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1981-02-20 第94回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月二十日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 綿貫 民輔君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 小泉純一郎君 理事 山崎武三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君       相沢 英之君    麻生 太郎君       今枝 敬雄君    木村武千代君       熊川 次男君    笹山 登生君       中村正三郎君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    毛利 松平君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山本 幸雄君    与謝野 馨君       大島  弘君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       平林  剛君    堀  昌雄君       柴田  弘君    渡部 一郎君       玉置 一弥君    正森 成二君       蓑輪 幸代君  出席政府委員         大蔵政務次官  保岡 興治君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         国税庁間税部長 小泉 忠之君  委員外出席者         参  考  人         (名古屋大学経         済学部教授)  水野 正一君         参  考  人         (株式会社福光         屋取締役社長) 福光  博君         参  考  人         (麒麟麦酒株式         会社専務取締         役)      桑原 良雄君         参  考  人         (大関酒造株式         会社代表取締役         社長)     長部文治郎君         参  考  人         (但馬酒造株式         会社代表取締         役)      日下部昌男君         参  考  人         (玉乃光酒造株         式会社代表取締         役)      宇治田福時君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 二月十九日  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一二号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三号) 同月二十日  関税暫定措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第四  号)      ————◇—————
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  酒税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  ただいまより、本案について参考人から意見を聴取することにいたします。  本日御出席をいただきました参考人は、名古屋大学経済学部教授水野正一君、株式会社福光屋取締役社長福光博君、麒麟麦酒株式会社専務取締役桑原良雄君、大関酒造株式会社代表取締役社長長部文治郎君、但馬酒造株式会社代表取締役日下部昌男君、玉乃光酒造株式会社代表取締役宇治田福時君の各位であります。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、目下、酒税法の一部を改正する法律案を審議いたしておりますが、本案につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきますようにお願いいたします。  なお、御意見十分程度にお取りまとめをいただき、その後、委員からの質疑にお答え願うことにいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず最初に、水野参考人からお願い申し上げます。
  3. 水野正一

    水野参考人 私、名古屋大学経済学部教授水野正一でございます。  ただいまから酒税法の一部を改正する法律案につきまして、参考人として意見を述べさせていただきます。  まず、今回の酒税法の改正につきましては、財政再建立場からこれをとらえることが基本的に重要であるというふうに考えます。  歳入、歳出の両面にわたる財政体質の改善によって財政再建を図ることは、現在緊急の国民的課題になっております。その一環として、昭和五十六年度において現行税制として対応できる範囲内で相当規模増収を図る必要があるという事情におきまして、特殊な嗜好品である酒類について税の増収措置を講ずることは適切なことであると考えます。  酒税は、その税率の決め方に従量税従価税がありますが、従量税を基本といたしております。そのために、物価水準及び所得等上昇に伴いまして、負担水準はここのところ低下を来しております。負担低下しております酒税従量税率引き上げて適正な負担水準を確保することは、現在の厳しい財政状態を考慮すれば、妥当な措置であるというふうに考えられます。  従価税の問題につきましては、従価税はその価格に応じまして税負担を求めることができます。また、所得物価水準上昇などに即応しましてほぼ一定の税負担を求めることができるという面ですぐれた方法であります。したがって、この従価税への移行が望ましいとする意見がかなり有力であります。  しかし、従量税につきましても、これは課税方法が簡明であるということ、それから酒類業界では長年にわたって従量税になれ親しんでいるということ、また酒類には高い負担を求めているというところから、従価税では転嫁という面でむずかしさがあるという現実的な諸点での難点がやはり考えられるわけでありまして、これらを考えますと、一挙に従価税に移行するということについても問題があるように考えられます。  したがって、この従量税従価税かという問題につきましては、税務執行上の問題、酒類生産及び流通事情というものを十分考慮しまして、その上で酒税制度全体のあり方とともに検討すべき事柄であるというふうに考えられます。  酒税といいますのは、言うまでもなく嗜好品である酒類に対する税でありまして、これについてはかなり高い税率での課税が可能であり、また、そうすることによって経済面に特に悪い影響を及ぼすということが比較的少ない税でありまして、財政当局の方としましても、これによって比較的多額の税収を確保することができる。また、嗜好品である酒類消費の社会的、経済的な性質というものから考えまして、負担の公平という観点からも問題が比較的少ない税であるというふうに考えられます。  したがって、今回の税率引き上げは、物価水準及び所得等上昇によりまして負担率低下していたのを適正な負担率に回復させる意味を持つものでありまして、家計に対する負担増経済全体としての消費に及ぼす影響、また生産面に及ぼす影響、こういうものから考えまして、これによって特に悪い影響を生ずるというふうには考えられないわけであります。  清酒一級、二級、合成清酒、しょうちゅう、みりんなどにつきましては、その消費及び生産態様等配慮しまして、税率引き上げ幅につきまして、その他のものと比べて小幅にとどめたことは一応適切な措置であるというふうに評価されます。  また、大衆の嗜好品であるビール等につきまして、それに対する税負担は現在でも国際的に見て著しく高い、これについて清酒特級とかウイスキー特級と同率の引き上げを行うのは適当でないとする意見もかなり強いように聞いております。  ビール税負担国際比較という点につきましては、これはそれぞれの国の事情、いわば国柄の相違とかあるいはアルコール飲料についての慣習の相違であるとか、またそれぞれの国民嗜好、こういった点でかなり違った点がありまして、したがって、この税負担率だけを単純に比較するということには問題があるように考えられます。  わが国の現行酒税におきましては、一応清酒あるいはビールウイスキー、こういうそれぞれの酒類生産側事情あるいは消費者側の特性、こういう種々の要素を考慮した上で、各酒類間のバランスに配慮した上で税率が定められて今日に至っているわけでありまして、これを国際比較の点だけから特に高いというふうに断ずることはできないように考えられます。したがって、今回の税率引き上げにつきましても、その他の酒類と同じように、従量税での負担率低下というものを回復するという意味でのほぼ同様な引き上げでありまして、これについてもそう特に不都合な点はないのではないかというふうに考えられます。  以上、簡単でありますが、私の意見の陳述を終わります。
  4. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  次に、福光参考人にお願いいたします。
  5. 福光博

    福光参考人 私、石川県の金沢で日本酒の製造、販売をいたしております福光でございます。本日、この会に出させていただきまして、意見を述べさせていただきましてありがたく存じております。  私きょう参りまして、今回の酒税増税につきまして基本的には賛成の立場であります。  一つは、財政再建ということで増税もやむなしということでございますから、私どももそれに対して努力しなければならぬということが一つでありますし、もう一つは、清酒はたび重なる米の値上げによりまして何回も値上げをいたしております。そのために、確かに税負担水準が下がっておるということもある程度事実でございます。そういう意味で若干の増税ということもやむを得ないのではないかと思うわけでありますが、しかし、清酒ウイスキーワイン等と違いまして、ここ十数年需要伸び悩みを続けております。その理由を考えてみますと、その中の大きな要素は、数次にわたる値上げによる相対的な不利な価格、高価格であるということが言えるわけであります。今回の増税におきましてその点の配慮をいただきましたことを私どもとしては大変ありがたいと思っております。そういう意味で、この増税機会に若干でもウイスキーとの相対価格が縮まりますことを私どもとしては高く評価しておるわけであります。その点は御配慮には感謝しておるわけであります。  次に、私ども日本酒業界におきましての問題点を若干申し上げたいと思います。  一つは、原料米の問題であります。  先ほど申しましたように、ウイスキーワインと違いまして、日本酒大変需要が低迷しております。それも私ども立場から申し上げさせていただきますと、この十数年間米代値上げは一体何回あったのか。まず年中行事のように生産者米価値上げがあったではないか。そのたびに私どもの直接生産原価の七割を占める原料米はそのままスライドして上げられた。このために、私どもとしては約二年に一回ぐらいの割合で値上げをせざるを得なかったのであります。これはとても私ども企業努力で吸収できるものじゃなかったのであります。そのために、先ほど申しました相対的な不利な価格になった。これに反しまして、ウイスキー等は、かつては三百円台のレートで決められた海外の自由な国際価格原料を使用しておりました。麦芽もそうでございますし、それからアルコール原料もそうであります。そのために、相対的な私どもの試算ではかなりのものがあるのでありますが、その原料米価格国際価格の三倍にもすでに上がっておるのでありますから、これを引き下げる努力をどこかでお願いできないものか。国際価格の三倍、片一方は国際価格、それで同じように競争しろと言われても、これは大変無理な話だと私は思うわけであります。そういう意味で、競争条件の整備という意味からも、この増税機会調整をしていただくことはありがたいことでございますが、それよりもっと根本の原因の原料米をどうか安くしていただきたい、このことをひとつぜひお願いいたしたいのであります。  その次に級別の話でありますが、最近級別にいろいろのひずみが起こっております。特級より高い一級とか一級より高い二級、あるいは特級より高い二級も若干出ております。そのために、級別制度はもう要らぬのではないかという説が方々から聞かれます。特に流通業界からそのような説を聞かされるのでありますが、しかしこの級別制度はすでに約四十年近く続いておりまして、ある意味では緩やかな従価税になっておるわけであります。そういう意味地方メーカーにとりましても若干の支えになっておりますし、それから消費者も、現在のところはまだ特級、一級、二級という区別で選んでおられるところがございます。このために、この問題につきましては早急に級別廃止ということを言うてもいいのかどうか、この辺につきましては若干の疑問があるのではないかと思っております。  特に、これに付随いたしまして、級別廃止になりますと従価税の問題が必ず出てまいるわけであります。ところが従価税というのは、ある意味では税としては非常に妥当なものかもしれませんが、清酒のようにたびたび米代値上げその他で値上げをしなければならぬという業界にとりましては、米代が上がったから値上げする、値上げするから全部一緒に上げんならぬ、本来ならこれだけ上げたらいいところを税の分も一緒に上げて上げんならぬ、こういうようなことが起こってくるわけでありますし、またある意味では納税手続が非常にむずかしくなる。こういうことで私ども日本酒業界にとりましては、従価税は絶対困るというのが実は従価税に対する考えであります。  それから、最近またおけ取引のことが問題になっておりますが、これにつきましては一部に誤解があるのではないかという気がいたしております。酒というのは、日本酒だけではございませんけれども、同じようにお蔵でつくっておりましても、できる酒はものすごく違うわけであります。必ず違うわけであります。同じ酒をブレンドいたしましてまたタンクに置いておきます。それを二つに分ければ必ず二つ違うものができるわけであります。結局どんなことをいたしましても、販売時点で、つまりびん詰めする時点でそれをその銘柄らしい酒にブレンドする必要があるわけであります。私ども会社で一番熱心に、一番高給をはんでいるといいますか、大事な仕事ブレンダーであります。調合する人間が一番大事な役目でありまして、しばしばこれには最高責任者ブレンダーに当たっている蔵もたくさんございます。私どもの蔵でも、私ももちろんこれに参加いたしまして一緒調合いたすのでありますが、調合というのは一番むずかしい、しかし一番大事な仕事なんでございます。それをしなければ、その銘柄らしいという酒は出てこないわけであります。その意味でおけ取引というのは、たくさんの違った酒の中の一つでございまして、ある意味では範囲が広い方が調合がしやすい。しかも一遍調合いたしますと、ある意味では、マリーとも申しまして、また一つ一つ欠点がなくなっていいところだけ集まるとか、いろいろと、夫婦のようなものでございまして、完全な人が二人いたらよくなるとは限らないのでありまして、お互いに欠点を補い合うて初めていい夫婦ができるというようなところがあるわけであります。そういう意味で、おけ取引についての若干の誤解があると思いますので、私どもはいまは注文生産制ということでおけ買い先とも十分な技術指導あるいは意思の疎通をいたしましてやっておるわけでございまして、おけ取引自身は余り現在では問題がないのではないか。それによっていろいろなことが起こっているということはまた一面ございますけれども、それはまたほかの要因から起こっておるのでありまして、おけ取引をいたしましてブレンドすること自身には問題がないのじゃないかと私は思っております。  それから、最後に需要開発の話でありますが、実は日本酒業界は、皆さん方から、おまえら何をしておるのだ、寝ておるのじゃないかということをよく言われるのでありますけれども、実はそういうことじゃございませんで、日本酒がこのように低迷したのは、先ほど申しました相対価格の不利な面が一つある。もう一つは何か、これは戦後のアメリカナイズの歴史の中で起こったことであります。日本的というものはすべてだめになった。日本というものは、日本的というものは全部だめになったのであります。それは酒だけじゃないのです。しょうゆだってみそだって、食い物だったらそうですが、家族制度だって日本的経営だって皆そう言われたのです。そういう歴史の中で、やはり酒もその方の一つでいかれたわけです。しかしながら三十数年たちまして、いや日本だって、決してアメリカの属国じゃないのでありますから、やはり日本の、大国になればそれに対するアイデンティティーが欲しいではないか、その中で日本酒日本文化一つ支えである。何千年かかって日本国産技術で、しかも世界に冠たる技術でございます。これは後で、時間がないから申しませんけれども、何でしたらまた蔵の方へ来ていただきましてごらんいただきましたらお教えいたしますけれども。それは世界に冠たる技術でございます。これによってつくった日本酒がまた日本人の心の支えになるというように、私たちは実は一生懸命やっておるわけでございます。  先ほど級別をはみ出ていろいろなものができたと申しましたけれども、これにはそのような努力を、非常にりっぱなものをつくったり、あるいは非常に優秀なものをつくって何年も置いたりいたしますと、級別なんというものははみ出すわけであります。それはもう初めから級別なんか出さない。だからそれは、二級で一万円だ、おかしいと思われるかもしれませんけれども、それは二級であるのじゃないのです。そういうものは審査に出さなかったのや、そういう級別になじまなんだのや、こう思うていただかなければならぬ。だからそういうものは初めから級別とは違うところで議論していただかなければならぬと思うわけであります。  また、日本酒がいろいろと長年の歴史があるだけに、いろいろと言われております。たとえば体に悪いとか、糖尿病に悪いとか、冷やは悪いとか、女が酒を飲むと酒飲みに思われるとか、どうも私どもにはちょっと理解できぬことがたくさんあるわけでありますが、実は糖尿病だって全くそんなことはないのであります。皆さん方も、糖尿だからといってウイスキーにしようという方がいらっしゃるかもしれません。これは全くうそでありまして、私なんか大変な糖尿病でございましたけれどもウイスキーワインやめて日本酒だけにしてから半分になったのであります、血糖値半分であります。このように非常に元気にしております。そういうようなもので、しかも現在の学説では、完全にこれはもうそうじゃないんだ。総カロリーの問題であって、日本酒が悪い、ウイスキーがいい、そんなことは全くの昔の話であります。それは、昔のわからなんだときのことを言うている医者はちょっとおくれておるのじゃないかという気がするわけでありますが、そういう意味で、糖尿病だって大丈夫なんです。  そういうことをいま一生懸命、日本酒ほがらか健康学というので、週刊誌に載せてそういういろいろなことを毎月順番にやっております。  また、日本酒の日というのを十月一日に決めまして、各地で三千軒の業者がそれぞれの近所の人に宣伝する、あるいは県単位で宣伝する、中央会は東京でそれをやるということでやっております。日本酒乾杯運動というのをやっておりまして、日本酒は米を使ってつくっておるんだ、この米が余っておるときに日本酒というのは米でつくっているんです、しかも日本文化の精華なんだ、どうかぜひとも乾杯日本酒でお願いしたいということで、日本酒乾杯キャンペーンというのをやっております。これも各週刊誌でしょっちゅうやっておりますし、夏場には若干のテレビも使ってやっておるわけであります。  しかしながら、いかに努力いたしましても、私どもにはどうしようもない敵が二つあります。  一つは、先ほど申しました原料米の問題であります。国際価格の三倍というのはいかに何でもひど過ぎる。どうかこれをひとつ何とか皆さんの、先生方のお力で解決していただきたい。  もう一つは、先ほど申し上げました、日本酒だけが値上げをしなければならなくなったための相対的な価格の不利さであります。これは増税のときの税率調整以外にはこれを直すことはできぬわけであります。  どうかそういう意味で、原料米を安くしていただくことと、増税のときには日本酒に対して税率調整をしていただくことと、この二つを将来ともひとつお願いいたしまして終わらしていただきます。ありがとうございました。
  6. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  次に、桑原参考人にお願いいたします。
  7. 桑原良雄

    桑原参考人 私、参考人麒麟麦酒株式会社専務取締役桑原でございます。参考人としての意見を述べさせていただきます。  ビールは、御承知のように麦芽やホップ、米などの農産物を原料といたしまして、酵母によりまして発酵、熟成させた低アルコール健康飲料でございます。また、ビールは、コミュニケーションを促進する潤滑油であるというふうにも言われておりまして、国民のあすへの生活の糧、活力の源になっている、そういうふうに考えております。また、ビールは現在では酒類の六六%を占める国民酒でございまして、オイルショック後の総合物価対策の際にも、酒類の中ではビールだけが生活関連物資といたしまして五十三の価格凍結品一つに指定されたというような経緯もございます。  業界立場から申しますと、よい製品をできるだけ低廉な価格消費者に供給したいというふうに考えておりまして、そのため、業界みずからが経営合理化努力する一方、企業努力では及ばない外部的なコスト要因、たとえば原材料価格だとかそれから税金の負担だとか、そういうことなどにつきましても、できるだけ低位の安定した水準に保つことが望ましい、そういうふうに日常考えているわけでございます。  ビール業界はきわめて競争の激しい競争的な体質を持っておりまして、各企業スケールメリットの追求と高率操業、また新鋭設備の導入と工程、物流の合理化販売コストの削減、そういったあらゆる面で徹底した効率経営を行いまして、その努力の結果が価格に反映されているというふうに考えております。  ビール価格は、昭和四十年を一〇〇といたしますと、五十五年の消費者物価指数は、総合で申しますと三〇八、食料品で申しますと三一三、そういったような指数に比較いたしまして、ビール小売価格は、指数で二〇〇、それから生産者価格で申しますと一八五と、いわゆる高率なビール税負担しながらも非常に低くなっております。  しかし、これを五十年以降について見ますと、増税だとかそれからコストアップ値上げとかそういったような価格改定がございました結果、前に申し上げましたような相対価格割り安状態というのは次第に失われる方向にあるということが言えると思います。  さらに、近年になりますと原材料などの高騰、それから輸入のモルトに比べまして三、四倍も高い国産麦使用比率上昇、そういうものがございまして、コスト上昇を強いられて非常に厳しい状態になっているわけでございます。  増税によります価格上昇による需要への影響という点につきましては否定できないのではないかというところもありまして、これは当社の経営上大きな影響があるというだけじゃなくて、卸店だとか酒販店など、そういった流通業界での売り上げ数量、それから収益、ひいては経営体質にもそれが影響するのではないかということを心配しているわけでございます。  しかし、ビール需要というのは価格のほかに消費者所得だとかそれから他の商品の価格動向だとか、そういうようなことにも左右されますし、特に天候による影響も大きいということもございますので、見通しにつきましては確かなことは申し上げられないというふうに考えております。  現在ビールの税金は大びん一本当たりで申しますと百一円九十八銭、生産者価格に占める割合は五六・七%、小売価格に占める割合は四二・五%と、これは非常に高率でございます。現行ビール税は、小売価格に占める税負担の割合で比較いたしましてもあるいは酒類に含まれるアルコール一度当たりの税額という点で比較いたしましても、国内のほかの大半の酒類に比べて高くなっております。  さらに、ぜいたく品に課税されているいわゆる物品税でございますが、これと比較いたしましても非常に高いものになっております。また、諸外国のビール税と比べましてもかなり高い税率になっております。  しかしながら、こういう状態ではございますけれども、国家の財政再建ということは緊要な国民的課題でございまして、酒類はいわゆる財政物資といたしましてこの際応分の税負担を負わなくてはならないということは一方では理解できるのではないかというふうに考えております。したがいまして、今回の財政の対応力の回復のために諸税の既存品目のほとんどすべてについて見直しがなされておりますが、その一環として行われます酒税増税案に対しましては、大局的な見地から従わざるを得ないというふうに考えております。  ビール業界といたしましては、かねてから機会あるごとにいま申し上げましたような消費コストの動向を踏まえましてビール税の減税を実施していただくように関係方面にお願いしてまいったところでございます。ビール消費がこのように大衆化してございます現状におきましては、できるだけ早い機会ビール税負担の見直しをぜひやっていただきたいというふうに考えております。  以上、意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。
  8. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  次に、長部参考人にお願いいたします。
  9. 長部文治郎

    ○長部参考人 ただいま御紹介ございました大関酒造の長部でございます。  私はちょっと違った観点で今回の増税その他について問題点を指摘させていただきたい、かように思う次第でございます。主に主産地の立場から意見を述べさせていただくということになろうかと存じます。  今回の増税案につきましては、累積が七十兆円というふうな赤字国債を抱えておられる国家財政、これは危急存亡のときであるというのはよくわかるわけでありまして、そういう面から言うとやむを得ないというふうな御議論もあるかと思いますが、しかし、われわれの最近の酒類市場、ビールとかウイスキーは別でございますけれども、特に清酒のマーケット、これはかなりかんばしくないというふうなデータが出ております。過去五年間、一月から十二月の課税移出実績の前年対比、これを平均いたしますと九七・六%でございます。したがって、じり貧であるというのがわれわれの業界でございます。  この原因についてはいままでの参考人の方々がいろいろ述べられておりますので、私は私なりの御意見を言わしていただきます。  まず第一に、原料米の調達のネックがある。これは福光参考人も言われておったとおりであります。しかし私も具体的に、アメリカで清酒をつくらしていただいております。実際にアメリカのカリフォルニア米と比較をいたしますと、現在カリフォルニア米は六十キロ、一俵当たり、これは二百五円のドル換算でございますが、五千六百円という低価格でございます。現在の日本の米価と比較いたしますと大変な違い、三倍以上になるということは正確なことでございます。  それから、われわれ次に問題にいたしますのは、業界の近代化というのがなかなか進んでいない。これは毎年、もう十年も前から業界の近代化を進めないといけないということでありますが、なかなかこれができないという困難性がわれわれ業界にはございます。これによってコスト上昇し、ますます消費者にうまくて適正な価格清酒を供給するという精神に沿うことができない、まことに残念であります。  それから第三に、この不振の原因となりますのは個々の企業の自助努力、それぞれの企業努力をするという精神にわれわれの業界は非常に欠けておる、そういうことでございます。これは、長い間続いた原料米の割り当て制度によりまして中央会依存の意識が非常に強い、何でも中央会へ持っていったら解決してくれる、そういうふうな依存心が非常に強い業界でございまして、それにまた当局の行政指導というのも加わりましてなかなかうまくいかないというのが実情でございます。われわれの業界の中で何とかなるという安易な経営姿勢がどうも不振の原因になっておるように私は思うのであります。  不振の原因の第四番は、現行級別制度にあるのでないかという感じもいたします。価格が硬直化しておりまして、どうも級別の周辺に集中した商品しか開発ができない。これはまことに残念でございまして、ある意味では脱級別ということも考えざるを得ないということになるのでないかと思うのであります。  このように不利な条件のもとで今回増税を実施された場合どうなるか。ますます清酒に対する需要が期待できないでしょうということは明白でございまして、一方酒類というのはその内部で代替性が非常に強い。日本酒を飲まなかったらウイスキーを飲む、ウイスキーを飲まなかったらビールを飲む、そういうシフトをする、代替性が非常に強いという商品でございますので、そういう面から考えまして、またこういうふうに最終消費価格がこの増税によりまして高くなるということでありますれば他酒類にかわってしまう可能性もある、清酒需要そのものも、価格弾力性がだんだん小さくなってくるという面から考えますと、どうもこの清酒そのものの需要がだんだん減退するというふうな感じになりまして、大変憂慮される事態になると思うのであります。  このような事情を考慮いたしますと、清酒の今回の増税というのは、産業政策上から考えると、むしろ余り適当ではなかったのではないかというふうな感じがする次第でございます。  しかも、級別間に増税率の格差をつけられたということは、清酒級別間の消費構造の変化を促進するという問題が出てくるわけでありまして、特に主産地の立場から意見を申し上げますと、特級増税率二五%というのは、やや高過ぎたのではないかというふうな感じがしております。  むしろここに一案を申し上げるならば、この際、特級、一級というのをやめてしまって上級酒というのを一本つくりまして、これは品質をうんとよくして消費者にアピールするような製品をつくりまして、大体千八百円ぐらいに値上げをする。次いで、二級酒というのはどうもイメージがよくないので、これを普通酒というように呼称を変更しまして、級別の簡素化を図っていただくということも一案ではなかろうかと思っている次第でございます。  いずれにいたしましても、主産地は従来、特級、一級と一生懸命やってまいりました。が、まことに不本意でありますけれども、今回の清酒増税によりまして、下級酒の方もタッチせざるを得ないというふうなことになる心配がございます。清酒のマーケットは、これを機会に何か新しいパターンに変化をするのではないかというふうな感じがしております。  さて次に、この際、業界内部の問題として、未納税取引について意見を述べさせていただきます。  未納税取引というのは、昭和十九年以来約三十五年間の長きにわたりまして続いてまいりました商行為でございます。また、清酒のブレンドということは、いまも他の参考人から発言がございましたが、元来、個々の企業の中で行われておることでございますので、私は、品質上の問題はないのではないかというふうに考えておりますし、また、さらに今後主産地におきましては、どう考えても、新しい工場を建設するとか増築するということは、公害対策上非常に無理であるという状態でございますので、そういう点から考えますと、未納税取引というのは、清酒業界にとって必要な商行為でなかろうかというふうに思っております。しかし、将来的には、このままの未納税取引では困るのでありまして、未納税取引そのものも、合理化された未納税移出体制というのが望まれるわけでありますので、この方向に向かって移出企業各位の御努力を期待する次第でございます。  いずれにいたしましても、われわれ清酒業界におきまして、将来どういうふうな図面になるかというふうなことを最後に申し上げますと、やはり主産地銘柄としては、有力な地酒の銘柄及び合理化された提携未納税移出企業と三位一体となりまして、将来、清酒業界の確固たる繁栄に向かって邁進していかなければならないというふうな希望を私自身持っておる次第でございます。  各位におかれましては、国酒としての日本酒に絶大なる御協力、御援助をお願い申し上げる次第でございます。  以上をもって、私の発言を終わります。ありがとうございました。
  10. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  次に、日下部参考人にお願いいたします。
  11. 日下部昌男

    ○日下部参考人 私は、兵庫県の北部にあります地方都市豊岡市におきまして、祖父の時代以来醸造をさせていただいておる但馬酒造の代表取締役日下部昌男でございます。  御存じのように、全国には二千七百軒余りの醸造業者がございますが、そのほとんどの八五%が三千石以下というようないわゆる零細酒造家でございます。当社もその一員としまして、先ほど来の参考人各位の御意見もありましたけれども、私はそのような立場から意見を述べさせていただきたい、このように考えます。  いろいろとお話がありました中にも未納税取引のお話がありましたけれども、こういった八五%という小規模の醸造家の大半が、大手と言われるメーカーに対しまして未納税取引、おけ取引をもって経営の依存をしておるというのが実態でございまして、最近の清酒の出荷不振とかあるいはいろいろな不安定要素の多い中で、合理化をお進めになっておられます大手も多うございまして、買い上げ価格の凍結とか、あるいは納入製品の検品強化などで零細、いわゆるおけ売り依存型業者の経営悪化、倒産を招きまして、それが直売とかメーカーの乱売の原因になっている面もございます。  私どもの当但馬北但地区にもかつては九社の酒造業者がございましたが、現在は当社を含めまして実質的には三社となっております。  零細業者というのは、言うまでもなく資金効率の悪化とか販売弱化などの欠点がございます。業界では第三次近代化計画の中で転廃給付制度をつくり、勇気ある撤退を促進しておりますが、全国的にはその効果は不十分でございます。  御承知のとおり、先ほど来お話がありましたが、清酒コストの七割を占める原料米というものが食管法で管理されておりまして、食管の赤字解消を旗印に毎年のように上がっております。それとまた、原料アルコールも毎年値上げが著しく、清酒製造業者にとりましてきわめて深刻な問題となっております。このようなコストアップの吸収策として販売価格値上げというのがありますが、現在のような低成長期のもとではそれこそ消費の下落を招くため、簡単には実行不可能でございます。  そのように酒類生販業界におきましては、ここ一、二年の間における酒類需要伸び悩みを反映しまして、銘柄とかあるいは企業競争のみ激化いたしまして、さらには諸経費の高騰が続くということから、経営環境の厳しさを訴え出る業者がふえておるわけであります。そのようなさなかに、本年は五月から過去に見られなかった大幅増税が、個人消費の低調のもとで、しかも特にわれわれ清酒業界にとりましては、ビール業界とは逆に閑散期を前にして実施されることになりましたために、ことのほか厳しいものとなってまいるわけでございます。こういう言い方をするとおかしいのですけれども、同じ値上げをなさるのであれば、清酒ビールも洋酒も、いわゆる酒類業界全般にとりまして、もう少しいい時期を選んでいただきまして値上げを願ったら非常に助かる次第でございます。  さて、このたびの増税額の一%程度のものが生産販売三層のマージン分として配分されることになっておりますが、この程度のマージン増では、すでにそれを上回っている販売数量の伸び悩みに伴う販売管理費の増大、諸経費の高騰によって膨張する経費増を埋め合わせることはきわめてむずかしく、なかんずく増税後の酒類需要がどのようになるか、さらには生販業者の環境にどのような変化をもたらすかということが、きわめて重大な問題となってまいると憂慮する次第でございます。  いずれにしましても、おけ売り依存型の零細業者にとりましては、販売基盤並びに企業体質の軟弱性から考えまして、このたびの増税による先行き不調を考え合わせますとき、はなはだ憂慮にたえぬものがあると思うのでございます。  一方、消費者酒類消費動向を考えてみますと、昭和五十四年の平均的一般家庭の一カ月の平均実収入は三十二万六千円でございまして、そのうち消費支出が二十二万二千円となっております。その中で食料費支出が六万二千円、これは二七・九%、約三割でございます。さらにその中で酒類消費支出というものが二千八百五十円、一・三%となっております。わずか一・三%しか持たないのであります。同年の消費者物価上昇率は三・六%でありますが、酒類費の対前年増加率は二%でしかありません。いかに酒類に対する消費金額が少ないか、酒販店の多くの方々が実感として持っておられる売れないという言葉を端的にあらわしている数字でございます。  本年一月に持たれました小売酒販六大都市会議の報告の中に、最近大阪局管内でここ一、二年の間に十五店の酒販店、それもほとんどが家庭用の小売店のようでございますが、十五店の酒販店が倒産したが、その原因はサラ金からの借金など資金繰りの悪化が原因で事実上の経営悪化によるものであるとのことでございます。酒販店の倒産原因というのは、従来、他の商売に手を出したとか本人の道楽が多かったというようなものだったそうですが、最近は経営そのものの行き詰まりが多く、これを見ましても酒販店を取り巻く消費環境が厳しくなりつつあることを如実に示しておるものと思う次第でございます。  一面、先ほど来お話があります級別消費動向を見ますと、消費者各自が生活防衛のために二級酒への志向が顕著でございます。本日ここに当北但小売酒販組合の豊岡部会長である秋山氏も同席しておりますが、たとえば私どもの豊岡税務署管内においては昨年、五十五年一年間に二級酒が一四・六%、合成酒が一八・七%の前年増加率でございます。このことはいわゆる売上金額の下降でありまして、利益の減少でございます。それとともに酒販店間における競合は激化の一途をたどっておる、このような現状でございます。  私は生産者でございますが、そういった酒販関係の皆さん方の声を一部聞いておるわけですけれども、いわゆる増税後の予測としましてまず消費低下が、これはもう避けられない。特に今回の増税の話題が巷間に上るときに、一級酒を二級酒にしようとかあるいはビールであれば大びんを中びんにしようというような声さえ出ておるようでございます。当然この消費の落ち込みによる利益の減少と利益率の低下が考えられます。たとえばこれも端的な例でございますが、清酒一級酒の小売店の利益が正価で三百二十三円であるときに二級酒の利益は二百六十二円でありまして、単純計算でありますが約二〇%の利益率の減少を来します。こういったような問題がございまして非常に生産者それからその取り巻きの流通段階の皆さん方、それから消費者と非常に大きな問題となってあらわれてくるのじゃないかと非常に心配しておるわけでございます。  以上、概要を述べさせていただきましたが、このたびの増税やむなしとするなれば、酒税負担の保証責務をもって業に当たる私ども酒類関係業者に対しまして、今後健全な経営の継続を可能ならしめるために低利、長期資金の融資など保護育成措置を御考慮いただきたいことをお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。どうも失礼いたしました。
  12. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  次に、宇治田参考人にお願いいたします。
  13. 宇治田福時

    ○宇治田参考人 私、京都伏見で玉乃光という主として純米酒に力を入れておりまする参考人宇治田でございます。  私は、きょうは中小メーカーの立場を特に強調させていただきたいと思いますが、さっきもお話のありましたように、現在中小メーカーはどんどん消されておるわけです。昭和五十三年に六十四社、五十四年に五十八社、五十五年で七十九社と、中小メーカーがどしどし廃業に追い込まれている、これは非常にゆゆしい問題でございます。私が昭和二十四年に家業を継いだときは四千社あったわけですが、それが現在では二千九百社に減っておるわけです。この厳しい環境はどうして来たかというと、一概に中小メーカーの自助努力企業努力の不足とは言えない、大部分はこれは行政の結果であります。  まず昭和二十年代には米が少なかったからやむを得ず昭和十一年の実績に応じて米の配分がされた。これは米が足りなかったのですからわれわれもやむを得ないと思っておりました。ところが昭和三十年代にぼつぼつ米が緩んできたのにかかわらず、三十年代も依然として昭和十一年の実績でこうやっていく。そうしますと昭和十一年のときの大手さんは中小と等比級数的に力の差がついていくわけです。だんだんだんだん差が広がっていくわけです。そうして何とこれが酒に関しては昭和四十九年まで続いたわけです。したがって、昭和四十九年から五十年というと酒は十分足りてきた。伸びもなくなった。そこでぽんとほっぽり出されたものですから、もはや企業努力をしても抜きがたい格差ができたものですから、それがどんどん中小の脱落、廃業につながっていく、こういうことでございます。  それでは何とか自助努力によって生き残る方法はないのかということを私ども考えますが、ないことはございません。さっきからビールウイスキーの問題出ましたけれども、まずビールよりもウイスキーよりもおいしい酒をつくることなんです、おいしい日本酒をつくることなんです。それにはどうするかというと、ここに、先ほど理事さん方にお目にかけましたように、この左側の大粒の米が玄米です。それを右のこれは五〇%みがいていますが、ここまでみがきますと、そうしてしかもなおかつ手づくりでやりますと、絶対にビールよりもウイスキーよりもうまい日本酒がこれはできるわけです。それでこれはいろいろ隘路がありますが、またついでながら申しますが、絶対に二日酔いしません。定量の倍召し上がっていただいても翌日気分爽快です。こういうのをまずつくることがわれわれの自助努力である。しかしながら、できたものを安く売らなければこれは売れませんから安く売らしていただかなければならぬ。つまり二級で売らしていただかなければならぬ。ちなみに私のところはこれを二級で三千円で売っていますが、お客さんが何だ二級かと言うので非常に抵抗あります。けれども特級にすると従価税がついて七千円になります。七千円じゃ売れないです。したがって、われわれの自助努力は二日酔いしない、ビールウイスキーよりもうまい酒をつくるところまでしかできない。後は皆さん先生方のお力で今後これからお願いすることをお願いしたいわけでございますが、こういう酒であればまず地酒としての特徴が出るわけです。よく最近地酒地酒と言いますけれどもアルコールなんか入れていれば特徴は出やしません。北海道の地酒も九州の地酒も、アルコールという共通のものを使う限りは味が似たり寄ったりになる。似たり寄ったりの物を売れば当然のことながら宣伝力の多い知名度の高い大手さんにつぶされる、これが原因です。ですから、特徴のある地酒というのは純米酒でなければならぬということを、特に先生方に御記憶願いたいと思います。  それから二級で売る、ところが二級はさっき長部さんもおっしゃったようにイメージが悪い。この際、国鉄さんでも二段階にしているのですから、でもと言ってどうも関係の方に失礼いたしますが、要するに酒より国鉄の方がよほどその点では進んでおります。昔のように三等の切符ならば非常に劣等感がありましたけれども、二段階だとそんなこと、三等と言わなくて済むわけですから、グリーン買うときだけグリーンと言えば済むわけですから、さっきも長部さんがおっしゃったように、税金の高い酒買うときだけ上級酒と言えば、もうあとは二級酒くださいというような消費者に劣等感を味わわせなくても済む、こういうことになるわけでございまして、特級酒なんというのは、これはまず結論から言えば数量的に四・五%しか売れてないのです。そうして、特級酒と一級や二級酒との原価の差はわずか百円くらいしかないのです。工場原価ですよ。それが末端の小売価格になると千円の差がついてくる。  そこで、わずか四・五%の特級の税金、これは増税が議論されているわけですから、われわれも三千億は請け負いましょう。それには特級と一級とをごっちゃにして割り勘にすればいいのです。酒造組合で計算してもらいましたが、特級、一級の税金を足してそれを特級、一級の石数で割れば、わずかに現在の一級酒を一升二十八円上げればそれでもうごっちゃになる。そこでいい酒がどんどん出れば私ははるかに税収は上がると思います。恐らく特級酒二五%上げても、四・五%の特級酒が三%になり二%になり減るでしょうから、率を上げても税額は減ると思います。間違いないと思います。ですから、そういうことをおやめになって、これはどうしても二十八円割り勘で増税して、特級をやめていただきたいということでございます。  なおまた、特級があるから特級従価税というのもございまして、一万円の小売価格で四三%、四千三百円ですね。そうしてメーカーの手取りが二千八百円です。メーカーは二千八百円もらって消費者に一万円で売る、四三%の酒税を払う。ダイヤモンドの一五%のほぼ三倍の税金は一体どこから出てきたのか。こういうものもやはり特級があるからそういうことになるのですから、これはもう直ちにおやめいただきたいと存ずるわけでございます。  なおまた、特級というのは昭和二十四年にできまして、すでにそのとき八百円税金を取ったわけです。それで一升千円しました。そのときの大卒の一流会社の初任給は三千円ですから、一升びん三本しか買えないような割り高な税金が特級酒というものに行われたのは、敗戦後のインフレを抑えるためにやむを得ざる処置であった。その時代、それは米の希少価値によってそういうことが可能であった。それが現在、米が余っておるのになおかつ特級酒というような制度がまだ残っておる。そうして増税のたびに、税額を上げる議論ばかりで税制の議論がなされたことがない。これはぜひそういうことのないようにお願いいたしたいのでございます。  そういうふうにしまして特に、話はもとへ戻りますが、中小メーカーが地酒、すなわち米一〇〇%の酒をつくるのに、ドイツにおけるビール級別課税というのがございますが、ドイツは裏でつくって表で飲ませて商売が成り立っているわけですから、そういうように級別課税の精神を導入していただいて、地酒が一〇〇%米を使うということについて、中小メーカーの地酒に対する財政的な措置をどうかお願いいたしたいのでございます。そうして村や町に氏神さんがあり、そしてお国自慢の地酒があるというような形が続くように、ぜひ先生方の御援助をお願い申し上げまして、意見開陳といたします。どうもありがとうございました。
  14. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  15. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。堀昌雄君。     〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕
  16. 堀昌雄

    ○堀委員 各参考人にお尋ねをしようと思いますが、まず最初に、水野参考人ビールの問題について。  私は率直に言って、日本ビール課税というのは、確かにメーカーが大企業でありますから租税負担力があるということに着目をしておる点は、徴税側の立場としてはわかるわけでありますけれども国民嗜好の側から考えますと、実はビールというのは果たして本当に酒類かどうかという問題が一つ問題点としてあろうかと思うのであります。  私、各国を歩いて感じたのでありますけれども、アメリカでは選挙の日はアルコールを売っちゃいけないのだ、こうなっています。調べてみますとビールはいいのですね。スピリットは売っちゃいけないけれどもビールはよろしい。要するに酒の待遇にしておる国としていない国が実は慣習上あるわけであります。  私は、今日国民が最も広く飲んでおる酒類というのはビールではないか、こう思っておるのです。私ども食事をする会合に出ますときに見ておりますと、私はもう本来、この酒類の問題を長年やっていますが、アルコールがだめでございまして、まあ飲むとすればビールで小びん一本がやっとである、お酒ですと大体五勺飲むのがちょっとオーバーだという程度の量でありますけれども、まず皆さん最初にビール乾杯してそれから日本酒をちびちびというのが今日わりに多いのですね。食事をする状況でも多い。また他の酒類は、ワインはちょっと最近別格のようでありますが、女性で日本酒をたしなむという人は非常に少ないのですけれどもビールはいまや日本の女性も何か普通の酒類という感覚よりもやや清涼飲料水のまあ特別な感覚というような感じで飲んでおると思うので、いま一番国民に親しまれておる大衆酒というのは何かといえば、私はビールだろうと思うのです。  先生はこの問題について、国際比較で単純に話をすべきではないのであって、やはりこれは慣習の相違嗜好相違税負担率の単純な比較は問題がある、国際比較で高いと断じるわけにはいかない、こうおっしゃったのでありますけれども、私はやはり実は高いと思うのです。それは、恐らく全国民が見てビールを飲んでおるときに、さっきキリンビールの方がお話しになりましたが、アルコール度換算という価格度から見るならばこれは論外の税率なんでありますね。ですから私は、本来ビール税率はもっと下げるべきだと思うのですが、残念ながら過去から大変高い税率が続いてきているわけであります。  ちょっと過去からの税負担率を申し上げてみますと、昭和四十五年のビール税負担率は五一・六%、それが四十六年から四十八年までは四七・九%。その次に、四十九年にビール小売価格が上がりまして百六十円になりました。そこで税負担率が四一・九%に下がりました。その後五十一年にさらにビールが百八十円となって、そこで税負担率が三七・三に下がりました。五十二年に増税が行われて、百九十五円に上がると同時に四二・一%と税負担が上がって、五十二年、五十三年が四二・一%、五十四年、五十五年が四七・四%でありましたが、二百十五円のビールが二百四十円になったものですからまたここで四二・五%に下がった。こういうのがビール小売価格に対する税負担率の変化であります。今度これが四七・九%になる。ずらっとこう横並びで見ると大体どうやら値上げをした後では実はこれは従量税の特性でありますから負担率は下がりますけれども、四七・九%というのは昭和四十四年、四十五年の五一・六%に比べると実はまだ四%くらい低いということですから、いまは財政再建ということでさっきお話がありましたが、酒類、もうちょっと税制の制度の問題を考えてほしいという問題が非常に重要なんで私も後でちょっと申し上げますけれども、いまは大蔵省なりふり構わず税収を上げればいいというのが私は大蔵省主税局の現状だろうと思うものですから、そうなりますと、ずっと税負担の割合を過去と比較をしてみますと、実は今度の増税というのは過去に振り返ってみるとそんなにべらぼうに上げたということにはならない、要するに従量税税率補正を多少やったということではないかと思うのです。ですから私は賛成しているわけじゃないのですが、現状では、大蔵省の状態としては、まあ大蔵省の立場に立てばやむを得ない問題だろう、こう思うのであります。  しかし、私はいま大衆の集会に出ておるときにはこういうことを言っているわけです。皆さん、ともかく政府は物価がこれだけ上がっておるのに物価調整措置を一向やっておりません。皆さん、累進税率なものですから、名目収入がふえたら実際はこれだけ税金ふえてますよという話をして、そうなったら賢明な選択によって要するに安い税率負担をみずから考えてもらう以外にない。そうすると、今度の増税の中では清酒の二級が御案内のように九%程度で低いわけであります。その次に低いのがしょうちゅうであります。     〔山崎(武)委員長代理退席、大原(一)委員長代理着席〕 ですから、しょうちゅうと清酒の二級を飲むことが生活の中でのむだな税負担を回避する唯一の道ではないか。こういうことをいま大衆の会合では言っているのでありますが、これらから見ると、私はいま申し上げたようにビールの税の負担が高過ぎるというような問題、それからこれはこの次に申し上げる級別問題でありますけれども、そういうような制度問題がどうしても速やかに一遍再検討されなければならない、こう思うのであります。  そこで、実はさっきから級別の問題が皆さんの方でお話に出ております。級別というのは、現在とられておりますのは清酒ウイスキーとブランデー、これだけが実は特級、一級、二級という級別になっているのです。このウイスキーやブランデーは実は大変理由のある級別になっているわけであります。  ちょっとウイスキー特級のところを読み上げますと、「ウイスキー特級 法第三条第九号イ又はロに掲げるもの(以下「ウイスキー原酒」という。)」要するにウイスキー原酒の量が全体の量の中で幾らを占めておるというものをもって実は特級であるとか一級であるとか二級であるとかこういうふうに決めているわけですから、これはある意味で客観的、科学的な根拠をもとにした級別制度だろう。原酒が多いほど値段が高くなるというのは当然であります。長い間寝かしておいた原酒とそうでないモルトのものとを一緒にするのでありますから、当然ここには客観的、科学的な級別格差というものが保証されていると思うのであります。  ところが、清酒はどうなっているかといいますと、酒税法施行令第十一条で「特級 品質が優良であるもの」「清酒 一級 品質が佳良であるもの」「二級 清酒のうち、特級及び一級に該当しないもの」、皆さん、今日の近代社会においてこんなべらぼうな施行令をそのままほっておくなんということは近代社会として私は全く考えられないことだと思います。  さっきからお話のありましたように、戦後のあの米のないときに何とかして一定の限られた米で税収を上げようということになるのなら確かに嗜好の問題でございますからこういうことを考えたかもしれません。私、昭和三十五年に当委員会へ参りまして最初に酒類の問題を取り上げたのは委託醸造の問題でございました。当時国税庁の間税部長が泉さん。そこで私が、どうして米をつくらない者が委託醸造と称して米の割り当て券だけを売買することによって金を得るようなおかしな制度があるのだということを私は徹底していまからもう二十年余り前でありますけれども委員会でやりました。そのときに私が米があるではないか、もっとどんどん配給してこんな権利にあぐらをかくような特権的なやり方をやめさせろ、こう言って厳しく間税部長を追及しましたら、検討さしていただきますということでありましたが、質問が終わったときに泉さんが私のところに来られて何とおっしゃったかというと、先生、先生のきょうの質問は、私ども国税庁にとっては実は大変な御支援をいただいたことになります。要するに酒類業界というところでは生産量をできるだけ圧縮をして、しかし自分はできるだけたくさんもらって酒をつくってもうけよう、こういうようなことになっておりました。自由化論、徹底して米をやれ、要するにのどまで来て口からあふれるくらいに米をやれ、そうすればこんな委託醸造なんという制度は吹っ飛ぶというような話をいたしまして、泉さん大変喜んでくれまして、国会でそういう御発言があったので私どもはこれからこの線に沿って行政をいたします。これが皆さん日本酒類行政が要するに競争原理という問題を導入して、このごろ大変停滞しておりますけれども、今日ここまで来たのはまさに当委員会において、競争原理でともかくいかなければ雑酒、ビールウイスキー競争する社会じゃないのか、清酒だけの社会ならどうやっていたってそれは選択の余地はないけれども、これから必ずビールや雑酒が伸びる。その中で清酒だけがぬくぬくとだんな衆の集団で、要するに採算ベースなんか考えないで、ともかく田舎の名士だからまあまあ酒だけつくっておれば、先祖代々の仕事だからなどというような前近代的な話、さっきも近代論が出ましたけれども、これで清酒が生き延びると思ったら大間違いだといって私は国税庁のしりをたたいて米をどんどん出した。  そうすると、地方へ参りますと、堀さん、あなたは大手の味方だ、主産地の選挙区だからあなた、大手の味方ですね、こう言われたわけです。いまそこにたしか佐藤さんがおられたような感じがするんだが、当時、金沢に視察に行きました。そうすると金沢の国税局長が佐藤さんだったんだが、そこでそういう話が出たから私はこう申し上げたのです。皆さん、いまの世の中というのは自由経済ということになっていますよ。酒屋の皆さん、みんな自民党支持です。社会党支持の酒屋さんなんて全国に一軒もない。しかし要するに消費者がよりよい酒をより安く飲めるということが経済の原則だから大いに皆さん競争していい酒をより安くつくれという私の主張が間違っていないと言うんなら自民党支持をやめなさい、私たち社会党の方を支持しなさい、おかしいじゃないかと言ったら、金沢の酒屋さんの皆さん、みんな黙ってしまいましたけれども競争原理のないところに物の発展はないというのが今日までの私の経済に対する一貫した立場であります。  そこで、このようないまの、特級、品質が優良であるもの、一級、品質が佳良であるもの——私はこれを一遍こういうふうにやってみたらいいと思うのですよ。各国税局のきき酒の審査官を当委員会で呼んで、そして各局で特級とか一級とかに決めたものをともかく何にも彼らにわからせないで各局の審査官に飲ませてみたらいい。どれが一級でどれが特級か当てられるかどうか。こんなもの当たるはずがないんだ。主観によって特級、一級を決めて、税金の額はうんと違うなどというのは全く近代的でないですね。税制のもととしてはこんなものはナンセンス。ですから、さっきもお話のあったように、大体二級酒なんて名前がよくないですよ。だから二級酒を外そうと思えば方法としては従価税しかないと考えて、かつて税制二課長の補佐であった内海さんに、ひとつ従価税で大蔵省の試案みたいなものを出してみろ、こう私が言ったら、内海さんが書いたのがあの内海試案なんです。ただ、この試案はゾーンが小さくて、まるで累進税率みたいになっているから大変御反対があったのですが、今後制度が改正できる段階に来たら、この問題を考え直さなければならぬところへ来ている、私はまずこう思うのでございます。そこで、そういう考え方について、いまの級別問題は論理的でないと思うのですが、水野参考人はいかがお考えでございましょうか。
  17. 水野正一

    水野参考人 お答えいたします。  まず最初のビール税率問題でありますが、これについては、確かに御指摘のように、ビールが広く多くの人に飲まれている、男性のみならず女性にも飲まれておりますし、いまや国民的な飲料とでも言えます。そういう面から言いますと、税率が高いというふうな考え方も確かに否定できないと思います。しかし酒税税率につきましては、やはり一つ歴史的ないきさつといいますか、こういうものも無視できないと思います。それから、わが国の場合のビールは、国際価格の面を考える場合に、大手メーカーの製品であるという点とか、また消費の面におきましても、かなりの部分業務用の消費が多いというふうな面もあります。それから税率を考える場合に、ビールが酒かどうかというのは確かに問題にできるかと思いますが、しかし一応アルコール飲料というふうに考えてもいいわけであります。そうしますと、他の清酒あるいはウイスキーとの競争面という点も配慮しなければいけないわけでありまして、一挙にこれを低い税率にするということはそういう競争条件に非常に大きな影響をもたらす、こういう点を考えますと、そういう国際的な比較という点から高過ぎる、したがってこれを引き下げるというふうにすぐつながっていくことはなかなかできにくいのじゃないかと考えます。  今回のビール税率引き上げにつきましては、堀先生もおっしゃいましたように、これは従量税率負担率低下していたのを回復させるという意味でありまして、その限りにおいては妥当なものではないかというふうに考えるわけであります。御承知のように、ビール税率につきましては、現在四二・五%の税負担率でありますが、これがこの改正によりまして四七・九%あたりに回復するわけでありまして、これが高いか低いかという点、これは先ほどお答え申し上げましたが、四十五年あたりと比べますと、四十五年にはもっと高くて五一・六%まで……。
  18. 堀昌雄

    ○堀委員 時間が限られておりますので、級別の方だけ簡単にお答えいただけませんか。
  19. 水野正一

    水野参考人 級別の問題につきましては、私特に専門家ではありませんので、そういうテクニカルなところは特に勉強したわけではありませんが、お話をお伺いしておりまして、なるほどそういう問題点は確かにあるというふうに感じます。それで、先ほど申し上げましたが、従量税率従価税率かという問題も含めまして、酒税法全般について制度的に見直す必要はあるというようには考えます。
  20. 堀昌雄

    ○堀委員 その次の問題は、清酒の方が多いわけでありますから、こういう余り理由のない形で特級、一級、二級という問題があります。この制度の上では審査に出せば一級か特級になる。だから審査に出さなければ、いま宇治田参考人がおっしゃったように、純米酒を二級で三千円で売っていらっしゃる、これは私は一つ方法だと思うのです。  そこで灘の主産地の長部さんに伺いたいのでありますけれども、これは国民のためを考えますと、いまのコストはある程度米が高いので仕方がないのですが、その後で節税を国民にしてもらうためには、何も特級、一級で出したから大関はブランドでもつというわけではないので、大関のブランドはブランドであるのですから——このころ地下鉄で見ると、何かうま口二級酒大関、こういうので二級酒と書いてある。ここに二級酒というのを誇張しておることは、どこに問題があるかというと、一級、特級は高いから、大関は二級酒でうまいものを出していますよという意味だろうと思うのですが、そんな二級酒などということをスローガンにしないで、二級酒でいいんだから、いい酒をともかく無審査でどんどん主産地の大手が足並みそろえて出したらどうかと思うのです。主税局はちょっと当てが外れるかもしれませんが、現行制度ではこれは順法闘争なんです。法律はそういうふうになっているのですから、順法闘争の範囲で、ひとつ大々的に無審査で、今度新しくできる酒造年度から二級で出したらいい。とにかく月桂冠以下ずらっと二級酒で、自信を持って国民に節税ができて、あなた方としてはそれでコストを上げてもらったら困るので、特級コストは保証してもらっていいけれども、税額だけ、これだけ安くなりましたと宣伝したっていい。この酒を飲めばこれだけ安く飲めますということでやれないかどうか、長部参考人の御意見を伺いたいと思います。
  21. 長部文治郎

    ○長部参考人 大変むずかしいお話でございますけれども、順法闘争をやれということでありますが、これはできないことはないわけです。しかしそれでは私の会社で順法闘争をやってやろうかということになっても、私の会社は八〇%から八五%一級を売っておりますので、やはりそれについた消費者というのがございまして、これのイメージというのは残念ながらまだ級別にぶら下がっているという感じがなきにしもあらずということは言えると思います。その辺の踏ん切りが非常につけにくいというのがむずかしいところでございます。  私も灘五郷の理事長をしておりますので、灘五郷の中でいろいろな種類のお酒を見ておりますけれども、ことしに入りまして一万円の二級というのが出てまいりました。こういうのがどんどん出てくると、消費者のサイドからちょっと級別を信頼できなくなるのではないかというふうな心配も実はしておる次第でございます。したがって、私にやれという御命令であればできないことはないのですが、私どものプライドもありまして、その辺が非常にむずかしいところで、目下思案をしておるというような感じでございます。
  22. 堀昌雄

    ○堀委員 私も強制力があるわけではございませんのでね。ただ私は、こういう制度の矛盾が非常に国民にマイナスになっているということなんですね。さっきお話しのように、原価コストの面では百円ぐらいしか違わないものがこうなっているのですね。今度もし値上げが行われると、いまの特級は二千二百円で売られているのですから、恐らくこれは二千三百八十円ですか、大方二千四百円になってしまう。そして二級の場合には千二百円に十四円七十六銭ですから二十円ぐらい上がるんでしょうか、千二百二十円ぐらいだ。そうすると、幾らも違わないものが千円違うのだという話は——さっき申し上げたようにウイスキーやブランデーはいいのですよ、これはモルトの違いだから。それはだれが考えてもそれでいいのですが、どこも違わないと思うのですよ。  ちょっとこれまた長部さんに伺って恐縮なんですが、特級酒と一級酒、つくられるときの原料コストの差というのはどのくらい違うのですか。一級と特級コストの差、私は幾らもないだろうと思うのだが。
  23. 長部文治郎

    ○長部参考人 具体的な数字を持ち合わせておりませんので、概略といいますか私の頭の中でお答えするわけですけれども、いまの宇治田参考人おっしゃったように全部純米にするとかそういうことになりますとこれはかなり、いまの清酒の一升当たり税抜きのいわゆる生産者サイドの原価を一〇〇といたしまして、全部純米ということになりますとやはり二〇〇以上になるということにもなりますので、その辺がやはり特級酒、一級酒のプライドでなかろうか、かように理解しておるわけであります。
  24. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこれは発酵上の問題ですから大変微妙でもありますし、さっきの宇治田参考人は純米でやっていらっしゃる。しかし実際に、恐らく特級はいまの玄米は精製度が二級との間では多少違うかもしれないし、いろいろありましょうから、確かにそれはコストにも反映すると思うのでありますけれども、まあしかしウイスキーやブランデーのようなモルトが幾らだという話ではありませんですから、だから私はその点では何とも奇妙きてれつな税制だな、世界じゅうでこんなばかな税制で税金取れている国は日本だけじゃないか、いかにわれわれがこれまで不勉強であったかということをあらわしていると思うのでありますけれども、何とかひとつこれは今後の税制改正で考えなければいかぬと思うのです。特に私はさっきからお話しの、米が高いという話、これは米だけがどんどん上がって、輸入麦に依存しておるビールコストの上では比較的そういうコスト圧迫要因が少ないのではないか、ウイスキーでも恐らくコストの圧迫要因が非常に少ないのではないかということになると、いまコストで一番もろにかぶっているのがいまの食管法に基づくところの米価の値上げがもろに来る清酒業界だろうと私は思うのですね。そして米はうんと余っているわけでありますから、やはりこの問題は、私はこの間から当委員会で、戦後のシステムを一回全部見直す時期が来ておるということを言っているのです。ですから食管法も見直したい。渡辺大蔵大臣、幸いにして農林大臣やっておりましたし、厚生大臣やってましたから、食管もひとつシステムを見直したい、医療費問題もシステムを見直したい。システムを見直すことなくして合理的な経済にマッチするようにならないのですから、それにはやはり競争原理が導入されるようなシステムにならなければ問題は発展しない、こう考えております。  私は清酒業界皆さんからは、どうもあいつは灘の大手の手先だぐらいに思われているかもしれませんが、酒類が発展していくためには、各個に競争するということを通じて以外に清酒業界が今後に発展される道はないと私なりに確信をしておるのですね。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕 そうしてみると、米の問題でも、いま一対三の開きがあるものを少しは縮めるということがどうしても必要でありますから、その点で私は、今後食管の問題を含めて当委員会でも検討を進めたい、そう思いますので、長い将来のことになりますが、早急には格差が縮まらないでしょうが、このままでいいというようには私どもは問題意識を持っておりませんので、そういうことで農産物関係の方も大変でありますが、しかし、いまの食管にあぐらをかいておられる限り日本農業というものの将来は非常に問題がある、こう思っております。そういう意味で、皆さん方清酒業界もどうかひとつ消費者のためにいい酒をより安く提供していただく方向で一層のお骨折りをいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  25. 綿貫民輔

    綿貫委員長 関連質疑で沢田広君。
  26. 沢田広

    ○沢田委員 きょうはお忙しい中を大変皆さん御苦労様です。また、貴重な意見ありがとうございました。きわめて私の与えられた時間は限度がありますので、簡潔にひとつお答えをいただくようお願いいたしたいと思います。  順不同で恐縮でありますが、陳述をされました各参考人の趣旨について若干お伺いをいたします。  まず水野参考人にお伺いいたしますが、従量税が妥当であるというふうな御意見でありますが、従価税にするという考え方は、これは私たちはそういう方に移行していくべきだ、こういうふうに思いますが、経済学的に見ましていかがお考えになっておられるでしょうか。
  27. 水野正一

    水野参考人 私、先ほど私の意見述べたときにちょっと誤解をお与えした点があるかと思いますが、私は従量税がいいと言っているわけではありません。それぞれ従価税にもメリットがあり、従量税にもいままでの酒税における基本的な税であるという意味におきましても、それぞれのまた捨てがたいところがある。ですから、従価税にかなりのメリットがあるとしても直ちに移行することにはまだ検討すべき問題が残されているのではないかということで、従価税への移行についてはもう少し時間をかけて検討する必要があるということを申し上げたわけです。
  28. 沢田広

    ○沢田委員 では日下部参考人にお伺いいたしますが、いまお話になりました中におけ取引の問題でいろいろと、宇治田参考人もお述べになられましたが、このおけ取引の実態というものとそれのメリットとデメリットといいますか、それを簡単に長所、短所、その参考にひとつお述べいただきたい。これも時間の関係で簡潔に、個条書きで結構であります。
  29. 日下部昌男

    ○日下部参考人 お答えします。  先ほど述べさせていただきましたおけ取引についてでございますが、いわゆる零細のメーカー、生産者として先ほどいろいろと意見がありましたが、販売力がない、そのために企業を継続するためにはどうしても製品を早く換金しなければならぬ、そういう回転率等の問題もありまして、その意味では必要に迫られた上ではありますけれども、納める側の零細業者にとってはメリットがあるように思います。しかし、いずれにせよ今後の酒類関係の状況を見ますと、幾ら零細メーカーにしましてもそれはそれなりの小回りのきいたといいますか努力をいたしまして、自分の手でつくったものは自分の手で売っていく、このような経営方針に強力に切りかえていく決意がなかったら、これは先ほども述べましたけれども、どうしても大手の皆さん方もそういった契約された零細メーカーとの引き取り価格につきましては、品質の面、価格の面につきまして厳しい要求をなさるのは当然のことでありますので、そういった面がプラス、マイナスの要素があるかと思います。簡単ですけれども……。
  30. 沢田広

    ○沢田委員 続いてちょっと恐縮でありますが、結局、おけ取引をやれば買いたたかれるということが必然的に起きてくるんだろうと思います。どの程度買いたたかれるか、これいろいろあるんだろうと思うのですが、その内容は後でまた折があったら書類等で出していただければ幸いだと思うのであります。大体二千七百とか三千とか言われております業者の中で、おけ取引をやっておられる率を、大体あなたの勘で結構でありますが、ひとつお聞かせいただきたい。  続いて、福光参考人中央会の方にもおられますし、それから長部さんは連合会の方におられるわけでありますが、いわゆるおけ取引の実態といいますか、率はどの程度割合として占めているのか、ひとつ参考に、これは率だけお答えいただきたいと思います。
  31. 福光博

    福光参考人 おけ売りをやっている、あるいはおけ買いをやっている、両方一緒でございますけれども、同じことでありますが、おけ売りをやっている方は、現在、大体八割五分ぐらい。大小はございますけれども、一部だけの方もありますし、全量の方もありますが、八割五分ぐらいあるようであります。数量は、三十五万キロリットルぐらいだそうでございます。
  32. 長部文治郎

    ○長部参考人 総合的なことはいま福光参考人が申されましたが、私の方のデータによりますと、五十三年度で大体二千軒というデータが出ておりますので、三千軒の酒屋さんとすれば、大体三分の二、これが売り側でございます。買い側は、五十三年度では八百六十という数字が出ております。これは、年次ごとにグラフをつくりますと漸減しておる、両方ともだんだん減ってきておるというのが傾向でございます。
  33. 沢田広

    ○沢田委員 続いて、今度粉酒というのが出るようになったわけでありますが、これは本当はそれぞれ皆さん方からお伺いすることがいいのだと思うのでありますけれども、望ましい、望ましくない、どちらかで、感覚的に、簡単にひとつお答えをいただきたい。  最初の三人の方は自民党さんの方の推薦で来られたのですが、どなたか代表して一人、あとはそれぞれ一言ずつお答えいただきたいと思います。
  34. 福光博

    福光参考人 粉末酒は、いろいろございますが、ブランデーとかウイスキー、みりんにつきましては、かなりそれなりにおもしろいものだと思います。清酒の方は、実は実際に溶解して飲んでみましたのですが、デキストリンがかなり大量に入りますので、かなり甘くてべたべたするという感じになります。そういう意味で、これは日常の用途には向かないのではないかと思っております。ただ、登山とかハイキングとかで、そこの水で飲んでみたいというふうな特殊なあれがあれば、それはそれなりにまた新しい用途ができるのではないか、このように思っております。
  35. 長部文治郎

    ○長部参考人 私は、実際にアメリカでそのパウダーを買いまして、それに水をまぜましてつくってみた酒を飲んでみました。アメリカで発売をされている粉酒は、たとえばスクリュードライバーとかそういうようなカクテルのもととしてアルミのかんに入っております。かなりの量を使わないとこれはお酒にならない。これは、先生御承知のように、アルコールを糖衣で包み込んであるわけです。ですから、水に溶けるとアルコールが出てきて酔っぱらうということでございますので、問題は、それじゃお酒の味が糖衣でできるかどうかということが問題になろうかと思いますが、これはなかなかむずかしい、将来そう簡単にはいかないと思います。
  36. 日下部昌男

    ○日下部参考人 ただいま長部参考人が申されましたけれども、やはり清酒のよさといいますか、本質的な性質から言いまして、われわれの受けとめ方としては、余りいいものではないだろう。また、言うなれば、感覚的に言いますと天然果汁のジュースと粉末ジュース、そういう受けとめ方をする一般の方もございますし、やはり清酒というのは普通醸造ででき上がるところの自然なものがいいのじゃないか、このように考えております。
  37. 宇治田福時

    ○宇治田参考人 私は、品質のよしあしは別問題としまして、いろいろな形でチャレンジするということは悪いことじゃないと存じております。
  38. 沢田広

    ○沢田委員 長部参考人は、中央会といわゆる行政指導ということを述べられたのですが、中央会のいまの割り当て制度——酒造、醸造関係の皆さんは非常に結束が強い、医師会に次いで結束が強いところだというふうに言われているくらいでありまして、いつの参議院選挙でもそれは如実にあらわれているわけでありますが、そういうことで中央会の指導、割り当てというのは現状でもやはり行われているのかどうか、また皆さんのところの行政指導というものはどういう形で行われているのか、一つずつ例を挙げておっしゃっていただきたいと思います。
  39. 長部文治郎

    ○長部参考人 以前は原料米が統制になっておりましたので、私も陳述の中で申し上げましたけれども、そういう統制された原料米を配分するという面において、たとえばよく売れている酒はたくさん増産をさせない、売れていない酒は増産しなさいというふうな感じで、なるべくまんべんなく配分をされておりましたが、その名残が残っております。現在は、そういう中央会そのものの威力というのはだんだん薄れてきておるのじゃないかと思うのですが、やはりそういう名残は若干雰囲気的には残っておると思います。
  40. 沢田広

    ○沢田委員 行政指導の方については、参考人の方で、こういう行政指導は困る、またこういう行政指導はいいというように、それぞれ一つずつ、いいところと悪いところを挙げていただきたいと思うのです。福光参考人はちょっと長くお話しになられるので、私の方の時間があと五分か六分しかありませんが、福光参考人中央会にもおられますので、ひとつ代表して簡単にお答えいただきたいと思います。
  41. 福光博

    福光参考人 行政指導と申しましても、私ども最近は、個別の業者としては、感じることは昔に比べたらほとんどないというくらいであります。中央会におきましてはいろいろの問題で国税庁と相談してやっていることはあると思いますが、個々の業者では余りないように思います。特に生産ガイドラインのときには、中央会でいろいろ、どれくらいの持ち越しがいいであろうかということを決めるときには相談をしていると思います。しかし、個々の業者にはないわけであります。私どもは、現在ほとんど行政指導は感じておりません。
  42. 沢田広

    ○沢田委員 キリンビールの方がおいでになっておりますが、サッポロ、アサヒ、キリンの三社が大体日本の市場支配をされているわけでありますが、酒の業界の利益に比べると、利益が言うならば上がり過ぎている。私の比較の問題でありますが、そういう感じもしないわけでもありません。キリンは、これは一昨年でありますが、八千二百六十五億という売り上げをされているようであります。そういうようなことでまいりますと、先ほどの堀委員の御質問にもありましたが、ますますビールが市場支配を強めていくという可能性があると思うのでありまして、今回の増税がもし行われても価格の引き下げは可能なのではないか、こういうふうに思われるのですが、その点いかがでしょうか。
  43. 桑原良雄

    桑原参考人 お答えいたします。  酒税は間接税でございますから、基本的には小売価格に転嫁される性質のものだというふうに考えておりますし、増税分を一部メーカーが負担しろということは、現行生産者価格を引き下げろということになるわけでございますが、とうていそれだけの余裕はございません。  以上でございます。
  44. 沢田広

    ○沢田委員 最後になりましたが、流通機構の中における酒販の問題という点について、これは連合会をやっておられる長部参考人にお伺いいたします。  いわゆる酒販制度というものの改善を、極端に言えばデパートであろうとスーパーであろうと、いろいろな場所で消費者に便利になるような酒販体制、そういうことの条件についていまの許可制度、果たしてこれはいまの状況で妥当なのかどうか。醸造の立場からひとつ見解を述べていただきたいと思います。
  45. 長部文治郎

    ○長部参考人 お酒の方は、特に主産地の方は販売組織というのはきっちり守っておりまして、生販三層という組織がございますので、それを逸脱をしまして、たとえば手前どもの方が直売をするということはなかなかできないということになっておりますので、私といたしましては生販三層の組織は守りたい、そういうふうに思っております。
  46. 沢田広

    ○沢田委員 先ほどは酒販の問題で、醸造の方でも廃業される方もあるけれども、酒販の方でも倒産件数も非常に多い、こういうふうに日下部参考人が述べられております。これは長年の経験であるとかいろいろと厳しい条件があるわけです。昔は酒の調合というものが酒販の中で行われていた時代がありました。ですから、そういう経験が必要だと思うのですが、いまのびん詰めあるいはかん詰めあるいは粉酒、こういうふうになってまいりますと、いままでのような許可要件が皆様方の立場から果たして必要なのであろうかどうか。スーパーでもデパートでもどこであっても身近なところで買える、こういうことは私たちの期待なんでありますが、その点はいわゆる小売店の問題について、いまのような許可制度が果たして現在の状況下において適当かどうか。この点ひとつ、これは日下部さんもお述べになられたことでもありますので、参考人にお伺いをいたします。
  47. 日下部昌男

    ○日下部参考人 やはりいまお述べになりましたように、現在の流通業界の中にありまして免許制度の運用を販売市場を適正に見ていただく中で堅持していただくことがいいのではないか、このように感じております。
  48. 沢田広

    ○沢田委員 これは長部参考人にお伺いをいたしますが、いまのように清酒の売れ行きがビールの方にとられそうだという状況の中でもっと清酒を売るためには、よりよいものをより多くの場所で販売できる条件ということが言うならば清酒を伸ばす。それでもビールに負けるという場合はあるかもわかりません。しかし、そういう形でいま内部の調合というのがなくなって製品販売になっている。そういうことになれば、許可制度がかえって不必要である、販売を逆にとめている、こういうふうにさえ考えられるわけでありますが、これはそういう方がいい、いやいまのままがいいんだということであれば、ひとつその点をお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  49. 長部文治郎

    ○長部参考人 酒類というのは免許がございますので、私どもとしては、むしろ免許の中で販売価格がある程度堅持されておるというふうな方が安全性があると思っております。  たとえば、私の方で酒類を外しで売っておりますのに甘酒というのがございますが、これは酒類ではございませんのでどこでも売れるということになっておりますが、なかなかこの価格維持がむずかしいという現状でございます。
  50. 沢田広

    ○沢田委員 さっき宇治田参考人から、特級と一級を一緒にする方が税収も上がるし、醸造の方も楽である、楽であるど言うと言葉が失礼になりますが、かえってその方が国民的な意見と合致するんではないか、いわゆる上級と普通こういう名称の方がなじみやすいんじゃないか、こういう意見がありましたが、福光参考人はその点どのようにお考えになっておられるか。
  51. 福光博

    福光参考人 特級というのが要らないという話でありますけれども、私はやはりシンボルとしては若干でもあった方がいいと思っております。私ども、実際特級を製造するときには精白度も上げております。それから、いま現在は、いわゆる三増というのがありますけれども、あれも使っておりません。糖類は使っておりません。アルコールもごく少量にしております。そして、やはり特級だからという、いい酒を飲みたいという、そういう判断をする消費者もたくさんあるわけでございますから、シンボルとして先ほど申しましたように、長い間には自然に消えていくとか、あるいはこれからやっていくのはいいのですけれども、いま急に制度としてなくする必要があるのかどうか、私はまだ疑問に思っております。
  52. 沢田広

    ○沢田委員 最後になりましたが、せっかくですから宇治田参考人、反論がありましたらお答えいただきたいと思います。
  53. 宇治田福時

    ○宇治田参考人 申し上げます。  正反対の意見でございまして、特級というようなものは、これはさっき申し上げた異常な事情でできた制度でございまして、戦前には級別はなかったのでございます。  そこで、小売業者の責任において、あるいは消費者の責任において、自分の舌を信じて、この酒うまいぞと言って買えばいいのであって、特級というような、さっき堀先生もおっしゃったような架空な、根拠のない制度に置いておいて、それがあたかもぜいたく品であるかのごとく印象を与えておるということは、消費者欺瞞であって、消費者をいつまでも幼稚園扱いせずに酒は御自分で判断して、おいしいと思うのは何級であろうと、二級でも結構、自分の舌で感じておいしいものは御自分で選びなさいと言う方が消費者に対して親切な制度ではないかと考えております。
  54. 沢田広

    ○沢田委員 ありがとうございました。終わります。
  55. 綿貫民輔

    綿貫委員長 平沼赳夫君。
  56. 平沼赳夫

    ○平沼委員 参考人皆さん、大変お忙しいところお繰り合わせをいただいて当委員会に来ていただき、ありがとうございます。まずもって御礼申し上げます。与党自由民主党の時間が大変限られて十分間でございますので、簡単に皆様方の御意見を伺わせていただきたいと思います。そして清酒に限って二点伺いたいと思います。  まず第一点は、日本酒というとこれは衆目の一致するところ、国民のお酒であります。そして私は、日本人が存在する限り、日本酒はこれまでと同様に国民に親しまれて飲み続けられる、そういうふうに確信しているわけでございますけれども参考人皆さん方の御意見を伺うまでもなく、その現実は非常に厳しいものがあるわけであります。そして、経営的にも相当不安定なファクターを持たれた企業も多いやに承っているわけでありますけれども、国としてもある程度この点を認識して、これまでにもいろいろな助成措置を酒造業者の皆さんには行ってきたわけであります。  申し上げますと、たとえて言えば清酒製造業振興対策、いわゆる日本酒センターをつくるというような問題ですとか酒造資金の信用保証事業の実施、あるいは清酒製造業の第三次近代化あるいは清酒原料米に対する助成措置、こういうことを一連として行ってきているわけですけれども、現実の問題として、かつては四千社あった酒造業者が二千七百社に減ってしまっている。ですから、具体的にこれだけのいろいろな助成措置があるにもかかわらず、これが十分機能していない、そういうことも言えると思うのです。きょうは清酒業の代表の方々、いわゆる大手の大関酒造の社長でいらっしゃいます長部社長さんから大手の立場として、そして福光屋の福光社長さんからいわゆる大手でない製造業者の立場として、この一連の国のいろいろな助成措置に対して、具体的に現実の問題点、こういうところがネックになっているじゃないか、こういうところを正したらもっとよく円滑に機能するのだ、そういう問題点に対して忌憚のない御意見をひとつ承りたい。ぜひよろしくお願いいたします。  それでは大関酒造の長部社長さんにお願いいたします。
  57. 長部文治郎

    ○長部参考人 お答えいたします。  日本酒センターとか信用保証制度、第三次近代化をやっておりますが、なかなかうまくいかないというところでは、信用保証制度で、運用によりまして転廃をなさる方に転廃給付金というのを差し上げておるわけです。その額が若干足らないのじゃないか、少ないというふうなネックもございます。それから、第三次近代化、実はこの五十六年度で終わるわけなのでございますが、その間に、第二次までは適用していただいておりました税制の優遇措置というのがございました。それがなくなったということで、近代化して合併をいたしまして新しい設備を整えてもそれがなかなかペイしないというネックもございます。そういう点、私としては気がついた点、二点ばかり申し上げておきたいと思います。
  58. 福光博

    福光参考人 日本酒センターにつきましてはいまお話がございましたが、今度銀座の四丁目のところにつくらしていただくことになりました。大変ありがたいことだと思っております。ああいうところを拠点にいたしまして、皆さんに、消費者の方々に何とか日本酒のよさをわかっていただけるようなあれにいたしたいと思っております。この助成も相当いただいておりますけれども、設備費全部というわけにはやはりまいっておりません。運営費にもやはり若干の不足もございます。そういう意味で、できればもっと徹底的にセンターのようなものはそういう助成をいただければと思っております。  それから、近代化の話でありますが、これは現在の構造改善が流通一緒になってという枠がはまっております。ところが、流通一緒になってということでやりますと、これはなかなかむずかしくなりまして、いろいろなことを考えましても、流通とどうもうまくかみ合わないというのが現状で、共同利用が大抵その辺で立ちどまっておりますのが現状でございます。その辺にやはり、理屈としては大変よかったのでありますが、現実問題として流通一緒にやるということは非常にむずかしいことだということを実感しております。
  59. 平沼赳夫

    ○平沼委員 もう一点、清酒製造業の方にお尋ねしたいわけですけれども、これも福光屋の福光社長とそれから大関酒造の長部社長にお尋ねしたいと思うのですが、過去の統計で見ますと、ビール等は四十九年から五十四年の五年間の統計を見ましてもその需要動向は順調に推移してきております。しかるに、清酒は横ばいというような形で推移して非常に伸び悩んでいるわけであります。これは、先ほどの御意見、御指摘にもあったとおりでありますけれども清酒製造業の発展の前提としてまず第一に需要の拡大を図らなければならない、これはもとよりのことだと思います。先ほどのお話にもありましたけれども清酒製造業界としても需要拡大に対していろいろな手当てを懸命に行っていられる、これはよくわかるわけであります。それでやはり大手の一つ立場とまた大手でない中小の皆さん需要拡大に対する具体的な方策というのはそれぞれ違うと思うわけであります。それに関して、まず福光屋酒造の福光社長に中小としての具体的な需要拡大の方策に対してひとつ御意見を承りたいと思います。
  60. 福光博

    福光参考人 地方の立場で申し上げますと、地方は最近地酒ブームというのがございまして、個性のある酒を探そうというお客様がふえてまいりました。これがかなり地方を潤しております。そのために現在、一軒のうちでもターゲットを決めてしぼった製品が非常に多様に出ております。これの一つのあらわれといたしまして、私ども地方の酒造組合できき酒会なんかをいたしましてお客様を呼ぶときに、特殊品を並べろと言いますと、石川県はわずか六十一軒、最近は五十何軒になりましたが、そのメーカーしかないのでありますが、七、八十点の特殊品が出てまいります。これがやはり需要振興には非常に人気があるようでございまして、たとえば石川県で申しますと、観光客がかなり多いのでありますけれども、観光客用に九谷焼に詰めた千円程度だとか千四、五百円程度までのみやげ品を皆さんずいぶん出しておられます。これもかなりの売れ行きを示しております。あるところにみやげ品専用の協同組合をつくりまして、観光物産館というところで売っておりますが、かなりの売れ行きを示しております。たとえばターゲットをしぼった製品を売っていく、地方の小さいメーカーは小回りがききますので、それに応じた酒づくりをまた手づくりその他でやっていこうということで現在やっております。  また一面では、先ほどございましたけれども、二級酒で一万円というような、五年くらいたった、精白度は物すごくよくて実にみごとな酒を売っておられたり、それもシンボルとして大変また人気を博しております。  こういういろいろのターゲットをしぼった需要振興策というのを地方はとって、それを口コミで広げていこうというのが現在の地方の実情ではないかと思っております。
  61. 長部文治郎

    ○長部参考人 主産地としての考え方を申し上げます。  やはりわれわれの方は全国に売っておりますので、どちらかというとライバルと言えばウイスキービールになるわけです。したがってそちらの方へお酒を飲む方が行かないように、まず基本的には強力なマーケティングを展開しないといけない。そのためには電波も使わないといけないし販売ネットワークの見直しもやらなければいかぬということになってまいるかと思います。そういう意味では卸機構というのは非常に重要な存在になる。それからまた一方自社内での技術革新とかそういうものを進めまして、製品の多様化というものを消費者のニーズに応じて開発をしていく、この二つが大きな柱になって展開されていくと思います。
  62. 平沼赳夫

    ○平沼委員 ありがとうございました。  それで、私も日本酒が好きでよく飲むわけでありますけれども、大分、先ほどの参考人、特に福光社長のお話にありましたけれども日本離れというお話がありましたけれども、どうも日本酒を飲むと翌日二日酔いで残るとか、そういう一つのイメージが大変日本酒に対して定着している。また翌日息が非常に酒臭いので翌日またまずい、本当に国民にそういうような変なイメージがあることも私は事実だと思います。ですから、やはりこれから日本酒需要拡大というものは、嗜好品という一つの部類に入るわけですから、そういうものを払拭するようなメーカー側の宣伝も必要じゃないか。これは素人の意見かもしれませんけれども、時間が参りましたのでこれを逆に私の意見とさせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。  まことにありがとうございました。
  63. 綿貫民輔

    綿貫委員長 渡部一郎君。
  64. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 各参参人の皆様には有力な御意見をお聞かせいただき、大変感謝をいたしております。  まず私は最近大蔵委員会に参りまして、この酒類特に清酒業界に対する大蔵省の行政指導というのを見ておりますと、はなはだ強力かつ具体的でありまして、日本酒特に清酒業界は国有化されたとしても、これ以上ないくらい徹底的な行政指導が行われているなという印象を抑えられないのであります。一体こんなにラベルの一つから、等級の決め方から、申告の仕方から、お米の割り当てから、お米の見分け方に至るまで徹底的に指導しなければならぬものか。こういうよけいなルールというものは多過ぎるんではないかという感じがしてならないわけでございまして、まずその辺のところを、はなはだ言いにくいところでございましょうし、一番言いにくい方にちょっとこの辺をお伺いしたいと思っておるわけでございます。  中央会福光さんにまずお伺いしたいのですが、ちょっと規制がいろいろたくさんあり過ぎて、ずいぶん御苦労なさって、たまにはやけ酒を飲まなければならぬときもあったんではないかと思うのですが、フランクに言って、こういう点はまずくて今後改めてもらうといいな、この辺の規制はもう邪魔だから取っ払ってもらいたいなというようなところを、今後の改善のために、御意見を率直に伺わせていただきたいと思います。
  65. 福光博

    福光参考人 いろいろと、酒税法というのがありまして、それに微に入り細にわたって書いておるそうでございまして、すべてそれによってやっておられますので、それが行政指導なのか、果たして法律による行為なのか、私はわかりません。わかりませんけれども、確かにいろいろとむずかしい面があるのは本当であります。たとえば免許の問題にいたしましても、これはなかなか容易に製造免許というのはもらえないわけでありますし、それから免許に付随したいろいろの規制がついておることも事実であります。しかし、これは法律で決めておられるということで、私どもはもう天与のものだと思って、それはそのように思っておるわけです。だからそれを前に、いまになって改めて感じるということは本当は余りございません。いまおっしゃいました中で、なくてもいいじゃないかとおっしゃっても……。そういう意味で法律に基づいてと言われればしようがないので、そういう意味では、私は関与と感じておりません。
  66. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ここは衆議院で立法府というところなんです。法律を直すところなんです。だから法律を直すところへ来たのですから安心してしゃべって大丈夫なんです。こういうところを直してほしいな、こういうふうに言った方がいいところなんです。ふだんはおうちへ帰ったら法律をちゃんと守ってもらいたい、そこをちゃんと立て分けていただきますように。じゃ、後で考えていただくとして……。  それから、最近小売屋さんや酒販店さん、大変倒産が多いというお話もあったようで、私もある意味で心を痛めておりますが、酒類販売についても規制が非常に多い。消費者立場から言えば徹底的に自由化してしまってだれがお酒を販売するのもいいじゃないか、そうして自由競争の中で淘汰されていくべきであろう、ひいては今度はお酒をつくる人もそういうふうにするべきであろうという意見も多数あるわけでありますが、日下部参考人に伺いますが、この点、最近の小売店、酒販店立場で非常に密着してやっておられるようにも拝見いたしますので、御意見を承りたいと思います。
  67. 日下部昌男

    ○日下部参考人 お答えします。  ただいまのお話でございますが、先ほども私が述べました中で、六大都市の小売酒販組合の会議で、そういったデータが現実に出ておる、非常に厳しいものがあると思います。  それで、先ほどの御質問に関連するのですが、いまの免許の問題につきましては、特に大型スーパー店等に免許が下付される場合、一般の昔からある地元の小売屋さんという立場皆さん方のお受けになる感覚というのは、スーパーマーケット、いわゆる集客能力の大きなところで、そういうところに酒類を置かれた場合には、免許をおろされた場合には、非常に目玉商品、おとり商品に清酒というものが使われはしないか、それによってその地域の販売価格の正常化というものが荒らされるというような御心配の声があるやにも聞いております。  いずれにしましても、実は私の参考意見陳述のときに申し上げましたように、きょう地元の豊岡の組合の部会長の秋山さんがお見えになっておりますが、この小売組合さんの方から実は今回の増税につきまして小売店関係としてはこういった点が非常に困る、したがって今後このような点は留意していただきたいというようなことを、メモをいただいてきております。それというのが、増税によって消費力が落ちてくる、販売力が落ちてくるということで、それを業とする者としての経営が非常にむずかしくなる。そのためには、どうか今後の値上げとか増税のときには適正な末端価格の改定によって販売利益率というものを最低でも二五%に確保できるように考えてもらいたいというのが一点でございます。  それからもう一点は、先ほど来出ております免許の認可が多過ぎるために過当競争あるいは零細化が進行する。そういった点で今後の新しい免許認可の制限は堅持してもらいたい。  また、第三点としまして、健全経営に必要ないわゆる価格指導、第一番目と重複しますが、並びに安売りとか廉販売に対する行政指導の強化というものをもう少しきめ細かに実施をしてもらいたいというような要望をいただいてきておりますので、参考までに申し上げさせていただきます。
  68. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの読み上げられたメモの御要望を聞いていると、まさにそういう感じがするのですけれども、行政指導というものは一遍踏み込み始めると、もう徹底的に、それこそ朝から晩まで行政指導しなければならぬほど細かくいかなければならない。しまいには店主は朝何時に起きろとか、店構えはどういうふうにしろとか、びんはこういうふうに並べろとか言いたくなるのですね。大蔵省が銀行に対して指導しているのを見ると、その感が非常に濃いわけですね。だからいま酒の業界はちょうど中途半端なところにいる。行政指導もある程度は行われておるが、余り自由でもない。それでなかったら今度は徹底的に自由化して競争はもうだめなところはどんどんつぶれていくというふうに切りかえなければならない。そのどちらに大蔵省の体制があるか、国税庁の体制があるかによって、非常に妙なことになっていると私は思っているわけなんです。だからお酒の免許がおりるのがおそいために、田舎で買いにくい、あるいは新設団地のところで買いにくいという要望があるかと思えば、やはりたくさんおろし過ぎて困ったというところが一方に存在する。そのたびに大蔵省の役人は現地へおっ取り刀で駆けつけては大岡裁きみたいなのを朝から晩までやっておる。大蔵省の役人は一体何をしておるんだ、朝から晩まで行政指導ばかりやっておるしかないのかという議論がいま国会の中で出ている最中なんであります。したがって、こうした問題については、私は各所の業界の方そろっておられますから、今後十分こういう点に着目されて御自分の意見を表明していただきたいと思います。いままではこの業界は余りにも国税庁からの御指導に基づいてやるという方向に一本化されていました。配給制度の時代と同じやり方、そういう考え方を推し過ぎちゃったために、いまアイデアが出てこない段階だろうと思います。やがてもう一回こういうチャンスもございますでしょうし、私はそういう意味では業界の皆様方全部にその点を御要望しておきたい、こう思っているわけであります。  次に、先ほどから参考人の御意見の中で一様に言われていることは、原料のお米の値が上がって困っておるというお話でございました。私は素人っぽく伺うわけでございますが、原料のお米が上がったら安いお米を買えばいいのであり、昔のような割り当て制が現在存在していないとすれば、世界じゅうからいいお米を探してくればいいのであり、そして世界の中ではお米の安いのがたくさんあるわけでありますから、そこから買ってきてもいいはずだと私は思います。さあ、どこにネックがあってそういうことができないのか。大関さんはカリフォルニア米でうまくやっておられるというおうわさでございますから、日本原料米の良質なのを手に入れるのにどういう苦労をしなければならぬか、法規制のどこに問題があるのか、お述べください。
  69. 長部文治郎

    ○長部参考人 私自身は食管法の内容を詳しく知りませんので、その辺の法制的なことはわかりませんが、いずれにいたしましても現在の食管法ではアメリカの米を日本へ輸入するというのはできないということになっておるようでございます。私の方で、実は二年前からカルフォルニアで清酒をつくっておりますが、かなり農林水産省の方でお心遣いをいただきまして、もしその酒を日本に輸入するというふうな事態に立ち至ったならばあらかじめ言うてほしいというような連絡も聞いております。そういうふうな点で、国内の清酒のメーカーあるいは食管法に対する影響がかなり大きいのじゃないかということで、私ども自身あらかじめ警戒心を抱きながら、これはなかなかできないんじゃないかという判断をしておる次第でございます。
  70. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま非常に言いにくい話をわざわざ言っていただきまして、それから先は私の方で、ヒントに富む示唆を与えていただいたわけですから調べまして、そしてもう少し合理的なやり方というものが幾つもあるだろうと私は思います。ちょうどアメリカへの輸出品が多いことでもありますから、新たな観点で見直さなければならぬだろうと私も考えております。  それから、日下部参考人が先ほどおっしゃっている中で、酒税引き上げの時期というものが非常にマイナスの時期だったとお話しになりました。ビール業界は大変にもうかる時期である。確かにこれから暑くなるところですから、ここで上がろうが何をしようがビールを飲むぞとこっちは構えているわけでありまして、それこそ笑い顔が絶えないビール業界であろうと、私もそんな気がするわけであります。ところが、これからお酒を一本おかんをつけて飲むというわけにいかぬから、それこそお酒の業界は青菜に塩でおられるのもちょっとわかるような気がする。いつもお酒の税金を上げるのはビール業界が笑う直前にやるというのは、ビール業界の回し者が大蔵省にいるのじゃないかど思われる節すらある。この問題について確かにいままでの論議、いろいろな論議がありましたけれども、税金の値上げの時期というものについて御指摘になったのは日下部参考人が初めてであろうと私は思います。この問題については非常におもしろい問題提起だったと思いますので、そう一方的に悪口を言われたのではたまらぬでしょうから、キリンビールさんとそれから大関さんにこの問題について意見をちょっとおっしゃっておいていただきたいと思います。
  71. 桑原良雄

    桑原参考人 私ども値上げの時期について考えたことはございません。最盛期前だということで会社に有利に働くということは別にないというふうに考えております。
  72. 長部文治郎

    ○長部参考人 われわれの業界値上げを数回やっておりますので、その時期についてはかなり経験を積んでおりますから、その経験に基づいて最もふさわしいというのは、やはりお酒の不需要期、売れない時期に入る前というのがいいのじゃないかと思っておりますが、余り清酒に関心のない時期、それを選んだ方がいい。むしろ最盛期に価格改正をやりますと、非常に仮需要が起こりまして市場が混乱するというネックがございます。
  73. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ではお酒はどんな時期がいいのか、これを日下部さんと宇治田さんにお伺いしたいのですけれども、仮需要が起こるとか、あるいは酒税引き上げのために酒類の間の相互的な需要の移動が起こったりするニュアンスというものを一番鋭く感じておられるのは御両所だろうと私は思います。ですから問題の一問目は、今回の引き上げでだれがもうかってだれが損するのか、そういう損をするグループが存在するとすればわれわれは税法上の手直しを明らかに考えなければならぬわけですから、どう考えられておるか、もう一つは、中小酒造家に対して酒税引き上げの時期、見直しの時期というのはどういう時期がいいのか、この二点について御両所にお答えいただきたいと思います。
  74. 日下部昌男

    ○日下部参考人 お答えします。  私は意見陳述の中で、増税の時期と、同じ増税されるのであればというような表現で申し上げましたが、いずれにしましても酒税増税あるいはコストアップによる値上げというようなものは、一般消費者大衆のいわゆる消費能力、消費者物価の値上がりとかあるいは所得水準の向上とか、いろいろな問題がございますが、今回特別感じますことは、いずれにしましても消費者消費能力、消費購買力が非常に低下しているときである、消費者各自が生活防衛のために当然財布のひもをしっかり締める、このようなときに増税値上げがありますと、なおさら清酒に対する需要の冷え込みが非常に厳しいものとして出てぐるのじゃないだろうか、このような心配をしておりまして、いつの時期の値上げがいいかということは非常にむずかしゅうございますが、全然値上げをしないわけにはいきませんものですから、同じようなことになりますが、やはり国民消費能力、経済状態の上向いていくような時期を選んで適切な価格値上げをしていただくのがいいんじゃないだろうか、このように感じております。
  75. 宇治田福時

    ○宇治田参考人 ただいまの第一の御質問で、この五月の酒税引き上げによってだれがもうかりだれが損するのか、端的に申せばビールウイスキーが得をし清酒は損をするということは、これはもう明らかだと思います。というのは、清酒の場合は不需要期に向かうので必要以上の買い控えが行われる、ビール需要期に入るので、じゃあ買っておこうか、恐らく前回の値上げのときには一・五キロという手持ちが認められたのでございますが、その一・五キロはことしの場合は恐らくビールばかりになって清酒は一本も入らないだろう、そのためにかえって消費者にも迷惑をかけるだろう。したがいまして、次の御質問に移りますが、時期はいつが適当かということは必ずしもいつとは申せられませんが、手持ち数量が中身が何でもよろしいというところにわれわれの大損をする原因がございます。手持ちは一・五キロまではよろしい、それ以上は増税の対象になるんだということになりますと、数量だけでございますと明らかに清酒は外されますので、この際適当なバランスを持った手持ちを認めるということにしていただければと思うわけでございます。
  76. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、ただいま貴重な御意見を聞かせていただきまして私大変感銘したところでございまして、ただいまの御指摘のようなものは今後の行政の中に反映しなければならぬだろうと私は思っております。  また級別の問題、古めかしい級別の問題につきまして、各参考人から大変強烈な御意見がございまして、恐らく中央会福光さんを除いてはほとんど皆さん級別についてある種の異議を表明されました。福光さんも、別の言い方ではございますけれども、同じように異議を表明されておられますところを見ると、級別の問題の見直しというのが必要だろうと思います。  私は、その見直すとき、どう見直すかという時期にもう来てしまったと思います。それはいままでのように、大蔵省の偉い人が決めて、大臣様が言われたから見直すというのじゃなくて、中央会として考え、みんなが考え、販売店が考え、消費者が考えるという時期が来ていると思うのであります。  したがって、さんざん申しわけないのですけれども福光さん、あなたの意見は非常におもしろいですから、この問題は業界として今後御研究をいただきたいと私は思うのですが、どうでしょうか。
  77. 福光博

    福光参考人 非常におっしゃるとおりでございまして、級別制度がまるまるいいと言ったわけではないのです。ただ、級別を外せば、従価税というのが自然に出てくるではないか、従価税は非常に困るということを私は申し上げたのであります。  なぜかといえば、先ほど申しました、米代が上がれば税金も一緒に上がるということになるわけでありますから、米代が上がって値上げしたら税金も一緒に上げねばならぬ、これはちょっと酷にすぎませんかということを私は言っておるのでありまして、いまの級別制度が万全であるなんとは全く思っておりません。しかし、かわる制度がいまのところ見つからないから、ゆっくりもう少し時間をかけて考えていこう、何かそれにかわる制度はないものかというのが私どもの考えであります。
  78. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 研究してください。
  79. 福光博

    福光参考人 研究したいと思います。
  80. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、どうもありがとうございました。
  81. 綿貫民輔

    綿貫委員長 玉置一弥君。
  82. 玉置一弥

    ○玉置委員 参考人皆さん、大変御苦労さまでございます。時間が十五分という限定がございますので、本当に皆さんにお聞きをしたいのでございますけれども、代表として各分野のお話を聞いていきたい、かように思います。  そこで、今回の酒税値上げによりまして、大蔵省の試算によりますと、一%程度の売り上げの影響が出てくるという一昨日の委員会での答弁がございましたけれども、それぞれの立場からどういうふうに見ておられるのか、これをまず簡単にお伺いしたいと思います。  まず、ビール桑原さん。
  83. 桑原良雄

    桑原参考人 売り上げの影響というのはいろいろな要素がございますので、一概に言えないんじゃないかと思います。特にビールの場合は、いろいろな相対価格の問題もございますし、それから、特に天候に影響される商品でございますので、夏場の天候がどうなるか、この酒類増税を乗り越えたいろいろな要因があるものですから、一概に言えないと思いますが、基本的には、やはり価格が上がるのですから、需要影響があるということは否定できないと思います。
  84. 玉置一弥

    ○玉置委員 では、大手の代表で、大体三十五万石ぐらいいまつくっておられますけれども、その辺の今期の見通しというよりも、酒税の値上がりの影響、その辺をお伺いしたいと思います。
  85. 長部文治郎

    ○長部参考人 全体的には、やはり伸びというのはなかなか期待できない、かなり一生懸命売りまして、一〇〇%を維持するというのがせいぜいではないか。  問題は中身でございまして、やはり特級酒はかなり減ってくると思います。五%程度ダウンするのではないか。一級酒もひょっとすれば一、二%ダウンするのではないか。その分が、二級酒である程度プラスで出てくる。全体で余りふえないというふうな見通しをしております。
  86. 玉置一弥

    ○玉置委員 中小の代表で、宇治田さんにお願いします。
  87. 宇治田福時

    ○宇治田参考人 大体長部参考人と同感でありますが、特級酒につきましては、私はもっと厳しく感じております。五%どころの落ち込みじゃなかろうと。したがいまして、結果として、税制御当局の企図するだけの増収にはならないんじゃないかと考えております。
  88. 玉置一弥

    ○玉置委員 現在、需要が大変低迷をしている。その中で特に、値上げではないわけですけれども消費者にとっては値上げになるわけで、こういう酒税改定によって値上がりが起こりますと、要するに、いままでの停滞の加速度以上の圧力になるのではないか、そのように私は危惧しているわけでございます。  その中で、需要が拡大をされない限り、製造原価としては縮小される見込みがまずいまのところない。そして、原料米について、自主流通米が大部分でございますけれども、毎年の米価値上げという影響が大変大きく響いてきておる。そして、いま六百五十万トンの米が余っている。酒造関係でいま五十五万トンぐらいお使いになっているわけでございます。  そういう観点から、これもまた長部さんと宇治田さんにお聞きをしたいのでございますけれども、いまの技術、そしてこれからの消費者動向、そういう面から見て、米を消費拡大するとすれば、大手の場合、現在の原料米価格が助成できれば、消費拡大をどの程度できるか。ニュアンスだけで結構でございますから、数字は事前に言ってなかったので出てこないと思いますが、そういう面でお聞きをしたいと思います。  まず、長部さんからお願いします。
  89. 長部文治郎

    ○長部参考人 細かい数字はございませんのでなかなか答えにくいのでありますが、いろいろな面でPRをし、あるいは声を高らかにして清酒を飲んでいただくように宣伝はしておるのですけれども、問題は品質の向上ということにあると思います。  これが米の消費につながればいいということでありますけれども、たとえばわれわれ業界から、三倍増醸という、アルコールとブドウ糖を使いまして米の使用量を減らしておるという製造法があるのですが、これをやめてしまうというふうなことにでもなれば、若干原料米の使用率が上がるのではないかという感じはしておりますが、正確な数字はちょっとわかっておりませんので、お答えできないのが残念でございます。
  90. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまの設備でふやすことは可能ですか。
  91. 長部文治郎

    ○長部参考人 いまの設備で急に大量に、たとえば三倍増醸をなくするというふうなことは大変むずかしいことでございまして、たとえば三年なり五年なりの中期計画を立てて徐々にそれを改善していくということであれば、できないことはないと思います。
  92. 玉置一弥

    ○玉置委員 宇治田さんにお願いします。
  93. 宇治田福時

    ○宇治田参考人 米をふやすということにつきましては、米をふやして売れるように、税制も同時に近代化していただきたい。つまり、具体的に言えば、特級をやめていただきたい。  そういうようなことになれば、先ほども指摘したように、これは五割みがいているわけですから、普通は、全国平均は二七%みがいているわけです。この五割みがいた米がどんどん売れるような税制にしていただければ、倍は使える。現在の設備は、もちろん精米力は一遍に倍にはなりませんが、幸いにしていわゆる共同精米場的な精米会社ができておりますので、そこへ委託をすれば精米には全然不安がございませんので、税制さえ近代化していただければ倍使う自信はございます。
  94. 玉置一弥

    ○玉置委員 現在、需要停滞の中で四千軒くらいあった企業の数が二千八百五十くらいに落ち込んできている。そしていままで構造改善等でやってこられたけれども、なかなか実効が上がってこない。そしていっとき五千石やらなければ採算点に合わないというようなお話がございましたけれども、先ほど日下部さんのお話では、三千石ぐらいが全国平均であるというお話でございます。この実態から見て、いまの構造改善では本当にだめなのかどうか、そして二千八百五十というこの数字、これについてどういうふうにお考えになっているのか、中央会におられます福光さんにお願いします。
  95. 福光博

    福光参考人 酒の需要振興の観点から申し上げたいと思いますが、いまの世の中は、かつてほど大量生産が歓迎されてない時代ではないかと思うわけであります。先ほども申しましたけれども、多品種少量生産でターゲットをしぼった酒をそれぞれつくっていくというあれが出てきております一そういう意味では、いまの二千八百五十というのはかなりよい線ではないかというように思っております。  それともう一つは、片や大企業でありますから、テレビその他マスコミを使っての大宣伝ができるわけであります。しかし、こちらは中小企業の集団でありますから、マスコミはなかなか使いにくい。しかし、この二千八百五十軒が自分の周りの人たちを懸命に説得して日本酒のファンをつくるという努力をすれば、これがまた大きな力になるのではないか、このように思っております。だから、私は数が減るだけが需要振興につながるとは思っておりませんで、逆に皆さんが熱心であれば二千八百五十というのはかなり適正な数字ではないか。あと減りましても、これは後継者がないとかそのほかそれぞれいろいろと事情がございまして、若干減るのもございましょうけれども、それほど多過ぎるとかあるいは少な過ぎるという数字ではないと思っております。
  96. 玉置一弥

    ○玉置委員 消費者立場から申しますと、安くおいしいものを得たい、そういう希望が強いわけで、いろいろな製造原価の割り出し方あるいは販売力、そういう面から見て、固定経費を詰めていこうと思えば量を消化せざるを得ない。そういうことからある程度量がまとまるということも必要でございます。ただ、現在の二千八百五十社の実情を見ておりますと、やはり嗜好品でございますから、そういう点でぜひ持ち味というものを出して、その中で活路を見出していただきたい、かように思うわけです。  同じような意味でキリンビール桑原さんにお伺いをいたしますけれども、キリンビールのシェアがいまほぼ限界まで伸びてきている。そしてビールが五十三年、五十四年の比較で見ますと、全体の伸びが四・八%、大体そのくらいである。その中で製造原価当たりで五六%くらいの税金をかけられ、小売段階で四七、八%の税金負担をされているわけでございまして、消費者としては本来の価格よりはかなり高いものを買わされているわけです。ここで大変心配いたしますのは、今回さらに値上がりになります。こうなった場合、ビール需要が、まず先ほどのお話で季節によってあれですけれども、普通ですと、多少影響を受けるだろう。それがどの程度かわからないというお話でございますけれども、たとえば横ばいというふうに見た場合、キリンビールとして考えていただきたいと思います。キリンビールのシェアがもう限度まで来ている、これ以上伸びないということは、全体が伸びなければキリンビールさんとしての生産量が上がらないわけですね。要するに分母と分子がありまして、片方が固定で片方がどんどんふくらんできているということになりますと、答えはふくらむわけですね。そういうことからいくと、原価が上がってくる。売り値を上げなければいいのですけれども会社として経営がやれなくなるということになると当然売り値が上がるということになります。そこで、現在の税制から見てこれからのビール業界はどうあるべきだとお考えになりますか。税制の悪いところも言ってください。
  97. 桑原良雄

    桑原参考人 非常にむずかしい御質問だと思うのでございます。  先ほど来いろいろ申し上げておりますように、いままでビールは非常に相対価格が安かったのですが、それが最近増税それからコストアップによって価格が上がってまいりまして、非常に相対価格も上がってきております。したがいまして、これ以上の増税は困るということでいままで減税運動その他をずっと進めてまいりましたのですが、今回は一方におきまして財政再建という国家的な大きな要請がございますので、この際は目をつぶって今回の増税には従わざるを得ないだろう、そういう御意見を申し上げたわけでございまして、今後増税等によって価格が上がることは極力避けていただきたいということをあわせてお願いしたわけでございます。  需要の伸びが価格によってとまってくるということになりますと、内部で合理化をやっていくより仕方がない。合理化も限度に来ておるわけでございますので、そういう意味から、将来なるべく早い機会にひとつビールの税制を見直していただきたいということを最後のお願いとして申し上げたわけでございます。  御質問に沿ったお答えになっておりますかわかりませんけれども、そういった趣旨をきょうは申し上げたいということで参ったわけでございます。
  98. 玉置一弥

    ○玉置委員 ただいまのお話を聞いておりますと、財政再建に協力されていただいているわけでございますけれども、私の見方によりますと、たとえば合理化はいままでやっておられないわけじゃない。そして需要が伸びない。そういう中でやられるということは非常にむずかしいわけですね。そういう面から考え、あるいは流通コスト、そして原料、人件費、いろいろなものが上がるわけです。固定費は年々薄まってきますから率は非常に下がりますけれども、固定費率よりもむしろ原料あるいはいわゆる変動費、その辺の比率の方が高いと思うのです。それでは税金の分だけ負担しましょうということで上げて、果たしてこれから売り値を上げないで税額以上にやっていけるかどうか、その辺について一言だけ。
  99. 桑原良雄

    桑原参考人 総需要拡大ということで一方において生産原価の切り下げを図ると同時に、需要をこれから努力によって上げていって、その中において適正なシェアを獲得していく、そういう方針でいっておりますので、当社としては総需要拡大ということに販売面では一番の重点を置いてやっているわけでございます。
  100. 玉置一弥

    ○玉置委員 最後です。  先ほど申しましたのは、キリンさんが一番シェアが大きい。これ以上大きくなると分割の話が出てくるということでございまして、ビール業界全体のシェアをキリンさんが上げていくのがどうか、そういうところも関係するわけですね。だからサントリーさんもありますし、サッポロビールもある、アサヒビールもある。いまのお話ですと、ほかのシェア拡大まで手伝っていくという話になるわけですね。普通はそういうことは考えられないので、たとえばいまのシェアが一〇〇、そのうち五十何%持っておられる、そういうときに、五十何%を幾ら拡大したってしようがないわけですね。では拡大して分かれちゃえという話もありますけれども、それはまず考えられない。それをやられるのだったらいままでもうすでにやっておられますから、いまの現状を維持していくということは、価格を上げるしかないというふうに私は思うのです。いままでのお話を聞いておりますと、価格を上げないためにシェアを拡大する、販売需要を拡大する——自分のところの分だけは拡大できないのですかどうですか。
  101. 桑原良雄

    桑原参考人 総需要拡大ということで、その中で当社の拡大も図っていくというのが一点でございます。  それからもう一点は、やはり競争の社会でございますから、競争によって若干ずつでもシェアを上げていきたいということは一方においてはあると思います。
  102. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、先ほど渡部委員の方からお話がございましたように、ふだんから大蔵省関係あるいは現在の制度についていろいろな御意見をお持ちだと思います。国会の中で発言された場合に外で問題にされないということもございますし、またいままでのどちらかというと税金を取るがための制度をつくられて以降、大変状況が変わってきております。そういう意味で、今後審議がどんどん続いてまいりますけれども、もし忌憚のない御意見がございましたら、それぞれの御関係の方へぜひ連絡をいただきたい、お願いを申し上げまして質問を終わります。ありがとうございました。
  103. 綿貫民輔

    綿貫委員長 正森成二君。
  104. 正森成二

    ○正森委員 時間がもう昼も遅くなりましたので、なるべく簡略に私から聞かせていただきます。  まず第一に水野参考人に伺いたいと思います。  先ほどあなたの冒頭の意見陳述を聞いておりますと、酒税というのは負担の公平な税制であるという趣旨の御発言をなさいましたが、その御趣旨はどういうものか、もう少しおっしゃっていただきたいと思います。
  105. 水野正一

    水野参考人 私が申し上げた負担の公平、ちょっと表現が適切ではなかったかと思いますが、社会的な正義といいますか、こういう観点から余り問題のない税ではないかという意味なんです。といいますのは、御承知のように酒税は、そもそもは酒というふうなアルコール飲料をともすれば多量に飲んで、本人の健康を害するとかあるいは社会的にいろいろ問題を起こすとか、あるいはその家族を不幸にするとか、そういうところを抑制するという趣旨から、たとえばアメリカなんかの禁酒法あたりのそういう直接酒の消費を禁止する、それにかわるような意味も持ってかなり強い抑制的な措置としての税が最初考えられ、それがそもそもの発端。したがって、そこからほかの消費税あたりと比べましても高い税率を適用される、これが現在にまで——現在かなりまた税の性格は変わってきておりますけれども、根底にはそういうものが残っている、そういうところを踏まえて一種の社会的な公正といいますか、こういう点から見てそう問題はない。所得分配という観点だけからとらえればこれはある程度逆進性を持つ税だとしておりますので、いわゆるそういう意味での税負担の公平という点から見れば問題があるかもしれませんが、私が先ほど申し上げたのはちょっと表現が適切でなかったかと思いますが、そういう意味に理解していただきたいと思います。
  106. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう補足説明がございましたので余り申しませんけれども、たとえば宇治田参考人が指摘されましたように、ダイヤモンドの税率は一五%だ、これは非常なぜいたく品ですね。買う人は数が限られております。ところが、自分のことを申し上げてなんですけれども、私もお酒はわりと好きな方で、特に日本酒をたしなんでおります、ほかの酒も全部好きでありますが。ビール税率が上がると四八%近くなる、特級は四三%だ、しかるに非常なぜいたく品であるダイヤモンドは一五%だという点から見れば、社会的に果たして妥当な税額であると言えるであろうかという点は、一つやはり問題になると思うのですね。  それからもう一つ、あなたのいまの答弁の中で、所得分配といいますか再配分機能といいますか、そういう点から言いますと、明らかに社会的な不公平のある税目なんですね。たとえば庶民でも夏場になればビールの一本あるいは二本は飲みます。しかし同時に、どんな金持ちでも一日にビール百本は飲めないのです。松下幸之助さんがおれは何億という所得があるからひとつビールを大いに飲んでやろうとおっしゃっても、あのお年寄りが一日に百本、二百本飲めば恐らく寿命がうんと縮まるだろうということで、大体普通の人間が飲める量というのは決まっているのです。そうしますと、どんな大金持ちでも、あるいはどんなささやかな庶民でも、よほど高級なウイスキーでも飲む方を除けば年間の大体の租税負担というのはほぼ同額であるという意味で、租税というものが担税力のある者からは多く担税力の少ない者からは少なく取るのが公平の見地であるとすれば、参考人のおっしゃった公平な負担の税制であるというのは、これは言えないであろうというように私は思うのですね。その点については若干御意見の中で是正をされましたので、これ以上は申し上げないことにしたいと思います。  次に、宇治田参考人に伺いたいと思います。  先ほどから非常にユニークな御意見を拝聴いたしまして、私は、その中には非常に正論が含まれているとも思います。私はよく承知しませんが、統計によりますと、去年一年間で特級酒は九・一%売り上げが減少し、一級酒は三・八%減少したが、二級酒だけが大いに奮闘して六・二%ふえたというようになっておるようであります。この事実が間違いがないかどうか。  それから、こういう現象が起こった原因はどこにあると思われますか、宇治田さんの御意見を承りたいと思います。
  107. 宇治田福時

    ○宇治田参考人 ただいまの数字でございますけれども、ぴたりと私も記憶いたしておりませんのでこの数字については自信を持ってお答え申し上げかねますが、傾向としてはまさにこのとおりだと思います。これは絶対間違いない。  つまり、さっきも申し上げましたように、酒というものは米酒が大体工場原価で八百円の酒です。アルコールが一升換算で八十円の酒です。それのブレンドの上に成り立っておるとごらんいただいてよろしいわけです。したがいまして、一級、二級とは余り大差ございません、これは銘柄力の差でございますから。そうしますと、さっき申しました若干アルコールの入った特級酒と一級、二級酒の工場原価の差は百円だ。その百円しかないものを末端で千円以上の差をつけるという制度そのものがこういう結果をもたらしたというふうに言えると思います。  そんなところでよろしゅうございますか。
  108. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。  結局、どういいますか、新聞その他物の本に書いてありますことは、二級酒が伸びた原因には二つあるんじゃないか。それは結局、地酒のよさといいますか、飲酒される方の舌が肥えてまいりまして、二級酒もなかなかおいしいじゃないかというのが一つと、もう一つはやはり、税金も上がるし、物価も上がるし、給料はそれほど上がらないで実質所得は減少という中では、できるだけ安い価格にシフトを移していくという点からやはり二級酒が伸びてきているというように言われていると思うのですが、そういう点では地酒をおつくりになる酒造業者の方の御奮闘を、われわれ酒が好きな者のためにもぜひがんばっていただきたいというように考えているわけです。  先ほど、私ども京都地方を中心にですが、酒造業者に対してアンケートをいたしました。京都からお見えになっている酒造業者の方にもあるいはアンケート用紙が行ったかと思うのですが、相当多くの方からお答えいただきました。多くの要望がございましたが、その中で共通しておりましたのは原料米の問題で、これを古米と込みで買わされたのではかなわぬとか、そしてできるだけ新米で、しかも安い価格で安定的に供給してほしい、できたら政府米を、消費者に売り渡す価格と少なくとも——それでもうんと高いのですけれども、入手できるようにしてほしいというような希望が非常に多うございました。  それで、私は政府の方にも資料として提供を要求しましたら、酒造米の総量のうち政府米の占める割合、これが五十一年度は七・二%、五十二年度七・三%というぐあいになりまして、五十四年度からやや上がって一五・八%、五十五年はまだ年度が終わっておりませんが、計画では二一・九%で十二万五千玄米トンですか、そのぐらいになりますかね、というような数字が出ておりますが、こういう点について何か政府の方にこうしてほしいという御希望がございましたら、酒造関係の御商人が三、四人お見えでございますが、どなたでも結構ですから御意見を承りたいと思います。福光さんいかがでしょうか。
  109. 福光博

    福光参考人 政府米をいただいたのは原料米を安くする方法としては現在それしかないということでお願いをずっとしてまして、最初は古米でありましたのがだんだんよくなってきて、ことしは新米で全部いただくことになりまして、二割ほどになりましたので大変ありがたいと思っておりますが、反面消費者価格も上がってくるものでございますから逆ざやの分がだんだん狭まってまいりました。最初で三千円ぐらいあったのがいま千何ぼしかないはずでございまして、数量は倍になりましたけれどもどもの方へ寄与してくれる率は余り変わらないということでございまして、その点を工業用として別に何とか考えてくれないか、それが私どものいまの念願であります。どうぞよろしくお願いいたします。
  110. 正森成二

    ○正森委員 その点について、大手の長部さん御意見ございましたら承りたいと思います。
  111. 長部文治郎

    ○長部参考人 全く福光参考人と同じ意見でございまして、これからわれわれ主産地といえども品質の改良をしなくちゃいかぬということになりますと、やはり原料米は使用量がふえてまいると思いますので、その点で御配慮を願えれば非常にありがたいと思っております。
  112. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  113. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四分散会