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1981-03-19 第94回国会 衆議院 地方行政委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月十九日(木曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 左藤  恵君    理事 石川 要三君 理事 工藤  巖君    理事 中山 利生君 理事 安田 貴六君    理事 小川 省吾君 理事 佐藤 敬治君    理事 大橋 敏雄君 理事 青山  丘君       池田  淳君    臼井日出男君       小澤  潔君    小渡 三郎君       片岡 清一君    亀井 静香君       久間 章生君    久野 忠治君       高村 正彦君    近藤 元次君       塩谷 一夫君    地崎宇三郎君       野呂 恭一君    松野 幸泰君       五十嵐広三君    加藤 万吉君       細谷 治嘉君    松本 幸男君       石田幸四郎君    部谷 孝之君       岩佐 恵美君    三谷 秀治君       田島  衞君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君  出席政府委員         警察庁刑事局長 中平 和水君         自治政務次官  北川 石松君         自治大臣官房審         議官      川俣 芳郎君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         厚生省薬務局企         画課長     古賀 章介君         厚生省保険局国         民健康保険課長 古川貞二郎君         厚生省保険局医         療課長     仲村 英一君         建設省住宅局民         間住宅課長   浜  典夫君         地方行政委員会         調査室長    岡田 純夫君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     麻生 太郎君   小渡 三郎君     平沼 赳夫君   亀井 静香君     山中 貞則君 同日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     臼井日出男君   平沼 赳夫君     小渡 三郎君   山中 貞則君     亀井 静香君 同月十九日  辞任         補欠選任   小澤  潔君     近藤 元次君   野呂 恭一君     高村 正彦君 同日  辞任         補欠選任   高村 正彦君     野呂 恭一君   近藤 元次君     小澤  潔君     ————————————— 本日の会議に付した案件  新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のた  めの国の財政上の特別措置に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出第一五号)  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び  納付金に関する法律の一部を改正する法律案(  内閣提出第一八号)      ————◇—————
  2. 左藤恵

    左藤委員長 これより会議を開きます。  新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、去る十七日質疑を終了しております。  これより討論に入ります。  討論申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬治君。
  3. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案に対して討論を行うものであります。  御承知のように、高度経済成長政策のもとで新産業都市建設促進法及び工業整備特別地域整備促進法制定されましたのは、それぞれ一九六二年、昭和三十七年と一九六四年、昭和三十九年でありました。以来、わが国国土開発計画は、この全国総合開発計画による拠点開発方式を経て新全国総合開発計画となり、今日第三次全国総合開発計画に至っております。この問開発方式は、管理中枢のネットワークの形成から、いわゆる定住圏構想へと変遷しております。  このように国土開発計画は、この二十年ほどの間に三度も変更されており、あの悪名高い日本列島改造計画も含めて地域の状態に大きな変容をもたらしております。  このような歴史的経緯を考えるならば、いわゆる新産工特の二法については、開発計画との関連から抜本的なメスが入れられるべきであることは言うまでもないことと考えます。とりわけわが国経済が一九七一年、昭和四十六年以降の国際的な経済変動によって猛烈なインフレと不況に見舞われ、出口なき危機に陥り、この打開をめぐって国民福祉中心経済への転換を強く求められていることを考えれば、前述の二法の抜本的改正は不可避と申せましょう。  こうした基本的見直しのないまま、これら二法に対する財政上の特別措置法のみをほんの一部を手直しするだけで単純延長するという今回の自民党政府のやり方は、十分な説得力を持ち得ないものであることをまず強く指摘しておきたいのであります。  このことは、首都圏近畿圏及び中部圏近郊整備地帯等整備のための国の財政上の特別措置法についても当然指摘し得るところであり、政府自民党の猛省を促したいと存じます。  このような基本的認識から、本改正案提出経過内容を考えると、二つの点について考慮する必要があると思います。  その一つは、財政再建の名をかりて自治体事業及び財政実態を無視し、代替措置のないまま一方的に廃止しようとした動きが政府部内において顕著であったことであります。  わが党は、新産業都市建設促進法制定に当たって、自治体の行う事業については自治体創意性を尊重し、地場産業振興住民生活環境施設整備重点を置くよう強く主張してまいりました。この結果、一九六五年、昭和四十年に新産工特地域における事業は、道路トップ義務教育施設公営住宅下水道屎尿処理施設の順であったのが、一九七八年、昭和五十三年には、下水道義務教育施設道路公営住宅都市公園の順となっており、わが党が強く要求してきたような事業の構成に近づいております。  このことは、首都圏等財政特別措置についても同様であります。三圏における事業は、下水道義務教育施設道路公営住宅がきわめて高い比率を示しております。  しかしながら、このような住民福祉中心とした事業内容に変化してきたとはいいながら、その整備水準はいまだに全国平均を下回っているのが実情であり、特別措置を一方的に打ち切ることには問題があると言わなければなりません。  その二つは、補助かさ上げにかかわる調整率の問題であります。  前述のように、補助かさ上げによって翌年度精算交付され、これが自治体一般財源として自治体財政に構造的に組み込まれていることを直視すれば、調整率あり方についてより合理性が求められるのは当然のことであります。  これに対して政府自民党は、新産工特及び首都圏等調整率について、法延長と引きかえに抑制策を講じただけであり、法制定時自治体財政力指数については一切手を触れてはおりません。これは、その後の自治体財政状況変動を考えれば、平均財政力指数を採用し、より合理性を加味するのが当然であります。  と同時に、よりたくさん事業を行えば補助かさ上げがなされ、標準事業規模の一割以下しか行えない自治体に対してはかさ上げがなされないということも不合理なことでありまして、強く指摘しておきたいと存じます。  さて、公害防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律についてでありますが、この法律制定された経過を考えれば、延長措置は当然であります。ただ、本法律による事業に加えて、自治大臣指定しゅんせつ事業等の割合がきわめて少ないことは大きな問題であり、法指定事業に加え、個々の自治体実情に沿った公害防止事業をさらに拡大するよう強く要求しておきたいと存じます。  最後に、本改正案の提案について指摘しておきたいと存じます。  最近、他の法案についても多々言えることでありますけれども、それぞれの個別法を一法にして改正案を提案することは、国会の審議権を制約するものであり、妥当なものとは言えません。この点で、政府自民党について十分な反省を求めたいと考えます。  以上、本改正案についてわが党の基本的な考え方を申し上げてまいりましたが、自治体における財政実態と本法律に基づく事業内容を考慮し、本改正案賛成することを申し上げて、社会党を代表しての討論といたします。(拍手
  4. 左藤恵

  5. 石田幸四郎

    石田(幸)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、賛成討論を行います。  まず、新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置法改正案についてであります。  いわゆる新産工特法は、これまで産業基盤整備を進めてきましたが、公害産業構造等について十分な対策がなされなかったため、公害の多発、産業経済のひずみをもたらしており、これらの問題点を指摘せざるを得ないのであります。  しかし、本法律の期限が本年三月末で切れることになっており、この間における目標達成率は当初予定を大幅に下回っており、公害防除環境保全に十分な配慮をしつつ、雇用吸収力の大きな産業の導入、人口地方定住促進などを進める必要があります。  また、計画の途中での中止は、関係地方団体に対して多大な影響を与えることは必至であります。したがって、現時点において、本法律延長はやむを得ないものと考えるものであります。  次に、首都圏近畿圏及び中部圏近郊整備のための国の財政上の特別措置法についてでありますが、首都圏近畿圏及び中部圏の三大都市圏においては、その大都市地域に過度に集積した人口産業等の適正な分散配置を図り、圏域全体の均衡ある発展を図るという法律目的をさらに進めるために、本法律延長は必要であると考えるものであります。  次に、公害防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律についてでありますが、公害問題については、当初の深刻な状況は脱したというものの、今後積極的な公害対策を進める必要があると考えるものであります。また、特に大都市地域中心とする公害防止計画策定地域では、現行計画期間内で計画目標を達成することが困難となり、引き続き公害防止対策事業を実施する必要があり、また、水俣湾堆積汚泥処理事業秋田県の農用地土壌汚染対策事業なども、なお相当の年月を要することが予定をされております。  こういう状況から見て、本法律延長は必要と考えます。  以上、私は本法案に対し、それぞれの角度から簡単に賛成の趣旨を表明しましたが、三本の法律改正を便宜的に一本にして提出したことについては、今後厳に戒めるべきであることを表明しておきたいと存じます。(拍手
  6. 左藤恵

  7. 青山丘

    青山委員 私は、民社党・国民連合を代表して、政府提出の新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案賛成討論を行います。  まず最初に、新産工特財特法及び首都圏等財特法について申し述べます。  新産工特地区並びに首都圏近畿圏及び中部圏近郊整備地帯等においては、各整備計画等に基づいて施設整備が進められて、地区により差異はあるものの、全体的に見てある程度の効果があらわれております。  こうした背景には、本法律案において延長しようとしている財特法影響も少なくないと評価すすものでありますが、各地域実情に応じた地域開発を進め、最終的に国土の均衡ある発展を図るためには、現行制度のように各省庁が各個別法に基づいてそれぞれ財政援助等の施策を講ずるといったあり方をこの際見直して、国においては、せいぜい国土利用基本計画策定であるとか根幹的な施設整備、各地域間の調整程度にとどめて、本来、地域社会づくりの主体となるべき地方公共団体に対しては、わが党が数年来主張しております第二交付税を配分することによって、地方公共団体財政力企画力を強化することが必要であると考えます。  しかしながら、当面、各整備計画等の完了時期を迎えて、新産工特地区及び大都市圏近郊整備地帯などにおいては、なお所期の目的を達成するために、来年度以降新たな計画を策定して引き続き事業推進を図ることとしており、その際見込まれる関係地方公共団体多額財政負担に対処していくためには、財政特別措置の継続もやむを得ない措置として認めるものであります。  なお、新計画策定等に当たっては、特に生活関連施設整備重点を置くとともに、この際、地場産業育成強化伝統産業振興育成にも十分配慮されるよう要望しておきます。  次に、公害財特法について申し述べます。  わが国環境汚染は、一時のような深刻な状況を脱したとはいえ、新たに都市公害等深刻化が顕著となるなど、いまだ予断を許さない状況にあります。こうした中で環境政策の停滞は許されるものではなく、国民福祉に最も身近な影響を持つ環境改善に向かって一層の努力が必要であります。しかし、公害防止対策事業関係地方公共団体多額財政負担を強いるものであり、今後とも事業の確実な推進を図る上においては、公害財特法延長は不可欠であると考えます。  なお、本財特法における財政特別措置は、対象事業特例国庫補助負担率等の点において決して十分とは言いがたいものがあって、今後早急に再検討されるよう望むものであります。  以上、本法律案に対して賛成意見を表明し、私の討論を終わります。(拍手
  8. 左藤恵

  9. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は、新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、日本共産党を代表して反対の討論を行います。  まず、本法律案形式につきまして一言申し上げたいと思います。  この法案は、それぞれ内容の異なる三つ法案、すなわち新産工特財政特例法首都圏等財政特例法及び公害防止財政特例法期限切れに伴い、五年ないし十年の延長措置をとるというものであります。  御承知のように、去る昭和四十九年三月二十五日の石炭対策特別委員会において、全会派一致電力用炭販売株式会社法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議が可決されております。この決議は、「それぞれ別個の意味をもつ三法律を一本として提出するが如き形式をとることは、審査の万全を期する上で妥当を欠く面も生ずるおそれがあるので、十分留意せられたい。」となっており、これに対しまして当時の中曽根通産大臣は、「今後十分慎重に対処してまいりたい」と述べています。  ところが、政府が今回も別個の三法案を一本の法律案としてまとめて提出してきたことは、審査の万全を図る上できわめて妥当を欠く措置であり、かつ附帯決議を踏みにじった点で議会軽視と言わざるを得ません。  わが党は、本改正案中の三つ法律について、次のようにそれぞれについて評価を下すものです。  まず、新産工特財政特例法延長についてであります。  この法律の十五年間の実績を見てみますと、わが党が制定時に指摘したところですが、道県の新産等債許可状況産業基盤事業に偏重していることに端的に示されるように、大企業中心産業基盤整備が図られた跡が歴然としています。  最近の低成長下産業基盤投資が後退したこととも関連して、おくれている生活関連事業整備がやや進む傾向が見られるものの、依然として産業基盤整備中心であることに変わりありません。延長後においても、秋田、富山など企業進出地域において原発立地等誘導策として運用される可能性もあり、この延長については反対するものであります。  次に、首都圏等財政特例法についてであります。  この法律も、基本的性格新産工特財政特例法と同様でありますが、道府県が中心となって大企業本位地域開発推進するという側面よりも、立ちおくれた住民生活関連事業整備中心となったことが十五年の実績から読み取れます。  しかしながら、延長後においては、日立新港等の新たな地域開発や市街化区域の線引き見直しによる開発、さらには、公害をまき散らす幹線道路促進などの手段等にも使われるおそれもあり、これに対しては棄権の態度をとるものであります。  これら二法につきましては、関係自治体もその延長を強く要望していたところですが、これは期限切れによる減収が主たる理由で、この点につきましては、わが党の地方財政危機打開緊急措置法の実現により基本的に充足できるもので、政府の大企業本位政策推進と絡ませたところの財政措置は、地方自治を侵害するものと言わなければなりません。  最後に、公害防止財政特例法についてであります。  この法律の十年間の実績を見てみますと、わが党が制定時に指摘したとおり、不十分な点が幾つか見られます。たとえば、公害防止事業の範囲と対象地域が限定され、新産工特財政特例法首都圏等財政特例法による財政措置実績と比較しても劣っていること、また、補助率かさ上げが二分の一と法定されているにもかかわらず実績では三分の一にすぎず、超過負担が多く出ている点などです。しかしながら、不十分であっても改善措置であり、この法律延長については賛成態度をとるものです。  以上、別個三つ法律についてわが党の態度を明確にしたところですが、分離採決もかなわず、一本の法律案として態度が問われている現在、わが党は、やむなく反対するものであります。(拍手
  10. 左藤恵

    左藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  11. 左藤恵

    左藤委員長 これより採決に入ります。  新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  12. 左藤恵

    左藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 左藤恵

    左藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  14. 左藤恵

    左藤委員長 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。部谷孝之君。
  15. 部谷孝之

    ○部谷委員 ただいま議題となっております地方税法の一部改正法案等に関しまして、順次ただしてまいりたいと思います。  現在の財政状況が国も地方もきわめて厳しい現状にありますことは、いまさら申し上げるまでもないところでありますが、かつて、戦前のことですが、大内兵衛教授が雑誌「改造」に「公債九十億、その経済的意義」という表題で論文を書かれたことがあります。そして、このままで行ったら日本は恐るべきインフレになるという警告をされたことがあるわけであります。  時代は変わりましたけれども、五十六年度末には国が八十二兆円、地方が三十一兆六千億円、合わせますと公債は百十兆円を超す、こういう状況になるわけでありますが、大変深刻な問題をわれわれは抱えることになるわけであります。量的にも質的にも市場の動向から見ましても、国債を発行して、あるいはまた地方債に依存するという日本財政危機的な局面を迎えておると思うわけですが、こうした現象に対しまして大臣はどのような御所感をお持ちか、まずお尋ねいたします。
  16. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 言うまでもございませんが、国債増発関連する地方債増発等の問題も、結局いたしますところ、第一次オイルショックの打撃が非常にわが国にとりまして深刻であった。その結果、税収は激減をし、しかも景気の回復のために政府の支出を増加しなければならぬ、そういう立場に立ちましたので、やむを得ず公債に依存するような運営が行われざるを得なかった状況でありますが、その結果、言うまでもございませんが、先進諸国におきまして日本経済発展というものはトップを行って維持しておるのが現状だと思います。  ただ、昭和五十二年以降におきまして、税収回復もある程度見られたわけでありまするけれども、いろいろな面からの歳出増加要因が大変強まってまいりまして、そして現在に立ち至って、ただいま御指摘になりましたような国債あるいは地方債残高というものが巨額に達した、こういう段階に来ておるわけであります。究極いたしますところ、オイルショックの際における日本選択は間違っていなかったと思っております。  しかしながら、今後の問題といたしまして、この国債及び地方債の巨額なる残高の償還並びに財政構造改善ということにこれから取り組んでいかなければならぬ、そういう事態に立ち至っておる。したがって、公債増発というような問題についていろいろ御意見があろうと思いますけれども、あの時期におきましてはやむを得ず、また正しい選択ではなかっただろうか、これからはまたそのバランスの上に立ちまして、その回復のためにわれわれは努力していかなければならぬのではなかろうか、こんなふうに認識をいたしております。
  17. 部谷孝之

    ○部谷委員 こうした地方財政危機、この危機打開につきまして今後どのような方向でお進みになろうとするのか、御答弁願います。
  18. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 日本がこれからどういう選択をしていくかという問題になりますと、やはり昭和五十二、三年以降歳出が非常に増加をいたしておる。これはいろいろの正しい理由はあると思いますけれども、全体のバランスから申しますと、歳出増加要因に対しましてのある程度の措置を講ずるということも、この国債地方債、巨額なものを抱えておる財政回復いたし、健全な国家並びに地方団体運営をしていくためにはどうしてもとらざるを得ない措置ではなかろうか。  しかしながら、地方実情を考えますと、どうしてもいままでの資金配分が国に重点が置かれ、地方に二次的な財源配分が行われる傾向が多々あったわけでございます。この機会に本当に、地域社会に対して積極的な、身近な問題として活動いたしておりまする地方団体に対するところの財源配分について、国との関係において調整をとっていくということが、全体の適正なる日本政治運営の上におきましてきわめて重要な課題ではなかろうか、そんなふうに考えておるところでございます。
  19. 部谷孝之

    ○部谷委員 そこで、具体的な問題にちょっと触れてみたいのですが、いま物価調整減税というふうなことがいろいろと議論され要求されておる状況の中で、住民税はとうてい増税できるという環境にはない。それから固定資産税、これは五十七年に土地家屋評価がえが行われるわけでありますので税率引き上げはやりがたい。それから自動車税は、昨年度税率がすでに引き上げられております。また自動車取得税あるいは軽油引取税、これは五十七年度まですでに暫定税率が適用されております。したがって増税がやれない。こういうふうに検討してまいりますと、結局大宗は、国税における法人税引き上げ中心とする増税に頼りながら、一方地方税においては、増税が可能と見られる不動産取得税税率引き上げを行ったのではないか。ということになりますと、今度の増税はそうした政策的な意図というものが度外視されて、いわば取りやすいところから取る、そういう印象を私は実はぬぐうことができないわけであります。  こう見てまいりますと、自治省に果たして財政再建に対する一つのポリシーがあるのかどうか、そういう点を疑わざるを得ないわけでありますが、自治省はこの点どのようにお考えでございましょう。
  20. 石原信雄

    ○石原政府委員 五十六年度の地方財政状況は、御案内のように税制改正前の段階では一兆数千億の財源不足が見込まれる。こういった状況の中で、地方債もなるべくふやさないでいかなければいけないという要請もこれあり、地方税源の充実強化を何としても図りたいということでいろいろな税目について検討を加えたわけであります。しかしその際、五十四年十二月の国会決議の趣旨もこれあり、五十六年度の税制改正は、いわば既存税目の見直しという制約の中で財源の拡充強化を検討せざるを得なかったわけであります。  そうした中で、ただいま先生からも御指摘ありましたように、住民税事業税あるいはそのほかの流通税、消費税、いろいろな税につきまして地方税源の充実強化の可能性を探ったわけであります。その結果、不動産取得税につきましては、税制調査会でも指摘されておりますように、この税が昭和二十九年に創設されて以来税率がずっと三%のままである、なお若干の負担の増加の余地があるのではないか、こういった御答申もいただき、今回税率引き上げに踏み切ったわけであります。  したがいましてポリシーといいますか、国、地方を通じます税制、財政あり方を根本的にどう考えていくか、こういったことにつきましては当然さらに高い次元からの検討が必要であろうかと思いますが、五十六年度につきましては、いろいろな制約のもとで可能な限りの税源充実を図るという意味で、不動産取得税税率引き上げを行った次第でございます。
  21. 部谷孝之

    ○部谷委員 不動産取得税につきましては、具体的に後でまたお尋ねをしてまいりたいと思うのですが、きょうの新聞によりますと、きのうの日本商工会議所の総会におきまして鈴木総理が、国民の期待にこたえるために行政改革を内閣の最重要課題として、五十七年度増税なしの財政再建に向かっていきたい、そのためには政治生命をかけたい、こういう決意の表明がされたということが報道されておりますし、また自民党の四年生議員との懇談会の席上でも、大型間接税を五十七年度に導入しないで歳出の削減による予算編成を行う、こういう意見を述べられたことが報道されておるわけですが、この総理の見解、これに対して大臣はどのようにお考えでしょうか。
  22. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 先ほどの御質問にも申し上げましたとおりに、ここ第一次オイルショック以来の動向を考え、現段階を省察いたしますと、やはりこの際歳出増加要因というものをある程度整理をいたしまして、財政バランスをとって、今後における発展を遂げていく道筋をつくるということは、私はきわめて重要な問題ではなかろうかと存じます。その過程におきまして、地方財政の問題も取り上げていかなければならぬと思っております。
  23. 部谷孝之

    ○部谷委員 去る一月二十八日に行われました衆議院本会議におきまして鈴木総理は、一般消費税につきまして、国会の決議もあって従来検討された形のままでは困難であるが、税制調査会の中期答申では間接税は避けて通れないと述べておる。中期答申がそのように述べておる。政府としては、税制のあり方、国会の論議、財政経済の見通しなどを踏まえて幅広い論議を尽くしていく、こういうふうに実は本会議で述べられておるのでありまして、五十七年度の新税導入につきまして非常に含みのある発言をされたわけであります。また、いま大臣地方財政に対する御答弁も、あらかたそのような方向での御答弁であったように思うのでありますが、きのうの総理の発言はこのことを否定されたと受け取れるのですが、大臣いかがお考えでしょうか。
  24. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 その点について総理といろいろ意見を交換したわけではございませんけれども、総理といたしましても、その点は政治的に非常に悩んでおる問題だと思います。行財政の整理、これはやはり基本であろうと思う。この点について一段の努力をする。しかしながら、それでバランス回復し得るまでにいけるかどうかということについて、総理といたしましてもいろいろと見当をつけておられると思いますけれども、本会議において述べられた所信の一端は、そうした点を総理といたしましては含みを持って述べられたものだと私は想像いたすものでございます。  端的にどちらでいけるかという問題ではなくして、この辺の調和をとってこの重大な時期を乗り切るということが基本的な構想でございまするが、総理といたしましては、第二臨調も発足いたしましたし、また世論の動向を考えますと、この際、税収増加よりも政府歳出増加というものを極力圧縮をいたしまして問題を解決していきたいという考え方に立ってお述べになったのが、本日の新聞等に掲載されておる内容であろう、私はこういうふうに理解をいたしておるのでございます。
  25. 部谷孝之

    ○部谷委員 ところで、日本経済新聞二月六日の記事によりますと、「大型間接税の創設に協力するから税収の半分は地方に回してほしい——という“運動”を自治省がひそかに開始した。」こういうふうに書いてあるわけでありますが、そうした大型間接税の導入というものを前提として、すでに来年度あるいはそれ以降の財政関係のいろいろな計画が立てられておるのではないか。特に今回自治省は、地方税法地方財源の充実という問題につきましては余り大きな、基本的、根本的な改正がなかったわけでございますが、そのことは、そうした五十七年度以降の大型間接税をにらんでのことしの態度ではなかったか、こういうふうに思うのでありますが、その点いかがでしょうか。
  26. 石原信雄

    ○石原政府委員 いわゆる大型間接税なるものの具体的内容等について、自治省として現段階で検討している事実はございません。したがいまして、それとの関連で国と地方の税源配分の問題云々という記事が出ておりますけれども、そういったことも特に具体的な検討をしているわけではございません。ただ、先ほども申し上げましたように、五十六年度の税制改正につきましては、現行税制の枠内で検討せざるを得なかったということは事実であります。  それから今後の問題として、税制調査会の中期答申でも指摘されておられますように、今後の財政再建を考える場合には、第一次的には歳出の徹底的な見直しに努力が払われるべきであるけれども、それのみで財政再建が達成できるかどうかという点についてはいろいろ問題があろう、そして課税ベースの広い税源の強化についてどうしても検討せざるを得ない、その一環として間接税というものも避けて通れない検討課題だということを税制調査会が述べているわけです。これが今後具体的にどういう形で審議が展開されていくかによっては、私ども当然それとの関連地方税源の充実強化のあり方を模索していかなければならないわけでありますが、現段階で具体的な検討を行っているということはございません。
  27. 部谷孝之

    ○部谷委員 中期答申ではこのように述べておりますね。「高い経済成長率の下で豊かな自然増収に恵まれ、財政支出に対する様々な要請に比較的無理なく対応し得たかつての時期とは異なり、今後の財政運営に当たっては、既存の制度、既定経費についての厳しい見直しを行い、また勇断をもって行政改革の実現を図ること等により、歳出の節減合理化に努めることを強く望むものである。財政再建は、単に特例公債、借入金等への依存の解消にとどまることなく高度成長期に生じた歳出増加傾向そのものを是正するものでなくてはならない。この努力を欠いたまま税収の充実を図ることは、かえって財政の肥大化をもたらすことに終わる懸念がある。」こういうふうに述べておるのでありまして、まさにそのとおりだと思うのであります。  こうした歳出の徹底的な見直しや行財政制度そのものの改革を行うことによって財政再建が可能ですし減税さえも可能ではないか、こういうふうに思うのですが、五十六年度においてまずこれをやるべきではなかったか、自治省は五十六年度の歳出削減につきましてどのような心構えを持ってやられるのか、この点重ねてお尋ねしたいと思います。
  28. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 御承知のような大変厳しい財政状況でございまして、どうしても財政の健全化を促進していきたいと思っておるわけでございますが、そのためには歳出の節減合理化、経費の効率的使用に徹する必要があることはお示しのとおりでございます。  そういったことで、五十六年度の地方財政計画の策定に当たりましても、全体として計画規模の増加率を昭和三十一年以来の低い率、七%増ということにいたしました。五十五年度が七・三%でございましたが、なお低い線に抑えたわけでございます。また、公債費を除く一般歳出増加率も五・九%ということで、五十五年度の六・六%に比べてなお低めておるということで、全般的に抑制基調に立って圧縮型にしておるわけでございます。  例を二つ三つ申し上げますと、たとえば給与関係経費については職員数の増加抑制を図るということ等をいたしますとともに、給与改善費についても国に準じて一%だけを組み入れるということで、全体として抑制基調を示しておるわけでございます。  一般行政経費につきましても、国庫補助負担金を伴うものについては国と同様にかなり厳しい抑制をいたしまして、国庫補助負担金を伴わないものにつきましても、たとえば福祉関係経費とか私学助成費あるいは中小企業に関する貸付金等、どうしても充実を図らなければならないもの以外のものにつきましては、極力抑制するという考え方に基づいて財政計画をつくったわけでございまして、一々申し上げませんが、義務教育職員なり警察官なり一般職員、補助職員等について、すべて抑制基調に立って計画をつくりまして、特に職員定数につきましては、国家公務員の定員削減計画に準じまして六千七百人余りの削減を行うことにしたわけでございます。  一般行政経費の単独分も、伸びを九・一%から七・六%というふうに引き下げておるわけでございますが、そうは言いながら投資的経費のうちの単独事業等につきましては、所要の額は十分確保するということも配慮いたしました。  なお、私どもといたしましては、地方歳出には国の施策というものがきわめて多く関連してまいりますので、そういった点については国においてもいろいろな経費の増加につながらないように極力抑制をしてもらいたいということをお願いしておるわけでございます。地方もみずから判断をいたしまして、今後なお計画的に定数なりその他いろいろな部門にわたって実態に合うような合理化を進めてもらうように進めていきたい。そういった意味で、五十六年度はそれなりの努力をいたしましたが、なお私どもとしては、まだ緒についたばかりであると思っております。引き続いて節減合理化といった点には十分検討を加え、地方団体としても工夫をこらしていただきたいということをお願いするつもりでおります。
  29. 部谷孝之

    ○部谷委員 そこでまた、第二臨調に戻りたいと思うのです。  第二次臨時行政調査会が十六日にスタートいたしました。土光会長は、増税によらないでも財政再建ができるという考え方を出発点としたいという決意を示され、鈴木総理も、調査会の意見を最大限に尊重し実現を図ることを約束する、こういうふうな確約をされて船出をしたわけでありますが、一面ではまた、果たしてどこまでできるかなという疑問が国民の中にもかなりあると思います。これはかつて第一臨調があのようなりっぱな答申を出して、これを完全に実行しておれば第二臨調は必要ないほどのきわめてりっぱな答申であったけれども、それがいろいろな理由の中で実現されなかった、そうした第一臨調の二の舞は困る、こういうふうな感じが一面では強く出てきておると思うのでありますが、こうした第二臨調に対しまして自治大臣は基本的にどのような御期待をしておられるのか、まずお答え願います。
  30. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 よく第一次臨調と第二次臨調の問題を比較して論議されておりますが、客観的な背景は、第一次臨調当時よりは第二次臨調の現在における背景はきわめて深刻なものがあると私は認識をいたしております。したがいまして、第一次臨調において答申が余り実現をしなかったというような批判、これは甘んじて受けなければならぬ点ではございまするけれども、当時におきましては高度成長期にもございました。さようなことでありましたが、第二次臨調の背景となるものは、ただいま申し上げましたとおりに本当に土壇場に立っておるというような事態であると私は認識をいたしております。  したがいまして、第一次臨調において答申が余り実行されなかったということが、直ちに第二次臨調の答申も行われないであろうというわけにはまいらぬだろう、私はこういうふうに思います。その点は総理も、相当の決意を持ってこの問題に当たろうということでいろいろな御発言があるものだと了察をいたしております。したがいまして臨調の問題から申しまするならば、第二次臨調において答申されたことは必ず実行するという決意のもとに現政府は問題を進めていくことに相なるだろうと思います。
  31. 部谷孝之

    ○部谷委員 そうしますと、今度自治省といたしましては、この地方財政に関しまして第二臨調でどのような点について特に審議をしてもらいたいと望んでおられるのか、その点をお尋ねします。
  32. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 国と地方関係は、いろいろな議論はございまするけれども、国があっての地方であり、また地方があっての国でもある、唇歯輔車の関係にあるわけでございます。それに地方の行財政の問題にいたしましても、国との関連においてきわめて重要な影響力を持つのが現在の日本地方団体の姿でございます。したがいまして第二次臨調におきまして、基本的には国の制度あるいは行政運営についての問題が重点として取り扱われると思いますけれども、おのずから議論するところは、地方の行財政の問題にも波及することは当然ではなかろうかと思います。  しかしながら、答申の形においてどういうものが出るかということになりますと、地方の固有の問題もございます。かような点をどう整理するか、こういうことは出てくるだろうと思います。この点については人選の面におきまして、第二次臨調の委員には特に地方の問題に造詣も深いし、そしてまた地方制度調査会の会長でもありまする林君が委員として入っております。さようなことで、第二次臨調といたしまして内部的に答申の前におきましてはその辺のある程度の整理はつくものだろう、私はそういうように思っております。したがって、これは截然と国と地方と区別できる問題でない分野が相当あるわけでございますから、その辺は論議の対象にも相なるだろう、答申の際にもそこをどう整理するかという問題は残ると私は思っております。  しかし、国と地方との関係が第二次臨調において論議されることは望ましいと私は思っております。と申しますことは、地方の問題は、国を離れて制度改正はあり得ないわけでございまするから、この際大いに論議を尽くしてもらって、国と地方関係が不適切である、財政上から見ても改善を要する面がある、それから行政の効率化の面からいっても問題があるということが論議をされる過程において、地方についての格段の配慮がなされるべきであろうということが認識としては高まっていくのではなかろうか。それを制度の面にどうしてもつなげていくという方向まで伸ばしていきたいものだ、こういうような考え方をいたしているものでございます。この点は今後の推移によりまして、私どももそういう線に沿うて配慮していかなくちゃならぬ問題だ、こう思っております。
  33. 部谷孝之

    ○部谷委員 すでに地方制度調査会が設置されておりまして、地方財政の制度につきまして逐次答申を出してきておるわけですが、この地方制度調査会と第二次臨調との関係、これはどのような理解をすればよろしいのか、お示し願いたいと思います。
  34. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 第二次臨調の方は国の立場において、国の制度、国の行政運営という面からが立論の根拠になると思います。それから地方制度調査会は、地方というものを主体といたしましてのいろいろな論議を尽くし、答申をいたしているところでございます。そこで若干スタンドポイントは違いますけれども、問題を扱う点については共通する部面もあるわけでございます。  従来、地方制度調査会において各種の答申を得ておりますが、この答申を実行するにいたしましても国の制度の改正を必要とするものが大部分でございます。したがいまして、第二次臨調においてこの点の問題を国の制度として取り上げていくということに相なりますれば、やはり地方の問題といたしましてもより前進をし得る要素もあるだろうと思っておるわけでございます。  したがいましてこの関係は、両者唇歯輔車の関係にあるということを申し上げましたが、その線に沿うて進むべきものでありまするし、なかんずく第二次臨調と地方制度調査会の関係におきましては、私どもいろいろ行政管理庁とも話をいたしました中において、第二次臨調におきましては、地方の問題についていろいろ地方制度調査会の答申、論議というものがあるのであるから、これを十分に尊重して遺憾なきを期してもらいたいという点については合意を見ておるわけでございまするし、人的関係においてもそのつなぎをとっておるわけでございますので、この辺は論議の過程におきまして適切な進行がとり行われるであろう、かように期待をいたしているものでございます。
  35. 部谷孝之

    ○部谷委員 そういたしますと、先ほどちょっと述べられました自治体の固有の行財政の問題あるいは公務員の数の問題、給与の問題、そうした具体的な問題につきましても、第二次臨調で審議の対象になるのかどうか、またそうしたものを対象として行うとするならば、自治省はそれに対してどのように対応せられるか。いま、いろいろ人を入れておるというお話でございますけれども、聞くところによりますと、そうした問題について行管と自治省ではいささか意見の相違があるようにも聞いておるわけなんですが、そういう意見の相違を克服してうまくやれるのかどうか、その点いかがでしょうか。
  36. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 人の問題になりますと、これも御承知のことでございまするが、地方団体の人の増加というものは、いつも申し上げておるわけでございまするが、たとえば警察、消防、教員あるいは福祉関係の諸施策、そういうものに関連して増加というものが行われておる。本当に地方団体プロパーの問題では、そう人員はふえているわけではない。したがって人員の抑制を図るということになれば、国のそうした問題にどう取り組むかということをやはり前提として考えてもらわなければ、問題の解決にはならないわけでございます。  さような点については、やはり第二次臨調においても論議をした方がいいのではなかろうか、そういうものを一切抜きにいたしまして地方制度調査会だけでその問題を議論するよりは、より改善の方向を見出すには、第二次臨調においても論議を尽くしてもらった方がより解決についての前進を図り得るものではなかろうか、私はこういうふうに認識をいたしておるわけでございまするが、この点をひとつ十分踏まえ、しかしながら地方団体の固有の問題となりますと、なかなか整理はむずかしいと思いますけれども、その辺の問題については地方の自主性を尊重するということをやはり原則としてこれからの問題を煮詰めていくべきだろう、こういうふうに思っております。
  37. 部谷孝之

    ○部谷委員 先ほどもお話がございましたように、地方制度調査会の林会長が臨調の委員としてお入りになっておるわけでございますから、そうした中で国と地方関係のみならず、自治体固有の問題についてもひとつ俎上に上せて、白日のもとで国民の納得のいくような議論が進められることを私は提言しておきたいと思います。  次に、第二交付税の問題であります。  このことにつきましては、わが党が従来主張を続けておるところでありまして、五十六年度の予算編成に当たりまして、その党首会談におきましても述べておりますし、また国会での代表質問、予算委員会の質問を通じまして第二交付税制度の創設、これを政府に対して強く要請してまいりました。  これに対しまして大蔵大臣は、党首会談におきまして口頭で基本的には賛成である、第二次臨調で検討してもらいたい、こういう旨の発言をされておるのでありますが、自治大臣といたしまして、この第二交付税の提案についてどうお考えでございましょうか。
  38. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 第二交付税という構想については、私もその考え方については、地方に一つの自主財源を与える、あるいは一般財源を与えるという意味において理解をするものでございます。  しかしながら、物によって若干実際は違いますけれども国の補助負担金制度、これは一地方だけではなくして、国全体の計画のもとに進めるという性格のものが相当あるわけでございます。それは、末端に参りますと地方だけの問題になりますけれども、全体の経過から申しますと、やはり国全体の立場においての政策の実施のための手段だという面があるわけでございます。それによって、国庫補助負担金制度というものができておるわけでございます。  これには、いろいろ実際上の差、内容の差もございますけれども、そういうものがあるわけでございまするから、国庫補助負担金というものを全廃をいたしまして第二交付税にするということについては、理論的にも私は問題があるのではなかろうか、こういうふうに思っております。考え方自体については私は理解をいたしますけれども、そうした制度の本来の趣旨から考えますと、そこに問題点があるのではなかろうか。  しかし、そうしたことをわれわれは理解をし、そしてまたそういう方向も望ましいと考えまする理由の一つには、補助負担金制度というものの実施状況を見ますと、きわめて一方的であり、そしてまたその補助負担金を得るために行政上のむだも非常に多い。それから、地方の問題を自律的に解決をしていくという能力を地方団体から奪い、そして陳情政治に陥るという危険性も現実にはあるわけでございます。  そういう面を考えますと、補助負担金制度のあるものにつきましてそうした弊害を除去するような制度をつくるということが、現実的には私は適切ではなかろうかという個人的な見解を持っております。第二交付税という構想、これについて私は大変理解を示すものでございまするけれども、国庫補助負担金制度の本来の趣旨から申しますと、そこに段階的なものを考えていかなくちゃならぬのじゃなかろうか、こういう考えをいたしておるものでございます。
  39. 部谷孝之

    ○部谷委員 第二交付税は、いまの補助金制度の弊害を除去するためにそういう形にしたらどうかという提言でありまして、たとえばいまの制度だから陳情政治の弊害というものがあるわけであります。十二月の暮れになりますと、新幹線はいっぱい、第一議員会館、第二議員会館の食堂は、もうわれわれが足を踏み込めないほどの陳情団が大挙してやってくる。そのことに対する行政のむだ遣いというものがかなりな数字になる。そういうところから、第二交付税の提案をしておるわけでありますから、どうもいまの大臣の御答弁は逆のお説を伺っているような気がいたしますが、この第二交付税につきましては、また地方交付税法の質疑の時間もありますので、きょうはここでとめておきたいと思います。重ねてひとつ、この問題についてはいろいろ質疑応答を通じまして明らかにしていきたい、このように思います。  次に、住民税についてでありますが、このたび五十六年度限りの特別措置といたしまして、個人住民税の所得割の非課税措置を設けたのでありますが、これはどういう理由でこういう措置をとられたのか、まずお答え願います。
  40. 石原信雄

    ○石原政府委員 住民税につきましては、御案内のように、昨年も一昨年もそれぞれいわゆる課税最低限の引き上げによる減税を行ってまいりました。五十六年度につきましても、この問題の検討を行ったわけでありますが、地方財政現状は、大幅な減収を生ずるような改正にたえられないという実情にあります。  仮に、所得控除を一万円引き上げますと、それだけで平年度七百三十億ほどの減収を生じます。先ほどのお尋ねにもお答えしましたように、既存税制の中で地方税源の充実、確保を図るということを検討しますと、なかなか税収増につながるような案がないという苦しい状況の中で、この住民税の扱いをどうするかということを種々検討したわけでありますが、初めに申しましたように、従来のような形での所得控除の引き上げによる減税は、五十六年度の場合とうてい困難であるという状況にあったわけであります。  しかしながら一方において、諸物価の上昇等を考えますと、低所得者層に対する配慮ということをしないわけにはいかないということもありまして、五十六年度限りの措置として、一定の所得以下の人については住民税を課さないという、いわゆる非課税限度方式というものを導入することにいたしたわけであります。しかし、このような方式が住民税の課税の仕方としていいのかどうか、これらについては大いに議論があります。そこでこれを恒久制度とせずに、五十六年度限りの措置としてこのような措置を講じたわけでありまして、これについては今後さらにどういう形がいいのか研究を重ねていかなければならない、このように考えております。
  41. 部谷孝之

    ○部谷委員 五十六年度限りの措置ということですが、五十七年度におきましても、生活保護基準額との逆転現象が、これは間違いなく起こるであろうということは容易に想像されるわけです。そうした場合には、従来のようないわゆる控除額を引き上げる等の措置によって住民減税を行う、こういう構えがあるということなんでしょうか。
  42. 石原信雄

    ○石原政府委員 課税最低限のあり方、あるいは今回採用することにいたしました非課税限度のような考え方、これらについてそもそも所得課税全体の中でどう位置づけていったらいいのか、これをどう考えたらいいのかという点については、税制調査会でもさらに研究しなさいと言われております。国民生活水準あるいは社会保障水準との関連なども考えながら、さらに検討をすべきであるという御答申もいただいております。  したがいまして、私どもといたしましては、五十七年度以降、従来のような形での課税最低限の引き上げの問題をどうするか、それから五十六年度限りに導入することにしたこの非課税限度方式を五十七年度以降どうするのかということは、当然考えなければならないと思います。ただし、その場合におきましては、国税、地方税を通じまして、所得に対する課税の税率の構造をどうするのか等も含めてさらに検討さるべきものだ、このように考えております。
  43. 部谷孝之

    ○部谷委員 いま、減税問題がきわめて大きな政治課題の中心になっておりまして、そのことを中心にいたしまして国会が動いているような感じさえするわけであります。そのことは、昨年六・四%の物価上昇で抑えるという約束を政府がされた、そんなことから、昨年度の賃上げが大体七%前後でおさまった。ところが実際には、消費者物価が八%まで上がるという状態の中で目減りがきたわけでありますから、物価調整の減税をやってもらいたいということがいま非常に大きな政治課題になっておるわけであります。  したがいまして、そういう観点からいたしますと、人的控除の引き上げというもので住民減税を行うべきであって、今度のようなこそくな措置は、まさに勤労国民をばかにした措置ではないかと思うのでありますが、その辺の御見解はいかがでしょうか。
  44. 石原信雄

    ○石原政府委員 住民税の課税のあり方からいたしますと、従来から行われておりますようないわゆる一定の生活に最小限度必要な分を非課税とする、それを所得控除という形で課税対象から外していく、こういう行き方が所得課税のあり方としては最も望ましいんだということが税制調査会等でも言われております。  したがいまして、私どもは、今回採用したこの非課税限度方式の導入が万全なものだというふうには決して考えておりません。財源事情その他が許すならば、従来のような方式による課税最低限の引き上げがいいのじゃないかという議論も検討の過程ではあったのでありますけれども、先ほど申しましたように、従来方式でいきますと巨額の減収を生ずる、その巨額の減収を別途補てんする方策が当面考えられないということで、最小限度低所得者層について減税効果の及ぶ措置を講じようということで今回の方式を選択したわけでございまして、この方式を今後どうするかということについてはさらに研究していかなければならない、このように考えております。
  45. 部谷孝之

    ○部谷委員 これからまた自動車関係税、不動産取得税、外形課税と、実はお尋ねしたいことを準備しておるのですが、時間が切迫いたしておりますので、ひとつ簡明に御答弁をいただきたいと思います。  まず、自動車関係でございますが、軽自動車の月割り課税制度を廃止されることになっているわけですが、これはどのような理由によるものでありましょうか。
  46. 石原信雄

    ○石原政府委員 軽自動車税につきましては、すでに一部の車種については月割り課税制度が廃止されております。なお残っている車種につきましても、市町村の課税の第一線の人たちからは、月割り課税によって入ってくる税収が非常に少ない割りにコストがかかる、また納税者の立場からも、わずかな税額のためにいろいろな手間がかかるという声があるということで、主として徴税簡素化という見地から月割り課税を今回廃止したい、このように考えた次第であります。
  47. 部谷孝之

    ○部谷委員 課税の簡素のためにやられた措置だということでありますが、こうした制度の改正によりまして財源はどれぐらい浮いたのでありましょうか。
  48. 石原信雄

    ○石原政府委員 月割り課税制度を廃止することによって失われる財源は一億足らずと見ておりますが、一方徴税コストの節減効果といたしましては、いろいろな推計方法があるのですけれども、従来の実態などを踏まえて推計しますと、三十億近い徴税コストの軽減につながるのではないか、このように見ております。
  49. 部谷孝之

    ○部谷委員 この問題によりまして、三月の末に軽自動車を買えばまるまる六千五百円の税金がかかる、四月二日以降に買えばこれが一銭もかからない、こういうことになるわけでございますが、買う時期がちょっとずれることによって一年分の税がかかったりかからなかったり、そういうことが税負担の公平という観点からいって問題はないかどうか、簡単にどうぞ。
  50. 石原信雄

    ○石原政府委員 結局、月割り課税制度をどうするかということは、まさにいま先生御指摘のようなことが関連するわけでございまして、私どもが月割り課税制度を廃止に踏み切ると考えたゆえんのものは、自動車税に比べて軽自動車税税率が比較的低いということ、それから月割りによって課税したり、あるいは還付したりという手間が非常ににかかるということから、廃止に踏み切ったわけであります。  したがいまして、三月末に買えば四月一日現在保有しますから年間税額がかかる、四月二日に購入した人は一年間かからないということは、この月割り課税制度に踏み切る以上は当然予定されることでありまして、これはやむを得ないことではないかと考えております。
  51. 部谷孝之

    ○部谷委員 買う時期によって、税金がかかったりかからなくなったりする。実は、大体三月購入が一番多いのです。いろいろ指数が出ておりますが、一五〇くらい、つまり月々の平均の大体一・五倍は三月に買われる、こういうことになっておるわけであります。そういたしますと、今度はディーラーの方にユーザーのそうした税負担が転嫁されるというおそれが実は出てくるのです。  これは現実に商売をやっている人は非常に敏感でありまして、そういうことを非常に懸念しておるわけでありまして、そうした単純に簡単におやりになることが、経済上あるいは民生上いろいろな波及効果を及ぼしていくということを十分認識された上でひとつ廃止していただく、その提言は取りやめていただきたい、こういうふうに思うわけであります。同時にまた、このことは一般の自動車に次は及んでいくのではないか、こういう心配もあるのですが、その点はいかがでしょうか。
  52. 石原信雄

    ○石原政府委員 結論から申しますと、いわゆる普通の自動車は、一般の自動車税についての月割り課税を廃止する考え方は持っておりません。理由は、軽自動車税の場合には税額が低いのと、それから市町村の区域を越えての移動が非常に多いために、月割り課税に伴ういろいろな事務的な手間がよけいかかるという問題があるわけですけれども、自動車税の場合には都道府県が課税主体でございますから、その都道府県の区域内での移動の場合はいわゆるみなし課税制度というのがございまして、移動のあった年は初めの所有者に年間分を負担していただくということで割り切っておりますので、いわゆる月割り課税に伴う事務的なロスは余り大きな問題になっておりません。  そのほか、年度の途中で取得した自動車の登録をされた方については、その自動車税は証紙で徴収するというような方法もとられておりますので、自動車税については軽自動車とは異なりまして、事務上のロスと申しましょうか、そういった問題が余り深刻でないものですから、私どもは、普通の自動車についての月割り課税制度の廃止ということは、現段階では全く考えておりません。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  53. 部谷孝之

    ○部谷委員 次に、不動産取得税関係についてお尋ねをいたします。  いろいろある地方税の中で、不動産取得税だけを税率アップされたわけですが、いろいろ御説明もあったのですが、これだけに税率アップを求めた。なぜ、そこだけに求めなければならなかったのかということと、不動産取得税税率引き上げによる地方財政への効果、これはどのように見ておられるか、この点をお尋ねいたします。
  54. 石原信雄

    ○石原政府委員 初めに、なぜ不動産取得税税率アップを行ったのかというお尋ねでございますが、先ほども申し上げましたように、私どもは五十六年度の税制改正に当たりまして、既存の税目の中で地方税源の充実強化に役立つような税目はないか、税率引き上げその他による税源の強化の可能性はないかということで幅広く検討を行ったわけでありますが、なかなか効果的なものがない。不動産取得税につきましては、先ほど申しましたように、昭和二十九年以来税率三%で据え置かれておりまして、なお税率アップの余地ありというような税制調査会の御答申等もありましたので、この税率引き上げに踏み切った次第でございます。  それから、この税率引き上げによる効果でございますが、税率引き上げによる増収額は初年度は二百十億円。これは、引き上げの実施時期とそれから課税事務の実質的なずれ込みの関係で初年度は二百十億円でありますが、平年度になりますと七百二十八億円の増収になると見ております。ただし、別途いわゆる住宅取得控除の引き上げ予定しておりますので、この関係を差し引きますと初年度の増収額が百五十三億円、平年度の増収額が五百四十九億円、このように見込んでおります。
  55. 部谷孝之

    ○部谷委員 不動産取得税あるいは固定資産税、そうしたものが住宅政策にいろいろな大きなかかわりを持つことは当然なんですが、建設省の方では、不動産取得税の方の税率引き上げ、そういうものによって住宅政策上何か支障を生ずるということはないのかどうか、建設省の立場からひとつ御答弁いただきたいと思います。
  56. 浜典夫

    ○浜説明員 お答えいたします。  住宅政策の立場から申しますと、一般に取得の諸条件、たとえば公租公課を含めましてなるたけ低コストの方がいいことはわかり切ったことなんでございますけれども、特にこのところの所得の伸び悩み等から来る住宅着工の落ち込みを見ますと、ますますその観があるわけでございます。そういう観点から、今回の案は特に五カ年間、住宅及び住宅用宅地についての税率の据え置きをお取り計らいいただく案になっておりますので、その点から住宅政策上問題はございませんし、今度六年以降どうかということに相なるわけでございますが、現行もございます課税標準の特例控除制度、ここら辺等を的確に運用していただければ、本年度の案もそういう内容もございますが、さらに将来においてもそういうことをお考えいただければ、住宅政策に対する税率のアップの影響は極力回避できるものと考えております。
  57. 部谷孝之

    ○部谷委員 では、最後に外形標準課税でありますが、実は私は昨年もこの外形標準課税についてお尋ねをいたしました。私は、やはり外形標準課税であることが事業税としては好ましい姿であろう。事業税というものが応益原則による物税であること、それから欠損法人が事業税を負担しないということは応益原則に反して税の負担が均衡を欠く、それから三番目には税収が安定を欠く、こういうふうな意味で事業税は外形標準課税方式であることが望ましい、私もそのように考えております。  そういうことで、かねてから税制調査会からも地方制度調査会からもまた全国知事会からも、いろいろな形でその導入に対しての報告あるいは答申というものが重ねられてきたわけですが、一般消費税の導入の問題が頭を出してきていた時点で一応外形標準課税問題は影を消したような形になりましたけれども、申し上げるまでもなくすぐ一般消費税そのものが影を消したという段階でこれはまた再び復活する問題でなければならぬわけでありまして、また中期答申の中にもそのことを指定されておると思うわけであります。そういう情勢の中で外形課税を今後どのように考えておられるのか、その御方針をひとつ最後にお尋ねしておきたいと思います。
  58. 石原信雄

    ○石原政府委員 先生御指摘のように、私ども税制のあり方として、事業税の性格論あるいは地方税の収入安定へといろいろな角度から、事業税に外形標準課税を導入することは必要であるという考え方を基本的に持っております。しかし、これについては、一方では赤字企業の税負担がふえるというようなこともありまして、強い反対があることも事実でございます。長い間論争を重ねておるわけでございますが、税制調査会においてもなかなかこの外形標準課税の導入問題を切り離して解決することができなかったわけであります。  そこで、先ほどもお話がありましたように、かつて一般消費税の論議がなされた際に、それと一緒にこの問題を解決するということが一度は答申でも取り上げられたわけであります。しかし、このもとになります一般消費税がたな上げになりましたので、現在の税制調査会の空気といいましょうか考え方としては、この問題はやはり今後の基本的な税制改正の中で、特に課税ベースの広い間接税の論議とともに一緒に解決するのが現実的な方法であろうという指摘がなされております。  私どもは、その答申の線に沿って今後これを研究していかなければならない、もちろんその場合に、課税ベースの広い新しい間接税の問題がどうなるかということによってはまた事柄が振り出しに戻るという可能性もあるわけですけれども、いずれにしても私どもはこれまでの経緯を踏まえましてその実現に努力してまいりたい、このように考えております。
  59. 部谷孝之

    ○部谷委員 終わります。
  60. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 岩佐恵美君。
  61. 岩佐恵美

    岩佐委員 ここ数年間深刻な地方財政危機が続いていますが、国はその対策として、国の一般会計から交付税特別会計への借り入れ、地方債の発行などを講じています。ただこの方法も、たとえば本来交付税率の引き上げをしなければならないのにそれをせずに借り入れで措置をするために、二分の一は地方自治体の借金として残っていくわけであります。毎年の財源不足額も、この間の委員会でも議論されたところですが、大蔵省と自治省の折衝で次第に引き下げられてきている状況であります。地方債の今後の発行についても、財政再建の観点から言えば借金はなるべく少なくしていくことが必要でありますから、このまま拡大していくことはできないということは明らかだと思います。  国からの補助金も今後は縮減される方向だということがはっきりしているわけですから、そうすると残された方法は、税で財源を確保するというわけになると思います。ところが一般消費税のように新たな税、しかも増税額がきわめて大きなものを導入するということは国民の批判が強過ぎてできないという状況のもとで、地方税の場合、基本的には現行税制での自然増収にその財源確保を求めているのではないかと思っています。今回の地方税改正に当たって、私はこのような政府の考え方が非常によくあらわれているのではないかと思います。  いま、この問題について議論をされたところでございますけれども、私は、この問題について数字をもとに議論をさせてもらいたいと思います。  まず、ここ数年の地方財政計画の歳入の中で、地方税の前年度比の伸び率がどうなっているか、あわせて地方交付税国庫支出金の前年度比の伸び率がどうなっているか、五十三年度から五十六年度までで結構ですが、それぞれ数字をお示しを願いたいと思います。
  62. 石原信雄

    ○石原政府委員 五十三年度から五十六年度までの間におきます地方税の伸びの状況について、初めに御説明させていただきます。  五十三年度の伸び率が一〇・四%、五十四年度が一一・六%、五十五年度が一六・五%、五十六年度が一三・四%であります。五十三年度——五十六年度平均しますと、年平均で一三%という伸び率になります。それから金額で申しますと、五十三年度は増加額が一兆九百三十八億円でありまして、その内訳は自然増が一兆三百九十三億円、税制改正による初年度の増が五百四十五億円。五十四年度の場合は増加額が一兆三千四百八十七億円、うち自然増が一兆二千二百五十六億円、改正増が千二百三十一億円であります。五十五年度は増加額二兆一千三百五十六億円、うち自然増が二兆百八十八億円、改正増が千百六十八億円であります。五十六年度は二兆百七十八億円の増、うち自然増が一兆九千四百二十二億円、改正増が七百五十六億円であります。  なお、地方税以外の歳入項目につきまして、五十三年度から五十六年度までの伸び率を平均で見ますと、地方交付税が一一・二%、国庫支出金が九・三%、地方債が九・一%という状況になっております。
  63. 岩佐恵美

    岩佐委員 いまの数字で見ますと地方交付税や国庫支出金、つまり国からの支出の伸びというものが全体の中で低下をしているという傾向にあると思います。一方、地方税の伸び率が全体として増加する傾向にあるのではないかというふうに見られるわけですが、この点についてはどうとらえておられますか。
  64. 石原信雄

    ○石原政府委員 御指摘のとおり、傾向としては、ただいま申しましたように五十三年度が一〇・四、その次が一一・六、一六・五、一三・四ということですから、五十三年度当時に比べますと最近の方が伸び率が高くなっております。これは御案内のように、五十年度、五十一年度当時非常に税収が落ち込んだということの後遺症がまだ五十二、五十三ごろは残っているんじゃないか。それが五十三、五十四、かなり日本経済全体として景気が回復しましたその結果が、五十五あるいは五十六に及んでいるんじゃないか、このように見ております。
  65. 岩佐恵美

    岩佐委員 地方交付税と国庫支出金について議論がはっきりするように、同じように、五十三年から五十六年の間の平均値ではなくて、それぞれの年ごとの伸び率というのをちょっと明らかにしていただけますか。
  66. 石原信雄

    ○石原政府委員 地方交付税について五十三年度以降の各年度の伸び率を申し上げますと、地方交付税は五十三年度が二三・四%、五十四年度が九・二%、五十五年度が五・〇%、五十六年度が七・九%であります。  次に国庫支出金でありますが、五十三年度が一七・六、五十四年度が一三・六、五十五年度が四・三、五十六年度が二・三、こういう伸びであります。  それから地方債でありますが、五十三年度が三二・九、五十四年度が二二・二、五十五年度は△の九・七、五十六年度は同じく△の三・六、こういう状況でございます。
  67. 岩佐恵美

    岩佐委員 そうしますと、地方財政の歳入の中で地方税の伸び率が大きくなっている、こういうことが言えると思いますけれども、その中身について問題が出てくると思います。  つまり、何がふえているのかということを見ていきたいと思いますけれども、五十六年度の地方税収入見込み額を五十五年度当初の見込み額と比較してみると、一体どのくらいの増加になるか。道府県税と市町村税、別々に合計額を明らかにしていただきたいと思います。
  68. 石原信雄

    ○石原政府委員 五十六年度の地方税収入の前年度五十五年度に対する増加額並びに増加率でございますが、全体として二兆百七十八億円の増であります。伸び率で一三・四%。その内訳を申しますと、道府県税が八千二百十億円、伸び率一一・四%。それから市町村税が一兆一千九百六十八億円、伸び率一五・二%という内訳になっております。
  69. 岩佐恵美

    岩佐委員 合計で約二兆円、前年度に比べて地方税がふえているわけですけれども、このうち道府県民税及び市町村民税の所得割がどのくらいふえているか、そしてその所得割の増加のうち自然増収分が幾らになるか、それぞれ明らかにしていただきたいと思います。
  70. 石原信雄

    ○石原政府委員 統計上、均等割も含んで個人分、法人分で分けてございまして、便宜個人分について申し上げます。  五十六年度の住民税のうち、個人分は七千四百六十四億円であります。伸び率にしまして一八・五%であります。なお、このうち自然増が七千四百二十四億円、伸び率一八・四%。それから税制改正による増が四十億円、〇・一%でございます。
  71. 岩佐恵美

    岩佐委員 いまの数字でわかりますように、五十六年度の地方税増収見込み約二兆円のうち、個人の負担する住民税増税分が七千四百五十五億円、つまり全体の中で三六・四%を占めている、こういうことが明らかになってくるわけです。しかも、そのほとんどが自然増収、ほかにも法人事業税など増収額が多いものもありますけれども、住民税増税分が非常に大きな比重を占めているということ、これは個人の税負担が非常に重くなってきていることを示していると思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  72. 石原信雄

    ○石原政府委員 五十六年度の地方税の収入増加額のうちで、個人の住民税増加額の寄与率が非常に高いということ、特に主としてそれが自然増によってもたらされる、その点は事実でございます。
  73. 岩佐恵美

    岩佐委員 自治省税務局がつくられました「昭和五十六年度 地方税に関する参考計数資料」というのがありますけれども、その中に「地方税の税目別収入額及びその割合の推移」という表があります。そこの(その三)という表で結構ですけれども、最初に書いてある昭和四十二年度と終わりの昭和五十二年度と比較する形で、道府県税全体に占める道府県民税の個人分、法人分及び市町村税全体に占める市町村民税の所得割、法人税割の比率をそれぞれ読み上げていただきたいと思います。
  74. 石原信雄

    ○石原政府委員 四十年度の場合で申しますと、道府県税全体に占める道府県民税個人分の割合が一六%、法人分が七%であります。それから市町村民税の個人の、これは均等割は別になっておりますけれども、所得割の比率が二七%、法人税割の比率が一一%になっております。  それから、決算で最終年度、最も新しいものとしまして五十四年度について申しますと、同じく道府県民税の個人分の割合が一九%、法人分の割合が七%。それから市町村民税につきましては所得割の割合が三三%、法人税割の割合が一四%、このようになっております。
  75. 岩佐恵美

    岩佐委員 市町村民税の法人税割、昭和四十二年度は一三%ではないですか。
  76. 石原信雄

    ○石原政府委員 失礼しました。四十二年度で申しますと一三%でございます。
  77. 岩佐恵美

    岩佐委員 いま読み上げていただいた数字、ざっと十年以上の長い期間を見てみたわけですけれども、これからも明らかなように、住民税においては法人の負担割合が横ばいである、それに比べまして個人の負担割合が非常に上がってきている、そういうことが言えると私は思うのですが、この点いかがでしょうか。
  78. 石原信雄

    ○石原政府委員 この点は、基準の年次をいつにとるかによって異なってくると思います。  たとえば、先ほど申しましたように切りのいいところで四十年度というところをとってみますと、住民税全体として個人分のシェアが七一・四、それから法人分のシェアが二八・六。それに対して五十四年度の場合は個人分が六九・八、法人分が三〇・二ということで、若干ではありますが法人の方が上がっております。ただ法人分は、御案内のように非常に景気の影響を受けますから、どの年次をとるかによってこのシェアはかなり変わってくると思います。  しかし、四十年度から五十四年度までの間を通して見ますと、個人分の伸び率が十・八倍に対して法人分が十一・七倍ということでございますから、必ずしも法人のシェアがダウンして個人のシェアがアップしたと言うことはできないんじゃないかと思います。
  79. 岩佐恵美

    岩佐委員 その点について、個人分についてのアップ率、昭和四十年をとるか四十二年をとるか、その差は多少出てくるということがあると思いますけれども、ざっと十年ぐらいということで見た場合に、やはり個人分がふえてきている、パーセンテージとしては上がってきている。それから法人分については、全体の中で占める割合というのがそう変わっていないということがこの数字から言えると思うのですが、その辺どこをとるかということに議論があるということになりますと、これもまたここのところで詰めてみてもしようがありませんので、先に行きたいと思います。  先ほどからずっと議論しているところでは、個人の負担割合というものが実数値で非常に大きくなっている、このことは議論のないところだというふうに思います。これは私は、住民税の本格的な減税が行われなかった、これが大きな理由になっていると思います。このことについては、納税義務者数が年々増大する結果ともなってあらわれているわけです。  たとえば五十年から五十一年にどのぐらいふえたかといいますと、百十六万人ふえています。それから五十一年から五十二年、百六万人、五十二年から五十三年、百八十万人、そして五十三年から五十四年にかけて百九万人、五十四年から五十五年にかけてちょっと増加数が下がっていますが八十三万人、こういうような状況になっているわけです。  予算修正で所得税の減税問題が大きくクローズアップされているところですけれども、私は所得税だけではなくて、住民税もいまこそ本格的な減税を行う必要があるのではないかというふうに思います。先ほど明らかにしました個人の住民税増税分七千四百五十五億円、これを納税義務者一人当たり平均に単純に割ってみますと二万円の増加になる、そういう状況になっているわけです。  ことしは、御承知のように五十五年度の物価の上昇率が非常に高いために収入のアップ率を上回る、そういうことで年間を通して上回るという、戦後始まって以来の重大な国民生活の危機状況になっているわけです。そういう中で、所得税減税の議論が行われているわけでございますけれども、この住民税についても非常に負担が高いという、圧迫感というのを国民は持っております。ですから、国民の減税要求というのはきわめて切実で、実現が大きく期待をされているところです。  私は、こういう財政状況の中でも交付税率の引き上げなどによって地方交付税をふやす、あるいは損金算入廃止などによって法人事業税を引き上げる、そういうことで個人の住民税等の減税は十分行えるはずだというふうに思っております。この点について、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  80. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 税務局長からも御答弁申し上げますが、私の感じから申しますと、地方交付税引き上げということは現下の諸情勢から申しましてきわめて困難なことでございます。本年も極力主張いたしましたが、国庫財政現状から申しますと最後には妥協せざるを得なかった実情でございます。  したがいまして、住民税の問題もいろいろございますが、それを直ちに交付税引き上げによって解決できるのではないかということは、なかなか実現のむずかしい問題だと思います。そうして、住民税の問題もこれまである程度やってまいりましたので、これを減税することによって地方財政に与える影響も大変大きい、こういうことで見送らざるを得なかったという実情でございます。  税務局長からも補足してもらいます。
  81. 石原信雄

    ○石原政府委員 住民税につきまして、先ほど来御説明申し上げておりますように、最近の地方税収入に占める住民税の収入の増加のシェアというのはかなり上がっていることは事実でございますが、その大部分はいわゆる増税と申しましょうか制度改正による増ではなくて、自然増によって占められているわけであります。  それはそれといたしまして、住民税につきましては先ほども御説明申しましたように、非常に苦しい地方財政状況の中で低所得者層に対する配慮を加えたいということで、最近も課税最低限の引き上げあるいは本年度の非課税限度の創設ということを行っているわけであります。  たとえば、五十二年に所得税の課税最低限が現在の二百一万五千円に引き上げられたわけでありますが、その当時住民税の課税最低限は百四十一万八千円でありまして、所得税に対する割合は七〇・四%であったわけであります。しかしその後、住民税の方では何回か最低限の引き上げを行ってまいりまして、たとえば五十五年度の場合で申しますと百五十八万四千円で七八・六%まで引き上げられております。それから、今回の非課税限度で計算いたしますと百七十五万七千円でありまして、率にしますと八七・二%というところまで差が詰まってきております。  私どもといたしましては、非常に厳しい地方財政環境の中で、低所得者層に対する配慮としては最大限の努力をいたしたつもりでございます。
  82. 岩佐恵美

    岩佐委員 大体、所得税減税が行われないというところに大変大きな問題があるというふうに私は思っていますし、また課税最低限の引き上げが毎年行われてきたといっても、それは大変不十分ではないかというふうに思っているわけです。この点については、もう少し議論をしていきたいと思いますけれども、個人住民税の所得割の減税問題、いま言われたことについて質問をしたいと思います。  今回の改正では、減税の方法として例年行われてきた各種控除を引き上げる課税最低限引き上げ方式をとらないで、いま言われたように非課税限度額制を設けて、しかも五十六年度に限るという措置をとられたわけです。先ほどの質疑の中で、課税最低限の場合に七百三十億円の減収になるところだったんだという説明がございましたけれども、じゃ一体非課税措置の場合にはどれだけの減収になるのか、伺いたいと思います。
  83. 石原信雄

    ○石原政府委員 今回の非課税限度の創設によります減収額は、初年度十二億円、平年度十四億円と見込んでおります。
  84. 岩佐恵美

    岩佐委員 この措置については、先ほどからたびたび言われているところですが、低所得者層を救済する措置であるという御説明があるわけですが、具体的な金額としては標準世帯年収百七十五万七千円以下のものについて非課税とするというふうになっているわけですけれども、なぜこういう金額にしたのか、はっきりと御説明をいただきたいと思います。
  85. 石原信雄

    ○石原政府委員 百七十五万七千円を導き出した根拠といいましょうか考え方といたしましては、いろいろな世帯構成の世帯につきまして生活保護基準額がどの程度になるかということを計算し、どの段階におきましても少なくとも生活保護基準程度の所得の人に住民税がかからないようにするためにはどの程度引き上げたらいいかというような検討を行いまして、これに若干のゆとりを持たせる意味で、所得額にして世帯員数に二十七万円を乗じた程度の所得以下の人には課税しないという非課税限度方式を考えたわけでございます。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  86. 岩佐恵美

    岩佐委員 そうしますと、生活保護水準額と同一水準以下の低所得者に対して課税対象にしない、してはいけない、おかしいという議論がこの委員会の中でもあり、また世論からも大きな批判がございました。そういうことに基づいて、今回の改正が自治省の側から提案されたというふうに理解してよろしいわけですね。
  87. 石原信雄

    ○石原政府委員 この具体的な金額を定めるまでの過程においてそのような検討がされたことを申し上げたわけであります。しかしこの制度自身は、従来も住民税に固有の制度としてあります一定の要件を備えた住民について住民税を課さない、いわゆる人的非課税の要件というものが幾つか定められておりますが、これの一つとして五十六年度限りの措置として、一定の所得以下の住民住民税の課税対象から除外する、非課税にするというふうにいたしたわけでございます。
  88. 岩佐恵美

    岩佐委員 今回のこの改正については新聞報道でも、大蔵省が臨時的でこそくな手段だというふうに言っているほど、本格的な減税とはほど遠いものだというふうに思います。こういう便宜的な手段をとった結果、標準世帯で年収百七十五万七千円の非課税限度額を一円でも上回った方々については税引き後の手取り額が逆転するという矛盾が生じて、そしてこれを解消するための調整措置をとらざるを得なくなっている、そういうふうに私ども説明をされているわけでございますが、この調整措置のやり方について説明していただきたいと思います。
  89. 石原信雄

    ○石原政府委員 口頭で申し上げるのはちょっとやりにくいのですが、考え方といたしましてはその百七十五万七千円を上回る部分について、そのために手取りといいましょうか税引き後の所得が非課税限度以下にならないように課税所得の段階で調整する、税金がかかることによって下回る結果となる、その金額を減額するという方式で調整をすることにいたしております。
  90. 岩佐恵美

    岩佐委員 この調整をしなければならない対象者というのは、一体どのぐらいになりますか。
  91. 石原信雄

    ○石原政府委員 二万五千人程度と見ております。
  92. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は今回のこの調整措置というのは、結局は税額控除方式というふうに言えると思います。今回のように非課税措置というものをとることによって、いわゆる調整措置を今度は逆にとらざるを得ない、そういうふうな非常に矛盾だらけな、言ってみれば大蔵省が指摘するこそくな手段、こういうことではなくて、自治省が本当に高額所得者までも一律に減税対象とするのは課税最低限でやるとこういうことになるからおかしいというのであるならば、税額控除方式による本格的な減税を行うべきだというふうに思いますけれども、この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  93. 石原信雄

    ○石原政府委員 ちょっと技術的な問題がありますので、初めに答弁させていただきます。  住民税にしても所得税にしても、所得課税につきましてどういう形で税負担の軽減を図るのがいいのかという点については、税制調査会では、現在のように所得水準その他から考えて必要と考えられる非課税部分を所得控除として控除する、そうしてその残余の所得に対して累進構造を持った税率で課税するいまの所得課税の方式が最も望ましい方式だということを述べております。  それに対して、一部税額控除方式を導入することについてはどうかということについて税調でもいろいろ議論があったわけでありますが、やはり所得控除と税額控除と二つの方法で税金を計算するというやり方については問題があるんじゃないかというような指摘もなされております。恒久的な制度として、所得控除と税額控除と二つの方式を併用するということになりますと、これは所得課税の方式そのものの変更になる問題でございまして、これについては私どもさらに慎重な検討が必要ではないか、このように考えます。
  94. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 いろいろ問題がございますので、これからも十分検討してまいらねばいかぬ、そういう意味で本年度限りの暫定措置にいたしたわけです。
  95. 岩佐恵美

    岩佐委員 そうしますと、今回の措置は五十六年度に限ったわけですね。五十七年度以降について、一体今回のような非課税限度額方式をとられるのか、あるいは再び例年行われてきたような課税最低限方式をとられるのか、あるいはもう減税は全く行わないのか、いろんな考え方があると思います。五十七年度以降一体どうするのかというのが、国民の大きな関心事になっているわけですね。この点について、いろいろ議論をいままでもされてきておりますけれども、どういうふうにされるのか、伺いたいと思います。
  96. 石原信雄

    ○石原政府委員 先ほど申しましたように、非課税限度方式を導入することについては、税の理論としてもいろいろ御意見のあるところでございます。しかし私どもは、五十六年度の厳しい地方財政状況の中で、最小限度低所得者層に対する減税措置を講じたいということでこの方式を導入することにしたわけですが、確かに、これについてはいろいろな御意見があります。それなるがゆえにまた、五十六年度限りの措置としてこれを導入することにしたわけです。したがいまして、五十七年度以降については、所得課税全体の問題として当然検討をされなければならないと思っております。  その場合に、従来のように所得控除の金額を引き上げるというか、これをどうするかという方式でいくのか、あるいは税額控除方式を導入するのがいいのか、それとも全く別個の方式が考えられるのか、これらにつきましては税制調査会でも、引き続き検討すべきである、今後の国民生活水準あるいは社会保障水準あるいは地方財政状況、こういったものを総合的に勘案いたしましてこの問題をさらに検討するようにという答申をいただいております。答申の線に沿いまして、私どもさらに勉強していきたい、このように思っております。
  97. 岩佐恵美

    岩佐委員 先ほど部谷委員が議論をされたところでありますけれども、もう五十七年度以降については収入をふやすということはなかなかむずかしい、そして増税もむずかしい、そういうことになると結局一般消費税導入、そういうことに期待をしていかないと、いまの住民税の減税ということをもはや行っていけないというような状況に立ち至っていくのではないか、そのことが昨年十二月に税制調査会が行った「昭和五十六年度の税制改正に関する答申」、その中で明らかになっているのではないだろうかというふうに思うわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  98. 石原信雄

    ○石原政府委員 税調の中期答申におきましても、今後財政再建のためにある程度の税収増加が必要であるとする場合には、当然課税ベースの広い税金を対象にせざるを得ない、そうした一つとして所得課税を挙げております。  所得課税を今後どうするかという点については、諸外国との比較では、わが国の租税負担率はむしろ低い方だ、そういう意味では引き上げる余地があるんだということを述べております。  しかしながら、個人所得については、把握の問題等で、いまのままで税率引き上げた場合には、かえって不公平を拡大することになりはせぬかというような疑問も提起しております。  それからまた、最近の物価情勢との関係で減税を求める声が非常に強い、こういうことも無視できないということでありまして、これらいろいろな要素を考えながら、税制全体の中でこの所得課税のあり方についても当然検討が加えられていくもの、このように考えております。
  99. 岩佐恵美

    岩佐委員 次に、個人事業税の課税対象業種拡大の問題、特に不動産貸付業を新たに加えたという問題について伺いたいと思います。  その前に、そもそも一体事業税とはどういうものなのかということについて、ここに自治省出身の方が書かれた「地方税」という本がございますが、この中で「事業税は道府県の公共サービス提供に対する一種の受益者負担的性格を有するものである。」というふうに書かれています。  確かに法人の大企業では、道路や港湾、下水道などで現に自治体からサービスを受けているということであれば、事業税が課税されているということはこれ自身わからないわけではないのですが、しかし個人の事業について、第一種、第二種、第三種と具体的に列挙されていますけれども、たとえば第三種事業に「あん摩、マツサージ又は指圧、はり、きゅう、柔道整復その他の医業に類する事業」というのがありますけれども、これらの人たちは一体事業として道府県からどのようなサービスを受けているのか、事業税を課税する根拠が非常に不明確だというふうに思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  100. 石原信雄

    ○石原政府委員 今日の個人事業税は、いろいろな経過を経て、現在のように第一種事業、第二種事業、第三種事業というものが課税対象として法定されているわけであります。  個々の事業につきまして、具体的に公共団体との受益関係を立証しなさいと言われますと、これはなかなかむずかしいことだと思います。ただ、いやしくも事業所を設けてその地域事業活動を行う場合においては、地域社会との関係でいろいろな形での受益関係がある、公益関係がある、こういう前提に立って課税がなされているわけであります。第三種事業についても、個別に立証するのはむずかしいわけですけれども、全体としてそのような考え方に基づいて課税がなされている、このように理解しております。
  101. 岩佐恵美

    岩佐委員 こういう人たちは住民税が課税をされているわけです。実態からさらに事業税を課すということは、二重課税になるというふうに思います。そういう点では、こうした方々の不満は大変強いわけです。  そういう点で、今回新たに加えられた不動産貸付業も同じことが言えると思います。この改定で、いわゆる地主、家主の方々が事業主として課税されるわけですが、この対象の方々、一体どのぐらいの人たちに影響を与えるということでしょうか。
  102. 石原信雄

    ○石原政府委員 今回の改正によりまして新たに納税対象となる納税義務者数としては、不動産貸付業が四万九千人、駐車場業が二千人、コンサルタント業が千二百人、デザイン業が千百人、このように見込んでおります。
  103. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は不動産に限っていまお聞きをしているわけでございますけれども、どのぐらいの人たちに影響を与えるかということ、これは税金を取られるという対象の方々。そういうことでは、そう大して影響はないんだというふうな言い方をされるわけですけれども、今回の改定で、法律上は確かに十戸、十室以上の家主ということになるのでしょうけれども、すべての家主が一応対象になる。そしてそれが、必ず便乗値上げ的なものを含めて借りている人たちにはね返ってくる、これは必至だというふうに思います。  ただでさえ借地借家人は、地代、家賃の高騰に大変苦しんでいます。東京の借地借家借間人組合連合会がことし一月に発表した実態調査では、借家の家賃は、昭和五十二年に都内平均で一畳当たり月二千二十一円だったのが、五十五年には二千四百一円で八%アップ、アパート、借間も、一畳当たり二千六百七十九円から三千二百二十二円、九%もアップをしています。  こういう中で、来年、五十七年度には固定資産評価がえもある。固定資産税、都市計画税も増税が予想される。そこへもってきて、個人事業税による新たな負担が地代、家賃にもろにはね返ってくる、こういうことではたまらないというのが借家人の実態になっています。自治省は今回の改定に当たって、こういう影響までを本当に真剣に考えたのかどうか、三十数億円の税収を得るために、こんなにも影響の多いやり方でしか増税の方法がなかったのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  104. 石原信雄

    ○石原政府委員 先ほど来お答えしておりますように、私どもは、地方財政現状のもとで、既存税制の枠内で何とかして地方税源の強化を図りたいということで、率直に申しましていろいろな税源を探したわけであります。事業税につきましては、現に事業税を課されているものとの均衡上、不動産貸付業につきましても、これは十分担税力があるということで課税対象に加えることにしたわけです。もちろん事業税は、その転嫁を予定する税でありますから、かかった税金が何らかの形で他に影響が及んでいく、不動産貸付業の場合にはその借り手の方に影響が及ぶであろうということは当然私どもも考えた結果、その上でこのような判断をしたわけです。  なお、その場合、不動産貸付業の場合で申しますと適用税率は五%でありますが、御案内のように現在事業主控除が二百二十万ということになっております。したがいまして零細な事業所得については、事業主控除の結果課税対象から落ちていく。それから、それ以上のものについても二百二十万がすべて控除されますから、この今回の課税に伴う家賃への影響というのは一%ないし二%ではなかろうか、このように見込んでおります。
  105. 岩佐恵美

    岩佐委員 その直接家賃にはね返る額が一%、二%、こういう答弁というのは、いつも公共料金等の引き上げの際にも出てくるわけでございますけれども、私は物価問題特別委員でもあるわけですけれども、いつもこうした多くの国民に影響を与える料金の改定というものは、それのみにとどまらないというのが通例だというふうに思っております。借地借家人というのは、全世帯三千二百万の六割、千九百二十万世帯だというふうにも言われているわけです。こういうふうな多くの人たちに影響を与えるこうした重大な問題について、いまのような答弁では私は大変無責任だというふうに思います。この点は善処を求めたいと思います。  それからもう一つ、今回の改定で、土地のみを貸している不動産貸付業についてはどのように課税されるのか、非常に基準があいまいだというふうに私ども受け取れるわけですが、この点はいかがでしょうか。
  106. 石原信雄

    ○石原政府委員 先ほどの事業税が新たに課されることに伴っていろいろな影響が出てくるわけでございますが、その影響が最小限度にとどまるよう、私どもは、改正に当たりましてはあらゆる機会を通じて必要な指導を徹底していかなければならない、このように考えております。  それから、第二のお尋ねの、土地のみを貸し付けている場合の不動産貸付業の対象をどのようにしぼるかということでありますが、考え方としましては、家つきの不動産貸付業、いわゆる一戸建ての家とかあるいはマンション、こういったものについては、先ほどもお話がありましたように、一定の基準以上のものを事業所得として把握したいと考えております。  そこで、土地のみを貸し付けているものの該当がどのくらいあるのか、正確な数字は把握しておりませんけれども、一戸建ての家屋あるいはマンション等を貸しておるものとの均衡を考えまして、契約件数あるいは貸付面積等で一定の基準を今後定めていきたい、このように考えております。
  107. 岩佐恵美

    岩佐委員 次に、国際障害者年に当たりまして、自治省の考え方を伺いたいと思います。  自治省は、国際障害者年に当たってどのような計画対策を持っておられるのか、政府計画に対応する計画立案についての内部的検討組織あるいは研究会、そういったものがあるのかどうか、伺いたいと思います。
  108. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 国際障害者年につきまして、自治省の事務次官が、内閣に設けられておりまするこの対策のメンバーになっておりまして、各省のいろいろな仕事をやるについての、特に地方財政においての役割りという点で協力をしようということで、いろいろ相談にあずかっているのが現段階でございます。
  109. 岩佐恵美

    岩佐委員 地方税法改正案では、障害者を多数雇用する企業に対する対策があるだけだと思います。これも課税標準の特例が縮減される、率が縮減されるというようなことになっています。国際障害者年に当たって、私は、もっと障害者一般に対する直接的な対策地方税法上もとれたのではないかというふうに思います。  地方税法改正案では、各種控除は、ほとんどというか、高齢の老人配偶者控除を新設したことを除いて据え置きということでございます。障害者控除が障害者年に当たって検討されなかったのかどうか、こういう点について私は大いに疑問を持つのでございますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  110. 石原信雄

    ○石原政府委員 五十六年度の税制改正に当たりまして、所得税、住民税を通じまして障害者控除等を含めて、いわゆる弱者対策としての税制いかにあるべきやという議論がなされたことは事実であります。しかし、これらについては、税制上対応するにはおのずから限界があるというような議論がありまして、所得税におきましても住民税におきましても、各種の所得控除全体が据え置かれたということもあり、障害者控除そのものも今回は引き上げが見送られたという経緯でございます。
  111. 岩佐恵美

    岩佐委員 障害者を持っておられる家庭あるいは障害者自身が家計を支えている、そういう家庭では、健常者ではおよそ想像がつかないような出費増、負担というものが非常にあるわけです。たとえば、車いすでもって出入りしやすいようにという設備を公共施設でします場合にかなりの負担があるわけですが、これも家庭内でそういう方々がいろいろ移動できるようにということになると、それなりのいろいろな配慮をしていかなければならないということもあります。あるいはおふろについても特別な改造をしていかなければならないとか、あるいは外出をする際にもタクシーに乗っていかなければなかなか目的地に行けないというような点で、大変、私どもが思いもつかないようなそういう出費がかさんでいるわけです。  そこで、伺いたいのですけれども、各種の控除について住民税と所得税とを比較してみますと、障害者控除のところで住民税については二十一万円となっています。そして特別障害者控除が二十三万円です。ところが所得税の場合には、二十三万円に対して特別障害者控除が三十一万円になっている。重度対策が非常にとられているわけです。この住民税と所得税の比較をすると、ほかのところは、控除の基準で見ると大体二万円ぐらいの差になっているわけですけれども、この特別障害者控除だけが八万円と大幅に差がついているわけです。これは一体どうしてこうなっているのか、御説明をいただきたいと思います。
  112. 石原信雄

    ○石原政府委員 確かに金額で見ますと非常に大きな差のように見えますが、御案内のように所得税と住民税ではもともとの税率がおおむね、住民税は所得税の半分程度の税率になっているということもありまして、基礎控除そのものが所得税の二十九万に対して住民税は二十二万と低くなっております。そこで問題は、各種控除間のバランスがとれているのかとれていないのかということであろうかと思いますが、障害者控除について申しますと住民税は御案内のように二十一万円であります。これは基礎控除に対して九五%という率、所得税の場合は二十三万円でこれは七九%、むしろ住民税の方が障害者控除は相対的には高くなっております。それから特別障害者控除になりますと、住民税は基礎控除に対しては一〇五%という率であります。所得税は三十一万で一〇七%という率であります。若干所得税の方がよくなっておりますけれども、率でいきますと金額で感じられるほどの差はない。障害者控除、特別障害者控除を通じて考えますと、住民税、所得税間のバランスはそれなりにとれていると私どもは考えております。  なお、この障害者控除あるいは特別障害者控除は、住民税は昨年度引き上げたわけでありますが、今年度は全体の所得控除を据え置いた関係で今回は据え置かれた次第でございます。
  113. 岩佐恵美

    岩佐委員 額で見るとかなりあるようだけれども率でいったら差はないということについて、それは重度障害者に対する特別な対策をことしはとったのですよというふうに自治省が言われていることからいうと、補助金制度の問題等についてそういうふうに言われていますけれども、こうしたことからいったらおかしいというふうに思います。説明がどうも納得がいかないというふうに思います。  同時に、障害者控除あるいは特別障害者控除、これを両方とも私は引き上げるべきだというふうに思います。そして、とりわけ特別障害者控除については改善をすべきだと思いますけれども、この点大臣のお考えを伺いたいと思います。
  114. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 御趣旨に沿いまして十分検討してみたいと思います。
  115. 岩佐恵美

    岩佐委員 政府提出法案について、政府の障害者年に対する姿勢から言っても、私はこの点についてぜひ改善されていくべきだというふうに思います。政府は、総合政策からいって、国際障害者年だからやるんだと言っているわけでございますから、この点はぜひやっていただきたい。そして、委員会としてもこの点について修正を図っていくべきだというふうに思うのですが、委員長にぜひ検討をお願いをしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。  以上で、私の質問を終わります。
  116. 左藤恵

    左藤委員長 田島衞君。
  117. 田島衞

    ○田島委員 私は、まず最初に大臣にお伺いをしたいと思うのです。  今回の地方税法その他の改正の提案理由の中に、現下の厳しい財政事情云々とこうあります。それはそれなりに素直にわかりますが、その厳しい財政事情に対する対応としての今回の一連の法改正がその効果として七百五十六億円を生む、こういうことになっているのですけれども、表にあらわれたものは確かにこの法改正によって厳しい財政事情を七百五十六億円救おう、こういうことになりますが、それだけなのか。この法案にはないけれども、その裏が厳しい財政事情に対応するものの一つとして今度の法改正によってこういう財源を生み出したい、そればかりじゃございません、こういうことも考えておるんだけれども、その考えておる中の一つの方法として今回の法改正によってこうしたいんだということなのか、これだけがもうすべてなのか、その点をちょっとお話を聞かしていただきたい。
  118. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 現下の厳しい財政状況に対応いたしましてどういう措置を講ずるか、その点については、お話のとおり税制の面におきましてはただいま御審議を願っておるこの辺が限度であろう、こういうことで御提案申し上げておるわけでございますが、そのほかに交付税特別会計の中における各般の措置とかあるいはまた歳出面についての地方財政計画上の措置、そういうような全般を踏まえて現下の厳しい地方財政状況に対応いたしたい、こう考えておるわけでありまして、これは一つの一環とお考え願ってしかるべきだろうと思います。
  119. 田島衞

    ○田島委員 もちろん、そういうことだろうと私の方も想像はしておるわけでありますが、表へ出てきたのは、この法改正によって七百五十六億円を生み出す、これだけははっきりしているわけなんですけれども、そのほかの、いわゆる厳しい財政事情に対応する決意といいますか方針といいますか、そういうものについてもう少し具体的に、たとえば住民の負担においてこれだけのものを何とか求めたい、同時にまた行政そのものの努力によってこういうことも強い決意を持っている、それでないとちょっと承りにくい。行政側が当然やらなければならないことの方はまことにあいまいで、住民に負担を強いる方はまことに具体的というのはどうも大臣いただけないと思うのですけれども、だからといって一方の方、そう具体的にということは無理なことはよく承知していますけれども、数字の具体的じゃなくて、やろうと思っていることの具体的なお話をもう少し承れないでしょうか。
  120. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 また補足をしてもらいますが、たとえば地方財政計画等におきましても、人件費の抑制でございますとかその他の問題については相当圧縮をした形においての計画を樹立いたし、地方団体に対してこれを提示して、そうした方向で進んでもらわなければいかぬ、こういう努力をしておるところでございます。  なお、交付税特別会計の中におきましても、これはお話の点から申しますと、そういう財源を与えるということじゃなくて、むしろ重点としては、経費の圧縮という面に相当力を入れるべきじゃないかというふうにも承れるわけでございますが、しかし、地方財政全般の問題といたしまして、やはり交付税特別会計の面におきましてもいろいろの工夫をいたしまして、地方財政がまあ何とかやっていける程度の措置を講じたということでございます。  この点についてさらにお触れになるといたしまするならば、政府委員の方からも具体的に申し上げます。
  121. 田島衞

    ○田島委員 大臣として、いかにその衝にあるとはいえ、余り具体的なことについてお伺いすることは無理だろうと思いますけれども、少なくとも住民にこれこれしかじかの負担増をぜひお願いしたいと言う以上は、その何倍かの行政努力による削減によっての財政再建を覚悟しているぐらいのところがなかったら、本来こういう法案を出すのはいささか無責任と思いますけれども、その点では大臣いかがでしょうか。
  122. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 重ねてのお答えでございますけれども、とにかく今回地方税についてのある程度の増徴をお願いしているわけでございます以上、やはり財政の面におきましても相当の節約をする、人件費については余り伸ばさぬようにする、それから経常経費についても圧縮をするとか、そうした計画をいたしましてお願いをいたしているという点はひとつ御了承賜りたいと存じます。
  123. 田島衞

    ○田島委員 それでは、政府委員のどなたかからせめて決意のほど——住民に、なるほどそれだけの決意を持ってやろうとしているんだったら、このくらいの負担はがまんして協力してやらなければしようがないかなと思ってもらえそうな決意のほどを、ちょっと聞かしてもらいたい。
  124. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 税の立場から税務局長から話があると存じますが、全体的な意味で御指摘をいただきましたことについては私どもも十分反省をしていかなければならない問題でございますが、どのような負担を求め、そしてそれに対応してどういった行政上の節減合理化等を図るかといったようなことは、私どもとしては、全体的には地方財政計画を通じていろいろと検討もし、それにあらわしておると思っておるわけでございます。  そういった中で私どもとしては、歳出面では必要な行政需要に対応するものは当然組まなければならないけれども、全体といたしましては、抑制的な立場に立ってできるだけ節減合理化を図るということにいたしまして、昭和三十一年度以来の総体の規模としては低率の七%増に抑えるということにいたしたわけでございます。公債費を除く一般歳出増加率も五・九%ということで、きわめて抑制的圧縮型というふうなことにいたしたわけでございまして、その中で一、二申し上げますと、給与関係費についても、職員数の増加抑制を図る、一般職員については六千七百人余りの削減を行うといったような具体的な形もとっておるわけでございます。一般行政費についても、同じくきわめて抑制的な形で組んでおりまして、いろいろな面で私どもとしては細かい指示をし、そしてそういう中で必要な行政需要に対応できるものとして財政計画を組んだ。  その財政計画の中で歳入面では、おっしゃいましたように七百五十億余りの地方税の増収を見込んだわけでございますが、なるべく全般的に歳入面での確保を合理的に図ろうということから、それ以外に見込まれる国の税法改正に伴います、国税三税の増収に伴います交付税増加二千九百億円程度、それから五十五年度における補正に伴います地方交付税増加二千五百五十億円、これは五十六年度の財源として使わしてもらう。そういったようないろいろなやりくりをいたしまして、それ以外に足りないところは三千四百億円の交付税増加を図る。しかし、それもいろいろな条件改定等によって生み出すというようなことでございまして、住民負担等も考え、そしてまた歳出全体は抑制をしながらも必要なものは確保するということで、歳入歳出全般にわたって私どもとしては地方財政計画を通じて努力をしたつもりでございます。  しかし、何と申しましても、まだ積年の累積赤字というようなものも多分にございます。こういったものをどういうふうに解決していって地方財政の本当の健全化を進めるか、そしてその行政の水準と住民の負担といったようなことについてどういうふうにしていくのが一番合理的かということは、今後さらに検討を進めていかなければならない問題だと思っております。とりあえず五十六年度においてはそういったことで、地方財政計画を通じていろいろと検討した次第でございます。
  125. 田島衞

    ○田島委員 いまのお話を聞いても、おおむね地方交付税その他税措置ということで、依然として住民の負担に基づくところの財源をもってする対応策であって、行政みずからの努力によるところの対応というものは具体的に出てない。そこらのところが一番問題だと思うのですけれども、その点については後でもう一回振り返ることにしまして、中身の問題で一、二点を聞いてみたいと思うのです。  先ほども別の質問者から出ましたが、今回の都道府県民税及び市町村民税についての改正の中で、単年度、昭和五十六年度限りの措置というのがありますが、これについての御説明が余りはっきりわかりませんけれども、この五十六年度に限っての措置とされた理由をもう一回、ひとつわかるように説明してほしい。
  126. 石原信雄

    ○石原政府委員 今回創設することにいたしました住民税の非課税限度額の設定につきましては、所得課税におけるそういったやり方がいいか悪いか、これについて税制調査会の中でもいろいろ御意見がありまして、私ども自身も五十六年度の財政環境の中で、最小限度の減収額の中で低所得者層に対する減税ができないものかということで考え出した方式であります。率直に申しまして、まだ定着するに至っていない方式ではないか、そういった意味で五十六年度限りの措置としてこれをやらしていただいて、将来の問題についてはさらに研究させていただきたい、こういう考えでございます。
  127. 田島衞

    ○田島委員 要すれば、こうすることが間違いなく正しいことなんだ、こういう方向に向かって改正をしていかなければならないんだという確信のもとのことじゃなくて、一連の住民に対する税負担増の中で、ちょこちょこぐらいは緩和する部分も入れなければちょっと調子が悪い、こういうことですかな。
  128. 石原信雄

    ○石原政府委員 住民全体に対する減税を行うには、五十六年度の財政環境は余りにも厳し過ぎるということでありますが、せめて低所得者層についてだけは減税をいたしたいということで、この方式を導入することにしたわけでございます。
  129. 田島衞

    ○田島委員 少しでも、一部分でも対象が緩和されるということは、それはその人たちは喜ぶでしょうから悪いことではないと思いますけれども、本来税というものに対する考え方というものは、そういう軽い考え方ではよろしくないと思うのです。求めるのも緩めるのも減らすのも、どう考えてもこうあるべきだという確信のもとで——一年だけやってみて様子を見てどうこうとか、あるいは増税ばかりじゃ調子が悪いから、一か所ぐらいは少し減らす方の部分もつけてみてとか、そうでないかもしれませんけれども、そんな考え方でいじるべき筋合いのものではないと思うのですけれども、違いますかな。
  130. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 この問題は、結局地方財政に与える影響が大変大きいのでことしは見送りたい、そういたしますと、生活保護家庭との関係において矛盾が出てくる、その矛盾を何とか解消しないとやはりおかしいじゃないかということで、御質問者がちょこちょことやったとおっしゃれば、ちょこちょこかもしれませんけれども、そうした矛盾を解消することもやはり一つの重要な問題だと考えまして非課税措置を講じた、こういうことでございます。
  131. 田島衞

    ○田島委員 本来税のあり方に対し、その控除等のあり方に対する考え方というのは、だれが考えてもなるほどもっともだ、たとえば基礎控除一つにしても、現在の物価等の状況、一般家庭の生活に必要とされる最低の生活費がどの程度のものなのか、ここらのところを厳密に査定した上で、基礎控除だとか何々控除だとかというのは考えられなければいけないものである。そのかわりに、それがどんなにきついものであろうとも、やはりそれだけの是正措置は本当はとらなければいかぬ。  これは、所得税でも何でもそうだと思うのです。それをやらぬところに、大変いろいろ論議が生まれてくるわけでありまして、したがって道府県民税や市町村民税についての控除等についても、本来はそういうたとえ単年度でも措置をとるについてのまことに合理的な説明がついてこなければうそだと思うのです。その点では何かこの法案そのものに対する考え方が、そんな程度の軽い気持ちなのかなというふうに受け取られるわけであります。  それから、もう一つ続いてお伺いしますけれども、日本勤労者住宅協会の業務用に供するところの土地またはその取得については非課税。一応日本勤労者住宅協会といえば、勤労者のために、働く者のために住宅を一生懸命建てて住む場所を提供する。社会公共のために、特に働く者のためにまことに結構なことだということになりますけれども、その日本勤労者住宅協会なるものの本質というものから考えると、端的に言えば、日本国じゅう病人や子供以外はみんな働く者、勤労者なんですけれども、その大半の者はそこに恩典を受けられない。全日本人、全国民の中の、いわゆる働いている者という範疇の中からすれば本当の一握りの人たちのための恩典だと思うけれども、違いますか。大臣どうでしょうか。
  132. 石原信雄

    ○石原政府委員 今回、日本勤労者住宅協会がその業務用のために取得する土地に対する特別土地保有税を非課税にいたしたわけでございますが、その考え方は、現在住宅供給公社あるいは住宅公団等について、業務用で取得する土地について特別土地保有税を非課税にしております。それとの均衡を考慮して、今回これを加えることにしたということでございます。すなわち、勤住協が行っております業務の内容が、住宅供給公社あるいは住宅公団ときわめて類似した事業を行っている、非常に公共性の高い事業を行っているという考え方で、これを非課税に加えた次第でございます。
  133. 田島衞

    ○田島委員 日本勤労者住宅協会法、その「目的」の中に、「日本勤労者住宅協会は、勤労者の蓄積した資金をその他の資金とあわせて活用して、勤労者に居住環境の良好な住宅及び住宅の用に供する宅地を供給し、もって勤労者の住生活の安定向上に寄与することを目的とする。」。まことにりっぱな目的なんですけれども、さてそこで、この中の出資者というのはどういうのかというと、第五条に「協会に出資することができる者は、次に掲げる者とする。一 労働金庫及び労働金庫連合会 二 消費生活協同組合及び消費生活協同組合連合会 三 前二号に掲げる者のほか、勤労者のための福利共済活動その他勤労者の経済的地位の向上を目的とする団体」、これだけ。  ほかの住宅供給公社だとか公団だとかいうのは、それこそまさに一般の国民、住民を対象としているのでしょう。だけれども、この日本勤労者住宅協会というのは一般じゃないですわな。そこらにおかしいと思う点ありませんかな。直ちにどうこうとは言いませんけれども、大臣いかがでしょうか。これは同じでしょうか。
  134. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 いま税務局長から御説明申し上げましたように、横の関係において住宅供給公社とか何とかというものに対しては非課税措置をとっておる、したがって、それと同じような性格のものだからこれもやはりやるべきだろう、こういう発想でこれは措置をされたわけでございまするが、いまお話しの点は一つのあるグループの住宅じゃないか、住宅供給公社なんて言えばこれは一般じゃないか、どうもそこにおかしい不合理な点もあるのじゃないかというのが御質問の趣旨だと思うのです。  そう言われれば、そういう点もなきにしもあらずだと思いますが、形の上でやはり住宅供給公社と同じようにしなければならぬということも一つの考え方でございまして、それをとりまして今回この措置をした、こういうふうにひとつ御理解を賜りたいものだと思います。
  135. 田島衞

    ○田島委員 法案の中にそういうことが盛り込んである以上、まさかそれはどうもおかしいようですねということにはならぬとは思いますけれども、私はおかしいと思うのです。ひとつ今後においても改めて御検討いただきたいと思います。  それから続いて、罰則といいますか、罰則的な更正、決定の制限期間あるいはその罰則等についての改正がありますけれども、この改正はそれほど必要ですか、どうですか。そんなにまで厳しくしなければうまくいかぬものかどうか。それだけ期間を延ばしたらそれだけまた手数がかかる、それだけまた人件費がかかる。果たして、この期限を延長することによってどれだけの効果を期待しての改正なのか。それからまた、それだけの期間の延長によってどのぐらい労力をよけいに使うつもりなのか。その点はどうですか。
  136. 石原信雄

    ○石原政府委員 今回、地方税の更正、決定等の制限期間につきまして、脱税にかかる場合の更正、決定等の制限期間を従来の五年から七年に延長することにしたわけでありますが、この背景には、わが国の除斥期間の定めが諸外国の立法例などと比べまして非常に短い。たとえばアメリカ合衆国などでは、脱税の場合の除斥期間というのは法律上は無制限、あるいは西ドイツなどでは十年というふうに、おおむねわが国の場合よりも長い。納税環境整備という意味でわが国の場合はやや短過ぎるのじゃないか、こういう御意見が税制調査会等で出されまして、これは国税、地方税を通じて延ばすことが適当じゃないかということで、今回地方税についても延長しよう、国税とのバランスも考えまして延長したい、こういうことになったわけであります。  もちろん、これによりまして更正または決定できる期間が長くなりますから、それだけ税収の確保には資するわけであります。それからまた同時に、そういった脱税犯等が出てくれば手間もかかるということでありますが、税収全体を確保しなければならない、また脱税については厳しく対処することによって税の公正を期する、こういう意味から税調の答申等も受けまして今回改正に踏み切った次第でございます。
  137. 田島衞

    ○田島委員 これまた答弁まことに不満であります。諸外国の例を見て云々と言うけれども、諸外国の例がどうだろうとこうだろうと、日本の国で、地方団体での税の徴収の実態の中で何もそんなに延ばす必要がない、従来のやり方で十分捕捉できている、またそれ以上延ばすことによって確たる効果についての見通しはないと言うなら、何も延ばす必要はない。よそでどうだろうとこうだろうと、関係ないじゃないですか。そうじゃないでしょうか。  むしろそうではなくて、いままでのやり方でするとその期間が短かったために、もうちょっと期間が長ければこれだけのものが捕捉できた、これだけのものが徴収できたのに、それが期間がなかったためにできなかったのを数字であらわしてもこの程度のことが考えられる。したがって、ぜひその数字を確保するためにも期限を延長したいとか、それから罰則が余り軽いから、だから脱税して困る。実際に実情としては具体的にこういう状況を説明できる。したがって、それを事前に防ぐために罰則を強化したい、だから長くするのだというのだったらわかりますよ。わかるけれども、諸外国の例でこうだとか税制調査会のあれがこうだとか、長ければ長い方がいいだろうとか言って、それだったら十年、二十年にしたらどうですか。いかがですか。
  138. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 お話の点よくわかります。そこで、具体的にどの程度になるかという捕捉はいたしておりませんけれども、御趣旨のような点について今回この措置を講じた、こういうことでひとつ御理解をいただきたいと思います。
  139. 田島衞

    ○田島委員 大臣がそう部下をかばっていられると、聞く方もちょっと遠慮したくなりますけれども、恐らくこれを延長することによってこのような行政効果を期待できる、罰則を強化することによってこうこうという見通しはほとんどないものと私は考えておりますが、もしあるなら説明していただくし、なければそのままで結構でございます。いかがですか。
  140. 石原信雄

    ○石原政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、この改正は先生がおっしゃられますように、具体的にこれこれこうだからという数字的なといいましょうか、具体的なケースの上に立って今回の改正をお願いするということよりも、制度全体のたてまえというか、考え方としてこうあるべきだという税制調査会の答申を受け、国税、地方税を通ずる問題として今回この延長をお願いしようということでございます。
  141. 田島衞

    ○田島委員 さて本筋へ戻りまして、今度の法改正の提案理由の説明の中に、先ほども申し上げましたとおり「現下の厳しい地方財政事情と地方税負担の現状にかんがみ、その負担の適正化及び地方税源の充実を図るため、」こうあるわけです。これを土台にして、この提案理由というのは、本当にそのままなるほどごもっともと受け入れられるような理由なのかどうかということをもう一回振り返って、一問一答してみたいと思うのです。  まず、厳しい財政事情とは、その要因は一体どこにあるか、このことについてはあらゆる機会に私は発言をしてきているわけですけれども、財政事情というのはいきなり厳しくならない。ちゃんとその経過があり、その要因があるわけです。いまや国、地方を問わず、例外なしに財政はまことに厳しい状況の中に置かれていることはだれもが認めなければなりませんけれども、ではその厳しい財政事情というものの要因はどこにあるのか。  大蔵大臣は、今度の予算委員会等で盛んに石油ショック云々と言っておりますけれども、それは要因の一つではあっても決定的要因ではない。なぜかというと、あの第一次石油ショックで税収がみごとに間違いなく落ち込んだのは昭和五十年度。確かに落ち込んだ。では、翌五十一年度ではどうかというと、早くも四十九年度分まで戻った。続いて五十二年、五十三年度は順調な伸びを示していることは、数字が明らかにこれを示している。だから、石油ショックは財政事情の悪化にそんなに決定的な要因になっていない。むしろその要因は、過去における高度経済成長の生んだものだと言ってもいいのじゃないか。  あの高度経済成長時代に、税収はまことにおもしろいように毎年順調な伸びを示した。その伸びを示した税収の中で本来行政が、あるいは政治が一生懸命対応しなければならなかったはずの仕事よりも、むしろその税収の伸びに甘えて組織、機構をいたずらに拡大させた。そして人間もどんどんふやした。ところがその後に、何事でも限界がある。高度経済成長もいつまでもは続かない。その上限に達し、それから下降線をたどって、今度は経済は反対にどんどん落ち込んでいったわけです。落ち込んでいったものに対応できなかったもの、それが行政の姿勢、また財政の対応だったのじゃないかと思いますけれども、そこらのところ、大臣いかがでしょうか。
  142. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 今回、現下における財政事情の悪化の要因の一つとして石油ショックの問題があること、これはお認めになったわけでございますが、私もそう思います。しかし、それがすべてであるかと申しますと、やはりすべてであるとも言い切れない面がある。この点は、昭和五十二年、五十三年とだんだんと税収回復したにもかかわらず、これをオーバーするような歳出増加要因が出てきておる。またこれに対しまして、将来の問題を十分に配慮いたさないでその増加要因に応じてきたという面もあると私は思います。その根源は、高度成長下における日本の行財政あり方にも遠因をなしておるものがあると思っております。  お話のとおりに、高度成長下において自然増収が大変出てまいりました。ある国などにおきましては、そういうものは将来のためにとっておいて、景気が沈下した場合の材料にするというような制度を設けているところもあるわけでございますが、そうした自然増収はそのままの形で歳出につながっていった、こういう面も確かにある。  そこで、高度成長下において機構、政策その他が相当肥満化したということ、その一つの流れが五十二年当時におきましてもなかったとは言い切れぬだろうと思いますが、そうした要因も重なりまして、起爆的な作用をなしたものが石油ショックであり、これが基本ではございますけれども、それだけの責任じゃないという点も御指摘のとおりだと思います。したがいまして、今後はこうした問題に取り組んで措置を講じていかなければならぬというふうになっておる、こういうふうに私は理解しております。
  143. 田島衞

    ○田島委員 大臣のお考えと、私がこうではなかろうかと思う考えと、そう違ってはいないようでありますが、ただ程度において多少違いがある。石油ショックは一つの引き金にはなったけれども、現在の国、地方を問わず苦しんでいる大変な財政事情の要因の大きなものではなくて、その要因の一番大きなものは行政の怠慢。税の伸びているときは一体その税の伸びにどう対応すべきか、税というのはいつまでもちゃんときげんよく伸びてくれるものなのかどうか。伸びなくなるときもある、そのときにはどうするか、そこらのところをちゃんと考えてやっておったらこんなことにはならぬはずだと思う。  では、これは行政だけの責任かというと、そうでもない。政治の責任、議決機関の責任も大変あるだろうと思うのです。そう言うと語弊があるかもわかりませんけれども、各政党、政治家がそれぞれ党利党略もあれば、自分自身の個人的ないろいろな期待もある。そういうものをどんどん強く押し出してくる。行政はこれをそう断り切れない。そこでその期待にこたえようとして、最初は楽にいった、だんだん無理をしながらやった、その無理がどんどんたまってきた。こういうことも言えるし、それからまたそのほかに、行政に働く公務員がまさに誇りを失ってしまった。できるだけ働かずに、できるだけよけいのものをもらうことの方がいいように考え出してしまったきらいがなきにしもあらず。全部とは言いません、何でも例外がある。いい方も悪い方も例外があるから、全部とは言いませんけれども、そういういろいろの事情がまさに相乗的に作用して、国の財政地方財政もどんどん窮地に追い込んでしまったと私は思うのですけれども、そのとおりだとは大臣言えないでしょうが、おおむねそんなことだとは言えますか、どうですか。
  144. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 おおむねそういうことでございまするし、またもっと根源的なことを申し上げれば、そうした政治家を選挙する人もやはりその点については考えてもらわにゃいかぬ面もあるだろう。こういうことになりますと、一部門だけの問題じゃなくして、国民全体の認識というものがこうした事態になっておる一つの遠因にはなっておるのじゃないか、要するに高度成長下における全体の一つの甘さというものが尾を引いておるというようなことじゃなかろうかと思っております。
  145. 田島衞

    ○田島委員 大臣おっしゃるとおり、確かに政治家の後に住民がいる。その住民が、税金を納めるのは余り感心しない、だけれども何かやってもらいたいことは大いにやってもらいたいという甘えというものがある。したがって、そういう住民の甘えというものも、原因の一つでもないということはないと私も思いますけれども、しかしそれをチェックするのが政治の、行政の機能だと思うのですよ。直接住民が要求してくるわけじゃありませんから、当然その間に立ってやはり政治が、行政がこれをチェックしなければいけない。そのチェックができなかったという点においては、住民の甘えの責任とはもう比べものにならぬぐらい行政と政治の責任というのは大きいのじゃないかと思うのですけれども、どうでしょうか。
  146. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 それが政治の責任でございまするし、政治のリーダーシップの問題だと思っております。
  147. 田島衞

    ○田島委員 次に、いまお互いにやや合意点に達していることは、国、地方を問わず、両面の財政問題について論じたわけですけれども、さらに今度は地方財政というものに限って考えてみますと、そういうような国、地方を問わぬ共通した財政悪化の要因に加うるに、まだ幾つかの要素があると思う。  その要素の一つは、まず国、地方の税源配分の不適正。たとえば税の徴収段階では、国の徴収するのが年度によって幾らか違うでしょうけれども六〇%前後、それから地方が徴収するのが約四〇%前後だと思いますけれども、反対にその徴収された税が実質的に行政に配分されて使われている額で見ると、今度は逆に国の方が二〇%、地方の方が八〇%。この実際の数字から考えればおのずから税源の配分というものを、どうせ地方に回すものなら地方に初めから税源として与えることによって、もっと税制度というものもスムーズにいくんじゃないか、それから経費の節減もできるのじゃないか、こういうことも一つある。  それから地方の抱える超過負担の問題、これも多少は改善されている面もあることは認めますけれども、いやしくも法律で国が負担することを義務づけられているものについて、それを地方団体にそのまましょわしたままでいいということはどう考えてもおかしい、法律違反でもあるし。しかし、そういうものが依然として現実にはある。こういうようなことなども加えて地方財政の苦しさに拍車をかけているわけだと思うのですが、この点ではいかがでしょうか。
  148. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 おっしゃるとおりに、税源から申しますと国が六割台、地方が四割弱、実際の支出というものになるとそれが逆転をしておる、こういう実態でございます。したがいまして、そのとおりに税の配分をしたらいいじゃないか、これも一つの御議論だと思いますが、ひとつ私ども考えなければならぬ問題は、そうした税の立て方にもよりますけれども、税源につきましては全国いろいろと差があるわけでございまして、この点はやはり国において調整機能を発揮しなければいかぬというような点から交付税制度というものができておるわけでございますから、これを無視するわけにもいかないだろうと思います。  しかし、結論的に申しますと、もう少し地方に対しまして税源を配分することが望ましい、これはもうそのとおりだと思います。それとあわせて交付税制度を併用していくということによって、日本全体の地方団体の行政活動が活発化できる、自律的に行動ができるようになる、その方向に向かって私どもは進まなくてはならぬ、こういうふうに考えておるところでございます。
  149. 田島衞

    ○田島委員 大臣から地方交付税法のお話も出ましたが、その地方交付税法そのものがいまやまさに存在の意義を九九%失いかけているといいますか、一%だけ特別のあれで残しておきますけれども、九九%なくなっているのじゃないかと言われてもやむを得ない状況、ここらでもうそろそろ国と地方との税源の配分だとか、地方交付税法の抜本的な再検討、やめてしまうか、残しておくのならやはり地方交付税法というものがあって、意義があるというような形に法の適用ができるような状況に大きな改善をするとか何かしなければいけないのじゃないか。いたずらに、地方財政も苦しいからひとつ七百五十六億円か何か生み出そうなんという法案出したぐらいでは、やはり地方財政は救われていかないのじゃないか、そういうふうに思うわけです。  それと、続いてもう少し突っ込んで申し上げますが、特別にどこの団体どうということは言いませんけれども、たとえば地方財政、まことに厳しい状況の中にあることは私はもうよくわかっているのですけれども、一方地方団体に対しても、もっと内部努力をしなければだめじゃないかと小言を言いたい面もたくさんあるわけだ。  端的な例がたとえば税務職員、これも全部とは言いませんよ。どこかの団体から私は例を引っ張ってきているのですけれども、税務職員は労使の協約で一切超過勤務はやらないと決まっておる。ところが、みごとに超過勤務手当をもらっている。そういうのがちゃんと現存するんですよ。それから特別勤務手当、特勤手当というのがある。その特勤手当を税務関係の一番最高幹部から下の方まで全部もらう。なぜだ。税金取るということは大変納税者にいやがられる、いわゆる嫌悪を伴う仕事だから特殊勤務手当だ、こう言うのだ。  これは一、二の例を挙げただけですよ。そういう実態がいまだに温存されているような行政体質のままで、地方財政まことに苦しい、住民の皆さんよ、ひとついままで対象にならなかった方も事業税の対象になってください、あるいは駐車場だとか不動産業だとかという人たちもこういうふうに協力してください、せっかくやっと蓄えたお金で買った家に不動産取得税をかけちゃ申しわけないけれども、それも協力してくださいなんと言って、この零細なお金を集めての七百五十六億ですか、そんな法案を出せた義理かなと私なんかは正直だから思うのですけれども、大臣どうですか。
  150. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 もちろん地方団体自体が自粛し、そして納税者に対しましても胸を張って、おれたちはこれだけのことをあなた方からちょうだいした税金でやっておるんだということを言い得るような、そうした自信を持つ行政をやっていかなくちゃならぬ、これは当然だと思います。  この点について、いろいろ各種団体、多くの団体がございまするので、いまお話のありましたような批判の対象になるようなこともありまするし、また、時折新聞記事等にそうした点が記載される事例だってないわけではないわけでございます。これは自治省といたしましても、各地方団体に対しましては、もちろんこれは首長の責任であり、その地域団体の議会の責任でもありますけれども、この点についての重要性というものをよくお話をいたしまして、そうしたことがないように努めていかなくちゃならぬ、これは当然のことだと考えております。
  151. 田島衞

    ○田島委員 この質問をするに当たって、冒頭私が申し上げたいろいろの点の理由は実はそこにあるわけで、住民に負担をかけることについては簡単に法の改正案を出してくる。だけれども、住民にそのような負担を求めるばかりじゃございません、それ以上に重大な決意を持って内部努力といいますか、歳出の削減、税金のむだ遣い、間違った使い方に対する徹底的な改善はこのように作業を進めておりますとか、このような段階までもうすでにやってますとか、そこまでいってその上で住民の皆さんにも少し協力をしていただきたいと言うならこれはわかるけれども、行政自体の中にあるところのいろいろのそんなばかなというようなことは悠々とそのまままかり通っていて、それでいて実際から言ったら確かに多少の甘えはあったでしょうけれども、現下の財政事情に対する責任というものは直接的には何もないはずの住民にだけ負担がしわ寄せされるということは、どう考えても正義じゃないと思うのですけれども、違いますかな。大臣ばかりに余り聞いては気の毒だから、政府委員の方から……。
  152. 石原信雄

    ○石原政府委員 私も税を担当する者といたしまして、増税を含んだ法案内容を各方面に説明に参りますと、先ほど来先生がるる御指摘になっておりますように、地方公共団体が現在住民増税をお願いするに胸を張ってお願いできるような実態があるのかというようなおしかりをしばしば受けます。私、税の担当でありますから、行政の合理化、効率化については直接私どもの方からどうということでなり得ないのでありますが、行政局長、財政局長、その他に対しまして常に苦衷を訴え、また協力をお願いしているのが最近の日々でございます。税務行政を担当する立場からも、やはり本当に住民が納得して税負担に応じていただける、そういう行政にしなければならない、このように痛感いたしております。
  153. 田島衞

    ○田島委員 行政だ、あるいは議決機関だ、職員だ、そういうものの区別なく、やはり一軒の家でもそうなので、財政が苦しい、家計が苦しいといったら、みんなが真剣になって自分の身を削る思いで努力をする、その努力をするには、おのずから一番努力をしなければならぬ順序というものがあるはずだと思うのです。一般住民、国民を子供扱いにしては怒られちゃうかもしれませんけれども、そういう意味じゃなくて、一軒の家で言えば、その責任度からすれば国民、住民の人たちは子供、政治や行政、そういうものを預かる者というのは言うならば、おやじとおふくろみたいなものだと思うのですよ。おやじとおふくろの方が悠々とたるんじゃっていて、子供よ、しっかりやれと言ったって、これは無理な話。当然大人たち、親たちが真剣になって身を削る思いで努力をして、その上で子供たちにも小遣いここのところは大してやれないけれどもがまんしてくれよと言うならわかるけれども、子供たちの方は小遣いばんばか削っちゃって、(「この委員会もたるんでやせぬか」と呼ぶ者あり)この委員会ばかりではないでしょうから、がまんしてください。それではちょっと筋道が違うんじゃないか。大変しつこいようですけれども、これはやはりいまの国、地方を問わぬ財政事情の中では、お互いに真剣に考え直さなければいかぬ時期だと思うのです。  今度の国の予算だってそうだと思います。増税しなくたって本当はできるはずです。それどころか減税だって、野党側の要求の四千億や五千億の減税なんか、そんなものは朝飯前にやってあげますよということは本当はできる内容を持っているはずだけれども、それができない。できないのはなぜだと言えば、おやじとおふくろは自分たちは余り苦労したくない、子供らだけ苦労しろという考え方がそうなってしまう。こういう点について、ひとつ大臣にもせっかく御努力を賜りたいと思います。やはり大臣が号令をかけて、そしてやればそれなりの成果が上がってくると思います。  第二臨調も間もなく動き出すことでしょうけれども、幾ら第二臨調がりっぱな答申案を出したって、それを実行しなければ何にもならない。現に第一次臨時行政調査会の答申があったにもかかわらず、それがほとんど実行されなかった。第二臨調だって同じような経過をたどったら何にもならぬことになってしまう。要は、どだい民間の人でつくった調査会の答申を待って、じゃあ実行いたしましょうなんという行政体そのものがだらしがなさ過ぎると思うのです、政治も。そんなよそからの御注意や勧告は受けません、われわれ自身でちゃんと直すところは直しますくらいのことでなければ本当はうそだと私は思うのですけれども、最後大臣の御決意のほどを承って、私の質問を終わりたいと思います。
  154. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 大変勇敢な御意見を承りまして敬服いたしました。御趣旨のほどをも体しまして、これから努力をしてまいるつもりでございます。
  155. 田島衞

    ○田島委員 終わります。
  156. 左藤恵

    左藤委員長 松本幸男君。(細谷委員「松本君、過半数になるまでやるな」と呼び、その他発言する者あり)  この際、暫時休憩いたします。     午後二時五分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  157. 左藤恵

    左藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松本幸男君。
  158. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 俗に、相手かわって主かわらずということが言われますけれども、きょうはたまたま主がかわったようですが、繰り返して同じようなことをお尋ねするので恐縮でありますけれども、少し角度を変えまして、なるべく重複しないように御質問したいと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。  まず第一番にお尋ねいたしますのは、昭和五十六年度における国民の租税負担は、国税分で自然大増税と新規の大増税分を合わせまして三十二兆二千八百四十億円、前年対比二二・二%増、こういうことであります。地方税の分で十七兆八百七十六億円、前年対比一三・四%増、これを合わせまして国民の租税負担は五十六年度四十九兆三千七百十六億円です。この約五十兆円に及ぶ巨額な国民の租税負担は、納入するときには、国税が三十二兆二千八百四十億円でありますから六五%、地方税の方では十七兆八百七十六億円で三五%程度になるわけであります。  ところがこれが歳出の段になりますと、国の予算総額は御承知のように四十六兆七千八百八十一億円から、交付税あるいは譲与税、国庫支出金等合わせて約二十兆円が地方に回りまして、さらにここから国債費六兆六千五百億円が差し引かれますと、国の使う金は約二十兆円程度であります。これに対しまして地方歳出は、この国からの交付税や国庫支出金約二十兆円に地方税収入の十七兆八百七十六億円と、さらに地方債や雑収入約七兆六千億円を加えますと四十四兆五千億円、こういうことになりまして、これからいわゆる地方債の償還費である公債費の三兆七千億円を引いた約四十兆八千億円が地方歳出予算であります。したがいまして、租税収入では地方は三五%程度であるのに、歳出になりますと逆に地方が六五%を支出する、こういうことになるわけであります。  こういう実態を見てまいりますと、先日も指摘がございましたけれども、税金の方は中央集権的に国が吸い上げて使うのは地方である、こういった今日の財政の仕組みというものは、国と地方財政秩序あるいはいま大きな課題となっておりますところの国、地方を通ずる行財政の改革、こういう観点からいたしましても、抜本的な検討が加えられるべきだと考えるわけでございますが、ひとつ御所見を伺いたいと存じます。  たまたま、いま発足をいたしました第二臨調の会長になりました土光さんが、会長になる以前から勇み足といいましょうか老いの一徹とでもいいましょうか、何か大分元気のいい発言がございまして、多少物議も醸したようでありますけれども、こういう実態の中で補助金というものが、この財政再建、改革の大きな眼目といいますか目玉になっている、標的になっている、こういう状況のように思われるわけであります。  そういたしますと、いま申し上げたように歳入の面では国が吸い上げるけれども、使う面では国庫支出金といった補助金のような形で地方に回して地方が仕事をする。こういう今日の財政的な仕組みからいたしますと、補助金が標的になりますと、地方に与える影響というものはかなり深刻なものがあるのではないか。何か第二臨調では、大変意欲的に精力的にかなり抜本的な改革案をやろうと考えているようでございますから、この国庫支出金という十兆円余りに及ぶ国からの財政支出というものが、いわゆる補助金というような形で出ておりますだけに、補助金が改革の大きな眼目になっておりますと、何となく弱い官である地方へのしわ寄せというものが懸念をされるわけでありますけれども、こういった点につきましてもあわせてひとつお考えを伺いたい、こういうことでございます。
  159. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 財政全般の問題でございますから、私から便宜お答えをさせていただきます。  お示しのございましたように、税そのものについて見ますと国が二で地方が一という形になっております。支出をする際は、国庫補助金とか地方交付税等が地方に回ってまいりますから、結果的には地方が七の行政を行っておる、国は三、こういう形になっておるわけでございます。したがいまして、現在の事務配分とそれに対応する財源配分ということはいま申したような形になっておるわけでございますが、それがいいのか悪いのかということについては、地方の自主、自律性を強化するという意味で、抜本的に改善すべきであるという意見が従来からございます。そういったことを検討していくべきだと思っております。  ただもう一つ言えますことは、本来なら地方が行政活動をします分は税ですべて賄い得れば結構なのでございますが、御承知のように大変税源の偏在がございますために、特定な税目を与えてみても、それが地方団体によってきわめてへんぱになってしまうということになりますと標準的な行政ができない。そこで、国税三税の三二%というものを交付税で留保して、いわばこれを共通の地方の財源だというかっこうで配分をして、そして財源調整をし必要な財源を確保する、両方の機能を果たさしておるわけでございますから、税だけでは必ずしもうまくいかない面もあるということは御了承願いたいと思うのでございます。  しかしながら、いまのような行政事務配分と財源の配分の形がいいのかとなりますと、私はもう少し地方の自主、自律性を高める意味で、地方が本来やるべきものには地方に権限を与え、それに対応する財源を与えていくという意味で抜本的に見直すべきだと思っております。その意味において、いまお示しの補助金の問題も全般的には見直すべきことだと思っておりますし、零細な補助とか効果のない補助とかそういったものは整理をしてしまう、それはそれでいいのでありますが、どうしてもやはり必要なものもございます。そういったものはできれば一般財源化するということも必要であろうかと思っておりますし、そういう観点から見直していくべきだと思っております。  ただ、全部が全部第二交付税的なかっこうで持っていけるかとなりますと、やはり政策的に行政の一定水準を確保するという見地から行われておる補助もございますから、にわかに全部そういう改革はできないとは思っておりますが、できるだけ私どもとしては地方の事務として同化、定着したようなものは、地方の財源として一般財源化すべきだと思っております。  そういう見地から考えました場合に、ただ、いまあるものを一律に全部削減をするといったような方針が、そうなるかどうかわかりませんが、仮にとられるということになりますと、必要な事務をただ切りさえすればいいということになりますと、それはどうしても地方団体の持ち込みということになってくるわけでございますから、いまの税源配分、財源配分では不足するということに相なりますし、全般の行政の運営上非常に困ってくる。当然打ち切ってしまって、そしてまたその事務ももう見直して、やらなくていいんだという意味の整理ができればいいのでありますが、そうでない、たとえば生活保護とかそういった社会福祉部門の措置費とかなんとか、どうしてもやる必要なものをただ一律に削除となりますと、地方団体の持ち込みになります。そういった点で、私どもは十分その行政効果、行政の現実というものを見て判断していただきたいということを心から望んでおるところでございます。  そういうことを含みながら、いまおっしゃいましたように全体として国と地方の本当の事務の分担のあり方を考え、それに対応した税財源の配分というものを考えていくべきだというふうに考えておるわけでございます。
  160. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 お話はわかりますけれども、いわゆる補助金という名の地方財政対策ということであるからこそ、いわゆる臨調が改革しようとする標的にもなるわけでありまして、確かに行政目的をすでに達したものであるとか、あるいは零細な補助金であるとか真に必要でないものとかいろんなもの、そういう補助金についてこれを切っていくということは当然なことでありますけれども、さっきも申し上げたようにいろんな形で国庫からの支出が十兆円も行われておる、こういうことになりますと、当然いまのお話のように、地方に固有の財源として付与してしまうと非常に地方経済的な格差、いろんな関係から均てんした形の歳入が確保できない、こういうこともあろうかと思いますけれども、極力これは地方の固有財源として付与していくという方向で、やはり地方制度調査会あるいはまた第二臨調等においても考えてもらうべきだ、こう思うわけでありますが、そういう点につきまして次官、ひとつお考えを伺いたいと思います。
  161. 北川石松

    ○北川政府委員 ただいま松本委員の御質問のございました地方財政の御心配の点につきましては、先ほど財政局長がお答え申し上げましたが、第二臨調が発足いたしまして、地方のいろいろ新しいやらなければならぬことがたくさんありながら財源に不足を来すようではこれは大変だと思います。特に、御指摘のように二対一の割合で歳入歳出がアンバランスしてくるようでは、地方は苦しいじゃないかという松本委員の御指摘もごもっともでございますので、今後は税制調査会また地方制度調査会等のいろいろの御意見もございますが、第二臨調発足に当たりましても、地方団体の業務に差し支えないように財源措置は講じなければならぬと私は考えております。自治省といたしましてもその点については特に留意いたしまして、今後よく研究してまいりたい、このように思っております。
  162. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 ぜひ地方財政基盤の確立のために、ひとつせっかく御努力をいただきたいと思います。  次に、それぞれの税目ごとに何点かお尋ねをしたいと思いますが、最初に個人住民税につきましてお伺いをしたいと思います。  すでにこのことにつきましても多くの方から御質問のあったところでございますけれども、今回の個人住民税の改正につきましては、いわゆる課税最低限の引き上げは行われずに非課税限度額の引き上げを行うということになっております。このように、課税最低限の引き上げを行わずに一部の低所得者のみを対象とした非課税限度額の引き上げを行うというような方法、これが本当に正しいやり方であるのかどうか、変則的なやり方ではないかというように思われるわけでありますけれども、この方法は十分根拠のある合理的なものだ、このようにお考えになっておられるかどうか、お伺いします。
  163. 石原信雄

    ○石原政府委員 五十六年度の税制改正に当たりまして、住民税の課税最低限をどうするかということは、税制調査会でも大変議論があったところでございます。  従来、昨年度の場合も一昨年度の場合も、所得控除を一万円あるいは二万円それぞれ引き上げて今日に至っております。五十六年度の場合、従来のような方式でこれの引き上げを行おうといたしますとかなり巨額の減収を生ずる、その減収を別途補てんし得るような税制改正が、当面なかなか知恵がないというようなことで、課税最低限の引き上げは困難ではないかという考え方が支配的になったわけであります。  しかしながら一方におきまして、課税最低限を据え置きますと、生活保護基準との関係でいわゆる逆転現象が起こりかねない、こういった問題もあり、生活保護基準相当額の所得に対して住民税の所得割がかかっていくということは、これは税制としていかがなものか、これは何らかの措置が必要である、こういった意見も大変強かったわけであります。  その結果といたしまして、初めての試みでありますが、一定の所得以下の住民に対して住民税所得割を課さないという、いわゆる非課税限度方式を採用することにいたしたわけであります。  このような方式が、所得課税である住民税にとって望ましいものであるのかどうか、これについても大変御議論がありました。しかしながら、五十六年度の地方財政環境の中で、低所得者層に対する配慮だけは何としてもしなければならないというようなことでこの方式を採用したわけでありますが、先ほど申し上げましたように、私ども、制度として定着したものと考えておりません。五十六年度、この方法を採用したわけでありますけれども、今後こういった方式を引き続き行うのがいいのか、あるいは別途の方法でこの問題に対処すべきなのか、さらに研究していかなければならない、このように思っております。
  164. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 お話のように、今回の非課税限度額引き上げ措置というのは、現行の個人住民税の課税最低限が百五十八万四千円である、ところが、一級地の生活保護費の標準世帯の支給額が百六十二万三千円になってしまって、いわゆる生活保護費の支給基準よりも課税最低限の方が低くなってしまうというような矛盾があるので、やむなくこの非課税限度額を設けて生活保護費のそれよりも高くした、こういうことだと思います。  そういたしますと、個人住民税の課税最低限は依然として百五十八万四千円であり、新たに設けられる非課税限度額が百七十五万七千円だったですか、そういう差が生ずるわけだと思いますけれども、非課税限度額と課税最低限とのそこに差が生じているということについては、全く矛盾がないと考えられるのか。
  165. 石原信雄

    ○石原政府委員 いわゆる課税最低限の方は、これは所得控除を通じましてすべての住民に対して適用されるわけであります。そうしてその結果、税額計算がなされるわけでありますが、年間の所得が世帯員一人当たり二十七万円以下の世帯については課税しないという方法がとられるために、言うなれば百七十五万七千円と百五十八万四千円のそのギャップの部分の世帯の人については住民税はかからないということでございますから、矛盾はないと思います。  ただ、先ほど御指摘があったところでありますが、このままでいきますと、たとえば百七十五万七千円を千円でも上回りますと、根っこから住民税がかかって、結果としてその逆転現象が起こるということについては、これまた税制上いろいろ議論が起こり得るところでありますので、それについては、今回御提案申し上げております改正法案の中で必要な調整措置を講ずる、すなわち、いかなる所得階層をとりましても逆転現象が起こらないように必要な調整措置を講ずるというふうにいたしたところでございます。
  166. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 非課税限度額を引き上げたことによって、本年は余り課税最低限と非課税限度額との差がないわけでありますが、さっきもお話しのように、五十六年度限りということでまだ定着をしていないということでございますけれども、こういった非課税限度額のような措置を、率直に申し上げて、定着させてもらっては困ると私は思うわけであります。  御承知のように、生活保護費の支給基準につきましては、いわゆる物価にスライドをして毎年引き上げが行われていく、それに伴って非課税限度額も引き上げていかなければならない。他方、課税最低限はそのまま据え置くということになりますと、課税最低限と非課税限度額との乖離と現象というものがますます大きくなってくる、こういうことになろうと思いまして、これはきわめて不合理なものになっていくというように考えるわけであります。  そういう観点からいたしますと、私は率直に申し上げて、やはりこれは非課税限度額の引き上げといったような措置ではなくて、課税最低限を引き上げ措置、そしてなおかつ、低所得者層の税収というものは軽減されても、全体としては税収が確保できるような方法によって課税最低限の引き上げというものを考えるのが、合理的でもあり、きわめて妥当な措置ではないかというように考えるわけでありますが、将来にわたって課税最低限の引き上げというものは考えられない、これは大変な減収になるから、こういうようなお考えであるのかどうか、その辺をひとつお聞かせいただきたい。
  167. 石原信雄

    ○石原政府委員 課税最低限をどのように定めるかにつきましては、当然、各年度における税負担の状況あるいは納税義務者数、それから地方財政状況、こういったいろいろな要素を総合勘案して決めていかなければならないものであろうと思います。  したがいまして、五十七年度以降この課税最低限を引き上げないんだということではございません。五十七年度以降の物価水準の状況、国民の所得水準の状況等を勘案しながら、課税最低限の問題を考えていかなければならないと思います。  ただ、その場合には、税制調査会でも指摘されておりますように、わが国の課税最低限は国際比較ではかなり高い水準になっているという指摘もあります。それからまた、この課税最低限を引き上げるかどうかということを考えます場合には、当然同時に、税率をどうするのか、現在の税率構造というものをこのままでいいのかどうか、あるいは所得税、道府県民税、市町村民税それぞれの税率構造がいまのままでいいのかどうか、こういったこともあわせて検討されるべきものではないか、このように考えております。
  168. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 この後で申し上げますことと関連をいたしまして、課税最低限をそのままにしておくということは、これはどうしてもやはり低所得者層に対する課税の強化、こういったことになると思います。  私は、あえて建設的に申し上げているわけでありますけれども、税収全体は確保するという観点で、やはり課税最低限の引き上げというものを考えて、低所得者部分のことを、ごく一部の者を対象にしてではなくて、全体的に考えるべきだというように考えるわけでありますが、このことにつきまして生活保護費基準のようにスライド的な方法を用いるというようなことはできないのかどうか。
  169. 石原信雄

    ○石原政府委員 先ほど申し上げましたように、課税最低限のあり方、さらにはそのもとになっております各種の所得控除の金額をどのように定めるかということは、当然各年度の物価の状況あるいは国民の所得の状況、こういったものを勘案しながら、それと同時にまた納税義務者の数とか財政状況なども勘案しながら、これは決められるべきものであろうと思います。したがいまして、単純に課税最低限あるいは所得控除の金額を自動的な物価スライド方式にするのがいいのかどうか、これはまた大いに議論のあるところだと思います。私は、単純スライド方式についてはいかがなものか、やはりいろいろな要素を勘案して決定する従来のやり方がいいのではないか、このように思います。
  170. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 論争をしておりますと時間がなくなりますので、これはこの辺で打ち切ります。  次に、個人県民税のことについてお尋ねしたいと思いますが、この個人県民税の税率が現行のように決まったのはいつだったでしょうか。
  171. 石原信雄

    ○石原政府委員 現在の二%、四%の二段階税率になりましたのは、昭和三十七年の改正でございます。
  172. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 昭和三十七年に現行の百五十万円以下百分の二、百五十万円以上百分の四に決められた、こういうことでございますが、現行の税率が決められた当時、すなわち昭和三十七年のころの勤労者の年間平均所得というのは幾らくらいでありますか。
  173. 石原信雄

    ○石原政府委員 ただいま手元に持っておりますデータによりますと、事業所の規模ごとに若干差がございまして、たとえば事業所規模が五百人以上の勤労世帯の平均賃金で申しますと、三十七年当時は四十万七千五百八円という数字になっております。
  174. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 やはり当時の個人県民税の納税義務者の総数が何人であったか、そしてその当時百五十万円以下の納税人員と百五十万円以上の納税人員が何人であったか、それがまた昭和五十五年になってどういうように変化をしてきているかということについて、御説明をいただきたい。
  175. 石原信雄

    ○石原政府委員 三十七年当時の所得段階別の納税人員を申しますと、実はこの当時は現在と違いまして、住民税の課税方式が団体によって、いわゆる本文方式をとっている団体とただし書き方式をとっている団体と二つありました。そこで、それらを単純に合計することがいいのかどうか、これは問題があるわけでありますけれども、仮に単純合計してみますと、百五十万以下の納税義務者数が千三百六十四万六千人、それから百五十万超が十四万八千人、合計千三百七十九万四千人、こういう数字になっております。  なお参考までに、現在のように課税方式が統一されましたのが昭和四十年度からでございますが、この昭和四十年度の時点で百五十万以下の納税義務者数がどのくらいあったかといいますと二千百四十八万七千人、百五十万超が三十六万二千人、合計二千百八十四万九千人であります。これに対しまして最近の実績では、五十四年の課税状況調べによる数字が一番新しいのでありますが、五十四年度の課税状況によります実数を申しますと、百五十万以下の課税所得の納税義務者が二千九百七十六万五千人、それから百五十万超が八百七十六万九千人、合計三千八百五十三万四千人、こういう数字になっております。
  176. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 現在のように統一された課税方式に改まったときの昭和四十年の納税義務者の数が二千百八十四万九千人、このうち百五十万以下の納税人員は二千百四十八万人、百五十万以上が三十六万人、こういう御説明をいただいたわけでありますけれども、これを比率で見ますと、当時は百五十万以下の百分の二の税率で課税をされた者が全納税者の九八%近くになるわけであります。百五十万超の百分の四の税率の適用を受ける者はわずかに二%程度にすぎないわけであります。それが約十九年を経まして昭和五十五年度になりますと、いま御説明がありましたように、私の手元の調べでは納税人員が三千九百三十七万人、百五十万円以下の納税者が二千九百二十二万人、大体七四%、百五十万円以上の納税者が一千十五万人、二六%、こういうように増加をしているということであります。  先ほども申し上げましたように、現在御承知のように、生活保護費の一級地の標準世帯の基準支給額でさえ百六十二万三千円になっている。こういう現況を見てまいりますと、この税率が決められた当時勤労者の年間所得は四十万円程度、こういうことでございましたけれども、現在では年間所得が、私の調べたところによりますと大体二百八十万円以上になっているのではないかというように思われます。  勤労者の年間所得が三十万円あるいは四十万円であった当時、百五十万以下は百分の二、百五十万以上は百分の四と決めた。これには当然、その時点での合理的な根拠があったろうと思います。にもかかわらず、十九年間もそれがそのまま据え置かれてきた結果、当時としては、一般の勤労者の平均年間所得が三十万円、四十万円程度であった当時は、百五十万円という年間所得というのはかなり高額所得だったと思うのです。ところがいまは年間百五十万というのは、いまも説明したように生活保護法の基準ですら百六十二万円になっているのですから、これはもう高額所得どころではない、生活保護費すれすれの最低の生活費程度である、こういう現況になっていると思うわけであります。  しかも納税人員が、当時はわずかに二%であったものが二六%と十三倍にもはね上がってきている。こういう現況を見ますと、個人県民税のこの百五十万円以下と以上の金額の区分とこれに対する税率の区分というのは、今日ではきわめて不合理なものになってきているのではないかというように考えられるわけであります。ひとつ、その点につきましてのお考えを伺いたいと思います。
  177. 石原信雄

    ○石原政府委員 若干数字の点で補足させていただきますと、現在の道府県民税の税率適用区分となっております百五十万円というのは、これは課税標準額であります。税金をかける課税標準額の計算で百五十万円以下と超、この二つに分けているわけであります。  なお、この百五十万というのは、現在のいろいろな給与所得控除とかその他を入れました収入金ベースに置きかえてみますと、昭和四十年度当時の百五十万円は百八十九万七千三百十円という数字になりますが、五十四年度現在で収入金ベースに置きかえてみますと三百六十五万三千八百六十四円ということになっております。したがいまして、いわゆる課税最低限などとの対比では、これは百五十万円ではなくて、現在、五十四年度で三百六十五万円という数字になっておるということでございます。  それはそれといたしまして、昭和三十七年当時、二%、四%の二段階の税率で決定されましたが、その当時の考え方を当時の記録などで調べてみますと、国税と地方税の税源移譲、具体的には国税の所得税の一部を道府県民税として移譲するということの一環としてあの税率が決まったわけであります。その当時としては、基本的には当時の税率構造を前提として比例税率地方に移譲する、それで一部手直し的な意味で四%という段階を設けたということが書いてあります。当時は、全体としては、所得税、住民税を通じまして所得課税の減税を行う際に、所得税の一部を府県民税として移譲するという改正がなされたようでありまして、その当時の考え方としては、道府県は比例税率で移譲するのだ、最小限度の調整措置として四%の税率を設けたということが記録されております。そういった考え方で当時の改正が行われたようであります。  そこで、この道府県民税に比例税率で移譲した残りの分につきましては、所得税の税率の累進率を変更するという形で調整措置がとられまして、たとえば所得税の最高税率は、その際の改正で七五%という率が決まり、またその当時最低税率は八%という税率になっておるようであります。  その後、時がたちまして納税人員も大きく変わり、所得水準も変わりました。道府県民税だけをとらえてみますと、先ほど来先生が御指摘のように、百五十万円以下の納税人員が当時よりもかなり減りまして、百五十万円超の納税人員が非常にふえておる、そういう意味では見直す時期ではないか、これは一つの御意見だと思います。  ただ、この道府県民税の現在の税率が決められたときの経緯が所得税からの移譲であり、また所得税、市町村民税を通じまして税率構造が決められているという経緯からいたしまして、道府県民税の税率構造を見直すということであれば、当然同時に市町村民税や所得税も含めて税率構造を見直す必要があるのではないか、このように思います。事実、この点につきましては税制調査会でも、所得課税の見直しのときには一つの大きな検討課題であろうということが一つの認識として存在しております。
  178. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 御承知のように、同じ地方税である住民税——市町村民税と道府県民税で、市町村民税につきましてはかなり実情に合ったように、最低は三十万円の二%から最高は四千九百万円超の一四%まで十三段階に区分をして、いわゆる超過累進税率を適用しているわけですけれども、それに比べて、同じ地方税でありながら道府県民税のそれは余りにも課税方式が違い過ぎる、こういう感じがいたします。  ともかく同じ地方税でありますから、いま申し上げたように、市町村民税の方はそういうふうに段階的に金額も区分され税率も区分されて適用されておるわけですが、いま、市町村民税の方との関連もある、こういうお話でございますけれども、市町村民税の方は恐らくもうすでに昭和三十七年当時のものではなくて、その後数次にわたって改定が行われて、今日の状況にかなり適合するように、下は三十万円から上は四千九百万円まで、こういう大きな十三段階の区分にしてあるのだと思うのです。ところが、一方の道府県民税については三十七年に決められっ放しで、十九年間もそのまま据え置かれてきておる、放置されてきておる。そこには当然、市町村民税と道府県民税との間に不合理が生じてくる、こう考えるわけですけれども、これを早急に検討してもう少し、十三段階と言わないまでも若干金額区分をして、それに対応する税率も決めていく。これをしもやはり、都道府県民税としての税収総額には影響を与えない、税収総額は確保される、こういう観点で見直しをする必要があるのではないか、こう思いますけれども、その点についてお考えがありましたら伺います。
  179. 石原信雄

    ○石原政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、道府県民税だけを切り離して税率構造を見ますと、当時からそのままではおかしいじゃないかという御指摘、確かにそういう見方もできると思います。  ただ、所得に対する税は、全体としてどういう税率構造がいいのかという見地から決められておりますから、道府県民税について改定をするのであるならば、当然同時に市町村民税やあるいは何より所得税の税率構造をどうするのか、たとえば道府県民税について累進構造をいまより強化すれば、所得税、市町村民税をそのままにおきますと、所得課税そのものの累進構造がいまよりもきつくなる、激しくなるわけです。  ところが、税制調査会では、わが国の所得課税の累進構造は各国に例を見ないほど急激であるという意見が出されております。ですから、税調の空気としては、むしろもっと累進構造を緩和すべきだというような議論もあるわけであります。そうした中で道府県民税についての税率を多段階にするということであれば、それと同時に、所得税の方の税率の構造を見直さなければいけないという問題が当然出てくるのではないかと思います。  そういった意味で、私は道府県民税についての問題意識は十分持っておりますが、この改正を実行するに当たりましては、所得税、市町村民税を含めて所得課税全体の中で検討すべきものではないか、このように考えております。
  180. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 この累進構造といわれるものを強化するか、あるいはもっと緩めていくか、そのことの論よりも、やはり十九年も前に百五十万円以下と以上、こう決めたものと、市町村民税はそのときそのときにかなり対応して今日まで改正が行われてきたのに、道府県民税については、来年になれば二十年になりますけれども、二十年間もそのままになってきたということで、その累進構造を強化するあるいは緩和する、そういう論とは別に、非常にその間の不合理が生じておるのではないか。それは税構造全体を見直さなければならないとは思いますけれども、やはりこれは、繰り返して申し上げますけれども、いわゆる都道府県民税の税収総額については確保する、こういう観点に立ってもう少し合理的に考えてもらうべきではないかというように考えるわけですけれども、もう一回お答え願いたい。
  181. 石原信雄

    ○石原政府委員 所得課税に対する議論としては、いわゆるスウェーデン方式などといいまして、地方税はその地域社会の費用を広く負担していただくという性格の税なんだから税率はなるだけフラットの方が望ましいのだ、一方、所得税は所得再分配の機能を果たすべきものですから高度の累進構造を持つべきだという議論があります。そういった中で、住民税と所得税の税率を総合的にどう考えていくかということが今後の課題だと思うのであります。  繰り返し申すようでありますけれども、道府県民税だけを切り離して、それだけについていまの税率構造をもっと累進構造に改めるということについては若干問題があるんじゃないか、道府県民税について累進構造を強めるのであれば、同時に他の税目、所得税や市町村民税でそれの調整措置が必要なんじゃないか、そうした中でこの問題を考えていくべきじゃないか、私はこのように考えております。
  182. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 時間がありませんので、これもまた余り論争しているわけにはいきませんけれども、私は道府県民税の累進構造というものを強化をしろ、決してこう言っているわけではないのであります。道府県民税だけをまた単独で直すということについては、非常に問題があるような考え方でありますけれども、市町村民税はその都度その都度かなりの改正が加えられてきて、道府県民税だけがそのままであったということの方がかえって不合理じゃないか。市町村民税が改正をされる際には、同じ地方税ですからこれにもやはり相当の改定が行われてもよかったのではないか。どういうわけか知りませんけれども、百五十万円以下は百分の二であり、百五十万円以上は百分の四であるということについては、どう考えてもなかなかそこに今日段階では合理的な根拠が見出せないんじゃないかというように思いますので、これはお答えいただかなくて結構ですけれども、ひとつ十分考えて検討していただきたい、このように思います。  それから次に、不動産取得税につきましてお伺いいたします。  不動産取得税につきましては、一定の住宅あるいは住宅用土地の取得につきまして五年間は現行の税率を据え置く、こういう前提条件をつけまして一%の引き上げをやったわけでありますけれども、この税金も昭和二十九年に創設をされましてから、現行三%の税率がそのまま今日まで続いてきたわけであります。この三%の税率が、今日まで変更をされずに二十七年間ですか続いてきたというのには、それなりの理由があったと思います。  この三%の税率がそのまま据え置かれたということの一つの大きな理由は、税率そのものは三%にしておいても、課税の客体といいましょうか、課税の対象になるいわゆる不動産、土地、建物、こういったものの値段が着実に値上がりをしてきた。したがって、税率そのものは据え置いても税収はどんどん増加をしてきたということが、先日この委員会でいただきました参考計数資料の「地方税の税目別収入額及びその割合の推移」、こういう表にはっきりと示されております。  創設当初の昭和二十九年には、わずかに二十億九千六百万円でありましたこの不動産取得税昭和五十四年になりまして何と二千四百三十七億九千四百万円、実に百十六倍の伸びを示しているわけであります。これが都道府県の税収総額から見ますと、昭和二十九年、千四百六十七億三千百万円でありました税収総額は、昭和五十四年に六兆六千億七千五百万円になっておりますから大体四十五倍程度であります。税収総額は四十五倍であるのに、この不動産取得税については創設当初に比較をすると百十六倍もの増額になっておる。これを考えますと、地価の騰貴等によって、税率は三%に据え置いても着実に大変な増収になっている。着実に大変な増収というのは変な言い方ですけれども、大変な増収になっている、このように考えるわけであります。  このことを考えますと、不動産取得税税率を今回一%引き上げたということは、言うならば、一方で土地、建物の値段がどんどん上がって税収がふえてくる。これに加えてさらに一%税率引き上げるということになりますと、まさにこれは納税者にとっては往復びんたを食っているようなものであって、大変な増税になってくる、こう考えるわけでありますけれども、これを一%引き上げました考え方をひとつお伺いいたしたいと思います。
  183. 石原信雄

    ○石原政府委員 率直に申しまして、今回不動産取得税税率引き上げを行う理由は、地方自主税源の充実強化でございます。先ほど申し上げましたように、既存税制の中で税源強化の可能性のある税目について広く検討を行ったわけでありますが、最近において税率引き上げたとかあるいは評価の問題とかいろいろの事情がありまして、税率引き上げが可能なものとして不動産取得税が考えられた。  税制調査会等におきましても、この点はいろいろ議論があったわけでありますが、消費流通課税の強化ということは地方団体が強く希望しておるわけでありますけれども、そうした中で現時点で考え得るものとしては不動産取得税である、こういう結論に到達した次第でございます。
  184. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 地価の抑制ということは、大変重要な政治課題であるわけでありますけれども、この不動産取得税一%の引き上げによって、土地等の値上がりに対して心理的な値上がり効果というものが出てくるのではないかということを心配するわけでありますけれども、そういう点については心配ないというようにお考えであるかどうか。
  185. 石原信雄

    ○石原政府委員 今回の不動産取得税税率改定に当たりまして最も心配されましたのは、地価に及ぼす影響、特に住宅政策に及ぼす影響でありました。  そこで、今回の改正に当たりまして、住宅関係につきましては、建物もその敷地もともに税率を向こう五年間は従来のまま据え置くというような配慮を加えることによって、その影響を最小限度に食いとめようという考え方をしたところでございます。
  186. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 次に移ります。  固定資産税でございますけれども、この固定資産税につきましては、今回の改正では非課税措置の整理合理化等が行われたわけでありまして、税率の変更等は行われないわけでありますが、来年の一月一日が一般的な固定資産の評価がえの期日になっておるわけでありますけれども、この固定資産税評価がえにつきまして自治省としてはどういう方針で対処されようとしているのか、この点をお尋ねしたいと思います。  それから、時間がございませんのであわせてお伺いいたしますが、今回新たに国民健康保険組合あるいは健康保険組合等の行います収益事業に対しまして課税をする、こういうことになっております。これらの団体が経営しております課税対象となる施設は、大体全国でどのくらいあるのか、それから法人住民税事業税の税収の見込みというのはどのくらいになるのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  187. 川俣芳郎

    ○川俣政府委員 五十七年度の固定資産税評価がえに際しまして、現在どのような方針でこれに対処しようとしておるかというお話でございますが、御承知のように固定資産税評価につきましては、市町村は自治大臣が定めておりますところの固定資産評価基準によって土地、家屋、償却資産、それぞれ評価をいたしておるわけでございます。  土地について申し上げますと、地目別に各都道府県に指定市町村を定めまして、その指定市町村の基準地、これは主として最高路線価の土地でございますけれども、この土地につきまして価格をまず決めるわけでございますけれども、その価格は実は自治大臣調整をいたすということにしておりまして、その調整の仕組みを通じまして市町村間の均衡を図るということにいたしております。  現在すでに市町村では作業の準備を進めておるわけでございますが、具体的に申し上げますと、土地につきましての評価がえの基準日になりますのは五十五年七月一日でございます。したがいまして、前回の基準日でございます五十二年七月一日以降、三年間の地価の上昇の状況等を勘案いたしまして、評価の水準を適正なものに定めたいということで現在準備をいたしておるところでございます。  それから家屋につきましては、これは家屋に係りますところの評価基準に基づきまして市町村が評価をいたしますが、先日も申し上げましたように再建築費評点数を家屋の用途別に求めまして、そしてそれに一定の価格を掛けて再建築費価格、つまり固定資産税の課税の基礎になります価格を決定するという仕組みになっております。五十四年の評価がえの際に家屋の評価基準の改定を行いましたが、その後三年間建築費の上昇も見られますので、家屋の評価基準につきましても五十七年度の評価の際には基準を改定いたすことにいたしておりまして、現在その最終的な作業を行っておるところでございます。この改正されました評価基準に基づいて、市町村では家屋の評価がえをいたすということになろうかと思います。
  188. 石原信雄

    ○石原政府委員 今回の改正によりまして、課税対象になる施設が国民健康保険組合外四団体についてどのくらいあるかというお尋ねでございます。  調査したところによりますと、国民健康保険組合関係では、直営の施設として病院が一カ所、診療所が三カ所、保養所が二カ所ございます。それから国民健康保険の連合会関係で、直営の病院が四カ所、保養所が五カ所あります。それから健康保険組合は保養所でございますが、これが千九百六十九カ所、それから連合会関係で同じく保健会館が二百九十八カ所ございます。  これらの施設におきましてどの程度の課税が行われるか、法人事業税あるいは法人住民税を通じましてどのくらいの金額になるかということでございますが、全体を通じておおむね一億円弱、このように見込んでおります。
  189. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 最後に、これは今回の税法改正には直接かかわりのないことでございますけれども、特にお尋ねしておきたいわけでありますが、政府は一昨日、すっかり冷え込んでおります景気を何とか浮揚させなければいけない、こういうことで、その対策の一環といたしまして五十六年度上半期にいわゆる公共事業の契約率を七〇%以上にするのだ、こういう方針を決めたようでございますが、これに対しまする自治省の対応につきましてひとつお伺いしたいと思います。
  190. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 お話のございましたように、内需の伸び悩みの中で景気の維持拡大を図るために、政府といたしまして総合対策を決定いたしました。その一環として、公共事業執行の促進を図るということにいたしておるわけでございますが、現実問題としてこれを実行に移す場合、かなりな部分が地方団体ということになってまいるわけでございますから、地方団体事業の円滑な推進が図られなければ、所期の目的を達成できないということにも相なるわけでございます。  そこで、地方団体事業推進の円滑化に資するために、補助金の交付について事務の促進を図ってもらいたい、また手続の簡素化、合理化等も図るように関係各省に要請をしてまいりたいと思っております。自治省自体といたしましても、地方債の配分等の問題がございますので、それを促進をいたしまして、それに対応してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  191. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 いま御説明がありましたように、また大臣中座しておりましたけれども、私が冒頭にも申し上げましたように、いわゆる公共事業の大半というものは、実際上都道府県あるいは市町村等の地方団体が施行しているというのが現状でありますし、実際にもそういう仕組みになっているわけであります。また財政支出の面でも申し上げたとおり、国の方は税金を吸い上げるけれども仕事の方は地方だ、こういうような関係になっているわけでありまして、したがって、公共事業の早期契約といいましても、当然地方団体の理解と協力がなければ実行は期しがたい。さらに自治省としても、当然地方団体に対する適切な指導、特に財政対策について適切な措置がとられなければ、かけ声だけで実効は上がらないと思います。このことに対しまして、今後具体的な指導対策、特に財政対策につきまして十分配慮をしていただきたい、このように考えるわけであります。  かつて、第一次のオイルショックのときの不況に対して景気を浮揚する対策として、休憩前の大臣の答弁のように、不況によって法人税収が大変落ち込んでしまった、その歳入不足をカバーするということで大量の国債を発行した。そして歳入不足を補って、この大量国債の発行によって調達した資金でいわゆる大型公共事業に投資をして、波及効果によって景気の回復を図ろうと考えたのが、いわゆる第一次のオイルショック後の不況対策であったわけであります。  その後、法人税税収も順調に伸び、景気もやや好転をしてきた、そういうやさきに今度はまた第二次のオイルショックが襲ってきた、こういうことでございまして、今日やはり景気は低迷をしておるということでありますけれども、今回は第一次オイルショックのときの景気対策のように、大量の国債を発行して公共事業に投資をするというような手法はとれなくなってきている。むしろ、この大量の国債発行が今日では財政破綻、財政再建、こういうようなことになりまして、財政が非常に困難になってきている、当然これからは国債に依存することはできない、むしろ国債は減額をしていかなくちゃならない、こういう状況にあると思うわけであります。  こういった状況の中で、一方では国は財政再建のために極力歳出を抑制する、あるいは歳出を削減する、これが財政再建の主要な課題とされているわけであります。しかし、今回決められました景気対策のための上半期七〇%の契約率、これはただ文書だけのものではなくて、景気対策といえば当然お金が伴って出ていかなければ景気対策にならないわけであります。  そういう観点からいたしますと、一方では財政再建のために厳しく歳出を削減しなくちゃならないという要請があり、他方では景気対策のために上半期に七〇%の契約率を達成してお金をどんどん出して何とか景気を直そうということ、これはある意味では全く相反する逆な方向ではないかというように思われるわけでありますけれども、そういう点につきまして、大臣としてはどのように考えておられるのか。  時間もありませんから、あわせてもう一点お尋ねいたします。  これは、前回の第一次オイルショックのときの景気対策のときの経験でありますけれども、やはり政府が契約の早期発注ということをやったわけでありますが、契約を発注する側はお役所でありますから、これはハッパをかければ設計とかあるいは契約発注の準備というものはできるわけであります。  むしろ問題は受注側の体制、いわゆる受注側の業者の体制にあると思うわけであります。大体、一般的に年度の前半というのは、特に土木業者などは地方からのいわゆる出かせぎの労務者等がたくさんおりまして、もう四月、五月になりますと大挙してたんぼに植えるために帰ってしまう、こういうのが現状であります。  それと同時に、業者としては上半期に七〇%の契約をもらってしまって、あと下半期は三〇%で、歌の文句ではありませんけれども、あとの半年は寝て暮らすというわけにはいかないわけでありまして、できるならば年間を通じてコンスタントに仕事が欲しいというのが業者の考え方です。  そういう点をあわせて考えますと、それと同時に上半期に契約をどんと出しても、受け入れ側の業者の方はそれを消化し得る体制がない。特に労務者等は、ほとんど出かせぎの労務者が帰ってしまいますから、そういうことを考えますと、果たしてこの景気対策としての上半期契約七〇%というものは実行が期待できるのかどうか、大変懸念をするわけでありますけれども、その辺を含めまして、ひとつ大臣の御所見を伺いたいと思います。
  192. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 大臣のお話の前に、一言私から申し上げておきたいと存じます。  第一次のオイルショック以後とられました公共事業の総量の積極的な拡大というのは、まさに収支不均衡の中で景気をかき立てるという意味合いで、実は金がないにもかかわらず大幅な公債発行ということで行ったわけでございます。それが今日の財政の厳しさにもつながっておるわけでございますが、今回はそういうことで公共事業費はほとんど伸びがございません。したがいまして、財政主導型で景気をかき立てるというのはなかなか容易でない。しかしながら、何としてでも景気にある程度刺激を与えて維持拡大を図っていかなければならないということで、前半に傾斜的な執行を通じまして景気の拡大を図る、こういうことでございます。  そういった意味で、総量としてはなかなかふやせない、しかし何か手を打つとすればやはり前半に傾斜的に配分をすることによって景気を拡大をしていこうということになるわけでございますから、これはいまの財政の事情の中ではやむを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただその結果、前半に集中すれば後半いわば油が切れてしまうのではないかといったような御趣旨のことも伺いましたし、季節労働者のこと等も御指摘がございましたけれども、やはり全体的な中では、過去の例に照らしましても、ある程度傾斜配分をすることによって景気がかき立てられるということはあり得ると思っておるわけでございます。それにまた、後半になりますと、私も詳しいことは存じませんが、やはり雪国の状況その他いろいろ考えますと、なるべく前半に仕事は傾けた方がいいという面もあるわけでございます。  ただその結果、後半になって景気がどういうことになるのか、その際に全体的な景気対策をどうするかということは、あるいはまたその時点においていろいろと検討しなければならない事態が起こるかもしれませんが、現段階においては、ただいま申し上げたようなことで一つの景気対策としては適切な方法じゃなかろうか。それが円滑にいくように地方団体としても協力していかなければなりませんし、またそれが事務が円滑にいくように私どもとしても地方団体への協力をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  193. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 いま財政局長から申し上げたとおりでありますが、景気刺激策といたしまして打つべき手というものはだんだんと狭まってきておることは事実だと思うのです。そこで何といたしましても、政府で直接できますことは公共事業費を促進をするということ、これが最も有力な手段になる。ところが、公共事業費は昨年と大体同様でございますから伸びはございません。いまは、財政局長から申し上げましたとおりに、せめてこの際繰り上げて、そして景気刺激策に寄与しよう、それがきわめて重要な当面の課題だということで踏み切ってそういうことになったわけでございますが、さて、財政的な処理はできるといたしましても、いまお話のありましたとおり、業界の思惑というものもこれに絡んでまいります。それから労働力の確保の問題もございます。いろいろな観点から問題はございますけれども、当面特に中小企業等がまことに苦しい事情にございまするので、この公共事業の繰り上げ施行によりましてこの危機を脱却いたしたいという考えをもちまして今回の施策を実行することに相なったわけでございまするので、自治省といたしましては十分その意を体しましてその促進に当たるべきだと考えております。  そしてまた、夏以降になりまして一体景気がどうなるかという問題もあるわけでございますが、これはやはりそのときの事態に即しまして考えていかなくちゃならぬ、こういうふうに理解をしておるものでございます。
  194. 松本幸男

    ○松本(幸)委員 財政再建のための歳出の抑制あるいはまた歳出の削減、これもきわめて重要な政治課題でありますと同時に、他方、景気の浮揚というものも政治に課せられた大きな使命であるというように考えますので、せっかく大臣の御努力を期待いたしまして質問を終わります。
  195. 左藤恵

  196. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 御飯も食べないで大奮闘の大臣で、本当にお気の毒ですが、続けます。御飯が来たら、どうか休んで十分に腹を満たしてください。  大蔵省の試算によりますと、五十五年度の租税、印紙税収入の見積もりが二千六百億程度下回って歳入欠陥になるのではないか、こういうことを三月二日に発表しておるようです。その理由を書いているのを見ますと、税収鈍化の理由として、個人消費の停滞を背景に間接税が急速に落ち込んだ、それから所得税、法人税も冬のボーナスが低額支給になったので十二月決算が予想ほどよくなかった、こういうような理由で国の租税収入が減って、歳入欠陥になるのではないかという、大蔵省の大変な問題ですけれども、私どもから見ますと、野党の所得減税攻勢に対する牽制球じゃないか、こういうことも考えますが、一応これに関連して、地方財政の中ではどういうふうになっておるのか、この点をお伺いします。
  197. 石原信雄

    ○石原政府委員 先生御承知のように、地方税の場合は国税と異なりまして、基幹税目である住民税所得割が前年所得課税になっております。言うならば勝負はついておりますから、見込み違いが起こることは余りございません。それから、固定資産税も同様に、現在は評価据え置き時期でございますから、余り大きな変動はございません。  ことしの一月末現在の道府県税の調定実績等から推計いたしますと、自動車関係税について地方財政計画を若干下回る可能性がありますけれども、法人関係税あるいは個人住民税関係等では地方財政計画よりもかなり上回るのではないか、このように見ております。特に法人関係税については、国税の場合と地方税の場合では三月期の決算の扱いが違いまして、地方税の場合は五十五年度の税収は昨年の三月分がもう入ってしまっておりますから、これまた不確定要素が非常に少ないわけでございます。  いずれにいたしましても、地方税全体としては、一月末現在の数字で推計する限りは、強化課税等を除きまして、いわゆる地方財政計画ベースで見ましても、三千億円前後の増収は間違いなく出るのではないか。したがいまして、歳入欠陥に陥るようなことはまずない、このように見ております。
  198. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうすると、ことしは大丈夫だけれども、前年度課税だと来年はおかしくなる危険性があるわけですか。
  199. 石原信雄

    ○石原政府委員 五十六年度の税収見積もりを立てるに当たりましては、昨年末時点での所得の状況等をベースにして見込んでおりますが、これにつきましても、現時点で地方財政計画の収入を下回ることはまずないのではないか、もちろんこれからまだ先が長いわけでありますけれども、現時点ではその心配はないのではないか、私どもはこのように見ております。
  200. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 次の問題に移ります。電電公社の国庫納付金に関しましてお伺いいたしたいと思います。  電電公社は、五十六年度から五十九年度まで四年間、毎年千二百億ずつ国に納付する。それから専売も、あれを見ますと、ことしは大体七千億以上の納付を国に行うことになっておるようです。これに関連して、三公社は、三十一年制定国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律によって固定資産税の支払いが免除されているかわりに、その固定資産税額の二分の一を納付することになっている。半分はまけていることになっているわけです。  五十五年度を例にとりますと、電電公社が四百八十七億、専売が二十三億、国鉄が二百四十億、合わせまして七百五十億納まっているのですが、本来ならば大体これの倍ぐらいになるはずであります。全国市長会は、御承知のようにこの前に会議をいたしまして、こういうようなことはおかしいじゃないか、このような高い収益を上げているのに市町村に二分の一しか納めないというのは、自治体の減収分を国がかっぱらってしまうことになる、こう言って強く反発しておるわけです。  ちなみに、ことしの電電公社が納める千二百億、これを四年間でやりますから四千八百億ですね。この四千八百億円の計算の基礎なんですが、こういうふうになっているのです。五十五年度末の総資本、それに対して五十五年度末の自己資本の比率三八・六八一%から、四十年から五十四年に至るところの平均自己資本比率三三・三四三%、これを差し引いた額を掛けたのが四千八百九十八億円になる。いわば固定資産ですね。  こういうものに対して、剰余金を、もうけ過ぎているからこれを納めろといって納めているのです。これは明らかにもうかっておるわけですが、もうかって国に納めるぐらいだったら、これをまける必要がないじゃないかというのが全国市長会の主張であると思います。自治省もこれに対して、是正しなければいけないといって検討を始めたということを聞いていますが、その後どういうふうになっているのか、お伺いしたい。
  201. 石原信雄

    ○石原政府委員 三公社の納付金につきましては、いずれも制度創設当時の経緯を見ますと、三公社の持つ公共性というものに着目いたしまして、固定資産価格の二分の一を納付金算定標準額として採用するという、いわば特例的な扱いがなされております。また、事実この制度ができました昭和三十一年のころを見ますと、国鉄は別といたしまして、電電公社などもかなり赤字があったようでございます。しかし、その後いろいろな曲折を経て、最近になりまして電電公社がかなり剰余金を出していることは事実であります。そうした中で、五十六年度から電電公社がその剰余金の一部を国庫に納付するという話が出てまいったわけであります。  この点につきまして、地方六団体からも大変不満の意見が出てまいりました。私どもも、三公社につきましては、公共性を理由として算定標準額を固定資産価格の二分の一というふうにしておるわけでありますから、国庫に剰余金を納付するような状況であるならば、当然これは本来の価格そのままを算定標準額にしてしかるべきじゃないかという考え方を持っております。  この点につきましては、御案内のように、地方制度調査会の答申におきましても、やはりこの二分の一の特例については見直すべきじゃないかというような御答申もいただいております。  そこで私どもは、五十六年度の税制改正といいましょうか、予算編成といいましょうか、こういった過程で、こういった声を背景に問題があるじゃないかという議論を政府部内ではしたわけでありますが、ただ、最終的には三公社、特に電電公社の納付金につきましては四年間の特例として納付金を納付させる、恒久制度とするわけではないというようなことで、一方、三公社の算定標準額の特例は三公社の持つ公共性というものに着目して設けられた趣旨からいたしまして、この臨時的な措置があったからといって、直ちに恒久的にこの算定標準額の算定方式を変えることはいかがなものかという反対意見もあり、結論を得るに至らなかったわけであります。  私どもといたしましては、この三公社の納付金制度というものが今後制度としてどういう形になっていくのか、こういったものを見きわめながら、もしこれが恒久的な制度になるのであれば、当然いまの納付金算定標準額の二分の一特例というものは見直されてしかるべきじゃないかという考え方を持っております。
  202. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 恒久的なものになればもちろんですが、もしこれが臨時的なものであるとすれば、この法律の第四条、三公社の納付金については原則として固定資産税相当額とする、こういう内容にしておいて、そして減額等の臨時の必要措置をとっていく、こういうふうにするのが一番正しい形じゃないかと思うのですが、どうですか。
  203. 石原信雄

    ○石原政府委員 ただいま申し上げましたように、四年後をどうするのかということがまだ決まってないものですから、納付金制度そのものの算定標準額の特例の扱いを恒久的にどうするかという結論が出しにくいというのが現状でございます。したがいまして、恒久的な扱いが決まれば、当然納付金法の方も本則をどうするかということが検討課題にならなければならない、このように思います。
  204. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 国が赤字だからといって剰余金を全部国へ納めて、地方は赤字でないかというと地方だってやはり一兆何千億という大赤字を抱えておるのですよ。それなのにこういうものがまかり通っているということは、地方と中央は車の両輪なんて言っているけれども、一方は木の輪で片っ方は金輪でびっこの車だとしか思われない、地方軽視だと私は思うのですよ。こういうものは早急に直した方がいいのではないか。そして、臨時的な措置をとるならば臨時措置法みたいなものをつくってやればいい、こう思いますけれども、大臣いかがですか。
  205. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 臨時的措置と言いながら、割り切れぬものは私もあると思っております。そしてまた三公社の性格から申しましても、公共的性格だと言いますけれども、私は、実態は必ずしもそういうものでもなかろうじゃないかという気もいたします。したがいまして、今回は今回といたしまして、別途検討させていただきたいと思います。
  206. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 わかりました。  それから、いよいよ老人医療の問題が厚生省から審議会に提出されて、いま審議をしておるわけですが、この問題についてお伺いします。  国保については、老人保健を切り離してやるということが年来の大懸案であります。そこで、新聞等を見ただけではよくわかりませんが、老人医療が、いま厚生省が出しているような原案になっていけば、一体国保の会計はどういうふうになるのか、この点をもう少し詳しく教えていただきたい。
  207. 古川貞二郎

    ○古川説明員 お答えいたします。  現在、厚生省が考えております、あるいは厚生省が法案要綱を制度審議会なり社会保険審議会に諮問いたしております内容は、予防給付、予防のヘルスの事業を拡大していく、それから医療負担の不均衡を是正しよう、こういうねらいでございます。率直に申し上げますと、費用負担の不均衡、つまり国保に対しまして被用者保険等からの負担のしわ寄せがある、年をとりまして医療費が非常にかかる、所得能力がなくなるときに国保に入ってくるというふうな構造的な問題を是正していこう、老人の加入割合が非常に違う、そういうことでございます。  それによりますと、厚生省では試案のIと試案のIIというものを出しているわけでございますが、五十六年度におきまして現行制度でいったとしたならば、国保の保険料としては四千百六十億の負担をいたしておる、こういう状況でございまして、これが試算のIということになりますと三千百億というふうに、千六十億程度国保の財源は軽減される、こういう考え方でございます。それからいま一つは、審議会に試算のIIとして出してございますものによりますと、千八百億程度の国保の減になるということでございます。  この試算のI、試算のIIの基本的な考え方は、まず老人医療費の全体の三割を国と地方公共団体で、公費でストレートに持ちます。その残った七割について、いわゆる国保とか健保組合とか政管健保とかそういった保険者が負担をいたします、その保険者の負担に対して国保なり政管については国庫補助を出します、そういうふうな考え方でございます。  その七割の給付について、その半分をそれぞれの保険者の医療費の実績で見ます、残った半分を加入者の案分——老人の加入割合が違いますので、それを是正して案分いたします、こういうふうな考え方に基づきまして、医療費実績と加入者案分を二分の一、二分の一とした場合には、相前後いたしますけれども、先ほど申し上げた試算のIの考え方になります。  それから試算のIIは、先ほど申し上げた保険者の医療費実績と加入者案分の中で医療費実績をゼロといたしまして七割についてすべて調整をいたしますというふうにいたしますと、国保はどうしても老人の加入割合が多うございますので、国保の負担は軽くなりまして、健保組合等の負担が重くなる、こういうことで先ほど申し上げた国保の軽減分は千八百億になります、こういうことでございます。  以上でございます。
  208. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これは自治省の方だと思いますが、そうすると、もしこれが通りますと、Iのケースでは千六十億ぐらい、IIのケースでは千八百億ぐらい国保の財政がかなり軽減されるわけですけれども、国保税の方はこれによって上げなくてもいいとかあるいは減税するとか、何かそういうような現象が出てきますか。
  209. 石原信雄

    ○石原政府委員 その試案による保険者としての国保会計の負担分がどういう形になるのか計算してみないとわかりませんが、いまの話を承る限りにおいては国保会計の負担がかなり減るようでありますから、現在はその分を国保税として被保険者に割り振っているわけですから、軽減されることになるのではないか、このように理解しております。
  210. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 国保という問題は国会でも余り取り上げられないのですよ。やっているのが、一番末端の力のない市町村がやっているものだから、なかなか中央へ声が届かない。しかし、われわれがあっちこっちを回って歩きますと、一番問題にしているのが国保の問題なんです。財政上からいろいろな問題で大変頭を痛めている。それで年来の念願がようやく出てきて、老人健保を切り離そうというのです。  私は、これは非常に重大な問題だと思うのですよ。それなのに、まだ厚生省が何をやっているかさっぱりわからぬとは、いま話を聞いたらこうじゃないかなんて、そんないいかげんな答弁ではだめですよ。向こうでそういう案を出したら、恐らくどこかで計算していると思うのですよ。こういうふうになればこっちの国保の方のあれはどうなるのか、国保税はどういうふうになるのか、国保財政がどういうふうに変わっていくのか、きちっと計算していると思うのですよ。あんな頭を痛めてみんな一生懸命になって、ようやく念願がかなって切り離そうとしているとき、いま聞いただけではわかりません、そんな答弁では困りますよ。わかっていたらもう一遍答弁してください。
  211. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 国民健康保険は、他の被用者保険に比べまして老人割合が高いわけでございまして、財政が非常に悪化しております。御承知のように、そのために一般会計からの繰り入れと都道府県からの財政援助が五十四年度は一千億円以上になっておりますが、そういうものをつぎ込んでいまようやく収支の均衡がとれておるわけでございます。  そこで、そういう前提に立って今回の厚生省案を見てまいりますと、全般的には、いま説明がございましたように国民健康保険の負担軽減を図るということにしておるわけでございますから、従来から老人を多く抱えております国民健康保険にとっては赤字要因が減ってまいります。したがって、老人医療に対応する一般会計からの繰出金が減ってくるということになるか、あるいは保険料、保険税が高いということでそれを下げるか、何らかのかっこうでそこは割り切られる。一般会計からの繰り出しも大変多いわけでございますから、それが減っていくのか、料が減っていくのか、そこのところが不明でございますから、税務局長としては税がどうなるかということはちょっと答えにくいということになったわけだと存じます。  ただ、一方この案を見てまいりますと、公費負担分については、厚生省試算のI、IIとも現行の地方公共団体の負担分が六・六%から一〇%に拡大されるということになっておりまして、地方負担が千六百二十億円から二千五百二十億円、九百億円の増加ということになります。ところが、老人医療全体に対する国庫の負担割合は現行の四七%、これは国の公費負担分のほかに保険者に対する国庫負担と臨時財政調整交付金、全部含めて見てみたわけでございますが、その四七%が試算Iでは四四%に、試算IIでは四〇%に減少することになっておるわけでございます。  国の負担割合が減って地方の負担が重くなっておるということ、これはいま申し上げましたように国保全体が減ってまいりますから、料か税が減るのか、一般会計からの繰出金が減るのか、繰出金が少なくなったかわりにこっちがふえるということになるのか、そこらの因果関係が不明ではございますけれども、全般として見れば、もう少し研究をしてみなければわかりませんが、全般的な公費負担の部分が非常に高くなっておりますので、どうも基本的に問題があるように思えますので、もう少しこれは慎重に検討さしてもらいたいと思っております。まだいま折衝をしておる段階でございます。
  212. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうすると、一方では国保の財政は軽減される、一方では今度新たに老人健保に市町村の支出が出てくるわけですね。それの兼ね合いだけれども、それ全体をひっくるめて、老人健保が新しくできると市町村の負担はどうなります。重くなりますか、軽くなりますか。
  213. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 そこのところがちょっと私どもがわからないと申し上げておりますのは、現在の国保が現行で四千百六十億ある、こういうことでございますが、それは保険料と保険税だけでなくて一般会計からの繰出金とかが入っておるわけです。だから、先ほど説明のございました第一案で浮きます千六十億では、その減る分は一体繰出金が減るのか、料を減らすのか。料が減ってしまえば繰出金は減らないということにもなるわけでございますから、そこらの兼ね合いがどういうふうに変化していくかということによって変わってくるわけでございます。  だから、減るには減りますが、一方公費の方はふえておる。公費負担のふえておる分は確かにふえておるのですが、減る方が一般会計分から減るのか。料と税を減らしてしまうということになれば、繰り出しはそのまま残るということになりますから、差っ引きして果たして地方団体の方は負担がふえるのか、減るのか、なかなか明確でない点がございます。もう少しそこらのところは詰めなければ、私どもとしても明確には答えにくいし、いろいろな条件を詰めてみませんと簡単には答えが出ないものですから、いまいろいろと厚生省とも折衝をしておるという段階でございます。
  214. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この間、公明党の大橋先生が大臣に質問をしておりましたのをお聞きしていたら、この問題は国が軽くなって自治体が重くなるから不満だ、こういうような御答弁をしておられました。いまの答弁とちょっと食い違うような感じがしますが、いかがですか。
  215. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 その辺が十分詰めてはいないけれども、地方団体が負担をする割合がどうも多くなりそうだ、この点はよく詰めて相談をしてもらわぬと困る、そういう趣旨にひとつ御理解願いたいと思います。
  216. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 別の問題に移ります。  私は秋田県なんですが、いま秋田県は県議会をやっていますが、非常に大きな問題になっているのは老人医療の無料化の問題です。前の小畑知事が全国に先駆けてこれをやりました。ところが、今度の佐々木知事はこれをやめてしまえ、全国に先駆けてやめろ、こういうので大変問題になっております。  それに関しましてお聞きしたいのですが、自治省はかねがね国がやっているのにさらに上乗せしたような福祉に対しては困るという態度をとっておったようであります。しかし最近、地方自治の本旨から見て、地方自治体の立場に立って地方の自主性を尊重せざるを得ない、こういうような立場をとっていると聞きました。さらにまた、この間、政府が社会保険審議会でもって、厚生省は上乗せ福祉に対して法律をつくって強制的には抑えない、こういうふうな態度を明らかにした、こういうことが発表されておりますけれども、これは事実ですか。
  217. 古川貞二郎

    ○古川説明員 老人保健制度の一部負担あるいは年齢等に対しまして、地方公共団体が単独でいろいろ上乗せといいましょうか、そういう措置を行っておられるということに対します私どもの見解といたしましては、基本的には地方公共団体がそれぞれの御判断あるいはその政策問題ではないかというふうに考えているわけでございます。その点はそういうふうに考えておるわけでございますが、新制度との関連等におきまして非常に大きな問題もございますので、地方公共団体に対しまして新しい制度の趣旨を御理解いただくように努めたい、かようなことでございます。  したがいまして、端的にお答えいたしますと、法的にこれを禁止するしないという問題で私どもは禁止できるというふうには考えてないわけでございますが、新しい制度とのかかわり合いが非常にございますので、よく地方公共団体と御相談し、新しい制度の趣旨を御理解いただきたい、かように考えておる次第でございます。
  218. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうすると、法律はつくらないけれども、別の方法で上乗せ福祉は禁止していく、そういうふうに指導していく、こういうことですね。
  219. 古川貞二郎

    ○古川説明員 お答えいたします。  基本的には、地方独自の問題として政策判断なりの問題でございますので、そういう理解でございますが、新しい制度、老人保健制度は、ただいまも申し上げましたような高齢化社会の到来ということを前提といたしまして、いわゆる予防から治療、リハビリということに対する施策と、それから費用負担の均衡、こういうふうな問題に対処した制度でございますので、そういう制度の趣旨をよく御理解いただきたい、かように考えております。基本的には、地方独自の政策判断の問題だというふうに私どもは考えている次第でございます。
  220. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 同じ問題について大臣にお伺いしますが、この問題、どういうお考えを持っていますか。
  221. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 いまの話を聞いておりましても、それは厚生省としては、いわゆる国でやる制度よりもより住民にプラスするようなことを地方団体が政策判断としてやるならば、それはまあいいんだ。しかし、国の制度をよくのみ込ませたい。率直に申しますと、それは地方の政策判断だということであれば、国の制度をとっくりと話したいということもちょっと解せない一点ではあったわけでございますが、結局、自治省といたしまして、いわゆるかさ上げあるいは期間の短縮でございますか、そういうふうな問題を地方団体の独自の判断でやるということについては、これは抑えるとか抑えないとかというわけにはなかなかいかぬだろうと私は思っております。しかし、これは財政負担が伴う問題でございます。したがって、その地方団体が長期にわたってそういうようなものをやって、ほかの方にも余り影響しないで、また政策判断としてほかの方は犠牲にしてでもそれをやった方がいいというような、そこまでの決意を持ってやるかどうかという問題ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  222. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 お話はよくわかりました。しかしどうも考えてみると、法律はつくらないけれども実際には強制的にこれを抑えていくというのは、いまも大臣のお話がありましたが、何となく納得できかねるところであります。ひとつよく地方の自主性というか、そういうものを圧殺しないように考えていただきたいと思います。
  223. 左藤恵

    左藤委員長 この際、午後四時三十分より再開することとし、休憩いたします。     午後四時一分休憩      ————◇—————     午後四時四十八分開議
  224. 左藤恵

    左藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤敬治君。
  225. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 国民健康保険のことについてお伺いいたします。  今度の地方税の改正で国保税の上限が二十四万から二十六万に上げられることになりますが、来年も上がる見通しですか。
  226. 石原信雄

    ○石原政府委員 この最高限度額につきましては、医療費の上昇の状況、各総所得金額の段階別の被保険者の数、こういったものを勘案しながら、その最高限度額に該当する被保険者数の割合がおおむね一定になるように金額を定めてきておりますので、五十七年度以降も、医療費総額が上がり、またその数に異動が生ずるようなことになれば検討せざるを得ないと思います。
  227. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 同じ問題を厚生省国保課長からも伺います。
  228. 古川貞二郎

    ○古川説明員 国保の保険料についてでございますけれども、保険料につきましては、条例準則によりまして、国保税とは違いまして限度額というものは法定はされておりませんが、国保税に準じて扱うということでございまして、考え方は税務局長がおっしゃったとおりでございます。
  229. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この保険税は、毎年大変な勢いで上がっております。私が覚えているところからでも三万円から始まって、五万になり七万になり九万になり十三万になり十五万になり十七万になり十九万になり二十二万になって二十四万になって、今度は二十六万になる、大変な勢いで上がっております。最近はずっと二万円ずつ上がっているのですね。このままでいきますと一体どこでとまるのか、これはそら恐ろしいような気がするのですよ。これは何かとまるめどがあるか、一体どこまで上がっていくのですか。何かめどがあったら教えていただきたい。
  230. 石原信雄

    ○石原政府委員 結局、最高限度額を据え置けば、それに該当する人がふえればふえるだけ、他の被保険者に対する負担額がふえていくという問題がありますから、要はこの問題は、保険税あるいは保険料、総体の負担額が将来どうなっていくかということと深くかかわっている問題であると思います。  いずれにいたしましても、この最高限度額につきましては、先ほど申し上げましたように、被保険者全体の中に占める最高限度額該当者の割合をおおむね維持するように考えてきております。それと同時にまた、この金額は他の保険における最高限度額などもにらみながら決めてきておりますので、今後の見通し、無限に上がっていくのかどうかという御指摘でございますが、この辺は何とも申し上げられないのですけれども、いずれにしても保険財政状況によって将来の額が規制されてくる、このように申し上げるしかないと思います。
  231. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 同じ問題ですが、保険の医療の内容が非常にかかわってくるわけなので、あるいは自治省ではわからぬかもしれません。厚生省が一番よくわかっておると思うが、いままでを見ると非常な勢いでどこまでもとめどもなく上がっていく、そのうちに負担にたえ切れない。特に最近は安定経済成長になって、経済の成長率よりもこっちの国保の税金のあれがどんどん上回っておるので、そのうちに払い切れなくなると思うのです。一体どういう見通しですか。
  232. 古川貞二郎

    ○古川説明員 お答えいたします。  問題は、基本的には医療費の増大というものをどう考えるかという問題だろうと思うのです。医療費の増大は、御案内のように医療技術の向上とかあるいは人口の老齢化とか設備の問題、いろいろな要因によって、これはもうわが国だけでなくて、世界的にも増大の傾向にある、これに非常に苦慮しているというのが恐らく世界各国の現状であろうかと思っております。  私どもは、この医療費の増大に対しては、一つは長期的には、先ほど来お話がございます国保にとってみれば、国保の三割が老人医療費でございますが、老人医療費がそういった物すごい大きな圧迫要因でございますし、こういった制度間での負担の均衡というものも考えなければいかぬ。  それからもう一つは、この老人保健制度の中で、この制度の実施に先立ちまして、診療報酬のあり方も検討しよう、老人医療に関する診療報酬のあり方をも検討しよう、支払い方式も含めまして検討しよう、これは新しい法案で出てくる老人保健審議会というところでいろいろな角度から検討していただこう、そういうふうな問題も考えております。  それから現状でございますけれども、当面何をするかということでございますが、これに対しましては医療費の適正化というようなことで、たとえばレセプトの点検とかあるいはお知らせと言っておりますけれども、医療費がある月どのくらいかかったのかというようなことをそれぞれの個々人に、住民の方々にお知らせをいたしまして、健康に対する啓発といいますか疾病予防といいますか、そういった健康管理にも御留意をいただく、あるいは医療機関に対する指導監査の強化とかいろいろな、いわゆる医療費の現状として見れば医療費の適正化というようなことに力を尽くしていこうというふうに考えておるわけでございますし、長期的には国保として考えれば、こういった制度間の構造的な老人の偏り等もございますので、そういった問題等も踏まえて総合的に検討していかなければいかぬというふうに考えておるわけでございます。
  233. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 課税限度額を据え置くと、課税限度額で納税する世帯がどんどん増加していく、ほかのところに影響があるということはそのとおりでしょうけれども、課税限度額を上げることによって、平均の保険料がやはりどんどん上がっていくのですね。これはもうかなりな大きな金額になっておるのです。  私ここに持っておるのは五十四年のあれで、二十二万の限度額のしか持っていませんけれども、これは岩手県の矢巾町ですが、一人頭四万八百五十一円です。五人いたら二十万円納めなきゃいかぬのですよ。これが二十二万で二十万円ですからね。いま二十四万だから、恐らくこれはもう二十二万ぐらいになっていると思う。またこれが今度二十六万になると、これは大変な金額になるのです。  これはもう非常に簡単な金額ですが、私ちょっと試算してみましたらこんなになるのですよ。いま二十二万の資料を申し上げました。それで、いま二十四万です。来年二十六万になります。このままの調子でいきますと、五十七年には二十八万になって、五十八年には三十万になる。だから、私がいま持っている資料の二十二万からいいますと、ちょうど上がり幅が四年間で八万円上がるのです。八万円を二十二万にパーセンテージであらわすと三六%強になる。これをいま四万という保険税だとすると、これに三六%をプラスしますと五万四千四百円ということなんです。五人家族ですと二十七万二千円納めなきゃいかぬということなんです。大変な金額なんです。これはもうとうてい納め切れなくなると私は思うのですよ。  これは、どうすればこれを納められるようになるのか、どうすればこの上がり幅をとめられるか、このことが大変大きな問題だと思うのです。それでなければ、そのうちにこの保険財政は、いかに老人医療を切り離そうが何しようが、いまに破滅しますよ。どういう手段が一体あるのか、もしあったらひとつ教えていただきたい。
  234. 石原信雄

    ○石原政府委員 結局、この保険税あるいは保険料が上昇する根本の原因は保険会計の財政にあるわけでありまして、医療費の支出が従来のようなトレンドでふえていけば保険料負担もふえざるを得ぬ。それからまた、国庫負担制度がどうなるかということも大変大きなかかわり合いを持ってくると思います。現在の定率負担あるいは調整交付金、それから臨時交付金、こういったものが今後どうなっていくのかということとの関連において、この保険料というものは決まってくると思います。これらの制度がいまのままで、また医療費がふえていくということになれば、保険料もふえざるを得ない。現在の地方財政法のたてまえから、一般会計が負担するというたてまえになっておりませんから、結局出口がない。医療費がふえて国庫負担が決められれば、残りは保険料で賄わざるを得ないという仕組みからいたしまして、これは将来とも同じような問題が残っていくというふうに見ざるを得ないと思います。
  235. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 あなたの言うことはまことにもっともなことで、医療費がふえれば保険料が高くなりますよと。まさにそのとおりなんですよ。だけれども、その高くなる医療費の負担に国民がたえられなくなればどうするかという問題が、いまここで大きな問題になっているのです。まあ、出せなくなれば、一般会計から出すなと言うけれども、一般会計から出さなければだれも税金を納めなくなってしまう。あるいはまた、国の調整交付金なり何なりそういうもので、納められなくなった高くなった分をますます負担していかなければいかぬ。国も市町村もみんな赤字だということになれば、これもできないということになる。  一体どうすればいいかということは、さっき国保課長が言ったようにとにかく総額を抑えるしか仕方がない。しかし、いま国保課長がばらばらと羅列したけれども、果たしてそれでもって医療費の増額が抑えられるのかどうかです。医療の内容がわかっている厚生省の人からどういうふうになっているのか、本当に抑えられるのか、そこらが非常に心配なので教えていただきたい。
  236. 古川貞二郎

    ○古川説明員 先生の御指摘のとおり今日の状況は、医療費の増大に所得が追いつかないというところに非常な財政圧迫の要因があるわけでございますので、端的に申し上げまして、何とか増大する医療費を抑えるというのが基本になろうかと思うわけでございます。  それに対しまして、私どもとしては長期的にはこういった老人保健制度、この目的は繰り返して申し上げておりますけれども、一つは壮年期からの健康管理というものを国民がいろいろと注意していただいて、特に循環器系統の疾病、脳疾患とか心臓とか、わかりやすく言えばたとえば寝たきり老人をできるだけ少なくしようとか、そういった長期的な観点から医療の増大を抑える。  いま一つは、先ほど申し上げましたが、適正化対策と言っておりますけれども、レセプトを国保保険者が一々点検するとか、あるいは医療費のお知らせをすることによって国民の医療に対するあるいは医療費に対する自覚を養っていただいて、健康管理というものをもっと重視していただくとか、あるいは適正な受診ということも含めて何とか増大する医療費を抑制していくというのが、出るのと入るのとの関係でございますので、そういった医療費の支出の増大を何とか食いとめていかなければいかぬ。  そういう観点から私どもは、一つは老人保健制度の問題をも検討いたしておりますし、この医療費の適正化ということをも非常に重視して、これは国民健康保険だけではございませんで、健康保険を含めましてすべての医療保険でそういったものを重視してきている、こういう状況でございます。  なお、国民健康保険に対しましては、療養給付費の補助金とか、これは医療費に対する四割の定率補助がございますし、財政調整交付金ということで五%、ほかに臨時財政調整交付金ということで率にしますと三・五三%、合わせまして医療費の五割近い国庫負担を投入しておりまして、その負担額を国の一般会計で見ますと、国保の助成費は五%に達しているわけでございます。  厚生省の予算の中で申し上げますと、厚生省の予算は予算の規模として見れば各省の中でも最も多いわけでございますが、それの二五%が国保の助成費になっている、合わせまして二兆三千億を五十六年度計上している。そういうことで、国保だけあるいはこの財政の支出だけに依存するという議論はなかなか困難になってきている。  したがいまして、繰り返して申し上げますけれども、増大する医療費を何とか食いとめなければいかぬ、それは国民全体が一人一人考えなければいかぬ、そういうためには老人保健制度で寝たきり老人、循環器系統を中心とする健康管理対策も強化しなければいかぬし、あるいは当面健康管理、医療費適正化、医療機関に対する指導監査、そういったものも強化していかなければいかぬ、かように考えておるわけでございます。
  237. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 御承知のように、国保は応能部分と応益部分でもって五〇%ずつ取るようになっておるのですが、応能部分の所得割の算定の基礎というのは昔のただし書き方式であって、総所得金額から基礎控除したものにもろに税金がかかっていくようになっているのです。だから、所得税だとか住民税みたいにもろもろの控除をやった後にかかっていくのじゃない。元金が非常に高いものだから、どんどん税金が高くなっていく仕組みになっておるのです。  それと、最近都市と農村で大きな違いが出てきていると私は思っておるのです。というのは、いま申し上げましたように、徴収する保険税の総額、これを応能割の総額五〇%、応益割の総額五〇%というふうに半々でやっていることになっているのですが、その中で応能の方は所得割総額が四〇%、資産割総額が一〇%、応益の方は均等割が三五%、平等割が一五%、こういうふうになっているのです。  ところが、農村部におきましてはこの所得割総額が、所得が余りないので勢いどこにかかっていくかというと資産割、大きな家があったり大きな庭があったり大きなたんぼがあったりする、この資産割に非常に重点がかかっていっているのです。都市の方は逆に所得が多いので、所得割のあれが八〇%超しておるようなところもある、非常に高くなっている。農村の方はどんどん資産割の方が高くなっていく。こういう形で、本来の分け方が非常に乱れてきている。もっともこの分け方は、必ずしもこれを守りなさいということじゃなくて、実情に応じて適宜変更することはいい、こういうふうに書いてあるから違法とは言わないけれども、非常に大きな差が出てきておるのです。  いまちょっと例を申し上げます。実務という本に出ている一つの例を申し上げますと、こういうふうになっているのです。  ある町の例ですけれども、資産割の税率昭和四十一年には一一%になっておるのです。ところが五十四年のこれで調べてみますと、もう一一%なんというのはどこにもない。物すごくかけ離れているのです。私の選挙区の秋田県を見ましても、資産割が秋田市は三二%、農村部へ行きますと四八・四%、五二%、四三%、五一%、物すごくかけ離れてしまっているのです。資産割に対する依存がとても高くなっているのです。  そこで、この資産というものはいわば固定資産のようなもので、商売をしていればいいけれども、商売をしていなければ収入が入ってこないのです。しかも、それに対してどんどん高い税金がかかっていくようになれば、農村部では金を払えなくなってしまうのです。農村に行くほど、保険税というのは高くなっていっている。都市に行くほど安くなっていっている。負担能力のない農村が非常に強い負担、高い負担を強いられているようになって、非常な不均衡が生じておるのです。この状態を直さなければ、都市より先に農村の方が保険財政がおかしくなってしまう、こういう可能性があるのですが、このことについてはどう思いますか、大臣からもお伺いします。
  238. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 資産割、資産の評価による資産税ですか、これは農村にとって非常に重くなっておるのは御指摘のとおりでございます。国保全体の問題をどうするかという問題にも、基本的にはかかわってくるわけでございます。医療内容をどうするのか、これは先ほど厚生省からお話のあったとおりでございまして、根本的にはその辺から手をつけてまいりませんと、問題は解決しないのではなかろうかと私は思っておるわけでございます。  農村地帯におきまして資産を標準にした負担金、これは相当上がっております。しかしながら、これをやらないとほかに方法がないという実情もあるわけでございまして、まことに困った問題でございます。おまえどうするんだといま問い詰められましても、御返答はできないのでございますが、きわめて重要な問題でございますので、ひとつ厚生省当局とも篤と相談をいたしまして、打開の道を工夫してみなければならぬ重要な問題だと認識しておることだけをひとつお答え申し上げておきます。
  239. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この都市と農村の不均衡を解決する方法は一つあるのです。標準税率を設けて、都市も農村も同じように負担させればいいのです。足りないところはしようがないからどこかでカバーしていく。これを直すにはこういう方法しかないと思うのです。この点はどうですか。
  240. 石原信雄

    ○石原政府委員 今日、保険料の負担の問題につきましては、まず保険財政全体の現状からくる負担水準そのものの高さということと、ただいま先生が御指摘になりました、相対的な都市と農村の間の負担が現状でいいのかどうかという問題だと思います。  後者につきまして、団体間のバランスの問題につきましては、一般会計については現在交付税制度によりまして、税は標準税率を基礎にして基準財政収入額をはじき、標準財政需要としての基準財政需要額の差額を普通交付税で補てんするという方式で、地域間の財政力のアンバランスというのはかなりの程度均衡化されておると思うのですが、保険財政についてその点がどうなっているのか、直接的には厚生省の方で所管されております財政調整交付金の交付の仕方、あるいはその前提となります保険料率について、いわゆる標準保険料率制度というものを設けることがいいのかどうか、これは財政一般の問題としてもかねてから論議されているところでありますが、この点につきましては、現在は所管の厚生省の方でやっておられますので、地域間の均衡化にはそれなりに努力されているのではないかと私どもは理解しております。
  241. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 厚生省から答えてください。
  242. 古川貞二郎

    ○古川説明員 お答えいたします。  農村部において、現在資産割の部分が非常に大きくなっているという現状は、御指摘のとおりでございます。厚生省といたしましては、これに対しまして財政調整交付金、これは総医療費の五%、五十六年度で申し上げますと大体二千億が計上されているわけですが、それに対する配分でそういった各保険者市町村間の保険財政の格差を是正しようということで、医療費と所得、保険料収入とのバランスで、私どもは傾斜的に交付することによってカバーしておる、こういうような方針でございます。  なお、先生御指摘の標準税率につきましては、昭和四十五年ごろに厚生省でそういうふうな考え方を検討したことはございますけれども、最終的には、いろいろの関係方面の合意が得られなくて見送ったという経緯がございます。いずれにしても、財政調整交付金の適正な交付によって、そういった市町村間の保険財政の格差を是正していこうということでこれに努めておる次第でございます。
  243. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いずれにしましても、これは医療費がどんどん高騰していけば、必ずそういうしわ寄せが来てアンバランスになります。これはいまの時期になれば、根本的な解決の策を講じなければどうにもならぬというような感じがしますので、ひとつその点をよく検討されるようにお願いします。  時間がないので進みます。  この間の新聞に第二薬局の問題が出ていました。医薬分業を装って所得分散、脱税行為というのをやっているというのでありますが、私の選挙区の秋田県で調べましたら、これは地元の魁新報に発表されていたのですが、第二薬局が県内で五十六カ所もあって全国の約四倍にも及んでいるということなのです。全国的に見ても、約一千カ所が第二薬局をやっており、非常に大きな問題になっておる。特に診療報酬の特別措置がちょっと下げられたら、途端にこの第二薬局が出てきた。医者というものは、あんなにもうけているのにもっともうけなければ承知しないようなのでありますが、この薬の問題も、いま薬価基準と実勢薬価の差も大きな問題になっているのですけれども、第二薬局という形のものを厚生省はどういうふうに考えて、これに対して何らかの処置をとるつもりであるのか、教えてください。
  244. 古賀章介

    ○古賀説明員 いわゆる第二薬局と言われますものの中には、事実上院内薬局と同じような場合等がございまして、医療機関からの独立性に問題があるものがあるわけでございます。これは先生御指摘のとおりでございます。これは医薬分業の本来の趣旨を損なうおそれがありますとともに、保険薬局のあり方からも問題があるというふうに理解しております。  先般実態調査を終えたところでございますので、今後はその薬局の許可でありますとか、それから保険薬局の指定に当たりまして、医療機関からの独立性について十分配慮をするようにいたしまして、私どもは薬務局でございますけれども、早急に保険局とも協議をして、規制についての対応策を検討してまいりたいというふうに考えております。もうしばらくお時間をいただきたいというふうに考えております。
  245. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま盛んに医者や病院の不正請求の問題が起こっております。最近の新聞には、カラスの鳴かない日はあっても何とかというあれがあるが、本当にカラスの鳴かない日はあっても医者への非難が出ない日はないぐらい、連日医者が悪いことをしたことが次から次に出てきております。国民の批判の声も非常に高くなっている。健保の不正請求に対して国税庁が乗り出す、悪質なのは脱税同様に重加算税も適用する考えだ、こういう記事が新聞に出ております。この一連の不正請求だとか、あるいは富士見産婦人科のあれだとかいろいろなのを見ておりますと、不正請求をしてそれがばれますと金を返す、それだけで済んでいるのですね。これはどう考えてもおかしいと私は思うので、ちょっとお聞きしますけれども、どろぼうをして金を返すとどろぼうでなくなりますか。大臣、どうです。
  246. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 ならぬようですね。
  247. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私もそうだと思うのですよ。医者が明らかに作為的に、やらない薬をやった、やらない注射をやった、やらない検査をやったといって文書を書いて、そうして不正に金を取るということは、ただ金を返せばそれで終わりだという問題ではないと私は思う。私文書になるか公文書になるかわからないけれども、これは明らかに文書偽造である。そうして、その文書を偽造して金を取ったという行為は私は詐欺だと思う。ところが、いままでそういう例というものは聞いたことがないのです。  警察庁にお伺いしますけれども、何か刑罰に処せられた例がありましたか。
  248. 中平和水

    ○中平政府委員 医療費の不正請求が犯罪を構成するのかというお尋ねのようでございますが、これは個々具体的に検討しなければ何とも申せませんが、医療費の不正請求の中には、詐欺罪あるいはその手段としての文書偽造等を構成する例はあるわけでございます。私どもは、かねてからこの種の問題につきましては関心を持っておりますし、毎年数件につきまして、医者も絡む医療のこの種の事件についての検挙措置をとっている、こういう状況でございます。
  249. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま、ちょっと久野先生が横で話したので、よくわからなかったのであれですが、いまのお話は不正請求すれば文書偽造あるいは詐欺罪に問われる場合もある、こういう答弁ですか。
  250. 中平和水

    ○中平政府委員 さようでございます。そうした具体的に検挙している事例も毎年ある、こういうことを申し上げた次第でございます。  なお付言して申し上げますと、この種の事案につきましては、これは事柄の性質上潜在性が非常に強いケースでございまして、まず当該行政当局におきまして把握され、そこから告発というような形になって私どもの手に移ってまいるのが通常の形でございます。したがいまして、今後ともさらに関係当局との間の連携を密にいたしまして、この種の不正事案につきましては厳正に対処してまいりたい、このように考えております。
  251. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 何というか、富士見病院から診療費の架空請求、水増し診療、薬づけ、検査づけ、巨額脱税、私立医大の不正入学、これは私の方の大原亨さんが委員会でやったのですが、不正のオンパレードだ。こんなに不正がどんどん次から次へと出て何の罰も加えられない、ただ金を返せばそれでいいなどということは私は許されないと思うのですよ。だから警察当局としても、医者だから、武見さんがおっかないから手を出さないというのではなくて、やはりきちっと調べるべきですよ。普通の人が文書を偽造して金を取ったら、あなた方告発がなくてもすぐ調べるでしょう、それがばれたら。それを医者だけが、でたらめな文書をつくって金を取っておきながら、それがわかっていても何のあれもやりませんということは、これはやはり怠慢だと私は思いますよ。これだけ社会から不信感を持って見られているならば、やはりこれに対して何かしらやるべきだ、私はそう思います。御意見を伺います。
  252. 中平和水

    ○中平政府委員 医師の絡む不正請求事件につきましては、昭和五十三年に四件、二億三千二百一万円、五十四年三件、千二百七十七万円、五十五年二件、四千百九十一万円相当の詐欺罪として、警察としては検挙措置をしております。しかし、繰り返し申し上げますが、やはり関係当局の方におきまして積極的に告発等をしていただく、そういうことがこの種の潜在する事犯をまず表に浮かび上がらせてくる第一のモメントだ、こういうように私は考えておりますので、その点さらに今後協力を密にしながらやっていきたい、こういうように考えております。
  253. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いまずっと議論したように、どんな方法を講じても、結局は急激な医療費の膨張を抑えることしか根本的には手段がないと私は思います。それを抑えるためにどういう手段を講じるのか、いろいろな問題があると思いますが、いままでみたいにだらだらではなくて、あるいはまた医師会に余り遠慮して何もできないようなことではなくて、どんな検査でも治療でも無制限に金をどんどん払ってやる、こういう制度がどこまでも続いていけば医療費というものは無限にふえていく、これは明白なんですよ。ここのところを強くひとつ頭の中に置いて、早急に医療費の膨張というものを抑えるような工夫をしなければいけない、こういうふうに思います。  そこで、時間がなくなったのでお伺いしますけれども、この間厚生大臣は医療費の引き上げをする、こう言っております。なぜいま医療費の引き上げをしなければいけないのか。毎年長者番付をやれば、大体上位からずっとほとんど医者が占めている。それから国民から見れば非常に金持ちだ。一般のサラリーマンの六倍から八倍ぐらいの所得があるのではないか、こういうふうにも見られ、医者は金持ちだ、こういう一つの国民感情があります。それに対して、もうけ過ぎている医者、医療の荒廃、こういうことが国民から批判されているときに、なぜいま医療費を上げなければいけないか。  あるいはまた国の財政から見ても、いま大増税をしてそうして財政再建をしようとしている。医療費を一%上げれば三百九十億円ふえると言われている。保険財政も赤字である、国の財政も赤字である、市町村の財政も赤字である。しかも医者がもうけ過ぎているという国民の不信感がある。その中で、なぜ医療費を上げなければいけないのか、その理由をひとつ教えてください。
  254. 仲村英一

    ○仲村説明員 お答えいたします。  診療報酬は御承知のように五十三年の二月に改定されまして、それから三年以上経過をしているわけでございます。この間に、診療報酬をどのように見直すかという問題があるわけでございまして、この三年間の物価あるいは賃金の動向でございますとか医療機関の経営状況等を総合的に判断いたしまして、医療費の改定を行うということを見きわめなくてはいけないのが一つの要素でございます。  もう一方の要素は、先ほどから出ております医療費の増高ということが片方にあるわけでございますが、それに要します医療技術の進歩というものを診療報酬の中に取り入れるという一つの技術的な要請もあるわけでございまして、そういうものを総合的に判断して、今後診療報酬の改定については対処してまいりたい、このように考えておる現在でございます。
  255. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 あなたのいま言ったことは、国民としては全然納得できないです。そういうことを全部あれしておいて考えた上で、なおかつ医者というのは大変なもうけで、しかもそのもうけ方というのがでたらめなもうけ方をしている。そこにさらにどろぼうに追い銭みたいにまた医療費を上げてやるなどということは、国民として納得できません、そんな説明では。  さらに大臣にお伺いしますが、もう一つ納得できないことがあります。いま申し上げましたように、いわば不正のオンパレードみたいな大変な不正請求をして不当に金をもうけている医者がある。毎日毎日それが新聞に出て、国民は医者に対してあきれ果てたような不信感を持っております。そして、いまの支払い制度その他の不備のためにどんどん医療費が上がっていっておる。その上がっているしわ寄せでわれわれは苦しんでおるのですけれども、こんなに医者がでたらめにと言えば語弊があるかもしれませんけれども、とにかくこれほど大きな不正請求をやって、そして医療費がどんどん上がっていく。それをわれわれはこんなに苦しんで税金を納めているのに、こんなことをこのままにしておいて、そしてはいそうですかと言って税金を増税するというようなことは、納税者としては納得できないと思うのです。  この不正な請求をしている医者、こういう医者をきちっと整理して退治してもらわなければ、このために上がった医療費を増税するからおまえら出せと言ったって、出す気にはならぬ。はいそうですかと言って増税に応ずるような気持ちにはならぬですよ。そこはどうですか。
  256. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 不正な医療費の請求、診療費の請求、これはどうしても防遏しなくちゃならぬと思います。それは関係者の間において最善の努力をこれからしていきたいし、また先ほどの話のように、刑事的な問題になり得るものについては断固たる措置をとっていく、こういう方針でいくべきだと思います。
  257. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これで終わりますが、さっきから申し上げておりますように、根本的なものに早急にメスを加えなければ大変なことになるという感じがいたします。  それから、こういうような不正な請求でもってどんどん医療費が上がっていく、これを増税で賄うということは大変な不信感を納税者から買うことになると思います。やはりこういう医者の倫理——出来高払いの制度をやめて、薬づけだとか検査づけだとかいうことのないように早急にあれして、医師に対する一つの信頼感を取り返さなければ保険制度全体がおかしくなるんじゃないか、こういうふうなことを強く訴えます。そして大臣も、単に医療は厚生省の方でおれの方はただ払うだけだ、こういう態度ではなくて、強い態度でもって厚生省と取り組んでいただきたい。決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  258. 安孫子藤吉

    安孫子国務大臣 御趣旨に沿うて努力します。
  259. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 終わります。
  260. 左藤恵

    左藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  261. 左藤恵

    左藤委員長 この際、本案に対し、日本社会党を代表して小川省吾君より修正案が、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表して大橋敏雄君外一名より修正案が、日本共産党を代表して三谷秀治君より修正案が、それぞれ提出されております。  各修正案の提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。小川省吾君。     —————————————  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  262. 小川省吾

    ○小川(省)委員 ただいま議題となりました地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、日本社会党を代表し、その提案理由内容の大要を御説明申し上げます。  一九七五年以来、地方財政を見舞っている構造的危機は、戦後地方財政制度の根本的な矛盾に起因するものであり、これ以後日常化している地方財政危機打開し、国民福祉の向上に果たす地方財政の役割りを高めることは、ひとり地方財政のみならず国の財政再建の大きな課題と言えます。  しかしながら自民党政府は、こうした財政再建の意義を歪曲し、大増税による国民負担の強化と地方財政の犠牲によって、現状を糊塗しようとしております。たとえば個人住民税においては、十二億円のまやかし減税の陰で実質増税を図る一方、国に厚く、自治体に薄い法人課税の現行配分割合については何ら是正することなく、一方的に法人税引き上げを行うなどがそれであります。この結果、本年度税制改正による地方税増収額七百五十六億円のうち地方税独自の改正による増収額は、わずか九十七億円にすぎないなど地方税財政無視の自民党政府態度には目に余るものがあります。  日本社会党は、インフレから国民生活を防衛するためには、地方財政の充実が不可欠であるとの立場から国、自治体の税財政の根本的改革を強く要求し、住民の税負担の軽減、法人課税の公正、強化を中心とする地方税源の強化を図り、もって地方自治の強化を図るため、特に緊急と認められる事項について所要の修正を行うこととしたのであります。  以下、順を追って修正案の概要を御説明申し上げます。  第一は、個人住民税についてでありますが、基礎控除、配偶者控除、扶養控除をそれぞれ二十四万円に引き上げ、課税最低限を百七十万七千円といたしております。  障害者控除、老年者控除、かん夫(新設)、寡婦控除及び勤労学生控除の額を二十二万円に、特別障害者控除の額を二十八万円にそれぞれ、引き上げるとともに老人の扶養控除額及び老人配偶者控除額についてはそれぞれ三十二万円に引き上げております。  障害者、未成年者、老年者、かん夫(新設)及び寡婦の非課税限度額を九十万円に引き上げるとともに、白色事業専従者控除限度額も七十万円に引き上げております。  次に、現行都道府県民税所得割税率を、低所得者との負担の均衡を図るため、税率を五段階に区分する超過累進税率制に改めることといたしております。  第二は、法人についてであります。  大企業の都市への集中は、いまや集積の効果よりも、マイナスの効果を増大させ、地方自治体の財政需要を急増させております。こうした大企業にある程度の税負担を求めることは、きわめて当然であり、法人税割を道府県民税にあっては、五・二%に据え置くとともに、市町村民税にあっては、一三・三%といたしております。  第三は、個人事業税についてであります。  当面、所得税を納付するに至らない者に対する個人事業税の解消を図るため、事業主控除を二百六十万円に引き上げることといたしております。  また中小事業者の負担軽減を図るため、白色申告者の専従者控除額を七十万円に引き上げることといたしております。  第四は、電気税についてであります。産業用の非課税措置については、まず本年度において製品コスト中に占める電気料金の割合が七%以下の品目について整理し、翌年度には九%以下、翌々年度には一〇%以下の品目を整理するとの考えに立ち、銑鉄等二十二品目に係る非課税措置を廃止いたしております。  以上が修正案の提案理由及び概要でありますが、何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  263. 左藤恵

    左藤委員長 大橋敏雄君。     —————————————  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  264. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ただいま議題となりました地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、公明党・国民会議並びに民社党・国民連合を代表して、その提案理由と修正案の概要を御説明申し上げます。  従来からの国中心の税配分の構造を改革し、地方自治の本旨に沿った税制を確立することが今日の地方行政に課せられた重要な課題であります。この中で、地方税制度はその基本となるものであり、その抜本的改革が望まれているところであります。  しかしながら、今回の政府改正案は、こうした点に対する改革は全く見られないばかりか、住民税においてもこれまでとられてきた課税最低限の引き上げによる減税を行わず、わずかに生活保護費の引き上げに伴って、非課税の範囲を設けたにすぎません。  このために、国民の税負担は一層強化されているのが実情であります。  こうした現状から、住民税の減税を行う必要があります。  その他、税の安定的確保と課税自主権の拡大、税負担の公平化を図るなど、当面の緊急課題について所要の修正を行うこととした次第であります。  以下、修正案の概要について御説明申し上げます。  第一は、住民税についてであります。  住民税の基礎控除、配偶者控除、扶養控除をそれぞれ二十四万円に引き上げるとともに老年者控除、寡婦控除、勤労学生控除を二十三万円としております。その他、障害者控除については二十四万円とし、特別障害者控除については二十五万円に引き上げております。  また、同居老親等控除については二十八万円としております。  第二は事業税についてでありますが、事業税については五十七年度より外形標準課税を実施することとしております。  第三は事業所税についてでありますが、現行の人口三十万以上の都市だけに認められている課税権を拡大し、各市町村の意思に基づいて課税できることとしております。  第四は軽自動車の月割り課税制度は、現行のまま存続することとしております。  以上が修正案の提案理由並びにその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
  265. 左藤恵

    左藤委員長 三谷秀治君。     —————————————  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  266. 三谷秀治

    ○三谷委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由を申し上げます。  総理府が先月二十七日に発表しました五十五年度の家計調査結果によりますと、昨年の勤労者の実収入は、第一次石油危機以来六年ぶりに実質減となっております。しかも、減少の幅は三十八年に調査を開始して以来の最大のものであります。この原因が、労働者の賃上げが抑えられる一方で、電気、ガス、国鉄運賃など政府主導の公共料金の引き上げによる消費者物価の大幅な上昇にあることは明らかであります。  実質賃金の目減りによる生活難の中で、減税を要求する声はいまや広範な国民世論となっております。それにもかかわらず政府提出法案は、こうした国民の要求を全く無視して、わが党が質問の中で明らかにしましたように、自然増という見えざる増税をますます住民に強要する内容となっております。  わが党の修正案は、本人三千円、配偶者、扶養親族一人につき千五百円を税額から控除する税額控除方式による住民税の減税を内容とするものであります。納税者に最もわかりやすい手法を採用したものでございます。この措置により、課税最低限は、標準四人世帯で百八十七万三千円と、現行より二十八万九千円引き上がることになります。減税を求める国民の切実な願いにこたえるために、最小限の改定を加えようとするものでございます。  何とぞ、慎重審議の上、速やかに御可決くださるようお願い申し上げます。
  267. 左藤恵

    左藤委員長 以上で各修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  268. 左藤恵

    左藤委員長 これより原案及びこれに対する各修正案を一括して討論に入ります。  討論申し出がありますので、順次これを許します。安田貴六君。
  269. 安田貴六

    ○安田委員 私は、自由民主党を代表して、政府提案の地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案賛成の意を表するものであります。  本法律案は、きわめて厳しい地方財政状況及び住民の負担の現状に配慮しつつ、その負担の適正化及び地方税源の充実を図るため、一定の低所得者層について、昭和五十六年度限りの措置として個人住民税所得割の非課税措置を講ずるとともに、法人住民税について均等割の税率適用区分の基準の変更並びに道府県民税及び市町村民税に係る法人税割の税率調整、個人事業税については課税対象事業の追加並びに不動産取得税について税率引き上げを行い、さらに固定資産税等に係る非課税措置等の調整、整理合理化を図り、あわせて地方税に係る更正、決定等の制限期間の延長等の措置を講ずることとするほか、日本国有鉄道に係る納付金算定標準額の特例措置について、その適用期限を延長することとすることを主な内容とするものであります。  地方財政は、昭和五十年度以降毎年度大幅な財源不足額を生じており、これを巨額の地方債の増発、交付税特別会計における借り入れ等により補てんする措置が講じられている状況にあり、これらの償還が地方財政の将来にとって大きな負担となることから、歳出歳入を通ずる財政構造の健全化を早急に進めることが重要であります。  また、最近における社会経済の進展と地方財政をめぐる環境の変化に伴い、社会福祉の充実、生活環境整備等、住民の日常生活に身近な行政を進める地方公共団体が果たすべき役割りは質的にも量的にも増大しつつあり、地方公共団体の自主性、自律性を高め、新しい社会経済情勢に即応して地域社会発展を期するためには、地方税源の充実を図ることが不可欠であります。  このように考えますと、政府提出の本法案は、地方税源の充実に努めつつ、住民の税負担の適正化にも配慮するなど、当面の課題に適応するものであり、現段階におきましては適切妥当なものと考える次第であります。  以上の理由により、私は、日本社会党提出の修正案、公明党・国民会議及び民社党・国民連合提出の修正案並びに日本共産党提出の修正案に反対し、政府原案に賛成の意を表するものであります。  以上をもって私の賛成討論といたします。(拍手
  270. 左藤恵

  271. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となっている地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案について、日本社会党提出の修正案に賛成し、政府原案に反対、また公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党提出の各修正案に反対の立場から、反対討論を行うものであります。  国家は、つり天井で存在するものではありません。よりよき地方自治体が積み上げられてこそ、よき国家が構成されることは申すまでもありません。そのためには国中心の税配分を改め、地方の時代にふさわしい、地方にウエートを置いた財源構造をつくることが急務であります。  ところが、今回の政府改正案はむしろこれに逆行するところが多く、国民の租税負担総額に対する地方税のシェアを見ても、ふえるどころか、逆に一・三%配分が縮小する結果を招くことになるのであって、地方税制改正の第一の原則を侵すものであります。  また、税政策の最も大切な基本は、公平、公正な課税であって、国民が納得のいく税でなければならないということは申すまでもありません。  ところが、税を論ずるあらゆる機関が常にその廃止を訴え続けておりますのに、一部特定法人などを対象とする地方税の非課税等の措置を強化し、政府案は四年前の三割増、今年比八百五十八億もこれを増額しようというのであって、今日の不公平税制を一層増幅しようとするものであり、地方税制改正の第二の原則に反し、容認できるものではありません。  しかも、その反面、物価高の中で実質賃金のマイナスにあえぐ庶民大衆に対しては、住民税の課税最低限を最低生活に必要な生計費に税が食い込むような低レベルに抑えている。  たとえば昭和三十三年当時に比べて、今日消費者物価は四・三倍、東京都の標準生計費は九・一倍になっているのに、所得税の控除額は三・二倍、住民税の各控除額に至ってはわずかに二・四倍という驚くべき低額にとどまっているのであります。  物価調整減税を求める国民の大合唱を浴びている所得税の課税最低限度額をさらに大きく下回るところに住民税を抑え、年々実質増税を重ね、深刻な生活危機にある低所得者に深く課税し、物価高でしぼり取ったしぼりかすをもう一遍しぼろうとするものであって、断じて許されるものではありません。憲法第二十五条が保障する最低の国民生活の生計費を税によって侵すものであり、税本来の、原則を忘れたものであります。  昨年三月における参議院地方行政委員会の全員一致の附帯決議、あるいは昨年十二月の第十八次地方制度調査会の答申においても、これらのことについては強くその改正を政府に求めているところであり、今次政府改正案にこれが全く反映されず、むしろこれに逆行して不公平を拡大したり矛盾を深めているのは、民主主義の諸原則を無視し、地方自治の本旨に反するものであり、強く政府の反省を求めるものであります。  私はこのような見解から、当面、少なくとも日本社会党が提案した修正案程度の実現を期するのが当然であると確信し、よって、政府原案に反対、また公明党・国民会議、民社党・国民連合の修正案及び日本共産党の修正案に反対するとともに、日本社会党の修正案に賛成して討論を終える次第であります。(拍手
  272. 左藤恵

  273. 石田幸四郎

    石田(幸)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました内閣提出に係る地方税法及び国有資産所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案並びに日本社会党提出の同修正案及び日本共産党提出の同修正案に反対し、公明党・国民会議及び民社党・国民連合共同提案の同修正案に賛成する討論を行うものであります。  まず、政府提出に係る原案に対する反対理由をごく簡潔に、三点にわたって申し述べたいと存じます。  まず、国、地方間の税源の配分についてであります。  五十六年度地方財政は、大幅な税の自然増収や五十五年度補正に計上した交付税の大半を五十六年度に繰り越す措置を講じたり、また住民税の減税見送りなどの措置をとってもなおかつ一兆三百億に上る財源不足を生ずるなど、五十年度以降の地方財政危機から脱却することができません。これは現行の国、地方間の税制度が国に偏重していることにより起こる、いわゆる構造的欠陥によるものであることは明らかであります。  従来からの国中心の税配分は、行財政構造を新しい時代に即応した制度に改革することが今日の地方行政に課せられた重要な課題であります。その中で、地方税制度はその基本となるものであり、その抜本的改革が望まれているところであります。  地方財政の抜本的改革については、すでに地方制度調査会等からたびたび答申が出されており、もはや論議の段階は過ぎ、実施すべき段階であります。今回の政府案では、この点について改革の兆しすら見られません。さらに、税の安定的確保ということから、事業税の外形標準課税化を強く要求してまいりましたが、この点についても改革されておりません。これが反対理由の一つであります。  次に、住民税についてであります。  今回の政府案では財政再建を優先させ、これまでとられてきた課税最低限の引き上げを行わず、生活保護費の引き上げに伴ってわずかに非課税の範囲を拡大したにすぎません。このために、所得税減税の見送りとともに国民の税負担は一層重くなり、収入の実質的減収を来す人が多く、その改正を望む声はきわめて切実であります。  こうした現状にかんがみ、少なくも公明党・国民会議及び民社党・国民連合提出の修正案のように、住民税の課税最低限を百七十万円程度にすべきであります。これが反対理由の第二であります。  次に、国税の租税特別措置等の地方への影響遮断についてであります。  今日の地方税制度は、国の租税特別措置等により、国税を減免した場合地方税もその影響を受けて減収する仕組みになっておりますが、その影響を遮断する措置を強く要求してきましたが、政府案にはその措置もとられておりません。また、課税自主権を拡大するために、地方税法に規定されている各種減免措置も各自治体の条例で行うようにすべきでありますが、こうした措置もとられておりません。これが反対理由の第三であります。  原案に対する反対は以上でありますが、日本社会党提出の同修正案は、同意する点もありますがなお検討すべき事項も多くあり、今回は反対をいたしたいと思います。また、日本共産党提出の同修正案についても、検討すべきものが多く同意できないので反対をいたします。  以上申し述べて、私の討論を終わります。(拍手
  274. 左藤恵

  275. 部谷孝之

    ○部谷委員 私は、民社党・国民連合を代表して、政府より提案されました地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案日本社会党提出の修正案及び日本共産党提出の修正案に対し、それぞれ反対、公明党・国民会議、民社党・国民連合提案の修正案に賛成の立場から、討論を行いたいと思います。  現在わが国財政は、国 地方ともに非常に厳しい危機的な状況を迎えております。国、地方を合わせた公債発行残高が百兆円を突破するというような異常な状態が今後とも継続するようなことがあれば財政は硬直化し、国民経済の健全な発展に著しい障害をもたらすということが予想されるのであります。  地方財政危機は一時的な現象ではなく、これまでの高い経済成長率のもとで豊かな自然増収に恵まれた財政構造そのものに起因しておるのでありますから、それに見合う形での行財政体質の抜本的な改善がなされなければならないのであります。  すなわち、昨年十一月に出されました中期税制調査会答申に見るごとく、既存の制度、既定経費の厳しい見直しと、歳出の徹底的な節減合理化を図っていく必要があるのでありまして、昭和五十六年度を地方税財政制度の改革の第一歩としなければならなかったのであります。  しかるに政府原案は、当面の予算措置を事務的に処理するということにとどまって、地方財政の未曽有の危機に対する政府認識対策は全く欠如しておると言わなければなりません。  わが国経済は、二度にわたる石油ショックによってもたらされた不況を、実質賃金の低下に見られるような勤労者の犠牲のもとに辛うじて乗り切ってきたのが実情であります。昨年一年間の平均実質賃金は、対前年比〇・九%減となっておるのでありまして、このことは、戦後統計史上例のない賃金目減りという異常な事態を招来するに至っております。  しかるに、政府の公約であった五十五年度の消費者物価上昇率六・四%という、政府のたび重なる約束のもとで賃上げの自粛に努力してきた勤労者に対して、政府はその公約もすでに放棄しておるのであります。  政府がその責任を痛感しているならば、今回の地方税法改正に当たって各人的控除を二万円ずつ引き上げ住民税の減税を行い、勤労者の流した汗が報われるような施策を行うべきであり、その財源は行財政制度の思い切った整理合理化にこれを求めるべきでありましょう。  また、政府原案による軽自動車税の月割り課税制度の廃止は、税負担の公平という基本原則を逸脱するものであり、国民生活に混乱をもたらし、また自動車税の課税方式との不均一化をもたらす点からも、わが党の容認できるところではありません。  公明党・国民会議並びに民社党・国民連合提案の修正案が、勤労者の要求にこたえるためのものであり、税の安定的確保と課税自主権の拡大、税負担の公平化を図るものであることを申し上げまして、私の討論といたします。(拍手
  276. 左藤恵

  277. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案に反対、わが党提出の修正案に賛成意見を述べます。  まず第一の問題は、所得税の減税見送りと同一歩調をとって、住民税の課税最低限が据え置かれた点であります。このため、所得税における課税最低限とは依然として大きな差があるばかりでなく、五十一年度以降、毎年百万人を超える新納税者がふえており、低所得者への負担はふえる一方であります。大衆課税の軽減という点から考えれば、住民税の課税最低限の十分な引き上げは早急にされなければなりません。  今回、個人住民税の課税最低限を据え置いたための自然増収額は七千五百億円を超え、納税者一人当たりの平均負担増は年間約二万円にも達します。物価上昇による実質賃金の目減りに加えて、この年間二万円の増税は、住民にとって所得税の負担増とともにたえられない重税となるのであります。  今回の改正で、標準四人世帯の場合、年収百七十五万七千円以下の世帯は、住民税を非課税とする措置がとられています。これは、課税最低限が生活保護基準額より低いという矛盾を手直しするためにとられたものでありますが、課税最低限を引き上げないで非課税基準を設けるという糊塗的なやり方ではなく、低過ぎる課税最低限が問題なのでありますから、これを抜本的に引き上げることにより解決すべきであります。  さらに、この非課税基準を設けるという異例な措置が五十六年度限りとされた裏には、広く消費に着目する間接税、つまり形を変えた一般消費税の五十七年度導入の意図があることを指摘せざるを得ません。  第二に、個人事業税の課税対象業種の拡大であります。たとえば不動産貸付業が新たな課税対象になっていますが、これが実施されれば、その負担は家賃や部屋代に転嫁されることは必至であり、広範な入居者にその影響が及ぶのを避けることができません。個人事業税は公共サービスの受益関係が明らかではなく、個人所得課税と二重課税となるものであり、廃止すべきであります。  第三に、障害者の問題です。政府案の中では、障害者に対してとられた改正点は、固定資産税の課税標準の特例を延長することなどわずか数点であります。それも、特例措置が縮減された上で延長されるという不十分なものです。質問でも取り上げましたように、障害者の家庭は諸経費が非常にかさみます。障害者控除の引き上げこそが必要であります。国際障害者年にふさわしい法改正とするためにも障害者控除、特別障害者控除の引き上げを再度要求いたします。  第四に、不動産取得税税率引き上げられ、初年度二百十億、平年度七百二十八億円の増税が図られ、地方税独自の改正の中では最も大きな額となります。住宅については、五年間に限り現行税率据え置き措置をとっていますが、期限を設けることはやめるべきであります。  次に、わが党の修正案について述べます。  わが党の修正案は、本人三千円、配偶者、扶養親族一人につき千五百円を税額から控除する税額控除方式による住民税の減税を内容とするもので、この措置により課税最低限は標準四人世帯で百八十七万三千円と、現行より二十八万九千円引き上げられることになります。この方法によれば、生活保護基準額を想定して政府案のような異例な非課税基準を設けることや、それをわずかに超える所得の人に対する減税措置などの必要は全くありません。  この修正内容は、国民の切実でかつ焦眉の要求にこたえるものであります。  なお、社会党並びに公明党及び民社党共同提出の修正案については、原案よりは改善されるものであることを認めますが、わが党独自の修正案を提出しているので棄権いたします。  以上で討論を終わります。(拍手
  278. 左藤恵

    左藤委員長 田島衞君。
  279. 田島衞

    ○田島委員 私は、新自由クラブを代表して、ただいま議題になっております地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案並びに同案に対する三つの修正案に対し、いずれも反対の立場から討論を行います。  本法案の提案理由の説明に財政事情の厳しさを挙げておりますけれども、財政悪化要因の最大のものは、国内、国際いずれの経済情勢とも不可分の連動性を持たされる財政というものに対する認識の甘さと行政の放漫姿勢に加うるに、国民、住民の立場にかわってチェック機能を果たすべき政治の怠慢、さらには公務員意識の欠如にあると言わなければならないと思います。  高度経済成長期に生まれた政治、行政の緩みは、それが許されなくなろうとする時点で当然みずからの責任と犠牲によって回復し、最小の経費をもって最大の効果を上げるべき行政の本旨に戻らなければならなかったはずでありますが、それが実行されずに漫然と時を過ごした結果が、今日の財政悪化を招いた一番大きな原因だと言ってよいと思います。ほとんど国民、住民の責任ではないと言うべきであります。  したがって、財政再建への道は増税に頼ることなく、まず行政みずからが血の出るような努力を断行すべきであり、政治もまた、税金をむだにしない安上がりのしかも実のある行政を目指して、党利党略を離れた行政への協力をいたさなければいけないと信ずるものであります。  そのような責任あるそれぞれの立場での努力の成果なくして、いたずらに住民に負担を強いることは断じて誤りだと思います。なおまた、徹底した節税と行政簡素化への努力なしで税源拡充や税率の強化を実施することは、行政改革に水を差すものであると思います。  しかも、改正案内容には幾つかの疑問点がありましたので、その疑義について数点尋ねましたが、残念ながら理解するに足る説明は得られなかったのであります。  よって、政府原案については、その性格、内容いずれも賛成いたしがたいのであります。  次に、修正案についての意見でありますが、前述の主張のごとくみずからの努力による財政再建のないままに、逆に減税の措置を求めることも現状では無理があると考えるものであります。  したがって、結論として、減収を予想させる各修正案にも残念ながら反対するとともに、行政みずからの努力不足のまま住民の負担をゆえなく重くする原案にも反対であります。  以上で討論を終わります。
  280. 左藤恵

    左藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  281. 左藤恵

    左藤委員長 これより採決に入ります。  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、大橋敏雄君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  282. 左藤恵

    左藤委員長 起立少数。よって、大橋敏雄君外一名提出の修正案は否決されました。  次に、小川省吾君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  283. 左藤恵

    左藤委員長 起立少数。よって、小川省吾君提出の修正案は否決されました。  次に、三谷秀治君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  284. 左藤恵

    左藤委員長 起立少数。よって、三谷秀治君提出の修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  285. 左藤恵

    左藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  286. 左藤恵

    左藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  287. 左藤恵

    左藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十一分散会