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岡田(正)
委員 大変言いにくい
質問でありましたが、明瞭な答弁をいただきまして、ありがとうございました。
そこで、いまのお言葉に甘えて申し上げるわけではありませんが、この際ちょっと希望を申し上げておきたいと思うのであります。入管当局の方が、
難民としてあるいは流民として、認めてやるべきではないだろうかというような問題が出た場合には、単に外登法違反だから、入管法違反だからということだけをもって一般刑罰と同じような扱いをなさらぬように、特に法務大臣は人道的な
立場を尊重してということをしきりにおっしゃっていらっしゃるわけでありまして、いま
局長さん自身もその旨を言われましたが、ぜひ人道的に御配慮をお願いしたいと思うのであります。
それから、いま
一つお願いしておきたいと思いますことは、これからたくさん出てくると思いますけれ
ども、これは
難民ではないよ、流民ではないよ、特別在留許可を与えるわけにはいかぬのだというようなものが出てくる
ケースもあると思います。そういうときにおいても、実際には、後で新
方針に基づくものは具体的には一体どういうものがあるかということをお尋ねしようと思っておるのでありますが、中には、たとえば一日違いで、あら残念でした、これじゃもうどうにもなりませんとか、あるいは第三国へちょっとおりてすぐ
日本へ飛んでくればよかったものを、そのおった期間が一カ月じゃいけません、二十五日なら結構でございますなんてことに内部基準がもしできたりいたしますと、その端境の人は、ああ残念なことをいたしましたということになり得る可能性もあるわけであります。そういう場合にいたしましても、いずれにしても
インドシナ三国のベトナム、ラオス、カンボジア、そういうところから戦乱に追われて逃げてきたという境遇には何ら変わりはないわけでありますから、あくまでも人道的な対処をしていただきたい。
私の言うのは少しどぎつ過ぎるかもわかりませんが、たとえば町を歩いておって、その人が外登法違反であることがわかった。
外国人ではあるけれ
ども、証明書を持っていないということになれば、直ちに逮捕、すぐ留置場へぶち込む。それから二十日間つついっぱいの勾留をやる。そのあげくの果ては起訴する。そして裁判係属、その間は保釈もできないということになりますと、
日本人が行いました犯罪の中でも殺人犯に相当するほどのいわゆる極悪人扱いの処遇になるわけでございますから、そういう点をぜひ御勘考いただきまして、戦乱の国を逃がれて頼るところもなく、金もなく知人もなく流浪しておる
人たちに対しまして、
日本という国は冷たい国だなという印象を与えないように、ひとつぜひとも刑事
局長さんの御配慮をお願いしたいと思うのであります。
さて次に、これもまたちょっと刑事
局長さんには言いたくないのでありますけれ
ども、裁判の独立という点から大変言いにくい問題で恐縮でありますが、私の仄聞するところによりますと、先ほど
稲葉議員の
お話の中にも出ておりましたが、東京高裁におきまして昨日第一回の公判が行われた由でございます。そのときの出来事であります。
チャン・メイランさんの裁判に当たりまして、このチャン・メイランさんは国連の、この人は
難民でございますという証明書を持っておるわけであります。
難民であるという証明書を持っておるから、それを弁護人側が、このチャン・メイランさんは普通の人じゃありません、
難民ですからといって実はその証明書を証拠として申請をした。すんなりと受けられるものだと思っておりましたら、あにはからんや、そのときおられました立会検事は、これを証拠として採用することには不同意であるということをおっしゃられたので、裁判官も検事がそう言うものを証拠としてとるのはと――これは裁判官の自由でございますけれ
ども、検事の御意見には相当左右されます。そういうことになって、ついにこの証拠の申請が不成立に終わってしまった。聞くだにどうも不思議な気がするのですね。
これからわが
日本におきましても、
難民であるかないかを査定しようという――どういう機関でおやりになるかもこれから
質問をしてまいりたいと思いますが、その機関において
難民かどうかを査定する。そこで、
難民と査定された人も、世界全体で認められておるいわゆる国連で
難民ですよといって認められた人、そんな人でもやはり
日本じゃまたもう一遍認定し直すのかなと不思議な気がします。証拠として採用するに足らぬなんてことになりますと、ははあ、国連の
難民の扱いをしておりますところで証明書を出した者でさえもだめなのかな、そうすると
難民の判定というものは物すごく厳しいなという感じを実は受けるのでございます。
どうせいこうせいということは言える筋合いでもございませんから、ただ、刑事
局長に直接お耳に入れたかった、そして大臣のお耳にもこのことは入れておきたかったので、実はあえて申し上げたような次第でございます。
いま
一つは、二十二日の法務
委員会におきまして、私、
一つの例として綾瀬警察に逮捕されておりますタオ・イン君の問題について御説明申し上げたのです。ところが、残念なるかな、刑事
局長さんはそのとき不在でございましたので、いま一度その概要だけを申し上げておきます。
実は五月七日ごろに綾瀬警察署に逮捕されましたタオ・イン君というラオス名の青年でありますが、二十五歳ぐらいだそうですが、この人は一九七七年の十月ごろ、台湾パスポート観光ビザで来たのでありますが、ビザ切れになったまま不法在留ということになりまして、ある日、この五月七日の一日か二日前でありましょう、勤めております会社の社員寮で
生活しておりましたところ、警官の尋問に会いまして、あんたは
外国人ではないのか、そうです、証明書を出しなさい、いや、実は持っておらぬのです、それではあなたは外登法違反ではないかということになりまして、綾瀬警察署に逮捕されたわけであります。
その後二十日間びっしりと勾留されまして、昨日、実は起訴されたというのでございます。一たん起訴されますと、いま申し上げましたように、裁判が終わるまでの間はなかなか保釈も許してもらえないというようなことであり、しかも、本人がそんなに大きな金も持っておらないということでございますので、私は大変心配をしておるのですが、司直のやられることに横やりを入れようとは思っておりません。
このタオ・イン君というのは、華僑のお父さんと純粋のベトナム人のお母さんとの間にできました三人の男の子と二人の女の子の五人きょうだいの長男でありまして、ラオスのビエンチャンというところで生まれて育った方なのであります。両親は、最初ベトナムのハイフォンにおったのでございますけれ
ども、その後サイゴンに出てきて二、三年いたのですが、
国内の政情不安定のため隣のラオスに行きました。幸いビエンチャンで大きなマーケットを経営できることになりました。これも聞いた話でありますが、このお母さんはなかなかの美人で、しかも働き者でありまして、非常に評判がよく、そのためにマーケットは繁盛したというのであります。
しかし、ベトナムに残しましたそのお母さんの御両親が戦乱の中におりますため、お母さんは大変心配をいたしまして、何人かの人と飛行機でベトナムに向かいました。ところがその飛行機は、ついに行方不明になったのであります。一説によりますと、ベトコンに撃ち落とされて、全員が死亡しているのではないかというのでありますが、
家族の者は、死んだということを信じたくないと言って、涙を流しております。
〔
委員長退席、熊川
委員長代理着席〕
そういう状態で、ラオスも戦乱に巻き込まれましたので、実は一家ばらばらとなり、あのメコン川を渡りまして、タイを経由して逃げたのがお父さんと二人の
子供であります。これは次女と次男であります。三男はタイの
難民キャンプからアメリカに参りまして、現在、永住権を得ております。
このタオ・イン君という本人は、
日本に参りましてから、台湾におる体の弱い
父親と二人のきょうだいの三人を養うために夜も昼も働いております。一月働いて得た約十万から十一万の金のうち五万円を本人の
生活費にいたしまして、
あとの残りの五、六万円を毎月台湾に送金しており、言うならば、一家にとっては大黒柱のような存在でありました。それがいま観光ビザ切れということで不法滞在、なるほどこれは不法でありますからよろしくありません。しかし、その本人が逮捕されてはや一カ月を迎えようとしております。これから裁判が始まりますが、一体台湾に残されたこの
父親や妹、弟たちはどうなるのでありましようか。私は、こういう点にも人道的な配慮があってしかるべしと思うのであります。
さらに、これはまた余談でございますけれ
ども、昨年の四月ごろに、実は特在を許された人が四人おります。その四人は、チャ・ダラ君、タオ・ボーライ君、タオ・リーフ君、もう一人は氏名がどうもつかめないのでありますが、この特在を許された四人の
人たちといま申し上げましたタオ・イン君という人とは、ビエンチャンの同じ町の中に住んでおった隣近所の人なのであります。お互いによく知っているのであります。戦乱を逃れて出たことは間違いないのであります。ただ、本人が台湾でちょっと足踏みし過ぎたということが
一つの大きな原因なのかもしれませんが、そういう
入国の経緯は違っておりましても、戦争で国を追い出された
難民であることは疑う余地もございませんし、もう一段下げて言うならば、流民であることには間違いがないという人でございます。
そういう人が七日につかまって、実は昨日起訴されたという状態でありまして、このタオ・イン君の行方についても、チャン・メイランさんと同じように私は大変心配をしておるのであります。長い長い裁判を、どうやって金のない者がやっていくのでありましょうか。いまわが
日本には、笹原弁護士を中心といたします十五名ぐらいのこの弁護グループがあります。この
人たちは全く無料の奉仕をいたしまして、こういう気の毒な
難民諸君のために尽くしておられます。果たしていつまでこの無料の奉仕が続くでありましょうか、私は非常に心配するのであります。
難民条約を批准されるというこの重要な国会に当たりまして、入管令の
改正がそれに伴って行われるのですから、この際、検察当局に、法務大臣がわが
委員会におきまして述べられましたその御
方針、それから大鷹入管
局長が述べられました新
方針、そういうものが決してむだに終わらないように、私は心から願ってやまないものであります。
次に、入管
局長の方にお尋ねをしたいと思います。
まず
質問の第一は、五月二十二日にああいうりっぱな新
方針を打ち出していただきまして、私
どもこの
関係者としましては、本当にやみ夜に光が差したな
あという、全くそんな感じなのです。夜明けが来たというような感じをもって受け取っておるのでありますが、しからば、さて今度はその新
方針を受けてみんなはどうしたらいいのだろうかという
質問になってきますと、実は、はたと行き詰まるのであります。喜んでばかりおられぬのであります。したがいまして、具体的にお願いをするのでありますが、この新
方針に基づいて特別在留許可を出しますよ、そのことについてもうちょっと具体的にはっきりしたことを述べるわけにはいかぬでしょうか。