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1981-03-03 第94回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月三日(火曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 田邉 國男君    理事 菊池福治郎君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 福島 譲二君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 武田 一夫君 理事 稲富 稜人君       逢沢 英雄君    上草 義輝君       小里 貞利君    亀井 善之君       川田 正則君    岸田 文武君       北口  博君    北村 義和君       近藤 元次君    佐藤  隆君       菅波  茂君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    保利 耕輔君       三池  信君    渡辺 省一君       串原 義直君    島田 琢郎君       田中 恒利君    竹内  猛君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       野間 友一君    木村 守男君  出席国務大臣         農林水産大臣  亀岡 高夫君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房技術審議官  山極 栄司君         農林水産大臣官         房審議官    高畑 三夫君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      森実 孝郎君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君         水産庁次長   山内 静夫君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      中村賢二郎君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 藤井 正美君         通商産業省基礎         産業局アルコー         ル事業部管理課         長       井上  正君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     横路 孝弘君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     日野 市朗君 同月二十八日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     野坂 浩賢君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     日野 市朗君 三月二日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     川俣健二郎君 同日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     日野 市朗君     ————————————— 二月二十八日  蚕糸業振興に関する請願井出一太郎君紹  介)(第一三五四号)  同(小川平二紹介)(第一三五五号)  同(小沢貞孝紹介)(第一三五六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一三五七号)  同(串原義直紹介)(第一三五八号)  同(倉石忠雄紹介)(第一三五九号)  同(小坂善太郎紹介)(第一三六〇号)  同(清水勇紹介)(第一三六一号)  同(下平正一紹介)(第一三六二号)  同(中村茂紹介)(第一三六三号)  同(羽田孜紹介)(第一三六四号)  同(宮下創平紹介)(第一三六五号)  同(林百郎君紹介)(第一四八六号)  農林年金制度改善に関する請願野間友一君  紹介)(第一四二八号)  飼料用稲品種開発等に関する請願瀬崎博義  君紹介)(第一四八〇号)  同(寺前巖紹介)(第一四八一号)  同(林百郎君紹介)(第一四八二号)  飼料用稲転作作物として追加等に関する請願  (林百郎君紹介)(第一四八三号)  第二期減反目標の上積み、転作奨励金引き下  げ中止等に関する請願(林百郎君紹介)(第一  四八四号)  第二期減反割当反対等に関する請願(林百郎君  紹介)(第一四八五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林大臣所信表明を伺いまして、若干の御質問をいたしたいと思います。  実は私は八年目でありまして、まことに長い空白がございまして、久しぶりに大臣所信表明を期待をしてこの間お聞きをいたしたわけでございます。私も長い間農村運動に携わった者でありますが、今日の農業農村農民というものは本当にこれ大変な状態になっておる、こういうように思います。大臣は、立場は違いますが、農村を知る数少ない政治家の一人だと思いますし、特に農民の今日の心を御承知のはずだと私は思うわけであります。大臣所信表明を聞きながら、やはりこれは昔聞いたのと全く同じ型の流れで、何か亀岡さんらしい、そういう味わいを、大変率直に申し上げますが、受けませんでした。  私は、やはり農林大臣として、今日日本農業を支えておる農民に対して、大臣がこの事態をこういうふうに受けとめておる、そして農民諸君と一緒に、ひとつこの問題についてはこういうふうにやっていこうじゃないかという、何か共感を導き出すような所信表明が欲しい、こういうふうに思います。農林省のお役人がおつくりになった作文をお読みになるという、こういうやり方ではなくて、本当に農民とともに歩んでいくという、そういうものが欲しいなと実は感じたわけであります。特に、今日の日本農業のこの実態を大臣は一体どう受けとめていらっしゃるのか。この形で日本農業はだんだん展望が開ける、こういう確信の上に立たれておるのか、このままいけば、わが国農業農民は大変な状態になる、こういう危機感前提にして今回の所信表明というものを明らかにされたのか、この点をまずお聞かせをいただきたいと思うわけであります。
  4. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 田中委員のお気持ち、理解できるわけでございます。しかし一面、行政というものは予算を伴ってこれを執行していかなければならないわけでございます。昨年の七月から積み上げ積み上げ積み上げて、そしてその予算編成に至るまでの間、私は私なりに努力をいたしたつもりでございます。  今日の日本農業に対しておまえはどういう認識を持っておるかということでございますが、一口で申し上げれば、このままの状態でいったのではこれは大変であるな、そういうことで、農政審答申、「農産物需要生産長期見通し」という閣議決定をいたしまして、そして国会で御決議をいただいた食糧自給力強化という御決議並びにこの決議をバックとして御制定をいただいた農用地利用増進法等の新しい手法等国会の御意思も十分わきまえまして、さらに私も政治家として二十年間、農村地域社会の進展のために及ばずながら努力してきた、その経験をもとにしまして、何とかしてこの八〇年代の日本農業を希望の持てるものにひとつ築き上げなければならぬな、そのような情熱を持って取り組んでおる次第でございます。  やはり一つ一つ積み上げてまいりましたのを御説明申し上げたのが先般の私の所信表明でございまして、臨時国会におきましても私の基本的な農政に対する姿勢というものはるる申し上げてきておるところでございますので、その点御理解をいただきたいと思います。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣の置かれておる立場はよくわかりますが、しかし私は、十年変わらないような、大体大まかな柱の中で農林大臣所信表明が述べられておる、こういうマンネリ化した一つ農政の動きの中に、日本農業農政をどう展開していくかという場合の大きなネックがあるような気がしてなりません。今後ともひとつその辺を配慮されて、大臣の率直な御見解を当委員会などを通して随時明らかにしていただきたいと思います。  一つ農業後継者の問題でありますが、もうすでに御承知のように、この二十年余り、農業を支えていく主体の問題が大変揺らいできておると思います。一昨年の新規学卒者、大体八千人と言われておりますが、農業後継者として意欲的に取り組んだ人々は約五千人。全国市町村が三千二百五十六市町村と言われますから、平均いたしますと一つの町に一・五人程度の農業後継者しか今日できていない。これが、三十年世代交代とよく言われますので、この一九八〇年代後半から九〇年代にかけて、相当大きな農村の、農家や農業従事者の変動が起きてくるということは当然想定されるわけであります。  このことをよしとする議論があることも事実であります。そのことによって農地が動き、規模拡大が実現されるではないか、こういう主張もございますが、しかし、今日のこの異常な状態は、余りにも農業後継者が不足をしておるということが言えると私は思うのです。この後継者農業主体をなす農民をどう農業政策は支えていこうとしておるのか、これからもう少しポイントをその辺に置いて考えていかなければならないのではないか、こういうふうに思うものであります。  これは大変むずかしい問題でありますから一概には言えませんが、農林省がいま行っておる後継者対策というのは一体どういうものがあるのか、今後どういうふうに政策的にはこの後継者づくりというか後継者を育てていく、こういう面について力を入れようとしておるのか、このことについてお尋ねをいたしたいと思います。
  6. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農業後継者育成確保、これは非常に重要なことでございます。そこで、これを確保するためには、何といいましても農業を魅力ある産業として育成をしていく、住みよい農村をつくって、後継者意欲を持って農業に取り組めるようにするというのが基本的に重要である、かように考えております。  具体的には、農業生産基盤整備なりあるいは農用地流動化促進なり地域農業振興、はたまた農村生活環境整備というような各般の施策を総合的に講ずるということが必要なわけでございますが、これとあわせて、直接的にすぐれた農業後継者育成確保するという面の施策、こういうものも展開をしていくということが必要であろうと思います。  そこで、直接的なものとしては、農業後継者に対します実践的な研修強化するということで、たとえば各県に農業者大学校というようなものを、現在もうつくったところもございますし、また今後これをつくる、施設整備していくというような県がたくさんあるわけでございます。こういうような実践的な研修教育というものを強化するという施策を具体的には講じておるわけでございます。  それともう一つは、就労青少年の自主的な集団活動促進ということで、青少年集団活動をさらに助けていくという、四Hクラブなどのバックアップをやる。あるいは資金援助の問題がございます。部門経営開始資金なりそういうことで農業改良資金を活用したり、総合施設資金を活用したりするということで、資金援助強化するというような措置を講じておるわけでございます。もちろん、こういう施策につきましてはこれで十分となかなか言い切れない面もございますので、さらに一層の拡充強化を今後とも図っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 これはもう、ことしの予算の原案はいま審議をされておるわけでありますので、なかなかことしすぐというわけにもいかないのだと思いますが、いま局長さんの方から御報告がありましたような事項がまあ後継者対策と称してとられておることは承知をいたしておりますが、私は、もう少し大胆に、もう少し大がかりにこの農業後継者に対する諸方策を、ある意味では集中化をし、あるいは総合的に組み立ててやるべきじゃないか、こう思うわけです。  日本農政はやはり物と土地資金、こういうものを組み立てております。農業焦点になっている農民中心にして土地をどう利用させ、金をどう使わせていくか、こういう立場農政への転換ということもしばしば言われてきたところでありますが、後継者などはまさにその焦点として取り上げていいのじゃなかろうか。やはりいまの時点で農業をやろうとする若い人々は、営農的にも非常に意欲を持っておりますし、地域経済全体もいわゆる改革をしていかなければいけないという旺盛な行動力もやはり持っております。こういう集団に対して相当自主的に——若い人でありますから、余りいろいろ注文をつけるとだめだと思うのです。意欲的に、それこそこの地域農政展開ということが言われておりますが、彼らに自主的に判断をさせて、自分地域自分作物をどういうふうにしていけばいいのか、このことについて資金はどういう援助体制がとれるし、あるいは指導はどうとれるし、こういう形で相当思い切った大がかりな農業を、後代を担う人々に対する施策を大胆に、大がかりに展開をしていく必要があるのじゃないか、こう思っておるのですが、この辺の問題を具体的に、たとえば来年度の政府農林省予算などの中でまとめるようなことはできないのか、大臣の方からこの際お答えをいただきたいと思うわけです。
  8. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 田中委員の御指摘のこの後継者問題は、日本農業発展のためにはまことに重大な、また重要な問題であるというふうに認識をいたしまして、そうして農業喜びを感じて若いときから農業に打ち込もうという後継者は、これはもう本当に全国民にとっても大切な存在である、こういう認識を私はいたしておるわけであります。  したがいまして、全国農業改良普及員諸君中心にいたしまして、四Hクラブ活動あるいは農協青年部活動あるいは婦人部活動等を通じまして、お互いに交流をし、技術交換もするというようなことで、各県が、あるいは各市町村が協力をいたしまして、そうして全国段階研修県段階研修市町村段階研修というようなことで、後継者のプライドを高めるといったような教育も兼ねてということで予算を計上いたしておるところでございます。  実は私も、そういう研修グループといいますか、全県から、あるいは全国から集った青少年農業後継者の若い諸君がキャンプを囲んで、昼間はいろいろ実習とか、あるいはお互い技術交換、勉強であるとか、夜はたき火を囲んで日本農業というようなものを論じ合う、そして土から物をつくり出すところに喜びをさらに見出していくというようなことを通じて、後継者対策をやっておるということでございます。  いま、最近は特に後継者の数が少ないという御指摘もあったわけであります。したがいまして、今日までやってまいりましたような点は、それでいいのかどうかというようなこともあろうかと思います。私どもといたしましても、現段階においてはこれが最善と信じてやっておるわけでございますけれども、しかしさらによき方法なきものかというようなことで検討、研究は進めていかなければならない。こういう点、農村でいろいろと研さんを積まれておる田中委員等から御指摘いただければ大変ありがたいな、こう思っておる次第でございます。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 具体的な問題はまたいずれ別途の委員会議論させていただきたいと思います。  時間がだんだん過ぎていきますので、次に移らしていただきますが、農政審答申とともに「農産物需要生産長期見通し」を閣議決定されたわけですが、この六十五年をめどにした生産長期見通しは一体どういう性格のものなのか、これを一口でひとつお答えいただきたいと思うのです。
  10. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 見通しの作業を担当いたしました者としてお答えいたします。  今回の長期見通しは、この先十年間におきまして実現性を重視しました政策的な努力ということも十分配慮いたしまして、需要面では、従来と異なりまして日本型食生活定着を志向していくというように、これまでの欧米型の食生活から方向転換しているという点が一つ生産面では、国内生産可能な農産物につきましては極力国内生産で賄うということを目指しておりますが、ただすべてを国内生産で賄うというわけにもまいりません。この十年間の見通しといたしましては、最近の品目別生産なり消費動向あるいは今後の経済とか労働力技術の問題等総合的に勘案いたしまして、できるだけ客観的に作成した、こういう性格のものでございます。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 政策的な努力を一定の要素としてつけ加えられておるといういまのお答えでありますが、川野農政審会長はこの閣議決定をした日に新聞社とのインタビューで、長期見通しはこうすべきだというものではなく、こうなる可能性が強いというものであります、したがって答申を受けた後、国民行政機関がこれに対してどう対応するかが重要であります、こういうコメントをしていらっしゃるわけですね。私もそういうふうに受けとめておるのでありますが、そういたしますと、この生産見通しを受けて鈴木内閣なり亀岡農政というものが、どこに重点を置いて、どういうふうにしていく、特にポイントはこの中でどこだというようなものがさらに明らかにされなければならないのではなかろうか、私はこういう気がいたすわけです。  同時に、十年先の見通しを出しておるわけでありまして、これは十年先というのは少し長いので、私はやはり中長期計画、三年とか五年とかあるいは年次別とか、こういうものもあわせて、それこそ政策的努力を明らかにした上で出すべきではないか、こういうふうに考えるのでありますが、そういう点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  12. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 後段の方からお答えいたしますが、農業生産内の動向といたしまして、やはりかなり長期展望を持たなければならない。しかも生産の対応というのはきわめて緩やかでございまして、一般の鉱工業のようなスピードをもちまして対応しにくい面がございます。そうした意味では十年ぐらいの比較的長い期間をとらざるを得ない。その間においてあるいは中期的な、御指摘のございましたような五年なり毎年というようなことも考え方としてはございましょうが、私どものつくります長期見通し自体はやはりあくまで長期一つ見通しでありまして、具体的な需給計画を織り込んだ計画経済前提としたような計画ではない。そうありたいという考え方も含めまして、長期方向を提示しておるものでございます。  なお、政策的な点といたしましては、先ほども申しましたように、需要面でのこれからの日本型食生活定着への努力という面、生産面においては、国内で可能なものは極力国内生産で賄う基本的な姿勢を持っていくということが、この長期見通しを具体化していく面での、政策努力をしなければならない点である、このように考えております。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 この生産長期見通しの中で、飼料用穀物自給率はどういうふうになりましょうか。これは資料ではちょっと明らかにされてないのです。
  14. 森実孝郎

    森実政府委員 飼料自給率を見ます場合、いろいろな見方がございますが、御指摘のように飼料穀物だけの自給率で見ますと、五十三年度は一・五%でございます。これに対して六十五年は二%と見ております。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 一・五%が二%。飼料ではなくて穀物自給率ですよ。そういうふうになりますか。
  16. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほど申し上げましたようにいろいろな見方があるわけでございますが、飼料穀物ということで限定いたしますと、ただいま申し上げましたように五十三年と六十五年を比較いたしますと、六十五年が二%で五十三年は一・五でございます。しかし濃厚飼料という視点で申しますと、五十三年が九・五で六十五年が八・四%ということになります。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 濃厚飼料と、いまの一・五と二%、それはどういうふうに違うのですか。そこをちょっと説明してください。
  18. 森実孝郎

    森実政府委員 飼料穀物だけで申し上げますと、それは大麦とか小麦とか、一部でございますが燕麦とか米が入るわけでございます。くず米でございます。これに対して濃厚飼料という視点から申しますと、膨大にございます糟糠類フィッシュミール等が入ってくるわけでございます。そういう点で違います。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろ計算が複雑なようですのでこの点は余り突っ込んで議論できませんが、ただ全体を見まして、やはり飼料用穀物自給率というのは他の作物に比べて伸びていない、濃厚飼料などについては逆に下がっておる、こういうことでありますが、日本は米で国のいわゆる食糧安全保障というものを今日まで維持してきた、こう思います。アジアモンスーン地帯高温多湿の中で芽生えた水田稲作というものによって、日本食生活がいわゆる日本型の食生活として定着してき、それが国の安全保障というものを維持してきたと思うのです。  ところが、特に戦後高度経済段階に入りまして、工業の論理が農業の中に厳しく食い込んできて、近代化ということが言われ始めて、ここで外国食糧輸入政策が大胆に取り上げられていく、そういう中から日本の米を中心とした食事のタイプが洋風化してくるという状況になって、米作自体減反、こういうことになってきておるわけです。  しかし、今日国際的に食糧に対する需給問題が非常に憂慮されて、一九七〇年代から二十一世紀に入ってくると食糧危機が訪れるのではないか、こういう状態になって、改めて内閣の方も食糧安全保障総合安全保障の一環の中に繰り込む、こういう立場をとられて、今回の答申の中にも一本の柱になっておるわけであります。それはいろいろ考えてみても、日本の場合は米が軸になって組み立てられねばならないのだろう。しかし、その米は今日需要が減退しておることも事実でありますし、それを昔に戻すこともなかなか大変でしょう。そうすると、米の消費について多角的に考えなければいけない。  その場合に、この委員会でもずっと問題になっております一つは、えさ米の問題をいやおうなしに日本農業は取り上げなければいけないと思います。各国の歴史を見ても、主食であったものからえさ用転換しておるというのが主要食糧一つ流れであります。同時に、アルコールなどを中心とした工業用原料への転換、こういう問題がいやおうなしに迫ってきていると思います。それが一九八〇年代のわが国農政一つの大きな方向でなければいけないのだと思うのです。  もちろんそのことを採択する場合には、政府が御心配になっておるように、今日損か得かといういわゆる所得計算上の、経常採算上の問題があることも承知をいたしておりますし、それが一番の問題であることも理解できます。しかし政策がそういうものをどうバックアップしていくのかというところに焦点が向けられないと、ただ安いからたくさん入れればいいじゃないか、こういう議論だけでやられていくと、食糧安全保障政策なりあるいは日本型食生活定着なりというものは基本的に崩れていく、私はこういうふうに理解しておるわけでございまして、これは非常に抽象的な一般論でありますけれども、やはり八〇年代農政基本方向を、そういう米作中心とした方向に切りかえ、今日の米というものについて、私どもも皆さんもいままで主張しておりますえさ化の問題やアルコール化の問題に大胆に踏み出していく、そういう方向亀岡農林大臣はお考えになっていらっしゃるかどうか、この際お尋ねしておきたいのです。
  20. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 御指摘の御趣旨は十分理解できます。しかし一面、えさ米政府が責任を持って奨励できるところまでの品種が確定され、造成されておるかどうかという問題は、いままでも何回か申し上げたわけであります。同時に、えさとして農家に奨励する以上は、コスト的に、えさとして販売した際に農業経営にどう影響してくるかというような問題を考えますときに、米の収量よりも五割あるいは倍の収量があるような、いわゆる超多収性のえさ米の品種をつくり上げていくことが絶対的に必要である。そういうことと同時に、さらに南方系の多収米になりますと、脱粒性という問題も解決しなければならない。これはせっかく政府が勧めましても、いざ収穫の時期にぼろぼろ落ちてしまうというようなことでは農家に大変な迷惑をかけるということも考えないわけにはまいりません。  そういう点、あれやこれや考えまして、何といっても水田の地力を活用するという意義は御指摘のとおりであろう、私はこう思いますので、政府といたしましても、昭和五十六年度におきましては、技術会議中心になりまして、国の農業試験場、県の試験場等に協力していただいて、いわゆるえさ米としての新品種の造成のための研究にいま全力を尽くしておる、こういうことでございます。技術者の報告によりますと、やはり脱粒性の少ない、脱粒しない品種をつくり上げるまでに三年、さらに多収米としての品種を固定化していくために五年、こういうようなことを実は技術者の諸君指摘をいたしておるわけでございますので、やはり一つの品種を固定化して、そうして国が責任を持って奨励してまいりますためには、それだけの措置を講じていかなければならぬのではないか。  しかし、全力を挙げてあらゆる工夫をいたしまして、その造成する期間の短縮を図る努力も実は私の方から要請をいたしておるところでございます。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 その答弁はもう再々私どもお聞きをいたしておりますが、私は短絡的にことし来年というだけじゃなくて、八〇年代の日本農政方向として、いま申し上げましたような——日本の水田の生産力は千四、五百万トンくらいのものを持っていると思うのですね。一千万トン程度は食用、あとの四、五百万トンは穀類なりアルコールなり、そういう方向に向ける、いま大臣が言われたような事情があって直ちにできないいろいろな問題はあるけれども方向としてはそういう方向だ、こう理解してよろしいですか。
  22. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 仰せのとおりでございます。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間が大分過ぎましたので、大臣の方もひとつ簡単に御答弁をいただきたいと思います。  一つは国際問題でありますが、大臣は、過般ASEANを訪問せられまして、ASEAN諸国の農業食糧に対する開発援助を四項目の開発援助の第一に掲げられたわけですが、このASEAN諸国との開発援助の進め方はどういう形で進めようとせられておるのか、これが一つ。  それからいま一つは、アメリカのレーガン政権が発足をいたしたわけです。いま日米間の貿易上、自動車の日本の輸出の問題をめぐっていろいろ議論されていますが、実は、いつもこういう自動車やカラーテレビの裏側に、農産物に対する、アメリカから言えば輸出でありますが、われわれは輸入自由化であります、こういうものがいつもうらはらになって出てきておるということを非常に心配をしておるわけであります。今回鈴木総理はアメリカへ行かれるわけでありますが、この鈴木総理の渡米あるいはその前後をめぐって、再び日米間の農産物の輸入自由化、こういう問題が話し合われないかどうか、このことについて大臣の方から明快なお答えをいただきたいと思うわけです。
  24. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 ASEANにつきましては、シンガポールを除くそれぞれの四カ国は、やはり食糧はできるだけ、特に米は自給したい、それについては日本は米の技術が非常に進んでいるので、そういう面で開発なり技術の面で協力をしてほしい、こういう要請が強うございますので、その面についてはできるだけ協力させていただきましょうということでございます。と同時に、やはり日本と競合する農作物があるわけでございます。たとえばバナナでありますとかパイナップルでありますとか、そういう日本農産物と競合するような点については、市場を日本に求めるような計画で開発計画を進めていただくとお互いにマイナスになりますので、そういう点はよく相談し合ってやっていただきたい、こういうことを強く申し入れをいたしてまいりました。特に日本の果樹農家の生産調整をしなければならないような実態、こういうものを向こうの責任者に十分私としては納得していただくだけの話し合いはできた、こう思っております。  と同時に、アメリカでございますが、中川大臣のときに日米の農産物の協定ができておるわけでございますから、これが期間のある間は一応これによって進めていこう、こういう考えを持っております。昨年の十二月に小麦を初めとする食糧の貿易の件についていろいろアメリカと定期的な話し合いをいたしましたときにも、新政府はどういう方向だろうかというような心配な点もぶつけてみましたけれども、われわれはやはり農務省に残るのであるからその点は心配要らない、十分新政府の方にも話をする、申し継ぎをする、こういうことでございまするし、また今度総理がおいでになるにつきまして、農林省としてどういうことを総理から話していただくかという件につきましては、私の腹づもりといたしましては、先ほど申し上げたとおりもうとにかく前に協定をいたしておりますので、あの線でまあここ当分は進めていきたいな、こう思っております。
  25. 田中恒利

    田中(恒)委員 ASEANとの関係は、いわゆる従来の日本の援助のやり方について現地でもいろいろ意見があるようでありますので、ひとつその辺は十分検討した上で、いま大臣が言われたような方向で、しかも日本農業との競合関係などを勘案して取り組んでいただきたいと思いますし、アメリカの問題はすでに賢人会議などの間で一部農産物の問題についての話が出ておりまして非常に心配しておりますが、一九八三年までは特に牛肉、オレンジを中心としたアメリカとの貿易上の問題については一定の話し合いがついておるわけでありますから、これはこれとして生かしていくけれども、その他の問題についてはひとつきちんとした姿勢で臨んでいただきたい、このことを特に御要望しておきたいと思います。  私は、他の同僚議員がそれぞれの担当分野で御質問いたしましたので、若干当面の果樹問題について、この際、大臣並びに関係者の御意見をお尋ねをいたしますが、一つは病害虫の問題であります。  世界の害虫の中で最も野菜、果実などに大きな影響を与えると言われておりますチチュウカイミバエというものが、最近、昨年の六月からアメリカのカリフォルニア、ロサンゼルス近郊とサンフランシスコ近郊の二カ所で発見をされまして、新聞等の伝えるところによると、アメリカの政府並びに州当局は大変な人を使ってこの撲滅に従事をしておるということであります。この点については農林省もすでに昨年の九月に調査団を派遣をして、現地の実情を把握をせられてお帰りになったようでありますが、その後、九月以降この害虫の発生の状況はどういうふうになっておるのか、調査団の報告を受けて農林省はこのチチュウカイミバエに対する対策をどういうふうにとられてきたのか、まずこの点をお答えをいただきたいと思います。
  26. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話しございましたように、アメリカのカリフォルニア州のロサンゼルス近郊とサンフランシスコ近郊でチチュウカイミバエが発見されたわけでございます。そこで昨年九月に調査団を派遣をいたしますとともに、米国農務省に対しまして防除状況等を定期的に報告することというようなことについて申し入れを行ってきたわけでございます。  その後の状況でございますけれども一つはロサンゼルス近郊につきましては本害虫の撲滅に成功をいたしまして、米国農務省は昨年の十二月十二日付で撲滅宣言を出しまして、検疫規制地域から解除をする措置をとったわけでございます。他方、もう一方のサンフランシスコ近郊のサンタクララ郡とそれからアラメダ郡フリーモント市の一部の地域につきましては、トラップによる捕殺、ミバエが発見された庭木に対します薬剤散布、不妊虫の放飼等によります防除を続行いたしております。さらに昨年の十二月二十四日、カリフォルニア州知事は緊急事態宣言を発しまして、病害虫防除関係職員のほか、他部局の職員、州の兵隊さんまでも動員いたしまして寄主植物からの果実のもぎ取りをやらせておりますが、このもぎ取り作業は順調に進んでおると聞いております。  なお、緊急事態宣言ということをやりましたので、非常に事態が悪化したのではないかというふうに考える向きもあるわけでございますけれども、これはそうではなくて、防除効果を高めるためにこういうものを発したと聞いております。
  27. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま御報告があったように、ロサンゼルスの方は撲滅宣言がなされたということでありますが、新聞報道等を見ますと、サンフランシスコ近郊の方はだんだん地域も拡大をしておるし、発見したハエの数もどうもふえておる。新聞によると本格的な、きわめて大々的な二万五千人の州兵を動員をしてもぎ取り作戦をやっておる状態で、これはまさに非常事態であると思うのですね。  こういう状態が昨年の六月から今日まで続いておるわけでありますが、チチュウカイミバエは春先から本格的に動き始めるわけです。これから表へ出てくるわけですね。いまの形でいくと、この数カ月の間に撲滅できるのかどうか、まだ様子もはっきりわからないわけですが、いまの状態が相当長期にわたって続くという場合、どういう処置をとられるのか。特にサンフランシスコというのは日本にたくさんの果実類を持ってきておる地方であります。それだけに非常に人の行き来も多いし、果物自体もたくさん入っておるのでありますが、こういう段階でどういう方法をお考えになるのか、お聞きをしたいと思うのです。
  28. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず、緊急事態宣言を発したので対象区域が非常に広がっているというようなお話をされましたけれども、私たち聞いておるのでは、対象地域は特に広がってはいない。問題は、この緊急事態宣言というものを発しましたのは、何といいましても害虫の発生には冬場はきわめて都合が悪いわけでございます。そのときに徹底的にたたいた方が防除効果があるということと、住宅地でございますので空中散布というのが非常にむずかしいということで、住宅の庭木を人海戦術で取るというやり方をやったわけでございます。  そういうことを徹底的にいまやっておるわけでございますけれども、春先になりますとこのミバエが動き出しますから、その辺の捕捉状況というものが出てまいるわけでございます。これは相当長期にわたって出るかどうかというのは、今後の春先のミバエの捕捉結果を見ないとわからぬわけでございますけれども、その捕捉数がどうであるか、また捕捉される場所がどうであるか、これは従来は住宅地のみに限定されたわけでございますが、そういう場所、それからそれに対応してとられておるアメリカ側の防除の状況、そういうものをよく見定めまして、必要に応じてはさらに現地調査をやる必要があるのではないか。いずれにいたしましても、春になりましてのミバエの捕捉状況というものを的確に分析して対応したいと思っております。
  29. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろ様子を聞きますと、アメリカの状況がこうなっておる、その事態を見守りながらということで、日本としてどういう処置をすればいいのかということへの対応はどうもほとんどなされていないようであります。昭和四十六年の六月にグレープフルーツの自由化が行われまして、フロリダからたくさんのグレープフルーツが入るようになりましたが、四十九年の五月、六月、七月、東京と大阪の港の検疫でいわゆるカリブミバエが発見をせられまして、十九万七千ケースのグレープフルーツを転送なり廃棄処分をした、こういうこともございますし、最近アメリカから入ってくるOPPも大変やかましい問題になったところであります。  日本食糧の輸入がこれほど大きくなってまいりますと、これに伴って、アメリカだけではなくて当然それぞれの国で発生をしております害虫が日本に入ってくる。この間も日本で最初の豚の病気が起きたようでありますが、今日の日本農産物輸入の実態からすると、私はそういうことは多様に出てくると思うのです。これに対して、日本の検疫制度を中心にして敏感に植物防疫法の処置をしていかなければいけない、こう思うのです。  チチュウカイミバエへの対応はアメリカが技術的に非常に進んでおるようであります。いまの不妊虫の問題にしても、誘ガ灯のようなものなり、大分アメリカ自体は進んでおるのです。日本でもしていない。これは来ないということは断言できないと思うのです。アメリカの場合も何か旅行者が持ってきたのではないか、こういう話のようですが、一匹入ってくることによって壊滅的な打撃を野菜と果実に与えるわけであります。これだけ外人が日本に来ておるようになりますと、私は当局として相当事前に対応していかなければいけないと思いますし、この事態が長期的に続くことになりますと、植物防疫法の規定に基づいていわゆる害虫の発生している国からの輸入の規制処置、最も激しいのは禁止でありますが、こういう方法も考えざるを得ないのではないかとすら思うわけであります。  こういう点について日本としてどうするのか、もう少しこういう対応の方向をはっきりしていただかなければいけないと思うのですが、いかがでしょうか。
  30. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、農産物の輸入がだんだんふえてきておる、あるいは輸入植物の種類も非常に多様化してきておる、それから海外への旅行者も増加をしております。手みやげにいろいろなものを持って帰ってくるわけでございます。したがいまして、そういうことに伴って病害虫が輸入植物に付着して国内に侵入する危険性は従来以上に高まっているというのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、植物防疫所におきましては厳重な輸入検疫をやっておるわけでございます。現在もチチュウカイミバエにつきましては特に厳重にやっております。まだ一匹も見つかっておりませんけれども、気を抜くわけにはいきませんので、厳重な検査を今後とも強く続けていきたいと考えております。  いずれにいたしましても海外からの病害虫の侵入防止については万全を期するようにやっていきたい、かように考えております。
  31. 田中恒利

    田中(恒)委員 厳重にやっておると言いましても、私どもが聞いておる範囲では、たとえば向こうから入ってくる野菜なり果物なりのうちの一割程度が抽出をせられて検査をされておるということで、この問題が起きてからそういう検査の状況がどういうふうに強まってきているのか。チチュウカイミバエという、これは恐らく世界の植物防疫上はある意味では害虫としては最大の敵でありますが、これが一番大きな問題だと思うのです。それが何か近寄ってくるような感じがしておるだけに、関係者にとっては非常に不安な問題であります。それに一定の安心感とまではいかなくとも、それを与えるようなものがまだないような気がしますね、いまのお話では。それをもう少し検討していただいて、私が申し上げました最悪の場合は、これはアメリカに対しては日本はいろいろ遠慮がちな傾向が非常に強いと私は思っておるわけでありますが、しかしそれをはっきりさせていくことが、アメリカがこの問題に対して腰を入れることにもなるわけでありまして、チチュウカイミバエが相当長期にわたって撲滅できない、こういう段階になったら、やはり植物防疫法上の処置を当然政府としてはとるべきである、こういうふうに思います。この点について、ひとつ農林大臣の御意見をお聞きしておきたいと思います。
  32. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 大臣お答えになられる前に一言事務的にお答え申し上げます。  一つは、われわれは先ほど申し上げましたような措置を現在とっておるわけでございますが、あと、一番今後問題といいますか関心を持っておりますのは、わが国の輸入検疫でチチュウカイミバエが発見されれば、これは相当の措置をとらざるを得ないということ。それからもう一つは、アメリカの、いま撲滅作戦を展開していますが、撲滅、防除の効果が上がらずにミバエが定着をいたしまして、発生地域がいま住宅地でございますが、これが商業の生産地まで侵入して広がっていくということになれば、これは相当の問題として考えざるを得ないということを技術的な面からは考えておるわけでございます。  以上でございます。
  33. 田中恒利

    田中(恒)委員 最後に温州ミカンの調整保管の問題について、昨日も予算委員会分科会で意見が出たようでありますが、私自体さきの臨時国会で、昨年の冷害でミカン地帯では品質の低下が恐れられ、加工への拡大が心配されるので、調整保管の必要があるのではないか、こういう御質問をいたしました。大臣並びに二瓶局長の方から、事態の推移を見て検討をする、こういう答弁がありました。きのうの予算委員会の質疑を聞くと、昨年は裏年ですか、生産量が少ないからというようなことであったのですが、あの時点では事態の推移を見て検討する、こういう御答弁であったと理解をしておるわけであります。その後どういうふうに状況を把握せられておるのか、お尋ねをしておきたいと思うわけです。
  34. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十五年産の温州ミカンにつきましては、裏年に当たるわけでございます。昨年の十月、御質問等ありました時点におきまして、生産量は九年ぶりに三百万トンを割るのではないかというふうに見ておったわけでございますけれども、その後果実の肥大が抑えられたといいますか、そういうこともございまして、最終的には前年産を大幅に下回る二百九十万トン、前年対比二割減というような生産が見込まれるようになったわけでございます。  それから果汁仕向けがどのくらいになるかということにつきましては、当時はまだしぼり始めたところというような状況でございましたが、その後やはり品質の低下で果汁仕向け増というものがございましたけれども、当時見込んだ果汁仕向け量五十五万トンというものに対しまして六十万トン程度ということで、そう大幅に上回ることは現時点におきましては見込まれておらないわけでございます。  そういうようなことからいたしますと、基本的に調整保管事業が表年対策として位置づけられておるというようなこと、あるいはさらに、裏年の調整保管というものは一層過剰在庫を促進するといいますか、そういうものを惹起しかねないというようなこともございまして、なかなかこの調整保管の問題につきましては実施はむずかしいのではないか、かように現時点におきましても考えておるわけでございます。
  35. 田中恒利

    田中(恒)委員 ジュース五十五万トン、こういうふうに想定をせられておるようですが、昨年も実は数字は少しオーバーしたわけですね。一万五千トンとか二万トン近いのじゃないかと言う人もおりますが、私どもの方のいろいろな計算では六十万トンには確実になるのじゃないか、こういうように思っております。  それから、私は果樹、ミカン産地ですからよくわかるのですが、この農家の諸君はいま市場へ出していくミカンを非常に選別しておりまして、もう三割程度しか製品としてはとってくれないわけです。ほとんどこれは加工に回しております。この加工に回してジュースでしぼっておるところにことしの一定の値段が形成されたということが一つあると思います。ただ局長さんも御存じでしょうけれども、御承知のようにミカンというのは値段はずっと落ち込んで、昭和五十年のミカンの農民の手取りに比較してことしはずっと減っておるわけですね。経費はこの四年間に約二八%ふえております。ところが、ミカン代金というのは逆に九七%に落ち込んでおるのです。これがこの五、六年来のミカン経営の実態であります。そういう中でも、何とか価格を維持したいということで、いわゆる調整保管というか、ジュースへ回して安定をみずからしょるわけです。  ただ、御承知のようにいろいろ問題があります。ですから、毎年毎年こういう結果が出てくるということについての対応を考えなければいけないと思います。一つはやはり高果汁化の方向へ切り向けなきゃいけません。いまのように、一〇%、二〇%、三〇%のジュースが横行していく、これは牛乳も入れてでありますけれども、こういう状態は改めさせなければいけないと思います。果汁団体は来年から三億の金を積み立ててその努力をしよう、こういうことでやっておりますし、もう一つはやはりこの需給調整をどれだけやれるか。これは果汁だけではありませんが、需給調整というのをどうするか。これは酪農にいたしましても、まあ食管ははっきりしておるわけでありますけれども、やはり一定の政策的な配慮がなされておるわけですね。ところが、こういう果汁についてはなされていないわけでありますから、私は、表、裏の問題もあるけれども、ぜひこの調整保管の問題について、この際農林大臣、ひとつ骨を折ってもらって、何とかできる範囲で努力をしてもらって、このまま飛ばしておれば来年はまたたくさん出てきて、在庫を抱えてしぼれない、そうすると農家はそれを市場へ出す、たたき売られる、これは大変な価格混乱をもたらす、こういうふうに考えますので、そういう立場でぜひこの調整保管の問題については重ねてひとつ御検討をいただきますように最後に御要請を申し上げて、大臣の御所見を承って質問を終わらしていただきたいと思います。
  36. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 非常に困難な事情につきましては局長からいま申し上げたとおりでございます。日本の果樹、特にミカン関係の現状というものはまことにミカン農家にとって厳しいということは私も十分承知いたしております。果汁の滞貨の点も十分承知いたしております。したがいまして、いろいろ研究は続けたいと思っております。
  37. 田邉國男

    田邉委員長 竹内猛君。
  38. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、「八〇年代の農政基本方向」、それと先日の亀岡農林大臣農政の方針に関連をして、若干の質問をしたいと思います。  まず第一は、農政基本方向の第一章が「日本型食生活の形成と定着」、第七章が「食品産業の食料供給体制の整備消費対策の充実」ということで結んでおりますが、自給率が三四%からさらに減って三〇%に押し下げられる。そういう中で、いままで農家が最も安定的に生産をしてきた米は、五十三年に作付面積が二百六十万ヘクタールぐらいであったものが、八十万ヘクタール減らす。収益にしておよそ二百六十万トンの減収に対して、麦類が四麦合わせて百十一万トンを増加する。農家の立場からしてみれば、収益性から見ても確実な収益の源泉が切られて、不安定なものが今度はそこへふえる。こういう形になるし、日本型食生活定着というところでは、米から畜産物、野菜、果樹という方向に変化をする。二百海里の問題があり、近海が汚染されており、さらに油の値上がり、こういうような問題からしてこれから漁業の前途は大変厳しいものがある。この点についてはこの見通しの中でもかなり詳しくとらえているようでありますが、いずれにしても、これから畜産の日本農業に占める位置というものはかなり大きなものであると見なければならない。  そういう場合に、その畜産のえさが先ほど言ったようにほとんど外国からの輸入である。自給率がわずかに二%ということでは非常に心もとないわけであります。そういう中でも畜産物を百二十七万トン、果樹を百二十六万トン、野菜が百五十八万トンと増産をする見通しは立ててはいるものの、いま愛媛県から議論があったように、これまた非常に不安定だ、こういう状態であります。そういう中で、農家の収益についてきわめて不安定な状況がずっと続いてきてとどまらない。これは農政史から見た場合には、米を中心とした水田農業生産構造から畜産、果樹、野菜を軸にしたそういう構造に大きく転換をしたもの、こういう理解をしていいかどうか。
  39. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  全体に今回の長期見通しにおきまして、生産の再編成が行われる形といたしまして御指摘のような米から麦等への転換がございますが、この長期見通しにおきます全体の粗生産額、農業の粗生産額は、五十三年現在の価格をベースにいたしまして約十兆円から十二兆円になるというふうに私ども算定しております。その中での収益性という問題は、やはり経営の努力なり技術の開発、普及、あるいは基盤整備等の条件等によりまして、大規模化と経営の合理化等により、より大きな収益性を上げられるように努力しなければならない点かと存じます。  かつ長期見通しにおきまして、御指摘は、生産構造は水田農業よりも畜産の方へ比重がかかった転換をする形態というふうなことでございますが、先般の農政審から答申をいただきまして閣議決定いたしました長期見通しの参考資料でごらんいただきますように、全体六百十五万ヘクタールの作付面積のうち、稲作の分は約二百万ヘクタール弱を占めておりまして、なお基幹的な耕地利用を占めることは変わりないわけでございまして、やはりそうした水田農業の上に果樹、畜産、野菜というような新たな拡大部分が加わってくる、このように私どもは理解しておるわけでございます。
  40. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはどうしても、米を抑えて、そして畜産、果樹、蔬菜の方に移していった、農業生産の歴史から言えば大きな転換だ、こういうように受け取らざるを得ないのです。農家はそう受け取っている。これは大臣、どうですか。
  41. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 いま官房長から申し上げましたように、やはり基幹は水田である、その上に畜産あるいは果樹、蔬菜等を積み上げていく、こういうことでございます。したがいまして、米を食わなくなり出したのに、三十年かかると言われておる学校給食を改善いたしまして、今後十年、二十年、三十年後にはもとの日本の食構造に変えていくというようなことも私どもとしては長い時点で考えておるわけでございます。日本農業は水田を無視したのではもうそれこそ大変なことになる、私はこういうふうに考えておりますので、その点は畑作に転換する方向じゃないのだ、米を食べていただければこういう無理な施策を進めなくてもいいわけなんでありますけれども、残念ながら現実がそういうふうになっておりますために生産調整をせざるを得ない、こういうことでございます。
  42. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その中で水田を中心にしていくというところが受け取れるわけだけれども、その水田が問題なんです。  私はなぜそういうことを言うかというと、畜産が中心になっているということは、たとえば牛乳の場合、乳製品の場合でも、一人当たり純食料として六十キログラムから七十一キログラムないし七十五キログラム、肉類が二十・八キログラムから二十六キログラムないし二十八キログラム、あるいは果樹にしても四十一から四十四、非常に増加を見通しているわけだ、米は八十一・六から六十三ないし六十六へとこれまた消費が減退する、こういうぐあいに見ているじゃないですか。だからどんなことを言ったところで、米は抑えられてほかのものがふえてくるということは、これは事実なんです、数字があらわしている。だから言葉でそう言ったってだめなんだ、数字がこういうふうにあらわしているのだから。やはりそのとおりに食生活転換し、作物転換なんだというぐあいに位置づけをして、その中でなお水田というものは大事だ、こういうような状況になっていくという表現が素直じゃないですか、どうですか。
  43. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答え申し上げます。  たとえばいま畜産の関係等なり米の消費の関係について申されましたが、これまでの米の減少率、年率にいたしますと、五十年から五十三年の最近時点におきましては年率二・五%の減をたどってまいってきておりますが、この六十五年までの長期見通しにおきましては約二%程度の減ということで、従来の減少率をかなり押しとどめる。これがまた、日本型食生活というような私ども考え方からもそういう形に減少率を押しとどめておるということ。また肉類について申しますと、五十年から五十三年の最近の肉類の消費動向は、年率にして七%というふうになっておりますが、この長期見通しにおきましては一・九%から二・四%の年率にいたしております。かなりスローダウンした伸び率といたしておるわけでございます。牛乳、乳製品につきましても、五十年から五十三年の伸び率は三・六%の年率の増でございますが、この見通しにおきましては一・六ないし二・〇%。したがいまして、肉類あるいは畜産物等につきまして欧米諸国と比較すれば、一人当たりの消費量はかなり低い水準だろうと思います。  また、米が六十三キロないし六十六キロぐらいの一人当たりの年間消費量になりますのは、現在の若い層の問題あるいは農村におきます都市化の問題等を考えれば、むしろ先ほど申しましたように減少率としてはかなり押しとどめた水準だと私ども考えております。
  44. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまの説明はそのとおりでいいけれども、それは一つの傾向として、これは歴史が決めていくことだから、議事録をまた後でちゃんと整理をして、そのときに、あのときにこういう議論をしたということだけは明らかにしておきたい。これは数字が示しておることでありますから、別にこれ以上議論しない。  ところで、この中心の畜産物の飼料の九〇%以上——先ほどの森実局長の報告によると、六十五年においても飼料穀物自給率は二%だ。こういう状況のもとで畜産にかけられるウエートは非常に多い。しかもえさが大商社によって輸入されておるというところに問題がある。一説によると、農林水産省がえさ用の米の生産にちゅうちょしているのは後ろで何か飼料会社が圧力をかけているのではないかと言われているような報道があるけれども、これは私は信じたくないが、そういう言葉さえ聞かれるほど慎重になっている。これは大変困ると思うのです。この問題については大胆に、しっかり取り組んでもらいたいと思うのです。  穀物はアメリカを中心としたカナダ方面から入ってくるわけですが、もし仮に、いまソ連とアメリカのやっているように、あるいはその他の地域におけるように、国際的に穀物が不足する、戦略物資として使われたときに一体どうなるのか。日本の畜産というのは、外国からえさを買ってきて、そして豚や牛や鶏を飼って、小作人じゃないのか、自主性がないのじゃないか、こういうことを考えると、どうしてもえさの自給度を高める、穀物の自給度を高めるのは当然の話だ。その当然の問題が六十五年度で二%。これでは余りにもひどい状況じゃないかと思うのですね。この点について、大臣、感じとしてどうですか。
  45. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 日本農政の青写真をかいてみますと、その点がやはり心配になる線であり、何とかしなければならないという、だれしもが感慨の至るところであろうと思います。したがいまして、長期見通しの中におきましても、いわゆる大家畜用の粗飼料等の増産も懸命の努力をしてまいる、さらに穀物飼料にいたしましても、政府としてもそういう点をカバーしてまいりますために、えさ米の研究に積極的に取り組んで、できるだけ早く新多収、超多収えさ米の造成にこぎつけたい、こういうことで全力を挙げておるということで御理解をいただきたいわけであります。
  46. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 なかなか理解がしにくいのですが、また議論は引き続いてやりますから、これで終わるわけじゃないから、前の方へ進んでいきます。  ところで、八〇年の展望を見た場合に、農用地についても、延べ面積ですが、五十三年五百六十六万ヘクタールのものが六百十五万ヘクタール、約四十九万ヘクタールの増加を見ております。特に飼料の場合には六十万ヘクタールの増加の方向を示したことはある意味を持ちますけれども、これは何をつくろうとするのか、つまり飼料作物として何を生産しようとしているのか、六十万ふやすけれども、これは何ですか。
  47. 森実孝郎

    森実政府委員 飼料作物といたしましては、やはり私ども今後の問題としては、サイレージによる給与方式の改善ということを念頭に置かなければならぬと思いますので、そういう意味ではトウモロコシ、ソルガム、青刈りトウモロコシ、青刈りソルガム、牧草を中心にして推進する必要があると思っております。
  48. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま言われた名前のものはほとんど生産性が低くて、いままでだめだと言ってきたものばかりでしょう。それを依然としてつくるということになると、いままでなかなか日本にはなじまないと言ってきたものをまたやるということになると、六十万ヘクタールも自信を持って進められるのですか、どうですか。
  49. 森実孝郎

    森実政府委員 トウモロコシ等ではすでにかなり出ているわけでございますが、たとえばホールクロップサイレージという問題も重要な課題になってくるだろうと思います。そういう場合はトウモロコシ、ソルガムあるいはまた湿田等で問題になりますオオクサキビ等を考えますと、TDN収量はかなり高いものになると見ております。
  50. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この点にも納得いかないものがありますから、これもまた問題として残しておきます。  次は、四十八年五月に閣議の決定を見た土地改良の長期計画、すなわち十カ年計画ですが、十三兆の費用を投じて進めてきたその金額と面積、両方でどの程度に達しているのか、この点を報告していただきたい。
  51. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 現行の土地改良長期計画におきますところの昭和四十八年度から五十六年度、五十六年度は見込みということになりますが、それまでの投資実績は約十兆七千百三億円ということになります。総額十三兆円の計画事業量に対します進捗率は八二・四%ということになるわけでございます。計画期間はあと一年ございますので、金額的に見た場合は、まあ計画に対してほぼ順調に推移していると言ってよろしいかと存じます。  ただ、実質はどうかということになりますと、実質のとり方はいろいろ考え方がございますが、面積でこれを見ました場合、計画目標面積に対しますところの実績は、計画策定後におきますところの諸物価の高騰とか公共事業予算の抑制といったようなこともございまして、五十六年度末時点の見込みで約四割程度ということになっております。計画に比べて相当遅延しておりますので、今後とも事業の推進に努めてまいりたいと考えております。
  52. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは来年で終わるわけですけれども長期展望には予算の裏づけがない。けれども土地改良十カ年計画というものは十三兆という予算の裏づけを持ってやった。来年終わったその後、さらに引き続いて計画を立てるつもりかどうか、大臣、この点はどうですか。
  53. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 実は私も、来年でこの十カ年計画が期限が切れるわけでありますので、さらにその後の長期計画をどうするかということにつきましては、去年の八月事務当局に検討を命じまして、とにかく長期見通し並びに農政審答申等を十分考慮して、これらの目標を達成することのできる基盤を十カ年間に並行的に整備をしていく、そういうものをひとつつくろうということで指示を与えまして、いま検討中でございます。
  54. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今日までの十カ年計画というものの目的は、水田の経営の近代化、機械化、省力化あるいは田畑輪換という方向できたと思うのです。ところが途中で水田の減反問題が入ってくるということになるといろいろ差しさわりも出てきていることはよくわかるけれども、これは農民の責任によって問題が出てきたわけじゃない。国の農政のいわゆるミスというか、つまり需給目標を立てながら、それがすでに誤ってきているというところに問題があるわけで、それを耕作農民にかぶせるというのは不当だと私は常に思っている。  そういう中で、これからの十カ年計画をつくる場合においても何を作付をするのかという問題が常に問題になると思うけれども、これまでの完了した部分についても、これからの方向についても、一体何を植えようとするのか、この点はどうですか。
  55. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えします。  従来の土地改良長期計画におきましても、当時の農産物生産及び需要長期見通し方向に沿っております。今後新たな構想を持ってつくられます計画も、まだ作業は始まっておりませんが、恐らく先般の「農産物需要生産長期見通し」の方向に沿って、これからの作物動向を反映した計画をつくるものと考えております。
  56. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いつも渡邊さんの答弁は文章に書いてあるとおりに答弁されるから、これは読めばわかるわけです。そうじゃなくて、もう少し中身と奥行きのある方針を出してもらわないと、後で読んで困ってしまう。大体そういうことは文章に書いてあるんだ。  そこで、土地改良を進めてきたわけですが、地下水位七十センチ以下あるいは七十センチぐらいのところの湿地というものがどうしてもあるはずだ。これはどれくらいありますか。大体百万ヘクタールくらいあると見ているのだけれども、それは間違いないかどうか。
  57. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 地下水位の分布状況でございますが、これは昭和五十年三月末現在で調査したものがございますが、若干古くなっておりますので、その後の工事等を加味いたしまして推定いたした数字があるわけでございます。  これで申し上げますと、普通の畑作物の栽培が可能な水田、七十センチメートルよりも地下水位の低いところが百九十二万ヘクタール、それから立地条件に応じて弾丸暗渠等を行えば比較的湿害に強い作物なら栽培できるという七十センチから四十センチメートルぐらいの水位のところが七十七万ヘクタール、それから普通の畑作物の栽培は困難でありますが、イグサとかレンコン等の栽培が可能なところ、つまり四十センチメートルよりも地下水位の浅いところ、これが二十万ヘクタール。いま申し上げました後の二つ、排水をやって何とか湿害に強い作物の栽培が可能な田が七十七万、それからイグサ、レンコン等の栽培が可能な二十万、これを合わせますと約百万、これをおっしゃっているのかと存じます。
  58. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これが実は、われわれが常に主張しているえさ米であるならば、水田に一番適用できる。レンコンをつくってもこれはどうにもならない。えさ米であればアルコールに使うこともできるし、それから直接えさとして使うこともできるわけだ。ただ問題はその採算の問題であるから、それは前々からここでも議論しているように、採算の問題ということを先に考えたら何にもできなくなってくる。そうではなくて、えさ米として、飼料用穀物としてこれをまずつくって、それを地域で試作をしながらどのようにルートに乗せていくのかということでいかなければまずいと思うのです。  そういう点からいって、大臣が先ほども答弁していたけれども、あの答弁はおおむねこれもまた文章でどこかに書いてある言葉をそのままいつも繰り返されているようで、あれではどうも前向きではないと思うのです。決まったような、だれかの書いたものを言うような形ではうまくない。時代は進んでいるのですから、前の方へ進んだ形でいく、これは国益に沿っているのですよ。つまり、税金を払っている皆さんに八十万ヘクタールからこれだけのものがとれるのだ、それは水田の条件に合っているのだ。それにもかかわらず採算がどうだのこうだのと言っていたらいつまでたっても国益につながらないことになる。そういう点で、ぜひこの湿地帯というものに対する活用はえさ米中心として考えてもらいたいということをまず強く要望したいのですけれども大臣、もう少し前向きの答弁をしていただきたいですね。
  59. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 私としては、事務当局で書いてくれたよりも大分前向きに答弁してまいりまして、いまでは私の言うことは事務当局も何にも言わなくなったということで、この点は竹内委員も御理解いただけるだろうと思うのです。  ただ私といたしましては、責任上、やれやれと言われてやってはみた、政府の言うとおりにつくってみました、ところがいざ刈り入れということでコンバインなり何なりでやろうと思ったところがみんなぼろぼろ脱粒する、そういう事態が予想されながらこれを奨励するというのはいかがなものであろうかということで、その点はやかましく技術者の意見を急がせ、技術的な措置を急がせながら、とにかく農政審からの答申にもあるわけでありますから、できるだけ早く竹内委員の御指摘のような線に持っていけるような努力をいま展開をしている、こういうふうでございまして、決してえさ米を拒否しているというものではないというふうに御理解をいただきたい。
  60. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 えさ米の問題については最後に時間があればさらに申し上げますが、昨年の本委員会で農地関係三法が改正をされて成立いたしました。これに基づいて各地で土地改良が行われておりますが、この土地改良の中で一つの傾向が見られるわけです。  特に換地をする場合に、残存地主を中心として地主が自分土地自分のところに集めてくる、つまり地主的換地方式が行われているところもあります。そうでないところもある。この際、法律が変わったわけですから、農林水産省としてはこの換地方針やその他について何か指示をしたことがあるのか、それとも従来どおりでいいとしているのか、この際見解を聞きたい。
  61. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 換地の問題は関係者の権利の移動、変動に関する重大な問題でございますので、これは公平を期することが必要でございます。  そこで、一般的に換地計画は、耕作の業務を営む者の農用地集団化その他農業構造の改善に資するように定めるということが基本原則になっております。しかし、この規定によって一方的に耕作者のために集団化を行う、そして所有者の意向が無視されてもいいということではございませんでして、土地改良法上、所有権者は換地計画を定めるための権利者会議の構成員となって議決権を付与されております。それから、換地計画についての異議申し出の機会も与えられているところでございます。  これは一般的な場合でございますが、昨年農地三法が成立いたしまして、農用地利用増進事業が格段に推進されることとなったわけでございます。この農用地利用増進事業によりますところの賃貸借は新しい賃貸借でございまして、その実態はこれからだんだん定着していくものかと思いますが、現在までのところ一部期間の長期的なものも見られますが、短期六年以下のものがまだ多いというような実態でございます。そういう関係からいたしますと、いま申し上げましたような考え方もあり、むしろ耕作者というよりは土地所有者、農地の所有者の立場での換地等もある程度考えざるを得ないというような実態も出てまいるわけでございます。したがいまして、農用地利用増進事業に基づくものについては、そういった土地改良事業に当たっての配慮をするというようなことについての指導もいたしているところでございます。  ただ、これは一般的な考え方でございまして、必ずしもいま申し上げましたことで一律に決めるということでなく、個別にその地域地域の実情に応じまして、お互いの話し合いをベースにしながら、いま申し上げましたようなことも加味して現実に即して決めていくということになるかと存じます。
  62. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 土地改良の参加者としては当然耕作権者が中心になるべきだ。しかし、そこに残存地主がいた場合にはこれも参加をする。これは話がうまくいけば問題はない。ところがこの残存地主が、これは地主だから従来から勢力があるわけだから、換地委員などをにらんで一杯飲ませてうまいことやる、そして小作人から取り上げをしようとする。これが対立したときに一体どういうふうな措置をするかという問題が問題なのであり、同時にまた、今度は土地改良費の負担の問題があります。いま六年という話が出ましたが、三年、六年、九年、いろいろあると思います。いずれにしても二年据え置き十五年返済というような償還金の問題で、仮に六年は耕作をさせる、その後は返してくれと言ったときに、この負担金は耕作権者が耕作をしている間は払うのはやむを得ないのか、それともそれは所有者が払うのか、こういう点についてどういう指導をされているか。
  63. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 御質問は二点あったと存じます。  初めの方の、換地の問題で農地の所有者と耕作を行っている者との間に対立が生じたときどうするかという点でございますが、役所の指導といたしましては、まずそういう対立が起こらないために換地計画の適切な運営を図り、そのための措置を講ずるということが第一であろうかと思います。  現在実際に行っております措置としては、採択前に換地選定を行うための基準、これを換地設計基準と言っておりますが、これを作成させる。また道府県の換地センターにおいて、地元の役員だとか委員等を対象として公正な換地計画を作成するよう、啓蒙普及活動だとか講習会を行うことにいたしております。圃場整備等の工事が終わった後での換地の相談ということになりますとどうしてもトラブルが多いということで、いま申し上げましたように、なるべく事前に換地計画を立てさせるということをまず指導いたしております。  それから、それでもなおかつ実際にトラブルが起こったときどうするかということになりますと、農業委員会が地元にあって実情を一番よく承知しているわけでございますので、農業委員会がその調停、あっせんの労をとるということを指導いたしております。  それからいま一つの負担金の問題、これは土地改良を行って施設の造成ができた場合に、その施設を完全に利用し切れないまま途中で耕作をやめて、地主に施設もろとも返還する場合はどうなるかというお尋ねかと存じます。  これにつきましては、一般的に民法の原則がございまして、有益費の償還請求ということができることになっております。償還した後その農地の資産価値が増して地主としてこれを活用できるということであるならば、その資産価値に応じてそれなりの有益費としての請求ができるということになっております。これも個別相対の問題でございますが、こういったことについて争いが起こらないようにということで、特に利用増進事業の関係におきましては、事前に計画をつくる際そういった有益費の関係についても適切に決めておくようにということで、これは市町村長の仕事になりますが、指導をいたしているところでございます。
  64. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 事前換地制は大変重要なことですから、事前換地の方式をとられるようにぜひ指導してほしいということを要望します。それからいまの負担金の問題は非常にむずかしい問題でありますから、十分に徹底するような指導ができるようにこれはしてほしい。  次いで、小作料の決定の問題ですね。統制小作料、法定小作料、その他の小作料が一切廃止をされていまは力関係になっている。一体どれが妥当な小作料なのか、所により場所により力関係により違うようなことでは非常に困るわけでありまして、残存地主といってもそれほど数は大きくはないにしても、問題はこれから生じてくる可能性があります。
  65. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いま、一般的には標準小作料というものを農業委員会に設定してもらっておりまして、地域におきますところの適正水準を示すということをいたしております。これは状況の変化に応じまして三年ごとに改定をするということになっておるわけでございます。まあ個々の小作料は相対で、当事者間で決められるのが原則でございますが、幾らに決めていいかお互いの間でなかなかその話がつかないときはこの標準小作料が一つのめどになると思っております。したがって、統制小作料のように強制するものではございませんが、それは指針としてかなり活用される、またそういう実態にあると見ておるわけでございます。  ただ、最近におきましては、昨年、統制小作料が完全になくなりました。その関係からいたしますと、残存小作地、昔の小作関係でもって安い統制小作料のままいまなお借り入れられておるところの農地、これについての小作料は、地主側からいたしますと長い間がまんしていたのだから引き上げたいというような意向もありまして、どの水準まで引き上げるかということになりますと、実際問題としてトラブルが生じかねない性質のものでございます。  そこで、私ども、昨年の八月三十日に構造改善局長名をもちまして「小作料の最高額統制に係る経過措置の失効に伴う指導について」という通達によりましてそのよるべき基準を示しております。一つは、賃貸借契約は何もなくなるわけではない、従来の賃借の権利は依然存続しておるもので、その点小作料についての統制がなくなったからといって誤解をしないようにとか、それから五十六年分以降の小作料の額について改定する場合、当事者間の協議ですが、円満な合意が成立するように指導するとか、それから標準額に比べて適正と認められる額によることが望ましいとか、さらに引き上げを行う場合は、一挙に引き上げるというようなことではトラブルのもとにもなるので、段階的に、これを双方の協議により円満に決めていくようにしろとか、さらには、こういったことについて農業委員会において事案ごとに適切な指導を行えというようなことを決めて指示したところでございます。目下都道府県、市町村農業委員会等を通じてその普及徹底方を図っているところでございます。
  66. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この際委員長にお願いしますけれども土地改良に関する通達、資料等について私はまだ十分にわかっていない点もあるけれども、いまの答弁等々の資料を後で各委員に配っていただきたい、そのことを当局にお願いしたいと思います。
  67. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 当委員会に提出いたします。
  68. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 続いてこの土地改良の問題ですが、戦後土地改良をしてからかなり時間がたっております。特に私の茨城県のごときは湿田地帯が多いために排水事業が大変多くありまして、この機械がそろそろ摩滅をして更新期にある。この土地改良の維持管理費というものについて何か新しい考えがあるかどうか。  それからもう一つは、この土地改良区の合併の問題。土地改良区がかなりできていて、まあ行政改革じゃありませんが、かなりむだな費用を使っているという向きがあるし、役員がロボット化して、事務員がすべてのことをやって役員がそれに乗っている。トラブルの原因にもなっているところがありますから、やはりしっかりした役員ががっちり土地改良区というものを管理をしていくという必要もある。そこで、土地改良区を合併をするということ、これは機械的な合併はぐあいが悪いですが、民主的な討議の中でやっていけるようにするために何か考えていることがあるかどうか。
  69. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 土地改良の施設の維持は、特定の農家を受益者としているわけでございますし、その申請に基づいて将来その維持管理はみずから負担し得るという前提のもとに始められた事業でございます。したがって維持管理については当事者が負担するというのが原則でございますが、ただこう申し上げてはそれこそ身もふたもないお話になりますが、最近におきましては、先生がおっしゃられますように、電力料金が大幅に上がるとか、それから利用者、受益者である負担する人間の数が減ってまいるとか、いろいろな形で負担がきつくなってきているという実態がございます。そういったことから、私どもも、やむを得ない事由のあるもの、一定の要件を備えた施設については、その定期的な整備、補修だとか、土地改良施設の点検、整備、操作、こういった技術的な診断業務、それらに対しましては国庫助成を行うということにしております。今後ともそういった形で現実的な対応を行ってまいりたいと思います。  それから合併の問題でございますが、これはまあ一般的に組織が大きくなるほど管理的な経費は少なくて済むということで、維持運営費の節減に役立つわけでございます。それから事業を実際に行います場合も、関係者が大ぜい集まっている方が合理的な、地域全体として有効な事業を行い得るということで、私ども従来からこれらの合併の推進を図っているところでございます。そのために土地改良区の合併につきましては、合同事務所の設置を図るとか、それから合併自体のための種々の相談といいますか、打ち合わせ等の事業もございますので、そういったことについて助成を行うというようなことで推進をいたしておるところでございます。
  70. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひ機械的な方針ではなくて民主的に、この合併問題については地域的にいろいろ問題がありますから、検討していただきたいということと、維持管理費の問題についても、たとえば米価の中には維持管理費というのは、私どもの県で負担をしているような金額はとうてい盛り込まれておらないわけでありますから、やはり維持管理費についてもこれは検討をしてほしいということを要望したいと思います。  そこでまたえさ用の米の問題なんですけれども、その前にひとつ話題をちょっと変えてミミズの問題を取り上げていきたいと思うのです。  ちょうどいまから二年前、NHKで転作作物としてミミズの問題が取り上げられたことがあります。そのときに私は、これは五十四年の五月二十三日ですけれども、ミミズを転作作物として取り上げることができるかできないか、こういうようなことを二瓶局長とやりとりをしたことがあります。当時の大臣は現在の渡辺大蔵大臣でありましたが、ミミズの問題は興味のある問題だ、しかし農林省がこれを取り上げて奨励をして最終的に失敗をしては責任上なかなか困るというような話もありました。ありましたが、内部に、畜産局に小家畜課をつくって、そこに責任者を配置をして取り組んでいくことについては前向きだと私は思います。  ところが、この約二年の間に、悪質な業者が中に介在をしております。いろいろ悪いことをしておる。この問題について過般調査を要求しました。その調査はどういうふうになっていて、今日問題はどこにあるかということについて総括的な報告をしていただきたい。
  71. 森実孝郎

    森実政府委員 昨年の八月にアンケート調査を各県に依頼してやっております。集まらない県もまだ若干ございます。これによりますと、種ミミズの販売業者が二十九、養殖者数は九百四十二という報告が出ております。  そこで具体的な問題といたしましては、現在、御案内のようにミミズは魚の養殖のえさとかあるいは遊漁用のえさとか、土壌改良用とかあるいは廃液処理等に利用されておりますけれども、流通実態はまだ必ずしもはっきりしない点があります。いままで、個々の事案でございますが、いろいろ提起されている問題を大体総括してみますと、要するに生産物をめぐりまして養殖者とあっせん業者のトラブルということが非常に問題ではないかと思っております。こういった問題は、やはり紛糾を避けるために、これから役所といたしましてもできるだけの情報の提供は必要だろうという見方をしております。
  72. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、やはりこの際せっかく人員を配置して努力をされておるわけですから、これだけのことについては検討をしていただきたいと思います。種ミミズの規定、それからミミズのふんの有機肥料としての認定をするかどうかという問題、それから有効利用という問題についての点、これは釣りのえさとか土壌改良とか肥料とか漢方薬とか、いろいろあります。特に私のところでは、ある一つの会社はよく努力をしておりまして、これはプリマハムと提携をして、プリマハムのヘドロ——ヘドロと言ってはなんですけれども、廃物、あれを中心にミミズを養殖をして農家と結びついているところもある。  ところが、一般には誇大広告があります。こういう週刊誌や新聞の折り込みに誇大広告を出して、もうかるもうかる、こういうわけ、だ。もうかるということになれば農家は何でもついてくる、そして金を出して損をして訴訟をする、こういう問題があるわけです。誇大広告というものを抑えることは、あるいは法律上できないかもしれないが、最終的には誇大広告にひっかかって、何十億ももうけた者と損をした者がいるということで、金の融資の問題等についても本当は口をききたいわけだけれども、そこまでやると農林省責任を持つか、こうなりますから、いまのところはまだそういう段階ではないかもしれませんが、調査整理の段階として一定の努力をお願いをしたいと思うのです。
  73. 森実孝郎

    森実政府委員 現在までも、いま先生御指摘の誇大広告等の問題について、個々の案件につきましては、広告を掲載しないように関係の広告業者等にも依頼した経過もございますし、また警察その他の関係機関にも事情の説明に当たったこともございます。御指摘のようになかなか広がりを持ってきておることも事実でございますし、ミミズの効用自体も一定の条件のもとでは評価していかなければならないと私は思います。  そこで一つは、ミミズ及びふん粒の利用方法についての探求を進めると同時に、そういったデータの提供ということを幅広くやっていきたいと思います。それから二番目は、過去において実施し、さらにこれからも御指摘を受けて調査を少し深めていきたいと思っておりますので、その調査結果の提供ということを始めたいと思います。それからさらに、紛糾を避ける意味から都道府県とか農協等に対して十分説明いたして、農家に対する情報提供に遺漏がないように少し努力をしてみたいということで、検討させていただきたいと思います。
  74. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ミミズの問題についてはこれからもまた取り上げていきたいと思います。全国で相当の数の者が関心を持っておりますので、これはひとついまのことを整理をしていただきたい。  通産省見えていますか。——米からアルコールあるいはカンショからアルコールをつくるということについてどの程度通産省としては熱意を持っておられるか。ちょっとそのことについて報告をしていただき行い。
  75. 井上正

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  現在アルコール製造事業は通産省といたしまして専売事業形態で行っているわけでございますけれども、国営のアルコール工場におきまして、国内産の原料といたしまして現在カンショそれからミカン果汁廃みつ、これはミカンからミカンジュースをとりましたあとのしぼりかすでございますけれども、あるいは沖繩産の糖みつ、こういったようなものを使用しているわけでございます。それからこれは過去でございますけれども、三年ばかり黄変米を原料として使ったこともあるわけでございます。  アルコール専売事業といたしましては、この国内産の原料を基本的にはできるだけ使っていきたいというふうに考えているわけでございますけれども、カンショあるいはお米につきましては現時点では経済性におきましてかなり問題があるということは否定できないところでございます。この面につきましてはやはりカンショなりお米なりをできるだけ安く生産供給していただくということが、これら農産物を原料として利用さしていただいております私たちの立場でございますけれども、私たちこれら農産物を利用しております立場からも、その農産物アルコールに転化する工程の中でできるだけの合理化努力といいますか、技術開発をやっていかなければいけないということで、従来ともいろいろな面で努力を払ってきているわけでございますが、最近では特に重油を中心といたします燃料の価格が非常に上がっているという点もございますので、こういった割り高な国産原料をできるだけ使えるように、今後とも省エネルギー技術開発という面に力を入れてまいりたい、そういうふうに思っておるわけでございます。  先ほど申し上げましたようにカンショとか米はすでに国営工場で使っておりますので、利用技術自体はあるわけでございますけれども、さらに経済性を持たせるための技術開発に今後も取り組んでまいりたい、そう思っております。
  76. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 食糧も資源・エネルギーも日本安全保障のために欠くべからぎるものであるわけですから、どうしても農林省としては、有限の石油の輸入にも安定性がない、中近東の問題あるいは最近の中国のプラントの問題を見てもわかるように心配です。そうすると最も安心できるのは国産。価格の問題についてはいろいろ政治的に処理しなければならない点もあるし配慮しなければならない点もあるが、ともかく努力をすれば米からもミカンからもあるいはパインからも、その他木材からもいろいろな種類のアルコールがとれるということだけは事実だ。そういう技術もある、体制もある。これを十分に活用する必要があるということが第一点ですね。  先般二十八日の予算委員会の分科会で渡辺大蔵大臣えさ米の話をやりとりしました。そのときに渡辺大蔵大臣の回答は、一定の前提があるけれどもえさ米をつくることについては賛成だ、こういう話だ。前提は何かというと、一つはやはり採算性、金の問題、それから二つ目は品質の問題、三つ目はつくる場所の問題、集中的にこれをつくっていくという問題、それから流通の問題だと思いますが、こういう四つの点を前提にして前向きな答弁があったわけです。  先ほどの大臣の答弁を聞いてみると、やや前向きになったように思うけれどもまた後ろの方に下がってしまう。どうも後ろでだれか引っ張っているのじゃないかというような気がしてしようがない。八十万町歩の減反が余儀なくされているこういうときに、なお百万町歩に近い湿田がある。これはまさに土地改良をやっても残っていくわけですから、えさ米をつくってそれを合理的に利用していくことが一番いい。茨城県の場合には県が十二地区に試験田をつくって、県も農協も農民組合も労働会議も一緒になってえさ米生産にいま実験に入っている。こういうようにして地方がすでに入っているときに、中央においても農林省が、各政党も加えあるいは労働組合、農民組合、農協、学者、技術者、そういうものを加えてえさ米をつくる懇談会くらいつくったっていいじゃないですか。それくらいの努力をして、一々国会でやりとりしなくたってその中でそういうものをつくってやっていくような考え方はないですか。大臣、それくらいのことはいいでしょう。どうです。
  77. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 いまのところそこまで考えておりません。
  78. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それはまたずいぶん愛想がないじゃないですか。そういうことじゃだめだね。それはやはりやる気がないということだからね。いろいろなことを言ってもそれでは後ろ向きですよ。そうなると地方が前進しますよ。ことしは相当な地域で研究がありますからね。恐らく地方の方が先行して前進する。この間予算委員会で社会党の野坂浩賢議員の質問に対して農林大臣は官民一体でやると言った。官民一体という言葉は非常にいい言葉ですね。いま民が進んでいる。官がおくれている。ハトムギのときだってそうじゃないですか。民間が進んで官が後からついてきたじゃないですか。それで最近では五十万トンくらいを目標にしていこうじゃないか、こういうぐあいに言われているとおり、役所の考えていることだけが最高の知恵じゃない。民間にもいい知恵がある。そういう知恵を活用して一緒になってお互いが信じ合っていかなければ前進しないじゃないですか。そういう点で、もう一遍それは考慮する、検討するぐらいのことは言ったっていいでしょう、大臣
  79. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 先ほど来申し上げてきておりますとおり、えさ米の問題につきましては、政府としては研究の段階であるという認識のもとに、そういう研究の段階において官民挙げて研究を続けてできるだけ成果を早く上げよう、こういうことを予算委員会で申し上げた次第でございます。これはもう竹内委員も十分認識されておられると思うのでありますけれども、役所の諸君の重い腰を起こさせるために技術者の見解を確認をしなければならない、こういうことで、私も就任早々筑波の十一ですかの農業試験場に参りまして、多くの研究者の諸君の話をじかに聞き、見、そうして、なるほどこれは将来は超多収えさ米の造成が図れれば日本としては相当利用価値があるな、こういうことで早く結論を出すのに全力を挙げるべきだという決意を私もした次第でございます。
  80. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に。防衛庁の問題で予算をふやせと言えば野党が騒いでそれこそ首にしろ、こう言うけれどもえさ米をつくることに一歩踏み出せば、この大臣全国農民がむしろ旗を立てて激励して、いつまでも大臣やってくれ、こういうふうになるんだが、この際、閣議で紛争を起こすぐらいにひとつがんばってもらいたいということを要求して、終わります。
  81. 田邉國男

    田邉委員長 武田一夫君。
  82. 武田一夫

    ○武田委員 私は大臣所信表明につきまして、まず最初に昨今の国際情勢を踏まえまして、特にレーガン政権の誕生というアメリカの事情、さらにまたソ連が第十一次ですか、五カ年計画を策定して、特に農業への力入れをしていくというような情勢があるわけでございますが、そういう国際情勢の中に置かれている日本農業立場というもの、それから今後の日本の歩むべき方向というものにつきまして、大臣がいかにお考えになっているかという、その点の所見をまずお伺いしたいと思うわけであります。
  83. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 農業の問題につきましては、先進国、開発途上国またそれぞれの社会主義国家、自由主義国家を問わず、やはり国づくりの基礎は農業だという意識を非常に強く最近持ってきているというふうに私は考えるわけであります。  特に、この間ASEANに行ってまいりまして、それぞれの政治的指導者の皆さん方が、やはり農業というものを安定をさして、国民食糧を少なくとも主食は自給をするという体制をつくることに全力を挙げておる姿を見てまいりました。これは中国においてもしかりでございまして、ある程度工業の方にブレーキをかけても農業開発に全力を挙げるんだと言っていたことが着々と実施をされておるという感じがいたすわけでございます。アメリカにおきましても、やはり農業というものに対して最も力を入れておるということは御承知のとおりでございます。  したがいまして、日本といたしましてもそういう点に、特に国会が昨年決議をされまして、そして自給力を強化をしなければいかぬ、昭和五十四年度の農林水産物資の輸入総額が二百八十九億ドル、三百億ドルになんなんとするというそういう事態、ほっておけばこれはもう輸入がどんどんふえてくる、それだけ日本農業が足腰が弱くなる、こういうことはもうほっておけない、こういう国会の御趣旨と政府は受けとめまして、八〇年代の基本方向を急いで答申もしていただくとともに、長期見通し閣議決定をいたしまして、そうして全力を挙げて自給力の強化努力をいたしておるところでございます。
  84. 武田一夫

    ○武田委員 いま一番大事なのは農業の復権ということが言われておりますが、私も八〇年代を通して考えますときに、やはり農業というものがあらゆる産業の基幹産業としての地位を確保できるという、そういう体制が大事だ、こういうふうに思います。そういう意味で、今後の施策の中でそうなっていくような方向をお願い申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  世界の食糧需給について政府はどういう見通しを持っているかということでございますが、長、中、短期という見通しがあるわけでありますが、その見通し、この問題についてまずお伺いしたいと思います。
  85. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 世界の長、中、短期の食糧需給の見通しについてのお尋ねでございます。  まず短期の方から御説明を申し上げますと、現在の世界の穀物の需給状況、特に一九八〇年でございますが、御案内のように米国の熱波による飼料穀物等の被害が非常に甚大でございましたし、またソ連は二年連続の不作ということでございまして、さらに中国の不作、その他日本もそうでございましたが、世界各地で異常気象による農作物の被害が見られるところでございます。FAOの発表によりますと、一九八〇年の世界全体の穀物生産量は十四億三千八百万トンということで、一九七九年に引き続きまして不作ということでございます。  品目別に見ますと、米、小麦については需給にやや余裕があるというふうに言われますが、粗粒穀物あるいは大豆につきましては世界全体でも減産になっているという状況でございます。このような状況を反映いたしまして、世界の穀物の在庫水準、特に粗粒穀物の在庫水準が中心になりまして低下をいたしまして、FAOによりますと、穀物全体の在庫率が一九八一年には一四%にまで落ち込むというふうに見通されております。また価格につきましても、昨年夏以来上昇傾向を示しておりまして、最近はやや落ちつきを見せておりますものの、かなり高い水準で推移をしている状況でございます。  次に、中期の状況でございますが、同じくFAOの一九八五年の見通しというのがございます。これによりますと、世界全体では需給が均衡するものの、開発途上国では七千二百万トンの不足ということでございまして、先進国では七千九百万トンの余剰ということで、大体均衡というのがFAOの見通しでございます。  さらに長期的な視野で見た場合にどうかということでございますが、FAOの「二〇〇〇年に向けての農業」という報告書によりますと、先進国等を中心といたしまして依然として食糧穀物需要が増大する、それから開発途上国における人口が増大するということによりまして、穀物の需給関係は長期的にもやはり楽観は許されないというふうに見られております。世界の人口がこの見通しでは六十億人余ということになっておりまして、三・八%というかなり高い農業の成長率を見ましても、なお二億四千万人の栄養不足人口が生ずるということでございます。
  86. 武田一夫

    ○武田委員 いずれにしましても、この需給見通しというのは、非常に厳しいという方向見通しはしかと心の中にとどめながら施策展開していかなければならないということは明らかなわけでございます。農政審答申の中で、その過程の中で有事の際の食糧自給というのが新聞に発表になりまして、これは答申ができ上がった段階で姿を消しているわけですが、これはどういう理由によるものか、事情を説明していただきたいのです。
  87. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  農政審議会の審議の過程におきまして、農産物の輸入変動を想定した場合の御議論がございました。その際、私どもからも資料を提出いたしまして、食糧輸入量が現状の二分の一ないし三分の二になった場合の国内の自給体制なりについて試算をいたしたことがございます。この資料に基づきまして農政審議会におきましてもいろいろ御議論をいただいたわけでございますが、なおその試算の前提条件等について問題が非常に多い、農産物のそのような輸入量の減少というのを単純に見られるのか、その場合に他の石油等の輸入というのを変動なしというふうに置けるか、あるいは最低の栄養水準、その当時は二千三百カロリーというような問題もございましたが、これがどの程度でいいのか、さらに平時の備蓄の水準なり、あるいは相当の耕地の開発を要するわけでございますが、そうしたものへのアプローチと申しますか手法等についてなお詰めるべき問題があるというようなことで、この点は資料に基づいて御討議はいただきましたが、答申では一般的に安全保障の問題といたしまして今後検討を深めるべき課題というふうにされたわけでございます。
  88. 武田一夫

    ○武田委員 いずれにしましても、前提とか過程、いろいろなもので非常に不備な点がたくさんあるということで、これから検討しながら今後の対応というのは考えなくちゃいけないわけです。ですから、私はたとえばここに出ておる輸入三分の二の第一のケースとか、二分の一の第二のケース、ゼロの第三のケースそれにまた国際的な情勢ですね、そういうものを踏まえた上での農林水産省としてのスケジュールといいますか、青写真みたいなものは研究しながら、いざいかなる場合でも一つのものをしかと持って対応することはできるのだ、こういうようなものを国民の前にはっきり示しておく必要があると思うわけであります。今後の検討の中でそういう機会を持つお考えですか。その点どうですか。
  89. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 御指摘のようにそうした課題がございまして、農政審議会の答申におきましても今後の検討課題とされております。私どもも省内に検討グループをつくりまして、不測の事態におきます安全保障の問題を、国際的かつ国内的のそれぞれの状況に応じた検討の準備を始めておりまして、いずれ農政審議会にもお諮りしながら、おっしゃるようにできるだけ取りまとめまして皆さん方にもお示しできるようにいたしたいと考えております。
  90. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、次に食糧安全保障の問題について伺いますが、まずこの食糧安全保障の根本というか核心というのは何だとお考えになりますか。大臣にお尋ねしたいと思うのでございます。
  91. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 やはり何といっても自給力を強化していくということが中核をなす。同時にどうしても国内生産困難なえさ等もあるわけでありますから、そういうものにつきましては安定的な輸入をきちっと図る、その体制をとることが中核である、私はこう思います。と同時に、やはりASEAN等の国々に対しまして、それらの国々が自給力を強化するということ自体もまた日本の輸入の安定的確保を間接的に助けるという立場から、そういう国々に対しても技術的なあるいは資金的な協力を積極的に行っていくということも大事な事柄である、こう私は考えております。
  92. 武田一夫

    ○武田委員 私もそう思いますが、私はもう一点、その中で特に国民が国土の風土的条件に最も適した農作物を基幹食糧として消費する体制が確立されておることというのが一番大事だ、こういうふうに思います。つまり、要するに国民消費する食糧農産物国内農業生産の中身とが相呼応しながら支え合うところに食糧安全保障体制の基本があると私は思うわけでありますが、このことを大臣もお認めだと思うわけです。この点はどうでしょうか。
  93. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 もっともなお話であると思います。
  94. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、その問題を一つの大きな重点の柱としての安全保障の確立というのが要求されてくるわけでありますが、いままでずっと見てみますと、需給見通しの云々というような問題、答申の中の問題等々見てみましても、いわゆる基本的な問題というよりも、どちらかというと二国間の協定の問題とか、あるいはまた食糧備蓄の問題というような対外依存的政策問題というものに重きがいくような気がしてならないわけでございます。この点については相当軌道修正をしていかなければいけないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  95. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 武田委員の御趣旨、全く賛成でございます。やはり一番日本の風土、気候に合って、また一番単収も上がりよくできるものを主食として用いていくということが、安全保障立場から見た際に大変大事であるということはおっしゃるとおりでございまして、農林水産省といたしましても文部省とも連絡をとり、学校教育の面におきましてもそういう点の配慮を、十分子供たちに理解させると同時に、給食の面でその実施を体験さして、やはり米のよさというものをみんなで知って、そうしてこれを消費していくということに最善の努力を払うということが農林省としての立場でございます。
  96. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、食糧安全保障対策前提となります平素における農業生産力の維持強化という問題、これは平素からの蓄えを強調しているということは当然のことで評価ができるわけでありますが、その中身というのはやはりもっとはっきりさせなくちゃいけないのじゃないか。あいまいであってはいかぬ。農家の皆さん方なんかにも行っていろいろお聞きしますが、一つには、平素からの備えを強調していくならば、やはりわれわれにもつとわかるような、理解できるようなそういう話をしてくれということであります。  これは前回のときにも話したのでありますが、自給率と自給力の問題、自給力と自給率とどういうものかといっても、特に自給率の存在というものがどうもはっきりしない、そういう話もございますが、特に輸入の安定確保と備蓄あるいはまた食糧自給力の維持強化が平面的に並べられ過ぎているのではないか。やはり輸入依存にたとえばガイドラインを設けてやるとか積極的な対応があってしかるべきではないか、こういうようなことも聞かれるわけでありますが、こういう問題についてはいかがお考えでしょうか。
  97. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 答申なり長期見通しの内容につきましては、先般も御指摘がございましたが、私ども昨年の十一月の閣議決定以来関係各方面にその趣旨を十分説明してきたところでございますし、また今後ともこの見通し方向に沿って施策の具体化と同時に関係者への理解をさらに深めてまいらなければならない、このように考えております。  食糧安全保障と申しますか安定的供給という面で、輸入の安定確保という面と、もう一つ自給力の維持強化という面と両面ございます。すでに輸入の農産物の安定確保という点につきましては答申の方にも十分述べておりますし、また備蓄につきましても、それぞれ各農産物につきまして民間在庫合わせまして二カ月以上の在庫水準を持つように五十六年度予算でも措置しておるところでございます。  自給力の全体の向上の方向といたしまして、私どもとしましては米は完全に自給する、野菜もほぼ完全自給する、果実、畜産物についても相当高い自給率を維持していこう、麦、大豆等の輸入農産物につきましても、食用向けの部分はできるだけ自給率を引き上げる、飼料作物につきましても約九十五万ヘクタールから百五十五万ヘクタールへとかなり大幅な作付増を期待しておるわけでございまして、全体に国内で自給できる農産物につきましては非常に高い水準を見込んでいる、このように考えておる次第でございます。
  98. 武田一夫

    ○武田委員 時間がないので次に移りますが、日本型食生活ということについてちょっとお尋ねしたいと思います。  まず、日本型食生活というものの将来像ですね、この答申を読みますと、まとめてみますと、一つは欧米諸国に比べて熱量水準が低く、その中に占めるでん粉質比率が高い等栄養バランスがとれている。二番目には、動物性たん白質と植物性たん白質の摂取量が相半ばしている。三番目に、かつ動物性たん白質に占める水産物の割合が高い、いわゆる欧米諸国と異なる食形態の独自のパターンを形成しつつある。この日本型食生活というものについての文章があるわけでありますが、日本型食生活定着ということに農林水産省では力を入れているようでありますけれども、まず第一番目に米の消費拡大との関係、これはどういうふうな関係でいくのか、御説明いただきたいのです。
  99. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 米の消費拡大につきましては、今後の日本人の食生活わが国の最も安定的な農産物と結びつけて形成していくというためにも重要であると考えておりますとともに、日本人の体位に合った栄養バランスという点からいたしましても重要であると考えておりますので、米の消費拡大事業という形で各種の事業をやっておるわけでございますが、特に学校におきます米飯給食事業を初めといたしまして、米の消費についての啓発普及事業または地域ぐるみの米の消費拡大事業というような形で、できるだけこの日本型食生活定着できるように消費の拡大事業を進めておるところでございます。
  100. 武田一夫

    ○武田委員 現在の日本食生活というのは、日本型食生活というものを考えたときに、そういうものに近いのですか、それともまた別な形のものだというふうに考えるわけですか。その点どうですか。
  101. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 日本型食生活につきましては、先生御指摘のようにわが国の熱量水準が二千五百カロリー程度で比較的低水準である、またその中の構成の比率、たん白質なり脂質、炭水化物のバランス等から見ましても比較的適正なものと考えているというふうに私ども現在評価しております。この評価の基礎になりましたのは、厚生省におきます日本人の栄養所要量の研究結果といたしまして適正比率目標というものがある種の許容限度を持った幅で示されておりまして、現在の姿もそういうふうになっておりますが、ただやはりわが国におきましても、若年層にはかなり畜産物等の消費が多いわけでございます。こうした層が今後育っていく場合にどうなるかということも考えますと、やはりこの適正比率目標の中にこれからの日本型食生活を誘導してまいらなければならない、このように考えておるわけです。
  102. 武田一夫

    ○武田委員 答申を見ますと、答申方向日本型食生活定着というものを実現させていく考えですから、その答申というのをちょっと見てみますと、まずこれは明らかに一人当たりの米の消費水準が現在よりも二割ぐらい低下する、こういうことですね。それから畜産物の消費が二、三割ふえる。これは十年後の昭和六十五年の食生活の実態です。十年後のこのときの標準がいわゆる日本型食生活のカロリー摂取量、たん白質とかいろいろな、メニューは別としまして、こういう内容のものがいわゆる日本型食生活と言える内容なものか、その点はどうなんですか。
  103. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 六十五年におきまして御指摘のような姿になりました際にも、先ほど申しましたような適正な栄養目標水準というものの許容限度におおよそ入るということになっておりますので、私どもとしましては日本型の食生活がそういう形に定着できることを望んでおるわけでございます。  なお、畜産物なり米の消費量について御指摘がございましたが、先ほどもお答えいたしましたが、米の消費量の減少の傾向につきましては従来二・五彩ぐらいの年率でございましたのを、この場合には二%程度の年率の減少と見込んでおりまして、従来よりは減少のテンポを著しく低くしておりますのと、畜産物の需要につきましても、従来のテンポよりもかなり抑えた年率の伸び率になっております。そういう姿でこれからの日本型食生活定着確立を図っていかなければならないだろう、また、これが御指摘食糧安全保障にもつながるゆえんだろう、このように考えておるわけでございます。
  104. 武田一夫

    ○武田委員 そうしますと、いずれにしましても、今後十年間というのは米の消費の減退傾向は進行していくという中で、その進行の度合いに少しずつブレーキをかけていくのだという程度である。しかしながら、二割くらいは減退していくということを是認しながらの食生活定着ということでありますが、私は、それでは果たしてその後六十五年以降どうなるのかという一つ見通しも、聞こうと思いませんが、考えるときに、こういういわゆる欧風化といいますか、洋風化というのが出てきた原因というのは、生活様式が多様になってきたし、あるいはまた経済的に非常に豊かになってきたとかいろいろあるわけでしょう。奥様方が非常に簡便なものを求める傾向が出てきたとか、あるいはまた栄養の面でどうとかと、いろいろ要素があるわけです。果たして六十五年以降もこういう消費減退というのは続いていくものか、あるいはまたその減りぐあいというのはもっともっと小さくなっていくものかという保証は何もないと思うのですよ。六十五年でその程度で米の消費減退がおさめられるという、そういう自信は農林水産省の中にお持ちなんですか。  私は、やはり日本型食生活定着という以上は、米の問題が重要な中心課題になってくるわけですから、その消費拡大という言葉があるとおり、減らすというのを少なくするというよりは、もうこの時点では減らないし、またこの時点からは多少なりとも安定的にそれが続いていくとか、あるいはまた少しふえていくとかというものが提示されない限りは、つくる方も大変でしょう。それじゃこの後にまた生産調整が続くのかといういろんな心配があるし、そういう点を考えたときに、そうした米の消費減退が依然として今後も続いていくというような方向での日本型食生活定着というものは、やはりもう少し中身を検討しながら考えていかなければならない、こういうふうに思うのです。  昨年十二月に五十四年の食料需給表というのが出されたのを見ましても、一人当たりの消費量というのは米が七十九・八ですから八十キロを割っているわけですね。ですから、三十七年のいわゆるあのピーク時の百十八・三キロですかに比べますと、もう三分の二の水準に落ち込んでいるわけであります。反面、肉類、乳製品、油脂類というのが三%から五%くらいふえておるわけです。  こういうふうなことを考えると、やはり生活水準の上昇が今後続くでありましょうし、また町村の都市化もどんどん続いていくでありましょうし、こういういろんな要素が重なってくると、果たして六十五年のときにそういう形のものでいいものか、かえってこの日本型食生活の地盤沈下というのを大きくさせていくのではないかという心配が非常にあるわけです。ですから、この見通しの中で、できるならば十年の中の三年とか、一つのけじめの中で、そういう努力の結果、日本型食生活というものがこういうふうにできて、これをやると米を食べる方もふえてくるし、いままで減っていたものがストップするというようなものを国民の前に、われわれの前に示す必要があると思うのです。そういう作業をこれから何か検討会でやるというのですが、そういうことをしっかりと踏まえてのいろいろな要素は、どういう機関でどのような形でやっていこうとするのか、その検討会の内容をまずひとつ説明できるなら話してもらいたいと思うのです。
  105. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お米の消費減退の過程につきましては、先生も御指摘のように、やはり農村部におきましても米の消費量は減退している傾向がございますし、都市におきましても、現在二十代ぐらいの方々の年間の消費量は一人当たり三十キロ台ぐらいでございますし、三十歳代でも五十キロ前後、四、五十代になって初めて七十キロ前後というような水準でございまして、こうした層が今後十年たちまして世代交代してまいりました際に、いまの減退傾向をいかにとどめるかということを私ども日本型食生活の点でも大きな課題としてとらえておるわけでございます。一方ではやはりあわせて畜産物等の需要も年々増加するというような傾向もございますので、こうしたバランスが、わが国におきましては二千五百カロリー程度という非常に低いカロリー水準がまた健康な食生活を維持しているという経過もあるわけでございまして、こうした中で、基本的には嗜好の問題ではございますが、やはりわが国としてこうした方向へ誘導していくことがこれからの食糧安全保障からも重要だ。  そうした意味農政審議会におきましてもさらに日本型食生活の確立、定着を図るための検討を深めるべきだということで、私ども省内におきまして部長、審議官クラスをもちました検討組織グループを先般スタートさせると同時に、アメリカにおきましては食生活についてわが国よりも非常に高カロリー水準で過食傾向でございますが、こうした食事メニューの指導等の農務省のデータ等を取り寄せまして、目下準備を進めております。いずれ農政審議会にも諮って具体的な作業をいたしまして、これからの日本型食生活の問題について具体的な方向を私どもとしては打ち出したい、このように考えております。     〔委員長退席、羽田委員長代理着席〕
  106. 武田一夫

    ○武田委員 時間も迫ってきましたので最後に一つ聞いておきますが、私は先ほども申し上げましたけれども安全保障の核心というのはやはり米食の見直しということが大きな課題だとも思うわけです。ですから、日本にふさわしい形態の食生活国民の間でつくり出されて普及されるように誘導すること、これがこれからの大きな政策課題だと思うわけであります。それがやはり一番大きな政策目標だと思うわけでありまして、そのための努力を一層していただかなければならないし、農林水産省としてもそういう方向での努力をなさるということであります。  そこで私は、この際、それじゃ米の消費拡大というのはなぜ必要なのかということ、これが果たして国民に多く理解されて浸透しているか、こういう問題を考えてみたいと思うわけでありますが、大臣のお考えとしては、この米の消費拡大というのはどういう点から必要だとお考えになるか、簡単にひとつお話し願えれば幸いだと思うのです。
  107. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 やはり日本で一番よくできるものを主食として用いていくということが私は大変大事であろう、こう思うわけでございます。したがって終戦直後の混乱したああいう政治情勢の中で食糧が極端に逼迫したときに、アメリカの余剰農産物中心として、脱脂粉乳を中心とした学校給食というものを行ってきた。それが三十数年間にわたって主として粉食というものを、小麦を中心にした食生活を体験的に教えてきた。これが米を疎外する一つの大きな原因であろうと私は考えるわけでございます。したがいまして、日本の風土、気候に最もよく適した、しかも食品としては最高の栄養価値を持つ米というものの見直しを、子供のころから認識を持たせる、そういう努力がいまの小学校、中学校教育においてやっととられるようになってきたということでございます。もう少し教育面においても米の重要さを子供たちの時代から知らしめていく。同時に、教えることは教えておるわけでありますが、実行面において学校給食というものが粉食中心である、こういうことでは、農林水産省が幾ら努力をいたしましても、なかなかこれは容易ではないなという感じを私は持つわけでございます。  学校給食会という組織も、歴史的な伝統と申しますか、そういうものがございまして、非常に強力なものを持っておるわけでありまして、なかなか私どもの言うことが徹底させてもらえない、週二日に持ってくるまでにも、もう本当に長年の年月を要しておるということにかんがみまして、これは根気強く、あらゆる機会を見てやってまいるということが大変大事である、こう考えております。     〔羽田委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 武田一夫

    ○武田委員 午前と午後に分かれているものですから、あと一分だけ、締めくくりますので。  それで、いま大臣が言われたのはそのとおりだし、またこれは栄養的にも非常にすばらしいものである、国土に合ったそういうものを食べる、それが即やはり一つ安全保障の基本でもあるというような観点の、そうした思想というものは、もっともっとあらゆる角度で国民の中に定着させながら、それが体でわかるような対応というものを今後の課題として私は要望しておきます。  あとの問題は午後からにさせていただきます。  以上で終わります。
  109. 田邉國男

    田邉委員長 この際、午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  110. 田邉國男

    田邉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  111. 武田一夫

    ○武田委員 午前中に続きまして質問をいたします。  米の消費拡大の問題についてお尋ねいたしますが、午前中でもお話しいたしましたけれども日本型食生活定着ということと米の消費拡大というのは、できれば関連の強くあらわれてくるのが望ましいと私は思います。  そこで、消費拡大の面につきまして、まず一つとしましてはどの階層が米を平均より食べないのか、この階層にはもっと米を食べてもらえればありがたいのだ、そういう階層があるわけであります。学校給食等々で米飯などが推進されておりますけれども、総理府の家計調査などを参考にいたしますと、これは五十三年の例でございますが「成人二人世帯における世帯主年齢別一人一年当たり米購入量」というデータがあるわけでありますが、二十代から三十代の前半、三十四歳までは年間五十キロ以下であります。特に二十歳から二十四歳というのはこのグラフによりますと三十キロくらい、二十五歳から二十九歳というのは三十二、三キロだろう、こう思います。  こう見ますと、比較的たくさん米を購入されているというのは四十代、五十代、六十代ですか。こう考えますと、二十代から三十代の前半というのがもっと米を食べるような習慣というのを身につけさせなければならない。前に調べたところによりますと、特に女性の二十代、十代の後半が食べないということでありますから、やはりこういう一つの階層というものに対する対応というのが考えられなければならない、そこに日本型食生活定着一つポイントがあるのじゃないかと私は思うのであります。  そこで、昨年十一月ですか、大日本水産会の主催で「九〇年代の女性の食生活」というシンポジウムがあったのだそうでありますが、そのときに四人の講師の方々がいろいろな意見を言っておるわけであります。シンポジウムで出た意見の中で、これからは「手間がかからなくて、食べる人の評判の高い料理への関心が高まり高級惣菜が普及するであろう」という意見が出たそうであります。それから二番目には「ラクをしておいしい料理をつくる女性の“ラク志向”を支えるのは加工食品だろう」ということもここで一つの結論として出されたそうであります。三番目には「手間ひまかけてゆっくり食事を楽しむヨーロッパ型の食事のとり方がふえるだろう」四番目には「有職主婦の増加や余暇ねん出のため、食生活の簡便化や手抜きが進む一方で、週末における一点豪華主義の手づくり志向が強まり、二極化現象が顕著になる」であろう等々の意見が出されております。そして「食生活の全般的傾向としては、食べ方は雑食化(混食化)、好みでは食料支出の相対的低下、機能では料理の効率化、二極化、趣味化」こういういろいろな意見が出されたようであります。  こういうものを見ておりますと、今後の対応について、女性という一番台所を預かる方々への対応というのが非常に重要だと思うわけでありますが、こういうところに対して、消費拡大の中でいままで政府がやってきましたそういう対策というものは十分考慮に入れてなさってきているものかどうか、その点をまずお尋ねしたいと思います。
  112. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいま御指摘のように、今後の米の消費拡大を進めるに当たりましては、女性に理解と協力を得ることが非常に重要であると考えております。  食糧庁が実施をいたしております米の消費拡大事業の中におきまして、たとえば地域ぐるみの米消費拡大事業がございますが、市町村中心となって実施していただいております米の消費拡大事業の中におきましては、料理講習会というものが相当多くの事例を占めておりまして、この料理講習会におきまして米の普及に努めておるわけでございます。その際には当然女性の方々の御協力と御理解を得ることになっております。  それからまた、小売店を通ずる米の消費拡大事業を進めておりますが、小売店が米の会を開きまして消費者と結びつきを強化いたしておるわけでございます。この米の会におきます主な事業といたしましても料理講習会が重要な内容をなしておりまして、この際にも婦人の方々に参加をお願いしておるというようなことでございますので、従来もこの婦人の方々の協力を得るよう努めておりますが、今後ともさらに一層努力したいと考えております。
  113. 武田一夫

    ○武田委員 そのやり方はいろいろとあるのでしょうが、一般的にはどういう形でなさっているのか。私はあちこち歩ってみましても、そういうものが行われているということが、断片的といいますか、地域的に偏りがあったりあるいはまた非常に少ない、何か申しわけ程度にやっているようにしか思われない。確かに消費拡大の運動を地域ぐるみでやることは大きな課題として挙げているわけですから、それで栄養士や医師、消費者団体などによる啓蒙活動ということを重点的に訴えているわけですが、この面の呼びかけといいますか働きかけがまだまだ弱いと思うのです。ですから、この問題につきましては今後相当力を入れていく必要があると思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  114. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいま申し上げました地域ぐるみの消費拡大事業といたしましては、市町村を指定をいたして実施しておるわけでございますが、市町村数といたしまして一般事業において千八百市町村を指定をいたしております。また特別事業、特に濃密に実施をしていただく市町村として二百市町村を指定いたしております。実はこの事業は昨年、五十四年度から始めました事業でございますので、まだ十分成果を上げるに至ってない面もございますが、相当程度こういった広がりを持って事業を始めております。  この事業の中におきましてはいろいろなタイプがございますが、その中におきまして料理講習会というような形で婦人の参加を呼びかけている例がだんだんとふえてきておりますので、今後はこの地域ぐるみの事業を通じましての婦人への理解と協力を深めることが可能であると考えております。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃもう一つ栄養士、医師等による啓蒙活動というのはどういうふうになさって、どういう実態なんでしょうか。
  116. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 医師による米の消費拡大事業と申しますのは、日本医師会にお願いをいたしまして、日本医師会におきまして、医学的な面から見た米の効用または米を中心とする食生活の健康上の問題というようなことにつきまして、短波放送を通じます普及をしていただいておりまして、一年間こうして放送をしました内容を印刷物にいたしまして全医師に配付するというような形で医師会全体に米の理解を深めるということをやっていただいております。  それから栄養士会につきましては、栄養士会とお話をいたしまして栄養のとり方等につきましての理解を深める話をいたしておりますが、医師会ほど組織的な形ではまだやられておりません。
  117. 武田一夫

    ○武田委員 美容と健康に非常にいいんだというような一つのテーマの中で米の消費拡大が進むならば非常に結構なことだと思うのですが、今後の課題としまして、たとえばテレビなどをもっと活用すべきではなかろうか、こう思うわけです。商業ベースの、コマーシャルベースの中になかなか金をつぎ込めないというようなことを言っているのですが、いま医師の場合ですが短波でやっているということです。いまテレビの時代ですから、たとえば料理の講習にしたって、御飯のおいしい食べ方にしましてもメニューにしましても、もっと公に出てきたテレビを大いに活用する、思い切ってその方にPR活動の半分か三分の一くらいつぎ込んだ方がかえって効果が上がるのじゃないかと思いますが、そういう考えはいまのところないわけでございますか。
  118. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 米の消費拡大事業につきましてテレビを通ずる事業も実は現在までやっております。一つ全国三十二局におきまして週一回十五分でございますが「キッチンパトロール」という形での料理番組を実施をいたしております。それからもう一つは大きな消費地六局におきまして「食べもの百科」ということで、一回五分でございますが、週五回月曜日から金曜日まで食料情報番組を流しております。このほか大きな消費地十局におきまして十五秒のスポットものでございますが、スポット放送もやっております。これらの手段を通じましてテレビの活用も図っておるところでございます。
  119. 武田一夫

    ○武田委員 テレビの活用については、時間帯などもよく考えた上での対応をこれからもっと検討してほしいな、私はこういう要望だけしておきまして次に移らせていただきます。  転作の問題についてお尋ねいたします。  これから第二期の生産調整に入るわけでありますが、転作についてまず第一番目は、将来稲作面積の三分の一を転作させるということでありますが、その目標は最後まで貫く決意で今後も臨むのか。それから二番目には、麦や大豆が定着して発展する見込みは間違いなくあるのか。第三点は、転作を促進するのに膨大な財政負担があるわけですが、これはいつまでも継続できるものか。この三つの点についてまず御答弁をいただきたいと思います。
  120. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水田利用再編対策でございますが、これは五十三年度からおおむね十カ年ということでスタートをいたしております。その先の問題につきましては、現在のところは一応六十五年の見通しというようなことの、見通しというかっこうで出しておりますが、これは先生御指摘のとおり大体三分の一の水田が余剰になる、こういう姿でございます。  現在水田再編を進めておりますが、この物の考え方といたしましては、総合的な食糧自給力の維持強化を図るという観点に立ちまして、需要動向に即応して過剰なものから不足なものへ農業生産の再編成を進めていく、こういうことでございまして、これは避けて通れない農政上の重要課題である、かように考えております。したがいまして、今後とも農業生産の再編成という角度で取り組んでいくということでございます。  それから第二点でございますが、転作を進めます際に麦、大豆、飼料作物というような特定作物等をむしろ軸に誘導いたしておるわけでございます。これにつきましては次第に奨励補助金依存から脱却し得るような足腰の強い農業経営を育成していくということで、各般の施策生産対策なり価格対策なり、そういうものを集中してやっていきたいということでございます。  それから第三点の財政負担でございますけれども、これは先ほども申し上げましたように五十三年度からおおむね十年間という長期的事業としてやっておるわけでございまして、この間に転作農家が次第に奨励補助金依存から脱却し得るような、生産性の高い、定着性のある転作営農を確立していきたいということでございまして、この間につきましては当然奨励補助金といいますものは支出することになる、こういうことでございます。
  121. 武田一夫

    ○武田委員 もう一つ。仮に転作作物の増産に成功しまして国内でたくさんつくるようになる、こういうときに、米国の政治的圧力、レーガン政権の誕生で非常に積極的な輸出攻勢に出てくるのじゃないかという心配をしているわけでありますが、そうした圧力をはね返して日本農業農民を守るために毅然たる姿勢を間違いなく貫きますという決意はお持ちであるかどうか、この点について。
  122. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 それはもう申すに及ばないことでございまして、私も日本農業並びに農業者立場を十分に相手国に伝えまして、そしてお互いに理解し合うという努力は、これはもう徹底的にやらなければいかぬ、こう思っております。
  123. 武田一夫

    ○武田委員 その決意に従ってひとつがんばっていただきたい。  それで、団地化加算制度という問題をちょっとお尋ねします。  まず一つは、政府は対象面積をどのくらいと見ているかということですが、この点はどうでしょうか。
  124. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 団地化加算の対象面積でございますけれども一つは単一団地型ということで三ヘクタール以上の団地、ただし北海道の場合は九ヘクタールという形に相なります。それから複合団地型という場合におきましては、計画転作地区内におきまして、それぞれの団地が一ヘクタール以上、北海道の場合は三ヘクタール以上というものの合計したものがその地区内の転作面積の三分の二以上を占めるということを考えております。一なお、山間部につきましては平たん部よりは若干緩和をいたしまして、都府県の場合は〇・七ヘクタール、北海道の場合はこれの三倍の二・一ヘクタールというふうに考えております。
  125. 武田一夫

    ○武田委員 全体としてどのくらいの面積というのが予想されますか。
  126. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 団地化加算制度は、二期対策一つの特徴といいますか、新しく取り入れたものでございます。これから現実に二期対策の転作が進められるということでございます。したがいまして、これからの問題ではございますが、どの程度のカバー率を見込むかということでございますが、やはり今後の関係者の積極的な取り組みによりまして団地化が一層進むとともに、こういう団地化加算の対象となり得る連担団地といいますか、そういうものが増加をしていくということを強く期待をいたしております。  ただ、冒頭申し上げましたように、これから現実に農家の方々が取り組んでいただくということでございますので、現段階でじゃどこまでいくかということにつきましては明確には予測しがたいわけでございます。
  127. 武田一夫

    ○武田委員 この団地化加算制度について、計画加算より非常に要件が厳しくなるのじゃないかということで心配のようでありますが、この問題についてはいろんな事例を挙げて心配な問題について相談に来ていると思うわけであります。一般的にずっと聞きますと、やはり弾力的な運用を考えていかなければならないのじゃないか、そういう声が聞かれるわけですが、この点につきましてはいかがお考えでございますか。
  128. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 一期対策のときに基本額のほかに計画加算ということで、地域ぐるみの計画転作をやるときに計画加算額を出すということで三年間やったわけでございます。ただ、その際に計画加算ということで団地化等も企図したわけでございますが、これにつきましてはさらに一層の団地化を図る、もっと団地化の質的向上を図るべきではないか、そうでなければ本当の定着したものが、転作営農が実現できないではないかというような御指摘もございまして、質の高い連担団地というものを念頭に置いて、団地化加算というものを計画加算の上にさらにもう一段考えるという、二段構えの、二段ばねの計画加算制度を考えたわけでございます。したがいまして、その第一段目の計画加算の要件、これは従来と同じでございますが、この要件の上に、さらに質的に高い連担団地ということを実現した際に二段目の加算をやるということでございますから、計画加算よりは厳しくなるというのは、これは当然のことであろうかと思っております。  そういうことでやっておりますが、まだ最後的に要綱等は固まっておりませんが、要綱を固める段階におきましてただいま申し上げたような趣旨、これに照らして、質を下げるというようなことは考えておりませんけれども、実情の面から見ておかしいという面は若干の補正は当然あり得るということで、現在県などと協議中でございます。
  129. 武田一夫

    ○武田委員 次に、農村地域農政総合推進事業の推進ということでお尋ねしますが、この中で、担い手農家の育成とかあるいは農村地域への工業導入の促進ということが取り上げられております。まず最初に、農村地域への工業導入促進という問題、現状はどうなっているのかということであります。この点について御答弁いただきたいのです。
  130. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農村地域工業導入は、四十八年にオイルショックがありまして、その後の影響、一般的な不況の影響、こういった事情があって若干停滞しておったわけでございますが、五十三年になって景気の動向がやや上向いております。それとともに回復の傾向にありまして、最近においては比較的堅調に推移しているという情勢でございます。     〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕  若干数字で申し上げますと、制度発足以来十年目を迎えたわけでございますが、五十五年三月末現在でこの農村工業導入の制度によって操業しておりますところの企業は千五百四十八社、雇用従業員の総数は十万五千六百人ということになって、それなりに地域の就業対策として寄与しているところがあるわけでございます。  今後における農村地域工業導入の進め方につきましては、現在第三次の農村地域工業導入基本方針というものを策定するために作業を進めております。その中で、通産省、労働省といった各省とも協力しながら、農村地域工業導入促進協議会にお諮りして、いまの第三次の基本方針を御検討願うということにしておるわけでございます。それとともに、その基礎になりますところの全国の道府県、市町村、関係企業等につきまして、実態及び意向調査を進めているところでございます。
  131. 武田一夫

    ○武田委員 農村地域工業導入というと、これはいわゆる農村地域工業導入促進法によって積極的に進められてきたのですが、どうもここ一、二年前くらいから思わしくないというのが一つの大きな傾向であります。三全総が打ち出されまして、それによって定住圏構想というのが一つの目玉になってきたわけでありますけれども、それと同時に、経済的な問題がございまして、非常に不景気である、そういうようないろいろな条件が重なって、中には土地やあるいはそういうものを提供しながら肝心の工場が来ない、そのために造成した土地が遊んでいるとか、あるいはまたその金利に相当苦労なさっているとか、こういうような問題があるわけでありまして、この問題について相当てこ入れをしないと、そう簡単にこの工業の導入というものの促進は行われないというふうに思うわけであります。いまの状態をそのまま放置しておいて、この地域農政の総合推進事業の中の一つの重要な課題がスムーズにいくとは思っておりません。  そこで、そうしたいまだに計画が進まないような地域に対する対応、こういうものについてはどういうふうに当局としてはしていこうとお考えか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  132. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農村工業導入の問題は、地域によって個別に非常に事情が異なると思うわけでございます。一般的には、先ほど申し上げましたように一時不況の影響を受けて停滞しておりましたが、最近においてはその回復の動向が見られる。そして現在第三次の基本方針を策定して実効性のある計画に持っていきたい、いまこう考えているわけでございますが、第三次の検討に当たりましては、従来はどちらかと言えば一市町村一工場というような画一的な考え方があったわけでございますけれども、できるだけ複数の市町村から成る広域の単位で、それぞれの市町村が協力し合って役割り分担を行って工業導入を進めるというようなことを入れてはどうか。  それからさらに、地域性の差が大きゅうございますので、出かせぎ、日雇い等の不安定兼業が多くて地元就業機会の少ない、具体的には東北でありますとか南九州、こういったところの遠隔農村地域を重点に工業導入を推進するということで、全国べたでない取り扱いをしていく方がよかろうというふうに考えております。  それから、現在まで計画を進めておりながら個別の事情もあってそれが進展を見ない、そのために地域に種々影響をもたらしておるというようなところも確かにございます。そういったところに対しましては、この制度に乗っております工業導入でそれがうまくいかなかったというような場合には、今日まで融資について利子補給の措置をとっておりますけれども、その措置についてさらに期限七年以内で調整を図るというようなことで、償還について、後の方へしわ寄せをして償還ができるように条件の改定といいますか、弾力性ある措置を図ることとしております。  それからまた、取得造成したような団地について、どうしても工業導入が図れないというようなことで何か転換せざるを得なくなったというような場合は、学校用地でありますとか住宅用地でありますとか、公共の利益となる事業に振り向ける。そういう場合にはただいま申し上げました利子補給につきましては、これは目的外への転用ということになるわけでございますけれども、事情万やむを得ないということで、利子補給金の返還免除を認めるというようなこともいたしておるわけでございます。  そのほか個別に都道府県、市町村等と種々協力いたしまして、個別に起こっている問題に対しましては、それなりに現地の実情に即した指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  133. 武田一夫

    ○武田委員 次に担い手農家の育成の件、これは一つには、大臣もおっしゃっているように、農林水産業の体質の強化ということを考えると、これは大事な人材の確保が必要であるということで、後継者の問題と関係づけましてお聞きしたいわけでありますが、農林水産という各部門における担い手農家の育成という問題、後継者の問題いま一番手を打たなければならない問題を何だとお考えになるか。特に林業、漁業というものを中心にお尋ねしたいと思うのです。
  134. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 農業の部門におきます担い手の問題といたしましては、先般の農政審答申にも示されましたように、今後の問題として、中核農家の育成と、やはりこれからは農業の体質を強化いたしまして、技術、経営能力がすぐれて、高い生産性と所得が実現できるような中核農家を中心地域農業振興していくという方向でなければならないだろう、このように考えております。  畜産とか施設園芸等の部門ではそうした中核農家の生産のシェアはかなり高いものがございますが、残念ながら稲作等の土地利用型の部門におきましては、このシェアが非常に低い。こうした土地利用型の農業におきまして耕作規模の拡大を図っていく、いろいろ困難な条件はございますけれども、先般国会で成立さしていただきました農用地利用増進法を中軸に据えまして、利用権の集積をいたして地域ぐるみで農業振興に取り組んでいく、そうした中で中核農家、これからの担い手を農林省としてはバックアップしていこう、このように考えておるわけでございます。
  135. 武田一夫

    ○武田委員 私はあちこち歩きますと、農業も深刻ですが、特に林業と漁業に対する深刻さというのはそれ以上に一段と大変だ、こういうふうに思います。そういう意味で、そういう方面の対応というのはひとつ十分にやっていただきたい。答弁を求めませんが、お願い申し上げます。  そこで、次に酪農の問題についてお尋ねいたしますが、二月の中旬に党の衆参両院の農林水産委員の一行が北海道に三日間行ってまいりました。私たちはそれでいろいろと実情を聞いてまいりました。大変な状況というのを知りました。そこでわれわれは、酪農経営の安定対策に関する質問の主意書をいま政府に出してその回答を求めているところでございますが、その際いろいろとわれわれが見聞きし、感じ、農民から訴えられた問題等を取り上げまして質問いたしたいと思います。  北海道の酪農家の皆さん方は一生懸命やろうという意欲を持っている方が非常に多いというので、まず安心はしました。しかしながら、その中でかなりの借財を抱えている。しかも最近入植した若い方々が、急速な規模拡大によって大変御苦労なさっている。いま入ったばかりで元気がよくてやっているからよさそうなものの、このままの状況が続いたら大変なことになるのではないか、そういうのがわれわれの共通した受けとめ方でございました。  経営の悪化、いろいろと原因があるわけでありますけれども、現地の皆さん方の意見を総合的に申し上げますと、一つは乳価水準の下落がその原因であった。それから物価、飼料等の値上がりというのがその一つである。それから生産調整の問題があるということ。そして肉牛あるいは乳牛用の個体の暴落がその原因でもある。そして高利、短期の借金の累増というのがその苦しい原因である。五つの苦しみがその中で話されたわけであります。二千万、三千万はざらでありまして、四千万からもざらである。中小零細企業であればとてもとてもこれじゃみんな倒産だというような状況のものも相当多くあるというふうに伺ってまいりました。  そこで、私はまず政府にお伺いしたいのですが、これは予算委員会でも大臣から答弁があったと聞いておりますが、このはっきりした実態の調査というのを一日も早くなすべきではなかろうかと思うわけです。私はこの実態調査が非常にいいかげんなものだということを痛感いたしました。われわれが現場に行って農家の皆さん方の話を聞いたその話と、同じ人間のことについて農協で出された資料と町役場で言われたことではかなりの違いがあるということがわかりました。極端なことを言いますと、一年間の経営の収支決算が出てきました、Aさんという方の場合。それは農協さんでまとめたのでしょう。ところがそれを持って本人に行くと、こんな金はなかった、あるいは本人が知らないのかそれはわかりませんが、それを通していろいろ聞いても、こんなはずはない、こういうようなことがあちこちであるわけであります。  こういうことで、その実態というものをもっと正確に把握することがやはり一番大事なことではなかろうか。しかも、一つのデータが出てきたときに、政府が集めるデータというのは標準以上の方々が大体出ているのだ、それ以下のわれわれは政府の発表するデータには全然御縁のない立場ですよ、こう言うわけであります。ですから、その調査対象というのは、もっと一般農家の実情に見合った調査方法といいますか、調査というのをしっかりとなさらなければ、現地の様子とそのデータの食い違いというのが出てくるのじゃないか、まずこの点についての対応をしてもらいたいというのが一点であります。  それから二番目には、経営環境の悪化という問題ですが、政府のつかんでいるのは恐らく制度資金の問題だけではないかと私は思うのです。ところが全体として見た場合に、制度資金の方は六割で農協プロパーの方は四割ですけれども、苦しさの中においては、その返済している金利等の問題を考えますと、どうも農協プロパーの負担が相当深刻である、こういうことであります。そういう実態をよく把握した上での対応をなさっているのかどうかという問題が一つであります。  もう一つ資金対策にいたしましても、私はいま早急になされなければならないと思います。ですから、酪農救済対策としてその資金の問題はどのようになさろうと考えているのかという問題、その三点をまずお伺いしたいと思います。
  136. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  まず酪農、特に北海道の酪農の負債の現状でございます。  全体として見ますと、確かに御指摘のように負債は年々増加してきております。その中で最近二、三年の変化としては、系統資金等短期資金が増加しつつある傾向は否めません。ただ、念のために申し上げますと、こういった負債の増加と並行して急速に資産も増加しておりまして、そこら辺のバランスの問題は一つあるかと思います。  しかし、御指摘のように償還期に入って、一方乳価なりあるいは販売数量というものの伸び悩みから資金繰りがかなり困ってきている、バランスシート自体としては特に悪いかどうかなかなか問題はある点だろうと思いますが、資金繰り自体は困ってきているという認識は私どもも持っております。そこで、現在北海道庁が予算を計上いたしまして組織的な調査に入ることになっております。私どもも並行して各種の調査を行いながら、道庁、農協あるいは市町村等の調査結果を十分聞かしていただきまして内容を把握してまいりたいと思っております。  それから対策の問題でございます。  対策の問題につきましては、御案内のように昭和五十四年には経営合理化資金として百億円を、五十五年度には酪農経営安定推進資金として三百億円の低利融資を行ったわけでございますし、また貸付条件の緩和等も進めてまいりました。さらに五十四年からは自創資金の融通の道を開いたわけでございます。当面、五十六年度におきましては、自作農維持資金の融資枠の拡大、さらには、要すればいま現在検討中でございますが、融資限度の引き上げ等も検討しているところでございまして、それを考えていかなければならないだろう。しかし、先ほど申し上げましたような調査の結果を十分把握いたしまして、その上で必要な対策考えたいと私どもも思いますが、先生も御指摘のように、いままで見ました状況ではかなり経営格差があるという認識を持っておりまして、画一的な問題ではなくて、経営の実態に応じた、段階に応じた負債整理のあり方を、そういった調査結果を待ってこれから検討しなければならないと思っております。
  137. 武田一夫

    ○武田委員 よく実態をつかまえての対応をしないといけないという、このことを私も痛感してまいりました。そういう点で一日も早くその実態をとらえた上での、しかも早い対応策を検討してもらいたい、こういうふうに思います。  次に、国産チーズ工場建設構想の問題であります。  われわれが行きましたら、北海道でも国産チーズの工場建設というのは相当要望が強く、期待の眼で見ているようでありますが、この構想の現状というのはどうなっているか、まずお尋ねしたいのであります。
  138. 森実孝郎

    森実政府委員 昨年来提案されましたいわゆる国産チーズ工場の構想は、現在農業者と乳業者の話し合いの中でいろいろな面から完全にデッドロックに乗り上げてしまったということは否みがたい事実だろうと思います。そういう意味で、私どもは現実的に問題を進める必要があるという認識を持っております。特に工場をつくってチーズをつくるという話でございますから、つくったものが確実に売却のめどがつくかどうかという問題が一つ問題になるだろうと思いますし、新しい販路を確保できるようなチーズをつくるためには生乳取引についても相当考えなければならぬと思いますし、農協と乳業との提携というものを生み出していかなければならないと思っております。  しかし、私どもは、国産チーズの基本構想を進めることは、基本的にはわが国の酪農の振興を図る上で重要な課題だと思っておりますので、これから現実的な視点に立って関係者の皆さんからいろいろ御提案をいただき、それを私どもも現実的に十分審査した上で、必要に応じて援助を考えていくべきではなかろうかと思っておりまして、現にいろいろ提案も出てまいりまして、これについても私どもも御意見を申し上げて問題点を詰めていただく、それが詰め切れるかどうか、また詰め切れなければ、さらにどういう案を考え得るかという現実的な展開を図ってまいりたいと思っておるわけでございます。
  139. 武田一夫

    ○武田委員 いまはいろいろと問題があっても、あくまでも実現の方向への意思はかたいということで理解してよろしゅうございますか。
  140. 森実孝郎

    森実政府委員 飲用乳の価格の安定とチーズの国産化という問題は、酪農、特に北海道の酪農を考える場合重要な課題だろうと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、つくったものが売れるかどうか、それからどういう形で乳業と農協の間に提携ができるかという、現実的な条件が充足されなければなかなか軌道に乗る性質のものでもございませんので、そういう可能性を十分検証して、できるものであれば、できれば積極的な応援をしなければならないであろう、こういうつもりで具体的な提案を検討しているわけでございます。
  141. 武田一夫

    ○武田委員 時間もなくなりましたので、最後に、水産庁においでいただいていると思いますが、近年入漁料が年々高くなるということで、それでなくても燃油の高騰あるいはまた魚価の低迷という中での入漁料の値上げは今後どうなるんだという心配、現実に困っているところも多いようでありますが、この辺の状況はどうなんでしょうか。
  142. 今村宣夫

    ○今村政府委員 本格的な二百海里時代を迎えまして、それぞれの国が自分の二百海里の中の魚は自分のものだというふうに思っておるわけですから、どうしても入漁料というのは高くなる傾向にございます。私たちは漁業交渉、政府間の交渉はもとよりでございますが、民間協定を締結いたします場合にあっても、できるだけ入漁料を低く抑えるということで鋭意努力をいたしておるところでございまして、大体大きく見まして入漁料の水準というのは三%ないし四多ぐらいでございます。特に南太平洋の諸島におきましては、入漁料が国の非常な財源になるというようなことで高くなる傾向がありますけれども、私たちとしましては、できるだけ現行の水準より余り上がらないように努力をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  143. 武田一夫

    ○武田委員 その入漁料の値上げについて、政府としては漁業経営の安定という立場から特にそうした問題に対する対応というのをお考えなわけですか。何かございますか。
  144. 今村宣夫

    ○今村政府委員 南太平洋の諸島での入漁料は一括払いでございますから、そういう点に着目いたしまして、南太平洋に行きます漁船の入漁料につきましては、基金を設けて低利融資を行っているところでございます。
  145. 武田一夫

    ○武田委員 その程度では今後の対応には非常に物さびしく、経営の面の非常な厳しさを乗り切るのはむずかしいというような情勢が出てくるのじゃないかと私は心配します。  大臣、今後日本型食生活定着の中で、魚もやはり一つの大事な部門を占めるわけです。入漁料が高いとなると当然魚が高くなる。そうすると、先ほども話がありましたように、どちらかというと安い値段で、安い材料でうまいもの、いいものを食べようという傾向が強くなる。ということになると魚が高くなる。そうなるとますます日本型食生活定着云々という中の挫折が出てくるのじゃないかと思うのですが、この辺のことも考え合わせてこの入漁料の問題についての対応を、ひとつ大臣から決意と今後の方向というもの、こうしていきたいというものがございましたらお聞かせ願いまして、私の質問時間が来ましたので、終わります。
  146. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 日本の遠洋漁業というものは、本格的な二百海里時代の到来に応じまして非常に厳しい情勢になっております。ASEANに参りましたときも、それぞれの国においてはやはり相当大きな期待を持って、日本から入漁料をできるだけ多く出してほしいといったような希望があるわけであります。ただいまも水産庁長官からお話し申し上げたとおり、さらに南太平洋の最近続々と独立してきております島嶼諸国におきましても、やはりこの入漁料が国の財源というようなことで、これまた要請が強いわけでございます。  そういう中で、技術を提供し、あるいは漁船を提供し、あるいはいろいろと漁法等の指導もするということで両国関係の融和を図りながら、水産外交とでも申しますか、そういう努力を続けまして、そしてできるだけ高額な入漁料にならぬように努力をいたしておるわけでございます。
  147. 武田一夫

    ○武田委員 終わります。
  148. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 稲富稜人君
  149. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、先日行われました大臣所信表明に対しまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まず私は、亀岡農林大臣は自民党内におきましても農本主義者として評価されている方である、かように考えておりますので、今回日本農業がこういうような後退している中に、その亀岡農林大臣農林大臣としてその任務を持って就任されたということに対して非常なる期待を持っておると同時に、わが国農業に対する一つの救世主でもあっていただきたいというような考えを持っておるのであります。もちろんそういう意味から農林大臣の将来の農政に対する期待を今後も続けてまいりたいとは思っておるのでございますが、先日の農林大臣所信表明を承っておりますと、私が期待いたしておりましたように本当に日本農業をどうするかという情熱がおありになるかどうか、はなはだ失礼でございますけれども、そういう感さえ深くいたしたのであります。  農林大臣は、その所信表明の中において、いろいろな農業の困難な情勢を踏まえながら、決意を新たにして強力な農林水産行政展開をしてまいりたい、かように述べられておるのでございます。しかもその内容については、昨年十月農政審議会が答申いたしました答申を尊重して、長期的な視点に立った政策の推進を図るというふうに申されております。よって、そういう点からであるだろうと思いますが、大臣所信表明を承っておりますと、何だかその答申書に対する答弁をしていらっしゃるような感じが私はいたしたのであります。何だか人のつくった原稿をいやいやながら読んでいるのだというような失礼な感じさえいたしたのであります。  私が亀岡農林大臣にお願いしたいことは、こういうような日本農業の中において、この際、亀岡農政というものはこういうものである、日本農業の将来はこうあるべきである、農民が安心できる、そして農民に希望を与えるような農政を確立されることを私は希望いたしておるのでありますが、その熱意というものがどれほどおありになるか。私が考えますと、今日まで日本農業というものは米中心農業であった、それが米以外の農業考えていかなくちゃいけないというような日本状態、こういう点から見まして、あるいは亀岡農林大臣は農本主義者としていささか戸惑いをし、あるいはこれに対する不安を持っていらっしゃるのじゃなかろうか、かように考えました。それだから、確信のある自分農政というものをはっきり打ち出せなかったのじゃないか、ただ農政審議会のそれに沿うてこれを実行するのだというような弱腰になられたのじゃないかとさえも私は考えたのであります。  その点から私は、亀岡農林大臣に本当に希望を持ってこの際やっていただきたい。この間だれかの質問に対して、私は六月には農林大臣をやめるかもわかりませんと答弁になった。そんな弱腰では、今日重大なときに、農民農林大臣に全幅の信頼をして希望を持ってその仕事に、経営に立ち向かうことはできないと思います。農林大臣みずからが日本農政を確立するために希望と信念を持って立ち向かうことによって、初めて農民農業に対して期待をし魅力を感ずると思います。この点に対して農林大臣はどういうような決意を持っていらっしゃるか、冒頭にひとつ率直に気持ちを聞かしていただきたいと思います。
  150. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 稲富委員から望外の激励をちょうだいして恐縮いたしております。  所信表明でも申し上げましたとおり、日本農業をめぐる情勢というものはまことに厳しいわけでございます。特に高度成長を遂げました日本、高所得国家であります日本、その日本の中において生産性の低い第一次産業である農業をやっておる農家の諸君が、本当に農業に生きがいを感じて、しかもその生きがいを感じて働くその代価が都市勤労者に負けないような、農村の所得を上げる農業をつくっていこうということで基本法をつくってやってまいったわけでございます。  しかるところ、米の生産については非常に大きな成果を上げたわけでありますけれども国民食生活の変化で米の過剰という現実が生まれてきておる。この過剰を克服しながら、しかも農家の収入を確保してまいるという、まことに至難な道を歩まなければならない、こういうことになりました。その反面、外国からの農林水産物資の輸入がどんどんふえてくる。そこで国会において、政府食糧自給力強化を図らなければならぬぞという決議をいただき、しかも農地法、農用地利用増進法等の制定までしていただいた、こういう環境をつくっていただいたところに私は農林水産大臣として就任させていただいたわけでございます。  したがいまして、国会の御意思に沿い、農政審答申をできるだけ急がして、そうして長期見通し閣議決定をしていただきました。まず何としても国民の世論をある方向に統一しまして、そうして強力な農政展開してまいりますためには、やはり相当な思い切った予算措置というものをとっていかなければなりません。その予算措置をとってまいりますためには、やはり一般国民、納税者の理解も得なければならぬ。  そういうような考え方で、農業を愛するがゆえに、農業を重視するがゆえに、また農家の将来を考えるがゆえに、農家の方々にももう少し温かい、もう少しやわらかいことをやってほしいという気持ちはわかりますけれども、かわいい子には旅をさせろという、農民魂を発揮するような面も農家の皆さん方に呼びかけながら施策を進めてまいりたいということで、生産者米価の決定さらには冷害対策、第二期対策、豪雪対策等々、私としてはできる限りの努力をいたしておるつもりでございます。
  151. 稲富稜人

    ○稲富委員 今日農民大臣に期待するところは、いろいろ農政審議会等の意見を聞いてこれに応じて対策をやっていこうということよりも、もちろんそれを参考になさることは結構でありますが、今日こういう過渡期における日本農業というものはこういうものを将来目途としていくのだ、こういうことをして日本農業を確立するのだ、農民は信頼しておれについてこい、このくらいの気魄を持って日本農業を立て直さなければいけないときが来ておると私は思うのです。この気魄が大臣に必要であるし、その気魄が大臣にあってこそ農民農業に希望を持てる。  現実に農民は、一体日本農業がどうなるか、自分たちの将来はどうなるかということに非常に惑いを持っております。迷いがあります。そこに農業経営者の不安があるのです。そこからすなわち農村後継者も出ないというような実態に置かれておるのであって、そういう点を考えてひとつやっていただきたい、かように考えます。  ただいま、こういうことから農業基本法というものができたのだ、それに沿ってやっているのだということでありますが、農政審議会もその中にこういうことを書いております。「農業と他産業間の生産性・所得格差を是正する」ということが必要であると言っております。これは改めて今日審議会が言うまでもなく、農業基本法の第一条の中には、すなわち「国の農業に関する政策の目標」ということでちゃんとこのことをうたってあります。これが実行されていないのが現在の状態なんです。  しかもただいま外国農産物輸入の問題もおっしゃいましたが、この問題も御承知のとおり農業基本法の第十三条の中には明記してあるのですよ。すなわち「国は、農産物につき、輸入に係る農産物に対する競争力を強化するため必要な施策を講ずるほか、農産物の輸入によってこれと競争関係にある農産物の価格が著しく低落し又は低落するおそれがあり、その結果、その生産に重大な支障を与え又は与えるおそれがある場合において、その農産物につき、第十一条第一項の施策をもつてしてもその事態を克服することが困難であると認められるとき又は緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとする。」ということをちゃんとうたってあるわけです。  これをいままでやらないのですよ。それだから農民というものは非常に農業の将来がどうなるかという不安を持っている。ところが農政審議会の答申を見ますると、「農業と他産業間の生産性・所得格差を是正する」ということがうたってありますけれども、いままで農業基本法で実現しないことをそのままうたってある。これでは農民がますます将来の農業に対する戸惑いをすることだと思うのです。  それだから私は、こういうことにこだわらずして大臣大臣として、亀岡農政を重視するのだ、亀岡農政というのはこういうものだ、こういうことをひとつあなたは農本主義者として日本農業の将来を考えて決意してやっていただきたい。これが私のあなたに対する強い要望なんです。その決意だけをひとつ承りたいと思うのです。
  152. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 農業基本法を制定した時代に思いをいたすわけでございますが、御指摘のとおり基本法には、農業が今日のような情勢を迎えた際のなすべきことをきちんと法制化されてあるわけでございます。したがってそれに基づいて、実は酪農製品等の問題についてはきつい指示を事務当局に与えておるわけでありますけれども、これまたなかなか厳しい情勢であって、政府の中でも、農林大臣立場、通産大臣立場、外務大臣立場、それぞれあるわけでありまして、話し合いをいたしておるわけでございます。私はあくまで強気を貫くという点、本当に稲富委員の仰せられるような気持ちで大臣の職を果たさなければならないという決意はかたく持っておる次第でございます。
  153. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣がそういうような決意を持たれることによって後継者もできるのですよ。今日、後継者に悩みがあるというのはそこにあるのですよ。御承知のとおり今日の日本がいまのような状態では日本農業がどうなるかということを、私も非常に憂慮いたしております。本当に日本の国家の将来のために、日本農業をどうするか真剣にわれわれは考えなくちゃならないときでしょう。後継者がだんだん減ってくる、これを一体どうするかという問題になる。私は、農村の青年にもっと希望の持てるような農業、希望を持ちながら農業経営に当たれるような、こういう青年を育成することが必要じゃないかと思います。この点から見ると、全く農村青年は希望を持ちません。  御承知のとおり今日、農業高等学校に入学しようという、こういう青年さえもなくなっているという状態です。私の地方の新聞にこの間こういうことが書いてありました。これは私の地方で朝羽という、本当に農村の中にある農業高等学校なんです。そこの研究発表を読みますと、こういうことが書いてあります。  県立朝羽高農業科の実態調査結果が報告された。   それによると、入学定員四十人に対し、今春の入学者は三十七人、昨年も三十九人、その前の五十二年も三十三人で連続して定員を割っている。一年生のうち専業農家の者は七人、兼業農家の者は二十六人、非農家の者四人。これを三年生と比べると、専業農家が二人少ないほか、二種兼業農家が約二倍に上り、まず生徒の家庭環境そのものが農業離れの傾向を見せている。家庭で生徒に対し農業を継いでほしいと思っているかを、一年生に質問したところ「思っている」は十二人で約三分の一。これに対し「思っていない」「わからない」が計二十一人だった。 こういうような状態なんです。   生徒自身に農業を継ぐ気があるか——という質問には一年生のうち「思っている」が六人に過ぎないのに対し「思っていない」四人「わからない」二十七人。しかも卒業後すぐ農業自営すると答えた者は皆無だった。農業ぎらいの理由は「農地がない」「現在の農地では生活できない」「他の仕事をしたい」などが上がっている。報告した教師は、こうしたことから「入学しても、生徒は目的を持たないし、やる気もない。また、兼業化が進み、普通科志向型の高校進学体制になっている現状では、農高志願者は当然減る」 減る一方である、こういうことを言っております。  私は、農業というのは国の基幹産業として必要であるという教育をこういう小学校、中学校時代からもっと徹底させなければいけないのじゃないか、こういうことを考えます。  こういうようなことで農業高等学校に行く。きょうは多分文部省も来ていらっしゃると思いますが、その農業高等学校の卒業生に農業に従事する者が少ない。農業高等学校の指導要領の中には、農業高等学校を卒業した者は農業経営かまたは技術者になるような教育をしなければいけないということが書いてあると思います。私は数年前にこの問題も農林省に質問いたしました。そういう教育をしておりますかと言うと、しておると言うのです。なぜ農業高等学校の卒業生が農業に残らないのかと言うと、農業に魅力がないからだと文部省は言う。こうなりますと責任は農林省にあるわけなんです。  しかも今日、非農家の生徒が農業高等学校にたくさん入学する。一般普通高校には入れないから定員の少ない農業高等学校にでも行こうかということでは、農業高等学校の存在価値さえないわけなんで、こういうところから農業後継者がなくなってくるわけなんだ。この実態を農林省はどう考えていらっしゃるか、さらにこの状態というものをほっておいていいのか、農林大臣としてどう考えていらっしゃるか。文部省の意見も、これに対する農林省の意見もあわせて承りたい、かように考えております。
  154. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 農業高校の実情の一部を御披瀝になったわけでありますが、実は私も教育の面には関心を持ち、年々農業高校の志望者が少なくなっていっている現実というものを承知をいたしておるわけでございまして、まことに残念であり心配もいたしておるわけでございます。これは小中学校の教育の面にも、そういう点を考慮いたしまして、やはり農業とか水産業とか林業であるとか、そういう基本産業として大事な食糧生産する大事な産業であるという自覚がなかなかぴっしりと教え込まれてない、こういう面もあろうかと思います。したがいまして、文部省に対しましても、義務教育に当たりまして農業及び水産業等につきましては非常に、現在の教科書等においてはその点は大分よくなってきておる、こう思いまするが、ただ残念なことは、林業関係の義務教育におけるいわゆる統一ある教育というものがなされていないというので、これまた文部当局にその点の改善も申し入れをいたしておる、こういうことでございます。  と同時に、やはり何といっても農業に従事しております方々の所得が、基本法で企図したようなところにいっておらないということが農業に魅力を失わせておるゆえんである。だからそういう点は、ほかの産業が高所得を上げておるわけでありますから、それに劣らないような農業をつくるためにはどうすればいいのかということを、もっともっと真剣に、もっともっと具体的に打ち出していかなければならない、その点あたりにやはり国会の御意向というものもございまして、規模拡大施策を進める環境を法律的に定めていただいた、こういうことでもありますので、とにかく八〇年代はそういう農業に光をもたらすための基礎づくりをするのだというような気持ちで取り組んでおることを申し上げたいと思います。
  155. 中村賢二郎

    ○中村説明員 お答え申し上げます。  農業高校の新規卒業者の就農率が低下してまいっておりますことは御指摘のとおりでございますが、この傾向は、過去におきます産業経済の急速な発展あるいはわが国産業構造の大幅な変化等によるもの、また農業経営基盤の変化によるものではないかと考えておるところでございます。  しかしながら、農業後継者の養成確保はわが国にとって重要な問題でございます。文部省といたしましては、農業及び農村社会の向上発展を図るという、先生お話のございました高等学校学習指導要領の目標に沿いまして諸般の施策を講じているところでございます。  特に昭和三十九年度以降、近代的な農業経営を担当するにふさわしい資質と意欲を備えた人材養成の中核となります、全寮制の自営者養成農業高等学校の整備を推進してまいっておりますが、昭和五十六年度におきましても、岩手県の花巻農業高等学校をこのような高等学校として整備する予定を立てているところでございますし、また大型農業機械等を使用いたしました実験、実習を推進いたしますために、愛知県に県内の農業高校の共同実習施設といたしまして農業教育センターを新しく設置することといたしております。  以上のような施策を推進しているわけでございます。  もう一つ、先生の御指摘のございます農業高校に対する入学志願者の低下の問題でございますが、これにつきましては、昭和五十四年度で一・一九の倍率でございまして、他の学科に比べて少ないわけでございますが、基本的には高等学校進学者の普通科志望が近年急激に高まっておりまして、これによる影響が非常に大きいのではないかと考えているわけでございます。
  156. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま文部省の御答弁がありましたが、農業高等学校の入学志望者は、たとえ減っていない、定員に満ちておるとしても、本当に農業をやろうという入学希望者がないということにまた非常に矛盾があるわけです。また、農業高等学校を卒業した者が農業に残らないということ。文部省は指導要領に基づいて教育をやっていらっしゃると思うが、結論は農業に魅力を持たないということなんです。やはり農業に魅力を持つような農政を確立するということが、ひいては農業高等学校の希望者もふえるし、農業高等学校卒業者が農業に帰る道である。この点はやはり農政の上に大きな責任があることをわれわれは考えなくてはいけないのではないかと考えます。かように考えるときに、今日のような日本農業をこのまま放任しておいたならば、日本農業の将来は一体どうなるか、私は大きな憂慮をするものでございます。  そういう点から、私はここでただいま申し上げましたような各般の情勢を考えますときに、いよいよ原点に立ち返って日本農業をどうするかということをこの際考え直さなければいけない時期が来ておるのではないでしょうか。いま大臣も言われたが、農民魂がなくなっては農業経営はできません。農民が手が汚れることをいやがるような考えでは農業は経営できませんよ。やはり問題は、本当に農民農民魂を植えつけて、どこまでも日本農業を守るんだという性根を植えつけることが必要であると思います。  それがためには政治家もまたその気持ちで農業を守らなければならないと思う。政治家が情熱がないのに農民がこれに対して魅力を感ずるはずはございません。やはり農林省農林大臣みずからが情熱を傾けて、日本農業をどう立て直すのだ、こういう気魄があってこそ農民日本農村を守っていこうという魅力を感ずるわけです。一番の問題は政府にあると思う。そういう点から私は、まず今日の状態日本農業を原点から考え直さなければならないのではないかと思う。  たとえば地力問題もそうでございます。今日の日本人は薬づけの人間になっておると言われる。農産物というものは化学肥料づけなんです。化学肥料を使うのでだんだん農村の地力は減退してまいります。一体これを放任しておってどうかという問題でございます。これに対しては地力の減退しないような肥料対策をとっていかなければならないと考えます。政府はどういうような考え方を持って将来最も憂慮せられる地力の、その増大に対処していこうと考えていらっしゃるか、この点を承りたいのでございます。
  157. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生おっしゃいますように、化学肥料が多投されてまいっております。四十五年に比べますと、窒素、燐酸、カリ、いずれも五十四年で六%ないし七%ふえておるという姿でございます。それに対しまして堆厩肥の方は、四十五年を一〇〇といたしますと、裁断した稲わらまで田に還元したものを織り込んで五四%ということで、半減しておるということでございます。したがいまして、確かに地力の低下という問題が懸念されるわけでございます。  農林省の方におきましては、五十年度から全国的にいわゆる土づくり運動というのを展開いたしております。これはもちろん農業団体なりそういう関係の向きとタイアップしてでございますが、やっておりますし、また堆厩肥なり家畜ふん尿等の有機物をもっと増投する、あるいは化学肥料の方につきましては適正な使用を図るということでやってきておるわけでございます。さらに、この家畜ふん尿と稲わら、おがくず、そういうものを結びつけた有機物の耕地還元につきまして、具体的に地域農業生産総合振興対策事業という補助事業もございますが、そういう面を通じて耕種農家と畜産農家との連携を密にして進めておるということで、こういう面の強化を図ってきているわけでございます。  ただ実績の面におきましては、いろいろやっているのでございますが、労働力の問題等もございましょうか、堆厩肥の投入というものが実際問題としては余り進んでないということでございます。今後ともがんばっていきたいと思います。
  158. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま局長からも御答弁があったのでございますが、日本農業というものは畜産と並行して今日まで進展してまいっております。ところがだんだん機械化が進みまして、畜産というものがなくなってまいりました。ここに堆肥その他の欠陥、地力減退の原因があると私は思う。それがためには、いま申されたようなふん尿処理の問題、これとおがくずその他をまぜまして発酵させて肥料をつくっているという状態もあります。こういう問題にもっと政府が積極的に乗り出して、助成措置とか、あるいはこれに対しては長期金融措置を講ずる、こういうことでやっていく。そして、農家と協力しながらこれを農家に還元する、こういう畜産団地、畜産家とタイアップしながらやっていくことに対する政府の積極的な助成が必要ではないか、奨励することが必要ではないか、これに対して積極的に取り組んでいただきたいという考えを持っておりますが、どうでございましょうか。
  159. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 確かに戦前等におきましては、有畜農家創設ということで農家が家畜を持っている、しかもそれが農耕馬等にも利用されるということで、堆厩肥は自家生産できたわけでございます。戦後におきましては、むしろ畜産農家は畜産農家ということで多頭羽飼育、あるいは耕種農家は耕種農家で相当機械化しているという形態がだんだん進んできておるということでございます。したがいまして、ただいま先生からお話ございましたように畜産農家群と耕種農家群との有機的連携を図って、家畜ふん尿と稲わらとかおがくずと結びつけた堆厩肥の増投というものが確かに必要でございます。  したがいまして、そういう結びつきをつくっていくことと、そういうことをやるための堆肥舎なりマニュアスプレッダー、そういうものの助成を強化すべきであるということでやってきておりますが、今後ともそういう面については十分配慮していきたいと考えております。
  160. 稲富稜人

    ○稲富委員 助成金融なんかも……。
  161. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 助成金融は当然考えます。
  162. 稲富稜人

    ○稲富委員 さらにお尋ねしたいと思いますことは、農政審議会の答申の中に「消費者については、消費者の主体的な選択を助長するという視点に立った教育と啓発、食品の規格と表示の適正化、品質と安全性確保への一層の配慮等が大切である。」ということを言われております。こういう点を考えますときに、消費者が農産物に対する選択をする前に、農民としてももっと親切なものを消費者に提供するというようなことを考えることが非常に必要じゃないかと私は考えます。たとえば魚にしゅんというものがあるように、野菜その他農産物に対しても、どういう時季の物が一番うまいんだというのがあるはずなんです。昔から秋のナスビが非常にいいとか言われておる。  ところがいまではそういう季節感がない。あのビニールハウスの中でビニールの袋をかぶせて成長させる、同じ規格のものができる、こういうような農産物生産が果たしていいのであるか。何か厚生省の話によりますとそれでも滋養は減らないそうでございますが、そういうものは市場ではきれいに見えるけれども消費者というものはそれに対しては魅力を持たないのですよ。農村に来まして土のついた芋がいいとかいうような希望がある。ところが生産者は消費者がそういう選択をしやすいようなものをつくる。これは消費教育からやらなくてはいけないのじゃなかろうかと思うのです。たとえば、御承知のごとくミカンに対しましてワックスを塗ってミカンに色をつけて売る。要らぬ手間なんです。ところが、そういう色がついておったら消費者は喜んで買う、こういうことなんですね。  私の田舎に行きますと山の中に禅寺がありまして、そこでは精進料理を食べさせる。そこで都会からバスに乗ってその精進料理を食べに来る。帰り道には近所のおばあさんたちがその地方でできた土芋を出しておって、それを競うて買って帰るのですよ。もうお寺の前はだんだん市場をなしているというような状態なんです。こういうように生産者みずからも消費者が希望するような、また喜ばれるようなものを生産するということを考えなくてはいかぬのじゃないか。  私のところのある知り合いの医者がこう言っていました。農家にずっと診察に回って、診察の後でその医者が農家にこう聞いたそうです、あなた方は農薬を使いますかと。ところがその農民が答えたのは、家で食べるのは農薬を使いませんが売るのは農薬を使いますと言ったそうなんです。医者がびっくりして帰ってきまして、これじゃ米なんか食べられぬと言っていました。こういうように余りに加工し過ぎる。うちで食べる米は農薬を使わぬが売る米は農薬を使うんだというような実情というものは、これでいいのであるかどうか。こういうことに対しても私たちは今後大いに考慮する必要がある、こういうことを考えますが、これに対してはどういうふうな指導をなさるつもりなんですか、承りたいと思います。
  163. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生御案内のとおり、わが国はモンスーン地帯に属するものでございますので、病虫害が多発をするという条件下にあるわけでございます。したがいまして、農業生産上農薬を使わないということにつきましては、どうしても避けられないのではないかと思っております。一部農家におきましては有機農業的な角度でやれとか、いろいろなことは間々ありますけれども一般論といたしましては農薬の使用は不可欠であろうかと思います。ただ、この農薬につきましては、単にこれは薬効があるというだけではございませんで、人畜なりに被害を与えたりあるいは国民の生活環境を悪化させるというようなことでは困りますので、安全性の確保ということには十分留意しなければならないというふうに考えております。  それから農薬ということでなくて、たとえば生物学的な防除というようなことで天敵の利用なり、性フェロモンを使うとかいうようなやり方もございましょうし、ものによりましては品種改良なり輪作の導入というような栽培方法によるという、いわゆる耕種的防除というようなやり方もあろうかと思いますので、そういうものを総合的に考えてこの病害虫の対策というようなものも考えていかなければならぬのではないかというふうに考えております。
  164. 稲富稜人

    ○稲富委員 次は大臣にお聞きしたいのですが、大臣も米の消費拡大に非常に情熱を傾けていらっしゃいます。大臣所信表明の中にも、米の消費拡大のために学校給食等を大いにやるということを言っておられる。そこで、もう四、五年前からこの委員会で私が何回も各大臣に繰り返し消費拡大のために提起した問題で、酒米の問題があります。  きょう酒税法の改正がなっておりますが、御承知のとおりあの酒税法の第三条によりますと、米と米こうじと水を発酵させたものが清酒であるということになっております。ところが昭和十七年ごろですか、食糧が非常に逼迫した時分に、政令事項としてこれに対して他に含有物を入れていいということになって、それ以来アルコールを入れることになったのです。そこで私は、これは政令事項でございますから、今日のように米がだぶついているときにはその政令事項を排除さえすればいいじゃないか、なぜこれをやらないかということを何回も委員会で言いました。そうすると年間五十万トンは米の消費拡大ができます。  ところがこれに対して最初の答弁は、いや、今日の日本酒も国民消費者に定着しておるからという答弁でございました。定着していないじゃないかと言ったら、後には今度は、いや、そうすると酒の値段が高くなるからということだった。酒の値段が高くなると言われたから、税金を安くすればいいじゃないですか、酒の税金が高いじゃないかという話をしたところが、きょうはまたこの税金を高くするという法律が通ってしまった。われわれの反対があったけれども自民党だけで通されてしまった。そうなりますとまた酒の値段は上がるということになってくるでございましょう。これは米の消費拡大から言うと逆なことになってくる。渡辺農林大臣のごときは、なぜこれをやらないかと言ったら、最近は酒がべたべたする酒になっておると言われた。これは知らないから言われるのであって、純米酒はべたべたしないのです、さらっとしているのですよ。  こういうような簡単に米の消費拡大につながる問題が、私は毎年毎年言っておるけれども今日まで実現しないが、これは法律改正じゃないです、政令ですからいつでもやれるのだと思いますが、なぜやられないのか、その原因がわかっておったらこの際ひとつ教えていただきたい。もしもわかっていないとするならば、これが実行に対して農林大臣大いに力を尽くしていただきたい、こういうことを申し上げたいと思うのです。
  165. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 実は私も就任早々、酒にもっと米を使おうということで、アルコールの添加をできることならやめて、またアルコールの添加率をできるだけ少なくして米の消費が伸びるように工夫はできないか、こういうことでいろいろ指示をいたしておるわけでありますが、先生もいま言われたように、もう清酒というとアルコールが添加されたものの味で酒の味を覚えた人も相当いるということで、酒屋さんも一遍に全部純米酒にしてしまうというわけにもなかなかいかぬという事情もあるようでございます。これは食糧庁に大蔵省とよく話をさせまして、それこそ純米酒の率をできるだけ多くしていくような指導をしていかなければならぬな、こう思っておる次第でございます。
  166. 稲富稜人

    ○稲富委員 次にお尋ねいたしたいと思いますことは、昭和五十五年八月三十日に構造改善局長から「小作料の最高額統制に係る経過措置の失効に伴う指導について」という通達が出されております。この結果、この機会に小作料を上げようということが地方でいろいろ行われております。中には、ややもするとこれが昔のような地主復活になるのではないかというようなことが憂慮されております。こういう通達をお出しになっておりますが、これに対しては双方が話し合ってしろということになっておるようでございますが、かりそめにも、この最高限度額というものの統制が撤廃になったからといって、これを引用して小作料を値上げする、そして昔の地主制度を復活するようなことにならないように、ひとっこれはすべからく指導して、そういう結果を生まないようにしなければならないと思う。  この指導が足らないような感じさえしますので、その責任があります構造改善局長として、これに対して今後そういうようなことがないように十分指導、取り締まりをやられるかどうか、この点を承りたい。
  167. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 お話しのように、昨年の八月三十日に「小作料の最高額統制に係る経過措置の失効に伴う指導について」という構造改善局長名の通達を出しましたのは、統制小作料の廃止に伴って種々混乱が起こることを予想いたしまして、その防止のために出したものでございます。  混乱はいろいろございましょうが、一つは、従来からの賃貸借が当然に消滅するというような誤解をするとか、あるいは農地法二十条の規制の適用が除外されるということがあってはならないので、その誤解をしないようにということと、いま一つは、先生がおっしゃられましたように、この統制小作料の廃止が直ちに小作料を任意に引き上げていいのだということを意味するものではない、やはりそれは従来の経緯も踏まえて適正な水準で扱うべきである、そしてまた、そのことのために農業委員会が適正な指導を行うようにということを指導したものでございます。  この通達どおりに十分徹底して小作料の改定が行われるならトラブルは防げると思っておるわけでございますが、現在までのところ、それほど件数は多くございませんが、一部地域において通達の趣旨についての理解が不十分なためか、問題が生じたところもあるやに承知いたしております。こういうことは一件でもあってはなりませんので、御趣旨はよくわかりますので今後十分努力して、この徹底方を図りたいと存じます。
  168. 稲富稜人

    ○稲富委員 次に、農林大臣に承りたいと思います。  農林大臣所信表明の中に「石油代替エネルギーの開発利用や省エネルギー型農林水産業の推進に努める考えであります。」と述べております。この後段の「省エネルギー型農林水産業の推進」という点はわかりますが「石油代替エネルギーの開発」というのはどういうことを意味しているのか、その点を承りたいと思うのであります。
  169. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 大きく分けますと二つの方面がございまして、一つは直接に太陽エネルギーあるいは風力、水力といったエネルギーを農業の、たとえば施設園芸ですとか畜舎といったものの熱源あるいはポンプ等の動力源に利用していくという研究開発でございます。これは、私どもとしてはグリーンエナジー計画といったような。プロジェクト研究で進めておるところでございます。  それからもう一つは生物資源の利用でございます。これはバイオマス変換計画ということで各方面でもやられておりますが、私どもといたしましては、農林水産廃棄物、もみがら、家畜ふん尿といったようなもの、あるいはその他の新しい未利用の資源を活用いたしまして、これを農産物の乾燥あるいは農業機械の動力、畜舎の熱源といったものに利用していきたい。こういう二つの方面で石油にかわるエネルギーの利用技術を開発してまいりたい、こういうことでございます。
  170. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、このことについて特に希望を申し上げたいと思いますが、ただいまのエネルギーの開発という問題は、私たちが期待いたしておりましたよりも非常に貧弱、と言うと失礼なのかもしれませんが、積極的にやればもっとこの燃料というものはできると私は思うのですよ。私たちは天然の石油だけに頼るのではなくて、やはり無限ではございませんので、一方にはつくる燃料というものが必要であると私は思う。つくる燃料ということになりますと、われわれのこの農林業に関係するところが非常に大きい。金はかかるかわからぬけれどもアルコールの製造であるとか、あるいはこのアルコールをどうやって燃料に代替する方法があるかという研究も必要でございましよう。  私は、かつてこの委員会林野庁長官にお尋ねしたことがあるのでございます。今日はユーカリというものから燃料ができるではないか、現にユーカリ油によって自動車を動かしたという例もあるので、こういうものに対してもっと積極的に取り組んだらどうか、こういうことをこの席上で申したことがございます。あるいはクスから燃料をつくるとかいうように、工面をすれば農林業の関係で石油代替のエネルギー資源が生じてくると思うのだが、私はこういう点、大臣はこの所信表明の中では「石油代替エネルギーの開発」ということはもっと大きな意味考えていらっしゃるだろう、こう期待していま質問したわけでありますけれども、そういうもっと積極的な、もっと大規模な開発ということに対しては考えていらっしゃらないのかという点を承りたいと思うのでございます。
  171. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 御指摘のような件に対しましても技術会議において検討をし、また林野庁に対しましても私の方から指示をいたしてございます。
  172. 稲富稜人

    ○稲富委員 そういう考えがあるとするならば、農林省としても、この石油代替エネルギーというものに対してはもっと積極的に働く必要があるのじゃないかと思う。  昨年、御承知のとおり石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律というものができております。この第一条には「この法律は、石油代替エネルギーの開発及び導入を総合的に進めるために必要な措置を講ずることにより、我が国経済の石油に対する依存度の軽減を図り、もって国民経済の健全な発展と国民生活の安定に寄与することを目的とする。」と書いてあります。そうしてその第二条には「この法律において「石油代替エネルギー」とは、次に掲げるものをいう。」「石油を熱源とする熱に代えて使用される熱」「石油を熱源とする熱を変換して得られる動力」こう書いてある。  私は、植物からそういう代替エネルギーができるならば、植物の中にもこれを求めていく、石油代替エネルギーの開発の一翼として林業がこれを占めるので、ただいま申しましたようないわゆるユーカリなんかの問題を取り上げていくという考え方農林省にはあってもいいのではないか、こういう考えを持つわけでございますが、どうでございますか。
  173. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 要は、企業のベースに乗るかというコストの問題等があろうかと私は思います。それまでには十分なる試験研究を重ねまして、そうして十分なるデータの上に乗った積極的な実施、こういうふうに進むのじゃないかと思うのでありますが、いまのところ、いろいろ言われておりますけれども、コスト的にまだまだ無理がある点が多いようでございます。とにかくいま技術会議の事務局長から申し上げたものは、もうすでに実用の段階に入っているものを申し上げたわけでございますが、そのほかのいま先生が御指摘をされたような、あるいはアルコールをつくるとか、さらにはユーカリが日本の風土に果たしてどのような成長の度合いをもたらして、どれだけできるものであるかといったような点の基礎研究すらまだできてない、これからだということでございますので、その辺はひとつ御理解をいただきたいと思うのであります。
  174. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題は、私、前に林野庁長官にユーカリの問題を研究してもらいたいということを言って、研究するということをその時分に林野庁長官から言われておりますから、研究はできておるものと思いますが、その結果を承りたいと思います。
  175. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 この問題につきましては、ただいま先生からお話がございましたように前国会でここで御指摘があった点でございますが、その際も申し上げましたように、確かにユーカリ類からは一%前後の揮発油性の油が得られる、これは事実でございまして、研究も進められておるわけでございますが、その際も申し上げましたとおり、わが国におきますユーカリ類の森林造成につきましては、かつて林業的な利用ではどちらかといいますと失敗に帰しておるわけでございまして、土壌条件からくる成長不良あるいは風による損傷等の失敗の実例が多いということを申し上げ、特にわが国の山地の気象、土壌条件等から見ましてその推進はかなり困難を伴うというふうに申し上げたわけでございます。  今後やるといたしますとやはり考えられますことは、農業的な発想に基づきます、背の低い、たとえば桑の栽培のような方式でやるということが考えられるわけでございますが、いずれにいたしましても、この問題につきましては先ほど技術会議の方からお答えいたしましたように、技術会議の研究の一環として実施をすることにいたしておるわけでございます。
  176. 稲富稜人

    ○稲富委員 次に、もう時間がありませんので簡略にお尋ねしたいと思いますが、林業問題でございます。  日本の林業対策というもので、単に木材の移出、商品化という問題よりもさらに大きいのは、林業の持つ公益性の問題あるいは水資源の問題、あるいは治水の問題、こういう関係から林業というのを考えなくちゃいけないのではないか。それに対してこれこそ百年の大計を立てるためには、林業対策というのを積極的に組まなくちゃいけないのじゃないか。エネルギーの一角といたしましても、日本の水力電気というものはだんだん少なくなってしまいまして、火力電気に頼る点がある。これはやはり水資源の関係だと思うのです。だから、そういう点からもわが国の林業というものに対してはもっと積極的にこの際取り扱わなくちゃいけない。私たちは民有林、国有林を問わず、この林業対策というものを樹立すべきである。  特に幸いなことには、今日林業というものは国がそれをたくさん所有しておるという強みがあるのだから、これについて積極的に取り扱わなくちゃいけないのじゃないか。ところが、これに対しては林業労務者というのが不足している。この林業労務者をどう確保するか、ここにもいろいろ問題があると思うのでございます。いろいろな問題があると思いますが、林業の持つ非常に国家的な重大な使命を果たすためには、林業対策というものを積極的にやるべきだ、こう思います。  いろいろ申し上げたいことはありますけれども、時間がありませんので結論だけ申したのでございますが、農林大臣はどう日本の林業政策に取り組んでいこうという考えを持っていらっしゃるか、大臣のこれに対する決意を承りたいと思うのでございます。
  177. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 林業の果たしておる公益的役割りというものは、非常に広範で重要な役割りを果たしておるということは先生御指摘のとおりであります。いままでのわが国の林業政策というものは、いわゆる木材を商品として林業者の自己努力だけに頼ってきたのじゃないか、その公益面を余り重んじてないのじゃないかなという感じを私は率直に受けております。  そのために造林面積が昭和三十八、九年からぐんぐんぐんぐん減っておりまして、一番多いときは四十万ヘクタールくらい植林をいたしたわけでありますが、最近ではもう二十万ヘクタールを割っておる。こういうような状況を続けてまいりますと、あと木を植える者がいない、どうするんだという事態になったらそれこそ大変なことになるなということで、私は公共性の強い森林資源の培養という大きな問題に対しましては、やはり国の投資面において高い補助率等を考慮しなければいかぬのではないかなと思って、今回も少なくとももう時期に来ておる間伐に対しては特別の措置を講ずるべきであるというようなことで、新規予算等も組ませていただいたということでございます。  政府もやはりもっともっと、林業は木材資源だけとるのじゃない、水をつくり、土壌をつくり、空気を浄化し、酸素をつくるといったような大きな役割りを果たしておる林業というものに対しては、全国民が関心を持って、山で働く方々のその労働に対しては、本当にほかよりも大事にするくらいの気持ちを持って考えてもらわなければなりませんし、私といたしましても、そういう意味で民有林に対する補助率あるいは国有林の経営に当たっておる職員の待遇というような問題につきましては、やはり真剣に考えていかなければいかぬ、こう思っております。
  178. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間が来ましたので、終わります。
  179. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 野間友一君。
  180. 野間友一

    野間委員 厚生省見えておると思いますが、農水省並びに厚生省に対しまして最初にお聞きしたいのは、果物、野菜に対する砒酸鉛あるいはスミレックス、フルチオンTP、こういうものが出回っておるというような新聞報道あるいは週刊誌等々がありますけれども、この砒酸鉛というのは増甘剤、スミレックスというのは防カビ剤、フルチオンTPは落果防止剤というふうに私は聞いておりまして、いずれも毒性の非常に強いものだと思うわけでありますが、これらがどのような経路で出回り、いまどういう実態にあるのか、これをどうしようとしておるのか、この点について最初にお聞きをしたいと思います。
  181. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず砒酸鉛でございますけれども、これにつきましては、二月の初めに砒酸鉛を販売している者がいるということが報道されました。具体的な名前も出たものですから、早速二月五日から農薬取締法第十三条一項の規定に基づく検査をするということで、職員を派遣いたしました。そういうことで調査をいたしたわけでございます。大阪府、熊本県、佐賀県の販売業者等につきまして立入検査等をやったわけでございます。  その結果明らかになりました点は、五十四年ごろから香港、ベルギー等から砒酸鉛が大阪の商社等によりまして工業用という形で輸入をされた。そして九商農材という有限会社が熊本にございますが、そういうところから農薬販売業者を通じまして農家に販売されていたということ、それから熊本県及び佐賀県の一部におきまして砒酸鉛が農薬として使用されていたということが判明をいたしたわけでございます。  以上が検査結果でございまして、こういう結果をもとにいたしまして、二月二十六日に、先ほど申し上げました九商農材の代表取締役を熊本県警に告発をしたということでございます。  それから二・四・五TP、フルチオンTPとも言われておりますが、これにつきましては、先ほど申し上げました九商農材から、山形日紅という山形市にあります会社でございますが、そちらに販売していたということが帳簿等から判明をいたしております。  それからスミレックスの話でございますが、スミレックスは現在登録申請を受けておりまして、目下検査中でございます。近々登録を認めることになろうかと思っております。毒性がどうという、そういう問題は余りないと思います。
  182. 藤井正美

    ○藤井説明員 砒酸鉛につきましては登録が解除されているわけでございますが、使用された砒酸鉛が果実にどれくらい残っているかという点について興味を持っていたところでございます。農林水産省の方からデータをちょうだいいたしますと、鉛及び砒素等もすべて一ppmを切っておりまして、この程度の含量でありますならば、不当に使われた砒酸鉛の人への影響については問題がないというふうに判断いたしております。
  183. 野間友一

    野間委員 厚生省からいま答弁しましたけれども、農水省、それに対してどうなんでしょう。
  184. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 砒酸鉛につきましては、温州ミカン、雑柑といいますか、これにつきまして農林省のある機関で分析をやらせました。その結果につきまして厚生省にも連絡を申し上げてあります。従来厚生省の方で、果皮なり果肉につきまして鉛、砒素それぞれ規格を決めておりますけれども、ナツミカンの規格に対しましてはむしろけたが大分違うppmの数値でございます。したがいまして、この基準には十分にはまっているものでございます。  ただ、これが本当に安全かどうかというのは、農林省というよりも厚生省が責任官庁でございますので、先ほど厚生省の方からそういうお答えをいただいたわけでございますが、安全面は心配はないというふうに思っております。
  185. 野間友一

    野間委員 これは結局、産地によっては出荷がとめられるとか、あるいは消費者にとってみても健康上どうなのかという、非常な不安とかいうようなことについてのいろいろな問題が投げかけられておるわけでありますから、これは早急に調査をして、農民とかあるいは消費者が不安な気持ちでつくったりあるいは消費したりすることのないように、きちっと早急にする必要があると思いますけれども、その点いかがですか。
  186. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほど申し上げました砒酸鉛で、農林水産省のある機関におきまして分析をしたその結果につきましては、これはプレス発表もいたしまして、いろいろ心配する向きもあろうかと思いまして、こういう幅の数値でございますということは公表をいたしております。  なお、現在もさらに各県の方に、二月十七日付で調査をするようにという指示をいたしております。近々その結果の報告等もあろうかと思いますけれども、そういう面を踏まえまして、消費者の方が心配するあるいは農家の方がいろいろ困る問題もございましょうから、その結果等も見ながら十分対処したい、こう思っております。
  187. 野間友一

    野間委員 それではこの点については終わります。  次に、農業共済金の支払いについてやりますが、これは二月十日の予算委員会亀岡大臣に、東奥日報の読者のいろいろな不満等を御紹介しながら質問をし、農林大臣は十分調査をしたい、その上で制度的に改善をしなければならないのかあるいは運用上でうまくいくのか、どういうところに問題があるのか一遍調査をしたいというふうにお答えになりました。その結果どうなっておるのかお答えいただきたいと思います。
  188. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 昨年の水稲の冷害に関しましては、その損害評価に当たりまして、私どももいろいろと大臣の御指示に基づきまして、そのスムーズな運用につきまして指導をいたしました結果、先般予算委員会でもお答えいたしましたように、全国のベースで考えますと、各県連合会の損害評価高に対しまして、これを統計情報部の数値で切ったところも全然ございませんでしたし、そういう意味では、全般的には非常に順調に行いまして年内の支払いを完了できたわけでございます。  ところが、先生御指摘の青森県の一部でございますが、特に津軽地方は相対的に比較的被害が少なかったところでございますけれども、この地域におきまして、組合等によって行いました最終的な認定に対しまして農家から相当不満が出ているということを伺いまして、大臣も二月十日の予算委員会におきまして、御質問にお答えして実態調査をいたすということをお約束したわけでございます。  そこで、私どもこの御質問の後直ちに、特に不満が多く出されております西津軽郡とそれから北津軽郡、この二郡につきまして県に調査を依頼すると同時に、農林本省からも二月十八日と十九日に特に不満の多いところに係官を派遣いたしまして、実態調査を現地で実施をしたという状況になっております。  この結果を申し上げますと、まず第一に組合等につきましては事務手続上は誤りがないということは確認いたしました。ただ、なぜこのような不満が出てきたかということの原因でございますが、仮に非常に大きな不満のございました地区をA農業共済組合、B農業共済組合ということで申し上げますと、A農業共済組合の方は、連合会が三十八筆実測調査をやっておりますが、組合の方が当該筆につきまして評価をいたしました単収の平均が百三十六キログラムという水準でございました。連合会が同じ筆を調査いたしましたところが、実はその平均が単収三百三十八キログラムということで、かなり大きな差が出てきておったわけでございます。それからB組合につきましては、同じく三十五筆でございましたが、組合の単収が八十五キログラムということで非常に低い単収でございました。これが連合会の実測結果では三百七キログラムという単収でございまして、かなりその差が大きかったということがございます。  私の方といたしましては、できるだけこういうことがないように指導もいたしたわけでございますけれども、このような状態になりますと、いわゆる修正歩どまりと私ども申しておりますが、組合の評価に対しまするところの連合会の評価が四分の一から三分の一に下がってしまうということでございまして、このために不満が多く出たというふうに考えられます。  それからなおつけ加えて申し上げますと、このような差が出ました場合に組合がこれを修正いたします場合に、被害率を一律に修正するという場合と、それから高被害耕地につきましてはできるだけ修正歩どまりを高くする、つまり、修正率を低くするという方法でやる場合とございます。どちらかと申しますと、一律修正あるいはこれに近い修正を行ったような場合に不満が大きかったと考えられる次第でございます。  いずれにいたしましても、私どもとしましては、損害評価の仕組みは、組合等において検見を主体にいたしまして耕地間の均衝を確保するということと、連合会は実測を中心にいたしまして水準、絶対値というものを正確に確保するということで、この両者がうまくかみ合っていくというところに適正な評価が行われると考えるわけでございますが、この間できるだけ差がないようにということで、今回は五十一年の経験にもかんがみましてかなり濃密な指導をいたしまして、全国ベースではスムーズにいったと考えておりましたが、この地区については残念ながらその評価が両者大きく食い違ったというところにこのような不満が出てきたというふうに考えておる次第でございます。
  189. 野間友一

    野間委員 調査の結果はいま御報告がありました。これが果たしていま言われるようなことで運用上済むのかどうか、あるいはこの前も私申し上げたように、いわゆる個人の不服申し立て、つまり権利救済のそういう手続が必要なものであるかどうか、さらに私も詰めて調査もしてみたいと思いますが、きょうはこの問題についてはこの程度で次に進みたいと思います。  何度も何度も当委員会においても議論がされておりますが、いわゆる転作の拡大の問題であります。  昨年の異常な冷害は、特に戦後稲作技術がもうずいぶんと進歩した、こういう中で戦後最大の被害が出たというところに特徴があると思うのです。農水省の農業総合研究所のある研究者は、地球の気候について、地球の北半分の寒冷化と相まって、ことし以降も冷害が心配される、これは唯是さんですけれども、そういうふうに警告を出しておられるわけであります。  そこで、減反はことしから第二期に入るわけでありまして、いわゆる減反面積の拡大と転作奨励金引き下げ、これをやられるわけでありますが、もし二年連続が確実と、こうなれば、農業所得の減少、実質農業所得がずっと下がっておりますので、それに追い打ちをかける、農家経済とかあるいは地域経済にとってみても非常に重大な打撃を与えるのじゃないか。そればかりか、国民に主食を安定的に供給するという点で非常に問題があるのではないかと思うわけであります。これは天候のことですから何とも言えないのは間違いないわけでありますが、もし二年続いて冷害が起こるとするならば一体どうなるのかということであります。  そこで、去年の十二月三十一日現在で主食用の米が検査数量で約百七十万トン、政府買い入れ数量で百八十万トン、いずれも予定より減少しておる。これは減反の拡大を決めた去年の十一月の時点の見込みの約二倍になっているというふうに私は思っております。     〔菊池委員長代理退席、委員長着席〕 この差ですね。八十万トンないしは九十万トン、これは面積にいたしますと約二十万ヘクタールに当たると思いますが、そうなりますと減反を拡大する必要性は少なくとも五十六年度に限って言いますとないのではなかろうか。とりわけいま申し上げたように冷害が二年連続して起こる、こういうことを否定する保証も全くない、こう思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  190. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十六年度から水田再編第二期対策に入るということで、転作等目標面積六十七万七千ヘクタール、ただ五十五年産米が深刻かつ広範な冷害等に見舞われましたので、四万六千ヘクタールほど軽減をいたしまして、六十三万一千ヘクタールということにいたしたわけでございます。  そこで、まず五十五年産米が不作であったわけでございますけれども、昨年の十月末で百七十万トン強の五十四年産米もございますので、五十五年度におきましては十分そういうものの配給等をもって対処し得るということでございます。  問題は、ただいまのお尋ねは、今度五十六年産米も仮に不作になるというような事態になればどうかというお尋ねでございますけれども、ことしの十月末におきましては、五十五年産米、これが百万トンから百十万トンくらいの持ち越しになります。したがいまして、大体この百万トン程度の古米といいますか、五十五年産米の在庫がございますれば、多少の不作でございましても需給操作は心配がないというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、転作等目標面積を六十三万一千ヘクタールというふうに、ふやしておりますし、またその次の年からは六十七万七千ということにいたしておりますけれども、この面については不安はないというふうに考えております。
  191. 野間友一

    野間委員 さっきから計算してみたのですが、ことしの米の生産が九百七十五万トン、そして政府の買い入れ予定が五百二十万トンのところが、実際買い入れ数量は三百六十四万トン、そうしますと予定から実際を差し引きますと百五十六万トンの不足になるわけでありますが、五十四年度の産米が百七十八万トン、五十三年度の低温貯蔵米が約二十万トン、こういうことであれこれ計算いたしますと、結局これを全部食べてしまいまして五十六年度の端境期には持ち越しはほとんどなくなるのじゃないかというのが私の試算なんですけれども、これはどうなんでしょうか。
  192. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず一つは、五十五年産米の現在の検査あるいは買い入れ、これがいわゆる冷害等もございましたので、むしろ例年に比べましておくれておるということは確かにございます。したがいまして、おくれておりますが、今後検査なり買い入れは相当あるというふうに見ているわけなんで、二十万トンとかというようなお話もございましたが、その辺はある時点で見た場合は例年よりおくれることがあるということをひとつ御理解いただきたいと思います。  それからもう一つは、五十四年産米が百七十八万トン程度昨年の十月末あるわけでございます。したがいまして、それを今度食べるわけでございます。食べることによって、冷害を受けたとはいえ相当の買い入れがある、これをむしろことしの十月末に振りかえて古米として持つことになるわけです。これが先ほど私が言いました、大体百万トンから百十万トンくらいになるだろう、こういうことを言っておりますので、そのほかに低温古米問題もあるでしょうが、そういうことで需給操作は心配はないというふうに考えておるわけです。
  193. 野間友一

    野間委員 私が先ほどちょっと数字を挙げましたけれども、そこでの違いというのは、三百六十四万トン政府は買い上げたというふうに言った、ところがこれについてはことしはおくれておる、まだ買い入れるものが出てくるんだというお話、私はこれの違いがあると思うのですが、そうしますとこれはいつごろまでにあとどのくらい買い入れがふえるというふうに予測をし、これは本当に確実に入るのかどうか、この点どうでしょう。
  194. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 食糧庁が専門なんでございますが、ただ私が食糧庁の方から関連がありますので聞いております点におきましては、五十六年の需給計画でいろいろ組んでおります問題につきましては、そういう操作の面におきましては大丈夫である、心配はないということを聞いております。
  195. 野間友一

    野間委員 いや、心配があるのかないのか——いま私が数字を挙げてお聞きしたわけですね。つまり見込みとしておっしゃるわけで、十月、十一月に取り入れて、もう三月でしょう。いまの時点においてもまだおくれているから、将来心配ない、何とかなるんだとおっしゃっても、これはちょっと私は説得力がないと思うのです。だから、いまの時点においてもまだ買い入れ予定を充足していない、それじゃいつごろ確実にどの程度まだふえる見込みがあるのか。この点はお聞きしなければ、実際に説得力がないですよ。
  196. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 大変恐縮でございますけれども、買い入れの計画等の担当は食糧庁になっておりますので、いま担当がおりませんのでこれについて確実な御回答はちょっと留保させていただきます。
  197. 野間友一

    野間委員 それじゃ困るな。二瓶さん、そういう見込みとか予測で物を言っちゃ困る。私が言っているのは、減反との関係で、冷害で、しかも二年連続するかもわからない。それはそれとしても、冷害で買い入れが予定より減っておるわけでしょう。ですから、五十四年度産あるいは二十万トンの五十三年度の低温米、これだけで果たして十分なのか、こういうお尋ねなんですよ。だから、これに対して見込みだけでお答えになる、これではわれわれは納得するわけにいかない。これはまだ私かなり時間がありますので、できればひとつお聞きいただいてお答えいただきたい、こう思います。  それでは、本来の御質問に入るわけでありますが、農業をどのように位置づけしていくのか。先ほどからいろいろ農林大臣お答えになっておりますけれども、特に自給率の向上、自給率を高めるというようなことを踏まえて、一体日本産業の中で農業というものはどうあるべきだ、どう位置づけするべきだというようなことについて、御認識のほどをまずお答えいただきたいと思います。
  198. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 日本産業の中で農業をどのように位置づけるかというお尋ねでございますが、これはやはり食糧生産する大事な産業でありますから、しかも昨年の四月に当委員会並びに国会において自給力強化決議もあることでありますので、私といたしましてはいままで以上に農業という地位を高めなくてはいけない、このような意識を持ちまして、施策の推進並びに予算の編成をして国会に提案をいたしておる次第でございます。
  199. 野間友一

    野間委員 自給率の向上がいかに大事かということで、実は総理府がやりましたアンケートの調査結果を私も拝見したわけでありますけれども、これに対してはどのように評価なりお考えになるのか、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  200. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  いま手元にその資料を持っておりませんが、かなり高い自給率を皆様方から期待されておるようにたしか記憶いたしております。これはある意味ではかなり主観的な面もあろうかと思いますが、私どもとしては、そうした御期待を持たれることについては担当としては非常に結構なことだろうと考えております。
  201. 野間友一

    野間委員 国民的な合意、たとえばよく答申の中にも出ておりますけれども、コストが余りにも高過ぎる、これでは国民的な合意は得られないとか、これは一つの例ですが、幾つかそういう記述が見通しの中でもあるわけであります。そこで、国民が一体日本食糧の自給自足、自給率を高めるということについてどのように考えておるのかということが、この総理府が行いました食生活食糧問題に関する世論調査、これに一つ方向を示されておるというふうに思うわけであります。  これによりますと、自給自足をするべきだというのが七五%、非常に高いわけですね。外国に頼るというのがわずか一六%、こういうことになっております。それから将来予測についても、悪くなるというのが四七%。こういう点からいたしますと、やはり国民世論も先行き非常に不安を感じておりまして、自給率をぜひ高める必要があるということを願っておるというのが、この世論調査の結果明らかになっていると私は思います。こういう調査の結果を大臣すでにお読みであると思いますけれども、これは尊重するべきだと思いますが、いかがですか。
  202. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 確かに御指摘のように、できるだけ自給自足をとりたいという方が七五%というアンケートも私ども承知いたしておりますが、一方、農産物の価格につきまして非常に問題を指摘される向きもございます。かつまた、日経調あるいは経団連等の企業だけではなく、最近では労働組合の方々からも非常に、農産物価格について合理的な価格を要望し、場合によっては輸入に依存すべきではないかというような御意見も最近出ていることも一方ではございます。これだけ自給自足を希望される向きの方があり、また就業の面では農業に就労するような方が非常に少ないというように、現実にはこうしたアンケートと実際の経済行為にはかなりギャップがあると思います。私どもはやはり基本食糧についてはできるだけ高い自給度を持つべきであろう、そうした意味で、米を中心にしました主食等につきましてはできるだけ高い自給率を維持していくようにいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  203. 野間友一

    野間委員 日経調とかそれぞれの団体の意向なり提言等について私は聞いておるわけではなくて、総理府のこういう世論調査国民のコンセンサスを得るための一つ方向性を示したものじゃないかというような点からのお尋ねなんです。  いま渡邊さんがいろいろ言いましたけれども、この設問は「国内で自給が可能なものはできるだけ自給するようにした方がよい」のか、「国産品よりも安ければ、外国産のものを輸入するようにした方がよい」のか、これが設問なんですね。これに対して、「できるだけ自給自足」と答えたのが七五%、「安ければ輸入」した方がよいと答えたのが一六%、こういうことになっているわけですね。それから、食管制度の逆ざやも、これは「現状ではやむをえない」と答えたのが四二%、こういう数字も出ておるわけですね。したがって、単に農民がどのような要求を持っておるのかということだけではなくて、やはり国民の間にも、この食管制度がなぜ存在し、そしてなぜ赤字が出ておるのか、しかしそれでもやむを得ない、これは理解度が非常に国民の中に進んでいるということが、私はこれからもうかがわれるのではないかというふうに思うわけであります。  ところが、この見通しを見ますと、何度も議論がされておりますように、三四%から昭和六十五年には三〇%、ダウンするわけですね。これは最大のものは、畜産がふえるけれども飼料用穀物がない、そのための乖離が穀物全体の自給率の低下を来しているということが大きな原因であろうかと思います。  そこで、私ずっと調べてみたのですけれども、過去に自給率というものはどの程度まであったのかということを見てみたのですね。そうしますと、過去の最高は、小麦の場合が昭和三十六年で四三%あったのですね、大臣。それから大麦が三十五年がピークで一〇四%、裸麦が同じく三十五年の一一二%、雑穀が昭和三十五年が二一%、大豆が同じ昭和三十五年の二八%。ですから、ピーク時といいましても、大豆とかあるいは雑穀等については非常に低いわけでありますけれども、それでも大麦、小麦あるいは裸麦の麦類、これなど相当高かったわけですね。ところが、現状は御案内のとおりなんです。  そこで、まず前提として聞きたいのは、特に発達した資本主義諸国の中でも日本の場合が異常に穀物自給率が低いということでありますけれども、これはたとえば一九七五年にフランスが一五二%、西独が八〇先、英国が六四%、アメリカが一七四%、こういう統計が出ております。ですから、いろいろな条件の違いがあるとしても、同じように発達した資本主義諸国の中で、日本だけが異常に低いというのがこの数字からも明らかに出ておるわけですね。そうしますと、世論調査からも言いましたが、私は何としてもこの自給率を高めるということが急務ではなかろうか、こういうふうに思うのです。  そこでお尋ねするのは、自給率の高かったものがなぜこんなに低くなったのか。これは確かに反当たりの収穫の数量などを見ましても、ずいぶんと日本は落ちていますね。ですから、どういうわけでこんなに落ちたのか、そして資本主義諸国の中でなぜこんなに低いのか、こういう点について、ひとつ明快な御見解をお願いしたいと思います。
  204. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  まず四十年代の前、昭和三十年代におきまして自給率が高いということは、当時におきます穀物その他小麦等、現在問題にされますものの需要量は比較的少なかった。現在は非常に大きくなっております。いわば所得水準なり生活水準が相当上がる過程におきましてこういう現象が起きておるわけでございまして、したがいまして現在、生活水準なり消費水準が三十年代に戻れば、あるいはそういうふうになるのかもしれませんが、現実に所得なり生活水準が上がる過程においてこういうふうな形になったということで御理解いただきたいと思います。  それから、西欧諸国等との比較でございますけれども一般穀物考え方日本とは大分違う点がございまして、従来から穀物が過剰になりますとそれがえさに回されるというような農業生産並びに穀物消費の形態を伝統的に持っておりまして、これ自体がまた、西欧におきます畜産物を主体にした食生活を形成する国々におきましては重要な問題とされておりますと同時に、畜産業が草資源に依存して生産されているというような性格も持っております。同時に、食用の穀物であります小麦なりと飼料用に回される穀物との間には比較的価格差がなく、品質に応じた連続的な価格形成をたどっている国々でございます。こうした国々での穀物のあり方と、わが国のように米を中心にいたしまして、これを食用として生産している国では、およそ米をえさに、飼料用に向けて生産考えるといいますか、生産行動を起こしている国の例はございません。  そうしたそれぞれの国の穀物自給率についての相違はあるわけでございますが、農産物自給率の国際的なそうした考え方の比較から申しますと、わが国では、食用の穀物においては若干低うございますけれども、やはり野菜とかあるいは果実等についてはかなり高い分野に属しております。それぞれ国におきます食生活及びそれに対応します農業生産の構成割合によって異なるのではないかと思います。  ただ、畜産につきましては、たびたび言われますように、現在の中小家畜を中心にしました飼料穀物はトン当たり三万円程度でございます。現在のこれを、いわゆるえさ米と言われるものはトン当たり三十万と非常な価格差を持っておりまして、この価格差をどのような形で埋め得るか。そういうことができないと、やはり収益性の問題、いろいろ識別性の問題、技術の問題等詰めないと、この問題はなかなか答えにくい。少なくとも今後十カ年の長期見通しの中において本格的にこれを生産するというふうに踏み切るわけにはいかないというのが私ども考え方でございます。
  205. 野間友一

    野間委員 気候とか風土とかあるいは国民性なり、その土地の特質等々でそれなりの一定のばらつきがあることは、これは私はやむを得ないと思うわけですね。ただ、農業の総合的な発展という観点からしますと、要するに需要と供給とのアンバランス、私は食糧というのは必要なものとつくるものと、ここにやはり整合性がなければならない。ここにリンケージがなければますます乖離していくというところに大きな問題がある。つまり食生活が変化をした、それはわかります。ただ、その変化に応じて必要なものを国内でつくっていくという努力が必要だ。ところがこれの努力がいままでなおざりにされてきたというのが今日のような結果になったのではなかろうか。これは私は多少のばらつきがあるのはやむを得ないということは前提で申し上げておりますけれども、この点について、大臣いかがでしょう。
  206. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 御指摘の点、よくわかるわけであります。確かにそういう点もないとは言えないと思います。特に麦類の生産ががた落ちしたということ、それはもう土地の利用率から言っても、高いときは一三二くらいまでいったわけでありますけれども、いまはもう一〇〇ちょっとというふうに利用率が非常に落ちている。その原因等はどこにあるかということを考えてみますと、先ほど来お話しいたしましたとおり、やはり収益の問題かと思うわけでございまして、麦では間に合わない、やはり米の方がいいということで米に集中をしていった、こういうことではなかろうかと思うわけであります。  したがいまして、麦類に対してもっともっとそれでは手当てをすべきじゃなかったか、こういう御意見でありますが、硬質小麦は、日本ではずいぶん品種改良等もやって努力をいたしたようでございますけれども、やはりカナダやアメリカ産のような硬質小麦ができない、そういうことが日本の小麦の生産減退につながっていったのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  しかし、遅まきながらもやはりつくれるものはつくらにゃいかぬ、自給力を上げにゃいかぬ、こういう時世になってまいりまして、さらに麦類の研究等についてもだんだんと熱も入ってまいってきておりまするし、実績も上げておりますので、そういう方面にも努力をして、十年後には小麦の自給率も上げようということで努力を再開しておる、こういうことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  207. 野間友一

    野間委員 米については品種の改良とかあるいは栽培技術の改良、こういう点に相当力を入れて、その結果、確かに収量の面でも品質の面でも非常にすぐれたものができておる。私は前々から思っておりましたし、言っておったのですけれども、米だけではなくて、いま大臣は麦のことを言われましたけれども、やはり整合性のある発展が必要でありますから、麦とか大豆についても品種なり栽培技術の改良、どこでどんなよいものをどれだけたくさんとるのか、これについていままで研究なり実践がおざなりではなかったかというふうに思っておるわけですね。これは大臣、やはりそのようにお考えになりますか。
  208. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 日本農政の中で、やはり技術というものの占める重要さというものはもう本当にはかり知れないものがあろうかと思います。米をここまで開発してまいりました日本技術陣というものは世界的にも非常に高く評価されておるわけでありますが、やればできるわけでありますから、麦類についても、大豆類にいたしましても、あるいは飼料作物にいたしましても、あるいは牧草類にいたしましても、あるいは野草の牧草化にいたしましても、やはりそういうものをやらなければならない。ところが、担当者にいたしてみますと、そういうものを担当してやっておったのじゃ出世もできないという、日本農政、農学の仕組みと申しますか、そういうもの、あるいは農林省内の行政の中の仕組みと申しますか、そういう点をもっともっと、技術と事務関係との渾然たる融和を図ることのできるような雰囲気、環境、そういうものをつくってやらなければいけないという感じが私はしみじみといたすわけであります。  したがいまして、そういう点につきましては、幸い事務関係の諸君技術関係の諸君が話し合いをいたしまして、五十六年度から技術総括審議官というものを官房に置きまして、そして技術者の地位の向上と申しますか、そういう面についての体制も四月からスタートすることができるようにいたしておりまするし、やはり技術者には使命感と申しますか、価値観と申しますか、そういうものをしっかりと与えてやれる行政の仕組みというものが大事ではないか、そういうことで十分配慮をいたして進めております。御指摘のとおり、品種改良、さらには新品種の造成、そういう面に向かって進むことが日本農政一つの大きな方向であろう、こう私は思っております。
  209. 野間友一

    野間委員 これはいまからでも遅くはないわけでありますけれども、やはりもっと早くからやる必要があった。  それからもう一つは、いま麦について硬質、軟質の話がありましたけれども、やはりその国々、その地域、その土地でとれるものを食べるというのが必要じゃなかろうかと私は思うのです。ロシアの黒パンからあるいはフランスのかたいパン、いろいろあります。だから私は、自給率を高める、日本農業を発展させるという点について言いますと、やはり政策で誘導しなければならない。だから、高めるためにはこうするのだというものがなければ、農民にいたずらに意欲をかき立たせて、おまえは必要だからこれをつくれということだけではうまくない、私はこう思うわけですね。  作物の単収の点について、私、ある資料を見てみますと、たとえば小麦について言いますと、一九六五年と七五年との比較でありますけれども、小麦について単収の伸び率を見てみますと、日本の場合には一一五%、アメリカの場合には一三一、アルゼンチンが一〇六、これは低いですね。フランスが一五八、西ドイツが一三五、イギリスが一二三ですね、ソ連が一四六。トウモロコシもまさにそうだし、ソルガムもそうですけれども、結局反当たりの収穫量の伸び率を国際比較してみましても、大臣おわかりのとおり日本の場合には非常に低い。だから、ここにも大きな問題があった。これはFAOの資料からの抜粋ですが、こういうことが言えるわけですね。  ですから、やはり政策で誘導して、とにかく単収も上げなければなりませんし、種子からの栽培技術改善というものにももっと積極的に取り組まなければならない、これが何よりも急務ではなかろうかというように私は思っておるわけであります。そういう点でいままで非常に足りなかったのではないか。これがこれらの具体的な数字の上から明らかになっておるというように私は思っております。  この食糧総カロリーの六〇%、これが輸入なんですね。大臣もいつも輸入が余り多過ぎてびっくりしているというようにおっしゃっておりますけれども、輸入金額を見てみますと、総輸入額の約一五先、相当なものなんですね。そうなりますと、いろんな背景なりの事情はあったとしても、日本人の生命が外国に握られるということ、極端な言葉で言いますとそうならざるを得ないと思うのですね。特にアメリカに対する依存度が非常に高いのが特徴だと思います。食糧の輸入に占めるシェアは四〇%近いものでありまして、大豆に至っては九〇%、トウモロコシは八二%、麦が五九%、異常なアメリカに対する依存度の高さですね。  こういうことがいま出ておるわけでありまして、こういう点で基礎物資あるいは食糧の安定的で自立的な供給体制を確立するあるいは維持する、このことがひいては国家主権、国民経済、いわゆる国民生活の安定、安全保障あるいは自主的な自由な発展をするという点からしても非常に必要ではなかろうか。これは国民主権とかそういう根幹にかかわる問題にも絡んでくるというように私は思っておりますけれども、こういう認識大臣いかがでしょう。
  210. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 生命を支える食糧というものの重要さは、これはもう申すまでもないわけでありますから、その大事な食糧をできるだけ自国で生産できる体制をつくる努力をするということは、これもまた当然だろうと思います。しかし、そうは言っても、技術の問題、コストの問題、品種の問題等々からいたしまして、それをやりたくともなかなか困難な面もあるわけでありますから、そういう点は安定的な輸入ということによらざるを得ない。したがって、その輸入先も一カ所じゃなくて、できれば危険分散的な考え方で数カ所から輸入できるという体制をつくることも考慮していかなければならない、このような考え方を持っておるわけであります。
  211. 野間友一

    野間委員 私、ここに冊子を持っておりますけれども、これは九つの電力会社が出資をして財団法人電力中央研究所というのをつくられておりまして、これが「食糧需給の長期展望」というものを五十四年七月に出しているわけですね。これはやはり石油なりエネルギーの需給との絡みで、電力会社としては非常に関心が高いものでこういう研究もしておると思うのですけれども、スタッフを見てみますと農水省の関係の方も実は入ってつくられておるわけです。たとえば農水省の農林水産技術会議の事務局研究管理官あるいは農業技術研究所の研究室長、こういう方も専門懇談会の助言者委員として入ってつくられたものがここにあるわけです。  これを見ますと、いろいろな指摘がしてあるわけでありますけれども、特に私、興味深く読んだのは、イギリスのケースがここに指摘してあります。その前段としては、日本食糧、特に穀物自給率が非常に低い、生産性も低いというようなことを挙げながら、一つの教訓としてイギリスの例が引いてあります。イギリスはかつて植民地支配で食糧は植民地から入れておった、ところが植民地がなくなってたちまち困って、そして自給率を高めた、そういう一つの歴史的な経過が書いてありまして、その中で、日本の場合にはそうでなくて全部外国に依存して、とにかく余ったものをどんどん金を出して入れてくる、こういうことではいまに大変なことになるぞということが、農水省の役人が入ったそういう報告書の中にも書かれておるわけです。  こういう点でも、諸外国の苦い経験を踏まえまして、安かろう、結果としては高くつくという、後でまた触れますけれども、世界的な食糧の需給関係も今後ますます逼迫していくという状況の中でありますから、いま必要なことは、コストが高くつくとか、農地利用型のものは狭隘でだめだとか、一刀両断に答申のように切り捨てるのではなく、やはりどうあるべきか、特に西暦二〇〇〇年を目指して日本食糧はどうあるべきかという深いところからあらゆる問題を掘り下げて、その中で総合的に組み立てる必要があるのじゃないかと私には思えて仕方がないわけです。  そういう点から見ますと、農政審答申あるいは見通し等々を見ますと非常に心もとないといいますか、将来に非常に不安を持つわけです。もっと自給率を上げていくという点でさらに検討して、この答申なり見通しを見直していくという積極的な努力が必要ではなかろうかと私は思いますが、いかがでしょう。
  212. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 食糧問題に関しまして各界各層からいろいろと論議が起こっておりますことは大変いい傾向ではないか。やはり国民全体がこの食糧問題を真剣に考えて、そのコンセンサスの中から強力な農政というものが導き出されてこなければならない。そういう意味におきましては、農政審答申が出たからそれでもう一安心ということじゃなくて、いま御指摘になったような点等も考慮しながら十分検討を加えていかなければならぬと思います。特に、私は、技術面からの検討は積極的に進めていかなければいかぬ、こういう感じを持っております。
  213. 野間友一

    野間委員 そこで、世界の食糧事情についてお尋ねをしたいと思いますが、国連の統計などを見ましても、発展途上国を中心にこれから異常に人口がふえるということが予測される。これは中位値をとりましても、たしか西暦二〇〇〇年には六十二億五千三百万というような予測がされているわけです。しかも、発展途上国を中心に人口がふえる、生活水準がさらに向上する、また一方、先進工業国の所得がふえる、水準も上がっていく、こういうようなことが将来予測されるわけで、そうなりますとその需給が非常に逼迫して、量、価格いずれも大変なことになるのではなかろうか、こういうふうに私は思うわけです。  この間、私「西暦二〇〇〇年の地球」という本を買って読みました。大臣もお読みになったと思いますけれども、これはアメリカ合衆国政府が特別調査をいたしまして、その結果をまとめた報告書なんです。  これを見て私も驚いたわけでありますけれども、いま申し上げたように人口の増加あるいは生活条件が非常に向上していくということの中で、これはケースを三つばかり挙げていろいろと試算しておりますけれども、こういうことも書いてあります。「世界の食糧部門は、一九六〇年代後半および一九七〇年代前半の一人当たりの基準的消費.水準を単に維持するためにさえ、記録的な上昇率をもって成長しなければならない。」これは生産ですね。  FAOの短期、中期の見通し等々は私も承知しておりますけれども、これは一つの例でありまして、ほかのところでも、全消費量の大部分を輸入に依存しておるというようなところでは、西暦二〇〇〇年になりますと影響は甚大であろう。これは本の百十二ページのところに書いてあります。「しかし、ほとんど自給状態地域では、価格変動の影響は実質上小さいと思われる。」こういう指摘さえもあるわけです。  したがって、短期的に物を見て、いまとにかく安いものが外国から入ってくるというようなことだけで外国に依存して、日本農業生産性の向上をないがしろにするということは大変なしっぺ返しを受けることは明らかだし、合衆国のこういう調査の結果もいま申し上げたような指摘をしておるわけです。  そういう点から答申をながめてみた場合に、先ほども申し上げたのですけれども、農地利用型の農産物自給率の向上については、これは国民の合意が得られないであろうとか、土地の狭隘性とかコストの点で引き合わない、非現実的だ、これは正確な引用じゃありませんけれども、随所にそのような記載があるわけです。私は、これでは非常に視野の狭い、物をミクロな目でしか見ていない、こう言わざるを得ないと思うのですが、この点についてはいかがでしょう。
  214. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 先ほどから穀物自給率の問題に関連した問題かと思います。  十年という期間を限りまして長期見通しを立てました際には、現実にわが国の中小家畜を中心にいたしまして飼料穀物を輸入に依存するという形態がございまして、経済的に申しまして、トン三万円のものにかわる、それだけの収益性をもってできる基盤を持たないという状況からいたしまして、これをわが国の条件で、なお現状の条件におきましてこの十年間の見通しの中でやろうとすれば、生産農家あるいは畜産農家あるいは消費者、いずれかがかなりの負担をするという形態でない限りそういうふうに移れないということが実態だと存じます。非常に自給率が高まることは私どもも望ましいこととは思いますけれども、余り幻想的なものを予定するわけにはまいらないというのが私ども見通しの形でございます。
  215. 野間友一

    野間委員 しかし、それぞれの国においてそれぞれの特性があるわけでしょう。だから、たとえば土地が狭隘だからだめだとか、あるいはコストが高くつくからだめだ、こういうふうになりますと、結局いま世界の大半の食糧を輸出しておるアメリカ、これ並みでなかったらだめだということになるわけですね。ですから、逆の観点から見ますと、ではもう日本農業はなくなったっていいじゃないか、これはそんなことは言いませんけれども、極論すればそんなところにいくのじゃなかろうか、私はこう思うのですね。世界各国を見ましても、それぞれの国がそれぞれの英知を集めて創意工夫しながら自給率を高めていく、こういう政策をずっととっておるわけですね。  これは私が申し上げるように、政策的に誘導しなければ、なかなか急激に思うようにはいかないし、また長い間の積み重ねがこうなるわけでありますから、やはり投資などもそういう長い目でいろいろな点を掘り下げて考えて、そしてもっといいものをつくらなければ、これでは非現実的だというようなことで突っぱねるということではどうにもならないのではなかろうか、こういうふうに思わざるを得ないのです。  特に、私は、鈴木総理が所信表明の中でも言われておりますけれども、一九八〇年代は二十一世紀への足固めだ、こう言われておるわけですね。そういう点からしても、長期展望の上に立って検討されなければならない。特に見通し答申等について見ましても、前のものが五年ですでに改定、大臣、そうですね、わずか五年たってもう今度また改定したわけでしょう。私、いろいろな数字を見比べてみましたけれども、わずか五年しかたってないのにかなり数字をいじくっていますよね。五年しかたってないのにいじくらなければならぬ、これでは大変心もとない感じが私はするわけです。大臣は、よりよいものをいつでも努力し、工夫し、改善していくのにはやぶさかではないというような答弁をされましたけれども、ぜひその点をこれからも取り入れていただいて、自給率を高めるために御努力をお願いしたいと思います。  関連して、いわゆるワイズメンの提言ですが、これがあります。これはたしか本会議席上において鈴木総理は、高く評価しこれを具体化することを命じた、指示したということでしょうか、こういう答弁をされております。つまり、提言そのものが非常に評価が高いということ、これをやはり具体化する必要がある、そして各関係にこれを指示したのだというようなことが言われておりますけれども、この中で農業の問題をとってみましても、私はなぜ高く評価をしなきゃならぬのか非常に不思議に思うわけであります。  しかも、この日米賢人会議というのは、これは単なる民間人の勝手な発言ではない、それぞれの政府に対して物を申しておりますし、この中にはいろんな、要するに政府と関係の深い人がそれぞれ入っているということはすでに御案内のとおりであります。この中でも「日本農業が現在もまた今後も当分の間、貿易自由化への圧力の対象となることは明白」だ、こういう記載もありますし、日本自給率を高めることは非現実的というか、「日本食糧政策の重点が特定水準の自給自足率の確保から、より柔軟性をもつ方向へと移行することが望ましい。」こういうような提言がされておるわけですね。  こういう点からいたしますと、食糧の問題についても、いま以上に貿易の自由化、これをさらに日本の門戸を開放してどんどん入れる、入れるためのひとつ条件をつくれというようなことが提言にあるわけでありますけれども、こういう提言をどうして鈴木総理が高く評価されるのか。事農産物農業問題について、農林大臣はどのようなお考えを持っておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  216. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 日米賢人会議の提言につきましては、私も一通り目を通しました。今後経済社会全体の中に農業農村を適切に位置づけ、振興を図っていくためには、そのあり方について国民各界の理解と合意を得ていくことが重要であることは先ほど申し上げたとおりであります。この意味から、この日米賢人会議の意見は、農業農政に関する論議をさらに深める一助になるものという受け取り方をいたしております。  しかし、内容をよく見てみますと、輸入制限撤廃や不足払い制度の提案などは、わが国農業が置かれている条件などから見て問題があるというふうに考えております。今後は、食糧の安定供給あるいは就業や居住の場の提供、国土や自然環境の保全など、農業農村の果たす役割りが十分に発揮されるよう、農業生産性を向上させながら、総合的な食糧自給力の維持強化国民生活の安定を図ることを基本として、申し上げてまいっておりますように日本農政を推進していきたい、こう私は考えておるわけであります。また、農産物の輸入につきましては、その需給動向などを踏まえまして、国内農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが重要であり、今後ともこのような考え方で対処していかなければいかぬというふうに思っております。  以上のような基本的考え方に立って、今後とも国民各界各層と忌揮のない意見交換を行って、そしてやはり国民の理解と合意のもとに農政の適切な推進を図っていきたい。  要は、やはりこの農業というものは、自然的な、社会的な、経済的な不利な条件を持っておる、そういう中で経営をしていかなければならないわけでありますから、ほかの産業と違って、投下した資本や労力がすべてゼロになるという、まあほかの産業ではちょっと見られないような特性を持っておるわけでありますから、これを経済合理性だけで詰めていったのでは、私は、これはもう農業をやる人がなくなる、こう言いたいわけであります。したがいまして、そういう意味において、農業に対して過保護であるとかあるいは助成のし過ぎであるとかいうことを言う人もおりますけれども、私は、やはりそういう点をカバーして、農家が食っていける、生活していけるという方向を承認してやりませんと、本当に農業をやる人がいなくなる。こういう立場が先ほどの世論調査等にもにじみ出てきているのじゃないか。先ほど先生がお示しになられた世論調査ですね、自給率、七十何%の人が多少高くともやった方がいいと望んでおるゆえんもその辺にあろうかと思うわけであります。  だからといって、農家の諸君がそれに甘えてはいけない、やはり自分の使命感と申しますか、役割りと申しますか、そういうものを十分認識して、そうしてできるだけ上手な農業をやって、価格のコストダウンを図る努力というようなことも積み重ねてもらう必要がある。また、私が先ほどから申し上げておりますように、科学技術の進展、品種改良、新品種創成等に国家がもっともっと力を入れて、そして多収穫のものを創成していくということを外国はやっておるわけでありますが、日本ももっともっと力を入れるべきであるということで、私は就任以来その点に全力を挙げておる次第でございます。
  217. 野間友一

    野間委員 私、聞き落としたのかもわかりませんけれども、この提言について総理が高く評価してこれを具体化するための指示をするとかしたとか、そういうお話がありました。その中にはすぐにできるものとなかなかすぐにはできないものと二つがあるということも、これは私は正確な表現は記憶しておりませんが、そういう御答弁がありましたね。その点で、この農業に関しては「農業貿易問題」として、この本では百三ページ以下いろいろ書かれてありますけれども、そうすると、これをどう実行というか具体化していくか、その点について総理から指示を受けてすでに作業を始められておるのか、同時にお聞きしたいのは、いま申し上げた「農業貿易問題」の項について農水大臣は全面的に高く評価されるのかどうか、これもお聞かせいただきたいと思います。
  218. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  ただいま大臣からも御答弁ございましたように、私ども賢人会議の報告を受けて、農産物の貿易の項、またそれに伴う措置についてはかなり問題があるというふうに感じておるわけでございまして、これは大臣が御答弁なさったとおりでございます。  ただ、全体を読んでみますと、たとえばその項目の中に政策協議を十分やっていけというような項目もございますし、またわれわれが農地三法を御提案申し上げまして、できるだけコストの安い、また消費者の方々にも受け入れられやすいような形での農業の合理化と申しますか、生産性の向上ということに努めていくという分については、この提言の中に生かされているということもございます。  かような点で、先ほど先生も申されましたように、ある部分については、この提言には私どもも当然十分に耳をかさなければならぬ部分もございます。しかし、輸入の問題といったような点について、特にわが国農業の特色からかけ離れたような状態での提言の部分は受け入れられないと考えているということでございます。
  219. 野間友一

    野間委員 レーガン政権下で圧力が恐らくかかってくるであろうということについてはすでにいろいろとやりとりがありましたけれども、私はこれからもいろいろ出てくると思うのですね。二階堂氏などが行かれて、日米交渉の中で農産物一つの大きな問題ではなかろうかというようなことを言われておりますし、それから今度新しく農務長官になられたブロック氏のいろいろ言われたことを私は持っておるわけですけれども、それを読んでも、日本に対する農産物の輸出はこれから相当力を入れてやるという趣旨のことがあちこちで言われておりますし、また書かれております。  だから端的には、たとえば八二年に始まります柑橘の八四年度以降の見直し、恐らく八三年度以前についても、たとえば柑橘の輸入についてのオフシーズンの量の自由化の問題等々も含めて出てくるのではないかということも非常に懸念もいたしておるわけでございますし、そういう点でこれから相当力を入れて、アメリカのそういう圧力に対して日本農業を守っていくという姿勢が何よりも必要ではなかろうかという感じが私はいたしておるわけであります。  きょうは時間の関係で少ししか質問できませんけれども、その点について農水大臣はどのようにお考えなのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  220. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 柑橘の問題はアメリカとの間に協定がございますから、その時限までこの線でいかなければならぬと思っておりますし、アメリカからもっと買えというようなことを言ってくるかこないか、いまのところはそういうことは全然ございません。  したがって、私としては強い決意で、私は日本農林水産大臣でありますから、この農産物問題については、これはASEANに行ってもしみじみと感じてきたわけでありますけれども、やはり日本立場というものを徹底的に相手に理解させる努力をするということではないかと思っております。したがいまして、日本農村が立ち行かなくなるようなことを聞くわけにまいりませんから、そういう点はほぞを固めてそういう事態に対処していかなければならぬと思っております。
  221. 野間友一

    野間委員 時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。あと、えさ米あるいはミカンの問題に関連して果樹の需給見通し、それからOPPの問題等をお聞きしたいと思いましたけれども、残念ながら次回にまたやらせていただきたいと思います。  終わります。
  222. 田邉國男

    田邉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会