○吉浦忠治君 私は、公明党・
国民会議を代表しまして、ただいま
農林水産大臣からなされました
昭和五十五
年度の
農業白書、
漁業白書、
林業白書についての
報告並びに
食糧管理法の一部
改正案の
趣旨説明に関連して、内閣総理大臣及び関係各大臣に質問をいたすものであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
御周知のように、
わが国の農林
漁業は、過去の高度
経済成長における重化学工業優先の国際分業政策のもとで、産業的地位において後退に次ぐ後退を強いられております。この傾向は、減速
経済へ移行した今日においても、なおとどまることなく続き、荒廃、衰退の一途をたどっております。
このことは、
農業について言えば、稲作の大
規模減反、農
畜産物の輸入
拡大や
生産者価格の抑制、
農業従事者の高齢、婦女子化等々といった形であらわれております。
ちなみに
農業所得は、
生産資材の値上がりもあり、
昭和五十四
年度には五・八%
減少し、五十五
年度には
冷害の
影響も加わりまして、四月から十二月の期間で見ると、何と一六・五%も
減少しているのであります。一般労働者にとって賃金の目減り現象は大変な問題となっておりますが、
農業者、とりわけ
農業へ大きく依存している
農家にとって、それを上回る深刻な事態を迎えるに至っているのであります。
漁業、
林業についても同様、いま大きな危機に直面し、
生産の担い手は確実に
減少しているのであります。
これら農林
漁業については、これまでの単なる政策の延長程度では再建、
発展は不可能であります。
政府は、農林
漁業の再建、
発展のために今後どのような政策的手だてを講ずるお考えなのか、まず総理の所信をお伺いするものであります。
以下、各白書に関連して簡潔にお伺いをいたします。
今年の
農業白書においては、
食糧の安全保障
確保のため総合的な
食糧自給力の
維持強化を図る、このように必要性を説いております。
しかし、昨年秋、閣議決定した「
農産物の
需要と
生産の長期見通し」においては、現在三四%ある
穀物自給率を
昭和六十五年には三〇%にダウンさせる見通しである、この点から見ても明らかなように、
食糧自給力と
食糧自給率の持つ意味は区別して考えられております。すなわち、
政府は、いざというときには国内で
生産できる、いわゆる潜在的な
生産諸力を
自給力という意味で使っております。
しかしながら、
食糧生産は、そのようなどろなわ式で対応できる性格のものではありません。したがって、
食糧の安全保障
確保のためには、
自給力の
維持強化ではなく、あくまでも自給率の
向上を政策の
基本とすべきであります。
その場合、
わが国においては、減反した水田等をえさ米づくりに活用することなどして、飼料
穀物の自給率を高めることがきわめて緊要であると考えます。そして、そのことがとりもなおさず
わが国農業の行き詰まりを打開する突破口となるものと確信するものでありますが、このことについて
農林水産大臣の御見解を承りたい。
また、
農業白書には
構造政策推進の必要性が強調されておりますが、本来
構造政策は、地価の安定や雇用、社会保障政策の
充実など、
農業政策を超えた総合的視点から、国が整合性を持たせながら進めるべき性格のものであります。事の
重要性にかんがみ、総理及び国土庁長官は、この問題に対し、いかなる実効ある具体策を用意できるのか、明確な御答弁をお願いしたいのであります。
次に、
漁業についてでありますが、今回の白書は、近年魚離れが著しく、その原因の一つに魚価の高騰があることを指摘しております。したがって、魚価の安定のためには、今後
わが国沿岸海域における栽培
漁業を強力に
推進したり、内水面を積極的に活用し、水産物の安定
供給を図るべきではないか。
また、近年水産物の冷凍品が急増している現状から見て、関係省庁が一体となり、在庫量を徹底して掌握し、商社等による魚の買い占め等の不当な行為は厳しく指導するなどして、魚価が下方硬直化している現状を打破していくような政策に力点を置くべきものと考えるものでありますが、どのようにお考えなのか。
また、
林業については、世界的に
森林資源が枯渇していく傾向であります。
わが国においては、戦後植林した森林が、あと二十年もすれば本格的伐採期を迎えると予測されています。しかるに、仮にそうであったとしても、その時点で一体だれがその森林の木を伐採するのでありましょうか。
現在、
林業就業人口はわずか二十万人足らずで、その多くは高齢化しております。近年は、高校新卒者で
林業へ就業するのは年間四百人を割るに至っております。そのため、いま必要となっている
間伐についてさえも遅々として進んでいない実情であります。今後、
わが国林業を考える上でキーポイントとなる、この担い手の
確保対策について、ここらで画期的な
施策を講ずる考えはないのか、
農林水産大臣にお尋ねをするものであります。
次に、
食糧管理法、すなわち食管法の一部
改正案についてであります。
米の不足を背景に制定された現行の食管制度については、米過剰の今日においては多くの矛盾が表面化し、世論の厳しい一つの批判の的となっております。しかし、今後懸念される世界的
食糧危機が到来した場合、
わが国においては
食糧輸入の大幅縮小を余儀なくされ、そうなれば米への依存度を高め、
わが国はたちまちにして米不足という事態を招くことになることは必至と言えるわけであります。
このような事態に対処するためにも、わが党は、
食糧不足時において、米を安定的にして、かつ、公正な分配ができるよう平素から万全の
措置を講ずべきものと考えるものであります。そして、そのためにも、適正な米価を補償し、
農業経営基盤の維持を図るとともに、米を国家管理貿易品目とすることにより米の輸出入を厳重に規制するといった現行食管制度が持つ機能については、これを大切に守る必要があるものと考えるものであります。
昭和四十八、九年における狂乱物価の中においても、米価だけは安定した
価格で
供給できたという実績は、まさに食管法が存在していたからと言えるのであります。
しかし、現行食管制度は、米の不足基調を背景として制定された統制色の強いもので、米の過剰基調には弾力的に対応できないことから、制度と実態の乖離とか、違法行為の横行等といった形で、さまざまな矛盾を表面化させているととも事実であります。したがって、今回の
改正案が、現状追認程度とか、部分的
改正ないしは運用面での多少の
改善措置程度にとどまるものであれば、食管法への
国民の信頼を高め、かつ、守りやすい食管とするためにも、それは必要な
措置と考えるものであります。
しかし、今回の
改正案が、さきに述べたような現行食管法が持つ重要な機能に支障を来す可能性をはらんでいるとするならば、その部分については、
修正案の提起を含め、十分な歯どめ
措置を講じておく必要があると考えるものであります。
以下、このような前提に立って、重要な問題点にしぼり質問をするものであります。
第一は、
基本計画についてであります。
この
基本計画とは、これまでの物量統制色の濃い配給計画にかわるもので、米の品質要素や
需給調整色をも帯びた計画になるわけであります。となると、この計画は、運用次第によって、ことに中長期的には減反政策を初め、
わが国の
農業、
食糧政策にも重大な
影響を及ぼすことになるものと思わねばなりません。それだけに、この計画策定には慎重を期さなければならないわけでありますが、今回の
改正案によりますれば、この計画は
農林水産大臣が一方的に策定できるようになっております。
したがって、この策定に当たっては、現在、
価格決定のみについての諮問
機関となっている米価審議会を、主要
食糧審議会という形に改組し、この諮問
機関の意見を聞かねばならないものとすべきであると考えるものでありますが、どうか。
また、この
基本計画に基づいて
政府が米を買い上げる場合、従来にも見られたように、減反に一〇〇%協力しながら、なお発生した余り米についてはどう対処される方針なのか。あわせて御答弁をお願いするものであります。
第二に、自主流通米についてであります。
今回の
改正案においては、これまで政令でもって運用されてきた自主流通米に法的根拠を与えようとするものでありますが、この自主流通米の存在については、すでにこれまでの流通形態の中で定着し、この存在を肯定する
生産農家も多いことから、今回の
改正の
趣旨に
基本的に反対するものではありません。しかし、その取扱数量を無条件に認めることは、米の自由化を促進し、緊急時において
政府による直接管理という方向へ容易にバックすることが困難となる懸念があります。したがって、その数量は全流通量の三分の一程度にとどめるほか、万一、自主流通米として売却できない場合は、
政府が責任を持って買い上げる旨について、
法律事項として明定すべきものと考えるものでありますが、どうでしょうか。
第三は、やみ米業者の取り締まりについてであります。
農林水産大臣及び国家公安
委員長は、正米市場関係をも含めて、やみ米業者について徹底して取り締まれる自信があるのかどうか。
また、米の
生産農家が直接消費者へ贈る縁故米についての公認は許されるとしても、消費者が買い求めた米を他の消費者へ贈る贈答米については、やみ米業者の発生を誘発しがちになるだけではなく、
供給計画をも大きく乱す要因となりがちなことから、贈答米の公認については再検討されるよう要求するものでありますが、どうでありましょうか。
第四は、米価の問題についてであります。
米価については、今回の
改正案とは直接関係はないものの、米価抑制のため、今後は、その運用面において、
需給均衡的要素を色濃く導入してくることになるのではないかと懸念されておりますけれども、この点はどうか。また、現在再検討しているという新しい米価算定のあり方とはいかなるものか、再検討の作業
日程もあわせ、その見通しをお尋ねいたします。
最後に、
政府は、本食管制度を部分管理へ移行させるという方針は、今後とも全くないものと断言できるものかどうか。これについて総理の明確な答弁をお願いし、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣総理大臣鈴木善幸君
登壇〕