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1981-05-21 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月二十一日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左近四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       浦野 烋興君    小渡 三郎君       狩野 明男君    粕谷  茂君       亀井 善之君    川崎 二郎君       木野 晴夫君    倉成  正君       平沼 赳夫君    宮崎 茂一君       村岡 兼造君    上原 康助君       角屋堅次郎君    広瀬 秀吉君       矢山 有作君    渡部 行雄君       市川 雄一君    岡田 正勝君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         任用局長    斧 誠之助君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         総理府人事局長 山地  進君         防衛政務次官  山崎  拓君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         沖繩開発庁総務         局長      美野輪俊三君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省条約局長 伊達 宗起君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主計局次         長       矢崎 新二君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      吉田 道弘君         水産庁海洋漁業         部長      佐野 宏哉君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 五月二十一日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     浦野 烋興君   田名部匡省君     平沼 赳夫君   竹中 修一君     村岡 兼造君   矢山 有作君     広瀬 秀吉君   小沢 貞孝君     岡田 正勝君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     粕谷  茂君   平沼 赳夫君     田名部匡省君   村岡 兼造君     竹中 修一君   広瀬 秀吉君     矢山 有作君   岡田 正勝君     小沢 貞孝君     ————————————— 五月二十日  公文書公開法案鈴切康雄君外七名提出衆法  第四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  委員派遣承認申請に関する件  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出、第九十三回国会閣法第六号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、  第九十三回国会閣法第七号)  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、第九十三  回国会閣法第九号)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  3. 矢山有作

    矢山委員 まずお伺いしたいのでありますが、今回の退職手当法改正案提出に至る過程で、政府昭和五十四年十一月二十二日に公務員給与改定に関する閣議決定を行って、退職手当に対する見直しを決めたという経緯があるわけでありますが、こういうようなやり方をやるということになると、まさに政府の意のままに労働条件を変えていくことになるのではないかというふうに考えるわけであります。こういうことが許されるなら、公務員労働条件は、一方的に何の歯どめもなしに切り下げられていくということにならないとも限らないわけでありまして、この点について私は大きな疑問を持つので、この点、総務長官の方から御所見を承りたいと存じます。
  4. 山地進

    山地政府委員 実は、この閣議決定以前におきまして、五十三年十月七日には総務長官稻村総務長官でございますが、退職金調査を行うということを御答弁申し上げまして、五十三年十月に人事院の方に民間退職金調査を依頼しているわけでございます。したがって、その以後、五十四年のいま先生の御指摘になりました閣議決定以前に、政府の方としては、その準備を人事院に依頼し、私どもとしても、その調査というものに一つのウエートを置いて、この退職金の調整ということを慎重に検討したわけでございます。  先生の御指摘の、こういったものをこういうふうな法律改正でやることの是非につきましては、るるいろいろと御説明を重ねてきたところでございます。
  5. 矢山有作

    矢山委員 こういう退職手当についての民間実態調査したかせぬか、そんなことにかかわりはないと思うのですよ。給与勧告と引きかえに、そういうような閣議決定をやったというやり方は不当であるということを私は言っておるので、そのようなやり方をすれば、公務員の権利なんというのは幾らでも剥奪されてしまうのではないか、こういうことを言っているわけです。  次に、まず確認のためにお尋ねしたいのですが、民間との較差是正だとかあるいは民間準拠ということを説明しておられるのですが、この較差というものは、いつの時点でどのような調査に基づいて出しておられるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 山地進

    山地政府委員 五十二年度における公務員並びに民間退職金の実額を五十三年度に調査をいたしまして比較をしているわけでございますが、その調査の内容については、行政職の(一)の高校卒事務職員というものを対象にいたしまして官民比較を行っているわけでございます。
  7. 矢山有作

    矢山委員 ここで問題になるのは、昭和五十二年当時の民間企業を取り巻く社会経済的な条件がどのようなものだったのかということを考える必要があると思うのです。御承知のように、その当時は世界先進諸国が、第三世界の国々、とりわけ産油諸国からの総反撃によっていわゆる石油ショックに見舞われておったときですね。日本でもこの当時、民間企業はことごと減量経営ということを余儀なくされておったわけであります。したがって、その当時は、企業の業績というものは非常に落ち込んでおった、そういう事態のときだろうと思うのです。そういうような時期の調査結果を比較対象にして、現在もなお同様の較差があるというふうに言い切ることができるのかどうか、その点はどう考えておられますか。
  8. 山地進

    山地政府委員 実は、この退職金調査は、三十六年、四十一年それから四十六年、五十二年とほぼ五年の間隔を置いて調査そのものはやっているわけでございまして、四十六年の調査に基づいて四十八年はこれを引き上げた。そこでこういった退職金官民比較はどういうふうにやったならば官民比較ということができるかという方法については、私どもとしては、五年ごとにその比較をしていく。これをいま先生のおっしゃるように、ことしはどうも民間景気がいい、あるいは悪いというようなこと、あるいは世界経済動向がどうというようなことでやりますと、恣意的な決定ということが行われるものでございますから、五年ごとに決めて調査をして、そこでその改正是非というものを判断するという方が公正さを期せるのじゃないかということで、今回も前回と同じようなことでやったわけでございます。  ただ、方法論といたしまして、今後そういったことをどういうふうにやったら適正な官民比較ができて、公正な退職金決定ができるかということにつきましては、私どもとしても、慎重に検討はしていきたい、かように考えております。
  9. 矢山有作

    矢山委員 五十二年の時期というのは、先ほども言ったように、経済的に非常に景気の悪いときで、企業減量経営を相当やっていましたね。そのときの民間調査を踏まえて、今日時点でこういう削減措置をとるというのは、私は必ずしも適当なやり方じゃないんじゃないか、現在がどういう実態であるかということを考えねばいかぬのじゃないか。そうすると、あなたの論法で言われると、五年ごと是正するというなら今度はいつの調査ですか。それで、その調査の結果で官民較差が今度は逆に官の方が低い場合には、それは十分是正措置を講ずるつもりですか。
  10. 山地進

    山地政府委員 おっしゃるように、世界経済あるいは国内の経済も揺れ動いておりますし、世界のあるいは日本高齢化社会というのが、これまた非常に問題を抱えているということでございますけれども、それらについてはいかなる方法でそういった変動に対応し得るのか。四十六年という時点調査も、高度成長のあおりがまだ残っていた時点で、四十八年に改正したわけでございます。これもやはり一つの問題があったろうと思うのです。それから今回の五十二年の時期も、先生の御指摘のような問題を抱えていたと思うのでございますけれども、その後さらに現在に至るまで、民間退職金動向というものも非常に揺れ動いていることは、また事実だろうと思うのでございます。  そこで、いま最後に御指摘になりましたように、今後のことになるわけでございますが、私どもの計画では、先ほど申し上げました五年ごと調査というのを、五十七年度の退職金実績を五十八年度に調査をして、必要があれば所要是正措置考えなければいけない、かように考えているわけでございます。
  11. 矢山有作

    矢山委員 それはそうでしょうね。四十六年の調査に基づいて四十八年にやったというのなら、比較的この間はそう大きな経済的な変動は私はなかったと思うのですよ。それで四十八年にオイルショックが来て、直ちに状況が悪くなったんじゃないんで、四十八年のオイルショックを受けて状況の悪くなったのは、やはり五十一年、五十二年ごろがピークです。その一番悪いときをとって、そして現在の削減をやろうというところに私は問題があると思うのです。そうすれば、やはりできるだけ調査時点是正時点とを短縮させていく、こういう配慮がなければ、今回のような矛盾した問題を起こすんじゃないかというふうに私は考えておるわけです。  したがって、再度お尋ねしますが、今後、そうした調査時点と、それから是正時点とを極力短縮する、そういう立場からいって、五十七年度調査を踏まえて速やかに是正するという考え方があるということですね。
  12. 山地進

    山地政府委員 その五十七年度の実績を五十八年度に調査するわけです。これは実際に支給された額を調査するわけでございますので、五十七年度のものを五十七年度に調査するというわけにいきませんので五十八年度にやる。そういたしますと、それを調査して分析すると若干時間がかかりますので、恐らく五十九年度に法改正所要があれば出てくるということになろうかと思うわけでございます。  したがって、その実績とそういった是正措置の間にタイムラグというのは、これは避け得ないことだろうと思うわけでございまして、しかし、それはそれとして、そういった是正措置が必要であれば、私どもとしては、速やかな措置をとるという方針で臨んでおるわけでございます。
  13. 矢山有作

    矢山委員 私が五十七年度調査と言ったのは、それは五十七年度の分を五十八年に調査をして、そういう意味で五十七年度調査と言ったわけです。わざわざ念を押していただく必要はないんで……。  それで、タイムラグが出てくることは避けられぬと思います。避けられぬと思うけれども、やはりそれをできるだけ縮めていくということが実情を反映するのではないかと考えますので、それはそういう努力をぜひやっていただきたいというふうに考えます。  ところで、総理府の言っておられる官民較差というのは、ただいまもお話がありましたが、行政職(一)の事務職の者をこの基準にして考えておられるようでありますが、公務員には行政職(一)だけじゃないので、したがって、なぜ、同じやるのなら全体を含めてその比較をするということを考えられなかったわけですか。
  14. 山地進

    山地政府委員 退職手当法対象は、まあ上と言うと申しわけないのですが、総理大臣からわれわれのような者、それから三公社現業、全部含んでいるわけでございます。そういったグループの各階層ごとに、民間というのは恐らく対応の職種なりがあろうかと思うわけでございますけれども、そこでそういった官民比較をするのに、その代表になるものを、比較しやすいということと、全体を代表するにふさわしいというところを選んで比較せざるを得ないんじゃないだろうかと思うわけでございます。  ところで、高校卒というのは、事務職で言いますと、公務員の全体の約五〇%でございます。行(一)で見ますと、七〇%近くが高校卒でございます。これは行政の(一)というのは二十四万人ぐらいいるわけでございますけれども、そこで高校卒というのがマジョリティーを占めているということは事実だろうと思うわけでございまして、しかも、その事務職事務技術職員と申しますけれども、これが勤務状態からいって民間比較しやすいということがございますので、その行政職の(一)の事務技術職員民間比較をして、言ってみれば代表選手に選んで官民比較をした、かようなわけでございます。
  15. 矢山有作

    矢山委員 その行政職(一)を代表選手に選んで比較をするから、その結果出てきたものは、ここへ示されておるように、勤続年数三十五年の者で言うと、国家公務員が千八百三十七万円になるというのですか、民間企業は千六百八十三万円だ、したがって、その官民比較で言うなら、民の方が九二%にしかいっていない、こういう考え方でしょう。  ところが、ここに私は非常な問題が出てきておると思うのですが、別個にわれわれの方で調査した資料を手に入れて、これで比較してみますと、公共企業体民間国家公務員との退職手当比較をやってみますと、公共企業体等において、勤続年数三十五年で千三百九十七万です。民間が千六百八十三万です。国家公務員が千八百三十七万、こうなっているわけですね。そうすると、公共企業体の皆さんというのは非常に低位にあるのですね。  この中身をもっと見てみますと、たとえば三公社現業で一番低いところで、林野が千二百七十七万円、一番高いところで、郵政が千四百九十八万円になっているわけです。これら三公社現業を全部平均したものが、先ほど言った千三百九十七万円ですね。こういう問題が起こってくるわけです。  そうすると、そちらで調べられたより一二%から三二%低目に出ているわけです。こうした矛盾をどうするかという問題ですね。どうお考えですか。
  16. 山地進

    山地政府委員 先ほど申し上げましたように、公務員グループの中にはいろいろな方々がおられるわけでございますが、いまの御指摘の三公社あるいは五現業方々退職金というものを、どう  いうふうに民間比較するかということになろうかと思うわけでございます。そこで私どもは、行政の(一)の事務職員高校卒というものを代表比較しているわけでございますけれども、それだけで全体の傾向が合っているかどうかということは、ほかにチェックをする、補助的な手段といたしまして、従来の資料を使ってチェックするという必要性はあろうかと思いまして、それはやっているわけでございます。  そこで、三公社についてこれを考えてみますと、これは三公社職員勤続二十年以上の方の退職状況を見ますと、中卒というのが約一万四千人でございます。それから高卒が四千人ぐらいでございます。したがって、三公社について見ますれば、代表的なタイプというのはやはり中学卒ではないか、かように私ども考えているわけでございます。五現の場合も、これは四千八百人ぐらいが中卒でございます。それから高卒は二千人ぐらいでございます。したがって、この五現の方々も、代表としては中卒がいいということになるわけでございます。  そこで、一体中卒民間はどうなっているかという比較を、中労委調査、これは資本金五億円以上、一千人以上の企業対象にしているわけでございますが、この中学卒生産労働者比較をしているわけです。そういう比較と、もう一つ労働省の、これは三十人以上の企業のところでございますけれども、それの比較、この二つの比較をいたしますと、これはちょっと数字が細かくなりますけれども、たとえて申し上げますと、三公社の二十五年勤続の方を比較いたしますと、これはおっしゃるように低くて、八百九十万円ぐらいでございますが、中労委民間調査によりますと、これが六百万円ぐらいのところに来ているわけでございます。あるいは三十五年で見ますと、三公社現業は約千三百万円ぐらい、大体先生のいま御指摘のとおりだと思うわけでございますが、この中労委調査によりますと、これは一千万円くらいでございます。それから労働省調査比較いたしましても、これはちょっとこの統計のとり方が違うわけでございますけれども労働省調査でも一千万円くらいになっているわけでございます。  そこで、私どもとしては、中卒生産労働者というものについては、民間生産労働者中卒比較する、それから行政職の(一)の事務職については、国家公務員の方も高卒でとるし、民間の方も高卒事務職員をとる、やはりこれが比較の手法としては正しい方法であろうかと思うので、この私どもの方の人事院に御依頼した調査、これは精密な調査でございます。それから従来の、既存の資料を使った生産労働者比較というようなものを通じまして、やはり人事院調査というものは間違っている傾向にはないということを確信して、この法案をつくったわけでございます。
  17. 矢山有作

    矢山委員 いろいろとそう説明されると、いかにも合理的な判断からやっておられるようですけれども、しかし、いま申し上げたような数字から見ましても、やはり相当な問題点が含まれておるのではないかということが私は考えられると思うのです。それだけに、こうした時期に退職金削減するというのは問題を含んでおる。  それからもう一つは、現在の状況というのは、五十二年当時とは企業状態もかなり違いますから、そういうときに、そうでなくても低いものに対して、さらに削減措置をやるというのは非常に大きな問題をはらむ、そういうふうに考えて、私どもは、こうしたやり方に対しては反対せざるを得ない、こういうことです。  そこで、定年制の方で一つだけ聞いておきたいことがあるのですが、定年法の今度の改正案の八十一条の四、再任用の問題がありますね、この問題でちょっと聞いておきたいのです。この再任用というのは、基準は「人事院規則で定める」ということになっておるのですが、一体再任用基準というものをどういうふうにお考えになっているわけですか。
  18. 長橋進

    長橋政府委員 人事院規則で決めます再任用基準でございますけれども給与について申し上げますれば、これは新たに採用された職員給与決定方式ということで、原則的にはそういう基準で決めることになります。  それから、任用につきまして、どういう場合に再任用を行うのかということでございますけれども、それはいわゆる公務必要性、本人の能力、そういうものに応じて個別具体的に決められる問題と思います。
  19. 矢山有作

    矢山委員 再任用について八十一条の四を見ると、「その者の能力及び経験を考慮し、公務能率的運営を確保するため特に必要があると認めるときは、人事院規則の定めるところにより、」というふうになっているわけでしょう。だから、その一応の基準というものを恐らくつくられるのじゃないかと思うのですがね、人事院規則に。そのつくる場合に、関係団体意見等を聞くとか、それと協議をするとかいうようなことは考えておられませんか。
  20. 長橋進

    長橋政府委員 これは採用側の事情、それから当然のことでございますけれども勤務条件にかかわりを持ってまいることでございますので、関係団体意見等も十分聞きながら対処してまいりたい、このように考えております。
  21. 矢山有作

    矢山委員 この再任用については、これを団体交渉事項考えるわけにいきませんか。
  22. 長橋進

    長橋政府委員 現在国家公務員任用につきましては、任用基準等につきましては国家公務員法人事院規則で決められることになっておりまして、交渉事項ということには含まれておりませんので、したがって、人事院規則で決めるということになろうと思います。法形式上はそうなると思いますけれども、しかし、これは関係者方々意見等も十分お聞きしながら決めていかなければならぬ問題だと思っております。
  23. 矢山有作

    矢山委員 それから次に、もう一つお伺いしておきたいのですが、「国の一般会計又は特別会計歳出予算常勤職員給与の目から俸給が支給される者」というのがありますね。これはいわゆる常勤作業員とかなんとかそういう呼び方で普通呼ばれておると思うのですが、そういう人たちがいまどのくらいいますか。
  24. 山地進

    山地政府委員 ちょっといま手元に資料がございませんので、至急調査いたしましてお答えいたしたいと思います。
  25. 矢山有作

    矢山委員 それじゃ後で知らしてください。  そこで、そういう人たちに対しては、国家公務員等退職手当法五条適用について、一応の制限がありますね。そのために、たとえば勤続二十四年で勧奨退職適用されて退職金を計算した場合と、二十五年以上勤続した場合と、これは二十五年、二十六年勤続している方が不利なような形になっておるはずなんですが、その点はどういうふうにお考えですか。  これは、もう一度申しますとこういうことです。国家公務員等退職手当法五条中、公務上の傷病または死亡による退職にかかわる部分以外の部分規定適用されない、こういうことになっているわけです。したがって、それでいくと、二十四年勤続勧奨退職受ける場合と、二十五年、二十六年で勧奨退職受ける場合と、その二十五年、二十六年、二十七年勤めて勧奨退職受ける方が不利になるわけです。そういう場合の取り扱いをどう考えていますか。
  26. 山地進

    山地政府委員 いまの御質問は、退職手当法の第二条で、いまおっしゃるような方々五条適用がないというお話かと思うわけでございますが、その五条適用がない、つまり四条の適用であるという意味では、五条適用をされる方々が二十五年以上勤続の場合に受けられる退職手当法上の規定に比べれば不利になるということであろうかと思います。ただ、二十四年勤めた、つまり四条の適用で二十四年勤めている方と、四条適用の二十五年、二十六年勤めている方との比較では不利にはならないと思っているわけでございますが……。
  27. 矢山有作

    矢山委員 それはそんなことはない。法の五条適用が、いま言った常勤作業員といったような人に適用されるのは、公務上の死亡もしくは傷病、この場合だけなんです。あとは適用にならぬのです。  そうすると、たとえば二十四年勤続して勧奨でやめる場合は三十八・七カ月分です。ところが、いま言った公務上の死亡傷病以外には、常勤作業員と言われる人たちにはこの五条適用にならぬものですから、したがって、たとえば二十五年勤続ですと二十八・三七五になる。それから二十六年だったら三十・五二五になる。二十八年なら三十六・一、こういうかっこうになるわけですよ。これは大変な問題だと思いますがね。
  28. 山地進

    山地政府委員 いまお示しの、二十四年の場合三十幾つとおっしゃったようでございますけれども、これは四条の場合ですと二十八・幾つという数字になりますが、五条にいきますればもっと高い三十幾つということになるわけでございます。したがって、四条の適用で逐次伸びていきますと、五条適用になれば高くなるのは当然でございますけれども、四条のままずっといくというのがこの法の規定になっているわけでございますから、四条の状態で二十四年と二十六年を比べれば二十六年の方が有利になる。それから二十六年で五条にいけば、途端に今度は五条適用は二十五年を境に高くなりますから、五条適用の二十六年と四条適用の二十六年は五条の方が有利になる。そういう意味では二十四年と二十六年の五条とは明らかに差が出てくるわけでございますけれども、二十六年と二十四年を四条の範囲内で比較すれば、二十六年が支給率は高くなるというのがこの数字になっているわけでございます。
  29. 矢山有作

    矢山委員 私の聞きたいのは、そういう不利が出る。ところが今度は常勤作業員というのも同じように定年制適用されるわけでしょう。そうすると、常勤作業員定年制適用されて、原則的に六十歳でやめなければならぬ。それからいわゆる国家公務員という人も定年制適用されてやはり六十歳でやめる。そのときに四条適用五条適用とが差別があって、常勤作業員について不利な扱いのままで置いておかれるということに問題があるんじゃないかということを言いたいわけです。
  30. 吉田道弘

    ○吉田説明員 先生ただいま御指摘ございましたように、常勤作業員ということを前提にこの退職手当法はできてございますので、先ほど申しました非常勤あるいは常勤に類するというものを二条でつくっているのは、むしろ特例的にそうしたわけでございます。そういうことでございまして、原則的には常勤を前提にしているという制度のたてまえからそうなったと私ども考えております。
  31. 矢山有作

    矢山委員 だから、私も制度のたてまえはわかる。差別と言ったら言葉があれですが、こういう差別があるということ、国家公務員と一条の一号適用ですか、「国の一般会計又は特別会計歳出予算常勤職員給与の目から俸給が支給される者」、これは国家公務員に準じて考えているんでしょうかね、それとの間でこの法をつくるときに差別を設けたこと自体が、私は何でそんなことを設けたのかなという気もするけれども、それはそれとして、今度定年制適用というのは一律に適用されるわけでしょう。国家公務員もそれからこの施行令の一条の一項の一号で言っておる人も一律に定年法適用されるのに、差別をそのまま残しておくというのは問題があるんじゃないかなという気がするわけですよ。だから、この点は検討していただいた方がいいんじゃないかと思いますがね。
  32. 山地進

    山地政府委員 いま先生の御質問の中で述べられたように、退職手当の中の位置づけとして、その常勤の方、いまの「常時勤務に服することを要するもの」について何で差をつけられていたか。これは退職手当の中で、つまり定年制の導入いかんにかかわらず勧奨制度という前提ですでにこういうことが織り込まれていた。そこで先生の御質問は、定年制度を導入されるについてこういったものをもう少し検討する必要があるんじゃないかとおっしゃったわけでございますけれども、現在の勧奨退職制度のもとでもそういった位置づけをしてきたので、今後も当面はそういったことで私どもとしてもまいりたい。ただし、今後退職手当の見直しということがございますので、その際、いろいろな点については御意見を承りながら検討を続けていきたい、かように考えております。
  33. 矢山有作

    矢山委員 しかし、常勤作業員の場合、大体三公社現業関係だと思うのです。この場合、現実には団体交渉でやっていって処理してきておったわけですよ。ところがそれがやれないで、一律に定年制でくくられてしまうということになると、これは全く不利益の救済方法がないということになるんじゃないですか。その点が私は問題だと思うのですよ。
  34. 山地進

    山地政府委員 いまの御質問の趣旨は、まず定年制度の運用上、三公社現業の団体交渉とそういった定年制度の運用というのは、定年法のところでは、主務大臣が決めるものは団体交渉するということで、私どもはお答えしておるわけでございますが、そのことといまの退職手当についてどういうふうに運用するかということは別の話のような気もいたします。  つまり退職手当というのは、三公社五現も含めて法律で決められているわけです。したがって、その勤務年数をどうするかということについては、退職手当法の中で、何年勤続の者についてはどういう支給率ということが法定されているわけでございますから、定年制度の運用とか、従来ですと、勧奨の年齢については団体交渉でおやりになっていたわけでございますけれども定年制度を導入してからの団体交渉というのは、主務大臣の決める事項についてやる、ただし、従来も勧奨制度でやっていたけれども退職手当そのものについては法律で決められていたということでございますので、定年制度導入後も以前も退職手出の運用については同じである、かように私どもは理解しております。
  35. 矢山有作

    矢山委員 私の言い方が悪かったかもしれない。団体交渉と言ったのは、定年制が施行されてないときには、勧奨を受けようがどうしようが、そういう人は不利な状態にあるんだから、やめなければやめないということで、それなりに団体交渉の中なりで処理できていったわけです。ところが今度はそれができないわけでしょう、定年制ということになると、これは団交事項でないと言うんだから。そうすると、団交事項でなくなってしまって、同じように解決の道がない、同じように定年制が施行される者を、この不利な状態のままでこの法律を残しておくというのに問題がありはしませんか。だから、そこに救済方法考えられないのかということを言っているわけです。
  36. 山地進

    山地政府委員 いまの常勤作業員方々退職金に関する問題点というのは、勧奨制度の運用で団体交渉をする、そのこととかかわりなく決められていたことになっているわけです。つまり二十年でやめようが二十五年でやめようが三十年でやめようが、二条の常勤作業員については、退職手当上はこういう法定でやっているわけです。したがって、従来も今後もその点については同じであろう。つまり長くいればこの二条が外されるということがありますと、それはおっしゃるような御懸念も出てくるわけでございますけれども、それは従来も退職勧奨制度のもとで長くいても二条は二条という適用をされてきているわけでございますから、定年制度の導入とは関係がない議論だろう、私はそういうふうに考えるわけでございます。
  37. 矢山有作

    矢山委員 私の言っているのは、とにかく定年制が導入されれば常勤作業員国家公務員も一律にやめなければならぬわけです。ところが、いままでなら勧奨があっても、やめるやめぬについては定年制の形でぴしっとしかれぬで済んだわけです。ところが今度はそれがしかれてしまう。しかれてしまうということを考えて、その差別された退職手当の支給のやり方をそのまま残しておくのがおかしいんじゃないかと言っているわけですよ。  たとえば、定年制が一律にしかれぬ場合は、三公社現業の場合にはやめなければやめないという形でいけたわけです。ところがそれはもうできなくなってしまった。定年がしかれてしまえば、国家公務員と同じになってしまうわけです。その状態の中でこのままの状況で残しておいたのでは、常勤作業員と称せられる人たちは浮かばれぬじゃないか、こういう意味ですよ。だから将来検討できませんかと言うのです。
  38. 山地進

    山地政府委員 先生のおっしゃる点は、定年制度導入後の常勤作業員の地位の改善というものについて、退職勧奨でしていたときと違うのではないか、定年制というのは、退職手当ではなくて勤務条件、全般的に勧奨退職と違う制度である、それで何らか不利益を受けるから、退職手当の方に反映させて、その不利益部分退職手当の方で何かちょっと見てやる方法はないだろうか、こういう議論のように受け取れるわけであります。  いずれにいたしましても、私どもとしては、退職手当について、この法律の中に見直し規定がございますので、いろいろ積極的な御発言をいただいて、もろもろの問題を検討してまいるのにはやぶさかではございませんので、もちろん先生のおっしゃるようなことも検討される可能性はないとは言えない、かように考えております。
  39. 矢山有作

    矢山委員 次に、四十八年にこの退手法の一部改正をしたときに附帯決議がつけられていますね。その附帯決議の二項に「国家公務員等の期間と公庫等の職員期間との通算措置に伴い、国と公庫等との間における相互人事交流が適正に行なわれ、いわゆる天下りの弊害が起らないよう配慮すること。」とあるのですが、国と公庫等との間の相互の人事交流というのは、その後適正に行われておるのですか。この間私の方でちょっと資料を調べたところ、中間管理職と言われておる人たちの天下りの実態は果たしてどうなのかなという気がしたのですが、どういうふうにお考えですか。
  40. 山地進

    山地政府委員 実は私も公庫等の方に人事交流で行った経験があるわけであります。これは役所の人事交流の一環としてそういったところに行くわけでございますので、それらについてはいわゆる天下りとは違うものである。決議をいただいたときの議事録によりますと、坪川国務大臣も、天下りとこの人事交流というのは性質的に違うものである、ただし、こういった附帯決議については十分趣旨を体してまいりたいというような御答弁を申し上げておるわけでございます。現在においても、いわゆる役人をやめて次の仕事につくという場合と、役人を継続している期間中、たとえば課長、補佐官ぐらいで公庫の方に行って経験を積んでくるということとは違いがあると思うわけでございます。したがって、私どもの見ている限りでは、こういった附帯決議の御趣旨を生かして人事交流というのは適正に行われている、かように考えているわけでございます。
  41. 矢山有作

    矢山委員 この前、私が一遍問題にしたことがあるのですが、天下りという言葉を使うのが適当か不適当か、おっしゃったような問題点がありますが、特殊法人の中には、人事交流と称しながら中間管理職を全部出向で埋めておるようなところがたくさんあるのです。そうなると、こういう特殊法人というものは何のためにつくったのかということになってくるのです。関係官庁から行ったり戻ったり、全部の中間管理職がそんなやり方をやっておるところがありますよ。たとえばその典型的なものは年金福祉事業団です。これは部長、次長が五人で、その五人が全部出向ですわ。一〇〇%です。課長も十三人、これが一〇〇%出向、課長補佐が一人、これも出向、こういうひどいのがある。そのほかのも七六%から八四%、高いところでそういうところ。それから低いところで二五%とか。人事交流といいながら、特殊法人の中間管理職を全部出向で占めているというのはどんなものですかね。
  42. 山地進

    山地政府委員 特殊法人の監督は人事局ではございませんので、ちょっと私からお答えするのはいかがかと思うわけでございますが、特殊法人にもいろいろなものがございます。いろいろ個別事情もありますし、それから役所との業務的なつながりとかいうものもございますから、いまの御指摘のようなところもあろうかと思うわけでございますけれども、それらについては担当の部局に、この附帯決議の趣旨というものをさらに貫いていくようにという先生の御趣旨を十分お伝えしてまいりたいと思います。
  43. 矢山有作

    矢山委員 外務省は来ておりますか。
  44. 江藤隆美

    江藤委員長 外務省は淺尾北米局長が来ております。
  45. 矢山有作

    矢山委員 それではひとつ質問を移してお伺いしたいと思います。  それは共同声明の中でいままで大変問題になって、とんでもないハプニングまで起こったわけです。今度の共同声明では、日米の関係を「同盟関係」と表現をしているわけですが、この「同盟関係」という言葉の中には、軍事的なものは絶対含まないのだということを、鈴木総理は相当強硬に主張されておった。ところが外務省の方は、「同盟関係」という言葉に軍事的なものを含まないなんというのはナンセンスだ、こうおっしゃったというのでありますが、その間の大きな見解の相違はどういうことなのですか。
  46. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 今回の共同声明において「同盟関係」という表現がございます。それは共同声明を読んでいただけば非常にはっきりしておりますが、「同盟関係」の意味については、民主主義、自由という日米の両国が共有する価値の上に築かれた総合的な日米間の関係をとらえて表現したものでございます。このような総合的な関係の中には政治、経済、文化等の関係とともに、日米安保条約に基づく日米間の安保関係があることは客観的な事実でございまして、そういう理解については、日本政府部内において考え方はまさに一致しておるわけでございます。総理が軍事的な側面はないというふうに記者会見で述べられたのは、この「同盟関係」という言葉を使うことによって、従来の日米間の枠組みに新しく軍事的な側面を加えるということでないということでございまして、外務省あるいは総理との間に「同盟関係」の認識について違いがあるというようなことではございません。
  47. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、私も今度のこういう関係、共同声明なんか反対ですが、それは抜きにして、「同盟関係」と言えば、軍事的な要素を含んでいるというのはあたりまえの話なんだ。これは常識ですわ。それをことさら「同盟関係」という番葉の中には軍事的な意味はないのだと言うって主張する。それで外務省の方があわてちゃって、いやそんな「同盟」に軍事力がないというのはナンセンスだというようなことからとんだことになって、伊東外務大臣がやめ、今度また元に戻られたようでありますが、高島事務次官がおやめになると言うとか、とんでもない醜態をさらしたわけです。私はこういう鈴木総理が言っていることは、アメリカに向けて言っているのと国内に向けて言っているのが全く違うのじゃないかという感じがするわけです。というのは、この共同声明を読んで私はこう思うのですよ。この共同声明は、特に対ソ軍事同盟の色彩を濃くしている。それは第二項で「ソ連の軍事力増強並びにアフガニスタンへの軍事介入及びその他の地域における行動にみられる第三世界におけるソ連の動きに対し憂慮の念を」表明したとあるわけです。そしてそういう対ソ認識の上で、第八項で日本の防衛と極東の平和及び安定を確保するため日米両国の適切な役割り分担を認め、防衛力改善に一層の努力を約束した、こうあるのです。そうすると、これは明らかに、軍事同盟の色彩が濃くなっているのじゃない、いままでどおりだとかなんとかというたぐいのものじゃないので、もうはっきり最初言った対ソ軍事同盟という色彩を帯びてきた、こう私は解釈するのですよ。ところが、そういうことをアメリカに行って首脳会談をやって共同声明を出しておきながら、それがそのまま国内にはね返った場合には、国内に対して刺激が強過ぎる、訪米する前から鈴木総理は盛んにハト派的な姿勢を強調しておったわけですから、これはいかぬと思って、国内向けに軍事色を薄めようと思ってああいう発言をしたというならわかります。そういうことじゃないですか。二枚舌を使っているということです。
  48. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私が総理のお考えについてコメントをするのは適当でないと思いますけれども、総理もアメリカで言われたことと日本で言われたこととは違いないということでございますし、それから昨日もマンスフィールド大使が見えまして、日本側の同順関係についての理解とアメリカ側の理解と全く一致しておるということを申しております。
  49. 矢山有作

    矢山委員 マンスフィールドが何と言おうと、そんなことを私が言っているのじゃないのです。問題は共同声明それ自体をまともな読み方をして解釈するか、それとも国内向けにハト派色をにじますために、共同声明であらわされているものをねじ曲げて説明するか、それだけの相違です。  しかし、いずれにしても問題でしょう。自分みずからが関与した共同声明に対して、軍事的な色彩は持っていないんだ、こういうようなことを言って、それであなた、外務省の方からそんなばかなナンセンスな話があるか、こうやられちゃって、この醜態を見ていると、大体総理には全く、共同声明をつくっておきながら、それをみずから理解する能力がなかったのか、それとも先ほど来言っておるように、軍事的な色彩を薄めるためにことさらに虚偽のような解説をしたのか、こういうことになるわけですが、こういう姿勢は、外務省もやはり総理と一体になって共同声明をつくっているはずなんだから、もし総理の理解が全くできておらぬということなら、外務省にも私は責任があると思う。よう理解できない総理なら、十分理解できるように、かんで含めるようにちゃんと教えておいて、そして共同声明をめぐってああいうぶざまなことになって、対外的な信用を失うようなことをやったらいかぬじゃないか、こういうことなんです。普通なら総辞職ものですよ、この問題、こういう醜態をさらしたというのは。どうですか。
  50. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私はこれ以上総理の発言についてコメントするのは差し控えたいと思いますが、総理と外務省との間で、この共同声明について認識の不一致は全くございません。(「それじゃ外務大臣はやめることないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  51. 矢山有作

    矢山委員 それじゃ、不規則発言が出ておりますが、なぜ外務大臣はやめるのですか。高島事務次官はなぜやめるのですか。やめることはない。やめたということは、やはり認識に大きな不一致があったということでしょう。だから、そういうおかしな、ごまかすような発言を委員会の席上でやってもらっちゃ困るのです。やはりこの場所ではちゃんと正直に言ってもらう。それで外務省が総理に対する教育が足らなかったのなら足らなかった、その結果ああいう醜態を起こしてまことに相済みません、こう言わなければならぬ、外務省は外交の最高の責任部門として。正直に言ったらどうですか。
  52. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 外務大臣あるいは高島次官が辞表を出された、まあ高島次官は留任されましたけれども、私たちが聞いているところでは、帰国後の紛糾について責任を感じてやめられたということでございまして、共同声明それ自体について、外務省、外務大臣あるいは総理大臣との間に意見の不一致はないというふうに私は理解しております。  なお、御指摘の事務当局が総理大臣に対して十分この共同声明の内容について理解させてないではないかということ、もしそういうことがあれば、私は共同声明作成者として、確かにそういう点があったとすれば十分そういう責任は痛感しておりますけれども、総理もこの共同声明の内容については、全く不満がないということを申されているわけでございます。
  53. 矢山有作

    矢山委員 ほかにいろいろ聞きたいことがありますから、これ以上このやりとりをやっておってもしようがないので、次に移ります。  第八項で、日本の防衛、極東の平和と安定を確保するために、日米両国の適切な役割り分担を認め、日本の領域及び周辺海・空域における防衛力の改善に一層の努力をする、こう言っておるのですが、これは明らかに集団自衛の方向に踏み込んでいるものじゃないですか、どういう解釈です。
  54. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほども申し上げましたように、今回の共同声明によって、日米間にある枠組みというものを変えることはないということを申し上げましたが、この役割り分担についても説明させていただければ、一つ日本の防衛ということ、第二点が極東の平和と安定、二つに分けてございます。  したがって、二つに分けて御説明いたしますが、日本の防衛、これは当然安保条約第五条に基づきまして、日米が共同対処するということになっております。したがって、そこにはおのずから軍事的な側面があるということは申すまでもないことでございます。しかし、それはあくまでもその共同声明の八項の同じ中で、総理大臣は、日本国の憲法あるいは基本的防衛政策に基づいて自衛力の整備を進めるということを述べているわけでございまして、あくまでも従来の個別的自衛権の範囲内にとどまるということでございます。  次に、極東の安全と平和と安定、そのための役割り分担でございますが、日本が極東の平和と安定のために軍事力を行使できないということは、皆様方御承知のとおりでございまして、ここで言っている日本の役割り分担は、まさに政治、外交、経済という非軍事的な面でございます。ただ、わが国がアメリカと安保条約を結んで、米軍に対して施設、区域を提供しているということから、この安保体制の効果的な運用を図るという意味から、日本の役割りは施設、区域の提供ということは含まれるわけでございますが、それ以上に日本が軍事的な役割りを新しく負ったということは一切ございません。
  55. 矢山有作

    矢山委員 それでは別の方からお伺いしたいのですが、第四項で中東、なかんずく湾岸地域の平和と安全の維持が全世界の平和と安全にとりきわめて重要であり、米国の確固たる努力が安定を回復することに貢献しており、それによって日本を含む多くの諸国が裨益しておる、こう言っておるわけです。  そして総理がナショナル・プレス・クラブでどういうことを発言されておるかというと、これは新聞の報ずるところでしか承知することができぬわけですが、それによると、第七艦隊がペルシャ湾水域防衛に出かけた留守に、自分の庭先を守ることは当然のことであり、わが国周辺海減数百海里、航路帯一千海里は自衛の範囲であるというふうに言っているわけですね。  だから、中東地域における米ソ紛争が発生したという事態を想定してこの問題を考えてみると、これは私は明らかに集団自衛という方向に踏み込んだと断定せざるを得ない、こう考えているのです。これでもやはり外務省は、いやそうじゃない、個別的自衛権の範囲だ、こう強弁なさいますか。
  56. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 集団的自衛権というものは、国家が実力を持って自分の国の防衛でなくて、他国のために実力を行使するということでございます。ここで書いてございます第四項、これは現在の中東の情勢が不安定である、そこでアメリカが各種の努力をしている、それが日本、アメリカのみならず多くの国に利益をもたらしている、これは客観的な事実でございます。  それから、総理大臣がナショナル・プレス・クラブで演説された際には、質問に答えられたことは、先ほど委員が御引用されたとおりでございますが、そこで日われているのは、日本日本の自衛のために自衛力を整備するんだ、その結果として、アメリカが中東により兵力を割き得るというのは、まさに結果論でございまして、何ら集団的自衛権とそこには関係がないわけでございます。
  57. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、たとえば中東で米ソの間に紛争が起こった、第七艦隊はどんどん出ていった、日本周辺海域は、そのアメリカの軍事プレゼンスが非常に減ってきた、そのときに自衛隊は何にもしないのですね。それとも、その穴埋めという形で対潜、対空の作戦行動をとるのか、何にもしないで、ああ出ておいでになったなということでじっと見ておるのか、どっちですか。
  58. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私どもから先に御答弁いたしますが、わが国の自衛隊というものはあくまで日本を守るということでございますので、その限度においての防衛力の整備ということでございます。
  59. 矢山有作

    矢山委員 日本を守るという限度においてですからね。だから中近東で米ソ紛争が起こった、第七艦隊が全部出払った、そのときに自衛隊はああ出ておいでになった、空になったなと言ってじっとしているのですか、それとも何らかの行動を起こすのですかと言うのです。これは防衛庁どうですか。
  60. 塩田章

    ○塩田政府委員 自衛隊は日本が攻撃をされない限り別段行動を起こすわけではございません。
  61. 矢山有作

    矢山委員 わかりました。それじゃ中近東で米ソ紛争が起こった、第七艦隊が出ていっちゃった、自衛隊は海上、航空ともじっとして何にもしない、確認しておきますよ。絶対動かない。それであるなら私は、あくまでも個別自衛権の行使の限界内にとどまって、集団自衛権の行使に踏み込むものじゃないというふうに理解しましょう。  そこで、次にちょっとお伺いしたいのです。中近東でそういうような米ソ紛争が起こったとする。ところが一方、ガイドラインでいわゆる共同作戦計画というのが研究されていますね。その中に「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」というので作戦計画が検討されているようですが、中近東で米ソ紛争が起こった場合に、日本に対する武力攻撃のおそれがありということで作戦準備の段階に入ることば絶対にない、先ほどの御意見から言えば、そういう結論にならざるを得ないと私は思うのですが、そう理解したらいいのですか。  なぜかと言うと、ガイドラインで言われておる「武力攻撃のおそれのある場合」というのと、自衛隊法で言っている「武力攻撃のおそれのある場合」というのは、このガイドラインで言っている方が自衛隊法で言っているよりも範囲がもっと広い、つまり武力攻撃のおそれがあるというので、作戦準備の段階からもう入らなければならぬ、そういう概念だから範囲が広いんだ、こういう説明を私は受けたわけですね。  だから、もう一遍繰り返しになりますが、中近東で紛争が起きたその場合に、日本に対する武力攻撃のおそれありということで、共同作戦研究に従って準備段階に入るということは絶対にあり得ない、これは前の回答との関連で出てくると思いますが、そう確認してよろしいか。
  62. 塩田章

    ○塩田政府委員 ガイドラインで言っておりますのは、どこで何が起こったかということではなくて、日本に対して武力攻撃のおそれがあるかどうかという判断でございます。それはその時点でどういう判断をするか、どこで何が起こっているかということを別に結びつけて考えるわけじゃなくて、日本に対する武力攻撃のおそれがあると判断するかどうか、こういうことでございます。
  63. 矢山有作

    矢山委員 だから、中近東で米ソ紛争が起こったのは、日本に武力攻撃のおそれがあると判断するかしないか、そこら辺が微妙になってくるということを私は言いたいわけですよ。その辺の関連がないなら、何のためにアメリカが、第七艦隊の中近東へ出動した後を埋めなければならぬから、対潜能力、防空能力をふやせとあれだけやかましくなぜ言うかというのです。何もないのに、そんなよその国の防衛のことについてあれだけやかましくくちばしを入れる筋はないですよ。何らかあるからくちばしを入れる。そうした場合に、日本への武力攻撃がない限りは、海上自衛隊も航空自衛隊も動けないわけでしょう。第七艦隊が出払っちゃっても動けないのだ。そうすると、これを動かそうとするなら、ガイドラインに言われている「武力攻撃のおそれのある場合」というのをばっと拡大解釈して、自衛隊を動かす以外に手はないのです。そこにいくのじゃありませんかと言って私は心配しているのです。
  64. 塩田章

    ○塩田政府委員 「おそれのある場合」を拡大解釈をして、自衛隊を動かそうとしているのではないかということでございますが、「おそれのある場合」で自衛隊が動くことはないわけでございます。先生のおっしゃいますのは、「おそれのある場合」に防衛準備をしていくということは、これはガイドラインの中にそういうことを考えておりますから、「日本に対する武力攻撃のおそれのある場合」に防衛準備をする、その時期が自衛隊法の防衛出動の場合の「おそれのある場合」よりは前広であるということは御説明申し上げたとおりでございますが、いずれにしても、日本に対する「おそれのある場合」に防衛準備をすることがあっても、自衛隊が御指摘のような武力の行使のための行動に入ることはあり得ないわけでございます。
  65. 矢山有作

    矢山委員 それは私の用語が適当でなかった。自衛隊が動くと言ったのは、つまり作戦準備の段階に入ることも含めてだ。作戦準備の段階に入るのじゃありませんか、こう言ったわけです。  だから、もう一遍言うと、中近東で米ソ紛争が起こった。普通なら日本に対する武力攻撃のおそれがあるとは言えぬのだから、自衛隊は作戦準備にも入れぬ。ましていわんや、実際の行動には出れぬ。じっとしていなければならぬ。ところがそれを、中近東で米ソ紛争が起こった場合に、日本への武力攻撃のおそれがあるんだと言って、ばっと拡大解釈をして作戦準備段階に入っていくのじゃありませんかという意味で、自衛隊が動くのか動かないのか、こう言ったわけです。どうです。
  66. 塩田章

    ○塩田政府委員 それは結局最初のお答えと同じことなんですけれども、結局日本に対する武力攻撃のおそれがあるかどうかという判断の問題だと思うのです。あれば準備に入ることもあるでしょう。だから、中東であろうがどこであろうが、何が起ころうが、日本に対して武力攻撃のおそれがあるかどうかの判断をどの時期にどうして判断するかという問題であって、先生のおっしゃいますように、中東で起こったから広げるのじゃないか、こういうふうには結びつかないということを申し上げておるわけであります。
  67. 矢山有作

    矢山委員 ちょっと時間食い過ぎますが、中東で起こって、第七艦隊が出ちゃって留守になったわけですよ。そういう事態を、手薄になったから、中近東の米ソ紛争が拡大をして、わが国に武力攻撃のおそれがあるというふうな解釈に持っていかれたら、作戦準備というところにまず入っていくわけだから、その辺を私は、判断判断と言われるけれども、かなり詰めておかぬと、これは問題が残ると思うのですよ。先ほどの繰り返しになりますが、そうでなければ、アメリカがあれだけ御熱心に日本の防衛力防衛力と、しかも防空能力じゃ対潜能力じゃ言うて、あれほどやかましく言うわけはない。それほど言うというのは、やはりそういうことがある。自衛隊をやはり引っ張り出して使いたいという考え方がある。使うのには、まず最小限度武力攻撃のおそれがあるという判断をしなければ使えないわけだ。その判断をすれば作戦準備に入れる。そして使える体制ができる。それなら使っていく。こうなっちゃうのです。だから、そこら辺がなかなか歯どめがきかぬのじゃないかな。したがって、そういう想定で作戦準備に入る、そうすればずるずると自衛隊が出動するようになる。対潜活動や防空活動に自衛隊が動き出したら、ソ連にとってはどうなるかというと、この間もどなたか竹岡元官房長のお話を引いて言われておったが、ソ連に宣戦布告したのと同じになりはしませんかという質問が出ておったようだけれども、そういうふうに発展していくわけです。そうなると、これはまさに戦争にのめり込んじゃう。ここまで考えたら、個別自衛権の行使だ何だという話じゃないので、もう集団自衛権の行使に入っているじゃないか、これが私の主張なんです。
  68. 塩田章

    ○塩田政府委員 繰り返しになるわけですけれども先生は、ずるずると結局自衛隊が実力行使に入ってしまうじゃないか、こういうことでございますけれども、それはもう先ほど来そういうことはあり得ないということを申し上げております。  それから、「おそれのある場合」のいろいろな準備段階、これはもちろんあるわけでございますから、それは私ども否定をしておるわけではございませんが、その「おそれのある場合」はどういう場合か。いま先生は、中東で何か起こった、第七艦隊が行ってしまったという例を一つお挙げになっているわけですが、そういうふうな何か具体の例を挙げて、こういう場合にどういう準備をするのかというふうにいまお尋ねになりましても、いま私のお答えできますことは、要するに、そのときそのときの国際情勢で、日本に対する攻撃のおそれがあると判断をするかどうか、それにはいろいろな要素があると思いますが、いずれにしても、そういう判断をして、これはあるとすれば準備に入ることはあるでしょう。ここまでしかお答えできないわけであります。
  69. 矢山有作

    矢山委員 したがって、最後に申し上げておきます。そういう判断、判断でとんでもないところにのめり込まぬように、やはり日本としては、あくまでも日本独自の自主的な立場に立って物を考えて対処することが必要だろうということを申し添えておきます。  そこで、もう一つお伺いしておきたいのですが、これはいままでいろいろ議論になっておるんだけれども、どうもはっきりせぬのでお伺いするのですが、共同声明の第八項で「日本の領域及び周辺海・空域における防衛力を改善し、」と言っているのですが、この場合の「周辺海・空域」、これはどういう範囲を考えているのですか。
  70. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まず、防衛力整備との関係から申し上げた方がいいと思いますけれども、まず周辺空域は、航空自衛隊が航空侵攻等に対処するために必要な範囲を一般的に指すものでございまして、それはサイトレーダーの探知距離あるいは要撃戦闘機の行動半径によっておのずから制約されているものでございます。一定の空域を具体的に特定して考えているわけではございません。  それから、海上自衛隊については、周辺海域における海上交通の安全を確保することを目的として、周辺海域約数百海里、航路帯を設ける場合には約千海里ということを目標として防衛力の整備を図っておりますが、このような防衛力の中には、海上自衛隊が持っておる航空機が当然含まれておりまして、そういう観点から右の海域ないし航路帯の上空において行動する海上自衛隊の航空機の整備も考慮されているわけでございます。  いずれにしても、今回の共同声明に言う「周辺海・空域」は、わが国がわが国として防衛力を整備する上での従来からの考え方を一般的に述べたわけでございまして、特定の海空域の範囲を具体的に意味しているわけでございませんし、また共同声明作成の過程の中でも、特定の海空域について言及したことはございません。
  71. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、いまの空域の方の御説明ですが、いまの御説明でいうと、従来言われておる防空識別圏ですか、大体そういう範囲がこの空域として考えられておると理解したらいいわけですね。これは海上幕僚長も何か新聞でそういうことを明言しておったような記憶がありますが、そう理解していいのですか。
  72. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま淺尾局長からもお答えございましたように、特定の空域を限って考えておるわけではございませんので、そういう意味では防空識別圏とももちろん異なるわけでございますが、ただ、実際上の話としまして、おおむねその程度の範囲であろうということを、私かねて申し上げたことがございます。
  73. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、いまの外務省の説明から判断すると、この場合、航空自衛隊が対処する空域と、海上自衛隊が対処する空域が異なってきますね。海上自衛隊は、先ほどのお話で、周辺海域数百海里、航路帯千海里、こうおっしゃったわけです。それをやるんだということだから、空域において、航空自衛隊が担当すると考えておる空域、海上自衛隊が考えておる空域、これは異なりますね。
  74. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 誤解があると申しわけございませんで、私からまず御答弁いたしますが、航空自衛隊について先ほど申し上げました点、それから海上自衛隊の場合は、海上自衛隊が持っております航空機は当然整備の対象になっております。そこで言う海上自衛隊の有する空域というのは、航空自衛隊と異なりまして、別に制空とか防空とか、そういう意味ではないことでございます。
  75. 矢山有作

    矢山委員 わかりました。要するに制空だとか何だとか、そういう意味はないにしても、海上自衛隊が考えておる空域と航空自衛隊の考えておる空域は違いますね。しかし、そんなことが軍事的に見て成り立つのですかね。これは妙な話ですね。航空自衛隊は、範囲が限定されてはないと言われるもののまあまあ防空識別圏、大体そういったものをいまのところ考えておる。海上自衛隊の方は、周辺海域三百海里、航路帯千海里の海域、さらに上空を考えておる。こうなると、軍事戦略上そういうようなことがあるのですかね、ちょっとわれわれ素人にはよくわからぬですが。
  76. 塩田章

    ○塩田政府委員 海上自衛隊が海上防衛作戦を行うという場合に、当然水上艦艇による防衛作戦のみならず、海上自衛隊の航空機がこれに協力をするという形で防衛作戦が行われるわけであります。海上自衛隊の航空機の支援のない純粋の水上艦艇だけの海上作戦というのは、まあ実際は考えられないと思います。そこで、その海上自衛隊の航空機が水上艦艇と一緒になって海上防衛作戦をやる場合の実態を、要するに海上防衛作戦という言葉で言ってしまっても、それはそれでいいわけです。別にそこに空域のことを考えなくても、海上自衛隊の海上防衛作戦なんですから。しかし、それはまた同時に、海上自衛隊の飛行機が上に飛んでおることも間違いないわけでございますから、それを空域と言っても、そういう意味で言うのであれば、それはそれで構わないわけであります。  要するに、共同声明で「周辺海・空域における防衛力」の改善を図るという表現をしておりますから、その場合の防衛力の改善という対象は何かということになれば、海上自衛隊の水上艦艇のみならず、海上自衛隊の航空機も当然改善をすべき対象としては考えられてしかるべきものであるというふうに私どもは思います。そういう意味で共同声明の「海・空域」というのは、海上自衛隊の航空機部隊の整備にも着目して表現をしてあるということであれば、それはそれでちっとも構わないわけでございます。そのことと先ほど淺尾局長が言いましたような航空自衛隊の要撃戦闘空域の話とは、それはもう別でございます。
  77. 矢山有作

    矢山委員 別だという御説明をなさっておるのはわかるのですが、海上自衛隊がいま言った海域を防衛する、その場合に、海上自衛隊の航空機がそれに協力する、それはわかります。ところが、海上自衛隊の水上艦艇と海上自衛隊が持っておる航空機、対潜のP3Cやその他あるのでしょうが、そういうものだけでやって、航空自衛隊の方はどういう事態になろうと、おれのところは、おれの担当範囲外だから、これは見ている以外に手はないんだ、こんなことになるのですか。私はそんなことにならぬのじゃないか。やはりこの周辺数百海里、航路帯千海里の空海域を防衛するんだということになれば、これは航空、海上一体にしてやらなければやれない話ですよ、こんなことは。航空はそっち向いておる、海上自衛隊だけこっち向いておるなんて、そんなべらぼうな作戦なんてないです。一体になってやらなければ。それだから、そういう広範囲な海空域の防衛をやるとすると、格段な防衛力の改善をやらなければならぬ。だから共同声明にわざわざこのことをうたったんじゃないですか。つまりいまは、いまの力では、実際上は、航空自衛隊は防空識別圏内外の担当、それに対応するものしか持ってない、第一段階は。海上自衛隊は周辺海域数百海里、航路帯千海里、それを海上自衛隊だけでやるんだ、それではとてもだめだ。だから防衛力を改善して海上自衛隊自体の強化を図ることはもちろんだが、航空自衛隊もその海空域、つまり周辺海域数百海里、航路帯千海里を含めた海空域をやれるような形に防衛力の改善整備を進める、こういうふうに共同声明をとるべきじゃないですか。
  78. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま委員の御指摘でございますが、全くそういうことではございません。ここでその具体的なことは何ら話をしていないというふうに申し上げているわけでございますが、同時に「総理大臣は、日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、日本の領域及び周辺海・空域における」云々ということを言い、それに対して「大統領は、総理大臣の発言に理解を示した。」ということで、その辺のわが方の説明あるいはアメリカ側の理解ということは、共同声明の中で明らかにしておるわけでございます。
  79. 矢山有作

    矢山委員 それはこじつけ解釈というもので、総理自身が言っているでしょう。先ほどナショナル・プレス・クラブの発言で、第七艦隊がペルシャ湾水域防衛に出た留守に、自分の庭先を守ることは当然のことで、わが国周辺海域数百海里、航路帯一千海里は自衛の範囲である、こう言っておるわけですよ。そういうことを踏まえて考えるなら、防衛力の整備というのは、いま言ったような航空自衛隊の対処するものと、海上自衛隊の対処するものとがちぐはぐだなんてばかな話はない。これはやはり航空、海上一体になって、その周辺海域数百海里、航路帯一千海里を防衛しなければならぬ、こうなってくるのはあたりまえの話なんです。これからの対米折衝で、恐らく防衛首脳の会談なりあるいは安保事務レベル協議で私はそうなると思いますよ。そんな素人みたいな話は通らぬのだから。こっちとあっちとは別ですなんて、それはそうなりますよ。局長、あなたどうするの、必ずそうなりますよ。そのときに断じてそれはだめだと言って阻止できますか、外務省。
  80. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど来申し上げているとおりでございまして、わが国は目下「防衛計画の大綱」に従ってやっておるわけでございます。したがって、アメリカ側がそれ以上の要求を出してきたというときには、この共同声明の中に書いてあるような「基本的な防衛政策」ということを踏まえて、わが方は対処するということでございます。
  81. 矢山有作

    矢山委員 これ以上やりとりしても前へ進まぬでしょうね。  では次に、ちょっとライシャワー元駐日大使の発言でお伺いしたいのですが、ライシャワー元駐日大使は、核積載艦がこれまで日本に寄港してきた事実というものをはっきり言っておるわけですね。それで日本政府は、核積載米艦艇の寄港、領海通過の事実をもう率直に認めるべきだ、ここまで言っておるのでありますが、わが方は、この寄港を含めて、米国による日本への核持ち込みは断じてないのだ、こう言っておるのですけれども、核持ち込みについて発言した人が一私人で片づけられないような経歴の方なんですね。長いこと駐日大使をやっておられた方の発言ですから、ライシャワーさんのおっしゃったのが本当じゃないかという気がしておるのですが、もしそうだとするなら、わが国の非核三原則というのはもう中身は崩れてしまっておる、こういうことなんですが、この点は一体どうなんですか、お伺いしたいのです。
  82. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 安保国会当時から、安保条約の改定交渉を踏まえて、艦船による核の持ち込みを含めまして、核の持ち込みに該当する場合はすべて事前協議の対象であるということを従来から日本政府としては宣明してきております。その点について、アメリカ側との間で意見の不一致ということはないわけでございまして、たとえばラロック証言というものがございました。アメリカ側が日本に艦船を寄港させて、そのときに核を持ち込んでいるんじゃないかということがございまして、その点を踏まえてアメリカ側に照会したところ、アメリカ側はインガソル副長官から安川在米大使に対し、アメリカとしては、安保条約あるいは関連取り決めに決められたアメリカの負っている制約、すなわち事前協議制度についてこれを守っていくのだということを言っておりまして、またその点については、インガソルの言明の中に、従来からアメリカ側が首脳会談で再三申しております安保条約あるいは関連取り決めを忠実に守っていくということを改めて確認ししてきたわけであります。
  83. 矢山有作

    矢山委員 改めて確認されたと言っても、確認の仕方が問題だと私は思うのですが、ライシャワーさんの発言をめぐって、その当時関係のあった総理大臣から外務大臣から外務省関係者まで、このライシャワーさんの発言を裏づけるようなことを最近どんどんしゃべっておいでになりますね。そこへ持ってきてライシャワーさんがこの前もしゃべっておられたことですが、その当時外務大臣であった大平さんに対し、核の持ち込みとは、陸揚げ及び貯蔵を意味するものであるという日米両政府間の口頭了解を説明した、それでもういいかげんうそを押し通すのはやめたらどうか、こういう意味お話があったという。ところがそれについてきのうの夕刊を見ると、ちゃんと訓令に基づいて大平外相とライシャワー大使は会って話したのだから、会談記録も国務省には残っておるはずだ、こう言っておるわけです。ここまで問題が出てきてしまうと、アメリカがいや従来どおり持ち込んでませんと言っても、そうですがと言うわけにはいかないわけです。  そこで、もしあなた方が、あくまでも核持ち込みはやられてない、つまり核積載艦が寄港もしてなければ領海通過もやってないとおっしゃるなら、国民を説得できるような事実調査をやらなければいかぬと思うのです。問題は核持ち込みという言葉の解釈から起こっておるわけでしょう。英語ならイントロダクションですか。それが何かアメリカの解釈によると、核の陸揚げ、設置を意味しておるのだ、だから寄港だとか領海通過だとか、こんなものは持ち込みの中には、イントロダクションの中には含まれてないのだ、こういう理解で来たと言うのでしょう。わが方は、いやそんなことはない、寄港も領海通過も含まれておるという解釈で来ておる、こう言う。アメリカはアメリカの都合のいいように解釈し、日本日本の都合のいいように解釈して、日本の都合のいい解釈を日本人向けにやっておるわけです。これじゃごまかしの上にごまかしを重ねるので、ここまで問題が進展してきた。しかも恐らく、正直言って国民の大多数が、核を持ち込んでおるかもしれない、寄港や領海通過をやっているだろうと疑っていると私は思いますよ。たとえばエンタープライズが日本の横須賀に来るときに、途中でグアムに寄り道して核弾頭をみんな外しちゃって横須賀へ入ってくる。それからまた出ていくときにわざわざグアムに寄って核弾頭をくっつけて、それで出ていく、そんなことはだれもやっていると考えている者はいませんよ。だから、あなた方があくまでもいやいやそうじゃない、寄港も領海通過もやっていないんだとおっしゃるんなら、この核持ち込みをアメリカはどう解釈していますかと、きわめて具体的な問題ですから、アメリカの解釈を聞いたらどうですか。私はそれをやるべきだと思う。
  84. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 従来からお答えしておりますように、事前協議の制度のもとで、核の持ち込みというものは、その事前協議の対象になる。核の持ち込みという意味は、いま申し上げた言葉でございまして、英語のイントロダクションとの間に意味上の違いはございませんし、またアメリカ政府が、従来からこの安保条約上の制約を遵守するということを繰り返し発言していることも先ほど述べました。  さらに、昨日、マンスフィールド大使が園田大臣と会談されたわけでございますが、その会談の中でマンスフィールド大使は、先ほど私が申し上げましたラロック証言に関する昭和四十九年十月十二日の安川大使とインガソル国務長官代理との会談の際表明されたアメリカ政府の見解に言及し、このアメリカ政府の見解は、現在でも何ら変わっていないということを述べておりますので、政府としては、この際、改めてアメリカ側に対して、さらにこの核の問題についてアメリカ側の確認を求めるということはいまのところは考えておりません。
  85. 矢山有作

    矢山委員 ライシャワーさんはラロック発言も知っておるし、ラロック発言に基づいてインガソルさんがいまあなたがおっしゃったような回答をよこしておるということも承知しておられるわけです。その承知をしておるライシャワーさんが、なおかつ核持ち込みということの中には寄港や領海通過は含まれていないんだ、だから事前協議の対象にならぬのだ、だから寄港もしておれば領海通過もやっているんだ、こうおっしゃっているんですよ。そうなると、これはあなたのお話だけでは説得力がないんです。そこまであなた方が強引に言われるんなら、やはり国民がこの問題については多大な疑問を持っておる、しかもこの非核三原則というのはわが国のいわば国是でしょう。国会まで決議している国是だ。それが根底から崩れようとしておるのです、ライシャワー発言で。それだったらやはりこの真相を究明する、そしてアメリカがもしそういう核持ち込みをやっておるんなら、断じてやっちゃ困るということを明確にしなければいけないし、それからまた、あなた方の方がその事実調査の結果、ライシャワーさんの言うことが本当で、歴代国民をだましてきたというなら、これはまた重大な責任だ。だから、その辺のけじめを私ははっきりさせなければいかぬと思う。だから、どうですか、もう少し実情調査をしてみたら。マンスフィールドさんがおっしゃったから、いやもうそのとおりですというわけにいきません。どうですか。
  86. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 マンスフィールド大使は、まさにライシャワー発言を踏まえて、アメリカ側の従来からの立場に変更はないということを言っているわけでございまして、その会談の際、外務大臣からも日本国内における受け取り方、もちろんこれは細かく説明いたしまして、日本政府としては、米国政府が安保条約あるいは関連取り決めに基づく日本に対する約束を誠実に遵守してきていると確信している、本件に関しては、その確信に基づき対処する考えであるということでございまして、日本政府として、このマンスフィールド大使のアメリカ政府の方針に何ら変更はないという発言もございますので、この際、改めてさらに事実調査ということは、いまこの時点で必要がないというふうに考えておるわけでございます。
  87. 矢山有作

    矢山委員 私はそれは納得できませんね。マンスフィールド大使がライシャワー発言を踏まえて言っておるとおっしゃるのなら、ライシャワーさんもラロック発言なり、さらにラロック発言をもととして出されてきたインガソル副長官から来たアメリカ側の回答、マンスフィールド大使さんが今度引用されたその回答を踏まえておっしゃっておるのですから、したがってこれは、やはり私は解明の必要があると思う。  そこで、委員長に私はお願いしたいのですが、国内でこのライシャワー駐日大使の発言を裏づけるような政府関係者がたくさんおるわけです。かつての総理大臣もおる、外務大臣もおる。それから外務省関係者もおるわけです。国内の方ですからこれは簡単ですから、ひとつ証人なら証人としてここへ来ていただいて、やはり事態を明確にする必要がある。  それから私は、ライシャワーさんがこれだけ強硬に、日本国内からライシャワー発言打ち消しの発言があるのにもかかわらず、いやおれの言っていることは正しい、核持ち込みの中には寄港や領海通過は含んでないのだ、だからアメリカの核積載艦は、寄港もしておれば領海通過もやっておるのだとあくまでも主張しておるのです。だから、この方は私は喜んで来ていただけると思いますから、ライシャワーさんにひとつ御足労でも日本においでをいただいて、ここで証人なり参考人として、私は証人を望みますが、国内の関係者も、ライシャワーさんも証人としておいでいただいて、この真相を究明する、そして国民の中に渦巻いておる疑惑をなくするということをやってはどうでしょうか。
  88. 江藤隆美

    江藤委員長 取り扱いは理事会で相談をいたしたいと思います。
  89. 矢山有作

    矢山委員 それでは、これはぜひ御相談いただきたいと思いますし、理事の皆さんにも、わが国の国是にかかわる非核三原則がまさに危機にさらされておるときでありますから、ぜひ国内でいろいろと発言なさっておる、先ほど言いました関係者、それからライシャワーさんにわが国においでいただいて、できるなら証人としてここへお越し願いたい。証人としてどうしても行かないというような正当な理由がおありになるなら、参考人としてこちらにおいでいただいて、この真相究明にお力をおかしいただきたい、こういう方向で処理をしていただきますことをお願いをしておきたいと存じます。  それから、最後にお伺いをしたいのでありますが、時間があと幾らもありませんので……。  この間、十二日から二十三日にかけて日本海で海上自衛隊と第七艦隊の日米合同演習がありましたが、そのときに数多くの漁船の漁具が切断されるという事件が起こっております。これについて、一体その実情をどう把握しておられるのか、関係方面から簡単に要領よくひとつ御説明いただきたいと思います。
  90. 石崎昭

    ○石崎政府委員 はえなわの切断事故については、水産庁から集計された件数その他内容を聞いて承知しておりますが、演習の内容については、もし詳しいあれが必要であれば、演習の規模や何かをこれから申し上げます。
  91. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 お答えいたします。  これまでに日本海さけ、ます延縄漁業協同組合から水産庁に入りました報告をもとに取りまとめますと、次のとおりでございます。  まず、五月の十四日の夕刻、津軽海峡西方海域において六隻のはえなわ漁船に漁具被害が発生をいたしました。これにつきましては、被害漁船は潜水艦を視認いたしております。それから五月十五日に積丹半島西方の海域におきまして、五十五隻のはえなわ漁船について漁具被害が発生をいたしております。それで被害を受けました漁船の一部は五隻の軍艦を視認いたしております。船の番号は二四、二五、九五〇、一〇四一、五六五、以上でございます。それで二四、二五、九五〇、一〇四一、この四隻につきましては、この番号は今回の合同訓練の後段に参加することが予定されております米国軍艦の番号と一致をいたしております。それから五六五という番号はソ連の巡洋艦ペトロパブロフスク号の番号であるというふうに承知をいたしております。  それから、さらに十六日に積丹半島の西方の海域におきまして、四十四隻の漁船に、これもはえなわでございますが、漁具被害が発生をいたしておりまして、一部の被害漁船は三隻の軍艦を視認をいたしておりますが、番号がわかっておりますのは二隻、二四と一〇四一でございます。これはいずれも後段の訓練に参加する米国軍艦の番号と一致をいたしております。  それから、同じく五月十六日に青森県の西方の海域におきまして、十二隻のはえなわ漁船に漁具被害が発生をいたしております。それで被害漁船が目撃をいたしました軍艦の番号は六九一でございますが、これは今回の訓練に参加する予定の日米双方いずれの艦船の番号にもこれと符合するものはございません。  以上、同組合のこれまでの取りまとめによりますと、被害件数が延べ隻数で百十七隻、重複がございますので、実隻数で七十三隻の漁船が漁具被害を受けたという報告を受領いたしております。(「被害額は何ぼだ」と呼ぶ者あり)日本海さけ、ます延縄組合の主張しております被害金額は九千二百万円でございます。
  92. 矢山有作

    矢山委員 いまの海上保安庁なり水産庁の調査は、調査結果をまとめてひとつ御提出を願いたいと存じますが、よろしいか。
  93. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 委員長の御指示がございますれば、提出いたします。
  94. 江藤隆美

    江藤委員長 そのように取り扱います。
  95. 矢山有作

    矢山委員 そこで、何か海上自衛隊の護衛艦も事故に関係しておるのじゃないかということを言われておりますが、この点どうなんですか。
  96. 石崎昭

    ○石崎政府委員 自衛艦が切断事故を起こしたという報道がございました。漁民が「ひごい」という名前の船を見かけたということがありました。私どもはそういうことは絶対ないという自信を持っておりますし、調べてみましたら、やはりそういうことはありませんでした。これは誤認でありました。
  97. 矢山有作

    矢山委員 それでは自衛艦は絶対に起こしていない、それは誤認だと言い切れるわけですね。  それじゃ一つお伺いしたいのですが、事故を二回にわたって起こしている米軍の艦艇の行動は大体わかっているのですか。全然わかっていないのですか。これはどうなんです。
  98. 石崎昭

    ○石崎政府委員 後段の共同訓練に参加する米艦がどういうコースをとってくるか、これは米側から通報がございませんのでわかっておりません。公海の上を外国の軍隊がどこをどういうふうに通ってくるか、これは一々通報する義務はアメリカ側にありませんので、私どもそれは聞いていないわけでございます。
  99. 矢山有作

    矢山委員 そこで問題は、公海上の通航について、公海は航行自由だから一々通告をしてこないし、そんなものは聞く必要はない、こういたけだかになっておっしゃったが、しかし、そうなってくると、このマスの流し網なりはえなわの最盛期に、こういうところを演習海域に選んだという責任はどうなんですか。いま最盛期で、しかも演習に選んだ地域は、その周辺が最適の漁場というんでしょう。何百隻という漁船が出動していることがわかっておって、そこをわざわざ演習海域に設定をして、日米の大演習をやるというのはどういうことなんですか。公海上を通るのは自由なんだから、行動に対してつかんでおらぬといっていたけだかに言えるのなら、こういう事故を起こすことが予見できないはずはないんだ、こんな海域で。しかも漁民の間からは、それを漏れ聞いて不安の声が上がっておったわけでしょう。しかも防衛庁は、水産庁に全然連絡していないというじゃないですか。それで演習海域についても詳細なことは知らしていないというでしょう。その責任をどうするのですか。——これはあなた、防衛庁長官が言わなければいかぬ。事務官相手じゃ話にならぬよ。防衛庁長官、どうするのですか。
  100. 石崎昭

    ○石崎政府委員 この時期に日本海に漁船がたくさん出てサケ・マスの最盛期であるということは十分私どもも調べて承知しております。そこでそういうところを通ってくる可能性のある米軍に対しては、現在そういう状況にあるということは詳細に情報を提供いたしまして、だから注意しながら安全に航行してもらいたいということはもちろん通報してございます。全くかってにどこでも自由に通ってくださいなんということじゃもちろんございません。日本海の状況についてはよく話してあります。  で、この時期になぜ日本海で訓練をやることになったかと申しますと、もともと日本海で訓練をやるという必要性を防衛庁は前から感じておりまして、いずれ適当な時期に適当な海面でやりたいという希望を持っておったわけでございます。そこで昨年から米軍といろいろ相談をしまして、日本海の漁業の状況がどういう時期にどういうことになっているかというデータを全部持ち出した上で、米側の都合と海上自衛隊側の都合、年間の配艦の計画とか兵員の運用計画とかいろいろございますから、一番やりやすい、効果的に訓練のできる時期を検討いたしまして、その結果落ちついたのがたまたまサケ・マス漁業の最盛期と不幸にして重なった、こういうことでございます。  そこで、漁業の安全確保とそれから訓練の効果的な推進、この両者を何とかうまく両立させる努力をしなければいけないということになりまして、安全確保の手だてをいろいろ講じまして、これで漁業の妨げにならないように訓練を行おうということで訓練を始めたわけでございます。その結果、十二日から十五日に至る前段の訓練は、われわれの計画どおり何ら事故なく終了したわけでございます。ただ、後半の訓練に参加する米艦が、参加途上で訓練にまだ入らない段階で、われわれが事前に日本海の現状はこうだという情報を提供しておったにもかかわらず、不幸にしてそういう網に気づかずに切ったというようなことがあったようでございまして、その点は大変残念に思っております。
  101. 大村襄治

    ○大村国務大臣 ただいま政府委員から経過については述べましたが、先生お尋ねの事前の連絡について私から補足させていただきたいと思います。  今回の訓練実施に当たりましては、訓練開始前の五月九日に海上保安庁、水産庁に対し訓練海域、訓練内容等連絡するほか、五月十日から十一日にかけて関係道府県の水産担当課及び日本海さけ、ます漁業協同組合に対し、同内容の連絡を行いました。これを受けまして、海上保安庁は、五月九日二十時二十分、本件に関し航行警報を発信したと承知いたしております。
  102. 矢山有作

    矢山委員 防衛庁にもう一遍聞きたいのですが、事前に米軍に知らせておいた、だから周知ができておると思っておったというのですが、米軍の艦艇の公海上における行動については、全然そんなことは言ってくるはずもないし、こっちから聞こうとも思わぬ、そういう状態にある米軍に対して、知らせたからそれが徹底すると思っておったのですか。本来なら日米安保条約というのは何のためにあるのですか。国民の生命、財産を守るためにあるのでしょう。それだったら国民の生命、財産を守ることが最優先されなければならぬ。ところが今度の事件は、軍事のためには国民の生命、財産などというのは考えていないのですよ。もしあなたがおっしゃるように、連絡をきちっとしておって、日米双方が国民の生命、財産を傷つけてはならぬぞという認識が徹底しておるなら、このマスの最高の漁獲時期に演習をやるという設定をやること自体もおかしいが、そういう事態がわかっておるなら、行動に対してよほど慎重を期さなければならない。ところが伝えられておるところによると、じぐざぐ航行をやってみたり、漁船が操業しておる近くまでやってきたり、いろいろなことをやっておるわけだ。そういう実態をどう理解したらいいのですか。だから、防衛庁はいろいろおっしゃるけれども、この時期に演習を設定したというところに最大の問題があるのですよ。  私はこう思う。日米共同声明で対ソ軍事体制の強化をうたった。そして国内外から国防、軍事拡大の意見が出てきた。軍事化の傾向はそれに拍車をかけて進んでいく。そういう背景の中で、ソ連に対する示威行動として大演習を計画したのじゃないですか。だから、確実なことはわかりませんが、十四日から十五日にかけて事故を起こしたアメリカの軍艦、つまり前期演習に参加してない、これはオホーツク海から宗谷海峡を通って南に来たのだろう、こう言われておるわけでしょう。報道ですから、私は確認してないからわからぬけれども、そういうことを考えていくなら、漁船がたくさん出て、漁期の最盛期だというときに演習をぶつける、常識では考えられないのだよ。共同声明ができた、それを機会にソ連に対する一大デモンストレーションでもかましてやれ、このような考え方じゃないですか。それでこの事故を起こした。そしてアメリカの艦艇の公海上における行動についてはわれ関せずだ、こう言って開き直っておるわけだ。そんなことを言って国民が承知すると思うのですか。安保条約は何のためにあるのですか。自衛隊は何のためにあるのですか。安保条約のために安保条約があるのじゃないでしょう。自衛隊のために自衛隊があるのじゃないでしょう。やはり国民の生命なり財産なりを守ろうというのが優先課題でしょう。今度の場合は、ソ連に対する示威演習のために国民の生命、財産を軽んじたということが如実に示されたわけです。これは承服できませんね。
  103. 大村襄治

    ○大村国務大臣 日米共同訓練につきましては、有事において日米安保条約が有効に働くためにも、平時における共同訓練は必要であると考えておるわけでございます。  そこで、海上自衛隊におきましても、毎年日本周辺の海域におきまして共同訓練計画を策定し、これを実施いたしているわけでございます。その場合におきまして、海洋というのは非常に微妙なものでございます。温度とか海流とか海底の状況が非常に複雑な状況でございますので、同じ海面でやることはかえって適当でないということで、あらかじめ日米間で相談をいたしまして、時期とか海域とかを毎年相談しているわけでございます。今回、本年度の計画に当たりましても、昨年末から準備にかかりたわけでございまして、海面、時期等が具体的に煮詰まりましたのは四月の末でございます。しかし、その過程におきまして、御指摘の漁業の状況等につきましても、私ども日本側から情報も提供いたしまして、事故防止につきまして万全の配意を払うように要請しておったところでございます。したがいまして、この訓練計画そのものは五月十二日から二十三日までございますが、訓練海域の設定に当たりましても、なるべく漁業に被害を与えないように配意いたしまして、日本海の漁業の一番中心である大和堆は避けるということで訓練海域も設定いたしたわけでございます。  また、漁業の最盛期であるということで、当初計画のありました実弾射撃とか魚雷の射撃は行わないということにも配意いたしまして、先方もこれを了とした、こういう経緯もございまして、私どもとしましては、今回の訓練に当たりましては、そういった点につきましても配意しまして、万全の計画を立てたつもりでございますし、また前半の計画は何ら事故なく終了いたしたのでございますが、後半の計画に参加する予定の米国の軍艦による被害の可能性が生じたという指摘を受けまして、非常に残念に存じており、また被害を受けた漁業関係者の方に対しまして、非常にお気の毒なことをしたと痛感しているわけでございます。  そういったような観点からいたしまして、後半の訓練の実施につきましては、一層この点に配意することにいたしまして、一部訓練区域の縮小も決定いたしましたし、また残された訓練海域内における訓練の実施要領につきましても、一段と配意をする。これまでは漁船を発見した場合には注意を払うという指令であったわけでございますが、今回は漁船を発見した場合には、その海面では訓練を中止して、漁船のいない海域に移動してやる、そういった詳しい指令も出すことにいたしまして、後半の訓練における事故発生の絶滅を期している、こういうことでございます。  御指摘の計画策定当時からそういった点を一層入念にやるべきでなかったかということにつきましては、いま申し上げましたように、及ぶ限りやったつもりでございますが、今回訓練参加途上の米艦による被害発生の可能性ありという点からいたしまして、今後はさらにそういった点も慎重に配意していかなければならない、私としてはさように考えている次第でございます。
  104. 矢山有作

    矢山委員 そろそろ時間が来たのですが、たったいまのテレビでやったそうですが、また事故が起こっている。五隻、これは演習海域だという。そうすると、いろいろ御丁寧にいま防衛庁長官が説明なさったそういう措置をとっても、なお事故が起こっておるわけだ。それは起こるはずですよ。漁業の最盛期でたくさんの漁船が出て漁業をやっている海域を選んでいるのですからね。大和堆は外したと言うけれども、大和堆を通らずに航行できるわけじゃないのでしょう。その辺はやはり通らなければならぬ。だから演習海域周辺なんだ。この時期に演習海域をそこに設定した、それがまず第一に問題なんですよ。  防衛庁長官は有事に傭えるために平時の訓練が必要だとおっしゃる。有事に備えるために平時の訓練は必要だが、その訓練のために漁民の生命や財産が脅かされちゃ困るのです。いかに有事と言ったところで、まだ差し迫って有事が来るような情勢でもないようですがね。有事有事と言いながら訓練を平和時にやる、そしてそういう問題を起こしていく、漁民の生命、財産を脅かす、こういうようなことは、やはり軍事優先の物の考え方から起こってくるのです。これは根本的に改めなければいけませんよ。  それともう一つ、最後に申し上げますが、アメリカ側はこの補償をやろうと言っておるらしい。原潜の日昇丸当て逃げ事件でも、まだきちっとした報告書が出てこない。そしてこの間の中間報告は、まるで子供だましのようなことを言って中間報告を出してきている。この問題が解決つかぬときにまたこの事件ですよ。これは情けないと思いませんか。補償の話を先へ先へ進めるというのは金で面を張るのと同じですよ。金で面を張って黙らそうというような、そんなさもしい根性はアメリカも捨てなければいかぬ。わが方もそんなさもしい根性で問題を解決しようとしたらいかぬですよ。これは原潜と同じように徹底的に真相を究明する。アメリカ軍の軍艦の行動が秘密だ何だと言ったって、日本の国民に大きな損害を与えておいて、秘密の一本やりでその行動を糊塗することはできないですよ。どういう行動をしておって、一体どうして事故が起きたのか、その真相を究明する、これは断じてやってもらわなければいかぬ、それぞれの機関で。特に外務省、防衛庁、それをやりますか。
  105. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私たちも、演習に参加の途上の米軍が漁網を切断ということが起こりましてから、再三にわたってアメリカ側に対して、安全確保のために必要があれば、そういう水域から退去してほしいということも申してまいりました。  それで、昨日も園田大臣がマンスフィールド大使に会われた際に、マンスフィールド大使の方から、はえなわ事故については米艦隊によってその切断が行れた可能性もあるということについて、非常に遺憾であるという表明がございました。アメリカ側はすでにその前から補償については迅速に処理するということを言っておりますが、マンスフィールド大使もそのように迅速にやりたいということでございます。  なお、アメリカ側の説明では、アメリカの駆逐艦が関連していたけれども、同時にそれと並行して行動していたソ連の駆逐艦もその切断に関与していたかもしれないということでございますが、いずれにしてもアメリカ側は、ソ連の補償云々にかかわらず、アメリカ側としての責任のある補償については迅速にやるということでございまして、園田大臣の方からも重ねて、今後こういうことが二度と起こらないようにという話がございまして、そのためには共同訓練の時期であるとか海域、先ほどからお話が出ておりますそういう点についてももっと今後は慎重に配慮していく必要があるであろうということを述べたに対して、アメリカ側も同感であるということを言っております。したがって・アメリカ側は別に金ですべてを解決するということではございませんで、しかし、少なくとも補償については確立された経路で迅速に処理をする、こういうことでございます。
  106. 矢山有作

    矢山委員 これで最後にしますが、外務省へのアメリカ側からの連絡によると、先ほどあなたもおっしゃっておったように、ソ連の艦もその事故に関係しておるかもしれぬというようなことをわざわざ言ったそうですが、それは関係しておるかしておらぬかわからぬ。わからぬにしても、自分のところの軍艦がこれだけの事件を起こしておいて、ソ連の問題を出して、それで帳消しにしようというような不当な意図がもしあるとしたら許されぬですよ。これはソ連の方はソ連の方で調査する、アメリカ側はアメリカ側の方で調査する、そして事故を起こしたのなら起こしたことに対して厳正に処置してもらう。これは責任の所在をはっきりさせなければいかぬです。こんなものをあやふやにしておくからいつまでもなめられるのだ。自主だとか独立だとか言うなら少しなめられぬことを考えなければだめですよ。  それで、いま言ったように、また事件が起こっているんだ。演習は二十三日まで続くわけでしょう。もう一遍事故が起こったら、防衛庁長官、責任をとりますね。責任とらなきゃいかぬですよ。どういう責任をとる。
  107. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  先ほども防衛庁といたしましては、今回の共同訓練の実施に当たりまして、事故発生の絶滅を期して万全の措置を講じているところでございます。万一そのようなことが起こりました場合には、私の責任を明らかにいたしたいと考えております。
  108. 矢山有作

    矢山委員 これでやめます。
  109. 江藤隆美

    江藤委員長 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時二十五分開議
  110. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中路雅弘君。
  111. 中路雅弘

    ○中路委員 退職手当削減法案の質問の前に、短時間ですが、外務省に来ていただいているので、若干御質問したいと思いますが、ライシャワー元駐日大使の発言と関連した問題です。  最初に二、三確認しておきたいのですが、横須賀を母港にしているアメリカの艦船名をまず最初にお知らせいただきたい。
  112. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 現在、横須賀をいわゆる母港としているアメリカの艦船は、次のとおりでございます。ブルーリッジ、リーブス、タワーズ、ノックス、ロックウッド、フランシスハモンド、カークミッドウェー、ホワイトプレーンズ、以上でございます。
  113. 中路雅弘

    ○中路委員 いま横須賀を母港にしている艦艇の名前を挙げられたのですが、この艦艇で核兵器の搭載が可能な艦船、空母は航空機ですけれども、航空機の数を含めて、核兵器の搭載可能な艦船、航空機をひとつお知らせいただきたい。
  114. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど申し上げました中で、核装備可能な艦船の場合には、核、非核両用あるいは核も搭載可能だということで申し上げますが、公表されているジェーン年鑑によれば、ミッドウェー、リーブス、タワーズ、ノックス、ロックウッド、フランシスハモンド、カークでございます。そのうち、リーブス以下六隻は、核、非核両用兵器であると言われているアスロックを装備しております。またミッドウェーについては、A6航空機が搭載されておりますが、これは核装備可能だということでございます。いまこのA6が何機積まれているかという御質問でございますが、ちょっと私、手元に持っておりません。
  115. 中路雅弘

    ○中路委員 きょうは短時間ですからしぼって御質問しますけれども、一九七四年から七五年にかけて約八カ月間、横須賀の地元の市民グループや平和委員会人たちが、十六ミリ映画あるいは八十ミリ望遠レンズで撮影を続けてきたわけですが、その写真の中に八種類の特殊コンテナが移送されている場面が撮影されています。最近私たちの党の訪米調査団が入手をしましたアメリカ国防総省の海軍特殊弾薬文献四五−五一C「核兵器物質の輸送」、これはいわゆる核兵器輸送の手引書です。核兵器の積み込みや積みおろし、運搬の基準、手順等を説明したもので、一九七五年六月発行の、現に使われているものですけれども、この中に核兵器運搬用の特殊コンテナ九種類の図解がついています。  撮影された写真の中に、駆逐艦、フリゲート艦、巡洋艦に現在も配備されている核魚雷のアスロックの輸送用のコンテナMK182あるいはMK183、核ミサイル、ウォールアイの輸送用コンテナMK516などと全く一致する写真が何枚かありますが、ここに私、きょうパネルで一枚持ってきました。この日付は一九七五年の五月十九日、最初のは横須賀の沖に停泊しています艦艇から、いまお話ししました特殊コンテナが運び出されるところの写真です。それで、ここから運び出される、出てくる場面が大きく出ていますから艦艇名はわかりませんが、同じ艦艇の全容がこの写真にあります。これで艦の番号はF一〇六四ということですから、この艦艇番号で見ますと、艦船名は、最初にお話しになった横須賀を母港にしていますミサイルフリゲート艦で核装備可能なロックウッド、三千十一トンの艦艇であるということが明白なわけです。ここから先ほどの特殊コンテナが運び出されたんですね。それから横須賀基地内の浦郷の弾薬庫に運ばれているところの写真が何枚かあります。横向きですからコンテナの全容はいずれも非常によくわかるわけです。いずれも手引きで図解になっているアスロック輸送用コンテナMK183であることは、これは図解と一致するわけですね。これは白黒ですから立っている人たちのヘルメットの色はわかりませんけれども、これは同じ場面のカラー写真です。カラー写真を見ていただけばわかりますけれども、赤のヘルメットを全部かぶっています。これが撮影されました五月十九日の状況は、写真にもありますけれども、危険物の取り扱いを示す赤い旗が上がって、赤いヘルメットの作業員、そしてピストルを持った武装した米兵が周囲を警戒するという大変物々しい、厳しい警戒が行われているわけです。  一つの同じ船から運び出されるのをパネルでお示ししたわけですけれども、このことは、ライシャワー元駐日大使の核を積んだ米艦船が横須賀に寄港しているという証言を裏づける事実ではないかと私は思います。この状況は、ライシャワー元大使の証言から見て、核が一時陸揚げされているという疑いがきわめて強いと思うわけです。この写真を後で外務省に一時お預けしてもいいですけれども、この問題についてアメリカに、私が言いましたものが核ミサイル輸送のコンテナであるということを確認いただきたいと思いますが、いかがですか。
  116. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま中路委員からお示しいただいたパネルは、私はここで初めて拝見するわけでございますが、同じようなことが五月十九日に報道されていることは承知しております。ただ、そこで報道されているコンテナが果たしてアスロックあるいは核ミサイル、ウォールアイの運搬用のコンテナであるかどうか、そのコンテナがまさにそのもののためであるかどうかということについては承知しておりません。御指摘のように、仮にアスロックあるいはウォールアイがそのコンテナの中に入っているとしても、中路委員御承知のとおり、その二つの兵器は核、非核両用でございます。しかしいずれにしても、従来から述べておりますように、日本政府は核の持ち込みに関する事前協議の制度のもとにおいてば、艦船による核の持ち込みであれすべて事前協議の対象ということは再三申し上げているとおりでございまして、アメリカも安保条約上の制約を遵守するということを繰り返し確言していることもこれまた再三御答弁しているとおりでございます。その点については、ラロック証言の際に、インガソル国務副長官から当時の安川大使に対して、アメリカ側は安保条約上の制約を忠実に守るということを述べ、また昨日の外務大臣とマンスフィールド大使との会談の際にも、マンスフィールド大使は、アメリカの従来からの立場、すなわちインガソル副長官の安川大使に対する言明については何ら変わりがないということでございますので、いまお示しになったパネルあるいは報道だけでもってアメリカ側に照会するということは、現在のところ政府としては考えておりません。  いずれにしても、従来ラロック証言あるいはコマー証言等の場合にも、念のためアメリカ側に照会しておりますけれども、それはコマーのごとく当時、証言したときに現職にあったということでございますし、今回の場合は報道の中で事実どうなっているかということも若干はっきりしないということも踏まえて、いまの段階でアメリカ側に照会するということは考えておりません。
  117. 中路雅弘

    ○中路委員 私は一般的なことをお尋ねしているのじゃなくて、日付も一九七五年の五月十九日から二十日にかけてですが、横須賀沖に停泊しているF一〇六四、ミサイルフリゲート艦、先ほどお話しの核装備可能な、横須賀を母港にしているロックウッドから積み出されたこのコンテナは、アメリカの国防総省の核輸送の手引書を見ても、それは核魚雷アスロックの輸送用コンテナMK183である、その図解と一致するということに基づいて、この問題についてアメリカ側に確認をしてほしいということをお話をしているわけです。  先ほどお話ししましたように、ふだんないような大変厳しい警戒の状況ですね。そしてもう一つお話ししますと、御存じのように母港ですからね、一時ここに立ち寄るというのじゃなくて、この艦船は横須賀を根拠地にしているわけです。出ていけばこちらへ帰ってくるわけですね。家族も横須賀に住んでいる。いわゆる母港にしている艦船でありますから、お話しのように、入港するときに核を外してくるということになれば、どこか遠い沖合いで積みかえるか、また出ていくときに積み込まなくてはならない。素人が考えてもわかるような問題ですけれども、横須賀を母港にしている、根拠地にしている艦船の、この日付と写真でコンテナが図解に一致するということでアメリカ側に確認をしてほしいということをお願いしているわけです。一般的に核の問題と言う前に、私がきょうお話ししました問題についてアメリカ側に確認をしていただきたい。いかがですか。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  118. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、先ほど申し上げました艦船は確かに横須賀を母港としておりまして、そこに入ってくる艦船が、仮にいま御指摘のような核兵器を持ち込むということであれば、これは当然に事前協議の対象になります。したがって、事前協議をアメリカ側がしてきていないということは、核の持ち込みというものが行われてない、これが私たちの確信でございます。  せっかくの先生の御指摘でございますが、現在のところいまお示しになったその点についても、政府としてここでさらに確認するということは申し上げかねるわけでございまして、この点については、従来と立場は何ら変わってないわけでございます。
  119. 中路雅弘

    ○中路委員 こうした具体的な事実で確認をしてほしいとお話ししているわけですが、それならば核であるかどうかということは爆発させてみなければわからないというところまでいってしまうわけですね。  もう一度お尋ねしますけれども、それでは事前協議の対象と言われている持ち込み、イントロダクションの中に、いまお話ししました寄港や通過が含まれているということについて、いまの問題はアメリカと、ライシャワー元駐日大使と日本政府の解釈の問題があるわけですから、この問題で確認をされているのかどうか。一般的に核持ち込みについて事前協議の了解ではなくて、その中に通過や寄港の問題について事前協議の対象になるということが確認をされているとすれば、いつ、どういう形で確認をされているのか。
  120. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まず寄港について申し上げますと、安保条約改定の当時、事前協議制度ができ、さらに藤山・マッカーサー口頭了解によりまして、そこに言われている核の持ち込みというものは、核弾頭、中長距離ミサイルの持ち込み並びに基地の建設であるということが明白になっているわけでございます。したがって、日本側としては、事前協議制度ができた当初から、核の持ち込み、その中には寄港も入るというふうに理解しておりまして、その理解についてアメリカも日本側の理解と差はないというふうに考えております。ただし、昭和五十年三月の予算委員会の席上、当時の外務大臣及び政府委員から御答弁いたしましたように、予算委員会での論議を踏まえて、わが方から藤山・マッカーサー口頭了解について英訳文を付してアメリカ側に照会し、その結果、何日か日にちがたちましたけれども、五十年三月と記憶しておりますけれども、アメリカ側から藤山・マッカーサー口頭了解についての日本側の考え方については異存がないという回答を得ているということでございます。  次に、通過の問題でございますが、通過については若干事情を異にしておりまして、当初、いわゆる無害航行に当たる通過というものは事前協議の対象でないということでございましたけれども、その後、領海あるいは接続水域についての論議が行われた際に、日本側は核装備の軍艦については無害通航と認めないということを国際法との関係で明確にし、この点については国会等で再三説明し、またこれを内外に宣明してきているわけでございます。
  121. 中路雅弘

    ○中路委員 いま英訳で示したとおっしゃいましたね。このときの英訳の持ち込みというのは、どういう訳ですか。
  122. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 「イントロダクション・インツー・ジャパン」です。
  123. 中路雅弘

    ○中路委員 いまおっしゃったように、向こうが了解をしたという返事をもらったという英訳で問い合わされたのは、異存がないという返事は、イントロダクションということで出されたわけですね。この中にトランジット、このイントロダクションとトランジットは違うということが今度の元駐日大使の問題になっている発言なんです。このイントロダクション、核の持ち込みは異存がない、これは事前協議だということだ。しかし、この中に通過、寄港、こういう言葉は、いまの問い合わせの中には一言もないじゃないですか。私がいま言っているのは、この通過や寄港ということも含めて確認をされているのか、それはいつ、どこで、どういう形で確認をされているのかということをお聞きしているわけです。
  124. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 もともと藤山・マッカーサー口頭了解ができたときに、すでにイントロダクションという意味あるいは核の持ち込みについて、これは寄港を含むということについて日米間で話もあり、さらに先ほど申し上げましたそれを再確認するというイントロダクションの中にはもちろん寄港も入っているわけでございます。  さっき私が一時通過と申し上げましたのは、無害航行という意味での一時通過でございます。
  125. 中路雅弘

    ○中路委員 その当の藤山さん自身が、いま新聞でもマッカーサー駐日大使の発言をある意味では裏づけるような発言もされているではありませんか、日米の間で話し合いがあった確認の。というのは、もう一度お聞きしますけれども、それは口頭ですか文書ですか。どういう形でそれば残されているのですか。
  126. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 もちろんこれは交渉でございますので、交渉の過程の個々の日米間のやりとりについて論ずることは避けたいと思いますけれども、御質問の問題については交換公文の規定及び藤山・マッカーサー口頭了解ということからして、特に藤山・マッカーサー口頭了解でございますので、あくまでもこれは口頭でございます。ただ、先ほど申し上げましたように、その口頭了解を踏まえて五十年に再確認しているということでございます。
  127. 中路雅弘

    ○中路委員 その口頭了解の中に通過、トランジットが含まれているということの確認はどういうところにあるわけですか。発表された口頭了解、国会に出された口頭了解というのは核持ち込みとなってますね。私が言っているのは、いま英文で言われたイントロダクション、その中に通過も含むという確認はどこで、どういう形で確認されているのですか。
  128. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私がさっき申し上げたことをさらに補足いたしますと、同じような御疑問がラロック証言で提起されまして、日本側がアメリカ側に対してラロック証言について照会した、それに対してインガソル副長官から、アメリカ側は事前協議については誠実に実行しているということ、さらにもう少し説明いたしますれば、事前協議の対象になるのは米軍でございまして、その米軍というのは、日本に配置されている米軍のみならず、日本に一時的に立ち寄るあるいは寄港するそういう米軍も入るということは、これは文理上も非常に明らかでございます。そういうことから、日本側の事前協議の対象の核の持ち込みの中には、寄港あるいは無害通航に当たらない一時的な通過が入るというのが当初からの理解でございまして、それに対してアメリカ側も、日本の了解と同じ考えに立っているということをさっき申し上げました。
  129. 中路雅弘

    ○中路委員 私が言っているのは、日本側のそういう理解をアメリカとの間でどこで確認をされているのか。先ほど異存がないと返事が来たという英訳の文書はイントロダクションじゃないですか。日本側の理解、通過も含むという日本側の理解、それはアメリカ側にとっても同じ解釈なのか、そのことをアメリカの方にどこで確認をされているのか、再度聞きますけれども、お尋ねしておきます。
  130. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 第一回は藤山・マッカーサー口頭了解ができるとき、それからさらにそれを再確認した昭和五十年でございます。
  131. 中路雅弘

    ○中路委員 そんなことはどこにもないのですよ。いまの勝手な皆さんの理解で、そして事前協議がないから持ち込みがないとか、アメリカを信頼するとか、いままでこの一点張りで答弁されてきたわけです。もともとこの核通過が事前協議の対象にならないというのであれば、アメリカ側が初めから事前協議を申し入れるはずがないじゃないですか。したがって、この確認、通過を含むんだということの皆さんの了解が、アメリカ側で確認されていなければならない。いまのお話では、どこでも確認はされていないのです。藤山・マッカーサー口頭了解でも、出されている文書はそれはイントロダクション、持ち込みなんです。私の言っているのは、それに通過という問題です。それがどこでどういう形で確認をされているのかということを聞いているわけです。幾らお聞きしても、どこにもその確認はないのです。ライシャワー元駐日大使がこのことを今度の発言でされている。それがまたわが国の国是と言われている非核三原則を踏みにじることになっているからこそ大問題になっているわけですね。  皆さんの発言でもあるのですよ。これは七四年の秋、わが党の立木議員の質問で木村外務大臣が答弁しています。通過を事前協議の対象とすることについて米側の確認は得ているのかという問いに対して、この問題はきわめて明らかな問題なので、アメリカと話し合う必要は認めてなかったという答弁をされている。確認をしていないのですよ。こちらの了解なんです。この時点ではっきりと当時の山崎アメリカ局長も同じ答弁をされています。七四年十月十八日の参議院外務委員会。確認をしていないということを答弁されている。藤山・マッカーサー口頭了解から確認している、そんなことはうそじゃないですか、あなたの答弁。その後の七四年でそんなことは確認していないんだということを答弁しているじゃないですか。
  132. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 仮にアメリカ側が日本の理解と異なるということであれば、日本側が再三国会で申し述べたことに対して、当然にそれはアメリカの理解と違うということを言ってくるのが筋でございます。そういう点はいままで全くございません。
  133. 中路雅弘

    ○中路委員 だから、ここでも余りうそをつかないで、日本政府も本当のことを言うべきだというのがライシャワー元駐日大使の発言じゃないですか。  私はいまの答弁を聞いていても、どこでもまだこれは確認されていない。確認をされてない上で、事前協議があるからとかアメリカを信頼しているからと言っていれば、私がきょう出したこの事実さえ事前協議の対象にならないのですから、当然、そうした向こうの方から事前協議の申し入れがないことは事実です。だから、私は、具体的な日にちと艦船名とその持ち込みの順番を追ってきょうパネルでお示ししているのです。だから、これを確認してくれということを言っているわけですが、もう一度いかがですか。きょうの私が出した問題については、少なくともこれは、私が質問した問題についてどうだということについての確認はひとつやっていただきたい。このパネルは外務省にその間お渡ししてもいいんです。
  134. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 具体的なケースについてお示しでございまして、それに近いのはラロック証言であって、ラロック証言についてアメリカ側が日本との取り決めを遵守するということを言っておりますし、いま委員が言われているのは、まさに持ち込みというか、日本に貯蔵するという意味での持ち込みということであれば、仮に日米間にイントロダクションの意味で差があるとしても、それはそこで言われていることは本来日本へ貯蔵するということでございますので、ここで確認をさらにするという必要はないと思います。  ただ、パネルその他お示しいただいたので、もう少し私たちでそのパネルを検討さしていただきたいと思います。
  135. 中路雅弘

    ○中路委員 それはうそを言ってはいけないですよ。航空機だって一時のあれは三十日以内だったらそれば通過だということを言っているわけですよ。陸揚げだって貯蔵じゃない、これは通過だということになれば、当然その中に入るのですよ。そういったごまかしを言ってはいけないですよ。だから、私はパネルまで出しているのだから確認をしてほしい。いま見たいというお話ですから、もう一度要請しますけれども、この問題については、日時も艦船名も、船から出てくる過程もずっと写真でお示ししています。カラーもあるわけですから、ひとつこの問題については、再度お話ししますけれども確認してほしい。  それから、委員長にお願いしたいのですが、私がきょう取り上げた問題については委員会として確認できるかどうか、お諮りをいただきたい。いかがですか。
  136. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 後刻理事会で検討します。
  137. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 委員会の御決定を待ちたいと思いますが、その前に私たちとしてパネルその他を十分検討させていただきます。
  138. 中路雅弘

    ○中路委員 この、質問の最後になりますけれども、ミッドウェーは来月帰ってくるのですが、いつ横須賀へ入港しますか。
  139. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 中路委員が来月ミッドウェーが帰ってくると言われておりますけれども、私たちの方には入港の時期について、われわれは横須賀にいつ入港するかについてまだ承知しておりません。どうも先生の方が情報を大変よくお持ちのような気がいたしますけれども
  140. 中路雅弘

    ○中路委員 私はいま確認をお願いしているのですが、こうした問題は、先ほど通過あるいは持ち込みについてどこでもアメリカ側とこの食い違いについては確認をされてないということを質問の中でも一層深くしたわけですけれども、こうした問題を明確にしないで、ミッドウェーのまた入港や横須賀の核装備可能な艦船の入港は、それまで中止をしていただきたい。  あわせて最後にお聞きしますが、日本政府としては、あくまで通過を含めたこの非核三原則問題については、今後も堅持していくんだ、そういうお考えですね。
  141. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 そのとおりでございます。
  142. 中路雅弘

    ○中路委員 きょうは退手問題の審議が中心なものですから、とりあえずこの問題は後で確認していただくそうですから、外務省にこれはお渡しします。  退手の質問に入りますけれども、途中で防衛政務次官がお見えになるそうなので、その時間五分間ぐらいだけちょっと中断します。非常に時間が限られてしまったものですから、その範囲内でどこまで御質問できるかわかりませんが、総理質問の時間が決められておりますから、その前まで御質問を続けさせていただきたいと思います。  退職手当は、実態的には老後の生活設計に欠かせない賃金の一部になっているわけですが、こうした重要な労働条件の事項の変更については、憲法二十八条の労働基本権の保障規定に照らしても、当然団体交渉による合意を前提として決めるべきだと私は思います。労働基本権が不当に制限され、労働条件が法定主義になっている非現業国家公務員についても、国公法の百八条の五の中でも、職員団体から勤務時間その他勤務条件に関して問題が出されたときは、その申し入れに応じなければならない。「国の事務の管理及び運営に関する事項は、交渉の対象とすることができない。」ということが書いてありますけれども、その他の労働条件の変更については当然交渉権を認めているわけです。三公社現業職員については、公労法第八条の中で、「労働条件に関する事項」ということを明確に団体交渉の範囲ということで定めてあります。労働条件の変更についての団体交渉権と労働協約の締結権を認めているわけですが、国公法、公労法とも、交渉または団体交渉の対象となる労働条件に関する事項について、労働条件が法定主義になっていようがいまいが、すべてその変更については関係職員団体との交渉による協議、これを前提にして決めるべきであると私は思うわけです。この労使協議を尽くさないで、一方的に法案を提案するということは、正しい労使慣行からいってもきわめて重要な問題だと思うのですが、最初に長官の御意見をお聞きしたいと思います。
  143. 中山太郎

    ○中山国務大臣 労使間で話し合うべきだという御意見でございます。この法案は、五現業だけに限らず、司法、立法、行政、五現業と、あらゆる分野の公務員の諸君に適用されるものでございまして、政府といたしましては、国会で御審議をいただき、その法が成立した後は、法律によって運用してまいりたい、このように考えております。
  144. 中路雅弘

    ○中路委員 国公法や公労法が交渉や団体交渉等についての条文を掲げているのは、労使間の紛争を解決する手段、いわゆる労使合意を実現する手段の一つとして掲げているわけですね。ただ単に話し合いすればいいとか、そういうものではないと思うのです。どうしてこうした労働条件の問題について合意を得る交渉を尽くして行わなかったのか、もう一度大臣にこの点をお聞きしたいと思います。
  145. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この法案を御審議いただく前に、それぞれ、私の立場でも労働の団体の方々ともお目にかかってお話をいたしましたし、あるいは局長、あるいはその以下の事務のレベルでも何回かにわたって御意見を交換させていただいたようなことでございまして、決して政府が一方的に法案提出することに踏み切ったということではないということを御了承いただきたいと思います。
  146. 中路雅弘

    ○中路委員 いま大臣のお話ですけれども、たとえば国家公務員の関係の労働組合からも、職員団体からも、私のところにもいま連日はがきや手紙、電報等が数千、数万と寄せられています。その中心は、定年制退職手当法等の労働条件にかかわる問題、これは労使の交渉をひとつ尽くしてほしいということが要請の中心なわけですね。いまおっしゃったように、何かちょっと話をしたとか、そういうことでは済まされない問題だと私は思います。退職手当削減法案のこうした提出の仕方は、国公労働者や三公社現業職員にわずかに認められている労働基本権をじゅうりんするだけではなくて、国際的な趨勢にも逆行すると私は思うのです。  御存じのように、公務員といえども労働条件民間労働者と同様労使対等で、団体交渉で決めるというのがいま世界の趨勢です。一九七八年の公務労働関係の条約を準備したILO公務専門総会における七五年の開会あいさつで、ILOのブランシャール事務総長はこう言っているのですね。「過去一〇年以上にわたって世界中で、高いところから一方的に決定されるという手続きにかわって、公務員とその団体が一つ、あるいはその他の方法で雇用条件決定に参加することを認める手続きが用いられる傾向が一般的になってきています。」ということを述べて、「多くの国の政府はいまや、能率と国民の利益の尊重とが、いかなる意味でも、公務員がその雇用条件決定に関与したいという要求と矛盾するものではないという結論に到達している」ということを言っているわけです。労使交渉を尽くさないで、一方的に退手削減であるとか、定年で解雇の制度化をするということは、こうしたいまの国際的な趨勢からいっても逆行するということを言わなければならないと思うのです。  このILOの公務専門総会で採択された正式の報告書「公務における雇用諸条件決定の手続き」というのを見ましても、いろいろさまざまな交渉の形態というのはあるけれども、「これらのシステムのほとんどに共通する分母は、両当事者がともに受諾可能な合意にその結果がどんなかたちをとるかをとわず、達するような誠意をもって交渉する手続」だということも報告されているわけです。  さらにこの会議公務専門総会には、日本政府代表である当時の片山総理府人事局次長が出席をされているわけですが、この発言の中でも、わが国の政府は、公務員勤務条件については、交渉の促進を図って合意をしていくというのが望ましいと考えるということを、国際的なこういう会議でも日本政府代表として発言をしている。  こういう点では、今回のこの二法の提出は、用条件決定に当たって適切な合意に達するための誠実な交渉を尽くすという、こうしたいまの世界の趨勢に逆行するだけではなくて、ILOの公務専門総会における日本政府代表の発言にも逆行するのではないかと考えるわけですが、いかがですか。
  147. 山地進

    山地政府委員 ただいまの先生の御指摘の「公務における雇用条件決定手続」という文書の結論に「予備的概要」というのがございまして、この中には「関係のある公の機関と公務員団体との間における雇用条件の交渉のための手続又はそれらの事項に関する決定において、公務員の参加を認めるその他の方法の十分な発達及び利用を奨励しかつ促進するため必要がある場合には、国内事情に適する措置がとられるべきである」、こういった問題につきましては、各国それぞれ事情が異なっておるということは、この条約を議論する際の一つの前提であったろうと思うわけでございます。この際、一九七五年でございますかの会議であったわけでございますが、その際の日本政府側の立場というのは、従来から公務員の地位の特殊性あるいは各国の公務員制度の現実の多様性、こういうものを考慮して、条約ではなく、各国が容易に受け入れられるようなできるだけ弾力的な内容の勧告とすることが望ましい、こういう旨を主張し、結果的に勧告によってある程度補足された条約の採択になったわけでございまして、わが国といたしましては、わが国の法制というものとの関連が必ずしも明確でないという理由で、採択に当たりましては棄権をしたのが事実でございます。  この条約を採択後批准いたしましたのは、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、ザンビア、ペルー、これだけの国でございまして、その他の国々においては、やはりそれぞれの国内事情があるということで、現在まで批准に至っていない、かように承知しております。
  148. 中路雅弘

    ○中路委員 いま報告になった七八年のILOの公務労働協約の関係の、公務労働関係の条約、公務における雇用条件決定手続に関する勧告、この勧告について、いま、日本側が棄権したというお話ですけれども日本政府は事あるごとに、西側の一員ということを非常に声高にいま叫んでおられるわけです。この採択では、先進国の中でただ一人日本政府代表だけがこの条約に、いまお話しのように留保を表明して棄権をした。勧告に反対したというのは先進国では日本政府だけですよ。条約に保留を表明して棄権した政府は、アフリカのウガンダや東南アジアのマレーシアなどわずか五カ国だけですね。そういう意味でも、先進国だとか西側の一員だとかふだん日本政府は言っておられるわけですが、こうした公務労働のあり方については全く立ちおくれるといいますか、こうした世界の趨勢にも逆行する、この考えが今回のこうした定年制や退手の削減法案提出の仕方にもはっきりとあらわれているんじゃないかと思うのです。  この条約と勧告が採択されるまでの公務専門総会で、片山日本代表公務員労働者の労働基本権剥奪と人事院の代償機関についても発言されているわけですが、この中で争議権の否認について適当な代償機関が講じられているという話の中で、給与に関する人事院勧告は一九七〇年以来完全に実施されているとか、十分な代償措置が形式上も実質上も整備されているというなど発言されております。しかし、今回のこの退手削減定年法案は、代償機能や紛争解決手続は何一つ有効に機能していない。中でも退職手当の問題は、人事院の代償機能や公労委の仲裁機能が全く及ばないようになっているわけです。私はこういう点でも、係職員団体とやはり徹底して協議して、納得をさして決めていくべきだ、国際的なこうした潮流からいっても、一方的に法案提出するというのは全く逆立ちしたやり方だどいうふうに考えるわけです。  これは国際的なあれだけじゃないです。たとえばこの二法について、私たちが言っているだけではなくて、これは朝日新聞の社説ですけれども、昨年の十月三十日、こう言っているのです。「われわれはあえて「給与」「定年」「退職金」の一括処理には慎重な態度をとることを要望したい。重ねていうが、二法案に反対なのでなく、手続きに問題があると考えるからにほかならない。公務員労働条件について重大な変更をもたらす問題であるにもかかわらず、事前に労使交渉どころか、意思疎通も行われていないのは拙速すぎるのではないか。近代的労使関係が公務員にもあることに目をつぶった措置という批判は免れまい。」これは私がここで主張しているのではない。朝日新聞の社説がこういうふうに論じているわけです。朝日新聞は二法案に反対なのではなく手続に問題がある。特に近代的な労使関係の確立という観点から述べているわけです。私はこうした当然の主張については、総理府も十分耳を傾けて、近代的な公務労働関係が樹立できるようにしなければならないと考えますが、大臣いかがですか。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 山地進

    山地政府委員 退職手当法というのは、非常に長い歴史を持っております。この退職手当法ができるまで、日本における民間退職手当というもののいろいろ発生の歴史もございましたし、それから国鉄における退職金の問題もございました。さまざまな役人の制度と関連いたしまして、この退職手当というのが来ているわけでございます。恐らく世界でこれだけ幅広い人たちを含んだものというのはないのではないかと思うわけであります。非現から現業まで全部含んでいる。それから三公社も含んでいる。これはやはり過去の退職手当というものがどんなふうな位置づけをされてきたかという長い歴史の中でできたものでございます。  そこで、そういったことについて、団体交渉というようなものと一体どんな関係があるのかということになるわけでございますが、仮にある一部だけ団体交渉で決めるというようなことがありますれば、それは法律から外れるという形でしかあり得ないことだろうと思うわけです。  そこで、これだけの歴史の中で熟成されたこういった退職手当法がいいのか、あるいは新しく制度として、そういった団体交渉にゆだねていくのがいいのかというような、これは立法政策といいますか、そういう政策的な判断はあろうかと思うわけでございますが、私どもはこういった歴史を踏まえまして、退職手当法ということで、非常に画一的な方法で御審議をいただいているわけでございます。その間においては、先ほど私どもの大臣から申し上げましたとおり、何回か御意見は十分承り、来たわけでございますが、その最後の決めるということにつきましては、やはりこの国会で御審議いただくということしかないのではないか、かように考えているわけでございます。
  150. 中路雅弘

    ○中路委員 質問は続けていきますけれども、ちょっと参議院の関係でおくれて来られたものですから、五分ばかり途中にはさむので御勘弁願いたいと思います。政務次官お見えになっておりますね。  十二日に大村防衛庁長官に直接申し入れもしまして、例の秋田沖の日米合同演習の問題ですけれども、こうした漁業の最盛期に広大な地域で演習をやるということは中止するように要求しましたら、そのときに大村防衛庁長官は私に、操業の最盛期だということはよくわかるから、操業の状況をもう一度調べてみて、漁業に影響のないように現地にもう一度訓練について指示する、アメリカの方にもそれを申し入れるということを約束されました。その直後に報道されているような大変大きな被害があらわれている。  そして先ほどの報道によりますと、二十一日の午前に日本海の日米共同訓練の海域内で操業中の秋田県所属の漁船五隻が網を切断され、青森県の沖合い、八十キロ沖だそうですが、この訓練内でまた大きな事故が起きております。五隻合わせて約千二百メートルにこの網の被害が及んでいるということで、この近くを通過した日米共同訓練中の艦船による被害の可能性が強いということも報道されているのです。ちょっと途中で来ていただいたので、私は一言でまとめてお話ししますけれども、まずこの責任を明らかにしなければならない。  それから二十三日までですか、演習があります。いまの演習は即時中止をするということを強く要求したいと思いますが、いかがですか。
  151. 山崎拓

    ○山崎(拓)政府委員 先生の御質問のとおり、十九日から日米合同演習が後期の演習に入っておるのでございます。  前期の演習におきましては、演習海域におきまして事故は発生しなかったのでございますが、ただ後期演習に参加予定の米艦艇四隻が積丹沖で網を破ったのではないかという可能性がございまして、そのこと等にかんがみて、後期演習につきましては事故が起こらないように万全を期してまいったところでございます。  先生からの御要請を初めといたしまして、農林水産大臣からも事故が起こらないようにという強い要請を受けてまいりましたので、後期演習に当たりましては、一部演習海域を縮小いたしましたし、またもし漁船を発見いたしました場合には、演習を一たん中止いたしまして、他の演習海域中の部分に移動して演習を行うということ等の措置を講ずることにしてまいったのでございます。  しかしながら、ただいま先生お話の中にございましたように、二十一日午前六時ごろ日米共同訓練海域の東端におきまして、秋田県の漁船第五十八広福丸等六隻のマス流し網が切断されているのが発見されたという報道を得たのでございます。  昨日訓練参加部隊は、米艦艇を含めまして五隻その周辺にいたのでございますが、対潜捜索攻撃訓練を実施していたのでございます。昨日の午後六時ごろ訓練を終了いたしまして、他の海域へ移動しているはずでございます。  一方漁船の方は、昨日、二十日でございますが、午後四時二十分に流し網を投入したというふうに聞いております。もしこの付近に訓練部隊がいたとすれば、時間的に入れ網を視認できたはずでございます。したがいまして、訓練参加部隊が網を切断した可能性はただいまのところ少ないと判断をいたしておるのでございますが、念のため日米双方の部隊に対しまして事実確認を急がせているところでございます。  また、この海域は貨物船の航路にも当たっておりますし、なお被害地点付近にはソ連艦ペチャがいたということも承知しておるところでございます。
  152. 中路雅弘

    ○中路委員 いずれにしましても、この最盛期に共同演習をさらに続けるということは、ますますこうした被害を拡大することになりますし、重ねて私は、この演習の中止を強く要求をしておきたいと思うのです。
  153. 山崎拓

    ○山崎(拓)政府委員 事実関係を速やかに把握いたしたいと存じております。その結果によりましては、訓練中止を含めまして、しかるべき措置を検討してまいりたいと思います。
  154. 中路雅弘

    ○中路委員 また別の機会に続けて御質問したいので、どうも時間をとりまして、あと残されたのはわずかですけれども続けたいと思います。  先日、同僚の榊委員の質問でも明らかになりましたけれども人事院の民調のやり方、これも大変——官民比較の基礎チータにこれをするというが、私は粗雑な材料だと思うのです。先日も質問でありましたけれども、九百二十九社中、半数以上の四百六十八社が、通信調査結果でありますから、調査用に記載されたものと実態とが合っているかどうかのチェックは何ら行われない。職種別や役職別の実態も不明でありますし、各勤続年数別の標本数も少なく、統計的にも私は安定した数値とは言えないと思うのです。たとえば総理府が、この人事院の民調結果であるということで公表した資料、いただいた資料を見ますと、百人から四百九十九人の規模の二百五十社の中で、勤続三十年、三十三年、三十五年の欄は空白になっているのですね。また空白にせざるを得ないようなありさまでございますし、それからところどころ勤続年数がふえると、逆に退職金が下がっている。五百人から九百九十九人をとりますと、三十二年勤続年数で千三百二十九万円。それが三十四年になると千百二十万円、下がるわけですね。あるいは百人から四百九十九人のところをとりますと、勤続二十九年で千百四十八。それが三十一年になると七百二十九。こういう資料提出してやるということ自身も、大変粗雑だと思うのです。しかも詳細な調査結果の資料提出を要求しても、それは出してこない。官民比較にたえるようなデータであるというのならば、私は堂々と民調結果を全部公表すべきであると思いますが、総裁の見解はいかがですか。
  155. 長橋進

    長橋政府委員 今回の退職金民間実態調査につきましては、総理府の依頼もございまして、そういう関係もございまして、調査結果につきましては、資料総理府の方にお届けしてございます。そういう関係がございますものですから、その資料等の取り扱いについては総理府の方で御判断いただくというのが適当でなかろうかというふうに現在考えております。
  156. 中路雅弘

    ○中路委員 先日、総裁が同僚委員への答弁で、人事院には資料を提供するという重要な職務があるとか、退職金の民調結果については、人事院でも所掌事務を進める上で活用しているということを答弁されているわけです。民調結果の詳細は、人事院内部でも活用しているとすれば、その資料をどうして出せないのか。調査票を集計確保したというものは、決して秘密でも何でもないはずでありますし、本法案の審議にも私は必要だと思うのですが、重ねて資料提出について御見解をお聞きしたいと思います。
  157. 長橋進

    長橋政府委員 今回の調査結果に基づく資料につきましては、先ほど御答弁いたしたとおりでございますが、御指摘のように、それらにつきましても部内資料といたしまして便宜集計して、あるいは分析したりして利用しているものもございますけれども、これは文字どおり部内資料ということでございまして、特に発表するということを念頭に置いて用意した資料ということにつきましては、現在のところ持ち合わせがないということでございます。そういう点で御了解いただきたいと思います。
  158. 中路雅弘

    ○中路委員 部内資料であっても、これはこの法案の審議のためにはやはり必要な資料ですし、決してひもつきではないのですから、私はぜひこれは提出していただきたいと思います。  三公社現業官民比較に用いるための中労委労働省から寄せ集めたこのデータ、これを見ても、非常にかき集めたという感じの粗雑なものですね。決して官民比較にたえるものではないと思うのです。たとえば行政職(一)については百人以上の企業の実体値をとっているのに、なぜ行(二)や三公社現業については三十人以上なのか。行(一)については学歴を問うていないのに、なぜ行(二)や三公五現について中卒生産労働者なのか。行(一)については勤続年数二十五年以上、各年数別の数値をとっているのに、行(二)や三公五現については五歳バンドにするのか。中労委から借りてきたこのデータはモデル退職金であって、これを実態値と比較するための修正試算などというような手法が導入されておりますけれども、モデル値を幾ら修正してもモデル値ということには変わらないわけですね。そういう意味では、行(二)や三公五現についても、私は官民比較にたえるようなデータを出すべきだというふうに考えるわけですが、この点でもいかがですか。
  159. 山地進

    山地政府委員 たびたび御説明しておりますように、公務員等、それから三公社という膨大なグループ退職金官民比較というのをどうやったらいいのかというまず基本的な問題があるわけでございますが、そこで私どもとしては、公務員代表である行(一)の高校卒というものをまず代表として、これを詳細に調査していただいたのが人事院調査でございます。これは国家公務員行政職の(一)の高校卒でございます。学歴は高校ということで限定してございます。これは高校卒公務員が全体の中で半分、行(一)の中では二十四万人の中で六七%が高校卒でございますから、マジョリティーであるということでは全体の代表である、ふさわしいと私ども考えているわけでございます。そこでその行(一)の高校卒の、しかもこれは事務の職員でございます。これは事務の職員の方が官民比較がしやすいという意味でそれを代表にして、民間高校卒の事務の方を比較したわけです。  それから、いま先生の方で御指摘のございました中労委労働省数字、これは私どもの方では、特に中労委労働省退職金の今回の官民比較のために調査を御依頼したものでございませんで、既成のそれぞれの中労委なり労働省なりのいろいろ政策目的のために御集計になっているものを利用さしていただいた。そこで私どもの方では行(二)とそれから三公社の方については、退職されている中でやはり過半数は中卒でございます。中卒の方がマジョリティーでございますから、中卒の行(二)あるいは三公社方々を、これは現場の方でございますが、生産労働者というカテゴリーでとらえて、それを中労委と、それから労働省の方が中卒生産労働者でございますから、職種の特殊性というものが似ているということでこれを比較した。これはその部分について、官民較差是正をどれぐらいにするかという量的な判断をするために用いたものでございませんで、行(一)の方で量的な判断をいたしまして、全体的な流れをどう見るか、たとえば生産労働者については異常な状態が起こっているかどうかということをチェックするために、補助的な調査ということで労働省なり中労委なりの資料を利用させていただいて比較してみたところが、やはり国家公務員の方が高いということがわかったから、これは全体のバランスといいますか流れとしては行(一)の数字で正しいであろう、かように判断したという次第でございます。
  160. 中路雅弘

    ○中路委員 この官民比較の際のもう一つの基礎データである公務員の方の代表例を見ましても、実態を正しく反映してないと思うのですね。たとえば代表として例示された行(一)勤続三十五年の平均退職手当千八百三十七万円の算出基礎となっています俸給月額を推計しますと、二十六万五千円になります。この金額に該当する等級号俸を退職金官民比較時点である昭和五十二年度の勧告で見ますと、推計ですが、行(一)三等級十六号俸以上になりますね。これが退職者の俸給の平均だとどうして言えるのですか。現状の昇給実態から言って、現実とかけ離れた代表例と言わなくてはならないと私は思うのです。行(一)の等級別定数は、いただいた資料で見ましても三等級以上の定数は全体の十分の一以下であって、圧倒的多数が四等級以下です。つまり代表的な公務員は、出世してもせいぜい四等級どまりということでありますし、現に五十二年度の任用状況調査を見ても、五十五歳以上の辞職者三千二百三十二人のうち、三等級以上は千二百十四人、全体の三七・六%で、六二%強が四等級以下なのですね。三公社現業の場合を見ましても、公労協の調査によっても退職金実態値は明白に民間よりも低い。結局総理府が示した公務員代表例なるものは現実離れした高いものになっているということですね。そうでないと言うのなら、職種別、等級別、号俸別、勤続年数別の退職者数と平均退職金額を、特別職、非現業一般職、五現業、三公社別に出すべきだと思うのですね。こういう資料を要求しましても提出はない。こうした官民比較にたえるようなきちんとしたデータがないのかどうか、ないと言うのなら非常にずさんな官民比較だというふうに思いますし、あると言うのなら直ちに出していただきたい。いかがですか。
  161. 山地進

    山地政府委員 まず資料提出お話でございますけれども、私どもの今回の調査というのは、先ほど御説明いたしましたように、行(一)において全体を代表するという考え方から百二十を百十に下げることが適当であると判断したわけでございますが、これは四十八年の値上げのときと同じ思想でございます。  そこで、まず第一にそういった判断をする資料が不足しているあるいは間違っている、三十五年勤続の三等級の十六というのは代表でない、このことからいきますと、お手元にお配りしてあります「勤続年数別等級別退職者数調」、これは千四百人に上る人の等級を全部調べてあるわけですが、三十五年の方でも一等級から六等級までそれぞれ分布しているわけでございます。恐らくこの分布状態というのは、絵にかきますと二十五年から三十五年の間、山が違うと思います。しかしこれだけの、千四百人という方々の分布状態というものを基礎にいたしまして、それぞれ二十五年から三十五年の方々比較したのがさつき先生の方で御指摘いただきました民間との比較で、民間の場合には、ある年度については三十年とか三十三年はないではないかという御指摘がございましたが、こういったところと全部を比較いたしますと、この比較表の方をごらんいただくとわかりますように、国家公務員の方は確かに各年度についてばらつきがございますけれども比較した数字というのは八九%から九二%にわたっているわけでございます。私どもは個々の年度について、ここがこうなっているから何%ということを申し上げているのではございませんで、この全体の姿から見て、大体一割くらい違うということを私どもは判断したわけでございますので、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  162. 中路雅弘

    ○中路委員 いずれにしても官民比較の基礎になった民調の結果や公務員代表例というのは、やはり大変粗雑なものなんです。決して比較にたえるものではない。しかも、比較の手法それ自体もまだ確立してないのではないかと思います。  退職金官民比較の問題で、たとえば元総理府の人事局参事官の山口健治さんが書いた「逐条退職手当法」という解説書を見ますと、いろいろ詳しく理由も書かれていますが、結論的に言いますと、退職金官民比較は、まず正しい客観的な調査からスタートしなければならない、そして各分野からの専門的な検討が必要で、単に大学を卒業して何年勤続したからあるいは何歳になったからという点にのみ着目して、当該職員の受ける退職金だけを並べて高低を論ずるのは大変危険だということを明確に述べておられるわけです。私は、やはり政府として、官民比較にたえ得るしっかりしたデータをそろえた上で、公務員退職金制度それ自体の基本的な性格づけや官民比較の手法のあり方を含めて関係職員団体と十分協議をし、その合意と納得の上で結論を出すべきだということを再度強調したいわけです。  私はこの四点について、まとめて簡単にお聞きします。退職金官民比較やり方について、いろいろ批判にたえるような確固たる手法がすでに確立しているのかどうか。第二点は、国家公務員や三公社職員退職金それ自体の基本的性格について定式化された概念というのは存在しているのかどうか、存在していると言うならば、退職手当法のどこにそれが書いてあるのか明示すべきだと思います。また三番目に、職員団体の合意が得られないから国会に判断してもらうというのなら、やはり官民比較にたえるデータを国会に出すべきだと思います。批判の多い人事院給与勧告でさえ官民比較は数十人、数百人体制で行っているのに、退職金官民比較に従事した職員は、お聞きしましたらわずか三人、こんな体制でまともな官民比較ができるととうてい考えられないわけですが、いまの四点について簡潔にお答え願いたいと思います。
  163. 山地進

    山地政府委員 まず手法が確立されているかということでございますが、前回四十八年に初めてスタートした調査の問題につきましては、今回は実額調査ということで詳細に調査いたしたところでございます。  それから、退職手当の性格というものにつきましては、法文上明確ではございませんが、私どもとしては、長期勤続報償であるというふうに考えておりますし、実際の退職手当が年限によって伸びていく。たとえば五年未満ですと六〇%というようにカットされているということから考えても、長期的に勤続する者に対する報償であるということは明確であろうかと思います。  それから、職員の合意を得るということにつきましては、大臣の御答弁申し上げましたとおり、この法案提出以前において随時関係団体の愚見を聞いてまいりました。  さらに、資料提出でございますけれども、今回の判断は、私ども提出した資料で十分御判断いただけると思っているわけでございますが、この二回目の調査までの間に、私どもとしても十分経験を積みましたし、退職手当資料というものについての認識も深まっておりますので、今後は時に触れてといいますか、法律の提案のときのみではございませんで、常時こういうものを作成し、皆様の御判断の資料にできるだけ供し得るような体制を整えてまいりたい、かように考えております。
  164. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの御答弁にもさらに質疑をしたいと思うわけですが、あと決められた時間が十分ほどしかありませんので、二、三さらに御質問したいと思います。  退職手当削減法というのは、一般公務員の生涯の生活設計にかかわりますから、大変大きな犠牲を強いるのに対して、反面五十五歳前後に本省庁の局長や次官などに上り詰めて、あるいは特殊法人や外郭団体などの役員に天下りすることが保証されている高級官僚は、いままで以上の高額給与が保証される上、法外な高額退職金が転がり込むようになっています。打撃は何一つないわけですね。しかも一般公務員退職金計算の基礎となっています基本給与月額が、俸給と扶養手当の月額、調整手当だけであるのに対して、指定職の場合、役職手当や超過勤務手当相当分が織り込まれた俸給が基礎にされているわけです。こういった点は抜本的に是正すべきであると思いますし、こうした特権的な高級官僚優遇のあり方こそメスを入れなければならない、一般公務員の老後の生活保障の水準を切り下げるということではないと考えますが、長官、いかがですか。
  165. 中山太郎

    ○中山国務大臣 特殊法人の役員の退職手当の問題につきましては、かねて適切な処置をすべきであるという考え方が引き継がれておりますが、昨年十三月末に行われました閣議におきましても、この問題については今後検討を重ねていって適切な処置をするという方向に向いておりますので、私どもとしては、今後この善処方について努力をいたしたいと考えております。
  166. 中路雅弘

    ○中路委員 いまおっしゃった特殊法人ですけれども、これは政労協の試算によりますと、資料はもう省略しますけれども勤続わずか七、八年で退職金額は皆三千数百万に達しております。こうした法外な退職金というのは、一般公務員のわずか五分の一の勤続で長期勤続者の二倍前後の高額退職金、どこから見ても妥当じゃないと思うのですね。一般公務員退職金について国民の税負担を云々するならば、まずこうした法外な高額退職金こそメスを入れるべきだと思います。  また、この退職金の計算の方式が一般常識で考えられないようなものになっています。特殊法人の職員国家公務員は、民間労働者と同様に勤続年数を基礎に何年何カ月分となっているのに、外郭団体の役員については勤続月数が基礎になっています。特殊法人や認可法人の場合、日本銀行の役員の場合をとりますと、退職金の支給基準は、退職時の俸給月額に勤続月数を掛け、それに支給率を掛けるという方式になっていますから、これは新聞でも出ましたが、昨年東京都の外郭団体である東京都信用保証協会の理事長が勤続三十年余りで三億八千万円という高額退職金を受け取って問題になっていますが、白銀の総裁の場合も勤続わずか十年で、しかもいまの給与をそのまま十年間据え置いたとしても一億六千六百万円の大変な額になるわけですから、私はこうしたことこそ至急に抜本的に検討すべきではないかと考えるわけです。  官民を含めてですが、日本の労働者の退職金を含む老後の生活保障の水準が国際的に見てもまだまだ大変低いわけですし、社会保障水準や労働条件も悪いわけです。もし仮に百歩譲りて、退職金官民較差があるとしても、公務員の既得権を侵害して老後の生活保障水準を切り下げるという方向ではなくて、逆に各種の公的年金を拡充する方向で校差を是正すべきである、今回の処置がそういう点では逆立ちしているというふうに言わざるを得ないと思いますが、長官、いかがですか。
  167. 中山太郎

    ○中山国務大臣 特殊法人の役員の退職手当につきましては、やはり民間企業の役職の退職手当というものの調査をして、それに基づいてそういうふうな算定方式というものができておる。ただし昭和三十三年までは勤続月数掛ける最終の給与額掛ける〇・七であったものが〇・三六に引き下げられておりまして、ただいま御指摘のような点も昨年末の閣議ですでに、今後適切な処置をするということになっておりますので、政府といたしましては、閣議の意思を尊重して、その方針に従って努力をしてまいりたい、このように考えております。
  168. 中路雅弘

    ○中路委員 この今回の退職手当削減が、いま言いました公務員の老後保障の水準というものを切り下げるだけではなくて、いわば公務員給与日本の労働者全体の低い賃金構造の柱になっていますから、その算定基礎になっている標準生計費が生活保護基準や各種の社会保障の水準を低く標準化する理論的基礎になっているように、今回の退職金削減が、官長を含めた日本の労働者全体の老後保障水準の引き下げを事実上ねらうものでもあると言わざるを得ないわけです。そういう意味では、単に公務員労働者だけの問題ではなくて、日本の働く労働者全体にとっても見過ごせない重要な問題だと私は思います。  時間になりましたので質問を終わりますけれども、この先ほどから討議してまいりました定年制の導入の問題あるいは退職金削減のこの公務員二法は、公務員労働者の労働基本権をじゅうりんするだけではなくて、一般公務員に多大の犠牲を強いる問題でもあり、論議をしてきましたように、高齢化社会への対応という方向でも、また国際的な趨勢にも逆行する、いわば愚策だと思うのです。そういう点では、最後に再度要求をしておきたいのですが、この法案を撤回して、より総合的な十分な検討と職員団体との交渉を十分重ねて、この問題について正しい近代的な公務の労働関係が確立するように、繰り返しになりますが、長官の御見解も聞いて質問を終わりたいと思います。
  169. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいまお尋ねになりましたこの法案を撤回しろという御所望でございますけれども政府といたしましては、撤回をする意思は持ち合わせておりません。  なお、この法律案が成立後、やはり法の運用ということで労働組合の方々とは当事者間で十分話し合いをして、法律が十分な成果を上げるように、政府としては努力をいたしてまいる所存でございます。
  170. 江藤隆美

    江藤委員長 午後三時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後二時四十八分休憩      ————◇—————     午後三時一分開議
  171. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国家公務員法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案及び国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩垂寿喜男君。
  172. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最初に、公務員二法の締めくくり質問として総理にお尋ねをいたしたいと思うのですが、これは実は本委員会総務長官を初め政府委員とのやりとりの中ではっきりしてきた問題でございますので、私も慎重に言葉遣いも含めて間違いないように朗読をさせていただきながら質問をいたしますので、どうぞ影響が大きいものですから総理にもお読みいただいて、ぜひ答弁をいただきたいと思うのです。  本法の改正によりまして昭和六十年三月三十一日から公務員定年制が実施されることになるわけですが、定年制は、政府のたびたびの答弁にもありますように、現在の勧奨退職にかわるものとしての新たな退職管理の手法として導入され、しかも分限の一項目として本人の意に反して強制的に退職させられる制度でありますから、この趣旨から言えば、当然に組織的、集団的、強制的勧奨退職はあり得ないと考えますが、総理の御答弁をいただきたいと思います。
  173. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 公務員二法につきましては当内閣委員会において熱心な御審議を賜っておりまして、この点厚く御礼を申し上げます。  今日までの審議の中におきまして政府の関係閣僚から御答弁を申し上げておるところでありますが、それを私からも確認をいたしておくところでございます。  ただいまの御質問の第一点につきましては、これまでもたびたび御答弁申し上げましたように、政府といたしましては、定年制度導入の趣旨にかんがみまして、人事管理の必要上、幹部職員についての個別的な退職勧奨をする場合を除きまして、組織的、集団的退職勧奨はなくなっていくものと考えております。
  174. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 公共企業体等労働関係法及び地方公営企業労働関係法の適用、準用職員につきましては、憲法二十八条の労働基本権の保障を基本にして、現行法のもとで退職にかかわる事項を含め、賃金、労働条件に関して団体交渉し、労働協約を締結する権利が保障されています。本法案の基礎となった昭和五十四年八月の人事院総裁の書簡でも、いま私が申し上げた趣旨をくんで、これらの職員については別の法律をもって定年制の導入を図ることが望ましいとしていました。ところが本改正案は、給与特例法で国家公務員法を読みかえるという規定になっており、職員の生存に直結する基本的権利である団体交渉権、労働協約締結権を制限してしまう危惧が大きく存在しています。  そこで、総理大臣にお伺いしますが、本法の施行が憲法に保障される基本的権利である団体交渉権、協約締結権を否認するものではなく、従来と同様に定年にかかわる事項が団体交渉の対象としてあることを明確にしていただきたいと思います。
  175. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 公共企業体等労働関係法、地方公営企業労働関係法によって保障される団体交渉権、労働協約締結権は、最大限に尊重しなければならないと考えております。五現業職員定年制度につきましては、人事院総裁の書簡の趣旨を尊重いたしまして、いわゆる非現業職員と扱いを一部異にし、給与特例法にその特例を定めることとしたわけでございます。給与特例法によりまして主務大臣等が定めるということにいたしておりますのは、公労法第八条第四号に基づき、当然に団体交渉事項であるとの理解によるものでございます。  なお、地公労法の適用、準用職員につきましても、五現業職員について団体交渉の対象となる事項については、地公労法第七条第四号に基づき当然団体交渉の対象となるものであります。
  176. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 本法案では、雇用延長などにつきましてその範囲、基準が定かであるとは思われません。とのままですと恣意的、情実的人事の横行によって公正な人事管理が破壊されるおそれを危惧せざるを得ません。  そこで、それらの弊害を除去し円満にして円滑な人事管理を確保するために、現業職員はもとより、いわゆる非現業職員についても当該職員団体の意見を十分に反映するよう運営する必要があると考えますが、総理大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  177. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 公正にして円満、円滑な人事運営は人事行政の基本であると考えておりますので、そのために関係職員団体の意見を十分尊重してまいる所存でございます。
  178. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 定年制が導入されることに伴いまして定年年齢に達した、共済年金の受給資格がないまま退職せざるを得ない公務員が発生することになります。従来はこのようなケースについて勧奨の実施の上で弾力的な取り扱いがなされ、退職後の生活不安を取り除いた上で円満に退職するという措置がとられてきました。定年制がこのまま施行されるということになりますと、そのような弾力的な運用の道は閉ざされ、共済年金の受給資格を持たないまま退職後の生活設計が全く立たないで退職せざるを得ません。このような気の毒な退職者が生まれることは公務員制度の将来に重大な禍根を残すことになりますし、しかも、このような職員はきわめて少数であるわけですから特別の措置をとることがどうしても必要ですし、また、その措置をとることは手続面でも財政的にも容易にできることだと思います。  さらに、現在在職している公務員は、一定の自然年齢に達したら本人の条件いかんを問わず強制的に退職させられる定年制はないものとして入職し、勤務し続けてきたわけですし、定年制の導入はいわゆる雇用契約の一方的変更という重大な制度の転換ですから、当然共済年金受給の保障は必要だと思います。加えて現行公務員法上、公務員退職した後も生涯守秘義務が課せられ、それに違反すれば懲役刑などの刑罰が科せられる制度に置かれていることは御存じのとおりであります。この公務員制度を担保するためにも、年金の支給は政府として最低限の義務だと考えますが、総理大臣は、定年制の施行によって生まれる共済年金の受給資格を持たないまま退職せざるを得ない気の毒な方々に特段の措置を講ぜられる考えを当然お持ちであると思いますが、いかがでしょうか。
  179. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 定年制度が施行される際、通算退職年金も含めての年金の受給資格のない職員が生じるという問題につきましては、民間における任意継続組合員等の特例措置を参酌して、共済法上特例措置を設けることにより対処することが適当であると考えており、今後とも関係省庁間で協議を行わせ、定年法が施行されるまでの間に具体化し得るようさらに検討を進めてまいりたいと考えております。
  180. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今回の定年制導入による定年退職者の退職手当法適用については、従来の定年による退職者と同様に昭和四十八年改正法附則を含めまして国家公務員等退職手当法五条規定が当然適用されると考えますが、総理大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  181. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 今回定年制の施行に伴います定年による退職者の場合におきましても、従来と同様の扱いとなり、二十五年以上勤続の場合には国家公務員等退職手当法五条適用を受けるものと考えております。
  182. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 公務員法の関連の質問はこの辺でとりあえず終わりまして、いま社会的にも問題になっております、これはある意味で国際的にも問題になっておりますライシャワー元大使の証言に関連をして御質問を申し上げたいと思いますが、この問題は、日本の国是である非核三原則の基本にかかわる問題ですので、どうぞしっかりとひとつ御答弁をいただきたいと思います。  最初に、きのう園田外務大臣とマンスフィールド大使が会談をされましたが、この会談の中で、核持ち込みについての核積載艦船の寄港、領海通航などが事前協議の対象となっているかどうかの解釈には触れないで、ここが問題なんですが、米国は日米安保条約と関連取り決めを誠実に遵守する、日本の核政策を知っているというような一九七四年のラロック証言の際のアメリカ政府見解を追認したというふうに報道によって聞かされました。これは実はいま問題になっているポイントが外されたまま合意というか、確認をしたという感じでしかないのですが、これは私は虚構の上塗りでしかないと言わざるを得ません。これではいま問題になっている焦点についての回答にはなっていないと思うのです。総理は、国民の疑惑あるいは不安にこたえるために今後具体的にどんな御努力をなさるおつもりなのか、これで満足なさったのか、その点について最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  183. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 安保条約の核に関する事前協議制度のもとにおきまして、いわゆる艦船による核持ち込みを含め核の持ち込みは事前協議の対象になる、これは日本政府の従来から一貫してとってまいりましたところの見解でございまして、変わっておりません。  また、二十日にマンスフィールド大使が園田外務大臣に対しまして、今回のライシャワー発言という背景の中で、昭和四十九年十月にラロック発言との関連で当時のインガソル国務長官代理によって表明された米政府の見解をみずから確認をしていた次第でございます。したがって、ライシャワー発言に関連して事前協議の問題について米側に改めて照会する考えはございません。  政府としては、非核三原則を今後とも堅持していくことは従来から繰り返し御答弁申し上げておるところでございまして、核持ち込みについての事前協議が行われました場合には、常にこれをお断りする、拒否するという所存でございます。今後とも上記に述べた政府としての考え方を十分国民の方々にも御説明をし、御理解を得ていきたいと考えております。
  184. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 念のために伺っておきますが、いまお答えをいただきましたが、改めて総理は、いわゆるイントロダクションという言葉の中に、領海、領空そして寄港あるいは着陸が含まれているという解釈に立っておられるわけですね。イエスかノーかを答えてください。
  185. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 イントロダクションの中に寄港、通過が含まれていることについては、合衆国軍隊の装備における重要な変更を事前協議の対象とする交換公文の規定及びいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解からして十分に明らかでございます。この点に関し日米間に了解の違いはございません。
  186. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ライシャワーさんがおっしゃったかどうかは別として、いま総理言われましたけれども、その解釈は、アメリカ政府なかんずく国防省も全く同じだというふうに御答弁いただけますか。
  187. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私から最初にお答えいたしますけれども、先ほど総理の述べられたとおりでございます。(岩垂委員「私は総理に聞いているのだ」と呼ぶ)
  188. 江藤隆美

    江藤委員長 後で総理に答えさせます。
  189. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私がいま明確に申し上げたとおりでございまして、日米間に了解についての食い違いはございません。
  190. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 では、この解釈についてアメリカと話し合ったことはございますか。
  191. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 すでに安保改定のときにこの事前協議の問題を討議いたしまして、その際に日米間でこの点について話をしているわけでございまして、その際に、了解について差はないということでございます。しかし、念のためにラロック証言が起きたときに、日本に艦船によって核が持ち込まれているのではないかという疑問が出ました。そういう背景をもとにいたしまして日本側から米側に照会した結果、アメリカ側の回答は、アメリカとしては従来どおり安保条約あるいは関連取り決めについてのアメリカの義務を誠実に守る、こういう回答でございます。
  192. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 後から触れていきますが、アメリカは、イントロダクションとトランジットは別だから事前協議の必要はないと考えている。これはアメリカのライシャワーさんの発言を含めていろいろな関係者が言っている。日本の方は、事前協議がないのだから核は持ち込まれていないと理解する。ここには距離があるのです。  そこで私は、これでは非核三原則というのはナンセンスじゃないかと考える。総理が何ぼ言っても、率直なところ非核三原則は厳守するとおっしゃっても、どうもことわざにあるようにイワシの頭も信心からというようなことと同じような気持ちにならざるを得ない。はっきり総理にお答えいただきたいのですが、この点は非常に重大な点ですから念のために伺っておきますが、日米両国間で本当に食い違いはないと断言できますね。
  193. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 食い違いはございません。
  194. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実はこの問題が起こってから、安保改定当時直接かかわったいろいろな方々がいわば発言をなさっておられます。  たとえばこれは十九日の朝日新聞ですが岸総理、これは東京新聞も全部書いてございますけれども、こう書いているのです。「日米安保条約の改定交渉の時には、核装備の艦船や飛行機による寄港、通過の問題は(日米間の)話になっていない。核を持ち込んで基地を造るというような、大所高所からの議論だった。非核三原則は自分の時にできたんじゃない。事前協議は、核を陸上にあげて貯蔵、装備する場合が対象だった。当時、核装備した艦船や飛行機による寄港、通過の問題は話になっていない。」とはっきり発言していらっしゃる。まさか岸さんを一私人だから当てにならないなんていうふうにおっしゃるつもりはないと思うのですが、その点はどうお考えですか。
  195. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私、新聞紙上で、いま岩垂さんがおっしゃったことを拝見をしておるわけでございますが、私はこの御発言は、古い当時のことでもございますし、また岸先生が今日いろいろの状況をお考えになっておるとは思いますけれども、当時日本政府が米側と事前協議の問題につきまして交換いたしました公文書、交換公文及び藤原・マッカーサー口頭了解……(「藤山だ」と呼ぶ者あり)藤山・マッカーサー口頭了解というものは変わっていない、そのとおりである、日本とアメリカとの間には、その点についていまでもそれが尊重され、確認されておるということを申し上げておきます。
  196. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 当時の外務大臣藤山さん、これはNHKの会見で、ちょっと長くなりますけれども、「交渉のなかで核兵器をとう載した艦船の日本への立ち寄りや領海の通過を事前協議の対象にするかどうかの議論があった。しかしアメリカ側が核兵器の扱いは軍事上の機密であり公表することはできないとする強い態度を示したため、結局明確な結論は出ないままになっていた。当時は核兵器をとう載した艦船はほとんどなかったため、日本側の関心の中心は、核兵器を陸あげして、陸上に設置する場合を対象にしていて、艦船の立ち寄りや通過については真剣に議論しようという認識がなかった。現在のように艦船にたいする核兵器のとう載が常識的な時代になれば、日本に立ち寄っていることも可能性としては否定できない。その後の変化に対応して、事前協議の対象になる範囲を、日米間で文書で確認するなど明確にしておくべきではなかったか。」と語っておられます。これは外務大臣ですよ。これも何か記憶に定かでない発言だというふうに私はとることはできないと思います。この点についてはどうですか。
  197. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 藤山先生のそういう報道がございましたが、その後藤山先生はさらに、あの当時の自分とマッカーサー大使との間の話し合いで口頭了解がきちっとできておるし、また交換公文もはっきりと文書で交換をしておる、その裏づけとしての口頭了解というものもちゃんとあるということをおっしゃっておるようでございます。
  198. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは当時外務省の条約畑のベテランとして知られていた下田さん、この方は安保条約改定に伴う国会審議で、事実上外務省責任者としての役割りを果たした方でございますが、五月十九日のサンケイ新聞は、「米第七艦隊の艦艇が日本の港に一時寄港する際、それが飲料水、食糧などの補給が目的ならば核兵器を積載していても事前協議の対象にならないとの合意が日米間にあった」と、以下私は全部読みませんけれども指摘しているのです。交渉の当事者がこう言っているのです。これはうそということですか。うそであるかどうかはっきりしてください。
  199. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  いま御引用になりました下田先輩は、交渉の当事者ではございません。それから、ただいま岩垂委員が引用なさいました水とか食糧とかを積むために日本の港に入るときには核の搭載をしておってもいいんだという了解があったというようなことは全く誤りだと思います。
  200. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは六〇年安保の時代の総理大臣、外務大臣、そして条約局におって、安保の直接の関係者であったかどうか別として深くかかわっておられた外務省の先輩、共通なんですね。  その上に指摘しなきゃならぬのは、きのう二十日の東京新聞ですが、木村元外務大臣、これは非核三原則のときのやりとりなんです。これはそれからかなり後の時間でございますが、四十六年十一月に衆議院本会議で非核三原則の国会決議が行われた、そのときのやりとりで、「非核三原則を政策として打ち出す際“持ち込ませず”に、核を積載した米艦船、航空機の日本審港、領海、領空内通過を含めるかどうか、具体的詰めは行われたのか。」それに対して木村さんは、「いや、“持ち込み”の内容が具体的になんであるかということまでは、詰めていなかった。具体的内容にまで踏み込んでいたわけではない。核を装備した艦船、航空機の領海、領空内通過、一時寄港を“持ち込ませず”の対象とするかどうかまで検討したうえで、非核三原則をつくったわけではない。」とおっしゃっていらっしゃる。  私はこれらの発言をいまちょっと例示的に新聞報道を含めて指摘をしてみました。六〇年の安保の改定作業に直接間接にかかわった方々の御発言なんです。はっきり申し上げて、それはライシャワー発言をきっかけとして、いまだから言えるという形で自由に述べられた、いわば歴史の証書だというふうに私は理解をせざるを得ません。ここで、新聞を信用できないとか、その記憶は少し間違っているんじゃないかというようなことを言って始末をすることは簡単かもしれません。しかし総理、この問題をきっかけにして起こっておる国民の疑惑や不安というものは非常に大きい。率直に言って、いままでアメリカは、政策として核の存在は明らかにしないということだった。だから核の存在というのは、立入調査もできないと言うし、照会もしないと言うし、どうもなかなかつかめないものだなというふうに私も思ってきた。しかし、これだけ実は当時の歴史の証言があらわれているわけです。しかも国民の疑惑は広がっているのです。総理は、園田・マンスフイール下会見で片づいたというふうにおっしゃったとしても、それは私は決して十分ではないと思う。  そこで、ぜひ日米間でこの問題に対する疑惑に答えるために、総理、あなたのためにも私は重要だと思うんだが、国民にとってはもちろんだけれども、この問題に対する統一見解をお出しになるために努力をなさる決意はございませんか。
  201. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ライシャワー元駐日大使の発言を私どもは踏まえまして、二十日に園田外務大臣がマンスフィールド大使にお会いをして、この問題についてマンスフィールド大使の方から進んでアメリカ側の見解をお述べになった。その内容は先ほど私が御答弁申し上げたとおりでございまして、米側におきましても、この交換公文及び口頭了解、そしてその後における安保条約に関連する諸取り決め、そういうようなものは誠実にこれを災行してまいる、今後におきましてもそのことを明確にお約束をなさっておる、こういうようなことからいたしまして、私はこれを改めて米側に照会をするということを考えておりません。ただ、国民の皆さんにそういう事情を十分御説明し、御理解を得るように努力していきたい、こう思っております。
  202. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ただ信じなさい、信じなさいと言うだけでは国民は信じないのです。総理自身がそれだけの決意を持っていらっしゃるならば、日米間でこの問題についてきちんとした、つまりイントロダクションとトランジットの関係について疑問があると言われている、この点は疑問はございませんね、解釈は日米間で間違いございませんねということぐらいはアメリカに照会したってちっとも非礼にはならないと私は思う。そのくらいのことは国民の不安に対してこたえていく総理の国民に対する責任だろうと思うのですが、やるつもりはございませんか。
  203. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、ラロック氏の証言があった際にも、日本政府としてはその点を米側に照会をし確認いたしておりますし、二十日にもうイシャワー発言を背景としてマンスフィールド大使がそのようなことを明確に言っておられるということで、さらにそれを重ねる必要はないもの、私はこのように考えております。
  204. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 総理はそうお考えになっても、われわれあるいは国民は思わないのです。だから、国民の納得するように努力をなさることが総理として必要だと私は強調したいのです。  そこで、これは委員長にお願いしますが、先ほどわが党の矢山委員も言っておりましたが、私が指摘した岸さん、藤山さん、木村さん、下田さんを証人として国会にお招きをして、せっかくこれはマスコミなどではっきりしたお言葉で発言をなさっていらっしゃるわけですから、それが偽りだとか誤りであったとかミスだったというようなことではないと思いますので、ぜひ証人としてお招きする、できればライシャワーさんもということになるわけですが、これは国際関係でもございますからそう簡単ではないと思いますが、このことを理事会においてお諮りいただきたい、委員会として御検討願いたい、このことをお願いしておきたいと思います。
  205. 江藤隆美

    江藤委員長 関係委員会もありますので、理事会において相談をいたしたいと思います。
  206. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 関係委員会というのは、要するに内閣だけじゃなしに全体として、たとえば予算で呼ぶこともあるかもしらぬし安保で呼ぶこともあるかもしらぬということだろうと思うが、私は内閣委員会で問題にしておりますので、当委員会理事会として主体的な意思を明らかにしていただきたい、このことをまずお願いいたしておきます。  そこで総理、古い話で恐縮ですが、一九六四年九月二日、あなたは官房長官として記者会見をされておられます。これはサブロックの持ち込みについて米側から事前協議があった場合は断る、したがって、サブロックを積載した原子力潜水艦が寄港しようとする場合は、日本の領海外でサブロックを他の船舶に積みかえ入ってくることになろう、こうおっしゃっている政府見解、これは統一見解と言ってもいいと思うのですが、それは今日もその認識として変わっていないと理解してよろしゅうございますか。
  207. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 古いことでございますので、私も記録をとってみました。私が当時官房長官として御質問に答えましたところの発言の趣旨は、核搭載艦が入港する場合には当然事前協議の対象であるという趣旨を述べたものでございます。これは現在においても変わっておりません。
  208. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私の言いたいのは、日本の領海外でサブロックを他の艦船に入れかえて入ってくることになろうというところ、この認識も同じでしょう。私はそれを持っているのです。あなたはその言葉のとおり述べていらっしゃる。時間はたっているけれども不変ですね。
  209. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 核を搭載しております場合には、寄港する際には当然これは事前協議の対象になる、事前協議の申し入れをせずに、またわが方からイエスを取らないで入ってくることはない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  210. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 待ってください。お言葉なのですから、私は、あなたの認識がいまも変わっていないかと申し上げているのですよ。はっきり言っているのですよ。言いましょうか。一は、サブロックの持ち込みについて米側から事前協議があった場合、これは断る。米側も、日本政府の意思に反して核兵器を持ち込まないことを確認している。したがって、サブロックを積載した原子力潜水艦が寄港しようとする場合は、日本の領海外でサブロックを他の艦船に積みかえて入ってくることになろう。その場合、日本に立入検査をして確認する権限はなく、米側を信頼するほかはないと言われているのです。昭和で言いますと三十九年の九月二日。このとおりですね。
  211. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。その趣旨はということで先ほど来繰り返し御説明をし、申し上げておるところでございます。
  212. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実はこれはわが党の石橋さんも指摘されておられますが、私も六〇年安保のときには運動隊の中でかかわってきたのです。それなりに古い記憶をいろいろたどって調べてみました。率直に申し上げて、私はこう思うのです。  つまり、安保のときにはいまのイントロダクションとトランジットの間のやりとりというものはなかった。これは藤山さんが、さっきおっしゃったように、船に積んであるいは飛行機に積んでなどということを想定してなかった、したがってやりとりはない、そこが一つの問題なのです。ところが、六〇年四月十九日衆議院安保特別委員会で、わが党の横路節雄さんが、第七艦隊の核装備は事前協議の対象となるかとお尋ねしたら、政府はなると答弁しているのです。この御答弁は、恐らく私が判断をするところ、アメリカの了解なしにそのようにお答えになってしまった。そこで、一九六二年にライシャワーさんが、訓令に基づく国務省の指示で、それは困りますよと当時の大平外務大臣に申し上げに行ったのだ。しかし、そこで大平さんが対応したのは、すぐそこで変えるわけにはいかぬから、六三年に大平外務大臣が国会での答弁で、つまり事前協議のイニシアチブというのは、日本でなくてアメリカがとるのだ、だからアメリカの方が核を積んでいると昔わなければ核は積んでいないのだ、こういうやりとりの中でその辺のつじつま合わせがまずあるのです。これが一つなのです。  二つ目は、六四年九月一日衆議院の内閣委員会で石橋さんの質問がございます。それはアメリカの原子力潜水艦シードラゴンの佐世保寄港に関連しての議論です。サブロックを積んでいるかどうか。積んでいる。そして海原防衛局長が核弾頭を装着していることを認めた。さてそこで、サブロックは核魚雷もあるいはそうでない普通の魚雷も積んでいる核、非核両用だ。入ってくる船はオーケーを言ってしまった。そこで仕方がなくて、鈴木さん、官房長官であるあなたが、そのとおりだといまでも思っていると発言なさった統一見解が出てくるのです。私が言いたいのは、大変残念なことだけれども、そもそもボタンのかけ違いをなさった張本人が鈴木さんじゃないだろうか、ずつと考えてみるとこういうふうに考えざるを得ないのです。それは私の邪推でしょうか。そうでなければこういう日米の間での食い違いというものが、しかもかなり公然と行われるということはあり得ないと私は思うのです。常識的に考えてみて、ペルシャ湾で作戦行動をとっている、あるいは韓国で、あるいは日本海で作戦行動をとっている米艦船が、どこかの島かどこかの船へ核兵器を積み込んで、そして日本へやってくる。出かけていくときには、またそこで積み込んで出かけていく。あなたの認識がこういう認識だとすれば、どう考えても私は、国民には納得ができないし、子供だましではないかと言わざるを得ないのでございます。そういう意味では、この問題というのは、何としても日米の間で、さっきおっしゃったイントロダクションに対する日本側の解釈というのをアメリカもそうですねということで言っておかないと、どうも問題が残るような気がしてならない。その点は総理、いかがですか。
  213. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ライシャワーさんが、当時の大平外務大臣にこの解釈の問題をめぐりまして申し入れをした、また外務大臣と会談をしたというようなことは、私は承知いたしておりませんし、当時の記録に何らございません。私、外務省当局にもこの点を念を押して、当時の経過を外務省は知っておるかどうか、そういうことも調べたのでございますが、外務当局におきましても、そのことは承知していない、こういうことでございます。
  214. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ライシャワーさんは、「核兵器を積んだ米艦艇は、日米両国政府の口頭了解に基づき日本に寄港している。」と表明され、「この口頭了解は現在も有効だ」と新聞で語っておられるが、こういう口頭了解というものはないとはっきりお答えくださいませんか。
  215. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、わが国政府といたしましては、六〇年安保改定当時の交換公文、そしてそれをさらに裏づけるところの口頭了解、この方針を日米両方で確認をし今日に至っておるわけでございまして、ライシャワーさんと当時の大平外務大臣との間にそういう了解がなされたということはございません。
  216. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 念のためで大変恐縮ですが、ライシャワーさんが一九六二年に当時の大平外相に「事前協議にかかる核持ち込みについて、アメリカ側は核兵器の日本国土への搬入なり核基地建設を指すと認識しており、両国の口頭了解でも確認されている」という趣旨の認識の統一を要請されて、大平さんは検討を約束されたというふうに発言されている。このような事実はアメリカ政府の訓令に基づいてやったんだというライシャワーさんの言葉ですが、こういう大平・ライシャワー会談もなかったというふうに理解してよろしゅうございますか。
  217. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ライシャワー教授が言っておられるような趣旨を目的とした会談というのは、外務省の記録を当たってみましてもございません。
  218. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 記録を当たってみてもなかったということだけでなしに、やはりその当時の人たちに尋ねてみて、本当になかったらなかったと、関係者もこう言っているというようなことをきちんと言えないのですか。それならば伺いたい、総理。これほどライシャワーさんはでたらめを言っているのです。いま政府側の答弁を聞いていると、これはでたらめです。私は、ライシャワーさんという方はそういう方ではないと思うが、それはそれとして、少なくとも大使として長い間日本に滞在をなさっておられるアメリカ政府の要人でございます。いまは確かに私人でしょう。しかし、日本に与える影響だけでなしに、日米交渉の窓口の人であったということを含めて考えてみると、そういうでたらめをおっしゃっているライシャワーさんに、日本政府はなぜ抗議をなさらないのですか。なぜ物を言わないのですか。普通の人間なら、何を言っていると言って怒るものですよ。日本政府は、抗議なり、ライシャワーさんに物を言うということはお考えになりませんか。
  219. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカ側も、ライシャワーさんの発言は一私人の発言であるということでございまして、もちろんライシャワーさんの駐日大使という経歴はございます。しかし、現在は一私人ということで、現在のところ、政府としてライシャワーさんにその発言について確認する意向は持っておりません。
  220. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 問題はそこなんですよ。私は、申しわけないけれども、人間の個人的なつき合いでもそうだと思うのだが、それとは事は違うのです。これだけ明確に、しかもこれほどしっかりした記憶に基づいて、しかも、一回ならず二度、三度、日本政府に対する抗議の気持ちを込めた発言をなさっている。私は、正直なところ、ライシャワーさんの発言の方がインチキであってほしい。しかし、現実には、私がそう思ったところで、それは信頼できない。総理、何らかの手だてをライシャワーさんに対しておとりなさい。それがあなたの日本国民に対する政治的な責任というものを果たす道です。どうです、総理。
  221. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、ライシャワー元大使、日米関係に貢献されたその方に対しましては敬意を表しておるところでございますが、いまアメリカ政府も、ライシャワー氏はいまや一私人である、アメリカ政府の証言、この確認というものを日本政府は信頼してもらいたい、こういうことをおっしゃっております。また、同じように駐日大使をされましたところのマッカーサー元駐日大使は、やはりあの当時、日本との間に行われた交換公文及び口頭了解というものはあのとおりであるということもおっしゃっておるわけでございまして、私どもは、アメリカ政府のこの公式の確認というものを全面的に信頼をし尊重していきたい、こう思っております。
  222. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 正直なところ、それじゃ国民は納得できないですよ。ライシャワーさんというのは何かインチキだ、うそをついているということを総理大臣もおっしゃったことになるわけだから、これは国内における発言だけで済むかどうか、私もよくわかりませんが、まあそうであってほしいということも含めながらも、やはりその点は抗議をするとか物を言うとか、間違っていやしませんかと記憶を正すとか、そのぐらいのことはやってもちっともおかしくないし、失礼には当たらないと私は思うんですよ。それもやらないと言うから、さっきのトランジットとイントロダクションの食い違いのところで、いつまでもそうっと持っている。こんなことはいつまでもごまかしはききませんよ。  私の選挙区は横須賀です。これは一九七四年の九月のラロック証言あるいは七八年のクレーター発言によって、アメリカの軍艦艇の核積載のことが問題になった。そして今回のライシャワーさんの発言であります。非常に大きな衝撃を受けています。神奈川県知事や横須賀市長が抗議をしたことだけは皆さんも御理解のとおりです。その上、新聞の報道するところによれば、七九年の夏に横須賀基地を母港とするミサイル巡洋艦「ウォーデン」が訓練中事故を起こして、核弾頭を積載したまま横須賀で修理をしたというふうな関係者の証言がある。また、核魚雷アスロック運搬用のコンテナMK182、183、核ミサイル、ウォールアイ運搬用コンテナMK516が浦郷弾薬庫に運び込まれたり搬出されたりしていることが写真に写し出されている。このような疑惑は横須賀市民のみならず厚木をも抱えている神奈川の県民にとっては大変な問題です。このような疑惑あるいは不安に対して総理からぜひひとつ何らかのそれを解消するための措置をとっていただきたい、このことを求めたいと思うのですが、事実関係を明らかにさせる措置をとっていただくわけにはいきませんか。
  223. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 横須賀市民の皆さんにつきましては、先ほど来私が日本政府の公式見解として申し述べており、また米政府もそれを確認しておることにつきまして十分今後御説明をし、御理解を願って、そして不安のないよう今後御協力をいただくように努力いたしたい、こう思っております。
  224. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 事実関係を明らかにして市民の皆さんに御理解をいただくというように努力するのですね。よろしゅうございますね。
  225. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど来私が申し上げておるように、日本政府の公式見解、米側のこれに対する見解、こういうもので明確でございます。この点を市民の皆さんに十分徹底、御理解を願うように努力していきたい、こう思っております。
  226. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それじゃ不安は解消しません。  それはそれとして、新聞の報道によれば、横須賀を母港とする第七艦隊のたとえばミッドウェー、ミサイル巡洋艦、駆逐艦などなどトータルすれば九隻の船で百発程度を持っているのじゃないかというような報道も行われている。そのことについて総理は持ち込まれていないとおっしゃった。もう質問を終わりますが、私はこの機会に、昭和四十七年三月二日衆議院の予算委員会、これは沖繩国会の際ですが、わが党の安井委員が時の佐藤総理大臣に質問をいたしております。沖繩は返還になる、核ば除かれるということを前提にして、安井委員は、もしも万一沖繩に核が五月十五日以降残っていたら、あるいは将来の段階において沖繩に核再持ち込みというふうなことがあったら、そういう場合には政府は責任をとって総辞職をします、私はそれくらいのことまでやはり言っていただきたい、そうすれば沖繩の人も相当程度満足すると思いますというふうな発言をされて、佐藤総理大臣は「先ほど来核撤去についての外務大臣から種々政府の所信を説明されました。おわかりになった点もおありだろうと思いますが、もし万一さような事態が五月十五日以後も続いているとすれば、それはもちろん重大なる責任を政府はとらざるを得ない、かように私は思います。」というふうに言われております。総理は、もし日本に核が持ち込まれていた、国民を偽っていたというふうな事実が明らかになったとすれば、それこそ総辞職を含めて政治責任をおとりになる、そのくらいの国民に対する責任のあかしみたいなものを示していただきたいと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。
  227. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 佐藤内閣総理大臣は非核三原則ということをわが国の基本的な政策として天下に明らかにされ、この非核三原則の堅持につきまして、きわめて熱心にこれを将来に向かって守っていこう、こういう立場をおとりになりました。自来自由民主党政府は、この佐藤内閣の非核三原則ということを政策の基本として踏まえ、今日もこれに努力をいたしておるところでございます。今後におきましても、鈴木内閣はもとより、わが自由民主党としては、この非核三原則をあくまで堅持して平和国家として努力してまいる、このようにいたしたい、こう思っています。
  228. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 同僚の上原委員と交代をいたします。
  229. 江藤隆美

    江藤委員長 上原康助君。
  230. 上原康助

    ○上原委員 総理に冒頭要望しておきますが、私へのお答えは余りメモを見ないでよろしいですから、ひとつ誠意を持ってお答えをいただきたいと思います。  最初に、公務員二法について一言だけ確かめておきたいわけですが、先ほどの答弁で尽きるかもしれませんが、一応法案の審査が公務員法ですから一言だけ触れますが、御承知のように、定年制の法制化や退職手当の引き下げ法案対象となる公務員関係労働者の皆さんに、この二法に対して根強い不満と反対があることを政府は十分理解、御認識をしていただきたいということであります。したがって、本二法案の審議過程に指摘された多くの問題点について、政府は、御答弁もありましたが、それらのことにつきましては誠意を持ってその善処策を講じていただきたい。特に法施行後の運用に当たっては、地方公共団体を含め、現業、非現業を問わず、労使間の交渉または協議を尽くして問題の処理に当たるということ、また、公務員関係労働者の生活設計や日常生活に大きな影響を与えるような諸制度の見直し等は慎重の上にも慎重を期すべきだと思うのですが、この点について改めて総務長官人事院総裁、そしてまとめて総理の方から御所見をいただきたいと思います。
  231. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生お尋ねのこの二法が成立後関係団体との十分な話し合いをやるかということでございますが、もとより円満にかつ公正な人事管理は労使間のきわめて重要な課題でございますから、法案成立後も、私どもといたしましては中央地方を問わず各職員団体との話し合いを行ってまいりたい、このように考えております。
  232. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 今回の法案の審議をめぐっていろいろな問題点指摘されておることは御指摘のとおりでございます。私といたしましても、これらの諸点は十分配慮しながら、今後の人事行政の公正にして円滑なる運営のために一瞬の努力をしてまいる所存でございます。
  233. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 公務員二法が皆さんの御協力のもとに成立をいたしました後におきましては、その運用に当たっては職員団体の意見等も十分聴取いたしまして、円滑、適正な運営を図ってまいりたい、このように考えております。  また、公務員制度の見直しに当たりましても慎重にこれに対処してまいりたい、こう思っております。
  234. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつ先ほどの総理御答弁、また本二法案の審議過程において総務長官人事院総裁、そのほかの政府委員方々から御答弁がありましたことに対して、公務員関係労働者やわれわれの指摘に対する期待を損なわないように最善の御努力を賜りますよう重ねて要望をしておきたいと思います。  そこで、先ほどもいろいろお話がありましたが、きょうせっかく総理お見えですから、私も大変時間が少なくて短いのですが、総理に主としてお尋ねをしてみたいと思うのです。  まず最初に、最近起きた一連の事件というものは日米安保体制の根幹にかかわる問題だと私たちは見ているわけです。すなわち、去る四月九日の米原潜の当て逃げ事件、日米共同声明の同盟関係問題、その同盟関係をめぐる政府内の見解対立、なかんずく首相と外務省の見解の違い、そして伊東外務大臣の突然の辞任、高島事務次官の辞表提出、まさに日本外交の権威失墜であります。そして先ほど問題になりましたライシャワー元駐日米大使の核兵器の持ち込みについては日米政府間に了解があったという証言、あるいは日本海における日米合同演習によるサケ・マスはえなわ漁船への被害など、これはまさに安保体制、安保条約そのものから派生をしてきた国民への犠牲であり、ある面では戦後日本の冷戦構造で積み重ねられてきた虚構の崩壊を意味して、ると言っても私は過言でないと思うのです。こういう一連の不祥事件や国民的疑惑に対して、日本圏を代表する内閣総一理大臣として、鈴木首相はどのような認識を持ち、どういうふうに責任を感じておられるのか、まずそこいらから見解を承ってみたいと思うのです。
  235. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 日米安全保障条約に関連いたしまして過去においていろいろの問題があったことは事実でございますが、日米政府間の信頼と協力関係、誠意ある話し合いによってそれらの問題も完全に解消し、信頼関係を再構築してきておるところでございます。私は、日米安全保障条約、安保体制というのは、今日、戦後三十年日本が平和で自由に国際場裏において日本民族の復興と再建、そして発展を遂げてきた、何らの心配なしに平和のもとに国家の再建を図ってきた、こういうことで大変重要な意義を持っておる、国民の皆さんも恐らくこの日米安保体制によって日本の平和が確保されたということは評価をされておるところであろう、このように思うわけでございます。したがって、個々の若干の行き違い等はございましたが、それは先ほど申し上げましたように十分日米間の信頼関係の上に処理された、このように考えておるところでございます。
  236. 上原康助

    ○上原委員 相変わらずそういう御認識で日米関係を考える、あるいは国際情勢なり、いま私が指摘した若干の問題等に対処していく政治、外交姿勢であるとするならば、私は、まあ大変失礼な言い方かもしれませんが、国民の期待をますます裏切ることになるのじゃないかという感じがしてなりませんね、鈴木総理。  そこで、具体的な問題について、私はいまの総理の御答弁とは認識を異にいたしますが、その中で幾分明らかにしていきたいと思うのですが、まず事実認識を深める意味で、一体事前協議制はいつから日米両国政府間で取り決められてきたかということ、そしてもう一点大事なことは、しばしば引用されておりますところの非核三原則について、日米両政府間でどういう話し合いが持たれて、この非核三原則というものは日米間の了解なり米側の理解というものがあるのかどうか、この基本的な点についてまず総理の方からお答えをいただきたいと思います。
  237. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 これは条約及び条約に関する交換公文また口頭了解、そういう点にかかわる問題でございますから、しかもずっと当初からの経緯等を踏まえての御質問でございますから外務当局から答弁をいたさせます。
  238. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  事前協議と申しますのは、御承知のように現在の日米安保条約が結ばれたのが昭和三十五年一月十九日でございまして、それが発効いたしましたのが昭和三十五年の六月二十三日でございます。そのときに、その条約とともに国会の御承認を得ました条約第六条の実施に関する交換公文という岸総理とクリスチャン・ハーター合衆国国務長官、この両者の間で交わされた交換公文がございます。そこで「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本政府との事前の協議の主題とする。」というふうに取り決められたわけでございまして、先ほどの日時からこの事前協議制度というものが安全保障条約とともに設定されているわけでございます。  それから、第二点の非核三原則がアメリカの了解を得ているかということでございますが、本来非核三原則というのは日本国の主権の作用といたしまして日本国が主体的に採用いたしました日本国の政策でございます。それについてアメリカの了解を得るというような問題ではございません。かつまた、この非核三原則と申しますのは、国際場裏におきましても、日本国内におきましても、長い間日本政府はそれを明らかにしてきているところでございまして、アメリカも、わが国が非核三原則を持っておるということは十分承知しているところでございます。
  239. 上原康助

    ○上原委員 そこで一つのいま疑惑になっている問題点が私はあると思うのですね。確かにいまお答えがありましたように、事前協議制というのは安保条約第六条の実施に関する交換公文、岸・ハーター書簡で確認を了解されていますね。  しかし、ではこの事前協議制というものは、私も沖繩国会からおりますので相当核問題についてはいろいろお尋ねもしてまいりましたが、適用されたためしはありますか。言うところの配備における重要な変更、装備における重要な変更、この第二項が核弾頭及び中距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設、アメリカはこれを盾にとっているわけですよね。安保条約並びにその関連取り決めというのはそうなんでしょう。そして三点目に、わが国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設、区域の使用の点、これが一遍だって適用されたことがありますか。
  240. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま上原委員がお述べになりました事前協議の主題にかかわる事項について、現在まで適用されたというか、あるいは事前協議についてアメリカ側から日本に対して申し込んできたケースはございません。
  241. 上原康助

    ○上原委員 これが締結されてから何年何カ月経過していますか。
  242. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 二十一年でございます。
  243. 上原康助

    ○上原委員 二十一年経過して一遍も適用されてない。じゃ皆さんはどうして核が持ち込まれた、持ち込まれていないの確認をするのですか。
  244. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まさにそういう事態が起こらなかったということでございまして、アメリカ側は核を持ち込む際にはこの事前協議の制度に基づいて日本側に了解を求めてくる、これは事前協議の先ほどの岸・ハーター書簡あるいはその後の類似の大統領と総理大臣との間で、アメリカの大統領は、アメリカは日本に対する安保条約あるいは関連取り決めに関する義務を誠実に実行する、こういうことから来ておるわけでございます。
  245. 上原康助

    ○上原委員 ここは国会の場ですよ。一体何カ年、皆さんこんな白々しいお答えをして国民を愚弄し、うそにうそを積み重ねていくお考えですか。少しは良心のとがめはないのですか、総理を初め防衛庁長官、条約局長、北米局長。国会に対する責任と国民に対する責任をお感じになれば、この期に及んでそういう白々しい答弁はできないはずですよ。どうなんですか、そこは。総理、あなたどういうお気持ちなの。これだけライシャワーさんがおっしゃっている。先ほど言ったような一連の問題に対しての認識、あなたは安保条約があるから平和だと言うんだが、それだけでは事は済ませない問題がいま次から次と起きているわけです。それに対してあなたは一国の総理としてどのように対処していかれようとしているのか。自民党が安定多数だからということで——恐らくここで聞いておられるどなただって、先ほどからの岩垂委員の御質問を初めやりとりを聞いて、それが事実だと思う方はいないと私は思うんだよ、国民も含めて。それに対してりっぱな解明をしなければいかないのじゃないですか。この際、総理の責任ある答弁を求めたい。
  246. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、ライシャワーさんがあのようなことをおっしゃっておることは新聞等で承知をいたしておりますが、このことにつきまして園田外務大臣が二十日にマンスフィールド大使にお会いになりまして、マンスフィールド大使の方からこのことにつきまして、アメリカ政府としてこの問題については従来の交換公文の文書及び口頭了解、そういうものを誠実に実行してまいる、こういうことを強く附言をされておるところでございまして、政府といたしましても、このマンスフィールド大使の御発言というものを米政府代表する公式の御発言として受けとめておるわけでございますから、いまや一私人になられたライシャワーさんの発言よりもこのアメリカ政府代表してのマンスフィールド大使の御発言というものをわれわれは信頼をし、今後もそのように進めてまいりたいと考えております。
  247. 上原康助

    ○上原委員 総理、あなたがそういうことを国会の場で一国の総理として強弁なざったってぼろは次から次へまた出ますよ。これは一私人という立場で済ませる問題じゃないでしょう。きょうは時間がありませんから多くは触れられませんが、あなた、そんなことではとてもじゃないが納得できませんよ。ライシャワーさんはこうまで言い切っているのですよ。日本政府の国会答弁、核兵器積載船の通過をも許されないについてわれわれ米国の了解と違うということで大平外相に申し入れた、困惑していると言っているのですよ。(「ライシャワーの言うことだけが本当だと思ったら大間違いだ」「そんなことを言うならうそか本当か確かめればいいじゃないか」と呼ぶ者あり)そこまで言い切っているのですよ、あなた。そこまで言い切っているのに——委員長、不規則発言をちょっと……。
  248. 江藤隆美

    江藤委員長 質問中でありますから、議席同士の発言はお慎みを願いたいと思います。
  249. 上原康助

    ○上原委員 そこで改めて確認したい。ここまで言い切っておられる。同時に、さらにライシャワーさんの言い分としては、これについてはその口頭了解があった、アメリカ政府にもメモがあるはずなんだ、ここまで言い切っておられるのですよ。先ほどもありましたが、核持ち込みについては大平外相への申し入れも米政府の訓令に基づいて行った、ここまで言い切ったら、一私人でも、かつては駐日大使ですよ。そこで皆さんは、きのうですか、園田・マンスフィールド会談をやったから改めて確認する必要はないと言うのですが、ラロック証言が一九七四年に出たときも、一退役軍人だということで最初取り合わなかった。じゃあのときはアメリカ政府に照会をしたのに、何で今度は照会できないのですか。どうしてただすことができないのですか。はっきりしなさい。——あなた引っ込んで総理に答えさせろ。
  250. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 おっしゃるとおりラロック証言のとき米政府に照会をいたしまして、米政府から、あの交換公文及び口頭了解をアメリカ政府は今後も誠実に実行していくということを回答を得ております。今回、園田外務大臣がマンスフィールド大使にお会いしたとき、マンスフィールド大使は、そのラロック証言のときのアメリカ政府の回答、これを具体的にお話しになりまして、その回答というものは今日においても変わりがない、アメリカ政府はそういう態度でこの問題に誠心誠意当たっておる、こういうことを言っておるわけでございます。
  251. 上原康助

    ○上原委員 そこで、これは園田・マンスフィールド会談で、昨日確かに安保条約上の事前協議制、非核三原則に従って寄港、領海通過を含め核持ち込みを認めない。これは今後も一切通過も、空域を含めて領海、空域、それから寄港、一切日本政府としては認めない、これは断言できますね。総理、断言できますね。航空機にしても艦船にしても、アメリカの核持ち込みは一切日本は認めない、確約できますね、先ほどの答弁で。いいですね、総理。
  252. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 事前協議の対象になるわけでございますから、日本政府としては非核三原則の立場に立ちましてこれを認めるわけにはまいりません。
  253. 上原康助

    ○上原委員 あなた、失礼ですが、事前協議ということと非核三原則という本当の中身をおわかりですか、失礼ですが。そんな答弁がありますか、あなた。事前協議の対象にならない——一切認めないか認めるかを聞いているんだ、私は。
  254. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私が少し丁寧に申し上げたのでございますが、認めるわけにはまいりません。
  255. 上原康助

    ○上原委員 それじゃ一切認めないというふうに理解をしておきましょう。しかし、またアメリカ側からクレームがつくでしょうね。  そこで、あなたのくるくる変わる答弁には恐らく与党の方々もうんざりなさっている方もいらっしゃると思うのですが、昨日ですか、日本記者クラブであなたは講演をなさって、事前協議制で道が開かれており——いわゆるアメリカの核のかさ云々の質問に対して、現実的に対処していくとお答えになったですね。しかし、あわててまたいまのように非核三原則や事前協議制があるからということで軌道修正をなさった。ここに本音が出ていると思うのですね。いわゆる事前協議制の道が開かれており、現実的に対処していく、これはライシャワーさんやアメリカ側の言い分と符合する。なぜこういうことをおっしゃったか。この真意は何ですか。改めてお聞きしておきましょう。
  256. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 昨日、日本記者クラブにおきまして講演の後、ライシャワー発言を背景にいたしまして御質問がございました。この艦船の核持ち込み、通過等の問題につきまして数名の方からこもごも御質問があったわけでございます。それに対しまして私は、わが国は非核三原則を堅持しておる、そしてこれは日米安保条約の核に対するところの事前協議の条項のもとに、わが方としてははっきりとこの核の持ち込みは認めない、あくまで非核三原則を堅持していくんだ、こういうことを再三私はあの場においても答弁をいたしております。  そういう中で、アメリカの新聞社の記君の方が、日本は日米安保条約を結んでおる、これに対して核の抑止力というものを期待していないのか、こういうお話がございましたので、私どもはアメリカ側から具体的な事前協歳の申し入れがあった場合にはこれは十分協議に応ずる、こういうことを申し上げた。その結論については日本は独自に判断をするわけでございまして、三原則並びに国民感情、こういうものを踏まえて、これに対してはノーと結論を出す、こういう考えでございます。
  257. 上原康助

    ○上原委員 いまのノーの考えは、有事も含みますね。
  258. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は核戦争というものを軽軽に予断するわけにいかない。これは人類の破滅につながる問題でございます。したがいまして、核戦争を前提としたような場合にどう対処するかの、そういう御質問に対してはこの際私はお答えをしない方が妥当である、こう考えます。
  259. 上原康助

    ○上原委員 先ほどの御答弁で、園田・マンスフィールド会談で、わが方、日本側が言っているいわゆる一時瀞港、領海、領空への核持ち込みも含まないということはマンスフィールド米大使も了解したわけですね。
  260. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ちょっと御質問を聞き漏らした点がございましたので政府委員から聞いておりましたが、私は、マンスフィールドさんがこの問題についてどのような見解を表明されたか、アメリカ政府代表してどういうお話をしたかということは、先ほど詳細にお答えを申し上げたとおりでございます。
  261. 上原康助

    ○上原委員 それは先ほど詳細でなかったですね。何で肝心なところをあなたはぼかすのですか。おかしいですよ。日本側の言い分とアメリカ側の言い分は違っているんです。ちゃんと食い違いがあるんじゃないですか。それを解明しなさいと言うんだ。あなた首振り振りしますが、だれが聞いたってそうなんだ。これは間違いで済ませる問題じゃないんだ。  そこで、時間がありませんので次に進みますが、あなたは日米百脳会談後の問題でもいろいろあったのですが、しかし総理、私が政治責任云々と言うのも、あなたの御答弁も私は納得できませんが、もう少しは事態の深刻さを御認識いただかなければいかないと思いますよ。  これはきょうの新聞なんです。「首相「事前協議」で発言混乱」「現実的対処する」「直後、一転打ち消す」「首相、また発言訂正」「寄港など現実対処」「直後にあっきり“全面撤回”」みんなトップ記事ですよ、総理。「核器港、現実的に対処」「首相発言、また否定」「あわてて統一見解」「事前協議ではノー」「“核”寄港など現実的対処」「イエスありうると示唆」「事前協議で見解、あわてて否定」「首相、相次ぐ発言訂正」「おかしいぞ首相の外交感覚」「「核」でまた発言訂正」あなた、新聞を毎朝読んでいらっしゃるでしょうね。「首相「核」事前協議で混乱発言」「「寄港イエスも」示唆」「直後に訂正、野党追及へ」いま追及されている、あなたは。「「核」見解は二転、三転」これはきょうだけの新聞ですよ。一国の総理大臣が五月の十日、日米共同声明が発表された以降今日までの混乱ぶりというのは大変な問題ですよ。これに対しては、あなたはきちっとした政治責任を感じていただかなければいかぬと思う。  そこで、防衛問題を一点お聞きいたしておきますが、今度の同盟関係には防衛的色彩はないとあなたは言い張ったが、とうとう軌道修正なさった。いま言うようにくるくる変わった。このシーリング問題で、要するに五十七年度予算で防衛費の別枠扱いはしないということをあなたはワシントンでたしかおっしゃった。いまもその御見解に変わりはないですね。
  262. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 五十七年度予算の編成の問題は、いま政府各部門におきましていろいろ検討をいたしておるところでございます。また、一方におきまして私は、五十七年度予算の編成に当たりましては増税なき財政再建を図りたい、こういうことから第二臨調の中間答申もお願いをしておるわけでございます。そういう臨調の中間答申、それからこれからの作業等々を総合的に勘案をいたしましてシーリングを各省庁に示すようにしたい、こう考えております。
  263. 江藤隆美

    江藤委員長 大蔵省の答弁、いいですか。
  264. 上原康助

    ○上原委員 いや、いいです。  また軌道修正ですね。あしたになったらまた変わるのじゃないですかね。時間がありませんから、いまの問題も留保しておきましょう。  そこで、今度の日米共同声明も八項でいろいろ問題が出た。沖繩国会で佐藤・ニクソン共同声明も第八項が問題だった。きょうそこまで触れられませんが、しかし時の総理大臣がアメリカもうでをするたびに在日米軍基地は強化されるんです。特に沖繩は。最近明らかになっていることは、今度F16が韓国に配備される。その後方支援基地施設として嘉手納に来年九月から新しい施設ができる。CIRF、集中中間整備施設と言っている。嘉手納基地の空軍の機関紙「ファルコン」の五月十二日号は、F16の後方支援基地のための機材や新しい要員の配備をすでに行っている。恐らくこれなども日米共同でやったんだろう。F16は当然核装備になるわけですね。このCIRF、集中中間整備施設、こういうことまでもわが方のいわゆる負担でつくるのかどうか、また、この新しい施設をつくることについて日米間ではどういうふうに話し合ったか、簡潔にお答えいただきたい。
  265. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 今回の首脳会談におきまして具体的な話は一切しておりません。
  266. 上原康助

    ○上原委員 F16の後方支援基地建設の問題についても政府はわからぬというわけですか。
  267. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 外務省としては全く承知しておりません。
  268. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁、どうですか。
  269. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どももまだ全く承知しておりません。
  270. 上原康助

    ○上原委員 しかし、皆さんが知らないと言っても、すでに日米軍事同盟というものは着々と強化されてきている。総理、あなたは防衛的色彩はないと言っているけれども、どんどん強化されている。  そこで最後に、あなたは九月に沖繩を御訪問なさるようですね。核抜きに行くのですか。核持ち込みに行かれては困るのですが、訪沖の目的について所信を聞いておきたいと思うのです。
  271. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 沖繩県は、今日まで整備計画を設定し、その整備計画に基づきまして開発と振興を進めてまいったわけでございまして、相当の成果をおさめておる、沖繩県民の御協力、御努力と相まって成果をおさめておる。そこで今度新しい整備計画をいま策定しつつあるところでございます。私は、沖繩県が本土との格差をなくして、そして県民の生活が向上できるようにということを念願いたしておるわけでございます。そういう意味合いから沖繩を一遍視察をしておきたい、こう考えておるところでございます。
  272. 上原康助

    ○上原委員 時間ですから、その視察のときには、四十六年十一月二十四日の国会決議にもあるとおり、基地の整理縮小を含めてなさいますね。
  273. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私の沖繩県視察の目的はいま要約して申し上げたとおりでございまして、県民の皆さんのいろいろな御要望なり御意見というものも十分拝聴いたしたい、こう思っております。
  274. 江藤隆美

  275. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公務員二法の質疑について衆議院においてもいよいよ大詰めの段階を迎え、鈴木総理大臣においでを願って総括的な質問をすることになったわけでありますが、公務員二法については、定年制の導入そしてまた退職金のカット、それに伴う修正ということでそれなりの論議が交わされてまいりました。本日は、鈴木総理に対して、公務員像及び公務員制度に対する見解とか、あるいは公務員独自の退職手当制度の存続とか、あるいは公務員制度に対する構想とか、そういう見解をそれなりに実は質問したいと用意をしてきたわけでありますけれども、わが党は、基本的に是正するものは論議を通じてそれなりに審議に反映できたものであると考えております。  本日は、限られた時間に総理の出席をお願いしましたので、当面する重要な外交課題をこの際放置しておくわけにはいきませんので、質問の問題について必ずしも二法とは余り関係がないということになりましょうけれども、お許しを願いまして質問に入らしていただきたいと思います。  さて、今回のライシャワー元駐日大使の発言は、昭和四十九年秋のラロック証言に引き続いての核の持ち込みを裏づけする重大な発言で、かつての政府高官、しかも日本への外交の窓口になってすべての外交機密を知り得た立場にあった人だけに、その信憑性ははかり知れない重みがあると私は思っております。また、そのことについては認識をしていただかなければいけないと思っています。その元駐日大使のライシャワー氏の発言をただ現在一民間人の発言として片づけ、葬ろうとしているところに国民の大きな疑惑が生まれておりますし、日本政府のいまだかつてないろうばいぶりというものが目に見えております。  そこで、私はまず第一に、鈴木総理は二十日の日本記者クラブ主催の昼食会で、ライシャワー元駐日大使発言に関連した核積載米艦船の寄港、領海通過問題で、事前協議によって日米間で現実的に対処していかなければならないと述べておりますけれども、事前協議によって日米間で現実的に対処するということは、これは首相はどういう御真意なんでしょうか、そのことをお聞きします。
  276. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほども同様の御質問に答えたところでございますが、数人の方々から、事前協議の問題それから核を積載した艦船の寄港、通過等の問題、こういう問題につきまして御質問がございまして、その際私は、明確に非核三原則はあくまで堅持していく、その核の持ち込みというようなものは日本としては絶対に容認できない、こういうことをお答えをしておるわけでございます。米記者の質問もございまして、そういう際には事前協議という当然の手続があるわけでございますが、これに対して私は、現実的というのはわが国の非核三原則の堅持、国民感情、そういうものを踏まえてこれに対処する、こういうことを考えて発言をしたわけでございまして、後でその点が何か日本政府の方針を変えたような感じを与えたということで、その場合でも明確にノーと、こう答えるということを敷衍説明をしたわけでございます。
  277. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたが記者クラブ主催の昼食会で言われた現実的な対処という問題は、これはいかにも核の持ち込みを許すという内容につながるような発言であるということで実は問題になったわけでありますけれども、総理はその後たしか記者団に懇談を求めて、核に対してはすべて事前協議でノーとする政府方針には変更はないということを述べられたというふうに伝えられておりますが、相次ぐ釈明と訂正で国民はどれを信じていいか全くわからないというのが現状でないかと思います。  このライシャワー問題が起きた直後、総理は、核の持ち込みは佐藤内閣以後は非核三原則は厳守されているが、それ以前は核の解釈がよく詰まっていなかったようだと述べられております。ということは、核の持ち込みがあってもやむを得なかったという意味の発言にもとれるわけでありますが、その点についてはどうなんでしょうか。
  278. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、国会で御答弁を申し上げておること、国民の代表である国会の皆さんからお尋ねがあり、それにお答えをしておることにつきましては、前言を翻したり、そういうことは一切いたしておりません。ここで私が申し上げることは国会を通じての本当に責任のある発言でございますから、私は、その方を皆さんが確認をしていただきたい、こう思うわけでございます。  いま申し上げましたように、事前協議が米側からあった場合、そういう際には、これは事前協議制があるわけでございますからこれに応ずるわけでございますけれども、その際には、非核三原則並びに特殊な日本国民の核に対する国民感情、そういう点を踏まえて、そして私はこれに対してノーと答えるということをここで明確に申し上げておくわけでございます。  それから、佐藤内閣におきましては、はっきりと国会を通じまして非核三原則の政策を打ち出しました。私は、日本の核に対する政策というものがその時点においてきわめて明確になった、このように考えております。  なお、内容的に触れますと、御承知と思うのでありますが、領海条約を国会において御審議をいただきました際に、佐藤内閣の三木外務大臣が、日本はいままで国際法に基づいて無害通航権というものを尊重してきたのであるけれども、この非核三原則、核に対する国民感情その他を勘案して、日本政府としては通航についても今後事前協議の対象とする、こういうぐあいにいたしたことは御承知のとおりでございます。そういうようなことを含めて私は申し上げておった、こういうことで御理解を願いたい。
  279. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一方、外人や国民の一部の中に、核積載の艦船あるいは航空機の領海、領空の寄港、通過を認めないとするならば、日本がアメリカの核のかさに頼っていることと矛盾しないかという疑問があるわけでありますけれども、それに対して総理はどういう御見解をお持ちなんでしょうか。
  280. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 プレスクラブの米人記者の御質問と同じような御趣旨のように伺いました。私は、日米安保条約によりましてアメリカの核の抑止力によって日本の安全に御協力を願う、こういう立場をとっておるわけでございますが、それは必ずしも日本の国土あるいは領海等にそういう核の持ち込みをしなくとも、十分その核の圧倒的な力、これが核戦争の抑止に働いておるわけでございますから、そういう意味で十分これは機能しておる、このように考えるものでございます。
  281. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 有事の際の核のかさとはどういう状態意味しているのでしょうか。有事において核の持ち込みはどうなるか、私は当然事前協議の対象になると思うわけでありますけれども、総理が言う現実的対処ということは、この場合についてはどういう対処をされようとしているのでしょうか。
  282. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私の現実的対処ということは、先ほど来繰り返し社会党の代表方々にも御答弁をし、いま鈴切さんにも御答弁申し上げたとおりでございます。  有事の際においてどういう対応になるか、私は核戦争というようなものを想定したことは実はないのでございます。そういうような事態は、これは人類の破滅につながる、こう思っておるからでございます。しかし、この点については、佐藤総理大臣がかつて国会におきまして、そういう有事の際でも持ち込みに対してはノーと言うということを明確に申し上げておるところでございます。
  283. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、有事の際にもしアメリカから事前協議があった場合においても、これはもうはっきりノーである、イエスは一切ないのだ、核に対してはもう一切何もかもイエスはないのだ、こういうふうに受け取ってよろしゅうございましょうか。
  284. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いまはっきり申し上げたように、佐藤内閣以来非核三原則を世界に宣明をし、そのもとにおいて平和国家として日本の将来をやっていこう、こういう決意をいたしておりまして、佐藤さんが言明されたこの核に対する考え方、これは歴代内閣がこれを堅持しておるところでございます。
  285. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、有事のときに、どんな場合があろうとも、いわゆる核というものは何も日本の国に持ち込まなくても、十分たとえば原子力潜水艦によるところの攻撃とかあるいはまた航空母艦とか、あらゆる角度からそういう攻撃ができるから、少なくとも日本の主権の及ぶところにおいては一切核は真空状態である、そして向こうから事前協議をされたときにはもうノーである、このようにはっきりとお答えになる、そういうふうに受け取ってよろしゅうございましょうか。
  286. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど来何遍もお答えしておりますように、そういう非常の事態におきましても、佐藤内閣以来わが党内閣はそのような方針を堅持していく、これからも堅持してまいる、こういうことであります。
  287. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理は、英語のイントロダクション、いわゆる持ち込みについて調査した結果、日米が口頭による了解をしたことはないと言っております。それは私は大変な問題であろうと思います。今日、核兵器積載の艦船及び航空機が、この解釈の違いから、ライシャワー元駐日大使は、寄港とか一時通過までこれに含まれるものではないとして、日本の寄港には核兵器を積載したまま立ち寄っているし、事前協議もかける必要はないという判断に立っております。それでは何のための非核三原則か。事前協議が無視され、全く形骸化されていると言わざるを得ません。私は、何をおいてもこの解釈に対する合意と一致を両国間で明確にすべきではないかという点については、これは国民の皆さん方もそう思っているでしょうから、ぜひこれを両国間において合意と一致をするということについて総理はおやりになりませんか。
  288. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ライシャワーさんの発言に関連して、このイントロダクションという問題についての解釈がいろいろ論議されておりまして、その解釈をめぐってライシャワーさんが当時の外務大臣の大平さんに解釈の統一方の要請を求めたというようなことをおっしゃっておるようでございますが、両方の話を聞かなければわからないわけでございまして、私は当時の大平外務大臣からさようなことを聞いておりません。私は大平氏とは非常に近い関係に個人的にもございますが、大平氏からそういう話は聞いておりませんし、外務省の諸君にもよくただしましたが、そういう記録もなければ、そういう話を聞いたこともない、こういうことを言っておるわけでございます。
  289. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカのイントロダクションに対する見解については、核兵器搭載艦船及び航空機の寄港あるいは一時通過まで含んでの持ち込みで、日本政府と全く同じであるということを日本政府ははっきり明言することができましょうか。
  290. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 政府はずっとその理解のもとに進んでおります。いまでもそれを堅持しております。
  291. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府はそういうように理解をしているというふうに言われておりますけれども、これは実は大変な問題でございまして、すでに五十年の二月十五日、ラロック証言のときに核の持ち込みが予算委員会で大変に論議されました。そのときに私も実はこの問題を取り上げたわけであります。矢野書記長がMK101、いわゆるルルが日本に持ち込まれた疑いがあるということで、カーゴーリストを中心にしてこれを追及しました。私もまた、核爆雷がやはり田浦に陸揚げされたということ、オクラホマシティーに積み込まれた、そういう内容について、これまたカーゴーリストを中心にして追及したことがございます。  それと同時に、やはり問題になったのは、日米安保条約の事前協議についての昭和四十三年四月二十五日の藤山外務大臣とマッカーサー駐日大使の口頭了解というものでありますけれども、それは「日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。」ここに問題があるのじゃないか。すなわち、この了解事項については、少なくとも日本政府の了解とアメリカの考え方と全く違うのじゃないだろうかということの問題点指摘しまして、実は政府もアメリカにこの問題を問い合わせたといういきさつがありました。アメリカからも、ずいぶん長くかかって、そして六月の半ばごろに、そのいわゆる了解事項についての返事が来たといういきさつがございます。  そこで、そのときに宮澤国務大臣が言ったことは、  鈴切委員のお尋ねがございました後に、東京におりますアメリカのホッドソン大使並びにその補佐官の人々においでを願いまして、私と山崎アメリカ局長とから、四十三年四月の文書を提示いたしまして、これは英訳文を添えてございますけれども、それで、藤山・マッカーサーの  了解は、このようなものであるとわれわれは考えておる、それについて米側として御異存がないことであるとは思うが、お返事を求めたい、こう申しまして、それからかなり時間がたったわけでございますが、この二十六日でございますか、米側から異存がないという返事が寄せられたことでございますから、したがいまして、漠然と昭和三十五年に藤山、マッカーサーが話したこと、あのことに御異存はないだろうと申したのではなくて、四十三年に、国会の御審議の席上お示ししましたあの文書そのものについて、先方の異存ありや否やを問いただしたわけでありまして、返答は、したがってあの文書に盛られました内容について寄せられたものと考えております。 こういう返事が来たわけであります。  そこで、私がお聞きしたいことは、そのイントロダクションという、その内容についてはっきりといま食い違っている部分について、言うならば、あなた方はその食い違いというものについてアメリカに了解を得た、そういうことなのですか。そういうことであるならば、どういう議事録が残っているか、すべてそういうものをお出し願いたい。
  292. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 あの一九六〇年のときでございますか、岸氏、ハーター氏の間に交わされたところの交換公文、そしてそれを相互に説明をし、理解をするための藤山さんとマッカーサー大使との口頭了解、これを私はこの問題についての日米間の合意ということに受けとめており、その後ラロック問題が起こった場合におきましても、今回のライシャワー氏の発言がございました際にも、この交換公文と口頭了解、これを米側も誠実に実行してまいる、こういうことを私ども確認をいただいておるわけでございまして、そういうぐあいに理解をしておるということをいま申し上げました。  なお、口頭了解等の問題につきましては、古いことでございますから、外務省の記録その他があるかどうか、外務当局から説明をいたさせます。
  293. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほどの鈴切委員の御質問の点について、確かに昭和五十年三月の国会の議事録のとおりでございまして、わが方から、いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解について英訳文を付してアメリカ側に照会し、アメリカ側からその点について日本側の考えに異存がない、これは先ほど委員が言われたとおりでございます。  そこで、問題は、安保改定の際の口頭了解に戻るわけでございますけれども、合衆国軍隊の装備における重要な変更を事前協議の対象とするといういわゆる岸・ハーター交換公文、それから先ほどから引用のあります藤山・マッカーサー口頭了解、その二つから考え合わせまして、日米間においていわゆるイントロダクションについて何ら差がないということでございましたけれども、念のため、先ほど申し上げましたようなかっこうでアメリカ側に昭和五十年に確認を求めた、こういうことでございます。
  294. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、イントロダクションという解釈については、日米間においてすでにこの問題についてはいろいろと話し合われ、そしてそれはまさしく日本が言うところの核持ち込みについては、核積載艦艇及び航空機の一時通過並びに寄港も含むということについて、アメリカは明確にそのイントロダクションというものについての合意はした、こう受け取っていいですか。
  295. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 交渉の過程についての個々の日米間のやりとりについて立ち入って論ずるわけにもまいりませんけれども、御質問の問題点については、岸・ハーター交換公文の規定、さらに藤山・マッカーサー口頭了解からして日米間にいわゆる持ち込みについて相違がないということは明確でございます。それは先ほど述べたとおりでございます。
  296. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはちょっと違うのじゃないですか。要するにこれは、藤山それからマッカーサー駐日大使との、日米安保条約の事前協議については、これは日本政府は了解をしているということに対して正式な文書ではないわけです。両国間の合意じゃない。そのためにいろいろ問題があって初めて、言うならばアメリカに問い合わせをし、それでいいだろうということになったわけであって、具体的のイントロダクションというその内容についてどういうふうな話し合いが行われ、どういうふうな見解が出されたか、はっきり出してくださいよ、その点については。
  297. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 藤山・マッカーサー口頭了解でございますけれども、そのもとになります岸・ハーター交換公文、これは国会の御承認を得た公文でございます。一九六〇年の安保改定の際にこの二つの、交換公文と藤山・マッカーサー口頭了解、それからして文理上持ち込みというものはないのであるということは明瞭でございまして、その点について日米間にいささかも錯誤はない。しかし、その後国会の御論議もございまして、先ほど申し上げましたように五十年にこの口頭了解に英訳文を付してアメリカ側の了解を求めて、日本側の了解とアメリカ側は何ら変わりない、こういう回答を得ているわけでございます。
  298. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先日ライシャワー元駐日大使が証言した日本語で言われる持ち込みと訳している部分、すなわちイントロダクションは、核の貯蔵など核兵器を陸に揚げて備えつけることを意味する、だから核兵器の寄港とか領海通航を含まない、こういうふうに言っているわけでありますけれども、そのアメリカ側の解釈に対して、日本政府は核の寄港は完全にオーケーだという口頭合意を忘れたと思っているがということをライシャワーさんが言っているわけでありますけれども、本当にそういう口頭合意をされたのですか。
  299. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 核の艦船の寄港あるいは一時通過はこの例外であるというような口頭了解があるとうイシャワー証言で報道されておりますが、そういう口頭了解あるいは秘密の了解というものはございません。
  300. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 イントロダクションという内容、核が入ってきているかきていないかという事実を明らかにする、いわゆる語句の解釈が非常に重大な問題ですね。これから後も恐らく日米の中にあってこの問題は必ずやくすぶり続けていくと私は思います。そうなってきた場合、やはり日米間でこの問題について明確に統一見解を出すべきだと私は思うのですが、総理はその気持ちはありますか。
  301. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほども申し上げたように、ライシャワーさんが当時の大平外務大臣に会ってこの問題で申し入れをし、解釈を米側としてはこう考えている、それに対してはいと言った、オーケーと言ったというようなことを言っておりますが、大平さんはそういうことを言っておらない、後の外務大臣にもこのことを引き継いでおらない、外務事務当局も一切承知しない、記録もない、こういうことでございますから、私どもは、先ほど来答弁を申し上げておりますように岸・ハーター交換公文、そしてこれに伴うところの藤山・マッカーサー口頭了解、これを日米の確認された見解としていまでも堅持しておるところでございます。
  302. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは委員長にお願いいたしますけれども、ライシャワー元駐日大使は、イントロダクションという言葉については日本とアメリカとの考え方が違う、こう言っているわけでありますから、この真相解明には重要な方であると思います。私はその真意を国会で聞く必要があろうと思いますので、委員会として、証人でも参考人でもどちらでも結構ですから、そういうことでぜひ御配慮を願いたいと思うのですが、委員長の御見解をお聞きします。
  303. 江藤隆美

    江藤委員長 先ほど来同様な御要求もあることでありますから、後刻委員会において取り扱いを御相談いたしたいと思います。
  304. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのことにつきましては委員会理事会で相談をするということで委員長からお話がありましたけれども、非核三原則は、歴代の総理及び外務大臣も、公的な場所において、しかも国会の場において国是ということで表明されております。われわれの理解によりますと、国是というものは国家政策の基本原則であって、内閣の変更とか政策の手段によって軽々しく変更できるものではないと思っておりますが、鈴木総理の御見解をお聞きします。  また、それにつきましてはおのずと政治責任というものがついて回ると認識をしておりますが、総理大臣、どのようにお考えですか。
  305. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 佐藤内閣以来わが党内閣がこれを天下に宣言し、また国会におきましても非核三原則につきましての御決議もいただいておるということでございますから、これはわが国の基本的政策である、私どもはそのように理解をいたしておりまして、今後ともこれを誠実に堅持してまいる考えでございます。
  306. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、当然これからも政府は、たとえ核が入っていようが核は絶対入っていないんだ、ライシャワーさんが言ったごとは全くのうそだ、こういう立場をとっておられますから、しょせんは、今後核の事故が起きるかあるいは汚染が出たときに初めて核の存在が明らかになるということも必ずしも考えられないことではないと私は思うわけでありますけれども、そういう場合が出たときには、総理は責任をとりますね。
  307. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、政府の進んでの宣言、国会の決議、これは私は何よりも重いものだ、このように考えております。
  308. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 以上をもって、時間ですから終わります。
  309. 江藤隆美

    江藤委員長 神田厚君。
  310. 神田厚

    ○神田委員 本日、公務員三法の総括質問ということで総理の御出席をいただいております。時節柄、いまの国際問題等を含めましていろいろと論議がありますので、最初にこの退職法案の問題につきまして二、三御質問を申し上げまして、あとこの退職問題とは多少かけ離れますけれども、全般的な質疑をさせていただきたい、このように思っております。  まず最初に、退職手当問題は官公労働者の労働条件に関するものでありまして、労使の団体交渉または協議により決定すべき問題であります。このため、当局の当事者能力の拡大、労働基本権の確立を早急に図るべきではないかと思いますが、その点、いかがお考えでございましょうか。
  311. 中山太郎

    ○中山国務大臣 公務員制度自身、これは主権者である国民全体に対する奉仕者という地位は、きわめて普通の一般の働かれる人たちとは違った地位というものを確保されているわけであります。そのためにいわゆる協約締結権というものが大幅に制約をされておりますけれども、それの代償機能としては、中立的な人事管理機構である人事院というものが法律によって制定をされて、その人事院の中立的な意見に基づいて公務員方々の生活を確保する、こういうふうな制度の中でわれわれの公務員制度は世界に冠たるものだと言われておるほど外国から高い評価を受けておる。そういう中で今回の法案につきましても、この法案が成立した後には、職員団体とも十分意見を交換しながら人事管理の運営は円満かつ円滑にやってまいりたい、このように考えております。
  312. 神田厚

    ○神田委員 さらに仲裁裁定の問題でありますが、どうも関係閣僚会議がこの問題について意見がまとまらなかったというようなことでありますけれども、われわれはこの仲裁裁定の完全実施を強く求めているわけであります。その点、担当大臣としてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  313. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先日第一回の会合を開きましたが、近く第二回の会合を開いてまいります。御案内のように財政事情がきわめて厳しい中でのことでございますので、私どもとしては、この関係閣僚会議のこれからの検討というものに対して参画をしてまいる、このようなことでございます。
  314. 神田厚

    ○神田委員 総理にお聞きしますが、ただいまの総理府総務長官の答弁は、この問題につきまして非常に前向きな答弁とは受け取れない答弁でございます。しかしながら、従来これは完全実施を求めてわれわれはずっとやっているわけでありますから、その点につきまして総理はどういうふうにお考えでございましょうか。
  315. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いま関係閣僚で最終的な調整、詰めをお願いしておるところでございます。私はその結果を見ましてその取り扱いを決めたい、こう考えておりますが、財政事情がきわめて厳しいということはいま総務長官から申し上げたところでございます。そういう中でこれをどういうぐあいに扱っていくのか、私も苦心をいたしておるところでございます。
  316. 神田厚

    ○神田委員 完全実施を強く要望いたします。  次に、日米共同声明問題に移りたいと思います。  首相は先日ワシントンで話者会見をしまして、共同声明問題につきまして軍事的意味合いは持ってないんだと日米同盟という言葉の意味合いにつきましてのお話がございました。同盟は民主主義、自由の価値観を共有する両国の緊密な関係を示す言葉だ、こういうことでお話をしたようでありますが、どうも外務省等の関係者と非常に意見が食い違っておりまして、総理の話したことは国内世論向けに話されている、外務省の方は対米関係を重視した話になっている、こういうことで意見の食い違いがあったようでございます。これは後で外務大臣の辞任にまで発展する問題でございますけれども、総理としては、この日米共同声明、日米同盟という言葉にどういう願いを込めてこれを解釈なさったのか、その点をお聞かせいただきたいのであります。
  317. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、首脳会談が終わりましてから同行の記者団に感想を求められましてお答えをしたわけでございます。  そのとき、今度の共同声明に初めて盛られたところの日米同盟関係というのは軍事的な意味がありますか、こういうお尋ねでございました。私は、政治的な発言でございましたが、いま国民は軍事同盟的なものに日本が踏み込んだのではないか、こういう点を非常に危惧されておるのではないか、国際情勢はきわめて厳しい、そして強いアメリカを標榜し国民の圧倒的な支持を受けて誕生したレーガン政権、そういう中でこの軍事的なバランスを回復するということで軍事予算もふやしていこう、こういうような中で、このアメリカの世界戦略の中に日本が組み込まれたのではないだろうか、こういう危惧、御心配があるのではないか、こういうことが私の念頭をかすめまして、そこで軍事的な意味合いはございません、実はこう申し上げたわけでございます。  しかし、日米の間には日米安保体制というものが厳として存在することは私も一日も忘れるわけがございませんし、また、今回の訪米におきましても、日米安保条約の円滑かつ効率的な運用も考えなければならないということ、国際情勢、そういう問題でも認識が一致いたしておりますから、私はそういうことを忘れたわけではございませんし、いま申し上げたようなことで申し上げたところでございます。したがいまして、これを法律的に厳密に言えば、日米安保体制があるわけでございますから、この同盟関係という中には軍事的側面が存在することば当然のことである。したがいまして、そのことは私も舌足らずということで補足をいたしましたし、政府におきましては、政府内でこの問題につきまして何らの意見の食い違いというものもございません。また一番肝心の日米両政府間におきましては、その共同声明についての解釈なり見解なりあるいは意見の対立なり、そういうものは一切ございません。私はそういう意味でこの問題はすべて解決済みである、このように思っております。
  318. 神田厚

    ○神田委員 大変聞きづらい話でありますが、意見が完全に一致しているならば外務大臣は辞任をしなくても済んだわけでありますが、外務大臣が辞任をなさったということは、総理との間にどういう意見の相違があったのでありましょうか。
  319. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いま申し上げたところでございまして、共同声明の作成あるいはこの扱い方等について私との間に意見が対立をしたというようなことはございません。したがいまして、私は最後まで伊東前外務大臣の慰留に努めたわけでございますけれども、辞表を受理しないうちに外務省の記者クラブで自分の辞意を表明された、大変残念な事態であったわけでございますが、これが国民の前に公表されました以上はこれを処理しなければなりません。私は一瞬の遅滞も起こしてはいけないということで、直ちに外務大臣の経験者である園田厚生大臣を外務大臣にお願いをし、その後に村山氏を厚生大臣に即日して体制を整えたということでございまして、私はいまでも伊東前外務大臣が辞任をするような理由はなかった、このように考えておりますが、本人がみずからそういう決断をされたわけでございまして、この点はやむを得ない事態であった、きわめて残念なことであった、このように考えております。
  320. 神田厚

    ○神田委員 しかしながら、総理と伊東前外務大臣は同志であるというようにもわれわれは見ておりますし、総理のいまの説明では国民としてはどうにも納得ができないのでありまして、これは総理どうでしょうか、率直な話、なぜおやめになったかということを、憶測ということではあれですが、思いはかったことがございましょうか。
  321. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いまるる申し上げたように、この共同声明の扱い方なりあるいは特に同盟関係とかあるいは役割り分担とかいろいろ重要な部分、これは問題を重視して各方面で、国会でも御論議がありましたが、そういう点につきましても、伊東外務大臣と私の間には意見は完全に一致しておったところでございます。したがいまして、私としてはあくまで伊東君に責任をとるようなことはないじゃないかということで極力慰留し続けたということでございまして、いまでも私は釈然といたしていないところがございます。
  322. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、この共同声明ができる手続の問題で総理自身が非常に御不満をお漏らしになったということでございます。外務省と総理の間でこの共同声明のつくり方の問題につきましていろいろ意見の違いがあって、伊東さんが外務省の立場に立って辞職をしたということが観測されておりますけれども、そういうことでございましょうか。
  323. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 伊東前外務大臣とはそういう点におきましても完全に私は意見が一致しておる、認識も一致しておるということでございまして、そのようなことはございません。
  324. 神田厚

    ○神田委員 どうも不可解な辞職でございますね。しかし、時間がございませんのでこれ以上はあれしますが、いずれにしましても外務大臣が日米会談の後すぐ日本に帰ってきて辞職をしたということは、アメリカにおきまして非常に問題になっているようであります。ワシントン・ポストを初めアメリカの多くの世論が、やはりこれは日米会談の効果を相当減殺するものだ、こういうふうなことで言われておりますし、この信頼関係をどういうふうにして回復していくかというのはこれから日米関係を考える上で非常に大事な問題になってくると思いますが、その点につきましては総理はどういうふうにお考えでございますか。
  325. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 伊東前外務大臣辞任の経緯につきましては、即日宮澤内閣官房長官が、マンスフィールド大使はちょうど大阪の方に行っておられましたが、シャーマン公使にお会いをいたしまして詳細に経過を説明をしておるところでございます。  共同声明の解釈その他の面で米側と何らのそごもない、解釈の違いもない、したがって、日米関係は共同声明のこの成果を踏まえて今後信頼と友情の上に立ってやっていくわけでございますからいささかの心配もない、私はこのように考えておりますし、マンスフィールドさんもこれは純然たる日本の政治問題、国内問題である、こういうぐあいに御理解をいただいておる、こういうことです。
  326. 神田厚

    ○神田委員 御答弁でありますが、しかしながらアメリカの世論はかなりこのことにショックを受けているということでありまして、やはり日本としましてこの共同声明の内容あるいはこれに対する履行の問題を中心としましてこれから共同声明で話し合われたことが具体的な形をとってくるわけでありますが、それらについての実行やその他の問題でやはり信頼関係の回復について日本政府としての努力をしていかなければならないと思っているわけでありますが、その点はどういうふうにお考えでございますか。
  327. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、今回の訪米を通じましてレーガン大統領との間にも友情と信頼関係を築くことができましたし、またレーガン政権の各有力閣僚とも十分意見の交換もいたしました。また、アメリカの経済界その他とも接触もいたしました。言論界の方々ともお会いをしたわけでございます。日米相互の理解は大変高まった、このように考えておるわけでございます。今後はこの日米関係というものを踏まえまして一層日米の友好協力関係を発展をさせていくことに全力を挙げていきたい、このように考えております。
  328. 神田厚

    ○神田委員 次に、会談の中身でありますが、特に防衛努力の問題につきましてレーガン大統領あるいはワインバーガー国防長官との会談で、日本の防衛努力について総理とかなり突っ込んだ意見の交換があったというように聞いております。この点につきましてどういうふうに御報告いただけますか。
  329. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 まず国際情勢全般についての意見の交換がございましたし、特に私からアジアの諸情勢につきまして説明をいたしました。私は、日米の間におきまして国際情勢の認識においては一致しておるというものを見出すことができたわけでございます。そういうような認識の上に立ちまして、今後世界の平和と安定、繁栄のために日米が協力をし、また西側民主主義諸国家とも連帯と協調を深めて世界の繁栄に協力していこう、こういうことで完全に意見の一致を見たところでございます。  防衛の問題につきましては、厳しい国際情勢につきまして大統領からもお話があり、ヘイグ国務長官、ワインバーガー国防長官等からもお話がございました。私は、第二回会談におきまして、わが国の防衛につきまして憲法並びに基本的防衛政策につきまして相当詳細に時間をこれに充てて日本の立場というものをお話を申し上げて、大変理解を深め得たもの、このように考えておるところでございます。  ここではっきり申し上げておきたいことは、米側は繰り返し大統領ほか言っておりますが、日本に対して防衛の問題で強要をしたり圧力をかけたり、そういうような感じさえも与えてはいけないというのが自分たちの考えである、日本の防衛の問題は日本がみずから決める問題である、国際情勢の認識等十分踏まえて、米側もやります、日本側も努力をしてもらいたい、こういうお話であったわけでありますが、私は、日本がこれから防衛努力をしてまいります上に、国民世論が一番大事でございますし、それからいろいろの政策との整合性、財政再建のときでもございますし、そういうような面を総合的に判断をして自主的にこれを進めていかなければならない、このように考えておるところでございます。
  330. 神田厚

    ○神田委員 特にワインバーガー国防長官との話し合いの中で、もう少し具体的に陸上自衛隊の継戦能力とか即応体制とか、そういうものについて話し合われたというように報道されておりますが、その点はいかがでありますか。
  331. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 そういう具体的なことについては話し合いがなされておりません。これは今後日米安保協議会あるいは大村防衛庁長官とワインバーガー長官の会談等においてそういう具体的な問題は意見の交換をしてもらいたい、このように考えております。
  332. 神田厚

    ○神田委員 次に、ライシャワー発言問題でありますが、これはずっと先ほど来から話し合われておりますけれども一つは、やはりこれだけの事実が報道されているのでありますから、あるいはこれだけライシャワー博士がいろいろと問題提起をしているのでありますから、このライシャワー氏に対しまして政府として何らかの接触をして、そしてこれらについての問題解明に努力をするという姿勢を見せなければいけないと思っておりますが、ラロック証言のときにはそういうことをしたわけでありますから、その点ひとつ強く要望したいのでありますが、いかがでありますか。
  333. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 これは先ほど来御報告を申し上げておりますように、園田外務大臣がライシャワーさんの発言をめぐっての国内の世論、反響ということを踏まえてマンスフィールド大使にお会いした際に、大使の方から、米側としては、この前の証言回答をいまでもあくまで遵守していくということを言っておる。ラロック発言がありました際に日本から照会したとき、アメリカ側からこれに対する回答があったわけでありますが、米側のこれに対するそういう考え方、方針というものはいささかも変わっていない、今後も誠実にこれを実行していくというお話があったわけでございます。そういう中で、一私人になられたところのライシャワーさんの発言について照会するとかというような考え方は私は持っておりません。
  334. 神田厚

    ○神田委員 先ほどから私人ということで非常にこだわっておられるようでありますが、ライシャワー氏は、自分がアメリカを代表して日本に大使として職務で来ておったときのことについて言っているわけでありますから、私人になったからといってそれを全然あれするというのは非常に問題があると思っております。やはりこれは日本政府の責任においてきちんとした解明、接触をしていただきたいことを重ねて要望したいのですが、いかがですか。
  335. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 ライシャワーさんを私人と申し上げて失礼のように思うわけでありますけれども、個人としてのライシャワーさん、また駐日大使として日米友好親善に寄与された功績というものは高く評価をいたしております。しかし、米側におきましても、いまもうライシャワーさんは一私人の立場にある、政府が公式に回答することを米側の公式見解というぐあいに受けとめてもらいたい、こういうように言っておるわけでございますから、私は、改めてこれを調査したりいろいろ重ねて回答を求めるというような考えは持っておりません。  それから、ライシャワーさんは、この問題を日本側の当時の大平外務大臣に、解釈の違いがあるのではないか、その統一見解を出そうではないかということで接触したことがある、お話をしたことがあると言っておるようでございますけれども、大平さんからはそのことについて私どもに何も話がございませんでしたし、後継の外務大臣への引き継ぎもない。外務省の当局につきましても、当時そういうことについての記録も指示も一切なかった。こういうことでございまして、やはりこういう話は、一方だけの話でなしに両方の話を聞かなければ本当の評価ができないのではないか、このように思います。
  336. 神田厚

    ○神田委員 大平さんの話でありますが、共同通信の記事によりますと、大平さんは一九七八年二月九日幹事長時代に、核持ち込みに関する日米解釈のずれと非核三原則の見直しに触れて発言をしている。そしてそれはミッドウェーの問題でありますけれども、このミッドウェーの問題のときに、米国も日本もまじめに対応しているが、米国がイントロダクションと言っておるのは本土に導入ということであり、米側は、通過は持ち込みに当たらないと解釈をしているのではないか、日本は、イントロダクションしていないという米側の説明に納得しているが、どこかにすれ違いがある、いつかは決着をつけなければならない、こういうことを言っているというのでありまして、ちょうどライシャワーさんが岸・マッカーサー会談あるいは藤山・マッカーサー会談で指摘をしている問題と同じ時期にこれらの問題を言っておるわけでありまして、この辺のところは政府が責任を持って究明しなければ国民は納得しないと思うのであります。ですから、その大平さんの問題についても、大平さんは返事をしなかったという話もありますけれども、しかしながら、そういう問題について非常に頭を悩ましていたということも事実でありまして、現実にこういう発言をしているわけでありますから、その当時にやはりいろいろな問題があったことは事実であります。その点はどうかひとつ調査をお願いしたいと思います。重ねてお願いしますが、いかがですか。
  337. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いまるる申し上げたように、大平さんからは私もそういう話を聞いておりません。きわめて近いところにおった私でございますが、そういう話を聞いておりませんし、後任の外務大臣も外務当局も聞いていない、こういうことでございます。
  338. 江藤隆美

    江藤委員長 榊利夫君。
  339. 榊利夫

    ○榊委員 私はまず、日本の主権と安全、国民生活にかかわる重大問題として、きのうの総理の日本記者クラブの昼食会での発言に触れて質問いたします。  総理は、核積載艦の寄港、通過問題について事前協議によって現実的に対処する、こう述べて、その後官邸でもイエス、ノーもあると答えたというふうに報道されております。核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず、この非核三原則はわが国の国是であります。である以上、核兵器の持ち込みに対して、寄港であろうと通過であろうと、海であろうと空であろうと、絶対にノーでなければならないことは常識であります。にもかかわらず、あえて総理が外人記者の前で現実的対処というふうに述べられたのはイエスの場合がある、こういうことを外国向けに言いたかったのではなかろうかという疑問がわくのでございますけれども、どうでございましょう。
  340. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私はもし米側から核積載艦の入港等について事前協議がなされたということになりますれば、これは協議に入らなければなりません。これは安保条約の協定に基づいて当然のことでございます。そういう中で私がその協議を通じて現実的な対処をする、こう言ったことは、非核三原則を堅持しておる、そして国民は核に対する強烈なアレルギーを持っておる、そういう現実を踏まえて日本側としてはノーと答える、こういう趣旨でございまして、イエスもあり得るというような考え方は持っておりません。
  341. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、少なくともあなたは官邸に戻られてイエス、ノーもあるという発言を一応やられ、そして後でこれを事実上取り消したというふうに言われております。総理自身はそれをどこで取り消されましたか。
  342. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 事前協議には、これは協議ですからイエス、ノーはあるわけでございます。しかし、日本側のこれに対する判断、結論は、私がいま申し上げたように非核三原則、そして国民世論、そういうことを踏まえて、日本としてはそれにノーの回答をする、こういう腹ははっきりしておるわけでございます。
  343. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、あえて質問いたしますけれども、少なくとも日本記者クラブではノーを言うんだということは発言されなかったわけですね。つまり外国に対してはそのまま打電されているわけです。そういう事実は変わりませんね。
  344. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほど来申し上げておるように、この問題については、その外人の記者の前に数人の方が同様のことを質問をしておるわけでございます。核積載艦の寄港、通航、これは核の持ち込みになるのではないか、これは非核三原則にもとるのではないか、そういう御質問が相次いでおります。それに対しては明確に私は、非核三原則を堅持してさようなことは一切認めないということを申し上げておる。そういう中で外人記者からあったということで、私は、前後の文脈、流れからいってみんな理解をしておってくれたもの、このように考えますが、後でそういう点について記者団の諸君から疑問が出ているということを伺いまして、それを明確にした、こういうことでございます。
  345. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、記者クラブでは少なくともノーを言うんだということを言われなかったわけですね。だから誤解を招いた。だから官邸で後でまたそのことについて事実上訂正の発言をした、こういうことのようでございますね。
  346. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 前後の文脈から私はそう思っておったのですが、時間の関係その他、そこをつけ加えることができなかったかもしれません。しかし、私の腹というものははっきりしておる。非核三原則というものをあくまで堅持する、こういうことは明快にその場合でもお話を申し上げておるところでございます。
  347. 榊利夫

    ○榊委員 それではノーを言うということが言われないままに外国にすでに打電をされている。そういう事実があるとするならば、総理としてはそのことについて公式に取り消す気はございませんか。
  348. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 そういう誤解があってはならないということで手配もいたしたわけでございます。また、もしそういうことで誤解がありますれば、私はさらにそのことを明確にする必要があると思います。私は、この国権の最高機関で、きょうこの内閣委員会を通じまして、国家、国民の前に、またこの立場をはっきりいたしておりますから、そういうようなことば誤解があれば十分解かれるもの、こう信じております。
  349. 榊利夫

    ○榊委員 公式に前の発言をここで訂正をされた、こういうふうに理解をいたします。(「訂正じゃない」と呼ぶ者あり)厳密にされた、これでもよろしいですよ。  非核三原則につきましては、世界唯一の被爆国民の心からの願いであります。いかなる核兵器も日本の領土、領海、領空に持ち込むことは一切許されない。このことは七一年の国会決議でも明瞭であります。それだけに、核空母、巡洋艦などの日本寄港、領海通過は核の持ち込みにならないというライシャワー発言は国民に大変衝撃を与えました。もしもこれが事実だとするならば、核積載艦の寄港、領海通過、領空通過、これを含めてアメリカによる日本への核持ち込みはないというこれまでの政府発言は全くうそだということになってしまいます。非核三原則は外から崩されるということになってしまいます。きわめて重天な内容です。  そこで、総理の認識をお尋ねしたい。ライシャワー発言のようにアメリカ政府自身も核積載艦の寄港、通過は核持ち込みにならないと解釈しているとすれば、それは安保条約あるいは関連合意これ自体とも矛盾をするし、これに違反することになる、こう思うのでありますけれども、総理の認識はいかがでございましょう。
  350. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 アメリカ側においてもライシャワーさんのような認識を持っておればということを前提にしてあなたはおっしゃっておるのですが、私は、米側におきましても、ライシャワーさんはいまや一私人であって、米国としては、こういうマンスフィールドさんを通じて表明されたところの見解が公式のものであるということを言っておるわけでございますし、わが方におきましては、あの安保条約改定時に行われましたところの岸・ハーター交換公文及びそれに伴う藤山さんとマッカーサー大使との口頭了解、これで明確である、このように認識をいたしております。
  351. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、総理の認識で言いますと、ライシャワー発言とアメリカ政府の公式の合意ないし発言とは違う、食い違っているということはお認めになるわけですね。これは明白、私人だからそのことについては云々、こういうふうに言われておりますけれども、その食い違っているものを米政府もやはりそういうように理解しているとすれば、協定に食い違うということになるんじゃないでしょうか。
  352. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いま申し上げたように、米政府はライシャワーさんのあのような一連の発言は一市民の発言であって、米政府の公式見解ではないということを明確に言っておりますし、私はわが方におきましてもあのような認識とは全然違う、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  353. 榊利夫

    ○榊委員 したがいまして、そのことについて私はお尋ねしているのです。米政府がそういう考え方だったら、条約や交換公文とは違うな、それに違反することになるな、こういうことを確かめておるのです。この点についてお答え願いたい。
  354. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 どういうためにそういう米政府とライシャワーさんが同じような考えを持つならばという仮定を置いておられるのか、私には理解ができない。公式に、ライシャワーさんの御意見というのは一私人の意見であって、米政府はそのように理解をしていないし、米政府の見解というものは公式のものと受けとめてもらいたい、こうはっきり言っておるわけでございます。
  355. 榊利夫

    ○榊委員 私人、私人と言われますけれども、ライシャワー氏は六一年から六六年にかけては日本におけるアメリカの最高代表ですよ。それで安保運用の当事者です。その発言をそのままにしておいて、ラ元大使の発言がそのまま当時のアメリカ大使館あるいはアメリカ政府考え方であったというならば、これはもう重大なわけですよ。そのことはお認めになりますね。
  356. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 そのライシャワーさんが当時の大平外務大臣に会っていろいろ話し合いをした、こうおっしゃっておるのでありますが、大平さんはそれにオーケーを与えたとか、そういうようなことはない。これは次の外務大臣にも引き継がれていないし、外務省にも記録がないし、また事務当局にも一切そういうような話はなかった、こういうことも明らかにしておりますから、私としてはずっと一貫して日本とアメリカ当局との間で確認し合っておることは間違いがない、このように認識しております。
  357. 榊利夫

    ○榊委員 どうも型にはまったお答えにしかなりませんので、もうちょっと側面からお尋ねいたしますけれども、安保改定時の国際合意では、核兵器の持ち込みは事前協議の主題、対象だ、こう明記していますね。その持ち込みに寄港、領海通過も含まれるという解釈、つまり寄港、通過を含まないというライシャワー氏流の考え方、発言、それは間違いだということ、この点については米政府に確認させ、解釈を一致させる必要があるのじゃないでしょうか。実際この問題ではラロック証言のときも、一九七四年、一私人ではあったけれども政府は照会したではありませんか。もともと藤山・マッカーサー口頭了解でも、核持ち込みという規定はありますけれども、寄港、通過を含むか否かということは明示していないのです。  そこでお尋ねいたします。先ほど来四十三年に英訳文を添えてアメリカに渡して了解を得た、こうおっしゃっていますけれども、そのときいま問題になっておりますいわゆるイントロダクションの問題につきましても、核兵器のイントロダクションの中には寄港、通過を含むか含まないか、こういう明確な問題提起をして照会されましたか。
  358. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど来御答弁いたしておりますように、岸・ハーター交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解によって核の持ち込みについて日米間に理解が一致しているというわけでございます。いま御引用になりました四十三年というのは、四十三年の委員会に藤山・マッカーサー口頭了解を御提示したわけでございまして、その後、先ほど論議がございました鈴切委員の御質問に答えて、日本側が四十三年に提示した藤山・マッカーサー口頭了解の英訳文を付してアメリカ側に照会し、それに対してアメリカ側から、日本側の理解で差し支えない、こういうことでございまして、もとは藤山・マッカーサー口頭了解及び岸・ハーター交換公文によって、核の持ち込みについては日米間で意見の差異がないということは文理上からも非常に明白になっておるところでございます。
  359. 榊利夫

    ○榊委員 いまのは何の答えにもなっていませんよ。私が聞いているのは、つまりこのときには核兵器のイントロダクションに寄港やあるいは通過の問題は含まれるのか含まれないのかということを明確にして質問したのかということを聞いているのです。明確にしてないでしょう、質問に。どうですか、そのこと一点にイエス、ノー、答えてもらいたい。
  360. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、根っこの藤山・マッカーサー口頭了解及びその前を受けます交換公文、それの両方の文理上の解釈から、日米間において何が事前協議の対象になるか、核の問題についてすでにそこにおいて十分の了解がございます。それを念のためさらにアメリカ側に、藤山・マッカーサー口頭了解について日本側の了解とアメリカ側の了解と違いはないかということで文書をもって照会したわけでございます。
  361. 榊利夫

    ○榊委員 私の質問に対して答えられない。いいですか、つまりいままさに問題になっている持ち込みと寄港、通過、どうなんだ、このことは全くそこでは問題にされていないじゃないですか、問い合わせたと言いながら。あたりまえですよ。もともと藤山・マッカーサー口頭了解というのは、核持ち込みという規定はあるのだけれども、寄港、通過を含むか含まないかということは書いてないのです。明示してないのですよ。そうでしょう。明示しておりますか。
  362. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いまの御質問については藤山・マッカーサー口頭了解、その前の交換公文の中を読んでいただきますと、米軍の重要な装備における変更ということでございまして、米軍の重要な装備における変更というのは、日本に配置されているアメリカ軍のみならず日本の施設、区域を一時的、領域、領海を含めて利用する軍隊ということでございます。そういう点から交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解から当然に寄港等も含まれるということは十分明らかでございまして、すでに安保国会当時において防衛庁長官も寄港はこの事前協議の対象になるというふうな答弁をされているわけでございます。
  363. 榊利夫

    ○榊委員 アメリカ側がそのことをはっきり明言したことはないでしょう。どうですか、その点は。あなたの解釈でしょう。アメリカの解釈じゃないじゃないですか。私の言っていることに答えてもらいたい。
  364. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いままで私の答えたことにつけ加えることはございませんが、昨日園田外務大臣がマンスフィールド大使と会談いたしました際にも、現在の日本国内における論議を踏まえて園田大臣からの発言があり、それに対してマンスフィールド大使から、アメリカ政府の事前協議に関する立場というものは現在においても変更がない、こういう回答でございます。
  365. 榊利夫

    ○榊委員 だから答えになっていないのですよ。全然答えになっていない。しかも、たとえばニューヨーク・タイムズの一九七一年から七四年に東京特派員のハロラン記者、彼がその問題を三回、四回書いております。ここに持ってきておりますけれども、この中では、特に七一年十月二十七日付のニューヨーク・タイムズでは、一九六〇年に藤山外相とマッカーサー大使の間で核兵器の日本通過を許す秘密合意が結ばれておる、和文テキストはない、米側だけが記録しておる、そう理解されておると言っているのです。しかも、今度のいわゆるライシャワー発言、しかも、それを裏づける証言というものが相次いで出てきているじゃありませんか。岸元首相^外務省OBだってそう言うでしょう。大平さんがはいと言った例のその話もある。しかも、アメリカに和文はない、アメリカ文がある、そういう新しい証言が続々と出てきている。一私人の言葉では済まされません。それだけにいま内容理解を厳密に一致させる必要があるのじゃないでしょうか。真剣な御答弁を総理にお願いしたい。いかがでしょう。
  366. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほども申し上げたとおり安保改定当時にさかのぼって日米間の交換公文、口頭了解、そこからずっと日米の見解は一致しておるのだということを申し上げておりますし、北米局長からもるる御説明申し上げておるところでございまして、私は日米の間には食い違いや見解の相違はない、このように理解をいたしております。
  367. 榊利夫

    ○榊委員 全くあなたのは答弁になっていませんよ。同じことを、意見は一致している、食い違いはない——この問題点一つも明らかになっていないじゃないですか。何といいますか、あなた任せばあほうの始まりと言いますけれども、本当にアメリカが言うからそれを信用しているということじゃ通りません。事は国際間の問題です。この点については、これまでの前回の照会についても、そのことを問題を明確にして問い合わせていないのです。しかも、続々証言が出てきている。改めて総理の見識をもってこの問題についてはさらに検討し、必要があれば確認を求める、それくらいの前向きの姿勢はあっていいじゃないですか。それが国民に対する責任というものじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  368. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 わが政府代表する園田外務大臣とアメリカ政府代表するマンスフィールド大使がこの問題を背景に会談をされまして、日米の解釈、見解というものは一致しておる、確認し合っておるわけでございまして、私はこれを重く権威あるものと受けとめるわけでありまして、前に日本におられた確かにりっぱな方ではありましたけれども、いまもう私人になっておられるところのライシャワーさんの言動というものをこれと同じようなはかりではかるわけにはまいらない、このように思います。
  369. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、はっきりしてまいりましたのは、私が提起した具体的な問題に総理を初め政府が答弁できないというこの事実は、これまでに非常に明確。したがいまして、ライシャワー発言に関しましても、国会として事実を解明するためにアメリカに対して超党派の調査団を派遣する、こういうことをぜひ考えてもらいたいし、岸、藤山、木村、ライシャワー、こういった人々の証人喚問の必要があると思います。当委員会としてもこうした提案が実現するよう委員長よろしくお取り計らいを願いたいと思います。
  370. 江藤隆美

    江藤委員長 後刻相談をいたします。  時間になりましたので、大変恐縮でありますが……。
  371. 榊利夫

    ○榊委員 これまで総理は日米首脳会談後四回前言を訂正したり、いろいろ国民が戸惑っているという問題があります。数々挙げませんけれども、いわゆる共同声明づくりの問題、これは外相辞任ということになりました。同盟をめぐる問題あるいは核の瀞港、通過をめぐる問題あるいは今回の現実的対応の問題、このようなことは内外の政治、外交史上前例のない失態じゃないでしょうか、率直に申し上げまして。一国の総理としての資格さえ問われる問題だと私は思います。この問題は最後にお尋ねいたしますが、総理自身はどういうふうに自己認識していらっしゃるでしょうか、この間の問題について。
  372. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私はいろいろ舌足らずの点もございましたが、公式のこの国会の場におきまして明確にそれを御報告申し上げておるところでございます。
  373. 榊利夫

    ○榊委員 全く責任という問題についての自己認識は……
  374. 江藤隆美

    江藤委員長 もう時間ですから……。
  375. 榊利夫

    ○榊委員 一音。定年制法案の問題につきまして、定年の問題、退手の問題、これは日本のいまの国際的な動向にも反するものでありますし、ざらに今日のこれまでの高齢者雇用という政府の政策と照らしましても矛盾しておりますし、公務員合わせまして五百万近く、四人家族といたしまして二千万人の生活設計にもかかわるようなこれに打撃を与える重要な問題であります。その点につきましては、総理としてもまた内閣としても、しかもこういう重大な問題ですから、当事者能力がある以上、労使間の協議にまずゆだねる、この原点に立ってやはり問題を処すべきであった、こう思うわけであります。その点について答弁を求める時間があるいはないかもしれませんけれども、そのことを最後にあえて要求いたしまして、反対の意思表示をして質問を終わりたいと思います。
  376. 江藤隆美

  377. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まず冒頭に、自民党歴代政府がとってきた本問題に対する神話と虚構を崩壊させることになるかもしれない二つの事実について総理に調査をお願いいたします。  一つは、つい最近も横須賀の浦郷弾薬庫にアスロックと思われるコンテナの運び込みがテレビで放映されました。昭和四十九年ラロック証言を前後にして、横須賀では原子力艦艇に乗っておる水兵等の実際の証言もあります。核を積んだまま入っておるのだという、あるいは核を一時浦郷弾薬庫に貯蔵させておるという証言があります。この証言あるいはこういった事実の裏づけはいまからお示しする資料の中にある。これは外務省も持っておりますけれども、この資料です。  これは一九七〇年、昭和四十五年一月二十六日から二十九日にかけてアメリカの第九十一議会第二会期上院外交委員会安全保障取り決め及び対外約束小委員会、サイミントン氏が委員長でありますから通常サイミントン委員会と言っております。この聴聞会の日本と沖繩に関する議事録、この議事録に一九六九年のペンタゴンの資料が添えられておる。この資料の中に、これは外務省聞いておってください。千四百五十二ページ、こういうところがあります。これは横須賀の米海軍兵たん部の役務と機能を具体的に列挙しておるところでありますが、その二のところに、「トランシップ・アンド・プロバイド・イントランジット・ストレージ」として、その次は「デリーテッド」、つまり日本語に訳せば艦船からの移しかえ、それから一時貯蔵、その次が削除になっておる。このデリーテッド、削除の部分についてです。これは昭和四十九年十一月一日にアメリカの米軍事専門家権威筋がこの削除部分は「フォー・ニュークリア・ウエポンズ」と暴露いたしております。すなわち、この削除部分に「フォー・ニュークリア・ウエポンズ」が入ってくれば、この横須賀の米海軍兵たん部の役務と機能はこういうことになりますね。核兵器の艦船からの移しかえ及び一時貯蔵、そういう機能を有するということになる。したがって、これは重要な部分であるからこの際デリーテッドは果たして何の削除であるかを明確にされたい。私も近々この部分の明確な資料を入手する予定でありますから、それが明らかになればあなた方の虚構、神話は全部崩壊する、まずそれが一つ。  二番目に、ここに一枚の写真がある。総理に見せてください。これは私のふるさとの福岡放送、FBSに撮ってもらった写真であります。この写真はごらんになればわかるとおり、マークがついておりますけれども、色は紺地に白地のクロースが浮き出ております。上部の方は赤い色であります。クロースの中には何と書いてあるかというと、明確にわかるとおり「バディー・ケア・ニュークリア・キャジュアリティー」、つまり仲間よ核災害に注意せよ、こういうことでしょう。これは北九州市の山田米空軍弾薬庫貯蔵庫の一部の建屋にそのマークがつけられております。四十五年の十月十五日に米空軍はこの弾薬庫の機能を停止して日本側に返還をいたしておりますけれども、このマークは古びたままいまも残っております。御承知のとおりこの山田弾薬庫は米軍の九州における拠点の弾薬庫であります。昭和四十一年から四十二年にかけてベトナム戦争が熾烈になったちょうどそのころに、この弾薬庫の警備員をしていた日本人の証言があります。テープにとってあります。この証言によれば、ベトナム戦争前はシンボルマークナンバー一、二、三表示の弾薬だけであって、自分たちも手を触れることができた。しかし、ベトナム戦争が熾烈になったころからシンボルマークナンバー四表示の弾薬が運び込まれるようになって厳重な警戒体制がとられ、日本関係者には一切タッチさせなかった。そしてこのナンバー四は火薬類の最大級のものだとの説明がその人たちにされております。  そのナンバー四はどういう形かというと、かまぼこ形で長さが一メートル六十センチ、高さ六十センチ、これを三つつないでコンテナにする。ちょうどせんだって横須賀の分が映った形になります。  以上がざっとこの日本人警備員の証言でありますけれども、アメリカの軍事専門筋によりますと、このナンバー四は通常核弾頭であります。これは昭和四十六年にそういう証言が出ております。  また、わが国会でも昭和四十六年十一月三十日あるいは十二月九日に、この場合は呉の秋月弾薬庫ですが、このナンバー四の論争をやっております。そしてこのとき呉の米軍基地司令官は、ナンバー四表示弾は最大級の爆発物であるが、呉の秋月弾薬庫にはナンバー四の弾薬は貯蔵されていない、こういうふうに記者会見で述べております。つまり、このナンバー四は核弾頭であります。しかも、その表示にありますとおり、明らかに「ニュークリア・キャジュアリティー」と書いてある。しかも、運び込まれた弾薬がナンバー四である以上は、かつて少なくとも山田弾薬庫にはベトナム戦争時代核弾頭が一時貯蔵された疑いはまことに濃厚であります。  それで、米軍に直ちに照会をしてこの事実を解明をされるように、総理が外務大臣及び防衛庁長官に指示されるように希望いたします。どうでしょうか。
  378. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 御指摘調査の問題でございますから、外務省等におきましてその問題をどのように処理するか、調査をやるか、そういう点を十分検討させてみたい、こう思っております。
  379. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この核搭載艦の領海通過の問題、これは実は地位協定の第五条一項、つまりアメリカの艦船なり飛行機は日本の空港、港に自由に出入りする権利を有するというところ及び領海条約十四条の4、これは無害通航の権利であります。これは国際法ですから、憲法は国際法を遵守する義務がある、こういうものと非常に微妙に絡み合っている点であることが非常に重大です。  時間がないので一遍にやりますから、これも後で外務省お答えいただきたい。核持ち込みをイントロダクションというふうにアメリカの公文書の中で出てきたのは、私の調査によれば、ただいま申し上げたサイミントン委員会の議事録である。これはジョンソン国務次官とサイミントン委員長との質疑の中で出てきておる。つまり、ジョンソン国務次官は、「イントロダクション・オブ・ニュークリア・ウエポンズ・インツー・ジャパン」と言っていますね。私がこの資料を手に入れたのは昭和四十五年の暮れである。  それで、昭和四十六年の五月十四日に私は内閣委員会で当時の吉野アメリカ局長にこの点をただした。まさにイントロダクションは果たして通過や寄港も含むのか。そうしたら含むと言った。じゃ、それはアメリカ側も了承しているかとくどく私は追及した。もし了承しているならば、それを示す証拠を出せと言った。ところが、この点についてついにアメリカ局長は明確な答弁をしなかった。つまり、イントロダクションに寄港や領海通過が含まれておるという日本側は解釈、これがアメリカ側の方で果たして了解しているかどうかの肝心の点については、日本政府はついにそれを明らかにせず、あいまいにしたままで今日まで終始しております。これが事実です。私は時間がありたら、何ぼでも過去のやりとりを示してみせる。  そこで、昭和四十三年三月十一日衆議院の予算委員会、同十二日衆議院予算第二分科会、両日にわたって私はこの問題を一あなた方はすく核を積んでおっても外してくると言うから、外しのきかないポラリス原潜をわざわざ例に挙げたんだ。そして、これは大事なところです。いいですか。
  380. 江藤隆美

    江藤委員長 時間が超過しておりますから、よろしくひとつ。
  381. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりました。済みません、もうちょっとです。  三木外相は、領海内の無害航行に対しては事前協議の条項にかからないという従来の政府解散に従う、事前協議の条項にかからない。そこで私は、これは重大だ、それなら非核三原則と矛盾すると言ったら、当時の佐藤総理は、領海内の無害航行は国際法上認められている、それはわが国としても認めざるを得ない。そして、そのあくる日に再び私がそれを追及すると、三木さんは何と言ったか。三十五年の安保国会の速記録では、すうっと通るときは無害航行で事前協議にはかからないと答弁している。そして、すうっと通り抜けるだけでは核を持ち回っているのであって、持ち込みではないから事前協議の条項にはかからないということだと明確に答えているのです。まさにライシャワーさんの発言と一緒なんですよ。  さらに、明確にこう言っていますよ。領海をかすめて通り抜けるようなことは日本に限らず世界にもあり得るが、それだけで無害航行を束縛するわけにいかない、またこの場合は——いいですか、ここです。安保条約で言う装備の重要な変更には当たらないと解釈しておる。全くこの当時の佐藤内閣の答弁はライシャワー発言と一緒なんですよ。  そして、その後いろいろ国会でやり合って、とうとう昭和四十九年、いま見えておるかどうかわかりませんが、最後に……
  382. 江藤隆美

    江藤委員長 まとめてください、法案外にかかることでありますから。約束の時間を超過しておりますので、結論を急いでいただきたいと思います。
  383. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昭和四十九年の十二月二十五日になって、当時の外務大臣宮澤さんが、余り左右に揺れているから統一見解を出したんだ。だからこの統一見解がおかしいのですけれども、時間がないから言わないが、少なくともこの統一見解が出る四十九年までは、核搭載艦の領海通過については事前協議条項にならない。いまさっき総理は、三木さんが事前協議の対象になると言った、それは間違いなんです。三木さんが言っているのは、事前協議の対象じゃなしに、領海条約に基づいて事前に通告させることを検討したいと、こう言っているのですよ。これは安保条約上の問題じゃなしに、領海条約の問題として単に事前通告の問題を言っているだけなんですよ。いいですか、間違っちゃいけませんよ。  だから、宮澤さんがきのうの記者会見で、この見解は佐藤内閣の前後を通じて一貫しているなんと言うが、この事実で、宮澤さんのきのうの記者会見の内容もうそですよ。だから、私はこういう点で、何回も何回も諸君がこの点をついておるが、きのうの園田さんとマンスフィールド大使との会談についても、マンスフィールド大使は当時のインガソルさんの見解を引用しただけである。つまり、マンスフィールド大使は従来のアメリカの態度を追認したにすぎないのであって、本問題の中心には触れていない。見解があったら承りたい。
  384. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 大変いろいろなことをおっしゃいましたので、短時間で一々一つ一つについてお答えすることができません。ただし、安保国会以来、わが国の領域に核の持ち込みが行われる場合は、事前協議の対象となるということは一貫いたしておりまして、佐藤内閣の前後によって変わるものではございません。  それから、無害通航の論議と関係いたしまして、楢崎委員は、ライシャワーさんの言っていることと佐藤内閣の説明とは同じだとおっしゃるわけでございますが、この寄港の面に関しましては、安保国会すなわち昭和三十五年以来、寄港につきましては事前協議の対象となるということはずっと一貫しているわけでございます。
  385. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 終わります。
  386. 江藤隆美

    江藤委員長 以上で内閣総理大臣に対する質疑は終わりました。  これにて各案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  387. 江藤隆美

    江藤委員長 この際、自由民主党愛野興一郎君から、国家公務員法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案に対し、また、自由民主党及び民社党・国民連合の共同提案により、愛野興一郎君外一名から、国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対し、修正案がそれぞれ提出されております。  提出者から各修正案の趣旨の説明を求めます。愛野興一郎君。     —————————————  国家公務員法の一部を改正する法律案に対する修正案  自衛隊法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  388. 愛野興一郎

    ○愛野委員 ただいま議題となりました国家公務員法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略し、その趣旨を申し上げますと、両法律案の附則の規定中に引用されている法律番号の年の表示について、「昭和五十五年」とあるのを「昭和五十六年」に改めようとするものであります。  よろしく御賛成くださるようお願い申し上げます。
  389. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、神田厚君。     —————————————  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  390. 神田厚

    ○神田委員 ただいま議題となりました自由民主党及び民社党・国民連合の共同提案に係る国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただき、その趣旨を申し上げますと、現在、長期勤続者等に対する退職手当の額については、特例として百分の百二十の割り増しをしているのであります。これを原案では、昭和五十六年四月一日から「百分の百十五」に、五十七年四月一日から「百分の百十」に引き下げることとしているのでありますが、退職者の生活設計等に急激な変化を与えないための緩和措置として、昭和五十七年一月一日から「百分の百十七」に、五十八年一月一日から「百分の百十三」に、五十九年一月一日から「百分の百十」に引き下げることに改めようとするものであります。  次に、原案の題名を「国家公務員等退職手当法等の一部を改正する法律」に改め、国家公務員等退職手当法に新たに附則を設け、職員が引き続き旧プラント類輸出促進臨時措置法に基づく指定機関職員等として在職した後、再び引き続いて職員となった者の退職手当の在職期間の計算については、公平を期するため、公庫等から復帰した職員と同様の通算措置を講じようとするものであります。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  391. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて、各修正案についての趣旨の説明は終わりました。  この際、愛野興一郎君外一名提出国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣に愚見があれば、これを許します。中山総理府総務長官。
  392. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいま議題となっております修正案に対する内閣の意見を申し上げます。  本件修正案のうち、昭和四十八年法律第三十号に係る修正部分、すなわち退職手当削減規定の施行日とその経過措置に関する修正につきましては、官民における退職手当水準の均衡を図ることの緊急性、現下の財政事情等から、また昭和二十八年法律第百八十二号に係る修正部分、すなわち修正案に言う指定機関等への出向した職員の在職期間の通算に関する修正につきましては、すでに国家公務員退職した者も対象に含まれている等の問題があることから、それぞれにわかに賛成しがたいものでございますが、院議として決定される以上、やむを得ないものと考えております。     —————————————
  393. 江藤隆美

    江藤委員長 これより各案及びこれに対する各修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。塚原俊平君。
  394. 塚原俊平

    ○塚原委員 私は、自由民主党を代表して、国家公務員法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案及び国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案並びにこれらに対する修正案に対して、賛成の討論を行いたいと思います。  現在、定年制度がしかれていない国家公務員に、昭和六十年から原則六十歳の定年制度を導入すること及び昭和五十二年度の人事院民間退職金実態調査に基づき、罠間の水準を上回っている国家公務員等の退職手当官民均衡の原則に立って是正することを、これらの法律案は内容としているのでありますが、このことは、いずれも現在の国民の要望に適切にこたえるものであると考えるのであります。すなわち、公務員は国民全体の奉仕者であり、その給与退職手当は、国民の汗の結晶たる税金によって賄われていることを考えますれば、公務員の処遇は、納税者たる国民の理解と納得を前提とし、常に正すべきは正すという基本姿勢に立って臨むべきであることは、言をまたないのであります。  さらに、現下のきわめて厳しい経済社会情勢と財政状況のもとで、今日、行財政改革を求める国民の声はきわめて強いものがあり、政府においても、現在、臨時行政調査会において各般にわたる検討を行っているわけでありますが、これらの法律案は、来るべき全般的な行財政改革の先駆けとも言える性格を有しているものであり、以上を考えますれば、ただいま上程されております三法律案の早期成立は、まさに国民世論の強く期待するところであります。  しかしながら、退職手当削減は、対象となる職員に多大の影響を与えることも、また事実でありますので、激変緩和のため、法施行日を政府原案よりおくらせて明年一月一日とすること、経過措置を三段階とすること等を内容とする政府原案に対する修正は、大方の納得を得られるものと考えるのであります。  以上の理由をもちまして、私は、自由民主党を代表して、政府提出法案及びこれらに対する修正案について、賛成するものであります。(拍手)
  395. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、上田卓三君。
  396. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私は、日本社会党を代表して、国家公務員法一部改正法案自衛隊法一部改正法案並びに国家公務員等の退職手当法一部改正法案に反対する立場で、討論に参加するものであります。  国家公務員法の一部を改正する内容が、公務員等に定年制を導入するものであることは申し上げるまでもございません。問題は、現行公務員法の分限条項との関連であります。このことについては、わが社会党は、法案審議の段階で再三にわたって指摘してきましたが、納得のいく答弁がなされていません。すなわち、分限条項が公務員の労働基本権の制約に対する代償措置である以上、労働基本権の論議なしに、一方的に定年を法律で定めること自体が間違いであり、公務員制度の根幹に触れる重大な問題であると言わざるを得ません。  人事院が、勧告権や、政府、国会に対し意見の申し出ができる権限を持ちながら、定年制に関しては書簡にとどめていることを見ても、今後に余りにも多くの検討課題を残すでありましょう。世論の一部に、定年制公務員勤務年限延長だという批判の声もありますが、とんでもない話であります。定年制を引き金にして構想されている公務員諸制度は、公務員制度の改悪に連動するものであります。  公労法適用の五現業職員についてもしかり、現行の団体交渉権を封殺する悪法であると言わなければなりません。政府は、定年制法案を断念し、改めて高齢化社会の展望に立った施策を構想し、当該する公務員や、五現業の諸君と率直に話し合いを進めるべきだと考えます。  次に、退職手当法一部改正法案に対し反対する理由を述べます。  そもそも、退職手当見直しが問題となったのは、一昨年の人事院勧告に対し、政府が態度決定した十一月二十二日の閣議であります。人事院勧告を実施する前提として、財政再建に関連する諸施策が閣議決定されたのであります。私は質問の段階で申し上げましたように、政府官民較差実態法案の前提としたとの趣旨説明や答弁がありましたが、事の起こりは財政再建が引き金であり、官民比較はその後に行われたのであります。政府の政策決定、それに追随する官民比較の作業を経て、今日の法案となったのが経過の真相であります。こうしてみると、政府が答弁している官民較差数字そのものにも疑問を持たざるを得ません。また基本的な問題としては、民間準拠のルールを踏むならば、民間の労働者が団体交渉によって決めている退職金は、官公労働者も当然に団交事項であるはずです。このことについても政府の明解な答弁がなされていません。また、公務員労働者を例にとると、定期昇給の延伸、ストップの措置退職時二号俸の上積み措置の廃止は、直ちに高齢者の賃金水準のダウンを招き、それによって生じる退職金の減額も数百万円となることが、わが社会党の試算によっても明らかになっております。この点に対する配慮が欠けているのも反対する理由の一つであります。  わが社会党は、今日国、地方の財政状況を見るとき、その再建が緊急課題であることは強く認識しております。しかし、政府の今日的財政再建の施策が、抜本的制度の改正は放置したまま、行政改革や公務員二法を成立させさえすれば財政再建ができるかのように宣伝していることを黙視することはできません。退職金退職条件は、官公労働者にとって、重要な勤務条件であり、法案提出に至る前提として、労使の心触れ合う団体交渉と、その合意を見る努力を政府はしたのでありましょうか。連日のように国会請願に押し寄せる公務員労働者の心境が、私にはよく理解できるのであります。公務員労働者の退職金削減して定年制を強行し、賃金を抑制する、こうした施策のもとで公務員労働者の勤労意欲が低下することば必至と言わざるを得ません。わが社会党はかかる理由で二法案に反対するものであります。  最後に総務長官に申し上げます。公務員二法については断念し、心触れ合う労使の話し合いの窓口をあなたの勇気と英断によって開くべきであります。討論を終わります。(拍手)
  397. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、鈴切康雄君。
  398. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は公明党・国民会議代表いたしまして、国家公務員法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案及び国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、同修正案に対し、賛成の討論を行うものであります。  国家公務員法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案、いわゆる定年制導入については、わが党の基本政策として、かねがねから高齢化社会に対応して、当面六十歳定年制を主張してきたところであり、民間企業も何らかの定年制をしいているところは九七%を占め、五十五歳、六十歳の定年制をしいているところが七二・一%にも達するということから見ても、まさに時代の趨勢であります。  現在、公務員の定年にかわるものとして勧奨、いわゆる肩たたきを行っているわけでございますが、勧奨に応じた者と応じない者との間に不公平が生ずるとか、社会全体の高齢化傾向と相まって、公務員の高齢化と人事管理の面で近い将来において支障を来すことになりはしないかと心配されている向きもあります。  公務員勧奨退職という不安定な状態に置かれているよりも、退職後の老後の生活設計を立てる上にも、明確に制度として法定された規定が必要だと考えるものであります。  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、いわゆる退職金削減法案についても、民間準拠昭和四十八年に二割増しにし、五十二年の官民比較公務員が八・三%高いということで、高い部分削減するという内容のものですが、わが党の考えは、退職金削減ということは公務員にとって大変に耐えがたいことではありますが、第三者機関である人事院調査結果は尊重しなければならないと思っております。しかし、退職金は老後の生活資金、家の増改築、ローンの返済、子供の教育資金等に組み込まれており、それを急激に削減するということは、老後の生活設計を脅かすものであり、政府が提案をしておりました削減計画については、かねがね急激過ぎるということで何らかの激変緩和の措置が必要ではないかということを主張してまいりました。その結果、十分に満足のいく内容ではありませんが、今回の修正案はそれなりの努力が実ったものであると判断し、またわが党の主張も取り入れられたとそれなりの評価をしております。  以上の理由により、国家公務員法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び同修正案に賛成することを表明して、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  399. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、神田厚君。
  400. 神田厚

    ○神田委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております国家公務員法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案及び国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、同修正案に対し、一括して賛成の討論を行うものであります。  行政改革の推進はいまや国民の声であり、国政の最重要課題となっております。国家公務員についても近年の職員の著しい高齢化に対応した計画的人事行政体制の確立、効率的、能率的な公務運営の一層の促進、民間との待遇面におけるアンバランスの是正等々の改革が強く求められている状況にあります。この意味において、国家公務員への定年制の導入、民間に比べ高い退職金削減は、実施を求められている不可欠の課題であります。  特に定年制の導入は、計画的な公務運営を可能にすることができるとともに、職員の高齢化に伴う公務能率の低下を防止することが可能であるという点で積極的な意義を持つものであります。しかし、この積極的意義を十分生かすためには、民間企業が定年の延長のために、五十歳以降の昇給停止、人事ポストからの高齢者の排除など、企業の存続をかけて労使が血みどろの努力をしていることを教訓とし、国家公務員においても、その典型となっている年功序列賃金体系の見直し、人事ポスト配分の見直し等、公務員制度全般の見直しが不可欠であります。われわれは、定年制の導入に当たって、関係職員の声を聞きつつ、政府公務員制度の見直しに蛮勇をふるわれるよう強く求めるものであります。  また、国家財政が窮迫の状況にあり、しかも年金、給料等において公務員民間に比べ恵まれている状況をもまた考えなければなりません。しかしながら、昭和六十年三月三十一日から実施される定年制の導入と異なり、退職金の減額は、今年度から直ちに実害を生ずる性格のものであります。したがって、退職金の減額については、退職公務員の生活実態を踏まえ、激変緩和措置を講ずる必要があります。われわれが本法案に修正を要求し、これが認められたのは、まさにこの理由からであります。  以上の理由から、民社党・国民連合は、これら諸法案及び修正案に対し一括して賛成するものであります。討論を終わります。(拍手)
  401. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、中路雅弘君。
  402. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、日本共産党を代表して、国家公務員法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案並びに国家公務員等の退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案のいずれにも反対する立場から討論を行います。  国家公務員法改正案及び自衛隊法改正案の両案は、一般職国家公務員と自衛官以外の防衛庁職員に対し、一九八五年度から六十歳定年解雇を制度化しようとするものであります。  高齢化社会が急速に進んでいるいま、高年齢者の雇用保障は文字どおりの国民的要望になっています。働く意思と能力を有する高年齢者への雇用保障は憲法が保障した重要な国民の基本的人権でもあります。また、アメリカが定年制を人権侵害になるとして撤廃し、ILOが年齢による雇用差別禁止を勧告していること、先進資本主義国のうち六十五歳未満の公務員定年年齢を定めているところなどどこにもないこと、人口統計などで十四歳から六十四戒までを生産年齢人口とするのが国際的な共通の基準になっていることなども周知のとおりであります。  この点で、定年解雇の法制化は、憲法の民主的諸原則をじゅうりんするばかりか、定年年齢延長など高齢化社会への対応の方向にも国際的な趨勢にも背を向ける時代逆行の悪法と断ぜざるを得ません。民間準拠というのなら労使合意による退職勧奨制度で十分であり、定年解雇の法制化など全く不要であります。  また、退職手当法改正案は、長期勤続国家公務員と三公社職員退職手当を一方的に削減しようとすることなどを内容とするものであります。  本委員会での審議を通じて明らかになったように、本案提出の最大の根拠とされた官民較差なるものは、官民比較方式が理論的にも実践的にも確立されていないにもかかわらず、きわめて粗雑な民間実態調査結果と意図的に高くなるよう操作された公務員代表例なるものを突き合わせて算出したずさんなもので、財界の公務員攻撃にこたえ、行財政改革に便乗して労働条件を一方的に切り下げる既得権侵害の悪法であります。同時に、退職手当削減は、公務員給与日本の低賃金構造の重要な支柱として機能しているように、日本の労働者全体の老後の生活保障の低位平準化をねらうものであります。むだを省くというのなら、軍事、弾圧部門や大企業向け補助金などにメスを入れるべきであり、退職金について言えば、勤続十年で数千万円から一億円にも上る特殊法人役員などの法外な高額退職金こそ抜本的に是正すべきであります。  しかも重大なのは、定年解雇と退職金削減が、五十五歳前後で局長や次官まで上り詰め、特殊法人役員などの天下り先を保証された高級官僚には何らの打撃もなく、一般公務員にのみ多大の犠牲を強いるだけでなく、こうした労働条件の重大な切り下げ変更を、関係職員団体との交渉を十分尽くさず、国会の多数を利用して一方的に法制化しようとしていることであります。これは、憲法が保障した労働基本権を不当に制限し、わずかに認めた交渉権や団体交渉権すらじゅうりんし、公務員労働条件民間と同様、労使対等の交渉で決するとした一九七八年のILO公務労働関係条約などが示す国際的な趨勢にも逆行するもので、断じて容認することはできません。  さらに、修正案は、昨年の通常国会以来各党間で救済することが確認されたプラント協会などへの出向期間を退職金計算の勤続年数に通算する修正部分など賛成し得る部分が含まれてはいますが、最大の争点である退職金削減問題については、削減の経過期間二年を三年に延長するだけにすぎず、提案者の自民党が公言しているように、法案の骨格を何ら変更するものではなく、およそ修正というにはほど遠いものであります。  私は、定年解雇法制化法案退職手当削減法案を撤回し、両案件を、高齢化社会に対応する総合的対策の重要な一環として国民的な検討を行うとともに、関係職員団体と十分交渉を尽くすよう重ねて要求し、日本共産党を代表しての討論を終わります。(拍手)
  403. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  404. 江藤隆美

    江藤委員長 これより採決に入ります。  初めに、国家公務員法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、愛野興一郎提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  405. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  406. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、愛野興一郎提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  407. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  408. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、愛野興一郎君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  409. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  410. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
  411. 江藤隆美

    江藤委員長 ただいま議決いたしました国家公務員法の一部を改正する法律案に対し、愛野興一郎君外四名から自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び社会民主連合の共同提案により、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。岩垂寿喜男君。
  412. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び社会民主連合の各派共同提案に係る国家公務員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     国家公務員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について善処すべきである。  一 第八十一条の二に定める定年年齢については、民間動向に顕著な変化を来した場合には、政府人事院において改めて検討するものとする。  一 定年制が制定されるに至った趣旨にかんがみ改正法の施行後においては、第八十一条の二に定める定年年齢(同条により人事院規則に委ねられたものについては、人事院規則で定める定年年齢)以下の年齢における組織的、集団的な退職勧奨は、なくしていくものとする。  一 第八十一条の三(定年による退職の特例)および第八十一条の四(定年退職者の再任用)のの運用に当たっては、勤務実績および関係職員団体の意見を反映する等運用の公正を確保するものとする。  一 本法の運用に当たっては、本法の施行時に在職するものについて通算退職年金を含む年金の受給資格の有無につき、配慮するものとする。   右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じてすでに明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  413. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  414. 江藤隆美

    江藤委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。中山総理府総務長官。
  415. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を踏まえつつ制度の運用に努めてまいる所存でございます。     —————————————
  416. 江藤隆美

    江藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  417. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  418. 江藤隆美

    江藤委員長 この際、連合審査会開会申し入れの件についてお諮りいたします。  外務委員会において調査中の国際情勢に関する件について、外務委員会に対し連合一審査会の開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  419. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上、追って公報をもって御通知いたします。      ————◇—————
  420. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  同和問題に関する実情調査のため、議長に対し、委員派遣の承認を申請いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  421. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員の人選、派遣の日時及び派遣地等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  422. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十六日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十一分散会      ————◇—————