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1981-04-09 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月九日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左近四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       粕谷  茂君    川崎 二郎君       木野 晴夫君    倉成  正君       田名部匡省君    竹中 修一君       宮崎 茂一君    上原 康助君       角屋堅次郎君    渡部 行雄君       市川 雄一君    小沢 貞孝君       部谷 孝之君    榊  利夫君       瀬長亀次郎君    中路 雅弘君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         総理府北方対策         本部審議官   藤江 弘一君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房審         議官      矢田部厚彦君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中南米局         長       枝村 純郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         厚生省援護局長 持永 和見君         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         警察庁刑事局国         際刑事課長   水町  治君         警察庁警備局外         事課長     鳴海 国博君         防衛庁防衛局防         衛課長     澤田 和彦君         防衛施設庁総務         部施設調査官  窪田  稔君         外務大臣官房外         務参事官    長谷川和年君         厚生省環境衛生         局指導課長   田中 治彦君         水産庁海洋漁業         部国際課長   中島  達君         運輸省航空局管         制保安部管制課         長       末永  明君         自治省行政局選         挙部選挙課長  岩田  脩君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     部谷 孝之君   榊  利夫君     瀬長亀次郎君 同日  辞任         補欠選任   部谷 孝之君     小沢 貞孝君   瀬長亀次郎君     榊  利夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第九号)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小沢貞孝君。
  3. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 ただいま上程されております議案等関連をいたしまして、私はかねてから在外公館はもとより在外邦人に対して選挙権を与えるべきだ、こういう主張をしてまいりましたが、それに関連して若干の質問をいたしたいと思います。  わが国が、特に最近のような流動激しい国際情勢の中にあって、適切な外交、経済等の諸政策を展開していくためには、在外活動の基盤となる在外公館の一層の充実強化と、そこに勤務する職員及び家族の働きやすい環境づくりを図ることが緊要と考えますが、特に私がかねてから主張しておりますこれらの職員及び家族の方々の選挙権行使ができる方途を早急に講ずることが、政府として何よりも先に実現を図らなければならない重要な課題だと考えます。  国民の最も基本的な権利である参政権が、これら海外の第一線で活躍している職員及びその家族にとって行使できないということは、これはきわめて重大な問題であると存じます。外国におきましては、代理投票郵便投票在外公館における投票等々により具体的な救済措置がとられているのでありまして、イギリスアメリカフランス、西ドイツ、ベルギーノルウェー、フィンランド、スウェーデンデンマーク等々その仕組みは国によって相違があるが、そのような投票制度が広く採用されているのであります。  そこで、伊東外務大臣推進者となって進めなければ、いつまでたってもこの問題は打開されないと思うわけであります。御案内のように、公職選挙法昭和二十五年に制定されて、当時日本占領下であって、六百万人の引き揚げ者引き揚げがようやく終わるというようなころでありまして、世界各国でも在外国民選挙ということは余り考えていなかった時代にこの法律はつくられたものであります。今日とは余りにも情勢が違い、これを行わないことは政府の怠慢ではないか、こういうふうにさえ考えられるわけであります。外務大臣、いかがでしょうか。
  4. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま小沢さんのおっしゃったことは、五十三年に真田法制局長官が、選挙権というのは属人的なもので、海外にある日本人には選挙権があるというふうに答弁をして、ただ、選挙の執行上むずかしい点があるので、行使できない現状にありますという答弁をしているわけでございます。  政府見解としましては、選挙権というものは海外にある日本国民にも適用があるというのが政府見解でございまして、これは当然在外公館職員も同様だというふうに考えるわけでございます。  ただ、外国主権下にある選挙の公正の確保ということでございますので、これは種々問題があるわけでございまして、選挙区の問題でございますとか、選挙人名簿とか、投票方法とかいろいろむずかしい問題があって、公職選挙法改正がなければこれはできないわけでございまして、自治省検討しておられることは当然でございますが、もし公職選挙法改正が行われるということであれば、在外公館職員につきましても同じに考え、それが最も有効にできるように外務省としても措置をとらなければならないと思うわけでございますので、これは公職選挙法との関係が一番でございますので、私の方ももちろん一緒になって検討いたしますが、自治省の方で十分その点は検討してもらうということが前提でございますから、自治省一緒になりまして外務省の方も検討させてもらいたいと思います。
  5. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 その自治省一緒になってという、そこがポイントであります。私は外務省としては、いままでいろいろ調査活動をやり、これを推進しなければならないという立場でずいぶん御努力をいただいておることを承知をいたしております。ただ、自治省の方がなかなかああでもないこうでもない、これもいかぬあれもいかぬというようなことで今日まで実現ができないでいる、こういうのが私は実態だと考えております。  そこで私は、困難な問題もあらかじめわかっておりますから、具体的な問題を二、三駆け足で質問をいたします。選挙区をどうするか、こういう問題がまず第一に問題になってくると思います。各国においては、日本と同じように、最初は選挙権がやはりなかった。それをいまやどんどんどんどんふやしてきておる。そのときに一番問題になるのは、在外邦人選挙区をどこにするかという問題であります。これは、最後の住所地の属する選挙区とする、これが世界各国、ここに例を十四カ国だけとってきてありますが、その半数はそういう便宜的なことで選挙区を決めてやっているわけです。それが第一の問題点だと思います。  第二の問題点は、どのように選挙人名簿の登録を行うか、住所要件をどう定めるか。所得税法第三条によると、「国家公務員又は地方公務員は、国内住所を有しない期間についても国内住所を有するものとみなして、」云々と規定しているが、手続上もそうむずかしくないのではないか、これが第二の問題点じゃないかと私思います。  それから第三の問題点は、どのような範囲在留邦人在外投票制度を認めるべきか。実は昭和五十四年十月現在で海外に在留している邦人は約四十三万五千人で、うち長期滞在者十八万一千人、永住者が二十五万四千人とされておりますが、長期滞在者のうち政府関係職員及び家族は、要するに外務省の出先だと思いますが、一万二千人と言われております。外国における国外在留者選挙権行使の立法の推移を見ても、海外在留公務員等からまず始めて、だんだん一般国民に拡大しているように、各国歴史はそういうように見受けられるのでありますが、まず海外で公務に従事する在外公館職員等から実施して、漸次だんだんと範囲を拡大していったらいいではないか、まずその道をあけることが大切だと思います。  私の手元にあるところの十四カ国の例は、公務員関係には選挙資格をすべての国が与えておるわけです。一般の者に与えているのは九カ国、移住者まで与えている国は七カ国、こういうような例になっておりますから、いろいろ考えていても始まりませんから、まず公務員に与えるというようなことから始めていってはどうだろうか、各国歴史からそう言うわけであります。  その次の問題点は、具体的な投票方法をどうやるべきか。これも外国ではいろいろ知恵をしぼってすでに始めているわけであります。投票代理人による投票、これはイギリスフランスベルギー等であります。郵便投票アメリカオーストラリア等であります。在外公館における投票ノルウェースウェーデン、こういうように始めているから、これを一体どういうように自治省研究をしてきたか。  まだ問題がありますが、時間がありませんので、簡潔に御答弁いただきたい。
  6. 岩田脩

    岩田説明員 お答えを申し上げます。  この問題については、かねてから先生の御指摘のあることでもありますし、われわれも大事な問題と考えて検討してきたわけでございます。いま御指摘のように、たくさんの問題をそれぞれ含んでおりまして、ただいまお挙げになりました点につきまして申し上げますならば、たとえば選挙区の問題、これを現在国内にある場所を仮定をして、そこに住所を置くというようにした場合には、たとえば地方公共団体選挙についてどう考えるのかという問題を一つ続発してくるように思います。それからおっしゃるように、国内の特定のところに住所を措定すれば、国内名簿がつくれるわけでございますが、こういった名簿のつくり方とか、住所の措定の仕方というのは、やはり投票方法に絡んでくる問題であろうかと思います。もし、たとえば先ほど御例に引かれました在外公館における投票というように、国外投票するということになると、その在外公館名簿をつくっておかなければならぬというような関係が出てこようかと思っております。  私どももこれを検討しました上で、やはり一番問題だと思いましたのは、ただいまの投票方法でございまして、これをどうやったら投票の秘密とか公正な投票という意味でいい方法がとれるだろうかということを一番問題にして検討してきたところでございまして、ただいま御指摘のありましたような、諸外国のケースについていろいろ考えてみたわけでございますが、たとえばいま一般的な方法としてお挙げになりました代理人による投票郵便投票の国があるわけですが、これらの国では、どちらかと言うと国内における不在者投票そのものがすでに代理人による投票であったり郵便による投票であったりというかっこうで、国内制度としても取り入れられている面がございます。わが国の場合は、御厨知のとおり国内不在者投票そのもの代理人による投票とか郵便によるというのがございませんで、そういった面で、こういう制度を取り入れるか、さらにまたそれがなじむかということについて、なお検討余地があるというかっこう結論に至らず、今日まで至ったような次第でございまして、なお引き続き検討さしていただきたいと存じておるところでございます。
  7. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 そのほかに選挙期日候補者等の周知、投票用紙の請求、交付等選挙に関する管理をどうするか。われわれ運動して指定船舶内における不在者投票制度があるが、これは後から認めてもらったことですから、そういうことを応用してもできるんではないかと思います。それも問題点だと思います。  適用する範囲をどう考えるか。地方選挙までやるということになると、何心郡市まで投票しなければなりませんから大変問題になると思いますが、これも便宜的に国政選挙からだけやればいいのではないか、こういうようにも考えます。  それから、選挙運動選挙犯罪についてのことも問題だと思います。これはそれぞれ恐らく自治省においても研究をしていただいておりますが、私は、きょうは結論的に、外務省は推進しようとして一生懸命で研究をしている、いま自治省答弁も、前向きか後向きかいずれにしてもいろいろ問題点検討している、こういうわけですから、ここで私の提案は、自治省からと外務省からと具体的にこれをどうやっていくかという、簡単には相談会といいますか、審議会と言うとまたむずかしくなっちゃうが、両方から二人あるいは三人ずつ挙げて前向きに検討をするという組織組織なんと言うと、また固苦しく考えますが、私は相談の会でいいと思います。どうでしょう外務大臣、それもうやらなければいけない時期だと思いますが、両方から二、三人ずつ集まって相談すればいいんですよ、外務大臣自治省
  8. 伊東正義

    伊東国務大臣 小沢さんの御提案でございますが、外務省自治省で過去におきましても、組織とかそういうものではなくて、随時打ち合わせをするというようなことはやっておりますし、検討会といいますか、今後もそれは続けてまいります。なるべく早く結論が出るように続けてまいりますが、事はこれは非常にむずかしい問題でもございますし、これは国会選挙でございます。国会皆さんにも関連のある問題でございますので、国会の方でもそれぞれの党で、選挙制度の問題とかいろいろございましょうから御検討いただくこともまた必要ではないか。われわれも自治省とよく検討いたします。組織ということではなくて検討することはお約束申し上げます。
  9. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 外務省自治省相談は二年間に一遍ばかり、一年間に一遍ばかりやったですか。そういうことだから進まないと私は提案しているわけです。  それから、いま外務大臣国会で論議しろと言うが、これは大変むずかしくて、この論議をしていたららちが明いていかないと思うから、これはやはり政府の責任でやるべきことだと思うわけです。これ、もし基本的人権が全然認められないということで提訴か何かされたらどうなります。完全に敗北ですよ。憲法違反ですよ。だから私は、余り固苦しい組織でなくていいから、いま外務大臣の言われるのを、一カ月に一遍とか二カ月に一遍とか定期的に推進していく、こういう組織を——いいですか。それだけで私はもう質問しませんが。
  10. 伊東正義

    伊東国務大臣 わかりました。  いま聞きましたら一年に五、六回ぐらいやっているのだそうでありますが、もっと頻繁にやって早く結論を出せということでございますので、もっと一生懸命この問題に取り組みます。  ただ、私申し上げましたのは、各党でも選挙制度のことで、選挙に関することでございますから非常に御関心のあることであり、議員のそれこそ身分にも関係することでございますので、各党の方でもひとつ御検討願いたいということをお願いしたわけでございます。私の方でもっと積極的に検討することは、これからやってまいります。
  11. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 それでは大臣答弁によって、もっと組織的に頻繁に連絡会議を開いて、これを前向きにやっていく、こういうように理解して次の質問に入らせていただきます。  実は、私は北方領土のことをやっているわけですが、本年の二月七日の北方領土の日の海外反響をここでお尋ねをしたいわけでありますが、初めてそういう問題があることを知ったというような反響の国も多いわけであります。だから、こういう反省の上に立って、政府は来年の二月七日の北方領土の日にどういう計画で進むか、こういうことが私は大切ではないかと思います。ことしは北方領土の日をつくってから実際の行事を行うまで、大変短期間で準備が足りなかったことは否めないことだと思います。しかし、そういうことしの実施した反省の上に立って、来年はもっともっとすばらしい北方領土の日の行事を行うことが必要だと私は思いますので、ぜひそのことをいまから反省の上に立って計画立案をしていただきたい。これは私の総理府並び外務省に対する要望であります。  そこで、各国地図を見ると、これも外務省地図だったか、私の手元に入っているのはサンケイ新聞ですが、昭和五十四年六月十三日のサンケイに出ている北方領土に関する各国地図であります。これは三、四カ国しか出ておりませんが、私がいろいろ聞いてみるところ、これは資料が不正確でありますが、どうも各国ともソ連地図をそのまま採用しているみたいなところが多いようであります。私はもう三十年間も運動をやってきて、外務省各国駐在高官がその国への説明が足りなかったのではないか、こういうようにも考えるわけであります。  私はこの間、国会へECから各国国会議員が十八人ほど参ったときに、これは思いつきであったけれども国会にも何か北方領土がわかるようなパンフレットがないかと言ったらない、できちゃいない。そこで外務省へ行ってやっと探してきたら、こんなようなパンフレットができておって、これは日本北方領土立場各国説明する資料かなと思って、私たち国会の方では、各国国会議員が来たときに説明してもらう等のことをやったわけでありますが、どうも各国地図やその他の様子を見ると、いままで日本各国に駐在する大使その他が十分の説明をしてなかったのではないか、こういうように考えるわけです。これは事務当局でいいですが、どうでしょう。
  12. 武藤利昭

    武藤政府委員 お答え申し上げます。  各国北方領土に関する日本政府立場説明する努力が不十分だったのではないかという御指摘でございますが、もちろん従来から私どもといたしましては、北方領土に関する日本政府立場を伝えるため、折に触れて努力はしてきたわけでございますけれども、果たしてそれが十全なものであったかということになりますと、正直に申し上げまして、まだまだ努力余地はあると存じております。  たとえば、いま御指摘のございました資料でございますけれども、今後北方領土問題は非常に息の長い問題として取り組んでいかなければならないということもわきまえました上で、その資料にいたしましても、単に英語のみならずフランス語資料もつくるとか、いまございます資料は、若干学問的と申しますか、歴史条約文引用等が多い資料でございまして、必ずしも一般の方にはおわかりにくいというようなことも考えまして、もう少し一般の方にもおわかりいただけるようなわかりやすい英文、フランス語資料等も作成するかとか、目下いろいろ検討中の段階でございます。  それから、各国に対する働きかけ、これは対象がいろいろあるわけでございまして、まず相手国政府というものがあるわけでございます。それから相手国言論機関がございますし、相手国国民一般あるいは学校といういろいろな対象があるわけでございまして、またその相手国の中の対象に応じましていろいろきめ細かい啓発努力をしなければならないのではなかろうか。まさにいまそのような外国におきます北方領土問題についての啓発の方策につきまして、鋭意省内で検討しているところでございまして、従来以上に今後努力を深めたい、かように考えている次第でございます。
  13. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 そこで委員長お願いをして、資料を私は要求をいたしたいと思います。  各国と言っても大変多いので、私はさしあたってサンフランシスコ講和条約参加国限定をしていいと思いますから、地図でも学校の教科書から一般観光用からたくさんあるから、その中でこれも限定をして、政府が認めている地図というか、そういうものはあるはずだと思います。そのサンフランシスコ講和条約参加国四十六、七カ国の地図をひとつ国会へ提出していただきたい、こういうように考えます。こういうことをやる努力は、あなた方が各国へ行ってこういう説明をする一過程にもなると思うわけで、いまはありのままの状態でいいから、各国地図資料を、特に北方領土関係する部分だけでよろしい、出していただきたい。
  14. 江藤隆美

    江藤委員長 わかりました。そのように取り計らいたいと思います。
  15. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 なるべく早くひとつ出していただくようにお願いをいたしたいと思います。  これは確かなことはわかりませんが、労働組合の同盟は、毎年北方領土返還要求納沙布岬大会を開いてもう何年かになって、日本世論喚起の原動力をなしてまいりました。伝え聞くところによると、ことしからはさらに一歩前進をさせて、ASEAN各国代表を、代表みずからカンパをしながら、納沙布岬に招待をして、だんだん世界理解を広めていこう、こういうことを国民が一人一人金を出し合ってやっているわけであります。  私は率直に申し上げて、今度の外務大臣は初めて就任早々視察に行っていただいたりあるいは国連で演説をぶっていただいたりして大変人気はいいわけですが、外務省そのもの各国わが国立場理解してもらう運動というか、私は運動だと思う、その運動が足りなかったのではないか、こういうように私は委員長に就任してしみじみ思うわけであります。  そこで、私はのっけに質問するわけですが、どうでしょう、在日各国大使あるいは高官、特にサンフランシスコ講和条約に参加した国の大使等を逐次現地へ御招待申し上げて、えらいむずかしい政治問題やそういうことは要らないわけで、現場を見てもらうというようなことから始めていけばだんだん理解が得られていくのではないか。一朝にしては成らないと思いますが、そういう努力をしてなかった。  この間、何か新聞の伝えるところによると、ポリャンスキー大使はのこのこ羅臼町まで出ていって、何か日ソ親善協会会員証、この会員証ロシア語で書いてあり、そしてその下に日本語で書いてある。そしてその下へ船の名前が書いてあり、その下に個人の名前が書いてある。そしてその会員証を渡すのに、三万円ずつ出して、日ソ親善協会長赤城宗徳、こういうような名前で出しているから、国民が見れば、これは私設パスポートじゃないか、御朱印船じゃなかろうか、こういうように見て物議を醸していることは皆さん案内のとおりであります。そういうようにポリャンスキーソ連大使現地に行っていろいろの活動をしているけれども日本外務省は諸外国在日高官現地まで見せて一生懸命運動をしていたとは一回も聞かない。そういうようなことはなかなか問題もあろうと思いますが、そういう努力が必要ではなかろうか、どうでしょう、外務大臣
  16. 伊東正義

    伊東国務大臣 お話しの問題は領土問題でございますから、日ソの両国で話し合って解決するというのが基本でございますが、世界世論に訴えて理解を広めるということも必要でございますので、おっしゃいましたように、国連の総会等で私も国際世論に訴えて、日ソ間に平和条約ができないのはこういう問題があるのだ、そこへさらにソ連は軍備増強をしておるというようなことを訴えたわけでございますが、いま小沢さんのおっしゃるような、たとえばサンフランシスコ条約に参加しました四十六カ国の大使、適当な人に北方領土視察といいますか、見てもらうとかいうようなことは、実はいままで余りやっていなかったわけでございます。でございますので、これは微妙な国際関係の問題がございますので、民間の団体がやられる場合と政府がやる場合では若干ニュアンスが違うことが出てきますので、デリケートな問題はございますが、しかし、どうやったら国際的な認識を得るに一番いい方法かということの努力は私はする必要があると思いますので、いま小沢さんのおっしゃったようなことも頭に入れまして、国際的な認識を広めるという努力をなお一層今後ともやりたいと思います。
  17. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 はい、連れてまいりますとは明確にお答えはいただけないが、まあ努力をしよう、こういうような御答弁ですから、きょう唐突に質問した限りにおいては、やはりそれ以外に答弁のしようがないと思います。しかし、私たちは北方領土委員会において、こういうことぐらい外務省努力をしなければ、一体外務省は何をしているか、こういう声が現地等でも大変燃え上がっているわけです。  そこで、これも唐突な提案でありますが、ことしは日がなくて北方領土の日においてはああいう規模のことしかできませんでしたが、それでもりっぱな成果が上がって、日本世論を上げることができたと思います。いままで外務省でいろいろやられておっても、国民世論が背景になかったからなかなかやりにくかった点があることは十分わかりますが、いまのような努力を続け、あるいは日本の在外大使各国説明をする、国内においてもいま私が言ったようなことをやりながら、一年かかり二年かかりそれをやりながらやっていって、北方領土の日全国大会のときは何万という人を集めて、サンフランシスコ講和条約に参加しておるところの在日高官を、えらい四角四面に言わないで、まあ日本国民はこういうことを考えているんだぞ、まあ見に来てくれや、これはポリャンスキー大使まで呼んでもいいのじゃないか、こういうようなことに持っていかなければ本当の運動にならぬし、外務省活動にならぬ、こういうように私は考えるわけです。時間がございませんが、一言、ひとつ方向だけ外務大臣から御答弁をいただきたい。
  18. 伊東正義

    伊東国務大臣 ことしの北方領土の日の式典に、小沢さんおっしゃるような意見がございました。実は出先の大使館からも意見具申がございました。そういうことをやったらどうかという意見具申があったのでございますが、時間的な問題もございまして、総理府の方でおやりでございますので、いろいろ総理府にも意見は言ったことはございますが、これは国際的に非常に微妙な問題もあることでございまして、参加者がどのぐらい出てもらえるかということの、これは非常に問題になることがございますので、その点はまだ時間がございますが、総理府とよく相談しまして、慎重にそのことは検討させていただきたいと思います。
  19. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 終わります。ありがとうございました。
  20. 江藤隆美

    江藤委員長 中路雅弘君。
  21. 中路雅弘

    ○中路委員 最初に法案について二点ばかりお尋ねをいたします。  前回の委員会でも御質問があった問題ですけれども、今度の在勤基本手当の額の改定で、特に全体の三分の二近くに上ると言われていますいわゆる不健康地に対して加算で改善をしたというお話ですけれども、五十五年度、五十六年度の予算の概算要求で出されました在外特地勤務手当の制度の新設については今度は見送られたわけです。その後、昨年の九月十七日に「在勤諸手当の改善に関する外務人事審議会勧告」というのが出ておりますが、これを見ますと、「勤務・生活条件の劣悪な地に在勤する職員の精神的・物質的負担を補償・軽減し、また、これらの地における職員の勤務能率の向上及び円滑な人事配置を可能ならしめるため、在外特地勤務手当制度を創設し、右目的を達成するに十分な手当額を支給することを検討する。」という勧告が出されているわけです。この手当制度については、外務人事審議会のこうした勧告事項でもありますから、在外職員の処遇改善のために、この創設については引き続いて特段の努力を必要とすると私は思いますが、今後の外務省のこの点についてのお考え方、やはり勧告事項でもありますので、実現のためにぜひひとつ特段の努力をしていただきたいということを要望したいのですが、一言……。
  22. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 昨年のこの委員会における与野党一致の決議も、それからただいま御引用のありました外務人事審議会の勧告も、その中の重要な項目として不健康地勤務環境の改善、整備ということをうたっていただいているわけでございまして、これは私どもまさに最重要課題と近年考えていることでございます。  大きく分けて二つ、一つは施設面の改善、もう一つは給与面の改善ということでございますが、給与面の改善の中におきましては、現在の在勤基本手当の中に含まれている特殊勤務地ポイントというものよりも、この部分を別に取り出しまして特地勤務手当ということにした方が、趣旨から見ても、また将来これをそれ自体としてさらに改善していく上からも適切ではないかという点は、まさに私どももそう考えまして、過去二回にわたりまして予算要求の重要項目として掲げたわけでございますが、前回も御説明いたしましたように、最後の最後のほとんども大臣折衝までいかんという段階におきまして、新制度の創設ということについては見送らざるを得ない情勢になりまして、そのかわりと申してはなんでございますけれども、特地勤務手当部分については他の部分に比べてもはるかに厚く実質的な改善を図ってことしの五十六年度予算を編成し、最近御承認をいただいたということでございます。  今後どうかというお尋ねでございますけれども、ただいま御発言のありました御趣旨は、私ども全く同じに考えておりますので、現時点におきまして五十七年度にどういう予算要求を盛るかということを具体的には決めておりませんけれども、ぜひこの問題についてはさらに検討を続けたいという気持ちでございます。
  23. 中路雅弘

    ○中路委員 この点はぜひひとつ創設について特段の努力お願いしたいと要望しておきます。  もう一点ですけれども、特に海外の子女教育の問題ですが、私も昨年外務委員会の皆さんと何カ国か回ってきて特に痛感したのですが、子女教育にいろいろ問題がありますが、中でも日本学校がないところですね。資料をいただきますと、日本学校があるのは、いま全体の約三分の一、七十校だそうですが、ないところは特に授業料が高い。現行の子女教育手当だけでは賄えないというのがあちこちで訴えられました。日本学校が存在するところは、先生の給与だとかあるいは校舎の借り上げ料の一部を国が負担しているわけですけれども、いまの手当月額とそれから加算額の最高限度を見ましても、日本学校のないところではこれにも及ばない。特にアメリカンスクールが、話を聞きますと大変高い。私が聞いたところでも、小学校で年間百万円以上になるという話も聞きましたけれども、これで見ますと、手当の月額と加算額の最高限度合わせても四十万余りですから、実際の半分にも満たないという状態だと思うのです。かつて五十三年ですか、予算委員会で法制局長官が、海外の子女教育の問題について、義務教育に近い教育が得られるように父兄負担の軽減と教育の充実のために最大限努力する、これが憲法二十六条の精神だという趣旨の答弁をされていますが、こうした憲法二十六条の精神に照らしても、いまの実態を改善しなければならない。これも先ほど取り上げました、昨年九月の外務人事審議会の勧告にも盛られている事項ですが、特に日本学校がないところの子女教育の問題について、その子女教育手当を含めて、ぜひ改善を早急に検討する必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  24. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 外務省の調査によりますと、義務教育年齢で現在海外にある海外子女の数は、海外子女全体としては四五%、また在外職員だけの子女につきましては四六%がそれぞれ日本学校に通学しているという数字になっておりまして、半分弱が日本学校の所在地におり、かつ、日本学校への進学を選択しているということでございます。  外務省の在外職員で、六歳以上十八歳未満の子女、これで本邦以外の土地、これはほとんどが両親の在勤する土地でございますが、一部は前在勤地とか、あるいはそこで教育が得られないために第三国ということもございますけれども、このために必要な教育手当として、いま御指摘のありましたように一万八千円、さらに特別な事情によって教育を受けるのに相当な経費を要する土地ということにつきまして、さらに一定限度内、最高限一万八千円の加算という制度になっております。  確かに御指摘のように、アメリカンスクールが非常に高い、しかし、その任国においては日本人子女が二、三人しかいない、したがって日本学校をつくることは困難であるというようなところで、かつ、任国の学校にはいろいろな事情でなかなか通学困難ということになりますと、通えるのはアメリカンスクールあるいはブリティッシュスクールというようなところに非常に限られてしまう。そうすると、いかにこれが高くても、あえてそこに通学させざるを得ない。そうでなければ、日本に帰して両親と別れ別れになるとこれまた大きな問題でございますので、そういう場合には、非常に高い額でもアメリカンスクールに通わせるという事例が御指摘のとおりあるわけでございます。  こういう場合の負担額をどうやって国がめんどうを見るかということは、これは日本に限らず諸外国の在外勤務、あるいは政府でなくて民間の方々の場合にも同じような問題があるわけでございますけれども、この際、国がどの程度の負担をするかということについては、これまでもいろいろ議論がございまして、この加算額という制度も、実はわりに最近にできた制度で、これによりまして、現在のところは大部分のものについては、かなりな部分が救済されていると思いますけれども、一部については、実態調査の結果、なお不十分になっているということでございますので、この部分につきましては、これは年々変わっておりますので、今後とも実情をよく把握いたしまして対処していくということを考えたいと思っております。
  25. 中路雅弘

    ○中路委員 きょうは私の時間の中で瀬長議員関連質問お願いしたいと思いますので、あと二、三簡潔にお伺いしておきたいのですが、施設庁はお見えになっていますね。  一つは、前回の委員会で岩垂議員からも御質問があったのですが、横浜のノースドックの米海兵隊の再上陸の問題です。前回の御答弁ですと、今後もこのノースドックを使用する可能性がある、あるいは今回二回は輸送していませんけれども、弾薬や重車両について、今後については知り得る状況にない、輸送をする可能性もあるだろうというような御答弁が出ているわけですけれども、一月の際は、いままで上陸していました沼津の今沢海岸の気象上の条件ということを挙げておりまして、一つは臨時的な処置のような印象も与えていたのですが、今回はこうした条件も抜きにして大量の車両を上陸させて、特に横浜は人口二百八十万、全国第二の大都市ですが、こうした過密化した市街地、交通渋滞の中を、大量の米軍の兵員や車両が輸送される。現地新聞はこの状況を、横浜の中心市街地が、住民感情を無視してまたしても米軍に制圧される形になったとまで表現をしているわけですね。御存じのようにこのノースドックは、この数年来事実上遊休の状態といいますか、月に二、三隻ぐらいしかチャーター船が入らないという状態で、神奈川県知事やあるいは横浜市長からも外務大臣あてにもたびたびこの都市の機能の強化の上でも緊急の課題として、この返還が要請されていたところです。ここにこうした状態が起きているわけですから、いま、一層住民感情も逆なでをするという状態にあります。  私は、これと関連して最初に一言聞きたいのですが、五十七年度に日米の陸上部隊の実戦訓練を海兵隊を含めてやるということが計画されているそうですが、五十六年度は図上だとかそういう演習ですけれども、実戦部隊の訓練を五十七年度に行うという問題。それから、これはやるとすればどの地域が対象になっているのか、防衛庁の方にお尋ねしたいと思います。
  26. 石崎昭

    ○石崎政府委員 お尋ねの陸上自衛隊の五十七年度の日米共同訓練は、全然まだ計画ができておりません。五十七年度に実動部隊を使った日米共同訓練をやりたいという希望をわれわれは持っておりますが、いつ、どこで、どういう内容の訓練をやるか、五十六年度の共同訓練すらもいま検討中の段階でありますので、五十七年度については全く検討に入っておりません。
  27. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの御答弁で、やるという希望は、計画はまだ具体化していませんけれども、持っておられるというお話ですが、そういう希望ですから、やる場合の対象といいますか、候補地というのはお考えになっているだろうと思いますが、たとえば東富士の演習場、これは計画の中に対象になっていますか。
  28. 石崎昭

    ○石崎政府委員 いま申し上げましたとおり、希望は確かに持っておるのですが、いつ、どこで、どういう内容の訓練をやるか、全く検討に入っておりませんので、何とも申し上げる段階ではありません。
  29. 中路雅弘

    ○中路委員 全体を見て、その演習をやるとすればこの富士のキャンプが候補地にならざるを得ないだろうと思いますが、今度のこの大量の輸送でこれが一層恒久化するということになりますと非常に大変なことになりますし、特に、この前も御質問がありました弾薬や重車両の輸送、この問題については、御存じだと思いますが、横浜港は特定港ですね。港則法の二十一条、二十三条等によって、爆発物その他の危険物を積載した船舶は、港長の指揮を港の境界線で受けなければなりませんし、その積み込み、積みかえなどは許可が必要になっています。米軍の場合も日本国内法を尊重する義務があるわけですから、こうした問題について施設庁がよく知らないということ自身も、私は大変けしからぬと思うのですね。今後の弾薬の輸送がどうなっているのか。  かつてベトナム戦争のときに、戦車が横浜の橋で、市の方の拒否でとめられたことがありますけれども、たとえば横浜市が弾薬の積みかえを許可しないということになれば、再びそういう事態も考えられるわけです。その点で、こうしたところに実弾や重車両を揚げること自身が大変けしからぬことだと思います。この問題について私も再度アメリカに対して、このノースドックのこうした使用をやらないということ、それから県知事や市長から返還の問題を含めて出ている要請について交渉するということを外務大臣、施設庁にも要請したいと思います。  最初に、弾薬の問題について、この前のそんなことは知らないという答弁はけしからぬと思うのですが、いかがですか。
  30. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答え申し上げます。  ノースドックを使用しまして弾薬の輸送等が行われたのではないか、行われるのではないかというお話だと思いますが、今年度二回使用がなされました際には、弾薬の輸送等は行っておりません。  それから、今後の見通しにつきましては、ノースドックは現在米軍に港湾輸送施設として提供しておりますので、将来の計画については当庁としては承知していないというように前回御答弁申し上げた次第でございます。
  31. 中路雅弘

    ○中路委員 繰り返しませんけれども外務大臣のところに神奈川県知事からも横浜市長からも繰り返し要望が行っていると思うのです。こうした大量の市内への輸送、いまのお話だと、弾薬輸送の可能性も将来考えられるわけですけれども、こうしたことは安全の点からいっても大変なことですからやらないということ、それから全体の要求である返還の問題について要望が強く出ているのだということは、アメリカ側にも強く要請していただきたいと思いますが、外務大臣、一言。
  32. 伊東正義

    伊東国務大臣 地元県あるいは横浜市からそういう御要望が出ていることは、従来も施設庁に伝え、アメリカ側にも要請をやっていたことがございますので、地元の要請は強いのだということを向こうに伝えることはやぶさかでありません。  それから、使用の問題はおっしゃるとおり人家の密策地域等の問題がありますので、使用上の安全の問題がありますから、国内法律の精神も尊重してもらうことは当然地位協定にも書いてあることでございますし、住民の安全の問題について十分注意してもらうことにつきましては、向こう側にも施設庁を通して要請はいたします。
  33. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一、二点お聞きしたいのですが、ノースドックの場合もいままで数年間事実上遊休の状態にあったのですが、数年間全く閉鎖状態の施設があります。何度か委員会でも取り上げましたが、逗子の米軍池子弾薬庫という二百九十万平方メートルの広大な自然で、今度できました横浜のスタジアムが百以上入るという、南関東でもないような広大な地域です。これが御存じのように五十三年七月から全く閉鎖状態です。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕 三年近く無人のままいま閉鎖状態になっていますし、弾薬庫そのものの機能は停止をしている。弾薬ももちろん入っていません。一部第七艦隊の家具、資材等が若干置かれていますが、管理人もいないですね、いま。かぎは逗子の市役所に預けてある。たまにパトロールするだけということで、防犯や防火の対策でも地元では大変苦慮しているところです。いま閉鎖のまま利用計画も明らかにされていませんが、私がお話ししました現状にあるということは、施設庁も確認されますか。
  34. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 池子弾薬庫につきましては、昭和五十三年七月に正門を閉鎖して、現在、先生もおっしゃいましたように、在日米海軍の補給品置き場として使用されております。今後の使用計画についても、米軍としての使用計画を持っているものと承知いたしております。
  35. 中路雅弘

    ○中路委員 使用計画を持っていますと言うが、利用計画は何ら明らかにされていないじゃないですか。
  36. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 現在のところ、具体的な利用計画というものは明確でございません。
  37. 中路雅弘

    ○中路委員 今後の利用計画もなくて三年以上も無人のまま放置している、文字どおり遊休化された施設については、やはり返還するのが当然ではないかと思うのですね。特にここは、横浜市は災害避難緑地として計画がありますし、逗子市は国営の自然大公園の誘致も要望しているところでもあるわけです。神奈川県知事から最近も、五十四年の七月、五十五年の四月、地元からの早期全面返還の要請が繰り返し出されているところです。  私は、特にきょう一言お聞きしておきたいのですが、この弾薬庫の南部地域、久木地域は、いまおっしゃった資材も全く入っていないですね。そうした保管もされていない地域です。この地域については、最近逗子市で五十五年から六十年の都市計画基本計画の中で、その利用を含めてすでに計画が作成されているところですけれども、さしあたって資材も貫いていない、文字どおり無人状態の南部地域については、地元の要請にこたえて、少なくとも米軍と返還について交渉するということはぜひやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  38. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 池子弾薬庫地区の米軍の現在の使用状況等は先ほど申し上げたわけでございます。地元等に各般の御要望があることも承知しておりますが、今後の米軍の使用計画等を通じまして、地元の御要望とも調整してまいりたいと思っております。
  39. 中路雅弘

    ○中路委員 外務大臣、いまお聞きのように、施設庁が認めるように閉鎖状態なんです。三年間も無人でほっぽっておいて利用計画もいまのところないというところですから、地元からこれだけ強い要求もあり計画もあるのですから、これは施設庁とあわせて日米間で返還について話し合いはしていただけますか。
  40. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 池子弾薬庫の点については、外務省にも地元から御要望が参っております。十分承知しております。  そこで、現在施設庁の方でも検討しておると思いますが、私たちとしても、地元の御要望と、他方米軍を日本に駐留させているということがございますので、その目的と調和を図りながら、慎重に検討しながらこの問題をさらに進めていきたいというふうに考えております。
  41. 中路雅弘

    ○中路委員 繰り返し要望しておきますが、いま公式の利用計画がないのですね。そして三年も広大な地域が放置をされて閉鎖状態、弾薬庫としては全く使われていないところですね。各自治体でも具体的な計画を持っておるところですから、これはひとつ米軍とそういう要望を踏まえて返還について話し合いをしていただきたい。外務大臣にも一言、要請をしておきたいのですが、いかがですか。
  42. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま政府委員が言いましたように、三年も利用されていないというのも事実でございますから、地元の御要望も私はわからぬことはない、片方米軍に施設を提供している安保の目的のこともありますので、その辺どういうふうに調整するかという問題はありますが、これをどういうふうにするかということ、十分検討させてもらいます。
  43. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点だけお聞きしておきますが、米軍犯罪に関連しての問題ですけれども、日米地位協定でも、米軍の基地周辺での警察活動といいますか、日本人に対する米軍の犯罪、この秩序の維持等については、当然日本の警察が日本の法規に照らして取り締まる問題だと思いますが、最初にお聞きしておきます。外務省いかがですか。
  44. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 中路委員よく御承知のとおり、地位協定の十七条において、特に十項の(b)の中で、米軍が施設内はもちろん施設区域の外においてもアメリカ軍人の規律を維持するというために警察権を持っていることでございます。いま御指摘のありましたのは、恐らく横須賀地区で特にSP、ショアパトロールというのが行われて、米軍の犯罪防止のために巡回を行っているということを指しておられると思いますけれども、これは地位協定の中で認められております。しかし、施設外におけるアメリカ軍当局のこういう警察権の行使については、地位協定の上でも日本側と十分協議してやるということでございますので、今後とも日本側の警察その他とも協議しながら、地位協定の目的あるいは趣旨に沿って行われていくというふうに私たちとしては了解しております。
  45. 中路雅弘

    ○中路委員 日本弁護士連合会の地位協定問題の委員会がありますが、その弁護士の皆さんも三月、現地において調査に入って、新聞でも報道されておりますが、大変驚いておられるのですね。戦後三十数年たってまだ治外法権だ。横須賀の米軍相手の飲食店やみやげ物屋があります本町、汐入周辺、約一万人住んでおられますが、ここで日常的にある米軍の盗みやあるいは物を壊したとか日本人に対する犯罪、こうした犯罪について日本警察がほとんど実態も知っていない。先ほどお話しのSPが基地内に連行して後処理をしている。在日米海軍保安本部ですね。こういうことで、警察はどのくらい事件が発生しているかも十分実態を知っていないということで、警察に対する信用もない。非常に強くこうした意見も聞かれるわけです。  余り時間もありませんので、私は外務省と警察に一言お聞きしておきたいのですが、こうした問題について、やはり日本人に対する米軍の犯罪については、SPともちろん協力をするわけですが、日本国内法に照らして、悪質な犯罪については厳しく取り締まるということが重要なわけですから、いまの実態が、戦後三十何年たって治外法権だということが一般新聞でも堂々と書かれるような状態はぜひ早急に改善していただきたい。最初に外務省にお聞きしたいのですが。
  46. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 やはり目的は、いかにして地元における安全あるいは治安が保たれるかということでございまして、地位協定の趣旨もまさにそれに沿って、アメリカ軍人、軍属に対する取り締まりということは、米軍の警察権にゆだねられているわけでございますけれども、施設の外で行う際にはあくまでも、やはり日本の警察当局と協力して行うということでございまして、これを一概に治外法権というふうに言い得るかどうか、私としては必ずしも賛同しがたいわけでございますが、目的が地元の治安なり安全をいかにして確保していくかということでございまして、地位協定の趣旨もわが方の警察当局と十分協力するということでございますので、そういう目的で運用されるというふうに外務省として理解しております。具体的な点については、警察庁の方から御答弁があると思います。
  47. 中路雅弘

    ○中路委員 警察の方から一言。
  48. 水町治

    ○水町説明員 ただいまの点については、神奈川県警察におきまして、米軍人による犯罪を含めまして、住民の安全を守るため米軍人の犯罪の検挙に当たってきているところでございます。今後とも法律にのっとりまして、必要な捜査を徹底してまいりたいと思っております。
  49. 中路雅弘

    ○中路委員 新聞でも報道されていますが、あるスナック店主が、アメリカのSPに連絡しただけで年間百回にも及んでいるということを言っているのです。それで年間全部で横須賀警察署が発表している米軍の犯罪は二十四件、二十四人です。全く実態がつかまれていないということが問題になっているわけですから、これはもう答弁は必要ないのですけれども、ぜひ外務省、警察の方もこの問題についてはひとつ厳しく対処してほしいということを重ねてお願いしておきます。  先日、私四日間沖繩へ、変貌している米軍基地等について視察に参りましたけれども、これと関連して一、二点御質問したいのですが、直接一緒に参加をしました地元の瀬長議員の方から、これについて、私の時間の枠内で関連して質問させていただきますので、よろしくお願いします。
  50. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 瀬長亀次郎君。
  51. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 先月の三十日外務委員会で福地ダムにおける湖上訓練について質問した際、伊東外務大臣も淺尾北米局長も調査するということをお約束されましたが、その調査の結果、実情はどうなっていたかという問題ですが、この点について局長からでもいいから、まず御答弁お願いしたいと思います。
  52. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 三月三十日外務委員会において瀬長委員の方から本件について御指摘がございまして、特に国会における議事録にも言及されたわけでございますが、その際に、私の方からも実情を十分調査したいということを申し上げたわけでございまして、目下調査中でございまして、施設庁とも連絡しておりまして、もう少し時間をかしていただきたいと思います。
  53. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 実はきょうまでちょうど十日目なんですね。事は飲料水の問題だというので、外務大臣も非常に注意に注意を重ねて、問題はいま申し上げました沖繩全県昂の、特に八十八万人が飲んでいる飲料水なんです。十分調査して報告するということでしたが、いまだに調査できない。実はきのうも現場に連絡してありましたが、その結果は、この前指摘したような仮設物、これは使用後は撤去するという問題。それから衛生の関係には非常に注意するという問題。依然としてポールがまだ立っているのです。仮設物が撤去されておりません。それから集水区域に汚物がいまだに散乱しておる、さらに仮設の便所ですが、これも厳としてある。こうなりますと、時間をかしてくださいと言っておりますが、幾ら時間をかしても外務省がそういったような態度では何カ月後になるか私はわからぬと思うのですよ。事実大河原発言にもあったように四条件はチェックする。水中爆破はしない、恒久建造物は建てない、仮設建造物は使用後撤去する、最後に衛生の問題、これも十分注意するという条件をつけて湖上訓練、これは世界にないのですよ。日本にはもちろんない。NATO諸国にもないのですね。そうなりますと、ダム上における湖上訓練は、日本の沖繩の北部訓練場の福地ダムだけだということになる。この前申し上げましたが、こういったような調査するという約束を外務委員会でやりながら、まだ調査中では問題にならないんじゃないかと思うのですよ。一体いつまでにできるのか、返事できますか。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 瀬長委員が挙げられた問題が幾つかございまして、私たちとしていま鋭意努力中でございまして、拙速な調査の結果を御報告するよりも、十分調査した結果をあわせて御報告した方がいいという考えもございます。しかし、いつまでもということではございませんので、ごく短期間内に御報告できるということが言えると思います。
  55. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が申し上げましたように、現地ではこの点、国頭村長初め現地の村長さんたちは非常に関心を持っているのです。水源地でしょう。その集水区域でこういった汚物がある。それではお聞きしますが、そこに仮設便所が建っておる。ちょっとおかしいのですが、これが満杯になるとどういうふうに処理するのかおわかりですか。たとえば向こうは、後で問題にする対戦車ミサイルなどはヘリコプターでつって持っていきますよ。その汚物は集水区域を汚しちゃいかぬというわけだから、ヘリコプターあたりでどこかへ持っていくのか、それとも同じ場所で穴でも掘って入れるのか、そこら辺は返事できますか。それは条件ですよ。
  56. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 米軍のごみ処理、汚物処理等のことについてのお尋ねですので、現在北部訓練場で先生いろいろ御指摘の事実について、私はいまここで承知しているわけではございません。通常は現地で穴を掘って埋めるといったような処理をやっているようでございます。
  57. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ですから、私は、たとえば外務大臣も水の問題は大事だと言っておるから、多分アメリカはヘリコプターで持っていってどこか集水区域外に処理するんじゃないかと思っていたのですがね、そういうお返事を期待しておりましたが、まさに穴を掘って埋める、そのとおりなんです。しかもその穴を掘って埋めるでしょう。雨が降りますよ。それでいまの普久川ダムからずっと福地ダムに来て、福地ダムが一番最後のダムになるわけですが、そこへそういうものが流れてきますよ。それで浄水するから大丈夫じゃないかと言うのだが、飲料水の問題は、食紅を入れただけでも有毒ではないかという心理的な影響があるんだということで、最高裁では有罪と決定している、この前言いましたが。そういったようなところで汚物を、びろうな話ですが、海兵隊ですからね、駐とんする場合にはそこでやります。演習中はどこでやるか、わけがわからないんだ。実に危険じゃないですか。いまの施設部長のお話でもおわかりのとおり、これは外務大臣、どんなものですかな、外務大臣として、飲み水ですよ。その集水区域でふん便をたれ流しておるということになると、これはどうなんでしょう。
  58. 伊東正義

    伊東国務大臣 この前もお答えしたように、飲料水に関係するということでございますと、これは本当に注意の上にも注意するということは必要だと私も思うわけでございます。でございますので、いまいろいろ具体的な例を挙げてのお話でございましたが、私どもとしまして、事は飲料水のことでございますから、どういう方法という具体的なことまではなかなか言えぬかもしれませんけれども、注意の上にも注意するように、施設庁を通して向こうに伝えるつもりでございますし、なるべく早くこういうことでございますという返事ができるように、同じ質問を何回も受けますのも私も本意じゃございませんので、なるべく早急に結果が出ますように努力いたします。
  59. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務大臣にもう一言お聞きしますが、飲料水の問題、たとえば狭山ダムあたりの集水区域で、こういったような屎尿を穴掘って入れるなどということは許されませんね。それは許されぬですよ。どこのダムの集水区域でも、そういうような衛生上の問題を管理者は定期に検査されるのだ。それほど注意する。にもかかわらず、沖繩の福地ダムだけはそういうような汚物は穴を掘って入れるといまはっきり答弁された。私は情けなくもなるし、怒りを覚えますね。注意に注意してと言われるのは、そういうところではやるな、やってはいかぬ、あなた方の合意された条件にあるのだから、衛生上ちゃんと注意してやるのだと書いてある。仮設物も使用後は撤去する。こういうのを事実は守ってないのですよ。守っていないことは、いま施設部長が穴を掘って入れるのだと言ったが、まさにそうですよ。私も見ました。ちゃんと穴を掘って入れておる。こういう点を具体的に注意するというのじゃなしに、集水区域ではそういうことをやってはいかぬということを、アメリカ外務大臣、言えますか、言えませんか、どうなんです。
  60. 伊東正義

    伊東国務大臣 私の方としましては、直接担当は施設庁がやっておられるわけでございますから、これは衛生上十分注意するということで、そういう条件でやっておるということでございますれば、それが一体衛生上十分なのかどうかということは、いろいろ問題があろうと思いますので、施設庁の方へ厳重にアメリカに条件を守ってもらうということを伝えてもらうように言うつもりでございます。
  61. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 施設部長さんはどういう考えですか。
  62. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答えいたします。  水質の保全に努めること、これは米軍の演習に際しても当然注意してもらわなければならぬことだと思いますので、私どもとしましても、水の汚染を招くおそれのあるようなものがあれば、米側に注意を喚起してまいりたいと思っております。
  63. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは毎日飲む水ですからね。いまの問題いつやるのですか。
  64. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 演習場使用の問題でもございますので、そういうようなことがございますれば、随時米側に注意を喚起してまいりたいと思っております。
  65. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 もう一つ、湖上訓練についてお聞きしたいのですが、いま非常に細心の注意を払いながら、的確に調査結果が出るように努力すると言われましたが、現に外務省で把握しておられる湖上訓練、これは私が四十九年に内閣委員会で質問したときの大河原答弁、それから大平外務大臣答弁ですが、その後七カ年間アメリカは湖上訓練を何回やっているか、そこら辺はおわかりですか。
  66. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私たちの承知しているところでは、ことしは一回でございます。それから先ほど先生が御指摘になりました水中爆破、これは行っておりません。
  67. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が申し上げるのは、過去七カ年間で皆さんが合意された湖上訓練は何回やって、どういう訓練をやっておるか。多分七種類ありましたね。波乗り訓練とかボートで渡る訓練とかいろいろ説明されました。こういった訓練を含めて七カ年間でアメリカは何回やっておるのか。
  68. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答え申し上げます。  米軍の訓練回数等につきましては、私ども把握しておりません。
  69. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務大臣、いま施設部長が答弁なさったように、何回やっておるかわからぬというわけです。わからぬから、いま申し上げました四つの条件、水中爆破はやらぬ、恒久的な建造物を建てない、仮設物は演習後撤去する、衛生上非常に注意するといったようなチェックが全然やられていないということになりませんかね。大臣どんなものですか。
  70. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほどお答えいたしましたように、水中爆発をやってないというのは私たちは把握しております。それから本年やった訓練は、ゴムボートによる訓練というふうに承知しております。さらに御指摘の恒久施設をつくらないあるいは仮設物を撤去する、これは御承知のとおり、福知ダムが現在のところ二4(a)というステータスでございますが、それを二4(b)というふうに変更するという条件でございまして、まだ現在のところ二4(b)に移すという手続は終わっておりません。  いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますように、御指摘の点について目下鋭意調査中でございますので、ごく近日中に私たちの方からあるいは施設庁と十分協議して御回答できるという状況になると思います。
  71. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が申し上げましたのは、湖上訓練を何回やっているのかわからぬというわけだから、わからぬ訓練の中で、こういった四つのチェック条件は全然行われていないということになるんじゃないかということなんですよ。これはだれでもそう思いますよ、何遍やったかわからぬから。わかれば、そのたびにこういったことをやっちゃいかぬよというふうになりますね。ところが何遍やったかわからないです。それを言っておるのです。  先に進みますが、四十九年から現在までの七カ年間の湖上訓練の回数、何月何日にどういう訓練をやったか、その参加した隊員は何名か、どういう種類の湖上訓練をやったか、そういった点など詳しく調査して報告してもらいたいと思いますが、伊東外務大臣、お約束できますか。
  72. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 せっかくのお尋ねでございますので、私たちとして十分努力しておりますが、毎回の訓練について参加人員が何名か、あるいはどういう訓練を何時から何時までやったか、そこまでは実はアメリカの軍の行動でございますので、われわれとしてお約束することはできませんが、委員が御指摘の、特に水質の汚染について、地位協定に決まっている日本法令の尊重ということを守ってほしいという点については、十分アメリカ側とも話をし、また現状について把握していきたいと思います。
  73. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは飲料水の問題であり、この前の外務大臣のお答えにもありましたが、注意すると言うからには、国民の健康を保持するためには、せめていま私が申し上げました何年に何回やっているか、どういう訓練をやっているか、これがわからなければチェックのしようがないでしょう。だから、そういった意味で私は要望しているのですよ。こんなこともできない。ただ水質の汚染がないかどうかなんていうふうなことをやると言ってみたところでいかぬので、根本的に洗い直して、これは国民の前に出す必要がある。四つの条件が守られている、どういったような訓練がやられたか、毎回こういうふうになっているということくらいは外務省の責任でできませんか。できないというのは無責任ですよ。
  74. 伊東正義

    伊東国務大臣 提供しますときの条件が守られているかどうかということは、外務省としましても、本当に水の問題に関連するのですから、演習のたびにこういうものはちゃんと守ってもらいたい、あるいは恒久施設ばつくらぬとかいろいろあるわけでございますから、そういう四条件は厳に守ってもらいたいし、もしそれに反するようなものがいまあれば撤去してもらいたいとか、そういうことは外務省として当然施設庁から先方に伝えるということをやりますが、何回やったとかどういう演習の種類だったとか何人参加したかというようなそこまでは、軍の行動にも関係することでございますから、いまここで瀬長さんに私約束するわけにはいきませんが、いまの条件をちゃんと満たしているかどうか、それに反しているものはちゃんとしてもらいたいというようなことは、外務省として当然施設庁に言うつもりでございます。
  75. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは調査の結果の要望ですが、何名参加したかということまでいいですよ、何年にどういう訓練をやったか、どういう種類の訓練をやったか、このくらいは調査して報告してもらいたいと思います。これは要望しておきます。  次に、いわゆる五・一五メモで、北部訓練場におけるメモがあります。これは「合衆国軍は、本施設及び区域内にある指定された水源涵養林並びに指定された特別保護鳥及びその生息地に対し損害を与えないよう予防措置をとる」というものです。それに対して日米間において国内法の適用の問題でどういう合意がなされておるか。たとえば指定された水源涵養林の問題、指定された特別保護鳥及びその生息地、そういったような問題で日米間でどのような取り決めが行われているか、国内法との関連でちょっとお知らせ願いたいと思います。
  76. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答えします。  五・一五メモによる指定された水源涵養林及び特別保護鳥生息地ということでございますが、北部訓練場内におきましては、指定された水源涵養林というのはございません。それから鳥獣保護区が二カ所北部訓練場も含めて指定されているというように聞いております。
  77. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうしますと、国内法による指定があれば、米軍はそれを守るというように理解していいのですね。どうですか。
  78. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 日米間の合意でございますので、米軍もその合意を遵守するということでやっております。
  79. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは現在、農林省は水源涵養林の指定をしていない。環境庁も、国としては鳥獣保護区域の設定をしていない。これが指定されれば、アメリカはこれを守るというふうに理解してよろしゅうございますね。
  80. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 日米合意による米軍の遵守というものは、先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、水源涵養林の指定はございませんが、鳥獣保護区については二カ所指定してあるというふうに先ほど御答弁申し上げてございます。
  81. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 農林省はいま水源涵養林の指定はしていないのですよ。指定したとすれば、国内法だからアメリカは守ることになりますねという私の質問なんですよ。守るのですか。
  82. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 今後の指定というお尋ねでしたら、今後そういう指定があれば、五・一五メモの指定されたものになると判断しております。
  83. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 今度伊東外務大臣にお聞きいたしますが、いま農林省も環境庁も基地の中だからということでやっていないということでありますが、使用条件がちゃんと書いてあるので、両省に対して早目に、水源涵養林の問題にしても鳥獣保護区——これは非常に限られております。きのうの外務委員会ですか、共産党の金子議員がノグチゲラの問題を出して質問したと思いますが、大臣として、農林省や環境庁にも連絡をとられて、早目に指定するように要望してください。それはどうでしょうか、大臣。いま国内法を守るというのだから。
  84. 伊東正義

    伊東国務大臣 使用条件の中に、水源涵養林に指定した場合には、大きな形質変更をもたらすようなときには事前に連絡するとか、あるいは特別保護鳥の生息地の問題が書いてあるわけです。損害を与えないように予防措置をとるとか、使用条件が書いてあるわけでございまして、ノグチゲラのことにつきましては、きのう環境庁長官と私と一緒に出ていたわけでございますので、これは沖繩県庁で指定したものを政令でそのまま保護区に指定しているというようなことでございましたが、環境庁がすぐこういうことをやられるかどうかということについては、きのう長官が出ておりましたので、環境庁で判断をされると思うわけでございますし、水源林の問題は、農林省はいまここに出ておりませんが、瀬長さんからこういう質問があったということを農林省の方へすぐ伝えます。
  85. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後に、対戦車ミサイルの問題、TOWですか、これについてお尋ねします。  この前の外務委員会で淺尾北米局長が言っておりましたが、これは現地で話し合われている。現地と言えば、沖繩にあるのは施設庁の施設局ですか、その施設局しかないのですね。これは現地でどのような話し合いがされておるか、この問題、施設部長ですか、お答えできますか。
  86. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 北部訓練場に関するお尋ねだと思いますが、北部訓練場に関してのTOW、対戦車ミサイルの発射訓練について、日米間において検討されたことはございません。
  87. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 日米間で話し合われたことないのですか。
  88. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 私どもの局における現地調整の段階において話し合われたことはございません。
  89. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、この前外務大臣も、特に淺尾局長の方で、これは現地の方で話し合いが行われていると思うのでといった御答弁でしたが、これとの関連はどうなるのですか。
  90. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 北部訓練場における実弾射撃につきましては五・一五メモにもございますが、射撃場の指定、それから着弾区域の特定について、これは現地において米側との間で検討を続けております。その検討の中で、現在までのところTOW、対戦車ミサイルの発射訓練については、局と現地米軍との間で話されたことはないというのが現地段階での実情でございます。
  91. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が参りましたので、要望しておきますが、これは一九七〇年の十二月に、国頭村の伊部岳、そこにいつの間にか知らぬうちに射撃場ができて、そしてちょうど大みそか、十二月三十一日にヘリで大砲を持ってきたのですよ。そのとき約一万五千人ぐらいが山に上がって、着弾地点に行って、とうとう包囲状態になってやめたことがあります。その後はそこはやっておりません。本当にいつの間にか砲台が据えられて大砲が持ってこられた。復帰二年前なんです。これがいま申し上げましたように、万一TOW、対戦車ミサイルの射撃場、あれはバロー証書によりますと、ちょうどそこはおわん状になっているので一番適地だということになっております。この前外務委員会で申し上げましたので詳しく申し上げませんが、もしそういった申し出があれば、断固として拒否しなくちゃいかぬ、私はそれを要望します。あの対戦車ミサイルというのは大変なミサイルなんです。ですから、これを絶対に許容しないように、私重ねて要望いたしまして、質問を終わります。
  92. 江藤隆美

    江藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時六分開議
  93. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部行雄君。
  94. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 まず私は、伊東外務大臣とは先輩後輩の関係でもあり、同じ選挙区の関係もありまして、個人的には非常に尊敬をしておるものでございますけれども、何しろ党を別にしておりますから、政治的には真剣勝負のつもりでやる覚悟であります。どうかひとつ大臣もそのつもりで丁丁発止とやっていただきたいと思います。  まず最初に、今回議題となっております在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対して御質問いたします。  今度この法律案がどういう背景をもって出されたのか、ただ単に一つの国が独立したから大使館を新設したのだ、あるいは八十名の増員についても、一つの惰性として、順次やっていく六カ年計画の一環としてだけ考えられているものか、その辺の考え方、それともまた日本の外交を根本的に見直し、今後外務省組織の形態あるいは運営のあり方等についてその根本的な洗い直しをしていくのだという、そのきっかけとしての考え方に立っているのか、その辺についてひとつお伺いいたします。
  95. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 かねて御答弁申し上げておるように、外交自主体制の整備充実というのは、別に外務省自体が人をふやすとか予算をふやすということではなくて、これからの国際化の時代、あるいは多極化し非常に多角化した外交関係を処理するための内外の体制を充実するという趣旨からどういうことがあるかという点が、まさに私どもの毎年の予算折衝あるいは定員折衝の根幹にあるわけでございまして、そういうことを踏まえて、他方、一年ではできないということも多分にございます。時間をかけて充実整備するということもございますので、一定の制約の中でそれぞれの年度の予算、定員をどう取り上げるかという気持ちでやっているわけでございまして、そういう意味では、いま御指摘のありましたように、今後五年、十年先の、それよりもっと先の二十一世紀の外交体制というものをいまからどういうふうに手を打っていくか、どうやって人を養成していくかというような問題を常に意識してやっているつもりでございます。  それで、そういう中での五十六年度の予算並びにこの設置法の関係でございますが、予算の方では一番重視いたしましたのが、やはり定員の増強ということで、八十名の純増ということを予算上お認めいただきまして、その予算はすでに成立を見たわけでございますが、それと相関連いたしまして、ただいま御審議願っておる名称及び位置並びに給与に関する法律という中では、一昨日の提案理由で御説明いたしましたように、中身は大きく分けて二つでございまして、一つは機構面で、ジンバブエの大使館の実館の新設、そのほか若干兼館並びに昇格がございますが、そういう機構面における部面でございます。これは過去において一年間に二、三館実館を開いたのに比べますと、一館だけの開設ということで、どちらかというと規模は小さいわけでございます。  他方、第二の点でございますが、これが給与に関する部分でございまして、これは世界的に非常にインフレ傾向等々がございまして、在外における生活費あるいは住宅費が高騰しているという状況がございまして一日も放置できない。特に瘴癘地勤務者が総体的にふえているということもございまして、これに対する諸手当も配慮しなければならないということがございましたので、五十六年度の予算の編成においては、結局は定員と、それからただいま御審議願っている法律について言えば給与面の改定、その二点に最重点をしぼって御審議願っているわけでございまして、一口に締めくくりますと、今後の外交の児直しということにお答えするとすれば、やはり質と量、その両面からの改善を図るということに尽きるわけでございまして、そういう意味で御審議を願いたいと思っている次第でございます。
  96. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 二十一世紀に向かっての戦略的なねらいは、別段この設置法の一部改正に伴っては考えていないようでございますが、ただ、それにいたしましても、ずっと以前にも外務者の体制の貧弱さということでは国会の論議を呼んでおったわけでございます。しかも、外務省は定員拡充の六カ年計画をつくって順次進めておるようでございますけれども、これによってもイタリーを追い越そうとする計画ではないわけです。現在はインドよりも低い状態でありまして、これでは世界で二番目の経済成長を持っておる国だ、経済大国だ、こういうことが言えないと思うわけです。本当に日本が経済大国としての襟度を持ち、これから平和外交の指導的なあるいは主導的な力をつけていくには、外務省というものをもっと強化拡充して、特に在外公館の充実を図るということは欠かせないことだと私は思うわけでございます。しかも、それはそういう組織面ばかりではなくて、人員の配置にいたしましても言えることだと思います。いまは官僚の一番のエリートというと皆大蔵省ということになっておるようでございます。これは自他ともに許しているような事実でありますが、これからはもっと外務省に人材を集中しなければならぬのじゃなかろうか。  そういう点では、たとえばいま人員の問題でも申し上げましたが、給与の面におきましても、英国や西ドイツあるいはアメリカ等と比べますと非常に低いわけです。たとえば、ワシントンの給与の比較を見ますと、省に入ってから十五年たった者の給与月額で見ますと、日本は七十二万七千六百円、英国は九十九万九千百円、西ドイツは九十五万二千百円、あるいはパリの場合は日本が八十七万五千円、米国が百三万九千六百円、英国が百五万二千四百円、西ドイツが九十九万七千百円どいうふうに、日本の場合はずっと低いわけです。これではイギリスアメリカの外交官と対置した場合、同じ外交官として何かそこにひけ目を感ずるのではないだろうか。  よく日本は、口を開けば経済大国だと政府の人たちは言うけれども、しかし実際にそういう意識を持っているのだろうか。言うこととやっていることとは大分隔たりがある。最近アメリカが経済的に非常に行き詰まってきておるということを言いますけれども、何か日本人というのは表面だけ見て中身を見ない一つの癖があるのではなかろうかと私は思う。それは実際にアメリカへ行ってニューヨークの建物と東京の建物を比べれば一番わかりますよ。そしてニューヨークから東京に帰ってくると、ちょうど東京から田舎へ帰ったような感じである。これはだれしもひとしく感じておられると思います。日本の住宅がウサギ小屋だと言われても私はそのとおりだと思います。それを反論する人もおるようでございますが、実際に日本の経済は、表向きは華やかなようでも、その中身というのは非常に底が浅い、深みがない、奥行きがない、こういうことが言えると私は思うのです。  たとえて言うならば、アメリカの黒人のお手伝いさんは一日に四十ドル、日本の下手な公務員よりも月給にすればはるかに高いわけです。またこれを物価と比べながら換算していったらもっと高いものになるわけです。こういう賃金の格差、国の内容というものを見ないでアメリカは最近貧乏だ、日本は金持ちだ、こんな考え方でもし外交が進められるとすると、大変な過ちを犯すのではないかと私は考えるわけでありますが、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておられるか、お伺いいたします。
  97. 伊東正義

    伊東国務大臣 渡部さんにお答え申し上げますが、外務省の実情等に非常に深い理解を持っていただき、激励をしていただきまして、まことにありがとうございます。  私も外務省へ来まして特に感ずるのでございますが、昔の私どもの予想しておりました優雅な外交官といいますか、戦前私ら若いときはそういうことをよく考えたことがあるのですが、そういうものとはもう打って変わった状態でございまして、渡部さんも御承知のように、国連外交というふうなことで非同盟の諸国といいますか、第三世界がうんとふえたわけでございます。それで中を見ましても、そういうところにある公館というのは五十も超えたものが非常に小規模公館である。これは実際五、六人でやろうといってもなかなかできないわけでございますが、またそういう第三世界というのが世界の中で平和外交をやっていく上でも非常に大切になってきているというような状態でございまして、その中でいまの外務省の人々だけでやっていくというのは本当に大変なんでございます。量の問題もそうでございますので、質をよくしようということで、研修でございますとか適材適所でございますとかいろいろ考えておりますが、なかなか質の問題だけでは解決できない、どうしても量の問題も考えなければなりませんので、御承知のような計画を立てまして、少なくともまずイタリー並みの人員にふやそうじゃないかということでやっておるわけでございますが、ちょうど行政改革といいますかそういう時期でございますので、思うように定員をふやしてもらうということもなかなか困難でございます。その中でことしは御理解を得まして八十名の純増ということでやったわけでございますが、われわれとしては、本当にまだまだこれでは日暮れて道遠しという感じを持っておるわけでございまして、質の問題はもちろん量の問題ということにも一生懸命取り組みまして、情報の収集でございますとか、やらなければならぬことが前と違ってうんとあるわけでございますので、外交体制の整備充実ということにつきまして私も一生懸命取り組もうと思っておるわけでございます。  いま先生からいろいろ具体的な例を挙げて御質問でありまして、詳細は官房長からお答えしますが、日本の国益を守る、日本の進路を間違えないようにする、平和外交ということで一生懸命取り組んでまいるつもりでございますので、今後とも深い理解を持って御叱正、御鞭撻を賜りますことをお願い申し上げます。
  98. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ただいま大臣から私どもの考えておることを取りまとめて御答弁申し上げたわけでございますが、六カ年計画について言及をいただいたわけでございます。  私どもは、最小限のねらいとして昭和六十年までに本省、在外あわせて五千人ということを目指しておりまして、毎年の達成状況から見て、六十年にそういうふうになるかどうか率直に言って不安を覚えておるわけでございますけれども、このスローガンは高く掲げ続けていきたいと思っております。  イタリー並みということがよく言われますけれども、これは現在のイタリー並みということでございまして、イタリー自身も増強を図っておるというふうに聞いておりますので、追いつき追い越せというのは、追いついたと思ったときには向こうもふえているということもあり得るので、余りどこの国並みということなしに、むしろ五年、十年先の外交のあり方、どういう外交需要があるか、それに対するどういう配置ができるかという見地から、今後とも主体的に検討していきたいわけでございます。  大臣申しましたとおり質と量、これは両輪でございまして、その一方が欠けてもいけないわけでございます。私どもはこの量の充実と同時に質の改善、試験制度の改革、研修制度の重視、淘汰登用制度の活用、さらには民間やその他政府関係機関等との情報の交換、接触の強化、さまざまな工夫をこらしまして質の面からもカバーしていく、日本人の勤勉ということもございますので、それらをあわせて総合的な外交体制の充実ということになるわけでございますし、また最近いろいろ機械、技術の発展もございまして、例を一つとりますと、電信の機械化ということが非常に進んでおります。そういうものにつきましてもいろいろな開発を行いまして、電信量が十倍になっても電信官は二倍そこそこでやっておるわけでございますが、そういう面からの機械化あるいは省力化というものもあわせて今後重視していきたいと思っておるわけでございます。  それから、人事の点について御指摘がございましたが、エリートは大蔵省というお話もございましたが、私どもは毎年上級職試験、専門職試験、初級職試験をやっておりまして、昨年私自身もその委員長をやりました実感から申しますと、相当な人材が受けに来てくれているという点は、実は力強く感じている点でございまして、自分の一生の職業として対外関係の処理、外交関係の問題を扱いたいという若い諸君が全国各地の大学出身者、非常に広いバラエティーの中から受けに来ておられる。私どもは単に学術の試験ということだけにとらわれずにたくましい外交官、やる気のある男というようなことにも気を配って選考しておりますので、われわれの後に続く人材の確保については、実は比較的楽観しておりまして、むしろそういう者を採った後どうやって研修させるか、どうやって彼らの入ったときの意欲を維持し発展させるかという辺に力を注いでいきたいと思っておるわけでございます。  もう一つ具体的な問題として、諸外国の外交官との給与の比較の点を御指摘があったわけでございます。各国とも在外給与制度というのは、いろいろ昔からの経緯、特に西側の諸国の場合は、従来の植民地経営の経験等の上に立ってずっと積み上げてきた制度でございまして、金額だけで比較するのは非常にむずかしいわけでございます。私どもの得ている資料では、先ほど御引用いただきましたように、ほかの先進諸国と比べて二、三割方少ないという数字も出ているわけでございますけれども、こういう諸外国の例は、今後とも貴重な資料として参考にはしたいわけでございますが、在勤法の在勤諸手当の決定は任国における生活事情、物価事情、住宅事情、そういうものを毎年詳しく調べまして、また前年と比べてその翌年がどのくらいふえたか、高くなったかというようなことを調べた上で計算して改善を図っているわけでございます。その際に諸外国の例は十分に参考にしていきたいという点は、ただいま御指摘のあったことと同じように私どもも考えている次第でございます。
  99. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ただ、惰性のようにいままでのしきたりを守るというか、それから一歩も出られないで物を考えておったのでは飛躍というものはないのじゃないか、そういう垂直思考法ではなくて、水平思考法で少し思い切った考え方を持ち込まないと、日本の外交はどんどん立ちおくれていくのではないか。特に伊東外務大臣は、内閣総理大臣臨時代理までやられた大物ですから、こういう大物大臣ができた機会に思い切ったことをやらないとできないでしまうのじゃないか、こんなふうにも考えるわけでございます。ですから、こんなちゃちな六カ年計画なんというものを捨ててしまって、本当に二十一世紀に対応する外務省体制ということで新たな練り直しをやってはどうか、こういうふうに思うわけです。しかも、外交というのは継続的なものでございますから、外務大臣が二年や一年でかわるようなことでは、本来どうすることもできないわけです。ソ連外務大臣グロムイコは何十年やっていますか。そういう中で日本なんか手玉にとられていく、こういう経験をしているんだから、外務省の人事というのはもっとその辺を十分考えていただきたい。たとえば在外公館に勤める大使やその他の参事官等についても言えることですが、外交を瀬戸際で何とかするというふうになるためには、どうしても相手国高官あたりと相当個人的な親密さといいますか、おい、君という呼び方で呼べるような関係をつくり上げないとむずかしいというのが出先の外交官の実感であります。だから、そういう一つの体制に持っていくためにどうあるべきかというのを、ただ模索だけでなくて真剣に検討する必要があるのではないか、このように私は思いますが、いかがでしょうか。
  100. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃいましたように、特に在外公館の人々の勤務年数の問題でございますが、その任国の十分な情報を得て仕事をするには、余り短期間ではだめなことはおっしゃるとおりでございまして、もう最低三年ぐらいはどうしてもかかると私は見ているわけでございまして、余り早くかわるという実態は、確かに先生おっしゃるとおり好ましくないということには同感でございます。ただ、余り長くなっても弊害が出るという問題がございますから、その辺のところはうまく考えなければなりませんが、任国の政府と十分な連絡がとれるように、そういう期間が大切だということはおっしゃるとおりだと思っております。
  101. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで人材の養成でございますが、人材の養成も外務省の試験を通ってから初めてやるというようなことでなしに、大体日本外交の重点はどこに置くのか、この辺をやはりはっきりさせる必要があろうかと思うわけでございます。というのは、アメリカやあるいはヨーロッパのいわゆる西側陣営との外交に重点を置くのか、それとも第三世界、発展途上国に外交の重点を移していくのか、この辺がやはりこれからの大きなポイントになるのではないかと私は考えるのですが、いつもアメリカやECとは自動車やテレビやその他の製品で摩擦を起こして、一方に経済戦争と言われる非常に先鋭な対立を抱えながら、他方で軍事協力を要請されて集団安全保障の中に組み込まれようとしておる、こういう一つの相矛盾した動きが続いていけば、ますます日本は危殆に瀕するのではないか。むしろそんなところにトラブルを持ち続けるならば、この際第三世界に思い切った援助をやって、その援助の中から資源を日本に輸入し、あるいは日本の製品をどんどん輸出していく、こうして第三世界の開発と援助に力を入れた方が、これから三十年、五十年、百年という将来を見通した場合には、私は非常に重要な一つの外交的基盤になっていくのではないだろうか、こういうふうに考えられるわけでございます。ひとつそういう点で、外務省の外交の重点、それに従って人材の養成、たとえば外国語ですね、アラビアに重点を置くならアラビア語をどんどんと日本にもっと専門的にやる人の層を厚くしていくとか、いろいろ私はあると思うのです。あるいはその風俗を若いうちから教え込むとか、そういうものを計画的にやっていくことが大事なのではないか、こんなふうに考えますが、いかがでしょうか。
  102. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生おっしゃった外交の基本の問題でございますが、日本の外交の基軸というのは、やはり日米関係だと私は思っております。日米安保というものの上に、日米関係の平和、友好、協力ということが日本外交の基軸だ。その上に立ちまして、経済問題あるいは政治問題で考え方の一緒ないわゆる西側の諸国と十分連帯、協調してやっていくということが日本外交の基本だと私は思います。といいましても、それだけということじゃないので、いま先生は北側のいわゆる先進工業国の発展というのは、南側の発展と非常に関係があるということをおっしゃったわけでございまして、これはそのとおり、やはり相互依存ということからも、あるいは世界の平和ということからも考えて、第三世界と十分連絡、協調を保っていく。おっしゃいました経済協力というようなことも、そういうことを主軸にしまして考えていくということは当然だと私は思うわけでございます。その上に立って、どの地域にもいろいろな政権があるわけでございます。社会主義の政権もございますれば共産主義の政権もあるということでございまして、そういう政権を何も敵視するということじゃなくて、そういう国々とも友好関係は保っていくというのが日本外交の基本方針だと私は思いまして外交と取り組んでいるわけでございます。  いま先生のおっしゃった、特に第三世界といいますか、南北の南の問題でございますとか、そういうところを重視する意味で、たとえば語学その他でそういう人を養成していくことは大切じゃないかとおっしゃったのはそのとおりでございまして、いま具体的な例は官房長から申し上げますが、そういうことにもいままでと違ってより以上の力点を置いていかなければならぬという先生のお考え方は、私は同じでございます。
  103. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ただいま人材の養成という点について非常に貴重な御示唆をいただきました。私どもも、基本的にはやはり外交をやるのは最終的には人間であるという当然の認識に立ちまして、特に近年地域的にもまた問題別にも非常に専門化が進んでいて、専門問題が非常にふえているということもございますので、上級職、専門職あるいは初級職を問わず、いわゆるゼネラリストも必要ではございますけれども、それ以上に専門家の養成ということに力を注いでいるつもりでございます。  ただ、専門家の養成というのは一朝にして成りませんので、ことし採用した者が専門家として使えるのは十年先というようなことでございますから、これは息の長い仕事でございますけれども、そういう努力を払っておるつもりでございまして、現在上級職合格職員につきましても、英、仏、独という言葉のほかに、スペイン語、ロシア語、中国語、アラビア語、朝鮮語、ポルトガル語等を研修させております。またこれら上級職合格者につきましても、やはり何か専門の分野を持つように、言葉であれ、あるいは問題別であれ、経歴や適性を考慮して能力を最大に発揮させるという工夫は、最近は従来以上に講じているつもりでございます。そのほかに最近でも毎年四十数名の人を専門職試験というものによって採用しているわけでございますけれども、それらの者につきましては、約四十カ国語のいわゆる特殊語学というもののさまざまな需要を勘案いたしまして養成しているわけでございまして、そのときどきには、アフリカ、中近東等の特別な言葉が非常に要るわけでございまして、そういう場合には途中からの採用その他の方法もあわせ講ぜざるを得ない状況ではございますけれども、やはり世界各国において今後いろいろな必要性が生じますので、それを目指しての専門家の育成ということになりますと、世界じゅうの主要な言葉については何人かの人間がこれをマスターしているという状態は絶対に必要であるという考えに立ちまして、計画に従って、すべての言葉を毎年というわけにはいきませんが、採用した人数の中からいろいろな言葉を選んで研修させているわけでございます。  それから、それ以外にも現に在外公館に発令になった職員につきましては、特にその者が特殊語学あるいは英、仏、独等以外を母国語あるいは公用語とする任地に参ります者につきましては、派遣前研修ということを励行いたしまして、少なくとも日常の会話等はできるような状態になって赴任するということに努力するとともに、現地におきましても研修をやらせまして、早朝研修とか週末とか、そういう先生をとっての現地における現地語の学習ということも、特に五等級以下の若い職員についてこれを励行するというようなことを行っておりまして、それらこれらを合わせまして、まさに御指摘の人材の養成ということは、先ほどお話が出ました情報収集機能、そのための相手国への食い込み等々の私どもの任務から見ても、最重要事項として今後も続けてまいりたいと思っております。
  104. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 肝心な答えのところを外さないようにお願いいたします。私はそういう一つの内容を例として挙げて、だからそういうものを直していくには、いまの体制をひとつ見直す気にはならないのか。つまりこんな人員の拡充の問題にしましても、いまイタリーだってこれを拡充しているというのに、イタリー以下の目標で六カ年計画なんというものを後生大事にしておったらどんどんおくれてしまいますよ。しかも、イタリーと日本を経済力といい、人口といい、比べたら比べものにならないわけですから、こういう立場から言うならば、むしろ日本イギリスよりも強化しておらなければならないのじゃないか、こんなふうにも考えられるわけです。しかも、これから第三世界と相当密接な関係を築いていくとなれば、相当多様性を持たなくちゃならない。それに対応するには、いまからその準備に着手していかないと、いよいよというときにおくれてしまうのじゃないか、こういう心配がされるわけでありますから、その点はっきりとお答え願いたいと思います。
  105. 伊東正義

    伊東国務大臣 渡部先生から、質的に何かやり方を変えなければいかぬじゃないかというお話でございます、私もそれを否定するわけではございません。もっともっと質も量も考える、あるいは外交の取り組み方ということについて、もっと情報の収集とかを積極的にやれるようにするということ、これはわかります。  ことしも、実は予算をやりますときにいろいろ具体的にどうやったらそれができるかということを行政管理庁長官とも私は話したことがあるのです。ただ、どうも微力でございまして、それが実現しないのはまことに申しわけないのでございますが、いまのままでいけば、定員一つとっても百年河清を待つようなものじゃないかとおっしゃることはわかりますので、これはまた予算のときだけということじゃなくて、一年間その問題に取り組むという考え方で、私ども何とか充実してまいりたいということで真剣に取り組んでいくつもりでございます。質的に変えろというお気持ちはわからぬではないのでございますが、なかなか微力でそこまでいかぬことだけはまことに申しわけございません。努力が足りなかったのでございますが、今後とも努力をしてまいるつもりでございます。
  106. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 それではちょっと趣向を変えてお聞きしますが、それじゃ在外公館というのは、その主な活動範囲は一体何なのか、これをひとつわかりやすく御説明願いたいと思います。
  107. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 在外公館の主な活動範囲というお尋ねでございます。これはいろいろな説明の仕方があると思いますけれども、やや条約的な側面から申し上げますと、これは外交関係に関するウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約というものによって基本的な枠組みが決められているわけでございます。  外交関係に関するウィーン条約によりますと、相手国において自国を代表すること、自国民の利益を保護すること、相手国政府と交渉すること等を外交使節団の任務として掲げておるわけでございまして、また領事関係に関するウィーン条約におきましては、相手国において自国民の利益を保護すること、自国と相手国との間の通商上、経済上、文化上及び科学上の関係の発展を助長すること、査証、旅券等の発給を行うこと等を領事の任務として掲げているわけでございます。
  108. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ただいまのは外交関係に関するウィーン条約の第三条に出ておりますが、私はそういうことを本当に効果的に達成するにはどうあるべきか、どういう体制が一番望ましいかという、物の推敲と申しますか、考え方をどんどんと発展させて矛盾を解決する積極的な態度が外務省幹部にはなければならないと思うのですよ。そういうふうにして考えてみますと、こういう設置法の一部改正などという一つの機会というのは、全体を見直す機会としても非常に重要なチャンスじゃなかろうか。そういう際に、一応いままでの外交に対する反省をどういうふうにされておるのかということが当然問題になってくるのではないかというふうに考えられるわけです。  そこで、いままでの日本外交というものは本当に国際社会の中で、あるいは国際連合の中で十分な力を発揮してきたのかどうかというふうに考えますと、必ずしもそうではない。日本では大変経済大国とかあるいは非常に先進国とか考えておるようですけれども、国連舞台の中では、まだまだ日本というのは東洋のサルくらいにしか思われていないのじゃなかろうか。というのはなぜかというと、まず一九七一年の七月十五日にニクソンが中国訪問を発表しました。これは日本は全く寝耳に水で全然知らなかった。この問題は、ただアメリカが中国を訪れるというだけの問題じゃないのです。これはアメリカの国策の一大転換なんです。これを知らないで過ごしたなどという外務省の責任は許せないのじゃないか。しかも、このことでは警告を発しておる人がいるのですよ。それは朝海警報と言われて、この方はこういうことを言っておる。「ある朝日が覚めてみたら、アメリカが中国と手を結んでいたということが起きないか、私は毎日それを気にもんでいた」これが朝海浩一郎という、かつてのアメリカ大使の任務を終えてから間もなくの言葉であったわけです。ところが、外務省はこういう大使の言葉をまるきり無視していたわけですよ。そうしているうちにこのような事態になって、全く日本の頭越しに米中関係が改善されていったという歴史的な事実。  さらには、第二十六回国連総会における中国代表権の問題はいまなお記憶に新ただろうと私は思うわけであります。この中国代表権の問題で日本は非常に甘く読んでおった。ところが、実際に票をあけてみたら日本の思惑はみごとに外れて、中国はその意のとおりに国連の舞台で代表権を獲得した、この歴史的な事実。私は、何をやっておったのか、一体日本外務省の情報というのはどういう方法でどこから収集しているのか疑わざるを得ないわけです。  そればかりではありません。さらに一九七八年十一月十日の国連安保理の非常任理事国の選挙においてバングラデシュにみごとに敗れた。私たちはバングラデシュに敗れるとは毛頭考えていませんでしたが、外務省もそんなことはゆめゆめ思わなかったと思います。しかし、実際に開いてみたら八十四対六十五が第一回、第二回が八十七対六十一とだんだん差が開いて、ついに第三回は辞退したという全く惨めな醜い姿を国連の舞台で露呈したのであります。これは日本のひとりよがりがアジア諸国からの反撃となってあらわれた証拠ではないだろうか、この辺に対する反省は一体どのようにされておるのか。  それから、その次は金大中事件であります。一体日本の国は自分の国土の中にある人間の生命を守る責任を持たないのか、正当な居所を保障する責任がないのか、こういう問題があるわけですが、これらの問題についてはどのような反省をされておるのか、お伺いいたします。
  109. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生がおっしゃったある朝日が覚めたらということは、私も実は外務大臣になりましてから常に考えておることでございます。情報の収集の問題、それを解析する問題、そして正確な解析の上に立って外交をやっていかなければならぬということはおっしゃるとおりでございまして、私もそのことは十分注意をしているつもりでございます。おっしゃいました例は、みんな私は一々反駁したり否定したりするつもりはございません。私どももそういう感じを持ったのでございまして、私はそういうことが二度とあってはいかぬというふうに思いまして、部内の諸君にも、情報の問題につきましては私も口酸っぱく注意をしております。今後とも情報収集の問題、正確な判断の上に立って外交をやるということには十分心がけていくつもりでございます。  昨年は安保理の非常任理事国の二度目の選挙でございましたので、前のことを十分反省しましてみんな軌を一にしてやったわけでございまして、世界の大多数の賛成を得まして当選したというようなことでございまして、今後ともいまおっしゃいましたことには本当に十分注意して、ある朝目が覚めたらというようなことが二度とあってはいかぬということで外交問題に取り組む決意でございます。
  110. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 御答弁は十分でありませんが、ただ私は、そういう一つの反省というものがはっきりと今度の新予算の中にも、あるいはこういう法案の中にも出てくるようにしてほしい、これが一つの希望であります。  それから、金大中の問題には全然触れて御答弁になりませんでしたが、けさの新聞を見ますと、金大中氏に対する判決文を一市民団体が入手したということが出ております。その内容も出ております。外務省が入手できないものを一市民団体が入手する、逆に言うと一市民団体が入手できるものを外務省レベルで入手できない、しかも敵対国でなくて日韓協力という国際的な協力をやっていながらそれが入手できないということは一体どういうことなんでしょう。日本外務省の責任はどうなんでしょうか。その辺をひとつお願いします。
  111. 伊東正義

    伊東国務大臣 私もけさ新聞を見たのでございますが、それが果たして本物の判決文なのかどうか、あれだけで判断する私には能力はございませんので、この点は時間をかけて調べたいと思います。  従来私ども向こうの政府にかけ合いまして判決文の手交ということをやったわけでございますが、韓国側は判決文を関係者以外の者に出すことはできないという一貫した態度でございまして、要旨だけが私の方に渡されたということで、要旨で大部分のことは判断できるということで、一応無期という結果になりましたので、私どもはその後は判決文の要請はやってないわけでございます。でございますので、きょうの新聞に出ておりますことを韓国の政府にも確かめて、もし先生のおっしゃるようなことであれば、われわれも手交してもらうのはあたりまえのことでございますし、その辺のところはもう少し時間をかけて調査をさせていただきたいと思うわけでございます。
  112. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この新聞記事が本当であるかどうかはわからないと申されましたが、政府が韓国から受け取った、政府が信じている話というのは、実際判決文の中にはないようなんです。それは法務士が判決の際口頭でつけ加えただけのものであるということが判明したとここに書かれている。そうなると非常に重大なことになるのではないか。大体判決文というのは秘密であるはずがなかろうと思うのです。判決が出る前の段階だからそれは言えないというのなら話はわかるけれども、出てから日本に対してその判決文を手渡すことができない。またそれが市民団体に流れるようなものであるとすれば、日本外務省の情報収集能力あるいは韓国に対して一つの権威というか、日本立場を全く無視されているのじゃないか、私はこういうふうに考えられてならないわけです。しかも、この金大中事件の本質は、日本の国の中にあって起こった事件ということなのであります。これは主権侵犯事件ですよ。同じようなケースは西ドイツにもあった。ところが西ドイツは原状回復させた。こういう一つの国際的な事実、比較の中で、日本のとっておる外交というのは全く弱腰で、こんな外交で独立国家の外交と言えますか。  竹島の問題だってそうでしょう。北方領土はツバメのようにきゃあきゃあ言うけれども、竹島の問題は全然触れようとしない。私は北方領土で文句を言ったりいろいろ言うのが悪いと言うんじゃないのですよ。そのことが外交の中にどんな影響を持っていくかということを考えなくちゃならぬのじゃなかろうか。そういうことからすれば、今度の金大中氏の判決文というものはどんなことをしても入手しなければならない責任が外務省にあると私は思うわけです。そしてもしこの記事が本物ならば、政治決着というものは御破算になって、そこで初めてもう一度金大中氏の原状回復を図る。そうでなければ日本の独立国家としての権威なんかは口に出せるものじゃないんじゃないですか。これを外務大臣はどう考えておられるか、お伺いいたします。
  113. 伊東正義

    伊東国務大臣 金大中事件そのものにつきましては、政治決着があったわけでございまして、私どもはその政治決着を尊重するという政府として一貫した態度をとっておるわけでございます。ただ、果たして公権力の介入があったかどうかということについては、捜査当局がまだ最後まで捜査をするということで残っておるということを私どもは知っておるわけでございます。政治決着は政治決着として私どもは尊重するという立場でおるわけでございまして、今度の事件が政治決着に反するかどうかという問題でございますが、私どもは、韓国からの判決の要旨によりましても、日本における言動については友好国との関係を考えてこれは問わない、国内の言動の証拠で判決をしたということの判決要旨をもらっておるわけでございまして、私どもはこの問題は政治決着に反するものではないというふうに考えておるわけでございます。  判決文の問題は、われわれは判決文を日本にも手交してもらいたいという要請は最後までやったわけでございますが、向こうは関係者以外には出さぬということで判決文の手交はなかったということは確かでございます。私は、その過程においては、判決文を手交してもらうということが本当に両国の関係を考えれば大切だと思って要請をしたわけでございますが、向こうのそういう事情で手交されなかった。そして判決が出まして無期ということになったわけでございまして、金大中氏の身辺について重大な関心を持っているということを伝えておったのでございますが、無期ということになりましたので、これ以上いろいろ言いますことは、また内政干渉にもなるおそれがあるという判断をしまして、今後の日韓関係からは金大中氏の問題は一応ここでピリオドを打った方がいいんじゃないかという判断で、その後は判決文の手交は要請はしていないという現状でございます。
  114. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大臣、こういう判決文が出てこないならば、一応そういう答弁もまあまあというところだろうけれども、実際ここではこういう問題が含まれているんですよ。日本政府に手渡さない判決文が一市民団体の中にもうすでに明らかになったということ、しかも、その判決文の中身は明らかに日本での行動にかかわっているということ、しかも、それが第一番目に指摘されておる。そうしたら、いままでの経過と違う結果が出てきたのですから、大臣は韓国に向かってその判決文を再要請して検討する責任が当然あると思うのです。これが第一点。  第二点は、外国人が日本に旅行したらその生命の保障は日本はしないのですか。金大中氏がいま無期懲役になったからといって、もし日本におられたならば、あのときに原状回復をしておったならば、こんなことにはならなかったはずです。監獄にもぶち込まれないで済んだはずです。それがあのように無期懲役という刑に服さなければならないというのは、日本政府が金大中氏を保護しなかったから、生命を保障する措置をとらなかったからこうなったわけで、その原因はまさに日本政府の責任にあると言わなければならないと思うのですが、この二点についてお伺いいたします。
  115. 伊東正義

    伊東国務大臣 判決文につきましてはさっきお答えしましたが、その新聞に出たものが判決文であるのかどうかということは、私はいまここで判断する能力がありませんから、これは調べてみますということをさっき言ったわけでございます。でございますから、その判決文はそのとおりのものかどうかというのはわれわれとしては調べてみるつもりでございます。  それから二番目の点は、これはあの当時を思い出しましてもいろいろ問題があったことは確かでございますが、日韓両国の最高下脳力総合的に判断して政治決着ということをやったわけでございますので、その日韓両国の当時の首脳の判断を尊重するということで私どもは考えてまいるということでございます。
  116. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ちょっと大胆、非常に話がずれていると思うのですよ。答弁が私の聞かんとすることに答えていないと思うのです。私は、過去の日韓政治決着をどうこうしろ、それを認めたのがどうだこうだと言っているわけじゃないし、この新聞記事が正しいか正しくないかの議論をしているのじゃないのです。一応判決文が新聞の上で明らかになって、そしてその内容まで新聞に出ておる。そうすれば、当然その中身の真偽について調査する責任があるだろうと言っているのですよ。たとえば、死刑の判決が出た、しかしその後にその人を無罪にする証拠が出てきたら、それは再審の請求をするのがあたりまえのことで、またその証拠を認めれば裁判所も再審の請求を取り上げなければならない。同じように、いま現実に日本政府が手にすることのできなかった判決文の内容が明らかになったのですから、これが本当なのかうそなのかということを韓国政府にただすことすらできないでしょうか。そんなに日本政府というのは弱腰なんですか。その辺についてはっきりと答えていただきたい。もう一度これは、韓国政府にこの判決文はどうなんだということを聞いて、そしてその判決文が日韓の政治決着に違反しているならば、それは日本の責任という立場で政治決着を見直すということが当然そこから引き出されるのじゃないだろうか、これが論理じゃないでしょうか、その点についてお伺いします。
  117. 伊東正義

    伊東国務大臣 新聞に出ていますのでそれを検討さしてもらいたいということを先ほどから言っておるわけでございます。まず調べてみなければならぬわけでございます。調べた上にこれは本当のものかどうかということを聞くということはあたりまえのことだと私は思うわけで、そういうことは検討というところに当然入っていると思うわけでございます。  それから、政治決着というのは、あれをお読みになるとわかるのですが、帰ってからのまた反国家——反国家運動でしたか、何か言葉は覚えていませんが、そういうことがない場合にはという条件がついているのです。しかし、そのことは別にしまして、まずわれわれは、政治決着に反していない、向こうの判決要旨にもちゃんと書いてあるということで判断したわけでございます。判決文をよく検討するということは、当然私ども検討はいたしますけれども、ただ、裁判自体は向こうの国内の裁判でございまして、日本がその裁判の結果をどうこうと言うことは内政干渉になるおそれがありますので、いままでは裁判の内容についてどうこうということは言っていないわけでございます。これはあくまで韓国の国内問題ということで判断をした。ただ、金大中氏の身辺については、ああいう拉致事件がありましたので日本としては重大な関心がありますという意向を何回も向こうに伝えたというのがいままでの経緯でございます。
  118. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は、判決文の内容そのものに日本政府がタッチしろと言っているのではなくて、日韓両国間の取り決め、それに判決文がかかわっている場合は、そのかかわりの部分については日本政府はただす責任があるのではないか、こういうことでございますから誤解のないようにお願いいたします。この問題ばかりもやっておられませんから、その点はひとつ十分御検討されるように要望いたします。  そこで、このように列挙しましたが、日本の情報収集力というのは全くお粗末そのものであると言っても過言ではなかろうと思うのです。日本がこれから本当に外交を展開していくには、まずもっと大きな立場から外交というのを見なければならぬのではなかろうか。福田内閣のときは全方位外交ということを盛んに言っておりましたが、鈴木内閣になってからは日米を基軸として西側陣営に重点がかかっているように思われますが、この点については一体どうなのでしょうか。全方位外交を転換したのかどうか、その辺について基本姿勢をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  119. 伊東正義

    伊東国務大臣 全方位外交の定義がこれは必要だと思うのでございます。外務省ではたしか全方位外交ということは言っていないはずでございます。どういう定義をするかということでございますが、いまわれわれ言っておりますのは、さっきもお答えしましたが、基軸は日米の友好関係が外交の基軸だ、そして経済、政治、そういう問題について考え方を一緒にする西側の一員としてその連帯、協調を保っていく、そして世界の平和、安全、繁栄ということに努力するのだということをさっきも申し上げました。ただ、それだけではない、第三世界との関係もさっき申し上げましたし、どの地域にもいろいろな政権があるわけでございます。共産党の政権もあればあるいはその他の政権、いろいろあるわけでございますが、これを敵視し敵対するということではなくて、できるだけの平和友好関係をどの国とも維持していきたいということが日本の外交の考え方でございます。ただ、原則は日米友好、安保をもとにしたこれが基軸、そして西側の一員としてということを原則にしていまのようなことを考えていくのだということを言っているわけでございます。そういう意味では、全方位外交ということと余り違わぬと私は思うのでございます。ただ、全方位外交というのは無原則なのだ、八方美人的なものだというふうなことではないと私は思うわけでございますので、私の言ったような意味と先生が考えられる全方位外交というのはそう違っていないのじゃないかな、私はこう思っているわけでございまして、何も大平内閣、鈴木内閣になって福田内閣と外交方針が変わったのだということではないと私は解しております。
  120. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは言葉の問題ですから私はそれほどこだわりませんけれども、言ってみれば、全方位というのは全面外交と変わりはないんじゃないかと思うのです。方角の方位というあれですから、易学あたりでも出てくる言葉であるし、そういう点ではいわゆる全部に向かってという意味だろうと思うのです。  ただ、それじゃそこに全部同じようにかという重点の持ち方にはいろいろな問題があるかと思うのですが、そういう点では全面外交と言えば一番手っ取り早い、わかりやすいのではないかと思うのです。しかし、全面外交というのは一つの歴史的な経過がありまして、サンフランシスコ条約のときから日本社会党は全面講和を打ち出して、そういう立場で全面というものを使ってきましたから、自民党の方々は全面という言葉は使いたくなかろうと思うのです。しかし中身においては、概念にはそれほどの隔たりはないんじゃないか。ただ、いま大臣が言った日米を基軸として、日米友好を基本に置いてということですが、このことは後で私はもっと深く掘り下げますけれども、こういう形でいくと日本は、ますます日本の本当の完全な独立から遠ざかっていくのじゃないだろうか、むしろアメリカの従属国としての色彩を強めていくのではないだろうか、こんなふうに考えられても仕方がないわけです。  そこで、そういう基本的な問題を考えていくには、いまの国際情勢の分析が一体どうなっているのか。日本国際情勢の分析とアメリカ国際情勢の分析とが果たして一致しているのか食い違っているのか。この辺からただしていかなければならぬのではなかろうか、こんなふうに考えるのですが、大臣は、いま日本の置かれておる立場から世界を見回したときに、どういう情勢であると御判断されるのか。また、日本が将来平和で安全に繁栄を続けていくにはどういう条件が日本に必要なのか、その辺についてお伺いいたします。
  121. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本が平和で繁栄を続けていくには、世界が平和、安定、繁栄ということ、の平和、安全がなければ日本の平和、安全はないというふうに私ども考えておりますので、日本も、日本の経済的な力といいますか、あるいはその他総合的な力を世界の平和のために尽くしていく、そして日本もそれに連動しまして平和、安定、繁栄を保てるということが日本の平和、繁栄の基本だと私は思っておるわけでございます。  世界情勢の認識でございますが、八〇年代の国際情勢というのはかなり厳しい国際情勢だと私は見ております。といいますのは、特に現象的に表面にあらわれておりますのは、他国に対する軍事介入というようなことがアジアでも一つカンボジア問題にありますし、またアフガニスタンに対するソ連の軍事介入という問題もある。あるいは中東のイラン・イラク紛争あるいは中東全部の平和の問題というものになかなかきな臭いような情勢もある。中東の問題の陰に東西の問題というのもちらちら出てきているということでございますし、ソ連が軍備の増強をしているということも確かでございますので、国際情勢というものは非常に厳しい八〇年代の国際情勢だというふうに私は認識をしております。しかし、その中にあって、何とかして平和を保っていこうという努力をすべきだということもまた強く考えております。
  122. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、朝日ジャーナルの「風速計」というところに出ておったのですが、大臣は、第一に、日本アメリカ世界情勢についての認識を回しくしている。二番目に、強いアメリカをつくろうとの努力に敬意を払う。三番目に、西側の一員として協力する。四番目として「憲法や非核三原則もあり、アメリカ要求通りには行動しない。できることと、できないことがあるという。」こういう趣旨のことを言われておるわけですが、アメリカ世界情勢分析と一致しておるという認識が成り立つとなれば、レーガンはいまどういう分析をしておるかと申しますと、まず今日の世界情勢のこの厳しさというのは、南北問題よりも東西の対立に大きなウエートがある、そこに問題があるのだ、あるいは経済援助よりも軍備拡大に重点を置かなければならない、南北問題というものはアメリカでは影が薄くなってとらえられているのではないだろうか、こう判断されるわけであります。そこで、日本もやはりこのような判断に立つというふうに外務大臣はお考えでしょうか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  123. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまいろいろおっしゃいましたが、この間行って、基本的にはアメリカ国際情勢の認識と大きな違いはございません。大体基本一緒でございましたが、その中で南北問題でございますとか中東の問題でございますとか、そういう問題になってきますと、いろいろ意見の違うことがございました。ただ、基本的には、いまの国際情勢の緊迫化ということの一番大きな原因は、やはり東西関係にあるということは大体一致をしたのでございます。たとえばソ連の軍備の問題.アフガニスタンに対する問題、ポーランドの問題はまだそのときは緊迫した姿では出ておりませんでしたが、ポーランドの問題等も議論しましたし、あるいは極東軍の増強、北方領土に対する軍備の充実とかカンボジアの問題とか、いろいろ話をしたわけでございまして、まずアメリカがいまやっておりますのは、経済が強くなければいかぬ、自分の国がまず強くならなければいかぬということで、経済再建計画をつくりまして、これの実現ということをやっておるわけでございます。その上に立ってソ連との力のバランスの問題とか、そういうものが平和を維持していく上には大切だというような基本的な考え方で行動をしておるわけでございます。そういう問題につきましては大体認識は一致したわけでございます。  ただ、先生のおっしゃった経済よりも軍備だということではなくて、経済の問題もしっかりしなければ、これは力の問題といっても経済が弱くては何ともだめじゃないか、経済を強くしなければならぬというようなことがあったわけでございまして、それから派生する問題としていろんな問題を議論したのでございますが、南北問題等につきましては、南北問題というのは、やはり世界の平和にとって大切な問題なんだ、東西問題だけで世界を見るという見方よりも、たとえば経済協力でも、南北問題を経済協力の重点にすべきだという議論をしたり、あるいは中東の問題で、キャンプ・デービッドでアメリカがイスラエルとエジプトの和平ということをやっておられる。それは結構だ。それは第一歩だが、それをまた延長してパレスチナ人の自決の問題、こういうことを基本的に解決しなければ包括的な平和はやってこない。その場合に、PLOというものも平和交渉のテーブルに着けるべきではないか。イスラエルの生存権ということをパレスチナも認める、またイスラエルもパレスチナ人の自決権というものを認めるということで中東の恒久的な平和が達成できるのではないかというようなことをいろいろ議論をしたことは確かでございますが、先ほどから申し上げますように、私はやはり日米関係の友好協力ということが日本の外交の基軸であるということは、向こうにも言いましたし、日本としてはそのとおりと私は考えているわけでございます。
  124. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そういう場合の発言ですが、私は非常に誤解を招くと思うのです。日本国際情勢の認識はアメリカと同じである、こうなると、基本的には同じだが、その他では違うとなると、またちょっとニュアンスが違ってきます。それでは基本的にどこがアメリカと同じなのかということ、基本的な問題がアメリカと全く同じというのはどの点なのか、こうなりますから、アメリカ立場でのアメリカ情勢分析はわかるが、日本としてはこうだというふうにしていかないと誤解を受けるのではないか、私はその辺を一つ心配しておるわけであります。  つまり、私はなぜこの情勢分析をこれほど重大視するかというのは、いまの世界のこの緊張状態、混乱というのは、米ソの対立が基本なのか、あるいはワルシャワ条約機構と北大西洋条約機構との対立が基本になっているのか、それとも南北問題が基本になっておって、その背後に米ソという力関係が作用しているのか、私はこの辺のとらえ方によって日本の自衛のあり方というものが大きく出てくると思うのですよ。そのとらえ方があいまいだと、ただ軍備をふやせば自衛が成り立つような錯覚に陥る。その辺についてお伺いいたします。
  125. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま国際情勢が非常に緊迫しているということを私申し上げたのでございますが、これは一番は、私はやはり東西関係だと思うわけでございます。ただ、紛争地域をいろいろ考えますと、たとえばイラン・イラク問題等を考えますと、これは直接には何も東西関係ということではございませんが、中東の全部を考えていきますと、基本的には民族問題、宗教問題、そういうことが本当はもとだと私は思うのでございます。最近は、どの国はソ連寄りだ、どの国はアメリカ寄りだ、そこにまた東西関係が影を差してくるという問題がある。あるいは東南アジアのインドシナ半島の問題をとりましても、一つは、後ろにソ連があるのではないか、後ろに中国があるのではないかというような問題があり、回り回って最後はアメリカではないかというようなことがあるとか、南北関係もいろいろ手繰っていきますと、後ろにまた東西関係の影があるというようなことでございまして、私は基本的にはやはり東西関係が多いというふうに思っているわけでございます。  ただ、その中で、いま先生おっしゃったように、軍備の増強だけすれば日本は平和だということではないのではないか、それはおっしゃるとおりでございまして、アメリカとも話したときに、軍事力というのは日本の個別的な自衛権で、それは日本を守るだけなんで、防衛というものは広く考えなければいかぬ、経済協力もあれば平和外交の外交努力もあれば、いろいろな面から世界の平和に日本は協力していく、西側の一員としてもそういう広い立場で協力していくんだということを私は言ったわけでございます。
  126. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、東西対立が基本でありて、そこに南北問題が絡み合っている、こういうふうに理解していいかと思うのです、こういう情勢分析をする場合に、よく右か左かをはっきりさせたがる人がおりますけれども、こういう情勢分析というのは、右か左か、その範疇をはっきりさせるのではなくて、ありのままに正確にするのが一番大事だと私は思うのです。ですから、たとえばアフガニスタンの情勢とまたポーランドの情勢とは質的に違っておるし、あるいは南北朝鮮の問題もこれまた違うし、エルサルバドルの問題も当然違ってきておるわけです。しかし、そこから一つの共通性というものを引き出すことは非常に重要であって、地球全体をながめてなぜ紛争が起きるのかということを考えた場合に、やはり宗教観の差というものも全然否定するわけにはいきませんけれども、とどのつまりは貧富の差が問題になっているのではないか、したがって、その経済格差というものを地球上からどうなくしていくかというその努力が非常に大事ではないかというふうに考えるわけです。特に日本のように四面を海に囲まれておって、しかも資源がほとんどない、高度な労働力は持っているけれども資源がない、こういう国で立っていくには、どうしても外国との取引をしなければならない。その外国との取引なしには生きていくことができないわけですから、そうすると、当然そこから外国との取引が安全にとり行われなければならないということが出てくるわけでございます。そうなると、その取引を安全に、しかも全世界の国々を相手にこちらの国がだめならばその隣の国というふうに、いつでもどこからでも資源を輸入して、また製品を輸出するという体制をつくらなければならない。そうするには日本世界からまず信頼を受けるということが前提でなければならないと思うのです。それにはやはり日本は独自の外交を展開し、本当に日本は平和を愛する国だ、そして世界各国の方々に日本の高度な技術と頭脳と労働力を提供して、この世界の中の貧富の差を縮めていくんだ、そういう一つの努力をする国だというふうな認識というものを全世界の人々にしてもらわなければならぬのじゃなかろうか、こんなふうに考えるわけですが、その点についてはひとつ大臣はどのようにお考えでしょうか。
  127. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま最後におっしゃった信頼ということ、これは本当に外交をやっていく上に非常に大切なものだと私は思います。この間外務省に新しく入ってきた人にも、私は先輩として訓辞ということで言ったのですが、その中で信頼ということは個人間ももちろん、社会に出てももちろんだが、外交でもこれはもちろん非常に大切なことだと私は言ったのです。やはり相手国から信頼を得るということが私はまず第一だというふうに思っております。そういう意味で信頼を失うというような国としての行動をしないように十分気をつけてまいるつもりでございます。  それから、先生がおっしゃった貧しさということが紛争の一つの種になるのじゃないかということ、これも私はそのとおりだと思います。戦争の原因というのはそれだけが原因だとは決して申しませんが、大きな原因の一つだと私は思うのです。貧しさということから社会不安が出てくる、それがいろいろな政治不安につながる、そこに世界のいろいろな関係がまた錯綜するというようなことで紛争になるということは考えられることでございますので、まず貧しさをなくす努力をすることが私は本当に大切なことだと思いまして、経済協力の基本もその貧しさをだんだんなくしていく南北問題ということに中心を置くべきだというのが日本の考え方でございまして、その点は先生と非常に似た考え方で外交と取り組むつもりでございます。
  128. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、今度はいよいよ問題になってくるのが、平和で安全であるというためには日本はどういう措置をとるべきかということになるわけです。そこで、いつも問題になるのが自衛権の問題でございます。この自衛権の問題ではおとといですか、外務大臣は個別自衛権について憲法上許されている、こういうお答えでしたが、個別自衛権というのは何に対して個別なんですか、それをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  129. 伊東正義

    伊東国務大臣 国連憲章でも集団的な自衛権と個別的な自衛権ということを言っておるのでございまして、何に対してと言われれば、集団的な自衛権に対して個別的な自衛権ということで私は言・葉を用いております。
  130. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 集団に対して個別と言われましたが、そうすると、個別自衛権は憲法違反でなくて集団自衛権は憲法違反である、このように解釈していいでしょうか。
  131. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 そのとおりでございます。
  132. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は憲法をずっと読んでみましたが、どこにも個別自衛権とか集団自衛権ということは書いていないわけです。そうすると、これはどこで憲法に根拠を求めたわけでございますか。その個別と集団、集団が憲法違反で個別が憲法違反でないというその論拠を明らかにしていただきたいと存じます。
  133. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先ほど外務大臣からもお話がありましたけれども、国際法上国家は個別的自衛権及び集団的自衛権の両方を持っているわけであります。これは本来は国家の固有の権利として当然認められているところであります。しかし、わが国の場合はそのうち憲法によって集団的自衛権が禁止されている、こういうふうに従来から解釈されているわけでございます。ここで集団的自衛権というのは、自分の国が直接攻撃されていないにもかかわらず、自分の国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自分の国に対する攻撃と同じように実力をもって阻止することが正当化される、そういうものであるというふうに解されますが、わが憲法は自国の安全を維持し、その存立を全うするために必要な措置をとることはもとより認めていると解されますけれども、それはあくまで外国の武力攻撃によってわが国民の生命なり自由なり、あるいは幸福追求の権利が覆される、そういう急迫不正の事態に対処して国民の権利を守るためにやむを得ない措置として初めて容認される、こういう考え方をとっているわけであります。そこで、そういう事態を排除するためにとられるべき必要最小限度の範囲わが国の自衛権の行使はとどまるべきである、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は憲法上許されない、こういう理屈になるわけであります。
  134. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 個別自衛権と集団自衛権が国際法上許されているというのは、国際法の何に出ているのですか。
  135. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  個別的自衛権及び集団的自衛権を国家が有するということは、国連憲章の五十一条にはっきりと書いてございますし、またそれ以後におきましてわが国の平和条約、サンフランシスコ平和条約でございますが、あるいは日ソ共同宣言あるいは日米安保条約の前文等におきまして、わが国のみならずそれぞれ相手国日ソ共同宣言の場合にはソビエト連邦、日米安保の場合にはアメリカ合衆国、いずれも各締約国が個別的及び集団的自衛の権利を有するということが書かれているわけでございます。これは国際法上の問題としてそういうことになっているわけでございます。
  136. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は、自衛権というのは法律以前の問題だと思っているわけです。憲法に積極的にこれを否定していないからあるんだという解釈の仕方は非常に問題があると思うのです。それじゃ憲法にないものは皆適当に解釈していいのかという論理に発展してもいたし方ないと思うのです。自衛権というのは、生物が生きるために必要な持って生まれた権利であって、生まれたときからその権利は付随しているものじゃないだろうか。それは、たとえばヤムシには毒という一つの武器があり、これは攻撃用かもしれませんけれども、あるいは防御用にも使われる。カブトムシにも角がある。象は力を与えられた。人間は英知を与えられておる。こういうふうにそれぞれに、この地球の上に生きていくために必要な防御措置といいますか、逆に言えば繁栄のための手段というか、そういうものは法律で定められたからあるのではなくて、法律以前のものとして、だれが認めようが認めまいが基本権として存在するのだ、こういうふうに解釈するのが本当じゃなかろうか。そうでないと、この自衛権をめぐって常に憲法の議論がされており、憲法を見る限りどこを見たって自衛権を認めておるというふうには解釈できないわけで、しかも日本の憲法は「戦力は、これを保持しない。」こういうふうになっておりますから、そこで問題がいつも出てくるわけです。  ただ問題は、自衛権とこの戦力というものをイコールで結びつける考え方が比較的多いところに問題がある。自衛の方法、手段というものは総合的なものであって、決して部分的なものではないはずです。そして、その自衛の基本的な権利に対して憲法はどのように作用するか。憲法はその権利を行使する方法、手段を規定しただけのことじゃないだろうか。そこで、その憲法と基本権との調整、調和、整合性と申しますか、こういうものを図っていくのが政治家の役目であり、それが政府の最も重要な任務であろうと考えるのですが、この点について法制局長官はどのようにお考えでしょうか。
  137. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 ある国が、その国に対する急迫不正の侵害がある場合に実力をもってそういう侵害を排除する、そういう意味の自衛権につきましては、いま渡部委員がおっしゃいました比喩とは恐らく同じことであろうと思います。ただ私どもは、先ほど国家固有の権利としてそういうものは当然憲法が否定しているはずはない、こういうふうに申し上げたわけであります。そういう意味の自衛権は、憲法以前という言い方が正確かどうかは別として、憲法がそれを否定するはずはないと思います。  しからば、そういう自衛権を行使する手段としては、これまた憲法によっていろいろな定め方が可能であり、また、憲法の枠内で自衛権を行使する手段なりそれを裏づけるための実力としてどういうものを整備するかということは、それぞれの国の政策の問題であるという意味におきましては、渡部委員がおっしゃったとおりだと思います。
  138. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、自衛権を一つの方法、手段、対応という点で憲法九条があるわけですが、ここで、戦力というものはどの程度から戦力と規定するのかということが当然問題になってくるわけです。しかし、一時的に戦力はこれですよということを規定してみても、国際情勢は刻々と変わっていくわけでございます。自衛という問題は相手のあることで相対的な言葉ですから、そういう相対的な関連の中で考えなければならない。そうなると、一時規定しても、その次の段階でまたその規定は変えなければならなくなってくるのではないだろうか。そういう場合の戦力の規定の仕方は一体どういうふうに考えておられるのでしょうか。
  139. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 御承知のように、憲法九条二項でいわゆる戦力の保持が禁止されているわけでございます。先ほど来申し上げておるように、私どもとしては、自衛権というものは憲法によって否定されていない、同時に自衛権の行使を裏づける必要最小限度の実力を保持することも九条では禁止されていない、九条で禁止している戦力はそれを上回るものである、こういう理解をしているわけであります。  しからばそこで、憲法で認めているいわゆる必要最小限度の実力と、それを上回る戦力、つまり憲法では禁止している戦力との限界いかんということになろうかと思います。おっしゃるように、そういうものの具体的な限度については、本来そのときどきの国際情勢とか科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面があることは否定できないと思います。したがいまして、そういう限界を数量的に示すことは非常に困難だと思います。結局は、常に申し上げていることでございますけれども、毎年度の予算、法律等の審議を通じて国民代表である国会においてそれを判断するほかはないということでございます。
  140. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 必要最小限度というその限度が示されないで、それを上回るということがどうして確定できましょうか。私はこれは言葉の遊戯でしかないと思うのです。いままでの政府答弁を読んでみると、必要最小限度までは憲法違反でないが、それを越えると憲法違反だという。それでは必要最小限度とは何だというと、これは具体的には全然明らかにされていない。そしてそれを越えたものはと言うが、どこから越えたかわからないのに、これが憲法違反だとか違反でないという議論がどうしてできますか。その点についてはいかがですか。
  141. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 それは常に問題になるところでありますけれども、憲法規範というものの性格としては、あるいは事の性質からいって、一義的に、ここから越えたならば憲法違反であるというようなことが憲法から直接出てくるわけにはどうしてもいかないと思います。憲法解釈としては、いつも申し上げているように、やはり必要最小限度の枠を越えてはいけないということが規範としてぎりぎり言い得ることであろうと思います。結局それはだれが判定するかといいますと、国民が判定をし、さらに具体的に言えば、国民代表である国会が判断をする。ここまではよろしい、ここまではいけないということは、いまの憲法の規定からは直接一義的な答えは出てこないと思います。
  142. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、私もこの点について、そこの判断は国民がしなければならない、やはりこれが一番正しいと思うのです。そうした場合に、いろいろな関係国政選挙が行われますから、そういう一つの雑物の入ったもので選択をさせてはならない。ずばりこの憲法について、いまの軍備はこれこれですよ、これこれに対する国民のコンセンサスはどうなっているのか、同意は求められるのか、こういうことで国民投票をして、これを明確にしていかないと、これほど憲法上に問題を抱えた問題の責任は政治家だけで負い切れるものではない。こういう重大問題は、国民全体の共同責任で負うという形、手続、立場、こういうものをつくっていくのが当然ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  143. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 一般論を申し上げる以外にございませんけれども、いま御提案になりました国民投票という問題につきましては、わが憲法というのは直接民主制でなく議会中心主義をとっておりますから、特に憲法で認めている憲法改正のための国民投票であるとか、地方自治特別法の国民投票など、特に憲法が認めているもの以外の法的効果を持った国民投票というのは、現行憲法の上ではできないことだと思います。  ただ、おっしゃるような意味の国民投票というのが、ちょっと言葉は悪いのですが、一応国民の意見を聞くというか、世論を調査するという意味の、法的効果は直接持たない、つまり国会を直接拘束しないような意味の国民投票であれば、これはしかるべき法律をつくって、国会国民の意見を参考に聞くということであれば構わないと思います。これはかつてある党からそういう御提案がありまして、その際に政府が申し上げたところの理屈でございます。
  144. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そういうことは政治家が判断することでありまして、もちろん法律上ないから、そういう手段で政治的に国民の納得を取りつけていくということが民主国家には非常に必要じゃないか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、いまの個別自衛権、集団自衛権ということになると、ある程度交通整理をしていかないと、何かすっきりしないものがいま日本に動いているように思うのです。たとえば日米共同作戦計画にいたしましても、あるいはリムパックにいたしましても、また今度の中東紛争に対する西側の日本に対する一つの要請にしましても、だんだん日本が西側の一員、西側の一員というふうに認識を深めていくと、いつの間にか集団安全保障と申しますか、集団軍事同盟に加担せざるを得ないという一つの流れが出てくると思いますが、この辺については大臣いかがでしょうか。
  145. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほどから自衛権の問題が出ておるわけでございますが、日本は集団自衛権にということは法律上できないことははっきりしているわけでありますから、個別自衛権以外に足を踏み出すことは憲法上あり得ないし、そんなことは考えていることじゃないわけでございます。  いま先生は、集団的な自衛権じゃない、集団的な安全保障という意味のことをおっしゃったわけでございますけれども、西側が自分の責任で自分の防衛をやっていくということの相談をすることは、私はあり得ることだと思うのですが、しかし、それはあくまで個別自衛権の範囲内のことだというように考えております。  また、イラン、イラク等からの問題でいろいろな要請があるとかいうことは、実際公には一切ないわけでございますから、その点は誤解のないようにお願いを申し上げます。
  146. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 たとえばイラク、イランあるいはサウジアラビア等から石油を運んでくるルートを安全に確保したい、その際に日本もひとつ協力してくれ、こういうことになりましても、いまの防衛といいますか、戦闘のあり方と申しますか、そういうものは一国ではどうにもならない、数カ国が一緒になって連係動作をしないと、敵に対して勝利をおさめることができない、こういうことは、今度は一つの純軍事的な立場から言うと当然考えられることであるわけですが、そうなると、この個別自衛権というものが崩れていくおそれがあるのではないか。しかも、この集団行動と責任の分担あるいはそういう一つの慣習と申しますか、一緒に行動すれば、その行動の一員としての責任を要請されるというのは、国際的にも普遍的な一つの原理になっているのではないだろうか、こういうことを考えると、自分の利益になるときには一緒に行動するが、今度いよいよ危なくなったら、いや私は憲法でそれはできませんよと言って果たして逃げられるものか。またそういうことをやっていったら、日本がその同盟国といいますか、友好国と申しますか、それと友好を維持することができるでしょうか。その辺については、軍事的立場からは防衛庁の方、それからいまの総合的な問題では大臣からお伺いいたします。
  147. 伊東正義

    伊東国務大臣 軍事的な問題は防衛庁の方から答えてもらいますが、私ども西側の一員だということを言ったわけでございますが、そのときに私は、日本としては軍事的にやれるということは個別自衛権だけなんで、それしかこれはもうできない、それ以上の軍事的なことを期待されてもそれはできない、ただ日本は、安全保障という問題は広く考えている、軍事的な問題はもちろんでございますが、外交的な問題、たとえばいま先生がおっしゃいましたホルムズ海峡からインド洋を通ってマラッカを通って日本に来るわけでございますが、その国々との間で平和友好を保てるような外交努力をしていくとか、あるいは南北問題というのを頭に置いて経済協力を考えていくとか、いろいろな多方面にわたって日本は考えるんだということを言い、アメリカもその点は、個別自衛権しかないということははっきり理解をしている。常に私は、防衛問題はブッシュ副大統領、ヘイグさん、ワインバーガー国防長官と話したのですが、三人とも日本の憲法がちゃんとあるということは十分知っているということを前提にいろいろ話をしたわけでございますので、私は、日本の平和憲法という立場は、やはり相手国から理解を得ている、また得るように説得をすべきだと思いますし、そのことによって友好関係が損なわれるということがないようにやっていくのがわれわれの外交努力だというふうに思っております。
  148. 塩田章

    ○塩田政府委員 軍事的観点からということでございますが、いまのお尋ねにつきまして外務大臣のお答えで実は尽きておるように思うわけでございます。と申しますのは、日本の場合、日本の防衛につきましては、自衛権の範囲内で防衛力を整備しておりまして、これによりまして自衛隊を設置して防衛に当たっておるわけでございますが、御承知のように、同時に日本は日米安保体制ということの中で日本の防衛ということを考えておるわけでございます。その場合に、日本立場は個別的自衛権の立場であり、アメリカとそういう前提に立って日米安保条約を結んでおるということは、アメリカ側もよく承知しているわけでございまして、その点は先ほど外務大臣からお答えがあったとおりでございまして、あくまでも日本の場合、個別的自衛権に立った防衛であるというふうに申し上げることができると思います。
  149. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 防衛ということを考えた場合に、私は、一つの何といいますか、原則的な法則性と申しますか、そういうものを無視していろいろな定義をつくっても、いよいよ現実の局面に立たされた場合は、規則を乗り越えて法則性が作用してくるというふうに考えられるのです。というのは、たとえば専守防衛ということで、ここまでは敵を追い返していいが、ここの一千海里から先の方は追い返してならない、そこまで追ってはならない、こういうふうに取り決めをしておいても、いよいよその周辺で海戦が行われてある程度こっちが優勢に立って敵が逃走しようとした場合には、それは構わず追いかけてせん滅するというのが戦争の法則だと私は思うのですよ。そういう法則性というものを一体どのようにとらえているのかというのが一つの問題点なんです。  そこで、この憲法上の自衛権というものと防衛のあり方というものをどういうふうに調和させるか。このことについて真剣に考えていかないと、その場に来て常に変更しなければならない事態に立ち至るのではないだろうか。そしてこのように軍備をどんどん増強していくということは、逆に言わせると、それだけ戦争の危険性が増大しているということではないでしょうか。これは私はそういうふうに思うのです。  そこで、これからお伺いしたいのは、法制局長官も時間があれでしょうから、先にその方を片づけたいと思います。  自衛隊の制服組から、いまの軍事予算は非常に少ないと、特に前の統幕議長の竹田さんが所々方方でいま盛んに演説会をやっておるようです。講演をしておる。その中で、GNP比一%というのは問題にならない、三%が必要だと言いたいが、三%でなくともいい、せめて二%あればというような話をしておるようですが、制服組と文民統制というものの境界線は一体どこにあるのか。制服組というのは、与えられた条件を駆使して、最高の戦闘効果を上げられる訓練をするのが制服組ではないだろうか。私は予算の問題は少なくとも政治の問題だと思います。その政治の問題に口出しをしていくようになれば、やがて文民統制というものはいつしかもう全く効力のないただ一書き物にしかなっていないという事態になる危険性がある。この点について、この文民統制と制服組の行動範囲というものがどの辺で区別されるのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。これは防衛庁と、なお法的にひとつ法制局長官からお願いいたします。
  150. 塩田章

    ○塩田政府委員 制服組が与えられた条件のもとでベストを尽くすべきである、これは私も全く同感であります。また現にそうしておるつもりであります。ただ、たとえば予算にしましても、あるいは必要な防衛力の整備に関しましてもいろいろ意見を持っていることは当然であります。その意見を政策の決定の前にいろいろ述べるということの必要なことは、むしろ私どもこれは必要なことだと思っております。ただ、防衛庁の中でそういった議論をいたしまして、防衛庁として決まり、あるいは政府の予算として決まったという以上は、その与えられた条件の中でベストを尽くす、これはまたきわめて当然なことであろうと思います。いまの具体的なお話の、前の竹田議長が現在いろいろ講演会をしておられていろいろなことを言っておられるという御指摘でございますが、やはりもうすでに制服でなくて、現役でなくて、おやめになった方が具体的にどういうことをなさるかということにつきましては、これはやはりいま先生から御指摘がありました制服組といわゆるシビリアンコントロールの限界というものがどこにあるかという点でございますが、これは個人の思想の自由、発表の自由ということで許されることではないかというように考えるわけであります。
  151. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 文民統制というのは、御承知のとおり政治が軍事を統制することというふうに言われておりますが、具体的な制服の人と政治との関係につきましては、いま防衛局長が前段で答弁したことがそのままで結構だと思います。
  152. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 制服を脱いでから言っていることは、別段私はそれほど問題にしないのですが、問題は制服を脱ぐ前からそういうことを言っておって、しかも防衛庁の制服組では統幕議長となると最高の地位です。この人がその地位を去ったから何でも言っていいという立場で政治批判をどんどんやると、やはり制服組が文民を乗り越えて前面に出てくるような国民の印象があると思うのです。少なくとも文民統制下ではそういう印象を与えることすら差し控えなければならないのではないだろうか。そのことに制服組が一層神経質に頭を用いるようにならないと、本当の意味で武器を持っている者を持たないまる腰の文民が統制するということは不可能だと思うのです。だからこそ私は、制服組がこのシビリアンコントロールというものの重要性についてどういう認識を持っているか、ここが何よりも大事だと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  153. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のような事例で、一般国民にシビリアンコントロールが行われていないんではないかというような印象を与えることは厳に避けるべきである、全く同感であります。そういう意味におきましても、私ども平素の防衛庁内あるいは防衛庁内外におきますシビリアンコントロールの確立ということについては十分配慮していく必要があるというふうに考えております。その点におきまして渡部先生と同感であります。
  154. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大体これで、あとは外務省だけにしますから、防衛庁と法制局長官はお帰りになって結構でございます。  そこで、大臣にお伺いいたしますが、日本の外交というものの基本に軍縮外交というものはどういう位置づけになっておるのでしょうか。
  155. 伊東正義

    伊東国務大臣 軍縮の問題は特に核軍縮でございますが、日本はああいう経験をしたわけでございますので、軍縮というものにつきましてはあらゆる機会に世界に訴え、そして世界じゅうがそれに向かって努力をしなければならぬというふうに私は思っております。この間アメリカへ行きましても、軍縮の問題、実はSALTIIでございますとか、軍術管理の問題とか、いろいろ話したのでございます。片っ方で力のバランスということはあるけれども、やはりそのバランスは低いバランスの方が望ましいじゃないか、そういう意味で核の問題でも、軍備管理、SALTの交渉というものは続けるべきではなかろうかというような意見を述べたときに、ヘイグ国務長官は軍縮というものはよくわかるが、軍縮というものは一人歩きするんじゃなくて、安全保障の中で軍縮というものをどういうふうに考えるんだ、安全保障というものを頭に置きながら軍縮を考えなければいかぬということを自分たちは考えているというような話があったわけでございますが、私も去年の国連総会で核軍縮を中心に意見を述べましたし、前には園田さんが外務大臣のときに、やはり国連の総会で演説をしておられますし、スイスの軍縮委員会では、常に日本代表が核軍縮を中心にして軍縮問題の必要性ということを述べているわけでございます。これは非常にむずかしい問題でございますが、しかし、人間の英知としてそれに取り組んでいくということが大切だというふうに思っております。
  156. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この軍縮の問題は、確かに総合的な安全保障という見地とかかわり合いを持ちながら考えなければならないのはそのとおりだと思います。しかし、それにいたしましても、国際的に合意を見たものについては、その努力が積極的になされなければ私は何にもならないと思うのです。  そこで、一九七八年の国連軍縮特別総会において、わが国基本的な軍縮の考え方を世界に向かって発表しているわけであります。この内容を若干読んでみますと、わが国立場と主張という一つの中で、わが国は、世界で唯一の核兵器の惨禍を体験した国として究極的に核兵器をこの地上から廃絶することを強く希求しており、平和憲法の精神に基づき、経済大国であっても軍事大国とはならず、その持てる力をもっぱら国の内外における平和的な建設と繁栄のために向けることを基本政策としています。したがって、わが国にとって国際的な軍縮努力に積極的に参加することは、平和外交の重要な一環であるということができます云々と述べられて、さらにわが国としては、全面完全軍縮の達成という究極目的に向かって実行可能な措置を一つずつ積み重ねていくことが望ましく、またこの方法によって初めて軍縮の分野における前進が可能であると考えていますと述べられておりますが、この考え方はいまもお変わりありませんか。
  157. 伊東正義

    伊東国務大臣 理想に向かっていくという考え方は変わっておりません。
  158. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 これは非常に重要な文句がたくさんあるわけでございます。そこで私は、本当に日本の軍縮に対する熱意というものがそれじゃ具体的にあらわれておるのか、こういうことをまず検証する必要があるのではないだろうか。そうすると、この中にもあるように、まず具体的には通常兵器について核軍縮措置に関する交渉とともに、兵力及び通常兵器の制限並びに段階的削減も追求されるべきである。そしてまた通常兵器のあらゆる種類の国際移転の制限に関して、特に当事国の安全保障が損なわれないという原則に基づき、主要武器供給国と受領国の間で協議が行われるべきである云々と言われて、そして今度軍事費の削減がここにうたわれているわけです。各国、特に核兵器国及びその他の軍事的に重要な国の軍事予算を段階的に削減することは、軍備競争の停止に貢献し、資源を経済社会開発に再配分する可能性を増大させる云々と言われているわけです。  こういうふうに国連の軍縮総会の中では非常にりっぱなことが言われておるのですが、実際には日本の軍備はどんどん増強されておる。こうなると、この国際的な取り決めに調印しながら、実は何らこれを履行していないということになるわけですが、その点についてはどのようにお考えになっておられるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  159. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまお読みになりましたのは、当時の園田外務大臣が軍縮の特別総会で演説された内容でございますが、その最後の方にもあるのでございますが、やはり軍縮というものをやるには、相互信頼関係がなければやれないのだ、相互信頼関係をつくることが大切だということも、その最後の方で触れておられるはずでございます。たとえばいま通常兵器のところをお読みになりましたが、実はそこで政府は決議をということを考えたのでございますが、特に非同盟諸国が、先ほどおっしゃった安全保障との関係で軍縮、通常兵器の移転ということを抑制することに対してなかなか賛成しないんです。消極的な立場を安全保障の面でとられまして、そのときはそういう決議はできなかったのでございます。ただ、今後もそういうことについては相談をしていこうということにはなっているわけでございます。世界の大勢がまだ通常兵器一つとりましてもなかなか相互信頼関係が達成されない、あるいは安全保障の見地からそう賛成ができないというようなことがありまして、なかなか決議にいくことがむずかしい問題があるわけでございます。  しかし、そういう情勢の中でも、たとえば核軍縮の第一歩の包括的な核実験の禁止でございますとか、そういう協定は何としても早く結びたい、それが核軍縮の第一歩じゃないかということで、日本はいまそのことに全力を挙げるということで常にそれを主張しているわけでございますが、いまお読みになりました考え方は変わっていない。ただ、相互信頼関係がそこまでなかなか行っていないということが現実でございます。
  160. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 相互信頼関係というのは天から降ってくるものではないと思うのです。私はそういう軍縮努力の中で築き上げるものだと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  161. 伊東正義

    伊東国務大臣 確かに与えられる問題ということじゃなくて自分で努力してつかまえなくちゃいかぬということはそのとおりだと思います。
  162. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 世界の軍備の推移を見ますと、これは世界の軍事力というのでストックホルム国際平和研究所の年鑑でございますが、アメリカは一九七五年から七八年までは確かに軍縮をしておるわけです。西ドイツは七六年から七七年に軍縮をし、イギリスは七七年に軍縮を予算的にやっておるわけです。ところが、ソ連は一貫して軍備の増強をしておる。あるいはワルシャワ条約機構の予算も、総合して一貫して増強されておる。しかも、これらの国々は、全部先ほどの国連軍縮特別総会の構成員であって、満場一致で最終文書というものが承認されておるわけでございますから、その責任を有すると思うのです。  日本ソ連と同じに一貫して軍事予算が増大しておる。これでは軍縮への努力をしたということを具体的には言えないんじゃないか。しかも、一番大事な核軍縮でSALTIIがいまアメリカのレーガン政権によって暗礁に乗り上げておる。これに対して日本はどういう働きかけをやっておるのか。やはりもう少し独自の外交方針を立てて、日本の外交の重点が平和外交であるとするならば、そういう観点から、一つ一つ形になって残る一つの手だてというものをやっていくべきじゃないだろうか、こういうふうに考えますが、大臣のお考えをお願いいたします。
  163. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃるように、平和への道といいますか軍縮といいますか、そういうことに努力しなければならぬとおっしゃるのはそのとおりでございます。  この間、私アメリカに行ったときに、さっきも申し上げましたが、米ソの力のバランスの問題が出たわけでございますが、そのときにも、そういう努力というものはわかるが、世界の平和ということを考えると、米ソの平和関係が維持されるということでなければ、米ソが全面的な対決をして核戦争のようなことがあっては大変なんだ、これは世界の破滅にもつながることなので、米ソ関係の平和というものは維持されなければならぬ、そこで首脳会談でございますとか、SALTの交渉の問題とか、この間ブレジネフ書記長の演説があったわけでございますが、そのことに触れまして、話し合いで平和ということも必要でなかろうかというような意見を言いまして、向こうの意見も聞いたのでございます。アメリカも、話し合いの道というものはそれは考える、交渉をあきらめてやらないということを言っているのじゃない、ただ、ソ連がいろいろなことを言うけれども、誠実にそのことを行動に移すのかどうかということが問題なので慎重にいま見ているところだ、SALTIIの問題はどうするか、あるいはそのままにして新しいSALTの交渉になるか、あれを変えようと言うか、そのことはまだアメリカの中では十分結論は出ていないのだというような話でございました。  日本としては、やはり話し合いの平和ということが求められれば一番最上の方法でございます。力のバランスとか恐怖のバランスとかよく言われる。そういう上に立っての平和ももちろんでございますし、そのバランスを低レベルにしていくということもまた必要だと思うわけでございますので、機会あるごとにそういう日本の考え方は伝えるつもりでございますし、この間も私はそういう話し合いをしたということでございます。
  164. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 では時間もそろそろ参りますから、少しはしょりますが、いま言ったように、日本の外交というものは、あくまでも平和に重点を置いて二度と戦争はしない、第三次世界大戦への危険があるならば、努めてそういうことにならないように努力するというのが基本でなければならないと思います。  そこで、いま私が非常に心配なのは、産軍複合と申しますか、日本の財界と申しますか、兵器産業に携わっている企業と申しますか、これと軍、軍と言うとなんですが、防衛庁との非常に密接な関係、こういうものができ上がっていくと、やがて逆に財界が政府をコントロールするようなかっこうになっていくのではないか。そうした場合、兵器の移転なんかも、もういま現実にやられたわけでございますが、今後もなおそういうものが今度は堂々となされるような事態になる危険性があるのではないか、こういうことが危惧されるわけであります。そういう点について、この軍縮外交の趣旨からいっても、私は、なぜ自民党が武器輸出の法律をつくることに反対しているのか、政府がなぜそれに決断を下せないでおるのか、この辺についてお伺いいたします。
  165. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いまおっしゃいました中で武器輸出の問題でございますが、これは御承知のような三原則、政府統一方針ということで厳しく運用しているというのが実情でございます。世界を見ますと、通常兵器の無制限な移転じゃないかと思われるような状態に実はなっているということでございますが、日本はこれは厳に慎むということでやっておるわけでございます。法律問題がいまどういう経過か、私自身よく知らぬではなはだ申しわけございませんが、あれは各党間でたしか検討されている、まだ続いている問題だと思うわけでございますので、私から論評することは差し控えさせていただきます。
  166. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 やはり外交というのは、実際の効果を上げるものでなければならないと思うのです。平和外交というのは、居直るようなことではなくて、相手から、いままで仮想敵国であっても、やはり日本はなかなか憎めないわいという一つの日本自身の魅力というものをつくり上げることが非常に大事じゃないかと思うのです。ところが、最近の外交姿勢を見ておると、アメリカ一辺倒で、何でもアメリカがやるとそれに同調して、日本はいたけだかに肩を張ってソ連あたりに対決意識を強く持つ。このことは決して賢明なやり方じゃないじゃないか。アフガニスタンの問題があったときに、日本ソ連に対してアメリカに同調して制裁を加えるということをやった。しかし、現実に日ソ間の貿易の推移その他のプロジェクト開発の問題等について見てみると、全然と言っていいくらい影響は与えていないわけですよ。逆に貿易はどんどんふえてきているのです。もっともふえ方は少し鈍化してはおりますものの、ふえてきておる。しかも、この間に西ドイツ、フランスは二〇%以上の伸びを持っておる。今度はアメリカの方ではどうかというと、穀物メジャーあたりは第三国を通してソ連にどんどんと穀物を売っているという話さえ出ておる。こうなると、ばか正直というか、日本だけが大きな損をして、そして実際の打撃を与えることはできないで、言葉だけで相手の心理を逆なでしておる。こういうことは外交として愚の骨頂じゃないか。  しかも、あのオリンピックをボイコットしたことにいたしましても、あのためにモスクワの大使館はどのくらいの迷惑をこうむったかわからぬと思うのです。モスクワ駐在の外交官たちは徹夜でオリンピックの準備をしていたはずなんです。それが一つの通牒によって全く無視されてしまう。しかも、日本のスポーツ選手はもちろんですよ。ところが、それじゃ相手にそれだけの反省の機会を与えて実効が上がったかというと、何の実効も上がっていない。こんなことでは本当の意味の平和外交を実らせることはできないじゃないか。  そういう点で、これからオタワのサミットがあるわけですが、このサミットについても、やはり一つの戦略的展望を持たなければならないと思うのです。それについてはまだ議題も確定していないようですが、一体外務大臣はどのような戦略的展望を持って臨むおつもりなのか、その辺もお聞かせ願いたいと思います。総理と一緒に行かれると思いますが、いままでのを総合してお伺い申し上げたいと思います。
  167. 伊東正義

    伊東国務大臣 対ソ措置をやったのは、原因は、直接にはソ連のアフガニスタン侵入、もう一つは北方領土に対する軍備の充実というようなことがあって、総合的な判断の上にあれはやったわけでございます。あの対ソ措置についての効果あるいはオリンピックに出なかったことについて、いま渡部さんからいろいろ御批判がありましたが、ここではいろいろ申しませんが、私はその点は渡部さんと意見が違う、はっきりそういうふうに思っております。ポーランドへの今度の問題等いろいろ考えましても、対ソ措置を西側がやったということについては、私は渡部さんと違う評価を持っておりますが、ここでは一々申し上げません。  それから、サミットでございますが、従来サミットは経済問題が中心になってやられたわけでございます。エネルギーの問題とか金融とか貿易とか南北問題とかいうようなことがございましたが、まだオタワ・サミットの議題は決まっていないわけでございます。決まっておりませんが、その中で南北問題というのは、やはり重点の問題として取り上げるべき問題だというふうに私は考えております。ヨーロッパでは日本とECとの貿易問題がいろいろ言われておりますが、貿易問題を取り上げるのなら、自由貿易体制を守るということで保護貿易主義には反対だ。自由貿易体制を守るということであれば意味がありますが、日欧の間の貿易を取り上げるということになりますれば、日本としてもヨーロッパには言い分が多くありますが、そういうことをあの場で言い合いすることはどうかと思いますので、二国間の問題というのは取り上げるべきじゃないと私は思っております。  もう一つは、政治問題でございますが、政治問題が取り上げられましたのは、去年のベニス・サミットの際に、アフガニスタンに対する軍事介入を契機にして取り上げられた、これが初めてでございます。ことしはまだ議題が決まっておりませんので、どういうことが議題になるか、私はまだわかりませんが、そういう経済問題、特に南北問題のほかに、西側の首脳が集まるのですから、恐らく政治問題に何も触れないということはないと思うのです。それを正式な議題として取り上げるのか、あるいは取り上げた場合に声明とか決議とかをするのか、そういうことは全然わかりません。わかりませんが、政治問題も話題になるというのがむしろ自然だろうというふうに私は思っておるわけでございます。
  168. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 経済問題ではいまEC、アメリカとも非常に対立的な条件を持っておるので、そういうものはなるべく避けて、つまりサミット首脳国が団結を図るべきだ、そういう意味で政治問題を取り上げるのは自然ではないか、こういうふうに受け取っていいでしょうか。また、軍事問題も当然政治問題の中で触れられると思いますが、その点についてのお考えもあわせてお願いいたします。
  169. 伊東正義

    伊東国務大臣 経済問題で特に南北問題、自由貿易体制の問題を申し上げましたが、エネルギーの問題とか金融の問題とかがあるわけでございますから、そういう問題も取り上げられる可能性はある。そういう議題はこれから詰めてやるところでございます。  政治問題と言いましたのは、いま渡部さんがおっしゃったように、そこで団結を図るのだということになるのかどうか、あるいは軍事問題まで入るのかというお話でございますが、私は何もいまそういうところまで予想して言っておるわけじゃないのでございまして、首脳が集まって政治問題について意見の交換をしないという方がむしろ不自然じゃないか、やはり国際情勢の問題とかいろいろ話し合いが出るのじゃないかという感じを持っているわけで、それから先どういうものが議題になるというようなことはいま考えておりません。
  170. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大体時間が来まして、これから関連でわが党の上原委員が継続して質問を続行いたしますので、私の質問はこれで終わりたいと思います。  なお、若干残ったのは後日やることにしたいと思います。どうもありがとうございました。
  171. 江藤隆美

    江藤委員長 上原康助君。
  172. 上原康助

    ○上原委員 渡部先生の持ち時間の範囲委員長のお許しを得て、どうしてもきょう取り上げておいた方がよさそうな問題ですので、お尋ねをしたいと思います。  御承知のように、米国が長い間宇宙開発ということで進めてきた宇宙連絡船、いわゆるスペースシャトルが明十日東部時間の六時五十分ですか、日本時間にしますと午後八時五十分にケネディ宇宙センターから打ち上げられるという予定のようであります。この打ち上げについて外務省なりわが国の方はどういうふうに連絡を受けているのか、計画は予定どおり実施されるのかどうか、まずそこいらからお聞かせをいただきたいと思います。
  173. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は政府委員から申し上げますが、この計画につきましては、こういう計画をやるので、御承知のような宇宙条約の五条に一般的な協力のことが書いてあるわけでございますが、その宇宙条約の五条で、万一故障で着陸せにゃならぬというようなときの援助方を、去年の一月に口上書が来たのでございます。向こうの打ち上げ計画がずっとおくれて、延び延びになって現在に至っておるわけでございますが、最近またアメリカ側から外務省に連絡があって、運輸省等といろいろ打ち合わせをしたということでございますので、詳細は政府委員から御答弁申し上げます。
  174. 矢田部厚彦

    ○矢田部政府委員 米国側からの通報につきましては、ただいま大臣から御答弁のとおりでございます。  それから、明十日の打ち上げ予定につきましても、予定どおりであるということを最近アメリカ側から通報を受け取っております。
  175. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、予定どおり打ち上げられるとしまして、わが方はどういう対策なり、これとの関連政府間の協議をなさっておるのか、その点明らかにしていただきたいと思います。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  176. 矢田部厚彦

    ○矢田部政府委員 スペースシャトルは予定どおり打ち上げられますと、カリフォルニアの予定飛行場に着陸することになっておりますが、万一何らかの緊急事態が生じた場合に、日本に対して支援を求めてくるという可能性は全く排除されないわけでございます。そのような可能性は非常に少ないわけでございますけれども、万が一ということもございますので、そういう場合に、アメリカ側から要請があったときには、政府部内で迅速に連絡をとるという態勢を整えておりますし、米側とも随時緊急の連絡ができるようにということを打ち合わせております。
  177. 上原康助

    ○上原委員 時間が余りないので細かい点はお尋ねできませんが、要するに、ケネディ宇宙センターから打ち上げて、着陸はバンデンバーグ基地になる、大西洋から打ち上げて太平洋岸に着陸するわけですが、いま米国内に三つの基地を持っている。しかし、緊急時の場合に着陸の予定基地としてスペインのロタ、ハワイのヒッカム、これはもちろんアメリカの国土の一部ですからどうということはないかもしれませんが、沖繩の嘉手納空軍基地が指定をされたというふうに聞かされております。もし緊急着陸を余儀なくされたという場合には、そのような可能性はほとんどないということなんだが、しかし、米側からはその連絡なり指定をしたということでいろいろ日米間の非公式といいますか、あるいは公式かもしれませんが、協議もなされたと報道をされております。  そういう面で、万一に備えての航空機の対策はどうなっているのか。あるいはまた、あれだけの物体ですから、スペースシャトルそのものはDC1〇くらいの重量だというわけですが、しかし、普通の飛行機よりもコントロールその他の面においてかなり問題があるという見方もなされているようなんです。そうしますと、よっぽどの安全対策というものを考えていただかないと、万一嘉手納基地などに緊急着陸を余儀なくされたという事態が生じたという場合は、そう普通の飛行機と同じだというような取り扱いにはならないんじゃないかという不安を私たちは持つのですが、このあたりはどういうふうにお考えなんですか。
  178. 矢田部厚彦

    ○矢田部政府委員 御指摘のように、スペースシャトルが一般の航空機とは違うということはそのとおりであるかと存じますが、私は技術的な専門家でございませんけれども、私どもの承知いたしておりますところでは、スペースシャトルは、仮に着陸態勢に入ってから緊急事態が生じても、まださらに相当の操縦の可能性といったようなものを持っておるというふうに聞いております。したがいまして、緊急事態の場合に、日本アメリカが支援を求めてくる可能性というものは、先ほども申しましたように非常に少ない、〇・一%というようなことが言われております。にもかかわらず、もちろん万全の態勢を整えておく必要があるということから、政府といたしましては、アメリカ側から万一連絡があった場合には、これは国務省から在米大使館及び外務省を通じて間髪なく連絡があるということになっておりますので、安全態勢については、外務省から関係の御当局に早速連絡するという態勢をすでに整えておるわけでございます。
  179. 上原康助

    ○上原委員 態勢を整えておる、どのような態勢を整えておるのか。運輸省も来ておられるわけでしょう。たとえば那覇基地、那覇飛行場は一日大体百八十機から多いときには二百近い飛行機が飛んでいるわけです。嘉手納空軍基地は恐らくそれの倍か二・五倍くらいの飛行回数だと思うのですね。これだけの飛行機が飛び交う空域ブロックというものについての安全対策をどうしているのかということ、それと御承知のように、嘉手納飛行場の周辺は東側と北側は皆、弾薬庫ですよ。さらにその最も近い周辺は民間地域になっている。そういう住民対策というものも考えていかなければならない問題だと思うのです。ここいらは〇・一%の可能性云々で済ませる問題ではないと思うのですが、そういうことはどうなるのか。  それといま一つ、一体地球帰還になってから、かなりの時間と操縦態勢があるということですが、万一緊急着陸を余儀なくされたという場合には、それはどのくらい事前に察知できるのですか。
  180. 末永明

    ○末永説明員 先生おっしゃいますとおり、スペースシャトルの緊急着陸の可能性は非常に少ないとされておりますけれども、もし万一緊急着陸を行うというふうな場合に際しまして、私どもといたしましては、着陸地周辺の空域における航空の安全を確保するために、航空機が沖繩周辺当該空域に出入しないようにノータムを発出いたしまして、周辺を航行する飛行機は情報入手に努めるよう注意を喚起しておるところでございます。万一現実に緊急着陸が行われるようなことになりました場合には、おっしゃるように、空域ブロック等の措置を講ずる予定でおります。空域ブロックによって那覇空港の出入機はブロックされるわけでございますけれども、大体着陸時よりさかのぼって三十分間くらいのブロックを予定しておりますので、入ってくる航空機等については若干の遅延がある程度かというふうに存じております。  また、緊急着陸を余儀なくされるということがわかるのは、NASA等からの情報によりますと、おおむね約二時間前ぐらいにはわかるというふうになっておりますので、それ以後航空交通をその地域から安全に処理するための措置を講ずることは十分であろうかというふうに存じております。
  181. 上原康助

    ○上原委員 二時間前後、それで着陸直前の三十分前後の離着陸機の進行に問題が生ずるわけですね。これは場合によっては大混乱が起きますよ。その対策は政府全体としてはどういう協議をなさるわけですか。一説には国務省からすでに係官が派遣をされているとかということもあるのですが、そのあたりはどうなのか。  まさか、打ち上げてから万一の場合に連絡をとればいいということだけではないわけでしょう。いろいろ問題が出てくると思うのですね。またこの件で外務省と国務省間にホットラインを設けるということなどもあるいは考えていらっしゃるのかどうか。その点も明らかにしていただきたいし、同時に、いま航空機の安全対策については、万一の場合に備えていろいろ運輸省関係でなさるということなんだが、住民への不安というものは全くないのかどうか。ここいらももう少しこれは明らかにしていただかないといけない問題なんで、後ほど大臣の御所見も聞いておきたいのですが、もう少しそこいらを詳しく説明をしてください。
  182. 矢田部厚彦

    ○矢田部政府委員 米国との連絡態勢につきましては、ホットラインは設置しておりませんけれども、これは電話等の連絡によりまして十分緊急の連絡が可能でございますので、国務省から在京米国大使館を通じまして外務省の科学課というルート、それから米国政府から在米日本大使館を通じて同じく外務省の科学課というルートで並行的に連絡が入ってくることになっております。外務省はそのために明日から科学課は常時待機の態勢をしくことにいたしております。万一そのような連絡がございました場合には、官房長官、運輸省、郵政省、科学技術庁等関係の官庁の方に直ちに連絡する。これも連絡の態勢が整っております。  それから、国務省からすでに係官が派遣されているのではないかという御質問がございましたが、そのような必要はいまのところ認められておりませんので、そのような事実はございません。  それからまた、別途いま申しました政府間と申しますか、その連絡以外に、打ち上げを担当するNASAからも直接わが方に連絡が入るというようなことになっております。
  183. 上原康助

    ○上原委員 住民対策をどうするかということについては、まだ全然お答えになっていないのですが、その点も含めてお答えいただきたいのです。  宇宙条約にはたしか日本も承認といいますか加入しているわけですが、締結されているわけで、七十二カ国ぐらい加入している。しかし、宇宙物体より生ずる損害の国際的賠償責任に関する条約、損害賠償条約と言われているようですが、これは日本は承認していませんね。そうしますと、なぜこれを承認しないかということと、万一事故が起きて、そのことによって損害が生じた場合は、この条約に加入、承認していないということからすれば、一体米側にそういった賠償責任を要求することができるのかどうかという不安を持つわけですね。私は成功してもらいたい。何も失敗することを望んで質問しているわけではないのですが、しかし、嘉手納空軍基地がその緊急着陸地に指定されたということになっては、これは周辺住民には不安ですよ。こういった面の除去はどうなさるのか。まとめてひとつ大臣の方から御見解を聞いておきたいと思います。
  184. 矢田部厚彦

    ○矢田部政府委員 住民の安全につきましては、もちろん最大の考慮を払わなければならないわけでございますが、これは緊急事態の発生ということが全く万一ということでございますので、事前にそのために特別の措置を講ずるということは、現在のところ考えておりません。ただし、先ほど申しましたように、米側から緊急事態発生の通報がございました場合には、その際に住民に与える危険の度合いと、それから宇宙条約上わが国が負っております宇宙飛行士への支援の義務ということ等勘案しつつ判断をいたすということに相なろうかと存じます。  それから、万一そのようなことが不幸にして生じました場合の損害賠償の問題でございますが、宇宙条約の第七条に基づきまして、米国は賠償義務を履行する用意があるということをすでに表明いたしております。確かに先生御指摘のように、宇宙損害賠償条約の締約国ではわが国はございませんが、しかしながら、その事実によって宇宙条約に基づく宇宙損害賠償を受ける権利が失われるということはないということでございます。
  185. 上原康助

    ○上原委員 時間ですから、ちょっと大臣の方に要望と、お答えをいただきたいのですが、これは明日打ち上げが計画どおりなされるとして、米側にも注意を喚起していただきたいと思うのです。そういう面で万全の対策をとる。特に万々一そういった緊急着陸を余儀なくされたという場合については、事前に沖繩県側にも通告をするなりあるいは政府全体としての対策を十分講ずるようにしなければいけない問題だと思いますので、その点、特段の御配慮をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  186. 伊東正義

    伊東国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思います。
  187. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 角屋堅次郎君。
  188. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 午前来同僚委員の熱心な質疑が続けられてまいりましたが、同僚委員渡部、上原両委員質問に続きまして、私からも在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案、この法律案の内容にかかわる問題、それと関連をして、若干の外交的な諸問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  きょうは外務省関係以外に、水産庁と厚生省関係からお願いをしておるわけですが、厚生省の方が五時以降というふうに聞いておりますので、若干質問が前後することがあろうかと思いますが、そういう点はあらかじめ御了解を得ておきたいというふうに思います。  伊東外務大臣質問をいたすに当たりまして、率直に言って伊東外務大臣がダブル選挙後鈴木内閣の外務大臣になられるというときには、古い三十年来の知人として、外務大臣としてうまくさばけるのだろうかという点に不安を持っておりましたが、その後外交全般の問題について、政党として見解を異にする点ももちろんありますけれども、東奔西走持ち前を発揮しながら、わが国の平和外交推進についていろいろ努力をされておるということについては、私もほっとしておるわけでございます。ただ旧来の関係もありまして、大上段の議論というのは、個人的にはなかなかやりにくい気持ちもあるわけでありますが、午前来質問が続いておりますので、きわめてじみな問題に大体スポットを当てながら御質問をいたしたいと思います。  冒頭に、伊東さんが官房長官から総理大臣臨時代理をやられ、そして鈴木内閣の登場とともに外務大臣になられてから十カ月近くたつわけであります。そういう経験を通じ、またASEANとか、過般は鈴木内閣の重要な閣僚として、新しく登場したレーガン政権の首脳部と会われるといったような経過を踏まえて、今日の国際情勢あるいはそれに処する日本の外交的態度、さらに今後日本の外交日程としては、御案内のとおり、鈴木総理の五月のアメリカ訪問による日米首脳会談、レーガン大統領が御承知のような不幸な事故がありましたけれども、健康が順調に回復しておるということを聞いておるわけでありますけれども、これが予定どおりなされていくという場合には、そのプログラムを準備しなければならぬ。さらに引き続いて七月にはオタワで首脳会談が開かれる。その後の外交日程等々も含めて、冒頭に伊東外務大臣から、今日の内外情勢に対するわが国の外交というものについて、十カ月近い経験の上に立って、基本的な考え方をまずお聞きしたいというふうに思います。
  189. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えを申し上げます。  早いもので十カ月たったわけでございます。その間、鈴木総理も行かれたのでございますが、私もアジアを回ってということを最初にしたわけでございます。日本がアジアの一員としてASEANとの友好関係を従来以上に親密にしていくということにつきまして、これは十カ月やったわけでございますが、私はASEANとの関係も非常によくなっているということを踏まえて外交をやっているわけでございます。  先ほどから申し上げますように、日米関係が本当に外交の基軸であるということは変わりございません。日本としては当然これをやり、そして経済、政治問題等考えを同じくする西側の諸国と連帯、協調していくということを原則にしまして、第三世界でございますとか、あるいはアジアでは中国の問題、韓国、朝鮮半島の問題、そういうところに取り組んでいるわけでございますが、残念なことには、先ほど申し上げましたように、八〇年代の国際情勢というのは非常に厳しいということが、これは特にソ連との東西関係、米ソの東西関係、これが一番の原因になりまして、世界が非常に厳しい関係にあるということは否めない事実でございます。しかし、何としても米ソというものが全面的に対決するということは、本当に世界のデタントというものの破滅でございますので、そういうことがないようにということで、話し合いによる平和ということを続けていかなければいかぬと思いまして、日本としましては、戦争が起こらぬように、戦争に巻き込まれぬようにということをやっていく平和外交ということが大切だなということを実感を持って、体験を持っているところでございます。  そういう意味で、残念なことは、日本の隣国でありますソ連との関係が、領土問題を一番の原因としまして、ソ連のアフガニスタン侵入、日本の領土に対する軍備の増強というふうなことがありまして、冷たい関係にあるということでございまして、これは領土問題という特殊な問題、特別な、国民としては何としても返してもらうという悲願でございますが、そういうむずかしい問題がございますので、なかなかむずかしいことはわかるのでございますが、ソ連もお隣の重大な隣国でございますから、ソ連とも恒久的な平和友好関係が結べるということができますことを私は本当に心から期待しておるわけでございますが、まだそういう問題は解決を見ないわけでございまして、カンボジアの問題とか領土問題とか、アジアにもそういうまだ未解決な、解決しなければならぬ問題が残っておりますし、アフガニスタンあるいはポーランドとか中東とかいろいろなむずかしい問題がございますが、その中に伍して日本は、国益を守り、日本の平和、安全、繁栄ということを目途として平和外交に徹していこうというふうに考えておるわけでございます。
  190. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま伊東外務大臣から、内外情勢の中の情勢判断とわが国の外交方針ということでお話が出ました。  水産庁長官の時間の関係もありまして、いま触れられましたソ連関係の問題に少し入ってお尋ねをいたしたいと思います。  たまたま私は国会議員で構成されております日ソ議連の事務局長という仕事を数年来仰せつかっておりまして、去年は第二回の円卓会議をモスクワでやったり、あるいは年に一、二回はそういう役職上向こうへ行かなければならぬということで、いわばこれは議員外交の一環ということに相なろうかと思いますけれども、そういうことを通じてでも、アフガン問題や北方領土問題等々を契機にして日ソ間が厳しい雰囲気の中に置かれておるということは非常に残念なことだと思いますし、日ソ双方がそういう問題を打開をしながら、大切な隣国として友好関係のとびらが開かれていくというふうに、やはり政府政府立場において、またわれわれはわれわれの立場においてお互いに努力しなければならぬという気持ちを持っております。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、御承知の今年度の日ソサケ・マス交渉が始まっておりまして、モスクワで日ソの両国代表による話し合いが進められておるわけであります。ことしのサケ・マス交渉の場合、日本からの漁獲量の要求、またきのうはソ違例からも漁獲量の提案、そして共同の漁業の援助問題についてのいわゆる漁業協力費というものについてソ連側からの要請も出てきておるわけでありますが、この機会に水産庁長官から、ことしのサケ・マス交渉の今日までの時点の情勢、これからの情勢判断といったようなものについて御説明を願いたいと思います。
  191. 今村宣夫

    ○今村政府委員 本年の日ソサケ・マス交渉は、四月六日からモスクワで開催されております。昨年末、日ソ漁業委員会の第三回の定例会議におきまして、サケ・マスの資源状況について議論を行ったわけでございますが、その際もソビエトは、資源状況についてきわめて厳しい見解を表明をしておったわけでございます。今回の交渉におきましても、サケ・マス資源は決して楽観を許さないということを強調をいたしております。特に、ベニ、シロ、ギンの種類につきましては、非常に厳しい見方をいたしておるわけでございます。同時にまた、御指摘のございました漁業協力費につきましても、その増額を要求をいたしておるところでございます。私たちとしましては、この北洋の伝統のありますサケ・マスの安定的な操業を確保するという観点に立って、今後鋭意努力をいたしてまいりたいと思いますが、幸いにしてソビエトは非常に実務的な態度で対応いたしておりますので、私はそんなに長期間を要しないで妥結を見得るものというふうに考えております。
  192. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 こちらからは四万五千トン、ソ連側からは四万トン。昨年が四万二千五百トンと、大野伴睦さんじゃありませんが、これも大体中間のところに去年の漁獲の決定高があるわけでございますが、引き続きこの漁業協力費の問題について、昨年が三十七億五千万円、ことしの場合、マスコミの報道では円建てで四十一億七千万円ソ連側から要請が出たというふうに聞いておるわけでありますけれどもソ連側の漁業協力費のこういった金額を含めた考え方について、日本側としてはどう対応していこうとするのか、重ねて御答弁を願いたいと思います。
  193. 今村宣夫

    ○今村政府委員 一つは、漁獲数量につきましては昨年四万二千五百トンということで、ここ数年そういう水準で推移をいたしております。ことし日本は四万五千トンということの要求をいたしておりますが、数量全体をふやしますということも大事でございますが、最も大事なことは、ベニ、シロ、ギンという値打ち物の数量を減らされるということがこれは一番問題でございまして、ソ連はこれらの数量につきまして、昨年より相当減らした提案をいたしております。この数量につきましては、そういう値打ち物につきまして特に重点を置いて考えていく必要があるというふうに思っております。  二番目の協力費でございますが、三十七億五千万円の現在の協力費の水準というのは、私は、わが国の漁業者の負担あるいは四五%分についての政府の負担を考えてみましても、相当いい水準に来ておると思っております。したがいまして、ソビエトは当然これについて増額要求をするでございましょうが、その辺のことは、全体的なおさまりを見ながら、やはり粘り強く交渉をしていくべきものであるというふうに考えておる次第でございます。
  194. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 次は、日ソ間における日ソの共同漁労の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  これは数年前の飛鳥田・スースロフ会談というのも一つの契機になりまして、そしてこれがおととし、昨年、そういうことでやられてきておりますけれども、なかなかこの経費面では必ずしも採算が十分合うという段階に至っていないということを私どもは聞いておるわけでありますが、それはそれとして、ことしの場合、日ソサケ・マス交渉が妥結した後、ことしの日ソ共同漁労について、これは従来やってきた実績の関係のところ、新しく希望の出るところ、そういうところを調整をしながら日本側のプランをまとめてソ連側と折衝して取りまとめる、こういうことに相なろうと思うわけでありますが、ことしの日ソ共同漁労問題についての取り組みについて御説明を願いたいと思います。
  195. 今村宣夫

    ○今村政府委員 日ソの漁業共同事業については、よく御高承のとおり、政府間協定による日ソ二百海里水域内のわが国の漁船の操業実績の維持に悪影響を及ぼさないこと、それから関係漁業者間において十分な意見調整が行われているということを基本的な要件にいたしまして、現実的な扱いとしましては、甲殻類を対象とする事業である、それから日ソ漁業暫定協定で認められている操業水域以外の水域で操業をする、それからまた漁業者またはその団体が事業主体になっておる、それから関係漁業者間で調整がついておるというふうな条件に合致するものについて、水産庁長官が承認を与えまして、ソ連と交渉をしてもらうという扱いをいたしておるわけでございます。私は、共同事業につきましては、秩序立てた話し合いが行われることが絶対に必要であると思っておりますので、今年度におきましても、従来の方針に従って処理をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  196. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この日ソ漁業交渉のサケ・マス交渉については、ソ連側の対応からしても比較的早い機会に取りまとめが行われるだろうという期待を持っておるわけでありまして、現地に行っておる水産庁の佐野さんあたりも、マスコミの報道によれば、ことしは大体順調に取りまとめができるだろう、こういう判断をしておるわけであります。それを期待するわけですけれども、この機会に今度は伊東外務大臣関連をしてお伺いいたしたいわけでございます。  こういった日ソの漁業交渉問題が、いわゆるポーランド情勢の今後の進展いかん、いわば不幸にしてソ連からのポーランドへの軍事介入というふうな事態が出てきた場合には、日本政府としては欧州共同体の国々ともおおむね共同歩調をとりながら対ソ制裁措置をとろう、そういう考え方であろうかと思うのであります。われわれは、ポーランドの国内問題は、非常に困難があってもポーランド自身の自主解決という方向でいくのが当然であるし、またそういうふうにすべきものだと思っておるわけであります。また報道では、日本政府は、ソ連がポーランドに軍事介入した場合には、こういう措置をとろうというアメリカからの考え方、それからECでの考え方を現在検討に入って調整中であるというふうに伝えられておりますけれども、軍事介入があった場合の対応策に腐心するのではなしに、むしろそういうことが防げるような方向における日本政府としての外交的努力が先決ではないかと私は思うのであります。そういうことに対してどういうふうな手を打っていくべきか。  その考え方と同時に、いまの日ソ漁業交渉と関連して申し上げますれば、不幸にしてポーランドにソ連の軍事介入があった場合には、アメリカ側からはいろいろなことを言ってきておるようですが、その中にソ連との漁業、航空協定を破棄せよというふうなことも含まれておると報道されておるわけであります。漁業の問題は、日ソの漁業問題にせよ日米加の漁業問題にせよ、あるいはその他の地域における国際漁業の問題にいたしましても、漁業者からすれば、またわが国国民食糧を確保するという点からいけば、まさに死活の問題に相なるわけでありまして、軽々に、アメリカがそういうふうに言っておる、ECがそういうふうに言っておるということで日本も同調してやる性格のものでは断じてないと思うわけであります。いま言ったポーランド情勢に対する判断で、ソ連の軍事介入が食いとめられるような方策を、日本の主体的条件においてどういうふうにやってきておるのか、あるいは不幸にしてそういうふうになった場合に、巷間伝えられておるいろいろな制裁措置の中で、漁業協定を破棄せよといったようなものが含まれておるとするならば、そういうものに対して日本側としてどう考えていくのか、こういう点について外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  197. 伊東正義

    伊東国務大臣 ポーランド情勢のお話があったわけでございますが、私も、ポーランドの問題はポーランド人自身で解決する、ポーランド人に任せるべきだという御意見、全然同感でございまして、そういう日本政府の声明も、去年十二月でございましたか、実は出したことがございます。全然同じ考えでございます。  それで、もしも介入ということになりますと、欧州のデタントが壊滅するだけでなくて、世界じゅうが冷戦状態のようなことになる可能性が多分にあるわけでございますから、私どもとしましても、そういう情勢は何としても避けたいという考えは一緒でございます。実は、ポーランドに対しましては、金融上の措置で経済的な勇気をつけるとかいろいろなことを考えておるわけでございます。ソ連に対しましては声明を出し、ソ連とは言いませんが、もしも第三国が介入する場合はというような警告も出したりなんかしまして、介入がなくて済むようにということを日本としてもヨーロッパの諸国と一緒になりまして考えておるところでございます。  それから、もし万一の場合はということでございますが、アメリカ等から、その場合にはアメリカはどういうふうに考えているというふうなことを言ってきたことがございます。しかし、これはまだいまここで一々申し上げるような段階にないと私は思いますし、またその一つ一つについて、これはできるとかこれはできないとかいうふうな調整をやることは一切やっておりません。でございますので、先生おっしゃるとおり、アフガニスタンのときも日本独自のやり方でやったわけでございますが、もし万一の場合は、やはり日本として自主的な判断をして、ある措置をとることは確かでございます。しかし、その内容については、まだ何も、これはやり、これはやらぬということは決めておりません。  いま魚のお話が出ましたが、ヨーロッパもアメリカも、ソ連が行って魚をとっておるのでございます。ヨーロッパとかアメリカソ連に行って魚をとっておるということはない情勢でございます。日本は、先生御心配になるように、サケ・マスはまさに向こうに行ってとっておるという、ヨーロッパ、アメリカとはまた違う立場にもあるわけでございますし、もし万一の場合でも、どういう措置をとるかということにつきましては、やはりそれぞれの国で特殊な事情がいろいろあると思います。私は、日本日本としての立場でどういうことをやるかを決めたいと思っておりますが、いま一つ一つにつきましては、調整をやっておるというふうなことは一切ございませんし、また結論を出しておるわけでございませんので、具体的な措置についてここでは申し上げることは差し控えたい、こう思います。
  198. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 日ソの漁業協定あるいは日ソの漁業問題は大臣からお話しのようなこともあり、私からも申し上げましたようなことで、このことがもし出てまいりましても——私が聞いておるのはそのことなんです。このことについては、日本政府としてはそういう形のものはとらない。個々と言ったって、私はほかのことは申し上げていない。この問題については、やはり日本政府として基本的な考え方があってしかるべきなんだ、そういう点は明確にしてもらいたいというのが私のお尋ねなんです。
  199. 伊東正義

    伊東国務大臣 私、魚の立場ということで申し上げたのでございますが、ヨーロッパあるいはアメリカソ連との魚の関係は、ソ連がヨーロッパに行ってとり、アメリカへ行ってとっておるということでございます。日本は相互にとっている問題があり、イワシとかサバとかございますが、サケ・マスは日本が向こうに行ってとっているわけで、向こうと関係が違うわけでございますから、その関係は私もよくわかっているつもりでございますし、また一々これはどうこれはどうと決めておりませんので、ここでは申し上げませんが、ヨーロッパ、アメリカ日本とは、水産関係においては立場が違うということだけは私もはっきり認識しているつもりでございます。
  200. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 水産庁の長官、日程の関係もありましょうから結構でございます。  そこで、もう一回もとへ戻しまして、法律案改正関連をしたきわめて地味な問題を若干お尋ねしてまいりたいと思います。  御案内のとおり、今回の改正大使館をヴァヌアツとジンバブエにつくる。一方は兼轄であり一方は実館という形で二つの大使館をつくる。領事館を総領事館に一つ昇格をさせる。またそれに伴います在勤の基本手当というものを決めていかなければなりませんし、従来からの在外公館についての改定を行わなければなりません。また同時に、研修員手当についての額の改定も行うということを中心とした改正が出ておるわけであります。  最初に、第一点目のヴァヌアツの場合は、フィジー大使館が兼轄をするということに予定されておるわけでありますし、またジンバブエの場合は、大使以下四名で新しく大使館としての活動を始めるということに相なるわけでございますけれども、いまの在外公館の場合、兼轄が現状としてどれだけあるのかという問題、それから新しく大使館に昇格する両国の若干の政治経済問題といったものについて、まず御説明願いたいと思います。
  201. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  現在わが国大使館のうちで実館を開設いたしておりますのが九十九、兼館が五十でございます。兼館の中にも、もう少し余裕ができれば実館に昇格したいというものと、諸般の事情から当面兼館でよかろうというものなどいろいろな内訳はあるわけでございます。  ところで、今度御審議を願っておりますもので、まずジンバブエでございますが、御承知のように、これはかつての英領南ローデシアでございまして、一九六〇年にソールズベリーに日本総領事館を開設したわけでございますけれども、南ローデシアにおける白人少数政権に伴う問題が起こりまして、国連の制裁決議というものができ、その一環として、同六八年にはこのソールズベリーの総領事館を閉鎖したという経緯があるわけでございます。昨年の四月十八日に黒人多数支配のもとで、国際的に承認される形での独立が達成されまして、わが国はそれと同時に同国を承認し、六月五日には外交関係の開設も行ったわけでございます。そのようなこともあり、同国が南部アフリカ問題という問題の中において占めている役割り、あるいは豊富な地下資源を持っておるということ、さらにはわが国に対しての経済協力の要望も非常に高まっているということ等々にかんがみまして、これは同国には最初から実館を開設することが適当と考えられましたので、現在御審議の法案の中で、そのような提案をさせていただいておるわけでございます。  次に、ヴァヌアツの大使館でございますけれども、これは南太平洋のフィジーの近くにある島国、人口九万七千人のいわゆるミニステートの一つでございます。ただ、南太平洋地域における水産業等々あるいは観光事業の発展ということもございましたので、昭和五十五年の七月三十日に独立いたしましたその同日、わが国はこれを承認いたしまして、その後五十六年一月八日に外交関係を開設したわけでございますので、今般同国に大使館を開設し、当面隣接国であります在フィジーの日本大使館がこれを兼轄ということにさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  202. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本委員会においても外務省の人員問題について、外務省自身がプログラムとして持っておる六十年段階で五千人体制というものを、外務省としても強く要請されておるわけでございます。なるほど諸外国、特に先進諸国の定数と対比してみますと、経済大国といっておる日本外務省定員というものは、たとえばアメリカの場合は一万三千六百一ということでありますから、日本は四分の一に当たる。イギリスの場合は一万三十七でありますから、大体三分の一に当たる。フランスの場合は六千八百一でありますから、大体半分。イタリア並みというが、イタリアは私の手元の数字では五千百五十六であります。マスコミではインド並みを希望しておるというような記事も出たりしますけれども、インドは四千八百五十二でありますから、それからも大幅に下回る。そういう状況から見まして、在外公館が置かれ、わが国の国益に沿って諸般の平和外交が展開されていくということは、日本立場から見ても非常に重要なことであって、そういう点から見て、アメリカはともかくとして、イギリスの三分の一、あるいはフランスの二分の一、イタリアにも劣るといったような現状というのは、なるべく早い機会に整備強化していかなければならぬという基本線については、われわれも十分理解できるわけであります。  先ほど来の兼轄あるいは実館という点をお聞きしましても、いわゆる兼轄という五十の大使館は看板も立てなければ人もおらない。ただそこに大使館があるというふうに言っておるだけでございまして、看板を立てるとすれば、兼轄しておる別の国の大使館に立てるのかどうか知りませんけれども、それが現実に五十もあるという状態等も考えてまいりますと、人員整備というのは、臨調の行革のこれからの問題も重要でありますけれども、外務関係については十分配慮する必要があるだろうというふうに私も思います。  同時に、八名未満の小規模公館というのが八十五公館ございまして、これは公館全体の五二%を占める。これは去年でありますから、ことしの場合はこの小規模公館が七十九で四八%を占める。大体半分ぐらいは定員八名にも満たない小規模公館である。役所でいいますと、係長になるかならぬかわからぬところにえらい大使がおさまって、わずかの人数で大きな国であれ小さな国であれ大使館の業務というのは各般にわたるわけですから、これでその国における十分の外交機能が果たせるかということになりますれば、やはりせめて定数が八名以上のところに大体おさまることが望ましいであろうというふうにも考えるわけであります。  そこで、そういったような状態の中で、昨年が八十名の増員である、ことしの場合も八十名の増員が認められた。いまのテンポでいきますと、なかなかイタリア並みの五千名台に行かないわけであります。ただ、こういう増員を考えます場合に、単に在外公館の現状等から見て、人員が先進諸国と対比しても必要であるということだけではなしに、いかに有能な人材をこれからの五千人体制の中で整えていくか。私は率直に言って、そういう増員の問題をすべて新規採用というふうな形でまいりまするというと、そこの期のところは押せ押せになるという問題もあり、いろいろ新しい血を外務省に入れるという点から、そういう面の検討等もやりながら、全体としては、やはり内容の整備した人材を確保していくという検討が必要だろうというふうに思うのです。そういったこれからの陣容の整備についてお伺いをいたしたいと思います。
  203. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ただいまいろいろ御指摘のありました諸外国等の実例、それと比べてわが国の実情、これを何とかすることが至上の国益であるという御指摘、私ども全くそのとおり考えておりまして、臨時行政調査会でこれからの行政機構のあり方が御討議になるわけでございますけれども、あの考えの基礎には、社会経済情勢の変化に対応した公正で合理的な行革という言葉がうたわれておりますので、もし仕事が余っている、不要になった部分があれば、これはこれなりに減らして、ふやすべきところはふやすということでございますけれども、いろいろ私どもなりに検討いたしましても、正直なところ、現在外務省がやっている仕事で、もう時代の要請から見て不必要になったというものはないわけでございます。かつて移住関係においてそのようなことがございまして、これはいち早く移住事業団が国際協力事業団と一体化して、むしろそのときの経験者は現在技術協力等に大分活動していらっしゃるということでございますが、それ以外にないわけでございますので、私どもは別に時代に逆行するという意味じゃなくて、真に必要な行政需要の部分についてはそれなりの手当てをしていただきたいということを強く訴えることは妥当なことである。いやむしろそれは責任であるというふうに私どもは考えてずっとやってきているつもりでございます。何分戦後にゼロから再出発した日本外交の体制でございますので、これを一朝一夕にして完全なものにするということはむずかしいので、じみちな努力をこれからも払い続けるということを申し上げるしかないわけでございます。  そのような中で、いま御指摘の二つの点の第一点、すなわち小規模公館についての御指摘でございますが、まさに御指摘のように、本年小規模公館のために増員された人数が全体の増員の八十名中三十三名でございまして、外務省関係二十九名、各省関係四名、三十三名の増が認められましたので、その結果、先ほど御指摘のように、小規模公館というものは五二%から四八%に減った。ささやかなことでありますが改善を見た。またその中でも、私ども超小規模などと呼んでいるわけでございますけれども、五名以下の公館について申し上げますと、これまで五十四館、全体の三三%あったわけでございますけれども、五十六年度の予算によりまして、これが四十八公館、全体の二九%に減った。若干の改善を見ることができたということを御報告したいと思います。  それから、増員については、単に数をふやすだけでないという御指摘でございますが、たびたび申し上げておるように、質の改善と量の増強というのは車の両輪でございまして、いい人間を採ることから始まり、採った人間の研修、登用等によって、同じ一人の人間でもそれだけより大きな能力を発揮できる人間を、これは時間がかかることでございますけれども、養成していくという点は、私どもの増員に劣らざる重点目標でございます。  定員がふえた場合に、それではそれだけの人材が確保できるかという御指摘でございます。私どもは五千人計画をつくっておりますときにも、このことについては十分気を配ったつもりでございまして、もしも外務省要求どおりに定員がいただけた場合にどういう手当てができるかということも、詳細な計画を持っているわけでございますけれども、上級試験、専門職試験、さらに初級職試験の通常の試験採用というものは増大したい。また現在の受験者の量と質から見まして、増大しても相当な人材を採用することができると思っておりまして、これが中心になることは事実でございますけれども、そのほかに従来からもこれは行っていることでございますが、政府関係の機関、地方公共団体、学界、報道界あるいは民間の銀行等からも中途採用を行う。これも片道で採り切りの場合と、一定期間仕事をしていただいてまたもとへ戻られる、両方あり得るわけでございますけれども、そういう形の中途採用。それから非常に海外で活躍しておられます、たとえば青年協力隊の中で、現地の言葉、民情等に通じた方で引き続きその国で働きたいという方を採用するとか、あるいは初めのうちは短期間のつもりで現地大使館の手伝いをしていた方等についても、優秀な方については現地採用ということも行うというようなこと。それから昭和五十五年から始まりました省庁間の配置転換がございます。すでに昨年は八名の方が外務省に配置転換で来られたわけでございますけれども、ほかの省庁において外務省に移って働きたいという方で、われわれから見て適当と思われる方があれば、むしろ積極的に受け入れて、そういう面からも強化していく。いろいろな手だてを講じまして、もしも定員をふやすことができれば、それに応じた採用の仕方については綿密な計画を用意しているつもりでございます。
  204. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 官房長の方にお願いをしておきたいのですが、大分予定がありますので、外務省として非常にうれしい質問ということでいろいろ細かくやられるという気持ちもわかりますけれども、そうではなしに、時間の関係の制約もありますので、なるべく要点をついてお答えを願いたいというふうにお願いを申し上げておきます。  今回の改正で、在勤基本手当、これが別表の第二の関係で基準額の一覧表が出ておるわけであります。研修員手当については、別表第三でこの引き上げの改定のあれが出ておるわけであります。申し上げるまでもなく、第五条で在勤手当というものがどういう性格のものかが得かれておりまして、それを受けて第六条で「在勤手当の種類」として、在勤基本手当、住居手当、配偶者手当、子女教育手当、館長代理手当、兼勤手当、特殊語学手当及び研修員手当、これが在勤手当だという種類が書かれておるわけであります。そのうちの在勤基本手当については第六条第二項のところで趣旨が掲げられておりまして、第十条のところで「在勤基本手当の支給額」ということが書かれておるわけであります。  そこで、参考までにこの在勤基本手当の支給額を引き上げる場合の算定根拠、これはこういう国会の舞台では余り説明を受けるという機会が少なかろうと私は思うのですが、やはり改定をやる算定方式というものがどういうことでやられるのか。これは画一的なものであれば別ですけれども、やはりファクターのとり方というふうなものがいろいろあってなされていくわけであります。  そこで、昭和五十六年度、在勤基本手当の算定根拠、これは私がお聞きしたところでは、ワシントンの三号のところの基準額をまず算定をして、そして各地の支給額については、たとえばパラグアイに例をとれば、パラグアイのそれぞれの必要な計数を入れまして、そして一欄表に最終的にはなるというふうに承知しておるわけでありますが、この五十六年度のワシントンでとられる三号俸の基準額の算定といったようなところを少しく御説明を願いたいと思います。
  205. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 なるべく簡潔にお答えしたいと思いますが、在勤基本手当の算定についてただいま御発言いただいた点はそのとおりでございまして、特に改めることはないわけでございますが、一口で申しますと、在外公館の基準額というものは、生計費ポイントと特殊勤務地ポイントとこの二つから成っているわけでございます。  そこで、いま御指摘のように、ワシントンに在住し、配偶者及び子女二名を持つ中堅在外職員の在勤基本手当というものをまず策定するわけでございます。もっともこれは前から策定されておりますので、改定に当たりましては、前に策定されたときと現在との間の物価指数の変動、為替レートの問題等々を勘案いたしまして、改善すべき率を策定するという作業になるわけでございます。これで出ました数字から日本においてその者が受け取る本俸を差し引いた額というものがワシントンにおける三号の者の在勤基本手当になるわけでございます。これから今度は各地域ごとの指数というものを、ワシントンを一〇〇とした場合に、その他の地域における物価の上昇、通貨変動等を検討して、それぞれ大体五%刻みで策定して、一〇五とか一一〇とかあるいは八五とか決めるわけでございます。それに乗じて得た数が各任地における三号の者の生計費ポイントになるわけでございまして、その上で今度は三号の上と下、すなわち大使から十一号までに至る生計費ポイントを上下倍率によって、これも前から定められております上下倍率によりまして、特号でいきますと一四〇とか、下の八号は五五とか、九号は五〇とかいう上下倍率によって掛けて、それぞれの号の人の手当額を決めるわけでございます。  そのほかに瘴癘地につきましては、特殊勤務地ポイント加算というのを行っております。これは詳しい説明は省略いたしますけれども、通常、自然、衛生、社会、生活、文化環境、この五項目についてそれぞれ検討を行いまして、一級地から五級地までについての格づけを行います。それをもとにいたしまして、これらの地域に勤務する者については、先ほどの定めました生計費ポイントによって得られた額に、一番瘴癘度の高い五級地については二五%という範囲でこれに加算を行う。  若干省略した部分はございますけれども、大体そういう形で現地で得られたあらゆるデータをもとにして算定しておるのでございます。
  206. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この算定資料の中で、たとえばワシントンの場合で申しますると、調達の割合が、現地調達が八割、日本から調達をするもの二割ということで計算をするわけですね。たとえばパラグアイの場合でいきますと、現地の調達が六割、それから任地外の調達が二割、本邦からの調達が二割、こういう形で算定方式の中にそれぞれ当てはめていくわけですね。これはその在外公館のいろいろ調達をする実態というものをみな基礎にして当然やられると思うのでありますけれども、これはそれぞれの在外公館によって種々まちまちだと思いますが、その辺のところは具体的にはどれぐらいのいろいろな取り扱いになっているのか、若干御説明を願いたいと思います。
  207. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 実態調査というのは毎回行いまして、その者が本邦で自動車を買ってから向こうへ赴任するとか、それから瘴癘地の奥におきましては、近隣国等において生鮮食料品とかその他の物資を外貨で買って定期的に入手するとか、御指摘のようにまちまちでございますので、それに合わせまして、二〇%とか三〇%とかいうものをはじいて計算している。ワシントンの場合は、かなり現地における調達分が高うございまして、自動車とか一部の耐久消費財等を日本から持っていくという部分が本邦調達分というふうに御理解いただきたいと思います。
  208. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 結局、ワシントンをまず基本にする。ワシントンの三号基準額をまず決める。各地の支給額は一定の算定方式でやっていく。たとえばパラグアイの場合は、そういうことでワシントンで出てまいります三十四万千八百円というものに、計算で出てまいります二割増しというのを掛けて、そして特勤手当部分ということでパラグアイの場合は一万八千八百円をプラスして、ラウンド数字で四十二万九千円というのが出てくるようになっているのですが、ここでプラスしております特勤部分というのは、それぞれの在外公館によってどの程度の幅があるのか、あるいは大体若干の幅程度なのか、そこをちょっと御説明願いたいと思います。
  209. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 この幅はいまの不健康地加算部分でございますが、これは五%から一級刻みに一〇、一五、二〇、二五と五級地、一番瘴癘度の高いところについては二五%という五段階になっております。これは瘴癘度に応じて五段階に区切っているわけでございます。
  210. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 法第十条の「在勤基本手当の支給額」というところで「在勤基本手当の月額は、別表第二に定める基準額(第九条の規定に基づき、在外公館の増置に伴って設定された基準額を含む。)の百分の七十五から百分の百二十五までの範囲内において在外公館の種類、所在国又は所在地及び号の別によって政令で定める額とする。」いわばこうやって法律で出てくる場合、あるいは法律に出さずに政令で二五%の上下でできる、こういう法律に第十条はなっておるわけですが、こういう面の発動は従来どういう、実態になっているでしょうか。
  211. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 以前はこういう制度がなかったわけでございますが、特に固定相場制の時代には割合に毎年法律改正を行って、それに応じて給与額を改定するということで大体都合がついたわけでございますけれども、変動相場制が多くなってきた、それから新しい独立国の場合になりますと、ある日突然その通貨の切り下げとか切り上げが行われて、五〇%切り下げとか切り上げということがあるというような非常に流動性の強い状況が近年起こってまいりまして、その結果、その時点においてそこに在勤する館員につきまして、翌年の法律改正を待って改定するのでは、もういかにも生活ができなくなるという窮状が散見されるようになりましたので、近年このような御指摘の第十条を設けまして、上下二五%幅について弾力的に運用できるということをしたわけでございまして、通常の場合は、いま申しましたような非常に急激な変動があった場合というときに……
  212. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 実例はどうですか。法律の趣旨はわかっているんだ。
  213. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 昨年実は法改正をしたわけでございます。法改正をしたためにいまのコードを発動する必要が起きなかったわけでございますが、その前、法改正が二、三年、間を置いたときには、いまの必要が起きましたので、たしか五十四年かと思いますけれども、これを行って、その時点における物価等による調整を行った事例がございます。
  214. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 次に研修員手当の問題で若干お尋ねしたいのです。  これは一号から二十二号まで。そこで私のいただいておる資料では、今度の改定の場合に十九号から二十二号というのが追加になっておる資料になっておるわけでありますが、そう追加になっているというふうに理解をしていいのかどうかということが一つ。  それから、第六条であります特殊語学手当。これは在勤基本手当の一年目が百分の十二、二年目が百分の十五、三年目が再分の十八ということで特殊語学手当が出ると承知しておりますが、これと第二十条の二で支給します研修員手当との関連というのはどういうふうになるのか、先ほど質問した点とあわせてお答え願いたいと思います。
  215. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 研修員手当の改正は、これだけ別な条文になっておりますけれども、在勤手当の一種でございます。研修員という特殊な立場にありますので、通常の手当の系統とちょっと違ったたてまえになっておるわけでございます。具体的には生計費部分と授業料等の研修費の二つから成っているわけでございますが、これも全体の物価上昇等を見合わせて改定を行いましたけれども、一部の国につきまして、その研修費がかなり安くて済むところができましたので、それに対応するために若干号をふやしたというのが実情でございます。  それから、特殊語学手当という部分でございますけれども、これは若手の館員が任地に参りまして、それが英語、フランス語、ドイツ語でない約四十カ国語あるわけでございますけれども、そういう任地の言葉をマスターすることが非常に必要である。しかし、本来は赴任前にしていくわけでございますけれども、現在の人繰りからいきまして、とてもそれが間に合いませんので、赴任した後勉強させる。それを奨励して、その実費を補てんするという趣旨で与えている手当でございまして、最初の一年間、さらに成績がよければ更新して合計三年まで、初級コース、中級コース、高級コースと申しますか、そういう三年間について御指摘のように在勤手当の一二%、一五%、一八%を支給することにしております。ちなみに昭和五十五年度におきましては延べ人数二百二十四名がその対象になっております。
  216. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 外務大臣が再び参られましたので、法律関係関連をして少しくお伺いしたいと思います。  戦前、外務大臣というのは外務省の外交ベテランといいますか、そういう者を大臣としてどういうふうに登用しておったかというようなことを調べてみたり、戦後の外務大臣というのはどういう人たちがずっとなってきたかというのを調べてみたりしたのですけれども、戦前は別として、戦後の外務大臣のいすを見てまいりますと、東郷さん、重光さん、吉田さん、芦田さん、また吉田さん、岡崎さん、重光さん、ここまでは外務省出身が続いておりまして、そのうちの吉田さん、芦田さんが天下を取られた。その後、岸さんがなられ、藤山さん、小坂さん、大平さん、椎名さん、三木さん、愛知さん、佐藤さん、福田さん、大平さん、木村さん、それから宮澤さん、小坂さん、鳩山さん、園田さん、大来さん、現在の伊東さん、大体この辺のところになりますと、外務省ベテランというのから他の座標軸に変わりまして、いわば外務大臣は、外交官出身、それから党の実力者、それから首相の側近で呼吸の合う人、大体こういう三つの流れの中で最近は選ばれておるのか。——それにいたしましても吉田さん、芦田さんに加えて岸さん、佐藤さん、大平さん、三木さんから福田さん、歴代大臣で戦後でも大分総理になったのがおるわけであります。  そういうことと、外務大臣というのは余り転々と変わらずに、ある程度の期間落ち着いてという先ほどの渡部委員の考え方に私も基本的に賛成でありますけれども、外交官出身という者の行方というものを見ますと、最近は外務大臣の方向もなかなか閉ざされておる。高級官僚の天下りというのが、大蔵省とか建設省とか農林省とか労働省とかいうのがいろいろ議論されるのですけれども外務省の人たちがどこへ行ったかというと、ほとんどゼロ状態。そういう点で、伊東さんは情の厚い人だから、ある程度、特定の人は、私は名前を挙げませんけれども、こういうポストについた、こういうところへ行ったというのがありますけれども、大勢としては引く手あまたという状態にはない。こういった外交官の任務を終わった後のめんどう見というのは、各省を見ますと、私はまあ農林水産省と関係がありますが、現役が実によくいろいろやっている。外務省はどうなっているのかよく知りませんけれども、やはり在外公館に出てわが国の使命を担って外交舞台で将来の心配もなくやっていく、そういう意味では大切な一つの面だというふうに思うのであります。従来も外務省は全くそういうことがなかったとは考えませんけれども、そういう問題については、それぞれ持ち味を活用できるところへいろいろそういう配慮をしていくということも陰に隠れた重要なことではないか、こう思いますが、外務大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  217. 伊東正義

    伊東国務大臣 ありがたい御質問をいただきましてまことにありがとうございました。いままでは外交官を退いた人が働く場所が比較的ほかの経済省や何かから見ますと少なかったことは確かでございます。やはり第二の人生ということを考えなければならぬような人の平均寿命も延びてきたという中で、私はそういうことも、現役で働く人人の士気の問題等から考えますと、これは考えていかなければならぬ問題だと思います。特に、最近はいろいろなことで国際的な関係が非常にふえてきたのでございまして、ぼつぼつ国際的な面で働くというポストもできてきたわけでございますが、そういう問題につきましては、一層私も努力をしていかなければならぬ、先生と同じ考えでございます。  ただこれは、そういうこととともに、また外交官自身も外務省の人自身も、自分でやはり第二の人生で引く手あまたというぐらいになるようにぜひしてもらいたい。自分としての修行をするということがまた大切だと思うわけでございまして、両面相まちまして、現役で得た知識、経験を第二の人生でも生かすことができますように、私も最善の努力をしたい、こういうふうに思っております。
  218. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 厚生省はまだ来ていませんか。——厚生省はまだのようでありますから、別の問題から入ります。  御承知のとおり、中国関係関連の問題で日中プラント問題があるわけでございます。八日の日から中国側の代表として、周建南外国投資管理委員会副主任を責任者といたしまして国家計画委員会、化学工業部、対外貿易部などの実務者で構成する代表団がおいでになっておるわけであります。日本側としては外務省のアジア局長がキャップになって、各省の関係の担当官との混合チームをつくって御相談をするという形になっておるわけであります。私はこの問題に深く入って御質問するということではありませんけれども、やはり日中の友好問題の関連から見て、これのさばきというのは重要なことでありますので、若干お伺いをしていきたいと思うわけであります。  質問に入ります前に、外務省の方から参考までに、日本が大東亜戦争で中国初め東南アジア諸国に大変な御迷惑をかけた、大変な実害を与えたという反省の上に立って、いわゆる賠償あるいは準賠償というのをやってきたわけでありますが、それらの問題について若干御説明を願いたいと思います。
  219. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ただいま先生の御質問がございました、まず賠償について申し上げますと、戦後の賠償は、サンフランシスコ平和条約の規定に基づきまして、戦争中日本軍の占領いたしました四つの国に対しまして賠償を行ったわけでございます。これはビルマ、フィリピン、インドネシア、ベトナムでございます。それ以外に、必ずしも向こう側に賠償請求権があったわけではございませんけれども、やはり戦後処理の一環といたしましてラオス、カンボジア、タイ等に経済協力をやっております。これはそれぞれの国について事情が違いまして、たとえばラオス、カンボジアにつきましては、先方に賠償請求権があったわけでございますけれども日本に対して賠償を請求しないということを申しましたことに対応いたしまして、日本側から無償の協力を行った。この場合は、日本とラオスで経済技術協力協定をつくって無償協力をしたわけでございます。それからタイの場合につきましては、戦争中日本軍が進駐いたしまして、タイの通貨を一時借りたと申しますか使ったわけでございますけれども、その決済といたしまして、タイに対しても一種の経済協力を行ったということでございまして、賠償ではございませんけれども、戦争処理の一環として、戦後これらの国に対しまして経済協力を行ったという実績がございます。  そこで、その金額の総額でございますけれども、先ほど申し上げました四つの国に対します賠償の総額は三千五百六十六億円でございます。それ以外の国につきましての経済協力の一環といたしまして、戦後処理として行った経済協力でございますが、これは総額千六百九十二億円になっております。
  220. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで、中国の場合は、御案内のとおり、一九七二年九月二十九日に北京で行われた日本政府と中華人民共和国政府の共同声明の第五項、「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。」ということを通じて、満州事変からシナ事変、大東亜戦争という全期間、特に大東亜戦争の中では一番被害を受けた、われわれの側から言えば当時の戦争の中で被害を与えたその相手国の中国が賠償放棄ということを正式に宣言された。したがって、賠償問題については、これを通じて解決済みということに相なるわけであります。この賠償問題が、それまでの経過の中ではいろいろ議論としてはあったわけでありますけれども、ここでピリオドが打たれるということについては、多くの日本国民に、戦争で中国にずいぶん被害を与え、御迷惑をかけたのに、温かい気の配りを受けた、戦後の日本の悲惨な、爆撃その他の状況の中からの立ち上がり状況等も勘案して考えますと、そういう気持ちが共通してあるだろうと思います。  私はそういうことを前提にして、今回来ている日中プラントの問題について、それの見返りとしてという気持ちで申し上げるのではありませんけれども、今日、中国は、当初日本との関係で、新しい四つの近代化を含めた経済プランの中で勢い込んでいったのが、現実には一つの障害にぶつかっておるといった状態にあります。その原因がどこにあるかは別として、中国側から、大慶、南京両石化コンビナートとか、あるいはまた山東勝利の石油化学コンビナートとか、これを含めていろいろな点について、いわゆる有利な条件の借款等の要請というものが日本に当然持ち込まれるだろう。後ほど谷牧副首相が来て、これらの取りまとめを日本政府との間でやられると思いますけれども、こういった日中プラント問題を考えるに当たっての日本側の判断、対応というものについて伊東外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  221. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  賠償問題につきましては、先生御指摘のとおり、日中共同声明発出後の現在、賠償に係る問題は最終的に解決したと私たちは考えております。  御指摘のプラントの問題に関しましては、政府としては、日中間の友好関係を維持していくという見地から、これが日中間の友好関係を傷つけないように、双方にとって事態が円満に解決されるように、そのように考えております。ただ、御案内のとおり、このプラントの問題は第一義的には民間の問題でございまして、いま民間の当事者がせっかく努力をしております。御承知のとおり、二月二十四日から三月十四日まで、先方から劉興華という方が来まして日本の民間の方と話をし、また四月二日から五日まで、当方から民間の関係五社の方が向こうに行って、向こうとせっかく話をしている。こういうことでございますので、政府としても民間当事者の話し合いを従来から見守ってきたということでございます。  また、今後の問題につきましては、こういった民間当事者の中国側との話し合いの状況を踏まえつつ、中国側が具体的にどういうことを考えているのかということを聴取の上、この問題の解決について政府としてどういうことができるかということを検討してまいりたいと思っております。
  222. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えします。  いま政府委員答弁しましたとおりでございますが、いよいよ向こうから周建南さんですか、来まして、きょうとあした、あるいは土曜日まで及ぶかもしれませんが、向こうの考え方を説明する、こういうことになっております。その説明を聞いた上で、政府としてどういうような態度でいくかという相談をしようと思っておるわけでございますが、この問題が起きましたときから、いま政府委員が言いましたように、この問題で日中関係の千年の大計、私はこう言っているのですが、傷をつけてはいかぬということで、大来政府代表にすぐに行ってもらいまして、向こうの実情、向こうの話等も聞いたわけでございます。その後、いま申し上げましたように、民間企業から向こうに行くとか、今度は政府から来てというようなことでいまやっておるわけでございます。  この問題につきましては、私は当初から一貫して、この問題で日中関係に傷が残らぬようにというのが私の考えでございますということを申し上げているわけでございまして、具体的にいろいろこれから詰めるところでございます。最初から政府が乗り出してどうということではなくて、やはり詰めるべきところはちゃんと詰めて、その後問題が残れば政府としてどうするかということを大蔵大臣、企画庁長官、通産大臣と四人関係がございますので、十分に相談をしたいというふうに思っております。
  223. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 委員各位はなるべくスムーズにバトンタッチをという気持ちもあるようですが、そういうことも念頭に置いて、実は中国の関係の問題では、この機会に中国残留孤児の問題に若干触れたいと思って援護局長のおいでになるのを待っているわけですが、厚生省から担当局長が参られましたので、中国残留孤児の問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。  この問題を取り上げるという一つの気持ちは、私自身も旧満州に学校を卒業して行っておりました関係もありまして、ひとしおにこういう問題を早急に政府としても、これは厚生省が中心になりましょうけれども外務省も含めて処理をしてもらいたいものだという気持ちを持っておるわけであります。  そこで、まず厚生省の方から、巷間中国残留孤児というのは三、四千名とかあるいは一万名とかいうふうなことがいろいろ言われるわけですけれども、厚生省サイドで把握しておられる中国残留孤児の調査の現状といったようなものを少しくまず説明を願いたいと思います。
  224. 持永和見

    ○持永政府委員 中国の残留孤児の数のお尋ねでございますが、全体としての把握は先生御指摘のとおりなかなかつかみにくい状態でございます。私どもの方で具体的に把握しておりますものは、日中国交が回復いたしまして以来、中国孤児の側からひとつぜひ肉親の解明をしてほしいという調査の依頼があった人、あるいは日中国交回復後中国から引き揚げた方々がいろいろおられます。そういった方々から、こういうところにはこういった孤児がいるよというような情報が提供されました。いま申し上げましたようなことで、私どもの方で現在調査依頼ということでつかんでいる孤児の数は千二百二十六人ということでございます。
  225. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 千二百二十六人のうちで身元の判明をした者が四百四十二人、現在調査中の者が七百八十四人、そのうちから今回六十人を受け入れるということで申し入れて、結局四十七名がおいでになった。秋に百名を受け入れるということで申し入れて、少なくとも六十名ぐらいの方に来ていただくように話を進めておるというふうに承知しておるわけであります。これもやはり戦後の重要な処理問題ということも言えようかと思うわけです。  いずれにしても、たとえば戦争が終わりましてから満州、中国本土から帰った人数を見てみましても、大連を含めて満州から五十一年十二月までに百二十一万九千人、これは邦人だけであります。それから軍隊関係で五万二千人、これはシベリアの方に行った人が相当あるということが前提であろうと思います。それから中国本土から四十九万一千人、そのほかにシベリアが別枠で、ここから四十七万三千人、このシベリアの方からは樺太等からシベリアに行った者も含めておるようでありますが、いずれにしても、旧満州あるいは中国本土あるいはシベリアからたくさんの方が敗戦の苦労もなめながら、そして渡部委員が言いましたようなシベリアにおける状況等も含めて帰ってきた人々があるわけでありまして、一方において、未解決の問題として中国残留孤児の三千名になるか四千名になるかあるいはそれを超えるか、向こうから調査依頼のもので千二百二十六名ということでありますが、もう少しそれをオーバーするような人数が現実におられるだろうというふうに判断をいたします。  そこで、いまのようなテンポでまいりますと、いわゆる身元がはっきりするという状態になかなか進まない。秋も百名申し入れて大体六十名ぐらいというふうな形だけでは、残留孤児の切実な気持ちになかなかこたえ得ないというふうに思うわけであります。私は、もちろん日本側でこういう問題の処理を外務省や厚生省が中心になって、またこういう問題に熱心に取り組んでおられる日中孤児問題連合会とかあるいは日中友好手をつなぐ会とか、いろいろな友好団体が熱心に取り組んでおられることも承知しておりますが、そういう問題と関連をして、さっきの在外公館の新設その他の問題でありませんけれども、いまの中国の場合は二カ所に総領事館があるわけですが、旧満州、いまの東北にはやはり総領事館をつくって、このことだけをやるわけではありませんけれども、こういう問題の促進を図るということは、当面の重要な政治判断で処置すべき問題ではないかというふうに思っておるわけであります。  そういう点で、旧満州で言えば新京とか奉天とか大連という言葉になりますけれども、いまで言えば長春あるいは藩陽、旅大、こういった形のうち恐らく藩陽あたりが東北という場所では適当であろうかと思いますけれども、いずれにしても早急に総領事館を設置をして、これらの問題についても第一線で帰還の促進を図る。もちろん、この点については、外務大臣が去年の十二月に日中閣僚会議に御出席の際に相手側の方にも要請をされ、相手側の方も快くそれを受けて、第一回目の今回の訪問があったというふうに承知しておりますけれども、それらの問題も含めて国務大臣として、中国残留孤児のこれからの日本への帰還、受け入れ問題等についてひとつ所信をお伺いしたいと思います。
  226. 伊東正義

    伊東国務大臣 中国残留孤児の問題はまことに気の毒な同情すべき事情、また両国の感情問題を入れますと非常に複雑な問題でございます。おっしゃるように、去年十二月の閣僚会議で、向こうの外務大臣と私が外交問題をやりましたときに、厚生省からリストをもらって行きまして、正式な議題にしまして、向こうへも渡したのでございます。向こうも極力協力をするということでございました。今度はごくわずかでございましたが、来られて、そのうち約半分の人が身元がわかったということは非常に結構なことだと思うのでございますが、今後とも厚生省とよく協力しまして、外務省としても、この孤児の問題につきましては最善の努力をしてまいるつもりでございます。またこれは非常に複雑な感情の問題がございまして、向こうで親がわりで育てられた方々の気持ちもまたこれ複雑なものがあろうと思うわけでございますので、この間来られたことを契機にしまして、日本人を養ってもらっておる親の人々に感謝の意を表するというようなことを、黄華外相を通じて向こうへも日本側の感謝の意を伝えたわけでございまして、今後ともこの問題につきましては、日本政府として積極的に努力をしてまいるというつもりでございます。  それから、総領事館の問題でございますが、行政機構の縮小という中で、新しく総領事館をつくるという問題、なかなかむずかしい問題がございますが、来年どういうことになりますか、いま確たる御返事はできませんが、世界のどこに許される数を置いたらいいかという問題がございますが、もしも中国へということでありますれば、当然藩陽といいますか、東北地区というのが第一番の優先に私はなると思っております。ただ、行政機構の改革案の問題、世界で幾つ認められるかということがありますので、いまはっきり御返事申し上げられませんが、中国の残留孤児の問題につきましては、繰り返し申し上げますが、最善の努力をしてまいります。
  227. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ぜひ総領事館の設置問題ということも含めて、中国残留孤児の帰還希望の問題についてはそれを促進をしていく。この場合は、奥さんであればだんなの方は中国人ということで、なかなかこちらへ参りましても、日本語を習う、職業を身につけるいろいろ苦労な問題もありますし、そういう点については、政府自身が、やはり生活、職業指導、いろいろな問題を含めた配慮がなされて、こちら側で定着をし、帰ってきてよかったという体制をつくることは、個人の努力の問題というよりも、基本的には政治の責任として考えていくべき性格のものであろうというふうに私は思っております。そういう点で、厚生省が、戦後引き揚げ者の問題、それからいま言った問題も含めて直接担当ということであろうと思いますが、対外折衝ということになりますと、これはやはり外務省が大もとでありますので、伊東さんのお答えのような方向で、ぜひとも実り多い結果が出ますように、御努力を願いたいと思います。  それから、私は冒頭に日ソ漁業交渉の問題を申し上げたのですけれども、向こうに参りましたり、あるいはこちらの関係で友好団体といろいろな会合を通じてお話し合いをしております場合に、私どものところにも要望書が参っておりますけれども、「日ソ貿易の増嵩に伴なう「在日ソ連通商代表部々員」の増員に関する要望書」、もう一つは「日ソ沿岸貿易の発展に伴なう「ダリイントルグ日本駐在事務所」の開設に関する要望書」というふうなことで要望書が参っておりますけれども、これは前者の場合は、「昭和三十三年五月九日(条約第七号)公布された「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約」に基づく、日ソ間の取引額(往復)は、昭和五十五年に四七億三、〇〇〇万ドル(米ドル)へと拡大いたしました。また貿易量の増大に伴なって日ソ双方の業務量は著しく増大し、駐在員の増員並びに駐在事務所の開設は欠くことの出来ないものとなっております。現在正式に認可を受けてモスクワに駐在している日本商社員の数は百十二名で、更に十二社が総計十九名の駐在員の増員を申請しています。また、モスクワ駐在事務所の新規開設を望んでいる会社も数社あります。」。これは「数社」と書いてありますが、現実には四社あるわけであります。こういったようなことから、在日ソ連通商代表部部員の増員問題と、それから「日ソ沿岸貿易の発展に伴なう「ダリイントルグ日本駐在事務所」の開設に関する要望書」、これについても「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦極東地方との消費物資等の貿易に関する交換公文」に基づく日ソ沿岸貿易は、年ごとに発展し、昭和五十六年度の取引額(往復)は一億六〇〇万ドル(米ドル)に達しました。この沿岸貿易には、現在、一四〇社にものぼる日本の商社並びに関連企業が参加し、また東シベリア・極東地方を中心としたソ連邦の一二の州及び自治共和国との間で活発な交易が行なわれております。」、こういった関係でいまのような要望書の趣旨が説明され、日ソ貿易協会を初めたくさんの日ソ貿易にかかわっておる株式会社や商社の中堅のところの代表から要望書が私どものところへも届けられているわけであります。  率直に言って、日本側からモスクワの駐在員事務所新設が四社、それから駐在員の増員が十九名、これは通産省を通じて外務省の方にもお願いをしておるわけでありますが、通産省は、私の承知しておるところでは、非常に好意的であるけれども、なかなか外務省が温かくそれに対応しようとしていないというふうに聞いておるわけであります。それからソ連側の方は、先ほども言いましたように、通商代表部の大阪の支所を新設してつくりたい。それから先ほどのダリイントルグ日本駐在事務所の新潟につくる問題で、人員としては大体七名から十名ぐらいの人員増というふうなことで要請されておると承知しておりますが、こういう点について一月十七日に外国貿易省のダフマニン局長日本側の方にも要請しておる点を推進してもらいたいし、相互主義の中でモスクワ駐在事務所の四社あるいは駐在員増員の十九名については受け入れる用意があるというふうな意向も承っておるわけでありまして、こういった日ソの問題については、ややもいたしますと、対アメリカの方に顔が向いて、伊東大臣も言われますように、中国が大切な隣国であると同時に、欧亜に伸びるソ連日本の重要な隣国であることは間違いないわけでありまして、しかも米ソを中心にした軍事的対立というものが激しくなれば、その惨禍を受けるのは日本国民自身である。だから今日の情勢については、私は多くの議論はいたしませんけれども、いずれにしても外務大臣がよく言われるように、ソ連との関係は常に窓口をあけておると言っておるのだけれども大使に会うにしても、総理に会うにしても、このごろ窓は非常にかたい。アメリカ大使に会うのであれば三日に上げず気楽にやっておる。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕 あるいはアメリカの方には首脳部が入れかわり立ちかわり行く。ソ連との関係については、いまはわれわれは必要に応じて行かなければならぬ立場にあるので行きまするけれども、そういう点についてもう少し外務省自身もゆとりのある態度というものを基本に持ってもらいたいものだと思っておるわけであります。  まずお伺いしたいのは、いま言った、われわれのところに要請が来ておる日本側の問題、ソ連側の問題、外務省から言えば特にソ連側の問題に基本を置いて、日本側の問題も含めて御答弁を願いたいと思います。
  228. 武藤利昭

    武藤政府委員 ただいまお尋ねのございましたソ連の通商代表部の増員の問題、ダリイントルグの駐在事務所の開設の問題、それとモスコーにおきます日本の商社駐在員の問題についてお答えいたします。  まず申し上げたいことは、ソ連通商代表部というのは、ただいまも御指摘がございましたとおり、通商条約に基づきまして、大使館と同様の特権免除を持つというきわめて特殊な性格を持っているわけでございます。このような取り扱いをいたしましたのは、御承知のとおりソ連におきましては貿易も国営と申しますか、種々の国家機関によって行われているという観点から、この代表部に貿易の分野にかかわるすべてのソ連の機関を一括して、これを代表するものとして仕事をしてもらうという趣旨で、このような大使館と同様の特権免除を有する代表部の設置を認めた経緯があるわけでございます。  片やモスコーにおります日本の商社駐在員は、御承知のとおり日本は全くの自由貿易でございまして、たとえば一つの商談を行うのに、日本の方は複数の商社駐在員がかかわり合うというような状況にございまして、窓口が一本化されているソ連側とは違うわけでございますので、東京にございますソ連の通商代表部とモスコーにおります日本の商社駐在員の方々とは、基本的に性格が異なるという認識があるわけでございます。  そこで、増員要求についてでございますけれども、これは従来から必要性に応じまして通商代表部の定員の増員は認めてきているわけでございまして、最初に通商代表部が設置されました一九五八年と現在とを比べますと、三倍近い増員を見ているわけでございまして、今後とも通商代表部の仕事の量、どれだけの仕事をしているかというようなことにつきまして、ソ連側と相談をしながら、必要があれば認めるというのが私ども基本的な考え方でございます。  片やモスコーにおります日本の商社駐在員につきましては、基本的には性格は異なるわけでございますけれどもソ連はえてして相互主義というようなことを言うこともあるわけでございますが、そのような基本的な性格の違いということも指摘をしながら、ソ連側の配慮を要望しているわけでございます。先ほどちょっと御質問を聞き落としたかもしれないのでございますが、もしモスコーにおきます日本の商社駐在員の増員に外務省が反対しているということでございましたら、そういうことではございませんで、外務省といたしましても、通産省と一緒になりましてソ連側に働きかけているということでございます。  去る一月、ソ連外国貿易省のキセリョフというアジア諸国貿易局長日ソ貿易臨時協議のために参りまして、私と会議を持ったわけでございます。そのときにも、このような問題につきましては話をいたしまして、先方から要望があり、日本からも日本の考え方を述べたという経緯があったわけでございます。  それからもう一点、ダリイントルグの駐在事務所の件でございます。もちろん、これはソ連の沿岸貿易公団でございますけれども、これの事務所を通商代表部と別個に設けたいという要望はあるわけでございます。ただ、冒頭申し上げました通商代表部の性格からいたしまして、ソ連の貿易関係の機関はすべて通商代表部に一括するという趣旨になっているわけでございます。現に、東京にございます通商代表部にダリイントルグの職員もいるわけでございます。そこで、別個の事務所を設置する必要はないのではなかろうかというのが私どもの考え方でございます。
  229. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 大臣事務当局からちょっとお話がございましたが、私はいまの点についてはひとつ早急に問題を処理するように外務省としてもお願いをしたいと思うわけですが、この点について伊東大臣からも御答弁をいただきたいと思います。
  230. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま武藤君から御説明申し上げましたが、通商代表部というのは特殊な、外国に例のないような外交特権も与えるということでやっておりまして、人数もたしか当初より三倍くらいふえているわけでございます。それで、そこには沿岸貿易公団の職員も入っておられるし、ソ連との貿易関係も大体東京の話し合いで解決がつくということでございますので、果たして大阪に支所をつくる必要があるのかなと思います。沿岸貿易公団の人もそこに入っておられるということでございますから、私どもは地方には要らないのではないかなと思っているわけでございます。片や角屋さんおっしゃるように、モスクワに駐在事務所を置きたいという商社等の要望があるということでございますので、これはどうせ相互主義ということで、通商代表部の職員との見合いの問題が出てまいりますから、どういうふうにしますかよく考えてみたいと思います。  それから、もう一つ大きな問題でございますが、アメリカソ連日本の態度が違うではないかということをおっしゃいました。これは御承知のように日米安保があり、ソ連との関係は解決しない領土問題がある、そこに軍備の増強がある、アフガニスタン問題があるということで冷たい関係になったことは事実でございます。この間は信頼醸成措置ということをポリャンスキーさんが持ってきたわけでございますが、信頼をつくるということであれば、やはりソ連も信頼に値するような行動をとってもらう必要があるのではないか。コンブの問題でも墓参の問題でもまず解決してくださいよ、すべきだというような話をしたわけでございまして、両国と日本との関係は、若干といいますか大きな違いがあるということでございます。  ただ、有力な隣国であるということは間違いないわけでございますから、今後とも残った領土問題をどうするかというようなことでお互いがテーブルに着き、話し合い、そして平和条約ができて、恒久的な平和関係が結ばれることを、私も心から期待し、望んでいるところでございます。
  231. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これからの国際情勢の中で、米ソ対決の状態がさらに深まっていく、あるいは軍縮の方向でなくて軍拡の方向に、アメリカの指導やいろいろな力が加わってそれが促進されていくということになれば、その行き着くところはもうおのずから明らかになる。いかなる条件、いかなる情勢下においてもわれわれが追求すべきは、やはり核兵器の廃絶であり、軍縮であり、そして体制のいかんを問わず国際的な平和環境をつくっていくということが日本の平和外交の基本であろうというふうに思うわけであります。特に私のように、長崎の原爆の洗礼を受けた立場から申しますと、今日、恐るべき核兵器がさらにどんどん水準を高めていく、そう大した時間がかからずにいずれの国からでも日本の本土にも到着するという射程内にある、こういう状況の中で、一方に加担をして他との対決を強めていくということは、長い目で見て、日本立場から見て決してとるべき方向ではなかろう。それに対して言うべき点は、私どもも行ったときには——私自身は領土問題であれその他の問題であれ遠慮なく物を言う方でありまして、それは相互理解のために当然やるべきだけれども、いま見ておりますと、日本政府の方は、対ソ脅威論というのに籍口して、アメリカの力による外交あるいは防衛力の対ソ優位というふうな路線の上に立って、これから始まっていく日米の首脳会談というところで重い荷物を大平さん以上に背負って帰るということが断じてあってはならないだろうというふうに思うわけであります。そういう点については、伊東さんは自民党内閣の閣僚、外務大臣の席にありますけれども、ある程度自分のニュートラルというかクールというか淡泊というか、そういう点を加味して外交の折衝等に当たっておられるというふうに私は見ておるわけでありますが、やはり政治の責任を持つ者は、将来に対して、かつての大東亜戦争で犯したような形のものを再び犯さないわれわれの政治家の責任というものを基本に置いて対応してもらいたいというふうに思うわけであります。  私は、去年の「第六十七回列国議会同盟会議報告書」というものに基づいて一言だけお尋ねをしたいわけでありますが、これは議員外交としてやられていくわけでありますし、政府政府立場で外交を当然やる責任を持っているわけでありますが、外務省も、やはり国会を構成しておる議員代表が列国議会同盟等でなされるそういう内容については十分目を通され、各国のそれぞれの主張等については、外交チャンネル以外の形において行う重要資料として、これを生かしていくという形で当然やられておると思います。  そういう中で、時間の関係上深く内容は触れませんけれども、要するに第六十七回列国議会同盟会議採択決議の中で、たとえば各国の議会と政府に対して、インド洋からすべての大国の軍事的存在及び反目の除去を呼びかけている国連総会決議第二千八百三十二号に述べられた平和地帯としてのインド洋宣言の実行に向けて努力を集中するよう要請するという平和地帯の問題、これは社会党の場合は、非核武装地帯をつくり、緊張緩和の重要なかぎにしていこうということ。この点については第三項のところで「湾岸地域及びインド洋を国際紛争から守り平和地帯とする緊急な必要性」というところでも詳細に述べられておるわけでありますが、これが一つ。それから第八項の点で、「平和大学創設に対する支持」ということで、「第六十七回列国議会同盟会議は、平和大学を創設するためのコスタリカ政府の行った発議に基づく国際的組織への関心を考慮し、」云々ということで、三項目にわたってこれに対する支持やあるいはまたこれからの協力問題について触れられておるわけであります。この二点の問題について行政府の責任の立場からどういうふうに受けとめられ、またこれからやられようとしておるか、その点についてお答えを願いたいと思います。
  232. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 第一点の列国議会同盟会議の御決議の平和地帯の創設でございますけれども、ただいま御指摘のように、湾岸地域とインド洋、この二つを対象としているわけでございます。インド洋につきましては、わが国も積極的に当初の決議に賛成をいたしまして、この審議に参加をしておるわけでございますが、この内容はインド洋の非軍事化ということでございまして、いわゆる非核地帯設定問題のほかに、より幅を広げまして非軍事化ということで大国の基地の撤去というようなものを含んでおるわけでございます。御承知のように、インド洋にはアメリカのジエゴガルシアの基地がございますし、またソ連の南イエメンの基地もあるわけでございまして、このインド洋平和地帯の範囲のとり方いかんによっては、米ソ双方が直ちに基地の撤去という問題に直面をいたすわけでございまして、米ソの思惑ということは現実問題として否定ができない。しかしながら、わが方といたしましては、本年じゅうにさらに会議ができますように列国議会同盟の御決議の趣旨を体しまして努力をさせていただくつもりでございます。  それから、湾岸地域につきましてはやや趣を異にいたしまして、当面の問題の地でございまして、この問題については可能性はやや異なるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  コスタリカの平和大学につきましては、これも御決議の趣旨を体しまして対応しておる次第でございますが、これは日本に国連大学というものがすでにございますので、もう一つ国連大学をつくろう、こういう話でございます。国連大学は多ければ多いほどいいという考え方もございましょうけれども、財政的な規模とかいうものを考えますと、この点は競合関係をなるべく少なくするということが必要でございますので、この点につきましてコスタリカ政府わが国政府で話し合いを進めまして、ただいまのところその競合関係が大分減ってまいりました。財政的な関係につきましても、コスタリカ政府が大半を負担するというような線まで出てまいりましたので、これも御決議のラインで努力したいと考えております。
  233. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に、伊東外務大臣に一点質問申し上げて私の質問を終わりたいと思いますが、これからの政治日程の中では、冒頭にも触れましたように、五月には日米の首脳会談が行われる、七月には首脳会談がオタワで行われる。それ以降も国会が終わりますれば伊東外務大臣自身も、総理に随行してとかあるいはみずからこういう政治日程があろうと思うわけであります。  そこで、最後に一点お伺いしたいのは、日米の首脳会談が行われるわけでありますけれども、私は首脳外交というものは各国の間でできるだけ頻繁に行われて相互の意思疎通が続けられるということが必要であろうと思います。日本の側からアメリカに昔の言葉で言えば参勤交代式に行くというのではなしに、アメリカからも首脳部がおいでになる。これはアメリカに限りません、EC諸国であれ西側であれ、あるいは中国であれソ連であれ、そういう首脳外交というものが頻繁に行われることによって、デタントの崩れ、緊張激化の方向をできるだけ平和の回復の方にいくように努力しなければならぬと思うのです。恐らく鈴木総理が五月に予定どおり行かれるとすれば、レーガン新大統領に対して、ことし秋にでも政治日程が許せばぜひ日本にも来ていただきたいというようなことを要請するであろうというふうに予測しておるわけでありますが、そういったレーガン大統領の訪日等の要請問題も含めて、最後に外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  234. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの最後の点でございますが、五月の七日、八日総理がワシントンという日程はそのままでございます。行かれての首脳会談があるわけでございますが、いま角屋さんおっしゃったように、首脳が頻繁に会うということは、私は大切な必要なことだと思います。会って話すうちに何かがやはり解決するものもあり、気心も知れるということが、外交をやる上には本当に必要だと思いますので、頻繁に首脳が会うということは原則として賛成でございます。総理も恐らく行かれれば、レーガン大統領に会ってアジアのことに理解を深めてもらうというためにも招請をされることは適当なことだと思いますので、私もそういう御質問も踏まえまして、総理にもまた御進言しようと思っております。
  235. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で終わります。
  236. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 部谷孝之君。
  237. 部谷孝之

    部谷委員 せっかくの機会でありますので、この際、外務大臣並びに関係省庁に対しまして、今般起こりました羅臼日ソ親善協会の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  去る三月二十八日に、羅臼の漁業協同組合の事務所内に開設されました日ソ親善資料室の開設祝賀会が開催された際に、ポリャンスキー駐日大使を迎えまして、そして日ソ親善協会の羅臼支部の発足に伴う会員証が渡されまして、その会員証が北方水域での漁業操業許可証的な役割りを果たすことになるのではないかということで、マスコミも大きく報道いたしておりますし、また、北海道議会の水産委員会におきましてもこの問題が取り上げられたということでありますが、この事情はどういうことであったのか、その経緯をまずお示しをいただきたい、このように思います。
  238. 武藤利昭

    武藤政府委員 経緯につきましては、いまお話がありましたとおりでございまして、外務省といたしましては、国内のできごとでございますので、直接承知しているわけではないのでございますけれども、間接的に承知いたしておりますところでは、いまお話がございましたとおり、三月二十八日に羅臼で、羅臼日ソ親善協会主催の日ソ親善資料室というのでございますか、その開設祝賀会というものが開催されまして、その際、日ソ親善協会からいわゆる会員証というものが授与された、その際、ポリャンスキー大使が出席して立ち会われたということは聞いているわけでございます。
  239. 部谷孝之

    部谷委員 この件に関しまして、日ソ親善協会から外務大臣にあてまして抗議がなされたというふうに聞いておるのでありますが、その内容はどのようなものでありましょうか。
  240. 武藤利昭

    武藤政府委員 四月七日に日ソ親善協会から外務大臣に抗議文の手交がございまして、その趣旨は、今般の羅臼における会員証の交付は日ソ友好に役立てようという目的から出たものであって、これが領土返還運動に影響を及ぼすというような外務省の懸念は当たらない、むしろ、政府北方領土の日を設定したりしてソ連を刺激している、領土問題解決の道を遠のかせていることの方が問題だというようなことが書いでございました。
  241. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、いまお示しがありましたように、政府は一方では北方領土の日を設定したが、これによって反ソ的な雰囲気が生じて、そしてソ連を刺激し、領土問題解決への道を遠のかせておる、このことの方が大事だ、こういうふうに言っておるというわけでありますが、この点についてひとつ大臣の御見解をいただきたいと思うのです。
  242. 伊東正義

    伊東国務大臣 抗議文は私が直接もらったのでございますが、その中にいま欧亜局長が申しましたようなことが書いてあるわけでございます。しかし、あの北方領土の日というものをつくるということは、国会のたしか満場一致の決議にも基づいておるわけでございますし、二月七日にも、私も出ましたけれども各党からも代表皆さんおいでになっているということで、私は、やはり北方領土の返還ということは国民の総意だ、こう思っているわけでございまして、これはどこの国からどう言われても曲げることができない国民の悲願だ、私はこう思っております。  あの二月七日という日は、先生御承知のように、下田条約の締結の日なんでございまして、あれは平和裏に下田条約をつくって、そして四島は日本の領土だということ、あれも条約ではっきりしたことでございまして、私どもはむしろ平和的に条約を結んだ日なんだ、日ソの間には領土という未解決の問題がある、これを何とか解決してもらって、そして日ソの間というものは本当に恒久的な平和友好が望ましいということの期待を込めた北方領土の日というふうに考えておりますので、あの日をつくったことが領土返還を遠のかせたとかそういうことではない、領土返還の問題というのは、別な次元で日ソがまた話し合う、そして何とか解決したい、私はこういうことだと思っておるわけでございます。
  243. 部谷孝之

    部谷委員 三月三十日の釧路新聞によりますと、羅臼の日ソ親善協会は、五十四年の秋に民族歌舞団が羅臼町で公演いたしました際に、それを受け入れる窓口として発足したものである、「それ以来ほとんど目立った活動もなく、同協会役員や漁協関係者が儀礼的に在日ソ連領事館を表敬訪問する程度だった。そもそもがバレエ公演の受け皿組織だったから、その資金を生み出す特別会費でまかなっており、当初の年会費はコンブ漁家一万円、十トン未満漁家一万五千円、十トン以上二万円で運営して来たという。この町独自の組織がこんどは日ソ協会の系列下にはいる訳だが、百三十五人の会員のうち、それに賛成したのが七十六人で、こんどの会員証はこの人たちに手渡された。したがってすべてが漁協組合員で町の一般人は入っていない」、こういうふうな記事があるわけでありますが、この羅臼漁協は一体どういう構成であり、また、営まれております漁業種類、そういうものはどういうふうになっておるのか、これはひとつ水産庁の方からお答え願いたい。
  244. 中島達

    ○中島説明員 羅臼漁協の構成その他の問題でございますが、羅臼漁協の組合員は、本年四月一日現在七百八十名ほどございます。  そこで、この組合員のほとんどは、二十トン未満の小型漁船によりまして、主としてスケトウダラ及びカレイの刺し網あるいははえなわ漁業、それからコンブ、ウニ等の採取、さらにサケの定置網漁業、こういったものを主体に営んでいると聞いております。
  245. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、この七十六人と申しますか七十六隻、この漁業種別、それからトン数別あるいは階層別の内訳はどういうふうになっておりましょうか。
  246. 中島達

    ○中島説明員 会員証を受けたと言われております七十六隻につきましては、漁業種類は、これらの会員が主として営む漁業種類について見ますと、スケトウダラの刺し網が六十六隻、それからカレイ等の雑刺し網が九隻及び定置網漁業が一カ統でございます。  これをトン数階層別に申し上げますと、五トンまでのものが八隻、五トンから十トンまでが十三隻、十トンから十五トンが三隻、十五トンから二十トンが四十八隻、二十トンから二十九トンまでが四隻でございまして、これらを一括して申し上げますと、すべて三十トン未満の小型漁船であるという実情にございます。
  247. 部谷孝之

    部谷委員 いま御説明がございましたように、羅臼漁協の業態は、大別いたしますと、定置網漁業、それからコンブ、ウニ等の根つき漁業、それにスケトウダラを主力としその他の機船漁業、こういうふうに分けられると思います。  そこで、会員証を交付されました船の大半はソ連水域へ出漁する船である、こういうふうに私は判断することができると思うわけであります。そこで、この七十六人に対して渡されました会員証は、報道されておりますように、ロシア文が上に書かれておりまして日本文が下に書かれたものでありまして、また、当然住所、氏名を書くべきところに船名と船主名が書かれておるということは、海上でソ連の取り締まりを有利にする目的以外には考えられないのではないか、このように考えるわけであります。協会では、船名は会員の漁民に友好を損なわないように注意してもらうために入れたものであって、あくまでも友好のためだ、こういうふうに言っておるようでありますが、御朱印状あるいは免罪符、こうした言葉で表現されておるような役割りを果たす懸念がきわめて高いと私は思うわけであります。先ほど大臣からもお話がございました北方領土の日の制定、そういうことで国民の間に盛り上がってきておる北方領土返還運動に水を差すことになると思うのでありますが、大臣、御見解を伺いたいと思います。
  248. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは実際の目的その他は、私ども説明を聞いただけで、それ以上のことはわからぬわけでございますので、いまおっしゃったようなそれが免罪符になるとかどうとかいうことは、親善協会の方はそういうことじゃないということを私にも説明をされたわけでございますので、そういうことが目的かどうかということは、事実は私どもは確認はしてないわけでございます。でございますので、注意深くそこは見守っていこうと思っておるわけでございます。  北方領土の日の設定、領土返還等に水を差すかどうかということは、これは私どももいますぐにそうだという判断をする材料は持っておりませんが、そういう目的で、たとえば領土問題抜きで日ソ友好だというようなことで日本側にいろいろ働きかけられるというようなことがソ連側にあれば、これは重大な問題でございますから、私どもとしましては注意深くその辺のところは見守っていくという態度でおるわけでございます。ただ、さっきの領土の日が領土返還を遠のかせるものだというような意見が日本側の中にあるということははなはだ残念だ、そんなことは全然考えてない、領土の日ということで私は国民の総意だというふうに思っておるわけでございます。
  249. 部谷孝之

    部谷委員 この問題が発生いたしましたときに、外務省筋はいろいろと「調査の結果、会員証の内容は北方水域での漁業操業の許可証的役割を果たす疑いが濃い」、また「会員証がさらに北海道の他の地域でも発行されれば、北方領土返還運動にも影響を与えかねないとして当面、北方領土隣接地域への駐日ソ連大使館、同総領事館員の立ち入り禁止措置を取ることを検討する」、あるいは「外務省筋は、以前に釧路でソ連大使館員が渡した同じような会員証が北方水域での漁業操業の許可証の役割を果たしたといわれるため、今度も同様の性格の会員証である疑いが濃いとみている。」あるいは「こうしたソ連の行動は北方領土問題の第一線にあたる漁民を切り崩して、返還運動の骨抜きをはかるねらいを持つ」、これは新聞記事でありますが、そういう新聞記事が出ておるわけです。  そこで、私はこれからそうした問題について具体的にお尋ねをしてまいりたいと思うのでありますが、ソ連は十年ほど前に札幌に領事館を創設いたしました。北海道でそれほどの領事事務があるのかどうか、領事館の主たる使命は一体何であるとお考えでございましょうか。また、このたび駐日大使が出席されるような意義の大きいと申しましょうか、そういう会合になぜ札幌におられる総領事が出席されなかったのか、この辺の事情はどうなのでございましょうか、お伺いしたいと思います。
  250. 武藤利昭

    武藤政府委員 札幌にソ連の総領事館が開設されましたのは昭和四十二年でございます。実は当時、日本側といたしましてはナホトカに総領事館を設置したいという希望がございまして、札幌にソ連の総領事館の設置を認めましたのは、ナホトカに日本側の総領事館を設置したこととの見返りのような関係も若干あったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そのときにソ連側が札幌に総領事館を設置したいというその理由として申しましたところは、札幌が地理的にソ連に近い、それで、将来経済、文化面で日ソ間の交流を進めていくに当たって札幌が果たす役割りが増大すると考えるということでございまして、これがソ連側が申しておりました公式の説明でございます。それ以上に真意があるかどうかということにつきましては、これはあくまでも憶測になるわけでございますので、この場で申し上げることは適当ではないと考える次第でございます。  そこで、いま申し上げましたように、札幌にソ連の総領事館の設置を認めましたのは、ナホトカにわが方の総領事館の設置を認めたのと見合いの関係にあったわけでございますが、実はナホトカにございますわが方の総領事館の行動の自由につきましては、かなりの制約があるわけでございまして、たとえばナホトカにございますわが方の総領事館の管轄区域はナホトカ市だけに限られている。また、ナホトカにございます日本の総領事館の館員が旅行すると申しますか、出歩くことができる範囲もナホトカ市に限られているということがあるわけでございます。したがいまして、相互主義の見地から、私どもといたしましては、札幌にございますソ連の総領事館の管轄区域は札幌市に限っているわけでございまして、札幌以外の北海道の他の地域には札幌のソ連の総領事館の管轄は及ばない。そういう理由で、実はこの羅臼の行事に札幌のソ連総領事からも旅行の許可申請があったのでございますが、羅臼は札幌の総領事館の管轄区域外であるという理由で、その申請は不許可にしたという経緯がございます。
  251. 部谷孝之

    部谷委員 五十一年に釧路に東北海道日ソ貿易友好協会、こういうものができまして、そして五十三年に日ソ友好の船の会員証が発行されました。この会員証もまた、日ソ両文で会員の船であることを証明いたしております。この友好の船は、入会の際に領土抜きの日ソ友好運動にコミットしなければならない、こういうふうに言われております。つまり、領土返還運動をやらない、そういう約束をして入会しておるということであります。この会員証を持っておれば、何かの違反があっても大目に見られるとかあるいは罰金を安くしてもらうとか、そういった恩典があったというふうにも聞いておるわけであります。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕 また、これらの会員からの連絡によりまして、北方領土返還運動に積極的な漁船をマークいたしまして徹底的な臨検調査がなされた、そのために、漁民にとっては全く無用なヒトデがひっかかったということで数百万円の罰金がかけられた、こういう話があるわけでありますが、これは羅臼と同じような形で会員証が使われるものだ、こういうふうに思うのであります。この点いかがでしょうか。
  252. 武藤利昭

    武藤政府委員 釧路で今般の羅臼の場合と似たような会員証ロシア語日本語と両方書いた会員証が発行されておるという話は聞いておりますし、またその会員証の役割りについて、いまお話がございましたようないろいろの見方が新聞報道等で出ておりますことは、私どもも承知いたしているわけでございますけれども、それが果たして事実であるかどうかということにつきましては、確認するには至っていないわけでございます。  ただ、もしそういうことで、その会員証をもらうために北方領土返還運動に参加しないとかという条件が仮についているということでございますと、先ほど大臣もおっしゃいましたような領土抜きの日ソ友好ということにもつながりかねないわけでございますので、私どもといたしましては関心は持って事態を見ておるということでございます。
  253. 部谷孝之

    部谷委員 去年、レポ船第十八和晃丸事件、これが大きく報道されたわけでありますが、第十一幸与丸事件あるいは米水兵密出国事件等々一連のレポ船の実態はどういうふうになっておりましょうか。
  254. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 いわゆるレポ船事件、ただいまお話がございました第十八和晃丸事件の概要、それからこれにつきましての警察措置でございますが、これは昨年一月九日、北方領土に駐留いたしておりますソ連国境警備隊、これの指令によりまして情報活動を行っておりました根室の漁民三名を関税法並びに検疫法違反で逮捕しまして、一月十日釧路地検に送致した、こういう事案でございます。  この逮捕の理由となった事実はどういうことかと申しますと、この被疑者らがソ連の国境警備隊と連絡のため、昭和五十四年九月二十五日あるいは同じ月の三十日、この二回、ひそかにくだんの第十八和晃丸で色丹島の穴澗港というところに参りまして、その際、かねて出港前に北海道内で購入いたしましたロシア文のタイプライターであるとかスーツケースなどの物品を先方に渡しまして、これを不法に輸出した、さらに、根室港に帰りました際に、法で定めるところの検疫の手続をしなかった、これが罪に問われた事実でございます。  これにつきまして、警察の措置というわけではございませんが、地検の方でそれぞれ起訴の手続がとられまして、最終的には根室簡易裁判所におきまして、被疑者二名につきましてそれぞれ二十万円の罰金が科されたということを聞いておるところでございます。
  255. 部谷孝之

    部谷委員 十八和晃丸事件だけいまお示しがあったのですが、十一幸与丸とか米水兵の密出国事件等もあるわけであります。そうした点についても触れていただきたかったのですが、いかがでしょうか。
  256. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 第十一幸与丸事件と申しますのは、昭和四十九年の事件でございまして、これまた、この船の船長が先ほど御説明しましたのと同様の背景をもちまして検疫法違反あるいは漁業法違反に問われまして、これについて罰金刑が科されたという件でございます。  それから、御質問の二つ目のいわゆる米水兵の密出国事件でございますが、これは折からベトナム戦争が激化した昭和四十三年当時の事件でございまして、刑事特別法に基づきます米軍からの逃亡米軍人の逮捕要請に基づきまして、その年の九月十四日、これは米海軍横須賀基地の病院から脱走しました米海軍軍人を釧路市内で逮捕したという件でございます。この水兵の自供によりますと、彼はジャテックと呼ばれる組織の手引きによりまして東京から飛行機で釧路に到着し、ソ連側と連絡をとりながら根室の港から深夜くだんのレポ船で脱出をし、国後島の付近でソ連の警備艇に乗り移り、ソ連へ逃亡するという計画であったということでございます。  本件に限って申しますれば、その計画は未遂に終わったということでございます。しかし、その水兵などの取り調べから、それまでに三回ほど、数にして十数人のいわゆる反戦脱走米兵が、根室港からこのレポ船を利用してソ連を経由し、終局的には北ヨーロッパ、北欧の方に密出国していたということも明らかになっておるところでございます。
  257. 部谷孝之

    部谷委員 ですから、レポ船というのは、いわばソ連の巧妙な働きかけを受けまして、わが国の情報や資料などをひそかにソ連側に渡し、その見返りにソ連が自分の国の領海と主張する北方領土の周辺海域で安全操業をさせる、そういう漁船のことを言うわけでありますが、同時にまた、情報、資料の提供ばかりでなく、わが国にとって好ましくない人物やスパイなども潜入させるあるいは脱出させることに利用される可能性もきわめて強いわけでありまして、このアメリカの水兵の密出国事件はそのような危惧が現実的に裏づけられた、私はこういうふうに思うわけであります。同時にまた、いまお話がございましたように、同水兵の取り調べから、これまでに数回、数十人の反戦脱走米兵が、根室港からレポ船を利用して、ソ連を経由して北欧に密出国していたという事実も明らかになっておるわけであります。  ですから、関税法や検疫法で罰金を食ったといういまの御答弁だけではどうも十分でなかったと私は思うのですが、しかし、それ以上お尋ねをしてもなにでしょう。とにかく、このように日ソ友好の船あるいはレポ船、そしてこのたびの羅臼日ソ親善協会会員証の発行、こういうものは、先ほどからるる申し上げております御朱印状の役割りを果たすものだという懸念をぬぐうことはできないと私は思うのです。そういう事実があればというお話を先ほどから繰り返しておられるのですが、こういった状況が次々と出ておる中で、なおそうした判断がされないのかどうか、重ねてお尋ねをしたいと思います。
  258. 武藤利昭

    武藤政府委員 いまお挙げになりました一連の例のうちで、レポ船の件についてはある程度実態が判明したわけでありますので、昨年の三月でございますが、直ちに外交ルートを通じましてソ連側に注意の喚起を行ったということがございます。その趣旨は、当時の調査によりますと、ソ連側が北海道の漁業関係者から、北方領土周辺の水域での漁業操業を妨害しないということの代償として、わが国の防衛、治安等に関する情報、資料であるとかあるいは物品等を受領していたということはきわめて非友好的な行為であるということで、注意を喚起したわけでございます。  ただ、日ソ友好の船あるいは日ソ親善協会会員証の件につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、果たしてそれが伝えられているような目的に実際使われることになるのかどうかという点につきまして、私どもといたしまして必ずしも確証を持っておらないわけでございますので、重大な関心を持って事態を見てはいるわけでございますけれどもソ連に対して正式の措置をとるというには材料が十分でないというのが現状だと思います。
  259. 部谷孝之

    部谷委員 去年の春、福井県におきましても、このたびの羅臼漁協と同じような会員券が発行されたということでありますが、その実情はどのようになっておりましょうか。
  260. 武藤利昭

    武藤政府委員 昨年の三月でございますけれども、福井においても今回の羅臼と同様の会員証が発行されたということでございますが、実はこれはお恥ずかしいのでございますけれども、私どもも最近になって知ったことでございます。  当時の新聞報道によりますと、日ソ親善協会福井支部の総会が、三月二十九日に福井市の県民会館で開かれて、その際に会員証が交付された、そのとき、福井県のイカ釣り漁業協議会四十二人に会員証の交付が行われたということでございます。
  261. 部谷孝之

    部谷委員 このことは水産庁はどうですか。
  262. 中島達

    ○中島説明員 私どもが福井県当局から聴取したところによりますと、五十五年三月二十九日に、親善協会の福井支部の総会の際に、越前漁業協同組合所属のイカ釣り漁業者を中心にしまして、船の隻数にいたしますと三十八隻、これは漁業者の数では一人で二隻分というものが中に入っておりますので数字が違うわけでございますが、三十八隻分の者が会員証をもらったというふうに聞いているわけでございます。
  263. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、このときにはソ連大使館からはどなたが出席されたかおわかりでしょうか。
  264. 武藤利昭

    武藤政府委員 記録を調べましたところ、その際は在京ソ連大使館のシレンコ一等書記官という人が出席しているようであります。
  265. 部谷孝之

    部谷委員 福井県のイカ釣り漁船は、沿海州方面へ出漁するイカ釣り漁船でありますが、もちろん沿海州のイカ釣りにつきましては、北方領土と全く関係のない地域への出漁、これに対する会員券であります。しかし、いま二百海里時代に入りまして、私は山口県ですが、山口県にもたくさんイカ釣りがおりまして、沿海州近辺でいろいろトラブルを起こしたことが当時非常に多かったわけであります。そうした沿海州のイカ釣り漁船に対してもこのような許可証が出されたわけであります。そういういわば領土問題と直接関係のないところに一等書記官が出られて、席に列せられたということであります。  羅臼の日ソ親善資料室、これも先ほど読み上げました新聞記事によりますと、特にそのために建設したものではなくて、約三十平米くらいの部屋の壁際に机を並べまして、これまでにソ連側から贈られた絵とか壁かけあるいは人形、そういったものを約七十点ばかり並べたにすぎないものであります。そうしてこの開設式と申しましょうか、オープン式にポリャンスキー大使がわざわざ出かけるということは、親善協会も初めは予想しなかったというふうに新聞では書いております。しかも、大使は静岡方面への旅行の予定を急遽キャンセルいたしまして羅臼へ行った、こういうふうに言われておるわけでありまして、ソ連の子供の絵を七十点ほど漁協の一室を割いて展示した、あるいはまたそういうところの開所式、七十六人の親善協会員への会員証の伝達に、超大物と言われる大使が足を運ばれるということはやはり異例のことだ、こういうふうに私は思うわけであります。  ところで、現在駐日ソ連大使館員の旅行の制限、これはさっき一部お話がございましたけれども、どういうふうになっておるのか。もしソ連大使等の行動が日ソ友好関係を害し、内政干渉にわたるものと判断されれば、駐日ソ連大使館員などの北方領土地域への立ち入りを禁止するというような先ほどの記事があったわけでありますが、そうした禁止をされるのかどうか、そういうお考えがあるのかどうか。またあわせて、ソ連における日本外交官の旅行制限はどのようになっておるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  266. 武藤利昭

    武藤政府委員 御説明の都合上、ソ連におきますわが方の大使館員に対する旅行制限から御説明を申し上げたいと思うのでございますけれどもソ連外国人に対しまして非常に厳しい旅行制限措置を課しておるわけでございまして、日本大使館員を含む各国大使館員についても同様なわけでございます。たとえば、極東地域はもうほとんどすべてが旅行禁止区域になっているという状況でございます。モスクワにおります外交官が旅行できますのは、モスクワ州の中にございます一定の開放された都市及び区域というところに限られているわけでございます。  そこで、このようなソ連側の措置に対します相互主義といたしまして、日本側におきましても、在京ソ連大使館員に対しましては旅行許可制度というものを実施しているわけでございます。その範囲は、おおむねモスクワにおきますわが方大使館員に対する旅行制限と見合うものといたしまして、東京の中央、日本橋から約四十キロメートルぐらいの範囲ということをめどといたしまして、若干の例外はございますが、おおむねそのような地域の中は自由に旅行することができる、この地域より外に旅行するときには事前の許可が必要である、事前に旅行許可申請を出してもらうという制度にしているわけでございます。  いまお尋ねのございました今後の方針についてでございますが、これはいろいろの問題を含んでいるわけでございます。もちろん、私どもといたしましては、先ほどから申し上げておりますように、何と申しましても北海道は北方領土返還運動の原点とも言われるところであるわけでございますので、ソ連が万が一にも北海道において領土抜きの日ソ友好というようなことについての工作をしているということであるとすれば見逃し得ないところであろうと考えているわけでございまして、今後のソ連の動向を注意深く見てまいりたいと思っておりますし、それから、ソ連大使館員の北海道への旅行につきましても、同様の観点から今後検討を行っていきたいと考えている次第でございます。
  267. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、大使館員の行為が内政干渉となると判断する、そういう基準はどこに置かれるのでしょうか。
  268. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  大使館員、つまり外交の特権免除を享有するような者が任国においてどのような義務を負っているかということでございますが、外交関係に関するウィーン条約では、その第四十一条に、これらの者は接受国の国内問題に介入しない義務を有するというふうに書いてございます。この国内問題に介入ということとそれから内政干渉とは国際法上非常に明瞭に区別されているわけでございます。  国内問題に介入しないと申しますのは、いわゆる内政干渉というものよりは軽い程度のもので、それもやってはいけない。具体的にどういうものであるかというはっきりとした基準があるわけではございませんが、審議経過から申しましても、それはある特定の政党を支持する演説を行うとかあるいはある特定の国内の政党に寄付をする、献金をする、選挙運動をするというようなことがこの条項の違反であろうというふうに解釈されております。  そこで、内政干渉ということでございますが、実はこれは国際法上は非常に厳密に解されている観念でございまして、具体的にお示しするわけにはいきませんけれども、国家の主権独立という概念に対応するものといたしまして、ある国が他国の現状の維持ないしは変更を目的としまして、その国際法上当該他国が自由に処理され得るものとされている事項、すなわち当該他国の専管事項に関しまして、それに立ち入りまして強制力を持ちまして自国の意思に従わせようとすることを干渉と言っているわけでございまして、国際法上国家の不法行為を構成する干渉というのは、そのように厳密に解釈されているものでございます。したがいまして、外交官の内政干渉ということはないのでございまして、外交官の内政干渉というよりは、むしろその外交官に指令を発して行動をする国家の内政干渉ということに問題としては帰属するものだと思います。
  269. 部谷孝之

    部谷委員 領土の返還運動、こういうものに関して世論を喚起する、こういう問題がいわば国内問題だと思うわけですが、その返還運動に関する世論を喚起する、そういう行為に対して評論しあるいは抗議を行う、そうしたことはどうでしょうか。私は素人でありますので、わかりやすく御答弁いただきたいと思います。
  270. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 国際法によりますと、内政干渉と申しますのは、単に意見を表明するということだけでは内政干渉、あるいは干渉と言いますが、そういうものを構成するものではないということが言えると思います。したがいまして、別に強制力を伴わないで単に意見を表明するということにとどまります限りにおいては、それは内政干渉とは言えないのであろうと思います。  また、大使館の個人が介入する、つまり国内問題に介入するといいました場合には、先ほどのウィーン条約での外交官の義務としての国内問題に介入しない義務というものでございますけれども、これはこの条約ができました経過からいたしまして、先ほど申し上げましたように、純粋に国内の問題、つまり国内の政治問題でございますとかそういうものに関連しまして、特定の政党を支持する演説をしたり論文を書いたりあるいは特定の政党に資金を供与するというようなことをしてはいけないという趣旨でございまして、さらに申しますれば、外交の問題というのは、任国に派遣されました外交官が当然持つものでございまして、その四十一条の起草の際には、内政、外交に関与してはならないというのが案としてあったわけでございますが、その外交というものが落ちてしまったのも、外交官として接受国に派遣された場合に、その国の外交に関心を持つということは当然であるということで、その外交という言葉が落ちてしまっている。したがって、この条項の解釈といたしましては、先ほど申し上げたような解釈になっているということでございます。  これは、以上が法律論でございまして、今回の事例が果たしてそれに当たるかどうかということになりますと、もうしばらく実態というものを考えてみなければ、にわかに判定できないものだと思います。
  271. 部谷孝之

    部谷委員 やはりそうした返還運動に関する世論喚起、こういう国内問題に対してこれを意図的に阻害しておる行為である、私はこのように判断をするわけでありまして、このことが干渉でないというふうにはわれわれは考えられないわけであります。これはそこでとどめておきたいと思います。  そこで、先ごろ鈴木総理に対しまして北方領土の視察を大臣からお願いされ、そして総理も北方領土を視察する意向があるように、そういう御意思のようなことを伺っておるわけでありますが、大臣は総理の視察の時期をどのようにお考えなのか、またその感触はどうなのか、お答えをいただきたいと思います。
  272. 伊東正義

    伊東国務大臣 総理は水産もずっと前から関係しておられますので、特に北方領土の問題につきましては非常に深い関心を持っておられるのでございます。予算委員会等でもしばしば答えられまして、日程の都合がつけば北方領土の視察もしたいということを言っておられるわけでございまして、そのお気持ちは全然変わってない、そのとおりだと私は思っているわけでございます。ただ、日程の具体的ないつごろということの打ち合わせとか御意見はまだ伺ってないわけでございますが、私は、総理は必ず日程をつくって北方領土の視察ということはやられると信じております。
  273. 部谷孝之

    部谷委員 返還運動つぶしのソ連の最終的な目標は、最も積極的な返還運動に取り組んでおります根室にある、私はこのように思います。そのために、先ほどるる申し上げましたように、釧路にあるいは羅臼に働きかけたものだ、こういうふうに今度の事件あるいはいままでの経過を通して判断するのが妥当ではないか、こういうふうに思います。こうした一連の会員証問題を中心とする返還つぶし、こういう問題が起こってくることは政府がきちっとした地元対策を怠っておるからにほかならない、このように思うわけであります。指呼の間にある国後島の郡司訓練の爆音や炸裂音、そういうものが聞こえてまいります羅臼町民に、ソ連は一方では恐怖心をそそり、また一方では漁民にあめをなめさせ、いわゆるあめとむちの工作、これが続けられておるという判断に立つべきだと私は思うわけであります。  そういう状態の中で、一部に領土より魚、こういう空気が出ておるわけでありまして、こうしたソ連の工作の術中に陥らないために、政府は断固たる処置をとるとともに、根室周辺の振興策に真剣に取り組むというような地方対策が必要だと思うのでありますが、ひとつ外務大臣といたしまして、この点についてどのようなことをお考えになっておられるのか、最後の質問といたします。
  274. 伊東正義

    伊東国務大臣 領土問題というのは、問題の性質上、私は、やはり国民が一致して息長く交渉していくということが大切だと思うわけでございます。そういう態度でこの問題はソ連と交渉し、あらゆる場所を通じまして、また国際的な世論も何とかして喚起したいというふうに考えて、粘り強く交渉していくつもりでございます。その際に、おっしゃるように、根室地区というのはもう指呼の間に歯舞、色丹があるわけでございまして、領土返還の原点まさに根室地域だ、私も同感でございます。  私も行きまして視察をしましたときに、根室周辺の方々と懇談をしたのでございますが、そのときにいまのおっしゃるような意見も実はあったわけでございます。私は、これは息の長いことで交渉しなければならぬ際に、原点の根室にそういう声があってはこれはまずいというふうに感じました。根室は大体水産を中心にした町でございますが、いろいろ経済面であるいは水産の面でその人たちの収入を支えていくということをまずやる必要があるのじゃないかということを考えまして、帰るとすぐ総理に御意見を申し上げまして、いま国土庁を中心に連絡をとることをやっておりますし、今後ともあの地域の振興、道東地区、特に根室周辺の振興ということに政府は積極的に取り組まなければ、この領土問題を主張する際に足元がしっかりしなければいかぬというふうに感じますので、今後ともひとつ積極的に根室地区の振興の問題を取り上げていくという決意でございます。
  275. 部谷孝之

    部谷委員 終わります。
  276. 江藤隆美

    江藤委員長 榊利夫君。
  277. 榊利夫

    ○榊委員 ジンバブエ、ヴァヌアツに大使館を設置するという案件でありますけれども、これはこれとして結構だと思いますが、大使館の設置に発展途上国に対する軽重と申しますか、目方の上での、態度の上でのそれがあるように思うのです。たとえば南イエメン、これは日本に実館の大使館を置いて大使が常駐されておりますけれども日本の南イエメンの大使館、これはエジプト大使館の兼轄になっております。こうした事例はほかに中南米のハイチとか中近東のオマーンあるいはアフリカのルワンダなどにも見られます。こういうことでは発展途上国を粗末に扱うということになるのじゃないかと思うのですけれども外務省としてはどういうお考えでございましょう。
  278. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 先ほどもお答えしましたように、兼轄公館というのが現在五十あるという状況は、私ども決して満足できる状態ではございません。その中でミニステート、人口が何万というような国の場合は、近隣国の大使が兼轄して年何回か行く、あるいは特に案件があるときに出かけるということで、しばらくの間、当面の間は兼轄でよろしいかと思いますけれども、いま例示をいただきましたような国につきましては、これは可及的速やかに実館を開きたい。特にこれらの国々は開発途上国でございまして、わが国に対するいろいろ経済、技術協力の期待とか、あるいは日本からのいろいろな訪問者、あるいは現に大使館がないところに在留邦人がかなりおられるところもあるわけでございまして、これはまた大使館に限らず、総領事館についても言える問題でございます。  そういう意味では、私ども現状に満足してないことはもちろんでございますが、この数年来の率直なる現状を申し上げますと、館をふやすことももちろんですが、人がふえなくてはどうしようもないというのが実感でございまして、ことしの、すなわち五十六年度の予算の折衝におきましても、いろいろな枠がございまして、定員枠あるいはお金の面からの枠がある中でどういう組み立てで予算要求するかということが省内で大激論になりまして、結論は、しかし、結局やはりいまにして人を確保して将来にわたって養成しておかなければ将来のことが一層心配であるという考えから非常に残念ではありますけれども、実館をふやすということよりも、定員をとにかくふやしていただくという方に重点をより置いたというのが、率直な内幕でございました。したがって、兼館ということもなおしばらくの間は続かざるを得ないと思いますが、いま御指摘の二、三の国については、特に実館を開設する日をなるべく早く実現したいという点は、そのとおりでございます。
  279. 榊利夫

    ○榊委員 兼館五十というその内訳が発展途上国に多いわけです。そこに問題があるわけで、やはりそういう発展途上国に対する軽視が疑われる状態というものは早く克服をしていく、このことが必要ではないかと思います。  同じような問題でございますけれども在外公館勤務者の基本手当の基準額を引き上げるという問題ですね。これもそれ自体としては結構なことだと思うのですが、外交官の言語能力あるいは外交姿勢という問題で、一つお尋ねしたいことがあります。  相手国立場を尊重して、対等、平等の外交を行っていく、そのためにはやはり相手国の言葉を解するということが最小限必要だろうと思うのですが、実際には英語で済ますという傾向が強いわけであります。たとえばインド、非同盟中立をとっております。ここの日本大使館には二十三名の館員がいますけれども、ヒンディ一語を解せる館員はたった三人というふうに聞いております。わずか一三%であります。中近東とかアフリカ諸国の大使館もほぼ同様な状況ではないかと思うのでありますが、これでは相手国を十分理解するというのに不十分だろうと思うのです。発展途上国の母国語の研修、これはどういうふうにやられておりますか。
  280. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘問題点は確かにそのとおりでございまして、この画の、つまり任国の現地語——公用語は別に英語とかフランス語とかの場合もかなりございますが、しかし、現地語というのが次第に重要になってくるということも事実でございまして、したがって、現地語の習得というのが非常に重要であるということは御指摘のとおりでございます。  外務省はつとにその辺の努力はいたしてまいりまして、上級職、中級職、現在専門職と呼んでおりますが、これについて、英語、フランス語、ドイツ語、それからそれに続いて中国語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、これらの言葉を話すかなりの人間があるわけでございますけれども、それ以外の言葉、モンゴル語、ヒンディー語、ベンガリー語、ウルドゥー語、シンハリー語、以下約四十の言葉につきましては、一部上級職、残りは専門職の職員につきまして、入省後の研修、現地への留学等を行って、現在これらの特殊語学と呼んでおりますけれども、これらを習得した人数は二百十六名でございます。そのほかに、これらの任地に行きましてから、あるいは行く前の短期間、特に官房事務をやる者のために行います研修を受けまして、いま申し上げました七つ以外の言葉、特殊語を一応物にした者が百十名という実情でございまして、それらを合わせまして何とかいま御指摘の問題に対応しているわけでございますけれども、実際の仕事は相手側も公用語を使ってくることが多いわけでございます。現地の民情あるいは友人をつくる、その他交際のためにより多くの館員が現地語ができるということの必要性は痛感しております。今後ともこれはひとつ重要な課題として取り上げていく次第でございます。
  281. 榊利夫

    ○榊委員 やはり日本の場合は、いまおっしゃったような一連の言葉についてはかなり普及もしているし、使う人も多い。しかし、とりわけ発展途上国等々の言葉については、ヨーロッパ諸国と比べても日本は後進国だと言えると思うのです、外国語後進国と申しますか。それにしゃべるのがうまくない。私らそうたくさん外国語ができるわけじゃありませんけれども外務省の通訳なんかの中にも、どうも余りうまくないなと思うことがしばしばあるのですね。万事英語で済ますのじゃなくて、やはり現地の言葉、本当に研修のシステムをつくりまして、そして生で理解をしていく、交流をしていく、このことがこれからの日本の外交という点からも必要だと思いますし、ぜひひとつそういう立場での外国語の研修を重視してもらいたいと思うのです。  次に、外交官の資質の問題で一つお尋ねしたいのですが、実は本年一月、新聞でも報道されましたが、タンザニアの日本大使館のある大使館員に帰国命令が出ているということがございました。どうも入札問題に介在をして問題になったというものでありますけれども、これはどういう性質の問題だったのでしょうか、あるいは外務省としてはどういう措置をとられたのかであります。
  282. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ただいま前段でおっしゃいました言葉、ことに開発途上国の言葉について努力せよという点は、重々含んで今後の施策に反映したいと思います。  第二の、非常に具体的な問題として、タンザニア大使館の館員について御指摘がございました。当時、現地及び東京でいろいろタンザニアにおける経済協力に関連したうわさ等があったことは事実でございます。ただ、ことしに入りましてから、現地におります館員一名が帰朝命令を受けて帰国したわけでございますが、これは何か問題があったとか非常に不適切なことを行ったということではなくて、この職員は、他の任地からタンザニアに、現地から現地へ赴任した館員でございまして、肉体的、精神的に相当疲労と申しますか、これ以上瘴癘地に在勤することはこの人間の将来の健康等に支障があるのではないかという現地からの意見もくみまして、通常よりは早い時期に帰朝を命令した、現在本省で勤務についておるということでございます。
  283. 榊利夫

    ○榊委員 これは承るところによりますと、道路建設に伴う土木機械の入札で日本の商社同志が争うかっこうになったのですね。それに介在をしたということだと聞いておりますけれども、商社の入札合戦に外交官が巻き込まれるあるいは介在をするということは、公正な外交活動という点からも好ましくないと思うのです。この外交官についてはいま本省ですけれども、こういう問題では今後こういうことがないように、外務省としてはどういう注意をなさっておられますか。
  284. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 経済協力等が行われて、日本の商社、特に複数の商社が入札合戦と申しますか、いろいろ受注すべく努力されるということがたくさんあるわけでございますが、こういう場合の大使館のあり方というのは、実は両面持っておりまして、非常にむずかしいわけでございます。  一方では、やはりできるだけ任国の事情あるいは相手国政府の内情等を日本の商社の方に理解していただく、公正な判断をしていただくためのいろいろ資料を提供する、意見を交換するということをいたす必要がある。大使館に相談に行っても何にも相談に乗ってくれなかったということで、大使館が批判を受けることもよくありまして、そういうところはできるだけお手伝いするという側面と、特に日本商社同士もしくはほかの第三国の商社も含めたいろいろ合戦がありますときに、余り介入いたしますと、これはやはり公正な立場から不適当になるということで、ときには現地の商社の方から見ると、冷たいとか一生懸命やってくれないという御批判を浴びながらも、あるところでは、ある程度の限界を持って対応しなければならないという両面があるわけでございます。  タンザニアの場合につきましては、いろいろ報告を徴しましたけれども大使以下この経済協力案件について相手国関係者といろいろ接触して、事情を聞いたり情報を入手する努力をしたことは事実でございますけれども、限度を超えて特定の方に介入したとか応援したという事実は承知しておりません。  ただ、この点は、いま申しましたように、非常に重要なことでございまして、在留邦人に対するサービスという面と、大使館のあるべき姿という両面をよく気をつけるように、これは入省時の研修以後、常に重要な研修項目として取り上げている次第でございます。
  285. 榊利夫

    ○榊委員 調べて汚れた関係はなかったのですね。
  286. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 そういうことは承知しておりません。
  287. 榊利夫

    ○榊委員 では次の問題に移ります。ガイドラインのことでお尋ねいたします。  「日米防衛協力のための指針」、つまりガイドライン、これは塩田防衛局長説明でも、有事の際は、この研究をベースに作戦計画を組み立てるという説明をされているわけでございますけれども、こういう非常に重大な意味を持った日米共同作戦のガイドライン、これがもともとは当初アメリカ側の提案によるものだというふうに理解しておりますけれども、これはそれでよろしゅうございますか。
  288. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私の承知しているところでは、日米安保条約第五条に基づきまして、日本が攻撃を受けたときは、日米双方が共同対処するということであったわけでございますが、それでは共同対処するに際して、具体的にどういうことをしたらいいかということについて、従来全く協議は行われておりませんでした。本来、十分協議した上でそういう共同対処に臨む必要があるということで、これはどちらかと言えば、わが方の発意によってアメリカ側とこういう研究協議をするということになったと私は承知いたしております。
  289. 榊利夫

    ○榊委員 わが方の発意と言われますけれども、実は当時の防衛庁伊藤防御局長は、当初ガイドラインのイメージをつかめなかったと言っておられます。いまのとはちょっと違うのですね。アメリカ側の発意だったというふうにわれわれも解しているし、世論も解しておると思いますけれども、そういうところはどうなんでしょうか。
  290. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 歴史的に御説明いたしますと、昭和五十年、三木・フォード会談というのが行われておりまして、その中で、両国が協力してとるべき措置について、安全保障協議委員会の枠内で協議を行うことに意見が一致したということがございまして、それを受けて五十年の八月に、当時の坂田防衛庁長官とシュレジンジャー国防長官が会談いたしまして、日米防衛協力に関する諸問題について研究協議するための場を設けることに合意したということでございまして、防衛局長答弁が何を意味しているか、私必ずしもつまびらかにしておりませんが、少なくとも日本側は明確な意識を持ってこの研究協議の場を設けるということで臨んでいるわけでございます。
  291. 榊利夫

    ○榊委員 明確な意識を持って協議に参加したのだけれども、もともとの提案というのはアメリカ側であった、こういう意味ですか。
  292. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私の了解では、日本側の提案というふうに承知しております。
  293. 榊利夫

    ○榊委員 それはそれでまた重大な問題でございますけれども、ところでガイドライン、これを日本側は一九七八年十一月二十八日の国防会議と閣議で承認、こういうことになっております。最高責任者の首相も確認されております。つまりそういうふうな過程で政府の約束、こうなっておるわけですね。アメリカはどこが承認をしておりますか。
  294. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま御引用になりました五十一年の防衛計画に関する指針というのがございますが、日米安保協議会の席上で了承されたものでございますが、その前に、アメリカ側としては、国務省、国防総省の関係機関の報告を受けて、それぞれの了承を受けた後、アメリカ政府として了承することとして、その旨を第十七回日米安保協議委員会の席上、アメリカ側の代表からこの点について異議はないということを発言しておるわけであります。
  295. 榊利夫

    ○榊委員 承認した関係機関というのはどこでしょう。日米安保協議委員会ですか。
  296. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 最初に申し上げましたアメリカ側の了承したのは国務、国防両省でございまして、日本側との間で指針について合意に達したのは日米安保協議委員会でございます。
  297. 榊利夫

    ○榊委員 いまのことではっきりとしましたけれども、日米安保協、さらに国務省、国防省が了解した。米軍の最高責任者は大統領でございますけれども、大統領は承認していない。承認手続はとられていないということですね。
  298. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これはアメリカ内の手続でございますが、少なくとも国務、国防両省が了承しておるということは、大統領ももちろんそのことについては承知しておるというふうに理解していいのではないかというふうに考えております。
  299. 榊利夫

    ○榊委員 それはあなたの御理解であって、大統領に知らされていついつ確認を得ておるという公式の文書も公式発表もない。証拠がないわけです。大統領がこの文書を確認したという証拠は示されますか。
  300. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 安保協議委員会において、アメリカ側は非常に明白に国務、国防両省の了承を得て、アメリカ側としてもこの指針については異議はないということを申しておりますので、私たちとしては、米側の手続について瑕疵はないというふうに考えております。
  301. 榊利夫

    ○榊委員 何回聞きましても、国防省と国務省だけしか出てこない、大統領は出てこない。ところが日本はどうですか。閣議了解でしょう。首相も確認している。政府の方針になっている。一方、大統領は知らない。少なくとも確認されたという手続上の公式の文書はありません。証拠はありません。ところが日本は総理です。閣議で了解しておる。違うのですね。これだったら、ちょっと語弊があるかもしれませんけれども、いわば宗主国と属国の取り決めのような非常にふつり合い、異常な外交文書だ、こう言っても差し支えないのじゃないかと思うのです。片や首相が確認、片やそうではない。きのう八日もガイドラインによる共同作戦研究の防衛庁の報告を鈴木首相が聞かれ、了承されたというふうに聞いております。これは聞いただけなのか、了承してないのかわかりませんけれども、目下のところ了承されたというふうに解されております。そういうふうに、日本側はガイドライン、さらに共同作戦研究、その報告についても首相が直接責任を負う、そういう関係になっておるわけでございます。ところが他方のアメリカ大統領は、そのもともとのところ未確認でしょう。こういう一種の、その限りでは屈辱的とも言えるような外交文書の扱い、そういうことは独立した諸国家間に通常あるだろうか、こういう疑問が私はわくのです。もし、そういう例が他にあるとすれば、むしろ教えていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
  302. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私は、このガイドラインだけについてお答えいたしますが、この手続はそれぞれの国内の手続でございますので、アメリカ側が安全保障協議委員会の席上、駐日大使を通して、これはアメリカ政府が了承したものである、国務、国防の了承もあるんだということを言っております以上、これはアメリカ側として十分検討した上で了承されたものというふうに理解して一向差し支えないというふうに思います。
  303. 榊利夫

    ○榊委員 理解して差し支えない、それはあなたの立場外務省見解かもしれない。しかし、公平に見まして、国際的な取り決めです。それが一方は大統領は知らない、少なくとも確認したという証拠がない。一方はもうその都度、閣議、首相確認、こういう.手続をとっているわけであります。やはりどうも片手落ち、こういう理解というものは免れないわけであります。しかも、その結果というものは非常に重大な内容を含むものであるということは、もう天下周知のことであります。その点ではどうですか。いまからでも遅くありませんけれどもアメリカ側にこのガイドラインについては大統領に報告して確認を得ているんですかと問い合わしてみることはどうでしょう。やってみられる気持ちはございませんか。
  304. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 委員が御引用になりました条約とか協定ということでございませんで、これは指針でございまして、しかも指針でございますけれどもアメリカ側として十分部内の手続を尽くしているということでございますので、ここで日本側から大統領の承認を得ましたかと言うことは、アメリカの部内の手続に対する干渉ということになりますので、私どもとしては十分アメリカ側の部内の手続を尽くしたということで、現在のところあえて大統領の承認を得たかということまで聞くことはいかがかなというふうに考えております。
  305. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、扱いに差が非常にあるということだけは非常にはっきりいたしました。  ところで、そのガイドラインに基づく日米共同作戦、つまり戦争協力計画でありますけれども、その研究作業は両国の制服組だけでやられております。その中身についても国会へ全く報告されたことはありませんし、国防会議にも内容は一切秘密になっております。  ところで、防衛庁の原事務次官が、きのう、アメリカ側からは在日米軍司令官、日本側からは統幕議長、この二人の制服組が署名された研究作業を首相に報告をした。その中で、海域防衛に関しまして、硫黄島や沖繩を拠点とすれば、従来政府がとってきた航路帯千海里、それとアメリカ側が要求するグアム島以西、フィリピン以北との地理的な食い違いがなくなる、こういうふうに述べている。これも一斉に報道もされております。  これは外務大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、これまで政府は航路帯の基点については、南東は東京湾が基点だ、南西は瀬戸内海が基点だ、こういうふうに再三国会でも説明をされてまいりました。そうしますと、航路帯の基点、これを政府としては変更されたのでしょうか。
  306. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 基点については、本州の中央部、たとえば京浜とか、そういう御指摘のとおりでございますが、変更したかどうか、それは、防衛次官が総理大臣に報告の内容については、私たち外務省としては承知しておりませんので、この場で御答弁できませんけれども、そういうような点について重要な変更があったということはちょっと考えられないわけでございます。
  307. 榊利夫

    ○榊委員 考えられないということでありますけれども、この説明に従う限り変更されている。防衛庁はこの点どういうふうに説明されますか。
  308. 澤田和彦

    ○澤田説明員 昨日夕刻四時過ぎでございますが、防衛事務次官、防衛局長、官房長の三人が総理大臣に対しまして防衛問題の御報告をいたしました。これは主として、いま先生署名されたとおっしゃいましたが、ガイドラインに基づく共同作戦計画、これはまだでき上がっておりません。ほぼ概成しつつありますが、その進捗状況についての中間報告を総理大臣にしたわけでございます。その際、いろいろな防衛問題についてお話ししました際に、いま御指摘の海上防衛のやり方についても話が及んだわけでございますが、それは海上交通保護についての一般的な話でございまして、一部に報道されておりますように、海上防衛の範囲が線から面へ拡大いたしましたとかあるいはどこどこを基点にして云々というようなことでは決してなく、そういうことを報告いたしまして総理が了承されたということではございません。  一般的な御説明といたしまして、従来いわゆる航路帯という言葉を使っておりますが、これは本州中央部からおおむね一千海里程度でございますけれども、この航路帯の帯という言葉がございますが、これは必ずしも細い線のようなものではございませんということを総理に御説明したわけでございます。それからまた、最近の潜水艦に対します作戦のやり方の進歩によりまして、従来の船団護衛の方式でございますと相当細い線でございますが、こういう航路帯のようなことになりますと、相当広い範囲から潜水艦を探しまして遠くから攻撃するというようなことで、線というよりも幅の広い概念、そういう意味での面のような要素が出てきておりますということを御報告したものでございます。
  309. 榊利夫

    ○榊委員 その帯というのが線じゃなくて、かなり広いのだ、こういう説明でございますけれども、この地図で見ても、グアム島以西、それからフィリピン以北、こう見ますと、かなり広い三角状の海域になります。これはまさに面です。そういう点では、対潜作戦との関連でグアム島以西、フィリピン以北の海域までいわゆる防衛分担区域を拡大したと判断してよろしゅうございますね。
  310. 澤田和彦

    ○澤田説明員 グアム島以西、フィリピン以北といういま先生がおっしゃいました三角地帯の面にまで分担区域を拡大したということは全く考えておりません。防衛庁といたしましては、従来どおり海上交通の安全を保護する区域といたしましては、わが国周辺数百海里、航路帯を設けるような場合におきましてはおおむね一千海里程度ということをたびたび国会で申し上げておりますが、その考え方は現在も変わっておりません。
  311. 榊利夫

    ○榊委員 拡大していない。そうしますと、フィリピン以北、グアム島以西というのはどの程度の帯なんですか。
  312. 澤田和彦

    ○澤田説明員 フィリピン以北、グアム島以西というのはどの程度の帯かという御質問でございますが、海上防衛の観点から申し上げますと、私ども防衛庁といたしましては、ただいま御説明いたしましたように、航路帯を設けます場合には、わが国からおおむね一千海里程度というふうに考えております。それは、いま御説明しましたように、面の要素が出てまいりましたが、必ずしもその面一面をべったりというものではございません。
  313. 榊利夫

    ○榊委員 仮に千海里といたしましても、グアム島以西、フィリピン以北と地理的違いはなくなる、こう言っているんでしょう。なくなるという  とは、この面とダブるということでしょう。そういうことではありませんか。
  314. 澤田和彦

    ○澤田説明員 おおむね重なるという表現を防衛庁しておりますが、これは面積が完全に一致するという厳密なことではございませんで、私どもの方は、その航路帯も固定したものではございませんし、幅を持っておりますが、おおむね一千海里程度と言っております。それからいまグアム島以西、フィリピン以北という表現が使われます場合に、これが厳密に数学的あるいは幾何学的にきちっとした長さをあらわしているものではなく、一応グアムあるいはフィリピンというようなわかりやすいところから向こうの海面というように解しておりますが、そういう意味で、わが国が従来から防衛力整備の目標にしていました、先ほど御説明いたしました海域とそう違いはないというふうに理解しているという意味でございます。
  315. 榊利夫

    ○榊委員 そう違いないというのは、どの程度まではそうなんです。
  316. 澤田和彦

    ○澤田説明員 これはたびたび国会でお答えを申し上げておりますが、航路帯を設けます場合にもおおむね一千海里程度ということでございますから、きちっと一千海里ということではございません。何%まで許容があるかということは詰めておりませんが、地図の上で、ことに小さい地図で見れば非常にグアムに近い。それからまたグアム島以西ともしアメリカ側が表現しておりましても、それはきっちりグアム島を基点にという厳格な意味ではないと思われます。そういうことで、私どもといたしましては、従来から考えております海上防衛の海域を広げたという考えは持っておりません。
  317. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、一般に報道されているところは間違いだ、ここで訂正をする、こういうことですな。
  318. 澤田和彦

    ○澤田説明員 防衛庁が正式にそういうことを発表しておりませんので、報道の中にもいろいろ推測等に基づく計算があるかと思われますが、いま申し上げましたように、きちっとグアム島それからフィリピンの先端なら先端を結ぶという、そういう厳密な場所の表現ではないと理解しております。
  319. 榊利夫

    ○榊委員 大変煮え切らない答弁ですけれども、ここだけにかかずらわっていてもあれですから進みますけれども、防衛庁は七日の本委員会でも、グアム島以西、フィリピン以北の海上防衛をわが国が負担するには、対潜能力で大綱よりも二、三〇%増強が必要だ、こういう答弁をされております。それで、いまいわゆるグアム島以西の海上防衛についても相当意欲を持っている、そういうことがいろいろなところで出てまいりますけれども、防衛庁としては、その点では大綱の改正にやはり足を踏み出しつつあるというふうに見えるのでありますけれども、そうみなしていいでしょうかね。
  320. 澤田和彦

    ○澤田説明員 いま最初に先生がおっしゃいました二、三〇%多いということは、これは議事録を見ていただけばはっきりすると思いますが、もし仮にグアム島以西、フィリピン以北という表現が地理的あるいは数学的といいましょうか、そういう厳密な意味で線を結んで面積を比較すれば、あるいはそのときに御質問になった先生の御試算のように二、三〇%多いのかもしれない、しかし、防衛庁としてはそういうようには理解していないというお答えをしているはずでございます。  それで、二番目でございますが、「防衛計画の大綱」、この中でわが国の周辺海域の航路帯等におきます海上交通の安全のための海上防衛力の整備を目標にしておりますが、これは先ほどから申しておりますように、わが国から数百海里、航路帯を設けるような場合におきましてはおおむね一千海里程度の範囲で海上交通の安全を確保するということを目標にしておりまして、いま私どもは「防衛計画の大綱」を広げるとか踏み出そうという考えは全く持っておりません。
  321. 榊利夫

    ○榊委員 念のために最後に聞いておきますが、対潜能力で大綱よりも二、三〇%の増強といいますと、金額ではどのくらいになりますか。どういうふうに見ておられますか。たとえば大綱では対潜水艦艇を約六十隻計画しておりますけれども、それを二、三〇%増強という場合に、どのくらい金がかかると思っておられますか。
  322. 澤田和彦

    ○澤田説明員 ただいまお答え申し上げましたように、防衛庁では二、三〇%増強という考えを持っておりませんので、いま御質問のような点を試算したことがございません。それで、ここで明確に御説明することは差し控えさせていただきたいと思います。
  323. 榊利夫

    ○榊委員 次の問題に移ります。  南麻布の米軍用ホテルの問題ですけれどもアメリカ側は、米軍用山王ホテルの明け渡しを求められているのと引きかえに、新たな米軍用ホテルの提供を日本に求めております。その際アメリカ側は、使用条件として、最滞りの駅から徒歩で十分、ヘリポートから車で十五分、アメリカ大使館に近い、この三つの条件を提起していると言われますけれども、この三条件をアメリカ側はどういうルートで要求したのでしょうか。それは文書でしょうかあるいは口頭でしょうか。外務省
  324. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 外務省としてそこまで承知しておりませんので、施設庁の方から説明していただきたいと思います。
  325. 窪田稔

    ○窪田説明員 口頭による要求があったと聞いています。
  326. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、日米合同委員会とかそういうところ、要するに正規の外交ルートで伝えたものではないわけですね。
  327. 窪田稔

    ○窪田説明員 お答えします。  先生御存じのとおり、現在の山王ホテル明け渡しの訴訟が起きまして、これに敗訴したというような関係がございまして、代替施設を提供することを条件としてあそこを返していただきたい、こういうお話をしている過程の中で出てきた話でございます。
  328. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、三条件というのは、アメリカ側が防衛庁に直接伝えた、こういうことですね。そうしますと、両国関係は上下関係、命令関係じゃないのですから、公式文書で合意している条件ではない、そういう点の法的な拘束力や国際法上の根拠はない、こう見ていいですね。
  329. 窪田稔

    ○窪田説明員 先生御存じのとおり、現在の山王ホテルは条約上の義務として提供しておるわけでございます。アメリカ側はそれを使う権利を持っていますし、私どもはそれを提供する義務を持っているわけです。そういう状態にあるときに、それを国内の出題で返していただきたいと言っているわけでございますので、理屈の上では先生のおっしゃるようなことがあるかもしれませんが、米軍としては、やはり三条件というのは必要だと考えて主張している限り、われわれの方としましては、それを満たすような形で代替施設を提供しない限り現在の山王ホテルを返してもらえない、こういうふうに考えています。
  330. 榊利夫

    ○榊委員 私が言っているのは、つまり正式の外交ルートで取り交わされた合意ではない、こういうことを言っているのです。それは間違いないでしょう。
  331. 窪田稔

    ○窪田説明員 正式の外交ルートというのは私ちょっとよくわかりませんが、要するに、施設庁側と米軍の施設担当官の間で、公式の席上でいろいろお話ししている過程の中で出てきたものでございます。
  332. 榊利夫

    ○榊委員 つまりその程度のことなんですよ。外交上のそれがわからぬとおっしゃるけれどもアメリカ日本との間で特定の建物や区域を提供するというのは重大な外交上の行為です。担当官がちょっと口で言った、そんなものは外交上の文書じゃありません。もしそういうふうに考えたとすれば、そこに問題がある。つまり米軍ホテルの提供というのは二つの外交行為が伴うんだ。現山王ホテルを対日返還することが一つ。南麻布に計画中の安立会館の対米提供、これを日米合同委員会で少なくとも公式に協定する、合意する。そのことを経なくてはいかなる施設もアメリカ側に提供することにはならないのですよ。日本は属国じゃないんだ。そうでしょう。外務省にお尋ねしたい。それは外交上の問題だ。
  333. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 一般論でお答えさせていただきますが、施設の提供については、日米間でまず施設分科委員会、あるいは米軍と日本側の施設庁との間で話し合いが行われ、そこで合意ができれば施設分科委員会に上がってまいりまして、さらに施設分科委員会の合意ができれば合同委員会で合意をする、これが一般的な手続でございます。
  334. 榊利夫

    ○榊委員 これが正当な外交上の理解だと思います。当然であります。したがいまして、公式の合意に基づく提供が行われるまでは、米軍用のホテルの建設の問題というのはすべて日本国内法のもとにあるわけです。法治国である以上はそれは当然のことであります。このことは三月三日の予算委員会でも法制局の確認を得ました。さらに、アメリカ側に提供されたとしても、地位協定第十六条で米側に日本の法令尊重の義務がある、こういうことを書いています。このことも四月七日の参議院建設委員会で法制局に確認したところであります。  ところで、問題は安立電気跡地、これは日本の旅館、ホテルならば旅館業法が適用される場所です。保健所もこの点は確認しています。旅館業法では、周囲百メートル以内に学校あるいは児童施設、保育園等々がある場合には知事の不許可もあり得る、こういうふうに書いておりますし、安立電気跡地というのは、周囲再メートル以内に慶応幼稚舎がある。二つの保育園もある。また北里大学もある。これはちょっと百メートルから外れますけれども、聖心女子学院もある。そういう文教、住宅地域です。  そこで尋ねたいのですが、このような場合、仮に米軍用ホテルとして提供されたとしましても、日本の法令尊重義務に照らして開設営業することができないという事態もあり得るのではないでしょうか。理論的にはそうだと私は思うのですけれども、この点いかがでございましょうか。外務省、条約上はどういうふうに解釈されますか。
  335. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 安立電気が建設するという前提であれば、国内法の適用はございます。ただし、山王ホテルがいわゆる旅館業法に当たる旅館であるかどうか、これについては一概に言い切れないかと思います。それから次に、米軍がそういう施設をつくる場合、これは一般的に旅館業法の適用はございません。
  336. 榊利夫

    ○榊委員 山王ホテルがホテルであるのは名前のとおりです、ちゃんと米軍がそこに交代でどんどん泊まっているわけでありますから。それで防衛施設庁の方でも、玉木防衛施設庁長官が一昨年防衛庁内で住民代表に対して、米兵はお金がないから、安い施設をつくって飲ませないといけない、こういうことを言われている。ちゃんと米軍ホテルであることは間違いありません。また米軍がつくる場合に、一般的な日本のそれは当たらないとおっしゃいますけれども、それはアメリカ側に提供されている区域内にPXをつくるとか社交クラブをつくる場合そうでしょう。だけれども、あそこはそうじゃなくて、事新しく住宅街の真ん中に七千平米の区域とホテルを提供するという問題ですから、初めからホテルを持っていくということははっきりしているわけですから、そういう場合に、日本国内法に照らして矛盾が起こる場合には、その法令を尊重しなければならないという地位協定十六条に基づく義務、これは生きていると思うのですけれども、米軍ならばそういうことも無視していいということにはならないでしょう。どうでしょうか。
  337. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 御承知のとおり、軍隊は一般国際法上受け入れ国の法令に従うという義務はないわけでございます。しかし、地位協定に基づいて米軍自身は十六条で日本の法令を遵守するということはもちろんでございます。ただし、いま先生が言われたように、麻布の安立のところにホテルを米軍が建てる場合、それは米軍が行う行為でございますので、直ちに旅館業法の適用はないということを先ほどから申し上げているわけでございます。
  338. 榊利夫

    ○榊委員 尊重の義務はあるでしょう。
  339. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 もちろん、尊重の義務があるというのは十六条からきているわけでございます。
  340. 榊利夫

    ○榊委員 その点ははっきりしております。米軍といえども、地位協定にちゃんと書かれているのですから、日本の法令尊重の義務はある。  ところで、ホテル営業を審査する当該の麻布保健所に対しまして、このホテルは米軍に提供されるので旅館業法は適用されない、そういう趣旨の公文書を出して説明をされている、こういう事実が防衛施設庁にあるわけでありますけれども、同ホテルの米軍提供というのは将来のことですね。外交行為を経てから提供されるわけであります。まだ建っていないのですから、提供されているわけじゃない。日本法律のもとにある。ところが、目的はホテル建設だ。それで、防衛施設庁としても建て主の安立電気に対しては打診の段階だ、こうおっしゃっている。未契約であります。金はもちろん払っておりません。したがって、保健所が旅館業法を適用しないなどと現段階で判断できるものじゃないのです。ところが防衛施設庁はそういう説明をされた、それに従って麻布保健所は日本の旅館業法は適用されないという報告をした、東京都はそれに従って建築確認をする、こうなっているのでありますけれども、防衛施設庁は麻布保健所に出した文書を国会に提出していただきたいと思うのですが……。
  341. 窪田稔

    ○窪田説明員 最初に事柄をはっきりさせていただきたいと思うのですが、私どもが麻布保健所へ文書を出しましたのは、安立電気株式会社が、保健所に、東京防衛施設局、私どもの出先機関でございますけれども、そこに説明してくれ、こういう要求がございましたので、私どもの局の職員が麻布保健所に赴き、口頭で説明し、その口頭で説明したものを文書にしろということで、東京施設局長名の文書で麻布保健所に出したわけです。  その文書の内容は、第一点は、まず代替施設を必要とする理由の説明、これは先ほど先生のお話の中で、若干お聞きになっている方が誤解を受けるとあれなので、詳しく申し上げさせていただきますと、現在米軍に提供中の山王ホテルにつきまして、昭和四十四年七月、建物及びその大部分の敷地の所有者である第一ホテルが国との賃貸借契約の更新を拒み、建物明け渡し訴訟を東京地裁へ提起した。国は第一審の東京地裁において敗訴し、第二審の東京高裁の段階で、山王ホテルを昭和五十五年十二月二十六日をめどとして米軍から返還を受け、所有者に明け渡すことを条件に裁判上の和解をした。当庁はこの和解条項を履行するに当たりまして、代替施設を米軍に提供することを必要としている、こういうことを言ったわけです。  それからまた、第二点は、当庁が安立電気に代替施設を希望するに至った経緯を説明したわけです。  それから第三点は、現山王ホテルの使用目的、管理運営等の概略について説明しているわけです。  こういう文書でございますので、実は一昨日参議院の建設委員会で上田先生からも文書の提出の御要求があったわけでございますが、担当課長がお答えしてお断りしたわけです。それは、私どもとしましては保健所の判断に資するために発出した文書でありますので、提出は御容赦願いたい、こういうふうに言ったわけです。内容はただいま申し上げたとおりのものでございます。
  342. 榊利夫

    ○榊委員 保健所に提出している写しはあるでしょう。こうこうこういう内容だと説明されるけれども、どうもさっぱり要領を得ない。だから、提出してこれこれしかじかのものですよという現物を見せていただきたいと言うのです。そうすれば、弁明されていることが事実なのかどうかということがはっきりするのです。現物を見ないでああだこうだと言ったってわからない。提出していただきたいと思うのです。
  343. 窪田稔

    ○窪田説明員 提出につきましては、ただいま申し上げた理由で御容赦願いたい、こう思います。
  344. 榊利夫

    ○榊委員 それではお尋ねいたしますけれども、防衛施設庁は安立電気と契約を結んでおられません。言うなれば賃貸予定者にすぎない。マンションができる、マンションに入りたいあるいは借りたい、こう言っている予定者にすぎない。その防衛施設庁は、どういう権限で将来米軍に地位協定で提供する目的で建築するホテル、施設だという公文書を出せるのですか。そういう説明を所轄外の保健所にどういう権限で出されたんですか。
  345. 窪田稔

    ○窪田説明員 私どもが文書を出したのは、先ほど御説明申し上げましたとおり、保健所から要求を受けましたのでお出ししたわけでございます。
  346. 榊利夫

    ○榊委員 要求があったから出したと言いますけれども、たとえばマンションの場合、マンションに入居する金も払ってない、だけれども入りたい、借りたいという希望はある。マンション使用の目的は何ですか。これこれしかじかですと書いて出したら笑われますよ。物笑いの種ですよ。まして、日本国内法と関係あるかどうか、無関係であると思わせるような文書まで実際には出しておられる。そういう権限は私はないと思うのです。防衛施設庁にはないですよ。頼まれたからといったって、ああそうでございますかと公文書を出す、これはやはり履き違えていると思うのです。  ところが、経過を見ますと、実際上安立の方もそういう防衛施設庁の説明に従って、これはもう米軍に提供されるんだから日本法律は適用できないんだ、こういうことになっているし、麻布保健所もそういうふうになっている。旅館業の審査を外した。都の建設局もそれに従っていく。こういう一種の行政ミスにつながっていっているわけであります。そういう点で、防衛施設庁は政府機関としてそういう行為をいまでも当然だったというように思っておられるのか、あるいはどうもまずい点があるな、あるいは反省点があるな、こう思っておられるのか、そのあたりの気持ちもちょっと聞かしてもらいたいと思うのですけれども、いかがでございましょう。一言でいい。
  347. 窪田稔

    ○窪田説明員 私は、個人としても別に間違った行為を当時の担当者はしたわけではないと思っています。
  348. 榊利夫

    ○榊委員 厚生省来ておられると思いますけれども、余り時間もありませんので簡潔にお尋ねいたします。  麻布保健所が、未契約の建物であるにもかかわらず、旅館業法は適用されないという見解を都に伝えた。それで旅館業法上必要とされる付近の学校関係者の意見も聞いておられない。これはミスはミスだと思うのです。厚生省としても、ホテルの賃借が未契約だということは判明しているわけですから、改めて付近の学校関係者から意見を聞くように保健所に行政指導する、アドバイスする、こういうことは可能だし、行うべきじゃないかと思うのですけれども、いかがでございましょう。
  349. 田中治彦

    ○田中説明員 お答えいたします。  旅館業法上、旅館業を経営しようとする者は、知事または保健所設置市区長の許可を受けなければならないことは先生御案内のとおりでございます。この営業許可申請がなされた場合に、申請に係ります施設の構造、設備の審査や、御指摘のございましたような周辺の学校長等に対する意見聴取ということも行われるわけでございます。したがいまして、許可申請がなされていない本件につきまして、これを行うように指導することはできないというように考えます。本件につきましては、そういう意味で所轄の省庁におきまして適切に対処されるというように考えております。
  350. 榊利夫

    ○榊委員 その説明はわからないわけじゃありません。ただ、問題がある以上、一般的に意見を聞くように伝えることはできると思うのです。その点はどうですか。
  351. 田中治彦

    ○田中説明員 先生重ねての御指摘でございますけれども、そのような許可申請が出ていないというような段階で旅館業法上の指導をすることはできないというように考えております。
  352. 榊利夫

    ○榊委員 あと四、五分でございますが、実はきのうの新聞によりますと、週内にも着工を強行しようという動きがあるようでありますけれども、この間参議院の方でも防衛施設庁の方は、着工しながら話し合いを、こういう答弁をされております。私が繰り返すまでもなく、建て主でもないのですから、防衛施設庁はそういう権限はどこからも出てこない。防衛施設庁の方から、着工しながら話し合いをとか、そういうことはいかなる場所においても二度と言ってもらいたくない、権限はない、このことをひとつ言いたいと思います。  しかも、東京都のあっせんで三者会談でいま話し合い中であります。安立側と住民側、それがわずか四回であります。直接被害を受ける地元との工事協定もない。念書もない。説明会も開かれていない。米軍ホテルと住民のプライバシー保護の問題、日照権の問題、風害の問題、電波障害の問題、ガス、水道の影響の問題などなど、重大な被害影響調査も全くやられていない。協定ももちろん結ばれていない。これらは大きなホテルが建つ事前に解決さるべき問題であるというのは常識です。マンションが建とうとあるいはちょっとしたビルが建とうと、こういったことはすべてやられますよ。米軍基地の中じゃないのですから、文教、住宅地の真ん中なんですから、そういうところで強行着工するならば問題は連鎖的に重大化すると思うのであります。しかも、権限のない防衛施設庁が着工を急がれるような態度、そういった態度は控えていただきたい。つまり着工云々とかそういったことは、契約のない状態のもとでの防衛施設庁、そういう態度は控えます、これくらいの確認はできるでしょう。どうでしょう。
  353. 窪田稔

    ○窪田説明員 お答えします。  先生御存じのとおり、これはまる三年以上前からの話でございます。すでに建築確認がおりる前におきましても、私どもはもう二十回以上、安立電気も含めまして地元の方にいろいろ説明してきたわけです。幸いにことしになりまして二月二十六日に、安立電気が申請していました建築申請に対しましてやっと許可をいただいた、こういうことでございますので、われわれも、先ほど申し上げましたとおり、国内法上負っています義務履行のためにも安立電気に早く建てていただきたい。安立電気もあの土地を三年以上遊ばせているわけでありますから、早く建てたいのだと思います。したがいまして、国会でも私どもの施設庁長官がたびたびお答えいたしましたし、現地における住民の方々とのお話し合いの中でも私も申し上げましたとおり、建築と並行しながらお話し合いをさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  354. 榊利夫

    ○榊委員 最後ですけれども、つまりさせていただきたいという、そういったことを言う権限は防衛施設庁にはないということを私は言っているのです。どんな権限がありますか。第三者じゃありませんか。だから要するに、そういうことについてはわきから促進するような態度はとらないでほしい。  それから最後に、外務省にお尋ねしたいのですけれども、七一年にアメリカの上院のサイミントン委員会で、日本に置いている米軍の施設等々が日本でトラブルがあったとき、その場所は固執しないということがその当時の国防次官の証言としてありますけれども、いずれにしましても、この問題が非常に重要なトラブルになっている。これはもう事実であります。外務省としては、こういうトラブルを抱えた米軍ホテルがアメリカ側に提供されるということを好ましいとは考えておられないと思うのですけれども、そのあたり、好ましいとお考えなのか、どうも好ましくないとお考えなのか、どうでしょう。外務大臣一つも発言されませんので、最後に外務大臣の意見をお聞きしたいのです。
  355. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま御質問答弁聞いておりまして、なかなかむずかしい問題だなと、私の田舎では、よく骨を折って怒られるのをかさ屋の小僧と言うのでありますが、本当に、なかなかこれは施設庁も大変だなと思って聞いたところでございます。何にもトラブルなしに提供できるのが一番望ましいことはもう先生おっしゃるとおりでございますが、過去の経緯、いろいろな問題があって、これはなかなか大変だと思って聞いたわけでございます。施設庁ともよく協議をしまして、外務省としてはどういうことができるのかということを考えていきたいと思います。
  356. 榊利夫

    ○榊委員 最後に一言。  やはり文教、住宅地域の中に事新しくそういう米軍用のホテルを建てるという計画、そこに問題がある。ひとつ根本的な再検討を願いたい、このことを要望しまして、質問を終わります。
  357. 江藤隆美

    江藤委員長 次回は、来る十四日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて故会いたします。     午後八時三分散会