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1981-02-05 第94回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月五日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       足立 篤郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    海部 俊樹君       鴨田利太郎君    倉成  正君       後藤田正晴君    近藤 元次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       細田 吉蔵君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    阿部 助哉君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       大原  亨君    岡田 利春君       中村 重光君    野坂 浩賢君       山田 耻目君    横路 孝弘君       草川 昭三君    正木 良明君       矢野 絢也君    神田  厚君       林  保夫君    寺前  巖君       中島 武敏君    不破 哲三君       藤原ひろ子君    松本 善明君       河野 洋平君    山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房会計課長         兼内閣参事官  鴨澤 康夫君         内閣総理大臣官         房総務審議官  和田 善一君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         行政管理庁行政         監察局監察審議         官       佐々木晴夫君         防衛政務次官  山崎  拓君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁長官         官房会計課長  永井 和夫君         科学技術庁振興         局長      宮本 二郎君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁長官官房         長       北村 和男君         環境庁企画調整         局長      藤森 昭一君         環境庁自然保護         局長      正田 泰央君         沖繩開発庁総務         局長      美野輪俊三君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁長官官房         審議官     柴田 啓次君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       萱場 英造君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省関税局長 清水  汪君         大蔵省理財局次         長       宮本 保孝君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      高石 邦男君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 吉田 壽雄君         厚生省環境衛生         局長      榊  孝悌君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省年金局長 松田  正君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房審議官    柴田 益男君         通商産業大臣官         房会計課長   宇賀 道郎君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省立地         公害局長    松村 克之君         通商産業省基礎         産業局長    小松 国男君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         運輸大臣官房長 角田 達郎君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設大臣官房会         計課長     杉岡  浩君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省都市局長 升本 達夫君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     足立 篤郎君   塩崎  潤君     近藤 元次君   砂田 重民君     倉成  正君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   不破 哲三君     藤原ひろ子君   松本 善明君     中島 武敏君   河野 洋平君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   倉成  正君     砂田 重民君   近藤 元次君     塩崎  潤君   中島 武敏君     松本 善明君   藤原ひろ子君     不破 哲三君   山口 敏夫君     河野 洋平君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山口敏夫君。
  3. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、新自由クラブを代表いたしまして、鈴木総理以下政府各閣僚に対し、内政、外交にわたってその姿勢考え方についてただしたいと思います。  さきの衆参ダブル選挙以前は与党野党の数が伯仲をしておった。伯仲国会状況は、与党よりはむしろ野党の中に責任政党意識というものが芽生えた。政策的にも政治的にも、国会審議等を通じまして非常に現実的、具体的な提案が行われるようになったと思うのです。私は、これは一つ議会政治の前進だと評価しているわけでありますが、いまはまだ、政権党である自民党の数がふえたわけであります。  鈴木内閣にとって初めての通常国会で、各党代表の本会議討論予算委員会等を見ておりましても、与野党伯仲時代のよき慣行は残っている。たとえば新自由クラブ田川代表も、鈴木内閣の国債二兆円減額の政策の支持でありますとか、総理が初めての外国訪問国としてASEAN諸国を訪ねた、こういうことに対しましても、是は是、非は非として率直に評価をしておるわけでございます。総理自身は、そうした本会議また予算委員会等におきましてこうした答弁を通じて、議会政治一翼を担う立場からどういう印象を持ってこれを伺っておったか、それをまず聞いておきたいと思います。
  4. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 山口さんから、先般の衆参両院同時選挙自由民主党両院において安定多数を確保した、こういう政治情勢下においても、伯仲国会時代に健全な傾向として生まれてきた建設的な与野党国会審議に当たっての取り組み、是は是とし、非は非として国政の審議に当たる、こういうよき慣行というものは生かしていくべきではないか、こういう御趣旨の御意見でございました。私も全く同感でございます。  私は自由民主党に対しまして、安定多数は確保したけれども、常にその数におごることなしに、謙虚な姿勢国会の運営に当たらなければいけない、こういうことを申しておるわけでございます。また野党においても、伯仲時代のそういう考え方というものがやはり依然として今日も生きておる。私は、そういう傾向を定着させていきたい、これが議会制民主主義の発展のためにも必要である、このように考えておるわけでございます。
  5. 山口敏夫

    山口(敏)委員 総理がそうした議会政治に対しての責任一翼を担うという固い決意にあることを聞いて私も安心したわけでありますけれども、他の質問者の方もときどき取り上げますので、総理にいやみに聞こえるかもしれませんが、どうも野党委員がまじめに論戦をいどんでも、紋切り型の答弁といいますか、官僚的答弁しか返ってこないという批判が依然としてあるわけであります。  また、この間のわが党の代表質問でも、たとえば経営論理政治の絡みの問題の中で、もっと不正行為をチェックしたり経営内容を公開させるような、いわばアメリカのSECのような制度も導入したらどうかという具体的提案についても、答弁漏れといいますか、答弁に対してのカットというのがあるわけでございまして、こういう、失言をすまいという気持ちが先に立ちまして、総理自身の哲学とか具体的な政策に取り組む姿勢というものが、どうも国民の方はいま一歩わかりにくいという批判が大変あるわけであります。  私もかつては自民党におりましたから、鈴木総理の人柄とかそういう誠実な姿勢というものは理解する立場にもありますけれども、やはり国会は申し上げるまでもなく議会政治の本舞台でありますから、私は、総理の揚げ足をとったり審議中断ということでなく考えておりますので、御自分の言葉で、考えで答えていただきたいと思うのです。  第一に、鈴木総理も、自民党内の派閥抗争の中でたまたま自民党の総裁になったということではないと思うのです。やはり国会において堂々と首班指名を受けて内閣総理大臣になられた。そういう内閣でありますから、人によっては、鈴木内閣佐藤内閣以上の長期政権になるのじゃないかということを考える人だっているかもしれない。しかし、今日の国会のやりとりを聞いておりましても、何かお役人さんの書かれた答弁、レールの上に乗って走っているような誤解を与えかねない。ひとつ総理政権担当にどのくらいの執念責任を持って取り組んでおられるのか、政権の問題が出ましたので、総理政権に対する姿勢もこの際伺っておきたいと思うのです。
  6. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私が首班に選任された経過等からいたしまして、本人自身が政局に執念を燃やして取り組んでおるというようなことではないのではないかという一般的な見方、私は、そういう政権に恋々としないということではそのとおりでございます。しかし、一たび首班指名をされ、政権を担当いたしました以上は、全力を尽くして国家国民のためにその負託にこたえる、そういう情熱と決意を持って取り組んでおるわけでございます。
  7. 山口敏夫

    山口(敏)委員 総理政権に対する姿勢もありますが、最初総理としての外国政治日程として、先ほども申し上げましたようにASEAN諸国訪問した。これはやはりアジアの中の日本アジアとともに歩む日本という立場においては、一つの見識だと思います。しかし、大変な歓迎を受けた総理ASEAN訪問でございますが、日がたつにつれて、現地の新聞とか情報を聞いておりましても、何かもらうものが少なかったというような評価印象になっているわけです。  私は、これだけの国際化時代、また貿易立国としての日本日本の世界に果たす役割りということを考えますと、経済協力の面で、日本国民理解のもとに政府がさらに国際南北問題等に真剣に取り組むということは当然のことだと思いますが、いままでの惰性的な無償援助でありますとかあるいは借款というものがばらまき福祉という批判と同じように、日本の対国際間の問題においてもそういう面があったのではないか。  たとえば、アメリカは軍事的な面で自由陣営、また同盟国への協力をする、日本軍事面でそうした協力ができるということはないわけでありますから、その国の福祉の面で協力をしていかなければならないということだと思うのですが、そういった一つ理念といいますか、経済協力等に対する日本政府姿勢理念というものが、いま一つ相手国に真意が伝わっておらないのじゃないが、こう考えるわけでありますけれども、総理はいかにお考えでございますか。
  8. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私の先般のASEAN訪問に関連いたしまして、わが国対外経済協力等のあり方、理念、そういうものについてお尋ねがございました。  私は、今回初めての訪問先としてASEAN五カ国を選んだ。そして実際に参りまして、ASEAN五カ国の首脳並びに各界の方々にお会いし、また住民生活に直接触れて、その状態を把握できた。ASEAN訪問最初に選んだということは本当によかったといまでも考えておるわけでございます。  私がなぜASEANを選んだかということは、アジアの平和と安定ということを考えました場合には、やはりASEAN地域というものが自立をし、また経済を繁栄させ、安定をしていくということがアジアの平和と安定にとっても必要であるし、ひいてはわが国の平和と安定につながる、こういう認識であるわけでございます。  私、参りましてまず感じましたことは、自立自助機運が高まってきておるということでございます。経済協力援助をやります場合におきましても、その受け入れ側自立自助の、活気のある、自分らで国の建設をやろうという意欲がありませんと、とかく従来言われたところの恩恵的といいますか、ばらまきというか、そういう経済協力になるわけでございます。しかし、今回私ASEANに参りましては、各国首脳も、また各界指導者地域住民も、自立自助機運というものが非常に高まっておった。そこに向こうの国々の現実的な要請にこたえて日本経済協力なり技術協力なりをやる、それがうまくかみ合って初めて経済協力成果が上がるわけでございますが、そういう状況が生まれつつある。私は大変タイムリーでもあった、こう思っております。  それから、やはり相互の信頼関係でございますから、一遍約束したことはこれを誠実に実行するということが必要でございます。福田元総理おいでになったとき、あるいは大平前総理おいでになったとき約束したことは、私の時代になりましてもこれを誠実にやはり実行に移していく、そこに日本は信頼できる国だということになるわけでございまして、私はそういう点に意を用いました。  さらに今回は、大衆が一番生活に直結しておりますところの農林漁業振興、農村の建設あるいは中小企業あるいは代替エネルギーを含めたエネルギーの開発あるいは人づくり、そういう問題について率直な話し合いをしたわけでありますが、これも現在におけるASEAN各国として一番望んでおった問題でございまして、その点においては非常に呼吸が合ったということであったと思います。  私は、これらの問題につきましては今後も誠実に、約束したことにつきまして協力をしていく。それから何よりも大きな成果は、ASEAN五カ国の各国首脳と人間的な信頼関係、友情というものを形成することができた、これが大きな成果であった、こう思います。
  9. 山口敏夫

    山口(敏)委員 外務大臣、いま総理ASEAN訪問の中で農業問題に対する協力も進めた、これは私は鈴木外交一つ成果だと思うのですね。やはり農林大臣もそうした訪問に同行された。  それで、外務省が、五十六年度予算のときに、日米関係を大切にする余りに防衛費の問題にまで相当首を突っ込んだ、こういう批判もあったわけでありますけれども、私は、いまの総理決意にもあるように、やはり日本が果たすべき役割りアメリカという国が果たすべき役割りとをきちっと線引きして、そして自由陣営同盟国福祉の向上に寄与すべきではないか、こういう姿勢が大事だと思うのですけれども、どうですか。
  10. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま山口さんおっしゃったことは、私も大切なことだと思います。特に、総理がいまおっしゃったように、第一回目の外国訪問ASEANを選ばれたということは、日本ASEANとの関係緊密化といいますか、日本アジアの一員として、アジアというものを非常に重視しなければならぬというのが総理のお考えでございまして、われわれも全然同感でございまして、ASEAN日本が緊密に、なっていく基礎は、もちろん工業化の問題もいろいろその国によってございますが、基本的には第一次産業をしっかりしなければいかぬ、そして基礎づくりをやらなければいかぬということをお考えになったのでございまして、そういう点に日本外交一つの大きな重点を置いているということは、これはもうアメリカASEANに対する重点の置き方と日本の置き方との内容の違いということは私はあってしかるべしと思います。先生の御意見に私は賛成でございます。
  11. 山口敏夫

    山口(敏)委員 それから、経済協力技術協力というものは年々ふやしていかなければならない、国民理解も得ていかなければならないということになりますと、外務省だけに四千億、あるいは一兆円にも将来いずれはなるでしょう経済協力、こういったものを任しておくわけにいかないと私は思うのですね。防衛費防衛費といって走り回ったところに代表されるように、もっとグローバルな感覚で日本国際関係というものを考えていただかなければならない。となると経済協力も、外務官僚の机の上でつくり出される提案、アイデアというものは、どうしてもその国の住民生活に密着しているとは私は言えないと思うのです。総理大臣をおだてるわけじゃありませんけれども、やはり農林大臣を同行するような姿勢の中に、一つ一つ経済協力の問題も技術協力の問題も考えていっていただかなければいけないんじゃないかということを一つ申し上げておきたいと思うのです。  そこで、私はそこまでは、総理外交一つ合格点といいますか、国際的評価だと思うのでありますが、その後、韓国大統領アメリカ訪問したわけですね。その前後、全斗煥大統領はわが因を訪問してもいいというアドバルーンがソウルにあったというふうに私は理解しているわけです。ところが、たまたまニュースを見ておりましたら、官邸を出るときの総理の立ち話のインタビューのニュースが流れておりまして、韓国大統領が会いたいのなら会ってやってもいい、話すというなら話し合ってもいいというようなコメントも放映されたんですね。私は、その総理の一言で韓国大統領が訪日を中止したとは思わないわけでありますけれども。しかし、日韓関係は、金大中氏事件も含めてこじれにこじれているわけですね。歴史的にも民族的にも非常に深い長いつながりがありながら、この両国間が一番遠い関係になっている。アジア訪問した総理一つ考え方、また、韓国大統領が、数多くの友好国の中で最初にトップバッターとしてレーガン大統領との会談を持った、いろんな意味でこのアジアの問題を率直に語り合うべきでなかったのか。私自身は軍事体制を認める立場の者ではありませんが、経済問題あるいは金大中氏の問題にしても、死刑から減刑になったからといって、これでまだすべて解決というわけではないと思うのです。同じ自由主義社会を築くアジアの同胞としての連帯というものの中に、こうした政治問題や経済問題へのかぎを解いていかなければならない。そういうときに、あれだけの政治関係、日韓の外交状況があったとするならば、どうして外務大臣をして、韓国大統領との会談を持つべく要請をしなかったのか。メンツが立たないとか、そういうことには決してならないと私は思うのですが、その点の総理の見解を承りたいのです。
  12. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 山口さんおっしゃるとおり、日韓関係は歴史的にも、また両国の長い友好関係からいたしましても非常に大切に私は考えております。アジアの平和と安定、これは日韓の友好協力関係を今後も維持発展をさせるということが大切だ、こう思っております。  そこで、全大統領が訪米の際あるいは帰途、日本にお立ち寄りになる、こういうような非公式な話もあったようでございますが、その経過につきましては外務大臣から御報告をいたします。
  13. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま総理がおっしゃったとおりでございまして、全斗煥大統領がレーガン大統領に会いに行かれるということが決まったときに、現地の須之部大使に向こうの外務部の長官から、向こうへ行く際、行きか帰りか別としまして、ちょっとお寄りすることができるだろうかという意味の話があったことは確かでございます。これは何も公文で来たとかそういうものじゃないわけでございますが、そういうお話があったということはございます。それで私の方は、日本としましてはその前後がちょうどこの予算の総括の最中ぐらいでございますし、お寄りになるということであれば、非公式にお寄りになるという話であったのでございますが、総理はいつでもお会いします。ただ、元首が来られることでございますから、元首が来られるとなりますと各方面の手配とかいろいろするわけでございます。そういうことには時間はなかなかないわけでございます、ちょっとの間ということは。その辺のところはなかなか準備ができないんじゃないかと私ども相談して考えましたので、その旨は大使を通して向こうへ、こういう状態でございます、しかし非公式においでになるならいつでも総理はお会いになりますということを伝えたわけでございます。これも文書とかなんとかそういうものじゃ一切ありません。その結果、余り時間がないし、向こうの事情で、大統領選挙もすぐある、あるいは国会議員の選挙もあるし、余り韓国を留守にしておくということもできないから、この際はその話はないことにして、いずれ将来お会いしてお話をすることもあるだろうからということで、今度はその話はないことにしようということになったわけでございまして、このことで日本韓国の間が気まずくなるとか、そういうようなことは一切なくて、気持ちよく話してそういうことになったということでございます。
  14. 山口敏夫

    山口(敏)委員 外務大臣、やはり大臣は役所と違いますから、やはり外務省外務省としての長い伝統とか慣行とかいうものもあると思うのですが、そこを政治家である大臣が調整をして国益を進めるというところにあると思うのです。だから、予算委員会があるから、物理的時間調整がつかないからということではなくて、私は、日本国際的な役割りの中においても、やはりアジアは選挙で言えば一つの地盤だと思うのですね。地盤がなくて選挙は当選できませんよ。そうでしょう。やはり自分たちのこの地域においては他の追随を許さないというぐらいの深い友好と信頼関係というものを築いていかなければならない。韓国のいまの政情というものは必ずしも是認できるものではありませんけれども、しかし、日本側が胸襟を開いて、そして率直に意見交換をする、そういう積み上げの中でアジア自由陣営が、民主化というものが一層促進される。そういう責任日本外交は、政治は、持たなければいかぬのじゃないか。ただ、経済協力をすればいい、無償借款をすればいいという考え方から一日も早く脱皮してもらいたいと私は思うのです。  大統領選挙はだれが当選するかわかりませんけれども、全斗煥大統領の就任式、それにだれか行くかということで、ばば抜きのカードを渡しっこしているような印象すら受けるわけでございますけれども、外務大臣総理大臣が行かれる計画があるのか、その辺ちょっと確認をしておきたいと思います。総理
  15. 伊東正義

    伊東国務大臣 総理がお答えになる前に私がお答えします。  政治的な大きな視野に立って日韓関係のことを考えなければならぬというお話は同感でございます。先ほど私、具体的には説明しませんでしたが、元首の来訪ということになりますと、やはり準備とかいろいろなことを考えなければならぬわけでございまして、単に予算委員会とか国会とかいう関係ではなくていろいろあるのです。ここで説明しませんが、いろいろございますので、さっき言ったようなことで今度はないということになったわけでございますが、いずれそういう首脳会談が持たれるということは必要だと私も思っております。それは時期、方法等ありましょうから、今後の問題として検討させていただきたいというふうに思うわけでございます。  それから、大統領の就任式は三月三日というふうに予定されておるということを聞いております。私のところへ韓国の崔大使が来られまして、口頭で、その予定でございますからしかるべき方の御出席をお願いしたいということを言ってこられたことは確かでございます。ただ、先生おっしゃったように選挙がまだでございますし、もう少し先のことでございますし、三月三日ということになると国会の方がどうなるかということも考えなければならぬこともあります。片や、向こうはしかるべき方ということの話でございますから、だれが行かれるかということは慎重に考えなけれればならぬということで、まだ内部で相談をしている段階でございまして、いまここでだれが行かれる予定だとか、そういうことまで決まっておりませんが、早急にこのことも内部的には話を決めなければならぬと思っております。
  16. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま外務大臣から御報告申し上げたとおりでございまして、いろいろな角度からいま検討し、考えておるところでございます。
  17. 山口敏夫

    山口(敏)委員 レーガン政権になりましてから、アメリカの対極東戦略とか外交姿勢はやはり変わりつつあると思うのです。そのレーガン外交をそのまま受け入れるのか、あるいはレーガン外交の特にアジア政策に問題があるとするならば、その軌道修正を日本側として率直に話し合われるのかということも、非常に大事なことだと思うのです。私は、そういう前提の上に立って、総理に日中関係の問題について伺っておきたいと思うのです。  日中関係を友好発展させるということは当然のことでございます。総理も、所信表明演説の中で一項目を起こして、これの決意をおっしゃっておられる。そこで、昨年十二月、第一回の日中定期閣僚会議が開かれた。成功したと言っている。そして、この実務的な深まりを通じて両国関係は一層安定し、発展するだろう、こう自己評価をされているわけですね。  ところが、どうも中国の情勢は厳しい。友好関係はあくまで友好的に維持しなければいけないと思うのですが、わが国経済、各企業との契約、成約がここへ来て非常に中止されている。南京などの大きな石油化学コンビナートなども、全部一方的に中止を通告されてきたわけですね。現在、中国は日本と同じように財政赤字、インフレ、失業――これはちょっと違いますけれども、いずれにしても三重、四重の苦しみの中にあるわけでありますから、こうした問題に協力の手を差し伸べなければいけないとは思いますが、中国との間でキャンセルされているプラントの規模、金額、実態、これを政府はどうつかんでおられるか。通産大臣ですか。
  18. 伊東正義

    伊東国務大臣 中国との関係は、昨年参りまして十二月に第一回の日中閣僚会議をやったわけでございます。そのときも、向こうの鄧小平さんでございましたか、経済調整の話が出まして、恐らく三、四年かかるのじゃないか、しかし、中国の長い将来を考えればこの際経済調整というものはどうしても必要だということで話があったわけでございます。それで大蔵大臣からも、変えるというようなことがあるときには前に連絡してもらわないといろいろ不都合なことも起きるからというような発言も閣僚会議であったのでございますが、その後、プロジェクトによりましては中止とか延期とかいうような話があることは確かでございます。  詳細につきましては、政府委員の方から、プロジェクト等については御報告申し上げます。
  19. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ただいま外務大臣から概要御説明があったわけでございます。いろいろ新聞にも報道されておりますとおり、相当規模の金額にわたるかと思います。第一義的にはこれは民間の問題でございまして、現在、中国の関係当局の代表が訪日し、あるいは西独にも参って、民間のそれぞれのカウンターパートといろいろ相談しておられる段階、かように承知いたしております。
  20. 山口敏夫

    山口(敏)委員 日中の国交回復、正常化には大ぜいの方々の努力と苦労の積み上げがあったわけでありますけれども、正常化後はいきなり、エコノミックアニマルではありませんが、中国フィーバーで、十分な事前調査ということもなく進出したきらいがあると思うんですね。これは自由主義陣営と違って、マーケティングリサーチみたいなものはできないから仕方がない部分もあるわけでありますけれども、これは単に、企業が利益主義で取っ組んでいったということではないと思うんですね。やはり一つの近代化政策とか国際友好という面も含めていったということを私たちは理解をしますけれども、しかし、そうした立場においても、政府立場における指導とか配慮というものについて、多少配慮に欠けるところがあったのではないか。もう少し国と国の、たとえば定期閣僚会議等の中で、やはり中国側も政府が窓口ですから、そういう点の調整役といいますか、そういうことがちょっと欠けていたのではないかというふうに思うのですが、これは通産大臣、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
  21. 田中六助

    田中(六)国務大臣 配慮が欠けておった、あるいは単なるフィーバーで行っておったような結果もあるのではないかという御質問でございますけれども、やはりプロジェクトでございますし、理外の理とでもいったようなところがあるわけで、そう簡単にこれらを進めておるのではないと思います。  ただ、向こう側の意向は、宝山の製鉄所あたりの破棄は正式に通告してきておりますけれども、その他のことにつきましてはペーパーだけで、正式に破棄というようなことを通告してきておるというようなことは確実にはつかまれていないのです。したがって私どもは、向こうの国内情勢も心配しておりますけれども、国内のことにつきましてもおいおい関係者と話を進めておる段階で、実態を正確につかめないというのが現状だと思います。
  22. 山口敏夫

    山口(敏)委員 では、もうすでに契約済みで生産を始めたり、あるいは船積みしたプラントもあるということも聞いておるわけでありますし、契約の損害が二千億とも二千五百億とも言われておるわけですが、そういう実態は政府はまだつかんでおらないということですか、通産大臣。
  23. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほども申しましたように、正確な実態はまだつかんでおりません。
  24. 山口敏夫

    山口(敏)委員 では、もしこうした実態が出てきて、損害が出てくるという形になったときには、政府としてはどうお考えですか。
  25. 田中六助

    田中(六)国務大臣 日本だけではなくて、西ドイツ、イギリスあたりもあるわけでございまして、国際的にもこれらの国々とも御相談をしなければならないというような考えを持っておりまして、いずれにしても、その前に確実なことを把握しなければならないというふうに思っております。
  26. 山口敏夫

    山口(敏)委員 仮に輸出保険のようなものの運用でこの問題を処置するということになると、日中関係は非常に困ったことになると思うのですけれども、そういう点は具体的に企業から内々相談を受けるとか、そういったことはまだないのでございますか。
  27. 田中六助

    田中(六)国務大臣 もちろん山口委員御承知のように、新聞報道などにはそういう輸出保険などのことについても、まあ私に言わせれば先走って報道されている部分もございます。しかし、先ほどから申しますように、まず実態をつかむことが先決でございまして、財界の一部などとも全く相談がないということはうそでございまして、それぞれの企業にとっては非常にこたえることでございますし、話し合いをしておる部分もございますけれども、先ほども申しましたように、実態の把握ということをいずれにしても先決にしなければならないということは、私どももそう思っておりますし、民間でも、それは私どもが想像する以上に焦って、その方に突っ込んでおるのじゃないかというふうに思います。
  28. 山口敏夫

    山口(敏)委員 では、実態が出てきた場合においては、その輸出保険の適用も含めて政府は検討する、こういうことでよろしゅうございますか。
  29. 田中六助

    田中(六)国務大臣 まあ、そういうようなことも当然考えの中には入れておかなければいけないのじゃないかというふうに思います。
  30. 山口敏夫

    山口(敏)委員 総理政府は、日中の経済問題は、中国側と慎重に検討していただいて、中国側の苦しい状況にも十分配慮した結論を出す必要がある。やはり日中関係は永遠につないでいかなければいけないわけでありますから、そういう立場で、経済再建の問題でありますとか、日本も大変ですけれども、やはりアジアの民生の安定、またアジアの平和、いろいろな角度から、経済だけで済む問題ではないと思うのですが、そうした点につきまして、総理政府を代表しての、この日中問題に対する一つのお考えを再度伺っておきたいと思います。
  31. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日中関係は、お話しのように日本の重要な隣国でございますし、アジアの平和と繁栄の見地からいたしましても、日中関係を今後も安定的なものにしていかなければいけない、発展をさせていかなければならない、そういう考え方を私も持っておるわけでございます。  ただいままでのように日中関係は心情的なものであってはいけない。もっと成熟した実務的な面にも十分目を向けまして、そして経済問題は経済問題として、私は、よく相互が納得するような形で処理されなければならないものだと考えております一御指摘のように、今回いろいろな問題がございましたが、日中関係は非常に長い目で、今後私どもは大切にこれを相互に発展をさせていかなければならないことでございますから、そういう心組みで取り組んでいきたい、こう思っております。
  32. 山口敏夫

    山口(敏)委員 中国との関係も、日米関係、日中関係、そういう関係の中でやはりアジアの平和と安定を促進をしていく。レーガン大統領になりましてからの極東の戦略が変わりつつあるのじゃないか。全斗煥大統領の訪米も含めて、カーター政権とかなり趣を異にしておるわけです。しかし私は、中ソ関係、こうした軍事バランスが崩れても直ちに日本の不利益につながるということも含めまして、やはり外交問題を通じて日本の平和と安全というものをあくまで考えていく。あくまで外交主権の立場から日本の平和、安全というものを考えていかなければならない、こう考えるわけでございます。  そこで、私たち新自由クラブは、日本の自衛力並びに自衛隊の存在を認知し、これはもうすでに国民的合意の認識に立っている。国会決議ということを佐々木委員長提案されましたが、そうしたことをするまでもなく、自衛隊の国民理解、コンセンサスはもう成立しているという立場に立っておるわけでありますが、たまたま竹田統幕議長の発言でこの予算委員会も一時中断をした。これは政策論とか財政論と違いますから、やはりその発言の評価をめぐって見解が対立することも当然のことだと思いますが、その閣議の席で――私たちは竹田発言をことさら政治的な問題、また政治的な一つ責任ということを申し上げる気持ちはありませんが、閣議において、これは当然のことじゃないか、こういう趣旨の応援演説も大分あったということも新聞等のニュースで伺っておるわけであります。  中川長官、奥野法務大臣から、ひとつ竹田発言に対する閣僚としてのお考えをいま一度伺っておきたいと思うのです。
  33. 中川一郎

    ○中川国務大臣 竹田統合幕僚会議議長の発言の趣旨は三点ございます。  第一番目には、専守防衛というものは非常に犠牲の伴うものである。これは軍隊の犠牲のみならず住民の犠牲も伴う、こういうことが第一点でございます。  第二点は、徴兵制度を政策的にとらないということはいいにしても、憲法十八条等からいって支障があるということになれば、これは自衛隊の士気といいますか、そのものにも関係することである。  第三番目は、防衛費がGNP一%に対して三%ぐらい必要である、こういう趣旨であろう。  こういういずれの点も、現場を預かる者としてはそういう気持ちを持つことはあっていいのではなかろうか。ただし、そこがわが国ではシビリアンコントロールによって、現場を預かる者に任せないで、それをどう政治的に組み入れるかあるいは退けるかという判断の問題だけであって、意見を言ったからといってにわかに四十六条によって処分すべきものではない。ただ、言うべき場所あるいは時期等に問題があるとすれば内部において注意するということはあっていいのではないかということでございまして、これはきのう民社党の塚本委員も指摘しましたように、シビリアンコントロールはシビリアンがコントロールしていくところにうまみがあるのであって、だからといって制服組が意見を言えないという性質のものではない、こう判断したからそういう趣旨の発言をいたしたわけでございます。
  34. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私も「宝石」を読みまして、ことさら意図的に政府批判する気持ちでインタビューに応じておられるわけではないな、こう感じたわけでございます。  同時に、私たちが自衛隊の中でどういう意見があるか、どういう議論がなされているかということを常時把握する、そういうのには大変参考になったな、こう感じたわけでございます。  同時に、シビリアンコントロールの問題は常に重要な課題としてわれわれ考えていかなければならぬわけでございますけれども、それには何としても制服が防衛庁を信頼している、この体制を崩してはいけない、これは私は大変大事なことだと考えるわけでございますので、そういう意味合いにおいて、防衛庁長官がここで言明をしておられる、その線が崩れると私は信頼関係が壊れるのじゃないかなということに懸念を持ちました。  同時に、シビリアンコントロールの基本は国会じゃないか、国会がしゃんとさえしていれば何も心配は要らないじゃないか、こういう判断もいたしているわけでございまして、そういう考え方を持っているわけでございます。
  35. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私たちも竹田統幕議長の発言を全部否定しているわけじゃないのですけれども、そのGNPの三%論も含めて、中川長官、応援団長として認めておるわけですか。
  36. 中川一郎

    ○中川国務大臣 一%というのは、わが国経済力等から見て一%が必要であるというシビリアン的な……(山口(敏)委員「三%」と呼ぶ)いや、一%ということが決まっておるわけですね。とりあえずは〇・九%ということで努力をしている。しかし、専守防衛ということで、守るだけでいくということになれば、相撲でも、立ち合いに向こうがぶつかってきてからやるというようなことであれば横綱でも十両になかなか勝ち切らないのではないかということになれば、専守防衛に徹するとすればやはり一%では守り切れないという願望を言ったまでであって、それは一つの現場を預かる、国を守る気概のある者ならばそれぐらいの気持ちを持つということは当然であって、ただ、それが許されるかどうかということについては政治家が判断すべきことであって、意見を言うことまで阻止するものではない、こういう判断でございます。
  37. 山口敏夫

    山口(敏)委員 政治家がシビリアンコントロールをする。やはり政治家だけじゃなくて、国民的なシビリアンコントロールというものが一番大事だと思う。  その三%の非常に大事な問題は、GNPの三%を防衛費に使うと、これは大蔵大臣、核兵器まで含めるぐらいの規模になるのですね。徴兵制とか核兵器とか、あるいは憲法改正、そういうボリュームが、GNPの三%を現在のわが国防衛費に割くとするならば、そうしたところにまでボリュームが上がるという前提だと私は思うのです。それも含めて、制服組がそのぐらいなければ守れないのだという考え方と私はある意味においては同一視することもできると思うのですが、総理大臣、ひとつその点をいま一度、昨日も政府見解は承りましたけれども、シビリアンの最高責任者としてお考えを聞かせておいていただきたいと思うのです。
  38. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今回の竹田発言につきましては、昨日の予算委員会におきまして政府の見解は申し上げたとおりでございます。それに尽きるところでございます。  私は、今後におきましても、現場を預かる制服の幹部というものは、予算であるとか政策の問題にかかわるような問題は、防衛庁長官意見を具申をするとか、順を追うて適切にやるべきであって、場所であるとか時であるとか、また内容等においてはしばしば逸脱する場合があるわけでございますから、防衛庁長官に対して意見を具申をする。また私も、できるだけ制服の幹部とは機会をつくりまして意見をお聞きしたい、吸収をしたい、こう思っております。
  39. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、GNPの何%ぐらいがわが国防衛費として適切かということについては、一%が妥当なのかあるいは一・二%程度までが一応穏健なのかという議論はあると思うのですが、やはり二%論、三%論というこの議論の中に含まれている防衛思想というものについては、総理以下政府が十分内容を認識して発言をしていただかなければならないと思うのです。今日、世界の軍事費が約五千億ドル、百兆円ですよね。百兆円のうちの三分の二がアメリカとソ連の分担に成り立っておる。五千億ドルの金を使えば世界の難民も飢餓も救えるとか、いろいろ議論はありますけれども、とにかくこの膨大な天文学的な数字が国を守るという防衛費のために使われている。そこに、世界銀行の報告にもありましたように、国際インフレの大きな原因の一つにもなっておるわけでありますから、われわれ新自由クラブも、わが国の自衛力、この環境整備というものにつきましては、政府の方針に対して是は是、非は非としても、ひとつこの機会を通じてシビリアンの実を国会立場でも進めていきたい、こう考えておるわけです。  私は、竹田統幕議長の問題の中で非常に思い起こしましたのは、故アイゼンハワー大統領が、大統領をやめるときに、産軍体制に警告を発して、「冷戦に入ってから、アメリカの企業家は、強力・高性能な兵器さえあれば対ソ優位が保てると主張し、政治経済界、国民心理に大きな影響を与えている。しかし、強大な軍事力でアメリカの安全が保障され、今日すべての難問が解決できると考えるのは幻想でしかない。われわれはこの誘惑にかられてはならない。今日この核兵器競争の危険度はますます増大をしている。軍縮はわれわれが誇りと自信を持って実現すべき至上命令である。軍縮は理想を持って実現すべき至上命令である。」、こういう職業軍人であったアイゼンハワーの見識。また、イスラエルに有名なダヤンという将軍がいます。外務大臣も務めましたけれどもね。そのダヤンが日本へ来たときに、「愛国心とは武器を持って戦うから生まれるものではない、祖国の自然の美しさとか、民族の歴史とか、伝統、芸術、文化、そうしたものへの愛情の中にこそ愛国心は育つのだ。戦争は何らの問題の解決にはならない。政治外交こそ平和を生み出す最大の武器である。」、こう言っているわけですね。  私は、制服組の方々がああいう形でしか発言することができないということについては、もっともっと開かれた、総理防衛庁長官もひとつ胸襟を開いた考え方を求め合うことが必要だと思います。しかし、基本は、単に、そういう栗栖さんの超法規発言とか竹田統幕議長が発言したからといって、それに妥協するような形での、一つのその場逃れの改善策というものは、長い視野で見れば決してプラスではない。日本の平和と安全を守ってくださる自衛官、防衛庁の責任は重大であるわけでありますから、そういう点を十分踏まえて、私は、アイゼンハワー大統領、ダヤン将軍の、その防衛に対する職業軍人としての見識というものをひとつ十分踏まえて、防衛庁長官にも今後の活躍をしてもらいたいと思うのですが、ひとつ御意見、所感を伺っておきたいと思います。
  40. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま貴重な御意見をお示しくださいまして、非常に感銘をいたしているわけでございます。  私といたしましては、防衛庁内において濶達な議論が行われる、そして防衛庁の使命達成に資することが最も必要であると考えている次第でございます。そのためには庁内の信頼関係が一番必要である、その点を就任以来苦心をしているところでございます。  たまたま今回の竹田統幕議長のインタビューの問題が起こりまして、国会でいろいろ御迷惑をおかけしましたことにつきましては、私は深く反省をいたしているわけでございますが、ただいま御指摘のような点を踏まえまして、部内の意見が濶達に行われるように今後さらに努力しますとともに、責任のある立場にあります人がいやしくも誤解を招くような発言をしないように指導してまいりたいと考えるわけでございます。そういう意味で、本人に対しましては昨日厳重な処分をし、注意をしたところでございます。  以上、お答えします。
  41. 山口敏夫

    山口(敏)委員 時間があと三十分しかなくなってしまいまして、教育の問題、財政の問題、行政改革、いろいろ伺いたいのですが、ひとつ答弁を簡潔にお願いしたいと思います。  ことしの予算の国債の二兆円減額という政策は、私は、総理大臣、大蔵大臣は大変努力されたと思うんです。しかし、その歳入の部分を全部これは増税増税ということで進めておる。確かに行政改革あるいは歳出の削減、いろいろ圧縮して努力の跡もうかがえますけれども、やっぱり国民の側は、歳出の削減に対する努力よりも、安易な増税に頼ったという気持ちの方が強いと思うのですね。  私は、総理、レーガン大統領が就任をした際、「強いアメリカ」、「大きなアメリカ」を復活するんだ、こう言って海の向こうから私たちは耳が痛いほど聞かされたわけでありますけれども、そのレーガン大統領最初に署名した仕事は公務員の新雇用の凍結なんですね。要するに行政改革なんですよ。小さい政府をつくるということなんですね。そういうところに私は政治家のリーダーシップというものがあるんであって、やっぱり行政改革というものに対する決意がどうにも欠けるうらみがあるんではないか。  渡辺大蔵大臣も行革とか歳出の削減に努力したという認識があると思うのですが、ちょうど大臣が去年この予算委員会で、質問者立場で、時の総理や大蔵大臣に、行政改革なんというのはやったって金目のものは何もないのだから、たてまえで言えばいいのだ、政治姿勢として必要なんであって、財源の問題としては当てにできないのだ、こういう趣旨の質問をしておりましたけれども、それじゃ、せっかくこの中期財政展望を大蔵大臣が出して、これは大型間接税とか一般消費税ということじゃなくて、これだけ金が必要なんだからその分は歳出の削減や行政改革でやるのですよという説明をしても、わずか半年の間に、攻める側と守る側との立場を変えただけでそれだけ政策が違うということではないと思うのですね。その辺の御自分の内なる矛盾をどう整理しているのか、ひとつ伺っておきたいと思うのです。
  42. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、行政改革は政治姿勢だけであっていい、そういうことを言った覚えはございません。(山口(敏)委員「いや、委員会で質問しているんだ」と呼ぶ)いやいや、違います。私の言うのは、行政改革をやらなければならない、しかしながら、結果的には大きな金目は出てきませんということを言ったんです。やらなかったならば大変なことになるのです。今回も、たとえば定員削減でも、行管では七千人以上の定員削減をしているわけです。しかしながら、一方でかなりな数がふえているわけです。文部省だけでも、医科大学をつくったりなんかして、中途でやめられないから二千八百人もふえているというようなことで、最終的には百何人しか減らない。そうしてみると、行政改革をやってもすぐには何千億、何兆なんという金目はどこからも出てこないのです。しかし、やらなければならないということは私は同じなのです。行政改革は遅効性のもので速効性のものじゃない。これはやる意思は十分ございますし、中曽根行管の方でもかなりやっておるというのが事実でございます。
  43. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そこで、財政再建元年も結構でございますけれども、やはり私は、国民の方々も赤字財政、財政再建しなければいけないという理解は広がっていると思うのですよ。何とかしなければいけない。しかし、急激な増税政策でこの財政再建を進めようとすると、せっかく国民理解しつつあるのをまた逃がしてしまう、逃がしてしまうと言うと語弊がありますけれども、また気持ちが離反をしてしまう。だから、財政再建を六十年までにやるんだやるんだというものを少しずらして、少しずつずらしながら、なだらかな形でこの赤字国債を調整する、一方においては歳出の削減をする、行政改革をするということになれば、政府決意国民理解し、国会もまた行政改革に協力をする。これは各政党間でいろいろ考え方もありましょうけれども、すでに新自由クラブ、民社、公明、社民連、四党も行政改革案を出していますね。自民党の数も足せばともかく三百数十名ですか、三百五、六十名の人が行政改革に取り組むということであれば、大蔵大臣がいろいろテレビで、国会があるからなかなかできないんですということもないのじゃないかと思うのです。そうして増税を伴わない、もう少しなだらかな財政再建計画というものができないものなのか、その努力をしておられるのかどうか、ひとつ伺っておきたいと思うのです。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 赤字国債をいつから脱却するかというのは議論のあるところなんです。山口委員のように、六十年以降でもいいのじゃないかという御主張の方もございます。しかし、私どもといたしましては、総理がたびたび国会でも申し上げているとおり、六十年になると本格的に赤字国債を返済しなければならない時期になる。そうすると、片一方で赤字国債を返済する財源を用意しながら、一方また赤字国債をなくすその方にも財源が必要なわけですから、ダブりの財源を一年に重ねるということは、これは非常に綱渡りみたいなもので危険である。したがって、五十九年までに脱却をするという方針でやっておるわけでございます。  いずれにせよ、消費的な経費に使われる赤字国債というものは、できることならば一日も早く脱却をした方がいい。しかも、二兆円ということを決めても私はそう無理なことじゃないんじゃないか。今回も、要するに二兆円は四兆五千億の自然増収の中で吸収されたと私は見ておるのです。したがって、一方において当然増経費が一兆九千億もあるわけですから、その一兆九千億を賄うためには、要するに自然増収は赤字国債と国債費とそれから地方交付税で消えてなくなってしまうわけですから、一兆九千億になんなんとする当然増、必然的にふえる経費、それをそのままそっくり税金で取るとすれば、二兆一千億円増税が必要なんです。そういうことはできない。そこで極力われわれとしては切り込むものは切り込んで、結果的には一兆四千億弱の増税にとどめて、しかもそれらの必然増の経費もほぼ抑えるところはある程度抑えましたけれども、いろいろなその他の経費の切り込みあるいは抑制というものをやって、一兆四千億の増税で一兆九千億円以上の新規の政策や当然増も消化をしてきたということは、かなり経費の切り込み、抑え込みもやったということも御了承願いたいと思います。
  45. 山口敏夫

    山口(敏)委員 しかし、そういう努力をした、そのしたという反面で、また何がけさの報道でも、税制調査会で所得税の仕組みを全面的に見直して、五十七年度に完全実施するというようなことも言われている。それは事実ですか、税制調査会で所得税の仕組みを見直して、所得税の増税を目指すということを検討したというのは。
  46. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 けさ一、二の新聞に、五十七年に所得税の改正を実現するように検討を始めたという税制調査会についての記事が出ておりましたが、そのような事実はございません。
  47. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ないですか。確かに、所得減税しろ、所得減税しろというときに所得税の増税を進めるとは、幾ら何でも破廉恥過ぎるのではないかと思うのですけれども、一応そういうことであれば、ひとつ国民の所得減税に対する願いも十分受けとめてもらいたいと思うのです。  日銀総裁に来ていただいているわけですが、増税一色になった五十六年度予算は、ほとんど歳出の削減が行われておらない。中期財政展望から見ても大型消費税の導入が考えられている。こういう国民生活を圧迫する予算を総裁としてどう受けとめておられるか、ひとつお答え願いたいと思うのです。ちょっと時間が少ないものですから
  48. 前川春雄

    ○前川参考人 私どもの立場から申しますると、いまの国債の発行額が大き過ぎる、そのために金融面でも幾つかのひずみが生じておるわけでございます。そういう意味で財政再建ということはぜひ実現していただきたい。そういう見地から二兆円の国債の減額を来年度から実施していただくということは、そういう線に沿うものとして、私どもとして大いに望ましいことであろう。財政再建のためには、来年度だけでなしに、やはり後また続けて、再来年もこれを継続していただく必要があるというふうに考えております。
  49. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、円相場とか物価問題、景気のかげり、いろいろあるわけでありますけれども、やはり金融政策で不況を乗り越えていかなければならない、こういうふうに思うわけであります。そのためにもどうしても物価というものが安定しなければならない。きのうも矢野議員と河本長官とのやりとりの中で、消費者物価が八%ラインに迫るのではないか、こういう見方もあるわけでありますけれども、これは与野党が物価対策として五百億の調整財源、まだ三十億しか使っていないのですか、野菜その他、ひとつそういった点で緊急的に二月、三月、どう対処されるのか、河本長官にひとつ、具体的な施策があるならば進めていただきたいということも含めて御発言いただきたいと思うのです。
  50. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 当面の物価対策の焦点は野菜対策でございますが、五百億の物価対策費はほとんど残っておりますので、これはどう使ったらいいか、四党の間でやはりある程度御相談をしていただきまして、それを受けて政府の方でも対応したい、こう思っております。
  51. 山口敏夫

    山口(敏)委員 四党のと言っても、もうすでに野菜等いろいろ自然現象の中で高騰を続けているわけでありますから、経企庁として直ちにこういう物価政策として講ずる施策はないのか、ここで再度伺っておきたいと思うのです。
  52. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 実は、何しろ異常気象という背景がありますので、なかなか有効な対策を早急に立てにくいのでございます。そこで、いま考えておりますのは、政府の持っております野菜の備蓄を放出することと、契約栽培をしております冬物野菜がございますので、これをできるだけ早く市場に出すということ、そのほかに、いま御指摘の五百億の一都を使って、何かさらに追加の有効な方法はないか、実はひそかにいま案をつくっておるところでございまして、一両日中に具体化したいという……(山口(敏)委員「どういうことをつくっているか、ちょっと言ってください」と呼ぶ)要するに、品質の悪い野菜などでもかき集めてこれを市場に出すとか、あるいは外国からできるだけ輸入をするとか、それから、いまからでも野菜の作付面積をできるだけふやすように協力をしてもらうとか、いろいろな方法がございますので、実はいま内々案をつくりまして、四党の方々と、多分きょうじゅうに御相談の運びになるのではないか……(山口(敏)委員「その内容について」と呼ぶ)いま申し上げたとおりでございます。
  53. 山口敏夫

    山口(敏)委員 じゃ、外国から野菜等を輸入してまで物価の鎮静化のために有効な手だてを講ずる、こう理解していいわけですね。  とにかく、大蔵大臣も、糖尿病を治すために急激に心臓病になっては困るという表現をたびたび使われるわけですけれども、庶民生活にとっては物価問題が心臓ですから、やはり心臓に響かないように先手、先手とひとつ対策を講じていただきたいと思うのです。  私はいろいろ財政論議――時間がありませんけれども、とにかく五十六年度は海外需要に依存できない。どうしても内需を喚起しなければならない。内需も財政再建で、増税路線で、これもまた民間需要に期待しなければならない。いろいろ考えていきますと、政府としての物価対策と同時に、やはり金融政策以外にないのですね。いろいろ日銀総裁は慎重な発言をしていますけれども、予算委員会でも、もうすでに各党議員がそれぞれ質問されているわけですが、その金融政策について最終的にどう考えておられるのか、ひとつ総裁から再度伺っておきたいと思うのです。
  54. 前川春雄

    ○前川参考人 金融政策をどういうふうにするかという点につきまして、私どもの基本的な考え方は、金融政策は機動性が特色でございますから、機動的に対応するということを旨と考えております。  いまの経済状況はかげりも出ておりますが、物価その他はかなり落ちついてきておるわけでございますが、いま日本の金利水準、国際的に言いまして、スイスを除いて世界で一番低いわけです。そういうことから、この金利水準を下げるということがなかなか下がりにくい環境にある。消費者物価の問題も非常に落ちついてはきておりますけれども、これも市場金利との関係で金利の資金配分機能ということも考えなければいけない、そういうところをあわせまして、しばらく環境の整うのを見きわめたいというふうに考えております。
  55. 山口敏夫

    山口(敏)委員 公定歩合の再引き下げも含めて金融政策でひとつ民需を喚起してもらいたい、こうお願いしたいと思います。  それから最後に、教育の問題、環境アセスメントの問題、いろいろ取り上げたかったわけでありますけれども、私は、総理以下各閣僚に最後にまとめて答弁していただきたいと思うのですけれども、校内暴力を初め非常に教育環境が荒廃をしておる。新自由クラブは教育立国を掲げておるわけですが、総理は二十一世紀への足固め、私は二十一世紀への足固めというのはやはり人づくりだと思うのですね。二十一世紀論のようなモダンなものを振り上げるよりも、むしろ総理は明治の人らしく温故知新で、古きを温め新しきを知るという姿勢の方が今日的ではないか。  たとえば教育の問題一つとりましても、六・三・三・四年制という制度、これがもうすでに今日的な対応になっておらない。やはり中学三年また高校三年の一番大事な時期に受験、受験で追いまくられている。そういう問題も、ひとつ制度を中教審の答申どおり検討する必要があるのじゃないか。  それから、新自由クラブが芸術のための一%システム、これは小学校、中学校の建築物の一%を芸術や文化に供しよう、これが大蔵大臣、百八十万円しか調査費がついてないんですよ。やはり子供の情操を、物、物、物、金、金、金の風潮から脱出させるためには、もっと情操教育を広げていかなければならない。だから、ただ刑務所みたいな、小学校があればいいんだということじゃなくて、やはり芸術や文化の触れ合いの中に義務教育を過ごしていく、これも大蔵省、全然つけてないですね。私は、大蔵大臣も高橋是清や井上準之助に準ずる財政再建家として歴史に残るかもしれないけれども、どうもやはり美意識がちょっと大蔵大臣欠けているのじゃないか。ひとつそういう点も含めて予算を十分配分をしてもらいたい。  それから、消防庁長官も来ておるわけでありますけれども、災害対策で、私この間ある会社へ行きましたら、ヘルメットの中に手袋を入れて各壁にかけてあるんですね。何だと聞いたら、関東大震災や第二次世界大戦の東京空襲のときに、上から何か落っこってきてけがをしたり、それから足はくつを履いているわけですけれども、手は素手ですね、手から入ってやけどをして死んだ人が四〇%くらいいるらしいんですね。ですから、いざ災害というときにヘルメットを、あんなのは千円くらいで買えるんですからね。それから手袋をして、それで十人のうち三人、四人は助かるということで、会社に全部並べてあるわけですよ。  私は、消防庁長官に、せめて小学校とか中学校なんかにもそういうように、いざとなったらすぐロープで逃げられるとかいう避難対策、そういう人命尊重というものを、小さいときから人命を大切にするという習慣をやはり持たせないところに、いろいろ校内暴力だとか非常に荒廃した教育環境というものがあると思うのです。そういった問題をやはり一つ一つ解決していく中に、一つの災害教育といいますか、災害問題に対する姿勢も解決されていくと思うのですが、以上、総理の教育制度改革に対する決意も含めて、まとめて私の質問にひとつお答えをいただきたいと思います。
  56. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いろんな御質問を集約して私から述べろ、こういうことでございます。  人づくりの問題、教育の問題、そしていま私ども大変心を痛めております校内暴力等の問題、この青少年の健全育成の問題は、日本の将来の命運にかかわる重要な問題でございます。家庭、社会そして学校教育、それぞれの分野が、十分青少年の育成につきまして連携を保ち、協力し合って、それぞれの立場において最善を尽くしていかなければならないわけでございます。  しかし特に、私は、現在校内暴力等が十四、五歳の子供たちの年齢層に多いということを考えました場合に、小学校教育から、引き続いての中学校の学校教育ということが非常に大事な意味を持っておる、こう思います。私は、師弟の間の情愛と申しますか、本当に教師が子供との間に愛情をもって接し、その愛情というのも、厳しさをもってこれを指導する、そういうことが必要である。  私が熊本の五高を訪問いたしました際に、夏目漱石さんの碑文が校庭にございました。教育の大本は師弟の情愛にありという趣旨のものが記してあるのでありますが、私はこれが本当の教育だ、こう思うわけでございます。家庭においてもやはり親子の間の対話ということが大事だ。ただ甘やかしだけではいけない。また、かぎっ子として放置しておいてはいけない。私はそういう点に問題があろうかと思います。  こういう人づくりということを基本にして、いろんな分野にわたりまして、私は日本の健全な社会の構成、建設ということに努力していかなければいけない、こう思っております。
  57. 小山長規

    小山委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十三分開議
  58. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大出俊君。
  59. 大出俊

    ○大出委員 昨日、塚本さんの質問がございまして、けさ各紙が取り上げておりますけれども、昨年の八月に私どものところの稲葉さんの質問に政府答弁書をお出しになったわけでありますが、この答弁書で、徴兵制度にかかわる、つまり十三条、十八条を引用いたしまして、前提にもちろん憲法そのものあるいは九条があるのでありますけれども、十八条、十三条というところに触れて、現行憲法のもとではそういうことは許容しない、許容できない、つまりできない、こういうことに内容はなっておるわけであります、簡単に申し上げれば。これを十三条だけでいいじゃないかという御質問だったと思います。もちろん、おのおの政党にはそれぞれの主張、色彩がございまして、栗栖さんをお推しになっておられた民社党さんと、私どもは立場は違いますけれども、実はこの件は、かって四十五年でございますけれども、私が内閣委員会で、それ以前の数々のやりとり、議事録等を調べまして、時の高辻法制局長官を詰めた結果初めて――憲法そのものが前提にあるのだけれども、つまり徴兵制度は現行憲法は許容しないのだけれども、さて、憲法のどの条章を適用すればいいかという点で長い間検討してきた結果として、十八条の適用が一番妥当性があるのではないかと思う、こういう意味の実は私の質問、私の詰めた結果として初めて十三条プラス十八条という、十八条が出てきたわけでありまして、これには大変歴史がございます。  当時の議事録も私ここに持っておりますけれども、実は林法制局長官、佐藤達夫法制局長官――佐藤さん、林さんとこうなんですが、林さんは自衛隊法をおつくりになった中心人物、佐藤さんは人事院総裁をおやりになっておりましたから、個人的にもずいぶん何回もお話をしたことがございます。何で一体、徴兵制度についてきちっとした憲法の条章に触れての結論が出せないのかと私はここで申し上げておりますが、昭和二十八年、第十九回国会、このときは佐藤達夫さんが法制局長官でございました。このときに、大体の傾向としては、現憲法のもとでは徴兵制度はむずかしい、できない、こういう学説の方がわれわれの目に触れております。つまり学説としては、現行憲法ではできない、こういうことなんです。だが、一体具体的にどこの条章でということになると、目下明確でないから、勉強中なんだから、勉強さしてくれということだったですね。これから何年も勉強中じゃ困るじゃないかということで、四十五年の十月二十八日に私が内閣委員会で、法制局長官の方々、歴代の方の所論を踏まえまして、高辻さんにお聞きをした。  ここに議事録がございますが、これは高辻さんの答弁でございますけれども、「一般に兵役といわれる役務の提供は、わが憲法の秩序のもとで申しますと、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものと社会的に認められるわけでもないのに義務として課される点」義務、ここに問題がある。「義務として課される点にその本質があるように思われます。」これは当然です。「このような徴兵制度は、憲法の条文からいいますとどの条文に当たるか、多少論議の余地がございますが、関係のある条文としては憲法十八条「その意に反する苦役に服させられない。」という規定か、あるいは少なくとも憲法十三条の、国民の個人的存立条件の尊重の原則に反することになる」つまり、ここで初めて十八条と十三条が出てまいりまして、戦後、新憲法のもとで許容しないと言いながら、どこの条章にということで、ずっと学界でも議論がございました。政治の分野でもございました。法制局も勉強すると言っておりまして、ようやくここで出した結論、こういう歴史がございます。  それだけに、きのうのやりとりを承っておりまして、それなりにおっしゃる意味もわかりますけれども、一遍お出しになっている答弁書、これをにわかに変更するがごとく聞こえるが、これは私の誤解だと思うのであります。私自身の誤解だという気がするのでありますが、きのう聞いておりまして、法制局長官の答弁も宮澤さんの答弁も、直ちにどうこうという意味じゃないというふうに受け取りましたが、まして、総理もそうだと思いましたが、大変に大きな記事にもなっておりますから、念のために、当時この答弁を引き出した私、責任者でございますから、かつまた、こういう議論、問題の後でございますだけに、一方の側から何か言ってきたらまたどっちの方かにぐらぐらっとこうなったという印象も、私はやはり考えなければならぬ点もある、こう思っておりますので、もう一遍ひとつこの点について、きのうの総理、官房長官、法制局長官の御答弁はどうだったのかという点を明確にしていただきたい、こうお願いをいたします。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきましての今日までの経緯は、ただいま大出委員の御指摘になりましたとおりでございます。そして、昭和四十五年に大出委員のお尋ねがありまして、当時の高辻法制局長官が、どの条文ということになれば多少論議がございますけれども、十八条あるいは十三条、こういうふうにお答えいたしましたことも事実でございます。昨年、政府が質問書に対しましてお答えをしたその中で十三条、十八条を引用いたしましたのもそのような経緯を踏まえてのことでございまして、法律的に申せば、まずこれが完全な答えと申しますか、いままでのいきさつをも踏まえた正式なお答えであることは間違いないと思います。  それで、及びこの十八条について、何人も奴隷的拘束を受けないという規定は、個人の自由の選択で職業を選ぶということと全く無関係な規定であることは、法律的に考えますと問題がないところだと思いますけれども、そういうことを離れまして、この十八条を引いたために、あたかも自衛隊の職責がその十八条に書いてあるもののごとくに短絡的に解釈をされる、短絡的な解釈が起こる危険が現にあるわけでございます。それでございますから、そのことも考えながら、いままでの解釈をもちろん変えるというのではありませんで、法律的には完璧な解釈でございますが、短絡的な誤解を起こさないように、今後その問題を検討していく必要があるだろう、こう申し上げたわけでございます。
  61. 大出俊

    ○大出委員 ここで一言、また申し上げておかなければなりませんが、現行制度でいたしますというと、強制はされないわけでありますから、自衛隊でいまその任務についておいでになる皆さんは自由な立場で、自由な意思で契約をお結びになっている。それを無名契約というか労働契約というかは別として契約をお結びになっていて、それに基づいて、自衛隊法三条に基づく任務に服しておいでになる、こういうことでございます。だから、いやならやめればいい。苦しければおやめになればいい。全く自由がございます。選択の自由がございます。職業として考えれば、まさに選択の自由がございます。だから、そういう意味で、何ら苦役あるいはそういう意味の奴隷的拘束でも何でもない。  ところが、これを強制をするとなりますと、中曽根長官おいでになりますが、私は群馬県の高崎連隊でございまして、これは当時、馬占山討伐山岳部隊なんと言われた部隊で、私なんぞは廊下の端から向こうの端までひっぱたかれて、「三八の蚊」と言いまして、ぱちんぱちん、蚊が出たなというと、ひっぱたかれて、見えないほど遠い向こうの端からこっちの端までひっぱたかれる。「飯盒の池」という池が、中曽根さん御存じですけれども裏門にございます。「飯盒の池」とは何だというと、夜になると「ハンゴー、ハンゴー」と泣く。実は飯ごうをなくして物干場に立たされて、罰で一昼夜さらされて、赤城おろしに吹きまくられて、とうとう耐えかねて池に飛び込んで死んじゃった、飯ごうをなくしたために。浮かばれず「ハンゴー、ハンゴー」と泣くという池があったなんというわけですが、つまり強制された徴兵制度というものはかくのごとき歴史がございます。  私どものように、豊橋の第一予備士官学校出身、私は少尉でございますから、いま自衛隊の部隊に行きますというと、先輩、と挙手の礼をされる。先輩と言われてみると確かに先輩なんですね。われわれサーベルか何か提げるようになった人間はまだいいんだけれども、まさに、はがき一本、強制的に召集された、おまえはきょうから地方人ではないと言われたところから苦役が始まる。奴隷的拘束が始まる。だから、それといまと全然違うのだからそこを混同されることはない。法律的に考えれば一つも矛盾をしない、こう思っておりますので、いまの御答弁は、にわかにあの答弁書を訂正するとかなんとかということじゃない、何かまた機会があれば検討してみるという、誤解があってはいけないから、こういう趣旨だと受け取ってよろしゅうございますか。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 すでにお答えとして出しました答弁書は、法律的に間違っておりませんし、内容も違っておらないと存じます。ただ、これについて、先ほども御指摘のありました、誤解を生じた向きがございますから、将来そういうことのないように政府としても注意をいたしたい、こう思っておるわけでございます。
  63. 大出俊

    ○大出委員 答弁書をいただきましたのは稲葉誠一委員でございますから、また稲葉さんから、答弁書をお出しいただいた本人がおいでになりますので、後ほどまたひとつ。いま私の申し上げておることとそう違った御答弁でないと受け取りますので、先に進めさせていただきたいと存じます。  さて、武器輸出に関してでございますが、本題、中心、核心に入ります前に、少し背景といいますか、武器輸出そのものについての、ただ単に日本韓国だけの問題ではない、マレーシアもあれば台湾もあればフィリピンもある、全部申し上げていると私の時間がなくなってしまいますから、この中で一つだけまず取り上げて、台湾。  堀田ハガネが五十二年の二月十日に作成した資料がございます。ここに私持っております。なかなか詳細な資料でございます。堀田ハガネの社内の資料でございます。社内資料が実はたくさんあるものですから、読み切れないぐらいございます。非常に細かい資料でございまして、一枚、二枚、三枚、四枚、五枚と、こうたくさんございますが、ここで台湾の輸出の問題が出てまいります。  これは前川専務がお書きになっております。堀田ハガネの罫紙でございます。「株式会社堀田ハガネ」というふうに社名が入っております。「韓国、台湾輸出について」という文書等々幾つもございます。この中で明確に台湾に売っております。「当社の」、つまり堀田ハガネです。「当社の防衛産業向け取引実績及び今後の見込み」第三という項がございまして、ここにございます。こういうふうになっております。ちょっと読んでまいりますが、五十二年二月十日作成した資料、「韓国、台湾輸出について」によると、武器部品を台湾に輸出した実績がここに引用されております。「防衛産業向け取引実績」の項目で、昭和五十一年だけで、シームレスのパイプ、継ぎ目なしのパイプ、鍛造品でありますが、五千万円を輸出し、翌年五十二年の見込みとして、同じくシームレスのパイプを鍛造品として六億円輸出を見込んでいる。台湾です。  どこへ輸出したか。このくらいのことは通産省御存じなければいかぬのですけれども、まあ知っておってもめったに知っていたと言えぬでしょうけれども。輸出先まで申し上げます。輸出先は、台湾国防部外局のMS――MSとは何か。マターリアルサービス、頭文字をとりましてMS。これは何か、購買契約部門でございまして、MSと言われるセクションがございます。ここに輸出をいたしております。エージェントが中に入っておりますが、宝国実業、こう申します台北分公司、場所は、台北市民生西路三巻九号、喜新第二大楼、ナンバー九百十二、電話TEL五五一五二一一、支店長小川一郎、明確でございますので、もし反論があればおっしゃっていただきたいのであります。五千万のすでに輸出実績がございます。そして五十二年の見込み六億円と明確に記載されております。そのすべて細かく書かれたものを私、手元に持っております。  こういうことじゃいけません。表街道で通産省が言っておられることと全く違う。こういうことが行われておる。まずもって御存じかどうか、承ります。
  64. 田中六助

    田中(六)国務大臣 知りません。
  65. 大出俊

    ○大出委員 私は、田中通産大臣を責める気は毛頭ない。鈴木さんの内閣になって通産大臣を初めておやりになって、武器輸出問題は長い歴史がございますから、それはにわかにわかるものではない。だけれども、それぞれの局もあり、それぞれの訳もある。課長が出てきて私が一言聞いたら、統計法の守秘義務がございますから申し上げられません、何もかも答えない。ふざけちゃいけませんよ。武器輸出がこれだけ騒ぎになっている。政府の方針と違うでしょう。調査に何で協力しないのですか。そんな課長はやめてもらいたい。一言も言わない。そういう姿勢じゃいけない。昔、通産銀座と言われたけれども、そこまで企業と癒着することはない。  さて、次の問題、もう一つ申し上げます。  日栄という鋼材企業がございます。兵庫県警が昨年九月に、この日栄鋼材、楠信雄さんという人が社長ですが、外為法違反で書類送検しております。警察庁を呼んで私も聞いてあります。容疑内容はどういうことかといいますと、日栄鋼材は韓国軍の大田兵器工廠、忠清南道大田市へ納入権を持つソウル市内の貿易商社宇宣物産、李凡鍾社長との間で特殊鋼輸出契約を結び、五十三年ごろから輸出を始めた。ところが、宇宣物産が経営難に陥った。ここから、日栄鋼材が日本国内の銀行発行の円小切手、非居住者は受け取れないのですけれども、やみをやりまして、非居住者あてに出させまして、日本で渡したのもあれば、韓国に持っていったのもある。合計何と額面約二億八千万円、みんな武器製造会社の関係。これは外為のこっちの方だけで実は警察庁はやったのです。  ところが、これについてずっと調査していったら、とんでもないことに堀田ハガネが出てきた。堀田ハガネが出てまいりまして、砲身類の実績その他が全部出てまいりました。ここにたくさん資料がございます。細かく言っていると時間がなくなりますが、五十四年十月二十八日付日栄鋼材の韓国情報、「堀田ハガネの動向」という文書がその中から出てきた。  何と書いてあるかというと、堀田ハガネは以前より対韓輸出を行っております。主力は大韓重機納めの砲身、SNCMK-SE四三四〇であり、ピーク時期には半期六百M¥――これをどういうふうに訳せばいいのかよくわかりませんけれども、程度の実績を計上していた。輸出の実績がぴしっと書いてある。ルートは光進、これが一つ、ソウルコマーシャル、これが一つ。これがオファー商社としてここを通して受注していた。ところが最近、大韓重機向けの受注が大幅に減少した。競合先はアメリカ。新聞等も書いていますが、堀田ハガネは焼き入れの甘さでクレームがついて戻されたりいろいろなことがある。再輸出のときに武器だと表示してあるのに平気で承認してしまった大蔵省なんというのもあるのですね、困ったものですが。そういうことで、これは何かというと甘過ぎるというので売れなくなった。そこで、焼き入れの仕方の違うところを推薦している。その対策として愛知製鋼の品物を対韓輸出へと働きかけて、ちょうどこの問題が騒ぎになる少し前に、つまりこの資料に書いてある時期の二、三カ月前に、堀田の前川専務が愛知製鋼本社工場の技術主任伊藤さんという人と、名前ははっきりしていますが、十日間韓国に参りまして市場調査、それからPRをやって、品物を持っていって、わが社のは火炎焼き入れ鋼である、そういう方式の鋼であって、これならばアメリカに遜色なくて値段が安いということでPRしているわけですね。これは恐らくこれも入っていると思います、もう大分前ですから。その実績が全部ここに書いてある。  御存じですか。日栄鋼材の書いております「堀田ハガネの動向」という文書がございますが、どうですか。
  66. 田中六助

    田中(六)国務大臣 承知しておりません。
  67. 大出俊

    ○大出委員 これはたくさんございまして、この種のことだらけで、マレーシアなんかもございまして、実は後ほど申し上げますが、過去、大臣をいろいろな方がおやりになりましたが、中曽根さんが通産大臣をおやりになって、河本さんもおやりになって、いろいろな方がおやりになりましたが、三木総理も、マレーシアなんかとんでもない、そんなところには武器なんか売らない、こう議事録では言っている。ところが、もう井上一成氏が指摘しましたから深追いはいたしませんが、マレーシアにも引き合いがいろいろございました。どうもこういうことではおさまりがつかぬ、どうしたらこんなばかげたことが処理できるか、私は頭を悩ましているというのが現状です。  そこで、重ねて承りたいのでありますが、いま皆さんの姿勢を見ていますと、堀田ハガネだけ、比較的大きくない、小さいのですが、ここだけを悪者にして、ここに罪あり。かつて、フィリピンに手りゅう弾の部品を密輸した方々がございました。従業員七人のフジ・インダストリアルという会社、ここのときも、実は三井が後ろにいるじゃないか、逮捕してみんなそこまで縛ってしまって大企業を伏せてしまう、困るじゃないかと言ってさんざん詰めているのですけれども、弱いところだけが切られていくということになった、こういうわけなんですが、これは三国貿易でしたが、また同じことになりかねない。  そこで私は、この予算委員会の間に、この予算委員会に呼んでいただきたい。呼んでいただく方と理由を申し上げて、答弁を願います。知らない知らないとうそばかり言ってはいけない。ここに全部資料がありますが、みんな知っている、どこの社も。知らぬところなんかない。武器であることは全部知っている。後から具体的に申し上げます。  山陽特殊鋼、ここもうそを言っていますが、知っておりました。梶川和男さんという山陽特殊鋼技術管理部長、この方とそれから大阪営業所技術サービス課長阿久根三俊、これはクレームがついて、大韓重機工業を訪れまして工場視察をし、検査結果の説明を聞き、データをもらって、検査結果からデータからみんなもらって、だからだめなんだ、この砲身は、と言って帰ってきた。らせんも全部切ってしまったものをみんな見せられて。それでいて何で武器だということがわからないのですか。帰ってきて、おれの方が悪いのじゃない、素材が悪いのだ、鍛造したおれの方が悪いのじゃない、くれた素材が悪いから甘いのだと言って、できるだけ負担を少なくしようとして、最終的には千九百万ぐらい払っていますけれども、そうでしょう。これを何で知らないのですか。呼んでください。知らないなんて口が裂けても言えない。明確です。これが山陽特殊鋼の方。  それから、関東特殊製鋼、これもみんな知っています。本多検査課長、五十二年の十月と五十二年の五月の二度、大韓重機を訪ねて、これまたクレームがついているので、打ち合わせをやった。相手の工場を視察した。自分たちが納入している品物を見た。検査結果を知らされた。通産省、何もかも御存じないとしらばっくれますか。呼んでください、本多検査課長予算委員会に。私が質問しますから。参考人で結構。知らないなんてこんりんざい言えない。資料が全部ある。そういうところをいいかげんにしてはいけません。  それからもう一つ、いいですか、山陽特殊鋼と、これは焼き入れをやっておる大屋熱処理、この間で話し合いが、これは堀田ハガネ、山特、大屋熱処理、さんざんもつれた。ここに書いてあります。そのときのやりとりがコピーしてある。素材のできが悪かった、そうじゃない、焼き入れが悪かったと大げんか。互いに責任のなすり合い。激論が交わされた。山陽特殊鋼の大阪の支店の技術サービス課長さんが、ちゃんとはっきりこれを証言している。素材が悪い。焼き入れが悪い。武器だからというのでクレームがついて返されたんだ。武器に使えないからと返されたんだ。弾を撃てば銃身がはねちゃうと返されたんだから。それで武器じゃない、武器か武器でないか知りませんでしたなんて、ふざけちゃいけない。はっきりしているでしょう。KOHEMAというのは何かというと、大韓重機のことをKOHEMAと言います。そこから砲身としては使い物にならないというクレームがついて返されたんだ。そうでしょう。砲身として使い物にならぬと返されて、武器であるかないかわからぬ、そんなばかなことがありますか。かばっちゃいけませんよ。これもひとつ呼んでください、この課長さんを。私が一遍で、いや武器と知っておりましたと言わせてみせます。どうぞお願いをいたします。  それからもう一人、小林繁美さんという方がおる。この人は四十八年に、東京大学の生産技術研究所というのがございまして、これは東大の偉い方なんですが、この小林繁美さんが大屋熱処理の研究所の責任者として東大から大屋においでになった。この人が部長でこの方面の責任者で、この陣頭指揮で、兵器の焼き入れその他を大屋熱処理が全部やってまいりました。これは大変にすばらしい頭のいい、りっぱな方のようでございます。小林繁美さん。したがって、この大屋熱処理の小林繁美さんをあわせてお呼びいただきたい。兵器であることから始まりまして、どういうものがどういうふうに輸出されたか、全部わかります。私に質問させていただければ、ほとんどわかると思います。  以上、私挙げましたが、ここで委員長理事会で相談していただけるなりなんなりお答えください。
  68. 小山長規

    小山委員長 理事会で相談します。
  69. 大出俊

    ○大出委員 よろしゅうございますな、声が小さいけれども。大丈夫ですか。
  70. 小山長規

    小山委員長 相談します。
  71. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんから急いでおりますけれども、まだ本題がございますので、この本題を何とか――田中通産大臣は大臣におなりになってから短いわけでありますけれども、権限はおありなわけでございますから、そこらも含めて、これはどういうふうに御処理をいただけるかということをはっきりさせていただきたいのであります。  さて、いま私これだけ申し上げましたが、それでもなおかつ御本人たちは、山特、関特、大屋熱処理あるいは泉鋼材、こういうところは全く武器だと知らなかった、堀田ハガネだけが知っていて悪かった、こういうことになりますか。通産省、お答えください。
  72. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 ただいま先生のお挙げになりました関係メーカーでございますけれども、私ども、事情聴取並びに報告徴収等をいたしております。私どもの伺っておりますのは、製品の最終目的は知らなかったという話を伺っておりますが、現在、この堀田ハガネの関連の事件は、私どもとしては当該物件が貿易管理令上違反であるということで、法務省を通じまして神戸地検に対して私どもの見解を御通知申し上げておるという段階でございます。したがいまして、本件関連の案件につきましては今後法務当局で事件を解明していただけるものというふうに私ども期待しているわけでございます。
  73. 大出俊

    ○大出委員 後でまとめて物を言いましょう。いつものやり方で、そうなると、やみからやみに消えていくので、そんなことはかり繰り返していたんじゃらちが明かぬですから、荒療治でも何でもやってのけなければならぬと私は思っている。そこでひとつ本題に入ります。いまのは、これはつけたりでございます。  さて、私の党の井上一成委員が、堀田ハガネ関連の武器輸出、韓国その他、これについて関係のある、つまり武器輸出を行ったのは堀田を除いて四社が、こう聞いた。それ以外にはございませんかと。それ以外ございませんとお答えになりましたね。そこで、三菱はどうしたんだ、こう言った。そうしたらあなた方はあっさり調査をいたしますと言ったが、これは知っていたんじゃないですか、三菱。どうですか、簡単に答えてください。信用がない。
  74. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 昨日の時点では存じませんでした。
  75. 大出俊

    ○大出委員 念のためにこれも言っておきましょう。三菱はこういうことになっておる。山陽特殊鋼から三菱の高砂工場、ここに持ち込んだ。そうしたら定型のものしかできない。つまり、この鍛造というのは定型、定まった形のものとフリー鍛造と両方ある。フリーのものはできない、こういうことになりましたので、ここから大阪の営業所に参りました。大阪の営業所からどこに行ったかというと西播磨に参りました。ここには三菱重工の下請三社がございます。ここでつくった。  さてそこで、裏をとろうというので、われわれの関係がいろいろと当たってまいりました。五百点から約千点近いのですからね、たくさんあるのです。ミルスペックであるとか図面あるいは仕様、説明書、使用書その他関係書類、これはどこへ行ったんだとずっと追っていったら、ついに三菱関係者のお答えは――必要なら幾らでも名前を申し上げますが、お答えは、実は山特から三菱を通り越していきなりそれらの書類が下請へ持っていかれた、だから見ていない、こういう答えがありました。つまり、それが武器であった。そのことはいまになればお認めになっています。つまり武器、これをちゃんとおつくりになった。ただ、知らないと言わなければならぬから、いきなり下請に打っちゃったと。うそばっかり。こういうことばかり言っちゃいけませんね。それで通産省は紋切り型に知らない、知らない、知らない。そんなものなら通産省の航空機武器課なんというのはなくたっていいんだ。遊んでいちゃ困る。遊んでいるなら、これはやめてもらいたい。  さて、どうなんですかな。そこへもってきて三菱が出てきて、これも井上委員の指摘したとおりなんです。それで、もうないかというところから日本製鋼が出てきまして、大臣が、そういう引き合いがあったんだけれども憲法がというようなことを言った。そうしたら今度は、何か見積もりを出しているとかいうようなことが出てまいりました。もう一遍ここで承りますが、もうございませんか。仏の顔も何回とかで、もうございませんか。もうないでしょうな。
  76. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 私ども承知しているのは、いままでお名前の出た企業でございます。
  77. 大出俊

    ○大出委員 その私どもが承知しているのはというのだけよけいだ、あなたは承知しておるはずだから。うそばっかり言っちゃいけませんですよ。日新製鋼というのはやっていませんか、目新製鋼。私たちが知っている限りではないとおっしゃったんだが、あなた方知っているはずですよ。日新製鋼、いかがでございますか。あんなうそばっかり言っちゃだめだ。
  78. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 日新製鋼につきまして、この堀田ハガネの輸出事件に関連をしては承知はしておりません。
  79. 大出俊

    ○大出委員 ごまかしちゃいけないよ、あなた。いまの答弁は何だ、それは。いまの答弁は一体何だ。私がそれで引き下がると思って、とりあえず答えてみた。詰められて、しようがなければ知っているということにする。そういうことで審議ができますか。まじめに物を考えてください。何ということを言うんだ。  堀田ハガネというのは、日にちを申し上げますが、五十一年三月、ソウル貿易、ここと打ち合わせに専務が行きました。そして、ちょうど五十年の八月八日付で装甲板輸出について韓国の大韓重機工業からLCをとっているのですよ。輸出信用状、二万五千二百三十ドル払っている。信用状をとっている。信用状をとっているということは輸出しているということになる。アーマープレート、装甲板というのは、いみじくもきのう矢野さんが御質問になっておったアーマープレートだ。アーマープレートは輸出未遂じゃないんだ。輸出している。否定するのならもう一遍否定してごらんなさい。いかがです。
  80. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 堀田ハガネの事件は五十一年以降の輸出の案件だというふうに承知しておりますので、ただいまのお話は、それ以前のお話ではないかというふうに思います。(「委員長、議事運営にもう少し真価を発揮しろ」と呼び、その他発言する者あり)
  81. 小山長規

    小山委員長 私は議事運営はちゃんとやっております。
  82. 大出俊

    ○大出委員 以前であろうと以後であろうと、私は武器輸出について物を言っているわけでございます。だけれども、五十一年とあなたはおっしゃったから申し上げますが、これは契約は五十一年一月十九日でございますよ。いかがですか、五十一年以前だとあなたおっしゃいましたね。局長、知っているくせにうそばかり言って、あなた責任をとりなさい。契約年月日を言う。五十一年一月十九日。あなたは五十一年以前だと言った。知らないで以前だと言えますか。それじゃ以前のいつなんだ。それならば、もう一つあるのだ。
  83. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 私が先ほど来お答え申し上げておりますのは、堀田ハガネの今回の武器輸出事件に日新製鋼が関連しているかという御質問だというふうに了解をいたしましてお答えをした次第でございます。したがいまして、それ以前の話ということにつきましては私お答えを申し上げてないつもりでございましたが、ただいまの五十一年云云のお話、細かい契約年月日等は私は承知いたしておりません。
  84. 大出俊

    ○大出委員 そんないいかげんな局長がいたんじゃしようがないじゃないですか。そんなに逃げなさんな。幾ら逃げても真実は一つしかないんだから、だめなんだ。あなたは逃げ切れない。  ここに手紙が来ております。きわめて詳細なものでございますから読み上げます。内部におりまして大屋熱処理で直接熱処理に携わった方々であります。詳細な手紙が来ている。  「堀田ハガネと韓国向け武器輸出の件についてお知らせいたします。一月三日の朝刊で見た図面やテレビに映った砲身と思われるもの及びその付属品らしきものが神奈川県厚木市内の内陸工業団地にある大屋熱処理会社において、昭和五十一年の春」、五十一年ですよ、いいですか。あなた、いいかげんなことを言ってはいけませんよ。アーマープレート、装甲板は五十一年一月十九日の契約なんだ。いいですか。「昭和五十一年の春から秋にかけて大量に熱処理されました。それらの呼び名はチューブ一九」、これは解説が要りますから申し上げます。ここに絵もございますけれども、細かく申し上げると――ちょっとここに私が絵をかいてあるんですけれども、後からまた時間を見ながら申し上げますが、まずチューブ一九というのはりゅう弾砲なんです。口径が百三十五ミリございまして、砲身が四千百ミリ。これがチューブ一九B。それからチューブ一一一一というのは口径九十二ミリ、砲身が二千七百九十ミリ。一九の方は四千百ミリでございますけれども、こういうものでございます。契約がございまして、契約書に書いてある。間違いない。それからキャップチューブ、ブリーチブロック、こういうことになっている。キャップチューブというのは砲尾栓と言って、後ろからばたんと弾を入れて、こうやる砲尾栓。その周りをガードしているやつがブリーチブロック、こういうことになっている。「この四つだと思います。初めは厚木工場だけで熱処理、焼き入れ、焼き戻しを行っていましたが、量が多くなり処理が間に合わなくなりますと、埼玉工場と山口工場、また関東特殊鋼のあたりでも熱処理を行うようになりました。また、これより少し以前、これも韓国向けの戦車の」、これです問題は。「戦車の外板に使われるものだという畳一畳分ぐらいの鉄板の浸炭焼き入れを行ったことがあります。これには焼き入れの際、板がそり返るのを防ぐためにプレスクエンチという方法がとられました。油圧で板をプレスする特殊な機械もつくられました。」これが実はアーマープレートの熱処理の機械。全部調べまして、幾らもとってあります。油圧で板をプレスする、そり返りを防ぐ、装甲車の上の装甲板に使うのですから。「これらは、武器はもうかるという上層部の考えに基つき、工藤常務の命令により」、工藤さんという常務がおいでになります。この委員会に呼んでいただきたい。お願いしておきます。「工藤常務の命令により研究所の小林部長」、さっき申し上げました小林さん、この方をお呼び願いたい。東大から来られた方です、このために来てもらってるのですから。「研究所の小林部長が陣頭指揮をとって行われました。そして全員が武器と知りつつも」、真に迫ってるのですよ。「全員が武器と知りつつもこれらは決して外部に漏らさぬようにとかたく口どめされておりました。この仕事に関しては、会社の規模から見ましても、また技術的にも多くの困難を抱えて、下部の人生には多く無理や犠牲が強いられました。しかし、当時の関係者の中には、この件に関して私腹を肥やしたり家の新築や増改築をした人があると聞いています。また当時は厚木工場の敷地の一番奥にある研究室には堀田ハガネの社長」――関係が何でないんだ、局長。堀田ハガネの社長が来てやってるんだよ。「堀田ハガネの社長または専務または韓国人の技術者」、韓国人の技術者が韓国から二人来ています。関係の技術者です、軍需品ですから。この人は市内の旅館に泊まっていました。旅館までわかっています。そして最後に熱処理の終わった品物は大屋運輸――大屋熱処理の厚木工場の敷地内に大屋運輸というのをつくってあって、わからぬようになっている。「大型トラックで大阪、神戸、横浜方面に運ばれたようです。以上の内容は多少の誤りや勘違いがあるかとは思いますが、これをもとにさらに真実を究明し、企業の悪事をあばいてください。以上、過去四年半にわたり事実を外部に知らせるかどうか悩み続けてきましたが、あえてここにお知らせをいたします。」  とれるだけの裏はとりました。そして次に順序が書かれています。この方は専門家ですから、順序が書かれています。どうなっているかというと、製鋼は山陽特殊鋼がやった。鍛造、この向こうに堀田ハガネがいる。堀田ハガネがアーマープレートのLCをとっている、大韓重機から。製鋼は山陽特殊鋼。鍛造は関西方面の工場。これは調べてみたら明確に、わかりましたが、日新製鋼です。それから次はカッティング。カッティングは関東特殊鋼。その次、熱処理、焼き入れ、焼き戻しは大屋熱処理。曲がり取り、焼き入れ、ひずみ矯正は横浜、川崎、相模原方面の大型プレス機を持っている工場。これも幾つもわかっています。それから輸送は大屋運輸。大阪、神戸、横浜。仕上げ加工は大韓重機でやる。そして熱処理の大屋熱処理からどこへ行ったかというと、検査片というのをとらされる。小さい片。東京、神奈川方面の工場でそれぞれの鉄片をつくったものを整理して、そして検査をまずやる。この検査というのは磁気探傷検査といいまして、磁石式の磁気で傷の検査をやる。検査の先もわかっています。それから引っ張る試験をやる。シャンピという試験だそうです。大屋熱処理研究室。それから検査成績表作成。こういう検査結果になっているという成績表を作成して、大屋熱処理の研究室でこしらえたものを韓国の軍部に提出する。どういう提出の仕方かというと、堀田ハガネを通じて提出をする。堀田がLCをとっておるのですから、金を払ってるのですから。  これで軍需品であることがわからぬ、兵器であることがわからぬなんて、そんなばかなことがありますか。うそばかり言っちゃだめじゃないですか。もう一遍答えなさい、ここではっきり。
  85. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 先ほどもお答え申し上げましたけれども、ただいまの堀田事件に関連しての日新製鋼のただいまおっしゃったような話というのは、私、現時点で存じておりませんでした。
  86. 大出俊

    ○大出委員 あなた方、こういうふざけたことばかり言ってちゃだめですよ。これぐらいのことわからぬのかね、ぼくらが調べてわかるものが。あなたは責任者でそこにいるんじゃないの。  そこで、大屋林二郎さんという社長さん、大屋広茂さんという社長さんの長男、社長補佐、工藤績常務、小林繁美さんにおいでいただいてひとつ――韓国から来ている技術者の方は金さんという方だ。二人とも金さん、はっきりしてます。だからどなたか呼んでいただくと全部わかります。  そこで、私はこのまま済ますわけにいかない。知らない、知らないでしらばっくれてばかりいてはだめだ。ごまかしちゃいけませんよ。あなた方は今度の問題でアンケートを各社に出したじゃないですか。アンケートを出して、責任者を呼んで端から聞いたじゃないですか。その中の一つから、大臣がお答えになっているように取り下げたというわけです、憲法との関係で。日新製鋼だってあなた方呼んでいるじゃないですか。日新製鋼は否定してないじゃないですか。裏はみんなとってあるんだ、ぼくは。うそばかり言うんじゃない。  契約は五十一年一月の十九日、受け渡しは三月の末。規格ナンバーを申し上げる。SNCM二二。寸法もございます。総トン数もございますよ。つくった場所は日新製鋼の呉の製造所ですよ。いいですか。全部寸法も書いてありますよ。それであなた方がごまかしたってだめです。どう責任とってくれるんですか、これは。政府の方針は、韓国には断じて輸出しないと何遍も答えておられる。輸出しているでしょう、みごとに。いままでだって四社輸出したことを認めているでしょう。
  87. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 私どもの調査は行政上の調査でございまして、残念ながら限界がございます。したがいまして、知っておりますこともおのずから限界があるわけでございますが、ただいまの堀田ハガネの事件につきましては、私どもとしては、これは貿管令上違反であるということで検察にも御意見を申し上げ、後お任せするという形になっておりますので、そういった過程におきまして真実が解明されるというふうに考えております。
  88. 大出俊

    ○大出委員 どうも私どもが調べて、ちゃんとあなた方は日新製鋼を呼んで――日新製鋼は否定してないのですよ。認めているんですよ。知っていて言わないのですから、私もつい大きな声が出るんで、やじもありましたから気をつけますがね。  ところで私は、この際、政府にはっきりしていただきたいことがある。いいですか。まず、私、過去の議事録を調べますと、こうなっているんですよ。  河本さん、あなたは三木内閣の通産大臣をおやりになっていた、五十一年まで。四十九年十二月十九日の議事録がここにございます。あなたはもう何カ所も何カ所も、韓国については絶対武器輸出をしないと答えている。「韓国につきましては、これまで武器を出したことはないそうであります。」今後のことにつきましても、先ほど私が申し上げた原則に従いまして、出しません。それから、「先ほども申し上げておりますように、これまで、韓国に対しては武器を輸出したことはありません。したがいまして、今後具体的な問題が起こりましたときには、」というところから始まりまして、日本は平和国家でございますから、武器の輸出はしない。そして、一番最後の締めくくりもまた同じ、ずいぶんこれははっきりしています。「いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、かつて韓国へ武器を出したことはありませんし、今後も、先ほどの総理のお話のように、武器は出さない。」と言い切っておられる。これは四十九年十二月十九日。河本さん、おっしゃいましたね。どうですか。あなた、通産大臣で答えたんだから答えなさい。
  89. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 正確な字句は覚えておりませんが、いまお読みになったのは議事録だと思いますが、多分そのとおりだろうと思います。
  90. 大出俊

    ○大出委員 議事録だから議事録が不正確なはずはない。もう一遍言いましょう。「いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、」これは結論なんです。「かつて韓国へ武器を出したことはありませんし、今後も、先ほどの総理のお話のように、武器は出さない。」  これで三木さんも答えている。岡田春夫議員の質問、岡田さんの質問の中心が韓国への武器輸出だろう――そこで、三木さんも明確に「私が、今後もいままでの方針を踏襲して、韓国へ武器輸出はいたしませんと、あなたの質問の一番主たる点にお答えをしておるのでありますから、このことに対しては、各大臣が貿管令のときに、」いろいろ言ったけれども、なお一層督励して武器輸出はやらない、こう答えている。一番最後も武器輸出はやらぬということなんです。三木総理はその前にも言っておる。  それから宮澤さん、宮澤さんもここでお答えになっている。三木内閣のときに宮澤さんは何をやっておられましたかね、それもあわせてお答えいただきたいのですが、「○宮澤国務大臣 韓国に武器輸出をしたことはないし、今後もしないということは、総理が方針としてお示しになりました。」こう言って、私も武器三原則を遵守していきますと答えている。いままでも輸出したことはないし、今後もしない。  五十一年の議事録がございますが、同じ三木さんの内閣、これも重ねて何遍も、その武器輸出の三原則――これは五十一年ですけれどもね。ところが、五十一年のこのときにはもうアーマープレートまで輸出契約ができちゃって輸出しちゃっている。あなた、全部そうなんですよ。  福田さんもここにありますね。これは五十二年十月二十七日、ここも、つまり日本というのは平和国家だ、そんなことは一切しないと言って、韓国の昌原という団地にある企業に対して資金援助しているなんということがあれば、日本の親企業を通じて一切やらせない、日本の親企業を通じて、そういう日本政府の投資を許可した趣旨に反するようなことにならないようにする。ずいぶん強いですよ、福田さんも。財界が何とおっしゃろうとと言い切っている。ここまで私どもが武器輸出があるじゃないかと何遍言っても、あなた方こんなに答えてきた。  総理、三木さんも、いま福田さんもここで例を挙げましたが、責任継承の原則がございます。大平さんは亡くなりましたから、議事録は読み上げません。その後は鈴木さんなんだから。これだけ韓国に武器輸出をしないと言い切ってこられた。ここにおいでになる河本さんも宮澤さんも一中曽根さんのも実はございます。しかも、中曽根さんのは、もう念が入っているんですね。キッシンジャーが来られて、鹿児島に行っている桃井さんという防衛庁技研の人をわざわざ呼び帰して通訳にしたんです、ハーバード大学の出身だから。これは武器に関する話じゃないか、韓国から米軍が撤退をする、こういう場面で、一貫工場をつくって武器生産を自国でやるという朴正鴨大統領が大旗を上げたときだ。アメリカもそのかわりに援助する。防衛庁もとんでもない資料をつくって、このときは楢崎君にその資料を手に入れられて、それこそ釈明にこれ努めた時代がございますけれども、ちょうどこのとき。同じようにやはり武器輸出はしてないし、しないと、こうおっしゃっている。  そうすると、現閣僚の中に何人も、通産大臣をおやりになった方がみんな同じように答えている。それでいてこんな状態だということで、さっき申し上げたように四つ、堀田を含めて五つ、明確に武器輸出を確認している。この御答弁は、野党に対する答弁のみならず、国民に対する答弁なので、私はここで結論を申し上げますが、総理以下御相談をいただいて、これ以上質問のしようがありませんから、うそばかりおっしゃっているんで、だから、旧来かくのごとく言い続けて、本当に耳にたこのできるほど聞いている。韓国には一切輸出しない、今後も一切しない、それがこういう状態になっていることに対していかなる責任をおとり願えますか。これ以上私は質問しません。総理関係のお答えになっている大臣、皆さんはいかなる責任をおとりになるか明らかにしてください。それでなければ国民に相済まぬ。私は首になろうと何をしようと、これだけは後へ引けない。(発言する者多し)
  91. 小山長規

    小山委員長 静かに。
  92. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いま大出議員が事実を挙げていろいろ重大なことを述べておるわけでございます。私ども正直に申しまして、過去いろいろの人が答弁をした、まさしくそれは私ども行政に携わっている者の限界の一端をちらつかせておるところもございます。  しかし、といってそれを責任逃れで言っているわけではございませんで、行政能力でいまのところ、私ども申請を受けましてそれを承認するという、つまり外為及び外国貿易管理法という法律にのっとりまして、輸出貿易管理令というものに載っておる品物について、私どもそれを申請があれば承認をするということになっておりまして、申請がない場合、それは承認あるいは不承認はできないということが一つ。  それから、税関におきまして、通関の際にこれを検査、確認をするわけでございますが、私どもいま、まあこれは一つの例でございますけれども、五十五年度の輸出の貿易量が千三百六十億ドル、見通しで五十六年度が約千五百五十五億ドルと思いますけれども……(大出委員「簡単に願えませんか」と呼ぶ)そういう膨大な輸出量の品物に対してどういうふうにするか。抜き取り調査とかいろいろできるでしょう。しかし、限られている人間でそれだけの貿易量に対する検査、そういうものを考えますときに、これは困ったと、大出議員のおっしゃるとおり、まあこれはソクラテスの弁明ではございませんけれども、私どもはそこにどういうことが――真実は確かに一つでございます。しかし、それを調査する能力、国家全体の、たとえば税務署の地方の役人を全部含めても、千五百五十億ドルの品物に対してどういう処置をするのだろうか。  私ども正直に申しまして、刑法があってもその他があっても、どろぼうがおる、殺人がある、それはどういうことだろうかという自問自答をするときに、この問題は大出議員あるいは国民の皆様に済まないことでございますので、これをどういうふうに処置してどういうふうに解決するかということに取り組むときに、非常に限界を感ずるわけでございます。といって、先ほどから申しておりますように、責任逃れの意味で言っているのじゃありませず、むしろ責任を痛感するから、私は、真実自分の思うことを大出議員に吐露しておるわけでございますが、これに対する処置が……(「何言っているかわからないよ」と呼ぶ者あり)まあ、私が終わってしまってわからないなら……。あなたはちょっと待ってください。  それで私は、そういう点で非常に遠回しのことを言っているようでございますけれども、それをわかってもらいたいためにるる述べておるわけでございますけれども、端的に申しまして、人数あるいは行政能力、そういう意味でどうにもならないところがあるということを訴えたいのですけれども、それでは納得しないでしょうから、私は、どういう表現をしたらいいかといま考えておりますけれども……(「もういいよ」と呼ぶ者あり)いま、いいよということは、私を非常に救ってくれておりますけれども、そういうことで、いろいろ考えあぐんでおるのが真実でございます。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いま、大出委員のお話で、私の通産大臣時代にキッシンジャー氏云々ということで、韓国と武器輸出の関係があったというような趣の話がございましたが、私の時代にはございません。通産当局に聞きましたら、私の時代ではない、そういうことでございましたので、誤解が残るといけませんのでお断り申し上げます。
  94. 大出俊

    ○大出委員 田中通産大臣のお話を聞いていましたら、ちょうど五分ちょっとかかりましてね、あのお話が三時間の時間ですから大変に惜しいのですが、お話はよくわかりました。  中曽根さんのは、ここに議事録がありまして、これは河本さんの時代になって質問が出まして、キッシンジャー氏が来たときにこうだったじゃないかという質問が出まして、前通産大臣と連絡をとりますと河本さんがお答えになって、前通産大臣中曽根さんから御返答が参りましたというところから河本さんが答えておられるので、議事録がございます。誤解だとおっしゃるけれども、ここにありますから申し上げているので、必要ならば後でお見せします。  これ以上言いようがございませんから、ひとついかなる責任を、責任継承の原則もございますので、対国民、それからわれわれ質問者、この委員会というところに、いかなる責任を皆さんが明らかになさるのか。これだけもう各党が、公明党さんの坂井さんだって正木さんだって、みんな質問しています。それにあれだけきれいにお答えになっておるのにこういうことなんですから、責任を明らかにしてください。それ以外はもう申しません。(「委員長理事を集めなさいよ」と呼び、その他発言する者多し)
  95. 小山長規

    小山委員長 いま答弁しますから……。(「だめだ、いいかげんなことじゃ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し)  このままの状態で暫時休憩をいたしますので、この席のままでお待ちを願います。    午後一時四十四分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕