○林百郎君 私は、
日本共産党を代表し、
昭和五十六
年度予算三案に対し、
反対の
討論を行うものであります。(
拍手)・
反対の
理由を具体的に述べる前に、私は、五日の
予算委員会における自民党の
単独強行採決の暴挙を、満腔の怒りを込めて糾弾するものであります。(
拍手)
国政の基本である当初
予算の単独の強行
採決は、かつて米軍の全面占領下にあった一九五二年の二月以来、実に二十九年ぶりであります。しかも、実に今回は、このときを上回る暴挙で、議会
政治の歴史に、ぬぐうことのできない汚点を残したものであります。多数議席におごって、議会制
民主主義の基本原則を踏みにじって恥じない自民党と
鈴木内閣を、
国民は絶対に許さないでありましよう。(
拍手)
しかし、強調しなければならないのは、この暴挙は、自民党の真の強さを示すものではないということであります。逆に、その弱点をさらけ出したものだと言わざるを得ません。
アメリカと財界の要求に忠実に従って、戦車やミサイルが
福祉、教育の踏みつぶしをする、このような
予算に対する
国民の怒りが燃え広がり、この事態に直面した自民党が、
昭和五十六
年度予算は
国民には絶対に受け入れられない最悪の
予算であることをみずから認めていることを内外に示すことになったからであります。(
拍手)
さて、周知のとおり、昨年の
勤労者の
実質賃金は前年を下回り、統計始まって以来の異常な事態となり、
勤労者の家計には、税金、社会保険料などの
負担とともに、
公共料金やローン返済などの
負担がますます重くのしかかっております。
農家は、減反に加えて冷害と豪雪に苦しみ、実質
所得は二年連続して
低下しておるのであります。
中小企業は、月千件以上の
倒産が実に連続六十四カ月も続いているのであります。ことし一月は千三百件と、-一月としては史上最高という記録をつくりました。
このような
国民生活の困難とは全く対照的に、大
企業は、昨年九月期の利益を前期比一挙に五割以上も伸ばし、また、海外
投資を急増させて、多国籍
企業として繁栄する道を進んでいるのであります。
したがって、来
年度予算は、
国民生活の
防衛を何よりも優先し、それとあわせて
財政再建もしなければならないのであります。
わが党が提起しました
予算の組み替え提案は、軍事費の大幅
削減、大
企業優遇の不公平税制の是正で
財源を確保することによって、この課題を実行に移すことが可能であることを具体的に明らかにしたのであります。
しかるに
政府・自民党は、このわが党の提案を全面的に拒否したばかりか、
財政再建を口実に、これまでの大
企業奉仕のばらまき
財政がつくり出した膨大な借金のツケをすべて
国民に押しつけるだけでなく、大軍拡
路線の
負担をすべて
国民に転嫁するという驚くべき二重の犠牲を
国民に押しつける
予算を最善のものと強弁し、単独
採決という暴挙にまで出て、あくまで犠牲を
国民に押しつけようとしたのであります。(
拍手)
しかも重大なことは、このような反
国民的
負担増大の方向が、単に来
年度にとどまらず、一九八〇年代の全期間にわたって、ますます強められようとしていることであります。
財界の要求とレーガン政権の圧力に従って、
政府がしばしば口にするいわゆる総合安保なるものは、その実は
国民生活の犠牲の上に日米安保条約の攻守同盟化を基軸とした大軍拡を推し進め、軍事費をNATO並みのGNPの三%にまで飛躍的に拡大しようとするものであります。
このような
予算案は、
財政再建元年どころか、大
増税元年
予算、
福祉切り捨て元年
予算であるとともに、軍拡元年
予算ともなっていると言わざるを得ないのであります。(
拍手)
さて、
反対の主な
理由を具体的に述べたいと思います。
反対理由の第一は、本
予算案が軍事費を削り、暮らしと
福祉、教育の
充実を求める
国民世論に挑戦し、憲法違反の軍事費を急速に拡大したことであります。
アメリカ
政府の執拗な圧力のもとに、軍事費は、
予算編成の最初の段階から別枠扱いとされ、一般
経費の平均
伸び率四・三%を実に八割も上回る七・六一%増となり、ついに
福祉予算の
伸び率を追い越しました。これこそ
政府予算の性格を端的に示したものではないでしょうか。
とりわけ、三海峡封鎖の実戦上の要求に基づくC130H大型輸送機、E2C早期警戒機、米空母護衛のための四千五百トン級ミサイル積載護衛艦、F15戦闘機などの
正面装備費を、実に一七・七%も急増させておるのであります。その上、中期業務見積もりの一年繰り上げ達成という大平・カーター会談での密約を忠実に履行しておるのであります。
しかも、新規
軍備発注の大部分は後
年度負担方式をとっており、このため、後
年度の
負担の総額は実に一兆三千五百億円にふくれ上がり、今後の
予算を先取りし、五十七
年度以降、実に二けた台の
伸びを決定づけています。
また、米軍地位協定に何の根拠もない在日米軍への支出も
増大する一方ではないでしょうか。
わが党は、本
会議、
予算委員会での論戦を通じて、米軍岩国基地への核兵器持ち込みの重大な疑惑を明白な証拠を持って追及したのであります。しかし、
政府答弁は、「アメリカがそう言っていないから大丈夫だ」の一点張りであったのであります。
さらに
武器輸出禁止の法制化を拒否し、九条改憲発言を繰り返す奥野法相の擁護、竹田前統幕
議長の重大発言への弁護
措置、わが党の追及で明らかになった待機命令前の参戦準備態勢、自衛隊法の改悪の意図の表明等々、自民党
鈴木内閣の危険な本性をあらわしたものではないでしょうか。
私は、五月に予定されているレーガン大統領との会談で、鈴木総理がこれ以上危険な
負担を約束しないよう強く警告するとともに、この異常な軍拡に踏み切った
鈴木内閣に対し、
国民が必ず将来にわたって
反対の態度を強く表明するであろうことを、この壇上から断言するものであります。(
拍手)
反対の第二の
理由は、
政府は、大
企業、大資産家優遇の不公平税制を温存する一方で、一兆四千億にも上る史上最高の
増税を
国民に押しつけ、
所得税減税の四年間連続見送りによる実質大
増税を強制し、その上に、五十七
年度には「課税ベースの広い間接税」すなわち装いを変えた一般
消費税の導入を策しているではないでしょうか。
特に、
日本の
課税最低限は主要国中最高などという
政府の言いわけが、わが党の追及で全く崩れ去ったにもかかわらず、わが党の六千億円の
所得税減税要求を頑迷に拒否したことは断じて許すことができません。(
拍手)
購買力平価という最も適切な基準をもって比較すれば、
日本は主要国中最高どころか、最低であることは
政府自身が認めているではありませんか。
年収二百五十万円の四人家族の平均的な
勤労者の
所得税負担は、実に五十二年に比べて四倍にもなっておるのであります。一方、大
企業、大資産家に不当にまけている税金は、三兆円を大きく超えております。
私は、ここに大
企業奉仕、
国民生活破壊の
政府の姿勢が最も明らかに示されていることを指摘せざるを得ないのであります。
反対理由の第三は、来
年度予算が、
国民にとって最も切実な
福祉と教育費の露骨な
切り捨てに着手したことであります。
物価上昇が八%に及んでいるにもかかわらず、
政府予算案は、
老齢福祉年金の引き上げをわずか千五百円、六・六%にとどめた上に、
所得による格差
制度を導入いたしました。
児童手当も、支給額はもとどおりにしておりますが、これに
所得制限を
強化し、そのため十万人が新たに支給対象から排除されているのであります。
さらに、来
年度だけはようやく無料
制度を継続し得た老人の医療
制度も、五十七
年度からは有料化がたくらまれておるのであります。
加えて、
失業者が
増加しているにもかかわらず、現在十万人が就労している失業対策事業の五年内打ち切りを言明し、五十六
年度には二万人の首切りを準備しているのであります。
国際障害者年を迎え、立ちおくれだ障害者対策をいよいよ
強化しなければならないときに、わが党が求めた大
企業の障害者
雇用の改善
措置についても、
政府は明確な態度をついに示しませんでした。これで何がきめの細かい
福祉でしょうか。
教育
予算についても同様です。子供たちの教育環境をよくし、非行をなくしたい、落ちこぼれをなくしたいという父母と教師の切なる願いに対し、
政府予算の回答は、高校建設費を初めとする教育施設費の大幅切り下げではありませんか。
小中学校の教科書の無料
制度は存続されたものの、公害問題、商社の悪徳商法を記載した教科書に対し、
政府が介入して
内容を大
企業本位に変えることに踏み切ったのであります。総理の言う「二十一世紀への足固め」を本気で望んでいるならば、力を注ぐべきは、子供に真実を教え、健やかに育てる教育ではないでしょうか。
反対の
理由の第四は、
財政再建のために、大
企業奉仕のむだを徹底的になくす、
国民本位の民主的
行政改革に取り組むべきときに、
政府予算が、これに全く逆行する
国民サービス
切り捨て、大
企業奉仕の一層の拡大の方向を明らかにしていることであります。
アメリカの
世界戦略に従って、韓国を初めとするファッショ的軍事政権をてこ入れするとともに大
企業の海外進出を助ける
経済協力費を別扱いとし、大幅に伸ばしております。しかも総理は、今後五年間にこれを二倍以上にすることを公約し、ここでも五十七
年度以降の
予算を先取りしているのであります。
さらに、
一般会計で約五千億円、
特別会計を含んで総額八千五百億円の巨額に達するエネルギー対策費の大部分も、
補助金、利子補給金などの形で
石油メジャーと大
企業のふところに転げ込む仕組みとなっているのであります。
最後に、総理は、「和の精神」とか「活力にあふれ、ゆとりに満ちた安定感のある国家」をつくるなど、美辞麗句を並べていますが、実際に総理がやろうとしていることはどうでしょうか。(「やめろ」と呼び、その他発言する者あり)それは、本
予算案で明らかなように、
国民には苦しみを与え、
日本の将来を限りなく不安と危険にさらすものであり、あくまで多数を頼む強行姿勢ではないでしょうか。