勤務というのは一律支給するものかね。こういうことがあるのにはちゃんと労使協約とか協定とかというものがあるんですよ。超過勤務をやらなくてもやるように、つまり、超過勤務を実際にやっている者と、やりたくても仕事の関係上やれないんだ、おれたちだって超過勤務を欲しいんだという者が組合を通じて甘ったれる、そこで組合の力がだんだん強ければ、やむを得ぬから労使の協定を結んで、時間外勤務手当を、全然やらない者にもこの程度一律支給をしようという協定、協約というものが往々にしてできるのです。そんなことは知っているんです。だから、その内容はどういうことだと聞いているのです。
  267. 小澤春雄

    ○小澤説明員 御指摘のとおり、一律に、年に三回程度、時間を決めまして、トータルは先ほど申し上げた数字でございますが、労使話し合いの上、業務成果の向上に見合う手当、あるいは現場で行われます細かい超過勤務手当の一律支給というようなことで、帳簿には個々に載せずに一律に支給したということで、これは労使の協約に基づいたものでございますけれども、このやり方は手続上正しくないという検査院からの御注意もございましたので取りやめているところでございます。
  268. 田島衞

    田島委員 私の知る限り、検査院の報告では取りやめろといった報告もなければ、電電公社で取りやめますといった報告もない。でたらめな答弁をしなさんな。後で徹底的に調べますぞ。  そこで、大蔵大臣にお伺いをするわけです。大蔵大臣の所管だとは言いませんけれども、電電公社は省庁じゃないけれども政府関係機関一つであることは間違いない。そういう国の省庁なり政府関係機関のどこなりにある現象、事実というのは、絶対そこだけじゃないのですよ。私がこう言うと、わかっている者はうんうんとうなずくでしょうけれども、たとえば架空名目によるところの空出張、空超勤にしても、それから、いまの労使協約に基づくところの一律による超勤の手当支払いも、これは恐らく国の省庁全般に、そしてまた政府機関全般に、大なり小なりの違いはあるだろうけれども、存在すると私は見ているわけです。それを一度に直せとは言いませんけれども、そういう事実がもしあるとすれば、それで、財政が苦しいですよ、国民皆さん、もう少し税金出してくださいよと言うのはちょっと筋が通らないのじゃないかと思うのですけれども、大蔵大臣、どうでしょうかな。——大蔵大臣だめですか。
  269. 松下康雄

    松下政府委員 初めに、事実関係を申し上げます。  ただいまの、たとえば公社の予算の執行等につきましては、現在の制度上、それぞれの公社の長あるいは直接の監督官庁がその執行に関して責任をお持ちでございますので、私どもも個々の内容につきまして物を申し上げる立場ではございませんけれども、ただ、先生も御指摘がございましたように、ただいまの電電公社の場合あるいは他の鉄道建設公団の場合というように、たとえば超過勤務等につきまして本来の目的外の支出が行われていたというような事実を私どもが知りました場合には、それを次年度の予算査定に織り込みまして、それぞれの手当なり旅費なりというものの減額査定を行っているところでございます。  その他、一般につきましてなお類似のことがありますかどうかという点につきましては、私どももこれを明確に把握することができない立場でございますけれども、ただ、いずれも、そういうような事例も間々ございますところからも、また最近の非常に厳しい財源事情からいたしましても、一般の旅費、庁費等につきましては極力その増加を抑制するように努力をしているところでございまして、たとえば一般職の国家公務員の場合、通常、官庁が日常の業務をいたしますいわゆる経常事務費と言われる旅費、庁費につきましては、昭和五十二年度から昭和五十六年度まで毎年総額を抑えてまいりまして、物価の上昇分を内部で吸収するという努力を各省に求めているわけでございます。
  270. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいま主計局長が答弁したとおりでございます。
  271. 田島衞

    田島委員 大蔵大臣はまことにあっさりと答弁されておりますけれども、このことはなかなか重大な問題だと思うのです。しかも、重大だという意味は、二つ性格があるのです。これをこのまま放置することは国民に対する重大な背信行為だと思うのです。そのことが一つ。それからもう一つ、だからといって、これを直すのはそう簡単なことではない。相手、組合がありますから。行政改革も何もそうだけれども、一方に官僚の壁がある。一方に官公労の壁がある。こういう予算経理の中にある、予算執行の中にある。国民の立場からすればまことに迷惑千万というよりは腹が立つようなことでも、これをなくすることはなかなか大変なことです。大蔵大臣がただいま主計局長が答えたとおりなんという簡単なものじゃないと思うのですけれども、そんな簡単に直りますか。
  272. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 主計局長が言ったように、会計検査院その他の指摘で表にはっきりとわかりませんと、大蔵省は現場で一々検査するわけじゃないですから、大蔵省もわからぬわけです。しかしながら、それぞれの官庁に対しては、そういうことのないようにぜひともやってもらいたい、厳選して予算の要求をやってくれということは当然お願いはしてあるわけです。いま田島委員からお話があったように、たとえばやみ給与的なものは、これは長い間の慣行とかいろいろなことがあって、なかなか実際、表にでも出てこない限りは、本当に直すのは大変でしょう。しかし、われわれとしては、そういうことをなくするようにみんなで注意をしていかなければならぬ、そう思っているわけでございます。
  273. 田島衞

    田島委員 そこにもごまかしがあると思うのです。先ほど来、各省庁あるいは公社、公団について、一カ所だけでなく聞いてきたのですけれども、架空の名目によるところの旅費の支出ができたり会議費の支出ができたり、特に労使協約によるところの超過勤務手当の一律支給などということについては、その省庁、その部局、そういうところだけでは絶対できない。これは大蔵が必ず絡んでいる。主計局がちゃんと絡んでいなければ、そして暗黙の了解を与えていなければ絶対できない。絶対できませんよ。現に、さっき私も言ったとおり、電電における五十四年の三月分の超過勤務手当、実際の実績ですよ、実際に超過勤務をやった人の実績分が四十五億で、労使協約に基づくところの一律支給、つまりは超勤をやっていない者にも超勤手当をやっている、それが五十九億ですよ。実績以上にあるわけです。こんなことは、この電電なら電電だけで絶対できないです。またそれをやらせるようだったら、主計局、何を間抜けたことやっているのだということになる。そんなに主計局なんというものはなまやさしいものじゃないはずですよ。ちっとやそっとのごまかしならできる。だけれども、実際の超勤手当と同額以上のものを出すなどということは、これは主計局がちゃんと、主計局の局長がだれか知りませんよ、知りませんけれども、相当の権限あるところの者が内諾を与えてしなければできないことなんです。そう思いませんか、大蔵大臣。私は衆議院議員はまだ新米ですけれども、政治生活は長い。地方公共団体でも、特に東京都でいろいろなことを言ってきた。やみの給与、やみの手当、一切、片っ端からひんめくってきた。その経験から言っても、そんななまやさしいものではない。どう思いますか。
  274. 松下康雄

    松下政府委員 私どもも、政府関係機関の予算の執行あるいは決算につきしては直接の権限を持っておりませんので、予算要求に当たりまして、相手の各機関、各省庁の言われるところを十分に審議しながら査定をいたします。  そこで、ただいまの、たとえば超過勤務の予算でございますと、過去におきますところの実際の超過勤務の実績時間等、資料の提出を求めまして予算の査定を行ってまいるわけでございます。  本件の電電公社の場合につきましては、私も正確な計数は存じておりませんけれども、いわゆる超過勤務手当の支給の中に、やはり一部実際に超過勤務の実績がある。ただ、これが端数的なものでございますとか何かということで、一々精算をしないで一括精算をしたような面もあるようにも伺っております。そういう点につきましては、予算の査定上、当然予算計上の根拠となっていくべきものであろうと思っております。ただ、本件につきましては、それだけにとどまらないということを私どもも知ることができましたので、五十六年度予算におきまして適正な減額査定をいたした次第でございます。  私どもの努力のなお及ばないところもあるかと思いますけれども、予算査定の姿勢といたしましては、今後とも、あくまでもそのあたりにつきましては厳正な資料の提出を求めて、厳格な態度で予算査定をやってまいるように努めていきたいと思っております。
  275. 田島衞

    田島委員 局長は、減額というふうに簡単に言いますけれども、こういう種類のものはそう簡単に減額できないですよ。減額する前にやらなければならぬことがある。それは、一度結んだ協約を破棄しなければならない。それがされてないということはわかる。がたがたしてないからね。破棄するとなれば必ず組合が騒ぐわけ。騒いでないということは、まだそれがちゃんと生きているということです。生きていたら、とてもそれは局長、簡単に切れるものじゃないですよ。ふだんだったら、こんなきつい詰め方は私も言いません。だけれども、ことしの増税分だって大変だけれども政府・自民党はことしじゅうにじっくり用意をして、例の悪名高き一般消費税に名前とかっこうをちょっと変えたようなもので来年はどうでもやろうと考えているわけでしょう。自民党さんのためだって、そんなことをやったら大変だと思いませんか。何とかやらずに済むような方法を考えた方がいいじゃないか。だったら、これはやはり思い切って身内を削らなければだめだ。まず自分の身を削り、骨を削ることによって、その上で、国民皆さんよ、これだけやってみた、これは政府・自民党もそうだし、野党もそうだし、公務員もそうだ。公務員というのは全体の奉仕者ですからね、言うなれば小使なんだから。国民皆さんの負担の中で小使だけがぬくぬくとうまいことをやる、そんなことは許されない。これはそろそろ覚悟を決めて、それぞれの立場でみんなが協力し合い、勇気を持って改善をしていかなければだめだと思うから、いま聞いている。  私は、特別にどなたさんを責めて、だれに罪を着せようと考えているのじゃない。そんなけちな根性は持っていません。だから、もう一回聞きますけれども、労働協約、たとえば超勤一律支給、そういうものについて一カ所で出たというのは、国の省庁、政府機関のあらゆるところに全般的にあるはずなんです。望ましくありませんけれどもありますという、それぐらい、認めたらどうですか。  結局、そのことについて締めることのできる立場というのはやはり大蔵だと思いますから、私は、いますぐそれをどうこうしろとは言いません。そんなことを言ったって無理なのはよくわかりますから、だれがその立場になったってそう簡単にきれいに掃除のできるものじゃない。むしろ相手方が、そういう協約に基づいて超勤もやらぬで超勤手当をもらおうなどと考えている公務員と、その公務員のために一生懸命骨を折っておるかわからない労働組合が、勇気を持って考え直さなければならぬ問題です。だから、いますぐどうこうとは言わぬけれども、やはりそういう一律支給というような労働協約があることはある、それは望ましくない、それについては、何とか主計局としても、今後それぞれの省庁、関係機関等と相談をして、自粛してもらうようにがんばるとかなんとか、そのくらいの答弁はどうでしょうか。
  276. 松下康雄

    松下政府委員 ただいまの電電公社の超過勤務手当予算につきましては、私どもも、五十五年度予算に対しまして五十六年度は百三十一億円の減額査定をいたしたところでございますけれども、ただいま御指摘のありましたように、全般的な問題、執行の問題につきましては、予算査定を預かる者の立場として、各省各庁あるいは政府関係機関に対しまして、さらに厳正な姿勢でこれに当たっていただくように十分私どもから強い御要請をいたしますと同時に、それらの結果を踏まえながら今後の査定に当たってまいりたいと考えます。
  277. 田島衞

    田島委員 時間の関係で、そんなに長々と同じことを詰めているわけにいき出せんが、最終的に会計検査院の方から、この架空名目による旅費、会議等の支出の問題と、それからもう一方、労使の協約に基づくところの、それもまた架空の旅費あるいは超過勤務手当等の支出について、今後特に重点を置いて検査をしていただけるかどうか、それについてひとつお考えを聞かしていただきたいと思います。
  278. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  先生のおっしゃいました点につきましては、関心を持って今後も継続して検査をしてまいりたいというふうに考えております。
  279. 田島衞

    田島委員 それでは今度は、質問の要旨の一番最初の方へ戻りまして、いま審議中の予算については、大蔵大臣は財政再建元年予算だと言う。その財政再建をしなければならぬということの一番重点的なことは、大量の公債発行に依存しなければならぬ体質を変えなければならぬ、これは大事なことである、これはもうお互いに認識は同じだと思うのですけれども、その大量の公債発行の中でも一番改善されなければならぬもの、一番先にその依存度を落とさなければならぬものは特例公債だと思いますけれども、それについては、特にほかに御意見ありますか。
  280. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ありません。
  281. 田島衞

    田島委員 そうですか。それでは、そういう立場でひとつ聞かしていただきたいと思いますが、一体、現在のような財政事情の悪化、不健全化というものの要因、この要因については大蔵大臣は、第一次石油ショックがあってその後の経済危機があった、それに対する措置として大量の公債を発行をし、景気の回復と国民生活の安定のために世界でもまれな効果を上げた、こう、まことにみごとにうたいとげているわけですけれども、果たしてそうなのかどうか。私は、結論的に言うとそれはうそじゃないか、こう思うのですが、いまでも大蔵大臣、そう考えますか。
  282. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは物の見方でしょうが、石油のない国は、先進国はいまみんな二けたの物価高、失業者も日本の率で二倍から四倍ぐらい、そういうような状態の中ですから、私といたしましては、同じ条件、石油がない、しかも石油をたくさんに消費するというそれらの国と比べると、世界の人が認めているわけですから、私はそう言っても決して過言ではないと思っております。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  283. 田島衞

    田島委員 先ほど大蔵大臣と冒頭の一、二の質疑の中でも合意した、大量の公債発行に依存していることが一番困ること、その中でも特徴的なものは特例公債だということでは意見が一致したわけですけれども、特例公債というのは、これは私が言うまでもないことでありますけれども、特例という名前がついているゆえんがある。公債発行にはおのずから原則がある。その原則はわかりやすく言えば、その公債、借金をしてでもやっておくことが将来の国民のために役に立つ、したがって、その借金によってできたところのものによる恩恵を受ける者が、借金残しても了解してくれるだろうというような性格のものについてはこれを許す、これを四条公債と言うわけですな。建設公債とも言うわけです。言うなれば、社会資本の充足等に使うものならばいいよというのが公債発行の原則。その原則に違反して、やむを得ず、昭和四十年か何かに初めて発行した例を持つのが特例公債だと思いますけれども、それが今度は昭和五十年度に補正で始まって、毎年ずっとふえても減らない、なくならない。じゃ、その特例公債の中身というのは何ですか。経済危機に苦しむ国の景気回復のために役に立つものか、国民の生活安定に役に立つものか、どうでしょうか。
  284. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 質問の趣旨を私は的確につかんでいないかもしれませんが、要は、昭和四十八年を基準にしますと、当時、税収が十三兆、昭和五十五年が二十六兆、ですから約二倍です。しかしながら、国の支出の方はもっとそれよりも多くなった。その中で非常に大きな規模で伸びているのは、社会保障などというのは三・七、八倍になっているでしょう。公共事業が二・五倍ぐらいですか、文教もはるかに大きい伸びです。したがって、税収の伸び率以上に伸びている予算項目については、税収の中で賄い切れなかったわけですから、そういうものが結局借金になった、こういうふうに見ておるわけでございます。
  285. 田島衞

    田島委員 昭和四十年に初めて特例公債というものが発行された。その昭和四十年の特例公債の発行そのものが果たして財政上正しかったのかどうなのか、法的に言っても許容されてしかるべきだったのかどうだったのか、問題があると思いますけれども、その昭和四十年のたった一回の例外が一つの実績になって、昭和五十年に特例公債を発行することになった。その昭和五十年に特例公債が発行されて後、翌五十一年度の税収実績、租税収入というものは、もう石油ショック以前の昭和四十九年度並みに戻っているのですよ。戻っているということは、大体同額程度になっているということですけれども昭和四十八年に第一次石油ショックがあった。それでも昭和四十九年度は、四十八年度より租税は伸びておったわけですけれども、その四十九年を頂点に一して落ち込んできたわけですが、五十年一年だけで、翌五十一年にはもうすでに四十九年度並みに租税収入は復活をしている。白米、五十二年度、五十三年度と逐次、そう高度経済成長時代のようなわけにはいかぬけれども、徐々に着実に租税収入は復活しているはずです。  だから、本来は、五十年は特例公債の発行はやむを得ないけれども、五十一年からはむしろ抑えるべきだった。借金というのはなかなか気が楽なものですから、返すときのことを考えない。借りて使えばなかなか楽で調子がいいものだから、ついつい、五十年に発行して、それ以来、五十一年、二年、三年、四年とずっと続けて、額をふやしても減らさない。やめもしなかった。だけれども、特別公債で充てるべきものは経常経費であって、決して景気刺激策のものでもなければ、直接国民生活に刺激を与えるものでもない。むしろ、どちらかというと、人件費を初めその他の一般経常経費、その足りないところに充てるためにやむを得ず発行した。やむを得ず発行して、楽なものだから、そのままずっと発行し続けたというのが現実の姿だと思う。  そうしてみると、特例公債の発行を中心とする大量の公債発行が財政悪化の一番大きな中身、要因であるということになるとすると、その責任を国民の負担に求めるということ自体、筋違いじゃないでしょうかな。大蔵大臣の財政演説によると、大量の公債発行は困ったことだ、それに依存することは困ったことだ、そして大量の公債発行は、第一次石油ショック後の経済危機に苦しむ日本の景気を直し、国民生活を安定させるために、世界でもまれに見る成功をおさめた、大変効果があった、こう言っているのですけれども、実際には、国民一般には直接には何の恩恵も与えていない。間接的にもほとんど恩恵を与えていない。  しかも、その特例公債の発行は、国民が、洋々たる国民の声として、政府は何をやっておる、建設公債だけじゃ間に合わぬ、四条だけじゃなくて、こういうときにこそ特例公債でも発行しろという声を上げたかというと、そんな声は上げていない。この特例公債の発行を決めたのは政府・自民党であり、同時にまた、それを認めた野党を含めた議会だと思うのですよ、国民じゃないと思う。その点はどうでしょうか。
  286. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 議論のあるところでしょうがね。たとえば昭和四十八年には、老齢福祉年金一つとってみても、これは月五千円でした。五十五年度では二万二千五百円ですから、四・五倍になっていますね。それで一兆数千億という金になっておる。厚生年金をとっても、昭和四十八年当時は月二万二千円だった。それの約二〇%を補助するわけですから。それがもう五十五年度は十万円の年金になっておる。これも四・五倍。これは例示的に申しているのですよ。学校についても同じことが言えます。  したがって、年金を減らしなさい、抑えなさい、収入がないのだから、物価が上がっても税金が入ってくるまではがまんしなさいという声はないのですね。やはり年金は上げろ、それから医療費をもっと無料化にしろ、こういうようなことをやってきた。その要求の方が強かったということですよ。そうすると、税金では貯えない。やはりいままでの高度経済成長の惰性もあって、そこで結局、そういう要求を抑えていくよりも借金をすることの方へ安易に流れやすいということは言えるのじゃないか。私の財政演説の中にもちゃんとそれは書いてあります。したがって、それは決して国民のためにならなかったというようには、私は一概に言い切れないのじゃないかとも思っております。
  287. 田島衞

    田島委員 大蔵大臣の言われていることも、私もよくわかっているのです。それは私は否定していない。特例公債というものは、社会保障費的なものだとか、要するに福祉関係、それから人件費等の経常経費、こういうものに充てられるからこそ特例公債というのですから、その特例公債を発行せざるを得ない、そして、一回発行したものをやめないで、どうしても引き続き額をふやしながら発行せざるを得なかったということについては、これはもう政府・自民党だけの責任ではないと思いますよ。さっきも言ったとおり議会の責任もある、野党の責任もある。その因をつくった中には、野党の責任も決して否定できないと思います。むしろ、与野党を問わず政治家が、議員が選挙を考えるのはやむを得ぬけれども、年じゅう頭に選挙があるものだから、どうしても人気取り、迎合的な政策をとりがちで、競ってそれをとる。これは与野党を問わず各党ね。そういう姿勢が特例公債の発行を促し、促したものをやめさせずに、どんどんまたそれを継続さしていった。これはそう考えていいと思うのです。  私は、それについては同感だと思うのですけれども、問題は、それだからこそ間接的には、それはそれらの政治家を動かした国民にも多少責任があり、恩恵が与えられたと言うかもしれぬが、直接国民は、そんなことをしたらこういうことになるなんてわかりませんよ。ただ、欲しいものを欲しいと率直に言うだけです。言ったら、そのために政府は、本当は発行しちゃまずい特例公債まで発行しなければならないのだ、一回発行した特例公債はやめるわけにいかないで、次々にふやしていかなければならないのだなんということを国民はわかっていて、それでも出せと言ったのじゃないと思いますよ。ただ素直に、欲しいものを欲しいと言っただけです。途中で、それはわかります。わかるけれども、それを皆さんの希望どおりやったらこうこうこうなってこうなるから、そこは少しがまんしてくださいと言わなければならぬのが政治であり、行政であるはずなんです。それを怠ったところに政治と行政の責任があって、国民の責任はない、こう私は言いたいのですけれども、どうでしょうかな、大蔵大臣。
  288. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 そういう言い方もあるでしょう。
  289. 田島衞

    田島委員 言い方もあるじゃなくて、そういうことも考えられるという答弁ができませんかな。
  290. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは、だれに責任があるかという話になってまいりましても、そういう風潮であったことは間違いないのですよ。ですから、現在ですら、五十六年度予算ですら、四十八年から比べると税収は二・四倍ですね。しかし、社会保障関係費は二兆円から八兆八千億円になっていますからね、これは四倍になっているわけです。(田島委員「どっちを見て答えているのですか」と呼ぶ)いやいや、あなたの方を見ているのですよ。それから、公共事業が二・六倍、文教と科学振興費が二・九倍、防衛関係費が二・五倍、消費者物価は一・八倍、こういうふうな状態なんです。ですから私は、これからはそういうふうに、借金をふやしてこれらのものを賄うというわけにはいきませんから、ともかく、どんどんそいつをふやせと言うのならば、これは御負担もいただきますよということを言わざるを得ないわけですね、何らかの負担がなければできないわけですから。財源がなくて、それで支出をしろと言っても不可能なんですから、どちらにするかという問題だと思います。
  291. 田島衞

    田島委員 大蔵大臣の言っていることは、私もそれはちゃんと認めているのですよ。別に反対の意見を言っているわけじゃない。今日の財政事情を招いたのは国民に責任はないじゃないかということを私は言っているので、政府・自民党だけの責任だと言っていませんよ。さっきから言っているとおり、与野党を問わず政治の責任、議会の責任、これは間違いないと思う。いまの政治の姿勢、要すれば選挙ばかり考えなければならぬような姿勢そのものにもあるだろうと思いますけれども。  ただ、そこで、一軒のうちだって、たとえばおやじさんにしても奥さんにしても、子供たちが何欲しい、かに欲しいと言う、だからといって、ちゃんとうちの経済というものを考えて、じゃ借金してでもこれを買ってやるよ、お小遣い上げてやるよとは言いませんよ。もっと賢明に処置をする。おまえたちの言うことはよくわかる、だけれども、お父さんの給料はこれだけ、その中でも家庭の生活費がこれだけかかるのだから、そこはがまんをしてくれ、こういうことをちゃんとやりますよ。いわんや、一億一千万の国民の台所を預かっている政府・自民党ですから、そういう要求が強いからしようがない、それにこたえたんだからそうなっちゃったんだでは、少し無能過ぎるのじゃないか、勇気がなさ過ぎるのじゃないか。  それは幾ら野党の反発があろうといったって、野党の議員さんだって、ないものはない、ないそでは振れないということはわかるはずですよ。だから、そういう点はよくわかるけれども、これはこの程度でがまんしていただかないと、こうなってああなってこうなると、そういうことで多少は善意の大激論でもして抑えるところは抑える。そうしなかったらだめじゃないですか。でなかったら、一般家庭のお父さん、お母さんにも負けちゃうじゃないですか。大蔵大臣、どうですか。
  292. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 全く仰せのとおりだと私も思います。ですから、これは法律論から言えば、政府に責任がありましたと言っても何ら差し支えないことですからね。実際はそういうことでいろいろな、医療とか福祉とか文教とかその他全部恩恵は受けているのだが、おれの知らない間に借金をして、勝手にいまごろ借金があると言われたって困るという反発のあることも事実なんですよ。だけれども、それはこういう内容ですということで去年から財政再建のためのキャンペーンというのを張っているということは、やはり政府国民と一体ですよということを知っていただくためにやっておるわけで、もっと早くやればよかったと言われれば、そのとおりだと思っています。
  293. 田島衞

    田島委員 そこで、もうそろそろ時間が少なくなってきましたけれども、いままで何のために私がいろいろ下手なお話をしてきたかというと、いまの財政事情の悪化した要因というものは一体どこにあったのか。一体、国民にも責任をしょってもらう要因があるのか、そうじゃないのじゃないか。国民皆さんにはできるだけ負担をしょわせずに、むしろ政府が、そして政治が、きりきりいっぱい自分の身を削り骨を削るような努力をすることによって、国民の負担に肩がわりをさせるような財政再建を避けるべきじゃないか。そのためにそのことを取り上げ、それからまた、現在の行財政の中にある、当然これは直さなければまずいじゃないかという点を取り上げ、それらの要因から考えていった場合に、もっとわれわれのみずからの努力、身を切るような努力、その中には欲しいものもがまんしなければならぬ努力もあるでしょうけれども、そういうことを追求していくことにわれわれみんなの目が向き、勇気が決まればそれなりの前進があるだろう、こういうふうに思うわけです。  細かいことを言うようですけれども、たとえば、この予算委員会の会議時間をできるだけ縮小することもそうだろうし、貴重な時間をできるだけ貴重に使うこと。しかし、それもまた考えようによると悪くも考えられるので、予算審議をときどきやめちゃって、それで予算の審議の時間を少なくしちゃって、田島衞なんかに余り時間をやらないで、それで土壇場へ行って多数決で、自民党の横暴か何かの声の中ではっと決めちゃおう、実質審議の時間を少なくしちゃおうなんて考えてやっているのだったら、これはまた、まことにけしからぬ話でありますけれども、そうでない限りは極力われわれ自体が、政府自体が、そして公務員自体が、自分の身を削るような痛い思いをしなければ、国民皆さんに顔向けができぬと思う。そういうことをやりながら、しかもなお、この予算の中にあるところの国民の税負担ということについてできるだけ慎重な考慮を払う、これが一番大事なことだと思うのですよ。  少しくどいようですけれども、何人にも責任のないところへ義務をしょわされるのは望ましいことではない。一般国民皆さんにしてみれば、国は財政事情が悪くなった悪くなったと言う、だから何とかしなければならぬならぬと言うけれども、何かおれたちが悪いことでもしたのかなと首をかしげていると思うのですよ。  現実、先ほど来の応答の中でも、本当に責任をしょわなければならぬ者というのは国民以外の立場だろうと思うので、その立場での最善の努力をせずして国民の負担に肩がわりするということは、どんなことがあっても許されてはならない。このことを真剣に考えれば、きょうの冒頭取り上げた決算にあらわれたところの事項についての質疑応答の中に出てくるような、私の立場から言えばまことにふまじめというか、勇気のないというか、誠意がないというか、そういう答弁は出てこないはずだと思う。人間ですからだれだって間違いはある、失敗もある。だけれども、それは直すことによってまた新しい道が開けるわけです。  きょうの時間の中では、そう多くを取り上げることができませんでしたけれども、われわれですらわからない、いわんや一般国民は全然わからないところで、労使の協約によるところの、それが表へ出て一般の日に触れたら、何でこんなことをという批判を受けるであろうところの事実が、まだたくさんあるわけです。絶対にある。これだけは、だれが何と言おうと、私は絶対あると主張して譲りません。だけれども、それも調べられてわかったからこうだとかどうだじゃなくて、知っている者はみずからの自浄作用によってもうそろそろ自粛をして、一体どっちが主人公でどっちが奉仕者なのかということを明らかにする必要があるだろうと思うのです。そこらのところを考え、今度の予算を考えてみますと、軽々に賛成いたしかねるような内容を含むものだと思うのです。  ただし、たとえその要因が那辺にあれ、特例公債をこのままにしておいてはそれはもう先が大変心配ですから、その特例公債の発行を少しでも依存度を抑えるために努力をする姿勢については、全面的に賛成をいたしますし、また、そのための協力もいたしたいと思いますけれども、その要因からするところの責任感の追及が十分でなしに、責任のない国民に負担の肩がわりをさせようという考え方と、いまなお行政の万般の中にあるところの甘えというか、勇気のない、誇りのないもののやり方、考え方というものがそのまま存在するということについては、断じて許しがたいという気持ちを率直に表現して、まだ少し時間がありますけれども、私の質問を終わりたいと思います。
  294. 小山長規

    小山委員長 これにて田島君の質疑は終了しました。  次に、米沢隆君。
  295. 米沢隆

    米沢委員 遅くまで大変御苦労さまです。  冒頭、本当ならば高齢化社会の問題と年金の危機について御質問をさせていただく予定でありますが、さきの予算委員会におきまして同僚の小渕議員が提起いたしました、いわゆる国鉄が組合に合理化協力を取りつけるために現在係争中の二百二億円損害賠償請求訴訟の引き延ばしに応ずるという取引が行われたのではないか、こういう問題提起に対しまして、国鉄総裁は取引の事実を否定されましたが、私どものその後の調査では、事実、取引がなされているのは明らかであるという結論に至りましたので、若干時間を割いて、この問題から質疑に入りたいと思います。  さて、さきの小渕質問に対しまして、高木総裁は、一つ、合理化と二百二億円損害賠償裁判は別問題として考えており、サンケイ新聞の報道には事実に反するものがある、取引はしてない、二つ目には、小渕氏が取り上げました当局との交渉内容、すなわち、国鉄当局の妥協とも言える裁判引き延ばしにもなる運行可能論を受けて立つという内容が記された国労の資料は組合の内部資料で、われわれの承知するところではない、三つ目、国労の資料は当局側に届けられるものではない、その資料に事実に反することが書いてあっても取り消しを要請することは考えていないし、組合の内部事情について取り消すつもりはない、こう答弁をなさいました。しかし、この十三日のトップ会談をきっかけにいたしまして、当局の裁判に取り組む姿勢、すなわち訴訟技術が百八十度変わったことは事実であります。  そこで、再度お尋ねをいたしますが、この十三日のトップ会談で、組合が法廷で主張している運行可能論について訴訟技術上争うことにした、したがって、早期結審にはならないし、係争期間中といえども従来の労使関係を重視したい旨の発言があったことは、事実としてお認めになりますか。
  296. 高木文雄

    ○高木説明員 十三日に国労の委員長あるいは書記長と話し合いをしたことは事実でございます。その話し合いの内容は何かと申しますと、現在、私どもは成田へ油を今後も引き続いて送るように、本来、三月の初めで三年間の燃料輸送は終わるはずであったわけでございますけれども、パイプラインができないから引き続いて送るようにということを政府から御要請がございますので、私どもとしても、これは非常に重要な問題であるから、なかなか骨の折れる仕事ではございますけれども引き続いてお引き受けいたしましょうということで、ついては、労働組合との間で、私としても引き受けざるを得ないと考えるからひとつ頼むということを話した、そういう席でございます。  その際に、ところで、かねがねの問題があって損害賠償請求について労使間で争いになっておるが、そういう問題はそのままにしておいて、あれも協力せい、これも協力せいと言われるのは困るではないかという話が、これはいつも出る話でございます、今回に限りません、交渉といいますか、会っていろいろ話をするときにいつも出る話でございますが、出ました。それは、もうすでにあの問題は訴訟になっておることでもあるし、いろいろ国労側の要望事項があることは前々から知っておるけれども、それとこれとは別の話であっていかんともしがたいということを申したわけでございます。  それに関連して、例の運行可能論について訴訟上どういう扱いになっていくかということでございますので、これはもう従来どおり、運行可能論は、当然、それを認めたのでは私の方が訴訟で負けになりますから、私どもが別に運行が可能であるのに汽車を走らせなかったわけではないわけでございまして、やはり私どもは、組合のスト行為によってあのときは車がとまったというふうに考えておりますので、組合の主張する運行可能論についてはあくまで反論をして法廷で争いますよということを申したわけでございまして、組合の主張します運行可能論については、終始一貫、われわれとしては、いや、ああいう事態では運行ができない事態になるのであって、運行可能論に同調するわけにいかない、それでは私どもが損害賠償を請求した理由が成り立たないということで言っておるわけでございます。  そのことについていろいろ、私どもの考え方がふらふらしているというか、時折変わっているというか、そういう理解が組合の中に一部あることは事実でございますけれども、私の方は、終始一貫して、その点については変わっていないということで、その点は前回、他の委員のお尋ねに対して御答弁申し上げたとおりでございます。
  297. 米沢隆

    米沢委員 総裁は、今回もまた、そういうことを否定なさいますけれども、それならば、われわれが入手しております「総裁交渉の経緯と当面の行動について」というこの国労の文書は、全くでたらめが書いてあるというふうにきめつけられておるのですか。実際はこういう交渉が行われて、すでにもう、あしたかあさってぐらいに調印をするものがあったにもかかわらず、こういうものが出たものだからちょっと荒れておる、下部からの突き上げもある、こんな話を聞いていますよ。それならば、この資料はあなたの全然かかわり知らないことであるから、国労が何と書こうとそんなのはうそである、そうおっしゃるのですか。
  298. 高木文雄

    ○高木説明員 うそとかなんとかいうことは私、よくわかりません。ただ、それはその後、私も見せられましたけれども、それはいずれにしても国労の内部で会議をするときの資料でありまして、そのことをどういうふうに組合の方で取り上げようと、それは私どもの干渉する限りではないという意味でございます。
  299. 米沢隆

    米沢委員 もしこれが、皆さんが行った交渉の経緯を全然伝えていないとするならば、少なくともここに書かれている問題については、国鉄の方もみんなそれは見たわけですし、知っているわけでありますから、もしこれが事実に反するとするならば、この事実に反したようなことを前提にしてあちらが運動論を加えてくるならば、それはこちらの方としても対抗せざるを得ないでしょう。この交渉経過の内容は間違いであると、少なくとも一言ぐらい抗議するのが筋じゃありませんか。
  300. 高木文雄

    ○高木説明員 そういう資料が組合の中の資料としてあることはその後聞きましたけれども、あくまでこれは組合の中の資料でございますので、これに抗議するとか抗議しないとかいうのは筋違いじゃないかというふうに思います。
  301. 米沢隆

    米沢委員 しかしながら、たとえば、一般的にはこの文書は広がっておりませんけれども、実際ここに入手しました国労の新聞なんかには、あなたが写真入りで入っておるんだよ。そしてちゃんと、当局は、「組合が法廷で主張している運行可能論について争うことにする。したがって早期結審とはならない」と答えた、こう書いて、全国の国労の組合員に配られているんですよ。こういうことが書いてあるにもかかわらず、総裁はそれを否定されて、実際はこういうことで彼らは運動論を掲げてくるでしょう、全然筋が合わないじゃありませんか。  たとえば、総裁も御承知のとおり、職員局の労働課がつくっております「労働速報」というのがありますね。これの五十六年二月十七日十八時発行のものには、ちゃんとこの国労の資料そのままが書いてあるのですよ。十七日には、もうすでに当局はこの文書を見ておるのですよ。二言一句変わらず書いてあるのです。実際は、国労の資料によります微妙な言い回しまでそっくり書いてあるんだから、当局の人がこの文書を読んだことはあたりまえの話ですよ。それを読んだ人がこの部分だけとって書いたわけではない。流れをみんな読まれたはずですよ。読まれて、どうもあの交渉のときと全然違ったようなことが書いてあるというならば、普通ならば抗議をするんじゃないですか。それが何もなされていない。それは事実以外ないじゃないか。
  302. 高木文雄

    ○高木説明員 国労の新聞に出ているということになりますと、これは公式なものになってまいりますから、私どもとしても考えなければいけないわけでございますが、新聞に出ておるというのでございましたらちょっとお見せいただきたいと思います。この文についてはもう少しよく、私いま初めて見ましたので、これにどう処理するか考えます。
  303. 米沢隆

    米沢委員 いま総裁も確認していただきましたように、事実はどうもそういう取引があった。現に、先ほどから申しておりますように、この「労働速報」に国労の文書と全く同じ内容が載っており、番号まで一緒なんだ。そして、「現在交渉中の合理化問題については、大衆行動を中心に闘い、要求の前進度合いの中で判断する」というきわめて微妙な国労の言い回しの表現について、一言一句に至るまで同じ表現で記載されておるわけです。となりますと、いま総裁は新聞を見てびっくりされておりますけれども、実際はそういう話し合いが行われた。ひょっとしたら、あなたがいなかったのかもしれない。それだけのことになるのですよ。  よく当局は、合理化の問題とこの訴訟の問題は別問題だ、こういうふうに強弁されておりますけれども、実際は国労そのものは、運動論の一つとして、一体の問題として運動を進めるということもおわかりでしょう。交渉される中においても、合理化問題を提案されると、そんな合理化ばかりさせられてはかなわぬ、われわれの言うことも聞いてくれと常に言われていると、いま言われたじゃないですか。  そういう意味では、結果的にこのような会合の中で取引が行われたと思わざるを得ないのでございます。ひょっとしたら、これもいろいろな情報を聞いてみますと、さもありなんという気もするわけでありますが、確かに、トップ会談が開かれて写真が撮られるときまでは、あなたはそこにおられた。そしてその際、総裁が合理化問題と訴訟の問題は別でございますとおっしゃったことまでわかった。その後に問題が皆始まったんだ。あなたが何らかの形で退室されるか、それとも総裁がいない間の、鬼のいない間の洗たくだ。そこで、トップ会談ではなくて準トップ会談が開かれてこういう話し合いができて、そしてこの文書は総裁も読んでわかっておるということにしようではないかと、舞台がセットされたんだ。完全に総裁抜きでこんな交渉が行われておる。あなたは御存じないのですか。
  304. 高木文雄

    ○高木説明員 どうも、私のおりませんところで何があったか、こう言われても、ちょっと御返事しようがないわけでございます。
  305. 米沢隆

    米沢委員 しかし、総裁はそれを知らないと言うが、国労の資料の中でちゃんと、こういうことが決まりましたと書いてある。そして、現に乗務員の合理化の問題も、これとの差しかえで調印する予定じゃなかったんじゃないですか、この二、三日のうちに。それが下部の方から取引はけしからぬと怒られて、いま、もたもたしておるのでしょう。そんな事情もわからないのですか、総裁は。
  306. 高木文雄

    ○高木説明員 乗務員の乗務効率の問題というのは、昨年の秋ぐらいからずっと引き続いて交渉いたしております。何とか本年度中には了解を取りつけたいと思いますが、組合側の問題としてはかなり大きな問題でございますので、なかなか了解がつかないということでございますが、それは私どもとしては、別にこの訴訟の問題とは関係ない問題として解決するつもりでございます。
  307. 米沢隆

    米沢委員 あくまでも総裁自身が知らない。知らないから、ああいうふうな答えをせざるを得ない、よくその苦衷はわかりますよ。しかし、現実にはこういう交渉が行われて、すでに事態は進展しているのですよ。あなたと一緒に来ておる常務だとか局長、みんな知っておるはずですよ。いま聞いてください。吉井常務理事、おられたら答弁してもらいたい。うそを言ったらいかぬよ。
  308. 高木文雄

    ○高木説明員 先般来、この委員会におきましてもそういうお話が出ておりますので、私もその辺のことについては担当者に事情を聞いております。聞いておりますが、いずれの意味においても、私が二百二億の訴訟問題ともろもろの合理化案件とは全く別の問題であるということで対処しておることは、うちの職員はみんな知っておりますから、いずれにしましても、いろいろなことがあったかもしれませんけれども、その二つの事柄を結びつけて取引をするというようなことはあり得ないことだというふうに確信をしておりますし、私どもが聞きましても、そういう取引をしたというようなばかなことはしておりませんということになっております。
  309. 米沢隆

    米沢委員 それならば再度確認しますけれども、この訴訟については早期結審という従来の方針から方向転換は行わないつもりであるということでいいですね。
  310. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもの理解では、過去におきましても、それを早期結審ということに持っていこうとしたことはないわけでございまして、弁護士さんの、両訴訟当事者の間の、いろいろな法廷外におけるやりとりにおいていろいろなことがあったということはありますけれども、そうだからといって、私どもとしては、去年の時点におきましても、特に何か訴訟を早く解決しようということをしたことはないわけでございます。
  311. 米沢隆

    米沢委員 とぼけた答弁をするといけませんよ。裁判しておって、早期結審はいやだ、早期結審は反対だ、そんなばかな話があるか。あなた方が訴訟したのだろう。訴訟しておって、いつまでも裁判をやってください、百年裁判でも結構ですと言うんですか。いまの話は取り消しなさい。
  312. 高木文雄

    ○高木説明員 訴訟を一日も早く決着をつけたいという考えには変わりございません。終始一貫してそれは変わりございません。ただし、訴訟でございますから、必要にして十分なる主張なり証拠調べなり、そういうことは行われざるを得ないということでございます。
  313. 米沢隆

    米沢委員 これ以上詰めても話はそう詰まらないと思いますが、この問題は、総裁が知らないうちにこういう密約が取り交わされておる、この事実だけは絶対に正しいと私は思うのだ。しかし、この席で総裁はそれをあくまでも否定されるわけでありますから、運輸大臣、私は、本当に詳細に調査をしてもらいたい。いま国鉄再建というものが大きな問題になり、国民がみんな注視の中で、ローカル線をつぶしてまで国鉄再建をしようなんということをみんなが大わらわで議論しておる最中に、この裁判に負けるとかなわぬ、引き延ばした方がいいというような労働組合の戦術に乗って、それに妥協して取引をしようなんというのは絶対に許せない。そういう意味で、総裁との話は水かけ論になると思いますが、この事実関係を運輸大臣の責任においてぜひ調査をしていただき、この予算委員会に調査の結果も教えてもらいたいし、断固とした処置をとってもらいたい。約束できますか。
  314. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 仰せのように、国鉄の再建というのは、ただ単に地方のローカル線の撤去だけでできるものではございません。これも重要な一つの合理化の方針でございますが、しかし、根本的にはやはり労使が一体となって再建への意欲を燃やすということでございまして、そのためには、従来からのいろいろな労働慣行等、見直さなければならぬ点は多々あると思っております。  この二百二億の訴訟の案件につきまして、先日、当委員会におきまして質疑がございまして、その後、私は総裁並びに担当常務理事に聞きました。しかし、先ほど総裁が言っておりますように、一つ私が確認できましたことは、合理化と訴訟とは関係ないという一点を国鉄は強く主張いたしております。そうであるとするならば、運輸省といたしましては、その国鉄の基本方針をあくまでも貫徹さすことがわれわれの監督指導の道だと思っております。  それから、この訴訟につきまして、労使がこうして訴訟しておるということにつきましては、私たちは重大な関心を持っております。できるだけ早くこの訴訟問題の決着がつき、そして新しい労働慣行が生まれ、そして労使一体となって再建へ取り組んでくれることをこいねがっておる次第です。
  315. 米沢隆

    米沢委員 いまの大臣の答弁は非常に不満ですね。先ほどから聞いていただいておわかりのとおり、総裁は知らない、私は合理化の協力の取りつけと裁判は全然関係ないと見ておるとおっしゃっておるのです。ところが、すでに実際はそういう話し合いが行われて、今度は国鉄の方は運行可能論を受けて立ちそうだ、したがって裁判は長くなるから、その間いろいろと論議をしようというところまで、組合の方は走っておるのですよ。あなたは、総裁がそんなことはしていません、それだけを信じて、具体的な調査は何にもしてないじゃないですか。そして結果だけ、もう調査もしない、こんなふしだらなことをしたら、いつまでたっても国鉄再建なんかできませんよ。もう一回、答弁し直してもらいたい。
  316. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほども言っておりますように、訴訟問題と合理化とは取引をしないということを総裁が言っておる、それをわれわれが監視、監督し、その方針を貫かすということが運輸省としての責務であろうと思います。それが、具体的にこういう取引をしたという証拠があるならば、おっしゃっていただいたら結構だと思います。
  317. 米沢隆

    米沢委員 先ほどから証拠をしゃべっておるじゃないですか。そのことを調べると言っておるのだ。
  318. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 まだ現在におきまして、合理化問題というものはいろいろな問題がございまして、それは総括的にいろいろ問題として話し合っております。でございますから、その訴訟問題と具体的に何が取引されたのか、私はお聞かせいただきたいと思うのです。
  319. 米沢隆

    米沢委員 具体的には乗務員の問題だ。約三千人ぐらい合理化されるのだそうですけれども、当局の中にも、えらいけちなものと取引したものだという話もあるんだよ。われわれは確かに、現場におったわけでもなし、国鉄の人間でもない、運輸省の人間でもない。したがってわからないけれども、これだけ、そうであろうという資料みたいなものが集まって、さもありなんということになれば、それを事実を調べてもらいたいというのであれば、それぐらい調べて返答するのが何がおかしいのですか。
  320. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 調査をすることは私たちは十分やっておりますし、もしそういう取引をしたという事実があれば、これは重要な問題であります。けれども、あるらしいということだけで、われわれはそこで裁断を下すということは、いまの段階ではできない。でございますから、私は何遍も言っておりますように、国鉄の方針を確認し、その方針に間違っておるようなことがあった場合これは大変な問題である、こういうことを言っておるのです。
  321. 米沢隆

    米沢委員 調査というのは、事実があったら調査なんかいいですよ、そんなのは。事実らしきことがあるから調査してくれと言っておるのだ。
  322. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 現に調査はいたしておりますし、また、先ほど言いました、先日、総裁並びに常務理事を呼んだときには、そういう方針を確認しておる。でございますから、その確認が事実としてどのように出てくるかということ、これは重大な関心を持ってわれわれは見ておりますし、調査もいたしておる、そういうことです。
  323. 米沢隆

    米沢委員 吉井常務、おるかな。答えてくれぬかな、こういう事実関係は。
  324. 吉井浩

    ○吉井説明員 私の承知いたします限り、総裁の知られないところで、総裁並びに国鉄幹部の趣旨と違うことを行ったという事実はないと確信いたしております。
  325. 米沢隆

    米沢委員 これも、運輸省も一緒になって、そうじゃないそうじゃないと言っておる。後はもう本当に、神ならぬ身の中身はわかりません。しかし私は、今後の裁判の動き等々を重大な関心を持って、もしこういう事実が裏づけされるような証拠が、あるいは事実が出てきたら、断固として処置をしてもらいたい。運輸大臣に再度お尋ねします。
  326. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これはわれわれも重大な関心を持っております。でございますから、現在、この裁判の進行状態をつぶさに、鉄監局長を中心といたしまして調査もいたしております。また、先ほど来国鉄当局から言っておりますところの、訴訟問題と合理化とは別の問題なんだというこの方針を貫くために、われわれ自身といたしましての最大の努力をいたす覚悟です。
  327. 米沢隆

    米沢委員 この問題はこれぐらいで終わりたいと思います。  ちょっとエキサイトしましたので、今度はやさしくやりたいと思います。  次は、高齢化社会問題の、年金の危機について御質問をしたいと思います。  近年、高齢化社会の到来ということで、さまざまな問題が提起をされております。確かにわが国の場合、高齢化社会の到来は確実、必至であることは事実でありますが、欧米諸国と比べていまだ日本の場合には高齢化社会の入り口に立っているにもかかわらず、すでに年金の危機とかあるいは医療の危機とか雇用の危機等々が叫ばれており、その対策に大わらわというのが政治の実情であるといっても過言ではありません。アメリカの経営学春ドラッカー氏は、この高齢化社会の到来を見えざる革命と表現をされましたけれども、確かに寿命が延びる一方で出生率が落ちる、老人がふえて若い働き手が減る。こういう、かつてわれわれが経験したことのない人口構造の地すべり現象は、これからの日本の社会の仕組み、日本人の価値観、秩序、財政、社会、文化、経済のあり方等等、複雑で多様な革命的な変革を迫ってくるであろうということを考えましたときに、高齢化問題は非常に大事な問題であると思います。  特に、わが国の特徴的な現象は、人口問題研究所等の資料によりましても、二十年後の昭和七十五年には、六十五歳以上の人口が全体の一四・三%と現在の欧米諸国と同水準に達し、四十年後の昭和九十五年に、それが一八・八%とピークになる。その結果、現在、老齢人口一人当たりの生産年齢人口は七・六人でありますが、昭和百年以降は、すなわち二十一世紀に入りますと三・五人という非常に厳しい状況を迎えるわけでございます。生産年齢人口の割合も低下するのはあたりまえでありまして、この生産年齢人口の低下だけでも、実質経済成長率は二、三%減るかもしれないという経済学者の予測まであるわけでございます。このように、一番大きな問題は、余りにも高齢化社会への速度が速過ぎる、また、世界でも例のない、いわゆる老齢人口比率一八・八%という高齢化社会になるということは大変な問題だと思います。  そこで、この現象は、やはり出生率の動向に最大の問題があると思うわけであります。厚生省は、人口問題研究所等の予想以上に出生率が低下し始めているこの現象を一体どういうふうに受けとめていらっしゃるのか。人口の置換水準といいますが、これを示す純再生産率は、昭和四十九年以降一・〇を下回り、昭和五十三年には〇・八六となっております。仮にも今後ともこのような出生率の低下の傾向が続きますと、将来、人口が縮小再生産に向かう危険があると指摘をされておるばかりではなくて、高齢化のスピードが速まり、生産人口と扶養人口の不均衡が起こって、日本は重大な危機を迎えるであろうと言われておるわけであります。  この問題をどういうふうに受けとめて、どういうような対策をいまから立てていかれようとしておるのか、大臣の見解をまず聞きたいと思います。
  328. 園田直

    ○園田国務大臣 日本の人口推計は、いま御発言されたとおりでありまして、これは五十一年度の調査による推計であります。先般国勢調査をいたしましたから、その調査に基づいてまた新しい人口推計が出てくると思いますが、出生率は御指摘のとおり四十九年ごろから急速に低下をして、五十五年では、まさに、ひのえうまのときと同じような率に低下をいたしております。このような出生率が逐次急角度で減少していくということは、日本が欧米、ヨーロッパ諸国に比べて、一方が百年くらいで高齢化社会に向かうのに、日本が二十年、三十年で高齢化社会に向かう、しかもそのピークがとても十年、二十年ではとれない、こういう原因になっておることも私も同様に考えて、これは非常に恐るべき問題であると考えております。  そこで、まず、日本の人口はどれくらいがいいかということがまた問題になるわけでありますが、大体腰だめで静止人口、現在の人口の状態から減りもしない、ふえもしない、こういうことを目標にしてやるについては、出生率を食いとめる必要があるわけであります。このためには、出生率が低下をした原因がいろいろありますが、やはり社会保障の面において児童保育、育成あるいは学校の問題、こういう問題に十分、具体的に対処していく必要がある。同時に、年金の問題がこれにまた絡んでまいりますので、年金に対する問題等を早急に対応する必要があると考えております。
  329. 米沢隆

    米沢委員 こうした本格的な高齢化社会が駆け足でやってくる。従来以上に社会保障の果たす役割りというのが重要になってくることは言うまでもありません。月並みな表現をしますれば、多くの高齢者が健康で、経済的にも安定し、また、生きがいのある老後生活を過ごすためには一体どうすべきか、同時に、この社会は活力に満ちたものでなければならない、これがこれから先の社会保障行政の最大の課題であると思います。しかしながら、どうも現時点において将来を展望いたしましたときに、これからの経済の低成長、高齢化のスピード、そういうことから一般財政及び社会保障財政における収支の構造的な不均衡、この症状が非常に慢性化してくることが予測をされております。  そういう意味で、先行きは決して明るくない、逆に暗くなる一方だという感じがしてならぬわけでございますが、この際、厚生大臣と労働大臣に、この高齢化社会の入り口に立って、特にこの八〇年代の行政でどこに力点を置いていくのか、どうしてこの難局を乗り越えていけるのか、将来の展望を含めて所信を聞かせていただきたいと思います。簡単で結構です。
  330. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの御発言の問題は、単に老人に対する問題、出生率に対する問題だけではなくて、政治全般に保ってくる大きな問題であります。  一言に言えば、この際、このような急激な人口構造の変化にスピードを合わせて、安定長期的な社会保障、それから具体的に言えば児童手当の問題、年金の問題等をこの歩調に合わせてここで確固たる基礎をつくる。及び急にふえる老齢者の対策としては、単に病気の治療に重点を置くのではなくて、健康管理、健康の推進。労働の種類も、だんだん筋肉労働からボタンを押せば労働ができる、スイッチを入れれば労働ができるというふうに変化しつつあるわけでありますから、こういう高齢者の方々の職場というもの、これを関係各省と相談をして、適確に、長期的に安定さしていくことが必要であると考えております。
  331. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のとおりでございまして、私どもの社会の高齢化といいまするものが非常なスピードで進んでおる。しかしながら、法律にせよ制度にせよ、すべていままでの考え方がこれについていっていないということで、御指摘のような活力をなくするとか、あるいは現状に合わないとかいうような状態が出てきておる、私はかように考えておるわけでございます。  したがいまして、私どもの寿命が延びておるということは、同時に私どもの健康状態も変わってきておるわけでございまして、いままでならばもうお年寄りになられたと思われるような年齢にいたしましても、いまの状態でございましたならば、栄養状態にいたしましても医療の状態にいたしましても十二分にお働きをいただけるような、そういう環境にあるわけでございますから、私は、いままでのそういった考え方を変えまして、そうして、五十五歳になられようと六十歳になられようと六十五歳になられようと、私どもの肉体の動く限り、やはり私どもの世の中に対しまする責任といたしましてお働きをいただかなければならぬ、かように考えますし、私どもといたしましては、そういったお働きをいただけるような職場といいますものを安定的に用意をしていかなければならぬ、かように考えております。
  332. 米沢隆

    米沢委員 りっぱな御所信でございます。  そこで大蔵大臣、御承知のとおり、高齢化を迎えている先進国では、英国病だとかイタリア病だとか表現されるように、社会の活力低下がしばしば指摘をされております。同時に、高い税負担、高い保険料というものをめぐる国民の反発も大変強い、こういうことか言われておるわけでございます。確かに、社会から扶養される老人の比率が高まれば、その費用の負担をどこが受け持つのか、国の財政の果たす役割りはどう考えたらいいのか、あるいは世代間や労使での負担の仕方の合意形成、コンセンサス等、いろいろなものが解決されねばならない、合意を得られねばならない、そういうことになるわけでございます。  そういう意味で、この高齢化社会における社会保障費の急増を大臣としてどういうふうに見て、その社会保障財源の確保につきどういう対策を考えておられるのか。同時に、国民の負担のあり方等について、負担の限度等についてもお聞かせいただければ幸いでございます。
  333. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御指摘のとおりでありまして、私ども、これは大変頭の痛い、いまから真剣に考えなければならない問題でございます。  私は、財政演説でも言っておるように、高福祉には高負担はこれはやむを得ない、また、財政もそれらの高齢化社会を迎えて負担がふえるのもこれもやむを得ない、しかしながら、そのためにはやはり財政の体質を改善をして、借金政策なんかいつまでも続かぬわけですから、財政再建というものも早くやっていかなければならない、こう考えておるわけでございます。  御承知のとおり、年金の問題を一つ取り上げましても、日本の年金掛金率は大体ドイツの半分です。しかも、支給時期はドイツは六十五、こちらは六十歳から、厚生年金で言いますと。こういうようなものも、要するに負担は少なくして給付はドイツ並みにするというふうなことになれば、もうあなたに言う必要もないように、現在の積立金というのは、いまの四十か四十五くらいの人がもらうころは、いまのままではなくなってしまうという状態であります。したがって、こういうことを若い人たちにも知っていただいて、年金を初め負担のあるべき姿、世代間のアンバランスをなくすようにしなければならないし、給付水準あるいは給付開始年齢等についても、みんな利害があるわけですから率直に相談をし合っていく必要がある。  医療の問題については、ただいま厚生大臣からお話がございましたが、そのようなことでやっていただきたい。ただ、現在は医療についても必ずしも全部が効果的に使われているかどうか、疑問な点もある。したがって、こういう点については極力むだを排除していく。不正、不当のものを防止するというふうな点については、一層私は強化していく必要があると考えております。
  334. 米沢隆

    米沢委員 いまおっしゃいましたのは確かに正論だと思いますが、いままで確かに国民合意を形成するという努力が余りにも足りない。本当に大変だということになって財政再建しなければならない、財政が大変だから将来が不安である、こういう議論なのでありまして、できれば本当に現在の段階から、もっともっと国民のコンセンサスを受けるような、皆さん方の資料の公開の問題もあれば、討論の場をつくることもあれば、そういうことにかなりの努力を割いてもらいたい、こう思うのでございます。  これで総論は終わりますけれども、次は、年金の危機について若干触れてみたいと思うのでございます。  まず第一に、厚生年金の問題でございます。  御承知のとおり、先ほどからの話じゃありませんが、最近は年金に対する関心も大変深まってきた。しかし、年金財政は大変不安定である、そういう宣伝もこれはかなり行き届いてまいりまして、特に昨年、厚生年金の支給年齢を五歳上げようという具体的な論争まで加わりまして、さて、将来、年金は、いまは高い保険料を払っておるけれども、おれたちがもらうときには本当に大丈夫なのだろうかという不安が非常に国民の間に出てきておることは、私はゆゆしき問題だと思うのでございます。総理府の調査によりましても、老後不安の筆頭は十分な年金がもらえるかということであった、こういうことでございまして、そのことを証明しておると思うのです。特に年金というものは、もう言うまでもなく安定したものでなければなりませんし、信頼に足るものでなければなりませんし、長い間蓄積したものの配分でございますから、そういう意味で、特に若い世代にそういう年金不安が起こるということは、この年金制度を維持運営するについても、大変私は重要な問題であると指摘をせざるを得ないわけでございます。  そこで、この事実認識を新たにするために、あるいはまた、そこの制度改正の問題を同氏のコンセンサスの上に考えていくという意味から、どうもいろいろな場所で厚生年金の財政は大変だということはわかりますけれども、ちょっと専門的過ぎて、専門家のやりとりの用語としてはわかりますけれども、庶民がさらっとお茶の間で聞いてわかるようなことではどうも説明が行き届いてない、そういう意味では、この五十五年の財政再計算の結果を踏まえて、厚生年金の財政の将来の見通し、一体どうなるんだろうかということを簡単に、国民に語りかけるようなつもりで話してもらいたいと思うのです。
  335. 園田直

    ○園田国務大臣 厚生年金の保険は、今後制度の成熟に伴って、二十年後には被保険者数は現在の一保二倍、これに対して老齢年金受給者数は約四倍、給付費は五・四倍となる。また、三十年後には被保険者の数が一・三倍、これに対して老齢年金受給者は約五倍、給付費は八倍となる見通しでございまして、詳細な数字については事務当局から申し上げます。
  336. 松田正

    ○松田政府委員 被保険者数それから老齢年金の受給者数、給付費につきましては、いま大臣から申し上げたとおりでございますが、一例といたしまして、二十年後の七十五年の例をとって申し上げますと、被保険者数が三千三十三万人、これに対しまして、老齢年金の受給者数は七百六十七万人になる推計をいたしております。また、給付につきましては、同様七十五年で十七兆二千億円、老齢年金にいたしまして十三兆五千億円。収支試算につきましては、現在の標準報酬の上昇率を一応七%ということに仮定をいたしまして、資金の利回りを六%、こういうことで機械的に収支計算をいたしますと、保険料率を五年ごとに今後一・八%ずつ引き上げたと仮定いたしまして、昭和七十三年に収支残赤、こういうことでございます。ちなみに、昭和八十一年代になりますと賦課方式に移行する、こういう一応の試算をいたしております。
  337. 米沢隆

    米沢委員 大変厳しい財政状況でありますが、  その対策について後でお伺いしたいと思いますが、官房長官がちょっと時間の都合で早くやってくれということでございますから、官房長官の質問の方を早く繰り上げてやらしてもらいたいと思います。  厚年の財政が大変厳しい。その結果、昨年は支給年齢を五歳上げよう、こういう提案がなされて、結果的には訓示規定まで修正でなくなってしまった、こういう経緯があるわけでございます。じっくりとこの年金財政の勉強をしますと、確かに六十五歳に支給開始年齢を引き上げざるを得ないかもしれない、この六十五歳引き上げを避けて通ることはできないかもしれないという感じが率直にします。しかし、さきの国会でも大変問題になりましたように、そのためにはやはり国民の納得し得る条件が必要だ。この議論はもうこの一年じゅう言われておるわけでございます。  そこで、やはり問題は、定年と年金開始年齢のドッキングの問題あるいは六十五歳までの雇用確保の問題の解決。  第二には、官民格差の代表的なものでございます支給開始年齢の差の是正、それがされないままの厚年六十五歳移行は大変問題である。将来六十五歳支給に移行するにいたしましても、官民そろって実施するのが筋道である。そのためには共済年金がまず六十歳支給への移行を早めて、次いで六十五歳支給に移す準備をする必要があるのではないだろうか。  三つ目には、支給条件、六十歳以上の在職減額年金あるいは算定基準のとり方等の解決がございます。  公務員は、さきに法改正によりまして支給制限を行いましたけれども、これはもう再就職先が民間会社ならば、年収六百万円までは年金はそのまま支給されるわけでありますから、これは不合理でございます。民間と格差が生じた背景には、確かにこの制度発足の際の事情の違いがあるということで既得権を主張する意見もありますけれども、私は、既得権の中にも不合理なものがあるならば、やはりそれを是正していく努力が必要ではないかと思う一人でございます。  第四に、公的年金は大別して厚生、国民、共済の三通りあるわけでありますが、この制度間の整合性を欠いておることは事実でありますし、所管官庁もばらばらである。国公が大蔵、地方が自治、私立学校が文部、農林水産団体職員共済が農水、公共企業体、国鉄、専売、電電、それぞれ監督官庁がばらばらにこの年金行政をやっておるわけでございます。これらがそれぞれの年金財政の事情によってそれぞれの制度では整合性を求めるような解決をされたとしても、実際は横断的に見たらばらばらになってしまう、逆にいびつな方向に向かうであろうということは当然なことでありまして、だれがこういうものを一元的に把握して公正な年金制度をつくろうということになるのか。そのあたりが日本の場合に、医療保険の場合には厚生省が最終的には調整できますけれども、年金だけはだれも調整できないですね。そして実際は、官民格差が余りにも多過ぎると言われる。かといって、それぞれ勉強したり研究されたりしておるけれども、それぞれの制度の中で改革が積み重ねられても、実際は一向官民格差はよくならない。そういう大変頭の痛い問題があるわけでございます。  そういうことで、昨年も私はこの席におきまして、今後の年金改革は、ばらばら行政が個々の年金を狭い視野から縦に見るのではなくて、政府全体として一元的に横断的に見ながら将来のあるべき姿を提示して、そこに到達するスケジュールを示しながら改革に着手せよ、こう申し上げたわけでございます。  そしてその際、当時の伊東官房長官は、公的年金関係閣僚会議の設置、共済年金制度に基本問題研究会、社会保障制度審議会の中に年金数理部会の設置をする、よって、各省にまたがった問題を念頭に置きながら、それぞれみんな実力大臣がおるわけだから相談をして研究をやって、米沢さんの期待にこたえたい、こう答弁をなさっておるわけでございます。しかし、その際も、公的年金制度を横断的に見ながらその改革のためにリーダーシップをとられるのは一体だれなのか、ばらばら行政の頂点に立ってしりをたたかれるのはだれだろうか、その責任の主体はどこが持っておるのだろうかという疑問を投げかけたのでありますけれども、その答えは実際はありませんでした。  そこで、新しく官房長官になられた宮澤先生にも、一体、その後この公的年金関係閣僚会議というのは何回開かれて、何を議論して、何の検討課題がいま現実の問題なのか、一つぐらいは結論が出たものがあるのか、お尋ねをしたいと思うのでございます。
  338. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、八つの制度がみんな違った沿革、目的を持っておりますから、まちまちになりがちでありまして、本来的には、主管の各省庁が余り合理的でない格差は直していってもらうというのが現実的な方法だと思いますが、米沢委員の言われますように、それも必ずしもなかなかうまくいっていない。そういうことで、公的年金関係閣僚懇談会というものを持ち、また、その下部機構に連絡調整会議をやっておるわけでございます。  それで、私の聞いておりますところでは、昨年一月及び二月にこの閣僚懇談会を開いておりまして、その中で「公的年金制度の均衡ある発展について」ということについての懇談会の申し合わせをいたしております、昨年の一月二十五日でございますが。  まあ、いまとしましては、やはり関係の各省庁で全体を考えながらやってもらうということがどうも現実的のようでございますけれども、こういう懇談会の場も必要があれば活用してまいりたいというふうに考えております。
  339. 米沢隆

    米沢委員 どうも私の質問に全然ポイントが外れておるのですね。現にこの閣僚会議は、ちょうど昨年の国会が開かれて、そして支給開始年齢六十五歳がいろいろ議論されるときに、その論議のすりかえをやるつもりなのか、何とかかっこうをつけようとしたのか知りませんが、できた会ですね。ですから、おっしゃったような一月から二月にやられたというのは、私が昨年議論する前に開かれたやつなんでして、その国会が開かれた後、一体何がなされたのかというのが私は非常に不満でたまらぬわけです。ところが、いま聞いておりますと、全然開かれておりませんよね。結果的には、あの昨年の段階で官民格差がどうだ、雇用の問題がどうだ、六十五歳がどうだと議論された、ただその議論をやわらげるために、まあやるようなかっこうをしましょうやというだけの話であって、実際は全然動いていませんね。  どういうふうにお考えですか。少なくともどこかが言ってこなければしない、何か問題になったときに調整するにすぎない、そういうものでは、横断的な年金改革なんか全然できないんですよね。どこがリーダーシップをとったらこんなのができるのかな。勝手にやれというだけのことかな。何のためにこんな会議があるのかな。そしてまた五年先に、六十年前後になったら、厚生年金の大改正があるだろう。共済年金のまた改正があるだろう。そのときになって、やおら、また、いかにももったいつけて、いかにも考えておりましたというようなかっこうで出てきて、いかにもいろいろ考えた末の結論だなんて言われたんじゃ、たまったもんじゃないな、これは。  この公的年金の関係閣僚会議、その中でやろうとされたことがたくさんありましたね。その進捗状況は一体どうなっておるのですか。何にも会議開かなくても進んでおるのですか。
  340. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の一月の懇談会の申し合わせによりまして、一つは、学識経験者で研究会をつくってもらって、今後の共済年金制度の基本的方向について審議をしてもらう、もう一つは、社会保障制度審議会に年金数理部会を設置して検討してもらう、こういうことを決めまして、おのおのの省においてこういう検討が進んでおるものと聞いておりますが、どうも私もそれ以上詳しいことを、申しわけございませんがつまびらかにいたしておりません。
  341. 米沢隆

    米沢委員 もうそれは答弁できないように、何もやっていないわけでございます。その数理部会にしても、最終的には総理府の管轄だと言って、総理府が数理部会を運営してどうなるのだろうかと思ったり、あるいはまた共済年金の研究会なんかも、国鉄共済がもう来年か再来年はパンクだというのに、まだ国鉄共済どうしようかという結論も出ていないじゃないですか。そういう意味では、どう考えても、ただその場しのぎの、場当たり的に関係閣僚会議を闘いでかっこうだけとった、これじゃ私は大変困ると思うのです。そういう意味で、宮澤先生は大変有能な方だと聞いておりますから、どうか座長としていろいろ関係各省庁と相談をしながら、もっとリーダーシップをとってもらいたい。そのことをぜひお願い申し上げたいと思うのです。  同時に、もしこういう検討が重ねられたとしても、漫然とやられるのでは何にもならないわけですね。先ほど言いましたように、厚生年金は、昭和六十年か六十年前ぐらいにはまた大改正の時期がやってきますね。それまでには、時の議論になりました大方の官民格差は本当になくなっておるのだろうか、雇用の問題は解決しておるのであろうか、そういうことを考えますと、もう全然めどが立たないのではないかという気がするのです。  同時に、厚生年金の大改正のいろいろな議論ができたとしても、やはり官民格差を議論するのですから、共済年金もそれと同じように何らかの改正を積み重ねねばなりませんわね。しかし、一、二の三で提案されるものじゃありませんから、どうもそのあたり、どっちが先なのかということを考えねばなりません。下手に先になったり後になったりしますと、また新たな格差がつく。この前の改正において共済年金は六十歳まで延長されたというけれども、その後にまた厚生年金は六十五までいきますよと、二十年先にもまだ格差があるなんという、こんなつじつまの合わないようなことを平気でやる。それはやはり行政官庁が余りにも多元化して、一元的にリーダーシップをとるところがないというところに私は問題があると思うのです。ぜひそのあたりを整理される意味で、もう一回、リーダーシップをとる決意を示してもらいたい。
  342. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうも大変むずかしいいきさつのある問題らしゅうございます。私もよく勉強いたしまして、御趣旨に沿うように努めます。
  343. 米沢隆

    米沢委員 ぜひがんばっていただきたいと思うのでございます。官房長官、結構でございます。  さて、また前に返りますけれども、先ほど、厚生年金の大変厳しい状況について簡単に御説明をいただきましたけれども、その計算になった基礎も、現行の給付をそのままにしてでしょう。そして金利六%、それから賃上げ率七%、そういうぐらいのものを前提にして筋道を立てて計算をされた結果だと思うのですね。しかしながら、その給付水準を現在のままに置いてもそういう状況ですから、今後物価スライドをやったりあるいは賃金が上がっていく、実質価値を維持するためには何らかの改正をしないと、それはおさまらないと思うのですね。そうなりますと、また年金財政がどんどんおかしくなっていくわけでありまして、そういう意味で、われわれも大変厳しい状況ということは共通の認識を持ちますけれども昭和六十年あるいは一年前になるかもしれませんが、次の財政再計算期を待たずに財政安定化対策を考えておられるのかどうかですね。そしてまた、財政再計算期に一体どういうものが改正するための課題にいま挙がりつつあるのか、そのあたりを厚生大臣に概略、説明してもらいたいと思います。
  344. 松田正

    ○松田政府委員 通常の場合でございますと、五年後が再計算の時期になるわけでございます。ただいま先生指摘のような非常に財政的にもいろいろ問題を含んでおります制度でございますので、次期財政計算の基本的な考え方は、現段階ではまだ決まっておりませんし、その内容をお答えする段階ではございませんけれども、できるだけ再検討を早めまして、次期再計算のあり方等も含めて検討を進めたいと考えております。  その際、やはり財政基盤の充実をどのようにして図っていくかということがまず第一番の問題であろうかと思います。そのためには、現在お願いをいたしております負担につきましても適正化を図ると同時に、また給付の合理化、調整その他のいろいろな点も含めまして検討をしなければなるまい、かように考えております。
  345. 米沢隆

    米沢委員 非常に抽象的な御答弁ですけれども、結局、年金財政を健全にしていくためには、保険料をたくさん取るか支給条件を悪くするかですね。話を聞きますと、たとえば、この前、六十五歳に引き上げるという提案がありましたけれども、六十五歳に年齢を引き上げてもそう財政には好影響がない。昨年は六十五歳に上げようということだった。保険料を千分の十八上げてくれという提案がありました。結果的には千分の十五になりましたけれども、今回は、現在の五十五年の計算を見てみますと、六十五歳でもだめ、保険料を少々上げてもだめということになっておるわけです。そういうことじゃありませんか。
  346. 松田正

    ○松田政府委員 年金の給付を開始いたします年齢の問題は、ただいま先生指摘のように、昨年行いました厚生年金法等の一部改正の際にも非常に議論がやかましかった点でございます。私どもが現在の制度で計算をいたしますと、支給年齢を延長することに上りまして、六十歳から仮に六十五歳に延長いたします場合には、給付費におきまして大体二割程度財源が逆に確保されるのではないか、かように考えております。ただ、全体的な給付水準の問題でありますとかあるいは負担のあり方の問題でありますとか、今後いろいろな諸条件を考えながら検討すべき点がたくさんございますので、ただいまのところは確たる見通しを持っておりませんけれども、やはり将来とも給付水準を確保すると同時に、負担と給付のバランスを図っていく、あるいは八つに分かれておりますいろいろな制度の整合性を高めていく、こういう点で努力をしていくもの、かように考えております。
  347. 米沢隆

    米沢委員 いまお話しいただきましたが、六十五歳に年齢を引き上げてもそう財政効果はない、二、三年ちょっと危機が延びるだけという、そういうことからかどうか知りませんけれども、厚生省がこのような年金財政の大変厳しい状況を前にしまして、将来的には物価スライドを廃止しなければならぬかもしらぬとか、あるいは早ければ次の財政再計算期から段階的な年金水準の引き下げをしなければならぬかもしれないというようなことを言われておるというふうに新聞に載っておるのですよ。これは事実ですか。こんなことを考えておられるのですか。
  348. 園田直

    ○園田国務大臣 二つくらい新聞に書かれまして、私も気になりましたから、早速事務当局を下までずっと詳細に調べましたが、そういう事実はございません。将来どうやりくりをするかという問題はありますけれども、現段階でそういうことを考えたこともなければ、発言した者もおりません。
  349. 米沢隆

    米沢委員 火のないところに煙は出ないといいますが、少なくともそれぐらい厳しい気持ちで年金局の皆さん方が勉強なさっておるのかもしれない。しかし、六十五歳に支給開始年齢を上げるとかあるいは物価スライドを廃止したり年金水準を下げるというのは末期的な症状ですから、こんなことをするときは年金は終わりだという理解をしなければなりませんので、こうならぬように何とか年金財政のうまい運営をやってもらいたいと思っておるわけでございます。  それからもう一つは、年金の財政の状況を調べたり、どれくらいの改正をしなければならないか、どれくらいの保険料をもらわなければならぬのかというときに、いろいろ数理部会等で計算されますね。ところが、この場合どうも不思議に思いますのは、たとえば、さきの年金法案を提出された段階では、財政再計算試算においてはもともと腹案であった六十五歳に支給年齢を上げた場合の計算をされて、平準保険料は千分の百七十八。したがって、それに修正率〇・六を掛けて、結果的には実行保険料を千分の百八にしなければならぬ。そのために保険料を千分の十八上げさせてもらいたい、こういう形だったのですね。六十五歳に上げる、そのかわり千分の十八欲しい。ところが実際提案されたのは、この千分の十八が残って六十歳に引き下げられたのですね。六十歳に引き下げられた平準保険料は、試算によりますと千分の二百四ですね。だから、二百四であるならば、これに修正率〇・六を掛けて実行保険料は千分の百二十二ということでございますから、六十歳に引き下げられたならば、千分の三十一ちょうだいします、本当はこういう提案でなければならなかったわけですね。ところがどうしたことか、余り保険料を上げるといかぬと思ったのかどうか、保険料だけは六十五歳に上がったときの保険料をちょうだいする、しかし、実際は五年また引き下げられた、現行どおりになったということで、やはりいろいろな配慮があったかもしらぬけれども、十八ちょうだいというのと三十一ちょうだいというのとでは、全然感覚が違う。同時に、厳しさを考える場合にも違うわけです。そういう意味で、せっかくこういう計算をされながら、計算された結果は出さずに全然別のものを出す、そしてしゃあしゃあとしておる。これは間違いなのか、政治的な配慮なのか。もしそういううまい政治的な配慮だったら、これからもやってもらいたいと思うのだけれども、どうなんでしょうか。
  350. 松田正

    ○松田政府委員 昨年度、厚生年金保険法の改正をお願いいたしました際に、法案でお願いをいたしましたのは千分の百九ということでございます。平準保険料とそれから現実に提案をいたしました百九という数字の計算方法については、いま先生指摘のとおりでございます。ただ、支給開始年齢を六十五歳にいたしましたときに、関係審議会等にも千分の百九、つまり、非常に急激な保険料の引き上げを抑えるために若干抑えた数字で諮問をいたしました。それで御了承を得まして、法案の形で御提案を申し上げた、こういういきさつがございますので、その点はひとつ御了解を賜りたいと思います。
  351. 米沢隆

    米沢委員 それが出す方にとって大変いい政治的な配慮だとしましても、こんなに厳しくなるのだから、少なくとも本物の数字ぐらい出しておどすぐらいのことをしないとこれは大変だと私は思うのです、余り上げられるのはいやだけれども。いやだけれども、年金財政が大変だというのならば、わざわざ計算をして出てきた数字を引っ込めて、全然違った数字を出す、そうなれば千分の十八なんか全然意味がない数字でしょう。意味のない数字を議論しろというのもまたおかしい話で、これからもそういうふうにしてうまく値切ってくれるならばいざ知らず、それで年金財政がうまくいくならばいざ知らず、そうじゃないというのだから、もうちょっとまじめにやってもらいたいと思うのでございます。  それから次は、余り時間もありませんが、雇用の問題について労働大臣にちょっとお伺いしたいと思います。  先ほどからも何回も申し上げておりますように、雇用の確保が大事な問題になりました。いま何しろ、昭和六十年に六十歳定年を一般化しようということで各般の努力をされておりますし、また、雇用審議会の定年延長部会の結論も読ませていただきましたが、読んでみましても、昭和六十年に六十歳定年一般化というのは一体現実的な話だろうかと思うのですが、どうでございますか。
  352. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  御案内のとおり、定年を延長しようという私どもの理想でございますが、それは非常に困難ではないかという見方もございます。しかし、いかなる見方がございましても、私どもがそれを実現するというところに私どもの政治の力があるわけでございますし、それを逆にもっと早くするというぐらいの勢いでこれに取り組みませんと、そういった仕事というものは私はできない、かように考えておりますので、全力を挙げまして、必ず御期待に沿いますようにいたします。
  353. 米沢隆

    米沢委員 労働大臣、姿勢としては大変意気軒高という感じですが、姿勢だけではどうしようもないのでして、気持ちはわれわれもよくわかるし、本当に尊敬しますけれども、実際は昭和六十年六十歳定年一般化というのは無理じゃないかという気がしてならぬのです。  たとえば、数字を挙げましても、労働省の雇用管理調査によりますと、昭和五十五年一月現在で、六十歳以上の定年を定める企業は三九・七%、五十五歳の定年を定める企業が三九・五%、わずか〇・二%伸びたからといって大変喜んでおられますけれども、実際は六〇%の企業がまだ六十歳定年にたどりついていないわけですね。あるいは雇用審議会の定年延長部会の報告によりましても、今後の改定予定を入れても、もうすぐ定年延長するだろうというところまでくわえ込んで入れて計算しても、近い将来、六十歳以上の定年制を有する企業はまだわずかの四七・五%ですね。つまり、六十歳以下の定年が五三%も残っておるわけですね。  政府の各般の努力には大変感謝をしますけれども、第三次雇用対策基本計画から数党でもう七、八年、そういうことで一生懸命がんばっていただいても、まだ四七・五%しか六十歳以上の定年はない、こういうことでございます。まだ残っておるのはむずかしいものが残っておるのだろうということでございまして、数字的に追ったときに、一生懸命努力をしていただくのはよくわかりますが、昭和六十年六十歳というのは、いままでの行政指導程度では非常にむずかしくなってきておるのではないかと思うわけでございます。それでも六十年あるいは五十九年にでも一般化するという姿勢を示されたのですが、いまから三、四年の間にこの五割くらいが、いま大変むずかしいと困っておるところが一挙にそんなになるような、何かウルトラCでもあるのでしょうか。
  354. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 ただいま御指摘のとおり、昨年の数字で、実現をし得るであろうというのを加えまして四七%になっておるわけでございます。でございますから、これはことしの前半のうちにも私は五〇%を超えるであろう、かように考えますし、五〇%を超えましたならば、それは時代の趨勢でございますから、後は加速度を加えさせていけばこれはできる仕事でございまして、私は、委員の御指摘のむずかしかろうという御親切はわかりますけれども、これでできないというようなことであれば政治、行政はどこにあるかということになるわけでございますから、ひとつお任せをいただきたい。
  355. 米沢隆

    米沢委員 行政努力に期待を申し上げたいと思います。  そこで、この定年延長法制化の問題についてさきのレポートを読みますと、「ヒアリングの結果における労使の意見に隔たりがある現状からみて、今後、定年延長の進展の動向を見極めつつ検討を続ける必要がある。」こう言っておられますね。しかし、これは文章で読めば何となくわかるようで、実際はわからないのでございます。このどうもうまくいかないときに、「定年延長の進展の動向を見極めつつ検討を続ける必要がある。」というこの文章を、労働省はどういうふうに理解をされて読んでおられるのかということ。  それから、定年延長の進展がない場合には法制化を積極的に検討することも十分あり得るという中身がこの中に入っておるというふうに読んでおられるのか。特に、この部会において労組側が法制化すべしという主張の中で、「中小企業の場合、自主交渉による進展には限界があるため、法的なバック・アップが必要である」というような主張をされておりますが、この点について大臣はどういうふうに御答弁なさいますか。
  356. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 細かい字句の解釈は事務当局にやらせますけれども、御案内のとおり、審議会の構成は三者構成でございます。そのうちの組合側の委員の皆様方が、中小企業にこれを積極的に推進をするということは非常にむずかしいではないか、こういう御心配から、その一番最後の歯どめとして法制化することが必要ではないかということを主張をせられた、こういうことを記録をしておるわけでございまして、記録は記録といたしましても、私自身は決して、困難だからといってこれを直ちに法制化するというようなことをしなくても——法制化いたしますと、やがて私どもは六十二歳、六十五歳の定年に持っていかなければいかぬわけでございますから、そうたびたび定年法を改正をして御提出をするわけにはいかないわけでございます。でございますから、その条件整備といたしまして、最低限の六十歳ぐらいのところは、何も法制化しなくても、私どもの行政指導、そして世間の御理解をちょうだいをするという努力でそれは必ずできる、私はかように考えておりますわけで、先ほど私が申し上げましたように、五〇%を超えるということで、大勢がそちらの方に向かっておるんだということになれば、その説得力は三倍にも五倍にもなる。その説得力によって御了解を得ることは、いま私どもが各方面でやっております実績に照らしましても決して困難ではない、私はかように考えておるわけでございます。
  357. 米沢隆

    米沢委員 事務当局に……。
  358. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答え申し上げます。  雇用審議会の答申におきまして、立法化問題については「今後、定年延長の進展の動向を見極めつつ検討を続ける」、こう書いてございますのは、この答申を決めます際に、会長から、今期春季の労使交渉における定年延長問題の推移、あるいはことしの一月一日現在におきます定年の状況、これが労働省の行います雇用管理調査で五月末あるいは六月ごろはっきりしてくる、そういうものを見た上でまた審議会の審議をしていきたい、こういう御発言をされまして、委員の皆様の御了承を得ております。そういう意味で、今春季交渉が終わりました五、六月ごろの段階から再びこの立法化問題を雇用審議会で審議していく、こういうふうに私どもは理解しているところでございます。
  359. 米沢隆

    米沢委員 さて、中高年雇用保障対策の詳細につきましては、きょうはもう時間もほとんどありませんから、別の機会に譲って御質問をさしていただきたいと思いますが、あと数点だけ、入口論だけさわっておきたいと思います。  労働大臣の見解をお伺いします。  まず第一に、五十四年から予算化されました雇用開発委員会の成果を踏まえまして、今度は調査研究から一歩歩を進めまして、地域における潜在需要を開拓するなど、現実的に雇用を創出する事業開発のための雇用創出機構をつくるべきであると思うのです。これは各方面から要請があるはずですが、この点をどういうふうに考えておられるのか。  第二番目に、すでに法案要綱等については目に触れられておると思いますが、いわゆる定年延長のための定年延長奨励金制度の強化拡充、高年齢者雇用対策会議の設置、また高年齢労働者の雇用保障のために高年齢者雇用開発給付金制度の強化拡充、高齢者雇用率の制度の強化、高齢者雇用の納付金制度の創設、高齢者の職場環境改善融資制度の創設、職業情報の収集整理及び提供等々を柱にします高年齢者雇用保障臨時措置法案というものを出しておりますけれども、この点について簡単に、現在の段階でどういう見解を持っておるのかお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  360. 関英夫

    ○関(英)政府委員 まず、雇用創出機構のお話について、先生承知のように、現在中央及び地方で雇用開発委員会というのをやっております。で、そういう委員会で、これから発展が期待される産業としてはそれぞれ各地域にどういうものが見込めるか、あるいは雇用機会拡大のための方策としてどういうことをしたらいいかということを、労使、公益、行政側一緒になりましてさまざまな議論をし、また研究委託等をして勉強しているところでございます。  一番最初に出ました五県において、五つの地方の雇用開発委員会で、来年度中に最終的な報告書が取りまとめられるような段階にまで至っております。で、そういう報告を受けまして、私どもその提言に沿って具体的な施策を進めていかなければならないと思いますが、労働省といたしましては、そういった報告を十分に踏まえて、産業政策と有機的な連携のもとに、私どもの出先の職業安定機関を初めとする関係行政機関を通じて効果的な施策の推進に努めていくということを考えております。  現在、行政簡素化が非常に要請されている折でもございますので、雇用創出機構といったような新しい機構をつくらないでも、そういった研究成果に基づいて従来の行政組織の連携を強めて、そして施策を続けていきたい、こういうふうに考えているところでございます。  また、第二のお話の、高齢者の雇用保障法の考え方については私どもも伺っております。定年延長を初めとする雇用の問題につきましては、これは先生承知のように、日本の終身雇用慣行なり年功序列型賃金制度なり、そういったものと密接に関連して定年制度なりございますわけで、そういった労使交渉の焦点となるような問題、そういうものと密接に絡んでできている制度の問題でございますので、私どもとしては、これを法律的に強制する、あるいは納付金を納めさせるというのは余りなじまないのじゃないか、そういう意味で現在、先ほど来お話にありますように、六十年六十歳定年ということで一生懸命やっておるわけでございますし、また、さらに六十歳代前半層の雇用対策もいろいろ多様な形で進めていかなければならぬ、こういうふうに考えております。  また、いろいろな雇用奨励措置につきましては、今国会に、これからの高齢化社会に向けた雇用に関する助成金制度を整備充実していこう、また、従来非常に数多くて活用されないのも整理統合しようということで、関係法案をお願いしております。これは関係の審議会におきまして、公労使一致の建議を受けましてそういったものを御審議をお願いしておりますので、その成立を待って、ますますこれからの高齢化社会に役立つように、あるいは六十歳代前半層の雇用確保に役立つような助成金制度をつくっていきたいと思っております。また、その中にあります高齢者の職場を確保するための改善資金制度、これも新しく財政投資によります融資制度をお願いしているところでございまして、これも新年度から活用して、こういったいろいろな助成制度や融資制度を活用いたしまして高齢者の雇用対策を進めていきたいと考えている次第でございます。
  361. 米沢隆

    米沢委員 その問題は、また後で継続して検討させてもらいたいと思いますが、国民年金、婦人年金の取り扱い、年金積立金の運用の問題、企業年金、個人年金の健全育成の問題等々積み残しましたけれども、引き続きまた何らかの機会で質疑をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  362. 小山長規

    小山委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  363. 小山長規

    小山委員長 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  昭和五十六年度総予算審査のため、五個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(ただし経済企画庁及び国土庁を除く)及び法務省所管並びに他の分科会の所管以外の事項  第二分科会は、外務省、大蔵省及び文部省所管  第三分科会は、厚生省、労働省及び自治省所管  第四分科会は、経済企画庁、農林水産省及び通商産業省所管  第五分科会は、国土庁、運輸省、郵政省及び建設省所管 以上のとおりにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  364. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  365. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次いで、お諮りいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  366. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明二十四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十五分散会