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1981-05-12 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月十二日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左近四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       狩野 明男君    粕谷  茂君       亀井 善之君    川崎 二郎君       木野 晴夫君    倉成  正君       田名部匡省君    竹中 修一君       宮崎 茂一君    上原 康助君       角屋堅次郎君    矢山 有作君       渡部 行雄君    市川 雄一君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         任用局長    斧 誠之助君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         総理府人事局長 山地  進君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         労働大臣官房審         議官      松井 達郎君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   林  博男君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     中島 忠能君         自治省行政局公         務員部給与課長 大塚 金久君         自治省行政局公         務員部福利課長 柳  克樹君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 五月八日  国の行政機関職員等に対する営利企業への就  職の制限等に関する法律案中路雅弘君外一名  提出衆法第三六号) 同日  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願柿澤弘  治君紹介)(第三九六三号)  同外一件(白川勝彦紹介)(第三九六四号)  同(大橋敏雄紹介)(第四〇一六号)  同(沖本泰幸紹介)(第四〇一七号)  同(斉藤滋与史君紹介)(第四一一二号)  公務員退職手当削減定年制導入反対等に関  する請願(榊利夫君紹介)(第三九六五号)  同(中路雅弘紹介)(第三九六六号)  戦後ソ連強制抑留者に対する補償に関する請願  (佐藤文生紹介)(第三九九三号)  国家公務員退職金削減定年制導入反対に関  する請願岩佐恵美紹介)(第三九九四号)  同(中路雅弘紹介)(第三九九五号)  同(三浦久紹介)(第三九九六号)  同(佐藤誼紹介)(第四〇一八号)  同(土井たか子紹介)(第四〇六四号)  同(湯山勇紹介)(第四〇六五号)  平和憲法擁護等に関する請願(有島重武君紹  介)(第四〇〇九号)  同(大久保直彦紹介)(第四〇一〇号)  同(大野潔紹介)(第四〇一一号)  同(長田武士紹介)(第四〇一二号)  同(鈴切康雄紹介)(第四〇一三号)  同(竹入義勝君紹介)(第四〇一四号)  傷病恩給等改善に関する請願中曽根康弘君  紹介)(第四〇一五号)  重度重複戦傷病者に対する恩給の不均衡是正に  関する請願愛野興一郎紹介)(第四〇一九号)  同(高村正彦紹介)(第四〇二〇号)  同(田名部匡省紹介)(第四〇二一号)  同(田村元紹介)(第四〇二二号)  公務員退職手当削減反対等に関する請願(上  田哲紹介)(第四〇六一号)  外地派遣軍属処遇改善に関する請願外一件  (箕輪登紹介)(第四〇六二号)  同(田名部匡省紹介)(第四〇六三号) 同月九日  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願武田一  夫君紹介)(第四一三二号)  同(薮仲義彦紹介)(第四一七七号)  同(小渡三郎紹介)(第四二四七号)  同(田川誠一紹介)(第四二四八号)  同(長野祐也紹介)(第四二四九号)  同(山下徳夫君紹介)(第四二五〇号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願中島武敏紹介)(  第四一七八号)  国家公務員退職金削減定年制導入反対に関  する請願小林政子紹介)(第四一七九号)  同(中路雅弘紹介)(第四一八〇号)  公務員退職手当削減反対等に関する請願(榊  利夫君紹介)(第四一八一号)  同(中路雅弘紹介)(第四一八二号)  同(上田哲紹介)(第四二五一号)  同(長谷川正三紹介)(第四二五二号) 同月十一日  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願奥野誠  亮君紹介)(第四三〇三号)  同(永末英一紹介)(第四三四〇号)  同(伏木和雄紹介)(第四三四七号)  同(高鳥修紹介)(第四三八四号)  同(中川一郎紹介)(第四三八五号)  同(平石磨作太郎紹介)(第四三八六号)  傷病恩給等改善に関する請願木村俊夫君紹  介)(第四三〇四号)  同(愛野興一郎紹介)(第四三四八号)  同(大原一三紹介)(第四三八七号)  同(金子一平紹介)(第四三八八号)  同(佐々木義武紹介)(第四三八九号)  同(中村正三郎紹介)(第四三九〇号)  同(小山長規紹介)(第四四六七号)  外地派遣軍属処遇改善に関する請願永末  英一紹介)(第四三四一号)  公務員退職手当削減反対等に関する請願外一  件(飛鳥田一雄紹介)(第四三四九号)  同(中路雅弘紹介)(第四三九一号)  同(長谷川正三紹介)(第四四七〇号)  戦後ソ連強制抑留者恩給加算改定に関する請  願(伊藤公介紹介)(第四四六〇号)  戦後ソ連抑留中の強制労働に対する特別給付金  支給に関する請願伊藤公介紹介)(第四四  六一号)  引揚者等に対する特別交付金支給に関する法  律の一部改正に関する請願伊藤公介紹介)  (第四四六二号)  国家公務員退職金削減定年制導入反対に関  する請願木島喜兵衞紹介)(第四四六三  号)  同(中西積介紹介)(第四四六四号)  同(長谷川正三紹介)(第四四六五号)  重度重複戦傷病者に対する恩給の不均衡是正に  関する請願河野洋平紹介)(第四四六六  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十二日  靖国神社公式参拝に関する陳情書  (第一七二号)  同外二十六件  (第二〇八号)  靖国神社公式参拝及び国家護持反対に関する  陳情書  (第一七三号)  同和対策事業特別措置法改正に関する陳情書  (  第一七四号)  旧軍人・軍属恩給欠格者に対する恩給法等の改  善に関する陳情書  (第一七五号)  同外十件(第二一〇  号)  青少年の非行防止に関する陳情書外一件  (第一七六号)  同(第二一二号)  引揚者在外資産補償立法措置に関する陳情  書  (第一七七号)  同和対策事業特別措置法期限延長に関する陳  情書外十四件  (第二〇九号)  国家公務員退職金削減定年制導入反対に関  する陳情書  (第二一三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出、第九十三回国会閣法第六号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、  第九十三回国会閣法第七号)  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、第九十三  回国会閣法第九号)      ――――◇―――――
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  国家公務員法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 相当時間をかけて審議されてまいりました国家公務員等にかかわる定年法案については、すでに各同僚議員の方からいろいろとお尋ねがありまして、お尋ねする点も重複する面あるいは二番、三番せんじとなってくる面もあろうかと思うのですが、しかし、まだ政府なり人事院あるいは自治省関係省庁等の御見解を十分たださなければいかない重要な点が相当残っておりますので、きょうは総務長官初めの人事院総裁、各関係者の誠意ある御答弁をまず求めたいと思います。  そこで、これまでも取り上げられてきたことではありますが、この定年法案対象となる職員はどのくらいあるのか、それぞれ明確にしていただきたいと思います。
  4. 山地進

    山地政府委員 定年制度が実施される場合に同制度適用される公務員の数でございますけれども一般職国家公務員の数は昭和五十五年三月三十一日現在、給与法の適用のある職員が五十万五千九百二十六人、それから五現業、企業職員でございますけれども三十四万八千二百九十四人、合計八十五万四千二百二十人になるわけでございます。
  5. 中島忠能

    中島説明員 地方公務員につきましては、昭和五十五年四月一日現在で申し上げますと、地方公務員法適用職員が二百五十九万九千二百九十二人、地方公営企業労働関係法適用職員が五十五万二千八百六十六人、合計三百十五万二千百五十八人ということでございます。それ以外に県の教育長というのも適用になりますので四十七人がございます。
  6. 上原康助

    上原委員 いま明らかになった点でもざっと四百六十万人程度、それに防衛庁関係も入るわけですね。それはどうなりますか。——後ほどのお尋ねの面で明らかにしていただきたいのですが、これだけ四百数十万の地方公務員を含めて公務員関係者身分というか、あるいは労働条件に重大な影響を及ぼす定年法案であるということは、大きな社会問題であると同時に公務員制度にかかわる重要事項だと言って差し支えないと思うのです。  そこで、私がなぜこの点をお尋ねするかといいますと、せんだって大出先生の方からもお尋ねがあったと思うのですが、国家公務員定年制問題について一総務長官——総務長官と言うと語弊があるかもしれませんが、総務長官書簡人事院総裁見解を求めて、人事院総裁もまたその書簡に対して書簡で回答を出した。私は、これは本来筋が通らないというか問題を残すことになっていると思うのですね。なぜこういう形式をとったのか、改めて総務長官並びに人事院総裁見解を求めておきたいと思うのです。
  7. 中山太郎

    中山国務大臣 いま先生からどういう経過総務長官がこういうふうな書信を人事院総裁に送るという経過をたどったのかというお尋ねでございますが、政府は、昭和五十二年に国家公務員定年制を導入するという閣議決定を行っております。その閣議決定を行いました後で、やはり定年制というものは公務員身分に関することであるということで、この国家公務員法の中に指定されている人事院中央人事管理機構中立的機関である人事院意見を求めることが必要であるという認識に基づいて、総務長官かち人事院総裁書簡を送ったという経過を持っておりますが、これは閣議決定に基づきまして、政府統一的意思のもとに、定年制度を含む公務員制度を預かる総理府府務の整理に当たる総理府総務長官から発したものでございまして、いわゆる総理府設置法に基づいた一つの資格において書簡を発信したというふうに御理解をいただきたいと思います。
  8. 藤井貞夫

    藤井政府委員 総務長官書簡発出の経緯については、ただいま御説明があったとおりでございます。そのとおりであると私も了承をいたしておるのであります。これは政府の代表、いわゆる統一的見解として総理府の方から人事院意見を聞きたいという書簡の内容でございました。そういうふうに受けとめましたので、事柄公務員身分に関する重要な状況でございますので、大変慎重に従来も検討を加えておった問題であり、これを契機にして人事院見解を明らかにすべき時期であるというふうに判断をいたしました結果、総理府総務長官からの御書簡がございましたので、その御書筒に対する返書という自然な形をとりまして人事院の公式の見解をお示ししたということでございます。
  9. 江藤隆美

    江藤委員長 先ほどの防衛庁の人員、ちょっと報告させましょうか。
  10. 石崎昭

    石崎政府委員 防衛庁の数、ちょっとおくれまして失礼いたしました。二万七千二百六十五名であります。
  11. 上原康助

    上原委員 政府統一見解に基づいた書簡であったので、それに対して書簡で答えたということですが、しかし人事院は、確かにいま総務長官から御答弁がありましたように、五十二年の十二月に閣議決定がなされて、その際、職員の分限にかかわる問題として意見を求めたいと人事院に問い合わせをして、それに対していまおっしゃったような五十四年段階になされるわけですが、しかし、五十三年段階では人事院定年制問題について非常に慎重な態度をとっておりますよね。これが昨年の公務員給与勧告問題と密接にかかわったということ、あるいは行政改革の問題と絡めたといいますかリンキングされたということ等々考えますと、定年制というものが四百数十万の地方公務員を含めて国家公務員身分にかかわる、しかも強権力で解雇を余儀なくする制度を導入するわけですからね。そうであるとするならば、確かに人事行政を預かる担当大臣というか、それは総務長官かもしれませんが、総理府の本当の所管大臣というのは総理大臣ですね。失礼ですが、総務長官は一国務大臣にしかすぎない。合議体である内閣意思であるとするならば、できればこれは総理大臣名でしかじかの見解を求めたいということをやるのが私は筋だと思うのです。同時に、そうでなければ官房長官の名前でなければいけないと思う。この件については、これをきわめて安易に取り扱ったというところに、今日のこの定年制にかかわる問題がなお非常に多くの疑問点が解明されないままに進行しようとしている一つの要因にもなっていると思うのですね。この点どうお考えなのか。  同時に、この間から問題になりましたように、四月十六日でしたか、衆議院の本会議内閣総理大臣は、この定年制問題についてのお尋ねに対してこういうふうに答えておるわけなんですね。その会議録はまだ出ない。国家公務員定年制法案人事院との関係及び改正法案趣旨についてお尋ねがありました。この法案は、一昨年八月の人事院総裁書簡に盛られた人事院公式見解に基づいて取りまとめられたものでありますが、政府としては、この書簡は実質的には勧告ないし意見申し出と同じものと受けとめているのであります。だから、人事院総裁書簡というのはきわめて重要に取り扱われているわけですね。これは当然と思うわけです。これだけ重きをなすものである。しかも政府としては、この書簡は実質的には勧告ないし意見申し出と同等の同じものと受けとめている。総理大臣がこういう見解を本会議答弁をしているわけですね。そうであるとするならば、人事院は少なくとも国家公務員法に基づく、いわゆる第二十三条のおいて堂々と内閣国会に対して意見申し出をやるべきじゃなかったのか、こう思うのですがね。これが本来とらるべき処置だったと私は思うのです。このことについては人事院総裁総務長官はどういうふうにお考えですか。
  12. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほどの御質問の重ねてのお尋ねでございまして、内閣総理大臣あるいは官房長官からの書簡が当を得たものではないかというふうな御指摘でございますが、総理府総務長官といたしましては、国家公務員法第十八条の二「内閣総理大臣は、法律の定めるところに従い、職員の能率、厚生、服務等に対する事務をつかさどる。」その二「内閣総理大臣は、前項に規定するもののほか、各行政機関がその職員について行なう人事管理に関する方針、計画等に関し、その統一保持上必要な総合調整に関する事務をつかさどる。」総理府設置法、しかもこれで第十九条の第三項に「総務長官は、内閣総理大臣を助け、府務を整理し、並びに総理府所管事項について、」つまりこの公務員身分等について所管事項について「政策及び企画に参画し、政務を処理し、各部局及び機関事務を監督する。」こういうふうに規定をされておりますので、この規定にのっとって私どもといたしましては処理をいたしたというふうに存じております。  なお、いま人事院総裁所管の問題にお触れになりましたが、総務長官といたしましては、この中央人事機構管理機構最高責任者である人事院総裁書簡総務長官に送るということは、先ほどお話し申し上げたように、閣議決定に基づき法律の定めるところによって総務長官の発信した書簡に対する返信でございますので、私どもといたしましては、きわめて重要な重みを持っているものだというふうに理解をいたしたわけでございます。
  13. 藤井貞夫

    藤井政府委員 人事院が公式の見解を表明する形式といたしましては、いま上原委員からもお話しになりお触れになりましたように、法令改廃に関する意見申し出という形式と、それから勧告という形式二つがございます。人事院が独自の調査に基づいていろいろ分析、検討いたしました結果、現行の公務員制度に関する法令についてその改廃を行うべきであるという結論に達しました暁には、自主的に判断してやる方式といたしましてはこの二つがあるわけでございましょう。  ただ、今回の場合はるる総務長官からも御説明がございますように、総務長官政府を代表する所管大臣としてこれについての見解を聞きたいということを人事院の方にお申し出になったわけでございます。書簡形式でございました。普通の場合、その書簡が来たものですから、その書簡に対する御返事の形で人事院公式見解を表明するというのは自然な姿ではないかというふうにわれわれは考えたわけでございます。  それと、人事院が当面直接に所管いたしますのは一般職公務員でございます。ただ、事柄はほかの事項とは若干違いまして、その波及性が大変多い。いま冒頭お尋ねになりまして政府側からもお答えを申し上げましたように、定年制対象になりますもの、直接影響を受けますものは、一般職公務員だけじゃなくてそのほかにもいろいろございます。そういう点については人事院の当面の所管、直接の対象ではございませんので、それについてとやかくのことは申し上げることはやるべきではないという一つの限界がございます。しかし、事実上われわれも公務員制度全般をよく見渡して事を行っておりますたてまえからいって、影響が非常に広範であるということはよく承知をいたしておりますので、そういう点も含めて政府としては恐らく並行していろいろ御検討にならなければなるまいというような点も十分配慮いたしまして、ちょうど書簡というようなことで意見をひとつ聞かしてもらいたいということがございましたので、これにお答えをするという形で、書簡でもって返信の形で人事院の公式の意見を表明したということでございます。
  14. 上原康助

    上原委員 このことでいろいろやりとりだけしても、結果的にこうなっていますから、これ以上深追いもしたくないわけですが、しかしながら、やはり人事院の権威といいますか、人事院公務員制度公務員問題に対しての公式見解を出すというときにおいては、法律に基づいて堂々と意見を具申すべきだと思うのですね。それを何か手紙のやりとりみたいなかっこうで安易に取り扱うというところに問題を残しているんじゃないのか。このことはできれば今後は改善をしていただきたい。なぜなら、これから公務員制度全般について、給与についてもその他の制度につきましても、皆さん見直しをしようというわけでしょう。総務長官は何も軽く見ているわけじゃないのですよ。確かにいまおっしゃったような総理府所管、文書でできるかもしらないけれども、もう少しはそういった点についても配慮すべき点があるし、今後はこの種の疑惑、疑問が起こらないようにしていただきたい。そうでなければ——この総理大臣答弁に対していまだに会議録さえできないというのはどういうわけですか。問題があるから議院運営委員会でもとめられているわけでしょう。  それともう一つは、人事院総裁から五十四年八月九日に当時の三原総務長官に出された見解ですが、一、二点だけ問題点指摘をしておきますと、定年制導入というものを何か第三者的な感覚で見ていらっしゃるんじゃないかという疑問を持たざるを得ないのですよ。これはページは振ってありませんけれども、「これを実現する手段の一つとして、国家公務員制度定年制度が導入されることは意義のあるところである。」どう考えても少し真剣味が足りないという印象を私は率直に受けざるを得ませんね。これだけの多くの方々一般職公務員しか人事院は扱えないとは言っても、それが地方公務員とか地方公務員に準ずる方々とか、先ほど人数を挙げても約四百七十万くらい。そうであるならば、ただ「意義のあるところである。」なんて簡単に済ませる問題じゃなかったと思うのです。しかも、後ほど一つ一つ問題点を明らかにしていきますが、まだまだ解明をしていかなければいかない問題がたくさんある。これはある意味では書簡扱いをしたがゆえにこうなっていると私は思う。もう少し公務員法に基づいて堂々と給与勧告のような取り扱いをして、政府国会に対して勧告をするなり意見を出すということが筋だと私は思うのですが、今後この点は御検討いただけますか。
  15. 藤井貞夫

    藤井政府委員 御懸念の御趣旨十分了承をいたしました。  いろいろいきさつがございまして、また当時の状況というものも踏まえまして書簡やりとりという形をとらざるを得なかったということから、今回のような定年制に関する取り扱いになったことは事実でございます。ただ、本来的なやり方としては、やるべきときにはやはり勧告形式をとる、あるいは意見申し出をやる、これが普通の本来の姿である、そういう認識は私自身も持っております。したがいまして、今後ともそういう面については御懸念のあるような点の趣旨は十分踏まえまして努力はしていく所存でございます。
  16. 中山太郎

    中山国務大臣 今後は今回の書簡ということを前例に出さない、このように考えております。
  17. 上原康助

    上原委員 後ほどお尋ねしますが、これから公務員問題が二次臨調との関係どもあって非常に注目されつつある情勢、状況、環境でありますので、ぜひひとつ特段の御配慮をいただきたいと思います。何も私は総務長官がその種のことをやってはいかぬとかいう立場で申し上げているわけじゃありませんので、その点は御理解いただいていると思うのです。総理府設置法その他についてもある程度理解をしておりますので、ただ及ぼす影響が余りにも大なるがゆえに、もう少し慎重な御配慮が必要じゃなかったかということを指摘をしたという点で御理解をいただきたいと思います。  そこで、具体的な面に入っていきたいわけですが、まず定年制が仮に実施されたとしても、勧奨制度は残すということについて、各関係委員の方からいろいろな角度からお尋ねがあったわけですが、改めて確認をしておきたいと思うのです。私も法理論上、六十年定年制法律で決めてからさらに勧奨制度を残すということは矛盾すると思うのです。しかし、先般来の総務長官なり人事院総裁の御答弁を聞いておりますと、それぞれの機構あるいは役所には人事管理その他の慣行などがあって、定年制を施行することになるからといって個別的な勧奨退職までなくするというのはいかがかと思うというような御見解でしたが、それも言われてみるとわからぬわけでもないのです。ただその場合に、問題としてもう一度確認をしておきたいことは、これまでの集団的組織的勧奨制度というものはなくなる、しかし本省の課長以上については事実上の行為として残るであろう、こういう趣旨の御発言だったかと思うのです。そこで、再度定年制勧奨制度関係について、今後政府として、あるいは人事院としてはどういうふうに取り扱っていかれるのか、このことについては自治省を含めて御見解を賜っておきたいと思います。
  18. 中山太郎

    中山国務大臣 六十年に六十歳定年を導入するという今回の法律を成立させていただくということになれば、六十年以降一般の職員につきましては、これは権利が発生をする。だから勧奨を受けても、いや私はこのままいたいということを言えば権利が最優先で適用をされるということは、もう御理解いただいているとおりだと思います。なお、幹部の職員については、人事管理等の立場から勧奨制度が残るというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  19. 藤井貞夫

    藤井政府委員 総務長官がおっしゃったとおりでございますし、また上原委員も総まとめの意味でおっしゃったように、定年制ということになりますれば、いわゆる集団的と申しますか、そういう意味の勧奨退職というものはなくなってまいりましょう。ただ、いろいろな状況、特殊事情等から見て、勧奨というものは絶対にやらないということも人事管理上の点からいっていかがかと思いますので、そういう点具体的に申せば、課長職等についてはなお勧奨という道を残しておくという余地があり、またその方が全般の人事管理上も適当な面もあるのではないかというふうに考えておるということでございます。
  20. 中島忠能

    中島説明員 基本的な考え方はただいま総務長官人事院総裁から御答弁があったとおりでございます。私たちにおきましても、定年制度の代替的機能を果たしてきたいわば集団的退職管理として行われるものにつきましては、将来的には消滅していくだろうというふうに考えております。個々の人事管理上の必要により行う個別勧奨というのは、ただいま人事院総裁からお話がございましたように、全く消滅するとかいうようなことにはならずに、人事管理上の必要に基づいてそれぞれ残っていくだろうというふうに考えております。
  21. 上原康助

    上原委員 ある程度といいますか明らかになったわけですが、そこで重ねて念を押すようで恐縮ですが、やはり組織的集団的な勧奨制度というのはなくなる、そして六十年までどうしても勤める権利として発生するので、管理職が肩たたきとか、あるいは強制的な勧奨というものは、下級職員にというか、できなくなる、これははっきりしていますね。  それと同時に配慮すべきことは、残すにしても、いまありましたように、単なる幹部職員に限定をするということであってもいかないと思うのですね、まだ。万やむを得ず勧奨を受けたいという一般職員がおるかもしらない。その配慮もやはり時と場合によっては必要、しかし、それは強制であってはいかぬということ、あくまで本人の自由意思に基づくもの。さらにもう一点は、大変問題になっておりますが、ましてや勧奨制度を残すことで天下りを助長せしめるような一つの手法に使われてはいかないということ、この歯どめをぜひ政府としても人事院としてもかけていただきたいということを強く申し上げておきたいわけですが、いま私が申し上げたことについてはどういうふうにお考えなのか、改めての御見解を聞いておきたいと思います。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 先生指摘の点はきわめて重要な点でございますので、御趣旨を十分尊重してまいりたい、このように考えております。
  23. 上原康助

    上原委員 そこで次に進みたいわけですが、これも先日来大出委員、上田委員あるいはそのほかの方々からもお尋ねがあった点ですが、年金受給権の問題なんです。七日の上田、大出両委員の御質問に対して、無年金者の実態については正確な人数を把握し、本委員会でこの法案審議中に報告をする、そして対策を講じていきたい、そういう対処策をどうするかを明らかにしていくという御答弁だったと思うのですが、実態把握はできたのか、あるいはまた六十歳定年に達しても共済年金受給資格に満たない職員取り扱いについてどのようにやっていかれようとするのか、改めての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  24. 山地進

    山地政府委員 無年金者の実態がどうなっているかという調査を約束したわけでございますが、無年金者の数といいますのは、要するに、共済法上の二十年の受給資格が発生しない者というのは、この前一応御説明いたしました。ただし、そういう方々が前歴がどうなっているかということによって通算年金の受給資格が発生する、こういうものを調べなければならないわけでございます。このためには前歴をかなり詳細に個々に調査しなければいけないということになりますので、実は前歴というのは調べるのにかなり時間のかかる問題でございます。この前ここでお約束したように、できるだけ速やかにその調査が終了するように関係の各省に督促をいたしている段階でございますので、御了承賜りたいと思います。  それから、これらの無年金者が仮にいる場合に、現に非現業の公務員にも百四十人ぐらいいるということは非現業の方にはわかっているわけでございますが、これらに対してどういう措置をとったらいいのかということに関連いたしましては、この前ここで私が御説明いたしましたように、民間における任意継続組合員等年金制度の特例措置というのがあるわけでございますから、これらを国家公務員の場合に共済法上の特例措置として採用していきたいということで現在各省と詰めているわけでございます。実は六十年に定年法が実施できるまでの間まだ時間があるわけでございますが、すでに私どもとしては問題意識は明確になっておるわけでございますから、そういう方向でこれを検討してまいりたい、かように考えております。
  25. 上原康助

    上原委員 詳細な人数の把握は本委員会の審議中にできるわけですね。それは明らかにできますね。
  26. 山地進

    山地政府委員 来週ちょっと——委員会の審議期間ということと、明確にそこのところがむずかしいわけでございますが、実はかなりたくさんあるところでは来週にならないとわからない、今週中はちょっと無理じゃないかという話が来ております。これは本委員会の審議期間中ということでよくお願いをしてありますので、来週中には必ずその数字をつくるということに努力してまいりたいと考えております。
  27. 上原康助

    上原委員 これはせんだって国家公務員あるいは五現業については大体数字が出ておったわけですが、地方自治体の場合に三万一百ばかりとかなんとかということで大変抽象的なことだったのですが、自治省、その点の実態把握は非常にむずかしいとは思うのですが、いま人事局長がおっしゃるような方向で御努力いただけますね。
  28. 柳克樹

    ○柳説明員 ただいま先生からもお話のございますように、地方団体は非常に数が多うございまして、これを調査するというのはほとんど不可能ではないかと思います。  ただ、先般来申し上げておりますように、昭和五十四年度に共済組合における財源率の再計算をいたしておりまして、その数字をもとにいたしまして推定いたしますと、六十年の三月末におきまして、六十歳以上の職員で組合員期間が二十年未満である者というのが約三万百人程度というふうに見込んでおるところでございます。
  29. 上原康助

    上原委員 そこで、いまの御答弁でもなかなか納得しかねるわけですが、問題は、六十歳定年制を導入しなければ、この方々は当然年金受給資格年限まで継続雇用されたであろうということは十分推測が立つわけですね。それが一つ。  もう一つは、中途採用者という方々はそれなりの事情があるわけですよ。たとえば地方公共団体なら、新たな事業で中途で必要ができて、中年、高年の方々が中途採用された。あるいは国家公務員とか現業部門にしますと、炭鉱離職者とか駐留軍離職者というのは、一つの国策によってそういった再雇用政策というものを推進して中途で国家公務員なりに職業転換したわけですからね。だから、定年制も国策によって導入する、再就職促進も国策によってやらざるを得なかった、そういうことであるならば、やはりこれに対する救済措置という表現は私は余り好きじゃないのですが、補償措置といいますか経過措置というものはやるべきだと思うのですね、非現業それから五現業、地方団体を含めて。このことについては、総務長官人事院総裁自治省も、ぜひひとつ前向きの御認識をしていただきたい。それはそういう方向でいいですね。
  30. 山地進

    山地政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、これらの無年金者については、私どもとしては、民間でやっているように共済法上の特例措置ということで組合員の受給資格というものの付与ということの方向で考えたい、かように考えているわけでございます。
  31. 上原康助

    上原委員 それはあなた、だめなんだよ、そういう特例措置だけでは。われわれは原則として、原則というか、やほり国家公務員共済あるいは地方公務員共済の二十年年限に達するまでは継続雇用すべしだという基本的立場を持っているわけですね。それを認識をしていただきたい。もちろんいろいろ支障はあるでしょうが、少なくともまだ何年先にやるかわからないんだ。これはさっきちょっと聞くのを忘れたのだが、人事院総裁書簡を見ても、おおむね六十年をめどにと言っている。おおむねね。これは何も六十年から実施しなければいけないという急迫不正の事態はないんだ。  そこで、念を押すようで大変恐縮ですが、この中途採用者というか就職者に対する定年制、先ほど申し上げましたように予測して採用されたわけでないわけですから、これは六十年になると実際問題として本人の意に反してやめさせられるわけです。また、四百七十万の対象人員からすると、先ほどお述べになった人員というものは、全体の枠から言うとこれは経過措置をとれない人数ではないと思うのですね、国にしても、地方公共団体にしても、五現業にしても。このこともあわせてお考えになっていただきたい。したがって、これらの該当者に対する人数の実態把握と経過措置については、政府全体として十分に関係者が納得し得る経過措置を講ずるように一属の努力をしていただきたい。ある意味では、これは政策的判断というのも必要でしょう。そういう立場で御検討いたしますね。これは総務長官に伺います。
  32. 中山太郎

    中山国務大臣 いわゆる六十年六十歳の時点で年金を受けられない方々のためにその措置をせよという御意見でございますが、先般御答弁申し上げましたように、この法律が可決をされるまでに私どもといたしましては検討をさせていただくということをお答え申し上げております。  私どもといたしましては、やはりこの定年制導入ということが行政改革につながる一つの大きな柱であるというふうにも内閣では考えております。そういうことで、国民の理解をどのように得られるかということも、片面私どもとしては忘れるわけにはまいらないのでございますが、やはり一方においては、定年制導入により受給資格がなくなるという方については、先ほど申し上げましたように、今後検討をさらに続けてまいりたい、このように考えております。
  33. 上原康助

    上原委員 この法案の結論が出るまでといいますか、審査中に検討していくという改めての御見解ですから、一応前向きに御検討いただけるものと期待をいたします。  これは委員長の方にも御要望申し上げておきますが、定年制法案あるいは後ほど審議されるであろう退職手当削減法案等を含めて、いま申し上げたそのほかにもたくさんあるのですが、いろいろな条件整備をしなければいかない課題、問題が残されているわけですね。そういう意味で私は、この無年金者の経過措置ということについては十分に各政党間でも話し合って、政策的な立場で救済措置を講ずるべきだと思うのです。だってこの定年制を導入する前提として、職員を安んじて公務に専念せしめということになっているわけです。六十年で首は切るわ、年金年限には達しないわ、子供は高校や大学に行くわ、老後の生活はどうなるかわからぬわというときに、何が安んじて公務に専念できますか、人事院総裁。だからそういう意味からしても、私たちが申し上げている点は何も無理なことじゃないのですね。これはごく自然な常識論ですよ。そういう面で御検討いただきたいと思いますが、いいですね。
  34. 江藤隆美

    江藤委員長 理事会で、そのことは十分これからまた相談をいたしたいと思います。
  35. 上原康助

    上原委員 総務長官も、改めてですが、いまの私の申し上げた点、いいですね。
  36. 中山太郎

    中山国務大臣 いま委員長から御発言がありましたように、理事会でいろいろ御検討いただくということでございますので、政府といたしましても理事会の御審議の経過を十分拝見をさせていただきたい、このように考えます。
  37. 上原康助

    上原委員 ひとつ与党の理事先生方、また野党の各党派の理事あるいはオブザーバーの方々にも強くこの点の合意が見られるように要望を申し上げさせていただきたいと思います。  次に、大変問題になりました定年制と団体交渉権にかかわる問題です。実は私も少しく労働問題をやった経験がありまして、労働組合にとって、あるいは労働者にとって労働基本権の重要性はくどくど申し上げるまでもないわけで、それが法律なり権力によって制約をされるということは、経済的にもあるいは基本的な権利の面からもきわめて大きな問題になるわけです。そこで、まず五現業の方からお尋ねをさしていただきたいわけですが、端的に申し上げて、定年制は皆さんは分限だということで規定をしていこうということですが、労使の交渉事項ですか、事項じゃないですか。
  38. 山地進

    山地政府委員 定年制が労使の交渉事項かどうかということの前に、恐らく先生の御質問の中にあるのは従来からどうやっていたかということがあるかと思うのでございます。退職勧奨が従来行われているわけでございます。これらについては労使の間で十分協議がされる、つまり公労法八条の対象になっていたというふうにまず理解しているわけでございます。  定年制が実施された場合に一体どうなるのか。これは私どもがこの法印をつくる場合に最大の関心事で、法律上のむずかしい問題であったわけでございます。そこで、私ども定年制を実施する場合五現業にどういうふうな適用方法があるのかということで、五現業には協約締結権があるという前提に立ちまして、その協約によってできたものをどうやって実現していったらいいだろうかということで、大枠として六十歳という国家公務員法の定年を決めてあるけれども、特例定年というようなもの、つまり六十歳から六十五歳の間で特殊の勤務の者については定年を別に定める、こういうことは主務大臣が定めるようにしよう、主務大臣が定めるという意味は、労働協約で決めていくということが前提になっているわけでございます。したがって、今回の定年制法案のもとにおきましては、そういう定年制の運用に関する問題につきましては労働協約の対象になる、かように考えてこの法律を立法したわけでございます。
  39. 上原康助

    上原委員 私が聞かないことまでお答えするから、すでに御専門の大出先生からいろいろお尋ねがあったので細かいところは省きます。しかし、いまの御答弁にしてもきわめて制約を受けるわけですね。そこで私たちは、特に五現業の場合、いま引用されましたが、給特法あるいは公労法八条等々を見ましても、これは団体交渉事項になるべきことは明々白々だと思う。ですから、そういう面からすると本来なら公労法は八条を改正すべきなんです。そういう意味で、交渉事項の問題として五現業について交渉権を公労法上も認めているわけですね、いまもおっしゃったように、協約の対象にもなると。協約締結権があるということは団体交渉権がないとできぬわけでしょう。これは恐らくイロハだよ。そういう面からして、ある以上、定年問題については交渉権を明確にするために、公労法改正かあるいは本法のいま提案されている法案の附則の改正をなすべきである、それがこの間から言っている五現業に対する団体交渉権をいわゆる担保する一つの大前提だと思うのですね。ですからして、この件についても、きわめてむずかしい面も言い分もあるかもしれませんが、やはり先ほどの年金問題とかその他まだ十分納得できない問題点を含めて、本法案審議の過程でぜひ政府見解を明らかにしていただきたい。よろしいですね。
  40. 中山太郎

    中山国務大臣 そのような方針でまいるつもりであります。
  41. 上原康助

    上原委員 基本的には、いま申し上げたようなことで法案改正ができればそれにこしたことはないわけです。ぜひそういうふうに前向きに御検討いただきたいと思います。  同時にもう少し確かめておきたいことは、今回の定年法は一般職だけではなく五現業にも適用されることになるのは、先ほどから議論をしているとおりですね。また御答弁もありましたが、五現業は公労法によって団体交渉権が保障をされておる。これまでも勧奨退職というか定年の問題については団体交渉事項だったわけですね。協約も締結されている。では、今回の改正によって、従前の労使慣行あるいは団体交渉事項であったことについての定年制が実施される以後の取り扱いは一体どうなるんですか。
  42. 山地進

    山地政府委員 いまの御質問の勧奨退職が従来の交渉事項であったというのは明らかであろうかと思うわけでありますが、勧奨退職は、先ほど来いろいろ議論がありましたように、退職を慫慂し、本人が自分でやめるという場合に初めて効力を持つ強制力のない問題でございます。ところが、定年制は本人の意思にかかわらず強制する制度でございまして、これも先般来申し上げておるとおり、国家公務員法七十五条の「身分保障」で本人の意に反して免職されないという身分保障があるわけで、これは法律に定めなければならないということになるわけでございます。そこで今度の定年制法律として出てきているわけでございます。それらのことから考えまして、今回法律に主務大臣が決定する事項、つまり定年を幾つにするという特例定年とか六十歳の定年の日をどういうふうに実行するとか、あるいは勤務延長の問題、そういったことについて交渉事項になるというふうに私ども理解しておるわけでございます。
  43. 上原康助

    上原委員 ですから、従来は勧奨にしてもその幅にしても団体交渉事項として処理されてきたわけですね。そこでもっと具体的に言いますと、せんだっての七日の大出先生の、質問でも、先ほど私も申し上げたように、公労法第八条に定年をつけ加え、本法を改正して交渉事項と明記すべきだという提案に対して、いまも人事局長ははっきりは答弁していないわけですが、せんだっては、定年は現行の公労法八条四号その他の労働条件、いわゆる勤務条件の中に入るので、団体交渉事項となる、こういう答弁をなさいましたね。これは間違いありませんか。公労法第八条の四号に「前各号に掲げるもののほか、労働条件に関する事項」この「労働条件に関する事項」の中に、われわれは定年制は勤務条件だと見るわけですが、定年制も入るということで、したがって団体交渉事項になるという御見解でしたが、この点について改めて明確な答弁をしていただきたい。これは総務長官からもひとつ御答弁をしておいていただきたいと思います。
  44. 山地進

    山地政府委員 いま先生のおっしゃったとおり、この公労法第八条にはその他の労働条件に関する事項というふうになっているということを前提に私どもはこの法律を立案したわけでございます。したがって、今回の五現業に関する定年制度の運用に関しましては、この交渉事項に当たるということを私どもとしては明確に御答弁している次第でございます。
  45. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま人事局長がお答え申し上げておりましたとおりでございます。
  46. 上原康助

    上原委員 そこでもまだ若干ひっかかりはあるわけですが、定年制を分限ということで給特法に読みかえたわけですね。そこで、御承知のように、給特法というのは賃金と勤務時間を決めるについての五現業職員の特例法なんですね。これは問題ありますよ、五現業だけ切り離したということは。三公社五現業といつも一体なんだから。このことはもう触れる時間的なあれもありませんが、議論すればいろいろ問題が出てくるわけですよ。  そこで問題は、いまも第八条の四号のその他の労働条件、勤務条件に入るので明確に団体交渉事項だということをおっしゃったわけですが、給特法に置きかえていくわけですから、そうすると、同時に給特法の解釈としても勤務条件、給与、定年、これは団体交渉事項である、こういうふうに理解をするのが筋だと私は思うのですね。この点も間違いありませんね。明らかにしておいていただきたいと思います。
  47. 山地進

    山地政府委員 先ほど来御説明しているとおりでございまして、給特法に関して言えば、給与や勤務時間等が現在団体交渉によって決められているわけでございますが、それらと同じようにこの定年制の運用というものが交渉事項になる、かように理解しております。
  48. 上原康助

    上原委員 このことは五現業の団体交渉問題で冒頭申し上げたように、本来ならば本法八条に定年制というものを入れて明確に団体交渉事項としての法的保障をやるべきだ、それについては御検討いただくということですが、しかし少なくとも後段で申し上げたことはこれまでも確認されておりますけれども、団体交渉権が制約を受ける、そういう運用にならないような措置を十分に講じていただきたいと思います。この点はまた総括段階において最高責任者見解も求めることになろうかと思いますので、特に団体交渉権の問題については注意を払うべきだということを強く念を押しておきたいと思うのです。  そこで、ただいま定年制と五現業の団体交渉についていろいろやりとりをいたしましたけれども、要するに、五現業については団体交渉の対象事項であるという政府答弁が明確になったわけですが、これは地公企労法の適用者あるいはその準用者については、私は当然同等の取り扱いといいますか同等に考えてよいもの、要するに団体交渉事項とすべきだと思うのですね。これは念を押すまでもないと思うのですが、この点について労働省、自治省の御見解を聞かしていただきたいと思います。
  49. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 お答えいたします。  先生御質問の地方公営企業労働関係法の適用対象者の定年制に関する団体交渉権の問題でございますが、定年制そのものが団体交渉の対象になるかどうかという点につきましては、先ほどからお話が出ておりますように、身分保障との関係があったわけでございますが、今回からこの点につきましては条例で定めるということになってくるわけでございます。それで、その点につきましては国に準じた運用をするということになっておりますので、この定年制が定められた場合の運用につきましては、国の例に準じて団体交渉権を尊重した運用をなされるということを私どもとしましても期待しておるところでございます。
  50. 中島忠能

    中島説明員 ただいま労働省の審議官から御答弁申し上げたとおりでございます。
  51. 上原康助

    上原委員 自治省はもう少し自信ある答弁をしないといかぬじゃないか。あなたの方が担当者、管理者になるんじゃないか。そんな労働省がおっしゃるとおりでありますというのは、何をおっしゃっているか、あなたそこで復唱してごらん。そんな答弁では納得できませんよ。
  52. 中島忠能

    中島説明員 定年制度の実施に関する事項、たとえて申し上げますと、定年年齢とかあるいは特例定年とか、そういう事項につきまして条例で定めることになっておりますけれども、その事項については、私たちが法案を立案いたします場合に地方公営企業労働関係法の第七条第四号の規定に該当して団体交渉の対象になるというふうに考えております。
  53. 上原康助

    上原委員 いまのなら私でもわかるのです。そういう答弁をしていただきたい。ありがとうございました。  そこで、いまのお答えでもお答えになったかと思うのですが、ただ問題は、御承知のように五現業の場合は給特法の改正による読みかえ規定が置かれているわけですね。これは賃金、勤務時間、定年等々を同等の交渉事項にすべきだというお答えだったわけですが、地公労法の適用あるいは準用職員の場合は、給特法に相応するといいますか対応する法的措置はとられていないわけですね。だからいま七条四号ですか、それに基づいて条例を定める場合はそれ以前に団体交渉事項にするようにしたいということでしたが、ここいらの法的措置についてはどのようにお考えなのか。これもやはり明確にしておいていただかなければいかない問題だと思うのですが、この点はどのようにお考えですか。
  54. 中島忠能

    中島説明員 地方公営企業法あるいは地方公営企業労働関係法適用職員につきましてこの定年制度を立案いたします場合に、私たちいつもぶち当たる問題は、国の場合には法律と命令ということでございますが、地方団体の場合には法律、条例そして規則というこの三つが出てまいります。したがいまして、現在でもこういう企業職員につきましては、給与につきまして基本的な事項は条例事項にされている、こういうたてまえでまいっております。私たち定年制度につきましても、やはり現在の地方制度の根幹である民主的な考え方から申し上げますと、定年制度の実施に関する基本的な事項につきましては条例事項といたしたいということで、現在の制度を御提案申し上げておるわけでございます。  ただ、先ほども答弁申し上げましたとおりに、条例事項とされておりましても、当然私たちは地方公営企業労働関係法の運用上、団体交渉の対象になるということにつきましては疑いも持っておりませんし、そういう考え方で地方団体を指導していくべきものだと考えております。  そしてこのことにつきまして労働協約が締結されました場合には、先生よく御存じのとおりに、地方公営企業労働関係法第八条によって調整されていくということだろうと考えております。
  55. 上原康助

    上原委員 基本はその条例事項でも十分関係職員といいますか、団体交渉をやった上で定めていくということですので、関係職員団体の意見、提案なりが無視されないような御配慮をこの点では強く求めておきたいと思います。  次は、定年延長職員身分といいますか、処遇の問題なんです。定年延長、再任用職員取り扱いというか、処遇の件ですが、この法案によりますと、まず勤務の延長については公務の支障を来さないため、いわゆる余人をもってかえがたい職員については一年更新三年の範囲内で定年が延長できる規定になっておるようです。問題になるのは、この特例延長の手続、いかなる職員を特例延長にするのかということ、あるいはそれらの職員身分はどうなるかということ、待遇はどうなるかということ、現在のところこの点が非常に不明確なんですね。これはどのようにお決めになるおつもりですか。
  56. 斧誠之助

    ○斧政府委員 勤務延長職員につきましては、ただいま先生おっしゃいましたように、引き続き勤務するということでございますので、従前と同じ常勤職員としての待遇を受けることになります。  それから、再任用職員につきましては、一たん定年退職しまして、そしてその者の技能、経験等が公務に有効に活用できるということで採用するということでございますので新規採用の形になります。採用後におきましては、勤務時間、休暇その他の勤務条件は全く常勤職員と同様でございますが、給与については新規採用職員としての初任給決定基準によるということでございます。
  57. 上原康助

    上原委員 もう少し聞いてから、これも御見解を聞きたいわけですが、簡単に言うと、勤務延長の場合は従前どおりポストもあるいは給与も継続していくということでしょうね。再任用の場合、一応そこで定年退職をして新たに再雇用というか再任用する、これがもっぱら任命権者なりあるいは官側の要請だけで決められてはいかないということですね。一つは、手続面、人事の公正、平等の取り扱いが損なわれるおそれがある。  また、国の場合は、定年直後の延長任命権者の権限として再々々延長は人事院の承認を得ることにしているようですが、地方の場合は、たとえば人事委員会のある団体でも、その承認ではなく、もっぱら条例をもって定める。その手続、制度を国と地方で異にしている点も問題が生ずるおそれがある。  三点目に、勤続の延長については、国の場合は、官内庁の技能職員とか大型プロジェクトの主任研究員などが想定されているようですが、地方の場合は、この点はどういうものをやるのか全く明らかにされていないですね。この点もできるだけ明確にしていただきたい。  同時に、勤務の特例延長にしましても再任用にしても、やはり五現業の場合、先ほど言いましたように純然たる団体交渉事項、あるいはまた国家公務員にしても地方公共団体にしましても、それは関係職員団体なり該当者の意見というものをそんたくをしていく弾力的運用でなければならないと思うのですね。これらの点についてはどのようにお考えなのか、私がいま申し上げたようなことを含めて御見解をお示しいただきたいと思います。
  58. 山地進

    山地政府委員 いろいろ御質問がありましたが、まず五現業の扱いのところは私どもから御説明させていただきたいと思います。  五現業の問題につきましては、勤務延長については、その再延長につきまして主務大臣が定めることになっておりますから団体交渉事項であることは明らかでございます。しかし、再任用の点につきましては、任用制度というのは人事院の固有の問題でございますので、これは人事院規則で決めていくということになるわけでございます。もちろん人事院としては、関係団体の意見をよく聞かれてこれを定められるというふうに私どもとしては承知しておる次第でございます。
  59. 上原康助

    上原委員 地方公共団体はどのような考えを持っておられるのですか。どういうのが特例延長なり再任用になるのか。
  60. 中島忠能

    中島説明員 先生いろいろな御質問をされましたので、私がもしかしたら一部分聞き落としておるかもわかりませんから、その節には御勘弁願いたいと思います。  勤務の延長につきましては、地方公務員法の今度の改正案にございますように、職員の職務の特殊性またはその職員の職務の遂行上の特別の事情から見て、その退職により公務の運営に著しい支障があると認められる十分な理由があるときに勤務の延長がなされるわけでございますけれども、その十分な理由があるかどうかにつきましては、法案にございますように任命権者がその判断を第一義的には行う。そしてそれらの基準につきましては、職員団体から交渉の申し入れがございましたら、それに応じてその基準については議論していくのだろうというふうに考えております。  再任用につきましては、先生の方からお話がございましたが、そこは私聞き落としましたけれども、この問題につきましては、個々の職員の任用の問題でございますので、職員団体との交渉の対象にはならないだろうというふうに考えております。
  61. 上原康助

    上原委員 お答え趣旨は完全じゃないけれども、交渉事項にしたい、協議をしたいという御趣旨のように受けとめたわけです。  そこで、勤務延長の場合は問題がないというか、余人をもってかえがたい特定の技能を持つとかそういう方々、再任用の場合も考え方は同じかと思うのですが、しかし、また再任用される方々も問題が出てくるわけですね。年金制度との関係が出てくる。この再任用される職員給与はどういうふうにお決めになるのですか。
  62. 斧誠之助

    ○斧政府委員 採用でございますので、採用者について一般的に適用されます新規採用の給与決定基準が適用されるわけでございます。
  63. 上原康助

    上原委員 どうもいまのことは、六十歳になって定年になってやめて、また再任用ということで一般的に初任給からスタートするなんて、そんなことができますか、あなた。あなたも再任用しなければいかなくなるかもしれません。
  64. 斧誠之助

    ○斧政府委員 一番下位の等級に採用するという意味ではございません。新規採用というのは、その者の過去の経験年数に応じてしかるべき等級に格づけをされまして、そして格づけに必要とした経験年数を差し引いた余剰分が号俸決定の基準になります。したがいまして、再任用する場合の採用等級は、その者が在職しておりましたときについておりました等級から下ということで、その者が従前についていた等級にもつけるということでございます。
  65. 上原康助

    上原委員 要するに、これは非常に問題が出てくる可能性がありますし、その決定方法については人事院規則で定めるわけでしょう、再任用の給与とか身分については。これもやはり決定方法について、この法案が成立する前までに皆さんの確たるあれを明らかにしていただかなければ困りますよ。要するに、身分給与の決定は、いまおっしゃっていることは、一般職の常勤職員身分と同様な扱いをする、それ以下か、もしくは場合によってはその人がついておった号俸につける。これはどうなんですか。法律改正は必要じゃないのですか。人事院規則だけでやるわけですか。そこも明確にしてください。  それともう一つは、私が説明を受けた限りでは、普通給与については七〇%程度となる。これは非常に問題が生じると思うのですね。それでも応ずる方がいらっしゃるのかどうか。その場合に、ではなぜ定年延長とせず再任用とするのかという問題が一つ出てくる。再任用となる場合の共済年金の取り扱いはどうなるかということなんです。年金を受けるなら引き続き共済組合員でなければいかないわけだから。そうなりますと掛け捨てということもあり得ますよ。そうではないですか。もし私の言い方が間違っているならば改めていただきたいのですが、そこらのこともはっきりさせていただかないと困るのです。法改正が必要なのか、給与改正が必要なのか、人事院規則だけでやるのか、その内容は具体的にどういうふうなものなのか。
  66. 斧誠之助

    ○斧政府委員 再任用後の給与決定につきましては、一般的な新規採用の給与決定基準によって決められるということを原則として考えております。おりますが、民間でも再任用制度というのがございまして、そういうものの給与決定を行う場合にどうしておるかということもなおしさいに検討しまして、もしいまのままの新採用職員決定基準のままでは気の毒だというような状況が出ましたら、その点は考慮したいと思っておるのです。  それから、年金の問題でございますが、再任用後の勤務期間につきましては、退職前の勤務期間と合算されまして、その期間に応じた年金額が決定される、こういうことでございますので、掛金の掛け捨てということはございません。  ただ、その場合にどういう年金額をもらえるかということですが、二つ方法がございまして、一つは、前後を通算して年金額を新たに決定する方法、それから定年退職までの年金額と再任用期間に相当します年金額、つまり通算年金と言われているその部分ですが、これと別個に計算しまして合算する方法と二つございまして、いずれか有利な方をとれる、こういうことになります。
  67. 江藤隆美

    江藤委員長 人事院規則でいいのかどうか……。
  68. 斧誠之助

    ○斧政府委員 初任給決定基準は給与の方の人事院規則で決めることになります。
  69. 上原康助

    上原委員 ちょっとしかし、これは問題がすっきりしませんね。そういった具体的な内容を決めないで人事院の裁量で決めるということになると、再任用制度というのは非常に問題になってきますよ。ですから、これももう少しこの法案審査中に人事院見解をまとめて明らかにしていただきたいと思うのです。  総じて言えることは、この勤務の延長あるいは再任用のいずれの場合も、それぞれが通常の雇用というか、職員身分保障ではないわけですね。これはあくまでも特例なんです。そうしますと、その運用についても弾力的でなければならないと思うのです。身分給与その他の勤務条件に非常に深くかかわり合ってまいりますから。あるいはまた定年になって、あなたは特例延長でやるからとか、あなたはまた再任用やるからとかというふうに、管理者なり任命権者の情実人事になってもいかないと思うのです。そういうふうに悪用されてもならない。そういう公正な人事運営をやっていく必要から、先ほどお答えはありましたが、全体的に労働組合との交渉、協議で決定していく余地を十分に担保すべきだ、保障すべきだと思うのです。この点改めて御確認をしておきたいのですが、よろしいですね。総理府人事院自治省
  70. 山地進

    山地政府委員 再任用については、これは非現業の場合でございますけれども、まあ交渉という話ではないと思うのですが、いま五現業のことをお尋ねになれば、その給与については給特法で当然対象になる、かように考えております。
  71. 中島忠能

    中島説明員 再任用後の給与の決定基準につきましては、団体交渉の対象になると考えております。
  72. 藤井貞夫

    藤井政府委員 これは公務員にとっては大変重要な処遇の問題にも絡むことでございます。したがいまして、その取り扱いについては非常に一律的な、しゃくし定規的なことではなくて、実態に即した、また民間の取り扱い等も参酌した取り扱いをするということで考えてまいりますし、その間において職員団体等の意見等も十分拝聴してこれを取り入れることにやぶさかではないということは申し上げます。
  73. 上原康助

    上原委員 ぜひこの勤務延長、再任用の問題についてはもっと十分な御配慮がいただけるように要望しておきたいと思います。  そこで、もう問題が余り多くて私の頭もだんだんどこから何を尋ねていいかわからぬほどあるのですが、ほかの質問もありますのでちょっと急ぎたいのです。  次に、任命権者があらかじめ指定する日とはいつのことかということです。もっと具体的に言いますと、三月三十一日以外の指定日をどう決めるのか、あるいは年に何回指定するのか。私は、これも当然団体交渉で話し合いで決めるべきだと思う。この件についてのお考えをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  74. 山地進

    山地政府委員 五現業についてはまさに団体交渉で決めるべき問題だと思います。それから一般非現業の場合には任命権者が決める。それで三月三十一日というのも一つの方法でございますし、あるいは国会中にはなかなか人事異動ができないというような事情もありますので、七月あるいは予算の前に異動するというのが慣例である官庁もあるわけでございますから、そういうところについては各省の任命権者の方で人事の異動というようなもの等も考えて決めていただく、こういうふうなことにしてあるわけでございます。
  75. 上原康助

    上原委員 まあ五現業の場合は給特法との関係もあり、先ほどからの議論がありますから、それは主務大臣がAさんは何日だ、Bさんは何日だと言うことはできないと思うのですね。しかし、その基本理念というか考え方は、労使たるもの労使関係をよくせずしていい職場も効率的な役所仕事もできませんよ。さっきから五現業だけで、国家公務員とか地公関係はどうするの。そこは問答無用で主務大臣なり管理者が勝手に決めるんですか。そうはいかぬでしょう、この問題は。少なくとも人の首を切るんだよ。そこは弾力的運用でいきますね。この任命権者があらかじめ指定する日の決定というのは押しつけ的なことはやりませんね。それぞれお答えください。
  76. 中島忠能

    中島説明員 地方公共団体の場合定年退職日をどのように決めるかということにつきましては、現在までの退職勧奨による退職日の実態とか、あるいは人事管理上の必要に応じまして決めていくべきものだと考えますけれども、いま先生からお話がございましたように、個々の職員によりまして余り区々に分かれるということは地方公共団体の人事管理上の観点から望ましいことではないというふうに考えております。したがいまして、その年度において退職する職員がある程度まとまって退職することとなるよう定年退職日を定めるのが適当ではないかというふうに考えておりますので、そういう趣旨で地方団体を指導してまいりたいというふうに思いますが、先生お話しございましたように、この件につきまして職員団体の方からの意見申し出があれば地方団体の当局はその申し出に対応すべきものだというふうに考えております。
  77. 山地進

    山地政府委員 私の御答弁申し上げたのも三月三十一日以外に、三月三十一日でもそれはいいわけでございますけれども、それ以外にその省庁の特殊の事情でそういう日があればそういうことでやる。もちろんこういったことについて職員団体の意見を承ってそれを参考にするということは十分やらなければいけないことだと思います。  それからもう一つ、ただ恣意的にAさんはいつ、Bさんはいつというようなことでこういったことを実行するということは事実上あり得ないことだと思います。
  78. 上原康助

    上原委員 これとの関連もあるのですが、この法律施行日に、施行日というか施行された時点ですでに六十歳を超えていた職員の勤務延長の取り扱いあるいは再任用の取り扱いはどうなるのか、この点も明らかにしていただきたいと思うのです。
  79. 斧誠之助

    ○斧政府委員 昭和六十年の三月三十一日で定年を迎える方々につきましても、本則にあります勤務延長及び再任用の制度はそのまま適用されることになります。ただ、再任用につきましては、本則の職員が定年年齢に達してから三年ということでございますので、それとの均衡上、その退職する職員の定年年齢に達した日から三年の範囲内、つまり六十歳の定年年齢を定められております職員については六十三歳までの間に再任用できる、こういう措置をしてございます。
  80. 上原康助

    上原委員 何もまだ昭和六十年三月三十一日に決まったんじゃないよ、決まったみたいなことをおっしゃっているが。この点も先ほどの勤務延長、再任用問題とのかかわりもありますので、十分内容等については関係職員団体との協議なり交渉でお決めになっていただきたいと思います。  そこで次に、これはせんだってから総務長官なり人事院総裁からも御答弁があったと思うのですが、民間企業における定年延長の動向を見てみますと、だんだん六十歳定年を大体六十年までに定着をさせようというのが労働省の一つの御方針のようです。またそういう傾向にあろうかと思います。  そこで、今後の民間企業での六十歳定年の定着化、せんだって非常に問題になりました高齢化社会を迎えてのいわゆる高齢者の再雇用、再就職というもの、老後の生活保障ということから考えますと、六十歳定年というのは振り返るまでもなく公務員制度の中で昭和三十二年ごろから言われているわけですね。二十年くらい前から六十歳六十歳って、その間に日本の平均年齢は六歳から七歳くらい延びている。それでもまだ六十歳六十歳と言っている。最初だからそういう目標を、まず基準を決めてみようというお気持ちだろうとは思うのですが、いずれにしてもそういう高齢化社会を迎えつつある。したがって、私たちは六十年六十歳というものを面一的に法律で決めることは問題があるという立場に立っているわけですが、そういう点も含めて考えた場合には、公務員の定年年齢の延長についてもできるだけ早い機会に画検討をするということも必要だと思うのですね。この件についてはせんだってお答えがあったような感じがしますが、改めての御見解総務長官並びに人事院総裁の方からお聞かせをいただきたいと思います。
  81. 中山太郎

    中山国務大臣 高齢化社会を迎えるということがわれわれの国家の基本にはあるわけです。それも早急に速いスピードでやってくる。そういう中で一方では寿命が延びる、勤労年限も延びていくということで、六十年六十歳ということに一応の法律案としてはできているわけでございますが、私どもがこれから迎える高齢化社会はどのような社会になるのか、実際まだ国民全体が体験をいたしておりません。欧米等においてはすでに体験が行われておりますけれども、またヨーロッパ、特に北ヨーロッパあたりの社会体制をそのまま日本に直ちに振りかえることも国情の違い等もあってこれはできない。だからわれわれの国は、われわれの国家の歴史と一つの慣習の中で新しい高齢化社会というものを最も幸せな環境づくりとして持っていくことが政治としては私は必要だろうと思います。そういう中で、六十年になって社会情勢が一体どうなってくるのか。先生かねて御指摘の年金制度をさらに改善しなくちゃいけない。年金の受給年齢と定年とのいわゆる接続をしなければならない。これは与野党通じての一つの基本的な大きな考え方だろうと思います。そういうものをこれから六十年にかけてお互いに研究をし合いながら、また公務員の諸君については、人事院等も六十年までに公務員制度の抜本的な見直しをやる、こう言っているわけでございますから、六十年の時点に立って私どもはどうするという結論を出すということではなしに、絶えずこれから前向きに高齢化社会というものと公務員制度全体の問題、また国民の要求というものを十分勘案しながら、最も安い、いわゆる小さな政府というか、若人が御案内のように再生産率が非常に落ちてきて、これからの社会は恐らく若人たちに非常に負担の大きい社会がやってくるだろう、そういう中で生産年齢人口がどのように高齢化社会に対応するのか、そういう問題も全部ひっくるめて私どもとしては検討して、最も国民が望む形をとらなければならない、このように考えております。
  82. 藤井貞夫

    藤井政府委員 六十年六十歳という提言は昨今の諸般の情勢を総合的に勘案をいたしました結果、現時点においては最も望ましい措置ではないかというふうに考えた結果見解を表明いたした次第でございます。  ただ、御指摘のように情勢は非常に急激に変化し動いております。そういうことは予測はなかなか確としてできない面があることも事実でございます。人事院といたしましても、昨年の給与勧告の際の報告でそれらの点を踏まえて、ひとつ根本的に人事諸制度の再検討それから再構築を目指して精力的な検討作業に入るということを申し上げました。本年度からその作業に取り組んでやってまいっておる段階でございます。その検討状況の中において定年制等につきましてもなおさらに諸般の情勢をにらみ合わせて検討を加えてまいりますことは当然のことでございまして、その検討の結果かくあるべしというような点が出てまいりますれば、人事院自体といたしましても、先刻御注意のありましたように独自の見解として意見の表明なりその他のことを申し上げることは当然あり得ることであるということを御了承賜りたいと思います。
  83. 上原康助

    上原委員 あと三点ばかりこの定年法案お尋ねをします。  これは人事院に対してですが、せんだって上田議員の御質問に対して、職務の分類評価に関する資料を御提出していただくということだったと思うのですが、この件については改めてどういう分類をし評価をなさったのか、あるいはその評価をした根拠、基準等について資料の提出と御説明をいただきたいと思いますが、きょうの段階でどういうふうになっているのか、御見解を聞いておきたいと思います。
  84. 斧誠之助

    ○斧政府委員 特例定年につきましては、その職務と責任に特殊性があること、または欠員の補充が困難であること、こういうことが条件でございますので、その条件に合致するかどうかという点で各省及び関係者意見を聞きながら現在までいろいろ検討しております。  この法案がもし成立いたしますと、さらに精査して最終的に特例定年該当官職を決定することになるわけですが、現在までの検討資料の中からどういう点がいま申し上げました条件に合致するかということを検討したものがございますので、その資料を取りまとめ次第提出したいと思っております。
  85. 上原康助

    上原委員 資料が提出された段階でまたいろいろ私たちも勉強させていただきたいと思います。  そこで次に、定年退職をする職員の退職手当の問題についてお尋ねをしておきたいわけですが、仮にこの定年法が施行された後に定年で退職する職員に対しては、私は現行どおり退職手当の支給は退職手当法第五条の適用となると考えるのですが、この点については総務長官人事院総裁の方から明確な御答弁を賜っておきたいと思います。
  86. 山地進

    山地政府委員 現行の退職手当法には、現在定年制のある公務員の定年退職と勧奨退職による退職手当というのは同じ扱いになっておるわけでございます。一般の公務員定年制を導入いたしました後においては、勧奨退職の有無にかかわらず定年退職は同一に取り扱われる、つまり二十五年以上の場合には五条適用がある、こういうようなことになっておるわけでございます。
  87. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま人事局長がお答え申し上げたとおりでございます。
  88. 上原康助

    上原委員 これは総理府所管ですが、人事院としても同様な御見解を持っているというふうに理解していいですね。
  89. 藤井貞夫

    藤井政府委員 所管総理府でございますが、そのとおりというふうに御理解いただいて結構です。
  90. 上原康助

    上原委員 中身についてはまたこれからいろいろお尋ねがあると思いますから、私もまた聞かせていただきますが、あくまで五条の適用ということを確認しておきたいと思うのです。  それで施設庁来ていらっしゃると思うので、駐留軍の定年制問題についてちょっと触れておきたいと思うのですが、年間どのくらいの定年退職者がいるのか、その定年退職した後の補充はどうなっておるのか、御説明をいただきたいと思います。
  91. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 駐留軍従業員の、これは昭和五十五年度について申し上げたいと思いますが、本土と沖繩に分けまして、本土で五百六人、沖繩で八十人、合計五百八十六人という状況になっております。  この補充の問題でございますが、やはり定年退職の後は的確に補充をしていかなければならないということは言うまでもございません。米側といたしましても、基地運営上も必要であるということでこの退職者のポスト補充を速やかに行いたいという気持ちは持っておりますし、私どもも、これは重要な問題でございますので当然これに取り組まなければならないと思っております。米側も非常に関心を持っております。  ただ、先生よく御承知のとおり、駐留軍従業員の新規補充という問題は大変むずかしい問題がございまして特殊性がございます。たとえば語学の問題等がございますし、それから職種が限られておりますが、その職種に適応するような技術者が適時適切に得られるかどうかというような問題もございます。しかしいずれにせよ、この問題は非常に重要な御指摘でございます。私どももこれについて重要な関心を持っておりますし、日米間で現在も関心を持って協議を続けておりますが、将来とも検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
  92. 上原康助

    上原委員 きょうは実態だけをちょっと聞いて提案をしておきたいのですが、せんだっても長官にお会いしたときに、実際はこの補充がなされていないわけですよね、特に空軍関係は。今後の雇用計画をどうするかということは私はかねがね申し上げてきたことなんです。  これは防衛庁長官も聞いておいていただきたいのですが、すでに平均年齢は恐らく四十七か八くらいでしょう。五十歳に届こうとしておる。そうすると、数は少なくなったりとはいえ、年間六百名ぐらい定年で強制解雇を余儀なくされている。しかし、補充はほとんどしていない。これではいかぬですよ。もう少し雇用主である責任を果たしてもらいたい。その計画を立てて、日米間で今後の駐留軍の定年問題とのかかわりでの雇用計画をどうするかということを積極的に進めていただきたいということ。  もう一点は、せんだっても申し上げましたように、嘉手納空軍基地のサマータイム問題です。アメリカはいろいろ自分たちはぜいたく三味とは言いませんが、クーラーはぜいたくに使いながら、この四年間雇用人に対してはサマータイムを押しつけて生活のリズムを非常に狂わしているという実態なのです。これに対しては現地レベルに任すのではなくして、施設庁長官なり防衛庁長官は郷に入りては郷に従え、いまサマータイムを実施している職場がどこにありますか。沖繩の嘉手納基地だけなんだよ、在日米軍を含めて。これに対してもう少し善処策を講じていただきたい。御見解を聞いておきたいと思います。
  93. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 サマータイムの問題でお答えする前に、最初にお話ございました定年退職と補充の問題でちょっと申し上げたいと思いますが、五十五年度の状況を申し上げますと、先ほど申しましたのは定年退職者五百八十六名と申しましたが、そのほかに人員整理とかその他でやめていく人がございまして、全体で千五百六十八名やめております。これに対しまして採用者の数が千四百四十八名でございますので、百二十名ほど減ということになっております。これはもちろん補充ができればもっと補充するということでございますが、この状況から見ますれば著しい支障は来しておらないというふうに考えております。ただこの問題は、先ほども先生指摘のとおり放置しておけば非常に重要な問題になるということでございます。その状況を若干申し上げました。  それから、サマータイムの問題でございますが、これは先日も先生にちょっと申し上げたわけでございますけれども、米軍としては予算とかその他のいろんな事情によりまして、特に空軍でございますが、サマータイムを実施せざるを得ないということで過去三年間毎年やってきておるわけでございます。本年も実施したいということで現在組合との間で交渉を進めております。ただ私どもが間に入りまして、サマータイムを実施することによって非常に混乱を来す方々もございますので、それらの方々に対するきめ細かい配慮をしてもらいたいということを米軍に強く申し入れているところでございます。
  94. 上原康助

    上原委員 きょうはそれが本論じゃないからあれですが、やはりそういう理不尽というか、生活リズムというか、スケジュールを著しく混乱せしめるような勤務スケジュールの組み方自体が問題なんです。長官、それをやめてしまいなさいよ。そのぐらいのあれがないと困りますよ。そのことを強く要求しておきたいと思います。  そこで、定年問題の最後に、人事院総裁になるのかあるいは総務長官になるのか、ちょっと苦言を呈しておきたいと思うのです。実はきょう行管庁長官もおいでいただこうと思ったのだが、委員長のお立場もあろうと思って遠慮したのですが、五十八年度、人事院は今回の民間給与の実態調査と関連をさしていろいろ公務員制度全般についての抜本的改革案をつくるために作業を進めた。せんだっても角屋先生からもお尋ねがあったと思うのですが、勤務実績に基づく能率的なものを民間が支給しているかどうか。勤続年数や勤務成績がボーナスにどう反映されているのか。定年延長に伴う昇給ベースはどうなっているのか。こういうことを人事院のお立場でいろいろ調査をするのは、あるいはそれは参考資料として必要な面もあるかもしれません。しかし私が問題にしたいのは、第二臨調の目的は一体何かということです。これはいずれ議論をしてみたいのですが、どうも公務員制度にちょっかいを入れる、魔女狩り的なことをやるのが行政改革のような言い分がまかり通っていることは私はけしからぬと思う。正すべきところは正すというのは、いろいろな面で私たちもやぶさかでない。経費の節減も必要、補助金もカットもやるべきところはやらなければいかぬ。だが、あくまで公務員の退職手当の問題とか賃金の問題とか、公務員いびりの魔女狩りはよせ。それが第二臨調を設置した本来の目的ではないはずなんです。  そこで、きょうの新聞にも一部出ておりましたが、人事院総裁、生涯賃金も官高民低といって、生涯賃金なんてどうはじいたかわかりませんが、これは総じて言えば使う人の考え方、目的、意図によってもいろいろ狂いが出ますね。防衛庁がいつも防衛予算を切り詰めようとするのと同じように、高く見せようと思えば幾らでも高く見せられる。そういう生涯賃金問題とか年金問題とか、退職金を第二臨調で切り捨てられるような作業をやっていくということに対しては、総理府人事院も毅然たる態度をとらなければいかぬと思うのです。やるべきところはやらない、こういう行革フィーバーあるいは公務員攻撃ムードでこれからの賃金問題とか公務員制度ということをやるということになると、これは国民的コンセンサス、国会におけるコンセンサスは得にくい、こういうことを申し上げざるを得ないのですが、これに対して人事院総裁総務長官のお考えをきょうの段階は聞かしておいていただきたい。ぜひそういう風潮にならないように歯どめをしていただきたい。
  95. 藤井貞夫

    藤井政府委員 新聞に一部報道されておったようでありますが、これは私が直接に記者諸君とお会いしたわけではございませんので、その点はお含みのほどをいただきたいと思っておりますが、事実として、昨日臨調で、ひとつ人事院の立場から意見を聞きたいという御要請がございまして、私は行って意見を申し述べたということは事実でございます。いかなることを言ったか、いかなる御審議があったかということは、これは臨調の運営の問題ですから、私がここで申し上げることは差し控えます。  ただ、基本的にはやはり現行制度というもののあり方、これがいままでいろんな面において定着をしてきている。その経緯、そういう問題から見てかくあるべき点の一つの基本線というもの、それは厳然としてなければならぬということは事実でございます。そういう意味で公務員制度の沿革なり、そもそも公務員制度というものはいかなる理念によって運営されなければならぬのか、その間において人事院というものがいかなる性格を持ち、いかなる任務を与えられておるのかというようなこと、それから当面の給与の問題とか任用の問題とか、そういったことを含めて私なりの見解というものをはっきり申し上げたつもりでございます。この線がやはり正しい方向だと私は思っておりますし、現行制度自体がそのままで維持される限りにおきましては、その観点に立って毅然とした態度で人事院人事院としての見解を申し述べ、また実際上の行動をとっていくということははっきりと申し上げておきたいと思います。
  96. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、いろんな御意見があろうと思いますけれども公務員方々の一生の生活の問題、生涯の給与の問題とか、いろいろな問題を含めまして、正しいことは正しいという見解に立って守るべきものは守る、正すべきものは正してもらう、これははっきりしておかないと、社会全体の秩序は維持できない、このような感覚を持っております。
  97. 上原康助

    上原委員 これは国会全体の問題でもあると思うのですが、行革を言わなければ何か国会議員たり得ないというような風潮がある。行政改革の小さい政府というか、あるいはむだ遣いを節約するという面においてはわれわれも人後に落ちない。ただ、それが目的がそれて変なかっこうに行っちゃ困るということは言えると思うので、ぼくは与党の方々だって良識ある方々はそれはちょっと筋違いじゃないかと思う方はいらっしゃると思う。だって、きょうは引用しませんでしたが、かつての第一次臨調はどういうことを言っているか。ぼくがここで申し上げましょうか。臨調はそんな権限はないですよ、そこまでは。臨時行政調査会の第一回目の答申は「退職後の保障−定年制の実施と退職手当、退職年金の充実−」「定年制は、公務員の地位の安定、定員、昇進等の計画的運用、公務員の中立性の確保等を目的として実施すべきである。しかしながら、現在のような退職年金、退職手当等の支給状況においては、老後の生活安定は期しえないので、これら制度の抜本的な整備、充実をはかりつつ、当面六十歳を基準として定年制を実施すべきである。これはさっき言った昭和三十九年でしたか、こういうふうに公務員制度の問題についてはもっと老後の生活とか、そういうことを抜本的にやれという前提で定年制もやるべきだということを言っているのですよ。それがいまはあべこべじゃないですか。定年制もやりなさい、退職手当も削りなさい、人事院勧告給与も抑えなさい。公務員の皆さんの士気はどうなるの、士気は。これで一体能率的政府運営はできますか、地方も含めて。われわれはそういう風潮には同調しがたいですね。そこはやはり総務長官人事院総裁も毅然たる態度で臨んでいただきたい。えりを正すべきところは大いに正していい。  そこで最後に、人事院勧告は、調査に入っているようですが、従前どおりやりますね。
  98. 藤井貞夫

    藤井政府委員 調査に入っておりますので、調査を集計し、分析した結果、しかるべき当然とるべき措置というものは例年どおりやるべきときはやるということでございます。
  99. 上原康助

    上原委員 総務長官も、もし人事院から適切な勧告を受けた場合には従前どおりその勧告を尊重いたしますね。
  100. 中山太郎

    中山国務大臣 財政事情が許す限り全力を挙げて人事院勧告を尊重してまいりたい、このように考えております。
  101. 上原康助

    上原委員 少しよけいなこともつきましたが、ぜひ尊重していただきたいと思います。  そこで、ちょっと委員長にも御要望申し上げたいのですが、せっかく防衛庁長官も先ほどからおいでですので、残り時間は共同声明問題について若干お尋ねさせていただきたいと思うのです。  きのうも外務委員会で各党派の方からお尋ねがあったようですが、私は今回のこの日米共同声明を見て感じた印象は、日本を代表する総理大臣の国際感覚というのかあるいは防衛認識というものが一体これでいいのかという感じを率直に受けざるを得ません。鈴木首相は昭和二十六年ですかにアメリカに行かれて三十年ぶりというからやむを得ない面もあるかもしれないけれども、この共同声明はちょっとお粗末過ぎますよ。時間がありませんので余りたくさんは触れられませんが、防衛庁長官はこの共同声明をごらんになって、特に特徴点を言いますと日米同盟関係、役割り分担、一属の防衛努力、反ソ共通認識等々が特徴として出ていると思うのですが、これについてどうお考えですか。どういう御認識を持たれておるか。
  102. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  共同声明はまず冒頭の第一項で、日米両国が民主主義及び自由という共通の価値の上に築かれた同盟関係にあることを認め、両国間の連帯、友好及び相互信頼を再確認しておりますが、このことは共同声明の第八項で日米安保条約の重要性が再確認されていることと相まちましてわが国の防衛の基調をなす日米安保体制の信頼性を一段と高め、わが国の安全、そして極東及び世界の平和と安定のためにも非常に好ましいものであると考えております。     〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕 このため、わが国としては、今後においても自主的に憲法及び基本的な防衛政策に従って、わが国の防衛のために必要な防衛力を改善するとともに、日米安全保障体制の信頼性の維持、向上と、その円滑かつ効果的運用を図るためなお一層の努力を行うよう努めてまいらなければならない、さように考えている次第でございます。
  103. 上原康助

    上原委員 そうお答えせざるを得ないと思うのです。  そこで、それじゃ具体的に少し聞いてみたいのですが、外務省、来ておりますね。「日米両国間の同盟関係」同盟というのが初めて明確に共同声明でうたわれた。この「同盟関係」という表現を織り込むというようなことは第一回会談で出たのか第二回会談で出たのか、どういう経緯があって「同盟関係」というふうに声明で表現をしたのか、そこらの点を説明していただきたい。これが一つ。  それと、特にいま防衛庁長官からもありましたが、私も引用しましたように、いわゆる適切な役割り分担の確認の点ですが、適切な役割り分担、これはわれわれから見ると同盟というのは軍事同盟であり、役割りというのは防衛の分担役割りに間違いないわけです。日本側はきのうの外務委員会などでも、軍事的な分担を意味するものではない、軍事的色彩はないのだ、こう強弁しておられますね。しかし米側は、大統領も国務長官もあるいは国防長官も、これは軍事的分担と不可分のものなんだ、こういうふうに言っているわけですね。しかし、総理は何を言っているかというと、今度総理は、米側は軍事面の分担と言うかもしれないが、日本とは立場が違うと述べ、日米間、日米両国に解釈の違いが出てくるのはやむを得ない。こんな話ってありますか。あれほど国際情勢とか対ソ認識では共通認識をしたのだと言って同盟まで結んでおって、共同声明の中身そのものについては日米間の解釈にずれが出てくるというのはやむを得ない。こんなばかげた矛盾が一体国民に通るのですか。これは本来外務大臣の答弁すべき事柄だと思うのですが、この点についてどうなのか、御見解を聞いておきたいと思うのです。浅尾政府委員 最初の御質問でございますが、まず日米関係は同盟関係である。これは一昨年の大平訪米あるいは昨年の大平訪米の際に、日本側の大平総理大臣のあいさつの中で日米関係は同盟関係であるというあいさつがございます。今回の第一回の首脳会談においてアメリカからまず、アメリカは多くの国と関係を持っているけれども、日本との同盟関係というか日本との関係が最も重要なアメリカの対外政策の一環であるという話がございました。共同声明はそういう従来のいきさつを受けて日米関係を同盟関係というふうに規定しているわけでございますが、そこの一項のところに書いてございますように、そこで言っている「同盟関係」というのは、日米両国が民主主義あるいは自由という共通の価値観を有するというふうに後ろの方で明確に定義してあるということでございます。  それから第二の御質問の点について、同盟関係について日米の間で解釈について差があっても仕方がないという総理の御発言、具体的に総理のどこの御発言を指しておられるか、むしろ八項の役割り分担のところの関係であるかもしれませんけれども、同盟関係についての、先ほど申し上げました点については、日米ともまさに一致しているところでございます。  第八項の役割りの分担について、その中で日本の安全のためと、それから極東の安全と平和と二つ項がございますが、まず最初の日本の安全のためについて申し上げますと、これは日米安保条約を結んでおりまして、第五条の状況に対処するためには日米共同して対処する、その際には日米それぞれの役割りの分担がございます。これはその意味では軍事的な意味でございます。  それから、極東の安全と平和の役割り分担というのが書いてございますが、この点はまさに日本国の憲法に基づいて日本は日本の国を守るため、すなわち個別自衛権以外は武力の行使というのは認められていないということから、極東の安全と平和のために日本の果たす役割りというのは、明らかに外交努力あるいは経済面における日本の役割り、こういうことでございます。他方アメリカは、抑止力をもって日本の安全を守るということから、アメリカの役割りというのは軍事的な面である。  さらに、もう一つ申し上げれば、日米間には安保条約がございまして、そのアメリカの抑止力を果たすために在日米軍に対して施設、区域を提供している。そういう意味から日本としては施設、区域を提供しているという役割りがある、そういうことを述べているわけでございます。
  104. 上原康助

    上原委員 そうは言ってもあなた、そうは解釈できないのじゃないですか、普通に物事を考える人ならば。沖繩返還のときもそうだった。共同声明の、日米間に食い違いがあった。基地の取り扱いとか核兵器の問題について。  そこで、やはりこれは日本は米国の世界戦略にのめり込んだ。大きな借金というか借財を背負い込んだ。特に総理が、私もちょっとしか聞きませんでしたが、プレスクラブでしたか記者会見で、とうとうと日本の周辺海域数百海里あるいは交通路、航路帯一千海里、こういう表現を具体的にしていましたね。確かにこれまで国会でもその種の発言は防衛庁長官なり防衛局長からあったことは事実ですよ。だんだんこれも拡大をされてきていますがね。しかし、これはある面では非常に防衛技術的な問題ですね。一国の総理大臣が、果たしてこういった防衛のきわめて重要な技術的な面あるいは現在の「防衛計画の大綱」とか五三中業とか、そういう面との兼ね合いでどういうことをしなければ——そこまで防衛範囲としてできるのか、あるいはそれをやるには、仮にやるにしてもどれだけの予算措置が必要なのかということも、慎重の上にも慎重を期した発言でなければいけないと思うのですよ、一国の総理という立場では。しかも、庭先だ、この認識に対しては本当に疑問を抱かざるを得ない、余りにも軽率過ぎる。もし勘ぐれば、これを知っておって防衛庁なり外務省が言わしたとするならば、これは大変な悪代官ですよ、失礼ですが。意図的にやったとするならば。善意に解釈すれば、正直な善幸総理をそういうふうに言わしめたということにもなりかねない。ここいらの認識についてはどうなんですか、理解の仕方は。
  105. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカのナショナル・プレス・クラブにおける総理の発言についてお尋ねございましたが、これは私たちが総理にそういうふうに言っていただきたいということで総理が発言されたわけでなくて、総理は記者の質問に対して、日本の防衛政策は自分の国を自分の手で守るということの例としていまの点を言われたわけでございます。
  106. 上原康助

    上原委員 だんだんその背景というか中身はこれから明らかにされてくると思いますので……。  そこで防衛庁お尋ねしたいのですが、従来から数百海里あるいは一千海里という表現はあったわけです。しかし、いま申し上げたように一国の首相がそこまで具体的に、しかも外国において、アメリカとの共同声明発表後に、日米軍事同盟を結んだ上で言ったというのは、これは重大視すべきだということを言っておきたいわけですが、それは従来防衛庁が言っておったとこととどういう関係があるのか。  また、これまでもよく取り上げられてまいりましたように、アメリカ側が対潜能力あるいは対空能力というか、その増強を要求している。ワインバーガー国防長官あたりが日本側に具体的に、外務大臣が三月でしたか訪米なさったときに言ったグアム以西、フィリピン以北という私たちはやはりそのことを約束したものだとしか見れないわけですね。これはどうなのかという点。  それと、もし一千海里あるいは数百海里を防衛するとするならば、現在の「防衛計画の大綱」とはどういう関係があるのか。  さらに、今度明らかになったことはいわゆる海域、空域です。空の場合は、空域の範囲というのは一体どうなるのか。  以上の点についてお答えいただきたいと思います。
  107. 大村襄治

    ○大村国務大臣 ただいま総理のプレスクラブにおける発言等に関連して周辺海域の問題についてお尋ねがあったわけでございますが、私どもは、総理の御発言は、少なくとも日本の周辺海域を自分で守るのは当然のことであって、周辺海域数百マイル及び航路帯の場合は約一千マイルの海域について、憲法を踏まえつつ、自衛の範囲内で防衛力を強化するとの政策を推進しているという趣旨のことをお述べになったものと承知しているわけでございます。  また、このことについては、先生先ほど御指摘のように、しばしば国会において私ども申し上げておるところでございます。したがいまして、御指摘のようにグアム以西、フィリピン以北の海域について米側から海域分担の要請があり、日本側がこれを認めたいうようなことはなかったものと考えているわけでございます。  空域の点につきましては政府委員からお答えさせます。
  108. 塩田章

    ○塩田政府委員 今回の共同声明の中にわが国周辺の海空域の防衛力を改善するという言葉がございます。そこで空域についてのお尋ねだと思いますが、元来私どもが周辺空域と言う場合には、主として航空自衛隊の要撃作戦を展開する場合のことを考えまして空域という言葉を従来使ってきた。それによりますと、レーダーサイトのレーダーの機能する範囲と、それを要撃する戦闘機の要撃能力の範囲というようなことから、わが国の周辺空域のおのずからなる限度がございます。特定のどの空域というふうなことではなくて、そういうレーダーサイトなり要撃戦闘機の能力の範囲ということがおのずから言えるわけでございますが、今回共同声明におきまして周辺海空域と言っております場合は、そういう厳格な航空自衛隊の要撃作戦を考えての空域という意味ばかりでなくて、文言の文脈からいたしまして、海上自衛隊が行う海上防衛作戦につきましても、海上自衛隊の航空機というものが当然海上自衛隊の行動に空から協力、支援をいたします。哨戒でありますとか対潜水艦攻撃でありますとか、そういうことをいたしますので、海上自衛隊の防衛するいわゆる周辺海域に伴って海上自衛隊の航空機が参加することは当然ございます。そうしますと、その場合の海上自衛隊の航空機の作戦する空域も当然考えられるわけでございますので、今回のわが国周辺の海空域の防衛力の改善を図るという表現の場合は、航空自衛隊の防衛力の改善のみならず、海上自衛隊の海上艦艇部隊あるいは航空機部隊の防衛力の改善を図るという意味で使われておるというふうに私ども理解いたしております。
  109. 上原康助

    上原委員 ですから、空と海を数量であらわすとどうなるのですか、距離、能力の範囲は。
  110. 塩田章

    ○塩田政府委員 しばしば申し上げておりますように、私ども現在「防衛計画の大綱」の線で早く到達するようにということで整備を進めておりますが、「防衛計画の大綱」には、艦艇につきまして対潜水艦艦艇約六十隻、海上自衛隊の航空機部隊約二百二十機、航空自衛隊の作戦用航空機約四百三十機というのが「防衛計画の大綱」に定められておる線でございますが、それを早く達成したいと私ども考えておるところでございます。
  111. 上原康助

    上原委員 それはP3C関係を含む航空機、航空自衛隊の迎撃機も含め四百三十機。私が言っているのは、それもあるけれども、いま言う海空域の距離を数量的に言うとどうなるかということなんです。空域はそれぞれのレーダーサイトからどこまでですか。海は大体数百海里、航路帯の場合一千海里、それはわかる。空はどうなっているのですか。空も大体そういうふうに共通しているのですか。それを明らかにせよと言うのです。
  112. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど申し上げたのはそのつもりでございますが、空域の距離は、航空自衛隊の場合は、一方ではレーダーサイトの機能する区域と、それから要撃戦闘機部隊の要撃し得る能力におのずから制約されますので、数百海里というようなそんなに大きな数字にはならない。ただし、海上自衛隊の場合は、海上自衛隊が行いますわが国周辺数百海里、航路帯を設けた場合には約一千海里の防衛をしたいと言っております場合の海上自衛隊の防衛作戦につきましては、当然海上自衛隊の航空機部隊はそれに相呼応するというふうになろうかと思います。
  113. 上原康助

    上原委員 そうしますと、空域と言う場合には現在自衛隊が用いているADIZの空域というか、ADIZを超えるものではないと理解していいですか。それ以下でもない、それ以上でもない。
  114. 塩田章

    ○塩田政府委員 物理的な意味でADIZと同じように考えられるとちょっと食い違う点がございます。大きく言って、達観してそんな程度だとおっしゃるのであればそれはそれでよろしいかと思うのでありますが、ぴしゃっとADIZの線だというふうになりますと、飛行機のことでございますし、ADIZの方はレーダーの識別する範囲でございますからぴしゃっと一致するとは申し上げませんが、大体そんな線だという意味ならそれで結構でございます。
  115. 上原康助

    上原委員 そこらから少しおかしくなってくるんだよ。これはまた次にいろいろ……。  そこで、さっき防衛庁長官はちょっと言葉を濁しましたね。今度の総理がコメントした数百海里とか一千海里というのは米側がしばしば求めているという、しばしばという表現はしませんでしたが、グアム以西フィリピン以北ということを意味していないと思う、しかしそれを求めたこともあり得るというふうにも受け取れるわけですよ。その点どうなんですか。
  116. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは総理大臣がプレスクラブの質問に答えて言われたので、あくまでも日本が現在考えている、防衛局長等から御説明のありました「防衛計画の大綱」に沿った考えでございまして、アメリカの求めているそれに合致するということではございません。
  117. 上原康助

    上原委員 そこで、いま防衛局長がおっしゃったのですが、現在の「防衛計画の大綱」は、御説明があったように護衛艦六十隻、潜水艦十六隻、対潜用の航空機はP3Cを含んで二百二十機、航空を含めて四百三十機、一応そういう水準を達成しようということなんですね。  確認をしておきたいわけですが、今度の日米共同声明でさっき申し上げましたように日米同盟関係が確立をされたというか、私たちはこれは軍事同盟だ。役割り分担、一層の防衛力の強化、努力ということは、従来の政府が持っておった政策には何ら影響は与えない、「防衛計画の大綱」も変更ない、あるいは五三中業、五六中業で「防衛計画の大綱」の水準に持っていくことが当面の課題だということを言っておられたと思うのです。この変更は何ら考えていないということです。同時に、防衛予算についてもGNPの一%以内というのは閣議決定ですから一つの基準というか抑止になっているわけです。こういう面にはいささかの変更もないということでいいですね、防衛庁長官
  118. 大村襄治

    ○大村国務大臣 「防衛計画の大綱」の水準の早期達成は願っているところでありますが、見面しは考えておりません。対GNP一%を防衛予算のめどとするという閣議につきましても、これを尊重していく考え方でございます。
  119. 上原康助

    上原委員 仮にアメリカ側が求めている、あるいは総理が言った今度の共同声明に見られるような防衛努力をやろうとすると皆さんの土台は正直申し上げて崩れていると思う。基盤的防衛構想にしても。とてもじゃないが第七艦隊の肩がわりなんて、総理は本当にまじめな方だとぼくは思ったのですが、第七艦隊がペルシャ、中東、インド洋に移動、スイングした場合に、わが日本の庭先を日本が守るのは当然などと、そこまで胸を張るのはいいかもしれんけれども、これは正直申し上げておかしな論理ですよ。これはいずれ問題になってくるでしょう。そういう前提だと受けとめておきましょう。  そこでもう一点は、緊急展開部隊の問題。私は本委員会でも沖特でも何回か取り上げたのですが、インド洋、ペルシャ湾に緊急事態が起きた場合に第七艦隊が緊急展開をする。このことに関連をして沖繩基地の那覇港は、せんだってから言っているように、もうすでに緊急展開部隊の本拠地みたいになっていますね。これの使用とか、緊急展開部隊の恒常的補給基地というか展開基地として認めてほしいとか、そのための基地整備費というのが今度新たな負担として了承したということじゃないですか。ここらの件をはっきりさせていただきたい。
  120. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 一言で申し上げれば、そういう要請もございませんし、わが方からそういうコミットもしておりません。
  121. 上原康助

    上原委員 それで、防衛庁長官お答えいただきたいわけですが、六月、国会が済んだ直後になるのか、あるいは末になるのかわかりませんが、大村長官とワインバーガー長官の会談が予定されている。さらにその前後にハワイにおける事務レベル会議もあるということですね。ここに臨む防衛庁長官防衛庁の姿勢というのはきわめて重要だと思うのですね。もし皆さんがいまお答えになったようなことであるならば、アメリカ側との間にいろいろな問題が出てくる可能性もあるし、新たな防衛費の負担というようなことに対する国民の懸念というものに対して、どうこの会談で浮き彫りにされていくかということを私たちは注目をしているわけですが、これに臨む基本的な姿勢というのはどういうふうにお考えなのか。  さらにもう一点は、今度のこの総理発言あるいは共同声明を受けて、すでに五十七年度予算については防衛計画大綱の中期達成を目途に、当面の防衛庁の課題として、五十七年度予算の概算要求に当たっては防衛予算のいわゆるシーリングについて五十六年度の対前年度比で求めた九・七%増を下回らない別枠扱いに全力を挙げる方針を固めた、こうなっていますよね。こういうことが防衛庁内で検討され、そういう内容の会談を国防長官やハワイ事務レベル会議でやるのかどうか、このことについても明確にしておいていただきたいと思います。
  122. 大村襄治

    ○大村国務大臣 今後の日米間の協議に臨む基本的な態度を説明せよというお話でございます。その点につきましては先ほども申し上げましたとおり、わが国といたしましては、今後におきましても自主的に、かつ憲法及び基本的な防衛政策に従ってわが国の防衛のために必要な防衛力を改善する、そしてまた日米安全保障体制の信頼性の維持、向上とその円滑かつ効果的運用を図るため、なお一層の努力を行うように努める、この二つの点を眼目といたしまして、今後日米間の協議等に臨んでまいりたいと考えておるわけでございます。  また、シーリングの問題につきまして、新聞報道を通じてのお尋ねでございましたが、まだ比率を掲げてこの問題に臨むというようなことを決定しているわけではございません。これからあらゆる角度から検討してまいりたいと考えておるわけでございます。したがいまして、いま申されましたようなことで今後の協議に臨むという考えはいま持っておらないわけでございます。
  123. 上原康助

    上原委員 それじゃもう少し具体的に突っ込んだお尋ねをいたしますが、五三中業の前倒しとか、先ほど挙げた「防衛計画の大綱」で言う主要装備の目標、それの前倒しとか、この間国防会議で一応五六中業の策定についてはやるという決定を見たわけですよね、中身は別として。その五六中業の中身というのは六十二年までに達成をするという、そういうことがもし前提であるとするならば予算の問題も当然出てくるでしょう。そこいらはどうなんですか。前倒し問題あるいは五六中業の策定過程における六二までに「防衛計画の大綱」を完全に達成するという方向で日米間の話し合い、そういう方向で話されていると思う。ガイドラインやあるいは防衛研究、有事法制化の問題を考えてみた場合にはね。これは何も別々で動いているんじゃないですよ。連動してやられている。そこに私たちは非常に危険性を感ぜざるを得ないわけですよ。その点はいかがですか。
  124. 大村襄治

    ○大村国務大臣 五三中業につきましては、これはすでに決まっているものでございますので、五十七年度の概算要求を進めるに当たりましても、これの早期実現を念頭に置いて進めることはむしろ当然ではないかと思うわけでございます。ただ、財政状況もございますから、そういった点も念頭に置いて対処しなければならないと考えておるわけでございます。  また、五六中業につきましては、先般国防会議の御了解を見まして作業に着手したばかりでございます。「防衛計画の大綱」の水準を早期達成することを基本として作業に入るということについて御了解を得たばかりでございまして、中身が決まりますのはまだこれから一年先でございますので、そういったことを六月の協議で先走ってお話しするというわけにはまいらぬと考えておるわけでございます。     〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕
  125. 上原康助

    上原委員 時間もちょっと過ぎましたので、きょうのところは共同声明についてその程度でとめざるを得ませんが、最後に施設庁長官と防衛庁長官がいらっしゃいますので、沖繩の読谷飛行場、読谷のパラシュート降下訓練の問題について触れておきたいと思うのです。  これは何回か取り上げてきたんですが、最近非常に不穏な状況になってきていることは御承知のとおりだと思うのです。一々詳しく申し上げませんが、ああいう住民密集地域でパラシュート訓練を強行するがゆえに、学校の運動場の横に落下傘が落ちたり、あるいは過去に災害事故、人身事故なども起きておる。それじゃいかぬと思うのですよ。しかも、最近はそれを強行するために警察権力をかりてやっているわけでしょう。移転問題を含めて、この読谷飛行場の降下訓練をどうお考えになっているのか、どう解決しようとしておるのか、まず基本的な点をお答えいただきたいと思うのです。
  126. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 読谷補助飛行場における落下傘降下訓練の問題でございますが、私ども基本的には在日米軍の訓練、演習、これは一刻もゆるがせにできない問題である。したがいまして、原則として在日米軍の訓練、演習についてこれをみだりに中止をするというような申し入れをするつもりはございません。読谷補助飛行場における落下傘降下訓練で過去においていろいろなミスがあうたということは承知しております。最近もミスがあったということで現地の住民の方々がいろいろと御要望等を携えて米軍なり、私どもの現地の施設局の方にお申し越しになっておるということはよく承知しておりますが、今回の降下訓練におきましては、私どもはあれは事故ではないというふうに考えておりますし、別段の被害もなかったというふうに承知をいたしておりますので、米側に対してこの中止を申し入れるという考え方もございません。  ただ、過去における事故の経緯を踏まえて、この落下傘降下訓練場についての機能の移設の問題が出ておりまして、これをどこか適当な場所に移すということにつきましては私どもは必要なことであると考えておりますので、先生御承知のとおり、施設特別委員会の下部機構に特別作業班を設けて、現在鋭意日米間において協議をし、検討を続けておるわけでございまして、先般いろいろと現地においてトラブルがあったというふうに承知をいたしておりますが、私どもとしては、基本的な考え方としては、住民の方々理解と協力を得る必要があるという基本的な考え方には変わりございませんけれども、時と場合によっていろいろないきさつが出てまいることは、これは事情やむを得ないものというふうに考えております。基本的には速やかに日米間の検討を進めて、この機能をどこか適当な場所に移設をするということで本問題を解決に導きたいというふうに考えているわけでございます。
  127. 上原康助

    上原委員 もうできるだけ簡潔にと思ったんですが、どうもあなたの答弁は角が立つんだよ。みだりに中止をすることの申し入れを——みだりにやっているのは向こうじゃないですか、あなた。そんな認識はおかしいぞ施設庁長官、本当に。それと、あなた事故じゃないと言うけれども、四月二十一日、読谷飛行場で降下訓練中の米海兵隊のパラシュートが目標地点から一・五キロも離れた古堅小学校近くの黙認耕作地に降下したのはミスじゃないの。これは事故じゃないの。これが発端ですよ、今回の住民とのトラブルは。前にも民家の庭に十キロの物体が落ちたこともあった。これをみだりに中止を申し入れることもない、あるいは事故でもミスでもないと公式の場で言われると納得しがたいね。どうなんですか、そこいら。やめようにもやめられないじゃないか、質問を終わろうにも。もう少し誠意ある答弁をしなさいよ。
  128. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 私が事故でないと申し上げたのは、事故という字句の定義にもよるわけでございまして、決められた使用条件というのはまさに読谷補助飛行場の定められた目標に落下をすることでございますから、その観点から言えばミスであったということは事実でございまして、米側もミスがあったということは認めておるわけでございます。  それから、みだりに云々というふうに申し上げましたけれども、先ほど申しましたように、訓練、演習というのは非常に日常欠かすことのできない活動でございますので、その意味で米側の方に今回の件について中止を申し入れる考えはないというふうに申し上げたわけでございます。
  129. 上原康助

    上原委員 こっちも施設庁長官、なるべく角の立たない質問をしようと思っても、この間もそうだったけれども、あなたの御答弁はいただけないね。いままでの施設庁長官で一番いいと言いたいけれども、よくないな。  そこで、こんなやりとりをしてもどうかと思いますので結びますが、私は読谷の村長さんというのはきわめて見識のある方だと思いますよ。しかし、その村長さんが施設局長に会いたいと、この問題解決のために、事故が起きてこういうふうに住民も反対しているんだから——門前払いとは何ですか、門前払いとは。私もかつて門前払いされたことがあるんですよ。われわれ社会党の沖繩調査団が行ったら、あの施設局の庭に車を一遍横づけされて。ここでぼくは取り上げた。そのときかつての斎藤施設庁長官は何とお答えしたか、五十二年四月十五日沖繩・北方で。これは後で読んでください。民主主義社会というのは、いやなことでも役人は受けざるを得ない、抗議とかあるいは集団で要請をされた場合は聞く耳を持たなければならない、今回のことは本当に謝りますと彼は言った。何ですか、今回の態度は。村長あるいは村の議会の代表を門前払いをするとは一体何事なんだ。即刻こういう姿勢を改めていただきたい。やはりそれぞれの立場はあるでしょうが、責任者同士がそういうかたくなな態度をとっては、私は問題解決にはプラスにならぬと思うのです。この点はぜひ施設庁長官として現地の方に助言、指示をしていただきたい。それが一つ。  それと最後に、防衛庁長官、これは長い間の懸案事項なんです。あなた、潜水艦隊をつくるとか、アメリカの方にだけ頭いかぬで、こっちの方も少し考えていただきたい。いま施設庁長官もおっしゃいましたように、移転問題については、これは高度の政治的な判断も要るでしょう。日米間の話し合いもあるでしょう。その作業は積極的に進めていただく。そして問題解決については、門前払いとかそういう態度はとらずに、責任者同士じっくり話し合って今回の問題の方向づけをやっていただきたい、この二点について明確な御答弁をいただいて、よい答弁があれば質問を終わりたいと思うのです。
  130. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先生おっしゃいますように、現地の責任者として特に基地問題を扱っているわけでございますから、住民の方々の要望なり声というものをあとう限り聞くということは当然のことでございます。ただ、いろいろな事情がありまして、時と場合によってはお会いできないというようなこともございますことを御理解いただきたいと思いますが、基本的には私どもは住民の理解と協力が必要であるという基本姿勢には変わりございません。
  131. 大村襄治

    ○大村国務大臣 いま政府委員からもお答えがありましたが、私といたしましては、防衛施設の問題につきましては地元の住民の方の理解と協力がなければ決してうまくいかないというふうに考えているわけでございます。  今回の問題につきまして責任者同士の面会等が円滑に行われなかったような点もありますが、そういった点につきましても、今後とも改善に努めたいと思いますし、また移転問題につきましても、施設庁長官が懸案であり宿題であるということを申しておりますので、私といたしましても、そういった懸案ができるだけ速やかに解決できるように今後とも強く指示してまいりたい、さように考えている次第でございます。
  132. 上原康助

    上原委員 ぜひ御努力をいただきたいことを重ねて強く要望しておきたいと思います。  ちょっと時間を超過しましたが、最後に委員長にお願いですが、いま総務長官はいませんが、定年法案あるいはこれから審議に入る退手法案を含めて、非常に真剣に委員長を初め理事、各党派の方々が御努力をいただいていることに敬意を表したいと思います。ついては、大変重要な案件でありますので、ここまでみんな努力をしてきておりますから、ひとつ会期の問題等いろいろあるでしょうが、最後まで慎重な御配慮をいただいて、できるだけ与野党の意見調整なり方向づけが見出せるように努力をしていただくことを強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  133. 江藤隆美

    江藤委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開議
  134. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  135. 上田卓三

    上田(卓)委員 外務省の方がお見えのようでございますので、まずその点について御質問したいと思います。  フランスの大統領選挙が終わりまして、現職のジスカールデスタン大統領が破れ、そして社会党のミッテラン氏が新大統領に選ばれたわけでございますが、これは戦後の世界政治において画期的な歴史的な出来事ではなかろうか、このように思うわけであります。そこで、このミッテラン新大統領が今後どのような政策の基盤を固め、またどのような国内政策あるいは外交政策をとっていくかはまだ不透明な部分もあるわけでありますが、たとえば日本に対して、「不当な競争力を持つ日本製品に対抗する保護政策」というようなことも選挙スローガンの中に出ておったようでございまして、いろいろ日本にかかわって、あるいは世界の政治にかかわって大きな変化も起こってくるのじゃなかろうか。わが国は西側の一員ということも言っておるわけでございますが、その西側の中心的なフランスにおいて、私から言うならば、アメリカのレーガン大統領を厳しく批判したという選挙結果にもなっているのじゃなかろうか、こういうようにも思うわけでありますが、日本政府として、外務省として、このフランスの大統領選挙の結果についてどのように考えているのか、お聞かせいただきたい、このように思います。
  136. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 フランスの大統領選挙におきましてミッテラン候補が当選されたわけでございますけれども、一九五九年でございますか、ドゴール大統領のもとでのいわゆる第五共和制が始まりましてから、革新陣営の大統領候補が当選したということは始めてでございますので、私どもといたしましても注目しているところでございます。  そこで、ミッテラン新大統領の内外政策でございますが、これはいまも御指摘がございましたとおり、まだ具体的には表明されておらないわけでございますので、今後どのような政策が打ち出されるか注視してまいりたいと思っているところでございます。選挙運動中のミッテラン候補の演説等から推察いたしますと、少なくとも外交政策につきましては、たとえばNATOの枠内にとどまるということも申しているわけでございまして、いわゆる自由陣営に属するという基本的立場は変わらないものと了解しているわけでございます。ただ、国内政治の問題になりますと、これは国民議会におきましてまだ依然としてミッテラン候補の支持層は少数派にとどまっているということもあるわけでございます。大統領に当選すれば、国民議会を解散して総選挙を行うということも言っておられるわけでございますので、今度の総選挙の結果も見なければならないと思うわけでございます。  それから、いま御指摘がございました対日関係につきましては、確かに日本からの輸出の急増を警戒するということも言っておられるわけでございますが、フランスはもちろんECの一国でございますので、通商政策の面につきましてはECの枠の中で行わなければならないということもあるわけでございますので、その辺の観点も踏まえながら今後を注視したいというのが現在の立場でございます。  いずれにいたしましても、日本とフランスとの関係は、幸いにいたしまして年とともに緊密化の度合いを加えているわけでございます。したがいまして、政府といたしましては、ミッテラン新大統領の当選に祝意を表しますとともに、今後の日仏関係がますます緊密になることを期待しているということでございます。
  137. 上田卓三

    上田(卓)委員 ジスカールデスタン大統領が破れたというのは、彼のいわゆる国民生活を無視した政策といいますか、これがやはり大幅な失業者を出したし、また国民の生活水準を低めた、こういうことがあったのではなかろうかと思っておるわけであります。こういう政策に対して真っ向から反対したところのミッテラン氏が国民の支持を受けたということだろうと思うわけであります。たとえばイギリスのサッチャー政権についても、国民に耐乏生活を強いているということで、アイルランド問題の紛争もありますが、また同時に、先般の地方選挙でも労働党が大きく躍進するという結果も出ておるわけでありまして、そういうことを考えると、わが国にも大きく教訓として得なければならない部分がたくさんあるのじゃないかと思うわけであります。  公務員二法が審議されておるわけでありますが、行政改革とか、ときには小さな政府というような形、また増税、軍備の拡張、特に公務員に対する人員の削減とかいろいろな形の締めつけ、こういうことが国民の大きな不満となっている、こういうように思っておるわけでありますが、そういう意味で、フランスの選挙あるいはイギリスでの地方選挙などを教訓とすべきではないか、私はこのように思っておるのですが、その点について外務省、どうお考えでしょうか。また総理府長官も一言感想を述べていただきたい、このように思います。
  138. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ミッテラン候補がなぜ今度の大統領選挙に勝ったかといういわゆる勝因につきまして、外務省といたしまして公式見解は明らかにしていないわけでございます。その理由は、外国の国内問題であるということに加えまして、ミッテラン候補の勝因ということになりますと、ジスカール候補の敗因ということにもなるわけでございますが、ジスカール大統領は現時点におきましてはまだ厳然としてフランスの大統領でおられるわけでございますので、外国の元首に批判がましいことにわたることを外務省として公式見解として申し上げるわけにはいかないということで御了承いただきたいわけでございます。  新聞等で今度の選挙の結果につきましていろいろ分析等が行われております。少なくとも私個人といたしましては、新聞等で行われております分析、相当部分のものが当たっていると思っているわけでございますが、外務省としての公式見解というものは表明しておらないということで御容赦いただきたいと思います。
  139. 中山太郎

    中山国務大臣 ミッテラン氏の当選ということあるいはジスカール大統領の落選ということ、私もしばらくフランスに行っておりませんので、最近のフランスの国民感情というものを十分把握しておらない立場で論評することは大変失礼であろうか、こういうことで、論評は差し控えさせていただきたいと思います。  ただし、私政治家として考えますのに、東西間の関係にフランスの位置というものはきわめて高い、また東ヨーロッパとの関係も非常に深い関係を持っておりますから、日本政府としては、新しい政府がどのような形であれ、一日も早く関係をよくして、そしてこれからの東西緊張の緩和のためにもできるだけの努力をする必要があろう、このように考えております。
  140. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、ミッテラン氏の勝因というのですか、掲げた政策がフランスの国民に支持されたということは間違いなかろうと思うわけであります。とりわけわが国との関係考えると、たとえば週休二日制とかあるいは夏のバカンスをも加えてさらに週三十五時間労働、こういうような政策が現実問題として実行に移されてくるのではなかろうか、こういうように思うわけであります。そういう意味で、不当な競争力を持つ日本製品に対する保護政策というようなことを考えますと、わが国の場合は、週休二日制についても不完全にしか実施されていないし、あるいは賃金水準においても非常に低賃金の状況にある、外国から見るならば、ソシアルダンピングと言われても仕方のないような状況にあることも事実でありまして、そういう点で、今後、特にアメリカの軍備拡張を中心とした冷戦体制といいますか、そういうものに追随するというのではなしに、もっと自主的な日本の外交、特に西側の一員というよりも、かつて亡くなられた大平総理がおっしゃっておられたような全方位外交というのですか、そういうものをもう一度考え直すことが非常に大事ではないかということを私は申し上げて、われわれは退職手当減額法、こう言っているわけですが、法案の質疑に入っていきたい、このように思います。  国家公務員、三公社五現業の職員の退職手当を八・三%引き下げるという内容の改正案が出ておるわけでございますが、まず今回の退職手当改正案の提案理由を簡潔にひとつ述べていただきたい、このように思います。
  141. 中山太郎

    中山国務大臣 先生お尋ねの、今回御審議をお願いいたしました退職手当法の一部改正に関する法案趣旨でございますが、総理府は、五年を一つの契機として、五年ごとに民間の退職手当の調査人事院にお願いをいたしておりまして、それに基づいていわゆる公務員の退職時の手当と民間企業における手当との較差というものがどのようになっておるか、これが開き過ぎているという場合にはこれを修正をする、こういうことで、実は四十六年の調査によりますと、公務員方々の退職時に受け取られる手当が民間と比べると実は二割低い、こういうことで、前回の退職手当の二割引き上げということになったわけでございます。今回は、五十二年の調査に基づきますと、昭和四十八年のいわゆる石油ショック以来の民間の退職手当が平均公務員よりも一割低くなっているということにかんがみまして、今回はいま先生指摘のようないわゆる引き下げの法案の御審議をお願いするようになった、こういうように御理解をいただきたいと思います。
  142. 上田卓三

    上田(卓)委員 長官、いわゆるこの退職手当の改正案は、公務員あるいは三公社五現業の職員の退職手当を八・三%下げるのですか。その点どうですか。
  143. 山地進

    山地政府委員 この法案にございますように、附則第五項というのに、これまでは四十八年の改正でございましたけれども、「当分の間、百分の百二十」にする、こういうことになっていたわけです。つまり二割上げたというのは、四十八年の改正のときに、百分の百二十掛けるものを支給する、こういうことになっているわけです。それを今度は、いまの「当分の間」というのはそのままにいたしまして、それを「百分の百十」に改める。そうすると十減るわけでございます。それを百二十で割りますと八・三%になる。ですから率では八・三%減る、法文上は「百分の百二十」とあったのを「百分の百十」に直す、こういうことになるわけでございます。
  144. 上田卓三

    上田(卓)委員 結局は八・三%ですね。八・三%を減額すれば民間並みになるのですか。その点どうなんですか。
  145. 山地進

    山地政府委員 これは民間の調査でございますが、人事院の五十二年の調査というものと同じ時期の私どもの方の公務員調査というのを比較いたしました。その比較の内容については、あるいは後で御質問が出るのかもしれませんけれども、ちょっとこの際御説明いたしますと、高校卒業の行政職(一)の事務員、これが国家公務員でございます。それに人事院の方で調べていただいた、やはり民間の高校卒の事務員、これを比較いたしました。それで民間の場合には定年制がありますから、定年でやめる方、それから国家公務員の場合には勧奨退職でやめる方、つまり定年と定年と同じ状態のものを比較しているわけでございまして、その比較の結果、約一割公務員の方が高いということで、その一割分を直すということでございますから、先生のいまの御質問のとおり、その一割を下げれば八・三%下げると同じになる、こういうことでございます。
  146. 上田卓三

    上田(卓)委員 八・三%下げれば民間並みになる、こういうようにお答えなさったと思うので、この点については後からまた議論したいと思います。  たとえば一千五百万円の退職金がもらえるという人があるとするならば、八・三%ということになればかれこれ百三十万円何がしが減らされる、こういうことになるわけでありまして、本当にわずかな退職金を当てにし、そしてマイホームのローンの返済とか、あるいは子供の通学とか、あるいは結婚資金とかというのですか、そういうことで、あるいは自分たちの老後の生活というものを考えておった、そういう公務員の方にとっては、もう大変な計画倒れというのですか、本当に私は深刻な打撃を与えることになるのではなかろうか、こういうように思うわけでありまして、こういう減額をするということに対して、長官は実際どのようにお考えなのか。本当にもう退職金の計算ができるわけですから、それが八・三%減らされるということによって、今後の生活設計に相当な打撃を与えることになるのですが、実際その点についてどのようにお考えなんですか、長官ひとつお答えいただきたいと思います。
  147. 中山太郎

    中山国務大臣 公務員給与等を預っている総務長官といたしましては、まことにつらいという一言に尽きるわけでございます。これは次官以下各職場に働く公務員の諸君の退職の手当を八・三%カットするわけでございますから、大変つらい立場にある。だれも喜ばない。この法律をもし通していただけるならば、あの中山総務長官のときにわれわれは退職金をカットされた、こういうことに実はいわゆる司法、立法、行政のあらゆる職場に働く諸君が考えるだろうと思います。  しかし、主権者である国民が中心としての政治を行う立場から見ますと、国民の声というものを基準にしてあるいは民間の給与というものを基準にして五年ごとにやる、この調査の結果を無視するわけにはいかない。ここに政治のつらさがあるというふうに私はただいま考えております。
  148. 上田卓三

    上田(卓)委員 昨年の人事院勧告でも公務員給与制度の根本的見直しが言われたわけでありますが、いまは急いで退職手当だけを改正する必要が果たしてあるのかどうかということで、非常に私は疑問を持っておるわけであります。民間準拠ということが言われているわけでありますが、今回の改正されようとしている附則の第五項は、昭和四十八年に改正されたものであるわけでありますが、このときは公務員共闘や公労協の引き上げ要求から、実に五年間もたってからようやく改正されたいきさつがあるわけでありますが、今回の改正案は一昨年十一月の閣議決定からわずか三カ月で法案化され、そうして第九十一国会に出され、またそれと同じものが昨年の臨時国会でも、そして引き続いて今国会という形で審議入りしておるわけでありますが、政府は退職手当の引き上げのときはなかなかおくらせて、じらしたりしてゆっくり対処されるわけですが、引き下げは物すごく急にやろう、大急ぎでやられているというように私たちは受けとめざるを得ないのですが、これであれば公務員いじめと言われてもいたしかたないんじゃないかと思うのですが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
  149. 山地進

    山地政府委員 いまの上げるときは遅くて、下げるときは速やかに、こういうのはおかしいというお話でございますが、実は公務員の退職手当の調査というのは三十六年、四十一年、四十六年、これだけ過去続けてやってきているわけでございます。そこで、前回、四十八年の上げるときには、四十六年の調査で初めて公務員と民間との調整ということをやった。要するに、初めてやるときというのは時間がかかるというようなこともあろうかと思うわけであります。そこで、そういった上げるということだけはございませんで、上げる上げ方というものを、先ほどちょっと触れましたように、法律の附則——附則というのはかなり臨時的な項目といいますか経過的な項目でやるわけでございますから、退職手当法の本則をいじらないで、附則に入れたわけでございます。しかも附則の中に「当分の間」、つまり附則というのは臨時的な上に持ってきて、さらに「当分の間」という臨時的な、上げるというような処置をとったわけでございまして、今回私どももそういった臨時的な枠内、つまり公務員の退職手当の制度というものには根本的に触れないでやるということを前回やったものでございますから、その線に沿って今回再び同じような手法に基づいて一〇%を下げる。今回は前例があった、すでに路線が引かれている、こういう意味から言いますと、上げるとか下げるとかということにつきましては、やりよかったという事情は御理解いただきたいと思います。
  150. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、引き上げのときはもうおくらせにおくらせて、そして引き下げるときは大急ぎでやる。これはもう公務員いじめと言われても仕方がない。どのような弁解をしようとも、私はその非難は免れない、このように思います。  そこで、この退職手当の性格でありますが、この規定では、たとえば国家公務員法とかあるいは退職手当法においてその規定づけがなされていないのですね。そういう点で、政府はこの退職手当の基本的な性格をどのようにとらまえておるのか。これは非常に大事なことでございますので、お答えいただきたいと思います。
  151. 中山太郎

    中山国務大臣 退職手当の性格というものは、国家公務員の諸君が長期間勤続して退職する場合の勤続報償というふうに考えております。
  152. 上田卓三

    上田(卓)委員 長官は、長期間勤続ということで勤労報償というのですか、そういう長期勤続報償、こういうような形を説明されておるわけでありますけれども、どうもわれわれは納得できないわけであります。なぜならば、長期勤労報償というならば、たとえば退職手当が一年間しか勤務しない者でも支給されているということを考えた場合に、説明がつかないのではないか、このように思うのですね。     〔委員長退席、染谷委員長代理着席〕 一年間しか勤めてない人でも退職金が支給される対象になるということを考えた場合、この長期勤労報償という説明は適当ではないのではないか、私はこのように考えざるを得ないわけであります。現在、日本の企業の大半がこの退職金制度を確立していることを見ても、この退職金が賃金の後払い的性格を持っていることはもう明らかではないか、このように考えるわけでありまして、その意味で退職金は明らかに賃金の一部であり、労働条件一つ考えるべきだ、このように考えますが、それについてどのようにお考えでしょうか。
  153. 山地進

    山地政府委員 まず前段の、一年でも退職金が出るというのは勤続報償的でない。これは国家公務員等の退職手当法に、原則の退職手当を百といたしますと、短い人には百分の六十、つまり減額支給されるわけです。それから長期になればなるほど、二十年から二十五年になりますと、俗に言う勧奨退職とかいろいろの定年の場合も二割五分増し、それから二十五年以上になりますと五割増しというように、長期になればなるほど厚くなってくる。短ければ短いほど薄いというような性格から考えて勤続報償的である。  民間の場合にはいろんな退職手当があるじゃないかということ、それから民間では給与の事後払いである、これは確かに説としてはあるわけでございます。ただ、民間の実情を今回の退職手当法に関連して調査した結果を見ますと、民間の場合にもさまざまな性格がある。たとえば定年加算というように、定年の人には加算金がつくというのがあるかと思いますと、功労加算というように、功績のある人を選んでその人には加算金をやる、あるいは役員になった人には役員加算金、こういうようないろいろな性格がございます。ここらになりますと、各企業のそれぞれの自主的な判断に基づいてどういう人に退職金をふやしていくか、退職金があるというのはかなり歴史的なものでございますからいいわけでございますけれども、その基本的な退職金をどういうふうな額に決めていくかということについてもいろんなやり方があって、民間のいろんなやり方のそれぞれについて、功労金説とか、あるいはいま先生のおっしゃったように賃金の後払い説、これは学説としてそういうことがいろいろ言われているということは私も承知しているところでございます。
  154. 上田卓三

    上田(卓)委員 率は違うにしても、現実問題として、たとえば一年でも退職金が出るということは変わりないわけですから、勤続期間が長くなればなるほど優遇されるというのですか、率が上がるということもよくわかりますが、いずれにしても、民間においては賃金の後払い的性格を持っているという解釈は通例ではないか。当然公務員についてもそういう解釈をされる方の方が圧倒的に多いと考えなければならぬ、こういうように思うわけでありますが、少し角度を変えてちょっと質問します。  それでは退職者の実態、いわゆる退職手当を受け取った人がそれをどのように使っているのか。そういう点について調査されたのかどうか私知りませんが、その実態把握をどのようにされておるのか、御説明いただきたい、このように思います。
  155. 林博男

    ○林説明員 人事院の方で、昭和五十三年度中に退職されました一般職給与法の適用職員で年金を受けておられる方でございますが、そういう方が昭和五十四年の十月までに退職手当をどれぐらいすでに使っておられるかということを調査いたしましたところ、平均四三%すでに使っておられる、こういうデータがございます。それからそれをどういうことに使われたかという内訳を見ますと、全体を一〇〇といたしますと、宅地、住宅の関係、これが四七%、こういうことになっております。そのほか借金の返済であるとか教育費であるとか事業資金であるとか、あるいは一般の生活費に充当されているとか、そういう使途に充てられておるということでございます。
  156. 上田卓三

    上田(卓)委員 いま発表されたように、労働者にとっては退職金で住宅ローンの返済とか、あるいは子供の進学、就職あるいは結婚資金とか、あるいは自分たちの老後の生活に充当している、本当にそういう意味では、余裕があるというよりも、入ったらすぐ大部分がなくなってしまうというような部分もあるようでございます。  それで調査の資料、これはいただけますか。どうなんですか。
  157. 林博男

    ○林説明員 すでに集計いたしました部分につきましては、提出させていただきます。
  158. 上田卓三

    上田(卓)委員 すでにおありだというのですから、ぜひともすぐいただくようにお願いしたいと思います。  民間の労働者であってもあるいは公務員であっても、退職金は個々人にとっては同じ重さというのですか、必要性があるのじゃなかろうか。民間だからどうだ、公務員だからどうだというのじゃなしに、個々人にとっては本当に重要な重みを持っておる、このようにお互いに理解しなければならないのじゃないか、このように思うのですが、その点について、私はそういうように考えておるのですけれども、皆さん方の方で、いや公務員の場合は民間と比べてこうなんだというように、使途の問題も含めて何かそこに差というものを認められておるのかどうか、感じていられるのかどうか、それとも同じだ、こういうふうに考えておられるのか、その点について御説明いただきたい、このように思います。
  159. 山地進

    山地政府委員 いま人事院の方からお答えしたような使途に使われている。それから世間で言っている退職手当の利用、効用といいますか、そういったものを拝見いたしましても、民間でも同じようなことが起こっているという意味では基本的に同じだろうと思います。  ただ、恐らく退職金制度についての認識というのが、民間の間ではかなりここのところ変わってきている。つまり生涯給与といいますか、そういった老後の社会における退職金の持つ意味と、あるいは年金の持つ意味というものの均衡ということについてかなり各企業が考えてきている。それで、各企業が考えてきている基礎というのは、もちろん職員の老後の生活保障という問題とあわせて、企業の採算面ということからコストをどう管理するかという面が出てきているということは疑いない事実でございまして、この辺が国の退職手当にどう反映さしていくかということの一つ問題点であろうか、かように考えております。
  160. 上田卓三

    上田(卓)委員 退職手当については、民間も公務員も基本的に性格は一緒だ、このように言明できますか。
  161. 山地進

    山地政府委員 基本的な性格は同じだ、かように理解しております。
  162. 上田卓三

    上田(卓)委員 国家公務員法によれば、公務員給与は「情勢適応の原則」がある、こういうように二十八条にうたわれておるわけでありますが、退職手当法には、その目的、性格などが一切書かれていないわけであります。民間準拠という以上、退職手当にも「情勢適応の原則」が適用されるのか、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  163. 山地進

    山地政府委員 二十八条の「情勢適応の原則」というのは、公務員法の施行に当たって、国会が情勢に適応して変えていくということができるというのが前段に書いてあったと思います。それから後の方で人事院勧告の問題が出てくる。つまり国家公務員法上の適用についての問題だと思うわけでございます。  それから、退職手当法には類似の規定がない。したがって、法律的に二十八条が退職手当法に適用にならないという意味では、その原則は適用にならないわけでございますけれども、これは退職手当法自体の問題として、そういう二十八条とか条文の問題ではなくて、退職手当というものはどういうふうに運用されるべきかということを、法律自体で考えるべき問題、したがって、四十八年にまさに情勢に適応しようということで二割のアップを図った、今回は情勢に適応するという意味で一割の削減をする、こういうことに考えているわけでございます。
  164. 上田卓三

    上田(卓)委員 情勢適応の大きな要因は、民間準拠であるわけでありますけれども、退職手当の引き上げあるいは引き下げに際しても、民間準拠ということが言われておるわけであります。  ところで、民間では退職金の額やあるいは支払い条件について団体交渉事項の扱いを受けておるわけでありますが、この点はお認めになりますか、どうですか。
  165. 山地進

    山地政府委員 勤務条件として団体交渉しているというふうに私も承知しております。
  166. 上田卓三

    上田(卓)委員 明らかに民間では退職金は団体交渉事項になっておるわけでありまして、ということは、民間において、退職金も賃金などと同じように労働条件一つとして扱われているからであるわけであります。  先ほど述べたように、退職金の使い方についても、民間も公務員も差はないというのですか、公務員は退職金はこう使っているけれども、民間の場合はこう使っているんだということはないと私は思うのですね、同じ傾向を示しておるわけでありますから。そういう点で、退職金の性格というものは、やはり民間も公務員も、先ほどお認めになったような形で基本的に一致している、同じ性格のものである、私はこういうふうに理解をしておきたいと思います。  そういうことを考えますと、民間においては退職金は労働条件一つとして団体交渉事項に入っておるわけですから、公務員の退職手当についても、やはり労働条件一つとして労使の団体交渉事項にするのが当然であると思うのですが、その点はどうですか。
  167. 山地進

    山地政府委員 まず、退職手当法というのがどういう公務員対象にしているかということについて御説明をしてから、いまのお答えをしたいと思うわけでございます。  この退職手当法というのは、これは沿革的な理由が主だと思うわけでございますけれども総理大臣、つまり特別職の方も一般職公務員の方も、それから国会職員あるいは判検事、さらには裁判所の職員等司法の方も入っておる。それからさらに五現業はもとよりのこと、三公社もこれに入っているわけでございます。ですから、総理大臣から駅の国鉄の職員も全部この対象な入っているわけでございます。全部入っていて、それぞれ違うような適用方法をやっているかといいますと、これは勤続年限とその勤続年限に応ずる支給率というのを計算いたしまして、それから最終俸給にそれを掛けるということで、総理大臣から一般職員の方々まで全部同じような方式でやっているということがこの退職手当法の特色になっておるわけでございます。  そこで、一体この勤務条件として団体交渉ができるかどうか、やるのがいいかどうかということになるわけでございますが、まずは、一般職公務員については協約締結権がない、五現と三公社にはある。したがって、これらを議論しようというようなことを考えるということは、政策的にはあり得るかと思うわけでございますけれども、ただいまの法律のたてまえから言いますと、それらのものを含めて一律の方式で退職支給をするということでございますので、この支給方法につきましては、個々の団体交渉というわけにはまいりませんので、国会の御審議を通じてこの辺の改正考えていただくということしかないのではないだろうか、かように考えているわけでございます。
  168. 上田卓三

    上田(卓)委員 この労働基準法のいわゆる解釈、それについて、労働省の労働基準局が公文書で書いておられるわけですね。それは昭和二十六年十二月二十七日の基発八百四十一号で、「臨時的な事由に基づき支払われる賃金」である、このように解釈されているのですけれども、この事実については御存じですか、どうなんですか。労働省の方、おられたら……。
  169. 山地進

    山地政府委員 正確な資料をいま持ち合わせておりませんし、私自身正確にそれを読んだことはないわけでございますが、そういうことがあるということだけは存じております。
  170. 上田卓三

    上田(卓)委員 ここに資料の切り抜きがあるのですが、こう言っているのですね。「基準法に於ては退職金を労働条件の一として退職金について定をした場合には法第八十九条によって必ず就業規則に記載すべきものとしているが、その保護については労働契約消滅後の労働者の権利保護を包括的に規定した法第二十三条に包含すべきものと思われるから、退職金を臨時的な事由に基づき支払われる賃金と解釈し、単なる贈与とは見倣していない。」こういう見解を公文書で明らかにしているのですね。そうすると、先ほどから議論していることと、政府の中で見解二つに分かれるということになるのですが、この点についてどうなんですか。
  171. 山地進

    山地政府委員 詳細にその文書を検討し、また労働省の意見も聞いてから論評すべきだろうと私は思うわけでございますが、いまさっとお読みいただいたのを聞いております限りにおきましては、その文書というのは、民間における退職金について何らかの——つまり「就業規則」と書いてございますが、これは民間の場合の就業規則だろうと思うわけでございます。民間についてはいまのような御見解がそのまま適用になるだろうと思うわけでございますけれども国家公務員あるいは三公社五現につきましては、やはり退職手当法で決めるということ、つまり法定主義ということで来ておりますので、その規定のとおり実行するということはかなり困難ではないだろうかと思います。
  172. 上田卓三

    上田(卓)委員 これはひとつ資料を見ていただいて、そして十分これを解釈していただきたい。そういう意味で、この点についてちょっと留保しておきたい、このように思います。  いずれにしても、労働基準法の解釈という中に、退職金は賃金であるという形で見ておられるわけですから、それは公務員であっても民間であっても同じでなければならない、その性格が同じなんですから。だからそういう意味で、労働省基準局が出された文書というものは、当然民間においても、また公務員においても適用される、そういう解釈でなければならない、私はこのように思います。  ここに、昭和四十八年三月、つまり前回退職手当法が改正された際に、人事院給与局が作成した想定問答集のコピーがあるわけですが、ここにははっきりと、「人事院としては、退職手当が公務員にとって重要な勤務条件であることから、かねがね重大な関心を払い、民間における退職金支給の実態を把握することに努めており」云々と書いてあるわけですが、総理府として、この退職手当が重要な勤務条件であるということをお認めなさいますか、どうなんですか。
  173. 山地進

    山地政府委員 勤務条件というのは、先生の御承知のとおり、労働を提供する場合に判断する重要な要件ということでございます。したがって、退職金というものが、自分が労働力を提供する場合に、そういうものを入れて判断する材料であるという意味では、非常に重要な勤務条件であるということは先生のおっしゃるとおりだと思います。
  174. 上田卓三

    上田(卓)委員 民間と同じく重要な勤務条件である、こうお答えいただいたわけであります。  そこで、公務員の退職手当が勤務条件であるならば、給与を初めとした労働条件について団体交渉権を持ち、さらに協約締結権が保障されている職員、三公社五現業、地公では地公法の適用、準用者も当然団体交渉によって退職手当を決めることができるのではないかと考えますが、どうですか。
  175. 山地進

    山地政府委員 先ほど御説明いたしたように、これは沿革的な理由が大きいと思うわけでございますが、退職手当については法定主義をとってきたわけでございます。これは特別職から一般職、裁判所の職員とか三公社五現、全部を含んだ統一的な取り扱いを従来してきたという沿革的な理由によるわけでございまして、これらを勤務条件だから、どこまで交渉で決めていき、別個に決めていったらいいか、これは立法政策的な問題だろうと思うわけでございます。  そこで、こういった勤務条件をどこまで保障していくのかということは、国家公務員法身分保障あるいはそういう経済的な側面の保障をどういう仕組みでやったらいいか、一般の公務員については人事院勧告でやる、三公社の場合には、賃金については交渉により、さらには公労法によって仲裁で決めていく、いろいろなやり方があるわけでございます。その中で、退職手当も勤務条件であり、そういうものをどう保障していくかということは重要な問題でございますが、先ほど来御説明しているように、これを法律で決めていくということが従来からとられてきて、こういった交渉の外にあるということでございます。
  176. 上田卓三

    上田(卓)委員 民間と同じく重要な勤務条件であるというならば、これは労使の団体交渉事項に当然無条件に該当するのではないかと思うので、そういういまの答弁はわれわれとしては納得できないわけであります。公労法で団体交渉とすべき事項を定めてあるわけでありますが、この事項の中には退職手当は含まれていないと解釈しているのですか、どうですか。
  177. 山地進

    山地政府委員 先生のおっしゃるのは、公労法の八条の「賃金その他の給与、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項」二号には昇進だとかいろいろなこと、三号には労働の安全、四号には「前各号に掲げるもののほか、労働条件に関する事項」、こういうことで、団体交渉をすることと対象になるということがすべて協約ができるわけではない。つまりこの中で、これも定年法のときに御説明したかと思うのですが、たとえば免職は団体交渉の対象になる、協約ができる、こういうふうに読めるわけでありますけれども、そのこと自体は、実は国家公務員法なり三公社の個々の法律なりに免職の規定があるわけでございます。法律で決められたことについては、団体交渉で協約を結ばれても、それは法律の方に譲られているわけでございますから、そういう意味からは、観念的というとちょっと言葉が悪いわけでございますけれども、勤務条件であることと協約締結の対象になるということは若干違っていると私ども理解しているわけでございます。したがって、退職手当は勤務条件である、そういう意味では公労法の交渉の対象になっているようでございますけれども、それは法律で決められているということで、従来からの日本の制度として国会でお認めいただいた法律で来ているわけでございますので、その点について法律を直さない限りは団体交渉の対象にはならない、かように考えておるわけでございます。
  178. 上田卓三

    上田(卓)委員 納得できないですね。公労法の第八条一号に、いまおっしゃっておるように「賃金その他の給与、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項」という形にうたわれているわけですから、退職手当が含まれているのが当然ではなかろうか、われわれはそのように考えるわけであります。退職手当は重要な勤務条件であるということを認めるならば当然のことだろう、私はこういうように思うわけであります。  いずれにしても、この退職手当が民間の退職金と同じように、重要な勤務条件であるならば、何らかの形で保障されてしかるべきではなかろうか、このように思うのです。そういう意味で、たとえば退職手当の法改正を行う前に、当該の労働組合と話し合いをすることは大変重要なことだと思うのですが、その点はどうなんですか。
  179. 山地進

    山地政府委員 ある組合、ある組織において交渉して退職手当について、たとえば支給の方法についていまの退職手当法と違うようなことを話し合われたと仮定いたしますと、その当事者として、今後の問題として退職手当のあり方はこうあるべきじゃないかということを御進言いただくのは、それはそれでいいわけでございますけれども、いまの退職手当法の適用を排除して、その協定でやるということにはいかないわけでございます。先ほど私が立法論的にと申し上げましたのは、そういった退職手当法の仕組みを変えて、ある者については退職手当法から除外するということをすれば、それはその組織にとって別の退職手当を支給するということをその組織の中で議論するということになるわけでございますけれども、これはまさに立法政策の問題だろう、かように考えております。
  180. 上田卓三

    上田(卓)委員 当該の労働組合と話し合いをする必要があるし、またしているのじゃないかと思うのです。今回の法改正を前に労働組合と十分話し合いをしたのかどうか、その点どうですか。
  181. 山地進

    山地政府委員 この退職手当法の改正そのものにつきましては、いろいろな段階において、総務長官のレベルにおいてもあるいは局長のレベルにおきましても、それ以下のレベルにおきましても、関係の団体と意見の交換は十分いたしてきたわけでございます。
  182. 上田卓三

    上田(卓)委員 十分話し合いをしてきたというお答えですが、私の聞いている限りでは十分に話し合いが行われていない、このように聞いておるわけであります。十分話し合いをしないで一方的に頭越しに退職金を減額する、こういうことはもってのほかだ、このように私は思うわけであります。そういうことがなされるということは、今後も一方的に政府意思で退職金を減額できることになるのじゃないですか。そういう意味で、重要な勤務条件であるというならば、やはり組合と十分話を詰めることが大事なんじゃないですか。その点、もう一度答えてください。
  183. 山地進

    山地政府委員 重要な勤務条件でございますので、十分職員意見を徴すことが必要であることは、先生のお説のとおりだと思います。今回の退職手当法の改正は、先ほど御説明いたしましたように、いまの退職手当法の附則にルールがございますので、そのルールを四十八年につくりましたから、それを適用して今回やるということでございまして、これは退職手当法の根本的な性格を変えるものではないという認識に立っているということは、先ほど来御説明したところでございます。いずれにいたしましても、よく職員団体から意見を徴するということが重要であることはおっしゃるとおりだと思います。
  184. 上田卓三

    上田(卓)委員 重要な労働条件、勤務条件の一つ、こういうことですから、この公労法適用の労働組合ですね、三公社五現業の組合とも、やはり話し合い、いわゆる団体交渉を十分すべきだ、このように思いますので、ぜひともその点については留意をしていただきたい、このように思います。  次に、退職手当法は総理府所管になっておるわけでありますが、どういう経過からそうなったのか、説明いただきたいと思います。
  185. 山地進

    山地政府委員 私の承知しているところでは、昭和四十年に例のILOの八十七号条約に関連いたしまして国家公務員法改正が行われ、その際人事局というものが設立されたわけでございますが、そのときに、それまでは大蔵省が所管しておりました退職手当法が総理府の人事局に移ってきた、こういうことでございます。
  186. 上田卓三

    上田(卓)委員 まあ一般の国家公務員は大きく労働基本権が制約されておるわけでありまして、その代償機関、代償措置として人事院が存在しておるわけでありますね。そうすると、この退職手当も給与と同じ労働条件、勤務条件、こういうことであるならば、当然退職手当についても人事院所管にすべきである、これはもう常識的に考えてそう解釈して正しいのではないか。そういう意味で人事院勧告権を持つべきだ、このように思いますが、明確にひとつこの点についてお答えをいただきたい。
  187. 山地進

    山地政府委員 人事院ができた理由は先生のおっしゃるようなことで、国家公務員法が制定され、その中で人事院職員身分あるいは経済的な状態、条件というものを守っていくということでできたわけでございますけれども、この退職手当というのは、やはり過去のかなりいろいろないきさつがあって、歴史といいますか、それがあって、国家公務員法対象から除外されてきている。これは退職手当法というものの性格が、いま申し上げました国家公務員のみでない、三公社も入っているということ、そういったいわゆる国家公務員法の適応というものから言うといろいろのものがまざっているということで、退職手当法というものが独立なものとして来ている。しかし、その精神においては勤務条件等も必要なものは法定していくというような国家公務員法の精神にのっとった制度である、かように私ども考えております。
  188. 上田卓三

    上田(卓)委員 人事院ひとつ。
  189. 藤井貞夫

    藤井政府委員 退職手当関係一般職については人事院所管すべきではないかというのは、立法政策の問題としては、これはそれ自体意味のあることであろうと思います。われわれもそういう考え方はあり得るということは十分に承知をいたしておるのであります。ただ、現行の退職手当法の成立の歴史なり過程なりというものを見ました場合と、それと先刻来るる御説明がございますような手当法の対象となっておりまする職員の範囲の問題ということから考えますと、これはやはり直ちに人事院給与の問題等と同じような取り扱いをしていくべきであるということになるのかどうなのか。なかんずく、これは当面の責任官庁は総理府人事局でございますので、他省庁の所管にも関係をする問題でございますので、検討に値する問題であるということだけを申し述べさしていただくにとどめたいということでございます。
  190. 上田卓三

    上田(卓)委員 ですから、検討するに値する云々ということは、やはり給与と同じような労働条件一つであるということであるならば、当然総理府所管じゃなしに、人事院のそういう勧告権といいますか、人事院所管にすべきだ。隣におられるから言いにくい面もあるのかもわかりませんが、それが本来のあり方だ。経過はいろいろあるのですが、その経過がいかぬということをわれわれは言っているわけですからね。いかぬなら、やはりもとどおりに——もとどおりというのですか、やはり公務員は労働基本権が抑制されて、その代償機関、措置として人事院制度があるんですから、当然給与と同じように退職金についても人事院で扱うということは、本来から見ても正しい、経過は別にしてですね。そういうように理解していいですか。総裁、どうですか。
  191. 藤井貞夫

    藤井政府委員 本来正しいとまでは私はいま断言の時期には至っておりません。ただ、るるお述べになっておるような点からいって、これは検討してよい問題であろうという認識は持っております。特に最近のように、一連のいわゆる公務員の生涯給与というようなことが論議をされておることになりますと、この点につきましては、やはり現行制度でもって十分に一般国民の御納得をいただくことができるのかどうかという点についても、その点今後検討をしていかなければならない、またしていっていいという面もあることも事実でございます。そういう意味で申し上げておるのでございますが、これはいずれにしても、所管が現在はっきり決まっておることでもございますし、これをいま人事院が、そうだ、そうあるべきだというので、これを取りに行くというわけにもまいりませんので、そこらの点を含めながら、今後問題の所在は所在として突きとめるという姿勢で取り組んでまいりたいということでございます。
  192. 上田卓三

    上田(卓)委員 今後検討するに価する、こういう言葉のようですが、総理府はどうですか。長官、どうですか。
  193. 中山太郎

    中山国務大臣 私はいま直ちにこれを人事院に移しかえをするというわけには、ここでは御答弁申し上げかねますが、行政機構全般について、ただいま第二臨調等でもいろいろ御検討をいただくわけでありまして、二年間の経過の中にはいろいろな問題が出てくるだろう、そういうふうな経過を見ながら、将来総理府としてはしかるべき検討をすべきものではあろうと考えております。
  194. 上田卓三

    上田(卓)委員 しかるべき検討をぜひともしていただきたい、このように思います。  そこで、人事院にお伺いしますが、今回の退職手当のいわゆる減額法ですが、われわれはそういうように言っているのですが、この改正について人事院として相談を受けたのかどうか、あるいはまた同時に、この改正案について人事院としてはどういう見解を持っておるのかお聞かせいただきたいと思います。
  195. 林博男

    ○林説明員 退職手当の関係は、先ほどからお話が出ておりますように、現在のところ総理府所管ということになっております。したがいまして、この改正案につきましては、総理府の方でおやりになったということでございますが、ただ、その基礎になります民間の退職金の実態調査、これの方は総理府の方から御依頼がございまして、私どもの方で調査をした、こういうことでございます。  それで、その結果のいろいろな見方というコメントを付しまして、総理府の方へ御連絡申し上げまして、その結果に基づきまして総理府の方で公務員の方の実態調査、これと突き合わせをされた、こういうふうに理解しております。
  196. 上田卓三

    上田(卓)委員 国公法第二十三条によって退職手当法の制定あるいは改廃に関し、国会及び内閣意見申し出をすることができる立場に人事院はある、こういうように私は解釈しているのですが、その点についてどのようにお考えですか。
  197. 藤井貞夫

    藤井政府委員 公務員制度に関する事項につきまして、関係法律改廃等について結論が出ました場合に、それについてしかあるべしという意見を申し述べることがございますることは、法の規定をまつまでもなく、これは当然のことであり、また特に形式的にも、いまお挙げになりました法律規定、二十三条でございましたか、これに明定をいたしておるところでございます。
  198. 上田卓三

    上田(卓)委員 今回の場合、人事院は何も意見を述べなかったというように聞いておるのです。なぜなんですか。法律によると、そういうことは十分意見を述べることができることになっているんじゃないですか。その点明確に答えてください。
  199. 藤井貞夫

    藤井政府委員 あえてその意見申し出ができないわけではないというふうに私も思っております。ただ、これは上田委員もよく御承知でありますように、各省庁あるいは政府機関には権限事項というものが明定をせられておりまして、退職手当法はいま総理府所管ということに決められております。所管でございまするので、それなりの組織、機構を持ち、またそういう姿勢でもって常時退職手当について検討を続けておられるはずでございます。そういう責任官庁といたしましてお仕事を進めていかれるに関連をして、民間の退職金の実態はどうなっておるかということについては、人事院といたしましては給与調査その他でそういうやり方についてもある程度経験がございますし、また技法についても相当の自信があるという点は、これは間違いございませんので、そういう点に御着目になりまして、総理府の方からも御依頼がございました。実はわれわれとしても、退職金というのも大変重要な問題ですから、おおむね五年間に一度、所管ではございませんけれども、やはりどういう推移になっているかということはつかんでおく方がいいということで調べております。今回の場合も、そういう時期に来ておりましたところで、ちょうど総理府の方からも調べてくれという御依頼がございましたので、これを受けて調査をいたし、その調査の結果というものを総理府の方に御連絡を申し上げたということでございまして、所管がそういうふうに明定をいたしておりますので、いまのこの段階でわれわれの方で公式に意見を申し述べるべきものではないだろう、その期ではないだろうという判断に立ったものでございます。
  200. 上田卓三

    上田(卓)委員 今回のやり方は、人事院を全く無視したやり方ではないか、非常にけしからぬ、こういうふうに私は思っておりますが、総理府としてどのように考えていますか。
  201. 山地進

    山地政府委員 ただいま人事院総裁が申し上げたことに尽きるかと思いますが、まず私どもとしては、これは先ほど御説明いたしましたように、三十六年以来毎回人事院に御依頼をして継続的に実施してきた案件でございます。五年のインターバルで毎回人事院にお願いしてきた。それでその目的というのは、やはり民間の退職手当のレベルと国家公務員のレベルはどうなっているかということに着目して、こういうことをやっているわけでございますから、私どもとしては、先ほど御指摘になりました情勢の変化に対応する、つまり法律改正ということを常に念頭に置きながらこういったことをやってきたわけでございまして、内閣には議案の発案権と発議権というのがあるわけでございますから、人事院の御意見を待つまでもなく、改正すべきものは改正していくということを私どもは従来も実施いたし、そういう意味で今回も実施してきたわけでございます。
  202. 上田卓三

    上田(卓)委員 くどいようですが、やはり民間準拠と、このようにおっしゃるなら、当然退職手当についても民間と同じく団体交渉で決めなければだめだ。やはり民間準拠と言うならば、言う以上は、そうあってしかるべきだ。いわんや団体交渉権とかあるいは協約権が保障されているところの三公社五現業の組合においてすら、退職手当についてはそういう交渉権から外されているということは、私はもってのほかだ、このように思うのですが、こういう考え方について、こういうものがまかり通っていくならば、本当に退職手当についても公務員政府の言うがままというんですか、全く無権利な状況に置かれてしまうことになるのですが、これが果たして正常なのかどうか、本来そういう労使関係でそういうことがいいのかどうか。民間ではやはり給与の一部として定着していると言ってもいいのですから、そういう状況なんですから、やはり政府においても賃金の一部だ、賃金そのものだという解釈で、私は団体交渉権の事項に当然入れるべきだと思うのですが、そういう点について考える余地はないのか、検討するのか、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  203. 山地進

    山地政府委員 勤務条件であるから、それをどうやって保障していくのかということだと思うわけでございますけれども、三公社五現、それから国家公務員、これは法律適用関係を見ましても、片方では国家公務員法適用になるものもあれば、あるいは三公社のように、それぞれの法律を持っているものもある。それぞれ五現と三公社は公労法の適用もある。それから年金について言えば、国家公務員、五現は国家公務員共済組合法というものが適用になり、三公社は公共企業体職員等共済組合法、いろいろ分かれてきているわけでございます。  そこで、要はどうやったらその経済的な条件といいますか、そういった勤務条件というのは職員の経済的な状態を保護する、こういうことでございますので、私どもとしては、従来から歴史的な沿革のある退職手当法、つまりほかの法律ではばらばらになっているものを、一番大きなグループとして国家公務員として包んでいるわけでございますけれども、したがって、題名としては国家公務員等退職手当法、「等」というのは三公社が入っているから等になっているわけでございますが、そこはまさに立法政策の問題であろうかと思うわけでございまして、私どもとしては、そういった大きく包含したグループの国家公務員等というものの利益の保護ということは、まさにこれは国会で御議論いただいて上げ下げできる、これも一つの重要な保護規定だと思うわけでございますが、そういう意味で法定主義ということが、従来からの歴史から考えても、いまは妥当ではないだろうか、かように考えております。
  204. 上田卓三

    上田(卓)委員 だから国家公務員法改正して、そして人事院勧告権を私はぜひとも与えるべきだ。さもなくば、いわゆる公労協に団交権というんですか、そういうものを与える、私はどっちかしかない、このように思うのですが、どうですか。
  205. 山地進

    山地政府委員 一つの立法政策的なお考えでいろいろの立場といいますか、党派という意味じゃございません、いろいろな考え方を持ってこれを議論する場合に、そういう考え方が一つあるということは、私どもも十分認識しているところでございます。
  206. 上田卓三

    上田(卓)委員 これは国会の審議ということにはなるわけですけれども、やはり政府考え方、国会へ臨む態度ということが非常に大事ではないか、私はこのように思っておるわけです。今後の問題もありますから、もう政府の思いのままに退職金を、上げてくれるならいいのですけれども、何ぼでも下げられるということは——もう重要な労働条件一つなんですから、退職金の性格は民間と一緒だということを認めておられるわけです。それを民間準拠だと言いながら、民間では団体交渉の中でそれらが話し合われておるにもかかわらず、公務員の場合はもうそういう権利がない、政府が一方的に決める、こういうことはもってのほかですから、そういう意味での法改正をぜひともすべきだ、私はこのように思います。その点について十分配慮していただきたい、このように強く要望しておきたい、このように思います。  それに関連してですが、民間準拠という言葉があるわけでありますが、この民間準拠というのはどういう意味なのか。ずばり言うならば、民間と全く同じということは、金額であれば同じ金額という意味なのか、あるいは一定の水準としてあって、少しでも幅があるというように解釈をしていいのか。どの程度までが許されるのか。その点について明確にお答えいただきたい、このように思います。
  207. 山地進

    山地政府委員 退職手当法の適用範囲が非常に広範である。つまり総理大臣から一般の職員まで全部を包含して同じ方式でやっているということから考えますと、この民間準拠というのをどうやってやるか、民間に準拠するということを是といたしますと、どういうふうにそれを実施したらいいかというのが今度は手法の問題として出てくるわけでございます。  そこで、私どもとして今回やりましたのは、国家公務員の行(一)、二十二万か四万ぐらいおるわけでございますが、その中で七〇%近くというのは高校卒の方でございます。高校卒の行政(一)というのは事務職でございますので、こういう事務職の人と民間の高校卒の事務職の人を比較するということが、比較の方法としてもいろいろな条件を加味しなくていいという意味では比較しやすいということで、この官民比較を行って、その部分についてどれぐらい開きがあるか、端的に言うと八・三%違うということで、その部分で補正した。つまり公務員というグループ、これは三公社も入れましたグループでございますけれども、そのグループのバロメーターといいますか、それに行政職の(一)の高校卒を使ったということでございます。したがって、各部門個々に見た場合に、それが今度は民間の対等の者とどう整合しているかということは必ずしも一致しない場合がある。どこかで合わせればどこかが違ってくるというようなグループのいろいろな色合いの入っているものがあるわけでございますから、その全部について一部といえども違わないということは、制度の仕組みからいってもなかなかむずかしいわけでございます。そこで私どもとしては、代表選手である高校卒の行(一)というものと民間の高校卒の事務職の方を代表として比較して訂正したということでございまして、それが私どもの言う民間準拠でございます。したがって、先生が御指摘になるように、一分一厘違わないというわけにはいかないということが全部を見た場合には起こるということは御理解賜りたいと思います。
  208. 上田卓三

    上田(卓)委員 民間準拠ということは、一〇〇%何から何まで民間と一緒だ、金額も一緒だということじゃなしに、ちょっと幅があるというのですか。大きな幅じゃなしに若干の幅があるというふうにお答えなさっておるわけですが、この八・三%を減額することによって民間と、完全に一致ということじゃなしに、だれが見てもなるほどという——ある部分だけが一致しているというのじゃなしに、何%とは言いませんが、大部分が一致をしている、そういうように理解していいのですね。どうですか。
  209. 山地進

    山地政府委員 表現はともかくといたしまして、気持ち的に先生のおっしゃっているとおりだろうと思います。
  210. 上田卓三

    上田(卓)委員 そうすると、後からちょっと議論をこの点についてしたいと思っているのですが、相当合理的というのですか科学性というのですか、万人を納得させる、なるほど民間準拠だな、いわゆる幅があるにしても、そこに常識というものがあると思うのですが、自信を持って今回の八・三%減額は民間準拠と言えますか。その点どうですか。
  211. 山地進

    山地政府委員 自信を持っております。  それから、つけ加えさせていただきますと、四十八年の値上げしたときも同じように、行政職(一)の高校卒と民間の高校卒というものを比較して、二割公務員の方が低いということで値上げしたわけでございます。同じ手法で今度も、民間の方が一割低いから公務員を下げようということでございまして、私どもこのやり方について二度やっているわけでございますが、それなりの自信を私どもは持っておるわけでございます。
  212. 上田卓三

    上田(卓)委員 自信を持っておっしゃっておるわけですが、後からその自信がどんなものであるかということは明らかになるのじゃなかろうか、このように思います。  さらに、政府公務員の労働基本権など公務員にとって不利になることを論じるときに、特に公務員の特殊性というものを常に強調されるのですが、その点について、国民にわかりやすく、なぜこうなのであるかということが説明されなければならぬのではないか。公務員だから民間と違うんだ、公務員だからということだけでは納得できない、このように私は考えておるわけであります。労働基本権が制約されている、ストライキ権の問題も含めて完全に与えるべきである、そういうふうにわれわれは思っておるわけですけれども、この場でその点について明確に御説明いただきたい、このように思います。
  213. 山地進

    山地政府委員 まず憲法に、国家公務員は国民全体の奉仕者であるというように公務員の性格づけがなされているわけでございます。これは、国家公務員がその機能において全体の奉仕者であると同時に、片方では、使用者というものは実は国民全体が使用者であるというような関係にあると私どもとしては理解しているわけでございます。そのためには常に公正な立場に立って公益のために奉仕しなければならないというのが公務員の持って生まれた性格であろうかと思うわけでございます。そういった公務員の性格づけがあればこそ労働三権の制約ということが行われているわけでございまして、これについては公務員制度審議会等において議論され、さらには三公社五現については公共企業体等基本問題懇談会でございますか、そこでも種々議論がされまして、現在のところ、争議権を与えるべきではないというのが結論であり、政府といたしましては、それについて実施をしているわけでございますが、他方、そういった労働三権の制約というものを背景にいたしまして、国家公務員法が成立され、その中に身分保障があり、かつ勤務条件について法定し、賃金については人事院勧告というような制度ができて今日まで至っておるわけでございます。片方で制約、片方では保障というものがバランスをされてきておるというのは、最高裁の判決等においても認めていただいておる点である、かように承知しております。
  214. 上田卓三

    上田(卓)委員 公務員の場合は労働基本権を初めいろいろな形で制約があるわけです。たとえば国家公務員法の百条の守秘義務ですね。「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」そしてもしこの規定に抵触した場合には、同法の百九条の十二号で、「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」と明記されておるわけであります。結局、公務員というのは在職中だけじゃなしに退職後もこのように制約を受けているのですね。そしてそれに反した場合、刑事罰がついて回るということで、こんな厳しいものは民間にはないですね。その点どうですか。
  215. 山地進

    山地政府委員 ただいま御説明いたしました公務員身分の特殊性からそういった制約というのが絡まされておるのは事実でございまして、民間の場合には同様な規定はないということはおっしゃるとおりだと思います。
  216. 上田卓三

    上田(卓)委員 公務員の特殊性というのですか、公務の特殊性といいますか、そういうもののいわゆる担保として身分保障のための分限制度があるわけでありますが、これは当然在職中の身分保障ということになろうと思うわけですが、先ほど申し上げましたように、退職後も刑事罰がついて回る。在職中じゃなしに退職後の元公務員、そういう人たちに対して、それじゃどのような担保があるのか。  言っている意味はわかりますね。在職中は身分保障として分限制度があるわけですけれども、退職後も守秘義務という形で刑事罰がついて回るわけですから、それじゃそういう人たちに対してどういう保障を与えるのか、担保を与えるのかということになるのですが、その点についてはどうなんですか。
  217. 山地進

    山地政府委員 現在の国家公務員法あるいは退職手当法もそれに核当するのだと思うわけですが、そういった退職後も守秘義務という義務を課されている公務員に対して、現在の国家公務員法あるいは退職手当法等の保障が相当になされておるということが私ども理解でございます。
  218. 上田卓三

    上田(卓)委員 やはりそういう担保というのですか保障というのですか、そういう配慮は与えられて当然だというふうに私は思うのですが、その点についてもう少し詳しく考え方を述べていただきたい、このように思います。
  219. 山地進

    山地政府委員 いまの先生の御質問は、私の方で推察いたしますと、在職中の勤務条件、給与等も含めてそれが民間に準拠しておる、そうすると、退職後の民間準拠というのはどんなあり方なんだ、こういうような形になろうかと思うわけでございますけれども、実は退職後というのは、守秘義務という義務は回ってきますが、勤務という形ではないわけでございます。勤務しているのは在職中でございます。したがって、在職中の勤務条件とはどうあるべきかという中に当然入ってきている。それが現在の勤務条件、つまり給与なり退職手当なり、そういうものによってカバーされているというのが私の申し上げたことでございます。
  220. 上田卓三

    上田(卓)委員 納得できないわけですが、先へ進みたいと思います。  先ほどの民間準拠、それが果たして今回当てはまるのかということを申し上げたわけですが、勤続三十五年で、総理府の発表では千八百三十七万円というようになっておるわけです。この金額を逆算すると、三等級の十六号俸以上でないともらえない金額ではないかと思うのですが、三等級以上というのはどのような職務を持った人ですか。
  221. 山地進

    山地政府委員 等級で申し上げますと、三等級というのは課長補佐で困難な業務、これは本省庁でございますが、管区の機関に行きますと課長になります。それから二等級というと本省の課長ということになります。
  222. 上田卓三

    上田(卓)委員 そうすると、三十五年勤めた人は大体課長補佐以上になるというのが一般的なんですか。     〔染谷委員長代理退席、愛野委員長代理着席〕
  223. 山地進

    山地政府委員 この高校卒の行(一)の方というのは、私どもの調べた対象はたしか千四百人ぐらいおります。いろいろの職場におかれるわけでございますけれども、それのいまの平均でございまして、上の方は課長になっている方もおられますし、下の方は補佐にもなっていない方もある。つまりいま三等級の十六号とおっしゃったと思いますが、それは平均の数字でございます。
  224. 上田卓三

    上田(卓)委員 平均だと思いますね。高卒であっても大卒であっても、平均勤続三十五年で千八百三十七万になるということですから。  ところで、公務員の昇級とか昇格の基準は勤続年数によって決まるのかどうか、その点についてはどうですか。
  225. 長橋進

    ○長橋政府委員 お答えを申し上げます。  国家公務員給与につきましては、法律で「職務と責任に応じてこれをなす。」ということになっております。したがいまして、勤続年数で昇格等が行われるということはまずございません。まず第一は、どういう職務についておるか、職務を中心にして考えるということでございます。  ところで、昇格等につきましては、全体のバランス、それから部内における秩序というものを考えまして、最低の所要年数は規則で決めてございます。これは等級が上がるにつきましては、最低二年おらなければならぬという規定はございますけれども、実態は最低二年で上がるということはなかなかございませんで、基本的にはやはり従事しておる職務について等級が決まるということでございます。
  226. 上田卓三

    上田(卓)委員 昇級とか昇格は勤続年数で決まるのではないということになりますと、勤続三十五年の人でもいわゆる本省の課長補佐以上になれない人が出てきますね。どうですか。
  227. 長橋進

    ○長橋政府委員 いまお尋ねのとおりでございます。
  228. 上田卓三

    上田(卓)委員 そうしたら、勤続三十五年の人というのは、あるいはもっと端的に言うならば、本省の課長補佐級以上というのは一般的な、あるいは公務員を代表することはできないんじゃないですか。その点どうです。
  229. 山地進

    山地政府委員 私どもの高卒の行(一)の人の勧奨退職でやめた人の数が、三十五年から三十五年までの人全部合わせますと千四百八人いるわけでございます。この中で三十五年勤続してやめられた方というのは百三十二人いるわけです。これは実際に三十五年勤めた国家公務員の高卒の人全部を集めてきた数字でございます。この数字によりますと、一等級が二人、二等級が二十四人、三等級が五十五人、四等級が三十五人、五等級が十五人、六等級が一人、これは実際の姿でございます。  それで、私どもの方で官民比較をしましたのは、こういう退職をした方々についてどういう階層の人がいるか、経歴的に高卒の事務職の人が民間にいるから、それを比較しているわけでございます。いまの御説明のとおり、退職金というのは同じ高卒で三十五年でもそれぞれ人によって違うわけです。それの平均が千五百万とか千八百万とかということになるわけで、それを等級に直すと三等級の十五号、これは先生のおっしゃるとおりだと思うのですが、実際の姿で私どもとしては官民の比較をしている、こういうことでございます。
  230. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、平均千八百三十七万円という数字自身が勤続三十五年の人の平均的あるいは代表的数字ではないでしょう。どうなんですか。
  231. 山地進

    山地政府委員 これは先ほどちょっと申し上げましたように、官民の比較をする手法の問題になるわけでございまして、ある種の仮定を設けていろいろの比較をするということも可能でございましょう。ただ、私どもとしては、実際の退職者の支給された金額というものを比較しているということでございますので、官の方はいま三十五年でしたら百三十二人の平均でしか比較ができないわけでございます。したがって、その数字というのは、もっと多くもらっている人もいれば少なくもらっている人もいる。これは比較の手法上やむを得ないことではないかと思います。
  232. 上田卓三

    上田(卓)委員 過去のデータに基づいて云々という、これも非常に貴重なものかもわかりませんが、やはり状況というものも変わってくるわけですから、そうじゃなしに、本当にそれこそいま申し上げたように、公務員の代表的なそういう一つの平均的数値を出すということになれば、過去のデータだけでは大きな問題があるんじゃなかろうか。昇給とか昇格とかいうのは、自動的に勤続年数によって決まるとかいうんじゃないし、いわんや課長補佐級に全部がなれるわけでもない。そういうことを考えた場合に、これは余り科学的でない、こういうふうに言わざるを得ない、私はこのように思います。  そこで、国家公務員の行政職(一)の適用者で勤続二十五年、それから三十年、三十五年の基準で勧奨退職した人は、五十二年度中にそれぞれおられて、その点について説明があったわけでありますけれども、その勤続年数別平均年齢も明らかにしていただきたい。そしてその人たちの退職時の等級はどうなっているのか、そういう点でできましたら詳しく説明をしていただきたい、このように思います。
  233. 山地進

    山地政府委員 いまのお尋ねは、二十五年、それから三十年、三十五年の等級別の分布状況ということだと思います。  二十五年で勧奨退職でやめた方は六十一人、三等級が十一人、四等級が十三人、五等級が二十九人、六等級が八人でございます。  それから、三十年の方でございますが、二百三人で、二等級から逐次申し上げますと十二人、五十五人、七十二人、五十九人、五人というふうな分布状況になっております。  それから三十五年は、先ほど申し上げました百三十二人でございます。  これらの平均年齢につきましては、ちょっと私どもいま資料がございませんので、後ほど計算いたしまして御報告したいと思います。
  234. 上田卓三

    上田(卓)委員 ここに昭和五十二年度の任用状況調査の中から行政職(一)の適用者を取り出し、等級別の構成をただした表があるわけですが、それによると、勤続三十五年以上と見られる五十五歳以上の辞職者は、三千二百三十二人となっておるのですが、これは正しいですか。
  235. 山地進

    山地政府委員 数字でございますので、ちょっと調べてみたいと思いますが、いまのは行(一)で五十五歳以上でやめた方でございますか。
  236. 上田卓三

    上田(卓)委員 資料を私いただいておるわけですが、それに基づいて申し上げておるわけです。この任用状況調査によると、五十五歳以上の辞職者のうち三等級の者は全体の二二・六%となっておるのですね。しかし、先ほど総理府の方からお答えいただいた中、また資料の中にも五十五人で四一・七%の数字が出ておるのですね。さらに三等級以上の者で見れば、任用状況調査で三七・五%。しかし、総理府の資料では六一・四%となっておるのですが、この数字の違いをどのように説明できるのか、お聞かせいただきたいと思うのです。この調査から見たら、三等級以上は四割にも満たないですね。ということは、平均的な公務員は四等級以下で退職しているということになるんじゃないですか。
  237. 山地進

    山地政府委員 いまの御指摘の数字というのは、高卒の行(一)の退職状況がどうかということか、あるいは全公務員の行(一)の人たちの分布状況がどうかという点がちょっと私どもとして判然としないのですが、私どもの今回調べたのは、行(一)高卒の数字はいま申し上げました勧奨退職は一千四百何名でございます。それから二十五年から三十五年までの勧奨退職じゃない人も含めた者は、先生のおっしゃった三千二百何人というのがあるというふうに思います。  それで、いま三十何%かどうかという先生の御指摘の点は、これも数字を少し調べてみなければわからないわけですが、高卒にとどまらない一般の方も含めた数字ではないのだろうかというふうに思いますが、もし違っていましたら、もう一度御質問いただきたいと思います。
  238. 上田卓三

    上田(卓)委員 十分そのことが説明されてないので私も不確かなんですが、たとえば五十四年の任用状況調査を見ても、五十五歳以上の辞職者で三等級以上の者は三九・九%という数字が出ておるのですね。四等級以下が六〇・一%と先ほど申し上げたと同じ比率に結果として出ている。そうすると、私のいただいている総理府の資料は、三等級以上のが高く評価されている、意図的にそうされているということになるのですね。
  239. 山地進

    山地政府委員 どうも私どもの数字の手持ちが悪かったのかもしれませんが、いま先生の御指摘のは、三十五年で百三十二人の高卒の行一がいる。それで三等級以上というのが二人と二十四人と五十五人で、合わせて約八十人だから、これを百三十二人で割ると、三十五年につきましては六一%になるのではないか、したがって、それはいまの五十四年度の調査によると、三等級以上がそれほど高くないじゃないか、ここが異常に高いからおかしいじゃないか、こういう御議論であろうかと思いますけれども、いまのが私どもの全部を含めた行一の姿かどうかということについてもう少し確認をさせていただきたいと思うわけでございます。これはその三十五年の実績から割り出した数字でございますし、御指摘の三等級以上が三十何%であるというのは、ほかの要素が入っている数字ではないかと思うわけでございます。その数字についてもう少し検討させていただきたいと思います。
  240. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、先ほど私が申し上げたおたくの方からもらった資料でも明らかなように、三等級以上の者が平均的というよりも、四等級以下の人の方が約六〇%近くあるわけですから、そういう点で何か作為的なものをわれわれは考えざるを得ない、このように思うのです。  そこで、人事院の方にちょっとお伺いしますが、昭和四十八年の改正のとき、人事院は資料として高卒標準入職、いわゆるモデルの勤続年数別等級号俸を実態を考慮に入れながらお示しになっておられるわけです。これによると、勤続二十五年で五等級十四号俸、三十年が四等級十四号俸、三十五年で三等級十三号俸となっておるようでありますが、この勤続年数別等級号俸は昭和五十二年度時点でも標準的、平均的なものと見て構わないのですか。
  241. 長橋進

    ○長橋政府委員 四十八年の比較の場合に使いました標準的号俸は、いま御指摘のとおりでございます。今回の官民比較におきましては、先ほど人事局の方からいろいろ御説明がございましたように、実態比較をされたわけでございまして、モデル比較むしておらないということでございます。したがって、現在モデルとしてつかまえれば何号俸が適切なのかということは、いまにわかに正確なところはちょっとお答えできませんけれども、モデルとしてとらえるとすれば、三十五年勤務のところで三等級十三号より上に行っておるのではないかと思われます。
  242. 上田卓三

    上田(卓)委員 昭和五十二年度時点で勤続年数別等級号俸はどうなっているのか、それからなぜこのモデルが五年程度でそんなに違ってくるのか、その理由について説明をお願いしたいと思います。
  243. 長橋進

    ○長橋政府委員 五十二年のものにつきましては、これは逆算をして出した等級号俸でございますので、私どもの方にそれの資料はございません。  それから、先ほど私が若干上回っておるのではないだろうかということに対しまして、現在なぜそうなっているのかというお尋ねでございますが、これは職員構成とか新陳代謝というものがございますし、それからいわゆる昇給の運用ということもございまして、若干上を行っているのではないだろうかというふうに考えたところでございます。
  244. 上田卓三

    上田(卓)委員 この五十二年度時点ではモデルの資料はないのですか。あれば出してほしいのですが。
  245. 長橋進

    ○長橋政府委員 今回の退職金比較におきましては、実支給額の比較をいたしまして、四十八年当時はモデルの比較をいたしておりますので、比較号俸が違うものでございます。したがいまして、モデルとしての等級号俸の設定の必要性というものがなかったわけでございますので、特に調べておりません。
  246. 上田卓三

    上田(卓)委員 ないのですね。  そこで、四十八年と同様に標準を設定した場合、標準入職者の勤続年数別、それから等級号俸を昭和五十二年度当時の俸給月額に直し、退職手当を計算するとそうなるわけでありますが、勤続二十五年ですと、五等級十四号俸は十九万二百円ですか、それから退職手当支給率は四十八・六月ですから、退職手当は九百二十四万。勤続三十年で四等級十四号俸は二十二万四千九百円ですから、支給率が五十九・四カ月、一千三百三十五万円、勤続三十五年では三等級十三号俸二十五万三百円ですから、支給率六十九・三カ月で千七百三十四万円、このように計算されるのですが、これを総理府が発表した金額と比べると、勤続二十五年で百二十三万、勤続三十年で百二十八万、勤続三十五年で百三万円も総理府発表の方が高いのです。これは非常におかしいですね。だから、この金額の違いをどう説明をされるのか、人事院は私がいま読み上げた数字が平均的でないと考えていられるのか、私が示した数字についてひとつ納得できるように見解を示していただきたい、このように思います。
  247. 長橋進

    ○長橋政府委員 いま先生指摘の二十五年、三十年、三十五年のときのモデルの号俸、それから金額との関係について御指摘がございましたが、おっしゃるように、モデルで見ますと確かに低くなっております。しかし、総理府で用いられておりますのは実態でございますので、それはモデルと実態との違いということになるのではなかろうかというふうに思います。
  248. 上田卓三

    上田(卓)委員 ちょっとおかしいですね。昭和四十八年に、前回の改定時に人事院が示した標準モデルの設定は、実態から言ってもまだ高過ぎるくらいでそれでも総理府が発表した数字よりも低い。するとモデルにならぬのじゃないですか。
  249. 長橋進

    ○長橋政府委員 モデルの場合でございますと、学卒の直採用の中位数をとることになりますけれども、実態ということになりますと、いろいろな方が入っておられるということもございますので、モデルと実態との乖離ということでやむを得ないのじゃなかろうかというふうに思います。
  250. 上田卓三

    上田(卓)委員 それじゃモデルにならぬわけで、国家公務員の年齢別構成を見ても、四十五歳から五十五歳代までが一つの大きなこぶになっているわけですが、これらの職員の多くが二等級、一等級にいけるとはとても考えられない。現行の公務員制度のもとでは、職務が変わらなくてはこれらの等級にはついていけないし、またポストの数にも限りがある。したがって、平均的な職員は四等級ないし三等級どまりで退職するということになりますね。そうすると、たとえば勤続三十五年で三等級十三号俸という設定は、一般職員の実態からいって高いと思うことはあっても決して低いものではない、そういうことになるのじゃないですか。
  251. 山地進

    山地政府委員 いま御議論いただいているのは、私が御説明したように、今回の調査というのは、実支給額を取り出して、三十五年でいえば百三十二人の、平均を出して比べたわけでございます。これはなぜかといいますと、民間の場合も百五十社でございますけれども、実際の支給額というものを調査いたしまして、それで比較しているわけでございますから、民間も実支給額で退職金を調べ、公務員の方も実際の支給額で比較するということでございますので、私どもとしては、これは一つの比較の方法である。先ほど申し上げましたように、どういった比較をするのか、またいろいろな考え方があるわけでございます。ただモデルという考え方もあるわけでございますけれども、モデル自体が一体正しいかどうかという議論が片方ではあろうかと思うわけでございまして、今回私どもといたしましては、加算金、民間にも加算金が実際にあるわけでございますから、そういった加算金も実際に調べ、加算金のないものも調べ、それから公務員の場合にも、勧奨退職の者については実際の支給額というものを調べまして、それで比較をしているということでございます。
  252. 上田卓三

    上田(卓)委員 モデルにも問題があるし、それから実支給額というふうにおっしゃっているのですけれども、私もこれは一つの資料に基づいて実際のそういうデータで申し上げているわけですから、こういうぼくらの考え方から言うならば、総理府が勝手に作成した意図的なそういうもので官民の比較の結果を出しておるのじゃなかろうか。そういうような勝手な資料といいますかデータで官民の較差の是正というような形でされたのでは、私は公務員、国民は納得しないのではないか、このように思っているのですね。
  253. 山地進

    山地政府委員 今回の比較の方法といたしましては、二十五年から三十五年まで全部比較を調べまして、それで官民の比較をしているわけでございます。そこで先生の御指摘は、三十五年についてはちょっと異常現象が起こっているのじゃないか。つまり三等級以上が多くて四等級以下が少ない、これはちょっと公務員の常識から反するのじゃないかというような御指摘であろうかと思うわけでございます。私どもは、二十五年から三十五年の十年間にわたりまして全部平均をとっているわけです。たとえばさっき申し上げました二十五年、三十年、三十五年以外も全部調べてあるわけでございます。これも資料としてお配りしてあると思うのでございますけれども、この全部の二十五年から三十五年についての官民の比較をいたしまして、これは全部実支給額でございます。  そこで、年度ごとに比べてみると、官民の差というのは、たとえば二十五年というのは八九%、これは民間の方が低いわけです。それが二十六年だと八六、二十七年だと九一と、ずっと全部トレースしてあるわけです。したがって、この結果からまとめた表には二十五年、三十年、三十五年のところだけをお示ししてございますけれども、その裏には十年分全部とってあるわけです。そこでその十年間の全部の数字というのを見てみますと、九〇%前後に全部あるわけです。それはそんなに違っていないのです。ということは、これだけ十年のところにいろいろ退職者がいるわけですから、それが全部おかしいということはないわけです。あるところは統計上で言うと特異な現象が起こって、これは例にならないということが起こるかもしれません。それはサンプルが悪いということになるわけでございますけれども、私どものところでは、この五十二年という特殊の年度でございますけれども、そこの勤続年数が十年違う人、二十五年から三十五年全部を見て、そこで一〇%というのを決めているわけです。三十五年だけを見て一〇%と決めているわけではない。三十五年は九二で多少民間と比べてほかよりも高くないかもしれないという議論はあるかもしれません。ところで二十五年は八九、三十年は九二、三十五年は九二というこの三つの数字だけで決めたわけではない。もとより三十五年だけでも決めてない。これだけ十年のスパンで考えると、先生の御指摘になるような特異な現象というのは消えていくのではないか、こういうふうに私ども考えているわけでございます。
  254. 上田卓三

    上田(卓)委員 どうも納得できないですね。  次に移りますが、総理府の官民較差の行政職(一)の適用者を基準として行っておるわけですが、退職手当法は行(一)適用者ばかりか行(二)ほかすべての国家公務員適用されるわけですが、三公社五現業の職員適用となるわけですから、この官民較差、比較において、行(二)を初め三公社五現業の職員対象に入れていないのはどういうわけですか。
  255. 山地進

    山地政府委員 先ほど来御説明いたしておりますように、公務員グループといいますか、公務員等の中で官民の比較をすべての階層でやるというわけにはいかない、つまり代表のグループというのを選ぶ、それで私どもとしては比較がしやすい事務職というものを選んで、しかも公務員の中で全体で見ますと約五〇%が高校卒でございます。行(一)で言いますと六七%というものが高校卒でございます。そこで高校卒の方々事務職の勧奨退職された人と、民間の高校卒の事務職で定年でやめられた方、この比較が全体を代表するんじゃないだろうか、こういうことで比較したわけでございます。そこで、先生のおっしゃるように、三公社の職員もおられるし、行(二)の方もおられる、あるいはいろんな方もおられるということについては、確かに配慮しなければいけない点がございますので、ほかの資料で大体傾向を把握してみますと、やはり公務員の方が高いというふうに私どもとしては判断しているわけでございます。  ただ、行(二)を何で判断の材料にしなかったのか、あるいは三公社の職員を何で判断の材料にしなかったのかということにつきましては、これは三公社の場合にもそれぞれ職務というのが違っております。それから現業三公社の場合には、生産労働者という観念で、いわゆる事務というところから離れてくるわけでございますが、これらの方々は大部分が中卒でございます。そこでもし三公社あるいは五現業の方々が高いかどうかと比較する場合には、私どもの従来の手法を考えますと、中学卒の生産労働者の方と三公社五現業の方々を比較する、これはもちろん三公社五現業も中卒の人をもって代表するのが適当じゃないか、かように考えておりまして、そういう意味では、中労委あるいは労働省の資料等を利用させていただいて、三公社五現業の方々をいわゆるチェックしております。それらによりますと、やはり三公社五現の方々が民間よりも高いという結果が出ております。
  256. 上田卓三

    上田(卓)委員 公労協の各組合の調査によりますと、昭和五十二年度に勧奨退職者に支払われた平均手当額は、勤続三十五年で、最低の林野で千二百七十七万円から最高でも郵政の千四百九十八万円、こうなっているのですね。これは先ほどの調査から見れば、民間に比べても一二%から三二%も低くなっているのですね。それでまだ退職手当を引き下げなければならぬのかという点で非常に疑問を感じるのですが、納得できるように説明してください。
  257. 山地進

    山地政府委員 まず、いまの公労協の数字というのがどういう数字か、私、存じません。恐らく実際に勧奨でやめられた方々を全部集めておられると思うのですが、それらの方々をさらに分類いたしますと、大卒と高卒と中卒というふうに分かれるだろうと思います。そこで、いま私が三公社五現についてチェックしてみたという私どものやり方を御説明いたしますと、私どもの手元に中労委の生産労働瀞の調査というのがあるわけでございます。この中労委の調査というのは、資本金五億円以上で従業員が一千人以上の三百四十四社の退職金を調査した資料でございます。これは中卒の生産労働者ということで調べたわけです。その数字を、私どもがそれに対応する三公社の生産労働者の中卒の方を調べた数字と対比したわけです。そういたしますと、一例を申し上げますと、三公社の方々の退職金は三十五年で千三百七十一万円でございます。三十年で千百六十五万円、これは中卒の方でございます。それに対して中労委の調査は、一千万円を切っている数字が多いというような数字が出ております。これは中労委でやった数字でございますから、私どもとあるいは多少手法が違うかもしれませんし、考え方も違うかもしれませんけれども、少なくとも五億円以上の企業で従業員が千人以上のところでございます。  もう一つ、労働省で調べた数字というのもございます。この労働省の場合は、従業員が三十人以上の企業でやはり中卒の生産労働者の調査でございます。これの生産労働者一人当たりの平均と三公社あるいは五現業の数字を比較いたしますと、これも明らかに三公社五現の方が高いという数字が出ているわけでございます。したがって、いま先生のおっしゃった公労協の方でおつくりいただいた数字というのが、まず大卒、高卒、中卒に分かれているかどうかということが一つ。それからもう一つ、仮に全部含んでいるとするならば、その比較されている民間の方は高卒の事務職というのでは比較の対象としては正確でないんじゃないだろうか。いまの公労協で調べられたそのパートナーを民間に求めるなら、高卒か中卒か、生産労働者かどうかということがやはり比較の場合には非常に大事じゃないだろうか、かように考えているわけでございます。
  258. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、総理府が示している基準よりもはるかに低い退職金を受け取っているということは事実なんですから、その点ははっきりしておかなければならないんじゃないか。それと同時に、この人たちは現行の法体系というか、それで退職手当というものを計算して老後の計画をされているのですからね。そうでなくても低い状況方々に対して、さらに減額するということはもってのほかだと私は思うのですね。  ところで、本省の部長級の人たちは指定職俸給表の適用になっているのですが、これらの人たちの退職手当は五十二年度で平均どれぐらいになっているのですか。
  259. 山地進

    山地政府委員 五十二年度における指定職でございますけれども、これは大卒でございますが、これの四百七人の平均退職金が三千百五十四万円でございます。
  260. 上田卓三

    上田(卓)委員 指定職俸給表は現在三十八万四千円から最高八十八万円の金額になっておるようですが、この指定職の退職手当算定基準である俸給月額には、いわゆる管理職手当とかあるいは扶養手当までもが含まれておるようであります。したがって、勤続三十五年の場合は二千六百六十一万円から最高は六千九十八万円の退職手当ということで本当に大きな数字になっているのですが、一般職の人をいじめるようなことをしないで、ここに大きなメスを加える必要があんじゃないですか。指定職の人だけはぬくぬくとしている、こんなところにメスを加えないというのは不公平じゃないですか。
  261. 山地進

    山地政府委員 この退職手当というのは、その勤続年数に応じた支給率と最終俸給月額ということで計算する非常に単純な方法でございます。したがって、そういった方法下においては、同じような勤務年限だったら、その俸給月額の差が同じような倍率でそのまま効いてくるというのは御指摘のとおりだと思うのです。  そこで、私どもとしても、指定職の方々の退職金と、今度は民間におけるそういう大卒の方々を比較してみますと、民間の場合は、役員の退職手当というのと、平といいますか、役員になる前の退職手当と二つありまして、役員の期間における退職手当というのは率が高いわけです。したがって、こういった上の方の民間と役人との比較については若干困難があるのですけれども、ある種の仮定を置いて、平均の重役の滞留期間というものを計算いたしますと、私どもの資料では、民間と指定職の俸給表に対応する方々の退職金はほぼ拮抗しているということが明らかになっております。
  262. 上田卓三

    上田(卓)委員 指定職は管理職手当とかあるいは扶養手当まで含めているんですね。いま民間との関係もおっしゃったわけですけれども、その点は私も十分研究しておりませんが、しかし、いずれにしても、一般の公務員方々の問題をする前に見直すべきはこういう上の部分じゃないのか。いわんや、天下り高級官僚と言われていまマスコミをいろいろにぎわせておりますが、こういうところにもっとメスを加えることの方が大事なんじゃないかと思っているのです。政労協の方々の計算では、七年や八年ぐらいしか在職していないのに公団の総裁や理事長が三千万円以上の退職金を手に入れているというようなことが手元にあるのですが、もっとこういうところにメスを加えなければならぬのじゃないですか。そういう気持ちは全然ないんですか。
  263. 山地進

    山地政府委員 公社、公団の場合には退職手当法の対象にはなってないわけでございます。それから私は、公社、公団の担当の者ではございませんけれども、公社、公団につきましては国家公務員に準ずるという規定考えまして、ちょっと年度は忘れましたけれども、最近において退職手当を減額していると理解しております。
  264. 上田卓三

    上田(卓)委員 長官、どうですか。
  265. 中山太郎

    中山国務大臣 公社、公団におきましても下げておるわけでございます。
  266. 上田卓三

    上田(卓)委員 ぜひともそういう点についてもメスを加えていただきたいと思います。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕  ちょっとくどいようですが、八・三%——われわれその方がわかりやすいから行っているのですけれども、要するに八・三%減額すれば民間並みになるのだ、それでいいんですね。
  267. 山地進

    山地政府委員 そのとおりでございます。
  268. 上田卓三

    上田(卓)委員 何回も確認しているような形になるのですが……。  次に移ります。  人事院は、一昨年、高齢者に対して昇給延伸あるいはストップの勧告をして、本年四月から実施しておられるわけでありますが、昇給ストップが退職手当にどう影響しているのか、するのか説明していただきたいと思います。
  269. 長橋進

    ○長橋政府委員 この昇給延伸及び停止措置につきましては、所要の経過措置を設けてございますので、徐々に影響を持ってくるだろうと考えております。職員の生年月日等のこともございまして、昇給時期の関係もございますから一概には申し上げられませんが、概括的には、五十七年三月までの退職者についてはおおむね影響はないだろう、それから五十八年三月までの退職者につきましては一部一号俸程度マイナスの影響を持ってくるであろう、その後六十一年三月までの退職者については一、二号俸ということでございまして、おおむね六十年以降の退職者につきまして影響を生じてくるだろうと見ております。
  270. 上田卓三

    上田(卓)委員 たとえば勧奨年齢を五十八歳とした場合、五十六歳の人は、勧奨年齢になるまでに、これまで二回の昇給があったものが一回しかないということになりますね。また勧奨年齢を六十歳とすると、昇給は二回も減ってしまう、こういうことですから、去年四月から退職手当はすでに五、六%実質的に減額になっている、こうわれわれは解釈できるわけですが、この現実を考慮されているのですか。
  271. 山地進

    山地政府委員 まず、いまの現実ということでございますが、すでに五十二年の退職手当の支給実績を調べたものには、支給実額として出てきているわけでございます。それからいま人事院の方から御説明がありましたように、特別昇給のある種のストップあるいは定昇のストップ、そういったものは五十八年から影響が出る者あるいは六十年から影響が出る者と、いろいろあることは存じております。  そこで、私どもの今回の調査は、将来に向かっての変化、そういったものについては考慮を払わなかったということは事実でございます。それはなぜかといいますと、民間の方でもいまや低成長下にあって、第二基本給に移すとか企業年金の方に移すとか、最近出た労働省の統計によりますと、やはり給与は四十歳代が最高で五十歳代が下がっているとか、いろいろなデータが出てきている。これはやはり民間の方においても相当の変化が起こりつつあるということでございまして、この変化を入れた場合には、これまた官民の比較が困難になってくる。そこで現在、私どもとしては五十二年度にフィックス、固定いたしまして、そこで比較をいたすことが妥当であろうし、かつ、官民の今後の推移を見ても、それが適用されるものではないだろうか、かように考えておるわけでございます。
  272. 上田卓三

    上田(卓)委員 すでに実質的に引き下げが行われている。それにさらに追い打ち的になることは事実でありますから、こういうことを考慮に入れていないことは大きな間違いではないか。どのような説明をしようとも、これは余りにも過酷であろう、このように言わざるを得ないと思うのです。  さらに、人事院昭和五十五年二月十二日の通知で、給実甲四九八号ですか、これまで勤続十年以上について一号、勤続二十年以上について二号の退職時の特別昇給を昭和五十七年三月三十一日で廃止するということを決定しておるようですが、規則による特別昇給の一号分は残るとはいえ、勤続二十年以上はやはり一号低くなるわけでありますが、このことについてどうお考えですか。
  273. 山地進

    山地政府委員 いまの御指摘の点は、そういう制度が実施されていることについては私ども承知しておりまして、それらについての見解は、いま申し上げたとおり、民間の方も今後さらに下がる方向へ行っているし、役所の方もそういった下がる傾向があっても、現五十二年度の官民の較差においては影響はしないのじゃないだろうか。影響はしないというのは、相対的にお互いに下がっていくから、それについては今後の問題として対応したらいいのじゃないだろうか、かように考えておるわけでございます。
  274. 上田卓三

    上田(卓)委員 特別昇給の一号分は失われて、しかも今回の改正案による引き下げがあるということで、ちょっと計算してみますと、政府の言う三十五年勤続千八百三十七万円に相当するのは三等級の十五号でありますから、退職手当が、月額二十六万四千五百円掛ける六十九・三カ月で千八百三十三万円、これが今回の引き下げで六十三・五二五カ月となりますから、それで計算しますと千六百八十万二千円、こういう形。そして、さらに特昇の一号分がなくなるわけですから、結局千六百三十五万ぐらいになってしまう、こういうことですね。結局八・三%の引き下げというよりもそれ以上の引き下げに、この場合なるわけですね。  同様に、勤続三十年で四等級十七号をモデルにしますと、千四百四十二万八千円が何と千二百九十五万四千円に減ってしまうのです。百四十七万四千円の減という形になってくるわけです。ですから、これでは逆較差というのですか、較差を埋めるというのですが、逆に較差を広げるという結果になるのではないですか、どうですか。
  275. 山地進

    山地政府委員 五十二年の調査というのは実額の調査でございます。それからいまの先生の御指摘の定昇なり定昇の延伸なりやめるときの特別昇給の減額といいますか、一号俸にするとかいったことは、将来に働く要素であります。そこで、官民の較差をどうやって比較するか。これは将来の予測を入れて比較するなら、民の方も将来の予測を入れて比較しなければならない。先ほど来申し上げておりますように、民の方も、石油ショック以来退職手当というものについてどう考えていったらいいかということでいろいろと努力をされておるわけでありますから、官の方が減った時点で、もし民の方と比較したらどうなるかということは、今後の問題としてあろうかと思いますけれども、私どものいろいろの調査によると、民の方も減っているわけだから、五十二年の調査は、官の方も今後の特別昇給や何かから見れば高い、民の方もいま調査したものから比べれば高い、したがってその比較としては妥当なものではないか、かように考えておるわけでございます。
  276. 上田卓三

    上田(卓)委員 要するに、較差を埋めると言いながら、逆に較差を広げるという結果になることは事実だと思うのです。すでに減額されていっているのです。それをさらに追い打ちをかけるような形にするということは問題があるのではないか、このように指摘せざるを得ないのです。今回の退職手当引き下げの根拠というものは、昭和五十二年の調査が唯一正しいのだというようにおっしゃっておるわけですね。しかし、この調査の結果について言えば、明らかに公務員の方が高く、現実にあり得ない金額ではじき出されていて、意図的と言わざるを得ない。データとおっしゃっているけれども、われわれだってデータで物を言っているわけです。そういう点で国会論議もありますけれども、組合との話し合いでもそこらあたりがすれ違いになったままで、見切り発車みたいな形でされているところに大きな問題があるのではなかろうか、こういうように思うのです。  一九七九年度からの高齢者の昇給の延伸あるいは停止措置、そして退職者の特昇廃止など考えれば、それだけでもかなりの引き下げになっているのではないか。そういう意味で、今回退職金を引き下げる根拠は何もないと思う。すでに下がっているのです。それをさらに追い打ちをかける形で下げる必要はないと考えるのですが、その点について、もう一度納得のいく説明をしていただきたいと思います。
  277. 山地進

    山地政府委員 五十二年の時点から見れば、物価騰貴とか賃金の値上げということがありますから、名目的にはもちろん両方とも上がっていると思います。特昇とか昇給、延伸ということがなかったならばどうだろうかという議論からいえば、確かに公務員の今後の退職金というものは、そういうものなかりせばというものに比べれば下がっている。これは事実だと思います。しかし、それではわれわれが調べた五十二年時点の民間の数字というのは下がっていないのかというと、これはいろいろと新聞に出たりあるいは調査から出たりというものを総合いたしますと、これまた下がっているわけです。そこで一体こういった公務員の退職金の調査というのはどういうふうにやったらいいのかという根本的な方法の問題として議論するということは、今後十分しなければいけないと思うわけです。いま五年ごとに調査しているわけですが、五年ごとというのは、いつの五年をとっても将来強含みか弱含みかどっちかに決まっているわけです。私どもは、四十八年にはそこでも傾向の変化があったと思うわけです。しかし、その時点に固定して調べた。今回も五十二年については現状を固定して比較する、これしかないのじゃないか。しかも現状における将来の見通しについては、同じように下がるであろうということがかなり明確であるわけでございます。したがって、私どもとしてはこういうことで実施したいし、また五十七年、つまり五十二年から五年後、来年でございますけれども、この調査をやるわけでございます。その調査に基づいてさらにまたその是正ということを考えているわけでございますから、その際にどういうふうになっているかということは、私どもとしては現在予測がつかないわけでございますけれども、その時点において、今後の公務員の退職金についてどうしたらいいかということについては、また判断しなければいけないときが来る、かように考えておるわけでございます。
  278. 上田卓三

    上田(卓)委員 納得できませんね。  次に移ります。今回の改正案を見ると、もう一つ、退職手当制度全般の見直しという項が新設されておるようですが、これはどういう理由からですか。
  279. 山地進

    山地政府委員 この見直しの規定を設けましたのは、片方で御審議いただいておる定年制の導入というようなことも一つございます。それからもう一つは、人事院の方でいろいろお考えいただいている今後の給与あるいは任用の問題があるわけでございます。これらによりまして、今後の退職手当というのが従来のままでいいのかどうか、これらにあわせて検討しなければいけないわけでございます。それからもう一つは、五十二年度の次の五年目である五十七年度にも調査をするわけでございますので、それら全体的な給与制度あるいは定年制実施後の公務員のあり方、そういうものから考えて、退職手当というものはやはり見直すことが必要になるのではないだろうかと考えておるわけでございます。ただし、この見直しの規定を置くことが、直ちに今後引き下げることにつながるということには考えておりません。
  280. 上田卓三

    上田(卓)委員 「昭和六十年度までに所要の措置を講ずる」、このように書かれておるわけですが、具体的にはどのようなことを考えているのか。  また、定年制の実施時期は六十年となっておるわけですが、これに伴って共済年金制度も見直しを行うのかどうか。昭和五十九年十二月は共済年金の長期財源率の再計算期ですから、これらと退職手当の見直しも連動させるのかどうか、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  281. 山地進

    山地政府委員 そこに書いてありますのは文字通り本当のことでございまして、「所要の措置」、つまり必要があれば何らかの措置を講じなければいけないということでございまして、特に私どもとしてこういうことを措置すべきであるというようなことは別に持っておりません。その時点において、必要であるということについて十分判断をしたいと考えております。  それから、年金につきましては、私どもの所掌ではございませんので、私から間違ったことを申し上げるといけませんので、差し控えさせていただきたいと思います。
  282. 上田卓三

    上田(卓)委員 諸般の「事情を勘案して」「必要があると認められる場合」、このようにうたわれておるわけですけれども、これでは、いわばこの項新設の意味が非常に不明確ではないか。そういう意味で、予想的、予告的条項をこの法律案に入れること自体おかしいのではないか。将来の引き下げ準備までそういう法律化をするということはどうなんですか。
  283. 山地進

    山地政府委員 これまでこの退職手当の改正というのは、先ほど御説明いたしましたように、附則において、かつ「当分の間」ということで民間との調整ということをしてきたわけでございますが、今後の定年制の導入とか給与とか、それらの関連でどういうふうに変わってくるか、これは変わってみないとわからない問題でございますので、あえて変える必要が起こるかどうかということはわからないわけでございます。いずれにいたしましても、高齢化社会を迎えるに当たりまして、いろいろの面で制度が変わってくる。かつ民間の方もそういう意味ではいろいろ動いておりますので、そういったことを総合的に考えて宣言的な規定ではございますけれども、見直しの条項というものを入れておいた方がこの際適切であろう、かように考えて、それを入れているわけでございます。
  284. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、将来の引き下げを準備して、それを今回の法律案の中に入れているということはわれわれとしては絶対納得できないということを申し上げておきたいと思います。  それから、民間準拠と言いながら、実際は公務員の方を意識的に高くしておきながらその部分を減らしていくということで、そういう意味では民間準拠になってない。民間よりも低く公務員の退職金を考えていくと言わざるを得ない、逆較差が出るだけである、私はそういうふうに指摘せざるを得ないと思うのです。  それと同時に、冒頭に私がフランスの大統領選挙のことについて長官にも若干感想を聞いたわけでございますが、いま小さな政府というのですか、いまの日本の経済なり政治にも絡んでくるわけですけれども、そういうものが果たして必要なのかどうか。日本において中小零細企業の倒産が相次いでおり、失業者が百二十万とも百五十万とも言われて、非常に雇用不安というものがまかり通っておるわけです。フランスでもやはり失業が増大したということが現職大統領の落選につながっておるわけですから、われわれとしてはもっともっとこれから民間のそういう雇用を増大するあるいは民間の賃金なり退職金というものが低ければ高くしていく、こういうことが必要ではないか。自動車の輸出についても非常に欧米の風当たりが強いわけでありますし、また鉄鋼についても非常にかげりが見られておるというような状況があるわけですから、いまこそ内需の拡大というのですか、市場をどう広げていくか。確かに外国との貿易量をふやしていく努力を今後も続けなければならぬことは事実でありますけれども、もっと国内の景気をてこ入れするために、国民所得をふやしていく、内需をふやしていくということが一番大事なことではないのか。そういうことをしないで、増税であるとかあるいは行革ということで公務員いじめをするというようなやり方は大いに問題があるんじゃなかろうか。逆に公共事業とかで政府が民間の雇用をふやしていく方向を目指すべきであって、それを一たん採用している人間も枠を徐々に減らしていくというような考え方は時代逆行もはなはだしい。いまの時点で選挙をやったら、こんな状況ですから自民党さんは実際はしないかもしれませんけれども、大変な結果を招くんではないか。先ほど言ったように、イギリスのサッチャー政権があんな緊縮財政で、右寄りというのですかタカ派的なやり方がいまになって裏目になって出ているわけですからね。これはフランスにおいてもそうだと思うし、アメリカのレーガン大統領でもあのままでいくならば相当問題を残すのではないか、私はこういうふうに思っておるわけです。  だから、民間準拠という形で公務員の退職金を減額するというよりも、逆に民間をもっと上げる努力をするということ、さらには公務員の退職金についても下げるのじゃなくて、景気のてこ入れという意味からも上げる。また同時に何を言っても皆さん方は公務員公務員とおっしゃっているのですから、逆に言うならば、それだけ守秘義務があったり公務員は民間に比べていろいろな形で労働条件が制約されたり権利が踏みにじられているわけですから、給与とかあるいは退職金とかそういう制度でもっともっと特殊性というのですか、公務員を強調して身分を守っていくことが一番大事じゃないか、私はこのように思っておるわけです。本会議もありますし時間の関係もありますから、そういうことを申し上げて、最後に長官と人事院総裁考え方を述べていただきたい、このように思います。
  285. 中山太郎

    中山国務大臣 先生指摘問題点、フランスの大統領選挙の結果等も踏まえた御意見でございます。貴重な御意見だと思います。われわれも正直なことを申し上げて非常にむずかしい転換点に立っている。一年間の原油外貨支払いが大体五百億ドルでありますから、GNPが二百五十兆として大体十五兆円くらい毎年産油国に金を取られる。そういうことで、結局労使ともこれを割かれるわけでございますから、これから先の参考書というものは日本にはどこにもない。そういう中でわれわれはどういう道を選ぶかということでは、先生指摘のように、十分に公務員方々の実態、また民間の生産が上がるようにも努力をしていかなければならない。ただし、われわれの国は輸出立国でございますから、いかにして輸出を確保するかということで、今後とも努力をしなければならないと思っております。昨日総評がお招きになったワレサさんの言葉をかりれば、日本はうまく経営している、企業も労働組合もりっぱなものだ、こう言ってくれておりますから、私どもとしたら社会主義の国の労働組合の委員長があそこまでおっしゃるということについてはいささか誇りを感じさせていただいたようなことでございます。
  286. 藤井貞夫

    藤井政府委員 人事院には与えられた使命がございます。この使命はいまも今後も変わりはございません。その点はこの時点に立ってさらに認識を新たにしながら今後に備えた努力をしてまいる所存であります。
  287. 上田卓三

    上田(卓)委員 この改正案に絶対反対であるということを最後に申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  288. 江藤隆美

    江藤委員長 午後五時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後四時十八分休憩      ————◇—————     午後五時十八分開議
  289. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  290. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回、政府は退職手当を削減するいわゆる退職手当カット法案を出してこられたわけでありますけれども、この法案提出するに至った経緯とか背景とか、あるいはどういう理由で退職金をカットしなければならないというふうに判断をされたか、その点について総務長官の方からまずお話を承りたい。
  291. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御承知のとおり、政府は、昭和四十六年に民間の企業の社員の方々が退職される場合の退職手当、そういうものが一体どうなっているかということを調査をし、人事院に御苦労いただいて、その調査結果と公務員の諸君の退職手当との比較をいたしましたところ、公務員の方が二割方低い、こういうことで四十八年に二〇%のアップをするということを行ったわけでございます。そのときには合理的な方法でサンプル調査をして、それに基づいたいわゆる係数を基礎にしてやってまいったわけでありますが、今回も五十二年度の調査、同じシステムで、同じサンプルの摘出法で調査をいたした結果、今回はいわゆる石油ショックの影響も多分な影響を与えたのでございましょうが、民間の方がいわゆる一割方安い、こういうことになって、一〇%、いわゆる百二十掛けておったものを百十にするというふうに民間に合わせるという姿勢をとらせていただいた、こういうことでございます。
  292. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 細かいところについては、またお聞きするといたしまして、人事院総裁にちょっと先にお伺いをいたしておきます。  実は、五月の十一日に行われました第二臨調の定例会で、藤井人事院総裁公務員制度の基本と今後の課題ということで報告をされたそうでありますけれども、第二臨調が、いわゆる行政改革の一環として生涯賃金を比較して合理化を図るという意見に対しまして、人事院総裁考え方と人事院としての立場を明らかにされたというふうに伝えられておりますけれども、どういうような内容のお話をされたのでしょうか。
  293. 藤井貞夫

    藤井政府委員 いま御指摘になりましたように、昨日第二次臨調の総会、本会議公務員制度問題点なり課題なりというものについて人事院としての意見を聞かしてくれというお話がございましたので、そういう点を御理解をいただく大変よい機会だと存じまして、私も欣然出席をいたしまして御説明を申し上げたのでございます。これは非公開の会議でございますので、内容について詳細に申し上げますのは、臨調自体の会議の運営方針その他もございますので、その点私も、当然公務員として分をわきまえているつもりでございますので、その点は御了解を賜りたいと思いますが、要するに、公務員制度というものの現状、それの中における人事院の性格なり使命というものはどういうものかということをしさいに御説明申しました。それと同時に、特にいま問題になっておって、臨調の委員の先生方にも御参考になると思われる事項、特に給与の問題、任用の問題、これに重点を置きまして、官民比較の問題なり、勧告の従来の取り扱いなり、実施の状況なり、この勧告自体というものが持っている意味なり、そういうことを中心に御説明を申し上げました。それに対して臨調の委員の方々からも若干の御質問もございまして、それに対してお答えを申したという経緯、これがきのうの状況でございます。
  294. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる人事院の果たしている性格あるいはまた生涯賃金としていわゆる合理化の対象に値するかどうかというような、そういう臨調の関係者から実は話があったということが伝えられているわけでありますけれども、それについて私は、公務員の生涯賃金と比較して合理化をしようという考え方にはいささか問題があるのではないだろうかという考え方を持っております。確かに公務員給与については、民間準拠という形をとっておられますが、それは生活給としての位置づけをされておりますから、公務員と民間との間において賃金の較差があった場合においては、当然これを勧告をするということはもうあたりまえであろうかと思いますけれども、年金の問題とかあるいは退職金の問題について、それをひっくるめてすべて生涯賃金という形でやってしまうということがよいかということになると、ちょっと問題がそれぞれあるだろう、別個に扱うべき筋合いの問題ではないかというふうに私は考えているわけでありますけれども、なかんずく公務員という制約された労働条件の中にあって、確かに国民の税金で賄われている以上、国民感情と遊離した取り扱いができるものではございませんし、また労働基本権の代償機関としてできた人事院という存在価値というものは、財政再建という観点から、ただ合理化するという性質のものではないというふうに私は思うのですけれども、その点について人事院総裁はどのように第二臨調の方々の御質問等にお答えになったのか、この点が大分きょうの新聞に出ておりますので、お聞きしたいと思います。
  295. 藤井貞夫

    藤井政府委員 いまお述べになりましたお考え趣旨は、私は究極的には全然同感でございます。問題をいまの御指摘になりました点の給与関係二つにしぼって申し上げます。  第一点は、人事院の行っております給与勧告というものの性格なりその持っている意味ということでございます。これは私も強調いたしたのですが、給与問題というものは一番中心的なそれこそ労働問題なんだということであります。しかもこの労働問題というものは、長年の積み重ねでもって漸次補正されて今日まで来ておる。しかもその制度は、よく従来の総理あたりもお使いになっておりますように、慣熟した制度として皆様方の御理解のもとに今日まで来ておるものである、そういう点はやはり十分に認識をしてもらわなければ困りますよということが一点であります。  それから、第二点の問題は、このごろいろいろな角度から論じられております生涯給与の問題でございますが、これも私は生涯給与的な観点が全然無意味だということは申し上げません。それなりに十分配慮をしていかなければなるまいという立場はとりますけれども、しかし、これを一緒くたにして、たとえば仮に退職金が高いからといってあるいは年金がいろいろな理由からいって民間と比較して高い、この高低の比較の問題は別問題にいたしまして、そういうことが結果として出てまいりましたからといって、それを毎月のそれこそいまお話しになりました生活の資としての給与というものに反映せしめるということは、これは私はできない相談である、間違いであるということを常々思っておりますし、その点ははっきりと申し上げることにいたしたつもりでございます。したがいまして、給与給与として、これはこれで官民の比較をとっていく、退職手当は退職手当、年金は年金として比較のいろいろむずかしさというものはあろうけれども、そういう点についてやはり今後工夫をこらしながら、国民の納得もいけるような、また公務員の納得もいけるような、そういうことをやっていかなければならぬという方向自体については同感であるけれども、一方がどうだからといって、一方がどうだという考え方、特に退職年金、退職金が高いからといって、それを何らかの形で毎月の給与に反映せしめるというようなことは、技術的にもできるものでもございませんですし、そういう発想は私は間違いであると考えておりますということを申し上げました。
  296. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁のお考え方は私も実は賛成であります。確かに人事院が労働基本権の代償としてできたということから考えますと、それは正確に民間の給与に対して生活を保障するという意味を含めてそれを勧告をするというやり方、それが毎月、毎月の生活を潤していく生活給になっているわけですから、当然そういうことから考えまして、退職金など年金を比べてみたところがえらい高いとかいうことであれば、国民感情もありましょうから、そういうばかげたこともできないにしても、直ちにそれを生活の方が高いということでカットをしていくという、そういうこそくなことは人事院としてはあってはならないことであり、言うならば、人事院総裁のお考え方は正しいということで、それを第二臨調でおっしゃったということは、人事院総裁として当然のことだと私は思っております。  さて、今回の法案は、表向きには官民比較で官が八・三%高いから八・三%削減するということになっておりますけれども調査を実施した五十二年度は、先ほどもいろいろとお話しありましたように、民間産業は石油ショックからまだまだ立ち直っておらないで、おしなべて不況下にあったときでありますから、その時点をとらえて財政再建の名のもとに、削減のための官民比較をして、一方的に公務員にそのカットの犠牲を押しつけるのではないだろうか、そういう意見も世間にはかなりございますので、その点についてはどうお考えでしょうか。
  297. 山地進

    山地政府委員 この退職金というものの官民比較、これをどういうふうにやったらいいかということになろうかと思うわけでございますが、実は官民比較の民間の調査というのは、三十六年から四十一年、それから四十六年、五十二年と、ほぼ五年ごとに行ってきているわけでございます。その五年ごとのインターバルがいいか悪いか、これもいろいろの御批判の対象にはなろうかと思うわけでございますけれども、退職金の官民比較というのを五年ごとにやってきた。しかも四十八年に、その調査に基づいて二割官民が違うということで上げたわけでございますが、今回の五年目に当たります五十二年には下げたということでございます。おっしゃるように、五十年以降景気の後退といいますか、石油ショックで日本の経済というのは大きく揺れ動いているのは事実でございます。しかし、こういった調査というのは、一体時期がいつがいいのかということは、こういう変転きわまりない世の中になりますと、これが一番安定しているときだというときというのはなかなかはかり得ない点があるわけでございまして、私どもといたしましては、五年ごとの調査ということをベースにして、この官民の退職金についてのアジャストというものを実行せざるを得ないのではないだろうか、かように考えているわけでございます。
  298. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十二年当時から見れば現在すでに四年たっているわけでありますけれども、経済の動向も非常に大きく変わりつつあるという状態の中にあって、五十二年の調査をもとにしてつくられた今回の法案は、内容的に、現時点で審議し、実施しようとしても、相当な食い違いが生ずるのではないかということが言われるわけでありますけれども、その点についてはどうお考えになるのか。  それからもう一つは、五十二年から四年たっております。その間に、各民間企業においてはかなり退職金の考え方、これもずいぶん変わってきておりますし、退職金を生涯年金に振りかえようというような、そういう動きも出てきているわけです。五十二年から四年の間の一つの傾向といま私が申し上げましたように、生涯年金に退職金を振りかえていこうという動き、その実態をどのようにおつかみになっているのでしょうか。その点についてはいかがでしょうか。
  299. 山地進

    山地政府委員 まず、五十二年から四年たっているということについて御説明いたしますと、四十六年の調査に基づいて四十八年に実施いたしたときも二年たっているわけでございますが、五十二年の私ども調査というのは、実は五十二年に実際に支払われたものを五十三年に調査するということをやったわけでございます。これはまた後から御質問にお答えする機会があろうかと思いますけれども、実際に民間で支払われた額、それから同じく官の方でも実際に支払われた額というものを比較いたしたために、これは五十三年にならなければ集計ができない。つまりそうすると、それについての集計と、その比較をして、五十四年に法案として出す、それがたまたま今日まで継続審議ということで来たわけでございますけれども、これだけの時間というのは前回もかかっておりますし、今回もかからざるを得ない。これは退職金の実額を調べるという、その調査方法からの宿命だと私ども考えております。  それから、いまのような世の中が変わっているときには、四年間というのは変わるじゃないかということにつきましては、いまのような調査方法をしている限り、調査時点と実際の法案に出てくる時点とのずれというのは、いかなるときでも出てこざるを得ない。その点についてはかなり後追い型にならざるを得ないのじゃないだろうか、そこで五年ごとのインターバルで調査をして、そういう後追い型のかっこうでこういうものをやっていくのがいいかどうか、調査方法そのものについての今後の検討課題はあろうかと思うわけでございますけれども、今回は前回のものと同じように考えておるわけでございます。  それから二番目の、五十二年以降民間の退職金についてのいろいろの考え方なり制度なりというものが変わってきたという点については、まことに御指摘のとおりでございまして、退職金というものが経営の負担になるという点を、まず安定成長下の経営の一つの重大な問題点と企業の方としてはとらえている、これは事実でございまして、その場合に、給料の値上がりというものを退職金にどうやったら反映させないことができるか、つまり普通に払われている給料と、それから退職金の計算の基礎となる給与とを別にする、第二基本給の考え方、これが一つございます。  それからもう一つ先生のおっしゃるように、退職金として支払うよりも、年金として支払う方が企業のコストとしては同じ効果がある場合にやりくりができるというメリットもある。それから受ける方としても、一時の退職金を受けるか、あるいは長期にわたる年金として受けるか、これはまた選択の問題があろうかと思うので、その点についてもかなり企業年金、つまり厚生年金の上につく企業年金として、こういった退職金を年金化するという考え方が普及しつつあるということは、私どもとしてもいろいろの調査から承知しているところでございます。
  300. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は四年間たっているわけでありますけれども、退職金はいろいろのシステムが取り入れられながらあるわけでありますけれども、四年の間の傾向としてはどういうふうな傾向ですか。退職金が上がっているとか、あるいはもう一つは、同じような推移の仕方をしているというか、あるいは幾らかずつでも下がってきているのじゃないかとか、ということは調査をしなければ当然わからないにしても、それはいろいろ皆さん方も細かいデータの中に置きながら、そういう動向というものを見ておられるわけですから、当然そういう傾向というのはおわかりでしょうが、どういうことでしょうか。
  301. 山地進

    山地政府委員 一つの傾向としては、退職金そのものは減りつつあるのじゃないだろうか。それから退職金と企業年金とを同じような性格のものとして、つまり退職金から企業年金化を図るという考え方が出ているという意味から、企業年金部分を退職金部分に一緒にして考えるという考え方もあろうかと思うわけです。その場合には、退職金と企業年金と合計したものはあるいは変わってないかもしれない。ただし、それらについての基礎となる俸給を、申し上げましたように第二基本給というものを取り入れてきている場合には、恐らくその合算額についても減っているかもしれない。先生のおっしゃるとおり、これは調査をしてみなければわからないと私どもは思っております。
  302. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、四十六年と五十二年ということで調査をされたわけですね。この調査というのは一つはシステム化していかなければならない問題だと思います。ただ思いつきで、どうも景気が余りよくないから、財政が苦しいからということで取り上げて、そしてカットするというようなやり方は、なかなか公務員の皆様方も納得しない問題だろうと思います。そうなりますと、五十二年ということになりますと、今度は五十七年か五十八年かどちらかになるでしょう。そのときに人事院としては、公務員制度全般の見直しという問題をいろいろお考えになっているわけでありますけれども、その公務員全般の中の一つとして、やはり退職金問題というものも何らか取り上げていかなくちゃならぬ問題だろうというように思いますが、人事院総裁は六十年における公務員制度全般の見直しというものについてどういうふうなお考えでおられるのでしょうか。
  303. 藤井貞夫

    藤井政府委員 われわれが申し上げております長期的な展望、それに基づく公務員制度全体の見直しの問題、これについては本年度から本格的に着手をいたす体制で進んでおるわけでございますが、これはこの委員会でも私いままで申し上げたことがあるとはっきり記憶いたしておりますが、大体六十年というものを目途に作業を進めていったらどうかというふうに考えておりまして、この点各局長以下を、連絡をとり、督励しながら仕事を進めておるという段階でございます。したがいまして、その全体的な見通しの中におきまして、公務員の勤務条件の重要な一環であります給与は当然のこととして、いま問題になっております退職手当の問題その他についても、やはり検討の俎上に上せていかなければならぬ問題であろうと思っております。  ただ、直接のわれわれの所管事項とそうでないものがございますので、そうでないものについてはいろいろ問題点指摘しつつ、所管の方にも御連絡をとって共同歩調でやっていかなければならぬし、お考えをいただかなければならぬものも出てまいりましょう。それはそれとして、一応六十年を目途にして進めていきたいと思っております。しかし、これは別に期限が法定されているわけではないわけです。ところが、いま御審議をいただいております退職手当法案につきましては、もしこれが御審議の上通過、成立するということになりますと、六十年までにその点についてもっといろいろな角度から総合的に検討して、必要があればその措置を講ずるべきであるということを言って、こちらの方は時限的にはっきり出ておるわけであります。したがって、われわれの作業は作業として、お互いに入り組んで作用し合いますが、退職手当法に基づく各種の検討事項というものは、時限が決められていることでもございますので、当然総理府からもわれわれの方に御依頼があると思います。御連絡があると思います。われわれ自身の考えとしても、総理府の御依頼があるなしにかかわらず、やはりいままでやってきた大体五年ごとの調査ということでございますので、特にそれが時限があるということになりますれば、五十七年になりますか五十八年になりますか、それはまだいまここで申し上げる段階に至っておりませんが、その調査はやはりどうしてもやらざるを得ないだろうという考え方を持っておるわけでありまして、それと長期計画とのにらみ合わせ、整合性の問題は、それらの進みぐあいをにらみ合わせながらやっていかなければならぬというふうに考えております。
  304. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 給与の官民較差の問題、比較についてはかなり綿密に、しかも成熟してきておりますから、公務員の皆さん方も給与人事院勧告というものはかなり説得力のあるものであり、われわれも人事院勧告については尊重するという立場を実はとっているわけでありますけれども、この退職の方は、実際にはまだ四回しかやっていないというわけであります。これはきめが細かければ細かいほど客観性があるわけでありますし、また言うならば正しい数値が出てくるわけでありますけれども、その比較調査の内容というのはどのようなものでしょうか。いわゆる調査方法と官民比較の仕方についてどういうふうにやっておられるか、それについて少し細かく御説明願いたいと思います。
  305. 藤井貞夫

    藤井政府委員 資料的にわたることは給与局長さんからあるいは追加して御答弁があるかと思いますが、その前段として申し上げておきたいと思います。  いま御指摘がございましたように、毎年の給与勧告の資料にいたしまする給与についての民間の実態調査、これは実はいままでずっと毎年やってまいりましたし、ことしこれをやりますと、たしか三十五回だと思います。それに対して退職手当の方はいまお話しになりましたように四回ということでございます。そういうことともう一つは、給与の問題について民間の関係では対象が退職手当の場合と比べてかなり広いということがございます。そういうことをにらみ合わせました結果、私は正直なところを申し上げるという意味で、給与の民間実態調査と比べた場合においてという意味のことで若干退職手当の調査の方について何か少し自信がないというような御指摘を受け、あるいはおしかりを受けるような表現をしたことがございますが、その点私の本意ではございません。大変残念に私自身も思っております。表現の仕方も悪かったのではないかと思って反省をいたしておりますが、そういうふうに申して、率直なことを言って給与の場合の対象と、それから回数というものを比較した場合に、それと全く同列だというふうには申し上げかねるのではないかということを申し上げたつもりでございます。  しかし、われわれの組織と技法につきましては、長年いろいろやってきておりまして、その点は自信がございます。したがいまして、退職手当についての民間の調査につきましても、この問やりましたものについては、従来と違って、制度としてのモデル調査はやっておりますが、それ以外に実額調査ということを、その方がはっきりすると思ったものですからやり方を変えましたし、それから加算額の問題とかあらゆる面について綿密に調査をいたしたつもりでございまして、その結果自体についてはそれなりのはっきりとした自信を持っておるということを申し述べさしていただきたいと思います。
  306. 長橋進

    ○長橋政府委員 調査の内容につきまして、資料的なことをお答え申し上げます。  五十三年に行いました調査につきまして、その調査対象と方法でございますが、企業規模百人以上の本店事業所、これは二万五千七百でございますが、その中かち産業別、規模別に層化いたしまして、千五百社ほど無作為抽出をいたしまして、千人以上の規模の五百社については実地調査をいたしました。それから五百人以上九百九十九人、この五百社につきましては通信調査。百人以上四百九十九人という企業規模につきましては、同じく通信調査ということをいたしました。  調査内容につきましては、まず第一に退職金の制度調査でございまして、退職一時金、企業年金制度、それから退職加算金制度、定年前退職者に対する優遇制度、こういうものがあるかないかというようなことを調べました。それから二番目は、退職金のモデル調査でございまして、長期勤続して定年退職しました場合のモデル退職金額の調査をいたしました。それから三番目は、これは四十七年の調査と違うところでございますけれども、長期勤続定年退職者に実際に支払われました実支給額を調査いたしました。  以上でございます。
  307. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 民間企業の定年退職金と比較した結果、公務員と民間との間でどういう差が出てきたのか、二十五年勤続あるいは三十年、三十五年という形で比較した結果はどうなっていましょうか。
  308. 山地進

    山地政府委員 二十五年、三十年、三十五年についてそれぞれ比較した結果を申し上げますと、まず二十五年について申し上げますと、国家公務員の場合に千四十七万円、民間の場合九百三十一万円、民間の方が八九%になります。三十年の場合、国家公務員が千四百六十三万円、民間が千三百三十九万円、これは比較いたしますと民間が九二%になります。それから三十五年が、国家公務員が千八百三十七万円、民間が千六百八十三万円、この比率が九二%になっているわけでございまして、いずれも民間の方が低い。念のため申し上げますと、二十五年から三十五年の間それぞれについて、まだ二十六年、二十七年等その間のものも比較いたしておりますが、おおむねこのような数字の範囲内におさまっております。
  309. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 民間には退職手当のほかに加算金というシステムがございますけれども、今回の五十二年の調査の結果、民間実態の中で勤続二十五年、三十年、三十五年で平均幾らぐらいの加算金が含まれているという調査になっていましょうか。
  310. 長橋進

    ○長橋政府委員 各勤続年数段階別の加算金につきましては、調査いたしておりません。企業全体につきまして、加算金制度がありますか、それから加算金制度がある場合、一体何割くらいでしょうかということで調査した結果によりますと、約六割の企業が何らかの加算金制度をとっておるということでございまして、加算金制度を有する企業の退職金に占める加算金の割合が約二一%でございましたので、二一%に〇・六を掛けまして、大体一三%が加算金であろうということでございます。
  311. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 民間の場合加算金というシステムがありますけれども、各企業において加算金ということでいろいろやっていると思いますが、調査の結果、この加算金にはどういう種類がございましょうか。
  312. 長橋進

    ○長橋政府委員 項目別に申し上げますと、定年加算、長期勤続加算、功労加算、役付加算、その他がございます。
  313. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十二年度の公務員と三公社五現業の退職者の実態はどうなっていましょうか。人数と退職金の金額、これを一般職国家公務員の場合と三公社五現業に分けて御説明願いたいと思います。
  314. 山地進

    山地政府委員 行(一)、行(二)、その他と分かれているわけでございますが、人数でこの三つを合わせますと約二万九千人でございまして、金額では二千三百五十二億になっております。それから任期制の自衛官というのがございますが、これが三万二千人ぐらいでございまして、百五十七億でございます。それから三公社の職員は約二万二千人でございまして二千八百六十九億、五現業の職員は約一万人でございまして九百七十四億円、合計いたしますと、約九万三千人でございまして、六千三百五十二億円になっております。
  315. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十二年度の行(一)の高校卒の退職者の条文別内訳と退職金額はどうなっていましょうか。たとえば三条、四条、五条、その他ということでしょうけれども、これについてはどういうふうになりましょうか。
  316. 山地進

    山地政府委員 総数で三千四百三十人おりますが、法文別に申し上げますと、このうち法第三条が九百六十二人、法第四条が百六十五人、法第五条が二千二百九十七人、その他が六人でございます。
  317. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それらの三条、四条、五条、その他の退職金額の平均はどれくらいになるのでしょうか。
  318. 山地進

    山地政府委員 いまの条文別の人数の平均でございますけれども、第三条の九百六十二人の平均は九十三万円、第四条が百六十五人でございますが、七百三十七万円、第五条が二千二百九十七人でございますが、平均が千五百五十六万円、その他の六人が千百六十七万円、合計三千四百三十人の平均といたしまして千百六万円になっております。
  319. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのうち、勧奨退職による退職人員とその退職金はどれくらいになっていましょうか。
  320. 山地進

    山地政府委員 このうち勧奨退職の者は、二十五年から二十九年の者が五百四十五人で平均は千二百七十二万円、三十年から三十四年の者が七百三十一人、千五百六十三万円、それから三十五年から三十九年が六百人でございまして、千八百四十六万円になっております。
  321. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、二十五年未満あるいは四十年以上の退職者の中で勧奨を受けて退職をした者も当然いるんじゃないかと思いますけれども、それはどれくらいありましょうか。
  322. 山地進

    山地政府委員 二十五年未満で法第五条の適用を受けました者が五十八人おりまして、これの平均が九百五十万円でございます。それからこれも法五条でございますが、四十年以上の者が百五十四人おりまして、千八百八十七万円でございます。それから法四条の二十年から二十四年の者が七十六人おりますが、これの平均の退職金については、後刻御報告させていただきたいと思います。
  323. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 民間の生産労働者と国家公務員の行政職(二)の職員との退職金の比較というのはどういうふうになっているのか、また三公社五現業の職員との退職金の比較はどういうようになっているのか。これは人事院としては実際には調査を行っていないので出てこないわけでありますけれども、中労委の調査と労働省の調査というのはあると思いますが、その調査の内容と、加算金を加えて試算をしたということも、修正試算という形で出されていると思いますが、どういう内容になりましょうか。
  324. 山地進

    山地政府委員 まず五現業の職員と民間の生産労働者の比較というのを申し上げますが、その前提といたしまして、この中労委の調査と労働省の調査というものの性格といいますか、立て方というのを御説明しておきますと、中労委の調査というのは、資本金五億円以上、従業員千人以上の三百四十四社を集計したものでございまして、五十二年度における中卒の生産労働者の退職金でございます。それから三公社五現業の方は、五十二年度における中卒の現業職員、つまり両方とも中卒の現業と生産労働者、こういうことでございます。  それから、労働省の調査と申しますのは、従業員が三十人以上の企業の五十二年十月から五十三年九月までに退職した中卒の生産労働者の退職金でございます。  これの比較をいたしたわけでございますが、この中労委の調査というのは、いま先生の御指摘がございましたように、モデル退職金でございますので、加算金が入っているかどうかということについては承知しておりませんので、先ほど人事院の方で御説明いたしましたように、加算金が一三%あるという前提で、それに一三%を上乗せしたものも比較しております。  それで、五現業とこれらの民間の中卒の生産労働者の比較というのを御説明いたします。まず加算金のないもので申し上げますと、たとえば、これは二十五年、三十年、三十五年とあるわけでございますが、一例として三十年の数字を申し上げますと、三公社五現業につきましては千百六十五万円でございます。それに対して中労委の加算金のないものは七百八十二万円で、約六七%でございます。これに加算金を加えましたものは八百八十二万円でございまして、約七六%でございます。  それから、労働省の方の調査によりますと、これは二十五年から二十九年というような幅のある調査でございますが、それに対応いたします三公社五現業の方は千二十二万円、労働省の調査は七百四十二万円で七三%になるわけでございます。  それから、いまのは三公社五現業でございますが、行(二)について同じく調べたわけでございますが、行(二)の場合には、中卒の行(二)の技能、労務職員の退職手当の支給額を比較したわけでございますが、いまのような同様な手法で申し上げますと、三十年について行(二)は千五十三万円、中労委の調査は七百八十二万円で約七四%、それに一三%のかさ上げをしたものについては、これが中労委の修正して出したものは八百八十二万円でございまして、約八四%でございます。それから労働省の比較になりますと、二十五年から二十九年、これが九百十五万円、労働省の調査は七百四十二万円で約八一%、かような数字になっております。
  325. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十二年の調査で官民比較をしたときの国家公務員の退職金のうちでの代表とされるものは、どのような条件の人なんでしょうか。
  326. 山地進

    山地政府委員 退職者とそれから現在働いている人の実際の構成員というのは違うわけでございますけれども、まず、現在働いている人の構成から言いますと、行(一)について言えば高校卒が非常に多いわけでございます。  それから、退職金の代表とするものはどれか、どんなようなものがなるのかということについては、それぞれいろいろの職種があるわけでございますので、個々のものについていろいろ申し上げなければならぬわけでございますが、まず、行(一)の高校卒というのは、国家公務員の現在の職員の中で約半数を占め、かつ、行(一)の適用者で見れば、行(一)の中では三分の二を占めているわけでございますから、これらが退職金の調査をするときの代表的なものと私どもとしては考えているわけでございます。
  327. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その代表例とされる人は、五十二年の俸給表で見ますと、行(一)の何等級何号俸に相当するのか、またその本俸月額は、五十二年当時では大体幾らもらっている人なんですか。それは二十五年、三十年、三十五年というところでちょっとお示し願いたい。
  328. 山地進

    山地政府委員 結果的に私どもが高校卒の方の中で行(一)の人というのを選んでいるわけでございますが、勤続二十五年、三十年、三十五年のポイントで見た場合には、勤続二十五年では、五等級であるとすれば二十号俸、それから四等級である場合は十三号俸、三十年の場合には、四等級なら四の十八、それから三等級である場合は三の十二、三十五年の場合には、四等級である場合には枠外の一号、三等級である場合は十五号俸ということになろうかと思います。  この場合の、五十二年当時の俸給月額で見れば、この五等級の二十号俸というのは二十一万五千四百円、四等級の十三号俸は二十一万八千百円、それから四等級の十八号俸は二十四万七千九百円、三等級の十二号俸は二十四万三千百円、それから四等級の枠外の一号俸は二十六万五千九百円、三等級の十五俸は二十六万四千五百円となります。
  329. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十二年度におきまして、一般職で、勧奨退職ということも含め、あるいはまた自己の都合でやめたという方も含めてどれだけの方がやめられたのか、また特別職を含めると大体どれくらいになるのか、一年間に統計としてはどれくらい出ていましょうか。
  330. 山地進

    山地政府委員 いまの御質問にあるいは的確に答えてないのかもしれませんけれども、学歴別、職種別の退職人員というのを調べたのがございます。非現業の職員がやめた人数でございますけれども合計で五十二年度六万一千百六人やめております。この内訳といたしましては、行(一)が六千二百七十人、それから行(二)が二千三百十四人、自衛官が三万一千九百三人になっております。それから三公社の職員は二万二千二十人、それから五現業の職員が九千九百九十九人、合計で九万三千百二十五人という数字がございます。
  331. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十六年の調査で四十八年に退職手当を二割増しにされまましたけれども、そのときの理由はどういうものであったのでしょうか。
  332. 山地進

    山地政府委員 簡単に申し上げますと、官民の比較で二割違っていたということでございますが、そのときの比較は、先ほど人事院の方で御説明があったとおり、民間の場合千五百四十七社を対象といたしまして高卒事務、技術職員の定年退職のモデル退職金並びに定年加算金等の加算金を調査して、これを含めたものを公務員の高卒の事務、技術職員勧奨退職の者のモデルと比較した結果、二割違うということで二割公務員の増額をしたということでございます。
  333. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十六年の調査はどういう調査方法、対象に基づいて行ったのでしょうか。
  334. 長橋進

    ○長橋政府委員 四十六年の調査対象、これは五十三年の調査と同様でございます。約千五百社ほどでございまして、調査の項目につきましても、先ほど五十三年の調査につきまして申し上げましたとほぼ同様の調査項目でございますが、ただ一点違いますのは、五十三年の調査では退職金の実支給額を調査しましたけれども、四十六年の調査ではモデル調査でございまして、実支給額の調査はいたしておらなかったということでございます。  なお、別途加算金を調査いたしましたが、この点につきましては、約七〇%の事業所におきまして平均加算率が二七%ということでございましたので、二七%で七割を掛けて約二割程度加算があるであろうというふうに考えたわけでございます。
  335. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十六年の調査結果は、官民比較してどういうふうになっていたのか。少なくとも民間の加算システムが二割くらいついておったということで、公務員も二割アップというようなことになったわけでありますけれども公務員及び民間の退職金の金額というものは、その当時つり合っておったのでしょうか。
  336. 山地進

    山地政府委員 いまのお話は、私どもの計算は加算金を考慮に入れて二割違っているということでございまして、いまの御質問が、もし加算金を除いたところでどうなっているかということでございますと、あるいは数字を申し上げなければならないけれども、そのようなことでよろしゅうございますか。
  337. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十六年の官民比較調査の結果、勤続二十五年、三十年、三十五年を例にとって比較すると、具体的に公務員の退職手当が幾らで民間企業の退職金の平均が幾らになるのでしょうか。
  338. 山地進

    山地政府委員 当時の資料でございますが、官民対比で二十五年と三十年と三十五年を申し上げますと、公務員の退職金は、二十五年が四百三十一万円、三十年が五百九十万円、三十五年が七百八十一万円、それから民間企業の退職金、これは加算金を入れていないものでございますが、二十五年が三百二十万円、三十年が四百五十八万円、三十五年が六百万円ということになっております。
  339. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、今回は、五十二年度は確かに実額であるというふうにおっしゃったわけですけれども昭和四十六年は官民対比はモデルでやった。しかし、二十五年は公務員の退職手当は四百三十一万円で企業の方の平均ウエートといいますか、それが三百二十万、三十年が五百九十万で片一方は四百五十八万、三十五年で七百八十一万で六百万。こういうことになりますと、たとえば加算金が二割ついたとしても、実際には公務員の退職手当に見合っているというような状態じゃないでしょうかね。またさらに加算金を二割ふやしたというのはどういう理由なんでしょうか。ちょっと数字的に納得がいかないのですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  340. 山地進

    山地政府委員 四十六年のそのころの実際の数字というのは、私どもに残っていた数字がこの数字ということではあるわけでございますけれども、これを官民比較して、加算金も考慮して二割になっているというこの詳細なところにつきまして資料がございませんで、一応こういったことを基礎にして、加算金も考えて二割をアップしているというふうに、私どもとしては理解しているわけでございます。
  341. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和四十六年のモデルという調査の仕方、これは今回の五十二年の調査と比べるとかなり手抜きのような状態がされているのじゃないか。もしされてないとするならば、その五十二年に出されたそういう実数に基づいて当然出されなければならない問題である。ところが、いまお話をちょっと承りますと、確かにもうすでにこのときにおいて、退職金の状態の中にあっては、民間の方の加算金を二割と見て、それを足してももうすでにつり合いがある程度とれておった。それにさらに二割加算金システムを入れ込んだということは、たとえモデルであろうとも、そういうふうなやり方をしておったということは、これは昭和四十六年から五十二年までの間に実際に退職された方々が非常に有利であった。これから退職される方は、言うならばがっちりと調査に基づいてされることになれば、不利をこうむるということになると、公務員給与の中にあって平等の原則からいいますと、これはかなり不公平のそしりは免れない、こう思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  342. 山地進

    山地政府委員 私ども四十六年の二割アップについての資料を、いまのは私どもが手持ちのもので、こういう資料があるということで御説明したわけでございますが、そのときにはそのときなりの数字があって、またいろいろと御考慮の上、上げていただいたんだろうと、これは想像しているわけでございますが、現在は、私どもとしては、過去におけるモデルの数字ではなくて、実額の比較ということに踏み切って、今回人事院に御依頼して実額を調査してもらった。それから公務員の場合にも、実額を調査して比較しているということで、今回改めているわけでございまして、過去いままでに、五十二年に至るまで、あるいは現在に至るまでの方々が非常に有利であったかどうかということについては、私どもとしては、もう少しそれは詳細に振り返って調査すれば別でございますけれども、現在のところは二割上げるという理由があって上げたというふうに理解しております。
  343. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁、あなたが、官民給与の比較に比べて退職金については、私はどうも自信がございませんとおっしゃった内容も、こういうところに——実は非常に数字というものははっきり出てくる問題でございまして、ですから、当時もう実際にはバランスがとれておったんですね。それを、要するに加算金制度が民間にあるからというので加算金制度調査して、一九・数%、いわゆる二〇%というものをくっつけてしまったということで、実際本当の官民比較によるところのバランスのとれたところの言うならば退職金、手当ではなかったということは、いまのその数字から言えば、どうしても実際にはそうならざるを得ないのです。その点、人事院総裁は自信を持たれなかったというような内容をおっしゃっておったのですが、やはりその当時はモデル調査みたいなものだけであって、今回は実額を調べたということで、その四十六年度のときには、そういう意味において大変に網の目が粗かったということはお認めになりますか。
  344. 長橋進

    ○長橋政府委員 総裁からお答えいただく前にちょっと補足いたしますと、四十七年の調査の場合はモデル調査をしたわけでございますが、そのモデルということになりますと、長期勤続者についてモデルを調べますと、その基礎になります給与自体がいろいろこう変化をしております。それからもう一つは、やはりモデル調査となりますと、大体一社一人ということでございまして、一人の人間が代表するということでございまして、したがいまして、モデル性と申しますか、なかなか代表性というものがつかみにくいということがございまして、したがって、四十七年の調査のときには、一応そういうことで調査をいたしましたけれども、先ほど全社平均のモデル調査の平均の金額、対比されましたけれども、やはり企業規模の違いによりまして、かなり金額的な開きもございますし、モデル調査の場合には、加算金という制度はありましても、その実態はつかめないものでございますから、実感といたしまして、これでは調査というものは不十分ではなかろうかということもございまして、別途その加算金の調査をいたしましたということでございます。  したがいまして、五十三年の調査におきましては、そういう経験にかんがみまして、やはりモデルをつかまえた算出過程をいろいろ調べるよりも、実際の実支給顎を調べる方が正確なものが得られるということでございまして、そういうことから申しますと、五十三年の調査につきましては、四十七年の調査に比べまして、一歩前進した形でもって調査をいたしたということでございます。
  345. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ですから、モデルで調査をしたということが、昭和四十六年の場合においては実際には基準になっているわけですね。基準になっている以上は、やはり整合性がなくては、これはちょっといただけない問題だと私は思うのですよ。だから、公務員は非常に高いというようなそういう御批判を国民から受けるのも、やはり何か実感的な問題の中にあっても納得がいかないという、そういう点があるから国民の中から出てくる問題だと私は思うので、そういう点において、確かに人事院総裁は五十五年の七月二十四日に私の質問に対して、先ほどもおっしゃいましたけれども、「退職手当につきましても、問題は給与調査と同列に並べてというところまではまだ自信がない」というふうに御答弁されておりますね。やはりそういうふうな——それは私は何も民間とぴったりしなくてはならないということは思ってはいません。思ってはいませんけれども、やはり民間の方も調査をした以上は、それの動向というものが十分反映できるような言うならば退職金というものをそのとき決めなければならなかった問題だ。ところがそれを実際には、いま数字が出てまいりますと、大変にちょっと腑に落ちないような数字が出てきておるので、正直な人事院総裁は内心苛責に耐えかねてかどうか、ここで思わぬ答弁をされたということは、やはりそういう問題もあって言われたんじゃないでしょうかね。人事院総裁どうですか。
  346. 藤井貞夫

    藤井政府委員 四十六年、これは責任逃れでも何でもございません。組織があり、機構があるわけですから、これは永続しているものですから、とやかく申し上ぐべき筋合いではありませんが、私は当時の調査には実は立ち会っておらなかったということもございます。しかし、それはそれとして、当時としては最善と思われることをやったということで、私自身その当時の調査について云々することは、これは筋ではないというふうに思っております。  ただ当時、私が正直な気持ちで、若干軽率と思われるような発言をいたしたかと思いますのは、結局給与調査というものは、経験の度合いにしても、それから調査対象の広さから言っても、やはりこれは数年先を行っておるということでありまして、それを比較した場合において、給与調査と同列に、完全にこれは同じ精度だと言うことは、若干はばかられるのではないかという意味が恐らく発言の中に出てきたのではないかという気持ちがいたします。しかし、それはそれとして、当時としては一番これがいいということで確信を持って出したものだというふうに、これは御理解をいただきたいと思います。  ただ、その後の情勢もございまして、給与の実態調査自体でも大体同じことで、定着したことでやっておりますけれども、それでもやはり毎年少しずつその後の経験に徴してさらに密度を高めるとか改善の方向にいくとかいうようなことで、研究の結果は反映させております。そういうことで、漸次密度も濃くなってきておるわけでありますが、この退職手当、退職金の問題についても、そういうような角度から、その後の経験に顧みてやはり改善を加えるべきであろう。特にいまの実額調査の点、これはやはり制度としてのモデルを基準にするよりも、もっとやはり実態に合ったものではあるまいかという意味で、そこにやはり踏み切るべきではないかという感じから今回の調査になったわけでございまして、その点を踏まえまして、先刻お尋ねがあり、私もお答えをいたしましたように、六十年に向けての何らかの措置を考えるというような場合においては、これはそれなりにやはりこの間やりました調査の技法等についてもさらに検討を加えて、改善をすべき点は改善をするということで、さらに精度のある、密度の濃い調査を心がけてまいりたいと思っております。
  347. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実額調査ということで踏み切られたわけですから、やはり私は余り政治的な配慮をされますと、上げるときはいいのですよ。政治的配慮というのはまことに結構な話なんですけれども、今度下げるときになりますと、これはもう政治的な配慮で下げられたんじゃたまったものではありませんから、やはり客観的な数字というものは、これはみんなが信用しなくてはならない問題でありますから、当然実額なら実額で調査をされたとするならば、今後はやはり実額でやっていかなくてはならないし、退職手当というものについては、何もきちっと民間にすべてが一銭一厘合わなくても、それは私は別に問題ないと思いますけれども、そういう政治的なやり方をすることは、余りにも今度カットされる人が気の毒じゃないかと私は感ずるのです。  そこで、たとえば現行二割増しの退職金が改正されますと、退職金の最高支給率は現行の六九・三%から六三・五二五%になってしまうのですね。そうしますと、三十五年以上の勤続で給与ベース二十八万円というふうに計算いたしますと、二十八万円に六九・三を掛けますと千九百四十万、それが今度は六三・五二五になりますから、千七百七十八万円ということで、実際には百六十二万円少なくなってしまうわけです。これは私は退職後の生活設計の上で大変大きな脅威になると思いますけれども、先ほど申し上げましたように四十六年にはそのような手厚い退職金を、数字的には私どもいま論議申し上げたとおりはじいているわけでありますから、少なくてもこの方々に直ちに適用ということでなくして、やはりある程度激変緩和という問題を考えてあげるべきじゃないだろうかと私は思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  348. 山地進

    山地政府委員 おっしゃるとおり、こういった減額ということは、公務員の生涯設計にとって非常に重要な問題である、大変関心事であるということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、私どもとして、こういった退職金の上げ下げについて、やはり国民の税金で賄われているということから考えて、国民の理解を得られるということが大事だろうと思って、今回は正すべきものは正すということでございます。  そこで、いまおっしゃいましたそういった急激な変化にどういうふうに対応していくのかということは、この法案を出すときに、私どもとしても当然配慮すべき点でございまして、去年でございますけれども、初年度につきましては据え置く、二年度において百分の百二十を百十五にする、最後の三年目にやっと百十にするということでこの法案を出し、それなりに激変緩和に対応することにしていたわけでございますが、現時点になりますと、初年度から百十五になるという点につきましては、結果的には激変緩和の部分が少なくなっているように見えるわけでございますけれども、実はこれはすでに提案している段階から周知されている問題でございますので、私どもとしては、現在の激変緩和というのが一つの方法である、かように考えておる次第でございます。
  349. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十六年当時にもう少し細かいモデル調査の数字が出ておりますと、またそれはそれの論議の仕方があったわけでございますけれども、四十六年というと、公務員方々は、四十六年からいままでおられる方はどちらかと言うと非常に優遇された形になるわけです。そうなりますと、今度おやめになるか、これからおやめになる方々、いま申し上げましたように、たとえて言うならば、やめてからローンをお返しするということですっかり組み込んであるわけですね。あるいはまた子供さんの教育をするために退職金というものは全部用意して、そして計算に入っている。あるいは住宅を買う、土地を買う、借金を返す、いろいろしなければならない問題があるわけです、実際には。だから退職金についてどういうふうなものに使われるかという、退職金の使われる内容というものを調査されたことがありますか。
  350. 長橋進

    ○長橋政府委員 これは退職年金制度の参考資料、検討資料にするために追跡調査をいたしてございますが、五十三年度の退職者の退職手当の使途別を調査いたしました結果、割合でございますが、宅地、住宅に二六%、生活費に充てられたというのが二二%、子弟の教育等一二%、その他の使途、たとえば借金の返済でございますとか事業資金その他が一五%、使用予定なしというのが三五%という数字におさまっております。
  351. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ですから、退職される方は、言うならばいまあなたがお話しになった中の何かに実際には退職金を使わなければならないということで考えておられるわけです。ですから、やめられる方々がカットされるということは大変に忍びない。しかし、そうは言うものの、民間に比べたら確かに高いということであるならば、終局的にはそういうふうにしなくてはならないかもわからない。しかし、その間に激変緩和ということは考えてやらなければならない問題なんです。究極はやらなければいけないけれども、激変緩和という問題は、これをやらなければ、それを組み込まれている人が退職金がぽんと減ってしまうということになると、それこそ動揺していくという形になってしまう。だから、いま政府が提案してきたこの法案について、直ちに考えてそうせよとは、ここの場所では申しません。しかし、少なくともそれぐらいの配慮があってしかるべきではないだろうか。昭和四十六年は大変に配慮されておって、今度は配慮しないということはどういうことなんですか、これは総務長官
  352. 中山太郎

    中山国務大臣 昭和四十六年の時点と現時点とでは、その背景というものが社会的にやや違うのではなかろうかと思いますが、先生のいまの御意見は御意見として十分承っておきたいと思います。
  353. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間がなくなってきましたので、それじゃ先に行きます。  最近、地方公務員給与とか退職金等は、国家公務員に比べて相当高額になっておるということがかなり新聞に報道されておりますけれども自治省行政局の公務員部長の名前で、五十四年の八月十七日に各都道府県知事及び各指定都市市長にあて「地方公務員の退職手当制度及びその運用の適正化について」という通達が出されたわけであります。それはどういう内容なんでしょうか。
  354. 大塚金久

    ○大塚説明員 お答えいたします。  一昨年、退職手当の適正化について通達をして、地方公共団体を指導したところでございますが、その内容は、一つには、退職手当の支給率及び最高限度額が国の基準を超えている団体があるということ。それから勤続加算、役職加算等、国と異なる算定方法をとっている団体があるということ。それから勤続期間の計算の仕方とか、退職時の特別昇給等が国と異なった取り扱いになっている団体等があるということで、その適正化のために通達を出し、指導したところでございます。
  355. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 本来、地方自治体というのは、現業部門とかサービス部門の窓口となっている以上、地方自治体の本旨から言いますと、必ずしも国と同一歩調をとらなくてはならないというものでないと私は思うわけであります。しかし、国民の中にはアンバランスな取り扱いがされておるんじゃないかというような批判がないわけでもないわけでございますので、参考のために自治省に実態をお聞きしたいと思いますけれども、地方公共団体の退職手当制度状況について、三十年勤続勧奨の場合、都道府県、指定都市、市区町村で実際に国を上回っている団体はどれくらいありましょうか。また支給月数についても実態をお聞かせください。
  356. 大塚金久

    ○大塚説明員 ただいま御指摘のございました三十年勤続の勧奨退職の場合について申し上げますと、国は五十九・四月になりますが、地方公共団体について国を上回っている団体は二百四十八団体ございます。その内訳は都道府県で一団体、それから指定都市で九団体、これは五十三年四月一日現在でございますから広島が入っておりませんで、すべての指定都市でございます。それから市区町村組合で二百三十八団体となっております。その内訳を申し上げますと、七十月未満のものが指定都市が四、市区町村組合が百六でございます。それから七十月から八十月未満のものが指定都市が二、市区町村組合が七十五でございます。それから八十月以上が都道府県が一、指定都市が三、市区町村組合が五十七。  以上でございます。
  357. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国においては三十五年勤続で勧奨退職の場合は六十九・三カ月の最高限度になっておりますけれども、それを上回る地方団体はどれくらいありましょうか。
  358. 大塚金久

    ○大塚説明員 国の勧奨退職の最高限度である六十九・三月を上回る最高限度を定めている地方団体は三百二十六団体ございます。都道府県で一団体、指定都市で九団体、市区町村組合三百十六団体でございます。
  359. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 指定都市の三十年勤続勧奨退職の退職手当支給率はどういうふうになっておりましょうか。また役職加算の有無及び最高限度額はどのように調査になっておるでしょうか。
  360. 大塚金久

    ○大塚説明員 指定都市の勤続一十年の勧奨退職の場合の支給率でございますが これも五十三年四月一日現在でありますので、若干いま異なっておりますが、指定都市の勤続三十年の勧奨退職の場合の支給率の状況は、六十月以上七十月未満のものが四団体、七十月以上八十月未満のものが二団体、八十月以上のものが三団体となっております。それから最南限度支給率の状況は、その支給率が七十月以上八十月までのものが二団体、八十月を超え九十月までのものが五団体、九十月を超えるものが一団体、定めのない団体が一団体でございます。また役職加算を行っている団体は五十三年四月一日現在で五団体となっております。  以上でございます。
  361. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 役職加算の実態はどのくらい上乗せされているんでしょうか。指定都市における役職と加算の関係はどのようなものがあるんでしょうか。
  362. 大塚金久

    ○大塚説明員 役職加算の方法は団体によってさまざまな形態がございまして、一様じゃございませんので、私どもなかなか的確な調査がしがたい形になっております。したがいまして、五十三年四月一日の調査におきましても、個別的には適正な把握はしておりませんが、私ども承知している例を挙げますと、たとえば係長の在職年数に百分の四十五を掛けた加算額をやっている例、そのような団体で課長であれば百分の六十、部長であれば百分の七十五というような加算の例がございます。  以上でございます。
  363. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは在職一年についてでしょうけれども、局長なんかどうなんですかね。
  364. 大塚金久

    ○大塚説明員 それぞれの役職の在職一年についてでございます。ただいま申し上げた団体の例で申し上げますと、局長につきましては百分の九十という形になっております。
  365. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 指定都市の退職手当金支給率は、三十年勤続の勧奨退職を例にとると平均何カ月で最高何カ月になっていましょうか。
  366. 大塚金久

    ○大塚説明員 指定都市におきます三十年勤続勧奨退職の場合のそれぞれの団体の支給率を、単純に団体数で割った平均で申し上げますと、五十三年四月一日で七十三・八月となっております。そのうちの最高の支給をしている団体の月数は八十四月でございます。
  367. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その場合、国の場合は五十九・四。それから最高三十五年勤続で六十九・三。それに対していまあなたおっしゃったように七十三・八月、最高八十四月ということなんですが、都道府県の場合はどうなっていましょう。
  368. 大塚金久

    ○大塚説明員 都道府県におきましては、東京都を除きますと大体国に準じた退職手当制度になっておりまして、支給率は国と同様でございます。
  369. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 指定都市の勧奨退職金は、他の都道府県が国に準じて三十年で五十九・四、三十五年で六十九・三としているのに対して、三十年で一番低いところで六十六、高いところで八十五、三十五年で一番低いところが八十、高いところで九十カ月、非常にアンバランスになってかなり高くなっておるわけであります。本来地方自治は、地方独自の自主性が尊重されなければならないし、労使の話し合いが行われている経緯にかんがみて、国と同じでなくてはならないという論理も少し飛躍をしているように思いますけれども自治省として本当にアンバランスの状態であるという姿に対してどのようにお考えになっていましょうか。
  370. 大塚金久

    ○大塚説明員 地方公務員の退職手当につきましては、それぞれの地方公共団体が条例で定めることとされておるわけでございますが、その条例で定める内容と申しますのは、地方公務員法二十四条に定める給与決定の原則、権衡の原則、給与条例主義の原則等にのっとり定めなければならないものでございます。  ところで、地方公務員の退職手当の現状を見ますと、御指摘のとおり、大多数の都道府県においては国に準じたものとなっておりますが、指定都市を含め一部の地方公共団体におきまして制度及び運用において国の基準を上回る退職手当が支給されている状況にございます。自治省といたしましては、これまでも退職手当について条例準則を示し、国の制度に準じたものにするよう指導してまいったところでございますが、特に一昨年八月には、具体的な内容を示しまして退職手当の適正化について通知したところは、先ほど申し上げたとおりであります。さらに引き続いて昨年九月にも格別な通知を出し指導をいたしているところでございます。今後とも適正化について早急に措置をとるよう指導してまいりたい、このように考えております。
  371. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自治省は通達をお出しになったわけでありますけれども、それに対して地方自治体としてどういうふうな改善がなされているのでしょうか。
  372. 大塚金久

    ○大塚説明員 指導を強化してまいったわけでございますが、先ほど申し上げましたそれぞれの支給率の状況等は五十三年四月一日現在の状況でございます。したがいまして、五十三年四月一日以降五十五年十二月三十一日までの調査でございますが、その間どのような退職手当の改善が地方公共団体においてなされたかについて御説明いたしますと、支給率の引き下げを行った団体が十一団体ございます。それから最高限度を設定した団体が五団体、その他の加算の廃止、退職日の変更等を講じた団体が二十八団体となっております。このほか相当数の地方団体におきまして具体的にその適正化を検討中でございます。  以上でございます。
  373. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすると、自治省としても、この問題についてはかなり重大な問題だというふうにとらえられて、これからどういうふうに指導をされていくのでしょうか。
  374. 大塚金久

    ○大塚説明員 地方公務員の退職手当につきましては、先ほど申し述べましたように、国に準じて措置するよう指導し、特に一昨年、昨年と引き続いて適正化の具体的内容を示して通知し指導してきたところでございます。このような指導もありまして、先ほど申し上げましたように、地方公共団体におきまして近年退職手当の適正化措置をとったり、具体的に検討をする動きが多くなってきております。しかしながら、私どもこの状況が満足できる状況だとは思っておりません。きわめてまだ不十分だと考えておるところでございます。  それで、地方公務員の退職手当の適正化を進めるに当たっての考え方でございますが、基本は、地方公共団体の長、それから納税者である住民の代表が構成する議会が、法律趣旨に即してみずから適正な判断をすることによって退職手当の制度の運用の適正を確保するというのが基本であろうかというふうに考えております。しかしながら、国地方を通じて行政改革が緊要の課題とされ、とりわけ地方公務員の退職手当の適正化につきまして国民の関心が高まっている現状にございますので、自治省といたしましては、地方公共団体が早急に不適正な退職手当の制度、運用を是正し、住民の理解と納得を得られるような措置をとるよう、今後あらゆる機会を通じて指導を徹底してまいりたい、このように考えております。
  375. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後でございますけれども、この退職金カットの法案を私ども審議をしているわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、カットされるということは、非常にこれは生活に密接しているだけに大変な問題です。退職金が上がるということであれば、これはもう大歓迎であろうし、退職金を上げていただく方には喜ばしいことですけれども、退職金をカットされるということは、その人の立場になってみるならば、これは大変な問題であります。しかし、国民感情というものも無視はできないし、また信頼できる公務員という立場を考えたときに、私は、これから実額調査というものによってよりきめ細かな調査をやって、客観性がなければ実際にはお話にならぬわけですから、そういう形にぜひしてもらいたいと思いますし、またカットされるについては、余りにもショックの多いカットの仕方でなくして、少なくとも激変を緩和していく、そういう方向性というものを模索しながら、最終的にどうしてもやらなければならないというなら、これはやむを得ないと私は思いますけれども、そのショック、激変の緩和という問題をできるだけ取り入れて、国会の英知をすぐりながらこの問題にぜひ対処してもらいたいということを要望いたしまして、質問を終えます。
  376. 江藤隆美

    江藤委員長 次回は、来る十四日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十五分散会