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1981-02-26 第94回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月二十六日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 田邉 國男君    理事 菊池福治郎君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 福島 譲二君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 武田 一夫君 理事 稲富 稜人君       逢沢 英雄君    上草 義輝君       小里 貞利君    亀井 善之君       川田 正則君    岸田 文武君       北口  博君    北村 義和君       近藤 元次君    佐藤  隆君       菅波  茂君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    玉沢徳一郎君       保利 耕輔君    三池  信君       渡辺 省一君    串原 義直君       島田 琢郎君    田中 恒利君       日野 市朗君    安井 吉典君       吉浦 忠治君    近藤  豊君       野間 友一君    木村 守男君  出席国務大臣         農林水産大臣  亀岡 高夫君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      森実 孝郎君         食糧庁長官   松本 作衞君         水産庁長官   今村 宣夫君         水産庁次長   山内 静夫君  委員外出席者         外務省経済局国         際機関第一課長 池田 右二君         大蔵省主計局主         計官      的場 順三君         大蔵省関税局国         際第二課長   吉川 共治君         通商産業省貿易         局輸入課長   横山 太蔵君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     横路 孝弘君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     小川 国彦君 同月二十四日  辞任         補欠選任   高橋 辰夫君     原田  憲君   玉沢徳一郎君     始関 伊平君   保利 耕輔君     塩崎  潤君   日野 市朗君     中村 重光君 同日  辞任         補欠選任   始関 伊平君     玉沢徳一郎君   塩崎  潤君     保利 耕輔君   原田  憲君     高橋 辰夫君   中村 重光君     日野 市朗君 同月二十五日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     石橋 政嗣君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     日野 市朗君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松沢俊昭君。
  3. 松沢俊昭

    松沢委員 大臣所信表明につきまして御質問をいたしたいと思います。  去年からことしにかけまして、冷害そしてまた雪害ということで、大臣もこの面につきまして大変御努力をしてこられましたことに対しまして、まず敬意を表します。  私は、ずっと同僚の議員が続けて質問するわけでございますので、農業問題を中心にして御質問を申し上げたいと思います。  いま全国で農政の問題で一番関心事になっているのは、何といたしましても二期減反、そして大臣所信表明にも触れられておりまするところの食管の問題、この二つであろうと思います。そしてまた、この二つというのは考えてみますと全く表裏一体なんでありまして、これからの農政の上にも大変重大な影響があるんじゃないか、かように考えますので、その二つ中心にして質疑をいたしたいと思うわけであります。  まず質問に入る前に、過去の減反実績、そして転作定着の度合いというのがどういう状況になっているのか、最初にお伺いしたいと思います。
  4. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十三年度から水田利用再編対策がスタートをいたしたわけでございます。五十三年度は達成率が一一二%、五十四年度が一二一%、それから五十五年度でございますが、これは目標面積を十四万四千ヘクタールほど上積みをいたしたわけでございますが、一〇九%の実施見込みになっております。  それから定着性関係はどうなっておるかというお尋ねでございますが、もちろん、永年性作物等転作いたしたものは、これは永年性作物でございますから定着しておるというふうに当然見ております。ただ単年性作物ということになりますと、これが本当に全部定着しているかどうかということになりますと、現在転作奨励補助金というものを交付をして、稲作所得とのギャップといいますか所得ギャップを埋めるというような角度でやっておりますので、完全に定着している、ということは十分言い切れない向きも若干はあろうか、かように考えております。
  5. 松沢俊昭

    松沢委員 私、農林省の方からもらった資料によりますと、五十五年におきましては五十三万五千ヘクタールに対しまして五十八万五千ヘクタールということになっておりますが、その中を見ますと、一番転作のパーセントの高いのが飼料作目、その次に野菜、こういうことになっているわけであります。えさ用作目につきましては十五万六千ヘクタールということになっておりますが、この中でいわゆる青刈りというのも入っている、こういうことをお聞きいたしているわけなんでありますが、この青刈り面積というのは一体どの程度でしょうか。
  6. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十五年度の転作実施見込み全体で五十八万五千ヘクタールほどございます。ただいま先生からお話ございますように、飼料作物ということにおきましてはこれが第一番目のウエートを占めております。十五万ヘクタールほどあろうかと思います。これには当然青刈り稲というものも含めてございます。飼料用に向けます青刈り稲、これは大体二万二千ヘクタールほどございます。その他、しめなわなどその他に使うものを入れますと二万五千ヘクタールほど青刈り稲がある、こういう状況でございます。
  7. 松沢俊昭

    松沢委員 大臣、お聞きのとおりでございまして、二万五千ヘクタールに及ぶところの、当然稲作で米のとれるところが青刈りということになっているわけであります。それが五十三万五千ヘクタールのことしの実績ということになりますが、今度その上にさらに三年計画といたしまして十四万二千ヘクタールの上乗せをやる、六十七万七千ヘクタール。それから農政審答申によりますと、最終的には七十六万ヘクタール、こういう目標を掲げておりますが、いまでもこういうふうにして転作ができなくて泣き泣き青刈りをやっているという状況が続いておるわけでございまして、七十六万という最終目標ということになりますと非常にむずかしいというふうに私は考えております。また、そのようなことをやっていくということになれば、農政審の中でも新しい言葉といたしまして日本型食生活——日本型食生活中心になるのはやはり米ということになるわけでありますが、要するにその米が今度は壊滅的な打撃を受けるという結果になるのじゃないか、そのことを実は危倶いたしておるわけであります。  その点、第二期減反というもの、そしてまた最終的な転作目標というものが果たしてできるという自信を持っておられるのかどうか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。  もう一つは、最近非常に農業行政に対します厳しい批判が出ていることは御存じのとおりであります。しかしこれを一つ一つ分析してみますと、本当の農業実態を知らないというところからいろいろの攻撃がかけられておるのではないか、こんなぐあいにも私は考えるのでありまして、米が余るから減反しなければならない、その前になぜ米が余るのかということの追求の方が大事なのではないか、こう思っております。  これは大臣も見られたと思いまするけれども、米が余るという基本的な原因といたしましては、NHKなどの方々が編集されました「小麦戦略」という本も出ておりまして、米に小麦がかわってきた、そういうところに米が余るという原因があるのじゃないか。もう一つは、生活水準が上がってくれば、当然肉を食べる量というのもよけいになってくる。最近では肉と米との競合、こういう問題も実はあると思うわけであります。そういう点で、基本的には日本粉食ではないのでありまして粒食であるわけでありますが、それが押されに押されてきた。だからそこのところにまず歯どめをかける、こういうことが非常に重要だと私は思いますが、その点大臣は一体どのようにお考えになりますか。
  8. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 青刈り飼料に泣く泣く回さざるを得ない、生産調整は年々厳しくせざるを得ない、そういうことが自信を持って遂行できるのかどうかということと、そういうふうになったのは、とにかく小麦が米にだんだんとってかわってきておるのではないか、本来であれば、日本水田文明なんだから米を中心にしていかなければならぬのに、粉食になったというのはその辺に間違いがあるのじゃないかという御指摘を通じての御質問と承りました。  私の考えも大体同じでございまして、日本モンスーン地帯でありまして、米が一番気候、風土に合ってよくとれる穀物である、こういうことは歴史が示しておるわけであります。その米を中心にした食生活国民として維持存続、つくり上げていく努力が非常に大事じゃないか、私はこう思います。  終戦直後非常に食糧難に陥って、百万以上の餓死者が出るのではないかとさえ言われたような事態のために、そういうことも十分考慮せずに粉食に走ってしまって、学校給食等はすべてこれ粉食ということで、米は健康のためにはむしろ害のある食品で、粉食が健康のためにもいろいろな面においても米にまさるといったような誤った私は誤ったと思っておるわけでありますが、そういう国民的風潮が、終戦直後ずっと、昭和二十年代、三十年代の前半にあったことは確かでございます。私どももその当時から、これは大変なことになるということで、学校給食会に対して、米飯給食をするようにということを何回か農政運動を通じ、特に農政連運動を通じてやったわけでありますけれども、それがなかなか実を結ばぬ。そこで結局国会に籍を置かしてもらってから、学校給食会に対して、毎年毎年強く要請して、やっと米の給食という方向に踏み切ってもらった、こういうことでございます。  最近やっと週二回米飯給食をするところまでいっております。しかし二回では足りないので、少なくとも一週間に三日以上の米飯給食というところまで持っていかなくては本物にならないのではないか、こういう感じを持つわけでございますが、私ども政府内において強く要請をいたしながらも、週二日で十分だといったような感じがなきにしもあらずということでありまして、政府内部におきましても、学校給食米飯給食をもっともっと取り入れさせる。五十六年度は都会対策として、都市の学校給食米飯給食を取り入れさせる努力をしてもらう。粉食になっていったのも学校給食からでありまして、これには三十年かかっておるわけであります。これを引き戻すのにも相当粘り強く、根気よく努力を惜しまずに米飯給食奨励してまいるというのが何といっても大事であると同時に、やはり全国民が自分の国土の特質というものを十分考えながら、最もいいと言われております食品である米というものを認識して、その米を主食として食生活の中に取り入れていく、こういう心構えを持っていただくという努力を私どもは続けてまいることが大事である、こう思います。  同時に、農業に対する各界各層からのいろいろな提案なり提言なりが出ておりますけれども、これは農林水産大臣立場から見ておりますと、いずれも何か経済合理性というようなことが中心でございまして、ああいう方々はみずから農業をやられた経験もない方々のようでありまするし、しかも、農業が天候に支配されて投資したものが全くゼロになるといったような、他産業では全く見られない農業本来の特質を持っておる、そういう中での経営をしていかなければならぬという実態。確かに経済合理性もある程度は追求しなければならぬとは思いますけれども、すべてが経済合理性農業問題、食糧問題を解決しようとしたならば、日本のような急速に経済高度成長の道を歩んできている国家にとりましては、一遍にそういう方向に持っていくなんということはとてもとてもできないことでありまして、相当長期の期間をかけてやってまいりませんと混乱が起きて、農業に携わる者がなくなってくるというようなことまで起きてくるのではないか、こういう考えを持っておるわけでありまして、その点農業というものの特質をよく一般の国民方々にも認識していただく努力もやってまいりますとともに、そういう経済合理的な農業と申しますか生産性の高い農業をやってまいりますためには、農村の地域社会の雇用の問題等も十分考慮しながらやはり規模拡大というものを考えていかなければならぬわけでありますので、その方向に持ってまいりますためにも、これまた莫大な国費の投下というものをしなければなりません。そういうものをやってまいりますためにも、農家立場としても農家魂と申しますか農民魂と申しますか、農家としての社会的使命感というものも十分考慮した農業経営をつくり上げていくという努力も必要である、こんなふうに考えて指導をいたしているところでございます。
  9. 松沢俊昭

    松沢委員 私は、昨年の四月に衆議院本会議自給力強化に関する決議をやるに当たって、大臣が大変な御努力をされたということを実は聞いているわけなんです。ところが農政審に出されましたところの長期見通しからいたしますと、これはあべこべに六十五年になると国内穀類自給率というのが四%も下がるということになっているわけなんでありまして、その自給力というものと自給率というものは違うのかどうか。私は同じものではないかという考え方に立っておりましたが、大臣がそのような御努力をされて、全会一致自給力強化という決議がなされているにもかかわらず、政府見通しとしては逆に自給率が下がってくる、これは大変矛盾しているのじゃないか、こんなぐあいに思いますが、その点の定義をひとつ聞かせてもらいたいと思うのです。
  10. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 自給率というものは、これは消費されるものと生産されるものとの比率ということできちっと出てくるわけでありますが、力という方は、潜在生産力等も考慮してあらゆる食糧生産可能性等も考慮した一つの見方、こういうふうに理解いたしております。  実は、皆さん方と一緒に国会決議をやらしていただいたあの当時のことを考えてみますと、自給力が非常に低下をしてきておる、農林水産物資輸入も、昭和五十四年度は二百八十九億ドルという莫大なものを外国から買っておる、しかもその輸入のための経費が年々ふえておる、しまいに一体どうなるんだという不安、それを解消するためにということで食糧自給力強化決議案というものが国会意思決定をされて、農政一つの大きな足がかりをつくっていただいたと考えております。したがいまして、七月に就任をいたしまして農政審議会等の情報を聞いてみますと、五十三年度の穀物類自給率三四が六十五年度に三〇になる、この数字、私、審議会答申がまだ出ておりません時代に、こういうことでは農林行政が何のためにやられるのか、国会決議案ほどうなったのかということをずいぶん省内で事務当局と議論をいたしたわけでございます。  ところがいろいろ検討をしてまいりますと、とにかくあらゆる努力をしてあのようなことにならざるを得ない。数字関係のデータを見まして、もうあらゆる努力をした結果がこういう数字になるんだ、国会決議をいただき、努力をし、その結果がこのような数字になるんであって、もし努力しなければ大変なことになるんですよ、こういうことでございまして、私も、できることならもっともっと力を入れれば三〇というものを少なくとも三四くらいまで持っていけないか、こういうことを言いましたところが、やはりえさ関係で十年間にそれだけの大増産をするというような計画はなかなかどうして容易じゃございません、こういうことで、衆寡敵せずと申しますか政治力が弱いと申しますか、農政審議会答申をちょうだいした。ざっくばらんに言ってこういうことでございまして、この点はそれだけにほぞを固めてがんばらなければ大変なことになるんだなという、むしろ一つ警鐘乱打のためのものとしてこれを認めざるを得ないのかな、そんな心境になっているこ  とを率直に申し上げたいと思います。
  11. 松沢俊昭

    松沢委員 大臣の御心境もよく理解はできますが、さっきも米の消費拡大のために大変努力をしておられるということも聞きました。しかし、消費拡大努力するということも大事でありますけれども、何といたしましても、先ほどからの大臣答弁からいたしまして、麦という外国農産物、これが米の過剰という結果をもたらしているところの原因である。したがって、それを解消するにはどうするかということになりますと、どうしても外国農産物、それを自由に任しておくということでなしに削減計画を立て、それとうらはらにこっちの方では生産計画を立てていく。生産計画削減計画というものを二つつくって、それを目標にしながら農政を進めていかない限りにおきましては、国内自給率向上というものは期し得られないじゃないか、こういうぐあいに私は考えておりますが、大臣どういうふうにお考えになっているか。  それから、もう一つの問題でありますが、いま減反で大変苦しんでいるわけなんです。それが米だけでないのでありまして、たとえばたばこの場合におきましても、だれかがやめる、こうなると、そのやめた分を私にやらせてくれと言っても専売公社の方ではやらせてくれない。やはり外葉の問題が絡んできているわけなんです。たばこもやはり減反、こういう状態になっておりますし、牛乳の方におきましても御承知のとおり、あるいはまた柑橘類においても御承知のとおりなんであります。  こういうぐあいに考えていきますと、米をやめて何かをつくれと言われてもなかなか無理がある。その無理というのはどこに原因しているかというと、やはり外国関係がある、こういうことになっているわけでありますから、米だけでなしに農産物全体について生産計画を立て、削減計画を立てて、そして日本農業生産を高める必要があるのじゃないか、この点、どうお考えになっているか。  それからもう一つ農政審答申の中にも、優良農地確保水資源確保、それから農業技術向上、こういうことが不測の事態に備える条件だ、こういうことが述べられておるわけであります。さっきの大臣自給力についての御答弁の中では、潜在生産力、こういうことを言っておられますが、要するにその潜在生産力確保するためには、農政審答申しましたところのいまの条件というのが必要であろうと私は思います。しかし、そうは言うものの減反を強要されるということになれば、それは米をつくらぬで水資源確保優良農地確保もそれから技術向上ということも期し得られないわけです。どうしてもやはり水田というものは水田にして管理をしていかなければそれはなかなかむずかしい。もう本当に一年も休耕をしますと、とても草ぼうぼうになってどうにもならぬ、こういう点があるわけでありますから、したがってやはり水田水田としてちゃんと管理をしていかなければならぬ、こういうことになると思います。  そうなった場合、水田で何をするかということが問題になるわけでありますが、私は、この前の委員会でも申し上げましたけれどもえさ米というものが日本においては適しているのじゃないか、こんなぐあいに考えます。えさ米の問題につきましてはいまだに奨励というところに踏み切っておられませんが、この際それはやはり考えてもらわなければならぬのじゃないか、こんなぐあいに考えておるわけなんであります。  しかも、さっきの御答弁にもありましたけれども、何しろ家畜がどんどんふえていくわけですから、それに伴いましてえさが必要になってくる。農政審が出されましたところのえさ作付面積は六十五年には百五十五万ヘクタールですか、こういうふうに伸ばしていくんだ。この中で濃厚飼料はどのくらい入っているのか、これも農林省にお聞きしましたところが、それは粗飼料だけで濃厚飼料は入っていない、濃厚飼料作付面積はないんだ、こういうお話なんです。そうすると、濃厚飼料というのはそれじゃまるきり外国依存なのかと聞きましたところが、まるきり外国依存だ、こういうことなんであります。そうなりますと、日本畜産振興という立場からしても大変重要だと私は思います。  でありますから、水田えさをつくる、それからさらに畑にもえさをつくっていくということが必要になってきているのじゃないか。そういう意味からいたしましても、水田えさ稲をつくって、それこそ大臣が言われるような潜在生産力というのを保持していくということなくして自給力強化というものはないじゃないか、こんなふうに実は考えておるわけでありますが、その点はどうお考えになりますか。
  12. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 生産調整をやって米の後に何をつくるのか、そのつくるものについては生産計画をきちっと立ててやれという御指摘でございます。  私どもといたしましても、それを農政審にどうしたらいいかということを、一年半専門家方々に集まっていただいて、そして十年後の需要生産長期見通しをつくっていただいたわけでございます。当然麦も国内でできるだけ、めん類等の原料としての小麦国内で全部これを充足していくということで、六%であるものを一九%まで向上させて、六十五年度には小麦輸入量を若干減らすというような見通しを立てておるわけでございます。大豆等についても五%を八%まで上げていこう、そういう努力をする一つ見通し閣議決定をいたしておるわけでございまして、気持ちにおいては松沢先生の御指摘されたのと相矛盾してないと考えておるわけでございます。  ただ、需要が増加してまいりますところのえさとしての穀類ですね、こういうものの生産計画といいますか生産見通しというものがなっておらぬじゃないかという御指摘でございます。農政審でもその点はずいぶん論議をされたようでございますけれども、現在の状態日本の構造の中において、コストの問題を十分に考えながらやってまいります際には、速急に水田でトウモロコシやあるいはコウリャンやマイロや、そういうものをつくっていくということはこれは容易なことではない、こういうことに相なりまして、あのような長期見通しというものに落ちついたと聞いておるわけでございます。  したがいまして、今後の、やはり遠き将来においては、農政審えさとしての穀類水田生産をしていくというような、たとえばえさ米のごときも長期的な視野からこれは大変意義のあることであって十分検討すべき問題である、こういうふうにいたしておるわけであります。したがいまして、農林省といたしましてもその点十分考えまして、五十六年度の予算編成に当たりましてもこのえさ米固定化と申しますか、品種改良いたしましての固定化、さらには超多収品種を造成するための努力、そういうことを国の試験場並びに県の試験場を挙げて取り組む体制をつくっておりますゆえんもそこにあることを御理解いただきたい、こう思うわけでございます。  と同時に、飼料作物等に対しましても、やはり水田中心にした品種改良が必要ではないかということで、これは大分県の試験場だったかと思いますが、オオクサキビといったような新品種の造成と申しますか、そういうものも固定化されつつあるという報告も聞いておりまするし、やはりこれからが正念場でございまして、そういう面での多収穫の新品種を造成をしてまいるという努力も並行して努めていかなければならない、こういうことで五十六年度の予算編成もさしていただいておる、こういうことでございます。
  13. 松沢俊昭

    松沢委員 特にえさ米問題につきましては、試験場で試験をするということでなしに、全国でもえさ米の協議会なんかもできて、すでにことし全国的に作付をやるという状態に入っているということを大臣の方も十分意にとめていただきまして、このために積極的な御支援を賜りたいと思いますが、どうでしょうか。
  14. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 先ほど申し上げたわけでありますが、やはり水田生産力というものを基本にして飼料えさ用穀類生産をしてまいるという意義は非常に大きいわけでありますから、その意義が本当に生かされていくような仕組み、システムをつくり上げていかなければならぬ、それは技術面においてもまた価格面においても。それから一般の食糧用の米とまざっちゃって消費者から文句の来るような、また食糧管理を混乱させるような、そういうことのないようないろいろな面における取り運び方と申しますか、取り扱い方と申しますか、やはりそういう仕組みを一緒に考えてまいりませんと、企図した水田生産力を利用して穀類の、米の生産を上げていくということはなかなか困難性があるのではないかという感じがいたすわけです。その上においても、やはり畜産農家、畜産関係の団体等と十分な協力のもとにそれらの点の仕組みづくりに研究、努力をしてまいらなければならない。そういう点についても食糧庁並びに農蚕園芸局、農水省としても挙げて努力をしていこう、こういうふうにいたしておるわけでございます。
  15. 松沢俊昭

    松沢委員 この前の新聞に載っておりましたけれども、中核農家とは一体何ぞやということを実は私も非常に疑問に思っておるわけなんでございます。世界農業センサスが発表になりまして、それによりますと、いままで私たちの聞いておりましたところの中核農家というのは、六十歳未満の男子農業従事者が百五十日以上農業に従事している、そういう人のいる農家というものが中核農家だ、こういうふうにして説明を承っておりましたが、あのセンサスによりますと、そういう中核農家で販売額ゼロというのが七千戸にも上っている、その他二百万円以下ということになりますと四割以上、そういう状態であるということが出ております。農政審答申にも中核農家という言葉が使われております。中核農家というのはそういうものであるとするならば、そういうものが中心になって農業を担っていく、こういうことにもなるわけなんでありますが、この辺は一体どうなるのでしょうか。
  16. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 中核農家につきましては、統計上、ただいま御指摘がございましたように、自家農業に年間百五十日以上従事する六十歳未満の男子のいる農家ということで調査いたしておるわけでございます。八〇年農業センサスで約百万戸というふうに算定されております。  先般新聞に報じられたのは、この八〇年センサスの統計処理の過程のものと思います。この統計処理上の問題といたしまして販売収入区分によります数字が出ておりますが、販売収入でございますから、当然これは自給部分がまず入っておらないという前提が一つあるわけでございます。すでにセンサスの利用のときにも申し上げておるわけでございますが、この販売収入については比較的過少に申告されるという傾向が従来の農家経済調査等の経過から見られますが、ただ御指摘のような問題につきましては、私どももその内容について検討を進めております。具体的にどういう事例か、個票にわたっての具体的な事例の調査をいたしたいと思います。多少、事業の開始段階あるいは収入の帰属といいますか、主宰者になっておりますのが当該調査対象者でなかったとか、いろいろな問題もあるようでございますので、この実態についてはなお調査いたしたいと思いますが、戸数自体は全体的には約百万戸ということには変わりないかと思います。他の統計資料等と突き合わしてもそういうような推定も見られますが、中核農家経済状況については、全体的にはむしろ農家経済調査によって私どもはトレースしているというのが実情でございます。
  17. 松沢俊昭

    松沢委員 しかし、その統計が誤っているというわけでもないと思いますので、やはり中核農家がそういう状態であるとするならば、中核農家の定義をもっと変えなければならない、こういうふうに私思いますが、どうでしょうか。  それから、時間がありませんから申し上げますけれども減反の大幅な推進のために昨年は農地三法を制定されまして、そしてことしから利用増進事業というものを減反とドッキングして進めておられる、こういう状態であるわけでありますが、私の方でアンケートをとりまして調査いたしましたところが、これは通勤労働者の調査であります、ほとんどが零細農でありますが、その人たちがこれから先農地というものを手放すのかどうかというような調査をやりましたところが、ほとんど、七割の人は手放さないで自分でやはり農業をやっていく、こういうふうに答えておられるわけなんであります。  そういう点からいたしますと、農地三法とドッキングさせて大幅な減反を進めていくんだ、そのために計画を立てたりあるいは組合をつくったりしていくんだと言うけれども、そのアンケート調査からいくと、そういう小さいところの農家を整理、切り捨てをするということはむずかしいのではないかと私は思うのですが、その点どうお考えになっているのか。  それから転作奨励金は、いままでは基本が五万五千円、これがことし五万円になる、計画加算は一万五千円が一万円になる、こういうことなんでありまして、これは「八〇年代の農政の基本方向」にも出ておりますように、奨励金から脱却する、そういうのを目標にしてやっていかなければならぬということを言っておられますが、また三年たちますと面積がふえてくる、また減らさなければ財政負担が大きくなっていく、こういう関係が出てくると思います。そこで、転作奨励金というのはことしも来年も同じなのかどうか、それから転作奨励金というのはいつごろをめどにしてなくしていくのか、その点お伺いをいたしたいと思います。
  18. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 最初の御質問の中核農家につきましては、私ども概念としてこうした方々がこれからの農業生産中心的な担い手になるものと考えております。したがって、中核農家中心にした農業生産の再編成なりを進めてまいるべきものと考えておりますが、具体的な形態としてのセンサスの要請につきましては、なお個別に私ども検討させていただきたいと思います。  第二点としまして、利用増進のお話が出ましたが、まさに御指摘のように農地を手放さないという傾向が強いことは事実でございます。したがいまして、農用地利用増進法によりまして短期の利用権の集積をいたしたいということで御提案申し、成立させていただいたわけでございますが、最近の動向を見ましても、この十二月に、五十五年の累積で四万七千ヘクタール程度まで来ているかと思います。五十五年の年間の増が二万ヘクタールくらいはあったかと思います。当初二、三千くらいずつ増加してまいりましたが、最近の動向を見ますと、利用増進事業自体は非常に理解されて、農地政策上は非常に浸透しておるものと考えておりますが、なお現実的な地域の実情に沿うようにこれを一層促進してまいりたい、このように考えております。
  19. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 転作奨励補助金関係でございますが、これはおおむね十カ年でやります水田利用再編対策の中で、期ごとに定めるということに相なっております。五十六年度から第二期に入るということでございまして、その際に奨励金の水準なり体系をどうするかということでいろいろ検討をいたしました結果、先ほど先生からお話もございましたように、基本額の方は一律五千円切り下げる、あるいは計画加算につきましても、特定作物、一般作物ございますが引き下げる、そのかわり、今後の定着性を高めるということもございまして団地化加算等を設けることをやったわけでございます。したがいまして、この奨励補助金は五十六年度だけでなしに、いわゆる第二期の期間中の奨励補助金がただいま申し上げたような水準体系のものでございます。  三期以降どうなるかという問題がございますが、これにつきましては、具体的には三期の始まる直前に、さらに稲作所得転作作物の所得との所得ギャップがどのくらいあるかとか、いろいろなことも考えて決めるべきものと思いますが、考え方としては、やはり次第に転作奨励補助金依存を脱却し得る生産性の高い、定着性の高い営農を育てていくという考え方で臨むべきものであろう、かように考えております。
  20. 松沢俊昭

    松沢委員 時間が来ましたので、最後に食管の問題について御質問を申し上げたいと思います。  食管法は昭和十七年に戦時立法ででき上がったわけでございまして、この法律の条文からいたしまして、新しい憲法、民主主義、基本的人権の尊重という面からすると大変なじまないところの法律であると私は考えているわけなんであります。したがって、食糧管理を民主的にやっていかなければならぬことは申し上げるまでもございませんが、大臣も触れておられますけれども、現在、政府の方で食管の法律問題の手直しをやろうという考え方がだんだん明らかになってきております。二月の法の「改正の趣旨及び内容」についての食糧庁の文書を見ますと、簡単に申し上げるならば、配給通帳を廃止する、あるいはまた縁故米や贈答米というのを認めていく、それから流通ルートだけは厳しくやっていく、こういうことで、いままで現実と乖離している部分をとにかく追認するものであるように言われております。  しかし、よく考えてみますと、これは大変重要な内容があるのではないか。その一つとしては、いままでの法律が戦時立法であるとすれば、これは配給制度の停止を言っているわけなんでありまして、不測の事態が来た場合には配給統制の制度に戻すのだ、こういうことでありますから、それはいま言われるところのまさに有事立法ということになるのではないか、そしてそのことは、やはり農民の基本的人権を無視する法律ということになります。  それからもう一つの問題としては、いまは法律にはございませんが、今後は自主流通米というものを法律的に認める。認めることによっていわゆる価格の面において問題が出てくる。需給均衡の価格というのがずっと大きなウエートを占めて、政府の価格にもそれを反映させるということになりますと、いままでの生産費及び所得を補償するところの米価の算定方法というのは根底的に覆ってしまう。  それから三つ目には麦の問題であります。これもこの「改正の趣旨及び内容」には入っておりませんが、新聞等見ますとこれも何とかしていく。ということになりますと、いままでの二十五年、二十六年を基礎にしたパリティ指数を掛けてそれを下回らないものとするというものがなくなってしまうということになれば、やはり麦価格も低麦価になるのではないか。そういう点からいたしまして実は非常に重要な内容が含まれている、こういうぐあいに考えております。  その点についての大臣の御答弁と、それから私たちからいたしまするならば、食糧管理という問題は国民経済の基盤をなすものでありまするから、慎重の上にも慎重を期していかなければならない。したがって、だれかが何を言ったからといってそれなら変えましょうというような簡単な変え方では私は困ると思います。そういう意味からいたしまして、今国会で法案を提出されるということはきわめて時期尚早なんじゃないか、やはりもう少し十分な検討を加えながら、そして最も民主的な管理が行われるような、そういう制度の確立というのをする必要があるじゃないか、こういうぐあいに私たちは考えております。そういう意味につきましての大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  21. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 食管法は、いろいろな面で法律で定めた事柄がきちんきちんと行われておらない面も実はあるわけでございます。したがいまして私ども、特に私なんか生一本に考える方なものですから、やはりわれわれは立法府にある議員として国民から当選をさせてもらい、法律を制定する立法府に所属しており、しかもいまたまたま農林水産大臣として行政権を執行する立場にありましてしみじみ考えますことは、やはり法律というものはもっと厳粛に考えなければならぬのではないかなという気持ちを私前々から持っておったわけでございます。  したがいまして、この食糧券、配給券というようなものは、法律には定められてあっても全く使われておらないという問題。さらにはやみルートの米を扱っても、罰則まであるにもかかわらず、これらのことが全然もう法なきがごとしというような状態にある、こういうことでいいのだろうか、せめて違反者のないようにするのがわれわれ立法府におる者の心構えではないだろうか、政治家としてのそういうことで私、就任早々そういうことを事務当局に申し上げ、しかもこの食管問題というのは、法律改正をしないでとにかく改善できる点はいろいろな面で改善してきておるわけでありますけれども、これから縁故米の問題にしても、さらにはいろいろ米の消費を伸ばすという際の発想等を、一例を申せば飛行場で米をおみやげとして売るというようなことをしようと思っても、これはいまの食管法ではとてもできないというようなことで、そういう面でもやはり大方の合意の得られるような線は少なくともできるだけ早くきちんとすべきではないか。そういうような考え方のもとに、骨幹を変えるとか基本的な問題をあれするとかいうようなことは、松沢委員指摘のとおり、これはもう消費者にとっても、また生産者にとっても大事な大事な農政の基本法と言ってもいいくらいの法律でございますから、慎重に慎重を期さなければなりませんけれども、私がいま申し上げたような線でぜひとも、何といっても食糧管理する基本法でありますから、それが法律として守られておる、そういう法律が農家生産体制を守り、また消費者の食糧体制を守っていく、こういうふうにしていくのが至当ではないのか、そういう考え方で今回いろいろと積極的な検討を事務当局にさせておるところでございます。
  22. 松沢俊昭

    松沢委員 これで終わりますが、とにかく食管の問題は食糧管理の基本に関するところの重要な問題でございますので、慎重に取り扱うということにしまして、今国会に提案はやらないで、そうして各界の意見、また国会の意見なんかも十分聞いて、長い期間をかけて最終結論を出すのが至当ではないか、こういうぐあいに考えますので、大臣の方からもそのような取り扱いをしていただきたいということをお願い申し上げまして質問を終わります。
  23. 田邉國男

    田邉委員長 新盛辰雄君。
  24. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣所信表明の内容の中で、特に私の方から、水産振興にかかわる問題としてこれからの水産政策についてどのように考えておられるか、諸点にわたってお聞きをしておきたいと思います。  四面海に囲まれた日本の漁業がいま大変な危機に瀕していることは御承知のとおりであります。動物性たん白質を供給する上できわめて重要な役割りを持っているいまのわが国の水産業界が、それぞれの業種別にわたって危機的な状況にあることはもちろんでありますが、特に二百海里の急速な到来でその規制がさらに強まり、あるいはまた燃油の高騰、水産物需給の停滞、魚価の低迷、無秩序な輸入、さらには金融、融資対策、漁業災害あるいは福祉対策、減船その他多くの問題が山積しております。  こうした現状認識について、わずか数秒にして水産業の振興について大臣の方から所信表明がありました。この内容ではどうもわれわれも理解しがたい。いま当面している重要な課題である水産業経営安定対策の拡充だとか、あるいはつくる漁業への進展、いわゆる栽培漁業の振興あるいは沿岸漁業者等に対する福祉の対策などが本年度の重要事項になっているように予算的にも措置されているわけでありますが、その認識としてどういうふうにお考えになっているか、まずお聞かせをいただきたいと思うのです。
  25. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 新盛委員の御指摘になられた大筋の線、私もそのとおり考えておるわけでございます。何と言っても一千万トンの漁獲高によって一億国民のたん白食品を賄っておる大事な大事な産業であるというふうにまず認識をいたしております。しかるところ、海洋法の制定の機運も熟してきており、しかも二百海里という時代に入りまして、各国ともその漁業権、経済権益をできるだけ多く守ろうという空気が年々強くなっていく中で、日本としては沿岸漁業を幾ら振興させましても、やはり遠洋漁業の持つ意義というものもこれまたきわめて大きいことは申すまでもありません。そういうところへもってきて燃油の高騰という外的要因とでも申しますか、これがもう日本の遠洋漁業を、あるいは沿海漁業を非常に窮地に追い込んでおるということも私は十分理解しておるつもりでございます。  と同時に、先般もASEANに行ってまいりましていろいろ経験をいたしてきたわけでありますが、本当に二国間の話し合いをきちんと詰めてまいりますためには、時間もかかり、また入漁料等の問題もこれまた年々厳しく出てまいってきておる、こういうことでございまして、いわゆる漁業外交というようなものも積極的に展開をしていかなければなりません。そういう意味における水産庁の苦労、努力というものは今日までも大変なものでありましたが、これはもう本当に外務省と一体となってやってきておりまするし、また今後もやっていかなければならぬという問題もあるわけでございます。  特に私気にしておりますのは、アメリカが漁業という問題に大きく目を向けてまいりまして、アメリカの政治家諸君に、漁業の面でアメリカの雇用を少しでも吸収しようという空気が出てきておるのではないかというふうに見ておるわけでございます。そういう意味において、日本の漁船にとらせておった分までアメリカでとって、それを日本に買わせる、そういうような方向に行くのではないかなという心配もいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、とにかく日本の遠洋漁業をめぐる外的環境というものは年々非常に厳しくなってまいる。これに対処を誤ってはなりませんし、対処を十分にしていかなければならない、こう思っております。  と同時に、沿岸漁業あるいは養殖漁業、内水面漁業等においても、十分な資源活用という面からいたしまして、いろいろな養殖法の研究開発、あるいはサケなんかに対してみましても、日本の水産の技術の大変な進歩と申しますか、サケのふ化事業に伴うところの回収率なんかも最近とみに上がってきておるようでございますので、そういう点の技術向上させるとともに、地域を広めるということも私は考えておる次第でございます。  そういうような認識のもとに、これは私率直に言わしていただくわけでありますけれども、とにかく一千万トンのたん白源を補給しておる水産業が予算面において果たしていまのままでいいんだろうか。お米も一千万トン、たん白質も一千万トンと、大体そういう中で、この水産業というものが案外割り安に国民にたん白質を供給しておるといういまの体制から考えまして、そこに水産業界の苦しさというものが原因しているのではないかなという、これはまだ私の不勉強かもしれませんけれども、そういう感じを持って、実は水産庁に対しましても積極施策の遂行にいろいろと指示を与えておる、こういうことでございます。
  26. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いま大臣がお答えになったように著しい大きな変化が出てきている。それに対応する漁業の展望なり将来像ということについて、これからも明確にその方向づけをしなければならないだろう。特にいまアメリカの話が出ましたが、ブロー法案は昨年の九月の二十三日でしたか、アメリカの議会の下院の中では一応通りましたけれども、後廃案になったような形で、さらに今度十二月の五日に再び上下の両議院の議決を経て、若干修正されたそうですが、これが日本漁業に与える影響は非常に大きいだろう。特にまた入漁料とか外国割り当て基準などが八一年度に決まるというのです。そうした環境の中にありまして、これから強力な漁業外交を実行してもらう。あるいは南太平洋フォーラム諸国における入漁料の高騰は、これまたゆゆしき問題でありまして、漁場の確保を初めとして大変問題があるところでありますから、この辺についても担当の方からお聞かせをいただきたいと思います。  ブロー法案の行方はいまどうなっているのか、その後の日本に対する漁業の規制、そうしたものはさらに厳しくなっているという現状でありますから、お知らせをいただきたいと思います。  そういう環境の中で、栽培漁業という沿岸の漁業をより拡大し、掘り起こしていきたいという熱意のほどはわかりますが、最近の省エネ型漁業の推進をどう進めたらいいか。いつまでも石油に頼っているわけにはまいりませんし、だからといって魚をとるのに有効適切な手を打たなければいけない。いま栽培漁業、つくる漁業ということで特に強調されておるわけですが、そういう場合に、ここ一、二年に栽培漁業法というのをつくって、そしてこれからの栽培振興を図ろうということも聞いておりました。しかし、いまだにそういう法律も提起されていないのです。その理由は何でしょうか。  それと、これは確かに行政改革との問題がありましょうし、あるいはスクラップ・アンド・ビルドの関係で特殊法人をつくるのはどうも困るということになってきていることも推測されますが、そういうことにおいて、いま現在あります社団法人の日本栽培漁業協会、こうしたものの強化を図るのも一つの手だとは思います。そうしたことについてのお考えもいただきたいと思うのです。こうした予算の措置としては、提案されておりますように栽培漁業についてはこれから相当力を入れていかれるようです。二百九億の金も出してやろう、栽培センターをつくる、そうしたものが考慮にあらわれておるようでありますが、こうしたつくる漁業というのが、沿岸における漁業振興ということに強い希望を漁民は持つように至るわけであります。  ところが、この反面、厚生省と運輸省が何かいまもくろんでおると言うのは語弊があるかもしれませんが、例の広域廃棄物の投棄。そうしたことのねらいは、沿岸の港湾施設の中にいわゆる産業廃棄物だとかあるいはごみ捨て場として夢の島みたいなものをつくっていくのだというので、いま法律が形成されようとしています。これは日本を四面囲んだ海をごみ捨て場にするようなことになる。あるいは漁民が漁業振興、沿岸漁業をこれから栽培漁業として新しい体制に入ろうとするときに、まさに逆行することじゃないか。このフェニックス計画というのは果たして水産庁と十分連携がとれてやっておられることなのか。しかも漁業者の方から猛烈な反対があるわけです。直ちにこれは提案を控えておくべきじゃないかと思うのです。つくる漁業から逆につくらない漁業へ移り変わるということはきわめて問題があるのじゃないかと思いますので、ブロー法案から来る外交上の問題、そして内部における沿岸漁業の振興、そしてその逆に廃棄物をどんどん捨てて漁業環境の保全に逆行しているということについてどういう見解を持っておられるか、大臣あるいは水産庁長官からお答えいただきたいと思うのです。
  27. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のように、二百海里時代がだんだん定着を見ていく過程におきましては、やはり二百海里の魚は自分の国のものであるという非常に強い意識が働いてくるわけでございまして、そういう動きの一つとして最も端的な動きはブロー法案であろうかと思います。  ブロー法案の内容につきましては、当初私たちは非常な危倶を抱いたわけでございますが、その後いろいろな当方の働きかけあるいはアメリカの内部におきます修正の動き等がありまして、現在できておりますブロー法案の内容を検討いたしまするに、いますぐにブロー法案によってわが国の漁業が非常に大きな影響を受けるというふうには私は思っておりません。  今後アメリカの漁業がどういうふうに進展をしていくかということはなかなか予測が困難でございますが、アメリカとしても自分の国でとれるものは自分の国でとって日本に輸出をしようという動きを示すことは間違いございませんけれども、現在アメリカの二百海里内で百二十万トンないし百四十万トンの割り当てを受けておりますが、そのうちの大部分のものはスケトウダラでございまして、スケトウダラが直ちにアメリカにおいて漁獲されるような状況がそう急には来ないというふうに私は思っております。したがいまして、入漁料につきましても相当な値上がりを示しますけれども、これは船側価格でございますから、通常の入漁料の計算に直しますと約三%くらいの程度になるわけでございまして、負担がふえることは間違いございませんが、この負担に耐えられないような状況ではないというふうに思っています。  したがいまして、ブロー法案の成り行きが直ちにわが国の漁業に重大な影響を及ぼすというふうには思っておりませんが、これの実行上の問題につきましては当方としても重大な関心を有し、当方の希望を十分にアメリカの当事者に伝えまして、その円滑な、またわが国に影響のないような実施について十分な努力を払ってまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、第二点のつくる漁業への政策の展開の問題でございますが、御承知のようにサケ・マスを見ましても、あるいは栽培漁業でありますエビでありますとかカニ等を見ましても、あるいはタイ等を見ましても、大体相当部分のものはつくる漁業への足がかりといいますか、それがすでに実行の段階に移されて発展をいたしておるわけでございます。私たちといたしましては、そのつくる漁業への第二段階への飛躍をどういうふうに図っていくかということが重要な課題であると思っておるわけでございます。  そういう意味合いにおきまして、栽培漁業法というふうなものも当然考慮をしなければいけないと思いますが、これにはいろいろな問題がございます。たとえばタイのようなものをとりますと、これは相当回遊するわけでございまして、放流する者ととる者が違うという形になりますから、そういうふうな経費分担をどう図っていくかというふうな制度上の非常にむずかしい問題があるわけでございます。  これをさらに突き詰めていかなければなりませんし、また御指摘のような特殊法人等をつくるという場合には、これは現在の行政簡素化のもとにおきましては、全国統一的な特殊法人で物事を処理するということもなかなかむずかしい状況でございますが、私たちといたしましては、沿岸整備事業の第二段階に入る時期を迎えておりますから、そういう沿岸整備事業の第二段階の問題、それから栽培漁業の次の飛躍のステップ、そういうものを十分考慮しながらその法制化についても真剣に検討してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから第三点のフェニックス計画でございますが、大都市圏におきます広域的な廃棄物処理のための海面埋め立ての計画につきまして、現在厚生、運輸省においてそれを実施するための事業主体等についての法案の整備が行われております。これにつきましては、私たちは十分相談を受けておるわけでございますが、その基本は、御指摘のように漁業者に悪影響を及ぼさないということが水産庁としては基本的な方針でございます。したがいまして、関係漁業団体への説明、その意見の聴取を十分行いながら、漁業に悪影響を及ぼさないように対処をするつもりでございます。
  28. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そういう環境づくりの問願などからまいりますと、結局いまの漁業というのは一体何の法律で守られ、そして政策として実行されているかということになるわけです。漁業関係諸法規、言ってみれば沿振法だとか漁特法だとか漁臨法だとか、こうした法律がいろいろございます。しかし、二百海里という時代以前にできた法律が多いわけです。だから、新しい時代に即応したような、沿岸なら沿岸を主軸にするんだ、従来の沖合いから遠洋へと外延的な体制の漁業状況から変わってきたわけですから、そういう法律の整備を図りながら、全体的なわが国の漁業が一定的に世界の七分の一の漁獲量を上げているわけですから、その一千万トンの漁獲量を上げ得る基本的なものをつくるなら、農業に基本法があるように、総括をした漁業基本法というものがあっていいじゃないか。そういうものを抜本的な問題として検討される時期に来たんだ。それは、減船補償の対策は漁特法だとか漁業離職者については漁臨法だとか、それぞれいろいろ取り扱いがございますけれども、そういう船員法を初めとして総括をする漁業基本法をつくっていいではないか、これは毎回申し上げていることなんですが、どうも法律をいじるのがおきらいのようであって、基本法をつくろうというのは与野党ともにそういう動きがあるときだけに、ぜひ一考を要するところじゃないかと思うのですが、大臣の御見解を伺いたいと思うのです。
  29. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 政府といたしましては、現在漁業の振興に関する基本法として沿岸漁業等振興法があるわけでございますが、漁業生産の主要な担い手であります沿岸漁業及び中小漁業の振興に関する基本的方向が示されておりますことは御承知のとおりでございます。また、今後はこれに沿った具体的施策をさらに充実強化する考えでございまして、これによって漁業の振興とあわせて国民食糧としての水産物の供給の確保の諸目的を達成し得るように努力をいたしておるところでございます。したがいまして、いまのところ漁業関係に関する基本法等を政府として提案をするという考えはまだ持っておりません。
  30. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いま持っておりませんと言うのですが、将来の二百海里は、これから先はアメリカのブロー法案と同じような形に進展をしてくるものと思います。日本がイルカを余り虐殺したものだから向こうの方ではもう二百海里に入れませんよという感情論も出ているのですから、これは大変な問題ですよ。鯨だってそうでしょう。捕鯨の方はどんどん減船になってしまうという状況を迎えているのですから、そうした総括をすべき基本的展望が必要になってきたんじゃないかと思うのです。いまは考えていないということですけれども、将来の展望に立ってぜひ御検討をいただきたいと思います。  それで、漁場の環境保全対策として漁業公害対策は、予算の中でも周辺の沿岸漁場整備開発事業の推進だとか栽培漁業の振興だとか、先ほど申し上げた数字はちょっと間違っていましたが、沿岸漁業整備の方が二百九億、栽培漁業の方が四十五億、こうなっているようであります。しかし、こういう環境評価関連の調査ども拡充、強化されているのですが、最近石油備蓄あるいは原子力開発、巨大なエネルギー開発というようなことで漁業との調整、これは当然出てくるわけでありまして、もちろん産業廃棄物だとか低レベルの放射性物質の廃棄など、海洋に捨てるというのですから、そういうような問題等を私どもはやはり漁業者を守る立場から——油濁防止だとか、あるいは合成洗剤、汚排水の漁業に対する被害が相当これから出てくるだろう。だからエネルギー業界と水産業界がある意味では利害が相反する向きがあります。これは重大な政治課題だと私ども受けとめているのですが、こういうことに対するいわゆる調整機能、これはどういうふうにお考えなのか。  一方は開発、一方は漁業を守りたい。漁業を守る立場の上に立って開発を進めるのか、開発が優先して漁業がそのことによって公害を受けるというような形になってくるのか、その辺の基本的な考え方をぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のように漁場環境の現状はいろいろな要素で悪化といいますか、低下をしておるわけでございまして、この点につきましては、われわれとしては重大なる関心を有しておるわけでございます。したがいまして、私たちといたしましては関係省庁と連絡を密にしながら、公害関係法令の厳正な運用によります漁業公害の防止ということについて努力をいたしておるわけでありますし、また同時に漁業公害の防止にかかわります各種の事業あるいはまたその調査を積極的に実施をしまして、漁場の保全に努めているところでございます。もろもろの調査及び公害防止の予算につきましても、水産庁としましてはできる限りこの確保に努めておるところでございますが、私たちといたしましては、やはり漁場の保全ということをまず重点に考えるべきであると思っておりますけれども、同時にまた、国民の生活に不可欠なエネルギーの開発等につきましても、これをないがしろにするわけにはまいりませんので、この両者の調和ということについて重大なる関心を持ち、またその努力を行うべきものであると思っております。  従来の対処の方針といたしましては、私たちといたしましては地元の漁業者の意向を十分尊重し、十分な調整が行われた後その事業が実施されるようにするという基本的な考え方のもとに対処をいたしておるところでございます。
  32. 新盛辰雄

    ○新盛委員 調整は非常にむずかしい面はありましょうが、先ほど申し上げたいわゆるそうした開発との調整ということについては十分心を置いてやっていただきたい。特にこのフェニックス計画、夢の島のこういう廃棄物を、ごみ捨て場にするようなことにならないように、われわれは反対の立場でございますから、ぜひひとつそのことを念頭に置いていただきたいと思います。  これまでの漁業経営問題で、制度、政策融資がいろいろと行われました。漁業経営者あるいは油だとか、あるいは水産加工業者等を含めまして、この融資残高の総額は一体どれくらいになっているか。言うならば、漁業経営者が負担を——借りたわけですから当然返さなければなりません。利子補給もしなければいけません。これは一体いま幾らありますか、参考までに聞かしていただきたいと思うのです。私の調べでは二兆五千四百億くらい、こうなっているのですがね。
  33. 今村宣夫

    ○今村政府委員 正確な数字はすぐ調べまして御報告を申し上げますが、大体先生のおっしゃるような残高であろうと思っております。
  34. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それで、これも要求してまいりました、油が三倍に上がったという最近の事情から価格差の補給金をぜひ出してほしい、あるいはまた燃油の特別価格を設定をして、最低価格のガイドラインを引いて、それ以上どうしても負担をしなければならない場面はひとつ政府で助成を、この要求はもう前から申し上げておることであります。しかし今回の予算の中では、一応油の方は五百億が一千億に枠を拡大をして融資を決めた。あるいは経営の維持資金についてはこれまた融資の枠が五百億が六百億、水産加工業者の経営安定資金の方は百五十億変わらず、こういう形になっているのですが、その中でも、この枠はこうして拡大をされているのですが、現実これは経営者側の方が経営のコストの中で占める率として大変だからというので借りるわけですけれども、この際手だてとすれば、特別に今度つくられました漁業経営安定特別対策事業で約二十億、昭和五十六年度の償還に係る燃油資金、経営維持安定資金についてのいわゆる中間据え置き期間二年の設定、償還期限の延長二年、そして利子についても沿岸は三・五%が三%、遠洋が五・六%が三・五%、こういうことでお決めになったんで、これは自民党の食糧生産用石油対策議員連盟で要求された結論に近いものですから、どうもその運営のやり方にも問題があるのですけれども、ただ農林漁業用輸入のA重油同様に国内産の製品についても関税及び石油税を免税にできないか。これはいろいろと問題があります。しかしいま徴収税額の一部還元の方式をとろうとしても、やはり関税ないしは石油税を免税することについて相当経営者は期待をしていると思うのですが、この考えはどうなのか。  それからこの輸入A重油の価格が暴騰した場合に、これからの価格調整のためのいわゆる国庫助成はできないのかどうか、このことをひとつ油の対策としてお聞かせをいただきたいと思います。
  35. 今村宣夫

    ○今村政府委員 石油の価格がかつてのキロリットル当たり三万五千円の単価から言いますと現在約倍になっておるわけで、かつて高いときは二・五倍ぐらいまで上がったわけでございまして、これが漁業経営を非常に圧迫しておるということは御指摘のとおりでございます。  そういう状況を受けまして、漁業者の方からは補給金を出してもらいたいという強い要望があることは十分承知をいたしておるわけでございます。私としても漁業者にそういう補給金が出せればこれにこしたことはないと思いますが、漁業のみにそういう補給金を出し得るかどうかということになりますと、政策の均衡論もございましょうし、同時にまた仮にキロリットル当たり一万円の補給金を出すとしますと六百億の金が要るわけでございます。二万円出すとすれば当然千二百億の補給金が要るという形に相なるわけでございます。したがいまして現在われわれのとり得る施策といたしましては、ただいま先生のお話しのございましたように、燃油資金を一千億にし、それの利子をできるだけ下げて最も安い三分の資金にする。同時に、こういう状況でございますから、五十六年に償還をすべき石油資金及び経営安定資金につきまして、これを二年間猶予をするというふうな対策を講ずることによりまして、石油価格をできる限り魚価に吸収するという努力をする必要があると思っておるわけでございます。  これらの施策は漁業者の側から見れば非常に不十分であるという意見かもしれませんけれども、漁業が石油をたくさん消資し、そのコストに占める割合がきわめて高い、同時にそれが国民のたん白質の供給をすべき事業であるということに着目した特別な措置であるというふうに私は理解をいたしておるわけでございまして、漁業者自身におきましてもどうか、こういう国の施策をバックにしながら、その努力によってできる限り石油のコストを経営の中に吸収していただく努力をしていただきたいというふうに思っておるわけでございます。  税金につきましても、いろいろ党の方でも御配慮をいただいて検討いたしたのでございますが、これを戻し税の形で処理できるかどうかにつきましては、非常にむずかしい問題がございます。したがいまして、これらにつきましては今後なお検討をしていく必要があると思いますが、税法上の処理としてはきわめて困難な問題を含んでおるというふうに理解をいたしておるところでございます。
  36. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間がありませんので、もう端的に一問一答でいきたいと思うのです。  それでは、例の漁業経営安定特別対策事業、これは漁業経営維持安定資金の融資枠拡大とか、あるいは燃油対策特別融資枠とか、この方にかかわる取り扱いでありますが、水産加工経営安定資金の百五十億融資分の償還に、この特別対策事業として考慮は払えないかどうか、これはどうですか。水産加工業者も大変なんでして、どうですか償還の関係
  37. 今村宣夫

    ○今村政府委員 加工業者のいろいろなむずかしい状況につきましてもよく承知をいたしておりますが、現在の考え方のもとにおきましては、加工業者の現在の借り入れにつきましての償還猶予というのは考えておらないわけでございます。
  38. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それでは最近のカツオ・マグロの現状はどう把握をしておられますか。昨年来大変な危機が到来をして、ようやくカツオの方は浜値が安定しつつあるわけでありますが、マグロの方は相変わらず輸入マグロ等の圧迫もありまして魚価は低迷という状況でありますが、持ち直しているかどうか、現状をどう把握をしておられますか。簡単にひとつお願いします。
  39. 今村宣夫

    ○今村政府委員 カツオの方は一昨年は非常に苦しんだわけでございますが、昨年はまずまずの状態に相なっております。マグロは逆で、一昨年はまずまずよかったのですが、昨年から非常に困難な状況に相なっております。
  40. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それと、遠洋カツオ釣り漁業対策の関係で、一本釣りのカツオ漁業者の海まき転換、現実問題としてこうして小康状態を続けていくならば、来年度以降への海まき転換はひとつ中止されたらどうですか。そして、北部まき網船の南方出漁の許可、これは今回限りで打ち切るとか、こうしたことについて操業調整を図る必要があると思いますが、どうでしょうか。  それから、釣りえの低温蓄養装置の導入計画についてはまだ明確に出ていないのですが、おつくりになっているのかないのか、イエスかノーかでひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  41. 今村宣夫

    ○今村政府委員 カツオ業界の構造改善はどうしてもやっていかなければいかぬ問題であろうと私は思いますが、それを実施いたします場合においては、一本釣りの業界あるいはその他関連の業界と十分意見の調整をしながら対処をしてまいりたいと思います。  なおまた、低温蓄養装置につきましては現在試験を実施いたしておりますので、その結果を待って所要の助成の対策を考えたいと思っております。
  42. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最後に、これはこれからの二百海里時代の中で必ず起こってくるわけでありますが、いま私が申し上げたいのは、北洋海域における漁業取り締まりのことであります。  日米漁業協定に基づいて、二百海里内でわが船が違反をした場合には向こうに拿捕されるわけですし、警告を受ける、罰金を受けるというようなことになりますが、その前に、日米漁業協定の七条、十条、十一条に基づいて日本の、いまは二十七興南丸ですか、わずか一隻、これは例のべーリング海とかアラスカ、アリューシャン方面でありますが、ここに水産庁の監督官を乗船させて結局取り締まりをするわけです。大臣、もう昭和三十三年にできた七百二十三トン型のあの興南丸、ぼろの船ですよ。それに水産庁の取り締まり官がわずか一人乗って、それこそたくさんの船を追っかけ回すわけです。北転船六十隻、トロール船五十五隻、はえなわ船二十二隻、母船式底びき漁船あるいは母船六隻、独航船九十二隻、計二百三十五隻ですね。これはもう冬場はほとんど零度以下のところで悪天候です。その中に、船員の皆さんは船員法に基づいて待遇その他ちゃんとあるのですが、こうして取り締まり官の資格要件のない人を指導するために乗せるわけですね。これは一人です。しかも、どういう経験者が乗るのかわかりませんが、きわめて厳しい労働条件下に置かれているやに聞いているのですが、そのことについて水産庁はどういうお取り扱いをされているかお聞きしたい。  またこうした取り締まりの臨検あるいは検査、船籍の確認、すでに昨年来違反の船も相当おりまして、これは五十四年度で六隻、五十五年度で八隻という状況であります。こういうことをするにしては航海手当、これは旅費でいくらしいのですが、大変わずかな日当、そして支度金が一万三千円程度出るんだそうですけれども、まさに過酷な条件下にあって、もし巡視艇が何かの事故で、そして水産庁から取り締まり官がわずか一人乗っていてどうにもならなかったということになれば、国際問題でもあるのじゃないかと思うのですが、もっとこの辺のところに力を入れるべきじゃないかと思うのです。それはアメリカの巡視船なんというのは一千トン、二千トンクラスでヘリコプターを持っているのですね。そういういわゆる漁業二百海里時代において厳しい条件がこれから出てくると思うので、そうした職員の取り扱いについても十分に配慮していただかなければいけないと思うのですが、そうしたことについて大臣、総括的にいかがお考えでしょうか。
  43. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 非常に悪条件の中で任務を達成しておるという国家公務員は監視員に限らずおるわけでございます。そういう諸君に対する処遇等につきましては、十分人事院の方とも検討し合いまして、万遺漏なきを期していかなければならないと考えておりますので、十分検討さしていただきます。
  44. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これで終わりますが、いずれにいたしましても、この水産振興政策というのは非常に間口が広くて、また国民の動物性たん白質を供給する面で重要な役割りを持っているわけでありまして、ぜひひとつ大臣におかれましても、これからの具体的政策の中では、やはり関係業界初めとして漁業者の立場に立って政策を進められるように希望します。  具体的な諸問題については、またそれぞれの法律が出る際にいろいろと議論をしてまいりたいと思います。  以上をもって終わります。ありがとうございました。
  45. 田邉國男

    田邉委員長 小里貞利君。
  46. 小里貞利

    ○小里委員 午後一時から本会議も設けられておるようでございますし、さらにまたこのような時間帯でございますから、与えられました時間四十分以内で、できるだけ短い時間でひとつ要点をさらりと質問申し上げてまいりたいと思います。  そういうことでまず第一点でございますが、この前の農林水産大臣所信表明の末尾の項で次のようにうたっておいでになるのであります。すなわち、本年は農林水産省創立百周年に当たります。大臣としては、先輩の皆さんが積み重ねておいでになった業績を糧にしながら、農林水産に関係して携わっておられる皆さんにいわゆる明るい希望が与えられるような農林水産行政を展開しなければならぬ、こういうことを言っておられるわけでございますが、平たく申し上げますと、これはただ単に創立百周年を迎えるからということであいさつをなさった程度であります。  私はここで大臣にお伺いしたいのは、農林水産省創立百周年のこの節目を迎えて、過去の百年の歴史をどういうふうに農政史上評価しておいでになるのか。あるいはまた、今日のこの節目に立って、これからの農政の百年はどうなければならないのか。その辺のお考えの基本をちょっぴりでよろしゅうございますから、お聞かせいただきたいと思います。
  47. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 今日までの百年、農林水産行政についてはいろいろな経緯がありましたけれども、常に国民食糧供給の役割りを果たしてきておったわけでございます。しかし、制度の上におきましては、やはり地主制度というものがございまして、百年のうちの約七十年くらいは、農民哀史とでも申しますか、農民は、私もその一人でありましたけれども、小作として非常に厳しい経営環境、生活環境の中にあった。主権在民という意識じゃない時代であったわけでございますために、農村は非常に苦悩多き時代であったというふうに認識をいたしております。  しかし、戦後、農地解放になりまして、やっと農家の日の当たる時代というふうになりまして、それ以来農業基本法も制定をされ、あるいは災害補償法も完備をされ、とにもかくにも農家の生活安定、向上、都会の勤労者に互して生活していけるような方向を法律によって与えられ、また努力をして、農林省創立百年を迎えることができた。しかも九十九年目の昨年、国会における食糧自給の決議を当委員会中心にしてやっていただいていわゆる農政の政治的な地位というものを国政の中で位置づけをきちんとしていただいたということと、また農地法という大変厳しい法律があったわけでありますが、その運用についての弾力性を持たしていただいておる農用地利用増進法等も制定をしていただいて、本当に百年目から新たな希望と目標を持ってスタートできる環境を整備をしていただいた中で、政府農政に勇敢に取り組んで前進をせしめていくことができるという、そういう意義を私は感じておる次第でございます。
  48. 小里貞利

    ○小里委員 それこそ短い時間でいわゆる百年の歴史を振り返り、そしてまた向こう百年の、大臣が言われるように名実ともに日の当たる農政の確立のために、ぜひただいま表明いただきましたような所信で積極的に展開いただきますことを御期待申し上げます。  第二点でございますが、世界の食糧需給の趨勢でございます。  御承知のとおり、昨年は日本におきましても冷害で農民に顕著な被害を与えました。あるいはまたアメリカなどにおきましては御承知のとおり熱波等によりまして、言うなれば世界の食糧生産状況はきわめて窮屈な方向に追い込まれておる、かように申し上げまして言い過ぎでないと思うのです。一九八〇年のFAOの公表等によりましても、十四億二千万トンという穀物生産の二年連続減産を示しておるという状況からいたしましても、決して楽観できる状況でないことは御承知のとおりであります。幸いにいたしましてわが日本国民食糧生活は、アメリカがそれこそ穀物の在庫量が豊富であったというようなことなども手伝いまして、大きな影響はなかったわけでございますが、今日の世界の人口は御承知のとおり四十二、三億でございますか四十四億でございますか、そういう人口動態も、その専門筋の指摘する趨勢によりますと、発展途上国を中心にいたしまして、西暦二〇〇〇年前後には恐らく六十数億前後にも顕著な人口の増加を見るのではないか、こういうようなことなども言われておるわけでございまして、いままでの一九六〇年、七〇年のようないわゆる過剰基調というものとは基本的にさま変わりになっていくという状況であるわけです。  そういうような非常に逼迫いたしました世界の食糧の需給の情勢を踏まえながら、一体農林水産省は世界の食糧需給というものの動向を基本的にどういうふうにとらえておいでになるのか、この機会にお聞かせいただきたいと思います。
  49. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 世界の穀物の需給状況でございますが、まさに先生指摘のとおりのような状況でございます。  短期的に見ますると、アメリカの熱波による飼料穀物等の被害あるいはソ連の連年の不作、さらには中国も不作でございまして、世界各地で異常気象が起こりまして、わが国のみならず農作物の被害が各地でございます。FAOの発表によりますと、一九八〇年は十四億三千八百万トンということで引き続き不作になるという状態でございます。特に品目別にこれを見ますると、米とかあるいは小麦につきましては需給にややゆとりがあるというふうに見られますが、粗粒穀物えさでございますが、それと大豆につきましては世界的に減産になっているという状況でございます。  そこで、このような状況を反映いたしまして穀物は在庫水準も相当低下しておりますし、また価格も、最近はやや落ちついておりますものの、相当な高い水準で推移をいたしております。  さらに中長期の視野で見た場合には、先ほど先生指摘のとおり、FAOの「二〇〇〇年に向けての農業」という報告書で言われますような状況でございまして、穀物の需給関係長期的には楽観を許さないということでございまして、さような視点に立ちまして今後の食糧の安定的確保というものを考えてまいらなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  50. 小里貞利

    ○小里委員 ただいまの答弁の中に若干触れておいでになるようでございますが、いわゆる国民食糧の安全保障、食糧確保につきまして若干触れてみたいと思うのでございます。  国民食糧生活は、近年、経済の高度な成長に伴いまして大分豊かに、改善がそれこそ著しい勢いで進んでまいっておること、御承知のとおりであります。したがいまして具体的に申し上げますと、たとえば需要関係におきましては畜産物、油脂などの需要が顕著な勢いでふえてきておる。したがいまして、それに対応をいたしまして飼料穀物あるいは大豆、麦などの輸入が並行して著しい勢いでふえてきておるという傾向であります。こういうふうに見ていきますと、そういう観点から見る限りにおきましては、残念ながらわが国は農産物輸入、しかも大幅な輸入国でございますよと言われましても、これを否定できない事情であるわけです。  さらにまた世界のそのような食糧需給の緊迫した情勢からいたしまして、ただいま局長もお触れのとおり、昨年初めでございましたか、ソ連に対しましてアメリカが食糧の輸出規制などを行ったというような、食糧を外交上の武器に活用をいたしておるという傾向すら現実の問題としてあるわけでございます。言いかえますれば、食糧あるいは石油資源などが外交上の重要なデータとして考えられる、そういう国際政治の不安定性というものすら指摘しなければならない、こういうような状況であるわけでございますが、わが国のただいま私が申し上げました飼料穀物あるいは大豆、麦などの需要に対する外国からの供給体制というものはどういうふうに見通しておいでになるのか、この点をお聞かせをいただきたいと思うわけです。申し上げるまでもなく、食糧は一日でありましてもそれこそ欠かすことのできない、国民生活にとってはきわめて重要な必需物資であるわけです。この前の所信表明農林水産大臣指摘しておいでになりまするように、国民に対しましてそれこそ安定的に確実にその生活必需物資である食糧を提供することが農林水産行政の根本であるわけでございますが、そのようなことはすなわちまた政治の基本でもあると申されるわけでございます。このような観点から、いわゆる国政の基本とも言うべき食糧の安全保障を確立するためにどのような考え方をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  51. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 小里委員の御主張のとおりでございます。政府といたしましても需要生産長期見通しのもとに、国内で割り安に生産できるものはできるだけ国内生産をする、しかし広大な面積を要し価格的にも安くなければならないえさ等の問題につきましては、これは輸入に仰がざるを得ない、こういうことで、国内生産と安定的輸入という方法で一億国民食糧の供給を不安なからしめていくというふうにしておるところでございます。したがいまして、えさ等につきましても一カ所のアメリカというだけではなく、あるいは南米でありますとかあるいは豪州でありますとか、できるだけ異常気象等のことも考慮して危険分散をするという配慮はもちろんいたしております。しかし、何といってもパートナーとしてやってきておりますアメリカが日本えさ関係の供給国でありますので、アメリカとの信頼友好関係というものを図りながら、これらの安定的確保を期していかなければならないと考えておる次第でございます。石油ショックの際大豆が来なかったために非常な苦い経験もいたしておりますので、常に緊密なる政府間の意思疎通ということに特に留意をいたしておるところでございます。  と同時に、ASEANに行ってまいりましたときにも、ASEAN自体が、自給をしたいという熱烈な希望をインドネシア、フィリピン、マレーシア等が持っておるわけであります。そういう国々に対する技術協力をしてまいりまして、そうしてこれらの国々の食糧自給を進めることによって、輸出国の余力を日本に向けるというような体制もつくり上げていくことに間接的に大いに効果があるというような立場で相進めておる次第でございます。
  52. 小里貞利

    ○小里委員 大臣は、総合的な食糧自給力向上安定を図らなければならないというその大きな命題を背景にしながら、ただいまかような答弁をいただいておるわけでございますが、それに関連いたしまして端的にお伺いいたします。  食用農産物の総合自給率は七三%、あるいはまた主食用の穀物自給率は六八%でございましたか、この数字は御承知のとおり昨年の十一月でございますか、閣議におきまして、わが国の食糧需給の今後の、言うならば需要生産見通しについてという関連で閣議決定をなされた一つ見通しの中の数字であります。七三%と六八%、このように単純に数字で見てまいりますと、横ばいながらも農耕地の少ないわが日本の特殊な条件等から勘案いたしまして一応了承せられるところでもありましょうけれども、しかしながら、その主食用穀物自給率六八%という数字は、もっと具体的に掘り下げますと、実は飼料穀物を含めてまいりますと自給率は三〇%という実にみじめな凋落した数字になるわけであります。  このように見てまいりますと、先ほどから大臣もお答えいただきましたように、世界の食糧需給は大変な勢いで緊迫化してまいりますぞ、しかも穀物飼料なり大豆なり麦なり、その主なる依存国はアメリカでございますぞというような点から考えていきますと、国民がこの三〇%という数字に大変不安を持っているわけなんです。私は、食糧の安全確保について農林水産省こそ重大な責任がありますとおっしゃるその基本から考えましても、この辺に明快なる方針をあるいは施策をお示しいただくことが国民一つの関心の的ではなかろうか、こういう感じを持つのでございますが、いかがでございましょうか。
  53. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 現在の農政の最も厳しい点を御指摘いただいたわけでございます。私も、農林水産省を預かる責任者といたしましてこれでいいのかということでございますが、これは一応閣議でも決定した長期見通しでございます。しかし、それに対処する心構えといたしましては、やはり国会決議をされておりますところの自給力強化する、三〇になるんだから、六十五年には三〇になればいいというものじゃなくて、やはり今日以上の自給力を持つことのできるような努力をしていくということは、私に課せられた大きな責任の一つであるというふうに感じております。  それには、やはり長期的な努力といたしまして、何といっても科学技術向上と申しますか、遺伝子の転位の問題等によって本当に品種改良等が思わざる成果を上げることのできる可能性を持った部門も力を入れ始めておるわけでございますので、そういう点を督励をいたしまして、国民皆さん方に不安をできるだけ少なくしていただくような努力は全力を挙げて尽くさなければならないと考えております。
  54. 小里貞利

    ○小里委員 ただいま大臣答弁をお伺いしながら感ずるわけでございますが、いささか消極的に聞こえるかもわかりませんけれども、翻って考えてみますと、そのようにわが国の自給率が低下をいたしました根底に、見逃してはならない一つの事実があると思うのです。それは端的に申し上げまして米離れでございます。  先ほども話が出ておりまするように、畜産物や油脂に需要が大変増加をしてまいっております。そういうようなことから言いますと、わが国の農業生産に適合性を持たない方向国民食生活というものが一面においては展開してしまった。一つの結果論として言えばそれだけでしょうが、そういう傾向が出ておるわけであります。このような食生活のあり方を果たして野放しにしていいものかどうか。その辺、いわゆる日本食生活ということがよく言われているわけでございますが、具体的にどういうふうに受けとめていいのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。  なお、もう時間もないようでございますから、もう一つここでお伺いしておきたいと思うのでございます。  申し上げるまでもなく、六十七万七千ヘクタール、そして三百二十万トンの調整面積目標を掲げまして三年間の第二期再編成対策がスタートをいたしました。冷害という本当に史上まれに見るような特殊な最悪条件を背景にしながら、亀岡農林水産大臣中心に農林水産省の皆さんよく努力をしていただきまして、ほぼ円滑にこの再編計画というものを策定することに成功されましたことは大変結構でございました。しかしながら、その後の進捗状況は一体どういうふうになっておるのか。私どもは地方におきまして、関係都府県のあるいは農業団体なり自治体等が一生懸命この方向で協力をいたしまして、より完全な消化に努めて協力をいただいておりますことをよく知っておるわけでございますが、今日の段階におけるその進捗状況を明らかにしていただきたいと思います。
  55. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 米離れが自給率にまで影響しているのではないかという御指摘、まことにごもっともでございます。米さえ食べてくれれば自給力はぐっと上がってくるということはそうなんでございますけれども、なかなか米を食べてもらえないというところに大きな悩みがあるわけであります。なぜ食べてもらえないのだろうか。私は、やはり教育と実習だろうと思うのです。小学校の指導要領、中学校の指導要領、文部省で出しておりますが、それを見ましても、米はモンスーン地帯で最もよくできる作目である、日本の主食である。だからこれを中心にした食生活をつくり上げていくことが日本国民としての一番いい生き方なんだということを教えるべきである。ところが、そういうことが書いてあるのですが、主食としてそういうものを中心にして食べていくべきであるということまで教えてない、そこに一つの大きな問題があろうかと思います。  それから学校給食会、これはもう全く粉一辺倒でスタートしておるわけでありまして、私どもがやかましく、その給食会は一遍閣議決定でもう廃止をする、そういう粉ばかりやる給食会は廃止をするという閣議決定までされたことがあるわけであります。それを契機として米を給食する給食会に変わったわけでありますけれども、変わり方がまことに遅々としておりまして、やっと一週間に二日というところでおるわけでありまして、これはもっともっと、一週間に三日以上やってもらうような努力を続けていきたい。やはり教育と実習、この二つによって根気よく国民皆さん方に理解していただく政府としての努力が私は大変大事であろう、こう考えております。  あとの件につきましては局長の方から答弁させます。
  56. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 二期の都道府県別目標面積、それから二期の中でも五十六年だけは冷害等がございまして四万六千ヘクタール低減いたしました。これの県別の配分を十二月の九日やりました。市町村別の方でございますが、これは一、二の県を除きまして、東北のある県と近畿のもう一県と大体二県ほどでございますが、これを除きましてすべて市町村別配分が終了をいたしております。
  57. 小里貞利

    ○小里委員 先ほど大臣の方から答弁の中で触れていただきました自給力向上についての姿勢もわかったわけでございますが、その中で、ただいま局長の方から答弁のございました水田利用再編成対策を具体的に進める施策の上において、いわゆる麦、大豆などの自給力向上を積極的に期待できるような一つの措置を講ずるべきである。それはもう申し上げるまでもなく、転作作物の中で重要なる位置づけをきちんとすることだ、こういうふうに思うわけです。いわゆる定着性のある生産性の高い営農の育成について、麦、大豆というものをどういうふうに位置づけるかというその対策ではなかろうか、こういう感じを持つわけでございますが、これについて一点お答えいただきたいと思います。  もう一つは、えさ用に米をつくったらどうかというこの声は、この前の臨時国会でございましたか、若干当委員会質疑応答があったようでございますが、いわゆる無理して米から他作物への転換を図らずに米をえさ用につくったらどうかという、これは一面素朴に聞こえるかもしれませんけれども、いわゆる食糧自給力強化という観点から見てもいいのではないかという意見も国民の中にあるわけでございますから、この辺をどういうふうに取り扱うか、あるいは検討するか、大臣の所見を伺いたいと思うわけです。
  58. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水田転作の上で麦、大豆、これは特定作物ということといたしておりまして、これの転作の増大といいますか、こういうものを企図しておるわけでございます。(小里委員「だから特段の配慮を」と呼ぶ)特段の配慮といたしましては、五十六年度におきましては、一つ奨励金の面ではもちろん団地化加算というようなこともやっておりますけれども、そのほか関連施策の面におきまして、麦の面で申し上げますと、田麦の生産流通改善のための田麦の生産団地育成対策というものを新たに創設をいたしております。これは予算額としては四十一億という予算でございます。それから、こういう田麦のバラ流通あるいは品質改善ということをさらに強化してやっていくということで、麦類共同調製集約化促進事業ということで十二億円ほどの予算措置を新たに講じておるわけでございます。  それから大豆につきましては、これは新しい項目として出してはおりませんけれども、昨年度からやっております高水準農業生産流通技術開発事業という中で、大豆等につきましての高生産性の実験的なものをやり得るように、予算を充実して三億から四億にふやした。特にこの中では、新しい大豆の収穫機を導入して農家で実際に使ってもらう、そしてさらに改良に努めるということで、そういうことを考えております。
  59. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 飼料用米についてのお尋ねでございましたが、水田をそのまま利用できるということ、また不測の事態が生じた場合に食糧に回せるということで、食糧自給力の維持強化に寄与し得るという御指摘がございまして、私もそのとおり考えます。  しかし反面、現在使われております飼料穀物の価格水準からいたしますと、その収益性は非常に低いというところに問題が一つあろうかと思います。また先ほど申し上げましたように、食用の米との識別が困難であるということ、それから多収品種としていろいろいま民間で試験的にやられておりますえさ米につきましては、脱粒性が非常に激しいわけであります。これは私も試験場に参りまして詳細に技術者の諸君の話を聞き、また現場も見てまいったわけでございますが、非常に脱粒、性が激しいということでありまして、政府としてもいまの段階の品種ではなかなか奨励するというところまでの自信が持てない、こういうことでございまして、飼料米の問題につきましては、当面価格の問題を解決するには超多収品種の育成を図らなければならないということで、これについてはあと三年ほどすれば相当自信のあるところまで持っていける、これは筑波の試験場の話でございますが、そういう状態でございます。  したがいまして、五十六年も全国の試験場で約六千万円以上の研究費をかけまして、そして県の試験場等とも緊密な協力のもとに、特に新品種の造成のために試験研究の体制を強化して、できるだけ早期にえさ米の新品種造成という目標を達成したいということで、これはもう、すぐ来年、再来年という問題じゃなくて、ある程度長期的な視野に立った上で完成をしていくという慎重な態度で私はいまのところ臨んでおるわけでございます。
  60. 小里貞利

    ○小里委員 答弁も大変明快にお答えいただいておりまして、質問もいよいよ最後の一点でございます。先ほども社会党の質問の中で取り交わされたようでございますが、食管制度の問題でございます。  これは申し上げるまでもなく、長い間の懸案事項と申し上げていいんじゃないでしょうか。農林水産省、あるいはこれを取り扱うことは基本的な非常に重要な問題でございますから、政府と申し上げた方がいいかもわかりませんが、この食管制度の内容是正に手をつけられたようでございます。それこそ食管制度が長期にわたりまして生産者のためにあるいは消費者のために果たしてまいりました役割りは言うまでもございません。大変大きな貢献をした制度でございます。  そこで端的にお伺いいたしますが、私は米の不足時のみだけでなく、どんな場合でもこの制度というものが、生産者を中心にいたしまして、あるいは消費者も当然でございますが、国民食生活、福祉の安定のために貢献できるような、同じ改正するのであればそういう方向でやらなければいけない。言いかえますと、米の不足時のみでなくして、どんな場合でも貢献できるような食管制度に持っていこう、これが今回の改正の、是正の一つの主眼点であろう、こういうように思うのでありますが、そのことが一点。  それから、この前日本経済調査協議会が出しておりました、具体的提言として幾つか出してあるようでございますが、その中でたとえば部分管理あるいは自由化なども出されているわけでございます。私はさようにしなさいという意味ではないのですが、こういう提言が出されていることは事実なのでございまして、一体大臣はどういうふうにお考えか、あるいはどういうふうにいまの段階で整理しておいでになるか。  それからもう一つは、先ほどのやりとりの中で話も出ていたようでございますが、今回の制度是正を国会に手続として一体いつごろお出しになるのか。巷間聞かされるところによりますと、十日前後ではなかろうかとか、いや実はまだ手続作業がそこまで進んでいないとか、いろいろ話を聞かされるのでありますが、国民注目の制度の是正でありますから、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  61. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 御指摘のように、現在の食糧管理法は、米が極端に不足で農家から無理にも供出してもらうという時代にできた法律であるわけでございます。したがいまして、需給のバランスのとれておるとき、あるいは米が余っているときにどういう運用をするかという面については、実は法律には明快な指摘がないわけでございます。したがいましてどのような事態になっても、いわゆる食糧については生産者にも消費者にも絶対心配要らないという仕組みにしておくことは、これはもう私は政治を預かる、農林水産省としては最も考えなければならない問題である、こう考えておりまして、御指摘のとおり、こう申し上げていいかと思います。  それからいろいろ提言があります。部分管理という考え方もあるわけでございますが、ちょっとやそっとの、二五%ぐらいの部分管理では、これは大変なことになるだろう。たとえば去年のことを振り返ってみましても、あれだけの冷害があると、全部の米を管理しておるといういまの食管法のもとでも、一時ササニシキだとかコシヒカリとか、そういう米を買い出しに行ったとかなんとかというようなうわさがばらまかれて、モチ米が上がったとかなんとかというデマも飛んだ。そういう事態でありますから、いかに情報化の時代とはいいながら、部分管理では安心して政府に全部任せるという空気は出てこないとなりますと、一般国民方々が少しでも米を買いだめるというような意向を起こせば、これは大変な混乱が起きる、こういうことでありますので、私どもとしては、食管法改正に当たっては部分管理のような考え方は全くとらずに、いままでどおり全量政府管理をしていくという形を維持していきたいと考えております。  それから、いつ提案をするかということにつきましては、これはやはり私がいつも言っておりますとおり、私どもは政党としての責任ある政党政治をやっておるわけでありますので、農林省だけの考え方ではいけませんわけでありますから、よく党の方とも相談をいたしまして、今国会にぜひ政府としては出さしていただきたい、出したい、こういうふうに考えております。
  62. 小里貞利

    ○小里委員 私の持ち時間があと三十秒くらいあるようですが、これで終わります。どうもありがとうございました。
  63. 田邉國男

    田邉委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後二時五十五分開議
  64. 田邉國男

    田邉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島田琢郎君。
  65. 島田琢郎

    ○島田委員 亀岡農林大臣の所信を先般伺ったわけでありますが、一生懸命大臣として今後お取り組みになろうという、そういう熱意は十分買うところでありますけれども、昨年の十一月から、農政審答申が出されたり、八〇年代の農政方向閣議決定などを経て、いろいろな角度から目下私どもが検討をいたしておるところでありますが、全般を通じて矛盾する点や、果たしてこれで大丈夫なのかという不安の点やら、マクロで見ても幾つか指摘される点がある、こういうふうに思います。     〔委員長退席、羽田委員長代理着席〕 しかも個別の問題になってまいりますと、大変心配される点があちこちに出ておりまして、その点はぜひ今国会でしっかり論議をして、少なくとも昨年の春に全会一致決議をいたしました食糧の問題は、当委員会が責任を持ってしっかりしたものにしていかなくてはならぬ、こう考えているところでございます。  きょうは限られた時間でございますから、全般にわたってお聞きをしたりまた意見を述べるということはできないわけでありますが、幾つかの限定した問題についてぜひ率直な考え方を聞かせていただいて、われわれもともにこの困難な状況を乗り切っていくための合意を得たいものだ、こういうふうに考えているところであります。  まず、前置きをそれくらいにいたしまして、この農政審答申の中で、先般も議論をいたしました中で明らかになっておりますのが答申の積み残し、つまり提唱を受けました分で今後検討を進めていかなければならないというのが三つほどあったようであります。  申し上げるまでもなく、一つは総合安保、総合安全保障の立場からの食糧農業はどうあるべきか。それから日本食生活というふうな表現が出てまいっておりますが、これも意味するところは大体想像はつくのでありますけれども、しかし、余りにも言葉の持つ意味が、角度を変えてみますと大変重要な意味を持つという点でうっかり見過ごすことのできない言葉ではないか。これはまた言葉をもてあそぶだけで済んではならぬという内容をたくさん含んでいるのが日本食生活という問題でありましょう。三つ目は、国内飼料穀物生産をどうするか。これが積み残しと言われております三つの点であったというように思います。そのほかには農産物の価格問題というのが一つあ  るようであります。  その後、こうした問題を政府部内においてはどのように取り扱っていこうとされているのか、また、政府部内での検討は三、四月ごろで終えて、次の農政審でまた検討していきたいというふうなスケジュールをかなり早いころお決めになっているやに聞いておりますが、きょうはこの四つの問題をみんな並べてお聞きすることが時間的に許されません。そこで、私はその中の日本食生活という問題を取り上げてみたいと思うのです。  この名前の持つ意味というのは大変重いということをいま申し上げましたけれども、そこでひとつ概念というものをどこに置くのか。農政審の中でいろいろと論議されているのを聞き及びますところでは、日本食生活の中身について見ますと、二千五百カロリーといったところでやや横ばいの現象に入っている、これは欧米の熱量水準から見ると決して高い水準ではない、しかしでん粉質熱量の比率が高いとか、あるいは水産物のたん白質の割合が高いのであるとか、つまりそれは米を主食とした食習慣の中から出てきた日本型の食生活というものだというふうな議論がなされたというふうに実は聞くのでありますけれども、しかしこれだけではどうも概念がはっきりしない。概念がはっきりしませんと、今後日本型の食生活というものに対応して、米をどうするか、牛乳をどうするか、肉をどうするか、野菜や果物をどう持っていくのか、ずいぶん変わってきますね。もちろん魚の問題もそれに付随して出てくるわけであります。この辺のところは大臣としてはどういう概念でお考えになっていらっしゃいますか。
  66. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 大変基本的な問題だと思いますが、農政審日本食生活というものを取り上げた、しかもこれを非常に重要な問題として今後の検討にもゆだねておるという面もあるということで、この辺私としても直ちに省内に機関を設けて検討を進めるようにいたしておるわけでございますけれども、私といたしましては、とにかくこのいわゆる日本食生活というものの構図のかき方、それによって、いろいろな生産見通しなり何なりという各作目別の見通しに相当大きな違いが出てくるというふうに考えるわけでございます。  したがいまして、この日本食生活のよく言われておりますたん白質あるいは脂肪、炭水化物、この三つの摂取の割合と申しますか、摂取の度合いというものを、どこにどういうふうに持っていったのが一番人間として健全な健康をつくり上げて生活を維持していくことができるかという、あれは厚生省の関係審議会のあの食構造とでも申しますか、あれを中心にして、一番基礎になるものがこの日本食生活のあれである、こういう受け取り方を私としてはいたしておるわけであります。
  67. 島田琢郎

    ○島田委員 基本の問題、つまり基本的視点に据えるという、その大臣のお考えというのはわかりました。しかしいま私がお聞きをした概念というのは、それはなかなか示しにくいということだろうというふうに理解をするのですけれども、しかし本当は基本的視点として据える限りにおいては、このフレームというものはしっかりしていないとどこかで崩れていってしまう。それでそこから出発して八〇年代の農政はどうあるべきかということにいくわけですから、これはあだおろそかな取り組みでは大変なことになってしまう。  後ほど述べてまいりますが、まずいま大臣がおっしゃったのは、基本的な視点として日本食生活という問題はゆるがせにできない問題であるので、しっかりやらなければならぬという気構えをおっしゃったと受けとめまして、それではこれをどのように詰めていくのか、そこのところをもう一つお聞かせください。
  68. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 その中から脂肪関係あるいはたん白質関係あるいは炭水化物関係、この比率を一応厚生省のあれは公衆衛生審議会ですか、そこで出したものを基礎として検討いたしたようでございますが、その中の脂肪と申しましても、今度はたん白質、脂肪は動物性からとるのか植物性からとるのか、動物性にしても魚からはどれだけ期待するのか、あるいは畜産物からどれだけ期待するのか、そういう分析の仕方、さらには米はどの程度になっていくのか、小麦はどの程度になっていくのかというようなことを作目別に農政審で十分検討をされた結果、あのような二千五百カロリーという基本を置いて、それらを分析し、勘案した結果出されたのが、あの需要生産長期見通し、こういうふうに私は理解いたしておるわけでありまして、やはり米を中心としてあの食生活の内容というものを確立していけるようにすることが一番いいよということを農政審答申をしてくれたわけでございます。  そこで、たん白質の中で動物性たん白質と植物性たん白質が相半ばしておるということ、さらに動物性たん白質に占める水産物の割合が高いという特徴を持っておりまして、これらを含めて日本食生活ということを言っておるのであろう、こう思うわけであります。熱量水準が低く日本人の体位に適合しておる米を中心にした食生活、それから先ほど申し上げましたたん白、脂肪、炭水化物のバランスのとれた摂取の食生活、そういうものを組み合わせてやっておりますのを日本食生活、こういうことで一応結論を出して、その上に、それではその食生活を成り立たしていくためにはどういう生産構造なりあるいは生産目標なり、そういうものを立てていったらいいかというようなことであの農政審答申長期見通しが出された、こういうふうに私は理解をいたしております。
  69. 島田琢郎

    ○島田委員 私は農政審答申でこの部分はもっと詰めなければならない検討課題だ、こういう前置きで実は政府に預けられたと理解しているのです。ですから、いま大臣農政審でこういう考えでそのようにまとめられたとおっしゃるのですが、その辺のところはちょっと私は大臣のおっしゃっている意味がわからないのですけれども
  70. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 農政審のいろいろな結論を導き出すその基本的な考え方としては、まず食生活というものをそこに想定をしまして、そしてバランスのとれた日本食生活というものを理想として、そこに持っていくための作目、熱量の必要量といいますか、それをたん白、脂質、それから炭水化物でバランスのとれたものでやっていこうという、そういう考え方はとにかく農政審で取り上げていただいたわけですね。しかしその組み合わせを具体的に、それではいま言った動物性たん白質の中でも魚と畜産とどういうふうにしたらいいのか、あるいは植物性のたん白質と動物性のたん白質はどういうふうにしたらいいのか、そういうところをもっともっと詰めるべきではないかといったような事柄、しかもそのパーセンテージもいまのままでいいのやら、あるいはもう少しバランスのとれたのがあるのかどうなのか、そういうところの検討もしなくちゃならないかもしれませんし、そういうところを含めて、専門家によって政府においてもっと詰めなさいという点のあったことも承知をした上で、実は申し上げておる次第でございます。
  71. 島田琢郎

    ○島田委員 そうすると、どういうところでこれを詰めていくのか。もしも専門的なそういうものがすでに設置されていて検討が進められているとすれば、今日までの検討の経過をちょっと御説明願いたいと思うのです。
  72. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 その件については事務当局の方から説明を申し上げます。
  73. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 御指摘のように、農政審議会からの答申を受けましてから、本件につきまして検討事項とされておりまして、省内の関係部長なり審議官をもってします検討組織で現在やっております。近く農政審議会が開かれる際には、このとり進め方について御意見を承りたいと思っております。  具体的には、先般もアメリカに担当者が行きまして、向こうの農務省におきますこの種の食生活の改善方策について具体的な調査をしてきておりまして、そうしたデータを目下整理しております。こうしたデータ等を参考にいたしまして、日本食生活、概念につきましては先ほど大臣が申し上げたようなことでございまして、昨年から出ました言葉でございますが、その当時の意識といたしましては、従来の計画等が欧米型になるということが一つの理想のような形で食生活を誘導していくというのを、基本的に日本型という形に改めた、いわばアンチテーゼとして日本型の食生活の確立、定着というふうにいたしました。  これを具体的に国内におきまして定着させるためには、栄養知識の普及とかあるいは教育上での問題、あるいは学校給食等各種の問題がございます。こうした具体的な進め方につきましてこれから詰めていかなければならない。しかももう一つは、食生活というのは比較的地域に差の大きい問題でございます。やはりそれぞれの地域の生産物なりに影響されるところが多いものでございますが、一方では生活改善の方面で、地産地消運動というような形で地域内での生産物によります食生活というような具体的な試みは別途いたしておりますが、審議会以後の方向としましては、先ほど申しました省内におきます検討組織で具体的な各種のデータをいま収集いたしまして、近く審議会と御相談をしていきたい、このように考えております。
  74. 島田琢郎

    ○島田委員 そうすると、あくまでも具体的な検討というのは審議会にゆだねるので、任せられた農林省はデータを集めるだけの作業だ、こういうことですか。
  75. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 私ども審議会に御相談をいたしながら進めていきたいと考えておりまして、目下の段階として資料収集なり分析をいたしまして、これらの結果で各方面の権威者の意見を集めながら具体的な食生活の改善方策を詰めていきたい、こう思っておりますので、審議会に任せるということではなくて、審議会をもって代表いたします各種の専門知識を有した人方の御意見を参考としながら私どもとして進めていきたい、こういうふうに考えておるわけです。
  76. 島田琢郎

    ○島田委員 何だかあいまいでよくわからぬのですが、私がなぜこの日本食生活のところにこだわるのかというと、いま大臣のお話を聞いておりまして、日本型といえば頭に浮かぶのは米がやはり中心だ、それにたん白質が動物たん白か海の魚のたん白か、あるいは脂の点はどうなのかという点を組み合わせながらやるんだ、そこはわかるのですが、しかし、先般農政審議会で出されました意見というのは、やや今日段階で日本食生活というものが一つのタイプとなって定着したという理解がまずあって、これを定着させるために今後どのような進め方をするかというところが焦点だったように聞くのです。したがって、私どもはそれだけでは非常に問題の解決にならないし、それだけではない、むしろ現状の日本人のわれわれがとっている食生活一つのパターンというのがここで定着したとなると、これから非常に問題が起こる。  たとえば、これから話題にしようと思っておりますが、牛乳にしても乳製品にしても、日本人の今日国民一人当たりが摂取している量なんというのは、えらい牛乳は余っているようなことを言うけれども、乳製品もあふれているようなことを言うけれども、正直言って本当にバターなんか先進国から比べれば、つまようじの先にちょっとつけたのを一日なめているくらいしか摂取していないという状況ですから、ここで定着しちゃったとなると、それじゃ今後米に加えて割り込んでいく余地というものは全くそこで閉ざされてしまう。だとすると、第四次酪近でさらに幾ばくか伸ばしていこう、ずいぶん伸び率は鈍化しましたけれども、それでもまだ伸ばしていかなければならぬという目標を掲げていこう、そうすると、つくったものは日本食生活固定化した中に割り込む余地が全くないということになってしまう。そうだとしたら、もうここで日本の酪農はだめですよと言うのと同じ結果になってしまう。  そこを私は非常に心配するから、日本食生活というのは今後どういう動きになっていくのかの見通しというものが政府の中でしっかり検討されていかないと、そこの整合性が失われてしまうではないか。その辺のところがどうも資料集めに終始をするといったような感じにしか聞こえないから、それでは農政審政府に預けたお荷物の重さを御存じないのではないか、こんな感じがしてならぬので、この点はしっかりひとつ答えていただきたいと思う。  もう一遍尋ねますが、それでは概念はわかったけれども、一体今後どういうふうに進めていってどんなタイプを目標にしていくのか、そこのところをもう一遍示していただきたいと思うのです。
  77. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 御説明いたしますが、先ほど大臣からもPFCと言われますたん白質、脂質、炭水化物の構成比なりが現在わが国におきましては平均的には適正な比率にあると言われておるわけでございますが、ただ、このたん白質なり脂質あるいは炭水化物につきまして、それぞれ許容限度があるわけでございまして、その限度内の幅におきまして——固定的な比率で確定しておるわけではございません、この幅の中におきまして、今回農政審議会の御審議を経ました長期見通しにおきまして米なり肉類あるいは牛乳、乳製品なりの見通しを立てたわけでございます。  その結果といたしまして、見通しの方について言いますならば、米は二%前後の年率の減少をたどるだろう、肉類につきましては逆に二%前後の増加が予想される、牛乳、乳製品につきましては一・三ないし一・八%程度の年率の増加が見られる、油脂類についても一・八ないし二・二%の増が見込まれる、その見込まれた増の範囲で私どもがPFCと言われますこれらの構成比を見ましても、先ほど言いました適正な比率目標とされます許容限度の中に入っている、そういう姿に十年後も定着するように持っていくべきだということを日本食生活の内容として申し上げておるわけでございまして、現在の水準をすべて固定化するというふうなことで提唱しておるわけではございません。かつ日本食生活と言われておりますのも、いまの姿は平均的な姿でございますので、年齢差なりで相当食生活の内容が異なっておりますのと、地域的にも相当の差がございます。こうした地域なり年齢なりの相違を全体的に適正な方向へ導いていく具体的な方策につきまして、農政審の御意見も承りながら私どもとして進めていきたいということで準備作業に入っているというふうに御理解いただきたいと思います。     〔羽田委員長代理退席、福島委員長代理着席〕
  78. 島田琢郎

    ○島田委員 いま、米が減ってほかのたん白質、脂肪がもっとふえるから割り込む余地は十分ある、一口に言えばそういう説明であります。しかし私は、前臨時国会でも食料需給表の問題を取り上げまして、国内におきます自給率を高めていくためのあらゆる努力を払わなければならない、そのためには不備な面も整備して、安心して生産ができ、そして安定して供給ができるというふうに直していかなければいけないということを指摘いたしました。大臣からも前向きな答弁がございましたので、私の指摘したような方向で検討がなされているというふうに理解いたしております。しかし乳製品において、今後十年間で一・七%といういまの説明でありました。第二次酪近までの経過を見ましても、第一次酪近で示しました目標が実際やってみたらなかなか目標に到達しないで、第二次酪近では現状追認でまたレベルを引き下げる、そして第三次のところでもまた引き下げて、第四次のところもまた現状に合わせたような計画に引き下げざるを得ない、こういうふうなことで、計画と実際というのはなかなか思うに任せないという現状であるように私ども考えるのであります。  しかしながら牛乳の生産は御承知のとおり大変伸びてまいりました。その伸びる割合から言えば、消費のところが少しばかり足踏みしたりするものですからなかなかうまくいかない。こういう点について、私どもも実情については見ているわけでありますけれども、それにしても、いまの国内産の牛乳、乳製品という問題に限って言えば、今後十年間なりあるいは酪農近代化計画で進めていこうというお考えの中には、何かしら及び腰のところがあって、いま一つ腰が入っていかない。こういう点はいまの日本食生活というものを頭に置いている中でそういう感じがするのか、あるいはもっと意地悪く言えば、もうここで大体限度だ只これ以上余り伸ばしたくない、そういう気持ちがあって腰が入らぬのか。いずれにしてもこれから先の十年間を見通すという見通しの中において、どうも私どもはいままでになかったような及び腰の面が見られてならぬ、こういう感じがするわけであります。  ところで、私は前から指摘しておりますけれども輸入の問題というのは、米とは違いまして、牛乳の場合はまだ国内でその自給率は一〇〇%ではないわけです。政府が発表しておりますのでも、八六、七%のところでありますから、まだかなり余裕がある。しかし需給表で見られる限りにおいて、そうしたまだ国内生産に余力を持っている部分を残しながら、なお今日段階では牛乳がだぶついているということで生産調整が厳しく行われる、こういう状況の中にあるわけでありまして、これから来月のシーズンに向けて農林省としても頭の痛い時期を迎えるわけでありますが、頭の痛い話であればあるだけに真剣な取り組みがないと、生産の段階が非常に乱れて取り返しがつかぬような状態に相なっていく、こういうふうに考えますので、時期が参りましたらもっと詳しい個別の問題について大臣と意見を十分交換し合って、五十六年度の当面の酪農の問題についても真剣にやっていかなくてはならぬと思っております。  それを前にして先般——先般どころではない、もうここ二、三年大変大きな問題として取り上げられておりますのが、輸入で最も問題だと言われております、われわれが言うところの擬装乳製品という問題が、実は整理されないままに年を越してきました。先般もわが党の安井部会長が予算委員会でこの問題を取り上げて大臣と議論をしたようでございますが、その節の議論の経過をお聞きしていて、私はどうも農林省のいままでやってまいりました姿勢が次第に後退していくという感じがしてならぬ。どうも気負い込んでいた割りにはどんどんしりすぼみになっていって、うまい結論が出そうにないというふうな心配さえ最近は逆に持ち始めている。  そこで、きょうはここに焦点を当てまして、何としても、大臣がこの間予算委員会で、三月をめどにしてこの問題には結論をつけたい、こうおっしゃつているのでありますから、そうするともうあと一カ月あるかなしであります。そういう中で、果たしていまのような状態の中で結論がつけられるのだろうかという点について私は心配を消すことができないでいるのであります。そこで、きょうはもう一度この点を細かにお尋ねいたしますが、農林省が昨年の秋に非常に力を入れてこの問題に取り組むという姿勢を天下にお示しになって以来、事あるごとに応援の立場でいろいろな問題の取り組みを私たちもやってきた、こう思っているわけであります。その点について、現在までの取り組みの経過をまず簡単にお聞きして、それから現状のしっかりした分析をする意味で、擬装乳製品を代表するものはココア調製品であり調製食用油脂、こういうことでありますが、この点の実態を明らかにした上で対策を組んでいくことが必要だ、こう考えているので、まずいままで取り組んできての経過と、それから現状では困難だとされている問題点を明らかにしていただいて、そこからひとつ話を進めていきたい、こう考えています。
  79. 森実孝郎

    森実政府委員 御質問は多岐にわたっておりますが、まず調製食用油脂の輸入規制の経過について御報告させていただきます。  各省とも協議いたしまして、昨年の九月中旬から十月の初めにかけて、自由化品目としての調製食用油脂の関税分類解釈を変更したい、乳脂肪率が三〇%未満のものに限るということにいたしたい、そして三〇%以上のものにつきましては、ミルクを主成分とする調製食料品ということとして輸入割り当てに移してまいりたいということで、ニュージーランド並びにECと協議を行ったわけでございます。  率直に事情を御報告申しますと、ニュージーランドからは、本件措置はぜひ取りやめてほしいという正式な要請があるとともに、ガットに基づく二国間協議をわが国に申し入れてきた経緯があり、受け入れないときはガットの場に提訴したいという通知をしてきた経過がございます。それからまたECからは、日本との貿易アンバランスということを背景にいたしまして本件措置の再考を希望する旨、並びに輸入割り当て制を導入する場合においてはガット上の権利を行使せざるを得ないという通告があったわけでございます。こういった意味で、ニュージーランドとECとの、いわば関税分類によって問題を処理するという交渉は二国間交渉で一つのデッドロックに乗り上げたという経過がございます。  もう一つは、実は昨年の十一月、関税分類の国際機関でございます関税協力理事会、CCCの品目表委員会におきまして一つの採決が行われました。     〔福島委員長代理退席、委員長着席〕 この採決は、実は本品についてはわが方の主張とは全く逆でございまして、油脂の調製品に分類すべきであるという結論が表決されて、わが国の主張が国際的な場所において通る可能性はきわめて薄くなったという状況があるわけでございます。しかし御指摘のようにこの調製油脂の問題につきましては、私ども、いわば日本とかソ連にだけ輸出されております特殊商品でございまして、バター輸出の迂回商品であり、今日の酪農の現状を考えればやはり何とかこれに合理的な歯どめをかけることがぜひ必要であるという認識は変わっておりません。そういう意味で、実はただいまニュージーランドとECとの協議を具体的に行っているところでございます。私どもは、輸出国に対して合理的な措置を講ずることをいま幾つかの対策を出して要求しております。私どもといたしましては、こういった協議を踏まえまして、先般予算委員会大臣からもお答え申し上げましたように、三月中をめどにして何らかの輸入を有効にチェックし得る、規制し得る具体的な解決策を考えてまいりたいということで鋭意努力中でございます。内容等につきましては、現在国際交渉等を行っております経過もありますので、この点につきましては詳細は遠慮さしていただきたいと思います。  なおココア調製品につきましては、四十七年以来、業界を指導するということで自主規制が行われているわけでございます。五十二年、五十三年は輸入量がむしろ減少した経過があります。五十四年は若干ふえておりますが、実はココアビーンその他の輸入の増加と大体平氏の合った増加でございまして、洋菓子とかチョコレートとか、そういった消費の増加の範囲に大体見合った程度の微増でございまして、私どもいわゆるチョコレートクラムにつきましては、現在そういった自主規制がそれなりの効果をおさめているというふうに見ているわけでございます。
  80. 島田琢郎

    ○島田委員 しかし、局長はそうおっしゃるけれども、五十五年、昨年一年間の輸入状況を見てみますと、食用調製油脂なんかは一三二・六%前年より輸入がふえているのですね。ココア調製品だって一二三%もふえている。しかもCIF価格は決して下がっているのじゃない、上がっているのですね。これも御承知だと思うけれども、時間を省く意味で私の方から言いますと、食用調製油脂は五十四年がキログラム当たり三百五十六円であったのです。それが四百二十二円、大変な高騰ですよね。ココア調製品だって三百二十九円が三百七十三円と、やや四百円に近い。こんなに上がっている。しかも農林省がこの両品目を中心にして各国とも渡り合い、国内的に北海道を中心にする乳製品が大変な状態になっているときだから、国内の在庫もふえていて困っている、何とかひとつ、こういう努力や動きを業界は承知しないはずはないのに、まさにあなた方の動きを逆なでするように輸入量がふえている。一体この業界というのはどうなっているんですか。あなたは行政指導でかなり抑え込んだ、こう自画自賛されるけれども、知らぬ顔の半兵衛、これでは何ぼでも入れてこいというような調子じゃないですか。行政はなめられていると言わざるを得ません。この業界の実態をちょっと明らかにしてほしいと思うのです。
  81. 森実孝郎

    森実政府委員 まずチョコレートクラムの方の輸入実績でございますが、調製油脂の方は確かに先生指摘のように三割強ふえております。ココア調製品の方は四%の増になっておりますが、五十二、五十三は先ほども申し上げましたようにむしろ減ったという経過もありますし、全体のチョコレート関係消費がふえていく伸び率と大体符合しておりまして、実態が、そういった約束を無視して、自主調整が無視されて輸入がふえているというふうには私ども理解しておりません。  調製食用油脂については全く残念な事態だと思っております。私どもこれは御案内のように、先ほども報告いたしましたように、合理的な輸入規制措置を講ずるという方向でやっておりまして、いわば業界の自主的な規制という実態にはなっていないわけでございます。  調製食用油脂及びチョコレートクラムの流通、消費実態について簡単に申し上げますと、調製食用油脂は輸入量の大体三分の二はマーガリンメーカーが買っておりまして、加工の上これを洋菓子、アイスクリーム等に出荷しております。残った三分の一が、大体お菓子屋さんが直接買いまして自家消費をするかあるいは委託加工して利用している形でございます。これは、従来マーガリン、ショートニングに依存しておりました洋菓子とかパンの業界あるいは一部のアイスクリーム類似品等の業界が、急速に実は消費量の拡大と同時に消費の高度化が進んだために、従来の低品質のショートニング等に置きかわって調製油脂を使うようになったという実態があるわけでございます。  チョコレートクラムについては、御案内のようにこれは従来どおりチョコレート関係の原料として使われているわけでございます。
  82. 島田琢郎

    ○島田委員 あなたはどの統計を言っておられるのかわからぬが、これは私が捏造した資料で申し上げているのじゃありませんよ。大蔵省が出しております日本貿易統計によっているのですよ。大蔵省、これ違うのですか。私の手元にあります資料は大蔵省の日本貿易統計によってまとめたものである。ココア調製品の数字が違うというのはでたらめな統計だというんですか。大蔵省来ているでしょう、どうなんですか。
  83. 森実孝郎

    森実政府委員 実は私お答え申し上げましたのは、ココア調製品の無糖分類のものでございます。加糖のものについては、実はココア調製品だけではございませんが、いわゆる国際糖価の高騰や価格の関係がありまして過渡的にふえております。いまちょっと加糖の資料を持っておりませんので、照合いたしまして、恐らく先生の御指摘から考えますと加糖のものを含めた数字だと思いますので、もう一回チェックさせていただきます。
  84. 島田琢郎

    ○島田委員 この食用調製油脂の輸入実態についてもう少し詳しく教えてほしい。輸入商社は何社ぐらいあって、そのうち各商社の持つシェアというのを、大きいところからで結構でありますが、どれくらいのシェアを持っているのか、そしてついでにそれが実需者に渡っていく段階でどういう経路を経ていくのか、そしてどんなタイプで流通しているのか、値段は一体どんなふうになっているのか。また、農林省努力承知の上で逆なでするようにどんどん輸入量がふえている、これには関税が問題でないかという気もするんだが、この辺のところは大蔵省どういうふうな理解をしているのか、そこのところを一緒にひとつお答えください。
  85. 森実孝郎

    森実政府委員 調製油脂の流通経路について申し上げますと、先ほど申し上げましたように菓子メーカーに渡る場合と、それからマーガリン工場を通じて渡る場合がございます。  商社の数につきましては、相当数は多いわけでございますが、主力業者は大体十五社とお考えいただいていいと思います。  なお、関税の問題でございますが、関税の問題については、御案内のように疑似乳製品と言われますように、バターの輸出の迂回商品ではないか、そういう意味においては、バター含有分については少なくともバター並みの関税をかけたらどうか、あるいは売買差益を徴収したらどうかという論議が有力にあることは私どもも否定しておりません、あることは存じております。そういう意味で、私どもも実は国際交渉に当たっては、これが日本及びソ連に向けてつくられた特殊商品であるという事情を強く訴え、また国内においてはただいま先生指摘のように新しい関税体系を考えるべきだという有力な政治の議論もあるということを申しまして、私どもそういったことも大いに言わさせていただきまして、合理的な輸出を行うことについて具体的な交渉を進めているというところでございます。
  86. 島田琢郎

    ○島田委員 十五社あるというお話ですが、どういう商社がこれに入っているのですか。
  87. 森実孝郎

    森実政府委員 ほとんど大手の総合商社でございますが、一部専門商社も入っております。
  88. 島田琢郎

    ○島田委員 商社名を明らかにしてほしいという要求をしているのでありますが、手元にそれは資料としてあるんですね。(森実政府委員「ございます」と呼ぶ)  委員長にお願いいたしますが、この調製油脂と、それからココア調製品の輸入商社、それから、これに付随する油脂メーカーとか菓子メーカーの重立ったもの、それから、大口な実需者の資料をぜひ当委員会に提出されるよう要求をいたします。
  89. 森実孝郎

    森実政府委員 輸入業者は私どもそれぞれの年次について調べておりますが、これは個々の事業の営業活動の問題でございますので、個々の商社名を出すことについてはでき得れば差し控えさせていただきたいと思います。ただ、はっきり申し上げますと、やはり食料関係を扱っております大手商社が主力であり、あと専門商社が入るという実態でございます。  それから、マーガリン業者が大体三分の二の調製油脂を引き受けているわけでございますが、これは全マーガリン業者でございます。ほとんど例外なく全部引き受けております。それから、いわばその調製油脂を加工したものを買い取っておりますユーザーあるいは直接利用しておりますユーザーは洋菓子が主力でございまして、これは洋菓子協会加入のほとんど全企業にわたっております。
  90. 島田琢郎

    ○島田委員 商社名を明らかにすることは不都合ではないと私は思うので、時間の関係で十五社全部出せと、中身までここで説明せいということは時間的に私もそれは省きますが、しかし、重立ったところぐらいは十五社だったらずらずらと言えばすぐ言えるのだし、資料として出すということは差し支えないですね。
  91. 森実孝郎

    森実政府委員 別途資料を整理いたしまして、御相談させていただきます。
  92. 島田琢郎

    ○島田委員 この席で商社名を明らかにしてもらいたい、こう思います。
  93. 森実孝郎

    森実政府委員 これは五十四年の数字でございまして、年度によって違いますが、五十四年の数字で申しますと、食用油脂を扱っております商社は、三井物産、東食、専門商社の今中、住友商事、三菱商事その他でございます。いま申し上げたところが大体大口でございます。ただ、ニュージーランドとベネルックス三国、ベルギー、オランダとは若干、得意のところが違うようでございまして、国別には大分差がございます。
  94. 島田琢郎

    ○島田委員 重ねて委員長に、御返答がないから要求いたしておきますが、資料をぜひ提出願いたい。いま言ったような範囲の資料は提出できるですね。
  95. 田邉國男

    田邉委員長 私から申し上げますけれども、この点については出せるものは出してもらう。ただ理事会でよく懇談をいたしまして、そしてその上でこの問題は処置をしていきたいと思います。決して私が物を伏せるということではございませんで、その点も御理解をしていただきたいと思います。
  96. 島田琢郎

    ○島田委員 私はなぜしつこく商社名を明らかにせよと言うかというと、さっきも言いましたが、農林省は異常な努力をしているとぼくは思っていたんです。輸入をやっている輸入商社にしてもあるいは国内のユーザーにしても、今日のこの事態というものは相当認識を持っていなければならないはずだと思う。それにもかかわらず、さっき指摘をしたようにどんどん入れてきて、まるでもう局長の顔を逆なでするようなやり方、それほど行政がなめられておって許しておくわけにいかぬという気持ちが私にはあるのですよ。そういうところがきちっとしてないからこの問題だって解決しない。私はそういうふうに問題意識として持っているのです。ぜひひとつ正すべきものは正す、行政指導できちっと従わしめないとこういうものの混乱は整理できない、こういうふうに思いますから、この辺のところはひとつしっかり取り組んでいきたいと私自身も思っているから、必要な資料はぜひひとつ私どもにも出してもらいたい。重ねて、まあ理事会で検討されてということでありますから、ひとつ十分理事会で御検討いただきたいと思いますが、私の要求についてはぜひ実現されるよう委員長に重ねてお願いを申し上げておきます。  さて、先ほどこの問題の最初のところで、大臣がこの問題に触れて予算委員会で、三月の次の乳価決定の時期、この辺をめどに大体結論が出ると思うし出せると思う、こういう趣旨のことをお述べになりました。しかし、これと前後して関係大臣がいろいろと安井質問に対して答えておりますが、どうも各省とも足並みがそろっているとは思えないような節がある。まあ一々大臣が申し上げたことをここに述べはいたしませんが、そういう状態の中で、果たしてあと一カ月しかないタイムリミットみたいな中でこの問題の結論がつけられるのだろうか、こういう心配は先ほど述べましたとおり依然私としては消えていないのであります。いまのお話の中でも果たして大丈夫なのかな、これは去年、十一月一日から実施に移すとまで大みえを切った問題であります。それが十二月に入り年末、年を越しても解決しない。どうやらその問題は外国にあるというよりは、国内のいわゆる足並みの乱れにある、私はそう断じてもいいのではないかという感じがいたします。  この際、農林大臣の決意はこの問聞いておりますから改めて聞きませんが、まず通産省は農林省に対して協力の体制をしこうとしているか。責任を持って答弁できる方がいるかどうかわかりませんが、大臣答弁をもとにしてきょうはしっかりとお聞きをしたい、こう思っておりますから、責任ある答弁が欲しいと思うのです。
  97. 横山太蔵

    ○横山説明員 お答え申し上げます。  調製食用油脂の輸入急増問題につきましては、私どもいろいろとお話を伺っているところでございまして、先ほど畜産局長からもお答えがございましたように、外国との協議等も行われておるところでございまして、それらを踏まえまして各省協議の上で早急に結論を出すという態度で臨んでおるところでございます。
  98. 島田琢郎

    ○島田委員 次は外務省。この間大臣答弁されたのは、わかったようなわからぬような答弁でありましたが、その真意とするところをひとつ聞かしてもらいたい、こう思います。
  99. 池田右二

    ○池田説明員 外国との交渉事でございますので、若干公的な場では歯切れの悪い答弁になっておるかと思いますが、大臣からも申し述べましたとおり、この問題につきましてはわが国の酪農が当面している窮状というものを十分理解して、何とか早くこの問題を解決しなければいけないというふうに認識して、農水省初め関係省庁とも鋭意相談して、先ほど畜産局長の方からも説明がございましたように、ここのところニュージーランドその他とも協議を進めておるところでございます。そういう気持ちでもってできる限り早期に具体的な解決策を得るように鋭意努力をしていきたい、こういう気持ちでおります。
  100. 島田琢郎

    ○島田委員 大臣より悪い答弁なので理解ができないけれども、大蔵省は、大蔵大臣がこの間行政指導でという意味のことをおっしゃいました。外国の行政指導というのを聞いていますと、かなりこれは強制力を持つのですが、日本の行政指導というのはさっぱりだめだ。さっき例に挙げてお話ししたとおりです。役所の権威なんて全くない。本当は行政指導というのは大変重みのあるものでなければいけないのに、日本の行政指導はさっぱりなっておらぬ、こういう感じがしておる中で行政指導でという意味の発言をされましたが、これは的場さんがお答えになるのかどうかわからぬが、大蔵省、責任を持って答弁してほしいのですが、どうですか。
  101. 吉川共治

    ○吉川説明員 お答え申し上げます。  先般の大蔵大臣の御答弁、擬装乳製品のうち調製食用油脂に関するものでございますが、行政指導ということを御発言しております、そういうものと承知しておりますけれども、それで、その中身でございますが、大蔵大臣は農水大臣としての御経験もございますので、酪農家の当面している厳しい現状につきましては十分御承知の上で、他方におきまして対外通商関係の円滑化の必要性といった面も考慮いたしまして、やはり国外、国内両方の関係者の理解と協力をお願いしなければならない、そういうお気持ちでああいった御発言があったのではないかと私ども理解をしている次第でございます。  いずれにいたしましても本問題につきましては、わが国の酪農が現在当面しております状況にかんがみまして、効果的な対応を図るべく関係各省と具体策につきまして、先ほど来御説明ありましたように鋭意検討を進めている状況でございまして、まだ結論は出ておりませんが、大蔵省といたしましても非常に重要な事柄というふうに考えておりまして、できるだけ早く解決を図る必要がある、そういうふうに考えておる次第でございます。
  102. 島田琢郎

    ○島田委員 ところで局長、調製油脂がいま話題の焦点になっていますが、ココア調製品は、混入率割合を変えろというああいう具体的なものが出されて以来、次第にしりつぼみになってこの問題は消えてなくなるような状態にいまなっています。輸入の問題については行政指導で云々という話がありましたが、ココア調製品はどう考えているのですか。
  103. 森実孝郎

    森実政府委員 ココア調製品につきましては、前大臣のときに芳賀貢委員の御質問に答えまして、大蔵省と相談しながら、たとえばココアの混入割合の問題について何とかよい方向を打ち出していきたいという答弁があったことは御指摘のとおりでございます。これは否定いたしません。ただ、その後私ども大蔵省とも協議を続けたわけでございますが、わが国が加入しております関税分類に関する国際条約に基づく「関税率表解説」というのがございまして、ここでは粉乳とココアの混合品というものはココアの含有割合を問わずココア調製品に分類するということを国際的に決めておりまして、いまの状況のもとでこの混入割合を変更するルールを提起することは、国際的にほとんど困難に近いという状況で見送らざるを得なかったという状況がございます。     〔委員長退席、菊池委員長代理着席〕 ただ、先ほども申し上げましたように、チョコレートクラムについては購入の自粛を行政指導しております。お言葉を返すようで恐縮でございますが、実は加糖のものは先ほども申し上げましたように砂糖の価格によって非常に変動いたしますし、乳製品自体の混入している割合はずっと低いわけでございます。また、直販型もかなりあるわけでございます。私ども指導しておりますものは無糖のものでありまして、ちょっとおわかりにくい点は恐縮だったと思いますが、無糖のものにつきましては先ほど申し上げましたようにむしろ五十二年、五十三年は減った。五十五年は確かに四%ふえましたが、これにつきましては、全体のココアビーンの輸入の増加等も大体五%ぐらいふえておりまして、全体としてはチョコレート消費の伸びていく中で若干の増加があった。それでロングランに四十七年以降の動きを見ますと、この規制は私ども守られているのではないだろうかと思っております。加糖のものについてはいまのところ行政指導もしておりません。そういう意味においてはちょっと事情が異になるということは御理解いただきたいと思います。
  104. 島田琢郎

    ○島田委員 だんだんどうも当初の勢いがしぼんでいくというふうな印象で、私は大臣が結論を出すに当たっての結論のつけ方にも大変疑念を持たざるを得ないような感じになってまいりました。よもや農林省は、AA制をIQ制に戻すといったいわゆる調製油脂の取り組みを後退されるようなことは万々ありますまいな。その辺のところはひとつ各省の、といいますか、大蔵、外務、通産の大臣答弁、またそれを受けた役人の皆さん方の説明を聞いておっても、どこでどんな協力をするのか、あくまでもIQ制のところに協力をするという、そういうことで各省が協力をするのかどうかがいまひとつあいまいであります。しかし、担当の農林大臣は毅然としてそこのところを貫くということで、三月いっぱいで結論を出すと私は受け取っていいのですね。
  105. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、有効な輸入抑制措置ということを私どもは頭に置いております。率直に申しまして、先ほど申し上げました経過から御理解いただきますように、関税分類を変えてIQに移すということは国際的に見てほとんど容認されるところはないのではないか。非常にむずかしいという状況でございます。そういう意味で私どもは輸出国と協議し、輸出国の合理的な指導、それから国内における合理的な指導、さらに有効なチェックシステム等をできるだけ連動させて有効な抑制措置を考える以外にないということで、これについてもなかなか国際的に異論があることは事実でございます。そういう点で具体的な数字を挙げ交渉を行っているところでございまして、交渉の結果を待って私ども各省と協議して、できるだけ有効に輸入が抑止できる方法、抑制できる方法、チェックできる方法を考えたいと思っております。なお協議中でございますし、また国際交渉中でございますので、詳細については、いろいろな考え方がありますが、この際は避けさせていただきたいと思います。
  106. 島田琢郎

    ○島田委員 私は納得できません。それじゃまるでどんな結論が出るかわけがわからぬじゃありませんか。それは玉虫色どころじゃないですよ。変な妥協の産物でこの問題が収束を見るようなことだったら、国内の酪農は、そうでなくたっていま大変な状態を迎えている、活路はどこにも見出し得ないじゃありませんか。せめて残ったところで、まだ十何%のシェアを持っている、余力を持っているところで、いま見直しをやっていく分野というのは限られているけれども、ここのところは大事だから、これをやれば一つの活路が出てくるだろう、私だけではない、苦しみあえぎながら経営を続けている酪農家はいまそこに注目しているのです。変な妥協の産物で、何が何だかわからぬようなかっこうでこの問題が結論づけられるとしたら勘弁できません。前にお話を聞いたような線でしっかり決着を見る努力を払うべきだ。  そしてこの際、時間がないから私の方から申し上げて終わりにしますが、調製油脂なんというのはまさに日本にだけ向けてつくられている商品です。グローバル商品じゃないのですよ。そんなに及び腰で、何で弱腰にならなければならないのですか。もっと強く言えば、ガットなんて気にすることはない、打って出ればいいじゃないですか。私はガット積極論の一人です。そこに出て堂々と日本立場を主張する、これだってやっていくべきではないのですか。あっちの顔色、こっちの顔色をうかがい、国内では足並みの乱れ、通産省なんかむしろ邪魔するような姿勢だ。それで問題解決しませんよ。大臣、三月いっぱいで私の言ったような結論が出されないとしたら相当責任をとっていただかなければいけない、言葉が過ぎるかもしれませんが。だって、予算委員会という大事な席で三月中に結論をつけるとおっしゃったのだから。やってもらいたいのです。そうでなければ酪農家は死んでしまうのです。そのことだけ強く申し上げておきます。  時間が大分オーバーいたしましたから終わりにしなければなりませんが、お許しいただければ一言だけ大臣答弁を伺って、私はこの問題は全面保留にして次の機会に譲るということを宣告して終わりたいと思います。
  107. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 私といたしましては、とにかく日本の酪農の実態を根気強く相手にわからせるということと、いまも島田委員から御指摘のありましたとおり、日本にだけ擬装乳製品なんという名前で言わなければならぬような形にして売ってよこす、またそれを受け入れている商社というものに私はすっきりしないものを覚えまして、就任早々畜産局に対してはずいぶん厳しく指示をいたしてきておるところでございます。  これはいまさら申し上げるまでもありませんけれども、諸外国のやり方を見ましても、あの自由化を唱えているアメリカでさえも農事調整法、ガット上免責に基づいて、小麦関連、酪農関連及び落花生の十三品目につき輸入割り当て品目としているということですよ。小麦小麦粉、小麦ひき割りミール、落花生、チーズ、バター、バター代用品、チョコレート・ココア調製品、アイスクリーム、練・粉乳、ミルク・クリーム、麦芽ミルク調製品、ミルク含有飼料、こういうことをして、アメリカのあのような広大な農地を持ったところでさえもこういうふうにして守っておる。ECでは、穀物、酪農品、食肉、牛、豚、鶏、砂糖、鶏卵等について輸入課徴金を取るという共通農業政策により、輸入品を域内市場価格まで高めているということで、小麦に六三%、大麦六一%、トウモロコシ九〇%、米三一%、白糖三一%、こういうふうにして厳しくやっているわけです。  日本だけなぜ向こうの言うとおりにしなくちゃならぬのか、こう言って事務当局を督励をいたしてやっておるわけですが、そうはいうものの、通産は通産の立場がありましょうし、外務は外務の立場がありましょうし、そういう担当局が強く言って、そうして向こうときちっと火花が散って、そうしてどこに問題の所在があるかということがきちんと確認されて、それをさらに話し合いをして、お互いの納得のいく線を一歩譲り二歩譲りというところまで行ってこそ、本当の話し合いによる、将来長く信頼関係を持って貿易をやることのできる関係ができるものだ、だからしっかりがんばれ、こう私は言っておるわけでございますので、その点相手のあることでありますから、それは三月までやらなければおまえの責任だなどと言われれば、どうせ七月ごろになれば交代というようなこともあるのかもしれません。しかし、そんなことは別問題として、やはり北海道の酪農諸君が本当にあきらめをつけないで、やっとEC、ヨーロッパ並みにとにかく日本農業の先駆けをして、そうして規模をあそこまで持っていって、もうこれでいけるという自信と希望を与えるようにしてあげなければ、これから八〇年代の基本構想とかなんとか言っても、ほかの農家から、何だ、こう言われてしまうわけです。ですから、ここはひとり北海道の酪農問題じゃなくて、日本農業の国際農業社会における行く道を示す大事な問題でありますので、この辺は政府がほぞを固めて取り組んでいる次第であります。
  108. 島田琢郎

    ○島田委員 終わります。
  109. 菊池福治郎

    ○菊池委員長代理 近藤豊君。
  110. 近藤豊

    近藤(豊)委員 私は、いまの大臣の島田議員に対する御答弁の最後の方にある、国際的な日本農業との関連を、別の面から御質問をいたします。  大臣所信表明の中で、冒頭に、日本農業がいま食糧の安全保障という見地から非常に大事な問題に直面しつつあるということを触れておられます。もちろん去年のアメリカの熱害あるいは日本や韓国での冷害で食糧の減産が記録されているわけですけれども、これは日本にとっても食糧の安定供給を確保するという点からゆるがせにできない問題であります。しかし、大臣所信表明の中でそういう事態の認識については触れておられますが、これについて農政立場農林省がどういうような取り組み方をするかについてはほとんど触れておられない。日本国内自給力を高めることは、われわれの昨年の自給力強化に関する決議に基づき御努力いただくわけですが、それで、補わなければいけない輸入による安定供給、この面については基本的にどういう心構えでおられますか、まずそこを承りたいと思います。
  111. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 農林水産省として全国民に安定した食糧の供給をしていくというのが大変重要な仕事であり、そのためには国内生産でできるものはできるだけ国内生産農家の皆さんに積極的につくってもらう。どうしても日本ではコスト高になって、また気象や土地条件のために不可能であるというような部門については輸入をしていかなければならないわけでありますので、この両建てでやっていかなければならないことは御承知のとおりでございます。したがいまして、主として食糧供給国アメリカあるいは南米、あるいは食糧の輸出国であるタイ、豪州等があるわけでございますけれども、そういう国々からの直接的な、あるいは間接的な協力体制というものも考えていかなければならぬわけであろうと思っております。実はASEAN五カ国もアメリカあるいはカナダ等から相当食糧を入れておる。今度行ってまいりましても、日本以上に農業に力を入れて、そうして主食だけでも自給をしなければいかぬということで大変な意気込みで、フィリピン、インドネシア、マレーシア等、タイはさらに輸出を増大せにゃいかぬということで取り組んでおります。やはりこれらの国々に対して日本からも技術協力をしてほしいということでいろいろと要請がございましたので、そういうのに真摯にこたえていって、かの国の食糧自給体制というもの、あるいは輸出体制というものを強化していくことが日本食糧安全方策の一つでもある。とは言うものの、何といってもアメリカとの信頼関係、友好関係というものを確立して、そしてアメリカからの供給というものを確保してまいるということがこれまた大変大事であるということは論をまちません。  と同時に汎太平洋の関係で、豪州あるいはニュージーランドにつきましても、これまた彼らは日本に市場を求めなければならないということでございます。そうかといって日本と競合するような部門、これからますますお互いに伸ばしていこうということになりますれば、これはもうぶつかるわけでございますので、そういう点は今後のお互いの農業振興させてまいります上においても、そういう点まで話し合いをつけることができればそういうところまで話し合いをして、そして競合しないような体制を進めていくということも今度アジアを回ってみまして大変必要だと私も思っておりまするし、またニュージーランド、豪州の関係者の皆さんと話し合いをいたしておるわけであります。この間、豪州との閣僚会議をやりましたときにも、やはり日本立場日本農業の将来というものを十分歯に衣を着せないで主張する、そして相手に理解してもらう。またこっちも向こうの言い分を聞く。そして摩擦の起こらぬような方向にお互いに生産体制を進めていく、こういうことが私は非常に必要であろうと思う。そういう点を考えながら、実はアメリカとも去年の十二月定期協議をやりまして、食糧関係の五十六年の供給ということについての話し合いをいたしてきておるところでございます。
  112. 近藤豊

    近藤(豊)委員 大変いろいろとおっしゃったのですが、やはりいまの事態が重大な事態になるかもしれないという点についての取り組み方は足りないと思います。  まず、アメリカはアフガニスタン事件でソ連に禁輸をいたしましたけれども、今後ソ連との関係いかんでは食糧を有力な武器として使ってくるかもしれない。その場合に、ソ連に対して大量に食糧輸出が再開されたりしますと、日本はアメリカに対する依存度が過大でありますから、トウモロコシや大豆は非常にアメリカオンリーに依存しておるような状態であります。そうしますと、このソ連に対する輸出の再開と日本を含む世界の農産地帯での異常気象がマイナスに作用するということが一緒になった場合、これは大変な値上がりあるいは不足が起きてくると思うのです。  そういう事態が起きてきてあわてたのでは仕方がないわけで、日本はもっともっと穀物飼料作物輸入源の多元化に努力をするべきだ。ところが、その多元化についてはこれまで民間任せである。一部、開発輸入などについてブラジルのセラードの実験農場とか、あるいはその他の地域でほんの少しだけ開発輸入への政府の手が差し伸べられましたけれども、わが国として多元化に対して政府は全然手を出していないと言っていい。そうした意味で私はもっと食糧輸入源を多元化すること、その多元化のために役に立つプロジェクトについてはこれを積極的に政府の財政資金を使って支援すること、及びそういう役に立つプロジェクトをアメリカ以外の地域で、幾らでもあるわけですから、政府が手を出しても構いませんからつくり上げていくこと、これは絶対必要だと思うのです。  そうした意味では非常に民間任せで、民間は任せられても採算がとれない場合が多いですからどんどん撤退してしまう。インドネシアからでも撤退しておりますし、タイといま大臣が言われましたけれども、タイからのメーズなどについても開発輸入の案件は影をひそめでおる。これでは私は一朝事ある場合、そういう不幸な要因が重なったときには、国民食生活は大混乱するばかりか、日本食糧問題で経済全体が混乱するということを考えなければいけない。その点きわめて心構えがしつかりしていないし、農林省の対応の仕方が不十分だと思います。したがって、この点についてぜひ今後は改めて取り組む姿勢を要望したいわけですが、この点いかがですか。
  113. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 その面は先ほどは申し上げなかったわけでありますけれども、二千万トンにも上る飼料輸入をしておる国でありますから、やはり危険の分散という意味におきましても、南米に対する開発、さらにはASEAN、アジアに対する飼料作物等についての今後の開発ということは、今回も私が参りまして、先ほど申し上げたようにフィリピンでのトウモロコシ、タイでのトウモロコシの増産については日本の農協等もずいぶん努力いたしまして、現在二百万トン以上の生産を上げておるということで、この点にもさらに努力をいたしたい、協力してほしいということでありますので、そういう面での協力も一応話し合いをしてきておるところでございます。インドネシアにおいても、そういう点についての日本農産物と競合しない将来の増産ということを考えれば、飼料作物穀物である、こういうことで話し合いが合意をしておる。こういうことでもございまするし、今後ニュージーランド、豪州等とも、やはりいま御指摘になったようにアメリカだけに頼るということじゃなく施策を進めていこうということでやっておるところでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  114. 近藤豊

    近藤(豊)委員 国際協力事業団の開発輸入に対するローコストの資金の融資援助の予算が、ことしは多分三十億ぐらい取ってあるはずですが、いまほとんど使われていないわけなんです。     〔菊地委員長代理退席、委員長着席〕  これはリスクが多過ぎて、ローコストの資金の融資を受けてもそれだけではリスクはカバーできないから民間としては使いようがない。つまりいまやっている政府の支援措置よりももっと強力な支援措置を考えないと何にも進まないわけです。  そこで、いま大臣がそういう取り組み方をされるということの中には、果たしてそうした新しい支援措置、そして政府がもっと強くこの輸入源の多元化を進めるかどうかという点についてははなはだ不分明であります。その点を何か検討しておるかどうかを事務局から答えてください。
  115. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいま先生もおっしゃられますように、事業団の融資ベースで行っております農業関係の開発の事業が余り進んでいないということは事実でございます。これがためには、よいプロジェクトを見つけて効果的な投資をしていくということが非常に重要だと思うわけでございますが、やはり基本的に考えなければならないことは、いままでは相手方のリクエストを待つという考え方が基本的なわが方の開発政策の考え方のもとになっておったという点でございまして、このたびASEANに総理もおいでになり、また農林大臣もおいでになりまして、各国の首脳、農林大臣とお話し合いになりましたが、これから非常に重要なことは、むしろ相手方とよく話し合いをしてよいプロジェクトをお互いに見つけていく、それによりまして、事業団の融資あるいは円借その他につきましても有効な投資をしていくということが肝心だと思います。  このようなことで、われわれとしてはすでにインドネシアあるいはタイにつきまして、相手国政府と話し合いをしようというところまで来ておりますので、今後先生のおっしゃられるような方向におきまして、事業団あるいは円借等の融資も十分に活用のできるような体制に持っていきたいと考えておる次第でございます。
  116. 近藤豊

    近藤(豊)委員 その意欲は非常に買います。しかし、融資援助だけではこれはだめなんです。国が投資するということは問題がありましょうから、特に土地の所有権などが絡んでくると、主権問題などで非常にデリケートな問題があります。そこで、むしろ補助金を出すとか助成金を出すとか、あるいは減税措置を含めたいろいろな点でそのリスクをカバーする一つの助けをするという新しい支援の仕方を考える必要があると思うのですが、そこまで考えていかれるつもりがありますか。
  117. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かに融資の措置、円借あるいは事業団の融資ベースでなかなか片のつかない問題があろうかと思いますが、先生もよく御案内のように、いわゆる食糧援助方式によりまして、無償によりまして、相手国の機械であるとかあるいは肥料等につきましてこちらが無償資金を貸与する、無償資金を出すという方式もございます。あるいはわれわれがやっております、いわゆるプロジェクト方式による援助ということの中には、相手国初研修生を受け入れ、またわが方から専門家を派遣すると同時に、これに対しましては機材供与という形での無償の援助をするという形もございます。かような方式がすでにございますので、これらの制度を十分に活用しながら、お金を貸すだけで足らない分野につきましてはカバーをしていくということで、効果的な農業の開発を進めていくというように考えておる次第でございます。
  118. 近藤豊

    近藤(豊)委員 実はそれだけではとても開発輸入の案件は進まないと私は思います。これは企業のリスクをカバーすることが必要なので、無償援助を出したり機材援助を出すということは相手国政府の財源を助けるだけなので、日本の企業が開発輸入にどっぷりつかった場合のリスクを回避することにはならない。そこで、あくまでもつくったものが日本にコンペティティブに、つまり競争力のある値段で入らなければいけないのですから、その辺、フレートを助成するなり何か思い切った措置をとりませんと、とてもこの多元化は不可能だと私は思います。  そうした意味でこれは強く要望をしておきたいのですけれども大臣の在任中にでもそうした新しい方式についての芽を出されるように、次の五十七年度予算の編成に当たっては十分考慮していただきたいことを要望しておきます。  さて、この問題に関連するのですが、各国での農業生産を大いに助成していく場合の開発輸入の案件と並行して、日本の移住者たちが南米を中心として非常に活躍をしております。あるいはカナダやアメリカにも同じような移住者がおるわけです。そういう人たちが食糧増産に携わっておる。ところが、新しく開拓していくようなところではコストの安い資金がなかなかなくて、高い金を借りて困っているわけです。そういう場合に、御承知のようにいま農協にはたくさん預金が集まって、集まり過ぎて困っているような面があるわけですから、農協の資金を信連なり中金なりを通じて海外におる日系の農業者のプロジェクトに貸し出してやったらどうだろう。しかし、それはリスクを農協や信連に負わせるわけにはいきませんから、その為替リスク等については政府がカバーする。これは政府が為替リスクを直接カバーすることもあり得ましょうし、相手国との何らかの取り決めで折半することもありましょうし、そういう形の取り決めをした上で安心して農協の金が貸せるようになれば、非常にローコストの資金がそういう国の日系の人たちに流れて、日本人の発展にも役に立ちますし、食糧の増産にも役に立つ、それが開発輸入に結びつく場合もあるわけです。その可能性を実はお伺いしたいわけです。これは事務局からで結構です。
  119. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 御案内のように農協、信連あるいは農中の資金は、その性格といたしまして、海外の農業開発に直接これを投資する、あるいは直接これを海外の移住者に供給するというわけにいかないのは制度上御承知のとおりでございます。ただ、昭和五十四年にブラジル銀行の在日支店に対しまして、いわゆる金融機関に対する貸し付けということで貸し付けを行いまして、これがブラジル国内農業開発に非常に役立ったというケースのあることは私も承知をしております。  しかし農協系統金融は、御案内のように組合員あるいは所属団体のための金融業務というのが主力でございまして、本来の業務はこのような業務に限定されておるわけでございます。したがいまして、これらの業務以外の業務をやります場合にはそれ相応の制限があるということは御承知のとおりでございます。また、ただいま先生も御指摘になりましたように、海外にこれを持ってまいります場合には当然リスクが生ずる。零細な農林漁業者の資金というものにリスクの負担を負わせるわけにはいかないということもございますので、第一の点で申しましたように、ブラジル銀行への貸し出しといったようなことが今後行われる場合にも、われわれとしては、やはりケースに応じましてこれを慎重に検討してまいるという姿勢で行きたいと思います。むしろ私申し上げたいことは、現在入植者に対しましては、外務省におきましてその資金を供与する制度があるわけでございますから、これを中心にした制度の拡充というものがあってしかるべきではないかというふうに考える次第でございます。
  120. 近藤豊

    近藤(豊)委員 それでは次に、ちょっと性質の違う問題ですけれども、韓国に対する米の輸出についてお伺いをいたします。  御承知のように韓国は日本以上の冷害で、百万トンの米の輸出を要望してきております。私の理解するところでは、三月期までに三十万八千トンの輸出契約が成約をしておるはずです。そして、実は韓国としてはそれでは足りないわけで、韓国はさらに七十万トン程度の輸出を八月までに終了し得るように要望をしてきておるはずであります。この点、アメリカとの協議はすでに原則的に終わっておるはずでありますので、問題は日本側の対応にかかっておる。ところが日本側では、輸送の問題とか倉庫の問題あるいはバランスをとりながら各地から五十二年産米、五十三年産米を出さなければいかぬということでうまくいかないのだ、したがって、ついこの間食糧庁の方からおいでいただいて説明を受けたところでは、あと三十万トンぐらいしか見込みがないのだという話を承りました。  米の処理の仕方としては、えさなんかにするよりも当然輸出の方がずっと分がいいわけですから、ましてや一トン早く出せばそれだけ倉敷料も少なくなるので、これは大いに推進すべき問題だと思います。えさに食わせるよりは韓国の飢えた人たちに食べてもらう方が米も冥加でありまして、そういう点、大臣がこの問題については基本的にどういう気持ちで取り組まれるかをまず承りたいと思います。
  121. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 過剰米の処理につきましては、できるだけ工業用あるいは輸出用、えさという形で処理をするということを計画いたしておるわけであります。五年間でバランスをとっていこうということにいたしておるわけでございます。したがいまして、輸出につきましてもそれぞれの国からの要請があるわけでございますが、いわゆる輸出国に大きな影響を与えないということで、十分話し合いをしながら輸出をいたしておるところでございます。韓国の問題についてもできるだけ円満に、まあ要望全部にこたえるというわけにはまいらないかもしれませんけれども、できるだけ協力できるような体制のもとに仕事を進めるように、こう食糧庁の方に申しつけておるところでございます。
  122. 近藤豊

    近藤(豊)委員 それでは食糧庁の方から量的な見通しについて、現時点でのなるべく正確な数字を承りたいと思います。
  123. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 来年度の韓国に対する輸出につきましては、現在韓国側とも話し合いを始めておる段階でございまして、まだ量的にこれだけということを申し上げられる段階にはなっておりません。
  124. 近藤豊

    近藤(豊)委員 きのう日韓議員連盟の総会を行いまして、一部議員の中から八月末までにあと五十万トンくらい出せるはずだという話がありましたが、この点については、食糧庁長官いかがですか。
  125. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 国際間の話し合いの問題でございますので、いまの段階でまだお答えできる段階ではございません。
  126. 近藤豊

    近藤(豊)委員 実は、一部の倉庫業者等は、お米を、この不景気な時代ですから倉庫に入れておきたいということで、できるだけ出さないでくれという運動をしております。私のところにもすでに数社の倉庫業者から、この問題つつかないでくれという要望がありました。はなはだこれは情けないことでありまして、私は、韓国が困っているなら、わが安全保障に重大な関係のある韓国の窮状を助けるのはあたりまえである。それからまた韓国側としても、日本しかあと頼るところはないわけです。そういう意味で、これはぜひ韓国側の要望を、全部達しましてもせいぜいあと四十万トンか五十万トンでありますので、ひとつ極力これは関係者を督励して、満額韓国側の要望を達するように努力をしていただきたい。特に、大臣は日朝議連の方にも関係があられるので、ひょっとすると韓国側の方から見ますと、私たちにとって冷たいのじゃないかというように思っているかもしれません。この点、日韓議連の一員として強く要望いたします。大臣、ひとつお願いします。
  127. 亀岡高夫

    亀岡国務大臣 御注意を十分わきまえて処理をしてまいりたい、できるだけ努力をいたしたいと思います。
  128. 近藤豊

    近藤(豊)委員 終わります。
  129. 田邉國男

    田邉委員長 次回は、来る三月三日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十二分散会