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1981-04-28 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月二十八日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左近四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       狩野 明男君    粕谷  茂君       亀井 善之君    川崎 二郎君       倉成  正君    田名部匡省君       竹中 修一君    宮崎 茂一君       上原 康助君    角屋堅次郎君       矢山 有作君    渡部 行雄君       市川 雄一君    小沢 貞孝君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    加藤 圭朗君         人事院事務総局         任用局長    斧 誠之助君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         内閣総理大臣官         房総務審議官  和田 善一君         総理府人事局長 山地  進君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         労働大臣官房審         議官      小粥 義朗君  委員外出席者        労働大臣官房統        計情報部雇用統        計課長     北原  卓君        自治省行政局公        務員部福利課長 柳  克樹君        内閣委員会調査        室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     石原慎太郎君   渡部 行雄君     下平 正一君 同日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     上草 義輝君   下平 正一君     渡部 行雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出、第九十三回国会閣法第六号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、  第九十三回国会閣法第七号)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。  同和問題調査のため小委員十三名からなる同和対策に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、小委員及び小委員長選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長につきましては、委員長において指名し、追って公報をもって御通知申し上げます。  なお、小委員及び小委員長辞任の許可及び補欠選任並びに委員辞任に伴う補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 江藤隆美

    江藤委員長 次に、国家公務員法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最初防衛庁にお伺いいたしますが、まだ大臣が来ておられませんので、順序を変えて少しやります。  今度の有事法制研究の中でこの報告の第一分類、つまり防衛庁所管法令研究は第一分類という範囲の中では完全に終了したのかどうか、それともまだ完了はしていないが一応ここで報告した、こういうふうに受け取っていいのか、どちらかお伺いいたします。
  8. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御承知のように、今回の中間報告におきましては、第一分類、すなわち防衛庁所管法令につきましては、大方の整理を終わりまして今回御報告した次第でございます。  なお、第一分類の中にも、たとえば百三条による物資保管命令の罰則の適用の問題であるとか、あるいは防衛庁職員給与法による有事の際の給与の支給の問題等については、今後なお問題点が残されておりますので、この点については今後引き続き検討したいというふうに考えております。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうするとまだ完全に終了していない、こういうふうになるわけですね。
  10. 夏目晴雄

    夏目政府委員 問題点洗い出しとしては終わったつもりでおりますが、なお結論の出てないものがいま申し上げた点にあるということでございます。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、それが完了して立法化されるという段階までは大体どのくらいかかる見通しですか。     〔委員長退席染谷委員長代理着席
  12. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御承知のように今回の研究というのはあくまでも立法準備法制を直ちにつくるということが目的ではなく、自衛隊有事の際に行動するに際してどういう法制上の問題点があるかという問題点整理するための作業でございまして、したがって、私どもとしましては、直ちにこれを立法するとか法制化するというふうなことを考えておりません。ただ、この検討の結果出たものにつきましては、今後また有事法制研究とは一応切り離した形で研究をし、国会論議国民世論動向等も考えながら改めて研究すべきあるいは結論を出すべき問題であるというふうに考えておりまして、いつまでに立法化するかというふうなことについて、いま具体的な計画は持っていないということでございます。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 立法化をいつにするかという計画はない、ただ世論動向を見てと申されておりますが、それではその第一分類研究が完全に終わるという見通しが当然立てられていいのじゃないか。そうでなければ第二分類にはなかなか入れないと思います。三年余もたっておる今日、防衛庁管轄内の第一分類だけでもまだできないというふうになると、この有事法制研究が全般にわたって終わるころは恐らく何十年かかかるのではないか、こんなふうに考えられるのですが、どんなものでも一つ研究をしようとすれば、まず全体の大ざっぱなつかみをしながら、その中の一部分をどういう段階研究を進めるか、こういうことが当然考えられていいと私は思うのです。まず第一分類だけを最初に切り離してこれだけやって、これが終わったら次の段階と言うけれども、しかし第三分類までこれがはっきりと区別されている以上、全体についてのある程度の見通しというものは当然立てているのではないか、こういうふうに考えるのですが、その辺はいかがなものでしょうか。
  14. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず第一に、今回の有事法制研究といいますのは、去る五十二年八月に当時の福田総理から指示を受け、三原長官の指揮のもとに開始したわけでございます。したがって、相当時間がかかっておるということは御指摘のとおりでございます。ただ、五十三年九月の見解でも申し上げたとおり、当時こういった法律を直ちに適用しなければならないという差し迫った事態というものは考えられないということでございまして、そういうときであればこそ、こういった勉強をじみちに慎重に冷静にやるべきであるというふうなことから、私どもとしては必ずしも短兵急に短期間に結論を出すというスケジュールで作業していなかったということがまず一点挙げられようかと思います。  それから第二、第三の分類につきましてのおおよそのめどということでございますけれども、御承知のように第一分類防衛庁所管法令というのは、防衛庁設置法自衛隊法防衛庁職員給与法という三つ法律でございまして、これについての問題点洗い出しというのは一応終わったと申し上げましたが、そのほかに他省庁関連法令というのがございます。これは自衛隊物資輸送、隊員の輸送あるいは通信連絡に関する法制あるいは火薬類取り締まりに関する法律、その他もろもろの法律がこれに含まれるわけでございます。  たとえて申し上げれば、現在の自衛隊法の中に適用除外であるとか、あるいは特例を設けられている法律ですら二十四件あるわけでございます。そのほかの法律も数えますと相当多くの法律が挙げられるということが一つと、それからこれらについての検討をするに当たっては、当然のことながらその法令所管する関係各省との調整、協議というものが必要になります。こういったことを考えますと、いまいつまでにというふうな具体的なことを申し上げる段階にはまだ至ってない、今後相当長期間を要するのではないかというふうなことが申し上げられようかと思っております。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、この有事法制研究対象となっておる各般にわたる法令というのは大体どのくらいありますか。第一分類、第二分類、第三分類と分けた際にどのくらいずつあるのか、それをまずお伺いいたします。
  16. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ただいま御答弁申し上げたように、たとえば第二分類に属するものとしましては、まず第一に部隊移動資材輸送等に関連する法令が挙げられようかと思います。この法令一つ一つ洗っているわけではございませんが、まず常識的に私ども検討をする必要があると考えられるものを申し上げますと、道路法であるとか道路交通法航空法部隊移動資材輸送に関する法令として挙げられようかと思います。  第二としては、通信連絡に関連する法律としまして電波法有線電気通信法がこの中に入るのではないか。  第三番目に、火薬類取り扱いに関連する法律としまして火薬類取締法あるいは航空法鉄道営業法が入るだろう。  その三つのほかに、自衛隊有事の際の行動に関連する法令として、たとえば森林法とか医療法とか墓地、埋葬等に関する法律とかいうふうなものが無数にありまして、いま直ちに具体的に数を整理して幾つということを申し上げる段階にはないことが第一点でございます。  さらに、第三分類におきましては、現在どこの省とも所管がはっきりしない問題、すなわち住民の保護、避難誘導に関する法令、これは現在災害救助に関しての同種の規定はございますけれども有事に際してのこの種の規定がございません。いまこういうものをどういう場でどういうことを検討すべきかの土台が全くできてないわけでございます。  さらにはまた、ジュネーブ四条約といいますか、人道に関する条約に関する法制化の問題、すなわち捕虜の問題、傷病者の問題、これらについての法制も何らできてない。しかも、これをどこで検討すべきかということの検討の場すら決まってないことを考えますと、まず法制の数からいっても相当数多くのものにまたがるであろう、それから協議の相手方も相談する役所の数も非常に多岐にわたるであろうというふうなことから長期間を要するということを申し上げた次第でございます。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 こういう重大な問題を研究するのに法律にどの程度関連していくか、まず数を拾ってみるということがなされてしかるべきではないか。第一分類にはどのぐらいの数がある、第二分類にはどのぐらいの数がある、それを挙げておいて、長い間研究するとまた別の問題が出てくる、その際に次の法律がそこに追加される、そういうことでいかないと詰めができないじゃないですか。いまのような漠然としたことでどうして研究が具体的に進みましょうか。私はそこを聞いているのですよ。だから全体としてどのくらいの法律にこれがかかわっていくのか、そして第一分類では三年余かかったのだから第二分類はあとどのくらいかかるだろうということで、そこで一つの予測がつくわけでしょう。そういうふうにして研究を進めないと、ただ国の金を漫然と使って、何を研究しているのだかさっぱりまだわからぬということではどうにもならぬでしょう。実際いま私とあなたのこのやりとりの中で、研究概略すらつかめないじゃないですか。これは三年有余かかっているのですよ。そして概略もつかめないような報告しかできないのではどうにもならぬじゃないですか。全体としてはこういうものだ、こう私は言えると思うのですよ。
  18. 夏目晴雄

    夏目政府委員 何回も申し上げるようでございますけれども、私ども有事法制研究を進めるに当たって、まず三つ分類に分けたということは先ほど来申し上げたとおりでございますし、お手元に配付している資料にもそのことを明記してあると思います。第一分類に属するものは自衛隊法……(渡部(行)委員「そんな名前じゃなく幾つぐらいの法律があるか」と呼ぶ)したがいまして、第一分類に関しては三つ法律ということでございます。第二分類につきましては、先ほど申し上げておりますように、自衛隊法によって適用除外特例を設けられている法律が二十四あります。まず私どもとしては、この適用除外なり特例がある法律について、いまの特例適用除外で十分であるかどうかというふうなことから検討するべきではないだろうかと考えております。  その他、そういった特例適用除外のない法令は、先ほど申し上げたとおり相当数多くのものがございまして、これがいま挙げたもので十分かどうか、あるいはそれ以外にあるのかどうかというのは非常にむずかしい問題でございます。したがって、今後時間をかけて研究したい、いま直ちに幾つ法律が関係するということは申し上げられない状況でございます。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大臣がおいでになったようですから、今度は大臣からお伺いいたします。  いま申されましたとおり、まだそれほど明確に研究が進んでいるわけでもないわけです。第一分類についてもまだ完了したという段階ではない。しかも、いま鈴木総理は訪米を控えておるし、あるいは防衛大綱の見直しとか、そういうことが云々されておる中で、この時期を選んで有事法制研究中間報告という形で報告されたその意図は一体どこにあるのか、またこの時期を選んだ背景は何か、この点についてお伺いいたします。
  20. 大村襄治

    大村国務大臣 有事法制研究中間報告を最近に至りまして国会に御報告申し上げているのでございますが、なぜこの時期を選んだかというお尋ねでございます。  この問題につきましては、御承知のとおり二年以上前から研究を開始いたしているわけでございます。その状況についてできるだけ早く報告をせよというお話が昨年の臨時国会のときからございまして、私はそのときには、防衛庁所管法令についての検討が比較的進んでおるので、これをできるだけまとめて次の通常国会の会期中には御報告することにさせていただきたいという御答弁をいたしておったわけでございます。その後、防衛庁所管法令についてさらに作業を詰めました結果、ようやくまとまりましたので、今回国会に御報告申し上げまして、その研究について御審議を願うことにいたしたわけでございます。他省庁所管にかかわる法令あるいは所管省庁がまだ明確にされておらない法令等につきましては、まだ研究が進んでおりませんので、今後まとまりました段階において、またそれぞれ御報告させていただきたい、さように考えておる次第でございます。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この研究はいま法制化する意図はない、ただ研究をして、それを報告して国民の理解が得られるかどうかを見るのだ、つまりリトマス試験紙みたいな立場でこれを出したと言ってもいいだろうと思います。そうすると、第一分類、第二分類、第三分類分類したのは、その分類が終わるごとに報告をしていくのか、そしてその法制化は、仮にやるとすればどういう時期に考えるのか、その辺についてお伺いいたします。
  22. 大村襄治

    大村国務大臣 法制化の問題につきましては、この研究を始めるもとになっております長官指示におきましても、研究法制化とは別個のものであるということを明らかにされておるわけでございます。一部研究のまとまりましたものにつきまして今回中間報告を申し上げたわけでございます。今後これをどのようにするかにつきましては、防衛庁において別途検討させていただきたいと考えておるわけでございます。その場合におきましては、国会審議状況あるいは国民世論動向、そういったものを参考にしなければならないということは当然のことではないかと思っておるわけでございます。具体的な時期につきましては、まだはっきりしたものを持ち合わせておらない次第でございます。  また、今回御報告できなかった部門の研究につきましても、まとまったものから中間報告をさせていただきたいと考えておるわけでございまして、第二分類、第三分類、それぞれの分類にまとめてやるかどうか、その点は研究進行状況を見ないと別々にするかあるいは一緒にするか、どの程度のものが御報告できるか、この点は今後の研究作業にまたなければならないと考えております。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 研究法制化は別問題だとおかしなことを言っておりますけれども、しかし、現実にこの報告の中には、自衛隊法百三条とかあるいは七十六条等に挿入しなければならない、これを改正しなければならないことを具体的に書いているじゃありませんか。だとすれば、それは当然今後自衛隊法の一部改正とか何かの形でやってくるわけでしょう。それは法制化意図なくしてどうしてこういうことを書くのですか、その点をお聞かせください。
  24. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ただいま大臣が御答弁申し上げたとおり、今回の研究というのは再三申し上げているとおり問題点整理を行ったということでございまして、直ちにこれを立法化したり法制化するというふうなものではないということを申し上げているわけでございます。  ただ、私どもこの研究は、研究のための研究ということではなくて、有事の際に自衛隊がいかに有効、円滑に行動できるかという立場から、どういう問題点があるかということを整理したものです。したがって、この問題点整理というのは、私どもが今回中間報告したとおりになることが望ましいとは考えておりますが、しかしその望ましいということと直ちに立法化することとの間には相当の距離がございまして、それはいま申し上げたとおり今後関係各省との協議もございますし、国会の御論議等もありますので、そういった点を含めながら考えていくべき問題である、今回の研究はあくまでも問題点整理にあるということを再三申し上げている次第でございます。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 問題点整理ということは、つまり立法化目的としているからそういう整理が必要じゃないですか。私はいま直ちにこの国会法案を出すのかどうか聞いているのじゃないですよ。将来立法化目的としてこの問題整理をやっているのではないかということを聞いているのです。その目的なんですよ。
  26. 夏目晴雄

    夏目政府委員 言葉じりをとらえるようではなはだ恐縮でございますが、目的はあくまでも問題点整理である、ただし、検討したことが中間報告に盛られているという意味で、私どもはそういうことを期待し、あるいは願望していることが全然ないかといえば、そういうものはあったということは言えようかと思いますが、作業目的では直接ない。作業目的はあくまでも整理であるということでございます。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは水かけ論みたいになりますけれども、そんな理屈は国民は信用しませんよ。大体あなた、立法化する意思がなくて問題整理がどういう効果をあらわしますか。問題効果で終わるならば、それは金のむだ遣いということでしょう。税金のむだ遣いということでしょう。問題は、これをやがて法制化していく、そのためにいまその準備としてこの整理をするんだ、だから目的はあくまでも法制化だというふうに国民は受け取っているのですよ。それじゃ法制化は絶対しないとあなた言い切れますか。
  28. 夏目晴雄

    夏目政府委員 法制化は絶対にしないかということはあれですが、あくまでも今回の研究目的問題点整理であって、したがって、ここでもって中間報告した問題点整理が、いま先生から再三の御指摘があるような議論を踏まえて、絶対にこれは直ちに法制化すべきであるという議論が出てくれば、私どもとしてはそうしていただくことが望ましいというものでございます。ただし、そう思っていることとこの作業目的とは区別して考えておるというものでございます。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはこれ以上突っ込んでも同じ答えしか返ってこないと思いますから、それではまず、有事法制研究というのは、全然立法にはかかわり合いがない、こういうことに受け取っていいでしょうか。ただ研究だけが目的であって、やがても現在も法律審議行為とは無関係である、こういうふうに受け取っていいでしょうか。
  30. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、研究成果報告立法化作業とは全く別個のものでございます。法案提出、御審議とはかかわりございません。ただ、研究成果を御報告申し上げ、その後における国会の御論議世論動向等によりまして今後必要が生じた場合には、また法律改正案等として御提案して、そのものとして御審議を願う。研究立法化とは別個のものだということを重ねて申し上げておきます。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは少し具体的にお伺いしますが、ここに土地使用とかあるいは物資収用等が書かれておりますが、この土地使用という場合に、その手続はどんなふうにされて使用するわけでございますか。
  32. 夏目晴雄

    夏目政府委員 たとえば自衛隊法の百三条には有事の際における自衛隊土地使用についての規定がございます。この土地使用というのは、私どもが必要とする土地について、通常の例であればあくまでも民事契約によって土地を取得し使用するわけでございますけれども有事の際そういうことが不可能であるということも予想されます。そういう場合には、この百三条の規定によりまして都道府県知事要請をして土地使用するというふうなことが決められておるわけでございます。この土地使用について都道府県知事要請し、どういうふうに使用するかについての政令が決まってないというふうなことが現状でございまして、したがって、今回の中間報告にも示してあるとおり、そうした百三条を実際に適用する場合の具体的な手続についての政令をつくらなければならない。その政令には一体どういうことが盛り込まれるべきであるかということを検討した結果がお手元に配付してある資料の後半に載っている百三条に盛り込むべき政令の内容の骨子というか、そういったものは、その手続に関するものでございます。その手続のおおむねの考え方というのは、災害救助法とか水防法その他の現在既定の法律に基づく手続とおおむね同様のものと理解しております。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)委員 有事の際に土地使用について、たとえば県知事に要請する、そうすると、その要請書の中には行政区を指名してやるのか、一筆ごと地番を付して要請していくのか、その点はどうなんでしょうか。
  34. 夏目晴雄

    夏目政府委員 土地使用する場合に、当然のことながら国民財産権にも関連する問題でございますので、単なる何区何町というふうなことでなく、個々の土地についての地番といいますか、そういうものを指定してお願いするということに相なろうかと思います。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)委員 あなたは土地の所有の実態を知らないからそういうことを言うと思うのですが、軍が行動する場合に、何百筆も何千筆もあるものを一々拾ってそこに書き込んで要請できますか。
  36. 夏目晴雄

    夏目政府委員 問題点を具体的な問題に移してお答えした方がわかりいいと思いますので、現在自衛隊法の百三条による土地使用、これを私どもは防衛出動待機命令から適用さしていただきたいというふうにこの中間報告ではお願いしているわけでございます。これはどういうことかといいますと、武力攻撃が起こり得るということから防衛出動が下令されることが予想されるような緊迫した事態において、私どもとしては、たとえば敵の着上陸予想地点にざんごうを掘る、部隊を集結する、物資の集積をしなければならないというふうなことが考えられるわけでございます。そういう場合に、この土地というのはどこでもいいというわけにいきませんので、ある種の特定の土地が必要になろうかというふうに考えますが、そういう場合に、私どもとしては、その土地使用者に対してその土地を提供していただくような、いわゆる民事契約によるお話し合いをすることは当然でございますが、それが不可能な場合には、いま言った百三条を適用して都道府県知事要請し、土地使用をするということが第一点でございます。  それから、いま先生が御疑問として呈せられたのは、いわゆる戦闘の場面といいますか、部隊が緊急移動する場合などに田や畑を通行することがあるのではないか、そのときに一々土地の所有者その他を確認してできるのか、こういう御趣旨だと思いますが、この点につきましては、この百三条とは別個有事の際に部隊が緊急に移動するときには、公共の用地でなくても、道路等が通行不能の場合には、たとえば畑であるとかいうものを通行し得るというような規定が必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。もちろんこれも正当な補償のもとに行われるべきであることは論をまたないところでございます。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いまは公用に供しない土地でも歩くということを言われましたけれども、私が先ほど言ったのは、たとえば陣地構築にしても、トーチカのようにある時間をかけて陣地を構築する場合は事前に十分調査をしてできますけれども、戦闘時に陣地を別に新たに構築しなければならないという事態は、戦争をやった者であれば皆わかっているのですよ。そういうことがあり得るのです。そういう場合にそういう手続が果たして間に合うものかということなんです。それは現地でもう戦闘が熾烈になってくる、その場合に、そこは部隊長の判断でここの陣地ではもうだめだ、次の陣地どこどこに、一応ざんごうでも掘ってつくれ、こういう指示が出るわけですよ。そういう際に、どういう手続をするのかと言っているのです。
  38. 夏目晴雄

    夏目政府委員 若干誤解していましたが、いま先生が言われている御趣旨というのは、実際の戦闘場面においてそういったことが一体どういう手続で行われるかということであろうかと思いますが、実際にある種の戦闘場面におきます彼我の戦闘あるいは陣地の変換あるいは前進、後退というふうなときに、他人の畑なり土地を使うことは論をまたないところでございますが、これは一種のそういう有事、戦闘状態における武力行使の一環として、そういうことについての手続をとるいとまがないことは論をまたないところでございまして、私どもとしては、それは戦闘行為、いわゆる武力行使の一環として手続を省略せざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それで、先ほど言われたいわゆる部隊移動の際に畑作を全滅さした、こういう場合はその補償はどうなりますか。
  40. 夏目晴雄

    夏目政府委員 事後何らかの補償がなさるべきであることは当然だと思います。
  41. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間もありませんから次に移りますが、この防衛大綱というのはきょうの国防会議で六十二年度達成というのが決定されるやに聞いておりますが、この防衛大綱というのは六十二年段階における憲法が許す範囲の装備なのかどうか、この点について大臣からお伺いいたします。
  42. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  本日の国防会議におきましては、五六中業の作業に入る際の基本的な考え方をお諮りいたしまして、その了解を得たわけでございます。  基本的考え方は四つございます。  第一は「五六中業は、従前どおり、主要な事業及びそれに要する経費の概略等の見積りを行い、防衛庁の年度業務計画の作成等に資することとする。」  第二は「五六中業は、現下の厳しい国際情勢にかんがみ、「防衛計画の大綱」(昭和五一年一〇月二九日国防会議・閣議決定)に定める防衛力の水準を達成することを基本として作成する。」  第三は「五六中業の作成に当たっては、装備品等の充実近代化に際して、その効率的、かつ、節度ある整備に留意し、極力財政負担の軽減に配意する。」  第四は「五六中業の防衛庁における作成作業期間は、概ね一か年を予定する。」  なお、五六中業は、昭和五十五年度から五十九年度までを対象とする五三中業とは異なり、何らかの形で国防会議の議題とする方針であるので、別途国防会議審議をお願いしたい。  これが国防会議にお諮りしましたときの私の説明の要旨でございます。したがいまして、作成作業を行うに当たり、いま申し上げました四つの点について御了解を得たわけでございまして、「防衛計画の大綱」を達成するということをここで決めたわけではございません。これから一年作業をやって、そして中身が決まりましたものをまた改めて国防会議に諮って、そこで決定なり御了解を得る、こういうことをきょう了解を得たわけでございます。  そこで、お尋ねの「防衛計画の大綱」でございますが、これは日本国憲法の精神にのっとりまして平時において備うべき必要最小限のわが国の防衛力の基本的な考え方を五十一年の十月に決定したものでございます。先生御存じのとおり、これには本文の文章と、それから別表で主な事項についての表が付せられているわけでございまして、私はこの「防衛計画の大綱」というのは、憲法の範囲内でわが国の必要とする最小限の防衛の考え方を明らかにし、また別表において主な点についての目標を定めたものだ、そのように理解いたしておるわけでございます。
  43. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、別に六十二年度に達成するというふうに決まったものではない、ただそういう目標にしかすぎない、こういうふうに受け取っていいでしょうか。
  44. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど申し上げましたように、この五六中業の作成作業を行うに当たりまして「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準を達成することを基本として作成するということをお諮りいたしたわけでございます。ほかにやはり財政負担の軽減に留意するとか作業期間一カ年とか、そういった項目も重点事項として掲げているわけでございますが、その一環としていま申し上げました点が含まれているということでございます。
  45. 渡部行雄

    渡部(行)委員 五六中業は五十八年度から六十二年度というふうに言われておりますが、間違いありませんか。
  46. 大村襄治

    大村国務大臣 五六中業は五十八年度から六十二年度までの五年間の業務の見積もりでございます。
  47. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、五六中業の中身というものが達成されると、それは防衛大綱目的が達成される、こういうふうに受け取っていいでしょうか。
  48. 大村襄治

    大村国務大臣 「防衛計画の大綱」と五六中業との関係は一応別個のものでございまして、中業というものは三年ごとにつくり直すことに防衛庁の訓令で決まっているわけでございます。五十三年度にできまして、今度はその三年後の五十六年度に策定しなければならない、その時期に入っているわけでございます。その際に、作業を始めるに当たりまして基本的な考え方を先ほど申し上げましたように四つ決めたわけでございますが、その二番目に「「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準を達成することを基本として作成する。」この作成作業期間は一年間と予定しております。でき上がりましたものをまた改めて国防会議に付議して、そこで御審議を願う、こういう段取りにいたしているわけでございます。  五六中業の期間が六十二年度でありますことは御指摘のとおりでございますが、これは作業をやってみませんと達成することになるのかどうか、まさにこれからの問題でございまして、いまの段階で達成することが決まったということは決してございません。
  49. 渡部行雄

    渡部(行)委員 実はこの時期をにらんでこういう有事法制研究を発表したということは、一つは総理のアメリカに行くおみやげにしようと考えたからだ、こういうふうに私は思ったわけですが、いま防衛庁長官のお話によると、防衛大綱の達成すらもまだ確定していない、ただそういう方向で五六中業で検討したいということですが、きょうの新聞でもおわかりのとおり、アメリカはこの防衛大綱の見直しをすでに迫っておる、まだ達成もしないうちに、それでも不満だから見直せ、こういうことをアメリカ側では日本に迫っておると聞いておりますが、それは事実でしょうか。
  50. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  防衛庁といたしましては、けさ開かれました国防会議にお諮りしまして御了解を得たわけでございます。基本的考え方の四項目につきましても了解を得られましたので、いま国会で御報告申し上げている次第でございます。したがいまして、これまでにその内容をアメリカに話したことも全くないわけでございます。  新聞記事については、いろいろな関係で報道されていると思うのでございますが、防衛庁といたしまして、またきょう国防会議の了解も得たわけでございますので、わが国の政府といたしましては、あくまで自主的観点に立って防衛力の整備を進めてまいる決意でございますので、その点につきましては全く関係がないということを申し上げざるを得ないわけでございます。  なお、この時期を選んだのはどういうわけかというお尋ねでございますが、先ほど来申し上げておりますとおり、三年ごとに見直しをしなければいかぬ。五三中業は五十四年の春に決定をいたしておるわけでございまして、それから言いますと、もう五六中業も作業に入らなければいかぬ時期になっている。五十七年の春には決定しなければいかぬわけですから、それに間に合わせるためには、現在の時点において準備を始めなければいかぬ。しかも、でき上がったものは国防会議に何らかの形で付議するということを国会においてお話をしている事実もあるわけでございますので、作業を始めるに当たりましても、基本的な考え方は国防会議にお諮りして御了解を得る方がよろしいのではないかということで、きょう国防会議を開いていただいて御了承を得た、こういうことでございます。  今後私といたしましては、アメリカ側に対しまして、わが国の進めておりますことについて正確に説明しまして、誤解の起こることのないように努めたいと考えている次第でございます。
  51. 渡部行雄

    渡部(行)委員 アメリカ大使からこの間総理に対して御報告があって、その中でアメリカは現在の大綱達成も決して満足していない、こういう趣旨の説明があったといいますが、それをきょうの国防会議で御報告ありませんでしたか。
  52. 大村襄治

    大村国務大臣 そのような報告はございませんでした。
  53. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、アメリカがいま日本に防衛力の増強を迫っておるというのは事実無根だ、こういうふうに解釈していいでしょうか。
  54. 大村襄治

    大村国務大臣 先般伊東外務大臣が訪米した際には、先方の国務長官なり国防長官と会談した際に、最近の国際情勢等にかんがみて米国政府も国防の努力を高めているので、西側同盟諸国、日本を含めての防衛努力を期待している、そういう一般的な要請があったということは聞いているわけでございますが、具体的な要請があったという話は聞いておらない次第でございます。
  55. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、新聞で見る限り、どうもアメリカの行動というのは非常に傲慢であり、内政干渉的なやり方で日本の防衛に口出しをしているように受けとめられて仕方がないのです。こういうアメリカからの圧力に抗していくには、もっと日本は毅然とすべきじゃないか。余り西側の一員、一員ということを強調すると、アメリカの防衛に対する一つの考え方の枠の中にはまってしまって、これはやがてどうしても従わざるを得ない事態に追い込まれるのではないか。いま長官が言われたように、アメリカは西側の一員として日本をもうすでに見ておる。そして西側もアメリカと共同でソ連に対抗しようという一つの戦略を持っておる。そういう中で日本が、いや憲法があるから私たちは違うんだと逃げ切ることができなくなるんじゃありませんか。だから、いまその準備をするために、この憲法の改正を自民党が急いでおる。そういう憲法の改正準備を徐々に進めながら、やがて憲法が改正されたときに一遍にこの有事立法が出せるように、そういうことで憲法改正をにらんでいるから、いま有事法制というものは、その期限についても明確にできないし、立法化についても明らかにできない、こういう事態じゃないでしょうか。こういうことじゃないでしょうか。
  56. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛庁といたしましては、日本国憲法のもとにおいて許される自衛力の充実整備を図らなければいけない。その場合の当面の目標といたしましては、五十一年に策定されております「防衛計画の大綱」であると考えておるわけでございます。日本国憲法下で許される必要最小限の防衛力の整備に関する基本的考え方をまとめましたのが現在の「防衛計画の大綱」であると考えております。  防衛力の現状は、まだこの「防衛計画の大綱」の水準にかなり隔たりがある。可及的速やかに水準まで達成することが必要であるということで、逐年防衛力の整備をお願いしているわけでございますが、五六中業を開始するに当たりましても、その観点で作業を開始させていただきたいということをお諮りいたした次第でございまして、あくまで自主的な防衛努力でございます。  日米安保条約がございますので、アメリカがわが国の防衛について関心を持つことは当然であると思うのでございますが、日本国憲法の制約のもと、また非核三原則、専守防衛、そういった方針を堅持しながら、わが国としては自主的に防衛努力を払っていくという基本方針には何ら変わりはないということを申し上げておきます。
  57. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうも言葉ばかりでなかなか話がかみ合わないのですが、それでは憲法で言う防衛力の限界というのは、この防衛大綱が現在の段階で限界だ、こういうふうに受け取っていいのでしょうか。憲法から直接的に、いまの防衛実力というか防衛能力というものが憲法に合っているか、合っていないかというその判断は不可能なわけです。そういう場合には、これは政府が具体的に国民に、これまでは憲法で許されております、これから以上は許されておりませんという憲法との限界線というものをきちっと明示するのが憲法体制下における政府の責任じゃないかと私は思うのです。その点ではいかがでしょうか。
  58. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  政府といたしましては、わが国を守るため必要最小限の自衛の実力は保有することができるということを繰り返し申し上げているわけでございます。その場合の必要最小限の自衛力がどういうものであるかということにつきましては、そのときどきの国際情勢あるいは技術の水準等によりまして固定したものではないと考えるわけでございますが、あくまで憲法の精神を踏まえながらその点についての限界を考えていかなければならないと思うわけでございます。  たとえば徹底的な破壊的な攻撃の武器を持つというようなこと、他国に重大な脅威を及ぼすような、そういった兵器を保有することは、自衛のための装備の中には含まれないとか、それからわが国の領域、領海あるいは付近の海域を守る、こういったような点につきまして、憲法上おのずから制約がある、そういった点はあくまで踏んまえて防衛力の整備に臨まなければいけない。それから憲法の解釈上、集団防衛にわたるような防衛の取り組み方は許されない、そういったような点は十分踏んまえて防衛力の充実を図らなければならないと考えておるわけでございます。
  59. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうも話が抽象的でわからないんです。私の言っているのは、そのときどきで確かに力関係も変わるし、情勢も変わる、だが、政府としては、具体的にいま軍備を持っているのだから、防衛力を持っているのだから、憲法上いまの段階ではここまでが限度だ、その限度をまず国民に示して、そしていま持っているものは合憲なら合憲だということを説明していかないと、いまのように、そのときどきに変わるから何とも言えないみたいな言い方でやっていけば、国民はこれは憲法違反であるのか、合憲であるのかなんてわからないですよ、中身を知っていないのだから。もっとも普通の国民のほとんどは憲法違反だと思っているでしょう。憲法の条文から見れば、これは明らかに憲法違反だと思っているでしょう。だとすれば、なおさら政府はそれに対して説明をしなければならない責任があると思うのです。私はそれを言っているのです。だから、防衛大綱が今日の段階における憲法上の限度かどうかということを再三にわたって私が言うのはそこなんです。どうなんですか。
  60. 大村襄治

    大村国務大臣 大綱が限度であるかどうかというお尋ねでございますが、最高限度であるかどうかという点につきましては、私は必ずしもそうは思いません。     〔染谷委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、平時において備うべきいわば最低の水準のものを五十一年当時策定した、その達成を願って政府としては努力している、そういう経緯はあるものと考えておるわけでございます。「防衛計画の大綱」の範囲内の水準であればもちろん憲法の許す範囲内である。また、別表に示されておりますような装備とか、そういったものは憲法の精神に反するものではないということは明確に申し上げることができると思います。
  61. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、五十一年につくられた大綱は、いまの段階では最低の達成すべき目標であって最高限度とは見ていない、いわゆる憲法上許された範囲の最高ぎりぎりの限度とは見ていない、こういう見方ができるとなれば、将来やはりこの大綱も見直すという余地をそこに残すという意図があるように受けとめられるんですが、それはどんなものでしょうか。
  62. 大村襄治

    大村国務大臣 政府といたしましては、大綱を見直すことは現在考えておりません。このことはしばしば申し上げているところでございます。今後いかなる状況になったならば見直すことがあるかといいますと、国際情勢の変化、国内世論動向、そして現在の大綱水準の達成、そういった諸条件をよく見た上でなければ結論が下せないのではないか、そのように考えております。
  63. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に移りまして、日本の防衛費の予算の問題ですが、GNP一%の範囲内でということを再三総理は言っておられるようです。一方においてはこの一%でも足らない、こういうことが言われておる。それはどっちの方向から言われておるかというと、まず第一にアメリカからもっと軍備を増強しろ、こう言われて、大分強力に押しつけられているやに聞いております。それからもう一方は、自衛隊の制服組の中から、とてもいまの一%ではだめだ、こういうことが言われておると言われますが、これらの考え方は、明らかに防衛大綱を飛び出した方向で軍備を考えているとしか思われないのです。しかも、この間も問題になった前統幕議長が、いま各所において一%じゃだめだ、三%とは言わないが、せめて二%、つまりいまの防衛費の倍にしなければだめだということを言っておる。これは私は、幾ら制服を脱いだからといっても制服組を代表する考え方だと思います。こういう点について、これを放置したならば、総理が幾らがんばって一%以内などと言っても、これは吹っ飛んでしまうんじゃないか。シビリアンコントロールの頂点にある総理と、その次にある防衛庁長官はそれを抑える責務があると私は思うのです。したがって、それに対する防衛庁長官のお考え方はどうなんでしょうか。
  64. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛庁といたしましては、昭和五十一年に「防衛計画の大綱」が決定になりましたしばらく後に決定になりましたいわゆる一%以内の閣議決定、これは毎年度の防衛関係予算についてはGNPの一%を超えないことをめどとして進める、当面というあれもあるわけでございますが、その閣議決定が生きておりますので、今後の予算編成に当たりましてもこの範囲内で進めてまいりたいと現在考えておるところでございます。
  65. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはおかしな現象ですが、けさの新聞でも、首相官邸にわざわざ出向いて、小坂善太郎、金丸信、三原朝雄、こういう自民党外交国防関係の有力議員が、行政改革だけでなくてもっと防衛に熱を入れろという趣旨の申し入れをしたということでございます。  憲法はアメリカから押しつけられたからこれを改正しなければならぬと言う自民党が、その憲法を自民党流に言うと押しつけた張本人であるアメリカが、今度は憲法を無視してどんどん軍備をふやせというふうに迫ってきておる、この押しつけについてはさっぱり何の抵抗もしない、こういうこっけいな話があるでしょうか。しかも、その意を体して、総理がいま訪米しようとしておるのに、日本の軍備増強に対するアメリカの強い圧力をどうかわすか苦慮しているとすら報道されておるのに、そういうことをあの自民党内でやっておるということは一体どういうふうにお考えですか。
  66. 大村襄治

    大村国務大臣 自民党の議員の方々がそれぞれのお立場で自由な御意見を総理に申し上げることにつきまして私がコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  67. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは次に移らせていただきますが、一体有事というのはどういう状態を想定しておられるのですか。有事と戦時との違いはどこにあるのですか。その辺をお聞かせください。
  68. 夏目晴雄

    夏目政府委員 有事という言葉についての厳格な定義はございませんが、私ども有事というのは常識的に自衛隊法第七十六条の防衛出動が下令された事態というふうに理解しております。一方戦時というのはいわゆる戦闘状態にあるということでありますれば防衛出動、有事の中にこの戦時が含まれるのではないだろうかというふうに考えております。
  69. 渡部行雄

    渡部(行)委員 防衛出動が下令されたその時点から有事というふうに受け取っていいのでしょうか。
  70. 夏目晴雄

    夏目政府委員 特に定義がないのですが、常識的に、一般的にそうであろうというふうに思います。ただ、いろいろな場面で使われる言葉、たとえば防衛出動待機命令が発令されるような事態も含めて考える場合もあろうかと思いますが、言葉の定義がきちっとしてあるわけではございませんので、その使われる場面、場面において若干ニュアンスは異なることがあろうかと思います。
  71. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ここをはっきりしないと私は非常に問題が出てくると思うのですよ。有事法制というものが今度有事立法に変わった際に、一体防衛庁長官の出す防衛出動待機命令でその有事の諸立法が発動されるのか、それとも総理の出す出動命令が下令された時点からその法律適用されるのか、言ってみれば、各法律というのはちょうどボタンのようなもので、そのボタンを押していい時期を決定するのがこの有事有事でないかというところだと思うのですよ。その判断を明確にしないと、押して悪いボタンを出動待機命令で押してしまったりして大変なことになる可能性があると思うのです。その辺はいかがでしょうか。
  72. 夏目晴雄

    夏目政府委員 現在の自衛隊法は、一般的に平時に関する規定ももちろんございますけれども、いわゆる防衛出動待機命令、有事に関する法令もあるわけですが、私どもが現在お願いしているのは、たとえば予備自衛官の招集あるいは百三条による土地使用あるいは二十二条による特別の部隊の編成等につきましては、従来の規定では防衛出動下令後でなければ適用されなかったわけでございますけれども、これを防衛出動待機命令のときから有効に機能し得るようにしていただきたいというふうに考えているわけでございまして、個々にそういう問題がございますが、現在の自衛隊法というのはあくまでもその規定規定によって平時において適用されるもの、それから防衛出動が下令された時点において初めて適用があるものというふうに厳密に区分しております。そういう意味で一般的に言った有事と平時が混淆されておる。したがって、ボタンの押し違えがあるというふうには現在の規定自体もなっておらないというふうに考えております。
  73. 渡部行雄

    渡部(行)委員 有事法制研究を進めるに当たって私が一番心配するのは、ソ連の脅威を非常に過大に宣伝する、そして有事法制の必要性を宣伝して、そういう中で憲法の尊厳さというのが国民の心の中から消えていく、あるいは法の権威というのが国民の中から消えいく、もう憲法なんかどうでもいいんだ、法律なんかどうせつくったってそれはいつでも勝手に変えられてしまうんだ、こういうような気持ちが国民の中に出たとするならば、これはまさにソ連の攻撃以上に恐ろしい結果になると思うのですよ。こういう事態にならないためには、相当な決意を持って防衛庁長官法律と軍の強化とのバランスが崩れるようなことのないようにしていかないと、そこからシビリアンコントロールがもう有名無実になってしまう、こういうことが心配されるわけです。  これだけ有事法制でだんだんと法律の整備と軍の強化が進められている中で、それじゃこれを抑えていく、監視する、ブレーキとなるシビリアンコントロールをどういうふうに強化するか。これを双方均衡させていかなければいつの間にかシビリアンコントロールは弱体化してしまって、やがて文民が制服に統制される結果になるのじゃないか。まさにいまそういう潮どきにあるような気がしてならないのです。非常に心配です。だから、その辺についての長官の対策というか信念をお聞かせ願いたいと思います。
  74. 大村襄治

    大村国務大臣 憲法を尊重しなければならないことは申すまでもないところでございます。平時はもとより有事においても当然でございます。したがいまして、有事法制研究に当たりましても、有事において公共の福祉を維持するために必要とされる最小限度のものを研究の対象として作業を進めたつもりでございます。また、今後もし立法化するに当たりましても、その趣旨を生かして憲法の精神に適合するようにその範囲内において所要の立法化をお願いしたい。もちろん国会の十分な審議を煩わしたいと考えておるわけでございます。そして現行法令の運用に当たりましても、先生御指摘のシビリアンコントロールが徹底できるように、維持できるように一層留意してまいりたいと考えておる次第でございます。
  75. 渡部行雄

    渡部(行)委員 実は防衛庁関係はこれで終わろうと思ったのですが、いまはしなくも長官は、立法化する場合には十分考慮すると言われたわけでございます。先ほどは立法化は考えていないというまことに不思議な御答弁になったのですが、この研究はやはり立法化へ向かっている、こういうふうに解釈していいんでしょうか。
  76. 大村襄治

    大村国務大臣 私は、先ほど研究成果の御報告立法化とは別個のものである、今後の措置については防衛庁におきましても別途検討を進めてまいりたい、特に国会の御論議国民世論動向等に留意して進めてまいりたい、もし立法化ということになりましたならば、その段階で、憲法の精神を念頭に置きながら必要最小限のものを御提案したい、また国会においては十分御審議を願いたい、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。
  77. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この有事法制研究報告のあり方をよく考えてみますと、言葉では、立法化はいま考えていない、研究立法とは違う——確かに言葉の上では立法研究は違いますよ。しかし、関連のあることだけは事実だと思います。  そこで、なぜこのような報告の仕方をしておるかというと、私は、国民世論動向を見てではなくて、こういうことを次から次へ第三段階に至るまで報告を繰り返しながら行く中で逆に国民世論立法化の方向に誘導する、このねらいがあると思うのですが、そうではないでしょうか。
  78. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  私は、日本国民の皆様は非常に賢明でもあり、公正な判断を下していただけるものと考えているわけでございます。現行法制の防衛にかかわる部分につきましてどういう点に不備があるかということを研究して、ここに一部御報告したわけでございますが、その点を御認識、御理解くださいまして、その上でどうしたらいいかということになりましたならばそのときの段階としてまた所要のことを進めてまいりたい。あくまで事実を国民の前に明らかにして御批判を願うというのが防衛庁としての現在の態度でございます。
  79. 渡部行雄

    渡部(行)委員 防衛庁関係は大体以上で終わりまして、次は外務省にお伺いいたします。  まず、この間の貨物船日昇丸とアメリカのポラリス型原子力潜水艦ジョージ・ワシントン号が衝突して日昇丸が沈没した事件についてでございます。  これは全部事故ということで報じられておりますけれども、私は、果たして事故なのかどうか、あるいは意識的にやったのではないかとすら思われる節があるわけです。その後のいろいろな報告状況等を新聞等で見ましても、まことに不思議なことばかりでございます。これについて一体外務省では事故とはっきり判断しておられるのかどうか、もし事故と判断されておるとすれば、どういう点で事故と断定されておられるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  80. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 本件原潜の事件について従来外務省として各委員会で御答弁してきたとおり、事故の究明についてアメリカ側に対して再三早期究明ということを申し入れておりまして、また明後三十日に再び外務大臣がマンスフィールド大使に会って、アメリカ側が大統領の親書の中で、総理訪米前に双方の要請を満たすような十分の進展が行われることを期待するという個所もございますので、可及的速やかに事故の原因を日本側に知らせてほしいということを一貫して要請しているわけでございます。  いまお尋ねの点でございますが、日本側の日昇丸乗組員の方々の証言その他について私たちも新聞報道等で承知しております。他方、海上保安庁で目下鋭意調査中でございまして、まだ私たちは海上保安庁の現在に至るまでの調査はいただいておりませんが、いずれわれわれとしてもそういうものをいただけるというふうに考えております。  いずれにしても、現在の段階では事故の究明が第一ということでございまして、いま委員が言われましたようなこと、事故でなくて意図的にこういうことを起こしたのじゃないかということでございますが、衝突の原因がわかればその点も明確になってくるというふうに判断しております。
  81. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると外務省は、現段階では別段事故と確定した判断を下しているわけではない、こういうふうに受け取っていいでしょうか。
  82. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私がいまここでいろいろ出てきます調査の結果を予断するようなことを申し上げるのはいかがかと思いますが、私たちが報道その他で承知している範囲内においても、今回のはまさに衝突であって意図的に日昇丸を沈めた、そういうふうな情報は何ら持ち合わせておりません。
  83. 渡部行雄

    渡部(行)委員 確かにその意図もわからないわけです。すべてわからないと私は思いますが、考えてみますと、原子力潜水艦というのは、いかに古いといっても今日の潜水艦の中ではやはり相当に性能のすぐれたものであると判断していいだろう。それが二千三百五十トンもある大きな船に知らずに突き当たったというようなことが想像できるでしょうか。私はとても想像できません。この間私も日本の小さな潜水艦に乗っていろいろ視察をしてまいりましたが、実に精密にできておるし、視界も普通の商船や肉眼で見るよりもはるかに明瞭であります。そういうものが日昇丸に突き当たるまで知らなかった、あるいは突き当たって沈没しないと確認してそこを去った、こういうようなでたらめ報告をそのままうのみにするような外務省ではないと思いますが、そういうようなアメリカの一方的な報告、そしてもっと詳しく要請してもそれについては全然報告していない、ノーコメントである、こういうことに対して私はすごい怒りを感じるのです。というのは、一体アメリカは日本をどのように見ているのか。口先ではパートナーだとかなんとか言っておるけれども、まさに属国扱いじゃないですか。これでは日本は独立国などと言えませんよ。日本の近海を、しかも日本が非核三原則を持っているのを知っていながら、こういう危険な原子力潜水艦がどこからどこへ航行しているかわからぬというような事態を起こすことに対して、外務省はどのように考えておりますか。
  84. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私たちも、なぜこういう事故が起きたかということについては、まさにそれが今回の調査の核心であるというふうに存じておりまして、その点と、その他なぜ通報がおくれたか、人命救助の活動が十分行われたか、あるいは補償の問題を含めて現在アメリカ側に照会中でございまして、アメリカ側からも、レーガン大統領以下アメリカ側の当局者が再三にわたって本件事故が発生したことについて遺憾の意を表明してきておりますので、まさにアメリカ側も、日本側の要請あるいは日本側の立場も十分踏まえながら現在調査を鋭意続行中というふうに理解しております。
  85. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それで、この事故発生以来日本政府が今日までとったいろいろな措置、それに対するアメリカの対応というのはどういうふうであったか、御説明願いたいと思います。
  86. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 順を追って申し上げますと、十一日に外務大臣がマンスフィールド大使と会談いたしました。十五日にはワシントンにおいて大河原大使がワインバーガー国防長官と会談し、十六日だと記憶しておりますが、外務大臣及び総理大臣がロング・アメリカ太平洋総司令官と会談を行い、十八日に再度外務大臣がマンスフィールド大使と会談する、あるいは事務レベルを通じて鋭意アメリカ側に対して、第一点として、なぜ今回のこういう事件が起きたのか、そういうことを徹底的かつ迅速に調査してほしい、それから補償を初めとする事後の措置をきちんと処理してほしい、さらにアメリカ側からの通報がなぜおくれたのか、あるいはアメリカ原潜によって十分な人命救助の努力が行われたのかどうか、そういう問題について調査の上早く日本側に知らせるようにということを要請してきたわけでございます。  それに対してアメリカ側からは、レーガン大統領を初めレーマン海軍長官あるいはヘイグ国務長官等政府関係者から本件の事故についての遺憾の意の表明があり、徹底的な調査を行うとともに、補償問題についてもしかるべく処理するという言明が行われております。さらに十八日には、マンスフィールド大使が外務大臣と会談いたしましたが、その際にレーガン大統領から鈴木総理大臣への親書が手交されまして、その中で、本件事故について、アメリカ側として改めて深い遺憾の念を表明するとともに、大統領自身がこの事件の解決に個人的な注意を払うことを保証するとともに、日米首脳会談の前に双方にとって必要なことを満たす十分な進展が見られることを期待するという表明がございました。その後も連日、外務省としてはアメリカ側に対して、レーガン大統領の言う十分な進展が総理訪米の前に行われるように督促をしておりまして、先ほど申し上げましたように、明後三十日にも再度伊東大臣の方からマンスフィールド大使に対して調査の進展を早めるようにということを要請するわけでございます。  他方、補償の問題については海軍長官が声明を発表いたしまして、アメリカ側が補償の責任を認めて、アメリカ側の規則に従って早急に補償について日本側と話し合うということを指示し、現実に日昇丸を代表される弁護士の方と在日米海軍との間で補償の問題がすでに開始されているわけでございます。
  87. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、この事件の責任者、いわゆるジョージ・ワシントン号の艦長は全責任をとるべきだと思います。これに対して処罰なり何かの要求をしたかどうか、これが第一点。  第二点は、その後の対応がまだ不十分である。そうした場合に、総理が今度訪米される際に、これが首脳会談の一つの議題となるのかどうか、ここで言うべきことは言うのかどうか、この点についての御見解をお伺いいたします。
  88. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まず第一点の艦長あるいは乗組員の処罰の点でございますが、これはまさにアメリカ側が現在調査をしておるわけでございまして、その調査の一環としてアメリカが結論を出してくるというわけでございまして、いまそういう調査の結果がわからない段階で日本側から艦長その他を処罰しろということを申し述べることはまだやっておりません。  第二点の首脳会談でこの問題をどういうふうに取り上げるかという問題でございますけれども、まず第一として、首脳会談前にレーガン親書にあるような双方の要請を満たす十分な進展が行われて、わが方にとっても十分納得のいく何らかの説明が行われるということを期待しております。しかしながら、そういう進展がない場合に、それでは首脳会談にどういうふうに臨むかということでございますが、これはまだ首脳会談の議題その他も決まっておりませんが、もし仮にそういう進展が十分図られていない場合には、首脳会談の場が適当かどうかは別にいたしまして、もちろん何らかの形で日本側の主張なりあるいは立場というものをアメリカ側に伝えることになるかと思います。要は、総理訪問以前にレーガン親書にあるような双方の要請を満たす十分な進展があることをわれわれとしては強く期待して、それに向かっていま最善の努力を傾けているところでございます。
  89. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、この事件で受けた損害は船舶がどのくらい、物資がどのくらい、人的損害がどのくらいということは政府としても試算しておると思いますが、これについてお伺いいたします。
  90. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 この損害補償の問題は、先ほど申し上げましたように、当事者である日昇丸とアメリカ側がまさに現在話をしているわけでございまして、その損害補償額について政府としてどれぐらいであるというようなことを現在申し述べる立場にないわけでございます。しかし、海軍長官の声明の中にあるように、アメリカ側としては補償は補償としてまずきちんとするということでございますので、当事者の間で十分な話し合いが行われ、それによって双方にとって満足のいく補償による解決が行われるということを現在政府としては期待しているわけでございます。
  91. 渡部行雄

    渡部(行)委員 新聞で見るところによると、被害者からは十億円の請求が出ており、アメリカ側で提示したのは九億円程度であるように思われますが、やはりこれらについても政府は十分言うべきことは言って万遺漏なきを期していただきたいと思います。  次に、ソ連海軍が青森沖において実弾射撃の演習をしたということでございますが、これは日本の領海からどの程度離れた地点で行われたのでございますか。
  92. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 わが国の領海から約十八海里離れた地点と承知いたしております。
  93. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それから、いまのポラリス型の潜水艦ジョージ・ワシントンが起こした事件の地点は領海からどのくらい離れておりますか。
  94. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 保安庁から聞いたところでは、最も近い領海の外縁から約十一海里というふうに承知しております。
  95. 渡部行雄

    渡部(行)委員 こうなると、外務省はソ連に対して申し入れをしたというが、その申し入れはどういう内容でしょうか。
  96. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 本件が発生いたしました四月二十二日の夕刻に防衛庁から通報をいただきまして、外務省といたしましては、当時の状況につきましてさらに関係官庁からも事実関係を照会いたしました後、二十三日でございますけれども、ソ連大使館のコマロフスキー参事官を外務省に招致いたしまして、外務省のソ連課長から、本件に対しまして、ソ連側がいかなる目的意図を持って今回の実弾射撃演習を行ったかにつきまして説明を求めますとともに、ソ連側から本件射撃演習について事前通報がなかったという点について注意を喚起した次第でございます。  これに対しましてコマロフスキー参事官は、日本側の申し入れについては早速関係方面に伝達するということだったわけでございますが、昨日の時点におきましてまだソ連側からの回答がございませんので、昨日の夕刻、ソ連側の回答を在京ソ連大使館を通じて督促したというのが現状でございます。
  97. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、この二つの事件、つまりアメリカの原子力潜水艦が起こした事件とこのソ連の実弾演習とは質的に同じじゃないかと思うのです。ともに日本の近海において、どちらも無通告でこういうことをなされておる。そして最後にはこれは公海だと開き直っておる。ただそこで違うのは、日米間には日米安全保障条約があるというだけのことです。日米安全保障条約があっても、しかし原子力潜水艦は核ミサイルを積んでおる。こういうものは日本の憲法上からも許されることではない。そして日本の政策の基本からも許されるものではない。それが一体領海外だけを通航しているのか領海内に入っているのかもわからない。それはもぐって航行するんだから、わかるはずがないのです。ただ問題は、近海にこういう行動がなされておるという事実だけははっきりしておる。だとすれば、これは両方に申し入れをしなければならぬのじゃないでしょうか。  ところが、一方は完全に日本人を殺しておる。殺しておるのに、こちらから尋ねたものに対して電話で応答しておる。本来なら向こうから出向いてきて日本の外務省に対して陳謝すべきじゃないでしょうか。もしこれが日本とアメリカが逆さまの状態だったらどうなったでしょうか。もっと独立国家としての矜持をきちっと持つべきじゃないでしょうか。この点の関連についてお伺いいたします。
  98. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま電話でだけ通告ということでございますけれども、アメリカ側に対する申し入れその他の際には、マンスフィールド大使あるいはロング長官それ自身は外務省に参りまして伊東大臣と会談しているわけでございます。それからまた総理大臣と会談したときは、ロング長官は総理の官邸に行って会談しているわけでございまして、電話によって一片の通告ということであるわけではございません。もちろん最初入りました正午の、日昇丸の事件にアメリカの潜水艦が関係しているかもしれない、こういうのは電話であったわけでございます。
  99. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、時間もありませんから最後に一つお伺いいたします。  四月二十四日の朝日新聞に、北方領土問題で「期限つきタナ上げ提案」という見出しで、「永野重雄日本商工会議所会頭は二十三日午後、表敬訪問にきた来日中のソ連ジャーナリスト代表団(団長アレクサンドル・ボービン・イズベスチヤ紙政治評論員)に対して、悪化している日ソ関係の改善を図る試案として、北方領土問題の「期限付きタナ上げ案」を提示、日本側はこれに基づいてシベリア開発を行うので、ソ連側も日本側の意をくんで、将来、領土問題解決に積極姿勢を示すよう、申し入れた。」こういう記事が載っておるわけです。少なくともこの北方領土をたな上げするとかしないとかいうのは、一商工会議所会頭が言える筋合いのものではなかろうと思うのです。これは何かいつも政府は自分の自由になるものだというような錯覚があったからこういうでたらめなことを言っているのではないかと思いますが、こんなに外務省がなめられたことはないでしょう。これは総理や外務大臣が言うなら話はわかりますけれども、日本の国の方針を云々するようなことを財界の一人に勝手ほうだいなことを言わせておるようでは外務省の権限なんか吹っ飛んでしまうと私は思うのですが、その点について御説明願います。
  100. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 いま御指摘のございました永野会頭の発言につきましては、私どもも新聞報道で承知しているだけでございまして、その発言の詳細あるいはどのような意図でそのような発言をされたかということについては承知をいたしていないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、政府としての立場は従来重ね重ね申し上げているとおりでございまして、北方領土問題を解決して平和条約を締結する、そこに初めて日ソ間の真に安定した基礎が生まれるということでございまして、領土問題は日ソ関係において避けて通れない問題であると考えているわけでございます。したがいまして、政府といたしましては、領土問題を一時たな上げするというような考え方はとっておらない次第でございます。
  101. 渡部行雄

    渡部(行)委員 しかも、このソ連代表団の団長というのは大物でありまして、世論を代表するほどの大物でございます。そのとき朝日新聞社のあれと会見して、北方領土問題を出すのは袋小路に入るようなものだとはっきりと断っているのですよ。北方領土を口に出すならソ連と日本の関係はどうしようもなくなるということをはっきり断っておる。こんな侮辱されたことはないのじゃないですか。朝日新聞の編集委員と会って、はっきりとそういうことを言っておる。しかも、外国の代表団に対して財界の人がこういうことを言うことをこのまま黙って見過ごすのですか。外務省は一言も言わないのですか、永野重雄に対して。これは厳重に抗議をする必要があると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  102. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 永野会頭に、どういうことを具体的におっしゃられたのか、またどのような考え方でそのようなことをおっしゃられたのかにつきましては直接確かめたいと思っているわけでございますけれども、いま永野会頭は外国旅行中のようでございまして、そのようなことも相談したいと思っております。
  103. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私がここで言いたいのは、日本の政治は財界に従属しておるということを暴露したと思うのですよ。これは大変な問題だと思うのです。いかに財界が勝手気ままに振る舞っておるか。しかも彼らは、シベリア開発という自分の利潤追求のために国の方針すらねじ曲げようとしておる。国民立場などまるっきり考えていない。こんな者が愛国心を論ずる資格がありますか。こういうことについて毅然とした態度をとっていただきたい。このことをまず申し入れておきまして、次は総理府総務長官に移りたいと思います。  まず第一に、今度出た定年制の問題についてお伺いいたしますが、この定年制の考え方と、これを法制化しようとされたその背景というもの、何が原因でこういうふうになったのか。一応法案の説明では、高齢化社会とか学歴とかあるいは事務の円滑化とかうたわれております。しかし、そんなことは何もいまに始まったことではないので、私はそのほかにもいろいろな理由があると思うのですが、その点についてお伺いしたいと思います。
  104. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生お尋ねの高齢化社会の到来という問題とこの定年制の問題はどういうふうな絡みがあるのか、あるいはまたほかにどういうふうな背景とか理由があるのかというお尋ねだと思います。  御案内のように、日本もいままで体験したことのないような高齢化社会というものが欧米諸国に比較してきわめて速いスピードでやってきておる。これはただ単に民間だけが迎える新しい社会の実態ではなしに、公務員の諸君の組織にも高齢化の波が押し寄せてまいるということは、御承知いただいているとおりでございます。  ただ、いままでは勧奨制度というものが非常にうまく機能をいたしておりました。そうしてまた人生自身が、官僚も民間人も、今日のように男子が七十二歳、女子が七十八歳というような長生きをする社会というものを考えずに公務員制度が運用されてきたのだろうと考えております。御案内のように、昔は四十歳代で知事を務めた人が官選の時代にはたくさんあったと言われております。  こういう中で、若い公務員の諸君もたくさんおられますが、一番問題になるのは、このままいきますと、五年ぐらいいたしますと、戦後の高度成長の時期にたくさん公務員を採用した時期がございまして、その大きな山がやってくる。その山がやってきた場合には、年功序列型、終身雇用体系の中でやはり管理職のポストを相当ふやさなければならない、こういうふうな、ちょうどきのこのような形の公務員の管理体制というものが出てくる。そういうことの中で、若い公務員の諸君がやはり上を向いて、どうもおれの人生というものは一体どうなるのかわからない、こういうことで、政府としましても若い公務員の方々に、公務に携わる精神的なバイタリティーというか意欲をしっかり持って国民のために奉仕をしていただきたいということが最大の問題でございますし、勧奨制度自身によってうまく公務員の退職が機能しなくなった場合の問題というものも、私どもとしては大変心配をいたしております。  また一方、政府は新経済社会七カ年計画というものを広く国民に向けて示しておりまして、昭和六十年には大体民間においても六十歳定年というものが定着するように、あるいは第四次の雇用計画においてもそのような考え方で国民の認識を求めておる。やはり世論を調査いたしますと、六〇%に近い国民の方々の意思として、公務員制度の中に定年制を導入したら好ましい、民間が九七%の比率で定年制を導入しているじゃないかという御意見も出ておりまして、私どもといたしましては、主権者である国民の皆様方のお考え、また人事を管理している行政機関としての考え方、また公務員全体の勤労意欲というものを認識いたしました上で、閣議において定年制を導入するということに決めさせていただき、なお公務員の身分に関することでございますので、公務員法の基本であるいわゆる中立性の機関である人事院にも意見を求めて、法案国会で御審議をいただくような手はずになったようなことでございます。
  105. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただいまいろいろ申されましたが、しかし、退職勧奨によってやめられている人員数を年度別に見ますと、私は四十五年から五十四年までとったのですが、これを全部読むと時間がかかりますから五十一年から読んでみますと、五十一年に八千六百九十八人、五十二年が九千二百十九人、五十三年が九千八百二人、五十四年が一万三百八十人、だんだん多くなって退職勧奨というのは非常にスムーズになされているわけですね。そうすると、これがうまくなくなるんじゃないかというその危惧はどこから見ても出てこないわけですよ、この数字の中からは。だから先ほど言われた高齢化が進むにつれて退職、いわゆる新陳代謝が非常にうまくいかなくなるんじゃないかという心配があるというのは何ら科学的な根拠がない、私はこういうふうに思うのです。  それからまた、民間の定年制導入の問題ですが、これは昭和五十三年にすでに九五・七%にもなっているのですよ。しかも民間の定年制というものと、公務員の定年制というものをごっちゃに考えていいんでしょうか。私は、民間会社というのはあくまでも企業利潤を追求する立場であり、公務員というのはそうではなくて、そういう民間の活力を吸収して、そして国民の中にあるいろいろな可能性を十分発揮させる、そうしてその中心的な指導をしていくのが公務員だと思っております。そうした場合に、民間がこうだから公務員はそっちにならえという論法は通用しないんじゃないか。逆に理想的な公務員の制度をつくっておいて、民間は利潤追求もさることながら、こういう労使関係をつくったらどうだ、こういうふうに労働者を大切にしたらどうだ、そういう指導をするのが当然じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  106. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生のお考えを私どもも十分拝聴いたしておりますが、政府といたしましては、昭和六十年に六十歳定年というものを実施するという一つの時間的な幅を相当持たせて、この法律案の御審議をお願いしておる。勧奨制度自身はうまくいっておりますけれども、各省庁において勧奨が全部同じ年でいっているかというと、やはり勧奨を聞かない方も実はおられるわけでございます。  そういうことで、各省がばらばらな形でやっておることにも一つの問題が今日見出される。私どもとしましては、新しい高齢化社会の中で公務員の方々が自分の第二の人生というものが一体いつから始まるんだろうかということを考えて公務に精励していただくということであれば、やはり一つの年齢というものをセットして、その年齢になれば自分は第二の人生を用意しなくちゃいけない、こういうふうなお気持ちで公務員の生活に努めていただくということも人生の設計上には必要であるというふうな考え方を持っておるようなわけでございます。  政府といたしましても、昭和六十年にこの法律が施行されるという時点で、高齢化社会が日本の社会の中でどの程度浸透したか、民間においてはどういうふうな現象が起こってきたかということも踏まえて、その時点でそれから先の公務員のいわゆる年齢問題についても再検討する必要があろうかというふうに考えております。
  107. 渡部行雄

    渡部(行)委員 高齢化が進む進むと言われますが、これは私は大変好ましいことだと思うのです。決してこれは心配する問題じゃないと思うのです。人間が長生きするということほどすばらしいことはないわけです。  ただ、その高齢化というものの考え方ですが、高齢者人口がふえているのではなくて壮年の人口がふえておると見るべきじゃないでしょうか。たとえば小さい子供の頭の毛と大きな子の頭の毛を数えてみたら同じじゃないでしょうか。ちょうど頭の毛に相当するのが高齢者ですよ。老齢者ですよ。ない人もおりますけれども。そういうことで、何も背が高いからおまえは頭の毛も多くなくちゃならないという理屈じゃないのです。だから問題は、六十歳に線を引くのか、六十五歳に線を引くのか、七十歳に線を引くのか。実際、人間として労働にたえられない、勤労にたえられない、その時期はいつかということでしょう。しかし、それは個人差があるわけですよ。八十歳まで生きる人もおれば五十歳で死ぬ人もおれば、個人差があるわけです。その個人差を一緒にまとめて線を引くというのは私はどうしても理解できないのです。  しかも、この退職勧奨というのはそれぞれ個々人に当たってやめないか、どうだという相談をしながら相手との合意で退職させているでしょう。ところがこの定年制というのは、有無を言わせず、ぴんぴんしているのもよたよたしているのも一緒に体力の差を考えないで切るというのがこの退職制ですよ。(発言する者あり)そっちの方は黙っていてください。だから私が言いたいのは——いま人生をどう設計させるかと言われました。確かに長官もそこまで考えられると私もありがたくなるのですが、やはり為政者というのは国民の人生全体を考えて、そして職場から離れたときにどういう生活をしていくものか、そこまで見届けてその対策を考えるということが一番大事だと思うのです。  そこで、それじゃ長官は現在の公務員が退職後どのような生活実態であるかというのをどのようにお調べになったでしょうか。
  108. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生のむずかしい御質問でございますけれども、私の乏しい知識で申しますと、定年制を六十年にしくということと現状とを比べてみますと、現状では五十六歳でやめている人もたくさんいらっしゃるわけです。あるいは五十五歳でやめる方もいらっしゃるし、勧奨を受けてやめられる方もあるし、あるいは五十八歳でやめられる方もある。そういう中で新しく政府は、いわゆる勧奨というべき対象の年齢を法律で決めますけれども、現在よりも数年間延ばすというふうな高齢化社会対策としての前向きの姿勢をこの機会に示しているということはひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。だから、ことし五十五歳でやめられる方も、法律が施行されておれば六十歳までは働くことができる、こういうふうな考え方に私どもは立っておるわけであります。  公務員がやめてから一体どのような生活をしておるかという問題に入ります前に、日本の公務員制度は、先生も御案内のように年功序列型でございます。だから長く勤めた者は、政府は人事院の勧告を完全実施をするというたてまえをとっておりますから、給与は毎年高くなっていく。それに比べて果たして能力がどうなるかという問題から考えると、やはり三十代、四十代の公務員と五十八歳の公務員とでは、記憶力、発想力、体力とかにおいては相当ハンディキャップがあることは医学上明白なことであろう。ただ民間の場合は、五十五歳でたとえば嘱託になるとか顧問になるとかいう形で給料が下がります。そこが官庁との違いだと私は思っているわけでございまして、官庁の場合は上へ向いて真っすぐ上がっていく、上がっていけば給料の高い人たちがこれから五年後にかさのような形で国民の上に乗っかってくるということについて、果たして納税者がそれでいいと判断するのであろうかどうか。やはり国民のサイドから見た行政機構というものは、最も能率のいい公務員制度というものが納税者にとっては必要なのではなかろうか。政府といたしましては、そのような国民世論を踏まえてこういうふうな法律をぜひ御審議をお願いしたいという考え方を持っておるということを御理解をいただきたいと思います。  それから、公務員がやめられた後どうされておるかということは、完全な調査をしておるわけではございませんが、私の聞くところでは、自分で新しい職を求めて第二の人生に入る方もあれば、役所の方でその方に向いたような適当な仕事場を御紹介をするということによって、その所得をある程度お世話をするというようなことも常識としては行われているというふうに理解をいたしております。
  109. 渡部行雄

    渡部(行)委員 退職した後の公務員の生活というのは、年金依存者が六四・四%、あとは再就職をしておられる。私の知っている人なのですが、学校の校長先生をやったその人が退職をしてどこに就職したと思いますか。旅館の下足番ですよ。こういうところもあるのです。それはなぜか、年金が少ないからですよ。高級公務員はいいでしょう。また次の退職金をもらって年金をもらって、しかもいままで以上に高いところに就職する人もいるのですからね。こういう高級公務員はむしろ退職があった方が早くそういうところで自由に収入を多くすることができるからいいかもしれませんけれども、一般公務員は大変なことなのです。  しかも、いま人事院勧告を完全実施してきたと言われましたが、きょうの新聞に、自民党ではこの人事院勧告のベアの完全実施を見直そうという動きがあるということですね。ちょっと読みますと、自民党内には、「財政難の折、公務員ベアについても完全実施の慣行を見直すべきだ」「勧告制度自体も再検討してみる必要がある」こういうことを新聞に書かれるようでは、私は非常に問題があると思うのです。というのは、ここに総裁がおりますが、人事院というのは独立機関でしょう。しかも、あそこは政治的中立性をはっきりと明言しておるわけですよ。それが一党の意思によって動かされようとしておる、こういうことはやはりこの際明確にさせて、そしていま長官が言われた人生の設計の中で、六十年の退職制度というものは果たしていいか悪いか、こういう問題でもう少し議論を深めるべきだと思うのです。その点については、ひとつ長官人事院総裁からお願いいたします。
  110. 中山太郎

    ○中山国務大臣 自由民主党の中に人事院制度の見直しあるいは勧告に関する意見というものがあることを新聞に載せているという御意見でございます。自由民主党はいろいろな意見の方がいらっしゃる大政党でございますし、民主主義を原則にしておる政党でございますから、個人の考え方というものは党内では議論百出をいたしており、それが集大成されて、最終的に総務会での意思の決定によって党としての方針が決まっていくという過程をとるというのが自由民主党の仕組みでございますから、私はいろいろな意見があることは事実だろうと思います。ただし、政府といたしまして、また総務長官といたしましては、人事院制度というものが法律で確立されている、しかも中立機関であって、絶えず公正な民間の賃金を調査して、それによって労働基本権の制約を受けている公務員諸君の家庭生活を確保するために政府に勧告をいたすわけでございますから、人事院の勧告を受けて、従来どおりの姿勢を堅持して公務員の生活を確保してまいりたい、こういう方針には毫も変わっておりません
  111. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 いま総務長官のお述べになりましたとおりでございますが、人事院というのは戦後の民主的な人事制度の全般的な改正の一環として生まれてきた中立機関でございまして、公務員については、その職責の特殊性から言っていろいろな制約がございます。その制約の中でも特に重要なのは、労働基本権の制約というものがございます。これに対する一つの代償機能を果たさせるものとして勤務条件なかんずくその最も中枢的な給与については、勧告権を人事院に与えておるという制度の仕組みになってきておるわけであります。この制度の仕組みに立って人事院というものはいままで仕事をしてまいりましたし、その実績がだんだんと定着をいたしまして、勧告自体の取り扱いも、いまやこれが完全実施という慣行が完全に習熟をいたしまして十年を経過しておるということで、私はそれ自体がまた大変注目すべき重要な意義を持っておるというふうに考えておるのであります。  したがいまして、この制度につきましては、制度全体の総合的な見地の中での仕組みを考えてまいりませんと、取り扱いは非常に偏ったものになって整合性を欠くという結果にもなりかねないというふうに考えております。これはうまく定着して、いま公務員の労働関係が安定をしているから、これに対しては財政的な見地から再検討を求めるという考え方、そういう発想もございましょうが、われわれ人事院当局といたしましては、この制度ができましたいきさつ、また理由、存在意義というような点から考えまして、給与の勧告制度というものは大変重要視いたしておりまするし、この問題の取り扱いについては、毫も従来の方針を変えるつもりはございません。  すでに今年度の場合におきましても、例年の民間給与の実態調査の調査項目その他も検討を終わりまして、連休明けから六月の半ばごろまで、大体例年どおりのやり方でもって慎重に調査を実施する。その結果、ここに官民の較差が出るという状況になってまいりますれば、これも例年どおりのペースでその較差を埋めていただくための勧告を国会並びに内閣に対して出すということについては従来の方針と毫も変わりはございません。
  112. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、総裁にもう一度確認いたしますが、方針は従来どおりやって、仮に自民党等からの圧力が加わっても断じてこの圧力には屈しない、こういうふうに解釈していいでしょうか。
  113. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 これは従来からの実績その他を見ていただければ、私から申し上げるまでもなく御了承いただけることだと思っておるのでありますが、本来の趣旨から申しまして、人事院といたしましては官民の較差というものを慎重に調査いたしまして、較差があれば埋めていただくという基本的な態度で従来もやってまいりました。それまでには、やはり制度として定着をする段階ではいろいろな紆余曲折がございましたことはすでに先生よく御承知のところだろうと思います。  しかし、幸いにして国会その他についても大方の御支援を得まして、この制度がすでに定着をし、慣熟したところに来ておるわけでございます。その間にいろいろ国会でも論議をせられましたが、それに対して終始一貫して私からも御答弁を申し上げておりますように、人事院といたしましてはその使命がございます。職責がございます。これを遂行いたしまするためにはいろいろなそのときどきの批判とか、そういうものについて謙虚に耳を傾けはいたしますけれども、制度のあり方、基本というものについては毫も変改をするつもりは持っておりませんし、従来からもそういうことをやったことはございません。これからもこの制度がそのまま存続してまいります限りにおいては従来の方針を貫くという態度は堅持していくつもりでございます。
  114. 渡部行雄

    渡部(行)委員 総裁、長々と答弁されなくても、イエスかノーで結構です。つまりいまの制度は慣熟して定着しておるから毫も見直す考えはない、そしてまたこれは独自の立場で独立した機関であるから財政再建とは無関係である、したがっていかなる政党からの圧力にも屈しない、こういうふうにはっきりと明言できますか。
  115. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 そのとおりでございます。
  116. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは長官にお伺いいたしますが、今度の定年制を制定するについて、その前段で人事院総裁に諮問をし、そしてその書簡に基づいてこの法案を出した、こういうふうに説明がされておるわけですが、もし人事院総裁から書簡で好ましくないという返事が来たと仮定した場合にはどういうふうにするおつもりだったでしょうか。
  117. 中山太郎

    ○中山国務大臣 総理府総務長官としては仮定のことにお答えするわけにはまいらないと思います。私はそのような態度をとらしていただきたい。ただし、人事院の総裁の意見というものはきわめて重いものであるというふうな理解を絶えず持っております。
  118. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは仮定でなくて、現実にこの決意をしたときに、人事院総裁の書簡というのはその決意の何%ぐらい占めたものでしょうか。
  119. 中山太郎

    ○中山国務大臣 内閣の考え方が一〇〇%ということであれば、人事院総裁の意見はそれを裏づける一〇〇%であったと思います。
  120. 渡部行雄

    渡部(行)委員 また仮にということですが、人事院総裁の意見を無視してこういう立法ができるかどうか、それは法の手続上の問題ですからお答えできると思いますが、いかがでしょうか。
  121. 山地進

    ○山地政府委員 純粋に法律的に申し上げますと、政府は議案の提出権というのが憲法で認められておりますし、こういうところでいかなる法律でも御審議いただけるということは間違いないところだろうと思います。ただし、私どもの方で今回人事院に御意見を承りましたのは、国家公務員の身分の重大な変更にかかわることであり、かつ人事院が人事行政機関の中央にあるということから慎重を期して人事院の御意見を承ったということでございます。
  122. 渡部行雄

    渡部(行)委員 わかりました。慎重を期するという意味で人事院の意見を聞いたということですね。  そこで、私はこの定年制法というのは非常に日本の国民の活力を抑えていく法案になっているんじゃないだろうか、逆にこういうふうに考えられるのです。なぜかというと労働というものはすべて財貨に変化するものでございます。今日日本列島の上にあるすべての財貨は、労働者あるいは農民が労働によってつくり上げたものであるわけです。そうなると、まだ十分価値ある労働を年齢という線で切ってしまって、それを遊ばせてしまうということは、日本の国民の持っておる可能性を十分に引き出すことに対して抑える役割りを果たすのじゃないだろうか。私は勤労意欲というものについて、政府はこれを尊重し、さらに燃え上がらせるように指導しなければならないと思うのですよ。そうしてその勤労意欲のある者については常に職場を与え、そして生産に従事させ、そして日本人のすべてが豊かになれるように財貨の価値の増殖に努めさせるというのが政府の指導であるべきじゃないでしょうか。国というのは企業と違う。企業は自分の企業の中でどうもうけていくかという観点でしょうが、政府というのはそうでなくて、国民から失業で困っている者をなくさせ、そしてできればみんなが完全就職を果たして、まさに人生を楽しめる、不安なものに陥れない、そういうものでなければならないと私は思うのですが、長官、いかがでしょうか。
  123. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は先生のおっしゃるとおりだと思うのです。お考えは私と全く一緒だと思います。ただ、老いも若きも公務員がみんな同じような能力を持ち得るかどうかということはやはり慎重に考える必要があろうと思います。それは公務員の生活を保障するものは政府でありますけれども、財源を保障するものは国民であるということの観点が必要であろうと私は思います。だから国民の側から見て定年制度のない職場、しかもそれが自分たちの出す税金によって保障されているということになってまいりますれば、やはり能率の上がる公務員の仕事をやってもらいたいというのが偽らざる国民の考え方ではないか。  一方、公務員の立場から見ると、やはり安定した所得、そうして安定した生活の中で一生懸命国民のために奉仕をしていくということを確保しなければならない。綱紀を粛正せよと言っても、やはり安定した生活というものを政府が保障しなければ公務員は一生懸命働いてくれない。結果的に国家がマイナスになり、国民が大きなマイナスを負う。こういうことで両々相まって国というものはうまくいくのだろうというように私は考えておりますが、御説のように、高齢化社会というものと公務員のいわゆる高齢化という問題については、私はこれを別に考えていくことは不可能であろうと考えております。そういうことでございます。
  124. 渡部行雄

    渡部(行)委員 考え方は私と同じだと言うならば同じ結論が出ると思うのですよ。私は、こういう六十歳で能力ある者もない者も線を引くというのは間違っているということでいま申し上げたのです。ところが長官は、その点になるとまた全然違ってくる。  もちろん公務員は国民の税金で賄われておるわけです。それじゃ国民は何で税金を納めるのか。これは自分に対するサービスをもっとよくしてもらいたい、そしていろいろな施設もりっぱにしてもらいたい、だから納めて文句がないのですよ。納める気にもなるのです。ところがどうですか、いまどんどんどんどん事務量はふえて、公務員の守備範囲というものは、もう戦前の何十倍にもふえてきておる。こういう中で人員整理行政改革の名のもとに一方では進めようとしており、他方では今度は定年制を分限事項の中に入れて、有無を言わせずここで首を切っていく、こういうふうになれば当然これはサービスの低下につながるんじゃないでしょうか。  そしてしかも、私は、年金というものをもっと充実させなければ余生は楽しめないと思います。ところが、いままでの五十五歳支給開始日を今度六十歳に改定した。そうすると、六十歳以前に勧奨退職させられた者はその間どうしたらいいでしょうか。こういう問題について検討をされていないじゃないか。だから、そういうふうに考えますと、いま改定してしまったんだからやむを得ないけれども、それじゃ定年を六十五歳まで延ばしておいて、そうしてあとは自由にこの個人個人にそれぞれ話し合いをして勧奨退職なりをしていく、そしてこれは組合の交渉事項にのせていく、そうして公務員の労働組合といわゆる当局とが常に意思の疎通を図り、そこに意思の統一を図っていく、こういうふうにしていかないと、公務員制度というのは一つの統治制度でもあるわけですよ。だから、そこに事務の円滑化というよりも、むしろ全体のコンセンサスというか合意というものが大事じゃないでしょうか。そういうふうに考えると、私はこの六十歳定年制というものは決して賢明でないと思うのですが、いかがでしょうか。
  125. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先ほども申し上げましたように、この日本の産業構造自身が変わってきておることは先生も御承知のとおりでございます。一次産業が激減をしてきている。そして三次産業が非常な勢いで五〇%を超していくのが昭和六十年の日本の姿でございますから、三次産業の中に占める政府サービスはどの程度になるか。これはアメリカでも同じような現象が起こっております。つまり市民生活に対する公務のサービス量が莫大にふえていく、そういうことが大きな税金の負担の原因になっているということは先進国の一つの姿であろうと思うのです。そういうことをわれわれの社会がいま迎えようとする中で、政府は一体何をなすべきか。どんどんどんどんお説のように公務サービスというものが市民生活に不可欠になっていく中で、このサービスをどこでどうしたらいいのかというのは納税者との関係で非常に大きな忘れてはならない問題だろうと私は思います。  卑近な例で申しますと、先日私は国勢調査で台東の区役所に参りましたら、あそこに区役所独自でボランティア銀行というものを設置いたしておりまして、民間の方々にボランティアサービスで区役所の窓口で行政事務のお手伝いをしてもらっている。そうしなければなかなかうまくいかないというのが台東区長の御説明でございました。私は、新しい一つ行政のあり方をここで展開しているんだなという非常に大きな印象を持って帰ってきたのでありますが、これから先のいわゆる高齢化社会というものと公務員の数、公務員の年齢、そういうものはやはり全体的な目で、納税者の負担とのバランスというものをどうするかということに思いをはせなければならない。  先ほど申し上げましたように、昭和六十年六十歳ということにこの法律はなっておりますけれども、その時点で政府はそれを固執するという気持ちは持っておりません。高齢化社会にはどういうふうな変化が社会全体に起こるかもわからないという中で、その時点で日本全体の姿というものを見直しながらこの公務員制度の中での定年というものにつきましても検討をする余地を持っておることを御認識いただきたいと思っております。
  126. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、結局六十歳にはこだわらない、こういうことだと思いますが、ただ、理想を求めるのが政府の一つ立場じゃないか。六十という下で線を引くと高齢者がうんとふえるのは当然なことで、じゃ高齢者を減らすにはどうしたらいいか。アメリカは七十歳定年だそうですから七十歳で切れば高齢者は減るわけですよ。そうすると、いわゆる労働人口に比して年金生活者は減るわけですね。そうすればもっともっと年金も充実できるんじゃないか。そういうことがまず第一に考えられますし、それから理想としては、やはりその人の能力をどこまで使い果たせるかということだと思うのです。だから私は、一方においてこの再採用というものが制度化されているんじゃないかと思うのですよ。いわゆる能力のある者は幾ら定年を超えても再び採用する。それじゃ何も定年で首を切らないで採用を継続したらいいじゃないですか。しかも、分限事項でもうどうにもならないのは首を切ることができるようになっているでしょう。どうにももう労働にたえられない者は、分限事項でそうなっているはずですよ。だとすれば、何も働ける人まで定年制で首を切る必要はないのです。  しかも、定年制をやっても、今度はその中でさらに肩たたき、いわゆる勧奨退職を残すというのですから、これは全く一貫性がないのですね。これでは何を言わんとしているのか、何を目的としているのかさっぱりわからぬですよ。国民は納得できませんよ。だから私は、その理想に向かってもう少し考えられないか、そうして本当にこの人はもう限界だなと思ったときには、それは肩をたたいてやさしく次の人生に送ってやる、こういうふうにしていけば本当にすばらしい労使関係ができると思いますし、また、ヨーロッパの先進国等を見ましても、決して日本の公務員は多いわけではないのです。これは財界からそういう圧力がかかっているかどうかは知りませんけれども、国際的な感覚で見るならば、私は必ずしも公務員はそれほど多いとは思っておりません。  それからもう一つは、それじゃこの定年制をしいたことで一体財政再建にどれだけの寄与ができるのか、どれだけお金がそこから余裕として出てくるのか、こういう問題ですが、果たして出るでしょうか。一方において勧奨退職をして、これはやはり特別な手当てをしないと勧奨退職には応じないから、その手当てを残すと思うのですが、そうなっていった場合には、私は定年制が財政再建に寄与するとは考えられないのですが、その辺についてお伺いいたします。
  127. 山地進

    ○山地政府委員 定年制を実施した後、一体定員管理がどうなるのかということが一つわからないと財政再建に役に立つのかどうか言うことができないわけでございまして、私どもは別に財政再建のために定年制度を導入するということは申し上げておりません。先ほど来申し上げておりますように、むしろ業務の能率的な遂行のためにこういったことをやるということを申し上げているわけです。しかし、仮に一体こういったことが財政再建上メリットがあるのかどうかということでございますれば、一人の老齢の高給の方がやめられて若い方が入ってくる——大体定年でやめられる、あるいは勧奨退職でやめられる方は新入職員の三倍ぐらいの給料をもらっておるわけでございますから、その分については財政上プラスになる。ただし、勧奨退職をされるような方がやめられた場合には、当然年金の支給という問題が起こりますから、それはその分だけ財政支出が多くなるであろうということはそのとおりだろうと思います。ただし、その後で一体退職金がふえるのかどうかということにつきましては、いずれはやめられる方でございますから、その分についてはどの時点で計算するかによって違いが起ころうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、私どもとしては、当面財政再建に非常にメリットがあるというために定年制度を導入してはいない、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  128. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、この定年制問題は財政再建とは関係ない、そういうふうに受けとめます。  それから、六十歳定年をしいておきながら勧奨退職を残すのはどういう観点からされるのでしょうか。
  129. 斧誠之助

    ○斧政府委員 お答えいたします。  いま話題になっております退職勧奨は、定年制にかわるものとして退職管理の手段として行われておるわけでございます。定年制ができますと、きちっとした退職管理手段ができるわけでございますので、いま行われておるような形の退職勧奨はなくなるであろう。つまり各省が勧奨基準年齢を決めまして、その年齢に達したら勧奨する、そういう制度はなくなると思っております。  ただ、組織別に見ますと、年齢構成も非常に違いますし、業務の形態も違いますし、それから従前ずっと慣例的に行われております人事計画がございますが、そういうものの連続性もございます。そういうことで新陳代謝をなお必要とする経過的な期間があるであろうということで勧奨はなお残ります。こう書簡の中でも申し述べておるわけでございます。
  130. 渡部行雄

    渡部(行)委員 勧奨が残るというのは経過措置として残るだけであって、この法律では昭和六十年の三月三十一日からは残らない、こういうふうに考えていいのでしょうか。
  131. 斧誠之助

    ○斧政府委員 そういうことではございませんで、定年制が施行されました後においても、なお組織の特別な事情によって個別的には勧奨はあり得るということでございます。
  132. 渡部行雄

    渡部(行)委員 さっきは経過措置と言って、今度はそうじゃないと言う。どれが本心なんですか。
  133. 斧誠之助

    ○斧政府委員 定年制実施後においても、なお経過的には個別的勧奨は残っていくと考えておりますということでございます。
  134. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、定年制の役割りというか、定年制をしく理由にならないのじゃないですか。定年制になれば、今度は勧奨退職はないだろう、六十歳までは保障されるだろうというならまだ話がわかりますよ。そして六十歳でやめたら、今度はすぐに年金に連動するのだというならまだ話はよほどわかるけれども、定年制をしいておいて、ここまで来たらもう有無を言わさずばっさり首を切って、その前にできる者はまた首を切っていくというならば、これは何も定年制をやらなくたっていいじゃないですか。
  135. 斧誠之助

    ○斧政府委員 勧奨と申しますのは、制度と一般に言われておりますけれども法律的に言いますと、事実上の行為にすぎないものでございます。したがいまして、その勧奨に応ずるかどうかは各職員の意思に任されるわけでございまして、定年制ができますと、六十歳までは安定して職務に精励してもらいたいという意味合いも込めての話でございますので、六十歳まで働いていただく、そのような趣旨でございます。しかし、個別的に組織の人事管理の必要性によって事実上の勧奨というようなものが残ることは、何も定年制にかわるものとしてそういうものが存在するのではなくて、事実行為としてそういうものはあり得るでしょうということでございます。
  136. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、勧奨退職の場合の問題は、分限事項ではなくて労働条件として交渉の対象にしていくということですか。
  137. 斧誠之助

    ○斧政府委員 現在行われております勧奨退職は、定年制にかわるものとして、実際問題として各省の中で退職管理の手法として行われておるものでございますので、その年齢を定めるに当たりましては、職員団体と交渉できるというふうに考えております。ただ、定年制実施後におきましては、勧奨基準年齢というようなものは存在しなくなるわけでございますので、これはまさに個人対当局という関係になるのであろうと思っております。
  138. 渡部行雄

    渡部(行)委員 定年制がないときには、この勧奨退職は労働条件として団体交渉の対象にしたり、現業関係では協約に盛り込んだりしてきたが、今度定年制がしかれると、もちろん定年制は分限事項の中に組み込まれますからどうしようもなくなると思うのです。しかし、それによらない退職勧奨が個人対政府、任命者の関係だということで済まされるでしょうか。そんなふうになっていったら、労働者の権利は法律改正でどうにでも剥脱できることになりませんか。これは人事院総裁にもお伺いします。
  139. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 退職勧奨の関係でいろいろ御議論があるようでございますが、いま任用局長も申し上げておりますように、定年制ができますとそれが制度として本則的なものになるわけであります。したがいまして、従来は定年制度がないために、事実上の制度としてやっておりました退職勧奨制度が退職管理のやり方として機能しておったものが、定年制ができればそういう機能をする必要もなし、そういう従来やってきたものをやめるということに定年制の意義があるということに相なろうかと思います。したがいまして、はっきり申し上げますと、定年制がしかれますと、一般的には勧奨退職という制度はほとんどなくなるか漸次消滅をしていく方向に行くと私は思います。それは当然のことだと思います。  いまお話がありましたように、定年制があるのに、その前に勧奨でもって、おまえやめたらどうか、君ひとつ都合でどうかというようなことを言いましても、これはその職員自体の立場から言えば、せっかく定年制ができて、よほどのことがない限り、身分上または職務上の失態その他がない限りは、六十まではちゃんと生活設計上安んじてやっていけるんだと思ってやっておるものが、そういう生活設計が崩れるということになりますから、定年制がしかれれば退職勧奨というものは機能しなくなる、それは当然のことだと思います。  ただ、任用局長が申しておりますのは、具体的に申して、たとえば課長級以上になると私は思うのですが、そういう方々につきましては、各省庁の組織、人員構成、人事のやりくり、いろいろございまして、定年制ができて六十歳までというのだけれども、中にはそういうことで、ひとつ定年前ではあるけれどもどうだろうかという話を持ちかける余地が、それは全くなくなるわけではあるまい。しかし、一般職員の場合はほとんど全部そういうものはなくなりまして、主として課長さん以上の方々にはそういう場合があるいは残るのではないかということを申し上げたのであります。  ただ、あくまで勧奨というのは事実上の行為ですから、本人が、私はもう定年までおりますと言えば、それはそれで、あとそれ以上に強制するわけにまいりませんので、そういう点を前提にしてのお話であるということを御了承賜りたいと思います。
  140. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大分話が変わってきたように思うのですが、総裁が言うのは私はわかりますよ。確かに先ほど長官が言われたように、生活設計を考えてというなら、みんな六十歳を目安に生活設計するわけですから、その前に首を切られたのでは、先ほど長官の言ったのは崩れてしまうわけですよ。だから、そうなると、課長というのは本庁の課長を言っていると思いますが、そこをいま明確にしないと、労働者は本当に動揺しているのですよ。だから、一般職の公務員についてはそういうことをしないということを明言して、まあ万やむを得ないときの措置として、それは本庁の課長以上ということで考えているんだというなら、それは明確にしてもらいたいと思うのです。これは総裁と大臣から一応確認しておきたいと思います。
  141. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 これはいま私が申し上げましたとおりでございまして、これから定年制の関係が国会で御審議をいただきまして、その結果これが実施に移されるということになりました場合に、実施の時期が六十年ということでございますので、それまでの間にいろいろな準備措置その他で、いまの勧奨というようなことは、なお原則的に継続をしていくだろうというようなこともあるいはあり得るかもしれません。しかし、一つの目標として六十歳定年というものが出てまいりますので、その結果から、やはり六十年が来れば、それまでおれるんだからということで、勧奨自体がやりにくくなるという事実上の問題は起きてまいりましょう。しかし、それは別問題といたしまして、私が先刻申し上げましたように、一般職員についてはほとんど勧奨退職なんということの余地がなくなるだろうということは明らかでございます。さらに各省庁の実情がいろいろあるものでございますから、それを正直に申し上げたことが、言い足りなくて若干誤解をお与えしたかと思いますが、課長さんその他で、各省庁の組織の問題、従来のやり方等から見まして、そういう必要性のある場合が間々あるかもしれないということを申し上げたのでありまして、一般職にはそういうことはほとんどなくなりますし、漸次消滅していくというように考えております。
  142. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ただいま人事院総裁がお答え申し上げたとおりでございます。
  143. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで総裁にお伺いいたしますが、今度の定年制というものは、労働者にとって利益になることですか、不利益になることですか。
  144. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 利益、不利益ということの定義をどういうふうにやるかということの問題にも関連をすると思いますが、私は率直に言って、いわゆるメリット、デメリットというのは、御当人の考え方、制度の内包するものから言って、いずれもあり得ると思います。と申しますのは、デメリットということで言えば、これは御本人自身の考え方で、従来のいきさつその他から見て、自分はあるいは心の中では六十二歳あるいは六十三歳までやろうというふうに思っておる方があるかもしれません。そういう方にとっては、六十歳ということで一つの目標といいますか、そういう区切りが設定されるわけですから、そういう意味からは不利益とお感じになるということがあろうかと思います。またしかし、他面から申しますと、定年制自体をそもそも導入するという本来の目的ですね、これは私いまここで繰り返して申し上げません。簡単に申し上げる意味で申し上げませんが、そういう新陳代謝、それから長期的な生活設計、人事管理という面から見ますれば、これは長期的な展望ということで、職員御本人にとっても一つの生活設計の目標が立つということでありまして、また、職場の新陳代謝が行われるということになりますれば、六十までの一つの自分の生活の張り、勤務上の張り、昇任の可能性ということもいろいろお考えになるという余地は当然いままでよりも計画的に出てくるわけであります。そういう意味から、考え方によってはいろいろございましょうが、しかし、あくまで全体として見た場合、これは国の立場もございますし、また多数の公務員の立場もございますが、やはりメリットの方が断然多いのではないかという感じ方を私はいたしております。
  145. 渡部行雄

    渡部(行)委員 メリットもデメリットもあるということを言われました。  そこで、一体公務員の利益、不利益というものの判断は人事院がやるのでしょうか、公務員がやるのでしょうか、これが第一点。  それから第二点は、その公務員の中で定年制に賛成している者と反対している者の割合はどのくらいになっておりますか。  それから第三点目は、新陳代謝が行われると言われておりますが、私は新陳代謝は何歳で切ろうが同じだと思うのです。というのは、就職した以上は、これはいつかやめていくのですよ。問題はこの繰り返しだけなんですよ。就職した人が永久にやめないなら新陳代謝が行われないかもしれないけれども、就職すれば必ずいつかやめなくちゃならぬのです。その代謝はこれは同じなんですよ。何も変わるものじゃないと思うのです。それは一時的に量がばあっと——しかし、これは逆になるんじゃないでしょうか。いままでは五十七歳くらいで勧奨退職でやっていったものが、今度定年退職で六十歳になったら、新陳代謝は一時的には逆に悪くなるんじゃないですか。しかし、全体的に言えば同じですよ、新陳代謝なんというのは。入った者はやめていくのだから、この繰り返しなんですからね。そういう理屈がさっぱり勝手な理屈ばかり、こういうふうに聞こえてならないのですが、その点いかがでしょうか。
  146. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 第一点のメリット、デメリットの判定の主体でございますが、これは制度として最終的にかくあるべしというふうに決心をいたしますのは人事院であり、また政府であり、最終的には国会であるというふうに考えております。それまでの段階において公務員個々の御意見なりその他のものはいろいろ寄せられまするし、また職員団体を通じていろいろ意見の開陳があるわけであります。それはそれなりにいろいろわれわれの意思を決定いたしまする際の参考にはいたしておりますが、制度全体として決定をいたしますのは、今度の場合総理府総務長官の御所管に対する見解として決定をいたしましたのは、その段階では人事院であり、それから以後の法案提出あるいは国会における審議というものは、それぞれの段階で決定者が決まってまいるものだというふうに思っております。  それから第二点でありますが、これは特別にわれわれの方で世論調査をやったわけではございません。国民一般の世論調査ということは総理府でもおやりになりまして、これは先ほど総務長官も御披露になったことだと思います。個々の公務員のお考えについては、これはその代表としての公務員の職員団体というものがございまして、これはいままでも何回となく私の段階あるいはそれぞれ局長、課長段階でいろいろ御折衝を申し上げて参考にし、また聞くべき点は当然聞くということでやってきておるつもりでございます。  それから、ローテーションの問題、広く言えばそういうことであります。ただ、いまの現状というものは、勧奨退職でやっております年齢ではなかなか合理性を得られないのではないか。それから社会一般の大きな情勢の変化等もございますので、この際、六十歳定年ということを労働省としても民間の一つの定年制指導の目標といたしておるというようなこともございまして、これとの整合性も考えて適当ではないか、公務員の実態から見てもほぼ妥当なところではないかということで結論を下したわけでありまして、そういう意味の計画的なローテーションというものは、やはり若干長期的に延長された状況でこれがローテーションされていくということに相なろうかと思っております。
  147. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間が迫ってまいりましたので、少しはしょりますが、それでは現行の公務員法というのは、公務員労働者の基本権である三つの権利を剥奪した代償としてこの人事院ができ、公務員の身分保護が法律に明記されることになったわけです。しかも、この行政の中立、公正、安定を期するために、任命権者や政府権力の恣意によって公務員の身分が剥奪されることのないように保障したものであると思いますが、この点についてはどのように考えますか。  それから第二点は、これは昭和二十三年十一月十一日の第三回国会、衆議院の人事委員会における淺井政府委員の発言の記録でございますが、先ほど政府が判断するような言い方をこの利害関係について申されましたけれども、こういうふうに書かれておりますね。「國家公務員法の運営機関として、本年中には総理廳に人事委員会が設置されることになっているのでありますが、不偏不党、いかなる勢力の制肘をも受けることなく、嚴正公平な人事行政を行うとともに、國家公務員の福祉と利益との」ここが問題ですよ。「福祉と利益との保護機関としての機能を果すためには、この委員会は、そのために必要とし、かつ十分な権限が與えられるとともに、あとう限りの独立性が確保されることを、必要欠くことのできない要件といたしますので、これに関して所要の改正を行うことにいたした次第であります。すなわち、人事委員会を人事院と改め、從來内閣総理大臣の所轄のもとにあって総理廳の一外局でありましたのを、内閣に置き、他の行政機関に対し独立性を與えるとともに、財政的にもある程度の独立性を與えようとするものであります。またこれに関連いたしまして、人事院規則の制定につきましては、從來内閣総理大臣の承認を経ることとなっておりましたのを、人事院が独立にこれを制定し得ることといたしますとともに、人事院が処置する権限を與えられている行政部門においては、人事院の決定及び処分は、人事院によってのみ審査されることといたしたのであります。」というふうに述べられておるわけです。これは別段変わったわけでないと思います。この利害について、人事院というのは、労働三権を剥奪された労働者にかわって、労働三権にかわって労働者の利益を守るという立場をここで強調されたんじゃないでしょうか。
  148. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 一点、二点とも人事院の存立、目的等に関してお述べになりましたことは、いささかも狂いなくそのとおりであります。私もそのように理解をいたしておりまして、また従前人事院の業務を遂行するに当たりましては、そういう心構えで公正、厳正にやってきたつもりでありますし、今後ともその態度には変わりがございません。
  149. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最後に、時間が参りましたから、これは長官と総裁と両方にお伺いしますが、まず長官は、この六十歳定年制はしいても、決して六十歳にはこだわらない、将来これを見直していく用意がある、こういうことを確認していいかどうか。  それから、ここで定年制が施行された場合には、この定年制問題は、いままで現業労働者との中で取り交わされておった協約やあるいは団体交渉等の全然らち外になっていくのか、これは結局そういういままでの労働者の権能の中の一部分であるわけですから、それを剥奪したことになっていくのか、この点が第二点。  それから第三点は、この人事院というものは、そういうものを皆労働者の側に立って守ってくれるものといままで信じておったからこそ労働三権が剥奪されてもまあまあがまんしてきたわけでございますが、しかし、この考え方として民間の方に右へならえをさせるという考え方の中には、私はある意味では、民間が定年制をしいたからこっちも定年制をしくんだというような考え方については、どうしても承服できない。それは人事院月報の三月号の中で総裁、書いておるじゃありませんか。公務員と民間とをごっちゃにして考える向きがあるが、それはとんでもない、公務員と民間とは質的に違うということをこの中に書いてあるじゃないですか。だから、そういう民間に準拠するとか民間に右へならえするという思想は捨てていただきたい。そういうことを答弁の中に持ってくること自体がおかしいのですよ。そういう点について最後にお聞かせ願いたいと思います。
  150. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生お尋ねの点について、まず第一は、昭和六十年この定年法が施行された場合について、その時点で社会の変化等について公務員の定年についても再検討する含みがあるかどうか——ございます。明確にお答えを申し上げておきたいと思います。  第二点は、現業を持っている官庁で、団体交渉等の協約事項の中に、いろいろ退職等の問題についての協約があった場合にどうなるかというお尋ねでありますが、これは主務大臣と組合側との話し合いが行われて、それのいわゆる延長というような問題も、その中で当然話し合いの中に入っていくというふうに理解をしております。
  151. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 労働権が制限されておりまする代償的機能というものを人事院が背負っておりまして、これは大変重要な権能でございますので、この権能の行使については、従来も特別の配慮を加えてやってきたつもりでございます。過去の実績をここでいろいろ申し上げるつもりもございませんが、それなりの努力の成果は上がって定着をしてまいっておると思います。その点は、給与の毎年にわたる勧告のみならず、いろいろな厳しい条件もございましたが、週休二日制というのもその緒につくというようなこともその一例として申し上げてよいかと思います。  いま御指摘になりました公務と民間とは違うというのはそれはまさしくそのとおりでございまして、職員といたしましては、同じく勤務を提供するものでございますので、労働者であるということには間違いのないことでございますが、一面、公務員というのは全体の奉仕者として公務に従事するということから申しまして、よく指摘をされますような、要するに生産性とかあるいは効率とかいうものにつきましても、これは民間そのままの物差しを持ってくることが無理な場合もあり得るぞというような含みを私はいつも申し上げております。そういう趣旨のことを申し上げますとともに、それだけに公務員としては重要な責務を担っておるということを片方では申しておることでございまして、それはそのとおりでございますが、しかし、人事院の役割りというものは、るる御指摘のありましたことは、私といたしましても肝に銘じてこれを痛感いたしておりまして、今後ともこの職責を間違いなく遂行いたしますために全力を尽くしてまいる所存であります。
  152. 渡部行雄

    渡部(行)委員 以上で終わります。
  153. 江藤隆美

    江藤委員長 午後二時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時十三分開議
  154. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神田厚君。
  155. 神田厚

    ○神田委員 定年法の審議に先立ちまして、過日の委員会におきまして防衛庁長官から御報告がありました有事法制問題につきまして御質問を申し上げたいと思うのであります。  本日、国防会議が開かれまして、防衛大綱を六十二年度に達成をするということについての防衛庁長官からの報告が討議をされたというように聞いておりますけれども、国防会議においてどういうふうな御報告をなさいましたでしょうか。
  156. 大村襄治

    大村国務大臣 本日の国防会議におきましては、防衛庁から五六中業の作成に当たり基本的な考え方を御説明しまして、国防会議の御了承を得たのでございます。  その基本的考え方は、四つ項目がございまして、第一が、中期業務見積もりは自衛隊計画期間における毎年度の事業の見積もりを主とした内容とするものであるということ。第二に、今回の見積もりを指示するに当たりまして、「防衛計画の大綱」に示す水準を達成することを基本として作業を進めるということ。第三が、現下の厳しい財政事情を念頭に置いて効率的な事業の見積もりを行うということ。第四は、計画期間はおよそ一年間とすること。以上、四つの事項を基本的な考え方として御説明をしてお諮りをしましたところ、審議の結果、御了解が得られた、こういうことでございます。  ただいまの御説明でおわかりいただけると思うのでございますが、作業の開始に当たって「防衛計画の大綱」の水準を達成することを基本として作業を開始する、そういう考え方を含めての四つの項目をお諮りしたということでございまして、直ちに防衛計画の達成を本日決定したわけではございません。今後およそ一年間作業を進めまして、仕上がりました段階で、次の中業から何らかの形で国防会議の議に付するという、これまで国会でもしばしば申し上げておりますので、その手続をさらに仕上がりの段階でお願いをいたしまして結論を出す、いわばその着手の段階における手続を今回済ました、こういうことでございます。
  157. 神田厚

    ○神田委員 報道によりますと、国防会議の中でかなりの意見も出た。その中で特に財政当局担当であります大蔵大臣から発言があって、この問題については、計画が出た段階でもう一度国防会議にこれを報告をして、ここで検討するという形での発言があったかのように伝えられておりますけれども、その辺はどういうふうなことでございましょうか。
  158. 大村襄治

    大村国務大臣 大蔵大臣から私の説明に対しまして確認の意味を含めての発言が若干あったわけでございますが、その中におきまして、まとまったものを国防会議に何らかの形で付議するということについてお尋ねもあったわけであります。これはまさにそのとおり考えておるわけでございますので、そのとおりだとお答えしたわけであります。
  159. 神田厚

    ○神田委員 特にこの大綱の達成に当たりましては、財政当局と防衛庁の間で意見がかなり食い違っていたというようなことも伝えられておりますけれども防衛庁長官としましては、見積もりの達成を基本とするということでありますけれども、六十二年度達成は、努力目標なのか、それとも必達目標なのか、どういうふうにお考えでございますか。
  160. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛庁といたしましては、次の五六中業の期間内に防衛計画の水準を達成することを強く希望いたしているわけでございます。しかしながら、作成に当たりましては、水準の達成を基本として作業を進めるということにいたしているわけでございます。大綱そのものにつきましても、艦艇なり航空機につきまして「約」とかいろいろ幅があるわけでございますので、その読み方もございます。そういった意味におきまして、基本として作業をこれから進めたい、こういうことでお諮りをした次第でございます。
  161. 神田厚

    ○神田委員 大変含みのある御答弁でありますが、少なくとも六十二年度までに現在の防衛大綱の水準は達成をしていく、つまりこれは必達目標だ、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  162. 大村襄治

    大村国務大臣 必達と言われましたが、必達といいますと必ず達成するということなんです。私どもの考え方は、水準を達成することを基本とするということでございますので、必ずしも必達そのものではないかもしれないと思うのでありますが、いま申し上げたような考え方をいたしておるわけでございます。しかし、これは基本的な考え方の一項目でございまして、ほかの項目もございますので、そういったものと見合ってこの考え方をできるだけ実現できるように持っていきたいと考えておるわけでございます。
  163. 神田厚

    ○神田委員 私どもが前から何回も質問している中で、「防衛計画の大綱」の見直しの問題等についても質問をしていっているわけでありますから、現在の水準の防衛大綱を達成するということは、いままで、たとえば防衛庁長官等が大綱水準の見直し等についても非常に前向きに答弁をなさっていたようなことも考えますと、きょう国防会議で了承いただいたというのは、現在ある「防衛計画の大綱」について、これの達成を基本としていくということであるのか、それとも情勢によりましては、「防衛計画の大綱」そのものの見直しも含めた形での問題があるのか、その辺はどうでありますか。
  164. 大村襄治

    大村国務大臣 本日、国防会議にお諮りをいたしました防衛庁の考え方は、「「防衛計画の大綱」(昭和五十一年十月二十九日国防会議・閣議決定)に定める防衛力の水準を達成することを基本として作成する。」現在の「防衛計画の大綱」を言っているわけでございます。
  165. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、その期間内におきましては「防衛計画の大綱」の見直しは行わない、防衛庁の方針はそういうふうなことでございますか。
  166. 大村襄治

    大村国務大臣 五六中業の期間内というお尋ねだと思うのでありますが、そうだとすれば、そのとおりであると考えております。
  167. 神田厚

    ○神田委員 これはきわめて大事な発言でありますね。五六中業の期間内におきましては、「防衛計画の大綱」の水準の見直しは行わないということでありますと、いままで防衛庁長官が答弁をしておりましたのでは、国際情勢その他の変化によりまして、現在の「防衛計画の大綱」の見直しも考えていかなければならない、こういうことを言っておったわけでありますが、その点はどうなんでありますか。
  168. 大村襄治

    大村国務大臣 私は、これまでもしばしばの御質問に対しまして、現在防衛庁としては、「防衛計画の大綱」を見直すことを考えておらないということを申し上げているのでございます。今後見直しをすることがあるとすれば、国際情勢の変化、世論動向、そして防衛計画の達成状況、そういった点を勘案しながら検討されることになるのではないか、そういうことを申し上げているわけでございます。
  169. 神田厚

    ○神田委員 ちょっと答弁があいまいですね。ただいま五六中業中、つまり五十八年度から六十二年度までのこの計画達成に当たっては、「防衛計画の大綱」を見直さないということは、六十二年度まで「防衛計画の大綱」を見直さないということでありますか。
  170. 大村襄治

    大村国務大臣 「防衛計画の大綱」と中業、中期業務見積もりとの関係は別個のものでございますが、きょう国防会議にお諮りしました五六中業の進め方についての案によりますと、「「防衛計画の大網」に定める防衛力の水準を達成することを基本として作成する。」こういうことに相なっているわけでございます。  そこで、お尋ねの五六中業の期間に「防衛計画の大綱」を見直すことがあるかどうかという点になりますと、先ほど申し上げましたように、現在防衛庁といたしましては、大綱の見直しを考えておらないわけでございます。また今後見直すことがあるとすれば、国際情勢の変化、世論動向、そして「防衛計画の大綱」の達成状況、そういった要件が満たされないと見直しをすることはむずかしいのじゃないかということをかねて申し上げておるわけでございます。両方から見ますと、結論的に、この五六中業の期間において「防衛計画の大綱」を見直すようなことは起こらないのではないか、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。
  171. 神田厚

    ○神田委員 これは前々からのいわゆる大綱見直し論議から言いますと、防衛庁としての一つの考え方が明らかになったわけでありますが、国際情勢その他の変化がなければ防衛大綱の見直しをしないということでありますが、国際情勢の変化あるいはこの見直しをするという情勢はどういう情勢なのか、その辺のところはどうでありますか。
  172. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどの大臣の答弁の補足も含めましてお答えさせていただきたいと思います。  きょうの国防会議は、先ほど来大臣からお答えいたしましたようなことを決めたわけでございます。したがいまして、きょうの国防会議で六十二年まで見直さない、あるいは見直すとか見直さないとかいうことが議論になったわけではございませんで、そういう意味で、きょう、六十二年まで見直さないということを決めたということではございませんので、その点はまず一つあらかじめ申し上げておきたいと思います。  それではどういう場合に見直すかというお尋ねでございますが、これも先ほど来大臣からお答えいたしておりますように、一つはやはり国際情勢の変化、五十一年当時と比べて非常に厳しくなっておるわけでございますけれども、その動向といったものが一つの大きな要素であることは言うまでもないと思います。もう一つは国内の諸情勢、世論動向でありますとか国の財政経済事情でありますとか、そういった国内の諸情勢というのもやはり大きな要素であります。それと並行しまして、今後の防衛力の整備の進行度合い、それが「防衛計画の大綱」の水準に達していく度合いといったようなものをにらみ合わせながら、今後見直しするかどうかが決定されていく、考えられていくであろうということでございまして、いまの時点で見直しを考えているわけではないということを先ほど来お答え申し上げているわけであります。
  173. 神田厚

    ○神田委員 どうもちょっとはっきりしないところがありますが、要するに、六十二年度までには見直す情勢にないという判断に立っているのですね。そうしますと、六十二年度にこの「防衛計画の大綱」の水準が達成されました後は、どういうふうな防衛計画を推進しようというふうなお見通しをお持ちでありますか。
  174. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、六十二年度まで見直すとか見直さないとかということをきょう議論したわけではございませんので、六十二年度まで見直さないというふうに決めたわけでもございません。  それから、次の防衛計画についてどういう考えを持っておるかというお尋ねでございますけれども、それはまさに先ほど申し上げましたような状況をにらんで、見直しの検討が始まった段階で考えるべきことでございまして、いま私どもは防衛計画の現在の大綱の水準に早く到達したいということで努力をしておるということでございます。いまお尋ねの件は、次の段階ということで、私どもはいま何も案を持っておるわけではございません。
  175. 神田厚

    ○神田委員 六十二年度に達成するということになっていれば、その三、四年前からその後の防衛計画の問題というのは出てくるわけでありますから、「防衛計画の大綱」は絶対に見直さないんだというそういう中で、果たしてそれから先の新しい防衛計画ができるかどうか、これは大変疑問なところなんです。ですから、その辺を含めまして、つまり「防衛計画の大綱」の見直しというのは、いま局長が答弁したけれども、本日の国防会議では議題にはならなかった。ならなかったけれども防衛庁長官は、中業の見積もりの段階の中においては、六十二年度までは見直さないんだということをさっき言明したわけでありますから、そういうことでありますと、その先の防衛計画等の問題から考えると、六十二年度になってから、また新しい計画を立てるということでは間に合わないわけであるから、少なくともこの中業の期間内に「防衛計画の大綱」の見直しというのは検討されなければならないというふうにわれわれは考えるわけでありますが、その辺はどういうふうに長官考えておりますか。
  176. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほどの御質問の御答弁に際しまして、計画期間の六十二年度までは三条件を満たすことにならないだろうから、見直しそのものを必要とすることにはならないのではないかという趣旨で私は申し上げたわけでございます。三条件を満たすようになれば、ただいま御指摘のありましたように、検討はすることはあるいは必要になってくるのではないか、さように考えておるわけでございます。
  177. 神田厚

    ○神田委員 それは五六中業中においても検討するということでありますね。
  178. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど申し上げましたような三つの条件の進みぐあいを見て、あるいは必要によって検討をすることになることもあろうか、さように考えておるわけでございます。
  179. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、中業の見積もりの作成の作業というのは、具体的にいつまでにどういうふうにやるのか。一年ぐらいの期間でというふうな答弁がありましたけれども、どういう問題についてどういうことを基本に据えながらそれらの作業を進めていくのか。
  180. 塩田章

    ○塩田政府委員 期間としては約一年というめどを持っておるということを申し上げました。作業の進め方としましては、基本的な考え方としまして、いまの五三中業をつくりましたときと同じような考え方でいきたいと思っております。と申しますのは、防衛費の中で主要な装備品あるいは主要な事業につきまして積み上げ方式で一応積み上げていって、必要な経費の見積もりをつくります。しかし、それ以外の経費につきましては、そういう作業をいたしません。いたしませんで、主要事業についての見積もりだけをやりまして、しかも五三中業のときと同じように、年度割りというものを考えないで、大体五年間にこういう事業をこういうふうにやるといったところだけを積み上げによって算定をいたします。そうしまして、それを予算要求するときの概算要求の参考資料として、毎年度毎年度予算化を図っていく、こういうやり方、現在の五三中業のやり方でございますが、これは基本的には変えない、同じようなやり方でいこう、こういうふうに考えております。
  181. 神田厚

    ○神田委員 これは財政問題との関連になりますので、後からまた御質問申し上げますが、一年ぐらいで五三中業でやった作業を基本として同じような形でやっていきたい、こういうふうなことであるようでありますね。そうしますと、本日国防会議で了承されたこれらの問題につきましては、いわゆる日米の首脳会談に日本側が臨むに当たりまして、アメリカ側からの防衛努力の要求に対して、日本がそれに対応する、要求によって対応するということではなくて、自主的にこれらの問題について日本としての立場を明確にしておく、こういうふうなことが言われております。  そうしますと、日米の首脳会談の後、日米の安保協議委員会事務レベルでの協議、あるいは大村長官とワインバーガー・アメリカ国防長官との会議、これらを経ていろいろと防衛問題が論議されるわけでありますが、こういう一連の日米のいわゆる防衛の問題について、五六中業の作成の作業に当たっては、アメリカ側からの意見も参考にしてその作業に進んでいくのかどうか、この辺はいかがでございますか。
  182. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  本日、五六中業の基本的考え方につきまして、国防会議の御了解を得ましたのは、五六中業の作業を始める時期がもう来ているからでございまして、日米会談とかそういったものを念頭に置いてやったわけではございません。五三中業も五四年の春には決めているわけでございます。三年ごとにつくり直すということでございますから、五十七年の春に次の中業を決定するとすれば、一年前の四月中には、基本的な考え方を私としましては各幕僚長に向けて指示をしなければならない、そのタイムリミットが来ているわけでございます。ただ、昨年来国会におきまして、次の中業から何らかの形で国防会議の議に付すべしと強い御要望もございまして、私どもといたしましてもそのようにいたしたいということをお答えしております。  そこで、中業そのものは一年後に仕上がるわけでございますが、この基本的な考え方を示すに当たりましても、国防会議の御了解を得ている方がよろしいんではないかということで、きょうお願いしたということでございます。そういったことは、わが国が自主的に判断して、現下の国際情勢の厳しいことにかんがみまして、いわば平時における最低の水準ともいうべき現在の「防衛計画の大綱」を速やかに達成したい、そうすべきだという考え方に基づきまして、次の中業をいま申し上げました基本的な考え方で始めることにいたしたわけでございます。今後事務レベルの日米間の協議あるいは国防長官と私との協議が五月から、あるいは六月になると思いますが、六月にかけて予定されているわけでございますが、私どもは日米間の話し合いということはきわめて重要であると考えているわけでございます。先方からもいろいろな意見や要望も出ることと思うのでございますが、わが国はわが国としての憲法その他の基本的な考え方に立脚しながら、また自主的な防衛努力に努めているということを必要があれば正確に説明して理解を得るようにしたい、さように考えている次第でございます。
  183. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、アメリカの方の問題についてもやはり参考にして、それらのアメリカ側の要請も考慮しながら中業の作業をする、こういうふうに判断をしてよろしゅうございますか。
  184. 大村襄治

    大村国務大臣 私は日米関係はきわめて重要であると考えております。また日米安保条約を堅持し、その効率的な運用を図ることが日本の安全保障の重要な柱の一つであるということも自覚しているつもりでございます。そういう意味におきまして、米側から出される意見は、日本の立場を理解しての意見なり要望が多いと思うのでございます。しかし、そういったものにつきましても、わが国として取り入れることのできるものはできるだけ取り入れる、取り入れることのできないものははっきりそのことを述べるということで、あくまで自主的に会議等には当たりたいと考えているわけでございます。
  185. 神田厚

    ○神田委員 いまの御答弁ですと、米側の要請については、それらも考慮しながら、しかしながら自主的な判断で防衛力の整備を行っていく、こういうふうな御答弁だというふうに考えております。もちろん非核問題等がありますから、アメリカの言ってくるものすべてについて日本が受け入れるということはきわめて困難な情勢であることはわかりますが、現実に日米あるいは日米欧の協力体制というものが推進されている中で、日本としてこたえていかなければならない問題もたくさんあるわけでありますから、それらについては、アメリカ側の要請を日本としては受け入れていきながら、中業の肉づけを急いでいく、こういうふうな考え方に立っているというふうに判断をしてよろしゅうございますね。
  186. 大村襄治

    大村国務大臣 私といたしましては、先ほども申し上げましたように、日米間で意思の疎通を図るということはきわめて重要でございます。先方も日本の立場を理解した上でいろいろ発言があるのではないかと思うわけでございます。その場合におきましては、憲法の制約、非核三原則あるいは自主防衛、単独防衛、そういったわが国の立場を明らかにしながら、その上でなお可能な面につきましてはできる限り協力していく、要請のうち取り入れられるものがあれば、これの実現に努力する、そういった基本的な構えで臨みたいと考えているわけでございます。
  187. 神田厚

    ○神田委員 次に、この問題と財政の問題の関連について御質問申し上げます。  この計画大綱は六十二年度に達成をするという中で、防衛費の問題がずっと論議をされ続けてまいりました。本日の国防会議におきましては、それらの問題は触れられたでありましょうか。
  188. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  本日の国防会議におきましては、先ほど御説明しました防衛庁の基本的考え方につきましていろいろ意見が出されたわけでございますが、ただいまお尋ねの点につきましては、それほど詳しいと申しますか、具体的な御発言はなかったわけでございます。
  189. 神田厚

    ○神田委員 大綱水準を六十二年度で達成をするとした場合に、問題となるのは五十七年度からの防衛予算であります。防衛予算については、GNPの関係で論議をされている中で、GNPの一%以内、こういう閣議決定が五十一年十一月になされております。そうしますと、防衛庁等の考え方では、六十二年度に達成をする場合に、GNPの一%以内で果たして防衛計画の大綱が達成できるというふうに考えておられるのでありましょうか。
  190. 大村襄治

    大村国務大臣 五十一年の十一月に閣議決定がなされまして、毎年度の防衛関係費の予算はGNPの一%を超えないことを目途として作成するという趣旨の決定がなされたことは御指摘のとおりでございます。そこで、今後の中業の作業をこれから一年がかりで始めるわけでございますが、計画期間内の事業量が一体どのぐらいになるか、そういった点も決まってきませんと、分子の数字が固まらないわけでございます。分母の方に当たりますGNPにつきましても、現在経済七カ年計画がございますが、次の中業の計画期間全部にまたがる伸びということにつきましては、いまのところしっかりしたものがない、こういうふうな状況でございますので、この分母、分子の関係が出てまいります対GNPの比率がどういうふうになるか、現在の時点においては判断いたしかねるわけでございます。  しかしながら、政府としましては、現在閣議決定に基づく一%以内という決定が依然として有効でございますので、現在の時点におきましては、これを念頭に置きながら作業にかかるということはむしろ当然ではないかと考えておる次第でございます。
  191. 神田厚

    ○神田委員 いま新経済七カ年計画のお話が出ましたが、この名目経済成長率一一・七%、さらにそれを低めて一〇%というふうな仮定をしましても、現在そういうふうな高い経済成長率は見込めないわけですね。そうしますと、ただいま閣議決定のGNP一%ということは、一つの枠だということの認識はあるようでありますが、防衛庁としましては、現在の試算の段階で、たとえば五十七年度あるいは五十八年度等々の防衛費の要求にしましても、本当に一%以内のもので、つまり六十二年度までに達成ができるというふうに試算がされているのかどうか、その辺は具体的にどういうふうな検討がなされておりますか。
  192. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまも大臣からお答え申し上げましたように、まだ数字が、もちろんGNPの方もそうでございますし、防衛費自体が全くいまからの作業でございまして、いまいろいろお尋ねがございましたけれども、いまの時点でどういうふうな、GNPに対する比率がどうなる——もちろんGNPが一一・七%も伸びるかあるいはそれより下がるかというようなこともございましょうが、GNP自身が流動的である、また防衛費自身の今後の作業がまだできていない、そういう両方の面から、いまの時点で本当に何ともお答えができない段階であるということを御理解いただきたいと思います。
  193. 神田厚

    ○神田委員 たとえば仮にこの五六中業の五年間を五三中業と同じような形で計画を立てていった場合に、防衛庁としては、GNP一%という枠がはめられた場合には、「防衛計画の大綱」の水準達成が防衛庁の望んでいるような形でできるというふうにお考えでありますか。
  194. 塩田章

    ○塩田政府委員 きょうお決めいただきました、達することを基本として作業に入ってよろしいという意味は、まさに達することを基本にしていまから作業に入るわけでございますが、その際に、作業としましては、まず「防衛計画の大綱」の水準に達するということを目指した作業をいたします。その結果、来年、約一年後にはある程度まとまったものが出てくるわけでございますが、その時点で当然財政問題等もいろいろ検討されるわけでございます。そのことは先ほど来お答え申し上げておりますが、同時に、いまも大臣からもお答えいたしましたように、作業に当たってもわれわれはいまの財政状況というものを無視するということはとうていできませんので、財政の事情といったことも配慮しながら作業はするということもきょう御決定いただいた中に入っております。長官指示の中にも入れようと思っているわけであります。しかし、基本的には防衛計画の水準に到達することをまず基本として作業をしなさい、こういうことをきょうお決めいただいたというふうに私どもは思っているわけであります。
  195. 神田厚

    ○神田委員 新聞等では一%の枠を守っていくというふうなことを基本にして考えた場合には、防衛庁内部の陸、海、空三自衛隊間の調整で防衛予算の伸びを抑制していくのだ、つまり正面装備の充実というようなことを考えていけば、陸の方の予算が少なくなるのではないだろうかとか、いろいろ解説がされているわけでありますけれども、基本的にこの水準達成というのは、いまの国際情勢のもとで考えた場合には、正面装備の整備が当面の緊急課題になっているのかどうなのか。そうした場合には、正面装備を整備するということで、果たしてGNPの一%以内の予算でそれができるというふうに防衛庁は考えているのかどうか、その辺は長官、いかがでございますか。
  196. 大村襄治

    大村国務大臣 GNPそのものの伸びが今後どうなるか、この点が定かでございません。先生が御指摘になりましたように、近い将来GNPの伸びがダウンするということになりますと、その答えもぐんと高くなる可能性もあるわけでございます。しかしながら、いま七カ年計画で見込んでおりますような二けたの成長がもし続くとすれば、わが国のGNPそのものがかなり大きくなってきておりますので、その範囲内で賄っていくことも可能になりやしないか、そういう点もあるわけでございますが、一方において、次の中業の中身がどうなるか、その点との関連もございますので、いま政府委員が御答弁申し上げましたように、現在の時点においてその点の見通しを申し上げることは控えさせていただきたい、さように考えておるわけでございます。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  197. 神田厚

    ○神田委員 これから作業をしてつくっていくわけでありますが、予算の問題等については、これは平均した形で予算の要求をしていくのか。つまり計画は五年間おしなべてやるということでありますから、いろいろ予算づけ等についても何か考えがあるのかもしれませんけれども、常識からいえば、年々防衛予算については平均的な要求をして装備を充実していったわけでありますから、これからの方針としましても、やはり国の財政その他を考えれば、いままでのような防衛予算の要求の方式でこれをなさっていくような形になるのかどうか、その辺はどうでございますか。
  198. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま平均とおっしゃった意味は、陸、海、空内の平均という意味ではなくて、年度間の平均という意味で承ったわけでありますが、先ほどお答えしましたように、中期業務見積もりの場合は、主要な事業についての見積もりを行いますが、それだけであります。しかも、それには年度割りをつけておるわけではございませんということでございますので、それを毎年の予算にしていく場合に、いまも御指摘のように、ある年突然多くて次の年は少ないというような予算を出すことは、実際問題考えられません。それはやはり御指摘のように、原則的には平均した形でいく、あるいは平均した伸びの形でいくというようなことになろうかと思います。  ただ、いま具体的に申し上げにくいのは、先生御承知のように、飛行機などというものは生産のラインがございまして、どうしてもある年に調達して次の年はしないというようなこともございますので、そういった全体をにらみながら、そういうことがあってもなおかつ全体が平均的にいけるようにということは、今後配慮していかなければいけないというふうに考えておるわけであります。
  199. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、具体的にこの五六中業が始まる五十八年度以降の防衛予算の対前年度の伸び、これは二けたになるというふうに言われておりますが、その辺は防衛庁としては、その試算といいますか、そういうものについては、まだ内容がはっきりしないけれども、しかしながら、考え方の基本としては、やはりそのくらいの伸び率がないと達成ができないというふうに見込んでいるのでありましょうか。
  200. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど私が平均的に云々と申し上げましたのは、別に二けたとかという数字のことを念頭に置いて申し上げたわけではございません。いまの時点で五十八年度以降二けた以上の伸びとかそういうようなことを全然想定しておるわけでもございませんし、また想定をするに足る数字を現在持っておるわけでもございませんので、その点につきましては、いま何ともお答えいたしかねる段階でございます。
  201. 神田厚

    ○神田委員 防衛庁長官にお聞きしますが、財政の問題で長官は、五十一年の閣議決定のGNP一%以内というものについて、これで六十二年度に達成をするということにどういう見通しをお持ちでありますか。やはり一%という枠は、防衛庁にとっては、これから先の計画大綱水準の達成を考えると大変厳しいというふうな判断を持っておられるのか、できたらばそれについて、一%という枠の中での達成については、この閣議決定の変更についての防衛庁長官としての努力のお気持ちもあるのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  202. 大村襄治

    大村国務大臣 次の中業作業にかかったばかりでございまして、内容もまだ固まっておらないわけでございます。またお尋ねの六十二年度となりますと、いまから六年先でございますので、事業内容にも関係ございますし、またそのころのGNPの見通しとも兼ね合いがございますので、現在の段階見通しを言えと言われましても大変困るわけでございまして、申し上げかねるわけでございます。作業を進め、またその後の情勢等を見定めた上で、もし現在の閣議決定でやっていけないということが確実に見通されるようなことになりましたならば、その段階でそういったことを改めることについてお願いをしなければいかぬこともあるいは将来生ずるかもしれませんが、現在の時点におきまして、そういうことを申し上げるわけにはまいらぬと思うわけでございます。したがいまして、私といたしましては、中業の作成の作業の開始に当たりましても、現在の閣議決定を念頭に置いて進めるということを先ほど申し上げた次第でございます。
  203. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、正面装備を完成をしていくということについて、これをやっていきますと、つまりこういう財政事情の中でそれを推進していくと、どういうところにしわが寄るんでありましょうか。
  204. 塩田章

    ○塩田政府委員 きょうの国防会議でも私御説明を申し上げたのですが、御指摘のように、正面装備について「防衛計画の大綱」に別表がございまして、主なものが書いてございます。しかし、大綱の水準と申しますものは、あの別表に書いてある正面装備についての水準だけではないというふうに私どもは考えておりまして、防衛の体制ということで陸、海、空それぞれの防衛体制を本文の方に書いてございますが、そういった体制は、正面装備と、それに必要な後方との適合した形で実現されるわけでございまして、私どもは今度の五六中業の作業をいまから進めるに当たりまして、いま先生が御指摘のようなしわをどこかに寄せていく。たとえば正面装備を重点にして後方にしわを寄せていくというふうな考え方はとりたくないというふうに考えて、今度の作業に臨みたいというふうに思っております。
  205. 神田厚

    ○神田委員 この大綱問題で最後に長官にお尋ねいたしますが、長官は六月二十九日ワシントンでアメリカの国防長官ワインバーガー氏と会談をするわけでありますが、当然この席上におきまして、アメリカの方から中業の中身の問題についての要請が出てくると思うのでありますが、この会談等において、中業問題についてこれが会談の一つの話題、議題としてなるのかどうか。そしてそれらについては、長官としてはどういう立場でこの問題について対処をするのか。いわゆる五三中業がアメリカからの強い要望によっていろいろ話題になった経緯もございまして、このように国防会議に付議をされるという結果にもなってきたわけでありますが、同時に、五六中業も同じようにアメリカの方からかなり強力にその中身についての注文なり運用についての問題なりの指摘があるというふうに考えておりますが、その点は長官としてはどういうふうにお考えでございますか。
  206. 大村襄治

    大村国務大臣 私は六月二十九日、三十日ワシントンでワインバーガー国防長官と会って日米間の防衛問題について協議をすることを予定しているわけでございます。その場合に、お尋ねの中業の問題をどうするかということにつきましては、先ほど来御説明申し上げておりますとおり、まだ作業に着手したばかりでございまして、六月末の時点においては固まっておらないわけでございます。したがいまして、わが国の防衛力整備の状況については十分説明いたしたいと私は思うわけでございます。  これからの見通しにつきましても、「防衛計画の大綱」の水準の達成をできるだけ図るために努力するということは申すつもりでございます。次の中業がまだ固まっておりませんので、それ自身を申し上げるわけにはいかないと思っているわけでございます。ただ、先方からいろいろ日本の防衛力整備について意見や要請が出された場合におきましては、先ほど申し上げましたように、憲法の制約、非核三原則、専守防衛あるいは個別防衛、そういった基本線は明確にしながら、先方の意見のうち、そういったものに触れないで、役に立つような意見があれば、これは積極的に耳を傾けてまいりたい、さように考えているわけでございます。
  207. 神田厚

    ○神田委員 次に、有事法制の問題につきまして二、三御質問を申し上げます。  まず第一に、この時期になぜ有事法制中間報告、これが出されたのか。つまり日米の首脳会談やあるいはいろいろな防衛努力についてのアメリカ側からの要請等、防衛論議が高まってきている中でありますが、この時期に有事法制中間報告がなされたのはどういうふうな事情でございましょう。
  208. 大村襄治

    大村国務大臣 有事法制研究につきましては、いまをさかのぼる三年ほど前、国会においていろいろ御論議もございまして、防衛庁といたしましても、有事法制の問題を研究して、現行の防衛関係の法制について不備な点がありとすれば、その点を明らかにして国会に御報告するという作業を始めたわけでございます。すでに三年近く経過いたしまして、昨年の臨時国会におきましても、まとまったものから中間報告をした方がいいという御意見もございまして、私も就任以来この問題に鋭意努力しました。全部がなかなかまとまりませんので、防衛庁所管法令について一応まとまりましたものを、今回中間報告として御報告申し上げた次第でございまして、大変おくれて、しかもごく一部しか御報告できない点は残念でございますが、かねてからお約束しておりましたものにつきまして、まとまりましたものを御報告したということでございます。通常国会内にできるだけ早く御報告したいということを申し上げておりましたので、この機会にまとまったものを御報告した、こういうことでございます。
  209. 神田厚

    ○神田委員 これは福田総理指示をして、研究開始をして、閣議決定を経て研究するというふうなことであったわけでありますが、今回中間報告という形で通常国会の中で出されてきた。しかしながら、閣議決定をされて研究に着手したものの中間報告ではありますが、これは閣議に対しましてはどういうふうな形で取り扱いがなされるのでありますか。
  210. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御指摘のとおり、この有事法制につきましては、五十二年の八月、当時の福田総理から指示を受けて作業を開始したというものでございますが、いま先生おっしゃったような、作業を開始するに当たって、閣議決定を経たというような事情、事実はございませんで、あくまでも口頭による指示というふうに承知しております。したがいまして、私ども今回の報告も特段閣議にかけるということは考えておらない、あくまでもわれわれ部内の研究であるということと、中間的な報告であるということから、そういったことは必要ないのじゃないかというふうに考えた次第でございます。
  211. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、これは閣議の方には一切報告しないで国会にだけ報告する。まとまった段階においては、中間報告ですから、本報告が出た段階においては、やはり閣議の方には報告をなさるのでありましょうか。
  212. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  今回は、防衛庁所管法令につきましてまとまりましたものを中間報告という形で御報告いたしたわけでございます。今後、他省庁所管法令研究あるいはどの省庁に所属するかわからない分野の法令につきまして研究がまとまれば、その都度また中間報告するということになろうかと思うわけでございまして、全体をまとめての御報告ということは、いまのところまだその時期等も予想されない次第でございます。したがいまして、それを前提としての閣議報告ということはいまのところ考えておらない次第でございます。  なお、先ほど私御答弁申し上げました中で、単独防衛と申し上げました。これは個別防衛の誤りでございますので、訂正させていただきます。
  213. 神田厚

    ○神田委員 防衛庁所管以外の法令研究状況、これもただいま御答弁で触れられておりましたが、これは一体どういうふうになっているのか。それから他省庁所管法令で今後検討が必要と考えられているのは、どんな項目がどれぐらいあるのか、それらはどんな手続でいつごろまでを目途に改正点をまとめていく予定なのか。それから所管省庁が明確でない事項に関する法令については、どのような場で扱うことが適当であるというふうに考えているのか、だれがどこでそれをどういうふうに決めるのか。つまり防衛庁がこの問題全部一身にしょってこれの取りまとめを防衛庁自身がおやりになるつもりなのか。それから先ほどちょっと答弁で触れたように、それでは各省庁所管の問題については防衛庁が取りまとめるのじゃなくて、各省庁でそれぞれにやっていくということにするならば、防衛庁としては、今回の有事法制中間報告のねらいといいますか、それは防衛庁所管自衛隊法改正という問題に焦点を置いてこれを検討しているのか。この辺のところはどういうふうにお考えでありましょうか。
  214. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず第一に、今回の中間報告の中身というのは、あくまでも防衛庁所管法令にかかわる分に限っているわけでございます。これは具体的に申し上げれば、自衛隊法防衛庁設置法防衛庁職員給与法というものがそれでございます。  なお、第二分類におきまして各省庁、いわゆる防衛庁所管以外の各省庁にまたがる法令につきましては、まず第一に、部隊移動資材輸送に関する法令というのがあろうかと思います。それから第二は、通信連絡に関連するいろいろな電波法その他の法令があるだろうと思います。それから火薬類の取り締まり、輸送に関する法令というものがあろうかと思います。このほか非常に種々雑多な法令が含まれておるわけでございまして、一つの端的な例を申し上げれば、現在の自衛隊法の中に適用除外であるとか特例が設けられている法律だけでも二十四の法律がある、それ以外の法律を抱えますと相当多くの法律になるであろうということが予想されるわけでございまして、これらの法律についての検討をするに当たっては、防衛庁だけの作業では進まないわけでございまして、関係省庁と密接な連絡協議を重ねながらやっていかなければならない、相当長期間かかるのではないかというふうなことが予想されるわけでございます。  それから、第三分類のいわゆる所管がはっきりしない問題、たとえば国民避難誘導、民間防衛に関する法令あるいはジュネーブ四条約に関する捕虜、傷病者に関する法制化の問題というものについては、どこが所管すべきかということについてはまだはっきりしないものがございます。これらについても、あるいは防衛庁としての意見も出し、あるいは内閣、政府全体としてどこで扱うべきかということについて御協議を申し上げながら逐次固まっていくのであろうというふうに思うわけでございます。  この第二、第三分類について、いつまでに検討が終わるかというようなことについて、いま私ども具体的な結論を得ておりませんが、とりあえず、私ども所管法令についての検討もしないで、各省の法令についてとやかく申し上げるようなことはいかがかというふうな立場から、とりあえず今回防衛庁所管法令についての報告をさせていただいた、こういうことでございます。
  215. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、あとほかの省庁所管の問題についてはどこが取りまとめるのですか。
  216. 夏目晴雄

    夏目政府委員 具体的な作業につきましては、いま確たるあれを持っているわけではございませんが、防衛庁の方からこういった問題点があるということについて関係の省庁に申し上げる、関係省庁の御意見を伺いながら、防衛庁としてはこういうことの改正が望ましい、あるいは改善してほしいというふうなことを申し上げることになろうかと思います。  ただ、防衛庁と関係省庁との間だけではなかなか話が進まないというふうなことになれば、あるいはまた内閣なりどこかでまとめていただくようなことも考えなければならないという事態が起きるかもしれませんが、まだそこまで具体的に、私どもこうして進めるのだというふうな結論を得ているわけではございません。
  217. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、長官にお聞きしたいのでありますが、防衛庁としては、有事法制研究中間報告を出したことによって、防衛庁所管問題点については、自衛隊法なり防衛庁設置法なりそれらの防衛庁関係の法律改正に着手する準備というふうな形、準備というかそれに当然帰結するだろうというふうな判断が持てるわけでありますが、その辺はいかがでありますか。
  218. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  これはこの研究に着手する当初から明らかにされておりますとおり、研究立法措置とは別個のものと考えているわけでございます。今回研究のまとまりましたものを御報告申し上げた次第でございます。立法措置を含めての今後の進め方につきましては、防衛庁といたしましては、また別途に検討して、関係省庁協議を要するものにつきましては、そういった点も詰めました上で、結論が出ますれば、必要な措置をお願いすることにいたしたいと考えておるわけでございます。
  219. 神田厚

    ○神田委員 公務員法の問題もありますので、あと二、三点にいたしますが、われわれは有事法制問題につきましては、民社党としては有事法制の整備は必要だ、こういうふうに考えております。自衛力があるということは、有事を想定して自衛力というものをわれわれは持っているわけでありますから、そういう意味では、この有事想定という一つの大原則の中で、自衛隊二法もそういう前提でつくられている、こういうふうに考えております。そうしますと、こういうことから有事法制の整備というのはしなければならないけれども、しなければならないという立場は、もしもしないでおきますと、有事の際に超法規的な行為が必然的に認められてなってしまう、大変まずいことになるわけであります。しかしながら、この整備に当たってぜひとも注意をしなければならないことは、憲法の問題あるいはシビリアンコントロールの問題、基本的人権の問題、こういうものにきちんと照らし合わせて、それらの問題がやはりその枠を超えないことでこの整備というのは進められていかなければならないのだ、こういう基本的な考え方を持っております。しかしながら、現実に自衛隊法には欠陥があって、たとえば百三条や九十五条の問題等を見ましてもわかるように、われわれとしましては、自衛隊法の整備も、同時に見直しも進めていかなければならない、こういう立場をとっておりますが、その点につきましては、ただいま防衛庁長官の方から研究立法は別だということであります。しかし、現実にこういう欠陥を自衛隊法上そのまま置いておくというわけにはいかないと思いますが、その辺についてはどういうふうにお考えになりますか。
  220. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回の有事法制研究立法化とは別問題であるということは、いまの長官の答弁のとおりでございますが、私どもやはり相当長期間を経て検討した一つ結論というか結果でございまして、私どもとしては、ここに問題があるという認識を持った以上、このままでいいという認識に立っているわけではございませんが、ただ、実際の法制化に当たっては、今回の中間研究とは別に、これを立法化することの可否あるいは政策的な判断、国会での御論議やら国民世論というものを踏まえながら研究していくべき問題であるというふうに考えております。ただ、防衛庁として、この欠陥なり不備をそのままほっておいていいかということであれば、私どもとしては、早期に何とかしてほしいという期待というか願望というか、そういうものを持っていることは否定できないところでございます。
  221. 神田厚

    ○神田委員 防衛庁長官はどういうふうにお考えでありますか。
  222. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま政府委員、官房長のお答えしましたとおりに考えています。
  223. 神田厚

    ○神田委員 それでは最後に、この定年法との関係で、自衛官の定年の問題がいろいろ言われておりますが、この自衛官の定年の問題で、特に武官と言われている人たちの定年が年々延長はされておりますけれども、各国との比較から見ますと、相当若い年齢で退職せざるを得ないような状況になっております。いま少尉から中佐までは五十一歳、大佐が五十三歳、少将が五十五歳、大将、中将が五十八歳ということでありますが、五十一歳でこれを定年退職をする、つまり、六十歳定年ということにいま世論の中でなっている中で、自衛官について五十一歳で定年というのは、どうもそういう意味ではちょっとまだ短いのではないかというような意見もあります。この辺につきましては、各国との比較を見ましても、非常に若い年齢で退職せざるを得ないような状況でありまして、これは国家的な見地から見ても、やはり非常に問題があるのではないかというふうに考えますが、その点はいかがでございましょうか。
  224. 石崎昭

    ○石崎政府委員 自衛官の定年は、おっしゃるとおり、自衛官が一朝有事の際には戦闘という、その心身ともに全能力を発揮しなければならぬという任務を持っているために、ほかの職業に比べますと若干若く決められておるのはそのとおりでございます。しかし、いま、最近の平均寿命の延長であるとか、それに伴う高年齢者の労働能力の向上であるとか、民間企業における六十歳定年の次第にふえている傾向、そういう労働情勢一般の背景を勘定に入れますと、それからまた内部的に装備の近代化、複雑化に伴う熟練隊員の能力の活用というようなことを考えますと、定年を延長していくという必要も一方にございます。  そこで、五十四年度から五十九年度までの六年の間に段階的に定年の年齢を引き上げていくということにして、現在それが進行中でございます。これが計画どおり五十九年度までに全部終わりますと、従来よりは若干定年が延びまして、一佐は五十四歳、二佐から曹長までは五十三歳、一曹は五十二歳というふうに延長されることになるわけでございます。その結果、よその国と比べてみますと、よその国の軍隊は若干階級ごとの定年の年齢が違いますので、一概には比較がむずかしいのでありますが、西ドイツとかフランスあたりと比べると、尉官クラス、下士官クラスは大体同じ定年に落ち着くということになるわけでございます。
  225. 神田厚

    ○神田委員 いま私間違いまして、大将とか中将とか旧軍のあれで言いましたが、これは将とか将補とかということでございまして、ちょっと資料のとおり読みまして失礼をしました。  いずれにしましても、イギリスやあるいはアメリカ等に比べますと、やはり相当若い年齢で退官せざるを得ないような状況になっておりますが、これはひとつ今後検討していかなければならない問題だというふうに思っております。今後の検討課題ということで、それぞれの立場で御検討をお願いをしたい、こういうふうに思っております。  防衛問題でちょっと時間をとりましたが、以上で防衛問題について質問を終わりまして、次に、定年法案に対する質問に移らせていただきます。防衛庁長官、どうぞ御退席ください。  それでは定年法案について質問を続けます。  まず最初に、定年法案を提案をされてまいりましたけれども、この定年法案によって、政府としては、どういうふうな財政効果をこれで考えているのか。この法律が成立した場合に、昭和六十年三月三十一日から六十歳定年制が導入されるわけでありますが、これに伴って定年退職の対象となる公務員の数は一体どのぐらいなのか、昭和六十年度の場合はどのぐらいで、その後毎年推計何名ぐらいがこの対象になるのでありましょうか。
  226. 斧誠之助

    ○斧政府委員 お答えいたします。  昭和六十年三月三十一日にどれくらいの職員が定年退職することになるかという推計はなかなかむずかしいのでございますが、いま審議されております定年法が通りましたら職員にどういう影響が出るのか、それから人事院、総理府、各省、これは定年制の円滑な実施に向けていろいろ準備をする、こういうことになりますので、その影響がどういうふうにあらわれるかということでなかなかむずかしいのですが、非常にラフな推計で申し上げますと、現在五十五歳以上の職員が、給与法の適用職員で言いますと、約五万四千人在職しております。一方、五十四年度中に五十五歳以上で退職しております職員が八千五百人ばかりおります。その関係で、六十年の三月三十一日にどういう数字になるであろうかということを推計してみますと、大体、五十五年の三月三十一日に在職しております六十歳以上の職員が一万四千人ですが、この程度の数字になるのではないかというふうに考えられます。ただ、この一万四千人の中には、大学の教官でありますとか医師でありますとかという職員も入っておりますので、この方たちは六十歳以上の定年になりますので、若干数字は減ると思います。  それから、六十一年以後どういうことになるであろうかということなんですが、これも大変推計はむずかしいのですが、国家公務員給与の実態調査で出ております数字でいきますと、五十五年一月十五日現在で調べました国家公務員給与実態調査によりますと、大体毎年一万四千から五千人ぐらいが六十一年以降六十歳に達するというような、ごく大ざっぱでございますが、そんな感じでございます。
  227. 神田厚

    ○神田委員 一方現在国家公務員には、民間の定年にかわるものとして勧奨退職制度があるわけですね。現在、各省庁の平均勧奨退職年齢は五十八・六歳であります。六十歳定年制が導入された場合、六十歳まで雇用の延長となるわけでありますが、これによって雇用の延長の対象となる公務員の数はどのくらいになるのでありましょうか。
  228. 斧誠之助

    ○斧政府委員 これもなかなか確たる数字は出てまいりませんのですが、六十歳の定年になりますというと、現在五十九歳以下でもって勧奨基準年齢を設けております省庁の職員について在職期間が延びるという現象があらわれてくるのではないかと思いますが、これは課長補佐クラスで五十九歳以下の勧奨基準年齢を持っております省が十四機関、課長クラス以上で十七機関ございます。この人たちが今後どういう退職の過程を示すのかよくわかりませんが、大体いま任用状況調査に毎年あらわれております数字で言いますと、五十五歳から五十九歳までの間に退職する職員が四千名程度おります。いま御質問のどれくらいの人間が在職期間が延びるのであろうか。この四千名の人がいまは五十五歳から五十九歳まででやめておるわけですが、六十歳定年になりましたときに、もしそのまま居残るという想定をいたしますと、大体概数四千名程度であろうということでございます。
  229. 神田厚

    ○神田委員 定年制の導入の理由の一つが財政上の問題だ、こういうことでありましたが、定年によって退職する者の数と逆に雇用の延長となる者の数とを比較考量した場合に、財政上のバランスというのはどういうふうになるのだろうか。いまお話を聞きますと、それぞれ概算で数字が出ておりますけれども、定年制を施行したことによって人件費はどのぐらい節約されるというふうに考えられているのか、その辺はいかがでありますか。
  230. 山地進

    ○山地政府委員 この定年制の実施が六十年から始まるわけでございますけれども、その間経過期間がございます。その間に私どもといたしましては、過渡的な処置ということを多角的にいろいろとやらなければいけないだろうと考えております。したがって、そういったことがどのように推移していくかということが一つ問題があろうかと思います。  それから、いま人事院の方からお答えございましたように、本来ならば勧奨退職で退職された方が残るかもしれない。これはいまお答えいただいたようにかなり不明確なことでございます。そこで、そういったことがどういうふうに起こるかという予測が非常にむずかしいので、バランスシートの話になりますと非常に計算がしにくいわけでございますけれども、いずれにいたしましても、新しく私どもの方が六十年に定年制を施行したいということは、財政問題としてまずはとらえておりませんで、行政改革としてこれをやりたい。公務の能率を遂行するためには、定年制を施行することが適当であるという着眼点に立ってこれをやっているわけでございますが、しかし、それが財政上どのようなメリットがあるかというのは、片方でやはり考えておかなければいけないことだと思うわけでございます。  そこで、六十年まであるいは六十年からしばらくたったところ、つまり短期的なところではどうなるかということは、かなり計算が予測の問題に絡んでくるので明確には出てこない。しかし、言えることは、長期的には退職が円滑に行われるということになりますと、長期在職している方というのは、新規採用の方に比べると三倍の給料をもらっているということになりますので、その差額というものは、まずは浮いてくる。ところが退職が進めば年金の支払いがふえるということで、年金部分というのが財政支出としてふえる、そういうところが出ようかと思います。しかし、長期的には、そういうことで考えれば財政的にメリットというものはあるというふうに考えております。
  231. 神田厚

    ○神田委員 次に、三公社五現業の場合についてお尋ねしますが、まず五現業の職員につきましては、公労法によりまして労働条件について団体交渉権が認められているわけであります。しかし、今回の改正によって、法律で原則的な定年年齢六十歳を法定化していることは、第一番に五現業職員に認められている団体交渉権の侵害とならないのかどうか、さらにはこのことは公労法に抵触をしないのか、この点はどういう見解でございますか。
  232. 山地進

    ○山地政府委員 いまの先生の御指摘は、公労法八条で団体交渉の対象というところに勤務条件が入っておりまして、そこで休職、免職その他のことが団体交渉の対象になるということになっているわけでございますけれども、現行の公労法の四十条で公務員法の適用除外ということが書いてあるわけでございますが、その各条を見ますと、免職の規定あるいは公務員法の七十五条の身分保障の規定等は除外されていないわけでございます。七十七条というところは公労法で適用除外になっているわけでございますけれども、たとえば意に反する免職の規定というのが七十八条にあるわけでございまして、この規定はそのまま適用されているわけでございます。したがいまして、現在の公労法の精神というのを人事院規則で決めるということにつきましては、かなり広範囲に適用除外をしておるわけでございますが、こういった身分関係の変動、つまり分限にかかわる点につきましては、適用除外をしてないというのが公労法と国家公務員法の関係であるわけでございます。公労法の方で認めている団体交渉権の対象というのは、法律で身分保障をしている部分については適用になってない。つまり身分保障ということは、法律規定で定められているというのが現状であるわけでございます。  そこで、今度の定年制ということの導入をいたします場合には、やはり法律で決めていく必要がある。法律で定めたことの範囲内で団体交渉を行うということになるのが筋ではないか、これが私どもの考えでございまして、その考えに従いまして、五現業には団体協約権があるというたてまえを堅持いたしまして、本来ならば任命権者あるいは人事院規則で決めるというようなことを主務大臣に大幅に委任しております。たとえば六十歳定年でやめるという場合のいつやめたらいいのかというようなこと、あるいは勤務の延長をする場合にどういう方を延長したらいいかというようなこと、あるいは特例定年で六十歳から六十五歳までの間にどういう人が延長といいますか、特例定年を定めるかというようなことにつきましては、これは主務大臣と組合との間でいろいろ御協議いただいて決めていくということになっているわけでございます。
  233. 神田厚

    ○神田委員 法定化事項については団体交渉の交渉事項としないということであるならば、この法定化すべき事項と団体交渉で決める事項について、その基準は一体どこにあるのか、現在ではどういうふうになっているのか。いままで団体交渉に任せられている事項であっても、これを法定化してしまえば、その対象から外されて、団体交渉の範囲がそれだけ狭められてしまうわけでありますから、労働者の労働基本権のあり方からすれば、団体交渉の範囲を拡大するよう努力をしていくというのがわれわれの立場でありますが、この定年の法定化は、こういうことから言いますと逆行しているような形になる。したがいまして、こういうことについてはどういうふうに御見解をお持ちになりましょうか。
  234. 山地進

    ○山地政府委員 ただいま申し上げましたとおり、国家公務員法に身分保障がございまして、たとえば意に反する免職をするときの事由というのが国家公務員法の七十八条に書いてあるわけでございます。ところが公労法の八条で、団体協約の締結ができるようになっているところにも免職ということが書いてあるわけでございますが、これらの関係につきましては、免職の事由は国家公務員法で決めてあって、それの基準について八条の方で団体協約の締結がされるという関係になっているわけでございます。したがって、それではいままで団体交渉をしたときに免職のことについてどういう議論ができたかというと、いまの八条に書いてある基準についてはできたわけでございますけれども、その基準ということになりますと、たとえば勧奨退職のことを決めたということは、これは合意があってそのときに勧奨退職をするわけでございます。勧奨退職というのは法的な拘束力はないわけでございますから、国家公務員法の意に反してやめさせるという行為ではない、本人が合意をしてやめることでございます。そういったことは団体交渉で対象になっていたわけでございます。それでは、従来はそういった団体協約で定年制をしくことができたかというと、これは本人の意に反して免職できない、あるいは任命権者は法律に従ってしか免職することはできないという規定から考えて、そういったことの協定はできなかったわけでございます。  そこで、今回定年制を導入するという場合に、身分保障について変動はございますけれども、従来の団体交渉権ということからはやってなかったことであるということになろうかと思います。したがって、この点につきましては、狭めるということではないと私どもは理解しております。
  235. 神田厚

    ○神田委員 定年制の導入は、現業職員の基本的な労働条件の問題であるわけでありますが、これを法定化するに当たっては当然労使の十分な話し合いがなされなければならないと考えております。今回の改正に当たって、そのような交渉は持たれたのでありましょうか、その辺はどうでございますか。
  236. 山地進

    ○山地政府委員 いま申し上げましたとおり、団体交渉によって決めるべきことではないというのが定年制度の根本であるわけでございまして、これは法律で決めなければ定年制の導入ができない、そこで法律で決めるためにはどうやって決めるかという話になるわけでございます。もちろん政府としてそういったことを提案する場合に、職員団体の意向を十分聴取することが必要であることは言うまでもございませんが、そのために、私どもといたしましては、まず第一にそういった労働三権のために設けました人事院というところで意見を聴取し、そこで一年半の慎重な御検討を得た結果、この法案を作成したわけでございます。その過程においても職員団体の意見は聴取してきたわけでございまして、今後ともそういった職員団体への接触ということを十分にやっていきたい、かように考えております。
  237. 神田厚

    ○神田委員 次に、指定職の適用の問題について御質問申し上げます。  指定職の適用職員は現在千五百人弱いるわけでございますが、その中で現在定年が定められている者の数、割合はどういうふうになっておりましょうか。
  238. 斧誠之助

    ○斧政府委員 指定職は先生おっしゃいますとおり約千五百名でございます。そのうち定年制の定められております職員は、国立大学と国立短期大学の教官でございます。大学の学長及び教授の中に指定職の方がいらっしゃるわけですが、約六百六十名ばかりいらっしゃいます。
  239. 神田厚

    ○神田委員 指定職の高齢化比率が非常に高いわけでありますが、五十四年現在で六十歳以上の者の占める割合は約四〇・一%。定年制の導入は当然指定職にある職員にも適用されることになるのかどうか。たとえば一般職にありましては検事総長その他の検察官、さらには教育公務員におきましては国立大学九十三大学の教員の中から何名か出ているわけでありますが、これらについてはどういうふうにお考えになりますか。
  240. 斧誠之助

    ○斧政府委員 検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております。
  241. 神田厚

    ○神田委員 次に、定年と勧奨退職との関係について御質問申し上げます。  まず、定年制が導入されることになりますが、仮にそういうふうになった場合には、勧奨退職というのはなくなるのでありましょうか。
  242. 斧誠之助

    ○斧政府委員 定年制が実施されますと、現在各省で勧奨基準年齢というものを定めまして、集団的に職員の退職管理を行っておるわけでありますが、こういう形の退職勧奨はなくなるということでございます。  ただ、一般の職員の方と幹部の職員の方を分けて考えますと、一般の職員の方につきましては、定年制実施後早くに勧奨はなくなると思いますが、幹部の職員につきましては、組織の実態に応じまして、従来からの人事計画の引き続きということもございますので、なおしばらくは残るのではないかと思っております。
  243. 神田厚

    ○神田委員 勧奨退職が大体そういうふうな形で残るというわけでありますが、通称エリート公務員の場合、五十二歳から三歳で退職する例が大変多いと聞いております。勧奨退職を残すとすれば、これらエリート公務員の早期退職制はそのまま継続して実行されていくのかどうか、この辺はいかがでありますか。
  244. 山地進

    ○山地政府委員 いま申し上げましたとおり、定年制というのは、集団的な退職勧奨制度のために設けられたわけでございますが、御承知のように、公務員組織というものを維持していくためには、ある種の秩序が必要であろうかと思うわけでございますが、特に組織の中核である幹部の職員につきまして、新陳代謝を早めて組織の能率的な運営を図ることは、今後とも必要でないかと思うわけでございまして、そのためには定年まで待つというよりも、その以前において、もちろん本人の承諾ということが必要であるわけでございますけれども、個別的な退職管理としての勧奨退職は今後とも続けていかざるを得ないのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  245. 神田厚

    ○神田委員 この問題はいわゆる天下りの問題とも関連して、天下りの弊害を是正するという意味からも、まだどんどん働ける若い公務員を五十二、三歳で勧奨退職させてしまう、早期退職させてしまう、こういう方向はちょっと考えた方がいいと思うのでありますが、その辺はどうでありますか。
  246. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 いま御指摘の点は同感の面が非常に多いわけでございます。いまもお話しのありましたような、特に現在まで行われております勧奨退職の中で、非常に若い方でいろいろな事情が特殊的にあるわけですが、そういう方々もおられたわけでありますが、六十歳定年制ということになりますれば、一般職員は無論のことでございますが、そうでない、要するに幹部職員の方々でもそういう一般の風潮を背景にいたしまして、おのずからその分が延びていくという傾向は顕著に出てまいるのではないか。やはりそれは定年制の一つ効果でもあろうかと思うのであります。  それと、特に幹部職員等については、いま御指摘になりましたような巷間いろいろ御批判をいただいております天下りの問題とも関連なしとは申せません。この点については、法律規定もございますし、人事院といたしまして、内容について非常に精細に審査をいたしまして、弊害の出ないように十二分の努力はいたしておるのですが、各省庁の都合で幹部職員に後進に道を開いていただくという必要が生じました場合に、若い人であるだけに、そのまま、あとはおまえが勝手にやれと言うわけにはまいりますまい。そういうようなことから、いろいろな点で行く先をお世話するということが通例行われているわけでありまして、そういうことがいわゆる天下りの数をふやさせ、それをめぐっての問題点指摘される契機にもなるという点があったことは事実だろうと思います。そういう点につきましては、この定年制が施行されるということになりますれば、そのケースが絶無というわけではありませんが、おのずから勧奨の年齢というものも延びていくというようなことと並行いたしまして、天下り関係等につきましても漸次落ちつきを見せてくるということは十分考えられるところではないかというふうに思います。
  247. 神田厚

    ○神田委員 この問題については、総務長官はどういうふうにお考えでありましょうか。私は、定年制を六十歳に延長するという中で五十二、三歳の勧奨退職を残すということは、多少問題があると考えておりますが、長官としてはその辺はどうでしょうか。
  248. 中山太郎

    ○中山国務大臣 六十歳定年になるまでの五十二、三歳のエリート官僚の勧奨制度ということのお尋ねでございますけれども、この人たちが六十歳までおりたいという希望がある場合を除いて、御本人が新しい第二の人生をみずから求めたいという場合には、勧奨というよりも、むしろ御自身の人生設計という観点から転身をされるのではなかろうか、私はそのように考えております。
  249. 神田厚

    ○神田委員 次に、特殊法人の定年制の問題について御質問を申し上げます。  まず、各省庁の特殊法人の職員の数、常勤と非常勤とありますが、その中で六十歳以上の職員はどのくらいおるのでしょうか。
  250. 山地進

    ○山地政府委員 五十六年一月一日現在、特殊法人の職員数は実員で約九十四万人でございます。常勤、非常勤の別あるいは六十歳以上の者の数というお尋ねでございましたけれども、私ども手元にはいまそれらの資料がございませんので、判明し次第、後刻お手元にお届けしたい、かように考えております。
  251. 神田厚

    ○神田委員 各省庁に所属する特殊法人の定年制の実施状況はどういうふうになっておりますか。全特殊法人の中で定年制を実施している法人の割合、定年年齢の分布はどういうふうになっておりますか。
  252. 山地進

    ○山地政府委員 特殊法人全体の姿というものについては、現在、調べが行き届いておりません。一部につきまして調査いたしましたものがございますので、それについてお答えいたしたいと思います。  これは調査対象が四十一法人でございまして、定年の実施されているのは三十六法人でございます。その定年の年齢でございますけれども、五十七歳、五十八歳、六十歳というのが多数を占めております。五十五歳から五十七歳というような定年年齢を定めておる場合でも、勤務延長というような処置によりまして、定年年齢の実質的な引き上げがあるというふうに私どもの調査から見受けられます。
  253. 神田厚

    ○神田委員 国家公務員に定年制を導入することに伴って、特殊法人の職員についても定年制が導入されることが望ましいというふうにお考えになりましょうか。その点はどうでございますか。
  254. 山地進

    ○山地政府委員 御承知のとおり、特殊法人というのは、労働三権というのを完全に持っている団体でございまして、そこらに定年制度を導入するかどうかというのは、まさにその組織体の個々の事情というものがそれを決めていくことになるものと私どもは考えております。したがって、定年制というものをこういう特殊法人に導入することは、制度としていろいろ考えるということはあり得るかとは思うわけでありますけれども、現在の制度下におきましては、各法人が自主的にこれを決めていくというふうになっておるわけでございます。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  255. 神田厚

    ○神田委員 この特殊法人の問題につきましては、制度上、人件費等の運営費がすべて国庫補助で賄われているというふうなことを考えれば、当然公務員の六十歳定年にならって、特殊法人においても六十歳定年の導入というのは図られるように考えるべきではないかというふうに思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  256. 山地進

    ○山地政府委員 先生御指摘のとおり、特殊法人に対しては財政的な援助がなされておるわけでございますけれども、これはその法人の業務が公共的な性格を持つ、あるいはそういった助成金の必要性が十分あるということで国が財政的な負担を行っているわけでございますが、私どもとしては、こういった財政的な負担とそれから定年制というものは別のものではないだろうか、むしろ定年制というのは、その組織が労働三権のもとでどういうふうに決めていくかということではないだろうか、かように考えておるわけでございます。
  257. 神田厚

    ○神田委員 次に、定年制導入に伴って公務員制度の見直しを考えるべきだというような意見もありますが、この定年制導入と公務員制度の問題について御質問を申し上げます。  民間企業におきましては、定年延長を実施するために賃金、人事管理などの労働条件の見直しを不可欠の課題として行っているわけであります。それなしには企業の存続が危ぶまれるというふうな状況にもなるわけであります。ところが公務員の場合、倒産の心配はないにしても、国民の血税によってその運営が図られているという性格からすれば、定年制導入に伴って公務員制度の見直しが必要である、こういうような議論が出ておりますけれども、このことにつきましてはどういうふうにお考えでありましょうか。
  258. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 実は人事院といたしましては、定年制に関する意見を申し述べました際に、事は定年だけの領域でとどまるものではないのであって、これは広範な領域に及ぶものである、したがいまして、これを契機として任用制度、給与その他の勤務条件、研修制度、また退職後の生活設計に関するいろいろな配慮等を含めまして、長期的な対策を並行して検討する必要があるということを申し述べました。  それと、昨年、御承知のように給与勧告をいたしました際の報告に、目的は同じでございますが、その理念といいますか、発想といたしまして、若干次元が異なりますが、一つの提言といいますか、われわれの決意というものを申し述べております。それは戦後における新しい公務員制度が導入されて三十数年を経過するということに相なっておるわけであります。その間いろいろな経緯はございましたが、民主的、能率的な公務員制度として、わが国の社会に定着をして今日まで来ておって、その点は全般的に相当程度の評価を得ておるものであると考えておりますけれども、また他面、その間における社会、経済情勢の展開、変化というものは大変目まぐるしいものがございまして、先刻来もいろいろ御指摘、御論議がございますように、わが国における顕著な高年齢社会あるいは高学歴社会、そういうものを中心にいたしまして大変な変動が起きてまいっております。こういうものを背景にいたしまして、三十年を経過したこの公務員制度全般について掘り下げた再検討をしていく必要が生じておるのではないかという認識に実は立っておるわけであります。事柄は大変広範でございますが、人事諸制度に関連のあるすべての項目、すなわち任用、給与その他の勤務条件あるいは職員の福利、厚生、その他万般の問題について掘り下げて検討をしていく必要性があるということを指摘をいたしたのであります。本年度から予算措置も講ぜられてその柱が立ちましたこともございまして、本格的な調査にかかっております。今後鋭意作業を続けてまいりまして、できるだけ早く、いまもお話がございましたように、定年制が実施される時期とのにらみ合わせについてよく考慮しながら、この問題に精力的に取り組んで、結論を得次第その具体化についていろいろ発言も申し上げ、また御審議をいただきたい、かように考えておるわけでございます。
  259. 神田厚

    ○神田委員 ただいま見直しについての基本的な考え方、方向ということが言われましたが、どういう形でそれをやるのか、たとえば審議会を設けるとかいろいろ考えられると思います。公務員の場合、御案内のように、その職務の性格から労働基本権が大きく制約をされておりまして、その代償機関として人事院が設けられておるわけでありますが、人事院でそれを検討するとしても、公正、中立な委員から成る審議会等を設けるべきであるというのがわれわれの主張でありまして、そういう意味では、これらを積極的にやると同時に、その結論は少なくとも、六十年三月からこの定年制が導入されるということになりますれば、五十八年度くらいまでに結論を出すべきである、こういうふうに考えておりますが、その点はいかがでございますか。
  260. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 第一点につきましては、事柄が重大でございますので、われわれとしてはあらゆる資料を徴し、また徹底的な分析をいたしまして結論を出すように努めてまいる所存でございますが、人事院自体がいまお話しになりましたような公正、中立的な第三者機関としての性格を持っておりまして、そういう意味でいままでもそれにふさわしいような心構えでもって仕事をやってまいりましたつもりでございますし、大体職員の構成、組織等もそういうふうになっておるものと私は確信をいたしております。そういう点から申しまして、十分のスタッフもございますので、この問題について審議をいたしますためさらに第三者的な審議会その他を設けて意見を徴するということは考えておりません。われわれの方で、その点は十分掘り下げて検討して、しかるべき結論を出してまいりたいというふうに考えております。  無論その間において、われわれがあらゆる点を考慮してやることだから、間違いはないのだというふうに非常に思い上がった僭越な気持ちは毫も持っておりません。謙虚に外部の意見その他の意見に耳を傾けることは当然でございますし、具体的に申せば、職員団体の方々にも御意見は十分に拝聴する機会をつくってまいりたいと考えております。その点は職員団体の方々とのいままでの折衝の過程を通じて私からも申し上げております。それは結論が全部出そろって、ある段階に来たときに、それを一括してお示しをするということでなくて、ある事項について相当煮詰まって、こういう方向ということが出てまいりますならば、その節目節目で御意見を伺っていく、そういうことを必ずやりますよということを申し上げておる点もここではっきりさせておきたいというふうに思います。したがいまして、この点の作業は、いまちょうどお示しになりましたように、私自身も時限的に申して、やはり五十八年度中には相当具体的な一つの目標、成案というものを得なければならないと考えております。そのためには本年度、五十六年度は調査が主体になります。来年度、五十七年度は調査の補足とだんだんそれの分析ないし立案というようなことに入ってまいりますが、その検討の結果を踏まえて、五十八年度には成案を大体具体的につくりまして、これをまとめるというところにまで持ってまいりたい。そうでないと、法案の作成あるいは法案審議ということを考えますと、そういうタイムリミットというものはあらかじめ頭に置いてかかりませんと計画的な実施はできませんので、そういうことの大体のめどを踏まえつつ私自身として事務当局に指示をいたしておるというのが現在の段階でございます。
  261. 神田厚

    ○神田委員 定年制導入に伴う公務員制度の見直し、これは公務員労働者の労働条件の基本にかかわる問題でありますから、ただいま御答弁がありましたように、十分に公務員労働者の意見が反映されるような形でひとつ御検討をいただきたい、こういうふうに御要望を申し上げておきます。  時間が少なくなってまいりましたので、長官に最後二、三御質問申し上げますが、この定年制の問題で、今後の方向としまして定年年齢は原則六十歳でありますが、民間の定年年齢が六十五歳に延長された場合には、公務員の場合も六十五歳に延長するのかどうか、この点はどうでございますか。
  262. 中山太郎

    ○中山国務大臣 六十年に六十歳ということで法案の御審議をお願いしておりますが、昭和六十年になりまして、私どもとしては、社会全般の高齢化の状態というのはどんなものであるか、また人事院というような制度が厳然として存在しておるわけでございますから、人事院等においても社会一般の定年の状況、進行傾向というようなものを十分御調査いただいた上で研究をすることにやぶさかではないと考えております。
  263. 神田厚

    ○神田委員 定年年齢につきましては、あくまで民間と連動させることを基本とするのか。それとも民間で六十五歳にならなくても、公務員の場合、定年年齢を延長するということもあり得るのかどうか。われわれとしましては、高齢化社会に対応して、官民とも将来定年六十五歳に延長すべきである、こういうふうに考えて、この定年制の問題について考え方を明らかにしてきたわけでありますが、政府の今後の方針についてお聞かせをいただきたいと思います。
  264. 中山太郎

    ○中山国務大臣 これから社会全体が高齢化するわけでございますが、どのような社会になりましても、やはり公務員というものの全生活というもの、それはあくまでも国民の税金によって賄われるということは変わりないものだと理解しております。そのようなことで、国民から見て、この日本の公務員制度というものが絶えずバイタリティーに富み、そして国民のニーズにこたえる公務員制度である、そういうふうな原点に立って、私どもとしては、この定年問題、公務員の勤務条件というものの検討を続けてまいりたい、このように考えております。
  265. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  266. 江藤隆美

    江藤委員長 榊利夫君。
  267. 榊利夫

    ○榊委員 私どもは安上がりの行財政のために民主的な行政改革を具体的に提起しておりますけれども、今回の公務員二法はそれと全く性質が違うものだと思っております。また、いわゆる鈴木行革と言われるもの、その名分とも違っているのじゃないかと思っています。いわゆる鈴木行革では、仕事減らしを基調にする、こういうふうに施政方針でも述べてこられましたし、定年制やあるいは退職金減らし、これが行革の一歩だ、こういうふうなことは施政方針等々でも述べてこられなかったわけであります。まずこの点を私どもの意見として申し述べた上で、質問に入ってまいりたいと思います。  まず、何よりもお聞きしたいのは、具体的問題であります。この定年制が成立をするということになりますと、特に現場の公務員に犠牲がしわ寄せされる心配があります。いわゆる行(一)、行(二)、指定職、こういうふうに言われているもののうち、この退職者を例にとりましてお尋ねいたしますが、六十歳以上でやめる人は、今日それぞれ何%占めているでしょうか。
  268. 山地進

    ○山地政府委員 お尋ねは退職者の中で六十歳以上の方がどれくらい占めているかということであったかと思いますが、昭和五十四年度において見ますと、行(一)の職員で一九・六%、行(二)の職員で七一・二%、指定職職員で六〇・一%になっております。そこで、この三者の平均をとりますと、三二・二%でございます。ちなみに退職者全体というのはもっと多うございますから、退職者全体、これは二万三千人いるわけでございますが、その中で、この三者の合計は一万一千人でございますけれども、こういった中で六十歳の占める構成比というのは二一・二%になっております。
  269. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、いま挙げられました資料によりましても、一番高いというのがやはり行(二)ということになります。七一・二%であります。その前の年はたしか七八%だったと記憶しておりますけれども、この行(二)の職員というのは、御存じのように、守衛さんであるとか運転手、ボイラーマン、タイピスト、交換手、こういった公務員であります。これが圧倒的です。いわゆる高級官僚と違いまして、天下りしようにもしようがない。その一般公務員が今度の定年制では直接いじめられることになるわけであります。そういう状況での六十歳定年制の導入というのは、私は余りにも多く問題をはらみ過ぎるというふうに思うのですけれども、この点については対策を含めてどういうふうにお考えでしょうか。
  270. 斧誠之助

    ○斧政府委員 行政(二)表の適用職員につきましては、守衛、用務員などの労務に従事する職員につきましては、六十三歳の特例定年を法律規定してございます。
  271. 榊利夫

    ○榊委員 仮に特例を設けたといたしましても、これはいま挙げられただけであります。圧倒的多数のその他の行(二)の方々はこのままやめていかなければならないというのが非常に多いわけであります。しかも行(二)だけじゃありませんけれども、いわゆる俗に公務員というのは給与が高いとか言われますけれども給与だっていわゆる薄給でありまして、必ずしも民間企業よりも高いというわけじゃありません。むしろ低い層、これがたくさんある。そういう点では、やはりこの犠牲のしわ寄せがどこにくるか、このことを真剣に考えていきませんと、これは重大な社会問題にもなる、そういう性質ではないかというふうに私考えるわけであります。  さらに、これに付随いたしまして、現に働いている職員、六十歳以上、やめなくちゃいけない、こうなります。そうしますと、中には、そのために退職年金を受け取れなくなる、こういう公務員の場合も少なくないわけであります。この点では、何人ぐらい退職年金を受け取れない人が出てくるか、数字がございましたら教えていただきたいと思います。
  272. 斧誠之助

    ○斧政府委員 なかなか実態がつかみにくいので、いま申し上げる数字がこれで間違いないという保証はなかなかできないのでございますが、私どもが定年制を検討する過程で、六十年に定年制が実施された場合、その時点において年金を受けられない方が何名あるであろうかという調査もいたしました。  御存じのように、年金につきましては、共済年金だけではなくて、広くいま国民皆年金でいろいろな各種年金がございますので、そういうものを含めまして、いかなる意味の年金も受けられないという方は百四十名程度ございました。それで私たちも、この点をどうするかということで検討したわけでございますが、いま関係機関に民間の厚生年金と同じような特例措置、こういうものをとることについての御検討をお願いしておるところでございます。
  273. 榊利夫

    ○榊委員 いま百四十名という数字が上がりましたけれども、六十年以降もやはりこの程度発生をいたしますか。
  274. 斧誠之助

    ○斧政府委員 年金制度が普及しましてからだんだん歴史を重ねるに従いまして、無年金者というのは減ってくるわけでございますが、六十年以降について考えますと、そういう情勢でありますので、いま申し上げました数字よりはもっと減ってくるであろう、こう思っております。
  275. 榊利夫

    ○榊委員 いずれにいたしましても、いかなる退職年金も受け取れない、こういう人がかなり年々生まれるというわけです。地方公務員になりますと、もっとこれはひどくなると思うのです。たとえば定年制が導入されますと、年金受給権を得ないまま退職せざるを得ない、こういう人がもっと多くなります。たとえば東京都の大田区の給食作業員を例にとりますと、四十歳を超えて採用された人が総員五十四名中二十四名という数字があるのです。半数近いわけです。六十歳定年制が実施されますと、これらの人たちは共済組合年金の受給権もないわけです。こういう人は全国で何人ぐらい生まれるでしょうか。あるいはどういう対策をとるつもりでしょうか。
  276. 柳克樹

    ○柳説明員 地方公務員の場合にも、正確に把握するのは非常にむずかしいわけでございますが、昭和五十四年に財源率の再計算を行いましたときの資料をもとにいたしまして推計いたしますと、地方職員共済組合の組合員の場合、昭和六十年三月末において、六十歳以上の職員で組合員期間が二十年未満の者、それから同月末におきまして、六十歳未満でありますが、六十歳まで在職しても組合員期間が二十年未満である者、これは組合員全体の〇・九%程度と見込んでおります。しかしながら、ただいまもお話がございましたように、これらの者の大部分につきましては、通算退職年金制度による年金の受給権を有する者と考えられておりますので、何らの公的年金の受給権も有しない者はごくわずかではないかと考えております。  それから、共済制度上の対策でございますが、定年退職者で、退職年金または通算退職年金の受給資格を有しない者、この人たちの年金の取り扱いにつきましては、国家公務員の場合と共通の問題でございますので、関係各省とも協議して適切な措置により対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  277. 榊利夫

    ○榊委員 この問題では、人事院あるいは総理府はどういうふうにお考えですか。
  278. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 先刻任用局長が申し述べましたことで、問題があろうというふうに認識をいたしておりまして、そこらの点について、措置をできるものは措置をして、変動がなるべく少ないように、不利を受ける職員の範囲がなるべく少ないように、できる限りの努力はしてみたいという考えでございます。
  279. 榊利夫

    ○榊委員 つまり問題があるということは、いまのことでもはっきりしているわけでございますけれども、その点では、一、二の問題というよりも、そういう個々の具体的な問題だけではなくて、原理的にも、これは非常に重大な問題を含んでいると感じているわけであります。  そこで、一種の原理論と申しますか、最も基本的な問題に移らしていただきます。総務長官にお尋ねしたいと思いますが、定年制とか、退職手当をどうするか、こういうことは直接職員、労働者の分限あるいは勤務条件にかかわる問題だと思いますけれども、これはこれでよろしゅうございますね。
  280. 山地進

    ○山地政府委員 おっしゃるとおりだと思います。
  281. 榊利夫

    ○榊委員 定年制、退職金、こういった問題について、これが職員、労働者の勤務条件に直接かかわるという場合、たとえば民間企業の場合、まず労使協議にかけるというのが普通であります。公務員の場合も、職員団体との交渉によって合意と納得のもとで行うのが常識だと思います。御承知のように、憲法二十八条あるいは労働基準法第二条で勤労者の団体交渉権を保障しております。ところが人事院としてはなぜそういう態度をおとりにならなかったのか、この点について私は大変不可思議な気がするわけでありますけれども、藤井総裁いかがでございましょうか。
  282. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 定年制の問題は、職員の側から見まして勤務条件にかかわる問題であることも事実でございますが、一面、これは一定の年齢に達したならば、本人の意思とか希望とは関係なくその職を失うという取り扱いにいたしまする身分関係の重要案件でございまして、そういう意味からは、身分の変動にかかわる問題でございますので、公務員法上は、御承知のように分限ということに相なっておるわけでございます。分限につきましては、他のいろいろな事由もございますが、それと並んで定年も同じ取り扱いをすべきであり、したがいまして、これは法律でその基本的な制度の導入を図らなければならぬ性質のものでございます。  ただ、事は公務員の身分に関する重要な問題でございますので、われわれといたしましても、従来から非常に関心を持って、必要のある都度職員団体の御意見も慎重にまた頻繁に承ってまいりました。その段階においてのいろいろのやりとりもございますけれども、そういう点も十分に含みながら、最終的には定年制というのはかくかくの形でもって導入をすることが長期の計画のもとではやむを得ないというか、適切な措置であろうという結論に到達いたしましたので、こういう見解を総理府の方に申し上げたというのがその経過でございます。
  283. 榊利夫

    ○榊委員 私、これまでのこの委員会での審議の過程を今度調べてみましたら、いまの藤井総裁が過去にもずいぶん答弁されておりまして、初期のときはむしろ退職管理の方法として勧奨退職というのが日本にはある、これを一つの有効な方法として採用しておるということを非常に強調されておりまして、定年制導入には否定的だった。これは幾らも証拠はあるのですけれども、それがある時期になりまして変わってくるわけであります。一昨年の七月のこの委員会でも、閣議で方針が決定された、これを受けて総理府の方からわれわれの方に意見を求めてこられた、われわれも政府の一機関なんだから黙っているわけにまいらない云々、こういうふうな弁解が行われているわけでありますけれども、こういうふうに見ますと、結果的には総理府の方に押し切られた。中山長官の前ですけれども、そういうように解するのです。これは人事院のあり方という点から見てもやはりふさわしくないんじゃないか。ましていわんや、これは後でも触れますけれども、非常にたくさんの公務員のいわば半生にかかわる問題でありますので、何といっても政府あるいは人事院は当事者としてよく職員団体とも話し合う、こういうことは最小限の義務だろうと私は思うのです。その上で納得を得て国会なら国会法案として出す、これは民主主義のルールとしてもそうでなければならないと思うわけであります。その点については、現時点でどういうふうにお考えでしょうか。
  284. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 公務員制度を取り巻く諸般の情勢も大変時々刻々に変動をいたしております。特に近時における高年齢化あるいは高学歴化という現象が非常に顕著にあらわれてまいっておることは事実でございます。人事院といたしましても、退職管理の方法はどうかというような点につきましては、従来からも大変深い関心を持っておりましたし、そういう観点からいろいろ各方面にわたって調査検討をしてまいりました。御報告もいままで累次にやってまいっておるわけでありますが、民間における状況とか、あるいは各省庁の退職管理の実際、職員構成の問題、その他あらゆる点にわたって調査検討を続けてきておったのであります。  ただ、ある段階におきましては、人事院自身が定年制の必要性というか、その意義というものは認めつつも、いまそれを直ちに導入すべきかどうかということについての判断の点は、これはその時期によってなお流動的であったことは事実でございまして、そういう意味で、私の口からも、まだいまはその時期ではないのではないだろうかというようなことを申し上げたこともあろうかと思います。そのときは退職勧奨という制度が非常に効果的に作用しておったというようなことが背景にあったことも事実でございます。  ただ、その後非常に情勢が変わってまいりましたということもございまするし、また事実各省庁の人事当局の方々からも退職勧奨の困難性その他がだんだんと出てまいるようなことになりました。それと社会の変動ということを背景にいたします場合は、このままで放置いたします場合は、公務員の退職管理全体の問題、ひいては公務員の人事計画というようなことにも大変支障を及ぼす可能性があるというような情勢が出てまいりましだ。そういうことで、たまたま政府においても内閣で定年制の導入の決定がございまして、それを受けて総務長官の方から私どもあてに意見を聞きたいというお話がございましたので、従来の検討の結果に付加いたしまして、その後における情勢をさらにつけ加えて総合的に検討いたしましたところ、その結果として御返事を申し上げたということでございます。  その間におきまして、いまお話がございましたように、職員団体の方々とも何回となく接触を保っております。これは私が直接にお会いしたことも何回もございますし、そのほか各段階ごとに非常に頻繁に御意見を伺ったり意見の交換をしたという事実はございまして、そういうことを踏まえて、この問題の処理に当たったということが過去の本問題についての結論を下す際における経過でございます。
  285. 榊利夫

    ○榊委員 私、いま聞いておりまして、言いわけがましいという気がするのです。簡潔な答弁が欲しいということだけではありません。論理的にもそう感じるのです。やはりもう少し当事者能力を持ってもらいたいと思うのです。国家公務員の場合、労働基本権を奪われているわけでありますから、その代償機関として人事院がある。その人事院としても、勧奨退職制というのは有効な作用をしている、こう思っていられたわけですから、現在でもその点は変わってないと私は思いますが、それがいつとなしにずるずると、少なくとも対公務員という点では変わってくる、対国民という点では変わってくる。当事者能力を人事院としてどこまでも発揮をする、そうしないと、その陰で泣かされるのは結局は公務員だということになりかねないわけであります。実際なりつつあるわけであります。私は、そういう点では、果たして当事者として心の痛みを感じられないのかな、そういう気持ちすらするわけであります。  退職管理制度には二つの型がある。一つは勧奨退職制だ、一つが定年制だ、こういうふうに俗に言われております。だから、わが国の勧奨退職制というのは一種の日本型定年制なんですよ。私どもは定年制すべてに反対とは考えません。また公務員は高齢になってもいつまでも働くべきであるなどとも考えません。しかし、少なくとも日本の公務員に現在まで勧奨退職制という一種の日本型定年制があったということ、これは事実であります。その好悪は別として、この勧奨によって、公務員の退職の平均年齢というのは、総理府の調査によっても五十八・三歳でしょう。六十歳以上の退職者というのはわずか一・三%ですよ。この一・三%の人でも、健康体と働く意思も持っている、そうして働いておられるとするなら、私はそれは結構なことだと思うのですよ。鈴木総理だって七十歳なんですから。それなりに新陳代謝も進んでいる。ところが、この日本型の定年制に加えてもう一つ六十歳定年制というものが導入される。実際上、二つの定年制が併存することになるわけです。二重定年制であります。私は、そういう例というものは外国にない、日本の民間企業だってないと思うのです。その点はどうでしょう、お認めになりますでしょうか。こういう例があるかどうか……。
  286. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 二重定年制という言葉の表現でございますが、それにつきましては、われわれは、定年制が実施をされるということになりますれば、従来の勧奨退職制度というものは漸次なくなっていく、特に一般職員等については、そういうことは廃止の方向にいくだろうということは、いままで累次御説明を申し上げてきておるところでございます。  ただ、中に管理職、具体的には課長さん以上というような方々の場合は、各省庁のいろいろな具体的な事情がございましょうが、そういう従来からの人事計画その他のいきさつから、これを存続しなければならぬ場合も、なお残ることもあり得るだろうというふうに考えるわけでありますが、一般的には、これは漸次定年制の実施とともになくなっていくべきものであるというふうに考えております。したがって、いまお話しになりました二重の定年制、二重の退職管理の方法というものが文字どおり並列的に行われていくというふうには考えておりません。
  287. 榊利夫

    ○榊委員 現に勧奨制も続けるというふうに御答弁なさっているのでしょう。二十三日、そういうことを答弁されました。きょうも先ほど答弁されました。それから、これは一昨年の十二月六日のやはりこの本委員会ですけれども、藤井総裁はこういうふうに言われているわけです。「定年制という制度は一つの大きな枠として設定をしながら、その枠内におきまして退職勧奨ということも並行して実施をしていく。」と明言されていますよ。  したがいまして、いまの答弁を聞いていますと、漸次なくなっていくのだという御説明ですけれども、漸次なくなるということを仮に前提とするといたしましょう。だけれども、しかし、それにしても漸次でありまして、当面少なくともそれは残る。そうしますと、では具体的に考えてみましょう。二重定年制という表現がどうかこうかということじゃなくて、まず五十五、六歳になる、どうだ、もうそろそろやめてはどうだ、それで勧奨で退職が迫られる。六十歳近くになってくる、今度は決定的にもう定年退職を迫られる、こういうふうになるわけです。これは退職管理制度というものが二重に作用していくことになるわけでありまして、こういう例は日本の民間企業にありません。外国にもありません。私の調べた限りではありません。だから、この日本に古くからあった勧奨退職制というものに加えてもう一つというかっこうになっているわけですよ。そうなりますと、やはり公務員の場合、長年働いてきて、先ほど言いましたように、天下りやれる人はいいでしょう。しかし、本当に職場にも愛着を持ち、力もある、健康体にも恵まれている、そういう人に二重に、勧奨で退職を迫り、また定年でということになりますと、やはり世界的に見ましても、独特の公務員いじめの形態だということにもなるわけであります。この点については、やはり退職管理制度というものは本来どうあるべきか——この機会に何としても定年制という制度を、取ってつけたように、これまでなじんでこなかったところに持ち込まなければならないという非常に無理な発想あるいは至上課題をみずからつくり出しているという気がしてならないわけであります。その実体問題についてはどうでしょう。総務長官、いかがでございましょう。
  288. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生のお尋ねは、勧奨制度、定年制度がダブルチェックのようなかっこうになっているじゃないかというお話だと承っておりますけれども、六十年までの一つの過程として、従来の勧奨制度が存続をしていくというような考え方ではなかろうか。藤井人事院総裁の昨年からの御答弁をいろいろといま御紹介いただきましたけれども、けさ藤井総裁が御答弁になったように、管理職以外は当然六十年に六十歳の定年になれば、六十歳までは定年いっぱい勤められるということで定着をするというふうに私どもは理解をいたしております。
  289. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、つまり勧奨制も並行して実施していくということは、ここで明確に否定されるわけですか。
  290. 藤井貞夫

    ○藤井政府委員 定年制が実施される六十年度の以前と以後とはやはり分けて考えなければならないという感じがいたします。六十年までは定年制は実はないわけなんです。それまでの諸準備、いろいろなことはやってまいりますけれども、定年制はまだ正式には発足をしないわけであります。効果が動き出さないわけであります。したがいまして、その間には、いまやっておりますような勧奨退職制度というものが動いていくことはやはり認めざるを得ませんでしょうが、ただ、これの実際の運用自体についても、一つの予測でございますけれども、六十年になれば六十歳定年制が実施されるということがはっきりしてまいりますれば、勧奨を受けたとしても、六十年になれば六十歳になるのだからということで、その勧奨に応じない方々が出てまいる、これは否定できない事実ではなかろうかと思っております。  それと、六十年に六十歳定年制ができました暁におきましては、先刻来申し上げておりますように、一般の、現在作用しております形における退職勧奨制というものはほとんどなくなっていくであろう。ただ、幹部職員、課長級以上等につきましては、従来のいきさつその他の事情から申しまして、個々の問題について勧奨がなおあり得るのではないかということを申し上げておるのであります。
  291. 榊利夫

    ○榊委員 だから、どこで聞きましても、それがなくなるという明言は得られないわけです。あれこれの形で存在するであろう、これが最大公約数出てくる答弁であります。そうしますと、いままでなかったところに新しい定年制が導入されるのですから、しかも、それはいろいろと割合、比重が違うでしょう。しかし、二重のものになっていくのです。そのことはやはり否定できないのじゃないでしょうか。
  292. 斧誠之助

    ○斧政府委員 ほかに例があるかということでお答えしたいと思います。  退職管理制度という面で勧奨退職制度をとらえますと、これは各職員に一律に適用になるというところに制度の実質があるわけでございまして、その場合においても、各省で定めております勧奨基準年齢以下で勧奨を受けた人は、現にいままでおりますし、これからもあろうかと思うわけでございます。そういう意味では、勧奨退職制度という中での二重性がそのときあったわけでございますし、それから民間におきましても、退職年齢を定めますと同時に、選択定年制を設けている企業も近ごろはたくさんございます。これは定年年齢に達する以前に選択的に退職していくという制度でございます。個々にある、人事刷新の必要上後進に道を譲ってはどうかというような話、これは外国でもないわけではないと思います。日本でもその点は、そういう形で勧奨は残るということでございます。
  293. 榊利夫

    ○榊委員 外国の例というのは、いま言ったようなことでは私が質問したことの答えにはならないと思うのです。つまり制度としていま私は問題にしておるわけですから。  ところで、少し側面からの質問をさせていただきますけれども、日本人の平均寿命は、男が七十二歳、まあ七十三歳に近いわけですが、女が七十七・九歳となっています。全体として定年制というのは延長の方向にあります。いま鈴木内閣の平均年齢は何歳になりますか。
  294. 山地進

    ○山地政府委員 平均は約六十四歳でございます。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  295. 榊利夫

    ○榊委員 六十四歳といいますと、内閣総定年ということになりますけれども、六十四歳でもかくしゃくとして働いておられる。人生わずか五十年というのは昔語りになっております。それだけに定年延長が時代の趨勢だと言われる状況もあるわけでありますけれども、わが国の民間企業の場合でも、六十歳以上の定年制は、一九七〇年当時は全事業所の二三・一%でした。それから一九八〇年になりますと、これが三九・七%にふえております。八一年あるいは今後どういう趨勢をたどるだろうか、この点については政府はどのように見ておられますか。
  296. 北原卓

    ○北原説明員 五十五年一月に労働省が行いました雇用管理調査によりますと、調査対象全企業のうち定年制を定めている企業は八二・二%、このうち一律定年制を定めている企業は七三%でございます。この一律定年制を定めている企業を一〇〇といたしまして、定年年齢別の企業の構成比を見ますと、五十五歳が三九・五%、六十歳以上が三九・七%となっております。  なお、五十六年一月に実施いたしました雇用管理調査につきましては、現在集計中でございまして、公表は例年どおり七月ごろを予定しておりますけれども、このうち定年制関係の部分についてはできるだけ早急にまとめたいというふうに考えております。
  297. 榊利夫

    ○榊委員 ここに一つ数字がありますけれども、これは日本生産性本部の報告です。去年現在での調査ですけれども、これによりましても、六十五歳定年制を十年後にやりたいと考えている企業が四六・九%、ほぼ半数に近い。十五年後には実施したい、こういう企業を加えますと六六・四%、約三分の二がそうだという数字が出ておりますけれども、こういうふうに六十五歳定年制、これは民間でも一つの大勢として考えてきているわけですね。これにつきましては、これまでも質問が出ておりましたけれども、将来展望として政府はこの点はどういうようにお考えですか。
  298. 中山太郎

    ○中山国務大臣 昭和六十年の時点になりますと、日本の高齢化社会というものが相当その姿を現実的に社会の構造の中であらわしてくる、社会的な体質の変化も起こってくるだろう、また民間の流れも出てくるだろう、そういう中で政府としては、人事院の御意見も十分尊重して、それから先の日本の公務員制度における定年制度というものについての研究をしなければならないと考えております。
  299. 榊利夫

    ○榊委員 世界的にも定年延長ないし定年制の廃止が主流になっておりますけれども、公務員の六十五歳定年制、これをとっているのは主にどういう国がありますか。
  300. 斧誠之助

    ○斧政府委員 外国で私どもが二十カ国を対象に調査いたしましたところによりますと、六十五歳の定年をとっております国はカナダ、西ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、オーストリア、オランダ等がございます。
  301. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、主要な工業国では大体六十五歳定年制をとっているということだろうと思います。アメリカでは民間企業と地方公務員の定年が六十五歳から七十歳に延長された。それから一九七八年には政府職員の定年制、いわゆる年金による強制退職を廃止したと聞いておりますけれども、これについては政府としてはどういう御感想をお持ちでしょう。
  302. 中山太郎

    ○中山国務大臣 アメリカの場合は、日本の場合と雇用の慣習というものが大きく違うと私は思うのです。日本の場合は、一定の場所に長く勤めるというふうなことが一つの終身雇用制の形として長い歴史を持っている。アメリカの場合には、一定の年齢に達しますと、年金がつくということになれば、自分は新しい職場を求めて横へ移っていくというのがアメリカの実際の姿でございますから、実際に長く六十五歳以上勤めるという人は非常に少ない数になっている。そこが日本とアメリカとの大きな雇用の実態の違いだろうと理解しております。
  303. 榊利夫

    ○榊委員 言葉じりをとらえるわけじゃありませんけれども、いまはしなくも慣習が違う、こう言われました。確かにそのとおりでありまして、それぞれの国で慣習の違いがあります。終身雇用云々だけじゃなくて、先ほど来言っております勧奨退職制もまさにそういう日本的な慣習であります。それはそれなりに認められるものであるならば、その害悪が物すごく起こっているということならば別といたしまして、現にあって有効に作用してきた面もある、その運用をもっと完成をしていく、よくしていくということで、やはり風土に合ったやり方を育てていくということも、これは大変合理的なことだと思うのですよ。ところが世の中は定年制延長に向かっている。それに逆行するような形でダブルチェックで六十歳定年導入、こういうふうに二重の意味合いでどうも理屈に合わないことがやられてきているということが実は私が申し上げたいことであります。  ILOも、その点につきましては、御存じのように昨年六月、高齢労働者に関する勧告を採択しておりますし、わが国の労働省自体といたしましても、雇用審議会もことしの一月の答申で、定年延長を強力に推進されたい、こういうように述べております。鈴木総理もことし一月二十六日の施政方針演説、ここでは高齢者の就労機会の確保と健康に配慮する、こう述べられましたけれども、この場合の高齢者というのは六十歳以上を含んでいたはずであります。それはいろいろな文書を見てもそのことは明白なんです。国会でも雇用の安定に関する決議、これが三年前本会議で採択されておりますし、それから衆参の社労委員会で採択をいたしました雇用保険法の一部改正案に対する附帯決議、ここでも定年延長促進がうたわれております。ILOもそうだ、日本政府も少なくとも表向きのそれはそうだ、国会でもそうだ、こういうふうに見ますと、なおさら今度の定年制というものがちぐはぐに見えてくるわけであります。つまりこういうILO、政府、国会等々、これらのことについて政府はどういうふうな見解ないし責任を感じておられるのか、お伺いいたします。
  304. 中山太郎

    ○中山国務大臣 後退をしているというような感じを持った御質問だと思います。  私は、勧奨制度というものでやってきたものを、しかも大体五十五、六歳で肩たたきをやるという姿から六十歳という一つの大幅な時間的な延ばしをやったということは、公務員の方々にとっても一つの人生の再設計というか、設計する上においては一つの基準ができたというふうに実は考えておりまして、むしろ公務員の方々は、いや五十六歳で肩たたきに遭うのかなあるいは五十七歳で肩たたきに遭うのかなというふうな気持ちを持ってお勤めであった方々も、いや法律ができたらもう六十歳まで心配ない、こういうふうな安心の中で六十歳以降の自分の人生と家族の生活を設計されることができるのじゃなかろうか、そのように前進的な制度であるというふうに政府は考えております。  第二点の、ILOの勧告があるじゃないかということでございますが、ILOの加盟各国も、いわゆるILOの条約を批准した場合には、その条約に拘束されますけれども、勧告の場合はあくまでもその国その国の慣習、制度、歴史、風土というものを基準にして、勧告の意見等も踏まえながら、古来のその国のあり方というものに基づいた立法措置をやるべきである、このように日本政府としては考え方を持っております。  また、国会の御決議等、いろいろな御意見もございますが、私ども政府といたしましては、六十年になって高齢化社会が実際の姿となってわれわれの目の前にあらわれる時点において、それから先の日本の公務員制度における定年問題というものを研究させていただきたいと先ほどからお答えを申し上げておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  305. 榊利夫

    ○榊委員 人生設計云々というのは、私率直に申し上げましてきれい過ぎると思うのです。なるほど天下りであるとかあるいはそのほかのところに移れる人はそれはそれでいいかもしれない。ところが、若いときから勤めていちずにその道で働いてきた、それなりの生きがいも感じて仕事をしてきた、それが文句なしに、とにかく定年制ということになればいやおうなしにやめなくちゃいけないことになるわけです。これは要するに、他に移れるところがない場合にはまあほっぽり出される、こういうこと以外の何物でもないわけです。ですから、それを見据えながら他の人生設計ということでうまく組まれた方はいいでしょう。しかし、現在のわが国の状況で見ますと、たとえば年金制度が完備しているか。少なくとも年金については先進工業国の中では後進的な状態だと私は思いますし、それから実際に転業その他を見ましても、高齢者の雇用問題というのは深刻であります。たやすく第二の職場を見つけられるような状況ではございません、高級官僚は別といたしまして。  したがいまして、そういう日本の現実を踏まえてみた場合に、それに対応する年金制度の完備その他もやられていない。そして現在まで勧奨制度があるにもかかわらず、あえて定年制が導入される。しかも、いまずっとILOその他申し上げましたように、政府としても、方向といたしましては、少なくとも高齢者雇用をやらなくてはいけない、こういうことを述べておられる。ところが実際の定年制は、それと逆のことになるではないかということを私は質問申し上げているわけであります。前進的というお言葉でございますけれども、そういう日本の現実を踏まえた場合に、なるほど前進的に考えたいというお気持ちはわかります。しかし、現実にはそうならないのじゃないかということをあえて私は質問を申し上げたわけであります。
  306. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先生のお考えというものにも一つの考え方の筋道というものがおありになることは私もよくわかっております。政府といたしましても、いままで勧奨制度でやってきたものを定年制をしくということについて、やはりそれなりの理由があっていわゆる法案の御審議を願っておるということだと御理解をいただきたい。特に、政府といたしましては、公務員もだんだんと年をとっていくという中で、絶えず国民へのサービスはどうなるかということが自由民主党政府の最大の関心事でございます。公務員の全体の姿勢、公務員の方々の生活の安定、また国民のニーズというものを考えれば、やはり主権者である国民が納得のできるような公務員制度のために、定年制の導入あるいは退職手当法の一部改正ということを私どもとしてはお願いしておるということを御理解いただきたいと思います。
  307. 榊利夫

    ○榊委員 いま総務長官のお話を聞きますと、何か自民党の選挙演説みたいな感じがいたしますけれども国民サービス、これは自民党政府の最大の関心事と言われるまでもなく、私どももまた最大の関心事であります。同時に、国民サービスをよくするためにも、公務員の皆さんに気持ちよく働いてもらわなくてはいけません。しかも、生活と密着した分野の公務員は、接点ですから特にそうであります。行(二)関係なんて特にそうであります。  ところが、私がるる申し述べてきたことは、まさにそこにも問題があるということであります。テレビの討論会じゃないので、ここでお互いに議論するつもりはありませんけれども、要するに、定年延長ないし高齢者の雇用保障、これは内外の時代の趨勢でもあるし、わが国もまたそうだ。政府も一応それを認めておられる。ところが今回の新たな定年制の導入という点では、どうも推進じゃなくて逆行、こういうことになる心配が大きい。そういう点で、ぜひとも総合的な検討を加えていただいて、出直すべきところは出直す。理由がある、さっきこうおっしゃいました。しかし、いまの行革論議にひっかけて、便乗してごり押しする、こういう態度は少なくとも控えていただきたい、私は、私ども立場からこういうふうに申し上げたいわけであります。この点、一言だけ御答弁願えればと思います。
  308. 中山太郎

    ○中山国務大臣 政府は経済七カ年計画及び雇用計画等におきまして、民間側に対して、昭和六十年にはひとつ定年を六十歳というふうな形で社会の形を整えてもらいたいということを方向として訴えているわけでございまして、民間にだけそういうことを申し上げるということは、われわれの政府としても満足することはできない、やはり公務員の制度の中にも世論を確認の上でお願いをする、こういうことでございますので、ひとつ御理解を願いたいと思います。
  309. 榊利夫

    ○榊委員 定年制の問題は、私どもが申し上げたこと、この趣旨につきましても再度ひとつ御研究、御検討をお願いしたい、このことを申し述べまして、次に移らしていただきます。  防衛施設庁、おいででしょうか。——麻布の米軍ホテルの問題で質問いたします。  港区の南麻布に米軍用ホテルの建設がもくろまれておりますけれども、すでにマスコミでも報道されておりますように、きのうの早朝、六時ごろ、建て主の安立電気側によりまして強行着工が行われました。物々しいヘルメット姿の警備員や作業員が約六十名ばかり動員されていて、住民側に全治二週間の一人のけが人が出たと聞いております。この問題は、かねてから東京都のあっせんで話し合い再開が望まれて、また東京地裁では、安立側の妨害排除仮処分申請をめぐりまして審尋も始まったばかりであります。それで東京地裁、裁判所の方も、審尋中の工事強行は好ましくない、こういう旨の発言を行っていたやさきにそういうことが起こったわけでありまして、この点、防衛施設庁といたしましては、この強行着工をどうお考えなのか、まずかったなというお考えなのか、あるいはよくやった、でかしたというお考えなのか、まずお伺いいたします。
  310. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 本問題につきましては、この前委員会におきまして先生からの御質問もございまして、その際もお答えをいたしましたけれども、経緯は先生よく御承知のとおりの経緯で今日に至ったわけであります。  ただいま御指摘のとおり、昨日、建築主の方で工事用の資材の搬入を行ったという連絡を私ども受けております。  いま先生御質問の中で、搬入の際に住民の一人が傷を負ったという御指摘がございましたけれども、私どもの聞いている限りでは、搬入の際には何らのトラブルも起きなかったというふうに聞いております。  それから、審尋が行われているということは承知しておりますけれども、ただいま先生おっしゃったように、審尋中は好ましくないという発言をしたというふうには聞いておりません。
  311. 榊利夫

    ○榊委員 搬入の際、トラブルはなかったとおっしゃいますけれども、ヘルメット姿で六十人も押しかけて、そしてそこにあった車なんかも抱え上げて、それで中にいた人がけがをしたというのでしょう。トラブルそのものですよ、トラブルがなかったではなくて。  しかも、東京地裁が審尋中の工事強行は好ましくないと言っている、これは事実です。これはお聞きでないかもしれません。事実そういうことを言っている。それは当然です。だって、むしろ安立側から仮処分申請しているのでしょう。それで住民の皆さん方からも御意見を聞こう、いわばそういう裁判所としての研究検討ですよ。それが進んでいるときに、工事強行結構でございますなんという態度をとる裁判所なんかどこにもないと思います。  それで私がお尋ねしたかったのは、きのうの強行工事を長官としてはいかにお考えなのかということなんです。そのことについて再度お尋ねします。
  312. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 この問題につきましては、昭和五十三年以来二年間余り、地元の方々と建築主である安立電気、それから私どもも必要に応じて参加をして話し合いをしてきたわけでございます。その話し合いでも、まだ完全には住民側の方々は納得してないということはよく承知しておりますけれども、本年の二月二十六日には東京都によって建築確認がなされたということでございますから、私どもとしては、法的には建築ができる状態にあるというふうに考えております。  ただ、一部の方々の理解と協力が得られないということは大変残念でございますし、強行というような形で工事が行われるということは好ましくないと思いますが、私ども立場からすれば、でき上がった建物をお借りをするということを考えておるわけでございますから、速やかな建設がなされるということを強く期待をいたしておりますし、また建築の進行につきましては強い関心を持っているということでございます。
  313. 榊利夫

    ○榊委員 私が聞いたのは、きのうのこの強行着工をまずかったとお考えなのか、よくやったとお考えなのか、具体的に聞いているのです。
  314. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 一部の住民の方々の理解と協力が得られないということで、正常な形で行われないということは残念な事態であるというふうには考えておりますけれども、しかし、そうはいうものの、私ども立場からすれば、先ほど申しましたように、建築が促進されるということを強く願っておるという立場でございます。
  315. 榊利夫

    ○榊委員 一部とおっしゃいますけれども、あそこに新しく米軍ホテルの建設を持ち込んでくるということに対しては、町内会の皆さんは、八百二十七名ですか、裁判所に出されておる反対署名。八百二十七名といいますと、町内会全部ですよ。例外的に外れている人が、出張していないとかそういうことはあるでしょう。しかし、少なくともあの町内会の皆さんはほとんどすべてですよ。何も一部の人が反対しているなんということじゃありません。もしそういうようにお考えだったら、ひとつ再調査願いたい。これはもう根本的に皆さんの、防衛施設庁の側の誤認ですよ、一部なんというのは。そのことが一つです。  特にお尋ねしたいのは、この問題で安立電気側が四月十七日に東京地裁に出した文書、これにはこう書かれているのです。「本件宿泊施設を在日米軍の利用に供することは、日米両国間に締結された「日米安保条約」、さらに「同条約第六条に基く協定」により日本国の負う条約上の義務履行のためのものであり、従って本件宿泊施設の建築には絶対性があり、かつ又言うまでもなく公共性がある」こう書かれているのです。  防衛施設庁はこういう事実を御存じでしょうか。
  316. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 その文書については私は存じておりません。
  317. 榊利夫

    ○榊委員 防衛施設庁はこれまでの国会答弁でも、安立との間には正式契約はない、打診中にすぎない、いまも答弁で、借りる予定だ、こういう答弁がございました。そういう点では、いまの安立のその文書について事実を知らないということも、私はそれなりに、それを疑うつもりはございません。この問題では外務省でも、安立会館を米軍ホテルとして対米提供することは、まだ両国政府間で正式合意していないというふうに述べていますし、大蔵省も、防衛施設庁と米側が米軍ホテル提供といった問題で約束をするということは財政法上も考えられない、こういうふうに述べております。  そこで、私は聞きたいのです。安立側といたしましては、民間の一企業ですよ、契約を結んでおるわけでもない。その安立側が安保及び地位協定の義務履行であるとか、建築には絶対性があるとか、そんな安保風を吹かせる資格や権限はないのです。ある意味合いでは、裁判所に対してこういう文書を出す、これは暴言です。あるいはもうこっけいと言っていいでしょう。対米提供、義務履行である、本件のホテル施設の建築には絶対性がある。徳川時代じゃあるまいし、絶対性があるなんて、こういういわばいたけだかなこの安立側の態度、なぜそういう態度が出てくるだろうか。どうでしょうか、防衛施設庁としても、渡邊長官としましても、そういうことについては安立側に注意をする気はございませんか、そういうことは言い過ぎですよと。どうでしょう。
  318. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 いま先生お読み上げになりましたものを私は存じておりません。したがいまして、このことについていまここでお答え申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますが、安立側の方に会って、その間の考え方と申しますか、そういうものは聞いてみたいと思いますが。
  319. 榊利夫

    ○榊委員 長官、いま私が読み上げたのは、これは裁判所に出された文書なんですから、一つの公のものになっているわけですけれども、こういう表現については、あれでしょう、通常だなという気は少なくともなされないでしょう。その点、いかがでしょう。
  320. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 私はその文書について存じておりませんし、また事は裁判にかかわる問題でございますので、ちょっとコメントは差し控えさしていただきたいと思います。
  321. 榊利夫

    ○榊委員 まあ言いにくいということのようでありますけれども、少なくとも常識的に見まして、一民間の会社が、こういう安保だとか地位協定とか、義務履行とか絶対性とか、そういう立場にはないということは、これはもう明白であります。なぜそういうことが言われるか。私は何も防衛施設庁に入れ知恵をされたとかいうことをここで言うつもりはございませんけれども、やはり防衛施設庁との接触、関係というものを背景にしてこういう言葉が出ていることは、これは私は事実だろうと思います。  しかし、そこをここでいろいろ問い詰めるつもりはありませんけれども、特に、私ここでお尋ねしたいのは、またお考え願いたいのは、南麻布のこの予定地というのは、御存じのとおり閑静な住宅街です。慶応幼稚舎とか聖心女子学院など十六校に及ぶ学校がある、児童施設がある、そういう地域であります。このようなところに米軍用のホテルを建設するというのが、私はそもそもむちゃだと思うのです。  渡邊長官、現山王ホテルの夜の実態を御存じでしょうか。ここにちょっと写真を持ってきておりますけれども、これは実際中で撮った写真ですけれども、連れ込み——ちょっと公表をするのははばかるような写真ですよ、どうぞ見てください。男女の写真とかあるいはギャンブル、ステージのあれだとか、いろいろあります。これはほんの一部ですけれども、要するに山王ホテル、ここからおりていったところですから、地元の人たちは非常によく御存じなわけですよ。公表をはばかるような女子学生の連れ込み事件も何回も起こっております、一般に発表された以外に。鈴木総理のお嬢さんも卒業されたといわれる聖心女子学院なんかの学生でも、やはり連れ込まれた事実があるわけですよ。ところが学校の面目があるから発表しない、したくない。ホテルの中あるいはその敷地の中は日本の法律は及ばないのですから、警察の資料にも出てこない。ところが、地元の人はそれは二十四時間生活なさっているのですからよく御存じなんですよ。だから、それが移ってくる、これに対して、最初に申し上げましたように町内会ぐるみで、一部じゃ決してございません、町内会ぐるみで、それは待ってくれ、そういうことは困る、こういうふうに言われるのは、私は道理があると思うのです。したがいまして、現山王ホテルの実態はそういうものじゃない、普通のホテルだというふうに言われるかもしれません。しかし、もしそういうふうにお考えだったら、ひとつ長官自身、夕方から山王ホテルを見学に行っていただきたいと思うのです。何か調べられたことありますか。昼間じゃないですよ、夜です。
  322. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 私ども調べると申しましても一応限度がございますし、ホテルでございますから、みだりに人の部屋に入るというわけにもまいりません。先生御存じのとおり、もともと現山王ホテルを移転しなければならなくなったというのは日本国内の事情でございますから、米側の方には何らの原因がないわけでございます。米側から示されました三条件につきまして、私どもも緩和についてはずいぶん米側と交渉いたしましたけれども、若干の幅はあるにせよ、大幅に三条件の緩和ということを達成することはできなかったということでございまして、これはこの問題におきます日米間の立場からすればやむを得ないことだというふうに考えております。そういう事情から、私どもは十数カ所について東京都内について調査をいたしました結果、現在問題になっております土地以外に適地がないということでございますので、あそこに建物が建設されたらばお借りしたいという考え方を持っているわけでございます。  なお、現山王ホテルの使用の実績等に照らし合わせてみても、あの山王ホテルが米側に提供されて以来、私どもが調べたのは過去十年でございますが、過去十年間の間に事件らしいものは二件あっただけであるというふうに聞いております。したがって、この二件は私どもは偶発的なものだと考えております。決して一般的なものではない。こういう使用の実態から見て、南麻布の方に移転しても著しく環境を阻害するということはないだろうというふうに考えておりますし、またこの問題が起きて以来、地元の方々の御意向というものは米側に逐一伝えてあります。米側におきましても、建物が建設されて、あそこが施設区域として提供されて、現在の山王ホテルにかわるべきホテルとして運用をする中においては、管理等の面においても十分に注意をするということで、これはすでに先生も御承知だと思いますが、何項目かにわたって具体的な対策というものを地元に提示しておるわけでございまして、私どもは米側が今後もこの新しいホテルの管理について十分な注意を払って運用するであろうということを信頼をいたしております。
  323. 榊利夫

    ○榊委員 米側が云々と言われますけれども、実際いまの山王ホテルの実態がいわば日本流に言えば連れ込み宿的なものなんですよ。あそこしかないということじゃないんで、別の代替地や方法をやはり考えるべきじゃないかと思うのです。現山王ホテルを予定されているビルの中に抱え込むような形で入居させる方法だってあるわけでありますし、いろいろ方法はある。南麻布のそこ以外にないなんということはないわけであります。特に地元の人たちの身になって考えてごらんなさいよ。十年間で二件しかないとおっしゃいますけれども、これはいまさっき言ったとおり、日本の警察の及ばないところなんですから。しかし、地元の人に言わせると、そういう例はたくさんある。だからこそあれだけ反対されるのですよ。だからぜひひとつこの点では別の代替地や方法についても、もう頭から別のあれはだめなんだということじゃなくて、研究していただきたい。この点いかがでしょう。
  324. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先生せっかくの御提案でございますけれども、これにつきましては長い経緯がございまして、すでに昨日は資材を搬入したというところまで来ているわけでございまして、私どもとしては、ここ以外に他に適地を求めるという考え方は現在持っておりません。  むしろ私どもがお願いをしたいのは、すでに港区の審査の段階で、港区長あっせん案というのが出ておりますし、それから東京都の段階にまいりましたときも、東京都のあっせん案というものが出てまいりましたが、このあっせん案の中身は、たとえば環境整備を図るとか安全対策を講ずるとか、その他数項目にわたって地元の方々に提示をいたしておるわけでございますから、この中身について一日も早く話し合いに応じていただきたいということをお願いをしているわけでございます。
  325. 榊利夫

    ○榊委員 ずいぶんごり押しの姿勢ですけれども、考える意思がないみたいなあれですけれども、そういう態度でいかれた場合にどこまでいくのか。結局、地元の人たちの納得を得られないわけですから、ますます事態は紛糾するということになると思うのです。そういうこともひとつ十分にお考え願って、この問題については良識を発揮してもらいたいということを私最後に要望いたしまして、次に移ります。  防衛庁長官おいででしょうか。——自衛隊法の一部改正案が出されて、また有事法制研究中間報告が出されておりますので、それについてでありますが、防衛庁長官有事法制といいますと、余りよくわからぬことがありますけれども、率直に申し上げまして、国民に向かって有事とは戦時なんだ、戦時法制のことだと言った方が正直なように思うのですけれども、その点いかがでしょうか。  それから、今回の中間報告は、何でいま発表されたのかということもお尋ねいたします。
  326. 大村襄治

    大村国務大臣 有事法制とはどういうことかというお尋ねでございますが、私ども有事という言葉は、わが国の現在におきましては、自衛隊法七十六条の命令が下令された場合が相当するのではないか、さように考えているわけでございます。  また、なぜこの際、研究成果中間報告したかというお尋ねでございますが、御承知のとおり、三年ほど前に、国会論議等を踏まえまして、当時の長官研究を命ぜられたわけでございます。それから相当日数が経過いたしておりまして、昨年の臨時国会におきましても、まとまったものを早く報告をせよという御意見もございましたので、私も就任以来、研究の進んでいるものにつきましては、これを取りまとめてなるべく早く中間報告を申し上げたい、遅くとも通常国会の会期中には御報告申し上げたいということで、関係者を督励いたしまして進めました結果、今回防衛庁所管法令につきまして研究成果中間報告申し上げた、こういう経緯でございます。
  327. 榊利夫

    ○榊委員 自衛隊法七十六条によると言われますので、「外部からの武力攻撃に際し」と、こういうことが主になるわけで、そうしますと、これはやはり戦時ですよね。だから有事立法というのは、そういう戦時についての法制だというふうに解する方がわかりやすいというふうに思うのです。  それは別といたしまして、いま発表されたというのは、目前の日米首脳会談、その前にということは全く念頭になかったのでしょうか。
  328. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど申し上げたような経緯で御報告申し上げたわけでございますので、首脳会談とは直接関係ございません。
  329. 榊利夫

    ○榊委員 首脳会談があるから、その前に、防衛庁としてこの問題でのこの研究をなるべく知ってもらおう、こういういわば手みやげ的な性格ではないか。そういうことは全然頭になかった、首脳会談のことは発表の問題とは全然関係がない、こう断言できるのでしょうか。
  330. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、昨年の秋以来、通常国会の会期中に報告をしなければならないということで、防衛庁所管法令につきまして取りまとめを急いでおりましたところ、このほどようやくまとまりましたので御報告した次第でございまして、首脳会談を意識して御報告したということではございません。
  331. 榊利夫

    ○榊委員 三年前、当事の伊藤防衛局長が、有事幾つかの場合を想定して、毎年度の防衛計画では対処を研究しているんだけれども、その中できわめて近い朝鮮半島の問題も考えているというふうにこの内閣委員会で御答弁されております。この朝鮮有事の想定というのは現在も同じでしょうか、それとも変わっているのでしょうか。
  332. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回の有事法制研究というのは、別段そういった朝鮮半島で何かが起こったとかというふうなことのいわば設想というものを設けてしたのではなくて、一般的に自衛隊法第七十六条の防衛出動が下令された際に、自衛隊がいかに効果的、効率的に行動できるかということを頭に入れながら、法制上の不ぐあいというものが現在の自衛隊法その他の関係法令の中であるかないか、もしあるとすれば、どういう点であろうかということを研究して、問題点整理したのが今回の有事法制研究結果でございまして、特段朝鮮半島云々とかあるいはその他の事態を具体的に設想してやったものではございません。
  333. 榊利夫

    ○榊委員 具体的な設想云々は別といたしまして、つまり朝鮮半島で有事が起こり得る想定というものは、考えられているものの中にあるわけでしょう。
  334. 夏目晴雄

    夏目政府委員 防衛庁で年度防衛計画その他をつくっておりますが、その中にいろいろなことが書かれていると思いますが、その具体的な内容についてここでもってつまびらかにすることは適当でないというふうに考えますので、御容赦いただきたいと思います。
  335. 榊利夫

    ○榊委員 つまりないわけじゃない、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  336. 夏目晴雄

    夏目政府委員 具体的にあるかないかを申し上げることも適当でないのではないかというふうに考えております。
  337. 榊利夫

    ○榊委員 この間、ロング米太平洋軍総司令官が大村長官と会談なされた際、報道によりますと、北朝鮮の兵力増強が韓国、ひいては日本に対する深刻な脅威だというふうに語ったと伝えられておりますけれども、事実こういうふうな発言があったのでしょうか、あるいはそれについて大村長官は同意されたのでしょうか、あるいはいやそれは違うというふうに反論されたのでしょうか、どうだったのでしょうか。
  338. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまお尋ねの点でございますが、ロング司令官が私のところに表敬訪問されましたときには、いまお尋ねのようなお話はなかったわけでございます。ただ、そういったような発言をアメリカの国会かどこかでされたというようなことをちょっとどこかで読んだか何か記憶があるような気がいたします。
  339. 榊利夫

    ○榊委員 関連してお尋ねいたしますが、ガイドラインのIII項の極東有事についての研究、伊東外相が二月七日でしたか国会で、近く研究する、研究を始めるということを述べておられましたけれども、この極東有事についての研究はすでに始まっておりますか。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  340. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まことに恐縮でございますが、本日、有事法制についての御質問ということで大臣以下私、官房長出席しておりますが、具体的なガイドラインの研究については、私つまびらかにしておりませんが、この研究についてはまだ着手していないというふうに私は聞いております。
  341. 榊利夫

    ○榊委員 極東有事は着手していない。そうしますと、重ねてお尋ねいたしますけれども、先ほどの言葉によりますと、一般的に有事の際の法制問題を研究をしたんだ、こういうふうにおっしゃいますけれども、この有事というものは一つと考えられているのですか。つまり日本に対して「武力攻撃のおそれ」云々、これはその場合のみですか。
  342. 夏目晴雄

    夏目政府委員 先ほど有事の意味について大臣から御答弁申し上げたとおり、有事という言葉自体が法令上の用語でもございませんし、一般的に定義が確立しているわけでもございませんが、私どもこの有事という言葉を使う場合には、自衛隊法第七十六条による防衛出動が下令された時点、言いかえれば外部からの武力侵攻があって、防衛出動が下令された時点ということでございまして、その外部からの武力侵攻がどういうものであるかということを考えて使っている言葉ではございませんし、今回の有事法制も、そういう具体的な設想をして研究しているものではございません。
  343. 榊利夫

    ○榊委員 時間がありませんので、次に移りますけれども、三年前に自衛隊法百三条などによる有事法制問題が国会に持ち出された。土地、建物、食糧、資材など物資の収用あるいは医師、看護婦、土木建築業者、運転手といった人々の動員、これはもう大変ファッショ的な軍事優先体制づくりではないかということで、国民もマスコミも衝撃を受けました。今回の中間報告は、よく見ますと、より衝撃的な内容を持っていると思うのです。いま申し上げました一連の収用等々の措置、これも総理大臣の防衛出動命令が出てからでは間に合わない、防衛庁長官の命令する防衛出動の待機命令が出たときからやる必要がある、こういうふうに述べられております。たとえば陣地をつくるための土地の収用も早めよう、特別部隊の編成も早めよう、予備自衛官の招集も早めよう、こうなっているわけであります。  お尋ねいたしますが、防衛出動はどのようなとき下令され、また防衛出動待機命令はどのようなときに下令されますか。
  344. 夏目晴雄

    夏目政府委員 防衛出動は、わが国に対し外部からの武力侵攻があった場合あるいはそのおそれがある場合に下令されるわけでございまして、防衛出動待機命令というのは、近々防衛出動命令が下令されることが予想され得る、あり得るというふうなことが認められた場合に下令されると理解しております。
  345. 榊利夫

    ○榊委員 といいますと、待機命令というのは、武力攻撃のおそれのあるときよりも以前、こうなりますね。  ところで、今回の中間報告をそれで見ますと、武力攻撃のおそれのある時点よりももっと以前に、言うなれば、おそれのまたそのおそれ、そういうときに早くも土地の収用などをやる必要がある、こういうふうに書かれておりますが、そうですね。
  346. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御指摘のとおり、私ども今回の中間報告でまとめた内容には、自衛隊法第百三条による土地使用、二十二条による特別の部隊の編成、七十条による予備自衛官の招集については、従来防衛出動下令時からでなければ発動できなかったものを待機命令から発動できるようにしたいというふうに考えております。
  347. 榊利夫

    ○榊委員 間違いないです。ところで、そういう発想と申しますか、考え方、いわゆる有事即応というよりも、もっと早くから有事体制をつくろう、有事体制に持っていこう、あるいは時期を早める、こういう発想はいつごろから生まれたのでしょうか。この三年間に新しくそういう変化をした理由は何でしょうか。
  348. 夏目晴雄

    夏目政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この有事法制研究につきましては、五十二年の八月に、当時の福田総理指示を受けて開始しているものでございまして、いまの、いつの時点から適用時期を早めることが決められたか、あるいは研究されたかということは、具体的に定かにはできませんが、その研究の過程の中でそういうふうな見解、意見が出てきたわけでございます。特にいつからこの問題が出たというふうなことをつまびらかにするのは困難であろうと思っております。
  349. 榊利夫

    ○榊委員 いつからだけではなくて、何によってそういうことが必要だと思われましたか。そのモメントは何ですか。
  350. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御承知のように、予備自衛官の招集を一つ例にとってみますと、予備自衛官の招集命令書というのは、現在出頭日の十日前までに交付するということになっております。これは当該予備自衛官の身辺整理であるとか旅行日数であるとかいうふうなことを加味しながら考慮されているわけでございますが、その上にさらに予備自衛官の招集令書を作成する期間あるいは郵送の期間ということを考えますと、相当長期間必要ではないかということが考えられます。また土地使用につきましても、部隊の集結、物資の集積あるいは陣地を構築するに際しても相当長期間を要するのではないか。特別の部隊につきましても、編成してすぐ戦える状況にはない。思想統一も必要でございましょうし、訓練も必要でありましょうし、いろいろその指揮関係を整理するという期間、相当必要であろうかと思います。自衛隊というのは、有事に際して有効に機能し得ることが任務でございますので、防衛出動が下令になったときにこうしたことがスムーズに行われないということは、われわれに負託された任務が円滑有効に機能できないという心配から、せめて、たとえばですが、防衛出動待機命令からそういったことが適用できれば、いざ防衛出動が下令されたときに整々と行動できると考えて、今回の中間報告にまとめさせていただいたというものでございます。
  351. 榊利夫

    ○榊委員 待機命令が出たときからというのは、少なくとも前はなかったわけですね。今度はそのときからそういう措置をとりたい。率直に言いまして、これは日米防衛協力のガイドラインに合わせたのではないでしょうか。
  352. 夏目晴雄

    夏目政府委員 これも再三申し上げておりますように、この研究はあくまでも防衛出動が下令された際における自衛隊の行動を円滑にするという立場でしたものでございまして、日米ガイドラインの研究とは全く無関係に研究を進めておったというものでございます。
  353. 榊利夫

    ○榊委員 としますと、日米ガイドラインは自衛隊の運用に関して、あるいは有事法制研究に関して無視してもよろしい、ガイドラインは無視してもいいということですか。
  354. 夏目晴雄

    夏目政府委員 質問の御趣旨がちょっとわかりかねましたが、ガイドラインの研究有事法制を無視してもいいか、こういう御指摘でございますか。
  355. 榊利夫

    ○榊委員 もう一度そこのあたりちょっと説明いたしますけれども、これまで防衛庁では、ガイドラインの問題につきまして、ガイドラインで言う「武力攻撃がなされるおそれのある場合」というのは、自衛隊法の防衛出動で言う「武力攻撃のおそれのある場合」よりも若干前だとか、広い概念だ、こういう説明をされてまいりましたね。これは三年前からの説明です。つまり三年前にはなかった。ガイドライン以降に生まれてきたガイドラインについての説明です、当然ながら。そうしますと、これでは防衛出動のそれとは違うわけですから、違うということをお認めになりますね、広いとか前だとか、そういう説明そのものですから。そういうガイドラインの規定、内容、これは有事法制研究の場合に無視をしていいのか、具体的にはこういうことなんです。
  356. 夏目晴雄

    夏目政府委員 有事法制は、あくまでも自衛隊の中において自衛隊の有効な行動が期待し得るような立場研究したものでございまして、ガイドラインとは、無視するとかということではなくて、無関係なものである、関係なく行われたものであると御理解いただきたいと思います。
  357. 榊利夫

    ○榊委員 内容においても無関係ですか。
  358. 夏目晴雄

    夏目政府委員 無関係でございます。ガイドラインの研究というものが、有事法制、たとえば有事法制の中で米軍に対する協力関係についての法制化についての研究というものは対象にしておりませんでしたことをつけ加えさせていただきます。
  359. 榊利夫

    ○榊委員 対象にしていなかったというのはどういうことですか。
  360. 夏目晴雄

    夏目政府委員 有事法制研究というのは、あくまでも現在の憲法の範囲内において行っていることが第一点。それから現在の自衛隊法その他が、七十六条の防衛出動の下令された時点において有効に機能を発揮し得るかどうかという点から研究したものでございまして、米軍との協力関係がどうあるべきかということとは無関係に研究されたということでございます。
  361. 榊利夫

    ○榊委員 憲法の問題はまた後で触れますけれども、いずれにいたしましても、ガイドラインで言う「武力攻撃がなされるおそれのある場合」は、自衛隊法でこれまで説明をされてきました、またいまも説明されました防衛出動で言う「武力攻撃のおそれのある場合」よりも広い、その前だ、違うんだという説明が行われてきたことは事実であります。これでいきますと、ガイドラインというのは、日米の政府間で共同作戦研究されている。そこで「武力攻撃がなされるおそれのある場合」、こういうふうに判断した場合、それが自衛隊法で言う防衛出動のときでなくても、その前であっても、防衛庁長官の命令で土地の収用だとか予備自衛官の招集であるとかあるいは部隊の戦時編成などをやる、こういうことじゃないんでしょうか。
  362. 夏目晴雄

    夏目政府委員 われわれがいまこの三点について適用時期を早めたいというふうに御報告申し上げているのは、あくまでも、自衛隊法による防衛出動下令時から適用されるものを、防衛出動待機命令が下令されたときから適用させていただきたいということでございまして、これはガイドラインに言う「おそれのある場合」云々とは関係のない別個のものであると思っております。
  363. 榊利夫

    ○榊委員 それでは客観的に見て、つまり待機命令が下令されたとき、それからガイドラインで言う「おそれのある場合」、これはダブりますね、客観的に見て。そのことはお認めになりますね、内容において。
  364. 夏目晴雄

    夏目政府委員 事態が切迫しまして、情勢が切迫しまして、自衛隊法の系統で言えば防衛出動待機命令が徐々に出される。それからまたさらに切迫しまして防衛出動命令が下令されるというふうな一つの流れがあろうかと思います。それとは別個に、日米ガイドラインに言うところの「おそれのある場合」の判定云々といういろいろな一つの流れがあると思います。その流れの中で少なくとも防衛出動が下令されるというような事態においては、ガイドラインによる日米共同でもって対処するというような事態と合致することはあり得ると思いますが、個々の問題についてどれがどこと合致するかというようなことについては、事態にも応じましょうし、一概に申せないのではないかというふうに推測されます。
  365. 榊利夫

    ○榊委員 おっしゃったように、合致するのです。少なくとも、客観的に見た目には合致するはずです。そこに新しさがあるわけであります。そういう点で、やはり日米ガイドラインに合わした国内有事立法体制、そんな研究になっているんじゃないか、私はこういうふうに思うし、そう見ると、この三年間に変化が起こったということも道理としてわかるのです。理屈が通るのです。  私は、それはやはり重大だと思うのですね。なぜなら、ガイドラインによる日米共同作戦というのは、あるいはその研究というのは、ずっと日米制服でやられているわけです。そこで、「おそれのある」云々、自衛隊法で言う防衛出動の時期よりももっと前だ、日本の自衛隊法で言えば待機命令のときだ。結局それに合わせて日本の有事法制研究というものが実際に進められている。その点では、突き詰めていけば、シビリアンコントロールとかそういうことじゃなくて、実際日本の国会に知られないところでというノンコントロールにもなるということを私申し上げたいのですけれども、それは一応ここでおきまして、もう時間が余りないので、次の問題に移ります。  さらに中間報告の(二)、これは「現行規定の補備の問題」として「自衛隊法第一〇三条の規定により土地使用を行う場合、」「工作物を撤去しうるようにすることが必要である」、こういうふうに述べておりますけれども、これはある土地、区域内の建物など障害になるものを取り払うということになりますね。
  366. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊法百三条によって土地使用する場合に、現在の法制上は、土地の工作物、すなわち建物とかへいとか、あるいは地上のもろもろの物件というものを取りのける規定がないわけでございます。一方、私ども自衛隊有事の際に使う土地というのは、どこでもいいということでなくて、その土地でなければならぬというふうな事情もあろうかと思います。先ほど来申し上げたように、部隊の集結、物資の集積、あるいは陣地を構築するに当たって、どこでもいいという代替性がないという事情がございます。そういった際に、私どもできるだけ民事契約によってそういった土地の取得をしたいと考えておりますが、最悪の場合に、どうしてもというときには、この百三条による土地使用も必要かということでございまして、いま御指摘のような地上における物件の除去ということも必要になろうかというふうに考えております。
  367. 榊利夫

    ○榊委員 お尋ねいたしますけれども、戦争中に建物疎開といって民家を取り壊しました、駅前とかどことか。この法的な根拠はどういうものだったでしょうか。結局あれと同じようなものなんでしょうか。
  368. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いま突然のお尋ねでございまして、戦時中の強制疎開による建物の撤去、破壊というものがどういう根拠でもって行われてどういう手続で行われたかということについて、私つまびらかにいたしませんが、私ども土地使用というのは、現在の法律にすでに根拠を置いておるわけでございます。そういった意味合いから、土地使用できても、その土地にある種の工作物があって有効な使用が期待できないというときに、そういうふうな根拠規定が欲しいというのが今回のお願いの趣旨でございまして、いまできるということではございません。有事の際における状況をいろいろ考えた場合に、そういうものが必要ではなかろうかというふうに判断をして、今回の中間報告に挙げさせでいただいたということでございます。
  369. 榊利夫

    ○榊委員 戦争中にこういうことがあったんです。戒厳令第十四条第五項というんですけれども、「戦状ニ依リ止ムヲ得サル場合ニ於テハ人民ノ動産不動産ヲ破壊燬焼スルコト」つまり破壊したり焼いたりすることができるという、こういう規定がございました。それで人民の動産や不動産であっても、必要だと認めた場合にはいつでも疎開さしたり破壊したりできる。  そうすると、いまの説明によりますと、ある土地使用する。そこに工作物があってじゃまだ、じゃそれは撤去し得るようにする、つまり取り壊したり取り払ったりすることができるようにしなければその土地が使えないということになりますと、結局やはり私たちが頭に浮かんでくる戦争中のあの取り壊しだな、大体ああいうもんだな、こういうイメージがわくんです。  要するに、この項目は、ある特定の使用が必要な土地というふうに考えてみた場合に、じゃまになる建物と工作物等はいま言いましたように取り払うことができるようにしたい、こういうことですね。
  370. 夏目晴雄

    夏目政府委員 取り払えることができるようにしたい、もちろん言うまでもなく、適当な、正当な補償というのが行われるべきことは論をまちませんが、少なくも撤去できるような根拠規定が欲しいということでございます。
  371. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、いま読み上げましたけれども、戦争中の戒厳令第十四条第五項みたいな、まあ表現はともかくといたしまして、それと似通ったものが法律上は必要になってくる、こういうことになります。これはもう大変な、非常に重大な問題です。国民の側から言えば、これは恐るべき戦時状態、有無を言わさず、これは必要だとみなされたら取り壊される。  同じようなあれで物資の保管命令ですね、これに罰則規定がない、これは災害救助法等との権衡上必要ではないかとの見方もあるので検討していく、こういうふうに述べておられますけれども、これも、たとえば商工業者などが物資保管命令に従わないという場合は、罰則を設ける方向で研究する、こういうことでございましょう。
  372. 夏目晴雄

    夏目政府委員 現在の自衛隊法の百三条による従事命令、物資の保管命令については、罰則の規定がございませんことは御案内のとおりでございます。一方、災害救助法その他の関係法令については罰則の規定もあるわけでございます。いま先生がお読みになったのは、そういうものとの均衡があるのではないかというふうな御議論もあることは承知しております。  ただし、私ども、この従事命令につきましては、有事の際はそういうふうな罰則を設けなくても当然協力していただけるのではないか、またむしろこの罰則がなければ有効な支援、協力ができないようでは心もとないというふうなことから、この罰則を設けることの必要性と同時に有効性ということも考えました場合に、従事命令についてはどうもそこのところは問題ではなかろうか。ただ、物資の保管命令は若干ニュアンスが違いまして、自衛隊の行動に必要な資材を保管するということについての措置については、罰則が必要かというふうな意見もあるわけでございます。ただし、この罰則の問題につきましては、国民の権利義務とも非常に重要な関係がございますので、私どもいま直ちにその罰則が必要だという結論を出したわけではございませんが、そういう意見があるということをそこにつけ加えさせていただいて、今後慎重に検討してまいりたいという趣旨でそこに挙げてあるわけでございます。
  373. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、罰則を設ける方向で研究したいということでしょうか。あるいはその罰則規定は避けたいというふうにお考えなんでしょうか。あるいは避けたいということは現段階で言えませんか。
  374. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まさにそこのところが、私どもはいま深刻に若悩していることでございます。
  375. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、深刻に研究をされて、現段階で罰則は避けたいというふうには言えない。やはり罰則を設ける方向で研究するということのように思いますけれども、そこはいかがでしょう。
  376. 夏目晴雄

    夏目政府委員 この罰則がないと、一体有効性が確保できるかどうかという問題、それからさらには国民の権利義務との関係というものを、やはり相当慎重に検討しなければならないということで、いま直ちに設けなければならないあるいはなるべく外したいとかいうことを具体的に申し上げる見通しを持っておりませんが、そういうことがなくても、本質的に国民の御協力が得られるということが大前提でございまして、またそれがなくては、有効な国の防衛というものは期待し得ないということから言いますと、そういうものがなくても、私どもが期待する支援、協力というものの効果が生まれることを期待しているものでございます。
  377. 榊利夫

    ○榊委員 もしそういう場合に、その持ち主がいやだと言った場合にはどうなんでしょう。そういう場合でも、これはもうしようがない、現在こういうふうなお考えですか。
  378. 夏目晴雄

    夏目政府委員 そこが私どもこれから大いに研究しなければならない問題であるというふうに考えております。
  379. 榊利夫

    ○榊委員 ここはもう押し問答ですけれども、要するに、この罰則を設けるかどうか研究する、しかし、罰則規定は避けたいというふうには言われないということは、やはりお考えは罰則を設ける方向だな、こういう理解しか出てこないわけでありますけれども。  次の中間報告の(四)、ここで「新たな規定の追加の問題」といたしまして「自衛隊部隊が緊急に移動する必要がある場合」は、「公共の用に供されていない土地等の通行を行いうることとする規定が必要である」、こういうことが書かれておりますけれども、この場合、緊急とはどのようなことでしょうか。それから緊急というのは戦時、平時の区別があるのでしょうか。たとえば演習のときなどは緊急に入るのでしょうか、入らないと断言できるでしょうか。
  380. 夏目晴雄

    夏目政府委員 部隊が緊急に移動する必要があるという場合は、あくまでも有事の際でございまして、演習等の際には一切考えておりません。
  381. 榊利夫

    ○榊委員 ただし、防衛出動じゃなくて、待機命令が下令されたときということですね。それは含まれますね。
  382. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ただいま申し上げたとおり、防衛出動が下令されたとき以後ということでございます。
  383. 榊利夫

    ○榊委員 防衛出動が下令されたときですか。待機命令ではそれはやらないということですか。
  384. 夏目晴雄

    夏目政府委員 防衛出動命令が下令されたときということでございます。
  385. 榊利夫

    ○榊委員 それでは、今度第一、第二、第三分類に分けておられます。特に第三分類を設けられた目的は何でしょうか。特にジュネーブ四条約の国内法制の問題を出しておられるのは、そういうものをつくる必要があるということでしょうか。
  386. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず、第一分類防衛庁所管法令であり、第二分類防衛庁以外の各省庁にまたがる法令の問題であるということは御承知のとおりでございますが、第三分類というのは、たとえば国民の避難、誘導、保護に関する問題、すなわち民間防衛に類する問題もこの中に入ろうかと思います。専守防衛を本旨とするわが国の防衛に当たって、国内で戦うことも余儀なくされるということも大いに予想されるわけでございます。そういった場合の国民の保護、避難、誘導というのは、まず何よりも重要な問題でございますが、わが国にはこれに関する規定というものはございません。こういうものについての検討をしていただく必要があるのではなかろうか。あるいはどこでやるかということも含めまして将来の検討課題である。それからジュネーブ四条約、すなわち捕虜の問題あるいは傷病者の問題ということについても法制化の必要があるのではなかろうか。ただし、これもやる場合に、どこの場で、どういう官庁が所管してやるのが適当であるかということをまず検討しながら、時間をかけて研究していきたいというふうに考えておるものでございます。
  387. 榊利夫

    ○榊委員 といいますと、非常にはっきりいたしますのは、そういう民間防衛、恐らくその中には民間防空体制なんかも含まれると思いますけれども、そういうこと、あるいは自衛隊の掌握のもとで住民の疎開や移動をするといったことになりますね。それはひとつ研究する。  さらに、ジュネーブ四条約ですけれども、これは戦地軍隊の傷病者の状態改善に関する条約、海上軍隊の傷病者、難船者の状態改善に関する条約、捕虜の待遇に関する条約、戦時の文民保護に関する条約というふうになっております。これに対応した国内法といいますと、軍隊の、戦地だけのということではなくて、日本本土そのものが戦争地獄と申しますか、まさに戦火が交わされる状態、恐らく日本は第二次大戦では沖繩以外にそういう経験はなかったでしょうけれども、そういうことが想定されるようなものになっていると思うのです。これは大変深刻な問題でありまして、そういう戦争地獄の再現を予定して研究する、現在そこまで考えているのか、また考えなければならないのか。国民の目から見ますと、これはやはり衝撃的な戦時体制づくりの問題なんです、法制研究と言うけれども。この点では、やはり現行憲法とか法規の外にあるのではないか。多くは大体この外にあると私は思うのです。  そこで、時間の関係でちょっと質問が飛びますけれども、そういう点では、自衛隊の中でもあるいは防衛庁の中でも、自衛隊法百三条に刑罰がないというのは、憲法第十八条とか三十一条に触れるおそれがあるからだというふうに、もともとこの自衛隊法をつくるときから問題になっていたというふうに聞いております。当時の保安庁法制班長の宮崎弘毅氏が「国防」という雑誌の一九七八年五月号でそのことを書いているのです。実は、その当時もそういう有事法制を考えたのだけれども、どうも憲法に触れるおそれがある、心配だ、だから百三条の場合には刑罰規定を設けなかったのだということなんです。そうしますと、かつては憲法に触れる、法規に触れる、その枠外だと思っていたものを、いまは研究しよう、研究しなくちゃいけない、こうなっているわけでありますけれども、この点については、特に憲法との関係ではどういうふうにお考えですか。
  388. 夏目晴雄

    夏目政府委員 保管命令でありますとか従事命令につきましては、現在の災害救助法にも同種の規定があることは御承知のとおりでございます。それからいま先生がお読みになった宮崎氏の論文についても、私ども承知しておりますが、まさにそういういろいろな問題点がありますので、私どもいま直ちに罰則規定が必要であるというふうに判断しておらないのでございまして、その点を今後時間をかけて、慎重に国民の権利義務との関係を配慮しながら研究してまいりたいというふうに考えているものでございます。
  389. 榊利夫

    ○榊委員 そういう非常に重要な中身を持った問題だということはお認めになっておられますけれども、しかし、そういう有事法制研究あるいはこの実施、これは結局は法改正の要求になっていくんじゃないでしょうか。それを進めようとすれば、違うから、これはやっぱりどちらかを変えなくちゃいけない。そうすると、現在ある法規を変えなければならない。この出されている文書の中でも、不備があるという前提に立っておられるわけですから、結局は現行法を改正する。この間も自衛隊法改正、合意が得られるならば改正したい、こういうことも言われました。したがいまして、近い将来に国会提出を予定した立法準備ではない、こう言いわけされているのですけれども、実際には国民の合意が得られれば法制化が望ましいということになる、つまりやりたい、こういうことになっているわけであります。  問題は、憲法についても同じことにならないだろうか。幾ら現行憲法の範囲内で、こうおっしゃっても、大体憲法そのものが、戦争だとか武力行使や交戦権を否定している。基本的人権など国民の権利を保障している。土地や家屋の強制収用とか医師や運転手などの強制動員、こんなものはできっこないのですよ。できない。これがもしできるとすれば、これは明らかにもはや日本国憲法は停止も同然です。憲法停止の非常事態ということになりますよ。  そこで、最後に私お尋ねいたします。防衛庁長官といたしましては、憲法改正とかあるいはそういう非常事態法の制定といったものは考えていない、要求するつもりもないというふうに約束できるのかできないのか、その点だけ最後にお尋ねいたします。
  390. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  防衛庁といたしましては、憲法の改正や非常事態の、いまお述べになりました非常事態の法律、そういったものは考えておりません。
  391. 榊利夫

    ○榊委員 考えておらないという御答弁ですけれども、しかし、実際にいま研究をされている。この方向を進めていけば、あるいはまたそれを実行しようとすれば、明らかに矛盾はますます大きくなっていくし、要求にならざるを得ない。そういう重大な内容である。国民にとっては非常に衝撃的な内容なんだということを最後に申し上げまして、私はやっぱりこういう方向での研究というものはやるべきでない、これは私の意見ですけれども、そのことを申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。答弁はその点要りません。
  392. 江藤隆美

    江藤委員長 次回は、来る五月七日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十四分散会