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1981-05-29 第94回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月二十九日(金曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 鍛冶  清君 理事 岡田 正勝君       上村千一郎君    太田 誠一君       亀井 静香君    工藤  巖君       高村 正彦君    佐藤 文生君       中川 秀直君    丹羽 雄哉君       原田昇左右君    平沼 赳夫君       小林  進君    下平 正一君       前川  旦君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         法務政務次官  佐野 嘉吉君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君         外務大臣官房審         議官      関  栄次君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 幸治君         大蔵政務次官  保岡 興治君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         社会保険庁年金         保険部長    新津 博典君  委員外出席者         法務大臣官房参         事官      山本 達雄君         法務省入国管理         局総務課長   妹尾 正毅君         厚生省社会局保         護課長     加藤 栄一君         厚生省保険局国         民健康保険課長 古川貞二郎君         厚生省年金局企         画課長     長尾 立子君         厚生省年金局年         金課長     佐々木喜之君         労働省職業安定         局雇用政策課長 野見山眞之君         建設省住宅局住         宅企画官    北島 照仁君         最高裁判所事務         総局刑事局長  小野 幹雄君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十九日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     原田昇左右君   大西 正男君     工藤  巖君   白川 勝彦君     丹羽 雄哉君   森   清君     平沼 赳夫君 同日  辞任         補欠選任   工藤  巖君     大西 正男君   丹羽 雄哉君     白川 勝彦君   原田昇左右君     今枝 敬雄君   平沼 赳夫君     森   清君     ――――――――――――― 五月二十八日  在日韓国人に対する国民年金法全面適用に関  する請願中野寛成紹介)(第五三一二号)  同(和田耕作紹介)(第五三一三号)  同(加藤六月紹介)(第五四六〇号)  同(國場幸昌紹介)(第五四六一号)  同(島村宜伸紹介)(第五四六二号)  同(谷川和穗紹介)(第五四六三号)  同(中村弘海紹介)(第五四六四号)  同(長谷川四郎紹介)(第五四六五号)  同(三池信紹介)(第五四六六号)  同(三原朝雄紹介)(第五四六七号)  同(毛利松平紹介)(第五四六八号)  同(森下元晴君紹介)(第五四六九号)  同外五件(吉浦忠治紹介)(第五四七〇号)  国籍法改正に関する請願田中恒利紹介)  (第五三一四号)  同(土井たか子紹介)(第五三一五号)  在留外国人に対する国民年金法適用等に関す  る請願小川省吾紹介)(第五三一六号)  同(田中恒利紹介)(第五三一七号)  同(矢山有作紹介)(第五三一八号)  同(土井たか子紹介)(第五三一九号)  同外一件(小川国彦紹介)(第五三八六号)  同(矢山有作紹介)(第五三八七号)  同(石田幸四郎紹介)(第五四五五号)  同外二件(稲葉誠一紹介)(第五四五六号)  同外三十六件(岡田正勝紹介)(第五四五七  号)  同(草川昭三紹介)(第五四五八号)  同(佐藤敬治紹介)(第五四五九号) 同月二十九日  在留外国人に対する国民年金法適用等に関す  る請願阿部昭吾紹介)(第五五三三号)  同(菅直人紹介)(第五五三四号)  同(楢崎弥之助紹介)(第五五三五号)  在日韓国人に対する国民年金法全面適用に関  する請願田川誠一紹介)(第五五三六号)  同(松野幸泰紹介)(第五五三七号)  同(森喜朗紹介)(第五五三八号)  同(山口敏夫紹介)(第五五三九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  難民地位に関する条約等への加入に伴う出入  国管理令その他関係法律整備に関する法律案  (内閣提出第七二号)      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所小野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 内閣提出難民地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律整備に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前川旦君。
  5. 前川旦

    前川委員 私は、一つは人道的な立場から、もう一つ難民受け入れにつきまして、余り日本の狭い国家エゴが出ますと逆に国際的に評判を落とす、大きい意味難民の人道的な扱いをするということが日本の国益にかなったことだと思いますので、そういう立場から若干質問をいたします。  初めに各論からお尋ねしてまいりますが、労働省いらっしゃいますね。――まず、ベトナム難民のうち定住許可を受けた者について就職がそれぞれ始まっておりますが、就職差別をなくするようにどういう努力をしていらっしゃるのか。これはベトナム難民のみに限りません。在日朝鮮人も全部含みますが、要するに、外国人就職差別が非常に問題になっていますが、これを解決するためにどういう努力をされていますか。
  6. 野見山眞之

    野見山説明員 職業安定法におきましては、職業指導職業紹介におきまして国籍による差別を行ってはならないという大原則がございまして、私ども職業安定に関する第一線機関におきましては、国籍による差別を行わないように職業紹介その他事業主に対する指導等を行っておりまして、この方針につきましては、インドシナ難民の場合も同様な原則に基づいて実施いたしておるところでございます。
  7. 前川旦

    前川委員 結構なたてまえでございますが、ここに毎日新聞が行ったアンケートが出ております。このアンケートによりますと、これは昭和五十六年二月二日の新聞に出ておりますが、ベトナム難民就職先を追跡調査した。そうすると、圧倒的多数が零細企業である。零細企業でしか採用されていないという結果が出ています。その雇用主難民を雇った動機を聞きますと、人道的な立場からというのが半分ありますが、これはたてまえはそうですけれどもあとの半分は人手不足からというのが理由です。もっと極端に言いますと、できるだけ安く雇いたいという本音がちらちらしているわけです。  私の知人のある海運会社の人ですが、船員をアフリカの人間を雇うと月に二万円ぐらいで雇えると言った人がおりましたが、低賃金で雇うために難民を利用する、こういうことがあってはいけないと思う。しかし、現実にはほとんどが零細企業しか就職していません。これをもっと平等に、大企業へも就職できるように具体的にどういう指導をしておられますか。現実に出ているのは零細企業がほとんどですけれども、どうされていますか。たとえば職安の窓口なんかでどういうふうに指導されていますか。
  8. 野見山眞之

    野見山説明員 難民就職につきましては、先生承知のとおり日本語の問題、それから雇用慣行、それからインドシナにおける産業事情日本雇用事情、技術の違い、その他むずかしい問題がございまして、私ども方針といたしまして、これらの難民方々就職あっせんの場合は、事業主自身が親身になって技能の向上、あるいは家族も含めて日本に適応できるようにするという方針で雇い入れをお願いしておるわけでございます。必ずしも大企業労働条件が高ければいいということよりも、むしろ日本への適応を容易にするという観点で事業主に対するあっせんを行っておるわけでございまして、あくまで本人の適性能力に合うような就職先あっせんするというのが適当だというふうに考えております。  現実に、すでに定住センターを出まして就職している方々、五月二十一日現在で二百五十三名でございますが、そのうち六人以上の規模の企業就職しているのが九十一人でございまして、求人につきましては五人未満の求人が多うございますが、実際に就職させておりますのは三十人以上の企業の場合が六四%、二百五十三人のうち百六十二人になってございます。
  9. 前川旦

    前川委員 これは後ほど質問いたしますが、難民というと非常に狭い概念になりますね。一種の政治亡命者、意識の高い層であると思いますが、恐らく本国ではかなり地位の高い職業についていた人が多いと思います、避難民じゃなくて難民となった場合は。ですから、かなり能力を持った人だと思いますので、やはりそれにふさわしい職をあっせんするような努力を私はうんとしていただきたい。  三十人以上というと、これは小企業でしょうね。やはり中企業、大企業の方へも振り向けていくような、能力に応じて受け入れるような努力をもっとしていただかないと、現実には零細企業ばかりになってしまう。賃金が非常に低い。同じ零細企業の中でも、日本人とは格差がついているのじゃ  ないだろうか。もしそういうことがあれば、これは日本に対する悪い印象しか受けませんので、そういう点、もう少し実効のある指導をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  10. 野見山眞之

    野見山説明員 日本に定住する難民につきまして、向こうでの社会的地位に近い職をお世話したらどうかという御指摘でございますが、先ほど申し上げましたように、インドシナにおける産業事情なり労働事情日本とおのずと状況が違うということでございまして、私どもといたしましては、難民適性なり能力に合った職業を結びつけることに最大の努力をいたしたいというふうに考えておりますが、必ずしも向こうでの社会的地位に直ちに見合う職に結びつき得るかどうか、むずかしい問題があるかと思いますが、いずれにいたしましても、私どもは、インドシナ難民日本に定住し職業の安定が得られるように、さらに努力をしてまいりたいと考えております。  なお、先ほど労働条件が劣悪との御指摘がございましたが、主な職種につきまして就職賃金状況を見てまいりますと、わが国における初任給賃金に比べまして、たとえば機械工の場合は十七歳の方が約九万円、それから三十五、六歳になりますと十四、五万円ということでございまして、統計調査によります勤続一年程度人たち賃金が九万円等でございまして、私どもとしては、事業主に対して能力に合った適正な求人賃金労働条件が確保できるように、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
  11. 前川旦

    前川委員 いまお答えになったように、どうぞ実効が上がるようになさっていただきたいと思います。  それじゃ建設省にお伺いしますが、今度の改正案では入国条件が大きく緩和されまして、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」の条件を必要としないということになりました。言いかえれば裸一貫の人を受け入れる、こうなったわけですね。そうなりますと、衣食住、いろいろありますが、特に住の問題はやはり一番深刻な問題になると私は思います。木賃アパートでも非常に高いですね。そう高い収入は期待できないのに、家賃だけが日本の場合非常に高いということで、てきめんにぶつかる問題です。  そこで、建設省としては、この難民受け入れのための住宅政策として何を考えていらっしゃるのか。たとえば公営住宅の場合では、一定割合心身障害者に割り振るとかあるいは母子家庭に割り振るとか、そういうことをいろいろやっていらっしゃいますね。同じようなことをやはり受け入れ難民にも考えなければいけないのではないだろうか、これは大変深刻な問題になるのではないだろうかと思いますが、建設省のお考えを承りたいと思います。
  12. 北島照仁

    北島説明員 お答えいたします。  住宅政策としまして、公的住宅をいろいろ供給しておるわけでございますが、いろいろございますけれども公営住宅に一応しぼりましてまずお答えしたいと思います。  公営住宅につきましては、すでに昭和五十年から、それまでは公営住宅法日本人だけを対象としているということで、外国人方々入居を排除しておったわけでございますが、法律解釈等を変えまして、外国人を禁ずる趣旨ではないということで、地方公共団体裁量によって入れてもいいということで運用してきております。  さらに五十五年、昨年でございますが、その通達をさらに一歩進めまして、永住許可等を受けた者については全面的に開放するようにということで、その地域の住宅事情なり入居を希望する外国人事情等を勘案して、その他の外国人、すなわち今回の難民のような方も含まれるわけですが、外国人登録をしておる方について門戸を開いてもいいという指導をしてきております。  そこで、現実にどの程度地方公共団体が開放しているか、難民のような外国人登録証だけで入居できるかということについては、細部は調査しておりませんけれども、東京都とか神奈川県、大阪府、兵庫県等につきましては、外国人登録だけで一応その入居申込資格がある。日本人でも一年とか二年とかという居住要件がございますが、一応外国人登録だけで入居申込資格があるというふうにしております。  問題の優先枠の問題でございますが、公営住宅入居者の選考につきましては、従来から、住宅困窮度の高い者から入居者を選考するように指導してきておるところでございます。いま先生の御指摘のございました、難民の方で住宅に非常に困っているということであれば、これは地方公共団体の方の運用でございますが、その困窮度が非常に高く評価されるのではないかというふうに一応考えております。  今後、難民方々住宅事情を見ながら、さらに、日本人なりその他の外国人とのバランス等を考慮しまして、適切に対処していきたいというふうに考えております。
  13. 前川旦

    前川委員 だめですよ。地方自治体が多分そうするだろうと期待しているというようなお答えではなくて――この難民条約で言う難民だけでしょう、裸一貫受け入れるというふうにするのは。あとはみんな経済的にかなり厳しい条件があるわけですね、入国を認めるのに。今度は本当に裸一貫で認めるというのですから、それはやはりそれに対応した受け入れ体制を立てていかないと実効は上がりませんね。  ですから、それは地方自治体で多分そうするでしょう、それを期待しているというのじゃなくて、もっと強い行政指導をするか、さもなければ、一定割合を確保してやる、そういう指導をするとか、何かそういうことをやはり考えなければ実効は上がらないと思いますが、その点はいかがですか。
  14. 北島照仁

    北島説明員 公営住宅は、まさにその公ということで、地方公共団体が建設し管理する住宅でございますので、原則としては、地方公共団体かなりその裁量をゆだねておるという点がございます。私が申し上げましたのは、難民方々についてもかなり道が開かれておるということと、困窮度の高いということを指導しておるということで、当面これで対処できるのではないか、さらに、その事情を見て適切に対処したいということを最後につけ加えたわけでございます。  もう少し国の関与が強いものとしまして、公団住宅がございます。公団住宅は、収入がちょっと高い方ということであるいは入りにくいかもしれませんけれども、一応公団住宅については、外国人登録でいいということで全面的に開放しておりますので、少なくとも、資格の面におきましては問題ないと思います。  それから、優先入居の問題でございますけれども、これは団地によりましてかなり差がありまして、たとえば百二十倍もするような団地もある、あるいは六十四戸募集しても一戸しか来ないという住宅もある、そういうことで、公団住宅としてはかなりまだ受け入れる余地はあろうかと思いますが、場所等もその場合には若干悪くなるとかということがございまして、その点対応できる道はいろいろあろうかと思いますので、その辺の難民方々実情等を見ながらこれから適切に対処したい、このように考えております。
  15. 前川旦

    前川委員 それはやはり通達とかなんかで、困窮度の高い者、難民は必ず入れなさいとか優先的に考えなさいとか、こういう行政指導をしていただきたいと思いますが、これはかりやっているわけにいかない、これは宿題にしておきます。そういう指導をしてもらいたい、こういうことです。  それでは、次に厚生省にお尋ねをいたしますが、まず児童扶養手当法ですね。これが現在、母子家庭実態を無視した打ち切りが行われているということで、ずいぶん日本国内でも問題になっています。  たとえば、父親から年に一回でも子の安否を尋ねる手紙電話等があれば、仕送りがなくても手当は打ち切られる、そういうことになっていますね。それから、別居している場合でも、母親離婚意思がなければ、これは手当は該当しないのですね。しかも、一方的に打ち切られても、これは不服を申し立てることもできないのですね。そういう手続はありませんね。一方的に打ち切られるだけですね。これは、難民家族にこのまま適用してどうでしょうか。  たとえば、父と母と別れ別れになって、母子だけが日本へ逃げてくる、難民として認定された、手当をもらうようになった、年に一回でも外国にいる父親から、子供はどうしていると手紙が来たらもうこれは打ち切りだとか、その母親離婚意思がないとだめだとか、これは非常に現実に合っていないと思いますよ。これは、このままにして適用するのでしょうか。  もう一つは、これも非常に問題になっていますが、この所得状況提出というのが現況届け出に変わりましたね。それで、現況届け出の中には、たとえば父親が月に何回ぐらい訪問するんだとか、ずいぶん立ち入ったプライバシー関係する問題がありますね。これも国会でずいぶん議論されたけれども、全く議論は平行になっていますが、これはこのまま適用されるべきものだろうか。私は、どうしてもこのまま適用できないと思いますが、これは厚生省はどう考えていらっしゃいますか。
  16. 金田一郎

    金田(一)政府委員 ただいま先生の御質問がございました児童扶養手当でございますが、これは御承知のとおり、生別母子世帯に対して出ている手当でございます。これは全額国庫負担手当でございまして、現在約千七百四十億円の額が出ております。それで、最近の離婚増加等によりまして、毎年二、三万人の受給対象増になっておりまして、一年間に二百億から三百億の手当の増額になっております。そういうことがございまして、一方におきまして不正受給も多いというような声がいろいろな方面から私どもへ参りましたので、私どもの方でいろいろ通知を出した次第でございます。  それで、ただいま最初に先生が言われました遺棄の問題でございますが、この遺棄につきましては、これはなかなかむずかしいわけでございますが、私ども考え方といたしましては、遺棄というのは、父が児童と同居しないで監護義務を全く放棄している場合という考え方でございます。ただ、父が監護義務を放棄しているという場合のその監護でございますが、これは金銭面精神面等から児童生活について種々配慮していることを言い、同居しているか別居しているかは必ずしも問わないわけでございます。そういう意味におきまして、父から安否を気遣う電話手紙がありますれば、精神面において児童生活に配慮していると考えられますので、遺棄には該当しないという考え方で従来からおります。  それから、母が子を連れて家出したというような場合もあるわけでございますが、こういう場合におきましても、私どもは通牒におきましていろいろ事例を示して各県に指導をいたしております。たとえば父の酒乱や暴力行為等のため、父の監護意思及び監護事実が客観的に認められないときは、遺棄に該当するというように指導いたしております。ただ、父に監護意思がある場合あるいは離婚する意思がないにかかわらず――これはいろいろな例がございますので具体的に申しますと、たとえば母に愛人ができたとか、単なる性格不一致等理由により家出したような場合は、遺棄には該当しないというように私ども指導いたしているわけでございます。  それから次に、異議申し立てができるのかどうかというお話がございましたが、これは児童扶養手当法の第十七条におきまして、これは現在知事手当の支給をいたしておりますが、この処分に不服のある場合は、当該知事異議申し立てをすることができることになっております。  それから、調書お話がいろいろございましたが、これは事実問題についていろいろ問題がございまして、やはりある種の調書をつくってこれにより実態調査する必要があるということで、私ども指導してこういうものをつくらすようにしたわけでございます。
  17. 前川旦

    前川委員 いま局長お答えになりましたのは、いまの制度を御説明いただいただけであります。私が御質問申し上げましたのは、そういう制度難民に適用できないでしょう、つまり、別れ離れになって母子だけが父親と別れて来るということもあるでしょう、父親がたとえばアメリカに逃げた場合もあるでしょうし、本国にいる場合もあるでしょう、また、タイかどこかの収容所にいる場合もあるでしょう、難民ですから母子だけで来る場合があるでしょう、その場合の児童扶養手当です。  死別している分は児童手当ですから、これはまた別です。児童扶養手当、これは生別ですね。しかし、別れ離れに来ている者をそのまま日本国内遺棄している、監護していないという場合は、これでカバーできないじゃないですか。ですから別のことを考えなければ、せっかく今度の法改正でこれを取り上げても実効が上がらないじゃないですか、こういうことを言っているのですから、この通達に何かつけ加えるか変えるかしなければいけないのでしょう、それを聞いているのですよ。
  18. 金田一郎

    金田(一)政府委員 難民の場合におきましては、具体的にどのようなケースが出てまいりますか、ただいまのところどうもはっきりはわからないわけでございますが、現在私どもは、国内における場合につきましてもできるだけ画一的な判断を避け、事実関係を総合的に調査の上認定いたしますとともに、プライバシーの保護については十分配慮するよう指導いたしております。  それで、難民につきまして、ただいま先生おっしゃいましたのは遺棄ケースだと思いますが、これが国際的に見て事実関係等からいってどう考えられるか、そこら辺につきまして私ども十分研究いたしまして、ただいま申し上げたような趣旨で対処してまいりたいと思っております。
  19. 前川旦

    前川委員 十分研究をいたしますとおっしゃいましたけれども遺棄するもしないも別れ離れになっていたら、子供を心配して、養うつもりがあって、それは手紙を出そうが消息を尋ねようが、実際には監護することができないような状態にある。別れ離れになっているのですから、事実上できないことですね。ですから、事実上できないのであれば、これは遺棄だ、監護不能だというふうに、はっきり割り切って手当を支給していくというふうにしないと法は生きませんね。そういう意味で、そういう方向で検討をなさるのかどうか、そういう方向でしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  20. 金田一郎

    金田(一)政府委員 難民の場合は、いろいろなケースがあろうかと思います。たとえば、父親が先に他の国へ行っておりまして母子だけわが国にいる場合、お互いに連絡があるような場合もあろうかと思いますし、あるいは本国父親が残っている場合とか、いろいろあろうと思います。また、これは事実関係でございますので、実際問題といたしまして、国内の場合におきましても、遺棄されたといいましても仕送り等が事実上あるような場合もございます。そういう事実認定の問題がございまして、私どもといたしましても個々の認定について非常に慎重に取り扱っております。たとえば、国内の場合におきましては民生委員等に調査を依頼するとか、そういったことをやっているわけでございますので、一概に何とも申し上げられませんが、難民の場合におきましては特殊なケースがいろいろあろうと思いますので、そこらについては十分配慮いたしてまいりたいと思っております。
  21. 前川旦

    前川委員 それでは、今度は生活保護の問題を伺いますが、難民生活保護を受けるようになるのだろうと思いますけれども生活保護法では、第一条で日本の国民というふうに限定していますね。それから「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」という昭和二十九年五月八日に出された厚生省社会局長通知があります。これには「外国人は法の適用対象とならないのであるが、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて」「保護を行う」というふうになっていますが、この条項で難民を扱うのでしょうか。
  22. 加藤栄一

    加藤説明員 いま先生指摘のとおりでございまして、昭和二十九年の社会局長通知に基づきまして、難民につきましてもその他の外国人につきましても、生活保護を適用いたします。
  23. 前川旦

    前川委員 ほかの法律では、日本人であることを要するというような条項を削るということになっていますね。これだけどうして削らないのですか。
  24. 加藤栄一

    加藤説明員 今回の難民条約の批准、加入に際しましては、難民条約の二十三条におきまして、公的扶助、公的援助につきましても自国民と同様の待遇を行うということになっておりますが、この解釈といたしましては、生活保護につきまして自国民と同様の給付が確保されておればよろしいというふうに解せられます。また、生活保護におきましては、先生御案内のとおり、この通牒は、現行法が制定されました昭和二十五年以来の通牒をここでまとめたものでございますが、実質は昭和二十五年以来の行政措置によりまして、一般外国人に対しましても日本人と同様の給付の保護を行っておりますので、もちろん難民に対しまして生活保護が適用されるわけでございます。そして、これが難民条約の二十三条の規定を満たすというふうに考えまして、法改正の必要まではない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  25. 前川旦

    前川委員 ここでも、裸一貫受け入れるという難民は非常に特殊な例ですね。新しい例になりました。となると、起こってくるのはやはり生活の問題ですね。この通達生活保護の対象にはなる、こうなんですが、この通達には後で問答がありまして、こういうことが載っています。「外国人に対する保護は、これを法律上の権利として保障したものではなく、単に一方的な行政措置によって行っているものである。従って生活に困窮する外国人は、法を準用した措置により利益を受けるのであるが、権利としてこれらの保護の措置を請求することはできない。」  日本人の場合なら権利として請求できますね。外国人の場合はただ行政措置として恩恵的にやっているんだ。だから、難民裸一貫受け入れてくれた国が単に恩恵だけでやっているんだということでは、この難民条約趣旨に反するのではありませんか。やはり裸一貫受け入れるという限りは生活を保障してやる、そういう義務が新しく日本に課せられるのではないでしょうか。  となると、これは恩恵だけだ、おまえたち請求権ないよ。日本人には請求権があるのです。これははっきり明示してありますね。外国人には請求権ありません、難民にもこのまま。せっかく裸一貫受け入れた、新しくそういうことで思い切ってやりながら、相変わらず請求権ではありません、恩恵ですよ、こういうことで貫いていいのか。私はふさわしくないと思いますね、条約の趣旨からいって。この点、いかがですか。
  26. 加藤栄一

    加藤説明員 条約二十三条の解釈から申しますと、自国民待遇と申しますのは、実質的な生活保護の給付を確保しておればよろしいというところが要求されるところであろうと思います。  さらに、保護の請求権ということでございますが、昭和二十五年以来安定的に、外国人に対しましても行政措置として生活保護を適用しております。こういう安定した関係を裁判等におきましても考慮いたしまして、確かに生活保護法上の審査請求にはなじまないわけでございますが、最終的には裁判上の訴えの利益というものも認められております。最終的な保護の受給というものは、外国人に対しましても確保されるというふうに考えております。
  27. 前川旦

    前川委員 どういう意味か、よくわかりませんね。こういうことですか。ごたごたが起こるようなことは一切いたしません、困った者には実際上きちっと生活保護はめんどうを見ます、そんな請求を起こすような、トラブルの起こるようなことは責任を持っていたしません、こういうことですか。
  28. 加藤栄一

    加藤説明員 生活保護の適用につきましては、行政機関の方が内部基準に基づきまして日本人と同様の保護を適用しておりましても、あるいは個人的には御不満があるという場合もあるかもわかりません。そういう場合におきましては、もちろん福祉事務所で生活保護を実施しておりますが、受給者の方の御意見を十分に聞きまして実際上問題のないように、また対象者のニードに十分対応したような保護を実施する、これは当然のことでございまして、この点につきましては、私どもは十分指導してまいりたいと思っております。
  29. 前川旦

    前川委員 あなたいろいろ言われるけれども、この「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」、これに基づいてやるとおっしゃるのですけれども、この昭和二十九年の通達、これには「外国人保護に関する法的措置が確立されるまでの間暫定的に生活に困窮する外国人の保護については、一応その国の外交機関に連絡し、それで解決しない場合には法を適用することとしたのである。」こうなっていますよ。  これをこのままいったら、難民生活困窮者に生活保護を与えなければいかぬ、だけれども、一応たとえばベトナムならベトナムへ、カンボジアならカンボジア、これは国があるのかどうかわかりませんが、一応その国の外交機関に連絡して、それで解決しない場合には生活保護を適用するのだ、こんな変な文言がかぶさっていますね。ですから、ベトナム、カンボジア、ラオスなんかの難民に実際問題としてこのまま適用できないでしょう。だから、この言葉そのものを、この通達をやはり変えなきゃうまく合わないでしょうが。私はそういうことを言っているのです。このままじゃだめなんでしょう。その辺、はっきりおっしゃってください。
  30. 加藤栄一

    加藤説明員 現在、わが国に代表機関あるいは領事館等がない国につきましては、この通達上は照会できないわけでございますが、私どもの方では、できるだけ国内的に各種の措置、あるいはその他の外国人につきましてはもちろん領事館等によります措置が適用されるかどうかを調べた上で、他のそういう援助措置がない場合には適用する、こういう趣旨でございます。  また、難民条約二十三条の趣旨に基づきまして、日本人同様に難民の方を処遇するということにつきましては、これはこの通達の内容に当然入っておりますので、その点につきましては、難民条約の実施に伴いまして、私どもの方で各都道府県に十分にその趣旨を周知せしめるために、新たに通達を出すということはいたしたいと考えております。
  31. 前川旦

    前川委員 新たに通達を出すということでありますから、これはいろいろ議論したいのですが、時間が足りなくて、これは宿題にしておきます。  それじゃ、今度は国保ですけれども、国保の場合は法律では外国人の排除を決めていませんね。ほかの法律が、全部といっていいぐらい法律で日本人だけと決めているのに、国民健康保険法、これだけが法律じゃなくて施行規則ですか、ここで日本人以外の人を排除していますね。これは、どうしてこういうふうになったのかよくわかりませんが、この前の連合審査では、これは地方自治体が主体性を持っているのですから、国としてはそう深い指導はできないのですというようなことをしきりに答えておいででありましたけれども、どの外国人対象にするんだということを全部地方自治体に任せてしまうのですか。  この通達を見ますと、地方自治体が条例をつくる場合には、国民健康保険の適用になる国を条例で指定しなきゃいけないことになっていますね。たとえばベトナムと指定してて、今度ラオスの人が入ってきたら、また条例を変えてラオスも入れなきゃいかぬ、今度はまたほかの国も入れなきゃいかぬ。そのたびごとに一々条例を改定するという、非常にめんどうで煩瑣な手続になるし、さらにもっと考えると、地方自治体地方自治体によって区別がつく。この市ではラオスは入っている、国保の適用を受ける、隣へ行ったら適用を受けない、こんなでこぼこが地方自治体で起きてきますと、これは居住の自由を実質上制限するという結果になりますね。  ですから私は、こんな外国人排除というような規則は全部一遍削除してしまって、外国人全部一律にどこでもやれるのだというふうにしておくのが一番合理的だと思いますが、どうなんでしょうか。この点はどうなさいますか。
  32. 古川貞二郎

    ○古川説明員 お答えいたします。  国民健康保険におきましては、先生指摘のように、市町村がそれぞれ地域の実情に応じまして事業運営を行っていく、言うなれば団体委任という形でございまして、市町村の財政状況とかあるいは所得の把握状況、そういったような事務的な受け入れの問題、そういったことでこの事業を行っていくというふうな仕掛けでございます。  したがいまして、外国人につきましては、そういった点を勘案して条例でもってその適用を図っていく、こういう構成をとっておりまして、私どもとしては、地域の実情、自主性を尊重しつつ、できるだけこういった方々の医療の確保を図るという観点から、ことしの一月の全国主管課長会議でも私がその点の促進方について強く要請を行ったところでございますし、外国人につきましては全額そういった適用を図っていくように、こういうふうに考えておるわけでございます。  また、難民関係の方につきましては、この法律におきましては、日韓協定に基づく永住許可を受けている者等、いわゆる条約上内国民待遇が義務づけられている方々に関しましては、市町村が条例で規定する規定しないに関係なく、強制適用というふうになってございます。したがいまして、難民条約が批准された場合には、国保上の施行規則を改正いたしまして、難民条約上の難民についてはすべて国保を適用する、国籍のいかんにかかわらず適用する、こういうふうに考えてございます。
  33. 前川旦

    前川委員 よくわかりました。そうすると、この規則の一条の二号ですか、これを協定永住者は適用することになっていますね。これに難民も適用する、その点、こういうふうに変えるのですね。  そうなると一つ問題が起きるのは、日本人以外の者で適用される者が一つは協定永住者、その次は難民、こうなりますね。そうすると、協定永住者でない、対象でない在日朝鮮人、今度新しく二十数万人が永住者になりますね。資格できますね。この扱いが非常に不公平になるじゃありませんか。これはどうします。
  34. 古川貞二郎

    ○古川説明員 お答えいたします。  現在も、日韓条約に基づく永住許可を受けている者については、強制適用の扱いをしているわけでございます。それから、今度難民の条約が批准された場合は、これは強制適用ということになるわけでございます。それ以外の外国人につきましては、先ほど申し上げましたように地域の実情でございますけれども、できるだけ国保法上の医療の確保を図るようにということで指導を申し上げているわけでございまして、現在も相当の方々対象に入っておられる。特に主要都市におきましては、ほとんどの都市がそういった外国人の適用を図っておる、こういうことでございます。  なお、この点については私どもも近く通達を出しまして、できるだけそういったことの漏れのないような方向で、しかし、地域の実情というか、そういったことも尊重しなければなりませんので、すべてを強制というわけには今日の時点ではまいらないわけでございますけれども、できるだけ地域の実態を踏まえつつ適用していくように強力に指導してまいりたい、また、通達を出してそういう方向で指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  35. 前川旦

    前川委員 実態で不公平のないようにしていくというふうにいまのを理解してよろしいでしょうかね。――あなたはうなずいたから、速記録に残らないけれどもあなたはそこで大きくうなずいているから、それはいいでしょう。  ただ私は、それで満足しないのです。問題提起だけしておきますけれども、それでは一番いい待遇を受けるのはいまの協定永住者と難民ですね。  一応法的には差がつけられて、今度新しく認められた約二十七万九千人、入管令の特別措置の対象となって、朝鮮、韓国籍約二十七万九千人の人が新たに、さきの法律では法的永住許可というのですか、これになるのでしょうか。この人たちが法的に差別される。実態努力すると言われたが、法的に差別されるということは私は問題があろうと思います。これは問題提起だけにして、今後の問題にしておきたいと思います。厚生省はこれで結構です。  それでは、法務大臣に伺いますけれども、この難民の問題を管轄する省庁いろいろありますが、主管省庁はどこにお決めになりますか。やはりどこかに一つ決めておかないといけないと思いますよ、責任を持つ省庁。どうお考えでしょうか。
  36. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 出入国及び難民認定、これは法務省でございますけれどもあとはいま御質問いただいておりましたように、それぞれの所管に従って各省が責任を持つということになろうかと思います。そういうこともございまして、インドシナ難民に対しましては、総理府にインドシナ難民対策連絡調整会議が設けられておるわけでございます。したがいまして、これはインドシナ難民に限って置かれたものでありますが、そういう式の処理をさしあたってはしていくことになるのじゃないだろうかな、こう思っておるわけであります。
  37. 前川旦

    前川委員 いまのインドシナ難民に限られると大臣おっしゃいましたが、難民ですから限りませんね。これから、たとえば生活保護とか厚生省関係のことでもいろいろな矛盾が出てきた場合、これはこういうふうにしてもらいたい、直してもらいたい、そういうことを申し入れたりまとめたりすることをどこがやるのでしょうか。どこか一つ決めなければいけないと思うのですよ。それは外務省がやるのか法務省がやるのか、どうなんです。やはりどこか決めないといかぬと私は思いますが、どうでしょう。
  38. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 インドシナ難民に限られているわけでありますけれども、将来それ以外に難民が発生してくるということになりますと、やはりそういう機構を拡大していくということになるのじゃないかな、こう思っておるわけであります。特定の役所というよりも、そういう機構を通じまして連絡をとりながら、各省はそれぞれ分担するという行き方ではなかろうか、こう思っております。
  39. 前川旦

    前川委員 大臣、なかろうか、こうおっしゃいますけれども、総理府にお願いする、総理府にやってもらう、こういうことですか。
  40. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま行っておりますことに準じて処理をしていく。いまのたてまえを変えません以上は、準じて処理していくということだと考えております。
  41. 前川旦

    前川委員 よくわかりませんけれども、やはり責任官庁というのを決めるような方向で考えていただきたい、これは強く要望しておきます。  それから、この条約を批准したら、難民受け入れというのは国としての義務になるのでしょうか、それのお考えはどうですか。
  42. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 お答え申し上げます。  難民条約には、受け入れの義務につきましては直接規定をいたしておりません。これは、外国人をその国に受け入れるかどうかは主権行使の一部ということが、国際法上一般的に確立されているわけでありまして、その反映かと思われるわけでありますが、わが国といたしましても、難民と認定した者につきましては原則としてこれを受け入れることとするのが、条約の趣旨とか精神からいきまして当然であろうかというふうに考えておるわけでございます。
  43. 前川旦

    前川委員 いまのは義務と考えていい、義務と考える、こういうふうなお考えですか。条約の趣旨からいってやはり義務として受けとめる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  44. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 言葉が足りなかったかと思いますが、条約の趣旨とか精神に沿うゆえんであるというふうに考えるわけでございます。
  45. 前川旦

    前川委員 何かよくわかりませんね。これは義務と考えるかどうかによって、難民に対する扱いが変わってくるでしょう。義務というふうに考えたら、西ドイツなんかは難民の範囲を非常に狭く解釈していますね。義務と考えないのであれば、行政措置でやる裁量が広いのだというのであれば、難民の範囲はかなり広く考えられますね。ですから、その辺ははっきりしておかないと、後々法務省が困りますよ。どうなんですか。
  46. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 先ほど申し上げましたように、条約上は何の規定もございません。それで、これは難民受け入れるかどうかということを義務づける何らの規定もないわけでございますものですから、義務というふうには私ども外務省といたしましては考えておりません。
  47. 前川旦

    前川委員 それならそれで結構。  それじゃ、法務大臣にお伺いしますが、法務大臣が今度は難民を認定するということになりますね。認定の基準というのがこれから要るんだろうと思います。そこで、条約の第一条には難民の基準が載っていますね。その中で「迫害」という言葉が出てきますが、おたくが出した「出入国管理の回顧と展望」という本の二百四十九ページには、この「迫害」について「生命、身体又は自由に対する現実の脅威が「迫害」に当たることは自明であろう。」こうなっています。  ですから、この「迫害」という意味は、「生命、身体」、これはよくわかるのですね。「自由」というのが非常に幅が広い。たとえば身柄を拘束される危険がある、おそれがあるという意味の「自由」なのか。もっと広く、たとえば思想の自由、学問の自由あるいは言論の自由とかいった基本的な人権にかかわる「自由」、そこまで考えて、自由に対する迫害というのを、ただ単に監獄にほうり込まれるおそれがあるというのじゃなくて、思想の自由、学問の自由も侵害されるおそれがある、これはずいぶん広くなりますね。そこまで考えて「迫害」という解釈をされるのかどうか、その辺いかがでしょうか。私は広げて解釈していただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。
  48. 関栄次

    ○関(栄)政府委員 ただいま先生が御引用になりましたことも、もちろん「迫害」の一つの具体的な例として挙げられるかと思うわけでございますが、そのほかに、たとえば生活手段を剥奪される結果生存に著しい障害が生じるというような場合とか、あるいは不当な拘禁、軟禁あるいは強制労働等、その当該個人の身体の自由が害されるおそれがある場合が「迫害」の具体的な事例かと思うわけであります。  しかし、具体的な個々のケースにつきまして、やはり個別に状況を判断する必要があろうかというふうに考えるわけでございますが、ただ単に、たとえば自由が奪われているという、自由に対する脅威といいましても、あるいは「迫害」という言葉もかなり広い意味を持っておりますので、不当な拘禁、軟禁、強制労働等、身体の自由が実際に害されるおそれがあるという場合が、この条約上難民として認定される一つ条件になるわけでございまして、いずれにつきましても、具体的な状況に応じ、個別的案件ごとに慎重に判断する必要があろうかと考えるわけでございます。
  49. 前川旦

    前川委員 個別的に慎重に対処していただきたいと思いますが、これは余り狭くとらえないでほしいと思うのです。たとえば、一つの学問を主張したばかりに大学を追放されるなんということがありますね。これなんかはいまのお答えからいうと、別に拘束されるわけじゃないから、自由に対する侵害と言えないかもわからない。しかし、これは人間としては自由に対する侵害ですね。私、そう思いますよ。そこまでも含めて考えないと、人道的な立場を貫けないというふうに私は思うのです。そういう意味で、この自由の制限は広い意味で解釈をしていただきたいということを、私は特に法務大臣にお願いをしておきます。  それから、この迫害した国、つまり難民に認定するときに対象になる国、これはどこの国であっても、すべての国が該当しますか、線引きしますか。その点、いかがでしょうか。どの国は迫害する国だと認めるとか、この国はたとえ逃げてきても迫害する国と認めないとか、これは後の送還の問題と関連するのですが、これ、線引きしますか、どうなんでしょうか。
  50. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 今度お諮りしております難民認定手続におきましては、そういう国籍別の制限は全然考えておりません。
  51. 前川旦

    前川委員 わかりました。はっきりした御回答で結構です。  それから、「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」と条約にはありますね。これは、逃げてきた人が自分で証明してみせなければいかぬのでしょう、私は本国では迫害されましたし、されますと言う。だけれども、これを実際に実証するということは非常にむずかしいことだと思いますよ。一々これは言い分を聞くのでしょうけれども、それを客観的にどうやって認定するのですか。どんな方法でやりますか。
  52. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 もちろん、最初に当事者の陳述を詳しく聴取しなければなりません。その場合に、当事者の言い分をすでに一般に知られている事実に加えまして、大体これは難民であると認定できる場合もありましょうし、そうじゃない場合もあろうと思います。つまり、その申請した個人個人の主張、陳述だけでは難民と認定できないという場合には、それだけで難民と認定しないということではなくて、さらに私どもの方では調査を深めたいと思っております。  そのために私どもは、難民調査官というものを指名することになっております。この難民調査官は、まず知人であるとか親戚であるとか、そういう人たちに出頭してもらって、いろいろその人たちの話を聞き取る場合もありましょうし、さらに、場合によっては現地の事情に詳しい国際機関、たとえば国連難民高等弁務官事務所の人たちに意見を聞くこともございましょうし、さらに、外務省に依頼して在外公館を通じて現地の事情を照会するとか、そういうことをやりまして、その難民の個人個人の方の立証ができやすいように、できるだけ私の方も協力すると申しますか、そういう姿勢でいきたいと思っております。
  53. 前川旦

    前川委員 いまの答弁、結構です。できるだけ難民であることを認めてやろう、認めるような、立証できるような努力をしようというふうにいま受け取りました。それでよろしゅうございますか。よろしいですね。
  54. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そういう精神で対処したいと思っております。
  55. 前川旦

    前川委員 時間が足りなくなりました。少しはしょっていきます。  もう一つの大きな柱は、迫害を受ける国には送り返さない、これはノンルフルマン、非逆流、反逆流、逆行ですか、この法則が確立されるわけですね。  そこで、この条約を読みますと、難民は迫害をされるおそれのあるところへは、どんな手段方法によっても送り返さないとなっていますね。難民となっていますが、私は、この難民は、条約を純粋に解釈したら、認定された難民というふうにしか解釈できないのだろうと思うのですけれども、それではこの条約の趣旨に反すると思う。ですから、このノンルフルマンの法則というのは、認定された難民だけに適用されるのではなくて、もっと幅広い認定されなかった難民、たとえばこれは戦火を避けてきたような避難民も入るでしょうし、あるいは一般外国人も入るでしょうし、もっと広くこの法則を貫いてほしいというふうに思いますが、その辺の解釈はどうですか。
  56. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民条約では、難民につきましては迫害を受けるおそれのあるところには送還しないという原則がうたわれておりまして、ただしそれには、若干の例外的な場合にはそれを適用しないということが書いてございますが、これを受けまして、今度の入管令改正法案の中にも同様の規定を設けました。  そこで、ただそれでは難民認定を受けた人のみがこの適用を受けるのかということになりますと、実は私ども、今日まで運用面におきましてこのノンルフルマンを実行してきております。その場合に、もちろん難民の認定云々ということはなかったわけでございまして、これからも難民の認定を受けた人だけにこれを限らないという運用を続けていきたいと考えております。
  57. 前川旦

    前川委員 はっきりした回答をいただきました。  それでは時間が来ました。最後に大臣に伺いますが、大臣は奈良の御出身ですから、でなければ私はこんなきざなこと言わないのですけれども、奈良は日本のふるさとだと言われる、飛鳥は特に日本の魂のふるさとだと言われます。  ところが、これは続日本紀の記事の宝亀三年の項、西暦七七二年の項に出てきますが、坂上田村麻呂の父である苅田麻呂の天皇に対する上奏文を見ますと、飛鳥、これは高市郡、ここにいる人は十中八、九までが外国から来た人、その他の姓はわずか一、二、九割までがいわゆる帰化人――帰化人という言葉は当たらないかもしれない。渡米人という言葉が当たるかもしれませんね。日本のふるさと飛鳥の辺に育った朝鮮半島から来た人でしょう。だけれども、奈良の人は朝鮮半島から来たということはきらいますね。中国から来たんだ、こういうことをしきりに言います。私は、ここに民族差別のいわれなき差別が出ているのだと思います。  それから、そういう例はほかにあります。たとえば八一五年に嵯峨天皇の勅令によって成立しました新撰姓氏録、これでは京都の周辺、平安京の周辺の有力氏族をずっと列挙していますが、その有力氏族千百八十二氏のうち三分の一に近い三百二十六氏が外来系の氏族である、こういう記事も出ています。  それから、これは百済と日本の連合軍が唐と新羅の連合軍に六六三年ですか、白村江の戦いで敗れて百済が滅びて、それから後、どんと日本へ百済から避難民がやってきますね。日本はどんどんそれを受け入れますね。どんどん受け入れる。しかも民族差別なしにどんどん受け入れていく。ですから、桓武天皇の生母というのは百済系の人ですね、後に太皇太后という称号を受けましたけれども。民族差別なしにどんどん避難民受け入れて、それによって日本というのはどんどん発展をしていく歴史があります。  大臣が奈良ですから私こんなことを言うのですけれども、そのことを踏まえて、日本人そのものが太古は混血民族だというのはもう定説ですから、民族偏見というか、日本人はこれをなくしていかないといけませんけれども、そういう難民受け入れについて民族差別をなくするためにどういう努力をなさいますか、大臣としての御見解を伺って、終わりにしたいと思います。いかがでしょう。
  58. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 インドシナに大量の難民が発生をした、それに対する日本の対応が冷淡だということで国際的な批判を浴びたと思います。また、そのことが契機になりまして、日本難民に対する施策が大きく前進を始めたと考えるわけでございますし、今回また難民条約の批准、さらにまた出入国管理令改正という運びになってきたわけでございます。やはり国際社会に生きていきますためには、国際社会における連帯の思想を強めていかなければなりませんし、同時にまた、人権思想を普及していきますと、国際人権規約にも加盟してまいりましたように、そういう精神的な面につきましても一層大きく目を開いていかなければならない、こう考えるわけでございます。  これらの問題は、出入国管理行政、これの処理に当たりましても基本的にそういう考え方を持っていかなければならないと思いますし、難民認定の問題あるいは難民に対する処遇につきましていろいろお尋ねいただきましたけれども、同じような考え方で政府としてその対処を十分やっていかなければならない、こう考えているわけでございます。幸いにして、社会保障の関係におきましても国籍に関する規定を排除していただいたわけでございますので、このような精神であらゆる行政において浸透を図っていくということじゃないだろうかな、かように考えております。
  59. 前川旦

    前川委員 終わります。
  60. 高鳥修

  61. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは法務大臣にお聞きすることだと思いますが、この法律は一体いつから効力を発生するのか、どういうふうになっているのでしょうか。
  62. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 来年の一月一日施行という予定をいたしているわけであります。
  63. 稲葉誠一

    稲葉委員 来年一月一日施行の予定ということはあちこちで聞くのです。だけれども、これは資料を見ても全然そういうことが出てないわけです。もっとも、法律がいつ通るかわからぬという段階ですから、それはそうかもしれません。それはそれでいいのです。  そこで、これは厚生省にお聞きした方がいいのですが、たとえば児童扶養手当は現在何人ぐらいいて、結局幾らぐらいの支出になるかということ、特別児童扶養手当、それから、これは二つに分かれるんですか、福祉手当も入りますね、それから児童手当、この四つですか、これはどの程度の金額が必要になるというふうに考えられますか、その根拠と一緒に……。
  64. 金田一郎

    金田(一)政府委員 児童関係の諸手当につきましては、まず、ただいま先生がおっしゃいましたように、生別母子世帯に支給される児童扶養手当、障害児を養育する者に支給される特別児童扶養手当、重度障害者に支給される福祉手当及び三人以上の子を有する者に支給される児童手当、この各手当につきまして、改正後それぞれの支給要件に該当する外国人に対して支給されることになるわけでございます。  改正により新たに受給対象となる外国人でございますが、まず数は、児童扶養手当では三千人、特別児童扶養手当では七百人、福祉手当では二千五百人、児童手当では一万四千八百人程度となる見込みでございます。  今回の改正により新たに必要となる給付費用でございますが、五十六年度、改善後の満年度ベース、要するに四月から支給されたとした場合の計算でございますが、児童扶養手当は十二・一億円、特別児童扶養手当が二・七億円、福祉手当が三億円、ただし、これは八割の国庫負担でございますので、うち国庫負担額は二・四億円ということでございます。それから児童手当は十・三億円でございますが、児童手当につきましては、自営業者につきましては三分の二の国庫負担、サラリーマンにつきましては二割の国庫負担でございますので、国庫負担額は四・八億円ということでございまして、合計支給額は二十八・一億円、国庫負担額といたしましては二十二億円となる見込みでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、これは来年一月一日から施行になるのですが、一、二、三の三カ月ですね。だけれども、これは四月に支給するわけです。だから、結局これは補正予算や何かの中には入らない、こういうふうなことになるわけですか。
  66. 金田一郎

    金田(一)政府委員 実は一月施行といたしますと、児童関係の諸手当につきましては、認定請求があった月の翌月分から支給されるということに、法律上そうなっております。  支給月は、児童扶養手当、特別児童扶養手当、福祉手当につきましては年三回、四月、八月、十二月ということになっております。それから児童手当につきましては二月、六月、十月という三回でございます。それぞれの前月までの四カ月分が支給されることになるわけでございます。  外国人につきまして最初の手当が支給されますのは、改正法の施行をただいまのように一月といたしますと、児童扶養手当につきましては二月分と三月分が五十七年四月に、児童手当につきましては二、三、四、五月分が五十七年六月ということになります。そういうことで五十六年度中には支給は行われませんので、五十七年度予算で措置するということになっているわけでございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、難民の認定の問題についてお聞きするのですが、難民が入ってきて認定するまで大分時間がかかるわけです。その間一体どうするのですか。難民人たちをどこへどうやって入れていく――入れていくと言うと語弊があるけれども、そういうことになるのですか。それを一体どこが責任を持ってやることになるのですか。
  68. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民認定手続中の難民地位については、特に規定しておりません。難民申請をする人の中には、正規にわが国に在留している人、それからそうでない不法入国者、不法残留者、こういうものに分けられると思います。正規に入ってきている人たちは、たとえば定住のためインドシナ半島から入ってきている人、あるいは政変前にインドシナ三国の旧旅券を持って日本に滞在して特別在留が認められている者、さらに一時庇護制度によって入ってきているいわゆるボートピープルというような人々、こういう人々がおられると思います。こういう方々は、すでにいま持っておられる在留資格とか上陸許可とか、そういうものに従ってその間処遇されます。それから不法入国、不法在留のような人々につきましては、強制退去手続と並行して難民認定手続が進められる、こういうことになろうかと思います。
  69. 稲葉誠一

    稲葉委員 私が聞いているのは、難民が入ってきて一時庇護を受けなければならないわけでしょう。どこかで収容していかなければ、みんなどこかへ行ってしまうのじゃないですか。だから、庇護というのでしょうな。それをどういう設備をどこへやるのかということです。それをどこが主管するのか。法務省が主管するのか、厚生省が主管するのか、総理府が主管するのか、そこら辺はどういうふうになっておるのでしょうか。予算の問題などありますから、あとは大蔵省に要望することにして、いまのところ、その点はどういうふうになっているのですか。
  70. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 現在、ボートピープルとして一時上陸の許可を得ている人々、滞在している方は約千四百名でございますが、これはすべて民間の支援団体のお世話になっております。それらの中には、カリタス・ジャパン、これはキリスト教系の団体でございますが、日赤、立正佼正会、天理教、そういう方々がセンターをつくってそこに収容されている、こういうわけでございます。
  71. 稲葉誠一

    稲葉委員 そんなことを聞いているのじゃない。こっちの質問意味がわかりませんか。これから入ってくる人を、日本の政府として、何かの施設をつくってそこへ一時的に収容――収容という言葉が悪ければ庇護でもいい、そういうふうにしていかなければいけないのじゃないですか、こういうふうに聞いているのですよ。その主管はどこになるのですか。
  72. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 一時庇護のための上陸許可を受ける外国人の中には、わが国社会にとって好ましくない者や、衣食住等生活の保護を必要とする者が含まれると考えられます。いま申しましたように、これまでは国連難民高等弁務官事務所からの補助金や、民間諸団体の協力によって衣食住等が確保されてきたのでございますが、今後の問題としては、政府関係の施設、たとえば一時庇護センターとでもいった施設を新たに設ける必要があるかどうか、設けるとした場合、所管はどうするのか等の問題について、現在関係省庁の間で鋭意協議を重ねているところでございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは大蔵省に要望しておきますから答えは要りませんが、いま言ったように政府関係の施設が何らかの形で必要になってくるんだ、こういうふうに思います。だから私は、入国管理の管理という言葉は取った方がいいと盛んに言っているのですよ。管理というと、これがまた今度は庇護でしょう。これもやはり一つの出入国管理の対象になるわけですからね。これもまた管理するという形になってくると話がおかしくなる、だから名称も変えなければならぬということになってくるわけです。  いずれにいたしましても、庇護センターという名前になるのかどうか知りませんけれども、どこでどういうふうに取り扱うかは今後の課題として、それに対しては大蔵省としても十分考慮願いたい、こういうことを最初に要望だけしておきます。答えは結構です。何か大蔵省に答えを求めると、後で法務省は何だかんだと言われるらしい。こういうことで大蔵省に質問したとかなんとか、法務省は気が小さいんだ。きょうもぼくのところに、大蔵省の方に質問しないでくださいと紙に書いたものを持ってきたよ。答えも書いてあるので答えを読もうと思ったけれども、答えを読むのは悪いから読まなかったのです。後でぼくも渡辺氏に会って話します。  それはそれとして、そこで、一つの問題は、私はよくこういう相談を受けるのです。日本における外国人地位の問題に関連しまして、国民金融公庫、中小企業金融公庫これらに対して外国人が適用にならない。借りる方の適用にならないから何とかしてくれという話を盛んに聞くのです。ぼくもきのう特別金融課長というのですか、あの人たちに来てもらっていろいろ聞いたのです。私の考え違いだったらしいのですが、そこら辺のところは現在どういうふうになっているのか、ひとつ御説明願いたいのです。
  74. 保岡興治

    ○保岡政府委員 お答えします。  国民金融公庫の外国人に対する貸し付け、これは昭和五十五年度から実施をいたしております。また中小企業金融公庫の方は、従来より外国人に対する貸し付けを行ってきております。  先生がちょっと疑問に思われていたことにも関連すると思いますが、国民金融公庫は五十五年度より前は外国人の貸し付けは行っていなかった。これは国民金融公庫法の第一条に、国民金融公庫は国民大衆に対して必要な事業資金の供給を行うこと、こうなっております。そういうことから、日本国民を第一義的に考えていたという立場から、外国人に対する貸し付けを控えていたということでございますが、国際人権規約が批准されたこと等にかんがみて、昭和五十五年度より外国人に対する貸し付けを行うことにしたということでございます。  なお、住宅金融公庫も同様の理由から、五十五年度から外国人に対する貸し付けを行っております。  各公庫において、できるだけ外国人であるということをもって差別しないということで、もちろん融資条件あるいは返済能力、滞在期間等は勘案しなければなりませんが、できるだけスムーズに融資ができるようにしておるところでございます。
  75. 稲葉誠一

    稲葉委員 それでわかりました。  そこで、これは法務省の民事局長に聞いた方がいいですね。あなたは商法も終わったのでしょう。まだ終わらないのかな。少し気軽になったところだと思うのですが、そこで、いま言った「国民大衆」という言葉が法律に出てきましたね。それから、法律によって「国民」という言葉が出てきます。それから「日本国民」という言葉が出てくる法律もあるのです。三つある。これはどういうふうに違うのですか。日本人という定義はどういうふうにするのですか。外国人でない者を日本人という。外国人というのはどういうのかというと、日本人でない者を外国人ということになるのかな。三つ言葉が違うのです。いろいろな言葉が入っているので、何とか統一しなければいけない、こういうふうに思っているのです。「国民」と「日本国民」とどう違うのか、ぼくもよくわからないけれども、条文によってそういう条文があるのです。これはあれしてください。大蔵省は結構です。いま言った言葉は後でよく研究しておいてくださいよ、法務省。これは非常に問題なんです。それがまた以下の質問に関連してまいります。  そこで、難民認定の問題で一番大きな問題は、認定と同時に異議の問題が問題だ、私はこういうふうに思うのですが、この難民の認定を法務大臣がすることになっておりますね。これは聞くところによると、難民の認定というのは条約上の問題でもあるから、入国審査官が難民調査官になるのでしょうけれども、それが認定するという形だと対外的にまずいからというので、そこで法務大臣が認定するようにしたわけでしょう。どうですか。
  76. 山本達雄

    ○山本説明員 難民認定をだれが行うかという問題かと思いますが、いろいろ考えられるわけでありまして、たとえば難民認定官というような官職を設定いたしまして、それが認定をするという方法もありますれば、委員会制度をとりまして委員会が認定するという方法もある。今度の法案では、法務大臣がその認定を行うといたしたわけでございます。入国審査官が難民認定を行うということは検討したことございません。
  77. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、入国審査官がというのはぼくのあれで、入国審査官を難民調査官にして、あるいは難民認定官にして認定しようとしたのでしょう。私の言うのは、法務大臣がなぜ認定権者になったのかということです。  では、一般の不法入国の場合には、最初の場合は法務大臣じゃないでしょう。入国審査官でしょう。そうでしょう。それとの対比からいって、なぜこれだけを法務大臣が認定するようになったかというのを私は聞いているわけです。いいですか。それはそれで一つの問題ですよ。  それに対して、またこれに関連して出てくるのが異議申し立てですね。法務大臣が認定をして、それに対する異議申し立てがある。それに対して、今度は法務大臣がまた異議申し立てに対してこれを認定するというのでしょう。認定というか、決める、裁定するわけでしょう。だから、仮に難民でないと言っていた者に対して、それから異議が出れば、法務大臣、同じ人がやるのですから、特別な事情の変化のない限り、それを難民であると認定するわけがない。難民でないというそのままの認定を、同じ人がやるのだから、そういうことになるでしょう。それは近代的な司法の原則からいってもおかしいではないですか。これは私の疑問です。  ほかの国の例というのはみんな違いますよ。こういうふうにやっているのは日本だけじゃないですか。あるいはアメリカはどうか知らぬけれども、みんな専門のいわゆる準司法的な一つの機関あるいは独立の一つの権限のある行政機関、そういうふうなものを設けて認定をしておるわけですよ。そうでしょう。ドイツの場合もフランスの場合もそうでしょう。ドイツなんか、インドシナ難民がずいぶん来ておりますね。専門官が入ったそういう認定の仕方をしておりますね。日本の場合は、どうしてそういうやり方をとらなかったのですか。それが一つありますよ。  第三の質問は、どうして難民認定法という法律を特別につくらなかったのか。非常に簡単な条文がここのところにちょっと入っているだけですね。どうしてそういうふうなやり方をしなかったのですか。問題は三つ。
  78. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 法務大臣が難民認定に当たるのは、この難民認定という行為が非常に重要な行為でございますので、法務大臣御自身が認定に当たられる、こういうことにしたわけでございます。それが第一の御質問の点でございます。  第二に、異議申し立てでございますけれども、行政処分について処分庁が主任の大臣である場合におきまして、不服申し立て異議申し立てという形式で処分庁に対してなされることは行政上一般に行われているところでございまして、行政救済にかかわる一般法である行政不服審査法も同趣旨の規定を置いておるのでございます。同一の機関が再審査をするからといって、公正さが担保されないということではございません。  なお、取り消しを担当するセクションと不服審査を担当するセクションとは別にする予定でございまして、また裁判所で難民認定の可否を争うこともできることとなっておりますので、この面でも問題はないと考えております。  第三の質問の、なぜ難民認定法という独立の法律をつくらなかったかということでございますが、それも一つの方法でございましたけれども、今度の入国管理令改正に当たりまして、難民認定の手続も入国管理令の一部の中に法務大臣の行政処分として入れることが妥当であると考えたからでございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまあなた、行政不服審査法を挙げられましたね。これは、行政不服審査法はこれに適用しないと書いてあるでしょう。その書いてある理由はわかりますよ。わかりますけれども、では、行政不服審査法には「国民」と書いてありますね。日本国民だけが行政不服の審査を申し立てることができるわけであって、外国人はできないのじゃないですか。できるのですか。どういうふうになっているのですか。「国民」と書いてあるでしょう。だから、できるようになったとすれば、それは国際人権規約の批准によってできるようになったのですか。最初からできるようであったのですか。どういうふうになっているのですか、これは。
  80. 山本達雄

    ○山本説明員 御説明申し上げます。  行政不服審査法は、先生指摘のとおり、国民に対し不服審査の「不服申立てのみちを開く」と書いております。難民認定につきましては、しからばこの行政不服審査法の適用があるかどうか、これは、私この不服審査法の所管ではございませんので、まあ解釈がどうなるのかよくわかりませんが、いずれにしましても、行政不服審査法は行政不服の一般規定であると言われております。普通はそれぞれの行政処分等の根拠法令に、その行政処分の性格と申しますか、そういうものから見てふさわしい不服申し立てに関する特別の規定を設けるということでありますので、難民認定関係につきましても入管令の中に特別規定を設けることといたしたわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の質問に答えているのかな。「国民」と書いてあるけれども外国人が適用になるかならないかということを聞いたでしょう。それは人権規約の批准と関係あるのかないのかと聞いたが答えなかった。何だかよく聞いてなかったけれども、答えなかったですね。
  82. 山本達雄

    ○山本説明員 当然、六十一条の二の四に定めますその異議申し立ては、難民認定の申請をした人が対象になるわけでございますから、外国人がその対象になるわけでございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の言うのは、難民の認定の場合ではそうだけれども、いまの行政不服審査法の「国民」とは書いてあるけれども、その「国民」というのは一般に外国人にも適用される、こういうふうにいま理解していいのか、とすれば、それは国際人権規約の批准との関係があるのかないのかと、こういうことの質問ですよ。
  84. 山本達雄

    ○山本説明員 最初に申し上げましたとおりに、この行政不服審査法の所管官庁ではございませんので、その解釈につきましては正確なことを存じませんが、外国人にも適用があるというように理解されておると聞いております。
  85. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはきのうぼくのところに聞きに来たから、いまのところは質問を教えてあげたところだよ。それにしては少しできが悪いな。  これからは、きのうぼくの方で、質問で教えなかったところ。いいですか、この法律のように、行政不服審査法による不服申し立てをすることができないと書いてあるほかの法律ありますか。
  86. 山本達雄

    ○山本説明員 行政不服審査法の適用がない行政処分等につきましては、行政不服審査法第四条でございますか、ここに列挙されておるようでございます。
  87. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、その主なものは何ですか。――では、有斐閣の六法全書を持っていますか、厚いやつ。
  88. 山本達雄

    ○山本説明員 これは昭和五十六年度版のIでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉委員 最新のやつ。その二千百十七ページを見てごらんなさい。社会保険……
  90. 高鳥修

    高鳥委員長 速記をとる都合がありますので、順次御発言をお願いします。
  91. 稲葉誠一

    稲葉委員 わかりました。  有斐閣の六法全書の二千百十七ページに社会保険審査官及び社会保険審査会法というのがあるのです。見てごらんなさい。それも同じように書いてありますね。これは厚生省の方が詳しく知っている。いいですか。それに対する異議申し立てと今度の難民認定法の異議申し立てとは、どういうふうに違いますか。
  92. 山本達雄

    ○山本説明員 先生の御指摘は二千百十七ページでございますか。二千百十七ページは住民基本台帳法と書いてあるのでございますが。(稲葉委員「じゃ六法全書が違う。それは古いんじゃないですか」と呼ぶ)五十六年度版でございます。  いずれにしましても、社会保険法につきましては私その内容をよく存じておりませんので、今度のわれわれが御提案いたしました異議申し立てとの比較は困難でございます。
  93. 稲葉誠一

    稲葉委員 困難じゃないでしょう。しないから困難なんで、こういう法律があって、そこで異議申し立てに対して第三者機関を設けているわけでしょう。準司法的な第三者機関を設けて、三人、二人の五人、それに両方の一人を入れて全部で七人でしょう。七人で審査会みたいなものを設けてやっているんじゃないですか。それは第三者的な準司法的機関で、不服に対してちゃんとした決定を下すようになっているでしょう。その場合下すのは、下の方のあれは社会保険審査官が下して、それに対する異議申し立て知事がするのかな、あるいは逆かな。どうですか。人が違うわけです。機関も違うわけですね。だから、認定する人と異議申し立てられてそれを裁決する人と同じ人だなんて、そんな制度はないですよ。そんな近代司法のあり方というものはありませんよ。そんなのはおかしいです。  これは厚生省から聞いてもいいんだけれども厚生省はそういう制度をちゃんととっているでしょう。このやり方はいけませんよ。これじゃあなた、自分で認定していて、認定却下した者に対して異議申し立てがあれば、特別な事情の変化がない限り認定するわけがあり得ないじゃないですか。同じ人間が裁判をやって、異議があったらまた同じ人が裁判をやっているのと同じですよ。こんなことはだめですね。あり得ませんね。  「欧米諸国における難民の取扱いとその問題点」という本があるでしょう。外務省の領事移住部査証室。これはあなたの方は知らなかったらしいな。ぼくがこういう本があるから早くとりなさいということを教えてあげたんだ。ここにもちゃんと書いてあるでしょう。「難民資格の認定にあたっては公正な判断が下されるように準司法的な難民認定機関や独立性の高い行政機関を設置したり、国連難民高等弁務官事務所各国代表の関与を求めたり、」とちゃんと書いてあるでしょう。やはり準司法的なものというか、第三者機関を設けるとかあるいは独立性の高いものを設けるとかしなければ、法理論的にもおかしくなってくるんじゃないですか。  そうすると、いまの難民認定、異議申し立て、これは準司法的な難民認定機関ですか、独立性の高い行政機関ですか、どっちです。あるいはこれは入りませんか。どうですか、入管局長
  94. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいま先生がお手に持っていらっしゃいます資料は、私どもも一応読んでおります。これは外務省で各国のいろいろな法制とかそういうものを集めたものでございますけれども、私どもとしては、その本によって今度の認定手続を定めたわけではございません。  そこで、法務大臣が難民認定をする、これは、一般的な行政不服の原則を定めている行政不服審査法でも、上級官庁がないときには同じ処分庁に異議申し立てをすることになっております。そこで、法務大臣に対して異議申し立てをするということは、それからいっても少しもおかしくないのでございます。もっともその場合に、私どもといたしましては、一応、先ほど御説明しましたように、難民認定をするセクションと異議申し立てを取り扱うセクションは別建てにするということを考えておるわけでございます。
  95. 稲葉誠一

    稲葉委員 難民認定をするのは法務大臣がすると言ったって、実際法務大臣がするわけはないでしょう。ないと言っては悪いけれども、一々難民のことをわかりっこないでしょう。ただ判こを押すだけでしょう。判こだけ押して、今度またあれするときにまた判こを押すというだけの話じゃないですか。セクションを別にすると言ったって、そんなことはいま行政改革の中で認められないじゃないですか。それじゃどういうセクションを設けるのですか。どこへどういうセクションを設けるということになりますか。  それから、難民調査官というのは入国審査官のうちから指定するのでしょう。全部するわけじゃないでしょう。その中から選ぶのでしょう。結局どういうことなんですか、よくわからぬですな。だから、いま私の言った社会保険の方のやり方と違うでしょう。違うことはわかるでしょう、法律を見れば。社会保険の場合は、第三者機関がちゃんとやっているのじゃないですか。だから、難民の認定だって、そういう第三者機関的な、準司法的なものというか、そういうようなものを設けようと思えばできるわけですよ。そういうことをしないのですよ。  これはそもそもの出発点が、法務大臣が認定するというところがおかしいのじゃないですか。対外的な考慮を加えて、難民の場合は、入国審査官かあるいは入国審査官を難民認定官にしてやるのは、諸外国に対してちょっとあれだからというので、法務大臣にしたでしょう。だからそこへ話がみんな行っちゃって、同じ人が認定したり却下して、異議申し立てに対しても同じ人がまた判断をするということになっちゃうのですよ。  これは基本がおかしいのじゃないですか。あなたの方でもよく考えてごらんなさいよ、外務省も、これは準司法的な機関なり何なり設けなければいかぬとちゃんと言っているのだから。ドイツなんかみんなやっているでしょうが。ドイツの場合は、専門家がちゃんと入った機関を設けているでしょう。フランスの場合だってそうでしょうが。これは問題がありますよ。これは十分考えてください。あなたの方でそういうようにがんばるなら、それはがんばる以外にないけれども、よく考えてくださいよ。
  96. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 各国の難民認定機関の例について先生がいまお触れになりましたけれども、私ども承知している限りでは、アメリカでは司法省の移民帰化局長でございます。カナダは雇用移民大臣、英国は内務大臣、それから西独は連邦難民認定庁、フランスは難民国籍者保護事務所長、スイスは連邦警察の事務局、オランダは法務省外国人難民課でございます。西独のように委員会制度、審査会制度を設けているのは非常に例外でございます。  なお、先ほど申し上げましたセクションでございますけれども、私どもといたしましては、難民認定に携わるセクションを東京入管局の中に設けますし、それから異議申し立てを取り扱うセクションは、同じ東京入管局の中に別に設けることをいま検討しております。難民調査官は、地方の入国管理局にそれぞれ一名ずつ配置する方針でございますけれども、東京、大阪につきましては、複数名を配置するということをいま考えております。
  97. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはいろいろ議論のあるところですからね。制度が違うし、欧米と西独やフランスとはまた態度が違うのですよ。これは、出入国管理それから受け入れに関連しての二つの流れがあるでしょう。だから私の方も、一概にそれをどうこう言うわけじゃありませんけれども。  それと難民の人の異議申し立てですね。異議申し立てと不服の申し立てとは、法律的にどういうふうに違うのですか。
  98. 山本達雄

    ○山本説明員 異議申し立ても、行政不服の申し立て一つの種類でございます。審査請求と異議申し立て、さらに、これは二審的になるのでしょうが、再審査請求というようなものが、行政不服申し立ての種類だと承知しております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉委員 社会保険審査会法というのをよく見てごらんなさい。非常に詳細に法律の中に規定していますよ。代理人を選任できるということも法律に書いてありますよ。口頭で申し立てができるということも法律に書いてある。そこまで法律に書く必要があるかどうか、ぼくも社会保険審査会法というのをきのう見て、これはちょっと詳し過ぎるなと思ったのですよ。こんなに書く必要はないですよ。よけいなことがいっぱい書いてある。よけいでもないけれども、とにかくこれは詳しい。ここまで書く必要はないと思うけれども。  だけれども、今度はこれは余り簡単過ぎるのですよ。異議申し立てといったって、どうやってやるのかさっぱりわからない。代理人をつけてやられるのか、口頭でやるのか書面でやるのか、決定をどういうふうにやるのか。決定を受けた日からでしょう。社会保険審査会法の場合には、決定を受けた日から六十日以内に異議申し立てまたは再審査か何かできるというふうにちゃんと書いてあるでしょう。これは細かく書いてあるわ。厚生省はよほど時間があったんでしょうけれども、よく書いてあるよ。代理人をつけることができるとか口頭で申し立てができるとか、法律の中にそんなことは書く必要はないですよ、あたりまえの話なんだから。  だから、これは通知を受けた日から七日以内に異議申し立てでしょう。できるだけ早く決めたいという気持ちはわかりますよ。七日というのはどこから出てきたかということです。刑事裁判だって十四日ですよ。民事だってみんな十四日ですよ。七日というのはどこから出てきたのか、よくわからないのです。早く決めたいという気持ちは、これはわかりますがね。  そうすると、難民人たちというのは一体英語やフランス語ができる人なの。大体英語かフランス語ですね。字が読める人なの。どうするんです。何を渡すんですか、七日以内に。七日以内に異議申し立てをするんだから、本人にその決定書というのを渡すんでしょう。だめならだめだと言って渡すんでしょう。どうやって渡すの。本人は英語もフランス語も読めやしないし、何が何だかわけがわからないでしょう。そうじゃないですか。  七日というのは、これはおかしいですよ、官僚がつくったんでしょうけれども。どこの法律だって十四日以内でしょう。普通三十日とか六十日になっているのです。これは非常に短過ぎるんじゃないですか。どうやって現実に本人たちに対して通知するの。
  100. 山本達雄

    ○山本説明員 御説明の前に、若干手続の根拠規定について御説明申し上げたいと思います。  六十一条の二の四、この異議申し立ての規定は確かに一条でございまして、手続の規定はございません。ない部分につきましては、行政不服に対する一般法である不服審査法が適用されるというように理解しております。  なお、七日ということでありますが、自分が難民であるかどうかということは本人が最もよく知っておるわけでありまして、難民認定を申請した者は本国に帰れば迫害を受けるおそれがある、あるいは日本の庇護の及ぶ範囲、日本の領土内から出ればいつつかまるかもしれない、そういう大変差し迫った状況のもとにおいてわが国に保護を求めておる人でございますから、この難民認定、仮に否認されましても、その通知を受けてから何日も考えなければ不服申し立てをすべきか否かわからないという性質のものではないように思うわけでございます。  ちなみに、入管令では、上陸手続における法務大臣に対する異議申し立て、これは三日になっております。また、退去強制手続における法務大臣に対する異議申し立ても、これも三日になっております。横並びの問題として三日にしてはという意見もございましたが、それはやはり短過ぎるであろう。しかしながら、一週間もあれば、差し迫った状況に置かれるその人が異議申し立てるかどうかは十分決められるはずである。  なお、本人が日本語も英語もわからない場合どうするかということでございますが、これはわからない文書を送り込んでも意味のないことはもちろんでございますので、そこはわかる言葉で、あるいは本人が理解できる方法で通知するということにいたすわけでございまして、そういう事柄は省令などで規定したいと考えております。
  101. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま入管の全職員で、ベトナム語ができる人というのは何人ぐらいいるんですか。
  102. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 現在の職員でベトナム語のできる人はほとんどいないと思います。しかし、難民認定手続が実施に移される段階で、私どもといたしましては、通訳であるとか翻訳者であるとか、そういう人たちの協力を外部から得るような措置をとるつもりでございます。
  103. 稲葉誠一

    稲葉委員 いろいろなことをあなたの方は言うでしょうけれども、これは問題を起こしますよ。通知があったかなかったか、計算は通知があった次の日からですよ、あたりまえの話ですが。そうすると、通知があったかなかったか、通知をされたとしたって、何を言われたのかわけがわからなかったという人がいっぱい出てきますよ。これは弁護士でもついていれば、代理人でもついていればいいけれども、ついてないとわけがわかりませんよ。紛争のもとになりますよ。これは、いずれにしてもそういう点で問題があるんですよ。手続を、省令でなくて法律でもう少し詳しく書きなさいよ。  これは厚生省が、さっき言ったけれども、社会保険審査会法は本当によくできている。詳しく書いてある。そこまで書く必要があるかどうかは別として。法務省令といったって、法務省令はみんなわかりやしないですよ。だから、どこへ一時庇護所をつくるかということもまた問題ですけれども、庇護所の中でもそういうことを徹底させるようにしないと、国際的な紛争の種になる可能性がありますよ。私はそういうふうに思うのですが、これはまた後であれしましょう。少し実際にやってみて、それからにしたい、こういうふうに思います。  そこで、私はわからないのは、ディスプレースドパーソンズと言っていますね。これを流民と訳しているのでしょう。政府は訳さないかもわからないけれども、ここら辺がよくわからないんですよ。なぜ流民なのか。ボートピープルなら流民だろうけれども、ディスプレースドパーソンというのは、法律用語としては政府としてはどういうふうに訳しているの。
  104. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ディスプレースドパーソンに当たる正式の日本語訳はございません。ディスプレースドパーソンという言葉はいろいろな意味がございまして、使い方によってまちまちでございます。非常に広い意味では、本国の動乱であるとか政変とか、そういうものを逃れて国外に出てきた人という意味もございます。また、最近の日本のジャーナリズムでは、別の意味で、もっと狭い意味でこの流民という言葉を使っているようでございます。
  105. 稲葉誠一

    稲葉委員 流民という言葉の意味は、通俗語ですからいろいろありますけれども、ディスプレースドパーソンズというのは、正式な会議では強制追放者というふうに訳しているんじゃないですか。マニラで国際法曹人の会議がありましたね。これに行った人の話を聞くと、これは強制追放者というふうな意味に訳しておるようですね。その訳がいいかどうかは別として、ちょっとここら辺のところがごたごたしていますから、通俗語が非常にはんらんしているものだからわからなくなっちゃうのです。  そこで、これは私、具体的な事件について聞くのは避けます。最高裁からもおいでになっていると思うのですが、いわゆるメイランさんの事件というのがありますね。きのう、高裁で第八刑事部で第一回のあれがあったはずですが、これは具体的に内容は聞きませんよ。それに対する判断とかなんとかはすべきじゃありませんからしませんけれども、裁判があったのは八〇年三月なんですよ、出入国管理令外国人登録で。  新聞によると、懲役六月、執行猶予二年の実刑判決と書いてあるのですね。懲役六月、執行猶予二年の実刑判決。法務省の刑事局長、こういうのはあるの。あなたが聞かれても困っちゃうな。新聞記者の人は勉強してないですね。そんなことを書いて物笑いの種ですよ。これは内容はいいんだけれども、懲役六月、執行猶予二年の実刑判決なんて書いて平気でいるのですからね。ぼくは笑ってその新聞社へ電話したんです。そうしたら、訂正も何も出てないからどうしたのか知らぬけれども、もう少し新聞社の人も初歩的な法律ぐらい勉強してもらわなくちゃ困るわ。  それはそれでいいのですが、一審はそうでしょう。二審までに約一年以上かかっているのですね。これは公正証書の提出なんかいろいろあるでしょうから、記録を送ったりするのがありますけれども、一年ぐらいかかっていますね。これはどういうわけでこんなにかかったの。これだけお聞きしたいと思うのです。
  106. 小野幹雄

    小野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  この事件は、いまお話がございましたとおり、一審の判決は昭和五十五年三月二十八日でございまして、控訴の申し立てが三月三十一日でございました。控訴審に記録が参りまして、それが受理されましたのが五十五年五月二日でございます。それで、この控訴趣意書の最終の提出期限が当初六月三十日でございましたが、一月延ばしまして七月三十一日となりました。七月三十一日に弁護人から控訴趣意書が提出されました。その後、検察官の答弁書が五十五年十二月二十七日に出ました。ただ、これは裁判所の方で提出を命じたものではございません。刑事訴訟規則二百四十三条三項に基づくものではございませんで、任意に出していただくというもので、期限も別に限っておりませんでした。そういうことで、いまお話しのとおり、昨日第一回公判が開かれたわけでございます。  このおくれました理由でございますが、この係属部は東京高裁の第八刑事部でございまして、裁判官四名おりましたが、そのうち二名が相次いで病気入院をするというようなことでございまして、訴訟関係人との打ち合わせでは三月ごろに期日が入る予定でございましたが、それが昨日に延びたということでございます。
  107. 稲葉誠一

    稲葉委員 その内容等については、いま係属中の事件ですから聞きません。  そこで、法務省の刑事局長にお聞きするわけですが、そこで入ってきますね。それが難民の認定を受ける間の時間がかかりますね。その間は、検察庁としてはもちろん起訴しないわけでしょう。それはあたりまえの話でしょう。起訴してから後に難民ということがわかったときには、刑の免除ということが書いてありますね。何か条文にありますね。なぜ刑の免除になるのか、そこのところをちょっと、前のことと後のことと御説明願いたいと思うのです。
  108. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 第一の点でございますけれども、実際の運用といたしましては、法務大臣の難民認定に関する手続が行われている間、それと矛盾するような処理をするのも適当でないということで、それを見守るというようなことが多いだろうと思います。  ただ、理屈めいたことを申しますと、刑の免除の規定は刑事手続の問題でございまして、帰するところ裁判所の判断ということになるわけでございますから、法務大臣の認定手続と連動するといいますか、理屈の上ではそういうものではないわけでございます。したがいまして、非常に理屈めいたことを言えば、難民認定の手続中であっても処理できないことではない。しかし、実際の運用としては、そういう難民認定というものを尊重してしかるべき措置がとられるであろう、こういうふうに思うわけでございます。  それから第二点は、いまの法案で七十条の二にいわゆる刑の免除規定を新設することになっておりますけれども、これは御案内と思いますが、もとになります難民地位に関する条約の三十一条という規定がございまして、それを受けて刑事手続上どういう規定がいいかということを考えました結果、こういう形にしたものでございます。
  109. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま刑の免除というのがいいかどうかということは、法律的に非常に議論があるところではないかと思います。免除というのは、有罪であることを前提として刑を免除するのでしょう。それは緊急避難的なものに該当するとかなんとかということになってくれば、有罪の認定で刑の免除という行き方はおかしいのではないかということも考えられるし、公訴の取り消しもあるでしょうし、いろんな問題がありますね。これはむずかしい問題が出てきますが、きょうは時間がないからあれします。  それから厚生省の方、わざわざおいで願って本当に済みませんでした。この前連合審査のときにお聞きしておりまして、厚生省の方はなかなかよく勉強しておられるなと私も思って、非常に感心したわけですね。ただその中で、基本的な認識の差が相当あるわけですね。だから、私どもの方も年金問題についてはよく勉強しまして、予算委員会なり何か別の機会にゆっくり時間をかけてやらせていただきたい、こういうふうに思います。  終わります。
  110. 高鳥修

    高鳥委員長 午後零時四十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十九分開議
  111. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田正勝君。
  112. 岡田正勝

    岡田(正)委員 まず一番最初に、刑事局長さんにお尋ねをしたいと思うのであります。  去る五月二十二日のこの法務委員会におきまして、私の方から大鷹入管局長さんに対しまして流民対策について質問をしたわけです。今度の難民条約を批准するに当たりましての整備もありますので、流民に対する新方針を策定したということを明瞭にされたわけであります。  内容といたしましては、簡単に言いますと、次のようなケースには特別在留許可を与えることを決めたということを言われたのであります。その主なものは、インドシナ三国の旧旅券で入国し、不法残留となったが帰る国がない者、それから、台湾、タイなどの第三国で他人名義の旅券を不正入手して入国した者、それから、台湾の正規旅券を取得し、たとえば華僑なんかでありますと簡単に入手ができる、そうして入国をした者でありましても、日本人あるいは日本に居住する外国人と親族の関係にある者、あるいは両親、きょうだいが第三国の難民キャンプにいる場合、その他特に理由がある場合、こういうことを具体的に御説明に相なりまして、私ども難民の問題について長年の間非常に心配をして苦労してまいりましたものにとりましては、これは大前進であると実は高く評価しておるのであります。  さてそこで、入管の方ではこういうりっぱな御方針をお打ち出しになったのでありますけれども、この方針を受けて検察庁としては一体どういう対応をなされるであろうかが、関係者にとりましては大変心配なことであります。そこで、この機会に特に刑事局長の発言を求めたいと思う次第であります。
  113. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま御質問の中にありましたように、前回の当委員会で、いわゆる流民という立場にあられる方につきまして入管当局の取り扱いについての御説明があったということは、私も承知しておるところであります。内容的にはいま御引用になったようなことであることも承知しておるわけでありますが、検察当局といたしましては、申し上げるまでもないと思いますが、個々の刑事事件が起こりました場合に、それぞれの具体的な事情といいますか、情状、そういうものはケース・バイ・ケースということになりますけれども、それぞれの事案に応じて十分考えて、それに応じた処置をとることを基本としておるわけでございます。  ですから、この流民と言われる方々に対する扱いも、一般的に言えばそういう考え方に基づいてなされるわけでありますけれども、現にこういうような扱いがあるということでございますから、その点は十分検察当局の取り扱いにおきましても頭に置いて、入管当局がいろいろなことを考えて、人道的な配慮をするものにつきましては、立場は違いますけれども、似たような考え方で臨むことになるだろうと考えております。
  114. 岡田正勝

    岡田(正)委員 大変言いにくい質問でありましたが、明瞭な答弁をいただきまして、ありがとうございました。  そこで、いまのお言葉に甘えて申し上げるわけではありませんが、この際ちょっと希望を申し上げておきたいと思うのであります。入管当局の方が、難民としてあるいは流民として、認めてやるべきではないだろうかというような問題が出た場合には、単に外登法違反だから、入管法違反だからということだけをもって一般刑罰と同じような扱いをなさらぬように、特に法務大臣は人道的な立場を尊重してということをしきりにおっしゃっていらっしゃるわけでありまして、いま局長さん自身もその旨を言われましたが、ぜひ人道的に御配慮をお願いしたいと思うのであります。  それから、いま一つお願いしておきたいと思いますことは、これからたくさん出てくると思いますけれども、これは難民ではないよ、流民ではないよ、特別在留許可を与えるわけにはいかぬのだというようなものが出てくるケースもあると思います。そういうときにおいても、実際には、後で新方針に基づくものは具体的には一体どういうものがあるかということをお尋ねしようと思っておるのでありますが、中には、たとえば一日違いで、あら残念でした、これじゃもうどうにもなりませんとか、あるいは第三国へちょっとおりてすぐ日本へ飛んでくればよかったものを、そのおった期間が一カ月じゃいけません、二十五日なら結構でございますなんてことに内部基準がもしできたりいたしますと、その端境の人は、ああ残念なことをいたしましたということになり得る可能性もあるわけであります。そういう場合にいたしましても、いずれにしてもインドシナ三国のベトナム、ラオス、カンボジア、そういうところから戦乱に追われて逃げてきたという境遇には何ら変わりはないわけでありますから、あくまでも人道的な対処をしていただきたい。  私の言うのは少しどぎつ過ぎるかもわかりませんが、たとえば町を歩いておって、その人が外登法違反であることがわかった。外国人ではあるけれども、証明書を持っていないということになれば、直ちに逮捕、すぐ留置場へぶち込む。それから二十日間つついっぱいの勾留をやる。そのあげくの果ては起訴する。そして裁判係属、その間は保釈もできないということになりますと、日本人が行いました犯罪の中でも殺人犯に相当するほどのいわゆる極悪人扱いの処遇になるわけでございますから、そういう点をぜひ御勘考いただきまして、戦乱の国を逃がれて頼るところもなく、金もなく知人もなく流浪しておる人たちに対しまして、日本という国は冷たい国だなという印象を与えないように、ひとつぜひとも刑事局長さんの御配慮をお願いしたいと思うのであります。  さて次に、これもまたちょっと刑事局長さんには言いたくないのでありますけれども、裁判の独立という点から大変言いにくい問題で恐縮でありますが、私の仄聞するところによりますと、先ほど稲葉議員のお話の中にも出ておりましたが、東京高裁におきまして昨日第一回の公判が行われた由でございます。そのときの出来事であります。  チャン・メイランさんの裁判に当たりまして、このチャン・メイランさんは国連の、この人は難民でございますという証明書を持っておるわけであります。難民であるという証明書を持っておるから、それを弁護人側が、このチャン・メイランさんは普通の人じゃありません、難民ですからといって実はその証明書を証拠として申請をした。すんなりと受けられるものだと思っておりましたら、あにはからんや、そのときおられました立会検事は、これを証拠として採用することには不同意であるということをおっしゃられたので、裁判官も検事がそう言うものを証拠としてとるのはと――これは裁判官の自由でございますけれども、検事の御意見には相当左右されます。そういうことになって、ついにこの証拠の申請が不成立に終わってしまった。聞くだにどうも不思議な気がするのですね。  これからわが日本におきましても、難民であるかないかを査定しようという――どういう機関でおやりになるかもこれから質問をしてまいりたいと思いますが、その機関において難民かどうかを査定する。そこで、難民と査定された人も、世界全体で認められておるいわゆる国連で難民ですよといって認められた人、そんな人でもやはり日本じゃまたもう一遍認定し直すのかなと不思議な気がします。証拠として採用するに足らぬなんてことになりますと、ははあ、国連の難民の扱いをしておりますところで証明書を出した者でさえもだめなのかな、そうすると難民の判定というものは物すごく厳しいなという感じを実は受けるのでございます。  どうせいこうせいということは言える筋合いでもございませんから、ただ、刑事局長に直接お耳に入れたかった、そして大臣のお耳にもこのことは入れておきたかったので、実はあえて申し上げたような次第でございます。  いま一つは、二十二日の法務委員会におきまして、私、一つの例として綾瀬警察に逮捕されておりますタオ・イン君の問題について御説明申し上げたのです。ところが、残念なるかな、刑事局長さんはそのとき不在でございましたので、いま一度その概要だけを申し上げておきます。  実は五月七日ごろに綾瀬警察署に逮捕されましたタオ・イン君というラオス名の青年でありますが、二十五歳ぐらいだそうですが、この人は一九七七年の十月ごろ、台湾パスポート観光ビザで来たのでありますが、ビザ切れになったまま不法在留ということになりまして、ある日、この五月七日の一日か二日前でありましょう、勤めております会社の社員寮で生活しておりましたところ、警官の尋問に会いまして、あんたは外国人ではないのか、そうです、証明書を出しなさい、いや、実は持っておらぬのです、それではあなたは外登法違反ではないかということになりまして、綾瀬警察署に逮捕されたわけであります。  その後二十日間びっしりと勾留されまして、昨日、実は起訴されたというのでございます。一たん起訴されますと、いま申し上げましたように、裁判が終わるまでの間はなかなか保釈も許してもらえないというようなことであり、しかも、本人がそんなに大きな金も持っておらないということでございますので、私は大変心配をしておるのですが、司直のやられることに横やりを入れようとは思っておりません。  このタオ・イン君というのは、華僑のお父さんと純粋のベトナム人のお母さんとの間にできました三人の男の子と二人の女の子の五人きょうだいの長男でありまして、ラオスのビエンチャンというところで生まれて育った方なのであります。両親は、最初ベトナムのハイフォンにおったのでございますけれども、その後サイゴンに出てきて二、三年いたのですが、国内の政情不安定のため隣のラオスに行きました。幸いビエンチャンで大きなマーケットを経営できることになりました。これも聞いた話でありますが、このお母さんはなかなかの美人で、しかも働き者でありまして、非常に評判がよく、そのためにマーケットは繁盛したというのであります。  しかし、ベトナムに残しましたそのお母さんの御両親が戦乱の中におりますため、お母さんは大変心配をいたしまして、何人かの人と飛行機でベトナムに向かいました。ところがその飛行機は、ついに行方不明になったのであります。一説によりますと、ベトコンに撃ち落とされて、全員が死亡しているのではないかというのでありますが、家族の者は、死んだということを信じたくないと言って、涙を流しております。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕  そういう状態で、ラオスも戦乱に巻き込まれましたので、実は一家ばらばらとなり、あのメコン川を渡りまして、タイを経由して逃げたのがお父さんと二人の子供であります。これは次女と次男であります。三男はタイの難民キャンプからアメリカに参りまして、現在、永住権を得ております。  このタオ・イン君という本人は、日本に参りましてから、台湾におる体の弱い父親と二人のきょうだいの三人を養うために夜も昼も働いております。一月働いて得た約十万から十一万の金のうち五万円を本人の生活費にいたしまして、あとの残りの五、六万円を毎月台湾に送金しており、言うならば、一家にとっては大黒柱のような存在でありました。それがいま観光ビザ切れということで不法滞在、なるほどこれは不法でありますからよろしくありません。しかし、その本人が逮捕されてはや一カ月を迎えようとしております。これから裁判が始まりますが、一体台湾に残されたこの父親や妹、弟たちはどうなるのでありましようか。私は、こういう点にも人道的な配慮があってしかるべしと思うのであります。  さらに、これはまた余談でございますけれども、昨年の四月ごろに、実は特在を許された人が四人おります。その四人は、チャ・ダラ君、タオ・ボーライ君、タオ・リーフ君、もう一人は氏名がどうもつかめないのでありますが、この特在を許された四人の人たちといま申し上げましたタオ・イン君という人とは、ビエンチャンの同じ町の中に住んでおった隣近所の人なのであります。お互いによく知っているのであります。戦乱を逃れて出たことは間違いないのであります。ただ、本人が台湾でちょっと足踏みし過ぎたということが一つの大きな原因なのかもしれませんが、そういう入国の経緯は違っておりましても、戦争で国を追い出された難民であることは疑う余地もございませんし、もう一段下げて言うならば、流民であることには間違いがないという人でございます。  そういう人が七日につかまって、実は昨日起訴されたという状態でありまして、このタオ・イン君の行方についても、チャン・メイランさんと同じように私は大変心配をしておるのであります。長い長い裁判を、どうやって金のない者がやっていくのでありましょうか。いまわが日本には、笹原弁護士を中心といたします十五名ぐらいのこの弁護グループがあります。この人たちは全く無料の奉仕をいたしまして、こういう気の毒な難民諸君のために尽くしておられます。果たしていつまでこの無料の奉仕が続くでありましょうか、私は非常に心配するのであります。  難民条約を批准されるというこの重要な国会に当たりまして、入管令の改正がそれに伴って行われるのですから、この際、検察当局に、法務大臣がわが委員会におきまして述べられましたその御方針、それから大鷹入管局長が述べられました新方針、そういうものが決してむだに終わらないように、私は心から願ってやまないものであります。  次に、入管局長の方にお尋ねをしたいと思います。  まず質問の第一は、五月二十二日にああいうりっぱな新方針を打ち出していただきまして、私どもこの関係者としましては、本当にやみ夜に光が差したなあという、全くそんな感じなのです。夜明けが来たというような感じをもって受け取っておるのでありますが、しからば、さて今度はその新方針を受けてみんなはどうしたらいいのだろうかという質問になってきますと、実は、はたと行き詰まるのであります。喜んでばかりおられぬのであります。したがいまして、具体的にお願いをするのでありますが、この新方針に基づいて特別在留許可を出しますよ、そのことについてもうちょっと具体的にはっきりしたことを述べるわけにはいかぬでしょうか。
  115. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 インドシナ三国旧旅券による入国者及び第三国の旅券を不正入手して入国した者につきましては、それらの事実が確認されればおのずから結論が得られることだと思います。第三国旅券を正規に取得して本邦に入国した者につきましては、事案の態様を踏まえてケース・バイ・ケースに処理することとなる以上、これからの個々の具体的事案の処理を通じておこたえするというほかないわけでございます。
  116. 岡田正勝

    岡田(正)委員 しからば、その手続の方法はどうやったらよろしいのでございましょうか。
  117. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 流民と言われる人々は、そのほとんどの人が不法残留者と思われますので、まず入管の出先機関に出頭していただくことになろうかと思います。その上で入国時期、入国方法、不法残留後の生活状況について陳述し、あわせて自分の主張を裏づけるいろいろな資料、たとえば旅券であるとか身分証明書とかいうものでありますが、こういうものを提出してもらい、所定の審査手続を経て法務大臣の裁決を待つことになります。
  118. 岡田正勝

    岡田(正)委員 そこで、午前中の稲葉議員の御質問でも、どうもちょっと回答に納得がいかなかったのでありますが、流民であるか難民であるか、いずれにしましても、流民と言っても私は難民だと思うのでありますが、そういうものを認定するのは今度は法務大臣になります。その法務大臣が、これは難民だよあるいは難民に準ずる流民だよという認定をなさいますその機関、それは一体どこなのですか。
  119. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民の認定は法務大臣がされます。そして実際の難民認定の手続は、入管の当局の中に設けられるわけでございますが、東京入管の本部に難民認定についての体制を整えます。さらに、地方入管局に法務大臣が指名されます難民調査官を配置する、こういう体制を考えておるわけでございます。
  120. 岡田正勝

    岡田(正)委員 そういたしますと、いま私が難民としますね。それで、今度法改正によりまして、速やかに出頭してくれば刑を免除するよという法律もできることになりますね。ということになると、新しい方針も出たし、うんこれならいけるかもしれぬなと思って出てきますね。それでいまの東京入管の本部ですか、そこへできる何やら委員会とか何とか審査官というようなもののところへ行くわけですね。行きまして、いろいろその時期だとかあるいは動機だとか入国の方法とか、資料があればそれを提出するというようなことをするのです。こう言うのであります。  さて問題は、どんどん出頭してきなさいよと言いましても、新方針も出ましたし遠慮なく出てきなさいよ、こう言っても、実際には行って取り調べを受けるときに、言葉が余り十分でない三国人としましては、当然だれかに付き添ってもらいたいという気持ちがありますね。たとえば弁護士についていってもらうとか、あるいはもうすでに特在を受けておる友達に連れていってもらうとか、あるいは国際親善の会の幹部の人についていってもらうとか、いろいろな方法がありましょうが、本人単独では心細くて、日本語も十分じゃない、余りしかとも読めないというような人が、一人で部屋の中へぴしゃっと閉じ込められて、そしてどうだ、どうだ、どうだと調べを受けたら、相当な精神的な強迫観念といいますか、汗びっしょりというような状態になると思うのです。  そういう点で、取り調べをされるときに、本人が出頭して取り調べを受けるときには、付添人をつけてもよろしいというやり方をなさろうとするのですか、いかがですか。
  121. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 出頭をされるときに、だれかほかの人が同行するというようなことまで拒むつもりはございませんけれども難民認定手続の過程の間にずっとそういう方が一緒にいらっしゃる必要があるかどうか、この辺はこれからいろいろ手続を定めていくつもりでございます。  なお、先ほど先生からお話がございましたけれども、いま問題になっております流民でございますね、これは難民条約の「「難民」の定義」からいいますと「難民」には入らないことになります。これはすでに第三国の国籍をもらって、そこの国の保護に入っているということで、定義上外されるわけでございます。もちろん、そういう方が難民認定の申請をされることは自由でございますけれども、私ども難民条約の定義に合致した人を難民と認定するわけでございますから、その結果難民と認定されないということもあろうかと思います。ただ、難民と認定されない場合でも、先ほど先生がお触れになりました新しい方針に基づいて法務大臣の特別在留許可を下すかどうかは、その新方針に照らして判断をしたい、こう言っているわけでございます。  それから、先ほど先生おっしゃいましたけれども、流民が不法残留していて、その人たちが遅滞なく自分は難民であるということを入国審査官に申し出て、その後で不法残留の罪が免除されるというふうなことをちょっとおっしゃいましたけれども、この場合は、あくまでもその本人が自分は難民であるということを主張し、その難民であることが裁判所によって認められなければなりません。ところが、こういう流民の人々は難民条約難民の定義には当てはまらないわけでございますから、ほかの特別の事情があれば別ですけれども、一般的に言えばそういうことでございますから、したがって、ただいまの刑の免除の対象にもならないということでございます。
  122. 岡田正勝

    岡田(正)委員 さて、そういうふうにここでこの問答をやりとりいたしましても、なかなか微妙な、きわどいすうっと間を縫うような問題が出てくるのですね。だから、私は難民だと自分で信じて、そして難民の認定を受けたいと言って出頭してくる、そしてその手続というのはまだこれから決めるのだということでございますけれども、手続の方法はいままだはっきり決まっておらぬわけでしょう。これから決めるのでしょう。そういうことになってまいりますと、一応出頭してくれば、東京入管を本部といたしまして、そして地方の入管には調査員を二人置いてそこで調査いたしますよ、こういうことでありますが、出ていくには出ていったけれども、その審査の結果難民と認定されればよし、あるいは新方針の中の流民に入ればよし、だけれども、それにも入らなかったというようなことになりましたときにどうなるのだろうか。  そうすると、よう来たのう、おまえは難民にも流民にも入らぬよ、よう来た、入れ、ぽんとほうり込まれたんじゃ、がちゃんと鉄のとびらが閉まったんじゃ、これは何しに行ったのか、まさに正直者がばかをみるということになりかねないわけでして、そういうときにはどうなさいます。難民でもない、それから新方針に基づく流民でもないということが調査でわかった、いまこの机の上でわかった、途端にばんと手錠をかけてほおうり込むのですか、どうなるのです。
  123. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 その場合は入管令上の手続によることになります。その結果、強制退去の手続が進められることになると思います。
  124. 岡田正勝

    岡田(正)委員 そこなんですよ。そこで正直に出頭してきた者について、あなたは難民でもないよ、流民でもないよ、したがって、あなたは許すべからざる不法滞在者であるから、強制出国だといって強制退去令をばんと発行いたしますと、その人はもう間違いなくパスポートに赤スタンプを押されまして、そしてそのスタンプを押されたパスポートを持ってよその国に行けば、よその国へ行ったらこれは犯罪者扱いですね。そういうむごいことをする必要はないではないか。  本人が正直に出てきて、そして難民でもないのですか、流民でもないのですか、それじゃ仕方がない、特別滞在もお許しが願えぬということになれば、私は自分の力で出てまいりますというときに、いや、それでもおう出ていけ出ていけ。本来言うたら、強制退去というのは、日本の国の税金を使って飛行機代を出して送り届けるのでありますけれども、あなたが自分の費用で出るというなら結構よ、行きなさい、そのかわり強制退去令という令書だけは発行する、それで飛行機に乗るときには赤いスタンプをばたっと押してやるのだということじゃ、これは余りにもかわいそうじゃないですか。  だから、いま一ついわゆる退去勧告というような方法もあるのでございましょう。この正直に出てきた人に対してまで、審査の結果いわゆる不法滞在だということになったら、強制退去令を発行して赤スタンプを押して出すというようなことだけはすべきではない。せめてそこだけは守ってあげて、やはり退去勧告といいますか、そういうような程度で済ましてあげる。しかもその退去する、どこかへ行く第三国の手続が終わるまでの間は暫時特別に短期滞在を許す。それは不法在留者だから、強制退去令を出すのだから、その退去令を出すと同時にもう手錠をかましてばんと収容所へほうり込んでしまうというようなことをするのではなくて、正直に出てきたんだから短期特在を許しましょう、そしてあなたに退去勧告をいたします。だから手続をいち早く済ませてあなたの目がける国へ、どこかへ行ってください。せめてこのくらいの武士の情けというのがあってもいいんじゃありませんか。いかがでございますか。
  125. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先生ただいま退去勧告、出国勧告のことをお触れになったんだろうと思うのでありますが、出国勧告という運用は、不注意で一日とか二日とかいった非常に短い期間不法残留した者について、退去強制手続によって退去させるのはいかにも酷であり、行政経済的にも問題があると思われるところから、実務の運用上行われている制度であることをまず御理解いただきたいと思います。  御指摘の潜在していた流民のほとんどの者はかなり長い期間にわたって不法残留していた者であり、出国勧告制度を適用する余地はないものと考えております。また、入管令上は、不法残留等の令違反者については、すべて身柄を拘束して退去強制手続を進めるのが原則とされておりますので、自発的に出国するとしても、違反調査、審査という定まった退去強制手続が終わった後、初めて自費出国が許されるのがたてまえでございます。しかし、早期の出国を希望して入管へ出頭してきた者等につきましては、違反態様によっては速やかに退去強制手続を終えて出国をさせているところでございます。  それから、第三国向けの出国につきましては、どこどこの国に出国したいという希望を持っておられる場合には、できるだけその希望に沿って処理するようにいたしております。  なお、強制退去手続が進められている間の身柄の問題でございますけれども、逃亡のおそれがなければ仮放免という道も開かれておりますので、短期特在という変則的な運用はいま考えておりません。
  126. 岡田正勝

    岡田(正)委員 よくわかりました。仮放免という方法もあるんだしということでございますから、これは運用としてよくわかるのでありますが、ただ、いま現在の入管令あるいは内部手続においてこう決まっておるから強制退去にしなければならぬということですね。なるほど今度の法律案を見ても、これはやはり強制退去を命ずるというふうになっております。なっておりますけれども、しかしながら、そこには難民条約を批准する国として、難民ではないよというような場合の判定というのもきわどい差があるわけでしょう。きわどい差がある。明瞭にがばっと、だれが見ても、第三者が判断しても、これは難民でもなければ流民でもないよというようなものではないと思うのです。流民の線から外れた人でも、やはりこの人は残念なことをしたなというケースがずいぶん出てくると私は思うのです。  そういう人たちがいま日本の国の中に潜在しておるというのは、日本の国にとっても好ましいことじゃありませんね。好ましいことじゃないから、できるだけ出頭してきてもらって、厳正に審査を受けてもらうのが一番いい。これが国内的にも一番いいわけです。ところが、そういうわれみずから出頭してきた者に対して、よう出てきたな、規則はこうなっておるから、なかなか殊勝な心がけではあるが、しばらくの間牢屋へ入っておれというようなことでは、これは余りひどいことないですか。これはもうちょっとその運用の面で考えられる点があるんではないかと私は思うのですが、重ねて質問をいたします。
  127. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民と認定されなかった、また流民として新しい方針対象にもならなかったという方につきましては、私どもは入管行政を入管令という法律で適用しておりますので、これは退去強制に訴えざるを得ない、退去強制手続をとらざるを得ないということでございます。ことに、こういう方々は、不法入国あるいは不法な残留という刑罰法令にも関係する方々であるということを、この際御指摘申し上げたいと思います。
  128. 岡田正勝

    岡田(正)委員 それでは、時間がありませんので次に参ります。  自分で自主的に考えて、これはやはり第三国へ行くべきがいいと思って成田へ行った。成田の空港に行きましたら、おお、いいところへ出てきたなと言って、そこで成田の収容施設へがばっと入れる。長い人になりますと、たしか昨年の質問では、そんなに長くとめることはありませんよ、三日ぐらいですよなんということを言っておりましたのに、どういうことをやっておったか調査をするのに三日ぐらいですと、こう言っておりましたのに、つい最近でも、一週間ぐらい前のことになると思いますが、四人の青年の諸君が出国するときに、二人は無事に出してもらって、残りの二人は一人が八日、一人が九日という長期間成田空港へとめられておりました。  これなんかも、自分の考えで出ていこうとしておる、強制退去でも何でもないのですよ。自分で自主的に出ていこうとしておる者をとめて、そしておまえの友人はどんなのがおったか、おまえどこで生活しておったか、何を食べておったか、どれくらいもうけておったか、どういう交友関係があったかというようなことを調べて徹底的に追及する。これは同じ東洋民族ですから、やはり義理とか人情とかいうことは同じものがあるのですよ、共通のものが。いままで世話になった友人の諸君たちに何で後足でどろをかけるようなことをして行かれようかというので、本人ががんばる。がんばればがんばるほど勾留期間が長いということになる。逆になるわけです。こういういわゆる自分から出ていこうとするような人たちを余り成田やあるいは羽田、羽田には施設がありませんから羽田はすぐ東京入管へ持ってきちゃいますけれども、そういうことはなさらぬ方がいいのではないかと私は思うのですが、いかがですか。
  129. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 みずから出国されようとする方でも、出国手続をとる間に不法入国あるいは不法残留していたということが発覚するわけでございます。この場合には、入管令上退去強制手続をとらなくちゃならないということになっております。そのためには、身柄を収容してそして具体的な審査が行われるわけでございます。この審査には、先ほど先生からもお話がございましたけれども、私どもの資料によりますと、大体成田入管の場合には、平均三日ぐらい時間がかかっているようでございます。もちろん若干それより長いケースもあるようでございますけれども、これは飛行機の便の都合とかいろいろなことで長くなっているということでございます。
  130. 岡田正勝

    岡田(正)委員 時間がなくなりましたので、最後に大臣に希望をしておきたいと思うのでありますが、この難民条約を批准するのも余り自慢にはならない、先進国としては非常に恥ずかしい八十一番目か二番目というような状態であります。ただ、胸を張って言えるのは、アジアでは一番目ですということが言える程度でございます。そういう点は大臣も率直にそのお話をされまして、もっと早くするべきであったということで、大臣の姿勢というのは私はもう終始一貫りっぱなものだと評価をしておるのでありますが、この難民条約の批准に伴いまして入管令のBができてまいりました。先般可決になりました入管令Aがあります。  いずれにいたしましても、これは両方一緒にして運用されるわけでありますが、いまいろいろな質問を通じて明らかになりましたのは、やはり認定するのはだれかということもまだはっきりはしてない、あらかたこんなことにしよう、東京入管に本部を置きましょうというような程度でございます。私どもも、法務大臣が認定をして、不服があれば法務大臣へまた言うてこいという何か非常に変な制度だなということも実は頭の中にあるのでありまして、いろいろな疑問がありますけれども、審議の時間も限られております。あえて多くのことを申し上げませんけれども、要は、この内容そのものは私は非常な大前進であると思いまして、そのこと自身は評価を高くしておるのであります。  しかし問題は、それを運用するのは人でありますから、法律を運用するのは人であります。その運用する人の心の中に、いわゆる温かい、人間が人間を愛するという、人間が人間をやっつけるのではない、人間が人間を愛し、お互いが助け合っていこうではないか、それでこそ世界がもてる、そういう感覚を持って愛の精神で法の運用をしていただきますように、ぜひともひとつ部下の方々にも周知徹底をお願いして、さすが日本という国は温かいという評価を受けることができますように大臣の一層の御監督を希望いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  131. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 安藤巖君。
  132. 安藤巖

    ○安藤委員 最初に、この出入国管理及び難民認定法案、これは難民条約の批准に伴うものでありますけれども入国管理局の業務として、難民に対する処遇について現行法と比較してどういうところが端的に言って改善をされるということになったのかということをお尋ねしたいと思うのです。入国管理局としてはどういうふうにその辺のところを理解しておられるか、いかがですか。
  133. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 このたび入国管理令改正案の中に盛り込みました難民認定手続によって難民と認定された者につきましては、入管令上次のような取り扱いがございます。  第一は海外旅行でございますが、海外旅行につきましては、難民に対しては難民旅行証明書というものを発給します。これは難民条約の規定を受けたものでございます。  それから、第二に永住でございますが、難民と認定された方につきましては、本法における適用を促進するという見地から、一般永住の要件――一般永住は日本の国の利益に合致する場合で、かつ次の二つの要件を満たさなければいけないとなっておりますが、その二つとは、一つは素行が善良であるということ、第二が独立生計維持能力があるということでございますが、難民と認定された方につきましては、その独立生計維持能力という要件を取り払うことにしたわけでございます。これが第二の点でございます。  第三の点といたしますと、これは退去強制手続に関するものでございます。入管令第二十四条四号の規定によって退去強制手続が進められている難民に対しまして、難民であるということのために特別の在留許可を法務大臣が与える考慮の対象になるということで、いわば法務大臣の裁決の特例というものが適用される道が開かれたわけでございます。  これが、今度の難民条約に伴う入管令改正に伴って難民に対して新たに与えられる大体の処遇でございます。
  134. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろ入国管理局としての立場からの改善点というのをお聞きしたわけですが、この「出入国管理の回顧と展望」、これは法務省入国管理局のつくったものですね。これの二百五十一ページにも「難民条約への加入は、条約上の難民に対して条約に規定されたとおりの保護を与えることになる」ということと、難民に認定できる人とできない人とを分けるということだというふうな記載もあるわけですね。だからそうしますと、いまおっしゃったようなことが難民に認定するかどうかによって違ってくるわけですけれども、認定されるとそういうことになる。それから、いろいろな社会福祉面においても、この前も連合審査でいろいろ議論がなされましたけれども、内国民待遇を与えるというようなことにもなってくるわけですね。  それからもう一つ、いろいろ時間の制約もあるから私の方で先に言いますけれども、今度の難民条約加入に伴う法改正に従って、いろいろ入国管理局の中、大きく言えば法務省の中でいろいろ人事の配置等々についても異動があるんじゃないかということで、全法務と言われている労働組合があるわけですが、そこの労働組合との、これは団体交渉と大きく言っていいと思うのですが、業務の性質はこれまでの規制的な事務から保護的な事務になるというところに質的な違いがあるんだというふうに言っておられるということなんですね。こういうふうに考えておられるということも間違いないというふうに考えてよろしいのですか。
  135. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 入管の行政には、規制的な面とそれから行政サービスと申しますか、そういう面と両方あるだろうと思います。規制というのは、好ましからざる外国人入国を拒否したり、あるいは退去を強制したりすることでございますが、行政サービスとなりますと、これはいろいろございます。先ほど申し上げました永住手続もその一つでございますが、今度の難民条約加入に伴って私どもがお諮りしております難民認定手続によって難民と認定された人に対する処遇というのは、非常に多く行政サービスの面があるかと思います。
  136. 安藤巖

    ○安藤委員 いま私が紹介しましたのは、今月の十五日に入管局の法務専門職の方が全法務労働組合の代表に言明をされた言葉で、いま大鷹入管局長がおっしゃったのも大体そういうようなことだと思うのですが、そうしますと、これはくどいようですけれども、大臣、やはり中身と法案の名称とは――あるいは法律の名称ですね、いまは法案ですけれども。合致しておった方がいいのじゃないか。  私、どうしても気になってしようがないものですから、重ねてお尋ねするのですけれども、出入国管理の方はほかに譲りまして、「難民認定法」というのじゃなくて――「難民保護法」とまではいきません。認定も入るし、保護的な事務も入る、そして先ほどおっしゃったようないろいろな処遇を与えるということになるわけですからね。「難民認定法」というのじゃなくて、「難民法」というふうに法案の名称を変えるべきが至当ではないか。かえって中身と一致する。これは対外的なアピールとしても大いに意味があることじゃないかと思うのですが、こういう名前で法案を提案したんだからというふうなこだわり方をされないで、考えていただく余地はないか、くどいようですけれども、再度重ねて大臣にお尋ねをいたします。
  137. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 この法律に規定をしておりますのは難民認定に関するものでございまして、その人の生活を守っていく、健康を守っていくというのは、厚生省関係の諸法令でございますし、労働関係についていろいろお世話することはまた労働省関係の諸法令でございますし、難民を処遇して  いくことを網羅して規定しているわけではない。難民のうちの認定関係の法律だと御理解いただきたいわけでございまして、出入国のことは難民についても当然あわせて規定されているということでございます。  したがいまして、「難民法」と言うには少し面映ゆい感じがするわけでございまして、やはり法の内容を題名によって明確にしますためには「認定法」とさせていただいた方がわかりやすい、こう思っておるわけであります。
  138. 安藤巖

    ○安藤委員 まあ、この議論をあれこれやっておっても時間が、もったいないとは思いませんけれども、制約もありますのでやめますけれども、どうも私はしっくりしないのですね。いつかの機会でもまた一遍議論したいというふうに思っております。  ところで、法案の二条の十二の二ですか、難民調査官、これはこれまでいろいろ議論になってきたのですが、難民調査官を「難民の認定に関する事実の調査を行わせるため法務大臣が指定する」、そして指定の対象入国審査官だという規定があるわけなんですが、これは難民調査官という職名というのか、官名というのか、それがきちっと出てくる、そういう職名として難民調査官を設けられるというふうに理解してよろしいのですか。
  139. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そのとおり御理解くださって結構でございます。
  140. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、入国審査官の中で難民調査官に指定される人が出てくる。入国審査官でありながら、難民調査官の業務も、そして職名を受けてもう一つ追加の辞令をもらう、二つの辞令をもらって兼務ということになるのですか。
  141. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そのとおりでございます。
  142. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、先ほど難民認定の業務についてはそれ相応の体制を整えるんだというふうに答弁をしておられたのですが、たとえば難民認定課、そういうような課を別個に設けられることになるのでしょうか。まず、それをお尋ねします。
  143. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 目下、法務省入国管理局の中に難民認定を取り扱う何らかのセクションを設けたいと思っております。それが果たして課という体制になりますか、あるいはどういう体制になるかわかりませんけれども難民認定の仕事を十分にこなせるだけの体制をつくるということを考えておるわけでございます。
  144. 安藤巖

    ○安藤委員 それはいまいろいろ御検討を願っているということのようですが、人の配置の問題でいろいろ気になる向きもありますのでお尋ねするのですけれども、いま入国管理局に警備課、入国審査課、総務課、資格審査課、審判課、登録課とありますね、大体どの課に入りそうだというところまでは、まだ煮詰まっておりませんか。
  145. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 これはいろいろな行政、財政上の制約とかそういうものもございますので、そっちの方の影響も受けるわけでございますけれども、私どもとしてはいろいろな可能性を現在検討しております。  いま先生が御指摘になりましたいずれの課にも属さない形のこともありましょうし、あるいはそのうちのどれかの中に形の上では含まれるというものもあり得ようかと思います。
  146. 安藤巖

    ○安藤委員 別個に課というのを仮に設けられるとすれば、課長さんが要ることになりますし、そうでなくても、いまおっしゃったようにそういう業務をしっかりこなしていくような体制をとっていくということになれば、それに相応した職制というものも必要になろうかと思いますが、いずれにしても、そういうようなことも考えておられるというふうにお聞きしてよろしいわけですか。
  147. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 職制ということの意味、よくわかりませんでしたけれども、いずれにしましても、法務省入国管理局の中に難民認定を取り扱う何らかの体制、十分の体制をつくりたいと考えておるわけで、そこの体制の中に入ります担当の人々は、こういう難民認定問題を専門にやる、こういうことになろうかと思います。
  148. 安藤巖

    ○安藤委員 条約との関連があるのですが、今度法改正になりますと、いまいろいろお尋ねをしております難民調査官の業務、これはたくさんあって大変なことになるんじゃないかと思うのですけれども、ふっと思うだけでも、各国の人が来るわけですから、その国の状況ども知っておく必要があろうと思いますし、あるいはその国の法令とか国際法、そして言語が達者でないとという気もするのですね。だから、そういうような能力といいますか、資格といいますか、どうしても要請されると思うのですが、そういう人を特別に養成するというようなこともお考えになっておるのですか。
  149. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民調査官は、先生がただいまおっしゃいましたように、確かに相当広い知識、素養が必要でございます。現在の難民問題についての理解、それから難民問題が起きている国についての知識、それから、できればそういう人たちの言葉を知っているということ、そのほかに国際法についての知識、いろんなものがあると思います。  現在、入管の中には相当人材がおりまして、こういうものについて必要な知識を備えている人もいるわけでございます。しかし、それだけで十分とは考えておりません。難民調査官をこれから指名していきましたらば、そういう人につきましては研修制度を活用するなり何なりいたしまして、難民調査の仕事に支障がないようにしたい、こう考えておるところであります。
  150. 安藤巖

    ○安藤委員 条約の中身を見ましても、難民に認定するについてはこういうような条件が必要だ。一番の中身は、第一条のAの(2)ですか、この中に書いてあるようなこと、あえて読みませんけれども、いわゆる「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」を有するかどうか。だから、これはある程度客観的な事実を把握する必要があると思うのです。こういうのももちろん調査しなければならぬと思うのですが、そのほかに、条約の関係だけでもいいですが、一条の何と何の項を調査対象にするのかということを教えていただきたいと思うのです。
  151. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民認定手続におきまして、難民認定の申請を行った外国人が、条約の第一条に掲げてあります難民の定義に当てはまるかどうかということを認定するわけでございます。それに必要な調査を行うのが難民調査官ということになります。手それでは、難民調査官の仕事は何かと申しますと、難民認定に際しまして、難民であるということを証明する挙証責任と申しますか、それはもちろん申請する人にあるわけでございます。その申請する人が行った陳述を客観的に裏づけるというのが難民調査官の仕事であると御理解くださって結構でございます。そのためには、難民認定申請者の陳述が十分でない場合には、調査官は、その友人であるとか、知人であるとか、親戚とか、そういう人たちに当たって、そういう人たちの出頭を求めていろいろ質問をすることもこざいましょう。さらにUNHCR、国連の難民高等弁務官事務所に連絡をとって、そうした人たちの持っているような知識を活用するということもございましょう。また、難民認定申請者の出てきた国々の事情というものをもっと知るためには、外務省を通じて在外公館の協力を得て資料を集める、こういう仕事もあろうかと思います。  いずれにしましても、難民調査官の仕事は難民認定を申請した人の陳述を裏づけるためのいろいろな仕事をする、こうお考えくださって差し支えないと思います。
  152. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうようなことは、これまでいろいろ質疑があって、御答弁をなさっておられるのをお聞きしておりまして大体理解をしておるのですが、いま私がお尋ねしましたのは、たとえば条約の一条Aの(2)の事実と、このほかに一条の「Aの規定に該当する者についてのこの条約の適用は、当該者が次の場合のいずれかに該当する場合には、終止する。」これは消極的な方ですね。こういうような事実も調査官の調査対象になるのかどうか。これは恐らく間違いないのだろうと思うのですが、改正案の六十一条の二の三ですか、この関係では、法務大臣が「取消しに関する処分を行うため必要がある場合には、難民調査官に事実の調査をさせることができる。」とあるから当然だろうと思うのですが、これも入ってくるのか。  それからさらには、これもマイナスの条項ですが、「次のいずれかに該当すると考えられる相当な理由がある者については、適用しない。」F項ですね。こういうようなことも難民調査官の調査対象になってくるのかどうかということです。
  153. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいま先生がおっしゃったとおりでございます。つまり、第一条Aが難民の定義についての積極的な規定でございますが、積極的な規定だけではなくて、消極的な規定の一つがCであり、もう一つがFでございますが、積極的な規定に該当するだけじゃなくて、消極的な規定に該当しないということも調査する必要があるわけでございます。したがって、難民調査官の仕事はそういう広い分野、この定義の定めておる広い範囲に及んでいるとお考えくだすって結構でございます。
  154. 安藤巖

    ○安藤委員 ついでにお尋ねしますけれども、「一時庇護のための上陸の許可」十八条の二ですね。この中身については後でまたお尋ねしますけれども、一項の一号に「その者が難民条約第一条A(2)に規定する理由その他これに準ずる理由により、その生命、身体又は身体の自由を害されるおそれのあった領域から逃れて、本邦に入った者であること。」という、この一時庇護のための上陸を許可するかどうかの事実の調査は、難民調査官の調査対象にはならないのですか。
  155. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 一時庇護上陸制度の場合には、難民調査官ではなくて、入国審査官がこれに当たります。
  156. 安藤巖

    ○安藤委員 とにかく難民調査官、新しくそういう職名を設けられて万全の体制をとっていくというお話ですが、なかなか大変な仕事だなという感じがするのです。  そこで、難民調査官として指定された人は、入国審査官としての仕事はとてもできなくて、もっぱら難民調査官としての仕事に専念をするというふうに先ほどおっしゃったのですが、そういうことではなくて、やはり入国審査官としての仕事もやりながら難民調査官としての仕事もやる、両方やっていくということになるのでしょうか。
  157. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民調査官は入国審査官が兼任するかっこうになります。もちろん、難民調査官としての仕事が手いっぱいである場合には、そっちの方に専念せざるを得ませんけれども、他方、そうでない場合には、入国審査官としての仕事もやるわけでございます。
  158. 安藤巖

    ○安藤委員 それは難民認定申請の数の多い少ないによって違ってくるかとも思うのですよ。あるいは調査対象が質的、量的、地理的な範囲でどれぐらい広いか狭いかということにもよってくると思うのですが、いままでお尋ねして答弁をいただきましたように、なかなか大変なことを調査官はやることになるわけでしょう。それで、職務上の仕事そのもののシステムの上からすれば、入国審査官であって難民調査官に指定されたのだから、両方の仕事をやるのはあたりまえだということになるのかもしれません。しかし、いまお答えいただいたようなことを難民調査官がするんだということになると、とてもじゃないが、入国審査官との仕事を兼務で両方やっていくなんという芸当はできないんじゃないかという気がするのです。まあしかし、それはやってみなければわからないのかもしれませんが……。  ところで、いまどういうことを考えておられるのか。入国審査官の数というのはいま全部で何人ありますか。
  159. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 お答え申し上げます。  現在、入国審査官の数は、全国を通じて六百六十七名でございます。
  160. 安藤巖

    ○安藤委員 その中から、いまお考えになっている段階でもちろん結構ですが、難民調査官に指定をされる数というのは大体どれぐらいを予定しておられますか。
  161. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 実際の仕事の量によって変わり得ると思いますが、一応の目安として考えられますのは、各地方入国管理局に最小限度一名の調査官は必要と思われますし、特に仕事の量が多いと予想されます東京、大阪あたりではまず二人ぐらいは要るのではないかと考えられるわけでございます。そういたしますと、いずれにしましても、とりあえず十数名の入国審査官を難民調査官に指名する必要があるのではないかと予想される次第でございます。
  162. 安藤巖

    ○安藤委員 十数名ね。そうしますと、私が想像していたのとちょっと感じが違うのですが、難民調査官に指定をされた入国審査官の方が実際に目と手と足で調査をされるというようなことにはどうもなりそうもないような気がするのです。難民調査官という仕事ももらった人が入国審査官であって、そして一応事情はお聞きになるかもしれませんけれども、いろいろな調査をするとか実際の調査というのは、当該難民申請をした人が出てきた国まで行くというわけにはとてもまいらぬと思いますが、それを外務省に問い合わせるとかいろいろな連絡とか、そういうようなことは自分がやらないで、ほかの入国管理局の人にやってもらうとか、部下といいますかスタッフを一人の難民調査官につける、そういうようなことも考えておられるのですか。
  163. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 ただいま先生指摘の点は、まさにこれから最終的に詰める過程で、そういう仕組みが必要かどうかということで検討を必要とする問題であろうかと存じます。
  164. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、私がさらに続けて気になるのは、この前もいろいろ議論がありましたけれども日本人の海外旅行者を含めて、日本から出ていく、あるいは日本へ入る出入国者というのが全部で、これは五十四年度でですか、一千万人を超えるという状況にあって、入国審査官の人は、成田でも大阪の方の空港でも、ほかの国際空港になっているところなんかでもきりきり舞いをしている。とてもじゃないが、人をふやしてもらわなくちゃならぬ。ところが、五十六年度で全体として実質的に二人減つちまったというようなことで、これは入国審査官ばかりではないですけれども、もっとふやしてほしいという非常に切実な要望がある。  そこへ十数名、先ほど私がお尋ねをして、ある程度そういうことも考えなくちゃいかぬのかということを検討しておられるということですが、そこに入国審査官の方がスタッフになるのかどうかわかりませんけれども、それだけ人が別に要るわけでしょう。そうなると、入国審査業務というものに支障を来すというようなことがないのだろうかな、こういう心配をいましているんですよ。その辺の手当ての方は大丈夫なんでしょうか。
  165. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民認定手続をやります結果、入国審査の方の仕事に影響があってはならないと思います。そこで、そういう影響を及ぼさないでできるかどうかについて現在検討しておりますが、もし万一、現在の体制で賄えないという場合には、やはり必要な手だてを関係省庁と協議してとるということになろうかと思います。
  166. 安藤巖

    ○安藤委員 それももちろん考えていただかなくちゃいかぬと思うのですが、そこで、この法案の施行は来年の一月一日からだという御答弁が午前中にありました。そしてこの経過措置の附則によりますと、施行から六十日以内に認定申請をすることというふうになっておりますね。そうしますと、普通一月いっぱいあるいは余りぎりぎりという人もなさそうに思いますので、二月にかけて相当な認定申請が出てくると思われるのですが、大体どのくらいの人数の人が認定申請をしてくるだろうというふうにいま予想をしておられますか。
  167. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 当面、難民認定の申請を受ける方々としては三つのカテゴリーがあるんじゃないのかと思います。一つは、いわゆるボートピープルとして現在一時滞在していらっしゃる方々です。現在千四百名近くおられるわけでございます。それからもう一つは、定住のために日本に来ている方々でございます。現在すでに入国していらっしゃる方は六百名を超えているわけでございます。第三番目に、インドシナ三国の旧旅券を持っていて日本に留学していたけれども、政変とか動乱のためにもう帰れなくなって、その結果日本に在留している人、法務大臣の特別在留許可をもらった人が六百数十名おります。こういう方々であろうかと思います。  では、その方々のうちのどのくらいが果たして難民申請をされるかということになりますと、なかなかこれは把握できないという状況でございます。
  168. 安藤巖

    ○安藤委員 認定されるかどうかは別にして、いわゆるボートピープルというふうに言われている人たちも、できれば難民に認定してもらった方がいいというふうにお考えになるのじゃないかと思うのですけれどもね。だから、認定申請としては、いまおっしゃったような数ほとんど全員の人が、難民に認定してほしいという申請が出されるんじゃないかなと思っておるのですね。いま一応考えられる数として局長が挙げられたわけですから、大体これだけの人が六十日の期間内に申請してくるとしますと、ある程度目減りはあるのかもしれませんが、これはえらい仕事になると思うのですよ。  幾日間の間に認定をするかどうか、あるいは却下するかどうかということについては、全然この法には書いてない。できるだけ早くということになろうかと思うのですが、これはやはりいろいろ国際的にも、日本が条約を批准、加入した、にもかかわらず、難民認定申請をしてもちっとも事務がはかどらぬ、いつまでも長蛇の列だというようなことになったら、これは大分国際的な問題になるのじゃないかと思うのです。だから、そういう体制が必要だと思うのです。来年の一月一日からこの法施行と同時に、いまおっしゃったような、とにかく難民調査官という人はきちっと配置しなければならぬと思うのですが、そして入国審査官の業務は差し支えないようにしなければならぬと思うのですが、そういうような体制はとり得るということは断言できますか。
  169. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたボートピープルでございますけれども、ボートピープルは、ほとんどすべての人が、実は日本にずっといようということではなくて、第三国に移りたい、第三国に出ていきたいという方々でございます。ところで、日本難民の認定を受けますと、その第三国が、すでにその人々は日本難民としての保護を受けているということで、入国を拒まれる場合がございます。したがって、そういう事情もあって、ボートピープルの人々のうち果たしてどのくらいが難民認定の申請をするか、わからない面があるわけでございます。いずれにしましても、来年一月一日施行後そういういろいろな人たちが申請に来るだろうと思いますが、現在そういうことも十分検討いたしまして、その際遺漏のないような体制を整えるべく、準備しているところでございます。
  170. 安藤巖

    ○安藤委員 それは、私の見通しが誤っておるか、局長の見通しが誤っているか、どちらかということはそのときになってくればわかるわけですが、ボートピープルの人が日本に定住を望まなくて、主としてアメリカとかそちらを希望しておられるということは、日本難民条約批准をまだしていない段階、そして批准をすればこうなってこうなって内国民待遇も与えられる、こうなるということになると、考え方が変わってくる人も相当出てくるのじゃないかと思うのですよ。だから、ボートピープルでいま日本に在留している人のほとんどは認定申請をしないだろうというのは、どうもちょっと甘いんじゃないかという気がするのですね。だから、相当数の人が認定申請をするんじゃないかというふうに構える必要があるんじゃないかと思うのですよ。  そこで、万遺漏なきを期するために万全の体制を整えるんだというふうに言っておられるんですが、先ほどちょっとお話ししました労働組合のいろいろな入国管理局の法務専門職の方の話によりますと、一月一日にこの法が施行になっても、組織替えは行わないで現在の体制でやっていくんだということを言っておられるそうですが、それはどうなんですか。そうなったら、これは万全の体制とは言えないと思うのです。
  171. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 お答え申し上げます。  恐らく、その説明は、一つの可能性ということで組合の方に御説明したんだと思いますが、その点につきましては、説明のときの状況、私の方からも後ほどチェックいたしまして、いずれ私も、組合の方に、その点を含みましていろいろな問題についてお目にかかることになっておりますので、その際、詳しく状況とそれから私どもが考えておることを御説明したいと思っております。
  172. 安藤巖

    ○安藤委員 そのときの話では、いろいろ説明を今後されるそうですが、とにかく年度変わりは四月一日ですから、五十六年度の予算ではそういうような特別に人をふやすとかいうことは当然組まれていないということで、四月一日からだけれども、七月の第二臨調がある、行政改革の声がかまびすしいというようなことでもって、どうも私の聞いた感じでは、恐る恐る、第二臨調の結果を見てから、こういう人員の配置等についても申し出ようというようなことを考えておられるみたいな印象を受けたんですけれども、そういうようなことでもないんですか。
  173. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 うまくいかなければそういう可能性があり得ると思いますが、その辺まだ突っ込んだ関係官庁との話もしておりませんので、いろいろな可能性を頭に置きながら対処したいと思っております。
  174. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで大臣、いまいろいろお尋ねしておるんですけれども、条約を批准してこの改正案がいよいよ法律になって、来年の一月一日から施行ということになって一難民認定申請が相当数一時的に、六十日間と限ってありますから殺到するんじゃないかと思うのですね。そのための体制は十分かということをいまお尋ねをして、十分にやるんだという答弁はいただいているんですけれども、本当にできるのかどうかということになると、私、気になってしようがないのですよ。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕 だからその点で、この難民調査官、いま十数名というふうにおっしゃったんですけれども、これは別枠でふやすということを考える。そういうことを考えないと、入国審査官から簡単に言えば引っこ抜くわけですから、そちらの難民調査の仕事をするために。そうするとそれだけ手薄になるわけです。入国審査の仕事もきりきり舞いしているということで、そちらの方へも影響が出てくるのではないかという心配です。  きちっと難民条約に加盟をして、おっしゃるように難民認定をして、そしてしかるべき処遇をちゃんと与えるというようなことをきちっと日本がやっていくためには、そういう受け入れ体制をきちっと整えなくちゃいかぬと思うのですが、そういう点についてまた国際的なあれこれ、何もなりはせぬじゃないか、事務が完全に停滞している、結局口ばかりじゃないかというような国際的な批判あるいは非難を受けるようなことがあってはならぬと思うのですね。だからそういう点で、法務大臣にも、人の配置の問題について、人員枠の拡大の問題について、がんばっていただく必要があるんではないかと思うのですが、いかがでございましょう。
  175. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 安藤さんの御注意に留意しながら、時勢の進展に応じて遺漏のないように努力をしてまいります。
  176. 安藤巖

    ○安藤委員 努力をお願い申します。  そこで、これは先ほどもちょっと話が出ておりましたが、窓口は結局、難民調査官を各局に一人ずつ、忙しそうなところは二人ということをおっしゃったですね。すると、いまある各局がそれぞれ窓口になる、本庁も窓口になる、こういうような仕組みになりますか。
  177. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そのように御理解くだすって結構でございます。
  178. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、ちょっと細かいことをお尋ねするのですが、法務省の中では、たとえば人権擁護関係の保護観察官の人には人事院規則による給与の調整額が八%ついているという話ですが、入国審査官にはついていないようです。労働組合の方からも、入国審査官の仕事の関係でこの調整額をつけてほしいという要求が大分以前から出されていることは御承知のとおりですが、それについて前向きに検討をしていただくということにならないのか。これが一つと、今度難民調査官に入国審査官から指定される人ですね、先ほどからお尋ねし、答弁をいただいておるようになかなか大変な仕事をするわけですが、そういうことを考えていただけるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  179. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 お答えいたします。  まず、入国審査官一般につきまして俸給調整額の対象にできないかという問題でございます。この問題は、私どももかねてから承知しております。今後とも宿題として考えていきたいと思っております。  それから、もう一つ指摘のございました難民調査官の問題でございます。入国審査官の場合にも同じことがあるわけでございますが、先生指摘のとおり、俸給の調整額の対象というのは、一般職の職員の給与に関する法律で人事院が定めることになっているわけでございます。いずれにしましても、いろいろ仕事が大変なことは先生の御指摘のとおりでございますが、こういう難民調査官に任命される入国審査官について給与の調整額の支給対象官職というふうにできるかどうかということにつきましては、さらに、関係当局と協議いたしまして今後検討していきたいと考えておる次第でございます。  御参考までに申し上げますと、御承知かもしれませんが、現在入国管理局関係では、入国収容所の医師、看護婦、薬剤師、栄養士がその対象になっております。
  180. 安藤巖

    ○安藤委員 検討をいたしますということは、悪く言うと何にもやらないということなのだという悪口を聞いてもおりますので、そういうことではなくて、前向きに善処をするという方向で御検討いただきたいということを要望しておきます。  何か前向きにという答弁をいただけるなら、答弁してください。
  181. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 何分にも私どもだけで決められることではございません。先生の御発言、よく念頭に置いて対処したいと思っております。
  182. 安藤巖

    ○安藤委員 次に、先ほどもちょっとお尋ねしたのですが、「一時庇護のための上陸の許可」の関係についてお尋ねをいたします。  この十八条の二の一号「その者が難民条約第一条A(2)に規定する理由」、これはいいのですが、「その他これに準ずる理由により、その生命、身体」云々というふうにあるのですが、こういうような「これに準ずる」というような条項がほかの外国国内法にもうたわれている事例があるのでしょうか。
  183. 山本達雄

    ○山本説明員 そういう事例は承知いたしておりません。
  184. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、日本が八十一番目か何番目かということですが、日本で初めてこの条約よりも広い概念がここに入ってきているわけですね。これを入れられた理由はどういうことになりますか。
  185. 山本達雄

    ○山本説明員 まず、この一時庇護のための上陸許可という制度は、世界どこの国にも例のない規定でございます。これは一時的ではございますが、領土的庇護を認める規定でございまして、こういう例はないかと思います。  なお、ここで「準ずる理由」というものを入れましたのは、この許可の対象になります者は、そもそも難民に該当する可能性がある、難民かもしれない、そういう蓋然性をもとにしまして入れるわけでございます。したがいまして、この難民条約に定める理由だけにそれを限定いたしますならば、運用において非常に困難な場面に遭遇する。物事を確定的に限定できない、そういう状況のもとにおいて難民かもしれない者にこの許可を与えることとしていこうとするものでありますので、こういうことにせざるを得なかったということであります。
  186. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもようわからぬのですが、そうしますと、「条約第一条A(2)に規定する理由」というのはまあいいのですが、「これに準ずる理由」というのは、具体的にたとえばどういうようなことを考えて、こういう「準ずる理由」というふうに条約よりも広いものをここにお入れになったのかということを、端的にお答えいただきたいと思うのです。
  187. 山本達雄

    ○山本説明員 条約に定めておりますのは、「人種宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがある」ということになるわけでございますが、たとえば本人の主張によりますと、性別あるいは年齢あるいは出生、門地、そういうものでどうも迫害を受けておるような主張をする、しかし、それはどうも余りよくわからない、よく調べてみると、それは「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見」、要するに難民条約に該当する事由であるかもしれない、よく調べてみないとわからないということがあるわけでございますね。それで幅を持たせておるわけでございます。
  188. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、こういうことですか。難民だというふうに認定するほどのはっきりした主張あるいはそれを裏づける証拠はないけれども、どうもそれらしい、はっきりしたものはないけれどもそれらしい、どうもけ飛ばすわけにはまいらぬだろうな、これからよく調べてみなければというような人も一時庇護のために上陸を許可しよう、こういうようなことだ、こういうふうに理解していいわけですか。
  189. 山本達雄

    ○山本説明員 そういうことでございます。
  190. 安藤巖

    ○安藤委員 何かぼくが答弁しているみたいなあれですけれども、そこで、先ほどお尋ねしましたら、十八条の二のそういうようなことは難民調査官の仕事じゃない、これは入国審査官がやるんだというふうにおっしゃったんですが、そういうことははっきりした証拠がなくてもいいんだからというようなことで、そういうようになるのかな。やはり難民調査官が一枚かんで、何か意見を言わなくちゃおかしいんじゃないかなという気がするのですが、これは入国審査官でその辺のところを全部判断してしまうということになるんですね。
  191. 山本達雄

    ○山本説明員 そういうことでございます。これはもともと上陸に関する事項でございます。それは入国審査官の本来の仕事でございます。  なお、難民かもしれないということにはなっておりますが、そのことについてよく調べるということではございません。たとえば、ボートピープルを船に乗せたまま何日もかけて、これを難民かどうかということを調べていくということは非常に現実的でない、本人にも苦痛を与えるし、また船会社にも大変御迷惑をかける。とにかく人道的な配慮から上陸を許可するという扱いになるわけでございまして、そのように考えますならば、これはどう見ましても難民調査官の仕事ではなくて、入国審査官の仕事だということになるわけでございます。
  192. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうことでおやりになるということですから、一遍やっていただいて、どうも調子が悪いということだったらまたお考えいただくことにもなるんじゃないかというふうに思います。  次に、二号の方ですね。「その者を一時的に上陸させることが相当であること。」とあるのですが、この一号、二号の前文によりますと、「次の各号に該当すると思料するときは、」というのがあるのですが、この一号に該当するだけでは一時庇護のための上陸の許可をするわけにはまいらぬ、一号と二号と二つ条件がそろわなかったら一時庇護のための上陸を許可するわけにはまいらぬ、これはこういうような趣旨ですか。
  193. 山本達雄

    ○山本説明員 そのとおりでございます。一号、二号、二つの条件を満たさなければいけないということでございます。
  194. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、一号の条件が満たされておって、そしてなおかつその者を上陸させることが不相当であるという場合、そういう判断をした場合は一時庇護の上陸をさせないということになるわけなんですね。そうすると、不相当であるというようなことが配慮として出てくるわけなんですが、これはどういうような場合にそういうことが不相当だというふうに考えるわけですか。
  195. 山本達雄

    ○山本説明員 理屈っぽいようでございますが、別に不相当と考える必要はないわけでございます。相当か不相当かと二者択一では物事はないと思うわけでございます。ただ、いま理屈を申し上げても仕方ございませんので、具体的にどういう場合が想定されるかと申しますと、どこかの国の船に拾われてきた、しかし、すでにその国が受け入れることを約束しておる、あるいは第三国にそのまま行ける、こういうような場合が一番はっきりわかる事例かと思います。なお、その船で引き続き船員として使ってもらえるというような場合もそれは考えられるのかもしれません。いずれにしましても、人道的な配慮から見ましたならば、これはわが国でとりあえず上陸を許してやらないわけにはいかない、やるべきであるというようなケースを、上陸させることが相当と認められる場合というふうに考えております。
  196. 安藤巖

    ○安藤委員 この規定を見ておりますと、人道的というふうにおっしゃるその趣旨はよくわかるのですが、そのほかにいろいろな対外関係も含めて政治的な配慮でもって、人道的ばかりではなくて、もう一つのそういう要素を入れて上陸を許可するかどうかということにも使えるというような配慮があって、これは日本で初めて、外国にはないこういうような条項が入れられたんじゃないのかなという気もするのですが、そのことは心配しなくてもいいわけですか。
  197. 山本達雄

    ○山本説明員 申すまでもなく、入管行政に係る処分は、すべてわが国の利益とそれから人道的な配慮、そういうふうなものを考慮いたしまして行う自由裁量行為でございますので、そういう配慮が、これは一時庇護のための上陸許可に限らず、すべての裁量処分にある、共通しておるということは言えるわけでございます。
  198. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、人道的なことだということですが、それ以外にいろいろ裁量を働かして、そして一時庇護のための上陸を許可する場合もあるんだというふうにお聞きをしておいて間違いないと思いますので、あえてさらに質問はいたしません。  それから、やはり十八条の二の三項でちょっと気になるのですが、一番最後のところで「必要があると認めるときは、指紋を押なつさせることができる。」というふうにあるのですが、この趣旨。それから、指紋というものになれていない人たちも多いんじゃないかと思うのです。そういう場合に拒否をするというようなときは、上陸の許可を認めないということになるんでしょうか。
  199. 山本達雄

    ○山本説明員 一時庇護の許可の対象となるような人の多くは、旅券、身分証明書その他本人を特定する文書を持っていないのが普通でございます。そういう場合には、本人を特定する、少なくとも一時庇護の許可を与えた以後本人を特定する手段としては、まずこの指紋しかないということであるわけでございます。  お尋ねの、本人が拒否したらどうするのかということでございますが、これは本人の御希望によってわが国に上陸を許可して差し上げましょうということでございますので、わが国の定めた法律に従っていただくように、ひとつ御理解いただく以外にはないんであろうと考えております。
  200. 安藤巖

    ○安藤委員 次に六十一条の二、いわゆる難民の認定のところですが、この第一項、先ほどもちょっと質問があったのですが、その提出した資料に基づいて難民であるかどうかを認定するんだということですが、そうしますと、これを文字どおりに読めば、私が難民であるということを主張して、そしてその主張を裏づける資料、証拠、これを一〇〇%本人が出さなければならない、いわゆる挙証責任が全部一〇〇%申請者にあるのかどうか。これはあるんじゃないかという気がするので、こうなるとなかなか至難のわざだなという気がするのですが、その辺はどうなんでしょうか。
  201. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 挙証責任は、その便益を得ようとする人が持つべきでございますので、認定手続の場合にも、申請人に挙証責任があるというふうに考えております。
  202. 安藤巖

    ○安藤委員 挙証責任がある。そうすると、難民調査官がいろいろ面接をしたりして事情をお聞きになると思うのですが、あなたの言っていることはどうも信用できぬという判断を調査官がしたら――これは証拠を採用するかどうかの問題ですから、判断事項に入るのです。この前連合審査のときに局長は、だれが認定をやろうと認定をするかどうかは同じだみたいな話があって、わが党の野間議員がいろいろ質問しておりましたが、ここに判断事項が入ってくるんじゃないかと思うのです。そうなると、調査官の判断によって、まだこれは五〇%、あるいは六〇%、あるいは七〇%しかあなたはどうも信用がとれぬということになったら、これは却下する、認定しないということになる可能性があると思うのですが、どこか不足のところを難民調査官が先ほどいろいろお尋ねしたような業務の内容に対応する仕事として、問い合わせをするなり何なりして、調査官の方が積極的にその足らざるところを調査することによって補うというようなこともできるんでしょうか。
  203. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民申請した人は必ずしも常に十分自分たちの主張を証明できるとは限りません。彼らはいろいろと資料も不足でしょうし、なかなか証明はむずかしい場合もあろうと思います。その場合に直ちに、それではあなたは難民ではないというのはやや酷ではないかと思います。したがって、そういうときには、難民申請をした人の陳述の裏づけをとる措置が必要でございます。これを難民調査官がやるわけでございます。つまり、難民認定を申請した人の言っていることがどうもはっきりしない、しかし、これを客観的に証明するための資料をもっと手に入れる必要があるんじゃないか。  その場合には、先ほど申し上げましたように、たとえばこの申請した人の知人だとかそれから親戚で日本に滞在している人、こういう人に来てもらっていろいろと情報を提供してもらうこともございましょうし、それから国連の難民高等弁務官事務所、これはインドシナ半島の事情には非常に詳しいわけでございますから、そういうところに問い合わせて資料を手に入れたり、さらにどうしても必要である場合には、外務省に依頼して在外公館を通じて現地のいろいろな情報を手に入れる。もちろんそのほかに、調査官は一般に利用できる新聞、雑誌その他そういうマスコミによって伝えられている情報は常に手に入れているわけでありますが、そういうものでも足りないという場合にはいま申し上げましたような難民の陳述を、これは補うと申しますか裏づけると申しますか、そういう活動をするわけでございます。
  204. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が参りましたのでこれで質問を終わりますけれども、この前、いわゆるインドシナ難民難民条約難民として認定されるかどうかということは非常に疑問があると思いますし、たとえば、ボートピープルが難民認定の申請をするかどうかということすらも疑問であるというお話もありました。が、いわゆるインドシナ難民の問題について何かベトナムに責任があるかのごときいろいろなお話がありましたけれども、この発端はやはりベトナムに対するアメリカの侵略戦争が一番のもとだということですね。それから、中国の方から華僑を通じていろいろなそそのかし行為もあったというようなことも言われております。その辺のところも一つ大きな原因であるということを最後に申し上げて、これは御答弁していただかなくても結構ですが、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  205. 高鳥修

    高鳥委員長 林百郎君。
  206. 林百郎

    ○林(百)委員 まず、大臣にお聞きしますが、資料で見ますと、発達した資本主義国でこの難民地位に関する条約を締結したのは八十一番目になっているわけなんですね。議定書ですと七十九番目ですか。それはアジアでは最初だといいましても、フランスにしても、それからアメリカにしましても、スイスにしても、ユーゴにしても、締結しているのですね。いまに至ってこういう条約を締結するに至った理由はどういうことなんでしょうか。私としては、日本の国としては非常に遅きに失していると思えるのですが、政治的にはどういうようにお考えですか。――いや、大臣に聞いているのです。
  207. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 連合審査会の際に、外務当局からは、保留条項なしに批准をする、それに意味があると申し、そのためにもおくれてきた、今回何の保留もなしに批准できる、国内法の体制も整えたということを言っておられました。私自身、インドシナ難民定住受け入れを政府側に主張してきた人間でございまして、そのときの話としては、日本は同一民族なものだから、そこへ異民族が入ってきても異民族自身が困るのじゃありませんかというお話がありましたし、あるいはアジアに大量に難民が発生した場合にどうするんですかというような式の意見もあったりしたわけでございまして、あれやこれやでおくれてきたと思うわけでございますけれども、批准したからにはそれなりにりっぱに責任を果たしていかなければならない、こう考えているわけでございます。そういう意味の潔癖な国民であるということも言えるかもしれないと思います。  一応これで体制は整えることができたのではないか、おくれたとはいいながら、それなりに責任を果たせるのではないかな、かように考えているわけでございます。
  208. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣、私の見解を申し上げますと、やはり徳川幕府の三百年に近い鎖国政策をとっていた、それから開放されてまだ百年ということで、非常に鎖国的な考え方日本人の中にあるのではないかということが一つですね。  それから、あなたの言う意味で、いい意味で言えば、日本は島国に住んでおりますから純血と言えば純血ですけれども、また、マイナスの側面からいいますと、ただ日本人だけかたまってしまって、よその者が入ってくることは何か異分子が入ってくるような感じがする。たとえばわれわれ外国に行きましても、日本人だけまとまっていろいろと話し合っている、そこの国の人たちと溶け合って本当に胸襟を開くというようなことをしないで、ぱちぱち写真ばかり撮っている、こういうこともあります。こういうようなことも影響しているのではないか。しかし、もう日本の国は飛行機で数時間でどこの国へでも行けるようになっているわけなんですから、あなたの言う島国としての純粋性というのも、われわれとしてはそれが閉鎖的な意味になってはいかぬと思うのですよね。外国にどんどん門戸を開くし、また、外国の長い間試された基本的人権を守る条約等はどんどん取り入れていかなければならないと思うのです。そのことが一つです。  それから、もう一つ非常に重要だと思いますのは、難民の条約を締結すれば、いままでとっていた朝鮮半島の人たちに対する韓国民と朝鮮民主主義人民共和国の人たちとの間の差別はいろいろの点であると思うのですが、それを是正していかなければならない。それは朝鮮半島の人たちに対する日本の入管の法体系を相当程度手直ししていかなければならない。今度はある程度は手直ししているわけですが、そういうことがあって難民条約の締結がおくれていたという要因はありませんか。
  209. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 そのためにおくれていたかどうかは別といたしまして、外務大臣に対しまして、朝鮮半島出身、台湾出身者の処遇をどうするかということを先に決めるべきだと私自身が申したこともございました。今回、同時に解決できるようになったわけでございますが、それが原因であるかどうかは知りませんけれども、私自身そういう話をしたことがございました。
  210. 林百郎

    ○林(百)委員 これからいろいろ聞いていきたいと思うのですけれども日本が韓国とは外交関係を持って、歴然として事実上存在している朝鮮民主主義人民共和国と外交関係を持たないということについては、これはあなた一人で決めるわけにはいきませんから、内閣の政策になると思いますが、考えてみなければいかぬと思うのですね。  私も朝鮮民主主義人民共和国へ行きましたけれども、たとえば鉄道にしても、日本の植民地になって、南の端から北の端までずっと鉄道がありますね。それが三十八度線へ行くと、北の方は駅の名前が書いてあるが南の方の駅の名前はブランクになっているという妙な不自然な形になっているのですね。そして治安の関係から申しましても、いまの韓国の状態とは比べものにならないほど安定していると私は思うのですよ。百貨店などへ行きましても物資は非常に豊富ですし、日本の植民地のころは朝鮮の山は赤山だ、はげ山だと言われましたが、もう至れり尽くせりの植林がなされています。それから、農業も非常に生産性を上げておりますし、旧植民地時代の農民の家屋は全部建て直しておるわけですね。そして非常に行き届いた教育をしているわけですね。  こういうところを見ると、韓国のようにいつも政治的に不安定で、軍事クーデターが起きたり大統領が射殺されたりする国とは日本は外交関係を結び、そしてそういう国の国籍を持つ朝鮮半島の朝鮮人には特別な待遇を与えている。安定した朝鮮民主主義人民共和国の人たちに対しては入管が差別的な扱いをしている。こういうことはもう最近の世界情勢からいったら手直しをすべきではないかというように思うわけです。これは法務大臣一人に聞きましても、内閣で決めることですし、いろいろのいきさつもあると思いますが、ここで大臣に聞けることは、そういう事実上存在している朝鮮民主主義人民共和国を、入管の諸君に聞けば韓国国籍が全朝鮮半島の国籍になるのだ、韓国が朝鮮半島全体の支配権を持っているのだというような、まるで事実と離れたようなことを言っておるわけなのですね。そういう点は手直しをしていくべきではないか。  ここに日本の国の高級官僚がいますが、この中で朝鮮民主主義人民共和国へ行った人があったら、ひとつここで行ってきた経験を話してもらいたいと思うのです。だれも行ってないのじゃないですか。自分が行ってないでおいて、その国とは国交は結びませんなんて、どうして言えるのですか。行っている人があったら手を挙げてください。ありますか。――だれもないでしょう。その人たちが入管令を行政的に措置しているのですから、これは公正な入管行政が行われてないのはあたりまえだと思うのですよ。  そういう意味で、大臣、私は率直に言って、入管行政というのは非常に暗いのですよ。じめじめして暗くて、事実上は三十万近くいる朝鮮民主主義人民共和国の人たちを、半ば公安の被疑者視して扱っている。だんだん直ってはきましたけれども、かつてなんか非常にひどい扱いをしているのですよ。われわれが朝鮮民主主義人民共和国の人たちの在日の資格の問題とかあるいは祖国へ帰る問題あるいは祖国から人を迎える問題などで行けば、入管の官僚の人たちは私たちまで敵視しているのですから、そういう入管行政はいまの時代には合わぬと思うのですよ。  だから、その暗さ、そしてそういう差別、それが世界的に試された基本的人権を擁護する条約である難民条約をいままでおくらしていた。これをやればそういう北と南の差別をなくさなければいけない、それがおくれた一つの原因ではないかと思うのですが、そういうことについて大臣と、ここにおいでになる入管の最高責任者になる大鷹さん、私は、日本の国の入管行政の姿勢をここで根本的に直さなければならないと思うのですよ。いままでみたいにあんな暗い、朝鮮民主主義人民共和国のことを言っていけば国会議員にまで敵視する態度をとるような入管行政は、もういまの時代には合わぬと思うのですよ。  たとえば強制送還の問題についても、後で聞きますけれども、一年以上の懲役または禁錮をうたっているでしょう。しかし、朝鮮民主主義人民共和国の人たちにすれば、日本の法律を犯したことに対する日本の社会に対する贖罪は、懲役なり禁錮なりを勤めることによって果たしていると言うのですよ。それを、さらにそれを理由にして、生活の根拠のある日本を追い払われて、全然言葉も通じない、親戚もあるかどうかわからない、むしろ死刑にも等しいような強制退去の理由になるというのはどういうことなんだろうということを、朝鮮民主主義人民共和国の人たちは思っているのですよ。  こういうことをおわかりかどうか知りませんけれども、そういう問題について、法務大臣は内閣の閣僚の一人として、アジアにおける日本の国の将来の国際的な関係を広げていき、安定させ、平和を維持するという意味で、朝鮮民主主義人民共和国に対する従来の考え方を考え直すべき時期が来ているように思うわけです。法務大臣一人でこうします、ああしますということは言えないことは私よくわかっていますけれども、もうそういう時期が来ているのではないかと思うのですよ。  それから大鷹さんには、そういういままで持っていた日本の国の入管行政の暗さ、人を見れば犯罪人と見るような目つきで見るという、いまはどうか知りませんけれども、そういうあり方は直して、もっと明るい、入管こそがいろいろな事情日本の国へ来た人たちの基本的人権を守る拠点だという意識を皆さんに持っていただかなければ、入管行政に対する国民や外国人の暗い感じというものは払拭されないと思うのですが、その二つの点をまずお聞きしておきたいと思うのです。
  211. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 日本は韓国とは国交を持っておりますけれども、朝鮮民主主義人民共和国とは国交を持っていない、これは私は不幸なことだと思います。しかし、朝鮮半島におきまして、両方ともが朝鮮は一つだ、こう言っているところに問題があるように思うのでございまして、日本側よりも、私は外国の方に問題があるのではないかな、こう思っております。  中国は一つだということで、当初中華民国と国交を持っておったのを、大陸の中華人民共和国と国交の相手方を変えたりもしたわけでございました。西ドイツと東ドイツにつきましては、資本主義国と共産主義国と違いますけれども、双方ともに国交を持っているわけでございます。  私、きのう東ドイツの外務大臣と話しまして、どういう行き方がいいのかと言いましたら、それぞれがそれぞれに国際社会と国交を持っていくことがいいと思っている、なぜそんな質問をするのかと言うものでございますから、私は、アジアのこの朝鮮と中国の話をしたわけでございました。  また、韓国についていろいろ御批判がございました。いろいろな批判もできるだろうと思います。同様にまた、日本人から言いますと、朝鮮民主主義人民共和国についても希望がいろいろあろうと思います。日本人妻の往来を自由にしてくれということも一つの問題だろうと思いますし、あるいは朝鮮大学、朝鮮民主主義人民共和国の送金によって運営されているわけでございますけれども、なぜオープンにしないのか、政府側にあの学校に入っていってその教育内容を自由に見せないのか、こんな感じもするわけでございまして、やはりお互いに言いたいことを自由に言い合いながら、交流を深めていくということがアジアの安定のために非常に大切じゃないかな、こう私は思います。  入管行政の上におきましていずれの国であるかによってその処遇を異にしてはならない、これは林さんのおっしゃるとおりだと思うのでございまして、これまでもそうではなかったと思うのでございますが、これからもそういうことのないように、私としては一層努力していきたいと思います。
  212. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 入管が非常にじめじめして暗いとか、あるいは北鮮の人を敵視しているということでございましたけれども、私、この入管局長に就任してからそういう批判をちょうだいしたのは初めてでございます。私どもの職員は、もちろん入管令を公正に実施する責任を持っております。その場合に、たとえば退去強制であれ上陸拒否であれ、その相手になった人たちから見たら非常におもしろくなくてそういう感じを持ったかもしれませんが、職員は公正に法令を実行しているはずでございます。  それから、入管令の実施でございますが、これは規制的な面だけではなくて、行政サービス的な面もございます。これはたとえば在留期間の更新であるとか、再入国許可の発給であるとか、永住許可の手続であるとか、いろいろございます。入管職員としましては、この行政サービスということもあるので、十分公正に当事者に、相手の人に対すべきであるということは、日ごろから私どもは徹底さしております。たとえばいろいろ定期的に会合を開く場合にもそのことは言っておりますし、それから研修その他そういう催しのたびごとにそういうことは徹底しておりますので、御心配のことはないと思います。いずれにしましても、こういう教育は、私どもとしては日ごろからいつも心がけていきたいと考えております。
  213. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣の、いろいろの事情はあるけれどもこれから交流を深めていくということについては、ぜひそういうふうに深めていただきたいと思います。それから、大鷹さんのそういう理想をもって入管行政をやっていくということについては、私たちも将来これを監視していきたいと思うのです。  たとえば難民条約を締結するというのに、政治的に一種の亡命の意味を持っているような金大中氏が、白昼公然と韓国の暴力をもって日本の主権を侵して韓国へ連れていかれる、そして本当なら海の中へ船から、飛行機から落として殺そうと思っていたというようなこともマスコミは伝えておりますが、いまは無期懲役で入っているというわけですね。日本と国交を回復している韓国の方がむしろそういう乱暴なことをして日本の主権を侵している。しかし、朝鮮民主主義人民共和国でそのようなことをしたことはないわけなんですから、学校がオープンでないというような意見もありますけれども、これも将来は改善していくことだと思います。そういう意味で、やはり朝鮮民主主義人民共和国に対する、これは日本に一番近い外国で、しかもいま日本の国とは中国ですら――中国ですらというのはあれですけれども、中国が友好関係を持っているし、東ドイツも友好関係を持っていますし、そういうときにいまもって朝鮮民主主義人民共和国に対する従来の考え方を維持していくということは、ぜひ考え直してもらいたいと思うわけです。  そこで、これは事務的なことになりますから大鷹さんに聞きますが、難民条約が締結をされた場合に、なおそれでも朝鮮民主主義人民共和国に与えられている権利と難民に与えられている権利との間に違いがありませんか。  具体的に言えと言えば私の方で言いますけれども、たとえば外国への旅行の証明書、一方では難民の方は一年と書いてありますね。在日朝鮮人人たちの方は一年以内ですね。一方は一年は大丈夫、一方は一年以内です。それから強制送還につきましても、政治的な圧迫を受けるというような国へ強制送還してはならない、こう書いてありますけれども在日朝鮮人人たちには、かつては、韓国籍を持て、そうすれば無事に戻してやるからというような勧誘が入管行政として行われたことを私、知っておりますけれども、この強制送還の問題にしましても、そういうようなむしろ難民の方が、従来日本にい、そして日本人の中に溶け込んでおる朝鮮民主主義人民共和国の人たちよりも有利な条件、あるいは朝鮮民主主義人民共和国の人たちから言わせればむしろ不利な条件、そういう行政措置はありませんか。
  214. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 私どもとしては、難民が与えられる待遇と、それから長期在留している外国人、朝鮮半島出身者の方との間に大きなギャップはないと考えております。例を挙げて御説明したいと思います。  まず、在留期間でございますけれども難民と認定された場合には原則として一年間の在留期間を付した一六-三という資格が与えられます。他方、日韓法的地位の協定に基づいて永住権を持たれた方はもちろん永住でございますし、それから法一二六-二-六該当者も事実上の永住、あるいは今度特例永住によって永住の道が開かれているというわけでございます。難民につきましては、永住許可要件は独立生計能力が落とされているだけで、在留期間に関しましては難民の方が待遇がすぐれているということは言えないだろうと思います。  それから、強制退去でございますけれども難民につきましては一年を超える刑を受けた場合には退去強制になりますし、一般外国人と同じでございます。協定永住者の場合には、特別法で七年を超える刑以上の場合に限って退去強制になりますし、それから法一二六-二-六該当者の場合には、一年を超える刑ということになっております。しかし、難民の場合には、今度の改正法案によりまして、法務大臣の特別在留許可の特例事項の対象になります。それから、協定永住者の場合もそういう配慮を加えられておりますし、それから御承知のとおり、法一二六-二-六該当者についても同様でございます。  再入国の手続につきましては、先ほど先生難民の場合には一年であるけれども、朝鮮半島出身者の場合には一年以内とおっしゃいましたけれども、在留期間が一年ある場合には一年を与えております。のみならず、再入国許可について申し上げますと、難民の場合にはこれの延長は六カ月だけに限られておりますけれども、今度法改正によりまして、長期在留外国人につきましては一年に加えてもう一年、合わせて二年ということになりまして、その意味では難民よりも有利になっているわけでございます。
  215. 林百郎

    ○林(百)委員 難民の方は旅券を持ってきている難民があるわけですね。これは後でいろいろ聞きますけれども、それはいずれの国へ行っても旅行の許可を得て、それからもし再入国の期間延長の許可を得ようと思えば、その国の外交関係のところへ行って再入国の手続ができますが、在日朝鮮人の皆さんは、日本と外交関係がありませんから、旅券は給付されてませんね。これは御承知のとおり在日朝鮮人の証明書ですか、証明書を持っているわけですね。たとえば外国へ行って親が危篤だ、一年ともう一カ月いなければ親の死に目を見送ることができないという場合に、いままでは北京へ行くかハバロフスクの日本の領事館へ行ってその手続をしましたね。ところが、難民の方は旅券を持っている。外交関係がありますから、そこで日本の外交官の延長の証明が取れるわけです。  そこでお聞きしますが、これも行政措置として改善していくつもりだということでたしか答弁されていると思いますが、再入国の期間の延長の手続については、わざわざ北京やハバロフスクへ行かなくても、日本で代理人によって日本の入管へ申請して延長することができる、そういう行政措置を考えているというような答弁があったと言う人もあるのです。私は聞いておりませんので、そのことはどうなっていますか。
  216. 山本達雄

    ○山本説明員 再入国の期間の延長を許可する権限を有しておりますのは法務大臣でございますので、日本の入管当局に直接機関延長の申請をしていただいて悪いということはないわけでございます。ただ、期間延長はやむを得ない事由がある場合に許可することになっておりますので、そのやむを得ない事由を遠い国からどうして疎明するかというその疎明上の問題があろうかと思われます。やはり一番いいのは、最寄りの在外公館でその手続をとっていただくことであろうと考えております。
  217. 林百郎

    ○林(百)委員 そうですか。そうすると、依然としてたとえば北京だとかあるいはハバロフスクとか、そういうところへ行くのが一番確実で可能性のある道だ。そうすると、疎明の方法はあなたのおっしゃるようにあると思いますけれども、疎明の方法が立てば日本で申請してもいいわけなんですか、申請して許可がおりますか。
  218. 山本達雄

    ○山本説明員 最初に申し上げましたとおり、日本に直接していただいて一向差し支えないわけでございます。
  219. 林百郎

    ○林(百)委員 そこでお尋ねしますが、難民の中にはレフュジー、いわゆる旅券を持っている正式な難民というのとボートピープル、それからディスプレースドパーソンあるいはランドピープル、いろいろありますね。まだ条約が発効しませんから、どういうことになるかわかりませんけれども、しかし、これは考えてみますと、たとえばベトナムの場合、いまは南北ベトナムは統一されまして、そして一つのベトナム社会主義共和国ができて治安も維持されている。それにもかかわらず、この条約に言う政治的な不安だとか迫害を受けるおそれがあるというようなことを、いわゆるインドシナ難民と称するのは言っているのでしょうか。それから、カンボジアを見ましても、マスコミでも書いておりますけれども、ポル・ポト政権が六百万の国民のうち三百万をいろいろな意味で虐殺した、それで軍事的に追われて後にヘン・サムリン政権ができて、憲法を制定し、総選挙を行い、議会ができている。そういうときに、まだこの「政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ということに該当してくるのでしょうかね。認定権の問題は同僚議員からもいろいろ論議されましたけれども、これはどうもおかしいと思うのですね。  要するに南ベトナムは、たとえばグエン・バン・チューだとかズオン・バン・ミンだとか、あるいはその前にはバオ・ダイ皇帝等がアメリカのかいらい政権として存在していた。ところが、アメリカのそういう南ベトナムへの侵略が北ベトナムやベトナム人民の民族自決の権利によって追放された。そういう主権を侵している者が追放されているのに、そして祖国が完会に主権を回復したというのに、そういうところから難民が来るというのは、アメリカがかいらい政権をつくっているときに特別な利益を得た人だとか、あるいは高級役人で何か賄賂でももらってそれが追及されるとか、そんなような人たちではないのでしょうかね。これはまだ調査官による調査もしていないわけですからわからないわけなんですけれども、どうもわれわれにはわからないのですがね。何でそんなに三十万も何十万も来るのか。それで、アメリカやフランスや旧帝国主義的な支配をした国へみんな行っているわけですね。そういう人たちもこの難民条約で言う「難民」のAの(2)に該当する者と考えられるのですかね、どういうものでしょうか。
  220. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答え申します。  いわゆるインドシナ難民インドシナ三国から流出した難民の数については、国連難民高等弁務官事務所、いわゆるUNHCRというところでございますけれども、そこで確認されたもので百五十万ということが言われておりまして、その内訳はベトナム難民が八十万、ラオス難民が二十六万、カンボジア難民が三十八万ということになっております。これらの難民のうち、約九十万が米国等西側第三国に定住をしておりまして、一部は本国に帰還し、現在でもタイ、ASEAN諸国に約二十九万滞在しておるということでございます。  先生お尋ねの、これらインドシナ難民がいかなる事情で累増したか、発生したかということ、それからこれらの難民難民条約上の「「難民」の定義」に合致するかどうかという点でございます。  インドシナ難民の発生については、御案内のとおり、一九七五年インドシナ紛争終結に伴いまして、ベトナムを初めとしてかなり急激な社会主義化政策がとられたということで、客観的に申しましてかなりの社会的あつれきが生じている、それが大量の難民の発生の一つ理由であろうということが言われております。  先生指摘の点に、一九七五年ベトナム戦争が終わったときにアメリカとの関係難民が発生したのではないかという御指摘がございました。確かに十五万ないし二十万ぐらいの難民が発生したわけでございますけれども、最近のピークは一九七九年、五十四年でございまして、このときに三十万近い難民が出たわけでございます。これとアメリカとの関係を直接関連づけることはややむずかしいのではないかとわれわれは考えておりまして、むしろインドシナにおける情勢、社会主義化の展開あるいはベトナムのカンボジア侵攻その他の要因があろうかと思っております。  そういうインドシナ難民難民条約上の「「難民」の定義」に合致するかどうかでございますけれども、この点は法務省から累次御答弁がありますように、具体的な申請を待って検討せざるを得ないということでございますが、他方、百万に近い難民が命を賭して国を出ているということを踏まえて考えれば、その大部分が難民条約上の「難民」に認定できないということも言えないのではないか、かように考えております。
  221. 林百郎

    ○林(百)委員 命を賭して逃れる人があるかもしれないが、命を賭して祖国の再建のために、社会主義のために努力している人たちもあるわけですから、社会主義化がおもしろくないからといって逃げてくる、そしてその社会主義国が、社会主義の方向を目指していますけれども、そうでない者に対しては迫害するというようなことを別に言っていないわけで、あなた、三十万のアリメカへ行った人たちの意見を聞いてそうおっしゃるのですか。それが難民条約のAに該当するということを確認されたのですか。そうでないわけでしょう。あなた、聞きもしない人のことを政治的な判断だけここで聞いたって、政治論になってしようがないのですね。  そこで、現実にボートピープルかあるいはディスプレースドパーソン、こういう人で一時庇護だとかそういうことでお調べになったどなたか、どういう点で何が恐怖だと言うのですか。私たち、難民条約はいいと思うのです。国際的なこういう人権を守る条約を批准することはいいのですけれども、しかし何でもかんでも――この条約にはちゃんと規定がありますから、入管としては、難民と称してくる人が、そういう規定に合致するかどうか、概念に合致するかどうかは調査官が調査したりいろいろ判断もしなければならないし、最後の判断は奥野さんに行くというようにさっきからなっているわけです。そういう場合に、何が恐怖だと言うのですか。お調べになった方の理由を知らしていただきたいと思うのです。調査室の資料を見ますと、上陸者数が四千四百六十四で、いま残っているのが千三百四十、この数字の差はどういうもので出てきたのか、この人たちに当たってみたのか、当たったら、何が難民条約に該当するということを表明しているのか、説明願いたいですね。
  222. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 先生指摘の数字でございますけれども先生のお手元にある数字と私のはちょっと違うかもしれませんけれども、四月三十日現在で日本に一時上陸をしたインドシナ難民の数が四千五百九十三名、大体その数字に相当するものだと思います。他方、現在、一時上陸者で、滞在している者が千三百三十九名、その差約三千二百名は第一二国に永住のために去っていった者でございます。ですから、現在一時上陸をしているインドシナ難民は千三百三十九名ということでございます。他方、日本にいわゆる定住をしているインドシナ難民は現在のところ千四百十四名でございまして、この中には元留学生あるいは留学生七百四十名も含まれておるということでございます。  一時上陸者あるいは定住難民について、網羅的に難民となったというか国を離れ理由について調査したものはございませんけれども、断片的に聞いてみると、たとえばベトナムの場合、新経済区にサイゴンから派遣された、そこの生活がきわめて厳しいということで耐えられなくて、ここで、社会主義のもとでは生きていく道はないということでボートピープルになって南シナ海に出た、そこで日本の船に助けられて日本に来たというようなケースもございます。すべて包括的に難民となった理由、国を離れ理由を分析はしておりませんけれども、いずれもかなり苦しい、ベトナムでは生きていけないというような理由を述べていると承知しております。
  223. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がもうありませんので、これで最後にいたします。  大鷹さんにお聞きしますが、これは条約が締結されて、調査官で調査もしなければいけませんから、ここであなたの意見がどうだったと聞くのも非常に無理もあると思いますけれども、要するにレフュジー、国際的に考えて難民の概念に該当する人のほかのボートピープルだとか、いわゆるディスプレーズドパーソンズですか、これは流民とも言いますが、こういう人たちを全部ひっくるめてこの条約の難民だということじゃないわけでしょう。調査をして、この条約に該当するかどうかをお調べになるわけなんでしょうね。私はこの条約に賛成ですし、世界の人たちの基本的人権を守らなければいけないと思いますけれども、だからといって、この条約で規定されておることを離れて、何でもいいから日本へ来た者はみんな入ってくださいというわけにもいかないと思うのですね。その点はどうなんでしょうか。それを聞いて私の質問を終わります。
  224. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 いわゆるボートピープルは、即難民であるとは考えておりません。ボートピープルの方が難民と認められるためには、難民認定手続で申請をしなければなりません。そうなりますと、さっき先生おっしゃいましたように社会主義体制がいやだということだけで出てきた人、あるいはもう少しいい経済生活をしたいというので出てきた人、こういう者は難民とは認定されないことになります。しかし、これは一般論でございまして、個々に申請が出た場合に、その個人の事情をよく調べてみないとわかりません。したがって、それ以外にまた別の事実も出てくるかもしれません。その場合には難民と認定されるでございましょうし、そうでない場合には難民に認定されないということでございまして、やはり調査をしてみないと何とも言えないということだろうと思います。  それから、ディスプレースドパーソンというのは非常に広い概念でございまして、UNHCRなんかは、いまのボートピープルはディスプレースドパーソンという言葉で包摂しているようでございます。しかし、このディスプレースドパーソンを日本語で流民とやった場合には、日本語の最近マスコミで使われている流民とはまた別の意味がございまして、ずっと狭いものでございます。これは第三国のパスポートを持って出国して、そのパスポートに日本の観光ビザをもらって日本入国して、そして滞在期間を過ぎてずっとここにいる人たち、不法残留者でございます。これは、難民条約第一条の「「難民」の定義」によりまして、すでにほかの国の保護を受けているわけでございますから、難民とは見なされないわけでございます。
  225. 林百郎

    ○林(百)委員 結構でございます、時間が参りましたので。
  226. 高鳥修

    高鳥委員長 横山利秋君。
  227. 横山利秋

    ○横山委員 いろいろな角度で同僚委員の質疑が行われました。聞いておりますと、角度の違った立場で聞く場合には多少政府委員の答弁にもぶれがあると思われるわけであります。そういう意味合いで整理をしてお伺いをいたしますから、そのつもりでいままでの答弁を集約した形で、統一的な意味お答えを願いたいと思います。  その前にちょっと申し上げておきたいと思います。私ども社会党は、四十四年の六月、六十一国会に政治亡命者保護法案を提出いたしました。自来、七十七国会、八十国会、八十九国会、九十三国会とずっと継続案件になってきておるわけであります。いまから十二年前に政治亡命者保護法案を提出した一人として、この提案と今回の政府案とを比較してみますとこういう点の違いがあるように思うのですが、いかがでございますか。  その一つは、私どもの案は、難民から訴えがあり許可があればすぐに在留を認めるという立場をとり、政府は必ずしもそうではない。それから難民の定義が、私どものは法文上は緩やかであるが、比較論として政府側は必ずしも緩やかではない。社会党案は難民についての在留資格を特定しておるが、政府は特定していない。おおむねそういうふうに見てよろしいのですか。
  228. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ほぼ先生がただいまおっしゃったとおりでございます。
  229. 横山利秋

    ○横山委員 その意味では、私ども違いはございますけれども、おおむね私どもの主張が認められたものと解するわけであります。  第一にお伺いいたしたいのは、一時庇護については、十八条の二によって入国審査官が判断する条件が具体的に書いてあります。やや抽象的なおそれはありますが、具体的にあります。さて、法務大臣が難民を認定いたします場合には、その条件が法律上特定してありませんが、これは十八条の二の条件に該当すればという意味でありますか。なぜ法務大臣の認定基準がないのでありますか。
  230. 山本達雄

    ○山本説明員 一時庇護のための上陸の許可は、難民であることのゆえに許可するものではございません。ボートピープルを思い浮かべていただくと一番いい例でありますが、難民かもしれないということで許可しようというものであります。
  231. 横山利秋

    ○横山委員 それならば、第六十一条の二で法務大臣が認定いたします基準は、これとは違うのですか。なぜ特定して具体的に六十一条の二に書いてないのでありますか。
  232. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先生難民認定手続のことをおっしゃっているのだと思いますが、難民に認定する場合の基準はただ一つでございまして、それは難民条約の「「難民」の定義」でございます。
  233. 横山利秋

    ○横山委員 「「難民」の定義」と十八条の二とどこが違うかという点について私も考えてみたわけであります。難民条約の一条のAの(2)は「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」、十八条の二は「生命、身体又は身体の自由を害されるおそれ」、この違いがある。しかも十八条の二は、難民条約の一条のAの(2)を受けて両方にまたがっておる。あなたの答弁によりますと、法務大臣の裁断は、難民条約の一条Aの(2)だけに限定されるわけでありますか。
  234. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民であるかどうかという認定は、難民条約の第一条に書いてございます。積極規定、消極規定とございますけれども、それに合わせて、もしそれに合致すれば難民と認定されるわけであります。他方、十八条の二の一時庇護の場合には、これよりもやや広くしてございます。と申しますのは、いわゆるボートピープルにつきましては可能性、幅を少し広げておいた方がいい。入国審査官が、難民等であるかもしれない、難民である可能性がある人の上陸を許可するわけでございますが、その場合に間口を少し広くしておいた方が実際的であるということで、現在のような案文になっておるわけでございます。
  235. 横山利秋

    ○横山委員 条約の一条のAの(2)と十八条の二で、あなたのおっしゃるように十八条の二の方が間口が広いという論理は、十八条の二の「その他これに準ずる理由により、」ということに係っておるわけでありますか。
  236. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 「これに準ずる理由」ということが加えられておるだけ広いわけでございます。
  237. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。  そこで、今度は現実問題になるのでありますが、難民条約の一条のA(2)「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」、それによって法務大臣が認定するわけであります。先日来当委員会で議論をしてまいりましたのは、一体具体的にはどうなのか。いまも同僚委員に対して答弁をされたわけでありますが、「おそれがあるという十分に理由のある恐怖」というのは、たとえば拘禁されるおそれ、軟禁されるおそれ、監視されるおそれ、行動制限されるおそれ、執筆制限されるおそれ、経済的活動を束縛されるおそれ、生活がやっていけないおそれ、こういういろいろな問題がある。先ほどの答弁では、ただボートピープルだからといって難民とは定義しがたいと言いながら、そのときそのときの事情を精査しなければわからぬとおっしゃる。けれども、一般常識的に見れば、わざわざ長い間船に揺られて命からがら来たものを、おまえさんはただ社会主義がいやだから、アメリカに行けばもっと楽だから、アメリカに知り合いがあるから、あるいは日本に来たいからということだけではいかぬとでも言わぬばかりの話があったわけですね。  そこで私がお伺いしたいのは、一時庇護は緩やかであるけれども、法務大臣の裁量難民条約一条Aの(2)に限定される。その限定が「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」にさらされておるということを、現実問題として狭義に解釈をいたしますと、これはきわめて狭い範囲内になる。広義に解釈するにしてはちょっと作文が、難民条約一条Aの(2)では現実に適合しない、そういう矛盾を感ずるのですが、どう思いますか。
  238. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ボートピープルの場合には、先ほど申し上げたのですけれども、たとえば、ただ社会主義体制がいやだとか経済的な利益ということで出てきたというのであれば、一般論として言えば、これは難民には分類されないということに、なるわけであります。しかし、個々の人にはそれぞれいろいろな事情がございますから、したがって、もし難民の認定を申請した場合には、そういう人たち事情を詳しく調べて初めて結論が出るわけでございます。その場合に難民と認定される人もありましょうし、そうでない方もあろうということを申し上げたわけでございます。  それでは、難民と認定されなかった方はどうなるかと申しますと、難民の認定と在留の可否とは直接の関連がございません。したがいまして、ボートピープルで難民認定を申請されたけれども認定されなかったという方につきましては、人道的な見地から引き続き在留を認める考えでございます。
  239. 横山利秋

    ○横山委員 これはきわめて政治的な問題でありますから、その判断をされる法務大臣の意見を伺っておきたいと思うのであります。  私が先ほど申しました拘禁、軟禁、監視、行動制限、執筆制限、経済的活動の自由束縛、生活の恐怖等々の問題について、いまの局長の話は難民である者と特在を認める者に分ける、こうおっしゃるので、その議論の具体化についてはいま論評を避けますけれども、この難民条約Aの(2)を狭義に解釈するか広義に解釈するか、どちらを選ばれますか。
  240. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 この間連合審査会の席上で園田外務大臣が、難民を発生させる出口をふさぐべきである、当該国がそういう責任を持つべきである、こういう話をしておられました。それと関連して入管局長は慎重な答弁を申し上げているのだと私は思います。いずれにいたしましても、命を的に国外に逃れ出るということは、私はよほどのことがあってのことだ、こう考えるわけでございまして、狭義とか広義とかということよりも、基本的人権を尊重していく人道的な配慮というものがこういう難民対策については基本にならなければならないのじゃないかな、私はこう思っておるわけでございます。
  241. 横山利秋

    ○横山委員 私ども、連合審査にいたしましても当委員会におきましても、ほとんどの委員質問の骨子になりますのは、私の言い方によれば、要するに広義にひとつ取り扱ってもらいたいということであることを十分お含みおきを願いたい。  次は「追放及び送還の禁止」の問題でありますが、条約の三十三条「生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。」ということと、法案の五十三条の三「法務大臣が日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除き、前二項の国には難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国を含まないものとする。」との関係ですね。この二つの関係はどう考えたらよろしいのでありますか。
  242. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 この二つは基本的に一致するわけでございます。ただし、私どもの入管令の中では、このノンルフルマンの原則難民には限定しておりません。そこが違うわけでございます。
  243. 横山利秋

    ○横山委員 五十三条は、私はよくわかりませんが、日本国の利益または公安を著しく害すると認めた場合には、この三十三条一項に規定する領域の属する国へ出せと、こういう意味に逆に解されるわけですか。
  244. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民条約におきましても、国の安全または公の秩序を理由とする場合を除きまして、ノンルフルマンの原則をとっておるわけでございます。わが国の場合にも、国の利益、公安を害する場合を除いではノンルフルマンをやる、つまり両方は一致しているわけでございます。それぞれ例外的事由は掲げられておりますけれども、そういう場合を除いては迫害のおそれのある地域には送還しないということを定めているわけでございます。
  245. 横山利秋

    ○横山委員 五十三条の「前二項の国には」の「前二項」というのは五十三条の一項、二項ですね。「前二項の国には難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国を含まない」ということはどういうことなんですかね。要するに、三十三条によってそういうところへ送還してはいけないと言っているわけでしょう。いけないと言っていることを除外しているわけですか。そうではないのですか。
  246. 山本達雄

    ○山本説明員 御説明申し上げます。  この五十三条三項の規定は大変むずかしい書き方になっております。これはもう少し読んですぐわかるような規定にしたいと思ったわけでございますが、立法技術的にできなかったわけでございます。それで一項、二項は、これは送還先について規定しておるわけでございます。原則的には一項の国籍国、そこに送還することができない場合には二項のもとの居住国とかそういうところへ送還するということになるわけでございますが、第三項におきまして、その一項、二項で定めた送還先に迫害を受けるおそれのある国は含まないと書くことによりまして、迫害を受ける領域に属する国は、この一項、二項の送還国から除かれることになります。
  247. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。ちょっと書き方が、さっと出てこないですね、解釈が。  その次は現実的な問題でありますが、結論として申し上げますと、難民の中の政治的な難民という立場で聞くのですけれども、東であろうと西であろうと南であろうと北であろうと、日本国と友好国であろうと非友好国であろうと、政治難民については扱いを一切区別しない、こういうふうに端的にお伺いした方がよさそうですが、いかがですか。
  248. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 難民の認定に際しましては、その人が北から来ようと南から来ようと、東であろうと西であろうと、それによって差異が出るものではございません。
  249. 横山利秋

    ○横山委員 そういうことは本当にわかりやすい話ですが、さて現実問題になりますと、法務大臣にお伺いしたいのですが、かなり政治的な配慮がそこに働くおそれがあると思うのです。具体例を出して大臣に聞くのはむずかしいと思いますが、一遍やはりその意味で聞いてもらいたい。  たとえばイタリアの政治的な過激派、それが政治難民として来たらどうか、北アイルランドの活動家が日本難民として来たらどうか、台湾政府に反対する独立運動の人が日本へ政治難民として来たらどうだ、あるいはカンボジアのポル・ポト政権の難民についても二様があると思うのですけれども、それもそういうようなことには考慮しない、本当にこういうふうに解釈をしていいのでしょうかね。これはもうそういう人たち日本に政治難民として来たときに必ず論争の焦点になる。政治難民は政治難民だ、ここではっきり割り切って、そのときに、いや日本との友好関係にある国だから、イギリス政府の立場も考えなければいかぬ、イタリア政府の立場も考えなければいかぬということをおっしゃらぬでしょうね。どうですか。
  250. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先ほど申し上げましたとおり、いまの先生挙げられました方が果たして難民であるかどうかということにつきましては、私どもはあくまでも難民条約の第一条の定義に当てはまるかどうかということを確認するだけでございますので、出身国がどこであろうと何の関係もないわけでございます。具体的にいろいろ先生お挙げになりました実例につきまして、私どもはまだ情報と申しますか知識が非常に不足でございますので、いまここで一般論として申し上げることはできませんけれども、やはりそういう人たちの個々の事情というものをよく調べた上で、先ほど申し上げたような確認をするということでございます。
  251. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、お答えありますか。
  252. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 お気持ちはよくわかるわけでございます。そういう気持ちで当たっていかなければならないと思います。ただ、個々具体のケースになりますと、いろいろな事例があるのじゃないだろうか、こう思うわけでございまして、たとえば平和に対する犯罪を犯してきているということになりますと、難民からは除外されるということになるわけでございますので、個々の具体のケースに当たりましては、いま横山さんおっしゃったような気持ちで対応していくべきだ、こう思っております。
  253. 横山利秋

    ○横山委員 その次は、先ほど稲葉委員から言われておったことなんでありますが、不服審査の問題であります。  先ほどずいぶん詰められたのですから多くは申しませんけれども、私が国税審判法案を国会へ議員提案をいたしたいきさつから、不服審査のあり方については、同じ穴のムジナが自分のやったことがいいか悪いか審査するなんということは、理論上どうしてもおかしいのであります。税務署長のやったことなら局長が判断してもよろしい、局長が判断したことなら大蔵大臣が判断してもよろしい。しかし、法務大臣が判断したことを法務大臣が、自分のやったことを間違っておったかどうか再審査するということは、客観性がないわけであります。先ほど御答弁はいろいろありましたけれども、まあ今回は別としても、これは将来にわたって再検討をする必要があるのではないかと思うのです。  そういう前提のもとに二つばかりお伺いをしたいのでありますが、先ほどの答弁によりますと、まだ不服審査の手続が十分準備されていないようであります。この不服審査の手続が簡素かつ迅速、申し立て者の便宜を十分に計らうような手続規定ができることを希望をいたします。  それから、もちろん前置主義はとらないことだと思いますが、不服審査をするか法廷に訴えるか、どちらかも選択だと思うのでありますが、申し立て中あるいは訴訟係属中は送還をしないものと考えてよろしいか。
  254. 山本達雄

    ○山本説明員 前置主義はとっておりません。したがいまして、異議申し立てをしなくとも訴訟に訴えることができるし、異議申し立て後さらに訴訟に訴えるということも可能であります。  それから、そういう異議申し立てをしている時期に、退去強制を執行することがあるかという点につきましては、これは難民認定の手続と退去強制との関係になるわけでございますが、五十条を改正いたしまして難民認定を受けたということを在留特別許可の特例の事由に掲げておる趣旨から申しましても、手続中に退去強制を執行するということはきわめて希有のことであるというふうに御理解いただけるかと思います。きわめて希有と申しましたのは、もう明々白々というような場合も送らないのかといいますと、それはそこまでは保証できないわけでございますが、そういうことで御理解いただきたいと思います。
  255. 横山利秋

    ○横山委員 その次の問題は、難民日本に来るについて、この改正案国内法に違反をしておってもそれを追及しないという原則のようでありますが、その国内法に違反をしておってもということは、単に出入国法に違反をしておってもということなのか、それとも、入国するために港でトラブルがあった、あるいは公務執行妨害をした、あるいはその間に多少びくびくしておるものだから傷害を与えたとか、そういう入国に当たって、あるいは入国以後難民として認められるまで、あるいは在留を認められるまでに至るやむを得ざる国内法違反というふうに一般的に考えてよろしいか。  第二番目の問題は国外法ですね、外国法に違反をして入国をする場合がきわめて多いと言った方がいいと思います。たとえば外国で緊急の場合に、アイルランドで独立闘争をやっておった、台湾で独立運動をやっておった、そして傷害を与えた、殺人をした、あるいはその国の出国法違反をした、あるいは反逆罪に問われておるというような場合が、政治難民につきまとう問題でありますが、その国外における犯罪、違法性についてはどういうふうにお考えになりますか。
  256. 山本達雄

    ○山本説明員 お答えいたします。  まず、刑事免責の対象となります行為は、不法入国、不法上陸、不法残留ということになります。それはなぜかと申しますと、条約三十一条も「不法に入国し又は不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。」ということになっております。これを国内法に照らしますと、それは不法入国、不法上陸、不法残留ということになろうかと思います。  なお、外国で犯した犯罪に対してはいかがなるかという点でございますが、それはわが国で処罰することができる犯罪であるかないかということに係っておるわけでございまして、仮にわが国で処罰することのできる犯罪であればそれは処罰される、要するに刑事免責の対象にならないということになります。
  257. 横山利秋

    ○横山委員 前段のお答えは、「不法に入国し又は不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。」私の言っているのは、たとえば入ってくるときにほかの問題で国内法に違反をしておるということが、難民として認定する際、特別在留として認可する際に障害になることはないかと、こういう意味であります。
  258. 山本達雄

    ○山本説明員 それは障害になることがあります。たとえば条約第一条Fの(b)でございますか、それに該当する場合には、すなわち、入国前に国外で重大な犯罪を犯していた場合には、そもそもその人は難民でないわけでございます。また、国内で何かの犯罪を犯して懲役一年以上の刑に処せられたというような場合には、退去強制事由に該当するわけでございまして、退去ということになることもあるわけでございます。
  259. 横山利秋

    ○横山委員 ともあれ、難民日本入国するまでには、ここでわれわれが想像をするにもいろいろな紆余曲折がある。そして、その場合における迫害をする国、政府等からさまざまな違法行為であるとして指摘をされておる、それに抵抗して闘った人もおる。だから、普通のように気持ちよく旅券をもらって日本へやってきて、堂々入国して、さあ難民でございますというようなことがまず少ないと見なければならぬ。したがって、私が先ほど申し上げたように広義に解釈して、いまあなたのお話のように外国で何やったか知らぬけれども日本国内でそれを処罰することはできませんからそれは知りませんよ、国内において出入国の法律には違反してもそれは免除する、しかし、おまえさん、港で人をおどかしたじゃないかとか、公務執行妨害やったじゃないか、こんなことじゃ難民として認めぬ、特在も認めぬということでは、仏つくって魂入れずということである。したがって、この点についても善意ある措置をされることを希望をいたします。  その次には、難民の政治活動であります。要約いたしますと、マクリーン判決が最高裁でありました。著名な判決でありますから多くの人が知っておるところでありますが、要するに、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人地位にかんがみ、これを認めることが相当でないと解されるものを除き、外国人の政治活動を認める、こういう内容であることは御存じのとおりであります。わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動、これは一体どこまで含まれるかという問題でございます。  要するに、外国人日本へ来た、たとえば金大中さんがホテルでいろいろと韓国の民主化について相談をしていろいろ議論をした、そういうことが友好国であるわが国のいまの政治的意思決定または実施に影響を及ぼすとは思わぬのですけれども、そういう人たち日本で行うであろう諸問題をどう考えたらいいのでありましょうか。たとえばデモに加わる、ビラをまく、あるいは大衆集会でその国の事情を訴える、あるいは新聞記者会見をする、あるいは外国人同志を集めていろいろな検討をするということが、一体どの程度までわが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動であるかという点はどうお考えでありますか。
  260. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 どういう場合が日本の政治的意思決定あるいはその実施に影響を及ぼす活動であるかということは、やはりケース・バイ・ケースに当たってみないとわからないと思います。ただ、平穏なデモに参加したとか、そういうものはこういうものに当たらないということは言えようかと思います。
  261. 横山利秋

    ○横山委員 大臣にお伺いをしたいと思います。  先ほどから同僚委員質問にもあなたお答えになっておるようですが、あの中に、わが国の国民と言えども単一民族ではないという論理がありました。なるほどそうかと私も思うのですけれども、いまの日本の現状は、国際的な日本として、外国人の政治的意見の発表を聞くこと、あるいは日本人と意見の交換をすること、あるいはまた国際交流をすること等は日本及び日本国民にとっても有益である。外国人もまたわが国の政治、文化、経済、社会の中に数十万の人がいま生きておる。だから、日本人のことだ、おまえら余分なことを言ってもらわぬでもいいというような偏狭な気持ちでは私はいけないと思う。それを取り入れるか否かは別でありますけれども、国際社会におる日本が、難民が来た、おまえは日本に厄介になっているんだから日本の悪口を言うな、あるいはおまえのところの国のことは知らぬ、そんなこと勝手に言いふらしてもらっては困るというような、偏狭な態度はいかがかと思うのであります。  ですから、私は、少なくとも今日の日本の経済社会において、難民が来たら、何を言いたいか、そして意見交換をする、意見の合わないところはしようがない、新聞記者会見をする、ビラをまく、大衆集会で話を聞く、そういうことは、私は逆説的に言うならば日本のためになる、国際的感覚を養う上において日本のためになる。それを、マクリーン判決を狭義に解釈をして、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす行為というふうに決めてかかるのはいかがかと思うのでありますが、どうですか。
  262. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 国際社会にはいろいろな意見また活動があるわけでございまして、やはり日本もいろいろな意見、いろいろな活動それを理解しながら日本の進むべき道を決めていくべきだと思いますので、私は、横山さんの意見、賛成です。マクリーン判決に沿って政治活動を考えるべきだし、また、国の利益及び公安を害する場合に強制退去命令を出せることに法律上なっておりますけれども、この十数年、そういう意味で退去命令を出した者はないようでございます。
  263. 横山利秋

    ○横山委員 マクリーン判決については、その適用については、外国人日本における政治活動についておおらかな気持ちで見てもらいたい。希望しておきます。  最後に、ちょっと事務的にお伺いしますが、朝鮮民主主義人民共和国へ旅行する日本人、たとえば商社、それは数次旅券出しておりますか。
  264. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 数次旅券制度は今度の改正法案に盛り込まれておりますので、まだ数次旅券発給した実例はございません。これからは数次再入国許可――数次旅券でございますか、数次再入国許可でございますか。
  265. 横山利秋

    ○横山委員 日本人です。
  266. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 それは、いまのところ数次旅券を発給したケースはないようでございます。
  267. 横山利秋

    ○横山委員 そのために愚痴、苦情があるのですけれども、数次旅券発行してないために、日本人商社の人が共和国に行くについて、一般論からいうと一カ月くらい必要である。なぜ共和国だけ数次旅券を出さないのか。台湾にはどんどん出しているじゃないか。この法律改正を機会に、日本人商社に対して、商社ばかりじゃありませんが、日本人に対して共和国にも数次旅券を出せという希望があるのですが、いかがですか。
  268. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいまの御意見、よく参考にさせていただきたいと思います。
  269. 横山利秋

    ○横山委員 参考にするということは、後ろ向きか、前向きか、横向きか、どうもようわからぬのだが、どういうことだ。斜めか。
  270. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 実はこの旅券の発給は、法務省じゃなくて外務省の所管事項でございます。そこで私どもも御相談にあずかりますけれども、ただいま先生からいろいろな不便なケースについてお話がございましたので、これについてよく検討させていただきたいと思います。
  271. 横山利秋

    ○横山委員 終わります。
  272. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  273. 高鳥修

    高鳥委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  274. 高鳥修

    高鳥委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  276. 高鳥修

    高鳥委員長 次回は、来る六月三日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十九分散会