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1981-05-07 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月七日(木曜日)委員長の指名で、 次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  同和対策に関する小委員       愛野興一郎君   稻村左四郎君       上草 義輝君    木野 晴夫君       染谷  誠君    竹中 修一君       塚原 俊平君    上田 卓三君       矢山 有作君    鈴切 康雄君       神田  厚君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  同和対策に関する小委員長   染谷  誠君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十六年五月七日(木曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    狩野 明男君       粕谷  茂君    亀井 善之君       川崎 二郎君    木野 晴夫君       倉成  正君    田名部匡省君       竹中 修一君    宮崎 茂一君       上原 康助君    大出  俊君       角屋堅次郎君    矢山 有作君       渡部 行雄君    市川 雄一君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣臨         時代理         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    加藤 圭朗君         人事院事務総局         任用局長    斧 誠之助君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         総理府人事局長 山地  進君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛政務次官  山崎  拓君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁装備局長 和田  裕君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         外務省条約局長 伊達 宗起君         労働大臣官房審         議官      松井 達郎君         労働大臣官房審         議官      小粥 義朗君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    松田 慶文君         大蔵省主計局共         済課長     野尻 栄典君         大蔵省主計局主         計官      畠山  蕃君         大蔵省造幣局東         京支局長    田中 泰助君         大蔵省印刷局総         務部長     山本 六男君         厚生大臣官房企         画室長     長門 保明君         厚生省年金局年         金課長     佐々木喜之君         林野庁林政部長 宮崎 武幸君         林野庁職員部長 関口  尚君         通商産業省基礎         産業局アルコー         ル事業部長   太田 耕二君         海上保安庁警備         救難監     野呂  隆君         郵政省人事局人         事課長     金光 洋三君         郵政省人事局厚         生課長     藤田 孝夫君         労働省労政局労         働法規課長   中村  正君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     中島 忠能君         自治省行政局公         務員部給与課長 大塚 金久君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   渡部 行雄君     大出  俊君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     渡部 行雄君     ――――――――――――― 四月三十日  行政機関の公文書の公開に関する法律案中路  雅弘君外一名提出衆法第三五号) 五月一日  戦後ソ連強制抑留者処遇改善に関する請願(  小沢辰男紹介)(第三五四九号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願外一件(  岡本富夫紹介)(第三五五〇号)  同(三浦隆紹介)(第三五五一号)  同(二階堂進紹介)(第三六一二号)  同(保利耕輔君紹介)(第三六一三号)  同(甘利正紹介)(第三六六四号)  同(柿澤弘治紹介)(第三六六五号)  同(依田実紹介)(第三六六六号)  新憲法制定に関する請願始関伊平紹介)(  第三六一一号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願河野洋平紹介)(  第三六六七号)  同(米沢隆紹介)(第三六六八号)  重度重複戦傷病者に対する恩給の不均衡是正に  関する請願矢山有作紹介)(第三六六九  号) 同月七日  公務員退職手当削減定年制導入反対等に関  する請願田邊誠紹介)(第三七九四号)  同(高沢寅男紹介)(第三七九五号)  同(武部文紹介)(第三七九六号)  同(塚田庄平紹介)(第三七九七号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願近藤鉄  雄君紹介)(第三七九八号)  同(西田八郎紹介)(第三七九九号)  同(森田一紹介)(第三八〇〇号)  同外一件(山中貞則紹介)(第三八〇一号)  外地派遣旧軍属の処遇改善に関する請願山崎  武三郎紹介)(第三八〇二号)  国家公務員退職金削減定年制導入反対に関  する請願外一件(五十嵐広三紹介)(第三八  〇三号)  同(上原康助紹介)(第三八〇四号)  同(大島弘紹介)(第三八〇五号)  同外二件(角屋堅次郎紹介)(第三八〇六  号)  同(河上民雄紹介)(第三八〇七号)  同(木間章紹介)(第三八〇八号)  同(久保等紹介)(第三八〇九号)  同(串原義直紹介)(第三八一〇号)  同(佐藤敬治紹介)(第三八一一号)  同(嶋崎譲紹介)(第三八一二号)  同(清水勇紹介)(第三八一三号)  同(武部文紹介)(第三八一四号)  同(塚田庄平紹介)(第三八一五号)  同外一件(中村茂紹介)(第三八一六号)  同(野坂浩賢紹介)(第三八一七号)  同(馬場昇紹介)(第三八一八号)  同(細谷治嘉紹介)(第三八一九号)  同(松沢俊昭紹介)(第三八二〇号)  同(村山喜一紹介)(第三八二一号)  同(山花貞夫紹介)(第三八二二号)  同(渡部行雄紹介)(第三八二三号)  重度重複戦傷病者に対する恩給の不均衡是正に  関する請願渡部行雄紹介)(第三八二四  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出、第九十三回国会閣法第六号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、  第九十三回国会閣法第七号)      ――――◇―――――
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  国家公務員法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 公務員二法が当委員会にかかっているわけですが、中曽根行管庁長官にお伺いしますけれども、行財政改革公務員二法の関係あるいは位置づけはどのようにお考えでしょうか。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 公務員二法につきましては、昭和五十二年の閣議了解及び五十五年の閣議決定による行革の内容の一環をなしておりまして、行政改革の重要な項目であると心得ております。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなに密接な関係があれば第二臨調中間答申が七月に行われるので、それを待ってこの公務員二法を処理するというのが順当ではないかという感じがしますが、どうでしょうか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 この件はすでに閣議決定等を経まして政府の既定の政策として決定しておるものでございますから、それを実行していきたい、こういう考えでございます。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、行財政改革上どうもこの部分は余りさわってもらいたくない。つまり聖域と申しますか、そういう部分が出てくるのではないかという気がするのです。  まずその第一は、いわゆる防衛費との関係であります。報じられるところによりますと、五六中業、六十二年度までに五一防衛大綱を仕上げるというような内々の了解ができておるやに聞く。そうすると、そのために防衛費聖域扱いになるのではないか。特に米側に対してそういう約束と申しますか、そういうことになれば、なおさらこの防衛費というのは聖域扱いになるのではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 今次行革におきましては、聖域はないものと心得て処理してまいりたいと念願しております。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ところで、この防衛費との関係ですが、つまり装備関係がまずその主体になりましょう、聖域扱いにしないといういまの答弁ですから。防衛庁自体の組織、構成、そういう点に行政改革メスを入れる、そういう気持ちはありますか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 防衛庁におきましても、ほかの諸官庁と同様に簡素にして効率的な政府一環をなすように努力していただきたいと思っております。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 第二臨調中間答申が七月に出される予定でありますが、この中間答申完全実施に対する政府保証は一体何でしょうか。どういう保証があるのでしょうか。たとえば一例を挙げますと、その中間答申をよく実施し得ない所管大臣は罷免するとか、一例ですよ。完全実施に対するその種の政府保証というのは一体何でしょうか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 中間答申を拝見した上で政府・自民党として態度を正式に決定することと思いますが、第二次の臨時行政調査会をつくるに当たりましては、土光会長及び委員皆様方に対して最大限に答申を尊重して実行いたしたい、こういう念願を総理大臣及び私から表明しております。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 鈴木総理は、この行革政治生命をかけると表明された。中曽根長官も同様の決意を表明されておるやに聞いております。一体鈴木内閣政治生命をかけるというのは具体的にどういうことなんでしょうか。たとえば、これもたとえばです。もしこれが完全にできないときは、鈴木内閣責任をとって総辞職するとか、その種のことなのかどうか。鈴木総理政治生命をかけるということは、どういうふうに中曽根長官は理解されておりますか。それと、あなた御自身政治生命をかけるということですが、あなたの場合には、改造がいつあるかわからないけれども、自分はこの行革あるいは中間答申完全実施するまで、総理任免権はあるけれども、みずから進んで留任を希望される、そうしてこれをやり遂げる、悪い言葉かもしれないが、食い逃げするというようなことは絶対ないのだ、それくらいの決意中曽根長官はお持ちでしょうか。その二点をお伺いします。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 政府といたしましては、臨時行政調査会答申を受けまして、その合理的妥当なものにつきましては全力を傾倒して実現をする、いかなる障害があってもこれを貫徹する、そういう意気込みで誠意を尽くしてやりたいという考えでおります。  私といたしましても、臨時行政調査会重大法案国会で成立さしていただきまして、日本を代表するりっぱな方々にせっかく御審議を煩わしておる問題でございますから、大きな責任を持っておると心得ており、この行政改革の貫徹につきまして、私も全身全霊を打ち込んでこれを実行していく、そういう決意を秘めておる次第でございます。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 鈴木総理がこの行革政治生命をかけるということは、具体的にはどういうことなのかという点は、御本人がおられませんから、いずれ総理が当委員会出席をされた際にお伺いをすることにして、この点は留保したいと思いますが、委員長、よろしゅうございますか。
  16. 江藤隆美

    江藤委員長 理事会で御相談をさせていただきます。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、もう一つ重大な問題として、御案内のとおり、政治金権腐敗が非常に国民指弾の的になっている。その根源を探れば、まさに政官財癒着構造だ、そう断定して差し支えないと私は思う。したがって、単に財政を再建するための行政改革であると同時に、この際そういう政官財癒着金権腐敗体質構造に何とかメスを入れる、そうしないといわゆる構造的な汚職はなくならない、これも行政改革の根本的な一つ問題点であろうと私は思いますが、この政官財癒着構造についてメスを入れる決意があるかどうか、中曽根長官決意を承っておきたいと思います。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 行革の目的は、日本政府あり方がいかにあるべきかということを決めていただくということが基本にあると思いますが、それにつきましては、簡素で、そして清潔で、そして能率的な政府をつくる、そういうことも機能的改革重大ポイントになっておると思います。現在の行政の実態につきましては、いろいろな見方や御批判があると思いますが、それらのいろいろなお考えに対しては十分耳を傾けまして、簡素にして効率的で清潔な政府をつくっていくように私たちは努力してまいらなければならぬと思っております。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いままさにこの行政改革理念長官は述べられたと思います。その点は大変結構だと私は思います。それに行政民主化というかあるいは分権化というか、そういうものも理念の中に入れていただければ完璧であろうと思います。いま清潔という言葉が出ましたから、私が指摘をしましたそういう政官財癒着構造についても、清潔という点からメスを入れるというふうに私は受けとめておきたいと思います。  実はきょう第二臨調土光会長参考人としてお願いをしたのですが、諸般の理由出席されないということですから、委員長お願いをいたしますけれども、私の土光会長に質問をしたかった点を申し上げますので、後刻それを土光会長にお伝えいただいて、文書で御回答を願う、このような取り扱いをひとつお願いをしたいと思います。出席されないということについては了解をしましたから、そのかわりそれだけのことはひとつ……。
  20. 江藤隆美

    江藤委員長 事務局次長出席しております。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、土光さん本人じゃございませんから、土光さん本人にお伺いしたい点があったものですから、御配慮をいただきたいと思います。  以下それを申し上げます。  私が土光会長参考人としてぜひ出席していただきたかったのは、世上、土光さんが出てこられたので財界主導型の行政改革になるのではないかということが言われておるわけですね。土光さんがあの年になられて、自分の人生としての最後の御奉公をいわゆる行政改革という大きな氷壁に向かってピッケルを打ち込む、そういう決意であられるというふうに私は期待をしておるわけです。しかし、やはり財界主導型という疑念が世上ある以上、それを払拭してもらわなくてはいけない。そのためには、以下のような点について態度を明確にされることが財界主導型ではないのだということになろうと思いますので、以下、土光会長にお考えを聞きたい点を言いますと、どうもこういうことが誤解を与えている一つの問題ではないか。  それは経済界なり財界関係の薄いところに行政改革をしわ寄せしようとしておるのではないか。財界あるいは経済界関係の深いところについてはなるだけ手をさわってもらいたくない、そういうことがあるのではないか。たとえば経済界関係の深い経済協力とかあるいはエネルギー関係とかあるいは公共事業関係、こういうところには余り手を触れてもらいたくない、そしてそういう関係でないところに行財政のしわ寄せをやられるのではないか、そういうことが私は懸念されます。ということは、経済界がすでにこういうことを言っておるからですね。この点はぜひ土光会長からぴしゃっと、そういうことはないという御回答を私は期待したいところであります。  それから、いわゆる政界や官界に対する財界依存体質と申しますか、それが先ほど申し上げた政官財癒着構造関係がありますけれども、そういう財界政官に依存しておるという点がありますよ。だから、そういう依存体質をなくするようにひとつ土光さん自体メスを入れてもらいたい、これが二番目の要望であります。この点は、経済界への官界からの天下り問題も含めてひとつお考えをお伺いしたいところであります。この天下りというのが癒着一つの大きな原因になっておりますので、この点も含めてひとつ土光さんの決意をお聞きしたいところであります。  それで三番目に、こう言っては失礼ですけれども、またそれがあたりまえだとも思うけれども、財界価値観というものは、率直に言ってそろばん勘定ですよ。私は、財界だと当然だと思う面もまたあるのですね。だから、これはちょっと余談になりますが、私は財界が防衛問題などにくちばしを入れるのは断じてならぬと言うのはそこなんです。財界価値観はそろばん勘定しかないのだから、先ほど中曽根長官がおっしゃったような行革理念がありますから、その理念をしっかりと踏まえて、そこに価値観を置いてひとつこの行革をやってもらいたい。そうしないと、そろばん勘定だけが非常に関心の中心になりやすいから、えてして財政つじつま合わせだけに終わる可能性がある。だからそういう点だけに関心がいかないように行革の広い理念というものを基本にしてやってもらいたい。  この三つの点について土光会長自身決意が承れたらと思います。この点は後ほど理事会でひとつ御処理をいただきたいと思います。
  22. 江藤隆美

    江藤委員長 わかりました。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、宮澤長官に……。
  24. 江藤隆美

    江藤委員長 いま議運に出ておられるそうですから……。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それではその間に別の問題をやりますから、見えられたらちょっと知らせてください。  最近起こった問題でちょっとはっきりしておきたい問題があるのでありますが、実は、石原慎太郎議員が弟さんの裕次郎氏の病気見舞い自衛隊飛行機を使って行ったという問題であります。私は石原裕次郎氏のファンであります。また石原慎太郎議員とも友人の仲でありますから、情としては、心情的にはよくわかるのです。そして、よほど重体という知らせを受けたのでしょうから、わらにもすがる気持ち防衛庁に頼まれたという点も私は同情をいたします。しかし、それは私自身の私情でありまして、やはりこの問題は客観的にきちんと処理をしなければいけない。そうしないと今後この種の問題が起きたときどうするか、あるいは小笠原島民の感情というものも無視できない。  そこで、最初にお伺いをしますけれども、かつて大村長官の先輩である上林防衛庁長官引責辞職をされた。これはなぜされたか覚えておられますか。
  26. 大村襄治

    大村国務大臣 上林山元長官辞任をされたということは、私も当時国会におりましたもので承知しております。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 なぜ引責辞職をされたか御存じですか。やめられたことはいま知っておるとおっしゃられた。その理由をお伺いしているのです。
  28. 大村襄治

    大村国務大臣 理由は、帰郷の際に、選挙区に帰られた際の行事あり方についていろいろ問題があったというふうに聞き及んでおります。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 長官、だめですね。そういう理解しかないから今度のような過ちを犯すのです。自分大臣就任ふるさとへのお祝いに行くために自衛隊飛行機を使った、これが公私混同だから引責辞職をしたのです。思い出されますか。
  30. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  飛行機使用の件もあったかもしれませんが、私が主として記憶しておりますのは、選挙区で行事があった際に自衛隊音楽隊が参加したとか、そういった点が世論の批判を浴びたということを記憶しておるわけでございます。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 冗談じゃないですよ、あなた。自衛隊軍楽隊を使って引責辞職するなどということはないんですよ。私のふるさとの博多でも今度ドンタクがあったけれども、自衛隊軍楽隊が参加してやっていますよ。そんなことじゃないんです。東京から鹿児島まで自衛隊飛行機で行って、今度鹿児島へ着いて、その会場まで自衛隊のヘリコプターで行った。問題はそれですよ。そういう認識だから、あなた、今度のような間違いを犯すんだ。一体石原議員を送った飛行機は何ですか。
  32. 大村襄治

    大村国務大臣 石原議員の乗りました飛行機US1であります。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 飛行機自身任務は何ですか。
  34. 大村襄治

    大村国務大臣 US1の任務救難を主としておりますが、また飛行艇でございますので、飛行場のない地点への連絡等任務にも使用しております。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、本件の場合は、そのUS1の任務とは全然違うことに使われましたね。
  36. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまのお尋ねにお答えする前に、少し経過を御説明させていただきたいと思います。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 まことに失礼ですが、経過はわかっておりますから、聞いたことだけにお答えください。時間がないのでございますので……。
  38. 大村襄治

    大村国務大臣 お言葉でございますが、ちょっと関連する経過を御説明しないと御理解いただきにくいのではないかと思いますので、エッセンスだけ申し上げますので、しばらくお聞き取りを願いたいと思います。  四月二十六日の午後、石原議員の秘書から防衛庁に対しまして、議員が父島から緊急に帰京する必要が生じたが、交通手段が全く確保できないため自衛隊機への搭乗はできないかとの電話がございました。そこで本件につきまして防衛庁内で十分に検討いたしまして、小笠原という遠隔の地で空港もなく能力的にも自衛隊US1しか対応できず、他に代替交通手段が得られないという特殊な事情を勘案し、かつ石原議員が現地に行きました理由ヨットレース行事に対する後援者――防衛庁が後援しております。そういった立場をも考えまして、ほかに全く方法がございませんので、US1を派遣することを決定いたした、そういう経緯でございます。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 経緯はわかりましたが、私がポイントとして聞いておるのは、US1の任務には今度のことは入ってないですね。それははっきりしている。幾らかかりましたか。――いや、そうでしょう、救難、それから連絡でしょう。
  40. 大村襄治

    大村国務大臣 いま申し上げましたように救難が主でございますが、飛行場のないような遠隔の地へ連絡をする場合には、この飛行機を使用することがあるということは先ほど申し上げました。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 連絡というのは軍の内部のことでしょう。軍の内部の問題じゃないですか。
  42. 江藤隆美

    江藤委員長 二人でやりとりをせずに……。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、聞きもしないのに相手が立ってくるからですよ。
  44. 大村襄治

    大村国務大臣 御承知のとおり父島は飛行場がございませんので、着水できる飛行機としては、このUS1でございます。そこへこれを派遣する以外他に方法がないということでございましたので、派遣することを決定した、こういうことでございます。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 稻村さん、私も一時間半をちょっと縮めようと思っているけれども、こういうことじゃだめですね。私が聞いたことに答えないのです。この送り迎えに費用は総額幾らかかったかとさっきから聞いているのです。聞いていることを答えなさいよ。
  46. 塩田章

    ○塩田政府委員 燃料代だけで約百六十万円でございます。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いままで小笠原の島民が、たとえば急病でどうしても本土のお医者にかからなければいけないというようなときに、防衛庁が依頼を受けた事実がありますか。
  48. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま回数を覚えておりませんけれども、しばしばございます。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どう対応されましたか。
  50. 塩田章

    ○塩田政府委員 小笠原の復帰当時はUFという米軍供与の古い飛行艇を使っておりました。いまのUS1ができましてからは、岩国におりますUS1の部隊を使って対応いたしております。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その事実はたくさんはないと思うから資料として出してください。
  52. 塩田章

    ○塩田政府委員 資料として提出いたします。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 もしそういう対応がきちんと行われておればいいけれども、私の聞いたところではそう行われない。そうなってくると、小笠原島民の命と石原裕次郎氏の命と防衛庁は差をつけたことになるのです。これは大変な問題になる。だから、何回要請を受けて、そのうち何回要請にこたえたか、要請にこたえられなかった分はなぜであったか、それを含めて資料として提出をしていただきたい。  それで問題は、石原慎太郎氏が病気になった問題と違ってお見舞いに行かれたわけですよ。先ほどから言うとおり情としてはわかるけれども、事実はそうなんですね。それにこういうUS1を動かす。私はその価値判断が、石原議員もそういう緊急のあれだったからやや動転されておったでありましょう。しかし、客観的に冷静に見れば、石原議員も大臣をされた方ですけれども、公私混同の非難を免れないと思う。と同時に、問題はむしろ防衛庁の対応なんであって、防衛庁がきちっとしておったら石原慎太郎議員にその過ちをさせずに済んだのです。だから、防衛庁自身公私混同がある。いまのような理由というのは理由にならないですよ、あなた。これは全く逸脱した行動だ。それでは一つだけ聞いておきましょうか。一般の庶民から本土の肉親が病気になったからと頼んだらどうしますか。
  54. 塩田章

    ○塩田政府委員 自衛隊の航空機につきましては、航空機の使用及び搭乗に関する訓令がございまして、それに従って処理をしておるわけでございますが、いま御指摘のように今度の石原先生と同じようなケースで島民の場合起こったらどうするかというお尋ねでございますが、やはりケース・バイ・ケースで判断をする必要があるだろうというふうに考えております。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 一般庶民でもそういう見舞いなんかに要請があったときは出されるのですね。
  56. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど言いましたように、搭乗に関する訓令がございまして、訓令の規定に該当する場合は問題ございませんけれども、該当しない場合――該当しない場合といいますか、今回の場合で言いますと、訓令の中に、その他長官が必要と認めた部外者という規定がございますが、結局この規定を使って今回は飛行艇を出したわけでございますが、やはりその場合でも、それでは長官が認める限りどんな場合でもいいのかということにもなりますので、いま長官がお答えいたしましたように、緊急性でありますとか、他に代替性がないとか、あるいは公共性があるとか、そういったようなことを個別に判断をして、いまの搭乗訓令の長官の必要と認める場合の運用について恣意に流れないように慎重に判断をして決定していく必要があるだろうと考えております。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この問題の最後に、私はこの問題だけの処理としては、少なくとも石原慎太郎議員も百六十万円ですか、その実費をみずから弁償すべきであるし、防衛庁としても石原議員に対してそれを要求すべきであると思いますが、どうですか。
  58. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねのありました費用の弁償の点につきましては、防衛庁としてはこれを徴収する考えはいま持っておりません。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはおかしいじゃないですか。まさにあなた財政再建を言っているとき、それは金額は少ないですよ。百六十万と金額は少ないけれども、これは筋の通らない金だ。ほかに代替し得る飛行機があったら石原さんは金を出して行っておるはずですよ。中曽根長官はどう思われますか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 これは防衛庁が所掌していることでございまして、防衛庁長官の判断にゆだぬべき問題である。防衛庁においてよく御検討願いたいと思っております。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は行財政改革の点から聞いているのですよ。長官は元防衛庁長官でしょう。これは納得できませんね。もしそういう態度であれば、弁済を要求しないというのであれば、これは理事会で検討して結論を出して、防衛庁に正式に要求すべきだと私は思いますね。これは理事会に譲りたいと思いますが、委員長のお取り計らいをお願いいたします。
  62. 江藤隆美

    江藤委員長 御相談をしてみましょう。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは次に、原潜の衝突事故について昨日中間報告が米側からなされたのでございますけれども、官房長官、この中間報告をお読みになってあなた自身矛盾したところ、不明なところ、あるいは疑問点、こういうものが解明されたかどうか。解明されていないとすれば、具体的にどこどこに疑問がある、どこどこに矛盾がある、どこどこにその不明な点がある、それを明らかにしていただきたい。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米国大統領がわが国の首相との会談に先んじて約束に従って中間報告をされたこと、その誠意は私としては評価をいたします。  なお、この報告そのものについての考え方、見方でございますが、報告そのものが述べておりますように、これは中間のいまの時点における判明した事実の説明であって、報告が完結する時点において幾つかさらにこれにつけ加える、あるいは変更を加えなければならないことがあるかもしれないと書いてございますように、基本的に中間的な暫定的なものである、こういうふうに解釈すべきであろうと思います。  なお、どの点が突合せず、どの点が矛盾があるかというようなことにつきましては、私専門家でございませんので判断は差し控えさせていただきます。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 公式の場では言えないのかもしれませんが、だれが読んでも、結論を先に申し上げますと全くうそを言っておる。そのうそを隠すためにまた別のうそを言っておる。だから、どうしても文章上自己矛盾に陥らざるを得ない。私はこれは精神分裂症的な作文だと思いますよ、だれが読んだって。時間が限られておりますが、中身を少しばかり言いましょうか。私はたくさん矛盾点を指摘し得るけれども、主だったところだけちょっと言ってみましょうか。  第一番に報告全般についてですよ。これは日昇丸の乗組員の証言とずいぶん違いますよ、実際の体験者の証言と。そして九日の十時二十六分にソナーは完全に作動しておったわけでしょう。六分後に衝突しているのです。一体そのときに、九日の十時二十六分にソナーが正常に作動しておって、どうして日昇丸をキャッチできなかったのですかね。六分後には衝突している。それから潜望鏡を二回にわたって三百六十度回転させても日昇丸は見えなかったけれども、ちょっと引っ込めてまた出したらP3Cはすっと見えたというのです。そんなに早く潜望鏡がP3Cの方を、あんなに速い飛行機をぱっと見つけておって、速度の遅い近くにおる日昇丸がなぜ見えなかったか。冗談じゃないですよ、これは。  それからまた、その衝突寸前に日昇丸をソナーはキャッチしたんでしょう。そして司令室に報告した。ところが当直士官の耳に入らなかった。こんなことがあり得ますか、防衛庁長官。こんなことが常識で考えられますか。こんな報告をぬけぬけとなぜやるのでしょうかね。もしそれが事実なら全くなっておらぬですよ、アメリカ海軍は。何が日本を守るですか。それから情報がもし当直士官の耳に入っておって敏速な行動をとっておったならば、その衝突を回避することができたかどうかについては明らかでない。これは一体何のことです。何を言おうとしておるのですか、これは。官房長官うなずいていらっしゃるから、私の疑問点は同感だと思うのですよ。  それから、最初付近で潜望鏡を上げたのが十時二十六分、そして衝突が十時三十二分。六分の間にこの潜水艦はどういう行動をしたと書いてありますか、あれに。まず自分の位置を確認するために潜望鏡深度まで浮上したのですね。そしてソナーは正常に作動しておる。次に潜望鏡で見ると、視界が悪く、しま筋が流れ、ぼんやりして日昇丸は見えなかった。ところが、さっき言ったとおりP3Cはすぐ見ているのです。そして今度は潜望鏡を二回にわたって三百六十度回転しているのですね。そしてその次、今度は潜望鏡を下げて潜航した。そしてその次に、再び浅い深度に浮上した。そして潜望鏡を上げた。そのときにP3Cを見たわけですね。そして再び今度は潜望鏡を下げているのですね。このときにソナーが日昇丸をキャッチして司令室に伝えたが、当直士官の耳には入らなかった。そして三十二分衝突。つまり、十時二十六分の時点においてP3Cは、あの報告書によると真上に来てジョージーワシントンを見ているのです。それから二、三分後でしょうか、また潜望鏡を上げて、P3Cを今度はジョージ・ワシントンは見ている、ということは、P3Cは恐らく三百メートルか五百メートルの低空で原潜の真上におったはずです。この報告どおりならば、六分間ジョージ・ワシントンの真上におったんです。それなのになぜ日昇丸が見えないのですか。こんなばかな報告がありますか。六分間にこれだけできているんだ。そしてP3Cは潜水艦の真上にずっとおって衝突するのを見ているはずですよ。こんな報告は、私は絶対に納得できませんよ。だから、これはなぜ衝突が起こったかというその日本側の問いに完全に答えていない。  それから、次の救助努力がどのようになされたか。この点についても、ジョージ・ワシントンはいわゆる核抑止部隊から外されて、SSBNだけれども、SSNの役目をしておったわけでしょう。そうすれば、別にこれは秘匿する必要はないんだ。まずそれを明らかにしておきたいと思う。第一次警戒態勢にないというのだから。本来ならば、そういう衝突が起こったならば、そのまま浮上して見届けなければいかぬのですよ。それなのに、てめえの船の損傷がそう大したことがないということだけわかったらすぐ潜航しているのですね。そして、結局報告するのに一時間半もかかっておる。なぜそんなにかかったのか。その一時間半の間に一体何をジョージ・ワシントンはしておったのか。何かどこかの待機水域に行ったというが、何のためにそういうことになったのか、これもわかりませんよ。  それから、この報告は、日昇丸が沈没したのがわからなかったということに根本的にはすべての原因を置いていますね。ところが、その点についてもわれわれは納得できない。P3Cが低空で来て、衝突した直後、真上に来たときに、日昇丸の船長はいわゆる遭難信号を上げているんですよ。しかも、それから二、三時間後、今度はいかだに乗っておる連中が、またP3Cが来たときに信号弾を上げているんです。P3Cが見逃すはずはないんですよ。深海のどこにおるかわからぬ潜水艦でも探すP3Cが、海上に浮いて信号灯まで上げた、そういうものがわからないなんということがあり得ますか。冗談じゃないですよ。どうしてこういう報告をぬけぬけとやるんですか。だから、この米側が言っている沈没がわからなかったという根本問題がすでに間違っているんだ。これはインチキですよ。  しかも何ですか。P3Cは一〇〇%捜索した、ところがそのほんの何行か後に、視界が不明であったから計器飛行をして、機外は余り見えなかったと書いてあるでしょう。何が一〇〇%の捜索ですか。こんなだれが読んでもおかしい自己矛盾の文章が堂々と報告されているんです。一体何ですかと言いたいのです。しかも三分か五分間確認したが、大したことはなかった。そんな短時間で、しかも自分が衝突して相手にも相当の損害を与えておるであろうと思うのは常識じゃないですか。それを三分か五分ちょっと見渡してどうもなかった、こういう報告もでたらめです。  それで、結局私が心配するのは、日米安保条約、これは私どもが核問題をやるときでも、アメリカ側は、日本の非核三原則をよく承知しておるから、それにもとるようなことはしない、だからアメリカを信用するのだ――そういうときの説明だって、日米の信頼関係をあなた方は答弁するでしょう。こういうことで信頼関係が保てますか。それからまた、共同作戦をこれからする。ガイドラインでやっているでしょう。こういうことで日米の共同作戦ができますか、防衛庁長官。  いいですか。九日の正午にはこのジョージ・ワシントンは在日海軍司令部に報告しているのです。日本の海上自衛隊が見つけ出して、米側の司令部に問い合わしたのがその明くる日の十日の昼です。このとき米海軍は何と言いましたか。そんな事実はないと言ったのでしょう。何がこれで共同作戦ですか。この点はどう思いますか、防衛庁長官。こんなうそを平気で言われて。
  66. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  海上自衛隊が護衛艦の救助した乗組員のお話等から遭難事故を承知しまして米側に問い合わせましたのは、お話のありましたように十日の朝でございます。それに対しまして昼ごろ返事が参りまして、米潜水艦の該当するものはその付近の海域を航行してないが、なお調査してみる、こういうことがあったわけでございます。御指摘のように九日の昼ごろぶつかったことを知っているとすれば、その辺どういう事情なのか、その点、私の方としてもわかりかねる節があります。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それが当然だと思いますね。まことにばかにされた話です。  それで官房長官お願いしたいことが以下あります。後の時間があるそうですから急いで申し上げますが、私はこの中間報告が政治決着にならないようにひとつお願いしたい。まずそれが第一です。その点よろしゅうございますか。この中間報告がこの衝突事件の政治決着に事実上ならないようにお願いしたい。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどからお尋ねを伺っておりまして、最初に申し上げましたように、第一に、この報告そのものが暫定的な中間的なものであるという点がございますが、第二に、恐らくこの事件は関係者の間の裁判に発展するものと考えられますが、したがいまして、先ほどから楢崎委員の言っていらっしゃいます幾つかのなかなかよくわからぬと言われます点、それは恐らく先々被告になるかもしれない人々から聴取したような事実関係であるかもしれない、そういうことは十分に想像ができるわけでございます。したがいまして、こういう事件の全貌というのは調査が完了し、しかも裁判を含めて事実関係が明らかになるそのときを最終的には待たなければならないのではないか。本来そういう性格のものではないかと私考えておりまして、それはアメリカ政府がうそを言っているとか、事を隠しておるとかいうことと違いまして、事実関係を発見するために任命されました調査官のただいまのところ聞き得た事実を言ってきたにすぎないと思っております。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの官房長官のお考え、私もそうじゃないかと思うのです。これは恐らく裁判にかかる。裁判にかかってすべてが明らかになった後、最終報告ということになるのじゃないかと思う。そうすると、最終報告はいつになるかわからない。事実上この中間報告が政治決着という意味を持つのではないかということを懸念します。したがって、この点はどうでしょうか。もう最終報告がいつになるかわからぬという時点で、日本側はいま一生懸命調べている。日本側が調べた点の調査結果を早く報告すべきであると思いますが、その点はどうでしょうか。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこで、最終的な事実の確認にはある程度時間がかかるかもしれないということが予測されますが、しかし、それはいずれにしても明確にされなければならないことであります。と同時に、しかるがゆえに、米国としては、すでにこの事件の責任は米国側にあるということを明確にいたしております。その上に立って大統領が遺憾の意を表明しておりますし、補償の用意もあることを申しておりますので、責任関係はそこではっきりいたしております。事実がはっきりしないから責任もはっきりしないというような事態ではない。これは御承知のとおりでございますから、そこはきちんといたしておると私は思います。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がお伺いしておるのは、最終報告がいつになるかわからないから、その前に日本側独自の調査結果の報告はできないかということをお伺いしているのです。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま所管大臣がおられませんので確答は申しかねますけれども、海上保安庁等々において調べました限りの事実は、いずれかの機会に公にすることになるのではないだろうかと思っております。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それで、これはさっき明らかにしたとおりジョージ・ワシントンだけがうそを言っているのではなしに、在日米海軍司令部もうそを言っているのですね。つまり米海軍ぐるみでこういううそを言っている。この中間報告は、日本国民から見れば、まことに日本国民の威信を傷つける、あるいは日本国の尊厳を損なう、そういう問題であろうと思うのですよ。これで日本国民は絶対納得はしない。日米関係にもひびが入る。だから、官房長官にぜひお願いしたいが、きょうここに来られるのがおくれたのは、ワシントンにおられる鈴木総理との電話連絡があるということでおくれたそうですけれども、明日もまだ首脳会談は行われるから、ぜひ鈴木総理に、こういうことでは日本国民は納得できないということをレーガン大統領に伝えてもらうように連絡をしていただけませんか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから申しますように、両国の法体系等の違いがございまして、故意にうそを言っておるというふうに言われますが、私は実はそう考えておりません。先ほど申し上げましたような理由によるところであろうと考えております。なお、わが国として最終的な事実関係の解明は、もとよりどうしても必要なことであると考えております。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、日米会談の中で、この問題はもう出さなくてもいいという判断ですか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 幾たびか大統領から遺憾の意が表明されております。そういうことを背景にいたしまして、総理大臣が現地において判断をせられると思います。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 留守を預かっておられるのですから、日本国民の本件に対する感情というものを率直に鈴木総理にお伝えなさるのが忠実ではないかと私は思うのですね。それはどうですか。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣が最上最善と考えられる判断を現地でなさると考えております。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 残念ですね。私は納得できませんよ。新聞論調だってしかりでしょう。乗組員の感情だってしかりでしょう。そう載っておるでしょう。太平洋の向こうにおられるのですから、細かいところまでわからないから、そういうことを伝えることが忠実な官房長官の役目ではなかろうか。ぜひそれはもう一遍お願いをしておきたいと思います。  それで官房長官は、議運があれだそうですからやむを得ません。中曽根長官にちょっと残ってもらいますから、よろしゅうございます。  中曽根長官、一、二問だけです。官房長官が退席されましたので、中曽根長官、申しわけないが、総理大臣代理として二、三お伺いをしますが、中曽根長官は、内閣法九条によって総理の代理になられたわけですね。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 何条だか知りませんが、閣議で臨時代理として指名されたものでございます。
  81. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなに軽いものですかね。内閣法九条というのは、実は重大な問題があるのですよ。それは防衛出動は内閣総理大臣しか出せないから。内閣総理大臣にどういう事態が起こるかわからない。大平さんのような問題もあるし、レーガン大統領のような問題もあるから、九条によって、本来常時総理大臣代理というものは決めておく必要があるのです、有事立法を考える前に。これはすぐできることです。こういうこともしないで、有事立法の、やれ何とかかんとかと言うのはおかしいのですよ。これは余談ですけれども、内閣法の九条というのはそういう意味がありまして、九条による正式な総理代理だと思います。  それでお伺いしますが、非核三原則の核、これは放射能を利用する核兵器のことでしょう。これは放射能の濃淡によって区別しない、つまり放射能を利用する核兵器は全部非核三原則の核なのだ、そう私は理解しておりますが、よろしゅうございますか。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣臨時代理 非核三原則に関しまする限りは楢崎委員と同じようなものではないかと私は記憶しております。
  83. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務省にお伺いします。  核防条約の二十五年間の核軍事利用禁止、この核も放射能の濃淡は関係ないですね。
  84. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 核防条約におきましては、ここで核と申しますのは核爆発装置を持ったものでございまして、放射能の濃淡ということは関係ないと思います。
  85. 楢崎弥之助

    楢崎委員 科学技術庁にお伺いしますが、原子力基本法の核軍事利用禁止は、やはり放射能の濃淡は関係ないですね。
  86. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 濃淡に関係はございません。
  87. 楢崎弥之助

    楢崎委員 中曽根長官、御苦労さまでした。よろしゅうございます。  防衛庁長官にお伺いをいたしますけれども、これは四月二十九日の朝日新聞に載っておる記事です。ほかの新聞に同様の記事が載っているかどうかわかりませんけれども、この朝日の四月二十九日の記事によればこうなっております。「大村防衛庁長官は二十八日、同庁技術研究本部長に対しても長官指示を出し五十七年度予算要求の中に巡航性能をもつ地対艦誘導ミサイルの研究開発を盛り込むよう初めて指示したほか、現有の七四式戦車に代わる新戦車の国産開発、すでに着手している長魚雷、新中等練習機の開発推進を打ち出した。また、自衛隊と米軍との兵器共通化を進めるため、例えば新戦車の主砲に米陸軍の最新鋭戦車M1の一二〇ミリ砲を積み、弾薬の共通化を実現することなどを検討することにしている。」こういう記事が載っておる。これは事実ですか。
  88. 大村襄治

    大村国務大臣 担当の政府委員からお答えします。
  89. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは「大村防衛庁長官は」になっている。ほかの人が言っているのじゃないのです。あなたです。
  90. 大村襄治

    大村国務大臣 私が具体的にいま御指摘のような指示をしたことはございません。
  91. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、これは朝日新聞の間違った記事だというのですか。
  92. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 長官の指示が出たことは事実でございますが、そこでは陸上戦闘、海上戦闘、航空戦闘それぞれにつきまして主な方向を示しておるということでございまして、いま御質問のありましたように、戦車に百二十ミリの砲を積む場合にアメリカとの共通化をしろというようなことまで、そこの指示には書いてはございません。
  93. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、この朝日の記事は間違いを、言ってないことを書いているということになるのですか。
  94. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 新聞の記事につきまして直接コメントすることは差し控えたいと思いますが、片やその長官の指示の中に、自衛隊間及び日米間で共通化を図ること、こういう項目がございます。そこのいわば例示として、新聞記者の方が、たとえば今度の新戦車につきまして装備を考えております百二十ミリの砲身等が日米で共通化はできるのではないかというふうに御推測されたのではないかというふうに考えております。
  95. 楢崎弥之助

    楢崎委員 防衛庁長官が六月に訪米されるときに、ワインバーガー国防長官と話される際も、こういう弾薬の共通化あるいは兵器の共同開発、そういうものをお話しになるのかどうか。あるいは日米安保事務レベルの協議でも、いま言ったようなことが議題になるんでしょうか。
  96. 大村襄治

    大村国務大臣 私の訪米の際の議題をどうするかはまだ決めておりません。総理訪米の成果も踏まえまして、今後検討さしていただきたいと考えておるわけでございます。いま御指摘のような問題につきまして議題にすることを現在はまだ考えておりません。
  97. 楢崎弥之助

    楢崎委員 このアメリカのXM1、最新鋭戦車、これに積む百二十ミリ、これはどういう砲弾か御存じですか。
  98. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 ラインメタル社のスムーズボア、滑腔砲だというふうに聞いております。
  99. 楢崎弥之助

    楢崎委員 核砲弾ですね。U238砲弾ですね。いわゆる劣化ウラン砲弾ですね。
  100. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 私はいま大砲のことを申し上げたわけでございまして、大砲の砲身が中に旋状、ライフルを切っていない滑腔砲だというふうに申し上げたわけでございます。
  101. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはあなたの勉強不足でして、このアメリカの最新鋭戦車の百二十ミリ砲の砲弾は、いわゆるウラン砲弾なんです。それは後ほど調べて答弁してください。そうなんですよ。
  102. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 調べましてお答えしたいと思っております。
  103. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは留保しておきます。大事な問題ですから。  五三中業の防衛庁の説明資料、その中の海上自衛隊の性能諸元の中に、DDG、DD、DE、DDA改、DDH改、DDK、全部CIWSを積むようになっている。高性能二十ミリ機関砲CIWS、これはクローズ・イン・ウエポン・システムの略だと思うが、どうですか。
  104. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 そのとおりでございます。
  105. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これはアメリカ海軍が開発した近接ウエポンシステム、ファランクスそのものである、間違いないですか。
  106. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 ただいま計画しているものにつきましては、そのとおりでございます。
  107. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この近接ウエポン装置ファランクスというのは、低空で飛んでくる飛行機もそうですけれども、主として自国の艦に対して迫ってくるミサイルを近距離において撃墜する兵器です。クローズイン、この近接距離というのはどのぐらいの距離ですか。
  108. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 正確な要求性能というのは秘密になっておりますので、申しわけございませんけれども、弾の性質が、先生御存じかと思いますが、非常に比重の重い弾を使っておりますのでそういったことがございますが、基本的にはバルカン砲を使っておりますので、バルカン砲の性能とそう変わらないというふうに考えております。
  109. 楢崎弥之助

    楢崎委員 海幕調査二課が「調査月報」を出しておる。この中にファランクスを紹介しておる。それによりますと、これは特殊な兵器。「このシステムは、貫徹力の高い特殊な弾丸を使用しており、そのため撃墜公算が通常弾を使用する場合より高くなっている。」特殊な弾である。通常弾ではない。一体これは何か。ファランクスはさっき言った核砲弾を使うのです。弾心にU238を使うのです。アメリカのファランクスはそうです。それは間違いないですね。
  110. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 アメリカにおきましてはU238、劣化ウランを使っておるというふうに承知しております。
  111. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が調べたところでは、五百メートルないし二百メートルの近距離で発射するのです。まかり間違ったらばんとやられるのです、そばまでおびき寄せるのだから。だから、この弾丸は特殊な弾丸である。つまりウラン弾でなければ役に立たない。いいですか。このファランクス、CIWSをいま装備しているのはDDHの「くらま」だけである。皆さん方の報告書によれば、DDH改にしかつけることになってない。それが「くらま」につけておる。搭載さしておる。これも資料と違う。  それで、この海幕の「調査月報」によると、ファランクスは一九七六年、つまり昭和五十一年より日本の海上自衛隊護衛艦等の重要な戦闘艦艇多数の搭載される予定であり、この計画は、米海軍のオルドナンス・システム・コマンドからの契約に基づいて進められておる、こうなっておる。調べたら、そのとおりです。いいですか。このU238、ウラン弾、これは確かに放射能は少ない。私が科学技術庁に聞いたところ劣化ウランと言っておりますが、数ミリレムの放射能を持っておる。二年前に米国がこのウラン弾の大量発注を済ました。これがアメリカの議会では上院も下院も問題になっておる。たとえば下院の委員会ではロジャース下院議員、民主党です。ロジャース下院議員が低水準放射能の人体に及ぼす危険というものをこの問題と関連して警告しておる。上院の本会議ではドール上院議員、これは共和党ですが、国防総省は米将兵を新たな放射線の危険にさらそうとしておる、こういう非難をしておる。これはアメリカ政府の国務省の医薬品局も同様の見解だ。ペンタゴンは、放射能が少ないから核兵器じゃないと言って、その論争の決着はついてない。日本では明らかにこれは非核三原則に反する。先ほど言ったとおり核防条約にも反するし、原子力基本法にも反する。これは一体どうなるのですか。
  112. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 海幕におきましては、装備をしておりますもの、あるいはただいま計画中のもの、あるいはまた建造中のものもございますけれども、そういったものにつきまして、劣化ウランと同じような比重を持っておりますタングステンの弾を使うことを考えております。
  113. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは間違いですよ。タングステンは高くてだめだということになっているはずですよ。そんなでたらめ言っちゃだめだ。まだ疑問点がありますよ。この「くらま」に積んでおるCIWSはいつ予算化されたか。続けて質問します。「くらま」にCIWSを積むことになったのはいつか。それもあわせて答弁をお願いします。
  114. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 先ほどの御質問でございますが、タングステンの弾を使うことを考慮しているというふうに言い直さしていただきます。  それから、いまの御質問でございますが、CIWSを積むことになりましたのは、五十三年の七月アメリカ海軍からCIWSのレリーズの回答を得ましたので、そのときに積むことにしたということでございます。
  115. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ファランクスはアメリカでいつ完成されましたか。
  116. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 昭和五十二年度でございます。
  117. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それですぐ五十三年に積むことにしたのですか。  ちょっと時間をいただきたい。防衛庁長官、CIWSというのはどういうやつか知っていますか。見たことありますか。
  118. 大村襄治

    大村国務大臣 聞いたことはありますが、見たことはございません。
  119. 楢崎弥之助

    楢崎委員 見せておかないとわからぬと思いますからちょっと見せますが、ここに「くらま」の二枚のはがきがある。五十四年のやつには、性能の中にこの重大な兵器が書いてない。そして完工のとき五十六年三月二十七日、この中にはちゃんと載っておる。だから「くらま」に進水のときには積む予定になっていなかった。これを見せますよ。(楢崎委員、写真を示す)  それで、私が調べたところでは、CIWSそのものは予算化されていない。予算の先取りの可能性がある。いま言ったとおりです。あのはがきにりっぱに示されておる。だから一つは、このCIWSの装備は非核三原則あるいは核防条約あるいは原子力基本法に抵触する可能性がある。もう一つは、予算の先取りの可能性がある。それに明確に答えるまでは、私はこれは留保しなくちゃいかぬ。重要な国の基本政策にかかわる問題です。今度鈴木総理が首脳会談をやられるときも非核三原則というのを言われるんでしょう。私は納得できませんね、このCIWSの装備というのは。
  120. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 予算化の問題でございますが、予算化につきましては、確かに五十一年度のDDHの当初予算にCIWSが入っておらなかったのは事実でございますが、しかし、その当時からDDHの対空兵器といたしまして、五インチ砲と並びましてCIWSの搭載を考えておりました。しかし、たまたま米海軍のレリーズが得られなかったということで、将来の装備の前提にCIWSが搭載できる余積を五十一年度DDHに考慮いたしまして、その余積を考慮した設計をいたしまして建造に着手したものでございます。そこで先ほど申しましたとおり、五十三年七月に米海軍からのレリーズが可能であるという回答を得ましたので、五十一年度のDDHの武器システムの見直しを行いまして、当初予算の積算に組み込まれておりましたところの余積の分にCIWSを積み込んだ、こういうことでございます。
  121. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう流用はできますか、あなた。だめですよ。そんなどんぶり勘定で、たまたまCIWSが出てきたから、予算を総額的に決めてもらっているから、その中でやりくりするなんということはできませんよ。しかも、こういう重要な非核三原則に触れるような兵器を国防会議にかけましたか。私はこれは納得できませんね。
  122. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 流用の点でございますが、これは五十三年七月にレリーズの回答を得ました後で運用要求の変更を行いまして、同時に、実施計画の変更も行いまして、大蔵省の承認を得てやったものでございます。
  123. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのくらいのことでこの予算が使われると思いますか。だめですよ。この「くらま」ができたときに、その専門誌が写真を撮りに行ったら、このCIWSのところだけは撮らないでくれ、まだ予算が通っていないから、そう言われているのですよ。私は納得できませんよ、いまのような答弁では。だから、いまの非核三原則との関係、それからいまの予算の先取りの可能性、これを解明するまでは私は次に進めませんね。重要な問題ですよ。
  124. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 先生の御質問は、CIWSを積めば当然に劣化ウランを使うという前提でお話しのようでございますが、私どもの方には劣化ウランを使うという計画はないという事実がございます。  それから、先ほど御質問のありましたアメリカの戦車砲の問題でございますが、現に積んでおりますXM1、最近はXがとれてM1と言っておりますエイブラムスでございますが、これは百五ミリの砲を積んでおりまして、これには確かに先生おっしゃるとおり、劣化ウランの弾を積むということになっております。  それから、今後積むことを予定しておりますところの百二十ミリの砲でございますが、これについて劣化ウランの弾を使うかどうか、これについてはまだ情報を入手しておりません。
  125. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、調べて報告しなさいと言うのですよ。新鋭戦車M1は百二十ミリ砲を使うことになっているんだ。勉強不足ですよ。そんな答弁では納得できませんよ。しかも、朝日の記事にあるとおり、日本の場合のXM、次の新戦車にこのアメリカのM1の百二十ミリ砲を積むというのでしょう。そして弾薬の共通化を図るというのでしょう。  もう一つ、ファランクスですけれども、さっきから言っているとおり、タングステンの弾は高過ぎてだめということになっているんだ。そうすると、ファランクスは普通の弾頭では役に立たぬのです。もしウラン弾を使わないとすれば、これは逆にむだな装備だ。納得できませんね。
  126. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 CIWSの弾は貫徹力が強いということが最大のメリットでございます。貫徹力というのは、運動エネルギーとそれから弾自体のかたさが関係するわけでございますが、劣化ウランの場合には比重が約一九、要するに一立方センチメートル十九グラムでございますし、また一方、タングステンの場合にも比重は一九でございますので、比重の点については全く同じということでございます。  それから……
  127. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっと待ってください。いいですか、タングステンは百ポンド十六ドルもするんだ。劣化ウランは二ドルで済む。タングステンを使うといったら、とても高価で問題にならないからあきらめているのですよ。あなた何を言っているのですか。この場だけは逃れようと思ってそんなことを言ったらだめですよ。こっちはもうとことんまで調べているのですよ。
  128. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 タングステンの弾につきましては、それを使用するという方向でいま技術研究本部で研究中のものでございます。
  129. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が調べたところでは迷うのですよ。あきらめているのですよ。そんないいかげんな答弁をしてもらっちゃ困りますね。だめですよ。そういう答弁は納得できませんよ。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕 これは大変な金額になるんだ。だから通常弾を使えば、これはファランクスそのものが役に立たない。どうせこれはウラン弾を使うんだ。これはもうわかり切った話ですよ。だから私は、ファランクスを装備したのは納得できない。
  130. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 先生御指摘のとおり値段は高くなります。劣化ウランの場合に比べますと二、三倍にはなるかというふうに考えておりますが、私どもとしてはタングステンの弾を使うということで検討中でございます。
  131. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この問題は私納得できませんから保留をしておきます。  それで、時間も来ましたので、保留の分はいずれ機会を与えていただくとして、外務省がせっかく見えているから最後に一問だけ聞いておきますが、マリアナ諸島、グアム島は、安保条約第六条の極東の範囲に入りますか。
  132. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 グアム島は極東の範囲には含めておりません。
  133. 楢崎弥之助

    楢崎委員 小笠原が返還になったらグアム島は周辺じゃないのですか。
  134. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  これは昭和四十三年当時にも問題となったところでございまして、これにつきまして、昭和四十三年四月十九日でございますが、当時の佐藤内閣総理大臣もお答えしております。それを読み上げてみますと、  小笠原諸島の返還に伴いまして、これらの諸島が、安保条約第五条の条約地域になることは当然であります。ただいま申したとおりであります。小笠原が安保条約の第五条地域に入ったからといって、第六条の極東の範囲が広がる性質のものではありません。ただし、地理学上、極東の範囲が正確に固定されているわけではありませんし、安保条約で極東といっているのは、そこにおける国際の平和及び安全の維持について、日米両国が共通の関心を持っている地域であり、元来、明確な線で区画されるような性質のものではありません。したがいまして、マリアナ群島であれその他の太平洋における島々であれ、その一つ一つについて、安保条約でいったところの極東に入るか入らないかということを答えることは、本来適当とは私は考えておりませんが、しいて申し上げるならば、グアム島を含むマリアナ群島は、安保条約にいう極東の一部とは考えておりません。 というふうに御答弁申し上げているところでございます。
  135. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がなぜこれをお伺いするかというと、アメリカの方かち日本の防衛分担についてグアム以西、フィリピン以北の海域という要望があって、伊東外務大臣はそれをできませんと言われたそうですが、国会のやりとりでそれは明らかになった。これは自衛隊の現在の能力上それができないというのか、憲法上できないというのか、あるいは日米安保条約上それは防衛分担の海域ではないというのか、この三つのうちのどういうことなんですか。
  136. 江藤隆美

    江藤委員長 答弁はだれに求めますか。
  137. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だれでもいいです。
  138. 江藤隆美

    江藤委員長 だれでもいいそうですが……。塩田防衛局長。
  139. 塩田章

    ○塩田政府委員 三つの点、どれかというお尋ねでございますが、私は、現在海上自衛隊の能力の整備目標といたしまして、いま御指摘のようなところまで考えておりません。そういう意味で、できないと思います。
  140. 楢崎弥之助

    楢崎委員 防衛庁は能力上できないと答弁をしたが、憲法上と安保条約上の観点はどうですか。
  141. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 安保条約との関連におきましては、先ほどお答え申したとおりでございまして、別に全く条約とは関係がないのでその地域を日本が守らなければならないとかいうような義務も生じているわけではないと思うわけでございます。
  142. 楢崎弥之助

    楢崎委員 安保条約上も関係ない、だから義務がないから防衛海域にしなくていい。憲法上はどうですか。
  143. 味村治

    ○味村政府委員 わが国に対する急迫不正の武力攻撃がありました場合に、わが国の自衛隊が活動いたしますことができる憲法上の範囲は、わが国を防衛するために必要最小限度の範囲であればどこででも行動ができるということでございまして、わが国の領海、領空のみならず公海、公空にも及ぶということを従来から御答弁申し上げているところでございます。
  144. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、そんなことは知っていますよ、私も二十一年間おるから。具体的には憲法上はケース・バイ・ケースと答弁しているが、そんなことはいままでの答弁とは違うんだ。いままでの答弁は、ケースによっては公海上に出ることもある。これは例外なんだ。日本の領土、領空、領海に限られておる。それをあたかも一般論として公海、公空も含むなどというようになったのはこのごろですよ。前の答弁と違う。  では聞きますが、ケース・バイ・ケースで相手の領土もたたくことがある。座して死を待つ場合、憲法上も法理上も。ではそのときに、その相手の基地をたたくような武器を持つことは憲法上どうですか。
  145. 味村治

    ○味村政府委員 公海、公空にも防衛活動の範囲が及ぶのだということは、従前から御答弁申し上げておるところでございまして、これは別に例外的というわけではございません。御承知の昭和三十一年二月二十九日の政府統一見解によりまして、誘導弾等による攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれるということを申しておりまして、これは他国の領土、領海において防衛活動を行うということが例外的であるということの一つの例でございます。  なお、政府といたしましては、わが国が憲法上許されております自衛力の範囲は、自衛のために必要な最小限度の範囲に限られるというふうに考えているところでございまして、御承知のように、大陸誘導弾等のように他国に対しまして壊滅的な打撃を与えるような武器は、これは自衛の範囲を超えるものとして保有することができないというように考えております。
  146. 楢崎弥之助

    楢崎委員 五十一年の国防白書では、他国に脅威を与えるような攻撃的な武器は憲法上持たないということになっている、わが国が持てない武器の概念として。どうして壊滅的打撃を与える兵器に拡大されたのですか。
  147. 味村治

    ○味村政府委員 基本といたしましては、わが国の自衛のため必要最小限度の自衛力を保持するということができるわけでございまして、それを超えるものは持てないというのが基本でございます。そして持てないものの例といたしまして、ただいま私が申し上げましたようなものを申し上げたわけでございまして、ほかにも考えられるかと思いますが、特に表現を変えたということはございませんで、一つの例として申し上げた次第でございます。
  148. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなことは納得できませんよ。攻撃的な兵器から壊滅的な打撃を与える兵器というのはずいぶん違いますよ。冗談じゃないです。そういう簡単に表現を変えたぐらいの問題じゃない。それならあなた、責任とりなさい。あなたはそんな簡単な問題と考えているのですか。国会を何と思っているんだ。
  149. 味村治

    ○味村政府委員 基本的な考え方はただいま申し上げましたとおりで、他国に対して攻撃的な兵器、自衛のためでない兵器は持てないということは当然でございます。その非常に顕著な事例として、ただいま申し上げたICBMのようなことを申し上げた次第でございます。
  150. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは私に対する答弁を変えますか。壊滅的打撃を与える兵器は持てないと私の答弁書ではなっているが、攻撃を主たる任務にする攻撃的な兵器は持てない、ここでそういうふうに変えますか。
  151. 味村治

    ○味村政府委員 ただいま先生から質問主意書に対します答弁書を拝見しておるところでございますが、壊滅的打撃ということにつきまして、その答弁書に記載されているところがちょっと見当たらないのでございまして、基本的には先ほど申し上げましたとおり(楢崎委員「ちょっと待ってください、見当たらないなんという認識で答弁してもらっては困りますよ」と呼ぶ)先生の昭和五十五年九月二十九日付の質問主意書に対する答弁書と……(楢崎委員「では私に対する答弁書の第一項のあれを読んでください」と呼ぶ)失礼いたしました。答弁書の「三について」の五、これに記載がございます。「政府は、従来から、自衛のための必要最小限度を超えない実力を保持することは、憲法第九条第二項によって禁じられていないと解しているが、性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器については、これを保持することが許されないと考えている。」このように御答弁申し上げております。この基本といたしましては、先ほど申し上げましたように、わが国が憲法上保持することができます自衛力は、自衛のための必要最小限度を超えないものであるということでございます。これは言ってみますれば、全体的な問題、全体的な自衛力が自衛のため必要最小限度を超えるか超えないかという問題もございますと同時に、個々の兵器についてもそれがあり得るわけでございます。  個々の兵器につきましては、ある兵器は防御的機能も持ちますし攻撃的機能も持っております。そういったように個々の兵器につきまして、これが憲法上可能かどうかということを判断することは非常に困難な場合がございますが、この答弁雷に例に挙げておりましたような「専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」につきまして、答弁書においてこれは保持できないことは憲法上明らかでございますので、これを例に挙げた次第でございます。
  152. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が聞いておるのは、国防白書では攻撃的兵器になっているのです。他国に脅威を与える攻撃的兵器は憲法上持たない。なぜ今度は「性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」と変わったのですか。あなたは、文章の問題だけだとおっしゃるのだったら国防白書のとおりに変えますかと聞いているのです、もとどおりに。それがいままでの国会でやってきたわれわれの質問に対する答弁の積み重ねなんですよ。それを今度突如として「潰滅的破壊」という言葉が出てきたから私は言っている。こうなりますと非常に限られますよ。
  153. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ただいま御指摘の「潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」云々という用語につきましては、昭和五十二年の防衛白書から一貫して使用しております。
  154. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、その壊滅的破壊を目的とするというものはずっと変えないわけですね。もう限定するわけですか。
  155. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私ども防衛白書においても使っておりますし、それから昨年九月の政府答弁書でも使っております壊滅的脅威云々の用語を変える気持ちは持っておりません。
  156. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が指摘したいのは、そうやってだんだん拡張していくんですね。壊滅的破壊のために用いる。非常にこれは限定的。では壊滅的破壊というのはどの程度なんですか。たとえば核兵器の中でそういうことを分けられますか。分けるつもりでしょうね。一体核兵器の中でも壊滅的破壊を目的とするやっとそうでないやっとある、そういう区分けを考えているのですか。
  157. 塩田章

    ○塩田政府委員 壊滅的破壊の兵器の例としまして、従前ICBMとか戦略爆撃機等を最も典型的な例として挙げてまいっております。その考え方は変わりませんが、具体的に個々にそれ以外どういうものがあるかということにつきまして、個々の兵器につきまして、私ども持っていない、あるいは持とうと思っていないものについて、そういうことを検討したことがございませんので、具体的にどの兵器がどうだ、たとえばいま御指摘の核兵器につきましても二つに分けて、壊滅的兵器に当たる核兵器とそうでない核兵器と分けておるのかというようなお尋ねでありますが、核兵器等につきましては、私ども全然非核三原則によりまして持つ意思もございませんので、どういうものが破壊的、壊滅的な核兵器であり、そうでないものがどういうものかということについて検討したことがございません。ございませんが、要するに、考え方としては、核兵器といえどもそれはあり得るということを答弁したことはございます。しかし、実際にどういう核兵器がそれでは壊滅的であり、どういう核兵器が防御的であるかということについての検討をいたしたことはございません。
  158. 楢崎弥之助

    楢崎委員 理事会もあることでございますから、これで一応終わりますが、保留しておる問題、それから答弁できなかった問題で後で調べて答えるという問題、それから資料提出の問題、それは保留をいたしまして、一応質問を終わらせていただきます。
  159. 江藤隆美

    江藤委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十六分開議
  160. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢山有作君。
  161. 矢山有作

    矢山委員 まず最初に、きのう原潜の事故に関するアメリカの中間報告が出ていますので、先ほど楢崎委員の方から質疑もありましたが、私もまたこの問題で少しお伺いしておきたいと思います。  私ども、あの中間報告を見ましてから、この一カ月近くかけて調査をしたにしてはきわめてずさんだと思っておりますし、全体の印象としては、楢崎委員が触れたような印象を持っておるわけで、とてもあれでは国会あるいは国民を納得させることはできないだろうと思うわけです。まさに最初の出だしでいいかげんな報告をやった、それのつじつまを合わせるためにさらにいいかげんな報告をやっておるという感じを私どもは持っておるわけでありますが、この中間報告をごらんになってどのようにお考えになっておいでになるか、まず外務省の方からお伺いしたいと思います。
  162. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  この中間報告がニューヨークに滞在中の伊東外務大臣に手渡されました際、外務大臣は、従来よりの本件に関する報告については首脳会談以前にできるだけのことをするという米側の約束が果たされたことを多とする、評価する、そのように言われております。それが現在私どもが大臣の公式なお言葉として承っておるところでございます。
  163. 矢山有作

    矢山委員 大臣は、首脳会談前にできるだけこの報告ができるようにしよう、それができたということでそういうふうに言われたのだろうと思いますが、あなたはその中身を読んでどういうふうな印象を持っておるか、これを聞いておるわけです。何も伊東外相の考え方を聞いているのじゃない、それは私も新聞で読んでいるから、大体伊東外相がどんなことを考えているのかということはわかっています。
  164. 松田慶文

    ○松田説明員 外務省事務当局といたしましては、大臣が御訪米中で東京においでにならない現在、昨日本報告を受領以来、事務的な検討を進めておりますし、また政府部内におきましても、関係省庁といろいろ相談することもございますので、外務省として、あるいは政府としてこれをどう認識するかの点につきましては、大臣のお留守の間、私どもの見解は控えさせていただきたいと思います。
  165. 矢山有作

    矢山委員 防衛庁長官も読まれているでしょうね。あなたはどういうふうに受けとめておられますか。
  166. 大村襄治

    大村国務大臣 私も読ませていただきました。感想を申し上げますと、これまで触れておらなかった米潜水艦の行動についてもかなり記されておりまして、そういった点につきましては、努力の跡が見受けられるのではないかと考えております。  なお、これはあくまで中間的報告でありまして、今後の調査の結果、追加、変更もあるべしということも記されておるようでございますので、そういった点を含めて今後も検討させていただきたいと考えておるわけでございます。
  167. 矢山有作

    矢山委員 日本側の調査は海上保安本部の方でやっておるわけですね。そうすると、いまの調査の状況というのはどういうようになっていますか。
  168. 野呂隆

    ○野呂説明員 海上保安庁といたしましては、日昇丸乗組員等関係者から事情を聴取いたして、その取りまとめをやっております。具体的な内容につきましては、当委員会初め関係委員会で御報告申し上げておるとおりでございますが、その取りまとめた結果につきましては、しかるべき時期に御報告いたしたい、かように存じております。
  169. 矢山有作

    矢山委員 当委員会で報告をしておるとおりといっても、当委員会で正式に何も報告を受けていませんよ、私も当委員会におりますが、われわれの方から仲間がたまに質問をして、それに断片的に答えておるだけで。だから、現在調査がどの程度いっておるのか、できておるなら、しかるべき段階というのじゃなしに、いつそれが発表されるのか、少し具体的に言ってくれませんか。
  170. 野呂隆

    ○野呂説明員 乗組員等関係者からの事情の聴取は数回にわたって行われております。その結果もいままでの分については取りまとめをやっておるところでございます。
  171. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、いままでの事情聴取等については取りまとめをやっておるのなら、アメリカですら中間報告をやったのだから、あなたの方も中間報告をやったらどうですか。
  172. 野呂隆

    ○野呂説明員 乗組員等の事情聴取結果の内容につきましては、取りまとめて御報告させていただくつもりでおります。
  173. 矢山有作

    矢山委員 いつ報告するの。ここで言ってくれるんじゃないの。
  174. 野呂隆

    ○野呂説明員 関係機関とも協議の上、できるだけ早い機会にやりたいと思っております。
  175. 矢山有作

    矢山委員 それではお伺いしますが、日本側のあなたの方でやった調査と、今度のアメリカの中間報告を見て、どういう点に問題点があるかということは、調査の実情を踏まえてみれば大体わかるはずですから、それを言ってもらえますか。
  176. 野呂隆

    ○野呂説明員 たとえば衝突位置の問題、それから衝突の直接の原因と見られますアメリカ原子力潜水艦の動き、衝突後におきますアメリカ原子力潜水艦から見ました日昇丸の確認の状況あるいはその後米軍機によります捜索の状況等、不明な点あるいは相違点がございますので、私どもといたしましては、最終報告を待ちたい、かように思っております。
  177. 矢山有作

    矢山委員 時間的にいまその問題をあなたの方から一々言ってもらうわけにもまいりませんので、私の方から聞きたい点を二、三聞いてみたいと思います。  アメリカ側の報告によると、「天候は雲が低くたれこめ雨で視界は良好から極めて不良の間を変化していた。」こういうふうに言っていますね、衝突の前後の状況を。あなたの方ではどういうふうに掌握しているのですか。
  178. 野呂隆

    ○野呂説明員 救助当時、日昇丸の乗組員から聴取いたしましたところでは、天候は雨または霧、南東の風約五メートル、波の高さ約一メートル、視程約二キロメートルであった、こういうふうになっております。  なお、その後の事情聴取で、当直の三等航海士は、天候曇り、南東の風八メートル、視程二ないし三キロ、うねり南東と述べておりまして、他の乗組員もおおむね天候は曇りまたは雨、南東の風五ないし十メートル、波の高さ約一メートル、視程約二キロメートルと述べております。
  179. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、その点ではアメリカの中間報告とはかなりな相違がありますね。  そこで、アメリカの方の報告は、「天候は雲が低くたれこめ雨で視界は良好から極めて不良の間を変化していた。」こういう前提に立って、衝突六分前、そのときの状況は、「潜水艦は潜望鏡を上げた。天候のため視界状況は悪く、高いうねりのため潜望鏡を通した視野にはシマ筋が流れぼんやりとしていた。潜望鏡を二回にわたり三百六十度回転させたが、潜水艦は日昇丸を見なかった。」これは衝突六分前の状況ですね。さらに、衝突の直前の状況については、「幾分浅い深度に浮上した際、当直士官は潜望鏡を上げ、直ちにP3Cを見た。」こう言っているわけです。  それから、衝突直後の状況については、「艦長は、浮上中及び潜航中に、潜望鏡を通じ日昇丸を視認した。約千二百五十ヤードの距離において、視界の悪化のため日昇丸が視界から消える前の三-五分の間、艦長は、同船が遭難しているとのいかなる兆候をも認めなかった。艦長は、一人の船員が艦橋右げんに静止したまま立ち、潜水艦の方を見ているのも視認した。」と言っているわけです。  そうすると、この問わずか十分ほどです。十分ほどの間に、潜望鏡はP3Cを浮上して直ちにとらえる、あるいは一人の船員がじっと立っておるのを千二百五十ヤードの距離で視認することができた、ところが、そういう中で日昇丸全体が見えなかった、こう言っているわけですね。これは大きな矛盾を感じませんか。この十分の間に天候が激変をして、上がったとたんにP3Cが見えたほど見通しがよかった、千二百五十ヤードの距離から艦橋に船員がじっと立っているのが見えるほどよく見えた、ところが、それなのに同じときに日昇丸という大きな船が全然見えなかった、こういうことを言っているわけです、わずか十分ほどの間に。おかしいと思いませんか。
  180. 野呂隆

    ○野呂説明員 まさに先生御指摘のとおり、そういう点が乗組員から聞きました事情聴取とは非常に異なっておる点でございます。
  181. 矢山有作

    矢山委員 全くおかしいわね。こういう報告をのこのこよこすというのは、よっぽど相手はどうかしていますよ。まあ日本をなめ切っておるのか、あるいはこういうふうな報告をしておけば、それでまあまあ何とか話はつくだろうと思っているのかわかりませんが、これはきわめて不可解な話です。  では、その次の点を聞きますが、ソナーは日昇丸の情報を得た、そして司令室に伝えられたのに、当直士官の耳に入らないで、確認もとれなかったと言っているわけですね。これは私はまさにおかしな話だと思うのですよ。ソナーが日昇丸のおることをとらえておるわけですね。そして司令室に伝えられたのに、当直の士官の耳に入らないで、確認もされなかった、それでドスンとぶつかった。これは私は専門家の防衛庁の方に聞きたいのですが、一体どういうことなんでしょうね。どう理解したらいいのでしょう。
  182. 塩田章

    ○塩田政府委員 どういう理由でソナーの報告が潜望鏡を担当しておる士官の方に伝わらなかったのかということにつきましては、私どもも目下のところよくわかりません。海幕の専門家にも聞いてみたのですけれども、その辺の事情はよくわかりません。
  183. 矢山有作

    矢山委員 これも奇々怪々な話ですね。これがそのままの事実としたら、アメリカ海軍なんというのは、まさにこれはどういうふうに言うていいのですかね。規律が緩んでいる。弛緩も弛緩、はなはだしい。これで防衛だ何だと言ったって話にもならぬと私は思いますね。  そこで、当面士官は潜望鏡を上げ、直ちにP3Cを見たのですね。ところが日昇丸が見えなかったというのです。これも防衛庁の方、よく御存じでしょう。そんなことがあるのかないのか、不思議だと思われるのか、それはP3Cは直ちに見えても、大きな船は見えないこともあるのだとお思いになるのか、どうなんです。
  184. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体の事情がわかりませんので、何とも申し上げようがないのですけれども、ちょっと考えられないような感じはいたします。
  185. 矢山有作

    矢山委員 考えられませんね。私も考えられない。まして防衛庁におられる専門家の方たちは、考えられぬも考えられぬ、そんなことはあり得るわけはないとお思いだと思うのです。  そこでもう一つ、悪天候とはいいながら、艦長は潜望鏡を通じ日昇丸を千二百五十ヤードの距離において視認したのですね。ところが、視認したのに、視界の悪化のため日昇丸が視界から消える前の三ないし五分の間、艦長は同船が遭難しているとのいかなる徴候も認めなかった、ところが艦長は、一人の船員が艦橋にたたずんで静止したままじっと潜水艦の方を見ているのをちゃんと視認した、こういうのです。それだけ細かいことがちゃんと艦長の目で確認できておるのに、日昇丸が遭難をしておるんだということがわからぬのでしょうか。しかも遭難者の証言によれば、そのときにNC旗を掲げておったというのでしょう。これもまさに奇々怪々な話だというふうに私は思いますが、どうですか。
  186. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもも、いまの時点では米側の報告を読んで、それ以上のことは何とも申し上げようがない段階でございます。なぜか、なぜそういうことなのか、何ともいま申し上げようがございません。
  187. 矢山有作

    矢山委員 何とも申し上げようがないのでなしに、あなたも防衛局長ですから大体御存じでしょうが、常識的に考えてそんなことがあり得ると思うのですか。こういうことはいいかげんなことを言わないで、やはりはっきり物を言うべきですよ。
  188. 塩田章

    ○塩田政府委員 いいかげんなことを言わないために、いま何とも申し上げられないというのが、一番いまの時点で私の気持ちを正確に表現していると思います。
  189. 矢山有作

    矢山委員 大体日本のお役人という人は、なるべく責任が後に残らぬような答弁をしようしようとするのです。率直に言った方がいいですよ。こんなばかげた話が常識的にあるはずがないのですよ。これはそういう点をはっきりせぬと後々の処理に響くから私は言っているのですよ。何も後々の処理にこれが全然影響がないなら、ああそうですか、この報告をもらった、首脳会談前にいただいてありがとうございました、こう言っておけば済む話です。しかし、そんなものじゃないでしょう。だから、私はそういった問題点を押さえて、あなたたちがどう考えておるのかと言っているのです。それを明確にしておかないと、後の問題になりますよ。  たとえばP3Cが衝突直後日昇丸の上に低空でおった、これも遭難者が証言しておるはずですが、どうですか、海上保安庁。
  190. 野呂隆

    ○野呂説明員 日昇丸の乗組員から事情聴取したところによりますと、衝突直後から沈没するまでの間、上空を低空で二、三回旋回しておる、そういうことを言っております。それから沈没後の話でございますが、沈没後から昼ごろまでの間に、衝突直後飛来したと同型機が飛来して上空を旋回しておった、こういうように申しております。
  191. 矢山有作

    矢山委員 私もそのとおりといままでの報道等・から承知をしておるわけですが、このアメリカ側から出た中間報告を続んでみましても、やはり衝突時にP3Cが低空で飛んでおったということは十分理解できるのです。それからまた証言もそのとおりになっておる。  たとえば、この中間報告には、「天候は雲が低くたれこめ雨で視界は良好から極めて不良の間を変化していた。P3Cは、通常はより高い高度で行動するが、雲の覆いによって、訓練のだめ低高度(五百から一千フィートの間)で飛行することを余儀なくされていた。」こう書いているわけです。そうすると、かなりな低空で衝突時に日昇丸の上におったということがうかがえるし、それから衝突の後はあなたの言ったとおりですよ。そういうふうにやっておって、なおかつ遭難の現状がつかめなかった、遭難したものじゃないということで考えておったというのは、やはりきわめて不可解な話だというふうにお思いになりますね。海上保安庁、どうですか。
  192. 野呂隆

    ○野呂説明員 日昇丸乗組員から事情聴取した結果とは非常に異なっておりますし、またその点が不明な点でございます。
  193. 矢山有作

    矢山委員 そうでしょう、それは。そのとおりに言わねばいかぬ。  それから、この中間報告によりますと、もう一つの問題は、戦略核抑止部隊としての任務には、このワシントンはこの当時なかったと言っているわけですね。戦略抑止部隊としての任務にはなかった。それが衝突したら、その実態を、どういう状況にあるかを十分確認しようとしないで、約八マイル北方の待機水域まで移動したと言っている。そう説明しているわけですね。私はこういうことがあり得るのだろうかと思うのです。  戦略核抑止部隊としての任務についておったというなら、これはやはり敵に所在を知られないというようなことでいち早く待機水域に待機をするということがあるかもしれない。しかしながら、戦略核抑止部隊としての任務についてなかったわけです。それが衝突事故を起こしておいて、十分な確認をしないままに約八マイル北方の待機水域にまで移動してしまった、こういうことは私ども納得いかぬと思うのです。これは防衛庁の方でしょうね、専門家だから。どう思いますか。     〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕
  194. 塩田章

    ○塩田政府委員 待機水域に行ったということが書いてあるわけでございますが、ホールディングエリアと書いてあるだけでございまして、それが何を意味するのか、いまのところ私どもつかんでおりません。
  195. 矢山有作

    矢山委員 こういうふうに一つ一つ中間報告の中身を検討してみると、まさに理屈に合わない記述なんですよ。楢崎君が言っていたとおり、この報告は予盾だらけなんですよ。まさに言うならこれはでたらめな報告です。こんなものを出してもらって、首脳会談前にいただいたからありがとうございましたということにはならぬのじゃないかと私は思うのですよ。  それからもう一つは、衝突後一時間二十七分で上部機関に対して報告したと言っていますね。そして在日米海軍当局は九日の正午ちょっと過ぎに衝突の報告を受け取っておるわけですね。ところが海上自衛隊の方から十日の午前に問い合わせをした、何か九時前ぐらいに問い合わせをしたのですか、そしたら在日米海軍当局の方からは該当がないという返事があった、こういうことなんですね。これは楢崎君も触れておったようですけれども、これは防衛庁長官、どう思いますか。――いや、長官の方がいいよ、こんなことは長官が言わなければだめだよ。
  196. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもは、この事件に関しまして、いわゆる事故原因を調査する直接の立場にあるわけではございませんが、いまおっしゃいました点は、私ども防衛庁としては大変関心を持っておる点でございます。  と申しますのは、九日の正午ごろ在日米海軍が知っておったということを響いてあるわけでございますから、とすれば、私どもは翌日の八時半過ぎに米海軍あてに通報したわけですから、その時点で当該水域に潜水艦が行動しておったという報告を受けていない、なお調査してみる、こういう返事が来たということに、どうしてだろうかという感じは否めないわけでございます。その点は今後さらに詳細な報告を待っていきたいというふうに考えております。
  197. 矢山有作

    矢山委員 これは、表では日米共同体制の緊密化だ何だと言っているけれども、利用するときだけ利用して、自分たちの不都合なときにはほっぽらかしにして知らせぬでもいいということなので、日米関係の緊密化どころの話ではない、私はこれに多分に不信感を持つわけです。平素から日米相互の緊密な体制だとか、日米共同体制をつくるのだとか、あるいは日米共同作戦計画の研究ももうできたのだと言っておる防衛庁としては、この問題については毅然たる態度をとってほしいと私は思いますが、防衛庁長官、どうですか。
  198. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま政府委員が御答弁申し上げましたとおり、九日の昼ごろ米側が衝突事故があったという報告を受けておるにかかわらず、翌日の朝、わが方が護衛艦で救助した乗組員の話に基づいて、まずわが方の潜水艦の行動を調査して、同方面海域にはわが方はないということで、引き続き米側に照会しましたところ、その日の昼ごろ、米潜水艦はその付近に該当するものがない、ただ、なお引き続き調査するという回答を受けたことは事実でございまして、その間の点につきまして、こういった中間報告を見ますとわかりかねる節があるわけでございます。  先生御指摘のような感じも持っておるわけでございますが、今後はさらにその点も調査してまいりたい。またそういうことの連絡がもっと緊密に行われるように努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  199. 矢山有作

    矢山委員 これはまさにこけにされた話ですね。  そこで、海上保安本部にお伺いしたいのですが、保安本部で調査された中で、救助に来た護衛艦が事前に遭難を知っておったという問題について恐らく遭難者の方からいろいろ発言があったと思うのですが、これはそうですか。
  200. 野呂隆

    ○野呂説明員 日昇丸乗組員のうち一名の者が救助された際に、同護衛艦の乗組員の方から、それらしいことがあったから注意していた、こういうふうに話されたという供述はございます。
  201. 矢山有作

    矢山委員 われわれとしては、そういう疑問も出てくるわけですよ。日米の緊密な体制だとかいろいろ言っている中で、在日米海軍当局が九日の正午ちょっと過ぎに衝突の報告を受けておった、そういう前提に立つなら、防衛庁の方には何らかの連絡があったのではなかろうか、だからそれに基づいて護衛艦がタイミングよく救難に出向いたのではなかろうか、ここらの問題が逆の方向で考えると疑問を持たれてくるわけですよ。それで海上保安本部が調べた乗組員の供述も、事前に知っておって救助に来たというふうな供述になっているわけですよ。  だから、事前に知っておって護衛艦が救助に来たのだということを護衛艦の乗り組みの人たちの発言から遭難者が感じ取っておる、そこへ持ってきて在日米海軍当局が九日の正午過ぎには遭難のことを知っておった、こうなってくると、防衛庁としては、痛くもない腹というと語弊があるかもしれませんが、まあ痛くもない腹を探られてもやむを得ないようなことになるわけです。それだけに防衛庁自身は、この中間報告の問題に対して、やはりきちっとした見解の表明をして処理すべきだ、こういうふうに私は思います。  そこで、私がいままで一つ一つ取り上げてきた問題をある程度まとめて言いますと、少なくとも日本側の調査と向こうの調査との間に大変な食い違いがあるわけです。そして向こうの報告書の記述自体にも、それぞれの矛盾というものが露呈しているわけです。そうするなら、日本側としてどういう態度をとるのかということがきわめて重要だと私は思うのです。このまま、約束どおり首脳会談前に報告をいただきました、ありがとうございました、それだけでいくのか、それとも、わが方で調べたところによるとこれこれの大きな食い違いがある、この点は問題ですよということを相手方にきちっと言っておくか、この点が今後の処理に非常に大きな影響を持ってくると私は思うのです。  もしこのまま黙っておって、首脳会談前に報告をしていただきました、誠意を見せていただいてありがとうございましたということで済ますなら、これからの事後調査も恐らくこの基本の筋にのっとった調査報告しか出てこないと私は思う。日本に対する報告はどんなに自家撞着の文書を書いて報告しておいても、どんなに問題点があるような報告書を渡しておいても、日本はありがとうございましたと言って受け取る、そういう姿勢であるなら、これからの調査でいろいろのことがわかったからといって何もそれを日本に知らせる必要はない、こうなってきます。これは人情の常です。  そこで私は、これだけ矛盾があり、これだけ問題があるのですから、第一には、いま言った日本側の調査と先方の中間報告との大きな食い違い、問題点、そしてこの中間報告の中の記述の矛盾点、これだけは、こういう点はおかしい、理解ができないということを明確に通告をしておくべきだと思います。その点、外務省どうですか、これは事務的な処理の問題だよ。
  202. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  伊東外務大臣は、ニューヨークにおきましてマンスフィールド大使からこの報告を受け取られた際、日本側も海上保安庁等において調査を行っていることを言及されまして、いずれ帰国の上はそのような日本側の調査を米側に示して、今後誤りのないような結論、真実の発見に努めることが大事であるという趣旨のことを言われております。私どもは大臣のお帰りを待っている段階でございますけれども、来週お帰りの上は、御指示を仰いで所要の措置をとりたいと考えております。
  203. 矢山有作

    矢山委員 これはきわめて事務的な処理なんです。したがって、やられる時期は、外務大臣がお帰りになってから相談してというのはわかります、わかりますが、少なくともこれは全く事務的な問題ですよ。日本側の調査と先方の報告とが食い違っているのは事実なんだから、それをだれも何ともすることはできない。それから文章上の矛盾が各所にあることも事実なんだから、その点について明確に意思表示をするということ、そのつもりがありますか、これは再度聞いておきます。そのつもりは全然ないと考えておるのか、それは今後の処理に対して重要であるから、そうするような方向で外務大臣と相談をしたいというのか、どちらですか。
  204. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいま私、御答弁申し上げましたとおり、大臣は、日本側も調査をしているのでこれを米側と突き合わせる必要があるということを米側にも言っておるわけでございます。したがって、当然のことながら、お帰りの上はそのラインで私ども御指示をいただくものと承知をしております。
  205. 矢山有作

    矢山委員 そういうふうに理解をしておきます。ぜひ腰砕けにならぬように。  そこで私は、外務省にどうしても一つ言っておきたいことがある。それは何かというと、十三日に衆議院の安保特別委員会があった。そこで自民党の石原委員の方から、当て逃げをした原子力潜水艦はSSBNなのかSSNなのかという質問があったわけです。これに対して防衛長官は、定かでないと言われた。そうですね。
  206. 大村襄治

    大村国務大臣 そのとおりでございます。
  207. 矢山有作

    矢山委員 あなたは正直な人だから、定かでないと言うぐらいだから、あなたは外務省から何も聞かされていなかったわけだな、私はそういうふうに理解しておきます。  そこで、外務省に聞きたいのですが、外務省はこの点についてはちゃんと知っておったのではないですか。すでに十日の午後九時過ぎの段階で、アメリカ側のマンスフィールド駐日大使のステートメントと、アメリカ海軍の説明と、それを補足するための応答要領、これを外務省は受け取っておるはずですね。その応答要領の中には明確にSSBNだと書いてあるはずです。ところが、それが当委員会でいま言うように議論になっているときに、外務省はその質疑に対して何も黙して語らぬ。それどころじゃない、石原委員の方から、外務省は米側に対して、SSBNだったのかSSNだったのか尋ねるのかどうかと聞いたら、それは公海上の事故だから、SSBNだったのかSSNだったのか尋ねるつもりはないと答えたわけです。  それは尋ねるつもりはないでしょう、十日の午後九時には自分はちゃんと知っているのだから。尋ねようたって、そんなことを尋ねたら、おまえさんの方へ応答要領でちゃんと知らしてあるじゃないか、こう言われてしまうですよ。だから外務省としては、石原さんがSSBNだったのかSSNだったのか尋ねるのか尋ねぬのかと言われたときに、いや、尋ねるつもりはないと言う以外にはない。外務省は何でこんな問題をそれほど隠さなければならぬのですか。外務省は少なくともアメリカの国務省の出先じゃないでしょう。
  208. 松田慶文

    ○松田説明員 御説明申し上げます。  四月十三日の当院安保特別委員会におきましてお尋ねのような論議がございました。そのとき、政府委員が、この潜水艦がどういう種類であるかという説明の過程で、攻撃型か弾道ミサイル型かはわかりませんということを申し上げたのは、実はその一週間後の四月二十日の同じ委員会で申し上げているのでありますけれども、答弁者は現に核弾頭を積んでいたかどうかというふうに質問をとりまして、それはわからないと答えましたが、潜水艦の形そのものがどうであるかということにつきましては、先生御指摘のとおり、形としてはSSBNであるということは当初からの通報に入っていたわけでございます。答弁者が、形よりも現に事故の際に核弾頭を積んでいたかどうかというふうに質問を理解したものでございますから、その点はわからないと答えた次第であります。  その誤解、思い違いの原因は、御案内かと思いますけれども、このジョージ・ワシントンは一番古いタイプのものでございまして、目下弾道ミサイル搭載から攻撃型への転換の過程にございますので、衝突の時点において積んでいたかどうかは現在自信がないということで答弁したものと理解しておりますので、その点御了解を賜りたいと存じます。
  209. 矢山有作

    矢山委員 いろいろと言い抜けをやっているけれども、そのときの議事録を読んでごらんなさい。核を積んでいたか積んでいないか、そんなことは石原君は聞いていないよ。SSBNだったのかSSNだったのか、こう聞いておるのです。外務省はそれに黙して語らぬ。知らぬ顔をしている。しかも質問は、SSBNかSSNであるかということをアメリカ側に対して尋ねるのか尋ねぬのか、こういう聞き方をしておるのですよ。核があったかないか、そんな聞き方はしていない。ときによったら聞かぬことまで裏を探って答えようとする、しまったと思えばまたそれを訂正する、そんなことをやられたら、委員会は何のためにやっているのかわからない。それは言い抜けですよ。SSBNであったことがわかっておりながら、その段階では外務省は黙して語らず、隠していたわけだ。そして発表したのは、十四日のアメリカ国防総省の方が改めてSSBNであることを確認した段階で、外務省はやっとそれを認めたのじゃないですか。日本の外務省なら日本の外務省らしく、もう少しきちっとした処理をしてもらわなければ困る。そんな向こうから言ってきておることまで、問題になっておるのに答弁をしない、隠すなんていうのはもってのほかですよ。  それともう一つ、まだ問題がある。これもすでに二十日の安保の委員会で問題になっておるようですが、応答要領の中で説明しなかった部分があるでしょう。前の段階では、海軍声明だけは説明しておるのだ。海軍声明でその部分関係するところは、潜水艦は直ちに救援活動のために浮上したが、視界不良で貨物船は視界から消えた、その以前には貨物船の人的、物的被害は確認できなかった、同時に行動していた航空機が一機おり、低空飛行で捜索したが、船、乗員とも発見できなかった、こう言っておる。  ところが応答要領の方では、その部分が「当該潜水艦は、衝突後直ちに、視界不良という条件の下で、当該海域の捜索を行い、当該船舶が遭難の様子もないまま航行し去るのを目撃した。」こうなっている。「更に、当該潜水艦は、米国の航空機に対し、捜索を行い、商船の無事を確認するよう指示した。当該航空機は、救助を求める船舶又は乗組員を発見しなかった。」こうなっているわけです。議論になった段階で、なぜこれを応答要領のまま明確に答えないのか、それが委員の方から突っ込まれて、それを認めるような姿勢をなぜとるのかということです。  というのは、私はそのときに外務省の方から答弁されたと聞いておりますが、その場所で要点を翻訳したのだ、こういうような答弁をしたとかせぬとかいうような話であります。しかし、そんな簡単なものではない。この記述は非常に重要な意味を持っているわけでしょう。応答要領のあの記述というのは、要するに、事故後、自分たちは手を尽くしたが遭難の現実はなかった、このようにはっきり言い切っておるわけです。つまりこれは完全に責任を回避する回答になっているわけです。だから、これはきわめて重要な意味を持つのですよ。恐らく外務省の頭のいい役人が、この応答要領がどれだけ重要な意味を持つか理解していないはずはない。それを真実をそのまま語ろうとしないで、ぼかしたような説明を当委員会でやる。安保の委員会でもやったのですか。外務省は一体どういう感覚なのか。
  210. 松田慶文

    ○松田説明員 お言葉ではございますが、私どもの理解では、米軍発表の本文と応答要領の当該記述に関しては、本質的には相違はないと考えております。表現の態様は違います。念のために申し上げさせていただきますと、発表本文では、「当該商船は霧と雨による視界不良のため視界から消え去った。当該潜水艦は、当該日本船が見えなくなる前に人的又は物的被害があったか否か確認することができなかった。」ここの記述は、船は見えなくなったが、見えている間、つまり見えなくなる前に遭難に遭ったという情勢は見受けられなかったという表現をいたしました。  他方、応答要領では、結局同じことを言っているのでありますが、「当該船舶が遭難の様子もないまま航行し去るのを目撃した。」と言っておりまして、前後を逆に言っておりますけれども、これは同じ内容のことを申し上げているものと私どもは理解しております。
  211. 矢山有作

    矢山委員 あなたはそういうような理解をしておる。視界不良で貨物船は視界から消えた。単に視界から消えたと言うなら、これは全然遭難しないで、安全にずっと向こうへ航行していった、こういうふうにもとれるし、遭難して沈んでしまったというふうにもとれるのです。もう一遍言い直しますが、単に視界から消えたと言うなら、沈んでしまって見えなかったという解釈も成り立つ。後で乗組員を捜したがわからなかった、こうなるわけです。ところが、「航行し去るのを目撃した。」となれば、これは何らの損害も受けずに達者で航行していった、こうなるのですよ。大変な相違なのです。  ただ単に消えたという場合には、沈没して消えてしまった場合もあるでしょう。そして捜したが乗組員が見つからなかったという場合もあるでしょう。もう一つ、損傷軽微で安全にずっと航行していったというふうにもとれる。あなたがいま読んだ外務省の発表は二つにとれるのです。あなたは英語は達者かもわからぬが、国語をちゃんと習ってもらわぬと困る。二つにとれる。ところが、応答要領はとりようがないのだ。損傷を受けておったとしても、軽微でそのまま航行し去ったというのだから、これの方が大変なんですよ。どうですか。
  212. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  いま先生が二つにとれるであろうとおっしゃいました本文の方の記述は、文章が二つのセンテンスから成ってございます。お読みなさいましたように、前段は「当該商船は霧と雨による視界不良のため視界から消え去った。」その次の文章は「当該潜水艦は、当該日本船が見えなくなる前に人的又は物的被害があったか否か確認することができなかった。」となっております。これを一文でお読みいただきますと、先ほど先生が応答要領はよくわかるとお話しなさいましたけれども、船は見えていて見えなくなったが、見えている間は何か事故があるような様子は見えなかった、それを言っている点におきましては、私どもは全く同じではなかろうかと考える次第でございます。
  213. 矢山有作

    矢山委員 これでやりとりしておると時間がかかるが、私はそうは思わぬ。この二つの文章を一緒にしてみても同じですよ。これは「消え去った。」沈んでしまったのだ、沈んでしまって乗組員も何もわからなかったという場合があるし、それから航行し去った、そうして物的、人的損害があったかわからなかった。それはそうだ。達者で航行していったら物的、人的損害はあらへんのだから、それはわからぬはずだ。これは文章を一緒にしようがすまいが、応答要領に出てくるのとあなたの方で発表したのとは、とりようで確実に違うのです。これが後の処理に大きな影響を持ってくるわけです。  そこで、私が最終的に言いたいのは、なぜこんなことを持ち出したかというと、外務省の姿勢に問題があるからです。常にアメリカの方に顔を向けておる。それでは困るのです。だから、私どもはそういうふうに外務省の姿勢に対して大きな不安感を抱くから、あえてしつこくわが方の調査と向こうの中間報告との相違点は明確に示すべきだ、また中間報告の中で矛盾点がある点は仮借なく指摘しておくことが必要だということを言ったのですよ。だから、このことだけは忘れないで腹に入れてこれからの処理をやっていただきたいと思います。ましていわんや、楢崎委員が言っておったように、政治決着なんかとんでもない話ですからね。この点はあたりまえの話でしょう。  それで、原潜の問題はこれくらいにして、次の問題に移っていきたいと思います。この間、有事立法の報告をなされたのですが、その問題に関して私は一つ、二つ聞いておきたいのです。  第一にお聞きしたいのは、七七年八月、有事立法の研究を総理だったかが正式に指示をして検討が始まったわけですが、その後竹岡官房長が、有事立法の検討項目というので八項目を参議院の内閣委員会で説明しておるわけですよ。その第一項目を見ると、狭い国土で戦うことになるので、自衛隊の行動に現在ある諸法令が支障にならないか、なるとしたらどのような適用除外や例外規定を設けるかというようなことで、その他七項目の検討をやるのだと言われたわけです。  ここで、自衛隊は明らかに国土戦を想定しておる。これは専守防衛ですから、国土戦ですね。国土戦を想定するなら、自衛隊がどう円滑に、有効に、効率的に軍事行動ができるかという研究を急いでやるよりも、国土戦なんですから、肝心かなめの日本の住民の生命や財産をどう守るのかということをやはり検討しなければいかぬのじゃないですか。私はちょっと本末転倒のような気がするのですが、防衛庁長官、どうですか。
  214. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  有事法制の研究は、有事の際の自衛隊の行動の円滑化を図るという観点から、法制上の問題点を整理するものでございまして、三年ほど前に、総理のお許しを得て当時の防衛庁長官が下部に研究を命じたものでございます。これが現行憲法の範囲内だということは、当時から大方針として明示されておったものでございます。  また、先生お尋ねのように、国民の権利や国民の生活が可能な限り尊重さるべきことは憲法上当然のことでございまして、この点につきましては、毎年の防衛白書におきましてもはっきり指摘しているところでございます。  そこで、当初、狭い国土で戦うという趣旨のことがうたわれておるのでございますが、これは先生も御指摘のように、専守防衛であります以上は、着上陸の阻止のために全力を挙げて戦うわけでございますが、万一の上陸の可能性も否定できないわけでございます。そういった場合に、あくまで粘り強く戦いまして、被害を局限し、これを撃退するということでございますが、どうしてもそうならない場合には、粘り強く抵抗いたしまして、安保条約の規定に基づく米軍の来援を待つ、そういったようないわば三段構えの考え方をとっているわけでございます。万一着上陸が阻止できなかった場合の有事のもとにおける法制が、現在の法律で果たして十分であるかどうか、そういった点を約三年間研究しました結果、防衛庁所管の法令につきまして、今回研究のまとまりました分を御報告申し上げたという次第でございます。  そこで、有事の場合の着上陸のあった場合の国民の生命、財産の保護の問題あるいは避難の問題、そういった問題はもちろん重視しなければならない問題でございますが、これは必ずしも防衛庁だけで処理できる問題ではございません。内閣全体で処理しなければいけない面が多いわけでございまして、そういった問題につきましては、今後なお引き続き検討さしていただきたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  215. 矢山有作

    矢山委員 いまあなたが説明されたことは、この問われわれは説明を聞いたのです。その説明を聞いた上に立って言っているわけですよ。着上陸があったその場合に、できる限り防衛戦をやるんだ、そのために自衛隊が動けるようにするんだ、その説明は聞いたのです。ところが、国土戦を想定して、それを考えておる以上は、自衛隊が動くことを一生懸命先に研究するよりも、自衛隊は何のために着上陸に対して抵抗していくのかと言えば国を守るのでしょう。国を守るというのは、具体的に言うたら国民の生命なり財産を守るのでしょう。だから、国民の生命、財産をどうして守るのかということをまず優先して考えておかなければ、防衛庁の所管でないからそれは後回しだというわけにはいかぬでしょうと言うのです、防衛庁も内閣の構成の一つの機構なんだから。だから、まず防衛庁ひとりでいけなければ、内閣としてその問題をさらに最優先して考えていくというのが筋じゃないですかということを私は聞いているのです。いままでの説明を聞いたんじゃないのです。
  216. 大村襄治

    大村国務大臣 その点もきわめて重要な問題でございますから、今後引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。
  217. 矢山有作

    矢山委員 それから、有事立法を憲法の範囲内、憲法の枠内ということを盛んにおっしゃるのですが、大体いまの日本の憲法というのは、御存じのように有事を想定した憲法じゃないので、したがって、有事を想定しての土地の使用だとか、家屋の撤去だとか、物資の収用だとか、あるいは従事命令だとか、物資の保管命令だとか、いろいろあるわね。そういう法律をつくれば、これはやはり憲法の保障しておる基本的な人権なり私権というものに抵触してくるのはわかり切った話なんですよ。それを憲法の枠内枠内と言っておられることが私たちは理解できない。どうして憲法の枠内枠内とおっしゃるのか。有事を想定しておらぬ憲法のもとにおいて、そういうような基本的な人権や私権を制限するようなものをつくれば、これは憲法の枠内という乙とにならぬのじゃないの。実質的に憲法を変えていくということになるんじゃないの、個々の立法によって。そうじゃないですか。
  218. 大村襄治

    大村国務大臣 日本国憲法は基本的人権の尊重を旨としておりますことは、申すまでもないところでございます。しかしながら、憲法は、一方におきまして、公共の福祉のためには、一定の制限のもとに国民の権利を制限することも認めているわけでございます。国の安全を守りますために必要な最小限において、また法律の定める厳重な手続に従いまして、私権の制限を必要最小限度行うことも、その意味におきましては許されるものと考えておるわけでございます。その場合の範囲、手続等について、立法上現行規定のもとにおいてなお不備な点があるかないか、それを検討したものを一部御報告したという次第でございます。
  219. 矢山有作

    矢山委員 これは憲法論になりますから、きょうは時間の関係があるし、やめておきますが、今度有事法制の研究ということで報告された。三年有余かかっているわけですよ。三年有余かかってたったこれだけの研究に終わったのだろうか、第二類、第三類と称せられておるその部分についても、あなた方はもう研究しておられるのじゃないかという気がするんですよ。  たとえば、かつて三矢計画というのがあった。これは三十八年でしたね。正式には、昭和三十八年度総合防衛図上研究と言っておった。これがたまたま国会で非常に問題になったわけです。しかし、その直後にすぐまた有事法制研究というものを始めているでしょう、四十年の八月に参事官会議で。有事法制研究をやるのだということで、これは開始したようにわれわれは承知しておりますが、これらと今回の有事法制の研究というのは全然無関係なんですか。そういうような研究過程を踏んできて、そうして総理の指示なり防衛庁長官の指示で正式に体裁を整えながら有事法制の研究をやってきたということなんだろう。であるとするなら、その第一分類だけの研究で終わっているはずはないと私どもは思うわけです。その点いかがでしょうか。
  220. 大村襄治

    大村国務大臣 今回御報告申し上げましたのが第一分類、すなわち防衛庁所管の法令にかかわるものでございます。三年もかかりまして、まことに長くかかりまして申しわけないのでございますが、先生御指摘のような国民の権利義務にかかわる重要な問題でございますので、慎重の上にも慎重に検討を重ねました結果、やっとその部分だけがまとまったわけでございます。引き続き第二分類、第三分類の検討に入らせていただきたいと思うのでございますが、他省庁と協議をしないとまとまらないのが第二分類でございますし、また管轄がわからないものにつきましては、内閣全体で取り組まなければいかぬ。そういう関係で作業に入るのが大変おくれているわけでございます。  御指摘の三矢研究等は、当時の防衛庁の内部で研究をしたものでございますが、今回の有事法制の研究は、それとは全く趣を異にいたしまして、当時の国会論議等のあれも踏んまえまして、総理大臣の許可も得まして全く新たに着手したものでございます。したがいまして、せっかくのお尋ねでございますが、今回御報告申し上げましたもののほかに、第二分類とか第三分類についてさらに進んでいるものがある、隠しているものがある、そういうものはないわけでございます。
  221. 矢山有作

    矢山委員 誤解してもらっちゃ困るのですが、私はこの第一分類の研究が期間が長くかかり過ぎたからけしからぬとかけしかるとか言っているのじゃないですよ。三年有余もかかってこれだけの研究だということではわれわれは信頼できませんよ。  いままで有事法制の研究というのは、たとえば三矢研究でも、あなた方自身がよく承知しておられるように、相当精密な研究をやったわけです。それが国会で問題になったから、それはそれで、そこでどうしたのか知りませんよ。どうしたのか知りませんが、区切りをつけて、今度は問題になった、半年ほどたって、四十年の八月にさらに参事官会議の決議で有事法制の研究をやるのだということでやってきておる。だから、そういう背景がありますから、私どもはこの第一分類だけ発表されたけれども、実質的には防衛庁としては、第二分類、第三分類含めて検討がなされておるのじゃなかろうか。それを一遍に発表すると、これは大変なショックですからね。大変な問題を含んでくるわけですから、そこでまずこの第一分類をこの辺で出してみたということじゃなかろうかという大きな疑惑を持っているから私は言ったんです。その質問に対して、それはおっしゃるとおりで、もう従来ずっと続けてやってきておりますから、第一分類だけ小出しにしたのですとはあなたはなかなかおっしゃらぬと私は思いますよ。おっしゃらぬけれども、実はそういうことなんじゃなかろうか、こういうことでお尋ねしたわけです。  そこで、次の点に移りますが、一つは、百三条の適用時期を防衛出動下令後とあったのを、出動待機命令のときに適用時期を繰り上げたわけですね。そうなると、防衛出動命令のときと違って、防衛出動待機命令というのは、防衛庁長官総理の承認を得てやるわけでしょう。そうすると、これはやはり適用時期というものが、防衛庁長官なりそれを補佐しておる実力を持っておる防衛庁幹部、特に制服幹部の動きでどんどん早められてくるというようなことになるんじゃなかろうか。それに対する歯どめというのは具体的に考えられておるのか、その点が問題だと思うのですが、どうなんですか。
  222. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 御承知のように、現在の中間報告では、自衛隊法百三条のうちの土地の使用について及び特別の部隊の編成、二十二条でございますが、あるいは七十条の予備自衛官の招集については、現在、防衛出動命令が発令されなければ適用されないことになっておりますけれども、これを防衛出動待機命令から適用できるようにしたいというのは、いま申し上げたような事柄というのは、防衛出動が下令されてからでは準備に時間がかかって間に合わないということが懸念されるからお願いしているわけでございまして、私ども自衛隊の有事における部隊の運用上、任務遂行上必要であるというふうな判断からお願いしているものでございます。  ただ、あくまでもこの問題を適用させるには、国会で御審議を経て改めて法律をつくっていただかなければならないということもございますし、そういう意味合いからいろいろ御論議があることは私ども当然であろうと思いますし、このことをもって防衛庁が独走しあるいはシビリアンコントロールを乱すというふうなことに相なるとは考えておりません。
  223. 矢山有作

    矢山委員 それはシビリアンコントロールを形骸化したり、それから適用時期が無限に拡大していくようなことは考えておらぬとおっしゃるが、それは考えられたら大変なんで、それは考えておられぬと思うのですよ。思うのだけれども、しかし、その歯どめというのは、実際具体的にどこにあるのかということなんですね。  待機命令というのは、「長官は、事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、」対処するわけでしょう。そうすると、これはその場合に総理大臣に承認を得ることにはなっていますね。防衛庁長官が承認を得てそれをやる。ところが、その判断が防衛庁長官に必ずしも的確にできるとは限りませんね。だんだん制服が力を持ってきますと、制服の判断が防衛庁長官の判断を動かす、こういうふうなことになってくることは、やはり火を見るより明らかであろう、かつての軍隊の様子を見ても。そうすると、何らかの歯どめがないと、適用時期というのがどんどん繰り上げられて、いわば平時が戦時のようなかっこうになってしまうおそれがある。そこで私は、具体的にどういう歯どめをするのですかと聞いているわけです。  つまり、適用時期を繰り上げるということについては、法律をつくらなければいかぬのだから、それはそのとおりです。ところが、適用時期を繰り上げますぞ、待機命令下令時にしますよと法律をつくる。それは法律をつくるのだから審議しますよ。ところが、文言としては、恐らく出動待機命令が出たときに土地の使用をやるのだ、あるいは家屋の使用をやるのだ、こういうことになるのでしょう。ところが、それじゃ何も歯どめはないわけです。だから、具体的な歯どめをどうお考えになるかということを言っているわけです。
  224. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 一つの歯どめは、いま申し上げたように、防衛出動待機命令にそういうふうなことを適用させることが妥当かどうかという御論議があろうかと思います。そういうことにつきましては、今後法案の審議の場でもって御議論があり、それが一つの歯どめになろうかと思います。  もう一つは、私ども、部隊運用上、任務遂行上必要ということからいまの事柄についての適用時期の繰り上げをお願いしているわけでございますが、その繰り上げをした防衛出動待機命令というのは、国会に諮ることも必要ない、防衛庁長官総理の承認を得て下令するというふうな政府、いわゆる内閣の問題になってしまうところに御懸念があるということであれば、あるいは防衛出動待機命令のあり方についての御論議がその場で出ることもあるのかもしれません。その点は今後の御論議を踏まえながら私ども検討していかなければならないというふうに考えております。
  225. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、いまの御答弁はこういうふうに考えたらいいのですか。あなたがおっしゃるように、出動待機命令は防衛庁長官総理の承認を得てやる、それだけのことであるというところにわれわれ不安を持つわけですから、そうすれば、それに具体的な歯どめはどうかけるかということについては、論議を踏まえてシビリアンコントロールが有効にきくような具体的な方策を立てる、たとえばそこに国会を関与させるとか、いろいろなことも今後の論議の過程では出てくるというふうに考えておいていいわけですか。
  226. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 一般論としていろいろな考え方があるだろう、またそういうふうなことを考えた場合に、適用時期を繰り上げることがなかなか認めがたいというふうな御論議もあるかもしれません。一般論としては、防衛出動待機命令のあり方についての御論議も出てくるのではないかということは大いに予想し得るところだというふうに考えております。
  227. 矢山有作

    矢山委員 こっちは具体的な歯どめをどう考えておられるかということを聞きたいのだけれども、なかなか具体的な答弁が得られません。これは今後もしそういうことが法制化されるということになれば、あなたのおっしゃるように、その段階で議論は出るでしょう。しかし、少なくとも私は、これは適用が非常に拡大されて歯どめのない結果、大変な事態に発展していくおそれがあるということについてだけは厳しく懸念を表明し、具体的な歯どめというものをどう考えるかということを今後検討してもらわなければならないし、われわれも検討しなければならない、こういうふうに思っております。  そこで、多少細かいことで一、二聞いておきたいのですが、待機命令のもとで部隊の要員防護のために武器使用ができることになっておりますね。この武器使用の決断をするのは、その部隊の第一線の指揮官ですか。
  228. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 有事の際にというか、防衛出動待機命令が下令された際にというのはどういう時期かと申しますと、事態が非常に急迫しておる、情勢が緊迫しておって、いつ何どきいわゆる国外からゲリラ等の潜入ということがあるかもしれない。そういったものが待機のもとにある自衛隊に対して危害、侵害を加えることが大いにあり得るというふうなことを考えて、私どもいまの規定の設定を提案しているわけでございますけれども、この武器の使用というのは、あくまでもその部隊の防護に当たる任務を持った部隊の指揮官というふうに御理解いただければ結構だと思います。
  229. 矢山有作

    矢山委員 それはえらい持って回ったような言い方ですが、部隊の防護に当たる部隊の指揮官、つまりその部隊の第一線指揮官ですね。その部隊の指揮官が、こういう出動待機命令の段階で武器使用が許されるということになると、これまた私は非常に問題になると思いますよ。ゲリラだとか不法分子だとか、それに対する対策としてそれをやるのだとおっしゃるけれども、そのゲリラあるいは不法分子という判断をもっぱらその指揮官がやるわけでしょう。そうすると、これはきわめて物騒な話なんで、ゲリラでないものをゲリラと見立てたり、不法分子でないものを不法分子と見立てて、待機命令の段階で第一線部隊の指揮官が武器使用を認める、これは危険性を感じませんか。私はどう抑制するかということをやはり考えなければいかぬと思います。
  230. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 現在の自衛隊法第九十五条には武器防護の規定がありまして、武器を防護するために、武器防護の任に当たる隊員は武器の使用が認められているということでございますが、それと同様のことを部隊の要員の防護のためにしたいということでございまして、この九十五条にも武器の使用についての厳格な要件が定めてございます。それと同じような要件は、当然この新しい規定にも適用されるべきものであって、みだりに武器の使用が認められるというものではございません。  それからもう一つは、念のためでございますけれども、武器の使用というのは、あくまでも国外からゲリラ等が潜入した場合ということでありまして、いわゆる武力侵攻があった場合の防衛出動下令時における武力の行使とは厳然と異なったものである。あくまでも警職法の適用というふうないわゆる九十五条と同様の制限規定があることは言うまでもないところでございます。
  231. 矢山有作

    矢山委員 いやいや、武力侵攻が現実にあった場合の武器使用と混同してもらっちゃ困ると私は思うのです。武力侵攻は現実にない。なるほど情勢の緊迫というものはある。そこで出動待機命令が発せられる。その出動待機命の段階で武器使用をするわけでしょう。なるほど九十五条にいろいろの制約はあります。しかし、武器使用を許す。ところが、出動待機命令の段階だから敵さん自体の武力攻撃はない。あなたがおっしゃった海外からゲリラが進入、こういうわけですね。これはゲリラだという認定、これは不退分子だという認定、そういうのはすべてその部隊の指揮官がやるわけでしょう。そこに私は非常な危険性を感ずるというわけです。ゲリラとはかくかくのものであるときちっと定義づけて、その定義でいくとか、不退の分子というのはこういうものだといってびしっと枠をはめて、きちっとくくっておくならいいですよ。ところが、前線の部隊の指揮官が、これは不退分子だ、これは潜入したゲリラだと認定すれば武器使用をやるわけでしょう。そうなったら、この間も議論が出ておりましたが、たとえば土地の強制使用がなされる、家屋の強制使用がなされる、従事命令が出されてくる、いろいろな強制的な手段が講ぜられることに対して、反対をするという人は必ず出てきますよ、皆やりたいほうだいやってくださいという者ばかりはおらぬのだから。そうすると、そういうものを部隊の指揮官が、これは不退分子だ、これはどうもゲリラだ、こういうふうに一方的に認定して武器使用をやったら大変なことになるんじゃないかということを言っているわけですよ。  だから、こういうところにもやはりそういうことにならないような歯どめを常に考えておかぬと、法律をつくってこれでもう大丈夫だと言っているんじゃ私は困ると思うのですよ。具体的な歯どめということになると、実際問題としてなかなかむずかしいですよ。むずかしいからよけい危険なんです、こういうものを待機命令の段階からやらせるということは。そう思いませんか、夏目さん。
  232. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私ども自衛隊法の百三条による土地の使用あるいは従事命令に反対するからといって武器を使用するということを考えているのではなくて、あくまでも待機中の部隊に対してある種の武器を持った侵害行為、そのためにやむを得ずぎりぎりの必要最小限度の武力行使をするということでございまして、みだりに、たとえば部隊に対して投石があった、そのことによって直ちに自衛隊が武器を持って反撃するというふうなことを考えているものではない。あくまでも部隊要員を保護するために必要やむを得ない場合に最小限度の措置として武器の使用が認められる。現在の九十五条は平時においてもそのような規定があるわけでございます。部隊要員についても同趣旨の規定が必要であろうというふうに判断しているわけでございます。
  233. 矢山有作

    矢山委員 私がこの問題をあえてどうしてこれだけ言うかといったら、実は私は深刻な経験があるのです。  あれは正確には五十一年の春ごろだったと思うのですが、日本原の自衛隊が、大村さんはおわかりです、東演習場で実弾射撃をやるという問題があった。実弾射撃をやるから何時から何時までは立入禁止とやったわけだ。ところが、その立入禁止時間より三、四時間前の段階で、地元のお百姓や少数の労働者の諸君、全部合わして五、六十人だったと聞いておりますが、その人たちが、演習時間にはまだ三時間も四時間もあるじゃないか、どうしていまから通らせぬのだ、ちょっと通らしてくれ、そこは通行権のあるところですから、そう言って行ったところが、バリーケードが張ってあって入れてもらえなかった。入れろ、入れぬと言ってやっておるうちに、山の中腹に自衛隊の隊員が百五十か二百ぐらい展開しておった、それが部隊の指揮官の号令一下、その五、六十人の農民と労働者の諸君が狭いところに密集しておる、それに向かって一斉投石をやったのです。山の中腹にそれだけの石はないので、たくさんの石を事前に集めておったらしい。そうして投石事件を起こした。これはいま裁判になっています。こういうことがありますからね。  ですから、あなたはゲリラだとおっしゃるけれども、そのゲリラであるかないかという認定は、第一線の部隊の指揮官がやっているわけです。だから現実に、わずか五十人や六十人のお百姓さんと労働者に対して、百五十人も二百人も山の中腹に展開した自衛隊員が指揮官の号令一下投石事件を起こすんですよ。けが人が出る、自動車がぶっこわれる、そういう事件があったのです。ですから、こういうような規定というのはきわめて慎重にやらないと問題がありますよということを、私は身をもって感じておるから言うんですよ。そのことを特に強く申し上げておきたいと思います。  それからもう一つは、自隊隊が土地の緊急通行をやるという場合がありますね。その緊急通行をやるというのは、それぞれここを通りたい、たとえば戦車なら戦車が、道路ばかりは走らない、この田んぼ、畑を突っ走ろうと思えば、その人たちが勝手に判断して走るのですか。これはどうなるのですか。
  234. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 土地の緊急通行の問題については、当然のことながら所有者に何らかのあいさつというか承諾を得て走る。私ども、決してこれがいつでもできるということではなくて、橋梁が落ちておった、道路に車両が詰まっておるというふうなことで、やむを得ず公共の通路以外のところを通さざるを得ないというふうなことがあり得ると思います。私どもその際には、所有者の了解を得てやることが当然であろう、しかし、緊急の場合には、正式な手続、百三条の手続なんかも間に合わない、そういう意味では正当な補償というふうなことを率後考える、そのことは別としまして、御承諾を得ながらそういうことをやることが当然であろう、ただ、緊急やむを得ないで所有者の承諾を得るいとまがとれないというふうなこともあるいはあるかもしれませんが、そういうことにつきましては、事後何らかの正当な補償というのは当然措置されるものというふうに考えております。
  235. 矢山有作

    矢山委員 この緊急通行の判断をするのは、やはりそこにおる部隊の指揮官ですか。
  236. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 当然現場における部隊指揮官ということに相なろうと思います。
  237. 矢山有作

    矢山委員 これも私は大変な問題を含むと思いますよ。緊急通行だといってその判断をするのが、その部隊の指揮官が判断をしてやるということになれば、待てば待てるものをできるだけ早く行こうと思って、おれたちには緊急通行の権利があるのだからということで突っ走るという問題は必ず起こってくると思う。だから、こういう問題に対してもどう対応していくかというのは、今後私は議論になるだろうと思うし、その点は防衛庁の方も考えておかれるべき問題じゃないかと思います。  それから、もう一つ。この問題についてあと一つですが、損失補償や実費弁償の問題がありますね。これは知事または長官がこの実費弁償なり損失補償をやるらしいのですが、これの査定といいますか、それはどういうふうにしてやるのですか。一方的に知事なり長官がやってしまうのですか。
  238. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 自衛隊が土地等を使用する場合に、当然損失補償を要することは論をまたないところでございまして、この損失補償につきましては、憲法第二十九条による正当な補償をするということでございます。  具体的な手続をいま考えているわけではございませんけれども、損失補償の申請を出されるということに対して、知事あるいは防衛庁長官がその損失補償額を審査、決定して、損失補償決定通知書を相手方に交付するというようなことから決まるのだろうと思います。いずれにしましても、補償額というのは、いわゆる適正な補償といいますか、通常生ずべき補償、正当な補償を支払うべきことは論をまたないところでございます。
  239. 矢山有作

    矢山委員 正当な補償なり弁償をやるということ、それはわかりますが、申請が出た場合に、その補償額や弁償額の決定は一方的に知事や長官がやるのか、それとも、何らかの基準をこしらえて、もっと民主的といいますか、たとえば評価委員会をつくるとかいうような形でやるのか、その辺は扱いとしては非常に大きい相違があると私は思うのですが、どうなんですか。
  240. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 損失補償額の決定につきまして、どういう基準をつくるか、いろいろな具体的なそういう決めについては、今後の検討課題であって、いま私どもは具体案を持っているわけではございません。
  241. 矢山有作

    矢山委員 時間を食うから、夏目さん、一緒に答えてください。それは一方的に知事や長官がやるのか、それとも何か評価委員会的なものをつくってやるのか、どちらなのかと言っているわけです。
  242. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 失礼いたしました。  補償額の決定手続等についての具体的な問題については、今後検討すべき問題である。いま私どもが具体的に細かなことまで成案を持っているわけではございません。
  243. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、現在の段階ではどういうふうな決定手続をとるかということはわからない。知事なり長官の一方的な決定もあり得るかもしれないし、あるいは評価委員会のようなものをつくってやるのかもしれないし、そこは未定だ、こういうふうにおっしゃったと理解しておきます。  次に、もう一、二聞きたいのです。この間承知したのですが、五六中業によって「防衛計画の大綱」の達成を考えておるようでありまして、国防会議では、それを基本としてやるのだ、こういうことになっておるようですけれども、五六中業で「防衛計画の大綱」を達成するという場合に、これはGNP一%といういまの閣議決定の範囲の中でおさまりますか。
  244. 大村襄治

    大村国務大臣 先般の国防会議了解を得ましたのは、五六中業の作業を始めるに当たりまして、基本的な考え方を四つほどお諮りしたわけでございます。その中におきまして、五六中業におきましては、「防衛計画の大綱」の水準を達成することを基本として作成するという一項があるわけでございます。その御了解を得ましたので、作業をこれから始めるわけでございますが、約一年かかるわけでございます。でき上がりましたものをまた改めて国防会議に何らかの形で付議する、こういうことでございます。  そこで、お尋ねの一%の関係でございますが、まず中業の中身が決まりませんと、一体事業費はどのぐらいかかるか、その点が決まらぬわけでございます。また一%は対GNPの比率でございますので、これから先の相当長期間のGNPが果たしてどういった姿になるかということになりませんと、GNP一%を超えるのか超えないのか、その点はいまの時点で判断することはきわめてむずかしいわけでございます。ただ、この閣議決定は現在なお生きているわけでございますので、作業を始めるに当たりましては、これを念頭に置いて作業を始めるということは当然ではないかと私は考えているわけでございます。
  245. 矢山有作

    矢山委員 見方を変えてお尋ねしますが、それはおっしゃるとおりだと思うのですよ。GNPの成長率等でわからぬだろうし、これからつくる五六中業の中身によってわからぬとおっしゃる。しかし、それはそれで聞いておきますが、それでは「防衛計画の大綱」を達成する場合に、GNPの一%ではできないということになったときには、その枠を破るのか、それともあくまでも一%の生きておる閣議決定の中で作業をしようとするのか、そこのところがやはり姿勢としてはきわめて重要なんです。  つまり、五六中業を、基本的に六十二年度大綱の達成を目標にしてつくるにしても、一%の範囲の中でおさめるという姿勢でつくっていくのと、いや、もう一%を超えたらやむを得ない、そのときには考えるのだという姿勢でつくるのと、これは大変な相違であります。その点で、あなたはいま閣議決定のGNPの一%は生きているとおっしゃったのだから、そうすると、一%の中で何が何でも抑えるという形で五六中業をつくるのかどうか、その点はどうですか。
  246. 大村襄治

    大村国務大臣 五十一年十一月の閣議決定は、毎年度の防衛関係費はGNPの一%を超えないことをめどとして編成する、そういう趣旨の文言であったように記憶しておるわけでございます。五六中業は五十八年から五年間の見積もりでございますので、先ほど申し上げましたように、事業内容も相当長期間にまたがっておるわけでございますが、また毎年度のGNPの大きさという点と両方から判断しなければいけないわけでございまして、あらかじめ何年度のあれがどうなるかということは、ちょっといまの段階では判断できないわけでございます。  ただ、作業を始めるに当たりましては、先ほども申し上げましたように、現在閣議決定が生きておりますので、これを念頭に置いて作業をいたしまして、作業の結果、事業内容も決まり、また当該年度のGNPの大きさということが出てまいりました場合に、先生御指摘のような点をどうするかは改めて検討、判断しなければならない問題である。万一、一%を超えざるを得ないという場合には、改めて閣議決定の変更をお願いするなり何なりをしなければならないと思うのでありますが、これはこれから作業をやってみないと何とも言えない点であると思います。
  247. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、いろいろ持って回ったようなことを言われたけれども、やってみた結果、結局閣議決定のGNP一%というのは不動のものじゃない、動くこともあるのだというふうに私は受け取って聞いたわけです。しかし、あなたは、国防会議で言われたのか、その後に言われたのか知らぬけれども、やり方によればGNP一%以内で六十二年度大綱の達成は不可能な話じゃないというようなことを言われたとか言われぬとか聞いているのですが、どうなんですか。そんなことを言ったことがありますか。
  248. 大村襄治

    大村国務大臣 繰り返して恐縮でございますが、事業の内容とGNPの関係でございますから。これから作業を始めるのです。そしてまた閣議決定の一%がいま生きているということを念頭に置いてやるわけです。そういうことでいろいろな要素を念頭に置きながら作業を始めるということを申し上げたわけでございます。
  249. 矢山有作

    矢山委員 大蔵省に聞きますけれども、大蔵大臣は国防会議の構成員ですから、基本的に六十二年度で「防衛計画の大綱」を達成するのだ、そういうつもりで五六中業をつくるということになったときに、GNPの一%といういまの閣議決定の枠は生きておるとするなら、その場合に、大蔵省の立場から考えてGNP一%以内ということで達成ができるのかできぬのか。それは経済社会七カ年計画等もあることだから、そういったものも踏まえながら、一応大蔵省としてはどういう見解を持っておるのかということが一つ。  それから、もしどうしてもGNPの一%以内で達成をしようということになれば、その年度ごとの防衛費の伸びというのはどのぐらいに見ておるのか。これはたしかこの間、大蔵の方は試算をしておるのじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  250. 畠山蕃

    ○畠山説明員 お許しを得まして、先ほど防衛庁長官からも申し上げましたように、最初にお断り申し上げておきますが、この間開かれました国防会議では、防衛庁長官が五六中業の作業開始に当たっての指示の基本方針を了承したというものでございまして、政府として五六中業の期間中に「防衛計画の大綱」の水準を達成するということをいまの段階で決めたという性格のものではございません。  そこで、御質問の一%との関係でございますが、先ほど防衛庁の方からもお答え申し上げましたとおり、私どもといたしましては「防衛計画の大綱」の水準を達成するためにどのくらいの所要経費が必要であるかということが現段階でわかっておりませんので、仮に分母であるGNPの方は経済社会七カ年計画の数字を持ってくるといたしましても、その比率が出てまいりませんので、現段階では何とも判断のしようがないということでございます。  ただし、もちろん現在、防衛関係費がGNP比の一%以内ということは閣議決定として存在しておるわけでございますし、それから政府の方針としても、この決定を変更する気はないということが公式の場でるる答弁されておりますので、私どもも当然そういうものと理解しておるところでございます。  それから、御質問の第二点の、この間新聞にちょっと出ておりましたGNP一%とした場合の防衛予算の伸びはどのくらいかという点でございますが、これもちょっとお断り申し上げますと、私どもで試算したように書いてございましたけれども、私どもではそういう試算をしたことはございません。ただし、その記事を見ましてもう一度検討してみましたところ、これには前提があるようでございまして、一一・七%でGNPが伸びると仮定した場合に、六十二年度にちょうどGNP比が一%となるとした場合には、等伸率で伸ばした防衛関係費はどのくらいかというと一三・六%になるという単純な試算でございます。
  251. 矢山有作

    矢山委員 そこで、大蔵省にもう一つお聞きしたいのですが、いま財政再建ということで、それに総力を挙げて取り組んでおるのですが、私はその中で防衛費だけを特別扱いはできないだろうというふうに考えざるを得ない。そのことは午前中、中曽根行管庁長官楢崎委員の質疑に対して、防衛庁といえども行財政改革の中で特別扱いはしない、いわゆる聖域視しない、こういうことを言っておりますが、大蔵省としても、この財政再建との絡みで考えるなら防衛費だけを特別扱いはできぬはず、つまり聖域化はできないはずなんですが、その点はどう考えていますか。漏れ聞くところによると、新聞報道等の中では防衛費は別枠扱いだというようなことがちょろちょろ出ますが、その点の大蔵省の見解は。
  252. 畠山蕃

    ○畠山説明員 御指摘のとおり、財政再建が最大の課題の現下の中にありまして、防衛関係費についてだけ特別扱いをするということは考えておりません。
  253. 矢山有作

    矢山委員 行財政改革というのは、何も防衛関係聖域化するものじゃない、まさに中曽根行管庁長官の言うとおりだと思うので、それを貫いてもらわなければ困るのですがね。ところがどうも最近は、繰り返しになりますが、防衛だとか、経済協力だとか、エネルギー関係、そういったものは五十七年度概算要求の中で特別扱いせざるを得ないとか、するのだとかいう記事が盛んに出てくるのですよ。大蔵省はその点ははっきり言えますね、それは別扱いはしないと。当然言わなければうそだと思うのだ、財政再建が絡んでいるんだから。     〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕
  254. 畠山蕃

    ○畠山説明員 五十七年度の概算要求のシーリングにつきましては、ついせんだって各省庁の官房長会議を開きまして、大蔵省の方からその基本考え方を御説明申し上げ、御協力方をお願いしたところでございます。  その基本的な考え方は、伸び率ゼロというようなことを基本として考えるということでございますので、それはその限りにおいて例外はないわけでございます。ただ、現在、それですべてができるということかどうかは、これから閣議決定に至るまでの期間かなりございますが、各省庁と相協議しながら決めてまいろうということでございまして、その間にありまして防衛関係費についてどうする、あるいは具体的に特別扱いするかどうかといったようなことにつきましては、現段階ではまだ何も検討をいたしておりません。仮に考えるとしてもということで新聞には出ておることは私も承知いたしておりますが、現段階では、その辺の別枠の扱いといったものについては、具体的に何ら検討がなされておりません。ただし、御承知のとおり五十六年度のシーリングにおきましては、防衛関係費が結果として他の四項目とともに一部特別扱いされたという事情はございます。
  255. 矢山有作

    矢山委員 五十六年度予算でも、あなたがおっしゃったように防衛費は一部特別扱いされた。ところが、最近のアメリカとの関係を見ておると、「防衛計画の大綱」の早期達成であるとか、あるいは防衛力の速やかな拡大であるとか、いろいろなことを言っていますから、それをそのまま聞いて日本が拳々服膺するということになると、これは防衛費については相当なものになってくる。したがって、この防衛費だけを別枠扱いをして突出させるような結論になったら、これは非常な問題だと思いますよ。大蔵省はその点は、どんなにアメリカの圧力がかかろうと、防衛関係筋その他から圧力がかかろうと、防衛費だけを特別扱いをして突出させるというようなことについては最大限抵抗の努力をしてもらいたい。そんなものをやらしたら、いまの原潜の事故が起こってこれだけ問題になっておる情勢の中では、大変な問題になるということを私は申し上げておきます。  そこで、防衛庁に聞きたいのですが、五十七年度の概算要求について、先般いろいろと鈴木総理基本的な考え方を御説明になったりしたのじゃないかと思うのです。であるとするなら、この場でも大体五十七年度の防衛費の概算要求については基本的な考え方はどうであるということをやはりおっしゃっておいていただきたいと思うのですがね。
  256. 塩田章

    ○塩田政府委員 鈴木総理に説明したのではないかというお尋ねでございますから、私が御説明したものですから私から御説明したとおりを申し上げますが、別に五十七年度予算が話題になっておったというわけではございませんけれども、五十七年度予算につきましても、現在の中期業務見積もりについて五十六年度で足がかりを得たと私どもは考えておるわけでございますが、それは五十七年度、五十八年度、五十九年度、三カ年に予定されておるものについて、引き続き相当の努力がなされた場合に早期達成ができるという意味で、五十六年度はそのための足がかりができた、われわれはこういうふうに考えておるので、五十七年度も引き続きよろしく御配慮をお願いしたいということを申し上げたわけであります。それだけでございます。別段、五十七年度の予算要求につきまして具体的な基本方針とか、そういうことを申し上げたわけではございません。
  257. 矢山有作

    矢山委員 この種のものは、あなた方が積極的に話してくださらぬから、私どもは報道を通じて知る以外には方法はない。これは朝日ですか、八一年の三月十三日の報道でも、かなり具体的な中身が出ているのですよ。五十七年度予算要求をする場合の、主要装備というのですか、そういったものはこういうふうにしたいという、また似たような記事が四月十六日にも出ているわけです。それは朝日が勝手に書いたのだと言えば、われわれの方はそうかいなと言うしかないけれども、私は、この種のものをそう勝手に書くということはないと思うのです。しかも、両方比べてみると、大体同じような調子で書いてあります。かなり具体的に書いてありますよ、P3Cをどうするとか、F15をどうするとか、E2Cをどうするとか。やはりそういうふうな話をやるなり、あるいはそういうことを概算要求の基本の方針として出そうとしているのじゃないのですか。
  258. 塩田章

    ○塩田政府委員 具体的にP3CだとかF15だということでなしに、主要な装備品につきまして五十六年度に引き続き五十七年度に単期達成ができるように配慮をお願いしたいということは申し上げました。個々の新聞がどう書いたかについては、私はいまここで申し上げませんけれども、私が総理お願い申し上げたのは以上のような内容でございます。
  259. 矢山有作

    矢山委員 そういうどの程度総理に御説明なさったか、あるいはどの程度の考え方を持っておられるかというのは、あなた方がおっしゃらぬ限りはわれわれはどうともわからない。しかし、「防衛計画の大綱」の達成をどうするか、あるいはそれに向かって五六中業をどうつくるか、それが日本の防衛とのかかわりがどうなるのか、あるいは対米関係、いろいろな問題が絡んでいるわけでしょう。だから、そういう問題について実は五十七年度の概算要求はこういうふうに考えておるのだ、それから六十二年度達成を目指す五六中業については基本的な考え方はこうなのだということを国会の場では積極的に言っていただかぬと、これは審議のしようがないのですよ。ときどきぽかっと漏れてきたものをつかまえて論議するしかない。そういう論議の仕方というのは、国の防衛を云々する場合には非常に不幸なことだと私は思うのですよ、たまにどこかのルートから漏れてきた部分的なものをとらえてしか議論ができないというのは。だから、あなた方が国民的なコンセンサスを得るという基本の立場に立って防衛問題を論議しようというのなら、もう少しあなた方の考えておる考え方なり、いわゆる自衛隊の現状なり、そういったものを出してもらわぬと、そういうふうにならぬと論議ができないと私は思うのですね。これは実に不幸なことだと思いませんか。今後、特に防衛の問題というものが非常に重要な課題になりつつあるようですから、それだけに十分な、真剣な論議ができるようにという配慮を政府側が積極的にするという姿勢が必要なのじゃないですか。それがない限り、どんなに言ったってシビリアンコントロールも形骸化します。その点の御見解を伺っておきたいのです。
  260. 大村襄治

    大村国務大臣 五十七年度概算要求につきましては、防衛庁としましては、まだ具体的な作業に入っておらないわけでございます。ただ、ことしは行政改革関係もこれあり、シーリング時期も早まるというお話でございます。そこで、私どもも早急に概算要求の作業に入らしていただきたいと考えておるわけでございます。  その場合の基本的な考え方は、御指摘もありましたように、行財政改革の最も重要な時期に行われる概算要求でございますので、私どももその趣旨を踏まえまして、経費の効率的使用あるいは人員、組織等の合理化、そういった点につきましては従来以上に一層に配意してまいりたいと考えておるわけでございます。  一方におきまして、最近の国際情勢等に顧みまして、わが国の「防衛計画の大綱」の水準をなるべく早く達成することが必要であると考えているわけでございまして、その観点から、緊要な正面装備を中心とする装備の改善、またこれと緊密な関連を持ちますところの後方の問題等につきましては、重点的に配意して、現在の財政状況下にふさわしい概算要求を何とかこれから取りまとめていきたい、そういう気持ちでおるということを申し上げておきたいと思うわけでございます。
  261. 矢山有作

    矢山委員 これでやめますが、私は最後に申し上げたいのは、何も五十七年度予算だけに限って申し上げたわけでもないし一五六中業だけに限って申し上げたわけでもないので、やはり防衛問題についてもっと積極的な論議をしていくことが必要であるというふうなお考えなら、もっと積極的にその情報を出してもらいたい。それをできるだけ隠した形の中で論議をするというのは、およそ不毛な論議になってしまうということを申し上げたので、このことをひとつ今後十分心得て対処していただきたいということをお願いしておきます。  きょうは実は総理府なり人事院にはお気の毒だったわけでありますが、私の持ち時間も三、四分はあるようでありますけれども、三、四分では意を尽くさぬことになりますので、他の同僚の議員の方から質疑をしていただくということで、私は以上で終わらせていただきたいと思います。
  262. 江藤隆美

    江藤委員長 大出俊君。
  263. 大出俊

    大出委員 私は定年制一本にしぼって承りたいのであります。  給与あるいは恩給、年金あるいはまた定年制、長らく手がけてまいりましたが、退職手当とも密接に絡む問題でございまして、前の事務総長の尾崎さんがいみじくも書いておられますように、拙速に法律で何歳なんというようなことを決めていいはずはないという周辺問題、ほとんど手つかずのままでございますしいたしますので、大変にこれは問題があり過ぎる法案。世上行革の試金石など、中身のわからぬ諸君がそういう言い方をいたしますけれども、そういう性格のものでない。一人の公務員の生活全体を考えていかなければならぬ問題でありまして、そういう意味で定年制にしぼった質問をひとつさせていただきたいと思っているのであります。  そこで、総務長官に承りたいのでありますが、本会議における加藤万吉代議士の質問に対しまして、総理とあなたが答弁をされた中で、どうもきわめて奇異に感ずるかつ不適当であり間違いだと思っている答弁がございます。人事院の総裁の書簡をめぐりまして、何かこれと同等、こういう表現を使っておいでになるわけでありますが、意見の申し出あるいは勧告と同等、こういう表現に受け取れましたが、一体正確には――私は総理に後からここへ来てもらおう、きょうそういう質問をしようと思ったら、あるいは何か来るのかもしらぬという話でございますけれども、一遍御本人にもしかと聞かなければいけませんが、一体何と言ったのか。正確に話してみていただけませんですか、あなたの答弁もあるので。
  264. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生お尋ねの本会議における私の人事院総裁の書簡に対する発言、その点についてのお尋ねでございますが、人事院総裁からの書簡というものは、公務員の身分とかあるいは給与等に対して絶えず政府に意見を申し出ている機関でございますし、その代表者でございますから、公式な護衛というものはきわめて重い内容を持っている、私はこのように理解をしておるように考えております。
  265. 大出俊

    大出委員 そう簡単じゃないですよ。あなたは素人だからしようがないといったらしようがないが、簡単じゃない。いまだに十六日の本会議の議事録ができないのですよ。議事録がどうなっているんだといったってまだ印刷していませんという。以来今日まで議運でもめているのでしょう。そんなに簡単な問題じゃないですよ。正確に言ってくれと言ったら、あなたはいま何ということを言うんだ。言ったことと全然違うじゃないですか。はっきりと答えなさいよ。そんなことじゃだめだ。自分で答弁していて何だ。
  266. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私のお答え申し上げました点は、具体的に申し上げると、一昨年の八月の人事院総裁の書簡に盛られた人事院の公式見解に基づいてこの法律案が取りまとめられた、この書簡は一年半にわたる検討の結果出されたものであり、政府としては、実質的には勧告ないし意見の申し出と同様のものと受けとめている、ところで本法案の意図するところは、行政の能率向上を図り、もって国民の信託にこたえるため、人事行政面においても長期的な展望に立った計画的な人事管理の展開を通じて、組織の活力を維持し、職員の士気を高揚させることにある、こういうふうな認識で御答弁を申し上げているということでございます。
  267. 大出俊

    大出委員 そこで、もう一つ承りますが、人事院総裁、あなた書簡をお出しになりましたが、国家公務員法何条に基づいて書簡をお出しになりましたか。
  268. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 これは法律自体の何条という根拠に基づくものというものではございませんので、人事院の所着に属する事項について、総理府の方から閣議決定に基づいて人事院の見解の検討結果の表明を期待するという書簡が参りましたので、これに対して人事院としての見解を申し上げたということでございます。
  269. 大出俊

    大出委員 それじゃ今後は総理府に承りますが、総理府が人事院に何か手紙を出したのですな。この手紙は一体公務員法何条に基づいていますかな。
  270. 山地進

    ○山地政府委員 いま総裁のおっしゃったのと同じようなことでございますが、この手紙は公務員法の何条ということではございません。政府には議案の提出権があるという前提に立ちまして、政府では立案ができるわけでございますが、事柄は身分の問題に係る、分限の問題に係るということで、人事院の方に慎重に御検討いただくという意味で人事院の見解を求めたということでございます。(「分限の問題だけじゃないよ」と呼ぶ者あり)
  271. 大出俊

    大出委員 いまも不規則発言がございますけれども、これは分限という問題だけじゃないのですよ。これは本当に公務員の命にかかわるのですよ。年金権も取得できないうちに六十になって首になったら路頭に迷うでしょう。十五年年金なんていうようなことを言い始めてもだめですよ、十五年なら三〇%なんだから。そうでしょう。最低年金年限というのは二十年でしょう。二十年で四〇%でしょう。十五年なんていうようなことを言い出して、十五年ならば三〇%でしょう。そんなことで生活できますか。いいかげんなこと言ってはいけませんよ。つまり人事院の総裁も総理府も、国家公務員法なら国家公務員法という法律があって動いているわけですよ、この二つの機関は。このいかなる条文にもよらないで勝手に書簡を出した、勝手に答えた。勧告、意見の申し出と同等のものと考える、だから法律を、ふざけたことをなさいますな。そんなこと言ったら公務員制度というのはどうなるのだ。でたらめじゃないか。これは一体何だ、この書簡は。「昭和五十三年二月三日総人局第六十五号人事院総裁藤井貞夫殿 総理府総務長稻村左四郎」こうなっている。責任継承の原則がございますから、目下中山さんですが……。「国家公務員の定年制について」「標記の件については、昭和五十二年十二月二十三日別添の通り閣議決定がありましたが、」閣議決定が先なんだ、これは。意見を聞くもヘチマもないんだ。いいですか。「別添の通り閣議決定がありましたが、その際、職員の分限に係る問題として貴院の見解を承ることとしておりましたので、貴意を得たく御検討願います。」閣議で勝手に決めちゃったんだ。閣議で決めたのはひっくり返さないのでしょう。そうなると、定年制実施は閣議で決めてしまったのだ。決めてしまっておいて、――これは本来ならば人事院がよほど腰を据えて、今後ともに研究をしていかなければならぬ筋合いのもの。やめた前の事務総長尾崎さんが長々と書いておられるでしょう。皆さん読んでおられるでしょう。あれだけ長い間その職にあった、研究課長さんから始まった尾崎さん、私が官公労事務局長を二十五、六歳のときにやっていたのだが、初めて尾崎さんが研究課長で入ってこられた。あれからだからもうえらい長いですよ。尾崎さんがあそこまではっきり言っているじゃないですか。皆さん尾崎さんに教わったのでしょう、いまの人事院の方々。先生の言うことを聞きなさいよ。これには「貴意を得たく御検討願います。」ということだけしか書いてない。それで、「行政改革の推進について」(抄)ということで省略をしたということにして、昭和五十二年十二月二十三日閣議決定、「当面する厳しい内外の諸情勢にかんがみ、」云々と、これはもう三くだり半だ。何かこの間岩垂委員の質問ですか、やりとりの中で、行革、それでこんなものを出したのだろう、そうじゃない。そうじゃなくはない。ちゃんとここに閣議で決めたと書いてある。「行政改革の推進について」という決めた中で定年制、だから貴意を得たいという。そうでしょう。これは稻村さんの時代ですかな。いみじくもそういうことのようだけれども、だからこれは何条にも基づかない。法律に基づいていない。  ところで、総裁にもう一遍承りたいのだけれども、手紙が来たからしようがないからお答えになったと、こういうわけですか。人事官会議をお開きになっているようだけれども、しかもあなたの答弁を議事録によってずっと調べてみましたが、あなたの方から正式にとかやれ意見の申し出と同等とか勧告と同等とか、一かけらも言ってない。公式にこういうものをよこされたからお答えをするようになったということしか一貫して言ってない。これは一体どういう関係なんですか。もう一遍総裁に承りたいのですが、意見の申し出とか勧告とかいう性格のものじゃないでしょう。勧告ならば国家公務員法の二十二条、二十八条でしょう。二十三条が意見の申し出でしょう。同等だなんてどこから出てくるかわからぬけれども、あなたがもしも同等だなどと認めるとすれば、実質的にも形式的にも認めるのだとするなら、総裁、そこにいる価値はない。やめてもらいたい。  ところで、これは単なる書簡でしょう。どうなんですか。
  272. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 国家公務員法の規定に基づきます根拠規定といたしましては、ただいまお示しがございましたように二十三条というのが意見の申し出であり、それから例の、いつも御審議をいただいております給与勧告の関係、これが別の条文で三十六条でございます。定年制の見解表明というのは、これのいずれにも基づいておりません。これに基づき得るものでありますれば、無論私たちとしては、それらの規定に乗ってそれぞれのしかるべき言い方をするということは当然でございます。  ただ、この点については、総理府の方から正式に分限上の問題、分限上の問題の側面が非常に重要な側面としてあることは事実であります。そういうことで人事院の見解を聞きたいということでございます。人事院といたしましては、分限上諸般の問題について責任ある官庁でございますので、場当たりのことではございません。場違いのことではございません。そういう意味でこれを受け取りまして、従来からも関心を持って検討を加えておった事項でございますので、この際いろいろ掘り下げをいたしました結果、一定の見解をまとめましたので、これを御返事として差し上げたということでございます。
  273. 大出俊

    大出委員 国家公務員法二十三条、意見の申し出、これは正式には「法令の制定改廃に関する意見の申出」法律上はこういうふうになっています。「法令の制定改廃に関する意見の申出」これが国家公務員法第二十三条の表題です。「法令の制定又は改廃に関し意見があるときは、その意見を国会」に、国会が先に書いてあるのですよ。「国会及び内閣に同時に申し出なければならない。」はっきりしている。議運の責任者の方々きょうは後ろにおいでになりますけれども、国会に来てない。ここで決めている二十三条の趣旨というのは形を言っているのですよ。意見の中身じゃない、形です。もう一遍言います。国家公務員法第二十三条「法令の制定改廃に関する意見の申出」「法令の制定又は改廃に関し意見があるときは、その意見を国会及び内閣に同時に申し出なければならない。」条文はこれだけなんです。人事院が意見を申し出ようというなら、国会が先になっています。書き方は、国会、内閣、この両方に人事院は意見の申し出を出さなければいけません。法律上こう書いてあるだけです。ほか何にもない。何をもって実質的に同等だというか。この二十三条の意見の申し出から言うならば、国会と内閣に一緒に人事院の意見が出されて、だから同等だと言い得る。当然じゃないですか。そんなものを内閣だけ出しておいて、それを勝手に同等だなんというようなことを政府考えるとすれば、思い上がりもはなはだしい。政府国会を全く無視している。そんなもので一体出された法案の審議ができるか。それだけで頭からこんなもの審議ができない。  ところで承りたい。人事院の総裁は、いま私が二十三条、意見の申し出の提起をいたしましたが、形を二十三条で決めている。その手続を欠いて、その形を変えて意見の申し出には同等も形式もない、いかがでございますか。
  274. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 これはお示しのように、また先ほど私も申し上げましたように、現行法の根拠規定としては二十三条と三十六条がございます。いずれも正式の人事院としての見解表明の形でございます。そのいずれも、御専門で大変詳しい大出委員に申し上げる必要もございませんが、あくまで人事に関する関係というものは、ほかに例がございませんように、やはり国会国会というのは法律事項ということです。国会それと内閣、これを対象として挙げて、同時にやらなければいけないということを申し上げているところに大変大きな意味があると思うのです。それをその中でやはり国会を先に出しておりますのは、これは私から申し上げるまでもなく、国会は国権の最高機関、国会の方が偉いわけですから、そういう意味で国会というものが先に出ておるというふうに理解をいたしております。  今回の場合は、形式としてはこのいずれにもよりませんでした。というのは、われわれとして機が熟して、それこそこの場合にやらざるを得ない、やるべきときが来たということであれば、給与勧告と同じように、例年御厄介になっておりますように、勧告をいたします。あるいは別の事案が出てくれば意見の申し出というような形式をとってやります。ただ、この関係の場合には、従来から重要事項として掘り下げて検討はしてまいりました。まいりましたが、その時点において、なお結論は得ておらなかったということは、これは事実でございましょう。  ただ、そういう意味で、いまお述べになりました、正直に申しますと、内閣の閣議決定なり、これを受けての総理府総務長官の御書簡なりというものが仮にあの時期になければ、われわれの方としてあの時期に、というのは、おととしのあの時期に意見の表明ということを、意見の申し出というものを二十三条に基づいてやったかというと、それは私はここで確言申し上げる段階ではございません。あるいはもう少し延びた、あるいはまだいまの段階においてもということがあるかもしれません。しかし、いやしくも閣議決定があった、総理府総務長官がこれを受けて、見解を示せと言われたということであれば、全くわれわれとして無縁なことであれば別問題でございますけれども、従来から検討を加えておりましたことでもございますので、それを受けてここで意見をまとめて申し上げたというのが順序でございます。
  275. 大出俊

    大出委員 総長もおやりになっておいでになった藤井さんのことでございますから、私も長い討論、議論の相手方でもございまして、そんなに違った認識になるはずがない、そう思っていま承ったのでありますが、私の認識と全く同じであります。  そこで問題は、機が熟した、その時期が来たということでない、だが閣議が決めた。だから先ほど私が言った、閣議決定が先じゃないか。この総理府の書簡というのは一体何だ。分限にかかわる問題だから人事院の所管なんだというふうに考えたというなら、まずもって代償機関の人事院が、一体機は熟したのか、あるいは意見の申し出をすべきときなのか、どう考えているのかということを確かめるのが先だ。これじゃまるきり人事院無視じゃないですか。ずばり閣議で決めちゃって、決めた中身を後ろに一枚ひっつけている。これは不届き千万ですよ。人事院が何でもかんでも総理府や政府の言うことを聞いているなら、人事院の代償機関たる価値はない。閣議決定一枚ひっつけているだけじゃないですか。表面は三くだり半で、貴意を得たいと書いてあるだけじゃないですか。それを、機も熟していない、その機にもなっていないというのに、ぶっつけられたら出さないわけにいかないから出したと、こう言う。したがって、二十三条の形式はとらなかった、こう言う。そうでしょう。公務員法には二十二条もある。「人事行政改善の勧告」というのもございます。しかし、これは人事行政改善の勧告だ。二十八条「情勢適応の原則」という勧告もある。五%の上下による賃金勧告、これも国会、内閣です。つまりいずれにもよらなかった。ここにいま御答弁なさっておる総裁の真意がある。そういうことで、この法律をつくったから審議しろということに無理がある。だから、私はこの法律については、この席から質問をする各党の諸君の意見を十分に聞いて、入れるべきものは入れて改めるべきものは改めてまとめていく必要があると言うのだ。暴走しようったってそれぞれの公務員の身分にかかわる。さっき申し上げたでしょう。私の出身は郵政省だが、炭鉱離職者だけで五百人いるのですよ。六十でぽんと決められてごらんなさい。年金権がつかないでみんな町にほうり出されるじゃないですか。炭鉱でほうり出されて、せっかく郵政に拾ってもらって、外務員その他やっていたら、また六十で切られたら、年金もつかないでほうり出される。駐留軍の基地に働いている諸君もわざわざ試験種目を変えて、落としてまで郵政省は雇っているのですよ。これだってみんな切られちゃうじゃないですか。だれかこの間答えたそうだが、いかなる年金にも属さない者百二十八名とか言ったそうだが、それは人事院の所管だけでしょう。五現業等見てごらんなさい、そんなことになっていない。だから、そこらのところは皆さんが本当に五百万の公務員にかかわるんだから入れるべきものは入れて、時間がかかっても大方の意見をまとめてけりをつけなければいけません。  ついてはもう一つここで承っておきたい。私は、これはやがて総理にいずれかのところで出てきていただいて承らなければいかぬ、こう思っておるとさっき申し上げましたが、実は本会議、事本会議なんですね、本会議における総理の答弁なんだ。いいですか、読み上げますよ。いま議事録はないんだ。出てない。いたし方ないから記録部に参りまして、部長さん以下に了解をいただいて、皆さんが立ち会ってくださって、その席で私が書いてきた。これしかないんだ。ほかにとりようがない。一字一句間違っていません。「内閣総理大臣(鈴木善幸君)お答えいたします。国家公務員の定年制法案と人事院との関係及び改正法案の趣旨についてお尋ねがありました。この法案は、一昨年八月の人事院総裁の書簡に盛られた人事院の公式見解に基づいて取りまとめられたものでありますが、政府としては、この書簡は実質的には勧告ないし意見の申し出と同じものと受けとめているのであります。」これでは人事院は単に利用されただけになってしまう。閣議で決めておいて人事院に書簡をぽんとぶつけた。判断の余地がない。回答しないわけにいかない。回答した。したら、意見の申し出、勧告と同等のものだ、だから法律をまとめた、こう総理が答えた。これで問題にならなければおかしいじゃないですか。われわれ命がなくなったってこの制度は続くのだ。議会制民主主義という制度も、国家公務員法という法律も改正はあったって続くのだ。そんないいかげんなことを後世に、後から来る方々に、後から身分を取得する公務員に残せますか。だから問題になるのはあたりまえじゃないですか。いまだに議運で結論が出てないでしょう。私は出してもらいたい。議事録もできない一本会議の提案理由の説明の議事録もできないで一体何を審議するんだ。審議ができるか。政府が提案した提案理由の説明の正確な議事録もない。だから、それに基づく本会議の質疑応答の議事録もない。ないままで何で一体内閣委員会審議ができるんだ。提案理由の説明が見られないじゃないですか。そんなべらぼうな話がありますか。そして総務長官の答弁もここにある。総務長官「第三のお尋ねでございますが、定年制度という職員の分限の根幹にかかわる事項を法制化するときに、人事院勧告によらずに、単なる総理府総務長官と人事院総裁との間の往復書簡に基づいて措置をするということは、労働基本権制約の代替機能を有する人事院制度の否認を意味するのじゃないかというお尋ねでございますけれども、」これはこの質問のとおりなんだ。「国家公務員の定年制度は、公務員制度の根幹にかかわる重要な問題でございますので、政府といたしましては、人事院の制度の趣旨を十分に尊重して、その意見を求めた次第でございます。これに対して、昭和五十四年八月に人事院総裁から見解が表明されました。そうして総理府総務長官あての書簡という形式をとっておりますけれども、総理の御答弁でもございましたように、人事院の公式な見解として政府は尊重しておる次第でございます。」総理の発言を追認されておるわけですね、総務長官は。そうでしょう心議事録のとおり一字一句違っておりません。だから議運で問題になるのはあたりまえです。だからきょうも議運どうなりましたかと聞いてみたら、きょうも議運で取り上げられて問題になっている。そっちの方は提案理由の説明も正式な議事録もできない。にもかかわらず審議している、これは議会制民主主義違反ですよ。ルール違反。  ところでもう一つ承りたい。さて議運の関係者がやりとりをされたその席上で、自民党の加藤紘一さん、当時の官房副長官、今日の議運の自民党さんの理事、この方が、われわれの側の不穏当な発言、的確を欠く発言、意見の申し出でもなければ勧告でもない、同等とはどこを押せば言えるのか、これを取り消してくれ、これに対して何とか御勘弁願いたいと言う。なぜならば、当時の事情も知っているけれども、政府内部でこの間の十六日の総理答弁、いま私が読み上げた答弁、もみにもんでいろいろあったのかけれども、あの総理答弁にまとめたのだ、だからこれを何とかされるということになるととんでもないことになってしまう。もちろんこれを取り消すならこの法案を引っ込めてもらわなければいかぬ。うそを言ったのだから引っ込めてもらわなければいかぬ。人事院を単に利用するだけなんだから。その時期も来ていない。意見の申し出をする気もない。ぶつけて取ったのだから、そうして同等というのだから、これはペテンだ。何とかそこのところはと言う。それで話がついてない。私は加藤君をここへ呼んでもらいたいのだ。しかもこのまとめるときに人事院が一枚かんでいるというのはどういうわけだ。これが私は腹に据えかねる。総理府は人事院にぶつけたのだ、第三者に対して説得力をという、あるいは野党のわれわれに対して説得力をと。人事院の権威をかさに着ようというのだ。それで、実質的にというのだからいいじゃないか、こう言う。やかましく言われたようですな、人事院の方は。それから政府考えるというのだからいいじゃないかと。しかし皆さん、これは大変な問題なんだ。事公務員法というきちっとした法律で立てられている秩序があります。前の総裁の佐藤達夫さんも人材確保法案を一番最初にぽんとぶつけられたときに、きちっと答弁した。秩序が壊される、これだけは何としても防ぐ、その秩序の中に入れてくるのでなければ認めない。再三がんばりまして、その秩序の中に入れさした。それだけ制度というものは大切なものですよ。みんなが苦労してつくってきているのだから。国会だって長い間質問してきているのだから。そこで、少なくとも人事院の総裁たるもの、先ほどの答弁のとおり本来実質的に同等などというものはあり得ないのだから、意見の申し出や勧告と実質的に同じもの、同等のもの、そんなものは本来ない。本来ないのははっきりしているのだから、政府から人事院に物を言ったのなら、本来同等になどというものはあり得ない、認めない、こう出なければいかぬじゃないですか。政府が勝手にそう受けとめるから。勝手に受けとめられては困る、人事院の意思は一つしかない、こう言わなければいかぬじゃないですか。それでなければ法律体系や制度は守れないじゃないですか。だれが一体政府がそう言うなら仕方がないと言ったのか答えでもらいたい。事と次第によってはただではおかぬ。
  276. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 先刻公務員法上の公式意見表明の根拠といたしまして、給与勧告に関するものを、私ちょっと言いそびれて三十六条と言いましたが、二十八条の間違いでございますので、訂正させていただきます。  いまの御意見、ごもっともな点があると思いますけれども、この点は、先刻もちょっと申し上げましたように、定年制の問題というのは、公務員の身分の得喪に関する大変重要な事項、すなわち分限事項の面を多分に持っておるわけでございます。そういう意味で、公務員制度上も大変重要な意義とまた内容を持っているものでございますので、従来からもわれわれといたしましては、退職管理の方法として、いろいろな点を実は検討を続けてまいっておったわけでございます。  これは大出委員もすでに御承知のように、たとえばその一つの例といたしまして、退職公務員の生活実態がどうなっておるかというような点につきましても、実はいままで初めての大がかりな調査をやりまして、最初は五年でしたが、さらにまた追加をいたしまして、数年にわたって長期の追跡調査というようなものもやるというふうに、大変関心を持って検討を続けてきておったことは事実でございます。そのときにいろいろ議論がございまして、時たまその結果として出てまいりましたのが、閣議決定であり、またそれを受けての総理府総務長官からの御書簡であったというふうに私は理解をしたわけでございます。  いまお話がございましたように、私といたしましては、そういう背景があるので、この問題に取り組んできたという、そういう事実がございますので、閣議決定なり総務長官からの御書簡がありましたけれども、それの取り扱いについて、閣議で決定したから、あるいは政府から言ってきたからしようがないじゃないかということは、これはそういう不見識なことは申し上げません。またわれわれの方の職員のだれかが言ったと仮にいたしますれば、それは間違った見解でありまして、私は、そういう点は毎度きわめて慎重に取り扱って、部下も督励しているつもりでございますので、そういうことは万々ないと思いますが、仮にあったとすれば、それは私は間違いだと思っております。
  277. 大出俊

    大出委員 ございましたが、言うのをやめましょう、総裁がそこまでおっしゃるなら。わかっておりますけれどもやめましょう。ただ、それは間違いだといまおっしゃった。私も間違いだと思っています。  そこで私は、いずれかにしていただきたい。ここで責任を追及していくととんでもないことになる、やりとりまでわかっているんだから。だから、そういうことでなしに、こういう妙な答弁を寄ってたかって皆さんがおつくりになって――総理は何も知らない。鈴木善幸さんという方は、私が全逓という組合の書記長のときに郵政大臣に初めておなりになった。善幸さんの大臣の第一号、それ以来の長いおつき合いですから、よく知っています。しかし、公務員のこの種の制度には縁のない方なんです、魚の方は堪能だけれども。だから、総理自身気持ちでそんなことを言うはずがない、判断で言うはずがない。だから、さっき私は加藤紘一君の名前を挙げた。そうでしょう。だから、これは議事録もできないのだから、提案理由の説明も読めないのだから、皆さんにだれか読ませてください、提案理由の説明を。そうなったら、議事録で全部これを読むから。そうでしょう、ないんだからだめだ。質疑応答、議事録を出してくれ、ない、こんなことをやっていたらしようがない。議運できょうも議論している。だから、これは議運の方の始末をしてください。取り消すなら取り消す。しかし、取り消したのなら、法案を全部引っ込めてください、同等だという前提でまとめたと言っているんだから。そうでしょう。同等でないことになったんだから、まとめようがないのだから、やめてもらいたい。筋の通らぬことは国会はしゃやいけません。多数、少数の問題じゃない。(「同等でないとはっきり認めた」と呼ぶ者あり)そういうこと。  もう一つ、どうしてもそこまで政府の方が突っ込んで人事院に、同等だ、同等だ、同等を認めろ、勧管、意見の申し出と全く同じものなんだと言って、人事院も、しようがない、それじゃということになってしまったというほどのことならば、言わないことにいたしましたから、そこのところは触れませんが、それならば逆に、総理府並びに政府は、総理以下は、人事院が出した書簡、これは全く勧告、意見の申し出と同等だと言うのだから、そのとおりやってください、ごまかさぬで。これはごまかしじゃないですか。  この人事院総裁の、総理府から来たからしようがないから出したという書簡には、五現業というものは、別な法律をつくることが望ましいからそうしろと書いている。何で一本の法律で出すのですか。それで団交権を何で取り上げようというのですか。こういう作為に満ちたことだらけでこの法律はできている。私も長い間内閣委員会におったんです。十五年おったんだから、十五年間たくさんのこの種の法律をいじってきましたが、こんなひどい法律は初めてだ。作為がある。初めからこれはそうなんだ。  だから、ここに書簡があります。書簡の中身を、問題点だけちょっと取り上げます。「定毎制度の内容等」そして「定年制度が実施される場合には、次の内容」云々、こうありますが、つまりこの流れというのは「公務部内における職員の」云々というところから始まって、現業でないところの一般職の公務員、この方々について一つと言っているわけです。それは国家公務員法の改正なんです。そうしておいて、その次に、検察官あるいは教育公務員特例法による公務員、学校の先生ですが、これには法律そのものに定年がついている。これが二つ目のグループ。一般職の公務員というグループ。検察官や先生方の定年のついているグループ。そしてもう一つあるグループ。これは現業ですよ。だから、「なお、国の経営する企業に勤務する職員の定年制度については、企業としての自主性等を考慮すると、」あたりまえでしょう、団交権があるんだから、公労法適用職員なんだから。「企業としての自主性等を考慮すると、別に法律をもって定めることが望ましい。」別に法律をもって定めろと人事院は言っている。定めていますか、別に法律をもって。八十一条を持ってきてただ並べちゃっているじゃないですか、読みかえ規定なんというものをこしらえて。これは読みかえ規定も間違いだ。立法の趣旨も何もみんな忘れてしまって入れている。むちゃくちゃな話です。  どっちかにしてください。ここに書いてあるとおり、意見の申し出、勧告と同等だというのなら、別に定めろとなっているんだから、別に定めてください。そして、そうじゃないというのなら、議運でいまもめているのを決着をつけて、議事録ができるようにしてください。どっちかにしてください。そうでなければ質問できない。だめだ。議事録もないものを、そんなことを言って質問できるか。
  278. 山地進

    ○山地政府委員 人事院の書簡の中に、いま先生の御指摘の「別に法律をもって定めることが望ましい。」ということがあるわけでございますが、先生の御指摘のとおり、五現業というのは国家公務員法の適用がある、しかし団体協約締結権があるということで、公労法と給与特例法というもので特別の法律関係がある。そういうことで、私どもとして、この人事院の書簡を読んだときに、この団体交渉の結果協約締結権がある、それから企業の自主性があるということに十分配慮して、一般の非現業と同じような定年制というのは無理であるということは私どもとして理解できるものでございますから、そういう特別な法律関係というものに配慮して、こういうものをつくることが――人事院の「別に法律をもって定めることが望ましい。」という、この「望ましい。」というところは、私は、人事院としては非常に注意深くお使いいただいた点だろうと思うのでございますけれども、配慮しながらそういうものをやった方がいいんじゃないか。これは、別の法律でやるというようなことも、それはないこともないと思います。  ただ、私どもとしては、この国家公務員の枠内にありながら、しかもその自室性を認めて、協約の締結権というものについてはある程度尊重していくということで、いま先生が御指摘になったような特別のものを、締結した内容を主務大臣が尊重して実行できるように、非現業と違うものをつくっていく。いま御指摘になりました読みかえ規定でそれをやっておるということでございまして、この人事院の言っておられる趣旨に合っていると私どもとしては考えているわけでございます。
  279. 大出俊

    大出委員 そういうごまかしを、どうせそれしか答弁のしようがないので、そういう答弁をするためにこしらえた法律だから、それしか答えようがない。それは最小限度そこに逃げるしかないのだ。山地さん、あなたも人事課長が長いからなかなかそういうことには手なれた方だ。だから、そう答えるのは初めからわかっているのだ、そんなことは。いま私が申し上げた論点にもう一遍後で戻りますが、せっかく話が出た。出たからその点について触れていきますが、そして先ほどの論点にどうしても――これは提案理由の説明がない、本会議で質疑討論をやっているのだけれども議事録がない、読めもしない。そんなことで質疑や質問はできない。  そこで次に、いまの読みかえと絡んで申し上げますが、この人は非常に頭がいいというのか悪いというのか、どっちかわからぬのだけれども、うまいこと考えていると言えばうまいこと考えている、しっぽが出ていると言えばしっぽが出ているのですね。国家公務員法の一部を改正する法律、皆さんがお出しになったこれについて説明を求めますが、この「定年による退職」というのを国家公務員法第八十一条の二というところにこしらえたわけです、新設をしたわけですね。今日までない。分限というものを二つに分けた。今日までは、一冊にまとまった冊子の後ろの方を見ていただくと皆さんによくわかると思うのでありますが、新旧の法律の比較、これを見ていただくとよくわかると思うのでありますけれども、国家公務員法というのは昭和二十二年法律第百二十号ですけれども、この上の、つまり「国家公務員法目次第三章官職の基準第六節分限、懲戒及び保障第一款分限第一目降任、休職、免職等第二目定年」第二目というのをこしらえて「定年」と入れた。そして下を見ていただけばわかりますが、下の第三章は「官職の基準」これは同じ。「第六節分限、懲戒及び保障」新旧同じ。「第一款分限」ここまでは同じ。ここから先を「降任、休職、免職等」というのを第一目に入れた。第二目に「定年」と入れた。ここにまずごまかしがある。  なぜならば、三公五現というのは、公労法がこしらえられて以来、私は当時、公労法をつくられたときには役職におりましたから直接いろいろやりとりをいたしました、いろいろな審議会ができましたから。これは公務員法の枠内にみんな一緒にいた。いたのだが、ここから現業というのは三公社と一緒にこっちへ取り出して、労使関係の問題というのはここでやるのです、公労法の八条というのを持ってきて。ただ、一つだけ違う。労組法。一つだけ違う。基準法は、これは完全適用です。一つ偉うのは何かと言うと、管理運営に関する事項だけはつり上げる、官庁だから。ということでこしらえたわけでしょう。その八条というのは列挙式になっている。ここで言っている分限だから交渉対象にならぬ、そんなことはない。そんなばかなことはない。この公労法の八条には、列挙式に全部書いてある。免職まで書いてある。休職もあればあるいは降任も昇任もある。公労法の八条、全部ここに書いてある。だから、まずもってこの公労法八条の中に第二項なら二項をつくって「定年」と入れればいい。それだけのこと。三公五現、一緒にカバーしては三公に気の毒だというのなら、「(三公を除く)」とすればいい。それだけのこと。それが正しい。以来今日まで三公社五現業、三公社五現業、三公社五現業、常に同じ法律、同じ規定に従って皆団体交渉をやってきている。公労委の仲裁裁定が出て賃金も片づいている。同じことをやってきている。それをわざわざ、いいですか、あなたはまたどうせ答えるんだろうから言っておくけれども、五現業は公務員、身分法は国家公務員法だとこう言う、三公社は公社法だとこう言う、そこが違うと言いたいんだろうと思うのだけれども、そんなことを言うんなら、何で今日一緒に八条適用でやっているのか。長い年月何でやってきたのですか、そんなことを言えば。そうでしょう。つまりここのところを外して、こっちの第二目の方に入れて、しかし人事院のこの書簡の趣もある、だからここのところを使えないからというので読みかえ規定をつくった。どう読みかえるか、ここのところをまず承ってから次に行きますが、どう読みかえるのですか。  八十一条の二は、ちょうど真ん中に、「第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日」という、ここで退職する、こうなる。ここで言うところの「任命権者」、二つありますね。「第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者」、ここが読みかえになるのでしょうね。説明してくださいよ。これが一つ。これが八十一条の二の第一項でしょう。  二つ目、「前項の定年は、年齢六十年とする。」皆さんが勝手に原則定律とかなんとか言っているようだけれども、そんなことは関係ない、法律にはそんなことは書いてない。「前項の定年は、年齢六十年とする。ただし、次の各号に掲げる職員の定年は、当該各号に定める年齢とする。」こうなっていますね。これ一体どういうふうに読みかえるのですか。  それから、「一 病院、療養所、診療所等」――「等」というのは一体何を指し、その下の「人事院規則で」――「人事院規則」というのは「主務大臣」に読みかえるのでしょう。「人事院規則で定めるものに勤務する医師及び歯科医師年齢六十五年」、これは六十五年が定年になるのですよ、この法律でいけば。こんなものはほかに団交の余地も何もないですよ。そうでしょう、ぴしゃっと六十五と決めたんだから。ただ一つ違うのは、人事院規則で決めるか主務大臣と読みかえて決めるかだけのことだ。ここには何もない。「等」と書いてある。これは何だ。私の推測では、医系教官だとか、厚生省の患者を診ない教官、つまり役人ですよ。そういう方だとかあるいは大学病院の医者の先生だとか、そのほかにもいろいろあるかもしれません。診療行為に携わらない方々などが恐らく入るんだろうと思うのだけれども、これはもう介入の余地ないんだ。団交の余地もヘチマもないんだ、こんなもの。  それから、「庁舎の監視その他の庁務及びこれに準ずる業務に従事する職員で人事院規則で定めるもの年齢六十三年」これも庁務、つまり用務員その他を含めましてはっきりしているじゃないですか。一般的に労務職の方だとかドライバーの方々は入らない。まあいままでの経過からいけば、外交交渉が継続中にそこで人をかえるわけにいかないとかなんとかというようなことを、この後の方と絡んでいろいろなことを言っている人もありましたが、しかし、ここのところは要するに六十三というふうに定年を決めちゃうわけですよ。そうでしょう。だから余地はない。ここでも「人事院規則」は「主務大臣」と読みかえる。  「三 前二号に掲げる職員のほか、その職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより定年を年齢六十年とすることが著しく不適当と認められる官職を占める職員で人事院規則で定めるもの六十年を超え、六十五年を超えない範囲内で人事院規則で定める年齢」この「人事院規則」はすべて「主務大臣が定める」と読みかえるわけですよ。そうでしょう。  「前二項の規定は、臨時的職員その他」云々と、これは排除規定が入っている、こういうわけですね。  それから、八十一条の三、「定年による退職の特例」、この特例もまたなかなか皆さんの方は非常にずるく考えているのですね後から言いますが。「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。」定年は六十、六十五、六十三だが、一年刻みで延ばすことができるという規定だ。「前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。」三年を限度に一年ずつ人事院の承認を求めて、定年は六十なり六十三なり六十五と決めるんだが、一年ずつ延ばしていく、三年延ばせるという規定だ。そこで「人事院の承認を得て、」というのを読みかえて「主務大臣等の定めるところにより」というふうにする。この読みかえ規定は給特法である。給特法という見当違いな法律の中にあなたはとんでもないものを入れているじゃないですか。  ところで、この読みかえ規定は、あなたが言う読みかえなんだから例を挙げたが、そこで何をもって団交権ありと言うのか。言うなら、一体団交権の中身は、これについては具体的にどういうことになるのか、その担保がどこにあるのか。「主務大臣が定める」と読みかえてしまう。話がつかないで定めな。提訴をしたら、法律に「定める」と明確に読みかえ規定がついていて決まっているじゃないか、大臣が決めて何が悪い、そうなるだけじゃないですか。どこに団交権の担保がありますか。何にもないじゃないですか。ごまかしてはいけませんよ。公労法八条の中に二項なら二項をつくって、「定年」と入れてあるならいざ知らず、その他の勤務条件となったときに、その中に入っていますと言ってもだめです。旧来から、その他というのは、労使で争ったって、力関係です、決まったことはない。そんなことは列挙式になっているのだということになっているじゃないか。何十年も私もやってきている。団交権、どこにも担保してなりじゃないですか。いいかげんなことを言ってはいけませんよ。もう一遍説明してみてください。
  280. 山地進

    ○山地政府委員 読みかえ規定はいま先生がお読みいただいたとおりでございますので、その点については私の方の答弁する余地がございませんので、それは差し控えさせていただきます。  いまの、公労法でいくのか給特法でいくのかということでございますが、これは先生御承知のとおり、昔は公労法で全部給特法の部分も適用除外していったという古い歴史を持っているわけでございまして、御承知のような事情で給特法ができて給与の準則というものもその中に取り入れ、それから勤務時間が一般職の公務員と同じように取り入れられて、あそこに五現業だけの陣地が一つできているわけでございます。したがって、給特法ができる前の法律状態で考えますと、おっしゃるように公労法以外に特例を設けるところはなかったと私は思うのです。ところが、公労法は、その第一条をごらんいただいておわかりになりますように、これも先生御承知のとおりなんでございますが、円滑な団体交渉を進めるという、交渉の手続をかなり書いてある法律であろうかと思うわけでございます。それに引きかえ給特法は、三公社と違った五現業だけの法律である、そういうところを考えて、私どもとしては公労法でなくて給特法の方が適当であろう、そっちでなければならぬということじゃないのですが、適当であろうという判断で給特法に置いたわけでございます。  それからもう一つ、では給特法に置いて、公労法の八条の規定はどうなんだということでございますが、八条の規定の中にもいろいろ限定列挙されております。たとえば免職の基準というようなものがあるわけでございます。では免職の基準は全部団体交渉になるのかといいますと、これは公労法の四十条で七十五条、七十八条は適用除外になっていないわけでございます。したがって、免職の基準と書いてあるけれども、それは全部団体交渉できるということにはなっていない、そういう意味では公労法の適用除外はある種の法律を前提にしたものである、かように私どもとしては理解をさせていただいているわけでございます。  そこで、いまの定年制度というものは、新しく定年制度として樹立された後に、その枠内でどの程度の団体交渉をするのかということになるわけでございまして、また先生の方から先に言われてしまったわけでございますが、その他の勤務条件ということで読むことは、これは私どもとして、それ以外はないし、また実行上そういうことでやっていただけるもの、かように確信しているわけでございます。
  281. 大出俊

    大出委員 その他の勤務条件に逃げ込むことは、団交の担保ができないということ、はっきりしている。あなただってそんなことはわかり切っているじゃないですか。だから、逃げる、ごまかす。しかもあなたは、給特法を本当に理解しているのですか、山地さん。あなたは給特法の提案理由の説明を読んだことはありますか。とんでもないことを答えて、あれは議事録に残りますよ。私はここにちゃんと第十九国会の給特法の提案理由説明を持っている。一つもそんなことを言っていないですよ。いいかげんなことを言っちゃいけませんよ。あなたは人事局長なんだから、こんなことを言っちゃいけませんよ。間違ったことを言っちゃいけませんよ。これは昭和二十九年六月の百四十一号という法律、提案理由の説明は昭和二十九年四月二十八日、加藤国務大臣。長いから読み上げるのを省略しますが、ここで言っていることでどういうことかというと、ここに公労法がある、団交はそっちの方でやって物は決まっていくというわけだ。給与も決まっていく。公労法適用職員は五現の中にはいっぱいいる。そうすると、非適用の職員がいるというわけだ。チャンポンになってどうにもしようがないというわけだ。公労法というたてまえがあるのだから、ここで給特法を五現業溶けつくって、国家公務員法の特例という形で給与をごつちへ持ってくる。服務法という法律は日本にないのだから、給与のみならず勤務時間も入れる。この法律はそういう意味の給与と勤務時間なんだ。そんなところへ何で分限なんてものを入れられるのですか。読みかえったって分限じゃないですが。そうでしょう。これは分限の法律じゃないですか。「何でこんなところに読みかえ規定の分限を入れるのですか。あなた方は分限で「第二目定年」というのをつくったのでしょう。そして岩垂君の質問に分限だって答えたじゃないですか。それなら、そんなばかなことをやりようがないじゃないですか。立法の趣旨が全然違うじゃないですか。いいですか。そういういいかげんなことばかりやって、公労法八条を直さないで。人事院が別途に法律で決めなさい、法律で決めなければ身分を解くことはできないからですよ。それならば、公労法の八条に「定年」という一項を入れればいいだけのことです。それだけのことです。三公社と一緒でひとつもおかしくない。公労法で来て、今日まで一緒じゃないですか。この際わざわざ引っこ抜こうとするについては、それなりの意図があなた方にある。私はそれが気に食わぬ。だから、人事院等が言うとおりにしろと言っておるのです。それじゃなきゃ取り消せと言っておる。どっちかにしろと言っておる。わかるでしょう、私の言っていることは。私も長いこと官公労の事務局長を、二十五、六で始めて三十まで五年やっていたのだから――私が事務局長を始めた翌年に人事院ができで、初代総裁は浅井清にするなんて法律に書いてあって、これは大騒ぎになった。忘れもしない、行政調査部から案をもらってきた。だから、私も改正の都度都度、ずいぶんたくさん携わってきている。知らないことはほとんどない。そういう意味で、いまの妙なやり方をしないで、ひとつどこかですっきりしたものに直してくださいよ。先ほど来私が申し上げているように、人事院だってまだそこまで来ていない。来ていないのだけれども、ぶつけられて、その気になっていないのに書簡を、しようがないから出した。申したら、今度はその書簡は、勧告、意見の申し出と同等だ。トラの威をかるという話があるけれども、分限の専門家である人事院の書簡の威をかりて抑えようとする。その間に妙な人事院の取りつけをなさる。これはやみだ。総裁の気持ちは私はわかるから、もうそんなものは言わぬけれども、もってのほかだ。そういうことまでして何でこういうことをこの法律でしなければいけないのですか。  私はもうちょっとこれに触れたい。そしてこの結論にしていただきたい。つまり先ほどの給特法、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法、昭和二十九年六月一日の百四十一号法律、この法律で読みかえると、普通の人にはわからなくなっちゃうのだ、この法律を何遍ひっくり返しても。ぼくはゆうべ、とっさに質問する気になったものだから、ずっと当たり直していったら夜中の二時になってしまった。事細かに仕分けしていかぬと間違える。この法律はうまくできている。何とも言えないずるさでごまかしだらけなのです。  私は郵政出身ですから、特定局長会の皆さんの動きをよく知っている。白浜仁吉さんを会長にして、そこらじゅう押し回った。驚いたことに、その都度、いまどうなった、いまどうなったといって報告が出ているのですよ。まずここに逓信新報というのがある。「全国特定局長会の要望五項目に郵政省回答」というのがある。ここには去年のですが、全特五月号、全特四月号がある。細かく書いてあるのです。白浜仁吉さん初め二十三名の自民党の議員さん、これはどの辺まで入っているかは構わない。構わないけれども、六十八歳という特定局長の定年を断じて譲らぬというのです。そこまで激しくは書いてないが、同じようなことが書いてあるのです。いいですか、私は郵政部内出身ですから、私のつくった特定局長も何人もいるのです。私はある人に直接聞いたのですが、大出先生大変ですよと言うわけです。郵政省もおっかなびっくりだ、総理府もそうだ。何だと思ったら、世の中が定年制に注目しているときに、六十八歳というのは現行の特定局長さんですよ。七十歳以上の人もたくさんいた。そうでしょう。団体交渉ということになってきて、それが拡大されてくると、組合が足を引っ張って、七十歳以上の特定局長はということになる。秩父セメントの社長の諸井という人もかって特定郵便局長をやっている。ところが特定郵便局長をやっていて特定局に一遍も来たことがない。そういうことなのです。そして砂田重政さんが与党・自民党の組織局長のときには四千何百人が一遍に自民党に入ってしまった。それが悪いと言うのではない。つまり五現業といっても郵政だけじゃないか。あとはたばこをつくっておられたり、金をつくっておられたりしているが数からいっても少ないじゃないか。郵便を一生懸命配達している郵政だけじゃないか。しかも選挙といったら全国の特定局長全部が大変な犠牲を払ってやっている、確かにそれはそうです。私も全逓は長いからよく知っているけれども、選挙が終わると特定局長さんの違反もずらっと出てくる。だから六十八歳という既得権は断じて守れ、そのように法律をつくらした、心配するな。世間がうるさいからというのだが、これは普通の方にはわからないようにできている。  さて、どういうふうにできているかということを申し上げますから、その上で御判断いただきたい。提案理由などというのは一行半しか書いてない。「国における行政の一層の能率的運営を図るため、定年制度を設けることとする等の必要がある。これが、この法律案提出する理由である。」さあ、これを見ると基礎定年六十歳となっている。八十一条の二の第二項で、この六十年を六十五年にすることができるようになっている。そうでしょう。「病院、療養所、診療所等」と「等」が入っている。「人事院規則で定めるものに勤務する」ここで人事院が絡む。ところがこれを読みかえてしまうのだから、郵政大臣が定めるものに勤務するになる。特定郵便局というのは、郵政大臣が定めるものに勤務しているじゃないですか。切りかわってしまって、人事院の介入余地はないのだ。そうすると、ここで特定郵便局長さんをあっさり六十五歳にできる。しかも、さっきの論理で全逓の団交権を剥奪してしまえば文句の言いようがない。そうすると、どういうことになるかというと、地方の郵便局には二人局、三人局というのがあるのです。そういうところに勤めている人もいるのですよ。二人局、三人局の方々、局長さんはいつまでも勤められるけれども、お忙しい局長さんにかわっている代理さん初め一生懸命やっている方々は、六十歳になればすっぱり首なのです。こんなに差がついてしまうのです。  のみならず、次の「定年による退職の特例」からいきますと、さあこれはむずかしい。「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、」この「前条第一項」が何を指すかがまず問題だ。八十一条の二を見ると、四行目の「退職する。」まで、「六十年」という数字の一つ前までが一項なんだ。そうして八十一条の三は「定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、」とあって、その退職の年齢は六十あり、六十三あり、六十五あり、いろいろになっているわけですよ。そのすべてを指しているわけです。そこで人事院の承認を得て一年ずつこれを延ばしていくことができる。どういう延ばし方をするか。六十歳の人を延ばす場合には、六十歳が定年だから、六十歳になったら、これは動かさないで一年延ばす、また二年延ばす、三年延ばす。三年を限度に延ばせる。今度は定年六十三というふうに主務大臣が決めた人、人事院が決めた人は、六十三になったらこれは動かさない。ここで一年延ばし、二年延ばし、三年延ばせるということだ。さて、局長さんが六十五という定年に決まって六十五になれば、この六十五は動かさない。ここから一年、二年、三年と、一年区切りでその官職につけたままにしていけるという規定なんだ。この場合、人事院の承認がいることになっているのだが、さて給特法に読みかえ規定をくっつけて、これまた主務大臣の定めるものとすると読みかえる。そうすると、これまた読みかえ規定に人事院は介入しない。八十一条の三、いいですか。「前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。」こう書いてある。人事院の承認がなければ三年延長はできない。ところが、この「人事院の承認を得て」というところを山地局長がさっきいみじくもすり抜けた給特法によると、「人事院の承認を得て」というところは「主務大臣等の定めるところにより」と読みかえると書いてある。すべて郵政大臣の権限じゃないですか。六十五歳というふうに局長さんの定年をまず指定して、この規定で三年延ばす。人事院の介入はない。郵政大臣の独断だ。それは選挙で一生懸命応援する皆さんで世話になっているんだから、三年延ばすのはあたりまえじゃないか、こんなのは常識じゃないか、この並べ方はそういうふうにできておる。しかもこの読みかえは五現業に限られている。五現業でも圧倒的に郵政で、あとはみんな小集団だ。そのためにつくられた法律だと言ってだれが悪い。こんなものが審議できるか。これは取り消すなり、人事院の言うとおりやるなりやってください。こんなものはだめだ。めちゃくちゃだ。
  282. 山地進

    ○山地政府委員 私の御説明で先ほど来申し上げておりますように、五現業という法律的に特殊の関係にあるものについてどういうふうに決めていくかということが、定年制の導入の場合の非常な問題だと思うわけでございます。まず、その五現業とそれから三公社といろいろな法律関係があるわけでございますが、たとえば共済組合法というのは三公社だけの共済組合、これは年金の方でございます。ところが五現業の方は国家公務員共済組合に入っているわけでございます。それから労務災害の方もそうなっているわけでございまして、こういった法律関係がいろいろ網の目のようになっている中で、五現業というものに定年制を導入する場合に、私どもとしては給特法が適当である。人事院の方も、一般的な非現業の公務員について、別の法律で定めることが望ましいということは原則を全部お示しになっておりますけれども、五現業については方針を特にお示しになっていない。それは別の法律で定めることが望ましいとお示しいただいているものですから、私どもとしてはぜひこういうような形で御審議を賜りたい、かようにお願いしているわけでございます。
  283. 大出俊

    大出委員 別な法律で定めるというのは、読みかえ規定を給特法に入れるということじゃない。この際別な法律とあなたが言ってみたところで、八十一条というのは国家公務員法じゃないですか。だから国家公務員法一本じゃないですか。読みかえ規定だけじゃないですか。中身は何もないじゃないですか。国家公務員法一本じゃないですか。別途法律じゃないじゃないですか。読みかえ規定を、筋も通らぬ、分限だと言っていながら、これは何を何に読みかえるというだけじゃないですか。何が別な法律ですか、そんなごまかして。だめですよ、そういうことを言ったら。だから私は先ほど、総務長官がさっき答えましたが、私が後から読み上げましたが、人事院の意見の申し出、勧告と同等だ同等だと言ったんだから、それが大きな問題になって議運で決まらないじゃないですか。だから議事録も何もない。こんな状態で審議はできぬじゃないか。だから早急に決着をつけてくれ。そしてどうしても加藤紘一君の言うように、人事院も含めていろいろなことがあったんだ、表に出せぬというようなことがあるんだと言うならばそれでもいいが、それならせめて別途法律で定めろ。五現業というものは現業で、特殊性があって、公労法適用でずっと三公社と一緒に来たんだから、ここでぶっ切って離すなんという芸当をしないで、しかもこういうとんでもない細工をなさらぬで、人事院の出された返答のとおりに別途法律できちっと決めなさいよ。そんなことは公労法の八条を使ったっていいんだから。そうでしょう。それであなたが心配なら、団体交渉で六十になることだってあるじゃないか。世の中のみんな空気ぐらいのことはわかっているんだから。世の中の人は、われわれだって行革行革というムードも知らぬわけじゃない。だけれども、団交権というものを簡単にネグレクトされては困る。筋がある。しかも公務員制度というものを適当に使われては困る。将来のためによろしくない。悪例、前例を残したくない。このぐらいの筋はだれだってわかるじゃないですか。だから言っているんだ。どっちかにしてくれと言っている。それ以上審議はできない、そういう意味だ。相談してくださいよ。相談してうまくまとめてくださいよ、無理言っているんじゃないんだから。
  284. 山地進

    ○山地政府委員 私の答弁について若干舌足らずであった点を補足させていただきたいと思います。  いま私は、人事院の書簡では別の法律で定めることが望ましい、だから私どもが給特法を使ったのは別の法律であるという意味ではございませんで、むしろ先ほど御答弁申し上げましたとおり、別の法律で定めることが望ましいという意味は、五現業について団体協約締結権がある、それから企業としての自主性がある、そういうものに十分配慮した法律関係をつくるべきであるというのが人事院の気持ちであるというふうに私どもは理解しているわけでございまして、したがって、そういった法律関係というのを、給特法に「定年」というのを置いて読みかえ規定を置くというのが私の答弁の内容でございます。五現業の公務員については、これは国家公務員法のいろいろの規定を適用除外しながら、しかし、公務員法に片足を置いているというのは事実でございまして、どこまで国家公務員、非現業の者と一緒にいくのかというのは、これは一つの判断の問題だろうと思うわけでございますが、私どもとしては、やはりこの定年というのは国家公務員と一緒にいく方がいいというふうな判断で今回の提案をさしていただいている。御理解を賜りたいと思います。(発言する者あり)
  285. 大出俊

    大出委員 これは委員長のお立場がありますから、なるべくわかるように山地君に申し上げているのですが、お互い素人の集まりじゃないんだから、ここまで言えばおわかり願えるだろうと思うから言っているんでね。要するに、団交権というものを、つまり定年というものに置きかえてみたときに、どこで担保されているのかということになると、給特法に読みかえ規定があるからと言ったって、これはただ単に「主務大臣」と読みかえる、「主務大臣が定める」と読みかえるだけなんだ。これは「人事院規則」を外すだけなんだ。これは勝手にやれるということにするだけなんだ。一体何が担保なんだ。ないじゃないか。それなら人事院が「別に」と言っているのは何か。団交権があって、三公社と一緒に来た五規業なんだから、人事院もそういうことは百も承知だ。だから「自主性」と言っているんだ。そんなものは何もないじゃないか。給特法が自主性か。あなたは最初は、別に定めるということだから、給特法という法律で別に定めたと答えた。しかし、それは中身じゃないと私が言ったら、今度は変わった。議事録をひっくり返してみればわかりますよ、あなたは言いかえているから。私は最初そう言ったんじゃないと言ったが、そうじゃない。それはあなたがそう引っ込む。引っ込むのもそれはわかるけれどもね。だからそういう性格のものなんだから、事の起こりは、問題は、人事院の書簡というものを一体どうとるか。これが気合わずというところを引っ張り出された人事院だというならば、これは引き下げてくれ、同等なんて言わぬでくれ、それでこの法律をもう少し温めてもらって、人事院から改めて勧告なり意見なり出してもらう、そうしてくれと言うのです。筋が通らぬじゃないかと言うのです。陰の方でこっそり話し合ったりしたんじゃだめじゃないかと言うのです。  そこで、もう一つの方法は、いいですか、出てきた書簡というものを本当に忠実に受けとめて、別な法律をつくって五現業の団交権を担保しなさいと言うのです。わかるでしょうが。
  286. 山地進

    ○山地政府委員 おしかりを受けて、やや答えにならないかもしれませんけれども、まず、これは体系上給特法の中では「主務大臣が定める」ということが原則的になっておるわけでございます。  そこで、団交権とそれから定年制の導入というものとの関係がどうなるかということについて、ちょっと観点を変えて私の方の立場を御説明したいと思うのですが、まず、いま団交権である場合に、これは三公社あるいは五現業を含めてでございますけれども、あるいは仲裁裁定にまで仰いで退職年齢、勧奨退職年齢でございます、これを決めているわけでございます。そこで、その五現だけに限って言いますと、勧奨退職年齢というのをそれぞれその企業で協定で結んでおられるわけでございますが、じゃ勧奨退職というのは何だと言うと、これも先生御承知のとおり、本人の意思に基づいてしかこれは発動できないということでございます。  そこで、こういった勧奨退職について協定ができるということと、それから定年制との関係はどうなんだといいますと、これは一般の会社においても定年制度は協定で導入できるわけでございます。ところが、国家公務員公務員法の身分の保障ということから考えて、あるいは七十五条で、法律によらなければ、本人の意思に反して免職されることはないという規定、その他の規定の趣旨から考えて、定年制ということは団体交渉の対象になっていないわけでございます。そこで一体定年制というものを、こういう公務員制度の中、公務員の社会の中に取り入れるということを考えた場合には、これ以外の方法がないということになるわけでございまして、私の説明が右左揺れたかと思いますけれども、私としては、給特法に読みかえ規定を置くということが一番適当ではないだろうか、かように考えて御説明したので、御理解を賜りたいと思います。
  287. 大出俊

    大出委員 さっきから物を言っているように、もう言う余地はないんだけれども、つまり給特法という法律は分限などというものの読みかえる規定を入れる法律じゃない。書いてないじゃないですか。初めから、この給特法というのはこういう法律だと書いてある、この法律には。そうでしょう。そんなことはできないじゃないですか、分限の法律じゃないんだから。しかもここに入れている入れ方も、定年制の団交権というものを担保していないじゃないですか。読みかえ規定だけじゃないですか。要するに「人事院規則」というのを「大臣が定める」と書いた。大臣が定めるんだから団交権をとあなたは言いたいんだろうけれども、さっきから申し上げておるように、大臣が決めた、決めたらどうなるか、法律上明確になっているんだから、しようがないじゃないですか。初めから余地がないじゃないですか。だから人事院が別に定めろと言っているんだから、公労法なら公労法というところの八条に「定年」を入れなければだめじゃないですか。担保できないじゃないですか。その場合に、その定年のどの部分が団交の範囲になるかということは、別な観点で決めればいいのだけれども、その中に「定年」とうたわない限りは、給特法に「定年」をうたって何の担保になりますか。そうでしょう。だからどっちかにしてくれと言うのです。
  288. 山地進

    ○山地政府委員 これは公労法の八条の運用の問題だと思うわけでございますが、給与等明示してあるものもあるわけでございますけれども、勧奨退職でいままで団交していたというような長年の事実と、それから定年制を実施後、こういったことについて団交が必ず行われてくるであろうということで、私は慣行上団体交渉ということが必ず行われてくるというふうに思うわけであります。団体交渉していけないということを積極的に書いているつもりで「主務大臣」と書いてあるわけではございません。たとえば給特法の第四条に先ほど申し上げましたとおり「国の経営する企業の主務大臣は、その企業に勤務する職員に対して支給する給与について給与準則を定めなければならない。」こう書いてあるわけでございますが、これは第八条の給与に関する団体交渉ということとあわせて読めば、団体交渉の結果主務大臣が決めるという意味でございまして、この主務大臣が決めるというところに団体交渉をしてということが書いてないのは、やはり公労法の八条が裏打ちをしている、かように理解をしているものでございます。
  289. 大出俊

    大出委員 いいですか。公務員法に書いてあるものを公労法に持ってきて八条をこしらえているので、八条に書いてあるとおり。公労法八条。「第十一条及び第十二条第二項に規定するもののほか」となっているのは、手続規定が団交対象になっているからですよ、この最初に書いてあるのは。あとはずっとここに並べてあるわけですよ。いいですか。おまけにわざわざ御丁寧に「団体交渉の対象とし、これに関し労働協約を締結することができる。」こうなっている、はっきり。「ただし、公共企業体等の管理及び運営に関する事項は、団体交渉の対象とすることができない。」だからここだけが違う、さっきから申し上げている。そして「一 賃金その他の給与、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項」「二 昇職、降職、転職、免職」――免職もちゃんと入っている。「免職、休職、先任権及び徴戒の基準に関する事項」「三 労働に関する安全、衛生及び災害補償に関する事項」「四 前各号に掲げるもののほか、労働条件に関する事項」こうなっているわけでしょう。全部列挙式になっているでしょう。公務員法のあなたの方の改正案の第二目に「定年」と入れているけれども、この方もこれとほとんど同じ条項に「定年」一つ追加したというだけのことでしょう。何で一体団交権を担保するために、この中に「定年」が追加できないのですか、人事院が別な法律でと言っているのに。それだけのことだ。
  290. 山地進

    ○山地政府委員 公労法と給特法に、公務員法に足を乗せながら片方でいろいろ適用除外をしている。この給特法にも、たとえば二十八条の情勢の変化に対応する規定を適用除外しているのは、これは給与勧告があるから二十八条を適用除外しているわけですね。それで給特法あるいは公労法と国家公務員法、この五現業の適用に関する限りは、あるものは適用除外ということで従来は済ませてきたといいますか、そういうわけでございます。そこでこの定年について、定年の枠組みは先ほど先生の方でいろいろ御説明ございましたような六十歳あるいは六十五歳、あるいはそれの勤務延長というような枠組みを崩さないでこの法律関係をつくっていくときに、やはり公務員法の新しくできる定年の規定の読みかえしかできないのじゃないか。私はその方が妥当であるという考え方からその定年制の読みかえ規定というのを置いたわけでございまして、その読みかえの範囲内でいまおっしゃった公労法の八条のその他というところで――その他というのは非常に不明確であるという意味ではそうかもしれませんけれども、やはり情勢の変化に法律が対応するためには、その他いろいろなものが出てくるということを予想せざるを得ないものですから、その他ということを普通つけるのが通例だと思うわけでございますが、まさに今回の定年の読みかえの規定に基づく団体交渉というのは、この四号でございますか、その他の勤務条件ということで読むというのが公労法の運営上必要ではないだろうか、かように考えております。
  291. 大出俊

    大出委員 あなたの方はこの案を出してきて、国家公務員法の方には「第一目 降任、休職、免職等」ということに第二目をつくって「定年」と入れたんでしょう、あなた方。そうすると、実際には読みかえで向こうに行くのでしょう、五現の方の法律というのは。読みかえるのだから人事院規則じゃないのでしょう。そうだとするならば、あなたがそれは団体交渉の対象になるのだというならば、何で公労法を手直ししないのです。三公社が困るというなら三公社を除くとすればいいだけじゃないですか。あたりまえじゃないですか、そんなことは。列挙式になっていて、こっちはわざわざ入れておいて、国家公務員法の方は「定年」を。何で五現のために片っ方に入れられないのですか、人事院が別途法律をと言っているのに。人事院が別途法律で決めろと言っているじゃないですか。あなた方は同等だと言うなら書簡のとおりにしろと言うのです。あなたも言い直してはっきりした。言い直して、あなたの言うのは、別途法律をというのを読みかえ規定の給特法で言うたのじゃない。人事院の書簡でそう言っている趣旨を生かすべくというので給特法を考えたんだ。それなら私の言うとおり法律は一本になるじゃないですか。国家公務員法の中にみんな入っているじゃないですか。「二目」というところに一括入っているじゃないですか、「定年」というところに。そうでしょう。それを給特法で読みかえているということで、別途法律じゃない。ただあなたは、別途法律をと書いてあるから、その趣旨を生かすべく法律は一本で出したけれども、給特法に読みかえ規定を、これが正しいか、ここが正しいかどうかはわからぬが、「定年」と書いて読みかえ規定を入れた。そうでしょう。だから、それでは書簡のとおりではないではないか。書簡は別途法律で定めろ、こうなっているのだから、あなたが同等だと言うなら書簡どおりにしろと言うのだ。同等でないと言うなら本会議総理答弁は取り消してくれ、引っ込めてくれ、どっちかにしてくれ、こう言っているのだから、はっきりしているじゃないですか。これは基本的権利にかかわる問題ですよ。団交権の担保という問題だ。
  292. 山地進

    ○山地政府委員 大変私の発言を整理していただいてありがとうございました。私の申し上げているのは、別の法律で定めることが望ましいと言っていた意味は、五現業については別の関係があるのだから、非現業の公務員と違うような定年制を考えるべきだ。それは協約締結権とそれから企業の自主性というものを尊重しなければならぬ、これに配慮した法律関係考えろ、こういう意味であるというふうに私は理解したわけでございまして、したがって、その給特法で読みかえ規定を置いた。それは公務員法の中の問題である。これは先生の御指摘のとおりでございますが、それで私はこういった給特法に読みかえ規定を置いて、国家公務員法を適用していくということ。ただし、五現業については違う関係があるということで人事院の御意見の趣旨を実現できた、かように考えているところでございます。
  293. 大出俊

    大出委員 では、もう一遍言いましょう。つまり給特法というのは、私が二十九年の提案理由説明というところで申し上げたように、国家公務員法の特例なんですよ。さっき私が申し上げたでしょう。だからすべて国家公務員法処理をしているわけだ。今度の定年というのは、あなたの方は。そうでしょう。そうではなくて、人事院の書簡の趣旨は、現業という団交権を持っている企業の自主性というものがある。だから別途の法律で決めろという趣旨なんだ、これは。三つのグループを前に置いて、検察官その他は定年が書いてある。一般職の公務員がある。ところで、さて、五現というのは企業でその自主性というものがある。公労法適用者で長年団交をやってきている。だから別途の法律を、こう言っているのであって、あなたは給特法給特法と言うが、給特法というのは国家公務員法の特例なんだから、あなたの方は国家公務員法一本で出しているのだ。そうでしょう。だから書簡のとおりなぜしない。公共企業体等労働関係法規の適用を現に受けているのだから、三公五現一緒に来たんだから、だからここで明確に八条の中に列挙してきたんだから「定年」を入れて一つもおかしくないと言うんだ。国家公務員法をあなた方が直して出した中にも、「分限」のところに「二目」をつくって「定年」と入れただけじゃないですか。だから同じじゃないですか。そうすれば、人事院の書簡どおりに別途の法律になると言うんだ。そこであなたの心配する六十歳がはみ出したりいろいろあるかもしらぬということがあるけれども、そこのところは今日的空気があるんだから、そこで考えて、そんなことぐらいわからぬ組合でもないじゃないですか。これだけあなたが言うとおり各組合全部、永年にわたる協約を結んでいるじゃないですか。みんな五十九歳六カ月という協約ばかりですよ。機能しているじゃないですか。何人働きかけて何人やめたかまでこれ五現業ともに全部わかっています。そんなに非常識なことをしてないですよ。公社の国鉄だって五十七歳。そうでしょう。みんな五十九・六カ月歳なんというわけだ。印刷なんかは六十歳。そうでしょう。それでやはり圧倒的に呼びかけに応じていますよ。残る方々は事情のある方々だけですよ、ほとんど。それはなぜかというと、年金権の取得ができないような人間をやめさせるなんてばかなことを考えることは間違いだと私は言うんだ。十五年年金なんか持ってきたって三〇%なんだ。もうちょっと見てやれば四十になるというのに、何でそこで切るんだ。そういうことだらけじゃないですか。それをあなた方は大蔵省に頼んでありますとかなんとかと岩垂氏の質問で答えているようだけれども、そんなことを言うなら、法律が通る通らぬというときに何で具体的にどうするというのを出さないんだ。地方公務員の方々は心配しているのですよ。給食の方々だとかパートタイマーの方々というのはどうなっているかといえば十五年年金なんだ。だから臨時の期間を含めて幾らももらえないんだよ。そんなところに落とされたんじゃたまったものじゃないという心配があるんだよ。そこにこの種の権利をやかましく言うんだ。そういうのは地方公営企業なんかの労務職の中にたくさんいるんだ。そうでしょう。団交権のある労務職や公営企業職員にたくさんいるんだよ。普通の堂々たる公務員の中にはそういうのは少ないんだ。郵政みたいに現場があって炭鉱離職者五百人とか全駐労の基地離職者山ほどおるというところと違うんだから。そうでしょう。だからそこら辺のところをこれはきちっとしてくれと言っているんだ。そのくらいわかってくださいよ。これは皆さんが知っているたくさんの公務員の皆さんのためなんだから。
  294. 山地進

    ○山地政府委員 いまの御質問の中で、公労法に「定年」と入れる御提案があったのでございます。その点についてわれわれの間でもいろいろ議論があって今日のような案ができているわけでございますが、先生の御説は恐らくそれにとどまらないいろいろなものがついた意味だと思うのですが、ちょっとわかりよくするために、仮に「定年」ということだけで公労法の八条に入れますと、団体交渉で定年が決められるというのが法律になってくるわけです。ところが、今度は国家公務員法の七十五条の身分保障」の規定それから七十八条でございますか、意に反する免職の規定、こういうのが五現業には適用になっているわけです。そうすると、定年ということを定めるという団体交渉の結果が一体どっちなんだと。仮に団体交渉で決まっている人が団体交渉で決まった協定に従えば、たとえば六十歳でやめるということになるんだけれども、定年法が国家公務員法から適用になってないと仮にいたしますと、これは七十五条で身分保障があるからおれはやめない、こう言えばその人は残る可能性があるわけですね。それは定年制、それから国家公務員法が公平に各人に適用されるという原則から言って、そういうことはあり得ないし、法律的に、そういった判例も一部過去において、地裁でございますけれども、そういった団体協約で定年制ができたという地方の話がある。それでその協定というのは有効なのかどうかという議論が争われたことがございまして、そのときの判定は、そういうことは公務員法の身分保障がある以上できない。したがって、先生の御提案というのは、それにいろいろとまた複雑な関係を織り込んだ御提案だと思うのでございますが、その点だけちょっと私の方のコメントをさせていただきます。
  295. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いま山地人事局長が御答弁を申し上げましたが、局長と私どもの省内での考え方というものは、十分相談をして御答弁を申し上げていると御理解をいただきたいと思います。  もう一点、加藤紘一君が本会議場であるいは衆議院の議運でいろいろとお話を申し上げておるという件につきましては、ただいまアメリカへ行っておりますので、私どもとしてはいま直ちに加藤紘一君と相談をするということは事実上不可能でございますが、この点はひとつ私どもといたしましても、先生の御指摘を十分留意いたしまして、できるだけ早急に加藤紘一君と連絡をとらせていただきたい、このように考えております。
  296. 大出俊

    大出委員 いずれにしても、本会議の答弁というのは総理答弁でございまして、しかも先ほど藤井人事院総裁があそこまでおっしゃっておいでになるので、私もあそこまで総裁に答えられると、いろいろな意識や考え方がありますけれども、これ以上というわけにもいかないので遠慮しているわけですよ。だから私の言っていることも、実は細かい実際にこれから先制度運営をやっていく上に必要なこと、聞かなければならぬことをたくさん抱えています、実のところ。ただそれに入るにしても、基本をはっきりしないと入りようがないのです。林野庁の皆さんなんかでも、実はいろいろな問題、何とかしてあげたい問題をいっぱい抱えている。やりたい。ところが、どうしてもこの基本、団交権というものをどう考えるかという問題なんだ。私はきょうは五現業の皆さんのそういう心配を代表させていただいてここに質問に立っているわけでございます。そういうわけで、私はいまそちらの方の物を言っているのです。総務長官、新聞が書いているのだから本当かうそかわかりませんけれども、この種の公務員二法なんというものは、何か突っ張ったようなことを総理が言っているとか言うけれども、やはりどうしたらいいかという知恵をお互いに出し合わぬと、これからどういうふうにおさめていくかという問題になるのだから。しかもさっき私が一つ例を挙げたように、百二十何名、これは斧君ですか、答えたというのだけれども、無年金者というのが。それどころで済むんじゃないのですよ。私は実際に数字もここに持っているのです。調べているのだから。そうすると、そういうものをどう片づけていくか。大きな問題をたくさん抱えているのですよ。だからひとつそこらのところまでやはり突っ込んだ話し合いをするようなことにしなければ、本当なら内閣委員会に小委員会くらいこしらえて、昔は私はよくやったのだ。そこでずいぶん突っ込んだ論議をしたこともあるけれども、何かそこで考えなければ、私も疑心暗鬼が少しあって気をつけながら質問しているのだが、いまの大臣が言っただけでは団交権の担保ができない。大臣が決めちゃったらどうするか。決めちゃって幾ら文句を言ってみたって、法律には「主務大臣が定める」とちゃんと書いてあるじゃないですか。それきりですよ。そうでしょう。専門家にもずいぶん聞いてみました。公労法に入れたらどうなるかということもずいぶん調べてみた。ここにたくさんある。労働省の見解というものはいっぱいある。けれどもそんなことより、あなた方は書簡に忠実にやってくれば、一本の法律で出したんだ、これは間違いなんだ、書簡のとおりになっていないのだ。山地君これは認めたんだから、そうしてくれと言っている。そうしてくださいよ。そうなれば幾らでも知恵をかしますよ。
  297. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いま公共企業体に働く人たちの給与等あるいは分限に関する問題について、先生昭和二十年代後半からずいぶん御苦労いただいた。先生のいままでのいろいろな御経験に基づいた御発言に対しては、大臣といたしましても深い敬意を表させていただきたいと思います。  また、人事院総裁からの書簡に関しても重ねてのお尋ねでございます。私どもといたしましては、先生いまこの問題をどうするかという問題の、いわゆる新しい法律が施行され、その法律が適用された場合に、その境界に達しない人たちの問題については、私はやはり現場の人たちに大きな不安があることは率直に認めたいと思います。こういうことにつきましても、私どもとしても政府としては十分これから検討さしていただきたい、このように考えております。
  298. 大出俊

    大出委員 きょう私は大蔵省呼んでいるのですよ。なぜ大蔵省を呼んだかというと、年金権を持ってない人、六十歳ということにした場合に、ちらちら十五年年金なんという話が聞こえるけれども、そんなものはだめだ。大蔵省に頼んでいるというなら、ここへ出してください。目の前に出してもらわなければ、そんなことはできない。どうするのですか。具体的に出してください。
  299. 山地進

    ○山地政府委員 いま御指摘の無年金者の取り扱いにつきましては、先ほどいろいろ御言及があったわけでございますが、民間の場合の通算年金等もあるものでございますから、共済法でそういった民間と同じような取り扱いができないだろうかということで大蔵省に話をしておりまして、関係各省もこの問題があるということは明確に認識をして、この検討をしている段階でございます。
  300. 大出俊

    大出委員 共済法でなんというのはだめです。それは共済法の規定をいろいろ持ってきてという話が前からあるのです。たとえば再雇用問題なんかも同じなんです。共済法の関係で言えば、これは七十七条の一項に、つまり再び組合員になったときには年金を停止されるわけです。一遍やめると、年金はもらえるけれども、再雇用されれば停止になるのですよ。再雇用されたら払えという規定があるのです。払わなければいかぬのです。再雇用になれば、賃金が下がるでしょう。勤める年限が少ないでしょう。掛けたってもらえる年金額が一つもふえないのです。掛け捨てなんだ。そうでしょう。掛け捨てでも払えということになるのだ。だから、この種のことを含めてこういう提案の仕方をするなら、八十一条の四というのは再雇用なんだから、そうならば、そこらのものもいまの無年金者の問題も、半掛けの十五年年金になりそうな人も、全部この法律の特例で経過措置でここで決めなければ共済法にはなじみません。これはいまの規定があるのだから。そんないいかげんなことで通すわけにはいきません。これはだめですよ。どうするのか、具体的に出してください。さっき具体的に申し上げたのだから。
  301. 野尻栄典

    ○野尻説明員 私ども共済年金を所管しております立場から、共済年金の関係につきまして御説明申し上げたいと思いますが、確かに共済年金は受給資格期間が二十年ということで、それ以外に短期の受給資格を認めておりません。したがいまして、定年法施行後に定年退職される方が組合員期間二十年に達していないと、原則として年金の受給権は発生いたしません。しかし、これは共済年金だけの受給資格の問題でございまして、昭和三十六年以降わが国の公的年金は、すべてそれぞれの年金制度の期間を通算し合って、その全体を通算して二十年に達していればそれで年金は支払うという仕組みはもうすでに確立しております。したがいまして、共済組合員としては期間が十年あるいはそれ前後しかなくとも、その他の先ほどお話がございました炭鉱の離職者の方とか、その他前には厚生年金の被保険者であった期間があるわけでございますから、そういう期間と合算して二十年以上になれば、それで年金権がつくという仕組みはできているわけでございます。したがいまして、そういうことで大部分の方は年金権についてはカバーされるというふうに私どもは考えているわけでございますけれども、それでもなおたとえば国民年金に入るべき人が入っていなかったというような例外がございますならば、その例外の方々につきましては、民間における各種の資格期間の短縮措置等を勘案しながら、年金権の付与ができるように特例措置を共済制度上で考慮していったらいかがか、こういうふうに考えている次第でございます。
  302. 大出俊

    大出委員 それじゃ具体的にちょっと聞きますが、先ほどの団交権の担保問題を私はやめたわけじゃないので、まだ継続しますが、ちょっと話がいま出たから、いま委員長から御指名になったので、私が呼んだ大蔵省の人が答弁しましたからちょっと触れますが、よろしゅうございますね。  ここに私、持っております資料は、中途採用職員の採用状況、これは郵政省のものです。郵政省職員採用試験乙種の受験資格年齢の変遷というようなことで、四十五年から五十一年度、受験資格年齢制限を三十五歳未満にして、五十二年度から五十五年度は四十歳まで上げた。そして炭鉱離職者の方々を採用されている。三十七歳から四十歳採用の方が五百人いる。きちんとした数字で五百人。この方は最低三十五歳、最高四十歳。ここに具体的にございます。これは郵政省の資料です。そうすると、これは斧さんが答えたのですが、百二十何名どころじゃない。それからそのほかに駐留軍の離職者の方が相当大量に採用されているとここに書いてありますが、この方々は、郵政省でもいいです、大蔵省でもどこでもいいけれども、それじゃ具体的にどうなっていますか。この法律を議論しているのに、その周辺をきちっと責任を負わないなんというばかなことは認められない。これは具体的にどうなっているのです。無年金者がいるのか。一体二十年年金にはどのくらいのところでいってなるのか。最低三十五歳、最高四十歳。ですから、そこら全部手当てしてくださいよ。それでなければ、こんなのは議論できないじゃないですか。
  303. 斧誠之助

    ○斧政府委員 人事院としましては、先ほど来五現業職員の話題が出ておりますが、これは別の法律で定めるのが望ましいということで意見を申し述べましたので、私どもの方が調べましたのは、給与法適用職員についてだけ調べまして、それが百四十名余と、こういうことでございます。
  304. 大出俊

    大出委員 給与法適用職員だけというお話がいま新たに出てまいりましたから、ということになりますと、じゃ全体をカバーしてみたらどのくらいあるのか。要するに地方公務員を入れますというと、これも実は後で触れなければならぬのですが、つまりここに地方公務員の定年制が、基準ということで法律に書かれています。この基準からいきますと、準ずるとは違う。中央で決まったものが、まず一〇〇%とは言わぬまでも、条例化されて、ここで問題は、基準条例のモデル条例というものが必要だ。基準条例の案も自治省から出してもらわなければならない。どういうものをお決めになるのか。国家公務員だけ審議しているけれども、そうはいかない。全部絡んでくる。地方公営企業もみんなある。条例でと言うなら、それは一体どういう基準条例をおつくりになるのか出していただきたい。そういう関係が出てくる。だから、対象人員は五百万。その方々について、いまの無年金者あるいは無年金者に等しい二十年年金権を取得できなそうな方々は一体どのくらいいますか。だれが答えてもいいですよ。給与法適用者だけなんてのんきなことを言っていては困るじゃないですか。基準というものを決めて全部にカバーするのじゃないですか。
  305. 金光洋三

    ○金光説明員 お答えいたします。  炭鉱離職者の採用につきまして先生御指摘の数字は、いま手元に正確な数字ございませんが、たしかその程度の数字であったかと思います。具体的には四十歳未満の方の採用をいたしておりまして、その方々のうち四十歳ぎりぎりの方が何人いるかという点は、手元に数字がございませんのでわかりませんが、仮に四十歳ぎりぎりで採用になっていましても、六十歳定年でございますと、その間二十年の勤続ということになるのでほぼカバーされるのではないか、こんなふうに考えております。
  306. 大出俊

    大出委員 つまり、これもつかみの数字、腰だめの数字ということでございまして、それは非常に無責任だと思うのですね。一つの法律ができたらばらばらっと困ったのができても、そんなものはしようがない、大筋で見てこのくらいだからよかろうというおっつけ仕事はやるべきでないですよ。総務長官、これはいけませんですよ。いままでもこの委員会でよくありまして、そのことはもう避けなければいかぬ。一つの法律ができたら、それをカバーしていくたくさんの対象者がいるんだから、その中でエクセプションが幾つかあってもしようがないということではやはりいけません。だから、そこらはひとつどこかで責任を持ってくれなければ困るんですがな。給与法適用者だけでございますと言って、人事院の斧さんの方は、私のところはそうだから。そうすると、これは皆目見当のつかぬままでということになるので、これはどこかで何とかしてくださいよ。いまここでできなければ審議中に何とかひとつ大臣やってみてくださいよ。どのくらいどうなるのか、私は具体的に数字を挙げたんだが、やってみてください。大臣、いかがですか。
  307. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いま先生の御指摘の点は、この審議の間に一応調整をさせていただきたい、このように考えております。なお、この機会に……
  308. 大出俊

    大出委員 私に言わしてください。  先ほど専門家である山地さんと、国鉄の御出身でございましょうが、人事を長くおやりになっておられたし非常に詳しい山地さんとやりとりをいたしておりましたが、だから、お互いの言っている筋は私もよくわかる、山地さんがおっしゃっている筋もよくわかる。国家公務員法というものの中で八十一条を持ってきて、ここに二項をつくってかくのごとく。再雇用から先は読みかえはないわけですから。そのほか読みかえてと、それをせっかくここに給特法があるから給特法を使った。しかし、私に言わせれば、それは国家公務員法の特例なんだから、国家公務員法の枠内の問題なんだから法律一本じゃないか、人事院の書簡はそうじゃないじゃないか、別途法律でとこうなっておるじゃないか。  なぜこれを私は強調するかといえば、団交権の担保が欲しい。三公五現、三公五現で公労法適用以来今日まで来たんだから、ここで分かれていく。その意味では担保が欲しい。総務長官、そのことを五現の関係の方々がみんな心配しているんですから、ひとつこの間に、いまの山地さんの答弁だけじゃ困るので、ここのところはどういうことになっていくのかを話し合うなり詰めるなりわかるようにしてくれませんか。
  309. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生の御指摘の団体交渉権の担保の問題につきましては、現業で働く方々にとっては非常に重要な問題でございます。私も同様な認識を持っておりますので、関係省庁と連絡をいたしながら、なお委員の先生方の御意見も聞きながらこの問題の検討を進めてまいりたい、このように考えております。(「この法案が通るまでの間に」と呼ぶ者あり)この法案を通していただくまでの間に十分検討させていただきたい、このように考えております。
  310. 大出俊

    大出委員 余り簡単に通るまでなんてなことを言うとうまくないですな。通さぬこともあり得るわけでございまして、実は私もここで江藤さんの顔を見ながら、委員長の顔を見ながらさっきから考えておったわけでございますけれども、ぜひひとつ早急に中身について通い合うような形にこれはしていただきたいというふうにお願いをしておきたいわけであります。  それじゃあと幾つかの問題について、時間がなくなりましたが、まだ少し時間がございますので聞かしていただきたいのであります。  一つ、林野庁の関係の方々の問題でございますけれども、ここも特殊な職場でございます。基幹作業員、まあ基幹作業職員というのが正式名称でございましょうね。一万九千八百人ほどおいでになる。この方々はこの法律の適用範囲内においでになる方々という認識でいいんでございますか。簡単に答えてください。
  311. 宮崎武幸

    宮崎説明員 お答えいたします。  そのように理解しております。
  312. 大出俊

    大出委員 これはもう少しつけ加えなければいけませんけれども、この基幹作業職員制度というのは林野庁独自のものなんですね。常時勤務を要する職員なんです。常に勤めている職員。ところがこれは妙なことになっていまして、夏八カ月冬四カ月というような契約で合計十二カ月、だから一年、こういうわけです。それで定年制が適用されると考えた場合に、林業労働者の皆さんというのは長い間の経験やたくさんの職種があります。私も伐木だ育苗だと山のてっぺんまでずいぶん歩いたことがありますけれども、つまりそういう高度の技術が要求される。八十一条のどこに入れるのか。六十五があり、六十三があり、あともう一つ高度な技術が云々だと特殊なものがあるわけでありますが、どこにいくのかという、ここのところはどうでございますか。――わかりますか。「職務と責任に特殊性」とこの法律に書いたところがございますけれども、山地さんとさっきやりとりした中に。いかがでございますか、林野庁の皆さん。
  313. 宮崎武幸

    宮崎説明員 「職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難」というような要件がございますが、基幹職員につきましては、私どもの理解では「職務と責任に特殊性がある」というふうには解せないのではないかというふうに考えております。
  314. 大出俊

    大出委員 ちょっとそこのところも、いま何とおっしゃいましたか。いまの答弁はそうはならないという答弁だろうと思うのですね。これはいま理由はいっぱい書いてありますが、これから物を暑い始めますと時間がなくなってしまいますから、なるのかならぬのかというのは、これまた先ほどの話のように審議中に詰めてくださいよ。そこのところ、なぜかという理由もございますから。いいですか。  それから、林野の皆さんも中途任用者が非常に多い。年金、退職手当の受給資格、つまりさっき年金権という問題もございますけれども、これも何か特例を考えなければちょっとおさまらぬ気がするのですけれども、そこらのところはどう考えていますか。
  315. 宮崎武幸

    宮崎説明員 御指摘のように、林野の作業員におきましては、身分が途中から常勤に移ってくる、定期から採用に移ってくる者が多いわけでございまして、そうなりますと、通年雇用になり始めましてから勤続年数が計算されるというふうな事態もあることは御指摘のとおりでございます。  そういうことで、現在でも確かに勧奨退職等につきましてもいろいろな現象が出ておるわけでございますが、しかしながら、そういう点はございますけれども、この制度が仮に発効いたしますと、その点について特別のことを考えるというのはなかなかできないんじゃないかというふうに私どもは考えております。
  316. 大出俊

    大出委員 部長、先ほど二つ答弁をしております。なかなかそれはむずかしいんじゃないか、できないんじゃないかといういまの中途採用者の皆さんの問題ですね。それから先ほど「職務と責任に特殊性」というものをひとつ強調したいがと私が言ったら、どうもなかなかというお話なんだが、私の方もいろいろな理由があるんで言っているんだから、これは言いっ放さないで、そこをひとつお互いにじっくり検討する、そういうことにしてもらいたい。なぜかと言うと、私ももう林野の皆さんの職場というのはずいぶん歩いて知っているんですよ。伐木にしても造林にしても育苗にしても、あるいは集材、一生懸命材木を集めることにしても、あるいは林道なんかの問題もありましたり機械運転がありましたよ。  だから、いろいろなことになっているんで、たとえば定員内職員の技能職、これは四千六百人ぐらいおいでになるでしょう。この方々は基幹作業員とほぼ同じような仕事をしておられるのですね。そうすると、これもまたひとつ何とかここで考えなければならぬという問題が出てくる。それから常勤作業員、これは一体定年法が適用されるかどうかという問題もある。ここらは一体どういうことになるか。つまり私どもが知っている限りは、昔は非常勤の定員化闘争などと言って、大蔵省が四谷にあるころ、組合が、一生懸命、全国から上がってきて取り巻いて苦心惨たんした時代もあるわけですよ。十二カ月のうち、冬場があるものだから、やれ十カ月とか、何とかもう一カ月、十一カ月にならぬか、ところが一カ月切れるからというので、そこで契約は更新だ、ずっと十年も二十年も勤めているのに、ほかにかえがたい人間ばかりなのにと、苦しいところが山ほどあるわけですよ。だから、あなた方の方もそのつもりでひとつ物を考える、こういうことにしていただきたいと思うのですが、いまの点はいかがでございますか。
  317. 宮崎武幸

    宮崎説明員 法律の運用あるいは解釈に係ることでございますので、有権解釈になりますと、いろいろ関係省庁とも協議しなければならないと思っておりますが、現時点では、私ども林野庁としての解釈は先ほど先生に申し上げたとおりでございます。
  318. 大出俊

    大出委員 いま有権解釈云々ということがございましたけれども、先ほどもいろいろ議論しておりますように、あなた方の解釈がそうであっても、そうでないという理解の仕方もあるわけでございますから、反論をいたしておきますが、やはり林野の職場環境から言って、本当に苦労している方々でございますから、そういう意味で、できるだけひとつ救っていくという原則を皆さんは考えるべきだ、こう思うのですね。  それから、林野の職員の皆さんの中で、六十歳以上の方というのはいまどのくらいおいでになりますか。
  319. 宮崎武幸

    宮崎説明員 細かい数字はございませんが、約五百人程度と考えております。
  320. 大出俊

    大出委員 そうですがね。ここに、年齢階別勤続年数階別基幹の人員、こうありますね。これで六十歳から六十四歳というのが七百八名いますね。そんなに少ない数じゃないですよ。そこらじゅうどうもそういうふうに食い違うのじゃ困るじゃないですか、二、三百人どこかへ行っちゃったなどというのじゃ。これはあなたの方の数字ですよ。そうでしょう。だから、やはりそこらのところはもうちょっと……。退職手当も五条適用になっていないなどという方々がおるのです。施行令の第一条の一項一号で除外されているなどという人たちもいるのです。だから、これはそこらも含めて細かく当たってみなければいかぬと思っているのですがね。もうちょっと親切にやってみてくださいよ、さっきみたいなことばかり言っていないで。
  321. 宮崎武幸

    宮崎説明員 ただいま申し上げました約五百人という数字でございますが、私どもただいま申し上げましたのは、勧奨によりまして退職しなかった者、要するにいま居座っている者と申しますか、その数字を申し上げたわけでございまして、これによりますと現在四百六十三名、こういうことになっております。
  322. 大出俊

    大出委員 いまのやつをやっているともう時間がありませんが、私が持っているのは皆さんの方の数字でございまして、違ったことを言っているわけじゃない。  そこで、再雇用というのは制度的にどういう手続をして、八の十二を使ったりいろいろするのでしょうけれども、何で、どこに一体根拠を置いてお考えになるのですか。
  323. 斧誠之助

    ○斧政府委員 この提案されております法案で、八十一条の四で「再任用」という規定がございます。それが根拠でございまして、そこには任命権者が行うことができるようになっておりまして、人事院の定めるところに従い、こういうことですので、人事院としては基準を定めるということになります。  再任用の場合は、その者の能力を活用することによって、公務能率に寄与できるような知識、技能を持った人がいれば再任用いたしましょう、こういうことでございますので、規則にはそういう知識、技能を証明するようなもの、それから過去の勤務成績の状態、それから再任用するポストについては退職時と同等以下でございますよというようなことを定める予定をしてございます。
  324. 大出俊

    大出委員 印刷、造幣、アルコール専売の対象になる方々、通産、印刷、造幣の方々につきまして、先ほど私申し上げました中途採用で年金権云々ということにかかわる、あるいは年齢的に、今回もし法律が通るとすれば、六十歳以上、旧来の協約がございますね、皆さんの方で。年齢何歳ぐらいでお決めになっていたかという問題が一つございますから、そこを合わせて三点、ひとつそれぞれお答えをいただきたいのですが……。
  325. 太田耕二

    ○太田説明員 まず勧奨退職の勧奨する年齢でございますけれども、五十八歳と九カ月で勧奨いたしまして、私どもの方は実際退職していただくのが五十九歳と六カ月ということになっております。  それから、中途採用云々という話でございますが、私どもいま詳しく調べておりますけれども、ほとんどいないというふうに了解いたしております。
  326. 田中泰助

    ○田中説明員 造幣局の場合、勧奨退職の年齢男子六十歳、女子五十九歳ということでやっております。  それから、中途採用もほとんどございません。  それから、六十歳以上の方もほとんどいらっしゃいません。  こういうことでございます。
  327. 大出俊

    大出委員 労働省の皆さんは、安定局長がおいでにならぬようでありますから、承りたいことがこの議事録にありますけれども、きょうのところは飛ばして遠慮しておきたいと思います、御本人でございませんようですから。  そこで、最後に一つ総務長官に申し上げておきたいのでありますけれども、最近の高齢化という現象の中で、私どもの足元、横浜なんかもそうでありますが、たださえ中高年齢者の雇用ということが非常に大きな問題になっているのですね。  いま幾つかの現業の方々に、時間がありませんから簡単な質問をしたのですけれども、実は案外早くやめてしまう方々があるわけですよ。公社、国鉄なんかそうですね。数字を見ますと五十五歳というのが案外多い。なぜかと言うと、遅くまでいると行く先に困るのですよ。だからそういう意味で、条件も五十五が一番いいわけですね。そうすると行く先を考えて、やはりやめるということで、そこは比較的スムーズにいくわけですね。ところが郵政省はどうなっているかというと六十・二歳ですよ、いまいる、つまりやめていく年齢で計算をしましてね。なぜそうなるかというと――五十五じゃないですよ。六十・二。というのは、さっき申し上げたように、炭鉱離職者の方だとかあるいは駐留軍の方だとか、私も郵便配達してきた人間ですけれども、非常に苦労してやっておられる。しかし、業務の性格上、俗に言うつぶしがきかぬというとちょっと言葉が悪いけれども、すぐほかへというわけにはなかなかいかない。そうなると、その企業の特殊性で、六十を過ぎても、勧奨があっても、こういう事情だから何とかもう少し働かしてくれと言わざるを得ない方々が非常に多いというわけです。そういう意味で企業ごとに非常に違うのですね。だから、私は実はそこらから先が労働省に対する質問のつもりだったのですけれども、民間の場合ならこれはほとんどが団体交渉ですよ。ただ片方に、企業の、つまり年齢が上がれば上がっただけよけいに手当を払わなければいかぬとか、企業年金の場合にはよけい払わなければいかぬとか、使用者負担分が多くなるとか、いろいろなことでつくっておるわけです。だから、官業の場合に、いま言ったような違いが仕事の性格上ある。そうすると、そこのところは、原則はやはり自由な団体交渉で自主性というものを生かして、うまく回転をしていくように、そして長年勤めた方々がそれから先の人生について大変不安定なことにならぬような進め方がどうしても必要だ。だから、そういう意味で、先ほど団交権の担保ということを固執しましたけれども、ぜひ全体的に見て中途採用というのを、人事院が把握している百二十何名というのじゃなしに、地方公務員の基準の条例がどうなのか知りませんけれども、この法律がもしも通過するとすれば大きな影響力を持つのですから、そこらも気を使って全部調べていただくという努力をぜひしていただきたいと申し添えまして、最後に大臣の御答弁をいただきまして終わりたいと思います。
  328. 中山太郎

    ○中山国務大臣 公務員の方も一般国民も初めて急速な高齢化社会を迎えるわけでございます。その中でいろいろな予測もたくさんございますし、また働いておられる方々が次の職場を求めるという問題でも、いろいろな不安を持っていらっしゃる、これは一般の国民も一緒だと思います。その点につきましては、政府といたしましても、今後とも慎重に御意見を承りながら検討してまいりたい、このように考えております。
  329. 江藤隆美

  330. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 同僚の矢山大出委員の質問に引き続きまして、国家公務員法の一部改正を中心にその周辺の諸問題についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  まず、八月に予定をされております人事院勧告の問題について少しくお尋ねをいたしたいというふうに思います。  御案内のとおり、給与の勧告については人事院が独立の権限を持っておるわけでございまして、給与勧告については国会並びに政府にこれを勧告することが認められておるわけであります。そこで、ことしの八月に向けていま人事院では、春闘もおおむね収束の過程にあるわけですが、五月六日から民間の職種別の給与実態調査に入って、大体私どもの承知しておるところでは六月の十六日ぐらいを目途にして調査をし、そしてこの結果を集積、分析をして恒例の八月の十日前後に勧告をするプログラムであろう、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、人事院の勧告に直接対象になる公務員共闘の組合の関係から藤井総裁に対しまして「給与勧告基礎作業の改善に関する申入れ」というものを二月十三日に出しておるわけでありまして、これは長橋給与局長が会われたというふうに承知をしておるわけでありますが、この改善の項目は、調査対象から事業所抽出率、比較対象職種、比較給与の範囲、職種の対応等級の設定、積み残し事業所、追加較差の算出式、特別給比較、その他として三項目にわたる調査を要請をしておることは御案内のとおりでございます。そこで、この前段の八項目までの給与勧告基礎作業の改善の問題について人事院としては、ことしの調査の場合にどういう内容のものを取り入れて勧告作業に入っていくのか、その辺のところについてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  331. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 ことしも給与勧告作業を進める時期に入っておるわけでございます。いま御指摘もございましたように、人事院といたしましては、大体例年どおりのテンポでもって作業を進めておりまして、この連休明けから調査にかかりまして、おおむね来月の十五、六日ごろまで所定の事業所等について詳細な実地調査をいたしたいというふうに考えまして、目下すでにその実施に入っておる段階でございます。その後の作業につきましても、おおむね従来どおりのテンポで進めていくということに相なると思いますが、いろいろな情勢の変化あるいは調査項目の集計その他問題点がどのような点が出てくるかというような点もございまして、勧告がどうなるか、また勧告の時期がいつごろになるかということは、いまの段階ではまだ確定的なことは無論申し上げることはできませんですが、しかし、例年の実績というものもございますので、そういうものを十分にらみ合わせながら作業についてのテンポはできる限り速めまして、正確な資料に基づいて勧告作業を実現をしてまいりたい、かように考えております。  その間に、いまお話しになりましたように公務員共闘からいろいろの要求がございます。これはわれわれの方の各段階でそれぞれお会いをして御意見もよく承っております。私もいままですでに二回にわたって直接にお目にかかりましていろいろ意見の交換もいたしておるようなわけでございます。そのときに持ってこられました要請書の内容についても、私自身もよく承知をいたしております。これに対して公務員共闘の方々にもわれわれの考え方ということを大体申し上げておりますが、本年の場合、いろんなこともございますけれども、やはり従来と同じテンポで大体同じ状況でもって進めてまいるのが一番いいのではないかというふうに考えておりまして進めておるわけでございますが、特に今年度の場合は、実は昨年給与勧告を出しました際に、あわせて報告というものをいたしまして、その報告の中で、戦後三十余年にわたっていまの公務員制度の骨格というものを基礎にした人事院制度がずっと続いてまいっております。その間情勢の変化においていろいろな改革すべき点は改革をしてきたけれども、しかし、その後における情勢の展開から、特に高年齢化、高学歴化というようなことに対応して、ここで根本的に、総合的に公務員制度自体を見直すべき時期に来ておるのではないかということについての見解を表明をいたしました。それの作業も本年度から本格的に進めるということに相なっておりまして、いま組織のみならずあらゆる準備を鋭意進めておる段階でございます。  それとの関連がございまして、今年度は、いままでやらなかったようなことで若干つけ加えておるものもございます。もし詳細にわたって御要請がございますれば、給与局長などからお答えをいたしたいと思いますが、その中では、たとえば高年齢対策としては、具体的にどのようなことをやっておるのか、たとえば昇任試験というようなことが実際にどの程度にどの方向で行われておるかというような点も含めまして調査、検討の対象にしてまいりたい、かように考えております。
  332. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 給与局長の方から要点的に補足があれば説明を願いたいと思います。
  333. 長橋進

    ○長橋政府委員 ただいま総裁からお答えしましたことに尽きております。基本的には、民間企業の調査につきましても、従来どおりの線ということでやってまいりたいというふうに考えております。
  334. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私、この公務員共闘からの申し入れの各項目に入るというわけにいきませんので、これらの点については、組合側の意見も今後勧告までの過程で取り入れるべきものは積極的に取り入れて勧告作業を進めてもらいたい、こういうことを強く要請をしておきたいと思います。  そこで、ことしの場合はたまたま財政再建あるいは行革というふうな時期とぶつかっておるわけでございますけれども、御案内のとおり、過去人事院ができましてから今日まで、人事院勧告は実際に出たけれども、これがなかなか実施をされない、そういう経過昭和四十五年段階までずっと続いたわけであります。私はそれまでの段階における経過について具体的に申し上げようとは思いませんけれども、いずれにしても勧告時期を、たとえば五月というのに対して翌年の段階に入って実施をするとか、あるいはまた、たとえば昭和二十八年の七月十八日の勧告で言えば二十九年の一月一日の実施とか、あるいは三十一年七月十六日の勧告で言えば三十二年四月一日実施とかいうふうに、いろいろ年度によって違いますけれども、いわば人事院の勧告自身が、内容的に問題はあるとしても、その勧告自身を値切ってきた歴史が昭和四十五年の段階までずっと続いてきたわけであります。このことは、後ほど議論をします退職金問題あるいは今日具体的に議論の対象になっております定年制の法案をつくるかどうかという問題にも、やはり重要な関連を持った問題であることはいまさら申し上げるまでもございません。そういうふうな長い闘いの経過といいますか、公務員共闘側から言えば闘いの経過を経て、昭和四十五年の段階でようやく完全実施、それ以来、人事院勧告の中身の是非は別として、これが今日まで実施されてきておるということに相なっておるわけでありまして、過般本委員会において同僚の渡部委員の質問に対して人事院総裁も、また給与担当大臣である中山総務長官も、やはり人事院勧告が出されれば完全実施をするというふうな方向で御答弁があったわけでありますけれども、その点について、改めて中山長官から人事院勧告の実施問題についての基本的な考え方を承っておきたいと思います。
  335. 中山太郎

    ○中山国務大臣 人事院勧告に対する私の基本的な考え方というお尋ねでございます。人事院制度そのものが労働基本権の制約の代償機能を果たすという中立の機関である、こういうことで、政府はこのところ、十年ばかりでございますが、勧告があればこれを完全実施するということがすでに定着をしておりますし、先生お尋ねの、今年人事院勧告が出されれば、総務長官といたしましては、この勧告を完全実施するように努力をしてまいりたい、このように考えております。
  336. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 人事院総裁から、先ほどの答弁の中で、これから公務員制度の全般的な見直し作業といいますか、それをやっていきたい、こういうお話がございまして、御案内のとおり人事院に総合施策検討委員会を発足さして、大体五十八年中に具体案を取りまとめて六十年に向けて実施に移していくという、そういうお考えのように承知をしておるわけであります。そこで、この考え方の中で、たとえば任用制の問題あるいは給与の問題、あるいは職階制という問題について、一体見直しのポイントをどこに置くのかというふうな点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  337. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 検討の基本的な方向というのは大体決まっておりますので、ここでは簡潔に問題点だけにしぼって申し上げたいと思います。  任用制度で申しますと、具体的に申せば一つ試験の種類の問題がございます。これは、現在ございます上級、中級、初級というこの試験の区分というものについて、現在では御承知でありますように、短大卒程度の中級試験に上級試験に普通は行く人、普通の大学を卒業した人が受験するのが九五%というようなことになっております。また高校卒業程度であるはずの初級についても一〇%になんなんとする受験者が四年制の大学から来ておるというようなことがございます。こういう点については、やはり試験区分自体について問題が起きてくるんじゃないかということもございますので、試験区分自体について、やはり検討すべき時期がはっきり来ておるというふうな感じがいたします。またそういうようなことで、現実に公務員になりました人々が、あと五年なり十年たちますと、入り口のことは別問題といたしまして、処遇の問題についていろいろ問題が起きてまいりましょう。そういう場合に、やはり職場環境の改善というようなことから見まして、昇任試験その他についても制度化を具体的に図っていく、現在公務員自体にはそういうことはございますけれども、これはまだいままで実施に移されておらない。そういう問題をやはり具体的に取り上げるべき時期に来ているんじゃないかというような感じがいたしております。  また、給与制度自体について、これは根幹についてはいまのところ変えるつもりはございません。ただ、俸給表の現在のそういう適用範囲というようなものが果たして妥当だろうか。また本俸といろいろな手当がございますが、そういう手当の配分状況がどうであろうかとかいうような点については、根本的に掘り下げてやらなければならぬ問題がかなり出てきておるように思います。  まだ、いまお話しのございました職階制というのが非常に遺憾ながら変態的な取り扱いで、法律ができておりながら実行に移されていないというような点について、現在の制度あるいは改善すべき制度との絡み合わせをどうするかという点等について、いろいろ掘り下げて検討をいたしたいということを考えておるわけであります。
  338. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの人事院総裁の御答弁で少し間違えておられるのじゃないかと思うのは、たとえば任用制度の問題で、採用試験の点では上級職の甲、乙、中級、初級とありますが、中級で九五%台というのは合格者なんですね。それから初級で一割台というのは、九%と言っておりますが、これは合格者なんですね。先ほどは申し込みの状態で言われましたけれども、要するに、それは答弁の間違いだと思います。いずれにしても、本来、大学卒であるべき上級試験を受けなければならぬのが、中級の短大、高等学校卒業の方で合格するのが九五%、高校で出てくる初級の方に約一割合格、言われるように、採用試験については根本的に考えなければならぬという段階に来ておる。ある意味ではこのままに放置してきた人事院の、そういう面における責任が問われなければならぬのかと思うのですけれども、それは別として、上級職の甲の場合は、いわゆる大学院の修了者あるいは在学者というのが大体三五%上級試験の方の合格に来ておる。いわば高学歴化といいますか、それが初級、中級にまで入り込んできておる。中級のごときは九五%が大学卒で占めるという状態になっておる。これはいずれにしても、どういうふうにしていくかという問題では、そのままに放置できないことは事実だと思うのですね。  同時に考えていかなければならぬのは、いわゆる公務の場合は、管理監督部門あるいは技術専門部門というところに、分化傾向がそういう方向に出てきていると思うのですね。特に私が技術官僚出身だから申し上げるのではありませんけれども、同じ大学を出て法科等出た場合と、いわゆる農学部とか工学部というようなところを出たところでは、東大のケースを一つとっても非常に違っていく。これをこのままにしておいていいのかということは、やはり活力ある公務員制度というものを考える場合には――何も東大だけが例ではありませんけれども、実際に管理監督部門あるいは技術専門部門、こういう方面に中級から上の方では分化傾向を持ってくる。これに対応する新しい給与のあり方はどうかということも考えていかなければならぬこともあろうかと思うわけであります。しかも採用試験は、高等学校であれ、短大であれ、大学であれ相当志願者が殺到するわけでありますから、試験で採用するのは当然のことだと思いますけれども、一たんそういう区分で入ったら、最後までところてん式で、いわゆるエリートコースは限定されるということであってはいけない。学校は家庭の事情その他で上へは上がれなかったけれども、公務に入ってからなかなか成績優秀で伸びていく者に対しては、やはり上級への道あけというものは当然なければならない、そういうものもこれから検討していく任用制度の中では、基本的にはスタートは試験でありましょうけれども、自後昇進問題については、研修も含めて有能な者はどんどん上がっていくという体制が基本的に考えられていかなければならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、それらの点について総裁から御答弁願いたいと思います。
  339. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 九五%、一〇%の点は御指摘のとおりでございまして、私ちょっと表現を間違いましたので、おわびいたします。  それから、そのほかの点でいろいろ御指摘になりましたことは、先刻なるべく簡略にということで要点を中心に申し上げましたが、まさしくいまお述べになりましたような点も、これはその後だんだん起きてきておる重大な問題でございまして、そういう点も十分頭に入れながら、これに対応する具体的な改善策というものを当然ながらあわせて検討してまいる所存でございます。
  340. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いわゆる国家公務員、地方公務員の場合、一般職とか特別職とかいうふうに分けられて、国家公務員関係で言えば、特別職については、特別職の職員の給与に関する法律で総理大臣以下閣僚を初め律せられておるわけであります。  そこで、これは自治省関係になりますが、いわゆる地方の県、市町村長、首長の給与問題ということで若干お伺いをいたしたいと思うのであります。  私の手持ち資料で、そのままであるとすれば、いわゆる首長、知事の場合、あるいは政令都市の市長の場合、月額百万円をオーバーするものが三知事、四政令都市の市長、七人ということに相なっておると承知いたしております。そして知事について言えば、鳥取県の七十九万円というのが一番低いのでありますけれども、七十万台というのはこれだけでありまして、他は八十万台以上九十万台、そして先ほど言ったように百万をオーバーしておるのが三県、政令都市では広島だけが八十万台であって、あとは九十万以上、百万オーバーが先ほど言ったように四市長、こういう形になっておるわけであります。  そこで、自治省にお伺いしたいのは、こういった首長は、後ほどの法案で出てまいります退職金の関係は後に回しまして、いわゆる地方自治体の、憲法上許されておる地位というのはもちろんありますけれども、自治省から言えば、こういった地方自治体の知事、市町村長の給与等がそれぞれの自主性で進んでいけばよろしいと考えておるのか、あるいは全体的なこういう特別職の報酬のあり方は、考え方としてはこうあるべきだろうという御指導をなさっているのか、その辺のところについて、自治省のこれまでの指導についての考え方をお伺いしておきたいと思います。
  341. 大塚金久

    ○大塚説明員 地方自治体の議会議員またはその知事、市町村長の、いわゆる首長の報酬または給料等につきましては、一般の職員の場合は地方公務員法が適用されまして、地方公務員法二十四条等にその給与の決定原則の規定があるわけでございますが、そういう特別職の方々につきましては、法律上の基準等の規定はございません。したがいまして、そういう特別職の方々につきましては、それぞれの職務の特殊性に応じて、当該議会において個々具体的に判断して決定されるという制度になっております。しかしながら、特別職の報酬及び給与につきましても、公費の支出であり、住民の税金で賄われているものでございます。したがいまして、その特別職の職務の内容と責任に応じたものでなければならないことは当然でありますが、住民の十分な理解と支持の得られるものでなければならないというふうに考えております。  自治省といたしましては、このような観点から、特別職の報酬等を決定するに当たりましては、一つ国家公務員の特別職の職員の給与、それから二番目には当該地方公共団体における特別職の職員に関するここ数年来の給与改定の経緯、さらに当該地方公共団体の一般職の職員の給与の状況、それから他の地方公共団体との均衡等の事情を考慮して決定するよう、それからさらにそういう特別職の給与につきましては、より公正な決定を期するために、議会に提案する前に、住民各層の代表等で構成される特別職報酬審議会を設置して、その諮問を得て実施するよう指導してきているところでございます。今後とも審議会の議を得、議会の審議等を通ずることにより、住民の意向を十分反映して、適正な給与が決定されるよう指導してまいりたい、かように考えております。
  342. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いずれにしても、この特別職の給与なり報酬という問題は、たとえば中央で言えば総理百五十五万、閣僚百十三万という現状で、それぞれ特別職はずいぶんたくさんありまするけれども、中央の場合はそれで決めていくということです。  地方自治体の場合、いま御答弁のようなことでいかれるわけですけれども、たとえば東北六県の場合は旧八十万であったのをいずれも八十七万でそろえる、こういう形をやっておるところもありますし、またそれぞれ県の知事の報酬を見ていきますと、どういう物差しかは別として、上下それぞれ変化があるわけであります。地方議会の県会の場合で言えば、大体五十万から六十万台というふうな形に今日来ておるわけであります。同時に、県別に細かく見ていきますと、知事よりも政令都市の市長の方が上であるというのも出てまいりましたり、その地域においては県会議員よりも政令都市の市会議員の方が若干上であるというのが出てまいりましたり、それでいいのかどうかということは、やはり問題だろうというふうに思いまして、いわゆる報酬審議会をつくっていろいろ彼此勘案をしながらやると申しましても、何かその辺のところに、地方自治体の首長、議員等の給与、報酬問題についてどうあるべきかということは一つの検討課題ではなかろうか、こういうふうに考えますけれども、それらの問題について自治省としては今後どう考えていかれるのか、重ねて御答弁を願いたいと思います。
  343. 大塚金久

    ○大塚説明員 ただいま御答弁申し上げましたように、特別職の報酬、給料等については、法律的な指導の基準となるべき規定はないわけでございますが、先ほども申し上げましたように、職務の内容、責任に応じたものであるという考え方で、しかも住民の十分納得の得られる決定でなければならないというふうに考えておるわけでございます。その場合、参考になるべきこととして、職務が比較的類似している国の特別職とか、他の地方公共団体の特別職の状況等は参考になる要素だというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、私ども、現在その特別職の報酬等につきまして、具体的にどうという形での指導をするよりも、住民の十分納得の得られるような形で、より公正な決定がなされるよう指導してまいりたい、このように考えております。
  344. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先ほど大出委員の方も、国家公務員の定年制についての総務長官の書簡に基づく、藤井人事院総裁の書簡に基づく回答という問題についていろいろ議論がございました。私は、これはきわめて変則、異例のやり方だというふうに思うのです。本来、国家公務員法二十三条の「意見の申出」の人事院の権限の問題もありますけれども、今後公務員制度の検討をするにいたしましても、あるいは先ほど総裁自身の御答弁になった、これからの検討課題の問題にいたしましても、総理府の人事局自身は、また同様に総理府の設置法の関係で、人事局の事務としては、総理府設置法の第六条の三で「人事局においては、次に掲げる事務をつかさどる。」という中の第一項には「国家公務員に関する制度に関し調査し、研究し、及び企画すること。」それから第二項には「国家公務員等の人事管理に関する各行政機関の方針、計画等の総合調整に関すること。」以下読みませんけれども、要するに総理府人事局、それから独立機関として存在しております人事院は、これから始めていく人事院のいわゆる公務員制度の検討という問題は、相関連した部局が総理府にもあるわけでありまして、日本の国内で、東京に官庁があって、書簡形式でという異例、変則のやり方というのは、これからはもうやめた方がいい。一回そういうことが行われたけれども、これからはやはり人事院は人事院の国家公務員法上に基づく権限に基づいて、意見のある場合には、それぞれの条項に基づいて意見を国会並びに政府に出してくる、こういう形をとるべきであって、現職の総務長官として中山さん、これからこういう書簡形式というのは本来やめるべきじゃないかというふうに考えておりますが、その辺のところはいかがですか。
  345. 中山太郎

    ○中山国務大臣 総務長官が書簡を発信するということを今後改めたらどうか、こういうことでございます。当時の事情等、書簡を発信するにはいろいろそれなりの理由があったと思いますが、私は前例としないというふうな考え方を持っており、これからは人事院総裁もひとつ中立機関としてどんどんと公務員制度に関しては意見を出していただきたい、勧告を出していただきたい、それを政府は受けて、また国会も受け取っていただいて、公務員制度全般に対して見直しを行っていく、こういうふうな考え方を持っているわけであります。
  346. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 総裁にも一言お尋ねをしていきたいのですが、こういう書簡形式ということについては必ずしも好ましくない、本来人事院は国家公務員法に定められた権限に基づいて、必要に応じてそれぞれの条項に基づいて意見の申し出なり、必要があれば勧告をしていく、こういう方針でむしろ今後はいきたいというお考えでしょうか、一言お答えを願いたいと思います。
  347. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 定年制の取り扱いをめぐる問題については、いろいろその背景の事情等もあったかと思いますが、本来の姿といたしましては、公務員法上も意見の申し出あるいは勧告という形式がちゃんと決まっておるわけでありますからして、これに基づいてやることが本則であろうというふうに私も考えます。
  348. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 定年制に直接関連をする問題に入ってまいりたいと思います。  今日、国家公務員法の一部改正、地方公務員法の一部改正を通じて、定年制を法制化をして双方同時にやっていこうという姿勢にあるわけでございますけれども、これから議論を展開していく立場に基づいて、基本的に政府のそういう方向に対しては賛成できないという立場をとるわけでございますが、まず最初にお伺いしたいのは、これまで地方公務員法の一部改正を通じて地方公務員の定年制の法制化が先行したわけでございます。これは昭和三十一年の段階以降四十四年も含めて、いずれも廃案になっていったわけでありますけれども、自治省として、国家公務員に先駆けて地方公務員の定年制をやる必要があると当時どういう立場から考えられたのか、お伺いしたいと思いますし、また中央の場合、人事院が直接この点では関係があるわけですけれども、今日の時点まで国家公務員については、地方公務員で定年制をしく場合にもその必要はないという見解は、どういう立場からとってこられたのか、この二点を双方明らかにしてもらいたい。
  349. 中島忠能

    ○中島説明員 お尋ねの件につきましては、当時の記録をよく読んでみますと、基本的には、今回の法案と同じように、新陳代謝を促進して行政効率の促進を図るという立場から法案を提案したようでございますが、当時、現在と同じように勧奨退職というのを行っておりましたけれども、勧奨退職の応諾率が余りよくないような地方団体もあったようでございます。そういう地方団体を中心といたしまして、定年制の法制化についての要望が強く出されたという経緯もありまして、三十一年、四十三年と三回法案を提出したわけでございます。
  350. 斧誠之助

    ○斧政府委員 人事院といたしましては、退職管理の一つの有力な手段として定年制というものがある、それについては公務員制度に導入すべきかどうかということは、前々から研究はしておりましたわけでございますけれども、国家公務員の場合、地方公務員法改正が言われました当時、勧奨退職、これによって新陳代謝がかなりスムーズに行われておったという実績もございました。それから職員の年齢構成自体もまだ相当若い状態でございまして、あの時点で定年制を積極的に導入するという必要性は認められなかったということで、現在まで研究を続けておったわけでございます。
  351. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今回、定年制について、これの導入は、藤井総裁からの書簡のあれをもってすれば意義があるというふうに文面の中で触れられておるわけでありますけれども、積極的にこれを実施すべきだという文面には読めないわけでありますが、自治省の場合は、従来から地方公務員の定年制、をしこうとして、それが結局成功しなかった。国家公務員の場合は、今日やる時期が来たという、これは総理府人事局の問題もありますけれども、勧奨退職がスムーズに労使間の知恵として行われてきて、特別に問題なく今日まで来ておる。新陳代謝もその限りでは今日までスムーズに行われてきた。なぜこの時期に、そういうふうに労使の知恵としてやってきたのに、法律でもって一刀両断、六十歳で定年で大半はやめてもらう、特例のものが若干法律的にも明示されておりますが、そういう形式をとろうとするのには、法制化でこの期に国家公務員も地方公務員も一挙に、そして公労法で団体交渉権を正規に与えられておる五現業まで全部網の中に入れてやろうという考え方は、政府の意図を十分に理解する立場には立ち得ないわけであります。この点については総務長官と自治省からお答えを願いたいと思います。
  352. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いまのお尋ねに対しましては、総理府並びに、まあ政府といたしまして、やはり民間がどうかということで絶えず国民の実態というものを把握していなければならない、そういう中で、民間企業では九七%が定年制を導入している、世論調査におきましても、いわゆる公務員制度の中に定年を導入しろという声が六〇%を超えているということを一つの基盤として、考え方の柱に持っているわけでございまして、政府としては、絶えず国民が主権者として何を求めているかということ無視するわけにはいかない、これが第一でございます。  もう一つは、高齢化社会というものが急速にわが国の社会に歴史の上で初めてやってくるという中で、過去の高度成長期に行政機構の中の仕組みをふやす上で、公務員が一時大量に採用されている、そういうふうな一つの山が五年ぐらい後に実はやってくる。こういう中で、いわゆる年功序列型の公務員制度の現行の体制の中では、やはりこの管理職のポストを乱設しなければならない、こういうことが一つの予測として私どもとしては見たわけでございまして、それが果たして国民の要求にかなう道であるかどうかという問題から考えますと、やはり活力のある人事管理というものを長期的な観点に立って堅持していくことが、これからの社会には政府としての大きな責任であろうということが一つでございます。  こういうことから、今回定年制の導入ということで法案を御審議していただくようなことになったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  353. 中島忠能

    ○中島説明員 地方公務員につきまして、今回法案の提案をいたしまして御審議を願っておる背景は、ただいま総務長官から御答弁がございましたが、それとほぼ同じでございます。
  354. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 戦後三十数年、公務員共闘あるいはその傘下にある国家公務員関係の組合あるいは自治労、こういったところでは、労使の知恵として退職勧奨というのを取り入れて今日まで来ましたし、これからの事態についても、労使の協議を通じて対応する組織的な判断と力というものを十分持っておるというふうに私は理解をしておるわけであります。私自身も、戦後三十年の段階まで全農林本部の委員長その他幹部をやった経験を持っておりますけれども、そういう関係から見ましても、ここで一刀両断、法制化でやるということには、いままで積み上げてきた労使の知恵というものを全く壊してしまうのではないか、そういうふうに私は思うし、このことは財政再建その他の、他のねらいからこういうものをやろうとしておるというふうに言わざるを得ないわけであります。  そこで、立場を変えて民間の労働者の場合について若干関連してお尋ねをいたしたいわけでありますが、これは労働省関係でありますけれども、御案内のとおり、労働省の関係では、本年の一月十九日に雇用審議会の方から藤尾労働大臣あてに、「「高年齢者の雇用の安定を図るため、定年延長の実効ある推進策について、立法化問題をも含めて貴会の意見を求める。」に対し、下記のとおり答申する。」ということで、答申の内容がずっと続いているわけであります。私はこの答申の内容の詳細についてここで論議をしようと思いませんが、定年延長の法制化問題、この問題については、これは国家公務員、地方公務員の場合と違いまして、主として使用者側の方は反対、労働側の方は賛成という形がこの答申の別添の「雇用審議会定年延長部会報告」という中にも出ておるわけでありまして、定年延長法制化問題の反対の論拠としては、「定年延長問題は、基本的に、労使間の問題であって、法律による規制になじまないこと。」以下それぞれ書いてありまして、ことに民間の場合は、企業によって企業内容がいろいろ異なるとか、いろいろなことを挙げておりますが、それに対しまして賛成の論拠としては、「急速な高齢化に対応するため、我が国の雇用慣行のもとでは、定年延長は緊急な課題であり、この実現を担保するためには、法制化を行うことが必要である」以下理由が、それぞれ述べられたところに基づいて掲げられております。  民間の場合、労働省としては昭和六十年を目指して六十年の定年延長に持っていこうという御指導をされておると承知しておりますけれども、特に、法制化問題というふうな審議会の答申との関連の問題について触れながら、雇用審議会の高齢者雇用対策について考え方を御答弁願いたいと思います。
  355. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 お答えいたします。  御承知のとおり、民間の企業におきましては、定年を初めその他のもろもろの労働条件は労使自主的に決めるというたてまえになっております。したがって、最近のように、高齢者の雇用不安ということがいろいろ言われる中で、労働者の方からは高齢者の雇用安定という見地から定年延長ということが取り上げられ、それが単なる行政指導だけではなかなか進まないということから、法制化の論議も出されておりまして、他方、使用者側からは、先ほど先生もお述べになりましたような雇用審議会の部会の検討の中でも、たとえば賃金原資がかさむとか、あるいはポストが足りないとか、あるいは高齢者になじむ仕事がないといったような難点がいろいろ出ておりまして、労使必ずしも見解が一致してないという状況にあるわけでございます。  それで、行政指導の立場で定年延長法制化をどう考えるかという点でございますが、先ほど冒頭に申し上げましたとおり、民間企業では労使自主的に労働条件を決定するたてまえでございます。定年を延長すれば、当然賃金の体系をどうするか、あるいはポストをどうするかといったような問題、つまり雇用、賃金慣行に非常に密接な関係があるということでございますので、従来の年功序列型の賃金、雇用慣行を前提にして、直ちに定年延長だけを義務づけるということはなかなかむずかしい問題があると思っております。  とは申しましても、これは一昨年の国会でございますが、予算委員会での審議経過等も踏まえまして、雇用審議会の検討をお願いしたわけでございますけれども、先生御指摘のとおり、一月に審議会からの答申が出ましたが、現状では労使の見解に非常に開きがあるので、なお引き続き検討をするということになっております。  行政の立場では、先ほど申し上げたように、これから高齢化社会が急速に進んでいく中で、高齢者の雇用不安というものをどうするか、非常に大きな雇用問題になってきております。したがいまして、当面は行政指導によりまして、まずは昭和六十年に六十歳定年が一般化するように目標を揚げまして、これに全力を挙げて取り組んでいく。と同時に、一たん企業から離れました高齢者の方が再就職をするのも、これは決して容易ではございません。求人倍率を見ましても、年齢が高くなるほど求人倍率が非常に落ちている、こういう姿にございますので、その再就職の促進を図っていきたいと考えております。     〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕 そのためには、すでに今国会で成立をさせていただきました雇用関係給付金の整備に関する法律に基づきまして、今後また関係の給付金の充実を図り、そうしたものを活用して高齢者の再就職を促進していきたい。同時に、同じ法律で新設が図られることになりました高齢者の職場改善のための融資制度、こうしたものも活用し、高齢者の雇用安定に努めていきたいと思っております。  なお、昭和六十年以降になりますと、いわゆる六十歳代前半層の労働力人口が非常にふえてまいります。その時点になってあわててその対策をと言っても遅きに失するといった問題もございますので、六十歳代前半層については、その就労希望が六十歳以前の方とは大分形態も違っている面もございますので、その多様な就業希望といった姿に対応して、就業の場を実質的に確保できるようなことも考えていかなければならないということで、これはすでに政府が五十四年に策定いたしました第四次の雇用対策計画の中でもそうした点の指摘をしてございますが、そうした点もあわせまして高齢者の雇用安定に努めてまいりたいと思っているわけでございます。
  356. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、民間の場合は定年延長法制化問題については賛否両論があって、結局行政指導という段階でしばらく推移するような御答弁でございますけれども、労働者側から見れば、これは今日の資本主義体制のもとにおいて、大企業もあれば中小企業もある、景気の波動ももちろん受けていくといったような状況の中で、たとえば最低賃金制の問題にしても、あるいは労働条件等の労働基準法の問題にしても、あるいは組合の団結権や団体交渉権や罷業権、労働三権の問題にしても、そういう体制の中で基本的に重要なものは決めていくという従来の伝統から見て、しかも経営者側に任しておいたのでは樹齢化社会の中でなかなか六十あるいは六十五というところに来ない。したがって、やはり今日の情勢の中では、労働者側が言っておるように、定年延長の立法化要請というのは、民間産業の場合においては当然の声として出てきておるのだと思う。  いずれにしても、そういう状況の中で民間産業でも賛否両論がある。国家公務員、地方公務員、三公社五現業の形で、特に五現業を含めた形で言えば、定年制法制化は労働者側としては強く反対をしておる。そうして政府あるいは自治省関係としては、これを実施をしたい。民間と公務員関係では全く対照的な形になっておる。ただ、国家公務員、地方公務員、三公社五現業の場合は、組織としては幾つかになっておりましても、ある意味では三つのブロックになっておりますから、これは別に法制化しなくても、いままで労使の知恵としてやってきたことで十分これからの事態にも対応できるという意味で、私はやはり法制化の必要は認めないという立場を持つわけでありますが、この機会に、これは人事院になりましょうか、総理府の人事局になりましょうか、欧米各国の定年制の実態というものについて、簡潔に御説明序願いたいと思います。
  357. 斧誠之助

    ○斧政府委員 人事院で諸外国二十カ国につきまして定年制の状況を調査しましたところによりますと、十七カ国が実施しております。そのうち十一カ国、これはカナダ、西ドイツ、イギリス、フランス、イタリア等でございますが六十五歳、これが大部分でございます。次いでタイ、エジプト、これが六十歳となっております。一番高い年齢を定めておりますのがデンマークでございまして七十歳、一番低い年齢を定めておりますのが韓国で五十五歳ということでございます。アメリカ、ブラジル、メキシコ、この三カ国は、警察官でありますとか航空管制官など、一部を除きましては定年年齢を設けておりません。
  358. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、いま御答弁がありましたように、欧米諸国の定年制導入の時期あるいは変遷、こういったものを見てまいりますと、たとえばスウェーデンの場合は十九世紀後半に定年制の導入、あるいはイタリアの場合は一八九五年で六十五歳、西ドイツの場合は二十世紀の初頭、これは六十五歳、それからデンマークの場合は一九一九年、これがいま御答弁のありましたように原則として七十歳、それからスイスの場合も一九二一年、これも男子の場合は七十歳、フランスその他ありますけれども、いずれにしても六十五歳が大勢なのです。七十歳もある。先進諸国はおおむね六十五歳。ところが、経済大国、GNP世界第二位、あるいは高齢化の点では世界のトップを行くという日本が、定年制法制化で言う場合に、国家公務員、地方公務員関係は六十歳、民間はこれから六十年を目指して六十歳に持っていく、一体これはどういうことなのでしょうか。それだけ日本の場合は近代国家としての労働政策というのは非常に立ちおくれておる、いわば経済合理主義あるいは利潤主義、こういうのがバックボーンにあって、そういうきわめておくれた状態にあっておると見ていいのでしょうか。その点についてお答えを願いたい。
  359. 斧誠之助

    ○斧政府委員 定年制の諸外国の実施状況につきましては、ただいま先生がおっしゃったとおり、私たちもそのように承知しております。  この勤務条件、給与でありますとか勤務時間でありますとか、そういうものは各国の長い歴史的な背景、事情とか、あるいはそれぞれの国の慣行とかというようなものをバックにして成り立つものでございます。定年制につきましても例外ではございませんで、そういうバックグラウンドがありまして、各国のそれぞれの特殊性に応じた定年制が設けられる、こういうことであろうかと思います。  私たちが今度原則定年六十歳ということで見解を表明いたしましたのは、現在の国家公務員の在職状況、特に高齢者の在職状況、それから各省庁におきますところの退職官吏の実態、民間の定年制の実施状況、政府の雇用政策、そのようなものを種々勘案いたしまして、当面六十歳が最も適当ではないかということで意見を表明した次第でございます。
  360. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは、日本の場合も、政府自身が定年制を考える場合も、たとえば六十歳という場合は、これは当面六十歳という解釈で、本来先進諸国との関係考えても受けとめておられる、早い機会にやはりさらに少なくとも多くの先進諸国の六十五歳定年というところに持っていきたいという考え方を前提として六十歳定年を出してきたのかどうか、この辺のところについてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  361. 山地進

    ○山地政府委員 民間の動向というのが、大臣の申し上げたとおり、一番大事な一つポイントだと思うのでございますが、六十歳定年というのは大体三〇%前後いま民間が普及しております。それから六十歳以上というのは二%か三%、そのくらいであろうかと思うわけでございます。日本の特殊の終身雇用あるいは年功序列というような給与体系において、今後こういった定年とそれから給与体系というものがどういうように変わっていくのかというのは、まさに世界でもないような高齢化の社会の中の大変な実験だろうと思うわけでございますが、今後民間の動向あるいは雇用状況というものが顕著に変わった場合には、公務員の六十歳定年というものについては、当然再検討されるべきものであろう、かように考えております。
  362. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私はこの機会にわが国の高齢化社会へのいわゆるスピードといいますか、そういう点について厚生省関係に少しくお伺いをいたしたいと思うわけでございます。すでに厚生省関係にはあらかじめお話をしてございますので、先進諸国と対比してわが国の高齢化社会へのスピード、現状、こういったものについて御答弁を願いたいと思います。
  363. 長門保明

    ○長門説明員 お答え申し上げます。  現在のわが国の老人人口の総人口に占める比率でございますが、これは昨年の十月一日現在で行いましたセンサスの結果によりますと、六十五歳以上の人口が千五十七万四千人で、総人口に占める割合は九・〇%でございますが、これが将来どうなるかという見通しといたしましては、五十一年十一月に厚生省の人口問題研究所で行っております将来人口の推計によりますと、今世紀の終わり、昭和七十五年、西暦二〇〇〇年でございますが、この時期には千九百六万一千人、総人口に占める比率にいたしまして一四・三%になるであろうというふうに見込んでございます。  これに対しまして、諸外国の例でございますが、仮に六十五歳以上の総人口に占める比率が五%から一二%までふえました所要年数を比較いたしますと、一番年数の長いのがフランスでございまして、五%から一二%に上昇いたしますまでに百七十年かかっております。以下スウェーデンが百五年、西ドイツが七十五年、イギリスが五十五年程度かかっておりますが、日本といたしましては五%でございましたのが一九五〇年、昭和二十五年でございまして、一二%に到達するであろうと見込まれますのが一九九五年でございますので、大体四十五年程度かかるのではないかということでございまして、フランス等に比べますと、三倍以上のスピードで高齢化が進む、こういうふうに見込んでおります。
  364. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 出生率あるいは合計特殊出生率、こういう最近の出生数の年次別推移というのを見てまいりますと、出生率というものは千人に対して何人生むか、そういう比率で示されておりますが、従来出生率の場合は一八%、一九%台からだんだん下がってまいりまして、昭和五十年の段階で千人で十七・一人、以下十六・三人、十五・五人、十四・九人、十四・二人、五十五年は推計で十三・七人、いわゆる出生率が非常に低下していく。合計特殊出生率というのは、十五歳から四十五歳でしたか、そこまでの女性が子供を生む人数の問題で、これが大体二・一であれば人口は大体減少していかない。ところがこの二・一というところは、昭和四十九年が二・〇五であって、五十年以降は一・九一、一・八五、一・八〇、一・七九、一・七七ということで、だんだん子供を産む年齢のところで産まれてくる子供の状態というのが非常に低下をしてきておる。つまりその意味は、高齢化の中で老人人口の方はどんどんふえていく。一方、将来の生産人口になるべきところが相対的にどんどん減少していくというふうな形になっておると思うのですけれども、この厚生省の人口問題研究所の五十一年の調査の場合は、合計特殊出生率二・一で将来を推計したのではないか、こういうふうに思うのですが、この作業見直し等は最近やられておるわけでありますけれども、その辺のところにも触れて、いわゆる若い年代のところ、中間のところ、老齢人口の占めていく比率の高齢化のスピードのところ、さらに敷衍して御答弁を願いたいと思います。
  365. 長門保明

    ○長門説明員 近年わが国の出生率が低下しております。先生御指摘のとおりでございまして、この動向につきまして、これは昭和四十九年から出生率が低下したわけでございますが、その背景がどのようなものであるかということにつきまして、昭和五十四年に人口問題審議会に特別委員会を設けまして、その出生力の動向を約一年かかりまして検討したわけでございます。  その結果といたしまして、最近の出生率の低下の理由といたしましては、大きく分けて、人口学的に見ますと三つ考えられるのではないかということでございます。その第一は、その四十九年以降の出生率の低下、一つはベビーブームが昭和二十二年から二十五年ごろにかけてございましたが、このベビーブーム後の急速な出生の減少が、ちょうど一世代を経過いたしまして、最近の結婚とかあるいは出産の適齢期の女性人口の減少となってあらわれた、これが一つ。それから二番目といたしまして、高学歴化の進行によりまして、結婚年齢がだんだん上昇しておりまして、若い夫婦が相対的に減少しているというふうな現象。あるいは三番目といたしまして、夫婦の間におきまして子供を産みます出生間隔の調整というふうなことが行われている。こういったことがその出生率低下の背景になっているんではないか、こういうふうに見ているところでございます。  このような事態のほかに、社会経済的な要因が作用しているのではないかというふうな議論もございますが、これがどの程度数量的に影響するかというふうな点につきましては、残念ながら計量的な研究も十分でございませんので、いま申しましたような、そういった実情、背景を踏まえ、かつ最近の出生率の低下の実態を踏まえまして、将来人口の推計、実は昨年十月のセンサスの結果がこの三月に一%抽出の結果が得られておりますので、これと直近における出生、死亡の動向等を前提にいたしまして、将来人口の推計をやり直す作業に現在着手しているところでございますので、およそことしの秋から暮れぐらいにかけて新しい推計がお示しできるのではないか、かように考えているところでございます。
  366. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先ほどの御答弁にもありましたように、先ほどはちょっと物差しが違った数字で高齢化のスピードを話されましたけれども、たとえば六十歳以降の人口の割合が八%から一八%に拡大をする。それに要する年数ということで言えば、フランス百七十七年、スウェーデン百三年、イギリス五十六年、西ドイツ五十四年、日本四十年。いわば高齢化の比率というのは非常なスピードで日本は進んできておる。  日本経済研究センターによる将来人口推計の中で取り上げてみますと、昭和五十五年から昭和六十五年の十年間に人口増加が八百七十一万人、そのうちで四十四歳以下では八十一万人減、四十五歳から六十四歳のところでは六百五万人増、六十五歳以上では三百四十七万人増。昭和六十五年から七十五年を取り上げますと、人口増加が七百三十九万人増。そのうちで四十四歳以下が百四十九万人減、四十五歳から六十四歳が三百七十三万人増、六十五歳以上が五百十五万人増。つまり若いところあるいは若い生産人口とも言うべきところ、これでは今後十年を展望しても二十年を展望しても、いまの現状で推移をすれば非常に減少していく。そして中年以上、いわゆるあくまでも六十五歳まで勤めたいというのが、いろんな世論調査をしても出ておりますけれども、それ以降もやはりいろんな諸条件で勤めたいというのが希望としてありますけれども、少なくとも働く人々の側から言えば、六十五歳まではぜひ勤めたいというのは大勢である。その四十五歳から六十四歳というところが前段では六百五万人増、後段では三百七十三万人増。六十五歳以上のところでも、前段では三百四十七万人増、後段では五百十五万人増。いわば何か定年制をしくのに五十歳前後のところにこぶができておる、こぶができておるというようなことを、まるで何か突然そういうものが生まれたような形で言っておりますけれども、わが国のこれから十年、二十年を展望してまいりまするというと、若いところは減少傾向、中年のところはふえ、さらに高年のところは、長生きの状態の中でさらにふえていく。こういう状態の中で、先進諸国では、もう十九世紀以来大体六十五歳定年。仮にこれを法制化するにしても、そういうことをもう早くからとっておる。場合によると七十歳、そういう形をとっておるのに、わが国の高齢化のスピードはフランスの四倍以上のスピードで進み、これから十年、二十年の中では、中年あるいは高年齢のところがどんどん増加傾向の中で、しかも六十歳定年を固定化するようにとれるような考え方で定年をしこうということになれば、これはもう国際的に見ても、日本のいまやろうとしておることはきわめて後進国的であると断ぜざるを得ない。  臨時行政調査会の第一次の場合にも、六十年は当面定年制をしく場合には考えるけれども、今後やはり六十五歳を目指してこれを延ばしていかなければならぬということを第一臨調のときには定年制問題について言っておることは御案内のとおり。今日六十歳で定年制を法制化でしこうとしておるのは時代逆行じゃないですか、国際的に見て。いかがです。
  367. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ヨーロッパ諸国の高齢化というものは相当な歴史を持っておる。日本の場合はおくれて出ましたけれども、非常なスピードで行く。こういう中で、私どもとしては、やはりこの老人たちというか高齢者の人たちが働く場所を欲しい、これは一つの大きな社会の欲求であろうと思います。ただ、ヨーロッパと日本と比較した場合に、雇用の性質が違うんではないか。日本の場合は終身雇用年功序列型給与、こういうふうな形になっておりますけれども、ヨーロッパの場合あるいはアメリカの場合には、横へどんどんと職業をかえていく社会体質を持っている。だから五十五歳で年金を受ける年に来ますと、年金と次の職業とのいわゆる合計した金額が自分の月の報酬としてどうなるか、これは絶えず公務員考えておりますし、民間企業の人たちも考えている。こういうところで実際に、いわゆる法律で決められた定年のときまでずっといる公務員が何人いるかというと、これはもう全然推計の予測と違いまして、現実にはほとんどの公務員がやめていっているというのが欧米の姿であろうと私どもは考えております。  また、人口の密度が全然違う。そういう中で、先生御指摘のように、若い世代の再生産率というものが一応ある状態の中で、その人たちが支払った税金によって公務員が生活を確保するということが一つ公務員の特殊な給与の制度でございますから、この点ひとつ私どもとしては国民の意見というものを絶えず聞いていかなければいかぬ。しかし、私は何も六十歳六十年定年にこだわる必要はないと思います。  先生御指摘のように、初めての経験でございますし、私どもとしては、この法律の御審議を願って、この法律で六十年六十歳という定年制度が実現をするということになりましても、六十年になったときの社会の状態、また厚生省の人口問題研究所の人口統計というものがその時点でどうなっているか、あるいは労働省が全体の労働の実態というものを踏まえて、これからの雇用というものの姿はどうあるべきかというようなことを六十年以降において改めて検討することは、政府としても必要なことであろうと考えております。
  368. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 中山長官が答えられた、いわゆる日本公務員の終身雇用制ということを言われたのだけれども、定年制を六十五歳にする思想というのは、欧米の場合はそのままお仕事をやられれば六十五歳までおっていただいて結構ですということになっているのです。これは同じ終身雇用の思想なんです。ただ、それぞれの国によって中間のところでかわっていくかどうかというのは別問題なんですね。私自身も戦後大体五回ばかりいろいろ仕事をかえましたけれども、これはそれぞれの個人によって差はあると思いますね。学校の先生をやったり県におったり農林省におったり、わずかの間にずいぶんかわりましたよ。これはそれぞれの考え方であって、要するに試験採用を通じて公務員になった者、これはやはり国であれ地方自治体であれ、いわば行政を取り扱っていく中枢になるわけです。そこにいる者は、やはり公正、能率あるいは政治的中立といろいろなものが要請される。ことに日本の場合は国家公務員、地方公務員もいわゆる労働三権が制約どころかストライキ権は禁止という状態である。こういう状態の中でわが国だけが終身雇用制のように言われるのは、これは答弁としては間違っておると私は思うのです。やはり考え方としては、定年制を六十五でしく以上は、特別の場合がなければおっていただいて結構です、そういうことであって同じだと思うのですね。そこに年齢別に見て、たとえば日本の場合だって二十歳から三十歳代のところで地方自治体の場合を見ても、ちょっと予想よりも多い数字でやめていますね。それはもう各国ともに大なり小なりあることであって、みんなが六十歳なり六十五歳まで全部おるということではないと思うのですね。  要は、私の言いたいのは、国際的に見ても六十五歳定年というのが公務員の場合いわゆる大勢である。日本は今日猛烈なスピードで高齢化社会に入っておる。そして若い人口は減少傾向にあり、中年のところはふえ、さらに高齢者はどんどんふえていくという現状にある。そういう中で国家公務員、民間も含めて、民間では六十年六十歳と言っておりますけれども、これといえども、やはり同じように六十五歳のところまで持っていくということは行政の立場から言えば当然のことだろうというふうに思う。そういう中で、今回のいわゆる定年制法制化問題を考える場合には、国際的に見ても後進国的である。また将来展望から言えば、これはきわめて短視的な立場で、いわば別の観点からこの問題を取り上げ過ぎておるというふうに私は言わざるを得ない。  そこで私は、この問題でもう一つ厚生省の方にお伺いをしておきたいのは、いわゆる退職年齢と年金とのドッキング問題であります。厚生年金等を中心にして、今後の高齢化社会の中で厚生年金の問題の、いわゆる年金支給開始年齢等も含めた問題をどう考えておられるのか、この機会にお答えを願いたいと思います。
  369. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 先生ただいま仰せのとおり、わが国は今後急速に高齢化社会に向かうわけでございまして、したがいまして、高齢者の雇用終了ということの拡充が大きな課題になってまいるわけでございます。したがいまして、年金制度といたしましては、今後の雇用状況の推移に適合した方向に持っていく必要があるわけでございまして、お尋ねの年金支給開始年齢の問題につきましては、年金と高齢者の雇用との間にすき間が生じないように配慮しながら総合的に考えてまいりたいというふうに考えております。
  370. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 きわめて抽象的に、しかもあと論議をしていくのに掲げ足を取られぬように当たりさわりのない答弁をされましたが、それは答弁になっていないんじゃないですか。現実に大平内閣当時でも、厚生年金あるいは国民年金あるいは各種共済年金の問題について、いわゆる年金支給開始年齢という問題については、労働省も関係がありますが、ある意味では厚生省は直接そういうところの中心の官庁になると思いますけれども、一定の考え方というか、やはり方向としてはそういうふうに持っていきたいという考え方があるわけでしょう。それをきわめて抽象的にしか答えずに、これは労働省も含めて結構でありますけれども、明確にこういうふうな方向を考えておるということだけははっきり言ってもらいたいと思うのです。
  371. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 職業生活とそれからの引退というものがスムーズにいかなければならない、その際の高齢者の生活設計に配慮していかなければならないということは当然のことであろうかと思っております。したがって、雇用政策の見地から申し上げますと、高齢者の雇用が終了し引退に至る場合には、当然年金その他の政策が関係してまいるわけでございますから、その雇用政策と社会保障政策とが有機的に、言うならドッキングするような形で円滑に引退の形がとれるようにする、これが望ましい姿だと思っております。  一昨年でございましたか、年金の支給開年齢の引き上げ云々が財政問題と絡んで論議されたこともございます。その際も私どもとしては、雇用の現状というものを十分配慮して、いま申し上げたような職業生活から、高齢者の生活設計を考えた上で円滑に引退ができるような形がとれるように関係省庁にも要望をいたしてまいったわけでございまして、その考え方は今後も続けてまいる所存でございます。
  372. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いずれにしても、定年制を法制的にやるかあるいは退職勧奨のやり方でやるか、手法としてはこれは二つあると思うのですけれども、この場合に、やはり年金の支給開始年齢とのドッキングは最小限きちっとしてないと、老後の生活の設計は立たないということは明確なんですね。一方が間隙を生ずるように、たとえば年金の支給開始年齢の方が先へ行っちゃったのでは、これは老後の生活の設計が成り立たないということになるわけでして、そういう問題を考えてくる場合に、大平内閣当時に、いずれにしても、厚生年金にしろその他の共済年金等も含めて行く行く六十五歳に支給開始年齢を持っていく考え方を示した時代があったわけですね。そういう問題と、いわゆる法制化でやるやらぬは別として、官公庁をやめていく年齢というのは最低限ドッキングの状態でなければならぬというふうに思うのです。  そこで、今度は問題を変えて、いわゆる定年制法制化といままで労使の知恵でやってまいりました勧奨退職との兼ね合いの問題についてお伺いしていきたいと思います。  私は、同僚委員の質問に対して中山総理府総務長官の御答弁、人事院総裁の御答弁またその他の局長の御答弁を聞いておると、少しずつニュアンスが違う、こういうふうに思うのです。この機会に、中山長官とそれから人事院総裁からもう一度はっきり御答弁を願いたいと思うのです。私が問題にいたしますのは、人事院総裁の三原長官に対する回答の中で「なお、定年制度実施後も、退職勧奨を行う必要のある場合も見込まれるので、この点について引き続き配慮することが望ましい。」と書いてある。これはきわめて重大な意見の開陳ではないかと思う。いままでは定年制は法制化されてない。そこで労使の知恵として、退職勧奨ということを双方ともに理解してやってきた。ところが定年制を法制化しようという政府側の考え方である。そのときに、従来やってきた勧奨退職も並行してやっていく、これは基本的に考え方が間違っているのじゃないですか。いわゆる定年制法案が法制化された段階においては、これが本格的に実施される段階においては、いわゆる勧奨退職を一般職員に対してもあるいは幹部職員に対しても組織的にやるということは違法になるのじゃないですか。法制的に何ら決めていない形のいままでやってまいりました勧奨退職を、定年制法制化後においても並行できるという考え方は私にはわからない。欧米諸国の定年制の場合は、定年制を六十五歳なら六十五歳、そして六十歳からはかくかくしかじかの条件でやめていく、そういう強制退職、任意退職という二本立ての法制化もあるわけでしょう。ところが日本の場合は、六十歳一本立てにしておいて、人事院自身が「定年制度実施後も、退職勧奨を行う必要のある場合も見込まれる」、これは一体どういう立場なんですか。私は、法制化以降、これが本格的に実施される場合は、退職勧奨を組織的にやることは禁止される、違法であるというふうに考えるのが立法論上正当であろうというふうに思いますが、この点について総務長官人事院総裁からお答えを願いたい。
  373. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 定年制と勧奨退職を同じような比重をもって並立的に進めていくという考え方は、無論私たち持っておりません。先刻来るる御指摘がございましたが、結果的にはそのとおりでございまして、人事院としての見解を勧奨退職について申し上げておりますのも、以下申し述べるようなことに尽きると思います。  これは、先般来御質問に対してお答えをしておることと同列になるわけでございますが、現在は定年制がないから勧奨が行われておるということでございます。したがいまして、定年制がしかれることになりますと、いままでのようないわゆる組織的な勧奨退職は行われなくなるということは当然であろうと思います。そこで、定年制が施行されることに相なっておりまする六十年というものの時期に……(角屋委員「まだ決まってない」と呼ぶ)仮になった場合のことですが、その時期を目安にして申しますと、定年制がしかれない前には、やはり大体同じようなかっこうの勧奨というものが行われざるを得ないだろう。特にいまこぶといいますか、非常に数の多い部類の年齢層がございますから、それらにつきましては、自然の退職を待って新陳代謝というわけにはなかなかまいらない面がいままでよりも多くなってまいると思います。したがいまして、定年制の施行の前には、やはり従来どおりのものがほぼ同様に継続されていくであろうということを申し上げております。  ただ、定年制が施行になりますと、これは組織的な勧奨退職というものは行われなくなります。それが直ちに違法かどうかは別問題といたしまして、やはりそれは定年制がある限り組織的な勧奨退職をそれと並行してやるということは、これは私は妥当な措置ではない、適当でないというふうに思っております。事実上また任命権者といたしましても、勧奨は御本人の御了解を得なければいかぬことですから、そういう意味でそういうものはだんだんとなくなっていく方向にいくと思います。  ただ、申し上げておりますのは、その点はっきりすればよかったといま私も反省をいたしますが、一部の省庁においては、従来の経緯もあり、組織上の問題もありまして、具体的に申せば課長さんのポスト等につきましては、やはりいろんな人車上の配置の問題その他から言って、定年制ができても、それに全部移行するということが困難な場合があるであろう、そういう場合については、いわば全体として見れば、例外的に勧奨退職というものも並立して実施せざるを得ないのではないかということについての配慮はやはり必要だろうという意味のことを申し上げたつもりでございます。
  374. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいま人事院総裁が答弁いたしましたのと一緒でございます。
  375. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 中山長官はこの前のときは、いわゆる幹部級のところは勧奨退職とかということでなしにみずからの生活設計としてやめていく人もあるだろう、こういうふうに御答弁されたように私は記憶をしているのです。つまり一般の職員について、仮に六十年にしろ六十一年にしろこれが法制化をされてスタートしていく以降の問題を一つ考えてみると、この段階ではいわゆる一般の職員に対しても依然として肩たたきでやめることを勧めるというのはもうできない、それをやっちゃいかぬ、そういうことは明確だと思うのです。一方では定年例の法制化で六十歳と言いながら、他方ではその前の段階から肩たたきをやるというようなことは法文上何もない、そういうことをやることは私は違法だと思うのです。中山さんの言われるように、みずからの生活設計としてやめていくというのは、これはヨーロッパだって日本だって、何も六十年までおってくれとか六十五年までおってくれと言ったって、いや私はこういうところにかわっていくというのは幾らもあるわけだ。みずからの意思によってかわっていくということ、それを言っているのじゃない。まだ引き続きおりたい者を組織的に肩たたきでやめさせるということ、これはもう禁止されるべき性格のものだというふうに私は理解しておるわけですが、その点は総務長官人事院総裁も変わりはございませんか。
  376. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 趣旨としてはそのとおりでございます。
  377. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いま人事院総裁の御答弁申し上げたとおりでございます。
  378. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私はそういう意味で、たとえば高級官僚の場合、従来、次官が四十四、五歳代から今日五十歳、五十一歳代になっているのでしょうか。これを六十までおる、あるいは将来六十五までおるということになると、人事がそういうランクの前後のところというのは停滞するんじゃないかという考え方。しかし、法制化でやるにしろ何にしろ、とにかく高級官僚が早くやめるということで、特殊法人問題や天下り問題というのは非常に問題を生じておる。大体高級官僚になっていくという人は、日本の全体的な立場から言って有能な人なんです。ある意味では優秀な人なんです。これが四十五歳や五十歳そこそこでやめてどこも行くところがない、それは当然のことだというのは残酷だと私は思うのですね。だから、そういう点で、いままで天下り問題というのは、ある意味では起こるべくして起こったということが言えるかもしれない。六十歳定年問題というようなことを前提に仮に考えてみる場合は、いまの次官や局長クラスのところというのは、本来はもう少し後の方でやめていくというふうに、いわゆる法の示すところの考え方としては、そういうふうに考えていくべきものなんでございましょう。総裁いかがです。
  379. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 定年制が施行されるということになりますと、それ以後はだんだんとそのような方向にいくのではないかというふうに私も予想をいたしております。またその方が望ましい形ではないかというふうに考えます。
  380. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの論議の過程の中で、国家公務員、地方公務員の場合はマッカーサー書簡によっていわゆる労働基本権というものが制約を受ける、そして国家公務員法が誕生する、そして今日に至っておる。こういう現状の国家公務員法体制、地方公務員法体制というものを将来ともに続けるべきだという考え方は毛頭持っていない。労働基本権については本来国家公務員、地方公務員にも与えられるべきものである。これを制約するという場合は、たとえばストライキ権について条件つきというようなことはあり得るだろう。しかし、少なくともいまのような国家公務員、地方公務員について団体交渉権に基づくいわゆる協約締結等の権限も与えられていない、ストライキ権は禁止であるという状態は、欧米先進諸国から見ても非常に後進国的である、こう言わざるを得ない。この機会にフランスとかイタリアとか西ドイツとかイギリス、こういうところを主体にして、公務員の特に労働三権のうちのストライキ権についてどういうふうにそれらの先進諸国がやっておるかについて御説明願いたい。
  381. 金井八郎

    ○金井政府委員 お答えいたします。  欧米諸国の公務員に対する労働三権の付与状況につきましては、それぞれの国の国情、法体系あるいは労働慣行等によってさまざまな形態になっておりますけれども、主要な国について、特にストライキ権について申し上げますと、まずアメリカでございますが、これは合衆国法典によって全面的に禁止されております。イギリスにつきましては、警察官、軍人以外につきましては、特段にストライキを禁止する法律の規定はございませんので、公務員につきましてもストライキは一応できるという形に了解されております。それからフランスでございますけれども、ここは警察職員あるいは共和国保安隊職員以外はストライキ権を有しておりますけれども、この場合は五日前までに予告義務がございまして、抗議ストは禁止されているということになっております。それから西ドイツでございますが、ここは御承知のごとく公務員が官吏、雇用人、労務者というふうに分類されておりまして、そのうちの官吏につきましては、直接ストライキを禁止する明文の規定はございませんが、これは職務専念義務あるいは服務義務等の規定から禁止されているものというふうに考えられておりまして、それ以外の雇用人、労務者につきましては、一般労働法が適用されますので、ストライキ権はあるものというふうになっております。  大体主要国の状況については以上でございます。
  382. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 主要国という場合に、私はアメリカとは言わなかったのだ。アメリカと日本はそういう点では大体似た状況にあるんだけれども、たとえば西ドイツの場合についても触れましたけれども、これは争議制限禁止立法は存在してないから、やはり解釈上ではストライキ権は認められておるということになるわけですね。そこで西ドイツの場合で言うと、官吏のストライキというのは余り起こってないのですね。それは官吏の身分、待遇の安定とかあるいはエリート意識とか、あるいは賃金についても、総評のヨーロッパ諸国における官公労働者の労働基本権調査報告書によれば、十年勤続で民間より三五%高いとか二十年で五五%民間より優遇されておるとかいうことで、日本では民間準拠、民間準拠と言っているが、私はこの一から十まで民間準拠という考え方は基本的に問題があるというふうに思っているんです。これは公務員の給与を考える場合にも、どういう対象事業所をとるかという場合に、百人規模の企業、それから事業所の場合で五十人のところとかいういまとっておるような方式というもの、これは公務員共闘の関係では千人規模と言っているんだけれども、そこまでいかぬまでももう少し引き上げることは当然考えなければならぬ問題だと思っているんです。西ドイツの場合は、公務員というのはエリート意識を持ち、身分も待遇も非常に安定しておるし、民間から見るとはるかに高い給与を与えられておるという形になっておるわけで、ストライキは一般的には認められた形になっておるけれどもやられていない、こういうことなんですね。他のところについてもいろいろお触れになりましたが、要するにイギリスにせよフランスにせよ西ドイツにせよイタリアにせよ、日本のように国家公務員についても地方公務員についてもあるいは三公社五現業についても、ストライキを法的に禁止もしくはそれに準ずる形をとっておるという国は、アメリカは別として先進諸国にはありません。そういう条件下というのは、まさに占領下においてやられた国家公務員法の改悪が現在まで続いておるというのは、労働三権については、公務員関係はまさに後進国的である、こういうふうに言わざるを得ないかと思うのです。  そういう状況の中で、本来は分限であるとかあるいは労働条件、勤務条件であるかというようなことの定年制の問題の議論はいままでにもやられてまいりましたが、そういう問題を含めて、ストライキ権まで、あるいは団体交渉権まで国家公務員、地方公務員の場合には制約をされ、あるいは認められていないという状況の中で、公務員に最も重要ないつやめるかというふうな問題について、一刀両断の法制化でやるというところにも基本的に問題がある、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。労働省としては、近代国家として、いま国家公務員、地方公務員あるいは三公社五現業を含めて労働三権の今日の制約というものはもっと近代諸国並みにすべきではないかという考え方に対しては、一体どう対処されようとしておりますか。
  383. 中村正

    中村説明員 お答えいたします。  公共部門の労働者のスト権の問題については、非常に長い歴史がございまして、御存じのとおりの経過を経ておりますけれども、私ども所管しております三公五現、いわゆる現業の部門につきましては、御存じのとおり公企体の基本問題会議の意見書において、現状においてはスト権を認めるということは適当でないという結論が出ておりまして、それを受けて政府としては、その意見を尊重するということで対処しているところでございます。そこの意見書で指摘されているいろいろな問題点がございます。何ゆえにスト権を認めるのが適当でないかという点についていろいろ指摘がございますが、今日までの事情では、その条件に大きな変化はないというふうに考えておりまして、現状ではスト権を認めることは適当でないという考えを持続しております。
  384. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そういう考え自身がきわめて後進国的なんです。欧米の先進諸国と対比してみても、労働政策上の問題としてきわめて立ちおくれているというふうに言わざるを得ない。たとえば総評のスト権委員会のストライキ権等の立法構想という中でも、争議権の回復については、ストライキ禁止条項である国家公務員法九十八条と百十条の十七号、こういうものを削除して、労調法の準用規定を置く。さらに団交権の完全保障をやる。団交権については、公務員関係も公労法、地公労法と同一の効力を持つ団交権の完全保障をする。あるいは団結権の完全保障については、国公法の第九節の「職員団体」に関する規定を全面改正をして、労組法上の団結権を与えるようにしていく。こういった形の中で、要するに労働三権については、国家公務員、地方公務員、三公社五現業も含めて、制限禁止の条項を欧米先進諸国並みに近づけていくということが本来必要だろうと思うのです。  そういうことが完全にシャットアウトの状態のもとにおいて、たとえばいま言ったような定年制法制化の問題、しかも大勢として、先進諸国では六十五歳定年ということ、歴史的に見れば十九世紀以来だんだんにそういうものが六十五歳でやられている大勢の中で、わが国ではGNP世界第二位だとか経済大国だと言いながら、六十歳というところでやろうとする。いわゆる国家公務員、地方公務員等の関係労働者が立法化に反対する背景の中には、いま私が論じてきたようなものがそれぞれあって、それならば法制化でこれをやろうというのなら、労働三権というものについて、きちっと与えてもらいたいという要請が出てきても当然のことだと思う。いかがでございますか。大臣、国務大臣はあなたしかおらない。
  385. 中山太郎

    ○中山国務大臣 労働三権を与えてもらいたいという要望に対しましては、かねがね政府はそういう要望があることは存じておりますけれども、現在の姿というものがきわめてうまくいっているということで、国際的にも日本の制度というものは高い評価を受けて、今日外国からも研究の対象にされている、こういうことで、私どもとしては、現在のところこの制度自身をさわるという気持ちは持っておりません。
  386. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま大臣が言うところの考え方は、公務員の場合も民間産業労働者の場合も、いわゆる日本人全体の勤勉性、誠実さ、そして公務についておる場合は、全体としてとにかく仕事に熱心にやっている。企業で言えば、いわゆる終身雇用、年功序列型と言われる賃金の中で、愛社精神、企業中心、これは国際的に見て、従来は経営者側もこれがそもそも問題だと言っておったんだけれども、そのこと自身日本型雇用形態とか日本型賃金形態ということで先進諸国に評価されたところもありますけれども、これからこれをまた変えていこうというのでしょう。いわゆる年功序列型賃金を変えなければならぬということが企業の中にも出てきておるし、人事院がこれからやろうとする場合にも、民間準拠なんという物差しでいっておったら、右へならえ方式でいったら、国家公務員や地方公務員行政官庁には全く合わないような給与体系だって生まれかねない。     〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕 そういう点では、そもそも民間準拠、民間準拠というのは、体制側としては望ましい考え方なんです。企業は、民間労働者に対しては、いわゆる企業意識、あるいは利潤、経済合理主義という中で賃金を決めている。これに民間準拠で公務員の方が決められて、体制としては、そういうことでいくのならば安心かもしれないけれども、そもそも一から十まで民間準拠というのは基本的に問題がある。給与だって、私はそういうことを言いたい。退職金だって、後ほど議論するからきょうはやらないけれども、何でもかんでも民間準拠。国家公務員、地方公務員や三公社五現業については、どういう形がふさわしいかという主体的なものがまずあってしかるべきだというふうに私は思うのですが、長官、いかがですか。
  387. 中山太郎

    ○中山国務大臣 これからの公務員の給与あるいは年金の問題、あるいは年功序列型の再検討の問題等は、人事院におきましても、ただいま鋭意研究をいたしておりまして、私どもといたしましても、この人事院の研究の結果が出てくることを待って、政府としては対応してまいりたい、このように考えております。
  388. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 持ち時間が参りましたので、以上で終わらしていただきます。ありがとうございました。
  389. 江藤隆美

  390. 中路雅弘

    中路委員 きょうは定年制の問題の質疑に入る前に、先日報告のありました有事法制の中間報告について若干御質問しようと思ったのですが、前回の外務省設置法のときにも御質問しました原潜問題の中間報告が行われましたので、時間の関係で、有事法制は改めてまた機会を見て御質問することにして、最初短時間ですが、この原潜の中間報告について御質問したいと思います。  今度の中間報告で、アメリカの責任による事件であるということは改めて裏づけられたわけですけれども、報告そのものは大変つじつまの合わない、日昇丸の乗組員のいろいろの証言とも大きく食い違う、文字どおり作文にしかすぎないと思いますし、一般の新聞の報道を見ても、国民はだれもこれには納得し得ないと考えます。特に、この報告の中にありますが、報告では、SSBNの原潜とP3Cが共同訓練をしていたということを言っているわけですが、わが国の、いわば日米合同委員会の確認の訓練空水域の外の領海も事実上含む近海でこうした無通告の訓練が行われていたことは、大変重要な問題でありますし、またこの共同訓練とあわせて、自衛隊との合同訓練の疑惑も依然としてあるわけですが、こうした疑惑にも全く答えていない。また真実を語っていないと私は考えるわけです。  これはきょうの読売新聞ですが、今度の中間報告を読むと、「日本のごく近海にSSBNを配備していたことを伏せるために、その任務をあえてぼかした。その結果、つじつまが合わないところが出てきたという見方もできる。中間報告でも依然としてあいまいな、なぜ救助しなかったのか、なぜ通報が遅れたのか――のなぞを解くカギは、」この辺にあるのではないか、こういうことも言っているわけです。  これで最初に一、二点お聞きしておきたいのですが、私も、P3Cの行動については、先日、この事件を解く重要なかぎとして航跡を調べればわかるはずだということも御質問したわけですけれども、先日、四月十六日ですか、参議院の内閣委員会で防衛局長は、核搭載の原潜とP3Cが随伴して行動する、共同訓練する、こういう質問について、私どもの知識から言えば、そういうことはないという趣旨の答弁をされているわけですが、今度はアメリカの報告によりますと、これは共同訓練だったということを言っているわけですね。こういうことがしばしば行われていたということになれば、勘ぐって言えば、局長の答弁はこれを隠したということにもなりかねないわけですし、また依然としてある自衛隊との合同訓練の問題も、たとえばアメリカの報告で、午前九時に航行中だったということが最初にありますけれども、救出した自衛隊の護衛艦は、九日の午前九時に奄美大島の古仁屋港を出港して訓練をしながら佐世保に向かっているわけです。こういった点でも依然として疑惑が残るわけですが、いまの問題について最初に防衛局長から、事実はどうだったのかということをもう一度簡単にお聞きしたい。
  391. 塩田章

    ○塩田政府委員 私が参議院の内閣委員会で、P3CとSSBNとの共同訓練は常識的に考えられないという意味のことをお答えしたことは事実でございます。一般論としましてのお答えでございますが、所在の場所を最も秘匿すべきSSBNがわざわざ共同訓練をするということは、考えられないということで、一般論としてお答えしたわけでございます。  今度の中間報告でわかりましたことは、ジョージ・ワシントン号が当時いわゆる任務から離れまして、任務から離れてというか、「プライマリー・アラート・ステータス」という言葉を使っておりますが、第一次的な警戒任務を離れて韓国のある港に向かう途中であったということで、そういう時期においてこういうP3Cの練度を維持するための訓練が行われたということが今回わかったわけであります。そういうことがあるということは、私どもも今回の中間報告によって承知いたしましたが、一般的に、SSBNが本来の任務についておるときにP3Cとの共同訓練ということはあり得ない、あり得ないといいますかきわめて少ないということは現在でも言えると思います。  それから、こういうことがしばしば行われていたのではないかということでございますが、この点はいつも申し上げておりますように、SSBNの行動につきましては、私どもは承知しておらない、今回の中間報告で初めてその一端がわかったわけであります。  それからなお、自衛隊の艦艇の行動から、あるいは自衛隊との間に共同訓練があったのではないかという疑問が依然として残るという趣旨のお尋ねでございますが、そういったことは全然ございません。
  392. 中路雅弘

    中路委員 こうした訓練については、特に秘匿されているSSBNのことなので、防衛庁もいままで知らないというお話ですけれども、はしなくも、今度こうした近海で、定期的な航路の周辺でアメリカの報告ですと共同訓練をやっていたということが明らかになったわけですし、私はこうした訓練は当然やめさせなくてはならない、中止させなくてはならないと思うわけです。この報告の中で、全体がつじつまが合わないのですけれども、防衛庁お見えになっていますから、関係した点で特に二、三その点も指摘したいのですが、たとえば最初浮上してきて潜望鏡を上げて衝突するまで、浮上したのが十時二十六分、衝突が三十二分ですから六分間、この間に二回にわたって潜望鏡を三百六十度回転させた、しかし、潜水艦は日昇丸を見なかったという報告になっています。海上保安庁はたしか視界二キロというお話もされていましたけれども、日昇丸のこのときの報告にあります十一ノットとしますと、六分間で衝突しているわけですから、潜望鏡を上げて三百六十度二回回転させている間にどの辺に近づいていたかということは計算できるわけですけれども、この速力から言えばどのくらいになりますか。おわかりになりますか。
  393. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまのお尋ねの点は、私どもにはわかりません。
  394. 中路雅弘

    中路委員 六分間ですから、速力は十一ノットという日昇丸の報告がありますから一マイル、大体千メートルか千五百メートルもう近づいているのですよ、最初の潜望鏡を上げたときは。それから六分間に三百六十度回転しているわけですから、視界は二キロということも言っているわけですから、潜望鏡を二回も三百六十度回転したのに二千トンの貨物船が全然見えなかった、この報告も全くでたらめじゃないかと思うわけです。しかも、衝突後三分から五分間は目で確認しているわけです。この報告によりますと、一人の船員がブリッジの右舷に静止したまま立って潜水艦の方を見ているということを目で確認しているわけです。わずか前後十分間に、片方では二千トンの貨物船が全く見えない、片方は貨物船に乗っている船員が静止して立っているというところまで見ている事実から言っても、この報告がつじつまを合わせているいかにでたらめな報告かということも、この点でははっきり言えるのじゃないかと思うわけです。  もう一点、これも防衛庁にお聞きしたいのですが、ソナーが日昇丸についての情報を得た、しかし、この情報は当直士官の耳に入らずに確認もされなかったという報告があります。全く常識では考えられないわけですが、この報告について防衛庁はどんな感想をお持ちですか。
  395. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどの二回にわたり三百六十度潜望鏡を回したという記述のところは、六分間ずっと回しておったという意味ではないだろうと思います。それは事情はよくわかりませんけれども、この文章からは、六分間ずっと回しておったという意味ではないだろうと思います。  それから、いまのお尋ねの、ソナーで情報を得て司令室に伝えられたけれども、当直士官の耳には入らなかったという点の事情は、先ほどの答弁でもお答えいたしましたが、私どもはそれ以上、ここに書いてある以上のことはわかりません。
  396. 中路雅弘

    中路委員 いや、私が聞いているのは、通常――これは戦闘だったら全く撃沈ですよ、ソナーで情報をとっていてそれが知らされないというような行動は。これが事実だとすれば、こういう点についての感想はどうですかということが一つ。  それから、さっきの回転ですけれども、私の言っているのは、衝突まで六分間、その六分前にはすでに千メートル、千五百メートルくらいのところには来ているはずなのですよ。その六分間に少なくとも二回は回転しているわけですから、どんなに遠くても千メートル以内には来ているわけです。それが潜望鏡で見えないというのは、常識では全く考えられぬことだということを言っているわけです。いまの質問はそういう趣旨なのです。いかがですか。
  397. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまのソナーの情報が当直士官の耳に入らなかったことについての感想は、先ほどもお答えをしたわけですが、私どもの海幕で聞いた限りでは、どういう事情であったのかちょっとわからない、考えられないという意味の感想はお答えをしたとおりでございます。
  398. 中路雅弘

    中路委員 いまおっしゃったように、普通常識では全く考えられないほどこれはおそまつなものだと思うのです。  もう一点、衝突して後「八マイルほど北方の待機水域まで移動させ、」それで「最初の報告を発信した。」そしてその閥およそ一時間二十七分ということが言われていますけれども、普通潜水艦で八マイルほど北方の待機水域まで移動というのはどれくらいで移動できるのかということと、ここで言われている待機水域というのはどういう地域なのですか。
  399. 塩田章

    ○塩田政府委員 このときのジョージ・ワシントンの具体的なスピードがわかりませんので、八マイル移動に何分要したであろうかということはちょっと私にはわかりかねます。  それから、待機水域のことでございますが、これも先ほどお答えをいたしましたけれども、報告書には「ア・ホールディング・エリア」となっているだけでございまして、それがどういう意味を示すのか、具体的な意味でありますとかあるいは定義的なことが何も書いてございませんので、いまのところ私どもは具体的な意味についてはわかりかねるわけでございます。
  400. 中路雅弘

    中路委員 この待機水域というのが、いわゆる原潜の待機水域といいますか、そういう水域があるとすれば、日本の領海すれすれのところに核ミサイルの原潜の海中基地があるということにもなるわけで、これも大変重要な問題だと私は思います。  この八マイルの移動ということですが、たとえば二十ノットでしますと二十分で行けるわけですね。三十ノットで十五分。だから、一時間二十七分かかっているわけですから、少なくとも一時間はこの衝突した海域にいたというふうに考えられるわけです。その点では、衝突した後いわゆる魚雷の発射の音と考えられる音だとか、水中を物体が走行するシュルシュルという音を聞いているという乗組員の証言が幾つもあるのですが、演習を引き続いてやっていたということは十分考えられるわけですけれども、少なくとも待機水域まで普通考えても十分か二十分で行けるところですから、それが一時間二十七分というのは、乗組員の証言も裏づけているんじゃないかと私は思うのですが、いかがですか。私の考えで大体想像できるのじゃないですか。
  401. 塩田章

    ○塩田政府委員 何しろそのときのスピードもわかりませんし、お答えのしようがございません。わからないとしかお答えのしようがございません。
  402. 中路雅弘

    中路委員 じゃわからなければいけない問題をちょっとお聞きしますけれども、P3Cの行動で主として計器飛行を行っていたということを言っています。これも現場を捜索して潜水艦の潜望境までわかる、そういうのが救命ボートや生存者を全く見なかったというのも本当にでたらめなことだと思います。計器を見ていたから、主として集中していたからという話ですが、P3Cは今度購入されるわけですからおわかりだと思いますが、乗員が何名で大体どういう分担をしているのですか。乗員全部が計器を見ているわけではないわけですね、そうすればP3Cの役割りを果たせないわけですから。そのことと、計器飛行ですから、当然どこかでサービス支援をしていると思うのですね、コンダクトが必要ですから。どこが支援を提供していたのですか。
  403. 塩田章

    ○塩田政府委員 P3Cの乗員とその任務分担の状況でございますが、乗組員は十一名で士官が五名、下士官が六名。士官の五人はパイロットが三人、この三人は正副と予備のパイロットということだそうでございますが、あとの二人は、戦術航空士が一人、航法通信士が一人ということで、士官が五人。それから下士官の六人は、機上整備員一人、対潜音響機器の操作をする人が二人、非音響機器の操作をする人が一人、それから武器員と機上の電子整備員というような割り当てになっておるそうでございます。  しかし、いま申し上げましたのは通常配備の状態でございますが、具体的な行動においてどういう配置をしてどういう割り振りをしておったのか、もちろんわかりません。当該P3Cの中の乗員がどういう配置をしておったのかはわかりませんが、標準的にはいま申し上げたようなことでございます。  それから、P3Cが計器飛行をしておったのであるから、何らかの計器飛行に対する支援があったのではないかという点でございますが、自衛隊は支援をいたしておりません。
  404. 中路雅弘

    中路委員 いまのお話でも、少なくとも乗員が計器飛行をやっているからといって、計器に集中しているから見張りができなかったというような、こんなことは常識でまた考えられないことですし、乗組員の証言でも、パイロットの顔も見えるくらい低空だったということも言っているわけです。この点でも、海面を捜索して救命ボートや生存者を全く見なかったという、これも全くでたらめな報告ではないかと私は思うのです。二、三この報告について例を挙げましたけれども、先ほども防衛庁が常識では考えられないと言うような矛盾もこの中に幾つもあるわけです。  十四日の衆議院の内閣委員会で、私が外務大臣に抗議をすべきじゃないかということをお尋ねしたときに、米側の調査の中間報告を見て、抗議するかも含めて日本政府態度を決めたいということを答弁されていますし、アメリカ側の報告が納得できぬ報告なら、そうですかと言うわけにはいかないということを外務大臣は答弁されています。少なくとも一般の世論もあるいは国民も、またいまおっしゃったように、防衛庁すら常識では考えられないというような矛盾した中間報告が出されているわけですから、これについて当然再調査も求めなければいけないし、徹底して真相を究明しなければならないと思いますが、外務大臣はアメリカへ行っておられるので、外務省、いかがですか。外務大臣がそう約束されているのです。
  405. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  ニューヨークにおきまして伊東外務大臣も、この中間報告を受領するに当たりまして、日本側は日本側でいろいろと調べているので、それとの突き合わせも含めて今後いろいろ考えるという趣旨のことを言っておられますので、大臣が週末にお帰りの上は、その御指示を得まして、しかるべき措置をとることになろうかと存じております。
  406. 中路雅弘

    中路委員 こういう中間報告で政治決着をしてしまうということは、私は絶対ならないと思うわけです。  いま日本側の調査の話が出ましたけれども、海上保安庁お見えになっていますか。――日昇丸の乗組員の供述調書を伊東外務大臣に訪米の際に届けてあるというお話ですけれども、この乗組員の調書は訪米のときに外務大臣に渡してあるわけですか。
  407. 野呂隆

    ○野呂説明員 外務省に対しましては、本件の事故の概要、日昇丸の乗組員等から事情を聴取しました主要点について説明をしてございます。
  408. 中路雅弘

    中路委員 外務省に、すでに乗組員から聞き取りをやられたそれは報告されておるわけですから、その報告については当然この委員会に報告していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  409. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいま海上保安庁から御答弁のございました外務大臣に対する御説明は、口頭でなされておりまして、大臣の訪米に先立ちまして、海上保安庁のお知りになっておるところの一端を外務大臣に対する口頭説明という形で承ったものと承知しております。
  410. 中路雅弘

    中路委員 これは五月七日、きょうの参議院内閣委員会理事会の説明ですと、日昇丸乗組員の供述調書を伊東外務大臣に届けている、伊東外相はこの調書を持って訪米しているということが理事会で説明されているのです。口頭じゃないのです。いかがですか。
  411. 松田慶文

    ○松田説明員 調書をちょうだいしている事実はございません。
  412. 中路雅弘

    中路委員 それでは海上保安庁は、私の聞いているきょうの参議院内閣委員会理事会の説明は違うわけですか、どういう説明になっていますか。
  413. 野呂隆

    ○野呂説明員 海上保安庁といたしましては、日昇丸等関係者からの事情聴取を行っておりまして、その結果を現在取りまとめております。  内容等につきましては、関係委員会等で御質問にその都度お答えしておるとおりでございますが、なおまとめた結果につきましては報告させていただきたい、こういうふうに考えております。
  414. 中路雅弘

    中路委員 まとまったものは国会に報告してもらうのが当然なんです、外務省に報告されているわけですから。私が言っているのは、こういうアリメカの中間報告、でたらめなつじつま合わせが出ているわけです。それと日本の報告、乗組員の報告を国会にも報告しないで外務省に渡して持っていって、向こうでまた両方突き合わせて最終決着になってしまうということになれば、国民にも全く事実が、日本側の調査についてもわからないまま決着がつけられる、そういう心配が非常に強いわけですから、当然外務省に報告されているとすれば、その報告はその都度というだけじゃなくて、まとめて報告されているわけですから、それは国会にも報告してくださいということを話しているわけです。いかがですか。
  415. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいま先生、外務大臣が調書を受け取って、アメリカへ持っていって向こうで突き合わせているという御趣旨の御発言ございましたが、先ほどから重ねて申し上げておりますとおり、そういった調書というものをいただいたり携行していることはございません。  海上保安庁の責任ある方から外務大臣が大臣室に来ていただいていろいろとお差し支えない範囲でお話を承りましたけれども、それを念頭に置いて出ていっておりまして、そして大臣が米側に伝えましたことは、日本側は日本側で調査を行っているから、いずれそれは突き合わせて真実を追求しなくてはならない、そのように言っているというように御理解賜りたいと存じます。
  416. 中路雅弘

    中路委員 それでは重ねて、外務省に海上保安庁が報告をされた、説明をされたそれは国会にも報告されますか。
  417. 野呂隆

    ○野呂説明員 外務省に説明いたしました内容につきましては、私の方で現在取りまとめ中の報告書の中に記載されております。
  418. 中路雅弘

    中路委員 どこでも中間報告というのは最近よくやられるわけですから、当然それもあってもしかるべきだと思うのですが、いま作業中の報告は、それでは国会にいつごろ提出されるのですか、報告されますか。
  419. 野呂隆

    ○野呂説明員 関係機関とも協議いたしまして、できるだけ早い機会に提出させていただきたいと思っております。
  420. 中路雅弘

    中路委員 新聞等の報道ですと、鈴木総理が帰ってこられたときには報告するような記事も出ておるわけですが、大体時期はその前後になりますか。
  421. 野呂隆

    ○野呂説明員 できるだけ早く提出させていただくように努力いたします。
  422. 中路雅弘

    中路委員 私が聞いておるのは、総理が帰ってこられるころには報告をするような報道もすでにされておるわけですから、総理に報告を出されるわけですから、その時期には当然国会にも報告されるかということをお聞きしておるわけです。いかがですか。
  423. 野呂隆

    ○野呂説明員 できるだけ御要請に応ずるように努力いたします。
  424. 中路雅弘

    中路委員 きょうは本題の定年制の質疑がありますので、これで終わりたいと思います。防衛庁結構ですから。  大きく分けて三点ほどお聞きしたいのですが、御存じのように、アメリカでは三年前ですか、一九七八年にいままでありました公務員の定年制が廃止をされているわけです。ILOの中でも定年解雇というのは年齢による雇用差別である、人権を侵害するという勧告もありますし、こうした国民的な世論というものも背景にあったと思うのですが、わが国でも定年解雇を法制化して強制するということは、一つは憲法の第二十七条一項の勤労の権利、この保障規定にも大きく触れる問題だと私は思いますし、また定年年齢の定め方のいかんによっては、憲法二十五条の国民の生存権の保障規定にも触れる場合もあり得ると思うのです。  最初にお聞きしたいのですが、現在の憲法のもとですべての国民に対して定年解雇を法制化してやるということができるのかどうか、また公務員はできるのだけれども、民間はできないとか、いろいろお考えがあると思うのですけれども、定年解雇を法制化して国民に強制するということがいまの憲法との関係でできるのかどうか、これを最初にお聞きしたいのです。
  425. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 私から申し上げてよいのかどうかですが、お尋ねでございますので、お答えを申し上げます。  憲法上の規定は、いまお挙げになりましたように、十四条とかあるいは二十七条とか、いろいろ関連の条項がございますことはそのとおりでございます。憲法の条項でございますので、これの趣旨、精神に抵触するような措置を政府として、またわれわれとしてやるべきではない、またやってはならない、厳重な制約があることは重々承知をいたしております。  そこで、定年制の問題でございますが、これと憲法との規定において考えてみまするに、憲法の規定はいずれもそれぞれ大原則を決めております。たとえば十四条の規定によってみますると、これは法のもとの平等ということでございまして、年齢ということはございませんけれども、いろんな面で差別があってはならぬということを規定をいたしております。また二十七条でございましたか、国民というものは勤労の権利を持っておるというような基本規定がございます。いずれも大事な条項であって、われわれ拳拳服膺すべきものであろうと考えております。  ただ、定年制というのは、いままでいろいろやりとりがございましたところで明らかにいたしておりますように、現在の状況から見まして、公務員の場においても、やはり積極的に公正な新陳代謝を図ってまいるとともに、長期的な人事計画というものの樹立を可能ならしめるための措置であるというふうに解釈をいたしております。それが従来は勧奨というようなことで十分に機能をしてまいってきたことは事実でございまして、そういう意味で、人事院もこの問題については深く検討は続けてまいっておりましたけれども、なお正式に意見の申し出、その他の措置に出るまでには至っておらなかったのであります。その後急速に社会情勢の変化がございまして、そういうような変化を踏まえました場合において、この際、やはり民間の動向等もございまするし、公務員の場においても定年制を導入するということが合理的な理由として支持されるのではないか、そういう見地から定年制についての意見の申し出をいたしたというのが人事院の立場でございます。
  426. 中路雅弘

    中路委員 もう一点重ねてお尋ねしますけれども、そうしますと、公務員の場合はできる、民間の場合はいかがですか。法制化ですね、定年解雇を法律によって決める、民間の場合いかがですか。
  427. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 民間の場合に定年制というものを決めますこと自体が直ちに憲法違反と言えるかどうかという点は、私もそこまでは掘り下げて考えておりませんので、立場上無責任になってはなりませんので結論は差し控えさせていただきますが、民間の場合とやはり公務員の場合とは違うと思うのです。と申しますのは、あくまでも公務員の場合においては、やはり一定の年齢に達した、そのゆえをもってその職から去っていただくという、そういう措置でございますので、要するに公務員の身分の得喪、この場合は喪でございますが、それに関する重要な事由になるわけであります。そういう意味で、反面から言って公務員はそれぞれの職能がございます。また責任もございますので、それを全ういたしまするためにいろんな義務なり制約がある。それの補償のために、労働基本権の制約の問題その他の代償といたしまして分限の規定があったり、あるいはわれわれ人事院というものの機関的な意味がそこに誕生してきておるというような背景があるわけでございます。そういう意味で申せば、先刻申した合理的ないろんな情勢の変化のもとに、公務員について分限的な面も多分に持っておる定年制というものを導入することは、憲法上も許されることではないかという意味のことを申し上げた次第でございます。
  428. 中路雅弘

    中路委員 分限の問題は後でまた論議したいと思いますが、定年制をもし法制化する場合、たとえばいまの労働条件の基準の法定主義の原則、現行労働基準法の諸規定などからして、定年制をもし法制化するとすれば、何歳以下は解雇しちゃならないというふうに定年年齢の最低基準を定める以外にないのではないかと思っております。定年制を労働条件の一つとして法制化する場合、定年年齢の最低基準を法制化する、それ以外にはないのではないかと思うのですが、なぜ公務員には定年年齢の最高基準を定めて、そして定年解雇を制度化できるのか、もう一度お尋ねしたいと思います。
  429. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 定年制設定の合理的な理由というものとわれわれ考えております点については、先刻申し上げたとおりでございます。ところで、公務員の場合には、定年年齢を決めます場合に、やはり一つの制約がございます。各省庁の自主性に任せるというやり方も一つはございましょう。そういう場合に各省庁の自主性に任せるけれども、その年齢はこれ以下であってはならないぞ、そういう決め方もなるほどあり得ると思います。この点は、専門家の先生も御承知でございますように、昔の地方公務員法の場合におきましては、相手が三千にわたる地方団体の問題でございます。その自主性、多様性というものを尊重しなければならないという事柄もございました。そういうことで、定年制度を設けることはできるぞ、できるけれども、これは公務員の立場に立って物事を考えなければいけないのであって、一ころいろいろ論議がございましたように、非常にユニークな特異な考え方を持った市長さんがございまして、この市長さんは一つの人生哲学からいって、やはり定年制というものは四十五歳だ、そこでやはり第二の人生を選ぶべきだというようなことを言われた方がありました。それはその方の人生哲学から出たものですが、しかし、公務員の利益擁護という面からまいりますと、一つの基準を設定するとともに、やはり最低基準を決めるという決め方が一つあると思います。  ただ、国家公務員の場合は、それぞれの多様性のある公務員がたくさんおりますし、職場職場は違いますけれども、やはり各省庁で他の公務員の諸制度というものは全部画一的に一律的にやっております。それとの歩調を合わせる意味合いからいたしましても、やはり各省庁ばらばらというようなことではなくて、一つの原則でもって統一をするというのが当然適当ではないかと思います。  ただ、その場合に、各省庁の情勢、または職員構成、職員の種類等から見まして、それだけでは実情に合わない面もあるだろうということの配慮から、実態を調べました結果に基づいて、特例定年という措置を設けることが適切ではないかという意味もあわせて申し上げたというのが実情でございます。
  430. 中路雅弘

    中路委員 民間では定年制は退職に関する労働条件事項ですね。団体交渉事項となっているわけです。政府や人事院がこの法案を提出をされる一つの論拠として官民対応、いまお挙げになりました、民間準拠ということを掲げておられるわけですけれども、民間準拠というのなら職員団体との交渉を尽くした上で労働条件事項として定めるべきじゃないかと私は思うわけです。その際、民間には定年解雇を法制化するということについては私はできないと思うわけですけれども、公務員にもこの定年解雇を、そういう意味では民間準拠という以上法制化すべきじゃないというふうに考えますが、民間でも確かに定年解雇制度になっておりますけれども、これは法制化されていないわけですね。重要な労働条件の一つとして労働協約などで定められています。これに対応する形で、いまおっしゃったように、職員団体との交渉を前提にした勧奨退職制度が定められて有効に今日まで機能してきたわけです。また五現業では、先ほども大分論議がありましたけれども、労働協約事項となっているわけです。民間準拠というのなら、いまのこういった現状で十分であって、定年解雇の法制化というのは全く不要だと私は考えるわけですけれども、この点について再度お尋ねしたいと思います。
  431. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 五現の関係等もございますので、その点は御答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、公務員制度と民間の制度との間の基本的なあり方の相違ということからこの問題が派生をしてくるものではないかと私は理解いたしております。と申しますのは、公務員というものの特質、任務の特殊性がございます。したがいまして、これに随伴をいたしまする各種の制約が法律上も規定されておるわけでございます。それでありますだけに、それに対する代償機能というものを果たす機関が必要であろうということで、第三者機関たる人事院が設けられて、今日までそれなりの仕事をやってきたというたてまえになっているのではないかと考えますが、それと同時に、公務員の場合においては、基本的に労働三権というものの制約がなされております。その制約がどういうところからきて、どういう必要性があるのか、今後どうするのかという点は、いまの場合に私からお答えすべきらち外であろうと思いますので、これは差し控えさせていただきます。  要するに、現行制度のたてまえ上もう一つ重要な点は、あくまで基本的な公務員の勤務条件は法律でもって決められなければならぬということでございます。団体協約その他で行われるものではなく、そこに法律規定事項であるという厳然たる一つの事実がございます。これは政府によって法律として提案される場合もありましょうし、国会において発議される場合もありましょうが、いずれにしても、国会審議の場を通じて成立をする法律によって生まれる、実現されるという点に非常に基本的な相違があるのではないか。そういう公務員の本質、公務員を取り巻く諸情勢から派生するものとして、定年制の取り扱いも当然に生まれてくるものではないかという理解でございます。
  432. 中路雅弘

    中路委員 いま勧奨退職制度というのが事実上あるわけですね。一般には、民間に定年制があるのだけれども、公務員は定年制がないので、やはり民間準拠で定年制をやらなければいけない、こういう宣伝が広くされているわけです。そして国民の賛成も多いのだから、公務員にも定年制をという話があるのです。勧奨退職制度、事実上こうした制度があるという実態をよく調べていませんけれども、今度勧奨退職制度の実態も各省庁から集められたと思いますが、それではこの勧奨退職制度の実態について現状を公表される、こういう意思はおありですか。
  433. 斧誠之助

    ○斧政府委員 各省の勧奨退職制度といいますか、事実上の行為ですが、それの基準につきまして私ども調べております。個別の官庁それぞれにつきましては、それぞれの役所のいろいろな事情あるいは労使関係の中ででき上がっておるものでありまして、これを一々公表するのはちょっと差し控えたいわけですが、全体として申し上げますと、一部小規模官庁を除きまして、本来の任命権を有しております四十三官省庁につきまして調査したところでは、行政職俸給表(一)につきましては、課長クラスで五十八歳が十二省庁、六十歳が十三省庁、課長補佐クラスでは、五十八歳が十一省庁、六十歳が十三省庁、係員では六十歳が十九省庁ということでございまして、大体五十八歳、六十歳、この二つの年齢のところに集中しております。あとは五十五歳から六十五歳まで、一省とか二省とかいうことで散らばっております。  それから、行政職俸給表(二)の場合ですと、六十歳が八省庁、六十三歳が十二省庁、六十五歳が七省庁というような基準年齢になっております。
  434. 中路雅弘

    中路委員 各省庁からいま集められた勧奨退職制度の実態もありのまま明らかにして、こうした中でいまのあり方をどうしていくかということを十分検討しなければならないと私は思うわけですが、委員会の中ですからあれですが、改めて実態を詳しく公表していただくように重ねて要求しておきたいと思うわけです。  先ほどもお話がありましたけれども、分限事項だからというお話ですけれども、分限事項だから、法定主義になっているから職員団体との交渉を尽くさないでも一方的に決めることができるのだ、これもおかしいと私は思うのです。労働条件の基準も法定主義の原則になっているわけですけれども、団体交渉事項になっているじゃありませんか。定年解雇の制度は労働条件の重要な変更でありますから、当然職員団体との交渉を尽くすべきだと思います。そもそも公務員に身分保障規定があるというのは、国家公務員法が提案された際、当時の佐藤法制局長官の述べられている趣旨もありますが、これを読みましても、職員を国民全体の奉仕者として安んじてその職務に専念できるようにしなければならないということで、職員の身分を保障する趣旨を述べておられる。これを見ましても、分限事項の本質というのは、恣意的な人事行政を排除するという身分保障として設けられている。そういう全体の奉仕者としての公務員、憲法で定めた基本的な性格、ここから私はきているのだと思うのです。その点で、分限事項だから、一切職員団体との交渉をしなくても、一方的に法律で決められるのだということは、こうした重要な労働条件の変更の問題について不当なやり方だと私は思うのですが、いかがですか。
  435. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 先刻ちょっと言葉が不足した面があるかと思いますが、定年制というのは分限の面を多分に持っておると思いますが、同時に、これは職員の勤務条件であるという面も持っておることは事実でございます。そういう面もございますので、分限だから交渉は要らないという趣旨のことは私は考えておりませんので、実はこの定年制の問題が俎上に上ってまいりました前後から、従来もそうでございますが、職員団体の方からも人事院に対しても働きかけがずいぶんございました。それに対して私はできる限りお互いに意思の疎通を図っていこうではないかという基本的な立場をはっきりいたしまして、それは関係部局の方にも徹底をいたしたつもりでございます。したがいまして、対組合関係の交渉も何回も持ちました。私自身もその場に参画いたしておることもございます。また職員団体だけではなくて、理事者側と申しますか、各省庁の責任者の方々からも非常に詳細にいろいろな状況をつぶさにお聞きいたしまして、そういう意味の対策を全部取り入れたというつもりでございまして、分限だからというので交渉に全然そぐわない、なじまないという考え方は持っておりません。
  436. 中路雅弘

    中路委員 私は人事院に特にきょう述べたいのですけれども、これまで人事院は、たとえば国家公務員の職階法を三十四年間にわたって事実上たなざらしして、休暇に関する制度改定についての勧告を行うという一般職の給与法第二条や年金制度の改正についての意見の申し入れ、国公法の百八条、こういうことを行うことなどが法律で義務づけられながら三十四年間事実上サボっている。そうして公務員の定年制については必要なしといままで言ってきたわけですけれども、今度政府の方から圧力がかかると、職員の利益の保護というのが責務なわけですけれども、これを放棄していくということになれば、代償機関というような看板をおろしてしまわなければならないというふうになるのではないかと思うのですが、総裁いかがですか。
  437. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 年金に関する意見の申し入れの規定あるいはすでに法律として成立をいたしておりまする職階制に関する法律の取り扱いの問題につきましては、いま御指摘になりましたようなことが遺憾ながら事実でございます。しかし、それにはそれ相当の背後関係なり理由がございます。そういう点を事細かにここで申し上げるごとは差し控えたいと思いますが、それなりの理由があって今日まで来ておるという点を申し述べさせていただきたいと思います。  ただ、人事院といたしましては、その本来の機能でありまする公正な人事行政の確立ということとあわせて公務員の利益の保護ということの重要な任務を持っていることも事実でございまして、そういう観点に立って従来からも仕事をしてまいっております。いろいろな議論もございますけれども、そういう中でも毎年給与勧告等について正しい措置をお願いをいたしておるというような点についても、われわれなりの努力はいたしておるつもりであるというふうに考えております。ただ、人事院といたしましては、そういうこととともに公正な人事行政の推進ということを図ってまいらなければならぬという大きな責務も同時にあるわけであります。そういう観点から、いまや公務の場にも定年制を導入する時期に来ておるのではないかという判断を下したわけでございまして、前々からそういう意味で特に関心を持って検討を加えてきておった、そういう時期に閣議決定もあり、総務長官からの見解表明に関する御依頼があったというような点も背景にございまして、この意見を申し上げたというのが実情でございます。
  438. 中路雅弘

    中路委員 いま公正な人事行政ということをお話しになったのですが、六十歳定年解雇というのは、たとえば天下り先を保証されている五十五歳前後に転出していくいわゆる高級官僚にとっては全く痛くもかゆくもないわけです。打撃を受けるのは行(二)の職員など、働かないと生活がやっていけない、やめても再就職先がなかなかないとか、再就職先があっても労働条件が下がる、途中でやめると、議論もありましたが、年金がつかなくなる、こうした条件を抱えた一般公務員にこれがかかってくるわけです。若年層の昇進の機会が拡大されるということもありましたけれども、これも私は矛盾だと思うのです。もし昇進の機会を拡大するというなら、二、三年ごとに昇進して五十五歳前後までに局長や次官にまで上り詰める優遇の昇進制度にメスを入れるとともに、もっと等級別定数を拡大して、出世をしてもせいぜい本庁の課長補佐どまりぐらいという一般公務員の昇給頭打ち、こうした点についても検討をしなければいけない。これが私はいま公正な人事行政あり方ではないかと思うのですが、重ねてお尋ねしたいと思います。
  439. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 職場の活力の高揚とか新陳代謝の促進というようなことについては、定年制以外にもいろいろ措置すべき点は措置をいたしておるつもりでございます。今後ともその点は並行して十分に検討を加え、実現すべきものは実現に移していくという努力は続けてまいるつもりでございまして、たとえばいますでに御指摘がございました頭打ち等の場合にはどうするかというような問題に対する対応策として、それぞれ専門職等の制度を考えるとか、あるいは等級別定数についても、各省庁の事情もございますけれども、特別な配慮を毎年考慮して改善を図っていくとか、そういう措置はそれなりに毎年続けてやっているつもりでございます。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕  定年制はそれとは別に並行して、全体としての社会情勢の変化、公務の職員構成の実態というものから見て、いままでどおりの勧奨退職の制度をそのまま存置してここ五年、十年というものがそのままの推移で参りまする場合には円滑に作用しなくなる、そういうような点も考え合わせながら、メリット、デメリットというものを彼此総合勘案しつつ、この制度程度のものは考えていいのではないかというふうな結論に達したわけであります。
  440. 中路雅弘

    中路委員 別の角度から少し御質問していきたいのですが、今度の六十年六十歳定年という問題については、これもさまざまな問題があるわけです。一、二例を挙げますと、七九年の八月ですか閣議決定で、新経済社会七カ年計画というので完全雇用の達成ということが出ておりますけれども、この中で、一挙に中高年齢化が進むものと見られ、高学歴化が進行するという情勢認識のもとに「中高年齢層をめぐる労働力需給の不均衡を是正し、その雇用の安定を図ることは今後の雇用政策上最大の課題であり、中高年齢者の能力を十分活用することは、我が国経済社会の長期的発展にとっても重要な要件である。」と述べておられるわけです。そしてこの計画期間中に民間企業の六十歳定年制が一般化するように努めなければならない、さらに六十歳から六十四歳層に対しては再雇用、勤務の延長等の形態を含めて雇用が延長されるように努めなければならないということ等をここで決めておられるわけです。  また、七九年の十月の社会保障制度審議会の勧告を見ましても、定年延長の目標は当面六十歳とされるが、これが達成された暁には六十歳を超える定年延長という施策を講じなければならないということも指摘されています。  こういう点で私は、六十年六十歳定年の法制化というのは、まだ四年先ですけれども、こうした閣議決定や各種の審議会の答申が示した方向から見ても妥当でない、逆行ではないかというふうにも思うわけですけれども、六十年までにこうした六十歳定年というのを見直さざるを得ないということになるのではないか、この点について、これは大臣、いかがお考えですか。
  441. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生御指摘のように、新経済社会七カ年計画あるいは政府の雇用政策によって、民間に対しては昭和六十年に六十歳の定年が定着するように、労働の体系、体制としての協力を民間に呼びかけておる。こういう中で政府も、今回御審議お願いしているような、公務員制度に定年法を導入して、昭和六十年に六十歳ということで、これから先、それを六十年までに見直すことがあるのじゃないかという御指摘でございますが、当面政府は、六十年までにいま一度この六十年六十歳定年を見直すという考えは現在のところ持っておりません。
  442. 中路雅弘

    中路委員 いま一、二、例を挙げましたけれども、指導方向としては六十歳を一般化しながら、さらに六十五歳という方向を指導方向としては出しておられるわけですね。しかも、いま急速に中高齢化の社会が進行していくという現状認識も述べられている。今度の法案、六十年六十歳、これが逆にそこで歯どめをかけてしまうという、こういう指導の方向という結果になる危険もあるということも私は考えるわけです。そういう面で、いずれこの六十歳というものは見直さざるを得ない時期も、それも早く来るのじゃないか、またそうしなければ、民間のそういった指導の方向にも逆行するということからお話をしているのですが、この法案がすぐ施行されるというわけではない、六十年ですから、少なくともこれを見通した、法案として出される場合に、問題点の検討も必要ではないかと思うわけですけれども、この六十年六十歳、特に六十歳というものについてはいずれ見直しということも考えられるわけですか。
  443. 中山太郎

    ○中山国務大臣 現在の時点でどういうふうな計画の変更をするかとか、そういうことはただいまのところ考えておりませんけれども、こういうふうな社会の新しい経験でございますし、政府といたしましても、絶えず国民の生活実態というものを調査しながら、この公務員の方々の定年問題も考え続けていかなければならない。そういう意味から申せば、昭和六十年を過ぎた時点で、そのときの社会情勢を見ながら、これからの公務員の定年問題についてはいかがあるべきかということについては改めて検討する必要があろうかと考えております。
  444. 中路雅弘

    中路委員 私は、この六十歳定年というのは、いまの働く労働者の能力や意思から見ても妥当ではないと思うわけです。たとえば労働省が七九年に行った定年退職者調査報告というものを見ますと、定年退職者のうち約九割の人が扶養家族を抱えておるのですが、八割の人が再び雇用されているわけです。そのうち四割の人が働かないと生活に困るという統計も出ております。職業能力の点でも、八〇年七月の高齢化問題懇談会の高齢化社会における労働、経済の諸問題の長期展望についての報告を見ますと、むしろ中高年齢者の能力の点で、職種別に見ても、多くの職種において中高年齢者の職務適用度が高いことが示されているという結果も報告をされています。むしろこの活力を生かさなければいけないということも指摘されております。また七八年五月に機械振興協会の経済研究所が行った調査によると、六十歳以上の高年齢者の職業能力は、若年者や中年者層よりも低下するどころかむしろ高いという結果さえ出ているものもあるわけですね。これは昭和五十三年五月の機械工業の六百社の生産工程の労働者についての調査で出ています。  こうした一連の調査結果を見ても、六十歳定年というのは、私はいまの現状、能力からいっても、著しく妥当性を欠くと言わなければならないと思うのですが、もう一度、この六十歳という問題についていかがお考えですか。
  445. 中山太郎

    ○中山国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、私どもやはり、この公務員の人事を長期的に管理するという考え方、また年功序列型で終身雇用できておりますから、特にこれから急激に高齢者がふえてくる公務員の層を見ておると、六十年六十歳ということを見直す、さらにそれを六十歳以降に持ち込むということについては、非常にむずかしい問題であるというふうに、率直にお答え申し上げておきたいと思います。
  446. 中路雅弘

    中路委員 いままで民間で広く行われた五十五歳定年年齢というのは、平均寿命が非常に短かった時代にすでに定められているのですね。それから見ますと、資料はもう時間も限られていますからあれしますが、平均寿命がそれから二十歳以上延びているわけです。長官はお医者さんですから詳しいと思うのですけれども、こういう現在の高齢者社会の中で、今後の定年年齢のあり方については十分検討しなければならない。  元人事院の事務総長だったですか、いま日本人行政研究所理事長の尾崎さんが、七八年の八月に「平均寿命七十歳時代にふさわしい新人事管理制度設定の必要性」という提言をされています。その中で、五十五歳を中心にした定年制は、戦前平均寿命が五十歳、十五歳まで育った者の平均寿命が六十歳ぐらいであったころ、それにふさわしい制度として制度化されたものであるけれども、日本人の平均寿命は戦後急速に延び、いまや七十歳を超え世界の最高レベルに達しているのに、五十五歳定年制はおおむね従来の形のまま実施されてきているということを述べて、平均寿命七十歳代と二十歳変わってきているわけですから、それに対応する人事管理制度の設定を新たに構想していくことが必要だ、労働の通常定年を六十五歳にしていくということをとりあえずの問題として提案して、好むと好まざるとにかかわらず、将来の雇用においては、この点を真剣に考えていく必要があると述べておられますけれども、この御意見についてはいかがですか。
  447. 中山太郎

    ○中山国務大臣 やはり戦後の健康保険制度とか医療の発達のために日本人の寿命が急速に延びた、その結果急激な高齢者層の増大によって、政治的にも経済的にも社会的にも大きな問題が出てくることは、御指摘のとおりだろうと思います。  ただ、これからの高齢者のために定年を六十五歳にしろといういまの御意見につきましては、私はこれから先、長い観点から見れば、そういう日もあるいはあり得ると思います。しかし、問題はやはりどの程度のいわゆるエネルギーを持って国民のために奉仕ができるか、どの世代が一番公務員の勤労について力として充実していくのか、そこらもこれから大いに検討していかなければなりませんし、また老人たちに希望を持った人生を送らせるということを考えていかなければならぬ。こういう問題で、御指摘は貴重な御意見として私は承っておきたいと思います。
  448. 中路雅弘

    中路委員 長官のもとの総理府の昭和五十五年の国勢調査の抽出速報集計結果というもので、どういうふうに分類しているのか見ましたら、長官総理自身が十五歳から六十四歳までを生産年齢人口として統計をとっておるわけですね。だから、少なくとも六十五歳をずっと超えないと老年人口という区分でないわけです。少なくとも六十四歳までは、現在でも生産年齢人口として総理府は区分をされているわけですから、こういう点から言っても矛盾するのじゃないですか。大臣、尾崎さんがここで言っている、少なくとも六十五歳にすべきだということこそが、総理府がいま区分しているところから言ったって妥当じゃないですか。
  449. 中山太郎

    ○中山国務大臣 総理府の国勢調査で十五歳以上六十五歳未満の生産年齢人口は、人口統計において、国際的に十五歳から六十五歳未満を生産年齢人口とするのが通例となっておりまして、わが国の調査もそれに準拠した国際基準に合ったものである、このように御理解をいただきたいと思います。
  450. 中路雅弘

    中路委員 しかも、日本は世界でも最も長い国にいまなりつつあるわけですね。少なくとも、尾崎さんも言ってますけれども、欧米並みにしていくというのは必然的な成り行きだということをここで強調されております。現に、いま人事院総裁おられますけれども、私ちょっと人事官を見たのですが、人事院総裁はたしか六十六歳、人事官の加藤さんが六十九歳、愛川さんが七十二歳でしょう。十分りっぱに仕事をやっておられるのじゃないですか。六十六歳、六十九歳、七十二歳なんです。少なくともこの点でも六十歳定年制というのは本当に妥当じゃないと思うのですね。高齢者社会の問題として、この問題はいずれにしましても慎重かつ本当に総合的に検討しなければならない重要な国民的課題だというふうに思いますが、この認識についてはいかがですか。
  451. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いま先生からお話のあった人事院総裁初め皆さん元気でいらっしゃいます。平均して健康な方、青年にもまさる知力と体力を持った人がこうして働いているわけですが、国民全体の中で、私はやはり御指摘の点というのはわれわれとしても大いに参考にしていかなければならない。こういうことは私は十分御指摘のように踏まえて、これからやってくる高齢化社会でのいわゆる高齢者の勤労問題、労働問題として勉強さしていただきたいと考えております。
  452. 中路雅弘

    中路委員 国際的な趨勢については同僚議員もまた他の議員も質問されていますから、私も資料をいただいてみて、アメリカのように、定年制が年齢による雇用差別になるということで、定年制を撤廃したことはすでに指摘しましたけれども、人事院からいただいた調査結果を見ても、アメリカのほかブラジルやメキシコにも公務員の定年制はないわけですし、こうしたものが一つの動きにもなっているということですし、また定年年齢についても六十歳というのは韓国やタイ並みなんですね。大部分の国が六十五歳またはそれ以上となっているわけですから、こうした国際的な趨勢から言っても、六十歳定年制法制化というのは私は逆行するのじゃないかということを強く指摘しておきたいと思うのです。  もう一点、御意見を聞いておきたいのですが、これは社会党、公明党、民社党そしてわが党の共産党とともに四党が昨年の通常国会に定年制及び中高年齢者の雇入れの拒否の制限等に関する法律案提出しました。御存じだと思いますけれども、この中で「高齢化社会における中高年齢者の雇用を確保し、」その職業の安定を図るため、「六十五歳未満の定年制及び中高年齢者の年齢を理由とする雇い入れの拒否を制限する」等の必要がある、これが法案提出理由だということを述べているわけですけれども、私はこうした立法措置こそがいまの国民の期待にもこたえるものだというふうに考えますけれども、この四党提出の法案について、人事院総裁また政府の見解はいかがですか、一言。
  453. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 いま御指摘の法案自体についてはそれなりの背景もあり、また考え方といたしまして納得される面もあるかと思います。ただ、社会情勢一般の問題、それと公務員の実態というものをあわせ考えまする場合に、何が現実的であるかということとはおのずから別個の考え方というものがそこに必要ではないかというふうに考えております。私自身も、総務長官が先刻お述べになりましたように、六十歳定年というものが設定されたといたしましても、これが未来永劫続いていくあるいはそれが妥当なんだというような非常に思い上がった考え方は持っておるわけではございません。社会情勢一般の変化の問題もございますし、そういうものを踏まえて、これについての変改を加えることが妥当であるという状況が参りまするならば、人事院といたしましても、それこそ正式のルートである意見の申し出等をその時期になればやる用意はするように検討は続けてまいりたいと思っております。
  454. 中路雅弘

    中路委員 いまの法案について大臣はいかがですか、一言見解を。
  455. 中山太郎

    ○中山国務大臣 人事院総裁がお答えを申し上げたとおり、私どもも同様の考え方を持っております。
  456. 中路雅弘

    中路委員 時間もなくなってきたので、具体的な問題で何点かお聞きしたいのですが、六十年六十歳定年制の問題で一般公務員に非常に犠牲が出てくるわけですけれども、最も犠牲の多いのは、先ほども御質問ありましたけれども、たとえば行(二)職員などの中途採用者で給与も低くて定年が法制化されると無年金になる職員がありますね。あるいは通算年金もつかない職員、省庁を集めたので見ますと、たとえば無年金になる職員で勤続二十年未満約三百人、通算年金もつかない職員が十五年未満で百人出てくるわけですけれども、これらの職員の扱いをどうするのか、どうされるのか決まっているわけですか。
  457. 斧誠之助

    ○斧政府委員 無年金者が、給与法適用職員で通算年金をもらえる人、それももらえない全くの無年金という方が百四十名余おられるということは、前回申し上げたとおりでございます。この人たちにつきまして、できるだけ年金がもらえるようにということで、民間の年金制度に準じた特例措置、これを共済関係にも制度化するということで関係機関に申し入れをしておりまして、大体そういう方向で検討していただくということになっております。
  458. 中路雅弘

    中路委員 私は、この点でも大変けしからぬと思うのですよ。こうした法案を出される場合に、出しておいて、それから関係機関にいま申し入れて検討してもらっている、こんな無責任なことはないわけです。この法案を出される以上、こうした職員についてはどういう対応をするのかということをきちっとさしていかなくてはならない。法案を出してから後、関係機関に検討してもらっている、こういう無責任なことはないと思うのですね。どうされるんですか、もう一度はっきりお答え願いたい。
  459. 斧誠之助

    ○斧政府委員 法案を提出しておるのは総理府でございますけれども、私たちが意見を申している際に、そういう方といいますか、公務員の退職後の生活問題ということでそういう調査もいたしましたということでございます。そういう方が発見されましたので、何らかのできるだけの範囲の救済措置というものは考慮しなくちゃならぬ。しかし、定年制というのは本来ある一定年齢に達したことによりまして退職するということでございまして、これが職員個々ばらばらに適用されるんでは、定年制の意味がないわけでございまして、そういう意味で一部非常に気の毒な方が出られるということは、制度全体からながめました場合に、ある程度はやむを得ないんじゃないか。できるだけの努力ということで民間並みのそういう特例措置をお願いしておる、こういうことでございます。
  460. 中路雅弘

    中路委員 扱い方もまだ決めないまま一方的に法制化を強行するということは、私はけしからぬことだと思うわけです。またいま高学歴化が進んでいる中で六十歳定年がしかれますと、たとえば勤続四十年で、年金の最高支給限度、七〇%保障の年金条例というのは、二十二、三歳で大学卒業ということになれば全く死文化してしまうわけですね。こういう点についてはどう調整されるのですか。
  461. 長橋進

    ○長橋政府委員 人事院の方からお答えするのが適当かどうかちょっとわかりませんけれども、その問題につきましては、私どもは、現行の最高限度の制度それ自体は、他の公的年金制度との調和とか保険数理の見地から決められておるというふうに承知しております。したがいまして、制度的に見ますと、必ずしも全員が最高限度額を支給されるということを想定しているのではないというふうに私どもは理解しております。
  462. 中路雅弘

    中路委員 幾つか飛ばしながらちょっと聞いていきたいと思います。  特例定年条項の問題に関連してですが、八十一条の二の第二項にただし書きということでいろいろ書かれているわけです。まとめてお尋ねしますけれども、医療職の(一)は六十五歳としていますが、関連の教育職、研究職、これとの均衡をどうするのかということが一点。それから行(二)の労務は六十三歳としていますけれども、六十三歳とした理由ですね。さらに今度は同じ行(二)の技能を外していますけれども、その理由はどういう理由なのか。また裁判所の廷吏についてはどうされるのか。こうした点をちょっとまとめてお答え願いたい。
  463. 斧誠之助

    ○斧政府委員 第一点の特例定年の医師の関係でございますが、ここで人事院規則で定めようとしておりますものは診療業務を行っておる施設でございます。これは代表例として「病院、療養所、診療所」と出ておりますが、人事院規則で定めると考えておりますものは、刑務所、拘置所等の矯正関係の医療施設、検疫所の医療施設、それから研究所のうち診療業務を行っております研究所、そういうものを考えております。  お尋ねの研究職、教育職でございますが、教育職につきましては、たとえば大学病院の医師でございますけれども、これは教育(一)の俸給表の適用者で、しかも大学教授あるいは助教授、教官でございまして、教育公務員特例法の適用を受けて、そちらの方で定年が決まるということになります。また研究職の医師免許を有しておる方でございますが、いま申し上げましたように、特例定年で定めようとしておりますのは、診療業務に従事する医師ということで、これは欠員がなかなか補充できないというような事情もありまして、特例定年を定めようとするものでありますので、もっぱら研究に従事するとかあるいは医療行政にもっぱら従事しているとか、診療業務に全く携わっていない方は原則定年によっていただくということでございます。  それから、第二点の行政(二)の関係でございますが、行政(二)につきましても、特例定年でございますので、基本はやはり職務の特殊性というところにございます。行政(二)の職務の特殊性ということを考えます場合に、職務の性質からいきまして、ここに書いてございます庁務の職員、こういう方はその官職の性質上中途採用、それも中年以降の中途採用が非常に多い。また人事ローテーションには余り関係がない、加齢による業務に対する影響も余りないというような特質を見まして六十三歳ということにしたわけでございます。したがいまして、準ずる職員といいますのは、労務作業員でありますとか、清掃婦でありますとか、洗たく婦でありますとかいうような労務職員でございます。  技能職員でございますが、われわれが精査しましたところ、技能職員の方は採用時年齢の平均が二十七歳ぐらいでございます。大体、年金がもらえます四十歳前までに九〇%以上の方が採用になっております。この点は労務職員とはかなりといいますか非常に趣を異にしておりますので、特例定年の対象といたします者を労務職員というふうに限定したわけでございます。  それから、裁判所の関係総理府の方でお答えいたします。
  464. 山地進

    ○山地政府委員 裁判所の廷吏でございますが、裁判所職員臨時措置法により国家公務員法の規定が準用になりますので、この廷吏の方については六十歳定年がそのまま準用されるわけでございます。ただ、特例定年の運用につきましては、これは人事院規則ではございませんで、最高裁判所の規則で定めるということになるわけでございます。
  465. 中路雅弘

    中路委員 これもまとめて御答弁願いたいのですが、第三号の人事院規則で定める官職の基準と基準ごとの具体的な官職名、これを例示していただきたいと思うわけです。
  466. 斧誠之助

    ○斧政府委員 第三号の職員は、「職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であること」、そういう特殊性がある人たちでございますが、いま考えております官職例としましては、宮内庁の楽師、調理師、カモ場の職員あるいは文化財の補修に当たっている職員、そういう方のように職務内容が非常に特殊でありますために、そういう職務遂行能力を有する者が非常に少ない、そのために計画的な人事ローテーションも組みがたいし、欠員補充も困難であるという官職。それから海難審判官でございますが、海難審判官は船長経験者ということで、相当高齢になってから審判官になります。したがいまして、六十歳定年ですと、公務で働いていただく期間が非常に短い、公務での活用期間が短いということで、特別な免許、資格というものを必要として、途中で採用される事例が多いという官職。それから職務遂行のためには相当期間研修をしなければならない、また長い公務経験を必要とする、そういう経歴を要するような官職については、さらに長い公務の勤務をしていただいた方がいいということで、これは高専の教官でありますとか、外交領事事務に従事する職員でありますとか、そういう例でございます。もう一つは、業務遂行上、豊富な知識あるいは経験というものが要求されておりまして、適任者が高齢瀞に非常に多いというような官職でございます。例としましては、公害研究所の所長あるいは水俣病研究センターのセンター長というような特殊な研究所の長を予定しております。
  467. 中路雅弘

    中路委員 これと関連してもう一点お聞きしておきたいのですが、いま海難審判官というのが出ましたけれども、私も先日当事者の方からお話を聞きましたら、たとえば海技試験官の方々は、海難審判官とか同理事官と全く同類なんですね。海技試験官や甲種の船長、機関長を含めないのはどいいうわけか。要求があれば、こういう者は検討をされるのか。当然職種ごとの理由があるわけですから、いままでの勧奨年齢等を考慮することが必要だと思うのですが、こういうお考えはあるのですか。
  468. 斧誠之助

    ○斧政府委員 海技試験官につきましても事情は承っておりまして、なおいま人事交流あるいは採用、そういう状況を精査しておるところでございます。当然検討の対象にはしております。
  469. 中路雅弘

    中路委員 私はそれは当然含める必要があると思います。いま検討中ということですから十分この点は考慮していただきたい。  それから、「定年による退職の特例」条項に関連してですが、法案の八十一条の三でこの問題を述べていますけれども、この条項の運用の基準は人事院規則で定めるのか、どういうケースを考えられているのですが。
  470. 斧誠之助

    ○斧政府委員 退職の特例でございますが、通称勤務延長と言っておりますので、勤務延長と言わしていただきますが、勤務延長につきましては、この法案に示されておるところによりますと、延長することについての第一次の判断者は任命権着ということにいたしております。したがいまして、第一回目の勤務延長を行う権限者は任命権者でございます。この場合は人事院の承認を要するということにはなっておりません。これは、ここにも書いてありますように、「その職員の職務の特殊性」――「職務の特殊性」として例示的に申し上げますと、非常に端的に言いますと名人芸、たとえば通産省あたりにはレンズをみがく非常に名人芸の方もおりますし、植物園で高山植物を栽培するのに非常にたけておるような職員もございます。そういうものがわかりやすいから例示いたしますが、要するに、その者の有する知識、技能、経験、そういうものが職務遂行上不可欠で、しかも代替者が直ちに得られないというようなケース、それからいま現にその職員が担当しております業務がある一定期間継続性がありまして、その職員を欠きますと、その業務の遂行に支障が生ずる、つまり業務の連続性がある、しかも非常に緊急な業務であるというような職務についておる職員、そういうことを例示として考えております。  第二回目以降は、人事院の承認に係らしめておるわけですが、これはまさに特例でございますので、これが乱にわたるというようなことがあっては定年制の趣旨が損なわれるということになりますので、人事院で審査を必要としておるわけでございます。この場合は、当初においてその者を勤務延長した事情の説明、それが継続しているかどうかの証拠資料、そういうものを取り寄せて審査する予定にしてございます。
  471. 中路雅弘

    中路委員 各省庁のいまの勧奨退職制度を見ますと、属人的要素を考慮それているわけですね。一定の例外規定を設けています。通産省で見ましても、たとえば身体障害者の子供を扶養している家族だとか身寄りのない者だとか、退職年金の受給資格がなくて云々だとか、収入がないとかいろいろ例外の事由を挙げて考慮した処置をとっていますけれども、その基準を定める際に、こうした属人的な要素というのは全く考慮することはないわけですか、考慮されるわけですか。
  472. 斧誠之助

    ○斧政府委員 勤務延長につきましては、公務上の必要性ということが原則でございまして、属人的な要素で勤務延長を行うということは考えてございません。
  473. 中路雅弘

    中路委員 これは各省庁あるいは職員団体から要請があれば十分検討すべき問題ではないかということを強く言っておきたいと思うのです。  「定年退職者の再任用」の条項に関連してですが、八十一条の四で述べていることを、時間ももう余りないので読み上げませんけれども、この点について、この運用の基準をどういうように定めるのか、あるいは身分や給与、一時金、退職金、年金などの労働条件はどうするのか、人事院規則で統一的に定められるのか、こうした点についてお尋ねしたいと思います。
  474. 斧誠之助

    ○斧政府委員 再任用につきましては、一たん定年退職した者をその者の技能とか経験、それが公務に非常に有用であるということで再採用しようという制度でございます。これも任命権者の裁量によって再任用を行うことができるという規定になっております。  この場合、人事院規則で定めるのは、その基準を定めるわけでございますが、第一点は、その職員の能力、技能が公務に活用できるというその職員の経歴とか持っておる特殊技能の証明、そういうものが第一点、それから勤務実績が良好であるという証明、それから再任用する場合の官職は定年退職前の官職と同等以下の官職に限りますという、そういう三つの基準を設けまして、あとは再任用の手続などを定める予定でございます。  給与等につきましては、給与局の方からお答えをいたします。
  475. 長橋進

    ○長橋政府委員 給与につきましてお答え申し上げます。  これは、形式的には一応身分を切りまして、新たに採用ということになるわけでございますので、原則的には、採用された場合の給与決定方式によりまして給与を決定するということになると思います。
  476. 中路雅弘

    中路委員 もう一、二点で終わりたいと思いますけれども、ちょっと戻るようになりますが、職員の全体の在職の分布を私資料で見たのです。これは五十五年一月十五日の階層別の資料ですけれども、これを見ますと、現在四十八歳から五十三歳代が大変大きなこぶになっているわけですね。定年解雇、たとえばこれから定年制が施行されますと、五年前後すると公務に精通したベテラン職員が一挙に大量にやめる、解雇されるということにもなるわけなんで、そういう点では業務の正常な運営が阻害される、非常に重要な問題も起きてくると私は思うのです。このこぶはいまの勧奨退職制度の適切な運用でなだらかにしていくということも一つの方法だと思うのですが、六十年六十歳のこの定年制の法制化というのは、こういう点でも大変矛盾を持った、安定した人事行政という点でも問題点が大変大きいのではないかと思うのですが、こういう問題に今後どのように対応されるおつもりですか。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  477. 斧誠之助

    ○斧政府委員 現在の職員の在職状況から見ますと、いま先生御指摘のような将来に対する不安が生じてまいります。そういうこともありますので、今回意見を申し上げるに際しまして、準備期間を五年程度置けばよろしいという意見を申し上げておるわけでございまして、その間にそういうことも含めて長期的な人事計画あるいは要員計画というものを各省に立ててもらう、人事院と総理府はそういう各省の計画について指導をしたり援助をしたりするということで、円滑な定年制の実施を確保するようにという趣旨でございます。  それから、なお申し上げますと、そういうことで余人をもってかえがたいような人が発生しました場合は、先ほど来申し上げております勤務延長とか再任用で業務に支障のないような措置をとっていただく、こういうことになろうかと思っております。
  478. 中路雅弘

    中路委員 終わりに一、二点大臣にお聞きしたいのですが、先ほどから私幾つか具体的な例示で挙げましたけれども、この定年解雇を法制化するという問題、特に六十年六十歳というのは、いまの高齢化社会への対応の方向から見て、これに逆行する方向ではないか。しかも、一般の公務員にこれは大きな犠牲を強いる問題でもありますし、いわゆる民主的な行政改革という点では大変逆行的な法案ではないかというふうにも私は思うわけです。  先ほどもお尋ねしましたけれども、今後こうした時代の流れ、それから急速な高齢化社会の中で、いまの六十歳という問題を見直さざるを得ないというのが非常に早く来るのじゃないかと思うのですが、この点については、いま全体の六十歳、さらに六十五歳ということも提起されているわけですから、そういった方向に沿った見直しがやはり必要ではないかと思うのですが、終わりに重ねてこの点についてもう一度お聞きしておきたいと思います。
  479. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先般来人事院総裁も申し上げておりますとおり、この高齢化社会に対する公務員の定年問題あるいはまたそれの変更に関する問題は、あくまでもこれからの社会情勢の変化をとらえてやっていかなければならない。そういうことで、人事院はこの問題については重大な関心を持って必要に応じて政府に対して勧告をいたすというふうに申しておりますので、政府といたしましても、総理府は御案内のように人事局を持っておりますので、総理自身におきましても鋭意検討を重ねてまいりたいと考えております。
  480. 中路雅弘

    中路委員 先ほどの質問でも御答弁にもありましたけれども、まだこの実施に当たって詰め切っていない問題がたくさんあるわけですね。年金の検討の問題もそうですが、いろいろこうした問題にどう対応していくかということが、いま検討中だとか申し出をしているとかいう問題ですね。こうした点は、やはり不安のないように対応を考えなければいけない、そういうものの上で検討しなければいけないと思うのですが、こうした問題の決まってないまままた出されるということも大変けしからぬことだと思うのですが、いま幾つか答弁がありましたですね、まだ検討中だとか省庁にお願いしているとか。こうした問題は大臣としてこれからどのようにお考えですか。
  481. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この国会を通じて高齢化社会、いわゆる高齢者問題、雇用の問題、年金の問題、いろいろと予算委員会あるいは本委員会で御質疑がございました。政府といたしましても、高齢化社会全体に対する政策について基本的な問題を含めて積極的に現在研究中でございます。いずれ各党の御意見も十分踏まえながら、私どもといたしましては、われわれの社会が迎える新しい事態に対処するように努力してまいる覚悟でございます。
  482. 中路雅弘

    中路委員 最後に要請ですけれども、私は、労働条件の重要な変更であるこの大事な問題について、一度この法案を撤回されて、関係の職員団体とも十分協議もし交渉も詰めて慎重にまた総合的に再検討をしていただくということを重ねて要求したいわけですけれども、最後に大臣の答弁を伺って質問を終わりたいと思います。
  483. 中山太郎

    ○中山国務大臣 せっかく各党で御審議していただいている法律案でございます。ただいま撤回をせよというような御意見もございましたが、ただいま撤回いたす意思は毛頭ございませんので、ひとつよろしくお願いを申し上げます。
  484. 江藤隆美

  485. 上田卓三

    上田(卓)委員 まず最初に、今国会に定年法案を提出した理由につきまして簡単に御説明をいただきたいと思います。
  486. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この国会に法案の御審議お願い申し上げたというのは、昨年の臨時国会政府といたしましては、この二法の御審議お願いをいたしましたが、前国会では審議未了、継続審議ということになり、引き続きこの国会で御審議をいただいているという経過でございます。
  487. 上田卓三

    上田(卓)委員 政府はこれまで定年制問題について、法律で定年制を決め企業を縛るのは反対であり、企業の労使関係の中で自主的に決めることが望ましい、こういう見解をとられてきたわけでございます。ところが、今回、公務員だけこの法律によって定年制を決めようというのはどういうわけか、御説明をいただきたいと思います。
  488. 山地進

    ○山地政府委員 公務員の身分といいますか地位というのは、あるいは労働三権との関係というのは、民間と違うわけでございますけれども、これは勤務の特殊性というものに基づいて、言ってみれば国民が使用者であって、公僕として国民全体に奉仕するという立場があって、労働三権というものから制限を受けている。その代償として身分保障あるいは勤務条件の法定化ということで国家公務員ができ、それから人事院がそれらの身分保障等も含めて勤務条件の整備に努めておられる、こういうような特殊な関係にあるわけでございまして、民間の定年制と違った法的関係にある公務員の定年制でございます。  そこで、一体民間に定年制がこれだけ九七%普及しているのに、国家公務員に定年制というものを導入するのがいいかどうか、これは政策的な問題だと私は思うわけでございます。そこで、これだけ民間が普及して世論も公務員に定年制を導入すべきである、こうなりますと、これはやはりいま申し上げましたように、国家公務員というのはすべて法律で決められているものでございますから、こういった定年制というものは法律で御審議いただいて、その可否をお決めいただくということでなければいけない、かように思いまして、定年制というものを法定化し、この法案を出した次第でございます。
  489. 上田卓三

    上田(卓)委員 今回政府が挙げておりますところの提案理由でありますが、「国における行政の一層の能率的運営」を図るため定年制を設ける必要がある、このようにうたっておるようでございますが、これは一体何を意味しているのかということをお聞かせいただきたいわけであります。なぜならば「行政の一層の能率的運営」とは、定価制の法制化で実現できるものでは決してない、このように考えるわけであります。基本的には縦割り行政の弊害と各省庁間のなわ張り争いが行政の能率的運営と民主化を妨げているのではないか、このように考えるわけであります。行政の能率的運営は、六十歳以上の公務員を首切れば、それで実現するものでは決してないし、また六十歳以上の公務員が非能率的だということでもないはずであります。そういう意味で、行政の能率的運営ということと定年制の実施はどういう関係にあるのか、はっきりと大臣の説明をいただきたい、このように思います。
  490. 中山太郎

    ○中山国務大臣 いま先生お尋ねの、行政の効率化と言っているのは定年制を導入することだけでうまくいくものじゃないよというお話でございます。私もそのように実は思います。  御案内のように、戦前からの一つ行政の流れ、例を言えば伊藤博文がつくった行政機構というものは、戦後も脈々と生き続けている。こういう中で縦割り行政機構をどうするのか、新しい社会に対応する新しい行政のシステムというものをどうするのかということが、私は今度の第二臨調一つの大きなテーマになっていると思います。そういうものといわゆる公務員のバイタリティーに富んだサービスというものをどうかみ合わせるか、ここに国民が求める新しい行政のシステムが出てくるんだろう。こういうことで、いままで勧奨制度が比較的うまく作用いたしておりましたけれども、各省ばらばらに勧奨の年次が決まっておりますし、また長期的な展望に立った人事管理というものがなかなかむずかしいという問題もございます。あるいは民間の流れ、世論の流れというものを見ながら、政府といたしましては、公務員制度にこの定年制を導入することによって長期的な人事管理をやる、バイタリティーをつける、そして若い公務員の方々に大きな夢を持って働いていただけるような公務員制度をつくりたい、こういうことで今回お願いをしたようなことでございます。
  491. 上田卓三

    上田(卓)委員 公務員の定年制導入ということが、一般に言われておりますように、財政再建とかあるいは行政改革一つとして考えられているのだとすれば、大きな間違いではないか、私はこのように考えるわけであります。政府は、小さな政府とかあるいは安上がりの政府というようなことも言っておるようでございますが、来るべき行政改革というんですか、第二臨調が発足しておるわけでございますが、公務員の数をできるだけ減らそう、あるいはこれまで何回もわれわれ自身が指摘しておりますように、公務員の首切りというものに対してわれわれは絶対反対である、こういう立場にあるわけでございまして、そういう首切りを前提にしたところの行政改革というものにはわれわれは賛成できない、このように思っておるわけであります。  しかし、仮に小さな政府ということを認めたとするならば、いわゆる定年制の実施が公務員の数の削減にどれだけ効果があるのかということで、私は大変疑問を感じておるところでございます。現在行われている退職勧奨制度を変更して、そして定年制を法制化する積極的意義は全然考えられない、このように考えるわけでございまして、行政改革という以上は、定年制より先にやるべきことが幾らでもあるのではないか、このように考えるわけでございますが、大臣の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  492. 中山太郎

    ○中山国務大臣 定年制を導入したらどの程度の人員の削減ができるか、あるいはそれに要する給与の削減ができるかというお尋ねでございますが、それは先生もお話しのように、具体的な計数をいま直ちにお示しするわけにはまいらないと思います。  私は先日も日本学術会議政府への意見書を読んでおりましたけれども、そのレポートには、日本はいま大きな歴史的時代転換という言葉を使っております。大きな社会の体質の転換が起こりつつある。その中で、政府はいかにあるべきか、あるいは民間がいかにあるべきかということで、民間の方が先に体質転換に努力をしている。政府も民間の世論の流れ、あるいは民間の流れというものを見ながら、やはり国民が主権者でございますから、主権者はどう考えているか、主権者の求めているものは一体何かということから、われわれとしては国民に対する責任として行政改革を思い切ってやる、また公務員の制度の合理化もやっていく、こういうことで、私どもとしては今日取り組んでおるということを御理解いただきたいと思います。
  493. 上田卓三

    上田(卓)委員 納得できませんね。本当に確かな資料というのですか調査というのですか、そういうものがないままに定年制が行政改革一環というのですか、そのものではないにしても、重要な一部を占めるというようなことを考えておるとするならば、非常に問題があるんじゃなかろうか、このように思います。  今日、わが国は欧米諸国の約二倍から三倍のスピードで高齢化社会を迎えつつあることは長官自身も御存じのことであろう、このように思うわけでありますが、十五年から二十年後には六十歳以上の人口が一千万人を超えるのではないか、このように言われておるわけであります。それだけではなく、特に働き手である労働者の年齢も高くなるわけでありまして、このまま推移すると、中心的な労働者の年齢は四十五歳ぐらいになると予想されておるわけでありまして、こうした高齢化社会を目前にして年金あるいは医療などの社会保障政策、あるいはまた高齢者が可能な限り労働を続けられるような雇用政策の充実こそがいま一番大事なことではなかろうか、このように考えるわけでございます。  定年制の問題も、このような雇用や年金、医療など高齢化社会にかかわる全般的な施策の中に位置づけて論じられるべきであろう、このように考えるわけであります。ましてや高齢化社会の問題とは全然無関係財政再建や行政改革から定年制問題を論じるべきではなかろう、このように考えるわけであります。  そこで、政府として高齢化社会に向けた施策というものをどう考えておるのか、それと定年制との関係についてどのように考えておるのか、お答えをいただきたい、このように思います。
  494. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は、高齢化社会への考え方の基本というものをはっきりさしておかなければならないと思うのです。それは人間がいつまでも働く、生きている限り働くのだという考え方も一つあります。しかしもう一つは、適当な時期に引退をして、第一線を退いて年金生活で豊かに暮らす、こういうふうな考え方もあるだろうと思うのです。また第二の人生を生きていくときに夢がなければ人間というものは生きていけない。それはお金だけではなくて、やはり生きがいというものがなくちゃならない。こういうことから考えていくと、高齢化社会というものは、先生も御指摘のように、医療をどうするのか、年金をどうするのか、あるいは家族構成の中での老人の位置をどうするのか、あるいは親子の同居の問題をどうするのか、いろいろな高齢化社会についてのニーズというものは出てくるだろうと思うのです。そういう中で定年制というものとの絡まり、そういうものを全体に含めて政治全体が取り組んでいかなければ、この問題はなかなか解決できないだろう、そういうふうな考え方を持ってただいま対処していると申し上げておきたいと思います。
  495. 上田卓三

    上田(卓)委員 長官、だれでも死ぬまで働きたいというふうに思ってないと思うのです。労働というものは、本来は人間にとっては欠くべからざるものであろう。だから、そういう意味で働くということがいかに大切なものかということは明らかだと思うのですが、今日の社会で労働に対してなかなか意欲を持てない、多くの人が一日も早く仕事をやめて、そして余暇を楽しむというのですか、豊かな老後を送りたいという気持ちを持っていることも、これまた事実ではなかろうか。生きがいの問題はまた別にあるわけでございますが、現実に老後を豊かに生活できない、そういう社会の貧困あるいは社会福祉が充実してない、年金では食っていけない、こういう状態があるわけでありますから、そういう点で長官のおっしゃっているのは的外れではなかろうか、私はこういうように思っておるわけであります。長官がおっしゃるならば、そういう前提条件を完全に準備した上でそういうことをおっしゃるなら私わかるわけでございますが、その点について、私の質問に対して全然ピンぼけな答弁になっているのじゃなかろうか、こういうように思うわけであります。  次に、時間の関係もありますから移りますが……(「もう一回やってもちえ」と呼ぶ者あり)それではもう一度。
  496. 山地進

    ○山地政府委員 高齢者問題というのは、いま大臣がいろいろお答えしたとおりだと思うわけでございますが、政府の方では、五十四年八月に雇用対策基本計画というのを出しております。この計画の課題が「安定成長下において完全雇用を達成するとともに来るべき本格的な高齢化社会に向けての準備を確実なものとすること」、つまり高齢化社会を意識した雇用対策基本計画というのを立てているわけでございます。この中で、先生の御指摘になりましたように、高齢化社会がどういうふうにいくのだ、労働人口がどういうふうに変わってくるのだ、雇用の機会がどうなのだというようなことを踏まえまして今後の雇用対策を考えているわけでございますが、これは御案内のとおり、六十年までに六十歳定年を定着させるということを一つの目標に掲げているわけでございます。政府といたしましては、経済七カ年計画あるいは雇用基本計画を含めまして、六十年までに六十歳定年の定着ということを政策目標に掲げているわけでございまして、今回の公務員の定年の問題もその一環としてわれわれとしては推進している次第でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  497. 上田卓三

    上田(卓)委員 高齢化社会を迎えようとしているわが国にとって、六十年六十歳の定年制の導入というのは時代逆行であって、われわれとしては断じて許せない、このように考えておるわけでありまして、その点について篤と考えていただきたい、このように思います。  これまでの定年法案と今回の法案を比べて基本的に異なるところは、定年による退職の規定の仕方にあるわけでありまして、これまでは定年による退職は離職の形態の一つという法律上の取り扱いになっておったようでありますが、今回は分限として取り扱われているわけであります。定年による退職を分限に関する規定として盛り込んだ理由について明確にお答えいただきたい、このように思います。
  498. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 従来離職という関係で規定する方向であったのではないかというような点でございますが、従来というのは、あるいは地方公務員関係の規定の仕方の問題その他の関連でお述べになっておる面もあるかと思います。なるほど考え方といたしましては、離職という結果が出るということは事実でございましょう。ただ、離職というだけでまいりますと、これはいろいろな原因があるわけでありまして、免職というのも離職という効果がありますし、単なる自発的な退職もそうでありましょう、また死亡というようなこともそういうこと、懲戒免職もそうだというようなことで、定年による効果というのも離職という結果はそうでございます。  ただ、その原因についてどうであるかということに分類の仕方としては大変意味があるわけでございますが、そういう意味から見ますと、一定の年齢に達したがゆえに本人の意思とは関係なくしてその職を失うということになりますと、これは身分の変更、身分の喪失に関する問題でございますので、これを裏返して言えば職員の分限ということに相なるわけであります。そういう意味合いをもちまして、定年につきましても分限の一種であるというふうに規定をいたしますことが、方法としては正しいのではないかという意味から、こういう結論に達したということでございます。
  499. 上田卓三

    上田(卓)委員 どうも納得できません。公務員の身分保障としての分限の規定は、国民生活に重大な関連を持つ公務の遂行に当たって、その一貫性と安定、そして公正を確保するために、それを担う公務員の身分を保障するという意味から設けられておる、このように思うわけであります。その身分保障として、職員の意に反しては、法定の理由によらない限り降任あるいは休職、免職などがなされることはないという分限があるわけであります。これは国家公務員法の第七十五条に規定されておるわけでありますが、この分限にかかわる事項は、労働組合それから職員団体との団体交渉の対象となり得るのかどうか、その点について明確に答えていただきたい、このように思います。
  500. 斧誠之助

    ○斧政府委員 お答えいたします。  分限の権限を行使する、それ自体については交渉の対象にならない、これは管理運営事項とされておる事項でございます。ただ、免職、休職、そういう分限事項を発動します条件、つまり基準でございますが、こういうものをどうするかについては交渉の対象事項になります。
  501. 上田卓三

    上田(卓)委員 分限は公務員の身分に関する基本的な事項を意味しておるわけでありまして、公務員の労働組合、職員団体はみずからの身分の基本的な事項について団体交渉する権利も与えられていないということについて非常に問題があるのではないか。私は、分限も広い意味での勤務条件であって、団体交渉の対象であるべきだと考えておるわけであります。しかし、説明があったように考えると、いわゆる定年を分限の中に入れるということは、団体交渉の余地なく本人の意に反して退職しなければならない法定理由にこれが一つ加えられる、こういうことになるわけであります。現行法のもとでは、退職にかかわる事項は勤務条件の一つとして団体交渉の対象となっておったわけでありますが、勤務条件の一つとして団体交渉の対象である理由をその対象から外すということは重大な問題であろう、このように思うわけでありまして、公務員制度の根幹にかかわる問題だと考えるわけでありますが、総理府の長官のお考え方をお聞かせいただきたい、このように思います。
  502. 山地進

    ○山地政府委員 おっしゃるように、身分の変更、根本的な問題でございますので、政府といたしましては、人事院にこれをお諮りして、一年半の慎重な御検討を待って定年制度の導入ということについて意見を承ってこの法案を出したわけでございます。  ところで、身分保障とそういった労働組合との団体交渉の関係でございますけれども、いま先生のおっしゃるように、従来やめるということについて、労働組合と退職勧奨の基準年次についていろいろと折衝して決めてきたという事実はあるわけでございますけれども、これはあくまで退職勧奨の年次でございまして、退職勧奨存しても強制力がない、本人の意思次第でやめるかどうかという話でございます。ところが定年制度というのは、これは民間もすべて同じでございますけれども、強制的にやめるということになるわけでございます。したがって、勧奨退職ということ自体は、現在の身分保障の法制の制度から問題はないわけです。つまり本人の意に反してやめる、やめさせるということではないから、組合の交渉の対象になっていたわけでございます。ところが定年制度ということ、これはいまの身分保障で、いま先生の御指摘の七十五条で、本人の意に反してやめさせることがないという規定があるわけでございまして、この問題と絡んでくるわけでございますので、もし定年制度を公務員に導入するということが妥当であるという政策的な判断があった場合には、やはり定年制度を導入する場合には、法律をもって導入し、国権の最高機関である国会において御審議いただく、これが国家公務員法の精神であろうか、かように考えております。
  503. 上田卓三

    上田(卓)委員 現行法で定年制が設けられていないのは、公務員の職務遂行能力について一定の年齢的限界を置くことは、画一的に決められることではなく、公務にたえられるか否かはその個人個人について判断すべきだという能力実証主義の立場に立っているからである、このように考えておるわけでありますが、現行法が制定された当時の状況と今日とでは、公務員制度の根幹を変更しなければならないような状況、そういう変化があるのかどうか、その点について具体的に説明をしていただきたい、このように思います。
  504. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 戦前には、いま御指摘のように、一般の公務員には定年制がございませんでした。地方公務員については一部で定年制に関する制度があった事実がございます。当初、新制度が戦後発足をいたしました際に定年制がなかったというのは、いろいろな事情もございますし、またいま上田先生がおっしゃったような理由づけも当時としてはあったかと思います。それ自体としては意味があり得るわけだろうというふうに私も理解をいたしておるのであります。したがって、その当時は一般公務員については、年齢を離職事由にする必要はなかったという認識に立っておったものだと思います。その認識のもとに実際上やってまいりまして、最近までは勧奨退職の制度というものが比較的にうまくいっておりましたので、その必要性はなくて今日まで来ておったという事実がございますが、それが最近いろいろ言われます、高年齢社会の急激な爛熟というような事柄が出てまいりまして、その点については、公務員社会でも例外ではないという事実が顕著に出てまいりました。そういう情勢の変化と、民間における普及の状況その他をいろいろ総合的に彼此勘案をいたしました結果、従来なかった制度をこの際導入することが適当ではないかという結論に達したのでございまして、その間情勢の変化があったというふうに認めましたことは事実でございます。
  505. 上田卓三

    上田(卓)委員 定年制について、現行法の制定当時と今日の状況について、それほど根本的な変化はなかったと私は考えておるわけであります。それだけじゃなしに、高齢化社会を迎えるという、こういう時代になればなるほど、逆に定年制を導入しない方が正しいのではないか。そういう意味で定年制導入は時代逆行である、こういうように私も先ほど申し上げたわけでございます。  再確認いたしますが、この分限制度の趣旨が公務の継続性、一貫性、安定性を確保する、つまり公務員が安心して職務に専念できるための保障だということであるならば、それは定年制とは全く考え方が違うのではないか。定年制は公務の一貫性、継続性、安定性を確保するという分限制度本来の意味からして、何か積極的な意義があるのかどうか、その点について明確にお答えいただきたい、このように思います。
  506. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 定年制を分限の中に入れましたが、定年制が入らない前の分限は、いまお話しになっておりますように、これはやはり公務員の特殊性からまいります身分保障の規定、それが色彩としては非常に強いという面を持っておったことは事実でございます。したがいまして、それを野方図に行使されましては職員の身分に安定性がございませんので、分限事由として列挙いたしまして、それ以外のことでは恣意的には身分の変動は許さないぞという保障をいたしたのであります。したがいまして、定年についてもこれをやろうとするのであれば、やはり事由として法律でもって明定しない限りにはできないということになりますのと、もう一つ、やはり定年自体というのも一定の年齢に達すれば云々ということでございますので、これは職員の身分の変動に関する重要事項であるということから、分限の内容に入れるべきであろうという結論が出てまいった次第でございまして、その意味では、従来の分限規定とややその趣を異にするということは、これは評価としては事実でございます。ただ、これが入りませんと定年制というものが実施できませんし、これが入ることによって、また一つの分限事由が加わりまして、それ以外の事由によっては職員を意に反してこれを変動はできないという効果も生じてまいるわけでございます。
  507. 上田卓三

    上田(卓)委員 定年制とは一定の年齢になれば退職するという制度であって、つまり一定年齢以上は在職できないという首切り制度でありますから、これ自身いわゆる身分保障でも何でもなかろう、こういうように思うわけであります。やめるのですから、身分保障ということにはならぬのではないか。逆に、六十歳まで身分保障しているという解釈が政府の方にあるかもわかりませんが、われわれはそういうような解釈をとることは間違いだ、このように思っておるわけであります。  そこで、定年制は明らかに退職条件に関することであって、要するに勤務条件の一つにすぎないわけであります。定年制をそれと全く関係のない分限条項の中に位置づけることは、絶対にわれわれは納得できない、反対である、こういう立場でありますが、総務長官からこの点についてどのように考えておるのか、明確にお答えいただきたい、このように思います。
  508. 中山太郎

    ○中山国務大臣 定年そのものが、やはり一定の年齢になれば職を離れるということを規定するわけでございますから、公務員の身分に関することで分限事項である。そういうことになれば、法定で、国会での御審議にまたなければならない、このように理解をいたしております。
  509. 上田卓三

    上田(卓)委員 これはもう押し問答になるわけでございますが、その問題はまた後で述べるといたしまして、今回の定年法案の内容に立ち入って若干お聞かせいただきたい、このように思います。  まず定年退職日の規定でありますが、国家公務員法第八十一条の二第一項で「定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日」こういうふうになっておるようでありますが、この任命権者について、「第五十五条第一項に規定する任命権者」とは、いわゆる五現業に関するものと思われるが、その次の「法律で別に定められた任命権者」とは、具体的には何を指しておるのか、御説明いただきたい、このように思います。
  510. 斧誠之助

    ○斧政府委員 国家公務員法第五十五条の任命権者は、内閣総理大臣、各省大臣が基本的な任命権者であるということで定められております。それで別に法律で定められております任命権者としましては、国家公安委員会、これは長ではなくて国家公安委員会でございます。それから工業技術院の院長、内閣法制局長官、高等海難審判庁の長官、それが別に定められている任命権者でございます。
  511. 上田卓三

    上田(卓)委員 次に、この「任命権者があらかじめ指定する日」というのは、どういう理由で設定されたのか。具体的に三月三十一日以外にどのような指定日を設定するつもりなのか。また別に定める指定日を、たとえば七月とか十月とかに設定した場合、職員の採用との関係で、新規採用は普通四月に行われるわけでありますので、そういう意味で採用と退職との間にギャップ、すなわち空白期間が生じるわけでありますが、どうしても一定の期間欠員が生じることになるわけでありますが、その点についてどう考えておられるのですか。
  512. 山地進

    ○山地政府委員 定年のみならず、恐らく勧奨退職の場合でも同じような現象が起こって、それぞれ知恵を働かしてやってきたことであろうと思うわけでございますが、それぞれの組織の実態だとか、あるいは退職管理計画等に応じて定めるわけでございます。法律に明示されている三月三十一日以外の具体的な定め方としては、たとえば人事異動をその省によってそれぞれ特定の時期に、七月ごろやるというのが慣例になっているところもあれば、一月ごろというようなのもあります。そういった異動の時期に合わせるというのも一つの方法でございます。それから各四半期ごとにどういうふうな人数割りになるかというようなことを定めるというのも一つの方法でございますし、あるいは定年に達した日のその月の末日、あるいは翌月の初めとか、これは各人の公平の観点から決めていく。こうすると、まばらにいくということで、一時固まって、年についてはある種のかたまりがあるわけですけれども、時期的にはばらばらにいくというようなことでおさまりがついてくるのじゃないだろうか。任命権者が定年退職日を定めるというときには、もちろん先生の御指摘のように、新規採用者というものの補充の可能性というのは非常に有力なファクターになるということは間違いないと思いますが、それらを考えまして、一時的な欠員が生じないように、これを計面的にやっていくということにしたいと考えております。
  513. 上田卓三

    上田(卓)委員 非常に空白をつくらないようにするということをおっしゃるのですが、なかなか大変であろうというように思います。やはり退職の日と、それと新規採用の日との関係がありますから、そういう点はわれわれとしては非常に疑問を感じておるところであります。改正案のいわゆる国家公務員法第八十一条の二では、原則定年年齢を六十歳とし、さらにただし書きで六十歳の原則定年によらない特例職種の年齢が明示されておるわけでありますが、つまり第一号は、「病院、療養所、診療所等で人事院規則で定めるものに勤務する医師及び歯科医師」が六十五歳。それから第二号では、「庁舎の監視その他の庁務及びこれに準ずる業務に従事する職員で人事院規則で定めるもの」、これは六十三歳となっておるわけでありますが、この一号、二号の関係の特例職種が設定された基準と根拠は何によるのか、明確に説明をしていただきたい、このように思います。
  514. 斧誠之助

    ○斧政府委員 特例定年官職につきましては、三号で示してあるのがその趣旨でございまして、「その職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であること」、そういう事情がある官職につきましては、特例定年を定めるということでございます。  病院、診療所の医師の場合は、医師はだんだんこれからふえてくるようですが、いままでのところ非常に欠員補充困難の官職でございまして、医師の獲得になかなか苦労しているところでございます。そういう意味で、医師については特例定年を設けたということでございます。「人事院規則で定めるもの」というこの「もの」は、病院、診療所、療養所と同様に診療業務を行っておる機関を定める予定にしております。  それから、二号の「庁舎の監視その他の庁務」、この職につきましては、庁務職員といいますのは、巡視、守衛、用務員、これが庁務職員でございます。準ずるものとしましては、労務作業員とか清掃婦あるいは洗たく婦等の単純労務に従事する職員でございます。これらの職につきましては、その官職の性質上中年以後の採用者が非常に多い。わりあい高齢者の在職者が多い。それから業務そのものが年齢にはそんなにかかわりがない業務である。それから特に人事ローテーションというものを考える必要がない、そういうような官職の特殊性がありますので、これを設けた次第でございます。
  515. 上田卓三

    上田(卓)委員 さらに同じく国家公務員法第八十一条の二の第三号は、その職務と責任に特殊性があり、六十歳の原則定年とすることが著しく不適当と認められる職員は、六十歳から六十五歳の範囲で人事院規則で定める、このようになっておるわけでありますが、これは具体的にはどのような職種を指しているのか、また六十歳では著しく不適当とする基準と根拠は何かお聞かせいただきたい、このように思います。
  516. 斧誠之助

    ○斧政府委員 第一番目の類型としましては、先に例を申し上げますと、宮内庁の楽師、調理師、カモ場の職員あるいは文化財の補修に当たっている職員、そういうことでございます。  これを特例定年といたします規準は、こういう官職というのは、職務内容が非常に特殊で、当該職員が遂行しておりますような、そういう職務能力を有するものが非常に少ない。したがいまして、計画的な人事ローテーションを組もうと思ってもなかなかあと補充が困難で、後任者が得られない、そういうグループでございます。  第二のグループとしましては、海難審判官を考えておるわけでございますが、職務内容が非常に特殊なために、特別な免許とか資格とか設定されておりまして、そのために公務に入ってくるのが非常に遅い。公務活用期間が短くなるような、そういうグループでございます。海難審判官は御存じのように、船長経験を二年以上経た後でなければ審判官になれない、こういうことになっております。  それから、第三のグループとしまして、外交領事事務に従事していろ職員でありますとか、高専の教官でありますとかというグループですが、これは職務遂行のためには非常に長期間の研修をする。それから経験も必要とする。そういうことで、特例定年を超えて勤務させることがより公務能率上有効であるという、そういう官職のグループでございます。  それから、第四番目のグループとしましては、職務遂行上豊富な知識経験、そういうものが要求されます、そのために適任者に非常に高齢者が多いというような官職でございまして、これは研究所の長で、外部から招聘して歴代研究所の長にしているというような、そういう高齢者で、もっぱらその道の専門家を連れてきている、そういう一部の研究所の長を考えております。
  517. 上田卓三

    上田(卓)委員 それから、同じく八十一条の三では「定年による退職の特例」、いわゆる延長、八十一条の四では「定年退職者の再任用」について、それぞれ規定されているわけであります。このように勤務の延長や退職者の再任用の規定を設けた理由は一体何なのか。またその職種は具体的にどのような職種を想定しているのか、お答えいただきたいと思います。
  518. 斧誠之助

    ○斧政府委員 定年年齢でずばり退職いたしますと、その者の退職によって非常に公務に支障が生ずる場合が発生いたします。そういたしますと、今回の定年制というのは公務能率という見地から意見を申し上げたわけですが、かえって公務能率を阻害するということになりますので、そういうケースについては、八十一条の三で勤務の延長を行いましょうということでございます。例といたしましては、退職する職員が現に特定の業務を遂行しておりまして、それがなお今後継続する、その職員が欠けることによってその業務が非常に支障を生ずるというような場合でございまして、たとえば大型プロジェクトチームの一員として研究に従事している職員が、なおそのプロジェクトが終了しないという場合には、終了するまで勤務延長したらよろしいのではないか。それから外交交渉というものに従事中の職員が定年年齢に達するというような場合は、交渉終了までは延長すればいいのではないか。それから退職する職員が持っております知識、技能、経験、そういうものが業務遂行上不可欠で代替者が直ちに得られない、たとえて申しますと、会計検査院の調査官がいらっしゃるのですが、現在見ておりますと、年齢構成上一挙に退職するようなケースが起こりそうな状況が見られます。そういう場合に調査官が一遍に退職いたしますと、調査官には一定の資格がございまして、研修等も検査院の中でやっておりますが、そこまで達していない職員ばかりでは検査業務ができない、そういう場合は勤務延長をする。要は余人をもってかえがたいような職務が現に存在して、その業務が終了するまでの期間、そういうことでございます。  それから、再任用につきましては、これは一たん定年で退職するわけですが、その退職した職員の経験とか技能あるいは技術、そういうものを公務に活用することが公務能率上非常に有用である、有効であるという場合に、その者を任用して公務能率を上げようという趣旨でございます。
  519. 上田卓三

    上田(卓)委員 たとえば天皇の料理人は何歳までやっているのか。雅楽の笙、篳篥の楽人は八十歳くらいまでやっているというように聞いておるわけでありますが、最高年齢は何歳までやっておったのか、こういうようなことがあるわけであります。  いま説明を受けて明らかになることは、原則定年年齢は六十歳となっているが、なぜ六十歳なのかということがよくわからない。なぜ六十歳でなければならないのかということが十分説明されていないのではないか。特例職種は六十三歳、六十五歳、また六十歳から六十五歳といろいろ設けられているけれども、その基準は一体何なのか、どこにあるのかということが明らかでないわけであります。勤務の延長、それから再任用の基準は何なのか、根拠はきわめてあいまいと言わざるを得ない。皆さん方はある程度の根拠らしきものを言っているのだけれども、われわれはどうもその根拠というのがわからない。本当に科学的なというのですか、全く科学的でないと言わざるを得ないのではないか、このように思うわけであります。国家公務員の全体の職についてその責任の度合いあるいは特殊性、専門性、精神的あるいは肉体的な負担の重さなどいろいろな要素を加味して個々に分類をしていかなければ、どうしても客観的でそうして合理的な基準や根拠といったものが明らかにならない、私はこのように考えるわけでありまして、人事院は今回の改正案に当たり、国家公務員全体について職務評価のようなことを具体的に行ったのかどうか、そのことについて明確にお答えいただきたい、このように思います。
  520. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 事柄が大変重要な問題でございますので、人事院といたしましては、そういう認識を持って非常に慎重に、また深刻に受けとめた上の調査を実施いたしました。また分析もいたしております。  職務分析等のお話がございましたが、これはわれわれの平常の仕事自体につきましてもそういうことを毎年ずっと手がけておるということがございまして、自信を持って職務評価等は現在の段階は段階なりにやれるつもりを持っております。そういう現状の立地点に立ちました上で今回の意見を述べろという御依頼が総務長官からございましたので、これを契機といたしまして、さらにわれわれとしては突っ込んだ調査、検討を行いました。これは各省庁の人事当局者等についてもつぶさに事情を聴取いたしまして検討を加えたのでございまして、その点は自信を持った資料に基づいてやっておるものというふうに私たちは確信を持って申し上げてよいのではないかと思っております。  それと、それぞれの職務分析に基づいて特例定年というものについて余地を設ける必要があるかということで、そういう規定を設けさしていただきたいということでございますが、原則定年につきましては、これは各省が実施をいたしておりまする勧奨退職の実態、それから方向というもの、それから民間における定年の実施状況と今後における見通し、そういうものも総合的に検討、加味をいたしました結果、原則定年は六十歳ということにいたしました。これを基礎にして、そういう特殊の職務実態等を持っておるものについては、そういう慎重な評価をいたしました結果、特例定年の余地を設けるという措置を講じた次第でございます。
  521. 上田卓三

    上田(卓)委員 結局、例外を設けることによってそういう人たちは何歳までということはないにしても定年が延長される、あるいは再任用される。そうして一般公務員は六十歳で、あるいはそれ以下でも勧奨制度でやめさしていこうということを考えておるんじゃないか、そういう意味では本当に差別的な関係がここに明らかになってきておるのではなかろうか、こういうように私は思うわけであります。公務員全体に一律何歳という形で一般的に通ずるような基準を決めることは、実際上不可能ではないか、このように私は考えておるわけであります。退職年齢というものは、結局個々の職種の特殊性に応じて、また公務員の個々人の生活上の都合も考慮した上でそれぞれに具体的に決定されるべきだと考えるわけでありますが、それについてどのように考えておるか。そういう意味で、すでに長年の慣行として労使間で確立されておりますところの退職勧奨制度が現時点では最も合理的ではないか、定年制をわざわざ設定する必要はない、このように私は考えておるわけでありますが、中山長官の明確なお答えをいただきたい、このように思います。
  522. 中山太郎

    ○中山国務大臣 現在までは、私正直申し上げて勧奨制度というものは非常にうまくいってきたと思います。しかし、これから先にやってくる高齢化社会に対しては、やはり定年制の導入というものが必要であるという人事院総裁の意見というものは非常な価値のあるものだ、そのように私は判断をいたしております。
  523. 上田卓三

    上田(卓)委員 全然もうあべこべなんですね。高齢化社会だから定年制を導入するということは間違っている、それこそ時代逆行である、こういうふうにわれわれは思っておるわけであります。  それでは、その職務評価の科学的根拠をひとつ資料として提出していただきたいのですが、それは提出していただけますか、どうですか。
  524. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 その職務評価の具体的な内容等をどの程度にするかという問題がございますけれども、これは職階制の資料の場合にもございますし、その後の検討もいたしておりますのでそういうものもありましょうし、また毎年俸給表というものを作成いたしますし、その等級別の定数を設定いたしますので、そういう際における検討資料、基礎資料というものもございますから、そういうものの中で御意向等参酌しながら、適当な資料がまとめ得まするならば提出をいたしたいと思っております。
  525. 上田卓三

    上田(卓)委員 それは早急に提出していただきたいし、また自信を持ってこの根拠を設定しているということであるならば、即刻出していただきたい、このように思います。われわれは当然この法案の審議中にぜひとも出していただきたい、このように要請をしておきたいと思います。  それから、退職勧奨制度と関連いたしまして、国家公務員の職員年齢構成で、四十八歳から五十一歳を頂点としたいわゆるこぶの問題をどう考えているのか、こういうことでございます。国家公務員の一般職の場合は四十八歳から五十一歳が一三・二%、それから五十二歳から五十五歳が一一%、五十六歳から五十九歳が四・九%となっておるようでございますが、六十歳定年となりますと、昭和六十年に五十二歳から五十五歳が定年直前に差しかかり、それから五、六年のうちに職員の一〇%から二〇%もの大量の部分、しかも一番経験を積んだ職員たちが退職してしまうということになるわけでございますが、このグループといいますか集団といいますか、それを六十歳定年で一律に退職させるということは、その分の欠員補充でまたしても同じようなこぶができてくるのではないか、このように思いますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  526. 斧誠之助

    ○斧政府委員 職員の在職状況は、いま先生おっしゃったとおりの状況でございます。そこで、そういうことも考慮しまして、実は人事院の意見を申し上げます際には、直ちにということではなくて、五年程度の準備期間を設けて実施するのが適当であるという意見を申し上げておるわけでございます。この間に将来の人事計画あるいは要員計画ということで後継者の養成もしっかり計画してもらわなくちゃいかぬし、昇進計画等もしっかり立ててもらわなくちゃいかぬということで、この法案でも、各大臣それから人事院、総理府にそれの準備の義務を課しておるわけでございます。  なお、申し上げますと、先ほど来話題になっております勤務延長とか再任用、そういうものも、どうしてもその職員が欠けると職務遂行に支障が生ずるという場合は適用の余地があるということでございます。
  527. 上田卓三

    上田(卓)委員 戦後の昭和二十五年ごろのいわゆる混乱期に大量採用された職員が、現在五十歳以上で大きなかたまりをつくっているわけでありますが、これを六十歳定年で一律にばっさりとやってしまうのは非常に無理があるのではないか、このように私は思います。むしろ弾力的な運用が可能な退職者の管理の方法がいまこそ必要ではないかと考えておるわけでありますが、この点についてもう一度明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  528. 斧誠之助

    ○斧政府委員 いま申し上げたとおりでございまして、各省庁の任命権者といたしましては、公務に支障の生じないような措置をあらかじめよく準備をしてもらうということをわれわれとしては指導もし、援助もしたいと思っております。
  529. 上田卓三

    上田(卓)委員 そこで、この勧奨制度を定年制の実施後も残すつもりであるのかどうか、この点について明確にお答えをいただきたい。もしこの勧奨制度を残すのであれば、退職について二つの方法が存在するということになって混乱するのではなかろうか。今回、定年を分限、すなわち身分保障としながら勧奨を残すとすれば、それは矛盾しているのではなかろうかというように思うわけでありまして、われわれは定年制の導入はあくまでも反対でありますが、この勧奨制度と定年制というものについてどのように考えておるのかお答えいただきたい、このように思います。
  530. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 他の御質問の方々にもお答えを申し上げたとおりでございますが、繰り返して申し上げますと、定年制というものができます時期を、いま御審議をいただいておりまする法案によって六十年と仮定するといたしますと、定年制が施行されまする六十年までの間は、おおむね従来どおりの勧奨がそのまま制度として存続して行われていくのではないだろうかというふうに思っております。ただ、それにつきましても、勧奨いたしましても、その効果の面においては、従来とは多少違った面が出てくるのではないかという感じがいたします。というのは、六十年になれば定年制が実施されるということが明確に相なってまいりますると、勧奨に応じる必要がないのではないだろうかというような思惑も恐らく入ってまいりましょう。したがって、そういう点については、人事当局として総合的に周囲の事情等をいろいろ彼此勘案しながら進めてまいらなければならぬという特別な配慮が出てくるものと思います。  それと、今度は六十年以降ということで定年制が動き出した段階を考えてみますると、これは定年制というものがそれ自体でもって制度として動いていくということが原則に相なってまいります。したがいまして、勧奨退職というものは漸次なくなっていくというふうに考えてよかろうかと思っております。  ただ、この点特例的に申し上げておりますが、各省庁のいろいろな都合がございまして、なかんずく管理職、具体的に申せば課長さんクラス以上の方々については、従来のいろいろな人事配置の都合その他の面がございまして、急にその定年の線に乗せてていくということが困難な事情のあるところもあるのではないかと思います。そういうところでは、範囲としてはごく限られた範囲でございますけれども、なお勧奨というものは並行して行われていく余地もあるのではないかという意味のことを申し上げておるのであります。
  531. 上田卓三

    上田(卓)委員 ちょっとお聞かせ願いたいのですが、現在あります勧奨制度、これはスムーズにいっているんじゃないのですか。その点についてお答えください。
  532. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 従来までは勧奨は大体うまく機能してきたと思います。ただ、その点について情勢の変化がいろいろ出てまいりまして、この勧奨制度の運用が効果的に行われない時期が来つつある、またそれは急速に近づきつつあるというような点の配慮も、定年制について制度をしくべきだということを申し上げておる一つの主要な要素でございまして、先刻総務次官も申されたとおりでございます。
  533. 上田卓三

    上田(卓)委員 勧奨制度がいままでスムーズにといいますかうまくやってきた、やられてきた。ところが今後の状況の変化、恐らくその状況の変化は高齢化社会を迎えて云々、こういうことだろうと思うのですね。ところがそのことについて大きな意見の違いがあって、逆に高齢化社会を迎えるがゆえにそういう定年制を導入することはおかしいのではないか、このように思うのです。そこにも根本的な違いがあるのですが、しかし、この勧奨制度がこれからうまくいかないから定年制を導入するというのであれば、勧奨制度をやめればいいのじゃないですか、定年制をあなた方が導入しようとするならば。勧奨制度がうまくいかないのだから定年制をしくというのでしょう。そうしたら勧奨制度は要らなくなるのじゃないですか。その点がよくわからないですね。定年はしくは勧奨はそのまま残すのだということになるわけでしょう。その点どうなのですか。納得できませんね。
  534. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 だから、その点は繰り返して申し上げておりますように、定年制がしかれる六十年以降は勧奨は恐らくなくなっていくであろうということを端的に申し上げております。ただ、課長さん以上というような者については、いろいろ従来のいきさつ、人事配置の都合上から若干のものは残るかもしれませんよということを申し上げておるのであります。
  535. 上田卓三

    上田(卓)委員 勧奨制度が徐々になくなっていくであろうというようなことをだれも保障できるものではないでしょう。それじゃ何年何月からその勧奨制度はやめる、こういうようにおっしゃるのですか。それとも希望的観測でおっしゃっているのですか。どうなのですか。
  536. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 希望的な観測ということでなくて、定年制度がしかれれば勧奨との関連でそうなるであろうということを確信を持って申し上げておる次第であります。
  537. 上田卓三

    上田(卓)委員 それなら、定年制がしかれたら勧奨制度はもう廃止します、こう言えばいいのじゃないですか。要らなくなるでしょうではちょっと納得できませんね、大臣。
  538. 中山太郎

    ○中山国務大臣 六十年になって定年制が導入されるということになれば、現実に勧奨制度というものはなくなるというふうに判断をいたしております。
  539. 上田卓三

    上田(卓)委員 なくなるということは、廃止するということ、そういうものはなくすということですね。
  540. 中山太郎

    ○中山国務大臣 制度そのものよりも公務員の諸君自身に権利が発生するわけでございますから、権利が最優先すると私は判断をいたしております。
  541. 上田卓三

    上田(卓)委員 問題は、退職する人々の権利が発生するというよりも、政府がそういう勧奨制度をいまとっているわけですから、権利が発生するというような形の答弁じゃなしに、政府として勧奨制度をやめる。勧奨制度をあなた方が存続しようとしても、われわれは六十歳まで権利があるのだというふうな形で当然主張されると思いますよ。ありますけれども、それはこちらの問題であって、それこそ権利の方であって、政府としては、定年制ができるのだからこの勧奨制度はなくす、こうはっきりと言うべきじゃないですか。
  542. 中山太郎

    ○中山国務大臣 公務員の諸君に権利が発生するということと同時に、政府にもやはり勧奨する権限があるというふうなのが人事院総裁の発言の真意だろうと私は思っております。
  543. 上田卓三

    上田(卓)委員 それじゃ人事院の総裁から聞かせてください。(発言する者あり)
  544. 江藤隆美

    江藤委員長 質問者は一人に願います。
  545. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 勧奨というのはあくまでも事実上の行為としてやっているわけであります。これは本人が聞く聞かないは本人の自由でございますね。定年制ができるということになりますと……(「こんな遅くまでやるから頭がおかしくなっているのじゃないか」と呼ぶ者あり)ぼくは大丈夫です。  そこで総務長官の言われる六十歳まではおれるという権利ができるのですから、その権利を覆すようなことは官庁側としてはできなくなる、そういう意味をおっしゃっております。
  546. 上田卓三

    上田(卓)委員 そうしたら勧奨制度がなくなるのですね。なくなるのですね。もう一度長官
  547. 中山太郎

    ○中山国務大臣 権利が発生するわけでございますから、これは最優先でございます。私は一番明確な答弁だと思っております。
  548. 上田卓三

    上田(卓)委員 これは余り押し問答をやってもどうかと思いますが、要するに公務員の方に権利が発生する、こういうことですが、やはり本人の意思というものは非常に大事だろうと思いますし、われわれの反対にもかかわらず政府が定年制をしくということになれば、政府みずからの手によってそういう勧奨制度をなくしていくということが当然正しいし、そういうことをする考え方を持っているのだというように私は解釈をしてこの問題をおきたい、このように思います。  先ほど人事院総裁は、この職務評価について自信を持って科学的根拠のある資料が出されるというように私は判断をいたしたわけでございますが、それは今国会、いわゆるこの法案の審議中に出していただけるというように理解していいですか。
  549. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 これは資料の関係でございますので、関係部局ともよく相談をいたします。いたしますが、先刻申し上げましたのは、われわれいつも職務評価というものはやっておるわけでありまして、その点俸給表をつくるにしてもそうでございます。等級別の定数をつくるにしてもそういうことは常時やっているわけです。標準職務表なんというのもございまして、それは一つの大きな資料でございます。そういうような判断のもとに、これは一つのグループとして原則定年の範囲内におさめられる、この分はやはり多少無理であろう、だから特例定年というものを設けるように道を開く方がいいのじゃないか、そういうことを申し上げて、この点については給与局長からもるる御説明を申し上げたとおりであります。それを明確にするような点は御説明で大体おわかりだと思いますけれども、なおそれを裏づけするような適当な資料ができますようであれば、極力急いでいたしますということでございます。
  550. 上田卓三

    上田(卓)委員 根拠ですね、そういうものを説明されているのだけれども、私はわからないわけです。あなた方が科学的と言ったって、根拠があるのだと言ったって、基準はこうだと言ったって、私自身は全然理解できない。そういう意味であなたの方で自信を持って科学的根拠を出せるならば、そういう資料があるならば出してほしいということであります。この法案の審議が終わってからでは遅いわけであります。法案の審議とかかわって私はそういう判断できる資料が欲しい、こういうことを言っておるわけでありますから、この法案の審議中に出すということでひとつお答えをいただきたい、このように思います。
  551. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 御趣旨に沿ってできるだけ速やかに、物理的な限界もございますから、そういう点は御承知おきの上でわれわれとしては最善を尽くします。
  552. 上田卓三

    上田(卓)委員 その資料がおありだとおっしゃるから、私は出してくれと言ったのです。(藤井政府委員「印刷です」と呼ぶ)そんなのは簡単なことですから。あるやつを出してくれと言っているのですからね。ないやつを出せと言っているのじゃない。いまから調査するという部分じゃないですから早急に出していただいて、そうせぬと審議にも影響するのじゃなかろうか、こういうように思います。  次に、定年制といわゆる共済年金受給資格との関連について御質問申し上げたいと思います。  まず、昭和六十年度で六十歳定年制が実施されますと、六十歳で退職し、しかも共済組合員期間二十年未満であるため退職年金が受給できない職員数の実態について、どうなっておるのか。  それから、国家公務員共済組合連合会、いわゆる四現業を含むわけでありますが、それと郵政省の共済組合について、一、昭和六十年度において、二番目は昭和六十一年度において、三番目には昭和六十二年度において、四番目には昭和六十三年度において、五番目には昭和六十四年度においてそれぞれ何名いるのか、その各所管庁の方から御報告を願いたい。また同時に、地公の場合について同様に自治省の方からお答えをいただきたいと思います。
  553. 藤田孝夫

    ○藤田説明員 申し上げます。  ただいまお話のございましたそれぞれの時期におきまして六十歳以上の年齢に達して、かつ勤続年数がまだ二十年過ぎていない、こういう職員の数は、これから申し上げる数字、おおむねそのようになると思います。  六十年三月に定年制が実施された場合には、約千三十人でございます。それから六十一年三月の場合は九百六十人。六十二年三月の場合は八百六十人。六十三年三月の場合は八百人。六十四年三月の場合は七百二十人でございます。これは冒頭申し上げましたように、勤続年数だけで抽出した数でございまして、いま申し上げました職員の方でも、郵政省に就職する前に他の官庁あるいは民間、こういったところで就業しておる実績がございますと、御承知のように通算ということでございまして、郵政省の勤続期間とそれ以前のいわゆる前歴の期間とが通算されまして年金の受給資格を取得する場合がございます。したがいまして、こういう前歴につきまして、ただいま申し上げました職員のそれぞれについて調べなければ、二十年未満のためにまだ受給資格を取得するに至らない、こういう数はただいまのところ正確に調査したものはございませんので、正確にお答えいたしかねますが、先ほど申しましたうち、相当数の方が前歴通算でもって年金の受給が可能ではなかろうか。かように考えております。
  554. 関口尚

    ○関口説明員 国有林につきまして勤続年数二十年に達しない者の今後の推移を見ますと、六十年度につきましては六百二十名、六十一年度につきましては六百三十三名、六十二年度に関しましては六百十八名、六十三年度につきましては六百四十八名、六十四年度六百四十名ということになっております。  以上です。
  555. 田中泰助

    ○田中説明員 造幣局の場合お答え申し上げます。  昭和六十年度からこの定年制が仮に実施されました場合、造幣局だけの勤務年数では年金受給資格の生じない者という定義で、昭和六十年度は一人、六十一年度一人、六十二、六十三年度はございませんで、六十四年度二人、計四名ということでございます。
  556. 太田耕二

    ○太田説明員 アルコール専売事業につきましては、六十三年度、すなわちこれは用務員でございまして、一名そういう該当者がおります。
  557. 山本六男

    ○山本説明員 大蔵省印刷局でございます。  中途採用等で勤務年数が二十年未満につきましては、六十歳定年で年金受給がないという者は、六十年度につきましては一人、六十一年度につきまして一人、六十二年度はゼロでございまして、その後は目下調査中でございますが、ほとんどこんな数字だと思っております。
  558. 中島忠能

    ○中島説明員 地方公務員の場合、六十年三月三十一日現在で六十歳以上の者で二十年未満の者につきましては、組合員数の約一%、三万百人ばかりでございます。ただいま申し上げました数字が五十四年の財源率再計算のときの資料に基づいて推計したものでございますので、各年度ごとの数字はちょっと把握し切っておりません。
  559. 上田卓三

    上田(卓)委員 この共済年金受給資格が発生しない職員の人数といいますか、そういう実態について報告いただいたわけでありますが、特にこういう方々はどういう職種の方が多いのかということで、国公関係とそれから地公関係になると思いますが、各省別じゃなしに大まかに、大体おわかりだというように思いますので、釈迦に説法でございますが、お聞かせいただきたいと思います。
  560. 斧誠之助

    ○斧政府委員 私の方で所管しております給与法適用職員だけで申し上げますと、行(二)の職員と医療(三)、看護婦さん、この二つの職種が非常に多うございます。
  561. 上田卓三

    上田(卓)委員 いわゆる現業職、特に地公の場合も――それじゃ自治省の方、ちょっとお答えください。
  562. 中島忠能

    ○中島説明員 ただいま御答弁申し上げましたように、五十四年の財源率再計算のときの資料に基づいて推計したものでございますので、正確な数字というのは不明でございますけれども、ただいま申し上げましたように三万百人ばかりに推計しております。  そこで、職種別というふうなお尋ねでございますけれども、私たち職種ごとに把握できませんので、共済組合ごとに申し上げますと、共済組合ごとでは、市町村職員共済組合というのがやはり一番多いというふうに現在推計いたしております。
  563. 上田卓三

    上田(卓)委員 私が申し上げたいのは、たとえば五現業の場合の中でも、特に郵政などには、私も関係しておりますところの同和関係のそういう方々もたくさんおられますし、またいわんや地方公務員の場合は、現業の中にたくさん、清掃労働者を初めとしてそういう同和地区の出身者が採用されておるわけですね。そういう方々が、この定年制の導入によって、いわゆる年金受給資格に達しないのに六十歳でやめていかなければならぬ、こういう点で、これは非常に深刻な問題だと私たちは考えておるわけであります。その対象者にとっては本当に身を切られるような思いで、大変心配されているのじゃなかろうか、こういうように思います。その点について、今回の定年法の中では具体的に何も触れてないわけでありますが、どのようにお考えでしょうか、明確にお答えいただきたい、このように思います。
  564. 山地進

    ○山地政府委員 いまいろいろと御説明のありました無年金者につきましては、数字はともかくといたしまして、私どもの間でこういう方々が発生するという事実については以前から確認をしておりまして、各省間で検討を進めるというふうに申し上げているわけでありますが、その検討を進めるという意味は、そういうことがあるということが確認されているので、その点について何らかの方法を講じなければいけないだろう。いま私どもの考えておりますのは、民間の年金で通算とか特例とかいろいろやっておるわけでありますので、そういったものに準じて共済法上何らか特例を講じたい、こういう方向で各省で検討を進めている段階でございます。
  565. 上田卓三

    上田(卓)委員 これらの職員に何らの保障措置がないということは、私は大きな問題じゃないか、こういうように思っておるわけでございます。六十歳を超えてなお年金年限に達しない者について、年金年限に達するまでの間在職させるための経過措置というのですか、そういうものが必要ではなかろうか、そういう意味での何らかの法の修正が絶対に必要であろう、こういうふうに思っておるわけです。われわれはあくまでもこの定年制については反対でありますが、もしもこの法案が通るということになればが前提でありますが、もう少し具体的にその点についての決意というのですか、考え方というものを、これは大臣の方から答えていただきたい、こういうように思います。
  566. 中山太郎

    ○中山国務大臣 本日の大出委員の御質問にもお答え申し上げましたとおり、この問題は重要な問題でございますので、関係各省庁と十分連絡をしますとともに、各党の御意見を聞いて、この御審議が終了するまでにこの問題の結論を出すように検討させていただきたいと考えております。
  567. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来たようでございますので、最後に私の考え方を述べて終わりたいと思います。  冒頭にも私から申し上げましたように、今日は日本は本当に急速な高齢化社会を迎えつつあるわけでございまして、定年制だけを切り離して論議するのではなくて、この高齢化社会に向けて雇用対策とか社会福祉施策、そういう施策を充実させていく、そういうことをもっと真剣に考えていかなければならないだろう、こういうように思っておるわけであります。政府行政改革ということで、すきあらば公務員の数を減らし、首を切ろうと考えているようでありますが、これは高齢化社会を迎えるわが国において時代逆行もはなはだしい、こう言わざるを得ない、このように思います。経済情勢も長期的に明るい見通しが立っているわけでもないし、今日においてでも失業者が百二十万とも百五十万とも言われるような現状があるわけでありますから、いまこそ景気の回復のために、また雇用拡大のために、政府はもっともっと大きな力を出さなければならぬし、いわんやそのためにも公務員の役割りはますます大きくなってくるのではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。  そういう意味で、雇用の拡大、福祉、医療あるいは教育の充実を目指して、私は本会議でも申し上げたわけでありますが、これは私の持論になるかもわかりませんが、いわゆる日本型のニューディール政策をこれから積極的に取り入れなければならぬ、そういう状況にあるのではなかろうか、こういうように思っておるわけでありまして、民間においてもなかなか雇用の問題が苦しい中で、公務員の方が六十歳になったらどんどん民間のそういう職場に進出することになるわけでありますから、なおさら民間のそういう雇用の問題が大きな問題になってくるのじゃなかろうか。民間のそういう雇用のむずかしい状況を、政府がどう採用して雇用の拡大を図っていくかというようなことも逆に考えていかなければならぬ時代ではなかろうか、こういうように思っておるわけでありまして、そういう点について、今回の公務員に対する定年制の導入に対しては、私は絶対反対である、直ちに法案を撤回すべきであるということを申し上げまして、私の、質問を終わります。
  568. 江藤隆美

    江藤委員長 次回は、来る十二日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。午後十時五十六分散会