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1981-03-19 第94回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月十九日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 田邉 國男君    理事 菊池福治郎君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 福島 譲二君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 武田 一夫君 理事 稲富 稜人君       逢沢 英雄君    上草 義輝君       小里 貞利君    亀井 善之君       川田 正則君    北口  博君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    菅波  茂君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       玉沢徳一郎君    保利 耕輔君       三池  信君    渡辺 省一君       小川 国彦君    串原 義直君       島田 琢郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    日野 市朗君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       木村 守男君  出席国務大臣         農林水産大臣  亀岡 高夫君  出席政府委員         農林水産政務次         官       志賀  節君         農林水産大臣官         房審議官    高畑 三夫君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      森実 孝郎君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         水産庁次長   山内 静夫君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      的場 順三君         大蔵省関税局企         画課長     新藤 恒男君         大蔵省関税局監         視課長     田中  史君         大蔵省関税局輸         入課長     忠内 幹昌君         農林水産省経済         局統計情報部長 関根 秋男君         通商産業省生活         産業局通商課長 末木凰太郎君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ――――――――――――― 委員の異動 三月九日  辞任          補欠選任    佐々木良作君     神田  厚君     ――――――――――――― 三月十七日  農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四七号)  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員  共済組合からの年金の額の改定に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提出第四八号) 同月七日  農林年金制度改善に関する請願(小川国彦君  紹介)(第一六三〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月四日  竹島周辺への出漁不能に伴う漁業者救済措置に  関する陳情書(第  九三号)  水田利用再編第二期対策に関する陳情書外四件  (第九四  号)  同外一件  (第一五二号)  学校給食用牛乳予算完全確保に関する陳情書  外二件(第九  五号)  林業振興対策に関する陳情書  (第九六号)  農業総合政策確立等に関する陳情書  (第一四七号)  農業改良普及事業充実強化に関する陳情書  (第一四八号)  農業基盤整備事業に対する補助率引き上げに関  する陳情書  (第一四九号)  飼料用稲栽培普及等に関する陳情書外一件  (第一五〇号)  学校給食用牛乳供給事業補助金制度の存続に関  する陳情書外七件  (第一五一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  漁船損害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第三一号)  農林水産業振興に関する件(畜産蚕糸問題  等)      ――――◇―――――
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  漁船損害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。亀岡農林水産大臣
  3. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 漁船損害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  漁船損害補償制度につきましては、漁業生産手段たる漁船の不慮の事故による損害の復旧と適期における更新を容易にすることにより、漁業経営の安定に多大の寄与をしてまいったことは御承知のとおりであります。  しかしながら、近年における漁船大型化沿岸海域利用高度化等に伴って、他船との衝突その他の偶発的な事故により、漁船所有者等が、第三者に与えた損害を賠償し、または放置することができない沈没漁船撤去費用等不測費用負担することによりこうむる損失漁業経営に重大な影響を及ぼすようになってきておりまして、このような責任及び費用等を適切に保険する制度確立が強く要請されております。  政府におきましては、このような事情にかんがみ、昭和五十一年十月以降漁船船主責任保険臨時措置法に基づいて漁船所有者等責任等に関する保険事業を試験的に実施してきたのでありますが、その実績等を踏まえて、本年十月から漁船損害等補償制度の一環として漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険を恒久的な制度として確立することとし、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、漁船損害補償制度に新たに漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険を加えるとともに、これに伴い、漁船損害補償法の題名を漁船損害等補償法に改めることとしております。  第二に、漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険実施体制であります。これは、漁船保険組合保険事業及び漁船保険中央会の再保険事業のほか、漁船船主責任保険に関し漁船保険中央会の負う再保険責任をさらに国が再保険する事業により行うこととしております。  第三に、漁船船主責任保険は、漁船運航に伴って、第三者に与えた損害を賠償し、または沈没漁船撤去費用等不測費用負担することによる漁船所有者等損失をてん補することを内容とし、漁船乗組船主保険は、漁船所有者等であってその漁船乗組員であるものの漁船運航に伴う死亡等につき一定額保険金を支払うことを内容とするものであります。  第四に、漁船保険組合引き受けは、漁船船主責任保険漁船保険とあわせて、また、漁船乗組船主保険漁船船主責任保険とあわせて行うこととしております。  第五に、漁船船主責任保険保険料につきましては、漁業者負担の軽減を図るため漁業者が支払うべき純保険料の一部を国庫負担することといたしております。  第六に、漁船保険中央会は、従来の漁船保険事業の健全な発達を図るための事業のほか、漁船船主責任保険保険事業及び漁船乗組船主保険保険事業を行うものとしたことに伴い、同会の再保険事業内容に関する規定のほか、その再保険事業の適正円滑な実施を確保するために必要な規定を設けております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  4. 田邉國男

    田邉委員長 補足説明を聴取いたします。山内水産庁次長
  5. 山内静夫

    山内政府委員 漁船損害補償法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  まず第一に、漁船船主責任保険によりてん補される損害について御説明申し上げます。  その一は、漁船運航に伴い生じた損害につき損害賠償責任に基づき賠償することによって漁船所有者等がこうむる損失であります。これは、たとえば、漁船船舶養殖施設岸壁等衝突した結果生じた損害を賠償した場合における損失であります。なお、船舶衝突した結果生じた損害を賠償した場合における損失の一部につきましては、従来、漁船保険特約でてん補しておりましたが、今後はこれを漁船船主責任保険においててん補することとしております。  その二は、漁船運航に伴い発生した事故により支出を要することとなった費用負担によって漁船所有者等がこうむる損失であります。これは、たとえば、法令等により沈没漁船を撤去しなければならない場合における撤去費用であります。  第二に、漁船乗組船主保険保険事故について御説明申し上げます。  漁船乗組船主保険保険事故は、漁船所有者等でその漁船乗組員であるものにつき漁船運航に伴って生じた死亡等であります。  第三に、漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険引き受け制限について御説明申し上げます。  まず、漁船保険組合は、普通保険申込人があわせてその保険の目的たる漁船につき漁船船主責任保険を申し込む場合等でなければ、漁船船主責任保険引き受けをすることができないものとしております。  次に、組合は、漁船船主責任保険申込人であって漁船乗組員であるものがあわせてその漁船に係る漁船乗組船主保険を申し込む場合等でなければ、漁船乗組船主保険引き受けをすることができないものとしております。  なお、漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険をそれぞれ普通保険及び漁船船主責任保険に付随する保険としていることに伴い、漁船船主責任保険及び漁船乗組船主保険保険関係は、それぞれその付随する保険関係が消滅したときに原則として消滅すること等所要規定整備を行うこととしております。  第四に、漁船保険中央会が行う漁船船主責任保険保険事業及び漁船乗組船主保険保険事業について御説明申し上げます。  まず、組合とその組合員との間に漁船船主責任保険または漁船乗組船主保険保険関係が成立したときは、これによって中央会当該組合との間に組合保険責任の一部を再保険する再保険関係が当然に成立することとしております。  次に、この再保険関係はいわゆる比例再保険であり、中央会の支払うべき再保険金の額は、組合の支払うべき保険金の額に再保険割合すなわち再保険金額保険金額に対する割合を乗じて得た額としております。  なお、中央会漁船船主責任保険保険事業及び漁船乗組船主保険保険事業を行うこととなったことに伴い、中央会は、これらの事業に係る経理については、他の経理と区分し、それぞれ特別の勘定を設けて整理すること、農林水産大臣は、組合から請求があった場合に中央会の業務または会計の状況を検査しなければならないものとすること等所要規定整備を行うこととしております。  第五に、政府が行う漁船船主責任保険保険事業に係る再保険事業について御説明申し上げます。  まず、中央会組合との間に漁船船主責任保険に係る再保険関係が成立したときは、これによって、中央会の負う再策険責任の一部を除き、再保険責任区分ごと年度ごと中央会の負う再保険責任一体として政府中央会との間に再保険関係が成立することとしております。  次に、この再保険関係はいわゆる超過損害額保険であり、政府の支払うべき再保険金の額は、中央会がその再保険責任に基づいて支払うべき再保険金の額が一定額を超えた場合に、その超えた部分の額に相当する額としております。  第六に、漁船船主責任保険保険料国庫負担について御説明申し上げます。  漁船船主責任保険のうち、これまで漁船保険特約で行ってきた衝突損害賠償金に係る部分については従来どおりの国庫負担率を適用するとともに、これまで試験実施してきた漁船船主責任保険に相当する部分の一部についても新たに純保険料国庫負担を行うこととしております。  この国庫負担率につきましては、たとえば、五トン以上二十トン未満の動力漁船では純保険料の三割を国庫負担することとしております。  最後に、この法律の施行につきましては、漁船船主責任保険臨時措置法の失効及びこれに伴う経過措置等に関する規定にあっては公布の日から、その他の規定にあっては本年十月一日から、それぞれ施行することとしております。  以上をもちまして提案理由補足説明を終わります。
  6. 田邉國男

    田邉委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  7. 田邉國男

    田邉委員長 次に、農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村義和君。
  8. 北村義和

    北村委員 初めての質問でございますので、前後狂うかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと思います。  御案内のように、畜産振興審議会を開催いたしまして、すでに諮問をされておるわけでございます。その中で特に重要だと考えられます酪農の問題にしぼりまして質問をいたしたい、このように存ずるわけであります。  実は、私は現在も村の農協組合長をやっておりまして、昭和三十年、御案内のように酪農振興法に基づく集約酪農地域建設計画樹立促進、あるいはその後の農業基本法に基づく指導、さらにまた四十年度の酪農三法の改正によりまして、酪農近代化促進に実は組合員とともに真剣に取り組んできたものであります。そしてまた私自身酪農経営をやっておる、こういう立場でございます。  その私が、現時点では厳しく自己反省をしておる現況にございます。と申しますのは、私の組合で、ことし個々の営農計画樹立、相談をいたしました際に、経営の抜本的な改善対策を講じなければ、その中で負債の低利、長期の方策を講じなければ経営に対する持続ができないというような農家が実は半数にも及んだ、こういうことでございます。私の村は純酪農村でございます、半数酪農家経営意欲をなくさせることはそれ自体村の破壊につながる、こういうような立場から村とも協議をいたしまして、これらの該当農家に対する年賦償還金約定償還金、これを向こう五カ年間農協立てかえをし、村が八%程度の利子補給をして、この間に経営再建対策を軌道に乗せる、こういう思い切った措置をしなければ、先ほど申し上げましたような村の酪農基盤がおかしくなってしまう、こういう状態になったわけでございまして、私自身先見性あるいは指導力の不足というものに実は大きく反省もし、恥も忍んでおるような事態でございます。質問する前の私の率直な心情をまず冒頭に申し上げておく次第であります。  そこで、酪農問題に関係するわけでございまするから畜産局長にお伺いすることになるわけでございますが、畜産局長は、かねがね過去にこだわらず現実を直視して適正な判断と行動力を備えておられる方だ、こういうふうにお聞きいたしておりますので、明確にお答えをちょうだいいたしたいと思うわけであります。  まず、畜産振興審議会諮問をされまして答申をしていただく前に、農水省としては基本的な方針を決めておかなければならぬ二、三の点について最初にお伺いをいたしたいと思います。  第一点は、擬装乳製品輸入の問題でございます。乳脂肪を高率に含む調製油脂につきましては、一般的な国際商品ではなくて日本向けに製造された特殊な商品である、こういうふうに思うのでありますけれども農水省のお考え方はどうでございましょうか。
  9. 森実孝郎

    森実政府委員 調製油脂流通につきましては、国際市場国内市場では若干事情が違うと思いますが、国際市場という視点から申しますと、ただいま先生指摘のように、確かに特殊商品であり、幾つかの国においてはその流通が規制されているという実態がございます。国際貿易の上でもこういった商品が出てまいりましたのは最近の状況でございまして、主としてソ連と日本への輸出ということに充当されておるという実態を持っております。
  10. 北村義和

    北村委員 この調製食用油脂輸入商社がイニシアチブをとり、需要を開発した、そして大部分国内油脂メーカーによって加工されて菓子業界なりパン業界に向けられている、こういうふうに見ておるのでございますけれども、これはこのとおりでございますね。
  11. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、現在の消費実態から先に申し上げますと、九割が大体菓子とかパン等消費されております。これはほとんどすべてがマーガリンメーカーによって加工されまして最終のユーザーに渡されている、一部は、大きなお菓子屋さん等では自分で直接消費しているという実態でございます。若干のものがいわばコーヒー用ミルク等に使われているという実態がございます。  この利用わが国経済社会でかなり広がってきた背景は、従来、実は日本パンとかお菓子にはかなり広範にマーガリンショートニングが使われていたわけでございます。御案内のように、いま急速に洋菓子とか高級パン消費が伸びてきております。質的にも向上してきております。そういう過程で従来のマーガリンショートニング、特にショートニングが中心でございますが、ショートニング利用にかわって、より高級な調製油脂が使われ出してきたというふうな実態でございます。これは商社が開発したと申しますか、商社ユーザー一体になってそういう利用が生まれてきたと見る方が実態ではないだろうかと思っております。
  12. 北村義和

    北村委員 このような仕組みでいま一元輸入の裏をくぐって輸入されるということについては、本当に実は憤りを感ずるわけであります。しかし、いま説明されたように、現実にそういうような実態が起きているということになりますと、無視をするというわけにもまいらないと思うのでございますが、国内酪農が未曽有の危機に直面しているときに、これらの業界に、積極的に酪農振興に協力するように、これは農水省としても何としても指導をしていかなければならない、いってほしいものだ、こういうふうにも考えますし、また、後ほど申し上げますけれども過剰在庫のこととも絡み合わせて積極的な指導が可能であると私は思うのでございますが、畜産局長のお考え方をお聞きいたしたいと思います。
  13. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘にもございましたが、非常に利用技術が進んできた、それから消費者自体が実は植物油脂に対してかなり高い選好を持っている、最近、商品表示等でも、植物油脂利用しているということが実は消費抵抗購買抵抗にならないという実態があることは否定できないところでございます。しかし、御指摘のように今日の酪農実態を考えるとき、こういった調製油脂の形でどんどん輸入されるということは非常に好ましくないと思っております。  そこで、私どもといたしましても、一つ調製油脂輸入に歯どめをかけるための行政指導ということを真剣に考えなければならぬ、さらに中長期的視点に立っては、率直に申し上げますと、マーガリンわが国の方が品質もはるかにいいし、価格も安い実態があるわけでございますから、国産のバター及びマーガリン消費を切りかえていく指導をするということを二段構えで考えていかなければならないだろうと思っております。
  14. 北村義和

    北村委員 基本的には数量制限といいますか、IQによってしっかり抑制をすべきだ、こういうふうに考えますし、この委員会におきましても実効ある措置をと大臣お答えになっておったわけであります。わが党といたしましても、総合農政あるいは農林部会等々から強固な申し入れをしておるわけであります。大臣あるいは政府統一答弁にもありますように、実効ある措置をと、こういう答弁をいただいておるわけでありますけれども、本当にしっかりこの実効ある措置をとっていただいて、そして不安を除去し、秩序立てをしていただきたい。また、わが党の方とすれば、実効ある措置がとられなければ議員立法も考えざるを得ないのではないか、こんなような意見も非常に高まっておりまするので、とにかく実効ある措置を確実に行っていただくようにお願いをいたしたいと思いますが、局長、現在の状況はいかがでございますか。
  15. 森実孝郎

    森実政府委員 現在ニュージーランドと最終的な交渉を行っている状況でございます。またECに対しても、わが国の意図のあるところを明確に伝えて交渉に入っているところでございます。  当面の問題といたしましては、私どもやはり何とかこの増加してきた輸入にしっかり歯どめをかけていきたい、まずしっかり第一の防波堤をつくることが基本だろうと思います。今日の状況から見まして、私ども、このためには一つ手法だけではなくて、各種の手法を組み合わせてチェックするということが大事だと思っておりまして、農林省だけではなくて、通産省、外務省、大蔵省、四省協力いたしまして最終的な詰めを行っているところでございまして、何とか乳価決定の時期までにはこの見通しをつけたいと思っているわけでございます。  また、基本論でございますが、これはなかなか政府の中で統一見解というわけにもまいりませんが、少なくとも農林省としては、IQの実現ということは国際的状況を見ながらこれからも努力していくべき性格のものだろうと思っております。  私どもも、本委員会あるいは予算委員会等で諸先生からも厳しい御指摘がございましたし、また与党の方からも政府申し入れがあった経過がございまして、そういった点を十分背景にさせていただきまして、さらに最後努力を続けたい、また今後の努力も続けていきたいと思っておるわけでございます。
  16. 北村義和

    北村委員 とにかく結果が出てからあたふたするということではないように、しっかりひとつチェックできるように体制づくりをしていただきたい、このようにお願いをいたしておきます。  次の点は、乳製品過剰在庫の処理の問題でございます。  御案内のように、畜産事業団在庫をいたしておりますものが相当長期にわたっております。入れかえは六カ月ごと、こういうふうに聞いておりましたけれども、現在では十カ月余というふうにして入れかえをされているようでございます。民間在庫も、五十五年につきましては特別な助成措置を通じて対策を練っておられたわけでありますけれども、何はともあれ、この過剰在庫乳製品あるいは飲用牛乳市況を圧迫し、計画生産意欲に非常に大きな支障を来しておるわけであります。  現時点では生産者メーカー在庫処分のためには応分負担も辞さないという空気が出てきております。したがってこの機会に、官民一体になってこの過剰在庫、特に事業団在庫などについては、差損が出た場合には年賦ででも始末をつけるというぐらいな考え方を持って積極的な在庫処分をしてはいかがなものか、このように実は考えるのでありますけれども局長のお考え方をお聞きいたしたい、このように思います。
  17. 森実孝郎

    森実政府委員 乳製品在庫状況は、現在バターで五・六カ月分、脱脂粉乳で八・八カ月分という、絶対量としても率としてもかってない過剰在庫になっております。そのことが今日の乳製品市況を低迷させていることは疑いもない事実だろうと思います。私ども当面、計画生産実施ということで需給の均衡を図ることも重要でございますが、やはり長期的には、何といってもいま御指摘のように、どうやっていまの乳製品在庫のうちの過剰分処分するかについて組織的に取り組まなければならないと思います。  率直に申し上げますと、この処分を考える場合、たとえばバター一つ例にとっても、一万トン処分するとすれば実は八十億の差損が出てくる。脱粉でも、いまの飼料用価格で見れば二十七億の差損が出てくるというふうに膨大な負担が発生するわけでございます。どうやってその負担をしていくか。ただいま御指摘がありましたように、確かに、私どもにも農業団体の一部等からは、応分負担をするから積極的に取り組めという温かい御支援を賜っております。非常にありがたいことだと思っております。役所も民間一体となって、応分負担をしながら処分をするという姿勢で取り組みたいと思っております。  また同時に、この処分については、輸出等の場合は、量が多いと国際的摩擦という問題もありましてなかなかむずかしい問題もあります。しかし、いろいろな手法なり負担の仕方を組み合わせて、ひとつ計画的に処分していくということを、これから課題として若干時間をいただきまして検討させていただきたいと思います。  この場合、事業団在庫民間在庫と両方あるわけでございますが、それをどういう順序でやっていくのか、またどういう形で市場に吸収していくのか、その負担をどうするのか、さらにその負担の仕組みについて、いま御指摘のように、一挙にてん補を考えるのか分割しててん補を考えるのか、いろいろな手法もあると思いますので、若干時間をいただきまして、ひとつ前向きにこの問題を検討させていただきたいと思っておるわけでございます。
  18. 北村義和

    北村委員 とにかく、気重いこの在庫処理について何としても積極的に取り組んでいただきたいし、生産者もいま申し上げましたようなそういう気構えになってきておるので、これをうまく誘導して一日も早く晴れ間が見えるように指導をしていただきたいものだ、このようにお願いをいたします。  次に酪農経営の動向についてでございますが、国の施策と酪農民の努力によりまして、一戸当たり飼養頭数は四十五年対比三倍、北海道はEC水準を超える規模まで達したわけであります。しかし、三月十八日付の日本農業新聞は「負債にあえぐ北海道酪農 七割が償還不可能」として、道の農務部あるいは北農中央会調査資料をもとにして報道をいたしております。このことは、私が冒頭に申し上げました私の村、私の組合の経済動向とも符合するわけであります。農林省としてはこの現状をどのように見ておられるのか、ひとつお伺いをいたしたい、このように思います。
  19. 森実孝郎

    森実政府委員 いま御指摘がありました北海道酪農調査でございますが、これは道の中央会と道庁が酪農家をAからDの四階層に分けてサンプルで調査されたものでございます。これにつきましては、私どもも資料をいただきまして検討をさせていただいております。  私ども農家経済調査で見ましても、確かに負債額はかなり増加しております。北海道の例で申しますと、たとえば五十四年でも、五十三年対比で一二・二%の負債の増加という点があるわけでございます。借入金自体は、北海道の場合で言えば財政資金のウエートが、都府県の場合においては系統資金のウエートが非常に高いという形になっております。  なお、もう一つ注目しなければならないのは、この負債の増加というものは、一方においてやはり資産の明確な増加を伴っていることも事実でございます。たとえば、先ほど申し上げました農家経済調査で申しますと、五十四年は一三・九%北海道では資産が増加しているという実態があります。そういう意味では全体として負債も資産もふえたという形にはなっているわけでございますが、従来のように生乳生産も順調に伸びて市場を確保できた、乳価も順調であった時代から、はっきり低成長に移行いたしまして収入が停滞する、一方、急速な設備投資に伴う資金がいわば償還期に入ってきている、償還金の負担が年々ふえてきている、こういう意味で、いわばバランスシートの問題ではなくて、むしろ資金繰りの問題として大変つらい状況が生まれてきている。さらに五十五年に入っては、全体の乳価の低迷等もありまして所得自体も非常に影を差し、経済余剰も減少してきているということは事実だろうと私は思います。  現在、道庁等も予算を計上されて調査中でございます。私どももこの調査結果を見て、また国としても必要な調査を補完して実態を正確に把握して問題の解決に当たることが必要な段階に来ているという認識を持っているわけでございます。
  20. 北村義和

    北村委員 抽出調査でございますから、これらの抽出調査をもとにして推計をするということでございまして、現在の時点で明確にこれに対応していくということは非常にむずかしい、こうも思います。したがって、いまのお話のように、今後国と道が一体となって調査を進めていただいて、適切な措置をひとつお願いいたしたいと思いますが、このことについては後ほどまた、さらに私の意見を交えて提案をいたしたいと思いますので、その際にお聞きをいたしたいと思います。  次に、今年度の加工原料乳の乳価保証あるいは基準取引価格、さらに限度数量、それから指定乳製品の安定指標価格、こういったようなものを、いま申し上げました実情をどうとらまえて判断していくか、非常にむずかしいところでございますけれども実態がこのような形になっておりますので、私としては、やはり相当程度反映するような配慮があってしかるべきではなかろうか、こうも考えますが、この点についてお伺いいたしたいと思います。  恐らく局長の方からは、審議会の意見を聞いて適正な水準にということではありましょうけれども、とにかく加工原料乳地帯の北海道の経営実態が先ほど申し上げたような状況にあるわけでございます。これらを踏まえて農林省としてひとつ反映をさせていただくというふうにぜひともお願いをいたしたいのでございますけれども局長のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  21. 森実孝郎

    森実政府委員 私ども、二十七日に畜産振興審議会酪農部会を開くことになっておりまして、この審議会の意見を伺って今月末までに決めたいと思っております。御指摘もございましたが、私どもも非常にむずかしい時期だろうと思っております。はっきり申し上げると、先ほど申し上げたような膨大な乳製品過剰在庫を持っております。需給ギャップがやはり生まれてきている。生産のポテンシャルな伸びの方が消費の伸びをはるかに上回る状況にある。それからこの数年間の動きを見ると、規模拡大を基軸としながら相当頭数がふえてまいりまして、一頭当たりの泌乳量もふえて乳量がふえているという実態にある。かなり価格が生産刺激的に働いた過程があったということを考えなければならないと思います。  そういう意味で、私どもまだ結論を出しているわけではございませんが、保証価格については、生産の抑制と急速な需給の均衡を図るためには引き下げ論も一部にあることも事実でございます。しかしまたコストが上がってきているという点もあるわけで、据え置き論もあるわけでございまして、どう考えるか非常にむずかしい状況であるので、これから十分皆様方の御意見も伺った上で私ども政府としての方針を決めていかなければならないと思っております。  保証数量の問題についても、ただいま申し上げましたような、いわば過剰在庫を持っているということ以外に、乳業自体が非常に経営状態が悪化いたしまして、縮小均衡の傾向が出てきているわけでございます。果たして実態としてどこまで乳業会社にしっかり引き受けさせることができるかどうか、そこのめどをつけることも非常に大事だろうと思っております。とつおいつ頭を痛めて思案をしているところであるということを御高察いただきたいと思います。
  22. 北村義和

    北村委員 いずれにいたしましてもこれから審議会の答申を得るわけでありますから、私どもも党の機関の中で十二分にこれらの問題をいまから検討しながら、農林省の方針に期待をかけるところでございます。  もう一つお伺いをいたしておきたいのでございます。三月十六日の畜産振興審議会におきまして第三の乳価論が提起されたと聞いております。その内容局長の見解をお聞きいたしたい、このように思います。
  23. 森実孝郎

    森実政府委員 確かに畜産振興審議会委員の方から第三乳価というものを考えるべきではないかという御指摘があったことは事実でございます。また、それ以外にそういう御議論が一部から出ていることも事実でございます。  その背景というのは恐らく二つあるだろうと思うのでございます。一つは、はっきり言うと生乳は過剰である、しかし米の過剰と違って、いわば価格に媒介された過剰である、その意味で、より安い生乳でより安い乳製品をつくるならば、それは輸入に代替できるではないか、市場の拡大を図れるではないか。今日のように日本酪農の規模も拡大して生産性も上がってくるとすれば、加工向けにはより安い乳価、第三の乳価みたいなものもその一部にはあっていいのではないだろうかという背景一つ。それからもう一つは、これは私どもも一番頭の痛い問題で、いま農業者間の話し合いを進めてほしいということを急速に要望しているところでございますが、飲用乳の建て値が急速に崩れてきている、過剰を背景といたしました農協プラントあるいは乳業の過当競争の中で非常に建て値が崩れてきている。何とか飲用乳についての需給調整と申しますか、飲用乳に供用される生乳の量をある程度抑えていかなければ、非常に強力なバイイングパワーを持った現在の小売資本に対抗できない。そういう意味においては飲用乳に供用される生乳の需給をある程度調整していくための手法としていわば要るのではないかという御議論だろうと思います。  私ども、ようやくそういう議論が出てきたということは一つ状況の変化があるのではないかと思います。特に今日のような大幅に需給基調が緩和している状況下においては一つの有力な御議論であり、またそれがある程度まで行われるならばいわゆる生産調整を回避することも可能であるという背景から、農業団体等からも言われている面もあるわけでございまして、一つの御議論として評価し、少し勉強をさせていただきたいと思っているわけでございます。
  24. 北村義和

    北村委員 この問題につきましてはまだ私どもも深く検討してみなければならないと思いますし、ただいまの説明内容背景等について私どももひとつ今後検討を進めたい、こういうふうに思います。  次に、先ほどの問題と関連をいたしまして経営対策でございますけれども農家の現金収支を通じて見ますと、階層別に経済の実態の格差が拡大しているわけでございまして、これを農水省の方としてはどう見ておられるか、どのように認識されておるか、ちょっとお聞きいたしたいと思います。
  25. 森実孝郎

    森実政府委員 この二、三年の農家経済調査を多少個別に分析すると同時に、先般いただきました北海道庁や農協の調べられた調査等を分析してみますと、一つ経営格差が確かにございます。しかしもう一つは、やはり地域格差がかなりある。地域によって農協によって非常に差があるという点がございます。これは私どもの認識から申しますと二つあります。  一つは、やはり北海道等の酪農というのは急速に設備投資が行われて産地ができてきたわけでございまして、投資期間からかなり長期に時間が経過した、ある程度でき上がってきているところには余力があり、いわば産地形成の過程がおくれた地域についてはかなりきつくなっているという実態があるということが一つあるだろうと思います。それからもう一つ背景といたしましては、私これは農協の運営の問題にも非常にかかわってくると思いますが、いわゆる貸し出しというものにどういう姿勢で臨まれたかというあたりの問題もやはり差があるのではないだろうか。それ以外に、ただいま御指摘がありました経営格差というものは、何といっても規模の農業でございますから出ております。  そういった状況を踏まえて、これから負債整理のための対策をもし検討するとすれば、それはやはりそういった要素を十分取り入れて、個々の経営条件に即して考える必要があるのではないだろうかという基本認識を持っているところでございます。
  26. 北村義和

    北村委員 特に私は、手元にございます道農務部の戸別調査の中から、B層の一部、C、D層を対象にしてどうしても経済再建対策を講ずる必要がある、こういうふうに思うわけでございますが、局長考え方をひとつお聞きしておきたいと思います。
  27. 森実孝郎

    森実政府委員 従来から、いわゆる負債整理を念頭に置きまして中期の低利資金ということは供与してまいりましたし、昨年からは自作農維持資金を特に酪農を念頭に置いた負債整理に充当するということとし、さらに本年はその枠もふやすし、融資限度も引き上げるということを現在検討準備を進めているところでございます。  また、先ほど申し上げましたように北海道庁の調査農協調査等も中間的に伺っておりますし、さらに調査を詰められると聞いておりますので、内容を十分検討させていただきたいと思います。先ほど御指摘がありましたこの中央会と道庁のサンプル調査というものも一つの有力な参考になると思います。この区分がいいかどうか、はっきり申し上げますと、実は借入金の内容というものが物を言うだろうと思いますし、それからやはり一頭当たりどの程度の借入金になるかということもよく見きわめなければならぬと思いますので、これも一つの参考にし、またそういった他の要因も取り入れて、これからじっくり勉強させていただく必要があるのではないだろうかと思っております。
  28. 北村義和

    北村委員 時間もたってまいりましたので、私はこれから提案をいたしまして、これらの方向の中でひとつ検討をしていただきたいものだ、このように思うわけでございます。  私は北海道でございますので、北海道のことを重点にして申し上げますが、公庫資金を含む約定償還金がC、D層では総収入の大体三〇%を超えておる。したがって一時的な借りかえ措置だけではまた再び償還不能の者が出てくるというふうに見えます。したがって、少なくてもB層については三年、C層については五年、D層については七年、制度資金の償還延期をしなければ経済再建というものは本物にならないのではないか。したがって、北海道の農協では自主再建を打ち出しまして、各農家の主体性に基づき長期の計画を立てることを申し合わせしておるのであります。したがって、やる気のある者については抜本的、長期低利の再建対策資金措置を考えていく必要があると考えておるわけであります。  そこでその方法として、C、D層のうちの重症の者を対象として、自作農維持資金の中に経済再建枠を設けまして低利の制度を新しく考えてみてはどうか。それ以外の者に対しては系統資金を原資とする経済再建資金制度を設け、国が利子補給を行う必要があると思います。この中に先ほど申し上げましたこれからの制度資金の約定償還金を必要な時期の分を含めて対応する、こういうふうに一応考えられるわけでございますけれども、今後検討する中で、これらの面を含めてひとつ積極的な対応を特にお願いをいたしたいと考えますが、局長のお考えをお聞きをいたしておきたいと思います。
  29. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほどから再三申し上げておりますように、私どもも補完的に調査をしたいと思っておりますし、道庁の正式の調査も進められるということを伺っております。  そこで、考え方といたしましては、先ほども申し上げましたように、いま資金繰りが特につかなくなっている農家をどうとらえていくか、借金の性格をどう分析するか、その上に立って、各種の据え置き期間の延長とかあるいは据え置き期間の設定とか償還期間の延長を含むようなかなり長期のものが必要な階層もある、農家もあるということは、よく調査してみなければ私わからない点もありますが、恐らく否定できないところだろうと思います。  そういう意味で、ただいまの御提案も私一つの御提案だと思いますが、全体分析と、その分析に即した対応はいろいろな手法なり準備の仕方があると思いますので、ひとつ参考にさせていただくということできようのところは御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  30. 北村義和

    北村委員 時間が参りましたので質問を打ち切りたいと思いますけれども最後に、要望と、大臣もお見えでございますので大臣からもひとつお答えをいただきたいと思います。  実は私それぞれ農村を回って歩きまして、農家の故老から厳しく言われることがあるわけでございます。それは、農家は工夫し努力をし、汗を流すことについては何にも苦痛ではない、だけれども、汗を流す、物をつくることに制限を加えられる、こんな苦しいことはないのだ、いままでの農民の心理というものはそうでないか。そういう勤勉、努力、そういったようなものを農政の根幹に据えてもらわなければ、何のために開拓をし農業をやっているのかわからなくなる、しっかりひとつ農政の原点に戻って、日本の農業のあり方なり、あるいはそれぞれの地域の位置づけをしてくれろ、こういう涙ながらの要望、意見を聞くことが実は至るところでございます。  特に酪農不況の関係については、何といっても需給の均衡を図るために、生産者みずからの計画生産は積極的にやらなければなりませんが、何としてもこの過剰在庫を、あるいはまた、口を悪く言えばしり抜けの輸入規制、こういったようなものは思い切ってひとつ整理をし、チェックをしていただいて、晴れ間をつくって、そうして生産にいそしめる、こういった方向づけを是が非でも努力をしていかなければならぬではないか、こんなふうに考えております。  こういった点、大臣は十二分に農民の心は御承知だと思いますが、これは酪農に限らず、すべてのいまの日本の農業情勢がそうなっておるわけでございますが、重ねてこの際、大臣の農政の進め方に対する所信をお伺いして質問を終わりたい、このように思います。
  31. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 北村委員の御指摘のとおり、日本の農業に携わっておられる農家の皆さん、今日ほど厳しい環境の中で営農を続けなければならない、酪農を続けなければならない、また養蚕をやっていかなければならないという時期はないのじゃないか。私も国会に籍を置かしてもらって二十年、今日ほど厳しい環境というものは初めての経験でございます。これもそれぞれ農家努力の結果、いいところまで来ておるのだけれども、そのいいところという面が農家一つもはね返ってこない。規模を大きくすればするほど、資産はふえるかもしらぬけれども、借金もふえて重圧感がひしひしと家族の上にのしかかってくる、そういう気持ちを取り払うべく私ども懸命の努力を続けておるわけでありますが、なかなか具体的な解決の方策がすかっと出てこない。  実はゆうべもドイツのある村長さんが訪ねてきたわけでありますが、その方が私の顔を見るなり、ドイツでも牛乳の洪水で、バターの山で困っております、すぐそういうことを言うわけです。そういうことでドイツも非常に苦しんでおる、日本だけじゃありませんぞ、こういうことなんですが、いや、あなたの方はとにかく百年、二百年と長い歴史を持って、その歴史の上に築かれた酪農なんだ、日本は戦後三十年の歴史しか持たないのだ、そういう短い歴史の上にとにもかくにも急速に酪農家努力によって先進国並みの規模になって、どうやらこれからというときになって疑似乳製品とかなんとかいう外国酪農品の輸入によって非常な苦境に追い込まれておる。ここのところで基本的な対策政府が講じていかなければ、本当にいままで努力したのが画餅に帰する心配もある、こういう意識を私は就任早々から持っておるわけであります。  したがいまして、事務当局に対しましても、ただいままで答弁申し上げてきましたとおり、今回の加工乳価等につきましても、十分検討に検討を重ねて、そうして適正に決めるべきであるし、しかも現在酪農家が当面しておる負債の問題、こういう問題もそのままにしておいてはいかぬ、いままでいろいろと自作農維持資金なり何なり努力はしておりますが、これだけではいかぬよという気持ちも持ちまして、事務当局にもいろいろと検討を命じておるところでございます。  いろいろ党の方とも十分連絡をとり、御相談をいたしまして、そうして酪農家がその経営意欲を消磨させないでやっていただけるようなぎりぎりの線であっても、その線だけは、もう酪農をやめたというようなことをおっしゃっていただかないだけの線はどうしても確保していきたい、そんな気持ちで対処し、指導してまいりたいと思っております。
  32. 北村義和

    北村委員 終わります。ありがとうございました。
  33. 田邉國男

    田邉委員長 島田琢郎君。
  34. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、先般の質疑を通して、五十六年の乳価決定に当たって何としても整理をつけておかなくてはならない問題を幾つか提起をいたしまして、時間の関係で、ただいま社会問題にもなっております擬装乳製品輸入の問題に力点を置かざるを得なかったのでありますが、この問題は当日、私が十分納得できない点が多いので、質問は継続させていただくということを宣告いたしておきました。  その後、もう事実上畜産振興審議会が開かれたわけでありまして、これから飼料部会、食肉部会、酪農部会と一連のスケジュールが決まって進められていくわけでありますが、大臣は、少なくとも乳価決定に合わせてこの問題についての結論を出すのだ、こういうことを言っておられましたから、部内では相当検討が進められているものと理解をいたしますが、検討の経過、おおよその考え方をお示しいただくことができれば、まず冒頭でそれを伺いたい、こう思います。
  35. 森実孝郎

    森実政府委員 先般大臣からもお答えを申し上げましたように、乳価決定まで決着をつけたいということで、現在ニュージーランドと最終的な段階での交渉を行っておりますし、またECにも先般、当方の意のあることを伝えて、その回答を求めているという状況でございます。また国内的には、農林省、通産省、大蔵省、外務省一体となりまして、具体的な内容について詰めているところでございます。  私どもといたしましては、まず、歯どめ措置についてはいろいろな手法があると思いますので、できるだけそういった手法を組み合わせて、実効が上がるということが現実での対応の基本論だろうと思っておりますので、そういう努力を続けているところでございますが、ただいま申し上げましたように、なお交渉を持続している面もございますので、具体的内容については、決定しましたところでひとつ御説明させていただきたいと思うわけでございます。
  36. 島田琢郎

    ○島田委員 主要な輸出国であるニュージーランド初め各国に意向を打診している、こういうお話でありますが、どんなことを意向として打診しているのですか。
  37. 森実孝郎

    森実政府委員 交渉内容でございますから、直接御報告するというわけにもまいりませんが、私どもとしては、節度ある輸出と申します、輸出の抑制ということでございます。
  38. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、前回の質問趣旨は、国内的には行政指導を強化する、まあ大蔵大臣がそういう趣旨のことを予算委員会でお述べになった、対外的には節度ある輸出を要請する、いずれにしても、これは具体的には何の内容も伴わない、お願いします式の意向打診でしかないというふうに聞こえるのですが、それで各国が納得しましょうか。  たとえば、ニュージーランドのごときはどう言っているかというと、グローバル商品でないことは認める、わが国においても二〇%以上は製造、販売はすべて許可制になっているというしろものでありますが、日本から何しろ欲しいと言ってくるのでありますので、これにおこたえしなくてはならないから、私どもは紳士的にこれに対応しているのでありますと言い張っていたではありませんか。節度ある輸出お願いするということで物事が解決できるというふうに、素人なら考えにくいのですが、一体それで大丈夫だとお考えですか。
  39. 森実孝郎

    森実政府委員 私どもも実は、民間の方がニュージーランドとお会いになった場合、それぞれニュージーランド政府なりEC政府も公式的な御発言があるわけでございますが、これは事柄の性質上、あるいは立場上やむを得ないことだろうと思います。それからまた、新聞でもいろいろな記事が推測として書かれているわけでございますが、私どもも、現実交渉を行っているだけに、それがいいとも悪いとも言えない、当たっている点もあるでしょうし、当たっていない点もあることも事実なんでございますが、困っております。  しかし、政府の話し合いといたしましては、そういった抽象論ではなくて、かなり具体論として私どもは話を進めているという状況でございまして、単なる節度ある輸出という抽象論ではなくて、非常に具体論として話を進めている状況であるということは御理解を賜りたいと思います。  それからもう一つは、国内ユーザー、インポーターに対する行政指導でございますが、私ども、やはりこれはしっかりユーザーの組織をつくり、インポーターの組織をつくり、そういった組織を通じてチェックするということを考えておりますし、さらに、ちょっと先ほども触れましたけれども、そういった輸出国側の協力と国内における組織的な行政指導と、それを何らかの形でチェックできるような方式というふうなことを、いろいろ手法を組み合わせて考えなければ、御指摘のように実効が上がらないと思っておりますので、そういう方向で検討しておりますが、何せ、現在協議しております内容に応じて具体的に考えなければならない点もありますし、ニュージーランド、ECとの総合のバランスというふうな問題もありますので、これ以上の詳細は、まだ検討段階でもございますので、御勘弁いただきたいと思います。
  40. 島田琢郎

    ○島田委員 おわかりでもありましょうが、いまのようなお考えに立っていくとすれば、こう理解していいのか。  ニュージーランドについては、国内規制の内容についていま触れましたが、重ねて言えば、乳脂率二〇%以上は製造、販売はすべて許可制、これがニュージーランドでありますね。ベルギーは一〇%以上は製造、販売すべて許可制。西ドイツは乳脂肪が入るとすべて製造、販売が禁止であります。フランスは四一%以上が製造、販売禁止であります。そのほかのECは、いずれも国内的な規制としては許可制をとっております。アメリカでさえも四五%以上は完全IQ制でこれを規制している。カナダは御承知のとおり全くのIQ制であります。日本だけが自由ではないですか。七〇%以上はまあバターとしての扱いになりますけれども。  しかも、私は繰り返し申し上げますが、全く日本向けの特殊製品であって、グローバル製品ではない。だから私はガット攻勢論を打ったのであります。ほかの国はこういう状態ではないですか、日本だけ何で及び腰になる。そういう必要がありますか、堂々とガットで主張されてしかるべきではないですかと言いました。  これは、現下の諸情勢を考えますときに、きわめて暴論だという意見もございます。しかし私は、その根底にあるのは、今日の国内的な情勢、もう述べる必要もありません。酪農家は、四年据え置きの乳価、そうして実質手取りが減っている。先ほどの質問にもあったように、負債は累増し、固定化された負債でもうにっちもさっちもいかぬという状態に追い込まれている。価格が据え置かれたら量で何とかなればまだ生きる道はあるが、生産は抑制されている。右を向いても左を向いても、前を向いても後ろを向いても、全く真っ暗やみの中に置かれているという状態を考えますならば、これは単に各国の情勢を見ながら処置するといったような、そういう手ぬるい状態で国内的に問題の解決ができないということは、余りにも自明ではありませんか。  私は、悪貨が良貨を駆逐することのないような、そういう措置がいま擬装乳製品に求められているのだということを前提にして申し上げてまいりました。しかも、私は少し口が過ぎたかもしれません。農林省が重い腰を上げて去年の秋からこの問題に取り組みをされたことに私は大きな評価をしてきた一人であります。同時にまた、酪農民もそのことに大きな期待を持ちました。何かやってくれるという農林省の動きに対して応援の態勢もとりました。希望に胸をふくらませました。しかし、それが一転してしぼみ、今度はがっかりさせる、失望させる。この罪はまさに万死に値するではないか、大臣責任をどうおとりになるのかと迫ったのであります。  いまのお話を聞いていたら、どうもまだ不安でなりません。大臣は、事あるごとに決意を強く述べておられますから、重ねて大臣に追い打ちをかけるような質問をすることは私は差し控えたいと思いますが、事務当局の局長答弁は、どうも大臣の決意を裏書きするようなものにはなっていないと思えてならぬのです。それでは国内的にはどうしようとお考えになるのか、そこのところをひとつこれからお話を聞いてまいりたいと思うのです。  私は、こうした輸入の問題にしろ、これから触れていきたいと考えておる乳製品在庫の問題にしろ、あるいは置かれている酪農経営実態を考える場合にしろ、どうも不足払い法は、事実上現在の状況の中では機能喪失、半身不随の状態に陥っているという感が深いのです。だから、一つ一つ正確にいま問題の解決を図っていかなくてはならない、それは不足払い法という法律を守る上でも大事だ、こういう前提に立っているということをまずしっかりひとつお聞きとめいただきたい、こう思うのです。  擬装乳製品の問題については、これ以上触れるということはもう必要ないかもしれません。あとは、先ほど自民党の側からもありましたが、この際、政府がやりにくいならわが方で、議員立法で構えてでもこの問題を処理いたしたいと決意が述べられました。自民党の諸君がその気なら、われわれ大いに賛成だから一緒になってやりましょう。政府はそれでもよろしいか。
  41. 森実孝郎

    森実政府委員 先般も御報告申し上げましたように、はっきりと申し上げますと、ニュージーランド、ECからIQ化の問題について反対の通報がございましたことは事実でございます。さらに、はなはだ残念なことだったわけでございますが、CCCの昨年の十一月の委員会において、わが方の主張と反対の結論が表決されまして、したがってIQ化は関税分類の解釈としてするという方法をとれなくなって、輸入制限品目の新設という、最も国際的にむずかしい問題の形をとらざるを得なくなったという状況があることは事実でございます。  しかし、前々から農林大臣が申し上げておりますように、私ども農林省といたしましては、やはりこれからも引き続き国際的状況を見ながら輸入割り当て制度の実現には努力をしたいと思っております。しかし当面、やはり合理的な歯どめをかける必要があるという現実認識に立ちまして、当面の抑制措置を考えるという姿勢をとったわけでございます。そういう現実状況にあって、その中での対応を考えているという点は御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  42. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、いまダイレクトに振りかざして議員立法のお話を持ち出しましたが、しかし、現行法でやれないことはないということも一つあるのですね。現行法そのままではできませんが、現行法にわれわれが一つ手を加えれば、大臣そんなに、六月になったらおれの首はだめになるんだよなんというような泣き言をおっしゃらぬでも、問題解決する道はあるのです。だからわれわれにお任せくださいという意味でありますが、これはいまさら法律を持ち出して言う必要もありますまいが、少なくとも不足払い法による三条の関係あるいは十四条の関係から言えば、これに一項目加えればいい。あるいはまた輸入貿易管理令三条に貨物としてこれを品目追加すれば、この問題はすっといっちゃうのですね。技術的にはさしてむずかしい話ではない。ただ、おっしゃるように外国との関係があって、その辺の遠慮がございますというのが問題のポイントでしょう。  そして、食品流通局をして言わしめれば、もう一つあるのは、実はユーザーの大半は零細な菓子屋さんでございますというのが一つの泣きどころだと思うのです。その問題を解決するというのも私はそんなにむずかしい話ではないと思うのです。  先般の私の質問に対して森実局長から、ほぼ現行法の手直しでIQ制に移行することは断念せざるを得ません状況下に追い込まれましたとおっしゃって、事実上ギブアップを天下に表明されたのであります。しかし大臣は、そうは言うけれどもそれに匹敵するような方法をもってこの問題の結論を出したいとおっしゃったのだから、冒頭で、それならそのお考えを具体的にもうそろそろお示しいただかないと、乳価は目の前に迫ってきているわ、この問題がだんごになって、ごっちゃになっていったら、変な解決をされたらこれはかなわないという気持ちも酪農家の間には強くあるのです。だから、これはこれとして前段の大事な、整理しなければならない政治課題としてとらえて、しっかりひとつ結論をお出しいただきたいという趣旨で、私はしつこいけれどもきょうの質問の冒頭で再びこれを取り上げたのであります。お聞きになっている皆さんに納得できるような大臣からの御答弁がいただければ幸いです。
  43. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 乳価決定につきましては、先ほど来の質疑等を通じていろいろ実情の現況が明らかになっておるわけでございますので、あらゆるデータの上に立って適正に決定をしていきたいということで、最後の詰めを急いでおるところでございます。審議会の意向も十分伺った上で決心をしたい、こう考えておるわけでございます。それにつきましては、擬装乳製品等の問題、IQ制にしたいということでやってきたわけでありますけれども森実局長からこの前答弁申し上げたような線を歩まざるを得ないという点にぶつかっておるというのが現況でございます。  しかし、やはりこれは相手のある交渉事でございますから、こちらの姿勢がやわらかくなり弱くなれば、相手がかさにかかって出てくるというのはもう折衝事の道程でありますので、やはり気持ちだけでも、とにかく農家実態酪農実態、今後の日本酪農の展望を切り開いていくためにも、折衝する者の決意はやはり相当きつく、強く持って折衝を進めるようにということを、私は森実局長、また次官以下に指示をいたしておるわけでございます。したがいまして、IQ制まではいかなくとも、とにかくこの厳しい国際環境の中でぎりぎりの線までかち取る、圧倒されないという線だけは確保しなければいかぬ、こういうことで、実はこれは具体的に数字を入れて申し上げればいいわけですけれども、そういう点いまそれぞれお互い、ニュージーランドはニュージーランド、ベルギーはベルギーで、それぞれ自分の国の酪農家を守るために丁々発止とやっておるわけでございますので、その点はひとつ御寛容をいただいて、抽象的な説明で申しわけありませんけれども、近く結論の出ることでもございますので、この点はひとつお聞き取りいただきたいと思うわけでございます。  と同時に、いまいろいろ島田委員から言われましたが、日本の農業政策全般について、諸外国がどのように自分の国の農業を守っているかということを私は私なりに勉強し直しているということでございまして、アメリカにいたしましてもそれからECにいたしましても、特に自分の国の農業、主食として扱っておる食品を生産する農業の保護については、非常に懸命の施策を講じておるということをいまさらながら私はひしひしと感ずるわけでございます。したがいまして、事務当局を督励をいたしまして、日本といたしましても、これからの八〇年代の基本構想並びに長期見通しを達成していくためには、よほどそういう面での決意と対策確立しなければ達成も容易じゃないぞ、こういうことで指導をいたしておりますので、御協力をお願いしたい。  立法措置の問題につきましてはやはり立法府の問題でございますので、私はいま両生動物といいますか、行政府の方におりますので、ここでは発言は遠慮させていただきますが、これはもう自動車の問題にしても、アメリカの議会あたりでも盛んに規制立法すべしという声も上がっておるわけでございます。これは国民の声として国会からそういう声が出てくるのは自然の姿ではなかろうかな、こういう感じもするわけでございますので、お答えをいたしておきます。
  44. 島田琢郎

    ○島田委員 大臣の苦しい胸の内を私どもも察しないではありません。ですから、本当は追い打ちをかけるような質問はやめておこう、こう思ったのでありますが、いまのお話ぜひひとつ——大臣は、六月になったらおれの首だって危ないよと前回おっしゃいましたが、私はまれに見るりっぱな農林大臣だと思っておりますから、首はつながるように私だって協力は惜しまない。これはまさに踏み絵であり一つの試金石だと心得て、鈴木内閣の重要な閣僚として居残ることのできるような亀岡大臣であってほしい、こう思っている気持ちは少しも変わっておりません。  そこで、きょうは大蔵省の関税局からお見えだと思うのですが、お見えですか。——ちょっと聞いておきますが、農林省の所管にかかわる部分で特にいま輸入乳製品の問題を私は取り上げておりますが、昨年事業団が一元輸入をやりました関係でいいますと、全体で何トンあるとつかまえていますか。
  45. 新藤恒男

    ○新藤説明員 擬装乳製品の数量ということでございますでしょうか。
  46. 島田琢郎

    ○島田委員 いや、事業団輸入した乳製品の全体の量。
  47. 新藤恒男

    ○新藤説明員 事業団輸入いたしました全体の乳製品の資料、ちょっといま手元にございませんですけれども……。
  48. 島田琢郎

    ○島田委員 ちょっと意地悪い質問であったかもしれませんが、関税局は、いま話題になっているし、先般も大蔵省から私はおいでいただいております、この問題に一時間の時間をかけて質問を展開いたしました、相当御認識をいただいているつもりで、だからこの問題にも関税局内部でも相当検討がされたのではないかと考えたからお尋ねをしたのでありますが、どうやら問題意識をそれほど強くお持ちではなかったようであります。きわめて残念です。ぜひひとつ重大な関心をお持ちいただきたい。関税局が関心を持たなければ、肝心の所管の農林省はこの問題を詰めていく段階でもスムーズにいかない、こういう結果に相なります。  それでは、ひとつ所管の畜産局に聞きますが、いまの質問につけ加えてお尋ねをしますが、一元輸入品目、つまり非自由化品目のほかに入ってきている乳製品というのは何トンあるのか。生乳換算で結構であります。つまり、それは輸入貿易管理令や関税割り当て制度によって入ってきているものを指すのでありますが、その辺のところは明確になっていますね。それもあわせてお尋ねをし、同時に、そのどちらが多いか、比較していただきたい。
  49. 森実孝郎

    森実政府委員 まず事業団輸入でございますが、バターと脱粉でございます。バターにつきましては実は輸入は五十三年以降実施しておりません。脱粉については五十二年以降実施しておりません。  そこで、割り当て、自由物資等を通じて民間輸入の問題でございますが、練乳、それから飼料用の脱粉、学校給食用等の脱粉、それからチーズ、これはプロセスとナチュラルがございますが、乳糖、カゼイン、こういった乳製品を全部合計いたしますと、五十三年が全体といたしまして三十一万二千トン、五十四年が三十一万トン、五十五年は二十八万一千トンとなっております。その意味では狭義の乳製品自体輸入量が減っております。  それから、いわゆる擬装乳製品と言われているものは、調製食用脂とココア調製品の無糖のものでございますが、数字で申し上げますと、調製食用脂は五十三年が一万三千三百トン、五十四年が一万二千八百トン、五十五年は一万七千トンでございます。それから無糖のココア調製品は、五十三年が一万七千トン、五十四年が一万八千九百トン、五十五年が一万九千八百トンとなっております。
  50. 島田琢郎

    ○島田委員 いま示された数字から見ますと、事業団の一元輸入の対象品目であります特定乳製品四品目、また政令で定めるその他の乳製品というのが三品目、つまりこれは七品目でありますが、七品目とその他の乳製品を主原料にしたものと、比較で言えば圧倒的にその他の方が多いということは歴然としているわけですね。
  51. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま申し上げましたものを生乳換算で申しますと、いまの時点のベースでは確かにいわゆる狭義の乳製品が、生乳換算量で二百六万トン、参考までに、五十四年が二百二十三万トン、五十三年が二百二十五万トン、それからいわゆる擬装乳製品が、五十五年が三十一万トン、五十四年が二十七万トン、五十三年が二十六万一千トンでございますから、御指摘のように一元輸入の品目よりははるかに多いということは事実でございます。
  52. 島田琢郎

    ○島田委員 そこで、事業団が七品目を対象にした、それはわけがありますね。つまり七品目がそのほかのものよりも多い、しかも、それは国内において価格や需給に与える影響が余り大きくないということによって、七品目に限定し、それ以外を外したわけです。ところが今日の状況は、いま局長から御答弁のあったごとく七品目よりもはるかにその他の方が多くなっている、それは価格や需給に与える影響も少なくない、こういう現況に立っているとすれば、七品目で限定する意味が薄れてくるということになりますね。  その一つの品目として、調製食用油脂つまり調製バターなるものが七品目以外の品目の中でも圧倒的に飛び抜けて量が多い。また脱脂粉乳も多くなっている。そうすると七品目を一元輸入の対象にした経緯からいいますと、圧倒的にこういう状況の変化があるということが言えるのですから、品目追加は当然と言ってもいいのではないかというのが私の論法であります。この辺はいかがですか。     〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕
  53. 森実孝郎

    森実政府委員 それは実は私、なかなかむずかしい問題だろうと思います。一元輸入を現在の不足払い法をつくりますとき制度化いたしましたが、どういう品目を一元輸入の対象にするかということは二つの視点から議論されたわけでございます。ぎりぎりそれが国際的に是認されるかどうかという問題が一つと、それからもう一つは、まさに先生指摘のように、国内乳製品及び牛乳の価格の安定、需給の安定にどの範囲が必要かという判断だったろうと思います。  ただいまのいわゆる一元輸入品目以外の乳製品について、はっきり申し上げますと実は一番大きいものはえさ用の脱脂粉乳なのでございます。その次はチーズでございます。それからあと乳糖、カゼインと調製食用油脂が比較的大きなものではないかと思います。  私、やはり品目ごとにそれぞれ事情が違うと思います。飼料用の脱粉は、私が申すまでもなく最高の品目でございますが、これはいわば日本畜産のコストという視点からいきますと、国際価格の脱粉が二十万円とか二十五万円、それに対して国内の脱粉はどうしても四十万円から四十五万円になる。そういう価格差の中で、どうやって割り安なえさを確保するかという視点で行われているという事実があるわけでございます。  それからチーズにつきましては、何といいましても商品形態が多種多様でございまして、どんどん変化していく、精製品という形態もある。そういう意味で、一方においてわが国のチーズ産業もそこまで成熟していないという状況のもとで、この多様な、いわば最終消費財に近いものとしてのチーズについては引き続き自由化をしておいたということでございまして、この実態はいまも非常に大きくは変わっていないと思います。  一時問題になりました乳糖、カゼインについては、もう今日の状況でははっきり言うと割り高な商品になっておりまして、特殊な工業用とか製薬用等に使われておりまして、むしろ若干減る傾向が出てきております。価格の関係からいわゆる合成乳をつくるという状況もなくなってきております。その意味では私は余り問題はないのではないかと思います。  いろいろ詰めていきますと、まさに先生も御明察のとおり、調製食用油脂の問題が大きく浮かび上がってくるということは私も事実だろうと思います。調製食用油脂につきましては、利用技術も進んだ、消費の拡大、質的向上の中で、いわば従来のショートニングにかわって使われ出したという点もありますが、他方において確かに御指摘のとおり、その限りにおいてはわが国バターというものの消費市場を抑え込んでしまう結果になってしまったということは否定できないだろうと思います。  この問題が非常にむずかしくなっております状況は、いま申し上げたように、一つ国内利用技術も進みそれなりに消費者にも支持されてきているし、何といっても実はバターの国際価格国内価格の間に百十万円以上と四十何万円という大きな格差があるという実態があることと、それからもう一つは、今日の需給の状況のもとで事業団バター輸入しておりません。輸出国の立場から言うと、バター日本輸入しなくなったことに対して大変不満がございまして、そこら辺の主張があるというあたりのむずかしさはあると思いますが、しかしまさに大臣指摘のように重要な課題と思っておりますので、まずここに歯どめをかけるということから積極的に取り組んでまいりたいということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  54. 島田琢郎

    ○島田委員 問題がはっきりいたしましたから、これ以上私はこの点に触れることは今回はやめておきたいと思いますが、一つだけ、せっかく関税局からおいでだから聞いておきます。  私は前回の質問で、これだけ問題になっている調製食用油脂がなお大手をふるって国内に入ってくる、これには関税が安過ぎるという問題もあるのじゃないかと質問しましたが、これに対しては的確なお答えがないままになっておりました。見解をお聞かせ願いたい。
  55. 新藤恒男

    ○新藤説明員 調製食用油脂あるいはココア調製品の関税率は現在二五%でございます。この水準につきましては他の品目の関税率と比較いたしますと決して低い水準ではない、ほかの品目全体で見ますと、平均ですけれども一けたになるという状況なものでございますから、この水準自体は決して低くないと考えます。  本件につきまして、仮に関税で実効ある輸入の規制を行おうというふうなことで、内外の価格差を基準にいたしまして試算いたしますと、現在の水準を数倍にしなければ輸入を規制できないというふうな状況でございますので、現在のわが国の置かれた立場を考えますと、そういうふうな高い水準の関税を設定することは大変むずかしいという状況でございます。したがいまして、先ほど農林省の方からもお答えございましたけれども、それ以外の実効ある措置ということで現在関係省とも相談をしつつ協議を進めている状況でございます。
  56. 島田琢郎

    ○島田委員 それでは次に進みます。  調製バターユーザー国内的にいえば相当の、一万数千社に及ぶという広範囲のものである、それだけ日本菓子業界の置かれている立場がきわめて零細であるということが言えるだろう、こう思いますが、いま直ちに関税障壁で輸入規制を厳しく行うということになれば、たちまちここに大きな影響が出る、こういうふうに指摘をする向きもありますから、私はそのことも否定はいたしません。酪農家が生き残ってお菓子屋が死んでしまってはどうにもならぬ、これもよく理解のできるところであります。それは大手の菓子屋なら、一年赤字になって苦しくても何年かでまた生き返るという道もあるかもしれませんが、一万数千社に及ぶお菓子屋さんの中には、家族労働で細々と菓子をつくっている人がおることも私は十分承知いたしております。したがって、この人たちを生かす道も考えなければならないのは当然であります。政治家としての責任で、片一方死んでもいい、片一方だけ生かせばいいというわけにいかないのもよく理解のできるところであります。  そこで、少しの知恵を働かさなければならぬのではないか。いま問題になっておる第二の点でいえば、国内におけるバターや脱脂粉乳を中心にした乳製品在庫が滞貨され、それがふえる傾向にある、全く動かない状態になっている、これは何としても解消しなければならない大事なもう一つの政策課題であります。  この際、端的に申し上げますが、せめて事業団の手持ちの在庫を一掃するという構えに立って物を進めようとお考えになったらどうだろうか。現在在庫は、時間の関係で私の方からこの数字で間違いないかということを念押しいたしますが、バターで実量一万一千九百七十トン事業団の倉に入っております。脱脂粉乳が四万四千九百トンございます。しかもこれは五十三年、五十四年、五十五年の現在までほとんどこの実量が動くことなく滞貨されている、間違いありませんね。
  57. 森実孝郎

    森実政府委員 若干ザイールに援助輸出したのでありますが、ほとんど間違っておりません。そのとおりでございます。
  58. 島田琢郎

    ○島田委員 現行法で事業団の特別売り渡しという制度がございます。この法律事業団の手持ち在庫を減らす、一掃するということは可能だと私は解釈していますが、どうですか。
  59. 森実孝郎

    森実政府委員 まさに制度上、法律上は可能なことだと私は思います。基本的な問題は、これに伴う負担をどうやって吸収していくかという問題だと思っております。
  60. 島田琢郎

    ○島田委員 財政的な問題は確かにあります。いま調製バターと言われております食用調製油脂は、いただきました資料によりますと、昨年一年間の平均CIF価格は四百二十二円だと発表されております。そういう値段で比較をするならば、国産バターはまさに安定指標価格で言えばキロ当たり千二百五十三円でございますから、大変な価格差があることは事実です。事業団民間から一〇%引きで買い入れるとしても、なおその格差はかなりあることも数字上は歴然としております。  しかもまた、いま私が申し上げようという趣旨は、お菓子屋さんを殺さない方法で物を考えるということが前提でございますから、特定してそのお菓子屋さんに国内バターの安売りをしていくということがなければ、これはやった意味がありません。また、お菓子屋さんが死んでしまうのであります。ほぼ輸入まがいもの製品に近い水準まで安売りをしなければ意味がないとすれば、財政の負担は相当なものになることもまた事実です。  しかし一面、事業団在庫バターの金利、倉敷その他の経費を含めると、年間おおよそ五億円になると伝えられておりますが、この数字は間違いないですか。
  61. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のとおり、五億以上になります。
  62. 島田琢郎

    ○島田委員 三年間滞貨すれば、単純計算でも十五億以上の金が必要だということに相なるのであります。安売りしてもなお在庫している方が得だという数字であるかもしれないが、しかし品質は下がり、社会的にもこのまま滞貨していくような状態をつくっていくことのデメリットの方がはるかに大きいとすれば、この際思い切ることの方がはるかに大きなメリットではないかと私は考えるので、現行法を発動して大臣は勇敢にこの在庫一掃に取り組むべきだと考えるのですが、その決意のほどはいかがです。
  63. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほども申し上げましたように、現在の過剰なバターと脱粉の在庫の処理をどう図っていくかは、私も重要な課題だと認識しております。  問題は、はっきり申し上げると、これに伴う負担をどういうふうに分担していくかという問題、それからもう一つは、民間在庫政府在庫との関係の兼ね合いを、どういう順序で処分していくのが一番市場に対する緩和に役立つかという問題、さらに負担をどういうふうに順序立て、時間をかけて吸収していくかという問題に帰着するだろうと思います。その一環といたしまして、先生も御指摘のように、当然余りに長期に保有するならば、金利、保管料は非常にかさんでくるということももちろん重要な判断要素であることは私も否定しないところでございます。  そこで、先生指摘のありましたように、端的に申しますと、事業団バターマーガリン業者に割り安な価格で渡して輸入に匹敵するような調製油脂をつくらして、それをお菓子屋さんに一般市場を撹乱することなしに流通させたらどうかという御議論だろうと思います。私も一つの有力な御意見であることは否定いたしません。  ただ、はっきり申し上げると、全体の過剰在庫についての順番とか負担の計画ということを十分考えなければなりませんし、これはなかなかむずかしい問題がありまして、国際的に私ども実は調製油脂輸出規制を求めているわけでございます。それとの兼ね合い、これははっきり言うと、仮に財政負担であれば、補助金をつけて国内で安売りをして輸入品を売り払う形になるわけでございますから、いわば輸出規制をしろと言っていることとの兼ね合いの問題が実は出てくるという問題があるわけです。そういう点も踏まえまして、少し宿題として検討させていただきたいと思います。  いまここで全体の過剰な乳製品在庫について、残念ながら系統立てて考えるだけの準備もまだございません。勉強中でございます。時間をいただきたいと思います。その一環として、その御提案一つの有力な案としてあるということは私もそれなりに評価させていただいておるところでございますので、今後の宿題ということで検討の一環に組み入れて、その問題点がどうなのか、それを回避できるかどうかということも検討させていただきたいと思います。
  64. 島田琢郎

    ○島田委員 私の提案を取り上げて検討するというお答えでありますから、これ以上のことは申し上げる必要はないと思いますが、ただ重ねて、こういう席でありますから明確にだけしておきたい点があります。  それは冒頭で、現行法で特別売り渡しができますねと私が言ったことに対して、できますという御返事であったように思いますが、これは大丈夫ですね。できないというのならばわれわれは議員立法を構えなければならぬということになるのでありますから、その辺はどうですか。
  65. 森実孝郎

    森実政府委員 法律上の問題としてはできますが、問題は事業団自体が、発生いたします赤字をどう処理するかということなしには事業団の運営として成り立たないということを申し上げているわけでございまして、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  66. 島田琢郎

    ○島田委員 ちょっと私は矛盾を感ずるのです。いま現行法で大丈夫ですというお答えでございますが、現行法を適用するとすれば幾つかございます。不足払い法十七条また政令の十一条、施行規則の十二条、いずれも適用できる条文であります。財政上のことだけ言ったって、法律的にはこう明記されていることをよもやお忘れになってはおりますまい。  一つは、保管する指定乳製品の数量が、国内生産量の一カ月分を超える場合特別売り渡しをしなければならないのです。また保管する指定乳製品等の保管期間が一年を超えた場合はやらなければならないのです。またそのほかに管理上の必要がある場合、つまり品質が低下するとかいろいろな問題が発生してまいります、この場合はできますし、また大臣が指定する用途に供する場合、こういうふうにまた特別な問題を付記してあるのです。財政上の問題のいかんにかかわらず、やらなければならないと法律上明記されておるではありませんか。財政上財政上と、それだけ頭に置いてお考えになったら、法律違反ということにもなりかねない。この辺の行政の取り組みはいかがなものかという気がしてなりません。この辺を明確にしていただきたい。
  67. 森実孝郎

    森実政府委員 法律の問題といたしましては、先ほども指摘がありましたように、十七条で「加工原料乳及び指定乳製品の時価に悪影響を及ぼさないような方法で、」「売り渡すことができる。」という規定がございまして、農林大臣の承認があればできることになっておりますし、政省令でも可能なわけでございます。  なお、品質低下に伴う問題というのは、実は乳製品にあるわけでございまして、これからくる問題をどう考えるか、現在はそれは交換という形で品質の低下を来さないようにカバーをしておる実態があるということはあわせて御勘案いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、これははっきり申し上げますと、私も法律上できないということを一言も申し上げておるわけではございませんので、それをどういうふうに段取りを組んでやるのが一番一般市場に悪影響を与えないか、またそれに伴う負担をどう負担をしていくかという問題を基本として詰めなければできないということを申し上げておりますので、法律上の問題を申し上げておるわけではございませんので御理解を賜りたいと思います。
  68. 島田琢郎

    ○島田委員 そこで、昨年一年間を振り返って、政府もそれなりにいろいろな手を打たれたようであります。その御努力に対しては一定の評価を惜しむものではありません。そこで、民間在庫の問題にも手をおつけになって、昨年のちょうどいまごろであったと思いますが、局長通達で民間在庫の金利、倉敷相当分のリスクにかかわる部分の補てんをするということが事業の一環として持ち出されてまいりました。たしか金額は十五億五千万と記憶をいたしております。これは今月いっぱいで切れるわけでありますが、この運営の状況はどうなっていますか。
  69. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように民間在庫についても所定のルールを決めまして金利、倉敷の補助を行っているわけでございます。この三月で切れます。今後の問題については、やはり全体の在庫の問題あるいは当面の乳価決定との関連等も考慮いたしまして検討させていただきたいと思っております。まだ結論は出しておりません。
  70. 島田琢郎

    ○島田委員 そこで、私がこの点についてお尋ねをいたしました中で、こんな趣旨のことが述べられております。こうした事業実施することによって今後の牛乳、乳製品の需給事情改善に向かうと考えられる、しかも、助成対象乳製品在庫は五十五年度中に解消する、こう見通しを立てておられるのであります。この見通しはそのとおりになっていま進んでいますか。
  71. 森実孝郎

    森実政府委員 解消に向かうということは言ったようでございますが、解消するとまで自信のあることは申し上げなかったというふうに聞いております。しかし、率直に言いましてこれはもう理屈を言ってもしようがないわけで、過剰乳製品在庫民間事業団を通じて余り減っていない、民間は若干は減っておりますが、余り変わっていないという事実があるわけでございますから、これをどうするか、これが現実であるという形でこれからは取り組まなければならないと思っております。
  72. 島田琢郎

    ○島田委員 まあ言った言わないという話になればこれは水かけ論でありますが、私は事実論としてきわめて残念に思っていることがあります。  それは、昨年やや時を同じくする時期でありましたが、国会に各界の参考人においでをいただきました。ある代表は政府のいまの乳価体系にもいちゃもんをつけました。しかも在庫をいっぱい抱えているメーカーの一員として確かに窮状を訴えられたという点について私は理解はできるのであります。しかし、お述べになっている参考人の意見と実態とが全く違うではないかということを私は当日指摘をしたのであります。  たとえば在庫の大宗をなすもの、目玉は何といってもバターと脱脂粉乳であります。この際脱脂粉乳はおいておきますが、バターは、国際的にももちろん国内的にもバターの会社として名を売る一メーカーは、本気になってバターを売るという姿勢に立っているかどうかに私は深い疑念を抱いたからであります。  それは、一つの事例で言えば、われわれがテレビのチャンネルをひねります。コマーシャルが出てまいります。おやつと思うことに幾つかぶち当たる。長い歴史と伝統を持っているバターメーカーであるある会社はバターのコマーシャルを流しているかどうか。かわってマーガリンのコマーシャルがあふれるように流れてくるのであります。こうやっておいて、私ども在庫バターが大変ふえておって困っております、何とか応分の金利、倉敷の助成をというお願いは筋違いというものだ。もう少しバターを一生懸命売って、真剣になってやった結果が何ともならぬと言うのなら私は理解ができる。しかしバターのバの字もコマーシャルもなければポスターもビラもない。いわんや、いまの日本人はバターを食べ過ぎるからコレステロールがたまって云々とまで発言されるに及んでは、私は何とも心外と言わざるを得ない。こんな会社に何で十五億何千万もの金を出さなければならぬのかと、私は当時政府に対しても文句をつけたのであります。  その後その態度は一部改まったようであります。私の発言を契機にして、当時四つほどコマーシャルが各テレビ局で流されておったもののうち、三つが消えました。いま一つだけ残って何とかマーガリンの宣伝が行われています。バターも少しスクリーンにあらわれましたが最近はまた下火だ。私は、天下に、それこそ国際的にも名を売ったバターメーカーが、その誇りと伝統をかなぐり捨てたと理解せざるを得ないのはまことに残念です。もっと真剣にバターを売るという努力を続けてしかるべきだという考えは今も消えていないのであります。  何となれば、われわれは生産するだけではなくて、生産したものを売るためにも、北海道の酪農家は三年越しキロ当たり一円を積み上げて消費拡大のために全力を挙げて取り組んでいるのです。この努力や、ぼくはあだやおろそかに考えてもらっては困る。官民挙げて一体になってやるという政府の気構えを私どもは実行している。それを逆なでするようなそういう行為を許しておくわけにはいかない。私の言っていることに無理がありますか。どうですか、大臣
  73. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほどちょっと御答弁した点をまず補足さしていただきますと、保管開始時の実はこの助成事業の対象数量は、バターは七千五百トンであったものが現在五千七百トンでございます。それから脱粉は一万四千九百トンのものが九千三百トンという状況に、ある程度は減ってきておりますが、在庫全体量は依然として多いということは御理解を賜りたいと思います。  私、ただいま先生のおっしゃったこと、よくわかります。また、先生の御指摘があったためだと私は信じておりますが、その後販売努力なり広告宣伝等についても配慮しているようでございます。私どもも行政官庁として、そういう姿勢を貫くようにこれからも言っていき、行動してまいりたいと思います。  ただ私ども非常に困っておりますのは、ある意味でバターの斜陽化という問題をこれから本当にどう考えるかということが非常に大きな問題ではないかと思います。今日の状況で言いますと、植物油脂利用技術が進んだことと、もう一つは保健衛生上の知識、これが正しいかどうかという議論は私は大いにあると思いますが、そういった点からマーガリンに対するむしろバターの代用品という従来の意識が消費者になくなってきておる。マーガリン等でも非常に高級なものが売れるという状況が出てきているわけでございます。そういう意味で、長い目では乳製品の構成比をどう考えていくかという問題も、われわれとして大きな宿題だろうと思っているわけでございます。
  74. 島田琢郎

    ○島田委員 まあ私はそうした点も、この一年間を振り返ってみると、こういう事態の中でありますから、いろいろなことが起こってくる、それは予測ができる問題であるというふうには理解をいたしますけれども、しかし、みんな一生懸命になってやるという気構えを出してもらわなければ困る、そういう気持ちで言っているのでありまして、一乳業会社をやり玉に上げて、ここでしゃべれば留飲が下がるというたぐいのものではない。この辺はひとつ大臣もしっかりお聞き届けいただきたいし、行政指導もそういう意味でそつなぐ行っていただきたい、こういう考えを持っているわけであります。  そこでもう一つの問題がございます。昨年もう一つ北海道でこういう問題が起こりました。受乳拒否という問題です。これは直ちに酪農家のふところに影響してまいります。当初十四万七千トンという受乳拒否があって北海道は上を下への大騒ぎ。何とか話し合いを詰めてまいりまして、その後やや数量的には減ってまいりましたが、しかし実質酪農家の手取りにマイナスとなってあらわれたことは否定しようがありません。基準価格六十四円三十銭をおおよそ十円割り込むという状態であります。六万トンが対象になっていますから、この数字は決して少ないものではない。  そもそも、これも法律の中で、原料乳の価格に関する勧告という条文がございます。これは畜安法、不足払い法で読みかえることになっております第五条の関係であります。乳業者が基準取引価格に達しない価格で買い入れ、または買い入れるおそれがあるときは、大臣または知事は当該乳業者に勧告することができるという条文がございます。現実に基準取引価格を十円割り込んでいるという事態が発生しているのです。大臣は当然畜安法五条の発動のもとで当該乳業者に対して勧告しなければならない義務がここにあるわけであります。おやりになったでしょうか。
  75. 森実孝郎

    森実政府委員 これは形といたしましては、引き取り価格というのではなくて、農協の委託生産という形で処理をしておりまして、その意味ではメーカーが買い取ったという形にはなっておりません。
  76. 島田琢郎

    ○島田委員 私の法律の理解の仕方が違っていると言うのでしょうか。
  77. 森実孝郎

    森実政府委員 法律の理解の仕方が違っているなどという失礼なことを申し上げているつもりは全くございません。ただ、現実の問題としてやはり操短せざるを得ない、工場を閉鎖せざるを得ないという状況のもとでどうするかという話し合いが行われまして、それではひとつ安い価格で委託加工にして生産者団体が処理しようということで行われたわけでございまして、法律の解釈とかなんとかという問題ではないという意味で申し上げているわけでございます。
  78. 島田琢郎

    ○島田委員 確かに、素直な法律の解釈を言えば、受乳拒否という状態であって、直接その値段で買い入れたという経過ではないことは事実であります、委託加工という形をとっているわけでありますから。しかし、結果論として、現実に基準取引価格を十円も割り込んでいるという事実があるのだから、法律解釈上私は成り立つと思っているのですが、これからでも遅くない、勧告する考えは全くないということでありますか。
  79. 森実孝郎

    森実政府委員 これは私はかなりむずかしい問題だろうと思います。はっきり申し上げまして、いわば生乳の需給のバランスがとれておる、在庫もそうたくさんないという状況と違いまして、いわ抱えている。乳業経営にかなりの余力がある状況と違って、乳業会社も非常に行き詰まったところまで来ておりまして、やはりかなりの整理をしなければならぬ状況に来ている。  そういう意味で、実は先ほど御質問のありました点にも触れますが、むしろ第三の乳価を考えたらどうかという議論も、生産調整との関連も考慮して出てきているような状況でございます。いわば法律に基づいて勧告をするということについては、いまの状況では問題があるのではなかろうか。むしろ、先生も先ほどおっしゃっていましたように、やはり現在の不足払い制度を守っていくためにどういうふうな現実的対応を考えるのがいいかということに問題を集中して考えるべきだろうと私は思っております。
  80. 島田琢郎

    ○島田委員 この法律には、買い入れる乳業者が経営上のマイナスとか損したとかという意味のことで言えば、そういう状態があるときには勧告することができないなどとはどこにも書いてないですよ。そんなことは関係なしに、基準取引価格を割り込んだときには、農林大臣は当該乳業者に対して勧告しなければならない、こうなっているのですよ。乳業者の経営の中身がどうあろうと、基準取引価格を割ってはいけませんよという趣旨ではないですか、この法律は。理解ができませんな。
  81. 森実孝郎

    森実政府委員 私は法律の解釈の問題として申し上げたわけではございません、先ほども申し上げておりますように。現実にやはり縮小均衡の動きが乳業に出てきているし、それを客観的に抑えていく立場でもないわけでございますし、またこれは現実の牛乳の需給なり乳製品在庫背景にして起こってきている、収益の急速な低下を背景にして起こっているという経済的実態を申し上げたわけでございます。  その意味で、非常に形式論で物を申し上げるならば、むしろ保証限度数量が多いのだという議論になるかもしれませんが、私はそういうふうな解決の仕方が必ずしもいいとは思っておりません。いろいろなことを考えて総合的に、いまの不足払い制度を守っていくにはどうしたらいいかという観点で具体的な対応を考えた方がいいのではなかろうか、こういう意味で申し上げているわけでございます。
  82. 島田琢郎

    ○島田委員 そうすると、昨年の四月一日に政府が公表された六十四円三十銭の基準取引価格は間違いであったと言うのですか。
  83. 森実孝郎

    森実政府委員 私は基準取引価格のことを申し上げているのではございません。むしろ保証限度数量が実行可能なものでなかったという議論が一つあるということを申し上げておるわけで、価格の問題を申し上げておるわけではありません。
  84. 島田琢郎

    ○島田委員 とんでもない。限度数量だって、公示すべき大事な一つの要件として、政府はこれを妥当なものとして百九十三万トンを公表されたのではありませんか。いまになってそれが過大であったと言う。それでは一体どこを根拠にして百九十三万トンをお決めになったのですか。六十四円三十銭の基準取引価格だって、製造コスト、もろもろのファクターを積み上げて、六十四円三十銭が妥当な基準取引価格だとして天下に公表されたのではありませんか。いまになって、在庫が云々だ、経営実態がどうだと言う。それでは途中で畜審に、これは妥当でなかったから改めるというような諮問でもされましたか。そんなことはなかったでしょう。  一年間は公示どおりの価格、数量で加工原料乳地帯は進んでいくということが決められたわけであります。不都合だと言うのなら、途中で変更される必要があったのではないですか。もう一年終わりになってから、決めた価格は不当であった、数量も過大であったなどと言われたって、政府のお決めになった決め方そのものに対して、そんないいかげんなものであったら、この法律そのものは死んでしまうではないか。あなたの御説明は、私にとっては何とも納得しがたいことなので、再度このことについて明確にしておく必要があると思います。
  85. 森実孝郎

    森実政府委員 私が申し上げるまでもなく現在の保証限度数量というものは、一つには先生指摘のように、保証価格と基準取引価格との差額を補給金として交付すべき数量として法律規定されているわけでございます。  そこで問題は、確かに先生おっしゃるように、形式的な整合性という視点から言うならば、むしろ現実にそれだけ吸収処理できないならば加工限度数量を減らした方がいいじゃないか、それの方がすっきりするじゃないかという御議論があることは、私も否定いたしません。しかし、私が申し上げておりますのは、仮に基準取引価格による取引が行われない、つまり委託加工という形で処理されるとしても、やはり生産者に対して補給金が行くという事実を重視する方がベターではないかということでございまして、私は、法律の解釈としてはどちらも違法とは思っておりません。本来、先生がおっしゃったような状況が生まれることは好ましいということは、私もまた否定しておりませんが、それが非常にむずかしい場合においてどういう手続をとるかということについては、形式的整合性を求めて限度数量をカットするという手続をとることはいささかいかがなものであろうか。やはり補給金の対象とするという努力をすることの方が現実的ではないかということを申し上げているわけでございます。
  86. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、百九十三万トンの限度数量をオーバーしたアウトサイダーの分まで入れて考えろと言っているのではありませんよ。そのインサイダーの部分でそういう事態が起こっておることに対して、政府がこれを看過するというのはおかしいではないか。法五条に基づいて大臣は勧告してしかるべきではないか。そうでないと、今後こういう問題が続々起こってくるということになりかねません。納得できませんが、時間の関係で次に進みます。  四年の連続据え置きともろもろの支出がかさみまして、酪農家の実質手取りはどんどん目減りをしていくという状態にあります。しかし、物価は容赦なく上がってまいります。この一年間で二けた台の資材費の値上がり。価格は上がらぬわ、生産の制限はされるわ、物価は上がるわ、労賃は上がっていくわ、われわれが直接使う農業用諸資材も軒並み値上がりだ。肥料がそうであります。農薬がそうです。えさは大変な値上がりになりました。周囲を見て、これで経営ができるという判断材料は一つもない。維持できるという材料は一つもない。神様でない限り、この状況の中で一年間の収支を償い得るはずがない。だれが考えたって赤字が出るのはあたりまえという状況の中でいま苦しみ抜いているのだ。  当然、返すべき負債は固定化の方向に向かって急速に進みつつある。借入金は大変な額に達しておりますから、一年でもつまずいたらこれは大変。経営を維持し発展させていくことはほとんど不可能に近い。絶望です。ここらでその最も大きなネックになっている負債という問題を、これまた第三の政治課題として真剣に考えなければならない時期にいま来ている、こういうふうに思うのです。  このままで進んでまいりますれば、一口に言って、北海道の主産地と言われている地帯の酪農家でも、半分の酪農家は脱落していかざるを得ないでしょう。あとは命をとっていくか、借金をとるかどっちかだという開き直り以外には方法がない。われわれは借りた金は返したい。ネコババを決め込んで何とかたな上げしてもらって、たな上げといいますか払わないで済まそうなどという魂胆はだれ一人持っておりません。何とか経営の中から生み出して借金を払い、経営を維持させ、生活を明るい方向に持っていきたいという願いは、いま切実にあるわけです。そういたしますと、農家の負債という問題は真剣に考えざるを得ないではないでしょうか。  たまたまこういう時期に酪農家畜産農家の負債の問題を持ち出しますと、政府はすぐ乳価の引きかえでちょぼちょぼっとお金を出してそれでごまかすというたぐいになるから、この問題をいま取り上げるのはきわめて用心しなければならない。わかりやすく言って、抜本的な措置というものが必要だということであって、乳価を上げない材料に使われちゃかなわない。ここのところはひとつ明確に区分して私も質問したいと思うので、だんごにするような考え方だけは今回は絶対持たないということをぜひひとつ考えに置いて話を聞いてもらいたい、こう思うのです。  中身につきましては、先ほどの前者の質問の中で、実態調査農林省としても進めている、こういう趣旨答弁がありました。ぜひそれを急いでいただきたいということと、ただお話の中で、そうは言うてもまた資産がふえましたからねと局長はおっしゃいました。どうもその辺が私は気に食わない。  そもそも、われわれは資産がふえたことによって毎年の経営の収支が黒字になるというふうにでも理解されているのでしょうか。資産で金が生まれてくるなら、私どもはこんなことは言わないのです。また、一年間一生懸命かせいで何とか黒字が出ました、余剰金が出ました、その余剰金で土地を買った、牛舎を建てた、サイロを建てたというのなら、そんなことは言いません。これは政府が御親切にも出してくれた金で資産がふえたのですよ。もっと平たく言えば、借金の変形でしかないのでありまして、この建物はあるいはこの土地は、われわれが一生懸命働いて一年間の働いたかせぎの中から少しずつでも返して、スムーズに返し切って、そして島田琢郎なら島田琢郎の名義に変わったときに、名実ともに私のものになったときに、これは資産としての価値が発揮できるのであります。いまは単なる借金の肩がわりでしかない、変形なんです。いまその苦しみの最中にあるわけですね。  資産がふえたという言い方は私は納得ができない。資産で飯が食えるのなら、局長どうか私の農場に行って飯を食ってもらいたい、やってもらいたい。食えないから酪農家の皆さん方はいま苦しんでいるのです。机の上に数字を並べて、借金がこれだけあった、おれの資産はこれだけだ、プラスマイナスしたら資産の方が多いからこれでおれは飯が食える。数字だけながめていて飯が食えるのなら世話はない話であります。資産が幾ら一億になろうと二億になろうと、単年度の収支が償わなければ、借金がきれいに払っていけるような状態になければこの経営は維持できないのです。イロハのイの字でしょう。これは経済の大原則です。  そこのところを履き違えての御発言であるとしたら、私は許せないような気がいたします。借金がふえたけれども、かわって資産がふえたではないかというのが、農林省内部ではよく聞こえる言葉であります。考え直していただかなければならない。実態を無視していると言わざるを得ない。まずはそういうことによって固定化されている負債の実態に正しく目を向けて、それに対する抜本的な対策を組まなければ、ぼくは時すでに遅しという感さえあるが、いまからでもやらなくてはならない大事な課題だ、こういうふうに考えるので第三の問題としてこれを取り上げたのです。  くれぐれも申し上げておきますが、またぞろ少しばかりの金を持ってきて、一年据え置き五年払いだなどというようなやり方で乳価を抑えた肩がわりの材料に使うなどという魂胆であるとしたら、私はこれは絶対容赦できないと思いますから、そういう手法は今回はおとりにならないということも含めて御答弁をいただきたいと思うのです。
  87. 森実孝郎

    森実政府委員 誤解を招いて恐縮なんでございますが、私どもが申し上げておりますのは、確かに負債もふえました、北海道の例で申しますと、たとえば三十頭以上の階層の例で申し上げますと、資産は五十三年と五十四年と比較すれば何百万かふえております。しかし、同時に借入金の総額もふえているという事実も申し上げているわけでございます。それが、実は償還に当たって、順調に成長過程にある場合においては比較的楽な資金繰りができる。しかし、今日のように低成長、生産抑制、価格の低迷という状況になると資金繰りがなかなかつらくなるということは、私ども事実として認めますということを申し上げているわけでございます。いわば企業経営的なバランスシートだけで物を言うのじゃなくて、やはり資金繰りとして大変だということは私どもも否定していないわけでございます。  ただ、内容につきましては、先ほども申し上げましたように、北海道庁も調査中、農協調査中でございますし、私どもも補完的に調査し、十分内容を確定したいと思っておりますし、また内容につきましては地域によって、経営によってかなり大きな格差があることは先生よく御存じのとおりでございます。そういう経営実態に応じまして各般の措置を考えたい。  従来、私ども五十四年、五十五年にも中期の負債整理のための運転資金を出したこともございますし、また五十五年から自創資金の適用もしております。さらに五十六年は酪農の負債整理を念頭に置きました自創資金の融資枠の拡大や融資条件の改善等をいま図っているところでございます。しかし、それだけで十分かどうかということはまだ判断できませんけれども、深刻な事態であることは私ども受けとめておりますので、十分調査をして、経営実態に応じたきめの細かい具体的な対応を考えたい。それだけに、ぱっとすぐ決まるというふうな簡単なわけになかなかいかないので、十分内容を精査させていただきたいという慎重な姿勢を申し上げているわけでございます。御賢察いただきたいと思います。
  88. 島田琢郎

    ○島田委員 私の手元にも、これは北海道ばかりではありません、全国各地から農家経営実態が報告されております。とりわけ北海道におきましては、北海道の中での主産地と言われております根室、釧路そして天北、次いで北見、十勝、こういったところの酪農家実態が報告されているのでありますが、私は先ほど冒頭で申し上げましたように、畜産経営安定資金といったような名目で、二回にわたって政府も乳価との肩がわりみたいなかっこうで支出をされたが、その効果が全くあらわれていないという表を手にいたしまして、冒頭でそのことを強く言ったのであります。  たとえばある農協、ABCDというランクが正しいかどうかにはいささか私は議論があります。しかし、便宜上わかりやすく言えばそういうふうに分けることがよい、こういう判断のもとで見てまいりますと、五十三年にはA階層農家と言われたのが八十九戸おりました。全体で百六十二戸のうちの占める割合から言えば、この農協はわりあいにまだA農家のランクが高いということは言えると思うのです。私はお断りしておきますが、何とか収支償い、負債が払える、借金が払えるという農家はめんどうを見てくれなんと言っているのではありません。そういう状態に近い人たちは除外されてしかるべきだ。私は決してそんなむちゃくちゃなことを言っているのではありませんが、これを見てまいりますと、A農家とランクされた人たちが八十九戸、これが五十四年には十戸減りまして七十九戸になりました。そして昨年も三百億の金が出されて負債の一時肩がわりなどの措置も講ぜられたとは言いながら、ことしに入りまして、さらにこれが半分近くに減るという状態であります。つまり三年前には九十戸、何とかやっていけると考えた農家がおったのでありますが、五十五年の二年後にはそれが四十三戸と、実に半分以下に落ち込んでいる。それは言わずもがな、B、Cへの転落になっていっているのであります。  BもCも同じような傾向をたどっております。B階層農家は五十三年に四十九戸ありました。A、Bのランクについていま時間がなくなってしまったからその定義をお話しすることは避けます。これは局長よく御存じのとおりだから。一年後の五十四年には四十九戸のうち二十一戸しかBの高いところにランクされる農家がなくなってしまった。それが五十五年に至りますと、実に十分の一の五戸になってしまった。このように経営がどんどん悪化しているということです。  こういう詳しいことについては、畜産経営課長もここにいらっしゃるから、数字のことについては私どももいままでもかなりやり合っておりますからのみ込んでいただけると思いますので、局長がおわかりにならぬところは経営課長からお聞きいただけばよく内容がわかるはずであります。一つの例を挙げますとそういうことなんですよ。これは何も十勝のある農協、根室のある農協に限定された話ではない、ごくごく平均的な農協を取り上げて私はいまお話をしたのであります。  きょうは大蔵省の的場主計官もおいでなんで、負債の話はいままでも大分主計官にもお話をしました。この前もおいでいただいておきながら、御答弁いただく機会を私の方からつくりませんで大変失礼に思っておりました。きょうもだんだん時間がなくなって的場さんに御意見を聞くという時間が余りなくなりましたけれども、大体いまお話ししたことで御推察いただけると思うので、こういう状態にあるいまの酪農家を、大蔵省としては何としてもやはり考え直してもらわなければならぬ時期に私は来ていると思うのです。農林省が幾らこういう認識を持っても、主計局の的場さんのところへ行ってぱっとはねられちゃったら、これは話にならないのでありまして、同時にこういう現況を御認識いただきたいと思って、大変お忙しい中、恐縮ですが、一時間有余にわたって私の話を聞いていただいたわけであります。この際ひとつ、大臣の前に的場主計官から御所見を承りたいと思うのです。
  89. 的場順三

    ○的場説明員 先ほど来あるいはまた予算委員会等で、酪農の現状については十分意見を承っております。それから負債対策についても、農林水産省から内々でございますが、相談を受けております。ただ、全体としての輸入乳製品状況は、国際問題になっております問題、それからその根底にあるのは内外価格差の存在、それから過剰在庫が一向に解消しないというふうな状況がございます。今年度の加工原料乳の、保証、基準価格あるいは限度数量の問題とあわせ、農林水産省の意見を十分に聞いて検討いたしたいというふうに思っております。
  90. 島田琢郎

    ○島田委員 実は、社会党も戦後二度にわたって国会に農家の負債整理対策法という法律提案してまいりました。残念ながら与党の諸君の賛成が得られないでこの法案はつぶれてまいりました。最近では五十八通常国会であったと思います。十年間のたな上げ、その間は無利子の措置法で、固定されている負債を一時隔離をすると同時に、三十五年にわたる長期の負債整理資金の制度を新しく設けて、現況の、置かれている農家の経済の再建に向けて努力すべきだという趣旨を十分盛り込んだ法案を提起した経過がございます。  私どもは必要とあらば、いや、もう必要差し迫った状態にございますから、できれば与党の自民党の諸君を初め各党の御同意をいただいて、現況のこの農家経済の再建のための必要な法案を国会へ提出する用意もあります。こういう時期でございますから、ぜひひとつ政府としても重大な政治課題として構えていただきまして、この問題の処理に当たっていただくことが強く望まれる、私はこう考えております。  先ほど来、私は三つの問題をきょうの委員会で提起をし、私の考え方を述べ、政府のいわゆる所信を承ってまいったのであります。大臣は、いつの場合もそうでありますが、終始まじめに委員会でお聞き取りをいただいております。相当の御認識をいただいているものと判断がされるのであります。最後大臣の決意を承って私の質問を終わりにいたしたい、こう思うのであります。
  91. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 先ほど島田委員のお話の中に、十勝の酪農家の今日までにおける実情のお話がございました。私も非常に興味深くお聞きしたわけでありますが、このような厳しい情勢の中でもAランクに位してがんばっておる酪農家が現に存在しておるというこの事実を、私は非常に感銘深くお聞きしたわけであります。施策よろしきを得ればそのAランクまで押し上げることが必ずできるはずだ、こういう感じを持つわけでございます。したがいまして、先ほど来の旧債整理の問題、あるいは自給飼料の増産の問題等々、論ぜられておりますことの施策よろしきを得れば、私は必ずや将来に展望の開ける酪農対策ができる、こう自信を持っておるわけであります。  また、北海道の酪農家の若い方々とも話す機会があったわけでありますが、この方々もやはり低利長期の融資を適時適切に借りることのできるような施策を強化してほしいというようなことも言われておるわけでございます。そういう面につきましても、旧債の問題、今後のいわゆる酪農対策の問題等につきましても、農林水産省といたしましては本当に酪農家の方々に信頼していただけるような線を、ぜひ今回も乳価決定に当たって打ち出していかなければならないということで、全力を挙げて取り組んでおるということをひとつ御理解をいただきたい、こう思います。  何遍も申し上げるようでありますけれども、やはり役人の諸君は、もう国際問題国際問題ということで非常に憶病になりがちなんですね。ところが、やはりわれわれは一億国民のための政治をやっておるわけですから、それは国際問題も確かに大事、これは本当に日本の物を買ってもらっておる、そのためにわれわれはこうして生活できる、その点は十分わかっておるわけでありますけれども、しかし日本のこの苦しい実情を相手によくわからせて、そして日本との貿易関係に対して理解を持ってやってもらうようなやり方があるはずだ。七割もバターであるのに、これはもうバターではありませんというようなことで、そういうことはやめさせることができないのか。これに対しては日本業界の協力ということも非常に大事だ、私はそういうことを指摘して、畜産局長ふうふう言いながらやっておりますけれども、やはり貿易を中心にする通産省という壁もまたこれ薄くない。  しかし、日本の自給力がだんだん落ちてくれば大変なことになるということは最近少しずつみんなわかってきてくれているようですから、とにかくそういう面、私ども政府・与党からも十分バックアップを受けまして、農家の信頼を得る施策を打ち出していきたいということで、いま、ちょうど三月の末は農産物価格決定の時期でございますので、最後のがんばりをつけて農家に納得していただけるようにしなければならぬということで取り組んでおります。
  92. 島田琢郎

    ○島田委員 私の持ち時間はすでに尽きておりますので、きょうは二瓶局長の出番がなかったことをおわびして私の質問を終わります。
  93. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 串原義直君。
  94. 串原義直

    ○串原委員 まず初めに、養蚕蚕糸問題について伺ってまいりたいと思います。  最初に統計について伺いますが、五十五年は前年対比、肥料、農薬、農業機械器具、それぞれ値上げの率はどのくらいであったか。それから同じく農業労働賃金は前年対比どのようになっておりますか、お示しを願いたいのであります。     〔菊池委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 昭和五十五年の農村物価指数で見ますと、対前年比でございますが、肥料一一七・八%、農薬一〇五・七%、農機具一〇六%。それから賃金の関係でございますが、これはまだ暦年のがまとまっておりませんので、十一月から十月までという平均で対前年を見ておりますが、農業臨時雇い賃金、男女平均でございますが、一〇三・六%というふうに相なっております。
  96. 串原義直

    ○串原委員 繭の一キロ当たり生産費調査、五十四年、五十五年それぞれどんな数字になっておりますか、これは全国平均と、参考のために伺いますけれども、群馬、若干地域情勢の違う長野等について、地域の実情も含めて数字を示してもらえるならば幸いだ、こう思います。
  97. 関根秋男

    ○関根説明員 繭の生産費の五十四年と五十五年の御質問でございますけれども、五十五年につきましては御承知のようにまだ数字を公表する段階になっておりませんので、五十四年について申し上げますと、上繭一キログラム当たりの生産費は、第一次生産費で二千四百六十一円、第二次生産費で二千六百九十円、これが全国の数字でございます。それから、それにつきましての長野県の一キログラム当たりの第二次生産費は三千六十七円でございます。それから群馬県の一キロ当たりの五十四年の生産費は二千五百六十五円でございます。
  98. 串原義直

    ○串原委員 今年度の消費者物価は、結論はまだ出ていませんけれども、上昇率八%になるだろうと言われております。公共料金の値上げを初めとして、諸物価は大変な高騰を続けております。ただいま答弁を願いましたように、農業生産資材あるいは肥料、農薬等々も上がっている。労賃も上がっている。それからさらに繭のキロ当たり生産費、長野県等は三千円を超えている。それから全国平均でも二千六百九十円、二千七百円。ところが今日の基準繭価はキロ当たり二千百五十三円、当然のこととして、基準糸価も上げなければならない、これらの諸物価を見るならばそう思うのが常識である、私はこう考えるのであります。  また、この諸物価高騰の中でいま少し繭値が上がらなければ、農民は養蚕に魅力を失ってしまうであろう、こう考えるのでありますけれども、その中で三月十二日、A紙に報道されまして糸価の大幅下落を見ましたように、なぜ農林省は基準糸価の値下げを示唆するごとき発言をされたのか、伺いたいのであります。
  99. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 基準糸価につきましては、先生案内のとおり、蚕糸業振興審議会繭糸価格部会にお諮りした上で、繭糸価格安定法に基づきまして三月末までに適正に決定をするということにいたしておるわけでございます。本年は審議会の開催を今月の二十八日に一応予定をいたしております。現在、この基準糸価の算定の基礎となります資料の収集を行っており、検討も開始をしたというような段階でございます。したがいまして、どういうような諮問を行うかということについては、まだ農林水産省としては何ら決定をしておらないわけでございます。一部新聞等でいろんな記事等がございますけれども農林省として公式にどうというような話は一切しておらないわけでございます。
  100. 串原義直

    ○串原委員 そうすると、一部報道された、戦後初めての値下げへというような表現については、まだ農林省としてはそこまではとてもとても考えたわけではない、こういう理解でいいわけですか。
  101. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、基準糸価につきましては、この算定の基礎となります資料、これが必要でございますので、その資料の収集、取りまとめをやっておりますし、また検討にも着手はしておるのは事実でございます。しかし、現段階におきまして、どういうような形で審議会に諮問するかというようなことはまだ決定は見ておらないということでございまして、どういう水準かというようなことにつきましてはまだ白紙の状態であるということでございます。
  102. 串原義直

    ○串原委員 蚕糸事業団在庫が大分ふえている、まことに困った事態だというふうに思うのでありますが、ここ四年ほどの在庫の推移をちょっとお示し願えませんか。
  103. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ここ四年ほどということでございますので、五十一会計年度から会計年度末で申し上げます。五十一会計年度末三万六千五百六十五俵、五十二年度末五万六千百九十二俵、五十三年度末五万一千九百三十四俵、五十四年度末九万四百八俵でございます。それから、現在五十五年度に入っておりますが、まだ会計年度末、三月末が出ておりませんので二月末現在で申し上げますと、十四万四千六百四俵ということに相なっております。
  104. 串原義直

    ○串原委員 いまお話しの事業団在庫は、五十四年、五十五年で異常にふえたということが言えますね。つまり、この在庫増加は需給の実態を越えた輸入の過剰にある、言いかえますならば、この傾向を生み出したのは政府責任であろう、こう私は考えている。大臣、いまの実態をどのようにとらえていらっしゃいますか。
  105. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま数字を申し上げましたように、五十四年度末九万俵余になっておりますし、五十六年二月、十四万四千になっておるということで、確かに大きくふえてきておるわけでございます。  そこでこれにつきまして、輸入の需要を越えた入れ過ぎではないかというお尋ねでございます。私どもは、生糸の輸入につきましては一元輸入制度というもとでやっておるわけでございますけれども、この一元輸入制度も、生糸が自由化品目であるというもとにおいでの一元輸入制度ということでございますので、全然輸入はしないというわけにはまいりません。ただ、その際に、何といっても輸出の大どころは中国と韓国でございますので、五十一年度から二国間の協議をやりまして、話し合いをしながら輸入教量をしぼり込んでいくといいますか、そういうことをやっているわけです。  そして、これは五十一年度から始めたわけですので、そのときは過去数年間の平均の輸入数量の以内に抑えるということで五十一年度の数量を決め、五十二年度、五十三年度はそれと大体同水準ということでやってきたわけですが、五十四年度以降は非常に需給も厳しくなってきましたので、五十四年度は対前年一割減、五十五年度さらに五割削減ということでやってきたわけです。そして五十五年度の分などはまだ全然輸入発注はしておりません。そういうような姿において、なおかつ、ただいま先生指摘のような大きな在庫が積み上がっておるということでございます。  そこで、これは端的に申し上げますと、末端絹需要の減退なり景気の停滞というものを背景としながら、生糸の国内の引き渡し数量が急減をいたしております。五十三年に比べますと五十四年は二割減、さらに五十五年は五十四年に比べて現在までのところ一割減ということで大きく減ってきておるということでございます。したがいまして、輸入生糸を売り渡すというわけにはまいりませんし、また逆に国産糸は買い上げざるを得ないということで、過剰の累積といいますか、これが続いてきておるということでございまして、国内の生糸引き渡し数量がこんなに急激に減るということをよく読み切れなかったのはけしからぬということでございますれば、確かにその面については、ここまで落ち込むとは思っていなかった点は不明のいたすところである。かように考えます。
  106. 串原義直

    ○串原委員 いま局長は、需要の減退が主たる原因である。こういう立場での答弁をなさった。それも否定はいたしません。しかし、この情勢を踏まえて相変わらず輸入がずっと続けられてきた。つまり、需要が減っているのに輸入だけはどんどんふえてきた、そして在庫が重なった、こういう結果であろうというふうに考えているわけであります。     〔委員長退席、福島委員長代理着席〕 そういう意味でこの在庫増というのは、いろいろな意味での原因はあるにいたしましても、需要に見合わない過剰な輸入在庫増につながったものであろう、したがって、この傾向は予測し得なかったといたしましても、そうは言ってもやはり政府責任ではないか、こういう立場を私は強調したいのであります。大臣、これはどう考えますか。
  107. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 蚕糸行政をめぐる情勢というものは、数年前から非常に厳しい情勢の中にあったことは御承知のとおりでございます。蚕糸、製糸、絹業一緒になって団結していかなければもうこの急場は乗り切れないと言い、私も蚕糸関係に首を突っ込んでからずっと見ておりまして、数年前からそういう情勢であったことは御承知のとおりでございます。しかるところ、輸入生糸がどんどんふえる、絹織物がどんどんふえるということで、いろいろ施策を講じてきたわけでありますが、やはり中国、韓国等との貿易という面がありまして、私どももずいぶん政府を督励してその減少を図ったわけでありますが、思うとおりの輸入減も実施することができずに私も農林水産大臣に就任した。  そして就任いたしましてから、いま御指摘のありましたような感じを私も抱いておりましたので、どんなことがあってもこの輸入の数量は大幅に減らすべきであるということでやかましく指導をいたしたわけであります。そして五〇%ほど減らす努力をいたしたわけでございます。ところが、そういう努力をいたしましても糸価は低迷をいたしておりまして、もう本当に暗たんたる気持ちでおりましたところへ持ってきての今回のあの大幅値下げということで、私自身も本当にほおを殴られたような感じを受けたわけでございます。  まあ、政府責任があると言われれば、そうじゃありませんとはなかなか申し上げにくい。いろいろな需要と輸入の関係等の見誤まりと申しますか、そういう面についての責任政府としても感ぜざるを得ない、こんな気持ちでおるわけです。
  108. 串原義直

    ○串原委員 大臣答弁、よく理解もできるわけでございますが、そこで、何としても在庫をなくさなければならぬ、この実態を踏まえて。いろいろ言っても、どうしても在庫を減らすという努力をとにかく関係機関総力を挙げて考えていかなければならぬ時期だと思う。とりわけ外国産の糸を減らすという努力を急がなければならないのではないか。この対策について、大臣いまのところどうお考えになっておりますか。
  109. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 二月末現在で十四万五千俵というかつてない在庫になっておりますし、現在も買い続けておりますのでこれからもどんどんふえつつあるのが実態でございます。したがいまして、この在庫を軽減することがどうしても必要であろうと思います。軽減するためには、何といいましても生糸、絹需給のバランスをとる、改善をすることが必要であろうと思います。したがいまして、末端絹需要の拡大措置ということで、蚕糸事業団の助成事業を用いまして需要増進対策、これは五十五年度は三億七千万円ほど使っております。そういうようなことをやっております。今後もこういうものを強化するとか、あるいは生糸、絹製品の供給の抑制措置ということで、輸入承認制とかいろいろ貿管令等の措置がございます。そういう措置の強化なり、あるいは二国間協定数量の圧縮ということをやってきたわけでございますけれども、今後も、需給バランスをとる、改善をするという観点に立ちましてさらに努力を重ねていく必要があろうかと思っております。  景気浮揚策の進展ということも期待されそうでございますので、そういうものと両々相まって、この事業団在庫の解消は、一挙にはなかなか無理でございますけれども、逐次図っていきたいと思っておるわけでございます。
  110. 串原義直

    ○串原委員 ともかく在庫が大変あるので、それが頭にのしかかっていてまことに蚕糸情勢好ましくない。このことは現実として理解しないわけにはいきませんけれども、いまお話しのようにすぐというわけにはいかないでしょう。しかし、何としてもこれは在庫を減らしていくという努力官民一体となって全力を挙げなければならぬ、こう考えておりますので、その努力に期待いたしたいわけでございます。  先ほど、基準価格の問題について、月末に決まるがいまのところ白紙だということであったわけでございますが、事業団在庫が大変あることを踏まえて、外国産の生糸は安いということになっておりますので、したがって、国際価格との比較から国産物の価格は上げられない、だから基準価格は据え置きでよろしいのだというような説がもしあるとするならば、何としても私は納得することができない。日本の土と養蚕を守ってまいりますためには、わが国の物価や経済情勢を総合判断の上で価格決定、養蚕振興対策を推進していくというのが基本でなければならぬ、こう考えているわけでございますが、その点について伺っておきたいわけであります。
  111. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 輸入糸は国産糸に比べまして確かに割り安になっておる、そういう面では内外価格差があるということは現実でございます。しかし、基準糸価を決めるという際には、法律規定がございまして「生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情からみて適正と認められる水準に生糸の価格を安定させることを旨として」定める、こういう書き方になっておるわけでございます。したがいまして、この法に定めるところによりまして適正に決めたいということで現在資料を収集し、検討にも着手しておる、こういう状況でございます。
  112. 串原義直

    ○串原委員 在庫があります、あるいは外国産の生糸、繭は安いのだということが、基準価格の決定に何か作用するがごとき錯覚に陥っている部分もなしとしないように思う。だから、そうではないのだということでただいまの局長答弁を受けとめておきたい、こういうことでいいわけですね。いかがですか。
  113. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 法の定めるところという際に「生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情からみて」云々となっております。したがいまして「その他の経済事情」ということに相なりますればいろいろな問題があろうと思います。生糸の内外価格差という問題も「その他の経済事情」という概念の中には入り得るものと考えておりますが、ただ、具体的にこういう要素を織り込んで算定をするかどうかというようなことはまだ結論を出しておるわけでございません。先ほど申し上げましたように、まだ資料収集をしており、また、一部検討に着手しておるという段階でございますので、その辺はどういう方式でやるか、いろいろ検討しておるということでございます。
  114. 串原義直

    ○串原委員 大蔵省、見えていますか。——では、大蔵省に伺います。  昨年の十月、輸入規制されておりますところの絹織物百三十七万平方メートルをスペインから輸入したことが発覚、東京税関や通産省が法違反容疑で調査中ということを聞くのでありますが、これは事実ですか。
  115. 田中史

    田中説明員 お答えいたします。  いま御質問のありました件でございますが、昨年の十月二十一日に東京税関の大井出張所に対しまして、スペイン産の絹織物ということで輸入申告があった事案がございます。これにつきまして、私どもの方で分析、検討いたしました結果、関税法違反の疑いがあるということで、現在東京税関において犯則調査を行っておるところでございます。
  116. 串原義直

    ○串原委員 大蔵省はいまの事件を関税法違反で調査をしているということですが、ほかの法令に照らして違反ということにはならないわけですか。     〔福島委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 末木凰太郎

    ○末木説明員 ただいま先生指摘の案件につきましては、通産省といたしましても、法律違反の疑いがあるのではないかと考えまして調査をしてきているところでございます。  この場合の法律といたしましては、外国為替及び外国貿易管理法、俗に外為法と言っておりますが、この法律でございまして、具体的に申しますと、この絹織物がもし本当に申告どおりスペイン産品でございますれば問題ないわけでございますが、私どもはこれは中国産のものではなかろうかという疑いを実は持っておるわけでございます。仮に中国産のものでございますと、先ほど申し上げました外為法の規定に基づく輸入貿易管理令に基づきまして、通産大臣の事前の許可を必要としたものでございますが、この輸入案件について許可を与えたことがございませんので、もし事実関係がそういうことであるとすれば外為法違反になる、こういうことで調査をしている段階でございます。
  118. 串原義直

    ○串原委員 聞くところによりますと、この絹織物は青く染められてはおりますけれども、精練すると簡単に脱色できて白地の生地に戻る。つまり擬装羽二重、俗に青竹と言われておるものだそうですけれども、百三十七万平米というこの荷物の量は大変な量だと私は思うのです。一立方メートル単位で考えたらどのくらいの数量になるのでしょうか。素人にわかるようにおおよそをお示し願えませんか。
  119. 田中史

    田中説明員 お答えいたします。  百三十七万五千平方メートルという量は、私が聞いているところによりますと、大体四カートンという数量といいますか、大きさになるというふうに聞いております。
  120. 串原義直

    ○串原委員 私はいま、素人が判断してこのくらいのものだということがおおよそわかるように示してもらいたいと尋ねたわけです。専門家でないからいまの答弁ではわかりかねます。もうちょっと具体的に教えてもらえませんか。
  121. 田中史

    田中説明員 失礼いたしました。  大ざっぱに申し上げまして、縦、横、高さ、八フィート掛ける八フィート掛ける四十フィートというぐらいの大きさのコンテナ四本分ということでございます。     〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕
  122. 串原義直

    ○串原委員 ちょっとぴんときませんけれども、いずれにしても相当な量であることは想像できる。したがって、通産省の課長から、スペインから入ってきているのだけれども他国のものと思われる、そうであるとするならば外為法違反ということになるので調査中である、こういう答弁がありました。  では聞きますけれども、御答弁はどなたでも結構です。スペインという国はそんなに生糸を生産するのですか、繭を生産するのですか。
  123. 末木凰太郎

    ○末木説明員 お答え申し上げます。  残念ながらスペインにおける絹織物の生産の詳しい数字は把握しておりませんが、少なくともスペインからわが国に従来輸出されておりました絹織物の量は把握をいたしておりまして、この数字に照らして見ますと、今回の百三十七万という数字は非常に大きな数字でございます。
  124. 串原義直

    ○串原委員 では、専門家の二瓶局長さん、スペインという国はどれくらい生糸を生産しているというふうに把握していますか。
  125. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 スペインの生糸の生産量をというお尋ねでございますが、生糸の生産量につきましては大体六カ国ぐらいが主なところでございます。六カ国の中でも一番少ないのがイタリアでございまして、これが九百俵でございます。スペインなどはその他というところにくくられているものですから、抜き出してはいまわかりませんけれども、特掲されておるイタリアでさえも九百俵でございますので、それより大分少ないかゼロかくらいのミゼラブルな生産しかないものと心得ます。
  126. 串原義直

    ○串原委員 ともかくとても少ない。生産しても微量なものである。微量という表現がいいと思うのですけれども少ない。とすると、おかしいですね。ともかくそれだけ少ない生産国スペインが百三十七万平方メートル、こんなに大変な絹織物を輸出できるはずがない、こう考えるのが常識だと思う。  そこで、その立場に立って伺いますけれども、これは調査してみて、船出したところはどの辺と見当をつけられましたか。
  127. 末木凰太郎

    ○末木説明員 私どもは、海外の事情につきましては、担当官を現地に派遣をいたしますとともに、外交ルートを通じまして昨年来調査を進めてきておりますが、現在まで把握したところによりますと、税関に申告をされました船積み地としては、スペインのバルセロナの港ということで記載をされておるわけでありますが、少なくともバルセロナからこの百三十七万平方メートルの絹織物を船積みした事実はないというふうに理解をしております。しからば、一体本件の絹織物はどこから船積みされたのかということでございますが、これは現在調査中でございます。
  128. 串原義直

    ○串原委員 これは調査を始めたのはいつですか。
  129. 末木凰太郎

    ○末木説明員 調査の経緯を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、この織物が通関したのは十月でございますが、統計上これが表に出てまいりまして、私どもが事実を統計で知りましたのが十一月の下旬でございます。直ちにいろいろな調査を開始いたしまして今日に至っているわけですが、調査は、敷衍して申しますと、国内、国外両面にわたって行いまして、国内でこの織物がどうなっておるかということと同時に、海外関係を調べたわけでございます。  先ほど申し上げました担当官のスペインヘの派遣でございますが、これはいま申しましたように、十一月下旬にこの事実を正式につかんで動き出しましてから、事前のスペイン当局との打ち合わせも経まして、十二月十二日にスペインに担当官を派遣いたしております。その後、スペイン当局の協力を得ませんと、日本の官憲が直接取り調べるというわけにまいりませんものですから、今日まで調査を続行しておるという状況でございます。
  130. 串原義直

    ○串原委員 この調査のむずかしいこともわかります。しかし、去年の十一月にわかって、十二月に入って早々スペインへ派遣をするというような状況を経て今日に至っているとすると、どこの辺から船積みされたのかということが今日に至ってもわからないというのは、ちょっと時間がたち過ぎてはいませんか。
  131. 末木凰太郎

    ○末木説明員 繰り返しになりまして恐縮でございますが、バルセロナから積んだものでないということは現地の当局の調べにより正式に確認をしておりますが、そのほかの積み出し地につきましては、ある程度の推測といいますか、候補地と申しますかはしぼられてきてはおりますが、これは確たる証拠といいますか裏づけで確認をいたしませんと、今後私どもこの問題の責任をきちんと追及していく場合に決め手になりませんものですから、まだ正式には判明していないと申し上げたわけですが、全然見当もつかないでおるという状況ではございません。だんだんしぼられてきておるということで御理解いただきたいと思います。
  132. 串原義直

    ○串原委員 それでは伺いますけれども、この荷物、大変な量の荷物なんですけれども、聞くところによりますとこれはまず大阪港に陸揚げされて、保税輸送という名のもとに陸路運ばれてきて、そして東京税関の大井出張所を無事通関した、こう聞くのです。これは事実ですか。
  133. 忠内幹昌

    ○忠内説明員 お答えいたします。  大阪税関で陸揚げされまして東京に保税運送されたというのは事実でございますが、保税運送されましてほかの税関で陸揚げされ、別の税関で申告されることは間々あることでございまして、本件について特に異常であるということはないという判断のもとに税関では審査したということでございます。  それから、先ほどから御指摘がございますように大量であったわけでございますが、本件についてはその原産地証明書というものが、スペインの公的な機関の発給した真正なものであるということが税関の検査で認められたということ、それから貨物を現物検査しまして内部をよく調べたのですが、スペイン以外の原産であるという確認が得られなかったというような事情がございまして輸入を許可したという次第でございます。
  134. 串原義直

    ○串原委員 先ほどから申し上げますように、この大量の物件、それも禁じられている絹製品、原産地はほとんど糸を産出していないスペイン、私どもが素人として考えても不思議だなと思うのです。どうして税関をスマートに通過できたのか。大蔵省の担当官、関係者はこの物件の移動に対して疑問をお持ちにならなかったのか。どうしてチェック機能をぴしっと発揮できなかったのか。それをやることが実は税関の大事な任務と私は心得ている。どうにも不思議でならない。いま課長さんの御答弁になった程度のことでは納得がいかないわけです。もう少しきちっとした立場で解説、御答弁願えませんか。
  135. 忠内幹昌

    ○忠内説明員 お答えいたします。  先ほども申しましたように、通関の審査の実情でございますが、大量の貨物を短期間に審査を完了するというような要請が一方でございまして、現場におきましては、関税関係法令に基づく所要の書類というものが完全に整備されておるかどうか、あるいは現品を検査した過程で現物自体からかなり疑わしい証拠が出るというような具体的な嫌疑がある場合、そういう場合を重点に置きまして輸入の許可不許可を決めておるというような実情でございまして、本件につきましてはそういう形式上の面においては完全であったということで現場で輸入を許可したものと思います。そういうことでございます。  しかしながら私どもといたしましても、通関審査はいま先生がおっしゃったように形式面じゃなくて実質面もやるべきであるという要請、これはもっともだという感じでございまして、その後の措置といたしまして、絹織物の輸入の通関に際しましては、EC、スペイン、スイス及び米国から輸入されるものについては、その申告内容、それから添付書類、貨物等についてさらに厳重な検査を行うということ、それからさらに中国で染色されたものではないというようなことの概要について、一応疑いのないような説明を求めるということを税関に指示いたしまして、それに基づいて十分な説明が得られない場合には、通関を一時留保しまして私ども本省の方に報告するという制度にいたしまして、さらに私どもとしてわからない点は通産省などと協力いたしまして疑義の解明に努めるという体制をとることにいたしたわけでございまして、それが解明されるまでは輸入を許可しないというような措置を現在とっておる次第でございます。
  136. 串原義直

    ○串原委員 その後につきましては若干厳しく監視も強めていくという方向でありますという意味の答弁があったのですけれども、つまりこのスペイン青竹の陸揚げされた時点ではまことに監視体制が甘かった、このことは私は厳しく指摘されなければいかぬと思う。あの事態、書類が整っていたのでやむを得ないということだけで済まされるものではない、私はこう思っているのですよ。したがって、ああいう機関があるわけでありますから、もっともっと税関というものはきちっとしたチェック体制を発揮してもらわなければいかぬ、まことに監視体制が甘かった、こう判断をするのですけれども、今日時点、あのスペイン青竹事件に対しては大蔵省としてはどういう判断をなさっているのですか、みずからに対して。
  137. 忠内幹昌

    ○忠内説明員 御説明いたします。  先ほどから申し上げておるように、スペイン青竹の問題につきましては、率直に申しましてもう少し実質面について税関の現場で解明に努めるべきであったのではないかということで反省はしておるわけでございます。  ただ、これは言いわけがましくなってはなはだ恐縮でございますが、繊維関係は常日ごろから検査率というものをかなり高めまして、必要なものは一〇〇%検査するというような体制はとっておったわけでございますが、さらにそれをかいくぐるというか、そういうような事態が起こったわけでありまして、私どもとしましても形式面の審査より実質面の審査ということを強調すべきであったと思いまして、それをいま指示しておるわけでございます。何しろ実質面の審査となりますと、相手方の証言というか、そういうようなものが非常に中心になってまいりまして、まあなかなか実施がむずかしい面もございますが、絹織物その他この関係の重要性にかんがみまして、そういうむずかしい中を今後十分注意していきたい、こう考えております。
  138. 串原義直

    ○串原委員 これは通産省でしょうか、伺いますが、実は昨年の七月末、十二万平方メートルが通関されたフィリピン青竹事件もあったということを私聞いているわけであります。これも通関されたところが東京税関の大井出張所である。いまになってみますと、ある人はスペイン青竹の小手調べであったのではないかという意見もあるほどでございます。通産省はそのときどう対応しましたか。と同時に、今回のスペイン青竹問題と関連して、いまのところどんな判断をなさっていらっしゃいますか。     〔菊池委員長代理退席、委員長着席〕
  139. 末木凰太郎

    ○末木説明員 先生指摘のとおり、スペイン青竹の前に、一般にフィリピン青竹と言われている輸入事件がございました。これは御指摘のとおり昨年の七月に約十二万平方メートルの絹織物が輸入されたものでございまして、これにつきましても、今回のスペイン青竹と同様に、本当は中国製のものではなかろうか。したがって許可が要るものを許可の要らないフィリピン産と称して持ち込んだのではなかろうかという疑問を抱きまして、今回のスペイン青竹と全く同様な調査に直ちに着手したのでございます。  その結果、これにつきましても、今日までのところで、本当は中国産であって、すなわち外為法上違法な輸入であったという疑いがきわめて濃厚になってきております。この件につきましては、すでに昨年ある時期に警察当局の方に連絡をとっておる次第でございます。  スペイン青竹とフィリピン青竹との関連についてどう思うかというお尋ねでございますが、残念ながら、フィリピン青竹を入れました人間が再びこのスペイン青竹の輸入にかかわってきたという関係がございます。そこをどう評価するかという問題がございますが、フィリピン青竹についてスペイン青竹と同様に私どもは厳しい追及をしている段階でございまして、いずれについてもきちんとした決着をつけなければならない、そういうふうに考えております。
  140. 串原義直

    ○串原委員 そうすると、この輸入の主役というのは、スペインの場合もフィリピンの場合もほとんど同じだということですね。それはだれなんですか。
  141. 末木凰太郎

    ○末木説明員 スペイン青竹の輸入申告を税関にいたしました名義人はニッタン株式会社、社長は深石鉄夫という人でございます。それからフィリピン青竹の輸入名義人は、銀座に本社を置きます日本バイルハック株式会社という会社でございまして、その社長は白井という人でございます。私が両方関連があると申しましたけれども、名義人はいま申し上げましたようにそれぞれ別人でございまして、ただ、率直に申しますとフィリピン青竹の輸入名義人である日本バイルハック株式会社が、今度のスペイン青竹の事件についても何らかの形の関与があるのではないかということを疑わせるに足りるといいますか、そういったことを裏づけるような調査結果を持っておりますので、関連があると申し上げた次第でございます。
  142. 串原義直

    ○串原委員 時間が来ますのでこの質疑はまた改めた機会になろうかと思っていますが、この質問最後に伺います。  これはまことに疑わしい。お聞きをしておると疑問が次々とわいてくるという表現が適当なほどに疑わしい。これは徹底的に調査をすべきである。違反であると明確になったならばきちっと処分すべきである。しかるべき答えが出たならば、関係機関への告発をも考えるべきであると、いまの答弁を聞いていて私は判断をいたしました。いかがでしょう。
  143. 田中史

    田中説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたスペイン産のいわゆる青竹事件、それからフィリピン原産の絹織物として輸入申告があった事件、いずれにつきましても関税法違反ということで現在調査を進めているわけでございます。調査の結果関税法違反の事実が明らかになりますれば、厳正な処分を行いたいというふうに考えております。
  144. 末木凰太郎

    ○末木説明員 通産省といたしましても、外為法違反につきまして、いま大蔵省の御答弁と同じように、法律違反の疑いがはっきりした場合には厳正な態度で臨む方針でございます。
  145. 串原義直

    ○串原委員 ではこの問題は機会を改めるということにいたしますが、そこで大臣、いまの私の質問を聞いていて、この不正事件、何ともやりきれない気持ち、遺憾だというふうに思いませんか。農林省が汗を流して、何としても養蚕家を守らなければいかぬ、さっき私が議論をいたしましたように、在庫がたまっちゃったのでこれを解決するためにまた汗を流さなければならぬ、こう考えておりますと、片方ではどこからともなくするすると絹製品が入ってくる。これがまた糸の値段の足を引っ張ったりあるいは事業団運営にまことに好ましくない結果を生むという、こういう結果になるとするならば何とも遺憾至極な話であります。  私は、いま大蔵省、通産省が答えによっては厳正な処分をいたしましょうということですから、それは行方を見守りたいと思うけれども現実入ってきたものは必ず日本国内における生糸、絹製品の流れあるいは価格にも好ましくない影響を与えていることであろう、こう思うのです。そういう立場で伺うのですけれども、この不正をただすのに、大臣農林省としてどういうふうにすべきだと思いますか。
  146. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農林水産省といたしましては、ただいまお話がございましたようなスペイン青竹なりあるいはフィリピン青竹なり、まあ違法とおぼしき輸入が行われる、そして絹需給というものを結果としては混乱に陥れるという問題が確かにあるわけでございます。こういうような面からして、輸入の秩序化という問題につきましてはやはり通産省なり大蔵省なり、十分ぴしっとやっていただきたいというふうに考えております。したがいまして、関係の省庁と連携を従来にも増してさらに密にしてまいりたい、かように考えております。
  147. 串原義直

    ○串原委員 これは基本的なことですから大臣に伺いたいと私思うのですけれども、つまりそれぞれの皆さんが努力したことはわかるけれども、貿管令だけではきちっと輸入規制が行えないのではないかという疑問をますますスペイン青竹、フィリピン青竹問題で私は感じるようになった。貿管令だけでは無理ではないか、こういうことを感じているわけであります。したがって、繭から製品に至りますまで法的な裏づけをされた一元輸入の方策というものを考えるべき時代にいよいよ来たのではないか、こういうふうに私は考える。いかがでしょうか。
  148. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  絹製品まで含めて法的な一元輸入対策というものを講ずるべきではないかということでございますけれども、やはり自由貿易を標榜いたしますわが国基本姿勢というものに照らしまして、絹製品まで一元的に輸入するというようなところまでいくのはどうかというような問題がございます。そういう一般論のほかに、個別具体的に見ますと、生糸の方は中国、韓国等数カ国から入れております。ところが絹糸なり絹製品、絹織物ということになりますとアメリカ、EC諸国等からも入ってまいります。そういう国々との話をどうつけていくかという問題もございましょう。いろいろな国際問題というのがあろうかと思います。  それから技術的な問題といたしまして、たとえば絹糸ということになりますると、これはより糸でございまして、油でよるというようなことがございます。保管の可能性の問題あるいは検査の仕方の問題、まだこれがはっきり確立していないというような技術上の問題等もございます。それから、一元輸入して絹織物を買いました際に、買ったのはいいのですが、これを売るというときに非常に流行といいますかそういう問題もございまして、買ったのが果たしてうまくいい値で売れるかという問題等もあるというようなこともございます。  いろいろなそういう技術的な問題というものもございまして、生糸だけでなしに、もう絹織物まで一貫して一元輸入という面についてはきわめて問題が多いであろうというふうに考えます。
  149. 串原義直

    ○串原委員 私も問題なしとしないと思う。しかし、これは大臣からお答え願いたいのですが、先ほど擬装乳製品の問題のときも似たような立場で議論がございました。確かに局長が言われるように自由貿易という立場、国際的な各国との関係ということになると問題をなしといたしませんけれども、ともかくいままで議論をしてきたような実態を踏まえて、いまの日本国内における養蚕の内容事業団在庫の現状等々を踏まえて、これは政治家という立場に立つならば、思い切ってきちっとこの際考えていくべき時期に来ているのではないか、そうしないととても規制はむずかしいのではないか、日本国内の糸、養蚕を守れないのではないか、こういう懸念を私は持つわけなんでございます。いかがですか、大臣
  150. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 お気持ちは十分私も理解できるわけでありますけれども、私は貿易管理令で十分規制の目的を果たすことができる。これはお互い信頼関係でありますので、通産省は通産省の立場がありまするし、農林省農林省の養蚕農家擁護という立場がありますが、今日まで政府部内におきまして、まあ福田さんが総理の時代から、本当に絹関係の問題につきましては農林省も通産省も大蔵省も協力しながらそれぞれの職責を果たしてきておるということで、私は貿管令によって十分今後も適切な処置を講じていくことができる、こう考えておるわけでございます。  まあバターのようなああいう問題で、食糧でさえもなかなかIQ制まで持ってこれないという中で、生糸がここまでとにかく養蚕農家を守るための処置がとられてきておるということは、私はこれはある意味においては相当な処置が講ぜられておる、こう思うわけでございます。  ただ、先ほど来議論がありますように、とにかく絹の消費がもう極端に減退をしておるという事実がどこから来ておるかということも十分考えなければならない、こう私は考えるわけであります。本当に絹物売り場なんかに行ってみましても閑散として、ほとんど買う人がいないといったような情勢等を見ますとき、絹需要の宣伝にこれ努めても果たして需要が伸びるのだろうか、そういう点も、ここ去年ことしあたりの絹需要の実態を見ますとき非常な心配が起こってくる、こういうことでございます。  こういうまことに厳しい情勢の中で基準糸価を決めていかなければならぬわけでありますが、十分諸般の情勢を検討いたしましてきちんとしたい、こう思っております。
  151. 串原義直

    ○串原委員 いま大臣がたまたま触れられましたけれども、まさに消費を拡大するということ、これが非常に大事なことであろうというふうに考えられるわけでございます。これは私、発想の転換という表現が適当かどうかわかりませんけれども、従来の絹消費という考え方だけではなくて、思い切った立場消費拡大という検討を始めるべきではないのか。官民一体というふうに言われますけれども農林省も関係官庁も養蚕の生産団体も、それから時によれば機屋さん等々も含めて、官民一体となった消費拡大対策というものを思い切ってやっていく時期に来ているのではないか。何か高級な着物だけの原料、材料の生糸ということではいけない、こう考えているわけであります。  五十六年度の農林省予算にも若干の芽が出たように伺っているわけでございますが、それはそれとして評価するとしても、思い切った消費拡大に対する具体的な、あるいは官民一体になった機関等をもつくるというような発想をも含めて前進させるということをおやりになる考えはございませんか。
  152. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 絹の消費拡大の関係でございますけれども、生糸消費の九割が大体和装需要の関係でございます。それから洋装の関係が大体一割ということで、これは逐次伸びてまいりまして現在一割程度になっておるということでございます。そこで、農林省の方といたしましては、日本蚕糸事業団によります助成事業を通じまして、五十五年度は三億七千万円の予算規模でございますけれども、和装の方につきましては、着物の着つけ指導などに助成をいたしております。それから、新しい生糸、絹製品の新規用途開発というような面につきましてもいろいろ助成をいたしております。たとえば絹とテトロンの交織編み物の試作、研究ということなり、あるいはシルク紡績糸による下着の関係だとか、いろいろなものに新規用途開発で助成費も出しておるわけでございます。  このほか、通商産業省の方におきましても、聞くところによりますと、五十六年度予算で新規に千六百万ほどですか、予算も計上したということで、特にこちらは洋装といいますか、そちらの部門に力を入れてやっていきたいということで、関係の方々等にもいろいろ知恵をかりながらやっておるというふうに聞いております。したがいまして、通産省の方とも十分連携をとり、さらに蚕糸団体だけでなしに織物関係の方々等にも十分呼びかけて、まさに官民一体という気持ちで今後この消費拡大というものに前向きに取り組んでいきたい、かように考えております。
  153. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたので、最後大臣の所信を伺って終わりにいたしますが、繭糸価格中間安定制度というのは、蚕糸業振興のために最も直接的で重要な制度だと私は評価をしているところであります。そして広い意味でこの制度は、その運用の中で輸入生糸類のコントロールを行うということもあるわけでして、輸入についての措置が安定制度の特徴的な柱の一つになっているというふうに私は考えているわけでございます。この制度を堅持するということはもちろんでありますが、今後より内容充実強化を図るべきだ、こう考えているわけでございますが、大臣の所信はいかがですか。
  154. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 厳しい環境の中で養蚕業を維持、存続、発展させてまいりますためには、やはり繭糸価格安定法、蚕糸事業団を中心にした価格安定の仕組み、この制度というものは堅持していかなければならないと私はかたく信じておるわけでございますので、これが一遍がたがたになってしまえば、もう本当に惨たんたる情勢になっていくということは火を見るよりも明らかであると私は考えております。かつて私、子供のとき、東北農村のあれだけ盛んな養蚕が一遍に崩壊していくのを目の当たり体験した経験を持っておりますので、もし事業団法、繭糸価格安定法が動きがつかなくなったということになれば、あんなふうにならないという保証はないということですから、これはもう堅持していきます。
  155. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたから、終わります。
  156. 田邉國男

    田邉委員長 この際、午後三時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時四十四分休憩      ————◇—————     午後三時一分開議
  157. 田邉國男

    田邉委員 長休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吉浦忠治君。
  158. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、現在の畜産酪農の問題につきましてお尋ねをいたします。  わが国の農業は、戦後最大の危機を迎えているわけでありまして、畜産酪農もその例外ではないわけであります。それは生産調整あるいは配合飼料価格の高騰の問題等で厳しい経営を余儀なくされているのが現状でございまして、ことに酪農にありましては、過去四年間、加工原料乳保証価格の実質的な据え置き、あるいは乳製品輸入外圧、あるいは乳牛個体の価格の暴落等によります大変な窮状を呈しているのが現状であるわけでございます。  このような事態を憂慮して、わが公明党は二月の十七日から十九日まで、酪農経営実態調査を北海道で行ったわけであります。その結果は、三月の十六日に大臣申し入れをいたしました内容でございますが、短期間で近代化をなし遂げてきた北海道の大規模酪農のような場合においては、多額の借金返済という重圧も加わりますので、国による緊急かつ抜本的な救済措置実施が必要だというように痛感をしているわけであります。  時あたかも食糧をめぐる国際的需給関係の緊迫化が懸念され、食糧の安全保障確立が重要な政策課題となっている折でもありますし、国内生産を基本とする畜産酪農確立に万全を期していかなければいけないというふうに考えるわけでありまして、現在のような場当たり的な農政ではいけないというふうに反省をしております。  そこでわが党は、長期視点に立って、畜産酪農経営の安定と国民の食生活を守る立場から、昭和五十六年度の畜産価格の決定に当たりまして、重要な点を指摘しながらお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  大臣もお忙しいようでございますので、先に大臣にお尋ねをいたしたいと思うのです。きょうもニュースで流れておりましたけれども大臣も出席された閣僚会議の中で——レーガン政権が誕生しまして今日二カ月が経過しているわけでありますけれども、農業政策について大臣は、貿易政策とわが国の対応に関しての記者会見を一月の二十一日でしたか、なさいました。その折に、農産物の輸入をもっと自由にすべきだという要求が強まることを覚悟しなければならないだろうというふうに述べておられまして、牛肉やオレンジあるいは果汁などの農産物の市場開放を求める圧力がかなり強まることは避けられないというような見解を示されたわけであります。  牛肉、オレンジ、果汁などの農産物の輸入については、五十三年末の日米農産物交渉の合意で、五十五年度から五十八年度の輸入枠が決められておりまして、五十八年春ごろからそれ以降の輸入枠を協議することになろうと思いますが、レーガン氏がカリフォルニア州の知事であったということも関連いたしまして、輸入枠をさらに拡大してくるのではないかというふうに懸念されております。またきょうの経済問題でも、自動車の輸入摩擦等が経済関係にどうしても影響してくるというようなことで、そういう面からも、どうしてもこの圧力などが農産物等にかかってこやしないか、こういう心配をいたしているわけでございます。その見解を先にお尋ねをいたしたいと思います。
  159. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 レーガン政権が誕生いたしましてアメリカの農業政策がどの方向にリードされるかということは、大変私どもは関心を持ち、心配をいたしてきたところでございます。大統領選挙中のレーガン氏の公約とか演説とかそういうことから察し、また大統領に就任されましてから農務長官の任命等をめぐってのいろいろの情勢をもととして考えます際、私が記者会見で申し述べたように、農産物をアメリカの経済の立て直しの一つの大きな柱にしていこうという意図は相当はっきりと出てくるものと私は思う次第でございます。それが自動車と絡み合ってくるというようなことはやらないのじゃないかなという判断を私はいたしておるわけでございます。  と申しますのは、何といっても日本は農産物についてアメリカから相当量を輸入いたしておるわけでありますから、もし日本をして自動車の問題で相当怒らせるというようなことになれば、そういう報復措置でもとられるのではないかという議論が、アメリカの議会筋でも出ておるやに実は最近仄聞をいたしているわけでございます。したがいまして、農産物問題についてはアメリカからはいまのところほとんど意思表示がない、こういうことでございます。  しかるところ、昨年の十二月に、日米間の食糧問題協議の定期会議を事務当局をしてやらしたわけでありますが、その際も、カーター政権からレーガン政権へかわっても、日米間の定期協議をやっておるこの協定の筋はそう大きく変わるまい、こういう話し合いがあったわけでございます。しかし、何といっても大統領自身はカリフォルニアの出身で柑橘類の産地、ブロック農務長官は小麦や大豆等の産地、こういうことでございますので、農産物の輸出ということについてはアメリカは相当真剣に考えてくるであろうということが察知されるわけであります。  したがいまして、日本の方から農産物について話を持ち出すというようなことはいまのところは考えておりませんし、外務省筋からの今回の伊東外相が訪米するに当たりましても、農産物関係の問題については触れないというようなことも私から実は話をいたしておるわけでございます。まあ寝た子を起こすというようなことにならぬように、いままで柑橘類についても東京ラウンドできちんと協定ができておるわけでありますし、小麦やその他の農産物につきましても話し合いが両政府間で毎年やられておるわけでありますから、いまここで新たに持ち出すべきではないじゃないかということを申し上げてございまして、外務大臣もその点は御理解いただいておるようでございます。  しかし、水産関係になりますとなかなかめんどうな問題がございまして、実はおととい水産庁長官を派米をいたしました。ズワイガニの問題、それからもう一つはイルカ混獲の問題、この問題についての日本政府立場を十分に説明するようにということで派遣をいたしました。水産問題については、外務大臣にも、実はこういう問題があるので日本政府立場を考慮して——やはりこれまた日本の雇用問題にも大きな影響をいたすわけでありまするし、日本が開拓したズワイガニの漁場という事実もあるわけでありますので、その辺を十分理解して、本当に理解あるアメリカ政府の決定をしていただきたいということを申し入れに、実は水産庁長官を派遣したところでございます。  したがいまして、これを要しますに、レーガン政権になっても、そういうことはないと思いますけれども、もし柑橘類をもっと買えとか、あるいは農産物についてのいろいろなことを申し越してきた場合には、私といたしましては、やはり日本の実情をよく理解してもらって、そしてこれ以上の輸入枠の拡大というようなことはもう御遠慮願うというような腹構えで折衝に当たっていかなければならぬな、こんな気持ちでおるわけでございます。
  160. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 話の筋合いから、蚕糸の方を先にちょっと局長にお尋ねしたいのですが、これは地元の問題で大変恐縮でございますけれども、千葉県夷隅郡の大多喜町に会所という部落がございまして、そこへちょうど私呼ばれてまいりましたら、野生のシカが発生をして困るということでございました。  いつごろから発生したかよくわかりません、恐らく二百頭未満じゃないかというふうに思いますけれども、これは調査しなければわかりませんが、それが桑畑を大変荒らして、桑の新芽を食べまして、そして地元の方々が有刺鉄線を張りまして野生のシカが侵入しないような防護さくをつくっているわけです。大変苦しい中をまた各戸で三百万くらいの負担をしまして、県の方に予算を九百万から要求したようでございますけれども、二千メートルの距離で六百七十五万の、これは野生シカ被害防止対策補助事業というような名目で、恐らくこれは林業振興費の方から支出をしたお金じゃないかと思いますけれども、こういうふうに大変野生のシカにいま悩んでいる状態であります。  きょうは環境庁をお呼びしておりませんので、そのシカの処理には私は触れませんけれども、桑の新芽を食べる蚕さん、稚蚕といいますか、その小さなときに新芽を食べられない場合、生育が不順で、しかもでき上がった繭がほとんど半分くらいの小さな繭になってしまうというふうなことで、大変農家の人も悩んでおりました。その補助等を、県が補助して国がそのまま放置しておるということも何だか手落ちのような気がしてならないわけです。どういう方法があるのか、またこれに対するどういう事情をお聞きなさっているか、その点からお尋ねをいたしたい。
  161. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 県の方にもいろいろ照会して事情は聞いております。野生のシカ、百七十頭程度ではないかと県の方も言っておりますが、大分桑の新芽を食べるというようなことで、被害面積は一ヘクタール程度というふうに聞いております。  それで、ただいま先生からお話がございましたように、千葉県当局あるいは大多喜町当局、それぞれ防除施設に対する助成措置につきまして検討をしておるということでございます。県の方では、五十六年度予算案で四百五十万円の補助金を計上するという方向で考えておられるようですし、大多喜町としまして、ただいま先生からお話がございました野生シカ被害防止対策事業ということで、県費も織り込みまして六百七十五万円、補助率大体七五%程度になるということで、何か町当局としても予算化をしておるようでございます。  国の方はどうするのだというお尋ねでございますけれども、国の方といたしましては、現在いわゆる蚕繭共済制度というのがございます。したがいまして、野生のシカによりまして新芽が食害されまして桑葉が減収になった、そのことによりまして繭が基準収繭量の二割を超える減収を来したというような場合には、当然この蚕繭共済制度の補償の対象になりまして共済金が支払われるということになるわけでございます。  あと、具体的な防除施設、県当局なり町当局の方でいろいろいま考えておられるようでございますし、被害面積等も一ヘクタール程度というふうに聞いておりますので、国がさらにこれに助成をするというところまでは考えておらないわけでございます。
  162. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 有刺鉄線を張りましてシカがさくの中に入らないように電流を流しているわけなんですね。ですから、何かそれぞれの受け取り方が違うようでございますけれども、戸数は少ないけれども距離が広い範囲にわたっているという点で、農民の方々も大変お困りのようでございます。鉄線を張ったところにシカが集まってくれればいいのですけれども、張らないところから入ってくればこれは何にもならないということになりますので、そういう面で大変広い、開拓村みたいなところでございまして、山全体が耕地みたいなところ、畑みたいなところでございます、山を開拓したところですから。そういう現状でございまして、どこをどういうふうにやるか雲をつかむような話でございますけれども、一応県とよく連絡をとりながらその対策も考えていただきたいと思うのです。  もう一つ、私もよくわかりませんけれども、わからないことを質問してはどうかと思いますが、水の中を泳ぐヒルは私よく知っておりますが、野ビルという山にいるヒルがシカを媒介として、それが農民の方々の大変因難な敵になっているようでございます。何かそれがぴたっと体へくっつきますと、ゴムみたいに伸びましてなかなかとれない。血を吸って真ん丸くなるとぽとっと落ちるというところまでヒルがシカを媒介に繁殖してきている。農作業に行くにも山の中に入るのにも、完全装備して、そして薬を体につけていかないと困る。ヒルが繁殖して、そういうのが大変人間に被害を与えているというような状態だそうでございます。  したがいまして、こういう問題も、農家の方々の苦情を聞けば切りがないわけでございますけれども、シカを何とか処理しないことには解決しない問題だろう。動物のことですから私もよくわかりませんけれども、人間が歩くだけで野ビルのようなものが飛びかかるという状態でしょうけれども、本能的にそうなるのでしょうが、そういう姿で、都会の人などもだんだん寄りつかなくなってしまうのではないかというような心配をいたしております。後日また環境庁あたりの自然保護団体等の御意見も伺いながら、放置しておけばこれからますます、シカだらけになるわけはないでしょうけれども、そういう状態になるかもわからないというような現状だろうと思いますので、十分検討して、調べていただきたいと思うわけでございます。  続きまして本論に入りまして、加工原料乳並びに牛肉、豚肉等の畜産価格について、生産農家の所得保障と畜産物の再生産が確保できる水準で決めていただきたいわけでありますが、再生産ができる所得保障というものがいま強く望まれているときであります。そのためにも牛肉や豚肉の価格は、需給実勢方式から生産費所得補償方式に改めるべきであると考えますが、その場合の家族労働評価について、すべての製造業の全国平均賃金水準に、いわゆるお米並みの評価ということをお考えいただけないものかどうか。  家族労働等にいたしましても、一般の労働者と違いまして、朝早くから夜遅くまで、休日も日曜もないというのが現状でありまして、他の農産物生産者と比較して大変労働が厳しい状態になるのに、その再生産の評価というものが所得保障を生むような形じゃないという点で大変疑問を持っているわけでございますけれども、こういう点についてどういうお考えを持っておられますか、お尋ねをいたします。
  163. 森実孝郎

    森実政府委員 豚肉、牛肉につきましては二十六日の審議会で、また保証価格につきましては二十七日の審議会で政府の試算を出しまして御検討いただき、決めたいと思っております。その意味で、まだ私ども内容を決めているわけではございません。  ただ今日の状況を御理解いただきたいと思うわけでございますが、牛乳につきましては、生産と需要の伸びの間にかなり大きなギャップができておりますし、過剰の乳製品在庫されている実態もございます。またこの数年間の動きを見てきておりますと、飼養規模の拡大を軸として順調に生乳生産は伸びてきて、むしろその生産エネルギーがやや停滞ぎみとなりつつある消費の動向によって影響されている。それとの関係の調整も図らなければならない、こういう状況にあるわけでございまして、私ども長い目で見るならば、やはり再生産確保という視点が貫かれていると思うわけでございます。こういう状況から見まして、はっきり申し上げて、今日の状況のもとでいわば生産費所得補償方式をとることによって生産刺激的な価格決定を行うことは適切ではないのではないか、むしろ抑制的な価格決定を行うべきではないかと見ているわけでございます。  肉につきましても、実は消費支出の停滞という状況で、消費に曇りが出ております。特に豚肉等につきましては、はっきり申し上げると過剰生産と価格の下落で悩んでおりまして、昨年の十月、十一月以降ようやく生産調整が軌道に乗りまして市況が回復してきた、市場価格がようやく採算のとれる価格になってきたという現実があるわけでございます。そういう場合、いわば農家の下支え価格としての効果を持ちます現在の制度のもとでの価格を生産刺激的なものとして考えるのは、むしろ供給を刺激し、需給不安を招くという点で十分考えなければいけないと思います。しかし、いずれにせよ現在検討中でございますので、まだ最終的な結論には達しておりません。
  164. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 御承知のとおりに、農産物の全般の需要が停滞している中で、また価格が低迷する中で、上がっているのは農業生産資材だろうと思うのです。五十三年までは安定的に推移してきましたけれども、五十四年以降、いわゆる第二次石油ショックによる石油関連品目の高騰がありまして、五十五年に入って一段とその勢いが強まっている現状だろうと思います。特に五十五年七月以降の冷害等によりまして被害を受けた農産物の被害見込み金額は、約七千億と言われておりまして、戦後最大の被害となっておるわけで、農業粗生産額の約七%に当たる大きなものであったわけです。  こうした状況の中で、五十五年度上期の農業経営は、農業粗収益が伸び悩んだのに対して、肥料や飼料等の生産資材の上昇によりまして経営費が一五%以上になったために、農業所得は二〇%以上も落ち込んでいるわけであります。このため、農外所得も加えた農家所得は二・九%増ときわめて低く、消費者物価上昇の八%を大きく下回っている現状でありまして、こういう点から見て、農業生産資材の値上がりというものを価格にどのように織り込もうとなさっておられるか、その経過をお尋ねいたしたい。
  165. 森実孝郎

    森実政府委員 牛乳の保証価格につきましても、豚肉、牛肉の安定価格を決める場合におきましても、従来から算定方式を持っております。この方式によって算定する場合には、直近三カ月の諸資材等の価格価格決定時の価格として算定いたしまして織り込むということにしておりますので、従来のルールからいって、できるだけこの方式を踏襲すべきものではないかと思っております。ただ、価格全体をどう見るかという問題はそういった要素だけからは決まってまいりませんので、そういう意味で、先ほど申し上げましたような事情も頭に置いて全体の決め方を考えているということでございます。
  166. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 続いて、やはり値上がりのことばかりでございますけれども、配合飼料価格の値上げを少し取り上げてみたいのです。  飼料穀物の需給逼迫、また背景にトウモロコシを中心とした飼料原料の急騰などがあるわけでありますが、五十六年一月からトン当たり約七千八百円値上げとなっております。全メーカー平均しますと八千五百円とも言われておりますけれども、配合飼料価格の値上げは五十四年七月に約七千五百円、五十五年一月に約九千円と値上げされて、今回で三回連続の大幅値上げになるわけです。この飼料価格の値上げがこのまま続きますと、これだけでも畜産農家はやっていけなくなるわけでありますが、今後の見通しを農水省はどのように把握されておられますか。これは適切な見通しが立たなければ農家の将来は大変不安がつきまとっているわけでありますけれども、そういう点でどういう見通しを持っておられますか、まずお尋ねをいたします。
  167. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま御指摘もございましたように、昨年の熱波等の異常気象を中心とした輸出国アメリカの単収の急速な低下、それからソ連の凶作による大量買い付け等が背景になりまして夏以降価格が急騰いたしまして、結局濃厚飼料の価格を引き上げざるを得ない状況になったということは御案内のとおりでございます。昨年の十一月末にアメリカの公定歩合の引き上げを契機として穀物市況もむしろ低落の段階に入りまして、下がった水準で現在もみ合っているという状況でございます。  要因的に見ますと、一つはソ連の大量買い付けというものが一巡して追加買い付けの可能性がそう大きくなくなってきたこと。アメリカ農務省の予測では恐らく三千四百万トン前後すでに手当てしたと見込まれているわけでございますが、そういう状況があること。もう一つは、今日の状況では南半球、特にアルゼンチン、ブラジル等の作況がかなり世界の市場に影響を与えるわけでございますが、作付が順調の上に、昨年の暮れ以来何回か雨がありまして作況もいいということで、不安材料がなくなったこと。そういう意味で昨年の高騰時に比べるとかなり低い水準で、たとえばトウモロコシで言うならば三ドル五十セントを下回る水準でもみ合っているというのがいまの状況でございます。  今後どう見るか、なかなかむずかしい問題があると思います。ただ、近々に発表されると思いますが、アメリカのトウモロコシの作付面積はかなりふえる見込みでございます。五%になるか四%になるかあるいは若干それを下回るのかはまだ発表を見ませんとわかりませんが、そういう状況にございます。それからもう一つは、ソ連自体の買い付けがいまのままでの状況でいけばかなりの水準で今後も推移するであろうということがすでにある程度市況に織り込まれている。こういう状況から見まして、五月、六月の作況と申しますか、端的に言うとアメリカの雨量だろうと思いますが、雨量の動向いかんによりますが、連続してアメリカに大きな干ばつが来ない限りはむしろ若干弱含みでこれから動いていく可能性があるのではないかという見方をしております。かたがた、実は円高の影響も少しずつ出てきております。そういう意味においては、四月以降の配合飼料の価格については当面これを引き上げる必要はないと私どもは思っておりますし、また状況によっては、いまの恵まれた状況が続けばむしろ夏ごろになれば引き下げの可能性が出てくるのではないかと期待しているところでございます。
  168. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この配合飼料価格について、異常基金と通常基金の国の補てん措置というものを強化すべきだと思いますが、異常基金の場合国が二分の一の補助をいたしておりますし、通常基金へのいわゆる財源等の見通しをどのように持っておられますか、お尋ねをいたしたい。
  169. 森実孝郎

    森実政府委員 五十四年七月以降の補てんによりまして、異常補てん財源はやや手薄になっております。三月末で約百三十億円の残ということになっております。そこで国といたしましては、来年の五十六年度予算では四十八億円の財源造成補助を行いたいと予定しているところでございます。それから通常補てん財源につきましても、この一月以降の補てんで若干手薄になってきているという点があります。そこで積立額をふやして、従来の千二百円の一トン当たりの積立額を千八百円として基金の造成確保を図ってまいりたいということで現在指導しているところでございます。
  170. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この飼料穀物の大変先行き不安な点を考慮して、やはり国で備蓄というものをこれから本腰を入れるべきじゃないかと思うわけです。飼料穀物の変動に対処し、配合飼料の安定的な供給を確保するために、飼料穀物の備蓄を本格的に進めていかなければいけない、私はこう思いますが、トウモロコシ、マイロについては五十一年度から配合飼料供給安定機構がみずから買い入れて、政府がその備蓄に要する経費、すなわち金利と保管料などですが、全額補助する、こういうふうにして進められております。サイロ建設等が促進されて、それに対する経費あるいは利子補給を行っておるが、どうしても大きな財政負担だということでその備蓄量が一カ月にも満たないものになっておる現状でございますが、これを私は、財源が厳しいでしょうが、少しでも伸ばすぐらいの施策をとらなければ、飼料穀物の急激な値上がりというふうなものにおける調節、安全弁みたいな形の備蓄はどうしても私は必要じゃないかというふうに思うわけでございます。こういう点についてどういうお考えをお持ちなのか。
  171. 森実孝郎

    森実政府委員 先生も御案内のように、現在すでに千六百五十万トンの飼料穀物を年々輸入しているわけでございます。この膨大な穀物、これはシカゴ相場によって買っているわけでございますが、そういった国際的な需給なり価格の動向にわが国の飼料政策を遮断して考えることはとうていできないと思います。しかし、御指摘のようにわが国輸入を考える場合、短期的な局地摩擦、国際紛争とかあるいは輸送遅延等短期的な輸入途絶の事態というものがあり得るわけでございまして、その意味で備蓄政策の強化を図るということは、いわば価格面では基金制度で急激な変化を吸収していく、量的な面では備蓄政策で急激な摩擦というものを解消していく、こういうことは非常に大事なことではないかと思っております。  そういう意味で、本年度も若干でございますが、備蓄数量をふやして予算を計上して審議お願いしておるところでございます。一カ月程度持ったらどうか、私も本当のところの気持ちとしてそのぐらい持ちたいという感じを持っております。ただ問題は、はっきり申し上げまして一つ費用負担をどうするか、あるいはその費用というものをいわば一種の保険費用として価格にきっちり吸収してもらえるかどうかという問題があるだろうと思います。何もかも財政の負担というわけにはいかないだろうと思います。それから品質保持上の問題もあります。それから、わが国の港湾立地ではサイロの収容力に限界がある点もあるわけでございます。  そこで、現在実は専門家にお集まり願いまして研究会をやっております。備蓄も含めて全体としての在庫量をふやしていくという政策がやはり一番重要ではないかという議論の中間集約を見ております。そのためにどういう仕組みをとっていったらいいか、どういう行政指導なり誘導をとっていったらいいか、少し前向きに研究をさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  172. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 畜産局長の三月十六日の報告「最近における畜産の動向と畜産関係諸施策等について」という局長報告がございます。この報告の中で三十ページに粗飼料の問題が出ております。「大家畜畜産経営の安定的な発展を図るためには、大家畜の給与飼料の主体である粗飼料の生産増強を図ることが、極めて重要であります。」云々と、こう出ておりまして「政府といたしましては、粗飼料の今後なお一層の生産増強を図るため、草地開発事業による飼料生産基盤の拡大を計画的に進めるとともに、既耕地における飼料作物の増産とその効率的利用等を積極的に推進していくこととしております。第一に、公共事業である草地開発事業につきましては、五十六年度予算額で三一五億円を確保するほか、」云々、「公社営畜産基地建設事業の採択要件を緩和することとしております。」こう出ておりますが、この草地開発事業と公社営畜産基地建設事業内容について御説明を願いたい。
  173. 森実孝郎

    森実政府委員 公社営の畜産基地建設事業と申しますのは、やはり今後とも畜産主産地として発展が望まれる地域におきまして、飼料基盤の開発整備、端的に申しますと草地の造成改良という問題でございますが、それから農業用施設の整備一体的に行いまして、そこに創設的に新しい経営をつくっていくあるいは規模拡大を図っていく、そういう形で大規模経営の創設と生産団地の建設を行うということを目的で、五十三年度から事業実施しているわけでございます。  事業内容につきましては、酪農、肉牛、それぞれ目的とする畜種によって内容はいろいろ違いますけれども基本施設の整備、農業用施設の整備、農機具類の導入事業、それからさらに土地のあっせん等を一元的に行おうというものでございまして、補助率五〇%ということで実施することにしております。  五十六年度におきましては、内地分といたしまして九地区の計画策定、それから事業化を十四地区、北海道では計画策定五地区、事業化を十一地区というものを考えております。
  174. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その第二の方に「既耕地等における飼料生産対策につきましては、転換水田における飼料作物作付けの拡大・定着化並びに里山等の低利用・未利用資源の活用等を図るため、地域農業生産総合振興対策において、自給飼料生産総合振興対策事業を計画的に推進することとしております。」と、こうありますが、この自給飼料生産総合振興対策事業内容についてお尋ねをいたします。
  175. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のございました事業は、大家畜の畜産経営におきます粗飼料の生産利用体制を物的な意味からも社会的な意味からも整備強化していきたい、同時に水田利用再編に対応いたしまして飼料作物の定着的生産振興を図っていきたいというねらいで、飼料生産基盤というものについて、土地利用を集積していく、それから小規模な土地改良等を積極的に実施していく、それからもう一つは飼料作物の生産とか利用のための必要な機械施設を導入する、さらに未利用の野草資源等の利用促進を図るための条件整備を図っていく、さらに土地を含めた共同的な生産組織をつくるということで事業実施することにしているところでございます。  特に五十六年度の予算といたしましては、新たに畜産経営と耕種農家の有機的連携を図るということによって飼料の利用率も上げていくし地力の向上も図っていこう、さらに湿田等の有効利用にも配慮していこう、こういうことで集団的な転作の促進事業を特に重視してまいりたい、こう思っているわけでございます。
  176. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 北海道の大型酪農を除きまして、内地の酪農の場合に、飼料の高騰というものが大きく影響して、ほとんどが濃厚飼料に頼っているというような現状の場合に、粗飼料の生産がこれから急がれるときじゃないか、こう思うわけでございますが、こういう内容をちょっと私いまお聞きしてもよくわかりませんので、提案をいたしたいのですけれども、これから基盤整備事業のような形のものが仮にあるとすれば、粗飼料をつくる場合の農耕地——農耕地というとあれですが、手を加える場合に、全額国で補助するくらいの勢いで急いだ方がいいのではないかという点で私は持論を持っているわけです。そうしませんと、稲転の場合にも、大臣も答えておりましたけれども、えさ米の飼料についてはどうやら中途半端なような形で、これは詰めなければなりませんけれども、そういう問題。粗飼料につきましても本腰を入れて対策と取り組まなければ、どれ一つとして日本にない飼料を外国依存でやる場合に大変危険を感じるわけですから、そういう面でどういうお考えをお持ちなのか。ここの三十一ページに書いてある内容でそれに当たるものがありますかどうか、お尋ねをいたしたい。
  177. 森実孝郎

    森実政府委員 粗飼料の生産を図ります場合、まさに御指摘のように、一つは未利用地を草地としてどうやって改良造成していくかという流れで考える問題と、それから既耕地の有効利用を粗飼料の生産という形で図っていく場合と、二つあるだろうと思います。  前者につきましては、もう御案内のように現在草地開発事業なりあるいは公団営事業、公社営事業として実施しているわけでございまして、御指摘のように確かに補助率を上げていくということあるいは全額国費でやるということが私ども事業促進にそれ自体としては役立つということは否定できないだろうと思っております。  しかし、現在の実際の補助体系を考えますと、国が大規模事業では六割の助成も行っている。残った四割についても、公団営等は財投で考えておりますし、またさらに、実際の負担区分としては、残った四割も国、都道府県とか市町村の負担もあるわけでございまして、やはり受益農家の私有財産自体が非常に付加価値を持ってくるという内容から見ると、現在行っております補助事業はかなり補助事業としては高率のものと御理解いただいていいだろうと思います。むしろ非常にむずかしい問題は、土地の確保というものをこれから未墾地についてどう考えていくか、非常に限られた土地資源の賦存状況から見まして、そこにむずかしい問題があるということを指摘せざるを得ないと思います。  それから既耕地における飼料作物の増産という問題は、特に現在酪農経営あるいは肉牛の育成経営と結びつけて考えているわけでございますが、これは、一つは、やはり土地を持っております農家畜産農家との結びつきをしっかりしたものにつくっていくという社会的な関係をどう仕組んでいくかという問題、それからもう一つは、やはり残念ながらまだ飼料作物の技術水準についてはかなり劣っておりまして、収量も少ないし品質等にも問題がある。そういった技術体系上の開発努力を続けながら、こういった意味での技術指導を強化していく問題、そういった形で図るべきものだろうと思っておりますし、特に、現下の情勢から見まして、稲作転換事業の中でどうやって粗飼料の増産を図り、それを畜産農家経営に結びつけるかが重要な課題だと思っておりますので、そういった物理的条件の整備とあわせまして、やはり畜産農家と土地を持っていてある程度利用度の低い農家との関係をどう結びつけるか、また、収穫された粗飼料がどうやって補完的に流通していくか、そういうことも含めて、十分各般の事業を通じてシステムをつくっていくということが重要ではなかろうかと思っているわけでございます。
  178. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間が迫ってきましたので、本論の外圧の問題、それから金融の対策、重要な問題を残しましたけれども、これは二十六日に質問するとしまして、一つだけ生乳の消費拡大についてお尋ねをいたしておきたいのです。  具体策を講ずる用意があるかどうかということでございますけれども畜産物の需要の拡大、消費宣伝活動の強化または新製品の開発普及など、政策的な消費拡大対策をとってもらいたいという私の希望でございます。その中で、政府飲用牛乳の広告宣伝、消費者啓発等として飲用牛乳消費拡大事業に来年度二億四千八百万円、それから全国牛乳普及協会が行ういわゆる幼稚国牛乳、妊産婦牛乳、老人牛乳などに対して事業団が十億二千万円の助成を行っているわけです。これは五十四年と五十五年にこういう協会が助成を行っているだろうと思います。これは続けるべきだというふうに思いますが、特に新製品の開発普及あるいは新規需要の開拓などで消費拡大を強化すべきだというふうに思っております。どういうような方途で消費拡大を図ろうとなさっておられますか、具体策がありましたらお尋ねをいたしたい。
  179. 森実孝郎

    森実政府委員 まず一つは、私、やはり学校給食の消費拡大を本年は積極的に進めたいと思っております。そういう意味で、未実施校の解消とか土曜供給、供給日数の拡大、さらに三百ccの飲用を認めるというふうなことを、要綱を改正いたしまして何とか消費拡大に直結させるようにしていきたいと、現在検討を進めているところでございます。  二番目に御指摘の幼稚園牛乳とか妊産婦牛乳、老人牛乳等でございます。これは、現在この存続の可否について検討中でございます。財源事情というものも実はございます。しかし、一方においては消費拡大を図らなければならない事情もございますので、ただいま御指摘の点を頭に置きまして検討さしていただきたいと思います。  それから新製品の開拓、これはなかなかむずかしい問題だろうと思います。各メーカーにおいて、ロングライフミルクとかローファットミルク等の開発が行われておりまして、それはそれなりに今日の多様化したニーズなり、あるいは非常に核家族化した、共かせぎ等の多い消費生活にマッチするものであろうと思っておりますが、やはり乳製品をどう考えるかが問題だろうと思います。  今日の状況のもとでは、やはりウエットな食品、ソフトな食品というのが乳製品でも非常な支持を持っております。そういう意味においては、ナチュラルチーズの中でも特にソフトなタイプのもの、それからヨーグルト、こういったものについては私どもも重視すべきだろうと思いまして、そういった面での開発問題、それからもう一つは、新しい工場の建設やマーケットプロモーションの問題については、引き続き前向きに私どもとしても配慮してまいりたいと思っているわけでございます。
  180. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 では、後日に譲りまして、本日はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  181. 田邉國男

    田邉委員長 神田厚君。
  182. 神田厚

    神田委員 畜産酪農の政策、価格の問題につきまして御質問を申し上げます。  まず最初に養蚕の方の問題につきまして御質問を申し上げたいと思うのでありますが、御案内のように、蚕糸政策あるいは価格の問題につきまして生産者のいろいろな要望が出ております。第一番には、蚕糸政策につきましては、繭糸価格の中間安定制度を堅持すること、さらには生糸の一元輸入の当分の継続、あるいは繭、生糸、絹糸、絹織物等の輸入規制の問題、さらには事業団在庫生糸についての対処の仕方、こういうふうなことで政策的な問題につきまして要望が出ているわけでありますが、これらにつきましてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  183. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 御案内のように、繭糸価格安定法に基づきまして五十六生糸年度に適用いたします価格の決定の時期は三月中となっておりますので、その時期に参りましたこともございまして、各界から要望があるのは事実でございます。現在、養蚕、製糸、絹業界等各界からの要望につきまして、いろいろその御主張されるところを聴取いたし、また、それぞれの問題点等につきまして検討いたしておりますが、いずれにいたしましても、繭糸価格安定法に基づきまして三月中に基準糸価等を、行政価格の決定をするということで現在検討を進めておるところでございます。
  184. 神田厚

    神田委員 特に問題になっておりますのは、事業団在庫生糸の問題が大変大きなしこりとなっております。これにつきましては現在十四万俵余りの輸入糸が在庫という形で残っておりますけれども、これらはどういうふうに対処しようというふうにお考えでございましょうか。
  185. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 最近におきまして、末端絹需要の停滞、経済の低迷といったことを背景といたしまして、生糸の引き渡し数量がここ二、三年急減いたしております。これらによりまして糸価水準も低迷いたしておりまして、基準糸価前後で推移いたしております。これらによりまして、五十四年六月以降、繭糸価格安定法に基づきまして、蚕糸事業団在庫輸入糸の売り渡しの停止、国産生糸の買い入れ等を継続して行ってきております。その結果、事業団在庫はこの二月末で十四万五千俵近くになっております。  この事業団在庫の軽減ということを図りますためには、生糸、絹需要の改善を図る必要があるわけでございます。このため、末端絹需要の拡大につきまして、事業団助成事業によります需要増進対策を進めますほか、生糸、絹製品の供給の抑制措置として、生糸、絹製品につきまして輸入調整措置の強化、対日主要輸出国である中国、韓国との二国間協定数量の大幅圧縮を図るなどの措置を講じてきておるところでございます。  今後需給改善努力をさらに重ねまして、景気浮揚策等の進展によります糸価の上昇を待って、国産生糸の買い入れの停止、輸入生糸の売り渡しの再開等を通じまして事業団在庫の軽減が逐次図られるものと期待しておるところでございます。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕
  186. 神田厚

    神田委員 次に、価格問題では基準糸価の引き上げについての要望があるわけでありますが、御案内のように五十五年度は、異常気象の中で、繭もその例に漏れず生産量が激減した。前年比一〇%減というような、大変打撃を受けたわけであります。一方生産資材やその他、金利、労賃等は異常に高騰をしておりまして、生産農家はきわめて経営的に厳しい打撃を受けたわけでありますが、そういう中でどうしても、五十六年度の適用基準糸価の決定に当たっては、再生産可能な水準にまでこれを引き上げて、そして蚕糸生産者経営の安定に資するようにしてほしいと強い要望が出されているわけでありますけれども、この点につきましてはどういうふうにお考えでございましょうか。     〔津島委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 繭糸価格安定法に基づきまして、中間安定措置におきます基準糸価は「生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情からみて適正と認められる水準に生糸の価格を安定させることを旨として」定めるということになっております。現在その要素となります生産条件、需給事情その他の経済事情に関連いたします資料を収集中でございます。御指摘のような事実もあるわけでございますが、それらがそういった資料にも反映されると思いますので、これらの資料に基づきまして、繭糸価格安定法に基づき三月末までに適正に決定いたしたい、蚕糸業振興審議会の繭糸価格部会にもお諮りいたしまして適正に決定いたしたいと考えております。
  188. 神田厚

    神田委員 いまの価格の問題につきまして、大臣どういうふうにお考えでございますか。
  189. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 養蚕製糸それから機屋、蚕糸絹業をめぐる情勢は大変厳しい情勢にあることも神田先生御存じのとおりでございます。こういう中で、基準糸価をどのように決定すれば諸問題解決のもとになるかというようなことを実は思い悩んでいるわけでございまして、ただいまも事務当局から御説明申し上げましたように、いまいろいろのデータを収集中でございますので、これらをそろえた上、蚕糸業振興審議会の意見も十分聴取をいたしまして、適正な糸価という立場でこれを決めていきたい、こう考えております。
  190. 神田厚

    神田委員 養蚕が年々戸数も減って、生産量もだんだんと減ってきているという状況の中で、日本の伝統的な産業としてこれを何とか守っていかなければならない、こういうふうに思っているわけでありますけれども、養蚕を主な経営としている農家の生産性の向上というのが一番いま大きな問題になってきております。これらのことにつきまして、たとえば生産基盤の強化やあるいは土地生産性の向上や、さらには養蚕を取り巻く環境条件の整備というようなものにつきまして、いわゆる養蚕主業農家の生産性向上についての、政策的なものについての取り組み方というのはどういうふうになっておるでありましようか。
  191. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 養蚕主業農家の生産性向上がきわめて重要であることは御指摘のとおりでございます。このため従来からも農業基盤整備事業、農業構造改善対策事業、山村振興事業等を活用いたしますほか、養蚕主業農家の生産性向上に特に力点を置きまして施策を進めてきておりますが、五十六年度からは、今後とも養蚕の発展が期待されます養蚕適地を対象といたしまして、経営基盤の整備、省力多収技術の導入、生産性向上を基本に高能率の養蚕経営の育成等、足腰の強い養蚕主産地の確立を図ることを目的といたしました養蚕振興地域育成総合対策事業実施する等予定いたしております。  なお、環境条件といたしまして繭、生糸、絹織物等の輸入の秩序化対策、繭糸価格安定制度の適正な運用等につきましても、最近の厳しい蚕糸をめぐる情勢に対応いたしまして一層努力してまいりたいと考えております。
  192. 神田厚

    神田委員 同時に一番問題なのは需要が減ったということ、不景気であることあるいは着物離れというような中で絹製品の需要が非常に減っているということが統計にあらわれておりますけれども、これらの消費拡大はもっと大事に考えられていかなければならない問題でありますが、これらにつきましてはどういうふうな具体的な考え方をお持ちでありましようか。
  193. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 厳しい蚕糸絹業の状況に対処いたしますために、絹の需要を積極的に拡大することが基本的に重要であることは御指摘のとおりでございます。  絹消費の拡大を図りますためには、生糸消費の九割を占めております和装の需要を一層促進するとともに、洋装部門等の絹の新規用途の開発も必要であると考えております。このため日本蚕糸事業団の助成事業を活用いたしまして、需要増進事業を進めておるところでございます。五十五年度におきましては、総額約三億七千万円の予算で、一つは着物の着つけ指導など和装需要の拡大のための各種助成事業を行いますとともに、生糸、絹製品の新規用途開発のための助成事業を積極的に進めまして、これらによりまして、これに関係業界との密接な連携協力もあわせまして絹需要の拡大に一層努めてまいりたいと考えております。
  194. 神田厚

    神田委員 これはよほど力を入れてやらないと、このことが一つの問題の解決になるわけでありますから、やはりもっと思い切った政策をとるようにしていかなければ非常に手おくれになってしまう。いまの間ならばまだ間に合うと私は思うので、どうか、そういう意味ではこの消費拡大についての政府の方のしっかりとした政策の遂行をお願いしたいと思います。  続きまして、畜産物の価格の問題について御質問を申し上げます。  五十一年度以降、わが国の農畜産物の需要は非常に停滞をしております。したがいまして農畜産物の価格も、御案内のように据え置きとか、こういうふうな形で大変低迷をしているわけであります。一方、農業生産資材は、これまたインフレの高進によりまして、月を追ってという言葉ではちょっとあれかと思いますが、どんどん騰勢を続けている。さらに、配合飼料価格も、これまた何回かにわたりまして非常に大幅な値上がりをしているわけであります。  こういう状況で、いま畜産をめぐります情勢というのは、第二の畜産危機と言われるような大変厳しい環境を迎えているわけでありますけれども、こういう中にありまして、五十六年度のこの畜産物の価格の決定に当たっては基本的にどういう価格決定をなさろうという態度なのか、その基本的な問題につきまして御質問を申し上げたいと思うのであります。
  195. 森実孝郎

    森実政府委員 畜産物の価格決定につきましては、来る二十六日と二十七日に食肉関係と酪農関係に分けまして審議会で御議論を賜って、政府としてできるだけ早く決めたいと思っているわけでございます。  御指摘のように、コスト要因はやはりプラスの方向に動いている、しかし需給関係ははっきりマイナスの方向に動いている、このギャップがやはり畜産物の価格を決める場合の最大の悩みであろうと私ども思っているわけでございます。確かにコストの上昇も一方において頭に置かなければなりませんけれども、牛乳、乳製品について過剰の在庫があり、また現実の生産テンポと消費テンポの間にギャップがある、過去の価格決定というものが事実としてかなり生産刺激的な効果を持ったということは否定できないのだろうと思います。こういう状況の中でいろいろな議論があるわけでございます。極論を言えば引き下げ論等もあるわけでございますが、どう考えていくか、とつおいつ頭を痛めているところでございます。  肉につきましても、やはり消費支出の停滞ということがございますし、豚肉等はやっと生産調整が軌道に乗って、前年対比で一五、六%市価が上がってきて、やっと息をついているところでございます。そういった状況のもとで、下支えの効果を持った安定制度価格を上げるということはかえって過剰供給につながらないかどうか、ここら辺も私どもコスト要因とはまた逆に悩まなければならない点だろうと思って、悩んでいるところでございます。しかし、いまの状況は、やはり市場の中での状況ということを重視して決めることが次の段階での経営なり市場の安定につながるということは事実だろうと思っております。十分に検討を進めたいと思っております。
  196. 神田厚

    神田委員 生産刺激的な問題があったというふうなことでございますけれども、しかしながらそういう形で一たん出発をしてしまっているものについて、生産調整や何かいろいろ御努力なさっておりますけれども現実にやっているのは一戸一戸の農家でありますから、この農家の人たちにとりましては、そういうふうないまの政府のやっております価格に対する考え方や、あるいは政策に対するものについて非常に不満を持っておりまして、同時にどうしてももうやっていけないのだということもあるようであります。  この前農林省の皆さんにこの価格の問題を検討するに当たっていろいろお話を伺いました。その話の中では、やはりどうしても生産抑制的な資料がそろっているというふうな感じを強調しているようなところがあって、たとえば穀物の需要の問題あるいは生産の問題等につきましても、農林省が把握している情報とわれわれがいろいろ聞いている情報と大分違っていたりするようなわけでありますので、その辺のところはもう一回よく検討していただかなければならないと私は思いますが、少なくとも今年度の畜産物の価格の要求といいますか決定に当たりましては、五十一年度からもう五年間も価格的には非常に抑えられたままになっているわけです。ですから、これは後で負債の問題その他で御質問申し上げますけれども酪農畜産農家はぎりぎりのところまで追い込まれている。これを大きな政治の中でどうにかうまく回していかなければならないと思っているわけでありますから、この価格決定に当たりましてはひとつそういう事情を十二分に御配慮をいただきたい、こういうふうに思っているところでございます。  ところで、六十五年の長期見通し、これが発表されましたが、この中で畜産物の需要動向及び生産の見通しについては、長期的に、六十五年までに具体的にどういうふうな見通しに立っているのか、そしてそれに沿ってどういうふうな畜産政策というのを展開しようとしているのか、この辺のところをついでにお聞きしたいと思っております。
  197. 森実孝郎

    森実政府委員 全体として見ますと、やはり日本人の胃袋も相当高い充足度になっておりますし、栄養素のバランスもとれてきている、経済の成長テンポもやはり鈍化の方向にある、そういう意味においては、ほかの商品とは違ってなお上昇カーブをたどると見ておりますが、やはりテンポは緩んでくるだろうと見ております。  牛乳、乳製品につきましては、大体年率で消費は二・四から二・八ぐらい伸びるのじゃないだろうか。生産量もこれに合わせて二・五程度のアップということを頭に置こう。肉類につきましても、トータルとして見ますれば年率二・六から三・一ぐらい、生産もそれに合わせて三・一か二ぐらいの伸びということを考えておりますが、この中ではかなり品目間に消長がありまして、どちらかというと牛肉が一番高い伸び率を持つと見ております。鶏卵につきましては、はっきり申し上げると、今日の状況では一人当たりの一年の供給、消費量はもうほとんど横ばいに近い姿というふうに見ておりまして、したがって需要量も生産量も伸びが非常に小さなものになってくるという見方をしているわけでございます。  こういった状況、それから基本的にわが国の土地資源と申しますか、資源の賦存量というものを考えるとき、やはりこれからの畜産業を考える場合においては、需要の動向を頭に置いた生産の誘導ということが基本だろうと思います。  それからもう一つは、酪農に代表されますように、多くの畜種についてわが国畜産経営はある程度の規模の拡大による生産性の向上を実現してきたと思いますし、特化が進んだと思います。これからはどうやって経営体質の強化を図っていくか。借金を減らし効率をよくしていく、償却負担をできるだけ減らしていく、そういう点がやはり重要な課題であろうと思います。  もう一つは、何といっても飼料政策の問題でございますが、土地利用畜産ということを飼料作物の生産拡大を通じて実現する、こういうことが政策の基本ではないかと思っているわけでございます。
  198. 神田厚

    神田委員 具体的なそれに沿った畜産政策というのは、長期的にわたってつくられていくわけでありますから、一言でいろいろ言えないことはもちろんでございますが、ただ、いまのような状況の中で畜産政策を進めていくというのは、相当思い切ったこともしていかなければならないわけでありますから、その辺のことをお含みおきをいただきたいと思っております。  同時に、昨年の十二月に第四次酪農近代化基本方針、これと家畜改良増殖目標というのが決定をされております。前回との違いというものが一番問題になってくるわけでありますけれども、特に近代化基本方針の中では、その需要見通し、乳製品の需要量は三百二十八万から二百八十三万と下方修正していく、こういうふうなところも一つの特徴的なものとして出ているわけでありますが、これらの問題についてはどういうふうにお考えでございますか。
  199. 森実孝郎

    森実政府委員 率直に申し上げまして、第四次の酪農近代化計画をつくる際に、非常に生産拡大の要望が各都府県からありまして、私ども今日の需要の動向を考えると過大ではないかということで調整したという過程があったわけでございます。  やはり基本的には、先ほど申し上げましたように、乳製品の伸びの鈍化、それから逆に、五十一年以降の動きを見ると牛乳生産の拡大のポテンシャリティーが非常に高いということで、むしろそのギャップから五十四年以降自主的な計画生産実施されているという状況を頭に置いて決めたわけでございまして、内容的に申し上げますと、まず需要の伸びを従来の三・七から年率二・八に下方修正した。また生産量につきましても、従来の四・二%という伸びから二・五%に下方修正をしております。  また、経営自体につきましては、専業経営については、先ほども申し上げましたように、ある程度頭数規模は一つの限界に来ているという認識を持っておりまして、むしろ質的な充実ということで、頭数規模を専業的経営については変えなかった。複合経営については、なお規模拡大のメリットということを頭に置きまして、五頭程度の規模拡大を図るというふうに考えた点が特徴でございます。
  200. 神田厚

    神田委員 同時に、いまお答えがありませんでしたが、家畜改良増殖目標もかなり違っているわけでありますが、その辺はどういうふうにお考えですか。
  201. 森実孝郎

    森実政府委員 昨年十二月に、昭和六十五年を目標年次とします家畜改良増殖目標をつくったわけでございます。従来との関係において特徴になる点を申し上げますと、一つは、家畜の経済能力の向上を図るため、体型より能力、たとえば乳量でございますとか発育とか飼料の利用効率を重視をするということと、それからもう一つは、個々の家畜ではなくて群としての家畜と申しますか、斉一性の向上ということを頭に置いたわけでございます。  それからもう一つの特徴は、豚、牛乳等について質の向上という点に力点を置いております。それからさらに、大家畜、特に肉牛で問題になるわけでございますが、やはり粗飼料の利用性に富むと申しますか、粗飼料が肉質を落とさない系統の牛ということを重視しております。  具体的な主な改正点といたしましては、全般にまず能力の目標数値を引き上げております。たとえば乳量で言いますならば、前回の四・八トンを五・三五トンに上げるとか、それから飼料の量は、ランドレースの場合で言うと、一キロ増体に要する飼料の量の三・三キロを三・二キロに下げる、こういうふうな向上を図っております。特に肉用牛に重点を置いておりまして、肉用牛については従来と違いまして品種ごと、たとえば黒毛とか赤毛とか日本短角とか、そういうふうに分けまして目標をつくると同時に、一キログラム増体当たりのTDN量をはっきり示していこうということを目標にしております。さらに、肉質の問題を重視するとともに、肉量の問題を、家畜改良増殖でできるだけ外形的、計量的に把握したいということで、ロース芯断面積についての目標の設定等を行っております。こういった点が主要な特徴点ではないかと思います。
  202. 神田厚

    神田委員 特に酪農近代化基本方針の中では、前回の六十年見通しでは、総需要量年間伸び率四・二%というふうにつくられていたわけでありますが、今回は特にこれを二・五%に減速さした。しかし、こういうふうな従来の目標は下方修正をした形でこの近代化方針が出されてきているということに私どもはちょっと後ろ向きの姿勢を感じるわけであります。たとえば輸入問題その他いろいろな問題があるのは承知しておりますけれども、これはしかしどうも後ろ向きだというふうに思うのですが、どうでございますか。
  203. 森実孝郎

    森実政府委員 客観的に需要の動向を見てまいりますと、たとえばいま御指摘にありました牛乳についても、今後も伸びると思いますが、飲用乳であれば四%前後という以上はなかなかむずかしいだろう、乳製品については二%前後というふうに見ざるを得ない、物によっては、バター等はもっと低いのじゃないか。そういう状況から考えまして二・五、たとえば二・四から二・八というふうな目標の設定は現実的なものだろうと思います。  これは畜産だけについて見ますと、従来の急速な拡大テンポから低成長への移行でございますが、私は、何といっても畜産の場合はまだプラスの計数がはっきり出ているという点では、わが国の作目として、あるいは消費生活から見ても生産面から見ても拡大を可能にしている品目であり、重点品目であろうと思うわけでございますが、そのテンポについては現実を受けとめたクールな判断が要る、こう思っております。
  204. 神田厚

    神田委員 畜産もいよいよ縮小生産に入るのではないかという心配がなされておりますけれども、いまの局長答弁で、そういうことじゃなくて、まだ拡大方向の余地がたくさんあるというようなことでありますから、そういうことに沿った政策の遂行をお願いしたいと思うわけでございます。  次に、乳製品輸入の問題、それから、その輸入等規制の問題、これは大変大きな問題になっておりますけれども、それにつきまして二、三、質問をさせていただきます。  五十五年の乳製品輸入量については、対前年比で見ると若干減少している、そういうふうに言われておりますけれども、その実態はどういうふうになっておりますか。
  205. 森実孝郎

    森実政府委員 五十五年の輸入量を生乳換算で申し上げますと、乳製品自体としては二百六万三千トン、これは五十四年の二百二十三万三千トン、五十三年の二百二十五万四千トンよりかなりの減少になっております。一方、これに対して、前々から御指摘のありました調製食用油脂等の疑似乳製品を加えますと、五十五年は生乳換算量で二百三十八万一千トン、五十四年が二百五十万六千トン、五十三年が二百五十一万五千トンでございますから、乳製品自体ほどではありませんが、これも全体としては減少しております。
  206. 神田厚

    神田委員 特に輸入乳製品のうちで国内生産と競合する自由化の乳製品であるナチュラルチーズなどについてはどういうふうになっておりますか。
  207. 森実孝郎

    森実政府委員 チーズにつきましては、従来わりあいに伸びていた品目でございます。五十五年も生乳換算で申しますと百万トンの輸入になっているわけでございまして、前年が九十八万八千トンでございますから、若干でございますがふえております。
  208. 神田厚

    神田委員 それから一番問題になっておりますのは擬装乳製品調製食用油脂という問題でございました。この輸入の規制について、これは外務、通産、大蔵、いろいろ問題のあったところでありますが、三月末までには具体的なこれらについての一応の結論を出すというふうな形で農林省の幹部の発言があるわけでありますが、具体的な規制措置をどういうふうに講じようとしているのか、その点をお答えいただきたいと思います。
  209. 森実孝郎

    森実政府委員 調製油脂輸入の問題につきましては、先般当委員会大臣からも御答弁がありましたように、農林省自体としては、やはり国際的状況を見ながら引き続きIQ努力はいたしたいと思っているわけでございますが、当面、やはり現実の国際情勢のもとでなかなか踏み切れず、説得できるものでもないという状況から、何とか有効な歯どめを考えたいということで、現在、輸出国でございますニュージーランド及びECと最終的な折衝段階に入っております。輸出国側の秩序ある輸出と申しますか、輸出のコントロールと、それから国力の業界指導、それらを有効に結びつける仕組み等、各種の手法を組み合わせて何らか歯どめをかけ、できるだけ抑えていく措置乳価決定時までには決定したいと思って、四省、額を合わせまして現在協議を進めているところでございます。なお若干の時間を、交渉事の関係もありましていただきたいと思っております。
  210. 神田厚

    神田委員 乳価決定というのはもう間もなくでございます。ですから、話は相当詰まっているのだろうと思っておりますが、大臣、どうでしょうか。農林省は非常にがんばっているのですけれども、いろいろほかの省庁との調整も大変むずかしいようでありますが、ひとつ、見通しとしてはどの程度のところに落ちつくというようなこと、おわかりでございましょうか。
  211. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 はっきり申し上げまして、相手のあることでございまして、相手もいまのところ非常にきついことを言うておるわけでございますね。日本はもっともっと買えるはずであるとか、ことさら数量を減らそうとしているのはけしからぬとか、非常にきついことをEC関係もそれからニュージーランド関係も言うてきておるわけであります。政府としては当初相当きつい線を出して折衝を始めたわけでありますが、それじゃなかなか話し合いに至らない、現物はどんどん入ってくる、こういうことでは非常に困った状態になってまいりますので、四省庁話を一応まとめまして、そうして現在ニュージーランド並びにECの方との話し合いを具体的にいたしておるわけであります。  その内容をここで申し上げるところまで実はまだ行っておりませんし、相手もまた、向こうの要請しておるような線をここで申し上げるということにもいきませんので、もうしばらく時間をかしていただきたい、こう思います。
  212. 神田厚

    神田委員 この問題は同時に、商社がそういうことで入れ知恵をしたとかいろいろ報道されておりますけれども、この商社に対しても、行政指導としてこれを何らかの形でやっていきたいのだというような話があったようでありますが、その辺のところはどういうふうになっておりますか。
  213. 森実孝郎

    森実政府委員 調製油脂は、実は急速に洋菓子高級パン類、アイスクリーム等の消費が伸びていく中で、従来ショートニングを使っていたものが高級品に変わっていく過程で量と質の転換が行われて出てきた。そういう意味においては、ユーザーがリーダーシップをとったのか商社がリーダーシップをとったのか、そこはなかなか私も判断のむずかしいところで、むしろ一体と考えていいと思います。  問題は、行政指導をしっかりとやるとするならば、ユーザー商社にそれぞれしっかり協議の組織をつくらせて、その連携をしっかりとらせることだろうと思います。そういうことを頭に置きまして、一部すでに発足したものもございますが、逐次組織をきちんとしたものにして、行政指導が有効に作動するように、いま組織とかを進めておりますが、先ほど大臣も申し上げましたように、何といっても輸出国側との話し合いのめどという問題と行政指導と、それからそれらを結びつける具体的な行政上の仕組みと、三つなければならないわけでございまして、なお詳細についてはできるだけ早く結論を出したいと努力中でございますので、決めたところで御報告をさせていただきたいと思います。
  214. 神田厚

    神田委員 乳価決定までにはいずれにしましても方向が決まるわけですね。いろいろそれぞれ要望がありますから、ひとつその点におきまして適正な御決定をいただきたい、こういうふうにお願いを申し上げます。  さらに、乳糖、カゼイン、これの輸入はどういうふうになっておりますか。そして、いわゆる合成脱粉としての使用の形態が問題になりましたけれども、それは現在どういうふうになっておりましょうか。
  215. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、ある時期、乳糖、カゼインから合成乳をつくる動きがあったことは事実でございますが、現在は全くございません。現在カゼインにつきましては、工業用としてコーティングとボタンと接着剤に主として使われております。また乳糖につきましては、薬品の糖衣用に使われる、それから調製粉乳に使われるというふうな形になっております。  それで、今日の状況を見ますと、はっきり申しますと、コストが実は輸入品の方が日本国内の脱脂粉乳よりはるかに高い関係になっておりまして、いわば合成脱脂粉乳の製造は急速に減少しているというのが現在の姿でございますし、最近の乳糖、カゼインの輸入量の動きを見ましても、ふえているような動向はございません。昨年対比でも、乳糖もカゼインも減っておりますので、私どもとしては落ちついてきていると見ております。
  216. 神田厚

    神田委員 いま三、四点乳製品輸入の問題について御質問申し上げましたが、何回も言われておりますけれども国内の生産が生産調整という状況でやられている。しかしながら一方、乳製品はいろいろ形を変えてどんどん入ってきている。こういう中で、適正な規制方針といいますか、これはやはり適正に規制をしていかなければならない問題も当然出てきているわけでありますが、大臣としましては、この乳製品輸入の問題についての考え方というのは、今後の取り組みのことも含めまして、どういうふうにお考えでございましょうか。
  217. 森実孝郎

    森実政府委員 ちょっと品目別の事情で申し上げますと、実はいまの乳製品輸入の中で一番大口を占めておりますのは飼料用の脱粉でございます。これは国際価格に比べて国内価格が倍以上になっておりまして、これをどうするかという問題が一つ基本にあると思います。私は、いまこれは横流れ等も行われておりませんので、それなりに配合飼料の価格の安定に役立っているという評価をしております。それから、乳糖、カゼイン等については、これはいま申し上げましたように、はっきりもう収斂段階に入ってきてしまっている。それからチーズにつきましては、これは実は不足払い制度をつくり、一元輸入をつくるときも議論になった点でございますが、ナチュラルチーズが主力でございまして、直消品もかなりウエートを持っておりまして、こういった多様な直接消費に充当される商品について果たして有効に規制できるのかどうか、単純に現在量だけでは言えないという面もあるわけでございます。また、一方においてはバターとか脱脂粉乳は、もう先生案内のように、この三年来一元輸入輸入しておりません。  そういった点から申しますと、やはり全体として見れば、いわゆる疑似乳製品の議論が問題になるのだろうと思います。その中でも、行政指導で、まあ大体前年並みの水準で横ばいで定着しております無糖のチョコレートクラムはそう大きな影響があると思っておりませんし、それなりに国際商品として定着してきておりますので、やはり現実的には調製油脂の問題をどう処理するかというあたりから入っていくのが現実ではなかろうか。  率直に申し上げまして、価格の開きがありますし、ユーザー立場もあります。それからまた輸出国側では、従来バターを買ってくれたがバターを買ってくれなくなったというふうな主張もあるわけでございますが、やはりこれは、御指摘もありましたようにエスケープ商品でございますので、私ども有効な歯どめをかける努力を当面すると同時に、やはり長期的には、農林省としては国際的状況を見ながらIQの問題に努力するというものであろうと思っております。  いずれにしても、乳製品一律ということではなくて、そういう現実事情の中で判断すべきものだろうと思っております。
  218. 神田厚

    神田委員 それでは乳製品でもう一点。  過剰在庫がいまあるわけでありますけれども、これについてはどういうふうな処理の方針を持っているのか。民間在庫につきましては、五十五年度においては乳製品在庫調整経費特別助成事業、約十五億円実施をされておりますが、五十六年度についてはこのような考え方に立って同じような事業を継続するようなお気持ちがあるのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  219. 森実孝郎

    森実政府委員 二つの御指摘があったわけでございます。  まず、過剰乳製品自体をどう思っているか。バター、脱脂粉乳等、かつてない率の、かつてない量の過剰を持っております。私どもやはり民間在庫政府在庫を含めてどういう順序でこれを処置していくか、またこれに伴う膨大な損失が不可避でございますので、この損失をどういうふうに協力して吸収し合っていくか、そういった点を頭に置き、一方においては、やはり政府が財政負担をして、安売りして輸出するということになると国際的な摩擦を起こすというような問題もありますので、そういう摩擦を回避しながらやっていくということで、これは重要な課題として受けとめ、今後時間をいただきまして、財政のめどもっけながら取り組みたいと思っております。  それから、御指摘の当面の金利、保管料の助成でございます。これについては、保管数量は発足時よりはバター、脱粉、特に脱粉等はある程度減ってきておりますが、しかしまだまだ相当な過剰在庫民間が持っている現実から見て、なかなか放置できないだろうと思っております。まだ方針は決めておりませんが、今日の状況、それから次の段階における過剰在庫処分のような方針等も頭に置きまして、できるだけ早く、できればこれも乳価決定時と前後して方針を決めたいと思っております。
  220. 神田厚

    神田委員 時間が大体来たようですのでこれで終わりまして、後日また二、三機会があるようでありますので、その際質問させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  221. 田邉國男

    田邉委員長 寺前巖君。
  222. 寺前巖

    ○寺前委員 限られた時間でございますので、私も一、二質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、蚕糸、絹対策の問題についてお聞きをいたします。  過般、蚕糸政策・価格要求全国蚕糸生産者大会というのが行われまして、その後、私のところにも関係者がお見えになりました。いまも大臣お答えになっておりましたが、端的に大臣に第一問お聞きをいたします。生産者の再生産を保障するためには、基準糸価を上げてやらなかったならば、ああやこうや言っても再生産の保障にならないのではないか、この点についての率直な大臣の見解を求めたいと思います。事務当局の説明は要りませんから。——説明は要らぬ、そんなややこしい話は要らぬのだ。
  223. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 それではお答えいたします。  非常に厳しい蚕糸関係を取り巻く情勢であることは、もう寺前委員、百も承知のとおりでございます。特に、これだけ私ども努力をいたしておるにもかかわりませず、糸価がさえないどころか、非常に大きな下落をしておるというようなこの現実をどういうふうに正確に受けとめるかというようなことで、実は私も頭を悩ましておるわけであります。  したがいまして、今年度の基準糸価をどうするかについては、やはり諸統計の数字を十分掌握いたしまして、さらに経済事情等各般の情勢を十分しんしゃくをいたしまして、審議会に諮りまして、そうして基準糸価を決めていきたい。いまのところまだどういうふうになるか、ここで申し上げるまでのデータを積み上げておりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  224. 寺前巖

    ○寺前委員 私が聞いたのは、農家の再生産を保障するという立場のときには、他の要件は別にして、基準糸価を上げないわけにはいかぬのじゃないかということだけを言っているのです。とやかく理屈を言っても、いま直ちに再生産を保障する道は何なのか、これしかないのじゃないかということを端的に聞いている。その一言だけなんです。
  225. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 私はそうは思わないわけですね。やはりいままで養蚕農家の方々も、団体も、行政府も、いろいろ努力をしてきておりますとおり、省力養蚕ということも一面にはあるわけでございます。そういう点も十分考慮しながら基準糸価を決めていく。上げればいいということでどんどん上げていったのでは消費の方もついていけないということ、ここ去年、おととしあたりからこの需要が非常に減退してきておるということ等もやはり十分しんしゃくしなければならない、こう考えております。
  226. 寺前巖

    ○寺前委員 私は現時点におけるところの農家の再生産を指摘したのであって、諸条件の問題を言っているわけではございません。  次にいきます。  蚕糸事業団の生糸の在庫が非常にふえています。五十五年の三月は九万俵であったものが十四万五千俵、一・六倍になっています。そのうち十万八千俵、七四%は輸入生糸になっているわけですが、私は、これは異常な在庫状況だ、需要全体から考えても四十万俵前後ですから、これは非常に異常な状況になっているというふうに見るのですが、この異常な状況というのはどうして生まれたのか、一体その責任はどこにあるのか、明らかにしていただきたい。
  227. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 日本蚕糸事業団在庫につきましては、御指摘のようにこの二月末現在で十四万五千俵近くになっております。  御案内のように、この二、三年の糸価の状況を見ますと、景気の低迷、末端絹需要の減退等を背景といたしまして、国内生糸引き渡し数量が急減いたしております。これを背景といたしまして、実勢糸価が中間安定帯の下限水準でずっと低迷いたしておりまして、したがいまして、繭糸価格安定法に基づきまして輸入生糸の売り渡しの停止、それから国産生糸の買い入れを継続的に実施してまいっております。  これらの結果、事業団在庫が御指摘のように五十五年三月の九万が十四万五千近くになるという結果を生じたものでございます。いま申し上げましたように、予想を上回る需要の減退等を反映いたしました生糸引き渡し数量の急減ということが基本的な要因と考えております。
  228. 寺前巖

    ○寺前委員 商売だったら、二年も三年も先の見通しが立たないような商売をしておったらばかかと言われる、そういう性格のものだ。十年先、二十年先の見通しが誤ったというものじゃないのでしょう。つい最近の話なんです。輸入がどんどん伸びている、需要がどうなるかということはわかるでしょうな、人口はどうなっているか、もう統計でちゃんと出ているのだから。そこへ絹を使うという人の姿はどうなっているのか、外国に輸出する状況下にあるのかないのか、こんなものは天下周知の事実ですよ。そうすると、絹の需要というものは決して特段にふえていく状況にない、使う人口というのはふえる状況下にはない、きわめて明確なんです。  そのときにもかかわらずどんどん輸入をした。何で輸入をしなければならなかったのか。問題はここの経営のあり方にかかってくるでしょう。こんなもの素人でもわかる話じゃないですか。ここのところが一体どこにあったのか、これを端的に指摘ができないようでは、今後の責任を負わすことにはならぬと私は思う。端的に言ってそこは一体何だったか。何で輸入がどんどんふえたのか。
  229. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 御案内のように、生糸は貿易自由化品目でございます。したがいまして、一元輸入制度のもとにおきましてもその輸入は避けられないものでございます。  ところで、主要輸出国は中国及び韓国でございますので、これら両国と五十一年度以降毎年協議を行いまして、その輸入数量の調整を図っております。二国間協定の数量につきましては、五十一年度におきましては、それ以前数年間の平均輸入数量以内としたところでございまして、五十二年度、五十三年度につきましては五十一年度数量と同量としたところでございます。  五十四年に入りまして、そのころから厳しい需給事情も生じてまいりましたので、厳しい需給事情に対処して、政府といたしましては輸入数量の圧縮に最大限の努力を払ってきたところでございます。五十四年度におきましては前年度の一〇%の削減、また五十五年度におきましてはその一〇%削減した数量をさらに五〇%削減ということで圧縮を行いまして、しかもこの五十五年度の協定数量につきましては、蚕糸事業団在庫が減少しない限り輸入の発注を行わないということにいたしまして、現在一元輸入生糸の輸入は一切停止しておるところでございます。  しかしながら、先ほども申し上げましたように末端絹需要の減退、景気の低迷等を背景といたしまして、国内生糸の引き渡し数量が急減いたしました。これは数字で申し上げますと、五十三年に比べて五十四年は二割減でございます。五十五年は五十四年に比べまして一割減ということで、二年間で三割近く急減したということもございます。それに起因いたしまして糸価が低迷した。糸価が低迷しますと繭糸価格安定法に基づきまして輸入生糸は売り渡しができない、逆に国産生糸は買い入れる必要があるということで在庫が増加したというわけでございます。
  230. 寺前巖

    ○寺前委員 そんなむずかしいことを時間をかけて言わなければわからぬという話と違うのですよ。売れない状況下にあることは天下周知の事実なんです。国内需要は減ってきているのだよ。昔、外国にどんどん輸出した時代とは違うのだから。そういう意味では流れないのだよ。そこへ外国から輸入する必要はないのだ。  ところが、輸入する必要があったのは、何ぼ制限したと言ったって輸入しなかったら、貿易は絹だけでやっているわけじゃない、生糸だけじゃない、自動車産業その他の産業の貿易との関係もある。そのしわ寄せがここへ来ているのじゃないですか。これも天下周知の事実じゃないですか。だから、農民は言っているのだよ。政治的災害を受けてこういうことになっているのだ、そのぐらいの気持ちを持ってくれなかったら困るじゃないか、こう言って指摘をするのです。農林水産省ともあろうものが、農民の立場に立ったらそのぐらいのことは端的に言うべきだ。言えなかったら今後の対応策も出てこない。私は率直に言わせてもらいますよ。  そこでその次に、これは農民の側にとっても機屋さんの側にとっても共通のものは、ともかく需要が減っているときに織物で外国のものが大量に入っているということがなくなってくれたらなあというのが共通した意見でありますよ。これは当然です。日本で織ってくれたらこの糸も流れるのになあ、こう見ているのですよ。  ところが、この輸入状況一体どうだ。五十一年の需要は、当時四十七万俵ということになっております。ところが、輸入されたのは七万五千。五十五年を見たら三十九万の需要で輸入は七万七千。需要が減っているのに、二次製品を入れて輸入の織物は逆にどんどん割合はふえているじゃないか。こんな日本の貿易の管理の仕方があっていいのだろうか。まじめに日本の絹産業を考えてくれるならば、もっと対応策があっていいのじゃないかという声がありますよ。これに対して、これは直接貿易の所管じゃないかもしらぬけれども、農民の立場から見るならば、輸入規制の問題についてはあなたたちはどういうふうに関係省との間にやっているのか説明をしていただきたい。
  231. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 寺前議員の言うこと、当たっているところもあるし、また当たっていないところもあると思うのですね。自動車関係との相対で生糸を入れておるというような御指摘があったわけですが、そういうことは絶対にありません。(寺前委員「そんなこと言っておりませんよ」と呼ぶ)だって、そういうふうにとれることを言ったでしょう。そういうことは絶対にあり得ないわけでして、これは韓国の問題と中国の問題が中心になるわけですから。  私どもとしても、生糸そのものは一元化の法律によってある程度の規制がきちんといくような仕組みをつくってある。ところが絹織物、絹糸、そういうものは自由化されたままであったということのためにいま御指摘のようにたくさん入ってきた。それで貿易管理令を発動させてこれらの織物等にも規制を加えられる措置をとった。私どもも、養蚕農家立場を考えずに、入ってくるのに任せてやってきたわけじゃないので、そのときどきに適宜適切と思われる措置をとったわけでありますけれども、いろいろな情勢判断等の誤り、これは私どももちろん責任を感じております。そういう需要の急速なる減退等がございまして事業団在庫が十四万五千俵にもなった。こういうことになって糸価が低迷をするということで、この辺で何とかしなければならないという最中にまた糸価が暴落をしておる、こういうのが現状であると私は認識をいたしておるわけであります。  したがいまして、こういう厳しい厳しい情勢の中で基準糸価を決めなければならないわけでありますから、こういうときであればあるほど養蚕農家立場を考え、あるいは、養蚕農家だけでもこの業界は成っていかないわけでありまして、製糸があり、製糸が全部つぶれちゃったのでは機屋も動かしようがない。やはり養蚕、製糸、機屋は、言葉は適切でないかもしれませんが、死なばもろともといったような形で、やっと三年ほど前からお互いに協力し合ってやっていこうというような方向づけができたわけであります。  そういうふうになった折でもありますので、今年度の基準糸価の問題につきましては慎重の上にも慎重に決定をしていかなければならぬな、こういうふうな気持ちでいるわけであります。まだデータが十分にそろっておりませんので、そのデータがそろった上で審議会に御相談をいたしまして決めていきたいと思っております。
  232. 寺前巖

    ○寺前委員 ぼくが聞いている質問は、織物の輸入の問題を言っているのです。糸じゃない。織物やあるいは二次製品で入ってきているのが需要に比べて依然としてふえているじゃないか、ここを抑えることが農民にとっても機屋さんにとっても共通した問題じゃないかと言っている。
  233. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 その点につきましては、貿易管理令を発動いたしましてから撚糸それから絹織物、そういうものにつきましてはふやすという方向にはいっておりません。年々減らしてきております。
  234. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 補足して御答弁申し上げますと、絹織物関係につきましても、先ほどお答えいたしましたように五十四年度の中国及び韓国との交渉におきましては、生糸につきまして一割減を行いましたが、絹糸及び絹織物につきましても一割減をいたしております。それから五十五年協定におきましては生糸は五割減でございますが、絹糸、絹織物につきましても三割減ということで、これは通産省所管でございますけれども、農林水産省と通産省と密接な連携のもとに、日本の蚕糸絹業の苦しい状況等も十分に踏まえて輸入の調整削減に最大限の努力をしてきたところでございます。
  235. 寺前巖

    ○寺前委員 ぼくは二国間協定も知っていますよ。そこでどういうことを結んでいるかも知っている。しかし、五十一年から五十五年の実情を見たら、客観的に需要の動向と輸入されている状況の率を見たら、率の方は上がっていっている。これで貿管令がどうのこうの言ったって、実績的には輸入は依然として全体の六分の一からの大きな位置を占めているのだから、農民の側にとっても織り屋さんの側にとってもこの輸入の規制問題というのは共通した大きな課題だ。  そういう点で、農水省も積極的に、その二国間協定にとどまらず、あるいは貿管令で言うならば、ECやアメリカやスペインやその他のところについてはどうぞということになっているのだから、これは将来そこからという問題もまた出てこないとも限らない。そういうふうに見てくると、貿易問題というのは基本的にはいまのままでは解決しないということを、農水省としてもきちんと握っておいていただきたいということを私はまず要望しておきます。  時間の都合がありますから、次に行きます。  そこでその次に、需要者の方は、それは努力したって伸び方というのは一定の限界がありますよ。それから織物の規制という問題にしても、いままでの歴史的実態から見て、これも現実的にはそう急速にべたっと減ってしまうという実態にはならないだろう。あす、あさっての問題にはならないだろう。そうすると、結局いまの在庫というものは流れるのかという問題に直面せざるを得ないと思うのです。事業団の持っている在庫、これはもっと動くのか。そう簡単にはこれは動く状態にはない。  動く状態というのは一体何か。それは織り屋さんの方で仮需がばっと動き出した、仮需になって動き出す状況というのはどういうときか。それは糸が安くなるか、あるいは市場がばっと急速に発展するか、何かそういう条件が伴わなかったらそういう動きというものは見ることはできないだろう。そういうことを考えなかったら大変なことになるな。そこは一体どうなるだろうか。正直言って事業団の関係者の方々は頭を抱えているだろう。  そこで、私はちょっと聞きたいのです。いま抱えているところの事業団の糸、これは保管料が要るでしょう。金利がかさんできているでしょう。一体、糸の値段は一俵当たりどのぐらいになってきているのだろう。市場の価格は一万四千七百円前後になるけれども、あの在庫品の糸の値段というのは、管理費、金利などを入れて計算したら一体いまどのくらいになっているのですか。
  236. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 現在、蚕糸事業団在庫糸につきまして、これはたとえば実需者用生糸でございますと……
  237. 寺前巖

    ○寺前委員 そんなこと聞いてない。抱えているものに金利がついて保管料がついて、大体どのくらいのもので——買うたときの値段によって全部違うがな。
  238. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 全体につきましては、現在、五十五年度一年間で申し上げますと、百二十億余という状況でございます。これは金利、倉敷料のトータル額でございます。
  239. 寺前巖

    ○寺前委員 一万四千何ぼが基準糸価で、その前後で市場の糸価があるわね。それに対して大体在庫の糸の値段は何ぼぐらいになりますか。
  240. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 買い入れまして、金利、倉敷料が毎月かかっていくわけでございます。一寺前委員「何ぼぐらいのものになっとるんだ」と呼ぶ)これは先ほど申し上げましたように、実需者用生糸と、一般輸入糸それから国産糸ではそれぞれ買い入れ価格も違います、違いますけれども、金利、倉敷料としましては、大体一月当たり百十円前後というところでございます。それだけは毎月コストがかかっていくという状況でございます。
  241. 寺前巖

    ○寺前委員 辛気臭い話をあなたはするのだけれども、大体常識的に言って、一万二千円ぐらいになっとるんだよ、いま保管しているところの糸は。物によって違うし、いろいろある。一年たつと千円ぐらい上がっていくというんだ。そうすると、ここ一、二年の間に基準糸価と在庫のものと比較していったら高い高い糸になっていきよる、あのまま抱えておったらえらいことになるぜ、にっちもさっちもいかへんで、これは世間常識的にみんな言っているんだよ。だから、いまのうちにあの糸の問題は解決しなかったら、在庫費はえらいことになりまっせ、これが常識なんだ。あなたはむずかしいことを言わなんだらわからぬらしいけれども、世の中だれもそんなむずかしいこと言いません。そうなると、大臣の方がもうよう知っていらっしゃる。事実はそうなっとるのだ。  そこで、この糸をいつまでも抱えとるのか。お米で言えば古米、古々米、古うなって、保管料は高うなっていってどうするんやという話が論議になりました。これは学校給食に持っていこうかというたって、糸をどこへ持っていくのか知らぬけれども、行くところはありませんよ。しかも、ちゃんと法的には安う売ったらいかぬことになっている。そうなると、コストが、管理費がどんどん高うなっていく、利子も高うなっていくのだ。そうしたら、ますますもってにっちもさっちもいかない。  私は心配して言うている。事業団が抱えているこの品物をどないするんだ。あなた、心配しないのですか。話をしとったら、わしの方が心配しているみたいだ。あなたのところの職員は、担当者はみんな心配していますよ。そうでしょう。だから、この糸を抱えれば抱えるほど、動かなければ動かないほど、これは大変な事態になるじゃありませんか、大臣、違いますか。いよいよ何とかしなければならぬところへ来ているのと違いますか。どうしますか。
  242. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 まず、先ほどのお尋ねの件につきましては、一般在庫糸でいいますと現在の平均で約一万三千五百円程度でございます。  それで、いま御指摘の十四万五千俵近い事業団在庫の今後の解消、是正のための問題ということでございますが、御案内のように、特に実需者用売り渡し生糸につきましては、昨年におきましてもその運用の改善を図りまして、五十六年の一月及び二月につきましては各月約一千俵放出をいたしておるわけでございます。このようなことで運用改善には努めておりますけれども基本的には実需者用生糸の放出もまだ五十四年度分が全部出切らないという状況でございます。これは絹業の経営安定にとりましても大変な問題でございますし、また事業団を軸といたします中間安定制度の今後の維持ということから考えましても、御指摘のとおり大きな問題でございます。  したがいまして、この在庫糸の円滑な売り渡しということのために、基本的には需給の改善が必要だと考えますので、需要の増進あるいは輸入調整措置を一層努力をする等によりまして、まず実勢糸価の回復を図る必要があると考えております。こういったことにつきまして、通産省とも密接な連携を図りまして一層努力してまいりたいと考えております。
  243. 寺前巖

    ○寺前委員 要するに在庫しているものを一月、二月千俵ずつやった。千俵いいですよ、もう三月ストップ。そんなものは知れているんだ。実需用渡し三万と言うておった。その金利負担事業団が全部やらされているわけだ。そして、いまの法的措置のもとにおいては、おそれのあるときという項目がありまして、これで出せぬようになっている。一月、二月でストップだ、三月は出せぬ。そうすると、あと二万何千俵ですね。これは実需者渡しの三万俵の範囲内においてもストップになる。まして糸はもっとたくさんある、これは動かないわけだ。だから、簡単に言えば織り屋さんに使ってもらうように出さなあかぬわけだけれども、出せぬ状況にある。出せぬままにおったら高い高い糸になってしまう。忠ならんと欲すれば孝ならずというところにいま来ているのだ。そうでしょう。ここをどう突破するのかということがいま事業団の果たさなければならない問題になっている。それをどうするのか。  私、この間織物の工業会へ行きましたよ。工業会の諸君はこう言うのです。ともかく実需者渡しというやり方で流してもらうことが大事なのと違うでしょうか。流すようにするためにはどうするのか。二つの法律上の問題点が出てきます。一つはおそれのあるときにはというところの問題、これにひっかかります。すなわち、法律で言うと第十二条の十三の三の第二項にひっかかります。それからもう一つは、保管すれば保管するほど高いものになる。ところが、法律では第十二条の十三の三の第三項で、簡単に言えばコストを割って渡したらいかぬ、こうなっている。そうすると、時間がたてばたつほどますますこれにひっかかってしまって、高いものを出すようになったら流れませんよ、この二つの法律条項がひっかかって、ますますにっちもさっちもいかぬことになるのと違いますか、ここのところを検討してもらっているでしょうかという話が出たのです。  関係者でそういうことを言っているのだから、恐らくおたくらのところにも話が来ているはずだ。いまそこへ問題点が来ているという認識をお持ちなのかどうか、ここはどうなんです。
  244. 高畑三夫

    ○高畑政府委員 お尋ねの絹業サイドの方々からの御要望は、私どもの方にも参っております。御指摘の繭糸価格安定法第十二条の十三の三の第二項と第三項、いまそういう基準糸価条項及びコスト条項という規定があるわけでございますが、これが実需者用生糸の売り渡しの円滑化のためにはせきになっておるということを御主張であることも聞いております。  私どもといたしましては、先ほどもお答えいたしましたように、まず現在蚕糸事業団にございます五十四年度の実需者用売り渡し生糸の売り渡しの円滑化、さらには一般輸入糸が相当量ございますので、それらも含めた売り渡しの円滑化ということを考える必要があるということで、そのためにやはり基本的に需給改善のための努力が必要だと申し上げたわけでございます。  それで、絹業サイドの方々からの御要望としましては、この二項、三項の規定を外せないものかという御指摘もございます。これにつきましては、十分検討いたしたところでございますけれども、やはり現在の繭糸価格安定法に基づきます中間安定措置趣旨が、実勢糸価を中間安定価格帯の中におさめていくということでございますので、実勢糸価が基準糸価を下回っても売ってよいということにいたしますと、その中間安定の措置趣旨に背馳するということになります。  それからもう一つ、コスト条項を外してはどうかという御要望もあるわけでございますが、これにつきましては、やはり現在の繭糸価格安定制度手法が、糸価が低迷したときに買い入れ、高騰したら売り渡すという手法でございます。つまり、買い入れました生糸に保管中の金利、倉敷料をオンして、そのコスト価格で売れるように実勢糸価がなったときに売り渡すということでございますから、もしそうなりません場合は、その金利、倉敷料等のコストをだれが負担するかという問題が出てまいるわけでございます。そういうことがございますので、コスト条項を簡単に廃止しまして、コストのいかんにかかわらず売れるということにいたしますこともいろいろ問題があるということで、検討いたしておりますけれども、この二つの条項の問題につきましては、以上申し上げましたような大変むずかしい点があるというふうに考えております。
  245. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣に私はお聞きしたいと思うのですよ。ぼくは提起された問題は非常にむずかしいと思う。これもさっきの忠ならんと欲すれば孝ならずというのに似ておって、流したら今度は糸価が下がってしまって農民へかかってくるという問題に対してどうするのか、そういう問題がまた同時に出てくるわけですから、だから従来の考え方でもしもやっておったら、これはにっちもさっちもいかぬ状態のままで推移をしていくことになるだろう。だから、抜本的に新しい道を検討して、農民のためにもなり、それからいまの事業団の持っている糸の処理の問題も解決する方向を打ち出さなかったら大変なことになるぞ、緊急に私はこの問題は研究して対処しなければならぬところへ来ているというように思うのですが、大臣一体どういうふうにこの問題を見ておられるのでしょう。
  246. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、この繭糸価格安定法に基づく基準糸価を中心にしての糸価安定システムというものは堅持をしていきたい。しかし、現在この制度を維持するためには非常に困難な現実が生まれてきておるということも度外視できないということでありますので、蚕糸業振興審議会に御相談申し上げるデータをいまいろいろと収集をし、そうして検討をいたしておるわけでございます。  まだ具体的に申し上げるまでに至っておりませんけれども、とにかく養蚕農家の方々に安心してことしも養蚕にいそしんでもらえるような結論をきちんと出したい、そして将来の見通しがきちんとつくようにしたい、こういうふうにだけ申し上げさしていただきたいと思います。
  247. 寺前巖

    ○寺前委員 私は非常に重大な段階に来ているということを重ねて大臣に申し上げて、緊急にこの展望を打ち出していただきたいということを、もう時間もあれですから申し上げたいと思う。  せっかくの機会ですから二、三残っている問題も聞きたいと思うのですが、鶏卵の問題です。  鶏卵の生産調整が始まった昭和四十九年以来、平均生産費と販売価格を比べると、四十九年、五十一年、五十四年の三年間は完全な赤字だ。それから五十二、五十三年がほぼとんとんで、五十年一年間だけが黒字だ。五十五年もどうやら黒字になりそうだ。私はこれは養鶏農家の皆さんが血のにじむような努力で、自前的な生産調整に取り組んでこられた成果がこういうふうになったのだと考えます。  現在、牛乳や子豚、ミカンなどが生産調整を余儀なくされているわけですが、鶏卵の例は一つのモデルになるだろうということで私は重視しているわけです。当委員会においても、五十三年六月に農家養鶏の振興と生産調整に違反したやみ増羽に対する厳しい措置をとるということを内容とした決議をやっております。私はこの意味で、鶏卵の生産調整の強化について聞きたいと思うのです。  第一に、昨年の十二月の鶏卵需給安定対策検討会の報告書の五ページを見ますと、無断増羽者すなわちやみ増羽者の扱いについて、要旨次のように書いてあります。つまり、やみ増羽者については、増羽分をすべてカットして、現行の、四十九年五月の凍結羽数に固定すべきとの意見もあるが、現実性を考えれば増羽分の一定比率以上をカットすればよいというふうな内容のことです。  やみ増羽をやったのはごくわずかな連中で、五十五年五月の調査を見るとわずか百一戸であって、やみ増羽数は三百四十六万羽になっております。ところで、一戸当たり十万羽以上のやみ増羽をやっている人というのは十三戸で百四十三万羽、すなわち四一%を占めている。言葉をかえて言えば、大型経営をやっている諸君たちがやみ増羽をやっている。  ところで、ここで全国養鶏経営会議など農業団体でこの間もお話を聞いたわけですが、いま書かれているような安易なやり方でもって、けしからぬという処置だけではあかぬ、そうしたら結局大型経営をやっている諸君たちを擁護する結果になるじゃないか、これは農水省一体どないするつもりや、こんな、一定数は堪忍してやるのだ——われわれせっかく自主的にやってきているものをつぶすことになるじゃないかというような声を強調しておられました。  そこで、一体、一定比率を抑えるのだという、その一定比率というのはどういうことを考えておられるのか。二割でも一定比率なれば五割でも一定比率だし、一定と言ったって、一定にもいろいろある。どの程度やったらいいというふうに考えていこうとしておられるのか、御説明いただきたい。
  248. 森実孝郎

    森実政府委員 現在検討中でございまして、五月上旬ごろまでに内容を決めていきたいと思っております。  いずれにいたしましても、いま御指摘もありましたように生産調整に協力してきた生産者の心情というものもありますし、また一方においてはできるだけ多くの協力を確保する、アウトサイダーを減らしていくという問題もあるわけでございます。また五十四年度に実施されました自主減羽運動における削減率もあるだろうと思います。こういったことを頭に置きながらこれから決めてまいりたいと思っております。
  249. 寺前巖

    ○寺前委員 生産者の間では、気張って調整をいろいろお互いにやってきたのだから、五十六年度一年かけてわれわれの意見も聞いてもらって、そして処理してほしいという声も非常に強くあります。それだけに虚心に耳を傾けて、これらの皆さんと合意を見た上で方向を打ち出していくように、これはぜひ要望をしたいと思います。  それから、時間の関係がありますから次の問題も一緒にお答えをいただきたいと思いますが、二月三日付の畜産局長通達で、やみ増羽者を配合飼料価格安定基金から排除することが決められております。これは長年の生産者の要求でしたし、この措置を本当に実効あるものにするようにみんなが望んでいるわけです。  この立場から見ると、基金のメーカー積立分を排除された者に対してバックペイをするというようなことのないよう、基金自身の財政も非常に弱いのだから何とか基金財政を強めて、そしてこの基金に入っている方が得なんだぞと、基金の役割りをもっと高いものにするように行政指導してもらえないだろうかという要望が出ております。これが第二番目です。  それから第三番目に、四月から六月の基金からの補てんは三千六百円です。もしも二千円バックされ、さらに農家積立金六百円も手元に残ることになれば、排除された者にとってはほとんどダメージを受けることにならないだけに、いまの点は特別にお願いしたい。  その次に、五十五年十一月時点のやみ増羽者は五十六年度中は基金から排除されるが、いまのお話だと五月ですが、五月に出る予定の通達にもかかわらず、それを守らなかった場合には五十七年以降は基金から半ば永久に排除すると理解していいのかどうか。わかりますか、今度の調査で処置をする、それを守らなかった場合には五十七年以降は全面的に排除されると理解していいかどうかということです。  それからその次に、一括して言います。飼料安定基金の財源は、通常分は七億円の赤字になっている。四—六月期の積立を使っても赤字は必至だ。借金する予定と聞いております。また、異常補てん分についても五十六年度予算で国が四十八億円積み立て民間も同額積み立てるということになっていますが、これでも厳しいとして、異常補てんを一月から三月期の千六百円、四月から六月期は五百円に引き下げている。通常、異常合わせて四千七百円、それを三千六百円に引き下げられ、飼料はその補てん分を入れると農家にとっては千百円の値上げになるではないか。これに応じて畜産価格を引き上げるというならば話はわかるけれども、先ほどから出ているように畜産価格がそのままだということになったら、補てんが減っていくのだから、この補てんは減らすということじゃなくして減らさない方向に打ち出してもらう必要があるのではないかという補てんの問題です。  さらにこの補てんについて、七月から飼料値上げがないとした場合にでも補てんを続けるようにしてもらわなかったら困るじゃないか。万が一値上げが行われた場合に、基金は完全に破綻をしてしまう。その場合に、この基金に対して返還条件つきの補助金というのを前にやったことがありますけれども、そういう措置をとることを含めて補てんするという方向を打ち出すことができるかどうか。  ちょっと細かい話になりましたけれども、一括して御説明いただいたら、これで終わりにします。
  250. 森実孝郎

    森実政府委員 いろいろなお話がございましたので、あるいは落ちておりましたらまた御指摘を受けます。  まず第一に、関係者とは私ども十分相談して決めなければならないと思います。ただ、完全な合意というのではなくて、どうやって全体をまとめていくかということだろうと思います。慎重にやりたいと思います。  それから二番目は、例の飼料基金から疎外されたグループに対して飼料メーカーが値引きをした場合にどうするかという御指摘だろうと思います。研究会の報告も受けまして飼料基金からの排除ということを決めたわけでございますし、また私どももこの分を、メーカー負担の千二百円の分を値引きというのは適当ではないだろうと思っております。  ただ、現実の問題といたしまして、飼料の取引は自由な取引でございまして、市場価格はかなり乱れております。現在でも実は建て値より現実の市価が下がっているということは先生も御存じのとおりでございまして、その場合、飼料の購入についてスケールメリットが働きやすいということは事実だろうと思います。私はそういう意味では、たてまえは理解できますけれども、その分を取り出して高いとか安いということを議論するのは実際問題としては無理ではなかろうかと思っております。  それからもう一つの問題は、いわゆる価格の問題でございましたが、価格の問題につきましては、私ども再生産の確保を図るという価格政策の一つ基本となる考えはあるわけでございますけれども、やはり需給その他経済事情も考えていかなければならないし、再生産の確保というのはある時期の短期的な変動だけを言うのではなくて、全体としてどういう状況になっているかという問題があると思います。  若干御意見とは違うかもしれませんが、そういう意味において、刻々変動いたしますいまの飼料の問題について織り込むというのは、飼料価格のいわゆる農民の負担分がふえるからその分だけ織り込めというふうにはなかなかいかないのじゃないか、全体の中でどういうふうに指標をとらえていくかだろうと思っております。  それから、基金の性格論なり今後の財源の確保の問題でございますが、シカゴ相場で価格は動いていくわけでございますし、千六百五十万トンもの穀物を輸入しているわけでございまして、いわば日本の飼料穀物政策でシカゴ相場の需給の実勢や価格から遮断する政策はとれないだろうと思います。いまの基金制度というものは、急激な変化をどうやってバッファーしていくかという問題だろうと思います。そういう意味において、従来どおり急激に値上げする場合においてはバッファーする範囲を広くする、ある程度なれてきたらそれを少なくするという、どうしてもそういう方法をとらなければやっていけないのではないかと思う次第でございます。  それから、今後の財源確保でございます。私ども異常補てんにつきましては四十八億の予算を計上しておるわけでございますが、全体としては異常補てん財源は百億円余ぐらいになるわけですし、また通常補てんにつきましては確かに若干ショートぎみであるということは否定いたしません。そこで、現在の問題といたしましては、少し価格も落ちついてきたという認識のもとで、当面できるだけ積み立てをふやさすということが必要ではないだろうかと思って指導しているところでございます。(寺前委員「やみ増羽者の問題は」と呼ぶ)
  251. 田邉國男

    田邉委員長 寺前巖君に申し上げます。  発言の場合には起立してお願いいたします。寺前巖君。
  252. 寺前巖

    ○寺前委員 答弁漏れを一つだけお願いいたします。  やみ増羽者を今度の通達以後の問題については永久に排除するという方向を打ち出すのか、また一定期間すると認めるという方向でやるのか、そこのところはきちっと、もう今後は永久に許さないという態度をとられるのか。
  253. 森実孝郎

    森実政府委員 私は永久に排除するということはできないと思います。やはり定期的にきちっと調査さして、その時点で違反者は排除していくが、また次の段階で調査して遵守されていれば、それは復権を認めるというふうな方法が必要ではないかと思っております。
  254. 田邉國男

    田邉委員長 次回は、来る二十四日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会      ————◇—————