○伊藤公介君 私は、新自由クラブを代表し、ただいま議題となっております
所得税法、
法人税法、
租税特別措置法、以上三法の一部を
改正する
法律案の
趣旨説明に対し、
総理並びに
大蔵大臣に
質問をいたします。
政府は、
昭和五十六年度予算を
財政再建元年の予算であるとし、この予算によって
財政再建を本格的軌道に乗せることができるとしております。財政の再建を公債依存体質からの脱却に求め、公債
発行額の二兆円
減額の達成が
財政再建のスタートとされているわけでありますが、
政府の
考えている
財政再建の基本的な理念につき、本議題であります
税制の
改正に
関連をして、まず
総理にお伺いをいたします。
歳入総額に占める公債金の割合が異常な高さにあることから見て、財政の再建が当面の急務であることは、われわれもひとしく認めるところであり、巨額の公債依存から脱却することが、現在の財政に課せられた
課題であることは、論をまたないところであります。
しかしながら、問題は、この財政危機から脱却する
政策手法にあると私は
考えているのであります。
政府が
国債二兆円
減額のためにとった方法は、総額一兆三千八百三十億円にも上る
税制改正による
増税と、
大蔵省が約四兆五千億円と見込んだ
自然増収、すなわち実質
増税によるものであります。この
税制改正による
増税と
自然増収という名の実質
増税を合わせたその
増税額は、実に六兆円にならんとするものであります。
われわれは、かねてより、財政危機の背景、その原因を究明する立場から、また活力ある自由主義
社会を求める立場から、
財政再建を歳出構造の改革によって達成することを主張してまいりました。つまり、財政の再建とは、単に公債
発行額の
減額を
目的とするものではなく、特に
増税による公債
減額は、不健全財政のそのしりぬぐいを
国民にのみ押しつける以外の何物でもないと言わなければなりません。すなわち、現在の歳出構造は、
昭和四十年代後半の高度
経済成長期の歳出構造そのままであり、それを増分主義という予算編成のメカニズムで歳出膨張をさせたものであります。したがって、予算編成のあり方を、増分主義からゼロベース方式へと改める必要があると
考えますが、この点について、まず
総理のお
考えを承りたいと思います。
財政の再建は、時代の要請に合致しなくなった
制度、たとえばその代表的なものとして、いわゆる三Kの赤字構造を変革する中で求められると
考えます。
財政再建についての
考え方をまずお伺いをしたいと思います。歳出構造の改革として、三Kを含めどのような
制度の改革を計画されているのか、これもあわせて伺いたいと思います。
現在の食糧管理
制度のもとでの生産者米価の決定方式は、生産費補償方式がとられているわけでありますが、食管
制度そのものの
見直しが行われない以上、生産者米価の
引き上げは当然のことになるわけであります。消費者米価は、米の需給動向から
考えましても、
引き上げはきわめて困難な
状況であります。財政の赤字という現状もあり、来年度の米価についての方針を、
財政再建の方針を伺う
一つの具体的な例としてお答えを伺いたいと思います。
昭和五十六年度予算は、一般歳出を四・三%の伸びにとどめ、歳出全体の規模を一けたの伸びに抑制するために、
経費について根底から見直すなど、
節減合理化に格段の
努力を払った、こう財政演説の中で
大蔵大臣は述べられておりますが、見るべき
制度の改革は全く行われず、国家公務員の百一人の純減、公共投資の抑制、地方財政対策費の圧縮など、これが徹底をした歳出の合理化、格段の
努力かと疑わざるを得ないのであります。
大蔵省がさきに公表をされました財政の中期展望によりますと、歳出歳入のギャップ、要調整額は、五十七年度においては二兆七千七百億円、五十八年度においては四兆九千六百億円、五十九年度においては六兆八千億円にも上るとされ、年度平均二兆三千億円弱が、歳出の抑制または歳入の
増加による調整が必要となっております。
五十六年度予算の編成が、六兆円に近い
増税と、わずか数千億円の歳出合理化で行われたことを見ましても、この中期財政展望に言われる要調整額は、再び安易な歳入
増加によって賄われるのではないかという推測がされるのであります。さらに、五十六年度予算の
増税が、
現行税制の枠組みの中で最大限の
増収措置を図ったとされている以上、五十七年度以降の
増収策は、新税の
導入が
考えられるわけであります。
われわれは、活力ある自由
社会の限りない発展を希求する立場から、これ以上の
政府の肥大化に歯どめをかけ、そして新税の
導入はもちろん、
増税策には原則として反対の立場をとるものであります。
国民の立場から見ても、まさに申しわけ
程度の歳出減らしと、大
増税の後にまたもや大型の新税では、とうてい容認ができるものではありません。
中期財政展望の要調整額をどのように調整されるおつもりか、また、歳出の
見直しで行われるお
考えであるとすれば、その内容をお示しをいただきたいと思います。
本格的な
制度改革を短時間で行うことがきわめて不可能である以上、要調整額を歳出構造の改革で行おうというなら、その具体的な内容を少なくともサマーレビューの中で明らかにすべきだと
考えますが、その点についての
総理並びに
大蔵大臣の御
決意を伺いたいと思います。
その上、私ども新自由クラブがかねてから、立党以来主張し続けてきたように、夏の各省概算
要求提出時期以前に、翌年度の予算の骨格、そのあるべき姿を議論する予算国会を開会をすべきだということを主張してまいりました。与党の総裁としての
総理のお
考えをお聞かせいただきたいと思います。
さて、
所得税法の
改正についてでありますが、この
改正の内容であります
控除対象配偶者の
所得要件の緩和等によって初年度百六十億円、平年度百三十億円の減収が見込まれております。この一方、いわゆる
自然増収という名の
増収額は二兆七千六百九十億円が見込まれております。このように大きな額の
増収は、
課税最低限度が五十二年以降長期にわたって据え置かれてきたことに大きく依存をしているものであります。
五十六年度
経済見通しによれば、来年度の実質
経済成長率を五・三%とし、この寄与度は、内需四%、このうち
個人消費二・五%を見込んでいるわけであります。五十五年度の輸出依存型から、内需依存型の成長への移行を予測されているわけでありますが、
課税最低限、
現行税率の据え置きと給与
所得者の可処分所得の減少の中で、
個人消費支出のこのような伸びが、どのような理由で予測をされるのか、大変理解に苦しむところであります。
今般の
所得税法の
改正の内容は、以上のような観点から、当然各種人的
控除額あるいは給与
所得控除額の
引き上げによって、
課税最低限の
引き上げ、
所得税減税を行うべきでありまして、
控除対象配偶者の
所得要件の緩和等の内容はきわめて不十分なものと言わなければなりません。
総理の御所見を伺いたいと思います。
大蔵省が予算資料として提出をされました「業種別
所得者数と
所得税納税人員」によりますと、給与
所得者は八四%が
所得税を納税するのに対して、自営業者では四二%、農業
所得者では一五%となっております。もちろん、山間の貧しい農家や地方都市の零細商店も決して少なくなく、これらが
課税最低限以下となることは予測をされるものの、源泉徴収による給与
所得者の納税と申告による納税の捕捉率に差があるのではないかと
考えるのでありますが、
大蔵大臣に、この数字を見て、税の捕捉率という問題をどのように
考えられているのか、また、税の捕捉率に問題があるとすれば、
改善の方策をどのように図っていくおつもりか、お尋ねをしたいと思います。
法人税法の一部
改正についてでありますが、私どもは、五十六年度予算の編成段階で、
法人税率の
引き上げには十分慎重である必要があるということを申し上げたところでありますが、今回の二%の
税率引き上げが、景気動向を十分に
配慮された上で行われようとしているのか、大変疑問を抱かざるを得ません。
企業の設備投資意欲は、ここ数年抑制ぎみに推移をしておりますが、その一方、機械設備の耐用年数の到来、あるいは省力化を指向した投資意欲が最近になってあらわれてきております。設備投資の
増加が
経済の活力を生む源泉であることは、いまさら申し上げるまでもないことでありますが、このような景気
状況の中で、投資意欲に水を差す形での
法人税率の
引き上げ、あるいは
増税が妥当性を持つものであるか否か、
経済運営の観点を含めて、御所見を承りたいと思います。
特に、
中小企業の
税負担については、
税率の一律二%
引き上げによって、ますます
企業経営を圧迫することになるのではないでしょうか。
中小法人の
軽減税率の
適用所得限度の
引き上げを
現行の七百万円から八百万円にするという小手先の
改正ではなく、
中小法人の経営実態を
考え、この際、
適用所得限度を少なくとも年一千万円
程度に
引き上げるべきだと
考えますが、この点についても、大臣のお
考えを伺いたいと思います。
以上、
総理、
大蔵大臣の明快な答弁を期待して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣鈴木善幸君
登壇〕