○藤井
政府委員 いま御
質問のございました点は、昨年の
給与勧告の際に
報告事項の中に述べました点についての御指摘であろうというふうに理解をいたします。この点は昨年の
報告で明らかにいたしましたように、現在の
公務員制度というものは、戦後発足をいたしまして三十年を経過しておるわけでございます。これはそれなりに近代的な
公務員制度として成果を上げて定着をしてきておるというふうに考えております。しかし、別に
社会経済の情勢というものは大変急激に進展をいたしておりますので、その間においていろいろの再
検討すべき事態、放置できない事態というものがだんだんと出てきております。
給与制度自体の問題といたしましても、現在の俸給表の種類なりあるいは俸給表の立て方の問題がそれでいいんだろうかというような点がございますし、また本俸と各種手当との振り分けの問題、手当の種類の問題等がそれでいいんだろうかというような点も、これは深刻に
検討すべき問題として出てまいっております。また
給与制度のみならず、
任用制度等につきましても、いろいろな点で再
検討を迫られる事態が起きております。
いろいろ申し上げれば切りがございませんが、顕著な例として一、二引いて申し上げますと、たとえば現在
公務員に採用いたしますためにはメリットシステムということで、成績本位ということになっておりますたてまえから厳格な試験をやっております。この試験の種類は、御承知のように大学卒業程度を
対象にいたしました上級試験というのと、短大程度の中級、高等学校程度の初級、大きく言ってこの三つございます。そのほか職種によっていろんな試験がたくさんございますけれども、一番中心的な上級、中級、初級という試験をやっておりますが、この試験の様相を見ておりますと、非常に顕著な特記すべき事態が起きてきております。
と申しますのは、上級試験はもちろんのことでありますが、短大程度のことをこちらが予測しております中級試験について、いまやその九〇%は普通の四年制の大学を卒業した人が志望してまいります。当然そういうことで、正規の大学を出た人の受験合格率も上がっていくというような点が出てきております。さらにひどいと思われますのは、高等学校卒業程度の初級試験にもいまや一〇%以上の普通の大学を卒業した人が受験をするというようなかっこうが現実に出てきております。しかもこれがさらにその程度がだんだん増幅してくるというような
状況も出てきつつあるような現象がございます。これはやはりほうっておけませんので、そもそも試験の種類の分け方、それを受けられる資格の問題等についてメスを入れてまいりませんと、将来大きな問題が出てまいります。というのは、いまのところは、入り口のところでは、私はそれがいいと思ったから中級の試験を受けたのですというふうになって採用されますが、採用された暁で、これが五年たち十年たってまいりますと、自分もやはり大学を出ているんだ、それがどうも見てみると、上級のなにはただ入り口が違ったというだけで、その後は同じような仕事をしているのに昇格その他については大変差別を受けるじゃないかというような不満がだんだんつのって出てくるというようなことも考えておかなければなりません。そういうような事柄もございまして、やはり試験自体についてもいろいろ改定を要する問題が出てきております。
それからもう一点、これも御承知でありますように、現在試験
制度として
公務員法上認めておりますのは採用試験だけではなくて昇任試験というものを認めておるわけです。ところがいままで昇任試験と銘打ったものは一般的にはやっておりません。というのは、大体それは職場でわかって、能力の実証でもってしかるべき能力のある人は上へ上げるというようなことで、係長、課長補佐ということになっていくものですから、そういう必要は事実上なかったというようなことで、昇任試験はいままでやっておりませんでした。しかし、いま申し上げましたような事態がだんだんと進んでまいりますと、やはり能力実証主義というようなことを言っても、ただ単に上の者が見た感じとか、それから周囲の者がどういうふうに感じておるかというようなことだけで判定をされたんじゃたまらないじゃないか、納得がいかぬじゃないかというような問題も出てまいりましょう。となりますと、どうしてもそこに昇任試験という
一つの入り口、ふるいにかけるための、言葉は悪いですが、そういう関門を設けて、そこで能力というものを実証するというようなことも考えていかないと、長いこれからの将来にわたって職場の管理というものを適正にあるいは円滑に行うことがむずかしいという事態も起きてくるのじゃないかというような点もございます。
例を一、二申し上げただけにとどまりますが、そういう一連のいろいろな問題がたくさん出てきておりますので、この際、三十年たった時点に立ってみて根本的にひとつ再
検討をしてみようではないかということの
必要性を申し上げたのが昨年の
報告でございました。この点についてはいま
作業を大がかりなものとして体制を整えてやりかかっております。私は大体六十年目途ということを申し上げたのは御指摘のとおりでございます。そういうところからまいりまして、実はこの長期計画樹立については予算でもお認めいただきまして、この間成立させていただきました五十六年度の予算にも柱が立っておるというようなことがございまして、本格的な
検討にこれから入るところでございます。五十六年は厳密な実態の
調査ということに専念いたしまして、五十七年度は補足の
調査と、だんだんそれに並行して立案
作業に入っていくということになるかと思います。五十八年度には大体のアウトラインをつくるという順序で仕事を進めたいと思っております。そういうふうにやりまして、各方面の
意見もいろいろ聞かなければなりません。そういうこともございますので、その余裕を見ますと、やはり五十八年には大体の方向を打ち出して、これを受けて五十九年度には
法案化というようなところへ持っていって
実施に移していくという段取りはどうであろうかということで、おおむねの骨格は
事務当局に指示いたしまして、その方向に沿っていまや本格的な
作業を進めておるという段階でございます。