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1981-02-19 第94回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月十九日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君       足立 篤郎君    上村千一郎君       小渕 恵三君    越智 伊平君       海部 俊樹君    鴨田利太郎君       菊池福治郎君    後藤田正晴君       高村 正彦君    近藤 元次君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤田 義光君       宮下 創平君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    阿部 助哉君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       大原  亨君    岡田 利春君       中村 重光君    野坂 浩賢君       山田 耻目君    横路 孝弘君       市川 雄一君    草川 昭三君       正木 良明君    神田  厚君       林  保夫君    寺前  巖君       松本 善明君    四ツ谷光子君       渡辺  貢君    河野 洋平君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君  出席政府委員         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁装備局長 和田  裕君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         環境庁長官官房         長       北村 和男君         環境庁長官官房         審議官     石川  丘君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省関税局長 清水  汪君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      松浦泰次郎君         文部省管理局長 吉田 壽雄君         厚生省医務局次         長       山本 純男君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 松田  正君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      森実 孝郎君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         中小企業庁長官 児玉 清隆君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         海上保安庁長官 妹尾 弘人君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         労働大臣官房審         議官      小粥 義朗君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省河川局長 小坂  忠君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第二局長  堤  一清君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社経理局長   岩下  健君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   倉成  正君     近藤 元次君   始関 伊平君     菊池福治郎君   藤本 孝雄君     高村 正彦君   細田 吉蔵君     宮下 創平君   矢野 絢也君     市川 雄一君   不破 哲三君     渡辺  貢君同日  辞任         補欠選任   菊池福治郎君     始関 伊平君   高村 正彦君     藤本 孝雄君   近藤 元次君     倉成  正君   宮下 創平君     細田 吉蔵君   市川 雄一君     矢野 絢也君   渡辺  貢君     四ツ谷光子君 同日  辞任         補欠選任   四ツ谷光子君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。
  3. 横路孝弘

    横路委員 きょうは南北問題、経済協力等の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、初めにポーランドの問題について、外務大臣お尋ねをしたいと思います。  今後の国際情勢のかぎを握っているのが一つポーランド問題なわけですが、ポーランドにも新政権が成立し、連帯労働組合ともある意味で言うと妥協が成立して、情勢もやや落ちついてきたのではないかというように考えておりますが、最近のポーランド情勢についてどのように把握をされておられますか。
  4. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま横路さんがおっしゃったように、最近は新しい首相が任命されまして、九十日間のスト中止という提案がありました。連帯の方では、それを約束して引き受けたということにはまだならぬようでございますが、一時よりも大分情勢が鎮静化しつつあるということは確かだと私も思います。ただ、これはまだ楽観していいというような状態ではない、一時よりは若干鎮静化したが、やはり状態は楽観を許さないというのが実情ではないかというふうに私は見ております。
  5. 横路孝弘

    横路委員 私はポーランドに対して、その経済再建に積極的に協力すべきだというように思うのです。今度のポーランド連帯の動きというのは、いわばソビエト東欧ブロック民主化一つの実験でありまして、これがうまくいくかどうかというのはこれからの国際情勢にも大変大きな影響を与えるのではないかというように思うのです。  ポーランド西側に対する債務が二百三十億ドルに達していると言われておりまして、日本も若干の債権があるようでございますが、ドイツフランス等中心にして債権国会議が開かれるという話も聞かれておりますが、開かれることになるのかどうか、それにわが国はどういうかかわり合いを持つのか、そこはどのようになっているでしょうか。
  6. 伊東正義

    伊東国務大臣 去年の十二月ごろから民間金融機関等でそういう会合が何回も持たれているということはございます。それから、御承知のように去年の十二月、緊急の事態としてEC等が食糧を値引きして売るとか、そういうような政府として緊急の対策をやったということはございます。その後、政府ベースでどういうことがやれるかというようなことは内々協議が持たれていることはございます。日本も大使館がその会議に出ておるということはございますが、そこで具体的に政府ベースでどうするということまでにはまだ実は至っていないわけでございます。そういうヨーロッパ諸国との協議を通じまして、どういう対策を講じていくかということは日本としても慎重に考えたいと思っております。
  7. 横路孝弘

    横路委員 ポーランドは、ここ二、三年の債務について債権国に対してリファイナンスの要求をしているということはあるんですか、ないんですか。
  8. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生おっしゃいました債権の問題は、なかなか正確に計算できないのでございますが、ポーランド側の試算によりますと、日本民間で大体八億数千万ドルある。そのうちたしか五億ドル足らずでございます。四億何ぼでございましたか。八〇年から期限到来するのでございますが、これの延期あるいは半製品まで民間援助の中に加えてもらいたいというような話し合いが金融機関の中で出ておるということをわれわれは聞いておるわけでございまして、これは政府が絡んでおる問題じゃございませんので、民間の中でそういう話が出ておることを政府としては聞いておるということでございます。
  9. 横路孝弘

    横路委員 西側債権国会議が開かれるという話は事実なんですか、事実じゃないのですか。
  10. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 関係国の間で公開しないことになっておりますが、事実でございます。
  11. 横路孝弘

    横路委員 日本はそれに参加するのですか。
  12. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 いま外務大臣から御答弁がございましたように参加いたします。
  13. 横路孝弘

    横路委員 いま外務大臣が答弁された問題は、日本ポーランド関係で一九七八年に第五次の民間の信用の枠が四億五千万ドルほど設けられて、消化率はわずかで、その期限がたしか切れているわけです。ポーランドの方からの要請は、輸銀の対象がプラント設備等に限定されているからその枠を外して消費財だとか原材料などにも使えるようにしてもらいたいという要望が日本側に来ているんじゃないでしょうか。私はそのように聞いておるのですが、それに対して日本としては正式な話があるかどうか、あるいはもしあった場合にどう対応するのか。情勢もだんだん落ちついているようで、問題は、経済再建がどうかということがこれからのポーランドにとっては大変重要なことでございます。  昨年総評富塚事務局長ポーランドに行きましてワレサ議長と会ったときも、直接西側と接触するよりも日本と接触することに大変強い関心を示しているのです。それは多分ソビエトに対する配慮があろうかと思うのです。そして五月には総評の招きでこのワレサ議長日本に来るということも伝えられておるわけでございまして、いろいろな意味でこれから日本にとってもポーランドの問題というのは大きな関心を呼んでいくことになるだろうと思うのです。そんな意味ポーランドに対する協力、いま私が指摘した点についてどのようにお考えでしょうか。
  14. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 その辺はいろいろな議論がございまして、今回集まります会議各国間でいろいろな議論がなされる、まだ確たることが決まってはおりません。
  15. 横路孝弘

    横路委員 それはいつどこで開かれるのですか、債権国会議は。
  16. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 関係国で明確に言わないことになっておりますので……。
  17. 横路孝弘

    横路委員 これは外務大臣姿勢として明確にしてもらいたいのですが、私は、直接借款の供与などを含めてポーランドというのは先進国としての扱いになっておりますからなかなか問題はあろうかと思いますが、ともかくここの動向が国際情勢に及ぼす影響が大変大きいことを考えますと、日本としてもポーランド側から要求がありましたら、最大限それにこたえる道を開くべきだというように思うのですが、いかがでしょう。
  18. 伊東正義

    伊東国務大臣 ポーランド問題というのが世界の緊張に非常に大きな影響があるということは、おっしゃるとおりでございます。デタント、軍縮、全部これは関係があるわけでございますので、日本としましてもこのポーランドの問題については非常な関心を持って実は見ているところでございます。  おっしゃいますように、政府援助というのはある程度、一人当たりのGNPが千ドルを超えたらやらないとかいままで基準を設けてやっておりますので、なかなかむずかしい問題があるということはおっしゃったとおりでございますが、ポーランドに対しまして日本が温かい目で見ていく必要があるんじゃないかとおっしゃるお気持ちは私もわかりますので、この問題は慎重にひとつ日本としても考えていきたいと思っております。
  19. 横路孝弘

    横路委員 ことしは国際的な会議の場では南北問題が大変大きな焦点となって浮かび上がってくるだろうというように思います。六月にはメキシコ南北サミットが開かれるわけですし、七月にはそれを受けた形でオタワのサミットが開かれるわけですが、これは昨年のサミット各国援助政策手続援助以外の貢献などレビューしてその結果を報告することにもなっておりますし、六月、七月と続くことから考えても、そこでも南北問題が大きな問題になるんじゃないかと思うのです。との南北サミット総理大臣出席するということでございますが、わが国として基本的にどういう態度で臨むのか、まだこれから議題を詰める段階だと思うのですけれども、この日本の基本的な姿勢、特に南北問題に対して日本がどういう責任を果たしていくのかということが大変大きな問題だと思うのでありますが、その基本的な認識について、外務大臣いかがお考えでしょうか。
  20. 伊東正義

    伊東国務大臣 ことし六月にメキシコで、メキシコとオーストリアが中心になりまして南北サミットを開きたいということで一回準備会議がございまして、また三月に関係国の外相が集まって正式に議題でございますとかそういうことを決めるということで、南北サミットを開こうということが現実の見通しとしてあるわけでございます。日本にはまだ正式に招請はございませんが、招請があれば喜んで参加をする、総理大臣にも御出席をお願いしたいということを内々申し上げているところでございます。  御承知のとおり、去年国連南北問題をやりましたときに、議題あるいは手続等意見の一致を見なくてまだグローバルネゴシエーションに入っておらぬわけでございますが、日本としましてあのときも態度をはっきりしましたのは、日本先進国の中では南側経済的にも非常に関係が深いわけでございますし、南北と言いましたときに、南の立場も十分に考えながら南の開発、南の国々の人々の生活水準の向上、民生安定、社会福祉ということを真剣に南と一緒になって考えていこうじゃないかという立場でございまして、この前もアメリカ、イギリス、ドイツとそのところは若干違って手続が合意できなかったわけでございますが、日本としてはどちらかというと南側立場十分理解を持ってこの南北問題には取り組んでまいりたい。大来政府代表にも、南北問題についてはひとつ責任を持って取り組んでほしいというようなことを、私、言っているところでございます。
  21. 横路孝弘

    横路委員 これからの八〇年代の日本の外交というのは、ある意味で言うと日本南北と東西のかなめの役目を果たさなければいけないのではないかというように思うのです。この南北問題も、見てみますと六〇年代から議論が始まりまして、七〇年代にはさまざまな問題が国連の場で提起をされているわけです。人口問題、食糧問題、資源問題、環境問題あるいは海洋法の問題、婦人の問題、軍縮の問題であるとか水の問題であるとかさまざまな問題が提起されて、いわば世界の問題が議論されてきたわけですが、これらのほとんどは実は南の開発途上国からの問題の提起なわけです。どちらかというと、わが国はいま挙げたすべての問題について国連の中で議論されたのをいわばフォローする、それだけにとどまっていたのではないか、むしろそういう問題で日本が率先して行動を提起責任を負うという基本的な姿勢に欠けていたんじゃないかと、私は国連議論をずっと見てみまして強く感ずるわけでございますが、外務大臣いかがでしょう。
  22. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げますが、南北問題といいましても、具体的になりますと、たとえば地域の問題であれば、アジアであればASEANの問題、これもまさに南北問題の一つの形として取り上げなきゃならぬ問題でございますし、あるいはその他の発展途上国の問題があるわけでございますが、いままで議論が出ておるのは、主に国連の場でそういう問題を取り上げようということで、世界の傾向としてみんなの考え方で、その場所としては国連が一番いいじゃないかということでやっていたものでございますので、日本国連の中で国連の機能を通じて南北問題に取り組んでいくというやり方がやはり一番いいんじゃないか、日本だけがどうするということではこれはできない問題でございますので、私は国連の場が一番いいだろうというふうにいまでも思っております。  ただ、横路さんおっしゃるとおり、それだけでなくてもっと国連の場でも日本がイニシアチブをとって主張するものを主張したらいいじゃないかというお話でございますが、それはそれとして、私も十分その御意見は参考にしまして、これからも日本が本当に、南の方との関係は深いわけでございますから、積極的にこの問題に取り組んでいくということでやってまいりたいと思うわけでございます。
  23. 横路孝弘

    横路委員 六〇年代以降交渉が南北間で行われて幾つかの成果を上げ、援助にしても大変ふえてはきているわけですが、しかし同時に、貧困であるとか飢餓の問題が解決されたかというと、そうじゃなくてむしろますます深刻化して、南北間の格差というのは増大をしてきているわけです。所得格差の問題だけでとらえられないわけでして、やはり南と北がお互いに依存し合っているという問題だという基本的な認識が必要であるし、同時に、南の経済的な自立をどう助けていくのかというような意味では、一次産品の問題であるとか技術協力あるいは移転の問題であるとか一般特恵の問題であるとか累積債務の問題であるとか、さまざまな経済自立を助ける問題が大変大事だと思うのですが、時間の関係でそこの議論はちょっと省略をしたいと思うのですが、指摘だけして頂きたいと思います。  どちらかというと、日本ほど経済の利益を追求している、広い意味での経済協力の金というのが還流して日本に戻ってくる国というのはない。難民の問題であるとか人道的な見地からの援助というのが少ないではないかという指摘もあるわけで、結局日本の場合は資源がないわけですから、資源確保とか市場確保という観点からの経済協力比重がかかっていたんではないかという指摘があるわけです。その辺でちょっと議論をしていきたいと思うのですが、そういう状況の中で、昨年の十二月二十日に環境庁地球的規模の環境問題に関する懇談会、これは先ほど外務大臣がおっしゃられた大来さんが座長を務めておられるわけですが、ここで提起されている問題というのはこれからのわが国経済協力に当たって大変重要な視点を出しているんではないかというように思いますので、若干環境庁長官お尋ねをしたいと思います。  ここで、まず環境問題というのは、従来は各国の国内の環境政策の積み重ねに比重が置かれていたと思うのです。したがって、日本経済協力の場合も、その相手国環境政策の問題であって日本環境政策の問題ではないという立場に立った経済協力が行われてきたんではないかと思うのです。基本的にそこのところの反省がこの懇談会の答申の流れをなしているのではないかというように私は考えるのですが、環境庁長官いかがでしょうか。
  24. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 御承知のとおりローマ・クラブの提言があってから、九年前にストックホルムで国連会議があって、去年はアメリカの大統領の指示で「二〇〇〇年の地球」という研究がなされて、それが去年の七月に発表になりました。それを読んで環境庁といたしましては、わが国でもひとつこの問題について研究してみなければならぬという総理指示もありましたので、去年の九月ごろから始めて十二月まで鋭意検討を続けた結果、提言がまとまりまして、それを皆さんにお分からしたわけです。  そこにも書いてありますように、いまの御質問に端的にお答えをするならばまさにそのとおりで、いままでの経済援助やり方は見直さなければならぬだろうというのは、地球的規模の環境問題に関する懇談会の報告でもそのように述べられているのですが、確実に言えることは、西暦二〇〇〇年というとあと十九年ですが、そのころには世界人口が六十二億から六十三億になるだろう。だれが研究しても、そうならないと言う人は一人もいない。六十二億ということは、いまから見れば二十億ぐらいふえるわけです。そこから先のことも研究が進んでおりますが、西暦二〇三〇年ぐらいには百億になる、しかもその九〇%は南の国でふえる、こういうことなんです。  そこで、だれもが言う南北問題というのは、所得格差を何とかして縮めたいということなんです。このままいったら、人口の問題もこれあり、所得格差は縮まるどころかもっともっとふえてくる。この面で政治的に大問題になってくる。だから経済援助ということも、いま先生が言われたように、いままでのようにその国その国で考えていることに対して出していくというやり方、それは主権の問題がありますから押しつけることはできませんけれども、いま申し上げましたようなことから考えて、人口問題の解決のために、あるいは環境問題の解決のために経済援助をしていくというような質的な変化がなければだめだろう、こういうことになっております。まだ一応の研究でございますが、これからもこの問題を研究していこう、こういうことでございます。
  25. 横路孝弘

    横路委員 たとえば特に生態系を破壊するような開発行為を避けて、環境の保全とも両立し得るような開発にしていこう。たとえば、日本は木材の輸入は世界で最高なんですが、森林の伐採がいまどんどん熱帯雨林をなくしていって、このレポートやアメリカの報告によりますと、西暦二〇〇〇年までの間に四〇%がなくなるだろうということなんです。そうすると、その後の植林をどうするかとかいろいろな配慮が同時に政策として必要なわけですね。そういう点の考慮がなかったのではないか。「開発援助の内容を地球的規模の環境保全の立場から見直し、必要な配慮を加える。」という御指摘がこの中にございますが、私はそこが大変大事なところだと思うのです。このところは、環境庁としては具体的にどのようにお考えになっておりますか。
  26. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 具体的にこれからどうするといいましても、南の方の国の方々の考え方は、われわれの心配していることがわからないじゃないけれども、当面の問題としてちょっとそこまで気が届かないという面もありますので、この間私は、いまの提言を持ってUNEPにトルバさんを訪ねました。この問題をどういうふうに解決していったらいいだろうか、それには、いまお話のあったような心配がその国だけの心配ではないんだ、地球的な規模での心配なんだ、これをどうやって諸国民に理解してもらおうか、諸政府に理解してもらおうか、どうやったらいいだろうかということについて話し合ってまいったわけでありますが、その際にトルバさんはこういうことを言いました。いままで日本国連を通じてずいぶんいろいろな協力をしていただいている、そのことについては非常に高く評価いたしますが、個々の国との間でも十分に話し合って、いま横路さんが言われたような形での援助に切りかえていくような方途はないものか、どうぞひとつ十分に御研究願いたい、こういうことでございましたので、私どもの方としてはこれをもう少し具体的にまとめて、外務省などとも十分に連絡をとって、そういう開発の質の変化というものを押しつけでなしに自発的にその国が考えてくれるような形で持っていきたい、こう考えているわけであります。
  27. 横路孝弘

    横路委員 日本は、幸か不幸か公害防止の技術というのはかなりな技術があるわけです。いま環境庁長官が言ったことはちょっと認識が違うのではないかと私は思いますが、もう南の国もそこのところは十分意識しているのではないでしょうか。たとえばシンガポールの石油化学のプラントにしても、われわれが考えていた以上にかなり厳しい公害の規制の問題というのを向こうの方で考えているようですし、最近の例のASEANの十億ドルのプロジェクトの中でも、タイの苛性ソーダのプロジェクトですか、ソーダ灰のプロジェクトについて現地で反対運動なども起きてきているというのが現実なわけですね。したがって、私たちはそういうことを考えるときに、日本のいままでやってきた蓄積というものを生かしていくことが大変大事なことじゃないかというように思うのです。  そこで、この提言の中で特にアジアの地域ですね。アジアの地域というのは「二〇〇〇年の地球」レポートや皆さんのレポートを見ても、これからますます人口が集中する地帯で、たしか西暦二〇〇〇年には世界人口の六〇%近くがここに集中するのではないかと思うのですが、アジアの地域において、皆さんのレポートでは、低所得層の解消、人口の安定化、居住環境の改普及び自然環境と資源の保全に貢献するために、開発援助の内容の見直しも行うのだ、企業の海外における行動についてもこの点について配慮していくというのをこれからの課題として環境庁考えられているわけです。私は、ここの視点がまさに大変大事な点でございますし、従来の日本経済協力の点から全く考えられていなかった点じゃないか、従来は、それは相手国考えることであって日本考えることじゃないという視点で、向こうからの要請に応じてこちらはそれにこたえていたということにすぎなかったのじゃないかと思うのです。  したがって、いま環境庁長官がこれから外務省とも相談していくというようにお話をされましたが、どういう形でその開発援助にかかわり合いを持つかというのは、これから環境庁や外務省や、それから通産省は多分一番抵抗することになるのじゃないかと思いますが、通産を含め、やはり日本経済的な利益だけじゃなくて、全地球的な観点からのことを含めた経済開発とか経済協力ということを進めていっていただきたい。そういうことを考えてやれば、日本援助というものはますます高く評価されることになるのではないか。環境庁の提案というのは大変りっぱな提案ですし、大来さんが、いままさに南北問題の責任者になっていろいろな裏方の交渉をやっておられるということでもありますから、行政の中で問題があるにしても実現できるのじゃないかというように私は考えておりますので、そこのところをアジアについて開発援助の内容の見直しを行う、特に海外の企業の行動についてもその辺のところをこれから検討していきたいというこの懇談会の基本的方向というものについて、再度環境庁長官の御意見を賜りたい。
  28. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 まだ十分ではございませんが、去年の九月から十二月まで大来さんに座長を務めていただきまして、現在わが国のその方面の最高峰の学者先生にお集まりをいただいて御検討願ったわけでありますが、その報告書について御理解をいただき、おほめをいただいて、まことにありがたく思います。  これは今後も続けていくつもりなのですが、まさに今日的な問題でない、二十年先というようなことでございますから、いろいろ今日的な問題で困っていることがたくさんある状態の中では、なかなか国民の皆様にも理解をしていただきにくいのですけれども、これはせっかくPRに努めておりますが、このままの状態でずっと進んで経済成長を続けていくと、二十年先、三十年先というのはそんなに明るい見通してはありません。事によると大変なことになるかもしれません。ですから、これはその心配をするのはその国だけの問題ではない。まさに地球的な規模の問題ですから、わが国も、うちは大丈夫だというのじゃなしに、地球規模として大変だということで、これはやはり開発途上の国の方々にも御理解を願う、そしていままで考えていた経済援助の質を見直していく。それから商売なんかでどんどんやっていく人は商売が大事ですからどんどんやるでしょうが、いまお話しのように一番日本が木を切るのです。そして植林がこれに追いつかないということになれば、これはもう大変なことになります。長くなりますから申し上げませんが、炭酸ガスの問題なんかも学者の間では非常に心配していることでございますから、そういうことではないようなやり方で、シンガポールのような途上国といいましても相当の域に達しているところもありますれば、もっとそうでないところもあります。それぞれの立場の中で主権を害するような差し出がましいことを言って不快な念を与えるようなことでないようにして、経済開発援助の見直しについては通産省は抵抗するだろうというようなお話がありましたが、そんなことはありません。むしろ商売を現にやっている人たちは商売が一時的に停滞するというようなことにもなりかねませんから、あるいはそういう抵抗があるかもしれませんが、お話をすれば必ず理解していただける、われわれ一代じゃないですから、われわれの後にずっと続くのですから、そのことを考えれば必ず理解をしていただけると思いまして、せっかくの御提言でございますので、十分体してその方向で進めていきたい、こう思っております。
  29. 横路孝弘

    横路委員 外務大臣お尋ねしたいのですが、環境庁がこういう方向を大来さんが責任者になって出されて、これからということですが、ひとつそういう環境面の配慮もこれからの経済協力の中でやっていくということで、環境庁が参加するどういう仕組みがいいのかはちょっと私わかりませんが、いずれにせよ、その辺のところの参加もこれから環境庁と相談をしていっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  30. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えいたします。  政府ベース経済援助経済協力というときに、おっしゃるように、公害の輸出をしたというようなことになっては本当に悔いを残すことになりますので、相手の国の政府政府の間で援助の相談をするわけでございますが、いまおっしゃったようなことをどういうふうに取り入れたらいいか、相手のあることでございますから一方的にこっちだけやってというわけにもいかぬわけでありますが、これは環境庁長官ともよくその点は相談しまして、悔いを残さぬようにやってまいりたいと思います。
  31. 横路孝弘

    横路委員 環境庁長官、後でまたお尋ねすることがありますので、ちょっとお待ちください。  日本経済協力もそんな意味で新しい段階に来ているのじゃないかと思いますが、最近のこの問題を考えるに当たって一つの材料を提供しているのがイラン石化のあの問題ではないかというふうに思います。ある意味で言うと、経済的な効果というのは全然配慮しないこういうプロジェクトも珍しいと思いますが、工事再開、中断、再開、中断ということを繰り返して今日まで来ているわけですが、いまイラン・イラク戦争が始まって中断になっているわけですね。この爆撃による被害というのは一体どんなぐあいなんですか。
  32. 田中六助

    田中(六)国務大臣 イラン・イラク紛争は御承知のように目下継続中でございまして、五回の爆撃を受けておりまして、私どもの日本側の方は全従業員八百名がすでに引き揚げておりまして、詳細な被害の状況はまだわかりませんけれども、できるだけ向こう側の調査、そういうものを実行していただいて調べたいと思っておりますけれども、現状のような状態ではその詳細がわからないのが事実でございます。
  33. 横路孝弘

    横路委員 この三井グループが手を引くとか引かないとかいうような話もございまして、昨年来金利のたな上げと政府出資の追加というのを要請しているというようなことも言われておるわけですが、最近はどういうような状況になっておるのですか。
  34. 田中六助

    田中(六)国務大臣 合弁事業でございますので、いま三井側と向こう側とが何回も往復してお話を進めておるようなわけで、その間、御承知のように金利のたな上げとか政府出資の問題が出ております。しかし、私どもは何らかの便宜は図らなければいけないとは思っておりますけれども、やはり具体的な問題が提起されなければというふうに考えておりまして、金利のたな上げの問題については考慮しようという返事をしておる段階でございます。
  35. 横路孝弘

    横路委員 企画庁長官、これを政府のいわば国家プロジェクトに上げるときに、皆さんの方で三井グループとの間に、あるいは大蔵、それから通産との間で、政府の出資についてはもうこれ限りという約束があるんじゃないですか。
  36. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 経済協力基金から若干の資金を出すことになっておりまして、これまでその一部分を出しております。しかし、いま通産大臣のお話のような状態で、もう少し戦争の見通しがはっきりしませんと、あとのものは出せませんので、目下中断をしておるのが現状でございまして、それ以降のことにつきましてはまだ相談をいたしておりません。
  37. 横路孝弘

    横路委員 通産省は経済協力白書の中で、この問題をサウジアラビアのプロジェクトと並んで取り上げて、経済安全保障に有効だとしているわけです。ただ、国家プロジェクトというのは、最初からそういう位置づけできちんとした目標を持ってやるというのが本来の筋なんで、これは三井グループがやっておって、みんなが協力するというのを振り切ってやっておいて、危なくなってきたから助けてくれということで切りかえたという経過があるわけですが、これは再開して本当にやれるのですか。
  38. 田中六助

    田中(六)国務大臣 三井グループ五社が中心になってやっておったわけでございますけれども、これが紛争あるいは革命というようなことで停滞ぎみになった。しかし、いろいろなプラン全体のことを考え、つまり日本経済安全保障と申しますか、あの地方の石油、エネルギーというような観点からいろいろ検討いたしまして、協力会社も膨大に上る会社が協力しようということ、それから先ほど来申しますように、経済安全保障という観点から、やはり政府もこれを援助した方がいいというふうな判断に立ったわけでございます。したがって、そういう方向に持っていったと思います。
  39. 横路孝弘

    横路委員 私たちもこれはなかなか議論しづらいのですね。どうもいまの状況では、やりなさい、大いにやりなさいと言うわけにもいかないし、しかしやめてしまえと言うのもどうもいま一歩すっきりしないということで大変微妙なんでありますが、外務省にちょっとお尋ねしたいのですが、イランにてこ入れするということが、じゃ中東外交にどういう影響を及ぼすかという問題なんです。いままで日本の中東外交というのは珍しく全方位でやってきておると思うのですね。ある意味で言うと、アメリカからある意味での自立をしてやっている部分も大変多くあるんじゃないかと思うのですが、いまのイラン・イラク戦争を見ると、イラクの方はどっちかというとアラブの穏健派がバックアップしていますね。イランの方はどっちかというとアラブの強硬派がこれをバックアップしているわけです。イラクの方のバックアップのサウジだとかクウェート、アブダビなんか見てみますと、これはやはりイラン革命の影響が波及することを大変心配しているのですね。そのイランにてこ入れするということの影響というのは、いずれにせよあの中東諸国にやはり外交的にも出てくるんじゃないか。つまり、そういう配慮もこのイラン石化の問題の場合にはもう一つしておく必要があるんじゃないか。もちろんイランとの関係の問題もこれは大事な問題ですけれども、そういう波及効果も一つ考えていかなければいけない。したがって、なかなか割り切りづらいわけですけれども、そこは外務大臣としてはいかように見ておりますか。
  40. 伊東正義

    伊東国務 大臣イラン・イラク紛争が中東地域に非常に微妙な影響を与えたということはおっしゃるとおりでございまして、中東がイラクの方にどうも味方をしている動きのあるところがあるし、イランの方に味方をしている動きのあるところもあるということで、非常に複雑になっておることはおっしゃるとおりでございます。  それで、イランの問題につきましては、このイランの石化事業それ自体が私はイランに肩入れしているんだというふうには、それだけでは見ていない問題で、前からの問題でございますからそうは見ておらぬのでございます。しかし、イランの問題というものを単にイラン・イラクという立場だけでなくて、もっと広いそれこそ米ソということまで頭に置いてこの問題を考えなければならぬ問題だというふうに、私どもは、単に日本とイランという立場でなくて、日本と中東あるいは日本と全世界的な国際的な問題としてこの問題を取り上げる必要があるというふうに思っております。
  41. 横路孝弘

    横路委員 すぐそこでアメリカの方に話がいってしまうのですが、いずれにせよこれを考える場合には、周辺諸国家に対する十分な説明と理解というものも必要なんでありまして、ナショナルプロジェクトだ、それ行けという単純な問題では決してないと思うのです。  もう一つは、経済協力基金から出資するときに採算性についても検討されてそれがあるということだったですね。たとえばこういう協力というのは、何も採算性を考えなくたって、日本の国にとって必要な場合やらなければならぬ場合もあると私は思うのですね。イランの側で望んでいるのは、経済的なこともあるでしょうが、技術移転というような大変大きな目標もイラン側にはあるわけです。しかし、どうもいままでの出資の仕組みから言うと、採算に合うのか合わないのかというのが一つのポイントになっておるようでありますが、これからの総建設費も相当増加するでしょうし、採算というのは一昨年の十月に認めたときにあるという判断だったのですが、それはいまの状況でもあり得るのですか。たとえば爆撃の被害を点検するだけで相当な金がかかるんじゃないかと思うのです。
  42. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  お示しのとおり、一昨年出資を決めました際に採算性を詰めたわけでございますが、もちろん採算が合うということで決めたわけでございます。その後、いまお話ございましたように、爆撃がありましたり中断しておりますので、その爆撃による被害の修復あるいはその間にかかります金利コスト等いろいろございますので、現在時点で直ちに採算性がどうこうということを詰めることは非常に困難でございますが、一方で原料ガスの面について見ますと、国際的には原料ガスの値段が非常に高くなるわけでございまして、逆にその分は採算性が非常によくなるわけでございます。それから、製品の国際市況といいますものは非常に不安定でございまして、石油化学工業全体について言える問題でございますけれども、それやこれや考えますと、現時点で採算がとれないということは言えないと思います。ただ、はっきりした数値につきましては詳細調査した上でないとわからない、こういうことでございます。
  43. 横路孝弘

    横路委員 いまもなかなか微妙な時期でもございますし、余り詰めた議論はいたしませんが、私たちも随時議論をしていきますので、通産大臣、ただ単に旗だけ振ってやればいいという問題ではないですから、ひとつ十分いろいろな点を外交的な問題を含めて検討して、しかも、民間にもうちょっとちゃんと、ともかく三井グループが率先してやり始めたことですから、やはり負担すべきところはそこにきちっと負担させるということも必要ですから、その辺は十分考えてやっていただきたいと思います。
  44. 田中六助

    田中(六)国務大臣 もちろん私どもも三井の幹部を呼んでたびたびその点の忠告はしております。ただいま申し上げておりますように、やはり経済安全保障というような観点からも考えなければならないし、いま日本経済それから世界経済、相互主義と申しますか、そういう観点からもありまして、私どもも頭を痛めておりますが、基本的にはやはり三井グループの態度が問題でございますので、その点の注意は御指摘のように十分怠りなくやっていきたいと思います。
  45. 横路孝弘

    横路委員 では、次の問題に移ります。  五十六年度予算でODAの関係なんでございますが、ちょっと時間がなくなりましたので、一つにだけしぼってお尋ねしたいと思います。  皆さんの方で中期目標というのをことしの一月に決めました。なかなかわかりづらい目標なんでありますが、これは何か国際的な会議の場、たとえばことしの南北サミットであるとかその後のオタワ・サミットで、国際的に掲げて一つの公約にするおつもりなんですか。
  46. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、たとえば南北サミットという場もございましょうし、あるいはオタワの場もございましょうし、そのほかいろいろな機会があると思いますが、日本としましては三年倍増ということでやりまして、ことしでこの目標は達成するわけでございますので、今度は五年間で過去五年間の二倍以上にするということの目標をつくったわけでございまして、そういう国際的な場で、日本はこういうふうに考えるということをはっきり声明しようというふうに思っております。
  47. 横路孝弘

    横路委員 従来から国連の目標はGNP〇・七%が目標ですね。そして皆さんは、たとえば伊東さんも去年の国連の総会で、開発援助の量の拡大及びGNP比の改善に向けて一層努力をしていくということ、その努力の目標は、政府として国連の場でも、時期は別にして〇・七%という目標については日本も同意しているのでしょう。
  48. 伊東正義

    伊東国務大臣 国連の場で、そういう目標を達成するように、時期はおっしゃるとおり言っておりませんが、日本としても努力を続けるということを言っております。
  49. 横路孝弘

    横路委員 それで、この中期目標でいって、一体GNP比が改善することになるのかどうか。国際的な場で公約はしたものの、よく検討してみたらGNP比が下がるような約束をしたって国際社会の物笑いになるだけなわけです。この問題は、八〇年度を基準にして八五年に倍になるというのではなくて、過去五年間のトータルをこれから五年間で倍にしようということですね。これでいきますと一体どうなりますか。五年後ですね。これは政府委員でも結構でございますが、五年後どういうことになりますか。GNP比の改善になりますか。
  50. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は政府委員からお答えを申し上げますが、われわれは何としてもGNP比の改善に少しでも進めるようなことをしたいということで、倍以上ということをその目標では言ったわけでございまして、それ以上にどれだけ努力できるかということ、いまのどれだけの改善ができるかということがこれからの問題だ、これからの日本政府の努力次第にかかっておるというふうに私は思っておるわけでございます。
  51. 横路孝弘

    横路委員 これをちょっと計算すると、七六年から八〇年までの総計が大体百七億ドルですね。そうすると、その倍ということだから二百十四億ドルになるわけですか。この二百十四億ドルを平均して年率で上げていくということをやりますと、年率大体八・七%ぐらいじゃないでしょうか。そうすると、経済成長率が政府が言っていると七カ年計画そのほかでいきますとそれを上回るわけですから、結論としては、GNP比はその最低のラインに行ったときには改善されないでむしろ悪くなる、こういうことになりますね。
  52. 梁井新一

    ○梁井政府委員 新しいこの中期目標は、先ほど先生御指摘のとおり、単年度の、たとえば八五年度の支出を二倍にするということではなしに、今後五年間のODAのトータルを倍にするということでございます。したがいまして、この最終年度の単年の数字がどうなるかということはもちろんわからないわけでございますけれども、それに至る過程におきまして、先生御指摘のとおり日本のGNPの伸びがどうなるかということによって非常に変わってくるわけでございます。そういうことでいろいろと不確定要素があるわけでございますけれども、ただいま大臣から御説明がありましたように、私どもといたしましては、倍増以上ということで努力していきたいと考えておるわけでございます。
  53. 横路孝弘

    横路委員 大蔵大臣、あなたのところがどうも抵抗して、こういう何かわけのわからぬ——本来明確なのは、この前と同じように三年間倍増というように五年間倍増とやれば明確なわけです、数字がはっきりするわけですから。そうでしょう、大蔵大臣。ところが、過去五年間のトータルのをこれから五年間で倍にしようというわけですから、これはきわめてあいまいなわけです。GNP比を改善するということ、たぶん今年度予算で〇・三ちょっとくらいでしょう。そうするとDACの平均にも達していないわけです。国連の目標は〇・七だ。しかも国連の決議は八五年までに〇・七。それから八〇年代の終わりまでには一%という決議になっているわけです、国連決議は。これは日本は留保していますけれども。そうすると大蔵大臣、これはその倍以上というところに日本的解決をしているわけですが、GNP比を落とすことはしない。そうしないと、こんな公約をよそに向かって発表したって笑われますよ。GNP比を悪くすることはしないということだけは約束してください、倍以上の中身として。対GNP比を悪くすることはしない、少なくとも改善されるようにしていくということだけは約束してください。そうしないと、こんなものを南北サミットだなんだといって外で発表したって物笑いになりますよ。対GNP比の改善だけは行う、これはいままで国連で、何回となく出かけていっては約束してきているわけですから。大蔵大臣、そこだけは約束してください、GNP比の改善だけはすると。私どもは本来は〇・七までやれということを言いたいわけですが、少なくとも悪くなるようなことをしないという約束だけしてください。
  54. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 アメリカとか日本というのはGNPが大きいわけでして、GNPが小さければ金額も小さいが、GNPが大きいから金額がべらぼうに大きくなってくるのです。一方、国内では増税はなかなかむずかしい。現在の基本的税制の枠組みの中では、余りでかい約束をしても、実際実現できないことの方が大変だと私は思います。したがって、いろいろ外務省とも相談したのですが、余り増税はできないし、そうなると、やはりいままでの五年間の倍ぐらいが……(横路委員「倍以上だよ、倍ぐらいじゃないんだよ」と呼ぶ)倍以上が努力目標、目標としてやらなければならぬ、そう思っておるわけで、GNPの何%以上を約束しろと言われても、現在の税制の枠組みの中では約束はなかなかむずかしい。
  55. 横路孝弘

    横路委員 何%以上約束しろと言っているわけじゃないのですよ。これ以上GNP比を落とすことだけはやめなさいよと言っているのです。
  56. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ですから、額で倍以上にしますと……。
  57. 横路孝弘

    横路委員 大蔵大臣、総合安全保障会議には大蔵大臣は出ていないのかな。いままで二回総合安全保障会議をやったでしょう。あそこでやった結論は何かといったら、経済援助をともかくふやしていこう、こういうことだけでしょう、いままでに結論を出しているのは。GNP比を改善するということはもう国連の場で何回となく言っていることなんです。現に三年間倍増で改善してきているわけですね。これはもうみんなが認めているところですね。だから、最近だんだんそういう面では評判も少しずつよくなってきている。この倍以上というところは確かに意味のあるところなんだけれども、少なくともGNP比を悪くすることだけはやめなさいよと言っている。これは〇・七を達成しろと言っているわけじゃない。悪くするということは国際公約にも反しますよ。だから、悪くするということだけはしないようにしますという、それぐらい答弁できるでしょう。
  58. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日本はGNPが大きいからね。べらぼうにアメリカに次いで大きいわけですから、私はどれくらいになるか計算して見なくちゃわかりません。要するに、はっきりわかることは、いままで経済協力をした過去五年間の倍以上にする、その結果GNPの何%になるか、事務当局に計算をさせますから。
  59. 横路孝弘

    横路委員 ともかくGNP比が悪くならぬようにというその意味をちゃんと大蔵大臣に話をしてください、国際的な公約になっているんだから。GNP比を改善するということは、大蔵大臣やはりそこをはっきりさせないとだめですよ。
  60. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 政府はODAを積極的に、拡充し、引き続きGNP比率の改善を図りということですから、改善を図っていくと……。
  61. 横路孝弘

    横路委員 大蔵大臣、とにかく改善を図るということをちゃんと約束しているわけだから、もう一度ちゃんとGNP比の改善だけは図ると……。
  62. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 引き続きGNP比の改善を図り、一九八〇年代前半五カ年間のODA実績総額を一九七〇年代後半五カ年間の総額の倍以上とするよう努めます。
  63. 横路孝弘

    横路委員 どうもあなた、金を削ることしか頭にないからだめなんです。つまり、ちゃんとやるべきことはやはりやる、お金を出すことはやるということでなければならぬわけです、これは国際的な公約なんですから。しかも、さっき言ったように、これを南北サミットで公約し、その後のサミットでも提起をするというわけですから。いまの前段の、GNP比の改善を図るというのがちゃんと答弁ありましたから、初めにそれを言ってくれればよかったわけです。そういうことで今後とも努力をしていってもらいたい。  経済協力の中で企画庁の役割りというのがどうもよく私わからぬのですけれども、企画庁から経済政策の理念とか方向とかいうのはさっぱり何も出てこないわけです。もう少しこういうような政策的問題について、企画庁もひとつ国際的視野に立って努力をしてもらいたいというように思うのですが、河本さんいかがですか。
  64. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先般ODAにつきましては、関係各省の間で意見の調整をしまして、七〇年代後半のODAを八〇年代前半には二倍以上にするということが第一点であります。それから、対GNPの比率の改善を図るということが第二点であります。この二点について関係各省の合意を得たわけでございまして、その点をいま大蔵大臣が文章を読み上げられたわけでございます。  ただ、こういう基本方針はできましたけれども、私はこれを有効に実行するためには、前提として二つの問題があると思うのです。その一つは、政府援助しようとする発展途上国の大部分は、いま第二次石油危機の悪い影響を受けまして経済がまさに破産状態になっております。一体この世界的な規模における発展途上国の外貨不足という問題をどうするのか。破産状態のまま援助いたしましても、これは有効に働きません。それから第二点は、経済がそういう状態でありますから、やはり政治も安定をしていない、したがって受け入れ体制ができ上がっていないということであります。だから、一刻も早くこの二つの問題を、受け入れ体制をしっかりさせるということと、もう一つは、基本的な外貨不足問題に対して世界全体でどう対処するのかという二つの前提を解決いたしませんと、せっかく日本援助いたしましても有効に働きませんので、この点をよほど慎重に考えていかなければならぬと思います。
  65. 横路孝弘

    横路委員 これからその援助の質の問題が大変大きな問題になっていくということで、農林大臣と文部大臣に、お待たせいたしました、時間が余りないのですが、ちょっとお尋ねしたいと思います。  ODAの中の贈与で食糧増産等援助というのが四百五十三億あるわけです。これは食糧増産が二百六十億で、食糧援助が百九十三億ということになっているわけですが、これから人口増加の中でアジアの占める比重というのはいずれにせよ大きくなっていくということの中では、農業の問題というのが大変重要だということで、今度総理大臣のASEAN訪問に農林大臣が一緒に行かれたというのは一定の意味があることだと思うのです。従来、日本の場合は、どうも大きなプロジェクトだとかなんとかすぐ言いまして、たとえばベーシックヒューマンニーズと言われているような分野、教育、保健であるとか、インフラ、福祉の問題であるとか、あるいは農業、漁業というようなところが一つ非常に弱いということと、もう一つはやはり人間の問題で、人の交流をこれからますます強めながら技術交流も深めていくという点が大事じゃないかと思うのです。  そこで農林大臣に、金額からいってもどうもまだ不十分で、そういう意味で言うと、ODAの中における農業の位置づけというのがまだ弱いのでないかというように思いますし、農業の技術や基盤整備や品種の改良などを行うと同時に、私ちょっとまとめて御質問したいと思うのですが、先日ある新聞の論壇に、タイの大学の先生がASEAN農業に協力をしてくれという投書をしておりました。その中で、日本は農民をぜひ視察に招いてもらいたい、そして日本の農業協同組合であるとか土地改良区というような、戦後いわば日本が非常にうまくいったこういう仕組みも、技術だとか機械だとか農薬だとかいうような援助のほかにぜひやってもらいたいという投書がありまして、しかもその最後のところに、日本人には奇異に映るかもしれないけれども、農民というのは大体底辺層にあるのだ、したがって従来日本に招かれることもなかったけれども、招いてもらいたい、招いてもらう場合には、旅行に必要な身の回り品程度が購入できるような配慮もしてもらいたいという投書でございまして、私は、これから農業が開発援助の中でウエートを高めていくと同時に、こういう交流もやはり農林水産省として考えるべきじゃないかというように思うのです。その辺全般について、これからの開発援助における農業の位置づけというものについて、ひとつ御見解を賜りたいと思います。
  66. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 ASEAN五カ国のうちシンガポールを除いた四カ国は、いずれも農業を中心にして国づくりを進めておる国々でございます。今回訪問いたしまして感じましたことは、御指摘のとおり、やはり各国とも、まず食糧はどうしても自給したい、天候も恵まれておるのだし、土地もあるのだし、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイを除いては外国からの輸入に依存しなければならぬ状態を早く脱却したい、これが首脳部並びに農業関係者の切なる願望であるようでございました。ところが、特に御指摘のとおり、水田を主にしておる農業でございまして、米作技術というものをぜひ日本から吸収したい、こういうことで今日までもいろいろ技術者を派遣し、それぞれの国々の要請にこたえて協力の体制をとってきてはおりますものの、なかなか地についたものに成長してこないといううらみがあったわけでございます。  今回、農業関係として私、参りまして、向こうの農業大臣等といろいろ話し合った結果、やはり農村の組織化、これを非常にしたいのだけれども、なかなかできない、こういう面については、日本の農業協同組合等との緊密なる人事交流等から始めて指導をしてほしい、これはいずれの国も、特にタイにおいては強うございました。と同時に、向こうの農家の諸君並びに農村の指導者を日本に招いて、日本の農村の実態を体験させてほしい、こういう要請も各国とも強うございました。いずれにいたしましても、今回総理が参りまして、農業という面に日本が積極的に協力を約したということに対して非常な期待を持っておる、こういうことでございます。  今日までいろいろと各国の大規模な土地改良でありますとか用排水でありますとか調査をいたしておる面もございます。したがいまして、そういう点に対しましては、積極的な協力をいたしまして、調査の終わり次第、無償援助等によりまして農業振興を図ってまいりたい。その際特に話し合ってまいりましたことは、お互いに農業をやるのはいいけれども、つくったものは日本で買ってほしい、こういう声が強いわけですね。しかし、日本の農業と競合されたのでは、日本の農業が大変困るわけでありますので、競合しないという立場でお互いに計画をし、お互いに調整し合って、アジアの農業開発を進めていくべきではないか、こういう話をいたしまして、その点では合意を得たと考えておる次第でございます。  いずれにいたしましても、米作の技術は直ちにでも適用できると思うわけでありますが、日本の水田経営と基本的に違っております。農機具も進歩しておりませんし、二毛作、三毛作ということをやっております関係で、日本の農機具を持っていっても、すぐに使えないという面もありまして、農機具の研究も共同してやらしてほしい、こういう声も非常に強うございました。  いずれにいたしましても、事務的に約束をしてまいりましたことは、逐次積み上げまして、空念仏に終わらないようにいたしてまいりたいと考えております。
  67. 横路孝弘

    横路委員 農民の交流はどうですか。
  68. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 現在、農民の交流は行ってはおりませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、それぞれの国々から要請がございますので、これは将来実現する方向で前向きに指導してまいりたいと考えております。
  69. 横路孝弘

    横路委員 文部大臣にお伺いしますが、日本の大学というのは閉鎖的で、欧米の大学に比べて学生の中でも留学生がわりあい少ないし、教師の中にも外国人教師が少ない。外国人教師の問題は、国会でも何回か問題になっておりまして、その受け入れについて国家公務員法上いろいろ問題があるわけですが、文部省の方で検討されておるのかどうか。議論が出てからもう四、五年たっているのじゃないか。これは毎年一回ぐらいは議論されているようですが、もし国家公務員法がむずかしいならば、新たに法律をつくるとか、ともかく外国人の教師がどんどん日本の国立大学の中にも入ってくるように文部省としてお考えになった方がよろしいのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  70. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お話しの点でございますが、特に私は、御意見のような意図のもとに積極的に留学生の受け入れあるいはまた交流というものを推進してまいっておりますが、計数的にちょっと申しますと、わが国の方に留学してこられておる方が大学等で約六千六百人になっております。  いまのお話しのように、留学生の受け入れのみならず、外人の講師その他の受け入れ等について、大学その他が閉鎖的であってはならないということを特に留意いたしておりますが、御案内のとおりに、国立大学では相当積極的に考えておりますが、任用その他の問題で若干の法制上の問題がございますが、それについても、ただいま打開をして積極的に導入できるように、希望者に対しては受け入れができるように努力をいたしております。  なお、詳細な計数上の問題は、担当の局長から申し上げます。
  71. 横路孝弘

    横路委員 計数はいいのですが、外国人教師を公務員としてきちっと受け入れるという点はどうなんですか。法改正とか新法をつくるとかいうことの作業はなさってないのですか。
  72. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 これは国家公務員の任用の問題がございますので、その点も改正をするように努力いたしておりまするし、また事実、それを打破して、特に私立大学におきましては、非常に数も伸びておりますが、国公立の場合、特に国立の場合に若干の改正を要する点もあるやに聞いております。この点も担当の方で折衝を続けておる次第でございます。
  73. 横路孝弘

    横路委員 経済協力関係、これでちょっと時間がなくなったものですから、環境庁長官、申しわけないですが、あと分科会でやらしていただきます。文部大臣も結構でございます。外務大臣も結構でございます。  電電公社の納付金の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思うのですが、五十五年度の予算と五十六年度の予算案をそこに配付してお手元にあると思いますが、国庫納付金というのは、ある意味で言うと、欠損金に対して国の資金による補てんをするということと表裏一体の関係にあるわけですね。前に公社を設立したときには、この国庫納付金制度というのは原案にあったわけですが、独立採算制を貫くということのために削除されたという経過があると思うのです。そんな意味では、この納付金の制度というのは臨時的なものであるとしても、独立採算制を維持するという基本的な原則に禍根を残すことになるのじゃないかというように私は思うのですが、郵政大臣、いかがですか。
  74. 山内一郎

    ○山内国務大臣 前の国会でいろいろ修正があった経緯は御承知のとおりでございますが、今回、納付金を納めることになった経緯は、臨時的にやるというようなたてまえからいきまして、私は、独立採算制が根本から覆るものではない、納付金は暫定的に四年間でございますので、公社の事業の能力から考えまして、基本的に崩れるものではない、こういうように考えております。
  75. 横路孝弘

    横路委員 公社の利益積立金というものの性格が一体どうかという問題が一つあるわけですが、一般の私企業と違ってすべて有形の固定資産だ、したがって、その納付金を積立金から取り崩すことはできないわけですね。だから、今度も損益勘定から支出するということにしますと、赤字の計上になるわけでしょう。だから、これは資本勘定から支出することにしているわけですね。  私は、ここのところのからくり、これはもうからくりと言った方がいいのじゃないかと思うのです。大蔵大臣、最初の言い出した経過というのは、利益が内部留保されてあるというふうに考えたのじゃないですか。そこに錯覚があったのじゃないでしょうか、出発点は。違いますか、大蔵大臣。
  76. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 要するに自己の資本比率というものが非常に充実をしてきた。これはどこの会社の経理も同じでございまして、いろんな引当金とか積立金とかという名目で留保してありますが、それが全部現金で残っているとは限らないわけでございます。したがって、その過去の比率と比較をして最近の充実ぶりから見て、この程度は臨時の措置としてひとつ御協力をいただいても経営には何ら差し支えない、こう思ったものですから、お願いをして両者の話し合いの結果、かように千二百億円ずつ拠出を願うように決めたわけであります。
  77. 横路孝弘

    横路委員 この収支差額というのは資本勘定に入って、そこの支出は債務の償還と建設勘定になっていますね。この建設勘定、ある意味で言えば、設備先行投資ですね、これは大幅に削ることができるものですか、郵政大臣。
  78. 山内一郎

    ○山内国務大臣 今回は臨時特例的に納付金をやることに合意しましたけれども、これによって、従来計画されている事業は従来どおりやっていく、こういったてまえで、納付金を納める金につきましては借入金によってやる、事業は依然として収支差額、いわゆる利益と言っておりますけれども、それは従来どおりの建設に充てていく、こういったてまえでございます。
  79. 横路孝弘

    横路委員 それで、その収支差額、五十五年度は二千七百四十四億あったのが、五十六年度は九百三十八億になっておりますね。ここでもって遠距離の料金の引き下げだとか深夜料金の改定というようなものが入ってまいりますと、これから先の見通しはどうなりますか。五十七年、五十八年、六、七、八、九まで拘束するわけでしょう。どうなりますか。
  80. 山内一郎

    ○山内国務大臣 従来どおりの計画を推進していくということでございますので、五十六年におきましても、遠方の電話料が非常に高いものですから、これを下げるように努力をする、また、日曜、祭日の料金も、これを割り引くような計画をもってやってまいります。こういうことでございますので、事業の計画は変更しませんが、収支の差額につきましては、納付金に関係なく、従来からの経緯からいきましても、収入と支出との関係でございますので、そういう点につきましては、これは年度によって変更はあるというように考えております。
  81. 横路孝弘

    横路委員 電電公社、来ていますか。——この収支差額のこれから先の見通し、これはどうなりますか。たとえば五十五年と六年でも、そこでもってかなり収支差額が減ってきていますね。特にいまのような郵政大臣が言ったような措置をとった場合には、先の見通しはどうなりますか。
  82. 真藤恒

    ○真藤説明員 現状では、五十七年までは黒字でいく見込みを立てております。五十八年、九年になりますと、これから先の電話の加入の数字の変更あるいは情報産業にいかに対応していくかというふうな企業努力を積み上げていかなくちゃなりませんが、また、その他のいろいろな問題もございますが、私どもの考えといたしましては、従業員と協力して、できるだけ突っ張っていきたいということで、いま新しい数字の修正、先の見積もりをつくっておる状態でございます。
  83. 横路孝弘

    横路委員 なかなか大蔵大臣、これは先のは厳しくなるわけです。いままでも、ある意味で言うと、皆さんと労働組合協力し合いながら、国鉄のような赤字を出すようなことにならぬように電電公社は努力をされてきたと思うのです。したがって、これからもそんな意味では働いている人たちに対する配慮を大いにやはりやって、協力していってやってもらいたいというように私は思いますが、そこで大蔵大臣、どうしてこういう措置になったのでしょうか。五十五年と五十六年を見ますと、結局、先ほども答弁がありましたように、設備投資そのほかで建設勘定を変えるわけにいかないから、そうしますと、どうしたかといいますと、いまお配りした表を見てもらいたいのですが、国庫納付金千二百億、これは損益勘定でやるわけにいきませんから、赤字になりますから、料金値上げをしなければならなくなるから、資本勘定でやったわけですね。支出の部に出ているわけです。それを賄うために。どうしたかといいますと、五十五年の場合は、財政投融資が五百億、特別債、借入金が三千三百十億だった、それを今度、財政投融資を千五百億円、特別債を五千五百九十億にふやしたわけです。つまり、納付金千二百億をつくるために、財政投融資から金を借りたという仕組みなわけです。この財投のものは政府の引受債ですか。利息を払って返すのでしょう、このお金は。
  84. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えいたします。  五十六年度の財政投融資の千五百億円につきましては、電信電話債券の形で政府資金によって引き受けていただく、つまり先生御指摘のように利息を払うものでございます。
  85. 横路孝弘

    横路委員 利息はどのくらいですか。
  86. 岩下健

    ○岩下説明員 表面利率がたしか八・一%で、若干のアンダーパーがございますから、利回りで八・二ないし八・三%が相当するかと思います。
  87. 横路孝弘

    横路委員 そうすると大蔵大臣、これは財投から金を貸して、そしてその金は今度国に納めてもらう、これは国債とどこが違うのですか。結局これは国債の肩がわりじゃないですか、国の方に返るものを公社に負担させるということなのですから。違いますか。
  88. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 公社のいままでの積み立てた利益のうちから拠出をしてもらうわけですが、それが御承知のとおり、いますぐに現金化できない、固定化しておる、したがって、とりあえず本年度納付分についてそういうような資金の融通をした。これは利息の分については、生産性の向上等によって吸収していただけるものと考えております。
  89. 横路孝弘

    横路委員 つまり、形としては電電公社から金を千二百億、これから四年間で四千八百億取る。その分は、しかし、電電公社は金を借りなければいけない。内部留保と言ったって、現金があるわけじゃないですからね。みんな固定の有形資産になっておるわけですから。そうでしょう。  そこで、皆さんの方は特別債と財投の部分ですね、大体三千三百億です。つまり、電電公社から言うと、経営の内容がいいからというので国に金をよこせ、しかし、実際には金はない、そのかわり国がお金を貸してやろう、ある意味で言うとそういう形になっていますね。そうでしょう。つまり、独立採算制そのものを危うくしていくことでしょう。だから、また下手をすると国鉄をつくることになりますよ。総裁どうですか。
  90. 真藤恒

    ○真藤説明員 財投からあるいは外部から借り入れたものは、元利返済いたしますので、結局従業員の努力と新しい技術の力ということで極力これを吸収していく、合理化を進めるほかに方法はございません。
  91. 横路孝弘

    横路委員 いや、進めるしかないと言ったって、あなた、そんな簡単なことじゃないでしょう。つまり、公社にとってみると、公社成立のいきさつからいって、独立採算制でやるのだ、納付金もやらぬかわりに、そのかわり欠損金に対する国の補助とか補てんとかというのはしないでともかくやっていきましょうということでやってきたわけでしょう。国の出資金と言ったって、いま全体の割合から見れば、〇・何%というようなものでしかあり得ないわけです。百八十億くらいですか。だから問題は、こういうことをやったというのは、国は財政が厳しい、国債も減額しなければならぬ、二兆円減額と言ったために、つじつまを合わすために、きのう議論がございました住宅公団についてのような操作もやった、ここでもその操作をやった。本来の筋から言えば、こういうことをやらなくても大蔵大臣、国債で賄うというなら、この分を国債でやったってよかったわけですね。ただ、二兆円という限度があるから、それができないので、こういうからくりを外につくった、こういうことじゃないですか。
  92. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは私は違うと思います。(横路委員「いや、からくりですよ」と呼ぶ)いやいや、それは要するに電電公社の方は利益があって、その利益は積み立ててあるわけです。しかし、現金で積み立てたわけじゃない。それはほかに投資その他になっておる。したがって、その資本の準備金のうちから四年間に分けて千二百億円ずつ国に拠出をしてもらう、しかし、とりあえずお金がないから、その分については一部融資の金繰りをしたということであって、これは長期間にわたって当然その利益の取り崩しということになるのです。どこの会社なんかでも、利益の取り崩しといえば大体そういうことが多いわけでございますから、これは国債の新しい発行とは私は異質のものだと考えております。
  93. 横路孝弘

    横路委員 細かい議論は法律の方で議論しますが、公社法そのもので収支差額については決められているわけですね。公社法六十一条。その予算の段階から資本勘定へ、たとえば債務の償還など、それからもう一つは建設のための資金、建設投資のための資金ということで計上されて、仮にたとえば予算が余った場合にどうなるかというと、全部これは資本勘定に繰り入れられるというように法律で決まっているのです。今度皆さん、そこの特例措置をとろうということで法律を出すわけでしょう。法律をつくらぬと多分できないことだと私は思うのです。したがって、この公社法の六十一条で言っている利益金の積み立てというのは、この公社法の規定を見ていけば、有形の固定資産であって、民間の企業で言っている内部留保とは違うんですね。そこがまず基本的に大蔵大臣の考え方で違っているところですよ。こういうことをやるならば、結局これはどうなるかというと、公社の負担がふえるわけですね、借金しなければいけないわけだから、利息も払わなければならぬし、その部分は償還するのでしょう。だから、公社から言うと、その部分の経営負担が重くなるということになりますね。だから、これは大蔵大臣何と言おうと、いまお配りしたこの五十五年と五十六年と比べてみればわかるのでありまして、完全にからくりじゃないですか。建設勘定といったって、こういう形なんですから、設備投資をやめるわけにいかない。したがって、どこでやるかというと、資本勘定のところで操作をしなければならぬわけでしょう。しかも、収支差額というのは、先ほど言ったように、だんだん先行きわからなくなってくる。いろいろ努力はするけれども、先ほどの御答弁だと厳しくなるというお話だ。そうですね総裁、うなずいておられるけれども。なかなかこういう場で、大蔵大臣などのいるところで言いづらいかもしらぬけれども、しかしあなた方、やはり自分たちの立場をはっきりさせなければいけないと思いますよ。どう考えたって、この国庫納付金というのは、財政投融資と特別債から借りてきて、そうして国に出したというわけでありますから、公債発行という手間を電電公社という一つの組織を通じてやったということじゃないですか。  電電公社にお尋ねしますが、結局皆さん方の経営からいうと、これは厳しくなったことでしょう。
  94. 真藤恒

    ○真藤説明員 厳しくなることでございます。
  95. 横路孝弘

    横路委員 いま大蔵大臣、厳しくなるという話があった、状況というのは。これから四年間ということでしょう。そうすると、いまから四年先のこと三年先のことを決めてしまうということじゃなくて、たとえば来年度の場合には来年度の段階でそれを公社の経営そのものを含めて見てみる。これから収支差額というのはだんだん減っていくのですよ。だから、これから四年間断固としてやるというのではなくて、それぞれの予算に際してそこのところをトータルに考えるという姿勢が、私は、大蔵省にも必要じゃないかというように思うのです。いかがですか。
  96. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは物の考え方でして、電電公社はともかく時代に合った産業ですよ。民間の人たちに言わせると、まあ独占企業であれだけのことをやっておって、民間ならかなりの税金を納めなければならぬだろう、国際電電なんというのはかなり収益率が高い、そういう点から比べて電電公社も非常によくやってきた、いままで非常に充実をした、しかし、もうけの部分は要するに積み立てて、資本勘定に入れたり建設費に使ったりそういうこともやってきた、これも事実でございます。しかし一応、電話の積滞という問題もなくなり、また別な新しい仕事というものも、見つけ方によってあるのじゃないか、やり方だ、私はそう思うわけです。したがって、電電公社の効率的な経営を考えるという点で、やはり民間から新進気鋭の総裁を迎えて、民間の合理性というものをもっと取り入れて一層よくやっていこうということでございまして、私は、千二百億円ずつ国庫に納付するということは、電電公社の経営に重大な支障を来すというようには思っておりません。国家と申しましても、これは国民でございますから同じことなんですよ。
  97. 横路孝弘

    横路委員 大蔵大臣、それでもって公社の経営が厳しくなったからといって、料金値上げなんと言ったって、そんなものは認めないですよ。最後のツケを国民に回すなんて、もうありありとしているじゃないですか。そうすると、もし経営が厳しくなってきたというような状況が、いろいろ努力したけれども出てきた場合には考えていただけますか。
  98. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、電電公社のやり方で、経営が厳しくなってきたとはいっても、それによって経営が非常に赤字になってくるというようなことはないと考えております。
  99. 横路孝弘

    横路委員 大きな赤字が出てからじゃ、あなた、国鉄みたいになったらもう遅いじゃないですか。  郵政大臣、あなた大蔵と電電公社との中間的立場じゃないけれども、少しは電電公社のことも考えるお立場だと思うのですが、これからの経営の状況は、いまから四年も三年も先、これから経済だってどうなるかわからないのに、千二百億ずつなんと言っても、なかなか厳しいものがあるだろうと思うんですね。そうしますと、たとえば債務の償還だってやらなければいけない、利払いもあるということになりまして、しかも、料金の引き下げをやっていくというわけでありますから、五十六年度というのはそれが一遍に重なったわけですね。なかなかむずかしい場面にあると思うのです。したがって、これかも状況の推移を見ながら、やはり大蔵省に物を言うところは物を言う、考えるところは考えるという態度が郵政大臣として必要じゃないかというように思うのですが、いかがでしょうか。
  100. 山内一郎

    ○山内国務大臣 現在のところは、千二百億円を四年間納付する、こういうことが決定しているわけでございます。したがって、この場で将来どういうことになるかということはちょっとお答えしにくい非常にむずかしい問題ですが、今後の情勢を見て、よく大蔵省と話してみたいと思います。
  101. 横路孝弘

    横路委員 時間が参りましたから終わりますが、どうもきのうの住宅公団の話を聞いておっても、大蔵省は初めに立てた政策に沿って、この五十六年度予算はあちこちでからくりをつくった。この国庫納付金もその一つだということを私は言わざるを得ないわけでありまして、結局は、国としては借金をふやしているということが言えるのじゃないかと思うのです。今後もまだこの問題について、法案の審議そのほかの中でも議論していきたいと思いますが、ひとつ大蔵省としても、財政再建を図るならまだほかに方法がたくさんあるということが言えるのじゃないか、その辺のところも十分考えていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  102. 小山長規

    小山委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。
  103. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 きょうの午前十一時に米レーガン大統領の一般教書、今後四年間のアメリカ経済政策を織り込んだ教書が発表になっておるわけです。すでにその骨子については実はいろいろ報道もされておるわけであります。ちょうど昨年七月の米国の共和党大会では、選挙に臨む政策綱領を決めて、その締めくくりとして、レーガン政権が誕生いたした場合には、初めの百日間はルーズベルトのごとく、次の百日間はアイゼンハワーのごとくと述べておるわけであります。したがって、レーガン大統領の就任後初めてのテレビ放送についても、いわば故ルーズベルト大統領の炉辺談話にならって、経済協力に関する米国国民の協力を呼びかけておる。まさしく公約を地でいっている姿が見受けられるわけであります。したがって、このレーガン大統領の一般教書、外務省としてもその内容については大部分把握をされておると思いますので、この機会に、この経済政策を日本側はどのように評価しているのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  104. 伊東正義

    伊東国務大臣 はなはだ申しわけありませんが、骨子はまだ正式に届いておりませんので、いま私がここで軽々に御返事するのもいかがかと思いますので、三十分前ぐらいのことでございますので、ここにおります間に来たら、また後で御返事申し上げることにして、いまは答弁をちょっと保留させていただきたいと思います。
  105. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私の手元には大体速報的な内容がすでに入っておるわけであります。では、後からこの点については答弁をしていだだくことにいたしたいと思います。  そこで、レーガン政権は選挙中に通貨の問題を取り上げて、いわば金本位に復元する、そういう方向性を実は訴えておるわけであります。そういうことはなかなか実現できないだろうという楽観論が非常にありますし、またいろいろな意見もあるわけですが、私は、レーガン政権としては、これは根強い一つの政策として国家次元で実現される可能性があるのではないか、このように実は分析せざるを得ないのであります。  先般イランが金、銀の売却を行った場合に金の価格は急落をいたしたわけであります。これはアメリカにおける金の価格の操作が行われたという情報がもっぱら有力であります。そして今後のエネルギー状況を考える場合に、石油と金の価格をリンクさせていく。したがって、石油の値段が上がっても金の価格が上がればそこで相殺できる、そういう一つの戦略が込められて、アメリカとしては今日の金保有を背景にして、金を一つの武器としてこれからの経済政策についても有効な手段を考えていく、これが共和党内部における金本位の復元に対するレーガン発言になってあらわれておるのではないかと思うわけです。  客観的に見ますと、ソ連の場合には世界第二位の産金国でありますし、何時にまた、ECは金を一応基礎にしている通貨体制をとっておるわけであります。日本を除いて、今日もしそういう政策をとるという場合にはそう強い反発は少なかろうということも定説ではないか、実は私はこのように受けとめざるを得ないわけであります。したがって、大蔵大臣もこの点については、すでにアメリカを訪問いたしておりますし、何といっても一番ショックを受けるのはわが国であるということは当然でありますから、今後のわが国経済政策の運営についても重大な支障があろうか、こう思うのでありますが、そういう点について一体どのように受けとめてどう判断されておるのか、この機会に承っておきたいと思います。
  106. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一部に金本位制の話があることは事実のようでございますが、しかしそれは本当にごく一部の話であって、レーガン大統領も、金本位制への復帰につきましては、選挙の直前に、目下のところ金本位制を支持しないというようにも述べております。また、金本位制に復帰するといっても非常にむずかしい問題がございます。金の価格を一体どういうふうに決めるのか、決め方によっては非常に投機的な状態になるわけでありますから、かえってインフレを激化させる要因になりかねないとか、あるいは非常に国際政治が安定しないで、しかも金の産出が南アとかソ連とかに非常に偏っている、そういうような国が非常に有利になるというような問題点もあります。したがって、この問題は、もし復帰するとすればえらい大変な変化になるわけであって、目下のところ現実的に、そういう可能性は薄いというように私は見ておるわけでございます。
  107. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、大蔵大臣の答弁は、現時点ではそういう答弁になろうか、こう思います。だがしかし、レーガン政権の今回の教書の内容等から判断しましても、その方向性は非常に強い、こう私は受けとめて、わが国としてもそういう場合の対応策というものは事前に種々検討しておく必要があるのではないか。あるいはまた、日米首脳会談においても、この通貨の問題については、当然随行者も行くことでしょうから、重大な関心を払っておく必要があるということをまず指摘しておきたい、こう思います。  いま横路委員が対外援助の問題についていろいろ質問をいたしたわけです。確かにわが国のGNPは、世界のGNPに占める率というものは一九七八年度は実に一〇%、ECは二〇・二%、アメリカは二一・八%、いわばアメリカ、ECの半分のGNPを占めるに至っているわけです。それだけにわが国経済協力に対する国際的な期待というものは強まっていっても、これは下回るものでないことはきわめて当然かと思います。  ただ、その中で私が気にかかるのは、では今日のわが国経済協力の実績はどうなっているかという点を検討してまいりますと、残念ながら、せっかくの海外援助の予算を組んでおるけれども、五十四年度はなかなかお金を使い切らない、実行率が大体力〇%程度ではないか。五十五年度はまだ時間が残っておりますけれども、実行率はさらにこれから下がるのではないか。せっかく予算があっても実行できないのではどうにもならないのであります。この点について外務大臣の見解を求めておきたいと思います。
  108. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  確かに、こっちで予算を組みましても実行率が上がってないということになりますと、これは所期の目的達成をしないわけでございますので、日本としましては、予算に計上したものは、相手方から要望があれば、それはもう一〇〇%実行していくということが必要だと思っております。ただ、これは相手方の国の予算措置の問題等があったり、あるいはいろいろな手続の問題等がございましておくれるということもあり得ることでございます。五十四年度、外務省が所管しています国際協力事業団の実行率を見ますと九三%ぐらいになっておりますが、それでいいとは私は決して申し上げません。なるべく所期の目的を達成するように努力をしなければいかぬ。少なくとも日本側の理由でおくれるということにはならぬように努力をしてまいるつもりでございます。
  109. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 五十五年度の見通しは、実行率は大体八〇%ぐらいに落ちるのではないでしょうか。その程度に割り込むという見通しが最近強まっているのが実態だと思うのです。憂慮すべき問題であるし、南北サミット会議が六月十一日に開かれる、そういうことを前にしてわが国の海外援助がそういう趨勢をたどっておるということは非常に重大問題だと私は思うわけです。  そこで、経済協力は大蔵省、外務省、通産省、企画庁の四省庁体制で、開発調査だけは外務省が担当する。今日、年々経済援助は高まっていくわけでありますが、そういう体制自体に問題があるのではないか、私はこう言わざるを得ないのであります。今日、公社、公団あるいはまた特殊法人は非常に数多くあるのであります。もう少し大蔵、外務、通産、企画のこの四省庁体制である程度重点的な点を分担し合うとか、あるいはまた単に国際協力事業団だけではなくして、海外経済協力基金や日本輸出入銀行、あるいはまた通産省であれば歴史的なジェトロも持っておるわけでありますし、あるいはまた農林省には漁業の海外協力事業団もあるわけでありますから、そういうあらゆる点を一度網羅をして、いわば海外援助の本部といいますか、そういう組織体制を整備する必要があるのではないか。外務省だけの——これは予算に計上しなければならぬわけでありますからなかなかスムーズにいかないという問題が事実発生しているのがこの数字である、私はこう言わざるを得ないのであります。  そういう点で、せっかく南北サミットも開かれるのでありますから、わが国経済援助の効率的な体制あるいはまた単なる要請主義ではなくして積極的にニーズを吸い上げていく、そういうところまでいかなければ、平和国家として経済援助を重点にして発展途上国の民生安定や繁栄のために資する、世界の平和に資するというお題目がなかなか実行できないのが実態ではないか、私どもこう思うのですが、いかがですか。
  110. 伊東正義

    伊東国務大臣 実行率の数字につきましては政府委員の方から後から簡単に御説明申し上げますが、先生おっしゃいました、まず相手国のニーズを待って、需要、要望を待って考えるということよりも、積極的にこちらからという御意見でございます。  この点は非常にむずかしい点でございまして、大使館も現場にございますので、その辺のところは相手国の事情をよく考えまして、向こうとよく協議してやっていくというのが一番妥当な方法だというふうに私は思っておるわけでございます。  国内の機構の問題につきましては、いま岡田さんおっしゃったとおり、四省が相談をしてやっていくことは確かでございます。一つの御意見としていま出たわけでございますが、要するに、どうやったらうまくいくかということを考えてみろということでございます。私は、いまの体制でもよく相談してやればできないことはない。これは各省にまたがる事項でございますので、その連絡を密にするということは必要だ、何も外務省だけで全部やれるなんてちっとも考えていないんで、各省と十分連絡をとって、先生のおっしゃるおくれていることが日本側の理由だということでは最も遺憾でございますので、そういうことにならぬようにという最善の努力を私はするつもりでございます。
  111. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど大蔵大臣の答弁があったように、今後GNPの〇・七%の予算をもって海外援助をするとすれば、大変なこれはもう業務の内容ですね。言うならば、海外径済協力庁などという組織をつくらなければ実際むずかしいと言わざるを得ないのであります。しかし、なかなか今日の情勢ではそうはいかぬでありましょう。だがしかし、たとえば一つの具体的な例を挙げますと、調査をするという場合には大体技術屋が多いんですね。技術屋が調査団のメンバーになる。ところが、今日の発展途上国の現状を見れば、その国の経済の全体をある程度診断をして、そしてその中でどう正しく順序立てて経済力をつけていくか、どういうものがいいのか、そういう中で相手方のニーズについても十分そしゃくをし、またサゼスチョンをする、ここまでいかなければ本格的は援助の効果というものは出てこないのではないか。いわばエコノミストも積極的に活用する、こういう姿勢も私は必要だと思うわけです。せっかくいま外務大臣から答弁がありましたけれども、中長期的な海外協力援助というものを素直に考える場合に、いまのままでは消化できないし、いまのままでいいはずがないし、そういう意味でひとつ、四省庁の体制もあるわけですから、余り外務省だけでこだわらないで、外務省だって出先の公館は地方の出張旅費がないのでありますから、地方の出張旅費がないということは、地方の実態はなかなか公館の職員の方々は把握ができないというのが本当なんですね。われわれが行ってみてそう感ずるわけです。人数も少ないのでありますから、そういう点で、ぜひひとつ新しい八〇年代に対応する海外経済協力一つの、もちろん方針も大事ですが、それを確実に消化をしていく体制の整備、この点について検討していただきたいということを強く要請いたしておきたいと思います。  私の手元にある教書の内容は、八二年度政府予算を四百十一億ドル切り詰める、八四年度までには財政赤字をなくする、所得税を三年間毎年一〇%減額する、企業の減価償却は大幅に加速し、八六年度までに約七千二百億ドルの減税を行う、不必要に企業に負担をかける政府規制の見直しを図る、通貨供給量の増加率を八六年度までに現行の半分に抑えるなど金融政策を引き締める、以上の四点を柱にして、貯蓄、投資、生産性の拡大を図り、アメリカ経済を再建する、国防費については増額をする、したがって財政カット、社会福祉費の切り詰めを図るなど、高額所得者優遇の姿勢というものが今度の教書の中に出ている、こういう大体の骨子が私の手元にあるわけですが、いかがですか。
  112. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生のおっしゃったことが大体内容でございまして、主として経済問題が言われているわけでございます。歳出の削減でございますとか、所得税減税毎年一〇%という問題あるいは小さい政府ということで諸規則の改革でございますとか、金融政策の安定とか、そういう経済問題が中心になった並み並みならぬ決意の表明が今度の教書の特徴でないかと私は思っておるわけでございます。  こういう点になりますと、国防の問題、防衛費の問題ももちろんございますが、これがそのまま実行されるということになりますと相当厳しい問題がいろいろ出てくるだろうということは予想されるわけでございますが、これはまだいまの教書の発表だけでございますので、これからこれを十分に検討しまして、まず私が向こうへ行きまして、国務長官を中心にいろいろ向こうの政策、日本考え方を述べ、あるいはこの中のあるものは首脳会談の議題になってくると思います。この問題はもう少し時間をかけて検討したいと思っております。
  113. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 議論はまた別途の機会に譲ることにしまして、この機会にプラント輸出について私は伺っておきたいと思います。  五十四年度大体百十七億ドルの、中国が中心でありましたけれども、伸びを示したわけですが、五十五年度の段階は大体百億ドル程度ではないか。したがって、五十六年度についても大体積はいであろう。若干下降ぎみである。御承知のように、プラント輸出は経済摩擦を起こさない輸出であるわけでありまして、先進国わが国として重大な関心を払わなければならない問題であります。私は、そういう意味で、プラント輸出について、最近の国際動向、国際的な状況から判断して、わが国としても従来の政策を充実強化する必要があるのではないか、こういう感じがするのであります。  もちろん、いまわが国のプラントの競争力は円高等でなかなか太刀打ちができないとか、あるいはまた一方、イランとかソ連とか中国、こういう国々についてなかなか見通しが暗くなってきているという面もあるわけですから、もう少し広範囲に対象を考えて政策を強化する必要があるのではないか。アメリカやECでは、すでにもうOECDのガイドラインを無視して、政府借款の抱き合わせ、ミックスクレジットなどの方法でプラント輸出が行われておるわけです。だから、わが国だけがOECDのガイドラインを守っていなければならぬということはないわけですね。いわばマッチング条項というものがあるわけですから、対抗手段としてそういう方法もとれるのであります。そういう意味では、ブラント輸出について、今日の状況から判断すればこの方針は見直さなければならない、再検討されなければならぬと思うのでありますけれども、これは大蔵大臣ですか、いかがですか。
  114. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 プラント輸出と国の経済協力関係は、輸銀とか何かに非常に関係あるわけです。しかし、これは最近使い残しが非常に多いとか何かでしょっちゅう御批判を受けるのですが、相手国の事情によりまして、一番いいのは中国の例をとってみてもわかるように、大きなものを次次とやめるとか、最初ずさんな計画でいろいろ持ってきたのだが、円借款してもそれは途中でなかなか実行しないとか、自分の方で国内のローカルコストの金がないために、外国から仕入れるお金は借りられても支払う賃金の金がないとか、そういうようなことであっちこっち行き詰まっているという実例がたくさん出ておる。これも事実でございます。  どういうような解決方法があるか、岡田先生まだ言ってないのだけれども、金利か何かのことを言うのだろうと思いますが、非常に諸外国との経済情勢というものもありますからいろいろ研究はしてみますが、直接的にはこれは大蔵省の仕事じゃないのであって、通産省等の仕事でございますが、われわれも協力できる面は協力をしていきたいと考えております。
  115. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この件について通産大臣は、最近のプラント輸出の状況、今後の見通し、中長期的な見地に立ってどういう御見解ですか。
  116. 田中六助

    田中(六)国務大臣 各国の状況を見ておりましても、プラント輸出というのは、私ども日本の場合を取り上げましても、これからの経済関係というものは相互主義でございまして、日本一国でどうということにはならない。また、私どもには重大な発展途上国というものも控えておりますし、そういうものを考えたときに、やはり何か条件のいいようなことは考えなければいけないというふうに思っております。したがって、先ほど申し上げましたように、西ドイツとかフランスとかそういうところを見ましてもミックスクレジットの方向をとっておりますし、私どももそういうことを参考にして十分これからもそういう点も検討していかなくちゃいかぬのじゃないかという考えを持っております。
  117. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、国内の中小企業の振興等から判断して、これからのプラント輸出は——従来は大型ブラントですね。大型プロジェクトに対する大型プラントの輸出が重点であったわけです。しかし、わが国は中小企業の活力も強いのでありますから、中小プラントの輸出、こういう点も相当ウエートをかけるべきではないか、そして中小プラントの場合には、相手国の民生安定とかあるいは住宅とか道路などの都市開発に結びついていくでしょうし、そういう点をもう少し積極的に取り上げてはどうなのか、あるいはまた将来に備えては、プロジェクトマネジメントといいますか、いわば総合的な大規模の開発プロジェクトも展望していかなければならないのではないか、こう思うのでありますが、この点はいかがですか。
  118. 田中六助

    田中(六)国務大臣 このたびの総理のASEAN訪問におきましても、四つか五つのテーマを鈴木ドクトリンとして出しておるわけでございますが、その中にやはり中小企業の育成ということをうたっておるわけでございまして、私どもの経験それから発展途上国とのそういう関係で、私は、岡田委員指摘のように、中小企業というものを念頭に置いて、そういうクレジット並びにミックスクレジットといいますか、そういう観点を十分踏まえてやるべきだというふうに思っております。
  119. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 エネルギー問題に入る前に、郵政大臣せっかくお越し願っておりますので……。  いまも電電公社の千二百億の納付金の問題についてはお話があったわけであります。私がこの際お聞きしたいのは、電話の加入区域外の加入促進の問題が今日大きな課題として残っておるわけであります。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕 すでに電電公社の場合には改良第六次五カ年計画が進められている。五十七年で終わるのでありましょうか、これを五キロを七キロまで拡大をする、非常に結構なことだと思うわけです。だがしかし、七キロ以遠の場合は依然として残るわけであります。  いま電話というのは、もうテレビ以上に必要なんではないでしょうか。僻地でありますから、何か緊急連絡の場合には電話に頼らざるを得ないというのが実態だと私は思うわけであります。したがって、このいま進めている五カ年計画外の遠距離の未加入の実態というものは一体どうなっておるのか、この機会に承っておきたい。
  120. 山内一郎

    ○山内国務大臣 御承知の五カ年計画、これは五十三年度から五十七年度まで、これは順調に進んでおります。そして、二十七万世帯の人が電話加入することになるわけでございます。  そこで、いまお尋ねの、では七キロ以遠はどうするのか、この点につきましては、五十七年度に完成する前に計画を作成いたしまして、約一万六千世帯ぐらい残っておりますけれども、ぜひとも加入区域内に入れてこれを整備してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  121. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま大臣から説明ありましたように、もしこれを完全に解消するとすれば、一応の試算があるわけですね、二百五十億かかって、大体一件当たり二百四十万かかるというわけです。設置費は百メーターに対して九千円、付加使用料金が百メーターに対して事務所は五十五円、住宅用は三十五円、こうなっているわけであります。もうやむにやまれず、たとえば北海道は自治体が助成を出してこの促進に当たっている。しかし、資料によると、これは大体全国に散らばっていて、北海道あたりはむしろ少なくなっているのではないか、むしろ東北あたりが非常に多い、あるいは九州が多いというような実態にあるわけです。やはりそういう意味で、かつて農村の場合でも山村法の電力を入れる場合には補助金がありましたし、北海道の場合の未点灯、それ以外の地域の解消のためにも国家は補助金を出したわけです。そういう意味で、こういう民生安定の基本に触れる部分になっておるわけでありますから、一方においては千二百億の納付金を取り上げて、政府はこれに対して放置をしておるということは、国民の側から見て納得できない問題ではないか。したがって、すでにこれはそういう要請も出ているわけでありますけれども、この点については、近代国家、近代社会として民生安定のためにも政策的に取り上げて、いまの五カ年計画の中で終わるんではなくしてやはり並行的にやるべきではないか、こう思うのですが、その点について郵政大臣と、特に大蔵大臣の本件に関する見解をひとつ承っておきたいと思います。
  122. 山内一郎

    ○山内国務大臣 御指摘ございましたように、いまの制度でいきますと、遠距離になるほど個人の負担がふえてまいるわけでございます。したがって、いまのところは七キロまででございますので、この制度でやっていただいておりますが、これより遠くなった場合どうするかということは並行的に計画も進めていきますけれども、いろいろ御指摘もございましたので、そういう点もあるいは考慮しないといけないのではないか。事実上できなくなると何にもなりませんから、北海道の例も一つの参考になると思いますけれども、その節には考えさせていただきたい、こう考えております。
  123. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国庫納付金の問題につきましては、これは国の非常に特異な財政事情のもとでございますので、臨時的なしかも四年間という特例的な措置でございます。  それからもう一つは、電電公社の場合、仮に民間の会社ですと年間数千億円の利益があれば、それは現金で持ってなくても借金してでも半分は税金や払ってやっているわけですが、電電公社の場合は、ずっとかなりの利益があった場合も国には税金を納めているわけでもないし、もっぱらそれらの費用をいろいろな投資や何かに充ててきた、またそれができたというのが現在の実情なんです。したがって、そういうような状況のもとですから、その一部についてひとつ臨時特例の措置として年間千二百億円、四年間納付いただきたいということをお願いをしておるような次第でございます。
  124. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私がいま言ったことは、これから六月から遠距離の電話料金も下げる、経営の内容はさらにそういう点で変わってくるわけです。一方においてはこういう遠距離の、一番電話の必要なところが大変お金がかかる。地方自治体はやむにやまれず自分で補助金を出している。しかし、いままでの政策手段から言えば、農業政策なんかの場合でもこういう点はめんどうを見たわけですね。郵政大臣の答弁もありましたから、こういう問題についてはきめこまかく考えていくという点で、ぜひひとつ大蔵省の場合にも御検討願いたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、時間がありませんからエネルギー問題についてお伺いしますが、エネルギーの対策費は今年度四千九百七十四億八千九百万円ということが決められておるわけです。ただ、エネルギー対策費というものは、大蔵省としてどういうぐあいに把握しているのか。たとえば農林省だってあるわけでしょう、バイオマスの関係の予算。あるいはまた建設省だってあるわけですね、ソーラーシステムとか。いろいろ各省にあるわけです。文部省にもある。そういう意味ではわが国のエネルギー対策費というものは、予算上そういうものを含めてトータルした場合に幾らになるのか、承っておきたいと思います。
  125. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 非常に重要な問題でございますから、エネルギー問題は私どもとしても最重点政一策の一つとして、乏しい予算の中でございますが、他と比べてみればわかるように極力配慮したような次第であります。  中身につきましては、事務当局から答弁させます。
  126. 松下康雄

    ○松下政府委員 五十六年度予算におきますエネルギー対策費は、通常一般会計におきまして四千九百七十五億円、特会も含めました純計で八千六百六十三億円と申してございますけれども、それ以外にいま岡田先生御指摘がございましたよう。に、それぞれ各省におきまして省エネルギーでございますとかエネルギー関連の幾つもの予算があるわけでございます。ただ、これらの項目につきましては、私どもの集計上はたとえば農林省でございますと、農林水産行政上の経費という意味合いが第一に参りまして、それに関連する付随的な効果として省エネルギー効果等がある。あるいは運輸省でありますれば、運輸行政の一環として実施をされているというような考え方で、いま申し上げましたエネルギー対策費には含めてなかった次第でございます。  これらのいま申し上げました以外のエネルギー対策関連経費がどのくらいになりますかということを実は各省庁にお問い合わせをいたしまして、それぞれの省庁から御報告をいただきました。それはただいま申し上げました総額の数字のほかに、五十六年度におきまして三百六十三億三千百万円に達しております。
  127. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうですね。まだ外務省だってこれはあるわけですね、二十二億。文部省だって百七十億。そういう点で私は、やはりエネルギー予算というものはそういう意味でもう少し、特にバイオマスのようなソフトな関係については研究段階だということになっているわけですから総合的に把握する必要があるのではないか。そういう改善、工夫、検討を希望しておきたいと思います。  その中で特に石油税の問題でありますけれども、石油税は五十六年度、今度の予算の計上で特別会計で三千百八十億組み込まれておるわけですが、積み残しの総額はどの程度でありますか。——では、これは後で答弁願うことにいたします。  そこで最近のエネルギーの動向なかんずく何といっても石油がその本流をなしていることは間違いないのであります。特に石油の節約は五十五年度二千万キロリッター目標であるわけですが、当初七%以上の実績が上がっているように承知をいたしているわけですが、五十五年度の見込みは一体どうなっておるか、お知らせ願いたいと思います。  同時にまた、五十六年度の場合には二千五百万キロリッター、昨年プラス五百万キロリッターの石油節約を図る、こういう一応の試算があるわけでありますけれども、私の判断では、これ以上ということですからもちろん以上になるんでしょうけれども、この目標をも相当上回るんではないか、こう判断をしておるわけですが、この点についても御説明願いたいと思います。
  128. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 五十五年度の石油消費節約は、御指摘のとおり七%で現在継続中でございますけれども、昨年の十二月までの実績を勘案いたしますと、大体前年度に対比いたしまして約一割強の節約が行われているわけでございます。そこで、三月までの動向を把握いたしまして、これは一部推測でございますが、恐らく七%を若干上回るような結果になるんではないかと思います。七%の節約目標を数字に当てはめますと、二千万キロリッターということになるわけでございまして、確定的なことはまだ申し上げる段階ではございませんが、推測では恐らく二千万キロリッターを上回る節約になるんではないかというふうに考えておるわけでございます。  そこで、五十六年度二千五百万キロリッター以上の節約をいま呼びかけているわけでございまして、これにつきましては、経済の規模の拡大あるいは火力発電所等におきます石油の石炭へのシフト等々を考えますと、ある程度の節約はこのまま行っても可能であるというふうに判断いたしておりますけれども、なお節約の手綱を緩めますともとに戻る危険性もございますので、二千五百万キロリッター以上の節約を呼びかけている、こういう現状でございます。
  129. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年の二千万キロに対して、五百万キロリッター上乗せがされて目標として設定されるわけですが、この五百万キロの内容を検討しますと、大体四百万キロというのは、産業あるいは電力、鉄鋼のオイルレス、こういうところから大体四百万キロリッター、あとが百万キロリッターが民生用、こういう試算の内容になっておるように私は思うわけです。しかし、鉄鋼の場合でも、単にいまのオイルレスの方式以外に、たとえばCTMというような一つの新しい方法もすでに実用化段階に取り入れておりますし、そういう面でも進むであろう、電力の場合においても、一般炭の確保が順調であればもう少し進むであろう、私は実はこういう意味で申し上げておるわけであります。  そこで、来年度の石油の消費量でありますけれども、五十五年度は五百五万バレル・デー、大体一一%減でおさまるだろうという実績見込みが出ておるわけです。これはIEAの五百十六万という予測に対しても下回っておるわけです。五十六年度は五百二十万バレル・デー、IEAの場合には五百六万、今度、来年度の場合にはIEAの日本に対する見込みよりも上回る五百二十万という数字が出ておるわけであります。  そこでお伺いいたしたいのでありますけれども、この傾向を延長さしていくと、昭和六十年度の場合には六百三十万バレル・デーが五百七十万ないし五百八十万バレル・デーになるであろうという予測がほぼついておると承っておるわけです。そういたしますと、昨年の八月に、代替エネルギー需給暫定見通しが閣議で決定をされて発表になったのであります。しかしながら、この見込みは当然もう修正をしなければならない。この代替エネルギーの需給見込みが見直しされるとすれば、エネ庁が過般来出しておりました暫定見通しについても当然見直しの作業に入らなければならないと思うのですが、いかがでしょう。
  130. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 御指摘のとおり、現在私どもが持っております石油代替エネルギーの供給目標あるいはそれのベースになりました長期需給暫定見通しの六十年度におきます石油輸入目標は六百三十万バレル・パー・デーではじいておるわけでございます。  そこで、昨今の石油の需給動向を勘案いたしまして、果たして六百三十万バレルも必要とするかどうかという議論がほうはいとして起こっていることも事実でございます。ただ、この計画はいろいろな整合性を持ってやっておるものでございますから、単に油の輸入目標のみを調整いたしましても全体の整合性がとりにくいという問題もございますので現在検討中でございまして、果たして六十年度あるいは六十五年度の輸入目標をどういうふうに勘案すべきか、こういう点につきましては関係諸国との協議も経た上でないと軽々に申し上げかねるという段階でございます。
  131. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 OPECのバリ島総会以来、加盟国及び非加盟国の石油価格の値上げは出そろったと見なければならないと思うわけです。このバリ島総会の段階まで参りますと、OPECの石油価格の決定方式、いわゆるインフレスライド方式、OPECの石油戦略の一環でこういう方法が今日までとられてきておるわけであります。したがって、インフレと先進国のGNPが増大すれば石油価格も上げるというパターンは一応定着したと見ざるを得ないのではないか、そういう認識の上にこれからのエネルギー政策を考えていかなければならないのではないかと思うのですが、第一点としてこの点についての見解を承りたいと思います。  第二点としては、今日全部価格が出そろったのでありますが、一−三月のわが国の平均原油価格、これはもちろんサインボーナスやプレミアムも含まれると思いますけれども、この水準はどういう価格水準になるのか、御説明願いたいと思います。
  132. 田中六助

    田中(六)国務大臣 OPECのバリ島での昨年末の価格の値上げ後、ことしになりましてジュネーブでまたOPECの会議が五月ごろあるというふうに言われておりますが、OPEC諸国は、資源は有限である、枯渇するものであるというような観点を持った態度があらわれておるのじゃないかと思いますし、これからも私どもは値上げがないというようなことは判断できませず、この点は十分考えなければいけないというふうに第一点は思います。  第二点につきましては、いま全体の平均が——一月ごろからの値上げですけれども、昨年の暮れのOPECの値上げが平均で二ドル七十五セントくらいでございます。高いところは、御承知のように三十二ドルから四ドル、上限を四十一ドルというふうにしておりますし、現状のところは三、四ドルを上乗せしておる。平均をしますと、二ドル七十五セントくらいじゃないかというふうに思います。
  133. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大体、一月以降は三十七ドル八十セント、若干これを上回るという傾向ではないでしょうか。従来のOPEC諸国の石油価格の引き上げのパターンというものを過去を振り返って分析すると、わが国で最もウエートの高いサウジアラビアは、すでに増産分は四ドルの値上げが通告されておるわけですが、うまくいっても一−三月は二ドル、そして四−六の第一・四半期が二ドル。いずれまたOPECの総会があるわけでありますが、いずれにしてもやはりこの四ドルの値上げはやむを得ない、そういう情勢認識しておかなければならないのではないか。約三〇%若干のものがサウジアラビアの原油で構成されておるのでありますから、そうしますと一ドル三十セントないし四十セント平均価格に上乗せをされる。こうなってまいりますと、来年度は名実ともに四十ドル原油時代が始まる。そういう認識の上に立って、これからのエネルギー源の価格バランスというものを頭に入れてエネルギー政策を進めなければならぬと思のです。こういう判断については、政府はコメントするのはむずかしかろうと思うのですが、私のそういう意見についてどういう感想をお持ちですか。
  134. 田中六助

    田中(六)国務大臣 全く岡田委員のおっしゃったようなことを私どもも頭に入れておかなくちゃいかぬというふうに思います。
  135. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今年度上期の四−九の平均レートは二百二十七円であります。一月には二百円から二百七円程度の間におさまっておるわけでありますが、かつて私は、円が一円上がった場合には、石油業界では一体油が幾ら上がって、どの程度になるのか、そしてまた電力業界のドル建て燃料はどうなるのか、こういう質問をしたことがあるのですが、その場合には、昭和五十三年の二月では一円の円高でキロ当たり八十六円で、年間、石油業界は二百五十億円、電力会社のドル建て燃料は三十三億円という答弁があったわけです。しかし、これは今日相当価格が上がっておりますから相当な数字の違いがあるわけですが、今日のベースで円が一円上がればどのような数字になりますか。
  136. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 五十六年の一月で申し上げますと、一円上がりますとキロリッター当たり二百六十円の変動がございまして、石油業界全体の年間の影響額は六百六十億円、こういう数字が一応の試算として出ております。
  137. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私の手元には、一円上がれば大体石油業界で五百億円強、電力業界は百七十億円ぐらいになるのだ、去年は多少消費量が減っておりますが、それにしても百六十五億はかたい、こういう資料が実はあるわけであります。  そこで、今日すでに石油業界は末端価格の仕切り価格の値上げを要望いたしておるわけです。恐らく物価の関係上、三月は抑えるということを指導しておるのではないかと思うのですが、そのとおりいったとしても四月から石油の仕切り価格が上がる。末端価格は需給ギャップが出て非常に弱含みの状況で推移をしている。こういう状況の中で、やはり石油業界の仕切り価格は上げることはもうやむを得ない、ぎりぎりにきているのかどうか、この機会に承っておきたいと思います。
  138. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 昨今石油業界におきまして、いまの値段ではとうていやっていけないという声が起こってきておるわけでございます。これはちょっとコメントをいたしますと、私どもは元売り仕切り価格につきまして、これは政府がコントロールしているわけじゃございませんけれども、一応各社別の元売り仕切り価格の説明を求めているわけでございます。この説明を求める際の根拠になっておりますのは、原油価格とその輸入した当時におきます為替レートがどうなっているかということを基準にいたしまして一応説明を受けているわけでございます。それを前提にいたしまして元売り仕切り価格というものが決められているわけでございます。  ただ、元売り仕切り価格がそのとおりに実行できないケースが出てまいります。現在はまさにそのとおりであると思います。といいますのは、市況が大変緩んでまいりまして、たとえば在庫がふえてまいりますと元売り仕切り価格どおりでは売れないということでございます。これを私どもの専門用語では突っ込みと言っておりまして、元売り仕切り価格よりはかなり安いところで現実に売買が行われている、こういう現状でございまして、現在石油業界が望んでおりますのは、その突っ込みの分をもとに戻させてほしい、元売り仕切り価格の分まで戻させてほしいということを要望されておるわけでございます。ただ、消費者の方にとってみますと、その突っ込みの分をもとに戻すといいましても、現実にはそれは値上がりになるではないかという御批判もございますので、私どもはいまの需給状況を勘案いたしましてその辺は慎重に扱ってほしい、こういう対応をしておるわけでございます。  そこで、元売り仕切り価格を上げるぎりぎりに来ておるのかという御質問にお答えいたしますと、現実の問題といたしましては、民族系の各社はもう元売り仕切り価格を上げざるを得ない段階に来ておると思います。ただ、この需要期の最中にそういった行為を行うことが長期的に見て果たして好ましいかどうかということを十分判断してほしいというのが私どもの政府立場でございます。
  139. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま長官が答弁されたように、石油精製会社の仕切り価格はそれぞれ違いがあるわけですね。OPECが統一価格でないものですから、仕入れ価格が違うのですから仕切り価格も違ってくるのは当然のことであります。極端なのは、キロリッター当たり九千円程度の差があるわけです。ところが、末端価格の場合にはこの仕切り価格の差がそのまま反映されていないわけですね。このことは、高値平準化で価格というものがほぼ安定してきている。だから、末端価格では二円とか三円しか差がないのに仕切り価格では九円も差がある。そういう点が、分析をするとやはり末端では高値の方に平準化されて、多少差はあるけれども末端価格の差は小さい、こう判断せざるを得ないと思うのですね。そして、今後OPECが統一価格を決めるということは絶望視、そういうことは残念ながらもうあり得ない、こういう趨勢になってきておるのではないかと私は思うわけです。  そういう意味考えますと、いまのわが国の石油精製業界そのものが、民族系あるいはまた外資系、この再編成はこういう状況が続けば避けられないということを物語っている、こう思うのですが、そういう認識で受けとめられていますか。
  140. 田中六助

    田中(六)国務大臣 外資系、民族系を合わせて三十五社ぐらいあるわけでございますが、日本の石油精製の発生のときにこういうことになってしまって、私も自分が通産大臣になってみましていろいろなことが考えられまして、余りにもこれは多過ぎる。それから、いま長官が申しておりましたように、一方では民族系はもう円高差益がなくなって何とかしたい、他方はまだ十分あるというようなことで、何かにつけて政策がちぐはぐなんです。したがって、そういうこともあると同時に、非常に多いこの数をどうしたらいいか、岡田委員の御指摘のように、これは何らかの形で整理統合の方向に行かざるを得ないのじゃないかということを私もつくづく感じておる段階です。
  141. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 通産省は昨年十一月、ちょっと異例な要請を電力会社に行ったわけです。いわば重油の優先使用、これを要請いたしたわけです。非常に珍しいことであります。しかし、重油の過剰というのは、中期的にも構造的に見てもわが国の場合には構造的なものになっている、そういう点ではやはり深刻であると受けとめなければならぬと思うわけであります。何せ転換するところは重油から石炭に転換するという部面が非常に多いわけでありますから、そうしますと、どうしても重油の方が過剰になる。一方、国内原油の方は重質化の傾向をずんずんたどっているという状況にあるわけです。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕もちろん通産省は、原油の重質化についていろいろ検討会を開いて、たとえばJIS規格、粘度の基準変更をするとか、重油の分解をして軽いものを引き出すとか、いろいろな計画で一応の試算はあるようでありますけれども、その内容を検討しますと、もう一度検討し直さなければならない状況に来ておるのではないか、私はこう思うわけであります。  したがって、そういう再検討と同時に電力会社に要請するということは、結局重油をたくところではなくして、原油の生だきをできるだけ下げて、そこで重油をたく。したがって、原油は出てくるわけですから、一石二鳥か三鳥のような効果を持つということも含めてこの異例な要請措置が行われたと思うのですが、そうであれば電力会社の原油の生だきという問題は、もちろん公害対策がありますからローサルファにしなければなりませんけれども、この際、重油に転換をしていくということを計画的にやるべきではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  142. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御指摘のように世界情勢日本情勢もそうでございますけれども、供給の方は重油が多い、それから需要の方は軽油というようなことになっておりますし、こういう点から御指摘のようにいろいろな改革をやって重油を残らないようにするわけでございますけれども、特に電力関係の原油の生だきというようなものは何かにつけてもったいないことでもございますし、それがどんどん重なっていくことも問題でございますので、C重油に転換できるというような精製開発を長期的にも短期的にも政策の転換をやっていかなくちゃいかぬというふうに考えております。
  143. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そういう意味で、総合的な検討をしなければならない時期に来ているし、八〇年代の大宗を占めている油を中心としたエネルギー政策についても深く検討しなければならぬ面が出てきているのではないか、こう私は判断をいたしております。  そこで、国際的な原油の供給状況もイラン、イラクの再開等で変わってきておりますが、わが国政府備蓄をふやしていくという基本的な方針で今年度も予算化されておるわけであります。しかしながら、サウジアラビアがいま一千万バレル・デーの増産を行っておるわけですが、技術専門家の意見では、多くても八百五十万バレル・デーが適正である。むしろ政策的に考えるならば、ヤマニ石油相も発言したことがありますけれども、現行水準から三百万バレル生産を下げる、こういう意見もあるわけであります。したがって備蓄の問題は、先ほど述べましたように、石油の節約が進んでいる過程でむしろこの対策を従来の計画を若干早めて、行える場合に行っておく、苦しくなれば行うことができないのでありますから、そういう機動性のある備蓄対策を実践していくという態度が必要ではないかと思うのですが、この認識はいかがでしょう。
  144. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、いま国内的にも国際的にも石油の需給関係が大変緩んでおるときでございますから、節約をした分を備蓄に回すという姿勢は私どもも基本的には全く同感でございます。  そこで、現実の問題といたしまして、とりあえず政府備蓄の増強ということに主眼を置いておるわけでございまして、従来は七日分の備蓄を持っておりましたけれども、昨年末に積み増しをいたしましてプラス二日分ということでございまして、現在は九日分の政府備蓄を持っております。なお、でき得る限り年度内にも若干の積み増しをしたいということでございまして、基本的な考え方は全く同感でございます。
  145. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 石炭の問題は、いま七次政策の諮問中でありますし、いずれまた後にしますが、またSRCIIも、私は先ほどレーガン教書の問題に触れましたけれども、これはもう恐らくだめですよ。ばっさりでしょう。そうじゃないですか。もう大体見込みはないですね、この教書の基本的な方向から見れば。いずれこの問題の議論は予算上関係のある問題でありますから後日に譲っておきたいと思います。  ただ、この機会にお聞きしたいのは、エネルギーである一般炭の需要が非常に強いのであります。だが、供給関係から見ればなかなかオーストラリアあるいはアメリカ、カナダ、中国と思うようにはいかないわけであります。したがって、五十六年度の大まかな一般炭の需給バランスは一体どうなのか。ある報道では百万トンの一般炭が不足をする、こう言われておるわけです。同時に、現時点において石油と石炭のカロリー価格の比較はどうなっているのか、この機会に承っておきたいと思います。
  146. 福川伸次

    ○福川政府委員 石炭の需給についてのお尋ねでございますが、五十五年度に関しましては、生産では大体国内炭が千八百万トン程度の水準に推移するのではなかろうかというふうに思っております。輸入に関しましては、特に一般炭の需要が先生御指摘のとおりかなりふえておりまして、当初私どもの見通しては七百七十万トン程度の輸入と見込んでおりますが、最近の推移を見ますと若干それを下回らざるを得ない供給状況にあろうかと思っております。明年度の見通しにつきましては、現在調査を進めておるところでございまして、まだはっきりした見通しを立てるに至っておりませんけれども、現在の状況での概略を申させていただきますと、御指摘のとおりに非常に需要が急増しているというようなことで、国内の生産体制は五十五年度の見通しの千八百万トンを若干上回る程度の生産が期待できるのではなかろうかというふうに理解をいたしております。輸入に関しましては、いま御指摘のとおりにかなり供給面に制約があろうかというふうに思っておりますが、私どもも従来、主として輸入を依存いたしました豪州から、アメリカ、カナダ、さらに中国というものの供給源の多様化を図りつつこの輸入の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。  第二点のお尋ねのC重油と石炭のカロリー当たりの数値でございますけれども、これは御承知のようにいろいろな購入条件とか、あるいは硫黄分等の差がございますために、一般的に比較いたしますのはなかなか困難ではございますけれども、C重油と国内炭を使用しております混焼の発電所をモデルといたしましてごく概略計算をいたしてみますと、石炭の場合には灰捨て場だとかあるいは貯炭場だとかデメリットがございますので、それを織り込んで比べてみますと、揚げ地で申しますと、C重油のカロリー当たりの価格に比べまして、石炭でございますと六、七割程度、産炭地で申しますと五、六割程度の水準になっているという一応の試算結果が出ると思っております。
  147. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんからあれなんですが、問題は、一言だけ申し上げておきたいのは、石炭の場合も揚げ地、産炭地いろいろございまして、そういう意味で一概に比較することもむずかしい面もあろうかと思います。  ただ私は、やはり昨年、豪州のクインズランドの炭鉱ストライキが長期に続いた、いまポーランドの問題でアメリカに欧州、日本からも船が殺到して滞船料が非常にべらぼうに高くなっておるという状況が出ておるわけであります。そういう意味では、石炭の戦略はやはり石油の経験に学んで石炭確保の戦略を行わなければならない、同時にまた一定の国内の生産量は確保していく、こういう点を教訓的に教えているのではないか、こう思います。  時間がありませんから、いずれまた委員会で議論することにしまして、エネルギー関係から次の問題に移らせていただきます。  次は酪農の問題について承っておきたいわけであります。端的に御質問いたしますので率直に御答弁願いたいと思うわけです。  今日の酪農の問題点というのは、まず需給のアンバランス、その中には擬装乳製品の輸入の影響の問題がありますし、また、近代化計画が進められて拡大増産の方向にきたという問題も抱えていますし、あるいはまた円高で飼料が安くなった——最近では飼料も高くなっておりますけれども、そういう中で酪農経営が進められてきた集積としての問題点があるのではないか。それから国際競争と同時に国内競争という問題も、これは南北問題とよく言われていますけれども、そういう問題がある。生産者や農民団体と乳業メーカーとの間の対立の問題もある。酪農家の経営の悪化による負債の累増ということが特に注目される。こういうような問題点があるのだと思うのです。  そこで具体的にお聞きしますけれども、今日、農家の負債というものが急増している。なかなか農林省も数字がないわけですね。昭和五十三年度の数字が出ておるのですが、五十四年度はまだ出てない。五十五年の速報的なものはないと言われておるのですが、北海道のような場合は五十三年、一千七百四十五万円の負債ですね。これは農林省の統計の発表です。五十五年には北大の農学部の教授の推定では二千六百万円は間違いないだろうという推計もいたしておるわけです。そういう意味で農家の負債の状況について一体どう認識をしているか、まず第一点として承ります。
  148. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  御指摘もございましたので五十四年度の農家経済調査をとりあえず中間集計してみました。これによりますと、北海道は約二千五十万、内地は五百四十万ということになります。これは前年に対比いたしますと御指摘のようにそれぞれ一七%、一二%の増加になります。ただ、これに対応いたしまして資産額も固定資産を中心に急憎いたしまして、北海道の固定資産額が約四千七百万、都府県の資産額が約三千百六十万になっておりまして、それぞれ二割並びに一四%程度ふえておるという形でございます。
  149. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 負債の中でも結局は系統資金を払うことができないで、それが組合の勘定に残る、俗に組勘残高、こう言っておるわけであります。この組勘の実態については御承知でしょうか。
  150. 森実孝郎

    森実政府委員 現在調査解析を進めておりますが、五十五年十月の北信連の調査をとりますと、酪農二月当たりの北海道の貸付残高は約千九百三十八万ということになっております。組勘でございます。ただ、組勘につきましては、御案内のように一般の消費金融その他の売り掛け等も入っておりますので、内容については数字とともにさらに解析する必要があると思っております。
  151. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは大変な問題であります。実はそれぞれの主産地の状態を見ますと、たとえば大樹町の場合には五十三年十二月に比べて五十四年十二月は一一五・三%、それから五十五年の十二月を見ますと一八二・〇%、前年に比べて一五七%と五〇%以上の増加であります。標茶町の農協で見ますと、これは前年に対して八月でとったわけですが、一七二・五%の増、中札内の平均一戸当たりは二百七十四万円、更別の場合には二百万円、こういう数字が実は出ておるわけであります。したがって、特に五十四年から五十五年にかけては五〇%から七〇%の組合勘定が急増して、二百万から二百七十万程度の組勘勘定が残高として残っている。いずれも金利は一〇%以上であります。そういう意味では負債の質が変わってきておるということがはっきり言えるのではないかと私は思うのです。  同時に、一方においては原料乳生産の保証乳価が八十八円八十七銭でありますけれども、三年間据え置きでまいったわけです。その生産者の乳価の手取りはまだ急速に下がっておると思うのですが、この農家手取りの乳価水準についてはどう把握をされていますか。
  152. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘もございましたように、実は需給の構造的ギャップが生じつつありまして余乳が発生しております。さらに、飲用乳につきましては大変な過当競争になっておりまして、建て値が崩れてきている。そういった状況から、農家全体の受取価格は停滞ぎみでございます。  たとえば全国の受取価格の数字で申しますと、五十四年は百一円三十銭、五十五年は四月から十二月の間で百円七十銭という形になっております。北海道のプール乳価につきましても、五十四年全体は九十一円二十八銭でございますが、五十五年はこれよりも落ち込んできているという実情にございます。
  153. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 数字の取り方がちょっと違うのですが、北海道の場合は五十三年の場合には、酪専の乳価の手取りは九十二円十五銭、五十四年は九十円五十二銭、五十五年には八十八円で保証乳価を割っておる、こういう数字が実は出ておるわけです。そして消費拡大のために一円出しておりますから、それを計算すると八十七円の農家手取りの乳価の水準である、こう言わざるを得ないと思うのですね。そういう意味で、保証価格を実は割っておるという点についてわれわれは注目をしなければならない問題ではないか、こう思っております。  同時に、結局生産は抑制されるわけですよ。今年は冷夏のために六万七千トンぐらいの余り乳が出る。これは来年度生産者は需要が四%ぐらいの伸びの中でこれを抑えて一%以下にみずから生産を調整する、こういうような計画がすでに組まれている。二力においてコストは上がってくる、消費者物価は上がるし飼料価格も、これは基金で補償しているけれども。また上がっていくわけであります。そういう動向にあるわけです。したがって、農家の所得の面でもこれは大変な落ち込みを示しておるわけですが、農家の所得についてどういう把握をされていますか。
  154. 森実孝郎

    森実政府委員 御案内のように酪農経営の規模、特に北海道等における規模はかなり大規模なものになりまして年々生産性も所得も上がってきております。たとえば一日当たり労働報酬で申しますと、五十一年には全国で六千六百七十八円だったものが、五十四年には九千八百十三円にまで上がってきております。しかし、五十五年はまだ推計中でございますが、どうも推計では若干落ちて九千五百円前後になるのでは悔いだろうかと見ております。したがって、所得自体につきましてもある程度停滞的ないしは微減の状況にあることは否定できないだろうと思います。  しかし、ロングランで見ますと、生乳の所得並びに労働報酬が非常に急速に上がってきたことは御案内のとおりでございまして、すでに五十一年から水稲の水準をはるかに上回っているという状況でございまして、投下労働時間は急速に減るし、使用規模も急速に上がるという実態を示しているわけでございます。
  155. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 稚内の農協の場合の試算で見ますと、昭和五十四年に三百六十九万三千円の農家所得があった。五十五年の場合には、暦年で計算しているわけですが三百二万円、こういう落ち込みであります。最も標準的で最もいいと言われるものを取り上げますと、大樹町の農協の場合には、五十四年の場合には五百五十七万円、五十五年の場合には三百四十六万円、六二%ぐらい農家所得がダウンしているという数字も実は出ておるわけです。ですから、微減をしているという認識は相当違いがあるんではないか。残念ながら統計的に資料がとれないから問題があるのですけれども、この点にもやはり目を向けておかなければならないんではないか、こう思うのです。  私が以上質問してきたことは、生産量は上がらない、乳価は国際情勢もあってなかなか上げられない。もちろんいずれ乳価は審議会で議論するんでありましょうけれども、いま一番大きな問題は、ゴールなき拡大政策をとってきて生産はストップだ、乳価は据え置く、コストは上がってくる、こういう状況の中で、当面のこういう負債の問題について積極的な対策をとらなければゆゆしき問題も出てくるのではないか。特に金利の高い組勘が急増しているという実態から考えてもそう認識をするのですが、農林大臣はいかがですか。
  156. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 酪農の実態につきましては御指摘のとおり、また畜産局長から申し上げたとおり、なかなか厳しゅうございます。乳価は三年据え置き、諸物価が上がってくる、飼料も上がる。しかも、そういう中でみずからの生産調整を血の出るような思いをしながらやっておるということで、なかなか厳しい情勢にあるわけでございます。しかしながら、全般として規模拡大も進み、施設も整備され、資産もふえというような状態で将来に対する希望も持ち得る情勢になりつつあることも事実でございます。したがいまして、御指摘のとおり規模拡大が進み、施設も整備されたけれども負債が非常に多い、こういう問題は本当に何とかしなければならぬなという感じを持つわけでありますけれども、農家負債の実態、また資産の状況、将来どういう経営展開をなしていくことができるかというようなことにつきましては、やはり実態を十分把握した上でこれからの施策を検討していかなければいかぬ、こんな気持ちで実態調査の促進を実は進めておるところであります。
  157. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、今日のこういう情勢は従来の政策を見直すという段階に来たんだ、こういう認識を持てるかどうかが重要だと思うのです。大蔵大臣も農林大臣をやってきた方なんですけれども、いままでゴールなき拡大で構造政策をばんばんやってきたわけですね。そして補助金政策でとにかく拡大生産、そして生産性を上げる、この一点張りでやってきたわけです。しかし、今日のこういう状況は、この政策の転換を意味しているのではないか。もう少し効率的な農業の方向を目指してどういう政策がいいのか、こういう検討の段階だと私は思うのです。  いままでの補助金というのは、たとえば気密サイロに五割補助だとか、機械とか、あるいはまた土地改良等について補助金を出してきたわけです。これから農民の側が自分の経営はどうしたら一番効率的か、こういう選択をする段階に来たのではないか。そうすると、補助金政策の場合には隣も補助金をもらってやるから自分もやる。いますぐ必要でないことも受け入れなければ乗りおくれるということで次々と補助金の政策を受け入れるわけです。自分の経営内容、効率化ということについては、残念ながら二の次になるという傾向があると思うのです。そうすると、補助金政策ではなくして、これからは無利子近代化資金とか、あるいはごく低利の資金だとか、こういう方向で行けば、これは借金でありますから、自分の経営を効率的にどうするかということによって選択をして、これに対応するということが弾力的にできるんだと私は思うのです。したがって、農林大臣は、こういう事態に直面して従来の政策を見直す考えがあるかどうか。また、補助金問題がいろいろ問題になっているのですけれども、私の意見について、経験者でもある大蔵大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  158. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 岡田委員承知のとおり、いろいろな困難な厳しい情勢のもとにおきまして生産調整を行っておるというようなことでございますために、いろいろな設備等に対する助成等も実は厳しく制限をしてきておることは御承知のとおりでございます。  そこで、私も実は北海道の酪農家の諸君といろいろ懇談した機会があったわけでございますが、やはり将来低利、長期の融資を準備してもらえれば、われわれは国際競争に負けない酪農をつくり上げることができる、こういう非常に頼もしい意気込みを持ってやっておるわけでございますが、いかんせん、現在の負債の状況を直視するとなかなか頭が痛いというのが酪農家の気持ちである一つ、こう私は思います。したがいまして、どうしてもこれは日本農業、酪農のみならず、その他の耕種農業におきましても、やはり越えなければならないそういう点があるわけでございますので、補助金によってこの危機を乗り切るか、あるいは低利長期の融資によって乗り切るかという選択の段階に入ってきておる、こんな感じがいたすわけでございます。したがいまして、今後実態を調査いたしまして、そうしていわゆる低利長期の融資制度をどう取り入れていったら酪農経営に対処していくことができるか、こういうことを決めていきたい、いまのところこんなふうに考えておる次第でございます。
  159. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま農林大臣の答弁のとおりだと思いますが、私は、方向としては、補助金政策よりもやはり融資の方がいいと思うのです。補助金政策というのはどうしても過剰投資になる。たとえば畜舎を一つつくっても、古村は使ってはいかぬとか、使えるものも捨ててしまう。借金ならば返さなくてはならぬからフリーハンドを借り手が持つということで、確かにそういうメリットはあろうかと思います。農林省とよく相談をしながら進めたいと思います。
  160. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 特に生産拡大で農林省が進めているチーズ生産の合弁会社の問題や擬装酪農製品の非自由化の措置、これが国際的になかなか反響を呼んでおる問題、これらについては、もう時間がありませんから私は質問を避けますけれども、やはり生産者を主体にして需要拡大という方向をぜひとってほしい。あるいはまた擬装乳製品についても、これはニュージーランドあるいはまたべルギーやオランダの国内流通ではないのでありますから、しんぼう強く話し合いをして、生産を抑える、それに従う、協力をするという農民のためにも、やはりこの方向は貫いてほしい。このことを要望いたしておきます。  同時に、ここまで来ると、在庫対策についても、生産をぴしっとセットをする。五十六年度で生産調整は定着するのでありますから、それにこたえる意味においても、在庫量が多いためにどうも市況を圧迫しているという傾向もありますから、少なくとも事業団の在庫、バターや粉乳についてはこれを何らかの形で、米に準じてこれらの対策も検討してほしいということをこの機会に申し上げておきます。  同時にまた、これは南北いろいろ問題がありますけれども、それを調整するという前提に立って、非常に量の多い一般の飲料業界、大変な量があるわけですが、ここに牛乳をどう入れていくか。そうすると、やはりロングライフミルクの問題は取り上げざるを得ないと思うのですね。国内調整ももちろん必要でありますけれども、そういう点についてもぜひ検討願いたいということを申し上げて、もう時間がありませんから答弁は要りません。  そこで、最後に漁業の関係で質問しますけれども、ベーリング海のズワイガニは五十四年一万五千トンの割り当て、五十五年は七千五百トンで半減したわけです。今度は米国の北太平洋漁業管理委員会は、米商務省に対して割り当てはゼロにするということをすでに勧告いたしているわけです。この海域には、母船一、独航船四、単船が十四、十九隻で五百人の人々が働いておるわけです。水揚げは五十億円。外国でのズワイ漁獲の大体七〇%を占めておるわけであります。そういう面からいきますと非常に大きな問題なのですが、非常に厳しい情勢ですね。これはだめな場合には当然補償せざるを得ないと思うのですが、この認識についてまず第一点承っておきたいと思います。  第二点は、北太平洋サケ・マス漁業の問題でありますけれども、米国内の環境資源の保護の団体からイルカの漁獲はまかりならぬという声がすでに非常に強く出ているわけです。イルカが混獲できないとすれば、母船式を初めとするこの北太平洋のわが国のサケ・マス漁業は実際は不可能に陥るのではないか、こういう心配があるわけです。いずれにしても今年の大きな課題でありますけれども、水産庁としてはこれらについてどう対応しようとするのか、また一体どういう努力を払っておるのか、この機会に注意を喚起する意味においても承っておきたいと思います。
  161. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のとおり、ベーリングのズワイガニは非常に困難な事態に直面をいたしております。私たちとしましては、繰り返し漁業管理委員会の決定は非常に恣意的なものであり、このような決定を米政府当局が容認をしますことは、資源の最適利用の原則及び従来のわが国の水産物貿易等におきます対米協力の度合い等の観点から見てきわめて不当である旨を従来から強く申し入れをしておるところでございます。先般も駐米大使から新しい商務長官に対しまして同様の趣旨の申し入れをし、好意的配慮を求めたところでございます。私たちといたしましては、米国に対し鋭意交渉を行うことによりまして、わが国に対する許可の発給と漁獲割り当ての実現につきさらに努力を重ねたいと思います。現在鋭意そういう努力中でございますので、今後の対応その他につきましてはこういう事態を踏まえまして考えていくべきものであるというふうに考えております。  それから、御指摘のイルカの混獲の禁止問題でございますが、御指摘のように従来日米加漁業条約によりまして許可取得が免除されておりましたが、それが本年六月九日で終了するわけでございます。したがいまして、これに対処いたしますためにはどうしても漁業許可を出してもらわなければいかぬわけでございますから、すでに漁業許可申請を行ったところでございます。しかし、御存じのようにアメリカでは非常に環境論者の力が強うございます。これに対しまして、今後その許可取得ができますように最善の努力を尽くしてまいりたいと思います。これができませんと、御指摘のようにサケ・マス漁業は重大な危機に直面するわけでございますから、われわれとしても最善の努力を払ってまいりたいと考えておるところでございます。
  162. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 わが国の領海が十二海里と設定をされて、恐らくわが国ほど領海を侵犯されている国はないのではないかと言うほど、その主力は韓国でありまた台湾の漁船であります。これは外国人漁業禁止の法律で三年以下の懲役そして十五万円の罰金でありますが、後を絶たないわけです。統計的にはますますふえてきておるわけです。今年はさらに去年よりもふえている。またこれはふえていく可能性があるわけであります。領海法はあるけれども、これは領海法の中で罰則規定というものがあるわけでありませんし、海上保安庁にお伺いしますと、どういう船が入っても、とにかく退去してくださいと言うだけである。なかなか立ち入りその他の調査についてもむずかしい。外務省の方はこれに対して、それぞれ関係機関を通じて改善方、自粛方を要請している。あるいはまた水産庁のせっかくの努力によって、北海道関係の韓国との漁業水域について交換書簡でせっかく協定をした。だが海上保安庁では、その準協定と言える水域に入ってきても立入検査もできないというような実態があるわけです。こういう点について、私はここで明確な答弁がなかなか出ないと思うのですけれども、やはり検討し直す必要があるのじゃないか、もう一回どうするかという点についてぴしっと検討する必要があるのではないかというのが第一点であります。  時間がありませんから第二点は、たとえば貝殻島のコンブの問題でありますけれども、コンブは自由操業であります。したがって漁民が、もう待てないからといって貝殻島に行ってコンブをとってきて揚げたら、一体処罰の対象になるのか、何か問題があるのか、見解をこの機会に承って終わりたいと思うのです。
  163. 今村宣夫

    ○今村政府委員 まず取り締まりの問題でございますが、先生御高承のとおり日韓の関係は旗国主義に基づいておりますので、これを前提といたします限り、この前の日韓の取り決めにおきますように、それぞれの国におきまして十分これに対処する。したがいまして 日本としましてはそういう違反を見つけました場合、直ちに韓国政府に通報することによりまして、韓国におきます水産業法に基づいて取り締まりをするという取り決めとなっているわけでございまして、日韓間におきましては、これを踏まえまして今後十分私たちとしましても韓国との交渉に当たる、あるいはまた取り締まりその他については十分の配慮を行うということであろうかと思います。  なおまた、領海侵犯等につきます取り締まりでございますが、これは領海につきましては日本国の漁業者に対する適用と大体同じような適用をいたしておるわけでございます。したがいまして、これもまたそれぞれの国内法に基づきます取り締まりを徹底していくべき問題かと思います。  貝殻島の問題につきましては、貝殻島におきますコンブは自由漁業でございます。また、禁止区域の設定もいたしておりませんので、ここで操業することは自由でございますけれども、御高承のような状態でございますので、なるたけこれに注意をして操業するということを指導いたしておるところでございます。
  164. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  165. 小山長規

    小山委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後三時三十七分開議
  166. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野坂浩賢君。
  167. 野坂浩賢

    ○野坂委員 先ほどの本会議で、税をめぐる問題について大蔵大臣からの御説明をいろいろ承ってまいったわけでありますが、今度の五十六年度の予算について、若干の問題についてお尋ねをしたいと思います。  この予算委員会で、物価の上昇率をめぐりまして、六・四%の当初の考え方が七%程度ということになって、どこが今度五十六年度の物価上昇の基準になるのかという議論もありました。  そこで、いただきました五十六年度の要綱とかあるいは予算、財政投融資計画の説明、こういうものを見ますと、大体みんな上に程度と書いてありますが、程度というのはどの程度なのか、よくわからぬのであります。私たちは小学枝のころから四捨五入ということを学んでまいったわけでありますが、大体、上限、下限とも〇・五というふうに考えてよろしゅうございましょうか。それは経企庁長官と大蔵大臣に伺いたい。
  168. 廣江運弘

    廣江政府委員 お答えいたします。  先生がいまお尋ねになりましたように、五十五年度の消費者物価につきましては、当初六・四%と見たわけでございますが、その後、異常な石油価格の値上げ、気象の異常等を勘案いたしまして、七%程度と改定をいたしたわけでございます。  程度というのはどの程度の幅を言うのかというお考えでございますが、こうした自由市場経済におきます見通しにおきましては、ある程度の幅というものはどうしてもお許しをいただきたい、考えなければいけ。ないところだと思います。そして、その幅はどこからどこまでだ、こういうふうに一義的にお尋ねいただきましても、これは一義的に、定義的に申し上げるのは控えさせていただきたいと思います。その辺はやはり程度として御了解をいただきたいわけでございます。
  169. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 程度は程度ですね、これは。やはり二兆円程度と言えば明らかに一兆円ではない、三兆円でもない。じゃ一兆五千億か、一兆五千億では程度になかなかならないかもわからない。二兆冊程度と言えばやはりその前後、一千億か、二千億か、まあその辺が、それは物によって多少ニュアンスが違うんじゃないか。しかし、そうかけ離れた数字ではないというように私は思っております。
  170. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大蔵大臣には、非常によくわかるようにお答えをいただきました。いわゆる二兆円というのは、許容率は〇・一ぐらいだろうということですね。程度というのは許容率ですね。だから、七%程度と言えば上は七・五、下は六・五、大体このぐらいが許容の限度じゃないかというふうに感ずるわけですね。七%が七・九%にでもなったら、それは八%程度と言うのが普通なんですね。これは常識だと思うのですが、物価局長、まあ程度は程度だというようなことではなしに、計算の根拠が出てきませんから、七・九%は、七%程度なのか八%程度なのか、それを具体的にお教えいただきたい。
  171. 廣江運弘

    廣江政府委員 七%程度につきましてその幅ということでございますが、いろいろ全体の中でどう見るかということにもよろうと思います。全体の経済見通しの中でその七%程度というのをどういうふうに評価するかということにもよろうと思いますし、七%として、程度というふうな中に含めて考えられるようなものであればそういうふうに見てもいいと思いますが、ともかく、いま実績見通しを改めまして、それに向かって最大限の努力をしているということをひとつお含みをいただきたいと思うわけでございます。
  172. 野坂浩賢

    ○野坂委員 努力されておることはわかっておるのです、前々から。  それでは、経済企画庁長官にお尋ねをしますが、七・七%物価上昇の場合は、八%程度の方が正しいか七%程度の方が正しいか、どっちです。
  173. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 常識的に考えますと、七%程度というのは、いま言われました六・五%から七・五%までが大体七%程度という常識であろう、こう思います。
  174. 野坂浩賢

    ○野坂委員 経済企画庁長官はやはり従来からきちんとした答弁ですから。いま、七・七%になれば八%程度ということになるんだということが明らかになりました。  そこで、経済の成長は、御案内のように名目成長は五十六年度は九・一%、実質は五・三%程度ということになっておりますね。勤労者のベアというのは七・五%アップが想定をされて経済成長が算定をされた、こういうように考えていいわけですね。
  175. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 お答えいたします。  全体としての各目成長率は九・一%でございます。この背後にございます所得面では雇用者所得をもちろん計算をしておるわけでございますが、これにつきましては、雇用者所得全体が前年比で九・二%程度という数字を見通しの中に掲げております。御指摘のように、雇用者の総数が出ておりますので、一人当たりということになりますと七・五%程度というような増加率になるわけでございます。
  176. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういたしますと、この予算の給与費の場合は公務員は一%ということになっておりますね。  総括質問からの議論を聞いておりますと、大蔵大臣は、この予算委員会といいますか国会が始まるまでは、週刊誌等に出たり、グラビアでは木刀を持ってやったり、いろいろなことが宣伝をされておりまして、何としても一けた台に抑えだということが非常にアピールされておりました。  いまの経済の成長と予算との関係は非常に密接不可分でありますから、七・五%アップを考えて九・一%、実質成長五・三%は考えておるということになりますと、この一%というのは将来七・五%になる可能性は非常に強まるということが言い得ると思いますね。そのときには、人事院が勧告をした場合は、どこからそのお金は出すわけでしょうか、心配をしますので、聞きます。
  177. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 人事院勧告がどう出るか、これは出てみないことにはわからないのです。(野坂委員「わからぬことないでしょう」と呼ぶ)いや、わからないのです、実際のところ。人事院勧告が出ましても、われわれはここ数年来それを尊重してきたわけです、できることならば尊重したいと思っておりますが、そのときの経済事情、財政事情、資金事情、こういうものがございまして、国会にお諮りする場合もあるわけですから、そのときの状況によって、それは経費の節減だけでできるものかできないものか、守れるか守れないか、そのときになってみないとわからないというのが事実でございます。  それなら最初から載せなくたっていいじゃないか、わからないなら何で載せるのだという議論が実際はあるのです。私もそれも一つの理屈だなと思って考えたのですがね。ところが、いや、それは載せるべきだ、野党の方も私のところへ来られまして、それは載せると言った人がいますよ、名前は言えませんけれども。幹部の人ですね。しかし、それは全然載せなくしちゃったということになると、これは数年来ずっと載せてきていますから、人事院勧告を政府がもう尊重しないという態度表明みたいになっても困るじゃないかという心配をなさった方もあるのです。その意見ももっともなんですね、これは。私も板ばさみになりまして、そこで私としては、いままで二%載せておったけれども、それじゃ人事院勧告はできるだけ尊重していくという姿勢を示すために、一%でも載せておいた方が安心だと言うならば、この際、苦しい財政事情ではあるが載せようかということで、政府及び政府関係機関、大体右へならえになったと思います。
  178. 野坂浩賢

    ○野坂委員 渡辺さんらしい御答弁をいただきました。  そこで、労働大臣にお尋ねをしますが、昭和五十一年から労働者の賃金というのは、五十二年を除いて、生産性の向上の率よりも賃金引き上げの率の方が非常に下回っておりますね。特に五十五年の場合は、七月を除いて二月以降、生産性よりも下であることはもちろんのこと、物価上昇率よりも下回ったというのが現状でございます。七・五%上がったとしましても、五・五%程度ということでありますから、まあ六%に去年の一%加えて七%で、ことしこれが五・五よりも上がるというようなことになれば、七・五%は去年の分の借金を払って、ようやく……。いわゆる経済成長にならない、五・三%の実質成長、九・一もならないというかっこうになってきますから、労働大臣としては、賃金引き上げの上昇率、これは最低といえども七・五%、こういうふうにお考えになっておるわけですか。労働者の味方である労働大臣はどうですか。
  179. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  賃金の決定といいますものは、これは労使が御決定になられるわけでございまして、私どもがそれに対しましてとかくのことを申し上げるというわけにはまいりません。私どものやれますこと、また、やらなければなりませんことは、そういった賃金決定に伴います。その周りの環境をどのように整備するかということでございまして、そういった点におきましては、私は御指摘のとおり、五十五年というその年間を通じまして六・四%に物価を抑えたいという御公約を申し上げて、どうもそれが守り切れないということで、昨年の十二月に七%程度にその目標自体を引き上げざるを得なかった、こういった物価環境といいますものの整備が思いどおりにいかなかった、これは私どもがその責任の一半を負っていかなければならぬ重大な問題だ、さように考えております。  そこで、ただいまは、御案内のとおり経済企画庁長官を中心にいたしまして、残る間、時間は余りありませんけれども、二月の残る期間と三月を通じまして全力を挙げて、どれだけのことができるか、物価もその目的に応じたような環境に整備することができるかということでやってみたいという最中でございますから、私どもはそういったことに御協力を申し上げ、一致結束をいたしましてその環境をつくっていくことにいま当面は全力を尽くさなければならぬ、かように考えております。  五十五年のそういった環境整備につきましてお約束を守り切れなかったということが一つの政治責任であろう、こういうことになれば、当然私どもは、それは政治責任であるということで、その一半の責任は負っていかなければならぬ、かように考えておりますけれども、いまさら五十五年度の過ぎたものに対しましてどのように責任を負っていくかということを御究明になられましても、ちょっとやりようがないということでございますから、それは五十六年四月以降の新年度におきまして、私どもが物価の問題あるいはその後におきまするいろいろな経済、財政政策を通じまして私どもの責任を十二分に果たさせていただいて、環境の整備が思ったよりよくできたなと言ってほめていただけるようにそういう努力をしていくべきである、かように考えております。
  180. 野坂浩賢

    ○野坂委員 労働大臣にお答えをいただいたわけですが、環境というのは労働者の生活が異常に苦しくなってきた、これは労働白書にも明確に書いてあります。あなたがお書きになったと思いますから、よく見ていただきたいと思うのです。そのほかに、答弁いただくと長くなりますから私の方が読み上げますが、労働のコストですね。労働コストの上昇率というのは、この三年間、わが国は〇・一しか上がっておりませんね。西ドイツは一・八、アメリカは六・八、イギリスは一一・九ですから日本の百十九倍です。それほど日本の労働コストは安くついておるというのは、賃金が異常に抑えられた、そしてまた、生産性向上率よりも賃金の値上げ率が異常に低かったということを端的に物語っておるということは、労働大臣も大蔵大臣もお認めいただけますでしょうか。
  181. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  御指摘のとおり、日本の労働コストが非常に安定をしておるということは事実でございますし、私どもは、その労働コストが安定をしておることによりまして非常に経済の運営について安定をした推移をおさめることができた、それは欧米各国と比べまして非常に大きな効果を上げておるということでございまして、私は、大きなそのよって来るところは、そういった組合を初めお働きの皆様方の御献身と御理解といいまするものがその間において非常に日本経済を安定せしめてきたということは、だれしもこれを認めておるところである、かように考えます。
  182. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その労働者の皆さんが懸命に働かれて、まあ経済企画庁が見込んでおりますように七・五%上がったとして、税金は一五・二%になるんですね。先ほど本会議で労働大臣はパートの問題に触れられて、七十万を七十九万円にわれわれは強く要求をして、また大蔵省もこれにこたえてきた、こういうことでありますね。こういうふうに七・五片っ方上がれば税率は一五・二、こういうふうに上がってくるわけで、労働大臣としてはパートの問題についても異常なほどの熱意を示されて、本会議で堂々の答弁をされたわけでありますから、いま質問しておるこれについては、ちょっと高過ぎるなというお感じだと思いますが、その辺はどうですか。
  183. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えをいたします。  私が、ここに大蔵大臣を目の前に置いておきまして税制の内容についてとかくのことを申し上げるということは、私どもの立場を越えたことでございまして、そういったことにつきましての感触と、その決定といいますものは、これは内閣並びに財政当局が十二分にそれまでに私どもの意見も聞いてもらって、その上で御決定になられることであるというところにとどめさせていただきたい。(野坂委員「だから、あなたの考えはどうなんですかと聞いておる」と呼ぶ)私は私なりの考えを持っておりますけれども、しかし、この際に私が申し上げることは適当ではない。
  184. 野坂浩賢

    ○野坂委員 やはり意見は堂々と言って、要らざることは言わないで、こういうことはぴしゃっと、七・五%なら七・五%程度というふうに言われた方がいいだろうということを勧告をしておきます。  そこで、今度大蔵大臣は異常なほど健全財政ということを考えられた、自然増収の伸びも低く見積もられたではないのか、こういうふうに私は素朴に思うわけです。と言いますのは、所得率は申告者も含めて九%の伸びですね。それでも賃金というのは、当初予想しておったよりも低く六・八%になった。それが九%の所得の伸びを計算をしておって、それでも七千四百億、源泉徴収の場合は六千八百四十億円の補正が組めた、そうですね。予定しておった額よりも下がっておった。それでも補正としては七千億程度の金が出せた。まだ出るのですからね、三月までありますから。  法人税は、昨年は五十四年度に対して一二%の伸びを考えておった。ところが、今度は対前年度比一〇%しか考えていない。去年は一二%だった。今度は一〇%だ。その上に今度は二%も入っておるのだ。四〇%が四二%に、二八%が三〇%になった。それでも去年よりも一〇%にしかならない。それが五十五年度の場合は今度の補正で二千五百億出ておるわけですね。これも少ないと思っているのです。そうしますと、通俗的にだれが考えてみても、もっと法人税は出るなということが考えられる。あなたは、いや、景気がどうなるかわからぬから最低限見積もっていく、こういうふうにおっしゃるかもしれませんが、去年は一二%、ことしは二%法人税を引き上げて一〇%しか見ない、こういうことになってまいりますと、いや、それは金額は八兆円が十兆円になっておるのだというようなことの議論よりも、パーセントで見るとそういう点は非常に疑惑が多いですね。  これでまいりますと、公務員の賃金の一%が八%になっても、今度の補正はこの給与源泉で、申告所得も含めて七千億なり八千億程度は出る計算に、なりますね、去年のような関係でいきますと一兆円ぐらいは出るだろうと思うのです。その辺についてはどうお考えでしょうか。
  185. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十五年度はあと一カ月ちょっとしかないわけですから、七千億補正に見込んだというのはぎりぎりの数字だと思うのです。これは現実にもうどんどん徴税をしているわけですから、その推移を見ればわかるのですよ。五十五年度の税収の推移を見ますると、つい最近の時点で判明している十二月末の税収では、前年度に比べて進捗割合が〇・三%下なんですね。また、前年比伸び率を見ましても、補正後予算の伸び一四・四に対して一三・八ということで、これも〇・六実は予算ベースでも少ない。一月末の税収については目下集計中です。日銀の窓口でいまお金の入ってくるのを取り扱っていますね、その国庫収支という状況を見ても、十一月末の比較で税収はさらに鈍化している。一月末の累計税収で、補正後予算の伸びをどうも一ポイントぐらい下がっているような状況だ。このままでは困るわけですよ。いまのような状態だと足りなくなってしまうわけだから、したがってそれは困る。  そこで、今後の税収を左右するものは所得税の確定申告、もうすでに始まっています、及び三月期の法人の申告状況、これがございます。これらを考えてみましても、どうも五十五年度の自然増収というものが、補正で組んだ七千億円を含めたものを大きく上回るというような状況に、残念ながらないのです。しかも、ぎりぎり見ている。さらに五十六年度は、ぎりぎり見た五十五年度の実績ベースに対して、これは補正後のものに対して一三・八、三兆七千五百六十億、三兆八千億でもいいですが、その程度を見ているわけですから、これは今後景気がだあっとよくなってくればまた別でございますが、私は、目下の予算を組むに当たってはかなり大胆に思い切って税収の伸びは見てある、そう思っています。  さらに細かい、なぜそうなったのかということについて、必要があれば事務当局から説明をさせます。
  186. 野坂浩賢

    ○野坂委員 昭和五十年度でしたか、三兆五千億程度の過大見積もりがあって出した。それ以後は非常にこういうふうにむずかしくといいますか、抑えて抑えて抑えている。あなたのところの補正予算の算定は、五十五年度十二月末の租税及び印紙収入額、調整額、そういうところの進捗割合、あるいは前年同月比の累計を見て算定をされているわけですね。大体五七・五で来ておるのです。したがって、かたく見積もってこの程度はやれるだろう、こういうふうな判断が、あなた方の書類を見れば判然とするわけです。これはかたく見積もって出る。出てまいりますが、この間も議論があったように、五十四年と五十五年を比べると、自然増収は三兆六千八百億なんですね。それから五十五年と五十六年は、増収分は予定されておるのが五兆一千五百億、その中から今度酒税その他を上げられて、法人税を上げられて一兆三千八百三十億、これをとりますとわずかに三兆七千六百七十億円、こういうことになりまして、五十四年と五十五年の関係はわずか一・一%しか伸びがない、計算をするとこういう結果になってくるわけですよ。一・一%、こういうことはないですね。だから、もっと自然増収はあるということが、この辺から考えてもわかる。だから、法人税を一〇%に下げたり、あるいは申告税はそのかわり一〇%を今度は一二%にされておるのですよ。だから、全くその辺のロジックが合わないというかっこうになるようにわれわれは見ざるを得ぬわけです。その辺はどうでしょうか。
  187. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 五十四年度の補正後の予算額と五十五年度の補正後の予算額と比べますと、三兆七千四百九十億円ふえておるわけです。ただ、その中身を申し上げますと、五十四年度の中にもうすでに三千三百三十五億という年度内増収が入っております。それから、五十五年度の税制改正による増税分三千二百六十億が入っております。したがいまして、先ほど大蔵大臣がお答えしましたように、五十五年度の固有の増収額は三兆八百九十五億ということになりまして、それが一三%でございます。それから、五十五年と六年とを比較しました五十六年の固有の増収額は三兆七千五百六十億円で、これが一三・八%でございます。したがって、自然増収が年度内に発生いたしましたり、当初予算と当初予算を比較いたしますとそれが二重に計算されますので、いまお話しのような数字が出てまいったかと思いますが、いま申し上げた数字で御説明いたします限り、五十四年度決算に対比して五十五年度の補正後予算の税収の伸びは一二・一%でございます。それから、五十五年度の補正後予算に対する五十六年度の税収の伸びは一三・七%でございます。したがいまして、仰せのように伸びを過小に見積もったということではないわけでございますが、なお御質問があれば、税目の中身についてさらに御説明をいたしたいと思います。
  188. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その中身についてはまだ後でお尋ねするとして、法人税にしても、五十五年度は八兆五千億を二千五百億円出しておるわけですね、八兆七千億になっていますから。五十六年度は十兆三千五百二十億。比率から考えまして、いま主税局長がお話しになりましたように一三・七%の伸びということですが、五十四年度の国税の収入は二十四兆九千六百二億じゃないですか。そうでしょう。そうですね。それから、五十五年度が二十八兆六千億、五十六年度が三十三兆七千億、端数を捨てまして国税収入は大体そういうことになるのじゃないですか。
  189. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 各特別会計に属します固有の特会の税収をのけまして、一般会計所属の税収で申し上げた方がおわかりになりやすいかと思いますが、五十四年度の決算額は二十三兆七千二百九十五億円、五十五年度の補正後予算額が二十七兆一千四百五十億円、それから五十六年度の、増税前で申し上げますと三十兆九千十億円、増税後で三十二兆二千八百四十億円でございます。
  190. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その辺が若干の違いがありますが、われわれの計算としてはそういうことになるわけであります。したがって、それでは自然増収はそう出ない。大蔵大臣、簡単に政治論議をやるとして、出ない。一兆円程度出るということになれば、われわれの計算は出ますから、一・一%なんてそういう低いことはない。その場合については、いわゆる出た場合、出るという見通しが立つ場合は、減税ということは当然考えられるというふうに考えていいですか。
  191. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私の方は、どこから計算してもそんなに出る見込みがないということなので、そこから先まではまだ考えておりません。
  192. 野坂浩賢

    ○野坂委員 全然お考えになっていないということでありますが、そういうものが出る可能性は強いとわれわれは計算しておるわけですね。それについて、出るということになれば十分配慮できるものなのですね、当てにしないものだから。そういうふうに考えていいですか。
  193. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そのときの御相談ですけれども、私といたしましては、極力公債を減らしたいのですよ。公債を新規発行するにしても、もう現にだぶついちゃっていて、いろいろな経済政策のネックになっている。したがって、それを取り除くことを私は優先的に考えたい、そう思っております。しかし、これは出るか出ないか全然わからぬ話でございますから、確定的なことを申し上げるわけにもいかないし、仮定の問題で答弁をして引っ込みがつかなくなっても困りますから、ひとつ仮定の問題は御容赦を願いたい。
  194. 野坂浩賢

    ○野坂委員 仮定の問題だから答えられないということでありますが、中期の財政の展望、これもそうすれば将来のことは仮定だ、計画だ、こういうものは、一遍出しますけれども見ておいてください、この程度のもので出されたわけですか、仮定の問題として。
  195. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いや、要するに、それは強い御要望がありまして、一応そういうものを出して、財政計画というようなものは無理ならば、財政計画というところまでいかなくとも中間報告として出せ、こういうようなことで、その中で一番苦労するのは積み上げの話なんですね、経常部門の積み上げ。あとは前提を置いてやるわけですから、そんなにむずかしいことはないのです。経常部門の積み上げというものは非常に大変な労力を要しているようです。それでも正確になるかどうかというようなこともわからない。わからないけれども、一応現在の制度をそのままにしておくとこんなふうにふえる。したがって、これはどういうふうにして切っていくか、やはり切るにはいろいろな御理解を得なければならぬわけですから、そういうようなことを目安として、財政再建の手がかりということで出したわけであります。
  196. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この出されたねらいは、全く他意ないということですか。出せと言われたから出したので、全く何を考えてほしいということではありません、まあ中間報告として、いわゆる七カ年計画に基づいて試算をしますとこういうことになりますよ、この程度ですか。
  197. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはやはり将来の経費の推計、負担しなければならないいろいろな経費の推計、それから税収の見積もりとかそういうもので、一応の目安として重要な参考になるだろう、私はこう思っております。
  198. 野坂浩賢

    ○野坂委員 事務的な経費でやられたということでありますが、余り答えていただかなくてもいいのですけれども、ちょっと見まして、たとえば歳出のところは五十六年度は四・三%で、五十七年度になると一〇・四%になります。経常部門は五・九%が一〇・六%になります。今度は大盤振る舞いになってくるわけです。そういうかっこうになってきます。だから要調整額が二兆七千七百億にもなります。五十八年度は四兆九千六百億になります。五十九年度は六兆八千億になります。だから増税ですか、だから経費削減ですか、こういうふうに迫りたいということだろうと思うのです。そういうことではないだろうか、こう思います。そういうことですか。
  199. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そこに書いてあるように、私もそれが出たときに、ともかく四・三%なのが何で一〇%になるのだ、ふえ過ぎるじゃないかということで、根掘り葉掘り実は調べてみたのです。ところが、ことしの四・三%は、かなり工夫をして抑え込んでみたり、いろいろなことをやってこしらえたものだ。それは、何にもしなかった、いままでどおりにするということになれば八千数百億円、かなりの違いが出てくる。その分だけは抑え込んだり切ったりしているわけですからね。現に文部省関係だと、四百数十億円の補助金をカットしている。去年よりも少なくしてしまっているわけです。それからまた、減反の面積というものは、ことしはうんとふえるわけですね。同じ単価にしておくと、そのふえた分だけばっとふえるわけです。したがって、これも単価は五千円切り込んであるわけですから、それで、五百幾らですかというような数字がふえるべきものを抑え込んである。というようなことなど、いろいろいっぱいあるわけです。ですから、そういうことを来年もやらないということになると、それを積み重ねるとそういう数字になってしまうのだというのであって、それらのことについては主計局長から説明をさせます。
  200. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大臣、たとえば投資部門ですね、あなたが出した財政収支総括表、〇・一%が一〇%になっておりますね。〇・一が一〇%、非常に伸びが強いですね。公共事業とか大型プロジェクトは、三本の橋や新幹線というものが考えられるわけですね、七カ年計画で。だから、いま生活と環境をよくしなければならぬという立場でもっともっと考える点が多いと思います。特にGNPは一一・七で、弾性値というのは一・二で計算してありますね。そうしますと、いままでは九・一ですね、ことしは。大体一・五。これで計算をしますと、ここに書いてあるこの金額は大体五十七年度一兆八千億、五十八年度が二兆五千億程度になるんじゃないかと思うのです、われわれの計算では。一五・一で九・一を延ばしまして、弾性値を一・五にして。  そういう関係をやってまいりまして、歳出を切り詰めていけば、いわゆる増税路線というようなものは考えなくても、あなたが大蔵大臣をやっておられる限り健全財政堅持は明々白々たるものだ、こういうふうに私は思います。そういう意味ではこれは本当のたたき台というか、まあ見ておけという程度のものにしか考えられない指標じゃないのか。あるということになれば、もっと詳しく、全部すべてのものを出さなければならぬのじゃないのか。  いままでも、私のところは政審会長、あるいは各野党ともこの問題は比較対照して、歳出にも歳入にも大変問題があります、こういうことを指摘したことはよく御存じのとおりでありますから、その点については一度再検討をしてもらわなければならぬというふうに思いますが、いかがでしょう。
  201. 松下康雄

    ○松下政府委員 大臣からお答えをいたしましたように、この中期財政展望の歳出の部分につきましては、昭和五十六年度の予算をスタートといたしまして、これが制度あるいは政策について将来変更がないという仮定を置きまして、したがいまして、予算の将来を展望いたしますと、たとえば消費者物価が上がる、あるいは人口の構成が違う、そういうふうないろいろな客観的な指標を手がかりにしまして、それぞれの歳出の後年度がどうなるかということを、各省とも御相談をしながら積み上げて計算をしてみたものでございます。  したがいまして、ただいまも、一般歳出の伸びが五十六年度は四・三%、五十五年度は五・一%と非常に低いのに対して、五十七年度は一〇・四、以下九・四、九・六というふうに伸びが非常に高いのは、その内容、つくり方自体がずさんではないかという御指摘であろうかと思いますけれども、これは実際に五十五年度、五十六年度の予算編成におきましていろいろと歳出の節減合理化の努力を行った結果があらわれている面が多いのでございまして、この表には出ておりませんけれども、一般歳出の過去を申し上げますと、五十四年度は一三・九%、その前の五十三年度は一九・二%、五十二年度は一四・五%というふうに、非常に強い伸びを示しているわけでございます。したがいまして、大きな査定あるいは制度改正ということなしにそのまま自然体で放置しておきますと、いまの財政にはこのような、一〇%とか九%というように歳出がふえるような傾向を中に持っているわけでございます。  そこで、そういう事実を私ども頭に置きながら、しからば五十七年度においてはその中にどういう工夫を加えてこれを節減合理化をやっていくか、そういう判断をいたします。その前の判定材料としてこういう数字をつくったものでございまして、それぞれ内容の積算がございます数字でありますので、これを修正するということはできないと思います。  いまの投資部門でございましても、五十五年度、五十六年度は、公共投資につきましては原則として前年同額の範囲の中に抑えでございます。しかし、別に他方、中期の経済社会発展計画では百九十兆円の投資計画がございまして、仮にこの百九十兆円の投資計画を今後所定の年限の中で全部消化をするとすれば、それに必要な国費は、ここにございますように、投資部門におきまして五十七年度は一〇%あるいは五十八年度は九・九%というふうに大きくなる。現在そういう性格の制度があるということをお示ししている数字でございます。
  202. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまお話がありましたように、一つの計算方法であるということでありますが、私どもも、一番初めの武藤さんのときの質問で案を提示して、弾性値の問題とかあるいはGNPの一一・七%とか、それよりも現実味を帯びたいまの状況から判断をしてやってくれば、そのような大きな税額、要調整額というものは出てこないのじゃないか、こういうことを提言しておりますので、大蔵大臣の方もこの点については十分御検討をしておいていただきたい、こういうふうに思うわけです。  次に、最近、新聞をにぎわしております私立の医科大学の入学をめぐりまして、いろいろなことが出されております。  私は、この際お聞きをしておきたいと思いますのは、お医者さんというのはずいぶん金がかかるものだ、こういうふうなことを国民は実感として感じたであろう。それから、医は仁術だ、お医者さんというのは非常に崇高で、人の命を預かっている、こういうふうに思われるわけであります。また、私たちもそう思っております。しかし、最近の富士見病院とかあるいは十全会とか、わずか一部の人たちによって医師会なり歯科医師の皆さんのイメージが非常に悪くなっておる、こういうのが実情ですね。しかも今度の事件です。この点については大多数のお医者さん、大多数の医学生なり歯学生というのは大きな迷惑を受けておるだろうと思うのですね。全く、そういう点については、どこで物を言っていいのかわからぬという焦りと怒りさえお感じになっておるだろうと思います。だから、一部のために大部分の皆さんがそのようなイメージダウンをするということは許されない。  そういう意味で私はこれから質疑に入りたいと思うのですが、いまの医療費というのは、今年度はざっと十二兆円でございますね。来年度は十四兆円になるんじゃないかと言われております。これは大体、平均して一五%程度上がっております。賃金は六・五%とか七%とか八%とか、その辺ですと倍額程度上がっているわけですね、医療費というのは。だから非常に生活がやりにくくなってくる。医者代というのは、毎年一五%程度診療費が上がっておるわけですが、このお医者さんの点数の問題がいろいろ問題になってまいります。  大蔵大臣、前に厚生大臣をしていろいろとここでやられたことがありますけれども、その辺はどういうふうにして間違いなく——診療報酬支払基金というのがありまして、チェックをすることになっております。十分チェックしてあるだろうかということが疑惑として出てくるわけですが、その辺は厚生大臣は、監督者の立場でどういうふうに進められておるでしょうか。
  203. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 私の担当でございませんのですけれども、ただいまの御質問、私が承知しておりますのは、医師の診療報酬請求は、各県に診療報酬支払基金という機関がございまして、そこに支払い報酬審査の委員の先生方をお願いいたしておりまして、これはいずれもその地域の信頼のある一流の先生方のメンバーでございます。そこで内容については審査、チェックをしていただいておるというふうに理解しております。
  204. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういうことは完全に各県ともやられておるというふうに考えていいでしょうか。
  205. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 各県の審査機関は、それぞれ法律に従って誠実に職務を実施しておると理解しておりますし、さらに、それにつきましては県の担当部局、さらには厚生省の担当部局におきまして、必要に応じて指導、監督をやっておるということを聞いております。
  206. 野坂浩賢

    ○野坂委員 やっておりませんという答弁はできぬだろうと思いますね。だけれども、たくさんあります、厚生大臣。これはカルテなんです。全部カルテですよ。これは守秘義務に関係をするだろうというようなことがあって出しにくい。患者のプライバシーの問題もありますから。ある県で調べて、全部これカルテなんですが、間違いないのですが、ここにみんな付せんが張ってあって、これを読み上げてもいいのですけれども、これは診療報酬に水増しをしているわけですね。たくさんありますよ。そういうのがたくさんありますよ。  そういう点について、いま、それはもう十分やっていらっしゃいますというようなことですけれども、そういうことは余りやられていない。たとえば、お尋ねをしますが、そのチェックをするために、いろいろなうわさが立つと県の保険課なり医師会が行く。これは医師会が立ち会いでやることになっているわけですか、どうです。
  207. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 私が承知しておるところで申し上げますと、そういう問題につきましては、そういう専門団体の協力を得て実施しておるということを聞いております。
  208. 野坂浩賢

    ○野坂委員 協力をして実施をしておるのですね。立ち会うのですよ、みんな。だから、あなたのところはどうもおかしいぞ、こう言って、夜の九時ごろにそのお医者さんを呼び出して、そしていろいろとやって、これは保険指導と言われておりますね、保険指導という名目のためにやられておりますけれども、そこで金が動くのですよ。  これは公開質問状というのが出ておる、お医者さんからお医者さんに向けて。これは御存じですか。余りばらばらせぬ方がいいと思いますけれども、御存じですか。福島県で起きた事件です。具体的に言うと、四十八年七月十八日に役員会をやられて、そこに医師を呼ぶ。そしていろいろ問題がある。そこで四十八年の七月三十一日に二百万円が出ておる。これは何の目的か。で、預っておいて。五十三年の四月一日に御本人に返っておるわけです。それは医師会の金庫に入っているわけです。県の方にも入っていないわけですね。そういう事件がありますよ。それは御存じですか。
  209. 山本純男

    ○山本(純)政府委員 担当部局に後ほど御趣旨を伝えることにいたします。
  210. 園田直

    ○園田国務大臣 非常に大事な御発言を聞いたわけでありますが、私もよく承知しておりませんし、当事者の保険局長にきょうは質問の御通知がなかったものですから、いま呼び寄せておる途中でございますから、でき得れば保険局長が来てから質問していただけばありがたいと存じます。
  211. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは後で御報告をいただきたいと思います。  それで、こういうことがある。だから、私立大学に入るためには金が要るから、こういうごく一部の人たちによってイメージダウンがある。私立大学は、いま新聞等で報道しておりますように、たくさんの寄付金なり学債というものがありますね。五十五年度は、大体学債と寄付金で二百億円程度、医学部では集めておる、こういうふうに聞いておりますが、その程度ですか、文部大臣。
  212. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 学債その他の計数の問題は、担当局長からお答えいたします。
  213. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 お答えいたします。  昭和五十五年度に係る私立医科大学の入学者に係る寄付金と学校債の状況でございますけれども、全大学、これは医学部でございますが、数が二十九学部、二十九大学ございますけれども、そのうち寄付金を募集いたしました学部が十三学部、学校債を募集いたしました学部は十二学部ございます。  いまお尋ねの受け入れ総額でございますけれども、寄付金の受け入れ総額は百十億円、学校債の受け入れ額は九十四億円となっております。
  214. 野坂浩賢

    ○野坂委員 新聞に出ておる大学の名は御承知のとおりでありますが、北里大学では裏金の操作がされておる。三十二億五千万円ですね。このことについては会計検査院は検査をされたというふうに聞いておりますが、どのような経理状況であったのか、どこに問題があったのか、お伺いをしたいと思います。
  215. 堤一清

    ○堤会計検査院説明員 北里大学の検査につきましては、現在、検査結果の取りまとめといいますか、そういう段階でございますので、詳細はちょっとお答えいたしかねるのでございますけれども、大略のところは大体新聞報道のとおりでございます。
  216. 野坂浩賢

    ○野坂委員 文部省は、こういう事実があったことをつとに御存じじゃないですか。
  217. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまのような経理の処理不適正の問題につきまして、まことに遺憾禁じ得ないものがございますが、私立大学、特に医科の経費の多額を要しますことは御案内のとおりでございますけれども、これらのことがただいま、前々からわかっておったかどうかということに対しましては、担当の方からお答えいたします。
  218. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 お答えいたします。  すでに昭和五十一年、五十二年ごろ、寄付金と学校債の募集の問題が大変大きく社会的な問題にもなりまして、昭和五十一年の九月でございますが、私の方から通知を関係大学に発しておりまして、入学者に絡むようなそういう寄付金と学校債は募集しないようにという通達をいたしております。それで、仮に入学に絡まない寄付金なりあるいは学校債を募集した場合には、その収入はすべて学校会計基準に基づきまして公の学校会計に入れるようにという指導を強くしてまいったところでございます。そういうようなことで学校会計に入らないような、そこに入れないで別途積み立てをするような別途会計ということは、これはあり得ないというふうに私どもは考えていたところでございますけれども、結果的には、今回の北里大学の例に見られますように、多額の別途経理をいたしておったことが判明いたしたわけでして、私どもは大変遺憾に思っているところでございます。
  219. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それではどういう措置をされたのですか、されますか。
  220. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 お答えいたします。  北里学園の昭和五十四年度並びに昭和五十五年度の医学部の入学に関係のある寄付金、学債、これはただいま会計検査院から御答弁がありましたところでございますが、私どもの方としては、総額約三十二億円余り別途経理の形で経理していたことが、いまの段階で明らかとなっております。まだ、最終的な調査は終了いたしておりませんけれども、いま詳細なことはいろいろと検討しておりまして、この別途経理に伴いまして過分の補助金がもし北里学園に出ていたとすれば、当然それは返還を求めるわけでございますが、そのほかの措置等につきましては今後の調査を待って行いたいということで、ただいま検討いたしている段階でございます。
  221. 野坂浩賢

    ○野坂委員 補助金の打ち切りも非常に重要ですが、問題は、豊かでない医学を志す子供たちが入るべくして入れない、入るべき者が入れない、こういうことが非常に困るわけですね。この寄付金は、表面は一千万円ということになっておりますが、高い方では、裏金は——裏金というと大変失礼でありますが、寄付金なり学債を合わせれば五千万ということになるわけですね、入学のときに。この五千万というものが入学に影響するかどうか、影響していないかどうかということを世間は一番注目をしているわけです。ある者から取ってもいいという議論もありましょうけれども、入学のときに手心が加えられておるのではないかということが、われわれは文部省としても一番重要ではないかと思いますが、その辺についての調査はいかがですか。
  222. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまの御質問の問題が一番重大な問題でございます。こういうふうな試験のあり方の問題が入学者の選抜の公正の確保を乱すというようなことがありますれば重大な問題でございまするし、あるいは寄付金及び学債の募集が、入学手続の完了後に行われなければならないものが、いろいろ不正があったりなんかするようなことがありませんように、今後十分に戒めまして厳重な措置をとりたい、かように考えております。
  223. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大学というところは非常に清潔で、喜々として、総理大臣の言葉を引用すれば、生き生きとしたそういう学園づくりをしなければならないのに、その大学生たちはみんな迷惑をするわけですからね。そういうことが新聞に出ると、あそこはそうだというふうに見られがちなんですから、そういう点についてははっきりしていかなければならぬわけですが、特に、こういうことはいままでにもあったわけです。会計検査院からお聞きになっているわけでしょう。過去ありますね。杏林とかあるいは福岡学園とか、こういう事実があって、あなたのところにちゃんと報告されておりますね。これはまた起きるわけです。一体どういうふうな指導をされたわけですか。万遺漏のないようにやる、こうおっしゃっておりましたけれども、五十二年の八月にもやられたのではないですか。やられたのでしょう。やられてその年にも起きているわけですよ。これを今後どういうふうに進められますか。こういう事件が起きてからどうやられましたか。
  224. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 過去に起きました忌まわしい事件の問題等々につきまして、その間の経過等につきましても当局といたしましては十分に戒心をいたしまして、厳重な指導をいたしてまいったわけでございますが、再度起きましたこのような問題につきまして、なお一層、これらの入学の適正ということは国家といたしましても重大な問題でございます、十二分に戒心いたしまして処理をいたします。
  225. 野坂浩賢

    ○野坂委員 五十二年の八月七日にいろいろと示されておるのじゃないですか。そのときにこう言っていますね。日本私立医科大学協会は「「私立医科歯科大学の入学時寄附金問題等の改善について」(案)は、入学者選抜の公正確保、入学許可の条件となる強制的寄附金の禁止、学生負担経費の明示、経理の適正処理と財務状況の明示、経営に関する諸問題に亘っている。」ここからですよ。「その多くは当然のこととしてそれぞれの大学が巳に実行していることであり、心外のこととして捉える大学も多い筈である。」だけれども、医科大学二十九のうち二十三もやっておるのですからね。これでは本当にどのように対応されたのか。今度どういう対応をされたですか。  時間がありませんから申し上げると、対応の内容は、この協会に行って、だめだよ、もっとちゃんとしなければいかぬよ、理事会に言われた程度じゃないですか。通達を出して厳重にこれから進めるということを約束できますか。  それから、合否決定前の父兄面接等は絶対にいけない、こういうことにしなければ、そのときに寄付金や学債ということが出てくるわけですから。  それから、今後不正ということがわかった場合は、調査の結果補助金を打ち切る、そういうことを三つ、約束できますか。
  226. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまの経緯につきましては、その衝に当たりました者から御報告いたしますが、いま最後にお話しいただきました、今後のこういうふうな不当、不正に当たりましては、厳重な態度をもって臨まなければなりません。  ただいまの補助金の問題等も同様でございます。
  227. 野坂浩賢

    ○野坂委員 文部大臣として通達を各学部に対してお出しいただけますか。ただ単に医学部だけ、歯学部だけでなしに、工学部とか、全部の私立大学に対してそういう点を明らかにするように、そして本来の大学の姿というものをやっていかなければ、もう貧乏人の子は医者になれないということになっては大変でありますから、そういう点については遺漏のないように通達を出してもらう、こういうことを約束できますね。
  228. 吉田壽雄

    ○吉田(壽)政府委員 お答えいたします。  いま先生が御指摘になられましたように、昭和五十二年の八月とおっしゃいましたが九月でございますが、九月に当時の管理局長、大学局長、連名で通達を出しております。そこで、いま先生がおっしゃられましたように、私立の医学部、歯学部への入学に関しましては、直接と間接とを問わず寄付金を収受し、または寄付の募集もしくは約束を行ってはならないということを特に強調いたしたわけでございます。しかるにもかかわりませず、今回、北里大学のようなああいう事態が生じてまいりまして、この通達が遵守、励行されなかったということにつきまして、私どもは大変遺憾に思っております。  いま先生御指摘のように、ついこの間、二月十日でございますが、私立医科大学協会の理事会がございまして、その席で私どもは、入学者選抜の公正を確保すること、それから第二番目に、寄付金と学資の募集につきましては、いままできわめて疑惑を招くような時期においていたしておりましたものを、今後は一切入学手続完了後に行うこと、それから三つ目といたしまして、経理を適正に処理すること、つまり別途経理等は一切行ってはならない、こういうことにつきまして強く求めたところであります。私どもは今後いろいろな機会をとらえまして、関係の団体に対しまして、あるいはまた個々の大学に対しまして、このような観点からより厳しい注意を喚起する予定でございます。  なお、今後通達を全私立大学に出すかどうかにつきましては、いろいろと慎重に検討させていただきたいと思っております。
  229. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまの局長さんですか、五十二年の九月に出されたことはよくわかっておるのですよ。それを受けて大学の協会もちゃんとすでにやっておることなのに、こういうことはきわめて遺憾だと言われることは、こういうふうに思う者もある、こう言われてまたやっておるのですからね。毎年出てくるのじゃないですか。こういうことはきちんとして、厳重な注意を喚起をするというようなことでは手ぬるいから、私は通達を出せと言っているのです。注意はこの間したんじゃないですか。理事会は全員集まっておったのではないでしょう。何枚集まっておったのですか、あの理事会には。歯が抜けておったんじゃないですか。私はちゃんとあなたのところに行って聞いてきたんじゃないですか。だから、そういう注意の喚起程度では公正が期せられないから、いまの問題を明らかにして通達を出せ、出しますか、こう言って聞いておるのです。  大臣、どうなんですか、あなたは。事務官僚の言うことばかりであなたが動いておったのではだめじゃないですか、あなた自身がやらなければ。
  230. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいまの適正な予算の配分措置並びに不明朗な学校の問題につきましては、厳重な態度をもって臨みます。いまの通達の問題等も、よく検討いたしまして処理いたします。
  231. 野坂浩賢

    ○野坂委員 出しますか。
  232. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 いたします。
  233. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それと、私どもにいろいろ投書はいただいております、大学の先生からも。いただいておるのですが、学校教育法の五十九条というのに、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」入学のときに教授会でやるのです。国立はみんなそうですね。教授会をやると、そこで人数が多ければ入試委員会というものが委託をされて、合否の決定をやるわけですね。  ある大学の学長はこう言っておるのです。当大学においては学問、教育は二の次で、財政を第一義とし、金もうけをするのが先で、学問、教育の方は後回してありますと言わなければならないことになりますという結語があります。これは言ったわけじゃないですけれども。まず経営をやらなければならないじゃないか、こういうことでやるのは、やはり理事長という経営者はそうなりがちなんです。だから問題は、この重要事項の審議権、教授会はそれを持っておる。だから教育、入学、そういうものに関してははっきり教授会ですべての学校がやらなければならないということになるだろうと思うのですが、そのとおりでしょうな。
  234. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 学生の直接の教育指導に当たりまする教学側の責任体制の確立されていなかった点につきまして、若干のかような問題が起こったと存じますが、教授会の責任体制の確立、また経営者の意向が合否判定を直接左右することのないよう、これから篇とさらに改めて指導をいたしてまいりたい、かように考えます。
  235. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう一つ理事長と学長の兼任というのは好ましくないと思いますが、どうでしょう。
  236. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 学制制度に従いまして、それを厳重に履行いたしましょう。
  237. 野坂浩賢

    ○野坂委員 学長と理事長というのが兼任しておるところがありますね。北里だってそうですね。そういう点で入試の辺がこんがらかってくるのです。だから、理事長と学長とは厳然として分けてやった方が、学校のためにもいいし、国民もそれを望ましいというふうに考えておるわけですから、一人で二つもやるよりも、教育に全力を挙げる、一人は経営の方で明朗にやるというかっこうの方がいいじゃないですか。
  238. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お説のとおり、経営の意向が合否判定を直接左右することのないように、この点はお説のとおりでございます。
  239. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういうことで指導していただけますね。
  240. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 はい。
  241. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、時間がなくなったわけでありますが、先ほど申し上げましたように、やはり私は、こういうことは、私立大学の医学部といいますか私立の医科大はたくさん金が要るということになるから、親としてはどうしても子供を入れたいということがある、その点で何としてもということがあるから、こういう問題が起きるのじゃないか。しかし、大部分のお医者さんは、日本の九割五分程度はそういうことはないだろうと思いますよ。だから、局長がそういうことは十分チェックしておりますということをおっしゃったけれども、そうじゃないところがずいぶんたくさんあるのじゃなかろうか、こう思うのです。これは頂門の一針として聞いていただきたいと思いますが、大臣でも政務次官でも、国民のリーダーですから、えりを正してやってもらわなければならぬと思いますね。医師の場合は、県の医師会等を十分監督をし指導をして、このようなことが絶対にないようにしてもらわなければならぬと思います。  厚生大臣、そういう点についてまず厚生大臣に伺うと同時に、保険局、どうも私の方がうろたえたりしまして大変申しわけなかったですが、これはそういう事実があるわけです。いま私が読み上げましたような公開質問状というのがちゃんとある、二百万円問題というのが。これはもう世間が知っておるわけです。これは新聞記者の皆さんもちゃんと知っておられる。こういうことがあるという事実は御存じなんですかということです。
  242. 大和田潔

    ○大和田政府委員 私ども通常の場合、保険関係は県から正式の報告がありまして正式に私ども知ることになるわけでございますが、ただいま先生がおっしゃいました件につきましては、正式な報告は県から受けておりませんので、早速私ども、県に照会いたしまして聞いてまいりたい、かように思っております。
  243. 野坂浩賢

    ○野坂委員 国としては県を指導するお立場でありましょうから、今後医師会立ち会いのもとに、いわゆる保険基金でチェックをする。しかし、非常に時間がなくて、この一点単価をやるのに大体一秒だそうですね。なかなかわからぬのです。これは私はカルテを見て計算したのですが、水増しがしてあるかどうか、頭が悪い関係もありますが、全部やるのに十分くらいかかるのですね。大変なんです。一秒間で見るというようなことはなかなかむずかしいのです。それしか時間がない。  そういうところはやはり徹底して指導して、一部の不心得者がないように、そして、県の医師会長というのも一遍お集まりをいただいて十分にお話しをいただかなければ、本当に医者を見る目が、われわれの命を預っていくりっぱな人だと思っておるのが、そういう雑音があって変な目で見られることは医者自身も損でありますから、そういう点については十分配慮してもらわなければならぬというふうに考えますが、いかがですか。  それから、この問題につきましては大体わかっておると思いますから、そういう点は十分精査をされましてそのような事態が起こらないように、また、余り医師会が関与しますとボスができまして、いろいろなことが起きてくるわけです、まだありますけれども。そういうところから、学校の入学の関係でたくさんの問題が出てくるわけです。そういう点をある程度公正になるような方法というものを考えていかなければならぬのじゃなかろうかと思いますが、その辺についてはいかがですか。
  244. 大和田潔

    ○大和田政府委員 県に対しましては十分に指導してまいりたいと思います。  また、先ほど先生おっしゃいました支払い基金の審査の問題、特にこれは今後とも、支払い基金における審査の充実を期していくということが必要でございますので、審査をいたします審査委員会の委員の充実、特に来年度におきましてはこれを重点的に進めるということに相なっております。また、コンピューター等を導入いたしまして重点審査をするということで、極力御趣旨に沿うような方向に持ってまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  245. 園田直

    ○園田国務大臣 一言申させていただきます。  いま発言されました事件は、だんだん聞いているうちに、週刊誌に出た問題と絡んでおるということがわかってまいりました。支払い基金の審査については、御発言のとおり、いろいろやっておりますが、実際問題は一枚のレセプトを一秒か二秒で見なければならぬということで、これではなかなか取り締まる方が取り締まれない。こういうことで、これの強化の方法については、今年度の予算でも強化しておりますが、それでも追いつくものではなくて、将来コンピューターシステムをとる以外にない、こういうことでこの予算もいただいております。  しかし、現在においては、おっしゃいますとおり、何か問題が起こったら徹底的にそこに重点を置いて、そしてそういうことがないようにしなければならぬと考えております。この問題も、いま局長から、県から報告がありませんということでありましたけれども、そういうことを聞いたら、こちらから進んで聞くなり、あるいは県の方にこちらから人を派遣するなり積極的にやって、そういう不正がないように今後十分注意をすべきであると考えております。
  246. 野坂浩賢

    ○野坂委員 次に、農林大臣にお尋ねしますが、この間、総括のときにもお聞きをしたのですけれども、時間がありませんから私が言ってこれで終わりますので、お願いをしたいと思います。  今度、食糧管理法を改正するということですね。農政審議会も閣議も、これからの農業の基本方向というものの中で、食管の問題については、その根幹は維持するということが書いてありますね。その根幹ということが問題になるのですけれども、根幹というのは、いわゆるやみ流通をやらない、あるいは生産者と消費者の二重価格制、それから全量管理というのが根幹だというふうにわれわれは承知をいたしておりますし、一貫して、農林水産委員会等ではそういう認識でやってまいりました。その根幹は守っていくというふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  247. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 食糧管理制度の根幹はこれを堅持をしながら、現実に合った、しかも守られる食糧管理法に改正をすべきであるということで、いま事務当局に検討を命じておるわけでございます。  御指摘のとおり、根幹はこれを堅持をしてまいります。
  248. 野坂浩賢

    ○野坂委員 根幹は維持していただきますが、その根幹は、私が申し上げました三つの点を根幹と考えてよろしゅうございましょうか。
  249. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 二重価格制という御指摘がありましたけれども、その点は、現在の食管法には、生産者に対しては再生産を旨とするという法文がございますし、消費者に対しては家計のバランスを旨として、その他物価、諸条件を勘案してこれを決定をしてまいる、こういうふうに法律に明示してあるわけであります。あの線はそのとおりに考えてやっていきたい、こういうことでございます。全量、国が取り扱うということもそのとおりでございます。
  250. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりましたが、二重価格制のところでは若干不明確な点がありましたが、三条、四条の精神は十分に尊重する、こういうことで確認してよろしゅうございますか。
  251. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 そのように考えております。
  252. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、あと問題ありますけれども、時間が参りましたので、また分科会のときにお願いをしたいと思います。  終わります。
  253. 小山長規

    小山委員長 これにて野坂君の質疑は終了いたしました。  次に、市川雄一君。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  254. 市川雄一

    市川委員 私は、主に外務省と防衛庁に安全保障政策についてお伺いをしたいと思いますが、その前提として、核時代におけるデタントということについて、まず外務大臣にお伺いをしたいのです。  いわゆる核時代のデタントの本質というものの理解の仕方のいかんによって、いま言われておりますようなソ連脅威論あるいは防衛力増強というものが是か非か、こういうことにつながってくるわけでございますので、そういう視点からまずお伺いしたいと思います。  最初に、外務大臣、米ソデタントの現状認識をお伺いしたいのですが、いま米ソデタントの状況がどういうふうにあると認識されているか。
  255. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  米ソ間のデタントの問題でございますが、特にアフガニスタンに対するソ連の軍事介入ということから、あれを契機にしまして、いわゆる米ソ間のデタントということにかげりが出てきたというような状態だと私は思うのでございます。ただ、デタントの解釈が若干違いまして、ソ連は第三世界に入ること自体はデタントと関係ないんだというような解釈をしておりますので、若干その解釈に違いはございますが、客観的に見て、いま私が申し上げましたように、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入によってデタントにかげりが出ているというふうに思っております。  ポーランドの問題が、いまは若干平静を取り戻しておりますが、去年私、十二月にヨーロッパへ行ったときには、もしもポーランドにソ連が軍事介入をすればデタントの壊滅だということを、ヨーロッパの首脳は言っておりました。ただ、かげりが出たことは確かでございますが、それかといって、それでデタントはもう終わりということじゃなくて、アメリカの新政権も、全面的に米ソ対決ということから核の戦争に巻き込まれるというようなことは避けるべきだということで、時間をかけてもソ連とは話し合いをするんだということを新政権が言っているということを、ドイツのシュミット首相は言っていたのでございます。  でございますので、若干解釈の食い違いがございますが、先ほど申し上げましたように、米ソ間ではデタントのかげりが出ているというのが現実の姿じゃないかというふうに思っております。
  256. 市川雄一

    市川委員 そこでお伺いしますが、ソ連のアフガン侵攻でデタントにかげりが出た、あるいは大臣御自身の発言かどうかですけれども、ポーランド侵攻があればデタントの崩壊だと。もちろん、アフガン侵攻やポーランド軍事介入なんということは許せないと思いますが、しかし、そういう簡単なものではないんじゃないですか、デタントというのは。ここでデタントの解釈議論をやるつもりは全くないのですが、いわゆる緊張緩和の本質は米ソ戦わず、核不戦、これがデタントの本質じゃありませんか、どうですか。
  257. 伊東正義

    伊東国務大臣 デタントの崩壊だということを言っておりましたのは、ヨーロッパの首脳がそういう表現を使っていたのでございます。  それで、市川さんおっしゃるとおり、デタントというものは、米ソ関係だけじゃなくて東西関係全部の、もちろん核戦争の回避あるいは安定した状態を維持していくということがデタントだというふうに私ども考えております。そういう状態が、そういうことに努力するということがデタントかの問題はありますが、もっと広い概念であるということは、私もそのとおりだと思います。
  258. 市川雄一

    市川委員 要するに、核不戦、米ソが核で戦わない。核で戦わないということは、核戦争の引き金になる通常戦争もやらないということですよね。これは私は非常に重大だと思うのです。米ソともに、地球の人類を五、六回殺せる、オーバーキル、それだけの量を十分に持ってしまった。ですから、核兵器については生産過剰ですね。これ以上お互いが量をふやし合っても本当は何も意味を持たない。アメリカの核弾頭が一万発。ソ進がいま五千発、最近六千発と言われておりますが、いまの米ソの核弾頭で人類を五回か六回殺し合うことができるほどの量の核弾頭である。これをもしアメリカが、軍拡だということで二万発の核弾頭にふやした、ソ進がこれを追っかけて一万五千になった、開きは今度は五千になった、そう言ったからといって何も意味がないんじゃないか。  ですから、核時代のデタントというのは単なる緊張緩和という言葉ではない。米ソは戦えない、核戦争はできない、だから核戦争の引き金になる通常戦争もできないということだと思うのですよね、そういう核時代におけるデタント。したがって、ポーランドの軍事介入は、これはけしからぬですよ。だけれども、そのことによって簡単に米ソが核で戦うようになっちゃうのかといったら、そんなことはないと思うのですね。そういう意味で、そういう御認識があるのかないのか、まず、それをお伺いしたいと思います。
  259. 伊東正義

    伊東国務大臣 市川さんおっしゃるとおり、デタントというのは核戦争の全面回避をしようということももちろんでございますが、それよりももっと広く、やはり東西関係の安定した関係を維持していくということがデタントの大きな一つのまた柱になるわけでございますので、通常兵器による紛争とか武力介入とかいうことも、やはりこれはデタントに対して大きな障害だ、核戦争だけじゃないということは、先生と私は同じ認識でございます。
  260. 市川雄一

    市川委員 それで、少し具体的にお伺いしますが、核拡散防止条約、略してNPTと言われておりますが、このNPTとデタントの関係をどういうふうに見ていらっしゃいますか。全く関係ないと見ていらっしゃるのか、関係がある、関係があるならどういう点で具体的にNPTと米ソデタントというものは関係しているのか、これはどうでしょうか。
  261. 伊東正義

    伊東国務大臣 核兵器の拡散防止条約とデタントの問題でございますが、先生も御承知のとおり、条約には、核を持っている国の義務、それから核を持たない国、一条、二条が一番の大きなねらいであることは間違いございませんが、あの条約の中で、六条でございましたか、核兵器の軍縮に努力するということもたしかあったはずでございます。そういうことから言いますと、デタントと核軍縮ということも私は非常に関係のあることだと思いまして、たとえばSALTの交渉とかああいうものはこの核兵器拡散防止条約と非常に関係がある、それはまたデタントと非常に関係がある、こういうふうに見ております。
  262. 市川雄一

    市川委員 どうも何か関係があるようにはいまの御答弁だと伺えないのですけれども、これは非常に深い関係がある。  もうちょっと具体的にお伺いしましょう。  NPT、核拡散防止条約の第一条の規定、これは日本語で訳されておりますから読めばわかるのですが、後の論議のために、ちょっとその規定の意味をお話しいただきたいと思います。これは大臣でなくて結構です。
  263. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  第一条は核兵器国の義務を規定しているものでございまして、核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置そのものもしくはその管理というものをいかなる者にも、移譲と申しますが、譲ってはいけないということと、第二番目には、核兵器その他の核爆発装置の製造、取得、それからそれらのものの管理の取得というものについて、いかなる者に対しても、特に非核兵器国に対しても援助したり奨励したりしてはいけないということを決めてございます。
  264. 市川雄一

    市川委員 そこでもう一つ、第十条の脱退条項がございますね。その脱退条項に「各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。」こういうふうにございますが、「この条約の対象である事項に関連する異常な事態」というのはどういう意味なのか、それが第一点。  それから第二点は、「自国の至高の利益を危うくしている」ときというのはどういうときを指すのか。  それから第三点、いまの質問とちょっとダブるかもしれませんが、「自国の至高の利益」というのは何か、これを簡潔に、明快にお答えいただきたいと思います。
  265. 伊東正義

    伊東国務大臣 十条の脱退の権利の問題でございますが、異常な状態等につきまして、これはいま最初からこうだと言って具体的に申し上げるには余りに複雑な問題でございますし、また、具体的に説明することもなかなかむずかしい抽象的な概念だというふうな感じが私はいたします。  また、「至高の利益」ということはいろいろ考えられますけれども、その国の安全保障なんというのは至高の利益だと私は思うわけでございますが、これは過去においてもいろいろ議論があったところでございますので、詳細は政府委員から申し上げます。
  266. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  「この条約の対象である事項」と申しますれば、これはこの条約の中で根幹をなすものが一条、核兵器国の義務、これは先ほど御説明申し上げました。それから、第二条で非核兵器国の義務、これは核兵器国の義務に対応する規定でございまして、いかなる国からも、特に核兵器国から、核兵器もしくは核爆発装置というようなものの生産をしたり、あるいは管理を取得すると申しますか、そういうことをしてはならぬというのが、二条の非核兵器国の義務になっております。その他にもございますけれども、それらがこの条約の対象である事項というふうに考えられるわけでございます。  それから、第二点の「自国の至高の利益を危うくしている」というような事態と申しますと、ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、自国の至高の利益、一国の至高の利益と申しますといろいろと範囲が広いものでございまして、しかもこの条文第十条によりますと、それを判断するのは各締約国自身にゆだねられているという意味におきまして、ある国が自国の至高の利益を危うくされておるというふうな認識を持てば、それがこの条項に当てはまるものとなってしまうという、幅の広い規定ではないかと思うわけでございます。  特に、「自国の至高の利益」といいますのはどういうものかという第三点でございますけれども、これも大臣から御答弁申し上げましたように、その国自身の判断において至高の利益というものが侵されているという判断になるわけでございますので、これもかなり主観的な要素がまじってくるのではないかと思いますけれども、しかし、一国の安全保障などという危急存亡にかかわるようなことは、当然のことながらこの「至高の利益」というものにも含まれているものということは、大臣も御答弁申し上げたところであります。
  267. 市川雄一

    市川委員 「至高の利益」を二回お答えになって、「異常な事態」が抜けてしまったのですが、結構です。要するに何か抽象的なお答えしかないわけですね。  そんなことを聞いているわけじゃなくて、要するに、日本はこれに署名して批准したわけでしょう。外務省は、日本の国にとって「異常な事態」とはどういう解釈に立っているのかということと、「至高の利益」とは何だと思っているのかということを私は聞いているわけですよ。一般論としての大学の講義みたいな答弁を聞いているわけじゃない。それはどうですか。日本の国として「異常な事態」「至高の利益」とは、外務省はどう解釈しているのか、これは簡潔にひとつ、政府委員の方で結構ですからお答えいただきたい。
  268. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  申しわけございませんけれども、やはり抽象的なお答えになってしまうものでございまして、具体的にどのような事態が起こったときにわが国の至高の利益が侵されているか、それはいろいろ態様があるわけでございましょう。また、そのときの政府の判断にもよるものだと思いますので、これを一体どういうものであるかということを具体的な例を挙げてお示ししてお答えするのは非常に困難なことだと思います。
  269. 市川雄一

    市川委員 どうも要領を得ないのですが、それでは、アメリカがこの条約から脱退しますとヨーロッパでどういう事態が起きますか、どうでしょうか。これはたしか質問通告してありましたけれども、アメリカがこの条約から脱退した場合ヨーロッパでどういう事態が発生するか、私はこれがこの条約のポイントだと思うのですね。
  270. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカがもし脱退すればという仮定の御質問でございますので、これは本当にお答えしにくいことでございますが、私も仮定のことで申し上げますと、この条約をつくることに非常に熱心だったのは、アメリカとか、あるいはソ連でございますとかイギリスでございますとか、この条約の寄託国、三国になっておりますが、そういう国がこの条約をつくることに非常に熱心だった、まず起こりはそういうことでございますので、私はアメリカが脱退するとかソ連が脱退するなんということはあり得ないことだ、こう思うわけで、まあ仮定の問題の御質問でございますが、私もそうあり得ないと思うわけでございます。  もしもそういう場合にヨーロッパがどうなるかということの御質問でございますが、これは非常にお答えしにくいことで、そういうことはあり得ないだろうというのがわれわれの考え方でございます。
  271. 市川雄一

    市川委員 仮定の質問というようにおっしゃいましたけれども、いわゆる条約交渉の中では、米ソはそれを十分に議論してつくっているわけですよ。これは決して仮定ではないんです。アメリカはソ連と交渉したときに、条約交渉の中で、自分がこの条約から脱退した場合はどうなるかということをちゃんと十分にソ連と話し合っているわけです。  では、申し上げましょうか。アメリカが脱退すれば、これは核の管理権を渡す自由が生まれますよね。そうすると、西独にいま七千発の戦術核兵器が置いてあります。アメリカは核拡散防止条約によって縛られておりますから、七千発の核兵器を西独に置いてありますけれども、これはアメリカが引き金を持っております。西独には渡してない。したがって、いざというときは間に合わない。七千発の核兵器。飛行機もあるでしょう戦略爆撃機もあるでしょう。アメリカの要員だけではとても間に合わない。では、どうするか。核拡散防止条約から脱退して核の管理権を西独に渡すわけですよ。西独は核武装するぞ、これはソ連が一番きらっていることです、西独の核武装は。西側諸国もきらっております、ドイツを除いては。それがこの条約には担保に入っている。アメリカはこれを入れたわけです。  ですから、要するに、アメリカはこの条約から脱退するということは仮定のことだ、あり得ない、それは私もそんなにあり得る可能性はないと思っているんです。また、あっては困ると思っているんです。思っていますが、しかし、条約自体の外交交渉ではそういうことはさんざん議論されて、アメリカはむしろ意識してそれを担保として入れているわけですよ。もしソ連がこの条約に関係する異常な事態を、アメリカの至高の利益を危うくしているという事態を引き起こした場合、アメリカは核防条約から脱退しますよ、西独に核を渡しますよ、どういう装置がこの条約にあるわけです。ですから、仮定なんですけれども、そういう仮定があっては困るんです。また、あってはならない。けれども、条約審議の中ではそういうことは議論されている。しかも、アメリカはそういう装置を意識して入れた。  これは単なる条約じゃない。いわゆるペーパーの条約じゃないか、そういうものじゃない、こういう御認識はいかがですか、全然お持ちになっていませんか。また、そういうふうに読めませんか、この条文の第一項、脱退条項。どうですか。
  272. 伊東正義

    伊東国務大臣 脱退の条文が十条にあるわけでございますから、私はそれは全然否定したということを言っているわけじゃないのでございますが、いま市川さんおっしゃるように条約は相対的なものでございますから、そういうことになった場合はソ連の対抗ということもございましょうし、もう完全な冷戦というか、それ以上のものになるわけでございますから、この条約というものは、十条にありますけれども、もうほとんどこの十条は実行するということにはならぬというふうに私は見ているわけでございまして、先生は仮定の問題として御質問になりましたが、私は、そういうことはあってはならぬことだ、また、あり得なかろうというふうに思っておるわけでございます。
  273. 市川雄一

    市川委員 あってはならないと言うけれども、あることを想定して入れたからこそあってはならないようになっているのですよ、この条約の装置が。そういう装置にしたわけですよ。ですから、いわゆる核時代のデタントに戻るわけですね。お互いがお互いを五回か六回皆殺しにできるほどの量を持ってしまった。しかも、十八年前にキューバ危機があった。最近の核兵器の進歩によって、一発で相手の国の都市を全滅させることができる水爆がつくられて、しかもその水爆の小型弾頭化に成功した。小型化ですね。しかも、その弾頭を運搬兵器で地球規模で一万キロ飛ばして、相手の目標に正確に撃ち込むことができる、こういうミサイルが生まれてきた。しかも、相手から攻撃されたときに、またこれを防ぐことができない。また、予見し得る将来、恐らくできないだろうと思うのですね。また、それでは先制攻撃で相手のミサイルを全部やっつけてしまおうか、これもできない。地上固定のミサイルはできるかもしれませんが、戦略爆撃機とか潜水艦発射のミサイルはなくせない。そういう核時代、その中にありましてキューバ危機があった。そのときに、米ソのリーダーがお互いに感じたことは、破滅的な報復攻撃の覚悟なしには核兵器は使えないということですよね。これがあのときの教訓です。だから、その翌年に部分核禁条約が生まれておるわけです。しかも、破滅的な攻撃を覚悟しなければ相手を屈服させることができないということがわかった。  そうすると、核時代の安全とは何だということになるわけですね。核時代の安全というのは戦わないことだということになるのです。核戦争をしないことだ。核戦争をしないためには、通常戦争もしないんだ。引き金になるような通常戦争もできない、こういうことになるわけです。しかも、お互い米ソが核で戦わない状態を何とかつくりたい。幾ら金をかけてミサイルを持っても、どうも安全感がいま一つ高まらない。何かもうちょっと安全感を高める方法はないか、それがこの核拡散防止条約でしょう。  米ソが戦わない、東西の現状を力で突破しない限り核兵器は使えませんよという了解が両方にある。同時に、米ソによる恐怖の均衡を安定させなければならない。安定させるためには、核兵器を持った国を少なくしなければならない。そのためには核拡散防止条約が必要なわけですね。ですから、米ソ不戦と、核兵器を持った国をふやさない、増加を防止する。この条約は別名、核兵器増加防止条約とも言えるわけです。そのことによって、米ソで核を独占する。あるいはあと英国と中国、フランスの五カ国。五カ国といっても、米ソと英国、フランス、中国では、核戦力に全く子供と大人の違いがありますよね。それ以外はふやさない。そのために部分的核実験も禁止をしたし、核拡散防止条約もつくった、こういうことではないのかと私は思うのです。  ですから、先ほど申し上げた、アメリカがもし脱退した場合ヨーロッパにどういう事態が生まれるか。西独にアメリカが渡してある七千発の核兵器に、アメリカが管理権を渡す自由が生まれている、これはソ連にとってはすごい脅威です。そういう担保が入っている。ですから、そういう考え方で生まれてきたデタント。キューバ危機が一九六二年の十月にあって、六三年の八月には部分核禁条約が調印され、六八年の七月に核拡散防止条約が調印された。こういう流れじゃありませんか。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕  ですから、私は結論として申し上げたいことは、デタントというのは、先ほども東西の交流ということをおっしゃっていましたけれども、もちろんそれもあると思うんですよ。だけれども、米ソがつくり上げたデタントというのは、米ソに一番利益のあることをやったわけですから、これは核不戦ですよ。ですから、デタントが崩れるということは、核で米ソが戦うということです。  そこでまず、核拡散防止条約との関連でデタントの一つの根っこがあるということ、こういう意見に対してどう思われますか。外務大臣、どうですか。
  274. 伊東正義

    伊東国務大臣 デタントと核兵器の拡散防止条約の関連性ということで市川さんはおっしゃったわけでございますが、私は、あの条約の中に核軍縮もあります、それは一つのデタント目的達成のために核の軍縮をしていくということもございますので、関連がございますということを申し上げたのでございますが、市川さんは別な面からデタントというものの解釈で、核の独占と言っちゃ語弊がありますけれども、なるべく核を拡散しないということが、核を持っている国の利益にもなる。それは広げれば広げるほど引き金に手をかける状態が多くなる可能性が濃くなりますから、引き金にかける手を少なくしようということが米ソの間のデタントのためにも役に立つんだという、別な面からの御意見があったわけでございます。私も、そういう関係からもこの条約は米ソのデタントに役立つものだという御意見は、それは一つの御意見として、何も間違っているものじゃないというふうに思います。
  275. 市川雄一

    市川委員 要するに、核時代における核大国は米ソしかありません。この米ソの利益は何か。これは要するに相戦わず、核不戦。核不戦を保つにはどうしたらいいのか。恐怖の均衡、バランスがとれていることが望ましい。恐怖の均衡。そのためには、核兵器を持った国がふえない方がいい。その構造の第一の実行が部分核実験停止条約にあらわれてきて、この部分核禁条約では欠陥があった。だれかほかの国からもらえば核兵器国になれるという欠陥があった。それをふさがなければいかぬというのがこの核拡散防止条約です。  これに上って、要するに、米ソという第一級の核大国、第二級の英、仏、中という核兵器国、それから第三級の潜在核兵器能力を持った国、日本、イタリア、インド、それから第四の全然持ってない国、こういうことになると思うんです。ですから、米国とソ連が、もう第二級のフランス、英国あるいは中国と適当な差がきちっと開いている。埋めがたい差が開いている。その差を適当に持ちながら、また第三の、日本のクラスの国には核兵器を持たせないで、しかも米ソの間で核バランスを保っていくのが恐怖の均衡の安定だ。その安定をさせるためにはどうしたらいいか、これがSALTじゃありませんか。これは軍縮じゃありませんよ、SALTは軍縮じゃない。核の恐怖の均衡を安定させるための装置をお互いがつくったんじゃありませんか。こういうふうになってあらわれてきているわけですよ。ですから私は、そういう核時代における日本の安全保障とは何かということをまず考えなければいけないんじゃないかということを申し上げたいわけなんです。  そこでお伺いしてまいりますが、同時に、この核拡散防止条約の条約交渉の中で——条約というのは、これは外務大臣に釈迦に説法かもしれませんが、でき上がった条文そのものよりも、条約交渉の過程の中にこそ本当の条約の姿がある。何の条約でもそうだと思うんですよ。でき上がった条約を十年たった後に読んでみてもわからない。やっぱり条約交渉当時の背景、あるいはこの交渉でどんな議論が交わされたのか、そういうところに本当の条約の姿があると言われております。これは私はそうだと思います。  そういう意味で、この核拡散防止条約で、米ソ戦わず。いわゆる東西の現状、第二次大戦で画定した東西の現状、東西の国境線をお互いが武力で突破しない限り核兵器は使いません。しかも。核戦争の引き金になるような通常戦争もやりません。言ってみれば第二のヤルタ協定じゃないのか、こういうふうにドイツからは批判されたわけです、この条約は。何だ、東西の分割を固定するんじゃないか、ヤルタ協定じゃないか、米ソの利益のために東西ドイツがそのまま永久に固定されちゃうのか、こういう御批判もあったぐらいです。ですから、アメリカドイツを説得できなかった。ソ連が西独を説得してこの核拡散防止条約に調印させているわけですよ。  こういう経過を考えますと、要するに、この条約によって米ソ共存、平和共存、しかもお互いの勢力圏を侵さないという了解、こういうものができ上がってきた。そしてSALTに移ったわけです。だから、いま安心して、米ソ戦わないんだ、核戦争はやらないんだ、また、核戦争になるような通常戦争もやらないんだ、できないんだ、こういう前提で、今度はお互いの優位性を米ソが勝手に争っているわけですね。どっちが優位に立つか。ですから、自分の身の安全は米ソはお互いに核戦争をしないということで確保をした上で、安心してパワーポリティクスにふけっているわけです。こう私は思えてならないわけです。  しかも、日本には日米安保条約というものがある。こういう条件の中で日本の安全保障を考えた場合に、結局、議論がいろいろありますが、ソ連に尽きてしまうんじゃないかと思うのです。ソ連をどう評価するのか。地球規模でお互いが核のかさをかけ合っている、日本アメリカと日米安保条約がある、こういう時代における日本の安全保障、その日本に対して軍事的侵略ができる国なんというのはそうめったにあるものではない。特定の国の名前を出すのは非常に芳しくないのですけれども、中国はできるか。どこができるか。ソ連しかない。対ソに尽きてしまう。  そこで、潜在的脅威論というものをもう一度ここでお伺いしたいのです。要するに、潜在的脅威論というのは、どうも伺っていて、もう一つ、すとんと落ちないものがある。何でかと考えてみると、ソ連の意図——意図は変わるものだ、こう言っているのですが、能力は増した。しかし、いま意図は持っていない。しかし意図は可変なものだ、だから潜在的脅威が増したのだ、こう言っているのですが、それじゃ、意図は変わるものだと言っているその意図がどう変わると見ておるのか、これは全くノーコメントなんです。ただ変わるものだと、こう言っているだけなんです。これについて外務大臣、どうお考えでございますか。
  276. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  軍事上の問題等でございましたら、防衛庁長官が後ほどお答えになった方が適当と思うのでございますが、私どもが潜在的脅威ということを言っております一つの理由は、最近のソ連軍の極東の配備といいますか、軍備の充実というような客観的な事実をとらえまして、そして潜在的な脅威ということをわれわれは考えておるというのがいまの考え方でございます。
  277. 市川雄一

    市川委員 では、防衛庁長官、お伺いしますが、潜在的脅威についての見解をちょっと、確認の意味でお伺いしたいと思います。
  278. 大村襄治

    ○大村国務大臣 潜在的脅威についてお尋ねがございましたので、お答え申し上げます。  先生御存じのとおり、もともと脅威は、侵略し得る能力と侵略意図が結びついて顕在化するものでありまして、この意味でのわが国に対する差し迫った脅威が現在あるとは考えていないということは、これまでもたびたび申し上げているところでございます。また、この侵略意図というものは、国際情勢や国際政治構造等とも絡み合って変化するものでありまして、現時点で特定国からのわが国に対する脅威の顕在化について具体的ケースを想定することは困難であると考えておるわけでございます。  また、ソ連についてはどうかというお尋ねもございましたので、その点について申し上げますと、近年の極東ソ連軍の顕著な増強は、北方領土への地上軍部隊の配備、空母ミンスク等の極東配備に見られる太平洋艦隊の増強、SS20IRBMやバックファイア爆撃機の配備、さらにはベトナムの海空軍基地の常時使用等に示されるように客観的事実でございまして、わが国の安全保障にとり潜在的脅威と考えている。この点も従来から申し上げているところでございます。
  279. 市川雄一

    市川委員 要するに、差し迫った脅威は全くない、いま差し迫って特定の国を想定した場合は脅威がないと、こう言う。それじゃ、何も防衛力をそんなにあわ食ってやることはないということになってしまいますね。それでいて、今度は片方では、ソ連の軍事能力がしかじか高まりましたと。  それじゃお伺いしますよ。ソ連の潜在的脅威ということなんですけれども、極東におけるソ連の軍事能力が高まった、だけれどもソ連はいま日本をどうこうする意図は持ってない、だけれども意図はどう変わるかわからない、だから潜在的脅威だ、こういうことなんでしょう。それじゃ、この意図が将来、いいですか、防衛庁長官、将来ソ連が対日侵攻する意思を持つ可能性ありと、こういうふうに見ているのですか、どうですか。
  280. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  政府はいずれの国をも仮想敵国とみなしていないということはしばしば申し上げておるところでございまして、特定国をとらえて、その国からのわが国に対する侵略の可能性があるとか可能性がないとか申すことは、無用の誤解を招くことにもなりますので、御指摘のことについて申し上げることは差し控えたいと思います。
  281. 市川雄一

    市川委員 ですから、話がいつもあいまいになるんですよ。  それじゃ、軍事能力を増すと、全部その国は日本にとって潜在的脅威になるのですか、その論理でいくと。どうですか、防衛庁長官、軍事能力を増した国というのは、日本から見ると全部潜在的脅威がふえた国だということになるのですかと聞いているのです。
  282. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  しばしば申し上げておりますように、脅威は軍事能力と意図と結びついて初めて顕在化するものでございます。そこで、ソ連につきましては、軍事能力の点は、先ほど申し上げましたように近年著しく増強されておるわけでございまして、そういった点等からいたしまして、私ども、潜在的脅威は増大している、さればといって、顕在化している、差し迫った危険が来ているというふうには判断しておらないわけでございます。
  283. 市川雄一

    市川委員 いや、それを聞いているんじゃないのですよ。いいですか、ソ連は軍事能力を増した、だけれども意図はいま持ってない、しかし意図はいつ変わるかわからないものだ、可変的なものだ、だから潜在的脅威だ、こうおっしゃるわけでしょう。何回も同じことをおっしゃらないでくださいよ。ということは、アメリカも年々軍事能力を増しているわけですよ。ヨーロッパも増しているし、中国も増しているわけでしょう。北朝鮮も増しているし、韓国も増しているわけですよ。何もソ連だけが軍事能力を増しているわけじゃないんです。ほかの国もみんな軍事能力を増しているわけですよ。そうすると、軍事能力を増している、しかし意図がないという意味では、ほかの国も皆、いま対日侵攻の意図はないのですよ。だけれども、ソ連だけが潜在的脅威になる意味は何ですかと私は聞いているのです。何でなんですか。もうちょっとはっきり、同じお答えだったらもう要りませんよ、時間がもったいないですから。
  284. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  たびたび申し上げているとおりでございますので、詳しく申し上げて結構でございますが、同じことなら要らないというお話でございますので……。
  285. 市川雄一

    市川委員 要するに、答えがないということなのですよ。  それでは、具体的にお伺いします。  革命後のソ連、いまのソ連政権がロシア革命後、武力行使をしたケースはどういうケースがございますか。これはあえて長官でなくても、政府委員の方でも結構です。どういうケースの場合にソ連は武力行使をしたか、こういう分析をなさっていますか、伺いたい。
  286. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 お答え申し上げます。  武力侵攻という言葉の定義いかんによるのでございますけれども、例ははなはだ多いのでございますけれども、むしろ端的な例を申し上げますと、わが国との関係で申し上げますと、ソ連は……(市川委員「分類でいいのですよ。国の名前は要らないですから、分類だけ、こういうケース、こういうケースと」と呼ぶ)さようでございますか。  まず、わが国との関係で申しますと、第二次大戦の末期に、当時まだ有効であった日ソ中立条約を一方的に無視して宣戦布告しまして、終戦直後にかけて南樺太、千島列島及び北方四島を占領したことは御承知のとおりでございます。  その他、国別にこれを申しますと……(市川委員「国別は要らないです。ケースでいい」と呼ぶ)むしろ、ケースとして申し上げますと、これは日本に対するケースでございまして、一番最近のケースは、アフガニスタン侵入でございます。
  287. 市川雄一

    市川委員 ちゃんと質問通告のときに説明したつもりなんですけれども、要するに、自国防衛ですよ、ソ連の革命後の政権がやった武力行使、自国防衛、当然のことですね。それから世界戦争、それから同盟条約による介入、それから帝政ロシア時代の領土の回復。第二次大戦のときに不可侵条約を破って日本に入ってきた。これは恐らく帝政ロシアの時代の領土の回復、そういう意味では北方領土は全然当てはまりませんけれども、大体いままでこういうケースしかない。  ですから、先ほどの防衛庁長官の御答弁、能力が増した、意図はいま持っていない、しかし意図は可変的だ、いつ変わるかわからない、だから潜在的脅威なんだ、こういう説明をされる。しかし、ソ連だけが軍事能力を増しているわけではない。中国も増しているし、アメリカも増しているし、ベトナムもイギリスもフランスも、みんな増しているわけですよ。日本も防衛努力をやっているわけです。では、どこの国もいま日本を攻める意図があるかといったら、ない。将来変わるかもしれないからということになると、日本にとって潜在的脅威国というのはたくさんになってしまう。けれども、ソ連だけを潜在的脅威だ、こう言う。この説明を求めているのですけれども、この説明はない。  それで、大体この自国防衛が、世界戦争が、同盟条約による介入——アフガン侵攻の場合、これは私自信は、要するに要請があって入ったのではなくて、要請がある前に入ったというふうに見ておりますけれども、これは同盟条約による介入ということでしょう。それから帝政ロシア時代の領土の回復、こういう四つの見方がある。  あるいはソ連の専門家の方々の指摘していることは、ソ連というのは、権力を握った革命政権を外部もしくは内部の反革命勢力から防衛するといった、ソ連側からする大義名分もしくは使命感が存在する場合に限って軍事介入に出るのであって、ソ連が無限定的に軍事力を行使し、あすにでも平和国家を侵略するといったソ連脅威論はとうてい成り立たないと、多くのソ連の専門家がおっしゃっていますよ。あるいは防衛庁が委託研究を頼んでいる平和戦略研究所の猪木正道さんも、ソ連脅威論は無用だ、こういうことをおっしゃっている。それから元防衛庁の事務次官、亡くなられましたけれども、国防会議の事務局長をおやりになった久保卓也さんがこうおっしゃっています。「東アジア太平洋におけるソ連軍事力の増強と展開は、対米構想を念頭に置きつつ、グローバルにあるいは地域全体を対象としているものであって、特に対日指向というわけではあるまい。したがって、ここ数年来のソ連の軍事的脅威が特に高まったと見る必要はなかろう。」こういう見方をおっしゃっている。制服の方は、おやめになってOBになると非常に激しいことをおっしゃるのですが、さすが内局の方は、おやめになるとかなり良心に従った発言が多くなっている。あるいは元防衛庁官房長をおやりになった竹岡勝美氏は、最近の朝日新聞の「論壇」で、ソ連は、平和外交をとっている日本を、日本がどういう平和政策をとろうが、自分の意思を通すためには軍事力に物を言わせて攻めていくのだという悪魔と見るか、いや、そういうことはやらない非悪魔と見るか、非悪魔と見た方が妥当なのではないのか。これはきわめて常識的なことをおっしゃっているわけですね。  要するに、こういう方々の言っていることの方は、ソ連が能力を増したことはみんな指摘していますよ。だけれども、皆さんは、日本は日米安保条約で対ソ戦は抑止力があるとおっしゃっている、あるいは核のかさがあるのだとおっしゃっている。その安保条約下で、日本が日ソ親善という平和政策をとっているわけです。そういう日本を、どういう国際条件、どういう国際的情勢、どういうわが国周辺の情勢が生まれると攻めてくるのか。それとも突然悪魔的に襲いかかってくるのですか、ソ連の言うことを聞けというので。この辺をどう見ているのかということが大事なのです。この辺をちっともしゃべらないから、昨年の国会からわけがわからない。  ソ連をどう評価するか、悪魔と見ているのか、日本が平和政策をとり続けている限り、そういうことはまずしないというふうに見ているのか。これは外務大臣どうですか、防衛庁長官というより外務大臣にお聞きした方がいいかもしれません。ソ連という国をどういうふうに評価されておりますか。
  288. 大村襄治

    ○大村国務大臣 その前に、時間の関係でちょっと省略しましたので、お答えいたします。  潜在的脅威と言う場合には、もとより軍事能力に着目しておるわけでございます。そのときどきの国際情勢等をも背景として総合的に判断してまいったわけでございます。  それで、ソ連以外はどうかというお話もございました。これは去年の秋の臨時国会でありましたか、先生のお尋ねに対しまして、ソ連以外の国につきましても防衛庁の見解は申し上げたところでございます。それは省略させていただきたいと思うわけでございます。  一体、どういうときに顕在化するのか、こういうお尋ねでございますが、侵略意図といいますのは、実際問題として国際情勢や国際政治構造と絡み合っておりまして、その可変性はおのずから限定されているものと考えておりますが、いずれにいたしましても、現在、侵略が顕在化する可能性を具体的に予測することはきわめて困難であると考えておるわけでございます。
  289. 市川雄一

    市川委員 そうではないのです。全然答えになっていないのです。ソ連が潜在的脅威だということは、私自身もソ連が脅威ではないとは思っていないのです。ソ連はやはりちょっと物騒だなという感じは受けているのです。だから、脅威がゼロだとは私は思っていないのです。そんなややこしい、潜在的脅威だなんということは言っていない。ソ連は脅威です。ただ、力で対処すべきではないというふうに私は思っているのですよ。だから、潜在的脅威なんというのはわけがわからない。私はゼロだとは思っていないのです。しかし、防衛庁や外務省が言うようなものではないというふうに私は思っていますよ。先ほどから申し上げていますように、要するに、ソ連の国をどう評価しているのかということを聞いているのです。潜在的脅威と言う以上は、顕在化する可能性を認めているからこそ潜在的脅威と言っているのでしょう。ソ連が意図を変えて脅威が顕在化する可能性が全くゼロだと見ているのなら、これは潜在的脅威でも何でもないわけではありませんか。違いますか。  それではお伺いしますが、ソ連がどういう政策をとったら、ソ連がどういう状態になったら、ソ連は潜在的脅威ではなくなるんですか。ソ連がどういう状態あるいは日ソ関係がどういう状態になったら、ソ連は日本の潜在的脅威国ではなくなるんですか、これをお伺いしましょう。どうですか。
  290. 大村襄治

    ○大村国務大臣 ソ連の軍事能力につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。極東にここ数年、質、量ともに目覚ましい増強をしております。また、わが国の北方領土に師団規模に近い軍隊も駐とん、配備させておるわけでございます。そういった点が変わってくれば潜在的脅威も減少してまいる、そういうふうに考えておるわけでございます。
  291. 市川雄一

    市川委員 それではお伺いしますが、SS20ですね、中距離可動式ミサイル。恐らく、シベリアから日本の東京まで約二千キロを十分で飛んでくるんじゃないか。MIRVで弾頭が三つついていますから、東京、名古屋、大阪に合わせておけば十分で日本の都市が全滅されてしまう、こういう核兵器ですね、このSS20というのは。これは日本は対抗手段があるのですか。潜在的脅威の一つの能力として挙げていますが、何かこれに対処するのですか。どうなんですか。
  292. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  SS20でございますが、先生御指摘のように、ソ連は大変これの開発に熱心でございまして、その一部が極東に配備されているというふうに考えるわけでございます。性能は大変よろしゅうございまして、弾頭が三個もあり、命中精度もいい。また、射程も先生御指摘のように四千四百キロ以上、日本列島がすっぽり入っておつりが来るぐらいの能力を持っておるわけであります。ですから、このミサイルの極東への配備は、わが国の安全保障にとって潜在的脅威の増大であると考えております。  これに対処することはどうかというお尋ねでございますが、非核三原則を堅持するわが国といたしましては、核の脅威に対しましては米国の核抑止力に依存することといたしております。このため、防衛庁といたしましては、日米安全保障体制の信頼性の維持向上に努めてまいりたいと考えております。
  293. 市川雄一

    市川委員 核のかさに頼るというのですけれども、しかし、元防衛庁官房長の竹岡さんも指摘しておられましたけれども、東京とモスクワは七千四百八十一キロ。これは戦略核兵器じゃないと届かないんです。戦域核や戦術核では届かない。いいですか。シベリア−日本は約二千キロですから、向こうは戦域核あるいは戦術核で十分間に合う。これにアメリカの核のかさを借りるということになると、アメリカは、御承知のように戦略兵器というのは、自国への核攻撃があった場合、アメリカ自身の報復攻撃が担保に入った兵器ですね、これを使うということは。この非対称性ですね。言われております。要するに、SS20はアメリカの核で対処できるのですか。アメリカはそのために、もし日本が核兵器でソ連からおどかされた場合は、自国の都市の犠牲を覚悟して応対しなければならないんですよ。そういうふうにごらんになっておるわけですか。
  294. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  私どもは、日米安保体制の堅持を目標として、平時からそれに備えておるわけでございます。また、アメリカも約束を守るということをしばしば言明しておるわけでございまして、日米間の緊密な信頼関係に立ってこの問題には対処していくことが可能でもあり、また、そうすべきであると考えておるわけでございます。
  295. 市川雄一

    市川委員 外務大臣にお伺いしますが、総理も施政方針演説の中で軍縮努力ということを訴えておられますね。外務大臣もたしかこの予算委員会で答弁されていらっしゃる。ただ、軍縮努力ということはおっしゃっておられるのですが、国連の舞台なり国際社会の舞台で日本らしい軍縮の提案というのですかね、軍縮を進めるための提案、何か具体的に用意をされていますか。どうですか、ことし。
  296. 伊東正義

    伊東国務大臣 軍縮の問題でございますが、これは核軍縮、通常兵器の軍縮、いろいろあると思うのでございますが、核の軍縮につきましては、日本世界で唯一の被爆国だという特殊事情がございますので、何とかして核兵器の広がることを防止し、それを少なくしていくという努力を日本としては、これはもう当然やらなければならぬことでございまして、ついせんだっての軍縮委員会でも、その中で、特に地下の実験の禁止を含めた包括的な核実験の停止という条約を何としても早くつくろうというようなことを委員会でも提案をし、前からも言っておりますが、強調し、あるいはそのほかの化学兵器の禁止というふうなことをつい二月十日にも日本は主張したのでございまして、前々から、当時の園田外務大臣が通常兵器の国際移転の、これは何としても無願則に移転をすることはいかぬということで提案をされたこともございます。  総理も私も、核軍縮あるいは通常兵器の軍縮のことにつきましては、これは世界の平和につながることだということで、努力しなければならぬということを施政方針演説あるいは外交演説でも申し上げたのでございまして、この秋にまた国連の総会がございますし、来年は軍縮の特別の総会があるわけでございますから、ことしは準備で二度ぐらい委員会が開かれます、そういうあらゆる機会をとらえまして、この問題については、日本としては日本立場からこうなければいかぬということを主張しようと思っております。
  297. 市川雄一

    市川委員 包括的核実験の禁止とか、非常に結構なことなんですが、これは、いまの世界情勢から見て、米ソがうんと言わなければとてもできないことですよね。まだ、SALTI、IIときましたけれども。これをやりながら、いわゆる核兵器の質の向上をお互いに競い合っておるのですから。これは断固やってほしいけれども、なかなか米ソはうんと言わないだろうと思うのです。そこで、できれば理想だけれども、なかなかできないということを——言うのはいいですよ、理想として、信念として強く持って言っていかなければならない。だけれども、もうちょっとできそうなことがあるじゃないですかね。現実的にできそうなことで軍縮に効果のあること、こういうことをもっと研究したらどうですか。  たとえば、一九七八年の国連軍縮特別総会でフランスのジスカールデスタン大統領が、国連の付属機関として平和研究所をつくったらどうか、こういう提案をしていますね。いわゆるスウェーデンのSIPRIの国際版ですね、そういうものをつくったらどうか。これなんかは、包括的核実験の禁止を求めることも大事ですが、また非常に重要な意味があると思うのですね。たとえば、いま英国の戦略研とSIPRIのデータと、あるいはアメリカの国防白書、こういうものが一応世界の東西の軍事バランスの分析の資料として、権威あるものとして使われておるわけですが、しかし、これはよく考えてみると、いわゆる米ソが軍事衛星を独占している、その独占状態でつかんだ情報で語られているわけですから、われわれはこれが間違っているのか正しいのか、どうなのかという判断がなかなかできない。米国があるとき軍事増強の必要を思えば、軍事増強が必要なような国際情勢分析を恐らくお書きになるでしょうし、そういうことなんです。それによって日本が、あるいはほかの国が左右されていたのではかなわない。  そうじゃなくて、国連の付属機関としてそういう平和研究所、軍縮研究する、あるいはそういう東西の軍事バランスをもっと冷静、客観的に分析する、そういうものが逆に米ソの軍拡競争を抑えていく。あるいはもう一つの提案として、国連の資金で軍事衛星を上げたらどうなのか、米ソ独占を破ったらどうかというような提案もなさっておりますけれども、この平和研究所に話を限定いたしますけれども、こういうできそうな具体的な提案ですね。  これも非常にむずかしいと思いますよ。簡単じゃないと思いますが、日本が国際社会で軍縮に活躍しているなとぴんと目玉になってわかるような、こういうものがどうもいま一つ欠けておるような気がしてならないのですね。だから、経済大国なのに——大国じゃないのですけれどもね、現実には。税金が重くて、住宅はまずくてということで、赤字が多いのですから。だけれども、国際的役割りを果たしていないじゃないかと批判が生まれてくるわけですよ。  だから、そういう軍縮という面で何か具体性があって、しかも現実性のある提案、こういうものをもっとどんどんやるべきじゃないですか。どうもさっきから聞いていると、十年一日のごとく、包括的核実験の禁止をただ訴えています。これは訴えているかもしれないけれども、すぐできない。もっとできそうな条件を持ったもので、日本軍縮に熱心だ、なるほどと説得力もある、こういうものをもっとやらなければいけないと私は思うのですよ。どうですか、外務大臣、何かそういうものをことし一つぐらいやるお考えがありますか。
  298. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま市川さんおっしゃったフランスの提案のものはもう実現しまして、スイスでできたのでございまして、もしも必要であれば政府委員から具体的に申し上げますが、これはできました。  いま市川さんおっしゃるように、何か具体的に少しでもできるものを考えたらどうかということでございますが、われわれも核実験の包括的な停止というものがすぐにできるとは思っていません。非常にむずかしいことでございますが、しかし、これはあきらめないで、あくまで実現するまで主張し続けるということは、これは大切なことだと思っているわけでございます。いま、われわれもわれわれとしていろいろ研究はいたしますが、せっかく御提案をいただきましたので、もし市川さんにいい考えがあれば教えていただけば、われわれも本当にそれは実現するように真剣に努力をしますので、もしもお持ち合わせであったら御教授願えればはなはだありがたいと思います。
  299. 市川雄一

    市川委員 これは行政改革とも関連しますけれども、やはり何というのですか、軍縮庁ぐらい持って、もっと予算取って、大蔵大臣いらっしゃいますから、軍縮の本格的な本腰を入れた研究体制を外務省の中につくらなければだめだとぼくは思うのですよ。それだけ申し上げておきます。  次に、先日、ある新聞、最近の新聞です、二月十五日付。時間がありませんので端的にお伺いしますが、英国の外務大臣とフランスの外務大臣、それから西独の外務大臣、この三国の外相がレーガン政権の対ソ政策、対中東政策に強い懸念を持っている、したがって、レーガン大統領と一連の西側首脳との会談の前に、レーガン政権の対ソ、対中東政策に対する強い懸念を会談の際にはっきり言えるように、会って話し合っておこうじゃないかという三国外相会議がボンで行われたと英国外務省が発表した。こういう動きがあることは承知しておりますか、どうですか。
  300. 伊東正義

    伊東国務大臣 私どもも、そういう集まりがあったということは連絡を受けまして、現地の大使館から聞いております。
  301. 市川雄一

    市川委員 これは確かに日本と米国では——もちろん、日米関係日本にとって非常に重要であることは理解しているわけですが、しかしまた、日本と米国では対ソ関係の利害が必ずしも全部一致してない。北方領土の問題あり、漁業交渉の問題あり、あるいは巨大な隣国であるということ、したがって日本は、ソ連と好ききらいは別にして友好親善をしていかなければならないという宿命を負わされているとぼくは思うのですね。だから、強いアメリカを目指すのだとソ連を力強く非難しているアメリカに、ただついていけばいいというものじゃないと私は思うのですね。また、対中東政策でも、PLOの問題一つ取り上げても、アメリカは非常に強い非難をしている。日本は非難する立場には全くない。全く違うわけですね。英国も西独もフランスも、それをやはり懸念しているわけですよ。会ったときに別々では弱いから、要するに共通の認識に立って物を言おうじゃないかということじゃないかと思うのです。  外務大臣。近く訪米されるようでございますが。イラン事件が起きたときには、対イラン制裁をどうするかということでずいぶん苦労された。結論として、当時の大来外相がEC諸国へたしか行かれて、EC並みの対応ということで足並みをそろえていたと思うのですけれども、今回外務大臣は、訪米を前にして、ヨーロッパにこうした動きがあることを承知していらっしゃるというようにいまおっしゃった、EC諸国に行かれる、あるいは意見を交換しておく、こういうお考えはありますか、どうですか。この間ヨーロッパへ行かれたばかりですけれども、これからのこういうレーガン政権、まだ姿がはっきりしておりませんけれども、対ソあるいは対中東政策で相当強硬な路線がいま予想される。どうも日本にとってそれはそのまま必ずしも同調できるものではないという立場でヨーロッパと話し合って、こうした問題を米国に対して対処をしていくというお考えがありますかと聞いているのです。
  302. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま市川さんおっしゃるとおり、日本日本としての独自な考え方があっていいということはおっしゃるとおりでございまして、たとえばソ連との関係でも、アメリカとソ連、日本とソ連との関係は違うことがあるわけでございますから、この点につきましては、十分日本の国益というものを考えて話し合いをするということでございます。  いまお挙げになりました中東の問題等ございました。これもアメリカ考え方と、たとえばPLOに対する考え方、これは日本は違います。ヨーロッパとも、私、この前十二月行ったときに話し合ったのでございますが、日本とヨーロッパは、PLOに対する考え方なんか非常に近いのでございます。アメリカとは若干違うというようなことがございますし、こういう問題につきましては、今度参りましたときアメリカに、日本のPLOの考え方とか中東和平の考え方ということは、はっきり言うつもりでございます。  ソ連との関係につきましては、過去においてもそうであったのでございますが、同じNATOの中にありましても、デタントの考え方とか若干の違いがあることは過去においてもあったわけでございまして、今度三国の外相が会われたということは聞いておりますが、わざわざヨーロッパへ行ってどうするということはいま考えておりませんが、その考え方も十分参考にしまして、アメリカと合うことは、意見の一致することは一致する、合わないところは合わないで、これはこうすべきじゃないかというような意見を独自な立場で言おうというふうに思っております。
  303. 市川雄一

    市川委員 防衛庁の大臣にお伺いしますけれども、ことしがちょうど五六中業の策定見直したと思うのですね。五六中業の策定の方向性というか、何かいまお持ちですか。大枠でこういう方向をやっていくんだというような方針をお持ちですか、どうですか。
  304. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  五六中業につきましてはまだ準備にも入っておらないわけでございますので、いまお尋ねのような事柄につきましては、直ちにお答え申し上げるわけにはいかないと思います。
  305. 市川雄一

    市川委員 防衛庁、この間、竹田統幕議長の発言、拝見していますと、専守防衛は必然的に国土決戦になるのだという非常に物騒なことをおっしゃっておりましたけれども、関連してお伺いするのですが、日本はいま都市型社会です。よく大ぜいの方から指摘されていますけれども、都市型社会。こういう都市型社会では、東京圏で約二千七百万人、大阪圏に千三百万人密集している。超過密の都市型社会。あるいは札幌は百万都市だ。これはもう食糧やエネルギーなどの供給のシステムが断ち切れても大パニックになるし、また、そこで市街戦など、戦車戦などという想定をされたらめちゃめちゃなことになりますし、この都市型社会、非常にもろい、脆弱性を持った社会ですね。  たとえば一例を申し上げますと、ちょっと古いですけれども、厚生省発表の七六年十月現在の人口調査、千葉、埼玉、神奈川、東京、一都三県で総人口の一億三百八十六万の二四%に達しているわけです。アメリカでさえも、一番人口の多いニューヨークからとって十の都市を足さないと、人口の二五%にならない。それからソビエトの場合は、モスクワから数えて百の都市を数えないと、人口の二五%にならない。中国は、千の都市を数えても人口の一四%にしかならない。日本は、東京と千葉、神奈川、埼玉、一都三県ですでに二四%という人口過密。これはもう非常に都市型社会。これはもし攻撃されたら、いろいろな意味のパニックが起きる。死傷者は多い。非常に脆弱な体質の社会構造になっている。しかも、太平洋ベルト地帯には重要な産業が密集している。  こういうことを考えた場合に、防衛庁のこの専守防衛のあり方、そういう都市型社会という脆弱性を持った日本の国土、その国土と日本人の生命、財産を守る、そのための専守防衛のあり方、これはもっと真剣にいま考えるときじゃないですか。専守防衛は必然的に国土決戦だ。そういう物騒な、上陸されてからではもう終わりですね。上陸されたら終わり。そういう意味で、限られた予算の中で、そういう日本の持つ脆弱性を踏まえて、しかも国民的な合意というものを考えながら、他国に脅威を与えない、こういう専守防衛の新しい兵器体系を私は考えるべきだと思うのです。  たとえば、戦車は何のために必要なんですか。どういう事態を想定して戦車を、いま二百六十両七四式戦車がある。それにまたことし、たしか六十両ですか、お買いになる。何で七四式戦車がそんなにたくさん必要なんですか、どういう事態を想定しているのですか、お聞きしたい。
  306. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、日本列島は細長く、しかも都市人口が多い。そういう点で、天然災害につきましても脆弱性があるということは、識者のつとに指摘されているところでございます。防衛についてもしかりでございます。  そこで、わが国といたしましては、平和憲法のもとで専守防衛を基本方針として対処しておりますので、この都市型社会にできるだけ迷惑を及ぼさないように、偵察能力を増強し、事前に情報をキャッチし、着上陸をできるだけ阻止する。そういった観点からいたしまして、通信なり電信なり、あるいはE2Cなり偵察機なり、そういったものを整備しているところでございます。また海岸には、上陸舟艇用のミサイルも、国産で開発しましたものを逐次配備いたしまして、着上陸をできる限り阻止するような工夫もこらしておるところでございます。  しかしながら、侵略の態様いかんによりましてはどうしても着上陸を阻止できないという可能性もあり得るわけでございまして、その場合に対する対処方法としましては、原則として自衛隊は粘り強く対処して、そして日米安保に基づく来援を待つということも考えざるを得ない。その場合に、戦車につきましてはもういろいろ、無用化しているという御説もございますが、現実の問題としては戦車が上陸してくるということもあり得るわけで、その場合にはできるだけ性能のいいもので対抗しないとならぬ。そういう観点でいま防衛計画、中業に盛りまして七四戦車を逐次整備している、こういうことでございます。  また、都市の住民の保護の問題、安全の問題につきましては、これは防衛庁単独ではなかなかやり切れない問題でございますので、政府全体として対処してまいりたい、さように考えておるわけでございます。
  307. 市川雄一

    市川委員 聞いていることは、戦車は何のためかと聞いているのです。簡単に答えてくれればいいのです。聞いていることには答えないで、聞いてないことには長く答えられると困っちゃうのです。丁寧ではなくて、的外れの丁寧では困るのです。  私が申し上げたいことは、防衛白書でもいろいろなところで指摘されておられますね、自分自身で。それから、この総合安全保障研究グループの報告書の中でも指摘されています。上着陸を防ぐ、そこへ鋭意力を入れていますと言うけれども、全然違うのですね。飛行機と戦車と護衛艦をそろえることにいままで熱中してきたわけですよ。それじゃレーダーサイトの抗堪性はというと、まる裸です、レーダーサイトは。全くまる裸。それで、高い飛行機を買うわけでしょう、一機八十四億円もするF15。それでは飛行場の抗堪性はというと、まだ掩体が二ついま入ったか入らないかということでしょう。それから、それでは護衛艦は何をやるのかというと、対潜水艦作戦だけ。だけということはないけれども、主に。防空能力ゼロあるいは対艦水上打撃能力もなし。これからようやく三隻、一隻、こういうお粗末な状態。  これはぼくは、そういう意味では予算のむだ遣いだと思うのですよ、専守防衛に対する。やはり飛行機に対して、飛行機じゃなくて防空ミサイル。戦車を上げちゃったら、日本の国土は終わりですよ。上げちゃならぬ。洋上で船を撃沈する対艦ミサイル、地対艦ミサイル、あるいは機雷で封鎖する、機雷封鎖能力、あるいは飛行機を早くキャッチする。ところが、レーダーサイトは全くまる裸。これはもし時間があれば聞こうと思っていたんですが、時間がありませんので、また別の機会にもうちょっと具体的にやりたいと思っておりますが、要するに正面装備と後方支援が全くアンバランス。いいですか。  それから、まず攻撃を受けると想定するのはレーダーサイトですよ。レーダーサイトをやられたら、目もつぶされ、耳もきかない。幾ら高い飛行機を持ってきたってどうにもならない。ところが、まだ熱心に、戦車を買いましょう、飛行機を買いましょう、六百億もする護衛艦を買いましょう。ところが、肝心の後方支援の態勢は全くできてない。ほとんどできてない。移動レーダー二個隊しかないじゃありませんか。そうでしょう。二十八カ所にレーダーサイトがあるけれども、全部まる裸で、やられたときはどうする。そのレーダーも旧式化しちゃっている。近代化しなければならぬ。それから、防空火器はどうかというと、ナイキもホークも全く旧式化してしまっている。いま、いわゆる精密誘導兵器というものが非常に進歩してきた。したがって、飛行機に対して、高いお金を払って飛行機を買ってやるよりは、むしろ防空火器でやった方が話が早い。あるいは船でやってくるものに対しては、船を買ってやるよりは地対艦ミサイルでやった方が早い。あるいは高速ミサイル、この方が威力が発揮できる。こういうものは幾らそろえても——レーダーサイトがりっぱになった、充実された、ほかの国は日本を脅威に思うかといったら、思いはしませんよ。攻めたらやられる、しかし攻めてくる能力はない、しかし攻めたらやられる、こういう能力を持つこと、これが本当は本来の専守防衛だと私は思う。なのに、いままでやってこられたことは違うことをやってきたのですよ。三幕の自衛隊が全部同じ予算でシェアが決まっていて毎年積み上げるだけ、こういうことをやっていたのでは、いつまでたったって本当の専守防衛の力もできなければ日本の国民のコンセンサスを得ることはできないのじゃないか、こう私は思うのです。  そういう意味で、ぜひ五六中業でこういう欠陥の是正に力を入れてもらいたい。そうしないと、せっかくの予算は全部むだ遣いですよ。——答弁要りません。結構です、答弁要求しておりませんから。時間がないから答弁は結構です、私の要望ですから。  私たちはそういうふうに思います、専守防衛のあり方。国土へ上がってしまったら終わりなんです。戦車は上げない。船でやっつけてしまう。飛行機は日本に入れない。防空火器でやっつける。そういうようにここにも指摘されているのです。少ない予算をいかに工夫して、専守防衛に役立てる工夫がいままで余りにもなさ過ぎたと指摘されているのです。そのとおりです。——いいです、もういいですよ。それだけ申し上げておきます。また安全保障特別委員会もあることですから、そこでゆっくり大臣と考え方をやりたいと思います。  せっかく環境庁長官お見えでございますから、話題ががらっと変わりまして、防衛問題から空きかんの問題に変わりますが、環境庁長官、最近、空きかんの回収の問題が日本の観光地を含めて、全国で問題になっておりますね。  京都で、その空きかん対策の条例をいまつくろうという努力をしていらっしゃる。これは実態をいろいろな形で聞いてみますと、現在、散乱しておる空きかんが総数で四十億個から五十億個ある。ほとんどが、各自治体がボランティアの皆さんの御活躍に依存してやっておる。たとえば、私の地元の鎌倉でちょっと調べてみたのですが、毎年、鎌倉市だけで二千五百万人の観光客が来るのですが、二千五百万個の空きかんが散乱している。ボランティアの労力で回収した場合、一個大体三十五個ぐらいかかるというのですね。五百万個を三十五円で回収したとして一億七千五百万。二千五百万個のうち二千万個は大体市のいろいろな形でやっていて、これは換算すると大体五円で一億円、五百万個はボランティア、これが一個当たり三十五円で一億七千五百万、こういう試算が出ている。かなり自治体にとっては圧迫しているんですよ。こういう問題もありますし、これは自治体の努力だけではもうどうにもならないのじゃないかと思うのですね、それは十分、大臣お気づきだと思うのですけれども。  そこで環境庁として、要するに自治体にも努力してもらう、知恵を出してもらう、環境庁も努力して知恵を出す、何か国でそういう自治体の努力が実るような手助けが必要なんじゃないか、こういうふうに思うのですが、その辺で何か、環境庁がどういうことをお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  308. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 時間がないそうですから結論から申しますと、これという決め手はまだ見つからないです。何せ一年間に百億個、かんが出るのです。その百億個は、散乱するものがいま五十億個というお話でしたが、もっとあると思います。  そこで、各自治体はみんな一生懸命になっておりますし、どういう形で一生懸命やっているかということは、去年の六月ごろから環境庁で調べております。そこで、業者も——私は、これは散らかす人が悪いんだと思いますよ、第一義的には。業者が悪いと言ってみたところで。しかし、ここまでくれば業者にも責任を持ってもらわなければならぬ。業者もそのつもりになっております。そこで再三にわたって業者とも会いまして、業者の方も体制を整えました。それから役所の方も、環境庁だけでなしに関係省庁みんな集まりまして組織をつくって対策を立てるようにしておりますし、それから、地方自治体にも集まってもらって、地方自治体にもどういうふうにしてもらうかというようなことをやっております。京都のやっていることは一つやり方、私は非常に敬意をもってその成り行きを見ているわけであります。
  309. 市川雄一

    市川委員 まあ時間があればもうちょっと、二、三この問題でお聞きしたかったのですが、いまの環境庁長官の御答弁で、どうぞその方向でぜひ御努力をいただいて、国もぜひ自治体の努力をバックアップしてやってほしいと思います。
  310. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 そこで、御心配いただいてまことにありがとうございますが、私は、すべて議員でも何でもみんなが、これは資源としてももったいないんだから、資源としてもったいないことをしないように、あらゆる機会にひとつ、われわれも一生懸命やりますから、先生方も各選挙区でもこれは言っていただきますように、ここでお願いするのはおかしいですけれども、お願いを申し上げるわけであります。  このごろ電力の問題もやかましゅうございますが、アルミかんは百億個のうちの二〇%なんです。これが再資源、リサイクルしないということによってむだになる電気の量は、山形県の一般家庭の電気の量と同じなんです、調べてみると。だから、電気が足らない足らないと言って、こんなむだなことをしておることは冥利に尽きますから、どうぞひとつ、あらゆる機会に先生方にもお願いをいたしたい、こう思うわけでございます。
  311. 市川雄一

    市川委員 済みません、もう一問。  これは運輸省と建設省とお見えになっていらっしゃると思いますが、高速自動車道における貨物自動車を対象とした休息施設ですね、これがないために運転手の休息が十分とれない。警察庁の調べでも、居眠り運転とかそういう事故が多い。したがって、これは何とか、業界だけの努力ではどうにもならない、国等の力をかりてぜひそういう方向をしてもらわないと、という要望がありますが、この点についての見解をお伺いしたいと思います。  それから、労働省の方にお尋ねしますが、その新改善基準というものを出しましたけれども、これは荷主とか荷受け人に行政指導でもっと徹底してもらいたい。そうしないと、幾ら新しい改善基準を出しても、実際一番に困るのはトラック業者でございまして、その二点をお答えいただきたいと思います。
  312. 飯島篤

    ○飯島政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、高速自動車道のトラック運行の安全の確保、特に過労運転の防止のためには、高速道路におきますトラック運転者のための休憩施設あるいは駐車施設の整備拡充が必要であるというふうに考えております。このために五十五年の一月に建設省、日本道路公団、全日本トラック協会、それと運輸省の四者で連絡協議会を設けまして、整備の推進方につきましていろいろ協議を進めているところでございます。
  313. 渡辺修自

    渡辺(修)政府委員 お答えいたします。  最近、東名、名神高速道路等におきまして非常に利用がふえてまいっております。駐車場も満杯というような状況でございますので、できましたときは約四千でございましたが、駐車マスをただいま約六千ほどにふやしております。  なお、休憩施設といたしましては、足柄にレストイン足柄というのをつくっております。利用を見ておりますと、どうも宿泊の利用がわりあい少ないようでございます。この辺の利用を見ながら次の施設等につきましても考えてまいりたいと思っております。
  314. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 新改善基準の実施に当たりまして、荷主団体の協力、また協力が得られなければなかなか進まないということも先生の御指摘のとおりでございます。これをつくりますときに、荷主団体等につきまして関係のところにそれぞれの要請を行った次第でございますが、さらに来年度におきましても、そういった徹底を期していくことにいたしておる次第でございます。  なお、具体的に改善基準の実施を阻害するようなものが荷主側のところにあるというような事例があれば、そういった点についても強力に要請してまいりたいと思っております。
  315. 市川雄一

    市川委員 終わります。
  316. 小山長規

    小山委員長 これにて市川君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十一分散会