○
松下政府委員 昭和五十六年度
予算及び
昭和五十五年度
補正予算の
内容につきましては、ただいま
大蔵大臣から御
説明いたしたとおりでありますが、なお、若干の点につきまして
補足説明いたします。
初めに、
昭和五十六年度
予算につきまして申し述べます。
まず、
財政の
規模につきまして御
説明いたします。
昭和五十六年度
一般会計予算の
総額は四十六兆七千八百八十一億円であり、前年度当初
予算額に対し、四兆千九百九十三億円、九・九%の
増加となっております。また、このうち
国債費及び
地方交付税交付金以外の
一般歳出の
規模は三十二兆五百四億円であり、前年度当初
予算額に対し、一兆三千百七十二億円、四・三%の
増加となっております。
次に、
歳入について御
説明いたします。
まず、
税外収入は二兆二千二百七十三億円でありますが、その内訳は、専売納付金七千六百二十二億円、官業益金及び官業収入百二十二億円、
政府資産
整理収入七百二十九億円並びに雑収入一兆三千七百九十九億円となっております。なお、雑収入には、日本電信電話公社臨時納付金千二百億円等が含まれております。
前年度
剰余金受け入れ六十八億円は、
昭和五十四年度の新規剰余金から
昭和五十五年度
補正予算に計上された額を差し引いた残額でありまして、道路
整備費に充てられるものであります。
なお、大蔵省証券及び一時
借入金の最高額につきましては、国庫の資金繰りを考慮し、
予算総則において五兆四千億円と定めております。
次に、
歳出について、社会保障関係から御
説明いたします。
まず、福祉年金については、
老齢福祉年金の支給月額を二万二千五百円から、扶養義務者の所得に応じ、六人
世帯の扶養義務者の年収六百万円未満の場合については二万四千円に、同じく年収六百万円以上八百七十六万円未満の場合については二万三千円に
引き上げるほか、障害福祉年金の支給月額の
引き上げと本人
所得制限の緩和を行う等の
措置を講ずることとしております。また、厚生年金及び拠出制
国民年金については、五十五年度消費者物価上昇率見込みを基準として年金額の
引き上げを見込んでおります。
児童手当につきましては、
所得制限基準額を六人
世帯について年収四百九十七万円から四百五十万円に引き下げる一方、市町村民税所得割非課税層について、手当額を月額六千五百円から七千円に
引き上げる等の
措置を講ずることとしております。
次に、社会的、
経済的に弱い立場にある方々に対する
社会福祉諸
施策を着実に推進していくこととし、生活扶助基準の八・七%
引き上げ等生活保護の
改善、
社会福祉施設入所者の生活費の
引き上げ、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の手当額の
引き上げ、重度障害者に対する福祉手当の
所得制限の緩和及び手当額の
引き上げ、母子福祉貸付金の増額、原爆被爆者に対する諸手当の手当額の
引き上げ等の
措置を講ずることとしております。
このほか、心身障害児者対策として、国際障害者年記念
事業を実施するとともに、引き続き家庭奉仕員の増員、障害者社会参加
促進事業、障害者福祉都市
事業の
拡充等を図り、また、老人対策として、寝たきり老人短期保護
事業、在宅の虚弱老人に対するデーサービス
事業を
拡充する等の
措置を講ずることとしております。
さらに、
医療につきましては、その
効率化、
適正化を図るため、
医療機関に対する指導、監査の
強化を初めとする各般の
施策を推進するとともに、健康保険について
医療給付の
改正、現金
給付の
改善、保険料率の
引き上げ等の
制度改正を実施することとし、これにより、
政府管掌健康保険の累積赤字を逐次解消していくこととしているほか、僻地、
救急医療等の
整備に努め、また、
難病対策等を一層
拡充することといたしております。
さらに、
雇用対策につきましても、高
年齢者心身障害者等の雇用安定のための諸
施策について特に
配慮しているところであります。
文教及び
科学技術の
振興につきましては、まず、公立小中学校等の教職員定数につき、五十五年度に発足した第五次学級編制及び教職員定数
改善計画の第二年次分として
所要の
改善措置を講ずることといたしております。
次に、
公立文教施設につきましては、学校建物の新増設、改築等につき
所要の
事業量を
確保するとともに、小中学校危険建物の要改築基準の緩和
措置を五十六年度においても継続することとしております。また、公立社会教育施設、公立社会体育施設等についても、
所要の
事業量の
確保に努めております。
私学
助成につきましては、引き続き私立大学等経常費補助の増額を行うことといたしております。
さらに、
科学技術振興費につきましては、
科学技術会議の方針に沿って研究の総合的推進
調整を実施するため
科学技術振興調整費を創設するとともに、次世代産業の確立に不可欠な
基盤技術について研究開発を行う次世代産業技術研究開発
制度を創設をすることとするほか、宇宙開発の推進等に努めることとしております。
国債費六兆六千五百四十二億円の内訳は、
国債及び
借入金償還費一兆三百二十一億円、
国債利子等五兆五千六百五十三億円及び
国債事務取扱費五百六十八億円となっております。
公共事業関係費につきましては、
国民生活に直接関連する
事業等について、その推進に配意しつつ、
総額として前年度と
同額の六兆六千五百五十四億円を計上することといたしました。
なお、内訳は、治山治水対策
事業費一兆千六十七億円、道路
整備事業費一兆九千十三億円、港湾漁港空港
整備事業費五千二百三十四億円、住宅対策費七千六百十二億円、下水道環境衛生等施設
整備費九千八百五十八億円、農業
基盤整備費八千九百九十七億円、林道工業用水等
事業費千八百六億円、
調整費等百十八億円及び災害復旧等
事業費二千八百四十八億円となっております。
経済協力費につきましては、わが国を取り巻く国際諸情勢をも勘案し、一一・二%増という大幅な
拡充を図ることとしております。このうち主なものは、二
国間無償援助千二百八十四億円、二国間技術
協力七百九十八億円、
国際機関分担金、拠出金等七百六十一億円、海外
経済協力基金出資金千三百三十億円であります。
中小企業対策費につきましては、前年度当初
予算額に対し二・六%増の二千四百九十七億円を計上いたしております。
このうち主なものは、
中小企業事業団出資金七百三十億円、
中小企業信用保険公庫出資金六百二十五億円、小
規模事業対策費三百四十二億円、小企業等経営
改善資金の
原資に充てるための
国民金融公庫に対する貸付金二百三十五億円であります。
エネルギー対策費につきましては、最近の厳しい
国際石油情勢等にかんがみ、エネルギーの
安定的供給を
確保し、
経済の安定的成長、
国民生活の
向上を図る観点から、厳しい
財政事情下においても特にその
充実を図っております。
このうち主なものとしては、
一般会計から石炭並びに
石油及び
石油代替エネルギー対策
特別会計への繰り入れ三千百八十億円を計上し、
石油の探鉱等の推進、備蓄の
拡充等の
石油対策を
充実するとともに、
石油代替エネルギーの開発導入を推進することとしているほか、核融合研究開発として三百五十五億円、海外ウラン探鉱開発として五十七億円を計上いたしております。
このほか、電源開発
促進対策
特別会計において、
電源立地特別交付金
制度の創設等
電源立地の
円滑化のための
施策を
拡充することといたしております。
農林水産関係予算につきましては、
食糧管理費について、食糧
管理特別会計調整勘定へ五千六百七十億円繰り入れるほか、米需給の均衡を回復し、需要の動向に適切に対応し得る農業生産構造の確立を図る観点から、新たに水田利用再編第二期対策を発足させることとし、三千四百二十九億円を計上いたしております。また、
沿岸漁業の
振興、
林業活動の
促進等のための
所要の
経費を計上いたしております。
日本国有鉄道の
財政再建対策につきましては、五十四年末に決定された
基本方針に基づき、実
増収率七・九%の運賃
引き上げを図るとともに、
定員一万一千人の
削減等の経営
改善措置を行うこととしております。これらの
措置を前提として、
助成面におきましては、地方交通線対策等に重点を置いてその
拡充を図ることとしており、国鉄関係
助成費として七千三百四十一億円を計上いたしております。
次に、
昭和五十五年度
補正予算につきまして御
説明いたします。
まず、
一般会計予算の
歳出の
補正について御
説明いたします。
農業保険費につきましては、低温等による水稲、温州ミカン等の被害の異常な発生に伴い、
農業共済再保険
特別会計の農業勘定及び果樹勘定の再保険金支払い
財源に不足を来すことが見込まれるので、
一般会計から同
特別会計の農業勘定及び果樹勘定へ再保険金支払い
財源不足金を繰り入れるために必要な
経費千四百四十億円及び共済金を早期に支払うため、
農業共済基金が
農業共済組合連合会に対し貸し付ける
農業共済保険金支払い資金に係る利子交付金四十億円を
追加計上しております。
昭和五十五年発生災害の復旧につきましては、その早期復旧を図るため、初年度の復旧進度を高めることとし、八百七十一億円を
追加計上し、遺憾なきを期しております。
給与
改善費千二百十三億円の内訳は、
一般会計職員分四百六十二億円、他会計繰り入れ分二百三億円、義務教育費国庫
負担金等分四百九億円及び補助職員分百三十九億円であります。
義務的
経費の
追加四百四十二億円のうち主なものは、
国民健康保険
助成費百二十七億円、義務教育費国庫
負担金百二十三億円、老人
医療費補助金百四億円であります。
国債整理基金
特別会計へ繰り入れ二千百五億円は、
財政法第六条に基づく
昭和五十四年度の剰余金に相当する額等を繰り入れるものであります。
道路
整備特別会計へ繰り入れ五百六億円は、揮発油税
財源の同
特別会計へ繰り入れの減少の補てん四百二十億円及び道路債券等の金利上昇等に伴う日本道路公団補給金等八十六億円を同
特別会計へ繰り入れるためのものであります。
地方交付税交付金の
追加額四千六十九億円は、今回の
補正予算において
所得税及び
法人税の
増収並びに酒税の減収を
歳入に計上したことに伴う
地方交付税交付金の
追加額並びに
昭和五十四年度の地方交付税に相当する金額のうち未繰入額を、交付税及び譲与税配付金
特別会計へ繰り入れるためのものであります。
交付税及び譲与税配付金
特別会計借入金等利子
財源繰り入れについては、金利の
引き上げ等に伴い、三百四十二億円を
追加計上いたしております。
その他の
経費の
追加千五十四億円の主な内訳は、住宅対策費四百八十八億円、国際分担金及び拠出金三十三億円、野菜価格安定対策費三十億円であります。
揮発油税
財源の道路
整備特別会計へ繰り入れにつきましては、揮発油税収入の減少に伴い、四百二十億円の
修正減少をすることとしております。
既定経費の節減七百三十九億円は、
既定経費の節約及び不用額の
減額を行うものであります。
次に、
歳入の
補正について御
説明いたします。
租税及び
印紙収入につきましては、最近までの
収入実績等を勘案し、七千三百四十億円の
増収を見込んでおります。
その他収入の
増収三百二十億円は、専売納付金の
増収二百四十四億円等であります。
公債金につきましては、
建設公債に係る
公債金収入を千七百億円
追加し、
特例公債に係る
公債金収入を千七百億円
修正減少することとしておりますが、
総額につきましては当初
予算額と
同額であります。
前年度
剰余金受け入れ三千二百六十五億円は、
昭和五十四年度の新規剰余金のうち、同年度における地方交付税に相当する金額の交付税及び譲与税配付金
特別会計への未繰入額に相当する額と
財政法第六条の純剰余金との合算額を計上したものであります。
特別会計予算におきましては、以上申し述べました
一般会計予算補正等に関連して、
厚生保険特別会計、
農業共済再
保険特別会計等の十三
特別会計について
所要の
補正を行うことといたしております。
政府関係機関予算におきましては、
日本専売公社、
日本国有鉄道、住宅金融公庫及び環境衛生金融公庫につきまして
所要の
補正を行うことといたしております。
なお、お手元に配付しております「
財政の中期展望」について、この際付言させていただきます。
いわゆる
財政計画の策定検討作業については、かねてから各省庁の
協力のもとに作業の進捗を図ってまいりました。各方面からの強い御要請もあり、今回、試作品ではありますが、「
財政の中期展望(
昭和五十五年度−
昭和五十九年度)」と題して、五十六年度
予算をもとにした試案を取りまとめました。
この試案は、五十六年度
予算における
制度、
施策を前提とし、その
運営方針に変更がない等一定の仮定のもとに、これを将来に投影する後年度
負担額推計を
基本とするものであります。これは今後の
財政運営のあり方について検討を進めていく上での一つの手がかりになるものと考えておりますので、参考資料として配付しました。よろしくお目通しのほどお願いいたします。