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1981-03-31 第94回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月三十一日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       粕谷  茂君    川崎 二郎君       木野 晴夫君    倉成  正君       笹山 登生君    島村 宜伸君       田名部匡省君    竹中 修一君       東家 嘉幸君    野上  徹君       宮崎 茂一君    上原 康助君       角屋堅次郎君    矢山 有作君       渡部 行雄君    市川 雄一君       小沢 貞孝君    榊  利夫君       中路 雅弘君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      中山 太郎君  出席政府委員         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         内閣総理大臣官         房管理室長   関  通彰君         内閣総理大臣官         房総務審議官  和田 善一君         総理府人事局長 山地  進君         総理府恩給局長 小熊 鐵雄君         青少年対策本部         次長      浦山 太郎君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君  委員外出席者         国土庁地方振興         局特別地域振興         課長      桝原 勝美君         外務省アジア局         北東アジア課長 小倉 和夫君         大蔵省主計局共         済課長     野尻 栄典君         大蔵省主税局調         査課長     滝島 義光君         大蔵省銀行局特         別金融課長   日向  隆君         厚生省年金局年         金課長     佐々木喜之君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 三月三十一日  辞任         補欠選任   小渡 三郎君     島村 宜伸君   田名部匡省君     野上  徹君 同日  辞任         補欠選任   島村 宜伸君     小渡 三郎君   野上  徹君     田名部匡省君     ————————————— 三月二十七日  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第九号) 同月三十一日  農林水産省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一〇号) 同月二十八日  外地派遣旧軍属の処遇改善に関する請願(上村  千一郎紹介)(第二二六四号)  同(北口博紹介)(第二二六五号)  同(河野洋平紹介)(第二二六六号)  同(田村元紹介)(第二二六七号)  同(武藤嘉文紹介)(第二二六八号)  同(小里貞利紹介)(第二三二三号)  同(久野忠治紹介)(第二三二四号)  同(後藤田正晴紹介)(第二三二五号)  同(村上勇紹介)(第二三二六号)  同(相沢英之紹介)(第二三四八号)  同(稻村左四郎紹介)(第二三四九号)  同(小沢貞孝紹介)(第二三五〇号)  同(渡部行雄紹介)(第二三五一号)  同(中山正暉紹介)(第二三六六号)  同(森下元晴君紹介)(第二三六七号)  同(山本幸雄紹介)(第二三六八号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願菅直人  君紹介)(第二三二二号)  同(小沢辰男紹介)(第二三三七号)  同(大西正男紹介)(第二三三八号)  同(小坂徳三郎紹介)(第二三三九号)  同(小宮山重四郎紹介)(第二三四〇号)  同(河本敏夫紹介)(第二三四一号)  同(近藤元次紹介)(第二三四二号)  同(田村良平紹介)(第二三四三号)  同(野中英二紹介)(第二三四四号)  同(浜野剛紹介)(第二三四五号)  同(村山達雄紹介)(第二三四六号)  同(山口敏夫紹介)(第二三四七号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願村上勇紹介)(第  二三二七号)  戦後ソ連強制抑留者恩給加算改定に関する請  願(藤本孝雄紹介)(第二三三四号)  戦後ソ連抑留中の強制労働に対する特別給付金  支給に関する請願藤本孝雄紹介)(第二三  三五号)  引揚者等に対する特別交付金支給に関する法  律の一部改正に関する請願藤本孝雄紹介)  (第二三三六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  一九号)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神田厚君。
  3. 神田厚

    神田委員 恩給法等の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。  まず最初に、恩給受給者現況と申しますか、恩給を受けている人たち状況というのはどういうふうになっておるのでありましょうか。年金受給者、それから一般文官恩給、旧軍人恩給、それぞれについてお尋ねをしたいと思うのでありますが、最初に、年金恩給受給者現況というのはどういうふうになっておりましょうか。
  4. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 恩給受給者の現状でございますが、五十六年度の概算要求の基礎といたしました件数で申し上げますと、まず総数二百四十万八千でございます。そのうち文官恩給が、四捨五入して十五万一千と言っていいと思いますが、割合が六・三%となっております。それから軍人恩給でございますが、これが総数二百二十五万八千となっております。これは割合は九三・七%となっております。大部分軍人恩給であるということでございます。  それから、本人が受ける恩給でございますが、これが百三十六万五千、このうち普通恩給を受けておる人が百二十三万六千でございます。それから傷病恩給を受けている方が十二万九千でございます。  それから、本人ではなくて遺族の方が受けておる恩給、これが百四万三千でございます。そのうち普通扶助料が四十一万でございます。それから公務関係扶助料が六十二万四千。その他小さい数字ですが、傷病者遺族特別年金というのがございまして、これが九千でございます。  以上、総数が二百四十万八千と申しましたが、八千七百でございますから、四捨五入しますと二百四十万九千になります。  以上でございます。
  5. 神田厚

    神田委員 約二百四十万九千名ということでありますが、この受給者年齢構成、それから受給人員推移というようなことはどういうふうになっておりますか。
  6. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 構成といいますか、平均的な数字で申し上げますと、普通恩給でございますと平均六十四・二歳ということになっております。それから遺族恩給でございますが、これが平均七十一歳。そのうち公務関係扶助料、これは非常にお年寄りの方が多うございまして七十三・七歳。それから普通扶助料の方が六十六・二歳。そんな構成になっております。
  7. 神田厚

    神田委員 旧軍人恩給につきましては、年齢構成というのはどういうふうになっておりますか。
  8. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 旧軍人平均で申しますと、軍人普通恩給、これが六十三・六歳でございます。それから傷病恩給が六十二・八歳でございます。それから普通扶助料が六十三・八歳でございます。公務関係扶助料が七十三・八歳。  それから、先ほど推移の話がございましたが、恩給受給者はこれからどうなるかという推移については非常に推計がむずかしい面もあるわけでございます。平均寿命であるとかあるいは年齢構成であるとか、あるいは普通恩給を受けている人が亡くなったとき扶助料に移るわけですが、そういったものであるとか、あるいは傷病が悪くなったというようなことで新規裁定の方もございますし、そういったファクターが非常に多うございまして、推計がなかなかしにくい面はあるわけでございますが、過去五年間くらい考えますと、凹凸はありますが、平均しまして大体年三万五千、三万から四万くらいの減少になっております。したがいまして、これから五年先を推計すれば、減少が約二十万ぐらいになるのではないか、このように考えるわけでございます。  いつ完全になくなるかということになりますと、現在二百四十万でございますから、いまのペースそのままでいくと仮に考えますと、五十年から六十年。ただ年がたちますと、このダウンするペースも早まってくるのじゃないかと思いますので、その辺非常に推計はむずかしいと思います。
  9. 神田厚

    神田委員 いま受給者現況についてお尋ねをしたわけでありますが、そういう人たちがどういうふうな生活をしているかという恩給受給者生活状況調査というのを過去やったと思うのでありますが、近々はいつやっておりますか。一番近い時点ではどこでやっておりますか。
  10. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 一番新しいのは五十五年でございますけれども、毎年全般についてやっておるわけではございませんで、扶助料を受けておる人についてやるとか、次の年は普通の文官恩給を受けておる人にやるとか、こういったぐあいに対象を分けてやっております。
  11. 神田厚

    神田委員 そうしますと、私どもの方で見たのでは、扶助料受給者生活状況調査というのが五十二年にやられておりますね。それから旧軍人普通恩給受給者生活状況調査、これが五十三年ですか、それから文官普通恩給受給者生活状況調査、これが五十五年ということでやられているようでありますが、それらの問題の中で、まず最初扶助料受給者生活状況調査、これはどういうふうなことをどういうふうにやって、調査結果はどういうふうに取りまとめられているのか。さらにこの調査結果がどのように扶助料恩給制度に生かされてきているか、その点をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  12. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 この生活状況調査でございますが、扶助料につきましてもあるいは軍人恩給につきましても、文官恩給につきましても大体同じような形で調査しておるわけでございます。  その調査中身でございますが、家族構成であるとかあるいは就業状況であるとか、家計に占める恩給割合であるとか、その他受給者の意見とか要望とか、こういったことを聞いておるわけでございます。この調査につきましては、受給者生活状況調査報告として取りまとめまして、それぞれ一冊の本になっておるわけでございます。  中身につきましては、非常に多岐にわたっておりますので、一つ一つ申し上げると非常に時間がかかるのではないかと思います。いずれにしましても、これはいろいろ恩給上の処遇についての問題点把握したい、これ自体がそのまま恩給改善と直に結びつけるというような——と申しますのは、調査自体メールシステムといいますか、郵便で出して、その回答を待ってやるということで、対象把握等についても必ずしも全部を網羅しているわけではございませんし、もちろんサンプル調査でやっているわけです。ですから、直接結びつく的確な数字というわけにはまいりませんが、いろいろ問題を客観的に把握しまして、これを今後の改正に、たとえば家計状況で占める割合とか、そういったものがほかの年金とどうなっておるんだ、もしほかの年金等資料が得られればそういったものとの比較も可能になりますし、そういった客観的な資料手元に持ちたい、こういう意向でやっておるわけでございます。それぞれ結果については雑誌等でも公表しておりますし、また製本された報告書にまとめてございますので、もし必要があればまたお手元にお配りしてもよいかと思います。
  13. 神田厚

    神田委員 この審議をしていく上で、やはりいわゆる受給者への生活状況調査というのは非常に大事な調査であるわけで、そういう意味ではこの機会に特に恩給局の方で、たとえば扶助料受給者生活状況調査の中ではどういう点が特徴的に把握されて、そしてそれをどういうふうな形でその制度の中に生かしてきたか。それから旧軍人普通恩給受給者の中ではどうだということで、多少時間が過ぎても構いませんから、だんだん聞いていきます。  まず、扶助料受給者生活状況調査についてはどういう点が特徴的に明らかになって、そしてそれがどういうふうに生かされてきているのか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思うのであります。
  14. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 たとえば扶助料受給者生活状況でございますが、世帯生活費、これは金額も古いものですから、金額は別としまして、その生活費を一体何によって得ておるかというような調査もしておるわけでございますが、その主なものを挙げてもらったわけでございます。そういたしますと、扶助料の種類とは関係なく、子供収入とかあるいは年金恩給、これがそれぞれ六割前後を占めておるわけでございます。それからこのいずれかの組み合わせによるものがあと大部分を占めておるわけですが、主なものを一つだけ挙げてごらんなさい、こう申しますと、やはり子供収入というのが一番多くて、これが三〇%を占めております。それから年金恩給だけというのが一〇%台、それから自分働きを主とするというのが五%ぐらい、こういった状況になっておりまして、やはり扶助料受給者生活状況というのは、もうお年も召しておられるということもあるかと思いますが、子供収入に依存するという方がかなり多い、こういうような結果になっておるわけでございます。
  15. 神田厚

    神田委員 そのこと一つをとっても、これは非常に大事な問題ですね。ほとんど子供収入によっているというようなことであります。そういうことからこの扶助料改善等一つの大きな資料になっていくだろうと思うのでありますが、そのほか、この受給者就業状況世帯就業状況というようなものは特徴的にどういうふうになっておりますか。
  16. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 いまの扶助料の場合でございますが、世帯就業状況、これは世帯収入のある仕事をしておるというのは、一人就業しておるというのは、普通扶助料の場合ですと大体四五%、それから二人就業しておるというのが二八%、大体両方合わせますと七割以上という状況でございます。これが公務扶助料になりますと大分少なくなりまして、全体として一人就業しておるというのが三八%、二人就業しておるというのが三三%、こういうような状況でございます。
  17. 神田厚

    神田委員 受給者就業状況はそういうことでありますが、それでは仕事をしているという人はどういうふうな理由仕事をしているのか、あるいは仕事をしていないという人はどういう理由仕事をしていないのか、それはどうですか。
  18. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 仕事をしておるという人で、まず七〇%の方が生活に困るから仕事をしておる、こういうことでございます。それから少なくとも自分小遣いぐらいは自分働きで得たい、こういうような方が一二・四%でございます。これは普通扶助料の場合でございます。それから公務扶助料の場合は、生活に因るからというのがぐっと少なくなりまして五六%でございます。それから健康にいいからとか、あるいは小遣い自分働きで得たい、あるいは生きがいを感ずるというようなのがそれぞれ一〇%台。ですから、それらを合わせますと約三〇%ぐらいということになっておるわけでございます。また仕事をしていないという方の理由でございますが、大体が老齢であるとかあるいは健康がすぐれないというような理由が八割から九割を占めております。先ほど申しましたように、扶助料受給者は大体お年寄りの方が多いわけでございまして、子供収入というか、子供と一緒にお住みになっておるというような方が多いので、こういった結果になっておるのだろうと思います。
  19. 神田厚

    神田委員 お話を聞いておっても、仕事をしている理由は、生活に困るから仕事をしている。非常に現実的で切実でありますね。仕事をしてないというのは老齢であったりあるいは健康がすぐれないから。これまた非常に切実な問題でございます。  さらに、調査の中に、受給者貯金額というようなものも調査をされているようでありますが、これもほとんど貯金がないというのはないけれども、わずかな貯金額しか持ってないというようなことで、一般的にやはり公務扶助料恩給受給者というのは、生活そのものは非常に困っているという調査結果が五十二年の段階で出ているわけであります。したがいまして、それらのことをやはり十二分に勘案をしていただきまして、この扶助料受給者扶助料受給の問題につきまして、やはり前向きにこれを検討していただきたい、こういうふうに要望申し上げたいのでありますが、長官いかがでございましょうか。
  20. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 ただいま申し上げましたように、先生おっしゃるように、確かに非常に恩給そのものだけで生活ということがむずかしい方もかなりおられるということは事実でございます。したがいまして、恩給改善につきましては、特に公務扶助料のように非常にお年寄りの方、あるいは戦争未亡人といった気の毒な立場の方が多いわけでございますし、また普通扶助料につきましても、御主人を亡くされた方ということになるわけでございますから、今後ともそういった改善に努めてまいるという方向で進めていきたいと思います。
  21. 中山太郎

    中山国務大臣 いま局長が答弁いたしましたとおり、今後とも十分努力をしてまいりたい、このように考えております。
  22. 神田厚

    神田委員 さらに、これは五十二年に調査をされて、すでにそろそろ五年立つのですが、これは大体どんなふうな形で調査を続けるようなおつもりでございますか。
  23. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 ことしにつきましては、今度は傷病恩給受給者等についてやりたいと思いますし、また来年さらに扶助料等についてもう一度調査をして、年次別比較等もやっていきたい、このように考えております。
  24. 神田厚

    神田委員 私はやはり五年くらいのサイクルできちんと生活状況把握をしておかないとまずいというふうに思いますので、その辺はひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  ついでに、旧軍人普通恩給受給者生活状況調査というのが五十三年に行われました。この調査につきましても、先ほどの扶助料受給者生活状況調査と同じように特徴的にどういうことが把握されて、それがどういうふうに行政の中に生かされているのか、その点をお示しを願いたいと思います。
  25. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 旧軍人普通恩給受給者でございますが、この収入状況なんかを見ますと、やはり六十歳以上の長期在職者、この方で仕事を持っておるというのが四六%ぐらいございます。これはお年のこともありますし、また恩給自体長期在職者恩給はいいというようなこともあるかと思います。それで短期在職者になりますと、これは実在職年が三年から多くの人が五、六年という程度の方で、まだお年も若いということもありますが、こういった方の仕事を持っておるという方は五六%ぐらいになっております。  それで、そういった仕事をしておる人たちがどういう理由仕事をしておるかということになりますと、長期在職者では生活のためというのが七二・七%、それから短期在職では八〇・七%、ここでもやはり短期の方が率が高くなっております。その他、生きがいを感ずるからというのが長期では二二・六%、短期で一〇%、それから健康によいからというのが長期で一七・七%、短期で一〇・六%、それから小遣いが欲しいからというのが、これは非常に少なくて長期で三・七%、短期で二・六%、それから働ける間は働くべきだからという方が長期で三五・六%、短期で二六・二%でございます。  ここで出てきますのは、先ほど申しましたように、やはり短期の方は比較的年も若い。それから恩給自体も少ない方が多いわけでございます。したがいまして、もちろん五年とか六年で恩給がついておる方ですから、そう多くを望むというのも非常に無理かとは思いますが、やはり軍人恩給についても最低保障制度等の充実は今後とも図っていくべきだ、このように考えております。
  26. 神田厚

    神田委員 この調査の中で特に回答者の中から要望されたと言われておりますのは、長期でも短期でも両方とも増額の問題は一番大きな声でなされておりますが、長期在職者加算年事務処理等の促進をしてくれというのが非常に多かった。さらには文武官格差の是正、これも大変多くなっている。短期在職者では老齢福祉年金併給制限の撤廃、こういうふうな形で要請がされていたようでありますが、これらにつきましてはどういうふうになっておりますか。
  27. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 加算制度につきましては、先生承知のようにある年齢に達しますと加算がつくというような恩給法上のシステムになっております。それで加算がついた年になって加算年をつけてくれという申請を出されるわけです。その申請都道府県を経まして本属庁である厚生省にまいりまして、それで私どものところへ裁定してくれ、こう言ってくるわけでございます。ところで、いろいろ加算年を裁定するための資料が必要であるわけですが、そういった履歴書であるとかいったものが戦災で焼けておるとかいうような状況もございますし、また府県の窓口職員がもう年も若くなりまして、一等兵と二等兵ではどちらが上かということすらなかなか判断できないような人がぽこっと来るわけでございまして、確かに都道府県段階あるいは厚生省段階で手間取っている面はあるかと思いますが、私どもとしましては、非常に年老いた方でもありますし、皆さんお待ちになっていることでございますから、とにかく連携を密にしまして促進するようにということで努めてまいっておるわけでございます。  それから、文武官格差でございますが、これにつきましては、これは参議院でございますが、前回の法案審議の際の附帯決議にもございますわけで、ただいま御審議いただいております五十六年度の改正案につきましては、旧軍人につきまして一律二号俸アップする、こういう改定をお願いいたしておるわけでございます。  増額につきましては、先ほど申しましたように、最低保障等改善ということで今後とも努めてまいりたい、このように考えております。  老齢福祉年金との併給制限でございますが、これは恩給の方で制限しているわけではなくて、福祉年金の方、先生承知のように、福祉年金というのは何も年金を受けてない方にお支払いするというシステムになっておりまして、ほかの年金を受けておるという方については制限をしておるわけでございます。これも厚生省としばしば話し合いをしておるわけでございますが、五十六年度におきましては、従来制限額四十五万円を四十八万円に引き上げるといったような改善を考えておられるようでございます。また傷病恩給とか公務扶助料受給者が大尉以下であれば制限を加えないといったようにいろいろ改善は加えられてきておるところでございます。
  28. 神田厚

    神田委員 この調査の中で、現金収入恩給以外にないという世帯も四%あったというふうなことがあります。そういう意味ではかなり恩給に依存をしている人たちもいるわけでありますから、その辺のところもひとつ配慮をしていただきたいと思うのでありますが、全体的に、長官どうでございましょうか、旧軍人普通恩給の今後の取り扱いといいますか、それらについてはどういうふうなお考えをお持ちでございますか。
  29. 中山太郎

    中山国務大臣 先生お尋ねの点は、制度保障問題等につきましても前向きに検討してまいりたい、このように考えております。
  30. 神田厚

    神田委員 そうしますと、この項の最後でありますが、いままでなされました中で一番近々にやられました文官普通恩給受給者生活状況の結果が出ておるわけでありますが、これらにつきましては特徴的にどういうことが把握されまして、どういう点について行政的な配慮をしていくおつもりでありましょうか。
  31. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 文官でございますが、文官の場合でございますと、たとえば一つの特徴は、先ほどの扶助料の場合は、子供さんの生活が中心で、そこに同居しておられるというような方が多かったわけでございますが、文官の場合は、むしろ家計の中心者が受給者本人であるというような方が七五%と非常に大きな割合を占めておるわけであります。  その他の特徴としましては、受給者就業状況でございますが、これも扶助料なんかの場合とは違いまして、文官普通恩給では仕事をしていないという人が七割近く占めておるというような状況になっております。やはり恩給制度文官恩給を受けておるという方は、昭和三十四年以前におやめになられた方でございまして、その後は共済年金に引き継がれておるわけでございますから、かなりのお年の方とは思いますが、長年お勤めになられたという方も多いわけでございまして、恩給自体軍人恩給よりはかなり高い水準にあるというような方であるということがこの結果にも出ておるのではないか、このように思うわけでございます。
  32. 神田厚

    神田委員 文官の恩給調査の中で、ただいまお答えがありましたけれども仕事をしてないというのが非常に多いのですね。しかも、健康の状況等でほぼ半数が健康でない、不健康だということで病床にあったりあるいは仕事につけない状況であるわけでありまして、そういう意味では、やはり生活状況というのは大変切実な問題になっているのではないだろうかと思っております。したがいまして、文官の普通恩給受給者につきましても、やはりそれなりの行政の側の配慮が必要であるというふうに考えておりますが、そういう意味で、文官普通恩給受給者恩給受給の問題について将来的にどういうふうなお考えをお持ちか、ひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  33. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 ただいま申し上げましたように、文官恩給受給者というのはかなりお年寄りの方が多いわけでございまして、したがいまして、従来とも老齢者優遇ということで特別の割り増し金をつけるとかいう措置はとってきておるわけでございますが、今後ともそういった老齢者優遇措置というものを検討してまいりたい、このように考えております。
  34. 神田厚

    神田委員 次に、恩給審議会の答申の実施状況についてお尋ねを申し上げたいと思うのであります。  恩給審議会が答申をした非常に多くの項目につきまして、政府の方でもそれなりに大変御努力をなさって、その答申の実施に向けていろいろとなされたことにつきましては敬意を表するのでありますが、なおいろいろな問題につきまして未実施の部分があるというふうに聞いております。その幾つかにつきまして具体的にお尋ねをしたいと思うのであります。  最初に、答申の内容の二番目に「その他の恩給問題に関する処理意見」というのがございまして、その大きい二番目の五番目の項目の「旧海軍特務士官等の仮定俸給に関する問題」、これらについてはどういうふうになっておるのでありましょうか。
  35. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 特務士官の方についての問題でございますが、これは元来原則的には、軍人恩給というのは一階級一恩給ということで陸海軍通じて決まってきておったわけでございます。ただ、海軍の特務士官の方は、当時でも非常に高い俸給を取っておられたというような実態がございまして、これについて陸軍のあるいは一般士官の水準よりも高い仮定俸給を決めるべきではないかという御要望がなされておったわけでございます。これにつきましては、そういった特殊性を考えまして、昭和五十四年に改正いたしまして、准士官と少尉につきましては三号俸、中尉と大尉につきましては二号俸アップする、仮定俸給を上げる、こういう措置をとっております。
  36. 神田厚

    神田委員 次に、四番目のところの傷病恩給の問題に関しまして、「傷病恩給の年額の算出基礎に関する問題」と「特別加給の支給範囲に関する問題」というのがまだやられてないと思うのでございますが、その辺はどうでございますか。
  37. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 傷病恩給につきましては、これはここ数年ずっと公務扶助料で特段の改善を行うのと同じ額を積み上げまして、特段の改善を図っておるところでございまして、これは算定基礎以前というか、それ以上の特段の積み上げが行われているわけでございます。  それから、特別加給でございますが、これも答申では三項症以下——これは特別に介護を要するような方に対する加給でございますので、二項症以上の方について特段の加給を行っております。それで、ただいま御審議いただいております五十六年の改善法では、二項症以上の中でも特別項症という方と一、二項症を受けておる方を分けまして、さらに特別項症の方に特段の配慮をするという改善を考えておるわけでございます。
  38. 神田厚

    神田委員 最初の「傷病恩給の年額の算出基礎に関する問題」は、「傷病恩給の年額は、戦前の普通公務の年額を基礎として算定しているが、これを、戦前の戦斗公務を基礎としたものに改めるかどうか」という問題が一つ提起をされておる。そういうふうにするかどうかという問題であります。  もう一つは、「昭和三十三年法律第百二十四号で傷病恩給の階級差が撤廃された際、兵の恩給額を基礎として算定しているが、これを、下士官を基礎とした恩給額に改めるかどうか」という二つの問題点が出ているわけでありますが、その点がどういうふうになっているかという話でございます。
  39. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 この点については、十分検討すべきであるという意見が出ておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、いろいろな公務扶助料のアップに等しいくらいの改善を重ねてきておるわけでございまして、この問題以前というか、以上の処置をやっておるというようにお考えいただいていいのではないかと思います。
  40. 神田厚

    神田委員 そうしますと、この四番目の「増加恩給受給者普通恩給に関する問題」についても大体同じようになされておるようでありますか。
  41. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 そのとおりでございますが、先ほど申しましたように、さらに特別加給といったような形で非常な改善を図っておるわけでございます。
  42. 神田厚

    神田委員 それから八番目の「増加恩給受給者が非公務により死亡した場合に給する扶助料に関する問題」、「目症程度の傷病者に関する問題」、これらについてはどうでございますか。
  43. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 増加恩給を受けておる方が非公死というか、公務によらないで亡くなられた——交通事故で亡くなられたとか、そういった方について公務扶助料を出せという話でございますが、やはり公務扶助料というのは、公務のために亡くなられた方ということがございますので、これは答申によりましても、意見では公務扶助料というのは必ずしも適当ではない。ただ、従来増加恩給を受けておられた方というのは、症状も重い方でございますから、家族の苦労も非常に大きかったわけですし、そういった趣旨から、公務扶助料との均衡を考えながら増加非公死扶助料改善を図ってきておるわけでございます。  目症者につきましては、この答申でも適当ではない、こういう意見が出ておるわけでございます。これは現在におきましても、この処理意見のとおりでございまして、ほかの年金等との比較で見ましても、目症者というのは非常に軽症の方が多いわけでございまして、こういった方に年金を給するというのは適当ではないというように考えておるわけでございます。
  44. 神田厚

    神田委員 傷病に関しては、かなり進んだ形で改善がなされているということでございますが、なお提起をしました問題について前向きの取り組みをお願いをしたいと要望しておきます。  次に「外国政府職員等の恩給に関する問題」で、「外国政府職員等についての恩給の基礎俸給に関する問題」、それから(七)の「外国政府職員として公務死した者の遺族に対する公務扶助料支給に関する問題」、(九)の「満鉄社員に対する恩給に関する問題」、この三つが問題点として残っているようでありますが、これはそれぞれどういうふうにお考えでありますか。
  45. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 外国政府職員の基礎俸給についてでございますが、戦前四・五%の割り増し率をつけたというのは、内地における昇給といいますか、こういったことを考慮してつけておったわけでございまして、この意見によりましても、こういった増率をすることは適当でないというのが出ておりますので、処理意見のとおりと考えておるわけでございます。  それから、外国のいろいろな機関におられた方というのは、公務員であったわけではございませんので、この処理意見にも公務扶助料を給することは適当でない、こういうことでございますので、その意見のとおりであるというように考えておるわけでございます。  それから、満鉄社員のみの方は、やはり日本の公務員ではないということから、これに恩給を給するのは適当でないという処理意見が出ておりますので、その意見のとおりと考えておるわけでございます。
  46. 神田厚

    神田委員 これは戦後処理の一つの問題でありますが、支給の仕方や何かで救済をしてくれという要望も非常に多いわけでありますから、この辺に対する取り扱いというのはこれからの課題になっていくと思うのであります。われわれとしましては、幅広くこれを救っていくという観点から、やはり検討の課題としてこれを引き続きお願いをしたいと要望を申し上げておきたいと思います。  さらに、「琉球政府職員等の恩給に関する問題」の中で、「元沖繩県吏員の恩給に関する問題」というのが残っております。琉球ではそれだけでありますが、これはどういうふうにお考えでありますか。
  47. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 先生御存じのように、恩給というのは国の官吏に対する制度でございまして、沖繩県の吏員は地方公務員でございますので、地方公務員共済組合から支給されておるわけでございます。
  48. 神田厚

    神田委員 これは、いろいろな問題の経緯の中から、特にこの沖繩県吏員の問題は出てきたわけでありますから、その点を考える必要がないかどうかという問題だと思うのであります。そういうことで手をつけられないでいる問題でありますので、この点につきましてやはり引き続き検討をお願いしておきたいと思っております。  それから、「いわゆる戦犯者および公職追放者の恩給に関する問題」、これは、ずっと審議会で答申されてやられてない問題についていま述べているわけでありますけれども、この「公職追放期間の通算に関する問題」がまだ手つかずのようでありますが、この点はどうでありますか。
  49. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 公職追放期間についても、その期間公務員ではなかったわけでございますので、処理意見におきましても、公務員期間に通算するのは適当でないという意見が建議されておりますので、処理意見のとおりである、このように考えておるわけでございます。
  50. 神田厚

    神田委員 それではあと残ったその他の問題で二、三まとめて御質問申し上げますが、「内地等における日赤救護員期間の通算に関する問題」、「戦地勤務に服した日赤救護員の加算に関する問題」、「雇傭人期間の通算に関する問題」、それから「旧外地市町村類似団体に勤務していた職員の恩給に関する問題」、これがそれぞれ問題点として残っているようでありますが、これについてはどういうふうにお考えでありますか。
  51. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 日赤救護員が事変地あるいは戦地で、これは公務員ですからもちろん日赤の婦長以上の方の話になるわけでございますが、処理意見でも「この措置を事変地または戦地以外の地域に勤務した日赤救護員についてまで及ぼすことは適当でない。」こういう意見でございますので、この処理意見のとおりであると考えておるわけでございます。  それから、雇用人も恩給制度そのものが本来官吏であったという方を対象としておりますので、その在職期間を公務員期間に通算するというのは適当でないという意見をいただいておりますので、その処理意見のとおりである、このように考えておるわけでございます。  市町村の吏員につきましては、内地であろうと外地であろうと恩給対象ではございませんで、それぞれの条例によって処理しておるわけでございますので、これを恩給対象とすることは適当でない、こういう意見をいただいておりまして、これに基づいて、その処理意見のとおりである、このように考えておるわけでございます。
  52. 神田厚

    神田委員 いま審議会の答申の中で問題になっている点について、現在の総理府、政府のお考え方を聞いたわけでありますが、いずれにいたしましても、この受給者の大多数が傷病者やあるいは遺族老齢者、こういう方によって占められているということから考えますれば、恩給問題の処理に当たりましては、残された問題等につきましても、ひとつ幅広く問題の検討をしていただきたいということを最後に要望しておきたいと思っております。  それで、時間もありませんので、次に昭和五十六年度の恩給費予算につきまして御質問を申し上げますが、五十六年度の恩給費の予算の問題は、現在の財政再建という非常に厳しい財政事情の中から、それぞれ総理府等の努力によりましてかなりの改善の財源についての要求が満たされたようでありますけれども、当初恩給予算について特に主張として強く掲げた問題と、それらについての財政当局の見解等にいろいろな問題があったようでありますが、この予算の要求について長官の方から、今年度の恩給費予算の対大蔵との交渉等についての問題がありましたら、ひとつお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  53. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 具体的な数字等もございますので、私から事前にお答えいたします。  昭和五十六年度の恩給費でございますが、概算要求は一兆六千六百四十四億円要求したわけでございます。これに対して大臣折衝等の結果を経まして、最終的に一兆六千四百四十一億円という予算が決まったわけでございます。いま先生おっしゃいますように、非常に歩どまりがいいというか、私どもの考えておるような予算がついたのじゃないか、このように考えております。  ただ、概算要求とそれから最終決定との違いでございますが、概算要求公務扶助料関係の最低保障額、これを六月実施ということで要求したわけでございますが、これが八月ということで二カ月ずれることになりました。  それから、先ほどちょっと話の出ました長期在職の旧軍人の仮定俸給のアップでございますが、これが四号俸アップという要求に対しまして二号俸アップということに変わった。大体その二点かと思います。
  54. 神田厚

    神田委員 恩給問題は、財政の事情が非常に厳しい中で、しかしながら恩給に頼って生活をしている人の生活状況というのは、やはり非常に大変な部分があると思うのであります。ですから、これらにつきましては、今後ともより財政当局の理解を得て要求がうまく通っていきますように、極力長官の方からもひとつそういう姿勢を堅持していただきたい。  最後に、決意をお聞かせいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  55. 中山太郎

    中山国務大臣 いろいろと恩給及び公務扶助料等の引き上げについて御心配をいただいていることに厚く御礼を申し上げておきますとともに、今後とも恩給及び公務扶助料等の引き上げにつきましては、概算要求の時点も含めて、総理府といたしましても、最大の重点項目として努力をしてまいることでございますので、一層の御支援をお願い申し上げておきたいと思います。
  56. 神田厚

    神田委員 ありがとうございました。
  57. 江藤隆美

    江藤委員長 榊利夫君。
  58. 榊利夫

    ○榊委員 けさ早く、アメリカの大統領が狙撃をされるという非常に異常な事態が起こっておりますけれども、総理府長官、一言だけ、委員長の御了解を得て質問をさせていただきます。  総理府の方にも内閣調査室をお持ちですけれども、もしこれまでのところ情報が入っておりましたら、それを教えていただきたいということが一つと、それからもう一つ、やはり最近暴力主義の風潮と申しますか、こういうものが強まっているわけであります。わが国内でもピストルや銃類の密売の問題であるとか、あるいはいわゆる暴力団から暴走族、家庭内暴力、校内暴力等々いろいろそういう暴力主義の風潮があるのでありますが、やはり民主的な討論あるいは人権を大切にする、そういう方向を目指していかなければならない、そういうことを痛感するのですが、総理府長官青少年対策本部を指導される責任も負っておられますので、この点について、暴力主義の問題でどういう御所見をお持ちなのか、その二点だけちょっと御質問させていただきます。
  59. 中山太郎

    中山国務大臣 アメリカのレーガン大統領の狙撃事件に関連いたしましては、先生お尋ねの内閣調査室は総理府所管でございませんで、内閣官房の所管でございます。そういう意味で私から御答弁申し上げることはどうかというふうに考えております。ただし、けさの閣議におきまして、伊東外務大臣からレーガン大統領狙撃に関する報告がございました。本日の午前八時三十分の時点では、レーガン大統領は肺にピストルの弾丸が入ったわけで、一時は心臓に達しているのではないかという危険を感じたそうでございますけれども、その後の診断の結果では、病状は心臓にまでは至っていない、肺の中に弾丸がまだ残留しているので、これを手術するかどうかということについては慎重に取り扱う、ただいまのところ病状が非常に安定しているということで、直ちに生命に危険が及ぶことはない、こういうのが本日の朝の閣議における外務大臣の報告でございまして、政府といたしましては、このレーガン大統領に対するいわゆる政府からのお見舞いということで電報も打たしていただきましたし、これに対する政府の特使派遣ということも今後検討するということが総理から報告をされたようなことでございます。  なお、暴力主義に対する総務長官の見解はどうかというお尋ねでございますが、政府はもとよりこういうふうな暴力というものに対しては全面的に対決をしていく、校内暴力、家庭内暴力あるいは一般社会における暴力事案等につきましても、あらゆる機会に、いわゆる暴力発生事件の根を絶やすために関係各省とも十分協力をいたして今後とも努力をしてまいりたい、このように考えております。
  60. 榊利夫

    ○榊委員 では本題に移らせていただきます。  総論といたしまして、今度の恩給法改正はまず改善と言えると思いますけれども、いろいろ研究してまいりますと問題もいろいろ気がつきます。  一つは、五十五年度中の物価上昇率でありますが、昨年十二月二十日に閣議で了解された経済見通しで七%という線が出ております。実際は八%に達すると見られますが、これに対して普通恩給の引き上げ率は最高で四・九%というふうになっておりますが、その点では消費者物価との差があります。追っつかない。物価スライド制の検討というのは、どうでしょうか。
  61. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 恩給改善につきましては、昭和四十八年以降公務員の給与改善率を用いて改善を図ってまいったわけでございます。またさらに昭和五十一年以降は、その改善傾向といったものを盛り込みながら改善を図ってきておる。もちろんその間物価の高いということもございましたし、あるいは公務員の改善率の高いこともございました。しかし、現在の考え方としましては、恩給受給者もかつては公務員であったというようなことから、現職公務員の方々の改善、これは生活水準であるとかあるいは物価であるとか民間の給与、いろいろなことを織り込んで、その結果で出てくる数字でもあり、恩給受給者について、現在の方式により恩給改善をしようとすることは適当ではないかと思いますし、そういった考え方を軽々に、ことしは物価が上がったから物価、ことしは給与改善率がいいから給与改善率、こういうようなことは適当ではないというふうに考えておるわけでございます。
  62. 榊利夫

    ○榊委員 ひとつ簡潔な御答弁をお願いします。  いずれにしましても、物価はどんどん上がっていく、これに恩給も伴って上がっていきませんと、結局有名無実ということになりますので、その点でのスライドの検討ということは一つの課題じゃないかと思うのです。研究したい、あるいは研究する余地はあるという御認識はお持ちでしょうか。
  63. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 給与改善につきましては、今後ともどういう手法がいいかというような研究は続けてまいりたい、このように考えております。
  64. 榊利夫

    ○榊委員 普通恩給普通扶助料、この最低保障額が四月に四・八%の改善、こうなっております。六月からの上積み分と合わせまして全体として七%の改善ということになりますが、しかし、これでも政府見通しの消費者物価の上昇率七%分、これをいつ埋めるかということになりますと、六月になってようやく埋める、こういうことになるのですね。そういう点では四月、五月の間はかなりの目減りがある。したがいまして、これはいままでもそういうことがしばしば問題になってきておりまして、各種の改善を年度初めに実施すべきではないか、こういうことは本委員会の場合でも昭和四十九年、一九七四年に附帯決議が付されて以来、繰り返して指摘されてきております。そういう国会決議の精神がありますので、やはり六月実施分も四月実施に持っていくような努力が必要じゃないかと思うのですけれども、この点、長官の御所見を伺いたいと思います。
  65. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御指摘の点は、総理府といたしましても公務扶助料等の受給者恩給受給者等への配慮から四月実施というものはきわめて好ましいことである、できればそういたしたいと考えておりますけれども、御案内のように、国債の発行の残高が非常に大きいとか、あるいは貿易の収支の問題とかいろんな問題で国家財政が非常な緊急状態にあるという中で、私どもとしてはできるだけの手厚い支給をいたしたい、こういうことで、そういうことになれば、その総枠の中でどうするか、むしろ来年の四月以降のことを考えてまいりますと、実施時期が少々遅れることが、まことに残念な結果ではございますが、その分だけの量を積んでいくということによって、来年度からの、四月からの受給というものが厚くなっていくというふうなことで、私どもとしては、最善の道を選ばせていただいた、財務当局もそれに対して全面的な、現在の時点での可能な限りの協力をいたしてくれた、このように考えております。
  66. 榊利夫

    ○榊委員 現在の場合は最善の努力をした、こういう御答弁でございますけれども、これがいわば常態化していくといいますか、これは好ましくない。ですから、この点についても、やはり決議が繰り返されてきているわけですから、そういう方向で努力をしていく、できないかどうかまず財政次第だ、こういうことで済ますのではなくて、その前向きの姿勢は必要だと思うのです。その点はいかがでございましょう。
  67. 中山太郎

    中山国務大臣 私どもとしては先生と同様でございまして、前向きの姿勢を絶えず維持しておるわけでございます。
  68. 榊利夫

    ○榊委員 これは人事院の方にお尋ねいたしますが、国家公務員法は百八条でこういうように述べているのです。「人事院は、前条の年金制度に関し調査研究を行い、必要な意見を国会及び内閣に申し出ることができる。」これは昭和三十四年でございますけれども、それ以来一度も人事院からその種の意見の申し出はないように思います。退職年金制度調査研究はどういうようにやってきておられるのか、あるいはその成果はどうなのか、お尋ねいたします。
  69. 長橋進

    ○長橋政府委員 国家公務員の退職年金制度につきましては、いま御指摘のとおり百八条に、人事院は調査研究して「必要な意見を国会及び内閣に申し出ることができる。」ということになっておりまして、いままでこの百八条の規定を発動したことは一度もないじゃないかということでございますが、これは御指摘のとおりでございます。三十四年に国家公務員共済組合法が改正になりまして、御存じのように、公務員の退職年金につきましては共済組合が主体になって運営しております。大蔵省は総括的な管理ということから実施について関係しておるというような事情にございます。そういう事情にございますものですから、人事院といたしましては、百八条の規定を根拠にいたしまして何か意見を申し出るという場合には、やはりその年金制度の、どちらかと申しますと基本にかかわる事項、これについて行うのが適当ではなかろうか。せっかく所管の機関におきまして鋭意適切な運営に努力されていることもございますので、人事院の心構えとしては、そういうことが適当ではなかろうかというふうに考えております。  しかし、じゃそれ以外の事項について百八条を発動することは適当でないのかというと、決してそうは考えておりませんけれども、先ほど申し上げましたような事情がございますので、事務的な、このように改善した方がベターだと思われるような項目につきましては、それぞれの所管機関に申し入れをするということも一つの方法ではなかろうかと考えておりまして、現に昭和四十九年には、若干の項目につきまして給与局長名をもって大蔵省に申し入れをした事実がございます。  なお、じゃ現在どういう調査研究をしておるかということでございますが、やはり年金制度ということになりますと、長期的な視点に立って検討をするということが大事でございましょうし、さらには他の公的年金制度、それから民間におきます企業年金、そういったものの動向もあわせて検討しなければならぬ。大変多岐にわたるものでございますから、現在のところじみちな調査研究をしておるということでございます。  その研究の一環といたしまして、昭和四十七年度の退職公務員で年金受給者、これは調査対象人員約一万人でございますけれども、その方につきまして生活実態の逐年の変化を調査しております。これは本人のいわゆる退職後におきます生活につきまして、年金との関係、そめ他の収入状況、そういうものとあわせて健康状態なども調査しております。  さらに、五十三年度の退職者につきましても、あわせてそのような調査をいたしたいということでございまして、大変じみちではございますけれども、そういう意味調査研究を続けておるという状況でございます。
  70. 榊利夫

    ○榊委員 どういう研究を進めているかということはいまのでわかりましたけれども、せっかく法律で「必要な意見を国会及び内閣に申し出ることができる。」と書かれているわけで、ひとつしかるべき時期に、この国会にも、それから内閣にも一つの研究成果を提起できるように御努力をお願いしたいと思うのです。そのことはどうでしょう。
  71. 長橋進

    ○長橋政府委員 できる限りいま御指摘の方向で努力してまいりたいと考えております。
  72. 榊利夫

    ○榊委員 これは恩給局長の方にお尋ねしますが、年金である普通恩給、増加恩給傷病年金扶助料、これらの受給者の数については先ほど御答弁ございましたけれども、毎年これはどれくらい減っているのでしょうか。それからその終了は、大体いつごろと予測されるでしょうか。この二点です。
  73. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 受給者の数でございますが、これは過去の経過を見ますと、わりあい変動が多うございまして、たとえば過去五年間の平均でとりますと、大体三万五千人ぐらい年平均減少いたしております。  これからの予測でございますが、だんだんお年を召していくわけでございますから、加速度は若干ずつ加わっていくんじゃないかと思いますが、ここ四、五年は大体年間四万ぐらい減っていくんじゃないかというように推測されるわけでございます。  ただ、いつなくなるかということになりますと、これは普通恩給受給者が亡くなりますと、その奥さんが扶助料を受ける、その奥さんが非常に若ければ、また世代がずっと先に延びていくというようなこともございますので、なかなか推測しにくいと思いますが、ただいま申し上げたような年間四万人というようなペースで仮に考えますと、いま二百四十万でございますから、六十年間とか、もっとペースは恐らく早まると思いますので、恐らく五十年ないし六十年というようなところで恩給受給者がいなくなる、こういうことではないかと思います。
  74. 榊利夫

    ○榊委員 普通恩給の場合、多額所得者の場合、一定額を停止することに決まっております。その該当者は、たとえば昭和五十五年度で何人ぐらいおられるのか、それはどういうふうな方法で調査をされているのか。たとえばその中で、この停止条件に該当している方はどういう方がおられるのかということです。
  75. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 恩給の多額停止でございますが、五十五年度では、恩給額が百四十二万以上の方で恩給外所得が六百六十万以上の方、その方の、両方合わせました八百二万円を超える分の二〇%を停止するわけでございます。  その停止額はいろいろ条件がございます。百四十二万円を下らないとか、あるいは恩給年額の二〇%を超えないとかいう条件がございますけれども、原則的にはそういうことになっております。  それで、私どもといたしましては、百四十二万を超える恩給受給者、この方々全員につきまして、所轄の税務署に対しまして、その方の前年の恩給外所得を全部調査するよう依頼するわけでございます。その結果に基づきまして、ただいま申し上げたような処置をとっておるわけでございますが、数で申しますと、五十五年度において調査を依頼いたしました件数は一万五千六百十九件でございます。そのうち多額停止に該当する方、これが三百九件でございます。  どういう方が該当するかというのは、これはちょっとプライベートな問題でもございますので、御勘弁いただきたいと思います。
  76. 榊利夫

    ○榊委員 たとえば、岸元首相なんかは該当しているでしょう。
  77. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 岸元首相が該当するかしないかということもちょっと回答は御勘弁いただきたいと思いますが、ただいま申し上げましたように、百四十二万の恩給年額を超える方で六百六十万の恩給外所得を超える方ということでひとつ御想像いただきたいと思います。
  78. 榊利夫

    ○榊委員 それではひとつ想像しておきます。  次は、特別の問題ですが、恩給受給資格での、これまでにずっとやられてきている中での一つ問題点としてお尋ねするのですが、理非曲直と申しますか、たとえば東條英機ら戦犯の場合、在職期間中の普通恩給権が回復しているだけでなくて、巣鴨などの拘置期間も加算されておりますね。この場合は、法的には何年何月に公務員でなくなったのでしょうか。それとも公務員のまま拘置されて処刑をされた、こういうことでしょうか。その点は、どういうふうにそちらでは処置されておりますか。
  79. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 旧軍人が戦犯者として逮捕されました場合、有罪判決を言い渡されたとき、これを一般に旧軍人としての身分を失ったとき、このように考えております。
  80. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、たとえば東條なら東條の例をとりますけれども、一九四五年の九月二日に陸海軍解体指令が出される、それ以後もやはり公務員だったのですか、あるいは軍人だったのですか。身分的には、たとえば陸軍大将そのままだったわけですか。
  81. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 そのように考えております。
  82. 榊利夫

    ○榊委員 それは奇妙なことなんですね。軍隊もないのに陸軍大将がいるということ、これはどこから見てもつじつまが合いませんよ。そういう解釈、これは根拠は何でしょう。
  83. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 公務員の任免というか、これに関することでございまして、本来はその公務員の所属した本属長、ここの判断によるわけでございますけれども、一般的には、「外地戦犯者等の復員処理について」という、これは昭和二十二年の七月十五日に復員庁総裁官房長から復員連絡局世話課あてに出された文書、さらに復員業務規程、これは昭和二十六年三月五日付の引揚援護庁調製によるものでございますが、そういった規程等によると、そのようになっておるわけでございます。
  84. 榊利夫

    ○榊委員 私も軍隊の経験がありますけれども、戦後復員する、そのときからもうすでに公務員ではもちろんなくなっているわけであります。そうすると、それは期間的に見まして、まあ抑留期間を経過した人もあるでしょうが、少なくともこういう戦犯者で逮捕された人について、しかもその前にすでに軍はなくなっているのですから、そのもとの身分のまま計算をするというのは拡大解釈ではないかという疑問が消えないのですね。これはここでもっと詰めたいところですけれども、かなり前のことなので、機会を改めてもう少し論議をさせていただきたいと思っております。  それはともかくといたしまして、いまの御答弁からはっきりしたのは、公務員でなくても拘置期間を在職期間に準じて、つまり公務員に準じて恩給支給している、恩給対象にしているということは非常に明確になりました。  そこで、お尋ねしたいのですけれども、それと全く逆の例があるのです。たとえばあの軍国時代に治安維持法その他政治的な治安立法で国立大学の教職を失った方がおられます。有名な学士院会員であった一橋大学教授の大塚金之助さんとかあるいは東大の教授でやはり学士院会員をやられた山田盛太郎さん、これらの方々の場合には戦後復職しておられます。ところが拘留されていた期間というのは恩給対象からはすっかり除外されているというふうに私たちは解していますけれども、これはそうだというふうに解釈していいですか。
  85. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 戦前、治安維持法で禁錮以上の刑に処せられた方は、これは治安維持法に限らず、いかなる刑法の場合でもそうでございますが、恩給を受ける資格を失うということになっておるわけでございます。ただ、その後恩赦等によって刑の言い渡しの効力が失われたというふうに考える場合には、これは三十七年以降でございますが、復権しておるわけでございます。
  86. 榊利夫

    ○榊委員 それで、この大塚さんや山田さんの場合ですと、逮捕され、拘留をされたその期間は、その後、たとえば大塚さんの場合には休職扱いみたいにして半分恩給対象になっているらしいのですね。それから失官をした以後、これはゼロ、こういうふうになっているわけであります。戦犯の扱いと非常に対照的なんです。さらに免官後復職までの間、これも恩給期間からすべて除外されておる。たとえば大内兵衛さんなどの例を見ましても、この方は治安維持法等の容疑で逮捕されて休職扱いにされた。ところが後でまた復職されるわけですけれども、休職期間の半分しか在職年としては計算されていません。そういう点では、あの戦争の推進側と戦争に反対した側とでは、恩給の扱いが公務員であっても非常に対照的である。矛盾している。つじつまが合わない。これは実際問題としてあるわけであります。もちろん多くの方はすでに老齢、あるいはいまの大塚さんにしても大内さんにしても故人でありまして、奥様はいられるわけでありますけれども、そういうふうに不当に拘留をされていた期間あるいは免官、退職されていた期間を恩給期間として算入するとか、あるいはこういう問題について改善措置を考えるとか、そういったことが必要ではなかろうか。これは日本の歴史の一つの不幸でありまして、それが本人と家族へのせめてもの善意ではないか、こう思うのです。研究していただきたい、こう思うのですが、いかがでございましょう。
  87. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 恩給法のたてまえから言いましても、国内法で処罰された方について、治安維持法あるいはその他というふうに分けることは必ずしも適当でないと思いますし、また戦犯者につきましては、御承知のように、戦勝国によって裁かれて、まあ個人的な責任といいますか、これについてどうこう言うという形ではないと考えられたせいかと思いますが、その後国内法上の扱いでは、一般の人と何ら変わりないように扱うということになったわけでございますので、これについて特段の差別をつけるということは適当ではない。こういった両方のあれから、現在恩給法のたてまえからは、先生の御指摘のようなことが不均衡であるというふうには考えていないわけでございます。
  88. 榊利夫

    ○榊委員 そういうふうに言われると、私も一言言わざるを得なくなるのですよ。戦争というのは何も個人的責任じゃないと言うけれども、戦争というのはやはり人間が起こしたのですよ。だから責任はあるのですよ。だからこそ人類の名で裁きを受けることにもなったわけでありますけれども、差別ということになれば、そういう時代に戦争に反対をし、そのために国立大学を追われたような人の恩給にまで差別がついているということこそまさに差別だと思うのですよ。こういう事実があるということも世間には知られていません。私も調べて初めてびっくりしました。これはみんな非常に有名な方々ばかりでありますけれども、私調べたところでも、そのほかに大学の教授等々五人、六人ではありません。数は相当数あります。したがって、ここでお願いでございますけれども、どういうところに問題があるかないかを含めましてひとつ研究をしてもらいたい、そのことだけをお願いしておきたいと思います。
  89. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 受給者の範囲ということで、受給権の問題で非常にむずかしい問題かとは思いますが、今後とも研究は続けてまいりたいと思います。
  90. 榊利夫

    ○榊委員 それでは次の問題に移ります。  硫黄島の戦後処理に関しての問題でございますけれども、しばしば本委員会でも、給付金を出すことで戦後処理は終わるとかあるいは終わらせたい、こういう答弁がなされてまいりました。しかし、そこまでもいかないで泣かされている人々がたくさんおられるという事実もあるわけです。たとえば東京都下の小笠原村の硫黄島の旧島民一千二百名の方々が昭和十九年に本土に戦時疎開させられて、戦後すでに三十六年過ぎておりますが、いまも帰島できないでいるのですね。これは地理的、行政的に言いますと東京都下なんですよ。行政的には小笠原村なんです。ところがその東京都民であるはずの人々が島に帰れない、こういう大変不幸で悲惨な事態が続いているわけであります。恐らく家族を含めれば三千人ぐらいに上るのではないかと見られますけれども、こういう戦時疎開者の方々のその間の精神的、肉体的な苦痛に対する見舞い金あるいは補償金というものを日本政府として全くやってきていないという事実、これはやはりここで指摘せざるを得ないわけであります。  実は十二年前に、沖繩と同じでありますけれども、小笠原諸島は日本に返還されました。それでその中に硫黄島も入っているのですけれども、その当時アメリカは、みんなの要求もありまして、占領中のそれに対して六百万ドルの一時金を支払ったのだそうです。ところがわが政府だけは一円も贈ったことはない。これは同胞に対しても非常に冷たい、冷た過ぎると私は思うのです。疎開中の旧島民に、そういう精神的、肉体的な苦痛に対するお見舞いの一時金あるいは補償金、これはぜひ研究していただきたい、こう思うのです。総務長官にこの点お尋ねいたします。
  91. 中山太郎

    中山国務大臣 この件に関しましては国土庁の所管でございますので、国土庁からお答えをさしていただきます。
  92. 桝原勝美

    ○桝原説明員 ただいま御指摘の硫黄島旧島民の一時金の問題につきましては、現在国土庁といたしましては、まず旧島民の方々の帰島を含む地域の開発の可能性というところから問題を手がけておりまして、その結論を得た上で御指摘の点も含めて広く検討したい、かような段階でございます。
  93. 榊利夫

    ○榊委員 実は昨年の予算委員会でも私この問題で質問さしていただいたのですが、そのとき大平前総理大臣が、定住の可能性についてあらゆる見地から調査検討を進めてまいりたい、こういう答弁をなされました。それ以後いろいろな調査がやられてきたことは存じ上げております。本年の一月中旬から三月下旬まで国土庁は硫黄島の不発弾問題、これは調査したというふうに聞いております。これについて、一時金の方はまた後でもう一度質問いたしますけれども、この調査では何ヘクタールぐらいを対象調査をされましたか。それからまた調査の結果はどうだったでしょうか。
  94. 桝原勝美

    ○桝原説明員 御指摘の不発弾調査につきましては、昭和五十年二月、三月、防衛庁と東京都において行われた調査では、島全体で約一千トンという結論が出ておるわけでありますが、今回私ども調査いたしましたのは、硫黄島全体の約二千二百ヘクタールのうち開発可能性が比較的高いと思われる地点約四百ヘクタール、旧東、南部落を中心に調査をいたしまして、標本地域といたしましては約八ヘクタール、そして調査地域といたしましては二ヘクタール余りを調査いたしておりますが、現在鋭意解析、分析中でございまして、なお不発弾の埋没量が具体的に幾らになるかにつきましては時間をかしていただきたいと考えております。
  95. 榊利夫

    ○榊委員 現在いろいろ分析中だということでしょうけれども、不発弾は予想されていたよりも多かったですか、少なかったですか。あるいは居住、耕作は不可能だと見られておられますか、あるいは可能だと判断されましたか、そのあたりどうでしょう。
  96. 桝原勝美

    ○桝原説明員 これは現在精密に検討いたしておる段階でございますが、前回の調査の一千トンないし二千トンを上回ることはないであろうというふうに現段階では考えております。  居住の可能性の問題につきましては、火山の噴火の問題、その他水の問題でありますとか制約条件全体を含めて多角的に検討すべき問題でございますので、不発弾だけでにわかに結論を出すことは困難かと考えております。
  97. 榊利夫

    ○榊委員 どうもいまのは何か奥歯に物がはさまったみたいな、よけいな火山とか水とかの問題まで持ち出されましたけれども、火山とか水とかいうことは明治時代からあることなのです。そんな新しいことではない。別にそれは居住不可能な条件ではないのです。問題は、新しいものとしては戦中に発生した不発弾だけです。それが前回の五十年で一千トンあった、それよりも上回ることはないという答弁でありますけれども、現在の科学技術の水準からすれば、そういうものの処理というのはそんなにむずかしいことではありません。沖繩でもずっとやってきているわけで、前例もあるわけでございますけれども、私たちはこれが帰島の制約条件にはならないというふうに解しております。ぜひひとつ正式の調査報告を早くまとめて、そしてこの問題については一日も早く帰島が実現できるような御努力をお願いしたい、こう思うのです。  何か聞きますと、近く総合調査団も送るというふうに聞いておりますが、いつごろ送られる予定ですか。
  98. 桝原勝美

    ○桝原説明員 政府の総合調査団につきましては、五十五年度で実施いたしましたので、本年度は引き続き火山あるいは開発の可能性の調査ということで、いわゆる政府全般を含めた総合調査団の派遣はいまのところ考えておりません。
  99. 榊利夫

    ○榊委員 いずれにいたしましても、もう戦後三十六年であります。疎開されましてから三十七年になろうとしております。恐らくそういう例は硫黄島だけだと思います。東京からもたくさん疎開しましたけれども、みんなもう帰っているわけでありまして、それが今日までいま御答弁願ったような遅々たる状態だ。大変悠長過ぎると思うのですよ。しかも、一方では自衛隊の航空基地に一億六千万円もつぎ込んでいるでしょう。だから、今度の新年度にも島民の帰島条件をつくる、そういう仕事に私は取りかかるべきだと思うのです。何回同じ質問がそれぞれの委員会等々でやられているかわかりません。そして小笠原振興計画にも硫黄島を含めるべきだ。除外する理由はないと思うのです。同じ村なんですよ。同じ村で一つの島だけ除外される。理屈に合いません。この点ひとつ国土庁の構えを御答弁をお願いします。
  100. 桝原勝美

    ○桝原説明員 戦後三十数年もたつ今日でございますので、私どもも決して結論をおくらせようなどとは考えておらないわけでありますが、東京都におきましても、調査会の結論が出なかったという関係もございまして、私たちもせっかく出すのであれば慎重かつ正確な結論を出したい、かように考えておりまして、ここ両三年の間に調査を終え結論を得たい、かように考えておる段階でございます。
  101. 榊利夫

    ○榊委員 この問題で最後ですが、いままでのやりとり総務長官お聞きだと思います。問題点は御理解願ったと思いますけれども、戦後処理が終わらないで戦中状態が続いている、こういう非常に例外的な問題でございますので、この間の労苦に対する政府としての心のこもった一時金等々ひとつぜひ御研究願いたいと思うのです。これは国土庁というのではなくて、そういう問題は総理府なんでございますので、ひとつその点最後に一言お尋ねいたします。
  102. 中山太郎

    中山国務大臣 今後研究してまいりたいと考えております。
  103. 榊利夫

    ○榊委員 もう一つ恩給問題に戻りますが、軍人恩給で在職期間が年金支給条件に満たない、ちょっとした差で資格を外されたという欠格者の方がたくさんおられます。その軍人恩給の欠格者の団体があるのですが、先ほど東京都の話が出ましたが、これらの人たちが一時恩給や一時金の申請者を記した受理簿を見せてくれ、こう言っても、プライバシーにかかわるのだということで東京都では閲覧させていないようであります。この受理簿には氏名と現住所、本籍などが記されているだけで、犯罪とか学歴とかそういったことは一切載っていないのです。ほかの県を調べてみますと、これは十分に閲覧の便宜を図っておられるのです。たとえば慰霊祭をやるから見せてくれ、便宜を図る、戦友会をやるから見せてくれ、便宜を図る、これが普通の状態なのですけれども、どうしたことか東京都に関しましては閲覧させていないというのです。この点厚生省はどういう行政指導をされているのでしょうか。
  104. 森山喜久雄

    ○森山説明員 ただいまの恩給欠格者の方々の問題でございますが、確かに一時金なり一時恩給の請求の受け付け簿というのが各都道府県にございます。これは、作製、管理は各都道府県でやっておりますので、厚生省といたしましては、これを見せろとか見せるなというような指示はできないわけでございますけれども、近年、この欠格者の方々の団体が都道府県に行かれまして、先生御指摘のような名簿を見せてくれというお話がございまして、これは見せているところもございますし、まだ見せていないところもあるようでございます。厚生省としては、先生いまおっしゃいましたように、プライバシーの問題に係るような重大な影響のあるようなものでもございませんので、各県から数回照会などもございまして、その都度先生と同じような御見解を私の方で申し上げているわけでございます。  御指摘の東京都の場合でございますけれども、非常に慎重な態度をとっておられまして、いま先生おっしゃいましたように、見せておらぬようでございます。これは私の方で、ほかの県も見せているところもあるので、そういう余りがんこな態度をとらぬで、もう少し団体とよく話し合い、お互いの信頼関係に基づいて、見せるとか見せないとか、そういうトラブルのないようにひとつやっていただきたいということは申し入れてございます。東京都も、他府県の状況もいろいろ参考にしながら再検討したいと言っておりますので、そのように御了承いただきたいと思います。
  105. 榊利夫

    ○榊委員 その点では余り言い分は根拠はないわけで、名前と住所ぐらいは構わないということが常識だろうと思いますので、政府の方としても、東京都について個別的にもぜひひとつ指導をしていただきたい、こう思います。  それでは、あと幾つかございますけれども、お願いしておいた外務省の方からお見えになっているようなので、あと五、六分ございますので、その方に質問を移させていただきます。よろしゅうございますか。  先ほど総務長行にちょっとお尋ねしたのですけれども、けさ方、アメリカの大統領が狙撃を受けるという大変深刻な事件が起こったわけでありますけれども、その後情報もずっと刻々変わっていると思いますが、現時点でどういうふうな情報を受け取っておられるでしょうか。
  106. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 一番新しいと申しますか、日本時間で九時四十分、アメリカ大使館、在米のわが方の大使館から電話連絡がございまして、その直前に医師団が発表を行っておりますので、申し上げます。  医師団の手術が終わり、レーガン大統領は現在リカバリールームで休養中。現存安定したよい状態にある。目を覚まして、意識は明瞭である。いかなる過程でも重大な状態にはなかった。これは、狙撃を受けてからその手術を受けて、いままで生命に危機が及ぶような重大な状態にはなかったという意味でございます。麻酔によって約二時間程度手術室にいた。腹部の出血は認められない。大統領の健康状態は非常によく、問題が起きるとは思えない。意識が明白なので、あすにでもいろんな決定が下せるのではないかと思う。心臓には全く影響がない。弾丸は、わきの下から入って七番目の肋骨に当たって弾が曲がり、三インチ肺に入った。六インチの長さの手術で弾を取り出した。  その後、もう一つ情報が入っておりまして、日本時間で十時五十分現在、同じくワシントン大使館から連絡ございましたが、日本時間で十時半にブッシュ副大統領が話者会見をしております。その記者会見の内容は、医師団の発表を聞いて安心した、心強く思っている。政府は完全に効率的に機能している。全米各地から心配を寄せられた方々に対し、大統領及びその家族にかわって謝意を表明したい。四番目に、この狙撃事件で負傷した方がいますが、ブレイディ補佐賞及び警護官と警察官の状態を心配しており、回復を祈っている。  これが現在の状況であります。
  107. 榊利夫

    ○榊委員 これから外務省あるいは日本政府としてどういう対応をされるつもりでありますか。
  108. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 本日すでに外務大臣談話を発表しておりますが、同じく総理大臣からレーガン大統領あて及び外務大臣からレーガン大統領あての見舞い電を、すでに発出したかと思いますが、私まだ確認しておりませんが、そういう手はずになっております。
  109. 榊利夫

    ○榊委員 この事態の認識でありますけれども、私は、いわば、レーガン氏は大統領に当選をして、俗に超タカ派路線と言われますけれども、一種のガン外交と申しますか、強硬な軍拡路線を推進されているわけでありますけれども、ガン外交のレーガン氏がガンにやられたというふうな、一瞬そういう思いもしたわけであります。そういう軍備拡張が続けられる。政治的な緊張が国内的にも国際的にも起こる。だから、それに社会的あるいは精神的な荒廃現象と申しますか、人命軽視の暴力主義といったものがはびこる。夜も安心して歩けない。こういう状態がいろいろなところにあるというふうに聞いておりますし、いろいろな経験をした人も多いわけであります。  私もたまたまきのう在日アメリカ大使館に行きましてびっくりしたのですけれども、空港のハイジャック対策と同じぐらい、持ち物なんか検査されるのですね。私は何も持っておりませんでしたから検査を受けませんでしたけれども、ついて行った秘書も、この袋何ですかとあけさせられて、空港と同じなんですよ。ああこれはアメリカがそうなんだなという思いがしたわけであります。  やはりそういう緊張状態と申しますか、異常な社会状態というものの中から発生したのじゃないか、こう思われるのでありますけれども、私はそれは他山の石以上のものがあると思いますし、この点について、私質問でございますけれども、アメリカの国内の状況ですね、背景と申しますか、それについてはどういう御認識をお持ちでございましょう。
  110. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 今回の犯人は二十二歳の白人の青年ということだけしかわかっておりません。したがって、犯行の動機あるいは精神的に異常があったかどうか、その辺についてもまだわかっておりませんので、それ以上私が推論することは差し控えたいと思いますが、たまたま私外務大臣に同行いたしまして二十一日から二十六日までアメリカに行ってまいりましたが、一般にアメリカ人は、レーガン政権の打ち出した経済再計計画、要するに小さい政府によってアメリカの経済を再建していくということに対しては、全幅の支持を寄せているという状況でございます。大統領の支持率も、いまのところ非常に高いというのが現状でございます。
  111. 榊利夫

    ○榊委員 そのことについてはこれ以上、本題と外れますので質問いたしませんが、あと一分ありますので、ちょっと最後に、軍人恩給について一言だけ。淺尾さん結構です。  受給額計算の基礎となる仮定俸給、この上げ幅に民主的な合理性がもっと必要じゃないかと私は思っております。政府の方の案でも、今回の引き上げ率にポイントの差がつけられておりますけれども、これがもう少し進められなくてはいけないのではないかということなんです。たとえば高級軍人の仮定俸給の方は、大将の場合、当初四十九万四千円が、今年度の改定では五百三十万六千四百円、つまり四百八十一万円の上げ幅という計算になります。ところが兵の場合は、一九五三年の復活当時、仮定俸給が六万六百円、今度の改定では七十六万二千百円ないし八十六万五千円、つまり七十万円ないし八十万円の上げ幅、こういうことになっております。七十万円ないし八十万円の上げ幅と、一方の四百八十一万円の上げ幅、これは違い過ぎるのですね。こういう高級軍人と兵の間の上げ幅の差、これをもっと縮める努力をすべきではなかろうかというのが私の最後の質問でございますが、いかがでしょう。
  112. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 上げ幅の問題もございますが、いま御指摘の数字で、軍人恩給復活時には、兵と大将の差は十六・何倍かあったわけです。それが今度の改善案によりますと、大体六倍程度に縮まってきておる。さらに最低保障制度が非常にカバレージが大きゅうございまして、大部分の方、特に普通恩給であれば、少尉以下の方は全部最低保障になってしまう。こういうことで比較しますと、大体三・数倍になってしまうという状況でございます。もちろん今後も努力は続けていくつもりでございますが、先ほど申し上げましたように、やはり恩給公務員の改善は、現職公務員の改善というものをお手本にしてやっておりますので、そういう方向でも努力していきたいと思いますし、また最低保障の改善という面でも努力していきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  113. 榊利夫

    ○榊委員 終わります。
  114. 江藤隆美

    江藤委員長 午後三時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後三時十四分開議
  115. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  116. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 恩給法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におきましても同僚議員から真摯な討議が続けられてまいりまして、いよいよ大詰めを迎えたわけでございます。私からも持ち時間の範囲内において総務長官並びに政府委員に若干の質問をいたしたいと思います。  まず、わが国における恩給制度というのは、明治の初期から数えてまいりますと百年余を経過しておるわけであります。明治八年、九年に陸海軍関係の、海軍で言えば海軍退隠令、あるいは陸軍で言えば陸軍恩給令、こういうふうなものができ、明治十七年に官吏恩給令が公布され、さらに国会開設とともに明治三十三年六月に軍人恩給法、官吏恩給法という形でスタートする。その後に小学校その他公立の学校の先生や巡査やあるいは看守というものに、それぞれに恩給がつくられる。それを大正十二年に一本化して現行の恩給制度ができましてからすでに五十七年経過をして今日に至っておる。これは御案内のとおりであります。  恩給制度約百年というものを顧みますと、ここで制度上からの一番衝撃的な問題と言えば、大東亜戦争の敗戦によって、しかもわが国に占領軍が進駐をする。それで連合軍最高司令官の指令による勅令六十八号によっていわゆる軍人恩給傷病者等の一部の適用を除いて廃止をされる。そして昭和二十八年の段階軍人恩給の復活というにせよ、あるいはその他の表現を、緒方副総理等の答弁からは非常に慎重な御答弁をいただいておりますが、それは別として、そこで旧軍人に対する恩給あるいは傷病者、亡くなられた人の遺家族の扶助料というものが支払われるようになる。そしてその後何回となく実態に即した改正が行われて今日に来たという経緯だと思うのであります。  そこで、まず質問に入ります前に、わが国の恩給制度、しかもこれは戦後においては、御案内のとおり国家公務員は国家公務員として、地方公務員は地方公務員として、公共企業体は公共企業体として、戦後民主化の中で新しく共済組合の制度がとられていくということも含めた全体としての広い意味における恩給制度という経過になっておるわけでありますが、このわが国のいわゆる恩給制度百年間を顧みて、その果たしてきた役割りあるいは今後の展望について総務長官としてどうお考えか、まずそれからお伺いをして質問に入っていきたいと思います。
  117. 中山太郎

    中山国務大臣 先生お尋ねのわが国の恩給制度というものは、いまお示しのように、明治の初頭においてつくられたものでございますが、もちろんその目的は、永年公務に勤続した者あるいは国家のために戦死あるいは戦傷病になった者に対する国の補償として支給するというのが基本的な精神であったと思います。その後、当時の経済状態あるいは社会状態に応じて政府としてはその対象者に対してその恩給制度を運用してまいった。しかし、戦後御案内のように、大変な国家の崩壊という敗戦の実態に当たりまして、苦しい中ではございましたけれども、政府としてはこの恩給制度というものを維持していくという方針のもとに今日までやってまいりましたけれども、その間にあっては、先年御指摘のように、いわゆる共済年金制度も発足をしております。  私は、これからの展望として考えてまいりますときに、やはり高齢化社会を迎えるわが国においては、相当老人のための社会保障的な意味を含めた恩給年金制度の充実拡充というものが非常に国の安定に重要な役割りを果たすのじゃないか。けさ総理府が発表いたしました国勢調査から抽出したサンプルの結果を見ましても、夫婦二人きりのいわゆる老人世帯あるいは一人きりで生活している老人の状態が非常にふえている。さらにこれからもふえ続けるという今回の国勢調査の結果を見ましても、やはり高齢化社会に対しても、これからの恩給年金制度の拡充には政府は格段の努力をしなければならない、このように理解をしております。
  118. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は今回の質問に当たって、先ほども触れましたように、昭和二十八年の時点で、当時第十六国会で恩給法の一部を改正する法律案というのを当内閣委員会でいろいろ議論をされましたときの議事録、さらに二十八年の七月二十二日に衆議院本会議で通ります際の当時の稻村順三委員長の本会議報告、それに対するわが党の当時の神近市子さん、あるいはまた当時左右に分かれておりましたから、高橋等さんやあるいは高瀬博さんや堤ツルヨさん、濱地文平さん、こういう方々の賛否の討論が行われて、そしてこれが可決をされる。同時に委員会等の、審議を見てまいりますと、中村高一さんや松岡駒吉さん、いろいろ私どもの政治の先輩の方々が当時いろいろな議論をしておられるのを興味深く拝見をしたわけであります。  私は三十三年の五月から初当選で二十三年、今日国会におりますから、それ以前の段階でこの問題が、相当時代的な背景もありましたから賛否に分かれて激しく議論をされた。しかし、今日になりますと、やはり戦争で亡くなられた旧軍人あるいは傷つかれた戦傷病者の方、あるいは亡くなられた後の遺家族の公務扶助料の問題という点については、政党のいかんを問わず国の責任としてできるだけのことをやろうという、こういう共通の広場が私は形成されてきておるというふうに認識をしておるわけであります。  そこで、時間の関係もありますので、御案内のとおり、きょうの神田さんの質問に対する答弁等からも、また資料でも明らかなように、今日、恩給法対象ということからいけば、これは戦後の制度改正によって、これからは恩給法では子供は生まれない、孫は生まれない、いわゆる旧来の対象者に対して手厚くこれからどう改善をしていくかという形に相なるわけですが、そういう前提のもとで、文官等の恩給対象は約十五万、それから旧軍人等の遺家族等も含めた対象は約二百四十万、こういうことになりますと、いわば大半を占める旧軍人関係の戦後処理あるいはそれの関係する問題の戦後処理的性格が非常に強いと思うのです。そういうことのもとにおける改善も、逐次各党の協力を得て政府の御努力でなされてきたというふうに理解をしておるわけであります。  そこで、これは恩給局長で結構でありますけれども、まず旧軍人関係ということになりますと、加算問題というのが一つの大きな問題になります。もちろん旧軍人に対する加算問題以外にも一般の文官に対する加算問題もあるわけでありますが、この機会に参考までに恩給法における加算の種類といったようなものについて簡単に説明を願いたい。
  119. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 戦前の加算年の種類でございますが、大きく分けますと、地域加算とそれから職務加算、この二つに分かれるかと思います。  この地域加算の中には、戦争とか事変に際し、こういったところで職務に関連しまして戦務に服した場合、これが戦務加算、あるいは国境警備のために勤務したような場合、これを国境警備加算、こういったものがあるわけでございます。  また、職務加算の方では、航空機搭乗者あるいは戦車搭乗者、こういった方々に対する航空勤務加算あるいは戦車勤務加算、こういったものがあるわけでございます。  なお、戦後認められた加算としましては、ちょうどこれは終戦間際になってなかなか手続が行われなかったというような事情もございまして、南西諸島戦務加算あるいは北方地域戦務加算、それから抑留されたような方に対する抑留加算、こういったものが設けられております。
  120. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 わが党の同僚議員の渡部さんの方からは、過般自分の体験に基づいてシベリア抑留当時の抑留加算問題について議論がなされたことを承知をしております。  この加算問題について、さらに若干お伺いをしたいわけでありますが、いま御説明の中の戦地戦務加算年の、いわゆる陸海軍恩給令時代、軍人恩給法時代、それから現行の恩給法時代に区別して若干説明を願いたいと思います。
  121. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 戦地戦務加算の歴史的な経過でございますが、明治八年海軍退隠令では、海軍ですから戦時乗り組みの一年につき半年から二年という加算がついております。それから明治九年、これは陸軍恩給令でございますが、これが外地従軍加算一年につき二年、内地従軍加算が一年につき一年。それから明治十六年、これは陸軍恩給令でございますが、外地従軍加算一年につき二年ということになりました。それから明治十六年、海軍恩給令では外地従軍加算一年につき二年。それから明治二十三年軍人恩給法、これが外地従軍加算が一年につき二年、それから内地従軍加算が一年につき一年。それから明治二十三年に官吏恩給法、これは軍人恩給法と同じ加算がついております。  それから、先ほどお話のありました大正十二年の恩給法でございますが、これが戦地戦務加算が一月につき三月、それから戦地外戦務加算が一月につき一月半。それから昭和十四年になりまして、航空基地戦務加算というのが一月につき三月。それから、昭和十五年になりまして戦地外戦務加算、これが一月につき一月。それから、昭和十七年に恩給法の一部改正によりまして戦地戦務加算が一月につき三月以内。これはここでいろいろ勅裁によって決める地域とかあるいは戦務の内容といったようなものを二カ月とか三カ月とか決めるということで三月以内という規定になったわけです。  それから、先ほどちょっと申し上げましたように、昭和三十九年になりまして南西諸島戦務加算と北方地域戦務加算、これが一月につき南西諸島については三月以内、それから北方加算については三月というものがついておるわけでございます。
  122. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この加算の歴史的経過、特に軍関係の歴史的経過について御説明がありましたが、満州事変、日華事変、そして大東亜戦争、こういう戦争の時代にそれぞれの地域における加算年というのは、いまもお話しのように、陸海軍の判断に基礎を置いて勅裁で決められるという経緯になっておったわけですね。敗戦直前はそういうことを決めかねた問題の地域、あるいはそれらの点を戦後ある程度手直しをされて新しく加えられたという経緯になっておるわけですね。  私は、自分の戦争当時の従軍の経験からいけば、大東亜戦争のときにフィリピン戦線に参加をする。そして、一たん召集解除で帰ったと思ったら、すぐ召集がございまして、中支方面に戦争が終わる直前まで——戦争が終わる直前に本土決戦部隊で長崎の原爆を受け、五島の警備中隊長という命令を受けて、そこで戦いが終わったという経験を持っておるわけです。そういうフィリピンあるいは中国、特に応召後の中国の戦争状態といったものを考えてまいりますと、これは日華事変当時は一月が三月という形が、大東亜戦争以降これが二月に変更になっておる。北支においても中支においても京漢、粤漢作戦を初め相当戦闘が激しく展開をされた。特にその点に触れるのは、私がということよりも、私どもの郷土部隊というのが大体中国戦線、フィリピン戦線あるいはビルマ戦線というところに関係が深いわけでありまして、そういう方々の戦友の意見の中でも、当時の中国の状態から見れば、他の南方地域と同じような取り扱いでいいのではないかといったような議論を聞いたりするわけであります。そういった問題について、勅裁以降の今後の加算問題の取り扱いといったようなことで検討をすることが考えられぬかどうかという点をお伺いしておきたいと思います。
  123. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 いま先生が仰せられましたように、支那事変に関しましては昭和十二年の七月七日から十六年の四月三十日まで、これが戦務加算三カ月ついておったわけでございます。その後、太平洋戦争に突入しまして、これがシナにつきましては擾乱地加算ということになりまして、これは十六年の五月一日から二年ということになったわけでございます。さらにその後、十七年の四月一日から、戦務加算でございますが、戦務二といいますか、戦務二カ月の加算になったわけでございます。そういう経過は確かにございます。  ただ、加算年を勅裁で決めるまでの間には、当時の陸海軍が中心となりまして、いろいろ当時の現況を踏まえながら、どの程度のものにすべきかということを決めておるわけでございまして、現在の段階になりまして、これがああだったとかこうだったと言うのは、非常に問題としてむずかしゅうございますし、適当ではないんじゃないか。これはやはり当時決めたということに一つの重みもございますし、これはその当時の均衡をいろいろ考えた上で決められたんだというように理解しております。
  124. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 問題は、そういう加算年が適用されて、戦後以降、たとえば全然ついてないところから三月とかあるいは三月とかいうところに行く場合には、何月幾日にどこを越えたか、この間の染谷先生の質問もそういうことに関連があったんではないかというふうに私理解しておったわけです。たとえば中国について言えば、旧満州から山海関をいつ越えたというようなことがいろいろ問題になる。また航空部隊のような場合は、全然加算のつかないところに基地を置いて、そしてたとえば中国なら中国に渡洋爆撃に行く。渡洋爆撃に行くという場合は、数時間の渡洋爆撃以上にはなかなか出ない。そうすると、それはいわゆる渡洋爆撃の航空日誌にきちっと記録されておれば、数時間行ってくれば、その基地そのものは該当の加算の地域でなくても、その一月はいわゆる渡洋爆撃をやった、そこが三月であれば三月、あるいは二月であれば二月という解釈をするのであろうというふうに思う。  海軍の場合であると、いわゆる基地はそういう該当地区になくても、作戦行動というふうな場合は、作戦行動のその地域の該当がその期間適用される、こういう形になるんだろうと思うのですね。陸軍の部隊というのは地上部隊ですが、海軍は海を移動する、あるいは航空機は空から作戦行動をやるといったようなことがあって、同じ陸海軍と申しましても、いわゆる加算年というものを考える場合には、そういう点でそれぞれ違った取り扱いになるわけですね。しかも恐らく航空部隊の場合は、一月のうちに一回なり二回なり、数時間の出動でも、それは該当地域の加算年が適用されるということであろうかと思いますが、それらの取り扱い上の点はどういうふうになっておりますか。
  125. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 その取り扱いについては、いま先生御指摘のように、航空部隊であれば、飛行機に乗りまして太平洋の艦船を爆撃に行くということであれば、出発のときから帰還するまでの間が戦務加算といいますか、一カ月につき三カ月の加算がつくということでございまして、もし仮にその基地が、基地そのものの加算は低くとも、そういう爆撃といったような戦務を経てきますれば、その月はまさに戦地戦務加算三カ月ということになるわけでございます。陸軍の場合は、そういった戦地戦務加算のつく地域に入ったときから出てくるときまで、これが戦地戦務加算の期間ということになるわけでございます。また海軍であれば、内地から出港するときから帰港してくるまで、その間が加算対象になる、こういうことになります。
  126. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 戦地戦務加算の問題は、戦前、戦時中の恩給法の取り扱いの問題でありまして、戦後、軍の解体とともに、そういう思想はなくなったわけであります。  そこで、今日自衛隊が御案内のとおり発足しておるわけでありますけれども、現在の自衛隊は言うまでもなく国家公務員災害補償法に基づいて運営がなされていく。その国家公務員災害補償法の二十条の二の、いわゆる警察官等の適用条項のところに、明文では書いてないが、政令の定めるところによって、自衛官もそれに入るという受けざらのもとに、二十条の二が災害出動その他いろいろな場合に適用されておるわけであります。  この機会に防衛庁の方に参考までにお伺いをしておきたいのでありますが、わが国の自衛隊をどう考えるかという議論は別個にいたしまして、防衛庁自身、いわゆる有事法制問題あるいは有事における体制の問題というふうなことで、われわれの意見は別として検討が進められておる。その場合に、日本軍の場合は、かつては戦闘行動が外征作戦として行われる場合、戦地戦務加算というのがあった。専守防衛と言い、あるいはその周辺地域にまで最近ではいろいろ検討が進んでおることに問題がありますけれども、国家公務員災害補償法の適用下にある自衛官、一朝不幸にして有事の場合も現行法制のもとでよろしいというふうに現段階で考えておられるのか、将来の問題としてこういう問題については検討する必要があるというふうに考えておられるのか、その辺のところを防衛庁の方から参考までにお伺いしておきたいと思います。
  127. 西廣整輝

    西廣政府委員 有事の際に出動を命じられました自衛官の公務災害に対します補償等につきましては、防衛庁職員給与法の第三十条の規定によりまして「別に法律で定める。」ということになっております。この出動時の災害補償の問題につきましては、現在防衛庁で行っております有事法制の研究の一環といたしまして勉強中ということであります。ただ、ただいま先生の方からも御指摘がありましたように、自衛隊というのは国土防衛というのがほとんどでございますので、旧軍時代とも非常に違っておりますし、また諸外国ともかなり違った面がございます。そういったことで他の一般の公務員の方々あるいは国民一般、そういった方々との権衡ということも考えなければなりませんし、また出動の態様なり規模といったものも非常にさまざまな様相がございますので、それに応じた勤務の内容なり、あるいは災害の態様もあろうかと思いますので、非常にむずかしい問題があるということになろうかと思います。したがいまして、出動時の公務災害補償が、いわゆるいま先生の申された一般の特別公務災害以上の加算が必要なのかどうかということも含めまして、ただいま検討中であるということであります。
  128. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これらの問題に関連をいたしまして、先ほども申し上げましたように、昭和二十八年の恩給法の一部改正が議論された当時の本衆議院内閣委員会の質疑の内容を見てまいりますと、当時の恩給局長でありました三橋さんが政府委員としてこういう戦地戦務加算の問題に関連をして委員の質問に答えておる中に、こういった戦地戦務加算というのは一現にドイツにおきましても、イタリアにおきましても、こういうような制度はとっておりませんし、また戦勝国のアメリカにおきましても、こういうような制度はとっていないのであります。」云々といったような質疑がこういう問題で展開されておるのを拝見しておるわけであります。現状もいま言った国々の場合にはそうであろうかと思いますし、ことに、いま今後の有事の場合の検討の中でということでございましたが、自衛隊は、当面防衛庁自身あるいは政府自身が考えておるいわゆる専守防衛ということになれば、これはまさに自衛隊だけの問題ではなしに、国民全体がそういう中でどういうふうにするのかといった議論になるわけでありまして、したがって、かつてのようなものは基本的にも想定され得ないのではないかというふうに私は思っておるわけであります。  次の問題に入りたいと思うのでありますが、それは、一般文官の恩給に通算をしていく問題として恩給法の中で、戦時中、旧満州であるとか華北であるとか華中であるとか当時の中国の臨時政府であるとか、いわば政府機関職員あるいはそれに準ずるものとして外国の特殊法人あるいは外国の特殊機関といったようなものについて恩給法上の通算措置が認められるという道が開けまして、いわゆる外国の特殊法人としては旧南満洲鉄道株式会社以下九つのものが昭和三十八年政令二百二十号として認められたという経緯がございますし、また外国特殊機関としては、まず最初に旧満洲帝国協和会を初め四つの対象のもの、さらにそれに引き続いて、旧満洲拓植公社をはじめ七つの対象のものが昭和四十七年十月から追加される。さらに昭和五十一年に十二番目の問題として旧満洲農産物検査所というのが追加されて、現在外国特殊機関関係は十二を数えておるわけであります。  私は、学校を上がりましてから旧満州の大同学院を出て、当時満州国政府の職員という立場にありましたので、ここで掲げられておる南満洲鉄道株式会社とか満洲電電とか協和会であるとか満洲開拓青年義勇隊訓練機関であるとか拓植公社、林産公社、こういった関係のものはすべてよく知っておるわけであります。そして、そういう際に、たとえばいろいろなところから、それに右へならえの性格を持っておるということで要請がなされましたが、今日時点までまだ解決されない、採択されていない。たとえば満洲棉花協会、それから中華航空株式会社あるいは満洲航空株式会社、興農合作社、これは私開拓総局におりましたから非常によく知っておるわけでありますが、満洲電業株式会社あるいは満洲馬事公会、そのほかにもありますけれども、こういうものがいま申しましたような適用の対象にということで要請されてまいりましたけれども、今日まで残っておるわけであります。そういった点について現行の恩給法というのは、先ほど来私が申し上げておりますように、新たに子供を生み出したり、孫を止み出したりする対象がない。いわば戦後処理等を含めて、従来恩給の適用者で新しい制度発足以前のものに対して制度改善をやっていく、あるいは取り上げるべき対象があるならそういう対象を加えていくというのが恩給局の任務であろうと思うのであります。そういう点では、昭和四十七年の時点で、当時の山中総務長官時代に、先ほど私若干例を述べましたけれども、できるだけそういうものを洗ってみろ、そして取り上げるものはできるだけ取り上げるようにしようということで追加があったわけでありますけれども、私がいま六つばかり言いましたような内容の問題というのは、いままでに採択されたものと同じような性格として十分採択すべき性格を持っておると思っておるのでありますが、こういった問題に対してどういうお考えかを承りたいと思います。
  129. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 いま先生御指摘の外国特殊法人あるいは外国特殊機関、こういったものが通算されておるわけでございますが、なお当時外国にございました特殊機関とか特殊法人、これは恐らく百を超える数のものがあったのではないかと思います。それらの中からいま先生の御指摘のようなものを洗いに洗いまして通算対象ということにいたしたわけでございます。この通算対象といたした条件としては、そういった組織の性格であるとか業務の内容といったこともありますが、人事交流の実態といいますか、こちらの公務員からそういった機関に特段に派遣するとか、そういった機関から国の公務員として戻ってくる、こういった人事交流の実態が非常に密であったというようなこともあわせて勘案されたわけでございます。ただいま先生の御指摘のまだ通算措置をとられていない法人あるいは機関、こういったものについて四十七年当時いろいろ検討されたわけでございますが、こういったものは通算されたものに比べて、やはりそういった条件についてそれほど必要性がないというような判断が下されたわけでございます。  さらにまた、そういったものと同じような種類の特殊法人、機関といったものが国内にもいろいろあったわけでございますが、そういったものの通算ということもなされていないわけでございますので、現段階で御指摘のような期間の通算というのは非常にむずかしい問題ではないか、このように考えておるわけでございます。
  130. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの答弁というのはそのまま受けとめるわけにはいかないわけです。ただ、一時間という持ち時間の範囲内でございますので、いま六つばかり挙げましたそれぞれの問題について、私も当時おりました関係上知っておる点も相当ありますけれども、これに時間をさらに費やすことができないわけであります。  五十一年にも追加があったように、これらの問題については再検討されて、対象とすべきものについてはやはりそれを拾っていく。人数から言えばそう大きな人数ではございませんけれども関係者からすれば非常に重要な問題であります。特に旧満州は引き揚げの段階でお子さんを現地の人に託して帰ってくる。あの当時私は戦争に行っておりましたから、満州は通過して本土決戦部隊で日本に帰るということで、そういう悲惨な経験は得ておりませんけれども、しかし、当時の同僚諸君に聞くと、北満あたりから帰るときは、昼間は目立つといろいろな迫害あるいは殺されるということがあるからといって、森の中に家族とともに隠れる、そして夜南下してくるというふうな、実に悲惨な体験をそれぞれ皆しておるわけでありまして、そういう中でいわゆる旧満州にせよ、あるいは華北、華中にせよ、当時はある意味では日本の軍政時代とでも言うべきものでありましょうから、それとタイアップした機関というのは明らかに政府の代行機関的性格を公的に持っておる。そういうものの顕著なものについてはさらに検討を加えられて、追加すべきものについては追加するようにひとつぜひお願いをしたい。この点について長官から御答弁をいただきたいと思います。
  131. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま御指摘の点は、今後研究させていただきたいと思います。
  132. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この際、大蔵省からも来ていただいておりますので、改正案中身に入る前に少しくお伺いをしていきたいと思います。  一つは、今度の国会の場合も、恩給法等の一部を改正する法律案以外に、昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、同じく昭和四十二年度以後における地方公務員等共済組合法の年金の額の改定等に関する法律等の一部を改正する法律案、さらに昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、さらに昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、これは関連するものがそれぞれの関係委員会で論議をされていくわけでありますが、そういう制度の戦後の改革に伴いまして、たとえば恩給制度における増加恩給の第一項症から第六項症までの障害の程度というものと、昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律における障害年金の第一級から第六級までの障害の程度というものは同一のものであるかどうかという点が質問の第一点であります。  それから第二点は、恩給の増加恩給は第七項症まで御案内のようにあるわけであります。二十八年当時もこの第七項症問題というのが与野党で相当議論をされる、あるいは当時の第一款症から第四款症までのものについても恩給にすべきじゃないかというので相当議論を呼んだという経緯は承知しておりますが、恩給の増加恩給が第七項症まで当時あったわけでありますが、共済の場合はそれに相当する七級の障害年金がない、その理由をひとつ第二点としてお伺いしたい。  さらに、恩給と共済年金の根本的に違う点は、文官恩給の最短恩給年限が十七年であるというのに対しまして、それを引き継いだ共済年金制度において二十年にしておる、そういった理由等について簡潔に大蔵関係から御説明を願いたいと思います。     〔委員長退席、染谷委員長代理着席〕
  133. 野尻栄典

    ○野尻説明員 お答え申し上げます。  第一番目の御質問でございますが、恩給の増加恩給は第一項症から第六項症まで、あるいは二番目の御質問で七項症もあるということでございますが、確かに昔の共済組合の障害年金と申しますか、業務上の傷病による障害年金については一級から六級までございます。ただ、この共済年金は昭和二十三年まではそれぞれの省庁が単独で持っていた勅令によってつくられていたものでございますから、その障害等級の区分等につきましては、すべてそれぞれの省庁ごとにばらばらに決められていたというのが経緯でございます。それを昭和二十三年に旧共済組合法ができました際に、ばらばらであったものをその新しい法律の中では一応統合した。その統合の仕方は、その当時、恩給法の一項症から六項症を参考にして統合したのではございませんで、むしろ災害補償法の系統の等級区分を参考にして統合したわけでございます。そのために、恩給で言う増加恩給の一項症から六項症までの障害の程度区分と、共済年金の一級から六級までの障害の程度区分は違っております。  第二番目の御質問で、増加恩給には七項症があるが、共済年金には七級というのがないではないかということでございますが、増加恩給の場合でも七項症の適用があるのは軍人軍属といった軍関係の障害でございまして、一般文官については七項症というものはございません。共済年金の場合は全部その文官に対応する形でつくられた年金制度でございますので、同じような理由で七級というものを設けていないわけでございます。  それから三番目の御質問で、年金受給資格要件たる期間が、文行恩給の場合は十七年、共済年金は二十年である。この三年の差についてでございますけれども、共済年金は戦前から現業官庁を中心として設けられていた年金制度でございますが、その当時から受給資格期間は二十年ということで現在までに至っているわけでございます。この恩給制度をいわば昭和三十四年に現在の共済年金制度に引き継いできたわけでございますが、民間の厚生年金保険その他公的年金受給資格期間である二十年というものとのバランスを考えて、むしろ二十年の方に資格を統合して現在に至っている、こういう次第でございます。
  134. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 もう一点、御承知の一級から六級までの点が、最近の問題でいけば一級から三級までになったわけですが、そのくくり方は、一級から六級までのときと一級から三級までのときとは、どういうふうにくくり方を変えたわけですか。
  135. 野尻栄典

    ○野尻説明員 一級から六級までで年金を支払っておりますのは、昭和二十三年以前にすでに公務傷病を受けて障害の状況がはっきりしている昔の方々に対する程度区分の状況でございます。その後、現在は一級から三級までという三つのランクに区分しているわけでございますけれども、これは昭和三十四年にいまの年金制度に切りかえる際に、厚生年金の廃疾区分である一級から三級に合わせたということでございます。
  136. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 まだ現行恩給法と他の共済組合との対比の問題は内容的に入ればいろいろあると思いますけれども、この程度にいたしまして、若干今回の恩給法等の一部を改正する法律案中身について御質問申し上げたいと思います。  まず、今回の改正案では、恩給年額の増額、さらに普通恩給等の最低保障額の増額、扶養加給の増額、特別加給の改善長期在職の旧軍人等にかかわる仮定俸給の改善、旧特別調達庁の職員期間の通算条件の緩和等々が内容的に含まれているのでありますが、そのうちの仮定俸給の問題、これは従来からも、この恩給年額の増額の場合の仮定俸給の引き上げについては論議がなされてきておるわけでありますが、私の承知しておるところでは、昭和五十一年の段階までは、これは定率主義をとってきたと思うのであります。昭和五十一年の時点から定率プラス定額の算定方式がとられ、そして今回の場合でいえば、もとの仮定俸給のそれぞれの該当の金額に百分の百四・二を掛けて、それに定額分として五千三百円を加える。こういう形で、五十一年度以降それが二千三百円であったり千三百円であったり三千二百円であったというふうに、要するに定率プラス定額の方式がとられてきているわけであります。そこで、これは上薄下厚という考え方を入れるということももちろんあったと思いますし、それと同時に、特に旧軍人恩給という場合は、制度が再発足する当時から、いわゆる赤紙一枚で行く兵隊、下士官の場合と、職業軍人として特に佐官、将官、そういうものの差が非常にあるというのは問題である、むしろ軍隊が解体をした以降においてはその差はできるだけ圧縮すべきだという議論が従来からもあるわけであります。現実に戦争が終わった時点、今日の時点の、いわゆる仮定俸給の対比においては、今日は兵と大将の差は六・一倍程度になっているという説明がしばしばなされてきておりますけれども、いずれにしても、そういう問題が、旧軍人の場合には階級差というものの差をできるだけ圧縮して、やはり特に兵や下士官についてそういうものを手厚くしたらどうだという考え方は、社会政策的な点からも強くあるわけであります。これらを含めて、いわゆる仮定俸給年額を決める算定方式あるいはいま言ったような問題についてのお考えを聞いておきたいと思います。
  137. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 先生御指摘のように、いわゆるベースアップでございますか仮定俸給年額の調整、これは四十八年以降五十年までは公務員の給与改善率を一律にアップしておったわけでございます。これをやりますと、格差が下と上がますます大きくなっていくということもございますし、また公務員給与自体が大体改善率が下の方が高くて上の方が低いという傾向を持っておるわけでございますので、これをそのまま当てはめるということで、上薄下厚を実現するという意味合いからも、この定率プラス定額という方式、これは一次回帰直線になるわけですが、これを用いてその改善の指標としたわけでございます。  この結果といいますか、したがいまして、上薄下厚の成果はだんだんと出てまいりまして、先ほど先生御指摘のように、二十八年当時は十六・何倍かであったいわゆる大将と兵の格差、これが現在では六・何倍かになっておるというような効果になってあらわれておると思います。  また、もっともっと格差を縮めるべきではないかという話でございますが、これにつきましては、恩給制度自体が原則的に最終俸給に勤務年限という要素によって計算しておるわけでございまして、これは文官も通じた一つの大原則になっておるわけでございます。ここを軍人だけそれでは上に上げろというわけにもまいりません。恩給自体制度の根本的な問題にかかわることでございますので、その点は非常にむずかしい。そこで最低保障法というような非常に社会保障的な手法を取り入れまして、これで下の方をなるべく上げていく。最低保障によりますと、兵から少尉の位までは皆一緒の金額になってしまいます。また勤続三十三年未満の中尉も一緒になってしまいます。あるいは公務員扶助料なんかでいいますと佐官のクラスまで一緒になってしまう。  こういったようにその効果を上げておるわけでございますので、そういった手法を用いまして今後とも検討をしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  138. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今度の仮定俸給の引き上げの問題では、細かくいいますれば七十七号俸以上というものについては逓減調整をしておるわけですね。これは現職の国務大臣の引き上げを控えた、それに伴って、そこを起点にして改善すべきカーブを描いて、それに基づいて今回の仮定俸給表ができておる。つまり算定方式からいえばマイナス二・二%プラス二十九万五千六百円、こういう算定方式が七十七号以上にとられたというふうに承知しているわけですが、その辺のところはそういうことでよろしゅうございますか。
  139. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 いま先生のおっしゃったとおりでございまして、今回の現職公務員の給与改善でございますが、これが月額一万五千七百円アップというところで頭打ちになっております。これが十八万八千四百円の年額になるわけでございますが、これは七十一号俸から七十六号俸まではこの定額アップにする。それから行政職の一等級をオーバーする額、七十七号俸、これからは、いま先生のおっしゃったように、大臣の年額、これが千三百五十六万円になるわけですが、現実には恩給を受けている人でこういう金額を持っている人はおりませんので、まあかなり仮定的な話になるのじゃないかとは思いますが、これについてはここがゼロになるような形で逓減しておる。それがいま先生のおっしゃったマイナス二・二%プラス二十九万五千六百円、こういうことになるわけでございます。
  140. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先ほども最低保障の問題に入られましたけれども、最低保障額の問題は、たとえば上原委員の方からは厚生省関係からも出席願って、いわゆる生活保護費というふうなものとの対比での議論も行われた経緯も承知をしております。いずれにしても、最低保障の適用を受ける今日の公務扶助料あるいは増加非公死扶助料、それから特例扶助料、こういうもののカバー率はどういう数字になっておりますか。
  141. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 ただいま御質問の公務扶助料、これについてのカバレージでございますが、これは今回の改善がなされた上での計算ということにいたしますと九八・八%でございます。それから増加非公死扶助料、これが九八・〇%でございます。それから特例扶助料、これは九九・六%でございます。
  142. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 逆に言えば、いまの公務扶助料が九八・八%、増加非公死扶助料が九八%、特例扶助料が九九・六%という数字が示しますように、いわゆる公務扶助料等の受給者というのがほとんど最低保障額を受けるということになるわけであります。それだけにいわゆる最低保障額の引き上げ問題というのは、いわばこういう対象者から見れば非常に切実な要請の問題になるということも言えるわけでありまして、こういう実態も踏まえて、今後これらの引き上げの問題について基本的にどういう考え方で臨まれようとしているか、これは大臣からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  143. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御指摘の扶助料の問題につきましては、一身を国家にささげられた方あるいはけがをされた方あるいはまた身内を亡くされた遺族の方々もだんだん年をとってこられるわけでございます。こういう方々が迎えられる老後に不安のないように、政府としては、最低保障額の引き上げについては最重点の課題として今後とも全力を挙げて努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  144. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この普通恩給等の最低保障額の増額という問題については、これもいままでにも議論されてきたわけでありますけれども、これを四月と六月に分けて引き上げをする。本来なら四月の時点で一遍に上げていただくということが非常に望ましいわけでありますが、同時に、こういう普通恩給にしろあるいはまたいま申しましたような増加恩給傷病等の公務関係扶助料の問題にいたしましても、こういった引き上げというのは、前年度、公務員関係でどういうふうな水準に引き上げられたか、それに見合って本年度改正を行って改正をしていく、いわば一年おくれという問題もある。したがって、できるだけ年度当初のスタートのときに可能な限り引き上げを行うということが望ましいというふうに存じておるわけでありますけれども、四月、六月に、普通恩給等の最低保障額の増額についてもそうせざるを得なかった事情について重ねて聞かしてもらいたいと思います。
  145. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 扶助料の最低保障額でございますが、これは厚生年金あるいは共済年金、こういったものとの横並びで設定されてきたわけでございます。これらの公的年金におきましては、現在も六月実施ということになっておるわけでございますが、恩給の場合は、他の種類の恩給については四月にベースアップをいたしますので、扶助料の最低保障額だけベースアップを抜かすというわけにもまいりませんので、四月にベースアップをして、さらに六月に最低保障額のアップをする、こういう形をとっておるわけでございます。
  146. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 普通恩給の場合の長期在職者、これは六十五歳以上と六十五歳未満とに分けられる。短期在職者については六十五歳以上の者及び傷病者に限るということで、これが九年以上、六年以上九年未満、六年未満というふうに分けられておるわけでありますが、この長期在職者六十五歳以上の六月の改定の年額というのは七十四万九千円ということになっているわけであります。この七十四万九千円という問題の改定については、去年から改定の算定方式を改められまして今度の数字を出されたと承知しておるわけですが、若干その改定の算定方式並びに結果について簡潔に御説明願いたい。
  147. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 いまの長期在職六十五歳以上の方の最低保障額でございますが、先生御指摘のように七十四万九千円になっているわけでございます。これの算定方式は、まず定額部分、これは厚生年金の基礎になるものでございますが、この定額部分をそのまま取り入れまして、さらに報酬比例部分、これは恩給独自の計算方式によりまして報酬比例部分と、それから妻加給部分、これを加えまして七十四万八千五百九十円になるわけですが、これを繰り上げて七十四万九千円とする、こういう計算になっております。
  148. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま御説明のように、さらに数字的に見ますれば、いわゆる定額部分というのは二千五十円掛ける物価として一・〇七掛ける二十年分として二百四十月、これが一つの項。それから二番目の報酬比例部分については、八十六万五千円掛ける百五十分の五十掛ける〇・四五。八十六万五千円というのは兵の仮定俸給、それから〇・四五というのは報酬比例部分割合、そういう一つの項と、もう一つは、加給部分として十三万二千円、これは妻の加給の金額、掛ける〇・七。これは妻の保有率というふうな形の算定方式に基づいて六月から七十四万九千円という数字を出されたというふうに承知をしておるわけです。  委員部の方から、お約束の時間が参っておりますので、よろしくお願いしますという連絡が来たわけであります。できるだけこの連絡の一時間——私は二時間希望ということで申したのでありますが、きょうはこの法案を処理したいという理事会の申し合わせもありますので、それに協力しますが、もう一点だけお許しをいただきたいと思います。  それは、今度の改正の中で旧特別調達庁の職員期間の通算期間の緩和をやられるわけであります。これは今日の防衛施設庁の関係の要請もこれあり、改定する必要があるだろうということに基づいて改定をされたものと承知をしております。対象人員は、私の承知しておるところではわずか十人でありますけれども、しかし、これは改定する必要があるということで改定されたと思うのでありますが、この旧特別調達庁の職員期間の通算条件の緩和ということをやられた、改正をされる経緯について若干御説明を願いたいと思います。
  149. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 特別調達庁というのは昭和二十二年九月にGHQの指令によって設置されたわけでございますが、その職員構成は、総理庁事務官と、それからいわゆる一般職員、これは役員とか参事とか主事とか雇傭人とかいうものがあったわけでございますが、これによって構成されておったわけです。その後、昭和二十四年の六月にその業務を政府に移管したわけでございますが、その際、一般職員の方が、これは総理庁事務官あるいは総理庁技官というぐあいになったわけでございますが、その際、昭和二十四年に恩給公務員として通算を行ったわけでございます。  ところが、いろいろ調べてみますと、その二十二年九月の設置後二十四年六月の移管までの間に、総理庁事務官に定員がありますと、一般職員の中からも総理庁事務官に入れておった、こういう経過がございまして、そういうものについては通算がなされておらなかったということで、これは総理庁事務官になった時期が後か前かということで通算になったりならなかったりということで、そういった二十四年六月以前に総理庁事務官になった方についても通算をしよう、こういう改正でございます。
  150. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に大臣に御答弁をいただいて終わりたいと思います。  わが国の恩給制度は、御承知のように歴史的には百余年を経過をしておる。特に第二次世界大戦の終わりました以降には、旧軍人関係あるいはその遺族は、率直に言って受難の時代を迎えたと思うのであります。二十八年のこれが改正をされます際には与野党で議論を呼びましたけれども、それから今日時点になれば、冒頭に申し上げましたように、戦争によって傷ついた方あるいは亡くなられた方々の遺族あるいは戦争の労苦をしてきたそういう旧軍人並びに新制度ができる以前の旧文盲と言われる者、こういった対象の方々に対する生活の問題として、あるいは社会政策的な問題も含めて逐次、財政問題もありますけれども、実態に即した改善を行っていくということは、これは総理府の担当のセクションの問題についても重要なことであろうと思います。特に恩給法が新しい制度のいわば基本法的な性格を持つ、母屋的な性格を持つという意味からも、わが国のこういった制度全般の内容をさらに充実強化するように今後とも努力してもらいたい。  私はきわめて紳士的な質問をしましたけれども、質問の中には、こうしてもらいたいということを幾つか含んでおるわけでありますが、そういうことも含めて今後とも努力してもらいたいと思います。大臣のお考えを承りたいと思います。
  151. 中山太郎

    中山国務大臣 国家、社会のために生涯をささげていただく方あるいはまた国家のために命を失われた方、傷つかれた方々、その御家族に対して政府といたしましては、きょう先生からいろいろな点で御指摘がございました。改善できるものから改善をしますとともに、その内容の充実のために、総務長官といたしましては、今後とも一段の努力をさしていただきたいと考えております。
  152. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  153. 染谷誠

    ○染谷委員長代理 上田卓三君。
  154. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、わが党の最後の質問者でございますので、おさらいのような形にもなるかもわかりませんが、幾つかの項目にわたりまして御質問申し上げたい、このように思います。  今回の改正案の実施時期についてでございますが、今回もまた四月、六月、それから七月と十月、こういうように実施時期が分かれておるわけでございます。去年もおととしも、この改正についての論議のときにも議論が出ましたし、また同時に、附帯決議などでも要望が出されておるわけでございますが、やはり四月に一本化するということが一番望ましいのではないか、こういうように思うわけでございますが、議論の中でも明らかに出ておりましたように、財政事情というようなことが出ておるようでございます。特にこの財政的な問題ということでございますが、四月に一本化するとどのくらいの予算が必要であるのか、まずその点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  155. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 現在の改善、これを全部四月に一本化いたしますと、百五十億の経費が必要になるわけでございます。
  156. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 百五十億ですね。ということは、六月なり七月なり十月に支給される方々は百五十億円損しているということになるのじゃないですか。その点はどうですか。
  157. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 現在のままで四月を六月にされた、あるいは八月にされたということになればおっしゃるとおりでございますが、中身を薄くして早くするかというふうな問題も出てくるわけでございまして、確かにいまの中身で計算しますと、先生おっしゃるとおりでございます。
  158. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 中身を濃くしておるから云々ということあるいは今日時点で言うならば、その百五十億の膨大なお金をそういう方々は損しているということになるということをお認めになったと思うのです。私は、実施時期というものは、いろいろ各種恩給の歴史があることも事実だろうと思うのですが、まずその中で実施時期を分けておるのは、決して意図的に、必要なというのですか、大事な部分から、これは各種恩給の中でも一番大事だから普通恩給は四月にしようとか、何々は六月にしようというような形で任意的に決めたものではなしに、そういう経過の中からなったものだろう、私はそういうふうに思っているのです。  そういう意味では、各種恩給を受ける受給者については、私は平等な扱いを受けることが本来のあり方であって、そういう意味受給者に格差が、実施時期によってマイナスを受ける、損を受けることがあってはならぬと私は思うのです。だから、隣の人は四月にさかのぼってアップされて受けている、ところが自分は六月である、また向かいの人は十月であるというような、一つの地域でたくさんあるわけではないにしても、そういう差が出るということは私は非常に大きな問題がある、こういうふうに思っておるわけでございます。  去年の九十一国会においても、附帯決議でその一本化を図れ、今回も恐らく最後にいわゆる附帯決議がつけられるだろうというふうに私は思うわけでございますが、そういう点で、一本化について格段の努力をする気構えがあるのかどうか、長官ひとつお聞かせいただきたい、このように思います。
  159. 中山太郎

    中山国務大臣 御指摘の点は、総理府といたしましても一本化のために今後とも全力を挙げてまいりたい、このように考えております。
  160. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ぜひともこの格差のないように一本化を図っていただきたい。事務的な繁雑さもあろうと思いますし、その一本化することについては、当局もそれが一番いいのだということをおっしゃっておるわけであります。あと問題は財政的な事情ということでありますから、ぜひとも増税ばかりせずに——こういう部分に日を当てていくということは私非常に大事ではないか、こういうふうに思いますし、毎年一回こういう形で議論がされて、いつも附帯決議がつけられながら、努力します、努力します、一本化に努力しますと言って実際されていないということはいけないわけでありますから、一定の段階で踏み切って、ぜひとも一本化していただきたい。そうせぬと、国会の決議というものは空文句になるわけでありますから、議会軽視ということにもなりかねないわけでありますから、その点について特にお願い申し上げておきたい、私はこのように思います。  次に、四月一日からの実施分について見ても、本来公務員給与の引き上げに見合って後追いをしている状況であるわけでございまして、どうしても一年おくれになっておると言わざるを得ない、このように思います。公務員給与についても、人勧に基づいて行われるわけであるにしても、これ自身が一年おくれということにもなっておるわけですから、そういう意味恩給は公務員の給与に一年おくれておる、さらに一般のそういう物価等の関係から見ると、二年おくれということになっておるわけでありますから、そういう点で、少なくとも四月にさかのぼって、ということは、国家公務員と同じように一年おくれにならないようにぜひともすべきであるというように私は思っておるわけでございますが、政府の方では一年おくれでない、こういうふうに考えておるのか、一年おくれだというふうに考えておるのか。一年おくれと考えているのなら、それをどうするのかという決意を述べていただきたい、こういうように思います。
  161. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 先生御指摘のように、今年度もそうでございますが、ベースアップに関しましては四月一日から実施しておるわけでございます。その改善の指標としまして、前年の公務員のベースアップ率といいますか、改善を指標として用いておるわけでございます。これは、従来は先生承知のように、十月から始まりまして、だんだんいま四月に追いついてきたわけでございます。  この恩給年額の改定でございますが、これの改定の基礎になるのが恩給法の二条ノ二というのがございまして、これによりますと「国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情二著シキ変動が生ジタル場合二於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」というのがありまして、これを根拠として改善を行ってきておるわけでございます。増額指標のとり方としましては、現職公務員の公務員給与改善率をとっておるわけでございます。これが一番、昔公務員だった者の改善指標としてはいいのではないかということで考えておるわけでございます。  これを、仮に現職公務員と同じように、恩給で言いますと、その前の年の四月からやろうということになりますと、ある程度公務員のベースアップを予測して翌年度の恩給予算を考えていかなきゃならないという、一つ技術的な問題がございます。このこと自体が技術的に非常にむずかしいという面と、それからほかの年金等でも、たとえば厚生年金なんかでも前年の物価上昇率を翌年の指標として使う、こういうようなことにもなっておるわけでございまして、これは、一つにはやはりその技術的なむずかしさとか、そういったものが影響しておるのだろうと思います。ですから、角度によると思うのですけれども先生おっしゃるように、確かに一年おくれという見方もあるかと思いますが、これはベースアップについて、その指標を何に使うかという意味で言えば、給与水準そのものが果たして一年おくれているのかどうかということには、まだこれは研究する余地があるんじゃないか。というのは、恩給改善というのは必ずしもベースアップだけではなくて、いろんな低額所得に対する改善であるとか、その他の改善をそれぞれの時期に応じてやっておるわけでございまして、なお今後ともこの一年おくれをどうするかということも含めまして検討する必要はあるんじゃないかとは思いますが、いまのところ指標として、水準そのものが一年おくれているというふうに考え得るかどうか、これはちょっと検討する必要もあるんじゃないかと思います。
  162. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それはおかしいんじゃないですか。去年の第九十一回の国会でこの法案が審議されて、そして可決された後で附帯決議がありますね。先ほど私も若干一本化の問題で申し上げましたが、「現職公務員の給与より一年の遅れがあるので、遅れをなくすよう特段の配慮をするとともに」と、こうなっているのです。それでは国会決議は間違っているんですか。これは大臣に答えていただきたいと思います。
  163. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 ちょっといま舌足らずだったかもしれません。間違っていると申したのではなくて、見方がいろいろあるんではないか、その一つの見方が国会で御指摘になっておる一年おくれという見方ではないか、こう申しておるわけでございまして、決して一年おくれじゃないというように申しておるわけではございません。
  164. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 一年おくれではないというように言っているのではない、こういうようにおっしゃっているわけですね。しかし、一年おくれであるのかどうかについては見方がいろいろある、そういうことは——この附帯決議は与野党満場一致で決まっているんですね。そうでしょう。当委員会で決まっているのでしょう。決まっているのだけれども、政府は、一年おくれでないとは断定はしないが、それについていろいろ意見があるということになってきたら、附帯決議について尊重すると言ったって、それは結局、そういう決議をしておるけれども、われわれはそう思ってないのだということになりはしませんか。これは長官ひとつお答えいただきたいと思います。
  165. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 私も、先ほど申しましたように、その一年おくれという問題については、これは検討する必要がある、こう申しておるわけでございます。決して一年おくれでない、こう言っておるわけではございませんので、その点、今後とも検討すべき問題ではないかというようには考えておるわけでございます。
  166. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 長官の決意をお伺いしたいと思います。
  167. 中山太郎

    中山国務大臣 いま局長がお答え申し上げましたとおり、附帯決議もございます。私どもといたしましては、できるだけ御趣旨を尊重して努力をしてまいりたい、このように考えております。
  168. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにいたしましても、一年おくれているということは私は間違いない、こういうように思っておるわけでございまして、そういう点で、言葉だけではなしに、実際問題として、やはりこの一年おくれを取り戻すために格段の努力をしてもらいたい、このことを強く申し上げておきたい、このように思います。  次に、最低保障額についてでございますが、これも毎年この引き上げについて附帯決議がなされておるところでございまして、そういう点で、この恩給というものは先ほどの角屋先生からもお話がありましたように、百年の歴史がある云々と、こういうことでございますが、しかし、今日的な意味から言うならば、やはり社会保障というのですか、生活保障的なそういう意味合いも濃厚になりつつあることは事実ではなかろうか、私はこういうように思っておるわけでございます。そういう点で、上原委員からも述べられたわけでございますが、この普通恩給生活保護基準よりも下回っているじゃないか、こういう点が指摘された、こういうように思うわけであります。  私の調べでも、普通恩給、まあ高齢の場合でございますけれども、一年に七十四万九千円、月にして六万二千四百円、こういう基準があるわけでございますが、生活保護の場合は、男六十歳、女性が五十六歳、いわゆる老人二人世帯で、東京とか大阪のような一級の地で何と一月に七万八千百四十三円、こういうようになっておるわけでございまして、普通恩給よりも生活保護基準の方が一万六千円ほど上回っているという現実があるわけでございます。そういう点で、恩給が、やはり報償制度というような側面もあるにもかかわらず、やはり戦後、生活保障、社会保障という側面が出てきた、こういうふうに考えるならば、生活保護基準よりも下回っているということは大きな問題ではないか、私はこのように考えておるわけでございまして、その点についてどのように考えておるのかお答えをいただきたい、このように思います。
  169. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 生活保護でございますが、これは社会扶助というような観点から、いろいろな資産とかその他の所得とかそういうものを全部活用して、なおかつ最低水準に満たない場合、最低生活が維持できないというような場合、その個別個別に生活最低保障をする、こういうたてまえのシステム制度であるかと思います。  片や恩給は、公務員が忠実に勤めた後、負傷しあるいは退職したというような場合に、国家でそれを補償するという形で支給する年金でございますが、これが計算の基礎としては、その最終俸給と在職年数、こういった要素で計算しておるわけでございます。したがいまして、これは国家補償というようなたてまえから、その方がどういう他の収入を持っていようとどういう資産があろうと、そんなことは一切問わずに補償するという形になっておるわけでございまして、その点、生活保護というものとは趣旨を異にしておるのではないか、このように思うわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、最低保障というような制度もあるわけでございますし、余りにも低い年金というのも問題があるかと思いますので、これは今後とも他の公的年金制度等との均衡といったことも考え合わせながら努力していくべきではないか、このように考えておるわけでございます。
  170. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 年金を受けておられる方はいろいろの方がおられることも事実ですね。資産を持っておる方もおられることも事実だろうと思いますが、多くは身寄りがないといいますか、いろいろの状況の中で非常に貧しい方々がたくさんおられるわけです。それではあれですか、資産のない、恩給を頼りにしている人であれば、恩給をもらわないで生活保護を受けろということになるのですか。恩給よりも生活保護の方が基準が高ければ、そっちを受ければいいということになるのではないですか。それではこの報償制度という側面はどうなるのですか、答えてください。おかしいじゃないですか。
  171. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 恩給生活保護費まで達しないで、しかもほかに所得がないという場合は、その差額は生活保護で見てくれるわけでございます。ただ、その際、その率といいますか、これはほとんど恩給受給者ではございません。現在二百四十万のうち約九千人ぐらいしかそういった例の方はございませんが、恩給生活保護費より低い、しかもほかに何の所得もないという方については、その差額だけは出ておるわけでございます。
  172. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それは当然のことじゃないですか。私はそういうことを聞いているのではなしに、せっかく恩給をもらっているにもかかわらず、ほかに収入が何もない、そうすると生活保護を受けた方が基準が高いということになれば、その差額をいただくというのでしょう。それではまるまる生活保護を受けている人と比べて、恩給をもらっているメリットというのはそこに一つもないわけでしょう。いわゆる報償制度だというのならば、そこに一般の生活保護世帯よりも何らかのメリットがあってあたりまえじゃないかということを私は言っているのですよ。だから、逆なのであって、差額を生活保護でもらっているというのではなしに、生活保護基準にプラスアルファになる部分普通恩給の場合、老齢の場合に考えるべきではないかと私は言っているのですよ。
  173. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 生活保護と恩給制度の違いについては先ほど申し上げたとおりでございまして、恩給自体は、やはり他の公的年金、いろいろな厚生年金であるとか共済年金、こういったものとの均衡を考えながらその改善を図っておるという状況にあるわけでございまして、恩給生活を全部保障しているのだというたてまえの制度にはなっていないわけでございますので、そういった先生がいま御指摘のような例も、先ほど申し上げたように、ごくわずかではございますが、あるにはあるわけでございます。
  174. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私の質問にまじめに答えていないと思うのです。数が少なくてもあることは事実なのですから、そういうことを考えた場合、恩給受給者であると言われながら、生活保護基準にも達しないから、その差額を生活保護からもらっているというのはおかしいのじゃないかと私は言っているのですよ。わかりませんか。要するに私がここで言いたいことは、少なくとも最低、言うならば生活保護基準並みに恩給制度を上げるべきであって、恩給を受けている者が生活保護から足らずをもらっているというようなことは間違っているのじゃないか。さらに言うならば、恩給を受けている人たちは、生活保護の基準があってさらにそれにプラスアルファがあってしかるべきではないかと言っているのです。そのプラスアルファが幾らであるか別ですよ。その物の考え方について同意できますか。どうですか。
  175. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 いま申し上げましたように、恩給受給者という方の中には、本当に三年とか五年とかという勤務年限で恩給がついておるという方もあるわけでございまして、そういった方すべてに生活を全部保障するというたてまえには恩給制度そのものがなっておりませんので、先ほど申し上げましたように、こういった方々にもしかるべき年金額になるように、今後ともほかの年金制度等を勘案しながら改善を図っていくべきであるとは思いますが、いまの段階でそれが生活保護よりも低いという実態はやむを得ないのじゃないか、このように考えておるわけでございます。
  176. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 恩給の性格というものは、報償金的なものとそれから社会保障というのですか、あるいは生活保障というのですか、そういうものとミックスされた性格のものである。近年最低基準額がどんどん上がってきているということは、報償金制度というものもあるが、そういう社会保障的な側面がずっと比率が高まってきているのでしょう。社会保障、生活保障というならば、最低のものとして別個に生活保護基準というものがあるわけでしょう。一番最低じゃないのですか。失対賃金でも生活保護基準よりも下回ることは問題ではないか。三年ほど前でしたか、失対賃金が生活保護基準よりも一円下回るというようなことがあって、早急に失対賃金が引き上げられたという例があるわけですね。     〔染谷委員長代理退席、委員長着席〕 だから、生活保護基準というのは、一応最低の社会保障というのですか、生活保障というものがあるわけでしょう。そういう点を考えるならば、いわゆる基本額というものが少なくとも生活保護基準程度であって、あと報償金的なものがプラスアルファになってこそ、初めて恩給受給者が納得できる課題ではないかと思うのです。  だから、時間の関係があるから、あなたはわざと質問を故意に曲げて答弁しているように思うので、長官の方からその点について、賢明なる長官でございますから、明確にひとつお答えいただきたい、このように思います。
  177. 中山太郎

    中山国務大臣 先年のお話は、いわゆる恩給受給者の一カ月の受給額というものが生活保護費の受給額とハンディキャップがあるところがある、それはおかしいのじゃないか、恩給は当然恩給としてそれだけの最低保障という意味があるのだから、それを支給する、もちろんそれは生活保護費と別建ての考え方で臨むべきだという御趣旨だろうと思うのです。私は御趣旨は御趣旨として一つの論理があると思います。しかし、いままでの恩給法の考え方というものは、たとえば文官の場合、高等学校を十七歳あるいは十八歳で卒業してきて二十年公務員で勤める。そうすると、三十八歳で退職をした場合にでも、若年停止の規定がございますから、五十五歳から恩給を受ける、こういうことになるわけでございまして、その間によその企業に勤めるということの場合も、これが発生してくる。そこいらにいわゆる従来の恩給法の基本的な概念というもの、立法の精神というものが存在しておるというところが局長の答弁の展開じゃないかというふうに私は考えておりますが、先地の御指摘の点は、これから社会保障という意味を兼ねて研究する一つのテーマであろう、私はそのように理解をいたしております。
  178. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 役所流のへ理屈というのですか、わけのわからぬ、納税者にはわかりませんよ。恐らく納税者、国民から見たらぼくの言うている方が正しいと理解するのじゃないですか。知らぬ人から見れば、ただ一般の生活保護世帯から見るならば、恩給を受けている人はわりとそこそこの生活をしているんだなというように思っているんじゃないですか。またそんな低い額で、差額を生活保護からもらっているというふうに理解している人が何人おるんかと私言わざるを得ないと思うのです。そういうことで長官、現実に数が少ないかもわからないが、それだけ普通恩給生活保護基準よりも低い現実があるわけですから、やはり生活保護基準以上に、もっとはっきり言うなら、恩給を受けている人は生活保護の差額をもらわなくてもいいような、そういう引き上げが大事だと思うのです。そういう意味で、附帯決議ども出てきているわけでございますので、その点決意のほどを述べていただきたい、私このように思います。
  179. 中山太郎

    中山国務大臣 いずれにいたしましても、受給金額そのものは納税者の税金から出るわけでございます。そういう意味で、私どもとしては、制度改善をする方が受給者の便宜でありあるいはまた行政上の便宜であるというふうなことであれば、その問題については積極的に処理をしてまいらなければならない、かように考えております。
  180. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 次に移ります。  現行法では、国民年金法に老齢福祉年金支給停止の項があるわけでありまして、今回の改正案では普通恩給の四十八万円以上の受給者老齢年金を打ち切られることになるわけです。四十五万円以上から今度は四十八万円以上、こういうことになったようであります。月四万円、こういうことになるわけでございまして、果たしてこれで生活ができるのかどうか、こういう点で高齢化社会あるいは老人対策というような形で非常に叫ばれておるわけでございます。厚生省の方にお聞かせいただきたいわけですが、四十八万円以上を受け取る者については老齢福祉年金が切られるということについて一体どのように思っているのかお答えいただきたい、このように思います。
  181. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 お答えを申し上げます。  ただいま先年御指摘のように、福祉年金恩給等の受給併給の場合の限度額でございますが、現行四十五万円でございます。これを五十六年度におきましては四十八万円に引き上げるということを予定をいたしております。  この併給限度額にはいろいろ経過がございまして、かつては福祉年金額と同額の限度額ということにいたしておりました。つまり福祉年金よりももっと低い年金がある場合には、その差額を福祉年金並みには支給する、こういうことで決まっておったわけでございますが、この引き上げをその後福祉年金額以上の限度額にいたしておりまして、ただいま申したような四十五万円、四十八万円という線になっているわけでございます。  一方、先生すでに御承知のとおりと思いますが、国民年金は拠出制の年金が主体でございまして、たとえば十年間保険料を完全納付をいたしました場合の年金額も現行では三十四万円程度という金額になっているわけでございまして、こういう方々には福祉年金の併給は行われておりません。そういったようなこともございまして、この限度額の引き上げにつきましては制度的にいろいろ問題が多いわけでございます。ただしかし、いろいろ御要望もございますので、五十六年度におきまして四十八万円まで引き上げる、かような改一正を予定しているわけでございます。
  182. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 要するに、先ほども問題になりましたように普通恩給が非常に低い額である、こういう状況のもとで四十八万円以上受け取ると年金がもらえない。四十万円だったら差額の八万円がもらえる、こういうことになるかもしれませんが、先ほどの生活保護とのかかわりあいの論議とよく似た性格のものでなかろうか、私はこういうように思いますので、いろいろ解釈もあろうかと思いますが、やはりそういう制限条項というものはぜひとも撤廃していただきたい。附帯決議の中でも盛り込まれることになろうと思いますが、その点についてもうお答えをいただきませんから強く要望しておきたい、このように思います。  次に、いわゆる旧軍人軍属の場合でございますが、戦後も引き続いて国家公務員の関係の職員についておれば共済年金に戦地での勤務期間が加算される、こういうことであるわけでございます。ところが戦後民間会社に勤めたとかあるいはお百姓をするとか自営業をする、こういう方々には戦地での勤務期間が加算されない。こういうようなことで、特に国会議員の中でも超党派的に軍歴通算議員連盟というような会もできておることも御存じだろうと思いますし、与野党問わずこの問題が大きな問題になっておるわけでございます。本当にそういう意味では、戦後においても公務員と民間でなぜそういう差をつけるのか、国に対する貢献度というのは公務員が大であって民間の人間は云々ということはなかろうというふうに私は思います。いわんや戦前においては同じ軍人軍属で一緒に戦地で働いてきたわけでありますから、そういう点で、戦後のことを言っているのじゃないのであって、戦前の期間についてなぜそういう差別をつくるのか。戦後の身の処し方が違うために、民間に働いたために戦前のものがなぜ帳消しになってしまうのかということで納得できないわけでありますので、その点納得できるように御説明いただきたい、このように思います。
  183. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 厚生年金、国民年金の所管の立場から御説明を申し上げます。  これも先生すでに御承知のように、厚生年金、国民年金は国民一般を対象といたします社会保障制度でございまして、国民の相互連帯の精神のもとに保険料を拠出をいただきまして、その拠出をいただいた期間に基づきまして給付をする、かようなたてまえ、仕組みになっておるわけでございまして、そういうような仕組みの中で元公務員の方々だけを特別の処遇をするということは、しかも拠出のない期間でございますので、制度的にこれは大変むずかしい、困難な問題があるということを御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  184. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いや、いままでのことについてはわかっておるわけです。問題は、今後そういう格差のないように、民間に勤めたあるいは自営、農業をされる方についても通算すべきである、こういうことでございますので、そういう方向で今後格段の御努力をいただけるのかどうか、その決意のほどをお聞かせいただきたい、このように思います。
  185. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 この問題、国会におきましてもしばしばお尋ねをいただいている問題でございまして、実は昨年の予算委員会におきましてもお尋ねをいただいたわけでございますが、当時の厚生大臣の方から、やはり現行の社会保障制度である厚生年金、国民年金の中で公務員の方だけを特別にということはなかなかむずかしいということを申し上げたわけでございまして、社会保障制度という国民一般を対象とする制度の中では、これはなかなか対応がむずかしい問題であるということを申し上げてお答えにさせていただきたいと思います。
  186. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 どうも納得できませんね。時間の関係がありますので、次へ移りたいと思います。  一時恩給の問題でございますが、この法律改正がなされてもうすでに五年を経過いたしておるわけでございます。いわゆる一時恩給受給対象者が約六十万人、すでに半数以上の方々が受給された、こういうふうに聞いておるわけでございますが、なお相当の方々が受給対象者でありながら受給されていない、こういう状況があるわけであります。  なぜそういうせっかくの制度がありながら受給しないのかということを考えた場合、一時恩給中身に大きな問題があるのではなかろうか、私はこういうように思っておるわけであります。いわゆる一時恩給の額というものは、発足した昭和二十八年の金額を基礎に置いておられるわけでありまして、その後条件が緩和されたということはあるにしても、現実問題として、たとえば六年間戦地で苦労してきた、こういう方であっても三万数千円という額のようでございまして、中には三年未満というのですか、最低の一時給付ということになりますと一万五千円ぐらいだというように聞いておるわけです。一万五千円ということになりますと、手続もめんどうくさい云々ということで、ついに取りに来ないというようなことにもなりかねない、私はこういうように思うのです。そういう点で、昭和二十八年のときの一万五千円、そのときはそれなりの意味があったかもわかりませんが、それからずっと物価が上がっておるわけでありますから、やはりそれ相応に一時恩給の額を物価スライドさせるというのですか、二十八年当時の一万五千円の値打ちのお金を今日時点で支給するということはぜひとも必要ではないか。特にこれは一回きりなんですから、額を二十八年の時点を基準にするということ自身は、前にもらった人間が損して後からもらった人間が得するというような問題ではなしに、同じ額であっても値打ちが違うわけですから、逆に前にもらった人間は得であって、後からもらった人間は損しているということになるわけであります。その点私はこの基準自身に大きな問題がある、このように考えるわけでありまして、大幅な引き上げについてどのようにお考えか、努力していただけるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  187. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 一時恩給につきましては、昭和二十八年の復活当時は下士官以上だけで、しかも勤務年数が七年以上という制限支給しておったわけでございます。それをいま先生おっしゃったように範囲をだんだん拡大していったわけでございますが、この範囲拡大につきましては、本当に国が苦労を謝しているという気持ちだけでもいいからいただけないかというような御要望にも沿うような趣旨で、本当に御苦労に対して国の微意をあらわすんだという形で、それでは昭和二十八年当時の最初に一時恩給を決めたときの金額でやりましょうということでやってまいったわけでございます。  先生御指摘のように、これは確かにきわめて少ない金額でございますけれども、これはまさに国の微意をあらわすということでございまして、これを仮に現在のベース、現在の恩給の仮定俸給に引き直して支給しろ、こういうことになりますと、財政的にも非常に大変なものになるかと思いますし、それから戦争中三年、四年という年限をお勤めになった方と戦争中苦労された方、こういったこととの均衡、みんなひとしく戦時中は苦労したのだということもございまして、この点については非常に私どもとしてはむずかしい問題じゃないか、このように考えておるわけでございます。
  188. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 これも財政問題だと言われるのですから、財政問題であればなおさら今後検討するということになるのであって、むずかしい問題だということにならないだろうし、いわんや二十八年当時もらった人と、今日時点でたとえば一万五千円もらった、これは全然お金の値打ちが違うわけですから、もっと早く取りに来るべきであったということになるのかもわかりませんけれども、いろいろの事情でそういうものを知らなかったという方々もおられるのではないか。だから今日時点で受け取る人が損するようなことは、それこそまた差別につながる、不平等だと言わざるを得ないと私は思いますので、この問題について前向きに御検討いただくということでお答えいただきたい、このように思います。
  189. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 先ほど申し上げましたように、確かに少ない金額でございます。ただ、いままた申し上げましたように、ひとしく国民が苦難を受けたという点も考えまして、いろいろ研究してみたいと思います。
  190. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ぜひともお願い申し上げたいと思います。現行のままであれば、三十万近くの方々が受給できるにもかかわらず、手続がうるさいとかいろいろ証明がどうだとかいうことで、せっかくそういう制度がありながらお受け取りになられぬということですから、魅力のある、受け取りやすいような金額にぜひとも御訂正をお願い申し上げたい、このように思います。  次に、旧日赤従軍看護婦の方々に続いて、今年度から旧陸海軍の従軍看護婦についてもいわゆる慰労給付金が支給される、こういうことになったわけであります。慰労という言葉自身に私は非常にひっかかるわけでございまして、何か慰め賃というか、そういうような非常にあいまいなものでありまして、われわれは旧日赤従軍看護婦——おととしですか、そのときにも申し上げましたように、本来ならば恩給法を適用すべきである、こういうように申し上げたわけでございます。本当に戦地で軍人さんと同じように戦場をくぐり抜けてきたわけでございまして、その差はなかっただろう。相手の弾が従軍看護婦さんには当たらないということではないわけでありまして、戦争になれば無差別、こういうことになるわけでございます。死線を越えてともに苦労された方々でございますので、そういう意味では同じ扱いをすることが当然望ましい、私はこういうふうに思っておるわけでございますが、残念ながら慰労給付金、こういうような形の制度となって発足したわけでございます。それが旧陸海軍の従軍看護婦の方々にも適用されて一歩前進ということで理解もし、また同時に、この制度につきましては、恩給法等と同じような、それに準じてやられる、こういうことのようでございます。そういう点で、それに関連して何点か御質問申し上げたい、このように思います。  特に恩給法上の加算年を加えまして十二年以上の人を対象にして十万円から三十万円までの慰労金が出される、こういうことになっておるようでございます。しかし、十八年以上戦地におられた方であっても三十万円ということのようでございまして、本当に十八年以上の人が何人おられるか。受給対象者の多くは、やはりそれ以下の五年、十年、こういう方々になっておるわけでございまして、実際にこの方々が受け取る金額というのは恐らく平均して十二万から十三万ぐらいじゃないのか、こういうように思っておるわけでございます。  そういう点で、恩給法に準ずるということであるならば、最低保障額というものが適用されて当然ではないか、私はそういうように思っておるわけでございまして、そういう最低保障額抜きの一般的な加算についてだけ恩給法並みであるということは、私はどうも納得できないわけであります。なぜそういうような差を設けるのかという点で納得できないわけでありまして、それについて明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  191. 関通彰

    ○関(通)政府委員 旧日赤及び旧陸海軍の従軍看護婦さんへの慰労給付金の支給の内容でございますが、ただいま先生お触れになりましたように、恩給法で適用しております旧軍人加算年、これをそのまま算入いたしまして外地での勤務期間が十二年以上の方を対象として支給しているわけでございまして、その支給額は勤務期間の年限に応じまして兵たる旧軍人支給する普通恩給の額に相当する額を決めているわけでございます。したがいまして、基礎的な計算では、先生十八年でも三十万という数字をお挙げになりましたが、兵たる旧軍人普通恩給の基本的な額の計算は十八年で五十五歳ぐらいでございますとやはり三十万ぐらいの算出が出るわけでございます。ただ、恩給の場合は、実際支給されます額は最低保障が適用されまして、たとえば五十五歳のこの期間でございますと、五十六年度の予算で五十六万円の最低保障が適用されることになろうかと思います。  なぜ看護婦の場合最低保障を適用しないのかという御趣旨かと存じますが、これも先生お触れになりましたように、この問題につきましては当委員会で数年にわたりまして御議論がございまして、恩給制度を含めまして既存の制度で何か適用できないのかという御議論があったわけでございますが、なかなか既存の公的年金制度のどれにも乗せることができない。しかしながら、過去の御苦労に対して何か措置はできないかということで、政府におきましても法令等に基づく制度ではございませんが、予算措置によりまして過去の御苦労に報いるための慰労給付金の制度の措置をしたわけでございます。したがいまして、この慰労給付金はいわゆる恩給等のような所得の保障を図るという年金的な性格を持っていない、過去の御苦労に対する慰労の趣旨である、かように解しておりまして、このために最低保障というような制度を取り入れていない、かようなことでございます。
  192. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 恩給の場合でも、やはり報償的な側面から最低保障というのですか、古い制度的なものの引き継ぎの中でも社会保障的な生活保障的な側面がずっと拡大されていっているわけですよね。だから、そういう点を考えるならば、慰労金という制度ができておるわけですけれども、慰労金だから最低保障はないんだというのじゃなしに、そういう部分を強めていくということが私はぜひとも大事だ。恩給に準じてということになっているのですから、やはりそういう社会保障的な側面というものも絶対取り入れていかなければならぬ、私はこういうふうに思っているのです。そういう点でぜひともこの点について御検討いただきたいし、老齢加算等についても当然考えなければならない点ではなかろうか、私はこういうように思います。今回はこういう形になっておるわけでございますが、今後において慰労金につきましては、やはり最低保障額というものを——毎年毎年これは支給されるものですから、物価に見合って伸ばすということもありますが、しかし、もともとベースが低いわけですから、大体十二万から十三万しか一年間に受け取れないということになるわけですから、ふやそうと思ったらスライドだけではとうてい限界があるわけですから、恩給に準じてそういう最低保障というものを私はベースにしいていただきたい。そういう努力をしていただけるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  193. 関通彰

    ○関(通)政府委員 給付内容の改善につきましては、昨年当委員会附帯決議でも、旧陸海軍看護婦にも措置を講ずるとともに、増額の措置を考えるようにという附帯決議をちょうだいしているわけでございます。昨年の段階におきましては、旧陸海軍の従軍看護婦さん方、数から申しましても大体日赤と相当するぐらいの数と見ておりましたが、それらの方々に何の措置もできていないというような状況でございまして、五十六年度から新たに旧陸海軍の方々への措置ができるようになったわけでございますが、なかなか財政的にも厳しい状況の中での予算措置でございます。したがいまして、当面給付内容の改善について具体的な計画は持ち合わしてないわけでございますが、将来の問題といたしましては、今後とも給付の状況あるいは支給に当たっております日赤本社等の意向も十分配慮いたしまして努力していきたい、かように考えております。
  194. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 普通恩給の最低のライン、それに比べても、十二、三万といえば四分の一ですね。それだけじゃなしに、ことしも据え置かれるということになれば、三年間これは一応据え置きということになりますね。片一方の恩給の方は年々上がっていく、片一方は慰労金という形で定額だということで全然上がらないということでありますから、この辺についても、スライドを図るだけじゃなしに、最低保障的なものをげたばきにして、そうたくさんな人があるわけじゃございませんので、年々厚くしていっても予算はそう伸びるということにもならないのではなかろうか、こういうように思いますので、ぜひともひとつ御配慮いただきたい、こういうふうに思います。  それから、厚生省の方にちょっとお聞かせいただきたいわけでありますが、慰労給付金の制度が発足するに当たり、昨年は約一万一千人の方々を調査された、こういうことらしいのでございますが、その中で加算年を加えて十二年以上の受給資格者は約千人であった、こういうような報告がなされておるわけでございます。そういう意味では、十二年未満の人たちがこの制度からすべて除外されておる、こういうことでございまして、本当に年限でそういう差が設けられておるわけでございますが、やはり現実に同じ苦労をしてきたというようなこともありますので、たとえば恩給の場合は一時恩給というのがあるわけですから、この十二年未満の方々についても、やはりこれは一時慰労給付というのですか、そういうような形で、もう十二年以下は切り捨ててしまうのだということじゃなしに、一時恩給があるように、私は検討を加える必要があるのではないか、こういうふうに思っておりますので、その点についてお答えいただきたい、このように思います。
  195. 関通彰

    ○関(通)政府委員 慰労給付金の対象は、加算年を含めまして十二年以上、これは恩給の兵の場合の受給資格に準じて定めたものでございます。  ただ、十二年といいますと大変長いように聞こえますが、実際は加算年を算入いたしますので、三年未満の方は対象にならないのでございますが、三年以上の方でございますとかなり対象になってくるわけで、実在職年が三年以上の方でございますと、三年ないしは四年ぐらいで加算年を入れますと十二年以上になる方もおられるわけでございます。ただ、加算年を入れましても、十二年未満の方々は慰労給付金の対象としてないわけでございます。確かに気持ちといたしましては、苦労された方々にできるだけ広く対象にしたいわけでございますが、この制度を始めますとき、五十三年でございますか、各党の御意向等もちょうだいいたしております。やはり外地、戦地、事変地で特に苦労した者に当面の措置をできるだけ速やかにするようにという御趣旨もございまして、特にある程度の期間にわたりまして戦地で格別な御苦労をされた方々に対象を限定させていただいている、こういうような事情でございます。
  196. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 こういう従軍看護婦の方の当時の実数、二万三千人ぐらいおられたというようにも聞いておるわけでございますので、実態の把握はなかなかむずかしいだろうと思いますが、そういう関係の団体の方々もおられるわけでございますので、今後も引き続いて実態の把握に努めていただきたいし、またそういう一時給付などもひとつ考慮に入れて、前向きに御検討いただきたい、このように思います。  次に、いわゆる日赤の看護婦さんで台湾あるいは朝鮮で勤務をした人たちの処置について、約一万二千の方々の請願署名も出ておるように聞いておるわけでございます。台湾とか朝鮮は直接戦地ではないということのようでございますが、現実にわが本土から——われわれ日本人から見れば、何ぼ当時は日本の直轄下にあったといったって、政府の解釈と国民の解釈は違うわけで、外地、異国ということは免れないのではなかろうか、こういうふうに思っておるわけでございまして、そういう方々に対する対策はぜひとも必要じゃないかと思います。これが一点。  それからもう一点は、台湾の、たとえば高砂族の方々が、われわれは旧軍人軍属、日本人として日本国籍を強いられて、そして奴隷的な軍役につかせられたということで、この問題をどうしてくれるのだという要求があることは御存じのことだろうと思うわけでありますが、これに関連いたしまして、同じく日本籍を強制されて奴隷的な軍務に服さざるを得なかった朝鮮の方々でございます。その朝鮮の方々の中で、いわゆる韓国の方々については、日韓条約等で戦後処理がなされているということでございますが、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国の方々については、そのことがなされてない。それは国交回復がなされてないということにもなろうかと思いますが、国交回復がなされた場合に、そういう戦後処理という形で政府は考えておるのかどうか。外務省の方もお見えのようでございますので、お答えをいただきたいと思います。
  197. 小倉和夫

    ○小倉説明員 お答え申し上げます。  いわゆる北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の問題につきましては、先生もおっしゃいましたように、現在まだ国交関係を持っておりませんので、今後どういう形で折衝が行われるかというようなことは、私どもとしてこの段階で予測はできないと思っておりますけれども、しかしながら、先生おっしゃいましたように、この問題の重要性ということは私どもも非常によくわかっておるつもりであります。  そこで、具体的にではどういうフレームワークと申しますか、基礎がいまあるのかという御質問だと思いますが、これはいま先生おっしゃいましたように、韓国との間では、国交正常化に際しまして戦後処理が行われましたが、その際に、明確な形でいわゆるその当時の休戦ラインの北には韓国の実際上の支配が及んでいないということを念頭に置きまして処理しておりまして、いわゆる北朝鮮、先生のおっしゃいました朝鮮民主主義人民共和国との関係は、この問題につきましてはいわば白紙の状態である、このように御理解いただければと思います。
  198. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 納得できません。白紙というのは、わが国は韓国を朝鮮半島の唯一合法政府というふうに認められておるからそういうことをおっしゃっているのかどうかわかりませんが、現実に朝鮮民主主義人民共和国があり、将来いずれにしても、国交の正常化ということがやはり避けられない状況だろうと思うわけでありまして、もしそういうことが実現したときには、当然戦後処理ということが大きな問題になるわけでございますから、十分その点については御検討いただきたい、このように思います。  時間が来たようでございますので、最後に長官から、傷病者死没後の遺族に対する補償等についても今後さらに改善を図ってもらいたいわけでございまして、そういう面で、約一時間私が述べました諸点につきまして、総論的に決意といいますか、そういう前向きの答弁をぜひともいただきたいと思います。
  199. 中山太郎

    中山国務大臣 公務扶助料あるいは恩給等に関する問題は、総理府の全予算の中に占める比率がきわめて高いということから御理解いただけると思いますが、総理府は概算要求の際に当たりましても、財政当局とは一番先にこの公務扶助料及び恩給等についてきわめて突っ込んだ話し合いをやり、いかなる財政事情があっても、概算要求時点で当局と話し合った線は崩さないというふうなかたい決意で例年臨んでいるところでございますが、今後とも一層充実してまいるように努力してまいる決意でございます。
  200. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  201. 江藤隆美

    江藤委員長 中路雅弘君。
  202. 中路雅弘

    ○中路委員 少し時間もおくれているようですし、私が最後ですから、できるだけ時間を縮めて御質問したいと思います。  先ほどの上田議員の質問と関連して、続きで二、三御質問したいのですが、先ほども御質問ありました元日赤従軍看護婦、それから五十六年度から慰労金が給付されます旧陸海軍の従軍看護婦さんの問題ですが、七五年の九月ですか、この運動が起きまして、十月に当委員会で長時間私この問題を御質問をしまして、当時の陸軍大臣通達やあるいは赤紙等も持ってきて御質問したわけですが、七五年に運動が始まってから約五、六年たっているわけです。旧陸海軍従軍看護婦さんの問題も解決をしまして、慰労金という形ですが、給付されることになったのですが、日赤と旧陸海軍従軍看護婦さんの慰労金の給付の現状、五十六年度でどうなっていますか、簡潔に御説明いただきたいと思います。
  203. 関通彰

    ○関(通)政府委員 五十四年度から慰労給付金を支給しております旧日本赤十字社の救護看護婦の方々に対する支給状況から先に申し上げますと、五十五年度の支給対象人員が千九十六人でございます。予算総額は一億三千九十三万三千円でございます。旧陸海軍の従軍看護婦さんの方々に対する処遇経費は五十六年度の予算に初めて計上するわけでございますが、先生御案内のように、昨年厚生省で実態調査を実施されまして、その結果、陸海軍の看護婦さんの方々も日赤の看護婦さんと同様戦地で兵たん病院等の勤務をされたという実態が明らかになりましたので、日赤の場合と同様の処遇をするということで五十六年度の予算に八千三百万円の経費を計上いたしております。約千人の方々に日赤の看護婦さんと同様の慰労給付金を支給するということでございます。
  204. 中路雅弘

    ○中路委員 いずれも長期の抑留生活で婚期を逸したりあるいは就職も思うに任せない、体を悪くした方も大変多いわけで、旧日赤の看護婦さんでは最初運動の中心でありました上野芳子さんも、この期間、吉報の直前に亡くなられたわけですけれども、残った方、いまおられる方も老後の不安ということも大変つのっていますし、先ほどの御質問のように、幾つかの要求も新しく出ています。もともと恩給に準ずる内容での要求だったわけですから、これに関連した要求が出ていますが、先ほど御答弁のように、恩給法上の戦地加算制度とのバランスの問題やあるいは援護法の関連やいろいろ他の諸制度との関連を見ながら引き続いて改善をしていただかなければならない問題も多いわけですけれども、一、二点だけ特に要請をしたいのですが、これは昨年の四月八日の当委員会でやはりこの問題を御質問した際に御答弁がありました。毎年予算計上している措置であるから、将来経済変動等があったら、その時点では検討しなければならないという、慰労金の増額の問題についての御答弁もあるわけですけれども、この点では物価も上昇していますから、ぜひこの御答弁にありますように、毎年予算計上している措置ですから、物価の上昇を見て、改めてこの増額について検討をしていただきたいということを強く要請をしたいと思いますが、いかがですか。
  205. 関通彰

    ○関(通)政府委員 慰労給付金の給付内容の改善につきましては、昨年当委員会附帯決議もちょうだいいたしておりまして、政府としても検討いたしているところでございますが、先ほども触れましたように、何分旧陸海軍の看護婦さんの方々には、昨年の時点ではまだ何も慰労給付金が支給されていないというような状況でございまして、五十六年度、新たにこの措置を行うということをいたしましたこと、また財政的にも、先生御存じのように大変厳しい状況でございまして、具体的に五十六年度にそのような措置ができなかったわけでございます。当面どう増額するという具体的な計画は持ち合わせておりませんが、今後の問題といたしましては、支給状況等も十分検討いたしまして引き続き検討してまいりたい、かように考えております。
  206. 中路雅弘

    ○中路委員 いまお話しのように、昨年は旧陸海軍の看護婦さんの問題をまだ抱えていたわけですが、この問題も一応日赤並みでは解決したわけですから、昨年の答弁にありますように、経済変動等があればその時点で検討するというお約束ですから、ぜひ増額については、いまの御答弁のように、検討を進めていただきたい、重ねてお願いしておきたいと思います。  恩給法の問題ですが、内閣委員会調査室が出された資料九五号に、いままで十年間の恩給法改正に関連した衆参の附帯決議が出ています。これを全部読んでみまして大変驚いたのは、毎年毎年同じ附帯決議がこの十年間ほとんど同じような内容で付されているのですね。この点で私は、きょうは幾つか御意見を述べなければいけないと思っているですが、その前に全般の問題で、これはちょうど四十五年ですから十年前、六十三国会の衆議院の内閣委員会でも参議院の内閣委員会でも「恩給に関する立法の簡素化その他法制上の諸問題について、国民の要望に沿うよう抜本的検討を加える」これは衆議院ですが、参議院の方も「現行恩給法は極めて難解であるため抜本的検討を加え、その平易化を図る」という決議がされています。恩給法というのは、その都度の措置、改善に伴う経過規定が非常にふえていますから、私もこの恩給法を勉強するのに大変にこの点は苦労するわけですね。非常に複雑になっています。一般の人にとっては当然のことだと思いますが、こういう附帯決議がされてから十年以上を経過しているわけです。その後どういう検討をされたのか、抜本的な法整備の問題ということをお聞きしたいのと、それまでの間でも恩給の問題について対象者に、ここで決議しているように、簡素でもっと平易化するという問題についてどのような補完的な措置を講じられているのかということをお聞きしたい。
  207. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 いま先生御指摘のように、確かに恩給法、非常に難解な法律でございます。これはしかし、年金制度全般に言える問題ではないかと思うわけでございます。と申しますのは、恩給法はまず大もとが大正十二年に制定されましたかたかな法律でございます。それから毎年改善が加えられ、特に戦後はもうほとんど毎年改善を加えられておるわけでございます。したがいまして、それに伴う経過措置とかいったものが非常に膨大なものになっていくわけでございまして、それを簡単にすると申しましても、片や受給権という権利を規定するわけでございますのでそう中途半端な規定もできないということで、私はもう実は毎国会毎日持って歩いているのですけれども、四十六年にそういう決議がございましてから、これを何とか一本化できないかということでこういう「実効恩給規程」といったようなものをつくってやってきたわけでございますが、これもどうも帯に短し、たすきに長しという形で、専門家には使えないし、かといって素人の方には非常にわかりにくいというかむずかしいということで、さらにまたその翌年には「恩給制度のあらまし」という、こういうようなパンフレットをつくったわけでございますが、確かに先生おっしゃるように、なかなかわかりにくい点が多いかと思います。そこで、五十二年からこういう「わかりやすい恩給のしくみ」というのをつくりまして、これを全市町村に配って理解を助けるというような方式をとっておるわけでございます。内閣委員会先生方にもお配り申し上げておりますので、恐らくごらんになっておられると思いますが、これは非常に評判のいいわかりやすい書き方になっておると思います。こういった努力をいろいろ重ねてまいっておるわけでございますが、おっしゃるように、確かに恩給法自体は非常にむずかしい法律じゃないかと私も実感しております。
  208. 中路雅弘

    ○中路委員 抜本的な措置というのも検討していただきたいのですが、私もいま出された「恩給のしくみ」というパンフを見たんですよ。関係都道府県に聞きましたら、これは評判確かにいいのですが、印刷の数が大変少ないのですね。それで必要とする人に届いていないという問題もありますから、問い合わせが絶えない。抜本的な法整備が行われるまでの間、そのパンフでも増刷をして、恩給関係の窓口で、都道府県の窓口も含むわけですが、請求する人に手渡せるような配慮が必要じゃないかと私は思うのです。大臣、ひとつ、いまの評判がいいという「恩給のしくみ」でもいいのですが、パンフでもう少し関係者に徹底できるような措置を、増刷を含めて何か検討していただけませんか。
  209. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 この「恩給のしくみ」でございますが、五十五年は約一万二千部刷りまして、市町村の末端まで配っております。今度五十六年度に改正がありましたら、二万部くらい刷る予定でおるわけでございます。ただ、請求者、末端までといいますと、受給者が二百四十万人ございますし、毎年、傷病恩給加算改定、こういったいろいろな請求がやはり十万件近く参りますので、そういった受給者あるいは請求者の方までというのは非常にむずかしい問題じゃないかと思いますが、非常に評判がいいパンフレットなものですから、今後とも増刷をして、なるべく皆さんに御不便をかけないようにしたい、このように考えております。
  210. 中山太郎

    中山国務大臣 恩給局長自信の作品でございます。要求がある方々に十分行き渡るような努力をこれからも続けさせていただきたいと思います。
  211. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、窓口に来られた人に少なくとも全部渡るように、それだけは必要じゃないかということを言っているわけです。  それから、これも先ほど御質問がありましたけれども老齢福祉年金支給制限の撤廃ですが、これを見ますと、「恩給受給者に対する老齢福祉年金支給制限を撤廃する」というのは、たとえば七六年も決議しています。七七年も決議している。七八年、七九年、八〇年、毎国会同じ決議をしているのですね。確かに、額としては、先ほど御答弁のように、年々少しは改善はされているのですが、これもお聞きしておきましょう。厚生省の方がお見えになっていますが、いまどういう関係になっておりますか。
  212. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 福祉年金とほかの年金との併給のお尋ねでございますが、これは恩給に限りませんで、ほかの、福祉年金以外の厚生年金その他の公的年金全般にかかわる問題でございます。福祉年金は、当初、昭和三十四年に制度ができます際に、ほかの年金を受けておられない方を対象にいたしましてつくられた年金でございますので、その趣旨から申しまして、ほかの年金と併給をするというのは、この性格をがらっと変えることになるということでございます。ただ、当初、この福祉年金よりも低い年金をそのままというわけにはまいりませんので、福祉年金額まではほかの年金との差額を併給する、こういうことでやってまいったわけでございますが、その後いろいろ御要望があることもございまして、福祉年金額、ただいま月額二万四千円ほどでございますが、それ以上の水準、本年度四十五万円、明年度四十八万円の水準までは併給する、かように改善いたすことを予定しておるわけでございます。
  213. 中路雅弘

    ○中路委員 私が話しているのは、この附帯決議との関係なんですね。併給の限度額を引き上げてきた努力は認めるわけですけれども附帯決議というのは国会の意思ですから、老齢福祉年金の本来の性格を承知の上でこういう決議が繰り返しやられているわけです。したがって、行政機関としては、やはり国会の意思を尊重して、場合によっては法改正も含めて、これを撤廃しろということが国会の意思ですから、そういう方向で努力するのが行政機関のやらなければいけない仕事じゃないかと私は思うのですね。撤廃しろと毎回同じ決議をしている。増額しろという決議をしているのならいまの要望でいいのですけれども、撤廃しろということになれば、やはり撤廃して国会の決議に沿うように努力をしていくのが当然じゃないかと思うのです。国会の委員会の意思というのは撤廃に向けてどうするかということですから、この努力をどうするのかということと、それまでの期間、限度額をさらに大幅に引き上げるというふうにぜひしていただきたいと思いますが、もう一度、いまの点についていかがですか。
  214. 佐々木喜之

    ○佐々木説明員 お答え申し上げます。  附帯決議につきましては、毎年決議が行われているということは、もちろん十分承知をいたしておるわけでございます。ただ、福祉年金は、性格から申しまして、国民年金の中で拠出制の年金というのが本体でございまして、それを補完するものという位置づけになっております関係上、制度改正の都度、関係審議会等で御意見をいただく際に、併給というのはおかしい、社会保障の趣旨から言えば併給ということは趣旨ではない、こういうような御意見を毎々いただいておるわけでございまして、そういう点から申しまして、もちろん附帯決議承知をしておるわけでございますが、一方、国民年金制度あるいは社会保障の考え方からいたしますとまた問題もあるということでございます。したがいまして、先ほどお答え申し上げましたように、制度の趣旨はそのままといたしましても、毎年限度額を少しずつ引き上げて改善を図ってきているという状況でございます。
  215. 中路雅弘

    ○中路委員 この附帯決議に関する問題は、もう一度、最後に御質問したいと思います。  もう一つ加算年の事務処理を迅速にしろということで、「加算年の事務処理については、速やかに措置できるよう特段の配慮を行うこと。」、これも大体、毎回附帯決議で出されているわけですが、この附帯決議を受けていままでどのような措置を講じてこられたのか、申請がされてから決裁までどのぐらいの期間をいま要しているのか。総理府に上がってから処理されるまでどのぐらいの期間がかかっているわけですか。
  216. 小熊鐵雄

    小熊政府委員 加算年の事務処理でございますが、これが総理府に上がってまいりますと、大体一カ月ぐらいで処理しております。ただ、これは本属長経由で参りますので、総理府に上がりますまでに、都道府県を通りまして、それから厚生省を通りまして私どものところに上がってくるわけでございます。都道府県段階では、本人の一々の履歴とか、そういった細かい資料をつけて整備して上げてくるわけでございまして、これが完全にそろっている県でございますとわりあい問題ないわけでございますが、戦災とか火災で焼けてしまったようなところは、この部隊はどう回ったとかああ回ったという追跡をいろいろ行いながら整備していくわけでございます。そういった面で、ある限度はあるのじゃないかというふうには思っておりますが、総理府自体としては一カ月あるいは一カ月未満で処理いたしております。
  217. 中路雅弘

    ○中路委員 私も少し調べてみましたらいまおっしゃったとおりで、いわゆる都道府県段階ですね。経歴書の整理というのは機械化になじみませんから、結局それだけの事務処理をやる体制がなければだめですね。だから、この決議を実際にやっていくということになれば、都道府県恩給関係のこうした事務処理がやれるような体制をもう少し充実しなければ、この決議は空文になってしまうわけです。そういう点で事務処理の迅速化という決議をやっていくためには、この要員を含めて都道府県の体制をどうしていくのか、それに要するお金をどうするのかという問題まで総理府で考えてもらわないと、この決議は何回やっても実現できないわけですよ。いかがですか。
  218. 森山喜久雄

    ○森山説明員 厚生省といたしましては、ただいま先生の御指摘がございましたように、都道府県の方に委託費を流しておりまして、この請求進達をやっておるわけでございます。五十四年に加算年恩給金額への算入というのが、従来六十五歳以上の方ということだったわけでございますが、これが六十歳まで引き下げられまして、六十歳から六十四歳までの方についても加算年恩給金額に反映させるということになったわけでございます。この関係で非常に事務が、請求書がどっと出てまいりまして、本年度、県の方も大分御苦労願いまして、かなりの進達をしておるわけでございます。  それで、厚生省といたしましては、委託費として約一億を都道府県に支出しているわけでございますが、都道府県の方といたしましても、だんだん古い方がおやめになるというようなことで、事務処理にはかなり御苦労されているようでございますけれども、この履歴の整備その他の問題は、こういう方々はすでに普通恩給受給されておるわけでございますから、一応の履歴というのはできておるわけでございます。ただ、加算をもう一回全履歴についてやり直すということでございますので、事務量といたしましてはかなりあるわけでございますけれども、すでに大体一年を経過いたしましてだんだん軌道に乗っておりますので、今後は順調に進捗するのではないかというふうに考えております。現に厚生省の方にもかなり件数は上がっておりまして、厚生省といたしましては、ことしは七万件程度進達しようということだったわけでございまして、これは十分達成できる見通しでございます。  それから、来年度につきましても、この二月に全国の課長会議を開催いたしまして、特に六十歳から六十四歳までの方の加算恩給につきまして重点的に処理を願いたいということで、各県にもお願いをしているわけでございます。厚生省といたしましても、いま若干滞留があるわけでございますけれども、明年は若干人員を動員する、それから事務で簡素化できるところは恩給局とも相談をいたしまして簡素化してまいりたいということで、大いにこの加算恩給の処理に重点を置きまして努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  219. 中路雅弘

    ○中路委員 毎年同じ附帯決議をやらなくてもいいように、ひとつことしは努力していただきたいと思います。  あと二、三点で終わりたいと思いますが、これもやはり七五年に決議されている問題です。恩給を担保にした貸付額の引き上げですけれども恩給の担保金融の問題では、金融公庫等定められた金融機関しかできないわけなんで、その点では実効を確保するためには貸付条件を余り厳しくしますと問題があると思います。現在、貸付限度額は幾らになっているのかということと、あわせて、この引き上げの要求が非常に強いわけですから、この点をさらに緩和すべきであると考えますが、総理府、大蔵省それぞれ簡単に御答弁願いたいと思います。
  220. 日向隆

    ○日向説明員 中路委員よく御存じと思いますが、現在国民金融公庫が行っております恩給担保貸し付けにつきましては、貸付額は恩給等の受給年額の三年分ないしは百四十万円、いずれか低い方ということになっております。これが百四十万ということで一定の限度に抑えられておりますのは、私が聞いておりますところによりますれば、恩給年額の高い人と低い人とのバランスの問題やら、恩給受給される方の恩給等は生活の手段になるわけでございますが、これを三年間まるまる押さえ込むことが妥当かどうかという問題等がございまして、一定の貸付金額に抑えているわけでございます。  しかしながら、いま先生の御指摘がございましたように、この恩給担保貸し付けの貸付限度につきましては、引き上げの要請が非常に強いものでございますから、私どもといたしましては、特に昭和五十三年度から毎年この貸付額の引き上げ措置を図っております。  具体的な数字で申し上げますと、昭和五十三年度につきましては、従来の百万から百十五万、昭和五十四年度につきましては、その百十五万をさらに引き上げまして百三十万、現在はいま私が申し上げましたように百四十万ということになっておるわけでございます。この限度額につきましては、恩給受給年額の増加の問題とかあるいは物価の上昇等といった問題をにらみながら、私どもといたしましては借入需要者の状況を十分勘案いたしまして、なお引き上げについて検討を加えていく所存でございます。  ちなみに申し上げますと、五十六年度からはさらに十万引き上げまして、貸付限度百五十万ということを予定しております。この点、十分御理解をいただきたいと思います。
  221. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点は、老齢者の控除額の引き上げです。租税特別措置法による老齢者の控除額を引き上げてほしい、これは請願で採択されていますけれども、総理府はこの採択された請願を受けて大蔵省との間でどういうふうにこれを進められているのかということと、今後ともこの老齢者の控除額の引き上げについて特別の努力をしていただきたいと思いますが、これも大蔵省、できたら総理府も御答弁願いたい。
  222. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答えいたします。  老齢年金特別控除の額は現在七十八万円になっております。これを引き上げろという御要望はかねがね出されているわけでございますが、私どもこの問題を検討いたします場合には、老齢年金特別控除を受ける方々のいわゆる課税最低限と申しましょうか、それと、これを受けない一般のサラリーマンの方の課税最低限、これを比較いたしまして、両者が余りバランスを失することにならないようにするという観点からいろいろ勉強しているわけであります。  ちなみに、夫婦という世帯をとりまして、年金特別控除を受けられる場合と一般サラリーマンの場合との格差を見てみますと、昭和四十八年が二・〇三倍になっておりました。その後、一・七倍、一・八九倍、一・九倍というような推移をたどっておりまして、大体二倍前後ということで来ているわけであります。御承知のように、昨今の財政事情で所得税の減税が最近見送られてきております。したがいまして、一般の方々の課税最低限が上がらない。したがって、老齢年金をお受けになる方々の課税最低限も上げられないということになっているわけであります。このような事情を考えましたときに、老齢年金特別控除だけをこの際引き上げるということはいかがかというふうに私どもは考えております。
  223. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題も請願が採択されている問題ですから、引き続いて努力をしていただきたいと思います。  もう一点、これは先ほども御質問がありましたが、軍歴の年金通算の問題ですけれども、昨年の四月八日の委員会で私が小渕大臣にお聞きしたときに、大臣はこういうふうに答弁されているのですね。「短期の軍歴を持った方々が戦後、共済年金に移行していく場合と国民年金、厚生年金等に継続していく場合に、通算される場合、されない場合という不公平な状況が起こってきているということに関しまして、私も議員の一人として素朴な疑念を持ちまして、自民党櫻内会長のもとでその是正方の運動を展開してきた」「五十五年度予算の中で調査費という形では計上いたしておりませんが、私といたしましては、ひとつ有識者の意見を十分拝聴してこの問題について研究する場も必要ではないか、こう考えまして、」「近々、でき得ますればこの軍歴通算の問題等に関しましては有識者の意見を拝聴する何らかの会等の設置について研究してみたい、」というふうに大臣は答弁されているのです。これは昨年の四月なんですね。大臣がこの席で、軍歴通算の問題について有識者の意見を聞いて研究する会を設置したいという答弁をされているんですが、その後、この問題はいかがされたのですか。
  224. 中山太郎

    中山国務大臣 前小渕長官の意を受けまして、総理府といたしましては、昨年秋以来、軍歴研究会という名のもとに有識者に御参加をいただいて御意見を承っている過程でございます。
  225. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題は改めてまた論議をしてみたいと思います。  時間も節約をしたいと思いますので、私は二、三の問題だけきょう取り上げたのですが、これは委員長に特にお願いしたいのです。いまお話ししました調査室の資料をいただきますと、十年間本当に衆議院、参議院で附帯決議がたくさん恩給についてやられて、それも同じ問題が毎年毎年やられている。私はその点で、国会の請願の採択や附帯決議のされた問題について行政機関に軽視があると思うのですね。附帯決議というのは形だけ整えたらいいというものじゃなくて、そういう点で、その年の国会で採択された請願や特に附帯決議については、その処理がどうなっているかということを一定の時期に委員会にその処理状況が報告されるというようなシステムが必要ではないか。そうでないと、十年間も毎年同じ附帯決議をやっているということでは、もう国会の意思が全く無視されてしまうということになるので、できればこの委員会で採択された附帯決議については、一年以内とかその間にこの附帯決議がどう処理されたのかという状況報告をひとつ委員会でしていただいて、さらにその問題について委員会でも論議ができるというような措置をぜひしていただきたい。一度理事会でこの附帯決議の取り扱いについて検討をしていただきたいと思うわけですが、委員長、いかがですか。
  226. 江藤隆美

    江藤委員長 ただいま御意見のありました附帯決議の取り扱い、それから前にちょっと意見のありました請願の取り扱い、これらにつきましては大事なことでありますから、理事会でよく今後の取り扱いを御相談申し上げたいと思いますので……。
  227. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一言。実はこの問題で、現在の藤尾労働大臣が本委員会委員長をやっておられたときに、私この問題を取り上げまして、藤尾委員長の発言で、採択した附帯決議請願については原則として当該年度に措置する旨の申し合わせを理事会で行ったことがあります。やはりこういう趣旨を今後とも生かしていただきたいということをぜひお願いしておきたいと思いますし、最後に大臣にお願いしたいのですが、附帯決議の、きょうは二、三の問題しか取り上げていないのですが、全部一度調べてみたのです。どういう附帯決議が何年にやられてどうなっているかということを一覧表をつくって私持っているのですけれども、本当に毎年、恩給については同じ附帯決議がやられているということなので、この処理については、やはり真剣に行政機関として対応していただきたい。先ほども、いまの法体系ではむずかしいという答弁でやらない。国会の意思ですから、そうだったら法改正すればいいわけですから、その点を含めて大臣から最後にひとつ御発言をいただきたいと思います。
  228. 中山太郎

    中山国務大臣 先生御指摘の点は、私もこの内閣委員会での藤尾委員長時代の決定というものもよく理解をいたしておるところでございます。総理府といたしましても、附帯決議をいただきました御趣旨を十分体して、その対策のために努力をしてまいりたい、このように考えております。
  229. 中路雅弘

    ○中路委員 終わります。
  230. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  231. 江藤隆美

    江藤委員長 この際、愛野興一郎君から、本案に対する修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。愛野興一郎君。     —————————————  恩給法等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  232. 愛野興一郎

    ○愛野委員 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただき、その趣旨を申し上げますと、原案のうち、公務員給与改善に伴う恩給年額の増額等の措置は、昭和五十六年四月一日から施行することといたしておりますが、これを公布の日から施行し、本年四月一日から適用することに改めようとするものであります。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  233. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  234. 江藤隆美

    江藤委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  恩給法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、愛野興一郎君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  235. 江藤隆美

    江藤委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  236. 江藤隆美

    江藤委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  237. 江藤隆美

    江藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、愛野興一郎君外四名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党の共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。岩垂寿喜男君。
  238. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党各派共同提案に係る恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかに善処すべきである。  一 恩給の実施時期については、現職公務員の給与より一年の遅れがあるので、遅れをなくすよう特段の配慮をするとともに各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めること。  一 恩給の最低保障額については、引き続きその引上げ等その改善を図ること。  一 扶助料については、さらに給付水準の実質的向上を図ること。  一 加算年の事務処理については、速やかに措置できるよう特段の配慮を行うこと。  一 戦地勤務に服した旧日赤看護婦及び旧陸海軍看護婦に対する慰労給付金の増額を検討すること。  一 恩給受給者に対する老齢福祉年金支給制限を撤廃すること。  一 外国特殊法人及び外国特殊機関の米指定分の件について速やかに再検討を加え適切な措置を講ずること。  一 現在問題となっているかつて日本国籍を持つていた旧軍人軍属等に関する諸案件(解決済みのものを除く。)について検討を行うこと。   右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じて、すでに明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願いを申し上げます。
  239. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  240. 江藤隆美

    江藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。中山総理府総務長官。
  241. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま御決議になりました事項に関しましては、誠意を持って検討してまいりたいと考えております。     —————————————
  242. 江藤隆美

    江藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  244. 江藤隆美

    江藤委員長 次回は、来る四月七日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十分散会      ————◇—————