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1981-02-26 第94回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月二十六日(木曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 井上  泉君    理事 青木 正久君 理事 岸田 文武君    理事 谷  洋一君 理事 吹田  愰君    理事 武部  文君 理事 長田 武士君    理事 塩田  晋君       今枝 敬雄君    木部 佳昭君       田名部匡省君    長野 祐也君       牧野 隆守君    五十嵐広三君       金子 みつ君    春田 重昭君       岩佐 恵美君    依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 伊従  寛君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         建設大臣官房会         計課長     杉岡  浩君  委員外出席者         大蔵省関税局輸         入課長     忠内 幹昌君         林野庁林政部林         産課長     山口  昭君         通商産業省産業         政策局商務・サ         ービス産業室長 江崎  格君         通商産業省生活         産業局通商課長 末木凰太郎君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      山梨 晃一君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     植松  敏君         運輸省海運局定         期船課長    浅見 喜紀君         郵政省電気通信         政策局業務課長 水町 弘道君         特別委員会第二         調査室長    秋山陽一郎君     ――――――――――――― 二月二十一日  公共料金値上げ中止等に関する請願福岡義  登君紹介)(第一一五五号) 同月二十四日  物価公共料金値上げ抑制に関する請願(中  路雅弘紹介)(第一二一三号)  同外一件(草野威紹介)(第一三〇五号)  公共料金値上げ中止物価安定等に関する請願  外一件(上田哲紹介)(第一三〇一号)  同(小川国彦紹介)(第一三〇二号)  同(新村勝雄紹介)(第一三〇三号)  公共料金値上げ反対生活安定等に関する  請願上坂昇紹介)(第一三〇四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 井上泉

    井上委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長野祐也君。
  3. 長野祐也

    長野委員 私は、昨年六月の衆参同日選挙鹿児島一区より国政に参画をさせていただきまして初めての質問の機会をいただきました。その私にとっての処女質問の相手が実力者河本長官であるということは、ぴかぴかの一年生にとりましては大変光栄の至りでございます。よろしくお願い申し上げたいと思います。  さて、河本長官経済運営に対する評価というものは高いものがございます。世界的な低成長期にあって、日本経済力石油危機を克服してある程度成長は遂げられるということを民間産業界政界等に示して、政治家として国民に夢と希望を与えてリードされておられる点、また現実日本経済は大筋において他の国と比べまして、長官が主張しておられるような高い成長を続けてきたことに対して長官先見性と見識に敬意を表したいと思います。  本日は時間の関係もありまして、当面する問題四、五点をお尋ねいたしますので、答弁の方も簡潔にお願いを申し上げたいと思います。  第一点は、新経済社会七カ年計画のフォローアップについてであります。  昨年十二月見直しされた新経済社会七カ年計画では、五十六年度から六十年度にかけての平均実質成長率を五・五%と想定されておられます。長官が描かれてきた従来の計画での成長率と変わらないわけでありますが、ただ変わりましたのは財政上の制約から公共事業への投資額が二百四十兆円から百九十兆円に縮小したことで、この縮小分を補う意味民間活力への依存度を高くしておられます。民間活力の重視ということで個人消費を五・一%を五・六%へ、民間設備投資六・九を七・二、住宅投資四・七を六・六にそれぞれ上方修正されました。いかにも長官らしいバラ色の展望であるわけでありますが、果たしてそれだけの民間活力への期待が可能かどうかお伺いをいたしたいと思います。  中でも個人消費住宅投資は高い伸びを見込み過ぎるように思われます。個人消費は五十六年度政府見通しでは四・九%の伸びで、その達成すら経済界で大議論のあるところであります。住宅投資宅地価格が高過ぎて、長期不況説すらあります。これをどう打開されるか、これらについての御所見を承りたいのであります。  これに関連して第二点は、長官の言われるところの景気の着実な拡大についてであります。率直に申し上げて現在の景気現状認識からしますと、長官考えられていた景気回復パターンと大分違うのではないでしょうか。とりわけ在庫調整がかなりおくれておりますが、その原因は何か。また在庫調整完了はいつになるか、御見解を承りたいと思います。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 新七カ年計画をフォローアップいたしまして若干の微調整をいたしましたが、御案内のように公共事業を五十四年、五十五年、五十六年とほとんど財政事情から横並びにいたしました関係で、後の四年間で大規模投資をするということも現実に合いませんので、実情に合わせまして七カ年における二百四十兆円という投資を百九十兆と修正をいたしました。そして一面、民間経済活力期待するということで、民間経済活動に対する期待を若干上方修正いたしております。特に、これまでのように貿易依存経済運営ができませんので、やはり内需の拡大ということを中心考えていかなければなりませんが、幸いにわが国は――幸いにと言ったらこれは言葉が悪いのですけれども、むしろ残念ながらわが国では社会資本投資がおくれておりましたので――アメリカヨーロッパでは社会資本投資をほとんどやり尽くしておる。したがって、新しい投資をする場合も、公共事業で新投資をするということがなかなかむずかしいわけでありますが、日本の場合は社会資本投資を幾らでもやれる。欧米と比べますと、こういう若干の事情の違いがあろうかと思います。  そこで、この新七カ年計画当初に想定をいたしました二百四十兆という社会資本投資計画というものは、これは非常に整合性のあるものでございますから、この計画は変更しませんで、一年半完成時期を延期いたしまして、そして整合性を持たせながら昭和六十年までの社会資本投資を進めていく、こういうことにいたしたのでございます。したがって、民間活力にある程度期待しなければなりませんので、個人消費住宅投資あるいは設備投資、これをやはり大きな柱として考えていかなければなりません。  個人消費を伸ばすためにはやはり物価の安定が前提条件だと思います。たとえば昭和五十六年度個人消費に対する期待は大き過ぎるのではないか、とてもそんなことはむずかしいということがよく言われるのでありますけれども、しかしながら個人消費の動向を調べてみますと昭和五十三年は大体六%台、それから五十四年は五%、五十五年が急に落ち込みまして現在は二%前後で推移しておるわけでありますが、来年度は四・九%程度想定しておりますから、五十四年度に近づけたいというのがいまの一つ目標になっておりまして、これは消費者物価が安定の方向に進んでおりますから、この見当は十分可能である、こう思って、おります。  それから、住宅投資は急には伸びませんけれども、しかし中身が毎年よくなっておりますので、これも来年は四%見当伸びは十分可能だ、こう思っております。  それから、設備投資につきましては、いまのところ大企業設備投資は順調に進んでおります。ただ中小企業が、現在は金利水準が非常に高いということで採算がとりにくいというのでちゅうちょする傾向がございまして、変更をしたり中止したりする向きが多いようであります。こういう問題がございますが、今後の政策運営よろしきを得れば、政府期待しておりますような程度設備投資も十分可能であろう、こう思っております。  とにかく五十六年を一刻も早く安定成長路線に定着させる、これが必要でありまして、五十七年度以降は五十六年度経済を基礎として七カ年計画を軌道に乗せていきたい、こういう戦略でございます。  それから、在庫調整がおくれておるではないかというお話でございますが、実は昨年の秋ごろには在庫調整も完了するであろう、このように考えておりましたが、景気回復がおくれておりまして延び延びになっております。現時点では、残念ながら一-三月にはまだ在庫調整は終わらないと私は思います。やはり四―六になるのではないかという感じがいたします。約六カ月間以上在庫調整がおくれておる、こういうことでございますので、この際何らかの対応策は必要でなかろうかといま考えておるところでございます。
  5. 長野祐也

    長野委員 積極的な見解を承りまして、ぜひそういう目標に向かって実現に努力をしていただきたいと思います。  第三点は、公定歩合についてお尋ねをいたします。  景気回復には、いま答弁のありました在庫調整のおくれ、そして個人消費回復が問題だと考えます。在庫調整のおくれということで中小企業の倒産がふえてきております。中小企業としては競争力をつけるために設備投資を行わなければなりませんが、いま御答弁にありましたように、金利が高くて、また、市中金融機関金利追随率から見ましても、中小企業は不利な立場にありまして、設備投資の意欲をなくしております。河本長官公定歩合引き下げについては前向きの見解を持っておられますが、景気への配慮ということで効果的な幅を持った公定歩合引き下げは緊急に必要であると思うのでありますが、どう思われるでしょうか。三月中に必至との声もあります。もちろんこれは日銀の決定するところであることは承知をしているわけでありますが、あえて長官見解をお聞かせいただきたいと思います。あわせて長官は三月上旬に総合経済対策を打ち出したいというお考えのようでありますが、その前にも公定歩合引き下げて、そして政策効果を高める方が私はいいと思うのでありますが、その点についての御所見をひとつぜひ明らかにしていただくことを期待いたします。  この問題と関連して、次に物価についてお尋ねをいたします。  寒波、異常乾燥等によりまして野菜が値上がりして、消費者物価が一月には東京都区部の場合、前月に比べて一・一%、前年同月比六・八%上昇しております。二月もこの影響東京都区部は前年同月比六%台の上昇になると思われます。その結果、五十五年度消費者物価上昇率は、政府見通しの七%を大きく上回るのではないかということが心配をされております。そういう中で預金金利を含め一連の金利を下げることがむずかしいと思われるのでありますが、いまの物価水準金融政策の障害にならないかどうか。三月から来年度にかけての物価見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済政策を進めます場合には整合性が必要だと思います。産業政策財政政策金融政策貿易政策あるいはエネルギー政策、こういういろんな政策整合性を持ちながら総合的に進めていくということが必要だと思います。そういう観点に立ちまして、昨年の九月の初め政府では総合経済対策決定をいたしまして、金融政策は今後機動的に運用する、そういうことを政府基本方針として決定をいたしております。機動的に運営するという意味は、当時金利水準が非常に高いので、それがわが国経済の足を大きく引っ張っておる、だから条件が熟し次第、できるだけ早く金利水準引き下げる、それが必要であるという趣旨のことを金融政策を機動的に運用する、そういう抽象的な表現であらわしておるのであります。これが政府の基本的な政策でございまして、その政策を受けまして、日本銀行の方ではいまいろいろ判断をし、工夫をされておるのではないかと思います。  それ以上のことを申しますとまた物議を醸しますので、それ以上のことは申し上げませんが、政府基本方針は、低金利政策を実行するという昨年九月の基本路線が決まっておるわけですから、それに従っていろんな政策を進めるということでありますが、ただ、日本銀行がいろんな金融政策を進められます場合も、物価が安定をいたしませんと、いまお述べたなりましたように、預貯金に連動する金融政策金利引き下げができませんので、物価を一刻も早く政府目標のとおり安定させるということが何よりも必要である。いま政府の方で考えておりますことは、日本銀行金融政策を弾力的かつ機動的に運営をしやすいような客観条件を一刻も早くつくり上げたい、こういうことでございます。でありますから、以上申し上げましたような線で金融政策が展開されることを期待し、同時に、政府はその条件をつくる、こういうことでございます。  それから、物価見通しでございますが、物価は昨年の末以来大体安定の方向に行っておると思います。十二月は消費者物価全国七・一%、それから一月は東京区部が六・八%、全国はまだ出ておりませんが、二月もほぼ一月の東京区部に近い線で出てくるのではないか、こう思っております。多分あすごろにその数字が発表されると思いますが、三月になりますと相当下がるであろう、こう思っております。  そこで、この四月以降新年度の五・五%という消費者物価目標でありますが、これは新年度に入りますと、むしろ物価政策は非常にやりやすくなるのではないか、私はこう思っておるのですが、その一つは、昨年のような大幅な公共料金引き上げがありません。昨年は一番の大口電気ガス料金引き上げ、これによりまして一%以上の消費者物価引き上げられておりますが、そういう大口が五十六年度はないということが一つと、それから卸売物価消費者物価は非常に密接な関係がございまして、卸売物価が下がりまして数カ月たちますと消費者物価にいい影響が出てまいります、幸いに、昨年の四月には前年同月比二四%くらいであった卸売物価が、現在二月の上旬では三%台に鎮静をいたしております。したがって、五十五年度卸売物価平均は一四%くらいになると思いますが、五十六年度は大体四%前後で推移するのではないか。したがいまして、この方面から来る影響も順次あらわれてくるであろうと思いますし、それから石油事情も昨年のようなことはないと考えております。昨年は途中でイラン・イラク戦争が始まりまして、石油価格が思わざる急上昇をいたしましたが、五十六年度はああいう大波乱はないのではないか、このように考えておりまして、むしろ五十六年度消費者物価目標はやりやすい、こう思っておりますが、十分注意をいたしまして、政府目標が達成できるような、そういう努力を続けてまいりたいと考えております。
  7. 長野祐也

    長野委員 公定歩合についての御所見を承れなかったのは残念でありますが、お立場上やむを得ないことだと理解をいたします。  もう一つ、お答えしにくいような問題で恐縮なんですが、こちらの方はひとつぜひ見解を明らかにしていただきたいと思います。  それは所得減税大型消費税についてであります。ことしは米、麦、郵便、国鉄、大学授業料等大幅値上げの上に、物品税中心にかなりの増税路線が敷かれました。これらのいわゆる予算関連公共料金改正物価に及ぼす影響をどのように見ておられるのか。このことは、実質賃金の目減りで苦しんでおりますサラリーマン重税感を高めております。オーバーに言えば爆発寸前のところまで来ているのではないかと思います。野党側からは所得税減税の要求が出ております。政府・自民党の方針としては、本年度はやらないとのことでありますが、大蔵省あたりでは、五十七年度からは、四年間抑えてきた所得税減税はもう抑え切れないと見て、その財源という意味からも大型消費税の導入が考えられるとの考え方だと聞いております。長官は、かねがね大型消費税については反対の意見でありますが、その際長官サラリーマンの不満をどういう形で解消されようとしているのか、所得税減税は必要ないというお考えなのか、それとも、もし必要とすれば、その財源をどういう形で考えておられるのか。景気をよくして自然増収をふやせば達成できるかもしれませんが、果たしてそれだけで所得減税までできる余地があるのか、所管外の問題であるかもしれませんが、財政演説ではなくて経済演説をされるお立場から、ひとつぜひ御見解を賜りたいと思います。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本所得水準を見ますと、計算上はだんだんとアメリカに近づいてきておりますし、それから、ヨーロッパ平均水準ももう追い抜いておる、こういうところまで進んでおると思います。  ただ、やはり住宅費食料費負担、特に住宅費負担が非常に重いということで、購買力計算どおりにいっていない、こういうことが先般来議論になっておるわけでありますから、まさにそのとおりだと思います。したがいまして、この点は私は、非常に重大に考えていかなければならぬと思います。  政治目標は、国民生活の安定と充実向上にある、いろいろな表現はあるかと思いますが、こういうことも言えるのではないか、こう思います。そういう意味におきまして、絶えず国民生活が充実するような、そういう方向政府としては考え努力していくことが必要だと思いますが、現在の財政事情では、現時点では残念ながら減税はできない、これが政府の正式の見解でございます。  しかし、現在の状態を考えますと、やはり何らかの解決方法は必要だ、こう思いますので、そこで、先般来大蔵大臣が、税制全体を見直す中においてこの所得税の問題もひとつ考えていきたい、こういうことを言っておられるわけでありますが、ただしかし、税制全体を見直すかどうかということもまだ決まっておるわけではございませんので、これから経済の動きとあわせてこの問題をどのように判断したらいいのかということは、これからの一つの大きな課題ではないか、こう思っております。  そこで、基本的な考え方でございますが、日本経済規模は非常に大きくなっておりまして、ことしはGNPに直しまして二百六十五兆円、来年は三百兆近い経済だと思いますが、昭和六十年には四百十三兆、こう想定をしております。それだけ大きな規模になっておりますから、経済活力を維持することが可能ならば、その経済から非常に大きな税の増収を生み出すことも可能である。それは、昭和五十五年度経済がこれを立証しております。また、五十六年度経済もこれを立証しようとしておりますが、ただ私は、五十六年度経済につきましては、よほどしっかりした経済運営を機動的に今後やらないと、政府の立てておるような増収はあるいは期待できにくいような事態が発生しないとも限らぬ、経済運営よろしきを得ればさらにそれを上回ることも可能だと思いますが、これからの経済運営いかんにかかっておる、こういう感じがいたします。  したがいまして、先ほども申し上げましたように、これからの課題は、五十六年度経済運営によりまして、わが国経済安定成長路線にとにかく定着させること、そしてそれを五十七年度以降につないでいくということ、そこから大規模な税の自然増収期待をしていく、こういうことだと思うのです。  やはり日本財政事情考えますと、毎年五、六兆、あるいはもう少し理想的に言えば六、七兆ぐらいな税の自然増収が毎年期待できるような、そういう経済運営をすることができれば、これはもう増税などしなくても、むしろ減税をしても日本財政再建は可能だ、こう思います。でありますから、財政再建考えますときには、まず税の自然増収期待できるような、そういう経済運営をするということが一番のキーポイントではないか、このように考えております。  第二点は行財政合理化だと思うのですが、今回のアメリカレーガン政権行財政合理化に対する対応などを見ておりますと、相当思い切ったことをやっております。やはり日本財政再建考えます場合には相当思い切ったことが必要ではないか、このことをアメリカ政策を見ながら私は痛感をしておるわけでございますが、それでもなお足りない場合には、これは国民にある程度負担お願いをしなければなりませんけれども、しかし、国民負担お願いをする前に、方法があり、その方法政府努力によって解決できるんだ、こういうことであるならば、やはり私は、その解決できる方法政府としては責任を持って全力を尽くすということが順序ではなかろうか、その過程を踏まないで、お金が足りません、増税だ、こういう結論を出すということは間違っておる、このように考えております。
  9. 長野祐也

    長野委員 ありがとうございました。  時間がありませんので、以下、もう六点まとめてひとつ御質問いたしますので、答弁結論的にお願いをしたいと思います。  第一に、電話料金体系の見直しについて伺いたいと思います。  結論を先に申し上げますと、現行電話料金体系近距離通話遠距離通話料金格差が大き過ぎるので、抜本的な法改正を行って遠近格差をなくすべきだが、そういう考えはないかということであります。  昨年十一月から郵政省でも、夜間割引時間帯の拡大でありますとか、深夜割引制度を改善をされまして、その点は評価をするものであります。  しかしながら、このような割引がなされたとしましても、まだまだ遠近格差が大きいのであります。一例を挙げますと、現行料金体系では、区域内では十円で三分間通話ができますが、距離が七百五十キロを超える、東京とたとえば私の選挙区の鹿児島の間では、十円でわずか二・五秒しか通話をできない。この間の格差は実に七十二倍であります。いま電話全国即時通話となっておりますので、昔のように人手を介して中継をしていた時代とは異なり、常識で考えても、七十二倍の格差が必要となるほど、距離によるコスト面での格差はないはずであります。また、無線中継による部分も相当に拡大をされていることは事実であり、無線であるということは、とりもなおさず距離を克服をしておるということであり、距離の差が料金の差も生む要因であるとは考えにくいのであります。  その意味では、現行料金体系の根拠は失われていると思うのであります。いまや電子交換機が、ときどきこれは故障いたしますが、すでに出現をして、光通信による通話実用化一歩手前まで来ておるときに、日進月歩の技術革新の成果を料金面での格差解消に生かすべきであり、それは政府の義務でもあると私は思います。  これらについての郵政省の取り組み、さらには、今回、今国会に提出を予定されております料金格差解消のための法改正の内容について明らかにしていただきたいと思います。  次に、離島物価についてお尋ねをします。  離島における食料品や日用品等生活関連物資の価格は、本土との間にかなりの格差があります。たとえば、ことし一月の鹿児島県における本土と離島との格差は、プロパンガス一七%、ちり紙一六%、灯油一四%、ガソリン、トイレットペーパー、砂糖一〇%等々、生活必需品が高くなっております。  本土との価格差の要因としては、島内自給の困難さ、海上輸送経費の上乗せ、流通の複雑さ、あるいは商店規模の零細性、天候による輸送途絶等考えられるわけでありますが、この価格差の縮小というものは、離島住民の強い要望となっております。離島であるための物価高に対する施策の一つとして、離島航路経営の欠損への補てん制度を改善する考えはないか、お尋ねをいたします。  次に、大島つむぎ問題をお尋ねいたします。  政府間の取り決め数量があるにもかかわりませず、大量の輸入が行われているという指摘があるわけでありますが、通産省としてどのように規制を行っていかれるのか。  具体的には、第一に、特別ビザの実現を図れないのか。第二に、国内輸入業者、矢野経済研究所によりますと五十三社あるそうでありますが、これらに対する徹底した行政指導の方策はないのか。第三は、いわゆるにせ大島つむぎ摘発後の韓国産つむぎの表示についての税関での監視体制はどうなっているのか。第四に、みやげ物規制の二反移行を円滑に進めるためのPR体制はどうなっているか、明らかにしていただきたいと思います。  次に、ガソリンスタンド業界の実態についてお尋ねをいたします。  資源小国のわが国は現在省エネルギー対策に国を挙げて取り組んでおるわけでありますが、その中にあって、石油業界、ことに中小零細業者であるガソリンスタンド業界は、幾つかの要因で熾烈な過当競争にあり、その八〇%が赤字または収支とんとんと聞いております。しかも安売り競争により、ガソリンの需要を拡大し、政策にも反することとなっております。その要因とは、一つは元売り会社の拡販政策、二つはアラムコ系企業とその他の企業との原油仕入れ代金格差に基づく販売店仕切り価格格差拡大、三番目には超安値業転玉の流用による特定スタンドの安売りであります。またそのほかに業界の問題として、日曜、祝日休業についての行政指導の不徹底に伴う業者間の疑心暗鬼とトラブルの問題等があります。こういう問題を放置しておきますと、末端での安定供給が非常にむずかしくなると考えるのでありますが、これらについての対策を伺います。  次に、公共投資の傾斜配分について伺います。  南九州地域などの、経済、産業基盤が弱く、社会資本の整備が著しくおくれている地域におきましては、公共投資による建設業等を通じて地域経済の発展に果たす役割りは非常に大きなものがあります。今日のように国、地方を通じて厳しい財政環境にありますとき、公共投資伸び率がゼロということでありますと、このような地域の経済にきわめて深刻な影響を及ぼすのであります。今後公共投資の配分に当たって、南九州のようなおくれた地域へ手厚く傾斜配分を行うなど特別の配慮を行う必要があると考えますが、政府見解を承りたいと思います。  最後に、木材関連産業についてお尋ねをいたします。  最近における木材関連産業は、住宅着工の大幅な減少、昨年春の外材輸入の増加等によりまして厳しい経営状態にあり、資金繰りの悪化による企業倒産や負債金額が増加する傾向にありますが、これに対して林野庁はどのような措置をとったのか、そして今後どのように対応されようとしているのか。  最後に、この点については要望でありますが、住宅ローンの金利引き下げや融資額の制限額を引き上げるなど、住宅ローンの質的な転換を含め有効な住宅政策を推進する中で、木材需要の拡大が図られるよう強く要請しておきます。  以上六点お尋ねをいたします。
  10. 井上泉

    井上委員長 順次関係者から御答弁を簡潔にお願いしたいと思います。  最初に電話料金の件について、郵政省水町業務課長
  11. 水町弘道

    ○水町説明員 電話通話料金遠近格差の是正につきましては、昨年の十一月二十七日から夜間割引制度の拡大を実施いたしております。さらに、今回公衆電気通信法の一部を改正する法律案ということで提案することといたしておるわけでございます。  その内容は二点ございまして、第一点は遠距離通話料の改定でございます。区域外の通話の地域間距離、いわゆる市外通話でございますが、これが五百キロメートルを超える区域外の通話料金につきまして、五百キロメートルを超えて七百五十キロメートルまでの区間につきましては、現在三秒ごとに十円というふうになっておりますものを三・五秒ごとに十円に、それからそのもう一つ先の区間でございます七百五十キロメートルを超える区間につきましては、二一五秒ごとに十円となっておりますものを三秒ごとに十円というふうに、それぞれ改めることにいたしております。このようにいたしますと、五百キロメートルを超えて七百五十キロメートルまでの区間は、三分間通話いたしますと現在六百円でございますが、これは五百二十円になります。それからその先の区間につきましては、七百二十円のものが六百円というふうに引き下げられることになるわけでございます。  それから第二点目は、日曜日と祝日におきます通話料の割引制度の導入でございます。区域外通話の地域間距離が六十キロメートルを超える通話の日曜日それから祝日に係る料金につきまして、郵政大臣の認可を受けまして電電公社が法定の料金より低く定めることができるという措置を講じようとするものでございます。  これらの措置を行うことによりまして、一つの試算でございますが、減収額といたしましては平年度ベースで、五十六年度ベースでございますが、昨年の十一月から実施しております夜間割引拡大分、これはおよそ千二百七十億円と見込まれております。それから今回新たに行います措置に伴いますものがおよそ一千億近くになるのではないかというふうに見込まれておるわけでございます。他方では、財政再建に御協力をするということで臨時納付金の納付ということも予定されておるわけでございますが、遠近格差の是正につきましてもこのように努力をいたしておりますということをひとつ御理解賜りたいと存じます。
  12. 浅見喜紀

    ○浅見説明員 お答えをいたします。  離島航路は、離島住民とその生活必需品を輸送するという面で、離島住民の方々の生活を維持する上できわめて重要な役割りを果たしているわけでございますが、とかく離島航路ということで輸送需要が少ない。その一方でコストが相当かかる。しかも、ここ二、三年来の燃料費の高騰あるいはその他の経費の上昇によりまして、輸送コストが急激に上昇している現状にございます。しかし、こういった上昇する輸送コストをすべて貨物運賃収入あるいは旅客運賃収入という運賃収入でカバーするということになりますと、これまた離島住民の方々の生活あるいはその運賃の負担能力というようなことにもいろいろ問題が出てまいりますので、国といたしましては、そういう離島住民の生活を維持する上で必要不可欠な航路につきましては、一定の要件のもとに国がその欠損を補助いたしまして航路の維持を図るということをやっているわけでございます。さらに船舶整備公団という公団によります建造のための助成制度もとっているわけでございます。  しかし、いまお尋ねの、こういった補助制度の改善、あるいはたとえば同一の航路に複数の事業者がいるというような場合にそういう航路も補助の対象にすべきじゃないかというお尋ねかと思いますが、そういう点につきましては、複数の事業者が競合して航路を営んでいるという場合には、一般管理費等の面で重複する分があるとか、そういう補助金の効率的な使用という点に問題があるとか、それから唯一の航路につきましても今後さらに補助の対象にしていかなければならないというようなこともございまして、現時点ではなかなか困難な問題もあるわけでございますけれども、なお、離島航路の充実につきましては今後とも一層努力してまいりたいと思っております。
  13. 末木凰太郎

    ○末木説明員 大島つむぎについて御説明申し上げます。  先生御指摘のとおり、日韓両国の協議によりまして、大島つむぎを含む絹織物の韓国から日本への輸出については、韓国側で数量規制、自主規制をやってもらっております。大島つむぎにつきましては年間三万六千五百反ということになっておりまして、私ども毎月韓国政府からビザの発給の数字の通報を受けております。しかしながら、関係業界の間に、実は三万六千五百よりも多い大島つむぎが入っているのではないかという御指摘がございまして、そのような調査、先ほど御指摘になりましたような民間機関による調査によってもそういう疑いがある、こういう問題がございます。  この点につきましては、私どもはこれは韓国側の公式な通報数字を信用せざるを得ないという立場ではございますけれども、事によりましてそういったことが、三万六千五百を上回るつむぎが入っていては問題がございますので、問題意識を持って調査をしておるところでございます。  しかしながら、この問題は、本場大島つむぎとその他のつむぎをどうやって区分するかという識別の技術的な問題がございまして、残念ながら現在のところ現実的に容易に税関の窓口でチェックする方法が見つかっていない、こういう状況であります。したがいまして、今後産地の方々のお知恵もおかりしましてそういった方法考えまして、それによるチェックがどのようにできるか検討していきたいと思っております。  それから民間に対する指導につきましては、御指摘のように取扱商社五十三社という数字がございます。これにつきましては昨年の秋、九月三十日に、改めまして政府間のこのような数量取り決めがあるということを念頭に置いて取り扱いの数量を自粛するようにという強い指導を行ったところでございます。  それから第三点、税関の問題ございましたが、飛ばして最後のみやげ物でございます。これにつきましては従来旅行者一人三反まで自由に持ち込めることになっておりましたが、みやげ物ルートで不正な表示のされた韓国品、つまり韓国品に日本産の表示をしたものが入ってきたような実態もございましたので、その点を勘案しまして今月十六日からこれを二反に削減いたしました。その点につきまして航空会社、フェリーの会社、その他都道府県の旅券担当部等にPRを行いましてあわせて韓国側にも周知徹底の協力を求めたところでございます。現在過渡期でございますが、支障なく行われていると思います。  以上でございます。
  14. 忠内幹昌

    ○忠内説明員 韓国産の大島つむぎの税関チェックについて御説明申し上げます。  大島つむぎにつきましては韓国織物原糸輸出組合または韓国絞製品輸出組合が確認ビザを捺印してそのインボイスを税関に提出する、こういうことになっておりまして、税関ではそのインボイスがなければ絶対に輸入を認めない、こういう体制をとっております。このため従来からこの大島つむぎ問題の重要性にかんがみまして各税関に指示しまして韓国から輸入される織物全般につきまして現品を十分確認してインボイスが必要かどうかというのを厳重にチェックするように指示いたしております。  それから、にせ大島つむぎの問題でございますが、これは関税法七十一条によりまして原産地の虚偽表示のあった貨物に該当するということで、にせ表示のものについては輸入を許可しないという措置をとっております。この措置を担保するために、つむぎ輸入につきましてはほぼ一〇〇%全数チェックをするという厳重な体制をとっておりまして、本場大島つむぎというような表示のあるつむぎ類につきましては表示を抹消させるあるいは切り取らせるというようなことをさせておりまして、さらにそれが不可能な場合には積み戻しをさせるというような措置をとっております。  以上でございます。
  15. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 ガソリンスタンドの問題につきましてお答え申し上げます。  先生御指摘のように揮発油販売業界は過当競争の結果大変経営が悪化しておるという状態にございます。これに対しまして私ども従来から揮発油販売業法に基づきます指定地区制度というものあるいは全国石油協会という社団法人がございますけれども、その協会が行っております経営合理化資金の借り入れに対する債務保証事業についての基金造成、そういったいろいろな措置を講じてまいっているところでございます。  私どもといたしましては、こういった措置を今後とも適切に運用することによりまして揮発油販売業界の経営の健全化にさらに努力してまいりたいというふうに思っております。  また、日曜、祝日の休業の問題でございますが、これは省エネルギー対策の一環といたしまして業界の御協力も得まして実施をしてまいっているところでございますが、かなりの成果は上げてまいっているというふうに思っておりますけれども、確かに、御指摘のようにやや不徹底な向きが出てきておるということでございまして、現在、どうやったら長期的にこの日曜、祝日の休業体制、休業を長期的に継続できるかということにつきまして、学識経験者なども入れまして私どもで検討をしているところでございます。そういった検討の結果を踏まえましてさらに徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。
  16. 杉岡浩

    ○杉岡政府委員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、公共事業につきましては市民生活の充実という観点から整備を進めておるわけでございます。したがいまして、建設省におきましても毎年の予算配分につきましては事業あるいは地域、こういったものの施設の整備状況、これを勘案いたして配分いたしておるところでございます。先生ただいま九州地区の公共事業の寄与は非常に高いということでございますが、確かに北海道あるいは東北、九州、四国といったようなところにつきましては国民総支出に占めるIG、政府固定資本形成の割合が非常に高くなっております。したがいまして、こういったところにつきまして整備を進めるわけでございますが、そういったところは整備水準も低うございまして、建設省におきましてもそういったところに重点的な配分をいたしておるわけでございます。たとえば、これは自治省の調べでございますけれども、行政投資の地域別の配分でございますが、大都市地域と地方というふうに分けますと、昭和四十五年と昭和五十三年と分けますと五〇%から六〇%にウエートが高くなってきております。また南九州につきましても昭和四十五年三・六%から四・三%に公共投資の配分の比率が高まってきております。同様建設省におきましても南九州地区につきまして四・六%の配分になっております。このように整備水準を勘案いたしながらこの地域の配分を進めておるわけでございます。
  17. 山口昭

    ○山口説明員 木材の関係でございますが、先生御指摘のとおりただいま大変な不況でございまして、これは基本的には、一つは住宅建設が大変少なかったということと、七割を占めます外材の供給が抑えられた、こういう問題で構造的な問題ではございます。短期的にも大変不況でございまして、林野庁といたしましても関係省庁と連絡をとりながら次のような対策を昨年打ったわけでございます。一つは、木材屋さんはどうも中小企業が多いものでございますから、とかく身の回りの情報で動きやすいという性質を持っております。そういうことで私ども短期的な需給見通しを策定いたしまして、これを公表して外材の輸入抑制等につきまして関係業界に対する指導もやったところでございます。あわせまして、中小企業信用保険制度というのがございまして、倒産関連業種に指定をいたしまして、いろいろな恩典があるわけでございますが、銀行から金が借りやすいということになるわけでございます。それから三番目には、雇用保険法というのがございまして景気変動等指定業種というものに指定いたしまして、工場をたたんだ場合は雇用調整給付金というお金がおりることになっております。それから木材関連産業に対します円滑な融資をお願いするということで、政府系の三機関に対しましても長官名でお願いをしておるところでございます。  林野庁としましては今後とも木材関連産業の経営動向あるいは事態の推移等を十分見守りながら適宜適切な措置をとっていくつもりでございますが、昨年十一月に、先ほど申しました外材問題がございますので、外材問題検討会というのを開きまして、木材輸入の中長期の見通しのもとに今後どうするか、産地対策あるいは国内対策ということを相談しておるところでございます。
  18. 長野祐也

    長野委員 時間が超えておりますので、簡単に要望だけさせてもらいます。  電話料金遠近格差につきましては、今回格差改正をしましても外国と比べますとまだ相当な開きがありますので、今後抜本的な検討をお願いしたいと思います。  離島物価に関連して補助航路の問題でございますが、私は、現行制度では救済されない欠損航路が現実にあって、それが離島物価を高くしている要因の一つになっておりますので、現行制度そのものを見直してできるだけ広く救済できるように要望しておきたいと思います。  最後に大島つむぎの問題は、本場大島つむぎ生産者の死活にかかわる深刻な問題でありますと同時に、消費者の利害にかかわる問題でもありますので、いままでもいろいろ御苦労していただきましたが、今後ともさらに強力に対処していただくことを要望して、質問を終わります。
  19. 井上泉

    井上委員長 長田武士君。
  20. 長田武士

    ○長田委員 まず財政再建について河本長官お尋ねをいたします。  財政再建の手法といたしましてはいろいろあるわけでありますが、私は大きく分けて二つだろうと考えております。その二つにつきましては当然行財政の改革を前提とすることは言うまでもありません。一つ自然増収中心とする財政再建、第二番目には増税中心とする財政再建等だろうと思います。長官はこの点についてどのようなお考えでしょうか、お尋ねをいたします。
  21. 河本敏夫

    河本国務大臣 やはり財政再建考えます場合には、わが国経済安定成長路線に定着させることによりまして、持続的に税の自然増収も大きく期待できるような経済運営をすることが第一だと思います。それから第二には行財政の思い切った改革が必要だと思います。先ほどもちょっと触れましたが、今回のレーガン政権行財政の改革などは私は参考にすべきである、こう思います。それから、その二つによりまして財政再建ができればこれは大変結構でありますが、それによってもなお財政再建がむずかしいという場合にはある程度負担国民に新たにお願いするということになりますが、新たな負担お願いするということになりますと、やはり経済活力がそれだけそがれるわけでありますから、そういうことも考慮しながら総合的な判断が必要であろう、こう思います。
  22. 長田武士

    ○長田委員 長官が一月十九日の横浜市での講演で、大型間接税を五十七年度から導入すべきだという声もあるが五十七年度は第二次石油ショックの影響もなくなってかなり税の自然増収期待できる、こういう講演をされたようであります。私はその記事を見まして非常に感銘を深くいたしました。  そこでお尋ねするのでありますけれども、大蔵省は五十六年度の予算編成では大型新税の導入を見送りましたが、現行税制の枠内の増税には手をつけたわけであります。しかし五十七年度予算については恐らく大型間接税を導入する以外にないという考え方のようであります。そうなりますと大蔵省の考え河本経企庁長官考えは相当開きがあるようでありますけれども、その点どうでしょうか。
  23. 河本敏夫

    河本国務大臣 この問題につきましては政府部内では何ら結論は出ていないのです。もう少し経済の状態等を見ませんと何とも判断できませんので、目下いろいろな角度から検討中である、こういうのが現状だと思います。以上私が申し上げましたのは、物には順序がある、初めからお金が足りなくなったからすぐ増税だ、こういう結論を出すのはよくないと思います。やはりいろいろな工夫と努力を積み重ねて、なおそれでも日本財政再建ができない、こういうことであれば、そのときには国民の皆さん方にこれこれしかじかです、御協力をお願いします、そういうことであれば理解もしていただけるだろうけれども、しかしその前提としての工夫と努力が不十分であるという場合にはなかなか理解をしていただけないであろう、こういうことを言っておるわけでございまして、別に意見が違う、こういうことではございません。結論そのものは出ておらぬわけでありますから。
  24. 長田武士

    ○長田委員 そのような手法がいろいろありますけれども、どうかひとつ行政改革を初め財政の見直し、特に歳出の見直し等々をしっかりやっていただいて、そうして国民に信を問うというような形が一番いいのではないかと私は思っております。  次は、大蔵省の資料によりますと、国民所得に対する税負担の率を見てまいりますと、長官、五十四年度は二二%、五十五年度は二二・九%、五十六年度は二四・二%、このように急激にふえてきておるわけであります。新経済社会七カ年計画では、昭和六十年度の税負担というのは二六・五%なんです、このように見込んでおります。昭和六十年度といえば四年後でありますから、すでに五十六年度で税負担の率は二四・二%ですから、計画で見込んだ負担率を五十六年度はもう上回っているのじゃないか、そのように私は考えるわけであります。そうなりますと六十年度の二六・五%は目標をさらに上回ってしまう、そういうようなギャップが負担率において出てくるのではないか、この点長官、どうお考えでしょうか。
  25. 河本敏夫

    河本国務大臣 新七カ年計画では昭和六十年度における国民の税負担二六・五%との想定をしておりますが、それでは現在はどうなっておるかといいますと、五十五年度の数字はまだ出ておりません。出ておりませんが、政府計画どおり税収がふえるということでありますと大体二三・四、五%ぐらいになるのではないか、こう思います。正確に言いますと、国民経済計算ベースというのと租税収入ベースという二つの計算方法がありまして、国民経済計算ベースは企画庁でとっておる計算方法でありますが、それによりますと二三・三%ぐらいになるであろう、こういうことが想定をされますが、しかしまだ年度の途中でありますからこれは正確な数字ではありません、経済運営計画どおりいくということが前提になっておるわけでありますから。  それから五十六年度も税の自然増収を四兆五千億、それから新しい増税を中央、地方合わせますと約一兆五千億円ぐらいになりますが、それが計画どおり入ると想定をいたしまして国民経済計算ベースで二四・七%、それから租税収入ベースで二四・二%、大体この見当想定をしておるということでありますが、これも経済運営計画どおりいくということが前提になっておりまして、もし経済運営計画どおりいかない、したがって税収が思うように入ってこないということになりますとこの計算も狂ってくるわけであります。五十七年度以降も同じようなことが言えるわけでありまして、大規模な税の自然増収期待できるということになりますと比較的早くこの二六・五%という数字を達成することは可能であろう、これからの経済運営いかんにかかっている、このように言えると思います。
  26. 長田武士

    ○長田委員 次に、本日の新聞によりますと、公正取引委員会は独占禁止法と行政指導のあり方につきまして見解をまとめた、そして通産省と大蔵省に提示をしたという報道がされておるわけです。先日、その問題について私は予算委員会質問いたしております。長官もお聞きだったと思います。  そこで長官お尋ねするわけでありますが、昭和五十四年八月の新経済社会七カ年計画、これにおきましては、「各種規制制度については、」ちょっと間を飛ばしまして、「競争促進の見地から必要に応じ制度及び運用の見直しに努める。」このようにうたっておるわけであります。行管庁もまた政府規制のあり方について見直しの作業を進めておりますが、活力ある経済、そして物価の安定という立場から、経企庁長官はこうした問題についてどのように取り組んでいかれましょうか。
  27. 河本敏夫

    河本国務大臣 最近、景気動向がさえませんから不況カルテルをつくりたいという計画があちこちにあるようであります。全部合わせますと相当の数になるのではないかと思いますが、やはりこの運営は公取の方もあらゆる角度から慎重に検討されると私は思うのであります。安易にこれをやりますと、かえって経済活力拡大をしていく、そういう路線から外れることになりますので、これは厳正に運営をしてもらいたい、こう思っております。  物価対策を進めます場合に一番大事なことは、国民経済に密接な関係のある物資につきましては、政府の方もその需給動向、それから価格の動向等につきまして十分監視をしながら物価対策をやっていきたい、こういう基本方針を堅持しておりますので、安易に不況カルテルが運用されることになりますと、こういう面にも影響が出てまいりますので、経済の実情は十分考えなければなりませんけれども、以上のような点も公取の方としては私は当然留意をしておられることだと考えております。
  28. 長田武士

    ○長田委員 これに関連しまして、行政指導と独禁法の問題が当然私は出てくると思います。この問題については、石油やみカルテルの事件の判決もありますが、長官、行政指導と独禁法の関係についてはどうお考えでしょうか。
  29. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 行政指導と独禁法の問題でございますが、一般論は実は私お答えする立場でございません。石油の問題について限定して申し上げますが、私ども、現在石油業界をめぐります問題というのは非常に流動的でございます。それぞれの問題に応じましていろいろな行政指導をやっておるわけでございます。たとえば先般のイランからの原油輸入の再開問題に当たりまして、業界に高い油の輸入というのは避けるように、これは強力に指導いたしております。それから価格につきましても、御案内のように、従来から便乗値上げがないようにいろいろ指導をしております。また、たとえば灯油の安定供給のために灯油の在庫積み増しのための増産の要望、指導といったようなこともいろいろその問題に応じましてそれぞれやっているところでございます。  私どもといたしましては、もちろん行政指導が独禁法の精神に触れないように注意をしながらやっていくことは当然でございますけれども、それぞれの問題に応じまして行政指導というのはまた必要であるというふうに存じます。
  30. 長田武士

    ○長田委員 時間がありませんから次に参ります。  五十五年度物価見通しについて長官お尋ねいたします。  政府は五十五年十二月に消費者物価指数の目標六・四%を断念いたしました。長官も私もテレビ等でずいぶん、長官ともこの論議をやったわけでありますけれども、この委員会等でもさんざんやりました。長官、六・四%は必ず実行しますという約束をされましたね。十二月の閣議では簡単に経済見通しを変えて七%ということで、長官はずいぶん抵抗されたと思いますが、その点どうなんでしょうか。
  31. 河本敏夫

    河本国務大臣 六・四%という政府見通しを昨年一月に立てまして、そしてそれを必ず実現する、そういう決意のもとに取り組んでまいりましたし、それからまた昨年のベースアップが六・四%という消費者物価見通しを前提として妥結した、こういうことを考えますと、政府の責任は非常に重いと痛感をいたしておりますが、しかしながら昨年秋におけるイラン・イラク戦争、異常気象等が継続をいたしまして、残念ながらこの目標を上方修正せざるを得なくなったということは大変遺憾に考えております。現時点におきましては、幸いに物価は安定の方向に行っておりまして、十二月の全国は七・一%、一月は東京区部は六・八%、二月はあす発表いたしますが、東京区部はおおむね六%台ではなかろうか、こう思っております。実は一月、二月はもう少し下がるであろうと考えておったのでございますが、いろいろな事情がありまして下がらなかったのは大変私も遺憾に思っております。かつまた、消費者物価一つの大きな背景をなしております卸売物価の方が急速に鎮静化の方向に進んでおりまして、これからはこの影響がだんだん出てくるであろう、このように期待をいたしておるところでございます。
  32. 長田武士

    ○長田委員 予算委員会では長官は大体七・五%以内におさめるというような発言をされておるのですが、いまでもその数字は変わりありませんか。
  33. 廣江運弘

    廣江政府委員 消費者物価につきましては、十二月まで七・一%と発表されておりまして、一月は明日発表されるわけでございますが、東京都区部だけで先ほど申し上げましたように六・八%でございます。当初、昨年の暮れに五十五年度の実績見通しを検討いたしましたときよりも、野菜等を中心にいたしまして異常気象等が災いしまして上がっておるということも事実でございますが、それに対しまして、政府はかねて備えておりました野菜等の対策を実施すると同時に、さらに二月の初めには緊急野菜対策も実施いたしまして鎮静化に努めておるわけでございます。そういうわけで二月もまだ正確な数字がわかりませんし、また一カ月、三月という月も残されております。私どもとしては、野菜は相当下がってはおりますが、まだ一部残っておる野菜等につきましてはさらにもう一つ対策を打つというような努力をいたしておりまして、より一層低めるという方向にいたしております。正確な数字がまだいまの段階では、二月、三月がわかってないわけでございますので申し上げられませんが、そういう努力をしておるということをお含み願いたいと思います。
  34. 長田武士

    ○長田委員 努力はよくわかるわけでございますけれども、私の試算では七・五%はちょっと無理だろうという感じがいたします。大体八%に近い線が出てくるんじゃないか、残念ですけれども、そういうことを私も試算をいたしました。  そこで、そうなってきますと、六・四%の目標というのが大幅に上昇するということになります。それに基づいてさっき長官もおっしゃいましたとおり賃上げの幅も決定したわけでございますし、そうなりますと勤労所得の目減りというのは甚大でございます。そういう意味で、経済運営という中でも最も大事なものは経済運営一つ目標、この点がしっかりしないと国民生活は非常に圧迫され、生活が落ち込んでしまうということでございます。国民総生産の五十数%は個人消費であります。そういう意味では個人消費が停滞しておる。景気が思うようにどうも上向きにならぬというのはそこに大きな原因があると私は思うのですね。そういう意味では、まじめに働いている国民が常に国の政策の失敗から、目標の設定の失敗から大きな損害を受けるということのないようにしっかりやってもらいたいと思います。  この点、長官決意をひとつ……。
  35. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまのお話はごもっともでございますから、力いっぱいそういう方向努力したいと思います。
  36. 長田武士

    ○長田委員 次は五十六年度における消費者物価指数の上昇率、この目標は五・五%としておるわけであります。そこで、公共料金の値上げに加えまして私鉄運賃、それからタクシー料金の値上げ、この申請もすでに出されております。さらにそれに加えて酒税、そして物品税増税による値上げも予定されておるわけであります。こうした状況の中で、来年度の問題ですからまだ時間もございます、ございますけれども、およその見当といたしまして私は政府の言う五・五%に抑えることはちょっと不可能でないかという感じがいたします。長官は石油とかそういうものはある程度見通しは明るいということをおっしゃるとは思いますよ、あるいは公共料金も抑えるということを言うでしょう。言うでしょうけれども、これには五十五年度から五十六年度に繰り越される物価のげた、平均ベースからいま実際の指数が大きく隔たりがございます。そのげたが私の試算では二%強程度になるんではないかと思っておるのです。もしそうなりますと五・五%達成というのはいよいよむずかしいんじゃないか、こういうふうに思いますが、この点どうでしょうか。
  37. 廣江運弘

    廣江政府委員 げたは五十四年度から五十五年度の場合は三・六あったわけでございます。これはただ結果としてわかったわけでございまして、先生も御高承のように物価見通しを立てますときは、月ごととかあるいは品目ごとに出すわけではございませんで年を一本にいたして出しております。したがいまして、現在の段階で五十五年から五十六年度へのげたが幾らになるかというのは私どもの方では申し上げかねますし、わからないわけでございます。ただ、一般的に申しまして昨年のようなことはないだろう。昨年は一月に入りまして物価の基調も強かった上に季節商品等がまた非常に大きな高騰を見せたわけでございますが、ことしの場合は、季節商品が一月から二月の中旬ぐらいまでかなり高かったということも事実でございますけれども、基調といたしますと非常に落ちついてきているということは、たとえば季節商品を除きます全体の流れを見ていただきますとわかると思いますし、あるいは瞬間風速といったようなものではかりましても全体の基調は落ちついてきていると思います。そういう意味からは来年度へ繰り越すげたは昨年度のようなことはとてもない、かなり低い数字になるんではないかと思いますが、現実にどうなるかというのはいま申し上げかねるというのが実情でございます。
  38. 長田武士

    ○長田委員 私は去年と同じようなげたがあるなんて言ってはいないのです。大体二%ぐらいあるんだろうと言っているのです。物価局長どうですか。大ざっぱでいいよ。全然なくはないでしょう。
  39. 廣江運弘

    廣江政府委員 全然なくはないと思いますが、いま正確に二%であるかどうかということは、先ほどもお答えいたしましたようにまだわからない段階でございます。それはこれから三月の動向いかんに左右されるわけでございますのでその点は御寛恕願いたいと思います。
  40. 長田武士

    ○長田委員 それでは次は経済成長率についてお尋ねをしたいと思っております。  五十五年度は五十四年からの繰り越しされた経済成長のげたが二・三%ありましたね。これは間違いありませんか。確認しておかないと危ないから。
  41. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 二・三%でございます。
  42. 長田武士

    ○長田委員 したがって四・八%の経済成長率は私は比較的に達成できるだろうという感じを持っております。しかし五十六年度経済成長率のげたは一%強ぐらいしか見込めない、私はそういう感じがいたします。そうなりますと相当努力いたしましても五・三%の成長率というのは事実上むずかしいという判断を私は持っております。景気動向を見た上で、個人消費等を見た上で、あるいはげたのパーセントを見た上で、非常にむずかしいだろうという感じがいたします。  そこで、政府は五十五年九月に八項目にわたる経済対策を発表いたしました。そうして経済運営に当たってきたわけでありますけれども、現状の経済認識の中では私は当然新しい経済対策が必要だろうという感じを強く持っております。すでにその作業に入っておるということも――長官は予算委員会のときに私が言いましたら、指数が出なければ、それからだ、そういう答弁でしたが、もっともっと進んでいるような感じがいたします。  来年度の五・三%の達成ができるかどうかという問題と、それに対して現在の景気に対するタイムリーな政策、対策、これはいまどの程度進んでおるか、二点お尋ねいたします。
  43. 河本敏夫

    河本国務大臣 まだ内々相談しておる程度でございまして、三月の上旬にはいろいろな指標が集まりますので、それを見た上で最終の結論を出したい、こう思っております。したがいまして多分経済対策閣僚会議を開く日取りは十日過ぎになるであろう、こう考えておりますけれども、日取り等につきましてもまだ各省間の調整ができておりません。以上が現状でございます。
  44. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 先ほどの五十六年度の実質成長率五・三%の達成の問題とげたの問題でございますが、先ほど物価局長が申し上げましたようなことがげたの議論については成長率においても当てはまるわけでございまして、結果的に何%になるかということは、これは物価よりももっと四半期の成長率というものにつきましてはっきり見通すことは困難でございまして、果たして五十六年度に繰り越すげたがどの程度であるかということは、現在の段階ではまだわからないわけでございます。ただ一つ申し上げられることは、いわゆる在庫調整がややおくれておるということは事実でございますが、そこからの反発と回帰というようなものは当然調整が終わりますれば期待できるわけでございますから、五十六年度におきましてはその上り坂の角度といいますか、そこは五十五年度とは違うのではないか。五十五年度はむしろやや後半において調整という過程に入っておったわけでございますから、四半期の成長率、まだ十―十二あるいは一-三の動向はわかりませんが、まあ年の前半よりもやや調整局面にあるということからいいますと、そのカーブを考えてみますと五十六年度の五・三%につきましては、単にげたの問題だけではなくてそのカーブを御勘案いただけば、五十六年度の私どもの諸施策によりまして実現が十分可能ではないか、このように考えます。
  45. 長田武士

    ○長田委員 河本長官、二月十日に閣議が終了いたしまして記者会見されていますね。それまで第二次総合経済対策の柱となるものにつきまして、公共事業の前倒しを最大限実施すべきだ、特に五十六年度は五十二年度、五十三年度並みにすべきであるということを発言されているようであります。第二番目には金融政策の機動的運営、第三番目には物価対策、第四番目には中小企業対策、以上四本の柱を述べていらっしゃいますが、この対策は今後変わるというようなお考えでしょうか、あるいは変わらない予定ですか。
  46. 河本敏夫

    河本国務大臣 大体そういうことを中心に各省間の調整を進める、こういうことになろうかと思います。
  47. 長田武士

    ○長田委員 それではいま申し上げました四本の柱の中についてお尋ねをしたいと思っております。  まず、公共事業の執行についてでありますが、物価の予想以上の上昇によりまして、昨年から公共事業にはやむなくブレーキがかかったわけであります。これによりまして年度内消化はむずかしいように思うわけであります。契約率から見てまいりますと、五十五年十二月は七八・七%、前年同月の七九・七%を下回っておるわけであります。前年度の場合、翌年への繰越額は公共事業全体の六・四%であったことからも、契約ベースでは五%、金額にして七千億円を超す予算が消化されない可能性が十分出てきたなという感じが私はいたします。また、五十六年度公共事業については前倒し執行するのかどうか、さらに、上半期の執行率をどの程度考えていらっしゃるのか、この点いかがでしょうか。
  48. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 五十四年度の六・四%という数字につきましては、これは先生仰せのとおりでございます。明年度へどのくらい公共事業が繰り越されていくかということにつきましては、現在、公共事業の執行につきまして鋭意関係方面で努力をしておる最中でございます。現在のところ、それがどの程度になるかにつきましては、この程度というような数字をまだお示しする段階には立ち至っておりません。いずれにしても、これは実績が出るのがかなりおくれるわけでございますので、五十四年度の繰越額の六・四というものに相当するものが幾ら程度になるかということはかなり後にならないとわからないわけでございますが、私どもとしては、公共事業一つ景気を支える柱として、昨年九月の八項目の対策の中で、完全に実施をするように努力するという項目に挙げて取り組んでおるところでございます。
  49. 長田武士

    ○長田委員 それでは、時間がございませんので先に参ります。  次は、物価対策費の活用についてお尋ねをいたします。  河本長官お尋ねしたいのでありますが、今年度物価対策の予備費であります五百億円、これにつきましては、すでに与野党合意によって約四十四億が支出をされたわけであります。この中から、ことしに入ってから野菜価格が暴騰した際、野菜供給確保緊急特別対策といたしまして二億三百万円の支出が行われました。その効果はどの程度上がったと見ていらっしゃいましょうか。
  50. 廣江運弘

    廣江政府委員 二億の予備費支出を決定いたしまして即刻実施いたしております。一つは規格外の並み級野菜の出荷促進でございます。それからもう一つは、ホウレンソウを中心といたします葉茎類の生産及び出荷の促進ということ、さらに最後には、直接的に、高騰しておりましたキャベツを台湾等から緊急輸入をするということで、二億の支出を決定して実行しておるわけでございます。市場に並み級野菜は出回るようになっておりますし、キャベツの輸入も逐次行われております。  それがどういうふうに反映しているかということでございますが、まずホウレンソウはかなり下がってきております。それからキャベツも相当下がっております。総体で申しますと、野菜の大どころのものといいますか大方のものはかなり下がりまして、中には趨勢値価格という基準の価格のあたりに下がってきているものもございます。一部、高い、たとえばネギといったようなものがまだ残っておりますが、これにつきましてもこれからまた考え得る対策をとっていこう、こう思っておるわけでございまして、効果は出てきていると思います。
  51. 長田武士

    ○長田委員 これから期末に入るわけでありますけれども、物価対策上、私がさっき試算しましたとおり八%近く上昇というふうに考えられるわけでありますが、そういう異常事態がだんだん近づいてくる、そうなった場合には、あと四百五十六億円残っていますね、この金額に対しては、どのように機動的に使われるのか、計画がありますか。
  52. 廣江運弘

    廣江政府委員 あと一カ月残っておるわけでございまして、必要な対策は打っていかなければいけないと思っております。先ほども申し上げましたように、一月以来高騰しておりました野菜に対しましては、昨年からも備えておったわけでございますが、それだけでは足らないということで緊急に二億の対策を打ったわけでございます。さらに、先ほども少し言及いたしましたが、まだ高い野菜等につきましてはこれからも手を打っていくということでございまして、三月の初め早々、には、たとえばネギ等に対しての対策を考えるということでやっていきたいと思います。いずれにいたしましても、これから必要な対策は必要に応じて機動的に打っていかなければいけないと思っております。
  53. 長田武士

    ○長田委員 残りの物価対策費の使途について、野党三党で二月九日に自民党に申し入れました。その回答たるや全く納得できるものじゃないのですね。そこで、私は、別途、物価対策費の残額四百五十六億円については、五十六年度予算の予備費の中で確保すべきであると考えますが、この点いかがでしょうか。  さらに、物価環境の予測しがたい事態に備えるために、物価安定基金の創設をした方がいいのじゃないかなという感じがするのですが、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  54. 廣江運弘

    廣江政府委員 伺いますと、自民党の方から三党に御回答になりました文書の中には、物価については今後も機動的に対策をとっていくというふうにうたわれております。また、来年度につきましても、まず三十億円の国民生活安定対策等経済政策推進費をもって充てるが、物価対策については一般会計をもって機動的に対処するのだというふうにうたわれておりまして、今後もこれは機動的に運営していくということをお考えいただきたい。私どももそうしなければいけないと思っております。  次に、物価安定基金をつくれという御要望がございます。これは、基金というものをつくって固定的に運営をするよりも、私が先ほど申し上げましたように一般会計をもって機動的に対処する方がより機動的に対処できるのではないか、こういうことでお断りをされたと承っております。
  55. 長田武士

    ○長田委員 来年度の予算には、いまお話がありましたとおり、国民生活安定対策等経済政策推進費を三十億円計上していますね。これで事足りるということですか。これじゃ足りないでしょう。ことしの場合は足りないのですよ。プラス四十四億も使っているのです。そういう不測の事態は起きないと思っているのですか。
  56. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十六年度につきましては、先般、自民党の安倍政調会長から野党三党に回答いたしまして、まず経済企画庁の物価対策費三十億を使います、そして、足りない場合には一般会計を機動的に運営することによって対処する、こういう表現をいたしておりますが、機動的に対処するとはどういうことかという質問が出まして、それは必要な資金を予備費から出すことである、必要なものは幾らでも出します、そういう答弁をいたしまして御了解をしていただいたというように聞いております。
  57. 長田武士

    ○長田委員 次は、石油製品の値上げについてお尋ねをいたします。  政府の五十六年度経済見通しでは、五十六年度における平均石油価格を一バレル当たりどのくらいに見ていらっしゃるのか、また、これは五十五年度と比べて何%ぐらい上昇すると予想されておるのか、経企庁長官はこの点いかがでしょうか。
  58. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 御承知のように経済見通しを作成いたします場合に、石油の価格それだけをはっきり幾らというふうに取り出してつくっておるわけではございません。ただ非常に大きな要素でございますので、一応推計を内々はいたすわけでございますけれども、やはりこれはきわめて微妙な価格でございます。私ども作業をいたしました当時、十一月までの通関の実績がわかっておりました。そこから出発いたしましてさらに十二月のバリ島のOPEC総会におきます原油価格の値上げ幅等を勘案いたしまして計算を大体のところやってみたわけでございますが、これは毎年のことなんでございますけれども、いろいろそういう要素を頭の中に置きながら、結局最終的に計算をいたしますときは、OECDの経済見通し等で使われておりますような、実質価格では変わらないという前提で計算をするというやり方をとっております。情勢によりまして非常にその前提が無理なときは別でございますけれども、大体そういうことを総合勘案いたしまして、世界の工業品輸出価格の伸びぐらいではなかろうかというのがOECDの経済見通しの前提になっております。私どももそういうやり方で石油価格の推定は一応作業としてはやってはおりますが、きわめて微妙な問題でございますので、日本政府として幾らと見ておるかということについて対外的に申し上げることにつきましては御容赦いただいておるわけでございますので、その辺はお含みおきいただきたいわけでございます。  ただ、それではバリ島の値上げでどのくらいになるであろうかということにつきましては、大体わかっておるわけでございます。これは御承知のようにサウジアラビアが二ドル引き上げたわけでございますし、その他のOPEC諸国が大体四ドルぐらい引き上げるというような形で現在までのところ来ております。そのようなものを総合いたしますと、大体現在のところでは、こういうものを全部織り込みますと、原油の価格はこれだけでわが国に対する輸入価格の上昇幅としては二ドル七、八十セントぐらいになるのではないか、そんなふうに計算しております。
  59. 長田武士

    ○長田委員 去年末開かれましたOPECのバリ島総会、これを受けまして値上げの通告が来ているようですね。大体出そろったというふうに私聞いております。それはいま話を伺いましたけれども、やはり年間の経済運営をしっかり立てる場合においては石油の価格の動向というのは私は無視できないと思いますね。そういう点で何となくあいまいな答弁でありますけれども、消費者物価の五・五%の目標というのはやはり石油を中心として換算しなかったら私はできないような感じがするのですよ、見通しを立てる場合に。そうなると、全然それが不透明でどうのこうのということになると、またこの五・五%というのも非常に計算の基礎がおかしいのじゃないですか。そうすると、長官、やはり年末になるとこれもまた変えなくちゃいかぬというようなことに追い込まれるのじゃないでしょうかね。
  60. 河本敏夫

    河本国務大臣 もう一回説明します。
  61. 廣江運弘

    廣江政府委員 物価見通しのときには個別品目ごとに積み上げるわけではございません。ただ輸入物価、わけてもその中で一番重要な石油等につきましては十分頭の中に置きましてこれを算定いたしております。  その石油の価格をどう見たかということにつきましては、先ほど大竹審議官の説明いたしましたような価格をおおむね考えに置きましてやっております。すなわち、これは世界先進国、OECD事務局等におきまして一般的にとられております方法、実質的に価格が変わらない、世界工業品の輸出価格と同じぐらいの値上がりはするであろうという程度のことを前提に置きまして物価見通しは作成されております。
  62. 長田武士

    ○長田委員 この問題、見通しということじゃなくて、目標ということじゃなくて、春闘が始まりますけれども、やはりこれからの消費者物価の動向というのは賃上げにものすごく影響するし、基礎になっているのですよ。したがって、今回の六・四%の見通しが大幅に上回ってしまう、そして勤労所得が低下をする、〇・九のマイナスです。そうなりますと、いいかげんな目標じゃ困るという意味なんです。客観的にこうなりましたなんということであったんでは、まじめな国民サラリーマンは踏んだりけったりなんです。そういう意味では、いつも皆さんおっしゃるじゃありませんか。石油価格が上がりましたからこうなりましたというふうなことで、消費者物価は常に公共料金中心として石油の価格にこのように圧迫されましたということを言うじゃありませんか。来年度のこの目標を立てる場合も、当然石油価格というものは十分踏んまえて、同じような轍は踏むまいとして、しっかりした目標を掲げているんだと私は思うのですよ。その点どうですか、こんなことじゃ私は納得できないですね。
  63. 廣江運弘

    廣江政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、石油は物価におきまして非常に重要なウエートを占めておりますから、その点は十分に勘案をいたしまして作成いたしております。ただ、それが幾ら幾らを幾らに見たということは、国際市場との関係もありましてデリケートだから控えさせていただいたわけでございますが、そういう輸入物価、わけても石油等につきましては十分勘案をして、来年度経済見通しにおきます物価見通しというものをつくっております。  物価見通し自体ができるかどうかということにつきましては、先ほど来お答えいたしておりますが、いまは基調はかなり落ちついてきているということ、それから公共料金等の問題もございますし、石油も、これは非常に流動的な要素はございますが、五十五年度のような状態まではないだろうとも考えておりまして、五・五%という五十六年度物価見通しにつきましては達成できると思っておりますし、私どもも大いに努力をしたい、こう思っております。
  64. 長田武士

    ○長田委員 私は、需給がだぶついていますから、そういう点ではある程度ことしみたいなことはないと思います。思いますけれども、これからイランとイラク両方から入ってくる予定ですけれども、プレミアムが一・ハドルということですね。これは早い話が四十ドル以上ですよ。そうなりますと、勢い石油は下がることはありませんし、どうしても資源を保存しようというようなことで減産の方向にサウジあたりも出るようであります。そうなりますと、勢い減産部分は価格で賄おうというような傾向にどうしても出てくることはあたりまえなんです。そうなりますと、ある程度価格の高騰というのは見込んでいきませんと、日本の場合はほとんど、九九・七%が輸入でありますから対応できないんじゃないか、幾ら節約しても追いつけないんじゃないか、そういう点を私は危惧するのです。  ですから、石油が上がらなくて物価が鎮静している、これは私たちは本当にうれしいことなんです。望むところなんです。しかし、ことしみたいな轍を踏むとまじめな勤労者は何だということになりまして、結局苦しい思いをするということなんです。そういう点では、ひとつ長官、この目標でなくてもっと確たるものでなくてはならぬと思いますが、ひとつもう一度御答弁を。
  65. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど来、政府委員の方から答弁いたしておりますことは、OECDではその年の石油価格見通しを立てますときには一つ計算方法をつくっておるわけです。その内容につきましてはいま申し述べたとおりでございますが、日本政府におきましてもそれを参考にして石油価格見通しを立てる、こういうことでございまして、それじゃ、その内容が幾らかということにつきましては、これは公表しないことにいたしております。  OECDがなぜそういう計算方法をやっておるかといいますと、現在のような非常に急上昇した石油価格、しかもOPEC諸国には昨年も千二百億ドルのオイルマネーが余り、それからことしもバリ島の値上げがありましたから、やはり千二百億ドルのオイルマネーが余っておる。それが世界経済の混乱のもとになっておるわけでございまして、この使い切れないくらいのオイルマネーが現に存在しているわけでありますから、OECD全体としても工業製品の値上がりぐらいはしようがないだろうということで工業製品の値上がり見当のことを見込んでいくというのが、これまでのしきたりになっているわけでございます。  もしそれを非常に大幅に上げるんだという見通しを立てますと、これはOPEC諸国に対してどうぞどうぞ幾らでも上げてください、こういうことにもなりますので、油の現状を考えますと、以上申し上げましたような見通しを立てながら、OPEC諸国とそういうしっかりした交渉をしていくということが必要でなかろうか、それ以上は余り無理をしない方がいいんじゃないか、世界経済をこれ以上混乱させては困る、そういう交渉をしっかりしていくということがこれからの大事な点ではなかろうか、このように考えております。
  66. 長田武士

    ○長田委員 エネ庁、来ていますね。  先日、森山資源エネルギー長官は、二月十九日の予算委員会で、民族系石油会社を中心として値上げの意向を言ってきておる、需要期であることを考えてほしい、こういうふうにして何か延ばしているようであります。業界が希望しているのは三月値上げだというようなことで要望が来ているようでありますけれども、そこいらの事情はどうなっていましょうか。
  67. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど経済企画庁の方から御答弁がございましたけれども、昨年の十二月のバリ島総会におきまして原油価格の引き上げが行われました。それの日本の調達価格に響きます影響というのは、大体私どもの試算では二ドル七十五セントくらいというふうに見ているわけでございます。  そこで、平均的に申しますと、そういうことでございますが、いずれにいたしましてもサウジの油とそれからその他のOPEC産油国の油の価格が非常に大きく開いております。そういった原油価格の国際的な格差、これを反映いたしまして、日本におきましてもアラムコ系の企業、それから非アラムコ系の企業との間でかなりの原油調達コストに差がございます。そういった状況がございますので、現状を申しますと、非アラムコ系、これは主として民族系になりますが、非アラムコ系の企業の経営状況というのはかなり悪化しつつあるというふうに見ております。  私どもといたしまして、こういった原油調達コストの上昇、そういったものと、それから為替レートの今後の動向、そういったものを見きわめながら、石油元売り会社がどう対応していくかということを見守っておるところでございますけれども、当省としては上期に為替差益が出たわけでございますので、そういった為替差益を背景としてできるだけ企業努力によって価格の安定を図ってほしいということを期待しておるわけでございますが、ただ一方におきまして、先ほど申し上げましたように民族系企業中心とした非アラムコ系の企業の経営状況がかなり悪化しておるという状況があるわけでございまして、その辺をにらみながら今後対応考えていかざるを得ないというふうに思っております。
  68. 長田武士

    ○長田委員 そうすると、経営内容が非常に悪いんで、四月以降値上げせざるを得ないかなという感触なんですか。
  69. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 森山長官も御答弁申しましたように、需要期はできるだけ価格を安定してほしいということを私ども希望もしておりますし、企業においてもそういう方向努力をしておるというふうに思っておりますけれども、ただ、いずれにいたしましてもこのコストアップの要因というのはございます。それで為替レートも最近二月に入りますとやや円安の方向に動いておるというような問題もございます。したがいまして、今需要期についてはとにかくできるだけ安定させるように私どもとしては期待しているわけでございますけれども、いずれにしてもそういった諸要因を踏まえまして対応をしていくということになろうかと思います。
  70. 長田武士

    ○長田委員 あなたも御存じのとおり、去年、永山石連会長を参考人としてお呼びしまして、その国会答弁の中で、円高差益を還元しないかわりに製品価格の値上げは当分凍結するという発言をしておるのですよ。あなたも聞いたでしょう。そして何月もたたないうち、もう一月以降何か価格を改定せざるを得ないと新聞に出ているのですね。あなたは、こういうのはどう思いますか。
  71. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  十二月のバリ島総会、これの引き上げ影響は先ほど申し上げましたように二ドル七十五セントであるわけですが、実は現在の仕切り価格の建て値が決まりましたのが昨年の六月でございますが、これは値下げをやったわけですね。それでそのとき以降、そのバリ島総会前におきましても産油国の原油価格の引き上げがあったわけです。それをトータルいたしますと、大体四ドル強の値上がりになっております。そういった原油価格の値上がりがすでにこのバリ島総会前からあるわけでございますけれども、そういった問題につきましては現在までその為替差益を背景にいたしましてこれを吸収してきた、円高を背景として吸収してきた、こういう状況であるわけです。  私どもとしては先ほども申し上げましたように、少なくとも今需要期の間はさらにこの為替差益を背景にいたしましてこれを吸収していくように期待しているわけでございます。永山会長が為替差益あるいは円高、そういうものを背景として価格を安定さしていく、そういうことによって実質的に為替差益の消費者への還元を図っていく、こういうことで発言をされたと思っておりますけれども、そういう考え方のもとに現在まで私どもとしてもあるいは元売り会社にしても努力をしてまいっておる、これが現状でございます。
  72. 長田武士

    ○長田委員 それから最後になりますけれども、そうなりますと、結論から申し上げまして、二千二百九十二億、大手の差益、この差益は、では一月、二月で終わっちゃった、こういうことですか。
  73. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 これは実態を申しますと会社によってかなりいろいろ差がございます。先ほど申し上げましたように民族系を中心とした非アラムコ系の企業というのはかなりすでに経営状況が悪化しておる、こういうことでございまして、もちろんアラムコ系の企業の中にはまだ余裕があるところもございます。ただ、いずれにいたしましても一方において民族系を中心とする企業の経営状況は悪化しておる、こういう事実がございますので、その辺については私どもとしてもそういった実態というものを踏まえながら考えていかざるを得ないというふうに思っております。
  74. 長田武士

    ○長田委員 私たちはどうしても納得できないのは、ついせんだって為替差益の還元ということを主張いたしました。石油事情も多少値上がりをいたしておりますけれども、国民として納得できないのは、二カ月しかたってないのに、もうすぐ製品の値上げでござい。こんなことでは納得できません。この問題については私はいつも問題提起をしておるわけでありますが、やはりCIFあるいは製品別の仕入れ値段等々がきちっと明細になりませんと、この問題について私たちは討議できないのです。そういう意味で、どうかひとつ資料の提出と、それからこの問題については引き続き当委員会でもってまたお尋ねしてまいりたい、このように考えております。  以上です。
  75. 井上泉

    井上委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十三分開議
  76. 井上泉

    井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。塩田晋君。
  77. 塩田晋

    ○塩田委員 河本経済企画庁長官にお伺いいたします。  わが国経済の状況は、国民の非常な勤勉さと英知とその努力によりまして安定的な成長を続け、内部に各種の問題をはらみながらも、世界的には英、米、西ドイツ等に比べましてもむしろ優等生だと言われるぐらいの経済運営をして発展を続けておるということにつきましては、私たちはこれを率直に認めるものでございますし、河本長官を初め関係の方々が、その運営につきまして賢明に対処してこられたそのことに対しまして敬意を表するものでございます。今後とも長官の過去の豊富な御経験と、先を見通す洞察力を持った御炯眼でもって有効な運営を図っていっていただきたいということをまず最初に申し上げておきたいと思います。  その河本長官の御力量と見通しをもってしましても、消費者物価につきましては全くこれが外れたということ、五十五年度消費者物価六・四%、これは公約であり、必ず実現しますということを再三にわたっておっしゃいましたし、また昨年十月十九日のNHKの国会討論会におきましても、私はこのことをほとんど不可能だということで申し上げたところ、その時点でもなおかつ六・四%は実現可能だということを強弁をしておられましたし、その当時の実勢から見て全く不可能であるというところから、もう余り言われない方がいいですよ、言えば言うほど政府答弁というものが信用されなくなりますよということも私は御忠告申し上げたわけでございますが、果たせるかな十二月に至りまして、五十六年度経済計画策定の際に、六・四%を七%程度ということに修正をされました。これも七%程度ということで非常にあいまいな表現になっており、この「昭和五十六年度経済見通し経済運営の基本的態度」におきましても、ほかのところはポツ以下小数点第一位が書いてあるのですけれども、どうしてか消費者物価指数に限りましては「七」と書いてあるだけでポツがない。しかもその上の方は「%程度」という表現でございまして、これはいまだかつてないことですから、特別の意味があるのかどうかということをむしろ疑うわけでございます。  いずれにいたしましてもいまの勢いでいきますと、五十五年度消費者物価見通しは七・五%を超え、八%近いものになるのではないかというふうに考えられますが、この点についてどのようにお考えになっておられますか、お伺いいたします。
  78. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年の一月に政府がつくりました物価見通しで六・四%という目標を設定いたしまして、それが背景となりまして五十五年のベースアップが妥結をした、こういう経過もございまして、年末に至りまして物価目標を七%程度というように改定せざるを得ない事態になったということは大変遺憾に存じております。  そこで、七%程度とは何ぞや、なぜ程度がつくのか、こういうことでございますが、実は昨年の九月にイラン・イラク戦争が起きまして以来、石油価格見通しを立てるということは当時の時点で非常に困難な事情もございました。また、十二月までは比較的温暖な気候も続いておりましたが、一月以降、寒波あるいは異常乾燥など異常気象が発生する可能性もこれありというようなこともございまして、特に生鮮食料品等の価格見通しについてなかなかむずかしい、こういう条件がございましたので、七%程度というある程度の幅を持った表現にさせていただいたのであります。しかしながら、最近になりまして幸いに消費者物価は、大勢としては鎮静の方向に進んでおります。十二月は七・一%、一月は東京区部が六・八%、こういう水準でだんだんと安定の方向に進んでおりますから、なお年度末まで懸命の努力を続けてまいりたいと考えておるところでございます。
  79. 塩田晋

    ○塩田委員 消費者物価が当初の六・四%に対して七%と修正され、またこれはいまの勢いでは八%近い――現に五十五年暦年平均では対前年比八・〇%になっております。年度になりますと若干変わるかと思いますけれども、ほとんど八%に近いものになるだろうということは見通されます。  そこで、なぜこのように違ったかということにつきまして以前も御答弁ございました。冷夏の影響あるいは異常な気象による野菜等の価格の上昇等ということを言われましたが、基本的に単なる季節的なそういう商品の特別の事情ということだけであるのかどうか。そういったものを除いた場合にどのような状況になっているか。この物価上昇の要因、これをどのように分析しておられますか。局長からお願いします。
  80. 廣江運弘

    廣江政府委員 五十五年度消費者物価上昇の主な要因は、先ほど長官もお答えいたしましたが、やはり一番大きなものは原油等海外原材料価格の上昇の波及でございます。予想を超える大幅な原油価格の上昇がいろいろの面に波及しているということが大きな原因だと思っております。  そのほか、これも予想を超える冷夏、厳冬等の年度を通じた天候不順による季節商品等の上昇が大きな要因であったと思います。ただ、現在のところ卸売物価は顕著な鎮静化の傾向を示しておりますし、これを受けまして消費者物価も大勢としまして落ち着きの方向にあるということでございますし、私どもといたしましては昨年の秋以来いろいろ直接的な対策もやっておりますし、二月に入りましても野菜等に対する緊急対策も打っております。さらに、これからもそういうことを考え努力してまいりたいというふうに思っております。
  81. 塩田晋

    ○塩田委員 要因につきまして原油価格の上昇、これが基本的にあるということはおっしゃるとおりだと思います。そして季節的なものが加わっておるということでございますが、この六・四%を実現する、そのための要因分析、そしてその対策を種々に打ってこられたと思います。その対策がどのように働いたかあるいは働かなかったか、対策についての政府評価、それはどのように考えておられますか。
  82. 廣江運弘

    廣江政府委員 政府は第二次石油危機影響を最小限にとどめますよう五十四年以来数次にわたりまして総合物価対策を強力に推進してまいりました。五十五年度消費者物価上昇率は七%程度と当初の見通しを上回る見込みでございますが、このところ、先ほども申し上げましたように落ち着きの方向にございます。そして、国際的に見ましても西独と並びそのパフォーマンスは良好であると先生もおっしゃっていただいたところでございます。  いままで政府としてとりました物価政策物価対策は基本的には財政金融を含めました経済運営全般にあろうと思いますが、もう少し細かく分けてみましても、生活必需物資等の安定的供給の確保とその価格動向の調査、監視あるいは輸入政策の積極的活用、低生産性部門とか流通の合理化のための競争政策の推進あるいは公共料金の厳正な取り扱い等々ございます。さらに、最近は物価安定推進運動さらには野菜対策の機動的運営などを行っております。こうした対策はそれなりにそれぞれの効果を発揮いたしまして、先ほど言いましたような結果になっておると思います。五十五年度の当初消費者物価見通しが達成できなかったことは大変残念でございますが、これにつきましても今後ともより一層政策を充実していきたい、こういうふうに思っております。
  83. 塩田晋

    ○塩田委員 いま種々の対策についての評価がございましたが、私は、基本的には海外からの要因であるところの主として原油値上がり、これをいかにして最小限度にとどめるかということのいろいろの対策、これもいろいろとなされたことにつきましては評価するものでございますが、国内的には、基本的にはやはり各部門におけるところの生産性の向上、これが物価対策の最も基本的なファンダメンタルなものであると考えております。その生産性の上昇は最近どのような動向を示しておるか、対前年比につきましてまた今後の見通しも含めまして御説明いただきます。
  84. 井川博

    ○井川政府委員 生産性につきましてはこのところ非常に大きい伸びを示しているわけでございまして、これを製造業で申し上げますれば、五十四年につきましては対前年比一二%アップ、非常に大きい伸びを示しておるわけでございます。しかし、ことしに入りまして御案内のように鉱工業生産の伸び自体が非常にしめりがちであるというふうなこともございまして、それからまた稼働率も一時は非常に高い稼働率を示しましたけれども、このところ、一時に比べますと大分落ちてきておる。俗に言います実稼働率で言いますと、昨年の二月が最高でございましたが、九三%まで参りましたけれども、昨年の十一月、十二月ごろは八三、四%と落ちておるというふうなこともございます。これをたとえば期別で申し上げますと、五一十五年の一―三月は一三・八%でございましたが、四―六月は一〇・八に落ちておる、それから七―九月は六%というふうに落ちてまいっておりまして、十月、これは実は統計が遅うございましてまだ十月しか出ておりませんけれども七・二。したがいまして一昨年、五十四年につきましては一二%という伸びでございましたが、五十五年につきましてはまだ十一月以降の数字が出ておりませんので明確に申し上げるわけにはいきませんけれども、生産性としてはそういう意味では数字的に落ちてきておるということは申し上げられるかと思います。
  85. 塩田晋

    ○塩田委員 いま御説明ございましたのは製造業の平均だと思います。その動向は一〇%を超える大きな対前年上昇率を示しておるということでございますが、昨年の半ば以降において上昇率は鈍化してきておる、生産性は上がっておるんだけれども上昇率が一〇%を超えておったのがそれを割るようになってきたという動向の御説明でございます。もちろん国民総生産の生産性という場合には生産性の低い、また伸びが緩やかな部門を含んでおりますから、全体的には製造業が一番突出している部分だと思います。いずれにいたしましても、先頭を切っていく部門である製造業が伸びなければ全体的なレベルアップにならないということであると思います。国民全体となると、これにほぼ等しいものとしては一人当たりの実質国民総生産の伸びがほぼこれに当たるかと思います。それは五十五年度見通しでは四・八%でございますから、人口の伸びその他を割り引きましても四%は優に超えているものになるだろうと思います。そういった生産性の上昇、しかも製造部門を中心として大きな伸びを示してきたということが日本消費者物価を欧米諸国に比して優等生という声も上がるくらい比較的安定的な推移をさせた大きな原因ではないかと思います。この生産性の向上につきましては労使ともにそれこそ血みどろの取り組みをして、特に民間企業におきましては非常な取り組みをして実績を上げてきたということが言えると思います。  そういった観点から以下御質問申し上げたいと思うのですが、まずこの経済見通し運営の基本的態度の中にございます消費支出の動向、これから入ってまいりたいと思います。  河本経済企画庁長官は所信表明の中におきましても、まず最初に指摘をしておられます景気の動向の関係で、設備投資は大企業中心として堅調であるけれども個人消費はなお低調でありますという説明をしておられます。個人消費がなお低調であるという状況が続いておる中におきまして来年度民間最終消費支出の伸び、これは五十五年度八・三%、五十六年度は九・九%というふうにはずみがついた上昇、これを想定しておられます。まずこの点について、これはどのような根拠で想定をされたか御説明いただきます。
  86. 井川博

    ○井川政府委員 先ほどもお話にございましたように、五十五年度、本年度につきましては消費者物価が相当高い水準で推移をしたということがございますし、さらに加えまして米価あるいは現在豪雪といったような異常気象が意外に消費に影響してまいっております。したがいまして、全般的に言いますと消費マインドが少し冷え込んでいるという状況でございまして、先ほど先生は名目で五十五年度民間最終消費支出八・三%とおっしゃったわけでございますが、これを実質に直しますと二%というふうに非常に弱い状況でございます。これに対しまして来年度、五十六年度につきましては九・九%、実質で四・九%と見込んでおるわけでございますが、これは消費者物価が五・五%、非常に落ちついた姿になるということでございます。そういたしますと当然消費における消費マインド――消費マインドと申しましてもきわめて大幅に伸びるということではございませんで、率はわれわれ内々計算をいたしておりますのは前年度、五十四年度程度の消費性向に復活するのではないか。五十五年度物価が相当高い水準でございますので一ポイント程度落ちていましたけれども、五十四年度程度に復活をする。そういうふうなことで計算をいたしますと、実質四・九%程度民間消費支出は実現し得る、こういう考え方に立っておるわけであります。
  87. 塩田晋

    ○塩田委員 いま御説明ございましたのでなおさらはっきりしたわけでございますが、民間消費が、名目で八・三が九・九とはずみがつく以上に、実質的には二%が四・九%というふうに非常な消費の伸びがあるということでございます。その原因として消費マインドが高まるのだということでございますが、五十四年度程度というこの消費性向、平均で結構でございます、裏返せば貯蓄率になるわけでございますが、貯蓄率がそんなに下がって平均消費性向がそんなに急激に上がるものでございましょうか、具体的な数字でもって説明願います。
  88. 井川博

    ○井川政府委員 これはいろいろな計算がございますけれども、われわれは国民所得ベースで計算をいたしているわけでございますが、五十四年度につきましては消費性向が八一・五でございました。これは御承知のようにGNP統計はまだ七―九までしか出ておりません。実績が出ないと最終的にはわかりませんけれども、われわれの現在の推計では、五十五年度実績見通しとしては八〇・五、先ほど約一ポイントと申しましたのはそういうことでございますが、物価が上がったために消費性向としては少し下がる。来年度についてはこれが五十四年度程度、八一・五程度。したがってそのころの状況というふうなこと。これは当然のところ物価が落ちついてくる、景気拡大をしていくという明るい状況が消費マインドを、そうべらぼうに明るくするということではございませんが、一%程度押し上げることは当然あり得る、こういう考え方に立っているわけでございます。  ちなみに申し上げますと、五十五年度実績見通しは先ほど申し上げましたように実質で二%と非常に低い水準になったわけでございますが、五十四年度は実質五%でございます。その前の年の五十三年度は実質六・二%でございます。われわれは五十六年度民間最終消費支出を実質で四・九と置きましたのは、五十三年、五十四年まではいかぬが、それに近いところまでは期待してよかろう、こういう考え方でございます。
  89. 塩田晋

    ○塩田委員 消費性向につきましては数字を挙げて御説明いただきました。これにつきましてはまだまだ検討すべき問題が含まれておろうかと思いますが、次に進みまして、名目ベースで九・九%上昇するということ、これは一人当たりの消費支出にした場合にはどのような状況になりますか。
  90. 井川博

    ○井川政府委員 民間最終消費支出ということになりますと、個人消費のほかにも多少ほかの要因もございます。したがいまして一人当たりということになりますと、雇用者所得がどの程度伸びるかという問題になってくるわけであります。したがって民間消費支出については一人当たりという概念はちょっとないのでございます。
  91. 塩田晋

    ○塩田委員 それでは勤労者所得の伸び、そして一人当たりの伸びがどうなるかということ、それから勤労者所得が民間消費支出に関連する個人所得の中でどのくらいのウエートを占めておるかということです。
  92. 井川博

    ○井川政府委員 今年におきます賃金の伸び、ある程度あるわけでございますけれども、先生御案内のように、これを消費者物価で除しました実質賃金というのはマイナスないし横ばいという状況が続いている、こういうところでございます。労働省の現金給与総額につきまして申し上げますと、五十五暦年でございますと対前年七%アップという統計が先般発表されたわけでござていますし、これは一-十二月でございますから、これを四―十二月にいたしますと、六・九%。しそしそ間の消費者物価が八%、先ほど先生のお話にもございましたので、それで除しました実質賃金というのは、五十五暦年では〇・九マイナス、〇・九とはいえマイナスがついた。四―十二月でございますと一・一のマイナスという状況で推移をいたしておるわけでございます。  さて、これは実質ということでございますが、雇用者所得としてはどう見ているか、あるいは五十五年度というものをどういうふうに考えているかという問題があるわけでございます。雇用者所得につきましては、先般出しました来年度見通しにもその数字を明らかにしておるわけでございまして、これは雇用者全体の雇用者所得として五十五年度は九・七%の伸びを見ておりましたが、五十六年度は九・二%の伸びである。ただしここに雇用者の増という問題がございます。五十五年度につきましては雇用者の伸びが予想以上に大きかったということもございまして、二・三ございます。したがいまして、一人当たり雇用者所得としては、五十五年度は七・三ということになるわけでございます。五十六年度の見方でございますけれども、先ほどの雇用者総数の伸びが一・六ございますので、われわれといたしましては、雇用者所得の伸び見通しで七・五と考えているというふうに御了承いただければと思います。  なお、全体の中で云々というのがもし賃金等の関係でございましたら、われわれの雇用者所得というのは全般の雇用者としての所得を入れているわけでございまして、そのうちの所定内給与というものをとりますと約半分、五四%程度ということになるわけでございます。
  93. 塩田晋

    ○塩田委員 わかりました。  そこで、いま御説明ございましたように、消費者物価の異常な上昇、特に政府が公約されたものよりも大幅に上昇したということもありまして、名目賃金を上回る消費者物価上昇のために実質賃金が対前年度でマイナスになるという事態が起こっているわけでございます。これは戦後では、統計のできまして以降いまだかつてないことだったと思います。ということは、生産性の上昇に必死に取り組んできた、そして今日の日本経済をこのような困難な中におきましてなお成長をもたらすだけのところに達したわけでございますが、その生産性の上昇、そしてそれに貢献した労働者、勤労者の側から見ますと、言うならば国民経済のパイがふくれておる。これはよく賃上げを幾ら要求されてもないそでは振れぬ、一緒になって国民経済の分け前のもとになるパイを大きくしましょうということでいままで努力をしてきたわけでございますが、パイは明らかに実質国民所得でふえておる。国民経済規模は大きくなっておる。そして生産性は、先ほど言われましたように最近落ちておるとはいえ、一〇%前後の大きな伸びがある。それに大変な努力をしてきた。その中で消費者物価の安定、この上昇は相当なものでございますけれども、これよりももっと上がるところを何とか八%程度に抑えてきたというのは、やはり勤労者が自制をした、労働組合を中心とした自制的な賃上げ、これが大きく働いておるということ。これは河本企画庁長官も以前から指摘をしておられるところでございます。ところがその努力をして必死で取り組んだ勤労者に対しましてマイナスの実質所得、賃金でこたえたという結果になろうかと思いますが、この点どのように見ておられますか。
  94. 河本敏夫

    河本国務大臣 お考えのとおりだと思います。  ただ、いま日本経済全体を展望いたしますと、二年前に比べまして油の代金の支払いが二百五十億であったものが、ことしは約七百億払わなければならない。ざっと十兆円の支払い超過になっております。これがいわゆる石油危機でありまして、これがなお尾を引いておりまして、そのために一方では実質賃金の目減りということになってあらわれ、一方では中小企業の倒産の多発、こういうことにもあらわれておるわけであります。あるいはまた大企業の減産、こういうことにもあらわれておりまして、日本経済、至るところでこの影響があらわれておるわけでありますが、幸いに最近になりましてようやく国際収支の方もほぼ均衡を回復できるようになりました。つまり約四百五十億ドルほどの支払い超過をようやく埋めることができるようになったと思います。現在、国際収支はほぼ均衡を回復しておりまして、ことしは少し赤字が残るかもわかりませんが、おおむね均衡状態になりつつございます。でありますから、これからは先ほど指摘いたしました実質賃金の目減りとかあるいは中小企業の倒産の多発とか、そういういまの問題が解決できるような方向経済運営を全体として持っていきたいと考えておるところであります。
  95. 塩田晋

    ○塩田委員 そこでこの勤労者の実質賃金の低下、しかも昨年の春闘におきましての賃金アップの自粛、こういう状況からして、ことしの春の賃上げ闘争、これがかなり激しいものになるだろう、またそれに応じてもらわなければ必然的に激しいものになるということは覚悟してもらわないといけないと思うのです。この賃上げにつきましては、もちろん政府が直接タッチするものではない、労使間の自主的な交渉にゆだねられるということをおっしゃると思います。またそのような仕組みになっておるわけでございますから、これを否定するものではございません。しかしながら国民生活、勤労者の生活が実質マイナスになる、しかも生産性を上げ、国民経済全体、規模が大きくなった中でマイナスになるということについて、消費者物価を背景にして行われる賃上げ闘争というものは非常に激しいものになるだろうということを私は申し上げておきたいと思います。  日経連を初め経営陣の方々の発言を見ておりますと六・九%以上はまかりならぬというような発言もなされておるわけでございますが、消費者物価によるところの実質賃金のマイナス、これをカバーしてなお経済成長の分け前、パイを公平に分配するという立場から――しかもこれは後追いでございます。後追いの立場で労働団体が一致して一〇%以上の賃上げを求めて運動をしておるわけでございます。政府は労使の自主的な交渉に任せるという立場でございましょうけれども、少なくとも国民経済計算、来年度経済計画というものから見まして消費支出をかなり大幅に伸ばす、少なくとも抑えられないという形で実質的にもなお一層上げよう、上げなければ国民経済の需要と供給がバランスしないという組み立て方になっておりますから。この点につきまして、今春の労使の賃金交渉につきまして、国民経済計画との関連におきまして消費が大きなウエートを占めておるわけですから、これが伸びなければバランスが崩れるわけですから、その立場からどの程度のものを考えておられるか、どのようにこの問題を見ておられるかということについてお伺いいたします。
  96. 河本敏夫

    河本国務大臣 春のベースアップをどう見るかということでありますが、政府として言えますことは国民経済的な視野に立って判断をしていただきたい、こういうことであります。いまの御議論国民経済的な視野に立っての御議論でございますが、あるいは若干それと異なった見方もあろうかと思います。いずれにいたしましても広い角度からの判断が必要である、このように思います。  その一つは、生産性の向上というものも当然一つの参考になると思いますし、それからまた業種間において明暗が相当ございます。それから大企業中小企業との間にも明暗がございますので格差は若干出るかもわかりませんが、全体としては広い角度からの判断が望ましい、このように考えております。
  97. 塩田晋

    ○塩田委員 いまから闘われつつあります春の賃金の労使交渉、これに対して政府がどれぐらいが適当だということは政府立場から言えないということは理解するわけでございますけれども、少なくとも国民経済計画、そのバランスの上からいって消費支出がかなり伸びて達成されなければならないということになってくることは明らかになったと思います。しかも各自につきましては生活のかかっている問題であり、特に消費者物価影響、これを背に負って行われる賃金の要求交渉というものは非常に激しいものになるだろう。これに応じていただかなければそういうものになるだろうということを申し上げておきたいと思います。そこで、各企業の側からいいましてもないそでは振れぬ、もうけてないところは出せぬじゃないかということもよく言われるわけでございますが、先ほど長官が言われましたように広い国民的視野から、賃金ベースというものは世間相場というものがあるわけでございます。そのような観点から賃金というものが労使間の精力的な折衝によって決まっていくものと思うわけでございます。その賃上げの大きな要素として消費者物価上昇率というものと、それから一般的な労働力の需要と供給の関係からくる有効求人倍率、こういったものがもちろんベースアップの率に大きく影響する。いろいろな分析がなされております。数式でいろいろな試算が行われて、どの程度の有効求人倍率がどの程度賃上げ率に響くか、あるいはまた消費者物価上昇率がどの程度賃上げに響くか、過去のデータから一定の方程式があるわけでございます。これはいろいろな研究がなされておりますが、もう一つの大きな要因でやはり企業の利益、利益が大きいときには大きな賃上げ率になる。また、利益がなければ出そうと思ってもなかなか出せない。これはわかり切ったことでございます。そういった観点から見ますと、かなりの利益、企業収益に余裕があるという状況、少なくとも五十五年におきましてはかなりのものがあると思います。この点はどのように把握をしておられますか。その推移についてお伺いいたします。
  98. 河本敏夫

    河本国務大臣 九月の決算は各企業が比較的よかったようでありますが、最近の景気動向を反映いたしまして三月決算はごく一部の業種を除きましてはどうも大勢としては落ち込んでおるのではないか、こういう感じがいたします。政府もそういう判断をいたしまして何らかの対策が必要ではないかということで、いま相談をしておる最中でございますが、実は私どもが心配しておりますのは、こういう状態がずっと続きますと五十六年度経済がどうなるか、相当大幅な税の自然増収期待しておりますので、やはり五十六年度から五十七年度を展望した経済ということを考えますと、何とかいまのような停滞した状態を一刻も早く抜け出すことが必要だ、このように考えております。
  99. 塩田晋

    ○塩田委員 私たちは、現在の経済制度をとる限り、企業が利潤を上げ収益をふやす、そのために生産性を上げる、労使を挙げて取り組む、この基本的な姿勢を持っておるわけでございまして、企業が利益を上げるからけしからぬというような考え方は持っておりません。もうけなければならない、企業はそのためにあるんだという考えでございまして、しかも、そのもうけたものをどう使うか、その分配をいかに公平にやるか、国民経済的にも労使間においても適切にこれが分配されなければならないという立場でございます。  昨年末中国にも行ってまいりましたけれども、共産主義の経済、社会主義経済におきましても、いまや企業はもうけなければならない。利潤導入をし、そして労使でもって話し合いをして、その利潤の中から一定のものはボーナスとして分け合おう、社会主義経済、共産主義経済ですらそのような立場に立って企業努力をしておる、労使を挙げて取り組んでおる。この事情を見てきたわけでございますが、資本主義制度下にあるわが国企業の場合、大いにむだを節約し、そして工夫をして収益を伸ばす、労使を挙げて生産性の向上に取り組む、そして生活の内容をよくしていく、分配を公平にして日本経済のバランスある発展を図るということが基本であると思うのでございます。そういう点からいいますと、収益が昨年かなりふえたこと、これは賃上げのアップ率を大きくする一つの大きな要因、要素になると思います。これにかげりがきて収益が落ちてきておる、またことしどうなるかわからぬ、このような状態でないように経済環境をしなければならないと思うのでございます。  そこで、そういった背後の状況の中で、少なくとも消費者物価上昇によって政府が公約したものが達成できなくて、実質賃金がマイナスになったということであれば、なおさら政府として打てる手、手段は減税だと思います。政府が打てる手はあるわけです。もちろん公共料金はできるだけ据え置き、できるものは下げてもらう、また上げなければならぬものは上げる前に生産性の向上をうんと、公企体を中心にしてやってもらいたいということを再三要望しておるわけでございますが、少なくとも政府がいま直ちに手を打ってやれることは減税でございます。自然増収というお話もいまございましたが、自然増収を高める、それを一般勤労大衆の所得税からではなくして、一般勤労者を含めて、中小企業者を含めての所得税減税を直ちに、消費者物価の抑制が十分にいかなかったということの勤労者に対するあるいは中小企業者に対する見返りとして、これは政府の手でできることでございますから、ぜひとも実現していただきたい。所得税の課税最低限度額の引き上げ、われわれは、現行の二百一万五千円を二百二十万まで上げるべし、これによって生ずる減額は四千五百億円であると試算をしておりますが、この程度のものによってかなりの消費者、勤労者に対する見返りが政府の手によってできると考えます。この点について企画庁長官の厳然たる決意をぜひともお聞かせ願いたいと思います。
  100. 河本敏夫

    河本国務大臣 何分にも勤労者の所得がマイナスの状態である、こういう状態でございますから、財政事情さえ許せば減税をしたいということは、政府部内でも、だれも言いませんが、そういう感じだと思います。しかし、残念ながらことしは一兆五千億もの増税をしなければ財政がもたない、こういう状態でございますから、何とかことしはしんぼうしていただいて、これからの課題として残しておいていただきたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。塩田さんは、仮に減税をやったって、その半分ぐらいはまた税ではね返ってくるではないか、その分だけ景気もよくなるじゃないか、だから余り細かいことを言うな、こういうお考えもあろうかと思うのですが、ことしの財政事情考えまして、一方で一兆五千億の増税をし、一方でまた減税をやるというのも、大変苦しい事情でございますから、ことしは何とか御容赦を願いたい、こういう感じでございます。
  101. 塩田晋

    ○塩田委員 減税については、考えられる一つの手段であるということについては河本長官も御認識をいただいておるようでございますので、その観点に立ちましてひとつ政府部内で御努力をいただきたいと思います。  増税をしなければならぬような状況であるから、当面は勘弁してもらいたいということでございますけれども、増税をしなくてもやっていける方法もあるのではないか。これは、国対あるいは政審会長、野党各党を含めまして予算の修正あるいは要求をいたしております。こういった点をなお検討されまして、行財政の思い切った見直し、改革によって財源はできないわけはない。しかも、必死になって生産性の向上に取り組んできた勤労者に報いるに、消費者物価の、政府見通しよりも約束よりも大きな上昇であるとか、増税であるとか、公共料金の値上げあるいは社会保険料等の公租公課の上昇、増加といったことで報いられたのでは、勤労者、中小企業者はたまったものではございません。そういった観点から減税を強く要求し、その財源は決して手はないことはない、やればできる問題だということを指摘いたしまして、質問を終わります。
  102. 井上泉

    井上委員長 続いて岩佐恵美君。
  103. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 河本長官経済演説によりますと、五十六年度は、民間投資個人消費など国内の民間需要を中心景気拡大をする、そのためにも物価の安定が必要なのだということをずっと述べておられるわけですけれども、この点についてまずお伺いしたいと思います。「昭和五十六年度経済見通し経済運営の基本的態度」によりますと、五十五年度消費者物価指数実績見通し七%、五十六年度見通し五・五%となっています。この「昭和五十六年度経済見通し経済運営の基本的態度」は、作成前提として、昭和五十五年度消費者物価指数実績見通し一つの前提となる、SP18という短期経済モデルを使って作成をされたというふうに聞いているわけです。そうすると、この七%という実績見通しが狂ってくると来年度経済見通しが大きな影響を受けるのではないかと思うわけですが、この点について伺いたいと思います。
  104. 井川博

    ○井川政府委員 われわれの経済見通しのつくり方はいろいろございます。先生はいまSP18の話を出されましたが、これはモデルでございまして、そのモデルに一つの数値を当てはめますと、過去の趨勢等々から一つ方向が出てくる、こういうやり方をやっておりますが、実はわれわれはその方式ではなくて、段階的接近法、すなわち各分野の面を考慮に入れながら積み重ねていく、こういうやり方をやっております。その場合に、物価について大変大事なことは、どの水準かということよりは、何%アップかというそのアップ率でございます。したがって、七%が仮に変わってまいりました場合に影響を受けますのは、五十五年度経済には影響を受けるわけでございますが、五十六年度経済につきましては、五十六年度物価見通し五・五と置いておりますが、この五・五が変わりないとすればそう大きい影響は受けないということでございます。さすれば、では五十五年度見通しが変わってくるじゃないか、五十六年度ではないけれども五十五年度は変わってくるじゃないかということでございますが、御案内のように実績見通しでございまして、ある程度各般の実績を入れているということでございますから、そう大きい見込み違いにはならない、こういうふうに御了承いただきたいと思います。
  105. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いま政府消費者物価指数について対前年度比七%程度というふうなことを言っておられるわけですけれども、五十五年度消費者物価指数は一三八・三五、これを達成するためには五十六年一月から三月までを物価指数で一三七・五、対前年同月比上昇率五十六年一月四・四%、二月三・五%、三月二・六%、これは前の年のを参考にして考えるとそういう形で乗り切らなければ達成ができないのではないかと考えるわけです。これは午前中の質疑でも指摘があったところですが、五十六年一月の東京都区部消費者物価指数は前年同月比で六・八%、前月比一・一%の大幅な値上げになっています。これを同じ水準で全国がアップしたというふうにしますと、物価指数一四一二、前年同月比七・二%ということになるのではないか。五十五年に入ってから東京都区部全国との物価指数の状況を見ますと、全国東京都区部を上回る、そういう上昇になっています。ですから、一四一・一以上になる、そういう可能性もあると言えると思います。一月が一四一・一になれば、七・五%にするためにも二月は前年同月比五%、三月は四・二%、これは一月は出ているということで考えて先ほどの数字と違うわけですが、非常に低水準にしなければ達成できない。  そうなると、政府の七%程度というのが議論になることですが、七%というのは、七・五%にしたって二月、三月こんな低水準でないと達成できないということを数字が示しているというふうに思うわけでして、公共料金の一連の引き上げ、一月から郵便料金も上がっていますし、そういう意味では大変困難な状況だと思いますが、この点いかがでしょうか。
  106. 廣江運弘

    廣江政府委員 消費者物価は、卸売物価が基調的に非常に落ちついておりますし、その影響もありまして、卸売物価からの消費者物価への波及といったものもこのところ著しく鈍化してきているという状況にあります。基調といたしますと、総体的に落ちついておるということは再々申し上げたとおりでございます。ただ、昨年の四月以来の対前年同月比の実績が七%、八%といったところで推移してきておりまして、全体の数字といたしまして、現時点で厳しいということは事実でございますが、何分一月の全国もいまだしでございますし、二月もまだ出ておりませんし、なお三月も残っておるわけでございます。厳しいということを否定するわけではございませんが、一月以降、先ほど先生が触れられました一・一%の東京都区部物価を押し上げた要因にいたしましても、寄与度一%強のものが季節商品でございますし、そうしたものにつきましては昨年秋以来鋭意対策を打っているものの成果を問うてもおりますし、さらに二月の初めには緊急野菜対策等も講じ、なお高いものにつきましてもさらに対策を講ずるということで懸命に努力をしているところでございまして、今後とも一生懸命やるのだということをひとつ了としていただきたいと思います。
  107. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 また後でも議論をしたいと思いますけれども、電気やガスの大幅引き上げのときに、六・四%という消費者物価指数、政府みずからが掲げたそういう目標を、こんなに大幅に値上げしたら守ることができないだろう、私どものそういう再三の指摘に対して、政府は、六・四%、何としてもやり切るのだ、去年の国会での所信表明を初めずっとそういう決意があったわけでございますけれども、最近に至って七%、それが今度は程度という言葉がつき始めている。その点では物価について大変無策だし無責任なんではないかということを私は痛感をするわけです。  もうあちこちで言われていることですけれども、五十五年度というのは勤労者の実質賃金、これは戦後初めて年間を通してマイナスになる。そういう意味ではつくってはいけない記録をつくってしまっている。再三物価問題特別委員会の中でこれだけ物価問題について指摘をしていながらこういう状況になった。これは私は大変残念なことだと思っているのです。  この七%程度ということについて、一体政府程度というのはどう考えているのか、それから歴史的にも汚点を残すようなそういう状態、勤労者の生活を圧迫しているそういう状態についてどう考えられるのか、この点について再三先ほどから長官に皆さんが伺っておられますけれども、私は長官答弁を伺いたいと思います。
  108. 河本敏夫

    河本国務大臣 昭和五十五年、勤労者の所得が実質〇・九%減少いたしました。しかも昨年の春のベースアップの際には、政府が、消費者物価見通し六・四%は実現をいたします、そういう政府見通しを約束をした。そういう背景のもとに比較的低いベースアップが実現をいたしまして、以上申し上げましたような結果になったわけでございます。そして年末になりまして七%程度というふうに物価見通しを変えざるを得なかったということは、大変遺憾にも思いかつ残念にも考えております。  ただ、なぜ程度というものがついたのだということでございますが、これは当時石油の価格見通しが非常に困難でありました。次から次に値上げが続く、こういう状態でもありましたし、かつ異常気象の見通しがございまして、野菜価格についての確たる見通しがつかない、こういうこと等もございまして、七%には程度ということをつけまして改定見通し決定したわけでございますが、幸いに最近に至りましてようやく安定の方向に進んでおりますので、なお引き続きまして年度努力を重ねまして、改定した政府見通しに近づくように今後努力を続けてまいりたいと考えております。
  109. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 その七%程度というのはどのくらいになるのですか。
  110. 廣江運弘

    廣江政府委員 程度につきましては、従来から政府経済見通しにおきましては、経済のたてまえが自由市場経済であるということ、海外の要因等についても予測しがたい要素があるということ等を広く勘案いたしまして考えておるところでございます。  ただ、先生が御指摘になりましたように、五十五年度の実績見通しにおきまして、消費者物価につきましては小数点一位の段階ではなくて、一位の数字まででとどめております。その理由につきましては先ほど長官がお答えいたしましたような次第でございます。  その程度の幅についてどう考えているかという御質問だと思いますが、そういう事情を勘案いたしまして程度という文字をつけておるわけでございますから、いろいろのお考えはございましょうが、ここはひとつ良識的に程度とお受け取りをいただきたい、こういうふうに思います。
  111. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 何か判じ物みたいなやりとりになってしまっているわけですけれども、そうするとコンマ以下ではなくて一%台なんだということなのですか。
  112. 廣江運弘

    廣江政府委員 お考えいただけると思いますが、ほかのものにつきまして、たとえば六・四%かつそれは程度がついております。それから七%、今度の実績見通しにおきましては七%程度ということでございますので、その辺にニュアンスの差があるというふうにお考えいただきたいと思います。
  113. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、六・四%程度ということは六・四一もあるし四九もある、七%程度というのは七・一もあるし七・九もある、そういうことなのですか。
  114. 廣江運弘

    廣江政府委員 先ほどもお答えいたしましたが、政府経済見通しにおきましては、わが国経済運営のたてまえからして、こういう数字にはある程度の幅があるのだということでございますので、余りここを定量的に決めてかかるのも、そういうふうなたてまえで出しているということからいたしますと、それほど適切なことではないのではないかということでございまして、多少のニュアンスの差はあるということを申し述べさせていただいたわけでございます。
  115. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私はいまの答弁を伺って大変問題だというふうに思うのですね。それはいままでの討論でも明らかでございますけれども、消費者物価というのが賃金を決める際のメルクマールにされるわけですね。それが、程度ということでございます、適当におはかりくださいみたいな、何かみんなが同床異夢なのかよくわかりませんけれども、それぞればらばらの数字で考える、そういうようなことで無責任な答弁をされるというのは、これを国民が聞いたら本当にとんでもないことだというふうに怒りが返ってくるというふうに思います。この問題についてこれ以上私は申し上げません。  次に、これは長官によく認識をしていただきたいということで、国民生活の実態につきまして幾つか事例を挙げさせていただきたいと思います。  これは経済企画庁自身がつくられている数字でも明らかなように、全国勤労者世帯の五分位階級別の可処分所得、それから非消費支出、これについてずっと推移を追っているわけですけれども、これが所得税減税がされなくなりました五十二年から見ますと、非消費支出が一〇・三%から、五十五年になりますと一三%に平均でふえてきているわけです。  それから、第一分位、低所得というふうなところになると思いますが、ここのところは非消費支出が六・七から八・九というふうに非常に急速に高まってきているわけです。所得税減税をやるかやらないかいま議論になっているところですけれども、所得税減税を見送ることによって実質増税になる、その結果こういう数字が出てきているわけです。  これからなお健康保険の値上げだとか、これは三月、十月と段階的に行われます。それから、年金が各種上がります。これが十月から上がるわけですが、そうなるとますますこの問題は深刻になってくるのではないかというふうに指摘できると思いますが、その点いかがでしょうか。
  116. 廣江運弘

    廣江政府委員 家計におきます公共料金等の支出のウエートを所得階層を分けてみた場合に、絶対額では一分位といいますか低い階層が小さいわけでございますが、支出全体に占める割合といったものは大きくなる傾向にあるということは事実でございますし、先生が示されましたように、これを時系列で見ましても言えると思います。ただ、全体として見ますと、たとえば公共料金等を抑えた年度等におきまして少し相対の平均額が小さくなるということはございますが、時系列で見ましても総じて一分位のウエートが、額は小さいわけでございますが、率で見ますと高くなっているということは事実でございます。
  117. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この率というのは、低所得層の場合には絶対額についても全体が非常に少ないわけですから打撃を受けるわけですけれども、低所得者のみならず、平均でも調整減税をやらないことによって非常に生活が圧迫をされてきているわけでございますので、先ほど長官から財政が許せば減税をしたいという気持ちをみんな持っているのだというふうな御発言があったわけですけれども、生活実態からいけば、私は経企庁長官が率先をしてこの点についてやるべきだという指摘をしていかなければいけないのではないかというふうに思います。  次に、厚生省の実態調査について考えていただきたいと思いますが、これは五十五年の九月一日に調査をされました「国民生活実態調査の概況」というものでございます。それによりますと、現在の暮らしについて、総数で見ると「大変苦しい」と答えた人が一三・一%、「やや苦しい」と答えた人が三六・一%、合わせて四九・二%にも上っています。五十四年から比べると一〇%も「苦しい」と答えた人がふえています。  先ほどの第一・四分位では、これは所得四分位階級に分けているのですが、二一・六%が「大変苦しい」、四二・七%が「やや苦しい」、合わせて六四・三%が「苦しい」というふうに答えています。  また、第二・四分位でも一三・九%が「大変苦しい」、四〇%が「やや苦しい」、合わせて五三・九%で、低所得層の生活が非常に圧迫をされているということが言えると思います。そして、ではこれをどういうところでみんな切り詰めようとしているのか、これについても細かいアンケートがとられているわけですが、まず、衣服費でもって切り詰めよう、これが半数以上ですね。五十四年度一四・九%だったものが五十五年度五四・八%に上っています。それからレジャー費、一三・八%だったものが四二・九%に上っています。光熱費、八・八%、これが三七・三%、外食費、一二・五%が三三%になっています。それから小遣いですが、サラリーマンのふところに関係するこれについてもふえています。一一・七%だった切り詰めようという人たちが二八・三%になっています。それから耐久消費財について見ますと、九・七%のものが二六・五%になるというような形になっています。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕  そこで、私はいままでのことについて二点、河本長官のお考えを伺いたいと思うのですが、一つは、ぜひとも所得税減税を行うべきだ、特に低所得者層で苦しいのだから、その点、率先して要求すべきであるというふうに思います。  それと二つ目には、この節約という項目を見ますと、消費支出が軒並みダウンするというようなことがうかがわれるわけで、物価を安定させて消費支出を伸ばすんだということが本当に可能なのかどうか。所得税減税はやらない、物価は安定しないという状況ではこれすらも守られないのではないか、こういうふうに思うわけで、この二点について伺いたいと思います。
  118. 河本敏夫

    河本国務大臣 生活の実態につきましては、いまお述べになったとおりだと思います。また、消費支出が減っておるということもそのとおりだと思います。そういう状態でございますから、先ほどもちょっと触れましたが、財政事情さえ許せばこの際はある程度減税が望ましいということは、これはだれしも考えているところだと思いますが、何分にも大規模増税をしないと財政がもたない、こういう現状でございますから、ことしは何とか御容赦を願いたいというのが現在の心境でございます。
  119. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、学生の実態について触れたいと思います。  大学生協連というところが昨年の九月から十月にかけて六千百七十二名の学生に対して生活実態調査を行っております。これでわかったことは、食費と住居費、交通費、この三つで学生の支出の六割も占めている。それも住居費が前年比一二%ふえている。交通費が一一%ふえている。そういう点ではきわめてこの二つが高くなっているわけでございますけれども、学生自身の訴えによると、この三つの項目のうち住居費と交通費、これは節約不可能な固定費と言えるそういう支出なんだ、だから全体が窮屈になれば結局は食費にしわ寄せが行くんだということを言っています。  この食費の問題について詳しく見てみますと、下宿生を取り上げているわけですが、一カ月の食費は二万八千八百円だというのです。一日当たり九百六十円です。そのうち昼食費が三百六十一円、それを差し引いてしまうと六百円。この六百円で夕食をもし外食にすれば、それで終わり、朝も食べられない、そういうような状況になって、本当に深刻な事態になっているわけです。  この学生の問題ではもう一つ授業料の引き上げ、これが大変な事態になっていて、それらを合わせると、これは中央大学が出している学生の生活実態についてのいろいろなアンケート調査の報告ですけれども、経常的学費の負担感というのが、昼間部の生徒について見ると、四十九年の調査では「かなり重い」というふうに答えた人が九%にすぎなかったけれども、今回の調査では三五・三%に急上昇しています。「それほどでない。ときに小遣いに困る」、そういう人が三一・六%から一〇・九%に激減をしている。こういう数字からも本当に学生が学問どころではない、生活が追い詰められてきている、そういう実態が明らかになっていると思います。  ところが、それに追い打ちをかけるように、春に国鉄と私鉄、大幅に通学定期が値上げされます。また、国立大学の授業料も上がります。私立の八割が授業料アップをいま打ち出しています。こういう中で学生のための通学定期の割引引き下げ、これがどんどん行われているわけですが、これについては学生の生活実態をもっと把握して、こういうことがないように経企庁としてがんばってほしい。それから国立大の授業料やあるいは私学の授業料の値上げについて、安易に値上げの方向に行かないように問題を解決をすべきだ。それから最近、奨学金に利子をつける、そういう話が出ていますが、これも学生にとっては大変困難な問題だというふうに聞いています。  この四点について、国立大授業料と私学を一つにしますと三点についてどうお考えか、考え方を伺いたいと思います。
  120. 廣江運弘

    廣江政府委員 まず、通学定期の割引率についてお答えをいたします。  日本国有鉄道につきましては、昭和五十四年十二月、「日本国有鉄道の再建について」という閣議了解が行われておりまして、定期割引率の修正を行うこととされております。五十五年度の運賃改定にも行われておりますし、なお、五十六年の申請をされております運賃改定においてもその修正が提案されていると聞いております。ただ、五十五年度の運賃改定におきましても、申請の段階から実際の認可に至ります段階では、その間に学生等運賃割引率の修正が、物価国民生活に与える影響を考慮いたしまして調整が行われております。また、民間の私鉄につきましては、長い歴史的経過の中で通学定期の割引率につきましてはかなり高率の割引率が設定されているところでございますが、事業者の経営上の負担となっているということも考慮いたしまして漸次適正化を図っていく必要があろうと考えられます。ただ、そういう一方の要請を考え、かつ先ほども触れましたように国民生活に与える影響にも十分配意して今後とも対処していかなければいけないものだと思っております。  次に、今年度は大学学部の入学料につきまして八万円から十万円へという改正が予定されておりますが、現状のまま据え置く場合には、国立、私立間の格差がさらに拡大するということもありますので、これらの事情も勘案して、こういうふうな措置をとっているという点を御了解いただきたいと思います。
  121. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いま定期の問題については、学生の実情をもっと見て善処をしていただきたいというふうに思います。  次に、公共料金の問題ですけれども、政府の「歳出百科」によれば「普通の商品は言わば、すべて受益者負担であり、公共料金と言えども商品やサービスの価格なのですから、」受益者負担は当然のことというふうに指摘をしているわけですけれども、この議論は公共性の原則を完全に無視している。そういう点では大変問題だというふうに思います。こういう姿勢でいきますと、特に低所得者ほど負担が大きくなります。これは経済企画庁の先ほどの資料に基づいて見ましても、昭和四十七年消費支出に対する公共料金支出の割合は平均で一〇・四%、第一分位が一一・三%、それが五十四年には平均で一一・三%、それに対して第一分位では一三・一%に達しています。明らかに低所得者に負担が高まってきているわけです。  従来公共料金の問題については、たとえば四十八年の十二月二十二日、公共料金を厳しく抑制することが閣議了解をされ、公共料金の改定を抑制するとともに、当時すでに改定が決まっていた国鉄運賃と米価の実施時期を半年延ばしたということがあります。五十年に入っても、電報電話料金について物価国民生活への影響に配慮して五十一年度に繰り延べる、そういうことが行われているわけですが、私は五十五年度公共料金の、本当に恐ろしくめちゃくちゃな値上げだと思いますが、こういう事態を経企庁が放置をすべきではない、経企庁が毅然としなければ、どこもがんばるところはないわけですから、この点について、公共料金の安易な値上げを許さない、そういう決意を伺いたいと思います。
  122. 廣江運弘

    廣江政府委員 公共料金は、基本的には経営合理化の徹底化に努めるということをまず第一前提といたしまして、事業の健全な運営が確保されるよう料金水準が定められるべきものであります。  また、この負担につきましては、サービスを利用するものがその利用によって受ける便益の程度に応じて費用を負担する、いわゆる受益者負担の原則によるべきだと思います。ただ、改定に当たりましては、このような考え方を原則としつつ、先ほども申し述べましたが、経営の徹底した合理化というのが前提であって、かつ物価及び国民生活に及ぼす影響も十分配慮して厳正に取り扱う方針で臨んでいるところでございます。言うまでもなく、その改定に当たりましては、真にやむを得ないものに限るとともに、その実施時期とか値上げの幅につきましても、物価国民生活への配慮から、極力調整してきているところでございます。  五十六年度公共料金の改定でございますが、予算関連のものは五十五年度物価に及ぼす寄与度〇・五%ポイント程度に比べまして、いまの段階で考えておりますのは〇・三%ポイント程度でございます。
  123. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いま五十五年度公共料金引き上げによる消費者、国民へのはっきりした生活圧迫があったわけですから、この点については、その反省の上に立って今後きちんとやっていただきたい、このことを強く要望をしておきたいと思います。  さらに、電気、ガス業界が大幅な引き上げによって五十五年度大変な利益を上げています。電力業界全体で九月期四千七百二十五億円の経常利益を上げています。東電は一千五十七億、関電が一千六十三億、またガス業界が全体で三百十七億、そのうち東京瓦斯が百四十九億、大阪瓦斯百四十八億、東邦瓦斯二十億、こういうふうになっているわけです。このような利益をつくり出している最も大きな原因というのは円高差益である。これはもちろんのことですけれども、あと原子力発電所の稼働率が認可時には五五・八%だったものが、現在十電力七社平均で六一・二%にも達していて、重油換算金額で九百億円以上にも達している、私はこのことを見逃すことができないと思います。また出水率の向上で関西電力だけで二百六十億円も燃料費が減っていて、それが増収になっています。このような計算と実際のずれ、言ってみれば法外な利益、こういうものを私は国民に還元すべきだと考えますが、この点についてお考えを伺いたいと思います。  時間がありませんので、続けてもう一点指摘をしたいと思いますが、昨年からこの委員会で指摘をしてきましたように、石油業界九千億円以上に上る円高差益、公定歩合引き下げ金利メリット、そういうものによって利益を得ています。三月期の利益は昨年九月の史上空前の利益をさらに上回るのではないかと予想されています。先日、エッソ、モービルに石油製品を供給している東亜燃料の十二月決算が公表されましたが、経常利益で実に六百三十五億円の利益を上げています。これは前期が百三十二億でしたから、四・八倍もの利益増になっています。現在の価格水準がいかに右回いものかということを示していると思います。  さらに石油業界は値上げを準備をしていて、とりわけ庶民の生活にとって欠かすことのできない灯油が、また量が減らされて値上げがされるのではないか、いわゆるC重油ネックを理由にされるのではないかという懸念が生まれてきています。特にC重油ネックについては、四月から早目に夏期定期修理に入って、しかも修理期間は安全強化にも役立つということで、より時間をかけるなど、減産をしようとしている、それが灯油にはね返ってくる、そういうことが推定をされるわけです。現在でも灯油は在庫がどんどん減ってきています。十一月一〇一・一%だったものが、十二月九六・五%、一月には八六・二%、これは四十八年の春の生産調整による灯油の大幅な価格の引き上げと、そして供給に対する不安、この状態を引き写すかのような数字であると心配されるわけですけれども、この点についてあわせて、通産省の方においでをいただいていると思いますので、答弁をいただきたいと思います。     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕
  124. 植松敏

    ○植松説明員 電力、ガス関係の御質問にお答えさせていただきます。  昨年春の電力、ガス料金の改定に際しましては、物価あるいは国民生活への影響を十分考慮しながら経営の徹底した合理化を前提として原価主義にのっとって厳正に査定をした次第でございます。その後、いま先生御指摘のとおり五十五年の中間決算が出ましたので、その結果は為替レートが円高で推移したこととか、あるいは電力につきましては史上まれに見る高収益に恵まれたこと、その他御指摘の点がございまして、かなり好調な決算が出たことは事実でございます。ただ、いずれも特殊要因によるものでございまして、その後、為替レートは円高に推移しておりますが、原油価格の方は昨年末のOPEC総会以降も値上げ通告がございまして全体的に上昇してきているというようなことでございまして、今後の収支動向につきましては十分慎重に見守っていく必要があるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、電気料金等の公共料金につきましては安定的に維持していくということが重要かと思いますので、今後収支の状況を踏まえながら、現行料金をできるだけ長く維持し、料金の安定に努めてまいりたい、かように考えております。
  125. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 石油の問題につきまして、お答え申し上げます。  現在の石油企業の経営状況でございますけれども、確かに五十五年度の上期に、ユーザンス差益を中心にいたしましてかなりの好決算を上げたということであったわけでございますけれども、現状を申し上げますと、昨年の十二月のOPEC総会の合意を受けての各産油国の価格の引き上げもございました。現状を申しますと、非アラムコ系の石油企業の経営状況というのはかなり苦しい状況になってきているのが実態でございます。  今後の石油製品価格でございますけれども、こういった原油価格の上昇などのコストアップ要因、それから為替レートの動向、こういったものを見きわめながら、元売り各社が対応していくということになってくるというふうに思っておりますけれども、当省といたしましては、とにかく上期におきましてかなりの為替差益を計上した、こういうことを背景といたしまして、できるだけ企業努力により価格の安定が図られるように期待しておる、こういう状況でございます。  それから灯油の問題でございますけれども、灯油の供給につきましては、五十五年度現在まで順調に供給は図られてきておるというふうに思っております。一月末の在庫が約四百九十万キロリットルということで、前年同月の水準を一二、三%下回っておるわけですけれども、これはむしろ昨年の水準が非常に高かったということでございまして、これは暖冬の影響で昨年の在庫水準が非常に高かったわけでございます。過去五年の一月の在庫レベル、これは大体四百二十八万キロリットルでございまして、そういった過去五年の平均に比べますとやはり上回っておるということでございまして、私どもとしては、今年度の灯油の安定供給については心配はないというふうに思っております。  なお、いわゆるC重油ネックの問題です。ちょっと申し上げますと、C重油の需要というのは、これは燃料転換あるいはエネルギー節約、そういった影響がC重油の分野で非常に大きく出てくるわけです。そういった関係で需要がかなり落ち込んでおります。  他方、生産の方は、石油製品が連産品であるという特殊事情から申しまして、灯油の安定供給確保のためにある程度の生産、原処理をしていかなければいけないということから申しまして、生産はこれも前年水準を下回っておりますけれども、ある程度の水準を維持してきている状況でございます。その結果といたしまして、現在C重油の在庫レベルというのは非常に高い水準にございます。  私どもとしては、こういったC重油の問題というのは非常に重要な問題というふうに考えているわけでございまして、あるいは電力業界に対して原油生だきからC重油に切りかえてもらう、それによってC重油の取引量の増加を図るというようなことも対策としてやっておりますし、あるいは精製設備の運転条件の変更、できるだけ重油の得率を下げ、灯油の中間三品の得率を上げるというような運転条件の変更の指導といったようなことをやってまいっているわけでございます。  いずれにいたしましても、灯油につきましては、先生御指摘のように国民生活に非常に重要な物資であるということから、私どもとしては灯油の安定供給確保に万全の努力を傾けてまいりたいというふうに思っています。
  126. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、きょうの新聞によりますと、公正取引委員会が行政指導について基準を各省庁と話し合いながら決めていくんだというようなことが報道されているわけです。この問題については私、昨年の十月十六日の当委員会で、石油やみカルテル事件の刑事判決について公正取引委員会委員長の御見解を伺い、その中で裁判所が出した評価、この点については厳しく受けとめるべきだ、行政指導についてそういう見解を示しておられるし、また、ことしに入っても予算委員会の中でこのことがいろいろ議論をされているようですが、私はこれは早くやることが重要だというふうに思っております。この新聞報道にあります事前協議の中身といいますか、それにつきましてお考えを伺いたいと思います。
  127. 橋口收

    ○橋口政府委員 行政指導と独禁法の関係につきまして、いま案をまとめまして関係省庁と話し合いをいたしているところでございますが、関係省庁もかなりの数がございますので、いま話し合いをしている真っ最中でございます。いまお話がございましたのは事前調整と申しますか、行政指導のあり方につきまして、独禁法との関係におきましていろいろお話し合いをするという場合の内容はどうか、こういうお尋ねでございますが、われわれがまとめております文書の中には判断基準というものを示してあるのでございますが、その一般的な判断基準によりましても、個々具体的なケースにつきまして、行政指導の内容とか程度とか強さとかいろいろな問題があるわけでございますから、そういう場合には公正取引委員会としましても積極的に各省庁と話し合いをいたしますし、また、関係省庁の方も疑念があります場合には、公取に相談をしていただきたいということを言っているのでございまして、事前協議とかあるいは事前調整の内容につきまして、特に決めているというわけではございませんで、やはり問題は、一般的な判断基準がむしろ大事だというふうに考えております。
  128. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この判断基準についてですけれども、きょうの新聞報道によりますと、具体的に幾つかの判断基準が示されているわけですね。具体的な法的根拠がない行政指導というのが五つに分かれ、それから具体的な法的根拠がある行政指導というのに分かれているわけですが、この内容についてはこのとおりなんでしょうか。
  129. 橋口收

    ○橋口政府委員 けさの新聞の報道は必ずしも正確ではございませんが、簡単に御説明申し上げますと、具体的な法的根拠のない、つまり各省設置法に基づく行政指導の場合と、それからたとえば石油業法その他具体的な法的権限を具備した法律に基づいて行われる行政指導というふうに大きく二つに分けております。その中で、行政指導の内容が価格、数量にかかわるものとその他品質、規格、営業方法等にかかわるものとを分けて考えておりまして、それはおのずから事柄の軽重によりまして独禁法違反の疑いのある程度にも差等が出るということを示しております。それから団体を経由して指導する場合、つまり事業者団体を指導する場合と個別事業者に対して指導する場合というふうにも分けて整理をいたしておりますので、いずれ案が固まりますれば御質問等にお答えができると思いますが、けさの新聞報道は必ずしも適当ではないと思います。  なお、価格、数量にかかわる問題につきましては、当委員会でも御議論がございましたが、第二次石油ショックの直後の客観情勢等のもとにおきましては、当委員会等ではたとえば灯油価格につきましては積極的に行政指導しろというような御要請もあるような状況もございますので、そういう異例、緊急の事態、ことに物価が異常に高騰するというような事態におきます行政指導につきましては、昭和四十九年三月に政府の統一見解がございますから、そういうものも引用いたしまして、いわばそういう時点における行政指導の可能性というものも明らかにいたしております。  くどいようでございますが、各省庁の行政活動すべてに対して枠をはめるとかあるいは制約を加えるということはなすべきことではございませんし、またできることでもございませんが、やはり各省庁の行政指導が独禁法の領域に踏み込んでこられます場合に御注意をいただきたい点につきまして、明らかにしたいというのが本来の趣旨でございます。
  130. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 その行政指導の問題ですけれども、ただ緊急時だ、石油パニックのときのような緊急時だとかあるいは企業の倒産時ということで間に合わないようなことがあるんだということで、どんどん範囲を広げていって、五十五年から五十六年にかけて八回も石油製品の引き上げを行うというようなこと、その結果石油業界が史上空前の暴利を上げるというようなことになっては非常に問題だというふうに思うのです。ですから、この四十九年三月十二日の政府統一見解というものによって行政指導の範囲がどんどん拡大されてなし崩しになっていくということを私どもは非常に危惧するわけでございますけれども、この点についてお考えを伺いたいと思います。  それから、この各省庁との話し合いについて当然めどをつけて作業をされておられると思いますけれども、一体いつごろまでにされる御予定なのか、その点も伺いたいと思います。
  131. 橋口收

    ○橋口政府委員 初めにいつごろまでかというお尋ねに対してお答えを申し上げたいと思いますが、大体の目標としましては三月の上中旬までに取りまとめをいたしたいというふうに思っております。これは各省庁とお話し合いをいたしておりますが、本来独禁法の適用の問題でございますから、お話し合いは続けて精力的にいたしますけれども、最終的には、決めるべきときには決めるという姿勢でおるわけでございます。  それから第一の問題でございますが、価格に対して政府が介入する、行政庁が介入するというのは原則としてなすべきことではございません。ただ、第一次石油ショックのような異例、緊急の事態におきまして、当時は国民生活安定緊急措置法というものはなかったのでございますが、それ以後そういう法律が制定されておりますから、本来のたてまえで申しますと、標準価格を設定するなりあるいは特定標準価格を決める、こういう法的な道が残されておりますからその道によるべきでございます。しかし、仮にそういう措置をとるということで思惑で価格が上がるというのは、本当に異常、緊急の瞬間的な事態におきます行政指導のあり方に対しましては四十九年三月の政府見解があるわけでございますけれども、そうではなくて、だらだらとしたような値上がりに対して行政庁が関与するということは、ともすると値段の底支えとか価格の騰貴を側面的に援助するようなことになる結果もございますから、そういう場合まで行政指導が許容される、容認されるということではございません。  なお、くどいようでございますが、行政指導の結果として事業者がカルテル等の共同行為をやれば、異例、緊急の事態におきましてもこれは独禁法違反になるということは四十九年三月の政府見解にも明らかにされておりますから、そういう全体の歯どめをした上において、ある一定の限度において許容される場合も念のため明らかにしておきたい、こういう趣旨でございます。
  132. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  133. 井上泉

    井上委員長 依田君。
  134. 依田実

    ○依田委員 最近の景気見通しなどにつきまして幾つかお尋ねをさせていただきたいと思うわけであります。  まず最初に、日本経済にとって重要なファクターでありますアメリカ景気動向はどうなるのか。レーガンが新しい経済政策を打ち出しました、そういうものを勘案しながら、これからのアメリカ景気動向を伺わせていただきたいと思います。
  135. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず、今回アメリカの新政権があれだけの内容の新しい政策決定したということに対して、私は決断と勇気に敬意を表したいと思います。  それから第二点は、あれだけの決断をしなければならないということは、結局アメリカ経済が非常に重大な事態になっておる、こういうことを痛感いたしました。議会の承認が必要でありますから、あのまま通りますか、若干の修正があるかどうかわかりませんが、議会の反応もいいようでありますから、大筋については私は変わらぬのではないかと思います。  特に、大規模減税をいたしまして、その減税を貯蓄に回して、それによってアメリカ経済の生産性の向上を図っていこう、起死回生の対策というか大きな対策というか、いずれにいたしましてもあれだけの思い切った政策は、日本としてもいろいろな角度から学ぶべきものが相当ある、私はこのように思います。
  136. 依田実

    ○依田委員 確かに勇気と決断、そのとおりでありまして、その根がまた一方では深いということ、お話しのとおりでございます。そういう意味からいうと、この日本との間のいろいろ経済摩擦、世上言われております自動車を中心にするそういう経済摩擦についてのアメリカ側の要求も厳しくなるのではないだろうか、こう思うわけであります。この日米の自動車問題などについて予算委員会でもお尋ねさせていただいて、通産大臣などのお答えをいただきましたけれども、日本経済全体を大所高所から運営される長官といたしまして、これからのアメリカの要求に対して日本がどう対応していったらいいのか、この問題について、自動車の問題を中心にしてお聞かせをいただければと思っております。
  137. 河本敏夫

    河本国務大臣 私はまず、先進工業国は自由貿易の原則を堅持することがこれからの世界経済の発展のために絶対の前提条件であるという認識を新たにすべきであると思う。ちょっと問題が起こるとすぐ保護貿易的な言動をすることはよくないと思います。  それから同時に、いまいろいろな貿易摩擦が起こりますのは、第二次石油危機によりまして、世界経済、特に先進工業国の経済状態が非常に悪くなっておりまして、現時点においては平均マイナス成長である、したがって購買力も非常に減少しておる、ここに摩擦が起こる背景があるわけでありますから、個々の細かな交渉も必要でありますけれども、しかし、OECD全体の経済が好転するということ、相当な成長回復するということ、そういう背景をつくり上げませんと、なかなか抜本的な解決はむずかしいのではないか、こう思います。幸いに、OECD全体の経済の状態は現時点が一番悪いけれども、だんだんと回復が進んでまいりまして、ことしは一%、来年は二%から三%、こういう水準に回復する、このように見通しが立てられておりますし、同時に、アメリカ経済レーガン政権期待どおり成功いたしますと、来年のアメリカ経済成長は四%台、再来年は五%ということになるようでありますので、あれだけの大きな経済がその程度経済成長をするということは貿易摩擦を解消する一つの大きな背景ができるのではないか、このように考えております。  自動車の問題につきましては、いま通産省が窓口になりましていろいろ折衝をしておられる最中でございまして、非常にデリケートな問題もあるようでございますから、私から具体的なことを申し上げることは差し控えさせていただきます。
  138. 依田実

    ○依田委員 次は、国内の問題でございますけれども、長官のごあいさつの中に「物価の安定を図りながら、民間設備投資個人消費など国内民間需要を中心に、景気の着実な拡大を実現することが必要であります。」こういうふうに書かれておるわけであります。本当に個人消費というのはいま非常に落ち込んでおる。去年よりもことし、一月よりも二月、そういうふうに非常に深刻になっておるのではないか、こういうような気がするわけであります。  それは一つは、よく言われますようにサラリーマン実質賃金が目減りしておる、つまり所得はふえても税率が高いために実質賃金がなかなかふえない。昨年の統計など見てみましても、月によってはマイナス、こういうところがあるわけであります。そういう、実質賃金の目減りが個々の消費者のふところをかたくしておって個人消費が盛り上がらない、こういう説と、それからまた、一つの循環、つまりいろいろ家庭電気製品とか、そういう耐久消費財なども買い一巡ということで、新しい魅力のあるものがビデオテープ以外には余りないというようなことから個人消費が低迷している、循環説と実質賃金目減り説、二つあるわけでありますが、長官はこういう国内消費の停滞について何が原因だとお考えになるのでしょうか。
  139. 井川博

    ○井川政府委員 循環説というのも確かにございます。循環というよりは、高度成長のときと違いまして、いろいろなものがそろってきた、しかしながら買いかえの時期というのがある、その買いかえ時期というのが循環をするという説がございます。しかし、概して言いますと、わが国の場合には、もう家庭生活におきまして相当程度のそういう耐久消費財をそろえてきたということになりますと、耐久消費財全体がサイクルをなすということではなくて、それぞれがそれぞれの形で循環していくということではないだろうか。そうすると、ある年度にそれが集中するということは、私、これも確たるお答えはできませんが、そう耐久消費財の循環ということだけが大きい意味を占めるとは考えられない。ということよりは、先生おっしゃいましたもう一つの、物価がやはり相当程度高騰するということになりますと、一昨年来いろいろ新聞でも書かれますように、値が上がるとやはり消費者としてはその瞬間買い控えに向かう。非常に落ちついた、賢明な行動に走る。そうなりますと、物価が上がると、それだけ財布を押さえる、物価の値上がりが鎮静化してくると、通常のベースに返る、こっちの方がきわめて大きい状況ではないだろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  140. 依田実

    ○依田委員 そうしますと、ここに書かれてあるように、「国内民間需要を中心に」こう書いてあるわけでありますから、その前提として、物価は安定させる自信がある、こういうことだろう、こういうふうに思うのであります。そういう意味で、民間個人消費が盛り上がる見通しがあるのかどうか、その辺について、そしてまたそれはどういう原因で上がるのか、物価がそうなんでしょうけれども、その辺をお話しいただきたいと思います。
  141. 井川博

    ○井川政府委員 物価につきましては、大臣からも物価局長からも申し上げておりますように、このところ鎮静化の傾向をたどっておるわけでございます。消費者はそういう意味ではきわめて敏感でございまして、第一次石油ショックと第二次石油ショックの大きい違い、そしてその中のきわめて大きい要因といたしましては、消費者がきわめて賢明に対応したということがあるわけであります。物価が八%台で推移しておりましたのが五%台に落ちついてくるということになりますと消費マインドというものが盛り上がってくるということが考えられるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、実は五十五年度については実質二%程度にしかならないという考え方でございますが、来年度については、見通しで四・九%、ただし五十四年度は五%であったし、その前は六・二%であった、それに近いところまでいくのではないかというわれわれの考え方でございます。
  142. 依田実

    ○依田委員 物価が安定しても、やはり賃金がふえたという実感がわきませんと、なかなか消費は盛り上がらないのではないか、景気はよくならないのではないか、こう思うわけであります。レーガンが、三年間にわたって毎年一〇%ずつ、こういった思い切った、勇気と決断、こういうことでございますけれども、そういうところから考えると、日本も、消費需要を喚起するような意味も兼ねて、いわゆる所得減税をやる、これが一つ考え方じゃないか、こう思うのであります。この議論はもう言い尽くされているかと思いますけれども、重ねて長官お尋ねさせていただきたいと思います。
  143. 河本敏夫

    河本国務大臣 それは政策の選択だと思います。思い切ってそういうことをやる、そして景気がよくなればまた税で返ってくる、そういう選択もあろうかと思いますが、現在の政府のやり方は御案内のとおりの方針でございまして、現時点はとにかく大増税をしないと財政がもたないという状態になっておりますので、現時点ではやはり所得減税をするということは何とか御容赦を願いたいというのが政府の統一した考え方でございます。
  144. 依田実

    ○依田委員 もう一度景気の方に戻りますけれども、いろいろ民間需要の中で住宅建設がいま非常に低迷しておるわけであります。普通ですと、年間百五十万戸くらい住宅建設があると大体平年度、こういうことでございますが、最近の住宅建設の需要の落ち込み方について、どういうふうになっておるのでしょうか。
  145. 井川博

    ○井川政府委員 住宅着工は大変な停滞の様相を示しております。新設住宅着工の数字で申し上げますと、御承知のように、数年前までは百五十万戸というベースでいっておったわけでございますが、本年につきましては百三十万戸にいかないのではないか、百二十万戸台にとどまるのではないかと言われておるわけでございます。最近で申し上げますと、たとえば十一月は八万八千戸でございますし、十二月は多少上がりまして九万九千戸という状況でございまして、これを期別に申し上げますと、四―六月で月平均十二万戸でございましたが、七―九月には十万戸に落ちまして、十―十二月は九万四千戸と落ちているわけでございます。そういう意味におきまして、宅地等々の問題もございますし、それから先ほどからお話のございます実質所得という問題もございまして、新設住宅着工については非常に停滞的な推移を示しているというのが実情でございます。
  146. 依田実

    ○依田委員 日本経済の中で住宅建設の占める、そのまた景気の及ぼす影響、つまり下請が非常に大きい、すそ野が広いわけでありますから、町の景気というのは住宅建設、こういうものに寄りかかっているところが大きいのじゃないか、こう思うわけであります。  昔は大体ある周期を置いてブームが来たわけであります。それは、建築ブームになる。だんだん土地と建築資材が高くなる。そこである一定の賃金より上にいくと手が届かなくなるから需要が減ってくる。何年か待つと今度はまたその間に賃金がふえてまた買える、手の届くところへ来る。そこでまた住宅建設ブームが起こる。こういう周期になっておったわけであります。ところがここのところは、所得が果たして何年か後に再びいま高くなった住宅へ手の届くところまで上るのかどうかということになると、どうも非常に悲観的じゃないか、こういうふうに私は見ておるわけであります。  そういう意味で、この住宅建設不況というのがどの程度長引くのか、いつごろまた回復の兆しを見せるのか、そういう点についてお考えを伺わせていただきたいと思います。
  147. 井川博

    ○井川政府委員 大変むずかしい問題でございます。ただ、たとえばわれわれが建設業界に接触をいたしました場合に、所得との関係というものを大変重視をいたしまして、一時相当高い、たとえばマンションでございましても相当高いものを中心に売り出しておったものが、これで全然だめだということになれば、やはり手の届く範囲のものにということで、いろいろ計画を変えていかざるを得ないということを言っております。  かつまた、先ほどからいろいろ話がございますように、だんだん物価も落ちついて実質賃金も上がってくるというふうな状況になるとすれば、いまのような停滞的な状況が今後もずっと続くとは考えられない。  それからもう一つは、これも先生御承知のように、たとえば空き家比率が昔と違って大分多くなってきている。したがって、昔の百五十万戸ベースが再び返るかどうかという問題がございます。しかし、それと同様に、短期的にはやはり建築資材、建築価格というのが非常に上がっておるという面があります。  それからもう一つは、公定歩合の二回の引き下げに連動いたしまして多少下がりましたものの、まだ住宅ローンというのは高い。そういたしますと、そうした金利が安くなるのを待っている。あるいは建築価格が安くなるとそういう需要も出てくるという面があるのではなかろうか。したがいまして、われわれは来年度の住宅需要につきましては、戸数でそう多く伸びるという見込みはするわけにはいかぬけれども、しかしながら、従来考えられている質的改善等々が三、四%ございますので、それと建築資材の値下がりということを考えれば、やはり本年度のマイナスに対してプラスと考えていいんじゃないか、こういう見通しを立てておるわけでございます。
  148. 依田実

    ○依田委員 いずれにしましても、先ほど申しましたようにこれは関連産業が非常に幅広い、そしてまた新しい住宅へ入ればそれに付随して家具をそろえなければならぬということで需要も起こるわけでありまして、この業界の動向がどうなるか、われわれも注目しておるわけであります。  いまお話しの中で公定歩合の問題が出ましたけれども、景気見通しをすっきりさせるために、ひとつ公定歩合のもう一段の引き下げ、こういうものをお考えになっておるのかどうか。その辺について長官の御意見をお伺いさせていただきたい。
  149. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府金融政策につきましては、昨年の九月に総合経済対策決定をいたしましたが、その中で、金融政策は機動的に運営をする、こういう趣旨のことを決めております。機動的に運営するという意味は、現時点における金利水準は非常に高い、そのために経済全体の足を引っ張っておる、これはもう確かでありますから、条件が整い次第、できるだけ低い水準に持っていく、低金利政策を進めていく、こういう趣旨であります。これが政府金融政策に対する基本方針であり、経済政策に対する基本方針であります。  金融政策を担当しておる分野におきましても、政府経済政策に基づいて金融政策を進めるというのが当然あるべき姿でありますから、金融政策の当事者もこの政府基本方針に従って金融政策を進めるべきものである、私はこのように考えております。  特に最近は、先ほども住宅の問題についても御指摘がございました、景気は非常に憂えるべき状態にもございますので、低金利政策を早急に進めることが必要であるということは、これは産業界全体が現在の状態から痛感しておるところでございますけれども、やはり機動的に金融政策運営できるようなそういう客観的な条件というものを政府の方では整える責任があろうかと思うのです。金融政策の当事者だけ責めましても、客観条件が整いませんとそれはなかなか機動的に動きにくい、こういうことでございますので、現時点におきましては、金融政策の当事者がどんな動きもできるようなそういう条件の整備に政府としては懸命に取り組んでおるというのが現状でございます。
  150. 依田実

    ○依田委員 公定歩合引き下げ問題については、これは長官としてはなかなか言いにくいところだろうと思うのでそういうお答えになったんだろうと思うのでありますが、それはそれといたしまして、これは長官の直接の担当ではございませんけれども、経済を総合的に調整する立場でぜひお聞きをさしていただきたいのでありますが、最近いわゆる官業と民業との分野調整の問題が非常に注目されておるわけであります。いわゆる郵貯懇というのができて、これからいろいろ諮問をされると思うのでありますが、その中に金利の一元化という問題が最大の課題として入っておるわけでありまして、これは非公式な見解だというのでありますが、日銀などの考え方は、どうもいまの郵便貯金、この金利の決め方が適切なる、円滑なる経済運営の阻害要因になっておる、こういうふうに規定をしておるようであります。まあこれからなるべく低金利にしたい、長官のお話であります。また、機動的に運営したい、こういうことでございます。そういう意味で、郵便貯金の金利のあり方、いわゆる金利一元化という問題について、いま大蔵省と郵政省で非常にホットな闘いが行われていると言われておりますけれども、この問題について長官としてどういうお考えをお持ちになるか、お尋ねをさしていただきたい。
  151. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済を発展させるためには、やはり自由経済、自由貿易、この原則が一番いいのではないか、私はこう思います。アメリカ経済なども遅まきながらこの方針でいくということを決断したようでございますが、そういう観点に立って物事を判断いたしますと、官業が民業を妨害するとか、民業の分野に介入してくるとかいうようなことはできるだけ避けなければならぬ、私はこう思いますし、それから政府の産業に対する行政指導などもできるだけ避けた方がいい、万やむを得ない場合も往々にしてあろうかと思いますが、原則的にはできるだけ避けて経済界が自由に行動、発展できるようなそういう判断が必要でなかろうか、こう思います。  そういう観点に立ちますと、現在、金融政策が機動的に運営できない一つの大きな背景は、金利が一元化されていないというところにありまして、このためにいつでももたもたして機を失する、そのために日本経済が受ける大きな打撃があろうかと思うのでございます。したがいまして、まあ郵便貯金がふえるということは結構でありますけれども、しかし金利の一元化ということは、日本経済の発展にとってぜひ必要なことであろう、何らかの形で一刻も早くこれが具体化することを期待しておるというのが現在の考え方でございます。
  152. 依田実

    ○依田委員 長官の本当に識見のある御意見じゃないか、私はこう思うわけであります。そういう観点から、経済調整官庁の長として、ひとつこの成り行きをぜひ御指導賜りたい、こういうふうに思うわけであります。  それでは、ここで問題を変えさせていただきまして、いわゆる金の市場の問題についてお尋ねをさしていただきたい、こう思うわけであります。最近、金に対する需要が日本でもややふえてきた。日本人というのは、昔から貴金属とかそういうものを持つよりも貯蓄だ、こういうことであったわけでありますが、だんだん世の中が変わってまいりまして、あるいはまた国際的な物の動きあるいは金融の動き、そういう中で日本人もだんだんお金だけじゃなくて物、つまり金にという指向が出ておるわけであります。ところが現在、金の現物売買、こういうものについてもいろいろ問題がある。つまり買うとき、店の方からすると売るときには売るけれども、いざ暴落などということでそれを店へ持っていった場合にはなかなか引き取らない。これは、私、自分が金なんか買える身じゃありませんからやったことありませんけれども、人の話では、買ったところへ持っていったところが、暴落のときには店が閉まっておった、こういうことではやはり困る。それとまた、もう一つは架空の先物売買、こういうようなことを当てに、いわゆるブラックマーケットというのができて、たくさんの被害者が出ているというような現状があるわけであります。  そこで、金の現物売買というものの趨勢と、それに対して、買った消費者が売りたいとき、あるいは買いたいときに公正な価格で買えるように、そういう市場というものができておるのかどうか、まずお尋ねをさしていただきたいと思います。
  153. 山梨晃一

    ○山梨説明員 お答えいたします。  先生ただいまおっしゃいましたように、金に対する、特にいわゆる民間保有というのは、五十三年に金が輸出入ともに自由化されて以来、相当大幅にふえてきているというのは御指摘のとおりでございまして、ちょっと数字で申し上げますと、自由化する前の五十二年に、これは実は工業用の歯科医療用とか電子工業用とか装身具用といったものを除いたその他というところで一括されて統計が出ているわけでございますが、これが約三十三トンという数字であったのが、五十三年には五十九トン弱、五十四年にはさらにまた相当ふえまして九十トンを超えた、こんな数字になっているようでございます。  それで金の現物の流通機構というものは、買い取るときには実は鑑定が非常にむずかしいという問題もございまして、過去には確かに売る一方であって、買い取りがなかなか自由にやれないというような状況があったわけでございますが、こういう事態を改善しなければいけないということで、実は私どもの方で五十四年十二月末に社団法人の日本金地金流通協会というものの設立の許可をいたしまして、登録店制度というものを普及さしてきたわけでございまして、当時から現在まで約一年二カ月たっているわけでございますが、この間に相当数をふやしてまいりまして、昨日現在では二百四十に達しておりまして、ほぼ全国に行き渡ったのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。  一方、金流通の一層の円滑化を図るという観点から、現物市場を開設してはどうかという考え方もあるわけでございますけれども、この問題につきましては、開設したらどうかという御意見と同時に、現物市場をつくるのは時期尚早だというような意見もございまして、現在この問題につきましては、関係者の意見を聴取しつつ、その必要性について検討を進めている段階でございます。
  154. 依田実

    ○依田委員 いわゆる商取法の八条の解釈をめぐりまして通産省で新しい解釈を出したんじゃないか、こういうことが一時言われました。いままでは商品取引業界の中で、金にはタッチできない、こういうことで統一見解だったのが、商取法八条の解釈が通産省で少しニュアンスが変わったということであるわけでありますが、この八条の解釈を、いま通産省としては、公式にどういうふうにおっしゃっていらっしゃるのですか。
  155. 江崎格

    ○江崎説明員 商品取引所法の第八条の解釈でございますが、従来は、昭和二十六年に法務府の意見というのがございまして、これによりますと、八条といいますのは、上場しておる商品はもちろんですが、上場してない商品についても、私設の先物市場はつくるのを禁止しているというふうに解釈されておったわけでございます。ところが、昭和五十二年あるいは三年ごろにいわゆる金の悪質取引というのが社会的にも非常に問題になり、国会でも御議論がなされたわけでございます。それで政府といたしましても部内でいろいろ検討いたしました。法制局その他にも意見照会をしたりしたわけでございます。その結果、従来の解釈には、文理的に解釈しますと多少無理があるということになりまして、解釈が変わったわけでございます。  それで、どういうことになったかといいますと、上場されておる商品について、それと別に私設の市場をつくるというのは確かに禁止しているけれども、上場されてない商品、たとえば現在ですと金は上場されておりませんが、こういうものについて先物市場をつくるのまではこの法律で禁止してないという解釈になったわけでございます。これは昨年の四月にそういう解釈を政府答弁として国会の場で明らかにいたしました。
  156. 依田実

    ○依田委員 そういうことで、いま自由民主党の中にも、この金市場開設をめぐっての小委員会ができた、こういうことでございます。この現物市場――まず現物市場だろう、その先の先物取引になるとまだまだと、こういうことだろうと思うのであります。しかし、その是非をめぐって検討がこれから行われるのではないかと思うのでありますが、いままでどうも日本の、まあ通産省と名指ししては申しわけありません、商品取引は農林省も関係があるわけでありますが、どうもいまの市場の姿勢が悪いからだめだ、こういうような考え方が基本的にあるのではないか、こう私は思うのであります。しかし、それより大事なことは、日本経済がこれから大きくなっていく、つまりいままでは物をつくって、汗を流して世界に売って、もうけて、そしてまたエコノミックアニマルだ、ウサギ小屋だとたたかれる。これでは日本はいつまでたっても浮かばれないと思うのであります。これから日本という国は、世界のすべてのところへ情報網を張りめぐらして、いわゆる国際金融、あるいはまたいま申し上げた金も含めてのそういう中で、この利益をいかにして吸収していくか、こういうことを早く考える必要があるのではないかと思うのであります。証券市場なども昔は株屋と言われておったわけであります。しかし、いまごらんのように世界のオイルダラーが集まるぐらいの隆盛をきわめておるわけであります。そういう意味で、金市場の開設についてはひとつ前向きに取り組んでいただきたい、こういうふうに私は思っておるわけであります。  それと同時に、この問題は、有識者は、これは将来必ず必要になる、そしてまたそのときのために、いまからいろいろアプローチしなくちゃいかぬ、こういうことで銀行あるいは証券などもこの分野にきっといろいろアプローチをするのだと思いますが、しかし、そういうものも早目に調整をする必要があるのではないか。銀行などはいわゆる金を扱うところでありますから、これは結構だろうと思うのでありますが、証券は証券で別の市場でありまして、そういうものとの分野調整というか、そういうものも含めて早急に、私は何かまだまだという感じがして仕方がないのでありますが、日本は金ができないから金の市場は必要ないんだということはないのでありまして、ロンドンは銅なんかできませんけれども、みんなロンドンが市場になるわけであります。そういう意味で、ひとつ日本にもそういう国際金融、金の流れの中心をいつも持つということが大事だろう、こういう意味で、ひとつこの問題については前向きに取り組んでいただきたい、こういうふうに思うわけであります。なかなか先物までということは言いませんけれども、しかしとりあえず現物を含めてひとつこの問題については慎重に御検討いただきたい、こういうふうに思います。  時間が参りましたので、終わらせていただきます。
  157. 井上泉

    井上委員長 次回は、来る三月五日木曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会