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1981-05-14 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月十四日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    狩野 明男君       粕谷  茂君    亀井 善之君       川崎 二郎君    木野 晴夫君       倉成  正君    田名部匡省君       竹中 修一君    宮崎 茂一君       上原 康助君    角屋堅次郎君       渡部 行雄君    市川 雄一君       小沢 貞孝君    榊  利夫君       中路 雅弘君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      中山 太郎君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    加藤 圭朗君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         総理府人事局長 山地  進君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省条約局長 伊達 宗起君  委員外出席者         内閣官房内閣参         事官      栗林 貞一君         外務大臣官房領         事移住部長   藤本 芳男君         大蔵省主計局給         与課長     水谷 文彦君         大蔵省主計局共         済課長     野尻 栄典君         大蔵省主税局税         制第一課長   内海  孚君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         労働省労働基準         局賃金福祉部賃         金課長     八島 靖夫君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 佐藤ギン子君         自治省行政局公         務員部給与課長 大塚 金久君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 五月十四日  情報公開法案横山利秋君外六名提出衆法第  三七号) 同月十三日  傷病恩給等改善に関する請願武田一夫君紹  介)(第四五〇二号)  同(三ツ林弥太郎紹介)(第四五〇三号)  同外一件(山崎拓紹介)(第四五〇四号)  同(天野公義紹介)(第四五五四号)  同(地崎宇三郎紹介)(第四五五五号)  同外一件(塚原俊平紹介)(第四五五六号)  同外一件(羽田孜紹介)(第四五五七号)  同外一件(葉梨信行紹介)(第四五五八号)  同(毛利松平紹介)(第四五五九号)  公務員退職手当削減反対等に関する請願(阿  部助哉君紹介)(第四五〇五号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願草川昭  三君紹介)(第四五五三号) 同月十四日  旧治安維持法等による犠牲者の賠償に関する請  願(小川国彦紹介)(第四六〇六号)  同(角屋堅次郎紹介)(第四六〇七号)  同(清水勇紹介)(第四六〇八号)  同(高田富之紹介)(第四六〇九号)  同(中路雅弘紹介)(第四六一〇号)  同(林百郎君紹介)(第四六一一号)  同(横山利秋紹介)(第四六一二号)  徴兵制制定及び憲法改悪反対等に関する請願(  榊利夫紹介)(第四六一三号)  同(中路雅弘紹介)(第四六一四号)  同(四ツ谷光子紹介)(第四六一五号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願大野潔  君紹介)(第四六一六号)  同(長田武士紹介)(第四六一七号)  同(草野威紹介)(第四六一八号)  同(田中昭二紹介)(第五〇〇四号)  同(藤尾正行紹介)(第五〇〇五号)  同(渡部一郎紹介)(第五〇〇六号)  旧国際電気通信株式会社社員期間のある者に  対する国家公務員等退職手当法施行令改正に関  する請願神田厚紹介)(第四六一九号)  国家公務員退職金削減定年制導入反対に関  する請願中路雅弘紹介)(第四六二〇号)  同(春田重昭紹介)(第五〇〇七号)  公務員退職手当削減反対等に関する請願(阿  部助哉君紹介)(第四六二一号)  同(伊賀定盛紹介)(第四六二二号)  同(上田卓三紹介)(第四六二三号)  同(金子みつ紹介)(第四六二四号)  同(金子満広紹介)(第四六二五号)  同(川俣健二郎紹介)(第四六二六号)  同外一件(高沢寅男紹介)(第四六二七号)  同(不破哲三紹介)(第四六二八号)  同(松本善明紹介)(第四六二九号)  同外一件(山本政弘紹介)(第四六三〇号)  同(大島弘紹介)(第五〇二八号)  同(小林政子紹介)(第五〇二九号)  同(中路雅弘紹介)(第五〇三〇号)  同(中島武敏紹介)(第五〇三一号)  重度重複戦傷病者に対する恩給の不均衡是正に  関する請願有馬元治紹介)(第五〇〇八  号)  同(稻村左四郎紹介)(第五〇〇九号)  同(片岡清一紹介)(第五〇一〇号)  同(神田厚紹介)(第五〇一一号)  同(染谷誠紹介)(第五〇一二号)  同(田澤吉郎紹介)(第五〇一三号)  同(塚原俊平紹介)(第五〇一四号)  平和憲法擁護等に関する請願外三件(鈴切康  雄君紹介)(第五〇一五号)  傷病恩給等改善に関する請願今井勇君紹  介)(第五〇一六号)  同(海部俊樹紹介)(第五〇一七号)  同(熊川次男紹介)(第五〇一八号)  同(河本敏夫紹介)(第五〇一九号)  同(佐藤恵紹介)(第五〇二〇号)  同(玉城栄一紹介)(第五〇二一号)  同(中村喜四郎紹介)(第五〇二二号)  同(鳩山邦夫紹介)(第五〇二三号)  同(吹田愰君紹介)(第五〇二四号)  同(堀之内久男紹介)(第五〇二五号)  同(森清紹介)(第五〇二六号)  同(森山欽司紹介)(第五〇二七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、第九十三  回国会閣法第九号)      ――――◇―――――
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  3. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まず最初に、本題からは外れますが、日本国家の運命にとって大変重要なことでございますし、内閣は当然そういう問題に関与しなければならないと考えまして宮澤官房長官にお願いするわけですが、その前に、私の退職手当に関する質問は大体十一時半以降になると思いますから、中山総務長官関係のないことを長々と聞くのもなんですから、どうぞ御自由に御退席なりしていただいて結構でございます。  そこで、官房長官にお伺いいたしますが、今度総理アメリカに渡って日米共同声明作成し、これを全世界に鮮明にされたわけでございますが、この声明の中には総理の思想と申しますか考え方が十分入ったとお考えですか。まずこの点が第一点であります。  なお、官房長官は非常に時間がありませんので、一遍に問題点を出してお伺いいたしますから、その点よろしくお願いいたします。  第二点は、この共同声明はすでに首脳会談の前に原案がつくられて固まっておったと聞いておりますが、それは事実かどうか。またそういうやり方では何のための首脳会談であるか全くわからないと私は思うのでございます。少なくとも首脳会談を踏まえて共同声明が出されるというものでなければなりません。しかるに、二月ごろからその準備に入って原案づくりをやっておった。そうしてそのあげくが、今度帰ってきたら総理外務省考え方が食い違っておる、意見が不統一であるということが暴露されたわけであります。こういうことについてはその共同声明作成作業あり方に問題があったのではないか。  しかも、総理出発前に大体四項目にわたって所信の表明をし、そういう立場会談に臨むということを言われておったわけです。それはまず、東西関係に関しては敵、味方を色分けすべきではない、こういう態度を表明され、さらには具体的な安全保障政策をめぐる日米間の相違に触れて、日本日本だ、政策が違ってもよいではないか、こういうことが第二点として表明され、それから第三点としては、包括的核実験禁止を提唱する、そして第四点として、東西対立緊張緩和日本の独自の立場で明確に主張する、こういう四つの基本的態度を表明され、あるいはまた朝日新聞等では、同盟と追随とは違うということで決して追随しないようにその社説で発表されておるわけです。こういう世論の関心というか、そういうものを踏まえて出発されたのですが、しかしその事前にこの声明がつくられておった、そしてそれに十分総理意見を盛り込むことができなかったという不満が帰国後表明されたと聞いております。一体こういうやり方についてどうなんでしょうか。  それから次は、日米安保条約について、今度の政府統一見解の中で、官房長官日米安保条約は片務条約であると明言されておりますが、しかし一方において外務省首脳日米安保条約が片務条約だというような考え方はナンセンスである、これは明らかに双務条約だという趣旨のことを言っているわけです。時間の関係でこれは後でまた外務省お尋ねする際に内容を詳しく読みますけれども、そういうふうに外務省官房長官考え方とが全く食い違っておる、この点については一体どう考えておられるのか。  それからもう一つは、予算の問題でございますが、五十七年度予算防衛費の増強ということが考えられるのかどうか。総理は決して突出した考え方は持たない、財政再建と行革が最も重要な当面の課題であるから、防衛予算についても他とのつり合いというものを考えなければならないということをはっきり言明されておるわけですが、その点についても明らかにしていただきたいと思います。  まず以上からお聞きいたします。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 共同声明作業が非常に早い段階から進められておったのではないかというお尋ねでございます。私もつまびらかではございません。つまびらかには外務当局から御説明をいたすべきだと思いますが、しかしそうであろうと想像いたします。と申しますのは、鈴木・レーガンの日米首脳会談は、いろいろな首脳会談がそうでございますように、やはり首脳会談が行われるというそのこと、あるいはその時点を目指しまして、それまでの両国間のいろいろな懸案あるいは問題等々を処理しておこう、首脳会談というものはそういうような意味効用をも持つものでございますので、いわば何と申しますか、たまった仕事を一つ片づける締め切りと申しますか、そういう意味でのサミットという効用を確かに持っておりますので、したがいまして、首脳会談が設定されますと、それに向かいまして両国事務当局がそれまでのいろいろな問題の整理をしてかかるということは当然にいたします。コミュニケ作成も、そういう意味では両国間のいろいろな物の考え方を調整し、そして合意をしておこうという作業でございますから、当然早い段階からそれが行われるということはあることであろうと存じます。  そのようにしてできました共同声明総理大臣考え方を反映しておるかと言えば、これはもとより日本政府考え方米国政府考え方、両方を突き合わせまして調整をするわけでございますから、そのような意味での日本政府考え方が反映されておりますことはもとよりであると存じます。  それからなお、総理大臣がかねて緊張緩和についていろいろなお考えをお持ちになっておられる云々という御指摘がございましたが、それは私はそのとおりと思います。すなわち、現在の国際関係におけるソ連の出方というものにはいろいろ憂慮し心配をいたしております。と同時にまた、そういうソ連に対していろいろな意味で話し合いの道は開いておかなければならない、そういう機会はできるだけつくらなければならないと総理考えておられることは、そのとおりでございます。わが国の外交はそういう考え方をいたしておると存じます。  それからその次に、安保条約は片務的なものであるかどうかということについてのお尋ねでございましたが、一般的に申して条約権利義務お互いに定めるものでございますから、そのような意味では双務的である、一般条約というものは全く片務的だということはあり得ないではないかという点ではそのとおりでございますが、私の申そうとしておりますのは、安保条約でいわば一方に危険が生じたときに他方がそれに対して防衛のための支援をする、そういう問題については、防衛義務については米国日本に対してそれを条約上負っておりますけれども、わが国米国に対してそれを負っていない、負うことができないという意味で双務的ではない、レシプロカルではないということを申しただけでございまして、条約というものが一般にはお互い権利義務を定めておるという点で申せば、それはそういう意味では双務的だということは言えるであろうと思います。また外務省首脳が特にその点で申しましたのは、この条約わが国もいろいろな義務を負っております。またいろいろな負担をいたしております。したがって、いわゆるただ乗りということには当たらないということを指摘したかったとすれば、私はそれは正しい指摘であると存じます。  最後に、昭和五十七年度の予算編成において防衛費をどうするかということでございますが、政府はまだ正式の決定をいたしておりません。ただ、先般国防会議におきまして、いわゆる五六中業において「防衛計画の大綱」を契約ベースではありますが昭和六十二年度には達成したい、そのような作業を開始することを防衛庁長官に認めるという決定をいたしておりますので、そのような意味で着実な防衛努力、そのための経費の計上をしていかなければならないということは一般論として申し上げることができると思います。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 もう一つくらいいいでしょうか、時間はどうなんでしょうか。――それじゃもう一つだけお伺いいたします。  この共同声明は、日本にとって一体どういうメリットがあったのか、これを明確にしていただきたいと思います。私が見る限りでは、逆にこんなものはなかった方がいいのじゃないか、こう思うのです。もう時間が来るから後で外務省とやりとりをしますけれども、そういう立場メリットとは一体どういうものか、伺いたい。  それから、長官見解の中で、この政府内部の解釈の違いは単に力点の置き方の違いであって、本質的には不統一ではないと言われましたが、この力点の置き方が大変な問題を起こしているわけです。軍事の方に力点を置くのか、そうでない方に力点を置くのかがこの問題の中心なんですから、その力点の置き方が違うということ自体が問題なんで、それが一致しないのは決して意見統一しておるとは解釈できないわけですから、その点を明らかにしていただきたいのです。     〔委員長退席愛野委員長代理着席
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この共同声明におきましては、両国関係を反映いたしまして、まず片方で、日米両国が相協力してこの困難な世界政治経済情勢にどのように対処すればよろしいかということをいろいろな意味で述べておりますが、これはわが国も経済的には自由社会の第二の大国でございますので、第一の大国と第二の大国世界に対して負っておる義務、責任を遂行するということについて合意したことは、私は大変意義のあることであると考えます。  また第二に、日米間のいろいろな問題について述べておりますが、日米間にございますいろいろな懸案を解決していくという意味でこの共同コミュニケが述べておりますことは、両国間の関係に関しましても意味のあることであると考えております。  それから、第二のお尋ねでございますが、今度いろいろに考え方の違いというようなことが報道で指摘されておりますが、率直に申しますと、少しニュアンスが過大に伝えられ過ぎているのではないかな、いわば話してわかってみればそう大きく違った話ではなかったというようなところに帰着するようなことについて多少大きく考えられ、あるいは報道され過ぎたのではないかなという感じを私は持っております。したがいまして、それはいわば表現においてどちらに力点を置くかという程度のことであったというふうに申しておるわけでございます。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは官房長官、大変御無理をいただいてありがとうございました。  次に、外務省にお伺いをいたしますが、日米会談を前にして、外務省としてこの共同声明準備に二月から入ったと申されておりますが、どういう準備をどのような形でなされたか明らかにしていただきたいと思います。
  8. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 先ほども官房長官からお答えされましたように、共同声明作業というのは非常に時間的にかかるものでございまして、従来から首脳会談を始めるに当たって相当前広に準備するのは事実でございます。  いまお尋ね日米共同声明はいつごろから準備にかかったかという点でございますが、外務大臣が三月の下旬に訪米いたしました。訪米して帰られてから五月の総理訪米の時期が決まりまして、その時期からこの共同声明作業に入ったわけでございまして、厳格に何月何日からということはちょっと私も記憶しておりませんし、またそれほど厳密な意味日本側作業にいつから入ったかということは、全体の流れから言えばさほど意味はございませんが、首脳会談を前にして共同声明作業については相当時間がかかるということで、前広に対したということは事実でございます。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、この共同声明作業に入る中で、総理考え方というものをどういう形でこの中に盛り込まれたか。私がこの声明の全文を見る限り、総理訪米前に言った基本的態度と大分食い違っている点があるように考えられるのですが、そういう点についてはどのようにどこに配慮されていたのか、そこをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  10. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず、どういう手順で総理意向をこの共同声明の中に反映したかというお尋ねでございますが、総理訪米が決まりましてから、具体的には四月になってから総理との間で勉強会を何回かいたしております。  その過程の中で、議題あるいは会談に当たっての日本側の基本的な考え方について事務当局から御説明し、また総理から基本的な考え方についてのいろいろな御指示がございました。そういう過程の中で総理のお考えというものを私たちとしても十分に把握し、そして共同声明作業にかかったわけでございまして、共同声明の草案をつくり、それをアメリカ側と話をする過程においても、随時総理を初めとして政府上層部意向を反映しながら作業をしていったわけでございますし、さらに共同声明の詰めの作業に入った段階においては、総理あるいは外務大臣の御意向条文ごとに伺い、最終的に固めたわけでございます。  それでは、どういう点を入れたかということでございますけれども、まず第六項の中で軍備管理のことがございます。先ほどのお尋ねに関連するわけでございますが、核実験禁止ということも含めて包括的に軍備管理、軍縮に向けて日米双方が協力するというか、前進させることを述べてございますが、そういう点が第一点。  それから第七項の中で、総理が従来から言われております総合安全保障の概念、これを共同声明の中に入れたわけでございます。  さらに、第八項の安全保障あるいは防衛の問題については、お読みになれば明らかになりますように、まず「総理大臣は、日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、」云々ということが書いてございまして、この「憲法及び基本的な防衛政策」という中には、総理が従来から言われております専守防衛あるいは非核三原則等日本側の基本的な考え方を織り込んだわけでございます。  以上が主な総理あるいは外務大臣意向を踏まえてのこの共同声明作成に当たっての考え方でございます。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、この声明ソ連あり方について非常に厳しい認識をしておられるようです。憂慮するとかソ連の行動について非常に問題であるという趣旨のことが書かれております。ところが、出発前は敵とか味方とかという考え方は持たない、つまりソ連に対して東西関係の問題を、仮想敵国視したりあるいはそういう考え方で問題を進めないという趣旨のことを申されたと思うのですが、それが今度共同声明の中では大変厳しくとらえられておる。たとえば「ソ連の動きに対し憂慮の念を示した。」と言って、その後で「ポーランドに対するいかなる介入世界平和に深刻な影響を与えるものであるとの考えをあらためて述べた。両者は、ポーランドへの介入が起きた場合には、西側先進民主主義諸国は、協力し、協調した政策を遂行すべきであるとの点で意見の一致をみた。」こういうふうになっておるのですよ。  そうすると、この「協力し、協調した政策を遂行」するということは、私はむしろこの中には集団安全保障考え方が入っているのではないかというふうに考えられるのですが、そのことについてはいかがでしょうか。
  12. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 集団的安全保障という言葉の意味でございますけれども、もとより日本集団的自衛権を行使し得ないことは明らかでございます。したがって、ここで述べていることは、ポーランドへの介入があった場合には西側諸国として協力して整合性のとれた政策をとるということでございまして、具体的にそれぞれの国がいかなる政策をとるかということまでは触れておりません。これはそれぞれの国の国力、国情に応じてとるわけでございますが、いずれにしても、ポーランド情勢が悪化し、ポーランドに対するソ連介入があった場合には、そこで西側がとる措置というものは整合性がとれていなければその効果はないということを認識したということを述べておるわけでございます。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ソ連に対する総理考え方が出ていないということを私はさっき言っているのですよ。東西は区別しない、西だ東だというような考え方では臨まない、それが現実には臨んでいるじゃないかということなんです。この点はどうなんですか。
  14. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 その点は、むしろここで述べていることは現状の認識でございます。現にソ連がアフガンに進出した、それは厳然たる事実でございまして、それに対して憂慮するということはまさに国際情勢に対する認識として当然ではないかというわけでございますし、さらにポーランドへの介入があった場合にも、それはひとり西欧のみならず西側全体として安全の面あるいは国際情勢の面から大変深刻な状態になるであろうという認識でございます。  それから、敵と味方を分けないといういまのお考えでございますけれども、その点についてはむしろ九項で経済協力について両者考え方を述べてございますが、その中でまず南北問題というものが非常に重要であるということで、第二項で「世界の平和と安定の維持のためには開発途上国の政治的、経済的及び社会的安定が不可欠であることを確認した。」こういうことでございまして、ここには日本の従来からの経済協力の理念が述べられており、その中で経済協力について敵と味方を峻別する、そういうような考え方はとっていないということでございます。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大変上手に御答弁されておりますけれども、実際はだれが読んでもこれはソ連を心の中の敵として考えているとしか受け取れないわけです。仮想敵国というようなものではなくて、むしろ心の中の戦闘しない敵である、こういう印象をこの全体から受けるのは私一人ではなかろうと思うのです。それは今度その問題で出された新聞等によってもほとんど一斉にソ連に対する態度が厳しくなっているというとらえ方をしているわけでございます。そこで、それじゃアメリカでは対ソ感情と申しますか対ソ認識というのは一体どういうふうにとらえているんでしょうか。
  16. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 今回の首脳会談あるいはヘイグ長官との会談等においてアメリカ側が述べましたことは、ソ連がアフガンその他の地域において進出を図っている、そしてその進出に対抗するためには西側が協力して当たらなければならないということを述べ、しかしアメリカとしてはやはりソ連との関係で窓をあけておく必要がある、窓をあけなければソ連がより非合理的な行動に出るということでございまして、具体的には欧州戦域核交渉については本年末までに再開する、それからソ連との話し合いは進めていくけれども、ソ連との交渉においては、従来のアメリカの政権がとってきたように軍備管理だけ取り出して交渉するのでなく、対ソ政策の一環として話し合いを続けていくということが話し合われまして、そういう点から見てアメリカソ連に対して、ソ連の行動につき憂慮の念を示しながらも、しかし対ソ話し合いの窓はあくまでも残しておくということを明言しております。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 話し合いの窓は残してあるものの、アメリカから日本に対する軍備増強の要請というものを考えますと、心の中では対ソ戦略として日本も任務を分担してもらいたい、こういうことがはっきりと出ているんじゃないでしょうか。その点はどうですか。
  18. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 従来もアフガンのような情勢が見られる場合に、対ソ経済措置を日本及び西欧はとりました。これはやはり西側の一員として、ソ連のそういう行動が非常に高価なものにつくということを知らせることが、今後のソ連の行動を抑制する上で不可欠であるということでございまして、そういう点において、たとえばポーランド介入があった場合にも、同じように西側としては整合性のとれた政策をとってソ連に対して警告すべきであろうということについては、認識の一致を見ているわけでございますが、具体的に各国がとる方策については、それぞれの国力、国情に応じてやるということでございまして、いま委員が述べられたように、日本を対ソ戦略の中に取り込んでいくというようなことはアメリカ側考えておりませんし、日本日本としての独自の立場から、これに対処していくということは申すまでもないわけでございます。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この西側整合性ということは、一体何を指しているのでしょうか。日本平和憲法を持って、日本の自衛隊の活動範囲は制限されておる。そういう場合に、わざわざこの共同声明西側の一員として協調し政策を遂行する――それじゃ「協力し、協調した政策を遂行すべきである」ということは、具体的にどういうことを指しているのですか。これは西側から要請されて、そこで初めて日本憲法とのかかわり合いでどういう行動をとるかを判断するならばまだ話がわかりますが、ここではまさに憲法というものの存在を忘れてしまって、何か日本がいま世界情勢に指導的に動こう、そういう意識が出ているように思われるのです。そしてアメリカと一緒にそのことを遂行しよう、こういう意思がこの中にあるのじゃないか、こんなふうに考えられるのですが、どんなものでしょうか。
  20. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 すでにアフガンあるいはイランの問題を契機といたしまして、日本西側の一員として西欧諸国と協調し協力してきたのは事実でございまして、今後もその姿勢を貫いていくわけでございますが、もちろん先ほども申し上げましたように、日本には日本の置かれている制約というものがあり、憲法の範囲内における行動であることは当然でございます。これは八項の中を見ていただいても、日本の果たすべき役割りはあくまでも日本憲法あるいは基本的な防衛政策ということを言っておりますので、いま御引用されました西側の一員として「協力し、協調した政策」ということは、何も憲法を乗り越えて集団的自衛権を行使するというようなことは日本としては毛頭考えているわけでございませんで、経済的な問題あるいは外交的な努力、そういうものを指しているわけでございます。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 総合的な安全保障というものを考えておるということがここで明らかになっているわけですが、しかし、西側との協力、協調という中では、日本は経済面について協力、協調するとか政治面についてそういうふうにするとかはっきりしているならば、それはいいのですけれども、これは軍事も一切全部含んでいるのでしょう。それじゃ同盟という一つの枠の中で、軍事面に対して要請があった場合は、どういうふうにしてこれを逃れるわけですか。
  22. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 あくまでも日本としては、日本にふさわしい役割りということで、たとえば積極的な外交の展開あるいは経済協力あるいは経済面におけるその他の協力ということでございまして、日本憲法の認めていないような集団的自衛権の行使を求められてきた場合に、全く仮定の問題でございますが、これは当然日本側としてはできないということで明確に断るということでございます。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 言葉では明確に断るとかなんとか言っていますけれども、しかし現実に、おれとあなたは同盟ですよ、しかも戦争というものは、一つの国が戦線から離脱したりあるいは戦線を拒否したりした場合には、そこに大きな欠陥が生じてくる、そうすると結局断り切れなくなっていくと私は思うのですよ。今度の共同声明でなぜ同盟という言葉を使ったのかということは、日本がそういう役割りを果たすために、一遍にそういうことを文章として盛り込んでは、平和憲法を持つ日本には大変な問題が起きるので、だんだんとなし崩しをやっていこう、その足がかりとして同盟という言葉を使っておると私は思うのです。大体同盟、アライアンスという言葉は、軍事の問題を含んでいると一般的にアメリカでは考えられている。これはNHKの解説の中にもありましたが、そのことは認めますか。
  24. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず日米関係を同盟関係と表現することは、一昨年、昨年五月の大平総理の二度の訪米の際にも行われております。この表現自体は新しいものでないことは御承知のとおりでございます。  そこで、同盟関係意味については、それは共同声明にも述べられておりますように、民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれた総合的な日米間の関係をとらえて表現したものでございます。このような総合的な関係の中には、政治、経済、文化等の関係とともに、日米安全保障条約に基づく日米安保関係があることは、これまた客観的な事実でございます。  そういうような理解について日本政府部内でも考え方は一致しているわけでございまして、会談が終わりました後にアメリカ政府の高官が述べていることは、日米関係を広くとらえて、あらゆる面から見て日本アメリカがいろいろな点で共通の価値観を持っている、それを分かち合うということをここで確認したということでございまして、いわゆる攻守同盟とかあるいは集団的自衛権の行使を前提にするような軍事同盟ということでないことはアメリカ側もそこで明確に述べておりまして、アメリカ側が今回の会談において述べていたことは、日米関係があらゆる面で非常に成熟した関係になってきている、そういうことを表現する言葉として同盟という言葉を使っているのであって、先ほど申し上げましたように軍事同盟、いわゆる攻守同盟とかあるいは集団的自衛権の行使を前提にした同盟ということでないことは、アメリカ側もまさに日本側と同じような理解を持っているわけでございます。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この共同声明の中の「民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれていること」ということは、同盟の中身を説明したのではなくて、そういう一つの価値観の上に新たな同盟を結んだということでしょう。そしてその同盟というのは、大平総理が二回にわたって使っておると言うが、これは口頭で使ったので、公文書の上では全然使っていないわけですよ。公文書の上で使ったのは今回が初めてでしょう。それは軽く会話の上で同盟などと言う場合もあるかもしれません。しかし、いやしくも公文書に出すには、もっと慎重さが必要じゃないでしょうか。いままではパートナーとかそういう言葉を使っておった。ところが、今度同盟という言葉を使うに至ったことは、日本アメリカに対する認識の変化あるいは政策の変更というものが裏側にあるというふうに認識するのは当然じゃないでしょうか。
  26. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 もちろん大平総理訪米の際に、共同声明というものは、第一回目のときは出ておりますし、第二回目のときは出ておりません。その中で同盟という言葉は使っておりません。ただし、二回にわたる訪米の際に、いずれもあいさつの中に同盟という言葉を使っております。  それから、第二点の同盟関係というものは何かというのは、ここに書いてございますように、まさに「民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれている」ということでございまして、さらにそういう日米間の「連帯、友好及び相互信頼」という関係をここでは再確認したということでございまして、今回新しくそういう関係をつくったということではなくて、すでに日米間には、日米全体を通してあらゆる面で非常に緊密な関係があるということをここで再確認しているわけでございます。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはきょうの新聞ですが、いかにそういうふうに弁解されても、今度アメリカの方ではどうなっているかというと、これはいままでにすでに同盟的な実態ができ上がっているのだ。たとえば「アフガニスタン侵攻後の対ソ制裁措置や人質事件に絡む対イラン制裁では最も忠実な協力者だった。」――これは日本ですよ、日本がそういう立場だった。「それと並行しての防衛力整備努力、日米共同指針(ガイドライン)の整備、自衛隊の環太平洋合同演習(リムパック)への参加と着々と事実は積み重ねられている。」その事実を一つのレトリックというか、そういうものに一致させただけだ、こういうことを米側が言っているのですよ。こういうふうに考えると、日本が勝手に解釈したって、それは日本だけの解釈で共同声明というものは進むものではないと思うのです。これはだれが見ても非常に軍事色を強めた日米同盟であるということが考えられるわけで、そこで言ってみれば、日本側は都合よくこれを解釈する、アメリカ側は具体的に今度は事務レベルまでここに押し込んで進めようとしておる。こうなった場合、玉虫色というのは最後にどういう色に変わっていくかということが非常に重要だと思うのです。いままでの外交の歴史からしましても、必ずこれは力関係の、力の強い方の色に変わっていく。だからいいかげんにここで身勝手な解釈はすべきではないと思うのです。その辺について一体アメリカ側はこれを確認しているのでしょうか。
  28. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 同盟関係がどういうことかという点は、私すでにほかの委員会で答弁しておりますように、先ほど来お答えしているような非常に広い意味で、日米関係が共通の分かち合う価値というものはたくさんある。その上にできている関係である。しかし、もちろん日米の間には安全保障条約というのがございます。したがって、そういう限りにおいていわゆる安全保障の面も排除するわけでは毛頭ないわけでございます。そういう点につきましては、共同声明作業過程の中で、わが方のワシントンの代表とアメリカ側の代表との間で何度も確認しているわけでございまして、いま委員が言われましたように解釈の差があるのではないかという点については、解釈の差は全くございません。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは各新聞社の社説等を見ましても、この同盟というものが非常に危険な道であるということを指摘されておるわけです。ですから、これは外務省の強引な解釈だけで通しても、一般的に国民は大変な疑問を持っているわけです。この疑問を解くには、やはり内容全体をもっとわかりやすく解説する必要があるのじゃないか。たとえば東西関係の緩和のためにどういう個々の内容で努力されているのか。そしていま東西関係をめぐる情勢というのはますます冷戦の方向に入っていっているのか、それともいまこれを緩和するチャンス、きっかけができてきておるのか、その辺に対する認識とあわせてお願いいたします。
  30. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 東西関係というものが厳しさを増しているのは、まさに事実のとおりでございます。しかし、アメリカも言っておりますし、またわが方としても東西関係がこのままであってはもちろんならないわけでございます。特に核の面において、一たん核が行使されるというようなことになれば、まさに人類の破滅になるということから、日本は特に軍備管理の面で種々軍縮委員会あるいは国連等を通じて努力しているわけでございまして、そういう軍備管理あるいは軍縮の面における努力というものも共同声明にうたっているとおりでございまして、決してその道のりは容易でございませんけれども、わが方としては、着実に軍備管理等を通じる東西の緊張の激化を防ぐという点について種々外交的な努力を重ねていくのが政府の方針でございます。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 軍備管理とよく言われますが、軍備管理というのはどういうことなんでしょうか。これはSALTIIとかIIIとか、そういうことを指して言っているんですか。具体的にはどういうことを指しているんですか。
  32. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ここで言っておりますのは、核の軍縮もございますし、あるいは通常兵器の軍縮もございます。すべてを包括して言っておるわけでございまして、特に日本が現在力点を置いているのは核実験の全面禁止ということでございます。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)委員 核実験の全面禁止をこの会談の中で提唱されて、その反応はどうでしたか。実験を停止します、これを実行しますというお答えがあったのですか。
  34. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 会談の中で特定にその核実験の全面禁止というのを今回の首脳会談で取り上げたわけでございませんけれども、従来から日本はそういう点において努力をしておるということはアメリカも認めておりますし、また今回の会談の中においてもまさに共同声明に盛られているように、軍備管理が核、通常兵器を含めて非常に必要であるという点については両者認識というのは一致しているわけでございます。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大変あいまいな非常に矛盾したいまの御答弁ですが、最初は総理は包括的核実験禁止ということをはっきりと言っているんですね。これを提唱すると言っておったのに、いまのお話では、この会談では別段提案しなかった。日本が常日ごろ言っていることだ。これはどうなんですか。国民に対して総理はうそをついたということですか、その点どうですか。
  36. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 首脳会談は時間的な制限もございますので、一つ一つの具体的事例について話し合いをするということはできませんけれども、全般的に軍備管理あるいは軍縮の点についての話し合いということは、もちろんこの共同声明に盛られているようなことがあったわけでございまして、特定の問題を取り上げなかったからといって公約の違反になるというふうには考えられないのではないかと思います。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、全般的な軍縮、こういうことを話された、核実験については時間の関係でそれまで突っ込んだ話はできなかった、こういうことのようですが、全般的な軍縮、つまり核と通常兵器を含めて軍縮を実行するようにという話し合いをしておいて、一方において日本が軍備増強を承諾してくるということは非常に矛盾していると思うのですが、その点はどうでしょうか。
  38. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 後段の日本が軍備増強を公約したということはございません。全く一般的に日本としては、従来どおり自衛力の整備を着実に進めていくということでございまして、アメリカ側もその日本の基本的な考え方については認識し、日本憲法を変えたり、あるいは日本に軍備の増強について、あるいは自衛力の増強について圧力をかけるようなことは毛頭ないということを明確に申しております。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、どうもあちこちに飛び火してしまうのですが、一つ決まりをつけたいのは、この共同声明を発表して、それが世界、特に東の陣営にどういう影響を与えたでしょうか。好影響、いわゆるよい状況をつくるきっかけになったでしょうか。
  40. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まだ全般的に各国の反応というものは入ってきておりません。しかし、もちろんソ連はこの共同声明に対していろいろな批判を言っておりますけれども、ソ連を除くほかの国、中国を含めましてアジアあるいはヨーロッパの国は、この共同声明について評価をしているというのが現在までのところわれわれの得ている一般的な情報でございます。
  41. 渡部行雄

    渡部(行)委員 世界の中で一番危険性を持っておる火種と申しますか原因というのは、米ソの関係でしょう。ソ連を除いたほかの国が好意を寄せているからということでは、世界平和の問題解決にはならないと思うのです。  そこで、この共同声明ソ連にどういう影響を与えておるかと申しますと、ソ連では大変警戒を強めてきておる。それは新聞にもあるように、ちょっと読んでみますが、「日米両国が「同盟」関係を初めて明記し、ソ連を名指しで警戒を表明した共同声明を採択したことにソ連は強く反発、これを契機に両国の軍事協力、日本再軍備の動きに拍車がかかりはしないか、と警戒を新たにしている。知日派のソ連筋は八日、「今度の首脳会談の結果、鈴木政権の対米追随姿勢は決定的なものになった。日本は極東地域での信頼強化措置を呼びかけたソ連提案にこたえようとせず、逆に軍拡、緊張激化の道を歩もうとしている」と厳しい調子で語った。」そしてまた、モスクワに日本の国会議員が行って、そこで佐々木民社党委員長との会談をしたポノマリョフ・ソ連共産党政治局員候補兼書記は、鈴木政権を日本の歴代内閣の中でも最も反ソ的であると評しておられた、こういうふうに言っておられるわけでございます。そしてしかも「日米共同声明は中国、韓国との協力強化もうたっているが、ソ連はこれを北東アジア地域で「対ソ包囲網」を一段と強める動きと受けとめている。」こういうふうに、まさにソ連を包囲した包囲網の形成であると受けとめられておるのが事実だとすれば、この声明というものは決して平和のためにならなかったのじゃないでしょうか。その点はどういうふうに価値判断をいたしますか。
  42. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いま御引用になりましたソ連の反応、これはソ連立場としてそういう反応が出てくるということであろうと思います。しかし、私たちとしては、まず第一項の冒頭の中に「両者は、世界の平和と繁栄を目指し、緊密に協力してゆくことを約した。」ということがございまして、日本として今後の外交政策を進めるに当たって、現状の厳しさを踏まえながら、しかしその上に立って、さらに世界の平和と繁栄に何ができるかということを今回の共同声明でも確認しているわけでございます。ソ連の反応がいま言われたように厳しいからと言って、それはソ連立場であって、日本立場というのはおのずから違っていくというように考えておりまして、日本として引き続き外交的な努力をさらに重ねていくということは申すまでもないことでございます。
  43. 渡部行雄

    渡部(行)委員 外交というのはたてまえではなくて、結果がどういうふうにできていくかというのにむしろ重点を置くべきじゃないだろうか。かえって相手の感情を逆なでするような、そして相手がますます挑発に対処するという形で軍備増強に走る、そういう一つのきっかけになるようなことは避けるべきじゃないか、私はこういうふうに思うのですが、見ていると、ただアメリカのきげん取りにアメリカに行って、どんなごちそうを食ったか知らないけれども、余りごちそうを食べ過ぎて言いたいことも言えなくなって、全く向こうの言いなりになったのではないか、こんな感じさえするこの共同声明であります。そういう点で、こういう声明を結ばなければならなかった理由はどこにあるのでしょうか。外務省の中にも大分慎重論が出ておったらしいのですが、そういう慎重論が抑えられて、こういう防衛の分担を規定されるなりあるいは軍備の増強を押しつけられるようなかっこうの共同声明を結ばなければならなかったその原因はどこにあったのでしょうか。
  44. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 先ほど官房長官からも答弁されておりますように、今回はレーガン政権及び鈴木政権にとって初の出会いでございまして、そして今回の訪米の最大の目的は、日米両国の友好親善関係を再確認し、かつ鈴木総理とレーガン大統領との個人的な信頼関係を樹立するということにあったわけでございます。その結果を盛った共同声明を出したということは、両者のその時点における国際情勢認識をうたうという点において、それなりの意義があるということでございます。  それから、先ほど来この共同声明アメリカ側の言いなりになって日本の主張は全く通っていないではないかという御指摘でございますけれども、共同声明作業過程におきましても、日本側としては貫くべき点は貫き、かつ会談において総理あるいは外務大臣日本立場をそれぞれ主張しておられまして、特に第二回の会談において時間をオーバーして、三十分の予定が一時間半になったという原因は、総理大臣日本防衛政策の基本について非常に明快に述べられたということでございますので、共同声明を含めて今回の会談アメリカの言いなりになったということは、私たちとしてはそういう考えには毛頭立っておらず、やはり日本日本としての主張を貫いてこの会談を終えてきた。またそういう会談を終えたことによって日米間の連帯、協調というものが再構築され、八〇年代への協力というものの将来をさらに展望する文書としてこの共同声明が出された、こういうふうに理解しております。
  45. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは少しこの中に入りますが、第四項、読むと時間がかかりますから読みません。この四項は、つまりアメリカの中近東政策を全面的に日本は支持し承認していると受け取っていいでしょうか。
  46. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 アメリカが中近東あるいは湾岸地域において、外交、軍事、経済の面で払っている努力、それを日本としても評価している。それで、実際上アメリカ側の確固たる努力によって同地域の安定が図られ、ひいては石油の日本への輸入について後顧の憂えをなくしている、それによって日本が裨益しているということをこの第四項において述べているわけでございます。もとより同地域におけるアメリカの努力というものが湾岸諸国の同意なくしては行われないわけでございまして、日本としてもその湾岸諸国の努力あるいは同意というものを前提にして同地域における平和というものが保たれるという認識でございます。
  47. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、この中に「包括的中東和平達成のための過程がさらに促進されるべきこと」というふうに書いてありますが、これは具体的にはどういうことを指しているのでしょうか。
  48. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 御承知のとおり現在中東の和平については、イスラエルとエジプトそれにアメリカが入りましてキャンプ・デービッドの合意ができているわけでございますが、それだけでは中東の和平というのは達成されない。やはりパレスチナ人の自決問題というものが解決されなければ達成されない。それがいわゆる包括的な中東和平ということでございまして、その包括的な中東和平達成のための努力というものを日米双方が、それぞれの立場はもちろんございますが、それぞれの立場から見てもさらに促進されなければ真の意味の中東の和平というものは達成されない、こういうことでございます。
  49. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、日本は全く変わったことではないと言っておりますけれども、第七項の問題をこういうふうに読みかえてみると、非常に問題が出てくると思うのですよ。「総理大臣は、先進民主主義諸国は、西側全体の安全を総合的に図るために、」世界の政治というものをまず隠しておいて、世界の軍事上の「諸問題に対して、共通の認識を持ち、整合性のとれた形で対応することが重要であるとの考えを述べた。」こういうふうに読むと、これはまさに軍事同盟の色彩を強くしたというふうにしか受け取れないのじゃないですか。そこに政治と経済が加わって総合的なものになっていくとなれば、単純な軍事同盟以上のものがここに考えられると私は思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  50. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いま委員が特に政治を隠してということを言われましたけれども、ここはまさに述べてあるのは政治、軍事、経済、そういう諸問題を全部統合して考えているわけでございまして、総理総合安全保障の概念を持って総合安全保障会議というものを開かれているわけでございますが、その際に考えられるのは、安全保障というのは何も軍事的なものだけでなくて、やはり政治的、経済的なもの、すべての要素を取り入れなければならないということでございまして、これはひとり日本安全保障のみならず、世界安全保障についても言えることであるという認識をここで述べているわけでございます。
  51. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、この中の「共通の認識」というのは具体的に何でしょうか。これは役割りの連帯ということではないですか。あるいは「整合性のとれた」というのは、たとえば万が一戦争が起きた場合、西側全体の軍事的整合性――軍事的整合性というのは戦争遂行能力の上から考えられる整合性というふうに考えられるのじゃないでしょうか。その点はどうですか。
  52. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ここで述べられている「共通の認識」というものは、西側諸国がいろんな問題に対処するときに非常に異なった認識を持っていると、それに基づいている対応というのも足並みが乱れる。かつ従来のように、たとえばアフガンとかイランの問題を考えた場合に、経済的な措置をとる場合、当然西側諸国として整合性がとれた措置をとらなければ、それ自体としてその価値はないということをうたっているわけでございます。     〔愛野委員長代理退席塚原委員長代理着席〕
  53. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いまアフガン問題その他について西側の足の乱れというようなことを言われましたが、つまり共通の認識を持ち整合性を図るということは、日本の側からすれば、あのソ連制裁についてもあるいはモスクワ・オリンピックについての西側の動向についても非常な不満がある。日本は忠実にアメリカの制裁政策に従ってやったけれども、西側のヨーロッパではそれほど忠実でなかった、むしろ逆にあの機会にどんどんと貿易をしてソ連に輸出をふやしたという、こういう事実についての不満を述べられているようにも思うわけですが、そういうことを指しているのですか。
  54. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 そういうことを指しているわけでございませんで、もし西側として何らかの措置をとるとすれば、やはり整合性がとれてなければその措置自身として効果がないのではないかということを指しているわけでございます。  他方、いま委員の御指摘になりました点について、確かに日本が一番厳格に対ソ経済措置なり対イラン経済措置というものを実施してきたのは事実でございますし、また今回アメリカが穀物の禁輸を解除したその点について十分事前協議がなかったという点につきましては、今回の首脳会談において大統領の方から、今後こういう日本にも非常に関心のある問題については事前に協議をするということでございまして、やはりまず措置をとる場合にも協議が必要であり、あるいは措置を解除する場合にも協議が必要であるという西側全体の十分な連絡、協議ということを考えながら、こういうことをいまこの七項でうたっているわけでございます。
  55. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはなかなかすっきりした答弁にはなっていないのですが、前に進みます。  第八項で、日米間の役割り分担ということがうたわれておりますが、この具体的な中身について明らかにしてください。
  56. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 今回の会談において、この八項に述べている点について日米双方が何をするかという具体的な話までしているわけでございません。しかし、そこで考えているまず第一点、日本の安全についての日米の役割り分担、これは日米両国安全保障条約を結んでおります。したがって、第五条の事態になった場合に、すなわち日本が攻撃された場合には、日米共同して対処するということでございます。その場合に日本の果たすべき役割りというものは、「防衛計画の大綱」に従った措置でございますし、アメリカがその際に果たす役割りというものは、アメリカの持っているたとえば機動打撃力というものを行使する、そういうものを念頭に置きながらの役割りの分担でございます。  第二点の、極東の安全と平和に対する役割りの分担は何かという御質問でございますが、この点につきましては、もとより極東の安全と平和について日本が軍事的な役割りを果たせないということは、日本憲法において集団的自衛権の行使は認められてないということからも明らかでございます。しかし同時に、日本安全保障条約第六条に基づきまして、極東の安全と平和のためにアメリカ日本の施設、区域を使用するということを認めております。したがって、日米安保体制を効果的、効率的に運用するためには、そういう基地の整備を日本として引き続き行っていく、そういう意味では安全保障面において日本も役割りがある。しかし、それ以外の面において日本に期待されている役割りあるいは日本が果たすべき役割りというものは、外交及び経済等の面における役割り、こういうことでございます。
  57. 渡部行雄

    渡部(行)委員 しかし、これは今度の会談の中で、はっきりと日本の軍備をもっと増強すべきではないか、GNP比一%などと言わないでもっとふやすべきではないか、あるいは防衛大綱も見直すべきではないか、こういう意見は実際は出たのでしょう。
  58. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 今回の首脳会談におけるやりとり、あるいはワインバーガー、ヘイグ長官との会談の内容から、そういう具体的なことは全く出ておりません。アメリカ側が言っているのは、日本憲法あるいはその他の制約があるというのは十分承知している、アメリカとしては日本憲法を解釈するような僭越なことはしない、あるいは日本に対して防衛努力をしろというような圧力をかける意図は毛頭ないということでございまして、日本日本独自で自衛力の整備を図っていく、そういう点について今後も整備を図っていってほしいという一般的な表明でございまして、いま御引用になりましたような一%とか、その他具体的な点については、今回の首脳会談あるいはその他の会談についても全く出ておりませんで、ただ上院での総理大臣と先方の議員さんとの間の会談の中では、たとえば具体的に日本がペルシャ湾に展開している米軍の輸送費を持てというような議論がございましたけれども、首脳会談あるいは行政当局間の会談については具体的な話は一切ございません。
  59. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで結局具体的な話は、この八項の後段に「六月に予定されている大臣レベル及び事務レベル双方での日米両国政府の代表者による安全保障問題に関する会合に期待した。」こういうふうに書かれておるわけで、そこで今度は具体的な問題が出るということになると思いますが、これにしてもある程度のガイドラインというか、そういうものに対する基本的なものは話されたのじゃないでしょうか。
  60. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 首脳会談の中では、先ほど申し上げたようなところでございます。ただ一つワインバーガー長官総理大臣を訪問されたときに言っておりましたのは、ワインバーガー国防長官としても、日本が自主的に憲法その他の制約の中で自衛力整備を図ってほしい、それは大前提である。ただ、アメリカが現在やっている国防強化について、通常兵力の整備、弾薬、魚雷あるいは戦術航空機の強化を図っているということを述べた後で、日本日本の防空あるいは対潜、そういうような能力を高めてもらえばありがたいということが唯一具体的な話でございまして、今回の会談の中にはそれ以上日本に具体的に何をしろということは出ておりません。
  61. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その後に在日米軍の財政負担の軽減ということもうたわれているのですが、こういうふうに考えてくると、アメリカ日本を守るために本当に日本の国の上に基地を置いているわけですか。むしろ日本アメリカの言いなりにするために従属させて、いつまでも従属させるために日本の重要な個所にアメリカの基地を置いておると思っております。本当の独立国ならば、横須賀にアメリカの軍港を置くような国はありませんよ。こういうアメリカの基地が日本の首都の中にもある。そういうことをひとつも減らそうとしないで、日本が完全独立国家になるための努力をしないで、こういうアメリカの言いなりになって言うことをどんどんと背負い込んでしまったら、日本日本のために安全保障考えているのでなくて、アメリカ安全保障のために日本が最も危険な戦争に巻き込まれるというふうに考えられると思うのです。大体外交などというのは、相手から譲歩を迫られたら相手にも譲歩を迫るという、こういう形がなければならないと私は思うのです。ますます従属を強めているだけじゃないでしょうか。独立国家への道をむしろだんだんと何かまた後ずさりしているような感じがしてならないのですが、どこかアメリカの基地を減らす交渉は少しでもやったことがありますか。
  62. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず第一に、アメリカ日本の施設、区域を使用しているのは、まさに日本の安全並びに極東の安全と平和ということでございます。それから施設、区域の縮小については、ここ十年ぐらいのところをとっていただけば、何回か安保協議委員会を開きまして基地の縮小あるいは統合ということをやっております。私ここに資料を持っておりませんけれども、日本側として不必要な基地は整理してほしいし、あるいは整理するなり統合してほしいということを言って、それはそれなりに効果を上げてきているわけでございます。  今後ももちろんそういう態度で臨んでいくわけでございまして、日本アメリカの施設、区域があるから日本は従属国である、独立性がないというお言葉でございますが、そういうことであれば、現在の安全保障を守っていくためには集団安全保障というのをとっているのが世界の中にたくさんございます。NATOの国もそうでございます。自分の国だけで守れるというのは米ソだけでございまして、まさに米軍が日本の施設、区域を使っているということは日本の安全のためにも必要である。日本安全保障政策の二つの輪の一つ、自衛力の整備と日米安保体制、こういうことから成り立っている点について御理解を得たいと思います。
  63. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それはあなたの考え方でしょうが、実際には、たとえば沖繩の基地にしたって、沖繩県民は決してこれを快しとしていないし、またわれわれだってそうですよ。この東京の中心にアメリカの飛行場があったり、そうして一番玄関口にアメリカの海軍基地があったりして、これで独立国家などと言えるかと本当に私は考えるのですよ。しかも、日米安全保障条約によってアメリカ日本を守っている、たてまえ上はそう言いますけれども、総理はハリネズミ論をこの間唱えてきたのじゃないでしょうか。ハリネズミというのは、相手が攻撃した際に自分で自分の身を守ることですよ。それを首根っこをアメリカに押さえられておってハリネズミだなんて一人で言ったって、だれが信用しますか。日本が独自の立場でハリネズミ論を言うならば、まずその前にアメリカの基地をみんななくして、あなた方のために私たち税金を分担して、アメリカの軍隊の経費までわれわれが分担しなければならない、負担しなければならぬ、そういうことは国民の側からしても真っ平なんです。だから、そういう点について一つ考えるべきではないか。  それから次に、今度の声明で、日本の領域とは一体どこを指しているのか、周辺海空域というものはどういう範囲なのか。そうして防衛改善ということがうたわれておりますが、このことは中身はどういうことなんだ、防衛力の改善というのは具体的に言うならば今度の大綱を見直せということか、具体的にどうなんだ、その目的とまた範囲はどうか、この点について明らかにしてください。
  64. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ここで言っております日本の領域、これは領土、領空、領海ということでございます。次の周辺海空域については、防衛力整備大綱の前提になっております現在自衛隊が整備しつつある周辺の海空域というのを指す。  それから次に、もう一つお尋ねのございました「防衛計画の大綱」を見直せということをアメリカが言っているのかということでございますが、この点につきましては、まさにそこのところにおいて述べてございますように「総理大臣は、日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、」ということでございまして、アメリカ側も後段で「大統領は、総理大臣の発言に理解を示した。」ということから、日本側立場及びアメリカ立場というものはそこにはっきりと出てきておるわけでございます。
  65. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは防衛庁の方から、この海域と空域の関係について少し詳しく説明してください。
  66. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、わが国の周辺海域といいます場合、海上自衛隊の防衛力整備に当たっての目標といたしまして、従来しばしば申し上げておりますように、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にあっては約一千海里程度を防衛できるようにという目標で海上防衛力の整備を図っておりますということをかねがね申し上げておりますが、ここで言う海域もそのような海域であると御理解いただきたいと思います。  それから、空域でございますが、この共同声明の表現がわざわざ「海・空域」別々に取り上げた用語として使ってあるのかどうか。要するに広く海空域というふうに言葉として使っているのかどうか、その辺は議論のあるところかもしれませんが、私どもが従来わが国防衛のための空域と言います場合は、航空自衛隊の要撃戦闘を念頭に置きまして、レーダーサイトのレーダーの及ぶ範囲の中で、また、要撃戦闘機の要撃の能力の範囲の中におきまして要撃を行うわけでございますが、その場合の空域というのはおのずから日本の領域の周辺空域ということで、具体的に特定の空域を指しておるわけではございませんけれども、日本の周辺空域というふうに、レーダーの性能からいきましても、それから要撃戦闘機の性能からいきましても、おのずから限度がある概念であろうというふうに思います。  しかし、なおつけ加えて申し上げたいのは、今回「周辺海・空域」と言っております場合に、それでは空域につきましていまの航空自衛隊の要撃の概念だけかと申しますと、先ほど周辺数百海里、航路帯を設ける場合には約千海里程度ということを申し上げましたが、その海域におきまして海上自衛隊が海上防衛作戦を行います場合に、それに対しまして海上自衛隊の航空機部隊が共同作戦を行います。その意味で、海上自衛隊の航空機が飛ぶ範囲ということも空域だということであれば、これは海上自衛隊の作戦海域の上空面が当然その海上自衛隊の航空機部隊の作戦空域として上がってくるわけでありまして、ここで言いますわが国周辺の「海・空域における防衛力を改善し、」という表現からいきますと、当然海上自衛隊の航空機部隊につきましても改善を図っていきたいと考えておりますので、その意味では「海・空域」の空域の方は、いま申し上げた意味におきましては、海上自衛隊の海上作戦に相呼応する空域も含むというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  67. 渡部行雄

    渡部(行)委員 北米局長の時間の関係もありますから、いまの問題についてはすぐ後からまた質問することにして、北米局長に最後にお伺いしますのは、今度のアメリカの原潜の当て逃げの問題について、これはこの首脳会談ではどのように取り扱ったのか、あの中間報告で一応けりをつけるつもりなのか、それとも今後原潜問題についてさらに追及をして、日本側の調査と照らして問題の矛盾を明らかにするか、それともそこにまた一つ整合性を求めていくのか、そういう問題についてはどうお考えになっておりますか。
  68. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 若干長くなるかと思いますが、首脳会談あるいはその前の点も含めて御説明いたします。  御承知のとおり総理一行がワシントンに到着される前の五月五日、ニューヨークにおいてマンスフィールド大使からアメリカの中間報告が手渡されたわけでございます。  それに対して外務大臣の方から、中間報告作成に当たってアメリカ側の払った努力、特にレーガン大統領の親書に述べられているとおり、首脳会談前に日米双方の要請を満たす十分な進展があることを期待するというレーガンさんの約束がこの中間報告によって守られたという点については高く評価する、しかし同時に、これは中間報告であって最終報告を早く出してほしいということを述べられたわけでございます。  マンスフィールド大使の方からは、その大臣の言及に対して、この問題は関係者の責任問題になるかもしれず、法的手続が終わらないうちには最終報告は出せない、したがって最終報告の時期いかんについてはいまだ不明であるということがありました。  それに対して伊東大臣の方から、中間報告について日本側として十分検討する、同時に、海上保安庁が日本側で独自の調査を行っておりますので、海上保安庁からの中間報告の提出を待ってアメリカ側にも渡して、日米間の調査を突き合わせて十分国民の納得いくような解決が図られることを希望するという言及がございました。  さらに、ワシントンに到着しましてから、まずヘイグ長官から、アメリカの大統領が総理大臣に対して親しくこの原潜事故について遺憾の意を表明している、それを総理大臣にお伝えするということを六日総理大臣に言われたわけでございます。  それに対して総理大臣から、この原潜の事故は日米双方にとって予期しなかった全く不幸な事件である、しかし、アメリカ側が大統領以下誠実に調査を行い、補償についても努力していることを日本側としては評価しているということを述べられ、マンスフィールド大使からの中間報告を受け取ったけれども、さらに最終報告をもらって現在行われている日本側の調査とも照合して国民が納得する日が近く来ることを期待しているということを述べたわけでございます。  さらに、越えて翌七日の第一回首脳会談において、総理と大統領と二人だけの会談がございました。その際に鈴木総理の方から、レーガン大統領が親書において約束されたとおりアメリカが中間報告を出したことを多とする、さらにわが方において海上保安庁による調査を行っており、この調査結果をアメリカ側に提供する準備をしている、これを最終報告の参考として日本国民の納得できるような最終報告を出してほしいということを述べ、それに対してレーガン大統領の方から、日本側のそういう考え方に同意し自分としても十分調査をするよう督促するから日本側の中間報告をぜひ提供してほしいということがございました。それで、日米両国が協力して事態の真相究明を徹底的に行いたいというのが大統領の考えでもあるというふうに承知しております。  さらに、八日の外務大臣とヘイグ長官との会談でも同じようなやりとりがございまして、アメリカ側としても日本側の要望に沿うように早期解決に努力している、これはレーガン大統領が個人的にも取り組んでいる問題で、できるだけ速やかに結論を出して、日米関係に禍根を残さないように大統領は関係当局に督励しているということを述べ、アメリカとしても、この潜水艦事件が日米全般の関係に悪影響を残さないように最大限の努力をしていることを日本側においても認識してほしいという発言がございました。伊東大臣の方からも、ヘイグ長官と同様に、真相解明について極力日本側としても努力をするので、なお一層アメリカの努力をお願いしたいということが首脳会談及びヘイグ長官その他の会談の内容でございます。
  69. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただ、最後に一言ですが、この日本側からの中間報告をアメリカ側に出して、そして突き合わせて、そこでさらに深めて最終報告書を求めるといま言われましたが、日本側の中間報告はすでに出されたでしょうか。また出すとすればいつごろになりますか。
  70. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 これは海上保安庁が現在鋭意調査し、その結果を提出する準備を進めておりまして、ごく近い将来に外務省にも手交されるというふうに承知しております。
  71. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは防衛庁の方にお伺いしますが、先ほどの海空域は後からにして、いま原潜の問題が出ましたから、これについて防衛庁が調査した、現在進行中であっても、現在まで明らかになった調査結果を明らかにしていただきたいと思います。
  72. 塩田章

    ○塩田政府委員 この事件の調査は海上保安庁がやっておられまして、防衛庁は別段調査をいたしておりません。
  73. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは海上保安庁がやっておるとはいうものの、私は、防衛庁というのは常に軍事的な面からそういう外国の、しかも原子力潜水艦の動きというものを調査する必要があると思うのです。そういう調査をしないで、いつでも日本の国土の周辺を外国の原子力潜水艦が航行しているのを知らないで済まされるのは少しおかしいのじゃないでしょうか。防衛を分担する専門の防衛庁がこの原子力潜水艦がどういう状況でこういう事故を起こしたのか、しかもそれはどういう作戦任務を持っていたのか、それは状況からどう判断するか、そういうものを調査の中で一応防衛庁としてはある程度把握すべきじゃないでしょうか。
  74. 塩田章

    ○塩田政府委員 今回の事故の調査につきましては、いま申し上げましたように、一方で米側がすでに中間報告を出しておりますが、米側の調査がある。一方で海上保安庁が、日本側としての調査があるということで、まだ日本側の方は中間報告も出ておりませんが、いずれ中間報告なりあるいは最終報告が出されると思います。その辺は私どもとしましても、いまお話のございましたような観点から関心を持って見ておりますけれども、防衛庁自身がいまの事故の状況についての調査をするということはいたしておりません。
  75. 渡部行雄

    渡部(行)委員 関心を持って見守っておると言われることは、その関心というのはどういう内容の関心ですか。
  76. 塩田章

    ○塩田政府委員 事故そのものがどうして起こったかというような一般的な関心ももちろんございますけれども、防衛庁自身の立場で言いますと、日米間のいわゆる連絡体制がどうであったとかいうような問題につきましては関心を持っておるわけであります。
  77. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今度の事故についてあの中間報告は、専門的立場から見て了解できますか。
  78. 塩田章

    ○塩田政府委員 幾つかの点につきまして事故の経過が明らかになっておるわけでございますけれども、私どもとしまして、あの中間報告を見まして、どうしてぶっつかったのか、特にぶっつかったときのソナーの作動が当直の士官に伝わっていないのじゃなかろうか、そういったようなことがあの中間報告だけでは必ずしも十分納得できないといいますか、今後その辺は明らかになるであろうことを期待しておるという点でございます。
  79. 渡部行雄

    渡部(行)委員 十分納得できないということが明らかになったわけですから、ただ海上保安庁がそれを調査しているからということだけでなしに、専門的な立場から積極的に問題を提起して、そうして納得のできるような結論を引き出すように努力してほしいと思いますが、やっていただけますか。
  80. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げましたように、事故の調査は、米側は米側でやっておりますし、日本側は海上保安庁でやっておりまして、私の方からそこへ、事故の調査を積極的にやるということは立場でもございませんので、目下そのようなことは考えておりません。
  81. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その調査をしろと言っているのじゃないですよ。その調査結果が出てきた場合に、専門的な立場から見てどうもこれはおかしい、そういうものについては積極的にアドバイスをして、その矛盾をなくするように、この点はどうなんだ、専門的に見ればどうしてもこれはおかしい、だからこの点について答えてくれというようなかっこうでのアドバイスというか、そういう意味での協力はできないものかと言っているのですよ。
  82. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げましたような点についての関心を持っておりますことは持っておりますが、防衛庁の方から積極的にいま申されましたような調査なりあるいはアドバイスなりをいま行っていこうという考えはありません。
  83. 渡部行雄

    渡部(行)委員 では次に移ります。  空域と海域というものを言っておりますが、海域は周辺数百海里ということですが、それからまた一方では航路帯一千海里、この航路帯というのはどこを中心に一千海里ということを考えておるのか、どこを基点として考えておるのか。それから領空、領海とこの空域、海域、そしてまた公海、公空、これとの関係についてひとつ御説明願いたいと思います。
  84. 塩田章

    ○塩田政府委員 航路帯を設けた場合に約一千海里ということをしばしば申し上げておりますが、それにつきまして別に決まった定義があるわけではございません。どこの港から一千海里だという意味で別に決まった定義があるわけではございませんが、過去の国会答弁等を通じまして、俗に言われますように南東航路、南西航路というような二つの航路が考えられるというふうに一般的に言われております。答弁の中でも申し上げたことがございます。その場合に、ごく常識的に考えれば、本土の港からということになりますと、南東航路であれば京浜地区ということが考えられましょうし、南西航路ということになれば阪神地区といいますか、要するに西の方の経済の中心地であります阪神港あたりから考えられるというようなことが常識的に言われると思いますし、また現にそういうふうに国会の答弁等でもやりとりをしてきたことがございます。しかし、定義的に決めておる、あるいは決まっておるというような性質のものではございません。  それから、公海と領海あるいは公空と領空ということを説明せよ、こういうことでございます。お尋ね趣旨がもう一つよくわかりませんけれども、私たちが自衛権を行使し得る範囲としまして、領土、領海、領空の範囲は当然といたしまして、自衛権の行使に許される必要最小限度の範囲である場合は、その自衛権の行使の範囲は領土、領海、領空にとどまらないというふうに申し上げてきております。そういう意味では公海、公空にも自衛権の行使の範囲は及ぶということをかねてから申し上げてきておるところでございます。
  85. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、自衛権の行使というのは公の海、公の空に及ぶ、こういうふうに認識していいわけですね。
  86. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのように私どもも認識いたしております。
  87. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは限度はないのでしょうか。たとえば防空識別圏というようなことが言われておりますが、大体いままで日本列島から平均して二百海里前後の範囲にしておいたと聞いておりますが、そういうものとはどう関連するのでしょうか。
  88. 塩田章

    ○塩田政府委員 自衛権の及ぶ範囲としての限度というものは、物理的といいますか地理的な意味で限度があるわけではございませんで、自衛権の行使として許されるかどうかという観点からの制限はございますけれども、自衛権の行使として許される範囲である限りは公海、公空に及ぶ、こういうことを申し上げておるわけです。  それから、いま御指摘の防空識別圏約二百海里程度、これが限度かというお尋ねでございます。防空識別圏というのはもう御存じだと思いますが、そこまでどこかの飛行機が飛んできたときに、防空識別圏まで来たときに、その地点でそれがフレンドリーであるかアンノーンであるかという識別をする、そういう線を一応持っておるわけであります。したがいまして、レーダーの捕捉する範囲とは必ずしも一致しませんで、レーダーでは捕捉しておるけれども防空識別圏まで来ない飛行機は私どもとしては何も関知しないわけですが、レーダーで捕捉しました飛行機が防空識別圏までやってきたという場合に、それはフレンドリーであるかアンノーンであるか、フレンドリーであれば問題ありませんが、アンノーン機である場合には、さらにそれをレーダーで見ておりまして、必要な場合にはスクランブルをかけるといったような対応措置をとるわけでございますが、そういう意味の防空識別圏というのが現在設けられております。これはいまおっしゃいましたようにおおむね二百海里程度のところではないかということでございますが、おおむねと言われればそのとおりでよろしいわけです。ただ、要するに韓国の対馬のところでありますとかあるいは宗谷あるいは根室、こういったところは当然のことながら相手の国と境の真ん中ということになりますので、厳格な意味では二百海里ということではございませんが、平均的、達観的に言えば大体二百海里程度のところで防空識別圏を置いておるというふうに申し上げることができるかと思います。
  89. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この防空識別圏というのは、仮に国籍不明機がここに入ってきた場合に緊急出動して迎撃する、こういうことになるというふうに解釈していいでしょうか。そしてまた、この周辺海域の上空と申しますか、そういう空域の中にそういう国籍不明機が入り込んだ場合はどういう処置をするわけですか。
  90. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまも御説明をしたわけですが、ADIZ、つまり防空識別圏の中に入ってきたアンノーン機がある場合に、当然にスクランブル等の措置をとるわけではございません。そのアンノーン機の航跡を見ておりまして、それが間もなく全然違う方向へ行くのであれば問題ありませんし、その高さとか速さだとかそういうのを見ておりまして、どうもわが国の領空の方にやってきそうだという場合にはスクランブルをかける、こういうことになるわけでございまして、それは識別圏に入ってきた以降レーダーで注目しておる、こういうことでございます。  それから、もっと広いいまの海域でございますね。海域でもってアンノーン機が来た場合にどうするかということでございますが、別段どういう措置もとらないし、とれないわけであります。
  91. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、結局防空識別圏の中に入って本土の方に向かっているとした場合はスクランブルをかけるというのは、そこで戦闘が起こるということと同じでしょう。そして相手を迎撃するというのだから、その国籍不明機を撃墜する、こういうことになるのじゃないでしょうか。
  92. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げておりますのは平時のことでございまして、平時に領空侵犯するおそれのある飛行機に対しまして、領空侵犯措置というものが自衛隊法八十四条で規定されております。その規定に従った措置をとるということでありまして、先生がおっしゃいますようにスクランブルをかければ、迎撃といいますか、発砲するとか戦闘行為になるとか、そういうことではございません。警察権としての領空警備といいますか、対領空侵犯措置をとるということでございます。
  93. 渡部行雄

    渡部(行)委員 具体的にどういうことですか。
  94. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体的に言いますと、要するにいまのアンノーン機がますます近づいてくるという場合に、レーダー基地からのあれによりましてスクランブル機が上がりまして、領空に入らない限りは問題ないわけですけれども、領空に入るということになると警告を発します。これは相手方に対しまして、日本の領空だから入ってはいけないという警告を発し、またその警告に従って相手が退避すればそれは問題ありませんが、退避しない場合には退去を命じあるいは着陸を命ずるという措置をとる、そういうことになっております。
  95. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間がありませんので次に進みますが、今度のアメリカから要請されている海域防衛分担の範囲、つまりグアム島以西、フィリピン以北、こういう一つの範囲が示されておりますが、これはすでに日本がとっておった既成の防衛の範囲であったのかどうか。
  96. 塩田章

    ○塩田政府委員 まずお尋ねの前提でございますが、アメリカからグアム以西、フィリピン以北を守ってほしいという要請があったという前提に立ってお尋ねをしておられるわけでございますが、私どもはそういう要請があったとは承知いたしておりません。少なくともこのグアム以西、フィリピン以北という言葉が出ましたのは、伊東外務大臣の三月の訪米のときであったと承知しておりますが、その時点におきまして、その区域を日本側が守ってほしいという要請があったという意味ではないというふうに私どもは承知しております。したがいまして、私どもといたしましては、先ほど来お答えいたしておりますように、従来どおりわが国周辺数百海里、航路帯を設けた場合にあっては約一千海里の海上防衛力を整備したいということをかねてから申し上げておりますが、そういう方針に変わりはございません。
  97. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは総理日本の庭先を守るのは当然だということでこの範囲を指摘しておるわけでございますが、そのことは、そうするとどういうことになりますか。
  98. 塩田章

    ○塩田政府委員 総理がプレスクラブの講演の際にそういう庭先という言葉を使われたように私どもも聞いておりますが、そのときにも総理がはっきり言っておられますように、その言葉の意味、内容としましては、わが国周辺数百海里、航路帯を設けた場合にあっては約一千海里ということをそのときにも使っておられまして、それ以外の違った概念として庭先という言葉を使われたのではないというふうに承知しております。
  99. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、その総理の言った庭先論というのは、日本列島の周辺数百海里、こういうふうに解釈して、そして航路帯については一千海里、これが日本の庭先だ、こういうふうに解釈していいわけですな。
  100. 塩田章

    ○塩田政府委員 庭先というのはあくまでも比喩的な表現をされただけであって、具体的な地理的概念を描いて発言されたわけではないと思いますので、わが国防衛力の整備目標としては先ほど来申し上げておるとおりでございます。
  101. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だからこういうことは非常に誤解を招きやすいのです。庭先などという言葉をこういう重要な問題に使うこと自体が不謹慎であると私は思います。大体勝手に自分の庭先を決めて、それを守るのはあたりまえだなんて、こんな理屈が通ったら大変なことになるでしょう。やはりもっと国際感覚を持たなくちゃだめだと思いますな。だからこのおかしな共同声明――おたくに言っても仕方がないけれども、そういうので自分の意思もそこに入ってないんじゃないかなんて後から文句を言うようなばかなことになるのですよ。やはり専門的な防衛庁は、そういうことを言ったら、それは言わないでくださいと一言たしなめる必要があるんじゃないですか。これからはそういう非常に問題を醸し出すようなことのないように、慎重に取り計らっていただくことを要望しておきます。  時間が参りましたから最後に、今度の共同声明でも日本防衛力の改善ということを言っておるし、それから五六中業が出されておりますが、この五六中業は六十二年までに達成する、この方針は絶対に変えませんか。
  102. 塩田章

    ○塩田政府委員 しばしば申し上げておりますように、今度の国防会議決定は、六十二年度に「防衛計画の大綱」の線に到達することを基本として作業を開始してよろしいという点につきまして防衛庁長官国防会議での了承をいただいた、こういうことでございまして、「防衛計画の大綱」の達成そのものを認めていただいたわけではなくて、それを基本として作業に入ることを認めていただいた、こういべ段階でございまして、いま絶対に変えないのかというお尋ねでありますが、いま私どもはそういう考え方作業に入らしていただいた、こういう段階でございます。     〔塚原委員長代理退席委員長着席〕
  103. 渡部行雄

    渡部(行)委員 一応計画として出すからにはその計画を忠実にやるというのが当然担当する省の考え方でなければならぬと思うのですが、それをまず計画は立てたが、ただそれに入るだけがいま目的であって、それを忠実にやるということは約束できないみたいな話はちょっと受け取れないのですが、その辺はどうですか。
  104. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げたようなことで作業に入らしていただくわけでございますが、防衛庁の作業の基本的な態度、基本的な考え方としましては、五六中業期間中に「防衛計画の大綱」の線に到達したいという目標を持っておることは事実でございます。したがいまして、その目標の達成に向かって作業に入らしていただく、こういうことでございます。  ずっと見直しをしないのかという趣旨お尋ねであったと思いますが、私ども現在「防衛計画の大綱」を見直すことは考えておりませんで、私どもとしましては「防衛計画の大綱」の水準に早く到達したいという目標を掲げて今回作業に入らしていただいた、こういうことでございます。
  105. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、軍備を考える場合に憲法の範囲内でということがどこにでもよく使われておるのです。だとすれば、憲法の範囲というものは現時点ではどこだということを具体的に把握しなければならぬと思うのです。そうでなければ何が憲法の範囲内であるかという判断はできないと思うのですが、そこで現時点における憲法の範囲内とは「防衛計画の大綱」の質を言っておるのか、それともまたそこにプラスアルファがつくのか、その辺を少し明確にしていただきたいと思うのです。
  106. 塩田章

    ○塩田政府委員 憲法の範囲内で自衛力を持ち得るという場合の憲法の範囲内といいますのは、二つの面から御説明ができると思うのです。一つは、よく言われますように他国に対して壊滅的打撃を与えるような兵器は憲法上持てませんので、それは明白に持てないということを申し上げてきておるわけであります。そういうものでなくて、通常のいま自衛隊等で持っておりますような防衛力については、どの範囲が憲法の範囲内かというお尋ねだと思いますが、それはやはりそのときそのときの情勢によりまして具体的には決めていくべき問題でございます。といいますことは、結局は国会等で法律なり予算なりを御審議いただくことによって決めていただく、こういうことになるわけでございまして、どの線が憲法上の防衛力の限界であるというふうに一律的に一概に申し上げることはできないんじゃないかと思います。  いまのお話の中にございました「防衛計画の大綱」で言っておる水準というのは、現時点における憲法の範囲内の限界かという点でございますけれども、私どもは現在の「防衛計画の大綱」で示しておる水準が憲法の範囲内であるということはそのように理解しておりますけれども、それが限界であるとか、そういうようなことでなくて、それは個々に毎年度予算あるいは法律等を通じて国会でお決めいただいていく、それが憲法上許された現実に持っておる防衛力ということになるわけでございまして、数字的な意味での限界をここで設定して申し上げる、そういう性質のものではないと考えております。
  107. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは毎回もう何十年にわたってずっと議論されてきておるのですが、数字的に明らかにすべき問題でないと言われますけれども、限界というのは物理的にはっきりした形だと思うのです。量だと思うのです。その量を専門的なあなた方が明らかにしなければ、抽象的なことでは仕事ができないと思うのですね。憲法でうたわれた抽象的な表現を今度は行政の中で具体化するのは皆さんの任務じゃないですか。それをしないで、いつまでたってもこんな議論ばかり繰り返していたら、どんなことをやったって憲法違反などなくなってしまいますよ。憲法なんか何でも勝手に自由に解釈できるようになってしまって、憲法の権威などというものはどこかにふっ飛んでしまうじゃないですか。その点についてはどうですか。
  108. 塩田章

    ○塩田政府委員 ですから、行政上の現実の整備目標としましては「防衛計画の大綱」もございますし、それを受けた現在私どもがやっております中期業務見積もりというようなものも持っておるわけでございます。それによって整備をしておるわけであります。先生が、それが憲法上の限界か、憲法上そこまでが限界だからそこまで整備するのだというふうにおっしゃられますと、憲法上の限界という意味でなくて、私どもは、現実の行政を進めていくに当たっての整備目標としては、現在は、防衛庁限りではありますけれども五三中業というものを持って整備を進めておる、こういうことでございます。
  109. 渡部行雄

    渡部(行)委員 防衛庁はあと結構です。  最後に、外務省おりますね。それでは一言。  国家公務員と現業の方々は、海外旅行をする際に所属長の認可を必要とするので、その手続をすると最も短くとも大体半月以上かかる、そして諸手続をして行かれるようになるまでは二カ月はかかるというのが多くの人の苦情なんです。地方公務員とか三公社の方々にはそういうことがないようです。しかも、国家公務員の方々には一次のパスポートしか交付されない。ほかの方々は数次のパスポートが交付される。国家公務員と地方公務員あるいは公社の違いだけで、なぜそんなに区別しなければならないのでしょうか。
  110. 藤本芳男

    ○藤本説明員 お尋ね国家公務員と地方公務員との差でございますが、国家公務員の場合には、御承知のとおり、憲法その他の法令におきまして、国民全体の奉仕者として公共の利益を守る、あるいは公共の利益を保持するために職務に専念しなければならないという規定があるわけでございます。これは国家公務員の特殊な服務規定でございまして、これが服務基準となるわけでございますが、国家公務員が国の用務以外で旅行いたします場合には、所属いたします省庁の許可を得てくる、こういうシステムになっております。  お尋ねの時間の点でございますけれども、私ども外務省限りで申し上げますと、旅券を出します時間は、新規の場合は一週間ないし十日、その旅券を発給いたします手続に要します時間はかなり短いはずであると私は思っております。  先ほど申し上げました国家公務員の服務基準ということの法的な根拠といたしましては、国家公務員法の九十六条を参考にしております。
  111. 渡部行雄

    渡部(行)委員 確かに国家公務員の職務の重大性というのはよく理解できるのですが、もっと簡素化できないものでしょうか。それを少し改正して、居所は明らかなんですから、届け出をすればいいとかあるいは現場の所属長の承認でいいとか、何かもっと簡素化する方法は考えられませんか。そして数次のパスポートが交付されないということ、これはみんなと同じようにやっていただけないものか、こういうことです。
  112. 藤本芳男

    ○藤本説明員 数次往復旅券が出せないかという御指摘でございます。  先ほど申し上げましたように、外務省側では各省庁の長からの承認を要求しているわけでございます。したがいまして、その承認の様式、形式がどういうふうになるかということは、外務省といたしましては各省庁のそれぞれの取り扱いに任せているわけでございますので、外務省独自の立場から簡素化ということを申し上げる立場にはない次第でございます。  それから、お尋ねの数次旅券の点につきましては、先ほども申し上げております各省庁からの承認書あるいは承認の内容で、プライベートに旅行する場合でも数次の出入りは差し支えないということを各省庁の長が承認されます場合には数次の旅券が出せるたてまえでございます。これは私実際の事例を承知しておりませんけれども、承認の内容が数次の旅行を許すという形になっております場合には数次の旅券が出るはずでございます。
  113. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうもありがとうございました。  次に、退職手当法に移ります。  民間企業における退職金には退職一時金と退職年金、こういうものがあるわけですが、この退職金としての性格と、国家公務員等の退職手当の性格とはどういう点で共通性があり、どういう点で相違があるか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  114. 山地進

    ○山地政府委員 国家公務員の場合の退職手当と民間の退職手当との相違点あるいは類似点というお尋ねかと思いますが、共通しておりますのは長期勤続、つまり勤続年数と俸給というものが基本的な要素になっているということが共通点であろうかと思います。それから民間の場合には定年加算とか功績加算、勤続加算あるいは役員加算、こういうようなものがございまして、この点については公務員の一律な扱いに対して相違している点があろうかと思います。
  115. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、今度の退職手当の引き下げについては民間に準拠する、これだけが原因になっておるわけですね。ところが、人事院総裁の論文を読むと、民間と国家公務員とは性格がもともと違うのだ、したがってそういうものを対比して考えること自体に無理があるという趣旨の論文があるわけですよ。そういう点についてはどういうふうに考えておられるのですか。民間と公務員、民間の労働者と公務員労働者とは全く性格は同じだというふうに考えているのですか。
  116. 山地進

    ○山地政府委員 人事院総裁の論文がどういうふうな論旨で書かれているか存じませんが、先日この議場においていろいろ人事院総裁が生涯給与についてお述べになった点がございますが、そのときに私の記憶に残っております点では、給与というのは生活給であるから退職手当の相違というものが給与に何らかの影響を及ぼすということは、そうはいかないというようなところに力点があったかと思いまして、退職手当そのものがどうこうということについては私は存じ上げないわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたとおり、民間における退職金とそれから公務員の退職金、これは確かに発生からしていろいろ違います。違いというのは給与ではございませんで、先ほどお触れになりましたように年金制度のあり方あるいは退職金がそれとどう絡むかということからしてまたいろいろと違うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そういった違いを含みながら退職金というものが現在官民でどういうふうになっているのかということについては、一般の非常なる関心事であろうかと思うわけでございまして、私どもも、官も民もでございますけれども、これは積立金という制度でない、企業あるいは国の方から支給するものであるという点でも共通でございますし、これらについては国民の税金で退職金を払うという国のたてまえから申しまして、やはり民間とのバランスというものに常に気を配るということは当然のことかと考えております。
  117. 渡部行雄

    渡部(行)委員 民間とのバランスに気を配るというのが当然だと言われますが、それじゃこの間退職手当を引き上げる際になぜ一〇%ぐらいの差のときに引き上げをしなかったのですか。二〇%まで差ができるまでなぜ放置したのですか。それじゃ今回だって二〇%差ができるまで放置してもいいじゃないですか。公務員が利益を受けるときはなるべく放置しておいて、民間との差を拡大させるのを待って、これ以上放置できないというところまで持っていって、今度はこの財政再建と行革との問題が出た途端に、今度は何もそれほど、かつての二〇%ほど開きが出ていないのに、わずか八・三%ぐらいの開きに対してこれを是正しなければならぬなんて、こんなかっこうで急がなければならない理由はどこにあるのでしょうか。
  118. 山地進

    ○山地政府委員 いまの御質問を二つに分けますと、何で二〇%を上げたときは時間がかかったかということと、それから今度は何で急ぐかということの二つだと思うのですが、前半の部分につきましては、三十六年、四十一年、四十六年と四十六年までの間に三度調査が行われてきたわけでございます。それで、それぞれの時点においてその差というものについてはそれほど認めなかったから上げなかったんだろうと私どもは推定しておるわけでございまして、四十六年の調査において二割高かったから上げる。私は、それまで退職金についてそれなりに民間とのバランスというものを考えてきたわけだと思うわけでございますけれども、それをどういうふうに比較考量して直していくのか、これはやってみれば至極当然ということではございましょうけれども、そういった比較をして、しかも法律の附則において直していく、こういう方式を確立するというのはやはり大変なことだろうと思うわけでございます。いまの四十八年の改正というのは、附則において当分の間二割上げる、つまり退職手当あり方を制度的なあり方には触れないで、現在のあり方のままでそれを直していく。これは一つの新しい方式ができたわけでございます。したがいまして、その新しい方式をつくるのについてはいろいろな議論があったと思うわけでございます。あったけれども、そういう方式ができた以上、できたからには私どもとしてはその路線に沿っていくというのが私どもの考え方でございます。したがって、今回の場合には前回ほど時間が要らない。あるいは前回、四十八年に要ったというわけではございませんけれども、今回はその路線に沿って提案をしている、かようなわけでございます。
  119. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうも私の言っていることがわからないのかどうか、あなたの御答弁は全く別なことを答えているのですよ。私が言ったのは、民間がかつて高度経済成長時代にどんどん収入が伸びて、退職金も伸びていって、そうして民間の方が上になって、この公務員との差が二割になった。そこで初めてこの民間との、民と官との較差を是正しなければならぬということで二〇%を上げたわけですね。だとすれば、今回はその民間が高くなったのでなくて今度は官の方が高くなったということですから、これもまた二〇%まで待っていなくちゃならぬじゃないかということです、もしそういう考えでやるならば。百歩あなたの方に譲って考えた際に、なぜまだ八・三%でこれをやらなくちゃならないのか。そこを言っているのですよ。それはなぜですか。
  120. 山地進

    ○山地政府委員 前回二〇%でやったんだから二〇%上げ下げのときに限ってやったらいいじゃないか。人事院勧告は五%差がついたら必ず勧告をするというような慣行といいますか法律でございましたか、そういうことでやる、これは一つの決め方だと思うわけでございます。前回二〇%やったんだから今度下げるときも二〇%まで待ったらどうだ。私どもとしてはたまたま前回二〇%の差があるということがわかったから二〇%やった、そういうことはパーセントがどれくらいまで行ったらやる――いまの人事院勧告の五%を超えたら必ずやるというのもルールでございますけれども、私どもとしては、二〇%というのはたまたま二〇%だったからやったので、今後は較差がある場合には常時是正をやっていったらいいんじゃないかという考え方でありまして、ただこういった考え方についても、前回二〇%上げ、今回一〇%下げる、今後は退職手当というもののアジャストはどうやったらいいのかという政策的な考え方を十分検討しなければならないだろうと思います。しかし、今回においては、私どもとしては二〇%まで行かなくても正すべきものは正すという考え方でやっているわけでございます。
  121. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この物価の変動の激しいときにその都度やられたんではとても――これは法律なんかつくらないでそんなのは規則でやればいいんでしょう、やるとすれば。法律をいじる者はそんな簡単に考えられちゃ困るのですよ。しかもこの問題は、民と官との比較の仕方に私は非常に問題を感じるのです。国家公務員はいま全体でどのくらいいるんですか。この法律の対象になる人数です。
  122. 山地進

    ○山地政府委員 対象になる在職者でございますが、国家公務員が百十九万一千、それから三公社が七十九万九千、会計いたしまして百九十九万人でございます。
  123. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大体百九十九万、約二百万の従業員を持つ企業が日本にありますか。
  124. 山地進

    ○山地政府委員 ございません。
  125. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、この二百万近い従業員を持つ公務員株式会社は最高の企業じゃないですか。そうしたら、これは日本の民間企業の最高と比べていいんじゃないですか。そうでなくちゃ筋が合わないでしょう。百人や二百人の町工場と比べてこっちが高いの低いのと言っていたんじゃ、これはつじつまが合わないんじゃないですか。その辺はどうですか。
  126. 山地進

    ○山地政府委員 いろいろ比較をすることについては単に退職手当の場合のみじゃございませんで、その退職手当よりももっと以前の国家公務員の給与の比較の場合、同様な議論が行われているわけでございまして、それも一つの御意見ということはかねがね承っておるわけでございますけれども、やはり民間というものは全体的に考えなければいけない。大企業、中企業、小企業いろいろあるわけでございまして、それぞれの方々がどういうふうな給与を取得されているか、そういうものをトータルに考えて民間というものを考えるべきじゃないかというのが私どもの立場でございます。
  127. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、根本的に民間の退職金と公務員の退職金というのは性格が違うと考えております。それはなぜかというと、民間の退職金は、これは民間といっても私の言っているのは特に製造工場に働く労働者を主として指します。この製造工場に働いておる人たちは物を生産する、物を生産して、そしてその賃金を受け取るわけですよ。ところが、その工場は剰余価値というものを必ず生み出すんです。そして賃金を払った後に剰余価値というものを蓄積して、その中から今度退職金を支払うわけですよ。別にそれ以外の価値から支払うわけじゃないんです。だから言ってみれば、この一般の生産労働者というのは、つまり自分の生産した価値の中からの分配を受けるにすぎないということなんです。そうすると、賃金の後払い説がそこに成り立ってくるわけですよ。ところが、公務員というのは生産していない。物の生産もしていない。間接的に物の生産に対していろいろな便宜を図ったり、何といいますかいろいろな点での関係はしますが、直接の商品の生産はしていない。だからそこからは剰余価値というものは出てこないのですよ。剰余価値を受け取るのが一般の生産労働者であり、そして公務員というのは税金からそれに見合うものを受け取るわけでしょう。  しかし、なぜそれじゃ人事院勧告の際にいわゆる民間製造業の労働者の賃金が基本になっていくかということは、これは十分知っておられると思うのです。知っておっても知らないふりをしておるのかもしれませんけれども。それはつまり同一賃金同一労働というか、私が一日かかってこの服の上下をつくった。あなたは自分の着ている紺の服をつくった。そうして二人の服は大体生地の価値も値段も同じくらいだ。つくった時間も同じくらいだ。しかし、私はこの白をつくってみたが気に食わない、紺の方がよさそうだ。あなたは紺をつくったが気に食わない、白の方がよさそうだ。それじゃ私とあなたで交換しましょう。こういうときにどういう交換をしますかというのです。     〔委員長退席愛野委員長代理着席〕 これは一着ずつ交換するでしょう。私の一着とあなたの上着だけは交換しないでしょう。そういう交換をすれば私が損をしますね。  だから、そういうことで、つまり労働者の生産に役立つ公務員の仕事も、直接生産する労働者の仕事も、大体年齢や熟練度において均衡をとるというのがそういう物の交換、労働の価値からそういうことが行われてきているのですよ。これは学説的にもそうだし、経験的にもそうなんです。そこで、公務員の賃金や退職金は一応そういうのが基準になる、ここまではいいのですよ。  そこで問題は、国家公務員法という法律があるわけですね。この法律の第三条にこういうことが書かれているのです。第二項全部読みます。「人事院は、法律の定めるところに従い、給与その他の勤務条件の改善及び人事行政の改善に関する勧告、職階制、試験及び任免、給与、研修、分限、懲戒、苦情の処理その他職員に関する人事行政の公正の確保及び職員の利益の保護等に関する事務をつかさどる。」こう書かれているのですよ。そうすると、これを読んでみなさい。給与と勤務条件の改善ということは、この退職金も給与の一部でしょう。だとすれば、これは改悪してはならないということを法律でうたっているのですよ。そうしてしかも、人事院は公務員の職員の利益の保護をする事務であるとうたっているのです。そこから考えていけば、当然今度の退職手当を引き下げるというものは、いかに民間に準拠しようとしてもこの法律が許さないようになっておる。そうじゃないですか。その点についてどうですか。
  128. 山地進

    ○山地政府委員 この法律の読み方の問題でございますが、「給与その他の勤務条件の改善」でございますが、この人事院の所管する事項についての改善だと私どもは理解しておりまして、退職手当については総理府の所管でございますので人事院の方の問題とはかけ離れてくる、かように考えております。
  129. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そういう憲法九条を読むみたいな詭弁は使わないようにしてください。それじゃ何であなた、総理府から人事院に諮問したのですか。あの書簡はそれじゃどういう意味があるのですか。
  130. 山地進

    ○山地政府委員 いまの書簡、手紙のことでございますけれども、あれは定年制度について伺ったことでございますので、退職手当については意見を伺ってはおらないわけでございます。
  131. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だって退職手当はその労働条件の一部であるということをあなたこの間言ったじゃないですか。そうでしょう。だから民間ではこれが当然に団体交渉の対象になり労働協約の対象になる。しかし、公務員の場合は法定制をとっているから、それを乗り越えて、法定された場合は幾ら団体交渉でやろうとしてもこの法律の枠を飛び越えることはできないんだ、こういう説明をされたね。それでは公務員法の第三条に該当しないというあなたの見解を裏づける何らかの法律があったらそれを示してもらいたい。
  132. 山地進

    ○山地政府委員 いまのお尋ねは定年制度に関する意見を聞いたのはどんなことに基づいて聞いたのか、こういうことだと思うわけでございますが、これはいろいろの機会に御答弁申し上げているとおり、正確に申し上げなければいけませんが、二十三条「法令の制定改廃に関する意見の申出」ということで人事院が意見を申し出ることができるわけでございます。「申し出なければならない。」こう書いてあるわけでございます。ただし、法令の制定、改廃というのは人事院の意見がなければできないということではございません。意見とか勧告とかいう場合に、いろいろな法律がございますけれども、何か承認をしようとするときには意見を求めなければならない、つまりそういった決意をするのにある意見を聞くということが条件になっているような場合があるわけでございますが、この場合には、国家公務員法の意見の申し出あるいは勧告というのは、人事院の自発的な行為を誘発するといいますか促すような規定になっているわけでございます。つまり法令の改廃というのは、憲法にございますように内閣が議案の発議ということができるようになっているわけでございます。内閣がそういった定年制をつくろうということを決意することは、この国家公務員法と何ら関係ない話でございまして、これは国家公務員法の二十八条に、国会が情勢に順応して法律をつくっていく、変えていくことができるようになっていることからも明らかであるわけでございます。したがって、政府がこういった定年制度ということを法律改正をするということはできるわけでございますが、私どもの申し上げているのは、人事院制度の趣旨にかんがみて慎重に人事院の意見を承り、人事院が一年半研究したということでございます。
  133. 渡部行雄

    渡部(行)委員 定年制がなぜ人事院にかかったかというのは、これはもちろん勤務条件の重要な問題であるからということは前もって議論されたところであるわけです。  そこで、人事院総裁お尋ねしますが、国家公務員法の第三条、人事院としては、給与の一部である退職金、そしてなおかつそれは勤務条件とも考えられるものでありますが、退職金を下げるのは、ここで言う人事院勧告の内容の中ではないから関係ないんだというふうに考えておられるのですか、それともこれはやはり人事院としては重大な関心を持ちながら公務員の利益を図っていかなければならないとお考えですか。
  134. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 行政の制度というものを考えます場合には、法律の規定、そのたてまえというものを中心としてまず考えなければならないことは当然のことでございます。したがいまして、人事院の職権その他を考えます場合は、国家公務員法というものがその主流でございまして、それに関係のあるいろいろな法律、制度というものが関連をしてまいる、その全体をながめて人事行政における人事院の所管の範囲、領域というものが決まってくるわけだと思います。  そういう点から見ますと、いま御指摘になりました人事院の権限というものは、一応現行制度のもとから導き出されるものについて概括的にこれをまとめ上げまして、例示的に列挙をしておるということになるわけでございますが、本来の給与についてはむろん人事院の一番重要な仕事の一つであることは申すまでもございません。ただ、いわゆる給与という範疇に入ってくるものあるいは勤務条件に関連のあるものというようなことに相なりますと、これは現行法の解釈でもいろいろ問題もございましょうし、また法令の改廃、制度の改変に従って随時変わり得る性質のものでございます。  そういう点から申すと、これは先刻御答弁がございましたように、現在は退職手当というものに関する問題は総理府が主管しております。これははっきり法律で書いてございます。したがいまして、人事院においてはその権限は持っておらないというのが現行法上のたてまえでございます。ただ、勤務条件という点から見まして、退職手当というものも大変影響の深い重要なものであることは間違いのない話でございますので、そういう意味からも人事院といたしましては、やはりいろいろ参考にし総合的に事態を把握するという意味合いを持ちましていろんな点を調査検討いたしております。その一環として退職手当につきましても、独自の調査をいたして今日まで来ておるわけであります。過去約五年を基準にいたしました調査をやっておるというのがそのあらわれであるわけでございます。  そういう意味で、どういう結果になっておるかというようなことは分析もしましていろいろ判断の資料に取り入れておるわけでございますが、そのことと退職手当について直接に権限的にいろいろ物を申すか申さないかということとは別の問題でございまして、現行法上は、退職手当については人事院においては直接の権限はないというのが現行法上のたてまえでございます。
  135. 渡部行雄

    渡部(行)委員 法律上所管するのは総理府であっても、国家公務員法というのは公務員全体の利益と秩序に関して規定されたものでしょう。だとすれば、それに対して人事院が重大な関心を持つということは当然だと思うのですが、法律の分野が違う、この法律で定められた所管の分野が違うからおれはそっちには口を出さないんだ、こういうことでいいでしょうか。それが国家公務員法の趣旨でしょうか。その辺の御説明をお願いします。
  136. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 退職手当の問題も、公務員立場からすれば大変重大な問題であるという認識を持っておりますればこそ、これについての調査を五年ごとという周期でやっておりますし、また退職公務員の実態調査を非常に詳細に追跡調査をやっておるということもそのあらわれでございます。
  137. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そういうお金をかけて追跡調査までして大変関心を持っておられると言っておられますが、しかし、この退職金は私には関係ないんだともし言うならば、国費のむだ遣いじゃないですか。何のために調査するのですか。
  138. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 これは調査はそのままただ単に趣味でやっているわけではございません。この調査ははっきりした目標でもってやっておりますし、その調査結果は御承知のように総理府の方にもお示しをいたしまして、それに基づいて総理府の方で公務員退職手当はいかにあるべきであるかということを決定をしておられるわけでありまして、資料を提出するということは人事院として大事な役目を果たしているものであるというふうに考えております。
  139. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで総理府総務長官にお伺いしますが、定年制の方は人事院にお伺いを立て、今度退職手当の方はそれをしないというのは、お伺いを立てると反対されるから、そういう危険性があるから立てないで、無理無理所管が自分の所管の中にあるからこの辺でやっていこうということでやったんじゃないでしょうか。それともいま人事院から資料が詳細に総理府の方に渡っているとすれば、それはどういうふうに判断されましたか。
  140. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御案内のように、退職手当関係には三公社も含まれているわけでございまして、そういう意味から人事院の調査を基本にするということの原則があろうかと思っております。私どもとしましては、退職手当の調査というのは、中立の人事管理機構である人事院の調査は絶対に信用すべき性格のものである。こういうところから、例年人事院勧告による公務員給与の引き上げも、人事院の勧告を完全実施するというたえまえを貫いておりますし、またこの退職手当につきましても、調査は五年ごとに人事院でやっていただくのを参考にする。こういうことで改めて書簡を出すということではなしに、一つの習熟した慣習として五年ごとの調査の結果を私どもとしては下敷きに敷きたい、このような考えを持っております。
  141. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その調査結果は結果として、それは当然見ることになるでしょうが、問題はその調査結果が適切であるかどうかの問題ですよ。長官が本当に公務員がかわいいなと思っているならば、民間よりも二〇%も安い退職金をもらっておったというときに何とか民間並みにしようと考えてそれを是正した、しかし今度少し高くなった、それじゃまだ是正する時分には至っていないのだからもう少し待とうというのが親心じゃないでしょうか。私はそう思うのです。ただし、何億ももらうようなこういう人たちは別です。実際に県知事とか、あるいはこの間六億何ぼもらった方がいるのです。こういうものは私はカットすべきだと思うのです。大体どんなことがあっても三千万以上いまの段階で退職金をもらうのは皆カットしていいと思うのです。そういうところはカットするが、四十年働いて、そして高校を卒業して退職するときには一千二百万ぐらい出なければならないのです。一千二百万といったら家を建てたらなくなってしまうのです。土地は買えない。土地は人のもの、上物だけしかできないのです。そういうかわいそうな人の退職金を削らなければならぬというのはやるべきじゃない。しかも、いつも長官は、公務員というものは非常に神聖な職務についておる、そしてまた日本公務員制度というものは世界にすぐれておるということを言っておられますだけに、日本公務員制度がすぐれているというのは公務員がしっかりして忠実だからなんですが、これに対してその退職金を引き下げるなどという考え方は、私は断じて持ってならないと思うのです。むしろ問題は、民間の低いのはどこに原因があるのかということなんです。現実にいま民間の企業はどうですか。減量経営という名のもとに利益は物すごく上げているのですよ。この五十三、四、五あたりは史上空前の利潤を上げておるわけです。そういう中で、いわゆる生産された価値の分配のあり方が問題だと思うのです。たとえば企業の重役クラスの報酬と退職金というものを考えれば、官公労なんかは本当にかわいそうなものじゃないでしょうか。だからそういう場合には、むしろ民間の労働者の低いものを引き上げる指導を国はしなくちゃならない。そしてそれを公務員に合わせてやる、これが政府の親心としての指導のあり方じゃないだろうか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  142. 中山太郎

    中山国務大臣 政府は、先生も御案内のように、経済関係の閣僚会議を毎月持っております。そこで政府の閣僚同士が話し合って一番心配をいたしておる問題は、大企業がどうという問題じゃなしに中小企業の問題でございます。大企業は石油ショックにかかわらずに自分で経営合理化、労使の相談の中で、利潤の追求のために生産性を上げるということをやっておる。その結果から非常に高収益を得ておることは先生御指摘のとおりであります。しかし、今日最大の問題は、日本の産業を支えている中小企業者、この倒産がことしも一、二、三と非常に高い数字を示しております。そういう中で、こういう企業に働いておられる民間の従業員の方々の退職金あるいはまたその方々の払われる税金、そういう中で政府といたしましては、ほとんどの民間企業に占める中小企業の実態と、官庁を退職される方々の手当との実態を調査して、国民の気持ちをそがないような行政をやっていくということに責任があるのじゃなかろうか、こういうことで、今回も調査の結果を信頼して、私どもといたしましては法案の御審議をお願いしている。いま先生御指摘のように、民間の手当を引き上げろというような御意見でございます。私は、中小企業の手当を引き上げることは決して反対ではない、好ましいことだ。しかし、おのずから職種によっては上げられないものと上げられるものと二種類あるのじゃなかろうか。そういうことから全国的な調査というものを人事院がやることに信頼を維持しなければ、公務員諸君の給与引き上げに対する人事院勧告、その勧告をするための調査自身に不信感が生まれてくると完全実施をする姿勢が崩れてくる、こういうところにも私どもの立場があるということをひとつ御理解を賜りたい、このように考えております。
  143. 渡部行雄

    渡部(行)委員 確かに中小企業の中には支払い能力がなくて低いところもあるわけです。ここに働く労働者は本当に気の毒という以外にないのですが、しかし問題は、人並みに給料も退職金も払えないような企業を許しておくところに問題があると思うのです。それだったら、早く全国一律の最低賃金制でもつくって、中小零細企業に働く労働者の生活の底上げを図るというようなことをしながら、そうして退職金の問題も、賃金条件を下げる、あるいは給与条件を下げる、勤務条件を下げるということは絶対にしない、どんなことがあっても上げる方向で努力するということが私はあってしかるべきじゃないか。しかも、人事院の調査と申しますけれども、この調査は層化抽出法というやり方で、網羅式に全体をやったものじゃないのですよ。これは非常に不正確さがあるわけです。だから、こういう調査方法に正確性を求めること自体が私はナンセンスだと思うのですよ。  そこで問題なのは、どうですか、ひとつこの辺でこの退職手当法を取り下げていただけないでしょうかね。私は、中山総務長官の日ごろの御答弁やそのお人柄というものは非常に尊敬しておるのですが、やはりそういう温かいお気持ちを持っておる大臣でございますから、どうかひとつこれは全公務員のためにお取り下げを願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  144. 中山太郎

    中山国務大臣 先生のせっかくのお話でございますが、私個人としては気持ちが別にあるといたしましても、政府としては現在御審議をお願いしている法律案というものについては取り下げる意思はただいまのところ持ち合わせておりません。公務員の諸君にはまことにお気の毒だと思います。私も、願うならば上げるときの総務長官であったらなといつも思っておりますが、こういうときには全職員、上も下も先生のいま御指摘のようなお気持ちだろうと思うのです。しかし、国民全体を見る政治の場からはやはり筋道を通すことが必要であろう、それが政治の道である、つらいけれども現在取り下げることはできないというのが私の率直な気持ちでございます。
  145. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、時間が参りましたので最後に長官、それほど厳格に物事をお考えになるならば、今後人事院勧告が出た際には必ず完全実施をやるとお約束できますか。
  146. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、昨年の総務長官就任以来、この公務員の給与引き上げに関する人事院勧告というものはすでに十年定着をしておる、これを完全実施することによっていわゆる労働の基本権の代償機能というものが果たせるという考え方を実は貫いてまいっております。昨年も大変財政事情が厳しゅうございました。そこで、昨年度大蔵当局との交渉においても、なかなか一度や二度の交渉ではうんと言わない、関係閣僚会議だけでも数回開きまして、やっと完全実施をするというところにこぎつけたわけでございますが、今年も大変財政事情は厳しかろう、補助金のカット等もございますから厳しいということは私どもよく認識をしておりますけれども、私は粘り強く大蔵当局に交渉して完全実施を維持してまいりたい、このように考えております。
  147. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  148. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時三分開議
  149. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神田厚君。
  150. 神田厚

    神田委員 国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、以下御質問申し上げたいと思います。  最初に、自衛隊関係の問題につきまして、若干時間をいただきまして御質問申し上げます。特に制服自衛官の待遇問題、退職等の問題も含めまして、以下防衛庁の方に二、三御質問を申し上げます。  制服自衛官と防衛庁事務官との給与体系が不均衡である、こういうことが言われているわけでありますが、たとえば課長の給与等級が将補より上であるというような事実がある、こういうように言われておりますけれども、こういう事実があるのでありましょうか。さらに局長、課長課長補佐、係長の給与等級に対応する制服自衛官の階級はそれぞれどういうふうになっているのか、この辺のところをお聞かせいただきたいのであります。ただ、私は何も防衛庁の事務官の方が大変たくさん給与をもらっているというようなことではなくて、事務官に比べて制服自衛官の方の待遇に問題があるという指摘があるので、この点について見解をお聞かせいただきたい、こういう立場で御質問しているわけでありますので、ひとつよろしくどうぞお願い申し上げます。
  151. 石崎昭

    ○石崎政府委員 防衛庁の職員の俸給は、御存じのとおりに「参事官等」というシビリアン、それから「自衛官」、それから「事務官等」という同じくシビリアン、こういう三つの区分で俸給が支給されているわけでございますが、自衛官の場合は、一般職の国家公務員における類似の官職の俸給を基準として調整してつくられております。したがって、自衛官と事務官等との間に不均衡がないというふうに考えております。  お尋ねの将補と中央官庁の課長の官職との均衡がどうなっておるかということでございますが、中央官庁の課長クラスの特に重要な業務を担当している課長の官職については一等級、その他の課長の場合は二等級というのが現状でありますが、将補の基準俸給についても、これら行政職の一等級、二等級に対応するものをつくって将補に適用しておりますので、制服が事務官等と比べて俸給の面で不当に均衡がとれてない、不利な状況に置かれているということはないと思います。  それから、局長や課長課長補佐、そういうものが制服の自衛官それぞれの階級とどういう対応の仕方になっているかということでございますが、一般職の公務員と比べて自衛官の場合、職務内容が大変違いますので、単純な比較がちょっとむずかしいのでありますが、ごくあらましの比較をしてみますと、局長クラスは将、課長は将補あるいは一佐、課長補佐クラスは二佐または三佐、係長クラスは一尉または二尉というふうに対応しているのが現状でございます。
  152. 神田厚

    神田委員 御説明ですと、不均衡ということはないというふうなことでありますが、これはちょっと細かいことにわたりますので、また後ほど御質問申し上げますが、制服自衛官の定年が今度決まるわけでありまして、政令で決められているということでありますが、一般公務員の定年が法律で決められることになるのに対しまして、制服自衛官の定年は政令で決める、こういうことはやはり不均衡ではないかというふうな指摘がございますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  153. 石崎昭

    ○石崎政府委員 御指摘のとおり制服自衛官の定年は現在政令で決まっておりますが、もちろんこれは法律を受けてのことであることは当然でありますが、これはどういう理由があるかといいますと、まずそういうふうに法律で決められているということが現状の一番根底にあるわけですが、法律を受けて政令で決めることになった理由というのは、多分自衛官の場合は階級ごとにわりあい細かい定年の定め方をしておりますのと、それから職務の内容からいって、部隊の編成とか装備の改編とか、そういう職務の内容を左右する要素が複雑であって、わりあい早く変わっていく可能性があるというようなことに対応するために刻みが細かいことと、そういう中身がわりあい状況に応じて変化しやすいということが背景にあって、それに機動的に対応するためには、法律の委任を受けて政令で定めるということが有効な対応の仕方であるということが原因になって、このような制度になってきておるのだろうと思います。  それで今後もそういう点は同じような状況が続きますので、論理的に言えば、絶対法律でなければいけないとか絶対政令でなければいかぬというような問題ではないと思いますが、現行の制度のような法を受けて政令で細かい刻みを設け、それが機動的に対応しやすいという状況が望ましいのではないかと考えております。
  154. 神田厚

    神田委員 また五十九年度までに若干の定年延長を図ることになっておりますけれども、それでも諸外国に比べまして非常に短い。この前の委員会でも御質問を申し上げたのでありますが、こういう定年問題について今後どういうふうな考え方をお持ちになるか、その点はいかがですか。
  155. 石崎昭

    ○石崎政府委員 確かに制服自衛官は一般公務員に比べて定年が若いところで定められておりますが、これは各国の軍隊と比較してみますと、やはり軍隊という、日本の場合は自衛隊の特質からいって体力、気力の充実した人でないと任務にたえないということが一つ背景にございますから、比較的若年に決められていくというのは、各国通じておおむね似たようなことが言えるだろうと思います。  ただ、国ごとに見ますと、確かに日本より老年のところで定年が決まっている軍隊もいろいろございますが、これも中身をよく調べてみますと、昇任の仕方にいろいろシステムの違いがあったりして、たとえばある階級から上位の階級に移る場合に何年もかかり過ぎている人は、一定の年限が来ればもうそこでやめざるを得ないというような、定年があるにもかかわらず、同一階級に足踏みしている人については早目にやめざるを得ないというような制度があったりというシステムの違いを考慮に入れますと、必ずしも日本の制服自衛官の定年が国際的に見て若年に過ぎるということはないのではないかと思います。  ただ、日本人の平均寿命が伸びてきたこととか、体力がそれに伴ってわりあい高齢者についても十分働けるというようなこととか、あるいは装備の近代化が進むに従って熟練隊員がより一層必要になってくるとか、いろいろな事情がございますので、いまおっしゃいましたような定年の廷長を目下やりつつあるところでございます。今後もそういういろいろな要素を考えながら、定年については絶えず検討を続けたいと思っております。
  156. 神田厚

    神田委員 制服自衛官の定年が延長されても、一佐以下は五十五歳未満になりますね。これに対しまして、退職年金は五十歳から減額年金、五十五歳から満額支給という制度になっておりまして、定年と連動していない特徴があるわけであります。そういうことで、一般公務員に比べまして非常に不均衡である。諸外国では定年が早い軍人に対しましては、年金の割り増しを行っているところがありますけれども、こうしたことについてはどういうふうなお考えをお持ちになっておるのか。  また、年金の支給開始年齢を定年と連動するよう引き下げるようなことは考えられないのかどうか。五十九年度には制服自衛官の定年が、将が五十八歳、将補が五十五歳、一佐が五十四歳、二佐から曹長までが五十三歳というようになりますけれども、これをすべて二年延長すれば、定年と年金支給が連動する、こういうふうな形になってくるわけでありますが、これらについてどういうふうにお考えになっておるのか。  ちなみに、主要国の軍人の恩給制度の中で、特に定年による早期退職に対する優遇策というのがそれぞれとられているわけでありますが、その中で、たとえばアメリカでは、軍人の退職年金制度は無拠出制であるけれども、文官の場合は拠出制、掛金率が七・〇%というふうになっている。また年金の支給開始時は、軍人の場合は定年または在職二十年以上で退職したときからであるわけでありまして、一方、一般文官には定年がないから、年金は、三十年以上の勤続者が五十五歳以上で退職したとき、二十年以上の勤続者の場合は六十歳以上で退職したとき、そして五年以上の勤続者が六十二歳以上で退職したときでなければ即時支給をされない、こういうようなことになっているわけでありまして、さらに西ドイツ、イギリス、フランス、それぞれ定年による早期退職に対する優遇策がとられているのでありますけれども、日本はそういうことから見ると、この点で大変おくれている感がするわけであります。  いろいろ資料がありますけれども、時間の関係がありますので、全部は申し上げられませんけれども、そういうことにつきましてどういうふうにお考えでありましょうか、お聞かせいただきたい。
  157. 石崎昭

    ○石崎政府委員 ただいま御指摘のように、外国と比べた場合は、恩給とか退職年金の制度がずいぶん違いますので、まだまだ日本でも改善の余地があるのかどうかという問題は確かにございますが、外国との比較でまず一番問題なのは、根本的にシステムの違うところが多いということでありまして、無拠出の恩給という制度の国がたくさんありますが、日本の場合それがないという点で根本的に違いますので、その辺の根本的な違いを念頭に置いて、さてどうしたら制服自衛官にとって一番望ましい年金制度ができるかということを考えざるを得ないわけでございます。  それで、現状は御指摘のように、退職の年齢と年金支給開始年齢との間に若干のすき間ができる場合があるのはそのとおりでございまして、これをどうしたらいいかというのは、一般職の公務員の場合と全く同じように検討すべき問題があるのではないかと思います。現状ではそれをカバーする方法としては、まず先ほどの定年の引き上げという問題が一つの問題としてありますし、それから自衛隊の精強の度合いを落とさないで定年を考えるとすると、やはりある程度一般公務員より若年定年というかっこうにならざるを得ないという面もございますので、そのすき間問題というのがどう解決されるかということでございます。  そこで、目下自衛隊で努力しておりますのは、就職援護ということで、比較的若年で退職する人が第二の人生を安定的に暮らせるというための援護活動を熱心にやっているということが一つ、それから年金に限って言えば、御存じの減額支給制度でそのすき間を埋めるということでやっているわけでございます。  全体として、この問題は自衛官にとっても大変重要なことでございますから、さらに合理的ないい制度があれば、それを探求しなければいけませんので、絶えず研究を続けているところでございます。
  158. 神田厚

    神田委員 特に西ドイツなどでは、文官に比べて定年年齢の低い職業軍人に対する特別の優遇処置としまして、それぞれかなりのことが準備をされてやられておるわけであります。いまお話がありました職業等の問題につきましても、きちんと職業生活への編入のためのその他の措置というような法律事項でこれが決められて、システム化されているというような状況もありますので、私はやはり定年、特に定年の低い制服の人たちに対する国家としての措置というものをもう少し考えていただければと思っておりますが、ひとつそれは要望として、またすぐ解決する問題でもございませんから、引き続きいろいろ発言をさしていただきたい、こういうように思っております。  以上で自衛隊関係を終わります。  続きまして、一般公務員の問題で御質問申し上げます。  最初に、官公労働者との事前協議の問題についてということで、この退職手当の削減の問題は、官公労働者の基本的な労働条件の問題であるということは、もうすでに周知のとおりでありまして、この委員会でもたびたび話し合われてきたところでありますが、この立法化をするという状況の前に、関係労働者との協議は十分に行われたのでありましょうか、その点はいかがでございますか。
  159. 山地進

    ○山地政府委員 総理府といたしましては、この法案を提出するに当たりまして、関係の労働組合と総務長官あるいは人事局長あるいはそれ以下で何回かお話し合いを持ってきたのは事実でございます。
  160. 神田厚

    神田委員 私ども、労働組合その他の方たちから、要望をいただくに当たりまして、これらの問題が出されるに当たって十二分な協議が必ずしも行われたというふうな形での報告は受けていないわけであります。当然これらの問題は法定事項でありますから、団体交渉の枠外の問題であるとしましても、基本的な労働条件にかかわる問題でありますから、この削減を決めるというこの法律の内容そのものが非常に重大な生活権の問題を持っているわけでありますから、もっと十分に関係労働者と話し合うべきではなかったかと思うのでありますが、その点は十分な協議ができたというふうにお考えでございますか。
  161. 山地進

    ○山地政府委員 退職手当の今回の改正の問題につきましては、従来から法律で決められているということと、それからもう一つは、民間準拠ということでやっておりますので、事柄上、先生のおっしゃったように、普通の団体交渉事項というふうな取り扱いは非常にむずかしいわけでございますけれども、私どもとしては、お申し出のある場合に努めてお会いをしてきたということでございます。
  162. 神田厚

    神田委員 今後またこの問題が、見直しを図ろうとかいろいろな問題が出てくると思いますけれども、今後こういう退職手当の見直しを図るというような場合には、先ほど答弁がありましたような民間との比較の問題あるいは制度全体のあり方の問題、こういうものにつきまして立法化の前に、立法準備をする前に、関係労働者の意見を十分に聞く必要があるというふうに考えておりますが、それらについてはどういうふうにお考えでありましようか。
  163. 山地進

    ○山地政府委員 この法律を通していただいた暁には、見直しの規定というのが法定されているわけでございますので、私どもとしては、いま先生のお話のように、制度的な見直しの問題あるいは任用と給与と深くかかわる問題あるいは今回のような改正の問題、種々さまざまにわたっておりますので、各方面から積極的な御発言というのをむしろ期待してお待ちしているということでございます。
  164. 神田厚

    神田委員 ことしの五月五日、先日でありますが、朝日新聞で、人事院は給与体系や昇進制など公務員制度の見直し作業に着手をし、五十八年に具体案をまとめて六十年度から実施をしたい、こういうふうに言っているというふうに報道されておりました。さらに人事院から出している雑誌等にも総裁の方からそういうふうなことが出ているようでありますが、その辺はどうでございますか。
  165. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 現在の公務員制度が発足をいたしまして三十年以上を経過しております。その間いろいろな情勢の変化がございましたので、その都度その変化に対応する措置はそれぞれ講じてまいっておりますし、法律に基づく措置を必要とするものについては、それなりの措置をお願いして今日まで来ておるわけでございます。ところが、特に注目すべき高齢化あるいは高学歴化の現象が大変急速に最近進んでまいる情勢が出てきておりまして、これに伴っていろいろな問題が提起されてきております。したがいまして、情勢の変化に対応する諸措置を人事行政上も機敏に講じてまいらなければならないというふうな情勢が深刻なものとして浮かび上がってまいりましたので、これに着目をいたしまして、昨年の給与勧告を出しました際に、関連する報告のところでこの問題を取り上げまして、ひとつ各般にわたって根本的な検討を開始しなければならないということを決意として申し上げました。  それの順序は、いまお話がございましたように、大体六十年を目途といたしまして、その準備等がございますので、五十八年あたりを目途にして具体案の作成に取り組みたいということで、いま鋭意そういう調査体制に入ったというところでございます。
  166. 神田厚

    神田委員 そういうことでありますと、そこで検討される課題というものはどういうものでございましょうか。
  167. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 これは人事行政全般にわたって総合的にいろいろな問題を検討してまいりたいというふうに思っております。したがいまして、ある適当な時期にまいりますれば、それらの検討項目なり検討の方向なりについていろいろ御参考までに申し上げる時期も来るのではないかというふうに感じておりますが、現在のところでは、それの前提としてのいろいろの基礎調査に取り組む段階だというふうに私自身は承知をいたしております。  いろいろございますが、とりたてて重要な点を申し上げますれば、たとえば任用制度等におきましても、採用の問題あるいはその後における昇任の問題等がいろいろ論議されなければなりませんし、給与の問題ということになりますれば、これは技術的にもその他各般の要素が出てまいりまして、なかんずくの点で申し上げますれば、俸給表自体の問題、給与水準の問題もさりながら、俸給表自体の問題、俸給表の種類、等級構成の問題あるいは俸給と手当の問題、それのあり方の関連の問題等にも及びまするし、そのほかいままでもいろいろ御論議をいただきました退職手当その他の問題につきましても、これは所管の問題とは別問題として、やはり公務員の給与条体に関する重要な点でございますので、それらの点につきましても大変な関心を持って掘り下げて検討し、総合的なひとつ調査、研究というものをあわせて進めてまいるという所存でございます。
  168. 神田厚

    神田委員 総裁は、幹部の方を集めた席でのお話の中で、これは雑誌に載っていることでありますが、改正するからには、この改正案が二十年、三十年という長い期間たえられるものでなければいけない、こういうことを一つの基本としてその作業を進めるのだということでありますが、この二十年なり三十年なりこれが長持ちをするというところの一番のエキスみたいなものは、基本みたいなものは、一体どんなところだというふうにお考えでありますか。
  169. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 まだそこまでの点について自信を持って申し上げる段階ではございませんが、やはり制度の問題を根本的に問題にしようとするところでございますので、制度である限りは、やはりそう簡単に朝令暮改といったようなことでやっていける問題ではございません。またそういうことでは、現在公務員である者の去就あるいは考え方というものに大変大きな影響を来しますし、また将来やはり公務の場に入っていろいろ活動したいと考えている、特に青少年の方々の思惑という点も考えますと、相当永続的な、長期の情勢変化に耐え得るところを目途にしていかなければならぬという決意を持っておるのであります。任用にしろ給与にしろ、いずれも無論、当面毎年変えてまいらなければならぬ、改善を図らなければならぬ問題もございますけれども、その基本というのは、永続的な人事行政の理念に立脚したものでなければならないと考えておりまして、その一番の骨子になりますものは、大変抽象的で恐縮でございますけれども、あくまで人事行政自体の公正を確保していくということと、公務員について、安んじてその職務に精励し得るような体制づくりをやっていく、その二本が大きな基礎になるのではないかと思っております。
  170. 神田厚

    神田委員 いずれにいたしましても、公務員の労働条件の基本に関する問題でございまして、人事院は、公務員に労働基本権を認めない代償として、その労働条件の向上を図る機関ということになっているわけでありますから、この作業に当たりましては、当然公務員関係者と十分協議をしていく場を多く設けていかなければならないと思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  171. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 この点につきましては、すでに公務員関係の諸団体からもそういう要請が出ております。従来私自身がお会いした各種の団体の関係の方々からもそういう御要請がございます。これに対して私は、これは公務員自身に関する重要な問題である、国民に対する公務員制度のあり方という側面を持つと同時に、公務員の身分に関する重要な影響がある事柄であるので、そういうお申し出の趣旨については十分わかるし、将来もこの仕事が進んでいく段階で配慮いたしたいと思っておる、ついては最終的にこういう案ができたからどうかというようなことではなくて、その段階段階において、私は節目という言葉を使っておりますが、節目、節目でひとつ皆さん方の御意見も聞く措置を講じてまいりたいというふうに申し上げておりまして、そういう趣旨に沿って善処してまいるつもりでございます。
  172. 神田厚

    神田委員 大変前向きな御答弁でありますが、節目、節目で話を聞くという場合には、どういう場でこういう話をお聞きになるのか、場が必要でありますね。その辺はどういうふうにお考えでありますか。
  173. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 先生も御承知のように、われわれ、職員団体との接触の場といたしましては、団体自身が、それもいろいろな階層がございますが、問題の所在によって、ただ単に係の方とかあるいは役職の方とか、最終的には、重要な問題については向こうの委員長が私のところへとか、いろいろな段階がございます。  この接触は、毎年それこそ、言葉は少し大げさに言いますが、百回や二百回にはとどまらないほど通常のことでも接触を保ってやっております。組合の方々もそれなりの評価をしてもらっておるのではないかと考えておるのでありますが、問題は、そういうようなことを踏襲いたしまするとともに、この問題については、ある段階に来た場合においては積極的にわれわれの方から関係方面の御意見を聞く、この点についてはいまこういうような考え方で、こういうような方向があるのだがどうだろうかということで、それぞれの事柄の種類と重さに従いまして、適当な段階によって進めてまいる所存でございます。
  174. 神田厚

    神田委員 ひとつ十二分に意見をお聞きいただきたいと思うのであります。  さらに現在、給与は人事院、年金は大蔵省、退職手当総理府、こういうように別々に分かれているわけでありますが、公務員制度の見直しを図るとするならば、こういう機関の統一を図っていく必要があるのではないか、こういう問題についてはどういう程度にお考えでございましょうか。
  175. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御指摘の点は、たとえば共済年金あるいは退職手当公務員給与という問題は今日までの歴史がございまして、それぞれの役所が所管しておるということでございますが、これからの新しい公務員制度のあり方の中で、今後慎重な検討を要する問題であろうと考えております。
  176. 神田厚

    神田委員 私どもは、この場合労働基本権の代償機関としての人事院が総括的にこれらのものを取り扱ったらどうだという意見を持っておりますが、この辺につきましてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  177. 中山太郎

    中山国務大臣 人事院でこれを総合的に全部取り扱うということも一つ考え方だと思います。いろいろと各方面の御意見を十分承りながら、どの制度が一番総合管理するのに適しているかについては、各党の御意見もまた改めて聞く機会もあろうと思いますし、私どもとしては、慎重に検討させていただきたい、このように考えております。
  178. 神田厚

    神田委員 さて退職手当の問題でありますが、退職手当公務員の任用制度、給与制度、年金制度、こういうものと深くかかわり合いを持っているわけでありまして、公務員制度の根幹をなすものでありますけれども、これらの問題につきまして、今回退職手当の削減の問題が出されてきているわけでありますが、われわれとしましては、この退職手当はもっと総合的に検討して、急激な変更をすべきではない、こういうふうに考えております。これらについての基本的なお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。
  179. 山地進

    ○山地政府委員 御承知のとおり、退職手当法という法律があって、四十八年に民間に比較して公務員が低いというので二割上げたわけでございますが、これは附則において当分の間上げるという臨時的な措置を講じたわけでございます。したがいまして、前回から今回におきましても、退職手当制度そのものを何らか変革するというようなことをしていない。言ってみれば、手直し的なことをやったというのがこれまでの改正の経緯だと思うわけでございます。  そこで、今回は見直しの規定というのが入っておりまして、いま御指摘のような人事院の方でいろいろこれから御検討いただく任用、給与、あるいは私どもで御提案申し上げております定年制度、そういったもの、さらにはそれは年金制度にもかかわってくるかと思いますが、そういったような情勢の変化というもの、単に国の側の変化だけではございませんで、民間の変化ということも十分に考慮に入れて今後検討を進めてまいりたい。その結果、所要の改正が必要であるという場合には、今後の退職手当制度というものはどういうものであるべきかということまで検討し、所要の措置を講じていきたい、かように考えておるわけであります。
  180. 神田厚

    神田委員 今回の改正によりまして、減少する退職手当の額は予算上どの程度と見込んでおられましょうか。
  181. 山地進

    ○山地政府委員 五十六年度でございますが、一般会計で約二百十億、それから特別会計で九十億、三公社で二百億、合計約五百億でございます。
  182. 神田厚

    神田委員 退職手当の削減の効果について質問を続けているわけでありますが、その場合、退職者の数はどの程度と見込んでおられますか。
  183. 山地進

    ○山地政府委員 予算上の削減額の対象となる人員は、一般会計の国家公務員で約一万二千人、それから特別会計と三公社を加えた総人数で約五万五千人でございます。     〔委員長退席塚原委員長代理着席〕
  184. 神田厚

    神田委員 人事院任用局の公務員の任用状況調査報告というのがございますが、これによりますと、公務員の退職率は昭和五十年度から五十四年度までで三・七%から三・八%、人数につきましては三万三千人から三万五千人程度であります。こういう報告がございます。今回の改正によりまして、公務員の退職率は増加すると予測されますか。それとも減少するというふうに予測されますか。
  185. 山地進

    ○山地政府委員 大変むずかしい御質問だと思うわけでございますが、まず、いまの御質問の退職の中にはいろいろな理由でやめる方もおられます。自己都合でやめられる方もおります。  そこで、今回の退職手当なりあるいは定年制度なりというものが出てきたときに、一つ考えられるのは、退職勧奨でやめる人がどういうようなことになるだろうかということであろうかと思うわけでございますが、職員が退職勧奨を受けて、それに応ずることを決意するにはいろいろな事情があるわけでございまして、その場合に、退職手当あるいは定年制度というようなことがどの程度影響してくるかというのは、それぞれの省庁における人員構成なりあるいはそういった退職勧奨の従来の実績なりあるいはこれからの任命権者のそういったものの運用、そういうものによって変化するだろうと思いますが、私どもとしては、そういったことから従来の傾向をたどるだろう、かように考えております。
  186. 神田厚

    神田委員 どうもちょっと局長の見解と違うようなことになりそうでありますが、聞くところによりますと、本改正案が今国会に上程をされる、あるいは上程をされております段階の中で、削減される前に退職した方が得だというふうなことで、公務員等の退職者がふえているというようなことが言われておりますが、そういう事実はどうでございますか。
  187. 山地進

    ○山地政府委員 私どもにそういったような情報は格別入っておりません。
  188. 神田厚

    神田委員 これは予測も含めてのことでございますが、私どもの方で調査しておりますところでは、どうもいまのうちにやめた方が得だというので、ふえているというような報告もいただいております。しかしながら、まだ全体的に明らかでありませんから、この問題はおくことにしまして、公務員の新規採用をどのくらいにするかという問題は、毎年度の退職予定者がどのくらいになるかの基礎があってそれらが決まるわけでありますが、今年度の場合、予測した退職予定者の数は、この法律の動向に関係なく、大体予測どおりにいくというふうに思われるのでありましょうか。
  189. 山地進

    ○山地政府委員 実は、こういった今回の公務員二法を提出するに当たりましては、人事局としては、関係の労働組合の方とのお話し合いというのはもちろんのことでございますが、さらに各省の人事担当の者といろいろとまた会合も重ね、一体どういうことになるだろうかということについても十分議論はしてきたところでございまして、これらについては、各任命権者の方でそれぞれの事情を踏まえまして、退職管理ということを通じて、いま御指摘のような新規採用者の数を決定していく基礎となる退職人数というものについては把握している、かように考えております。
  190. 神田厚

    神田委員 大体予測どおりであるということでございますね。
  191. 山地進

    ○山地政府委員 ただいまのところ、予測から外れているというような話は私どもに来ておりません。
  192. 神田厚

    神田委員 私どもが心配しますのは、五十六年度の場合はすでに新規採用も終わりまして、新しく公務員となった者は研修も終わって勤務先にそれぞれ配属されている。このような状況のもとで、仮に予測以上に退職者がふえた場合には、いま局長はふえないと言っておりますけれども、ふえた場合には、その現場で非常に過重な負担がかかる、こういうふうなことで、現場の方が大変それを心配しているということでありますが、それらについてもあらかじめ対策がとられるべきだと考えておるのでありますが、その辺はいかがでありますか。
  193. 山地進

    ○山地政府委員 先ほど来鋭意申し上げましたとおり、各人事当局担当者とは十分連絡をして今日にきておりますので、これらの動向、つまり職員がこういった公務員二法ができたときにどういうことになるかということについては、各任命権者の方で織り込み済みでございますので、御指摘のような心配は起こらないというのが私どもの考えでございます。
  194. 神田厚

    神田委員 たとえば税務職あるいは税関、現にこれは仕事量に比べて人員が不足している、そういう省庁があるわけであります。これらについては、退職率がもしも増加するということになりますと、行政のサービスが低下をするというような危惧も指摘をされておるわけでありますが、この点につきましては、十分連携をとって対策がとられておるのでありましょうか。
  195. 山地進

    ○山地政府委員 先ほど申し上げたとおり、各省庁それぞれの事情があって、それをわきまえた上で、今回の法案について各省の意見をまとめたわけでございますので、税関なり税務署なりで御指摘のようなことがございますれば、それなりの対応策というものは各省庁でお考えになるというのが当然でございますので、配置転換なりあるいは中途採用なり、新規採用をふやすなり、それぞれの対応をいろいろお考えいただいてきている、かように考えております。
  196. 神田厚

    神田委員 定年法との絡みで二、三御質問申し上げますが、国家公務員の定年法案が成立をし、六十歳定年制が導入された場合、前にもちょっと御質問申し上げましたが、現在の勧奨退職の存在を前提とした退職金制度というのはどういうふうになるのでありましょうか。
  197. 山地進

    ○山地政府委員 現行の退職手当法におきましては、現在定年制度のある公務員の定年退職というものと勧奨退職というものは、退職手当上同じように取り扱っておりますので、今後定年制度を導入した暁にも、勧奨退職とそれから定年制度というものは同様に取り扱っていくことになります。
  198. 神田厚

    神田委員 そうすると、法律第五条はそのまま定年退職等の場合に適用される、こういうふうなことでございますか。
  199. 山地進

    ○山地政府委員 二十五年以上の方には、したがいまして、法五条が適用になる、かようなことでございます。
  200. 神田厚

    神田委員 また、定年制が導入されても勧奨退職は継続することとなっておりますけれども、その場合の退職手当を適用するのは第何条なのか、新たな条項を設けるのか、それとも現在の条項の中での定年退職についての新しい条項をつくるのか、その辺はどうでございますか。
  201. 山地進

    ○山地政府委員 従来も定年と勧奨退職というのは同様な扱いをしてきたわけでありますし、今後も同様に扱っていくべきだということでございますので、勧奨退職について新たな規定を設立する必要はない、かように考えております。
  202. 神田厚

    神田委員 定年制の導入に伴いまして、今回の改正案のように、五十七年までに一〇%退職手当を削減する案では、官公労働者の退職率は低下すると予測するのでありますが、この点はいかがでありますか。
  203. 山地進

    ○山地政府委員 いまの私どもの提案で、五十七年度から一〇%、従来の退職手当に比較すると八・三%下がるわけでございますから、従来から受けでいた者に比較すれば八・三%相当額が減額される、つまり今回の改正がなかった場合に比較して、それだけ下がるというのは御指摘のとおりだと思います。
  204. 神田厚

    神田委員 現在の勧奨退職年齢五十七・六歳、これが六十歳定年になりますと、平年度で約百五十万から二百万円減収となります。そうしますと、これは退職手当の削減分を給料で補てんしようというような傾向が強くなるのではないか、こういう指摘がございますが、これについてはどういうふうにお考えでありますか。
  205. 山地進

    ○山地政府委員 先ほど申し上げましたとおり、退職勧奨を受けた場合に、それに応ずるかどうかを決意する場合にはいろいろな要素があるわけでございまして、そのときに退職金が若干といいますか八・三%減ることが、そのまま退職勧奨に応じないということに必ずしもならないと私どもは考えております。
  206. 神田厚

    神田委員 具体的に少し数字で申し上げますと、税務職をモデルにしたわれわれの試算があるのでありますが、現在の勧奨退職年齢である五十七歳で退職した場合、一〇%の退職手当の削減により百九十一万円減少させられるわけであります。しかし、勧奨に応ぜず六十歳まで勤めた場合は、五十八歳から六十歳までの三年間で給与は合計一千九百十四万円に上って、そのときの退職金は一千六百八十七万円となる。つまり五十七歳で勧奨に応じた場合、退職手当は百九十一万円減少させられるわけでありますが、勧奨に応じないで六十歳まで勤めた場合は、新たに一千九百十四万円ももらえるわけでありまして、国庫の負担額は逆に千五百万円弱追加しなければならない、こういう計算になるのですね。明らかに数字の上でこういうようになってしまうわけでありますが、これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  207. 山地進

    ○山地政府委員 いまのお尋ねは、ある人が五十七歳でやめる場合と、その人が六十歳まで勤める場合のことでございまして、これは退職制度、退職金の改正が出ると否とにかかわらず、五十七歳から六十歳まで勤めれば、それだけ給与の支出はその人に関する限りはふえるわけでございます。ただし、その人が五十七歳でやめるときに受領する退職金が六十年にずれ込む、その場合に給与がどれくらい上がるか、ベースアップはある、これは間違いないです。それからその場合に、定昇なり何なりがあるかどうかというのは、計算の一つの変化だろうと思いますけれども、それを除きますと、国の支出は、その人に関する限り、五十七年に払うものを六十年に払うというだけになるわけでございまして、ベースアップというのは、物価変動に関係してくるから金利みたいなもので、つまり後で払うのですから高くなるというような関係はあろうかと思います。したがって、退職金については、前に払おうが後に払おうが、国の方として見れば、五十七年度の財政で払うか六十年度の財政で払うかという違いはございますけれども、長い目で見れば同じになる。そうすると、退職金の額については問題がございませんので、後は給料をその人が三年間取るか取らないかということでございまして、これは退職制度の改正があるなしに関係ない話でございます。退職勧奨に応ずるか応じないか、それは現在でも退職勧奨に応じておるわけでございますから、そういうときには、その分について得しているのか損しているのかということについては、その人がその後どういう道を歩むかということに関係するだけだろうと思いますので、今回の改正とは、そういった数字の変化はない、かように考えます。
  208. 神田厚

    神田委員 今回のこの法案は行財政改革との関連だと言われております。私どもは、本来、この法案は行政改革、財政改革に悪乗りしてきた法案だということを言っておるわけであります。しかしながら、少なくともその間に給与を払うということであれば、国庫支出がふえるということでありますから、そういう意味では、行財政改革の面から言うとどうもそぐわない面を持つというふうに考えるわけであります。確かに局長がおっしゃるように、退職金は五十七年に払っても六十年に払っても手当としては同じだ、時期の問題もありますし、金利その他の多少のあれはありますが、そういうことであります。しかし、給与の支出というのはそこにあるわけでありますから、これは法の改正の趣旨とは違うということでありますが、皆さん方はやはりこの法案が行財政改革の一つの目玉だというような形で言っておるわけでありますから、その辺のところは非常に問題のあるところではないか、こういうふうに私は考えるのですが、いかがでありますか。
  209. 山地進

    ○山地政府委員 性格といいますか、従来から狭い意味の行財政改革と広い意味の行財政改革があるわけでございますが、私どもの公務員二法のうち定年法の方は、まさに公務の能率を増進するという点から行政改革ということで、これは行政改革の法律であるというふうに申し上げてきたわけでございますが、退手の方は、間接的に財政上の問題に寄与することがあるべしということを申し上げておるわけです。なぜ間接的に寄与することあるべしかと申し上げますと、退手法施行後、定年制のこの法律が通った後の定員管理、退職管理がどのようになってくるか。先生の御指摘のように、高年齢者の在職期間が長くなるのかどうかということは、財政的には、若い人が入れば三分の一の給料になるのに、その方がおられればそれだけ高くなるという意味ではマイナスになるわけでございますけれども、そういったようなことがどう寄与してくるかということで、これは定員管理が今後どう推移するかということに関係してくるわけでございます。そこで、そういったことについて、ふえるのか減るのかということについては余り定かではございません。ただ言えることは、これは六十年までという短期ではございませんで、長期的に見れば、この定年制度はそういった退職管理に機能していくであろうから、間接的には国の財政に寄与していくに違いない、かように考えておるわけでございます。
  210. 神田厚

    神田委員 五十七歳で勧奨に応じた場合と六十歳まで勤めた場合で、国庫負担額が一つのモデルでも約千五百万円違うということになりますと、五十六年度で退職手当の削減で効果として約五百億円程度しか見込めないということでありますと、逆にこの時期にこれだけの国庫支出がふえるということは、私はやはり非常な問題点を含んでいるのだと思うのであります。  おっしゃいましたように、どういう形で公務員の定数の中で年齢構成、高齢化の問題が残るのかわかりませんけれども、少なくともいまの予測からいきますと、何らかの形でもう少ししっかりと勧奨の問題が解決されなければ、勧奨退職に応じないで、六十歳定年というにしきの御旗があるわけですから、そこまで勤め上げようというのが人情でもありますし、またそういう一つの風潮というものが、民間も六十歳定年が定着をする、そういう中でありますならば、そういう形で六十歳定年まで勤め上げるという公務員の方が多くなってくる、こういうふうに考えますね。ですから、このところは退職手当法と定年法とのねらいといいますか、それが何か非常に矛盾をしている、二律背反みたいな形でこの法案が出されてきているところがあるんではないかと考えております。  この問題は、しかしこれからの予想の問題でありますから、そのことによってどうということであるというのではなくて、ですから総理府としては、一体どういうふうなところに本当のねらいを持ってこの退職手当法なり定年法を出してきたのかという法律の本来の趣旨に戻って、この法案が、発動するんでありましょうが、発動した段階において、さらに問題点が出た場合には、もう一回謙虚に検討していかなければならないんではないかというふうに考えているわけでありまして、そういうふうに意見を申し述べておきたいと思っています。  さて、このような形でわれわれ行政改革の趣旨にこれは反するのではないかというふうにも考えているわけでありますが、そうしますと、政府退職手当削減に伴う予算額の減少が、こういうふうな形でわれわれが言っているように、国庫負担の増加になるというような状況というのは見込まれていないわけですね。
  211. 山地進

    ○山地政府委員 いまの御質問は、高年齢の方が予想以上に勤めるから、したがって財政支出がふえるかもしれない、こういう御質問かと思うわけでございますが、仮にそういう場合は、五十七年なり何なりに退職手当がそれだけ出ないという効果もあるわけですね。三年分の給料と退職手当と比べると、退職手当で五年分ぐらい出ちゃうから、六十年までの間は財政が楽になるという計算もできるわけですね。だから、私どもとしては、基本的にそういった定員管理といいますか退職管理が起こらないだろうということで、従来の傾向をたどる退職管理が行われるであろうということで予算というものを考えているわけでございます。
  212. 神田厚

    神田委員 六十年までは財政が楽になるということは、逆に言えば六十年以降それだけのしわが寄るわけでありますから、これは同じことだと思うのですね。  こういうふうなことをずっと論議していくと、高齢化の問題の話が出てまいりますから、これからの見通しについていろいろ御質問申し上げますが、とにかく五十七年までの二年間で一〇%カットする、こういうふうな提案であります。こういう急激な変化では、考え方としては退職率は減少して国庫負担は逆に増加をする、われわれはそういう考え方でいるのです。そういう傾向はさきにわれわれが指摘をしましたけれども、現在あらわれている。  さらに、もう一つの問題は、公務員労働者が一層高齢化をする。現在の国家公務員の平均年齢は三十九・六歳、四十歳前後ということでありますが、定年制に伴いまして、この高齢化は常識的に言えば一層進行するというふうに思うのでありますが、この二点はどういうふうにお考えでありますか。
  213. 山地進

    ○山地政府委員 いまの予測というのは、先ほど来申し上げておりますように、一にかかってこの法律が施行されてから定年制が実施されるまで、言ってみれば過渡的な間の退職管理がどうなるのかということでございまして、私どもは従来からの勧奨退職の実態というもの、つまり五十八歳前後で大部分勧奨退職がされてきたという実績というものを十分考えてこれを運用してきたわけでございますから、今回の制度によりましても、それについては、それは全然影響ないということを申し上げているわけではございませんが、私どもは御指摘のような影響はないというふうに考えておりますので、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  214. 神田厚

    神田委員 高齢化の問題はどうでございますか。したがいまして余り影響はない、現在のような形で推移するだろう、こういうような見通しでございますか。
  215. 山地進

    ○山地政府委員 従来の退職勧奨の実態を踏まえて、今回の定年制なりあるいは退職手当というものを考慮してまいりましたので、従来の傾向をたどるであろうというのが私どもの予測でございます。
  216. 神田厚

    神田委員 どうもその辺がちょっと意見が食い違っておりますね。定年が六十歳ということならば六十歳まで勤めようという人が大変多くなってしまう。したがいまして、高齢化が進んで、それによる弊害も出てくるんではないか、私どもはこういうふうなことで考えているわけであります。どうもその見通しが全く違うということになりますと、これ以上この問題についてお話ししてもしようがないと思いますので、次に移ります。  いずれにしましても、公務員等が勧奨退職や何かにしましても、退職しやすいような状況をつくっていくのも一つの方法だということでありますが、そのために退職金の一〇%カットを五十六年、五十七年度の二年間でするのではなくて、たとえばわれわれがいま現在考えておりますのは、現在の提案にありますような一〇%を二年間でカットするということについては大変問題がある。やはり激変緩和措置として、もう少し期間延長等を考えまして、たとえば四年間にわたってこれを実施をして、実害を最小限にしていくような方法を考えるべきではないかということで、政策審議会等を中心として検討しているわけでありますが、この点につきましてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  217. 山地進

    ○山地政府委員 考え方そのものにおきましては、私どもも激変を緩和をしたい、これだけの改正をするわけでございますから、何らかの処置が必要であろう、かように考えまして五十四年に提出いたしたわけでございますが、五十五年度は、従来どおりの退職手当を支給、それから二年目の五十六年度に五ポイントでございますね、百分の百十五にして、三年目に百分の百十にするということで、私どもはこの法案を提案しているわけでございます。  ただ、不幸にして、前回の国会で継続審議になりましたために、本日時点から見ると、それが三年で私ども考えたのが二年というような感じになっているわけでございますが、私どもは提案して以来、この点につきましては周知されているものと考えておりますので、現在の緩和処置でこれをやっていくというのが一つの方法であろうかと考えておる次第でございます。
  218. 神田厚

    神田委員 提案の趣旨が三年であった、しかし不幸にして流れてしまったので、これはいま二年という形で提案がされているんだということでありますが、提案の趣旨が三年であるということはきわめて重要な示唆を含んでいるわけであります。これまで少なくとも公務員の場合は、退職金を計算に入れて持ち家や生活資金というものに充てているということであります。これをいま急激に一〇%を二年間というようなことでやりますと、公務員にとりまして生活設計その他で大変苦しい状況が出てくるわけであります。われわれは、やはり提案の趣旨が三年であるということだったのでありますけれども、もう少し激変緩和というものについて、いまのいろいろな状況を考えまして、五十九年までの四年間にこれを実施できないものだろうか、こういうふうに考えているわけでありますが、局長の方のお考えはわかりましたので、この問題は現在ある意味できわめて政治的な問題にもなっているようでありますが、長官といたしましてはどういうふうなお考えでございましょうか。
  219. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいまのところ、政府自身が御審議いただいている法律案の修正をいたすという考え方はございません。ただ、委員会等でいろいろと御意見が出て、先般の委員長への御提言でも、理事会でいろいろと話をしたいという方もございました。私ども政府といたしましては、この理事会のお話し合いというのがどのような経過で行われるか、慎重に見守ってまいりたいと考えております。
  220. 神田厚

    神田委員 われわれは従来、退職金等の問題については、公務員労働者の大変大きな問題であるということで、前国会におきましては反対の態度をとっていたわけであります。しかしながら、いま総務長官の方のお話がございましたように、委員会の各政党の間で、これを激変緩和をもう少し強化して、そしてこの問題についての考え方を検討しようということになっておりますので、ただいま長官から理事会等のそういう動きを十二分に考慮したいというような御答弁をいただきまして、まことに前向きの御答弁でありがたいと思っております。  そういうことで、三年間ということで、政府のもともとの提案はそうであったけれども、いまは二年間になっているということでありますが、これでは不十分であるから四年間を何とか一つのめどとしてできないかということの相談も内々やっているところもございますので、そういう形でこれからまたわれわれは委員長を中心にお願いいたすつもりでありますので、よろしくお願いいたしたいと思っております。  さて、公務員の中で二、三、ちょっと特殊な問題でありますが、税務職員の方から私ども陳情をいただきました。税務職員が、退職後の生活設計において、持ち家率が三二・六%と非常に低いのでありますね。しかも、税務職員がどういうふうな住居環境にあるかといいますと、宿舎におりますのが二七%、独身寮が一五%、親、きょうだいと同居しているのが一五%、それから相続による自宅が四・一%、持ち家で返済中が二一・六%、持ち家で完済しているのが六・九%、自分の家で本当に住んでいるというのは非常に少ないというのであります。実に三二・六%。これは仕事の性質で転勤が非常に激しくて、どうも一カ所に家を持って住めないような環境がある。この持ち家のうち返済中だという二一・六%の人の大部分は、退職手当を当て込んでこれをつくっているわけであります。ですから、退職手当の引き下げによってその計画も変更せざるを得ないというようなことでありますから、そういうわけで、退職等の問題につきましては、激変緩和の方をぜひともよろしくお願いしたいというような要望を特にいただいておりますので、この点につきまして、こういうふうなこともあるということをお聞き及びいただきたい、こういうように思っております。  続きまして、特殊法人の問題につきまして御質問を申し上げたいと思っております。来ておられますか。特殊法人の問題、これは行財政改革の中で特殊法人が非常に問題になっております。それで退職金の問題と関連しまして特殊法人のことを御質問申し上げたいのでありますが、公社、公団などの特殊法人の職員の退職金は何に準じて支給されているのでありましょうか。
  221. 水谷文彦

    ○水谷説明員 お答えいたしますが、特殊法人というのは御案内のように現在百八ございます。そのうち五十八の法人につきましては、公団等の設置法によりまして、特殊法人の給与及び退職金の規定を定めます場合に主務大臣の承認あるいは認可を受けなければならないということになっております。それに際しまして、主務大臣は大蔵大臣の方に協議をしてまいるという形になっているわけでございます。それからそのほか国会にその予算提出いたしますいわゆる政府関係機関というのが十五ございますけれども、その十五の政府関係機関につきましても、予算調整という形で大蔵大臣がかかわらしていただいておる。したがいまして、百八ございます特殊法人のうちで、大蔵大臣が何らかの形で関与させていただいている法人、これが七十三でございます。  それで、その特殊法人の職員等につきましては、基本的には労働三権がございまして、それぞれの団体交渉によってお決めいただく、それが承認事項あるいは協議事項とされてきている。  なお役員につきましては、ただいま申しましたような主務大臣承認、認可、それに前提としまして大蔵大臣が協議をさせていただくということでございます。そういった形で決めさせていただいております。
  222. 神田厚

    神田委員 現在の支給状況はどういうふうになっておりますか。
  223. 水谷文彦

    ○水谷説明員 先ほど物の考え方というお話でございましたけれども、まず役員のお話でございましたが、特殊法人の役員につきましては、その特殊法人それ自体が非常に公共性、特殊性の強い業務を機能的に行っているということで、国から独立した機関として設置をされたものでございます。と同時に、その役員は特定された任期におきまして、その独立体としての法人の経営に対しまして非常に重要な職責を果たしていただくということで、基本的には民間企業の役員と同じような性格を持っておられるのではないか。そういうことで、特殊法人の役員の退職金制度につきましては、民間企業の役員の退職金の実態等を勘案しながら決めさせていただくということでございまして、現在の考え方は、退職時の俸給月額に役員の在職月数を掛けて、それに支給率を掛けているということでございます。その支給率につきましては、現在は三六%になっております。これにつきましては、最近におきまして、特にこういった給与問題につきましての専門的第三者機関でございます人事院に対しまして、民間の役員の退職金の実態調査をお願いいたしまして、そこから出てまいりました計数を参考にして決めさせていただくわけでございます。  それで支給状況というお話でございましたけれども、冒頭申し上げましたように、大蔵大臣は特殊法人の役員の退職金等の規定につきまして、その基準について各公団法の規定によりまして協議にあずからしていただくわけでございまして、個々の退職状況あるいはそういった際の退職金の総額がどうであるかという支給状況については、私の方で把握をいたしておりません。
  224. 神田厚

    神田委員 特殊法人の役員の数、これはどのくらいですか。
  225. 栗林貞一

    ○栗林説明員 特殊法人の役員の数でございますが、常勤役員で五十六年一月一日現在で七百六十九人でございます。
  226. 神田厚

    神田委員 その中で以前官公庁に勤め、それを退職した役員の数はどのくらいですか。
  227. 栗林貞一

    ○栗林説明員 この七百六十九人のうちで国家公務員から直接役員に就職した人及びこれに準ずるようなかっこうで、若干ほかの民間などに行きまして、それから役員になった人は合わせまして四百四十二人でございます。
  228. 神田厚

    神田委員 それらの役員の官公庁退職時の退職金はどれぐらいでございますか。
  229. 山地進

    ○山地政府委員 国家公務員を退職して公社、公団に行ったときの退職金の平均、こういうような御質問でございますが、私どもその資料をいま持っておりませんで、後刻計算いたしましてお示しいたしたいと思います。
  230. 神田厚

    神田委員 これは五月十日の朝日新聞等では――昨年一年間の問題ですけれども、きのうの段階で一応退職金の平均を出すように話をしておったのでありますが、ちょっと間に合わなかったようでありますが、それは後で出してください。  それから、特殊法人の役員の特殊法人における退職時までの平均勤務期間はどれぐらいでありますか。
  231. 栗林貞一

    ○栗林説明員 実は、私どもの立場では、特殊法人の役員を任命いたします際に協議を受けているということで、資料として把握しておるわけでございますが、それで、ちょっと退職者というのと面が違うのでございますけれども、私どもの資料で、実は急いでざっと概要を見てみたのでございますが、昨年一年を見まして、三年から六年くらい在職しているところに集中しております。平均ということになりますと、大体四年九カ月程度ではないかというふうに考えられます。
  232. 神田厚

    神田委員 四年九カ月。これは特殊法人を退職する場合でも退職金は支払われるわけでありますね。
  233. 水谷文彦

    ○水谷説明員 特殊法人をやめられる際に退職金が支給されるわけでございます。
  234. 神田厚

    神田委員 この特殊法人の質問をすると、本当に一体どこが統括しているのかわからなくて、監督がそれだけきちんとされていないということなんですね。  それでは、またどなたが答弁なさるのかわかりませんが、五十五歳を過ぎていれば公務員の共済年金ももらえるわけですね。
  235. 野尻栄典

    ○野尻説明員 公務員を退職いたしますと、退職した後の就職先がどこであるかを問わず五十五歳を過ぎれば年金の支払いは行われます。
  236. 神田厚

    神田委員 この辺のところがいろいろ問題になっていることでありますが、去る五月十日の朝日新聞によりますと、昨年一年間で退職した特殊法人の役員は、平均四年四カ月の在職で千五百十八万円、こういうことになっておりますが、この辺はどうですか。
  237. 水谷文彦

    ○水谷説明員 お示しになりました朝日新聞の報道でございますけれども、先ほど申し上げましたように、大蔵大臣は特殊法人の役員の退職金の支給基準につきまして、公団法の規定によりまして主務大臣から協議を受けるという立場でございまして、個々の役員の退職の状況については把握をいたしてないわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、役員の退職手当というものが俸給月額、在職月数、支給率等から出てまいるわけでございます。俸給月額は法人によってそれぞれ違いますし、あるいは法人の中におきましても理事長、副理事長、理事等によりまして異なってまいりまして、分母が変わってまいります。また在職月数につきましても、それぞれ役員ごとに異なっておりますので、昨年一年間に退職されました役員について、その総数なり俸給別の構成とかあるいは在職期間の構成について把握しておりませんので、大蔵省としては、それについて事実かどうかということを申し上げかねますけれども、退職者の俸給別あるいは在職期間等の構成内容から見て、そういった数字がないわけではないという感じはいたしております。
  238. 神田厚

    神田委員 そうしますと、新聞で言っております、大体平均四年四カ月で千五百十八万円というのは、ちょっと調べがつかないというようなことなんですか。
  239. 水谷文彦

    ○水谷説明員 先ほど申し上げましたように、その特殊法人というのはどういう範囲でとられているかわかりませんし、大蔵大臣が全特殊法人について所管をしているわけでもございません。  それから、基本的には、基準について協議を受けておりますけれども、個々のものについて報告を受け得る立場にございませんので、そのところは詳細に調べかねるわけでございます。
  240. 神田厚

    神田委員 どうもこれははっきりしない。じゃこれはどこでどんなふうにやっているのか、各省全くばらばらでこの法人との関係を持っているようなことで、いま行財政改革の中で一番問題になっているところが依然としてこういうふうな状況にあるというのは、私は非常に問題だと思うのです。  われわれが行政改革の問題で一番初めにこの特殊法人の問題を取り上げまして、いわゆる渡りの問題やあるいはそれにかかわります膨大な財政投融資の問題をいろいろ指摘したのでありますが、この役員の退職問題、さらに一般職員に比べて役員の比重が非常に大きいというような問題、こういうふうなことを考えていきますと、行財政改革ということならば、この辺のところをもう少しぴしっと押さえていかなければならないわけであります。この退職金等の問題も、私は四年四カ月で千五百十八万というのは相当高額な退職金だというふうに考えております。もしもこういうことが事実とするならば、やはりこの辺のところにもメスを入れていかなければならないというふうに考えておるわけでありますが、その辺のところをひとつこれから――いま御答弁なさっているのは大蔵省の主計局ですね。ひとつそういうふうなところをもう少しきちんと、これは全体的な把握をどこかでしてもらわなければならないと思いますね。
  241. 水谷文彦

    ○水谷説明員 先ほど申しましたように、特殊法人は百八あるわけでございます。それぞれにつきましては、いろいろな事業を万般営んでいるわけでございますし、また沿革もそれぞれ違いますし、規模等もそれぞれ違うわけでございます。特に大蔵省として申し上げれば、財政的なかかわり合いもまた違うわけでございます。それぞれ濃淡があるわけでございます。したがって、政府としてあるいは財政当局としてのかかわり合いも、それぞれやはり濃淡があるのであろうと思います。そういった中で、先ほど申し上げました百八法人のうちで七十三法人につきましては、大蔵大臣として事実上の協議にあずかっている、こういう立場にございます。  その退職金の先ほど申しました基準につきましては、そのような基準で各特殊法人に運用をしていただいておるわけでございます。それで、なかんづく一番問題になります支給率につきましては、それは先ほどお話しいたしましたように、民間に準拠するということが、やはり基本でありましょうから、こういった給与問題についての専門的第三者機関でございまして、特に調査能力等も非常にすぐれておられます人事院に対しまして、民間の役員の退職金の実態調査をしていただきまして、その実態を踏まえて支給率を決めているわけでございます。それで支給率そのものにつきましては、あるいは基準そのものにつきましては、私どもは民間に準拠していると考えております。と同時に、ベースになります給与につきましても同じように、やはり人事院の調査等に基づきまして算定をいたしているわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げました実際の実額につきましては、それは先ほどの基準によりまして、各特殊法人におかれまして計算をされて支給をされているだろう、当然そのようになっているわけでございまして、その金額が幾らであるかということにつきましては、それは協議大臣として報告を受ける立場にはないということでございます。
  242. 神田厚

    神田委員 この特殊法人の場合、答弁にございますけれども、退職金の計算基礎が勤務年数ではなくて勤務月数、こういうことになっていますね。勤務月数を退職金の計算の基礎としていることは一体これは妥当なのかどうか。しかも、こういうふうなことを、退職金の計算基礎を勤務月数でとっている職種はほかにあるのかどうか、この辺はどうでございますか。
  243. 水谷文彦

    ○水谷説明員 ただいま御審議等いただいております一般国家公務員等の退職金につきましては、職員が長期間勤務して退職する場合の勤続報償ということでございまして、例外なく勤続年数を基礎として計算されているようでございます。特殊法人の役員につきましては、任期が特定されておりまして、その在任期間が短期間に限定をされております。先ほど総理府の方から平均的な在職月数につきまして御説明がございましたが、また閣議決定等によりましても、最も長くて原則的に六年ないし八年ということで非常に短くなっております。したがいまして、退職手当の算定に当たりましては、勤務月数を基準にしてやらしていただくということでございます。問題は、先ほど申し上げました民間との対応をいたします際に、それは民間におきまして具体的にその退職金の計算基礎に月数をとっているか、年数をとっているかということにつきましてまでは御調査いただいておりません。ただ、その支給月数を出します際には、あくまでも民間は年換算ではなくて、それを月換算にして計算をいたしておりますので、その点は特に不合理と申しますか、不公平のないように配慮いたしておるわけでございます。
  244. 神田厚

    神田委員 これは余り直接的なことじゃないかもしれませんが、この公務員の問題を、責任者でもございます総理長官あるいは人事院の総裁は、これらのいわゆる特殊法人の役員のこういう問題につきましてどういうふうにお考えでございましょうか。
  245. 中山太郎

    中山国務大臣 俗に言われる高級公務員の渡りというものについては、私はこれは早急に改良せなければならない、こういうやり方はいけないというふうに考えております。
  246. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 所管云々でかわすのはいかがかと思いますが、まさしく特殊法人の関係は私の所管ではございませんので、答弁は差し控えさせていただきますが、私、あえて個人的と申されれば、やはりいろいろ問題はあろうという感じは持っております。
  247. 神田厚

    神田委員 それぞれ御答弁のありましたように、私はやはり非常に問題があると思っております。それで、これをこういうふうな形にしておいて、あるいは一般公務員の退職金の削減問題等を論じるということは、やはり非常に問題なんですね。特殊法人の場合も、あるいはこれは国の方の財政の中に相当部分あるわけでありますから、国が行財政改革でそれを推進しようとしているときに当たりましては、一般公務員に一〇%の退職金の削減を提案をするならば、特殊法人に対する役員等の退職金等の問題等についても、同時にメスを入れていかなければならないし、そういうことについてはこれから先、きちんとした姿勢で指導をいただきたいというふうに思っております。  この共済年金の支給につきましても、これらの問題で公務員等の関係でいろいろこの支給がされているわけでありますが、いずれにしましても、国家の厳しい財政状況の中でこういう問題が行われているわけでありますから、この特殊法人の関係はどうぞ今後総理府あるいは関係省庁で十二分に論議をいたしまして、きちんとした方向性を出していただきたい、こういうふうに考えております。  終わりに、先ほど御質問の中で申し上げましたように、われわれは本来退職金を二年間で一〇%削減するという案には反対であります。しかしながら、この反対する中にありましても、いろいろな諸情勢にかんがみまして、もしもこれらの問題に激減緩和の措置が強化されるならば、それなりにわれわれとしましても、それらの態度について再検討していくということで、ただいま政策審議会あるいは国会対策委員会等を中心に検討しております。先ほどは長官の方から前向きの御答弁をいただきましたが、どうぞひとつ退職金問題は国家公務員にとりまして大変大事な問題でありますから、これの取り扱い等につきましてさらに慎重な御検討をお願いをいたしまして、最後に、総務長官の御答弁をいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  248. 中山太郎

    中山国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、先刻お答え申し上げましたとおり、各党が先般の委員会の質疑の中で、委員長のもとに理事会において意見を交換したいという御発言を承っております。総務長官といたしましては、このような御意見が今後どのような形をとっていくか、慎重に見守らしていただきたいと考えております。
  249. 神田厚

    神田委員 終わります。
  250. 塚原俊平

    塚原委員長代理 榊利夫君。
  251. 榊利夫

    ○榊委員 退職手当削減は労働条件の重要な変更であります。国家公務員さらにはまた地方公務員にとりましても生活がかかった問題であります。私の方にもこれについての手紙だとか電報だとか、ここにはがきだけ持ってまいりましたけれども、たくさんの声が寄せられております。その一つ二つを紹介して、長官の御感想をいただきたいと思います。  これは鹿児島の方ですが、「私たち一般公務員については、在職中は低賃金に耐え、退職後の手当に希望を持ち、退職してからは、退職手当によって人並みの最後の人生計画を立て、家計の赤字を埋めたり、在職中にできなかったことを手当によって行うよう考えているのが現状であり、この手当を減額されることは、現在の生活をも刺激しますので、よろしく善処方お願いします。」  もう一つは、栃木県のやはり公務員の方ですが、「現在退職手当について民間より公務員が高額とのことで修正されようとしていますが、どうも承知ができません。私たちが公務員として奉職してから(二-三十年前)民間の人たちは倍以上の給料を取り、われわれの低賃金を笑っていましたし、現在でもそうです。決して高くはないのです。」こうるる述べられておりますけれども、これについて長官はどういう御感想をお持ちでしょうか。
  252. 中山太郎

    中山国務大臣 率直に申し上げて、今回の法案が成立した場合に、一定の時期に退職される公務員の方々が、退職手当が百分の百十になるということで手取りが少なくなることについて御不満をお持ちになることは現実だと私は思います。しかし、一方日本の国には、公務員以外にも多数の国民が主権者としておられまして、この方々の税金によって公務員の諸君の給与が保障され退職手当が保障されているわけでございます。民間の場合は倒産がある。こういうふうな場合、自分の職を変えざるを得ないという国民も多数おられて、まことに残念な状況がございますが、公務員の場合は一たん就職をすると、俗に国民から言われると親方日の丸じゃないか、こういうふうな言葉がささやかれているのも世の中の姿でございますので、就職されたら倒産の心配が要らないのが公務員である。しかし、一般の国民の中にはいつ企業が悪くなって職を失うかもわからない。こういう人の中には、中小企業者の中でたとえば中小企業退職金共済事業団というようなものがございますけれども、これは三年勤めていないと掛け捨てになる。移った場所がこれに加入していなければ無効になるというようなことも過去においてやかましく言われたことでございますので、私はやはり主権者の立場というものを基本に政治と取り組むべきが政府の当然の責任だろうと思っておりますし、義務だろうと考えております。
  253. 榊利夫

    ○榊委員 私は、いまの長官の感想を聞きながら、率直に申し上げまして大変冷たいなという――親方日の丸というのは、現場で働いている多くの公務員に果たしてそういう意識があるだろうか。営々とし汗水流して働いておられるのが圧倒的多数の公務員だと思います。それは何もデスクに座っておるだけではなくて、道をつくるあるいは受付、福祉、ごみ処理の問題にいたしましても、非常に公務員労働の占める役割りというのは高くなっております。いまおっしゃった親方日の丸という言葉が妥当するとするならば、あるいは上の方の人に妥当するかもしれません。だけれども、一般公務員の場合には、日の丸を背中にしていばって国民に臨んでいるというふうに全体像を描くとすれば、私は恐らく時代離れした、現実離れした見方ではないかと思うのです。  なるほど、主権者に対する全体の奉仕者として公務員の役割りがあることは申すまでもございません。それだけに気持ちよく国民のために働いてもらえるような労働条件をつくることが必要でありますし、やはり半生を公務員としてささげてこられたような方への退職手当のカットという問題は、生涯の半生の仕事に対する評価でもあるわけで、そういうのについて軽々しくカットなどの措置をとるべきではない。  同時に、一般公務員の退職金――高級官僚ではありません。いろいろなデータで見ましても、民間企業の労働者の退職金より高いとは言えません。そういう点では今度の退手のカットというのは、よく言われますように、これは新たな公務員いじめではないか、こういう声が出てくるのは当然ではないか。そこに並んでおられる皆さんは公務員であるわけですが、自分たちの半生の労働を思い浮かべながら、私と同じような気持ちをお持ちではないかと思います。私はそう思います。  もう一度長官にお伺いいたしますが、それではその公務員の果たしている役割りについては、どういう御認識をお持ちでしょうか。
  254. 中山太郎

    中山国務大臣 公務員というのは、公務員法で規定されているように、国民への奉仕者である、私はそのように考えております。
  255. 榊利夫

    ○榊委員 法律から抜け出てきたようなあれではなくて、ひとつ現実から見ていただきたいと思うのですよ。生きた人間ですよ、生きた勤労者ですよ。しかも労働条件の重要な変更に係るそういう問題については、もちろん退手の問題というのは法定制であるといたしましても、まず労使間の協議を経て、そして国会に提出するというのが常道でないかと思います。民間企業におきましても、退手の問題は、たとえばかなりの部分が就業規則で定められている。ある場合には労働協約で定めている。いろいろ会社によっても違いますけれども、そこに職員組合がある場合には、そこでまず協議をする、交渉をする、話し合いをする、これは常識なんです。この点では、私は今度の問題につきましても、やはり労使間の協議を経るべきであった、こう思うのですが、その点について再度お伺いいたします。
  256. 中山太郎

    中山国務大臣 お答えを申し上げますが、私も何遍か労働組合の団体の方々とお目にかかりました。また、局長は局長、副長官は副長官、あるいは現場を担当する人たちが、それぞれの立場で会っております。こういうことで、回数から言いまして一万回会ったかとか五千回会ったかと言われれば、それほどの数はございませんけれども、われわれができる範囲の努力はいたしたというふうに考えております。
  257. 榊利夫

    ○榊委員 いや私がお尋ねしているのは、個々に会うというのではなくて、それぞれのところにちゃんとした職員団体があるのですから、当事者能力があるはずなんですから、そこでまず協議をすべきではなかったかということであります。
  258. 山地進

    ○山地政府委員 職員団体ということでございますれば、各省がそれぞれまたいろいろのレベルでお話をしている。ただ、私どもとしては、この退職手当法を所管する総理府として、私どもの職員以外、外部の職員の方とも十分お話をしているということでございます。
  259. 榊利夫

    ○榊委員 どうもそっけないのですね。実際は協議はやらなかったことについての言いわけですが、ここだけにかかずらわっているわけにもいきませんので、先に進みますけれども、やはり筋として、当時者能力があるならば、労使間の協議を経て国会に提出すべきだったということを申し上げておきたいと思います。  具体問題ですが、これはできたら人事院総裁にお伺いしたいと思いますが、大前提の問題で、今度の問題につきまして、退職手当だけじゃなく公務員の給与もそうですけれども、それが適しているか、あるいは妥当であるか、そうでないかということの判断ですが、それはあくまでも公務員なら公務員の生活、労働実態あるいは物価動向などに即して判断すべきであって、特定利益団体、たとえば経団連であるとか日経連であるとか、そういう特定利益団体の主張に追随するようなことがあってはならないと思うのですけれども、この点は御同感していただけますでしょうか。
  260. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 特定団体の特定的な意見には左右されるべきではなし、従来からも左右されておりませんし、今後もまたそういうつもりはございません。
  261. 榊利夫

    ○榊委員 たてまえとしては恐らくそうだろうと思います。ところが今度の公務員二法の経過を見てみますと、官民比較あるいは官民較差をなくすという問題にいたしましても、民間企業を一つの善と申しますか、よって立つべき基準とみなしてそれに合わせていく、こういう見方というものが、私いろいろ文献を調べてみましても、数年前から経団連であるとか日経連などからも出され、それを合図にするかのように退職手当削減の法改正の問題も表に出てきたというふうに私は解しております。政府の提案理由を見てみましても、民間事業における退職金の実情を基準にした、こう言っております。そして八%程度の官民較差があった。それで民間企業の退職金の実態調査をやった、こういうわけですけれども、そのことについてお尋ねしますが、民間企業の退職金の実態調査というのは、いつ、どのようにして行われたのでしょうか。
  262. 長橋進

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  民間の企業の退職金調査につきましては、昭和三十六年以後おおむね五年ごとに調査をしております。今回の資料となりました調査につきましては、五十二年度の退職者につきまして五十三年に調査したものでございます。規模百人以上の本店事業所約二万五千七百ほどございますが、それを産業別、規模別に層化いたしまして、無作為抽出によりまして千五百社ほど選びまして、千人以上の規模の企業につきましては実地調査、それ以下の企業につきましては通信調査ということで、千五百社ほど調査をいたしました。  調査の内容について申し上げますと、退職金の制度調査、これは一時金、企業年金制度、退職加算金制度、定年前退職者に対する優遇制度、それから退職金のモデル調査、これは長期勤続して定年退職した場合のモデル退職金でございます。それから退職金の個人別実態調査、これを調査いたしました。  なお、最後に申し上げました実支給額の調査が、前回の調査と違う点でございます。
  263. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、四年前の調査が基礎になっている、こういうことですね。いまの説明ですと、千人未満の企業については実態調査をやった、それ以外は通信調査ということですけれども、しかも勤続年数での退職金の較差を出したということのようでありますけれども、この勤続年数での退職金の較差を出す場合の通信調査というのはどういう方法でしょう。
  264. 長橋進

    ○長橋政府委員 較差をお出しになりましたのは、退職手当制度を所管している総理府でございますが、私どもは民間におきます実態を調査した、その資料をお示ししたということでございます。通信調査につきましては、これは千人以上が実地調査でございまして、それ以下が通信調査でございますが、これは通信調査でございますので、文字どおり通信による調査でございます。  なお、これは調査項目、調査票設計等につきましても、間違いがないように設計いたしまして、しかもなお実際回答をお出しになる方で、ちょっと疑問に思われる点がありましたら、こちらに電話照会をいただくというようなことで、通信調査はそれなりに一応きちんとした調査で、問題ないというふうに思っております。
  265. 榊利夫

    ○榊委員 私言ったのは、千人以上の企業の場合には実態調査ということですね。そうしますと、千人未満については通信調査しかやられていないわけですね。そうすると、民間企業側のデータは通信調査が含まれているわけですが、そこで人事院は、今度のことに関してはそういうようにおやりにになった。人事院ですか、総理府がやっているのですか、どっちですか。
  266. 長橋進

    ○長橋政府委員 調査は人事院がいたしました。
  267. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、一層はっきりするわけですが、もう一つの人事院勧告の基礎となる民間給与実態調査、この場合には通信調査も行っているのでしょうか。
  268. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは通信調査を行っておりません。全部実地調査をいたしております。
  269. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、人事院勧告を出す場合には、民間給与実態を調べるのに実地調査をやっている。それはその方が信頼性が持てるからということでしょう。通信調査は行っていない。それで通信調査よりも確かに実地調査の方が手間暇がかかると思います。実地調査の場合にはどういう体制で、どういうふうな実地調査をやられているでしょうか。
  270. 長橋進

    ○長橋政府委員 実地調査につきまして、これは通信調査も同様でございますが、使用いたしました調査票等は同じでございます。実地調査の場合には、人事院の職員が企業に出かけていきまして、いろいろ担当者にお会いいたしまして聞き取って調査いたしておるということでございます。
  271. 榊利夫

    ○榊委員 つまり実地調査の場合には、人事院の職員が出かけていってやる。ところが、そうでない通信調査の場合には、人事院の職員は出かけていかないで、文書で依頼をして、そうして文書でまた答えてもらう、こういうことですね。
  272. 長橋進

    ○長橋政府委員 さようでございます。
  273. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、つまり人事院勧告の場合には、それほど手数をかけて実地調査を行う理由というのはどういうことでしょう。ポイントですね。
  274. 長橋進

    ○長橋政府委員 いまのお尋ねは、民間給与実態調査についてのお尋ねかと思いますが、これは御案内のとおり、大変調査項目も多うございまして、多岐にわたっております。それからもう一つは、これは調査についての技術的な面でございますけれども、複雑であるということもございまして、そういう点から申しますと、第一にはやはり調査結果につきましての精度の高いものを確保する必要があるということでございます。それから民間給与実態調査につきましては、企業にお願いをいたしまして御協力をいただいておるという関係もございまして、過度の負担をおかけするのもいかがかと思いまして調査員が出かけておる。それからもう一つは、回収率の問題でございますが、何と申しましても、調査員が出かけていっていろいろお聞きして書き取ってくれば、拒否されない限りは回収は確実でございますので、そういう点もございまして実地調査をいたしておるということでございます。  なお、実地調査につきましては、実際先ほど申し上げましたように、調査項目、それから調査の技法等もございますので、事前にある程度研修をした調査員が必要であるということで、調査員に事前にいろいろと研修して出しておるということでございます。
  275. 榊利夫

    ○榊委員 精度の高いものを得るということのために実態調査をやっているということのようでありますけれども、給与勧告の場合には、そういう精度の高い資料を得る、そのためにすべて実地の調査をしている。それで私どもが伺っているところでは、人事院はそのために全国八カ所の地方事務局を使っているし、沖繩には沖繩事務所も配置している、さらに地方自治体の人事委員会の協力も得ているというふうに聞いておりますけれども、一方ではこれくらい手だてを講じている。そうでなければ基礎となる精度の高い資料は手に入らない。ところが退職金の問題につきましては、調査対象の企業千五百社のうち三分の二の千社、これが通信調査というふうになっているのじゃないのでしょうか、一千人で割った場合。まずそこを聞いておきましょう。こういう判断でよろしゅうございますか。
  276. 長橋進

    ○長橋政府委員 お尋ねのとおり、退職金調査につきましては、千人以上の企業につきましては実地調査、それから百人以上九百九十九人までの企業につきましては通信調査ということでございます。
  277. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、千人未満のところは通信調査ですけれども、退職手当の変更という問題、しかもそれは重大な変更です。そういう場合に、実態調査を貫くというのじゃなくて、通信調査で相当部分を賄ったというのは、どういう理由でしょうか。
  278. 長橋進

    ○長橋政府委員 五十三年の調査におきましては、先ほども申し上げましたとおり、退職手当につきましておおむね五年ごとに一応調査をしておるということでございまして、ちょうど五年目ということで調査をいたしたわけでございます。率直に申し上げまして、これはもう退職手当の調査に当たりましては、予算とか人員、効率というものも総合的に勘案いたしまして、一部通信調査によらざるを得なかったということでございます。
  279. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、やはり予算その他の理由があって、人勧のときとは違って、実態調査をやるまでもなく通信調査である部分は済ましておこう、つまりそのくらいのものとしか見ていなかったということですか。
  280. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは繰り返しになりますけれども、五年目が来ておるということで調査したことでございまして、調査時点におきまして特段の意図があって調査をしたということではございませんので、従来の例に従いまして調査をいたしたということでございます。  それから、若干御説明不足があったかと思いますが、民間給与実態調査と退手の場合、比べてみますと、退手調査につきましては、従来からそういう経緯で調査してきたということと、さらには民間給与実態調査と比べまして、調査項目等につきまして多岐にわたっているとかあるいは内容がより複雑であるということもございませんので、一部通信調査によりましても十分その実態は把握できるものというふうに考えておったわけでございます。
  281. 榊利夫

    ○榊委員 十分実態は把握できると言われましたけれども、実際に通信調査の正確さをチェックする作業は行ったのですか。
  282. 長橋進

    ○長橋政府委員 調査過程におきまして、通信で返事をされる方から疑義の照会もございました。たとえば、これはどう書いたらよろしいでしょうかということがございまして、それに御回答を申し上げたこともございますし、さらには調査票を回収いたしまして、事前に私どもがチェックいたしまして、腑に落ちない点がございましたらさらに電話照会をして確認いたしておるということでございます。
  283. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、特別のチェックをするようなことは電話程度ですか。
  284. 長橋進

    ○長橋政府委員 電話でございます。
  285. 榊利夫

    ○榊委員 それならどうして企業規模千人以上の企業については実地調査をやられるのでしょう。明らかに違うでしょう。それは差がありますね。
  286. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは調査方法につきまして、従来どおりの調査方法等をそのまま継承していこうということでございます。
  287. 榊利夫

    ○榊委員 長いものは正しいというわけではないので、従来からやってきたから今度もということではなくて、今度は退職手当をカットするわけでしょう。これまでカットする例というのはないですよ。
  288. 長橋進

    ○長橋政府委員 実際五十三年に調査に入りました時点においては、特に退職手当をカットするという話は別に出ておらない状況下でございました。
  289. 榊利夫

    ○榊委員 それではそれを仮に前提といたしましょう。通常の調査だった、だから従来からの方法でもって通信調査がむしろ数の上で多い。ところがそういう場合に、台帳に当たるなどそういうチェックもどうもやっておられないようであります。結局残るところは何か、結局企業の方が正しく答えてくれるだろう、答えてくれている、こういう御判断でしょうか。
  290. 長橋進

    ○長橋政府委員 人事院は従来から、給与実態もそうでございますけれども、専門的な調査機関として調査をいろいろいたしておるということでございまして、実際調査をお受けになった企業におかれましても、誠意をもって御回答いただいたものというふうに私どもは信じております。
  291. 榊利夫

    ○榊委員 それでは再度お尋ねしますけれども、企業規模千人で分けている。大きい企業については実態調査をしている、小さい企業についてはやらなかった。どうしてそれは差をつけられましたか。
  292. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは退職手当全般についての話かもしれませんけれども、調査効率、つまり全員実地調査をするという方法もございましょうし、あるいは一部通信調査、一部実態調査あるいは全員通信調査という方法、いろいろ方法はあろうかと思います。この種の調査におきましては、民間でもいろいろと調査機関がございまして調査しておりますけれども、ほとんどが通信調査ということで調査をされておるようでございます。私どもは調査の効率等から考えまして、やはり長期勤続者という数を考えますと、中小企業におきましては該当者の方の数が少ないということもございまして、調査の効率という点から実地調査と一部通信調査というふうに分けておる次第でございます。
  293. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、それは調査する側の効率ということですか。どうもさっきから見ますと、人手のことや何かを考えられたようであります。だけれども、仮にその時点では退職手当カットの問題は出ていなかったかもしれないけれども、現実はこの基礎資料というものが退職手当カットのまさに根拠にされているわけであります。一体、三分の二は通信調査だ、なるほど企業の方が正確に回答しておれば、それはそれで第一級の資料として役立つでしょう。だけれども、本当に正確かどうかということについては相当チェックしてみなければわかりません。ところがそれについては、いまの説明を聞いてみますと、台帳に当たってチェックしたようなことはないし、ただ電話で確かめただけだ。どうしてこれが正確だと言えますか。正確だという根拠はどうですか、何によって立証できますか。
  294. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは調査票を設計する一つの技術にもわたることでございますけれども、まず調査につきましては、先ほど申し上げましたように、これまでの調査の経験からかんがみまして、まず誠意を持って答えていただくという前提の調査でございますが、調査票自体におきましても、調査票の仕組みといいますかいろいろチェックするところがございます。したがって、調査結果上疑義が、おかしなところがあれば、調査票を見まして、その点でこれはちょっとおかしいんじゃないかなという点がわかるように設計してチェックするようにしてございますので、そういう点を見ましてチェックしたということでございます。
  295. 榊利夫

    ○榊委員 それほど信頼性があるとするなら、どうして千人以上の企業については通信調査でなくて実地調査をやらなければならなかったのですか。
  296. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは先ほど来申し上げておりますように、実地調査、通信調査いろいろのやり方があろうかと思います。そこで、退職手当の調査につきましては、民間の機関におきましてもおおむね通信調査によっておるというのが実情でございます。しかし、やはり実地に行ってみた方がいいであろう、あるいは一部通信調査で見た方がいいだろうということでございまして、特に通信調査でなければならないとか、あるいは実地調査でなければならないというような問題ではないだろうというふうに考えております。それはなぜかと申しますと、くどいようでございますけれども、調査項目、それから調査票の設計、そういうものがございまして、それから一つには予算、人員等も考慮して、両者併合の調査をしたということでございます。
  297. 榊利夫

    ○榊委員 いま一番問題なのは、それが先ほど答弁なさったように、資料が正確であるかどうかということです。ところが、いまはしなくも答弁されたように、実地調査をやった方がよいだろう、しかし、いろいろなあれでやらなかった、こう言う。つまりやった方がいいに決まっているでしょう。やった方がよければなぜやらなかったのですか。それでどうして通信調査の方のデータが正確だと言い切ることができますか。通信調査で正確であれば、実地調査はやるべきだ、やった方がいいという言葉は出てこないでしょう。
  298. 長橋進

    ○長橋政府委員 調査方法はいろいろございますから、一概に通信調査の方がいいとか、あるいは実地調査の方がいいんだということは言い切れないと思います。通信調査によるものはすべて不正確かというとそうではございませんで、通信調査によっても正確なデータは得られるというふうに考えております。問題は、その調査の仕方、技法であろう。それも影響すると思いますけれども、あながち通信調査だからと申しまして、それは不正確であるということは一概には申し上げにくいのではないかと思います。
  299. 榊利夫

    ○榊委員 私は、通信調査は一概に不正確だ、一概に不正確だという言葉は一言も使ってないのです。通信調査と実地調査を比べた場合、どちらが信頼性が高いか。それは常識的に考えて実地調査の方が信頼性が高いことは明らかでしょう。だからあなたも実地調査をやった方がいいとお答えになったのです。ところが、やった方がいいとお答えされていながら三分の二は通信調査だというわけでしょう。それで一体どうして確実な精度の高い資料に基づいたのだということが言えるでしょう。もしそれに答えられないとするならば、実地調査をやった方がいいというあなたの言葉がうそになるのです。やった方がいい。それをやるべきですよ。  重ねて質問いたしますけれども、通信調査が三分の二なのに、実地調査と同じような精度の信頼性があり得るという判断がどうしてそこから出てまいりますか。
  300. 長橋進

    ○長橋政府委員 通信調査、それから実地調査をめぐりまして、先生いろいろ御意見をおっしゃっておられるようでございますけれども、問題は調査内容、つまり調査項目でございますとか調査技法、そういうものも総合的に絡んでくる問題であろうと思います。私先ほど人員とか予算とか調査効率、そういうものも総合的に勘案いたしまして一部実地調査、一部通信調査にいたしましたというふうにお答えいたしたわけでございますが、やはり大きな組織になりますと、それなりの組織でございますから、対応につきましても余り過度の負担をおかけしないで応じられるということもございますけれども、小さな企業になりますと、こちらの職員がお伺いしていろいろ時間を割いていただいてお聞きするという場合についても、なかなか負担になるということもございますし、それからその調査結果がどうであろうかということになりますと、これは調査対象者がそこにおるかどうかということになりますと、やはりそういう長期勤続者というのは千人以上の大企業の方に多いということもございまして、全般的に調査効率も考えましてそのようにいたしたということでございます。
  301. 榊利夫

    ○榊委員 調査効率とかなんとかおっしゃいますけれども、調査効率というのは調査する側の問題です。ところが必要なのは、その得られた資料が正確であるかどうかという信頼性の問題です。正確さの問題です。ところが、その正確さという点では、やはり通信調査よりも実地調査をやった方がよりよい、こういう認識はお持ちでしょう。どうですか。
  302. 長橋進

    ○長橋政府委員 それは調査内容なり調査項目、調査手続によることと思いますけれども、今回の調査につきましては、民間給与実態調査におきますような複雑多岐といったような項目でございませんので、したがいまして、今回の調査におきましては、実地調査におきましても通信調査におきましても、調査結果という点からいいますと、ほぼ同様の成果を得られたものだというふうに考えております。
  303. 榊利夫

    ○榊委員 給与実態調査については実地調査を旨としてきた。今度のそれについても大きなところは実地調査をやった、だけれども、千人以下のところは実地調査をやらなかった、やれるのだったら実地調査をやった方がよかったのだろうけれども、こういうところがいまの実情ではないかと思うのです。  いずれにしても、ここでやりとりしても終わりませんので、いまのやりとりで非常にはっきりしているのは、要するに三分の二にわたる調査対象はやった方がいいに決まっている実地調査をやらなかった。台帳に基づくチェックなどもやらなかった。せいぜい電話で確かめる。そういう点では、やはり通信調査の信頼性ということについては大きな疑問符がつきます。ところが、その大きな疑問符のつく資料に基づいて出てくる政策は、退職手当は高過ぎる、カットすべきである、こうなってきておるわけです。国家、地方全公務員の生活、条件にかかわる非常に重要な問題でありますから、抽出の場合、通信調査で済ます、そういうずさんさでは、その対象になる公務員そのものは浮かばれないと私は思います。やはりこれこれしかじかの調査をやった、万全を期した、通信調査だけでなくて、実地調査でも少なくとも調査対象にしたところは全部追跡をしてやりました、こういう実態ですと言って、初めて正当な科学的な論議の対象になり得ると思うのです。非常にくどいようでありますけれども、何回もやりとりをする中で、この調査が非常にずさんだということだけは、率直に言って私の感想として、一つの判断として言わざるを得ない。  そこで、ここに本を持ってきておりますけれども、山口健治さん、これは奥付によりますと、最近まで総理府人事局参事官をやられていた方のようでございますけれども、この人が経験に基づいて「逐条退職手当法」という解説書を書いておられまして、この中でこういうふうに述べているのですね。民間の退職金と公務員退職手当との関係を論じながら、「退職金の官民比較というのは、」「まず正しい客観的な調査からスタートして、」スタートすべきだし、「各分野からの専門的検討が必要であるということである。単に、大学を卒業して何年勤続したから、あるいは何歳になったからという点のみに着目し、当該職員の受ける退職金の金額だけを並べて高低を論ずるということは、危険ではないか」危険である、こう言っております。そうすると、いままで聞いてまいりましたやり方というのは、どうもここで指摘されている危険な方法そのものじゃないか、言うなれば一種の欠陥調査だ、こういうふうに私感じるわけであります。それで、いま紹介しましたこの本は、皆さん専門ですからお読みになっていらっしゃると思いますけれども、この山口さんが言っているような見地については、そちらはどういう御判断でしょうか。人事院総裁、どうですか。     〔塚原委員長代理退席委員長着席〕
  304. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 私も当該問題についてはそれほど自信のある専門家というわけにまいりませんので、正確なお答えになるかどうか存じませんが、一応いまの点について私の考えを申し述べますと、先刻調査の方法についていろいろやりとりがございました。これは給与局長からの御答弁の繰り返しにはなりますが、私が要約して申しますると、一つは、人事院としても、退職手当というのは公務員の勤務条件に関する重要な事項だから、これについては所管ではないけれども、民間の実態はどうなっているかということについて関心を持つべきであるというような点から、大体五年ごとの調査をやってきたというわけでございます。そしてその調査の方法なり項目というものは大体従来どおりのことで進んできておる。ただ、その後の情勢の変化に基づいて、五十二年度、実際に調査をいたしましたのは五十三年になるわけですが、五十三年の調査では、モデル調査的なものよりも実額というものを具体的に調べた方がより適切であろうということで、それを加えましたけれども、調査の大体のやり方、スケール等については、従来と同じような方針を踏襲して、それ自体には他意はないという点が一つ。  もう一点は、榊委員もよく御承知でありますように、われわれ人事院としては、民間の調査というものは大変長年の経験を積んで確信を持っております。また政府各機関もそうですが、民間に対して労働関係のみならず各種の統計調査を実施いたします。その場合においても、民間はその立場において各省庁の統計調査にそれなりの寄与、貢献、協力というものは全部やっております。われわれといたしましても、長年やっておりまする調査のその段階において、民間の方々に大変御協力をいただいておるということについては、実績を高く評価いたしておりますし、毎年の給与調査等におきましても、その大変なる御協力に対しては心から感謝申し上げておる次第でありまして、その調査は、思い違いとかなんとかいう以外のことについては、大変真摯に御協力をいただいておりまして、調査自体について、その結果については正確なものであるとわれわれはわれわれとして確信を持っておるという点ははっきり申し上げておきたいと思います。またそうでなければ、御協力をいただいた民間の方々にも申しわけのない仕儀でございます。そういう点はひとつ誤解のないようにお願いをしておきたいという感じがいたしております。  ただ、退職手当の問題がこういうふうにいろいろ論議をされるような段階になってまいりましたこの時点において、いままでの調査方法というものを金科玉条として将来ともそのままずっと続けていくのか、改善の余地はないのか、こういうふうに言われますれば、従来までのやり方を金科玉条として、これが一番いいのだというふうな不遜な考え方は持っておりません。今度の手当法の改正案自体においてもいろいろ問題があるから、その後のいろいろな情勢の展開に応じて、六十年までに調べて、必要な措置を講ずる必要があればやるべきだということも言っておるわけであります。したがいまして、われわれ独自の判断においても、さらに調査をすることになりましょうし、恐らく主管の官庁でありまする総理府の方からも御依頼があろうかと思いますが、その際には、従来の実績にかんがみ、またその後の情勢もいろいろ考え合わせました結果、調査技法等についても改善すべき点は改善するという点については、さらに検討を加えていくことについては当然やぶさかではございません。この点を申し上げておきたいと思います。  それから、いま著書を御引用になっての御質問でございましたが、この点につきましては、そもそも退職手当制度というものがどのようにあるべきか、またはどういうふうに動いているか、特に、企業年金的なものがその比率においても重要性においても大変増してきつつあるこの段階において、それに対応する公務員の問題をどうするかというような点は、今後の情勢の変化ともにらみ合わせながら、さらにしさいに掘り下げて検討していく必要はあろうかということは考えております。
  305. 榊利夫

    ○榊委員 大変長い御答弁をいただきましたけれども、私いま聞きながら一つ思ったのは、民間の立場で調査に対して大変貢献願っているという御説ですけれども、その場合、政府の調査に対しては税金対策その他のために安く答える傾向が強いということも事実なんですよ。そのことはひとつ頭に置いていただきたい。だからこそこういうものは、やはり実態調査が必要になってくるんですよ。  それから、二番目の問題ですが、必ずしも実態調査だけじゃなくて、通信調査でも正しい、長年調査をやってきた、確信がある、こういうことでございますけれども、確信があると言うならどうして実態調査をやられますか。ということは、やはり実態調査がより精度の高いものを得る方法だという認識があるからやられるのでしょう、そう思いますよ。したがいまして、まあ一種の言いわけとして、通信調査についてもこれまでの実績では確信があるのだということはおっしゃっても、それは客観的な根拠に基づいて人を納得させるものじゃないです。それが二つ目。  三番目は、しかし、いずれにいたしましても、総裁はこれまでの調査方法を金科玉条にしないという答弁でございますし、これからも調査を進められる場合には、その調査方法について恐らく再検討することもやぶさかではない、その点は大いに研究をしたいというお気持ちのように思いますけれども、前の二つは要りません。最後の、この三つ目についてだけ御答弁いただきたいと思います。
  306. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 その点は繰り返しになりますが、いまの調査方法が万全で、これに付加すべきものは何物もないというような不遜な態度は持っておりませんから、いろいろな民間の情勢あるいは調査技法の問題等もあわせまして、さらに徹底した調査検討の結果を今後の調査の段階においては生かす努力はしてみたいというふうに思っております。
  307. 榊利夫

    ○榊委員 最近民間では、退職一時金を補完する方法として企業年金を導入する、そういう企業がふえております。資料でも、調査対象企業の六割は企業年金をやっていることになっておりますけれども、この企業年金についての調査は行われたでしょうか。
  308. 長橋進

    ○長橋政府委員 企業年金につきましても、調査をいたしました。
  309. 榊利夫

    ○榊委員 それでは企業年金、つまり毎年支給されておるわけですけれども、どういう比較対照を行われましたか。
  310. 長橋進

    ○長橋政府委員 あるいはちょっと御質問を取り違えているかもしれませんけれども……。  比較対照ということ、ちょっとわかりかねますけれども、調査に当たりましては、企業年金、これは調整年金、適格年金、自社年金、併用型、いろいろございますので、したがいまして、支給内容とか支給形態、そういうことから見まして、これは退職一時金として扱うのが適当だと思われるものについては退職金、一時金ということで調査をいたしております。
  311. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、企業年金の現価のうち企業の負担分というのがありますね。それは退職金との関係でどういうふうになりますでしょうか。
  312. 長橋進

    ○長橋政府委員 企業年金にもいろいろございまして、たとえば厚年の代行型の調整年金でございます、これはちょっと切り離せませんのでやむを得ませんが、それ以外の企業年金につきましては、企業負担分は一時金として取り込んでおります。これは実額調査をいたしておりますので、実額というかっこうで入ってきております。
  313. 榊利夫

    ○榊委員 企業負担分は取り込んだ、つまり退職金額に加算した、こういうことですね。  そうしますと、調査の際、企業年金額の回答はあったけれども、年金現価の回答はなかったという企業もあったのじゃないかと思うのですけれども、そういう場合はどういうふうにされましたか。
  314. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは調査票の仕掛けでございますけれども、企業年金制度がありますか、ありとすればどういう種類のものですかということをチェックするようになっておりまして、それから金額欄のところにはそれぞれ記入することになっておりますので、調査票の段階で、企業年金の制度があるという企業で、しかも年金現価を記入してないところがございましたならば、われわれ調査票をチェックいたしまして、漏れということになるわけでございますが、それは照会して記入してもらうということにいたしております。したがって、企業年金の年金現価部分は実額の中に入っておるということでございます。
  315. 榊利夫

    ○榊委員 その照会はどういう方法でやられました。手紙ですか、電話ですか、あるいは別の方法ですか。
  316. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは電話による照会でございます。
  317. 榊利夫

    ○榊委員 やはりさっきと同じように電話ですね。そのチェックの方法というのは、余り厳密でないといいますか、非常に気楽にやられている。  それではさらに、企業年金は物価スライドあるいは賃金スライド、金利スライドなど、何らかの調整措置をとっている場合が少なくありませんけれども、こういう企業年金の特徴、この点の調査はおやりになりましたか。
  318. 長橋進

    ○長橋政府委員 企業年金につきましてスライド制をとっておるところは約六%ぐらいと承知しておりますけれども、今回の調査におきましては、特にスライド制について調査をいたしておりません。
  319. 榊利夫

    ○榊委員 六%ぐらい、実際はもっと多くなっているはずです。そのパーセントの適否はともかくとしまして、そういうスライドの問題は調査していない、この点もやはりずさんだと思うのですよ、率直に申しまして。  それで、それではいまのようなスライドの調整措置がとられている場合、あるいはそれがやられていない場合、それぞれでこの年金現価が幾らになるか、私試算をしてみました。ちょっと御紹介いたしますと、試算の前提というのは、初年度の年金額は年額六十万としまして、支給期間は十年の有期、こうしますと、資金は五・五%の予定利率で運用されるものとして、退職一年後に最初の年金支給が行われる、以後一年ごとに支給される、こういうようにした場合、この条件でいきますと、年金額が据え置かれる場合には、年金現価は四百五十二万円という数字が出てまいります。年金額が毎年五%ずつアップしていく、そういう場合には、年金現価は五百五十七万円、こういうふうになります。一方は四百五十二万円、他方は五百五十七万円、年金現価にこれだけの差が出てまいります。こういう傾向が出てくることは、細かい計算はともかくといたしまして、人事院として確認していただけますね。
  320. 長橋進

    ○長橋政府委員 物価スライド制をとっておるところ、いろいろとございましょうから、先行きの問題どうなるかということはわかりませんけれども、したがって、あるいは先生御試算のようになるかとも思いますが、ただ、今回の調査におきましては、五十二年退職した方につきまして現実に支払われた部分ということについて調査をしております。つまり実支給額、幾ら支払われましたかということを調査しておりますので、そういう意味では、現実に支払われた退職金を正確につかまえてきておるという関係になるかと思います。
  321. 榊利夫

    ○榊委員 私いまこの数字を引き出しましたのは、要するに物価スライドその他のスライド制がとられているときには、とられていない場合と比べて、いまの例で言いますと百五万円の差が出るわけです。したがいまして、そのスライド制があるかないかということによって、年金現価というのは相当変わってくる。ところが、そのスライド制の有無すら今度の調査の場合には念頭に置かれていなかった、調査されていないということなんです。  これじゃ退職年金を右へならえでカットする、そのために民間企業の退職金の実態についても、むしろ一あるいは私の方が勘ぐっているというふうに言われるかもしれませんけれども、退職金の実態を低目に出したがる、そのためにこういう方法も用いたのかな、こういう疑問さえ出てくるわけであります。この点についてどうですか。
  322. 長橋進

    ○長橋政府委員 調査段階におきましては、すべて現価に換算いたしまして、すべて入ってきておりますので、したがいまして、調べました調査結果の数字というものは、そういうものを全部取り込んでおるという関係になるわけでございます。
  323. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、どうもその点はすっきりしないですね。取り込まれているということですけれども、しかし、いま紹介しましたような差が出てくることは事実でありますし、だから少なくとも今後、たとえばこの種の調査をやる場合に、スライド制についてはどういう方法をとりたい、とるべきだというふうに思われますか。
  324. 長橋進

    ○長橋政府委員 先ほど総裁の方からもお答えがあったと思いますけれども、退職手当については、今後いろいろ調査いたす場合につきまして、調査内容なり調査方法なりについては十分検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  325. 榊利夫

    ○榊委員 やはりこの問題も、調査方法としては一つの大きな検討課題だと思います。しかし、今回の基礎になった調査に関しては、それがやられていない。これはやはり一つのミスだと言えるのじゃないか、私はそういうふうに思うのであります。ここで、思うか思わないかいろいろ議論がありますけれども、それはひとつ省いておきます。  それで、やはりその年金額の調査を行うのですから、スライドの部分についても調査すべきであったと思うのです。実際問願といたしまして、年金現価に組み込まれているというふうにおっしゃいますけれども、その点についてもチェックはやっておられないのでしょう、組み込まれているということについては。どうなんですか。
  326. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは調査段階におきまして、そういう調査項目につきまして特に説明してございますので、したがいまして、回答を寄せる側でそれをちゃんと計算に入れて回答をいただいているということでございます。
  327. 榊利夫

    ○榊委員 だけれども、先ほどのお答えで、スライドの有無については調査しなかったというのでしょう。調査しなかったのにどうして組み込まれていますか。
  328. 長橋進

    ○長橋政府委員 スライド制そのものについては調査をいたしませんでしたけれども、支給された退職一時金については、実支給額を調査しておりますので、したがいまして、一時金でもらったような場合には、すべてその中に入ってきているということでございますし、さらには年金の場合においては、年金現価をその中に取り込んで記入してくださいという調査方法をとっておりますので、したがって、支給の水準として出てきました退職金総額の中には、それは取り込んでおるということでございます。
  329. 榊利夫

    ○榊委員 なお、この制度については、やらなかったけれどもと言われるのですけれども、実際問題としまして、仮に退職金の額について回答を求めた調査について、これこれしかじか回答してくれ、ところがその際に、スライドの問題についてはこちらから、政府の方から指示してないのでしょう。そうした場合に、退職金の額を少な目に回答してきた、それをチェックすることは不可能じゃないですか。実際問題としてどうなんでしょう。
  330. 長橋進

    ○長橋政府委員 先ほど申し上げましたとおり、スライド制度については調査しておりませんけれども、企業年金のあるところにつきましては、年金現価を取り入れたかっこうで記入してくださいということは、調査に当たりまして十分徹底しております。
  331. 榊利夫

    ○榊委員 ではこの問題はこれ以上続けませんが、これまで民間企業の調査について、幾つかの点で私の方の疑問を提起をいたしまして御答弁願ってきたのでありますけれども、まとめてその問題を言わせていただきますと、やはりあれこれの信頼性に欠ける。人事院総裁も金科玉条としない、こう言われたわけでありますけれども、今後はやはり改善を検討しなければならないような調査方法上の問題を含んでいるということは、私は御認識なさっておられるのじゃないかと思います。  私の方からは、もちろん先ほど来幾つも指摘しましたように、やはりかなり信頼性が欠ける点がある、そういう点では、それを根拠にするということについて非常に大きな疑問符が出るのだということであります。だから、そういうずさんな調査を根拠にして退職手当カット、高い、こういう結論を軽々に出していくということは、私はやはりあるべき姿ではないということを申し上げたいわけであります。  次の問題に移っていきますけれども、最初に申し上げましたように、今度の問題につきましては、退職手当の場合も、あるいはすでに審議をいたしました定年制の場合にも、官民較差ということで、民間を基準にしてそれに合わせていくということが基本方法になっております。総理長官がここで読み上げられました退職手当削減の提案理由の説明の中でも、先ほどちょっと一部読み上げましたけれども「民間における退職金の実情にかんがみ、これを是正する必要がある」ということです。これは退職手当を民間に合わせる方向で官民較差をなくすという考えでありますけれども、この点について字句どおりそういうものだというように私は理解しますけれども、総務長官、そういうように理解してよろしゅうございますね。
  332. 中山太郎

    中山国務大臣 総理府といたしましては、人事院が調査の一つのサンプルを使う場合の仕組みについては、民間準拠というようなことでいままでやってこられておる。私は、それに絶対信頼を置かなければ、公務員給与の決定もできないし、この退職手当の問題も扱えない。基本は人事院が中立的機関として、公正に民間のデータを整理していただいてわれわれに意見を出す、ここに一つの基本がなければならないと考えております。
  333. 榊利夫

    ○榊委員 いまの答弁を聞きますと、何といいますか、これ以外にはという大変民間絶対化的なそれがありますけれども、仮にそういうたてまえに立ったといたします。他方、賃金でもそうですしあるいは退職金でもそうですが、大企業など民間の方が公務員よりも高い場合が多いのです。その際に、官民較差をなくすというたてまえでいく以上、公務員ベースが低いことが明らかになれば、その場合には速やかに公務員賃金を民間に合わせて引き上げる、こういうようにお約束できるでしょうか。少なくともそういう見地で、近く出る三公社五現業のベースアップに関する公労委の仲裁裁定については実施を延ばしたりしない、あるいは人事院勧告についてもこれを値切ったりしない、こういうようにお約束できるでしょうか。
  334. 中山太郎

    中山国務大臣 お答えをさせていただく前に、私の考え方をもうちょっと申し上げておきたいと思います。  私は、やはり国民が物の判断の中心者である。そういうことから考えて、公務員の生活が苦しいという場合には、やはり公務員の募集に対する応募者が減る時代がございました。また民間の方が悪い、公務員の方が給与もいいし勤務条件もいいな、こういう場合には、やはり非常に高い応募者になってきておる。最近の学校の先生方の採用に対する応募者の数がべらぼうに高いというのも、そういうものを一つ物語っているのではないか。だからやはり私は、国民が主権者としてどこに基準を置いて公務員の給与及び退職手当というものを計算しているか。そういうものは、国民が大方納得してもらえるようないわゆる決め方でなければ、私は政治に対する主権者の信頼は起こってこない、こういうふうな考えでおることもひとつ御理解をいただきたいと思います。  また、ただいま人事院勧告等に対する私の考え方お尋ねでございますが、先刻もお答え申し上げましたとおり、昨年来大変財政事情が厳しゅうございますけれども、私は人事院勧告が出ましたならば、完全実施をするように今年も特段の努力を払ってまいりたい、このように考えております。
  335. 榊利夫

    ○榊委員 仲裁裁定については御意見はどうですか。
  336. 中山太郎

    中山国務大臣 私の所管外の事項でございますので、この席での発言は御遠慮させていただきたいと思います。
  337. 榊利夫

    ○榊委員 閣僚としていかがですか。
  338. 中山太郎

    中山国務大臣 まだその結論が出ておりませんし、私自身が所管でもございませんので、その結果を見てまいりたいと考えております。
  339. 榊利夫

    ○榊委員 比べ方にもいろいろ問題がありますけれども、つまり公務員と比べながら、どうもいいのについては民間準拠という、ところがそうでない場合には、それに合わせるという作業というのはなかなかうまく進んでいないというのが実情じゃないかと私は思うのですよ。とにかくいろいろでこぼこがあるんです。単純じゃないんです。そういう場合に、民間企業のたとえば退職手当あるいは給与あるいは労働条件、それを民間準拠というふうに原則化しまして、それを万事基準にしていく、手本にしていく、こういうことになりますと、これはやはり実態から離れていく場合が少なくないんじゃないですか。  私、一、二の例をちょっと挙げますけれども、たとえば労働省の労働白書、これは五十年以降の実働労働時間の問題ですけれども、「所定内労働時間の増加もあるが、企業が生産増加に雇用増によらずもっぱら所定外労働時間の延長で対応してきた」というふうに政府自体も判断をしているんです。判断しているということは、つまり民間企業の労働条件や給与、退職金、こういった実態が政府の通達だとか労基法ともかけ離れていることが少なくないということを示しているわけであります。  一例ですけれども、たとえば東京のカメラメーカーでキヤノンというのがありますけれども、時間外勤務の協定、いわゆる三六協定、これは男性が月に五十時間、女性が三十五時間、こういうようになっているんですけれども、実際には除外規定があって、男性は上限も無制限だというようになっている。このため時間外勤務が月七、八十時間になることがしばしばだ。月に百時間を超えるときはさすがに健康診断を実施しているようでありますけれども、特殊な研究開発の際は、月二百時間を超えた事例さえある。こういう実態については、これは政府側も国会で調査とか是正とかそういうことを言っておられますけれども、たとえばこういう事態が望ましいかどうか、あるいは基準になり得るかどうか。恐らく基準になり得るというふうには思われないだろうと思うんですけれども、総務長官いらっしゃいますか。――じゃかわりの人、つまり基準になるかどうかという……。
  340. 山地進

    ○山地政府委員 いまの御説は、労働条件が民間の場合にいろいろの法規から離れている、そういうものが望ましいかどうかというお話だと思うんでございますけれども、それは法規に照らして普通の状態に戻るのが望ましいというのが当然だと思います。
  341. 榊利夫

    ○榊委員 労働省はどういうふうにお考えですか。
  342. 岡部晃三

    ○岡部説明員 ただいまのお尋ねは二つの問題にかかわると思うのでございますが、一つは、残業というものをどのように考えるかということでございます。労働基準法のたてまえといたしましては、時間外労働につきましては、労使協定の範囲内で一日八時間、週四十八時間という限度を越えて労働に従事させることができるというふうに規定をしているわけでございます。この協定がありますれば、三六協定と申しますが、基準法三十六条に基づく三六協定があれば、女性については一定の法的な限度がございますが、男性につきましては限度がなく残業をさせることができるという現在のシステムになっています。したがいまして、単に時間が長いといいことだけで現在の法令に違反するといい状態ではございません。しかしながら、わが国の労働時間制度全体を見ました場合に、長時間労働というふうな問題が昨今提起されておりまして、労働省におきましては、労働時間対策というものを立てまして、いたずらに長い時間につきましてはこれを縮減してもらうようにという指導を行っているところでございます。現に、わが国の年間の総実労働時間を考えてみました場合に、現在毎勤ベースによって見ますと二千百十時間前後ということに相なっておりますが、これを全産業平均で二千時間を切るようなところまで持っていこうというふうな形で週休二日制等労働時間対策推進計画というものを立てまして、現在推進を始めたところでございます。その中の一つの手法といたしまして、残業をできるだけ短くしていくというふうなことも含まれておるという次第でございます。
  343. 榊利夫

    ○榊委員 いまの御答弁からも、つまりそれは基準にならない、むしろ是正すべきようなことであって、それをそういう民間準拠でもう絶対基準にしていくことは現実離れだということは明らかだと思うのです。  給与においてもそうでしょう。私、同じだと思うのです。たとえば給与における男女差別です。これももちろん民間、公務員いろいろありますけれども、たとえばここに資料を一つ持ってきていますのは、音響メーカーのソニーの例ですけれども、給与の配分の中に定額や査定分などと並んで補正というものがあるんですね。一般女子にはこの補正額が一貫して支払われない、ゼロなんです。だから補正のランクが係長が五千五百円、係長代理が四千二百円、リーダー三千円、中堅千九百円、一般男子、女子リーダーが千円、こう分かれているだけなんですね。約四千人の一般女子従業員、これは全体の八〇%から八五%ですけれども、この四千人の一般女子従業員というのはこの補正がゼロなんですよ、補正の中身ですね。これが賃金格差の大きな要素になる。年間当たり女子一人の差額も約百万円だというふうに見られています。これが退職金にももろに影響するわけです。この会社がこういう補正による支給を能力、技能などを考慮した結果だというように説明されておりますけれども、しかし、初任の女性であろうとトレースやあるいは管理部門の十年、十五年選手であろうと、一律に補正ゼロというのは余りにも常識外れなんです。だから、ソニーには幾つもの組合があると聞いておりますけれども、六つぐらいあるそうですが、六つの組合が全部この女性ゼロ補正には反対。だからこういう事態もまた好ましい典拠、民間準拠で基準になり得るのかなり得ないのか、私はそこの判断もちょっとお聞きしたいと思うのですが、これは労働省、特に婦人労働の関係……。
  344. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  先生すでに御承知のとおり、労働基準法第四条では「使用者は、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」ということを定めておりまして、婦人少年局では、この趣旨が十分に徹底いたしますように、いろいろな機会をとらえて啓発指導をやっているわけでございます。  先生が御指摘になられました事案につきましての詳細は、私ちょっと十分承知をしておらないわけでございますが、個々具体的な事案につきましては、基準法四条に抵触するか否かという問題は、基準監督署において諸事情を調査の上結論を出すということになっているわけでございます。
  345. 榊利夫

    ○榊委員 ちょっとお尋ねしますが、これは好ましい状態と見るか好ましくないかという点についてだけ。
  346. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 ただいま申し上げましたように、いま御指摘の事案につきましては、十分内容を具体的に私どもとしても検討しておりませんので、どういうところが女子であることを理由として差別的な取り扱いをされているかということが、私いままだ十分判断ができませんので、そうした点につきまして具体的な判断を行った上でお返事をさせていただければと存じます。
  347. 榊利夫

    ○榊委員 後で御答弁を待つことにしておきます。  もう一例ですけれども、たとえばこういう例もあるのですよ。参考書とか学習雑誌を出版している学習研究社、学研というのがありますけれども、この場合は、先ほど紹介しました就業規則で退職の問題、退職金をうたっているのです。就業規則の第二十条で定年自動退職を男子従業員六十歳、女子従業員五十五歳、こういうふうに差別的に定められているのですけれども、退職手当もそれに伴って差別がつく、こうなっているのですけれども、これも民間基準、民間準拠だ、これを原則化されますと大変なことになるわけで、これについてもまさか一つの基準になり得る、あるいは好ましいということにはならないと思いますけれども、どうでしょうか。
  348. 岡部晃三

    ○岡部説明員 その事案は私ども承知をいたしておりませんけれども、退職金の額を一方的に変更することがどうかというふうなお尋ねと理解をいたしますが、この労働条件の変更の問題は、秋北バスの最高裁判例が示しますとおり、合理的な理由があってそういうふうな変更を行うものであるということであれば、これは適法なものと認められるところでございます。したがいまして、その退職金等の変更というものが合理性があるかどうかという判断にかかってくると思うわけでございます。
  349. 榊利夫

    ○榊委員 いやこの事案について云々ということを私聞いているのじゃないのです。つまり民間準拠論につきまして、こういう例がある。いま申し上げましたように、就業規則で定年退職問題についてちゃんと男は六十歳、女は五十五歳というふうに差別的になっている。退職手当もそうだ。それがつまりモデルになり得るのだ、基準になり得るのだ、こういうふうな見地に立ちますと、これは大変なことになるわけであります。一般論として私は聞いているのです。こういう事態というのは、たとえば公務員退職手当の問題について考える場合に、あるいは定年について考える場合に基準になり得るのか、どうなんでしょう。
  350. 山地進

    ○山地政府委員 いまのお尋ねは、女性と男性とが差別されていて、そういうものが民間において顕著であるならば、そういった実態を踏まえて官民比較すると、民の方が低く出て、官が高くなるのじゃないかというようなお話のように承るのでございますけれども、これは官民を問わず男女をどういうふうに使っていくかということでございまして、定年まで勤める人、あるいは役所の場合で言えば勧奨退職をしている人の比率がどうだということになってまいりますと、一概にどっちが低く出るのか高く出るのかということはかなりむずかしい話だろうと思います。  それで、私どもの方の調査というのは、高校卒の行(一)ということでやっておる限りにおきましては、かつ事務職であるということからいって、現在男女の差別が少なくなる方向に行っている、これは官も民も同じような状態であるというふうに私は理解いたしますので、いまのような御指摘の件が顕著に今度の調査に響いてくるというふうには言えないのじゃないだろうか、かように考えます。
  351. 榊利夫

    ○榊委員 私がいま一、二の例を挙げましたのは、要するに言いたいことは、民間準拠論、民間基準論というのは成り立たぬということです。公務員にしろあるいは民間の労働者にしろ、勤務、生活あるいは物価などの実態、これに即して給与はもちろん退職手当考えるということでなければいけないんじゃないかと思うのです、実際に働きその他、それぞれ条件が違うわけですから。そうしないと、国民全体の理解は得られないということを申し上げたいわけであります。  ところが、そういう立場決定すべきであるはずの公務員の退職金の評価の問題、それを調べるということについてももう一つ疑問が残っております。まず今回の退職金の官民比較では、五十二年度中に退職した行(一)適用の高卒男子の公務員の退職金、これを経験年数ごとに区分して平均する、その額を標準的な水準とみなしている、こういうふうになっているというふうに私は理解しておりますけれども、これはこういう理解でよろしゅうございますか。
  352. 山地進

    ○山地政府委員 御指摘の表はお手元にお配りしてある「勤続年数別等級別退職者数調」というので、千四百八名の二十五年から三十五年までの人の分布が書いてあるわけでございますが、横には一等級から六等級、こういうふうなことで、どういう状態の人がおやめになったかということが御指摘の点だろうと思います。
  353. 榊利夫

    ○榊委員 いや私が聞きたかったことは、高卒男子の退職金を経験年数ごとに区分してこれを平均する、それを標準的な水準と見ている、これでよろしいかということなんです。
  354. 山地進

    ○山地政府委員 そのとおりでございます。
  355. 榊利夫

    ○榊委員 統計学上、母集団から標本を抽出します。それによって検討する。そういう場合にその標本が母集団を正しく代表しているかどうかによって正否が左右されるというのが普通だと思いますが、この場合の標本、つまり五十二年度の退職者の退職金がこの場合にもともとの母集団、すなわち毎年度の退職者の等級、号俸分布を正しく代表しているだろうかどうだろうかということが決定的に重要な要件になると思うのですが、この点についてのチェックはどういうふうに行われましたでしょうか。
  356. 山地進

    ○山地政府委員 まず、実態調査でございますから、この表の二十五年から三十五年のそれぞれについて、その各年次についていろいろのばらつきがある。たとえば一等級になった人が三十二年にはいるけれども三十三年にはいないとか、この千四百人というわれわれが実態を調べた中においても、年次ごとには違いが出てくるわけです。ただし、私どもとしては、そういったばらつきというのは、各年次ごとには違っているけれども、それぞれの年次の平均をとって退職金を出して、それぞれの民間の方の対象と比較して、最後にはどれくらいの較差があるかということを調べているわけです。  そこで、いまおっしゃったような各項目においてのばらつきというものは、二十五年から三十五年のそれぞれについて民間と対比した場合に、たとえばある年度は勤続年数二十五年の人は八九%であった。それから三十年の人は九二%であった。二十七年の人は九〇%であった。それぞれにばらつきがあるわけです。そういったばらつきというのは避け得ないもので、どれが一番正確かということはわからない。そこで私どもとしては、最後にはそういうものを見て、約一〇%、一〇ポイントは違っているのじゃないかというふうに判断したわけでございます。
  357. 榊利夫

    ○榊委員 私が聞いたのは、その場合のチェック方法はどういう方法だったのかということです。
  358. 山地進

    ○山地政府委員 その適正な分布というのは一体何かということは、かなりむずかしい話だと思うわけです。そこで、私どもとしては、この五十二年度の中で、それぞれの年次に切って、それが違っているけれども、どれも特異現象といいますかを出していない、官民を比較した場合に特異現象を出していないというところで、まずはこれは全体的にわりと安定した数字じゃないかと思ったわけでございますが、さらに先生がチェックポイントとおっしゃるから申し上げますと、五十三年、五十四年の官の方の退職状況を調べまして、それの二十五年、三十年、三十五年というのを比較してございます。ちょっと申し上げますと、あるいは御存じであるかもしれませんが、二十五年の者が五十二年には千四十七万円、これは等級に直すと、四等級の十三から五等級の二十でございます。五十三年千八十七万円、これは四等級の十三から五等級の二十でございます。五十四年千百七十六万円、四等級の十四から五等級の二十四でございます。三十年と三十五年もございます。申し上げれば大体わかるわけでございますが、大体同じような等級に位置していることからいって、五十二年のサンプルはかなり安定したサンプルだった、かように考えております。
  359. 榊利夫

    ○榊委員 つまり安定したサンプルだ。しかし、そのチェックについてなんですね。つまり代表しているだろうかどうだろうか、合っているだろうか合ってないだろうか、そこらはどうなんですか。
  360. 山地進

    ○山地政府委員 合っているか合ってないかというのは、何かあるべきものがあって、それに近似しているかどうかという御質問のように聞こえるのでございますけれども、私どもとしては、このサンプルが安定していれば、それがあるべきものであろう、かように考えます。
  361. 榊利夫

    ○榊委員 その点について、五十二年度の退職金の調査結果、公務員全体の退職金の調査結果が、全体の退職金の水準を正しく代表しているというふうに総理府としては思っていらっしゃるわけですね。そう思っていらっしゃるんだけれども、その根拠は何ですか。
  362. 山地進

    ○山地政府委員 人事院の方の御調査によりまして、学歴別人員構成表というのがございまして、全俸給表、これは五十万の方がいらっしゃるわけでございますが、高卒は四七・四%を占めております。     〔委員長退席愛野委員長代理着席〕 それから行(一)、これは二十四万四千おるわけでございますが、その中で高校卒というのは六一・五%おります。つまり公務員の中で行(一)の高卒というのはマジョリティーといいますか、行(一)に関して言えば過半数を超えているわけでございます。  そこで、総理大臣から国鉄の駅の職員に至るまで、公務員から五現業三公社全部を包含する退職金を同一の支給方法で支給する場合、これを官民比較するときに、一体どれを代表にするかということにつきましては、まずは比較が簡易であることと全体を代表するものであること、この二つが肝要であるわけでございますが、このような比率を占めている高校卒の事務職員が選ばれたのは、私としては非常に妥当なものであろう、かつ、四十八年の比較は同じような代表をもって比較したということをつけ加えさしていただきます。
  363. 榊利夫

    ○榊委員 その問題はまた後で戻りますけれども、ここでその問題との関連で聞きたいことは、たとえば五十二年度の退職者の退職金が、国家公務員の退職金の動向を正しく反映しているかどうかを知るためには、私は五十二年度だけじゃなくて、少なくとも前後数年間、退職者の勤続年数別であるとか等級別あるいは号俸別、こういった点での分布状況の動向を比較対照してみることが最小限必要なんじゃないかと思うのです。ところが、五十二年度の前後三年間、たとえば昭和四十九年から五十五年、この勤続年数別、等級別の退職者数を調べたいと思って、私の方から要求したんですね。その資料、出てこないのですよ。出されないのですよ。どうしてそれを総理府はお出しにならないのですか。
  364. 山地進

    ○山地政府委員 かなり手間暇のかかるものでございますから、別に隠し立てしているわけではございませんで、時間がかかるという理由でお出ししていないわけでございまして、かなり時間をいただいて統計をとれば、とれないことはない数字だろうと私は思います。
  365. 榊利夫

    ○榊委員 つまり準備がないわけですか。この五十二年度だけであって、国家公務員の退職金の動向、前後何年間か、これは調査されていないのですか。さっと出てくるような、そういう重要な資料じゃないのですか。
  366. 山地進

    ○山地政府委員 退職金の動向についてはいろいろな資料が私どものところにございまして、いまおっしゃったような集計表というのがないということでございます。
  367. 榊利夫

    ○榊委員 それじゃ仮に四十九年度から五十三年度というふうに区切りましょう。そこでの勤続年数別、等級別、号俸別の退職者調べ、これは調べようとすれば出てまいりますね。
  368. 山地進

    ○山地政府委員 私どもの調査というのは、全数調査というのですか、少なくとも高校卒については全部の人の退職金のカードをつくりまして、各省から全部それをいただいているわけなんです。そこで、私どもの手元にあるのは、五十二年のものはもちろんあるわけでございますから、五十三年、五十四年もあるわけです。それ以前については全部新しくカードをつくるということをしないと、これは出てこないわけでございます。  そこで、先生のおっしゃる意味は、恐らく高卒の事務職じゃなくて、退職者全員についてという意味だろうと思うのでございますけれども、それをやるためには相当の時間がかかるだろうと私は考えます。
  369. 榊利夫

    ○榊委員 そういう資料がないと、この五十二年度の退職者の勤続年数、あるいは等級、号俸分布が、ほかの年と比べて合致しておる、あるいは合致してないということが研究できないわけですよ。だから、もしそれを総理府としてやっておられないとするならば、それ自体が大変な問題なのですね。やっておられないわけですか、そういう比較は。
  370. 山地進

    ○山地政府委員 いま私の方は五十三年、五十四年の数字を御披露したわけでございますけれども、五十三、五十四については資料があるわけでございまして、それは集計の時間というものがあればできるわけでございますが、それ以前については、さらに新しく全部カードをつくらなければいけないということでございます。
  371. 榊利夫

    ○榊委員 五十三年、五十四年はあるとすれば、私は仮に四十九年からと言いましたけれども、一年さかのぼって五十一、五十二、五十三、五十四ぐらいはどうですか、そろえることができますか。
  372. 山地進

    ○山地政府委員 五十二、五十三、五十四はあるわけです。いま先生御指摘の五十一がない。五十一についてはまた別途新しくカードを全部つくってやればできないことはないと思うのですけれども、もし至急にといいますか、短時間で要るとおっしゃるのであれば、五十二、五十三、五十四というものについては、集計の時間はいただかなければなりませんけれども、つくれると思います。
  373. 榊利夫

    ○榊委員 それはぜひ五十一は、ちょっと時間がかかるかもしれませんけれども。さしあたり五十二はあるわけで、五十三、五十四と、要するに一定の期間をとってやらないと、他と一致しているかどうかわからないわけです。したがって、それは私も検討させていただきたいし、総理府としてもそれは合致しているかどうかを検討されているのだろうと思うのですよ。されていないとすれば、それはそれ自体が問題なので、その点はどうなのですか、やられたのですか、やられていなかったのですか。
  374. 山地進

    ○山地政府委員 いま申し上げましたとおり、五十三、五十四を使いまして、二十五年、三十年、三十五年というものが、人数は違いますけれども、平均で一体幾らぐらいの退職金をもらっているのか、その平均を出して、その平均の退職金から今度は給与を出してつくった表があるわけでございます。  いま二十五年のことを申し上げまして、五十二年が四等級の十三ということを申し上げましたが、これは五等級だと二十になるわけですが、仮に全部上の方の数字で申し上げますと、二十五年は四等級の十三、五十三年も四等級の十三、五十四年が四等級の十四、これは平均で出しているわけです。それから三十年勤続の方は、五十二年は三の十二、五十三年にチェックしてみますと三の十三、五十四年が三の十三。それから三十五年勤続の方は、五十二年が四の枠外の一、これは当時は最高号俸が四の二十二であったわけです。五十三年が四の二十二、五十四年が四の二十二。したがって、私どもは二十五年、三十年、三十五年のところをポイントでチェックしたわけですから、そのポイントでチェックしてみたら五十二年、五十三年、五十四年というのは同じであった。したがって、この五十二年の数字はサンプルとして非常に安定している、こういうふうに判断した、これは先ほど申し上げたとおりでございます。
  375. 榊利夫

    ○榊委員 それじゃその資料を提出してください。  この点でもう一点お尋ねいたしますが、昭和五十三年一月十五日現在でいいのですが、経験年数三十五年以上の行(一)、高卒男子の平均俸給は幾らになりますか。
  376. 山地進

    ○山地政府委員 これは、平均の俸給月額は二十四万二千幾らかというふうに出ておるかと思います。
  377. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、男女別の平均俸給額はどうですか。
  378. 山地進

    ○山地政府委員 男女別には私どもの方は把握しておりません。またこれは、調べればわかるかどうかも調べてみなければわかりません。
  379. 榊利夫

    ○榊委員 それじゃ男女別で、いま御答弁があった二十四万二千百三十八円ですか、この金に勤続三十五年以上の退職金算定月数六十九・三カ月ですか、これを掛けます。それで退職手当の額を算出します。そうすると、千六百七十八万円という数字が出てまいります。これは総理府が官民比較に用いている勤続三十五年の退職手当の額、つまり一千八百三十七万より百五十九万円少なくなります。こうした数字は、五十二年度退職者の等級号俸の分布が標準的な分布とは言えないということを示しているのじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  380. 山地進

    ○山地政府委員 いまの数字は、私どもの方は実際五十二年のものは集計したわけでございますが、いまのような推算をされる場合は、恐らく次のような問題が二つあるのじゃないか。一つは算定基礎となる、これは経験年数でございますけれども、採用前の民間経歴というのが公務員としての勤続年数に加算されます。したがって、中途採用者の場合には、経験年数が三十五年であっても、勤続年数というのが三十五年よりも少なくなる。もう一つは、御試算の場合には、在職者の平均給与額を基礎としているので、退職時の特別昇給というのが含まれていないのじゃないか、かように考えます。
  381. 榊利夫

    ○榊委員 それでもそこはちょっと疑問が残るのです。  じゃこの点はどうでしょうか。公務員の退職金調査、その際、公務員の退職金の水準を正しく反映しているかどうかという疑問なのです。この点、民間の退職金調査も同じなのですけれども、民間退職金調査の場合は、たとえば五十二年度の退職者の役職分布などがレアケースではないということを証明するためのチェックが必要だと思うのですが、そういうチェックはされたのでしょうか。
  382. 長橋進

    ○長橋政府委員 役職段階別の調査をされてレアケースがあるかどうかチェックしたかどうかという話でございますが、今回、五十二年度だけの調査ということでございますけれども、おおむね五年ごとの調査をしておるということで、たまたま五十二年度の退職者についての調査ということになったわけでございまして、最近は退職手当制度についてもいろいろ流動的のようでございますけれども、退職金制度につきましては、そう短期間に変化するということでないであろうということで、おおむね五年程度の間隔で行うということも適当であろうということでやったわけでございまして、五十二年度調査というものも、そのサイクルで実施したということでございます。
  383. 榊利夫

    ○榊委員 比較の仕方ですけれども、給与勧告の官民較差を算出する方法はどういう方法をとられましたか。
  384. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは民間の従業員の職務を種類別、段階別に分けまして、これとほぼ類似している公務、これを対比させまして、そこに従事している民間、公務両者につきまして、学歴でございますとかそれから年齢、それからその勤務しておる地域別、そういったそれぞれの別による較差というものを出しまして、それを総合して総合較差を出しておるということでございます。
  385. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、かなり総合的な手法をとっている、ただ勤続年数だけではない、役職等々にわたって総合的に調査をしている。そうすると、そういういわば手間暇のかかる方法をとっておられる理由というのは何でしょうか。
  386. 長橋進

    ○長橋政府委員 やはり比較ということになりますと、類似しておるもの同士を比較するということが比較の方法としては適当であるということで、そういう比較法をとっておるわけでございます。なるべく、類似しておる項目があるならば、それを条件をそろえて比較するために、そういう手法をとっておるということでございます。
  387. 榊利夫

    ○榊委員 類似比較ということだけでなくて、要するに正確、信頼性を持てるようなそういう資料を得るということのためには、やはりそういう方法が妥当だ、こういう理解をされたからではないでしょうか。
  388. 長橋進

    ○長橋政府委員 比較の方法といたしましては、そういう比較法が妥当であるという認識に立っておるわけでございます。
  389. 榊利夫

    ○榊委員 ところが、今回のこの退職金の官民比較の際は、先ほどずっと質問をいたしましたけれども、勤続年数による比較だけだ。役職別の比較は一切やられていない。比較していないばかりか、公務員に関しては役職別、等級別の退職金の調査もやられていないのではないでしょうか。この点はどうなんでしょう。
  390. 山地進

    ○山地政府委員 そういうふうにコンピューターに入れれば、等級別の退職金幾らということは出てくるようなカードがありますので、できるわけでございますけれども、私どもとしては、とにかく平均で比較する。これは何しろ特別職から一般公務員から五現業から三公社というような比較をするわけでございますから、やはり平均で出すのがいいという考え方でやっております。  したがって、いまのお答えになるかどうか知りませんが、役職別に比較したらどうだろうかということのチェックは、一応やっておりまして、これはただどれをどういうふうに対比するかということになるから、どこかのモデルをつくって、その官側のグループのモデルはこれで、それに対応する民のモデルはこれだというモデルの比較というのは、これまたいろいろな意味で、どういうモデルをつくるかということによって変わってくるわけでございます。ですから、それぞれ一長一短はあろうかと思うわけでございますが、私どもとしては、平均でやった中で、参考とするために仮に一等級を部長、二等級を課長、三等級から五等級までを課長代理あるいは係長というようなことで、官と民を比較するというようなことはやってみたことはございます。
  391. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、いずれにしましても、いまやろうとすればカードがあるからやれるということ、しかしやられなかった。つまり結局は勤続年数による比較にとどめた、役職別の比較はやらなかった、等級別もこれはやらなかったとしますと、やはり統計学上そういうのを含めてやるということは、私は常識じゃないかと思うのですけれども、イロハに欠けると申しますか、そういう印象を受けるんですけれども、なぜあえて勤続年数による比較のみにとどめられたのでしょうか。
  392. 山地進

    ○山地政府委員 まず一つは、四十八年にそういう方法でやっていたということが一つでございますし、それから二百万の代表をどういうモデルでやるというのがいいか、これは恐らく全部やるというわけにはいかないわけでございまして、やはり先ほど申し上げましたような高卒の行eというものが代表なんでその平均でいく。しかも、その平均が、先ほど申し上げたとおり、五十三、五十四というものに比較してかなり安定している。そこで、各等級別といいますか、各階層別に比較したらどうなのか。私どもの指定職の場合も、一体どこと比較するのだというような問題がございます。あるいは国鉄の職員はどこと比較するのだという問題もございます。それらを精密に比較した結果、何らかの平均というものはやはり出さざるを得ない。そこで、やはり代表的な行(一)を選んだという従来の手法というものは、それなりの理由があるし、前に実際に上げたときにもそうなのだから、やはり下げるときにもそうしたらいいというのが、私どもが今回平均で踏み切った理由でございます。
  393. 榊利夫

    ○榊委員 今回はそういう方法をとられた、今後もその方法で十分足りるという御認識ですか。
  394. 山地進

    ○山地政府委員 今回見直しの規定というものを置きましたのは、任用とかあるいは給与とかあるいは定年制の導入とかあるいは民間の動向もかなり動いておるというのは事実でございますから、そういった諸事情を踏まえて退職金の官民の比較というもの、官民のアジャストといいますか、そういうものをどうするかということが一つあるわけでございますし、今回の改正というのは、附則、つまり退職手当法の根本には触れないでアジャストするということをやっておるわけでございますから、それもそれだけで十分かどうかという問題もございます。いろいろなことを総合的に今後の見直しの中に入れていきたい。その中には、おっしゃるように官民の比較というのはどんなインターバルで、どういう範囲でどうやったらいいのだということについては、率直に皆様の御意見を聞いてまいりたい、かように考えております。
  395. 榊利夫

    ○榊委員 今後はそういう方法別の方法も含めまして研究していただきたいと思うのですけれども、少なくともこの調査に関しては、やはり役職別の比較等々をやっていない。勤続年数だけの比較だということでは、やはり信頼性に欠けるということを申し上げたいわけであります。  官民比較の問題でもう一つ聞きますけれども、時間がもう余り残っておりませんので簡潔にお答え願いたいのですが、高校卒と大学卒それぞれについて、指定職になっている者は何人か、それぞれ指定職の全体の中で何%を占めているか。
  396. 長橋進

    ○長橋政府委員 昭和五十五年の一月十五日現在の数字でございますが、指定職俸給表の適用を受ける職員は千五百十四人でございまして、そのうち大学卒の者は千四百三十七人、九四・九%ということでございます。それから短大卒の者は七十人、四・六%、高校卒以下の者は七人、〇・五%という数字になっております。
  397. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、高校卒は七人、〇・五%ということですから、公務員の場合、高卒ではほとんど指定職になれないということを示しています。それで、これは世上言われる学歴差別とか学歴社会とか、こう言われる現実があるわけですけれども、しかし民間では、学歴差別があることももちろん事実ですけれども、それでも中学、高校卒で管理職になっている、役員になっているという者も少なくありません。今回の官民比較の調査の際、この点は考慮に入れられたのでしょうか。
  398. 山地進

    ○山地政府委員 これは人事院の方の調査のあれでございますが、私どもの比較の場合には、事務職員、事務技術職員とも申しますけれども、役員は除外して比較しております。
  399. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、やはり除外でなくて、それは考慮の中に入れるべきではないか。民間と公務の差があるというのは、これは事実でありますし、その点を考慮に入れるべきだと思うのです。その点はいかがでございますか。現時点でどうやったというのではなくて、認識はどうなんです。
  400. 山地進

    ○山地政府委員 先ほど申し上げましたとおり、どういうのが代表であるかということに着目いたしまして、事務職員ということが職務の内容からいっても退職手当に当然反映してくるということからいって、その程度までは役員を除いて比較することが妥当であろうと私どもとしては判断したわけでございます。
  401. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、実際事実に即してみまして、いま報告がありましたように、指定職は全体で千五百十四名で、大学卒が圧倒的多数、高校卒は七人しかいないという状態というのは、結局賃金の差であり、退職金の差である、これはイコールなんです。ところが、民間の場合には少なくともこれほどではない。わずか〇・五%じゃなくて、役付の場合、特に民間企業でも中小企業なんかの場合はかなり高校卒で役付になっている方もあるわけであります。この差というのは、給与の面でも退職金の面でもかなり大きなものがあるのです。それを調査の際に入れない、公務員との比較対照の際に入れない、基礎資料として考慮に入れないということは、やはり片手落ちということになるのじゃないかと思うのですけれども、どうなんでしょうか。
  402. 山地進

    ○山地政府委員 私が先ほど申し上げたとおりでございまして、役人の方も指定職は高校卒でいるわけでしょうけれども、それは入っておりませんし、それから民の方も役職員は入れていない。それは先生が先ほど御指摘になったいろいろのカウンターパートナーみたいな人の責任に応じた比較というのが必要じゃないか、こういう思想も片方じゃあるわけですね。そこらはどういうものをもって代表にするかということだと思うのです。部長になった人は役人も部長、こういうふうなカウンターパートナー同士で退職金を全部比較したらどうだ、こういう考えもないことはないと思います。しかし、私どもとしては、全体をどういうもので代表させるべきかという点に関しては、先ほど来るる申し上げておるとおり、高卒の事務職員ということで比較するのが全体を把握できるのではないかということで、これをもって比較したということでございます。
  403. 榊利夫

    ○榊委員 時間が参りましたので終わりますけれども、いまの説明をお聞きしながらも、なおかつ民間と公務の差をいまの件についてはやはり入れるべきだ、こう思うのです。  これまで退手カット法案の基礎になってまいりました比較、特に官民比較の問題にしぼって重点的に質問してまいりましたけれども、これまでに得られた答弁の中で、率直に申しまして、公務員労働者はもとより、国民全体としましても、いやこれで十分なぞが解けた、疑問が解けた、そういう納得性というものに欠けるものがある、こう思います。  それで、結局はこの一番最初に戻りますけれども、ここにもたくさん持ってまいりましたけれども、長い間働いて、退職手当は幾らある、人生計画の中にもそれを入れて働いてきた、それが目の前でカットされていくことになるわけでありますし、何十年働いて、仮に千二百万、千三百万もらって、それで家が建つだろうか、建たない。しかも、ある意味合いでは冷酷な退職手当のカットを結論づけた調査の基礎データ、関連資料、こういった点でもどうも腑に落ちないということになれば、なおさらそこには釈然としないものがあるわけで、反対の声が公務員の中にまさにその点では満ち満ちている、これは当然だろうと思います。  それで、調査データだとか関連資料などもすべて公表していただいて、職員団体とも十分協議をしてもらいたいということを最後に重ねて主張し、あるいは要望して、きょうの私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  404. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 楢崎弥之助君。
  405. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まず冒頭に退手についての私どもの考えを明らかにしておきたいと思うのですが、私は定年法の審議の場合にも指摘をしたわけですけれども、行政改革というものは単に財政のつじつま合わせだけではだめだ。つまり行政改革の理念というものがある。その理念は何か。つまり行政の民主化であり簡素化であり、あるいは分権化であり清潔化である、これは中曽根長官も認めたとおりです。この二法は行政改革とすぐれて密接な関係がある、そういう指摘であります。この退手法を見ますと、いわゆる財政のつじつま合わせの一番やりやすいところからやる、そういう姿勢が出てきている感じがして仕方がないのです。それで、私はいま出されておるこの政府案には賛成しかねるわけです。やめていかれる方ですから、今後の生活の設計もあろうし、そういうものが十分に立てられるだけの余裕を持って、二年間で一〇%近く切るというのはひどい案ではなかろうか。もう少し生活設計が立てられるようななだらかな仕組みにはならないのであろうか。そういう意味で、これは何とかそういう方向で修正ができないものであろうか。この点については櫻内幹事長も柔軟な姿勢を表明されたようでありますけれども、こういう考え方について長官は一体どうお思いでしょうか。
  406. 中山太郎

    中山国務大臣 退職手当法の政府の提案に対して、ただいま先生御指摘のように、各党でいろいろと御意見が出されたりしておることもよく存じております。私は総務長官として、この各党のそれぞれの御意見がどのような推移をたどるか、重大な関心を持ってただいま動きを見詰めさせていただいておるというところでございます。
  407. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう意味で、私どもが納得のいくようなそういうなだらかな一つの修正というものができれば、私どもは賛成するにやぶさかではない、そういう意見をまず表明しておきたいと思います。  次に、せんだっての定年法審議の際にペンディングにしておりました海上自衛隊のシーレーンの問題にけりをつけておきたいと思うのですけれども、シーレーンというものが防衛庁で出てきたのは正式にはいつですか、どういう場所ですか。
  408. 塩田章

    ○塩田政府委員 別にいつから正式に打ち出したといったものではございませんけれども、三次防、四次防の過程におきまして海上防衛の議論がございまして、それと関連しまして、当時の国会等の質疑応答の中でシーレーンの話が出るようになったというふうに理解をしておりますが、具体的にいつから防衛庁として正式に打ち出した、こういうようなものではないというふうに思っております。
  409. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 局長は近ごろ来られたから過去を御存じないかもしれませんが、これは一応重要な点ですから指摘をしておきたい。  この航路帯というものが初めて出てきたのは昭和四十四年四月二十一日。沖繩問題についての外務省防衛庁の懇談について記者会見をやっている。そのときにそのメモを防衛庁は資料として出しております。その中に「南西航路の確保などに必要な防衛力を整備する」、初めてここに「南西航路」という言葉が出てきた。昭和四十四年四月二十一日。次に昭和四十五年四月二十八日。当時の防衛庁の小幡事務次官が工業クラブにおける防衛懇話会の総会で演説をした。その中で小幡事務次官はこう言っている。「本土周辺の地上防衛力を第一に考えるとともに、海上の交通保護についても、マラッカまでというとっぴなことは考えておりませんけれども、南西航路あるいは南東航路とわれわれが申します、アメリカ、豪州のほうの航路筋につきましても、ある限度は日本で守りたいというふうに考えております。」ここで「南西」、「南東」という航路帯の名前が出てきた。次いで昭和四十六年五月三十一日。時の防衛庁長官中曽根康弘氏は経団連の防衛生産委員会の懇談会に出席をして、このように演説をしておる。「一応われわれが考えております周辺海域といいますのは、太平洋岸で申しますると東のほうで南鳥島、南で沖ノ鳥島、それから西のほうで南西諸島というような範囲、本土から申しますと大体千マイル程度の海域になっております」「一応それが目標で、十年くらいで飛ぶ力を持ってゆく。」昭和四十六年。そして四十八年六月十九日に私は内閣委員会で質問した。そのときおられたのは、いまおられぬけれども、共産党の中路君が理事であった。そのときに、昭和四十八年の五月二十九日、三十日の第八回の日米安保事務レベル会議に出席して――これはちょうど田中総理の七月訪米の前である。その前段の準備として行った。そのときの日本側のメモとして外務省防衛庁がまとめた説明資料がある。その中に、日本の周辺「数百海里ないし千海里」という言葉が出てきておる。歴史をたどればそういうことになっておる。  今度の共同声明で、ナショナル・プレス・クラブで質問に答えて鈴木総理が、その周辺は数百海里、航路帯は千海里。総理がそういう席で言ったのは初めてであろうけれども、別に目新しいことではない。何が目新しいかというと、それに周辺空域がついたのが目新しいのです。いままで空域の問題でこういう形で出てきたことはない。あったら言ってください。私はないと思う。  そこで、北米局長、あなたは共同声明をつくったそうだが、共同声明で使っている周辺空域というのは、つまり防衛すべき空域、防空の対象空域と考えていいか。どうですか。
  410. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 共同声明の八項の中にございます周辺水域及び空域ということは一般的な表現でございます。その後に、日本防衛について、総理が述べられているように、憲法及び防衛政策の基本に従って行うということでございますので、あくまでもそこで考えていることは、日本防衛政策の基本に従ってということでございます。
  411. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が聞いておることに答えてくださいね。時間が短いのだから。  ここでわざわざ周辺海域のほかに周辺空域ということを出しているのは、つまり防空の対象となる空域でしょう。そういう意味で出しているのでしょう。一般的な空域などをこういう八項に設ける必要はないじゃないですか。何言っているのです、あなた。そうでしょう。防衛すべき空域のことでしょう。
  412. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ここで申し上げているのは、さっき申し上げたとおり非常に一般的な表現でございます。さらにそれをもう少し具体的に言えということであれば、これは別にアメリカ側とこの共同声明をつくる際に詰めたわけではございません。しかし、たとえば周辺空域、こういうことについては、現在の防衛政策上種々の要素から成っているというふうに私も承知しております。たとえば航空自衛隊はわが国の領域及び周辺空域において航空侵略、侵攻等に対処することを目的として防衛力の整備を行っております。この場合、周辺空域とは航空自衛隊が航空侵略等に対処するために必要な範囲を一般的に指すものでございまして、それはレーダーサイトのレーダーの探知距離あるいは要撃の戦闘機の行動半径などによっておのずから制約されるものでございまして、一定の空域を具体的に特定して考えているわけではないわけでございます。  ただ、第二点として、同時に、海上自衛隊においても、周辺水域、あるいは周辺海域と申した方がいいかもしれませんけれども、周辺海域における海上交通の安全を確保することを目的として、周辺海域約数百海里、航路帯にして約千海里を目標として防衛力の整備を図っていることは御承知のとおりでございます。したがって、かかる防衛力の中には海上自衛隊の航空機も当然含まれておりまして、そのような観点から右海域、航路帯の上空について防衛力の整備に当たっている、考慮されているというふうにわれわれは考えております。
  413. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何も私が聞かないことを長々とあなた何でしゃべるのですか。あなたは何かにおびえているのじゃないですか。この共同声明日本の周辺というのは、日本本土の周辺ですか、日本領土の周辺ですか。
  414. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本の領土の周辺と思います。
  415. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは共同声明をつくるのに参画してないから余り言わない方がいいのじゃないか。私は北米局長にわざわざ聞いているのですよ、あなたの立場考えて。後で聞きますから。  いまのでいいですか、北米局長。
  416. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 そのとおりでございます。
  417. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは外務省でも防衛庁でもよろしい。南西航路、南東航路の基点、それが南東は京浜であり南西は阪神である、そういう基点をアメリカに言ったことがありますか。
  418. 塩田章

    ○塩田政府委員 アメリカに対してそういうふうな説明をしたことは、私の知る限り、ないと思っております。
  419. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、いまの二つの答弁をかみ合わせますと、この共同声明、それからプレスクラブの総理の答弁は、アメリカ側が受け取ったときに、日本の領土の周辺、領土から千海里と解釈してもやむを得ないね、基点を言ってないし、周辺は本土でなくて領土と言っておられるから。私は、そういうところがまことにあいまいであろうと思う。アメリカは一体どう考えておるのでしょうかね。日本の国内では、国会で基点がそういうふうに語られているのは知ってますよ。しかし、プレスクラブで総理が言ったときも、アメリカ側はその千海里というのは周辺から千海里と思っているでしょう、きっと。九州鹿児島を基点にしてもいいわけです。九州鹿児島を基点にすればフィリピンまで入ってしまう。だから、アメリカとの関係ではこの点はまだあいまいですね。
  420. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 先ほども申し上げましたように、この表現は全く一般的でございます。したがって、今後さらに詰める必要があれば、それを詰める場が今後設けられると思います。
  421. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それを六月に詰めるわけでしょう、わざわざ共同声明の八項に事務レベル会議を書いているから。では、そういうふうに基点はここで、周辺数百海里の場合の周辺とは日本の領土からだと、そう言うのですか。
  422. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 これは八項を見ていただいても御承知のとおり、明らかに日本防衛について、先ほど私が申し上げましたように、日本の「憲法及び基本的な防衛政策」ということでございますので、わが方としては、そういう防衛の基本的政策に従って行っているということを、今後アメリカとの間で、必要であればそのラインで応答していくわけでございます。
  423. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは、総理がプレスクラブで演説をされて、質疑応答のときに同席されておりましたか。
  424. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 おりました。
  425. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 数百海里と総理が言ったときに、英語ではどういうふうな英語を通訳で使われたでしょうか。
  426. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 ここにプレスクラブでの応答の記録がございますが、セブラル・ハンドレッド・マイルズ。
  427. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでやや明白になってきた。フューではない。セブラルである。これは重大な個所である。フューであると大体二ないし三、セブラルは六ないし七、それがアメリカ側の受け取り方である。これは私は、アメリカの大使館のユニホームに行って聞いてきた。数百海里とは一体どのくらいを想定しているのですか。
  428. 塩田章

    ○塩田政府委員 いままでの国会の議事録等をずっと見てみました場合に、数百海里というのは一体数字であらわすと幾らかといった議論がかつてあったことがございます。その際に二百とか三百とかあるいは六百とか、いろいろな数字が出たことは承知しておりますが、いずれにしましても、そういうふうに決められるものではないということで、その後といいますか、最近では数百海里ということで、具体的に数字を挙げて御説明をしない、できないというふうに私ども考えております。
  429. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、外務委員会等で外務省が答えた周辺空域とはここで言う周辺海域の上空でしょうと、そういう簡単なことで済まされるのですか、これは。どうなんですかね。
  430. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 外務委員会でお答えいたしましたのは、先ほど私が申し上げましたように、周辺水域については数百海里、あるいは航路帯にしては約一千海里ということでございまして、当然海上自衛隊として、そういう海域を守るために、なお飛行機というものを整備しておるわけでございまして、その観点から申し上げたわけでございまして、航路帯あるいは周辺水域の全域にわたって航空自衛隊が行動するということを申したわけではございません。
  431. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まあいいでしょう、徐々に聞いていきましょう。  せんだっての外務委員会で、このシーレーンの幅はどうなのかと土井委員が聞いたときに、決まっておりませんと……。しかし、かって私は昭和四十六年十一月三十日に沖繩及び北方問題に関する特別委員会で質問をしました。「南西航路、南東航路は、長さがどれくらいで幅がどれくらいときめているでしょう。具体的に言ってください。」当時の久保防衛局長「南東航路は、東京湾からサイパン方向、ほぼ幅百マイル、長さが千マイル近くになります。それから南西航路は、大阪、九州を経て琉球列島の端まで、幅やはり百マイル程度、長さはちょっと記憶にありませんが、これも千マイル近くではなかろうかと思います。」こういうことで考えておるのでしょう。だから、この前の外務委員会の答弁は非常に不親切ですね。
  432. 塩田章

    ○塩田政府委員 長さの方は大体それでよろしいかと思いますが、幅の方をもし百マイルということで厳密に数字でもって規定するといいますか、表現するということになりますと、実態からいきますと、もっと狭い幅でもできる場合もありましょうし、もっと広い幅で海上護衛作戦を行うという場合もございますので、私どもは幅を何マイルというふうには申し上げておりません。いま御指摘の議事録があることは承知しておりますが、いま私どもはいろいろな機会にこういう席でお答え申し上げておりますのは、シーレーンという場合、航路帯という場合に、帯とか線とかいうような狭い概念では実際上現在はございませんということで、要するに、面的な要素が出てきつつありますというお答えをしております。しかし、それは幅で五十だとか百だとかあるいは二百だとか、そういうふうに申し上げることはむずかしいんじゃないか。作戦の実際の状況に応じて変化がございますものですから、具体的に百というふうには申し上げられないと思います。
  433. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではあなたの先輩である久保局長の答弁を訂正されるわけですか。
  434. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在の対潜水艦作戦から考えまして、かっちり百というふうに受け取られるとすれば、それは訂正させていただきたいと思います。
  435. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この百海里というのは、私は理由があって久保さんは言ったんだと思いますよ。なぜか。日本の持っている能力、それから仮想敵国、もしこれがソ連の場合は、ソ連の原潜等を頭に入れた際に、ソ連の原潜がパッシブソナーを持っているとすると、これの距離は大体数十キロメートルですね。私は、この幅のときにわざわざキロに直して久保さんとやり合ったのですよ。だから幅は、百海里ですから百八十キロですかね。そうなりますね。それから千海里はキロに直せば千八百キロですね。そういうことでやり合いしているんですよ。これはあなたがおっしゃったように、そう簡単に変えられるような内容のものじゃないんです、私に言わせれば。もしそんなことをしたら、その場その場で変えていただいたら、われわれは何のために国会で審議しているかということになるのですよ。だから百海里というのは理由がある。そうすると、たとえばソ連のパッシブソナーが恐らく数十キロ、五、六十キロでしょう。それが半径とすると、幅として考えた場合、まず百キロは超すんですね。それからたとえばソ連だけを言って、鈴木さんがソ連の脅威を言っていますから、私もソ連を例にとると、ソ連のSSを例にとれば、どういう潜水艦がおるかというとウィスキー型、これは在来型でしょう。それからエコーII型、この前火災を起こしたやつですね、これは原潜。ミサイルを積んでいる、シャドック、これは数百キロでしょう。だから、そういうものも考えて、久保さんは百海里と一応考えたんだと思う。理があると私は思うのです。だから、いま局長がおっしゃった点も半分は理がある。そのときそのときによって狭くなったり、広くなったり、百海里よりも広くなる、ぼくはそういうことだと思いますね。新聞等でいかにも細い道がこうなっている。私に言わせると、あの新聞地図は間違いなんですね、もう少し広いんだ。  なお、このとき久保さんは重要なことを言っているのですよ。どういうことを言っているかというと、ただその二つの航路帯だけではだめだ、その航路帯の間を行く商船もあるかもしれない、だから、そこを航行するのも哨戒の対象にする。つまり航路帯の間、現代的に言うならば、あの二つの航路帯、こうなっている、この三角形の面ですわね、すでにここも哨戒の対象にすると言っているんですよ。そのとき、すぐできはしない、そういうことを目標としてやる、すでにそのときに言っている。それをよく覚えておいてくださいよ。だから、グアム以西、フィリピン以北、アメリカが言ってもちっともおかしくないんだ。  統合幕僚会議教範5-0、表題は「海上作戦輸送教範」昭和四十六年二月、統合幕僚会議発行、これは現在も生きていますか。
  436. 塩田章

    ○塩田政府委員 突然のお尋ねで、それが現在、生きておるかどうか承知いたしておりません。
  437. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはまさにこの表題にあるとおり、海上作戦輸送ですね。鈴木総理はナショナル・プレス・クラブの演説会で、終わって質問のときに、海上輸送路防衛に関する質問を受けたときに、この千海里を出したのですね。だから、この教範は関係がある、後で確かめてください。こういうことが書いてあるはずです。「海上作戦輸送は通常制海及び航空優勢を確保して行なう」「航空優勢」というのは、第二次大戦のときには制空権と言ったものです。同じことです。つまり海上作戦輸送というのは、制海権と制空権がなくちゃだめだと言っているのです。そのことをまず私ははっきりしておきたいと思うのです。  そこで、周辺海域と空域に戻りますけれども、その防衛すべき周辺海域の上空と、ここで言う周辺空域というのは、いまの外務省の答弁を聞いていますと、差がありますね。先ほどの局長のお答えでも差があるから、その分は海上自衛隊が飛行機を飛ばしているから、あえて言うならそれも含まれるだろう、差があることは認めますね。
  438. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど北米局長がお答えしましたとおりでございます。
  439. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 海上自衛隊は防空能力がありますか、対潜作戦能力はあるけれども。まあ攻めてきたら撃つ程度のものはある。私の方から言っておきましょうか、海上自衛隊の防空能力。いいですか。これはDDGとかDDに、あるいはDDHにターターを積んでいるでしょう。あるいは短SAM、シースパローを積んでいるでしょう。あるいはせんだって私が問題にしたCIWSを積んでいるでしょう。その程度でしょう。これは防空優勢を保つ、防空能力じゃないですね。     〔愛野委員長代理退席委員長着席〕
  440. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように自艦の、自分の船の防空能力であります。
  441. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 非常に明確であります。つまり海上自衛隊にはいうところの防空能力はないのです。そうすると、いま航空自衛隊が受け持っておるADIZをややなだらかにした、それがいわゆる航空自衛隊が対象空域として防衛をしておる、それからはみ出した分について、航空優勢を保とうと思えば二つに一つしかないですね。共同声明で言うその周辺空域というのをぴしゃっと、あなたがごまかしたような言い方をしないで済むように、もう航空自衛隊の対象空域、そのようにするか、もしくは海上自衛隊にも防空能力を備えさせて、その差を埋めるか、二つに一つしかないですね。どちらにされますか。
  442. 塩田章

    ○塩田政府委員 実際問題としまして、海上護衛作戦を南東航路にせよ南西航路にせよ実施する場合に、どういう航空脅威があるかということをまず考えてみる必要があると思うのですが、いまの御指摘で航空自衛隊のエアカバーを広げるかと言われましたが、これも実際問題全く不可能と申し上げてよろしいんじゃないかと思います。それから海上自衛隊の対空能力、これはもし御指摘が海上自衛隊も要撃戦闘機みたいなものを持つという御指摘であれば、これもいま全然考えられませんし、考えておりません。  それより、いま最初に申し上げましたように、実際にどういう航空脅威があるかといった場合に、わが方の南東航路にせよ南西航路にせよ、それがよその国の侵略、日本に侵略しようとする国の戦闘機の攻撃範囲に入るんだろうかということを考えてみました場合に、実際上そういった必要があるかということもあわせて考えてみる必要があると思うのです。そういう意味で、いま二つの点のどちらかとおっしゃいましたが、私どもいまその二つの点とも、両方とも考えておりません。
  443. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう態度で、六月行って、向こうから聞かれたらどういう返事をするのですか。
  444. 塩田章

    ○塩田政府委員 ハワイ会談とか、あるいは防衛庁長官訪米の際にどういう話が出るか、もちろんまだわかりませんけれども、私ども実際に実務を担当しておるものとしまして、アメリカ側関係者との間に日米共同作戦計画の研究などをやっているわけですが、そういう間でよく意思を通じておりまして、その辺の事情はアメリカ側もよく承知しておるというふうに考えております。
  445. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、結局正確に言おうと思えば、この共同声明で言う周辺空域というのは、航空自衛隊を受け持っている、つまり二十八のレーダーサイトの能力、これは秘密になっているけれども、大体二百海里くらいでしょう。そういう範囲だというふうにぴしゃっと言えますか。できないことはできないと言い、できることはできると言うというのがたしか鈴木総理の言い分でしたね。できないことをどうして言ったのでしょうね。私はそう思うのです。
  446. 塩田章

    ○塩田政府委員 その点は、先ほど北米局長からお答えいたしましたように、航空自衛隊のエアカバーの空域をはみ出した部分は、それを今度共同声明で使ったからといって、それを対空戦闘の空域を広げるという意味で使っておるわけではございませんということを、先ほど北米局長がお答えをいたしたとおりでございます。
  447. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いずれにしても、外務省防衛庁が調整をされたその答弁というのは、北米局長の答弁を聞いても非常に苦しいわけですよ。そんな無理をしてわざわざ差ができたところを、もし海上自衛隊が飛行機を飛ばしているからというのなら、それは対潜作戦のために飛ばしておるのであって、防空のために飛ばしておるのではないのですよ。それをあえて空域と言えば、それもというような――そんなおかしなことは言わない方がいい。相手も素人じゃないのでしょう。だから、その辺はきちっとしておかないと、私は大変なことになると思うのですよ。  それで、昭和三十四年の松前・バーンズ協定は生きていますか……。
  448. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在も生きております。
  449. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 小笠原諸島あるいは南西諸島の防空はどうなっているのでしょう。
  450. 塩田章

    ○塩田政府委員 小笠原諸島の防空につきましては、現在防空体制はございません。南西諸島につきましては、御承知と思いますが、那覇に航空部隊がございますし、幾つかの島にレーダーサイトがございます。そういった防空体制でございます。
  451. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、私はできないと思うけれども、たとえ新しいバッジを入れても、いまのADIZを拡大するということはできないでしょう。なぜならば地球が丸いから、届くところは、まあ高く飛行機が飛んでくるのは別ですが、一定の限界がある。ADIZは拡大できませんね。
  452. 塩田章

    ○塩田政府委員 ADIZを拡大する意図はございません。
  453. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、この航路帯一千海里は、この「海上作戦輸送教範」からいくと、制海権ももちろんだが、航空優勢を保たねばいけない。航空優勢を保てますか。
  454. 塩田章

    ○塩田政府委員 ですからその点は、先ほど申し上げました、そういった航路帯を考える場合に、実際にどういう航空脅威があるだろうかということに尽きるわけでございます。つまり相手方の戦闘機部隊がどんどん攻撃してくるような空域ではございませんので、そういう意味で、航空優勢が保てるかということにつきまして、実際の作戦になった場合に、必ずしもこちら側が戦闘機を持たなければできないような形にはならないのじゃないかというふうに考えられるわけです。もちろんこれは、作戦は実際にはいろいろな形が起こりますから、いま一概に想定して申し上げることは大変むずかしいのですけれども、一般的に言えば、わが方の考えている南西航路にせよ南東航路にせよ、戦闘機による航空脅威というものはないのではないか、少なくとも少ないのではないかというふうに考えられます。
  455. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、この四十六年につくられた教範は、何のためにつくったのです。教範でしょう。あなたは防衛局長かもしれぬが、教範に書いてあることを、そんなことはないのだというようなことが言えるのですか。「海上作戦輸送は通常制海及び航空優勢を確保して行なう」とわざわざ書いてあるのですね。やはり制空権、制海権がなければだめだ。それはたとえばHSSが飛んでいったって、ミンスクがどれだけの飛行機を持っているか知らないけれども、私ども第二次大戦のことも頭にあるし、果たしてこういう航路帯の防衛ができるのか、そういうふうに思えて仕方がないのですよ。  それで、六月の十日から十二日までですか、局長はハワイに行かれますね。北米局長も行かれるのですか。そのときに、事務レベルで何を話をするのでしょうね。つまり五三中業はもう話すことはないじゃないですか。向こうの要求どおり一年前倒しをして五十八年にしたのだから。そして五六中業を五十八年から始めるのでしょう。まくら言葉にはなっても、話の中身はやはり五六中業だと思いますね。そのときに、あなた方はやっとこの前国防会議で、五六中業を研究することはよろしい、中身の承認じゃないのだな。そう承認を受けただけで、いまからやりましょうというときに、五六中業について何が話ができますか。ぼくはできないと思う。そうすると、アメリカ側の要求を聞くだけで、やりとりはあるとしても、その大体の姿を言えば、要求を聞くことで終わることになりはしまいか。私の予測ですが、どうですか。
  456. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、私が行くかどうかは決まったわけではございません。  それから、いま議題についての調整をやっておりますので、いまの時点でどういうことが議題になると、具体的に申し上げられる段階ではございませんけれども、いまお話しの五六中業のことが少なくとも話題になることは当然予想されます。その場合に、何が答えられるかということでございますが、結局どういう話が向こうから出てくるのか、それによっての応答になると思います。基本的に私どもは、いま御指摘のような国防会議の御決定をいただいている段階でございますから、その点については、それ以上のことはお話しできない、それは当然だと思います。
  457. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体私の予測どおりだと思いますね。そうすると、私が心配するのは、五六中業について、まだ中身を詰めていないのだから何の約束もできませんね。向こうの希望を聞くだけになるでしょう。そうすると、向こうの希望を聞いて、さて六月の終わりに今度は大村長官がワシントンに行きますね。ワインバーガーと会うわけでしょう。このときに、ハワイでこっちの要望を聞きましたが、一体どうなりましたかと回答を迫られますね。一体大村さんはどういう交渉ができるのでしょうかね。こう言っちゃ何ですけれども、大変頼りない長官でありますけれども大丈夫ですかね。どういう話ができるのでしょうかね。
  458. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの御指摘の点も、結局どういう話がハワイで出てきて、それにどう対応するかということになるわけでございますが、大村長官訪米されて話をされるときも、結局わが方としてどこまでどういうことが言えるか、それは当然決めて訪米に当たるわけでございます。逆に言えば、それ以上のことは言えないということになるわけでございます。
  459. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 したがって、私はそれでいいと思うのだ。なまじっか数字を挙げての約束は、いま一切できないと思いますよ。変な約束をしてもらったら困るのです。しかし、わざわざ共同声明で、八項目に、かつてない事務レベル会議のことまで決めているということは、だれがお行きになって話をされようと、その結果については鈴木総理が責任を負わなければいけない。だから、非常に客観的に重要なんです。これは、さあ一体何を話をしょうかというようななまやさしい問題じゃないのですよ。妙な話の内容になると、鈴木総理の責任になる。その辺は自覚されているのでしょうね、その重みについて。
  460. 塩田章

    ○塩田政府委員 よく承知しております。
  461. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最後の一問にいたします。  駐留米軍の維持費の増額について、施設でふやされるものはふやすと言うけれども、私はあのリロケーションのときに相当やったつもりだ。あれでも、当時の大平さんが拡大解釈をして、それで統一見解を求めて、やっと歯どめをかけたのです。あれが精いっぱいなんだ。どの条項から、何条から具体的に増額するその根拠が出てくるのでしょうかね。
  462. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 大平答弁は、施設経費についての運用の指針でございまして、しかもそれは代替施設についての運用でございます。したがって、新規に施設を提供する、あるいは施設内に新規に建物あるいは工作物を提供するということは、別に大平答弁の中に含まれておりません。かつ、そのときには、まだそういうような必要性が生じてなかったわけでございますが、その後、施設をより効果的に使うということで、すでに提供した施設の中に新規の工作物をつくるというようなことが行われておりますので、そういう観点から、米側の必要な工作物あるいはわが方として地元の御協力を得ながら地位協定の解釈の上で許されるものについて、今後も駐留米軍の経費について負担をしていくということでございます。
  463. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これでやめますけれども、これは大変なことですね、いまの答弁だと。増額の歯どめは日本の財政問題だけということになるのじゃないですか。地位協定上は、米軍が必要とするものは施設内であれば新規のものはどんどん建てていっていいのだ、解釈上。これは絶対にそういうことはできない。私はあのときに、行政協定の時代から、新規のものはだめだと言って、ちゃんと載っているんだ。それが地位協定に発展して、別に変わってないのです。くどくあのときやったのだ。そういう国会でいままで積み上げてきた貴重なやりとりを、あなたごときが、北米局長ごときが一遍でその解釈を変えるなんということは断じて許されない。これはいずれいろいろな委員会で問題になるであろうと私は思う。私自身もそれは承服できません。  以上で終わります。
  464. 江藤隆美

  465. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 午前来、同僚議員の熱心な質問が続けられてまいりまして、いよいよ私がこれから質問をいたしていくわけでありますが、同僚議員の御協力をお願いしたいということをまず申し上げておきます。  今回議論になっております議題は、申し上げるまでもなく国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案が中心でありますけれども、私は過般の定年制法案のときにも、国際的な立場あるいは高齢化社会の今後の動向、そういった立場から六十歳定年には基本的に反対であるということで各般の議論の展開をしてまいりました。  世に公務員二法というふうに言われておりまして、政府・自民党の方は、今回は是が非でもという意気込みのようでありますけれども、しかし、つらつら考えてまいりますと、たとえば、これから議論します退職金のカット法案、これは退職を控えておるような公務員の方々あるいは引き続いて退職をしていかれる方々にとっては、これは身を切られるような問題であります。  しかも、いま退職を迎えようとしておる人々というのは、おおむね戦後、学校からストレートに、あるいは敗戦に伴う海外からの引き上げその他を通じて公務員になった方々で、定年を迎えるという時期に来ておるわけであります。私も戦後公務員をやっておりましたから、最近でも、親しい人たちが職場で何人かやめられるときには、国会のいとまあれば出るわけであります。退職を間近に控えた人々は、先生、公務員の退職金カットについては、これはぜひひとつがんばって、流してもらいたい。これは率直に言って身を切られるような気持ちで願っておるというふうに思うのであります。  しかも、考えてまいりますと、戦後の時期、公務員給与そのものを見ましても、大体四十年代に来るまでは、いわゆる民間の相当規模以上の方が上回っておる、いわばそういう時代が相当続いた。人勧の完全実施も四十五年以降である。それまでは絶えず値切られてきたというこの状態をスルーしてきておるわけであります。そして、今回の場合で言えば、退職金の減額のみならず、いわゆる定昇問題あるいは特昇問題というふうなものもさらに追加されて追い打ちがかかるという状態になるわけであります。  そこへもってきて、わが委員会の直接の責任の法案でありました臨時行政調査会法案、この法律が通過して、いま動いているわけでありますけれども、これが七月ごろには、補助金その他を含めたいわゆる中間答申、さらに二年間にわたって行財政改革に取り組もうとしておるわけであります。公務員側からすれば、まさに受難の時代を迎えたという実感を持っておるように私は考えるのであります。  しかも、臨調について言えば、高齢の土光さんには大変御苦労さんなことだと思いますけれども、いま動きつつある全体の空気というのは、財界主導型で大きく動こうとしておる。一体、国民の素朴な、まじめな方々が望んでおるような行政の改革あるいは財政の民主化、そういうものが名実ともになされていくかどうかということは、今後に注目していかなければならぬ問題を多く抱えておるというふうに思うのであります。  そういった情勢の中で、総務長官人事院総裁にお伺いをまずしたいのでありますけれども、私もかつて籍を置いた立場から、そういうことは別にいたしましても、行政を預かる責任の立場から言えば、中央地方を通じて、行政機関には将来とも有能な人材というものをやはり集めまして、活力ある、しかも国民的立場に立った公正、妥当な行政が推進をされていくということが望ましいことは、また当然のことであります。いまのような、いわば公務員の受難時代というふうに私は申しましたけれども、そういった中で直すべきは直す、またこれはやはり意見として、将来展望からも、それはやるべきではないということについてはチェックをしていくという姿勢が望まれると私は思うのでありますけれども、公務員の人材登用と、将来の公務員の活力ある行政運営という立場から見て、今後どういう考え方で臨んでいかれようとするのか、これをまず総務長官人事院総裁、それぞれの立場からお伺いをいたしたいのであります。
  466. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま先生の御指摘の点は、先般御審議をいただき、通過成立させていただいた臨調の問題で、財界主導型じゃないかという御意見でございますが、私ども決してそのように受け取っておりません。たとえば労働組合の代表的方々も委員として名を連ねており、私どもとしては、国民の各界、各層の代表の方がお集まりをいただいて、日本が新しい時代へ進んでいくために、高度成長過程において形成された日本のいわゆる国家の行政組織というものが、いかにこれからの低成長時代にあるべきかという御意見を賜るのではなかろうかということで、この答申を期待をいたしておるわけでございます。  また私は、これから先のいわゆる行政のあり方につきましては、やはりこれから相当厳しい時代が日本にはやってくるだろうと考えています。それは産油国でない日本というものが、やはりこれから負わなければならない大きな負い目というものは、年間七百億ドルに上る原油支払い代価というものに、勤労者も経営者もともに自分の身を削らなければならない。大体五十六年度で十五兆円見込まれているわけでありますから、GNPの二百五十兆円の約七%に当たるものが、最低その金額でこれから毎年取られていく。一九八五年ぐらいには、バレル六十ドルになると言われていますから、ますますこれから勤労者と経営者の産油国に対する石油代価の支払いというものは大きなウエートを占めてくる。そういう中で、いかに国民が豊かに暮らしていくかというためには、やはり国民全体が納得できる行政組織というものを打ち立てていく必要がある。ただし、第二臨調というものはあくまでも第二臨調でございまして、あらゆる国民が有権者として参加された国会という場所が最終的な国権の最高機関としての意思決定機関でございますので、私どもとしては、国会の御審議をいただき、国会の御決定をいただいた新しい行政のあり方の中で国づくりをやってまいりたい、このように考えております。
  467. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 いままでもそうでございますが、特に今後行政というものの持つ比重というものがさらに高まりこそすれ、低下するということはあり得ないというふうに思っております。この場合に、私は常に申しておりますが、行政というものは、その本質からいって継続性と安定性を持っていなければならない。それと同時に、いわゆる一般の批判にあるしゃくし定規に陥ってはならないのであって、やはり情勢に対応する弾力性、即応性を持っておらなければならない。さらに第三としては、やはり行政というものは停滞してはなりませんですから、先見性というものを持って運営されていかなければならぬというふうに常日ごろ申しております。またそれは私の確信であります。  その見地から申して、公務に従事する公務員の職責というものは大変重要なものでございます。その点はいままでも本質的に違ったものではございませんが、今後ますますその重要性は増してまいるものと信じておるわけでございます。  したがいまして、この公務の執行に当たる公務員あり方なり心構えというものは、いま御指摘になりましたように、現在いろいろな事情から大変環境が厳しい、先生は受難の時期というふうにおっしゃいましたが、それはともかくとして、大変厳しい環境であるということは、これは間違いのないことでございます。そして公務に従事する者としては当然のことながら、国民の批判というものは、やはり謙虚に耳を傾けて、正すべきものは正していかなければならぬということは当然でございますけれども、一面において、やはり一つ国家的要請として、この重要な公務に従事する公務員というものは、その職責を自覚することは当然ながら、やはり安んじてその職務に精を出していける、しかも、熱意を持って、誇りを持って職責に従事できるという体制づくりが常に必要であろうというふうに考えております。  そういう意味合いをもちまして、特に、公務員については、基本的な労働基本権の制約その他の大きな服務的な規制がございますので、そういうような代償を図る意味からいいましても、人事院の職責は、これまた非常に大なるものがあるというふうに思っております。  従来からも、幸い皆様方の御鞭撻を得まして一生懸命やってきたつもりですけれども、今後はさらに意を新たにして、その重要な職責の遂行のために、なおさら一生懸命に尽くしてまいりたい、かように考えております。
  468. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま人事院総裁からも御答弁がございましたように、国家公務員の場合にいたしましても、あるいは地方公務員の場合にいたしましても、あるいは三公社五現業、公労協の関係の組合員の場合にいたしましても、いわゆる民間との関係で言えば、労働三権そのものをとってまいりましても大きな制約条件を受けておるわけであります。いわゆる争議権は禁止をされる、あるいはまた国家公務員、地方公務員について言えば、団体交渉権あるいは団体協約を結ぶ権利というふうなものは保障されていない、公労協関係について言えば、これは団体交渉権あるいは団体協約締結権というものは明らかに認められておるわけでありますが、それといえども争議権については禁止をされておるという状況下に置かれておるわけであります。しかも国民全体の奉仕者といったような立場で、中立性なりあるいは公平性なり、公正性なり、いろいろな形のものを強く要請されておりますし、同時に、政治活動についても制約を受けておるわけであります。しかも公務員のやるべき任務というのは、これは国、地方を問わず、行政の推進者としてきわめて大きな責任を負っていかなければならぬという立場にあるわけであります。  したがって、これからやられてまいりますこの公務員制度の検討問題、あるいは退職金の今回のカット法案で言えば、一つは、「長期勤続後の退職者等に関する退職手当の特例」として、「勧しょう等により勤続期間が二十年以上三十五年以下の職員が退職した場合に法第三条から第五条までの規定により計算した額に百分の百二十を乗じて得た額の退職手当を支給するものとしていたのを、」これは四十八年改正と言われるものであります。それを「百分の百十を乗じて得た額を支給するものとすること」これは附則第五項関係として改正をされる。  もう一つ、第二番目として「退職手当の基準の再検討」こういうことで、「職員が退職した場合に支給する退職手当の基準については、今後の民間事業における退職金の支給の実情一公務員に関する制度及びその運用の状況その他の事情を勘案して総合的に再検討を行い、その結果必要があると認められる場合には、昭和六十年度までに所要の措置を講ずるものとする」これは附則第十八項関係であります。  そこで、前段の部分は後ほどに議論をするとして、まず第二番目の「退職手当の基準の再検討」ということを特に法文上書いて審議をお願いするという、その基本的な考え方は何かということであります。元来、私も、二十三年の間に、政権を担当しておる与党の責任者としばしば法案の修正の話し合いをした経緯がございます。そして相当数出した中から、これとこれとこれは受け入れられるというふうな形で法案修正になったものはたくさんございます。そういう場合に、私は、かつて漁業災害補償法案というのが出てまいりましたときに、当時長谷川さんが農林水産委員長当時でありますけれども、委員長との修正の話し合いをして、結局これに、附則に検討条項というのをつけたのであります。この場合の検討条項というのは、政府から出してまいりました原案、それから私の名前で出しました党の対案、そういうものの中で、法案の中に政府として直ちに取り入れがたい、それは、二、三年の間にぜひそれを入れたいという気持ちの上に立って、そこで検討条項として政府にある程度法的に責任を負わせるという形をとったわけであります。この場合はまさに前進が期待される検討条項であります。また党の公害特別委員長当時に、公害紛争処理法案につきまして、私は当時の山中総務長官に検討条項というのを入れようとしていろいろ話し合いました。このときは、私の大臣のときにそれを入れて、後任の大臣に荷物を背負わせるというのは非常に困る、私が理事であれば相談をして政府に当たっていくけれどもというような経緯がございましたが、このときは前向きの改正を前提として検討条項をつけようとしたのであります。ところが、この附則の第十八項関係で「退職手当の基準の再検討」というのは、一体公務員労働者から見て期待される方向に行くという再検討なのか、あるいは民間準拠に籍口して改悪の方向に行こうとする再検討をわざわざ法文上あらわして予告をする、そういう意味の再検討なのかというのが、これが法文上にあらわすだけに基本的に問題であります。元来、総理府にいたしましても、人事院にいたしましても、こういう条文をつけなくても、常にこれまでも検討してまいりましたし、これからも検討するわけでございますけれども、特に今回の場合に「昭和六十年度までに所要の措置を講ずるものとする」ということで再検討をやっていこうというねらいと真意は何か、これを明確にしてもらいたい。
  469. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御指摘昭和六十年までに再検討をするというねらいは何か。戦後の日本の行政機構というものが、日本の復興とともにずっと膨張してきた。その中で、法律があるがために切れないものも相当ございます。そういうことで、そういうものをどうしたらいいのか。また公務員制度の中で、ここはこうしてやった方がいい。たとえば、これはもう数年前の話でございますが、学校の先生方は一般公務員と違った、いわゆる教育基本法の精神にのっとってがんばってもらうということで、人確法というものをつくって、公務員一般の方々の給与よりも高めた。いろんな変化というものが絶えず時代に応じて私は出現していると思います。  そういうことで、先ほども申し上げましたように、これからやってくる低成長時代に入っていく国家として、どのようにすれば主権者である国民の方々が納得できる公務員制度であるのか、また公務員のサイドから見て、これだけはこうしてもらわないと国民に対してまじめに奉仕ができない、そういう問題の両面から、私ども政府といたしましては、六十年までにひとつ新しい公務員制度のあり方というもの、こういうものを検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  470. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、この退職手当の基準の再検討というのは、もちろんその再検討していくそのこと自身を全面的に否定しようという立場ではございません。しかし、ここで法的に再検討を明示して審議をお願いをするという政府側の意図は、今回の退職金のカットに引き続く第二弾の改悪を目指すものでないかというふうな懸念を率直に言って持つのであります。その辺のところについては、なだらかな、客観的な、公正な、そういう気持ちで対処していこうというのか、それともまさに私の指摘したとおりであるという考え方でこれからやられようとするのか、そこらあたりを伺いたいのであります。
  471. 中山太郎

    中山国務大臣 まじめに国民のために奉仕をされる公務員の方々の家庭生活が、一つ法律によって激変をするということは決して好ましいことではないと考えております。家庭の生活があって初めて公務員の方々は国民にまじめな奉仕ができるわけでございますから、政府といたしましては、十分その点も含めて今後の検討に携わってまいりたい、このように考えております。
  472. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この「退職手当の基準の再検討」というものを昭和六十年までに進めていく場合の具体的な手法というものをどう考えておられるのか。たとえば、おおむね五年ごとに実施してまいりました退職金の調査がございます。そういうものを、これからは五年に一回ということではなしに、いわゆる六十年に向けてはもう少し調査を詰めてやっていこうということも一つの手法でございましょう。それからそのほかに、いままでの調査の手法について、六十年に向けての検討をやる場合には、やはりもっと調査を強化拡充をしていくというのも一つの方法でしょう。しかも、その場合に、従来からも本委員会で議論がありましたように、私の見解からいってもそういうふうに思うのでありますけれども、いわゆる公務員に入って、それで勤めながらその公務員がやめる時点の退職金までは人事院が勧告権を基礎としてそこでやったらどうか。  大体、人事院は、給与については、民間調査というふうなことで、いつも毎年「民間給与の実態」人事院給与局編、中身に詳しく触れませんけれども、これをずっと人事院発足以来、この調査の対象や中身についてはもちろん変遷がございましたけれども、今日、母集団にして四百二十万、標本にして四十万を対象に民間給与の調査というのをやってきておるわけですね。これは天下に公表されておる。ところが退職金については、引き下げの理由は資料一枚刷り、補足としてもう一枚、これで一〇%カットになります。大体こういうとらの子の退職金を紙の一枚か二枚、国権の最高機関の国会で議論をするときに、議論をやる場合の十分な資料も整備されずに、そして公務員にとっては大変な賃金カットをやろうとする。こういうやり方を今後の退職手当の基準の再検討のときにもやられたのではたまったものではない。  総理府で人事院の方に調査を委託するというのは一総理府の人事局の方では残念ながらそういう体制が組めない。経験豊富な人事院に調査を依頼しなければならぬ。人事院の方では、公務員給与はまさに人事院の死命を制する重要な勧告の問題である。ところが退職金については、総理府の人事局が実権を持っておって、そして権限を持っておる、これは総務長官になるわけですけれども。そして調査だけは御依頼する。こういう形でこれからの再検討の調査をやるというのはいかがなものかというふうに率直に私は思うのです。私の見解から言えば、公務員に入ってやめていくその時点までの、つまり退職金までの時点は、調査能力も持ち、調査体制も持ち、経験も持っておる人事院の方でそれをやってもらう、こういうことが望ましいというのが私の意見です。  これはこの議論をやった最初の委員会のときにも議論がございました。その際に、中山長官の方は渋い顔で、人事院総裁の方は遠慮ぎみで期待をしながら御答弁をされたというふうに私は見ておるわけでありますけれども、そういう議論を私はここで改めて中山長官からも聞こうとは思いません。先般お答えがあったとおりであります。しかし、いずれにしても、人事局の方で実権を握っておる、人事院を調査で使う、こういう形で退職手当の基準の再検討の手法を進めていくということでは、基本的に問題があるんじゃないか。しかもそういう調査については、今回の五十二年調査についてもそうでありますけれども、おくればせながらも、やはり可能なものを官庁の出版として出すべきものだというふうに思う。またこれから再検討のための調査をやる場合も、詳細なものでなくても、ある程度やはりそういう実態かということのわかるような資料というものは、国会のみならず一般の国民の方々にも、このごろは知る権利と言っていろいろそういう法案の問題も出てきているけれども、そういう方向というのが、やはり第二項の改正問題として、まず基本的な構えとしてそういうことがなければならぬ。  つまり、民間給与等の問題については、後ほど若干触れますけれども、税金を取る方の国税庁の総務課編として、毎年「税務統計から見た民間給与の実態国税庁民間給与実態統計調査結果報告」ということで、これは国税庁なりに実に中身のあれが、すぐ総理府で間に合うか、人事院で間に合うかという問題は、調査の手法が違いますから別として、これはこれできちっとした、なかなか内容のある、銭を取る方だから実にそういう立場からきちっとしておる。人事院の調査もこれはこれなりに、人事院は、この給与の実態調査というのは、国際的にも最高水準をいくんだと言って自負しておる。その評価が当たるかどうかは別として、とにかく大蔵省の方でも、そういう必要なものについてはちゃんと出てきておる。人事院の方はもちろん勧告権ということがあるから、これは必ず出しておる。権限だけは総理府が握ったんだけれども、そういうものについては、われわれ国会議員が全体として、五十二年調査、さらにさかのぼれば四十八年の改正の際の事前の調査についてだって、これは両方対比することさえきちんとした資料に基づいてできない。こういうこと自身が問題ではないか。  いまの問題も含め、退職手当の基準の再検討についての、これからの総理府が中心になった手法はどうしていくのか、またそういう再検討を六十年までに所要の措置を講ずるためには大体どの辺をめどにして、どういうふうな具体的な手法で、そして人事院を初め各省の協力をどういうふうにして得ながらやっていこうというのか、やはりそれを明らかにしてください。
  473. 中山太郎

    中山国務大臣 いま先生からの御指摘の点は、こういうふうな法律案を国会で審議をお願いする以上は、国会において直ちに対比ができるような、国際的に誇れるようなデータをそろえて出すべきだ、こういうふうな総理府に対するおしかりあるいは御指摘でございました。この御指摘は十分貴重な御意見として受けとめまして、来るべき昭和六十年をめどにするあらゆる公務員制度の改革に当たりましては、国会の審議で御不自由、御不便をかけることのないような、国際的な誇り得るデータを提出させていただきたい、このようにここでお約束を申し上げておきたいと思います。
  474. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 人事局長と人事院総裁の方から、これからのこういう問題の進め方についてそれぞれどういうふうにお考えになっておるか。いまの大臣答弁だけではきわめて抽象的ですから、せっかくこうやって再検討ということを言っているんだから、どういうプログラムでやられようとするのか、いままではこうやってきたけれども、これからは再検討ということは、どういうふうな手法でどういうふうにやっていこうとするのか、そういうプログラムをもう少し明らかにしてもらいたい。
  475. 山地進

    ○山地政府委員 まず従来からのこういった官民の調整というのをどういうふうにするかということと、それから今後の退職手当あり方というのをどうするのか、この二つが非常に大きな問題であろうかと思うわけでございます。と申しますのは、退職手当、この法律ができてから、これは三十年代にできた法律でございますが、二十年間延々と同じ方式をもって今日まで来たわけでございますけれども、昨今の石油ショック以来の経済変動というものを受けまして、四十八年に、この法律ができて初めて、さっき先生が御指摘になりましたような附則というところに、しかも「当分の間」という言葉を注意深く使って退職手当の官民の調整ということをやったわけでございます。  今回は、それの路線に沿ってやったわけでございますけれども、それは依然として退職手当そのものをどうこうするものではないわけでございます。ただ、昨今の世の中の経済の移り変わり、世の中というのは動いておるものでございますから、しかも人事院の方では六十年度を目指して任用と給与というものについて再検討を十分される、こういうことになっているわけでございますから、そういった給与体系がどう変わるかということあるいは民間の動向が年金の方に移行するのかあるいは第二基本給でいくのか、いろいろと変わりつつあるわけでございますので、この際は、やはり相当根本的な見直しということもやらなければならない。今回の改正の官民の比較ということについても、先生のいろいろな御指摘ございました。それからほかの先生方からもいろいろ御指摘ございました。かつ何年ごとにやったらいいかというようなことももちろんございます。そういったことも含めて、広く御意見を承りながらやっていきたい。私どもとしては、この見直しの規定ができた以上、単に協議をするとかいうことではございません。むしろ積極的な御意見の開陳ということを期待して、私どもは私どもなりに勉強していきたい、かように考えております。
  476. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 いま御審議をいただいております法案の……(角屋委員「さっきぼくが言った点について改めて総裁からも意見があれば」と呼ぶ)意見があればでいいですね。特に……
  477. 江藤隆美

    江藤委員長 簡明に……。
  478. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 簡明に申しますと、六十年ということがございますから、いまのしきたりからまいりましても大体五十八年、五十七年のものについて五十八年に調査をする段階が普通であれば参ります。したがって、それもわれわれとしては腹の中に入れております。  その他に、いま人事局長申しましたように、また私も再三申し上げましたように、基本的な、総合的な見地の検討ということを打ち出しております。それとのにらみ合わせもございます。したがいまして、それらの一環として重要な問題として、この問題に対して対処をしてまいりたいというふうに考えておりまして、先生が言われましたように、あらかじめ今後もさらに退職手当について厳しい方向を出すということを前提にしてやるとか、そういったものではございませんで、虚心坦懐に社会経済の情勢なり、また民間の動静その他の諸般の情勢を総合勘案して検討していきたいということでございます。
  479. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今回の第一項の改悪をやるためのいわゆる調査については、先ほども同僚議員からございましたが、これはこれから触れてまいります。  その前に自治省からもおいで願っておると思いますので、少しくお伺いをしておきたいと思うのです。  公務員批判とか公務員攻撃というのが、やはり昔で言えばお上、これはまあ公務員はトップレベルであれ一般公務員であれ、国民全体の奉仕者という立場から当たらざる批判もあるいは受けて立たなきゃならぬ批判もあろうかと思いますけれども、大体非常にトピック的な公務員批判という、全体に迷惑なそういう問題がやはり出てまいることが多いのであります。  たとえば高級官僚の特殊法人への天下り人事、渡り、そして退職金、これはもう大体毎年必ず出ないことはない。また地方の公共団体の場合で言えば、相当長年勤めた知事や政令都市等の市長、これが退職金を一億もらったとかあるいは二億を超えたとか、そういうことばかりじゃなしに、みんなにそういうふうに報道するだけかと思えば、わが党の飛鳥田委員長が横浜市長をやめるときには、あれもらうのかどうかと言うて盛んにやる。もらうのかどうかと言うて盛んに取り上げられるとなかなかいただけなくなる。また長年勤められた蜷川知事がやめられるときも、あれいただくのかどうかと言う。みんなにいただくのかどうかと言うのなら、これは公平なんだけれども、革新という名で、そういう取り上げ方ももちろんあると思いますけれども、取り上げられた方としては手が出せなくなる。こういう取り上げ方もいささかどうかと思うので、むしろいわゆる地方の知事や大都会における政令都市の市長なんという場合に、相当巨額のものをもらうんだな、公務員はいいな、リーダー格は大したものだ、こういうふうなことにそのまま流されて、こういう問題が是正されずにいくということは問題であると思うのです。少なくとも知事とか市長というのは、これはその県、その市におけるリーダーだから、大体リーダーとして模範を示すという態度がこういうものを決めていくプロセスの中でもあったらいいと思う。また全体の取り扱いとしての是正すべき点については、やはり是正をするという姿勢が必要だと思う。  そこで、自治省に聞きたいのだけれども、最近一億円以上もらった首長の例をひとつ御説明ください。
  480. 大塚金久

    ○大塚説明員 お答えいたします。  昭和五十三年四月以降に都道府県知事に支払われた退職手当のうち支給額が比較的多いものを幾つか、その順に申し上げますと、次のとおりでございます。  京都府、五十三年四月の退職でございますが、二期から七期までの間の分として一億九千八百八十三万二千円でございます。それから長野県、五十五年九月の退職でございますが、一期から六期までの分として一億八千二百八十八万円でございます。それから奈良県知事でございますが、五十五年九月の退職でございまして、一期から八期までの分として一億七千四百六十三万円でございます。それから秋田県、五十四年四月、三期から六期分といたしまして一億三千百二十四万円。それから佐賀県が、五十四年四月、一期から五期分として一億二千三百三十万五千円。  以上でございます。
  481. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、民間の相当規模の社長クラスとかいうのは、まあ同族的な場合はどうであるか知りませんが、そうでない場合の社長クラスというのは、やめるときに一体どれぐらい金をもらってやめるというのは定かでありません。が、いまおっしゃられたように、庶民感情から申し上げれば、一億、二億あるいはそれを超えてくるというのは、もちろん勤続の在職年数の長短にもよりますけれども、やはり庶民感情よりは超えておるということは、率直に言って言えるだろうと思うのですね。  そこで自治省は、昭和五十四年八月十七日に自治給第二十八号ということで、各都道府県知事、各指定都市の市長あてに自治省行政局公務員部長名で通達を出しているのですね。自治省のこの通達というのは、前段の部分は、地方自治の立場から見て、かつての内務省流の意識でいろいろな点に触れていくという点は、少しく基本的に問題であるというふうに思う点もありますけれども、きょう取り上げますのは、その「記」の第六項のところに「特別職の職員の退職手当についても議会の審議等を通じ、住民の十分な理解と支持が得られるものとすべきであること。」こういうふうに通達の中で述べているわけですが、いま取り上げました首長問題について、自治省としては、これまでどういう対応をしてきておられるのか、率直に答弁を願いたい。
  482. 大塚金久

    ○大塚説明員 お答えいたします。  地方公共団体の知事、市町村長等、いわゆる常勤の職員が退職した場合には、各地方公共団体の条例の定めるところによりまして、退職手当が支給されることになっております。  一般職の地方公務員の場合は、地方公務員法が適用されまして、その退職手当決定に当たって地方公務員法第二十四条三項で定める、いわゆる権衡の原則が働くわけでございますが、特別職につきましては、このような法律上の制約はございません。それぞれの職務の特殊性に応じて、議会において個々具体的に判断して条例で決定するたてまえとなっております。しかしながら、その退職手当は住民の税金で賄われるものであり、またその支給基準について、先ほど申し上げましたように、法律上の制約がないだけに、支給の根拠となる条例、予算を納税者である住民の代表で構成する議会で十分審議を尽くして、住民の理解と納得が得られるのでなければならない、このように考えておるわけでございます。  したがいまして、自治省といたしましても、このような観点に立ちまして、先ほど御指摘のございましたように、五十四年八月に「地方公務員退職手当制度及びその運用の適正化について」を通知いたしまして、一般職の職員に対する退職手当の適正化とあわせて、特に特別職の職員の退職手当につきましても、議会の審議等を十分に尽くすよう指導しているところでございます。国、地方を通じまして行政改革が緊要の課題とされ、公務員の給与、退職手当についての国民の関心が大変高まっておる時期でもございますので、今後地方公共団体の特別職の退職手当につきましても、十分住民の理解と納得を得て適正な支給がなされるよう指導してまいりたい、このように考えております。
  483. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これからまだ時間がありますけれども、総理府、人事院以外のところでおいで願っておるところの関係もありますので、質問の順序は少しく前後しますけれども、大蔵省の方に少しくお伺いをいたしたいと思います。  これは、退職所得の税金の問題について早々と触れるというのは、順序上どうかと思いますけれども、しかし、これもやはり重要な問題であります。二十年、三十年勤めて、そしてやめる。そのときに、いまのようにカットされちゃ大変ですけれども、それにしてもやめてとらの子の退職金をいただく。そのときに税金がちょっぴりかかることはあっても、特別の配慮がされて、それが老後の生活設計に十分間に合うということが、本来退職金の税金関係としては望ましいわけですね。そこで、大蔵省もそういう点を考慮されて、私がいただいておる、四十年以降今日に至るまでの間に控除の内容について、たとえば四十年、四十一年のときには、勤続年数一年について五万円だった。これがいま二十年まで一年につき二十五万というのですから大分上がってきておるわけですね。二十年を越える分についてはいまは五十万ですから、最初は勤続年数一年について、四十年、四十一年当時は五万円、最低が二十万円で、ことしは国際障害者年ですが、障害者については障害退職加算というのが五十万円ということになっておったわけです。これは四十年、四十一年。四十二年から四十七年まで、これは十年まで一年につき五万円、十年を越えて二十年まで一年につき十万円、二十年を越えて三十年まで二十万円、三十年を越える分が三十万円、最低が二十万円で、障害退職加算が五十万円。四十八年にも勤続年数についての改正がございまして、十年までが一年につき十万円、十年を越え二十年までが二十万円、二十年を越え三十年までが三十万円、それで最低が四十万円で、身体障害者加算がそれまでの五十万から百万円に上がった。四十九年に二十年までという刻みにしまして、一年について二十万、二十年を越える分が四十万、最低が四十万で障害退職加算が百万で、五十年以降が今日適用されておるわけでありまして、勤続年数が二十年までが一年につき二十五万円、二十年を越える分が一年について五十万、最低が五十万円で障害退職加算が百万円。  こういうことは大蔵省から本来は御説明いただけばいいのですけれども、後の答弁にウエートを置きまして、私から便宜上申し上げましたが、そういうふうにとらの子の退職金については、できるだけ老後の設計に間に合うようにということで改正をされておることは、いま申したとおりですね。一千万をある程度越えてくる。今後ともにカットというのはやめてもらいたいのですが、賃金が上がっていくに従って上昇していくということになると、当然勤続年数の二十年まで二十五万、あるいは二十年を越える分についての一年の五十万、最低五十万。特にことしは国際障害者年ということもございまして、元気な者ならまだ第二の人生を、賃金はダウンする、条件は悪くなるといっても、とてもじゃないが老後の設計が立ちにくいということになればお勤めに出られるけれども、障害者の場合はなかなか、たださえ勤めておることが大変であったろうと思うが、そういう場合は、大体いただいた退職金というのは税金はかからないというぐらいの配慮をしたらいいだろう、そういうふうに思うわけでありまして、この百万というのは、四十八年以降ずっと障害退職加算のやつはそのままなんですね。そういうことも含めて財政再建、どこからか税金を取ろう、こういうことに血眼な大蔵省ですけれども、とらの子の退職金といったような問題については、やはり金額の増高に見合ってこれからも是正されていくということには間違いがない、こういうふうに思うわけですけれども、この点ひとつ今後の問題についてお考えを聞いておきたい。
  484. 内海孚

    ○内海説明員 お答え申し上げます。  ただいま角屋委員から大変詳細かつ正確にお話しいただいたとおり、やはり退職金というものは、長い間勤められまして、恐らく普通の場合には一生に一度もらわれるということで、それなりに担税力が弱いわけですから、税制上最大限の配慮をしているということは、ただいま御理解もいただいたところであろうかと思います。  現在の水準自体について申し上げますと、十分御理解いただいていると思いますけれども、通常の退職金の支払いのベースから言いましてかなりカバーをしております。障害者の問題も言われましたけれども、これを考えましても、通常、労働省等の統計から見まして、支払われております退職金の水準から見て、現在のところ十分な水準であると思っております。もちろんこういうものは未来永劫に据え置くんだということではありません。財政の状況を見ながら、また給与の実態も見ながら考えていくべきものだとは思いますけれども、現在はなはだ苦しい状況にあるということもあわせ御理解いただいて、見守っていただきたいと思うわけでございます。
  485. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ちょっといまの答弁は、最近は財政再建、どこか税金の取れるところは、あるいはカットできるところは、こういう感覚がそのままにじみ出ておりますね。だってあなたはまだいま現役だけれども、やがてもらわれるのですよ。それは大蔵省出身者は税金をたくさん取るというわけにいきませんけれども、これは身体障害者のそういった問題も含めて、やはり二、三十年勤めてやめるときの退職金というのは、とらの子のようなものだと思うのですね。これはカット法案をやっているのですけれども、カット法案だけが退職金でそのまま問題であるということじゃなしに、カット問題はやめてもらいたいと思いますけれども、こういう税金問題というのは、増高に伴って配慮していくということが必要ですね。どうもいまのところは財政再建に血眼という感覚で、いま慎重な答弁をされたと思う。もう一回ひとつ……。
  486. 内海孚

    ○内海説明員 お答え申し上げます。  退職金の実態につきましては千差万別でございます。また税という面でこれをとらえますときには、これは税は低いにこしたことはありませんけれども、やはり全体のバランスを考えていかないといけない面がございまして、たとえば最近、全国法人会総連合におきまして、中小企業でどの程度退職金が払われているかというアンケート調査をしましたところ、全然払っていないというのが一〇%ございます。それから退職金規定がないというのが三〇%近くございます。こういう実態の中で、退職金が相当払われている場合にでも、税制上かなりの措置がとられているという点を御理解いただきたいと思います。
  487. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先ほど私は前段部分で、公務員の戦後三十六年の民間対比での給与という問題については、四十年代に入っていくまで民間の方が相当高くて、その辺のところで追いついて、今日では大体バランスがとれておる。それも入ったとき、中年のとき、やめるとき、最近では若干それぞれの比較はできようかと思いますけれども、戦後そういう賃金の推移になってきたことは間違いございませんか、人事院。
  488. 長橋進

    ○長橋政府委員 人事院勧告制度が発足しましてから三十数年になりますが、その間、勧告の実施状況等から見まして、昭和二十年代におきましては必ずしも勧告どおりは実施されなかったということでございまして、俸給表の面について見ましても、民に比べまして割り安になっておったということでございます。それが三十年代、四十年代を経まして、四十五年完全実施になりましてから、おおむね民間と均衡をとっているという実情になったと思います。
  489. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで、先ほど同僚議員からも質問があったことに関連をしていくわけでございますけれども、退職金調査というのは、最近まで大体五年ごとくらいに行われておる。ところが人事院の民間給与調査でございませんけれども、統計というのは、本来は時系列的にずっと継続していくことが必要であって、中間で切れて、五年ごとあるいは何年ごとにやっていくというのは、流れとして統計の解析をする場合には、統計理論の原則から見てなかなかむずかしいということであります。それは労働省や農林水産省や総理府のように、正式の統計のセクションをつくっておる場合も、これは継続的にずっとやっている。国際的な機関との関連でやっていかなければならぬ、日本の国内的な行政の要請でやっていかなければならぬ、いろいろありますけれども、それは継続的になされておるから学者などの経済的な分析、そういうことができていくわけですね。そういう点で必要度、あるいは五年ごとでおおむねその任務が果たせるかどうかというところの判断もありますけれども、解析をするためには、本来は時系列的に、本格調査と補完調査ということになるかどうかは別として、これは続けていくことが本来必要なんじゃないですか。
  490. 長橋進

    ○長橋政府委員 御指摘のとおり、退職金制度でございますから、制度というものは継続しているわけでございます。そういうことから申しますと、退職金についての実態調査につきましても、できる限り時系列的に調査することが望ましいことだと思います。
  491. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今回の改正のための五十三年の民間企業退職金調査の産業別調査対象企業数というようなことで、いわゆる調査設計ということの基本が出ておるわけでありますが、これは母集団の企業数として二万五千七百七、これを建設業、製造業、卸売業、小売業、金融保険業、不動産業、運輸通信業、電気ガス業、サービス業等、従来からとられておる部門によって分けて、そういうそれぞれの企業数が母集団として存在をしている。そこから調査対象の標本抽出の企業数というのが、先ほども議論されましたように、千人以上のところで五百、五百から九百九十九人のところで五百、百から四百九十九人のところで五百、こういうことで標本抽出をして、それに基づいて調査をやる。結局、書類で返事をもらうのが千社、それから千人以上の企業のものについては、直接聞き取りで調査をやるのが五百社、そこで書類についての回収率は、四十八年改正の前の調査と、今回の五十三年調査を見てみると、前より悪いですね。具体的にどういう数字になっておりますか。
  492. 長橋進

    ○長橋政府委員 四十六年退職者につきましての調査で見ますと、五百人から九百九十九人のところで五七・四%、それから百人から四百九十九人のところで五二・七%ということでございます。今回の調査の回収率でございますが、通信調査によりましたところの五百人から九百九十九人のところでは四三・六%、それから百人から四百九十九人のところでは五〇%という回収率でございます。
  493. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いわゆる書類で回答の来るというのは、いずれにしても四十八年の改正の前の調査でも今回の場合でも、大体半数もしくは半数を割るわけですね。これの根本的な原因は何ですか。
  494. 長橋進

    ○長橋政府委員 通信調査によりました場合の回収率ということになりますと、おおむね五〇%ということでございますので、通信による調査の回収率はその辺のところであろうと思います。この原因につきましては、これはこちらの推測でございますけれども、あるいはその該当者がいない、あるいはたまたま忙しくて返事しないというところ、いろいろあろうかと思いますけれども、つまびらかには追跡して調査しておりません。
  495. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 標本抽出の場合に、千人以上の企業の場合は三分の一の抽出率、五百から九百九十九の場合は四分の一の抽出率、百から四百九十九の場合には四十分の一の抽出率、いわゆる母集団を階層分けして、いま言った三段階に分けて、三分の一、四分の一、四十分の一の抽出率をとっているわけですね。この抽出率についてのとり方はどういう理屈に基づいておりますか。
  496. 長橋進

    ○長橋政府委員 従来からおおむね千五百社調査しておりますので、抽出率につきましては、大体調査対象の事業数もほぼ同じでございましたので、従来の抽出率をそのまま使ったということでございます。
  497. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 統計は一つの統計理論というのがあって、その理論に基づいて、これについて抽出率をこれにするというのには、おのずから理論的な説明が少しくはなければいかぬと思うのですけれども、給与局長も必ずしも統計局長でもなさそうだから、その辺のところはその程度にします。  そこで、書類による調査、それから現実に千人以上の聞き取り調査の場合に、調査の個票というのがあって、調査票ナンバー1、ナンバー2、ナンバー3、ナンバー4、ナンバー5というのがあって、それに基づいて調査を文書と聞き取りでやるという形になったわけですけれども、そこで、これから議論します一つの視点は、公務員の退職金の現状がかくかくしかじかであり、民間の調査をやったら、標本抽出に基づいてやった結果がこういうふうに出てきた。それで同じような対比できるものを対比をしてやるという形に、一応理屈の上ではいくわけですけれども、民間準拠と言うが、御案内のとおり、国家公務員、地方公務員、三公社五現業の場合で言えば、退職の時期の俸給の月額、それから勤務の年数、これは係数がいろいろ三条、四条、五条関係で入りますけれども、それとやめるときの事由、そういうことによってこれはわかりやすいわけですね。ところが、これからお聞きしていくように、民間の場合は退職一時金として支払う、あるいは企業年金としてそのものずばりで支払っていく。退職一時金で払うのと企業年金で払うのとの選択的なもの、要するに併用主義、こういうふうにいろいろあるわけですね。そうすると、制度論として民間準拠と言うても、大手であれ中小企業であれ、民間の方はいわゆる退職一時金ずばりで一〇〇%払われておるわけじゃない。企業年金が導入されてきておる。それがある程度進んできておるという段階にあるのであって、したがって、退職金の場合は簡単に民間準拠という形にはならない。  そこで、こういうことになれば、まず労働省からお伺いをしたいんだが、労働省はわれわれが簡単に資料を読み取る場合に必要な「労働統計要覧」というものを出しておる。これは労働大臣官房統計情報部編として、一九八〇年度版のものを今度の問題に関連してずっと見てみたのですが、それは別として、いま言いました退職金制度の形態別企業数の割合、これは企業規模が三十人以上ということで、昭和五十年と五十二年、五十三年については規模別に分け、あるいは企業別、それから業種別、こういうことで出ていますね。これをひとつ簡単に説明してもらいたい。
  498. 八島靖夫

    ○八島説明員 お答えを申し上げます。  ただいま先生の御指摘のございました統計は、労働省の行っております退職金制度調査のことでございます。これは昭和五十年及び昭和五十三年にそれぞれ実施しております。  この調査結果によりますれば、最近時点の、五十三年分の調査の数字をとってみますと、退職金制度を有しておる企業は、全体の九九・二%であるということになっております。それからその退職金制度を有しております企業数を一〇〇といたしまして、その内訳を見ますと、一時金制度だけで運用しておるというのは六二・一%でございます。それから年金制度だけで運用しておると申しますのは一六・四%でございます。さらに一時金制度と年金制度と併用しておるというのは二一・五%でございます。ただ、この内訳はやや複雑でございまして、年金制度がありましても、たとえばそれを一時金制度として受け取ることができるもの、あるいは一時金としては受け取れないものというようにいろいろなバラエティーがあるという状況が示されておるわけでございます。
  499. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで、今度の人事院が行いました調査の調査票の一番目を見ますというと、これは「退職金制度の概要」ということで、退職一時金制度の内容の調査がずっと項目別に書いてあって、並行して企業年金制度についての調査が右半分にあって、そこで、そういう企業年金制度があるかないか、それから調整年金があるか、適格年金があるか、自社年金があるかということで、支払い準備形態として調整年金、適格年金、自社年金というふうなことの調査があり、また企業年金の設立目的として、厚生年金の上積み、退職一時金の増額、従来の退職一時金の全部または一部の振りかえ、退職一時金制度を新設するかわりに設立、その他、こういうことで御調査されたわけですね。  いま労働省から、退職金でいっておるもの、年金でいっておるもの、退職金、年金の併用のもの、こういうことがありましたが、今回の人事院がやりました調査の個票でも、企業年金制度についての調査をやっておるわけですが、退職一時金制度のみ、企業年金制度のみ、退職一時金制度と企業年金制度併用、これはどういう姿になっておるか、お知らせを願いたい。
  500. 長橋進

    ○長橋政府委員 集計は九百二十五社でございますが、退職一時金制度のみというところが三百六十四社ということで三九%、それから企業年金制度のみのというところが五十二社でございまして、五・六%。それから退職一時金制度と企業年金制度を併用しておるというところが五百九社でございまして、構成比といたしましては五五%ということになっております。
  501. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 つまりいわゆる公務員関係、それと民間というものを見る場合に、月々いただく給与のような場合は、これは高くもらっておるか、ころ合いにもらっておるか、安いかは別として、職種別にもいろいろまた違ったあれがありますけれども、おおむねそんなに極端な制度的な差はないと思うのですね。ところが退職金を民間準拠で調べると言ってみたって、いま話が出ましたように、要するに退職一時金で公務員の方はいっておる。それに対して民間の方は、人事院の五十三年調査で言えば、退職一時金制度のみというのは三九・四%、企業年金制度のみというのは、これは人事院調査では少なくて五・六というのですが、その両者の併用というのが五五%ということになっておる。そうすると、これはいわゆる簡単な民間準拠ということにならない。同時に、これから先ほど触れた退職金の再検討問題というときにも、その簡単な、頭のよくないのが単純に民間準拠、民間準拠というような調子にはいかない。総合的にどうするのかという問題を、当然給与の問題と違って退職金問題は含んでいく。これを今回身の切られるようなカットをやろうとしておるのだが、ここのところは、調査の結果、対比する過程でどういうふうに処理したのか、お伺いしたい。
  502. 山地進

    ○山地政府委員 いま対比ということでございますけれども、この調査の結果、年金部分に当たるところを現価にいたしまして、一時退職金と合わせて計算してあるわけでございます。したがいまして、企業年金化しているというところは、企業負担部分でございますけれども、それを現価額を計算いたしまして、その一時退職金と合わせて比較しているということでございます。
  503. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 調整年金、適格年金について大蔵省、労働省から、民間の労働政策なりあるいは税務上の税制の措置なりといった問題についてもお伺いするつもりでおりましたが、時間の関係でお帰り願って結構でございます。  先ほど申した「税務統計から見た民間給与の実態」ということで、国税庁の総務課で出しておる昭和五十五年九月の資料によりますと、十八ページのところに、いま申しました母集団の階層分けに関係があります業種別の平均給与というのがグラフで出ております。これを見ますと、金融保険業が賞与を含めて三百五十七万円、運輸通信公益事業が三百二十七万円、以下ずっとそれぞれの業種が出ておりまして、最後の繊維工業のところへ来ると二百十九万円、これは給料、手当に賞与を含んだ形で出ておる。つまり業種別のそれぞれのセクションにおける平均給与ということから見ますと、民間の場合でも、大蔵省の調査で金融保険業の三百五十七万円から織維工業の二百十九万円まで、やはり相当に平均給与が違っておる。これはもちろん、男女の構成がどうなっておるか、あるいは学歴の構成がどうなっておるか、あるいは年齢構成がどういうところに厚みがあるかということを見ないと、平均給与だけではわかりませんが、いずれにしても、こういうふうに違っておるし、同時に、こういうものの資料とかいろいろなものを考えてまいりますと、ちょっと総理府と人事院にお伺いしたいのですが、いろいろな調査をやる場合に、各省でそれぞれの目的から調査をやっておる面がありますね。今度の退職金について言えば、人事院が委託されてやったような調査、労働省がやっておる調査、中労委がやっておる調査、生産性本部がやっておるような調査、あるいは東京都の民間のところでやっておるような調査もある。いろいろあるわけですね。そういう中で、特に政府関係機関というのは、それぞれの省によっていろいろ目的があるのだけれども、そこのところはもう少し横の関係の連絡をとって、こちらの方から言えば、こういうところをもう少し調べておいてもらいたい、また他から言えば、その機会にこういうことを調べてもらいたい。統計は共通性を持つといいましても、目的別によってこれは若干違うかもわかりませんが、そこらあたりは総務長官、大臣として、総理府には統計局もあるわけですけれども、各省間のそういう問題について、あるいは退職金や公務員制度の問題、給与の問題をこれからいろいろやっていく場合には、そこのところは、各省の機能を補強したり補完をしたりしながら、もっとこれを活用していくということが必要なんじゃないかと思うのですが、その辺はどうです。
  504. 中山太郎

    中山国務大臣 先生の御指摘は、私はまことにごもっともだと思います。幸い総理府には統計局がございますので、統計情報の調整に努力をいたし、先生御指摘のような関係各省庁あるいはまた民間の公的機関の調査等も、次期からのこういうふうないわゆる法案の審議に当たりましては、十分御検討いただくようにやってまいりたい。  ただ、その場合に、先生も御指摘のように、データをつくる場合のサンプルのとり方というものには、ある程度の整合性というものがなければ、出てきた統計にはいろいろ問題点が出てこようかと考えておりますので、その点も十分留意いたしまして、今後御趣旨に沿うように努力をしてまいりたいと考えております。
  505. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは、これからの臨調でもそうでありますし、行管を中心に政府自身もそうでありますけれども、縦割り行政の弊害といいますか、それを統計なら統計のセクションにおいても、これから中期展望に立ってどう改革をしていったらいいのか。これは、これ自身行政とかかわって非常に大きな問題だと思うのです。ぜひそういう視点で、今回総理府が中心になって、人事院の協力を得てやっていく問題についても、長官は大臣として、それぞれやっておる点で、特にこれからこういう点をという点は、やはり総合的に運営として配意してもらいたいと思います。  そこで、私は大臣にお伺いしたいのでありますけれども、退職金という問題で、公務員と民間は、先ほどのように、民間では企業年金がだんだん進んできておる。その場合に、これは私の考え方として思っているのですけれども、公務員がやめるときには、民間がとっているような企業年金の併用とかあるいは企業年金に切りかえていくというのは、これは基本的に問題があると思うのです。大体そういう問題というのは、公務員でいえば共済年金、いわゆる公的年金としての共済年金というものは、やはりきちっと充実してもらわなければいかぬ。それから老後の生活設計、いろいろなプログラムの補完としてのとらの子の退職金というのは、今後ともこういう形で進んでいくのはいいと私は思うのです。民間が企業年金併用主義からだんだん企業年金にウエートが変わっていくから、民間の方は厚生年金プラス企業年金ということによって、政府自身もそれで年金に追い足ししてもらえれば、これから高齢化社会の中で、全体を合わせたものとしては、国際的な点から見ても、これぐらいのかさになるじゃないかというふうなことに悪用されてはいけないと私は思うのでありまして、だから、公的年金というのは、本来やめてから以降の基本になるもので、民間でいえば企業年金は三つに分かれておりますが、伸びる傾向にありますけれども、これはあくまでも補完である、できればやはり退職一時金としてもらうというのが基本だろうと思います。  ただ民間の場合、一遍にたくさんの金を出すのをなし崩しにという資本の原理、企業の原理が、民間のこの企業年金の導入に入っておると思うのです。公務員の場合は、民間にそういう趨勢があっても、簡単に民間準拠というのではなしに、公務員の場合は一つのスタンドポイントとしての見解が成り立つならば、これについては公務員は従来どおりの考え方でいく。ただ相対として、企業年金や併用主義のものを、換算の方法がありますからこれで換算してみて、そこで対比してみて大きな懸隔があるかどうかということはもちろんやらなければならぬけれども、今日、公務員労働者の場合は、やはり退職一時金はそのままでいってもらいたいというのが多いのじゃないかと私は思うのですが、給与担当の大臣として、先ほどの再検討のところには、民間とかいろいろなことが書いてあって、これから総合的に検討するというのですけれども、考え方の基本はどうですか。
  506. 中山太郎

    中山国務大臣 民間企業におけるいわゆる企業年金と退職金との関係、また公務員における共済年金と退職金の関係、またこれからの企業形態の中では、民間サイドにおいてもいろいろと変革があるいは行われるかもわからない。こういう中で、私どもといたしましては、公務員制度審議会とか、いろいろ関係の方々の御意見、また組合の方々の御意見を十分ちょうだいしながら、適時御相談をして、よりよき方法を求めてまいりたい、このように考えております。
  507. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 オブラートで包んだような答弁で、はっきり考え方の中心がわかりかねますけれども、私はやはり公務員の場合の考え方からいけば、特に今日退職を迎えておる人々というのは、先ほど冒頭から言っておりますように、また人事院当局からも御答弁があったように、戦後民間より相当おくれた給与の状態の中で四十年のかかりごろまで来た。そして大体バランスがとれるようになった。そして今度はカットという非情な攻撃がかかってきておる。それで再検討というのは、このごろの政府・自民党の考え方から言うと、第二弾攻撃がそこでかかってくるのではないか。それに目の前に控えておるのは、臨調が財界主導型で、給与から退職金から年金までやるというようなことで網を広げたようなことを言っている。きょうは行管からは呼びませんでしたし、また別の機会にと思いますけれども、これもまた困ったものだと思うのだが、それについては人事院総裁が生涯年金問題での見解を別の機会に述べておりました。  いずれにしても、これから有能な人材をやはり行政機関に確保して、活力ある行政職場の状態の中で国民の要望にこたえていくという体制をつくるというのがまず基本なのです。そういう立場で、今回の問題も、これは私どもから言えば、いままでの議論で十分――出したのは不心得でございましたといって撤回をしてもらうということが一番望ましいのですけれども、同時に、私はダブルパンチと当面のもので思うのは、同僚議員からも触れましたけれども、ここでカットをされる問題と退職時の特昇の問題が、これはまたすでにやろうとして追い打ちがかかっておる。それに昇給延伸、停止措置の追い打ちがかかっておる。だから、二重、三重の追い打ちがかかっておるし、これからも相当シビアな情勢が場合によっては訪れるかもしらぬ。こうなれば、戦後苦労してやってきて、ここでやめようという時期にある者としては、こういう退職金カットの法案に対しては、これは絶対流してくれ、何とか通らぬようにしてくれというのは、私はこれは当然の心情だというふうに思うのです。  先ほど来、他の野党の質問の中で、これから退職金の減額の問題をどうするかというふうなことについての御質問もございましたけれども、退職金の取り扱い、これからの再検討問題、単純な民間準拠でなしに、公務員制度として、あるいは公務員の退職金として、かくあるべきが本来であろうというふうな問題については、関係労働組合の意見や態勢も十分判断をしながら、そういう意向に逆行して、あるいはそれに対抗して、簡単な民間準拠で改悪の方向をさらに追い打ちをかけるというようなことがないようにぜひ要望したいと思うのです。  この際、まず人事院総裁から、給与は全体として関係あるわけですから、いままでの論議に対して人事院総裁としての御見解、それから締めくくって給与担当の大臣として総理府総務長官から御答弁をお願いして、私の質問はこの辺のところで大体結びにいたしたいと思っております。
  508. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 大変御専門の立場から問題点の御指摘がございました。われわれも拝聴をいたしまして、これから参考にさせていただきたいと思っております。  いまお話の中にありましたように、私もやはりあり方としては、ここで生涯給与の問題は蒸し返して取り上げませんが、給与というものとそれから退職手当、退職年金との対比というものは、それぞれ別個に均衡をとってやるべきであろうというのが正しい道だろうと思うのです。その場合に、退職金と言われておりますものは、やはりあるべき姿としては一時金ということが望ましい、また年金というのは、いわゆる公的年金を主体にしてやっていく、そういうところで初めて比較というのも公正が期せられるというふうな感じがいたします。ただ、これはお話にも出ておりましたように、企業の関係ではそうばかりはいかぬぞ、これは年齢も大変高くなっていく、あるいは退職年齢も伸びていくというようなことになってまいりますれば、そこにおのずから企業原理といいますか、収益原理といいますか、そういうものを無視するわけにはまいらないというような要請が出てまいりまして、そこに企業年金的なものを退職手当にプラスしてやっていくというような形も出てくるわけであります。  そこで、今後の問題点としては、あるべき姿である一時金と年金ということの姿を描きつつ、その間において、やはり企業年金というような形でもって出てまいりますものの傾向、その内容、したがって、それの中で一時金としての制度にどれくらい取り入れられるか、その合理性があるものについてどういうものがあるかというような点についても、相当本腰を入れて取り組んでまいらなければならない時期が来ておるのではないかと思います。  いずれにいたしましても、公務員の処遇というものは大変大事でございまして、これは国民一般のコンセンサスという点を除外はできませんが、その間において、やはり処遇改善というものは着実にやっていかなければならぬ、そういう基本的な姿勢のもとに、今後とも私たち人事院としても大いに努力をしてまいりたい、かように考えます。
  509. 中山太郎

    中山国務大臣 きょうは先生から大変貴重な御意見を賜りました。総理府の立場といたしましても、きょうの御意見を職員一同十分踏まえて、これからの公務員の老後の生活をいかに確保するか、そういう面に当たって、いま人事院総裁が申しました点も含めて十分検討し、安心して公務に尽瘁していただけるような、いわゆる公務員の生涯体系というもののプランニングに努力をいたしたい、このように考えております。
  510. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 どうもありがとうございました。
  511. 江藤隆美

    江藤委員長 次回は、来る十九日火曜日午前十時理事会、十時半から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時七分散会