○五十嵐広三君 私は、
日本社会党を代表し、ただいま
議題となりました
地方税法及び
国有資産等所在市町村交付金及び
納付金に関する
法律の一部を
改正する
法律案について、
政府原案に
反対する
立場から
討論を行うものであります。
いい国家というものは、つり天井のように宙に浮いて存在するものではありません。国土のすみずみにまで存在する地方自治体が、よりよき姿で積み上げられて初めてよき国家が構築されるのであります。だからこそ、地方自治は、何にも増して民主主義社会にとって重要な根源的
制度なのであり、憲法は、地方自治の本旨についてこれを明記しているのであります。
しかしながら、その地方自治の本旨を具体的に保障するためには、今日の地方
財政の構造的危機を打開し、自主、独立に足る地方
財政の安定、充実を図らなければならず、現行の国中心の租税配分を改め、地方の時代にふさわしく、地方にウエートを置いた
財源構造につくり直すことが必要であります。
ところが、このたびの
政府原案はこれに逆行しているのであります。
まず、
国民の
税負担総額に対する地方税の占めるシェアを見てみます。
言うまでもなく、歳出総額の三分の二を占めながら税収が三分の一にとどまる
わが国の税源配分の仕組みにあっては、地方税の配分の強化
拡大は最も重要な課題であります。これは党のいかんを問わず見解の一致するところでありましょう。
しかるに、
政府原案は、
拡大するどころか、今年度の地方税のシェア三五・五%を逆に一・三%も縮めて三四・二%に圧縮しているのであって、地方
税制の
改正に当たっての第一の原則に反するものであります。
また、税政策の最も重要な
基本は、いかなる場合も
税負担の公平、公正を期するということであり、
国民の納得のいく税でなければならぬということであります。このことも何人も異論のあろうはずがない点であります。
ところが、
政府原案はどうですか。およそ、税を論ずるあらゆる機関が常に批判し、厳しくその廃止を求めている一部特定法人などを対象とする地方税の非
課税等の
措置について、あえてそれを強化し、今年度に比べて実に八百五十八億円も多く
減税しようというのであります。この
減税分八百五十八億円あれば、今日大問題になっている国鉄特定地方交通線の全国の廃止しようとする路線の赤字をすべて埋めることができるのであります。(
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このような誤った考え方は、特定の受益者に奉仕し、今日の不公平
税制を一層増幅させるばかりでなく、
国民の納税意欲を減退させ、
行政改革へのコンセンサスを妨げ、
政治不信を深めるばかりであって、あるべき地方
税制改正の第二の原則に反するものであり、断じて容認できるものではありません。(
拍手)
国税における租税
特別措置や地方税におけるこれら非
課税等の
措置は、よく言われるように隠れた
補助金であり、常に世論の批判を受けているものであって、今日、
総理がみずから
政治生命をかけるという
行政改革のイの一番に挙げられなければならないものであります。真に
行政改革、
財政再建を至上命令とするとすれば、
鈴木総理は、直ちに本
改正案を再検討するところから始めるべきことを強く主張するものであります。
しかも、これら税における特例の
措置は、一度法で決まれば、隠れた
補助金の名のとおり、
政府発表額でさえ国、地方合わせて一兆数千億にも上る金額が、
予算書にも全くあらわれることなく、また国会の審議の目に触れることもなく消えていくのであります。議会の権威の上からも、まことに不可解なことと申すべきであり、
政府は、アメリカなどの例にならって、これらの特例
措置によって年々巨額の利益を得ている主たる受益者と金額を毎年
国民に明らかにし、
予算書とともに国会に示して、公平な審議を尽くすべきであることをも、この機会にあわせて要求するものであります。(
拍手)
このような大法人等に対する底抜けの甘えの構造の反面、物価高の中で実質収入のマイナスに泣く
庶民大衆に対しては、最低の暮らしに必要な生計費に税が深く食い込むような過酷なレベルに
課税最低限度額を抑えているのであります。
たとえば
昭和三十三年、当時所得税、住民税の基礎控除など各控除額はともに九万円でありましたのが、今日所得税の控除額は二十九万円、住民税は二十二万円で、おのおの三・二倍、二・四倍にとどまっていますが、一方、東京都の標準生計費の推移を見ると、この間に九・一倍になっているのでありますから、
課税最低限度額は余りに低いと申し上げなければならないのであります。
今日、所得税の
課税最低限度額は、物価調整
減税を要求する
国民の怒りの大合唱を浴びていますが、住民税はさらにそれを大きく下回っているのであって、深刻な物価高にあえぐ低所得者の貧しい暮らしに、広く深く
課税しようとするものであります。これは、憲法第二十五条が保障する最低の
国民生活を営むための基礎的生計費を税によって侵すものであり、税本来の原則を忘れたものと言わなければなりません。(
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ただいま私が申し述べたことは、余りにも常識的な民主
政治の原理の問題であり、イデオロギー以前の問題であります。それゆえにこそ、昨年三月の参議院地方行政
委員会の全員一致の
附帯決議、あるいは昨年十二月の第十八次地方
制度調査会などの答申でも、強く
政府にその
改善を求めているものであります。しかるに、これが全く反映されず、むしろこれに逆行して不公平を
拡大したり矛盾を深めていることは、民主主義の諸原則を無視し、地方自治の本旨を忘れたものであって、断じて許されるものではありません。(
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このような見解から、
日本社会党は、昨日の地方行政
委員会で修正案を
提出し、敗れたりとはいえ、個人住民税の諸控除を
引き上げ、
課税最低限を百七十万円とし、都道府県民税所得割
税率に超過累進
税率を入れるなど、
庶民の
課税軽減を図り、一方、法人に対しては、市町村民税の
税率を若干
引き上げて、国税における法人所得税のアップに見合わせるとともに、電気税の産業用の非
課税措置については、その一部の段階的な整理などの
提案をいたしたところであります。
今日、参加、分権、自治を唱えぬ政党はなく、だれしも地方の時代をうたい、地方
財政の強化を訴えながら、しかも、それに全く逆行する
改正案を白昼堂々と
提案するごときはまことに驚きにたえないところであって、強く
政府に反省を求め、真に地方の時代の内実を求めるがゆえにこそ、
政府の原案に
反対を表明し、私の
討論を終了する次第であります。(
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