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1981-02-20 第94回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月二十日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       足立 篤郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    海部 俊樹君       鴨田利太郎君    倉成  正君       古賀  誠君    後藤田正晴君       近藤 元次君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    浜田卓二郎君       原田  憲君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    阿部 助哉君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       小川 国彦君    大原  亨君       岡田 利春君    小林  進君       中村  茂君    野坂 浩賢君       福岡 義登君    山田 耻目君       湯山  勇君    横路 孝弘君       草川 昭三君    神田  厚君       中野 寛成君    林  保夫君       栗田  翠君    寺前  巖君       松本 善明君    山原健二郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会 安孫子藤吉君         委員長         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局総務         主幹      大出 峻郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         青少年対策本部         次長      浦山 太郎君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         警察庁交通局長 池田 速雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁装備局長 和田  裕君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁長官官房         長       北村 和男君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁長官官房         審議官     柴田 啓次君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省条約局長 伊達 宗起君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         国税庁調査査察         部長      岸田 俊輔君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      高石 邦男君         文部省管理局長 吉田 壽雄君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局次         長       山本 純男君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    矢崎 市朗君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         林野庁長官   須藤 徹男君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         運輸大臣官房総         務審議官    石月 昭二君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省婦人少年         局長      高橋 久子君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省都市局長 升本 達夫君         建設省河川局長 小坂  忠君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治大臣官房審         議官      大嶋  孝君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     藤村 和男君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   鴨田利太郎君     古賀  誠君   塩崎  潤君     浜田卓二郎君   正示啓次郎君     近藤 元次君   阿部 助哉君     湯山  勇君   石橋 政嗣君     中村  茂君   中村 重光君     小林  進君   山田 耻目君     福岡 義登君   横路 孝弘君     小川 国彦君   林  保夫君     中野 寛成君   不破 哲三君     栗田  翠君   松本 善明君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     鴨田利太郎君   近藤 元次君     正示啓次郎君   浜田卓二郎君     塩崎  潤君   小川 国彦君     横路 孝弘君   小林  進君     中村 重光君   中村  茂君     石橋 政嗣君   福岡 義登君     山田 耻目君   湯山  勇君     阿部 助哉君   中野 寛成君     林  保夫君   栗田  翠君     不破 哲三君   山原健二郎君     松本 善明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野寛成君。
  3. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は、きょうは子供の問題、そして教育の問題にしぼって、むしろそれこそこの問題は党利党略を超えて、そしてお互いの立場を超えて一緒に考えなければならない、かつ緊急な課題であると思います。そういう問題を率直にお尋ねをし、そして率直な御答弁をいただく中で、国民みんなの問題として、いまの教育に関する、また子供に関する問題の解決の糸口をできる限りつくり上げていきたい、そういう気持ちお尋ねをしたいと思います。  まず、スウェーデンの有名な教育家でありますエレン・ケイが二十世紀子供世紀である、こういうふうに申しました。児童憲章では、児童は人としてとうとばれ、社会の一員として重んぜられ、そしてよい環境の中で育てられるとうたわれております。しかし、いまの子供たち実態を見るときに、青少年の非行だとか学内暴力だとか、青少年の行為に対する批判、そのことの方が大きく取り上げられている。私はむしろその根本原因を真剣に考えて、その対応について具体策考えていきたい、こう思います。  まず、その第一として、いま大きくクローズアップされておりますベビーホテルの問題についてお尋ねをしたいと思います。  きょうの新聞の朝刊を開きますと、またきのう二人の子供ベビーホテルで亡くなっております。私はベビーホテルのすべてが悪いというのではないし、またすべてがいいというのでもない。ベビーホテルというのはなぜ生まれてきたのだろうか、そしてなぜこうまでいわゆる繁盛しているのだろうか。私は、その実態と、そしてなぜそれがこうして市民社会の中で認知をされ、利用されるようになってきたのか。しかし、そこには行政は追いついていない。何の規制もなされない。何の基準も設けられない。しかも何の保護も加えられていない。そのようなベビーホテル、何の手も打たれていないということ、同時に、本来なすべき公立施設の数と、そして制度のひずみの中で子供たちがそういう被害を受けてきたとするならば、これはまさに行政谷間の中できのうも二人の子供が死んだと申し上げるのが当たっているのかもしれません。ベビーホテル実態と、そしてなぜそれがこういうふうに需要が多くなってきているのか、このことについてどのように厚生省としてお考えか、まずお聞きしたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 御指摘の問題は非常に大事な問題で、かつ深刻な問題であります。各種の要素を含んで非常に困難ではありますが、しかしこの問題を解決することがこれから端を発するすべての社会問題に影響していくと考えております。  ベビーホテルが繁盛いたしましたのはいろいろありますが、大方三つに分けて、一つは、育児に対する母親考え方が非常に近代的になってきた。そこで金と時間に余裕のある方、こういう方方が旅行だとかあるいはいろいろな仕事の場合に使われる高級ホテルに設けられたベビーホテル、それから上中下というのはおかしゅうございますが、中間的な方でいろいろな冠婚葬祭、旅行のときに親戚、友人に預けていかれる、これも一つベビーホテルの始まりだと思います。それから最も深刻なのは、婦人の方で働かれる方がふえてきた。しかも、結婚されても、子供ができても働く人、もっと突っ込んで言えば、働かなければならない人、そして働きながらも子供を育てることに非常に切実な負担を持っている人、これが非常にふえてきた。そこで、都市の中心とかなどに設けられた保育所というものではなくて、自分が働くのに身近に預けて身近にまた連れて帰る、しかも時間も制限なしに、夜でも夕方でも必要なときに預けていく、こういうのからだんだん生活上というか、社会一つ谷間のすき間が深くなればなるほど自然発生的に出てきたことであって、今後もますますこれは急増するという傾向にある、こういうことで、先生と同様、本日新聞を開いて、大阪ベビーホームで二名の赤ちゃんが亡くなられた、まさに責任と遺憾との両方から深刻に考え込んだ次第でございます。謹んで御冥福を祈ります。
  5. 中野寛成

    中野(寛)委員 どうして需要がそこまで高まってきたかということについて、おおよその認識大臣が持っておられることはよくわかりました。  もう一つ、それはあくまでもベビーホテルだけでなくて、公立保育所需要原因でもあるはずです。先ほど申し上げたように、もう一つ原因は、公立保育所なり乳児院なりが日曜祭日は預からない、または時間外は預からない、または年齢制限がある、または施設の数に限度がある、社会情勢変化市民社会の要望の変化にこたえられなかった、その行政的な責任。もしそれが追いつかなければこういう民間ベビーホテルに対してその動きを察知して基準を設けるなり何らかの補助措置をとるなり、そういうものがあわせてなされるべきであったにもかかわらず、今日各マスコミで取り上げられているようにベビーホテルのいわゆる悪い部分そのものがだんだん拡大されてくる。そしてせっかくまじめに子供たちのためを考えながら善意の第三者として子供たちを預かっているベビーホテル人たちは、いつの間にやらどこかへ追いやられてしまう、そういうふうなことが実態として起こっているのではないか。今日ベビーホテルがこうして繁盛しているその原因は、その行政的欠陥谷間が突かれたのではないか、そういうふうに思いますが、厚生省としての政治責任をどうお考えでございますか。
  6. 園田直

    園田国務大臣 ただいま御審議を願っております五十六年度の予算では、保育所を八百カ所ぐらい増加し、また、その定員は年々七万から九万ふやしているところでありますが、なかなか追いつけるものではございません。しかし根本原因は、いま指摘された、一つのいままでの保育所の概念にとらわれて発想転換ができなかった。いわゆる保育所という一つの型の中でやっていくので、これは該当するとかあるいは該当しないとか、もっと極端に言えば、保育所は、昼開く保育所があってもよろしいし、あるいは夕方から始める保育所があってもよろしいし、あるいはまた同じ保育所で昼と晩との交代制をやってもいいはずであります。そういうことに思い切って発想転換ができなかったという点は御指摘のとおりでありまして、これは一言の弁明もいたすところはございません。  ただ、乳幼児、零歳児というのは御承知のとおりに、朝元気であっても昼ごろは急変をして、体力がないためにけいれんを起こしたり熱を出したり、全く違った状態になるという、一つの預かることに対する責任の恐怖というものもあったと思いますが、おっしゃるとおり、これからはそういうことは乗り越えて、ほっておいてこういう悲惨なことがあるよりも、できるだけのことはやって。それで間違いがあってわれわれが責任を感じなければならぬという方向に踏み切るべきであると考えております。
  7. 中野寛成

    中野(寛)委員 大臣がいまいみじくもおっしゃいましたけれども、危険を負担するのはむしろ公共の機関負担をする、そしてその危険がない問題こそ安心して民間に任せられるという、その認識をぜひとも貫いていただきたいと思います。  先般このベビーホテル実態について調査結果の概要が発表されました。これは「各都道府県及び指定都市が把握できたベビーホテルについて」ということであります。何月何日に通達を出して、何月何日までに回答を求めたものでしょうか。そして、この調査結果の概要実態は何%ほどの把握率だとお考えなんでしょうか。この結果に対してどういうふうに厚生省はお感じになっておられるでしょうか。
  8. 園田直

    園田国務大臣 調査は急ぐことでありますから、とりあえずの調査をいたしました。なおまた、それに伴って、これに見当をつけて今後どのような調査をしようとしておるか、これは事務当局からお答えさせていただきます。
  9. 金田一郎

    金田(一)政府委員 ベビーホテルにつきましては、従来から特別の規制を行っておりませんでしたので、実態把握は困難でございましたが、問題になるベビーホテルもたくさんあると考えましたので、急遽可能な範囲調査を各県にお願いしたものでございます。  昨年十月二十五日に各県あてお願いいたしまして、十一月末日までに私どもの方へ結果を出していただくようにお願いしたわけでございます。各県におきましては、消防部局にいろいろ御迷惑をおかけしたところもございまして、また児童委員等に対する照会あるいは電話帳の記載、広告などによりまして所在を把握したり、さらに電話による照会、直接の聞き取り調査等によりまして収容人員等調査いたしたものでございます。  しかし、調査期間が約一カ月でもございましたので、また二万、法的な調査権限も現在ございませんので、完全無欠調査であるとは考えておりません。私どもも、可能な範囲でできるだけ調べていただきたいということをお願いしたわけでございますが、結果といたしましては、全国的な傾向につきましてはかなりの程度つかんでいるものと思っております。  なお、今後におきましては、消防当局ともただいま御相談いたしておりますが、今後危険度その他につきまして全国的にこれらのベビーホテルにつきまして再度調査をいたしたいと考えているところでございます。
  10. 中野寛成

    中野(寛)委員 再度調査をするということでありますから、ぜひ早急に、もっと念の入った調査をはっきりとやっていただきたいと思います。  この調査結果によると、京都でゼロカ所、私が住んでいる大阪でわずか十九カ所。われわれが知っている範囲だけでもこれだけ以上ありますよ。京都でゼロカ所なんてことは絶対にありません。ちなみに、東京だけで調べますと、消防庁の方でむしろつかんでおられるのが去年の十月段階で四百三十七件と聞いております。しかし、この発表では百六十九カ所だと出ております。ちなみに、電話帳を繰って幼稚園、保育園の中でベビーホテルらしき件数を数えただけで都内で六百二十一件、こういうふうに数字が出ているものさえもあります。  こうして考えますと、厚生省の今回の調査で五百八十七件だと出ておりますが、私は少なくともこの倍や三倍は必ずある、そして、ここに出てこなかった数字部分こそ本当は問題をはらんでいるところなのではないか、こういう気持ちさえするのです。実態は、この「調査結果の概要」で措置児童の数やベビーホテルの数やいろいろなものが出ていますけれども、本当は決してこんななまやさしい問題ではなくて、もっともっと多くの児童たちがここへ預けられ、一部ではきわめて不十分な場所で生活を余儀なくされているという実態をもっと真剣に考えなければならぬ、このように思うわけであります。そういう意味で、その調査を今後どのように進めようとしておられるのか、そしてその調査の結果、何をいまなさんとしておられるのかをお聞きしたいと思います。
  11. 金田一郎

    金田(一)政府委員 まず最初に、京都でべビーホテルはゼロではなかったかというお尋ねでございましたが、実は私ども調査いたしました、ちょっと見にくい資料であったかとは思いますが、京都ゼロと出ておりますのは、指定都市である京都市を除きました京都府でゼロということでございまして、京都市の中では十六いう数字が載っております。後でまたごらんいただければと思います。  それから、これからでございますが、消防庁とも協力いたしましてベビーホテルにつきまして一斉点検を実施いたしたいと思っております。私ども児童福祉施設最低基準というのが保育所についてございますが、ここでは衛生的な観点あるいは防火上の観点その他で基準がいろいろつくられております。あるいは職員、設備の基準が設けられているわけでございますが、それらに照らしまして、果たしてベビーホテルが適当であるかどうかといったことを両者協力いたしまして一斉点検をやり、必要なものにつきましては、児童福祉法の第五十八条第二項によりまして改善命令等を出したいと思っているわけでございます。
  12. 中野寛成

    中野(寛)委員 いまのお言葉では、調査をし、実態を調べ、必要であれば改善命令を出すということでございました。これから規制を加えて、それに合わないものはやめさせていく、もしそういうことだけを行われたとしたら、いまの子供たちは果たしてどこにいくのでしょうか。親のもとに、戻るのでしょうか、公立保育所乳児院が一〇〇%収容するのでしょうか、この子供たちは一体どういう扱いを受けることになるのでしょうか。基準を設けること、規制をすること、結構です、しなければなりません、遅過ぎるぐらいです。しかしそれと同時に、単に金と時間があり余って高級ホテルベビーホテルへ泊めているという子供たちは何とかなるでしょう。しかし、働かなければならない母親や父親、その働く時間帯がきわめて不規則であったり、またはいまの核家族化の中で若いお母さんが育児ノイローゼになって、そして何とかこれを専門家のところに預けながら自分はカウンセリングを受けに行く、むしろそういう前向きの意味にさえ利用される、そういう実態さえあるのです。そういうものに対してさえ公立保育所は何の手を差し伸べることも実際はできなかったのではないでしょうか。  そういうことを考えるときに、いま規制をする、基準を設けるのと同時に、何らかのことをやらなければならないはずです。それをしないで、もし調査規制と、そして基準を設けることだけが行われたとしたならば、子供たちはなお一層悲劇のどん底に落ち込んでいく危険性をいまやすでにはらんでいることを実際考えるべきだ。先ほど大臣がこの需要がここまで伸びてきた実態と理由について触れられました。そのことをそこまで理解されているならば、私の言わんとするところがおわかりになるはずです。どうされようとしておられますか。
  13. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりであると私も考えております。  そこで、これをただ単にいや危ないところはやめるとかやりますと、それが閉じるためにはみ出した子供というのはもっと暗い、もっと危険なところへこっそり押し込まれるおそれがある。これが一番恐ろしいことでございます。  そこで私が考えておりますのは、これだけの勢いでこれだけふえることで、しかも実際苦しんだあげくやむを得ずやっておることでありますから、二段階で、まず第一は、かぎだとか何だとかが危険だ、そういうところだけは、とりあえずこれは改善するとか、あるいはいろんな注意をするとか、それでやむを得ず閉鎖命令を出すところは、現在の保育所というものをいまの法律や予算や定員の中で何か受け入れる便法を考えなければならぬ、そうやってとりあえずの対応をしながら、いま発言されましたようなこのベビーホテルに対する恒久的な案を急いで立てなければならぬ、こう考えております。
  14. 中野寛成

    中野(寛)委員 きのう法規制等については前向きに検討するというお約束をなさったようです、  私は、その検討の中身、いま申し上げたように規制をするだけではない、基準を設ける、その基準に合うならば、むしろ何らかの助成措置さえもとっていく、そりトータル的な方法も含めての御検討がなされなければならぬ。いま大臣はそういう趣旨でお答えになったと思いますけれども、しかし私どもいまお聞きをいたしておりまして、残念ながら、御検討中のゆえか、まだ抽象論の枠を越えないと思います。しかし、むしろ急がれている問題です。大臣の私見でも結構かと思うのでありますけれども、具体的にいま何をなすべきか、そういうことをいま何らかの形で御相談をされていると思いますが、どういうところに問題意識を持ち、こういう方向へ持っていこうという何らかのサゼスチョンがあるならばお答えいただきたい。
  15. 園田直

    園田国務大臣 大体分けて三つぐらい。一つは、いまの保育所を制度その他人員、予算等を変えないで、これをどのように時間を変更するとか、あるいは交代制にするとかして受け入れられるか、これが一つ。それからもう一つは、いまのベビーホテルを、どうしてもほっておけないものと、何とかして力をかすか、あるいは数カ所のベビーホテルを組合というか、何か合同体みたいなものにして行政指導を府や県がやれば何とかこれは預けられるというものをどうやって救っていくか。やむを得ないものは、これはやめてもらわなければいかぬ。そのやめてもらうものは、どこでこれを救うか。こういうことを重点にやるべきだと考えておりますが、とりあえずの便法は急いでやれ、いまの問題はひとつ部内でチームをつくって早急に検討しろ、こう言っていることが実情で、手おくれではございますが、いまから急いでやるところでございます。
  16. 中野寛成

    中野(寛)委員 それでは、法規制は前向きに検討する、基準を設ける、そして現在の公立保育所についてももっと有機的に運用できるように検討を進めていく。そして現在こうして行われているベビーホテルについても、実態調査の上で行政指導が行えるような組織化を含めての対応を進めていく、そういう一連のことをやっていただけるということですね。そして、それはいつごろをめどになさるのですか、またきょうあすもそこで赤ちゃんが亡くならないとも限らない今日なんですが。
  17. 園田直

    園田国務大臣 そのとお力でございます。時期はもうなるべく早く、緊急のことでございますから急いでやるつもりでございます。
  18. 中野寛成

    中野(寛)委員 ぜひとも、大臣のいまの前向きの御答弁の中で答えられたことが一日も早く実現されることを願っておきたいと思います。  それからもう一つは、あのベビーホテルの組織化と、そして届け出制度をすることによって行政指導が行われるようにするということですが、その場合には補助や助成、保護、そういうこともあわせて考えられるということですか。それがなければ、施設等の改善というのはなかなか進まないです。そのことも財政事情の問題が必ず言いわけとして出てくるかもしれません、大蔵大臣ににらまれそうな感じがいたしますけれども。しかし、そういうことも含めての御検討が当然なされるということですね。
  19. 園田直

    園田国務大臣 こういう種類のものを規制するということ自体にもいろいろ問題があると思いますが、しかし規制をし、あるいは改善命令を出し——行政指導については、政府が規制するだけ規制するというわけにはまいりません。これに対して何らか考えなければならぬが、財政その他を口実にしてやらない、こういうことは間違いでありまして、何とかして努力をしてそっちの方も一歩一歩と改善していきたい、こういうふうに相談したいと思っております。
  20. 中野寛成

    中野(寛)委員 では、質問を次に。移します。  青少年の非行と教育のあり方の問題であります。引き続いてお尋ねをしたいと思いますが、この問題につきましても、先般来幾つかの調査が行われたり、そしてまた文部省からの通達が出たりいたしました。文部省の通達を拝見しておって、私は大変興味深いと思いました。十一月二十五日付の通達「児童生徒の非行の防止について」、この中で資料として「少年非行の現状」等々が後ろに記載をされております。「警察庁調査」と載っております。文部省として調査をする場合と警察庁で調査をする場合とは、おのずからその結果に違いがあるはずです。警察庁でやりますと、それは補導をした件数であったり、または逮捕をした件数であったりするだろうと思います。しかし文部省でやる場合には、その調査の項目も複雑になるかもしれませんけれども、より具体的な、むしろその非行の芽と言われるものに至るまでも目の届いた調査が行われるはずであります。文部省みずからが出した通達の中に警察庁調査の資料を添えなければならない、この文部省行政の貧困さをむしろ私は見る思いがいたしました。そして、ある新聞には「校内暴力に名案なし 異例の文部省議 調査だけを決めた」こういう見出しまでつけられております。文部省のこの問題に対する取り組みの姿勢についていま多くの批判が寄せられていることもお聞きだと思います。青少年の非行の実態傾向についてどのように把握しておられるのか、この際私は、文部省は文部省としての、警察庁は警察庁としての、そしてあわせて総理府は総理府としての御見解をお聞きしたいと思います。  ちなみに、局部的な現象としてか、一過性のものとしてか、今日の社会状況の反映そのものとして見ておられるのか。またあわせて、地域的に分布する傾向というものが現象面の中で出ておるとするならば、そのことから何か解決への糸口や予防措置のための名案が出てくるかもわかりません。総合的な把握の実態についてお答えをいただきたいと思います。
  21. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいまの御質問の前段の、まず文部省といたしましての調査その他の問題につきましては、冒頭担当官からお答えいたします。
  22. 三角哲生

    ○三角政府委員 文部省の通達で警察庁の資料を引用しておることは、御指摘のとおりでございます。非行の件数等の調査になりますと、やはり警察で刑法に触れたということで補導をされたということが一つ数字を把握する場合の要素と申しますか、そういうことでございまして、学校でのいろいろな事件を件数で調べるということはできないことはないと思いますが、しかし学校の中でのいろいろな子供たちの行動というものをどの時点でとらえるか、子供同士のけんかのようなこともございましょうし、あるいは器物を破壊するといった非常にぐあいの悪い状況の場合もありましょうが、そこのところのとらまえ方というのが学校のような現実的な行動の場では大変むずかしいということもございまして、あえて警察の資料をお借りした次第でございます。  ただ、ただいま中野委員の御指摘にもございましたが、文部省といたしましては、そういう件数もさることながら、最近のこういう非常に増加しております少年非行、特に校内暴力につきまして、都道府県の教育委員会を通じまして、その内容を少し掘り下げた分析をするに必要な状況の調査というのを昨年末都道府県に依頼をいたしまして、目下報告を取りまとめ中でございます。その中から学び取れるものを探しまして、また必要な対策についての検討を進めたいと思っております。  御質問の実態でございますが、これは先ほどの通達でも引用しております資料でございますが、五十五年におきます補導人員、校内暴力の発生件数は、中学生で千二百二件、補導人員七千百八人となっております。高校生では三百五十六件、補導人員千九百五十人でございます。  なお、この件数は五十三年から五十四年にかけましては、高等学校等ではむしろ減っておりまして、中学の場合に少しふえる現象でございますが、大体横ばいでございましたものが、五十五年に入りまして件数並びに率の上でも非常に増加を見たわけでございまして、そういうことで私どももこれを非常に深刻に受けとめて考えていかなければならないというふうに思っておるわけでございます。  なお、こういった校内暴力の原因や背景として社会状況が非常に重大な原因になっておるかどうかという点でございますが、私どもといたしましては、それももちろんございますが、こういったことの原因や背景といたしましては、これを必ずしも単純に割り切って考えることは適当ではないのではないか、いろいろな要因がやはり複雑に絡み合って影響しているというふうに見るのが適当ではないかと思っております。でございますから、社会状況といたしましては、やはり非常に物質的に豊かな状況に入りまして、そういった中で人間の精神面の重要性といったようなことがおろそかにされている状況がございますし、それからやはり何といっても自分本位の考え方をするというような風潮もあるかと思います。そういったような事柄、それから家庭自体にも問題のある場合が多い。子供に対して必ずしも十分なしつけをいたしませんで、放任をしておる場合もございましょうし、あるいは不幸にして当該子供の家庭が形式的にかあるいは実質的に本来の機能を失うような状況にあるというような場合も多いようでございます。  それから学校自身の問題でございますが、学校につきましても、学校の運営が必ずしも緊張して適正に行われていない、そして一人一人の児童生徒に対する配慮が十分でないというようなことがやはり背景として考えられるかと存じます。なお、もちろん子供自身に内在する子供自身の性格とかそういったものもあるわけでございますが、そういったものの複合の結果として、児童生徒が学校生活によく適応できないとか、あるいは例といたしましては、学校外部のいわゆる非行集団などの影響を受けるといったようなこともきっかけとなったりいたしまして、欲求不満が爆発して、物に当たり人に当たるという形で発生しておるというように考えておる次第でございます。  地域的分布の問題につきましては、これは最近の傾向としては、必ずしも特定の地域で典型的に起こるということでなくて、わりと農村部等にも起こっておりますので、私どもとしては、これについてはなお状況を個々の事例について研究をし、そして要因がそのどのあたりにあるかということ、地域との関係あるいはその地域における社会の取り組み体制といったようなものも影響をしておるかと思いますが、そういった点についてはなお今後研究のためにいろいろな努力を尽くしたい。と思っております。
  23. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  総理府といたしましては、青少年対策本部として最近の青少年非行、特に家庭内暴力、校内暴力の発生の増加に重大な関心を実は持っておる次第でございます。  戦後の青少年非行のピークというものが第三の波をかぶっている。第一は、昭和二十六年ぐらいの戦後の社会混乱、これが一つ原因となって青少年の非行が多発をいたしました。第二の波は、昭和三十九年の高度成長期における経済社会の格差の中から起こってきた青少年の非行問題、現在は豊かな社会の中で忍耐心の欠如、現在したいことをやる、将来に対して忍耐強く待つというような現在の青少年の心境ではないということが、青少年の意識調査から実は出ておるわけでございます。  こういう中で、原因が一体どこにあるのかということになれば、それは核家族化の問題、それから親の過保護、放任主義、かぎっ子、あるいはまたテレビの影響が相当あるのではないか。しかも、新聞雑誌等というものは相当むずかしい文字が使われておりますから、低学年にはなかなか読みにくいものもございますけれども、映像を通じて入ってくるいわゆる一般向けのテレビ放送というもの、判断思考が十分教育を受けて完成をしておる大人と、全然判断能力を持たない青少年とが同じメディアを通じて情報を受け、刺激を受ける、そういうものに対してどういうふうな影響が起こっておるのか。よく非行少年の陳述を見ますと、やはりテレビを見て非常に刺激を受けた、あるいはまた親のしつけが甘かったというようなことが報告をされておるということが現実の状態でございます。  地域的にどうかというようなお尋ねでございますが、昭和五十三年一月から五十四年八月までに全国の少年補導センターで受理いたしました補導件数は千五十一件に達しております。地域的には相談事例の多い県が、東京百七十一件、大阪六十三件、福岡五十七件、相談事例の少ない県は、沖繩がゼロ、宮崎がゼロ、山梨一件、佐賀。奈良各一件、このような状態になっております。  以上でございます。
  24. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 警察関係から一言申し上げます。  ただいま総務長官からお話ございましたとおりでございまするが、私、第二回目の青少年の問題が重要になった時期におきまして地方行政を直接担当してきた経験から申しますと、末端におきまして、どうしても警察というものの介入と申しますか、関与を極力拒否する傾向がある、これは事実なんです。しかしながら、現在の民主主義的な警察のもとにおきましてはそういう懸念はないと私は考えておりまして、実際運動におきましては、警察当局も入れましてこれの対策を講じた経験を持っておるものでございます。そして、相当成果を上げたつもりでございます。したがって、今後におきましても、この問題についてともすれば警察を拒否する傾向がなきにしもあらずでございますが、十分これを取り入れて活用するという方向で対策を講ずべきだろう、こう考えておるのでございます。  一、二申し上げておきます。
  25. 中野寛成

    中野(寛)委員 それぞれにお聞きをいたしますと、それぞれのお役所の性格が大変あらわれて大変興味深うございました。しかしその中で、私はこれらの問題を論ずるときに、教育のプロとして、たとえば教育の場所としては家庭あり学校あり社会があります。しかし、家庭といっても、父親母親になるというのは何も教育のプロとしての認識を持ってなるわけではないわけです。また、社会といってもこれは大変幅の広いものでありまして、具体的にそのどこがどうというふうにつかめるものでもない。言うならば、それを束ねるところ、リードするところ、または主体となるところは学校だろうと思うのです。ところが、文部省のお答えは、いわゆる現在調査中である、より具体的な調査をしておりますというのが第一点。  そしてもう一つは、原因は多岐にわたっていると思いますから一概にどれというふうに限定しては言えないということで幾つかのことを羅列されましたけれども、しかし具体的にどこから手をつけるというそのめどになるようなお答えは、残念ながら返ってきませんでした。そこに問題があるのではないか。学校当局にお任せをするしかないという考え方、または地域の教育委員会でやってもらうしかない、そのために文部省としては基本になるようなことを通達として出すほかに道がないということで通達を出された。書いてある内容を見ると、きわめてあたりまえのことです。しかし、このあたりまえのことが行われなかったからいまこういう事態になっているのではないのか。問題は、通達の内容だとか通達をやったとかということではなくて、それをどこでだれがどう責任を持ってやるかということではないのか。それが一つも明確になってこない。これが問題なんではないでしょうか。だから私は、そういう意味で文部大臣に、文部省の責任です、そして文部省が責任を持ってこれからの対策を考えます、文部省だけで、または教育委員会、学校当局だけでむずかしいことがあれば、社会的な問題は総理府に、またはいま国家公安委員長がお答えになりましたように、警察の理解と協力が必要であるとするならばそれも含めて中心になってやっていきますという毅然たる姿勢と態度がまず基本になければ、その後何をお伺いしても意味がないのではないかと思いますが、文部大臣御自身からもう一回いかがですか。
  26. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいま御指摘のとおり、この青少年の非行問題というものは、精神的な教育の問題を扱っておりますわれわれ文部省の責任でございます。と同時に、それに対しまして、御質問の中で、これは一過性がどうであるかというお話もございましたが、私は一過性でありたいとは念願いたしますけれども、必ずしもこれですぐ終わってしまう問題ではございません。  なお、いまのお話の中で、学校教育というものが中核をなしますけれども、しかしその前における家庭教育あるいはまた社会全般から影響を受けます青少年の問題については、やはり社会教育という面からも総合的に当然影響を受けることはお話のとおりでございます。  さて私は、これらの問題の中で基本的には、やはり愛情という問題あるいはまた親子の精神的な断絶というような問題、そういう非常に深いところに根源を発すると考えております。学校教育におきます教育活動の充実を図りますことは当然でございますけれども、その中においても、特に生徒の指導講座の開設の問題でありますとか、生徒指導資料の作成の問題でありますとか、配付等によります教員の資質の向上の努力でありますとか、生徒指導研究の推進校や生徒指導研究推進地域を指定いたしまして、学校ぐるみ、地域ぐるみの生徒指導に当たる、こういうことも具体的にはやっております。  なお、そのほかに、社会教育の面におきましても、家庭教育の学級でありますとか、家庭教育の総合セミナーといったものもいたしておりますが、この青少年非行の前にお話しになりましたベビーホテルの問題なんかでも、期するところは母の愛情という問題、この若いお母さんの教育という問題を原点として非常に重視しなければならないと考えております。  問題は多岐にわたりますけれども、先生の御質問に対しまして、私は、まずもって文教を預かりまする文部省の責任であるということはみずから深刻に痛感いたしておる次第でございます。
  27. 中野寛成

    中野(寛)委員 それでは、通達だけではなくて、調査ももちろん行われていますが、具体的に文部省が中核となって、そして地方の教育委員長会議や、また教育長、また現場の先生方のお話を聞く。教職員組合とそのために話を進めていく。たとえばこういう問題を解決するということは教職員にとっても職場の改善そのものにつながるわけです。そしてみずからの問題です。これはイデオロギーやその他の問題ではなくて、まさにともに力を合わせてやっていく問題だと思います。そういうふうに考えますと、文部省が中核となってそのような具体的な作業を、通達ではなくて作業を文部省がおやりになる、そういう御決意だと受けとめてよろしいですか。
  28. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 さようでございます。
  29. 中野寛成

    中野(寛)委員 それでは次に進みます。  いまお答えの中で、たとえば総務長官から核家族化の問題が指摘をされました。そして文部大臣からも親の問題が指摘をされました。私は、この言葉を聞くたびに、正直言って、私自身のことを指摘されているという気持ちで受けとめるのです。いまのこの事件を起こす子供たちの親の世代がまさに私の世代です。戦後の教育を受けて、そしてその中で、終戦直後、親自身も具体的な教育に対する自信を失って、そういう中でもちろん私たちは道徳教育も倫理教育も受けた経験はありません。そして核家族化の中でおろおろしている母親の姿を見ながら育ってきたことも事実です。言うならば、戦後教育の被害を受けた、恩恵ももちろん受けていますが、被害の第一世代、それがいまの子供たちの親であります。そういう意味で、私たち自身も大変痛切な問題としてこの問題を考えざるを得ません。  そこで、私なりの体験を含めて幾つかの御提案を申し上げたいと思います。  たとえば自信がない、定見がない、または育児ノイローゼに悩む母親もいる。幼児期に溺愛をし、子供の言うがままになって、そして肝心の青春期には過保護、過干渉。間違った教育をややもすると自分の感情のおもむくままにやってしまうこともあることをそれなりに反省をします。もちろんりっぱなお母さんお父さんが多いことは事実です。しかし、一部でそういう傾向があることは残念ながら認めざるを得ないと思います。し・かし、その父親も母親も悩んでいるのです。どうしたらいいのでしょうか。  たとえば放送局が主催をしてそのための教室をやると満員になります。そのための番組がテレビで放送されれば、その視聴率は抜群に上がります。みんなが情報を欲しがっているのです。去年も同じことを提案しました。そしてことしのいま審議中の予算案の中で、一つだけうれしいことがありました。文部省が子育て教室、いわゆるあすの親のための学級を実施するという、そのための予算が組まれておりまして、大変うれしいことです。しかしながら、ここで措置されるのは約千学級。参加できる人数は何人なんでしょうか。むしろこういうものを普遍的に、厚生省ともどもに協力をし合いながら、去年申し上げましたけれども、たとえば母子手帳等が交付されるそのときに一日有給休暇制度とか、いろいろなことを考えたらいい。その段階やそのほかの方法を講じながら、すべての親になる青少年に対して教育のあり方について具体的に、それも偏向教育だと指摘をされる危険があるならば、あらゆる分野の方々に参加していただいたらいいではありませんか。あらゆる分野の方々に参加していただいて、そこで論議して、そのやり方を決めたっていいではありませんか。私は、この子学級の子育て教室のスタートを喜びます。  しかし、それは文字どおりごく一部、かつスタート時点にしかすぎませんし、これに参加できる人たち、参加するぐらいの人たちだったらむしろ問題を起こさない、これを普遍化させていく方途についてもっと前向きに積極的に考えるべきではないかと思いますが、文部省、厚生省いかがでしょうか。
  30. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 母親教育その他の問題につきましては、最近真剣にこの問題が取り上げられるようになりましたことはまことに御同慶にたえません。特に関西方面からの陳情に対しまして、学校教育もさることであるけれども、もっと母と子供の問題が重大であるということをあえて申しております。  なお、その具体的な措置につきましては担当官からお答えいたします。
  31. 高石邦男

    ○高石政府委員 お答え申し上げます。  千学級のあすの親のための学級につきましては、初めての試みでございますので、これが実効の上がるような方策を講じてまいりたいと思っております。そのためには、市町村が事業を開設するわけでありますが、厚生省関係のいろいろな機関とも密接な連絡をとりながら、講座内容を開設してまいりたいと思っております。具体的には、その取り上げる内容としては家族に関すること、親の心構え、子育てに関すること、ないしは健康な子供を産むためのいろいろな講座を含めて開設したいと思っているわけでございます。したがいまして、その講師には、教育関係者だけではなくして、保健、医療、そういう関係の人力の御協力も得ながら、実効のある内容にしてまいりたいと思っている次第でございます。
  32. 中野寛成

    中野(寛)委員 普遍化させる方法についてお聞きしたのです。その内容については知っているのです、先ほど申し上げたように。
  33. 高石邦男

    ○高石政府委員 一つは、各市町村で開設する場合に結婚した男女を対象にとらえますので、まず市町村では結婚した男女のリストアップをいたしまして、そういう男女に対して呼びかけていく、そしてその学級への参加を勧めるというようなことを考えているわけでございまして、今後いろいろな方面からの意見を十分に承りながら、具体的な内容は来年度実行してまいりたいと思っております。
  34. 園田直

    園田国務大臣 非行少年は、御発言のとおり、原因があるから非行少年が出るわけでありまして、率直に言って、やはり親に責任があると考えております。特に母親責任があると私は考えております。ちょうど終戦後の一つの時代でもあるし、核家族で、しゅうとさんとか親のしつけを受けてないという点もありましょう。そこで、しかしこれが時代でありますから、非行少年の問題は私の所管でありませんけれども、そこまで行く間の主な原因は私の所管でございますから、まず妊娠されたら、御発言がありましたような健康手帳みたいなものを市町村と連絡をとって、そしてこれを中心にして新婚学級というか、あるいは生まれたら育てがいのある子供ができるような一つの学級、これはすでにやっておりまして、いままで二十何万という教育をやっております。  それから、今度はまた子供が生まれましたら、文部省のお世話になるまでの間母親がどのようにしつけていくか、あるいはおつむをどのように変えるか、こういう母親学級というものがおっしゃるとおり必要だと私は考えております。これもやっておりますが、今年度の予算もお願いしているわけでありますが、少なくともいままでの母親、おしゅうとさんの役目を政府がやるということでありますから、これは簡単な形式だけでは役に立ちませんので、やはり保健所それから市町村、こういうところが主体になって、国の方がこれに対する費用だとかその他の助成をして、もっともっと拡大充実をして、そして文部省のお世話になるころには、子供が健全な気持ちで、喜んで、大手を振って文部省のお世話になる、こういうふうにするのが私の責任だ、こう考えて努力をいたしております。
  35. 中野寛成

    中野(寛)委員 そのような親が悩んだとき、またはその意欲をすでに持っているわけですが、それにこたえる方途を講じていく。またはその意欲が、残念ながら親になる資格に欠けると思われるような人も中にはいるかもしれません。そして、そういう人たち子供が、ややもすると問題を起こすようになっていくかもしれません。傘として高いかもしれません。ですから、これを何らかの施策を講じました、こういう受け入れ口をつくりましたではなくて、むしろ積極的に、たとえば健康のために相談員が巡回をいたしました、そういう巡回制度その他もありますけれども、いろいろな施策やアイデアを生かして、そしてこれに臨んでいくということが必要だ、普遍化させることが何よりもまず必要なんだということを御認識をいただきたいし、そのためには学校の先生方にも御協力をいただきたい。  また、たとえば先ほどのように、話がちょっと戻りますが、ベビーホテルの問題にいたしましても、むしろそこの保母さんや経営者がきちっとした資格を持って、預けにこられるお母さんに、ここにお預かりするのはここまでが限度ですよ、しかしこれ以上はあなたのお仕事ですよ、そのことをも明確に言える、そういう保母さんなり経営者がきちっとベビーホテルにそろっていたとしたら、たとえば学校や幼稚園や保育所公立保育所なんかはそういうことをやるわけでしょう。そういうことができるようにしておったとしたら、これはまさしくいま私が心配して、より一層普遍化させていただきたいということの一つの役に立つと思うのです。  話が戻るようで恐縮ですが、ちょっと一つだけベビーホテルについての質問を追加させてください。  ベビーホテルを開設する経営責任者及び育児専従者の資格及び資質の観点から、許可制度の検討をなされるべきではないでしょうか。また、厚生省としては再調査を行うと言っておられますけれども、その調査の段階で、経営者及び保育専従者への再教育の場を厚生省が設けるよう検討するということはいかがでしょうか。また、いろいろな検討をなされる段階で、ベビーホテルのモデルケースとも言えるようなところの経営者なりその専従者なり、そういう方々にも御参加をいただくということの御検討をなさってはいかがでしょうか。ひとつ追加してお尋ねいたします。
  36. 園田直

    園田国務大臣 ベビーホテルをどのようにやるかは別といたしまして、それが急増することは事実でありますから、これの経営者及び子供を預かる方々について一定の資格を付与するとか、あるいは研修的な教育をやるとか、こういうことは十分考えなければならぬと思っております。
  37. 中野寛成

    中野(寛)委員 いま私が申し上げたことについては、大臣としてはその方向でやっていただける、こういうことですね。  それでは、次に移りたいと思います。もう一つ、幼稚園と保育所の問題です。幼保一元化の問題です。いつまでも進みませんですね。お母さん方はこう言っていますよ。厚生省と文部省とで子供のとり合いをしているのではないかと。自治体でも同じ批判を現場で受けるわけです。いま自治大臣がうなずいておられます。たしか昭和五十七年度から四、五歳児の全入の方向が決定をされて、検討が進められているはずです。しかし、これも実は幼保の一元化がなされなければ、この全入という言葉はかけ声だけに終わってしまいます。希望者だけは全部入るのだと言ってみたって何の効果もないのです。たとえば幼稚園に通った子供たち。幼稚園に全入と言ったって、幼稚園では短時間だけしか預かってもらえないから、幼稚園に行く年齢になっても、すなわち四、五歳児になっても保育所に預かってもらっている子供さんがたくさんいらっしゃるわけでしょう。その子供たちをも幼稚園に収容することはできません。幼稚園は、その時間が過ぎたら家に帰ることが確かに理想でしょう。しかし、それが不可能な家庭があるから、いろいろ保育所があるのでしょう。だったら、その後、いわゆる保育所としての性格を持ったもの、または幼稚園と保育所の両方の性格を持ったようなもの、そしてある一定の時間は幼稚園的保育をする、その後は保育所的役割りを果たす、そのようなことが検討されなければいけないのではないか。昭和五十七年度からの四、五歳児の全入なんということは、そういうことも含めて考えられなければかけ声だけに終わってしまいますが、幼保の一元化についてどのようにお考えですか。
  38. 園田直

    園田国務大臣 委員会の記録を調べていただければわかると思いますが、十三年前、私、厚生大臣をやったときにも、先生と同じように、幼稚園と保育所を一元化すべきであるという意見を主張しておったものであります。農村等で保育所に入所したいという希望が非常に多いわけであります。それを聞いてみますと、保育所というよりも、保育所に行った子供と行かない子供はどうもしつけが違う、学校へ行ってから態度が違う、こういうことで、農村あたりではすでに保育所を幼稚園と同じように考えているわけであります。  しかしながら、幼稚園は文部省、保育所は私の方。そして一方はお金のある人がやってなかなか財政もいい。保育所はこつこつやっている。こういうことではいけませんので、ただいま文部、厚生両省で検討しているそうでありますが、この検討の結果をもってやりたいと思いますが、私はこれを推進する方向で努力をいたしております。
  39. 中野寛成

    中野(寛)委員 文部省、いかがですか。
  40. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私も就任以来、何とかこの保育所と文部省との話し合い、調整をつけたいと努力をいたしておるところでございます。ただいまの厚生省のお話のように、働く母親の方々のあり方というもの、また文部省としての教育という考えから出た幼稚園の考え方、両者を何とかして私は調整したいと、せっかく努力をいたしておるところでございます。
  41. 中野寛成

    中野(寛)委員 いみじくも厚生大臣が十三年前からとおっしゃいました。大臣ほどの実力者が十三年前からおっしゃっておられる。そしてまた、私は、いろいろな予算委員会やその他の委員会等でこの問題をお聞きするのは、これでもう数回目です。そして、そのたびに検討中ということです。文部省で検討している間に、子供たちはボクシングをやっている。どっちもケントウだということになってしまいますが。ボクシングだって、たとえば世界選手権だって十五ラウンドで終わってしまうのですが、その検討はいつごろ結論が出るのですか。
  42. 三角哲生

    ○三角政府委員 検討しておるわけでございますが、そのやり方といたしまして、文部省と厚生省との間で相談をいたしまして、昭和五十二年十月末に幼稚園及び保育所に関する懇談会というものを発足させております。ここに学識経験者等入っていただきまして、林修三さんを座長として非常に真剣な検討を続けていただいております。これがただいまは両省協力のもとにこの懇談会の御議論が詰められまして結論をまとめる段階に入っておりますので、遠からずこの懇談会からの御答申と申しますか、御意見がちょうだいできると思っております。その御意見を踏まえて、両省で具体的な対応をまた考えてまいりたい、こういうふうに考えておる段階でございます。
  43. 中野寛成

    中野(寛)委員 ことしじゅうに結論は出るのですか。子供教育のことを行政改革の面から考えたくはないのですが、実はこれも行政改革の一つだと思うのです。そして、より能率的に、かつより効果的に子供たちの保育、教育ができるということも事実だと思うのです。これは御担当よりもむしろ御決意を関係大臣の方から、いつまでにやるんだ、むしろそろそろ時間的なけじめ、目標を決めてみたらどうですか。
  44. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 本件につきましては、懇談会を設けまして委嘱してございますが、懇談会の方からは、今年中には結論を出す、こういうことを申してまいっておりますことだけを御報告いたします。
  45. 園田直

    園田国務大臣 私の方の事務当局は、今年中ではありますが夏ごろまでには何とか、こう言っておるわけでありますが、ただ私は、どういう話し合いをやっているのかわからぬが、仮に文部省の所管にするか厚生省の所管にするか、こういう問題でもめておるのだったら、どちらの所管でも結構だということだけははっきりしておきます。
  46. 中野寛成

    中野(寛)委員 ぜひ夏までに結論を出し、そして来年度からはむしろ措置ができる、そこまで話を進めていただきたいと思います。もちろん現場の幼稚園や保育所の皆さんの問題もあるでしょう。御意見もあるでしょう。いろいろの問題があるでしょうが、その方々も、決してこの施策を前向きに進めることについては御迷惑ではないはずです。  次に、学校の問題に少し移っていきたいと思います。  まず、学校の先生方に対して期待されるところは大変大きいものがあります。先般来いろんな事例が新聞紙上等に載せられました。非行青少年の問題が報ぜられるかと思うと非行教師の問題も報ぜられます。そして、小学生段階で、子供がいわゆる番長と言われる同級生に殴られる、または教室の床にはりつけにされて、それを手伝わされた子供たち、それも番長に言われるからやむを得ず手伝う。そして押しつけられた子供のおなかの上に、机の上から番長が飛びおりる。給食の時間それを見ておった担任の教師は、自分の弁当を持ってこそこそと職員室へ逃げていって、見て見ぬふりをする。朝は遅刻をしてくる。授業時間が終わればそそくさと帰って、お母さん方のうわさによれば、教頭試験を受けるために一生懸命勉強しておられるのでしょう、こういうことです。その子供はついに学校へ行けなくなりました。そしてある日、その担任の先生が、夜の夜中に酔っぱらってその子供の家へ電話をかけてきて、あなたは私を首にするつもりですか、いつになったらおたくのお子さんは出てこられるのですかと酔っぱらって電話をかけてくる。そんな教師が多いとは言いません。しかし、一人たりともあってはならないたぐいの教師の姿ではないでしょうか。  こういう問題について、ほとんどいま同じ学校の他の先生が知らない。まして校長、教頭は知らない。知っておっても隠す。校長、教頭が担任の先生と一緒になって子供の親と話をして、そして何とか親をなだめる。悪いことをしている子供に注意をする、その対策を講じるのではなくて、被害者の方をなだめるという姿が見受けられます。一人そういう番長と言われる子供があれば、そのクラス全体の子供たちが被害者なんです。一人の非行少年の問題ではないんです。クラス全体の、学校全体の問題なんです。  この前の調査でも、私学の方にはそういう事例が少ないと出ておりました。どうして公立の方でそういう事例が多いのでしょうか。その中にはいろいろな問題が内蔵されているはずです。そしてそれは、教育委員会であり、文部省の指導能力の問題と姿勢にかかわってくる問題ではないのでしょうか。だから、警察の実態調査ではなくて文部省の実態調査も必要だということがそこにあらわれる。その実態調査、具体的に突っ込んで調査をし、足を運んで調査をすることでなければ本当の調査にはならないと思います。  私は、そういう意味で、教頭試験の制度、または校長になるその選択の問題、それから現職教員の再教育のあり方、そしてわが党が以前にも御提案を申し上げましたように、たとえば十年ごとに教員免許の審査制度を導入する等々、もっともっと教員の資質向上については具体的な措置がとられなければならないはずですが、いま何を文部省はしておられますか。
  47. 三角哲生

    ○三角政府委員 文部省といたしましては、教員にできるだけ優秀な人材を確保しようということで、中野委員御案内のように、いわゆる人確法の施行によりまして教員の待遇改善ということを図ってきておるわけでございます。  さらには、いま御指摘のような、教員になりましてからやはりその資質の向上ということが常に必要でございますので、新採用教員研修を初め、採用後五年の教員に対する研修あるいは教頭、校長等の研修を中央レベルでも行いますと同時に、都道府県レベルでも実施をする。その他、各教科別の研修も行いましたり、あるいは教育大学への現職教員の派遣といったようなことも考えまして、いろいろな角度から教員の資質向上のための施策の推進をしてきた次第でございます。
  48. 中野寛成

    中野(寛)委員 こういう施策を講じてきた次第ですとおっしゃったけれども一つも直っていないのです。いま何を検討し、何を行おうとしているか、そしてわれわれが幾つかの提案をいま申し上げたようにしてきましたけれども、それらについて前向きにお取り組みになるお気持ちはないのですか。そしてまた、これをやるために具体的に文部大臣は何かのお指図はされていないのですか。時間がありませんから、端的にお答えいただきたいと思います。
  49. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 問題は、管理体制の問題であろうと存じますが、学校が教育の質を上げてりっぱな生徒を育成してまいりますためには、校長を中心といたしまして全教職員が一致して教育の指導に当たる、この体制がぜひ必要でございます。このために校長、教頭、主任がそれぞれの職責を十分に果たしまして、今後職責を全うするようにせっかく努力をいたしておる次第でございます。
  50. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘の点はきわめて重大な問題だと考えております。  青少年の問題全般につきまして、政府としましては、関係各省庁連絡会議を十二月の十九日、一月十六日に開きまして、改めて一月二十日に青少年問題審議会にこの問題について諮問をいたしました。早急な御討議をいただいて、中間答申をいただいて、政府としてはできるだけの施策を関係各省と相談しながら打ち立てていく、そして社会の要求にこたえてまいりたい、このように考えているところでございます。  なお、先ほどお答え申し上げました数字で、学校内暴力と誤解をされる点があるかもわかりませんので改めて申し上げておきますが、家庭内暴力に関する全国調査数字でございました。
  51. 中野寛成

    中野(寛)委員 具体的に的確な措置を早急に講ぜられることをお願いしたいと思います。  親は教師の責任だと言い、教師は親の責任だと言い、そしてまた双方があわせて社会責任だと責任をなすりつけ合っているうちは絶対に問題は解決しない。まず、自分がなすべきことをなしていくことから始める、そのことが何よりも肝要だと思います。  時間が来ましたので、最後の問題に移りたいと思います。  なお、先ほど来、実態調査をしているとか検討しているとかというふうなお答えが文部省なりまた総理府なりからございました。それぞれにその資料ができましたら早急にちょうだいをいたしたいと思います。  一つは、現在医科歯科大学系統の不正入試等の問題が指摘をされております。これらについては、たとえば寄付金の問題や学債引き受けの問題、そしてもう一つは水増し入学、そして情実入学、これらのことについて毅然たる態度をとっていただきたいと思います。  昨日、また一昨日もこれらについては指摘をされておったようでありますが、たとえば医科歯科大学だけではない、ここに新聞のコピーがあります。大阪経済法科大学「商品券で受験誘う」「四十一校に配る」「「合格」と「不合格」」「受験生に二通の通知」、理事会は合格とし教授会は不合格としている、受験生はおろおろしている、こんな報道がなされています。  聞くところによりますと、この大学の理事長は、以前トルコぶろを経営しておった折に、二年間の執行猶予つきとはいえ、労基法違反で懲役二カ月の刑を受けるなど、学校の設置者としては疑義が持たれているため、この現理事長を理事から外すことを条件に学校の設立を認めたと聞いております。しかし、その後、三年以内に彼は理事長に就任をしています。そしていま読み上げたようなことが次々に行われています。  そしてもう一つ、時間がありませんから一挙に言ってしまいますが、ここに、いわゆる大阪経済法律学園という学校法人が大学を設置し、もう一つ、同じ代表者、同じ住所で、大阪経理経済学園というのが準学校法人として設立をされた。各種学校として四十三年三月に大阪府の認可を受けて設立されて一年間授業を行いましたが、その後十数年間休校状態にあります。私の調査した資料によりますと、その大阪経理経済学園という準学校法人は十数年間全く休校状態にあって、収入の道も全くない。それが債務者となって大学の方、すなわち大阪経済法律学園が権利者となって抵当権の設定が五十三年六月二十一日に、債権額四十五億円設定をされております。こういうふうな経理の不明朗さ、そしてこういうふうな学校運営の形態、きのうもきょうも、そして一昨年も昨年もことしも次々に出てくるこの実態に対して、文部省としては的確な指導と規制がなされるべきです。とりわけ医科歯科系については、昭和四十五年以後に設立をされた大学が問題を起こしているケースが多いのであります。当時の医療資源をもっと拡大しなければという国策に沿って、教育企業と言われる人たちが具体的な財政措置のないままに大学を設立していった。いわゆる教育を金もうけの手段にしようとする姿勢の中でこれらが行われたとするならば、いかにしてごまかすかということがはびこっていくのは当然のことなのではないでしょうか。むしろ文部省として具体的にこれらの問題について、たとえば教授会と理事会の明確な運営のあり方、経理の公開、これを義務づける。学校法人であり、そして教育が目的とされているならば、金もうけが手段でなければ経理の公開はいともたやすくできるはずです。そのようなことを次々に明確にすることによって、少なくとも受験生に不安を与えたり、社会的に疑惑を持たれたりすることはもうことしで終わりということにしていただきたいと思いますが、最後にそのことの明確な文部省の態度、具体的な諸方策についてお聞きをしたいと思います。
  52. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいま御指摘のような事例が頻発いたしておりますことはまことに遺憾でございます。同時にまた、それに対しまする処置に当たりましても、経理の問題、ことに入学の問題に関連いたしました問題等につきまして、文部省といたしましても徹底した態度で指導してまいらなければなりませんが、なお具体的な事例の問題につきまして担当者から一言例報告を申し上げます。
  53. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お答え申し上げます。  大阪経済法科大学の問題につきまして御指摘のような点がございましたことはまことに遺憾に存じております。  この大学は四十六年に認可された四年制の大学でございますが、従来から理事者側と教学側の間で、学校運営上大変不正常な関係にございまして、学生入学定員の超過でございますとか、あるいは教育研究条件の整備等につきまして改善を要するかなりの問題点がございます。こういうような事態に対しまして、私どもも、理事者側及び教員側のそれぞれの関係者をすでに三回ほど呼んで事情を聞きまして、必要な指導も行っているところでございますが、関係者が一日も早く学校の正常化に向かいますように、私どももそういう指導をいたしておるところでございます。  なお、具体的な学校の指導といたしましては、大学に対しましては視学委員等も派遣をいたしまして、現地でも指導を徹底させるように努力をいたしておるところでございます。
  54. 中野寛成

    中野(寛)委員 この問題については、実態を明確に調査の上で指導をされているとは思いますけれども、なお一層いま申し上げた経理の不明朗さ、このことも含めて再調査をお願いしたい。と同時に、大学全般の問題として、理事会と教授会の権限の明確化、そして理事会が入試の決定に影響を与えるようなことのないよう、本来の教授会の権限に基づいてそれが行われる、大学の趣旨はきちっと守られるようにすること、そして経理の公開について具体的に制度化をしていただきたいこと、そのことを重ねて要望申し上げ、これに対する文部省の御見解をお聞きして終わりたいと思います。
  55. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 お答えいたします。  学校法人の理事会とそれから教授会の権限、これをそれぞれ明確にするということにつきましては、先ほど大学局長から御答弁申し上げたとおりでございます。私立大学の円滑な運営かつ適正な運営を図るということのためには、やはり理事会と教授会が信頼関係の上に立ちまして、それぞれ教学面なりあるいは法人面のその主体性、独自性を尊重して行うということが望ましいわけでございまして、私どもは今後ともそういう観点に立ちまして指導を強めてまいりたいと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、大学におきましては、どこまでが教学面であり、どこまでがその法人の固有の側面であるか、そういう限界につきましては必ずしも明確に割り切れないものもございます。そういう点につきましては、やはりお互いが信頼し合い、その信頼関係の上に立ちまして、学生のためにあるいは児童生徒のためにりっぱな運営を期するということが一番望ましいわけでございます。いずれにいたしましても、今後とも私ども理事会並びに教学面それぞれお互いにその主体性、独自性を尊重するような形で大学が運営されるように指導してまいりたいと思います。  なお、もう一つ御質問のございました法人会計の公開でございますが、このことにつきましては、最近不明朗な法人会計が数多くの大学で出来している、表に出ているということで、私どもは大変遺憾至極だと存じているわけでございます。私どもの指導監督も必ずしも至りませんことにつきましては反省をいたしておりますけれども、一応学校法人の会計につきましては法律の規定がございまして、その内部機関といたしましては、学校法人の業務に関する重要事項につきましては評議員会に語るということが義務づけられております。そこで、そういう評議員会で十分にチェックしていただくことを私ども期待しておりますし、またその監査のためにはこれも法律に基づきまして監事が置かれているわけでございます。そういう監事が十分にその責務を果たすことを私ども期待いたしているところでございます。  いわゆる一般に外に対する経理の公開につきましては、これはそれぞれの学校法人が自主的に判断すべき事柄であるというふうに考えておりまして、文部省が画一的にいわゆる経理を公開すべしということで考えるのはいかがなものかというふうに存じているところでございます。
  56. 中野寛成

    中野(寛)委員 結構です。  もう一つの再調査の件、そのことについて大阪の大学の再調査の件について、大学局長の方からお答えいただきたい。  そして大臣から、いまの経理の公開等、不正を根絶させるための基本的な文部省の決意について端的にお聞かせをいただきたい。いまのように文部省サイドの言いわけがましいことは結構です。教育行政の中でいろいろな困難があることは事実です。それは承知の上です。しかし、経理の公開等についてはもっと前向きに真剣に、またそれにかわることがあるならばそれについてなさるべきです。このことについて最後に申し添えておきます。
  57. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 ただいまのことにつきましては、早急に調査いたします。
  58. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 貴重な御意見として承っておきます。
  59. 中野寛成

    中野(寛)委員 終わります。
  60. 小山長規

    小山委員長 中野君の質疑はこれにて終了いたしました。  次に、栗田翠君。
  61. 栗田翠

    栗田委員 私は、きょうは初めに、最近大きな論議を呼んでおります教科書をめぐって質問をさせていただきたいと思います。  この教科書についての批判は各方面からなされておりますが、共産党も、教科書というのは子供たちの学力を決める非常に重要な要素となっている問題でもあり、教育の成否にかかわる重要な問題だと考えております。また、戦前の国定教科書のあの歴史的教訓から見ましても、教科書のあり方が、それによりましては国民の思想、文化、社会の将来にとってきわめて重大な影響を持つというふうに考えているわけでございます。  私たち日本共産党は、教科書問題でかねてから政策を発表しておりますけれども、その政策の骨子をかいつまんで申し上げますと、一つは、教科書というのは真理、真実を貫き、真の教育的見地に立ったものであることという中身でございます。そのときどきの社会体制の維持や政府の政策にとって好都合かどうかということで教科書の中身は決められるべきではないということです。それと同時に、子供たちの心身の発達状態にふさわしい内容、順序、構成を持つべきものだということです。  第二は、言うまでもございませんが、憲法と教育基本法の平和と民主主義の精神に沿ってつくられるべきだというのが、私たち日本共産党の教科書についての政策でございます。  もちろん共産党も、いまの教科書がすべてよいと考えておりません。ですから、子供たちのよりよい発達ということを願いまして、改善のための批判もいままでしばしばしてまいりました。  ところが、現在行われています教科書批判の中には、偏向教科書という名のもとに一面的な見解、党派的イデオロギーを教科書づくりに持ち込もうとしているものが大変目立っております。このキャンペーンの急先鋒に立っているのが自民党でございます。特に、ここに私は「憂うべき教科書の問題」というのを持ってまいりました。これは自由民主党調査局政治資料研究会議というふうにきちんと書いてありますが、自民党調査局の情報資料でございます。この中にいろいろと問題なことが書き連ねられておりますけれども、たとえば一つ取り上げてみますと、この最後のところにこういうことが書いてございます。第四項「色の着いた教科書の大掃除を」、この中でちょっと読みますと、「共産党と日教組を征伐するのには、百パーセント確実な検定をやればよい。どんどん不合格にすればよい。疑わしきは罰せずではなく、疑わしいやつは全部罰する。そんなことをしたら、教科書がなくなるというが、教科書がなくなってもよいではないか。」云々。その後ですね。「そして、検定を行なう時に、私なら、巻末を見る、と言うのである。巻末に著者の名前がずーっと出ているから、さっと見て、あ、これはだめだ、内容は見ないでボツ。あとで、なぜボツにしたかという口実を、文章の中から探せばよい。」こんなことが書いてございます。  文部大臣に伺います。  文部大臣もまた自民党の一員としてやっていらっしゃいますけれども、また教科書検定の最高責任者でいらっしゃいます。あなたはこういう検定についての考え方、これをどうお考えになりますか。
  62. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 私は、りっぱな教科書が児童生徒に配られますことを念願をいたしております。  なお、具体的なことにつきましては担当者からお答えいたします。
  63. 栗田翠

    栗田委員 私は、いま大臣の御感想を伺っているのでして、これは自民党が言っていらっしゃることですから、こういう中身について大臣がどういうふうにお考えになっているか。(発言する者あり)いま自民党の講師が言っていらっしゃるというやじが飛びましたけれども、自民党調査局と銘打ってこれを発行していらっしゃるわけですけれども、検定をなさる態度として、こういうふうに巻末を見て、それなら名前を見て没、口実は後でよいということを支持なさいますか。
  64. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 私はただいま申し上げたように、りっぱな教科書ができることを念願いたしておりまして、一党一派に偏することはございません。
  65. 栗田翠

    栗田委員 文部大臣は一党一派に偏するようにはしない、つまり間接的なお答えですけれども、このような政治的イデオロギーをそのまま入れるようなやり方は支持しないというお答えだと承ります。  それから次にもう一つ大臣にぜひ見ていただきたいものがございます。委員長、これ、ちょっとよろしゅうございますか、大臣にお目にかけて。
  66. 小山長規

    小山委員長 はい。
  67. 栗田翠

    栗田委員 これは「ことりのくるひ」という大変きれいな絵本でございますが、大臣、ちょっとごらんください。その絵本の作者はいわさきちひろでございます。そして、この「ことりのくるひ」という絵本はボローニャの国際絵本展で国際グランプリを受けた作品でございます。このいわさきちひろという画家はその他の数々の童画もかいておりますけれども、その数々の絵の中で文部大臣賞を受けたり、またサンケイ児童出版文化賞なとたくさんの賞を受けている著名な画家でございまして、国際的にも十数冊の絵本が十数カ国に翻訳されていて、しかもそれがいま評判がよくてどんどん増刷をされておるという画家でございます。残念ながら七年前に故人になられましたけれども、いまでも国内では三百万部から四百万部くらいの絵本が、いわさきさんの手でつくられたものが売れているという、国内はもとより国際的にもトップレベルの童画作家でございます。  それでは、もう一つお目にかけたいと思いますが、これは教育出版社の国語の教科書でございます。小学校の国語の教科書で、これもちょっと大臣に見ていただきますが、よろしゅうございますね。——大臣に伺いますが、その絵本の表紙の絵をごらんになりましてどんな御感想でございますか。
  68. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 まことにかわいい、きれいな絵だと思います。
  69. 栗田翠

    栗田委員 私もその絵が大変好きでございます。ほのぼのとした情感が漂っていまして、子供たちがその絵を見たら本当に美しいと思い、情操が養われるだろうと私は思います。  その絵につきましても、この自民党の出しました資料「憂うべき教科書の問題」の中ではこう言っているのです。「共産党の」——このいわさきちひろさんというのは松本善明氏の奥さんであった方でございますが、「共産党の松本善明氏の細君の書いた絵が、小学校の国語の教科書の表紙になっている。これは大手の会社なので、採択部数が非常に多い。したがって、子供たちも、その親も、松本善明氏の細君の絵を、朝晩見ているのである。」云々。「もう、これだけで、今日の教科書に対する共産党の、影響力というよりも、支配力というべきものが明らかだ。」こういう言い方をしているわけでございます。  いわさきちひろさんの絵は、一九五四年、戦後間もなくから教科書の表紙などに、またさし絵に使われております。しかし、その絵の芸術性の評価をするのではなく、だれそれの細君であるからどうである、こういう形で「憂うべき教科書の問題」の中で取り上げておりますけれども、これは実に低劣な批判の仕方だと私は思うのです。私は、子供たちの学ぶ教科書の表紙というのは情感豊かな美しいものであってほしいといつも願っているわけですけれども、また文部省もこの芸術性を認めていらっしゃるからこそ検定合格をさせていらっしゃるのだと思いますが、大臣、いかがでございますか。
  70. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 御案内のとおり、教科書は検定審査を経まして決めたものでございまして、この問題につきましては一党一派の問題ではございません。なお、私は政府の文部大臣でございますので、どの党がどうということは関知いたしません。
  71. 栗田翠

    栗田委員 そのお答えを聞きましてぜひそういう立場でやっていただきたいと思います。  それでは、次の問題に移りますが、五十六年度使用、つまりことしの四月から使用されます中学校の教科書の記述が、もう教科書が検定合格をしまして見本本になって、そして各教育委員会その他におろされてどれを使うかという採択まで決定した後で内容が変更されたという問題がしばしば報道されております。この中で大きく変更されているもの、特に誤植とか脱字とかというものを書きかえたのではなく、内容そのものの変更がされているものに、原子力発電所についての評価とそれから商社についての評価が変更されているわけでございますが、どこの会社のどういうところがどのように変えられたのか、お答えをいただきたいと思います。
  72. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 担当者からお答えいたします。
  73. 三角哲生

    ○三角政府委員 五十六年度に使用されます中学校教科書の記述変更の問題でございますけれども、どこの会社のどの部分をどのようにというお話でございますが、ただいま御指摘の正誤訂正と称する記述変更は例年あることでございまして、その訂正の個所というのも、教科書全体についてでございますが、小中高等学校全体について大体一万カ所から多い年では一万五千カ所ぐらいになるわけでございます。特に社会科の教科書は訂正個所が多くて、一点の教科書について大体百カ所を超えるというようなことが多いわけでございます。  この内容、状況でございますけれども、これにつきましては発行会社からの変更申請の具体的な内容でございますので、これは長期的に見ましても当該申請者の利益に非常に関係のあることでございますと同時に、教科書の採択にも影響を及ぼす事柄でございますので、文部省としては、従来からもこれを公にするということはいたしておらない次第でございます。ここでも具体的にその会社名あるいは申請の一万五千に近い内容については申し上げられないのでございます。
  74. 栗田翠

    栗田委員 私は誤記、誤植、脱字だとかそういうものについていま伺ったわけではございません。原発と商社の内容変更はどこがどうされているのかというふうに伺ったわけでして、全体は一万カ所あるかもしれませんが、原発と商社がまさかそんなたくさん変わっているわけではないと思います。その点を伺っているのでございます。  しかも、採択に影響があるとおっしゃいましたが、いまのこの変更は、検定の過程でどう変わったかなどという問題ではなくて、すでに教科書が採択をされた後です。つまり、見本本として配られて、その教科書を見て、この教科書がいいからことしはこれを使おうよと決まったものが変わっているわけですから。これは普通の商品の常識でいいますと、これこれの見本がございますと言って配って、その中で、じゃこれを買いましょうと選んだ、それが変わるわけですから、大体選んだ人に対しましてどう変わっているかということを言いませんと、見本と売ったものが違うということになるわけです。誤記、誤植などというのは、これを変えることはもちろんだれが見ても客観的に改良したことになりますけれども、内容が変わるということになりますと、これは評価にかかわるわけですね。そこを伺っているわけでございますから、その一万カ所をおっしゃっていただく必要はありませんので、原発と商社のところだけおっしゃってください。
  75. 三角哲生

    ○三角政府委員 誤記、誤植とおっしゃいましたが、それはもちろんでございますが、そのほかにたとえば統計資料等がさらに新しく正確なものが出た場合に更新するような例もございますし、それから文章といたしましても、たとえば表現が不十分なために誤解を与える、あるいは学習に支障を来すというようなものをよりよい文章にするということ、これについては、文部大臣に正誤訂正の申請を行いまして、その承認を受けた上で供給本を印刷するというのが以前からの通例になっておりまして、でございますから、先ほど申しました個所教という中にも、そういう訂正もずいぶん入っているわけでございます。  それで、ただいまの御指摘の原子力発電あるいは商社に関する記載について訂正の申請があったことは事実でございまして、これにつきましては会社側の自発的な訂正を受けまして、会社の自主的判断に基づきます正誤訂正の申請を承認いたしましたので、その承認を受けた上で訂正が行われたというふうに承知している次第でございます。
  76. 栗田翠

    栗田委員 私は中身がどう変わったかということを伺っているのでして、まだ伺わないところまでお返事がありましたけれども、もちろん正誤訂正というものが四つの要件にはまるどれかの訂正であるということは知っております。「誤記、誤植、脱字又は誤った事実の記載」があった場合、それから「客観的事情の変更に伴い、明白に誤りとなった事実の記載があることを発見したとき。」それから「統計資料の更新を必要とするとき。」とありまして、いま局長はこの三つをおっしゃっています。それ以外の四の項目というのもありますね。「その他学習を進める上に支障となる記載で緊急に訂正を要するものがあることを発見したとき。」というのがありますけれども、一、二、三に関するものは伺っておりませんし、また原子力発電所と商社についてと特定して伺っているのですけれども、おっしゃってください。
  77. 三角哲生

    ○三角政府委員 先ほど一般的に申し上げましたような事情で、記述の修正にかかわることについては、私どもの方から公にすることは差し控えたいと思っておるのでございます。それから、原発、商社だけを特に取り出して申し上げることも、ちょっとむずかしいことだというふうに考えます。
  78. 栗田翠

    栗田委員 それでは、なぜおっしゃれないかということですね。なぜ私たちが問題にしているかというと、その中身の判断がどうなのかということ、判断にかかわる部分の変更があるからです。私どもの方で調査をしたものがありまして、いま資料でお配りしてありますので、これは後に触れますから、どうぞ皆さんもごらんになっていてください。後でこの問題に触れます。  ところで、出せない、出せないと文部省はおっしゃいます。私は、常識的に考えて、見本本を配った後の訂正、特に記述の訂正は、当然これは採択をした側に対して示すべきだし、また見本として配った後、供給本が出るわけですから、どう変わったかという正誤訂正表というのは出してよいものだと思いますが、正式に予算委員会を通して資料要求をしたのすらお出しになっていらっしゃらない、こういうことですね。  ところが、そんなふうにして、出せません、出せませんと拒否をしていらっしゃる文部省は、一方では、出してはならないもの、文部省自身が出してはいけないと通知をしていらっしゃるものについて、ある特定のグループに対しては、自分の方から積極的に提出をしていらっしゃるんです。  ここにこういう本がございます。これは「疑問だらけの中学教科書」、監修が筑波大学学長の福田信之氏の手によるものでございます。大臣、これ、きょう発売されましたけれども、御存じですか。
  79. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 まことに寡聞で申しわけありませんが、まだ見ておりません。
  80. 栗田翠

    栗田委員 担当局長は御存じでいらっしゃいますね。当然御存じでしょうね。
  81. 三角哲生

    ○三角政府委員 まだ見ておりません。
  82. 栗田翠

    栗田委員 検定課長は御存じですね。昨日見ていらっしゃいますね。
  83. 藤村和男

    ○藤村説明員 私も拝見しておりません。
  84. 栗田翠

    栗田委員 うそ言っちゃ困ります。これ、きのうお目にかけているはずです。ごらんになって真っ青になっていらっしゃったという話も私聞いています。こういう大事なものを見ていないなどとおっしゃって、報告すらしていらっしゃらないのですか。重要な中身がここにあるのです。見ていらっしゃるはずです。うそ言わないでください。
  85. 藤村和男

    ○藤村説明員 先ほど申し上げましたとおり、私拝見いたしておりません。
  86. 栗田翠

    栗田委員 そういうふうにおっしゃるんなら、それでもよろしい。見ていらっしゃるはずですが、余りに内容が重大なために、見ているとおっしゃれないわけですね。  これの「あとがき」にこういうことが書いてあります。「五十六年度の新しい教科書は、一般には入手できないので、」これは見本本の段階でございます。「文部省の手を煩し、中学校「公民的分野」の教科書七冊を全部手に入れた。さっそく、さっと目を通してみたが、思わずこれはひどいとつぶやきが出たほどである。事の重大性から考え、今までの経験からして一人で調査するよりも、協力者を得て徹底的に調査する必要があると感じた。」一般には入手できないので、文部省の手を煩わし、七冊全部をそろえてもらったと書いてあるんですね。感謝の言葉が述べられてあるわけです。  この見本本というのは、実は文教担当の国会議員であっても、あらかじめ見せてほしいと言いますと、お見せできないと言って貸してもくれません。これほどの厳しい規制のあるものでございます。それを文部省が特定のグループにはこれをわざわざ率先して渡したということが書いてある、これはどういうことですか。
  87. 三角哲生

    ○三角政府委員 御引用の「文部省の手を煩し、」という言葉がどういう意味であるか、私にはよくわかりませんが、見本本の段階というのは展示会でございますとか学校に届いておるわけでございますので、これは何らかの目的で新しい本を研究しようとする方は手に入れることができますし、そしてそれは別に私どもが制約しておることではございません。
  88. 栗田翠

    栗田委員 局長、そういうことをおっしゃっていますが、文部省自身この見本本の扱いについてという通知を出していらっしゃいますね。局長、御存じないのですか。これは「教科書見本については、下表の送付先に限り、下表のとおり送付し得ることとなっており、学校又は教員等に対する献本は厳に禁止されていること。」だから私たちも手に入らないのです。そして教育委員会には何冊、教科書センターには何冊、それから採択地区では一地区当たり何が何冊とぎちっと数が決まっていて、それ以上出してはならないことになっています。いまのお答えはどういうことですか。
  89. 三角哲生

    ○三角政府委員 私が御返事申し上げましたのは、その段階では新しい本について各会社とも、新聞その他報道機関にもこれをお示ししたりしてオープンになっておるということでございます。  それから、見本本の冊数等に制限をいたしますのは、これはやはり会社間の競争といいますか、そういったものを公正な形に持っていこうというような、また別の視点からの取り決めというようなことであろうかと思います。
  90. 栗田翠

    栗田委員 冗談じゃありません。局長がそんなことをおっしゃるのだったら、私たちが要求したら本は出てくるはずじゃありませんか。いままで貸してくれと言っても文部省はお出しにならない。しかも、この「あとがき」ですが、これは国立大学の筑波大学学長が監修していらっしゃる水なのですよ。「文部省の手を煩し、」と出所までちゃんと書いてあって、だれにもオープンでございますなんて、局長、そんなことおっしゃったら困りますよ。「厳に禁止されていること。」、局長、大体側自分で出された通知を御存じないのじゃありませんか。とんでもありません。これは禁止されています。冗談じゃありません。
  91. 三角哲生

    ○三角政府委員 細部にわたってのことは私も詳しくわかりませんけれども、見本本の冊数には制限があることは御指摘のとおりでございます。ただ、会社の側において若干手持ち部数等の余裕がある場合には、それが何らかの意味で活用されるということは考えられます。
  92. 栗田翠

    栗田委員 これは大変ですね。「教員等に対する献本は厳に禁止されていること。」それがよいと言うのですか。こんな新解釈は初めて伺いました。文部省自身がいままでだめだだめだとおっしゃりながら、局長、そういうことをおっしゃるのですか。これは大変なことです。しかもこの本「疑問だらけの中学教科書」、つまり検定済みの教科書、文部省が検定した教科書をあれこれ批判してけちをつけている中身なのですけれども、これのもとの資料になっているのはこれでございます。これは全く同じ方たちです。監修は福田学長ですけれども、教科書問題研究会という方で十人ずらっと名前が並んでおりますけれども、それと全く同じ方がこれのもととなった資料をずっとそろえております。これは世界平和教授アカデミー主催第二回学際研究会議「学校教育のあり方」というところで発表されたものでございますが、この世界平和教授アカデミーというのは、私たち共産党などがかねがね問題にして批判してきました勝共連合に関係する団体です。ここに文部省は積極的に見本本を七冊全部そろえて渡し、さあこれを批判してくれとおやりになったわけですね。文部省自身が教科書を検定する立場で、教科書の中身をいろいろと変えていく、批判ができないから、かわりにこの勝共連合に関係のあるところに教科書を、渡してはならない見本本を七冊もそろえて渡して、さあこれで研究をしてくれと援助したということ、そう考えるよりほかございません。しかも、この内容を見ますと大変です。たとえば憲法の前文、そこについていろいろチェックをしてありまして、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」というところを問題にしています。それからたとえば「非核三原則」、核を「もたず、つくらず、もちこませず」というところのうち「もちこませず」というところを問題にして「「もちこませず」は安保と矛盾」するのではないかというチェックがしてあります。つまり安保条約があったら持ち込ませるのは必要じゃないかという意味ですね。こんなことが書かれている大変な中身なのですね。「金大中事件を彷佛とさせる記述」などという項目があって、日本書籍の「国家の主権と戦争」というくだりの中で「主権は、その国内にいる外国人にもおよぶ。どの国の人でも日本にいるときは、日本の法律にしたがう。したがって、外国の警察官でも、日本にきて、その国の犯人を捕らえたりすると、それは日本の主権を侵したことになる。」というところを抜き出しまして、「わざわざこのような記述をのせるのは、どういう意図があるのか?」つまり金大中事件をほうふつとさせるというふうに解釈をしているわけです。そうして問題にしている。それから原子力発電所のところなどでも、たとえばさし絵についている説明で、「原子力の平和利用として、原子力発電が実用化されつつあります。しかし、放射能の問題が、住民をおびやかしています。」というところで「今まで原発事故によって死者が出た例はない」などと書いてあるのですね。こういう観点でずっと教科書を見ている。いわゆる勝共連合につながるところに、文部省は、他には絶対出さない、決められた数以外絶対出さない見本本を積極的に渡して、さあこれでやりなさい、キャンペーンを張りなさいとやっているじゃありませんか。この責任をどうなさいますか。
  93. 三角哲生

    ○三角政府委員 文部省は、いま御指摘の平和云云という団体に教科書を、さっきの字句は忘れましたが、お世話をしたということはございません。
  94. 栗田翠

    栗田委員 これは絶対に事実を調査していただかなければならない。ございませんとおっしゃるけれども、国立大学の学長が堂々と書いている、監修している本の「あとがき」に書かれていることなのです。そういいかげんなことを言っていただいては困ります。
  95. 小山長規

    小山委員長 この際、山原君より関連質疑の申し出があります。栗田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山原健二郎君。
  96. 山原健二郎

    ○山原委員 ただいまの問題ですが、文部省は見本本についてはちゃんとした規定を出しているのです。御承知でしょう。これは献本は厳に禁止されることと明確にしています。しかも、見本本を先生方あるいは教育委員会が採択する場合に展示をするわけですが、それは教科書会社から本当にわずかの部数が送付される、その部数までちゃんとこの規定の中には書いているのですよ。それ以外は渡してはならぬ。これが文部省がやってきておる検定の過程なのです。それが文部省の手を通じて渡されている。文部省がわざわざ各出版会社から集めてこれを渡している。もともと地方教育委員会には、教科書は教科書会社から送付される。わざわざ集めてこういう研究グループ、特定の思想を持った研究グループに対して渡している。これは重大な問題です。そんなことができるなら、われわれがいままで見本本を見せてくださいと衆議院の文教委員会で幾ら要求しても、貸してもくれない。わざわざ会社から集めてこれを特定のグループに対して差し上げている。これは重大なことです。しかも、この中に、本日から公表される何万部と出るこの本の「あとがき」にちゃんと書いてあるのです。文部省からいただいたのだ、ほかの者には手に入らないけれども文部省からいただいたのだと書いてある。知らないでは済みませんよ。これは文部大臣、直ちに調査をして、そしてどういう経路でだれがこういうグループに対して渡したかを調査をして、この委員会にまず報告をしていただきたいのであります。お答えいただきます。
  97. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 お調べをいたしましょう。
  98. 山原健二郎

    ○山原委員 これは、この問題について、恐らく調査の結果によらなければ質問はできないと思います。恐らく粟田さんも同じだと思うのです。私は後で関連質問をやろうと思っておりましたけれども、知らないとおっしゃるから、調査をして、できれば、粟田議員の質問があと一時間足らず残っておりますから、その間に教えていただきたい。  それから、それができなければ、当然粟田さんはこの問題についての質問を保留されると思いますが、その点で調査をしまして、どういう経路でこういうことが行われるのか。もちろん私どもは、見本本が公開されていいと思っているんですよ。当然検定が秘密ではなくて、公開されて公然と行われるべきだというのが私たちの主張です。それを文部省は秘密にし、秘密にしてきた。そうしておいて、特定のグループに対しては公然と出している。これが許せぬ。いま文部大臣がおっしゃったように、直ちに調査をして御報告をいただきたいと思います。  もう一つの問題は、正誤一覧表の問題です。見本本ができるまでは、皆さん方秘密にしてきた。それからあとは供給本です。この見本本で先生方も教育委員会も採択を決定するのです。そうしてその後で正誤表がつけられる。それは本の作成ですから、誤字脱字その他の正誤、改正することはあたりまえです。それはあるのです。でも、これは公開していいものなんです。このような制約は全くありません。この正誤一覧表を見せない。そして供給されたものが、いま栗田議員がおっしゃったように、たとえば原発の問題であるとかあるいは商社の記述であるとか、重要な部分変化をしたならば、採択を決定しておる先生方が、これで来年度は教育しようと思ったときに、供給本を手に入れたら違っているとなったらどうするのですか。当然この正誤表は、これはもう公然とすべきである。したがって、これは本委員会の権威にかけても、予算委員会において、理事会で資料要請をしましたときに、この委員会は、その資料要請を受けているわけですから、それに対して当然資料を出すべきだと思いますが、その点はなおかつ出さないとおっしゃるのですか。
  99. 三角哲生

    ○三角政府委員 見本本は、先ほどの御質疑でございますが、これは公開されておるものでございますから、教科書展示場へ行けばいつでも見ることができる、そういうことでございます。  なお、献本等の制限をしておりますのは、これは過当競争の防止等の趣旨によるものでございます。  それから、大臣調査と申し上げましたけれども、私どもは、文部省の方からそういう本を提供した事実はございませんので、先ほども申し上げましたが、重ねてお答えさせていただきます。  それから、修正の内容については、これも先ほど栗田委員に申し上げたとおりでございまして、そのとき申し上げました理由で差し控えさせていただきたいということでございます。
  100. 山原健二郎

    ○山原委員 粟田議員の主質問ですから、時間が余りありませんので、長くはやりませんが、大臣は調べるとおっしゃっているんですよ。局長が出てきて、事実はないと。そんなばかなことがありますか。これは出ている。事実がなかったら、この会社の、この本を出した森本真章という人物、これは筑波大学の講師です。国家公務員です。  私は、委員長にお願いいたしたいのですが、この事実を明らかにするために、これは教科書検定の経過にかかわる重大な問題です。むしろ文部省がいままで主張していた根幹にかかわる問題ですから、この本の「あとがき」を書きました筑波大学講師でございます森本具章氏を証人または参考人として呼んでいただきたいことを要請をいたしたいと思います。それが第一点です。  もう一つは、本委員会が文部省に対して資料要求をいたしました正誤一覧表については提出をしていただきたいと委員長から命じていただきたいと思いますが。この二点について委員長のお考えを伺いたいのであります。
  101. 小山長規

    小山委員長 理事会で相談します。
  102. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つ、私はこれと関連しまして、本日、文部大臣は閣議の後において、記者会に対して陳謝をされましたね。この経過を申してください。
  103. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 その件につきましては、鈴木官房長からお答えいたします。
  104. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 お尋ねの件でございますが、けさ大臣が記者会見の冒頭におきまして記者に申し上げましたのは、過般の教科書会社の日教組の公開質問状に対します回答につきまして、文部記者会におきまして会見をいたしました際に、教科書検定課の課員が不用意にもその記者会見の部屋にいたということによりまして、記者会の方から文部大臣に抗議がございまして、それについて大臣が遺憾であるというお話をしたわけでございまして、その経過を踏まえた会見前のお話であったわけでございます。
  105. 山原健二郎

    ○山原委員 この経過は、日本教職員組合が各教科書会社、教科書協会に対して公開質問状を、教科書検定、特に見本本、供給本の関係について数項目にわたる質問をいたしております。それに対する回答が出てきた。その回答をめぐって、記者の皆さんが、教科書会社の社長さんをずっと前に並べて、そして記者会見が行われたわけです。言うならば、この回答の真相を究明するための、記者の皆さんにとっては報道の自由、重要な会議です。その会議の後ろに文部省の検定課の菊地課長補佐が立っておりましてメモをとっているのです。このことが記者会で問題になって、文部省に対する抗議が行われたのではなかろうかと思います。それに対して諸澤文部次官が陳謝をいたしております。そして本日、文部大臣が陳謝の発言をしているわけです。これは非常に重大な問題です。教科書会社にとっては一番恐ろしい存在が文部省検定課ですね。その中枢におる菊地課長補佐がこの会見の模様を点検しているわけです。どんなことを発言するか、いわば監視しているわけですよ。したがって、まさに戦前における演説会等に特高警察が君臨をして弁士中止をやったときと同じものなのです。それだけの内容を持っているのです。絶対的な権力を持って検定をする力を持っておる者が記者会見にいて、しかも後ろから見ておりますから、向こうの出版会社の社長さんたちの顔は全部見えるわけです。にらんでいるわけですよ。だから。恐らくこの会見では各会社の社長さんたちは思ったことは言えなかったと思うのです。こういう状態なのです。  私は率直に伺いますが、何のために、だれの命令で菊地課長補佐がこの席に臨席をしたか伺っておきたい。
  106. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 記者会見のときに、文部省関係の発表でございますれば当然関係者が立ち会うというのが通例でございますが、他の団体のときには、記者会の不文律といたしまして文部省関係者は入らないということが、明文ではございませんけれども、決まってまいったわけでございます。団体によりましては、いろいろ案内してまいりまして、その席の後方にいまして若干傍聴するというふうなことも過去におきましては黙認されていたということもございまして、たまたま案内してまいりましたその菊地課長補佐が当日傍聴しておったというような経緯ではないかと思います。格別の意図があってメモをとって監視するというふうなことではなくて、過去の記者会における慣行等を不用意にも忘れまして、そういうところに傍聴しておったということではないかと思います。
  107. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省の一係官が出席をしてメモをとっておったというようなことではないのです。検定をする中心の人物ですよ。しかも、恐らく参考意見を出したであろうという人物がここに列席をしているわけです。そういうことで真相がつかめるはずがないじゃないですか。それだけの配慮もできないような課長補佐ではないでしょう。私は恐らくこの回答文は文部省が作成したのではないかと思う。あるいは文部省との合作ではないかと思う。だからこそ社長さんたちがそれを逸脱するようなことを言っては困るからということで、彼が監視役になったのではないか。それくらい憶測をせざるを得ない状態なのです。少なくとも文部行政を預かる、しかも重要なこの問題の焦点に立っておる者が、これに列席をしてメモをとるなどということは、まさに不謹慎きわまることで、それだけの配慮すらないとするならば、これはもうそういう衝におることは適役ではないと私は思っております。同時に、こういう態度が結局教科書検定問題という、いままでずいぶん問題になってきたこの事柄をさらに一歩、こういう強圧的な態度で検閲制度にまで持ち込もうとする意図がありありとあらわれておるのではないかという意味で私は重要視しているのです。この点について、そういうことは全くしないということを文部大臣がはっきりと言えるかどうか、伺っておきたいのであります。
  108. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 先生の御懸念のようなことはあり得べからざることであると存じます。  なおまた、さっきの調査の結果につきましても、私はそんなことはあり得ない、かようにかたく信じておりますが、先生の御要望でございますから、私は調べてみましょうとお答えしたわけでございます。さようなことはあり得べからざることだ、かように考えます。
  109. 山原健二郎

    ○山原委員 そうであるとすれば、こういうことを仮に文部省がやっていないとするならば、こういう捏造文書を書いた国家公務員、しかも国立大学の教官である者がこういうことをやっておるとするならば、私は委員長に対して改めてこの講師の方を本委員会に少なくとも参考人として招致をしていただくことを再度要請申し上げまして、私の質問を終わります。
  110. 栗田翠

    栗田委員 それでは続きまして、文部省がこうして監視までしまして発言を気にしたこの会見、その中で言われていた原発と商社の書きかえの中身にわたって、またその経過について伺いたいと思います。  いろいろな報道によりますと、原子力発電所の安全性の問題で危険を指摘する内容のトーンをダウンさせたのは、科学技術庁から申し入れがあって、文部省がそれを伝えだということが言われております。きょうの朝日の朝刊では、六月ごろにすでに科技庁はそういうことを言ってきていたというのが書いてありますし、十二月二十日の日本海新聞を見ますと、文部省の「検定課長の話」ということで「科学技術庁から意見があったが、」こう書かれております。  科技庁に伺いますが、そうですね。
  111. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 お答えいたします。  御指摘の件につきましては、昨年夏ごろと記録されておりますが、文部省に参考意見として意見を申し上げたという事実がございます。私どもは原子力に関する正しい知識の啓蒙普及という観点から、参考までにということで意見を申し上げたのでございます。
  112. 栗田翠

    栗田委員 その参考意見なるものはどういう形で、またどういう内容でおっしゃったのですか。科技庁、伺います。ちょっと出てください。参考意見はどういう形で、どういう内容でおっしゃいましたか。
  113. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 参考意見は文書等で公式に要請したというものではございません。口頭で申し上げたということでございます。  なお、どういう内容かということでございますが、まず事実関係あるいは事実関係の間違いと申しますか、データが古いというような内容、あるいは表現等のバランスに欠けるのではないかという内容、あるいは誤解を与えるおそれがあるのではないかという点につきまして意見を申し上げたものでございます。
  114. 栗田翠

    栗田委員 続いて伺いますが、それはどの点を指摘なさったわけですか。
  115. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 先ほど申し上げました三つの観点からの意見を参考として申し上げたということでございます。(粟田委員「教科書の記述のどの点を指摘なさったのですか」と呼ぶ)具体的な点につきましては、特に記録が残っておりませんのではっきりいたしませんが、観点としては、ただいま申し上げた三つの観点からの意見を申し上げたということでございます。
  116. 栗田翠

    栗田委員 見本本をごらんになって、中を見て、この点とこの点は問題だというふうにおっしゃったわけですね、科学技術庁。
  117. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 見本本を拝見いたしまして、先ほど申し上げました三つの観点からの意見を申し上げたということでございます。
  118. 栗田翠

    栗田委員 それを受けて文部省が会社に参考意見をおっしゃったと言いますけれども、文部省、どういう形で参考意見をおっしゃったのですか、また中身についても伺います。
  119. 三角哲生

    ○三角政府委員 科学技術庁の担当課から寄せられました意見につきまして、この中身は先ほど科学技術庁の当局から御説明のあったものでございますが、これが参考となると思われましたので、関係会社に対しまして参考までにこれをお伝えしたということでございます。(栗田委員「どういうやり方で、伝え方はどうなさいました」と呼ぶ)口頭で申し上げたというふうに聞いております。
  120. 栗田翠

    栗田委員 口頭とおっしゃいますと、会社を呼んでいろいろおっしゃったわけですね。
  121. 三角哲生

    ○三角政府委員 会社の編集担当者に来てもらってお伝えしたというふうに聞いております。
  122. 栗田翠

    栗田委員 その編集担当者に会ったのはどなたですか。文部省のどなたです。
  123. 三角哲生

    ○三角政府委員 先ほど来御指摘の正誤訂正のための記述の修正等で編集者が向こうから来る場合もありますし、そういった機会に、そのときにお相手をする者から申し上げておりますので、特定のだれということではございません。教科書検定課の担当者、課員がお伝えしたということでございます。
  124. 栗田翠

    栗田委員 これは大変ですね。教科書の中身を変えるということ、これは検定ですと審議会にかけて、そしてそれを受けて調査官という正規の資格を持った人が著者に対していろいろ言って変えていくというのが検定の過程ですね。それをそういうちゃんとした会にかける段階はすでに終わって、合格しているものを文部省が、しかもその検定の最高責任者は大臣でいらっしゃるのに、検定に合格したものを、だれか知らない会った人がその場その場で言ったとは。そんなことをやっていらっしゃるのですか。
  125. 三角哲生

    ○三角政府委員 教科書の内容は常に改善が図られてしかるべきものであると思っておるわけでございます。でございますので、先ほど来御説明申し上げましたような形の記述の修正という仕組みがあるわけでございます。先ほどの原発の問題でございますが、これは科学技術庁から寄せられました意見を参考までに各会社にお伝えしたのでございまして、これによってどうこうということではございませんので、これはまあだれでもその機会をとらえてお伝えするということはできるわけでございます。
  126. 栗田翠

    栗田委員 これは大変なことですね。合格済みの教科書を変える、それをだれがが伝える。しかも、いつでも改善を図るなんておっしゃいますけれども、正誤訂正手続というのは、きちんとこの要件この要件にかなっているもの以外やってはならない、変更してはならないという四つの項目があるわけですね。つまり、これは客観的に誤りであるとか、それから統計資料を変えるとか、そういうものが一、二、三号であって、四号にある「その他学習を進める上に支障となる記載で緊急に訂正を要するもの」ですから、客観的な中身でなければいけないものなんですよ。それを参考意見としてだれかが伝えたなんて冗談じゃありません。  これはまず、そのやった人の名前を調査していただきたい。そして句会社に対して、だれがどういう言い方でやったかと、やってください。大臣、いいですね、これは。大臣に伺っています。大臣に伺っていますが、検定責任者は大臣ですから、局長が出てこないでください。
  127. 小山長規

    小山委員長 三角局長。(発言する者あり)三角局長に発言を許しました。
  128. 三角哲生

    ○三角政府委員 これは検定ではございませんが、教科書会社に対して参考となるべき意見をお伝えしたということでございますが、御指摘のような見方については私どもはよくわからないのでございますが、しかしそのプロセスの一々につきまして、私どもからまた申し上げることも適切ではないというふうに考える次第でございます。
  129. 栗田翠

    栗田委員 大臣大臣はどうお考えになりますか。大臣が最高責任者である検定、それに合格したものを文部省のどこかの一職員が、ああ変えろ、こう変えると意見を言う。どうなんですか。とんでもないじゃありませんか。いかがですか。大臣のお考えを伺います。
  130. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいま事務当局から申し上げたとおりでございまして、やはりお国のためにはりっぱな教科書をつくらなければならないという意図は皆様方も私も同じでございます。
  131. 栗田翠

    栗田委員 私は、この関係、経緯について調査を要求いたします。委員長、どうぞお取り計らいください、重大な問題ですから。
  132. 小山長規

    小山委員長 理事会で相談します。
  133. 栗田翠

    栗田委員 それでは、この問題でもう少し進みますけれども、私が聞いたところでは、参考意見の伝え方というのも、ただ伝えただけではない。いままでこういう正誤訂正で文部省が参考意見を伝えたということはないと思います。それをことしはやって、この点はこう直せと、そこまで文部省が言っているという事実を私は調査の中でつかんでいるわけで、これは大変な問題だと思います。  いま私、どこがどう変わっていて、これがどう問題であるかということを一々やろうと思いましたけれども、記者会見で圧力を加えた事実とか、それからいまのようにだれかわからないのが教科書会社を呼んで一々伝えたんだなどというそんな中身、そういうことをお聞きになれば、常識をお持ちの方はこれでは検定制度は崩れてしまう、そうお思いになると思う。検定制度の根幹にかかわる重大な問題で、いま参考資料としましてどこがどう変わっているかというものもお分けしてありますから、それが主観にかかわる変更であるということは見てくださればおわかりになると思いますので、あえて一つ一つについては言うのを省きます。  とにかく大臣、これは重大なことですけれども、検定規則や基準の範疇で正確な正しい検定をやっていただかなければならないのですけれども、今後そういうことについてどう考えていらっしゃいますか。
  134. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいま申し上げたように、りっぱな教科書をつくらなければなりません。それで、日進月歩の社会環境におきましていろいろ正誤の場合もありましょうし、あるいはまた学習を進める上からいって支障となる記載で緊急に訂正を要するものというような第四号の問題もありますし、この問題はわれわれとしましては重大な問題でございます。
  135. 栗田翠

    栗田委員 大臣、重大だとおっしゃいましたが、教育の中立性ということを十分に把握なさって進めていただきたいと思います迫  私もっといろいろ伺いたいのですが、時間がなくなってまいりました。  それで次へ進みますが、二月四日の予算委員会で、大臣はやはり教科書問題で答弁していらっしゃいます。その答弁の中で、これは民社党の質問に対するお答えですけれども、教科書の中身にいろいろ問題があるということを質問されたのに対して、「私は、先生の御意見と全く同様でございます。」とおっしゃいまして、それから少し後で、「それから同時に、文部省は、自民党その他各方面からのいろいろな御指摘にもよりまして、この偏向教科書という問題につきましては、これからいかにすべきか、さらにまた、教育委員会等に対しまする検定の問題等々もございまして、そうして、あえて教科書の無償給付という今回の問題も、それあるがために特に強調いたした次第でございます。」とおっしゃっているのですね。なかなかこの御答弁は難解なのですけれども、これはどういう意味ですか。私、最初ひとつ伺っておきますが、「教育委員会等に対しまする検定」とおっしゃっていますが、検定をするのは文部省ですね。だから、文部省などの行います検定とこれは直すべきなのでしょうか。そこをちょっと伺っておきます。大臣に伺っていますよ。
  136. 三角哲生

    ○三角政府委員 当時の速記録にはただいま粟田委員のお読みになったように記載されておりまして、私も政府委員として連なっておりましたけれども大臣のおっしゃる声がちょっと小さかったりしてしっかりとその内容を私自身は確認することはできなかった次第でございます。
  137. 栗田翠

    栗田委員 大臣の御意見。そう訂正してもよろしいですね。——大臣大臣お願いします。
  138. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 大変重大な問題でございますから、先生、もう一遍私に質問してください。
  139. 栗田翠

    栗田委員 つまり、いろいろおっしゃって、「さらにまた、教育委員会等に対しまする検定の問題等々もございまして、」とおっしゃっているのですね。しかし、検定をなさるのは文部省ですから、教育委員会が検定をするわけではありませんので、これは文部省などが行います検定の問題と訂正すべきでしょうかということです。
  140. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 御案内のとおりに、文部省の方といたしましては、あくまでもりっぱな教科書をつくるという上から申しまして、検定審査委員会というものを設けてございます。そして、その審査委員会の議を経るわけでございますが、御承知のとおりに教科書の採択は地方の教育委員会……(粟田委員「たくさんおっしゃる必要ないです。御発言のここのところ訂正」と呼ぶ)もう一遍やってください。
  141. 栗田翠

    栗田委員 私、時間がないので気になっているのですけれどもね、  結局、検定というのは文部省がなさるわけですね。ところが大臣はこの議事録で「教育委員会等に対しまする検定」というふうにおっしゃっているのですけれども、文部省が行う検定というのを「教育委員会等に対しまする」と言い違えられたのかと思っているのですが、そこはそうですねと。文部省が検定をなさるわけで、教育委員会はしないわけですから、これは全然意味が通じないのです。そこの御訂正はどうなさるのかということです。
  142. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 いまの法規上のことは局長からもう一遍答えさせます。
  143. 栗田翠

    栗田委員 もうよろしいです。委員長、いいです。もうだめなんです。
  144. 三角哲生

    ○三角政府委員 「教育委員会等に対しまする検定の問題」というのは若干意味がとりにくいという感じはいたしますが、教育委員会等に対する検定ということは、これは検定という字でございますと、やはり教科書会社に対するとか、著作者に対する検定、こういうことでございましょうし、教育委員会がこの教科書の問題でここに出るとすれば、それはどちらかと申しますと教科書に対する研究でございますとか、あるいは採択についての指導とか、そういうことになるかと思います。
  145. 栗田翠

    栗田委員 つまり、これは訂正してください。  それで、私がなぜこれを問題にするかと言いますと、その後「あえて教科書の無償給付という今回の問題も、それあるがために特に強調いたした次第でございます。」とおっしゃっている。無償給付というのはそれがあるから強調したとおっしゃっているわけですね。つまり何があるからか。偏向教科書という問題につきましていかにすべきか、それがあるために検定という問題もございまして、教科書の無償給付を強調したというふうにとってよろしいですか、大臣
  146. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいま教育委員会の問題と検定の問題とごっちゃにしておりました点は訂正をいたしましょう。  それから同時に、これがあるためというのは、あの当時の客観情勢は、何しろ大蔵省から絶対に教科書の無償反対という強いあれが出ておりまして、皆さん方も各党こぞって教科書の無償の問題を強調いたしておりました段階でございまして、そういうふうなことから申しましても、これあるがために一つの強みである、ぜひ無償でなければいけない、りっぱな教科書をつくるためにはかくあらねばならぬということを申したわけであります。
  147. 栗田翠

    栗田委員 いまのお答えですが、私これをずっといままでの質問の流れの中でのお答えとして読みますと、偏向教科書だということを委員指摘していらっしゃるわけです。それに対して、偏向教科書という問題について、それがあるために特に無償を強調した。つまり無償をてこにして教科書の中身を直していくんだ、検定を強化していくんだ、あるいは採択のやり方を強化していくんだとしかとれないのですがね。そういうことですね、これは。
  148. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 私は、さっきから申しますようにりっぱな教科書をつくりますために、偏向教科書云々なんということは、これはいずれにしても偏ってはならないものでありまして、中正妥当なりっぱな教科書をつくる、そういう意味でございます。
  149. 栗田翠

    栗田委員 それでは伺いますが、大臣、いまの教科書、このときに問題になった教科書は偏向教科書だと思っていらっしゃるわけですか。
  150. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいまの御質問でございますが、偏向、偏向でないという問題は、おのおの考えの違う方がたくさんおられます。そういうことを言う方もありますれば、またそうでないという方もありましょうし、この点はわが文部省は厳正中正でございますから御心配要りません。
  151. 栗田翠

    栗田委員 文部省はどう考えていらっしゃいますか。いまの問題になった教科書についてはどう考えていらっしゃいますか。偏向していますか、偏向していませんか。
  152. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいま申しましたように、文部省は厳正中正でございます。
  153. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、文部省は検定なさったいまの教科書は中正の立場に立っているということですね、責任を持って検定なさったから。そうですね。
  154. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 たびたび申し上げますとおり、文部省には検定審査委員会という中正な機関がございまして、そこにおいて審査をしたものを文部省の意見といたしております。
  155. 栗田翠

    栗田委員 それでは次の問題に移ります。  私、高等学校の教科書の記述変更の問題に実は触れたいと思いましたが、残念ながら時間がなくなってまいりました。これはたとえば教科書レポートその他などにも書かれておりますし、私自身が調査をしましても、五十七年度採択の高等学校の教科書の中で、たとえば憲法の前文の一部を削除せよというような意見が調査官から出されているなんという問題もあります。それからとにかくずたずたに五十七年度教科書はされてしまっているのだという実態が聞こえてまいります。たとえば、中には五ページ全部書きかえさせられているとか、著者の名前だけで切り捨てられているとか、さっきの何か名前を見て没にするというのをまるで思い出すような中身ですけれども、著者の名前だけで切り捨てているものも出されているとか、まさにこれこそが憂うべき状態です。ヒトラーの魔女狩りみたいなことが再来年度新たに採択されます教科書についてやられているということを聞いておりまして、これはいま大変な事態だと思うわけです。しかし、新たに採択される高校教科書について大臣は所定の手続に厳密に沿って厳正中正にやっていらっしゃいますね。
  156. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 当然でございますが、御指摘につきましては現在検定中の教科書に隠する問題でございまして、お答えを差し控えたいと思います。
  157. 栗田翠

    栗田委員 検定の責任者は文部大臣なんですからね。検定中だからと答えていただくということじゃなくて、その精神を伺ったわけでございます。  それでは次に進みまして、今度は男女差別に関する問題でございますけれども、実は昨年は国連婦人の十年折り返し点としていろいろな取り組みがされました。また政府は、コペンハーゲンの国連の会議で、婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約に署名もしていらっしゃいます。特に国内では、五十二年以来、前半期の重点目標としまして、女子の定年年齢差別撤廃に取り組んでいらっしゃると思います。  婦人少年局長に伺いますけれども一つは、この重点目標が民間の定年差別撤廃を重点にしているという点、それじゃ公務員はいいんだろうか、なぜ民間を重点にしているのかということを簡潔に伺いたいということと、それからもう一つは、いままで定年差別についてさまざまな判決が出されてまいりましたけれども、その判決の法的根拠は何であるかという例について伺いたいと思います。恐れ入りますが、時間がございませんので簡潔にお答えください。
  158. 高橋久子

    高橋(久)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、五十二年から民間企業における男女差別定年につきまして、改善指導計画を立てて指導を行っておりますが、これは民間企業を対象としておりますのは、公務員には定年がございませんので、私ども民間企業を対象にして指導しているわけでございます。  また、いろいろな裁判が出ておりますが、その裁判でこのような男女差別定年を無効とした根拠でございますけれども、たくさんの裁判例が出されておりますが、この無効と判断いたしましたのは、おおむね憲法第十四条に定める法のもとの男女平等の精神に照らして、合理的理由のない男女差別をしてはならないということが公の秩序として確立している。したがって、それに反するものは民法第九十条の公序良俗違反であるということをその根拠としております。
  159. 栗田翠

    栗田委員 つまり、憲法十四条、民法九十条などに沿っての判決が出されているわけでございます。公務員は定年が確かにございません。ところが、女子教員、学校の教員は定年がありませんから、退職勧奨という形で、そろそろおやめになったらどうですかと言って退職をさせるということが通例になっておりますが、実は私の調査で、いま退職勧奨をする、それを開始する年齢が男女で差があるところが全国で十二県ございます。しかも、その中で五つ以上の県が公文書で年齢差を明記しているわけです。つまり、たとえば女の先生は五十五歳になったら退職を勧奨する、男の方は六十歳だ。一つの例を挙げれば、五歳の差がついておりまして、これは石川県、鳥取県、福井県、富山県、島根県などの公文書が手に入っているわけでございます。しかも、これは勧奨でございますから、いやだと言えば済むのだというお答えも出そうに思いますけれども、なかなかいやだと言えない制裁措置があります。  たとえば石川の例を言いますと、一度で退職に応じたときは二、三号給の昇給はあるけれども、それ以後断って二度目になったらもう昇給をしないとか、それから鳥取などの例は、三回以後は勧奨をしない、つまり優遇措置がないんだ、女の方は五十四歳ぐらいから勧奨されて三回、五十七歳くらいでもう優遇措置なしですが、男の方は、ことしから六十一と言っていましたが、六十一になって初めて勧奨が始まる。非常にそういうふうに差がある。それから福井などは退職を拒否すれば男女ともその年に配転されていく、これは全部の方がされています。それから富山の例を言いますと、現実の問題として女子の場合五十五歳から勧奨開始ということですが、五十五歳以上の先生はみんないらっしゃらない。みんな五十五歳までにはやめさせられているという実態があります。  こういうふうに、定年こそないけれども勧奨年齢に差があって、しかも言うことを聞かなかったら遠くへ飛ばすとか優遇措置をとらない。優遇措置といいますと、たとえば退職金が八割増しなんという措置がありますが、一度断るともう増しませんよといったらやめざるを得ないということになりますが、そういうことがあるわけでございます。こういう大変な問題があります。こういう婦人の公務員の中での問題。  それからもう一つは、逆に今度は就職の入り口であります四年制大学の女子学生の採用などに関しても大変な差別がまだ残っておりまして、リクルートセンターの昨年の調査ですと、七九年度卒の女子大生は八二・九%の企業が募集ゼロ、男子と同等に募集され採用試験を受けたりする機会を得た人は一七・一%しかない、こういう実態になっているわけでございます。これは大変憂うべき事態だと私は思います。  そこで、こういうことをなくしていくという立場に立って国際婦人年も行われ、いま国連婦人の十年ということで取り組みが進められていると思うのですが、総理府総務長官に伺いますけれども、国内行動計画を決めていらっしゃる推進母体である企画推進本部の副本部長でいらっしゃる総務長官、この企画推進本部が昨年六月二十七日、申し合わせをしていらっしゃいますね。「国内行動計画後半期における重点課題として、差別撤廃条約批准のため、国内法制等諸条件の整備に努めるものとする」という申し合わせをしていらっしゃいますし、昨年のコペンハーゲンへ送られた当時の大平首相のメッセージでも同様のことが世界に向けて約束されております。決意表明がされておりますけれども、この申し合わせの中身に沿って、日本政府は国内の諸条件の整備に努めていらっしゃるわけですね。そういう方向で努力をなさっていらっしゃるわけですね。
  160. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えいたします。  去る十七日に企画推進会議から内閣総理大臣あてに意見書が出されておりますが、政府といたしましては、この後半期の行動計画として批准の終了まで国内法の整備に努力してまいる所存でございます。
  161. 栗田翠

    栗田委員 それでは、この国内行動計画後半期の最終年は一九八五年と国際的に決まっておりますけれども、つまり、一九八五年に向けて国内諸法規その他条件の整備を完了なさる方向で最大限の努力をなさるということですね。
  162. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生の御発言のとおりでございます。
  163. 栗田翠

    栗田委員 これは、たとえば男女雇用平等法とかその他のさまざまな法規の整備、そしていろいろな条件の整備がありますが、八五年に向けてそれを完了なさる御決意だということを伺いまして、ぜひその方向でがんばっていただきたいと思います。  それでは、時間を少し残しまして、さっき保留にさせていただいた問題は時間を残しまして、きょうはこれで質問を終わりたいと思います。
  164. 小山長規

    小山委員長 これにて、粟田君、山原君の質疑は、保留された問題を残して終了いたしました。  午後二時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  165. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
  166. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは法制局長官にお尋ねする方がいいと思いますが、いわゆる武器輸出禁止の三原則がありますが、これと憲法とのかかわり合いについて御説明を願いたい、こう思います。
  167. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 お答えいたします。  いわゆる武器輸出三原則は、武器の輸出によって国際紛争などを助長することを回避して、外国貿易及び国民経済の健全な発達を図るという目的をもって、外国為替及び外国貿易管理法に基づく輸出貿易管理令の運用基準として定められたものであるというふうに理解しております。一方、憲法九条第二項は、わが国自体のいわゆる戦力の保持を禁止しているものでありますので、その意味では、武器輸出三原則は憲法第九条が直接規定するものではないというふうに考えております。この趣旨のことは、昭和四十二年五月十日に参議院の予算委員会で、当時の法制局長官が答弁しているところでございます。  しかしながら、わが国の憲法が平和主義を理念としているということにかんがみますと、当然のことながら、武器輸出三原則は憲法の平和主義の精神にのっとったものであるというふうに考えております。
  168. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは官房長官お尋ねした方がいいと思いますが、この前、鈴木総理がこういうふうにここで言われたわけですね、私は、憲法の中でこういう条項が気に食わない、どうしても改憲しなければいけない、こういう主張に立って、この鈴木内閣の憲法を改正しないということにはどうしても政治家の信念として相入れないというような人があるならば、鈴木内閣から去っていただくほかはない、このように考えておりますと。これは速記録を写してあれしたのですが、これは鈴木さんとしてはどういうようなお気持ちで、どういうことを考えられて言われたというふうに理解したらよろしいんでしょうか。
  169. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理がそのように答弁をされたと私も記憶をいたしますが、鈴木内閣としては日本国憲法を改正する考えを持っていないので、したがって、閣僚としてこの条項が現実に不適当あるいは不適切であって、当面の政治課題としてこれを改めることがどうしても必要であるというふうに主張されるお立場の閣僚がおられるとすれば、それは自分の内閣の方針と異なるので、あくまでそういう御主張を貫かれようとするならば、それは閣外においてやっていただくしかない、こういう意味であろうと考えます。
  170. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 官房長官、鈴木さんはそういうようなことを特に言われなければならないような理由というか、必要性があったんでしょうか。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前後どのような状況において言われましたか、はっきり記憶をいたしませんが、申し上げたことの意味はただいまのような意味であろうと思います。
  172. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 必要ないことを言うわけはないですよね。そうでしょう、だれだってあたりまえの話でね。必要があるから鈴木さんとしてもこういうふうな答弁が出たんでしょう。だから、どうい多必要があったんでしょうか、こういうことを聞いているわけですよ。
  173. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 内閣総理大臣として、憲法をいま改正する必要はないと自分考えておるので、自分の内閣の閣僚はこの自分の方針に従ってほしいということをそういう形で表現されたものと思います。
  174. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そんなことはわかっているので、私は、何かそういうことを言わなければならない必要があったんでしょうかと聞いているんだけれども、あなたは答えませんからね。  そこで、これはどなたにお聞きをしたらいいのか、ちょっと私はよくわからないのですが、やはり常識的に言えば奥野さんに聞くのが一番いいということになるんでしょうかね。そうすると、今言ったことは、奥野さん自身はどうなんでしょうか。憲法を改正しなければならぬという、ここに鈴木さんが言われた信念を政治家としてお持ちであるというふうに、ずっといままでの経過から見て理解をした方が一番妥当なんじゃないでしょうか。
  175. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 昨年八月、稲葉さんから法務委員会で自主憲法をどう思うかとお尋ねいただきまして、私がお答えをしたことから国会で憲法論議が始まってきたように思います。その際に私は、政府として自主憲法ということに特別な動きをする、それは適当ではないと考えますと、こうお答え申し上げました。今日もその考えに変わりはございません。
  176. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いや、そんなことを聞いているのじゃなくて、あなたは政治家の信念として、鈴木さんはそう言っているんだから、政治家の信念として憲法を改正したいという考えをお持ちだということは、もうほとんど公知の事実ではないんでしょうか。
  177. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま私が申し上げましたことは、私の信念と変わったことを申し上げているわけじゃございません。
  178. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 話を少し変えたいと思うのですが、私、海原さんの本を読んだときに、自衛隊で、たとえば陸と海は二年でしょう、空は三年かな、途中でやめちゃう人が約一万人ぐらいいるということで、統計をとってもらったのですが、この点と、それから防衛大学の中途退校者、これも全体で何人ぐらいに対して何人ぐらい中途で退学しちゃうのか。それから、卒業してから防衛関係につかないで民間に打っちゃう人もいるのですね、その点はどういうふうになっているのでしょうか、防衛庁長官からお答え願いたいと思います。
  179. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  自衛官の中途退職状況を見ますと、昭和五十年度から昭和五十四年度までの過去五年間で、中途退職者数は年間約八千人から約一万二千人程度となっております。このうち士隊員を除く定年制自衛官、これは幹部とか准、曹のランクでございますが、これらの中途退職者数は年間約千三百人から千六百人程度でありまして、中途退職者の大部分が任期制の士隊員となっております。  そこで、士隊員の昭和五十四年度の中途退職者数を見ますと、年間約六千五百人になります。該当者に対する割合は八・四%でございまして、昭和五十年度の約一万一千人、率にしまして一二・八%、比較しますと減少を来しております。  なお、これら士隊員の中途退職の主な理由は、任期制隊員であることから将来に対する不安、隊内生活規律等に対する不満等によるものと考えられ、また中途退職者の増減は、民間の景気動向、特に求人需要の増減に左右されることが多いと考えられますが、士隊員の中途退職者は民間に比して必ずしも高くないと言うことができるものと考えております。  防衛大学の方はちょっと資料がございませんので、できましたら政府委員からお答えさせます。
  180. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  防衛大学枝の中途退学者でございますが、二十二期生、五十三年卒業の者でございますが、五百三十八名のうち七十三名。それから、民間の会社等に行った者、自衛官にならなかった者が十四名でございます、二十三期生、五十四年度でございますが、四百九十七名の入校者に対しまして八十九名が中退、二十六名が任官せずに他の世界に行ったという数字がございます。二十四期生、五十五年三月の卒業生は、五百十九名の入校者に対しまして八十九名が中退、任官しなかった者三十三名でございます。
  181. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、これは前に奥野さんが言われたことなんですが、私の質問に対しても言われていますけれども、自衛隊の整備というか、そういうような問題については精神的な面も無視できない、結局、この九条について合憲、違憲の判断が分かれている、これはやはり何か解決の道をお互いに考えていかなければいけないんじゃなかろうか、こういうふうにあなたは言われておるわけですね。  同時にまた、この前は、憲法九条をめぐっては自衛隊について政党や学者の間で合憲論、違憲論があり、解釈が分かれている、そのことが自衛隊の士気に影響することを私は心配している、こうした解釈の食い違いを打開するためには、憲法をもう一度つくり直してみる以外にないのではないかなと考えている、こういうように答弁されておるわけですね。これは結局は憲法改正が必要であろうというようにあなたの言葉からはとられるのですが、その点はどういうふうに理解したらよろしいでしょうか。
  182. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 憲法九条をめぐりまして解釈が分かれている、それが自衛隊の士気に影響している、心配しているものでございます。そういう意味で、いろいろお互いに考えていこうじゃないか、また議論をしていこうじゃないか、そしてよい結論を導こうじゃないか、こうも申し上げておるわけでございます。  私たちは、自衛隊は合憲だと考えておるわけであります。もし社会党も、自衛隊は合憲だとここで考え方を変えていただければ、私は大きくみんなの考え方が変わっていくんじゃないかと思うものでございまして、やはりそういうよりに、政党が日本の独立を守っていく道をいろいろ考えながらだんだんと判断が一つになっていきますことも、大事な日本の政治の方向として望ましい方向じゃないだろうかな、こう思っております。
  183. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私が聞いておりますのはこういうことですよ。いまあなたが言っているのは、憲法九条で解釈の食い違いがある、それが自衛隊の士気に影響している、ここまでは間違いないんでしょう。間違いありませんね。そうすると、それが、こうした解釈の食い違いを打開するためには、憲法をもう一度つくり直してみる以外にないんじゃないか、こういうふうに自分考えていると言われているのでしょう。そこのところをもう少し砕いて説明を願いたいと思います。
  184. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 去年の八月に稲葉さんに、政治家個人としてどう考えるかというお尋ねをいただきました。そのときにお答えしたとおりでございまして、同時に、政府としては自主憲法をつくるというような動きをすることは適当でない、これもそのとき以来一貫しておるわけでございまして、いま私に法務大臣としてお尋ねをいただけば、憲法九条の解釈について合憲、違憲の疑いはないようにしていきたい。このことにつきましては、日本の独立を守る基本的なことでございますから、まず政党間でいろいろ諭し合って考え方が一つになっていく、これはもう最善の道じゃないだろうか、こう思うわけでございます。
  185. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 前提が違いますよ。私が聞いたときに、あなたの政治的な個人の見解を聞きたいなんて私は言っていませんよ。そういうふうに言われると私は非常に迷惑なんですね。法務大臣または国務大臣としての見解を聞きたいと言ったら、あなたが私の政治的見解を述べたいと言うから、私は質問席でうなずいた。うなずいたのは間違いありません。それだけのことであって、私は初めから政治的、個人的な見解を聞きたいなんて質問してませんよ。それはよく言われるのだけれども、議事録を見てください。そういうふうに自分に都合のいいように解釈されると困りますね。私の聞いているのはそういうことじゃなくて、憲法をもう一度つくり直してみる以外にないのじゃないかなと考えていると言うから、そこのところはどういう意味なんですか、こう聞いているんですよ。
  186. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまおっしゃいましたことも一つの方法でございますけれども、政府としての姿勢は一貫して八月以来申し上げているとおりでございます。
  187. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 政府としての姿勢を聞いているのじゃないんですよ。あなたがこういうふうに言っているから、それはどういう意味なんですか、こういうふうに聞いているんですよ。あなたははっきり言っているじゃないですか。憲法をもう一度つくり直してみる以外にないんじゃないかなと考えていると言うから、それはどういう意味なんですか、憲法九条を改正するということも含まれているのでしょう、あたりまえの話でしょう、こういうふうに聞いているんですよ。
  188. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 稲葉さん先ほどおっしゃいましたように、自分は個人としての考え方を聞いているんじゃないのに、おまえが勝手に個人としての考え方ということで述べたんじゃないかとおっしゃいました。政府の一員としての考え方をお尋ねいただいているのだ、こう受けとめているわけでありまして、その限りにおきまして、私が八月以来申し上げているところに変わりはないのですということを、繰り返しお答えしているわけでございます。
  189. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、鈴木さんが、政治家の信念として憲法を改正したいと言うような人がいるならば、閣外に去ってもらいたいということをなぜ言ったのだ、なぜわざわざそんなことを鈴木さんが答えたのだとあなたは理解されますか。
  190. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私に聞いていただきますよりも、おっしゃった御本人に聞いていただいた方が正確を期することができるのじゃないかと思います。
  191. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そんなことを聞いているのじゃない。あなたはそれを聞いていたわけでしょう。聞いておられて、どういうふうに感じられましたか。あなた自身のことに触れて言っておられるのだというふうにあなたはお感じにならなかったですか。それはだれでも聞いている人はそういうふうに、感じたと思いますよ。
  192. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 大変鈍感でございまして、私のことを言っておられるとはそのときには受け取っておりませんでした。
  193. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それはあなたとしては少しまじめさを欠く、と言うと語弊がありますが、そういう議論だと思います。あなたは、憲法に関連をしてどんどん議論をしてくれと言っているんでしょう。だから、私どもも議論をしようと、こう言っているんですよ。鈴木さんがああいうふうに言ったということは、それだけの理由があって言ったので、その前後の問題をずっと前のところから聞いていれば、あなたのことに関連して言ったというふうに、聞いている人はほとんどだれだって、とったのじゃないですか。それを鈍感だからわからなかったというのでは、ちょっと無責任だとぼくは思うな。決してあなたは鈍感ではないですよ。それはちょっといかぬですな。もう少しまじめに議論しましょうや。私は何もあなたの首を切り取るとか足をすくうとかというつもりでやっているんじゃないのですから、もう少しまじめに議論してください。お願いしますよ。  それじゃ、あれを聞いておって、あなたは鈍感だから全然わからなかった。聞いていなかったのですか。聞いておられて、ああ自分のことを言っているなと、こういうふうに考えられたんじゃないでしょうか。みんなそうじゃないですか。その点はどうなんです。
  194. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 総理は絶えず、憲法改正は全く考えない、こうおっしゃっているわけでございますから、あの言葉は総理としては当然の言葉だと、こう受けとめておりました。同時に、国会がいまおっしゃいましたように自由に論議する、論議の過程で審議が中断などしないような国会になることを心から希望いたしております。
  195. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だれも論議を中断するとかしないとかと、ぼくはそんなこと言わないですよ、ぼくはそんなことはきらいですから。——きらいというわけじゃないけれども、ちょっといまのは口がすべったので……。  だけれども、それは議論のあれですけれども、鈴木さんが言われたのは、結局あなたを意識して言われたと、だれでもそういうふうにとりますがね。ただ、それをあなたがそういうふうにとらない。そうすると、これは一般論を言われたので私には全く関係ないことだと、結局こういうことですか、結論は。
  196. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 総理はその種のお尋ねに対しまして、閣僚全般、国民全体に言っているんだとお答えになっておりましたし、私もそれをお聞きしておりまして、そうだったんだなと、こう思っているところでございます。
  197. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だけれども、あなたは、今後も幾らでも憲法の問題については自由な論議をしたい、国会の中でも論議があることは歓迎する、こう言っているんでしょう。それには変わりないんでしょう。変わりないとすれば、憲法九条の問題をあなたはつくり直したい、こう言っておられるのだから、つくり直したいという気持ちはいまも変わりないでしょう、こう言っているんですよ。
  198. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 繰り返して恐縮でございますが、昨年八月に申し上げた考え方は少しも変わってはおりません。同時に、国会も、自由にお互いの信念をぶつけ合って、そして論議に終始する国会であるように、国会全体がそういうようになってくることを心から希望しているものでございます。
  199. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いや、国会全体が論議を真剣にしていないように、あなたの言うのを聞くと聞こえるんですよ。そんなことはないんじゃないですか。ただ、論議は十分やっているけれども、あなたの方では答えないですよ。あなた方は、質問に対して決してストレートに答えない。ストレートに答えないのがいいことだというふうに、これは昔から言われているんですよ。だから、国会の答弁というのは、聞いているときにはもっともらしく聞こえるけれども、後で議事録を見たら何を言っているかわからない、こういう答弁が一番いい答弁だという説があるわけです。しかし、これは帝国議会の答弁なんですよ。いまの国会の答弁はそういうものではない。もっとストレートにぶつかり合って論議しなければ、いつまでたったって国会というものは権威を回復しないですよ。何をやっているんだかわからないということになってしまうのじゃないですか。私はそういうふうに思いますね。  鈴木さんが言っていることはあなたを目指して言っているのは、だれが見たってわかり切っているのですよ。その結果として、あなたは、きょうなんかは余りしゃべらなくなっちゃったのでしょう、今度は。余りしゃべってはまた後で困るということでしゃべらなくなっちゃったということじゃないでしょうか。私はそういうふうに思いますね。  そこで、まだいろいろお聞きしたいことがいっぱいあるのですけれども、そうすると、今後はあなたとしては、憲法に関する論議は国会の中でも、もうこれは誤解を招くからやめる、こういうことですか。
  200. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 憲法は国の基本を定めているものでございますから、大いに論議されることが非常に大切だと考えているものであります。
  201. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それは私も同じなんです。これはあたりまえです。憲法は改正の条項までちゃんと決めているのだから、国会で議論をどんどんしていいことはあたりまえな話。だから、私が聞いているのは、あなたが、自衛隊の士気に影響するから、憲法九条には解釈の違いがあるから、これを打開するために憲法をもう一度つくり直してみる以外にないのじゃないかと考えていると言うから、そのことはいまも変わりませんかと聞いているのです。変わらないなら変わらないとおっしゃってください。
  202. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いろいろな方法がある士、こう申し上げているわけでございまして、その中の一つにこんなことも挙げられるかとおっしゃれば、それはその一つでしょうと、こう答えておるわけでございます。しかし、そんなことよりも、憲法改正をこの内閣は考えないと言っておるわけでございますのに、私がそれが望ましいといま言えるものでもございませんし、また、各党が一致すればそんな必要はなくなって、すぐにでも大きな方向転換が始まっていくのじゃないか、むしろそれを期待いたしているわけであります。
  203. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 何だって、何を期待しているって。ちょっとよくわからなかった。何を期待しているの。
  204. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 各政党の間で自衛隊は憲法違反ではないという考え方に一致していくことを期待しているわけでございます。
  205. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それはあなたの方の希望であって、そうでないという考え方もあるわけです。これは自由でしょう。だから、私は何回も言うように、非常にくどいんです。私もくどいのはわかっている。(発言する者あり)いやいや、ぼくは江戸っ子ですから、くどいことは大きらい。だけれども、しようがないのだ。こっちの言うことに答えないから、どうしたってそれはくどくなっちゃうんですよ。ぼくはくどいことは大きらいなんだから、本当に。実にあっさりしているんだ。こっちの言うことにあなた方は答えないんですもの。どうしてストレートに答えないのかな。みんなそうだね。政治家というのは、はぐらかして答弁して、そしてその場をごまかしてしまえばいいという、それが日本の政治家だとはぼくは考えない。これはよくないですな。伊東さんをごらんなさい。伊東さんはまじめですよ。伊東さんは本当に正直に答えているもの。これはだめだよ。ぼくは奥野さんというのはもっとりっぱな人だと思った。奈良でしょう、大和の武士だもの。桜花というのは散るときはぱっと散るんだ、潔く散るものなんだから。  そこで、しつこく聞きますけれども、結局、鈴木内閣の一員としては憲法改正しない、だけれども、私、政治家個人としては憲法改正したいのだ、その気持ちには変わりないと、こういうことでしょう、結論的には。
  206. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 昨年の八月、稲葉さんに答えたとおりでございまして、政府としては今日の状態の中で自主憲法制定の動きをとることは適当でないと、一貫して考えております。
  207. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、あなたとしてはどうだと聞いているのだ。あなたとしては憲法改正をしたいという信念を持っているのでしょうと聞いているのです。
  208. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は政府の一員でございますし、政府としてはいま申し上げたとおりでございますから、政府の一員である私も当然そうでなければならない、こう思っております。
  209. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 おかしいですね。そうでなければならないという言葉は、いやいや、しようがないからそれに従っているという意味ですよ、あなた。それはそうでしょう、日本語はそういうふうに解釈するんだもの。文部大臣はいないかな。文部大臣がいれば——それはあなた、そういう解釈ですよね。だから、いやいやながらそれに従っているのだということは言外ににじみ出ている。そういう点はもっと率直にあなたは言われた方がいいと私は思いますね。余り同じことをやっていても時間ばかりたってしまいますが、どうしてこういうふうに、日本の国会というのは物事に対して正直に答えないのかな。それは質問する人の方の能力も足りない点がある。ぼくの場合なんかもそういう能力の足りない点は認めるけれども、どうも素直に答えない。素直に答えないで、その場をごまかして何とかしてしまうというのが政治家としては一流だ、こういう誤った考え方が非常に強いな、日本の国会は。これではだめだ。  そこで、次の質問に入りますが、外務大臣、いま米韓の会談があって、それから今後、日韓会談があるわけでしょう。これに対しては、一体米韓の会談の内容というのはどういうものであって、それが日韓会談の内容にどういうふうに関連をしてくるのか、この辺のところをあなたの方から御説明を願いたいと、こう思います。
  210. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答えします。  先般の米韓会談というものは、米国と韓国の二国間の関係の改善強化といいますか、そういうことでございまして、米国と韓国の関係が安定化していくということは、これは日本にとりましてもきわめて好ましいことで、この前の会談の結果出た声明を高く評価しているわけでございます。  あの中には、たとえば米国の韓国駐留軍の撤退をしないという問題がございましたり、あるいはまた、韓国の首脳が北の朝鮮人民共和国に呼びかけて、会談をしようじゃないか、場所を問わない、ソウルでも平壌でもと言ったあれを支持するというようなことも入っておりましたり、あるいは実務関係で経済関係、安全保障関係あるいは政策企画関係の協議会を早急に促進しよう、エネルギーの世話をしようとか武器体系の世話をしようとか各般のことが含まれていて、二国間の友好関係改善強化ということでございますので、先ほど申し上げましたように、評価しているわけでございます。  日本と韓国との関係は、日本と韓国の友好関係を維持発展さしていくというのが日本の外交の考え方でございますので、今度私が韓国に、国会の御了解を得れば行くということになったわけでございますが、その間では、米韓関係と直接結びついてどうということでなくて、これは日本と韓国との友好関係を促進するということでございまして、日本の朝鮮半島に対する考え方は、朝鮮半島の平和の維持ということは、日本にとりましても、アジアにとっても世界にとっても本当に大切なことだという基本的な考え方がございますので、あの米韓の中に入っている、たとえば南と北の話し合いをという呼びかけというようなことにつきましては、私は、日本としても当然そういう環境づくりに努力しようと言っているのでございますので、そういうものにつきましては日本としてもできることあればというような考えでおるわけでございます。
  211. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 全斗煥演説の中に、韓国は日本とアメリカの防護壁であるというような言葉があるわけですが、これについてはどういうふうに外務大臣考えでしょうか。これが一つと、もう一つは武器禁輸の三原則にも関係すると思いますが、日本が韓国軍近代化のための資金を緩やかな条件で融資する、こういうことについてはやはりできない、やらないというふうにお考えでしょうか。二つの点。
  212. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 二つの点の御質問がございましたが、最後に御質問になった点は、何か日本が経済協力をしてその結果にできたお金と言ってもいいかもしれませんが、そういうもので韓国がアメリカの武器を買うということがあり得るのかということでございますが、全然そういうことは日本は考えておりません。日本の経済協力は、御承知のような韓国の経済社会の発展あるいは民生の向上、福祉の向上ということでやっておるわけでございまして、この間取り組みをしましたのも、病院それから学校の建設に対する経済協力でございますので、いま稲葉さんのおっしゃったようなことは全然考えてないということでございます。  それから、韓国の防衛の問題でございますが、これは韓国が朝鮮半島の平和維持というようなことに非常に努力をしている、アジアの防衛のために努力をしているということは、率直に私はそのとおりだと思うわけでございます。日本としましても、韓国のそういう役割りがあるということは率直に認めてもいいんじゃないか、こう思います。
  213. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは防衛庁長官にお伺いするのがいいのか外務大臣にお伺いするのがいいのかわかりませんが、マラッカ海峡が日本の生命線だ、石油やなんかの生命線だ、こういうことをよく言われていますね。それは日本の自衛隊とはどういうふうな関係というか、関連づけを持つわけですか。そこはどういうふうに理解したらよろしいんですか。
  214. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のありましたマラッカ海峡と自衛隊との関係はどうかというお尋ねでございますが、いろいろ言われておりますが、どうも内容は余りはっきりしませんのでお答えしにくいわけでございますが、いずれにいたしましても、自衛隊が集団的自衛権の行使を伴うような役割りを果たすことは憲法上認められないということは、たびたび申し上げているところでございます。また、海上自衛隊は、現在、マラッカ海峡周辺において自衛権を有効に行使し得るような能力を持ってはいないと考えております。御参考に申し上げます。
  215. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 マラッカ海峡のことをよく言われるのですが、これはマレーシアとシンガポールとインドネシアの領海なんでしょう。このことを日本がかれこれ言うのは筋が違うんじゃないか、私はこう思いまして、石油を持ってくるときでも、いまマラッカ海峡を通らないで、スンバワ海峡というのがあるでしょう、あそこを通るようにしてやっていった方がいい、こういうふうになっているんじゃないですか。外務大臣、その点はどうですか。聞いていますか。
  216. 木内昭胤

    ○木内政府委員 お答えいたします。  タンカーの規模によりまして、航行の安全を図るために、三十万トン以上の場合にはロンボク海峡を通って南シナ海に抜けておるというふうに聞いております。
  217. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 質問が小間切れになって恐縮なんですが、大蔵大臣お尋ねするわけは、いま盛んに、来年度においていわゆる大型間接税を導入するとかかんとか言われていますね。そこで私がお聞きしたいのは、閣議決定で、それから院の決議としていわゆる一般消費税(仮称)はやらない、こういうことを言われているわけですね。そうすると、この当時言われておったいわゆる一般消費税(仮称)というのは、具体的にはどういう形のものを言うんでしょうかね。これは五%で三兆円取るという計算でしたよね。これはどういうようなことを想定していたんでしょうか。
  218. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは五十三年の十二月二十七日に、「五十四年度の税制改正に関する答申」というのが税調からありまして、そのときに別紙として「一般消費税大綱」というのがついているわけですよ。その中身は、いまちょっとお話があったように、売り上げを基準にするとか、それから二千万未満の零細なものは外すとか、税率は一律五%にするとか、そのほかずっと書いてありますが、そのことを指して言っているものと考えております。
  219. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、それがやれなくなって今後何か、よく新聞などで出ておるのは、直間の比率で間接税が少ないから、来年度ですか、大型な間接税をやりたいというようなことをよく言われておるわけなんですが、私がお聞きしたいのは、結局、そこでいわゆる間接税というか消費税というか、たとえば庫出し税がある、あるいは売上税がある、EC型の付加価値税がある、取引高税がある、いろいろな形のものがありますね。これらについて比較してみたときに、その一長一短というものがどういうふうなのか、ここら辺のところをきちんと説明を願いたい、私はこういうふうに思うのですね。
  220. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そこまでまだ詰めてないのです、実際のところ。ただ、政府の統一見解としては、いままでのような国会決議で認められなかったいわゆる仮称の一般消費税という特定な仕組みのものでなくて、消費支出一般に着目するという意味での一般的な消費税というか、幅広く消費支出に着目する間接税、こういうものまで一切合財全部否定なんだというようには考えていないのです。ただ、この前、税制大綱に出たようなものは、国会決議等もあり、ちょっとそのままの形で新税を提案できるという環境にはないと私どもも思っております。  しかし、ではどういうことを考えているんだと言われましても、いま言ったように抽象的になりますが、幅広く消費支出に着目したような間接税は、今後のいろいろな経費の増加に対応するためには、現在の既存の税制だけではなかなか追いついていけないのじゃないかというような点から、検討することは避けて通れないのではないかという提案でございますので、どういうふうにするかということはもちろん決まっておりませんが、いろいろ経費の増加に対応することを考えておかないと、現在の既存の制度それ自体も守れませんから、いろいろ研究はしてみたい、こう考えております。
  221. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 去年、五十五年度の法人税を上げるということは、一応大蔵省では案として決定したのじゃないかと思うのです。そうしたら、花村氏が竹下大蔵大臣のところに六回やってきて、これは私の議事録に柔道の話だということで出ていますが、結局反対をして、恐らく参議院選挙があるときだから、参議院選挙に政治資金を出さないとかなんとか言ってやったのかどうか知りませんが、とにかくそれで中止になりました。それでことしになったわけですが、私の聞きたいのは、法人税の場合、ことに大法人の場合は非常にあれがあったわけですから、二%や三%去年で当然取れたのではないか、なぜ延ばしたのかということが第一点。  それから、ことし法人税二%を取ることを決めた。中小企業の場合はあれですが、決めた。それがいわゆる法人税の転嫁の議論がありますね。そうすると、一体物価にどういうふうにはね返ってくるのかということです。これは企画庁長官にも後でお尋ねしたいと思っているのですが、法人税の転嫁の問題、これは非常にむずかしい議論ではあるけれども、これが一体物価にどういうふうにはね返ってくるのか、こういうことについて聞きたいわけです。去年なぜ取らなかったのか、ことし取った二%というものが妥当か、三%が妥当か、それがどういうふうに転嫁していくか、この議論です。
  222. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 税金はなるべくだったら取らない方がいいわけでございます。どうしてもやむにやまれぬものだけ課税をする。去年度は交際の発行額を一兆円減額するということを基本といたしまして、それで歳出の切り込みというものをやったり、かなりやったわけです。去年もい二けたぐらいで伸びてきた一般歳出というものは、ことしよりはちょっと多いけれども、それでも五・一%、昭和三十二年以来の小規模に抑え込むことができた。そうすると、いままでいろいろな点で不公正税制とかなんとか言われておりましたが、別に不公正ではないが、退職給与の支払いの実態が引当金よりも下回っているというような点から見て、退職給与引当金の累積限度額を百分の五十から百分の四十に引き下げるというような措置も講じたものですから、こういうものが法人税の一%ぐらい、二千七百億円ぐらいになるということで、大体収支の見通しがついたために、去年は、それまでしなくても、歳出の抑え込みと両方で予算規模も小さくしたから間に合ったということでございます。  それからもう一つは、五十六年度二%法人税を上げて物価にどれくらい響くのだ。これは一応の理屈としては、もうけの中から払うんだから物価には関係ないんじゃないかという理屈もありますが、学説的にはそれは転嫁されるという説もあります。そこで、仮にそれがまるまる転嫁されたとしても、〇・〇幾つだとかいう小さな数字だと思います。その数字の説明は主税局長から説明させます。
  223. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 細かい点はいいですよ。結局、転嫁の問題は非常にむずかしいわけです。留保の中からあれするか、物価にはね返るか、あるいは賃金を抑え込むか、いろいろな議論があって、主計局長の書いたものを読むと中立だと言っていますね。それはそれでいいのですけれども、私が考えますのは、日本の法人の場合は、なぜ法人から税金を取るのですか。——あなた、走って税理士だもの、そのくらいのことは知っているでしょう。
  224. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これもいろいろありまして、法人実在説、法人擬制説。法人というのはもともと個人の集まりじゃないか、だから法人から税金を取らなくたって、最終の所得は株主に帰属するんだから、株主に帰属した段階で取ればいいじゃないか、そうすれば結局取れるのだという議論が一つあるわけです。ところが、そうは言っても、実際に現在の株主と法人というものは完全に一体というわけにはいかぬ、やはり法人というものは別に存在するんだという説もございます。ややもすれば、いまはその方の見方が強いということでありまして、それぞれ収益を上げておるわけでありますから、それに対してはいろいろな国の財貨サービスも間接的には受けておりまして、法人だって、ともかく道路も使うだろうし、波止場も使ったりいろいろやっているわけだから応分の負担が当然ではないかということで、世界各国の例もそうであるがごとく、余り大した哲学はないが、世界じゅうそうやっておるので日本もやっておるということであります。
  225. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 法人実在説と擬制説、それはシャウプが来たときに、シャウプ勧告では擬制説をとったわけです。いまは、あなた方は都合のいいときには擬制説をとるが、いろいろその点がごちゃごちゃしているのですが、法人が実在しているのは厳然たる事実なんです。一つの収益団体です。そうなれば、アメリカのように五段階の累進税率をとってもいいわけですよ。アメリカは最高四八を今度四六にしたでしょう。低いのは二十何%かがありますよ。だから、その理屈から言えば、法人税率だって累進をとっていいということになるんじゃないですか。
  226. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 アメリカの場合も、累進税というよりも、低い方に軽課課税じゃないかと私は思うのです。日本もやっているのですよ。たとえば今回も、所得が七百万円のものを八百万円まで上げましたが、八百万円未満の人は三〇%だ、それ以上の者は四二%というので、段階は二段階しかありませんが、それは中小企業対策というようなものも含めて日本でもやっておるということであります。
  227. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私が聞いているのは、中小企業の軽課の方はわかるのです。そうじゃなくて、上の方が四八を、今度アメリカでは四六にしたのです。だから、日本の場合だって、法人が実在していれば、収益団体なんですから、当然、累進を何段階に組んだって理屈では構わない、こういうことが考えられるのではないか、こういうことを言っているのです。あたりまえの話ですね。どこへするかということは議論がありますよ。  そこで、企画庁長官お尋ねしたいのですが、ことしの物価の今後の見通し、同時に今後の景気の見通し、たとえば、秋口ごろになれば景気が回復するという議論もあるし、物価もいろいろな条件がありますから一概に言えませんが、そういうようなものを含めて、物価なり景気、こういうものの五十六年度の趨勢をお話し願いたい、こう思うのです。
  228. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず、物価でありますが、卸売物価の方は、現在完全に落ちついたと言ってもいいと誓います。ちょうど一年前のいまごろは、狂乱状地前夜と言われておりまして、年率二〇%という急上昇を続けておりましたが、夏ごろからだんだんとおさまってまいりまして、一月は六%台、それから二月になりましてからはさらに鎮静化をいたしまして三%台、このように非常に順調に落ちついております。したがいまして、卸売物価から消費者物価へ大きな影響があるわけでありますが、その影響はだんだん少なくなってくると思います。  一方、消費者物価の方でありますが、五十五年度に入りましておおむね八%、月によりましては七%という月も一、二ありましたけれども、大体八%見当の水準でずっと推移をしておりましたけれども、年末ごろからだんだんと鎮静化をしてまいりまして、一月には東京区部では六・八%という水準まで落ちついております。そして、ここで一番心配しておりますのは野菜の価格でございまして、野菜以外の消費者物価はおおむね安定の方向にいっておる、野菜だけが相当高い、物価を押し上げておる、こういう状態でございますので、いま全力を挙げて野菜対策を進めておる、こういうことでございます。  それから、景気の方でございますが、これは一言で言いますと、大勢としては相当悪い。ただし、業種によって明暗がある。非常にいい業種と非常に悪い業種という明暗がある。それから、大企業と中小企業との間にも明暗がある。大企業はおおむね減量経営のもとでも相当な利益を出しております。中小企業は相当悪い状態だと思うのです。ただ、日本の場合は中小企業は非常に大きなシェアを占めておりまして、企業の数も五百八十万ございますし、それから産業全体に果たしておる役割りも非常に大きいものですから、この中小企業がうまくいかないということで経済全体の足が大きく引っ張られておる、こういうことでございます。  それじゃ、なぜ悪いかといいますと、何と申しましても消費が落ち込んでおるということであります。五十三年度は六%台、五十四年度は五%台で推移しておりましたが、現在は二%そこそこ、こういう水準でございますので、これが非常に大きく最終需要が減っておる背景でございます。それから、住宅が非常に落ち込んでおります。住宅が落ち込んでおる背景もいろいろあるわけでございますが、これが景気の足を大きく引っ張っておるということでございます。高金利のために中小企業の投資が非常に減っておる。こういうことでございまして、明暗はありますけれども、大勢としては相当悪い状態であるということが言えようか、こう思います。
  229. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 こういう「自由民主」という月刊雑誌、これは自民党の機関誌でしょうが、二月号に、立教の西山という教授が「通貨の大収縮」というエッセーを書いていますね。これを見ますと、「通貨供給量の増大も恐ろしいが、通貨供給量の減少も恐るべきことだ。」と言って、結局、通貨供給量増加率の急激な減少がいま起きている。M2ですね。そして五十五年度にこれが発生し始めている。そういうようなことをずっと言いながら、通貨供給増加率が減ってきたというのは、このままにしておくと非常な不景気になる。それは「郵貯こそがいまやわが国経済にとって、深刻な不況要因となっているのだ。」こう言っているんですよ。「自由民主」で言っているんだから。「自由民主」で言っているということはちょっと不正確だけれども、この雑誌の中で言っているんですね。これは一体どういうことなんでしょうか。郵政大臣、「郵貯こそがいまやわが国経済にとって、深刻な不況要因となっているのだ。」こう言っているのです。これは一体あなたはどういうふうに考えますか。それに対してあなたが言って、後から大蔵大臣にもまたお答え願いたい、こう思うのです。
  230. 山内一郎

    ○山内国務大臣 ただいまの西山教授の論文、「自由民主」二月号に出ているのを私も読んでみました。それで、「自由民主」が掲載している文章が全部自由民主党の見解であるとは私は考えていないのでございます。編集者によっていろいろと論文を出すわけです。  一番この中で私は問題点であろうと思うのは、郵便貯金がふえると不景気になる、銀行の預金がふえれば景気はよくなる、こういう言い方をされておりますけれども、郵便貯金に預けられた金が固定されればあるいはそういうことになると思うのです。しかし、これは大蔵省に預託をしまして資金運用部資金の方に回りまして、住宅の問題、中小企業の近代化、それから生活関連整備事業とか、こういう方に回りまして大いに活用されて循環されておる。したがって、一カ所で固定されているものでないというような点からいけば、銀行と同じように、銀行は貸し出しをやってその金が回転している、同じことでありますので、郵便貯金がふえたからこれが固定されて不景気になる、こういうことは私は言えないと思っております。
  231. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私も何もこれが自民党の考え方だと言っているんじゃないんですよ。ぼくは「自由民主」に載っているこれを見て驚いたんですよ。いや、ひどいことを言う大学教授もいるものだなと思ったんですがね。これは確かにおかしいですね。そうすると、これに対しては大蔵省としてはどういうふうな言い分なんでしょうかね。  いま私は疑問に思いますのは、企画庁長官、日本の場合は全体の貯蓄率というのは、いまちょっと下がっていますけれども、世界の最高ですね。金が入ったってみんな貯蓄に回っちゃうわけでしょう。まあ、みんな回るわけじゃないけれども。みんな回ったら食えなくなっちゃうから、みんなは回らないけれども。だから、消費がちっとも伸びないんですね。これは日本特有の現象ですね。どうしてそういう特有な現象が起きるのかということが、どうしても理解できないことです。そこら辺のところを御説明願いたいということを私は考えておるのです。  時間の関係があるので申しわけないのですが、これは厚生大臣と大蔵大臣に大変お骨折りを願いましたので、難病対策について、現在どうなっていて、今後どういうふうに進めていくか、さらに御決意のほどをぜひお聞かせ願います。
  232. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 難病対策研究は四十七年から始められておりまして、すでに総額百億円に近くなっております。一現在、ベーチェットでありますとか特殊な疾患につきましての研究班と、難病に共通しましたテーマ別研究班、二つによりまして研究を進めております。現在四十三研究班でございますが、これにつきましてやっておりまして、たとえば患者数でございますとか、あるいは地域の偏り、あるいは診断の手技、それから治療の限界等につきましても、この研究班によって明らかにされております。  ただ、難病の性格といたしまして、これが簡単に原因が明らかになる、あるいは治療法が明らかになるという点につきましてはなかなかむずかしい点がございまして、患者さん方になかなか即効的に御期待に沿えるということにはなっておりませんが、今後ともこういうことで、四十三研究班をさらに一層充実いたしまして研究に向かいたいというふうに考えております。
  233. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 時間がないのであれですが、これは企画庁長官ですか大蔵大臣ですか、どっちでもいいですが、いま言いましたように、貯蓄が日本は、世界各国から比べて非常に多いですね。貯蓄率は二〇%を超えているのじゃないですか、ちょっと下がりましたか。そしてそれが消費に向かわないわけですね。それは一体どこに日本の経済政策の誤りがあるというか、どこに原因があるというふうに理解したらよろしいのでしょうかね。それに対してどういうふうにしていったらいいとお考えでしょうか。
  234. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 貯蓄率が高いということは、私は日本の国力の最大の源泉であろう、こう思います。この高い貯蓄率によりまして国債も消化されますし、社会資本の投資もできるわけでございます。あるいはまた産業資金の供給もできる。でありますから、これは国にとりまして非常に大きな力だと思います。  いまのお尋ねは、それにしても二〇%というのはよその国に比べると相当高いではないかというお話でございますけれども、その原因はいろいろあろうかと私は思います。一つは、やはり勤倹貯蓄というような国民性にもあろうかと思いますが、同時に、老後の備えも必要だ、こういうこともありましょう。あるいはまた、住宅が欲しいという人がたくさんおりますが、そのための貯蓄をしようという方もあろうかと思います。消費が減っておりますのは、消費者物価が所得を上回っておりまして、実質所得が減っておるというところに、現在の消費が落ち込んでおる一番大きな理由があるのではないかと思っておりますので、この点につきましては、これからも物価対策というものは、単なる経済対策ということだけではなく、当面の最大の政治課題だ、このように心得まして取り組んでまいりたいと思います。
  235. 小山長規

    小山委員長 この際、福岡君より関連質疑の申し出があります。稲葉君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福岡義登君。
  236. 福岡義登

    福岡委員 経済企画庁長官にお尋ねをしたいと思いますが、四十六年の十二月十七日に、臨時総合交通問題閣僚協議会におきまして日本の総合交通体系がつくられたのでありますが、自来、十年経過いたしました。情勢も相当変わってきたように思うのです。特に四十六年当時は、エネルギー問題などは、交通分野における制約条件としては余り考えられていなかったわけであります。その後、御承知のような状態になってきたわけであります。  いろいろ申し上げればありますが、一口に申し上げまして、この十年間に交通問題を取り巻く情勢は大きく変わってきた、そこでこの総合交通体系の見直しというものが必要になってきておるのではないか、こう思いますが、現状をどうお考えになっておるのか、その点も聞かせていただきたいと思います。
  237. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話がございましたように、四十六年に総合対策ができまして、それに従って交通政策が進められておったのでありますが、四十八年に第一次石油危機が起こりまして、ようやくこれがおさまったかと思いますと、二年前かう再び第二次石油危機が起こりまして、エネルギー問題を抜きにしてすべてのことは考えられない、交通政策ももちろんそうでございまして、そこでいま、抜本的な見直しをやってみる必要があるのではないかということで、運輸省が中心になられまして、しからばどうすればいいかということについて審議会に諮問しておられるというふうに聞いております。
  238. 福岡義登

    福岡委員 運輸省で運輸政策審議会に諮問されましていろいろ御検討されておることは聞き及んでおるのでありますが、総合交通体系は、設置法によりまして経済企画庁が担当なさっておるわけでありまして、経済企画庁としては、特別の取り組みは現在されていないということなんでしょうか。
  239. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 仰せのとおう、総合交通政策は経企庁が中心となって策定されるものでございます。しかし、経企庁におきましては、いわば社会資本の移動といいましょうか社会資本の建設ということ、それとエネルギー対策というようなことと、そういう点で総合的にやっていかなければならない。さて、運輸省におきましては、経済企画庁と協議いたしましたその方針のもとにおいて、各交通機関の体系をどのように持っていくかということをわれわれといたしまして担当いたしておりまして、経企庁と運輸省と共同して総合交通体系を決めていきたいと思っております。  先ほど経企庁長官のお話にございました、現在、運輸政策審議会におきまして、各交通機関の特性をどのように今後の新しい総合交通体系の中に生かしていくかということにつきまして鋭意研究いたしておるところでございます。
  240. 福岡義登

    福岡委員 お話がありましたように、経企庁は社会資本係といいましょうか、そこでこの総合交通政策を担当されておるようですが、聞いてみますと、六人しか関係職員はいない。本格的な総合交通体系をやるときには、四十六年当時は特別のプロジェクトチームをつくりまして、関係閣僚協もできまして、経企庁が中心になってやられたのですが、いまのところ、経企庁にその構えがないのですけれども、今後どういうように考えられておるのでしょうか。
  241. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま運輸省の方で審議会に諮問をされておりますのは、情勢も変わったので、つまりエネルギー事情が変わったので、四十六年の総合交通政策を変えるべきかどうか、変えるとすればどの点を変えればよろしいかということを運輸省の方で諮問をしておられるということでございまして、現在のところは、昭和四十六年の交通政策がまだ生きておるということでございます。しかしながら、企画庁といたしましては一応総合交通体系には責任を持っておるということでございますけれども、何分にも、いま御指摘のように手薄でございますので、やはりこれは運輸省と十分連絡をとりながら、運輸省の御意見をお聞きしながら協力してやっていこう、こういうことでございます。
  242. 福岡義登

    福岡委員 その点はわかりましたが、今後の交通体系の重要なポイント、これを二、三、私の考えも述べながら経企庁長官なり運輸大臣、まあ関係各省庁の御見解を聞かしていただきたいと思うのです。  結論を先に申し上げますと、大量輸送機関というものをもう少し活用することを考えるべきではないかということが私の結論なんであります。  その内容を少し申し上げてみますと、大量輸送機関の最たるものは日本国有鉄道であります。船舶もありますが、昭和五十四年の陸運統計要覧によって輸送量を見ますと、旅客におきまして、国鉄は昭和三十五年に五一%輸送しておりました。それが五十四年になりますと二五%に減ったわけでありますから、まあ半減をしたということになろうと思うのです。民鉄が三十五年二五%、五十四年一五%、これも六〇%にダウンしております。それからバスもダウンしておりまして、三十五年一八%、五十四年一四%になっておるわけでありますから、七七%に減っておることになります。乗用車がぐんとふえまして、昭和三十五年に五%だったのが五十四年に四一%、実に八倍にふえておるわけであります。飛行機はわずかに五十四年四%でありますが、これが旅客の輸送量であります。  それで、今度貨物の方を見ますと、同じく昭和三十五年に国鉄が三九%で、五十四年には一〇%に下がっておるわけであります。昭和三十五年当時の二五%に下がっておるわけであります。トラックは営業と自家用車に分かれておるのでありますが、営業車の方は三十五年七%が五十四年に二二%、三倍強にふえておるわけであります。自家用トラックの方が三十五年に八%で五十四年一七%ですから、二倍強にふえておることになります。船の方はわずかにふえておりまして、三十五年四五%が五十四年四九%にふえておるわけであります。  このように考えてみますと、大量輸送機関というものがもう少し活用されていいんじゃないか。逆に言いますと、自動車に相当頼っておる輸送量というものを、もう少しエネルギーその他の関係から、後で申し上げますけれども、大量輸送機関転換する誘導政策というものが非常に必要になってくるんではないか、こう思うわけであります。その点はいかがでしょう。
  243. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 福岡先生仰せのとおり、全くそのとおりでございまして、特に定型貨物等につきましては、大量輸送のきく鉄道に移管していくべきである、われわれもそう思っておりますし、現にその政策をこれから進めてまいりたいと思っております。
  244. 福岡義登

    福岡委員 エネルギー問題を考えてみますと、これは総合エネルギー統計、五十三年でございますが、石油の消費量を見ますと、産業用が五六%、民生用が一五%で、輸送関係が二九%であります。約三分の一、石油を交通分野で消費をしておるということになるわけであります。この消費量と同時に消費効率、これをとってみますと、やはり五十三年でありますが、国鉄と自動車を比較いたしますと、人キロ当たりのキロカロリーでありますが、国鉄が一〇〇に対しまして乗用車が七五〇になるわけであります。これは乗客でありますが、貨物も大体それ以上に消費効率が自動車の方が低い。そこでエネルギー問題から考えて、この輸送関係をどう考えていけばいいかということを、資源エネルギー庁の立場から御見解を聞かしていただきたいと思います。
  245. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 エネルギー、特に石油は大変貴重なエネルギーでございますし、また価格も大変上昇しているわけでございまして、私どもは極力エネルギー、特に石油の節約を図っていきたいという基本方針を持っているわけでございます。  そこで、ただいま先生から御指摘のございました、たとえば鉄道、バス等の大量輸送機関と乗用車の場合の例を調べてみますと、エネルギー原単位で見た場合に、鉄道の場合は乗用車の七分の一ということでございますし、また、バスで見た場合には乗用車の五分の一ということでございまして、エネルギーの消費効率はきわめてすぐれておるということでございます。もちろん、地域によりましてはこういった大量輸送に適さないところもあろうかと思いますけれども、一般論で申し上げますと、私どもエネルギー行政を担当しておる局面から申し上げまして、できるだけこういった大量輸送機関ということによりまして省エネルギーの効果を上げていただきたい、こういう気持ちを強く持っておるところでございます。
  246. 福岡義登

    福岡委員 警察庁お見えになっておると思うのですが、いらっしゃいますか。  交通事故が非常にふえてきておる。五十三年実績で調べてみましたら、道路における交通事故は死者八千七百八十三人、負傷者が五十九万四千百十六人、合計いたしますと六十万二千八百九十九人ということになるわけであります。これに対しまして、国鉄の方は死傷者全体で二千三十二人、こういうことであります。  そこで、警察庁にお尋ねしたいと思いますのは、最近の交通事故の傾向と今後の対策というものを伺いたいと思います。
  247. 池田速雄

    ○池田政府委員 昨年中に発生いたしました交通事故は、発生件数で四十七万六千五百八十一件でございまして、五十四年に比べますと五千八件、一・一%の増でございます。死者数は八千七百六十人でございまして、五十四年に比べますと二百九十四人、三・五%の増、負傷者数は五十九万八千百九十人でございまして、千九百八人、〇・三%の増という傾向になっております。死者数で申し上げますと、過去九年間連続いたしまして減少を見たわけでございますけれども、十年目にいたしまして、残念ながら増加の傾向が見られておるということでございますので、私どもといたしましては、大変にこれを重視いたしまして、警察がやり得る安全施設の問題、それから指導取り締まり、教育の全般にわたりまして全力を挙げますとともに、関係の各機関、国民全体の取り組みでもちましてこの減少を図ってまいるようにいたしたいというふうに考えておるところでございます。
  248. 福岡義登

    福岡委員 時間がありませんからこれ以上は言いませんが、いまの警察庁の答弁では根本的な対策ではないんですね。安全施設その他云々というお話なんですが、根本的には、大量輸送機関をできるだけ活用して自動車を減らしていく、こういう政策が交通政策の上に出てこなければ、これは問題解決にならぬ、そういうことを要望しておきたいと思うのです。  交通関係の公害、いわゆる大気汚染その他、環境庁としては一体、交通公害に対してどういう認識を持っておられて、今後どういうことをやっていこうとしておられるのか、お伺いしたいと思います。
  249. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡国務大臣 騒音の問題並びに排気ガスの問題に分けて考えておりますが、騒音の問題にしても排気ガスの問題にしても、いまのところ、われわれは心配の種が尽きないわけでございまして、騒音の問題につきましては、御参考までにちょっと申し上げますが、五十四年に三千五百八十二の測定地域ではかってみましたらば、環境基準を超過している測定点数が八三%、二千九百七十四地区が、われわれが考えている環境基準よりも超過している。これでは困りますので、いま中央公害対策審議会の環境部会等にお願いして、先ほどから先生おっしゃっておられる物の流れの問題、それから道路の土地利用といいますか、どういう道路にしたらいいかというような問題について御審議を願っているところであります。  それから、排気ガスの問題は、主としてNO2の問題でありますが、これが二百十三の地点ではかってみました。そうしましたらば、〇・〇四から〇・〇六、そういうゾーンで考えてみて、〇・〇六PPMを超えるという悪いところが六十四ありました。それから、これはいいなという〇・〇四以下というところは三十七しかございませんで、〇・〇四から〇・〇六でこれならがまんしてもいいわというところが百十二でございます。ですから、これは困るというのが三〇%でございます。これでは困りますので、御承知のとおり自動車、乗用車ならば、前に非常に厳しい規制をしまして、鋭意そのことに努力しておりますから、六十年ぐらいまでには、新しい自動車が全部出回れば世界でも冠たるいいところになると思います、乗用車については。ただ台数がふえてくるので困ります。これははっきりしませんが、私の記憶では、一年間に二百万台ふえるというのですから、悪いのはだめにして、いいのだけでふえるのが。そこで、やはり道路の問題なんかも、前段申し上げましたように考えなければならぬ、こういうことであります。  それから、トラックですが、これが困っちゃう。これはなかなかうまいわけにいかないのです。技術的にもなかなかむずかしいようでございます。  私はこの間、私どもの次官と手分けをいたしまして、自動車会社へ行きまして、ぜひひとつこれは基準時に達成してもらわなければ困る。もしそれができないようならば、五十八年ぐらいからは交通を規制する、そういうところも一部ありますが、そういうことをしなければならぬ。そうするといろいろ混乱が起こりますが、ぜひひとつそういうふうにやってもらわなければ困るというようなことを言って、これも鋭意努力をしてもらっているわけでありますが、六十年になっても、一番やわらかいよりもまだだめだというようなところについてはどうしたらいいかということで、その土地の首長、知事さんや市長さんやそういう方とも鋭意相談をいたしておるわけであります。  先生が先ほど申されたように、やはり貨物なんかは特にエネルギーの節約にもなるのですから、大量輸送の方にいってもらいたいと私は思いますよ。思いますが、便利さその他の面から言って、大量輸送の方がどうも便利でないというようなことを言われるわけですから、大量輸送で結構便利だよ、こういうふうになるようにひとつしてもらえないかなと切に考えているわけでございます。
  250. 福岡義登

    福岡委員 運輸大臣、経企庁長官、お聞きのとおりでございます。大蔵大臣もいらっしゃるから、国鉄の財政については大変な問題があるのですが、この際、やはり思い切って、総合交通体系の見直しをされる時期に来ておるのですから、お話がありましたようなエネルギー問題とか交通環境問題とか、あるいは交通事故というものに配慮を加えて、抜本的な大量輸送機関の活用という体系を重視していっていただきたいということを強く要望しておきます。  それで、交通行政が一元化されていない。経企庁が総合交通体系の責任を持っていらっしゃるが、実際は対応するだけの体制ができていない。そのほかにも、交通関係は各省に分かれておるものがある。  そこで、私どもは、将来の日本の交通問題を考えるときに、一つは、交通基本法的なものを制定して、合理的な交通体系を確立していく。また、交通省というようなものを設けまして、行政の一元化を図っていくという必要があろうと思うのですが、時間がありませんので、簡単に答えていただきたいと思います。
  251. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お尋ねの交通基本法でございますが、この中身等につきましては、私どもまだ定かにいたしておりませんけれども、仰せの点は、いわば各交通機関の総合的な指導監督をしろ、こういうことであろうと思っております。  この点につきましては、われわれも、計画策定の段階におきましては経企庁、それから公害関係は環境庁、あるいは交通規制につきましては警察庁というふうに、個々に緊密な連絡をとってやっております。まだ行き届かない点も多々あろうと思いますが、これは鋭意詰めていきたい、緊密にやっていきたいと思っております。でございますので、いまのところ交通基本法というものにつきまして、われわれはまた検討しておらないような段階でございますが、御提案のあったことはお聞きいたしておきたいと思っております。  それからなお、交通の総合政策のために交通省というお話でございますが、私も各国の交通行政を見てまいりますと、ヨーロッパなりあるいはまた社会主義国におきましても、交通機関ごとに役所を設けておるというのが多い状況でございまして、幸いにいたしまして、わが日本におきましては、運輸省がいわば交通機関全体の指導監督をしておるということで、他の国に比べまして、その点は集約化されておるように思っております。つきましては、この集約化されておる運輸省の中で、さらに各交通機関ごと、たとえば自動車、航空機、鉄道、海運というものをどういうふうにして機能的に、有機的に絡ましていくかということの問題であろうと思っておりまして、むしろ運輸省内における有機的な総合対策をとるということの仰せではないか、こう受けとめまして、われわれも努力を重ねてまいりたいと思っております。
  252. 福岡義登

    福岡委員 この問題は後日に譲りたいと思うのです。  さて、次の問題なんですが、例のローカル線問題でございます。政令の制定が非常におくれている。これはそれほど問題を持っておるということだと思うのであります。法律は去年十二月に公布、施行されましたのに、政令がまだできていない。こんなことは余りほめられることじゃない。しかし、現在は、問題を大きく含んでおるこのローカル線問題ですから、急いで政令を策定しないで、じっくり時間をかけたらどうか、こういうのが私ども考え方でございますが、関係各省庁にもそれぞれ意見があるようであります。あるいは関係地域にも強い反対の意思があるようであります。  そこで、幸いに、去年の十月、おおむね今後十年後を目標にいたしまして地域の交通計画を策定する、地方陸上交通審議会の中に都道府県単位に部会を設けてやっていこうという通達も運輸省から出されておるわけでありますから、ここはひとつ政令作業を少し休んでいただいて、そういう地域交通計画の審議をある程度進めて、その結果に基づいて地方線の取り扱いを考えていくということにされる方が適当なやり方じゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  253. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 仰せのように、いま、特定地方交通線の廃止に伴います。その基準の作成、これを政令にいたしたいと思って、各省庁間で鋭意協議いたしております。御承知のように、鉄道とその地域の発展というものは密接不可分、しかもその間には長年の歴史的なつながりがございます。でございますだけに、この特定地方交通線の存廃はその地域にとりましては大変な問題であるということは、私たちも十分承知いたしております。でございますだけに、これの基準を作成いたしますのには慎重の上にも慎重を期しておるところでございますし、その慎重というのは、つまり各省庁で代表されてまいりますところの地域の意見あるいは産業界の意見というものをわれわれも十分にそしゃくし、話し合いをして決定いたしたいと思いまして、現在その調整を急いでおるところでございます。決して拙速にわたり御迷惑をかけることのないようにいたしたいと思っております。
  254. 福岡義登

    福岡委員 政令作業を進めておられるというお話なんですが、私どもは、この国会中に、できるだけ早い機会に国鉄再建法の一部改正案を提案さしていただこうと思っておるのですが、いまの運輸大臣のお考えは、いつごろまでに政令を策定されようとしておるのか、時期的にはどのようなことを考えておられるのでしょうか。
  255. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 各省庁間の調整も、基本的な考え方は各省庁間でそれぞれ互いに理解を進めてまいりました。意見はそれぞれ違うところがございますけれども、それらの意見の相違をもう少し煮詰めていきたいと思っております。でございますけれども、御承知のように、あの法律に伴いまして国鉄は、経営改善計画を三月の末までに運輸省に提出しなければならぬのでございます。そういたしますと、国鉄が経営改善計画を作成するまでには、当然、特定地方交通線の基準を決めなければなりません。しかも、その経営改善計画たるや、一カ月近くの準備も必要でございましょうしいたしますので、そういう点等を相諮りましてできるだけ早い時期にいたしたいと思っております。
  256. 福岡義登

    福岡委員 私ども考えと違うわけでありますが、これも今後また、機会を改めまして、私どもの主張を述べてまいりたいと思います。  最後に、あと二分ぐらいしか時間がないから要望だけ申し上げておきますが、一つは公共負担法の制定について。公共割引の負担法ですね、通学でありますとか身体障害者とかいろいろある。国鉄再建法審議の段階でもお話があったのですが、これらの割引は政策担当省庁の予算で持ってもらう、国鉄から外すというお話がありました。しかし、五十六年度予算を見ますと全然そういう具体策は講じられていない、従来どおりやられておるわけです。公共割引は私鉄にもあるわけであります。したがって、今後の方向を明らかにするということになりますと、それらを網羅した公共負担法というようなものを検討していただきたいというのが一つの要望であります。  それから二つ目の要望は、国鉄の運賃が二十日から九・九%、私鉄大手十四社も御承知のように運賃値上げを申請しておるわけであります。運賃が上がればそれだけ生計費を圧迫することになります、あるいは物価を刺激することにもなろうと思います。ひとつ何よりも考えてもらいたいのは、特に国鉄なんかはそうでありますが、運賃値上げをしても、荷物とお客が離れれば増収にはならぬわけであります。もう少し国鉄の利用あるいはその他の交通機関をうまく利用するという、利用増による増収というものが原則的に正しいわけでありまして、運賃値上げは運輸大臣の認可事項でありますが、慎重に対処していただきたいということを要望いたしまして、時間が来ましたので終わりたいと思います。
  257. 小山長規

    小山委員長 これにて稲葉君、福岡君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  258. 小林進

    小林(進)委員 私は、今冬の東北、北陸、中部を中心とする豪雪、これは三十八年の豪雪をはるかに凌駕をいたしておりますが、社会党の豪雪・雪害対策委員長といたしましてずっとこの地域を実際に見てまいりまして、地元の方々とつぶさに御意見を闘わしながら今日に至っておるのでございますが、その調査の結果に基づいて、限られた時間、御質問をいたしたいと思います。  第一番目には、折損木、倒木に関する問題でございまして、ことしの大雪は例年にない非常に重い雪が降りまして、そのために森林の災害というものは非常に大きいのでございます。これはもはや行政的には処置しかねるので、現在、与野党ともに、これは与党の方でも法律改正をもって問題の処理をしようということで、非常に熱心にいま取り組んでいただいておるのでございますが、私ども考えといたしましては、まず農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律、それから激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律、この二つの法律を一部改正をしていただかないと、この折損木、倒木の処置ができないのではないか。と申し上げまするのは、この二つの法律にいたしましても、農地の災害あるいは農業用施設の災害、林業用施設の災害、漁港施設等の災害については云々という規定がありますけれども、残念ながら森林、立木に対する救済という項目がございません。そこで、できればこの中に森林も含めて災害の救助、補助金等をちょうだいするように改正していただけないかどうか、この一点でございますが、ひとつ農林大臣の御所見を承っておきたいと思うのでございます。
  259. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御指摘のように今回の豪雪の森林、立木に対する被害は、百年この方ない、こう言われておる、本当に異常災害とでも申しますか異常降雪とでも申しますか、そういう災害でございます。したがいまして、戦後の災害に対する法律的施策というものは、冷害にいたしましても台風災害にいたしましても、本当にかゆいところへ手の届くほどの施策が講ぜられておるわけでありますが、やはり例がなかっただけに、この折損木というはなはだしい、厳しい災害の施策が現行法だけで十分かとこう言われますと、私ども責任者として、もう少し何かあってもいいんじゃないかという感じが、実は施策を進めている間において感じ取っておるところでございます。したがいまして、そういう面で法律的な強化策を図ることができれば施策の万全を期することができるのではないかなという感じを持っておる次第でございます。
  260. 小林進

    小林(進)委員 何を言いましても先立つものは金でございますので、大蔵大臣、私ども、関係大臣とやりとりをやりましても、ひとつよく頭に入れてお聞き取りを願いたいのでございます。  農林大臣、いまも力強い御答弁をいただきましたが、実際、ここに農林省からいただいた資料もございますけれども、この立木でございますね、森林の災害は、この資料は中間報告ですけれども、第一位が、農林大臣がお生まれの福島県、これが百八十五億です。二番目が驚くべきことに福井県、これが百四十八億です。三番目が、これも驚くべきことだが滋賀県です。恐らく豪雪等に関係がない滋賀県の立木の損害が八十六億、四番目が岐阜県、これも豪雪には関係ないが五十四億、五番目が岩手県で一十四億、六番目が、これは名実ともに豪雪のわが新潟県の立木の損害が三十億、こういうふうになっておりまして、この立木の損害、これはまた、豪雪や激甚地の指定等とは関係なしに大きな被害が生じている。  これが今度の雪害の大きな特徴でございますので、そこで農林大臣、この立木の損害だけでも、これは中間報告でございますから、これは全部雪が消えたら一千億を超えるのじゃないかと私は思います。この二月七日現在の中間の報告だけでも、こうやって約六百八十億、七百億円近くの損害が出ているのでございますが、これに対しては何としても被害木の整理、整理しなければ植林できない。これは治山治水になりません。それから倒木、これは倒れている木を早く起こさなければ永久にまいってしまう。それからその災害地の後始末、造林をするには何といっても折損木、これはチップにもなりません、これはひびが入っております、これを処理していただかなければならぬという問題でございます。  そこで、立法措置をしていただかなければならぬのでございますけれども、どうかひとつ、激甚地指定という旧来の枠ではなしに、実情に沿って岐阜県でも滋賀県でも、あるいは宮城県なんか雪は少ないけれども重い雪のために非常に倒木の損害が大きいのであります。宮城県も立木の損害の十県の中に入っている。こういうこともひとつ実情に沿って、あるいは激甚地の指定をまた手直しをするか、さもなければ、従来の激甚地指定のほかに、改めて実害のある地域にその損害を立法措置で救済するとか、こういう親切なお考えを農林大臣お願いをしたいと思うのでございまするので、いま一回御答弁を承って、次の問題に移りたいと思います。
  261. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御承知のように、被害地に対しましては二月二日に、もうすでに天災融資法の政令を公布するという前提のも士に、つなぎ融資をするように実は通達を出させていただいておるわけでございます。  とりあえず、今回の災害、山林の被害が一番多くて、そのほかに園芸ハウス、畜舎、さらに保養蚕関係の施設等がこれまた少なくない被害を受けておるわけでございますが、もう春から早速営農事業に入らなければなりませんので、農林漁業金融公庫と政府関係機関並びに農協関係の金融機関等につなぎ融資をぜひしておいてほしい、こういう通達もいたしておるところでございます。  しかし、私も実は、この折損木の状況を視察してまいったわけでありますが、本当に地元の人は、もう山を見るにたえない、二十年も三十年も育てたやつがみんな卒塔婆みたいになって立っている、こういう言葉を使っているのを聞きまして、本当に山が泣いている、木が泣いているというような感じを受けるほど深刻でございます。したがいまして、こういう情勢を見て若い諸君は、こういうことが本当に百年に一遍ということであっても、現実に目の前にすると造林意欲というものが起きてこない、という話も実は聞いてきておるわけであります。  やはり、先ほど御指摘のとおり、森林は治山治水等々公共的な役割りを果たしてきておるわけでありますし、山を治めるということは大変大事なことでありますので、そういう意味から、山林関係の方々が造林意欲を落とさないような施策だけは、私ども責任においてなさなければなるまい。そのために必要な施策、いま林野庁を督励をいたして十分万全を期し得るかどうかやらせておるわけでありますが、まあいろいろ国会の方からの御意見もお聞きしておりますし、また、各党からの御意見等もそれぞれお聞きいたしておりますので、十分検討させていただきたいという気持ちでございます。
  262. 小林進

    小林(進)委員 私も、衆議院の議長さんから陳情を受けたというのは、長い議員生活で初めてでございますが、衆議院議長はきのうつくづく、わがふるさと福井の大野市もその近郷もての折損木で一山全部やられちまった、これは大変なことであるから、きょうの委員会では特に折損木の対策を関係各省によく陳情してくれという議長の陳情も受けてまいりましたが、何といってもこの折損木の後始末は、とにかく、壊れて折れて役に立たないものを取り除かなければ次の植林はできないのでございますから、この折れた倒れた木を取り除く作業にどう政府にお力をかしていただくか、これが法律改正の中心でございますので、どうぞひとつこの点は、くれぐれもよろしくお願いをいたしたいと思います。  いまの御答弁で私も安心をいたしましたが、与党と野党がいま立法措置、法律案をつくっておりますので、やがて、あるいは与野党一致の法律案がこの国会に出てくるかもしれませんが、どうかそのときには大蔵大臣、まげて御賛成を賜りますることを、金がないなどというけちなことはおっしゃらぬように、あらかじめお願いをいたしておきます。  第二番目の問題といたしまして、時間がありませんので急いで申し上げますけれども、国には積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法という法律があるのであります。こういう豪雪のときには、その法律に基づいて、国道や県道に対しては国や県はそれぞれ主管、いわゆる担当者として、除雪あるいは排雪に非常に力を入れていただいているが、さて、住民に一番大切な市町村道、いわゆるわれわれは生活道路と言っておりますが、その市町村道になると、どうも県道や国道に対する熱意が見られないのであります。ちゃんと差別をしている。これは一体どうして国道や県道と差別をする必要があるのかというので、この雪寒道路確保に関する特別措置法という法律を一生懸命に読んだ。一生懸命に読んだが、法律のたてまえには、国道や県道と市町村道を差別するということは何もない。これは平等に扱うことになっているのだが、それが扱われていないのであります。  そこで、私は関係各省呼んでみた。呼んで聞くと、いや、市町村道は特交でやってもらった方が平常の場合都合がいいからという、市町村長、自治体の要求もありますからなどという、人を小ばかにしたような答弁が返ってきた。だから、現実に私は市町村長を呼んで聞いてみた。私どもはそんなことはありません、そんなことを言った覚えはない、ないけれども、それじゃ補助金でくれと言ったら、同じ市町村道でも幹線でなければだめだとか、いや、この資料を出せ、あの資料を出せと言って、やかましい資料を山ほど言われるから、やむを得ず、そんなやかましい金よりはまあ特交でひとつがまんしましょうかというのが実際の気持ちでございます、こういう感じなんです。これがいわゆる官僚行政一つの悪いところなんです。  私がいま言ったように、この豪雪の市町村道は一体どんなことをやっているのかということを実際に調べてみたら、みんな市町村ばらばらですよ。ここに高岡の木間君などという——いませんか、私どもの仲間がいるが、これには市は何も責任を持たないというから、いわ障る町内会で金をみんな出し合ってトラックや除雪車を借りて、そして自腹で町内の道路の排雪、除雪をやっている。ところが、わが新潟県の私の知っている町なんかに行きますと、これは町ではもう力が及ばぬから、二千円ずつ個々にやるから、この金でひとつ町道の除雪、排雪をやってくれと言って二千円ずつ払っている、こういう町もある。ところが、私の選挙区の中心である長岡市になりますと、さすがに日本一の豪雪ですから、なれているから、町内会に全部、必要ならばロータリーもいわゆるトラックもお世話いたします、排雪をしてください。排雪というのは、ここに道路局長の規定があるけれども、雪を運んでいって川や海に捨てるのを排雪と言っている。除雪と区別をしている。やるときにはやってください、そのかかった費用の六割は市で出します、四割は、残念だが町内の皆さん個々にひとつ分担して負担してください、こういうような形をやっている。みんな市町村によってばらばらです。  しかし、県道に県道の主管者があり国道に国道の主管者があるならば、市町村道にも市町村道の主管者がいて、責任を持って除雪、排雪をやるのがやはり雪寒法のたてまえですよ。なぜそれをやらないのです。だれですか、これは建設省かね。どこです、答弁は。国土庁長官かね、どなたです。時間がないですから、ぱっぱっとやってもらわなければなりませんが、こういう行政の怠慢が行われて一いるから不平不満が出る。
  263. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  先生御指摘のような現状は認めます。問題は所管の関係で、やはりいままでの来し方の経過措置でこういうことになっておるわけであります。私たちは普通、特別交付税等々で財政措置をやるのが合理的といういままでの考え方できておるわけであります。やはり地方は地方なりに地方公共団体の自主性というものもありますし、その特殊性を判断して弾力的に運用できることで現在までやってきておるわけであります。  今回の豪雪につきまして、特に三十八年、五十一年のときも特別措置で国庫補助があったわけでありますけれども、こうしたことを踏まえながら対応すべき問題であろうかとも考えますが、現在までのところ、御指摘のような形でやっておることは事実でございます。地方の自治体の自主性というものを考えますと、いたずらに、どこからどこまでもすべて国で所管して、指揮監督をしてやるということについても、なかなかむずかしい問題があろうかと思いますので、先生御指摘の面をも含めて、今後の課題としてなお検討させていただきたいと思います。
  264. 小林進

    小林(進)委員 時間もありませんけれども、ひとつ建設省に聞きましょう。  住民が屋根から落ちた雪を国道の中に投げると、国道の責任ですと言ってさっとロータリーか何か来てやる。県道へ雪を住民が落とすと、県道でございますからとさっとどかす。屋根からおろして市町村道の真ん中に落とした雪は、所有者は一体だれですか。これは市長ですか、村長ですか。あるいは屋根から雪を真ん中に落としたその個人の所有ですか。雪の所有者はどっちですか。所有者はどなたですか。これは大臣はいいんです。だれか頭のいい役人はいないか。——いなければ、問題はこういうことなんだ。  それは道路に落ちたものを、これは災害の雪なんだから町村長が始末するのがあたりまえだ。あたりまえだから、国からは金は来ない。超過負担で市町村には金がない。だから市長は泣きの涙で、理屈をつけて、個人の屋根から落とした雪だから、これは共同の財産だ、除雪、排雪の費用は、六割は市が出すが、おまえさんの所有権もあるんだから、おまえさん四割出せ、こういう雪の共同所有説を出しているんだ。これは要するに詭弁ですが、そんなことをして雪の始末で苦労している。  その間には、市と個人の争いならまだいいけれども、隣のうちとけんかが朝晩絶えないのです。おまえのうちの雪がこっちに来た、いや、これはこっちに来た。まるで、二十年、三十年の隣同士が、雪の始末で犬猿もただならないようなけんかをしている。それはみんな行政の貧しさから、こうやって住民をけんかに追い込んでいる。  いいですか、時間がないから言いますけれども、こういう市町村道は生活の中心なんだ。横町、縦町、裏町、この町もちゃんと市町村が責任を持ってきちっと除雪をして、(「演説をやめる」と呼ぶ者あり)演説はやめるけれども、なぜやるかというと、これをやらないと通学道路で子供が学校に行けないのですから、親は県道よりも国道よりもその道路が大切なんだ。そのために泣き泣きやっているのですから。ひとつ制度をきちっとして、もう来年からは村道や町道の争いが起こらないように、この問題をひとつ明らかにやっていただく。これは第二問だ。  第三問に行きます。  このたびの豪雪で、特に老人、母子世帯、身障者に対する援護、除雪、排雪に対して一体どういうことをしてやっておりますか。  きのうのNHK見ましたか、NHKのテレビは言っていました。この豪雪、排雪で一番痛めつけられているのは弱者だ。そして生のテレビに出したのです。孤独の老人がついに、雪が降った、だれも除雪してくれる者はない、家の戸をあけて外へも出られない、やがて一週間たち二週間たち、親戚が行ってみたら、さびしく死んでいた。あるいはまた、気息えんえんとしていま死ぬ間際にいたという。そういう悲しむべき老人の家庭の、雪で泣いている姿が幾つも描き出されたじゃないですか。それは一体どうやっています。演説やるなと言うけれども、私はやらざるを得ないが、この気の毒な弱者の家庭を一体どうやっていますか。
  265. 山下眞臣

    ○山下政府委員 一般的に、災害救助法が発動されました地域では障害物の除去ということで、そういう弱者世帯の除雪を行うというのを救助の一種にいたしておりますほか、生活保護世帯につきましては、保護費の中で除雪費用を見るという措置を講じているわけでございます。  ただいま御指摘のありました老人や身障世帯、実は先般の災対でも先生から御指摘いただきましたが、私どもの方で、通常の場合に介護人の派遣制度というのを持っているわけでございます。これはホームヘルパーと違いまして、臨時的に、そういう世帯で病人が出たりしたときのお世話をする制度なんでございます。よく検討いたしますと、この介護人の派遣制度につきましては、その他必要な月もお世話できるということがございますので、これの活用ということに思いつきまして、先月末、急遽関係府県にも御連絡をとりまして、この制度を大いに活用してもらいたいという連絡をいたしております。その結果、ある県からはその補助の追加交付申請が出てきておりますので、私ども、この制度によりまして積極的、弾力的に、よく地方と連絡をとって対処してまいりたいと思います。
  266. 小林進

    小林(進)委員 山下君、君は優秀な局長だからうそは言わぬと思うけれども、ぼくの調べたところによれば、わが長岡市の市長を呼んで聞いた。一体、こういう身障者や生活保護者や老人の家庭をどうしているんだ。何にもありませんと言う。もっぱらボランティアの活動によってささやかにそれを支えております。これほど豪雪になれた市でもそうなんですよ。ところが、それはボランティアと言ったって、人の善意に頼っておるんだけれども、これはみんな自分の家が豪雪でつぶれそうになっているのですから、人の家も大切だけれども自分の家の雪掘りと屋根おろしで手いっぱいだということで、手抜きになっている。  実に惨たんたる状況でございますけれども、ここら辺はむしろ法律で縛って本当にきちっとやらなければ、弾力的なんというよりは、必ずやらなければならないという義務規定までもつくって、こういう弱者の家庭というものを保護しなければ、だれもが雪で泣いているときには、一番弱い者が置き去りを食っちゃう。私は、時間がないのでもう再び繰り返しませんけれども、二度とこういう質問をしなくてもいいように、この点をきちっとやってください。  それから次に移りますが、次は雑損控除と、いま一つは低所得者のいわゆる雪おろしです。  参考までに申し上げまするけれども、わが日本には特別豪雪地帯の指定市町村が二百七十九ある。その中における世帯が約百八万四千戸です。その中に保護世帯が二十一万おるのです。この保護世帯がいまこの豪雪で一番苦しみ抜いている。だれも手をかす者がないのですから、苦しみ抜いている。  そこで、この人たちは一体どうしている。それは動けない者は別ですけれども、弱い者は自力でやる以外にないからしようがない。なれぬ手で、スコップを買ったりあるいは雪のけの道具を買ったりしてやっている。だから、いま豪雪地帯へ行くと、雪を排除する機具というものは一切売れて一つもない。そして老人たちはこれをやっているのです。それは見るに見かねるのです。腰痛だ。みんな倒れている。  だから、わが衆議院にも特別豪雪地帯議員連盟というのがありまして、ここにいらっしゃる根本先生が会長、私が副会長です。それで、根本先生もおっしゃっているのです。こういう弱者、みずから、なれない雪と闘って命をつないでいるという低所得者、この人たちには少し、一時の見舞い金ぐらいやったらいいじゃないか。見舞い金というよりは、これは除雪の機具を買う金ですよ。除雪に必要な費用です。そういうものをやったらいいじゃないかと先生もおっしゃっておる。当然ですよ。  私どもは、立法措置を講じましょうと言ったけれども行政が抵抗している。そんな個人の一時金とか機具などを買う金をやるのは憲法違反になるとか言っている。何が憲法違反だか知らないけれども、そういう理屈をこねてどこかの行政が反対をしていると言うんです。これはいけませんです。いけないということは、現実に、こういうのは見ておれませんから、市町村長がやっているのです。あなたたちは雪おろしのために苦労しているから、あなた方に五百円ずつやろう、屋根おろしと前の道路をやった金で、若干公にも奉仕をしているという形で五百円をやりましょう、千円をやりましょう、二千円をやりましょうと言って、市町村長が一般の交付金の中からそれをやって処置している。それを国は、そんなことをやれば、個人にやれば、そんなのは憲法違反だというようなことを言って何にもめんどうを見ない。それならば一体、市町村が千円や五百円を弱者の雪と戦っている姿にやっている、これも市町村長は憲法違反をやっていることになるのか、そう私は聞きたい。そういう矛盾があるが、これをひとつしっかり解決してください。  なお、私は事のついでに申し上げますが、わが新潟県に行きますと雪の問題が特徴が変わって、雪害の中心は地すべりとなだれです、なだれでもはや十数人も死んでいるのですから。それでもう五、六十軒も家屋が倒壊をしている。この家屋の倒壊や地すべりに対して、皆さん方は一体何をしてくれたか。しかし、自治体の長はこれを黙って見ておれない。ですから、現実にわが長岡市において、地すべりがあった、倒壊をした、全壊をした、その全壊をした家庭には、市長は三十万円の見舞い金をやっています。そして、地すべりで床上浸水をやった数十戸の家屋には、五万円ずつの一時金をやっています。大蔵大臣、いいですか。これは私は一言もうそを言っているのじゃない。やっているのです。  ところが、そこの被害を受けた住民にはまだ非住家もある。蔵もああ、土蔵もある。この人たちは、私どもの家にも市町村の見舞い金を下さい、こうやってみんな、非住家といえども家を破壊せられて、そして部落の集会所か何かで寝起きをしたり、私はさびしい、せめて国からでも、ああ、おまえは気の毒だと言って、もらうお金は三万でも五万でもそれはありがたみがあるから、何とかしてもらいたい、こういう陳情が行われているのです。これもあなた方は何もめんどうを見ないのですか。  それから、いま一つはなだれの危険地域です。新潟県は、私の知っている市町村だけでも、言いかえれば、ほとんどなだれの危険地帯である。そこは市町村長の命令で緊急避難させている。あなたのところは危ないから緊急避難しなさいと、緊急避難をさせている部落が一体幾つあるか。私は、これは一々あなた方に言いたいのだけれども、言っていると時間がないから残念ですが言えぬけれども、非常に多い。わが村だけでも、やれ守門村だ、大和村だ、いや入広瀬村だ、六日町だの塩沢だのと、そういう緊急避難をやらしている町村の名前を言ったところで、これは何十あるかわからない。多いのは数十戸、避難命令で立ち退きさせています。小さい村でも六戸だ、八戸だ、十五戸だ、十四戸だといって、みんな避難命令をさせている。この人たちは縁故者を頼っていったり、あるいは部落の集会所に寝泊りしている。  これに対して市町村長は一体何をしているか。村や町には金がないからと言って、わずかだけれども五万円、十万円ばかりずつ、緊急避難の手当として金をやっているのです。それをあなた方はどうめんどうを見ていますか。何にもめんどうを見ていないじゃないですか。これはみんな市町村長が、超過負担で泣きながら出している。こういうものに対して、緊急的に一体どういう処置をおやりになるのか。これはみんな個人に対するいわゆる補助金であり、見舞い金であり、一時金だが、実際に実情に立って、雪害で泣いている者を前にしている市町村長としてはこういうことをやらざるを得ないのです。それに対して、いわゆる避難命令で家を立ち退いて部落の集会所に行っている者には、今度はその部落の者が全体で、われわれの方は立ち退かぬでいいのだからあの人のために拠出金をやりましょうと言って、二月千円だ二千円だということで金を出して、五十万円だ六十万円だとつくって、その避難された家に救助金を出している。そういうことに対して何にも温かい行政がないじゃないですか、あなた方は。やれば、そんな個人に金をやるのは憲法違反だとばかり言っているのじゃないですか。だめです、そんなことは。そんなことは政治じゃないです。いいですか。こういう個人のことをおやりになるのですか。  そこで社会党は、市町村長が議会の承認を得てそういう個人の弔慰金や見舞い金あるいは損害に補てんしたものは、国が市町村長を通じてその補助をなすべきだという法律をつくっている。血も涙もある法律だ。一体、賛成か賛成でないか、これは自治大臣から一言承っておきたいと思うのです。
  267. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 私も雪国の者でございますから、よく実情はわかっております。それで、現在のところでは、普通交付税並びに特別の場合においては特交でこれを処置しているというのが現状なのは、御承知のとおりでございます。これだけで今回の雪害については十分じゃございません。そこで大蔵大臣にもお願いをして、予備金支出というものもお願いしなければならぬ。これは臨時的な問題でございますが、さらに徹底した恒久策を講じなくてはならぬということは、私自身も考えておるところでございます。その一環としてお話の点を消化してまいりたいと思います。
  268. 小林進

    小林(進)委員 そこで、わが社会党は、豪雪に係る生活被害救済等のために市町村が行なう特別給付に対する臨時特別交付金の交付に関する特別措置法案という、いま私の申し上げた問題をちゃんと解決するような法律案をいま用意しているのであります。これは自民党の根本先生や天野光晴君、佐藤隆君等を通じて、与野党一致になって議員立法としてひとつ出そうじゃないかと、いま準備を進めている最中でございますが、自民党も、血も涙もある方々はみんな賛成していただいているのでございますけれども、そのときには、行政の方もぜひとも御賛成願いたい。  申し上げますと、法による災害弔慰金の支給の対象とならない死亡者の遺族及び負傷者に対する見舞い金、家屋の倒壊等生活上必要とされる資産の損害に対する見舞い金、老人、母子、身障者、生活保護世帯等に対する雪おろし、除排雪あるいは生活援護等の理由による特別の援助、給付、市町村道等の除排雪作業について協力した個人、自治会、町内会等に対する協力金、市町村民に対する豪雪見舞い金等、あるいは被害を受けた住民、農林漁業者、中小零細業者が受ける融資に対する利子補給金、その他政令で定める特別の給付、こういうものに対しては、市町村が現実に個人に支給しているのだから、それをちゃんと法律で、いまも自治大臣言われましたけれども、特交だとか予備費ではなかなか間に合わないから、その予備費や特交の上にいま一本この法律をつくって、きちっと救済をしていただいて、豪雪で泣く住民のこの苦しみの格差を一歩でも直すようにしてもらいたい。あなたも山形県ですから、苦しみはおわかりになると思いますが、これを強く要望いたしておきまして、時間もありませんから次を急いで申し上げます。  いま一つ、これは勤労者の生活の問題です。たとえば、いま農村地帯に行きますと、冬は仕事がない。土木事業だ。土木の作業員になって日雇いに雇ってもらうというのが農村における唯一の仕事です。ところが、その日雇いに出る人たちが、除雪や雪おろしのために日雇いを休んで、そして毎日雪おろしをやっていると、当然入るべき日雇いの金が入らない。これは重大なる生活の問題を起こしている。これを一体どう考えるか。いいですか、生活を奪われているのですよ。日雇いに行かなければ一家の生活が保てないのだ。この人たちが、雪おろし、除排雪のために仕事ができないのだ。この生活の苦しみを一体どう見てくれるか、これが一点です。  時間がないから続けていきますけれども、第二点、農村は出かせぎが中心です。みんな半年、出かせぎに行くのだ。ところが、出かせぎに行っていると、後に残っている者は年寄りと子供だけなんです。雪が降って家がつぶれそうになったってだれ一人始末してくれる者がないから、しようがない、出かせぎに行っている人たちが職場をやめてふるさとへ帰ってきて、一月、二月、自分の家で雪おろしをやっているのです。そうなるとどうなりますか。出かせきをすると——これは大原さん、あなたの方が詳しいが寸六カ月たたなければ失業保険をもらえないんだよ。だから、普通は、農業が済むと十一月に出かせぎに行って、四月に帰ってきて農作業をやって、この六カ月で失業手当をもらうんだ。ところが、豪雪の後始末ができぬから、一月、二月、途中で自分のうちの雪おろしに帰ってくると、失業手当をもらう六カ月の朝風がなくなってしまうんだ。六カ月に満たないんだよ。そうすると失業手当金がもらえないんだ。これは半年、出かせぎに行っている農家にとっては、生活の重大問題なんです。だから、これを少なくとも、出かせぎに行って、家へ帰って雪をおろしている期間も六カ月の出かせぎの期間に勘定してもらわなければ、農家の生活は根本的破壊なんだ。これを一体どうしてくれるかと言うのだ。いや、笑い事じゃないんだよ、あなた。これは本当に農民にとっては生きるか死ぬかの問題なんだよ。  それからいま一つ、第三番目。どうも大蔵省は、官僚というのはなかなか頭がいいな。雑損控除で、この前、十万円まではいいなんて言って、十万円に該当する者は一人もないと言ったら、今度はやっと五万円まで。雪おろしをやったときには、五万円を超過したものは必要経費として認めると言ったのだ。うまいことを言ったつもりでいるけれども、実際にこれは実施するときになったら大変なんですよ。二十万円雪おろしに使って、十五万円だけ必要経費で見てくれると言ったところで、いまどこへ行ったって、雪おろしの人夫なんかいませんよ。わが新潟県に行ったって、雪おろしの人夫といえば、スキーをやっているスキー場とかなんかでは、一日二万円だ三万円だと言って金をくれるから、そこには雪おろしの人夫は行きますけれども、一般の家庭に、雪おろしに雇われてくる者なんて一人もいません。  一体どうしてこの問題を措置するか。それでは隣りおやじさんとこっちのおやじさんと交互に雪おろしをやったことにして、受け取りをひとつ出し合うことにしようか。あるいは家計簿に隣のお父さんに払ったようなことにしてやろうか。お父さん、おまえさんに三十万円雪おろし費を払った、おれもまた、おまえさんのところから三十万円雪おろし費をもらったことにしよう。こうなると、なるほど、隣のお父さんに三十万円払った方は、五万円を抜いて二十五万円は必要経費で差し引いてもらえるだろうけれども、今度は反対に、隣のうちへ行って雪をおろしたことにしてもらった三十万円がそのまま所得税にひっかかってしまうから、五万円もうけたように思ったけれども、むしろ、三十万円の所得がふえたことになって、よけいに税金を取られる。大蔵省というのはこういう頭のいいことを考える。何にも恵みがない。  ところが、実際は朝から晩まで。水害や地震は一回ぐらぐら来ればいい。雪というのは、降った後三週間も四週間も災害は連続するのです。その間、雪と闘って、腰痛になったり腰が抜けたりして苦しんでいるのでありますから、一定の地域においては一律に三十万円、雪おろしをしたものという一つの仮説の上に立って、そんな受け取りは要らないよ、そんな家計簿なんか要らないよ、この地域はみんな三十万円ずつ雪おろしにかかったんだと言って、必要経費として認めるわけにはいかぬか。これがいわゆる政治の情けというものです。そんな制度があるかとあなたはおっしゃるかもしれませんけれども、また演説になるからやめますけれども、一人親方という制度があるじゃないですか。労働省、どこかにあるだろう。何も雇用されていないけれども、雇用をされた——大工さんなんかそのとおりです。その一人親方の大工さんが雇用されたという仮説の上に立って失業保険をくれるような制度があるじゃないですか。こういう制度を援用すれば、自力でもって一生懸命に雪おろしをした者も人を雇って雪おろしをしたものとするという仮説の上に立って、ちゃんとこういう必要経費を見ることにより、勤労者にも平等に恩典を与えることができる。  どうですか、以上三つの問題を私は提起いたしました。御説明をいただきたいと思います。
  269. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答え申し上げます。  今回の豪雪に際しまして関係県に対しまして、雇用対策として、まず、豪雪のための雪おろしの求人に対してできる限りあっせんをするということが第一、それから、豪雪のためにやむなく離職するような人に対しましてその後の就職あっせんといったようなことを指示いたしておるわけでございますが、特に先生御指摘になりました、出かせぎ労働者が豪雪のために一たん故郷に帰るといった場合に、雇用保険の被保険者資格を満たさなくなる問題、この問題につきましては、先生御承知のように、通常は六カ月まるまるの資格期間が必要でございますが、出かせぎ労働者につきましては一カ月十一日以上の月が六カ月あればいいということがございまして、最短四カ月と二十二日で満たせるということになっております。そういう意味で、一カ月のうち残り十九日ぐらいは地元へ帰って雪おろしをいたしましても、十一日分の賃金支払いがあればその月は被保険者期間として計算される、こういうような措置をとっております。  それから、出かせぎに戻りましてもう一度就労する場合に、万一足らないような場合には、できる限り事業所を指導いたしまして、資格期間がつくような就労形態をとるように指導するというような形をいろいろ指示して、できる限り出かせぎ労働者が従来と同じような形でやっていけるように措置いたしておるところでございます。
  270. 小林進

    小林(進)委員 日雇いに行かぬで雪おろしをしたのを、時間がないから早くやってほしい。
  271. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 先生の御指摘の雪おろしのための休日、つまり特別休暇の件だと思いますが、特別休暇につきましては、先生御承知のように、地方におきましてお盆だとかあるいは地方祭のようなときに、労使でそういった点を制度化しているというところが普及しておるわけでございまして、こういった問題につきましても、従業員と事業主との間で話し合ってそういった点を解決していただきたいというふうに思いますし、特にこういった豪雪の地域におきましては、事業主のそういった配慮というものを十分期待できるのではないか、こういうふうに思っております。
  272. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  ただいま局長がいろいろとお話を申し上げましたが、そのようなたてまえになっておるということを申し上げましたわけです。しかしながら、政治は生き物でございますから、仰せのとおり非常の措置、特別の措置ということはないではございません。私どもはそういうことをやるために、政治家として労働大臣をやっておるわけでございますから、時に応じ変に臨んで十二分の措置をいたす覚悟でございます。
  273. 小林進

    小林(進)委員 これは十二分の措置をやるという労働大臣の力強い御答弁を得ましたから、これでやめます。時間が来ましたから、残念ながらやめます。  大蔵大臣、ともかく精神的にまいっているのですから、自治体は超過負担は一銭もないように、あらゆる後始末をりっぱにやっていただくようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  274. 小山長規

    小山委員長 この際、湯山君より関連質疑の申し出があります。小林君の持ち時間の範囲内でこれを許します。湯山勇君。
  275. 湯山勇

    湯山委員 文部大臣お尋ねいたします。  さきに、この国会の自民党の代表質問で安倍政調会長から、わが党は偏向教科書の見直し運動を推進するというような意味の御質問がありました。それからまた、本委員会におきましても塚本委員の質問に、これは大臣の口から、偏向教科書の問題については云々と、先ほど栗田委員から指摘のあったような御答弁がございました。そこでまず、一体、大臣は、偏向教科書というものが存在するとお考えになっているのか、そういうものはないというようにお考えになっているのか、責任者としての御答弁を簡潔にお願いいたします。
  276. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 偏向教科書という言葉でございますが、あるいは安倍政調会長の所信表明に対する質問なり、あるいは民社党の塚本さんの御質問に対する私の答えなり、そもそも、教科書が偏向しておるか偏向しておらないかという問題は、見る人によっておのおの異なると存じますが、文部省が責任を持って検定、審査いたしましたものでございます、文部省といたしまして、自分のつくったものを偏向と言うわけ合いはございません。その点はひとつ……。
  277. 湯山勇

    湯山委員 大変明確な御答弁でした。  そこで、偏向教科書はないとおっしゃるのですからそれでいいとして、もし不備な教科書、欠陥のある教科書、そういうものがあったときには、これはやはり文部大臣責任だと思いますが、いかがですか。
  278. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいまの御質問でございますが、われわれ全力を挙げてりっぱな教科書をつくると考えておりますが、何分にもわれわれ、人のつくったものでございますから、立場立場によりまして足らないことを不備と思い、また行き過ぎたことを超過と思うこともございましょう。(湯山委員責任は」と呼ぶ)責任は私の方にございます。
  279. 湯山勇

    湯山委員 それでは、全責任を負っておる文部大臣は、教科書全部に目をお通しになりますか。
  280. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 私もできる限り、時間の余裕のあるときにページをめぐって見ることはございますが、全部目を通してあるかという御質問に対しては、いまだその点まで達しておりません。
  281. 湯山勇

    湯山委員 局長はどうです。
  282. 三角哲生

    ○三角政府委員 まだ全部は白を通しておりません。
  283. 湯山勇

    湯山委員 そうすると、これは非常に重要な質問ですから。実質行政機構上の機構としての責任は文部大臣がお持ちになっていますけれども、実際に教科書を動かしている、大臣にかわって目を通して責任を持つ仕事をしておるのはだれですか。
  284. 三角哲生

    ○三角政府委員 文部省の初等中等教育局に教科書調査官という官職がございまして、現在四十三名おりまして、それぞれの教科あるいは学校種別ごとの分類で担当しておりまして、その担当する分野について調査官が目を通しておるわけでございます。
  285. 湯山勇

    湯山委員 法律上の責任あるいは政治上の責任、それは大臣がお持ちになる。しかし、実際にその仕事をやっておるのは調査官であるということになりますと、実質は大臣の仕事を調査官がやっている。調査官というのはそういう非常に重大な、大きな権限を持っているということをひとつここではっきりさせておいて、大臣が一応検定してよろしいというので検定済みになったその教科書が、今回ずいぶんたくさん、それ以後において、正誤改訂という名目で直されましたが、直されたことを大臣は御存じか。内容も御存じか。
  286. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 過般来、その件につきましていろいろと御指摘や御議論があったのでございます。御案内のとおり、全体の検定は三年ごとになっておりますが、部分的な、四囲の情勢の変化によります問題は、個々の問題として部分修正もあり得たと思います。
  287. 湯山勇

    湯山委員 このことについては、先ほど御質問がありましたが、科学技術庁から申し入れがあったということです。科学技術庁は三項目について申し入れをなさって、今回改定になって出てきたものを見て、言ったとおりになっているとお思いになりますか。これでは一向通じてないとお思いになりますか。
  288. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 私どもは、原子力に関する正しい知識の普及という観点から、参考意見という形で文部省に意見を申し上げたわけでございまして、その後の取り扱いにつきましては文部省に一切をお任せしているわけでございます。その訂正等につきまして、それなりに考えていただいたという印象は持っておりますが、いずれにしろ文部省の御判断で処理されたというふうに理解をしているところでございます。
  289. 湯山勇

    湯山委員 先ごろ、各会社の代表を呼んで、文部省で参考意見を述べた。それによって教科書を書き改めた会社は、八社のうち六社がこれを書き改めております。そこで、この訂正は正誤訂正ということで行われておるということですが、それは間違いございませんか。
  290. 三角哲生

    ○三角政府委員 会社の方々がほかの事項等での正誤訂正等のために文部省を訪れましたときに、ですからかなりの期間にわたっておりますが、随時、参考としてお示しをしたわけでございますが、その訂正のカテゴリーは、委員のおっしゃいますように正誤訂正でございます。
  291. 湯山勇

    湯山委員 一たび大臣責任において検定したものを訂正するということは、これはよほど慎重にしなければならないということから、教科書検定規則に、正誤訂正については厳重な規定がございます。  法制局、お見えになっておりますか。教科書検定規則をちょっと見ておってください。正誤訂正のところ。この正誤訂正規則はちゃんと四項目、これに該当するものは正誤訂正をしなければならないという規定になっています。このどの条文に当てはまるかということをお聞きしたいのですが、原子力発電関係で正誤訂正した分はどれに当たりますか。
  292. 三角哲生

    ○三角政府委員 これは本によって若干異なるかと存じますが、教科用図書検定規則十六条二号あるいは三号あるいは四号、そのいずれか、あるいはその幾つか複合しておる状況であるというふうに理解しております。
  293. 湯山勇

    湯山委員 四号に該当しておるのはどれですか。
  294. 三角哲生

    ○三角政府委員 どれかという仰せでございますが……(湯山委員「教科書会社名」と呼ぶ)これにつきましては、私どもの方から具体的に申し上げることは適切ではないというふうに考えておるわけでございますが、内容的に……
  295. 湯山勇

    湯山委員 いいです、そこまでで。  法制局長官、お尋ねします。  この検定規則、これをお読みいただいたですね。正誤訂正のとき四項目挙げております。これを適用して正誤訂正したときには、どれか当てはまらないといかぬでしょう。その中で特に四項目です。一、二、三は明瞭ですが、第四は「その他学習を進める上に支障となる記載で緊急に訂正を要するものがあることを発見したとき。」こうなっておりますね。そうすると、一、二、三は明瞭ですけれども、第四の場合は、学習を進める上で支障があるというのが条件になっておる。こういうのを適用するときには、当然、こういう法律規則のたてまえからどれかに該当すると言わなきゃ適用できないのでしょう。それをお聞きします。
  296. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 いずれかの号に該当しない限り、十六条の規定は適用できないことは明瞭だと思います。
  297. 湯山勇

    湯山委員 それがいまのように、言えないというのはどういうことか、私にはわかりません。  そこで、けさ粟田委員が配った資料がありますから、これをお借りします。局長、見てください。清水書院の二百四十六ページ、これが一番訂正個所が少ないようです。これは何号の適用ですか。
  298. 三角哲生

    ○三角政府委員 先ほど御指摘の資料一ページの清水護院の欄のアンダーラインが引いてあります個所は、十六条四号に基づく訂正というふうに考えます。
  299. 湯山勇

    湯山委員 学習上どこが支障になるのですか。
  300. 三角哲生

    ○三角政府委員 やはり教科書の内容としてより適切なもの、これを児童生徒に供与するということが学習上望ましいということでございます。
  301. 湯山勇

    湯山委員 いま法制局長官の答弁を聞いておったでしょう。学習に支障があるということでなければやれない。よりよくするなんというのは項目に該当しないのですよ。ないでしょう、そんなのは。四項目に入らないのだ。どこが学習に支障があるか。
  302. 三角哲生

    ○三角政府委員 内容としては一番適切なものがいいのでございまして、より不適切なものということは、適切なものを使う場合に比べますれば支障が生ずるということであるというふうに考えます。
  303. 湯山勇

    湯山委員 答えていません。  法制局長官、いまのでいいですか。これは四号に当てはまりますか。よりいいものというので当てはまりますか。予告してなくて申しわけありませんけれども、入らないでしょう。
  304. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 正直に申し上げますが、いま初めて見ましたので何ともお答えしにくいのですが、要するに四号は、学習を進める上に支障となるかどうかということと、緊急に訂正を必要とするその必要があるかどうか、それしかないと思います。
  305. 湯山勇

    湯山委員 局長、それも答弁になってないですけれども、時間がありませんから、もう少しどんぴしゃりいきましょう。  あなたのところにもう一つ、帝国書院と教育出版の資料がありますね。それで見てください。実にこれは奇妙なことに、正誤で訂正した方が間違っておるのです。文章を入れまして、そして一方では、加えたのは「排」、ところが、帝国書院の方は、初め「排」であったのが、今度は「廃」に直さしていますね。違うでしょう。これはどういうことですか。
  306. 三角哲生

    ○三角政府委員 先ほどの、学習上支障があるという点でございますが、前の案で「放射線もれの危険という問題があり、発電所建設予定地では、どこでも住民の強い反対運動がおきている。」これは上の日本書籍の方でございますが、そういった記述につきまして、この記述では学習上支障があると発行会社が判断して申請をしてまいったわけでございますので、これにつきまして文部省においてもそれを認めたという、そういうことでごございます。  それから、ただいま御質問の「排水」の問題でございますが、確かに御指摘のように「廃」という字になっております。これは私どもはや一はり「排」という字を使う方が通常であり、一般であるというふうに思いますので、これは教科書会社でどういうことでこういう「廃」にしたか、私どもも、見落としがあったのではないかというふううに、いま先生から御指摘を受けて感じますが、必要がある場合にはこれについては正誤通知をするということになろうかと思います。
  307. 湯山勇

    湯山委員 答弁になっていませんよ。これは教科書会社の責任じゃないですよ。検定の責任は文部大臣にあるのです。しかも、これは特別に受け付けて正誤で直したところです。直したところで文部省が、見落としたかどうかわかりませんじゃなくて、それを間違えたのは、あなた、検定しておるのですから、これはもう全く、極端に言えば、責任を果たしていないでしょう。それはたくさんあるのを見落としたという場合もありますけれども、これはそうはいきませんよ。正しい字があったのを、間違った字を持ってきて、それを認めておるのですからね。大臣、間違いでしょう。
  308. 三角哲生

    ○三角政府委員 これは検定と申しますよりは、先ほど来申し上げておりますように、発行会社側からの正誤訂正の申請を認めたということでございますが、もちろん、御指摘のように、その間、私どもは見ておるわけでございます。ただ、正誤訂正の場合は検定の場合と違いまして、印刷した原稿本で行うというよりは、むしろ印刷してすでにできておる本の該当個所と照らし合わせて手書きの原稿で持ってくるということでございます。したがいまして、これは原稿でそういう字が使ってあれば、これは誤記に入りますし、それから、印刷段階でこういう字になったとすれば誤植ということになりまして、こういうケースは、非常にたくさんの教科書でございますので、ときどきございます。それはそれぞれの学校に会社側から連絡をするということにいたしておるわけでございます。
  309. 湯山勇

    湯山委員 断じて私は許しません。何百の教科書を見ておりはせんのですよ。これはもう検定して済んで、それから出てきた、この六つほどの中の一つです。しかも、同じ項目について六社からも出ておる。それをずっと目を通しておるのですから、私も、言われたように一般的なものなら言いませんよ。じゃなくて、何回も目を通している。しかも、その中の直したところを間違えているのですから、局長責任があるでしょう。あなた、責任があるかないか、それだけ言いなさい。
  310. 三角哲生

    ○三角政府委員 責任はあると思っております。
  311. 湯山勇

    湯山委員 文部大臣、あなたもありますね。
  312. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 文部行政の全責任を持っております。
  313. 湯山勇

    湯山委員 ある、なしだけ言ってください。
  314. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ございましょう。
  315. 湯山勇

    湯山委員 責任があれば、どう責任をおとりになりますか。
  316. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 この点はよく相談をいたしまして……
  317. 湯山勇

    湯山委員 ただ大臣、これは私に言わしていただけば、調査官は本当にまじめにやっておるのですか、どうお思いになりますか、こういう間違いをするというのは。
  318. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 私の部下は、本当に一生懸命に真剣にやっております。
  319. 湯山勇

    湯山委員 これはやっておるとは言うけれども、そうじゃないのです。これだけ同じものが出ておるのですよ、六つも。みんな「排水」と書いてあるのです。しかも、その中の一字を変えておるのです。一番審査の対象にならなければならぬところを、それをひっくり返してわざと間違った字を使っておる。これはまじめにやっておるというのは間違いです。もしまじめにやっておるなら、能力がないのです。無能力です。  いいですか、私はこうだと思うのです。さっき申したように、けさほども指摘がありましたが、いま訂正した資料を出せと言ったら、出さない。なぜ出さないか。出したらあらが出る、何万もの間違いが出ました、これじゃ教科書の権威にかかわりますから出さないのです。出さなくても、見本本は公開しているのだから、みんな見ている。検定本は子供の手に渡るのですから、資料を出さなくてもわかること。それを隠して出さない。それから、だれが言ったか。調査官が言ったのはわかっておるのです。しかし言えない。それを文部省のだれが言ったと言わない。それから何条何項適用、これも言わない。言えません。  こう秘密にして、その中で、調査官は文部大臣の権威をかさに着ていますから、そこで見て、ああ直しておる、われわれが言ったのをみんな直している。中身を見ていないのですよ、これを見落とすというのは。大臣がごらんになったって、少し気をつけて見ればわかることです。何人もの調査官が、しかも何回も目を通している。原本のときから見れば、もう十回以上、目を通しておる。しかも、つい落とすような、すらっといく中じゃありません。今度特に修正をして出ておるもの、これを見落とすのは本気でやっていない証拠です。ふまじめな証拠です。能力がないかどっちかです。これを直さなければ、いまの公開の問題も言えない、名前も言えない。では、調査官を全部呼んでください。これに実質的に責任を持っている調査官を呼んでください。これを見ていないのですよ。見ないからこういう間違いを起こしている。  普通の誤字、脱字なら言いません。わざわざ直したものを間違えて入れている。これは断じて許せない。大蔵大臣、こんなのですから半分も要らぬですよ、こんなことするなら。本気でまじめにやらすためには公開すべきです。そうしたら誤字がこれだけあるというのがわかれば、ああこれは少なくせねばいかぬとまじめにやります。第一、会社に言うのも、書いたことは一度もないでしょう、口で言うだけ。仕方ないからマイク持ってきてテープでとって、それでもって一生懸命直している。まことに官僚的で秘密主義で、その中に隠れていいかげんな仕事をしているのが今日の調査官。  大臣、言うこと間違っていますか。あなたは国民に対して責任がある。こういうことをやっておるのは国民におわびしなければならない。どうでしょう、大臣
  320. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいまの誤字の問題は、これはもう明らかに間違いは間違いでございます。なお、それに対しまして、調査官も大変多忙で仕事もかさんでおります。これは人のしたことでございますので、一字の間違いというものは重大ではございますが、すべて責任は、私が悪いのであります。
  321. 湯山勇

    湯山委員 けさも大分陳謝されたそうですが、いまも陳謝された。それは大臣には済まぬと思いますけれども、これは検定制度のあり方を変えなければだめです。いまのように、もう決まっておるでしょう、全部公表されるのは。あと一カ月もかかれば子供の手に渡るもの、それと見本本とで変えたところをなぜ発表しない、資料を出さないのですか。きょうもそんな人を集めてやっておるというから、そんなことをやるよりも私の質問でも聞いてくれた方がよっぽどいいのですけれども、もっとまじめにやらすためには公表するというのはどうですか、こんなものは後でどうせみんな見るのですから。
  322. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 間違っておりますことは、一字が間違っておりました。そのことあるがゆえに検定制度全体を公開、公表するということは、これはまた、別途な重大な諸般の問題もございます。これはただいまは御意見として伺っておきます。
  323. 湯山勇

    湯山委員 これは検定のあり方について検討する必要があると思うのですが、どうですか、大臣
  324. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 教育の問題について最も専門的に御研究になっていらっしゃいます湯山委員でございます。御説につきましては十分に拝聴いたします。
  325. 湯山勇

    湯山委員 なお、大臣、時間がなくなりそうですから申しますが、大臣は十月十五日に、検定になった教科書というのは三年間はいじれない、だからこれは教科指導の面で是正していくということを委員会で御答弁になりましたね。ところが、三年間待たなければならないと言っておったのが、ごそっと変わっておるのが今度の日書の社会の教科書です。とにかく、栗田さんの資料で見ましても、字がいっぱいあった一ページがごっそり図面に変わってしまっている。そうですね、大臣、中身は言わぬが。字がいっぱいあったのが図面に全部変わっている、そうお認めになりますね。
  326. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  ただいま先生がおっしゃいましたように、全面的な改正は三年ごとでございます。しかしながら、たとえば、記述につきましての誤謬がございましたり、あるいはまた、会社それ自体が改めたいというような問題につきましても、客観情勢のいろいろな移り変わりによりまして、りっぱな教科書をつくらなければならぬという責任からも、これら出版会社それ自体の意見もやはり聞いてやらなければいかぬだろう、かようにも考えます。
  327. 湯山勇

    湯山委員 どうもわかりにくいのですが、検定する前はいいのですよ。検定した後は、もう大臣責任持って検定したもの、それの訂正は出版会社が言ってきても四項目以外やってはいかぬ、こうなっておるのです。これはそれに該当しないです。ですから、これも間違い、さきのも間違いです。  そういうことをなぜやったかというと、大臣は三年待たないとできないと、非常に良心的に規則どおりのことを答えていますけれども、実は朝日新聞の報ずるところで、十二月二十八日、教科書協会会長の稲垣房男氏が、教科書の内容について指摘された部分は、三年ごとの改定の検定を待たずに直します、経団連から苦情の出た大企業の活動を必要以上に批判する部分はすぐ直します、こう言っておるのです。大臣は三年たたなければ直らないと言ったのを、稲垣会長はすぐ直すと言って、そのとおりなっておるじゃないですか。大臣ができないと言ったものが、教科書会社のそれが言って、大臣責任持った検定を、承認を得て直っておるのですよ。どっちが文部大臣ですか。稲垣文部大臣か田中文部大臣か、どっちです。こんなことは許せますか。
  328. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 先ほど来申しておりますように、原則として三年でございます。しかしながら、客観情勢の変化に基づきまして部分修正というものはあり得ると存じます。
  329. 湯山勇

    湯山委員 あり得るんじゃなくて、私はあれは認めますと言うのです。私は部分修正は承認します。勝手にやるんだったらあれですけれども。そうじゃないのです。大臣はそうやってできないと言ったことが、稲垣会長が言ってそのとおりなっておる。あなたの権限を行使しておる役人は、そういう稲垣会長かどこかと結びついて、あなたが国会で正規に答弁したことを平気で破っている。この体制に問題がある。言うことがおわかりになりませんか。言うことがわかるかわからぬか、それだけお答えください。
  330. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 客観情勢の変化によりまして、部分修正は当然あり得ると思います。(湯山委員「四項目に当てはまらない修正ですよ」と呼ぶ)この点につきましては、私は部分修正として認めると存じます。
  331. 湯山勇

    湯山委員 検定規則には部分修正などという言葉はないのです。学習を進める上で支障のあること、これしかないのです。よくするために部分修正なんということは、三年待たなければできない。答弁したから、あなたが一番よく知っている。言っていることがわかりませんか、大臣。あなたの言ったとおり言ってあげるのだから。
  332. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいまの問題は、先ほどおっしゃいました一項目から四項目の点でありますが、るる申し上げるように、いろいろと客観情勢の変化による計数の変化でありますとか、誤字の訂正でありますとか、さらに事実の誤りとか、そういうことであると私は信じます。
  333. 湯山勇

    湯山委員 いまのはそれ以外のことですからね、おっしゃったとおり。これも規則違反です。規則違反のこういうことを、あるいは規則違反とまでは言いません、遠慮して規則に合わないことと言いましょう。そういうことを、いま外部の人がすぐ直しますと言うのが、そのまま直っている。大臣は、それは三年待たないとできないと、いまおっしゃったとおり。それはよくしたいけれども、この規則のたてまえでできない。それを外部の人が言ったら直っておるのですから、どこに大臣があるかわからない。これは大事な問題ですから、もう一遍このことも検討してください。大臣、どうですか。
  334. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 記述が客観情勢と合わなくなったような場合もございましょう。そういうものの部分修正は、当然認めてよろしい問題と存じます。
  335. 湯山勇

    湯山委員 法制局長官、いまの答弁でいいですか。それで規則に合いますか。答えられないですか。聞いていませんでしたか。
  336. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 どうも事実関係がはっきりしませんけれども、とにかく明らかなことは、一号、二号、三号、四号以外には十六条の規定の権限はないということです。これだけははっきりしております。
  337. 湯山勇

    湯山委員 大臣、そういうことですからね。あなたも補佐が悪いから、あれも調査官も含めて資格ないんです。こんな大事なことを見逃がして、まだ答えができなかったりするようでは、本当に国民の教科書をあずかる資格はないと私は思います。  だから、いまの客観情勢の変化なんと言うと、すぐに高校の教科書でも、客観情勢が変わったから憲法前文の規定をなくせなんという訂正の指導をいま、していますよ。憲法前文の規定をなくせというのは、奥野法務大臣が法務委員会で言ったとおりです。奥野法務大臣に入れ知恵したのは諸澤次官です。これは記録にある。それがもはや調査官にちゃんと耳に入って、来年の教科書にそのとおりの指導をしていますよ。  それから、憲法の問題に触れても、憲法の内容が解釈が変わった、それは間違いだ、憲法の解釈は変わっていないという指導をしておるのです。  そこで法制局長官、憲法の解釈が変わったというのは、私が三木総理のときに聞いて、三木総理もそう言われて、これは大事な問題だからというので吉國法制局長官が補足して、永井文部大臣が総括して、いまのように変わったと言っておる。解釈は変わったでしょう。
  338. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 御指摘の答弁は、昭和五十年二月三日の衆議院の予算委員会における湯山委員の御質問に対する答弁だと思います。その答弁の考え方は現在も変わっておりません。
  339. 湯山勇

    湯山委員 いいですか、文部大臣。それを調査官はちゃんと、教科書会社へ訂正せよと言ってやっておるのです。これも、やったかと言ったら、あの人らはやってないかわからぬと言うでしょう。どうですか局長、やりましたか。
  340. 三角哲生

    ○三角政府委員 憲法の前文といいますか、ある文章について、それに対する採用あるいは削除の意見を申し上げましたり、あるいは憲法の解釈に関連して、教科書の検定の過程において意見を申し上げるということはあり得ることでございます。ただ、それは全体の文脈の関係でございますとか、それから重複をしておるかどうかとが、いろいろな状況のもとで意見を言うということでございます。  ただ、先生いまお持ちになっておりますのはどういうあれか存じませんけれども、高等学校の明年度から使います教科書につきましては、現在なお検定中でございまして、今後においてその合否を決定する、そういう事柄でございますので、具体的な一々の状況についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  341. 湯山勇

    湯山委員 結論的に言えば、やはり秘密主義なんです。学問的なこと、教育の問題に、そんな秘密があっていいはずはないのですよ。それを憲法の解釈が変わったというのに対して、修正せよ、政府の憲法第九条の解釈と運用はいささかも変化していない、自衛権、戦力の保持、交戦権ともすべて明確である、こうですよ。それで局長は言えないと。こういうところに問題があるのです。もっとこんなものは大っぴらに討議できるようにしてやったらどうですか。きょうも教科書会社と一一会って話すと。文書で出したらどうですか。調査官、こんな手間、全部省けます。  これは愛国心のときでもそうでした。大臣は初め、愛国心という言葉がないと言ったけれども、私からいろいろお尋ねしたら、愛国心という言葉がなくても愛国心は養成できるのだという御答弁に変わって、私も評価しました。何でもそれがなければやれないというものじゃなくて、音楽の本だって、音楽愛好なんて書いてないけれども、いい曲を歌い、いい曲を聞いて音楽を愛好する。そのことは大臣もおわかりになったからもうこれ以上申しませんけれども、検定の制度をもっと明朗にする、親切にする、わかるようにする。この暗く取り巻いておる秘密主義、ここが調査官の怠慢、こんないいかげんな検定につながるのです。このことはしっかり申し上げておきます。  そしてなお、これらに関して私は、いまたくさん資料を持っていますけれども大臣が非常に誠意を持ってお考えのようですから、また文教委員会等でお聞きします。きょうも、いまの資料を出さない問題を言おうかと思ったけれども、せっかく調査官がそうやっておるのならしんぼうしてあげよう。調査官も呼んでほしいと言ったけれども、いまやっておると言ったから見合わせました。  大臣だけは、私のいま申したことをわかってくれなければ、これは委員長、このとおりですから、調査官を全部呼んで、資料を出してもらって、もう一遍やります。そうせざるを得ないのです、理事の皆さんにもお願いして。大臣、いま申し上げましたこと、よくおわかりいただけましたですか。
  342. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 教育に対しまして非常に熱心な御意見に対して、心からお礼を申し上げます。  検定制度もりっぱなものにしなければなりませんし、同時に、教科書もりっぱな教科書をつくる。愛国心等の問題は、先生と私とが委員会でお話を申し上げたところでございまして、よく存じ上げております。
  343. 湯山勇

    湯山委員 大臣から、検定制度もりっぱな検定制度にするし、りっぱな教科書をつくらなければならないという御答弁ですが、いま非常に大事なときでございますから、国民は教科書に関心を持っている、ぜひひとつ早急に着手してやっていただくようにお願いを申し上げたいと存じます。なお、私は、教科書の問題というのは非常にむずかしい問題で、調査官に人が得にくいということも前にも聞きました。学者でもない、教育者でもない。ただ、こういう人が、教科書検定じゃなくて、権力の検定、そういう実質権限を、文部大臣の権限を任されていますから、権力検定になることも非常によくないことです。これも十分御留意を願いたいと思います。  以上、申し上げまして、私の質問を終わります。
  344. 小山長規

    小山委員長 これにて小林君、湯山君の質疑は終了いたしました。  次に、中村茂君。
  345. 中村茂

    中村(茂)委員 まず最初に、土地問題から御質問いたしたいというふうに思います。  ここに一冊の本がある。これは「土地社会の病巣」、副題として「日本を狂わせる土地」。目次は十一あるわけですけれども、そのうち五つを紹介してみますと、その一つは、「社会を狂わせる土地」二、「汚職の根源・土地」三、「金権政治の主柱・土地ころがし」四、「一億総不動産屋化と後遺症」五、「根深い土地神話」と書いてあるわけですけれども、昔は、不正の裏には女あり、こう言われてきた。いまは、不正の陰に土地ありき、こういう状態になっているのです。  私は、この土地問題というものを考えてみた場合に、土地が投機の対象になる、土地を手に入れればもうかる、こういう状態が続く限り、土地問題を解決することはなかなかむずかしいというふうに思います。しかし、いま土地問題全体を考えてみた場合に、または住宅問題を考えてみた場合に、まず宅地問題を解決しなければ住宅問題も解決できない、こういう状態に行き絡まってきています。ですから、英知をしぼって、何といってもこの土地問題を解決しなければならない、こういう事態に来ているというふうに思います。  そこで、この土地というものに対して、その理念、認識、土地に対する考え方を、その担当の国土庁長官からお聞きいたしたいというふうに思います。
  346. 原健三郎

    ○原国務大臣 土地の重大性につきましていまお話がございましたが、私もまことに同感でございます。きわめて重大であるが、また、きわめて難問題でもあることは御承知のとおりであります。ぜひひとつ、いろいろ英知をお聞きして善処いたしたい、これが私の前提でございます。  それで、土地に対しては、基本的理念は国土利用計画法の中に書いてありまして、それによりますと、国土が国民のための限られた資源であり、生活及び生産の基盤となるものであることから、その利用については公共の福祉を優先すべし、それから、健康で文化的な生活環境の確保に努むべし、こういうようなことになっており、私どももそういう理念でいまやっておるところでございます。  それで、それなら、そういう理念は理念として、今後どういう土地政策をやるか。長期的には、過密過疎をなべして、国土の均衡ある利用を図ろうとしている。そうして当面の対策としては、引き続き投機的な土地取引の抑制を図っていきたい、そうして宅地の供給を促進していきたい、こういうところが一般的な議論でございます。
  347. 中村茂

    中村(茂)委員 そういう意味で、地価の安定についての法的、政策的な対応について、ここで私の考え方を申し上げながら検討してみたい、こういうふうに思うのです。  その前に、この国土利用計画法に関連したことで一つお聞きいたしますが、京都で問題を起こしました十全会は、五十三年、この時期を中心にして株の買いあさりに走った。この時期を中心にして、土地投機を目的にして約四十件、金額で約六十二億円の不動産の取引を行っているわけであります。そのうち五件が国土利用計画法違反、こういう物件になっております。  この違反の土地の内容、それからそれに対してどのような措置を行ったか、対応策についてお伺いをいたします。
  348. 山岡一男

    ○山岡政府委員 十全会グループの行いました土地取引の中で、国土利用計画法第二十三条の届け出義務に違反して行われた取引五件、約三・四ヘクタールあるとの報告を受けております。  これらの取引につきましては、いずれも調査時点におきましてすでに解約済みになっておりまして、仮登記も抹消されていますので、いわば実質的な違法性は形式的には治癒されております。  しかしながら、十全会の問題につきましては、すでに京都府から、医療行政上の観点を中心といたしまして行政指導がなされておるところでございますが、国土利用計画法上の措置につきましても、総合的な判断のもとに適切な措置をとるように、京都府及び京都市に対しまして指導しているところでございます。目下、両団体で検討いたしているところでございます。
  349. 中村茂

    中村(茂)委員 すでに解約した、こういうふうに言われますけれども、この五件は、先ほども言いましたように、五十三年の六月、七月、八月、九月、この時期に全部取得しているのです。そして、解約したというのが、問題が起きてきた五十五年の十二月三日なんです。この間の約二年四カ月から五カ月、いずれにしても土地が移っていたわけなんです。問題が起きてきたから解約して、解約してしまったからこの国土法に基づく処分には該当しない、こういう言い方は私は納得できません。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕 いずれにしても、無届けで違反のものを二年何カ月持ってきたわけです。問題が起きてきたからといって解約しました、もう違反ということでこの国土法の処分ができませんという言い方は、どうしても納得できない。  それと、このときに取得した五件は、言えば関西殖産株式会社、これは、十全会の関連企業というのが十三あるわけですけれども、その中の一つなんです。全くそのグループの中の一つに入っているのです。それが売り主で、十全会の京都の双岡病院がこれを取得しているのです。同じ仲間で渡しているのですね。これが三件。それから、赤木孝という人、この人は御存じのように京都の双岡病院の理事長です。その理事長が個人で売り主になって、自分の経営している病院に売っているわけなんです。それが二件。だから、先ほどの三件も今度の二件も、全部同じグループの中で理事長の会社へ個人として売っている。ですから、ただ帳簿だけそういうふうにして、そのときのいろいろ譲渡税とか取得税、金がどういうふうになっているのか全然わからない。そういう物件ですから、先ほど言ったように、そういう言い方では私は何といっても納得できない、こういうふうに思います。
  350. 山岡一男

    ○山岡政府委員 先生のお話のとおり、当分の間そういう違法の状態が続いたということはそのとおりだと思います。もっと早く無届け事犯を発見しなければならないわけでございますが、実は無届け取引の発見のためにはいろいろな手だてを尽くしております。  一つの方法といたしましては、不動産の登記が終わりますと、市町村あてに登記済み通知書が参ります。その登記済み通知書の閲覧ということが一番基本でございますが、そのほかに森林法、都市計画法、農地法、いろいろな法律がございますが、それらの法律によります土地利用の転換に当たりまして、関係部局がお互いに連絡をするというのが二番目の発見方法でございます。三番目といたしまして、各種広告物等の情報を収集いたしまして現地を見て発見する。一部は地元の方々の通報等にもよる。  こういうふうなことで発見するわけでございますが、この件につきましては、仮登記ということでございましたので登記済み通知書になかったこと、それから、医務当局の方で早くからわかっておったようでございましたけれども、内部連絡が若干不十分であったこと等が原因であったと思って反省いたしております。今後におきまして、そういうようなものの発見に十分力を尽くすように、現地にも強くお願いしておるところでございます。  それから、処分ということでございますけれども、ただいまのそういうふうな違反事例にとりまして、無届取引等事務処理基準という相当厳しいものを示しておりますけれども、その中で、いろいろな違反の態様等によりまして始末書の徴収、是正指導、注意書による厳重注意、告発といった四段階ぐらいを考えております。  それで、法の不知のためにそういうふうなことを受ける方もございますし、今回の場合等につきましては、そういうふうな違反の中身等につきまして、先ほど御報告をいたしましたとおり府と市の両方にまたがるものでございますので、両者でいま合議しながらその処分について検討中というのが現状でございます。
  351. 中村茂

    中村(茂)委員 これは明らかに国土法二十三条の違反ですから、二十三条に違反すると、四十七条の「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」この項に該当するのです。こういう例は失礼ですけれども、一山岡局長が窃盗をして、いや、おれは間違ってやったのだから返したと言っても罪は消えないのですよね。しかも、私が言っているのは、いずれにしても二年半も取得していたのですよ、問題が起きてきたから解約したと言ってみても。まあ、この問題は一つあります。厳しい処分を要求しておきます。  それと、その間に取得されていたとすれば、金銭の授受、取得税、譲渡税、こういうものが当然かからなければならないわけでありますけれども、その点についてはあなたのところが所管ではありませんけれども、この処分の問題もあわせて、それぞれのところで処置していただきたいということをあわせ要求しておきます。  次に、行政管理庁来ておりますか。——昨年の十二月に皆さんの方で、国土利用計画法及び土地利用規制等対策費補助事業の実施状況というものについて調査して、その調査結果に基づいて改善通知を国土庁に出していると思いますけれども、長いものですから、その要点、重要点はこういうところというところを明らかにしていただきたいと思います。
  352. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。国土利用計画法の全般の調査をいたしましたが、この法律は投機的な土地利用の鎮静化なり地価の安定に総体としては寄与してきたというふうには考えておりますが、今後の運営に当たりまして若干の問題があるということで、計画の問題と土地取引の規制の問題につきまして若干の課題を提起してございます。  要点をかいつまんで申し上げますと、まず第一の計画の問題では、利用計画がまだ策定されていないところがある、ですから、都道府県なり市町村にその理解を十分求める必要がある、これが第一点でございます。  第二点の土地取引の規制関係でございますが、現在の法律でございますと、実需要に基づいていると言われている現在の地価騰貴にはこの法律だけでは十分な対処ができないのではないかということから、ほかの対応策も含めまして検討する必要があろうということで、具体策といたしまして、まず規制区域の問題につきましては、現在の規制区域の事前調査等がございますが、これらは少し重点をしぼって、地価上昇があると認められます三大都市圏の辺に重点を置いたらいかがか、こういうのが一つでございます。  それから、大規模土地取引の届け出と事前確認の制度でございますが、これにつきましては、規制対象外の土地取引が地価の上昇を促す一因になっているという面もございますので、今後の地価の動向等を注視しながら、これも三大都市圏における届け出基準について再検討をなさったらいかがかという点等を申し上げでございます。  なお、無届け事案の問題、それから届け出内容の確認の問題等にも触れておりますし、遊休土地についての措置についても若干触れております。  大体以上でございます。
  353. 中村茂

    中村(茂)委員 先ほどの十全会の無届けも、行政管理庁からいま指摘されている無届けの一つですね。こういうふうに指摘されているように、まだまだ全国的に相当あると思うのですよ。ですから、こういうものが出てきたときには厳しい対応をしておかなければ、また無届け、見つかったらそれを返してしまう、こういうことではいかぬ。それはいま報告があったからそれにつけ加えたわけですけれども、要は、特に三大都市圏について、いまの国土利用計画法を土地の規制の面とそれから需給の面からよく検討しなさい、こういうふうに言っていると思うのですね。いま土地というものをいろいろ考えてみた場合に、やはりこの国土利用法も五年、六年というふうにたってきたわけですから、通知のように見直す時期に来ているのではないか、こういうふうに私は思うのですが、所管の国土庁はどういうふうに考えておりますか。
  354. 山岡一男

    ○山岡政府委員 行政管理庁からの御指摘の点につきましては、すべて改善をしたというふうに私ども現在考えております。  なお、残る問題といたしまして、規制措置の強化の検討ということが示されておるわけでございますが、特に改善の中で示されましたものは、国土法二十三条の届け出制の免責要件、現在、市街化区域内でございますと二千平方メートル以上ということで運用をいたしておりますが、その問題につきまして、もう少し引き下げることを検討すべきではないのか、検討したらどうかという御提案をいただいております。  この点につきまして、国土利用計画法の届け出の現行基準二千平方メートルを決めます際には、先生よく御案内のとおりでございますが、四党の共同提案ということで現行法はできておりますけれども、その審議の過程におきまして、都道府県の事務処理能力、それから大規模取引の規制をやっておけば他のものにも波及するだろうという効果、他の法令との並び等を総合的に勘案をされまして、最も適切なものとして定められたというふうに私ども承知いたしております。  最近の地価の動向は、民間住宅建設の動き等もありまして、土地をめぐる諸指標を見ますと、現段階で直ちに対象面積の引き下げが必要かなという点につきましては、私ども、そういう状況にはないのではないかと思っております。したがいまして、当面は現行法の定着と完全な実施ということを中心に行ってまいりたいと考えておりますけれども、御提案の趣旨は十分承知をいたしておりまして、絶えず地価の情勢を見ながらその点につきましての検討を続けておるというのが現状でございます。  なお、もう一つの点といたしまして、規制区域の指定要件である投機要件等を外すことはどうかというようなお話がございますけれども、これにつきましては、やはり土地投機の集中による急激な地価の上昇ということが、土地を商品として取り扱うという反社会的なことが前提であるということからこの立法が行われたというふうに私ども承知いたしておりますので、実需を中心といたします最近の土地問題に対しましては、そういうふうな強権的な措置が直ちに正しいということではなくて、やはり宅地の供給をできる限り促進していく、投機を抑えるということが目下の急務であるというふうに考えておる次第でございます。
  355. 中村茂

    中村(茂)委員 大臣、どうも官僚の悪い性格で、議員立法というものについては大事にしないのですよ。先ほども議員立法だからというようなことをちょっと言ったけれども、議員立法で出したのだから、また皆さん改正するなら改正してみろというような態度なんだ。ちゃんとその通知に指摘されているわけですよ。官僚が直すことができなければ、また私ども四党で話し合って対処しますけれども、そういう議員立法というものを大切にするという風習というか、そういう取り扱いをしてもらわなければいかぬと思うのだ。  それで、いまも出ましたように、これは二千平方メートルという一つ基準を設けたわけですけれども、先ほどの通知でも明らかなように、弊害が出てきているのです。その二千平方メートルの前のところで分割してしまって、それでできるだけ高く売る。ですから、ミニ開発がどんどん進んでいってしまう、こういう弊害がいま出てきているわけです。それともう一つは、すれすれのところで幾つか、同じでも時期をずらすとか、または違う会社と合わせて別々にやっていくとか、いろいろ矛盾が出てきているわけなんです。ですから、これは何といってももっと下げるべきだ、こういうふうに思います。  それと十二条の対象要件の問題ですが、確かにその当時は集中的な投機的取引、こういうことで、先ほども言いましたように、総不動産屋ということでアリのように土地に皆群がる、こういう物価狂乱の時代ですから、これを抑えるために確かに効果はありました。しかし、いまはそういう問題とあわせて土地がどんどん高くなってくる、宅地が上がっていく、こういういわゆる地価の高騰を何とか抑えることができないものか、こういうふうに来ているわけなんです。ところが十二条は、この投機的な取引と地価の高騰、二つ合わせなければ規制できないというのです。ですから、これを別々にして、投機の取引の面も一つ、それから地価が高騰していく地域、そういうところについてもできるという道をあけるべきだというふうに思うのです。あけた以上、これはいろいろむずかしい問題が起きてきます。確かに地価を凍結するわけですから、むずかしい問題が起きてきますけれども、やはりそういう手法も法律上できるという道をあけておかなければ、どうしても需給バランスの中からどんどん上がっていくという道が開けていってしまう、こういうふうに思います。先ほどの答弁ではなかなか考えていかないようですから、私どもも議員立法としてつくりました四党で、またこの点も十分話し合って、官庁でできなければ私どもは改正案を出したい、こういうふうに思いますが、その点についてもひとつ御協力をお願いしておきたいというふうに思います。  それから次に、土地税制についてであります。  この土地問題というものをいまの時点で考えてみた場合に、やはり宅地をどういうふうに出していくか、需給バランスをどういうふうに整えていくか。そして、その時期はここ十年だというふうに思うのです。人口問題とかいろいろ考えてみた場合に、ここのところ十年が非常に大切な時期に来ている。そういう立場で、いまある法の面から、もう一つは土地税制の面からいろいろ考えてみたいというふうに思うのです。  言われていますように、土地に対する税金というものは、土地は資産でありますからそれに対して対応の税金をかける、こういうものが当然だと思うのです。その反面、土地税制というものは、出してもらう面についても、また出さないようにとめる面についても、税の操作によって土地を誘導するという性格を一つ持っているというふうに思うのです。よく町を歩いてみますと、宅地のようにできたところ、または農地でもこれを宅地にすればいいなというふうに思うようなところ、本当に空き地になっている遊休地みたいなところがある。その地主さんに聞いてみると、いや、わしのところは税金がかかるからどうもいまは出したくない、こういう人がいっぱいいるのです。ですから、土地税制の発想転換をこの際十分研究してみたらどうだろう。これは試案というか一つの例で申し上げるわけですけれども、優良なそういう宅地を出していただけるという方については譲渡税だけでも減免する。免除でも減ずるでもいいのですが、減免する。こういうような制度をひとつつくってみたらいかがなものか。  こういう考え方を今度宅地並み課税なら宅地並み課税という問題に置きかえてみますと、やはりこれからC農地を含めて五十七年度に向かって検討していくわけですけれども、いまのA、B農地に宅地並みをぶっかけて、それで出せ出せと、これは一つのむちですね。C農地をそのような手法でやったのではなかなか、また失敗するというふうに私は思うのです。  そこで、農家の皆さんに一応申告して登録していただく。その時期は、私は非常にむずかしいと思うのです。十年がいいか二十年がいいか五年がいいか、いろいろな角度から検討したいというふうに思うのですけれども、いずれにしても十年というふうに仮定いたしましょう。十年の間に、あなた営農していきますか、そういう人はやはり農業をやってもらう。都市農業で精を出して、農業の発展を図っていただく。しかし、もう何らの形でも農業をやらないからこれは出してもいい、こういう人については、宅地並み課税をかけてむちで出せと言うのじゃなくて、やはり宅地並み課税などはかけない、そして出していただく。うらはらの関係で、これは非常にむずかしいのです。かけないということになれば、かけないのだからまた持っているか、こういうことになりますけれども、それはやはり申告制で、しかもそれは漸減方式というか漸増方式というか、十年なら十年の間に向こうへ行くに従って強くするとか、いろいろやり方はあると思います。しかし、むちで出すという方法の転換をする、そしてそういう人については譲渡税などについてもかけない、こういう手法をひとつ考えてみたらどうだろう、こういうふうに私は思っているのです。  そういう点でいろいろ考えてみますと、これは全くの私案でありますけれども、宅地供給緊急対策特別措置法というような法律で、税制の問題についてはそういうものをきちっと入れていく。ですから、そういうもので基準になるとすれば、これも全くの私案ですけれども、十年程度の時限立法にする。それから、該当するところは、市街化区域の中の優良宅地にするために造成できる土地に限るとか、または、それだけの優遇をするわけですから転売は禁止するとか、法律的にも政策的にもいろいろむずかしい点はあると思いますけれども、そういう大胆な手法でこの宅地のバランスを図っていく。先ほど局長が言われたような、ただスローガンだけでは出てこないというふうに私は思います。  そこで、この点は国土庁長官、建設大臣、大蔵大臣、それから自治大臣、それぞれお伺いをいたしたいというように思います。
  356. 原健三郎

    ○原国務大臣 ただいま先生から、いろいろ土地が出てくるようにするについての対策を申されました。何と申しますか、非常に積極的な議論でございまして、どうも土地は、税金をかけてむちで出した方がいいか、あるいはあめで出した方がいいかというのはなかなか、相当の学者もこれは議論が両方あります。  いま先生のおっしゃったのはあめの方でございまして、登録農地制度を導入せい、そしてさらに、そのために宅地供給緊急措置法というようなものをつくったらどうか、この方が土地がよく出るという御議論でございます。これも一つの方法であろうと存じますが、これはなかなかわれわれも、いま直ちにイエスともノーとも言いがたいし、関係省庁とも十分連絡、研究してみたいと思っております。
  357. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 宅地並み課税の問題については、御承知のとおりに五十六年度はいまのままでいって、五十七年度は何とか新しい方策を考えにやならぬ、そういう状況になっているわけです。先ほどもお触れになりましたが、税調の答申といたしましては、A、B農地の適正化というものはひとつ強化をすべきじゃないか、しかし農業をずっと営もうという意思の顕著な者については別途配慮する必要があるじゃないか、それからC農地についても、お話の点とは逆に、適正化を強化しなくちゃいかぬのじゃないか、そういう線でひとつ考えてみろ、こういうのが税調の答申のように私は承知しておるわけです。  こういう考え方もあるわけでございまするが、また、先生がいまおっしゃったように、あめでもってC農地を出させる、あるいはA、B農地をも出させるというような構想だって成り立たぬわけではなかろうと存じます。見通しといたしまして、どちらが本当に土地供給対策として適正であるか、有効であるかということは、もう少し各方面の御意見も承りながら結論を出さにゃいかぬのじゃなかろうか、こういうふうに考えて、どうせ今後一年の間に結論を山さにゃならぬ問題でございますので、十分御趣旨のことも心得まして、せっかく関係方面との意見も調整してみたい、こう思っておるところでございます。
  358. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  先生の十年計画の問題については、一つの見識として、私はよろしいのじゃなかろうかと思います。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕 たまたま建設省におきましても、長期需給見通し、十年間、見直すという作業をやっております。何とか宅地需給を計画的にやるという考え方から十年ということの見通しを立てたわけで、その点につきましては、先生のお考えと基本的には似たものがあろうかと思います。  なお、何といたしましても住宅政策は土地問題を解決しなければいけませんので、なお建設省といたしましては、それはそれとして、農地、山林の問題あるいは遊休地の有効利用あるいは既成市街地の高度利用等を図りながら、土地政策にはなお先生方の御意見を徴しながら、積極的に対処してまいるところでございます。
  359. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 優良住宅に供給する方法としてもっと税を緩やかにしたらいいじゃないか、そういう趣旨だと思います。現在すでに御承知のとおり四千万までは二〇%、四千万円超は二分の一総合課税という優遇策があるわけです。それはそれなりにいま役立っておると思いますが、私は、土地問題というのはやはり少し発想を変えないと先へ進まないのじゃないか。ともかく、土地と水と空気はやはり公共性が非常に強いのですよ、これは、ふやすわけにいかぬし。したがって、この土地も、特に大都市のようなところでもう地価が物すごく暴騰しておる、そういうようなところで、一方には、農業をやりたいと言って農業をやりたい者にはやらしておけ、やっている以上は、生産物はうんと少ないんだから高い課税はできないよ、こういう姿勢では、本当に公共の福祉に果たしてそれがなるのかどうなのか。その地域の全体の状況もあるだろうけれども、やはりどっちを優先するのかということから始まらぬと、私はだめじゃないかと思うのです。  したがって、そういうような、一方においてはたとえば耕地整理というようなものについても、ある程度公権力の介入というものがあって、そして半分は農地として残させるが、半分は社会、公共のために供出させる、あるいは自分が使ってもいいが、そういう強制力を伴って、その反面、何かあめを少しやってくれ、与えてくれというんなら、それは話し合いに応じないことはないが、ただあめだけ出せと言ったって、これはさっぱり効果はない、いままでも。それで一方からは、何だ莫大な所得があって税金払わぬじゃないかという批判が出るわけです。ですから、そこらのところはもう少し総合的に考えていかなければ効果がないんじゃないかという気がします。
  360. 中村茂

    中村(茂)委員 先ほどから言っておりますように、土地問題というものを考えた場合に、一つの党でどうこうというような問題ではなしに、いまこそ各党、力を合わせて真剣に考えていかなければいけない時期に来ていますし、私が先ほど申し上げたのも一つの筋だけ申したわけでございまして、それぞれ研究を早めていただきたいというふうに思うのです。そうでないと、二年も三年もかかっていればまた土地はどんどん上がっていくわけですから、その点を強く要望しておきたいというふうに思います。  次に、第四期住宅建設五カ年計画についてお伺いしたいと思いますが、これはいま住宅宅地審議会に建設省で意見を求めているというふうに思いますけれども、どういう状況になっているでしょうか。
  361. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 お答えいたします。  昭和五十六年度を初年度といたします第四期住宅建設五カ年計画につきましては、現在、住宅宅地審議会の御意見を承るということで諮問いたしまして、検討をいただいております。私どもの現在の計画の原案におきましては、第三期計画に引き続きまして、昭和六十年度までにすべての世帯が最低居住水準以上を確保し、また半数以上の世帯が平均居住水準以上を確保することができるようにするということを目標にいたしまして、またさらに、別途住宅環境に関する基準目標を定めまして、これらをもとにいたしまして、計画期間中における住宅建設戸数として七百七十万戸を見込むとともに、公的資金による住宅三百五十万戸の建設を図るということで原案をお示しし、現在検討をいただいておるところでございまして、三月中に御答申をいただき、その上で閣議決定を経たいというふうに考えております。
  362. 中村茂

    中村(茂)委員 向こう五年間の第四期の計画で、住宅問題としては非常に重要な計画なんです。ですから、私どももいろいろ意見を持っているのです。ところが、制度上国会には関係ないと言えばそれまでですけれども、私がこのごろ、意見を徴しているというふうに言うから、どういう考え方でどういう内容のものを住宅宅地審議会に出しているのか、その意見を求めている案をください、こういうふうに言ったところが、いや、この審議会は非公開になっているから、そこへ出したものはお上げすることはできない、こう言うわけだ。こんなものを審議するのに、非公開で決めたからと言うけれども、そこへ出してある資料を、資料要求した場合に国会議員に出せないという、その秘密主義と態度というものは私は納得できない。  それでいろいろ話したら、そのものは、各党からみんなくれくれというふうに言っているから、あなたのところへやったらよその党へみんなやらなければならなくなるから、こう言うから、いや、私のところへよこしたらどの党にもみんなやればいいじゃないか、いや、表紙だけ取ってそこへ出したというものでなくて表紙を白紙にすればいい、こういうわけなんですね。その態度というのは、私はなかなか納得できない。これはそんな秘密主義でやるところじゃないですから、その点は直すように要求しておきます。  時間がありませんから次に進みます。  そういうかっこうになっていますから、私ども聞くところによりますと、この住宅宅地審議会に勤労者の代表が意見書を出したということを聞いております。皆さんは、この意見だというふうに出せばそのまま決めたいという気持ちはあるでしょうけれども、それに対しての貴重な意見ですから、審議会でそれを受け入れてやってからそれを受ける、こういうふうに言うだろうけれども、私どもはそこへ発言力がないというふうに言うでしょうが、これは、他の意見もそういうものが出てくれば、建設省に内々意見を聞くことは当然なんです。皆さんの方、省はどういうふうに考える、こういうふうに聞きますね。ですから、建設省としても、その勤労者の代表の出した意見を熟読玩味していただいて、この審議会の中で十分生かされるような措置と考え方を強く要求しておきたいというふうに思います。回答は聞かなくても結構です。そのとおりやってください。  それから次に、住宅基本法の制定について移りたいをいうふうに思います。  これは、もう長い間の懸案になっているわけです。五十年の八月九日、住宅宅地審議会から答申が出されて、「住宅基本法の制定について検討する必要がある。」それから五十五年の七月三十日にやはり答申が出されて、「住宅基本法の早期制定に努めるべきである。」その間、国会の中でこの住宅基本法で問題になったのは、やはり五十年からこの五十六年の現在に至るまでの間に、国会で言えば七十五回の国会から九十四回の国会までの間に、本会議で取り上げられたことが三回、それから委員会で取り上げられたことが十回。そして、この九十四国会に出しますと、四期五年の計画が五十六年度から出発するのでその時期に制定したい、こういうふうになって、この国会に出すように準備されていると思いますが、必ずこの国会に出していただきたい。いままでの経過からしてなかなかむずかしい問題ですけれども、必ず出していただきたいということを強く要求いたしたいと思います。いかがでしょうか。
  363. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 住宅基本法につきましては、住宅宅地審議会からの御答申もありまして、建設省におきまして現在、法案の検討を鋭意進めておるところでございまして、本国会に提案できるよう努力してまいりたいと考えております。
  364. 中村茂

    中村(茂)委員 そこで、注文をつけておきたいというふうに思うのですけれども、先ほど申し上げました五十年の八月九日の基本法制定のによりますと、これを制定するために「政府は必要な調査、広報等について格段の努力を払い、国民的合意を得て、その制定に努めるべきである。」こういうふうになっています。それから五十五年の七月三十日の答申では、「法案の作成に当たっては、政府は、国民各層の幅広いコンセンサスを得て、その内容を確定していく必要がある。」いま制定に努力している、この国会に出しますというふうに言いますけれども、この答申で言われている、国民のコンセンサスを得るとか国民的合意を得てとか、こういう事細かく答申の中で要求しているようなことが行われていません、これは。やはりそういうことをきちっとやって、基本法ですから、国民的な合意を得て制定する、コンセンサスを得るようにする、これを重視して。積極的に国民的な合意を得る対策を立てて実施していただきたい。強く要求いたします。
  365. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 先生の御指摘のとおり、住宅政策の長期にわたります基本的方向を示すための立法措置を考えているわけでございますので、この作成に当たりましては国民的な合意を得ることが必要かと考えております。そのための方策につきましては、いろいろと世論調査であるとか、また各種審議会の御意見を承る等々ございますが、何と申しましても国民の代表者で構成されますところの国会の御審議ということが最も重要であると考えておりまして、そういった点も十分考えながら検討させていただいております。
  366. 中村茂

    中村(茂)委員 これは原案をつくるまでのことを言っているのですよ。国民的な合意を得て制定——制定するのは国会でやるわけだから、その点をひとつ頭の中に入れておいて、いま言われたような対策を早急に立てて、国民的な合意を得られるようにひとつしていただきたいと思います。  それから次に、建設省専門委員制度の廃止についてお願いいたしたいというふうに思います。  私がこの制度はもう廃止した方がいいな、こういうふうに思ったのは、実は五十五年、昨年の九月二十六日の、これは新聞が一斉に出したのですけれども、私も新聞を見たところが、蓮実進さん、この方は皆さんも御存じのように船田中元衆議院議長の秘書をやっていた方です。この方が、建設省専門委員に任命されたので鈴木総理のところにお礼に行った、こういうふうに出ていたわけです。私ははっと思った。何ではっと思ったかと言えば、この方は昨年のダブル選挙の前に、五十四年だと思いますけれども、やはりある方から専門委員にしたらどうだという推薦があって、そのときの大臣は、まあ専門委員としては余り適格ではないということで拒否されて任命されなかったのです。その経過を私はよく知っているのです。前の大臣のときには適格者じゃないといって任命されなかった方が、何で今度、見れば任命されて、それで総理のところまで御礼にあいさつに行っているのだろう、まことに不思議に思った。  まさか、蓮実さんを建設省がとるとすれば、巨人の江川を建設省に持ってくるわけじゃありません、持ってくると言えば別問題だ。建設の専門委員だ。これは、いま任命されている人を見ても、定員は三十名ですけれども二十二名任命されていますね。それで、私が見て専門家というふうに思われる人三名、弁護士の方二名、マスコミ関係の方二名、それから建設省のOBが六名、それに元国会議員が七名、元秘書が二名、こういう方が任命されておる。それから、昨年のダブル選挙まで——どうして私はダブル選挙を言うかというと、いまの中にも、次の選挙を目当てにして、肩書きを利用して選挙運動をやっている人がいっぱいいるわけですね。ですから、次に選挙に出るときになれば、これは非常勤の公務員ですからやめていただくわけだ。  去年のダブル選挙で、じゃ、どういうふうになっていたかというと、いままで任命されてきた人で、参議院選挙だというふうに言って参議院に立候補する人が、五十五年の五月二十六日に三名。三名やめて参議院に立候補して、この三名全員当選しているわけだ。それから衆議院に立候補した人、これは五十五年の五月二十九日付でやめて、五名立候補して、秘書をやっていた方一名だけ落ちて、四名は当選しているわけだ。この補充をしなければなりませんから、ダブル選挙後、ダブル選挙で落ちて次また選挙をやろうという人を全部任命したわけだ。だから、元国会議員と、全部なっている。  それでは、この専門委員の方が本当に専門委員としての仕事を一生懸命やっているかというと、建設省へ行ってみれば部屋は確かに一つあります。しかし、諮問したことありますか。調査を依頼したこと、一件だか二件あるそうだけれども、そんな程度だ、これは二十四年か六年にできていると思いますけれども。そういうふうになってきているのです、これは。ですから、こういうものは全く有害無実、廃止を強く要求いたしたいというふうに思います。
  367. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  建設省の専門委員のことにつきまして、前国会でも中村先生から御指摘がございました。この制度が発足以来すでに三十年経過いたしておるわけで、それはそれなりに制度が創設された意義——経過において、建設行政への大変な御助言があったことも確かでございます。先生御指摘の問題を契機に、長年月たっておりますからいろいろと考慮すべき時期かなと私自身は考えております。制度の問題でございます。これは無報酬で御奉仕願っているわけでありますが、こうした問題が起こるということについてははなはだ残念でございまして、今後、制度上の問題でございますので見直すというように私も考えておりますので、見直すということで検討させていただきたいと思います。
  368. 中村茂

    中村(茂)委員 行政管理庁長官お見えだと思いますが、行政改革について非常に熱意を持ってやられておられるようですが、確かに無給ですからそういう面には関係ありませんけれども、盲腸みたいなこういうものはそれこそ行政管理庁長官として、やめなさい、こういうふうに建設省へ、それこそ勧告でも通知でもしたらいかがなものでしょうか。
  369. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 恐らくつくられたときは、その趣旨に基づいていろいろ機能しておったと思いますが、長年たつうちにそれを逸脱してきている面もあるのではないかと思います。ただいま建設大臣が見直すと答弁しておられますから、恐らく機能していないものはやめるんじゃないかと私は期待しておる次第であります。
  370. 中村茂

    中村(茂)委員 この問題は、ただ建設省をいろいろ責めてもなかなかむずかしい問題なのです。やはり、いま政府を支えている与党である自民党の方にもこれは考えてもらわなければならない。これをしろ、これをしろと言って山ほど持っていくわけですから、その中からだれだれと選ぶのにも大変なくらいになって、頭を抱えているわけでしょう。きっと何かメリットがあるのでしょう。これは一つの例ですけれども、事実を確認しています。肩書きを利用して建設業界に、建設省でやることは橋でも何でもおれに任じておけ、なるほど見れば建設省専門委員だ。しかし、政治というものを考えてみた場合に、その政府を支えている与党と癒着していけば、そういうものが広がって汚職につながる、こういう道にも通ずると思うのです。ですから、英断をもってそういうものは正していこうじゃないか、こういうふうに与党がなるべきのが当然だというふうに私は思います。  廃止を強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  371. 小山長規

    小山委員長 この際、小川君より関連質疑の申し出があります。中村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小川国彦君。
  372. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、千葉県政の金権腐敗の根源となっております千葉県浦安町所在のオリエンタルランド問題の疑惑について、国の指導監督責任をただしたいというふうに思います。  御存じのように、千葉県の川上知事問題に見られますように、千葉県政はいま金まみれで、天下に恥をさらしているという状態でございます。国としてこれをどうするか、これは国にも重大な責任があると私は思うわけであります。千葉県の行政というものが、あらゆる面で利権と結びついて犯罪的行政を展開してきた。この問題の根源はどこにあるか。このことは一千葉県の問題ではなく、国が指導性を発揮していかなければならないと思うわけでありまして、国が傍観している時期ではない、こういうふうに思うわけであります。  そこで私は、具体的な一例を挙げて問題の本質をただしてみたいと思うのであります。  実は、千葉県の浦安町に、レジャー施設会社といたしましてオリエンタルランドというのが、資本金二十億円で昭和三十六年に設立をされたわけであります。実はこの会社は、今日までの間に、実に数々の違法行為を行ってきているわけであります。  まず第一には、監督官庁も知らないうちに、大臣認可を受けない埋め立てを七万坪も行って、昭和四十二年十一月、建設省から中止の指示を受けるということがございました。さらにまた、オリエンタルランド株式会社の株式の売買をめぐりまして、田中角榮の盟友であります小佐野賢治が浦安の土地四万五千坪をかすめ取るというような事実もございました。これは坪一万九千円という大変安い値段で、総額八億五千五百万円でこの土地を、株式売買のあっせん料ということでかすめたわけでありますが、いまその土地は坪四十万円ということでございますから、大変な資産をなしているわけであります。  こういうように、浦安の土地をめぐりましてはいろいろな利権の問題があり、さらにまた、行政上もこの会社は、昭和四十五年には、埋立地の一部を県の許可を受けずに、遠山偖成株式会社、これは元日興証券会長の息子だそうでありますが、この会社と契約して、これも千葉県が、五十五年の春にオリエンタルランド株式会社に命じて契約解除させた。さらに、昨年の昭和五十五年十一月二十八日には、開発行為の許可申請がなされておったわけでありますが、この許可以前に、オリエンタルランドは土地の掘削、盛り土工事、こうした無断着工を行い、工事事務所も鉄筋二階建てで、これも建築確認を受けないで建てて工事を行ってきた。こうした数々の違法行為、利権的な行為を行ってきているこのオリエンタルランドに、多くの保守政治家が絡みついて金をつくり上げているという実態があるわけであります。先般も川上知事の五千万円の念書事件が明るみに出ましたけれども、これもこの浦安の県有地の払い下げをめぐる紛争が原因となってあの念書が出てきた、こういうふうに言われているわけであります。  これの実態をたどっていきますと、千葉県の行政がその金もうけのお先棒を担いできてしまっている。埋め立て問題一つを取り上げましても、この浦安地区では、原価一万七千円で埋め立てられた土地が、その後、宅地では現在は四十万円、商業用地では百万円で売れているという実態があるわけであります。こういう実態について、国の埋め立て行政の指導監督のあり方がどういうふうになされてきたのか、ここに私どもは非常に疑念を持つわけであります。  そこで、関係閣僚にお伺いをしてまいりたいと思うわけであります。  まず、五十五年一月七日にアメリカのウォルト・ディズニー会社と契約をしましたこのオリエンタルランドが、東京ディズニーランドという事業を推進するに当たりまして、千葉県知事と三井不動産、京成電鉄の三者において協定を結び、立会人としてディズニーランドを選ぶ、こういう出資協定が結ばれました。これは三井と京成がオリエンタルランドに十億円以上の出資をするということ、それから、千葉県の埋め立てで膨大な利益を上げた三井、京成のうち、京成電鉄は赤字であるので、三井不動産については十五億円以上の資金提供をするということ、この二つのことを千葉県と関係会社の間で覚書を結んだわけであります。  その覚書と、もう一つの覚書がございまして、同じくこれも東京ディズニーランド事業推進に関する覚書といいますが、これは千葉県とディズニーランドの間で契約を結んで、立会人が三井不動産と京成電鉄の社長でございます。そうしてその中では、オリエンタルランドという、東京都民や千葉県民、首都圏の人々にとっての一大遊園地を建設するということで埋め立てを許可されたその土地のうち、六十三万坪の中から二十万坪を遊園地用地から宅地に変更させる、これを解除するということをその担保協定で結んだわけであります。さらに、この二十万坪の宅地で足りない場合にはさらに十一万坪の利用制限を解除する、こういう協定を結んできたわけであります。  これは明らかに国の、特に建設大臣の持っている埋立法に基づく大臣権限あるいは都市計画法に基づく大臣権限、この大臣認可を無視して行われてきた覚書であり、協定であるというふうに理解せざるを得ないわけであります。  この点について、建設大臣はこの事実を承知しているかどうか、この点からまず伺いたいと思います。
  373. 小坂忠

    ○小坂政府委員 まず、埋立法に関しまして御説明を申し上げます。  ただいま先生からお話のございましたディズニーランドの土地、これはいわゆる浦安沖のC地区に関するものかと思います。これにつきましては、当初、大臣認可に基づきまして知事免許がおりて以後、二、三回の変更手続がございまして、最終的には昭和四十九年五月二十八日に大臣認可がおりまして、知事の許可が四十九年五月二十八日におり、その後、竣功認可もすでにおりておる埋め立てでございます。  その埋め立ての認可申請の際の用途、この用途につきましてただいまのような変更が現在意図されておるというお話でございますが、埋立法に基づきます大臣の監督権限はすでに知事の手に移っておりまして、すでに竣功認可いたしておりますので、今後は、埋め立て認可当時の意図も含みながら、地方行政庁の長でございます知事さんの総合的な判断によりまして指導されるべきものというふうに考えております。
  374. 小川国彦

    小川(国)委員 長々と答弁しているんですが、私の聞いたことに簡潔に、大臣なり局長なり答えてもらいたいと思うのです。  私が申し上げているのは、六十三万坪のうち二十万坪を宅地化すること、それで足りなかった場合はさらに十一万坪を宅地化すること、いわゆる六十三万坪の遊園地のうち半分を宅地化するということを、千葉県が関係会社と、都市計画法上の許可も得ずに協定を結んでいるけれども、こういう事実を建設省は聞いているかどうか、こういうことなんです。聞いているかいないか、それだけを答えてほしいのです。
  375. 小坂忠

    ○小坂政府委員 建設大臣と申しましても、埋め立て権者の建設大臣都市計画を主管いたします建設大臣とあろうかと思います。私、河川局長としていま申し上げましたのは、埋立法に基づく私どもといたしましては、そういうことはいままでまだ、お話はお伺いしておりません。
  376. 小川国彦

    小川(国)委員 それでは都市計画局長は……。聞いているか聞いていないかだけ。
  377. 升本達夫

    升本政府委員 御存じのとおり、都市計画法上は用途地域の規制が一般的にかけられておるわけでございまして、その用途地域規制範囲内でどのような行為が行われるか、具体には私ども関知する立場にございません。したがって、聞いておりません。
  378. 小川国彦

    小川(国)委員 それでは、もう一度都市計画局長に伺いますが、千葉県においては、知事はこの用途変更に当たって用途指定を——この埋立地は全部準工業地域ということになっているわけです。これはあなたがおっしゃるように非常に幅広く何でもつくれるというので、埋立地は全部、全国、準工業地域になっている。それから住宅地域に変更を認める理由として、千葉県知事は担保価値を高めるために、遊園地では担保価値がない、宅地にすれば担保価値が出る、だから担保価値を高めるためにこの用途変更を県は了承した、こういうように言っているのですが、都市計画上そういうことができるのかどうか、担保価値を高めるために用途変更ができるのかどうか、これを伺いたい。
  379. 升本達夫

    升本政府委員 都市計画の用途地域の変更は都市計画的な観点から、都市の発展その他諸般の状況を勘案して定めるものでございまして、個々の土地の担保価値、価値がどうなるかというようなことを判断の材料にはいたしておりません。
  380. 小川国彦

    小川(国)委員 そこで、大臣にしっかり耳をあけて聞いてほしいのでありますが、いままでは局長の答弁で、担保価値を高めるために都市計画の変更はない、こういうふうに言っているわけでありますが、千葉県知事は、千葉県の議会においても次のように答弁をしてきているわけであります。これは昨年の三月十一日の千葉県議会で、「今回土地利用制限の解除ということを当面、これは融資を得るための担保価値を高めるということでレアケースとして行うことにさせていただいた」こういうふうに言っております。それからさらに、「東京ディズニーランド事業に対する知事あいさつ」というものの中で、「株式会社オリエンタルランドは東京ディズニーランド事業に必要な千億円を超える資金調達のため、銀行側との折衝の中で特に銀行側から六百億余円の新規融資のためには三井不動産、京成電鉄の債務保証だけでは限界があり、担保措置を講じない限り、融資は不可能との強い示唆を受け本事業の遂行に重大な支障を生じることとなった」、その結果、「この際、異例な措置ではありますが本事業をなんとしてでも推進するため遊園地用地の一部の用途制限を解除する等の措置を講ずることとしたのであります。」  こういうことで、明らかに担保価値を高めるために、この用途地域の変更というものを大臣の認可を経ずして行ってきた。しかも、覚書を交わしてきておる。こういう事実について、大臣としてはどういうふうな御指導をなさいますか。——委員長、これは大臣に聞いておりますので、大臣から答弁を……。
  381. 升本達夫

    升本政府委員 ただいまの御質問につきまして、事実関係についてちょっと御訂正を申し上げたいと思うわけでございます。  いま、大臣の許可もなく用途を変更した云々という御質問でございましたけれども、現在までのところ、用途地域は準工業地域ということになっておりまして、これを住居地域に変更するという話は、私どもの方は一切聞いておりません。変更の手続がとられますと、知事が変更の意思決定をいたしました後に建設大臣あて認可の申請に及ぶという手続になっておりますが、現時点で一切そのような手続はとられておりません。
  382. 小川国彦

    小川(国)委員 ですから、私は建設省の指導が怠慢であるというわけなんです。まだ認可申請は確かに国へ出てきておりません。出てきていませんけれども大臣認可申請をして認可を経てからでなければ準工地域から住居地域に変えられないものを、このように民間企業と協定を結んで、担保価値を——六百億から一千億の金を調達させるために、用途変更をするということを民間企業と協定を結んでいるわけです。しかも、この事実は、私は昨年の農林水産委員会ですでに取り上げて質問をいたしているところでありまして、そこには大臣はお出になりませんけれども、建設省のそれぞれ河川局、都市計画局からお出になって、聞いていない、聞いていないと言ったのが昨年の十一月二十六日です。すでに三カ月たっておるわけです。  こういうふうな大臣権限に属する事項が、埋立法においても都市計画法においても大臣の認可事項に属することが、一地方自治体の恣意的な、全く独自なことの行為で行われている。そういうことを知っていながら、河川局においても計画局においても全くこれに対して関与せずに放置していく、そういう国の行政指導の怠慢が、金権腐敗の千葉というような形になって出てくる。これは一行政体の千葉県の問題ではなくて、国がやはり重大な責任があると思うのです。この事態に対して、大臣認可を経ないこうした覚書について、斉藤大臣はどういう見解を持っておられるか、この点を伺いたい。
  383. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  許認可の問題は、私のところへ具体的に出てきて初めて私の権限に移行するものと考えます。千葉県は千葉県なりに地方自治体の権限を持っておられて、知事がどのような形で相手側と話し合ったのか、あるいは県議会の発言について具体的に私のところに来ていない限りは、私がそこに権限を及ぼすということについてはいささかなじまないような気がいたします。昨年から二、三カ月たっておるということでございますが、私もまだ具体的な話につきましては承知いたしておりませんし、局長、担当局においても具体的な問題として当面の作業に入っておらなかった問題であろうかと思います。  なお、先生の御指摘のこともこれあり、そうした事実関係についてなお調査いたしまして、しかるべき行政指導は権限の及ぶ範囲において行っていきたいと思いますし、また、地方自治体の権限という問題もございますので、その点なかなかむずかしかろうと思いますが、具体的なことを御提言くださいましたので、この問題についてはなお調査の上検討させ、対応させていただきたいと思います。
  384. 小川国彦

    小川(国)委員 続いて自治大臣にお伺いをしたいと思いますが、千葉県の知事、副知事は、オリエンタルランド問題に関しては民間会社の側に立って金もうけの手伝いをやっている、こういうふうにしか私ども受け取れない事実がございます。本来、地方自治というものは住民の側に立って行われなければならない。この浦安の土地にいたしましても、これが公共的住宅用地で使われるならば、坪一万七千円で県民なり国民の住宅用地に供せられるはずのものなんです。それが四万五千円で転売され、四万五千円で民間会社に渡り、それが現在では三井のパークシティーは四十万円で売っている。商業用地は百万円で売っている。こういうように、地方自治体に任せていた埋め立てというものが、土地を国民のものにするのじゃなくて、企業の金もうけのために官民ぐるみで土地転がしをしているという実態があるわけです。しかも、協定に基づいて知事と副知事が、銀行団に、担保を出すから金を貸してやってくれと頼んで回っている事実もあるわけです。  こういう地方行政のあり方、自治大臣としてこういうものを正すお考えはないかどうか、自治大臣に伺いたいと思います。
  385. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 具体的な事例につきましては、私、承知をいたしておりませんが、地方団体としては一般的に適法に仕事が行われなければならないし、そしてまた、いろいろな非難を受けることのないようによく注意をして執行すべきだ、こう考えておるわけであります。いまの問題が一体どういう状況でどういう経過で執行されたか、こういう点についてはいまの段階ではつまびらかにできませんので、よく調査をして、私の見解をまたその際申し上げたいと思います。
  386. 小川国彦

    小川(国)委員 きょうは内閣の総元締めであります官房長官がおいでになっておりますので、この埋め立てのあり方についてちょっとお伺いしたいのですが、埋め立てというのは国民の海を埋め立てていくわけで、これを代替性のない、再開発のきかないものに埋め立てていく。したがって、国土としてふえてきたものは、これは国民の利用に供せられるものでなければならない。あなたの弟さんの宮澤弘さんは、いま広島県知事ですが、千葉県の副知事におりましたころは非常に聡明な副知事ということで評判が高く、埋め立てというものは本来国が事業としてやるべきものであり、あるいはまた、国民の海を民間業者に任せて利権の具に供してはならない、こういうような意見も雑誌に発表されているわけであります。  国として責任を持つ立場にある官房長官として、こうした埋め立て行政というものは今後どういうふうにあるべきかという方向を、ひとつ官房長官から伺いたい。
  387. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私、関係の法規に詳しくございませんので、正確にお答え申し上げることができませんが、御指摘になりましたように、埋め立てをするということは、公共の福祉のためにそれだけ海を国土に変えるということでございますから、その利用は当然に地方または国の公共の福祉を優先して考えなければならないものというふうに存じます。
  388. 小川国彦

    小川(国)委員 公共の福祉に沿って海を使うべきだ、私、本当にそれが正論であり、そうなければならない、そういうふうに思うわけですが、先ほど来、建設大臣並びに関係局長の答弁は、いずれも、国に対して申請が出てきていない、三カ月たつけれども、まだ申請を見ていないので何とも言えない、こういう形で言われているわけでありますが、現実には、建設省の担当者はこの協定の内容も知っているはずだと私は思うのです。昨年の十一月に国会でこの問題を取り上げて、それから同時に、いま時点において、それではこうした覚書の結ばれ方というものをどういうふうに思われるか、関係局長と建設大臣にもう一度答弁を願いたいのです。  現時点で、私が申し上げたいわゆる十億円を超える出資をすること、十五億円以上の資金提供をすること、その二つが満たされるならば最初に二十万坪、二番目に十一万坪、この土地をいわゆる遊園地としての制限を解除する、こういう覚書が結ばれているという事実に対して、関係局長大臣はどういうふうにいま時点で見解を持っておられるか。
  389. 升本達夫

    升本政府委員 お答えいたします。  都市計画法上の手続といたしましては、本件の用途地域変更につきましては都道府県知事が都市計画地方審議会の議を経て定めることとされておりまして、その際、あらかじめ建設大臣の認可を受けなければならないものとされております。したがいまして、法律の制度上の問題といたしまして、私どもは第一次的には知事にお願いをいたしておるわけでございますので、知事の御判断を待って、正式の申請の手続を待って判断すべきものというふうに考えております。したがいまして、事実問題といたしましても、私ども都市局といたしまして、ただいまおただしのようなことにつきましては全く聞いておりません。
  390. 小坂忠

    ○小坂政府委員 先ほどお話し申し上げました埋立法との関係でございますが、いずれにいたしましても、この埋め立てはすでに竣功認可いたしております。したがいまして、建設大臣の直接の監督下にはないわけでございます。当時の埋め立て許可時の知事が許可したときの用途、それにつきましては、もちろん、その後の社会情勢等、地域の情勢等にもよりまして変更することはあり得るかと思いますが、それにつきまして、法的に当時のまま動かすことができないということは、埋立法の、特にこの場合旧法に従っておりますので、言えないかと思います。ただし、その当時の条件が守られておるかどうかということは、やはり私ども行政範囲として関心は持つべきものであるというふうには考えております。
  391. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  法的な問題につきましては両局長からお答えいたしたとおりであろうかと思います。さきに官房長官からもお話がありましたように、地方自治体の長として公的な立場から、特に公海を埋め立てて公共の用に立つような形でなされた事業については、私は、知事の良識を信用し、知事は知事なりの権限を持って県民のためにやっておられる事業でございますので、知書の考え方をおもんぱかって指示する以外方法はなかろうかと思います。しかし、事実関係としていま御指摘がございましたので、権限の及ぶ及ばないはともかくも、当初の認可の状況を顧みてしかるべき進言なり方法を考えてみたい、このように考えるところでございます。
  392. 小川国彦

    小川(国)委員 国がこういうふうな国の行政に対して責任を持つという考え方、いわゆる地方自治体が何をやっていようと文書が上がってこなければ知らぬ顔だ、出てきたもので判断しよう。しかし、事実行為はどんどん出発しているわけです。この土地を担保として提供する、いわゆる担保力を高めるために用途変更を事実上千葉県は行った、こういうことで十二月三日に事業は出発しているわけです。銀行団も融資を開始していると思うのですね。そういう段階で抜き差しならない、これはもう遊園地から住宅用地にしなければならない、抜き差しならないところに来て申請が来たら、国はやむを得ないからということで認めるわけですか。その点、もう一遍大臣に伺いたい。事実は進行しているわけですよ。進行しているのに、申請書が来るまで待っているということですか。
  393. 升本達夫

    升本政府委員 一つ御説明が抜けておりましたので、補足をさせていただきたいと思います。  ただいま用途地域の準工業地域ということでございますが、この準工業地域内におきまして住居のために土地を利用することも、先生御承知のとおり自由でございますので、したがいまして、そのこと自体が、もし事実としてそういう事実がございましても、そのことのゆえに直ちに間違っているとか違法であるとかいうようなことにはならないのではないかというふうに私ども考えております。
  394. 小川国彦

    小川(国)委員 もう時間がありませんから、私はこのあとは建設委員会でやりますが、ただ、でたらめばかり言ってはいけないということなんです。あなたの方では、このオリエンタルランドの用地について、このC地区に二十三万坪、七十七ヘクタールの公共的住宅用地をつくれ。C地区の埋め立て許可をするときにやったのは、建設大臣、よく調べていただきたいのですが、建設省なんですよ。この千葉県の浦安に二百万坪埋め立てた、そのうちの百万坪は、A、B、Cと埋めたのです。そのC地区の埋め立て許可を建設省は与えなかった。なぜ与えなかったか。こんな膨大な遊園地ですね。アメリカのディズニーランドさえ十三万坪。それを最初は百万坪の遊園地だと言ってきて、大ぶろしきだ。結局、四十万坪宅地化を認めて、六十三万坪の遊園地になった。それをまた三十万坪の住宅地化を認めて、今度は三十万坪に遊園地が減っていってしまうわけです。三井不動産と京成が、子会社のオリエンタルランドが遊園地を宅地に変えれば、親会社が召し上げて、赤字赤字になっていくから、いつまでたっても遊園地はできなくて、建設省が一番最初に遊園地ということで百万坪を認めた埋め立ては、もういまや三十万坪になっている。この先もっと小さくなっていくだろう、こういうことが行われているのですよ。  そういう事実に対して大臣、これを直ちに調査をして、少なくもこれからの予算の分科会なり建設委員会なりで、これに対する建設大臣としての対処の方針を明確に示す、このことをひとつ御答弁願いたいと思います。
  395. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  事実関係についていろいろな問題があろうかと思いますけれども調査をさせていただきたいと思います。
  396. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  397. 小山長規

    小山委員長 これにて中村君、小川君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十三分散会