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1981-06-03 第94回国会 衆議院 逓信委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年六月三日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 佐藤 守良君    理事 伊藤宗一郎君 理事 加藤常太郎君    理事 畑 英次郎君 理事 堀之内久男君    理事 阿部喜男君 理事 鈴木  強君    理事 竹内 勝彦君 理事 西村 章三君       秋田 大助君    浦野 烋興君       鴨田利太郎君    長谷川四郎君       吹田  愰君    森  美秀君       森山 欽司君    久保  等君       楯 兼次郎君    米田 東吾君       藤原ひろ子君    村上  弘君       依田  実君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 山内 一郎君  出席政府委員         郵政大臣官房長 奥田 量三君         郵政大臣官房経         理部長     澤田 茂生君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         郵政省電波監理         局長      田中眞三郎君         郵政省人事局長 岡野  裕君         労働大臣官房審         議官      松井 達郎君  委員外出席者         外務省情報文化         局報道課長   寺田 輝介君         大蔵省主計局給         与課長     水谷 文彦君         労働省労政局労         働法規課長   中村  正君         会計検査院事務         総局第五局長  丹下  巧君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社総務理事   玉野 義雄君         日本電信電話公         社職員局長   児島  仁君         日本電信電話公         社経理局長   岩下  健君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     坂本 朝一君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    中塚 昌胤君         参  考  人         (日本放送協会         技師長)    高橋  良君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   山本  博君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     坂倉 孝一君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     田中 武志君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     海林澣一郎君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     渡辺 伸一君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     荒井 治郎君         参  考  人         (日本放送協会         経営総務室室         長)      片岡 俊夫君         参  考  人         (日本放送協会         経理局長)   青柳 保夫君         逓信委員会調査         室長      芦田 茂男君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   西田 八郎君     木下敬之助君 同月二十八日  辞任         補欠選任   依田  実君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     依田  実君 同月二十九日  辞任         補欠選任   吹田  愰君     栗原 祐幸君 同日  辞任         補欠選任   栗原 祐幸君     吹田  愰君 六月三日  辞任         補欠選任   福永 健司君     浦野 烋興君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     福永 健司君     ――――――――――――― 五月一日  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (愛野興一郎紹介)(第三六〇六号)  同(野上徹紹介)(第三七一一号)  同(米沢隆紹介)(第三七一二号) 同月七日  電気通信事業健全経営に関する請願池端清  一君紹介)(第三七三二号)  同(上田哲紹介)(第三七三三号)  同(上原康助紹介)(第三七三四号)  同(大島弘紹介)(第三七三五号)  同(角屋堅次郎紹介)(第三七三六号)  同(木間章紹介)(第三七三七号)  同外一件(新盛辰雄紹介)(第三七三八号)  同(塚田庄平紹介)(第三七三九号)  同(森井忠良紹介)(第三七四〇号)  同(井上一成紹介)(第三九四九号)  同(勝間田清一紹介)(第三九五〇号)  同(久保等紹介)(第三九五一号)  同(上坂昇紹介)(第三九五二号)  同(嶋崎譲紹介)(第三九五三号)  同(鈴木強紹介)(第三九五四号)  同(田邊誠紹介)(第三九五五号)  同(高田富之紹介)(第三九五六号)  同(塚田庄平紹介)(第三九五七号)  同(堀昌雄紹介)(第三九五八号)  同(村山喜一紹介)(第三九五九号)  同(森井忠良紹介)(第三九六〇号)  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (小杉隆紹介)(第三七五九号)  同(池端清一紹介)(第三七八六号)  同(岡田利春紹介)(第三七八七号)  同(北山愛郎紹介)(第三七八八号) 同月八日  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (田邉國男紹介)(第四一〇九号)  電気通信事業健全経営に関する請願鈴木強  君紹介)(第四一二八号) 同月九日  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (野坂浩賢紹介)(第四一七二号) 同月十一日  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (藤原ひろ子紹介)(第四四五四号)  同(金子みつ紹介)(第四四九九号) 同月十四日  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (石橋政嗣君紹介)(第四九九一号)  同(玉置一弥紹介)(第四九九二号)  同(村山喜一紹介)(第四九九三号)  同(春田重昭紹介)(第五一四六号) 同月二十七日  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (森井忠良紹介)(第五二三八号)  同(奥田敬和紹介)(第五二九三号) 同月二十八日  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (土井たか子紹介)(第五三七〇号)  有線音楽放送正常化に関する請願伊藤宗一  郎君紹介)(第五五二一号)  同(加藤常太郎紹介)(第五五二二号)  同(竹内勝彦紹介)(第五五二三号)  同(畑英次郎紹介)(第五五二四号) 同月二十九日  有線音楽放送正常化に関する請願堀之内久  男君紹介)(第五六〇二号) 同月三十日  有線音楽放送正常化に関する請願阿部未喜  男君紹介)(第五八七九号)  同(佐藤守良紹介)(第五八八〇号)  同(鈴木強紹介)(第五八八一号)  同(藤原ひろ子紹介)(第五八八二号) 六月一日  身体障害者に対する郵政行政改善に関する請願  (愛知和男紹介)(第六二三六号)  有線音楽放送正常化に関する請願依田実君  紹介)(第六二三七号)  郵便法第四十四条第一項の施行に関する請願  (大塚雄司紹介)(第六二三八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  閉会中審査に関する件  日本放送協会昭和五十三年度財産目録貸借対  照表及び損益計算書  逓信行政に関する件  請 願   一 福岡市に電電サービスセンター設置に関     する請願太田誠一紹介)(第二八一     九号)   二 一般テレビ番組への字幕手話通訳挿入     に関する請願石原健太郎紹介)(第     二八四三号)   三 文字多重放送聾唖者向け利用に関する     請願石原健太郎紹介)(第二八四四     号)   四 身体障害者に対する郵政行政改善に関す     る請願石田博英紹介)(第二九一九     号)   五 同(粟山明君紹介)(第二九二〇号)   六 同(中井洽紹介)(第三〇三三号)   七 同(部谷孝之紹介)(第三〇三四号)   八 一般テレビ番組への字幕手話通訳挿入     に関する請願浜田卓二郎紹介)(第     三三七一号)   九 文字多重放送聾唖者向け利用に関する     請願浜田卓二郎紹介)(第三三七二     号)  一〇 身体障害者に対する郵政行政改善に関す     る請願坂田道太紹介)(第三三七三     号)  一一 同(近岡理一郎紹介)(第三三七四     号)  一二 同(神田厚紹介)(第三四四五号)  一三 同(愛野興一郎紹介)(第三六〇六     号)  一四 同(野上徹紹介)(第三七一一号)  一五 同(米沢隆紹介)(第三七一二号)  一六 電気通信事業健全経営に関する請願     (池端清一紹介)(第三七三二号)  一七 同(上田哲紹介)(第三七三三号)  一八 同(上原康助紹介)(第三七三四号)  一九 同(大島弘紹介)(第三七三五号)  二〇 同(角屋堅次郎紹介)(第三七三六     号)  二一 同(木間章紹介)(第三七三七号)  二二 同外一件(新盛辰雄紹介)(第三七三     八号)  二三 同(塚田庄平紹介)(第三七三九号)  二四 同(森井忠良紹介)(第三七四〇号)  二五 同(井上一成紹介)(第三九四九号)  二六 同(勝間田清一紹介)(第三九五〇     号)  二七 同(久保等紹介)(第三九五一号)  二八 同(上坂昇紹介)(第三九五二号)  二九 同(嶋崎譲紹介)(第三九五三号)  三〇 同(鈴木強紹介)(第三九五四号)  三一 同(田邊誠紹介)(第三九五五号)  三二 同(高田富之紹介)(第三九五六号)  三三 同(塚田庄平紹介)(第三九五七号)  三四 同(堀昌雄紹介)(第三九五八号)  三五 同(村山喜一紹介)(第三九五九号)  三六 同(森井忠良紹介)(第三九六〇号)  三七 身体障害者に対する郵政行政改善に関す     る請願小杉隆紹介)(第三七五九     号)  三八 同(池端清一紹介)(第三七八六号)  三九 同(岡田利春紹介)(第三七八七号)  四〇 同(北山愛郎紹介)(第三七八八号)  四一 同(田邉國男紹介)(第四一〇九号)  四二 電気通信事業健全経営に関する請願     (鈴木強紹介)(第四一二八号)  四三 身体障害者に対する郵政行政改善に関す     る請願野坂浩賢紹介)(第四一七二     号)  四四 同(藤原ひろ子紹介)(第四四五四     号)  四五 同(金子みつ紹介)(第四四九九号)  四六 同(石橋政嗣君紹介)(第四九九一号)  四七 同(玉置一弥紹介)(第四九九二号)  四八 同(村山喜一紹介)(第四九九三号)  四九 同(春田重昭紹介)(第五一四六号)  五〇 同(森井忠良紹介)(第五二三八号)  五一 同(奥田敬和紹介)(第五二九三号)  五二 同(土井たか子紹介)(第五三七〇     号)  五三 有線音楽放送正常化に関する請願(伊     藤宗一郎紹介)(第五五二一号)  五四 同(加藤常太郎紹介)(第五五二二     号)  五五 同(竹内勝彦紹介)(第五五二三号)  五六 同(畑英次郎紹介)(第五五二四号)  五七 同(堀之内久男紹介)(第五六〇二     号)  五八 同(阿部喜男紹介)(第五八七九     号)  五九 同(佐藤守良紹介)(第五八八〇号)  六〇 同(鈴木強紹介)(第五八八一号)  六一 同(藤原ひろ子紹介)(第五八八二     号)  六二 身体障害者に対する郵政行政改善に関す     る請願愛知和男紹介)(第六二三六     号)  六三 有線音楽放送正常化に関する請願(依     田実紹介)(第六二三七号)  六四 郵便法第四十四条第一項の施行に関する     請願大塚雄司紹介)(第六二三八     号)      ――――◇―――――
  2. 佐藤守良

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  日本放送協会昭和五十三年度財産目録貸借対照表及び損益計算書議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件の審査が終了するまで、随時、参考人として日本放送協会当局出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 佐藤守良

    佐藤委員長 まず、郵政大臣から説明を求めます。郵政大臣山内一郎君。
  5. 山内一郎

    山内国務大臣 ただいま議題となりました日本放送協会昭和五十三年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書国会提出につきまして、概略御説明申し上げます。  これらの書類は、放送法第四十条第三項の規定により、会計検査院検査を経まして国会に提出するものであります。  日本放送協会から提出された昭和五十三年度貸借対照表等によりますと、昭和五十四年三月三十一日現在における資産総額は一千八百八十五億六千万円で、前年度に比し十四億八千四百万円の増加となっております。  これに対しまして、負債総額は七百二十六億七千九百万円で、前年度に比し十九億三千五百万円の減少となっております。資本総額は一千百五十八億八千百万円で、前年度に比し三十四億一千九百万円の増加となっております。  資産内容を見ますと、流動資産四百七十一億九千四百万円、固定資産一千三百九十四億六百万円、特定資産十七億八千六百万円、繰延勘定一億七千四百万円であり、固定資産内容は、建物五百二十六億八千八百万円、土地百六十五億一千百万円、機械三百八十億三千万円、その他の固定資産三百二十一億七千七百万円となっております。  また、負債内容は、流動負債二百七十七億一千八百万円、固定負債四百四十九億六千百万円であり、固定負債内容は、放送債券百七十八億六千万円、長期借入金百八十五億五千百万円、退職手当引当金八十五億五千万円となっております。  資本内容につきましては、資本七百五十億円、積立金三百七十四億六千二百万円、当期事業収支差金三十四億一千九百万円となっております。  次に、損益について御説明申し上げます。  経常事業収入は二千百四十一億三千六百万円で、前年度に比し五十億一千二百万円の増加となっております。  これに対しまして、経常事業支出は二千九十九億一千四百万円で、前年度に比し百九十五億五千五百万円の増加となっております。  この結果、経常事業収支差金は四十二億二千二百万円となっております。  これに特別収入四億五千三百万円及び特別支出十二億五千六百万円を含めまして、事業収入は二千百四十五億八千九百万円、事業支出は二千百十一億七千万円で、事業収支差金は三十四億一千九百万円となっております。  以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  6. 佐藤守良

  7. 坂本朝一

    坂本参考人 ただいま議題となっております日本放送協会昭和五十三年度財産目録貸借対照表及び損益計算書概要につきまして御説明申し上げます。  まず、財産目録貸借対照表当年度末現在の資産総額は一千八百八十五億六千万円で、この内訳は、流動資産四百七十一億九千四百万円、固定資産一千三百九十四億六百万円、特定資産十七億八千六百万円、繰延勘定一億七千四百万円で、このうち固定資産内容は、建物五百二十六億八千八百万円、土地百六十五億一千百万円、機械三百八十億三千万円、その他の固定資産三百二十一億七千七百万円でございます。  この資産総額は前年度末と比較し、十四億八千四百万円の増加となっております。  これは主として、当年度建設計画に基づきテレビジョン放送網建設放送設備整備等を行ったことにより固定資産が三十二億五千百万円増加しましたが、前年度からの繰越金の一部を当年度において債務償還設備改善に使用したこと等により流動資産が十八億九千百万円減少したためでございます。  一方、これに対する負債総額は七百二十六億七千九百万円で、この内訳は、流動負債二百七十七億一千八百万円、固定負債四百四十九億六千百万円で、このうち固定負債内容は、放送債券百七十八億六千万円、長期借入金百八十五億五千百万円、退職手当引当金八十五億五千万円でございます。  この負債総額は前年度末と比較し十九億三千五百万円の減少となっておりますが、これは長期借入金減少等により固定負債が三十七億一千万円減少し、一方、受信料前受金等増加により流動負債が十七億七千五百万円増加したためでございます。  また、資本総額は一千百五十八億八千百万円で、この内訳は、資本七百五十億円、積立金三百七十四億六千二百万円及び当期事業収支差金三十四億一千九百万円でございます。この資本総額は前年度末と比較し、三十四億一千九百万円の増加となっております。  次に、損益計算書により経常事業収支について見ますと、まず、受信料等経常事業収入は二千百四十一億三千六百万円で、前年度と比較し五十億一千二百万円の増加となりました。  これは主として受信料増加によるもので、極力受信者維持増加に努めました結果でございます。  なお、有料受信契約者数は、カラー契約増加等により六十万件増加し、当年度末には二千七百七十二万件となりました。  次に、経常事業支出は二千九十九億一千四百万円で、この内訳は、給与七百五十九億二千百万円、国内放送費五百五十七億四千七百万円、国際放送費十二億七百万円、営業費二百八十六億二千五百万円、調査研究費二十五億六千四百万円、管理費二百六十六億四千三百万円、減価償却費百六十六億三千八百万円、財務費二十四億六千九百万円となっております。  これは前年度と比較し百九十五億五千五百万円の増加となりましたが、主として放送番組内容充実刷新受信者維持増加対策の推進及びこれらの事業遂行に伴う維持運用費等増加によるものでございます。  以上の結果、経常事業収支差金は四十二億二千二百万円となりました。  この経常事業収支差金に、特別収入四億五千三百万円を加え、特別支出十二億五千六百万円を差し引いた当期事業収支差金は三十四億一千九百万円となりました。  この当期事業収支差金三十四億一千九百万円は、翌年度事業収支不足額を補てんするための財源に充てるものであります。  これをもちまして、協会昭和五十三年度財産目録貸借対照表及び損益計算書につきましての概要説明を終わらせていただきますが、今後の事業運営に当たりましても、公共放送としての使命と責務を銘記し、一層放送事業の発展に努力してまいる所存でございます。  何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第でございます。
  8. 佐藤守良

    佐藤委員長 次に、会計検査院当局から検査結果について説明を求めます。会計検査院丹下第五局長
  9. 丹下巧

    丹下会計検査院説明員 日本放送協会昭和五十二年度決算につきまして検査いたしました結果を説明いたします。  日本放送協会昭和五十三年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書は、昭和五十四年十一月八日内閣から送付を受け、その検査を終えて、同年十二月十日内閣に回付いたしました。  同協会の会計につきまして検査をいたしました結果、特に不当と認めた事項はございません。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  10. 佐藤守良

    佐藤委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 佐藤守良

    佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨田利太郎君。
  12. 鴨田利太郎

    鴨田委員 昭和五十三年度NHK決算は、結果的には事業収支差金三十四億円余りを翌年の五十四年度に繰り越すことになったとの説明でありますが、この五十三年度は五十一年度に始まりました三カ年計画最終年度で、本来収支差金がなくなるように計画されていたものと理解しております。経営努力もありましょうが、どのような理由で三十四億円もの多くの金が繰り越しされたか、これを御説明願いたいと思う次第であります。
  13. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  いま先生おっしゃいますように、五十一年度料金改定をさせていただきました。そのときに計算期間としましては三年までの三カ年間で収支均衡をとるようにということで必要な料金改定をさせていただいたわけでございます。しかし、毎年度収支でございますと、最初の年度においては黒字でございますが、最終の五十二年度におきましては赤字やむなしという財政計画でございました。それは事業収支差金では二十九億の赤字であったわけでございます。これが先生おっしゃいますように結果的には三十四億のプラスというふうになっているわけでございますから、その関係では六十三億の改善がなされたということになるわけでございます。  それでは一体なぜその六十三億という改善がなされたかというわけでございますけれども、この五十三年度という経済環境を挙げてまいりますと、たとえば消費者物価をとってみましても、当時は六・八%で推移するだろうと見ていたのですけれども、結果的には半分の三・四で進んでしまったという事情がございます。それから公定歩合、これは私どもお金を借りておりますので、金利にかかわるわけでございますが、これも一年じゅう三・五という非常に低い率で推移いたしていたわけでございます。それから円とドルとのレートでございますが、年間平均で二百円といういわゆる円高で推移をしたわけでございまして、電気、それからガスの円高差益還元なんという事象も起きたわけでございまして、これらの経済環境の中で私ども事業運営をやったわけでございますので、もちろんその五十三年度計画期間外においてもできるだけ収支の剰余を出そうということで懸命の努力をいたしました。そのほかに、いま申し上げました物価上昇がわりと低位であったということで支出が減ってまいりましたし、それから外国為替レートの変動による改善もございました。さらには金融費用が少なくなったということで、全体としましては事業支出を、三%強でございますが、七十九億ほど圧縮できたわけでございます。  一方、収入の方でございますけれども収入の方は、五十三年度予定しておりました受信者――当初における受信者数予定に達しなかったというような問題、あるいは災害の免除が発生いたしましたなどの理由によりまして、全体として収入は逆に十六億ほど予定より減ったわけでございます。  事業支出が七十九億詰められましたけれども収入が十六億減ったということで六十三億という改善が可能になったわけでございまして、これが大きな力となりまして、五十四年度もう一年受信料値上げをがまんするというところにつながるわけでございます。  以上でございます。
  14. 鴨田利太郎

    鴨田委員 わかりました。  次に、放送受信契約数は、計画では二千八百四十二万件、実績では二千八百三十九万件と、わずかであるが減少しております。計画と実績では多少の違いがあることは理解できるのでありますが、テレビの普及率が高くなって契約数に限界が見えてきたのではないか、この点についてひとつ御説明願いたいと思います。
  15. 海林澣一郎

    ○海林参考人 お答え申し上げます。  先生のおっしゃいますように、それにいま渡辺が御説明しましたように、五十三年度の有料契約の増加数、お手元のこの表にございます六十万を目標にいたしまして、この年度に限りましては六十万一千と一千プラスになりました。しかし、前年度五十二年度の末に、実は五十二年度目標を七十万に立てたのでございますけれども最終的には六十七万九千ということで二万一千の落ち込みがありまして、それが先ほど渡辺が御説明しました多少の差異ということに相なったわけでございます。  先生がその次におっしゃいました契約の普及率でございますけれども、おっしゃるとおり、国勢調査の世帯数、それに現在契約していらっしゃる数、その普及が九〇%に達しているというような状況でございますので、限界に達している、関係が大いにあるというふうに認識しておりまして、その辺の対策を現在立てているというところでございます。
  16. 鴨田利太郎

    鴨田委員 それでは、その限界点に達した後のことにつきましてはまた後で質問したいと思いますけれども、次に核についてとか、そういうふうなものについてちょっとお聞きしたいと思うのです。  最近の核に関する論議を初め、食糧、石油資源等世界の動きが直接日本人の生活に非常に影響することがきわめて多くなってまいりました。NHKは公共放送として的確な情報を収集し、国民に伝える使命があると思います。どのような体制で世界の情報の収集に当たっておりますか、これをひとつお尋ねいたします。
  17. 田中武志

    田中参考人 御存じのように、最近の情報の国際化ということに伴いまして、海外のニュースあるいは映像に対する視聴者の期待とか要望というものは非常に多様化し、的確な情報分析を要求するような動きが非常に強くなっております。そこでNHKでは、現在海外の主な都市約二十一カ所に総支局を置きまして、情報網、機動力を生かしましてニュースの取材、そういった番組の制作といったものに当たっております。  しかし、中には非常に長期にわたりあるいは広範囲にわたるような事件など、たとえば中東地域の中東問題、そういったことがございますので、そういったときには国内から最小限度の人数を派遣いたしまして「NHK特集」などの制作に当たるということもございます。そのほかに、なかなかNHKの自主取材だけでは及ばない地域、そういったところもございますので、共同通信とかロイターとかいったところから外信ニュースを契約購入しております。  また映像ニュースにつきましても、そういったものにつきましてはビスニュースと契約をいたしまして、ヨーロッパあるいはアメリカから衛星を使いまして毎朝定時の伝送を行って、これを適宜ニュースの中に使っているというような状況でございます。
  18. 鴨田利太郎

    鴨田委員 世界の動きを追い、それに対していろいろ機材を備え、語学はもちろん秀でた判断力を持つ人間を養成する、と同時に外国からのニュースをよその通信社から買う、NHK自体でもだんだんとこれからまた個性の情報をとるために経費がかかってくると思います。受信料収入がこれから頭打ちになってくるように考えられますと、今度はNHKの使命を達成するために経済的基盤との関係を基本的に考え直す必要が来ておるんじゃないか、こういうふうに思うのでございますけれども、NHKの考えはどういう考え方をお持ちですか。
  19. 坂本朝一

    坂本参考人 いま先生の御指摘のように、NHKのそういう情報提供の任務というのは何と申しましてもわれわれとして第一に果たさなければならないという認識に立っておる次第でございます。  そうは申しましても、これも御指摘のようにテレビ受像機の普及がやや頭打ちというような傾向の中で、収入は伸び悩みながらなおNHKに対する皆様方の御期待というのは非常に高まっておる、それに何としてもこたえなければいけないだろうというふうに考えておりまして、そういう意味から言いますと、先般の本年度の予算を御審議いただきましたときにも申し上げましたように、NHKの長期経営のビジョンを立てながら重点的に、効率的にそういう面に対応していかなければならないのではないかというふうに考えておりまして、災害時におけるNHKの国民の期待にこたえる任務の遂行であるとか、いま御指摘の世界的な情報の提供ということを、何としてもそういう経済的な条件にマッチさせながら果たしていこうという覚悟と認識を持っておる次第でございます。
  20. 鴨田利太郎

    鴨田委員 そうしますと、現在の政府の交付金の十億をさらに増額してもらいたい、こういうふうな御意見がやはりあるわけですね。政府からもっとお金が欲しいのですか。
  21. 坂本朝一

    坂本参考人 それは、いつもこの問題につきましても、特に国際放送等につきましては、当委員会でも附帯決議等においても充実するようにということでございますので、私はそういう点について日ごろ御要望申し上げておる次第でございます。
  22. 鴨田利太郎

    鴨田委員 これからの日本を考えたときに、世界の動きを見るだけじゃなくて、日本の立場も世界に対してよく認識してもらわなければなりません。たとえば平和憲法、そしてまた非核三原則、核をつくらず、持たず、持ち込ませず、こういうふうなものが現在問題になっております。これをどういうふうにして、NHKはラジオ・ジャパンなどを通して日本の立場を認識してもらうような努力をしておるのですか、それをひとつお尋ねしたいと思います。
  23. 田中武志

    田中参考人 私どもの国際放送を通じまして、海外の各地の外国人及び在留邦人などに対しまして、できるだけ日本国内の事情その他につきましていろいろ聞いてもらいたいということで日常努力しておるわけでございます。  特に、こういった面では「時刻表」なりあるいは「ラジオ日本ニュース」とかそういったものもいろいろPRの手段として使っておりますし、また、そういった海外の外国の方あるいは在留邦人などに対しましては、いろいろな面での投書などを受けまして、それに対しての反応、反響といったものにつきましても日常的に十分把握いたしまして、それにこたえ得るような内容のニュースなりあるいは番組なりをつくりまして多方向に現在放送しているという状況でございます。
  24. 鴨田利太郎

    鴨田委員 それにしては外国の日本に対する理解というものがなさ過ぎるのじゃないかと私は思うのであります。昨年ブラジルに行きましても、日本の放送がなかなか聞きづらい、聞き取れないというふうなことも聞いておりましたし、また、これは共産圏の中ではもちろん制限しておるわけでございましょうけれども、ある意味におきましてしっかりとひとつ日本の立場を説明していただかないと、向こうのニュースばかり聞いておっても、やはり私はこれからの日本ということを考えた場合には、ぜひそういうふうな役目もNHKは持ってもらいたいと思う次第でございます。これにつきまして郵政大臣の意見をお聞きしたいと思いますけれども、よろしくどうぞお願いいたします。
  25. 山内一郎

    山内国務大臣 NHKで国際放送を実施をしてもらっておりますけれども、その重要性については、従来からでもそうでございましたが、いま鴨田委員の言われましたようにますます重要性は増してきておると思うわけでございます。日本の実情を余り知らない人が外国にはまだたくさんいる。いまブラジルのお話がございましたけれども、私も一昨年ブラジルに参りまして在留邦人と話をしたのでございますが、NHKの国際放送があるので非常に助かるというような話がありましたけれども、まだ内容的に、もっと広くやってもらえないかというような要望もございましたし、これは在留邦人の話ですが、それよりも外国人に対してもっともっと日本の実情をよく知ってもらって、ただ国際親善でなくて、経済交流が日本にいま一番重要なことでございますので、そういう点についても十分に活躍して大いに効果を発揮してもらうように――交付金が少ないということも私はよく認識をいたしております。この増額についても十分これから努力をしてまいりまして、国際放送の実を上げていくようにやってまいりたいと考えているわけでございます。
  26. 鴨田利太郎

    鴨田委員 外国ではどのくらいの人がどのようにして聞いておるか、また、PR等外国で聞かれるための努力はどのようにしておるか、外務省にちょっと聞きたいと思うのですが、外務省の方、どういうふうに……。
  27. 寺田輝介

    ○寺田説明員 お答え申し上げます。  まずラジオ・ジャパン、この聴取状況はどういうことであるかということでございますが、実は私どもは直接モニターしておるわけでございませんので、NHK等からいただいた資料を御紹介せざるを得ないわけでございます。  私の手元の資料によりますと、ことし五十六年の三月の聴取状況を見てみますと、二通りの放送があるように承っておりまして、一つは地域向け放送、もう一つは一般向け放送でございます。そこで地域向け放送に関しましては、中南米、北米西部、ハワイ向け、それから欧州向け、欧州向けにもいろいろな方向づけが行われておりますが、豪州、ニュージーランド向け、アジア大陸向け、東南アジア向け、南アジア、アフリカ向け、この十にわたります送信に関しましては一応良好だという聴取結果があったというふうに聞いております。他方、中東、北アフリカ向け、北米東部向け、それから先ほど先生の方からも御紹介ありました南米向け、アジア大陸向け及び東南アジア向け、一部の東南アジアになると思いますが、この五方向向けの送信に関しましては、やはり放送内容を理解するにはかなり努力を必要とする、こういう結果が出ております。さらに欧州の一部方向に向けましては、聴取困難な状態であったという結果がNHKの分析のあれには出ているというふうに私どもは承っております。
  28. 鴨田利太郎

    鴨田委員 それを改善するにはどうしたらいいでしょう。
  29. 寺田輝介

    ○寺田説明員 国際放送の問題に関しましては、これは主管庁が決まっておりまして、外務省の所管ではございませんが、しかし、私どもの立場からいたしますと、やはり国際放送といいますのは、これを強化することによってわが国の相互安全保障の一環になるという観点からしまして、常に国際放送の強化拡充の必要性というものはきわめて重要であると考えております。  そこで、これは私どもの見た現状の問題点でございますけれども、やはり欧米諸国等に比較しますると、わが国の国際放送といいますのは残念ながら放送時間が短いという問題が第一にございます。続きまして、国際放送に使われていますところの使用言語の数、これもやはり残念ながら少ない。加えましてやはり問題となりますのは、現在国際放送が実施されるに当たって使われています送信施設の老朽化、こういう問題は、これは外務省の面接の所管事項ではございませんが、私どもが見てもやはり老朽化が激しい、機械が古くなってきたという問題がございます。  その結果、当然のことだと思いますが、私どもの感じておりますところは二点ございまして、やはりわが国の国際放送が世界的に聞こえるためには、少なくとも二つの措置をとる必要があるのではないかと考えております。第一の措置は、新鋭の送信機を投入すると同時に、送信機の出力をアップする必要があるということでございます。第二点といたしまして、これはただ単に送信機の出力アップをしますだけで世界各地で聞こえるわけではございませんので、やはり海外中継基地をつくらなければいけないのではないか、こういうことをわれわれ感じております。  ちなみに海外中継基地に関しましては、現在ポルトガルのシネスで一カ所、これは先方の中継基地を借りているわけでございますが、しかし放送時間は非常に短いというふうに私どもは聞いております。
  30. 鴨田利太郎

    鴨田委員 なかなかいまいい回答を得ましたので、またお聞きします。  そうしますと、いよいよ予算との絡みになってまいります。もう受信料は限界ということになってくる。だけれども、やはり国際放送は続けなければならない。送信機の数、時間、出力を改善する場合、どのくらいの予算がかかるのですか。鈴木善幸先生も知らないなんというふうな、世界的な有名な人を知らないというのですから、大変な問題ですから、出力を大きくして日本の総理大臣はこれだという説明をしてもらわないと、これから総理が行ったときも、あれだれだろうと言われたら困っちゃいますから、よろしくどうぞ。
  31. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 郵政省でございますが、ただいま外務省の方からいろいろお話があったようでございますけれども、わが国の国際放送の現状はどうかということでございますが、確かに主要先進国、アメリカ、イギリス、西ドイツあるいはその他の国に比べまして、使っております送信機の電力あるいは放送時間数、そういう点において今後拡充していく必要があると思っております。また、いまもコメントがございましたように、ヨーロッパに中継基地を設けまして、一部私も実際に聞いてみましたけれども、効果が上がっておるわけですけれども、一般に申しまして、日本の場合、地理的に非常に諸外国から離れたところにございますので、遠い地域、遠距離にある、非常に遠くから声をかけるというような面がございます。各国ともそれぞれの国におきまして努力しているわけで、そこへ遠くから行きますれば、距離が倍になれば電力は四倍要るというようなことになりまして、使える周波数の問題がある。同じ声を出しても、同じ周波数で話をするといいますか、同じ部屋で大声を出すというような競争関係にもございますわけで、私どもも、先ほどお話のありましたやはり海外中継の基地を借りるとかその他の方法があろうかと思いますけれども、これにつきましてはやはり外務省とも十分お話しないといけない面があろうか、NHKとは当然でございますが、そういうふうに考えておる次第でございます。  それからもう一つ、やはり周波数というものを使うわけですけれども、これは各国とも非常にたくさん同じようなところに五つも六つも入っておるというのが実情でございまして、この辺につきましても、実際に聞こうとすると非常につかまえにくいわけでございます。それから時間も一日せいぜい三十分とか一時間程度というようなことでございまして、それが大体電波の伝わり方の関係で、現状では年に四回入れかえるというようなことになっております。日本のラジオで言えば、TBSの九五四が三カ月たつと九六八に変わるあるいは千幾らに変わるというような実情があるわけです。そうしますと、きのうまで入っていたところのダイヤルの位置では、三カ月たちますと入らなくなるというようなことがあるわけでございまして、大体年に四回入れかえておるわけですけれども、いつの時点からどういう周波数でどういう時間に――少しずつ時間も変える必要が出る場合がございます。そういうようなことで、その辺についての広報的な周知の活動の必要もあるというようなことで、NHKともいろいろ相談いたしましてその辺の改善も行いたい。先ほど金銭的にどのくらいかかるのかということについては、いま数字をちょうど持ち合わせておりませんけれども、いろいろなやり方があろうかと思いますけれども、たとえば百キロの送信電力を二百キロにするとかそういう方法もございますし、いろいろな観点から努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  32. 鴨田利太郎

    鴨田委員 世界に百六十近くの国があります。みんな自国の利益を中心に考えております。これは日本もやはり同じだろうと思います。どうしても相手の国に日本の立場を知ってもらわなければなりませんので、それに対しましてぜひともこれから努力していただきまして、日本の立場をよく理解してもらえるようにひとつお願いしたいと思います。  それからNHKの五十三年度決算、黒字を翌年に繰り越し受信料の値上げを一年延ばした決算であり、その点では問題がないと言えます。しかし、今後受信料の限界の中でどう経営していくかはきわめて重要な課題であります。会長初め役員の真剣な取り組みを改めてお願いしたいと思う次第です。  最後に、長期ビジョン審議会の審議の状況についてお聞きしたいと思うわけであります。
  33. 山本博

    ○山本参考人 今年度の予算の御審議をいただいたときに同様の御質問がございましたので申し上げましたが、それ以降また大分時間がたっておりますので、それをつけ加えて御説明申し上げます。  昨年の七月に発足をいたしまして、当初の間は総会で全体的な問題を審議していただいておったのですが、昨年の秋、十一月前後から分科会をつくりまして、いわば小委員会制度というので具体的な問題をそれぞれの分野にわたって御審議をいただくことになりまして、放送の問題、制度の問題、技術の問題それから財政の問題、以上四つに分けまして、本年の五月までそれぞれの小委員会が十回前後継続して、それぞれの分野の問題について御審議をいただいております。  その中は、大きい問題から小さい問題、いろいろの角度から御議論をされておりますけれども、中にはまだ御意見が必ずしも一致しない点もございまして、今後詰めていかなければならない点も幾つか残っておりますが、総体としましては、NHKのあり方として、その持つ自主性というもの、独立性というもの、放送の不偏不党というもの、一つだけの意見にとらわれるような放送をしないように、これが将来ともぜひ必要であるというような基本線はどの小委員会でもお持ちになっております。それからもう一つは、国民が本当にNHKを支えておるのであって、NHKと国民との関係というものを今後ともより一層濃いものにして、常に国民の支持を得ていかなければならない、こういう二つの点はどの小委員会も全部基礎としてお考えになっておりまして、さらに具体的な問題を含めまして、この秋までに大体御意見をまとめていただいて、来年早々には全体としての答申をいただく、こういう手はずになっております。現在までのところそういう状況でございます。
  34. 鴨田利太郎

    鴨田委員 以上をもって質問を終わります。
  35. 佐藤守良

    佐藤委員長 鴨田利太郎君の質疑は終わりました。  阿部喜男君。
  36. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私の聞き違いかもわからなかったのですが、先ほど提案理由説明で、大臣がたしかニホン放送協会とおっしゃって、会長はニッポン放送協会と明確におっしゃった。実はこれは困っているのです。私どもの党でも、ニッポン社会党と言うのがあり、ニホン社会党と言うのがあるわけで、この際、権威ある公共放送NHKの見解を、ニッポンが本当か、ニホンが本当か、ちょっと聞かせておいていただけませんか。
  37. 坂本朝一

    坂本参考人 突然の御質問でいささかあれですが、私も正直言って、ニホン放送協会と言ったりニッポン放送協会と言ったりして、はなはだ無責任と御指摘を受けるかもしれませんけれども、いま事務局に聞きましたら、私どもは、ローマ字で記載するときはニッポン放送協会、NIPPON、そういうようになっているそうでございます。
  38. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうすると、ローマ字でつづるときはニッポンになるが、会長もニホン放送協会とおっしゃることもある。ということは、いずれを呼んでも構わないと理解していいわけですか――そうすると私の党も大変気が楽になるわけでございまして、ありがとうございました。  同じような関係でございますけれども、放送に使ういろいろな用語があるようでございます。たとえば刑事事件で訴追をされたようなときには姓を呼び捨てにするとかあるようでございます。  先般フランス大統領の選挙がありまして、ミッテランが大統領に当選をした。そのときNHKの報道では明確に、フランスに左翼政権が誕生したというふうに報道されました。私は聞きながら、では一体、左翼政権と言う限り、片方に右翼の政権が誕生する可能性もある。それは一体何なのだろうか。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕 たとえばジスカールデスタンが大統領に当選しておったならば、そのときは、フランスは右翼政権が継続してやることになった、こういうふうに報道するのだろうかどうだろうか。その辺の定義を聞かせていただけませんか。
  39. 田中武志

    田中参考人 御指摘のように、ミッテランさんの当選の際に私ども左翼政権という言葉を使いましたけれども、その理由は、まず第一点は、ミッテラン政権の登場に当たってフランスのマスコミがラ・ゴーシュという言葉で表現しておりましたけれども、これは日本語に訳しますと左翼という訳語になりますので、私どものみではなく、新聞その他のマスコミにつきましても大体左翼政権誕生という表現をしたかと思います。それからフランスの場合でございますけれども、左右双方ともが革新という名前を標榜しておりまして、ジスカール政権の場合も中道右派というような呼称をしておりました。したがいましてフランスの場合は、日本流に保守、革新という分け方が適切ではないのではないかというようなことも私ども考えております。  いずれにいたしましても、こういった放送用語の定義につきましては、私どもの中で放送用語につきましての専門の、これは使っていい、使ってよくないという、文研の放送用語研究部というところがございまして、そこと十分連絡をとり合いながら、実際的に使ったり落としたりということをしているわけでございます。
  40. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 直訳することが直ちに日本の国民感情に与える正しい判断になるのかどうか。いま私が申し上げましたように、フランスでは左翼政権が誕生したと言えば、それでは片方のジスカールデスタンの場合は右翼政権と呼ぶのだろうかという疑問が生まれできます。また、フランスの言葉でどうか、私よくわかりません。フランス語は知りませんけれども、みずからは中道右派というような呼び方をしておるわけですから、そういうところを勘案してみると、軽々に左翼政権だというふうな決めつけ方の報道が公共放送としていいのかどうか。もう少しそういう点については、いまもお話があったように、慎重な取り扱いをする必要があるのではないか。日本の国民感情に与える場合は、フランスの国民の感じと違うごろになると私は思うのです。その辺もう少し慎重に扱っていただかないと、どうも心配な点があるのです。これは議論しても仕方がありませんが、ひとつ慎重に扱ってもらうということをお願いしておきたいと思います。  その次に、先般来問題になっております関係でございますが、NHKの放送番組の中で生涯教育というものについてどういうふうにお考えになっておるのか、今日までどういう取り組みをされてきたのか、簡単に説明をお願いします。
  41. 田中武志

    田中参考人 御存じのように、最近一般の社会人あるいは主婦の方、そういったところの中で、何とか自発的にいろいろ勉強していきたいという、いわゆる生涯教育に対する意欲が非常に高まっているということでございます。こういった自発的な学習意欲に対して放送というものが非常に大きな役割りを果たし得るということは、御存じのとおりでございます。私どもそういった意味合いから、家庭で簡便に利用できるという意味合いでの放送を通じての生涯教育というものを、いろいろこれまでも大学講座とかあるいは語学講座とか、そういったものを通じましていろいろ放送してきたわけでございます。特に昭和三十四年に教育テレビが開局いたしましてから、いわゆる生涯教育、社会教育というものを学校教育と並ぶ大きな領域として位置づけまして、その中でできるだけ家庭の主婦の方、一般社会人の方が十分に自発的な学習意欲に沿えるような形の番組を放送してきたというのが実情でございます。
  42. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 ところが、いま申し上げましたように、問題になっております放送大学学園法というのがこの委員会ではなかなか審査させてもらえなくて、よその方でやられておるわけですが、たしかきょうあたり、参議院から返ってきて衆議院の文教委員会でおやりになっておるようでございますけれども、これも明らかに生涯教育でございます。これはもう何人も異論のないところでございます。文部省の大学局長もそう言っておりますし、また趣旨にも生涯教育だ、こう書いてあります。その生涯教育の中で、特に大学程度のものをおやりになって一定の要件を満たした者には何か学士号みたいなものをやる、こういうことになっておるようですけれども、これは明らかに生涯教育です。そうすると、生涯教育と呼ばれる限りは大体保育から入ると私は思うのですが、保育、それから幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、社会教育と通じて生涯教育というものが構成されていくのだと思いますけれども、いまおっしゃったように、その生涯教育にNHKが今日まで真剣に取り組んでこられておる。それであるのに、また別にほとんど国費で賄われる生涯教育の放送が行われる。このことについてNHKは一体どうお考えになっておるのか。はっきりとした見識がなければいかぬと思うのですが、これはまずNHKの方からお伺いします。後で局長に聞きます。
  43. 田中武志

    田中参考人 先ほども申し上げましたように、私ども放送を通じて生涯教育に取り組んでおります。特に計画的、体系的な学習を目指す人たちに対しましては、先ほどもちょっと触れましたように、大学講座、語学講座、それからNHK文化シリーズというような番組を放送いたしまして支持を得ております。こういったことで放送を通じてやっておりますけれども、今後放送大学の放送内容ができました場合には、私どもは放送大学の放送内容というものは大学教育そのものを目的として行われるものというふうに理解しております。そういった意味合いで、いま私が申し上げましたNHKが現在やっております体系的な生涯教育というものにつきましては、今後さらにいろいろ需要というか要望が高まってまいると思いますので、私どもとしては、今後とも引き続きNHKの幅広い放送、過去の経験などを生かしながら、十分教育的な効果を認識しながら、皆さん方のニーズにこたえて、よりよい生涯教育にこたえ得る番組の提供、開発といったことに一層努力していきたいというふうに考えております。
  44. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 どうもわかったようでよくわからないのですけれども、やはりこれは私が申し上げたように、放送大学学園法の設置の趣旨の中には生涯教育ということをはっきり明確にしておるわけです。大学教育だけをおやりになるのではなくて、生涯教育を目標として、その中でこの大学の一定の資格をお取りになった方については学士号か何か知らぬが、そういうものを差し上げます、こういうことになっておるのであって、これは不特定多数の人を対象にした生涯教育であるということは間違いありません。したがって、いまお答えいただいたように、これは大学教育そのものを目的としておるんだというお考えならば認識が少し違うと思うのですが、これは局長がさっきから満を持しておるようですから、どうぞひとつ電波監理局長から。
  45. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 非常にいろいろ今日まで御議論いただいたところでございますけれども、私どもの理解としましては、先生の御質問をちょっと言いかえてみますと、NHKの教育放送と放送大学学園の放送が競合するのではないかというようなお気持ちもあろうかと思いますけれども、その辺につきましては、私どもは放送大学学園の放送というものは、先ほどNHKの方からもお答えになりましたように、学校教育法の規定に基づいた正規の大学教育の一環として行うのだというふうな理解でございます。その成果が、やはり一般にも聞かれますので、当然生涯教育にも役立つ、これは否定は申すわけではございません。しかしながらNHKが行っておる教育といいますのは、先生もおっしゃいましたように、幼稚園から、特に学校教育という形では高等学校までの課程だと思いますけれども、その他社会教育あるいは教養番組等、非常に幅広いもので、また国民の中にも非常にしみ通っておると申しますか成果を上げているというふうに思いますけれども、私どもといたしましては、この放送大学学園の放送ができました暁には、ますますNHKの教育放送とよい意味での競争と申しますか、お互いに刺激になるというような形で生々発展していただきたいというふうに希望しておるわけでございます。
  46. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 もうずいぶん議論しましたから改めてやる気はありませんが、これは局長、やはりあなたの認識の違いです。放送大学学園設立の趣旨というのが一番先に出てくる。その一番最初に、生涯教育を目標として、こう書いてあるのです。そう書いてあるのに、あなたがこれはやはり大学教育が先だ、こうおっしゃるのはうそで、立案した文部省そのものがこれは明らかに生涯教育を目的としてと書いてあるのですから、生涯教育に間違いありません。そうすると生涯教育は、公共放送NHKと、ほとんどの予算を国が持ついわゆる放送大学学園法による放送で行われる。あなたはいい意味の競争が行われることを期待しているということをおっしゃったけれども、国民の側から見ればむだなことで、そんなものは二つもなくたって、NHKがあるのですから、もう少しNHKの内容を強化をして、カリキュラム等について整備をしていけば、それで結構事は足りると思うのですが、これはいままで論争してきましたからいまさらやってみても仕方がない。私がNHKにお願いをしておきたいのは、いま電波監理局長から話がありましたように、これは競合することになることは恐らく間違いない。その競合することになったときどう対応していくのか。生涯教育に取り組んで、NHKが公共放送としてどう対応をし、その自主性を堅持していくのか。あるいはもう生涯教育は向こうにお任せして投げ出してしまうのか。その辺はこれからのNHKの存在の理由にかかわる大きな課題になると思いますから、この点は十分検討しておいてもらいたいと思っております。  次に、放送衛星についてちょっとお伺いしたいのですけれども、私どもの知っておる限りでは、一九八三年にはBS2を放送衛星として打ち上げる。それから一九八五年には今度BS2のいわゆる予備衛星を打ち上げる。これは二つなければ、予備がなければぐあいが悪いから。その目的は何よりも難視聴の解消を図るということに置かれておるようですけれども、前からこの委員会でも議論がありましたように、この二つの衛星の打ち上げで必要な予算は六百億に近いと言われております。この分担は国が四、NHKが六という割合ですから、仮に六百億かかるとするならば、三百六十億をNHKがこの衛星を打ち上げるために負担をしなければならない。さらに受信装置についても、各家庭がパラボラアンテナの小さいものをつくるのか、あるいはサテライト建設方式によるのか、これもまた明確になっていないようですけれども、各家庭に何万かかるかわからぬが、こういう衛星を打ち上げて見せてやるからおのおのパラボラアンテナを買いなさいというのもなかなか酷な話だ。そうするとNHKの方でサテライト建設方式をとらなければならない。もしそうなれば、これにもまた相当なお金がかかるし、合わせれば恐らく一千億を超すお金がNHKとして必要になってくるのではないかと私は考えておるのです。先ほど山本専務理事の方から、長期ビジョンの方でも財政等の小委員会も含めて検討しておるということですが、そうすると長期ビジョンの委員会が財政等も含めて検討中であるのに、片方では一九八三年から一九八五年、しかもこの衛星の寿命が仮に五年であるとするならば、そのまた五年先には同じようなことを繰り返していかなければならない。そういう莫大な予算を投じていまこの計画を遂行しなければならないのかどうか、NHKの財政上からも私は非常に大きい疑問を持ちます。長期ビジョンの委員会、特に財政の委員会はかくあるべきであるという財政上の見通しが立ってからならともかく、まだ片方では財政の長期ビジョンを検討しておる過程で、片方ではすでに長期のこういう放送衛星というものを実行に移そうというふうに計画をされておる、財政的にながめてきわめてずさんではないかという気が私はするのですが、この辺は会長どうお考えですか。
  47. 坂本朝一

    坂本参考人 先生御指摘のように、この問題はかなり以前から議論もし、検討もされておるのでございますけれども、何と申しましても、いまこれだけテレビの文化が国民の中に大きな影響力を持つというそういう時点において、なおかつテレビが見られないというような方々に何としてもお見せするということが協会の大きな使命ではないかというふうに考えまして、難視解消ということを第一目的として検討いたしたわけでございます。したがいまして、長期ビジョン審議会との関連はどうかという厳しい御指摘がございますけれども、私もその点は十分承知しながら、なおかつパラレルにこの問題は検討していかなければならないのではないだろうかというふうに考えておるわけでございまして、多少苦しい立場の釈明になるかと思うのでございますけれども、そこら辺のところはひとつ御了察いただきたいと思う次第でございます。
  48. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 難視地域の解消というのはNHKにとっては最大の課題であることは私もよく理解をいたしております。しかし、それでは片方財政的にながめて三千億足らずの年間予算の中でこの三百六十億、さらにはまた五年先には同じようなお金がかかる、さらにサテライト建設方式でもとろうとするならばもっと莫大な財政の負担が必要である。それだけのことをやるのならば、たとえば現行の共同受信装置なりあるいは超ミニ電波なりそういう方法での解消が図っていけないものだろうか、それでも難視の解消には役立つわけでございますから。私計算したことはありませんが、それは共同受信装置で完全にすべてをカバーするというのは無理かもわかりません。しかし、ほとんどカバーするために共同受信装置をつくったとするならば一体どのくらいの予算で上がるものだろうか、そのことを検討してみて、そしてさらにはNHKがその負担にたえ得るのかどうか。もしたえ得るのならば、いままでのうちに全部でき上がっておったはずなんですよ。全部が受信できるようになっておったのです。予算にたえられないからこそ今日の難視地域が残っておるわけなんですから。そのことを考えますと、いま難視地域を解消するためにといって、予算上たえがたいような放送衛星というものを打ち上げろということについていかがなものだろうかという気がするのですが、どんなものですか。
  49. 高橋良

    ○高橋参考人 ただいま阿部先生の方から御指摘のような財務的な問題があるわけでございますが、放送衛星を経営の中に導入しようという考え方は、すでに先生御高承のように、NHKといたしましては地上施策でもって難視の解消に努力してまいったわけでございます。ただいまお話がございましたように、残存の難視世帯というものは散在しました集落とか非常に微小化しました離島、僻地、そういうところに残されておるわけでございます。先生の御質問にお答え申し上げますけれども、仮にこれを地上施策でもって解消してまいるということになりますと、施設の地区数といたしまして約二万地区というのがわれわれの図上的な見当でございます。なお、その二万施設の一地区当たりの世帯が二十世帯以下というような計算になるわけでございます。したがいまして、これを全部現在の地上施策でやるといたしますと、きょう現在約一千億強というのがわれわれの試算勘定でございます。それに比べますと、先ほど会長がお話し申し上げましたように、東京、大阪のように非常にテレビがたくさん見えておるにかかわらず、まだその享受もできていないという離島、僻地の皆さんのためにできるだけ早くお見せしたい、それは経費効率から言いましても、放送衛星の方がよろしいということで、四十年来研究調査をいたしまして、ただいまBS2の計画を導入するということになったわけでございます。  また、私申し上げたいのは、この放送衛星は難視解消ということを主目的にしているわけでございますが、先日の参議院の逓信委員会の附帯決議にもございますように、副次的に全国的な非常災害の周知とか、それから都市の受信障害が非常にふえております、こういうものにも使える、それから回線代替とか、現在では辺地のために中継ができないようなところからも即時に中継ができるというような非常に副次的な効果があるわけでございますので、これも有効な利用ができるようにその積極的な活用を図ってまいりまして、経営の方としても経費的な見返りを含めまして検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、BS2の経費は、御高承のように、六〇%相当負担するということになっておるわけでございまして、協会の長期構想的な考え方としては、五十五年から五十七年度までの三カ年経営計画で約百三十億を見込んでおるわけでございます。引き続きまして五十八年から六十年の三カ年に、年度別に単年度の予算計画の中で見込んでまいりたい、そのように考えておるわけでございます。しかし先生御指摘のように、非常にこれが高いものでございますから、経費的に低廉化について、いわゆる技術的な面についての調査なり研究は私どもやってまいりますけれども、これをつくっていただく関係機関にこの低廉化について要望もしてまいりましたし、今後も要望をして関係機関にも努力していただきたい、さように考えている次第でございます。
  50. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 放送衛星が実際に稼働するまでの期間といえども、これは国の方も予算を出しておりますし、やはり難視解消のためにNHKあるいは国、地方自治体が一緒になってそれを進めていくわけなんですから、片方では放送衛星に期待をしながら、しかし片方では現実にここ数年間はやはり難視解消の努力をしていかなければならない。そういうものをずっと積算していって、最後は一千億になりますというただ勘定だけでは成り立たないのですね。たとえば向こう三年間に難視解消のために三百億なら三百億を使うとすれば、それだけでもう六百億プラス三百億で九百億になるのですから、その勘定をしてみると、五年ごとに打ち上げていく放送衛星というものが、それだけ負担にたえてやらねばならぬものかどうか私は疑問がありますが、これはいまから申し上げることに関係しますから、ひとまずいまの放送衛星はそこで切らしてもらいまして、次にNHKの予算の使い方ですが、きわめて簡単に、最近の放送事故の件数とそれから原因を知らせてもらえますか。
  51. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  放送事故につきましての定義でございますが、一つには、三分以上の障害、これは大体におきましては電波監理局の方にも事故として届けるものでございます。それから部内的に一秒以上三分以内のものを含めまして、五十年の段階におきましては基幹局、これは県庁所在地紙局の基幹局でございますが、これの一局所当たりが五十年では十・九回ございました。それが五十一年に九・四、五十二年に八・三、五十三年八・三、五十四年七・一、五十五年には五・五と、送信機の信頼度を含めまして件数は減っておるのが実情でございます。それから、電波監理局の方にお届けするような三分以上の事故につきまして、いま申し上げましたように、これを一局当たりの平均をとってみますと、五十年に〇・五五五回、五十一年に〇・三二、五十二年〇・五二、五十三年に〇・三、五十四年に〇・四、五十五年に〇・二回、このような状況になっておるわけでございます。  簡単にそれの原因を申し上げますと、自局の設備、つまり放送機関係の設備事故というのがそのうち一六%でございます。それから、電電公社からお借りしている回線事故並びに演奏所から放送所に送ります回線を含めまして一九%でございます。それから、ほとんどが非常災害時以外は商用電源を使っておるものですから、それの受電障害が五七%と一番多いわけでございます。それから雪害等による事故が八%、大体以上が五十年から五十五年までの放送事故の件別並びに原因でございます。
  52. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで、私の手元にあったものなんですけれども、一九七九年のNHK年鑑それから一九八〇年のNHK年鑑の中に、協会としてはたとえば設備計画の中で、一九七九年の年鑑にはローカル放送充実のための放送機材の整備及び報道用取材機器の整備を行うほか、老朽のものを取りかえる、こういうふうな方針が出されておるのですけれども、一九八〇年の年鑑を見ますと、何と昭和三十年代の前半に設置をしたVHFの全真空管式放送機がまだ三十局所も残っておる、こう書かれておるのですが、これは年鑑に相違いございませんか。
  53. 高橋良

    ○高橋参考人 年鑑の統計数字は間違いございません。
  54. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 こういう古い機材を一方では使っておるのが実態だ。これはNHKの予算に起因すると私は思うのですけれども、それが一つのNHKの姿だと見なければならない。しかも、これは新しいもので恐縮なんですけれども昭和五十四年、五十五年、五十六年、のいわゆる放送設備の予算を比較をしてみますと、五十四年度が七十四億五千八百万、五十五年度が八十二億九千三百万円、そして五十六年度が七十七億七千万円というふうに大体五億円ばかり放送設備の予算がことしは去年に比べて少なくなっておる。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕 しかも五億少なくなっただけでなくて、ほかのもう一つの計画によりますと、先般この委員会でも問題になりましたいわゆるミニハンディを八十二台五十六年度には購入をするという計画のようにありますが、私が聞いたところでは、大体このミニハンディが単体で七百万、セットにした場合にはこれは二千万を越す、ミニハンディ一機で二千五百万くらいかかるのではないかと聞いておるのです。これを昭和五十六年度中に八十二台購入するとすれば、二十億を超すお金がミニハンディだけでかかる。そうすると、放送設備の方は昭和五十五年度に比べて五億減っておる上に、ミニハンディを購入するお金が二十億とすると実に五十億という設備費になってくる。そういう設備費でNHKの放送設備は持ちこたえられるのだろうか。新しいものが出ればすぐ飛びつくけれども、いままで使ってきておる古いもの、老朽化したものを直して本当に全国の皆さんがいい放送を聞くことができるようになるのだろうか。ローカル放送の充実とかいろいろ言っておりますけれども、東京の方で古くなった機材を田舎の局に持っていって配備しておるのはたくさんあると私は田舎の局で聞いてきておるのですが、そういうことをやっておるわけですか。
  55. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。先ほど先生のお話の中にございました質問に一つ一つお答え申し上げていきたいと思います。  確かにVHFの全真空管方式の送信機というものは昭和三十年代前半に設置されたものでございまして、これは四十二局所あったわけでございますけれども、これも各年度の事業計画で御説明申し上げましたように、四十年来から老朽の著しい放送機の取りかえを進めてまいりまして、五十二年度当初におきまして三十局所ございましたという年鑑にあったものは五十五年度でもって全部老朽取りかえは完了しております。  それから二番目に予算の問題でございますけれども、先生のお話は大体概略そのとおりでございますが、ただし放送設備という予算項目は、これはスタジオ関係回りのいわゆる演奏設備関係費と申し上げてよろしいんじゃないかと思います。それ以外に、五十六年度の予算書にもございますように、放送網設備費につきましては別に予算項目を計上しておるわけでございます。放送設備の演奏設備関係につきましては、確かに五十五年度の約八十三億に比べまして五十六年度七十八億という形に落ち込んでおるわけでございますが、この小型ビデオの予算経費につきましては、全局に一式ずつ配備するわけではございませんで、小型ビデオにつきましては、もうすでに編集装置その他が行き届いておる局には二台、三台というようにカメラだけを配置していくというような配備計画になるものでございますから、先生からございました約二十億というお話は、予算上は昨年もことしも十九億という形になっておるわけでございます。それでその落ち込み分はどこかといいますと、新しく広島、福岡、松山、仙台、それから札幌に広げました音声多重の設備費に約五億が回っておる。ただし放送網設備費につきましては昨年度は百五億の予算計上をしたわけでございますが、ことしは百四十億の予算計上をしたわけでございます。したがいまして、われわれは演奏設備も大事でございますし、また放送所関係の施設も大事でございますので、その年度年度にその機械の条件を点検いたしまして、本年度は放送網設備の方に約三十五億よけいに回ったというような考え方の予算計上をしたわけでございます。
  56. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私がお伺いしたいのは、いま一例を申し上げたんですけれども、新しいミニハンディがいいと言えばそこに飛びついていって、そして地方の放送施設は老朽化していっておる。そう書いてあるのです。老朽化したものを直さなければならないとちゃんとあなたのところの年鑑に書いてあるんだから、老朽化していることは間違いないわけです。その方に手が回るのか、そのことを聞きたいのです。新しいものに飛びつくのは結構です。予算があればミニハンディはもっとたくさんあった方がいいでしょう。しかしそれで老朽化しておるローカルの設備に手が回るのかどうか、それを心配しておるのです。大丈夫ですとおっしゃればそれでいいんです。事故が起こったときに震災が起こったというときに、ただいま故障でございますというようなことがあったのではNHKとして国民に申しわけないはずでございますから、それは大丈夫でございますと言うならそれで結構ですが、どうも予算の使い方が偏り過ぎておるのではないか。目に立たないところを抑えて、大事なところを抑えて、目に立つところだけを引っ張り出して予算を使っておるような心配はないのか、そのことを聞いておるのです。
  57. 高橋良

    ○高橋参考人 まず最初に、先生から東京で使い古した機材を地方に回しているんじゃないかというお話がございましたけれども、そういうことはございません。経理耐用年数は御承知のように各機器によって違いますが、放送機で申し上げますと経理耐用年数は大体七年でございますけれども、七年で取りかえられるほどのひどい放送機をつくっているわけではございません。これにつきましては大体十八年から二十年くらいは十分使い得るという判断をしております。そういうものにつきまして東京から持っていったものではございませんで、全国の各局にそういうところが、使い込んでいるところがあることは事実でございます。ただし、御指摘のように東京で古くなったものを使うということではございませんで、これは、全国配備計画の中から、東京の方で一、二年使って早く大阪なり名古屋なりというような管内担当局に配備して、いま御指摘ございましたような非常災害とか非常の場合の報道体制とかそういうものに即時的に対応させるという意味におきまして、それを一時的に回していくというものはあるわけでございます。  それからもう一つ、災害時その他のときに大丈夫かというお話は、大丈夫なように計画を取り進めておるということを私は申し上げたいと思います。
  58. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それを聞いて非常に安心をいたしましたが、この前、私ちょっとNHKにお邪魔をしまして見せてもらったのですが、東館というのがございますね。東館の四階、会長おいでになったことがありますか。天井がかなりたれ下がっておりまして、あそこは何かFMの良質な放送の番組をとるところのようですが、上を歩くくつ音が聞こえるのですね。あれは御存じですか。
  59. 坂本朝一

    坂本参考人 どうも先生から具体的に御指摘いただくと、はなはだ大みえ切って御返答をしかねるのですけれども、私もスタジオはときどき見回っておりますが、格段支障があるというふうには聞いておらなかったのですけれども、何か先生のお耳にそういうことで支障があるようなことでもございましたら、また御指摘いただいて手を入れたいと思います。
  60. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 予算関係で申し上げたかったのは、目の当たるところ、人が見るところには予算を使うけれども、設備の目に見えないところは手抜きになっておるのではないか、そのことを篤と配意してやっていただきたい。  次にもう一つお伺いしたいのは、国際協力による共同取材等、先般朝のテレビでもおやりになっておられましたが、NHKはますます積極的にこれを進めていく、非常に結構なことだと思うのですけれども、かなり金もかかるという話も聞いておるわけで、たとえば「シルクロード」の場合、どのくらい中国に対して制作協力費というようなものをお支払いになっておるのですか。
  61. 田中武志

    田中参考人 いま御指摘いただきました「シルクロード」につきましては、日中の共同取材番組ということで、昨年毎月一回放送いたしまして、御存じのように大変好評を得たものでございます。  お尋ねのこの経費につきましては、あのシルクロードを取材した経費、出演料、フィルム代、フィルムは約四十万フィート回ったと思いますが、そういったことなどで番組制作費は一本当たり大体二千万円程度と私ども考えております。ただいま申し上げましたように大変反響がありましたのでアンコール放送もしましたし、また、御存じのようにことしに入りましてこの四月から水曜日の十時台に三十分の「シルクロード」の各論を放送しております。これは秋口ぐらいまで放送できると思っております。こういったことで、新しい素材を加えて新しい番組を、「シルクロード」各論などをやっておりますと、先ほど申し上げた一本当たりの制作費はさらに大幅に軽減されてくるのだろうと思っております。  そのほかに、御存じだと思いますが、シルクロードの取材記あるいはスチール写真といったようなものも出版、第二次利用でずいぶん出ておりまして、この方の副次収入もございます。  こういったことを総合的に見ますと、大変支持を得た、高い評価のあった番組としてはかなり効率的に制作できたのではないかと思っております。
  62. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 「シルクロード」という番組はりっぱなもので、私どもも非常に感激して、あるたびに見ておるのですが、私がお伺いしておるのは、NHKが中国に支払った協力費は幾らですか。それを数字でぽんと言ってください。
  63. 田中武志

    田中参考人 いま申し上げました番組制作費のほかに、いま御指摘のようにNHKと中国中央電視台との共同制作にかかわる協定がございまして、私ども、中国側に共同制作の分担金を払っております。  この性格は、シルクロードのあの地域におきます文化遺産の保存に対する協力という点と、今後八年間にわたりまして私どもの取材した貴重な素材を自由に利用できるという権利を保障するという二点でこういった分担金を払ったものでございますけれども、前のこの国会でも申し上げたかと思いますが、この分担金の具体的なものにつきましては、中国中央電視台との約束もありますので、御容赦いただければ幸いかと思います。
  64. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その辺で御容赦いただければとくるから、みんな非常に疑問を持つわけです。私もあなたがそうおっしゃるなら強いてここで言えとは言いませんが、そうおっしゃるほどいろいろなうわさが出てくるわけですよ。べらぼうな金を払ったのだとかいろいろ言われるのだが、私はむしろ、あれだけりっぱな番組をつくったのですから、これだけかかりましたとぽっと初めからおっしゃった方がよかったのじゃないかという気がするのですけれども、いまのような答弁をいただくと――私だけじゃないのですよ。国民の中にそういう声がありますから私は聞いたのです、莫大な金を払ったのだという意見があるから。それなら、そうじゃないのだ、これだけ払ったけれどもこれだけの効率があるのだと言う方が納得させ得るのじゃないか。そういう取り決めがあるなら強いてそれ以上聞きませんが、今後のこともありますから、そういう国際協力、共同制作等をますます進めていくとすれば、そういう点については疑惑を招かないようにおやりになった方がよろしかろうと思います。  それから最後に、最近、特に昭和五十五年度の受信契約が目標に対してどのくらい伸びたのか、もう大体でき上がっていると思いますから、それと、ことしはまだ新しいですが、どのくらい進んでいるか、その辺を聞かせていただけますか。
  65. 海林澣一郎

    ○海林参考人 お答え申し上げます。  数字から申し上げますと、五十五年度目標、五十五万新しく契約を取ろうという数に対しまして実績は三十一万、達成率は五六%ということでございます。  若干解説させていただきますと、通常の年度でございますと、当然契約取り次ぎを行う、車の両輪合わせて収納の確保をするということでございますけれども、御承知の五十五年、料額改定をさせていただきましたのでそちらにウエートをかけた、裏を申せば不公平感をなくす、滞納対策に全力を挙げたということでこういった数字でございます。五十六年、四月から始まりましてまだ正確な数字を申し上げるに及びませんけれども、概算で申し上げれば昨年のスタートよりもはるかにいいスタートを切っている、またそれに対してはできるだけの対策を立てる。できるだけと申しますと、一例だけ申し上げますれば、たとえば東京の場合契約者の一二・五%が転居するというようなことでございます。それを探すために、たとえば住民基本台帳を役所で見せていただく、これもまたおのずからプライバシーのことなどございますけれども、そういうようなことを積極的に進めて、五十六年度は取り次ぎ目標に何としても迫ろうと考えている次第でございます。
  66. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 五十五年という年は、おっしゃるように料金改定があって大変なお骨折りだったろうと思いますが、五十六年はがんばっていただいて目標を達成するよう期待を申し上げております。  終わります。
  67. 佐藤守良

    佐藤委員長 阿部喜男君の質疑は終わりました。  午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時五分開議
  68. 佐藤守良

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本放送協会昭和五十三年度財産目録貸借対照表及び損益計算書議題とし、質疑を続行いたします。鈴木強君。
  69. 鈴木強

    鈴木(強)委員 最初に、会計検査院に一つだけお尋ねをしたいと思います。  先ほど丹下第五局長から、五十三年度NHK決算につきましては、検査の結果特に不当と認められるようなものはありませんでした、こういう御報告でございます。そこで「特に」というふうに書いてありますので、これは念のためにお伺いするのでありますが、検査の過程で、口頭ないしは文書等によって質問をなされるということが通例になっておりますが、そういったものがありましたかどうか、この点をひとつお答えをいただきたいと思います。
  70. 丹下巧

    丹下会計検査院説明員 お答え申し上げます。  昭和五十三年度決算検査に当たりまして、検査の結果、NHK、日本放送協会の意見を聴取すべく文書でもって質問を発した事項は三件ございます。そのほか、各部局の検査におきまして、口頭でいろいろ私どもの御意見を申し上げたものがございます。
  71. 鈴木強

    鈴木(強)委員 その文書によって照会をし、協会側から回答を得て、その結果その疑点は了解をして、それで相済んでおる、こういう趣旨でございますか。
  72. 丹下巧

    丹下会計検査院説明員 お答え申し上げます。  質問の中身にはいろいろございますけれども、その文書による質問の結果、回答をいただきまして、それを了解しているものもございますし、また向こうの御意見は御意見なりに私ども拝聴いたしまして、またさらに検査を続行しているといいますか、その後の推移を見ているというふうなこともございます。
  73. 鈴木強

    鈴木(強)委員 五十二年度当時は、NHKの財政事情は非常に窮屈な時代であったと私は思います。たしか五十四年度には料金改定をしなければならないだろうというふうに一般的に考えられておったのでありますが、協会側の大変な努力によりまして一年間延び、これが五十五年度になったという経緯もございます。会計検査院がもちろんその経理の使途その他について厳重な検査をなさると思いますが、NHKの協会の経営のあり方、これは財政との関連で、こういう点はこうしたらいいとか、そういったふうな、検査の結果何か御所見等お持ちでありましょうか。もしありましたら参考に聞かしていただきたい、こう思います。
  74. 丹下巧

    丹下会計検査院説明員 私どもの方では、検査の結果につきましては、法律に基づきましてどういうふうなことを検査報告の中に記述するということがございまして、それ以外につきましては、特に不当と認めるようなものがなければ何も記述しないというふうなことになっているわけでございます。  それで、会計検査院検査というのは昔からいろいろ行われているわけでございますけれども、私どもは、一応私どもが御意見を申し上げたものについては受検庁の側でそれを十分生かしていただけるというふうなことでいろいろ発言しているわけでございますけれども、そういう点で、私どもの発言については相当重みを持って聞いていただける。また、そのこと自体に対しまして、従来からも国会等でも非常に私どもの意見を尊重されまして、検査院の言ったことを非常に支持していただいているわけでございますけれども、そういう点で、私どもの発言に対してはかなり責任を持って発言しなければならないというふうに思っておりますので、この席で特にそういう点で御意見を申し上げることはございません。
  75. 鈴木強

    鈴木(強)委員 時間が非常に制約されておりますので、ちょっと伺いたい点もありますけれども、以上で大体了解できましたので次に移ります。  具体的な決算の中身について質疑をしたいと思っておりますが、その前に郵政大臣と電波監理局長にちょっとお尋ねをしておきたいことが一つ、二つございます。  それは、六月一日は電波の日でございました。大臣もあの日には、NHKのテレビでごあいさつの中で、これからのニューメディアについて何か触れられたようでございました。私は不幸にしてちょっとその場面を見ることができませんでしたが、私の友人から、きょう大臣のごあいさつがあったよということがございまして、その中で、特にこの緊急警報放送システムの問題については非常に関心を持っていましたね。非常災害時に、放送が終わった後、地震の警報あるいは津波の警報が出た場合に、スイッチオンになりまして放送が聞けるというようなことを言われたというので、大変関心を持って私に質問しておりました。ですから、私は自分の常識で知っている範囲については説明したわけでありますが、当面ニューメディアとして脚光を浴びてきておりますのは、御承知のようにテレビの音声多重放送、キャプテンシステム、それからいまの緊急警報放送システム、それからビデオディスク、双方向性放送システム、こういったものが挙げられると思いますが、大臣のおっしゃった緊急警報放送システムというものについて、まだ国民は深く理解をしておらないと思うのです。なかなかいいアイデアだな、こう思っておりましてもよくわからないものですから、ひとつこの機会に、現状はこれがどこまで実用化の方向に向かってきておるのか、そういう点について、これはNHKなり監理局長なりどこからでもいいですから、現状どうなっておるか、この観点から説明していただきたい、こう思います。
  76. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  最近、災害といいますか地震等々につきまして、こうしたものに対する関心が非常に深まっておるわけでございますけれども、ラジオやテレビを使いましてそうした時点に警報を発しようという考え方でございますが、この三月に、電波技術審議会という大臣の諮問機関がございますけれども、ここで緊急警報システムについての方式の基準というものを決めたわけでございます。そして、なお実験を要しまして、今年中にはその技術的な最終結論が出るというステージで進んでおるわけでございますが、せっかくの機会でございますので、どういうものかというのをちょっと御説明させていただきたいと思います。  緊急放送システムというのは新しいシステムかといいますと、そうではございませんで、いま普及しておりますラジオなりテレビ、FMでも同じでございますけれども、すでにある放送局の電波を使って、すでにある受信機なり受像機にこの信号を伝えようというものでございます。電波は違わない、ただ受信機の方にそれなりのアダプターといいますか、エネルギーも余り使わない、小さな簡単なものという考え方でございます。そういうものを送り出すということで、違うのは緊急警報信号というものを重ねるといいますか、これを出すわけでございます。そうしますと受信者の方は、たとえ寝ておりましても電源さえ入っておれば、緊急警報信号の中の警報音というものを聞きまして電源も入るし、それ以後は普通の形でテレビを見るあるいはラジオを聞くのと同じかっこうで作用をする、こういう種類のものでございます。
  77. 鈴木強

    鈴木(強)委員 NHKにお伺いしますが、私も最近ちょっと書物も見せていただいているのですが、緊急警報放送システムというのは、放送終了後の深夜あるいは日中でも、テレビ、ラジオの受信機のスイッチが切られているとき地震の予知情報や津波警報など非常災害情報が出た場合、放送局からの電波に特殊な信号を乗せて放送し、テレビ、ラジオの受信機のスイッチを自動的にオンにして情報を伝えるシステムであるというように言っております。ですから、いま田中局長がおっしゃったことだと思います。すでにNHKや民放が実験を行い、いまお話しのように現在技術基準や運用基準が検討されており、近い将来実用化の見込みである、こういうようになっておるわけですが、一つ局長に聞きたいのは、いまのNHKの割り当てられた周波数は、放送が終了しますと切っておりますね。オフになってとまっている。今度それを発射すると、その波でアラームというものが鳴ってそれがオンになっていく。その電波は、別の電波ではなくて現状の割り当てられておる電波であるかどうかということを局長に聞きたい。  それからNHKの方から、すでに実験を行っているそうですが、基準その他ができますれば大体いつごろからそういうシステムが開始できるのか、実用化の見通し等について伺っておきたい。
  78. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 一言お答えします。  同じ電波でございます。したがいまして、日中の場合は放送しておりますですね。そのときに非常事態が起こった場合は、やはり同じことでございます。スイッチをオンしている方はそのまま見ればいいわけですし、もし切っておられた方でも入れて普通のラジオとテレビで放送される、こういうことでございますので、夜中にたとえばオリンピックなんかのときに、途中休んでおってやるというときでも同じことでございます。電波的には全然変わりはございません。
  79. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生お話しございましたように、現在電波技術審議会の方でNHKその他でもって開発いたしましたシステムを審議しておりまして、五十五年度の電波技術審議会では、緊急警報信号方式の基本と、どういうシステムでやるかということの概括的なものは、郵政大臣に電波技術審議会から答申したわけでございます。現在、この線に沿いまして、信号方式の細かい技術基準を定めるための電波技術審議会を中心にいたしました検討が進められております。NHKといたしましては、八月ごろから実験局を開設いたしまして野外実験をやりまして、そのデータに基づいてこの電波技術審議会の技術基準策定のために寄与してまいりたい、そのように考えておるわけでございます。  具体的な内容といたしましては、ラジオでございますと中波、それからFM放送のFM電波、それからテレビ電波、各メディアで実験局を開設いたしまして、その信号の送信条件とか受信の条件、それから受信機、信号形式に関する実験を計画しているわけでございます。それで、その実験を踏まえまして電波技術審議会で技術基準が決まり、それの済み次第NHKといたしましては、国民のためにこの緊急警報放送システムというものを実施してまいりたい、そのように考えている次第でございます。
  80. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それで一つ問題になるのは、聾唖者とか目の見えない方とか、そういう人たちに対する問題です。ことしは国際障害者年でもございますし、いろいろの施策が行われていくわけですが、たとえばビーっと音が鳴ってスイッチオンになった、ところが普通の方ですと音がすれば大体わかりますね。しかし、聾唖者の場合は音が鳴ってもちょっとわからぬ場合があるでしょうね。ですから、たとえば前の日に十二時に終わった後、きょうは津波の緊急情報を出すとかというときには、その終了時に、手話なりほかの方法によってそういう放送がやられるという予告を初めからやっておくようなことも運用面においては十分考えておかなければならないし、技術的にもそういった面でちょっとわれわれ心配するわけですけれども、その辺に対する具体的な検討はなさっておるんでございましょうかね。
  81. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  先生の御質問、大変むずかしい問題でございまして、確かに先生のおっしゃるとおりに、この緊急警報放送システムは、目の見えない方でございますと、警報音でその警報をお聞かせするわけでございます。ところが、耳の聞こえない方につきましては、映像なり、目にこれを緊急的に訴えるというシステムまではまだ研究開発しておらぬ状態でございますので、先生のお話のように、前の日なり放送終了時にそういうような問題が出そうだということが予想できる場合は、当然放送のメーン番組でもそういう予告放送はやられるだろうと思いますが、緊急の場合におきましては、耳の聞こえない方につきましてはちょっと無理でございますので、聞こえる方に教えていただくというような形にならざるを得ないのじゃないかと思いますけれども、先生のいまの御意見につきましては、十分承って研究してまいりたい、さように考える次第でございます。
  82. 鈴木強

    鈴木(強)委員 教えていただく――ぼくもちょっと考えてみたんですけれども、東京のような場合にはそれはちょっと不可能ですわ。田舎ですと、隣のおじさんが行って教えてくれますけれども、東京のようなところはちょっとこれは無理でしょうね。ですから、やはりそこが一番の問題点だと思いますので、私も考えてみたけれどもいい知恵がない。皆さんもそうだと思いますが、ここまで進めておるわけですから、何か技術的にそういったことが解決できないかなと私は思うわけですが、さらに検討を加えていただいて、できるだけ早く実施できるようにと願っておるわけです。  大臣もああいうふうに言ったわけですから責任は大ですよ。やはりひとつ督励して、緊急に電波審議会等の技術基準、細則その他についてもできるだけ早く進めてやっていただきたい、こう思いますが、ちょっと一言……。
  83. 山内一郎

    山内国務大臣 重要な研究でございまして、特に地震対策といいますか、地震がいつ起こるかわかりませんけれども、起きた場合の用意ということもございます。その他津波等もございますし、いろいろな事件も発生する場合もありますので、ひとつできるだけ詰めて、早く研究をいたしまして、実用の段階に持っていきたいと思っております。
  84. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それからもう一つ。さっき外国放送のことに関連しまして、外務省の方からの御答弁ですと、現在の外国放送をしております送信機、放送機は非常に老朽化しておる、そういうことが受信を困難ならしめているのではないかというふうにとれる答弁がございました。私はこれは非常に重要なことだと思いますよ。残念ですけれども、NHKが独自に送信所を持てない。したがって、国際電電の送信設備を使わしてもらって放送しているのが現状だと思うのです。もしこれが老朽化して、適切な、または基準に合った放送ができないことになったら大変なことでございますから、誤解であれば解いてもらいたいし、もしそんなことをしているとすれば、重大な責任問題になると思いますが、どうでしょうか。
  85. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 実は先ほど外務省の方からそういうお答えをしたようで、私も聞いておってちょっとはっとしたのです。老朽施設であるので、それが原因で外国での聞こえ方が悪いと聞こえるようなお答えだったかと思いますけれども、先生御指摘のように、KDDの八俣にございます施設をNHKが借りて、無線局としてはNHKということでございまして、私ども重要無線施設でございますので、毎年のように定期検査をやっております。それであたかも百キロの送信機が五十キロしか出ないとか、そういうようなことではとても定期検査に通るわけじゃございませんし、二百キロはちゃんと二百キロの出力は出ておるわけでございます。周波数が動くようなこともあってはならぬわけですし、もちろん検査にも通らないわけでございますので、その辺で、更新するとすれば経費がかかるという意味での情報をあるいは外務省が聞いたのかもしれませんけれども、現在の施設、そういう点において全然心配はございませんので、その辺はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  86. 鈴木強

    鈴木(強)委員 わかりました。そうでなければおかしいですね。ですから、ちょっとお答えがおかしかったと私は思います。  時間がありませんので、もう一つ音声多重放送の問題でちょっと伺っておきたいのですが、これは最初二カ国語放送とステレオ放送だけに限っておったのですが、その後、災害にかかわる事項についてということで放送の範囲を拡大いたしました。それでNHKは、音声多重について現在どの程度放送しておられるのでございますか。全体の放送から見て、多重放送はどのくらいやられておるものでございましょうか、その点をひとつ伺いたいのです。
  87. 田中武志

    田中参考人 お答えします。  現在NHKでは、今年度のテレビの音声多重放送の実用化試験局の放送計画といたしましては、一日平均二時間二十分程度やっております。この内訳を言いますと、ステレオ放送が一時間四十分、それから二カ国語放送及び解説放送が四十分というふうな内訳になっております。全放送時間の割合といたしましては一三・三%くらいということでございます。  なお、今後視聴者の意向なども見ながら、順次いろいろ努力していきたいというふうに思っております。
  88. 鈴木強

    鈴木(強)委員 これは電波監理局長に伺いますが、たしか五十三年でしたか、実用化試験局として免許をおろしていると思うのですが、もう三年たっておりますし、効果の面は大体測定ができたと思うのです。ですから、やっぱり本免許の方向に早く持っていったらどうかというふうに思うのです。これは需要予測等についても、郵政省それぞれアンケート調査もやっておるわけですが、当初大変な期待を持ったほどには全体的には進んでいないように思うのです。ですから、ソフトとハードの面を十分勘案しながらやりませんと、私は拙速主義だけではいけないというふうな気も最近いたします。そういう点も含めまして、免許の方だけはやっぱり本免許を無線局として与えるような方向に持っていったらどうかと思いますが、その辺いかがですか。
  89. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 音声多重放送が始まりまして、昨年の十二月に、いまもお話ございましたように多重放送の拡大措置と申しますか、いわゆる補完的利用についてはすべて許可する、それから災害情報につきましては一定の条件のもとで行っていただくというように免許方針を修正したわけでございます。それで現在実用化試験局という扱いを行っておるわけでございますが、その辺につきましては、なお先ほど申しました拡大措置以降におきます具体的な利用状況等もいま少しく見きわめたいということがございます。それとやはり一方、独立的利用といいますか、その辺についての要望もございますので、一定の考え方の整理にちょっと時間をとっておる。ということは、たとえばNHKにこれを実用局として行っていただくということになりますと、NHKの業務としてどのような位置づけが必要なのか、あるいは必要ないのか。たとえばNHKの全国的普及義務の対象とすべきなのかどうなのか。これは一、二の例でございますけれども、そういう点についての考え方も整理した上で実用局に持っていきたいということでございます。
  90. 鈴木強

    鈴木(強)委員 現在の免許の方針というのは、現存するテレビ局ですね、そういうところを主にしております。ですから、これを単独な単営に任していくかどうかということも、これは重大な問題だと思います。あとは私は、もう大体そういう点を整理すればいいんじゃないかと思うのです。ですからできるだけ、これはもう非常に基本にかかわることですから、慎重にしていただきたいと思っていますし、私たちも意見を持っておりますからまた聞いてもらいたいと思いますけれども、そういうわけで、そういう点をかなり、もちろん詰めていかなければなりませんが、実験局としての形態はもう現段階では大体いけるのではないだろうかというような気がするものですから……。ただ問題は、それが波及してまいる点がありますので、その点を十分煮詰めて、ぜひ御検討いただきたい、こう思います。  それから、時間が来てしまいましたので、この決算内容について一言だけ伺っておきたいと思いますが、五十三年度受信料の未収額というのはどのくらいになったでございましょうか。そして、できればここ五年くらい、五十一年くらいから未収率というのはどの程度に増減しているか、その点をパーセンテージで示していただければ、ひとつ示していただきたい、こう思います。
  91. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  五十三年度におきます未収でございますけれども、先生御案内のとおり五十三年度一年終わりました後で、一年間に収納しましたものが幾らであるかというのが、まず未収というところの概念でございますが、この年度でございますと、収納しましたのが九六%以上を初年度で収納したわけでございます。これは五十三年度予算で見ておりましたよりも若干上回っております。しかし、この五十三年度の未収金が翌年度一体幾ら取れるかという問題が、まさにこの欠損引き当てというところでございますけれども、この欠損引き当てといたしましては、残念ながら予算で予定したよりも、この状況を踏まえますと上回ったものをせざるを得なくなったわけでございます。それが五十三年度末で受信料全体の債権額の二・八五%を計上したわけでございます。これが、もう一つ先にいきますが、五十三年度に取り残しましたものを五十四年度にまた回収をしていくわけでございますけれども、そして最終的に五十三年度受信料については会計上の処理を終わりますが、最終では受信料債権額に対して三・一八%が欠損として残ってしまったわけでございます。  この状況を、先生おっしゃいました五十一年度あたりから申し上げますと、五十一年度受信料収納額につきましては五十二年まで追いかけるわけでございますが、その最終で申しますと、五十一年度受信料は二・六四%の欠損でございます。それから、五十二年度が二・九六%、五十三年度受信料については、いま申し上げました三・一八%。それから五十四年度受信料につきましては、最近の決算で明らかになりましたが、これが三・一七%という最終の欠損率になっているわけでございます。  以上でございます。
  92. 鈴木強

    鈴木(強)委員 五十五年度はまだわかりませんか。
  93. 渡辺伸一

    渡辺参考人 五十五年度は、初年度の収納が終わっただけでございますので、初年度に立てました欠損率は、いま三・一五%ということで、五十四年度の実績よりも少しいい状況を予定しているわけでございます。
  94. 鈴木強

    鈴木(強)委員 これは、時間がありませんからちょっと触れられませんが、米軍の皆さんの受信料の支払いの問題とか、意識的に不払いをしている方とか、いろいろあると思います。行き先が不明になってわからないとか、中塚副会長が営業担当のころ大変な御苦労をいただいて、相当な陣容を整備した体制でやってこられたことも、私たちよく承知しております。しかし、未収が若干なりともふえていくような傾向にあることは非常に残念だと思います。大変な努力をしていることは、私どもはよくわかっておりますが、ぜひこの上とも未収の完全徴収方については、あらゆる知恵をめぐり合わして、がんばって取っていただきたい、こういうふうに強く希望して、時間が来ましたので、私これで終わります。どうもありがとうございました。
  95. 佐藤守良

    佐藤委員長 鈴木強君の質疑は終わりました。  西村章三君。
  96. 西村章三

    ○西村委員 時間の制約上、私は、都市難視の改善問題、それから受信者負担の問題について伺わしていただきたいと思います。  この問題は、東京都中野区ほか数区にまたがる受信障害の問題でありますが、かつて当委員会で取り上げられた内容でもございます。また、去る四月二十四日には、地元の中野区の区長さんあるいは議会の各超党派の代表の方々が郵政大臣に御陳情申し上げました。前大西郵政大臣にも陳情したものでございまして、十分御承知をいただいておると思います。  東京の副都心新宿に建設されました、新宿新都心開発協議会、略称SKKと言うのでありますが、ここの超高層ビル群あるいは池袋の超高層ビル、サンシャイン60によるテレビの電波障害、これは都内の各区に被害を及ぼしております。その被害者は、中野区内だけでも約六万五千三百世帯、その他の区を含めますと、およそ二十五万世帯の人々が被害を受けておる、こういうことでございます。今日まで住民及び地元自治体は積極的な働きかけを繰り返してまいりました。その成果といいますか、今日までに一部共同受信設備の設置、いわゆる有線化等の成果を見たわけでありますが、まだまだ相当数の障害地区が取り残されております。今後、これら取り残された地域の対策をどのように講じられて改善を図ろうとされるのか。また、最近に至りまして、この有線化された地区におきましても、維持費の負担の問題で悶着が起こっております。そういうことで、まず、現時点におけるNHK及び郵政省のこの事態への認識について、簡潔で結構ですから、お答えをいただきたいと思います。
  97. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、新宿副都心ビル群による受信障害によりまして、中野区を中心にしまして住民運動が起きておるというのは事実でございます。これは新宿副都心ビルによる受信障害を受けておる中野区のうち、中野五丁目、新井、野方地区におきまして、この新宿センタービルの建築に伴いまして、急激に受信状況が劣化したために、住民の団体を結成をいたしまして、新宿新都心協議会それから中野区に対しまして、早期の対策実施を申し入れましたけれども、新宿新都心協議会は五十四年の十月に中野五丁目地区に対しまして、当地区の電波障害というものは周辺ビルとの複合によるものである、したがって新宿新都心協議会の全面的な責任と負担による解消はできないというような回答をしたものでございますから、この住民が、これは非常に問題だということで、NHKの方にも、また郵政省の方にも、これに対する調査を含めましての要請があったわけでございます。それで、この中野区につきましては、住民団体の要請を受けまして、郵政省の方にも五十六年の四月にさらに電波障害の対策要請を行ってきておるというのが現状認識でございます。  それで、これの有線化の動きでございますけれども、中野区につきましては、受信障害を受けている、これは特に遮蔽障害でございますが、約四万六千世帯がございまして、そのうち共同受信施設で対策をされたものが約一万八千世帯でございます。未対策地区につきましては、住民運動を行っております中野五丁目、新井、野方地区のほか鷺宮地区の一部を加えまして約二・八万世帯がございますが、現在その対策の見通しは、先ほど副都心群と住民との話し合いのとおりで、まだ対策の見通しは立っておらないというのが現状でございます。  先生の御指摘の維持費問題でございますけれども、これにつきましての問題というのは、中野地区の一万八千世帯が五十三年の四月に発行しました協定書、これに維持管理費の問題については三年後に再協議するということになっておりまして、その三年が参ったものでございますから、この三年後の提案については、新宿副都心群は、受信アンテナは大体六年から五年ぐらいもつはずだ、したがってその受信アンテナというものは一般の受信者の方も負担しておるので、それの五分の一か六分の一ぐらいの、年額二千四百円ぐらいを負担してほしいということを新宿副都心群が受信者に申し入れしたものでございますので、住民側は、それは問題である、この維持費の負担というものを全部新宿副都心群の方が持つべきであるという形で反対しておるというふうにわれわれは認識しております。  さて、これの問題に対してのNHK側の認識でございますけれども、未対策地域の解消対策につきましては、郵政省の指導要領によりまして、住民側からの要請に基づいて調査を行ったり、場合によっては相談にあずかっておるというのが現状でございまして、これも建物を持っております建築主の責任と負担によって改善対策が行われるように、新宿副都心側にも私の方からも要望しておるという現状でございます。  それから、維持管理費の負担につきましては、郵政省の指導要領にも、受信者はテレビジョン放送の受信に通常必要とする経費に相当する額を負担することが適当であるという指導要領もございますので、この辺につきましては、この指導要領に基づきまして、NHKといたしましても、一般の受信者の方、つまり障害のない受信者の方も受信アンテナは自己負担をしていただいておるので、それの六分の一なり五分の一は、二千五百円ぐらいは年間持っていただけないでしょうかというような話は進めておるわけでございます。これは当事者の協議によって解決することでございますので、また指導要領もそういうふうになっておりますので、現在当事者間の協議によって解決が図られるように見守っておるというのがNHKの認識でございます。
  98. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 都市難視が発生いたしましたときの経費負担のあり方についての考え方はどういうものかというお尋ねかと思いますけれども、一応私どもといたしましては、いまのお話にも出てまいりました指導要領、五十一年三月に高層建築物による受信障害についての指導要領というものを出したわけでございますけれども、やはり都市受信障害の解消というものは、受信障害発生の原因である建築物の建築主の費用負担により行うことが適当というふうに基本的には考えているわけでございます。  ところで、この都市難視が発生しましたときに、関係者というものは、いま申しました直接発生の原因である建築主、またやはり電波を出しているという意味で放送事業者あるいは直接受けておる受信者、その中に国がどういう形で責任を持つか、あるいは都市、その住民の住んでおる地区の市なり区なりというものがどういう形でかかわるべきか、いろいろな問題があるわけでございますが、さて、先ほども申しましたように、建築主の費用負担が基本的な考え方だと申しましたけれども、なかなかそうはまいらない。その一つの大きな原因は、その原因者を端的に指摘しにくい複雑なふくそうした障害が発生してきたというようなことがあるわけで、先ほどの話にも出ましたけれども、やはり関係者の話し合いというものが相当重要な要素を持ってきておるというのが実情でございます。  ところで、受信者としての負担分と申しますか、中野におきまして最近維持管理費の問題が発生しておるわけでございますが、これは当初SKKが処置しましたときに、三年間はSKKが負担するけれども三年経過後は別途協議というような形になっておるそうでございますけれども、この維持管理費についての郵政省としての考え方は、やはり個別受信の場合にもそれなりにアンテナの費用というものは要るわけでございます。そうしましたときに、共同受信設備から受けるということになりますと、通常の個別受信の家庭で必要としておるアンテナの費用あるいは非常に海岸に近いようなところではもう少し早くアンテナを取りかえなきゃいけないようでございますけれども、そうした通常の場合に比べて必要なものは共同受信設備者にも御負担いただこう。そういうような考え方で、五、六年もっとすると、五分の一というかっこうで、まあ二千四百円というような数字も出たようでございますけれども、そういうものについては横並びで御負担いただきたい、こういう考え方でございます。
  99. 西村章三

    ○西村委員 NHKにお尋ねいたしますが、この件は、さかのぼること四十八年ぐらいからの問題でございまして、いろいろとNHKさんも調査をしていただきました。これら地区の受信障害の主たる原因者、これはSKKですか、まあこれだというぐあいに認定をされておるようでございますが、その認定をされたのはいつごろでございますか。
  100. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  新宿副都心群のビルというのは、四十三年ごろから着工いたしまして、一番早いもので四十六年ごろに完工した。それに、四十六年ごろの竣工を見ましてから、順次建ち上がってまいりまして、きょう現在完工しておるものが十棟あるわけでございます。十一棟目が現在工事中という状況でございますので、先生の御質問にお答え申し上げますと、二番目に建ち上がりました住友ビルのところからその建設主並びに副都心の新宿新都心開発協議会、ここからNHKの方に依頼がございまして、その段階から調査が始まっておるという状況でございますので、四十六年ごろから、建ち始めたころから調査をしませんと、建ち上がってからでは、その事前と事後の調査でもってこれということがわかりませんものですから、その着工次第調査にかかりまして、竣工時に調査を完了いたしまして、新宿副都心群の方には調査の報告をしたという次第でございます。なお引き続きまして、四十七年以降も、これは調査依頼のあったものとないものとございます。五十二年になりまして、五十三年から建ち上がりましたビル群につきましても、これは調査依頼が私の方にございましたので、これにつきましては私の方でその着工から完工に至る間において調査をいたしまして、完工事にその調査を報告したという事実がございます。
  101. 西村章三

    ○西村委員 この都市難視の解消責任というものは、複合原因があるからこの割合が非常にむずかしい、こういうことでございますが、主たるものはやはり建築主、いま局長御答弁のとおりである。ところがSKKは今日まで、自治体や住民代表に対しまして、この事件は土地の有効利用を図るという国の方針に従って超高層ビルを建てたものである、したがって建設に伴う障害除去につきましても当然国の責任である、こういう見解をとっているわけでございます。したがって、その対策はきわめて消極的でありまして、なかなか当事者同士では話がつかない。それが今日まで延引をしておるという最大の原因でございます。政府は、このSKKの見解表明にどのように対処をされたのか、国の責任と考えておられるのか、国の責任がないということなら、SKKに対してどのような意思表示をされたのか、その辺を聞かしてください。
  102. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  これにつきましては非常に複雑な問題であるので、いろいろ私どもも、根本的解決ということになりますと立法措置も必要であろうかというようなことで、立法措置による解消方策も探っておるわけでございますけれども、いま申しました原因者である建築主に受信障害解消施設というものを設置してもらいたいというのを中心としました法案で、いま国の土地利用を推進する主管になっております建設省との間でいろいろ話し合いもしたわけでございます。  放送事業者の方は、建築物がなかった場合にはそこにおいて受けられるだけの電波を出しておったんだから、こういう言い方で、たとえばそういうことでございます。建築主の方は、すでに土地を持っておりまして、まだ建ててないときにはその土地の上を無断で電波が通っておったんだというような見解、たとえばそういうようなことで、要するに郵政省あるいは建設省、建築主と放送事業者で見解の相違があるわけでございます。つまり、この障害についての責務についての自覚の度合いに食い違いがあるというようなことで、法案での早急な調整というのは正直申しまして現在困難な状態にあるというのが実情でございます。  なお、そういうようなことで郵政省といたしましては、先ほども申しましたけれども、基本的にはやはり原因者に御負担いただきたいという考え方が妥当だと考えているわけですけれども、この原則だけでは余りにも広範囲になってきた、また解決困難な事例も認めざるを得ないというようなことで、現在のところはやはり関係者の方々に、現実は見られないという状態で一般の聴取者が困っている状態でございますので、粘り強く関係者間の話し合いを進めておるというのが現状でございます。
  103. 西村章三

    ○西村委員 一応郵政省の考え方は、国の責任ではない、あくまでも建築側の責任であるという判断に立つわけでございますね。それでよろしゅうございますか。
  104. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 両面があると申しますか、一概に言い切れないというか、私どもはある考え方を持っておりましても御納得いただけなければ少しも進展しないわけなんでございまして、やはりそれぞれの立場、立場というものがあるわけですけれども、説得できるというか御納得いただけるところまで議論といいますか協議が調っていないといいますか、進んでいないということでございます。
  105. 西村章三

    ○西村委員 この責任問題は明確にさせることはきわめてむずかしいようでございますが、その後、共同受信装置の先ほど申し上げましたいわゆる有線化の維持費の負担問題であります。この経費の負担につきましては、先ほど御答弁がございましたような三年間維持費は無料、その後は協議という地区は、北新宿の八丁目と中野区の一部でございます。ところが四十八年の三月に西新宿の五丁目、六丁目、約八千世帯がSKKと協定を結んでおりまして、将来とも一切無料だという協定を結んでおります。ところが最近、このSKKは前言を翻しまして、この後発の協定に準じて西新宿地区にも永久協定の破棄を申し出る、こういう事実があるわけでございます。この考え方について郵政省としての見解はいかがでございましょうか。
  106. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど新宿地区におきます各ビルの逐年次における建設状況というものが披露されましたけれども、単純に普通ビルができますと、その後ろの陰とビルの高さの三倍程度の後ろを送信所方向に向かって背後になるところを救えばよろしいというのが通常の認識だったわけでございます。そうしました場合に、ある程度制限があるわけで、ビルを建てます場合に、この程度のビル陰に対する経費というものははじけたわけなんでして、そういう時点におきまして恐らく当初におきましては永久維持の責任というようなものを結ばれたのだろうと思いますけれども、二つ三つとビルが建ってまいりますに従いまして複合障害というもの、反射障害あるいは近傍反射、遠方反射というような形で非常に影響するところか多くなってきた、これを予測し得なかったというようなことが原因で、ビル側といたしましても、何か基本的な考え方が出る前に一番最初の例において責任を持った形の責任は果たすことが困難になってきた。要するに障害の範囲とそれに要する経費が予測し得ないほど莫大になってきたというのが真相ではないかというふうに思っております。
  107. 西村章三

    ○西村委員 SKK側は、共同受信装置の建設費は持つけれども維持費については全額いわゆる受信者に負担をせいというのが今回の内容なわけでございます。一家庭当たり二百円ずつ、毎月これだけ徴収をしてこいうということですね。さらに、すでに一切将来とも無料だと言ったところについてもこの項を適用しよう、こうかかっておるわけでございますが、この背景にありますものは、先ほど来局長の方から答弁がありましたが、いわゆる五十二年の受信障害解消についての指導要綱、これが一つの正当性を主張する根拠になっておるわけでございます。  私は、この通達の内容につきまして、基本的には先ほど来言われておるとおり一応原因者たる者が負担をすべきだ、しかし維持経費については受信者がすべて払わなければならぬかということになりますといささか疑問があるわけでございます。軒先からいわゆる受像機までのものは当然受信者が負担すべきでございましょう。しかし、共同受信設備からいわゆる軒先までのケーブルその他につきましては当然原因者が負担をしてしかるべき、これが通達の趣旨だと思うのでありますが、どうでございますか。
  108. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 先ほど申し上げましたように、やはり横並びの形で、通常個人的に見ておられる受信者が支払っている、支払うといいますか支出を余儀なくされている程度の経費につきましてはやはりお出しいただきたいという考え方でございます。
  109. 西村章三

    ○西村委員 そうすると、私がいま申し上げましたように、ここの通達にも書いてありますが、いわゆる維持管理の費用負担のあり方につきましては、家屋の軒先に設置をされる保安器の出力ターミナルからテレビジョン受像機までの屋内配線部分、これは当然受信者が負担をするといたしましても、いま申し上げました共同受信施設から各戸の保安器までの設備ですね、これは当然原因者が負担すべきだと思うのです。ところが、今回のSKKのやり方は、これまでをも受信者に肩がわりをさせる、こういうことなんです。郵政省の考え方はどうですか。この通達に照らしてもう一遍言ってください。
  110. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  維持管理の場合は、更改も含んでおるわけでございまして、維持管理責任及び費用負担のあり方につきましては、まず軒先に設置されます保安器の出力からテレビ受像機までの屋内配線部分、これは受信者自身がやっていただきたいということでございます。それで、共同受信施設を設置した場合に、受信者は家庭用アンテナの更改等、テレビ放送の受信に通常必要とします経費の支出が要らなくなるわけでございまして、この経費に相当する額はやはり受信者が負担するのが適当だ、こういうような考え方でございます。
  111. 西村章三

    ○西村委員 局長、それは答弁になってないですよ。私が申し上げたのはそういうことじゃないのです。いわゆる各戸の軒先まで来たものから中の配線は、これは当然受信者が負担をすべきだ。共同受信設備から各戸に取りつけられておる保安器までの維持経費というのはどうするのか、こういうことを聞いているわけです。これは単にこの問題だけじゃないのです。いま都市難視と言われる方はおよそ五十万あると言われておるのです。一つの大きなテストケースなんです。郵政省がはっきり判断基準を示さない限り、この問題はなかなか解消しませんよ。どうなんですか。
  112. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ちょっと言葉不足でしたので補足いたします。  いま申されました共同受信アンテナから各戸の保安器までの設備及びそれらに付帯する設備の経費でございますけれども、その前文のところで、この部分につきましては基本的には障害の発生の原因となっておる建築物の建築主の責任と負担で維持管理を行う。ただその一部を、この場合あくまでも共同受信設備で受けられるようになりますと、端的に申しましてたとえばアンテナの経費とアンテナの更改分の費用は要らなくなるわけなんて、そうした場合に、先ほどから申しております横並びで個人受信者が必要とする部分の経費ぐらいにつきましては出していただきたい、こういうような考え方でございます。
  113. 西村章三

    ○西村委員 局長の答弁、一歩譲ってそういうことにいたしましても、今回のSKKのやり方というものは年間の維持費がおよそ六千万円、これは各世帯に二百円ずつ割り当てますと全額持て、こういうことになっているわけです。いま前段でおっしゃったような主体的な原因者である建築主の責任を全部受信障害を受ける方に転嫁をさせよう、こういう魂胆なんです。どういう行政指導をされますか。
  114. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 内容をよく調査した上でお答えいたしたいと思いますけれども、基本的にはやはり受信者の側に要する費用が、先ほども申しましたようにたとえばアンテナ更改、潮の多いところでは二年ぐらいに一遍かえなければいけないそうですけれども、仮に五、六年ということにいたしますと、そのアンテナに要する部分経費というものを割りまして、それに相当する部分までは出していただきたい。その結果、建築主が出す金との差というものについてはより調査してみたいというふうに考えます。
  115. 西村章三

    ○西村委員 先月にこの三年協定がすでに切れております。したがって、もう緊急の問題になっておるわけでございまして、これは先ほども申し上げましたように、今後予想されるいわゆる超高層ビルの建設にはすべての面でかかわってくる問題でございます。ひとつ郵政省といたしましても、適正な基準を的確に運用していただくように私は強くお願いをしたいと思います。  残念でございますが、時間が参りましたので、これで終わります。
  116. 佐藤守良

    佐藤委員長 西村章三君の質疑は終わりました。  藤原ひろ子君。
  117. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、同僚議員からもいま御指摘がありましたが、都市におきますテレビの受信障害につきまして幾つか質問をさせていただきます。  今日、過密な都市部におきまして、建物の高層化によりましてテレビの電波障害が大きな問題になっております。特に東京における新宿副都心の超高層ビル群や池袋のサンシャイン60による被害は広範な地域に及んでいるわけです。NHKの受信障害調査によりますと、新宿副都心ビル群、SKKによる受信障害は十五万四千世帯、サンシャイン60によるものは十一万一千世帯となっております。たとえば中野区の場合ではSKKとサンシャイン60の影響によって区内の約半数、六万五千三百世帯が被害を受けているという状況になっているわけでございます。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕  先ほど同僚議員に対する答弁の中で、NHKの調査ですと、中野五丁目、野方地区で一万七千世帯、鷺宮地区で一万一千世帯未対策地域があるということをおっしゃったわけですけれども昭和五十四年十一月二十七日に中野五丁目、野方、新井、この周辺地域の住民の方々から、当該地区の電波障害の原因者及び対策についてということでNHKに対する見解の打診がなされているわけですね。それに対してNHKはどのような回答をお示しになりましたでしょうか。
  118. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  五十四年の十一月にSKKの障害対策につきましてNHKに見解を求めてまいったわけでございます。それでこの問題は、中野五丁目周辺地区テレビ電波障害対策委員会の方々を中心にいたしまして十名ほど、これは区役所の方も含んでおるわけでございますが、NHKに参りまして、SKKの言い分とNHKの主張が異なるではないか、その説明を求めに参ったということでございます。それでSKKの言い分といたしましては、電波の強さが七十dB以上あるではないか、したがって主たる原因者ではない、こう言っているわけでございますが、NHKの調査では、御承知のように新宿ビル群がない場合と、またありまして、電波が強くでも反射波が非常に強い場合においてはゴースト障害を起こすわけでございます。したがって、SKKビルによる遮蔽のためにゴーストを生じたものである。したがって、小さいビルはありますけれども、主なる原因はSKKにあります。したがって、この委員会の皆さんもおっしゃっているように、とりあえず当事者間の解決ということで話をしているんだというお話もございましたので、SKKの言い分とNHKの主張の異なる部分は十分御説明申し上げまして、NHKとしても、今後また調査の必要があればこれからでも御協力申し上げますという形で申し上げたわけでございます。
  119. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いまの御答弁によりますと、中野五丁目、野方それから新井周辺地区の障害の主たる原因はSKKと特定できるというふうにおっしゃったわけでございます。その中で、SKK及びサンシャイン60の超高層ビルによって中野区の地域に深刻な影響を及ぼしているわけですけれども、ただいまもありましたように、有線方式による対策が一部で実施をされておりますが、多くの地域では依然として被害が続いているわけです。中野区の新井、野方、中野五丁目の周辺地区のテレビ電波障害対策委員会であるとか、あるいは鷺宮地区住民の皆さんが、SKKやサンシャイン60に対して再三再四要望を出されているわけです。この一年間ぐらいを見ましても、昨年の二月十九日、都知事、十一区長、四市長から郵政大臣あてで、サンシャイン60による電波障害について新都市開発センターに対して受信障害対策を早急に実施するよう、国の強力な指導というものが要請されているわけでございます。また昨年の四月十一日には中野区長から、一つは、原因者負担の原則に沿った立法措置を講じてほしいということと、二つ目は、当面の措置としてSKK及びサンシャイン60の両者が改善対策を行うように行政指導をしてほしい、こういう内容の要請が大臣あてにも出ているわけです。さらにことしの四月二十四日にも、同じく中野区長より郵政大臣に要請書が出されているわけです。このことを大臣は御承知でしょうか。お読みいただきましたでしょうか。
  120. 山内一郎

    山内国務大臣 私は、中野区長さんそれから関係者とお会いいたしまして、いろいろ御陳情を承って、お話し合いをしております。
  121. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 では、当然経過も御承知になっているわけですが、中野の区民の皆さんからのこれらの要望に対しまして、郵政省は、電波障害の原因者というものに対してどのような行政指導――いまも聞いていますと、どうも当事者間のことはいろいろとおっしゃっているのですが、郵政省は一体何をしたのか、行政指導をどうされたのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  122. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 先ほどお答えしたことと一部重複するかと思いますけれども、何分にも都市難視の形態も非常に複雑化してきたということで、まず制度的な解消策を図る必要があるということでいろいろ模索し、あるいは建設省とも話し合いをしたわけでございます。それにつきましては、先ほども申しましたように、関係するところの責任のあり方についての見解が違うというようなことで、なかなか結論は見出せないというのが現状でございますけれども、やはり粘り強く調整、話し合いを続けていきたいということでございます。  郵政省としまして具体的にどういうことをしたのかということでございますが、まず制度化を図る際の基盤的整備が必要であろうということで、受信障害といいました場合に、従来は主観的評価と申しますか、専門家が何人か集まりまして、これは障害があるとか、この程度ならがまんできるとか、あるいはこれなら十分だというような、いわゆる主観的評価だったわけですけれども、それでは関係者に納得がいってもらえないだろう、そういうような考え方から、受信障害の客観的評価手法を確立する必要がある。それからそれに関連いたしておりますけれども、受信障害の認定基準の策定を行う必要がある。こういうことで、受信障害の認定基準に関する調査研究を終了したところでございます。  本年度は、その基準に沿いまして実際にその基準を適用する際の、これは早急にやらなければいけませんので、受信障害用自動測定処理システムの開発調査研究を引き続き行いたいというようなことで、受信障害の発生の原因者を究明するための必要性を痛感して、その線に沿いましての研究も鋭意進めているところでございます。
  123. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いま御答弁された行政指導によりまして、何度も要請を繰り返してこられた新井、野方、中野五丁目、鷺宮、この地域の受信障害はいまの対策によって解決の方向に向かっているのかどうか。解決の方向に向かっているのであれば、そのめどはいつなのかということをお答えいただきたい。私も先ほどの同僚議員の御質問を聞いておりまして、重なる部分はなるべく省いて、御答弁いただいたものはもうこちらはお聞きしないで言っているわけです。ですから御答弁の方も、答弁要旨に書いてあることでも前に御答弁された分はカットして質問に答えていただきたいと、時間がないわけですから、ぜひお願いしたい。ですから、いまの質問は、新井、野方、中野五丁目、鷺宮、ここはいつ解決するのか、その点すばりとお答えくださるようにお願いします。
  124. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 簡単に答えなさい。
  125. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 その点は、私もせっかちな方ですのでずばりお答え申し上げたいのですけれども、そうはなっていない。というのは、経費がかかるということでございます。それについての納得のいくようなお話し合いができないというのが実情でございます。それで、そうした線に沿いまして、電波のSHF帯を使っていただきたい、それと有線との兼ね合わせ、それからどこまで続くのかというような問題、遠方反射というようなことで、問題が非常に多いわけでございます。そういうことで私も切歯扼腕しておるわけでございますけれども、どうにもやはり金の問題であるというのが結論でないか。それについてどうすればいいのかということでいろいろと模索し、また技術的なじみな努力も重ねておるというのが真相でございます。
  126. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 先ほど私はわざわざ確認したわけですが、NHKの御説明では、中野区内の中野五丁目などの地域における電波障害の主たる原因というのはSKK、つまり新宿副都心の超高層ビル群だということがはっきりしているわけです。そうすれば郵政省は、従来からテレビの都市難視の解決策として、原因者の責任によって障害を除去する原因者責任主義というのをとってこられたのですから、原因者が明確なものについてはきちんと指導する。当事者で話し合って粘り強く、こう言っていても、それは傍観者です。もっとちゃんとそれを指導する。被害を受けている住民の皆さんはNHKに調査を依頼して、そして調査結果に基づいて電波障害の原因者でありますSKKなりあるいは新都市開発センターに、受信障害改善という要望を再三やっておられるわけですね。これ一枚書こうと思ったら、多くの方が長時間顔を突き合わせ、知恵を出し合ってやっておられるわけです。それでもらちが明かないので、自治体とか区議会なども郵政大臣に要請されているわけですね。直訴もされたというではありませんか。郵政省はなぜその実効ある措置をとられないのか。そこのところが明確でないわけですから、ずばり言ってください。
  127. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 NHKの方からお話がございましたように、たとえば新宿近辺のものについては、SKKが主たる原因であるということは確かでございます。ただ残念なことに、そこにたとえば非常に低い五、六階程度のビルがありましても、やはりそれも原因しておるわけでございます。そのために複合しておる。だから、主たる原因であるけれども、どの部分まで、あの六階建ての低い建物がなかったなら何軒減るのかというようなことで、それから場所によりましては地形難視も入るというようなことで、犯人は私だけではないということが言える面が現象的にあるということでございます。  それですから、通常野っ原に建物を新しく建てますときに、その建てる以前と建築の途中とそれから建築完成後という形で受信障害を調べる、これが理想的でございますけれども、その場合におきましてもまた小さな建物があるいは出てくるということになりますと、お金を出しましょうと言ってもらえるまでの確たる原因の御納得がなかなかいただけない、そういう面があるということと、やはり基本的には非常に広範囲にわたるということが、どうしても無視できない要素ではないかというふうに考えるわけでございます。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  128. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 確かに常識から考えても複合もあろうかというふうに思いますが、先ほどもそのために詳しく説明いただいたのですが、主たる原因はSKKにある、こういうことがはっきりしているわけですね。それでもいや複合だ何だかんだと言ってぐずぐずしていたら全く日が暮れる、そして夜が明けるというふうに思うのですね。私は、いま郵政省が答弁された理由で解決がおくれているというふうには思わないのです。住民の皆さんの電波障害解消のための要望に対して、SKKや新都市開発センターがどのような態度、見解を示しているのか、これを郵政省は御存じなんでしょうか。知っているとか知らないとか、簡単にお答えください。
  129. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ちょっと誤解があるといけませんので、ただいま話を進めておるところでございますけれども……(藤原委員「知っているか知らないかだけで結構です」と呼ぶ)大臣あての要望あるいは大臣がお会いになった後での私どもの話で、存じております。
  130. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 SKKや新都市開発センターの態度、これを知っているわけですか。大臣に陳情されたお話の内容ではなくて、その後体然としてSKKや開発センターが言っている態度とか見解、こういったものを知っているか、こう言っているのです。知っているとか知らぬとかいう答弁まで一々後ろの方に耳打ちされるというふうな必要はないと思うのですね。電波監理局長が知っていたら知っている、知らなかったら知らないとおっしゃっていただければいいわけです。
  131. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 存じておりません。
  132. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 そんなことも知らないでどういう行政指導をやられているのか。電波障害の原因者に責任をとらしていくということが、それではできないではありませんか。御存じないのでしたら、私が調べましたことを申し上げたいと思います。  昭和五十四年十月十九日、新宿新都心開発協議会つまりSKKの事務局長から、中野五丁目周辺地区テレビ電波障害対策委員長あてに出された回答書があるのです。こういうものを見られたらみんなあるわけです。これを見ますと、SKKや新都市開発センターの態度が特徴的にあらわれているのです。私は本当にこれを読んで怒りに燃えるといいますか、本当にごまかされているじゃないかということを思いますので、よく聞き、それからこういう「中野区の公害レポート」といったものも出ているのですから、よく見ていただきたいと思うのですね。  この回答書では、テレビ電波障害対策についてのSKKの基本的見解は昭和五十年一月三十日付テレビ電波障害対策についての見解、これに記載してあるとおりだ、こういうふうに言っているわけですね。昭和五十年の見解ではどう言っているのかといいますと「電波は土地の利用に対し無害な範囲内でのみその土地上の通過が認められるという認識に基づくものである。」こう言っているのですね。非核三原則とこれは違うのですね。通過が認められる、こういう認識に基づくものである。「従ってテレビ電波障害に関しても基本的には電波送信者側において対策を講ずべき性質のものと考える。」と述べているわけです。そしてどう言っているかというと、「都市におけるテレビジョン電波受信障害については、電波監督行政を行なう国、及び電波送信者である放送事業者において、その解消のための基本的責任の存することを明確にし、あわせて障害防除のための費用負担の範囲を明確にすること。」と述べまして、さらに「建築主と住民との当事者主義、原因者責任主義で解決することは、公平かつ妥当ではない。」ここまで言い切っているわけですね。全くばかにされているではありませんか。  このSKKの見解は非常に重要な問題を含んでいると思いますけれども、けしからぬですね。電波障害の原因者であることは明白であるにもかかわらず、土地の地上権を主張して、みずからの責任を国であるとか放送事業者に全面的に転嫁をしているわけです。そして、郵政省の基本方針であります都市難視の原因者責任主義、これも否定をしているわけですね。こうした見解について、郵政省はどのように考えておられるのか。御存じなかったわけですが、いま申し上げましたから、これに対してどう思われるでしょうか。これも簡潔に、いろいろ弁解抜きにおっしゃっていただきたいと思います。
  133. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 私が存じておりませんと申しましたのは、地名とかそういうような非常に詳しいことについての理解はないということでございますが、その問題の重大性、あるいは各関係する機関がどういう立場での発言をしているかということについては、承知いたしておるつもりでございました。その意味で、ただいまおっしゃいましたことにつきまして、同じようなことも私申し上げたつもりでございます。  放送事業者の方は、電波はある程度の強さは届けてあるのだ。ところがビルができると、建築業者の方は、自分の上を無断で通っていたんだ。そういう立場の見解等々がありまして、お互いの責任の限界についての話し合いがつかないために苦労しておる、なかなかそう急にはいかない、そういうことでございますが、いま先生お読みになりましたようなことでございますけれども、話を詰める段階では、事業者としても応分の負担はするという言い分を私ども聞いておるわけでございます。そういうことでより精力的にこの問題を詰めでまいりたいと考えております。
  134. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 ここまでの議論で明らかになりましたように、中野区の中野五丁目、新井、野方、鷺宮、その地名までは知らぬとおっしゃっておりましたが、ぜひただいま認識していただいて、この地域の電波障害の原因についてはNHKの調査でも特定されて明らかなわけなのですから、主たる原因はSKKにあるということは明らかなわけですから、そこのところをいろいろ言われると、何かサンシャイン60とかこういうところをカバーしておられるのじゃないかなというふうに要らぬところで勘ぐられてもつまらぬわけです。はっきりした立場で原因者責任主義をとれ、こういう立場にある郵政省なのですから。しかし障害の原因者の方は、いろいろな理屈を述べて解決を引き延ばしてきたわけです。その一方で受信者とか住民の方々は、情報化時代と言われる今日の状況のもとで最も重要なマスメディアの一つであるテレビを視聴する自由を奪われてきた。こういうことがこの新宿副都心やサンシャイン60の超高層ビルによる電波障害の実態であるわけなのです。いまそうなっているわけなのです。この中野区の場合は、原因者が特定できているのに原因者が障害解決に非常に消極的な態度をとっている、こういうことが最大の原因になっているわけです。郵政省として、当事者間の協議にゆだねているのではもうだめだということははっきりしているわけですから、受信者の立場に立って電波障害の解決のために積極的な指導を講ずる責任があると私は考えますけれども郵政大臣の明確な御答弁をお尋ねしたいと思います。
  135. 山内一郎

    山内国務大臣 非常にむずかしい問題でして、建築物による影響がはっきりしている、こういう区域については、これは原因者負担でございますのでSKKにやらせる、十五億すでに使っているそうでございます。それから先になりますと技術的に非常にむずかしい問題が生じてくるわけでございます。建物の影響もあるでしょうし、その区域における小さな建物の影響も出てくるということで、まず技術的な問題を解決しませんと、はっきりとSKKは幾ら負担すべきである――その外側の話ですから、ある一定の区域内は原因者負担ですでにやっているということで、まず技術的な問題が第一である、これが第一点でございます。  その次は、それじゃSKKも関係しているのだからSKKにも負担させる、それから放送事業者にも、ちゃんと電波を出しているというものの電波が行っていないのですから、これも何とか協力してもらえないでしょうかというような相談、さらには地元の公共団体も、地元の問題でございますので、これも何とか協議に加わってもらいたい、こういうような技術的な問題とそれの協力体制の問題、非常にむずかしい問題ですけれども、いま郵政省としては精力的にやっておりますので、いろいろ御不満な点もございましょうけれども、できるだけ早く解決をして皆さん方に御満足いただけるようにということをやっている最中でございます。
  136. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 今日の都市の受信障害というのは年々増加の傾向にあるわけです。NHKの推定でも五十四年三月末で難視の戸数というのは五十四万世帯もあると言われている状況です。今後も都市の過密化、高層化によって一層深刻な問題になっていくであろうということは火を見るよりも明らかです。したがいまして、都市難視の問題が電波監理行政上の重要な問題だと思います。ところが、私が指摘いたしましたように、この都市難視の解消に対する郵政省の対応はきわめて消極的だという印象を感じるわけです。消極的でないとしても、その打つ手が後手後手という後追いの行政になっているのじゃないか。  今後の対策についてお聞きしたいと思うのですけれども昭和五十五年七月三十一日付の電波監理局長の通達で各地方電波監理局に受信障害対策官を一名ずつ計十一名置かれたわけです。もちろんこうした専任の受信障害対策官の設置というのは、従来の体制から言えば一歩前進だと私は思うわけですけれども、受信障害の世帯が約五十四万という実態から見るならば、受信者の要望にこたえていくためには、対策官の体制強化など都市の受信障害を受信者の立場に立って解決していくという具体的な体制の確保が必要ではないか。先ほど二つほど具体的な対策をおっしゃっていただいたのですけれども、もう一歩踏み込んで具体的な体制確保が要るのじゃないかという点を郵政省にお聞きしたい。  情報化社会と言われる中でテレビが最も重要な。マスメディアの一つになっているわけです。五十四年のNHKの全国視聴率調査によりましても、テレビ放送に対する国民の接触率というのは平日で九三%、視聴時間は一日三時間二十九分、これでもわかりますように、いまや国民生活の上でテレビは欠くことのできないものになっている。ところが、高層建築物などの障害物によってテレビの受信ができない。都市の過密化、高層化によって人為的につくり出された公害の一つだ。だからこそ「公害レポート」にもこうして出てくるという状況が起こっております。  そこで、最後に大臣にお尋ねするわけですけれども、都市部の建造物などによる人為的な難視問題を解決するためには、紛争の解決を当事者間の話し合いにゆだねるということではなくて、被害者である受信者を救済していく上では、これだけではきわめて不十分だと考えるわけです。先ほどの新宿副都心やサンシャイン60の場合でも、当事者間だけでは限度に来ているということはだれの目にも明らかだと思うのです。行政の強力な指導が今日求められている。そういう意味から言いましても、受信者の立場に立った都市難視の解消のために、従来から郵政省がとってこられた原因者責任ということによって障害を除去するという見地を、電波障害の原因者に義務づけてこれを制度化しなければならない。それでないとなかなか縛りがきかなくて、先ほどのような本当に厚かましいことも平気の平左で言うだけでなくて文字にして回答してくるというふうなことがまかり通っているわけです。ですから大臣、ぜひ制度化の方向に急いでいただきたい、早急に必要だと考えますが、先ほどの郵政省と大臣の御答弁を聞いて、終わります。
  137. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 受信障害というのは、いまや情報化社会におきましてはまさに公害というべきものかと思いますが、ただ日照権あるいはそれに類するような公害という立場にひとつ世論で持っていく必要があるだろう。それで、テレビを見る権利というもの、これあたりにつきましても、先生方にもひとつ御後援いただきまして、テレビを見る権利がみんなあるのだというような形の世論の喚起というものが必要じゃないかというふうに実はつくづく感じているわけでございます。そういう形から、私どもといたしましても毎年度の要求その他におきまして、たとえば受信障害判定委員会というようなものも要望もいたしましたわけですけれども、力不足と申しますか、世論がまだそこまで来ていないのか、いろいろ苦労しておるということで、今後とも、重要性は私ども認識しておるつもりでございますので、努力してまいりたいというふうに考えております。
  138. 山内一郎

    山内国務大臣 先ほど私の考え方をお答えしたのでございますけれども、受信障害を受けておられる立場に立つ、これが第一点ですね。それから、技術的に障害の影響を解析していく。これは明らかにビルそのものが原因であるとなれば、そこは原因者負担ではっきりするのです。それから少し離れたところはぼやけてくるのですね。それをどうやって費用分担をしていくかという制度の問題、この二点を重点に置いていま懸命にやっております。それを制度化してまいりたいと考えている、そういうことでございます。
  139. 佐藤守良

    佐藤委員長 藤原ひろ子君の質疑は終わりました。     ―――――――――――――  これにて質疑は終局いたしました。
  140. 佐藤守良

    佐藤委員長 討論の申し出がありませんので、これより採決に入ります。  日本放送協会昭和五十三年度財産目録貸借対照表及び損益計算書について採決いたします。  本件について異議がないと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  141. 佐藤守良

    佐藤委員長 起立総員。よって、本件は異議がないと決しました。  なお、ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  143. 佐藤守良

    佐藤委員長 逓信行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木強君。
  144. 鈴木強

    鈴木(強)委員 公労委の仲裁委員会から、五月十六日に三公社五現業の労使に対して、ことしの春闘の賃金問題にかかわる仲裁裁定、加重平均七・六四%のアップの提示がございました。これを受けて、五月二十三日には関係の閣僚会議も開かれ、協議がなされたようでございますが、結論として、政府は二十六日の閣議で、仲裁裁定実施の可否の判断を国会にゆだねるということにいたしまして、一括議決案件として処理する方針のもとに国会に付議されておるのでございます。私はこの件につきまして若干の質疑をいたしたいと思います。  そこで、公社の方にちょっと、総裁に最初にお伺いしたいのですが、時間も非常に少のうございますので、私もいろいろ調査をしてみましたので、調査結果によって結論を申し上げますので、それに対してイエスかノーか総裁の方から答えていただきたいと思います。  特にこの委員会は逓信関係でございますので、阿部理事の方が全逓関係、郵政関係、それから電電関係を私が社会党は担当してやることになりましたので、電電関係に限って最初にお伺いします。  示されました五十六年度の仲裁裁定を実施するためには、所要経費として約七百六十億、これは郵政委託の職員の分がございますので、それが二十三億ありますから、含めますと七百八十三億円だと思います。ところで、予算に計上されております五十六年度内容を見ますと、給与改善費というのが百四十四億円ございまして、郵政委託の分は五億円、含めまして百四十九億円となっております。そのほか予備費が六百億円と思いますが、この点は間違いございませんか。
  145. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えします。先生ただいまおっしゃいました数字のとおりでございます。
  146. 鈴木強

    鈴木(強)委員 その次に、最近における仲裁裁定の実施に当たっては、四十九、五十年、五十一年度には、公労法十六条に基づき国会に付議されました。そして補正予算が編成されましたが、五十年度以降は、給与改善費、予備費の使用、既定経費の節約、そういうことによって、いわゆる既定経費内の移流用でもって仲裁裁定が完全に実施された、こう私は思っておりますが、その点間違いございませんか。
  147. 岩下健

    ○岩下説明員 先生御指摘のとおりでございます。
  148. 鈴木強

    鈴木(強)委員 仲裁裁定が一括議決案件として国会に付議されたことは昭和三十六年以来まさに二十年ぶりのことだと思います。ところで昭和五十一年度は、電報電話料金の改正を内容とする公衆電気通信法の一部改正案が国会に提示されておりました。この改正案が通常国会で継続案件となり、財源的に見通しが持てなかったことから、公労法十六条に基づき仲裁裁定の実施について議決案件として臨時国会に付議されたものと私は思っておるのでございますが、この議決案件は昭和五十一年十一月四日に公衆法が成立をいたしましたので自然消滅になっておる、こういうふうに理解しておりますが、この点も間違いございませんでしょうか。
  149. 岩下健

    ○岩下説明員 御指摘のとおり、議決案件としまして付議されました事案は、五十一年十一月四日、公衆法の成立の日に、仲裁裁定実施が可能だという通知によりまして自然消滅をしております。
  150. 鈴木強

    鈴木(強)委員 ところで、昭和五十六年度の予算は国会を通過しておりますが、私どもは、この国会で決められた予算というものは必ず実現できるだろう、なお公社の非常な努力によりまして、毎年余剰金等が生じ、これがまた逆に四千八百億の一般会計への繰り入れというような事態にもなってまいっておりますが、いずれにいたしましても、国会で承認された予算案というものは大体そのとおりいくだろうというふうに考えておりますが、財政状況についてどんなふうに展望されておりますか、その点をちょっと説明していただきたい。
  151. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えいたします。  今般の裁定の実施に必要な金額は、先ほど先生おっしゃいましたように六百三十数億円新たな予算の措置を必要とするわけでございます。今年度の公社の財務状況、これは年度の初めでもございますので、しかとした収入あるいは支出の状況を現時点で確定することはなかなかむずかしいわけでございますが、かって既定予算の中で対処した例もございます。今年度につきましても、さらに事業活動が進んでいきました時点では、こうした現在の財源の状況がさらに変わってくるという可能性はございますが、現時点におきましては、予算の中身から申し上げまして、この裁定の実施が予算上直ちに可能だというふうに明確には断定しがたいというふうに現在のところ考えております。
  152. 鈴木強

    鈴木(強)委員 断定できないということですが、私が聞いているのは、大体財政見通しというのは国会で決めたような形でまいりますか、こういうことが主なんですよ。大丈夫ですか、その点は。
  153. 岩下健

    ○岩下説明員 収入の確保の努力、これはすでに年度当初から私どもしておりますし、予算で予定いたしました収支、また収支差額の確保、これには全力を今後とも尽くしてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  154. 鈴木強

    鈴木(強)委員 ですから、その予算上、現段階で可能とか不可能とかいう判断はできないとおっしゃっておりますが、財政的には通年と大体変わりはない、こう理解できますね。そうしますれば、いままで幾たびか仲裁裁定が実施されてまいりましたが、要するにこれは予算の移流用ですね、そういうことによってできない、不可能だということも言えないし――可能だとも言えないということは不可能だとも言えないということに通じるんじゃないですか。やろうとすればできるんじゃないですか、その点はどうですか。
  155. 岩下健

    ○岩下説明員 先ほどの私どものお答え、別の言い方をいたしますれば、現時点でこれが不可能だということも直ちには申し上げられないということでございます。
  156. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そこで、これは大臣にこれからちょっとお伺いしたいのですが、政府は、先ほども申し上げましたように公労法第十六条に基づいて国会に議決案件として一括付議をしております。私はこのやり方というのは非常に問題だと思うのですね。まず一括議決案件とした理由というのはどこにあるのか、それを聞かしてほしいのです。
  157. 山内一郎

    山内国務大臣 仲裁裁定が出ました後、関係閣僚会議を三回開催いたしました。そこで中心の議題は、もちろんこれを実施すべくどうやるかと、いろいろ予算面等で検討してまいりまして、いまいろいろお話ございましたけれども、昨年は御承知のとおり国鉄と郵政が議決案件になっている。これは郵便法の改正等もございましたので、そうなっておりますが、そこでいろいろ検討いたしまして、昨年と予算上どうであろう、電電公社あるいは郵政省についてもいろいろ大蔵省と折衝しながら、たとえばまず第一点が所要額の点ですね、これは昨年よりもふえている、当然でございますけれどもふえている。それから給与改善費は逆にことしの方が減っている。それからなお、予備費は同じでございますけれども、予備費を全部使ってもなお足りない。昨年は予備費を使えば全部カバーできたということはございましたけれども、郵便料の値上げで議決案件にしているという点が違っている。こういうことでございますので、実施に大いに努力をしたのでございますけれども、何としても昨年と数字の点で大分食い違いがある。予算上可能であるということは断言できないから、これはひとつ国会で御審議を願いましょうというようなことで議決案件として提出をしたというのが、関係閣僚会議で十分に検討した結果でございます。
  158. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それからもう一つ、電電公社の総裁に基本的な考え方を伺っておきたいのですけれども、電電の場合には、いま申し上げたような財政見通しも非常に希望が持てるという段階でございますから、既定経費の中における移流用によって仲裁裁定は実施できる、こう私は思うのです。電電の場合には、ことしはいろいろなことがありました。長距離の値下げ問題、納付金の問題等々ございまして、いろいろ御苦労なさっておるわけですが、要は従業員に一生懸命働いてもらわなければならぬわけでございまして、これは一般的に言えることですけれども、公労法というものはストライキ権にかわる代償として設けられ、しかもその代償としての仲裁裁定というものは労使双方を拘束しているわけですね。政府もまたこの実現に努力しなければならない、こういったてまえになっておるわけです。ですから、われわれとしてわからないのは、そういう点を詳細に検討しないで、ただ何か右へならへ式に一括して議決案件にした、そして国会にゆだねたというところにも問題があるわけで、これは大臣にこれから聞いてまいりますけれども、電電公社総裁は、全電通労働組合と労使双方の当事者でございますから、一方の旗頭でございますから、公社総裁としては何とか完全に実施して一日も早くこの給与が組合員のところに行き渡るようにと、これは仲裁裁定の中にも書いてあります、そういうお考えは持っておられるのでございましょうね。
  159. 真藤恒

    ○真藤説明員 私ども現業部隊の組織でございますので、この仲裁裁定の問題、一刻も早く御決定願って、事ががたがたしないようにおさめていただきたいと思っております。もちろん私自身としては、できるだけの努力をしながら進むつもりでございますけれども、こういうふうになっておりますので御決定を急いでいただくようにお願いするよりほか、いまのところ方法はないというふうに考えております。
  160. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大臣、大臣は少なくとも郵政、電電の監督の立場にあるわけでございます。そこには恐らく七十万近い職員がいらっしゃると思います。家族を含めて二百数十万ですね、この人たちの生活にかかわる問題でございます。昨年は郵政の場合、後ほど御質疑があると思いますが、確かに財政的に困難であった。したがって、郵便法の改正というものが爼上にありまして、それとの関連で議決案件として出てきました。しかし、ことしの場合には違いますよ。公労法というものは、いまも申し上げましたようにストライキ権にかわるものとして公労委が設けられ、そして仲裁裁定が出る。出た場合にはこれは必ずやらなければならない。ただし、予算上、資金上というところがあるわけです。この予算上、資金上の問題について、政府が本当に一つ一つ、こうでございますということを国民の前に明らかにして、そしてこれは議決案件で、政府としてはどうにもなりませんということであれば、これはわかりますよね。しかし、一つ一つの企業、三公五現について予算上資金上こういうわけですからできませんということは一つも国民の前に明らかにしていないのです。私は大臣ともお目にかかりました。ぜひこれを従来どおりの線で実現してほしい、こういう要請もいたしました。大臣としては、閣議においてもあるいは関係閣僚会議においても、そういうあなたの後に二百十万の人たちがおるのだということを考えながら、従来どおりの線で完全に早期に実施してやりたい、こういう気持ちは当然持っておられたと私は思うのですね。そういう考え方を持ってあなたはこの問題に対処されたのですか。
  161. 山内一郎

    山内国務大臣 いま鈴木委員が言われましたとおり、公労法の精神というものははっきりしているわけでございます。仲裁裁定については三十五条で、できる限り努力しなければならない、この線に沿って関係閣僚会議はもちろんその議論を闘わしたわけでございます。そこで、昨年とどういう点が数字が違うのか、この点も検討いたしまして、郵政で申し上げますと、所要額は、五十五年度は五百十一億、五十六年度は六百七十七億、それから給与改善費は、昨年は二百四十億、ことしは百二十七億、それで予備費は両年とも二百億ございます。予備費を全部給与改善にプラスして使った場合なおマイナスが出てくるではないか、この点はどうするのか、こういうことが議論になったわけでございます。  それから、電電公社についても先ほど御説明ございましたけれども、所要額は五十五年は五百九十五億、五十六年は七百八十三億、給与改善費は昨年二百七十八億、ことしは百四十九億、予備費は昨年が五百億、予備費をプラスいたしますと所要額は完全に昨年はカバーできたわけでございます。ことしは六百億、予備費がふえておりますけれども、これに給与改善費を加えましてもなお所要額に差額が出てくる。こういう点を十分に検討して、これは可能であるということは断言できないではないかということで、これをやりたいという気持ちはみんないっぱいでそういう議論をしたわけでございますけれども、具体的の数字がこういうふうになっている以上、議決案件にして皆さんにお願いいたしましょうという結論で御提案をした次第でございます。
  162. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そんな平板なありきたったような回答をされてもわれわれには一つも通用しないのです、大臣。公労法が施行されてからの長い歴史をよく勉強してみてくださいよ。あなたが数字的な面だけを言っても、これはたしか一%しか組んでないでしょう。それだけで言えばつじつまが合わないことはもちろんです。しかし、そのつじつまの合わないことをずっともう二十年近くやってきているじゃないですか。  昭和三十一年にやはりこの問題がいろいろありました。議決案件になる。議決案件になるときには必ずその関連法案というのがあって、あるいは補正予算が出て、予算上資金上どうにもならないというときもありましたが、そのほかは大体既定経費の中で移流用ということがなされているのですよ。昭和三十一年には公労法が一部改正されて、政府は裁定実施にできる限り努力しなければならないということの条文をそのときに追加したのです。同時に財政的な面におきましても、仲裁裁定が実施できるように、予算の移流用をやりやすくするように改められているのですよ。そういうことによって今日までやられているわけですね。それをやればできるじゃないですか。ことしの場合、それをやればできるのですよ。そういうおぜん立てができているにもかかわらず、何か昨年と同じようなことで、財源が全然できない、移流用してもむずかしいというそういう理屈を持ってきて当てはめたってこれはだめなんですよ。そういう体制がしかれていることを理解するならば、ことしは移流用でできるのです。  これはできない、これはできる、そういう面までやはり検討した上でどうしてもだめだというのなら、私たちもわかりますよ。そうじゃないじゃないですか。何か数字を羅列してできないなんて、そんなばかなことはないでしょう。そういう説明では納得できない。
  163. 山内一郎

    山内国務大臣 公労法でちゃんと書いてございます。まず三十五条で、裁定が出れば努力しなければならない、これは当然のことでございます。それで努力をさせていただいたわけでございます。  それから、ただし書きも、十六条でございますが、この点についても検討してまいったわけでございます。だから、公労法の精神を十分踏まえながら関係閣僚会議で検討した結果を申し上げているわけでございます。
  164. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それは国民を納得させ、われわれを納得させ、労働組合を納得させるものではないですよ。あなた方は平地に波乱を起こし、敵地に理由がないのに斬り込んでいくのと同じなんです。だからこの決定に対しても、自民党の総務会でも、一括議決案件についてはかなり強力な反対の意見があったことを私たちは知っている。いま国会があとわずかで終わろうとしているのですけれども国会に付議された以上は国会においてやらなければなりません。ですから、大臣も国会議員ですし閣僚であるしするので、われわれもいま電電公社の総裁もおっしゃったように、また当然国民も、こんなところで平地に波乱を起こすようなことはしてはいかぬ、早く解決してやってほしいというのが私は願いだと思うのです。そういう意味からして、いままでやってきたようなことをやっておけば問題なかったのだけれども、そうでないために、ここまで来れば、いま国対委員長会談等も開かれて、情報によりますと何か自民党の方も当初の考え方を大分変えまして歩み寄りが行われるような記事もけさの新聞には載っております。しかし、それにはいろいろ条件もあるようですから非常にむずかしいと思いますが、われわれとしてはこれをできるだけ早く議決をしてやるべきだと思うのです。本来ならばこういうものは撤回して、従来どおりの二十年来やってまいりましたこの慣行、よき慣行を遵守して、それによって一刻も早く仲裁裁定を完全に実施してやる。いま労使間におきましても非常にいい方向に向かってきているではないですか。ことしの春闘をごらんなさい。そういうときに、政府はなぜ平地に波乱を起こすのですか。労働組合が怒るのはあたりまえですよ。  私はある新聞の論調を、簡単ですけれども、ここでちょっと読み上げてみたいのです。これは世論ですよ。   この一括議決案件方式はいかにも道理のないものといわざるを得ないのである。政府はもっと裁定完全実施のための努力義務を尽くすべきであった。その努力が十分に行われたとは言い難く、行革絡みの思惑が先行して公労法の原則が軽視されたのは遺憾である。  公労法の原則は、必ずしもすべての当事者によって十分に守られてきたわけではない。公労協のしばしばの争議行為はその最たるものである。だからといって法案を提案し成立させてきた政府が、それを軽視してよいということにはならない。行政改革その他どのような政策目的も、その理由になることができないのはもちろんである。  公労協は、今国会で裁定完全実施を決めず、臨時国会に先送りする場合や裁定を値切る場合は、五日に全一日のストを行う予定だという。もし政府が法に基づく実施努力を怠る場合は、このストを違法だとして非難しても迫力に乏しいものになりはしないか。  この段階で政府、自民党がなすべきことは、改めて裁定完全実施への努力を尽くすこと、具体的には今国会でこの案件の議決、承認を済ませることである。行政改革を国民的理解のもとに円滑に実施するためにも、それが必要だということをよく認識しなければならない。 こういうふうに書いてある。ですから、今度の閣議決定、政府のやり力は、実に公労法の精神を真っ向からじゅうりんするような形で挑戦したものだと言わざるを得ない。非常に残念です。  いませっかく話も詰まっておりますが、大臣としてもぜひこの国会においてこれが議決できるように最善の努力を尽くしていただきたいということを私は最後にあなたにお願いし、所信をいただいて終わります。
  165. 山内一郎

    山内国務大臣 国会に議決案件として出しました経緯はいろいろ述べたとおりでございますけれども、できるだけ早く議決をしていただきたい、なおかつわれわれもそれが実現できますようにいま努力をしておる最中でございます。
  166. 鈴木強

    鈴木(強)委員 では、時間ですので終わります。
  167. 佐藤守良

    佐藤委員長 鈴木強君の質疑は終わりました。  阿部喜男君。
  168. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣、私は、できればもうこの質問を取り下げるような状況になることを非常に期待しておったわけで、先ほども自民党の労調の関係の先生方にもいろいろ御意見を伺ったのですが、いま同僚の鈴木委員からもお話がありましたように、何か本日午後四時から与野党の国会対策委員長会談が持たれる、かなりいい方向に進んでおるというふうには聞いておるのですけれども、まだ結論が出ていないようですから、二、三点お伺いしておきたいと思うのです。  この委員会でも大臣にお願いをして、これはもう長い慣行の上に法の精神を生かしてきたいきさつもあるわけでございますから、今回もぜひ政府の責任で完全実施をしていただくようにお骨折りを願いたい。大臣を初め、公社の総裁その他の皆さんも大体私どもの主張に対して了解をしていただいて、それなりに大変なお骨折りをいただいたようでございます。したがって、私はいま大臣からここで、議決案件として持ち込まなければならないという、数字を挙げてのお話は実は余りありがたくないのです。努力をした、努力をしたが大勢としてこうなったということであれば仕方がありませんが、数字を挙げて、だから議決案件にするのだという理詰めで議決案件にした経過を説明なさるというのは、非常に不愉快なのでございます。去年は、御案内のとおり郵便法の改正がありまして、郵便料金の値上げがどうなるかということが財政上非常に大きい一つのネックになっておった。しかし、電電公社の場合にはそういう関係がなかったから、電電公社の仲裁についてはすんなりと政府の責任で実施を認める。そして郵政と国鉄については国会の判断を求める。そういう経過になったわけですから、そのこと自体のいい悪いは別にして、私どもはそれなりにその理由を理解することができたわけですけれども、ことしの場合、いままでお話がありましたとおり、私は、これは全く政府が何か仲裁裁定を利用していろいろな問題の解決を図ろうというように、仲裁裁定を悪用しておるように思われてならないわけです。まあそれは、内閣国会に連帯して責任を負うといったてまえから言えば、大臣がいまお答えのように何とか苦しいなりにも議決案件として持ち込まなければならなかった理屈をつけなければならないんでしょうけれども、私はむしろここで大臣から、いや、こんなふうに努力をしてきたんだと、努力をやってきた実績の方を御披露願いたいのですが……。
  169. 山内一郎

    山内国務大臣 関係閣僚会議でいろいろな議論が出たことは、三日間もやったのでございますから、あったわけでございます。そこでいろいろあった内容を、だれがどういうふうに言ったというようなことになりますと、郵政大臣はどうしたんだ、こういうような話も出てまいりますし、いろいろ述べましたように、最終の結論は議決案件になったということでございますので、それはもうすぐ実施すべき意見とか、いや、予算的に無理じゃないかという意見がいろいろあったことは間違いないのです。しかし、最終結論はそういうふうにせざるを得なかったということでございますので、もう数字は申し上げませんから、従来と同じようにならなかったということを申し上げておきます。
  170. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣の立場として、議決案件になった以上は閣僚の一人としてその方向で物を言わざるを得ない。  そこで、大臣が関係閣僚会議に臨むまでの郵政省の判断、考え方はどうであったのか。これは大臣に聞くのは酷ですから、事務当局の方からひとつ聞かせてください。
  171. 岡野裕

    ○岡野政府委員 お答えを申し上げます。  先生御専門の分野でございますものですから、言うもさらなりとおしかりかとも存じますが、この春三月以来、関係労働組合との間で一生懸命新賃金の問題で団体交渉してまいりました。しかしながら、有額回答いたしましたのではございまするけれども、これで了承ということになりませんで、非常に珍しいケースでございますが、一部労働組合との間には名前を並べて調停を申請をするというようなこともございましたが、結局調停段階におきましても不調ということで、調停委員長見解が出まして職権仲裁ということになりました結果、先生御指摘の仲裁裁定が出たわけでございます。  私どもといたしましては、これはやはり数字を挙げませんことにはどんな努力をしたかということにも結びつきませんものですから、失礼でございますけれどももう一度お話をさせていただきたいのであります。  五十六年の四月一日以降一人当たり三・八一%プラス二千八百八十円、この原資をもって引き上げるという趣旨の裁定でございまして、私どもの基準内給与は十七万八千四百十四円、引上額九千六百七十八円、パーセントにいたしまして五・四二%ということに相なるわけでございますが、しからば所要額はどんなふうになるであろうか。公労法適用外職員全部をひっくるめまして総額六百七十七億円である、こういう数字になるわけでございます。  ところで、成立予算中給与改善経費はどんな数字になっておるか、百二十七億でございますものですから、ということで差し引き不足額は五百五十億円であるということになりますと、これは私ども部内といたしましてはいかようにも措置ができかねる数字でございますものですから、それで今回の仲裁裁定につきましては、関係の分野ともいろいろ折衝した結果、実施可能であると必ずしも断定ができないというようなことで、議決案件ということで御付議を申し上げた、こんな経緯でございます。御了承いただきたいと存じます。
  172. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは郵政省は、大臣が関係閣僚会議に臨む際に、この数字では議決案件にする以外に方法はないというような方針で臨まれたのですか。何とかこの数字でも、やりくりをして従来のように既定の予算の中で抑えながら何とかやれるという方針で臨まれたのですか、どっちですか。
  173. 岡野裕

    ○岡野政府委員 一般に仲裁裁定を実施いたします場合に、私どもといたしましては、予備費の充当でございますとか、あるいは経費の節減でございますとか、あるいはまた増収を図るとかいうようなことで対処をしてまいるわけでございますが、予算が成立をいたしましてまだ二カ月にしかならない。幸いに過ぐる国会におきまして郵便法改定につきまして御了承いただきまして、一月から郵便料金改定をいたしました。しかしながら、改定をしました結果、今後郵便物がどのような伸びぐあいをするものであるか、それがはね返りまして収入というものにどんな結びつきをするものであろうか、その辺がまだ先行き見通しなかなか困難でございましたりというような事情で、やはりこれはそのまま実施をいたすというわけにはまいらない、断定ができないという判断をいたしました。  そんな次第でございます。
  174. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは大臣は、関係閣僚会議にお臨みになるときに、予備費の流用やあるいは経費の節減によっていまの予算の中で何とかやってもらいたい、やれるというような方針で閣僚会議にお臨みになったんではなくて、これはやはり非常にむずかしいから議決案件以外になかろうというような姿勢でお臨みになったのですか。ぼくがここは非常に重要であると言うのは、御承知のように、もし問題が解決しないときには五日の日には公労協がストライキをやるということになっておるんですよ。その際に、少なくとも関係大臣は熱意を持って努力をしてくれたんだという働く人たちの受けとめ方があるのか、何だ郵政省は初めからやる気がなかったのかということになるのか、それは労働者の受けとめ方として非常に重要なポイントになりますから。  同じことを電電公社にも申し上げておきます。電電公社だって国が国庫納付金といって、なかなか経営の状態がいいからといろいろ理屈をつけて四千八百億も持っていった。そのとき公社の幹部の皆さんは、これは職員が一生懸命がんばってくれたんですからということを一生懸命になってここでも説明されたし、われわれもそうであると考えておったんですよ。そういう国庫に持っていくような金がありながら、誠意を持って実現できるようにしなければならないという公労法の精神を外にして、いや、予算をながめてみるとどうも無理でありますなんて、予算が無理なら持っていくと決めた金を戻してくればいいじゃないですか。そこで初めて労働者と使用者の間の信頼が回復するのであって、片方は金が余っているごたるからなんて言って理屈をつけて国にどんどん持っていっておいて、仲裁裁定のわずか六百億かそこらの金を、どう計算してみても合いませんから、これは議決案件にせざるを得ませんなどというばかな話がありますか。  だから私は、大臣やあるいは総裁、そういう方々がどれだけ努力をされたのか、そのことをまずお伺いをして、それだけ努力をされたにもかかわらず、政府としての判断がこうなったというなら、ほかのところに聞きたいことが多いのです。ところが初めから大臣が、それはいま人事局長も言ったようにいや、議決案件以外にない、恐らくこの予算ではやれませんというようなことで閣僚会議に臨んだんなら、これはほかのところに聞く前に、もう私は大臣の話だけでやめにゃならぬのです。どういうことですか。
  175. 山内一郎

    山内国務大臣 関係閣僚会議でございますので、いろんな大臣がいろんな意見を言うことは当然でございます。そこで、発言する前に、やはり事務当局同士、ことしの予算は、人事局長が話をしましたように、これはこうなっているので予備費を流用、全部どうだとかいうような折衝は、当然大蔵省として努力したわけでございます、努力しなければいけないのですから。しかし、大蔵省としては、まだ意見がその点は、閣僚会議の時点においては合致をしていなかった。したがって、私としてはそういう点を踏まえまして、これはまあ余りいろいろ言うとまたあれでございますが、それはたくさん組合員を抱えていますから、そういう点はお察しをいただいてしかるべきじゃないかと思いますが、要するに議決案件になったということでございます。
  176. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣が察してくれと言われれば、私も察します。うそか本当かわからぬが、新聞を読まなかったわけではありませんから、新聞を読んでおるわけですから、恐らくそうだろうというふうには考えるのです。そこで私は、いまの雲行きからいけば、あすあたりはあるいは国会で議決するかもわかりません、実施せよということで議決をするかもわからないと思うのですが、大蔵省がそれだけ特別会計である郵政事業なりあるいは電電公社の会計について気を使ってくださるのならば、国会が判断をして議決をした、しかもいまおっしゃるように財政上かなり、計算をしてみると無理があるという場合には、国会が議決したら、国がその足らない予算を郵政省や電電公社に出してくれることになるわけですか。
  177. 山内一郎

    山内国務大臣 いま、なったらどうなるかというお話でございますけれども、従来の例から言えば、補正予算を組んだ場合もあるのですね、これは。したがって、まず実施をしておいて、だんだんと予算を使っていきますね。そうすると、どうしても足りない場合は補正予算を組んでくれる、こういうことで、議決をいただければ、完全実施するように最大の努力をするといったてまえでございます。
  178. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで、補正予算を組んでみても、既定予算の中で差し繰りをしてやってみるにしても、特に国が、大蔵省が郵政事業特別会計に、あなたのところは金が足らぬから気の毒ですと言って、くれるわけじゃなくて、補正予算を組んだって、郵政事業特別会計の中で、あるいは電電公社の予算の中で差し繰りをして処理しなければならない問題なんですよ。なぜそれを、いずれにしても郵政事業特別会計、電電公社の金の中で処理せにゃならぬ問題を、わざわざ国会に持ち出していやがらせをしなければならないのですか。その大蔵省の感覚が、ぼくはどうしてもわからないのです。そこできょうは大蔵大臣に出てもらおうと思ったら、きょうは大蔵委員会もあるから大臣が出れないというので、その次の何か審議官が来るはずですが、審議官来ていますか、来ていませんか。何かさっきその次のが来るとかいう話でしたが、課長ですか、ちょっとそこのところは、どういうわけで大蔵省はそういうことになるのですか。
  179. 水谷文彦

    ○水谷説明員 お答えをいたします。  御案内のように、仲裁の取り扱いにつきましては、政府の実施努力義務を定めました公労法三十五条の規定があるわけでございます。しかし、別途財政民主主義というようなたてまえから、予算上、資金上不可能な仲裁につきましては国会の御判断を仰ぐ、こういったてまえになっておるわけでございます。  先ほどからお話がございましたように、去る十六日に仲裁裁定が出まして、その後事務当局において、あるいは閣僚間においていろいろお話し合いが持たれたわけでございます。当面お話の郵政につきましては、先ほど人事局長から御答弁がございましたような、ああいう数字でございます。郵政に限らず五十六年度予算というのは、従来に比べまして本当に様変わりの厳しい予算編成を行っているわけでございます。したがいまして、先ほど先生お話にございましたように、この仲裁の財源というものは、給与改善費一%ございますけれども、それにこだわりませず、それを含めた既定経費全体で、それは予備費も入っておりますけれども、予備費も給与改善費も含めた既定経費全体でやりくってみまして、揺すぶってみまして財源が出てくるかどうかということが判断のポイントになるわけでございます。したがいまして、十六日以降そういったお話し合いを郵政省といたしてまいりました過程において、やはり五十六年度予算は大変厳しい編成がされている。しかも、成立後二カ月というようなきわめて短期間の段階においてそういった既定経費のやりくりについては見通しを得がたいんではないかということをもちまして、各公企体それぞれ判断いたしまして、結果的にすべての公企体につきまして議決案件として国会の御判断を仰いだ。こういう経緯でございます。
  180. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は基本的に少し狂っておるんじゃないかと思うのは、予算上、資金上やれるかやれないかという判断は、郵政事業特別会計ならば郵政省がその判断をおやりになる。電電公社の予算ならば電電公社が、その予算の中で資金上、予算上やれるかやれないかの判断をすればいいのであって、その限りでは、大蔵省が出てきて、できるとかできぬとを言うのはおかしいと思うのです。その証拠には、さっき言ったように、じゃ国会が議決したらどうなりますか。議決したらやるのでしょう。やるときに、それでは電電公社の予算は厳しいごたるから国がこれだけ持っていきましょうとか、郵政省の特別会計予算は厳しいから国が金を出しましょうと言うなら、それは大蔵省がいろいろ意見を述べるのはわかりますよ。しかし、そのやれるかやれないかという判断は、特別会計のところについては特別会計がまず自主的に判断をし、その意見を十分取り入れて閣議決定なり政府としての方針をお決めになるというなら話がわかるけれども、何かわからぬが大蔵省が出てきて、後の責任も持たないくせに、いや予算上どうだとか資金上どうだとか、つまらないことを言って労使関係を紛争させて、国民に迷惑をかけて――恐らく結果的には、見ていてみなさい。大蔵省が何と言おうと、恐らくあす、あすでなければ次の国会でこれは議決して、法に従ってさかのぼって仲裁がそのまま実施をされることになる、これは私は間違いがないと見ています。それじゃ何のために議決案件にして紛争を招くのか。全くそれは郵政事業特別会計あるいは電電公社の運営、予算というものについての自主性を拘束しているからだと思う。私はその判断は、公労法に言う判断は、それなりの会計の中で資金上、予算上やれるかやれないかの判断をすればいいんであって、そこに大蔵省がしゃしゃり出てきて、予算上できるとかできぬとか。そういう気のきいたことを言うならば、できぬときに国が、それは困りましょうからと言って金を持ってきてくれるのならそれはくちばしを入れていいです。そうでなくて、あくまでもその特別会計の企業体の職員の責任で処理をさせるんなら、そこの運営の責任でやらせるんならば、そういうことにくちばしを入れるのがそもそもおかしいのであって、明らかにこれはほかのものに利用しようとする意図にほかならない、こうぼくは感ずるのですが、郵政大臣や電電公社の総裁はそうお感じになりませんか。
  181. 山内一郎

    山内国務大臣 これは昨年でございますけれども、補正を二百七十一億組みまして所要額を賄っております。したがって、こういうことはあり得るんですね。だから今回も、予算を使いながら、どうしても完全実施に足りない場合には補正を組んでもらわないといけない、こういうことを言っているわけでございます。
  182. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 公社どうですか。
  183. 真藤恒

    ○真藤説明員 私ども、議決案件に決まる前、仲裁裁定が決まって議決案件という話が出る前は、何とかしなければならぬというふうに考えておったのでございますが、議決案件になってしまいましたので、さっき申しましたように議決案件を早く決めていただくよりほか方法はございません。
  184. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 もう議決案件になった以上は、いま総裁のおっしゃるとおり、これは早く決めてくれ、早く何とか国会で処理をしてくれとおっしゃるのは私は当然だと思うのです。しかし、なぜ議決案件にしなければならなかったのだろうか、そのことに大きい疑義を持つわけですよ。確かに補正予算を組まなければならぬかもわかりません。補正予算の提案権は、それは大蔵省が予算をつくるようになっておるかもわかりません。しかし結果的に責任を負うのは、郵政事業の特別会計がそのつじつまを合わせていかなければ、国が金をくれるわけじゃないのでしょう。しかも電電公社の場合は、さっき申し上げましたように、経理内容がいいからといって、国の財政が厳しいからといって四千八百億も取り上げておいて、それでこっちでもって、金がどうも予算上無理があるからあなたのところのは議決案件にするなんといったって、国民だってそこに働いておる人だって、ごもっともだと言うわけはないでしょう。新聞の論説なんかを見てごらんなさいよ。ほとんどがむちゃな話だと書いてあるじゃないですか。それを無理押しをせんならぬという大蔵省の姿勢というものは、私はほかに魂胆がある、ほかの案件を処理させるためにわざわざこれを議決案件にして引っ張り延ばしておるのだ、そういうふうに考えられて仕方がありません。したがって、私はきょうは郵政大臣や公社の総裁を責める気持ちはございませんけれども、もし議決案件にしたために決着がつかずに、ストライキなどが起こって国民の皆さんに迷惑を及ぼすような結果になったとしたならば、その責任は挙げて政府にあり、その中心が大蔵省にあるということを厳重に忠告しておきます。  あわせて、労働省に御出席願っておりますが、労働大臣に大変御苦労をいただいたと新聞紙上で拝見をしておるわけですけれども、この法にも明らかなように、公労法等の取り扱いの主務大臣は労働大臣でございますけれども、その労働大臣の意見さえ入れられなかったのですか、どうなんでしょうか。
  185. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 お答えいたします。  私どもとしましては、公労法に定める仲裁制度、これは労働基本権、スト権の代償措置である。それを踏まえて、予算上、資金上不可能な仲裁裁定につきましても、御存じのとおり公労法三十五条で政府の実施努力義務というものが課されておるわけでございまして、それを踏まえまして私どもの御意見を申し上げるとともに、それからまた当委員会におきましてもお話がありましたように、郵政省初め国鉄、電電、すべて労使関係が顕著な改善の方向をたどっておる、それからまた、今後国鉄の再建というようなものを進めていくに当たっても、やはり労使関係がよくなくちゃいかぬというようなことも考えて、ひとつ努力をお願いしますという立場でもって申し上げてきたわけでございます。  それで、給与関係閣僚会議は御承知のように三度にわたり会議を開かれまして、熱心に御討議の末、御存じのような結論になったわけでございますが、私どもとしましては、国会に御判断を仰ぎました以上は、御審議、御判断を進めていただきたいということで考えておるところでございます。
  186. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 労働省の方も大臣にかわって御答弁をいただきましたが、関係の閣僚の皆さん方に大変なお骨折りをいただいておるにもかかわらず、自分のところで実際にそういう関係の多数の職員を抱えていない関係大臣がいろいろ文句を言って抑えて、今日なお結論が出ていない。私は大蔵省の横暴だ、そう言わざるを得ないと思うのですけれども、もしも不測の事態が起きるようなことになったならば、国を滅ぼすのは大蔵省だということだけ、この際ちゃんと申し上げておかなければ――大蔵省の官僚の皆さんは私はわかっておると思うのです、本当を言うと。これはやはりやるべきだということぐらいはわかっておるし、また事実国会が議決したら、それぞれの企業体なりでもって処理をしなければならない財政の内容なんですよ。これは国が金を持ってきて出すわけではないのですよ。それならば、仮に後で苦しい財政の運用があったとしても、この際には努力してくださいと言うのがむしろ国の財政を預かる大蔵省の立場でなければならぬ。それを無理に何でも、新聞ですから私もはっきり知りませんが、新聞では大蔵大臣が一番強硬であったというふうに承っておるのですけれども、せっかく関係の皆さんが、自民党の方でも骨を折っていただいておるようでございますから、ただこれが議決されたからといって、またその後いろいろな手続が残るわけでございまして、配分の問題とかいつ支給できるかとか、いろいろそれはまたそれぞれの中で話し合いを進めてもらわなければならぬことになるわけでございますから、まず私は、議決が速やかにできるようにわれわれも努力をいたしますが、ひとつ大臣を初め関係の皆さんの御努力をお願いをし、もし議決されたならば速やかに皆さんの手に渡るようにお骨折りを願いたい。この点はもう異存はないと思いますが、いかがでしょうか。
  187. 山内一郎

    山内国務大臣 もう提出をいたしましたので、できるだけ早く議決をお願いしたいし、それからまたわれわれも議決をしていただくようにいろいろやっております。そして、できるだけ早く決定したい問題である、こういう気持ちでいっぱいでございます。
  188. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 総裁の方から一言あれば……。
  189. 真藤恒

    ○真藤説明員 大臣と同じでございます。
  190. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 終わります。
  191. 佐藤守良

    佐藤委員長 阿部喜男君の質疑は終わりました。  竹内勝彦君。
  192. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 御承知のとおり、仲裁裁定に対しての完全実施というものは、これはもう政府の義務です。先ほどもお話がありましたとおり、公労法第三十五条で「委員会の裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならず、また、政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」こう規定されておりますね。この政府の努力規定が加わっており、こういう中で昭和三十二年以降、仲裁裁定の完全実施というものが慣例として定着してきたわけです。そういう意味からも、この努力規定、さらに政府は三公社五現業について早期に完全実施しなければならない、こういった面から、郵政省、郵政大臣としてこの完全実施に対してどうしていく考え方があるのか、その点を最初にお伺いしておきたいと思います。
  193. 山内一郎

    山内国務大臣 まず、仲裁裁定がおりまして、さっそく関係閣僚会議を三回開催したわけでございます。一回で意見がまとまりませんで、いろいろな意見が二回、三回と出て、やっと議決案件にせざるを得ないのじゃないかという結論で、国会に提出をさせていただいているわけでございます。もちろん公労法の精神を外しまして、三十五条の実施の努力をするべくいろんな点から検討して、予算上の面で実施ができるとは断言できない状態であるというような点で、議決案件として提出をさせていただいたような次第でございます。
  194. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 この裁定の扱いというものを一括国会審議にゆだねる、こういったことに関しては、これはもう個々の経営内容を全く無視したものであり、労働者の労働意欲といったものを減退させます。そういう意味で、公共事業の発展を著しく阻害するといった意味からも、さきにも労働省としての考え方がございましたけれども、労働大臣としてはかなりこの労使関係のことを気にしておる。こういった意味で、労働省としてこの仲裁裁定の完全実施をどのように考えておるか、労働省の考え方をもう一度聞かせてください。
  195. 中村正

    ○中村説明員 先ほどの御質問でも労働省としてお答えしたところでございますけれども、公労委の仲裁裁定制度が労働基本権の制約に対する代償措置であるということを考えますと、私どもとしては政府の目いっぱいの努力をお願いしたいということで、わが省としてもいろいろと主張してまいりましたし、公企体の労使関係を考えますと、かなり改善に向かっておるということに重きを置きまして、その点からも完全実施をお願いしたいということで主張してまいりましたが、結果といたしましては、やはり法律にございますように予算上、資金上不可能な場合にはこれは国会の御判断を仰がざるを得ない、こういうことでございまして、結果として議決案件をお願いしておるところでございます。諸般の事情をいろいろ考えますと、やはり速やかに完全実施が図れるよう国会での御判断をお願いしたい、こういうふうに思っております。
  196. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今回の措置というのは、これはもう二十数年来全く例を見ないことでございます。このまま推移すれば、この正常な労使関係に亀裂が生じてくると言っても過言ではございません。こういった公労委の仲裁裁定を国会議決案件として付議した理由は一体何なのか、郵政省、答えていただきたいのと同時に、こういった形になってきたものをどうとらえておるか、公社としてどのような判断を持っておるのか、同時に公社からもお答え願いたいと思います。
  197. 岡野裕

    ○岡野政府委員 いままでお答えを申し上げましたところと多少重複をしてしまうわけでございますが、今回の仲裁裁定を実施いたします場合に、所要額が六百七十七億必要とされ、予算上成立をいたしましたものが百二十七億で、結局差し引き五百五十億の不足を生じてしまう。この不足額といいますのは、昨年の仲裁裁定の時期の不足額二百七十一億から比べますと、倍以上にもなっている。無論そのほかに郵便法料金改定を中心といたします改正を御審議願わねばならないという実態にはあったわけでございますが、ともあれ、今年のこの五百五十億というものは非常に大きな額でございまして、私どもいまの時点におきまして、これを支出することが可能だと断定はできないという考え方のもとに、議決案件ということで国会に御付議を申し上げた次第でございます。
  198. 児島仁

    ○児島説明員 電電公社といたしましては、まさに現業部門でございますので、職員感情を非常に大切にしていきたいというふうに考えております。したがいまして、この問題の解決が今後の労使関係並びに職員の勤労意欲に非常に重大な影響があるという観点から、私どもは、先ほど経理局長からもお答えしましたように、年間を通して予算を執行してみなければわかりませんが、絶対に不可能であるという結論はないわけでございますので、われわれとしては一苦労も二苦労もしてそういったことを実施していきたいという立場で、いろいろ御検討いただいてまいったわけであります。現在のところ議決案件ということになりましたので、先ほど総裁申し述べましたとおり、私どもの当初の気持ちはそういうことでございますが、現在時点では、早期に完全な実施をしていただきたいというふうに考えております。
  199. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今回はこの公労法第十六条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件として提出されておりますが、その提出事由の二の中で、予算上の理由だけを掲げております。御承知のとおり、公労法第十六条第一項では、「予算上又は資金上、」と、こうあります。その資金上という理由が欠けているのはどういうわけなのか。それからまた、資金上の移流用ができれば、国会に議決案件として提出しなくてもよかったのではないか、こういったことも考えられるわけでございます。  たとえば、今回三公社五現業で十八組合についての仲裁裁定があります。国鉄、林野などの巨額の赤字を抱えておるところも含めて、十八の議決案件を一括して処理することは非常に無謀ではないか、こう考えられます。  たとえば電電公社について、要求額が六百三十四億円に対して、公社の予算では百四十九億円が給与改定分としてすでに計上されておる。しかし、六百億円の予備費と、人件費の節約、たとえば五十四年度は百十億円、五十五年度三百十七億円が節約されておるわけでございますけれども、これらを運用すれば、必要な財源は公社の予算上からも可能なはずでございます。しかるに、この電電公社に対しても、今回この公労法第十六条の予算上の理由だけで、仲裁裁定を実施する努力をしないで国会の議決案件に上げてくる、こういった考え方はおかしいのではないかと思いますけれども郵政大臣どういうふうに考えますか。
  200. 山内一郎

    山内国務大臣 公労法の三十五条は、「裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」これが大前提でございます。ただし「予算上又は資金上、不可能な資金の支出内容とする裁定については、第十六条の定めるところによる。」ということでございますので、やはり予算上、資金上これがどうなるかというのが中心になっている条文でございまして、その点について検討したわけでございます。
  201. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 三公社等においても、この六月五日に仲裁裁定の完全実施を求めるストライキを予定しているようでございます。この無用のトラブルを防ぐためにも早期に完全実施すべきではないか。昨年は郵便法等改正法案やあるいは国鉄再建法案、こういったものの成立がおくれて、仲裁裁定の実施がおくれたわけです。ことしはそのような法案との関連は何もないわけです。早期に実施していかなければならないし、この公労法第三十四条等でも、仲裁裁定は労働協約と同一の効力を有しており、法的に労使当事者を拘束するばかりでなく、争議行為の禁止に対する代償措置でございます。したがって政府としては、完全にかつ速やかにこの仲裁裁定というものを実施すべきである、こう思いますが、いかがでしょうか。
  202. 岡野裕

    ○岡野政府委員 先ほどの労働省の関係官からもお話がございましたように、この仲裁裁定制度といいますものは、公共企業体等に働きます職員諸君のストライキ権の代償措置というようなことで決められたものでございますので、私どもはこの仲裁裁定を実施をすべく、法に基づきまして、法の定めました手続を踏んでいるところでございます。ひとつよろしく御審議をいただきたいと存じます。
  203. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 もしもこれ、たとえばストに追い込むような形になっていけば、国民感情、国民の立場、労使の関係――東京ではまた今後選挙も行われます。そういう意味で、その国民感情というものをどう計算して考えておるのか。そういう意味からも、このようなものに追い込んでいくのは非常によくない。ましてやこの国会審議を託すということは、仲裁裁定がそれだけおくれることになっていく。その場合の責任というものをどうとらえておるのか、説明してください。
  204. 岡野裕

    ○岡野政府委員 先ほどお話を申し上げましたように、あの仲裁裁定は当然私ども当事者を拘束をするものでございますが、先生お話がございましたように三十五条で、政府はできる限り努力をする、しかしながら予算上、資金上これが実行できないという場合には十六条になぞらって手続を進める、こういうふうになっておるものでございますから、その御審議をいただきますために若干の時間を必要とするということは、法そのものが要請をしているところではないか、こんなふうに存じております。  しかしながら、私どもといたしましては、せっかく今日まで築き上げてまいりました労使関係、特にここ両三年来非常に新たな歩みというものも、関係労働組合の間で芽生えてまいりましたものですから、ぜひこれの延長路線上で解決をいたしたいものだな、また、したがいまして今回の仲裁裁定につきましての国会の御審議も、そんな眼でお見守りを申し上げてまいりたい、こんなふうに思っておるところでございます。よろしくお願い申し上げます。
  205. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 それじゃ公社の総裁に最後にお伺いしておきますが、公社としましても、こういう形になっていきますと、一生懸命働いてきて、ましてや、いまも話がありましたとおり、今年度から向こう四年間、毎年度一千二百億円を国庫に納入する、また遠距離通話の値下げや日曜祝日通話の割引等、こういったものでの努力、あるいは今後いろいろと生産性を上げていかなければならない。そういう意味での労働者の労働意欲というものを減退させてはなりませんし、公共企業の発展という意味から考えても、総裁としてこれを今後本当に早期に完全実施でき得るよう、どう処置をしていくのか、その御決意をお伺いしておきたいと思います。
  206. 真藤恒

    ○真藤説明員 当面は、さっきお答えしましたように、早く議決していただくことでございますが、何といたしましても、こういうふうな問題が起こりますと、労働行政ということの面では、やはり決していい影響を与えるものでないことは確かでございまして、今後こういう問題をいかに後遺症をなくしながら、いまおっしゃいましたような普通の負担以上の負担に耐えていくということに対しましては、この前も申し上げましたように、従来どおりのやり方ではとてもいきませんので、いろいろなことをやり方を変えなければなりませんが、それに対する職員の協力体制ということに対して決していい結果をもたらすものではないと思います。これをどう打ち消していくかということがわれわれに課せられた責任だと思っておりますけれども、こういうことが次々起こりますと、非常に困る問題になってくるのではないかというふうに考えております。
  207. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 終わります。
  208. 佐藤守良

    佐藤委員長 竹内勝彦君の質疑は終わりました。  西村章三君。
  209. 西村章三

    ○西村委員 今日までの経過につきましては、同僚委員からお尋ねがございました。重複を避けまして、私は、この仲裁制度の趣旨といいますか原点について、さらに労使の関係に及ぼす影響についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず初めに、確認の意味でございますが、労働省、仲裁裁定制度というものは公共企業体等の労働者に関して、いわゆる憲法二十八条で認められた団結権及び団体行動権、これの制限の代償として存在するというのが制度の趣旨であります。また、裁判所の判例であることも承知をいたしております。いまさら、とこう思われるでしょうが、もう一度ここで政府の正式の見解を明らかにしていただきたい。
  210. 中村正

    ○中村説明員 ただいま先生おっしゃいましたように、公労法上の仲裁裁定制度というのは、公企体に働く労働者の労働基本権制約の代償措置であるということは疑いないところでございまして、その旨の評価をしているのも、最高裁判所の累次の判決に見られるところでございます。
  211. 西村章三

    ○西村委員 昭和三十一年に行われました公労法三十五条の新設以来、若干の紆余曲折がございましたけれども、仲裁裁定は完全実施をされてきております。政府は今日まで三十五条にある政府の実施努力義務、これを果たす方針でやってきたと言えるのでありますが、今回はこの方針に変更があったのかどうか、いかがでございますか。
  212. 中村正

    ○中村説明員 公労法三十五条に定められております、政府の実施のためのできる限りの努力ということについては、政府としてもいろいろな角度から検討をしたと私どもは考えております。しかし依然として、現在の状態では、財政上、予算上、資金上これを実施することができないという判断に立ちまして、議決案件にお願いするという結果になったわけでございまして、方針の変更というものはないと考えております。
  213. 西村章三

    ○西村委員 この仲裁裁定制度を設けまして、かつそれを完全実施するということが、従来ILO等に対する申し開きの根拠ともなっております。それはまた一定の評価を得ておったと言えるのでありますが、政府が今回、実施が可能である電電公社等の仲裁裁定までも議決案件として一括付議してきたことは、この基本的な立場を崩すものではないか、こう思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  214. 中村正

    ○中村説明員 確かにILOの舞台におきまして、スト権を制約するという場合には、労働者の利益を守るための適当な補償というものがなければならないという御指摘を受けておることは確かでございます。今回の場合、電電公社が実施可能であるという御判断での御質問でございますが、先ほどからいろいろの方がお答えしているように、現在の段階では残念ながら実施することができるというふうに断定はできないということで、国会審議をお願いしているわけでございまして、その点は、従来においてもいろいろ事情はございますが、議決案件あるいは承認案件でお願いしているということと事態は変わらないのではないかと考えております。
  215. 西村章三

    ○西村委員 これは郵政大臣にお尋ねをいたしますが、今回の賃上げ交渉の過程で、いわゆる電電公社の労使が、調停につきましても、あるいは仲裁につきましても、公労委に双方が申請する形式をとってきたということでございます。このことが労使関係に持つ意味につきまして、郵政当局はどのように判断をされますか。これは大臣からもお答えをいただきたいと思います。
  216. 岡野裕

    ○岡野政府委員 先生おっしゃいますように、ことしの私どもの部内の関係労働組合との団体交渉、これが当事者間で結論を見るに至りませず、公労委に調停を申請しました。その段階におきまして、名前を並べて申請をするという新たな現象というものも出たわけでございますが、これはやはりここ両三年来、私どもがとってまいりました意向といいますようなもの、あるいは方針が関係労働組合の間にも理解を得ることができました結果、このような路線になってまいったものではないかな、こんなふうな判断を私としては一応とっておるところでございます。
  217. 西村章三

    ○西村委員 昭和三十一年の公労法の改正以来の新公労法体制の発足以来、初めての一括議決案件としての取り扱いというこの処理の仕方が、今後の労使関係に及ぼす影響というものをどのように判断をされておるのか、明確にしていただきたいと思います。
  218. 中村正

    ○中村説明員 労使関係に及ぼす影響につきましては、やはりいろいろ複雑な問題がございまして、私どもは、常日ごろから労使関係の安定、そして労働組合におきまして、一部においては仲裁裁定制度というものに信頼を置きまして運動を展開している組合、あるいは今回、別の組合におきましてはストなしで春闘を収束する、こういうような経過があったわけでございますから、できるだけこの傾向というものを保持していくべきである、そういうふうな判断に立っております。
  219. 西村章三

    ○西村委員 従来から公労協の労使関係につきましてはいろいろと問題がございましたが、最近、非常に良好な関係になりつつあるわけでございます。これを一層維持発展をせしめていくことが、いわば政府としての任務であろうと思うのでありますが、その意図に反して今回一括議決案件の形で出された、きわめて遺憾なことでございます。特に電電公社を初めとする実施可能な企業体についてまで議決案件にしたということは、今日まで公共企業体等で築き上げられてきた一定の労使の信頼関係というものをさらに根底から破壊するものではないか、このようにも考えられるのですが、労働省、いかがですか。
  220. 中村正

    ○中村説明員 先ほどからるる御説明しておりますように、私どもは法の趣旨をわきまえているつもりでございまして、政府部内においてもその趣旨をるる説明いたしましたが、しかし、やはり法律にも書いてございますように、予算上、資金上不可能である場合には、これは国会の判断を仰ぐべしという法律の規定が明確に書いてあるわけでございまして、やはり財政上の観点というものを当然考えなければいけないという結果、こういう結果になったわけでございます。  いずれにいたしましても、繰り返しお願いしておりますように、やはり早期完全実施ができるように、国会の御審議をお願いして、労使関係がゆがむことがないようにしていきたい、こう思っております。
  221. 西村章三

    ○西村委員 いまの質問について郵政省の考え方を聞かしてください。
  222. 岡野裕

    ○岡野政府委員 先ほどお話をいたしましたように、両三年来せっかくいままで長いこと御批判をいただいておりました方向に若干の変異が出てまいりました。それが定着をする非常に重要な時期でございますだけに、仲裁裁定の国会におきますところの御審議を真剣に私どももお見守りを申し上げておるという次第でございます。よろしく御審議をお願いいたします。
  223. 西村章三

    ○西村委員 私は、この労使の信頼関係を破壊しないように政府としては最大限の努力をしていただきたい。労使の信頼関係が国民に対して大きな利益をもたらすということを考えましたときに、いかに重要であるかということは、いまさら申し上げるまでもないと思うのです。さらに、この信頼関係と裏返しに政府が今回とられた措置というものは、いわば実施可能な公共企業体の仲裁裁定まで議決案件とした、政府が公労法の実施努力義務というものをある意味ではみずから放棄したということにもつながるわけであります。これは裏返しますと、従来から調停、仲裁制度、こういうものがありながら違法ストを繰り返すことによって要求というものをかちとろうとする人々の行為を政府みずからが追認することになるのではないか、こういう考え方もできるのでありますが、いかがでございますか。
  224. 中村正

    ○中村説明員 先ほどもお答えしましたように、労使関係の安定というものは何にもかえて大切なものでございまして、その意味では、仲裁裁定制度というものに信頼をおき運動を展開しておられる組合、さらには今回の春闘においてストなしで解決するという道を歩まれました組合、それを考えますと、こういう傾向はぜひとも持続したいと思っております。
  225. 西村章三

    ○西村委員 いずれにいたしましても、この仲裁裁定制度の趣旨を厳守をし、さらに労使の良好な信類関係というものを維持するためにも、一日も早くこれを実施をできるように最大限の努力を払うべきだろうと思うのであります。  最後に大臣にお尋ねをいたしますが、政府は、国会議決ということについていつまでに行われることを望んでおられるのか。まあ今国会中ということも含めてもう一度明確にお答えをいただきたいと思います。
  226. 山内一郎

    山内国務大臣 できるだけ早くお願いしたいのでございますので、今国会中によろしくお願いいたします。
  227. 西村章三

    ○西村委員 終わります。
  228. 佐藤守良

    佐藤委員長 西村章三君の質疑は終わりました。  藤原ひろ子君。
  229. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 非常に時間が限られておりますので、私は大臣に二問だけお尋ねをしたいと思います。  今回政府が、郵政、電電、国鉄など三公社五現業職員の賃上げに関する公労委の仲裁裁定を議決案件として国会に付議したことは、法律に定められた政府の仲裁裁定実施義務を怠るという、まことに不当なものでございます。公労委の仲裁制度は公共企業体労働者のスト権を奪った代償として設けられたものであります。公労法の三十五条には、仲裁裁定は労使を拘束し政府に完全実施の努力義務が課せられているわけです。仲裁裁定実施のための何らの措置もとらずに国会に付議するというやり方はまさに公労法の違反でございます。郵政、電電という二つの公共事業を所管される郵政大臣は、仲裁制度、公労法三十五条をどのように認識されているのか、改めてお尋ねをいたします。
  230. 山内一郎

    山内国務大臣 もちろんこの公労法の精神というのは、われわれ十分に体しまして、いままでいろいろ苦心をしながら労使協調路線に努力をしてまいりましたが、いま非常にいい状態になってきましたので、これを維持すべくさらに懸命な努力をしているところでございます。  そこで、この仲裁裁定が出まして、三十五条と十六条と、二条ございまして、この精神をわきまえながら関係閣僚会議でも三回にわたり熱心な討議をいたしました結果、どうも予算上可能とは断言できないじゃないかという最終判断で、議決案件として提出をいたしましたので、よろしく御審議をお願いしたい、こういうことでございます。
  231. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 政府は裁定を実施する予算がないということを理由にされておりますけれども、今回の仲裁裁定の賃上げ内容を見ますと、三公社五現業平均で七・六四%、一万三千九百九十六円で、ベースアップ分は五・三八%となっております。昨年の消費者物価の上昇率が七・八%ですから、この裁定そのものがこの物価上昇にも満たない低い金額でございます。ところが政府は、五十六年度予算にベースアップ分としてわずか一%しか組んでいないわけです。最初から一%しか組まないで予算がないというふうな言い方は、全く不当なやり方だと思います。過日の当委員会でわが党の村上議員が、電電公社職員の賃金が生活保護世帯以下であるという実態を指摘をいたしましたが、低賃金の上に、仲裁裁定も、この額は物価上昇にも見合わないという非常に低い裁定ですね、これも完全実施をしない、全く私は理不尽な態度だと思うわけです。予算でベースアップを一%しか組まずに、予算がないという理由にならない理由でこの政府の責任を放棄をしているという今日の状態ですけれども、仲裁裁定の実施を公務員二法であるとかあるいは行政改革との絡みで駆け引きにするという政府の姿勢は、全く許されないやり方だと思います。  私は、仲裁裁定のここ十五年間の取り扱いについて調査をしてみましたけれども、一々それを述べる時間がございませんが、まとめて申しますと、過去公労委仲裁裁定の歴史を振り返ってみますと、絶えず時の重要法案に絡めて裁定を取引に使ってきたというのが自民党政府でございます。昨年も、郵政が郵便法改正に、国鉄が再建法に絡ませて議決案件とされる、こういう政治的処理がされているわけです。  仲裁裁定を政治的に処理するというやり方は即刻やめるべきであり、責任を持って実施すべきだというふうに考えますが、内閣の一員として大臣の御所見を承りたいと思います。
  232. 山内一郎

    山内国務大臣 決してその取引とかどうとかという問題でなくて、昨年は郵便法の値上げを認めていただかなければ予算上裁定を実施するのに不可能でございますのでよろしくお願いしますと、こういう趣旨で申し上げたのでございます。国鉄の再建法も、これは運輸省の関係でございますけれども、同様だと思います。
  233. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 本来賃金であるとかあるいは退職金などのこの労働条件、これは労使の団体交渉によって解決すべき問題でございます。ところが、政府は、公務員二法によって民間よりも低い公務員の退職金を削った上に、スト権剥奪の代償として設けられておりますこの公労委の仲裁裁定、これを完全実施しようとしない、こんなことでは二重に労働基本権を侵害したものだと言わざるを得ないわけでございます。私は、政府が責任を持って仲裁裁定を完全に実施されることを強く主張いたしまして、時間でございますので質問を終わらせていただきます。
  234. 佐藤守良

    佐藤委員長 藤原ひろ子君の質疑は終わりました。      ――――◇―――――
  235. 佐藤守良

    佐藤委員長 これより請願審査を行います。  本日の請願日程を一括して議題といたします。  本会期中、付託になりました請願は全部で六十四件でございます。  まず、請願審査の方法についてお諮りいたします。  各請願の趣旨につきましては、すでに文書表によって御承知のことと存じます。また、先刻の理事会で御検討いただきましたので、この際、紹介議員からの説明等は省略し、直ちに採否の決定をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより採決いたします。福岡市に電電サービスセンター設置に関する請願一件、有線音楽放送正常化に関する請願十件、以上の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、残余の請願は、いずれも採否の決定を保留いたしたいと存じますので、御了承願います。  ただいま議決いたしました各請願委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  238. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  239. 佐藤守良

    佐藤委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律   案  逓信行政に関する件  郵政事業に関する件  郵政監察に関する件  電気通信に関する件  電波監理及び放送に関する件 以上の各案件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査案件が付託になりました場合、現在本委員会に設置されております電波・放送に関する小委員会を閉会中も引き続き存置することとし、小委員及び小委員長辞任並びに補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査におきまして、委員会及び小委員会において、参考人出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  242. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中に委員を派遣して現地を調査する必要が生じた場合の諸手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 佐藤守良

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十三分散会      ――――◇―――――