○正森
委員 私がこれから問題提起として申し上げようと思いますのは、必ずしも現行法の解釈としてではなしに立法論として少し是正した方がいいのじゃないかと思われる点があるからであります。それは、先ほど挙げました判例というのは古物商
関係の方が提訴なさってそれへの判決なんですが、古物というのは御承知のように古い物を買ってきましてそれをまた消費者に売る、つまり小売であります。ですから、何回古い物を買ってきて何回売りましてもそのたびに
物品税がかかるのですね。ところが製造物
課税あるいは移出
課税と呼ばれる第二種の場合は、これは移出のたびにかかるという形になっているから理論的にはそれは二回だって三回だってかかるのでしょうけれ
ども、実際は製造場から出るというのはほとんどの製品は一回ですから、そこにランクされたものは一回だけしか
課税されないで、古物になった場合には
物品税はかからない、こういうことになるわけですね。そこでその点で非常に不平等的な問題が起こるのじゃないかということがあるわけであります。なるほど第一種にされているもののうち宝石とか、よほど傷まない限りは時代が変わっても価値が余り変わらないというようなものもございますが、ここに私は、ある古物商の方から預かってきたのですけれ
ども、第一種の五か六に毛皮製品というのがありますね。これは毛皮製品で持ってきたのです。速記に入らないからちょっと申しますけれ
ども、これを見ますと、これは確かに暖かい、だろうと思いますけれ
ども、こういうぐあいに破れているのですね。裏でもそんなにりっぱなものではありませんが、これもやはり毛皮だということで二万五千円とかなんかの
課税最低限を超えますと何回でも
税金がかかるということになるわけですね。
それからまた、
政務次官、これ、古いものですが、優勝カップなんです。これはちょっとこういうのがとれているのですね。ですけれ
ども、これは銀製品ですか、だから何になるのですか、貴金属になるのですかな。だからどんなに古物であってもこれは貴金属だからというので、これはテニスか何かでなつかしいと思ってだれかが買えば、何遍買うてもまたこれ
税金がかかる。
ここにあるのはめがねの——次官もめがねをかけておられますが、めがねの外側で、これはこういうぐあいにつぶれているのです。つぶれているけれ
ども、これは金縁めがねであるということになりますと、これは貴金属製品であるということで、古道具屋で売りますとこれに
物品税がかかるということになっているわけであります。
私はここに——
委員長、後でお暇でしたらごらんいただいたらいいと思うのですけれ
ども、指輪、これは判こを押せるような指輪ですね。これは銀だからだめだ。それからここに、これはめのうですか、帯どめか何か、ちょっと割れているのですね。これ、もしうまいことのりででもひっつければやっぱりかかるということになりますし、これはどこかの会社の記念品みたいな金のバッジですね。これもやはり古物でかかるということになるのですね。
次官、まだありますよ。ここに何かめのうみたいなものがちょいとあるのと、真珠があるのですね。別表を見ていただきますと、真珠の場合は合成品でもやはりかかる、こういうぐあいになっておりまして、しかも製品にしなければ
免税点がないというようなかっこうで、これは全部古物で売る場合は
税金がかかるということになるわけです。それだけならそんなに不公平だとは思わないのですけれ
ども、ここに時計があるのです。実は時計も持ってきているのですけれ
ども、高いものですから写真で失礼いたしますけれ
ども、これはどう読むのですか、ピアジェというのですか、時計に宝石が全部ちりばめてあるのです。中にはこれが時計かと思われるような——次官ちょっと、これが時計なんですよ。ここに
一つ小さい時計がついているのです。時計に貴金属がちりばめてありまして、値段を見ますと、後で見ていただきますが、一億二千六百五十万円、こちらの時計は五千九百五十万円というので、私もけたが間違っているのじゃないかと思ったのです。それはまさに貴金属といいますか宝石そのものなんですね。時計は添え物でありまして、宝石そのものなんですが、それについてはこれは小売
課税ではないのです。だから一回
税金がかかれば、後は古物商へ持っていって何回売りましても
物品税はかからない。ところが時計なんかにつけてないものは二万五千円を超えれば、ちょっとしたものでも二万五千円くらい超えますから、これは五回売っても十回売っても現在なら
物品税が一五%ですか、かかってくるということになるわけであります。
そうしますとどういうことが起こるかといいますと、判決の中に書いてありますけれ
ども、事実上の二重
課税の問題が起こってくるのですね。法律的には確かに古物を買う人は第一回目の消費者とは別の消費者だから租税を
負担する者は違う、こういうことは言えるのですが、しかしこの判決を見てみますと、これは
国税庁側の答弁の中で言っているのですけれ
ども、こう言っているのですね。「原告は、古物の消費者は二重
課税の被害をもろに受けることになると主張するが、いわゆる古物と称するものの小売業者を買手とする
取引価格はすべて買手の意思によって一方的に決められ、譲渡人の希望売渡価格は無視されがちで、古物としての市場価格の限度内で小売業者の小売マージンを控除した残余価格で
取引されるのが業界
取引の常識である。したがって消費者が第一種物品を小売業者に売渡す場合、その売却価格は、多くの場合、新品の市価よりかなり低額になるのが通常で、その差額の大
部分は買受業者の転売マージンによって占められるのである。」云々というようなことを言っているわけです。これはどういうことかというと、そういうものを買った消費者は、売るときに高く売ろうと思っても、買う古物商はどっちみち
物品税をもう一遍取られるのだから
物品税を引いた価格、しかも自分のマージンを見た価格、しかもその価格は新品よりも安くなければならない、そうでなければ売れないわけですからそういう値段でしか買わないということを言っているのですね。そうしますと、法律的にはなるほど
物品税を
負担して
現実に金を払うのは第二の消費者ですけれ
ども、そのもとになって買い入れるときに安くしか買うてくれない、買いたたかれるという形を通じて結局第一の購買者は最初新品を買うたときにもろに
物品税を取られ、二遍目は売るときに
物品税を予想した額でしか引き取ってもらえないということで、つまり出入りプラス・マイナス二遍事実上
物品税を
負担していることになるというのを間接的には
国税庁も認めているのです。しかし法律的には第二の
物品税を
負担するのは第二の消費者である、だから担税者は違うから二重
課税にはならないからいいではないかというのが議論なんですね。それは議論は、私は法律家ですからよくわかるのですよ。しかし事実問題としてそういう二重
課税に等しい問題が起こっているということを
考えますと、しかも一方にいまお見せしましたように、ピアジェの、この宝石でちりばめた時計は一回しか
税金がかからないで古物になればフリーパスであるということを
考えると、現行の法律の解釈としてはそれはやむを得ないのだと思いますよ、あるいは皆さんのお立場では。しかし立法論としましては、もし避けられるものならば、小売
課税にしている以上古物に何遍かけても仕方がないというのであれば、その第一種製品の幅を、せめて毛皮だとかあるいは足で踏むじゅうたんだとか、そんなものまで第一種にしているのは製造
課税に移すとか、それから何ぼ時計だ、時計だと言い張っても、こういうように宝石でちりばめたものはやはり貴金属あるいはそういうたぐいのものだということにするか何かしなければ、余り不公平過ぎはしないかというように思うわけです。それで、
説明がえらい長くなりましたが、次官、御感想、将来の御構想がございましたらぜひ
お答え願いたいと思います。