○堀
委員 各
参考人にお尋ねをしようと思いますが、まず最初に、
水野参考人に
ビールの問題について。
私は率直に言って、
日本の
ビールの
課税というのは、確かにメーカーが大
企業でありますから租
税負担力があるということに着目をしておる点は、徴税側の
立場としてはわかるわけでありますけれ
ども、
国民の
嗜好の側から考えますと、実は
ビールというのは果たして本当に
酒類かどうかという問題が
一つ問題点としてあろうかと思うのであります。
私、各国を歩いて感じたのでありますけれ
ども、アメリカでは選挙の日は
アルコールを売っちゃいけないのだ、こうなっています。調べてみますと
ビールはいいのですね。スピリットは売っちゃいけないけれ
どもビールはよろしい。要するに酒の待遇にしておる国としていない国が実は慣習上あるわけであります。
私は、今日
国民が最も広く飲んでおる
酒類というのは
ビールではないか、こう思っておるのです。私
ども食事をする会合に出ますときに見ておりますと、私はもう本来、この
酒類の問題を長年やっていますが、
アルコールがだめでございまして、まあ飲むとすれば
ビールで小びん一本がやっとである、お酒ですと大体五勺飲むのがちょっとオーバーだという程度の量でありますけれ
ども、まず
皆さん最初に
ビールで
乾杯してそれから
日本酒をちびちびというのが今日わりに多いのですね。食事をする状況でも多い。また他の
酒類は、
ワインはちょっと最近別格のようでありますが、女性で
日本酒をたしなむという人は非常に少ないのですけれ
ども、
ビールはいまや
日本の女性も何か普通の
酒類という感覚よりもやや清涼飲料水のまあ特別な感覚というような感じで飲んでおると思うので、いま一番
国民に親しまれておる大衆酒というのは何かといえば、私は
ビールだろうと思うのです。
先生はこの問題について、
国際比較で単純に話をすべきではないのであって、やはりこれは慣習の
相違、
嗜好の
相違、
税負担率の単純な比較は問題がある、
国際比較で高いと断じるわけにはいかない、こうおっしゃったのでありますけれ
ども、私はやはり実は高いと思うのです。それは、恐らく全
国民が見て
ビールを飲んでおるときに、さっきキリン
ビールの方がお話しになりましたが、
アルコール度換算という
価格度から見るならばこれは論外の
税率なんでありますね。ですから私は、本来
ビールの
税率はもっと下げるべきだと思うのですが、残念ながら過去から大変高い
税率が続いてきているわけであります。
ちょっと過去からの
税負担率を申し上げてみますと、
昭和四十五年の
ビールの
税負担率は五一・六%、それが四十六年から四十八年までは四七・九%。その次に、四十九年に
ビールの
小売価格が上がりまして百六十円になりました。そこで
税負担率が四一・九%に下がりました。その後五十一年にさらに
ビールが百八十円となって、そこで
税負担率が三七・三に下がりました。五十二年に
増税が行われて、百九十五円に上がると同時に四二・一%と
税負担が上がって、五十二年、五十三年が四二・一%、五十四年、五十五年が四七・四%でありましたが、二百十五円の
ビールが二百四十円になったものですからまたここで四二・五%に下がった。こういうのが
ビールの
小売価格に対する
税負担率の変化であります。今度これが四七・九%になる。ずらっとこう横並びで見ると大体どうやら
値上げをした後では実はこれは
従量税の特性でありますから
負担率は下がりますけれ
ども、四七・九%というのは
昭和四十四年、四十五年の五一・六%に比べると実はまだ四%くらい低いということですから、いまは
財政再建ということでさっきお話がありましたが、
酒類、もうちょっと税制の制度の問題を考えてほしいという問題が非常に重要なんで私も後でちょっと申し上げますけれ
ども、いまは大蔵省なりふり構わず税収を上げればいいというのが私は大蔵省主税局の現状だろうと思うものですから、そうなりますと、ずっと
税負担の割合を過去と比較をしてみますと、実は今度の
増税というのは過去に振り返ってみるとそんなにべらぼうに上げたということにはならない、要するに
従量税の
税率補正を多少やったということではないかと思うのです。ですから私は賛成しているわけじゃないのですが、現状では、大蔵省の
状態としては、まあ大蔵省の
立場に立てばやむを得ない問題だろう、こう思うのであります。
しかし、私はいま大衆の集会に出ておるときにはこういうことを言っているわけです。
皆さん、ともかく政府は物価がこれだけ上がっておるのに物価
調整の
措置を一向やっておりません。
皆さん、累進
税率なものですから、名目収入がふえたら実際はこれだけ税金ふえてますよという話をして、そうなったら賢明な選択によって要するに安い
税率の
負担をみずから考えてもらう以外にない。そうすると、今度の
増税の中では
清酒の二級が御案内のように九%程度で低いわけであります。その次に低いのがしょうちゅうであります。
〔山崎(武)
委員長代理退席、大原(一)
委員長代理着席〕
ですから、しょうちゅうと
清酒の二級を飲むことが
生活の中でのむだな
税負担を回避する唯一の道ではないか。こういうことをいま大衆の会合では言っているのでありますが、これらから見ると、私はいま申し上げたように
ビールの税の
負担が高過ぎるというような問題、それからこれはこの次に申し上げる
級別問題でありますけれ
ども、そういうような制度問題がどうしても速やかに一遍再検討されなければならない、こう思うのであります。
そこで、実はさっきから
級別の問題が
皆さんの方でお話に出ております。
級別というのは、現在とられておりますのは
清酒と
ウイスキーとブランデー、これだけが実は
特級、一級、二級という
級別になっているのです。この
ウイスキーやブランデーは実は大変理由のある
級別になっているわけであります。
ちょっと
ウイスキー特級のところを読み上げますと、「
ウイスキー特級 法第三条第九号イ又はロに掲げるもの(以下「
ウイスキー原酒」という。)」要するに
ウイスキー原酒の量が全体の量の中で幾らを占めておるというものをもって実は
特級であるとか一級であるとか二級であるとかこういうふうに決めているわけですから、これはある
意味で客観的、科学的な根拠をもとにした
級別制度だろう。原酒が多いほど値段が高くなるというのは当然であります。長い間寝かしておいた原酒とそうでないモルトのものとを
一緒にするのでありますから、当然ここには客観的、科学的な
級別格差というものが保証されていると思うのであります。
ところが、
清酒はどうなっているかといいますと、
酒税法施行令第十一条で「
特級 品質が優良であるもの」「
清酒 一級 品質が佳良であるもの」「二級
清酒のうち、
特級及び一級に該当しないもの」、
皆さん、今日の近代社会においてこんなべらぼうな施行令をそのままほっておくなんということは近代社会として私は全く考えられないことだと思います。
さっきからお話のありましたように、戦後のあの米のないときに何とかして一定の限られた米で税収を上げようということになるのなら確かに
嗜好の問題でございますからこういうことを考えたかもしれません。私、
昭和三十五年に当
委員会へ参りまして最初に
酒類の問題を取り上げたのは委託醸造の問題でございました。当時国税庁の間税部長が泉さん。そこで私が、どうして米をつくらない者が委託醸造と称して米の割り当て券だけを売買することによって金を得るようなおかしな制度があるのだということを私は徹底していまからもう二十年余り前でありますけれ
ども当
委員会でやりました。そのときに私が米があるではないか、もっとどんどん配給してこんな権利にあぐらをかくような特権的なやり方をやめさせろ、こう言って厳しく間税部長を追及しましたら、検討さしていただきますということでありましたが、質問が終わったときに泉さんが私のところに来られて何とおっしゃったかというと、先生、先生のきょうの質問は、私
ども国税庁にとっては実は大変な御支援をいただいたことになります。要するに
酒類業界というところでは
生産量をできるだけ圧縮をして、しかし自分はできるだけたくさんもらって酒をつくってもうけよう、こういうようなことになっておりました。自由化論、徹底して米をやれ、要するにのどまで来て口からあふれるくらいに米をやれ、そうすればこんな委託醸造なんという制度は吹っ飛ぶというような話をいたしまして、泉さん大変喜んでくれまして、国会でそういう御発言があったので私
どもはこれからこの線に沿って行政をいたします。これが
皆さん、
日本の
酒類行政が要するに
競争原理という問題を導入して、このごろ大変停滞しておりますけれ
ども、今日ここまで来たのはまさに当
委員会において、
競争原理でともかくいかなければ雑酒、
ビールや
ウイスキーと
競争する社会じゃないのか、
清酒だけの社会ならどうやっていたってそれは選択の余地はないけれ
ども、これから必ず
ビールや雑酒が伸びる。その中で
清酒だけがぬくぬくとだんな衆の集団で、要するに採算ベースなんか考えないで、ともかく田舎の名士だからまあまあ酒だけつくっておれば、先祖代々の
仕事だからなどというような前近代的な話、さっきも近代論が出ましたけれ
ども、これで
清酒が生き延びると思ったら大間違いだといって私は国税庁のしりをたたいて米をどんどん出した。
そうすると、地方へ参りますと、堀さん、あなたは大手の味方だ、主産地の選挙区だからあなた、大手の味方ですね、こう言われたわけです。いまそこにたしか佐藤さんがおられたような感じがするんだが、当時、金沢に視察に行きました。そうすると金沢の国税局長が佐藤さんだったんだが、そこでそういう話が出たから私はこう申し上げたのです。
皆さん、いまの世の中というのは自由
経済ということになっていますよ。酒屋の
皆さん、みんな自民党支持です。社会党支持の酒屋さんなんて全国に一軒もない。しかし要するに
消費者がよりよい酒をより安く飲めるということが
経済の原則だから大いに
皆さんは
競争していい酒をより安くつくれという私の主張が間違っていないと言うんなら自民党支持をやめなさい、私たち社会党の方を支持しなさい、おかしいじゃないかと言ったら、金沢の酒屋さんの
皆さん、みんな黙ってしまいましたけれ
ども、
競争原理のないところに物の発展はないというのが今日までの私の
経済に対する一貫した
立場であります。
そこで、このようないまの、
特級、品質が優良であるもの、一級、品質が佳良であるもの——私はこれを一遍こういうふうにやってみたらいいと思うのですよ。各国税局のきき酒の審査官を当
委員会で呼んで、そして各局で
特級とか一級とかに決めたものをともかく何にも彼らにわからせないで各局の審査官に飲ませてみたらいい。どれが一級でどれが
特級か当てられるかどうか。こんなもの当たるはずがないんだ。主観によって
特級、一級を決めて、税金の額はうんと違うなどというのは全く近代的でないですね。税制のもととしてはこんなものはナンセンス。ですから、さっきもお話のあったように、大体二級酒なんて名前がよくないですよ。だから二級酒を外そうと思えば
方法としては
従価税しかないと考えて、かつて税制二課長の補佐であった内海さんに、ひとつ
従価税で大蔵省の試案みたいなものを出してみろ、こう私が言ったら、内海さんが書いたのがあの内海試案なんです。ただ、この試案はゾーンが小さくて、まるで累進
税率みたいになっているから大変御反対があったのですが、今後制度が改正できる段階に来たら、この問題を考え直さなければならぬところへ来ている、私はまずこう思うのでございます。そこで、そういう考え方について、いまの
級別問題は論理的でないと思うのですが、
水野参考人はいかがお考えでございましょうか。