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1981-08-07 第94回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年八月七日(金曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 森中 守義君    理事 愛野興一郎君 理事 楢橋  進君    理事 三原 朝雄君 理事 岡田 利春君    理事 中西 績介君 理事 小渕 正義君       太田 誠一君    北口  博君       北村 義和君    久間 章生君       倉成  正君    古賀  誠君       保利 耕輔君    鍛冶  清君       稲富 稜人君    小沢 和秋君       石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 六助君  委員外出席者         通商産業大臣官         房参事官    檜山 博昭君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         労働大臣官房審         議官      倉橋 義定君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   福渡  靖君         労働省職業安定         局失業対策部長 加藤  孝君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ————————————— 六月六日  一、石炭対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(第七次石炭対策に関する  問題)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 森中守義

    森中委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  先般、石炭鉱山等実情調査のため、第一班として北海道に、第二班として熊本県、福岡県及び大分県にそれぞれ委員を派遣いたしました。  この際、派遣委員から報告を聴取いたします。第一班中西積介君。
  3. 中西績介

    中西(績)委員 北海道地区現地調査につきまして、派遣委員を代表して御報告申し上げます。  派遣委員は、森中委員長団長として、愛野興一郎君、楢橋進君、鍛冶清君、小沢和秋君及び私、中西積介の六名で、ほかに北村義和君、岡田利春君が現地参加されました。  日程は、去る七月八日から十日までの三日間でありましたが、この間、釧路では、太平洋炭礦、十条製紙釧路工場釧路白糠工業団地及び釧路西港を、苫小牧では北海道電力苫東厚真石炭火力発電所及び王子製紙苫小牧工場をそれぞれ視察し、札幌において石炭対策に関する関係機関業務概況説明を聴取し、また、関係団体から要望を受け、意見交換をしてまいりました。  今回の委員派遣は、第七次答申を控えた時期に行われたものであり、関係団体からの要望も、これを踏まえた熱心なものでありましたが、その詳細及び関係機関業務視察個所概況等につきましては、別途、報告書を提出しておりますので、これを会議録に参照掲載願うこととし、以下、主な要望と、これに対する私ども所感を簡単に申し上げたいと思います。  第一は、国内石炭の二千万トン体制維持発展を図られたいという点についてであります。  二千万トン休制は、第五次政策以来、わが国石炭政策基本的な位置づけとなってまいりましたが、ここ数年は一千八百万トン台の水準推移するにとどまっております。このため、現状維持する対策のみでは、地下資源の特性として減耗していかざるを得ないわけでありまして、さらに強力な発展策を講じ、石炭鉱業の将来展望を明らかにすべきであるとする考え方は、私どもも全く同感に思うところであります。したがいまして、これには、消滅鉱区の再開発、新鉱開発など、生産基盤整備拡充に積極的に取り組む必要があるし、積極策を講ずることによって、問題となっている若年労働力確保にも好影響を与えることになると思われるのであります。  第二は、炭価改定ルール確立されたいという点についてであります。  石炭企業自立を求め、財政による対策経費の効率的な執行を図るため、適正な炭価を定めるルール確立する必要があることはきわめて当然のことに思われます。  現在、基準炭価を設定する際、比較すべき競合財石油ではなく、輸入炭価格が問題となっております。原料炭についてはなお相当の価格差がありますが、一般炭については、横持ちが必要な小口需要の場合、むしろ輸入炭の方が高くなっている例も出ております。したがって、炭価改定ルール策定について関係者が話し合う環境は整いつつあると思われるのであり、この機会に再生産が可能となる炭価の設定をぜひルールとして確立すべきであると思われます。  また、輸入炭の効率的な利用促進するため、大規模なコールセンター建設等流通体制整備する必要があることも申し上げておきたいと思います。  第三は、企業間格差調整策を講じられたいという点についてでありまして、自然条件立地条件に恵まれていない北空知地区の各山が特に問題となっております。こうした企業は、現行の諸対策のみでは格差解消を期待することがむずかしく、石炭企業の存在が地域社会の構造に大きな影響力を持っておりますので、このまま放置できない問題であります。  政策的には、石炭鉱業安定補給金その他の助成傾斜配分強化する措置を講ずる必要があると思われますし、さらに、企業においても、企業間で可能な共同事業等の実施を図るなど、合理化努力に真剣に取り組む必要があると思われます。  第四は、産炭地域振興対策推進特段配慮を願いたいという点についてであります。  御承知のとおり、産炭地域振興対策は、今後十年間で地域ごとに策定される発展計画中心として諸般振興対策推進することになったわけでありますが、発展計画内容において、地域振興整備公団の行う産炭地域工場団地造成事業が重要な役割りを持つ場合が多いと思われます。しかしながら、北海道地区の場合、造成団地分譲率全国平均に比べ相当下回っており、また、道外からの企業誘致がなかなかむずかしいのが現状であります。  これは、北海道が大消費地から遠いこと、寒冷地であることなどが大きな理由として挙げられており、担当機関において企業誘致に相当苦労されているのも理解できるものであります。しかし、造成団地分譲促進することが、発展計画実効性確保する上からも重要であると思われますので、より一層の創意と工夫をこらし、企業誘致促進を図ることを強く希望しておきたいのであります。  以上の諸点は、今後第七次政策推進する過程で解決すべき問題点であり、私どもに対する期待も強いのでありますが、当局においても適切な措置を講ずるよう強く要望いたしまして、報告を終わります。(拍手
  4. 森中守義

    森中委員長 次に、第二班岡田利春君。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 九州地区現地調査につきまして、派遣委員を代表して御報告申し上げます。  派遣委員は、三原朝雄君、渡辺省一君、小渕正義君、塚田庄平君、石原健太郎君と私、岡田利春の六名で、私が団長を務めさせていただきました。  他に現地参加として、森中委員長を初め、中西積介君、田中昭二君、麻生太郎君、北口博君、古賀誠君、八木昇君、稲富稜人君小沢和秋君、木下敬之助君が参加されました。  日程は、去る七月二十一日から二十三日までの三日間であり、この間、荒尾市役所において関係団体から要望聴取三池炭鉱概況、工業団地、鉱害地等視察筑豊ハイツにおける関係団体との懇談、また、時間の関係で、関係機関業務概況説明は車中で聴取し、最後に、新日鉄大分製鉄所燃料使用状況現場視察を行ってまいった次第であります。  今回の委員派遣は、北海道班と同様に、第七次答申を目前に控えた時期に行われましたので、関係団体からの要望もきわめて熱心なものがありましたが、その詳細及び関係機関業務視察個所概況等につきましては、別途、委員長の手元まで報告書を提出しておりますので、これを会議録に参照掲載願うこととし、以下、主な要望とこれに対する私ども所感を簡単に申し上げたいと思います。  第一は、二千万トン体制確立等石炭対策拡充強化対策財源確保を図られたいという点についてであります。  御承知のとおり、わが国石炭生産は、近年、一千八百万トン台の水準推移しておりますから、二千万トンの生産確保するためには、第七次政策において相当積極的な施策展開を図ることが必要であります。これらについては、すでに本委員会において各党から熱心な論議が行われているところでありますが、具体的な施策として、炭価改定ルール確立企業間格差是正国内炭優先利用確保等に適切な措置を講じ、さらに、消滅鉱区の再開発、新鉱開発等生産基盤の拡大にも積極的に取り組む必要があることは改めて言うまでもないことと存じます。  また、産炭地域振興鉱害復旧離職者対策等のいわゆる石炭後遺症対策にも、より強力な施策展開が求められておりますので、石油使用の節減に伴う石炭対策財源の今後の伸びが危惧されているわけでありますが、これについては事態の推移に応じ、石炭対策推進に支障を来さないよう、今後とも十分に対応しなければならない課題であると思います。  第二は、疲弊した産炭地域の早急かつ計画的な振興を図るため、特段措置を講じられたいという点についてであります。  今後、県と市町村が協力して策定する地域ごと発展計画を国の振興計画と整合させ、必要な財源確保しながら強力に推進すべきことは言うまでもありませんが、九州地区の場合、鉱害復旧ボタ山災害防止、老朽炭住の整備など、他の施策体系によって実施される地域環境整備事業と密接な関係があり、関係各省庁との連絡協調体制確立することが重要であると思います。  また、大牟田、荒尾のように隣接し、相互に深いかかわりを持ちながら、県が異なるため別個の発展計画を策定しなければならない地域もあります。こうした地域発展計画については、国を初め関係機関がお互いに緊密な連絡調整を行い、整合性のある計画づくりを行うなど、計画推進特段配慮が必要であると思われます。  第三は、鉱害早期完全復旧を図られたいという点についてであります。  鉱害残存量につきましては、昭和五十四年度価格で六千六百億円に達する膨大なものがあることが明確にされ、今後の復旧事業促進あり方について、現在、石炭鉱業審議会鉱害部会検討が行われ、本年十二月初旬にはその結果が明らかにされる予定となっているのでありますが、赤水、湧水に対する対応策追加工事あり方金銭賠償済み物件処理対策、有資力、無資力復旧工事の進め方、あるいは果樹鉱害等の認定の問題等々、多くの問題が出されております。この機会に、問題点に対する処理方針を明確にすることが必要であると思われます。  また、残存鉱害量が巨領であるため、復旧予算確保が問題でありますが、地域発展計画推進との関係もあり、一定期間内に完全復旧できるよう措置する必要があると思われます。  第四は、炭鉱離職者雇用対策強化を図られたいという点についてであります。  今日、なお多数の離職者雇用機会のないまま産炭地に滞留しておりますが、これら離職者は、炭鉱離職者緊急就労事業産炭地域開発就労事業などの制度によってようやく就労機会を得てきたのであります。もとより、この離職者に対しては、再就職をあっせんし、安定した職場での雇用確保することが前提でありますが、現在、中高年齢に達し、再就職機会を得ることは非常にむずかしい状況になっております。したがって、地域雇用が安定するまでこれら諸事業を継続実施し、事業費単価など事業内容についてもその充実を図ることが必要であると思われます。  以上でありますが、九州地区の場合、特に石炭後遺症対策地域の安定と発展に重要な役割りを持っていると思われるのであり、当局においても、今後とも諸般対策充実強化を図ることを強く要望いたしまして、報告を終わります。(拍手
  6. 森中守義

    森中委員長 お諮りいたします。  ただいま派遣委員より申し出がありました第一班及び第二班の調査報告書は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 森中守義

    森中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書本号末尾に掲載〕     —————————————
  8. 森中守義

    森中委員長 次に、去る四日の石炭鉱業審議会答申に関し、政府から説明を聴取いたします。通商産業大臣田中六助君。
  9. 田中六助

    田中(六)国務大臣 本日の御審議に先立ちまして、石炭鉱業審議会の第七次答申が出ておりますので、一言ごあいさつ申し上げたいと思います。  私ども、この第七次答申につきましては、昨年の八月六日に石炭鉱業審議会に対しまして御審議をお願いいたしまして、この四日にその答申を受け取ったわけでございます。  御承知のように、エネルギー事情が大幅に変わりまして、私は通産大臣就任後、二回のIEAのパリの会議に出席いたしました。その間サミットもございましたが、これらの会議におきましては、エネルギー見直しということの中心石炭が置かれたわけでございます。石炭見直しは各国ともやろうということでございまして、私どもも、石炭合理化臨時措置法がこの石炭中心基本法でございますが、この法律が来年の三月に期限切れとなります。したがって、今回の第七次答申を見てみますと、この基本法の延長はもちろん、その基本となすところは、石炭位置づけを二千万トン程度というふうに置いておりまして、これに対する措置といたしましては、三本の柱を置いております。この三本の柱とは、業者の、つまり労使自助努力、それから政府施策、それから需要者協力、この三つを三本の柱に置いた答申でございまして、私どもは、この答申中心にこれからの施策の実行に邁進していかなければならないというふうに思っております。  この第七次答申につきましては、後ほど事務当局から詳細な説明をいたさせますけれども、そういうエネルギー体制の革命の中に、石炭位置づけ石炭見直しということこそ、これからこの委員会におきましても十分な御審議を願うわけでございますが、そういう意味で、この答申審議に先立ちまして一言ごあいさつを申し上げた次第でございます。何とぞよろしくお願いいたします。
  10. 森中守義

  11. 福川伸次

    福川説明員 ただいま大臣から報告のございました石炭鉱業審議会答申要旨等につきまして、補足して御説明申し上げます。  まず、同審議会審議経過について申し上げたいと存じます。  昨年の八月六日に、同審議会に対しまして「今後の石炭政策在り方について」通商産業大臣から諮問がなされたわけでございます。  同審議会では、これを受けまして、政策部会向坂正男氏を委員長といたします検討小委員会を設けて答申原案作業に着手したわけでございます。検討小委員会委員には、向坂委員長のほか六名の委員が参画されたわけでございます。  検討小委員会は、昨年の九月三日に第一回の会合を開催して以来、二十も回にわたりまして慎重かつ精力的な審議を重ねられたわけでございます。  その間、大きな変革を見せつつございます世界のエネルギー情勢、国際的な石炭需給の傾向と見通しわが国石炭鉱業現状問題点等につきまして実証的な分析を進めるとともに、総合的なエネルギー政策の中での国内炭位置づけと、それに立脚いたしました国内炭対策あり方について検討を続けてこられたわけでございます。その過程で、石炭業界需要業界関係労働組合の代表の方々からも意見を聴取され、また、政策部会におきます中間報告の際の御討議も参酌しながら、幅広い観点から慎重に議論を尽くし、答申原案をおまとめいただいたわけでございます。かくして、八月の四日に通商産業大臣答申がなされた次第でございます。  次に、答申要旨について申し上げたいと存じます。  答申は、まず、第七次政策検討経過及び検討の背景、契機について述べました後、わが国石炭鉱業現状環境評価を明らかにしております。  第一は、わが国石炭鉱業現状についてでございますが、生産は、採掘条件悪化を克服しつつ、昭和五十年度以降千八百万トン程度推移をしており、需給も最近は堅調に推移をしてまいっております。  しかしながら、資金経理面では依然赤字経営から脱却できず、企業体質は弱体化した状況にとどまっております。また、炭鉱ごと自然条件立地条件等の差もあって、損益面でかなりの格差が生じているという指摘がございます。  第二の点につきましては、今後の見通しでございますが、国内生産条件について、従来程度生産維持には当面十分な資源量が存在し、深部化奥部化進行に伴うコストアップも、従来の第六次政策期間と同様に合理化努力によりおおむねこれを吸収することが可能であるという石炭企業側見通しを、この審議会といたしましてもおおむね達成可能であるという評価を下しております。  また、需給環境に関しましては、国際的な石炭需給は当面堅調に推移するという評価を下し、長期的にも現状よりは緩和する可能性はあるものの、底がたい動きを示すのではないかという予測をいたしております。  次に、このような現状認識と将来の見通しを踏まえまして「第七次石炭政策理念枠組み」について述べてございます。  その第一は、国内炭意義に触れまして、貴重な国内資源であること、海外炭に比して供給の相対的な安定性を有していることなどの意義を認め、国内炭の活用を図る必要があるという判断をしております。しかし、その場合、経済性を全く無視してよいというのではなく、安定性経済性の調和に配慮し、その適切な組み合わせのもとに政策体系を形づくる必要があるというふうに述べております。  その理念枠組みの第二は、石炭政策としては、このような考え方のもとに石炭鉱業自立を目指していくことを基本とすべきであるといたしまして、いま大臣が触れられましたように、石炭企業労使自助努力、それを支援、補完する政府助成、指導、及び関係地方公共団体施策並びに需要業界協力を求めておるわけでございます。  そして第三点といたしまして、具体的な生産水準あり方につきましては、石炭鉱業をめぐる内外の諸条件から、現存炭鉱における現在程度生産維持は可能であり、さらに、今後の石炭企業体質改善需給環境の好転に伴いまして増産も期待されるとして、当面、現存炭鉱の安定的な生産維持を基調としつつ、将来における二千万トン程度生産の達成を目指すことを基本的な考え方とすべきであると述べておるわけでございます。  そして第四点といたしまして、対策期間は五年程度とするのが適当であると答申され、政府においては、石炭鉱業合理化臨時措置法等について所要措置を講ずるとともに、財政資金につきましては、引き続き石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計によって確保すべきであるというふうな御提言になっております。  次に、以上申し上げました総論的な部分に続きまして、答申では「具体的対策」について述べてあります。  第一に、現存炭鉱についてでございますが、今後の深部化奥部化進行に伴うコストアップについて合理化工事合理化設備導入等によりそのコストアップの吸収に努めるべきであるという提案でございます。  第二点は「新規炭鉱開発」でございまして、最近、石炭需要が増勢に転じていることから、国内炭需給価格の動向の推移いかんによって経済性を有することになることが期待されるとしまして、政府において現行開発助成制度を存続させ、所要支援を行うことが必要であるという判断を下しております。さらに、将来の開発が期待される有望地域で、まだ調査が十分に実施されていない地域につきましては、政府において資源状況のより的確な把握に努める必要があるというふうにされております。  第三点は、消滅鉱区の再開発についてでございますが、最近におきます需給状況を勘案いたしまして、現存炭鉱が一体的に開発することが著しく合理的である場合に限り再開発を認めるという従来の原則維持しながらも、再開発の制限を緩和すべきであるという提案がございます。  第四点は「労働力確保」についてでございますが、まず、「石炭鉱業労働者にとって将来展望があり、働きがいのある産業とすることが基本である」とし、経営基盤確立強化のための各企業の自主的な努力と、それを支援、補完する政府施策が必要であるとされております。  労働条件につきましては、労使努力の成果を踏まえつつ、労使間の話し合いで決められるべきものでありますが、その場合、他産業とのバランスを考慮して地下産業にふさわしい労働条件確保されるべきであると述べてございます。  さらに、作業環境改善、教育の充実生活環境整備等の面におきましても、石炭企業自助努力政府施策が必要であると述べております。  第五は「保安確保」についてでございます。保安は「石炭鉱業生産のすべての基礎である。」という認識に立ちまして、自然条件事前把握集中監視体制整備強化等重点を置きながら、保安確保対策を強力に展開する必要があると述べてございます。  第六に、生産技術研究開発についてでございますが、これにつきましても、従来に引き続きこれを推進していく必要があることを指摘してございます。  第七は、需要確保についてでございますが、エネルギー石炭転換海外炭の低廉かつ安定的な確保をできる限り阻害しないように配慮しつつ、国内炭安定的引き取り確保する観点から、輸入割り当て制度維持し、国内炭優先使用原則に立ちつつ、その適切な運用を図っていく必要があると述べてございます。  それと同時に、需給両当事者が「中期的なローリングシステムによる需給見通しを作成することは、安定的な需給関係確立に資すると考えられるので、その進展を期待したい。」と述べてございます。  第八に、「国内炭価格在り方」でございますが、通商産業大臣石炭鉱業審議会意見を聞き、国内炭生産費及び競合エネルギー価格等を考慮して基準炭価を定めろという現行制度維持していく必要があるという提案がございまして、その際の具体的な考え方としては、生産費については、合理的な自己努力を考慮した石炭鉱業の平均的な生産費基礎とし、競合エネルギー価格については、「一般炭需要者消費地における海外炭の限界的な購入価格を参酌することが適当」であると述べてございます。また、原料炭につきましては、「当面これまでの慣例に沿った価格での引取の協力を求めることが適当である」と述べてございます。  なお、電力用炭販売制度につきましては、基準炭価制度が定着しつつある今日では、その使命はおおむね果たしたものという認識から、「廃止の方向で検討すべきである。」と述べてございます。  第九に、「格差是正」でございますが、国内炭安定供給を図る見地から、一定合理的範囲内で是正を図る必要があるので、安定補給金交付領斜を強めることを検討すべきであると提言されてございます。  また、次に「閉山制度在り方」につきましては、予測し得ない自然条件悪化等による閉山可能性も否定できないとして、現在の脆弱化した石炭鉱業経理内容を考慮し、現在設けられている閉山対策については、対象となる債務の範囲などについて所要見直しを行いながら、当面存続させるのが適切であると述べてございます。  第十に、海外炭開発及び石炭利用技術研究開発でございます。これにつきましても今後のエネルギー需給を考慮し、重点を置いて進めていくべきであるという概括的な提案がございます。  最後に、離職者対策鉱害対策及び産炭地域振興対策につきましても、所要施策が必要であると述べてございます。なお、鉱害対策につきましては、現在石炭鉱業審議会鉱害部会検討結果を踏まえて、所要対策が講じられることを期待したいと述べてございます。  答申要旨は以上のとおりでございますが、審議会検討過程で出ました意見を踏まえ、若干補足させていただきたいと思います。  最も議論が行われましたのは、今後の具体的な生産水準あり方をどう考えるかという点でございました。一方には二千万トン以上の生産を目標にすべきだという御意見があり、他方には千八百万トン程度現状維持でよいではないか、あるいはまた、あえて数字を書くということには消極的な御意見等もございました。議論の結果、赤字経営が続き、経常基盤が著しく弱体化しているわが国石炭鉱業現状を踏まえますと、当面まず何よりも現存炭鉱における現在の生産水準をできる限り長期かつ安定的に維持する必要があり、それは地域経済の安定的な発展、炭鉱労働者の生活の安定のためにも不可欠の要請であって、まずこれを基本とすべきだということになりました。  そして、それを基調といたしまして、今後石炭企業体質改善石炭需給環境の好転など、諸事情の成熟に伴って増産を期待し、将来における二千万トン程度生産の達成を目指すべきである、これを基本的な考え方とすべきであるという結論になった次第でございます。  以上、簡単ではございますが、今回の答申要旨等につきまして、補足して御説明させていただきました。     —————————————
  12. 森中守義

    森中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 「今後の石炭政策在り方について」いわゆる第七次の答申に関するいまの大臣説明をお聞きいたしましたし、また石炭部長から答申の概要について説明をいただいたわけです。  まず初めに、石炭政策を諮問された大臣が今次第七次答申を受けられて、大臣としてはどういう評価をされておるのか、その所感があればこの機会に承っておきたいと思います。
  14. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほども私の所見の一端を申し述べたわけでございますけれども、今回で第七回目の答申を受けたわけでございます。  この答申は、先ほど申しましたように、約一年間二十七回にわたって、稲山会長のもと稲葉政策部会長、向坂正男委員長という段取りで進められたわけでございますが、いままでの七次のうち五回まではスクラップ・アンド・ビルドというようなものが盛り込まれてきたと思います。それから六次では、何とかこれに歯どめをかけようというような意思があったと思います。今回、世界のエネルギー情勢ががらりとは言わないまでもかなり変わってまいりまして、石炭見直しということを日本だけではなく各国が提唱しているわけでございます。したがって、そういう観点からは、石炭の将来というものが非常に暗かったわけでございますけれども、この七次答申ではほのかに明るい、ほのかと申すと恐縮でございますが、いずれにしても前途に明るさが見えておるというふうに言えると思います。  したがって、私ども政府施策よろしきを得るならば、また、日本における唯一のエネルギー資源としての石炭、そういうものを考えますときに、答申に明るさを盛り込んでおりますので、私どもがこの答申を十分踏まえてこの実現に邁進していくならば、日本のエネルギー問題にもかなり再び変革を起こしてくるんではないかという考えを持っております。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま部長から今次答申説明がありましたけれども、ここに第一次答申から第六次の石炭答申集というのがあるわけです。いま通産大臣説明で、第一次から第五次まではスクラップ・アンド・ビルド、そういうことが基本であった、第六次以降二千万トン以上になり、今回二千万トンを目指す、こういう一応の生産規模を想定しながら答申が行われているわけです。したがって、第六次と第七次を見ますと、傾向的には流れが継承されておる部面が大分あると私は思います。したがって、第六次に比べて第七次の特徴点を要約すると一体どういう特徴点が言えるか、その点について説明を願いたいと思います。
  16. 福川伸次

    福川説明員 第七次石炭政策の竹色はどこにあるかという点でございまして、私、要約して数点にまとめて申し上げてみたいと思います。  第一点は、エネルギーの構造が世界的に変革している中で国内炭位置づけを明確にしてきたということでございます。第二次石油ショックが起こりまして、その過程石油価格の高騰、石油供給の不安定性が出てまいりまして、世界的な、石炭見直しという状況がございました。将来の展望を踏まえまして、国内炭位置づけを現実的なものといたしまして明らかにしたという点が第一点であろうかというふうに思っております。  第二点は、大臣も強調されましたように、第七次政策におきましては現有炭鉱の維持現行程度生産水準維持を基調として、これを長期安定的に続けていく。それを基調としながら、その上に立って諸条件の成熟によって増産の可能性を探っていく、こういうことでございます。第六次政策が、当時二千万トン以上出ておりました現状において二千万トン以上を目指す、こう言っていたことから比べますと、現在千八百万トン程度水準ということを前提にいたしますと、それよりはやや明るさの見える、増産の可能性も含んだ答申ということで、そういう意味で言えば、現有炭鉱の維持という現実的な対策の上に将来の増産の可能性を織り込んだという点が第二点であろうかというふうに思います。  それから第三点は、これも大臣が強調しておられますように、業界の自助努力政府支援助成、それに需要業界協力、この三者が一体となって安定性経済性の調和の上に石炭鉱業自立を目指すという、三者の協力の必要性を強調いたした点であろうというふうに考えるわけでございます。  第四点といたしまして、具体的な対策になってまいりますが、現存炭鉱維持現行程度生産水準維持を図っていくということのために、従来に引き続き合理化対策を進めていきますと同時に、合理化を追求する過程で協業化あるいは共同化といったような体制整備も含めつつ、できる限りの合理化効果を目指していくということでございます。また同時に、自然条件によります格差を補てん、補整いたしますための安定補給金の傾斜配分を強めていくという形で、現存炭鉱維持を図っていく具体的な施策毛盛り込まれておるという点が第四点であろうと思います。  それから第五点といたしまして、先ほど、現存炭鉱維持、これにやや増産の可能性を探るということを申し上げましたが、その具体的な施策といたしまして、消滅鉱区の再開発につきまして、従来の非能率炭鉱の発生防止という考え方は基調としては貫きつつも、現在かなり厳しく運用をいたしておりますものを、需給環境の好転を反映させまして、その再開発の運用基準を緩めていくということを言っております。  また同時に、新鉱の開発につきましては、もちろんその後の操業が企業の責任において行われる、こういうことでございますから、この新鉱開発企業の責任と判断において行うべきであるとされておりますが、しかしながら、将来のそのような新鉱開発に備えて現在もございます大変有利な新鉱開発助成制度維持をしていくことと同時に、また、着手に当たりまして業界の体制等も整えていくという提案がございます。さらにまた、将来に備えて炭量等の把握には国も努めていくべきであるというような、増産の可能性を探る点で、ある程度の具体策が盛り込まれているという点が第五点であろうと思います。  第六点といたしまして、石炭鉱業自立に至ります過程でその安定を図っていくということで、その過程におきまして、需要者との関係で引き取り関係あるいは価格の設定の方法等につきましてその方向を明確にしておるという点であろうと思います。  引き取りにつきましては、外貨割り当て制度国内炭優先使用原則ということで明確にし、また一方その中でも、一応一律的な引き取りを原則としながらも、経済合理性がある程度反映し得るというような内容を盛り込むと同時に、自主的な取引関係を形成していく一助といたしまして、なおかつ長期的に安定した引き取りを実現するという観点から、毎年度の引き取り契約につきまして、それを二年ないし三年程度のローリングプランで需給見通しの情報交換をしておく、それによりまして今後の生産見通しあるいは引き取りのめどといったようなものをつけていくことによりましてその将来への安定性を出していく、そういったローリングプラン的な需要見通しというものが織り込まれております。  価格面につきましても、国内生産の安定の保持ということから、その安定性経済性の調和に留意しながら、国内炭価の設定につきましては、平均的な輸入価格よりは国内生産維持する、またエネルギー供給面におきましての安定性、あるいはエネルギー供給の安全保障的な機能を果たすという意義を適正に評価した形での価格設定というようなことを明確にいたしておるわけでございます。  そのほか、もちろん保安あるいは技術、従来からやってまいっております施策も強調いたしておるわけでございます。  また、海外炭あるいは将来の利用に備えまして低品位炭、低質炭の利用拡大の技術開発といった点も織り込んでおりますが、国内炭に関しまして第七次政策の特に特徴的なものを私なりに整理してみますと、いま申し上げました六点になろうかと思うわけでございます。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 通産大臣にお伺いしますけれども、この答申の取り扱いについてどうされるのか。第一次答申から第五次答申は閣議に報告されて閣議決定がなされたわけですね。第六次の答申は、閣議決定ではなくして、エネルギー閣僚会議報告をされて、言うならば了承されておる、こういう経過を第六次はとっておるわけです。第七次の答申はどういう扱いをされるのか、承っておきたい。
  18. 福川伸次

    福川説明員 いま岡田委員御指摘ございましたように、第五次まで、先ほど大臣が申しましたように、スクラップ・アンド、ビルドと言いながらも縮小均衡の道でございまして、その過程で大規模な閉山を伴うものでございました。その社会的な影響が大変大きいということでございまして、法案の提出や予算案の編成に先駆けまして閣議決定を行ったという点は先生御高承のとおりでございます。私どもも、この答申を受けまして、今後予算編成あるいは法案の提出等の準備をし、閣議等、内閣全体の意思としてこれをまとめ上げて具体化していくということになるわけでございます。  第六次政策は、先ほど申しましたように、スクラップ政策を転換をいたしました六次答申では閣議決定は行わず、エネルギー閣僚会議への報告というようなことになっておるわけでございます。今回この答申をどのような形で政府部内で扱っていくか、もちろん予算、法律等の準備にはこれを十分反映させてまいるわけでございますが、この答申そのものをすぐどのような形で政府部内に報告をしていくのかという点はまだはっきりいたしてございません。先ほど第六次の前例等の御指摘がございましたが、そのような前例も考慮しながらその取り扱いは決めてまいりたいと思っております。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の政策対策期間は五カ年と定められておるわけです。しかも、十年程度展望のもとに検討を加えて対策期間を五カ年とした。この五カ年というのは昭和六十一年度で終了するわけであります。いわば第三次肩がわりが終了するのが、私の記憶では昭和六十一年度で完了する。そういう意味でも、対策期間の五カ年というのは私としては賛成であります。  ただ、お聞きいたしておきたいことは、一応肩がわり完了の期間というのを意識されて五カ年とされたのか、別に石炭情勢のみを考えて五カ年と対策期間を定められたのか、この点についてはいかがでしょう。
  20. 福川伸次

    福川説明員 いま御指摘のように、第三次の肩がわり分につきましては、六十三年の四月末、おおむね六十二年度末に完了するということになっております。もちろん、その前に第二次分が五十九年の四月末に完了する、こういうことになっておるわけでございますが、そのような経理的な対策、これが石炭鉱業にも大いに貢献をしておる、関連しておるということでございまして、この点につきましても、当然のことながら検討の対象になり、念頭に置いて御検討いただいたものと考えておるわけでございます。  この肩がわりは、五十五年度末でいま五社で肩がわり残高三百三十億円ございまして、今後石炭鉱業自助努力、また需要業界協力、あるいはこの答申に盛られておりますような政府支援、補完というようなことで経常損益が大きく赤字にならないということになりますと、累積損失がおおむね回収できるのではないかという見通しでございます。したがいまして、これはおおむね五十七年三月から五年間延ばす、こういうことになってまいりますと、この肩がわり対策というものがおおむね大勢が判明をしていくということでございますので、これも当然念頭に置いたわけでございます。  もとよりこの答申は、そのほかのエネルギー需給情勢、これが非常に流動的であるということで、今後の石炭生産計画その他は十年程度展望をもって御検討をいただいたわけでございますけれども、非常に客観情勢が変化をする可能性もはらんでおるということから、これまでのそれぞれの対策のおおむねの期間五年程度ということを考慮しながら五年程度とされた。しかし、その過程の中で肩がわりということもひとつ念頭に囲いて御審議をいただいたという経緯であろうと理解いたしております。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 今次答申は、石炭鉱業自立を目指すことを基本とすべきである。第一に自助努力、第二には、政府、自治体を含む援助、第三には需要業界の安定協力、この三本が柱になっておるわけです。いわばこの三本の柱という意味は、主体的には自助努力が優先されるわけでありますけれども、これは自立という場合には竹馬の上に自立をするというしか意味がないと思うわけです。したがって、今次の五カ年の政策というものは、石炭鉱業の安定を目指すことが基本である、こう理解されることの方が当を得ていると思うのですが、いかがでしょうか。
  22. 福川伸次

    福川説明員 もとより石炭鉱業赤字経営を続けておるわけでございまして、最近かなり経理は改善しつつあるとは言いながらも、経営基盤は残念ながらまだ弱体化しているという現実は認めざるを得ないわけでございまして、その意味では、まだ自立しているというわけにはいかないわけでございます。また、安定しているということにもいかないわけでございます。今後の石炭政策は「石炭鉱業自立を目指す」こういうことを言っておるわけでございます。  もちろん「自立を目指す」ということにはいろいろな協力等々も含めてのことでございますけれども、最近のようにある程度石炭をめぐる環境がよくなってきているという諸情勢から考えますと、一応自立し得る展望も開かれつつあるのではないだろうかというふうに思うわけでございます。自立できれば当然これがまた安定につながるわけでございますが、ここで石炭鉱業自立に至るまでの過程を安定的にたどるように、これを安定的に自立の状態に達するように努力をしていこうということでございまして、一応三者の協力ということの上に立って、最終的には石炭鉱業自立できるというところをねらいといたしたいというふうに思うわけでございます。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまの部長の答弁を聞いておりますと、安定を目指すことが基本であって、将来的に自立を目指すということの方が適切なように私は聞きました。  そこで、二千万トンの問題でありますけれども、十年程度は従来の一千八百万トン程度生産維持できるということを前提にして組み立てられておるわけです。これは非常に甘いというのが私の持論であります。経済出炭規模というものを考える場合に、現有炭鉱の生産能力は将来に向かって大体百五十万トンぐらい切れるだろう、これが私の持論であります。そういう意味でいきますと非常にむずかしいわけでありますけれども、そういう意味で、この点は多少甘いということを指摘しておかざるを得ないと思うのです。答弁を聞いても、いや、各社のを集計した結果一千八百万トンになるという説明に終わると思いますけれども、その点は指摘をしておきたいと思います。  そこで、その中で、結局あとは新鉱の開発と封鎖鉱区の解除という問題が出てまいるわけであります。新鉱開発は第六次でも表現されておるわけでありますけれども、ここには特に念を入れて、露天採掘や残部の抗内採掘の小規模開発、それから将来開発が期待される云々と述べられておるわけでありますけれども、要は実効性の問題なんですね。したがって、第七次の五カ年の期間に新鉱の開発、少なくとも五十万トン程度の規模の新鉱開発の着手の可能性ありと思われてこういう答申になったのかどうか、承っておきたい。
  24. 福川伸次

    福川説明員 新鉱の開発の点につきましては、いまの浅部あるいは露頭の開発と同時に、また、今後の経済性あるいは需給環境改善ということの条件が成熟していくに伴って、そのような新鉱開発が行われることが期待をされる、こういうことでございます。もちろん、新鉱開発につきまして経済性あるいは需給環境等を無視して無理に進めるということは、将来の経営の安定からいって好ましくないことでございますので、その点につきましては、この答申におきましても慎重に判断すべきいろいろな要素が触れられておるわけでございます。  また、政府自身につきましても、このような答申の趣旨を尊重しながら現在の助成制度を残す、将来、資源状況の的確な把握に努めていくというようなことでございますし、また同時に、資金力、技術力を結集していくための石炭企業によります共同開発につきましても、諸条件の成熟を見ながら検討をするというような示唆が行われておるわけでございます。  それでいまのところ、これがしからば五年以内に必ず数十万トン程度の新鉱の開発に着手できるかどうか、こういうことにつきましてはこの答申過程では、いつの時点で新鉱が開発されるという点のめどははっきり立っていないわけでございます。それは、今後さらにその諸条件の成熟の程度にかかっておるという点が多いものでございますから、政府はその環境の準備をしておくように、また将来に備えた環境整備をするように、こういうことでございます。したがいまして、五年以内に必ず数十万トンの大型の探鉱が行われるということを明確にした形で成った答申ではございませんが、そのような可能性は否定し得ない、そのための助成制度あるいは実施をするための体制あり方というものを示唆したものであろうと私は理解をいたしております。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、この文面は非常によく表現されておる、きわめて上手にすきっと表現されておると思うわけであります。しだがって、政労使のいわば姿勢の問題と実効性の問題、これが一番問題として残る、こう理解をいたしておるわけであります。  そこで、次の消滅鉱区の再開発の問題でありますけれども原則禁止の趣旨を厳格に運用するということについては賛成であります。既存炭鉱の場合には採掘可能の限度はほぼ想定がつくというのが私の見解であります。ただ、この中で「同一炭田内の他の消滅鉱区等にも拡大する」という点があるわけでありますが、同一炭田外の場合も想定されるのではないか。たとえば北海道でいきますと、宗谷炭田、留萌炭田、石狩炭田とあるわけです。留萌炭田などを考える場合には同一炭田とは言いがたいわけであります。そういう場合も同一炭田内に解釈されるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  26. 福川伸次

    福川説明員 いまの留萌炭田の御指摘でございますが、この答申では、同一炭田内で一体的に開発することが合理的である場合、こういうことで条件がつけられておるわけでございます。したがいまして、炭田が異なります場合には、今回そこまで拡大するというのはまだいかがかという答申の趣旨だと思っておりますが、留萌炭田には、御承知のようにある程度の坑内掘りの炭鉱が存在をいたしておりますし、また現に中小の露天掘り炭鉱は稼働中でもございます。また、民間の保有の休眠鉱区がございまして、したがって、将来これがどのような開発になっていくかということで考えてまいりたいと思いますが、恐らくこの答申の御趣旨は、そこの一体的に開発するということの合理性を引きます場合に、同一炭田という一つの制約を置いたわけでございまして、この制約がもし仮にもう少し緩い形になりますればいろいろな形で、先ほど先生が一体的な開発原則は賛成だがとおっしゃったわけでありますが、さらにそれがどのような形に波及していくか、もう少しその現状を分析してみないと、容易にそこまでは踏み切れまい、こういうことでございます。  いまの留萌の場合でございますと、それぞれある程度の中小炭鉱が存在しておる、あるいは休眠鉱区があるというような現状を踏まえて、ここの同一の炭田内ということで一体的な活用を図るのが合理的であろう、こういう判断であろうと理解をいたしております。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 私有の鉱区の場合には、これは施業案を出して坑口開設の認可を得れば開発できるのであります。封鎖鉱区の場合は特に地上物件との調整、露頭の場合には林野庁との調整という問題が一番大きい問題であるわけです。だから、もし一回、後始末ができないでやめるという炭鉱が出た場合には、次の場合に林野庁は許可しないと思うのですね。ですから、常にパーフェクトでなければならないということが露頭採掘の原則だと私は思うわけです。そう考えますと、やはりある程度資力がなければ重装備ができませんし、また、計画的に進められなければ重装備はできないのでありますから、そういう点ではむしろ開発主体ということを最も重要視する、こういう施策が重要ではないか、こう私は思います。この点は今後の運用について指摘しておきたいと思いますので、御検討をいただきたい、こう思います。  そこで、生産規模を維持していく場合の一つの問題点として、採掘終了区域の採掘をどうするかという問題がこれから出てまいると思います。特に海底炭鉱のような場合には非常に広がっておるわけです。一つの区域が完了すれば、新しい区域の採掘を行うということが出てまいるのであります。かつて企業ぐるみ閉山の場合、明治五山、北海道二山、九州は佐賀の錦、そして明治佐賀、それから福岡の平山、この三山は上がり山であるということで特別閉山をして残して、残炭を採掘して六年間採掘をした、実は亡くなった保利先生が大変力を入れられたものであります。  そういう例から考えますと、同一炭鉱の中で一定の区域が採掘が終わった、上がり山地域、こう言えるわけであります。これの雇用の問題もございますから、そういう意味では、新しい問題として対応する準備をしておく必要があるのではないか。そのことによって、展開により生産の落ち込みをカバーしていく、そういう努力があっても、一千八百万トン体制維持することは非常にむずかしいと私は見ておるわけであります。そういう点についても触れられておりませんけれども、そういう点についてはぜひ対応策検討していただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  28. 福川伸次

    福川説明員 いま御指摘のように、貴重な国内石炭資源を掘るわけでございますから、それを掘り残すことなく有効に採掘するということが基本的には望ましいことでございまして、現実にも一部の炭鉱におきまして、そのような残炭を効率的に採掘している事例がないわけではございません。もちろん、その場合には、残炭の採掘に当たりましては、人のやりくりあるいは通気量、坑道維持長の増大等、コストとの関連でいろいろ検討しなければならない面が多々ございまして、それぞれの山に沿った形でこの採掘方法、残炭の採掘を合理的に行っていく、それが可能であるならばそれを努力していくということが必要であるという点は申すまでもございません。  したがいまして、そのような既存炭鉱の合理化ということの一環の過程の中でいま御指摘のような問題、これもいまの若干の事例等も参考にしながら、そのような方向は探求していく必要があるという先生の御指摘には同感でございます。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 国内炭需要確保について四点にわたって述べられておるわけであります。これをずっと読みますと、一応うまくいくのじゃないかなという感じが実はするのであります。だが、それでもやはり不安な面がある。  したがって、外割りの原則でありますけれども、従来、一般産業向けについては、二〇%国内炭を引き取る場合には外割りを認めるという基準があったわけであります。また鉄鋼の場合も現在大体一一%程度、これがやがて一〇%を切ると思います。したがって、せっかくそういう原則があったわけでありますから——二〇%以内になることは結構なんですね、優先引き取りが行われて、六%になろうと一〇%になろうと結構であります。  ただ、そういう従来の政策の視点というものは残しておく必要があるのじゃないか。鉄鋼についても一〇%以内の場合には優先引き取りが保障される、こういう基準を設けられていいのではないか。将来的には、これは鉄鋼だって八%、七%に下がるわけですね、国内炭の引き取りは。ここがあれば第一点から第四点がすかっと生きる、こう思うのです。したがって、そういうような基準の考え方を残すお考えがあるかどうか承っておきたいと思います。
  30. 福川伸次

    福川説明員 私どもも、この答申が述べておられますように、内外炭の価格差が解消し得ていないという現状におきましては、国内炭の安定的な需要確保を図るためにその輸入割り当て制度維持していく、その的確な運用を図るということが必要であるというふうに思っております。  答申におきましても、この国内炭優先使用原則に立ちながら、公正を期すという見地から、需要者一定の基準により国内炭の引き取りを求めるということを基本とするという基本の思想は、そこを明らかにしているわけでございます。しかしながら、この国内炭の引き取りということになりましたときには、立地条件とか流通環境とかによって必ず一律に引き取らせるということが合理的であるとは限らない面があるわけでございまして、たとえば近いところには少しその比率を多くする、遠いところには国内炭の引き取り割合は少なくするといったような補整的な考え方、これを取り入れていってはどうだろうか。そこはある程度民間の当事者間での自主的に形成されるような取引関係、これを助長していく。それをまた配慮した形で外貨割り当て制度の運用を行っていくということが提言されておるわけでございます。  私どもも、国内炭の優先引き取りという考え方を基調としてとる以上、全体の需給計画の中で、いま御指摘のようにこれからの輸入炭のふえる割合等によりましてその比率は当然順次変わってまいるわけでございますが、そのような全体の需給計画の中での引き取りの割合、これを原則に立てながら、いま申し上げましたような立地条件等の差で出てまいりますより合理性のある自主的な取引、これを反映させていく、こういう考え方でしていくという点では、私どももこれから運用の的確を図ってまいりたいというふうに考えております。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 国内炭価のあり方について一点から第七点まで述べられておるわけです。三点を除いてはおおむねこれは賛成であります。三点については理解ができないのであります。  競合エネルギー価格は「海外炭価格をとることが適当である。」こう書いてあるわけです。いままでの基準炭価の法律で定めておるのは石油、油の価格と外炭の価格、こういうものを参酌する、こう述べられておるわけです。これは従来の法律の趣旨を変更したものと言わざるを得ない、こう思います。したがって、私はやはり石油価格を参酌しなければいかぬのではないか。石油から他のエネルギーに転換するわけでありますから、もちろんそういう意味では石油価格の動向も見なければならぬ、また海外炭の動向も見なければならぬ、やはり二つの面を参酌するということが正しいのではないかと思うわけであります。なぜ一体今回は石油価格を外して外炭の価格をとることが適当だ、こう述べたのか、この点が疑問であるというのが第一点であります。  第二点は、結局内外炭の政策上、たとえば平均的生産費の上昇率、これは賃金とか物価の上昇率にとどめる、こう書いてあるわけでありますから、内外炭の場合には経済性安定性を調和させる場合に一物二価方式というものがどうしても出てくるのじゃないかと思うのです。この点は一体そういう理解でいいのかどうか、この答申の趣旨はそういう意味だろうかどうかという問題が第二点であります。  第三点は、第七の電力用炭販売制度を廃止するわけでありますが、まだ昭和五十六年度の基準炭価も決まっていないわけであります。基準炭価が決まると精算されると思うのですね。来年の四月一日から廃止をするわけでありますから、まずその基準炭価が決まってそれが精算をされた段階から、六十億の前渡しというのがあるわけでありますから、これを軟着陸で三月三十一日までに解消していく、こういう慎重さがなければならぬと私は思うわけです。何かすでに答申が出たらもう十億ずつ減らしていくなんという機械的なことではいかぬ、こう思うわけでございます。  この三点についてはいかがでしょうか。
  32. 福川伸次

    福川説明員 まず第一点は、国内炭基準炭価を決定するに当たりまして考慮すべき競合エネルギー価格について、答申では現状では海外炭価格をとることが適当であろう、こういうことでございます。もちろん答申の中にも触れられておりますように、考慮すべき競合エネルギー価格につきましては石油や原子力の価格も考えられるが、仮に国内炭供給が減少した場合、現状では国内炭供給が減少いたしますと海外炭が手当てされる、こういう状況にあることから、海外炭価格をとることが適当である、したがって、法律でももちろん石油等々のことも触れられておりますが、特に主として考慮すべきものは海外炭であろう、こういうふうに言ってあるわけでございます。  もちろん、この場合、代替エネルギーということでございますから、この海外炭価格というのは他の石油等々の価格にも影響をされるわけでございまして、したがいまして、いまの海外炭価格というのは、そのエネルギー全体の、ある程度範囲ではございますけれども反映してくる、こういうことであろうというふうに思うわけでございます。したがいまして、当面現状では主としてそちらを中心に考えてみたらいいだろう、こういう御趣旨であろうというふうに私は考えたわけでございます。  それから第二点は、一物二価で、換言いたしますれば、国内炭海外炭よりも一定範囲で高く引き取るということを明確に認めたものであるかどうか、こういう御指摘でございます。現在、一般的に申しますと、内外炭の価格差をどこで比べるかというのは、これは消費者の立地条件等によって非常に違ってまいるわけでございます。しからば、ではたとえば国内炭基準炭価と輸入通関の平均的なCIFと対比するかどうか、こういうことでございますれば、恐らくこの答申考え方は、そこに格差があってもやむを得ないという考え方であろうと思います。  もちろん、いまでも海外炭輸入炭と双方使っている需要者がございます。北海道あるいは九州、中国地方等におきましても内陸に工場のあります需要者、これを内陸にございます消費者の需要地でとってみますと、これは輸入炭を持っていった場合と国内炭を持っていった場合にほぼ競争条件がとんとんになっているというようなケースがございます。そのような需要地をとってみれば必ずしもこれは一物二価になっていない、こういう面はあろうと思います。取り方がいろいろ違いがございますけれども、いまの国内炭生産費維持する、こういう考え方に立ってみますると、この答申にもございますように、需要者協力の中に、国内炭安定性国内的な安全保障機能というものを適正に評価した形で引き取り価格設定の面などで協力すべきであるという表現は、一般的な平均的なもので見る限り、国内炭生産費が高いという背景を踏まえまして、国内炭海外炭よりもある程度割り高なものでも標準炭価としてそれが設定されていくということを容認したものだというふうに考えております。  それから第三点が電力用炭販売制度の廃止に伴いましての金融上の措置でございます。御指摘のように炭価の交渉がいま石炭業界と電力業界の間で行われつつございます。そう遠くない時期に今年度の炭価を決めるべきものというふうに思っておりますし、交渉がさらに進んでいくことを期待をいたしておるわけでございます。  いま御指摘のように、そのように炭価が変わった場合にこのような金融面、資金繰りの面で順次それを軟着陸させていく、こういうことは御指摘の点にありますように、私どももひとつ十分考慮すべき方法であろうというふうに思っております。  もちろん、このようなことでいま御指摘のような金融的な機能をこの制度が果たしてまいったわけでございますから、一応この制度の趣旨は使命が終わったといたしましても、そのような派生的な金融的な支援措置ということがなくなりますために非常に企業経営が苦しくなるということは避けねばならないわけでございまして、その面での金融上の措置というのは、それぞれ企業の実情に応じましてのその影響の緩和策というのは考えていかなければならない。確かに、一部の企業におきましてこれの影響がかなりありそうだというものもございますので、いま御指摘のような点も含め、企業の資金繰りの状況を踏まえながら、その対策、その影響の吸収に努めていきたい。そこは周到な配慮をいたさねばならないと思っております。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 五十六年度の炭価は今月中にほぼ決まって、そして大臣基準炭価の公示に持っていけると理解してよろしいでしょうか。
  34. 福川伸次

    福川説明員 五十六年度の炭価でございますが、いま両業界がお話し合い中でございます。私ども、いまもう少しその交渉の経緯を見定めなければならないというふうに思っておりますが、昨年は九月の下旬にこれが決定を見たわけであります。昨年は通常よりもそれでも半年早まったわけでありますけれども、私どもできるだけ早く決定をいたしたいというふうに思っております。  御承知のように、一方北海道電力も電力料金の値上げの申請をいたしておりまして、その辺との取り扱いという点にも配慮をせねばならないというふうに思っております。したがいまして、私どもとしても、必ず八月中かということをいまここで明言はいたすほどにまだ作業あるいは交渉が煮詰まっていないわけでありますけれども、そういうたいま申し上げましたような北海道電力等の料金改定の作業もにらみながら、なるべく早く、遠くない時期にこれの決定をいたしたいというふうに思っております。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 炭鉱格差問題に関連して、いま政府の補助金は坑道掘進補助金と保安補助金と安定補給金という三つの補助金制度に相なっておるわけであります。私は、この三つを含めていわゆる石炭鉱業の安定給付金だ、実はこういう理解をしていますし、過去の政策的な流れをずっと分析しますと、私の述べている点が大体理解ができるのではないか、こう思うわけであります。  今度は特に安定補給金をさらに傾斜をさせるということでありますから、安定補給金というか安定調整補給金というか、そういう性格により鮮明になってくるんだ、こう思うわけであります。そういう私の理解でよろしいのかどうか、特に御意見があれば承っておきたいと思います。
  36. 福川伸次

    福川説明員 御指摘のように、現在ございます坑道の補給金あるいは保安の補助金、これにつきましては、確かに急傾斜炭鉱等自然条件が厳しい炭鉱により厚く出るという結果になっておる点は御指摘のとおりでございます。  やや実績を申してみますと、この坑道の補助金、保安の補助金、それからいま御指摘の安定補給金、この合計額を炭鉱のトン当たり出炭で見ますると、昨年の八月事故のありました夕張新鉱を除いて考えてみますると、多いところで二千四百円、少ないところで大体千円、こういうことになるわけでございます。なお、現在では、いまございます安定補給金、これは御承知のように石狩地区が六百円、露頭炭を除きましてその他が四百五十円、露頭炭が三百五十円、こういうことになっておりますが、現在のその仕組みで安定補給金を交付いたしましても、もちろんその中には坑道、保安の補助金を入れてやってみましても、なおその炭鉱ごとの損益土の格差がある、こういうことでございます。  したがいまして、この答申の御趣旨は、このような安定補給金の交付につきまして、坑道補助金あるいは保安補助金を交付した後でなおほかにさらにある格差、もちろん、企業努力ということの働く余地を十分残さなければならないわけでございますが、もう少しこの傾斜を深めていってはどうか、こういうことでございます。もちろん、結果的にはいま先生のおっしゃるように、それぞれほかの二つの補助金も格差是正的な意味で結果として役立っておるという点は御指摘のとおりだと思います。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の調査では、この三つの補助金をトン当たりで計算しますと、空知炭田の場合は露頭が多いわけでありますから、坑内掘りで換算して計算をすると、これが最高で二千八百四十四円という数字になるわけです。普通一般の坑内掘りの炭鉱で芦別が二千四百五十四円であります。最も少ないのは三池炭鉱で九百八十一円。したがって、最高と最低を比較しますと大体千九百円程度の差がある、こういう数字になるわけであります。そこで、格差是正の場合に、普通一般の急傾斜と緩傾斜の場合には四五円程度のコストの差があるとも言われておるわけであります。協会あたりでもそういう議論がなされておるようであります。  そこで、特に象徴的に比較をしてみますと、太平洋炭硬というのは平層でありまして、赤平は住友一社で急傾斜の炭鉱であります。太平洋炭硬は補給金はトン当たり千二十三円であります。赤平炭礦は二千二百八十七円でありますから、プラス千二百六十四円という数字になるわけです。それからカロリーで言いますと、太平洋の平均カロリーが五千九百九十カロリー、赤平は六千三百七十カロリーであります。したがって、山元手取りで比較すると、太平洋が一万二千九百五十四円、赤平が一万四千九百七十八円、プラス赤平が二千二十四円であります。トータルをすると三千二百八十八円になるわけです。四千円までの差は七百十二円になるわけです。したがって、安定補給金を今度はたとえば仮定でありますけれども二百円持ち出して、赤平の急傾斜が五百円とすれば七百円の差になるわけです。総トータルが大体四千円、こういう数字にもなるわけですね。  だから、この答申の視点というのは、いま私の分析したそういう視点が大体目標ではなかろうかと私は思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  38. 福川伸次

    福川説明員 実は私どももこの答申を受けまして、いまどのような方策が一番適切であるかという点は作業中でありまして、私どもの案は予算要求を出しますまでに決めねばならないというふうに思っております。  考え方といたしまして、いま御指摘のような数字あるいはコストの差というものを幾らと評価するかという点は、私どももう少し作業をしてみないと明確な数字にならないわけでございます。  また、その場合、安定補給金の方が従来もらっておりました額よりも減らされるところの企業もございまして、その辺の経理もよく見定めてみたいというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、考え方といたしましては、残ってまいりましたいまの格差、それと収益上の格差、さらにコストの格差等で考えていくわけでございますが、いま先生の御指摘のようなことも参考にさせていただきながら、この八月中にとりあえずの案を固めてみたいというふうに考えております。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 格差というものは急傾斜と平層、そういう条件以外にやはりあるんだということは頭の中に入れておかなければならぬと思うのです。  このままちょっと比較しますと、最も優良炭鉱であると言われる三池炭鉱太平洋炭礦、松島炭鉱池島でありますけれども、カロリーで言うと三池は六千九百五十カロリーが平均カロリー、太平洋は五千九百九十カロリー、池島は六千五百十カロリーであります。能率は三池が百十一・三トン、歩どまりが八四で最高であります。太平洋は能率は九十七・二トン、五五%で歩どまりは最低であります。池島の場合は六九・九%、約七〇%の歩どまりであります。したがって、山手は当然変わってくるわけであります。そういう点から比較しますと、池島の場合には一万五千九百三十四円の山手、太平洋は先ほど申し上げたとおりであります。したがって、三池の場合も池島の水準をほぼ上回る、カロリーで計算するとさらに上回るというのが常識であります。  だから、同じ平層であってもこれだけの差がある、格差が依然として存在しているのだということをもこれからの政策の中に、頭に入れておかなければ、急傾斜と平層との間に差があって、あとは格差がないというものではない。いわゆる石炭産業そのものが常に体制的にはそういう問題を内包しているんだということに尽きるのではないかと思うのです。  しかし、ある程度是正をして、うまくいけばいいけれども、これがもし五年やってうまくいかないとすれば、もう一歩突っ込んでいかなければ、日本の石炭鉱業全体の安定はできないということになりかねないと思うのですが、こういう認識についてはどうお思いになるでしょうか。
  40. 福川伸次

    福川説明員 御指摘のように、炭鉱間の格差はいまの炭層の傾斜度だけではございませんで、それは石炭の品位あるいは採炭区域の深度、あるいはまた需要地との輸送距離、坑内の坑道の延長等いろいろ複雑な要因が絡み合って炭鉱間の格差が生じている、それは私どももそのように認識すべきものであるというふうに考えます。  しかしながら、これをいま企業の経営努力でどの程度吸収し得るものであるかということも、またなかなか評価が分かれるところでございます。  いまこの格差是正という制度を考えます場合に、御指摘の三池、太平洋あるいは池島といったあたりにも確かに格差がございます。しかし、その格差是正する財政的な諸措置というのを、どのようにこれを集約化して、制度としてつくり上げていくかということは、これは制度が余りに複雑になるというのもこれまた事務処理上問題でございます。したがいまして、格差を構成いたしております幾つかの主要な要因を集約いたしまして、どのようにつけていくかという点はある程度技術的にやっていかなければならない、そういう面もあろうかというふうに思っております。  基本的な認識につきましては、いま先生の御指摘のように、それぞれの炭鉱の中で、緩傾斜なら緩傾斜の中で、また急傾斜なら急傾斜の中でいろいろな要因があるという点は私ども認識をいたしておりますが、これを助成制度に組み上げていきます場合には、そこにはある程度の踏み切り、割り切りというものはせざるを得ないという状況にあると思います。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 今次答申の具体的な対策の中で選炭機までの近代化、合理化ということは明確に表現されているわけですが、選炭機を離れたいわば流通の近代化、合理化が過去の答申にはあるのでありますが、これに触れられていないのはどういう意味かというのが第一点。  第二点は、「近隣炭鉱間において一部鉱業施設の共同利用を図る等」という表現があるわけでありますが、これはどういう事業内容を想定されてこういう答申が行われたのか、この二点について承っておきたい。
  42. 福川伸次

    福川説明員 流通近代化、合理化の点につきましては、昭和四十年前後、そのおくれを取り戻すために、当時の答申には柱となりまして盛り込まれておりました。これを受けまして石炭の専用船の建造あるいは共同配船といったようなものを推進して、それなりの効果は私どもは上げてきたというふうに思っております。もちろん、現時点におきましても流通の近代化という点は必要でございますが、従来進めてまいりました流通近代化あるいは合理化の施策、これを引き続き実施していくということで、特に新たな施策を講ずる必要はなかろうという判断から、項目として答申の中には織り込まれなかったのだと思います。しかしながら、コスト低減を図っていくということから言えば、もちろん近代化、合理化につきましても必要であることは申すまでもございませんので、私どもも、この点につきましては引き続き努力をしてまいるというふうに考えております。  それから鉱業施設等の共同利用、これはどういうことを念頭に置いておったかということでございます。  これは特にこれだけに限定をしよう、こういう共同利用、共同化ということをしようということではございませんが、合理的な効果を発揮するものであるならば企業間、炭鉱間の施設の共同化、共同利用等もぜひ進めるべきだというふうに思います。  たとえば近隣に炭鉱がございます場合には、受配電設備、発電設備等を共同でつくり、それを利用するというのも一つであろうと思いますし、また近隣の炭鉱間におきまして、この二つの隣接いたします間でたとえば坑道等を共同利用していくということの方が搬出等に合理的であるというような場合には、そういうことの共同利用ということを念頭に置いて御議論がなされたように私どもは理解をいたしております。したがいまして、これはいろいろなケースがあろうと思いますが、それぞれ企業の側におきまして今後の炭鉱のコストを低減していくように、それぞれの条件の厳しい中でできるだけ、より合理化していく、少なくとも赤字の解消に役立っような合理化、これはいろいろな部門で探求してもらいたい、こういう御趣旨でこのような文言が入ったものと思っております。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここで保安の問題について若干お聞きいたしておきたいと思います。  一つは、今次赤平災害で二名がエアマントの中で待機をして救出されたという、いままでの政策がここで生かされたという実証的な結果になったわけであります。ただ、救出をされた方々は、気圧が非常に強いものでありますから非常に寒くて閉じこもっておるのが大変であったという証言があるわけです。これらについてはやはり早急に検討されなければならない問題であるし、あわせて簡易救命器の開発についても鋭意検討を続けるべきではないかというのが第一点であります。  第二点は、やはり今度の答申でも自主保安体制が基調になっておるので、私も賛成であります。  ただ問題は、征方ごとに変わる自然条件に対応する場合に係員だけで対応するというのは非常にむずかしいと思うのですね。極端に言えば刻々状況が変わるのであります。だから現場切り羽先における保安のダブルチェックの体制を恒常的に、何らか補完的なことを考えてとるべきだというのが私の持論であるわけです。したがって、たとえば法体系の場合はメタルも関係しますから、問題があるとすれば規則の関係の中で有資格鉱山労働者の中に一つの保安員といいますか、保安有資格者といいますか、そういう人を設けてダブルチェックの関係を考えるとか、あるいは今回の突出ガスのように、日常的にそういう人が教育を受けておくとか、そういう制度をもう一歩前進をさせる、そのことはあくまでも日常保安体制強化するということが私の意見の前提になっておるわけです。この点はどうかというのが第二点。  第三点は、今度三池に行って、保安技術職員の確保がむずかしいということが、しかも職員組合から陳情があったのであります。あれだけの鉱員を抱えている中で、普通一般の保安係員が不足をするということはなかなかわれわれは理解に苦しむところでもあるわけです。  聞いてみると、給与体系で出来高払いをやっているものですから、係員になると給与が減る、責任は重くなったけれども給与は減る、だから係員の選任には応じないというような傾向があるというのが実は明らかになったわけです。そうであれば、これは保安技術職員の確保がむずかしいのではなくして、そういう制度を対応させれば解決できるのではないか。高校を出ても三年間は実務がなければ保安係員にはなれない、土木の大学を出ても、いままでは三年間実務がなければ保安係員にはなれないのでありますから、やはり給与面ということから、恒常的に保安技術職員を確保する、そして若年労働力を補給するという問題は全体としてやらなければならない問題だと思うのですけれども、この点についてはいかがでしょう。
  44. 檜山博昭

    ○檜山説明員 まず第一点のマントの問題でございます。  この問題につきましては、通常坑内においてガス爆発等の災害を防止する場合、削岩機とかローダーとか、こういったものの動力源として大体四ないし五気圧の圧縮空気を用いておりまして、エアマントはこの圧縮空気を利用した緊急時における空気の供給設備いこういうふうになっております。  御指摘のとおり、エアマントの使用には圧縮空気が高速でもって放出されるということでございますので、冷却効果等によって、待避者がある場合、その体温低下というような問題が起こるということが十分考えられるわけでございますが、この温度対策といたしまして、幾つかありますが、減圧弁によって、この四ないし五気圧の圧縮空気を減圧して使用する、こういうふうな方法も考えられますけれども、減圧することによって、風量とかあるいは風圧が低下して、そしてエアマント内へ今度はガスが浸入する、こういうふうな問題が起こるとか、この減圧弁というのは、構造上あるいは操作上、いろいろむずかしい問題があるということでございますので、これにつきましては関係機関協力のもとに、今後慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。  それから続きまして、簡易救命器の問題でございますけれども、これは現在、御承知のようにマインゼムあるいはライフゼムといったものが避難所に設置されているわけでございます。ただ、その重さは、マインゼムの場合六キログラム、それからライフゼムの場合は十二キロということでかなり重い。したがいまして、定置式として備えつけているという状況でございますけれども、最近のガス突出事例におきます罹災者が脱出時の土砂によって埋没するということよりも、むしろ多量のメタンガスによって、酸欠によって死亡する、窒息死、こういうふうなこともございますので、こういったメタンガスによる酸欠から脱出者を守るというために、軽量の操作の簡単な携帯用救命器、こういうものの開発が期待されているわけです。  当省としましては、この目的を達成するために、いろいろこれまで検討を重ねてきております。現状の技術では、マインゼムあるいはライフゼムと同等の性能を有する携帯用のものの開発はいま現在ではまだ非常に困難な状況でございますけれども、これも何とかできないかということでやってきておりますが、最近の一連の災害の事例ということにかんがみて、さらにこの製品の調査あるいは新製品の開発、その可能性について検討してまいりたいというふうに考えております。  それから、その次の問題でございます、先山に何らかの保安資格を与えて、刻々と変わる坑内の状況に対しての保安確保という問題でございますが、この点につきましても、何らかの資格を与えることの必要性のいかん、あるいはその場合の問題点、こういったことにつきまして従来からも御指摘がございますので、業界あるいはその関係者意見を聞きつつ、検討を重ねてきておりますけれども、幾つか問題点がございまして、まだ最終的な結論には達してない。  幾つかの問題点と申しますのは、一つは、先山は御承知のように数人の作業従事者の中で、作業遂行上の責任者ということになっているわけでございます。したがって、この先山に一定の法的な保安資格というものを与えるということは、作業当事者が保安管理面の資格を兼ねるということになりまして、保安管理体制の面で問題が生ずるおそれがないかどうか。それから、仮に責任はあくまでも係員ということで、その補助であるというようなことを考えた場合でも、この先山と保安係員との職務権限の範囲、こういったものをどういうふうに決めるか、現在の保安管理体制との調整は非常にむずかしいのではないかということが一つでございます。  それから第二点は、保安に関する職務を来任させるということによって、本来の作業の遂行自体が場合によっては中途半端になるということで、不完全な状態というのがそのことによって招来されるというような指摘も一部なされております。  それから第三には、保安資格を与えた場合に、これは最後の問題にも若干絡んでくると思いますが、処遇の面での変更というようなことにもやはりなってくるのではないかということで、いろいろ以上のような問題がございまして、作業個所ごとの保安確保というのは非常に重要でございますけれども、いまのような問題点がございますので、この点につきましては今後とも係員の資質の向上というようなことに努める。同時に、いろいろと個々の炭鉱について状況も違いますので、なおさらに検討を重ねてまいりたいというふうに考えております。  最後の、三池の事例がちょっと出まして、係員の確保は給与体系の問題で非常にむずかしいというようなお話がありまし五が、給与の面で係員が不利益をこうむらないように、保安確保というのは非常に重要なことで、その中での係員の仕事というのは非常に中心でございますので、係員のそういったことがないように、これはやはり改善を図っていかなければならない問題じゃないかというふうに考えております。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、砂川、赤平の突出ガスの災害は、何らかやはり日常変わる状況に対応するという体制が必要だと思うのです。だから特に何が災害の中でも問題なのか。そういう特に危険個所、要警戒区域の個所についても、そういうチームのトップは保安資格を持っている、そこは弾力的に検討された方がいいんだと思うのですね。せっかくの検討を期待しておきたいと思います。  時間もなくなってまいりましたから、労働省にお伺いしておきますが、労働条件の問題が出ているのですが、過去において、炭鉱の労働条件は同じ地下産業であるメタルマインの坑内労働者、坑外労働者水準が望ましいということで調整されたこともあるわけですが、今度も労働条件の問題について触れられているわけです。一体、現状ではメタルマインとコールマインではどういう賃金の労働条件状況になっておるのか、これが第一点であります。  それから第二点は、緊就、開就の問題について、これも現行制度維持していく、こうなっておるわけでありますけれども、特に緊就などの場合も高齢化しているわけですね。したがって、その実態を十分把握をして、今日時点で何らかの対応策をやはり考えなければならぬのではないか、こう思うのですけれども、この二点についてお伺いしたいと思います。
  46. 加藤孝

    ○加藤説明員 労働省で行っております毎勤調査によりますと、昭和五十五年の一人平均月間現金給与総額、これは事業所規模三十人以上でとっておりますが、坑内労働者、男子の場合、金属鉱業では三十万四千百十一円、年間所得にいたしまして三百六十四万九千三百三十二円という数字が出ております。これに対しまして、石炭、亜炭関係では、月間二十八万六千百十二円、同じく年間にいたしまして三百四十三万三千三百四十四円、こんな数字になっております。そんなことで、地下産業という形で比べますと、金属鉱業に比しまして石炭関係が低い状態にあるわけでございます。  それから緊就、開就問題についてのお尋ねがございましたが、今回の答申におきましても、離職者対策に関しまして「従来からの対策の趣旨を尊重し、引き続き実情に即した所要対策を講じていく必要がある。」こういう答申がなされております。また、これらの就労事業につきまして、昨年十一月の産炭地域振興審議会答申におきましても、引き続きその合理的運営を図るという旨の答申がなされておるところでございまして、今後の事業運営につきましては、ただいまのそういう御指摘の点も含めまして、今後その合理的運営を図っていくべく検討を進めておるところでございます。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 今次答申をずっと説明を受けて、いろいろ苦心の跡について私もよく理解ができるし、大変な御努力をされた。この答申の時期についても、急がば回れということで一年間かかりましたけれども、時期も当を得ておるのではないか、私はこういう気がいたします。ただ、結論的に申し上げますと、第六次と違ってこの内容が実効的な方向性、実効的にぴしっと政策が組み立てられて実施に移されるかどうかというところにこの最終評価がかかっている、私はこう思うのであります。そういう点で、最後に通産大臣の、第七次答申実効性を上げるという面についての所信をもう一度承って終わりたいと思います。
  48. 田中六助

    田中(六)国務大臣 冒頭に申し上げましたように、三本の柱のうち、政府施策並びに地方自治体の政策遂行ということが大きな柱になっております。私も、労使双方の自助努力もありますし、需要者協力ということもありますが、何しろこれを実行しなければならない、私どもが導いていく、リーダーシップを発揮しなければならないいいチャンスではないかと思っておりますし、私も一次答申以来七回、石炭問題について一生懸命やってまいりましたが、たまたま通産大臣を拝命いたしておりますし、ひとつ石炭問題の革命というような大げさではなくとも、何か将来とも明るい方向に灯が点じられるのならば——岡田委員御指摘のように非常にいい時期にこの答申ができておる、私も実はそう思っておるわけでございまして、稲山会長にもそのことを申し上げたわけでございますが、私自身これを完遂しなければならない、それ以上に何か実を実らせなければならないという決心でございます。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  50. 森中守義

  51. 中西績介

    中西(績)委員 この答申を目を通させていただきまして、一、二の点について質問を申し上げたいと思いますが、時間の関係がございますので、お答えは簡明にお願いをしたいと思います。  まず第一点は、二千万トン体制の問題でありますけれども、これの表現の中で「二千万トン程度生産水準の達成を目指す」こう書かれてあり「基本的な考え方とすべきである。」ということになっていますが、問題は、現存炭鉱でということが中心に記述をされているわけですね。     〔委員長退席、岡田(利)委員長代理着席〕 そうなってまいりますと、現存炭鉱は、いまの千八百万トン体制の中でも一年間に平均すれば十メートル、資料を見ますと、現在平均が六百十メートル近くになっているわけですから、十年間になりますと七百メートルということになってき、しかも坑口からの距離はだんだん遠くなる。そうした中で現存炭鉱に依存をしながら二千万トンの体制維持するということになると、よほどの技術的な革新がなければできないのじゃないかと私は思うのです。  そうした中で、ここに書かれてある二千万トン程度生産水準という、私はここに何かごまかしがあるのじゃないかという気がするのですね。二千万トンという一つの目標設定というものが非常に大事なんですね。そうしなければ、いままでは二千万トン以上といっても、それより以下でずっと経過してきているという歴史的なものを考えてみますと、こうしたあいまいな表現の中では、当然二千万トンをはるかに切って、一千五百万トン程度くらいでもその中に入るというような感じを受けるのですけれども、そうした維持ができるかどうか、この点について伺いたい。
  52. 福川伸次

    福川説明員 先ほど岡田委員からもお尋ねがあったわけでございますが、私どもも、現存炭鉱現行程度生産水準維持、これを基調にしていこうということで、もちろん山によりまして減るところ、それから若干ふえるところはございます。いま御指摘のように深部化するあるいは奥部化する、そのためにたとえば立て坑に新たな掘削をするとかあるいは人車の高速化を図るとか、いろいろな合理化努力はしなければならないというふうに思っております。  私どもも、山ごとにいろいろ検討もし、また審議会でもいろいろ御論議をいただきましたが、いま、従来の経験にかんがみて、従来程度合理化努力あるいはこれまでの政策助成ということを前提にしていけば、そのような不利になっていく点は克服できるであろうというふうに考えておるわけでございます。  いま、二千万トン程度ということがさらにだんだん低くなっていくのではないか、こういうことでございましたが、答申の御趣旨は、いまの千八百万トン程度生産水準、これは五年ないし十年まだ維持していく、状況の好転があればそれに増産の可能性があるということでございまして、現在程度生産維持をまず基調として、その上での二千万トン程度、こういうふうなことでございますので、先ほど大臣も、第六次のときの二千万トン以上出ていた段階での二千万トン以上というよりは、その方向性において少し明るさと申しましょうか前向きさと申しますか、それが織り込まれている答申だ、このように私どもは理解しているわけでございます。
  53. 中西績介

    中西(績)委員 千八百万トン、これを基盤にいたしまして、それより以上を目指すということで一応確認をしておきたいと思うのですが、そうなってまいりますと、労働力の問題を見てみますと、この資料をずっと見てまいりますと、現在の平均年齢が四十二・何歳かになっています。ところが自然退職する人と新たに入ってくる人の数というのがアンバラがあるわけですね。     〔岡田(利)委員長代理退席、委員長着席〕 そうなってまいりますと、ここずっと、先ほどから出ておるような技術革新だとかいろいろな問題でそれが補完されていけばいいのですけれども、そういうものなしの中でやられた場合には、とうていまたいま言う千八百万トン体制だってどうなるか、あるいは二千万トン体制がどうなるか、ここにまたはね返ってくるわけですね。そうしたときに、やはり労働者の将来展望だとかいろいろなものがない中では、そうした目標達成というものが非常に困難になってくると思うのです。  そういうことを考えてまいりますと、私は特に政府でどういう対策を考えられておるのかということが非常に危惧されてまいります。というのは、いままで国政調査などに行ってみまして、地場資本的にやられているところではある程度地域に融合した、住宅政策からすべてが完備されているというような状況等がありまして、うまくやられていますけれども、大資本の場合に、大手の特に大資本と言われるところがやっておるところでは、その点が非常に欠けておるのじゃないかと私は思うのです。もう搾取するのにきゅうきゅうとしておるというような感じがしてなりません。それでは将来的に労働力確保などというものはとうていおぼつかないわけでありますから、こうした点、新しい技術者をどうするのか、あるいは労働者をどうしていくのか、こうした点で政府なりでどう補完をするか、そういう考え方があるのか、ただ単に企業の責任のみにおいてこれをしても不可能だろうと私は思っています。そうした意味で、指導なりあるいは補完的な対策を立てるのかどうか、この点どうですか。
  54. 福川伸次

    福川説明員 いま御指摘のように、労働者の定着を図るという点は非常に重要でございますし、また、いま出炭の確保を図る、あるいはまた能率の維持向上を図るということから機械化、合理化、それから適切な設備投資ということが非常に重要である、また同時に、保安が非常に重要でございまして、これは自主保安体制あるいは保安教育、各般の施策が必要だという点は御指摘のとおりでございます。もちろん、石炭鉱業に明るさが持たれるということが、それでまた働きがいのある職場であるという認識が広まるということが労働力の定着化を図る一つの重要な柱でございまして、その上に経営対策全般を含めましての対策を効率的に行うということが大前提として一つ重要でございます。  またさらに、もちろん労働条件、これは労使でお決めになることでございますが、環境整備に関しましても、たとえば住宅、病院、診療所等の改善労働者生活環境整備ということにつきましても、従来も融資等の措置を講じましてその助成も図ってまいった次第でございまして、これも引き続き助成を続けていくということも指摘されているところでございます。  また、関係地方公共団体におきましても、総合的な地域政策の一環といたしまして、これは産炭地域振興臨時措置法等の措置も含めまして、医療、文化施設等の整備充実を図っていく、こういうようなことを努力をしてまいるという点が必要であろうと思っております。また、保安確保保安のための中堅技術者の養成といったことも十分必要なことでございまして、実は答申でも、労働力確保の点につきまして、かなりのページ数を割いてこの点の問題の指摘をしているということも、その辺の重要さを示しているというふうなものであろうと思っております。保安面、それからまた労働省の御施策とも協力をしながら、いま御指摘のような点についても十分留意をしてまいりたいと思っております。
  55. 中西績介

    中西(績)委員 この点については、特にこれなしには実現は不可能でありますから、この点だけは、量が多いからということでなくて、実現可能なものをそこにどう具現化するかということがなければとうてい不可能ですから、この点は十分考慮していただきたいと思うのです。  そこで、問題は財源の問題でありますけれども答申を見ますと「所要財政資金確保のための努力を行うべきである。」ということで「引き続き「石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計」によって確保すべきである」とあります。この点は、将来的にこうした特別会計法の延長を行うということが前提にこうしたことが書かれておると確認をしてよろしいですか。
  56. 小松国男

    ○小松説明員 そう了解いただいてよいと思っています。
  57. 中西績介

    中西(績)委員 そこで「行政改革に関する第一次答申」の内容をずっと見ますと、エネルギー問題、エネルギー対策などのところにいろいろ記述されています。こういうものを見ますと、繰入額の圧縮を図るとか、財政面において圧縮されるのではないかということが考えられるわけでありますけれども、この点について何かいままでの折衝なり、あるいは閣議了解の中なりの問題点があるのではないかという感じがするのですが、この点はどうでしょう。
  58. 小松国男

    ○小松説明員 一般会計につきましては、先生御存じのようにゼロシーリングということになっているわけでございますが、エネルギーにつきましては特別の配慮をするということになっておりまして、現在財政当局ともいろいろ話し合いを進めておりますけれども、一般会計のようなシビアなことではなくて、エネルギー財源については特別に配慮をする方向で現在検討をいたしております。
  59. 中西績介

    中西(績)委員 そういうことになりますと、この特別会計そのものとあわせまして、こうした圧縮というものが一つの枠の中で決められていくのではなしに、特別配慮をするというように理解をしてよろしいですか。
  60. 小松国男

    ○小松説明員 石炭並びに石油及び石油代替エネルギー特別会計というのは、いわゆる重油の関税収入それから石油税につきまして、一般会計の方から繰り入れるということになります。その繰入額については、その財源の中から必要な額を繰り入れていくという方向で現在検討いたしております。
  61. 中西績介

    中西(績)委員 時間がありませんから、もう一点だけお聞かせいただきたいと思うのは、先般の委員会におきまして論議された際に、いろいろ財政問題についてはいままで討論をしてまいりました。そうした中で、特に五十六年度方式を、特別会計法の改正をするときにはとるのかどうかというのが大きな問題になってくるだろうと思うのですが、特に時間がありませんから読み上げるわけにはいきませんけれども財源確保の方法論についていろいろお考えになっておられるようであります。特にエネルギー対策費全体の中で石炭対策についてはどう確保していくか、こういう考え方が前回の場合には言われておったのでありますけれども、この答申を受けて、さらにこうした法の延長なりが考えられるとなると、その基本的なものはどういうところに置いて考えていくのか、この点はどうでしょう。
  62. 小松国男

    ○小松説明員 本特別会計の中での、特に石炭勘定につきましては、原重油関税の基本税率をベースに繰り入れることが原則になっておるわけでございますけれども、特に五十六年度につきましては定額先入れという方式をとったわけでございます。ただ、これは五十六年度の特殊事情がございまして、一つは、特別会計自身が五十六年度末で切れる、そういう場合に、原重油関税の収入の状況から見ていろいろ問題が出てきた場合に、年度末の借り入れ、さらに年度越し借りかえということはなかなか実際問題としてむずかしくなるということで、特に定額先入れ方式ということを採用したわけでございます。ただ、これはそういう特殊事情を考えた措置でございまして、五十七年度以降についてこういう方式をとるかどうかについては、現在いろいろ検討をしておるところでございます。  実際問題として、過去の経緯また原則論から言いますと、先ほど申し上げましたように、原重油関税の中の基本税率の五百三十円相当を原則とするという考え方はありますので、五十六年度のような特例が設けられるかどうかについては、これからいろいろ検討してまいらなければならないわけでございます。いずれにいたしましても、石炭勘定、特に石炭対策についての財源確保というのは私どもにとって非常に重要な問題でございますので、いろいろと創意工夫はしてみたいというふうに思っております。  たとえば、従来石炭勘定の中で見ておったような対策の項目を、石油及び石油代替エネルギー勘定の方の項目の中で見れるものがあるかどうかとか、そういういろいろ工夫をしながら七次答申及び鉱害復旧関係対策については万全を期していきたい、かように考えております。
  63. 中西績介

    中西(績)委員 特にいま一審最後のところで申された内容につきましても、何と申しましても石炭がこうして見直される時期やありますだけに、石炭生産に対する財政措置というものが、いままで石油との関係の中で、石油は膨大にどんどんふくらんでいった経過があるわけですが、それを抑えろとは言いませんけれども、いま言われたように、やはり特別に考えてでも、エネルギー対策を初めとして十分な措置をしていっていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。  最後になりましたが、二つ質問をしたいと思います。  一つは、この石炭政策答申を見てみますと、十三番目に出ております離職者対策あるいは鉱害対策あるいは産炭地域振興対策というのが出ておりますが、この中で特に離職者対策につきまして、ここに記述されておりますように「従来からの対策の趣旨を尊重し、引き続き実情に即した所要対策を講じていく必要がある。」こうなっております。  先般私たち、そうした産炭地域調査に参りました。そうした中で、その地域で示されました現地のいろいろな状況等を見てみますと、財政力指数にいたしましても、あるいは求人倍率にいたしましても、さらに生活保護、すべての条件というのは、一定の前進はあったといたしましても、依然としてまだまだ十分ではないということがはっきりしています。こうした就労事業をなくすということになれば、必然的にそこでは、いま低下しておるのがさらに基盤が低下するわけですから、そこでは大変な状況になってしまう。社会構成すらも危なくなるという状況が出てくるわけですから、そうした中における離職者対策であるという認識、私は前回調査に参りましてさらにそういう意識を強くしたわけであります。そうした中におけるこの文章表現とのかかわりで、いま時点どういうお考えを労働省の方はお持ちになっておるのか、この点一つ。  それから二つ目に、鉱害対策の問題でありますけれども、昨年八月調査結果を出すということを言っておりましたけれども、大変おくれてきています。しかし、おくれた中でそれが把握されたとお聞きしておりますけれども、そうした中で鉱害二法延長問題が出てくるわけですが、前国会からこれらの問題については当然しなくてはならぬだろう、こういうふうに私たちは理解をしてきました。また、そうした答弁をいただいてきたわけでありますけれども審議会はいま諮問を受けて鉱害部会で検討中のようでありますけれども、これについての日程がどうなっているのか、それからもう一つはどうした内容を諮問しておるのか、さらに、現時点においては先ほど申し上げたように延長についてはどうお考えになっておるのか、こういう点をお聞かせいただきたいと思います。  以上です。
  64. 加藤孝

    ○加藤説明員 炭鉱離職者の滞留しておる地域における諸問題についての認識は、先生御指摘のとおりでございます。そういう観点から、私どもそういった諸事業につきましても引き続きそれを実施していく必要があるということは考えております。ただ一方、産炭地域振興審議会の方からの答申にございますように、その合理的な運営を図るということの必要性もあるわけでございます。そういった観点で、一定の合理的運営への努力をしながら引き続き実施していく、そういう方針のもとに検討を進めていきたい、こう考えております。
  65. 福川伸次

    福川説明員 鉱害関係についてのお尋ねでございますが、六月三日に通商産業大臣から諮問がございまして、第一回の会合をその日、六月三日に開催をいたしております。以後現地調査も含めまして四回会合を重ねております。それで、今後さらに鋭意検討を進めていただきまして、私どもとしては年内にもこの結果をお取りまとめを願って答申にしていただきたい。ちなみに法律は七月に期限が参るわけでございますが、年内に私どもはぜひ御答申をおまとめ願いたいということで作業を進めていただいておるわけでございます。  諮問の内容につきましては「石炭鉱害現状にかんがみ、五十七年七月三十一日に廃止期限が到来することとなっている臨時石炭鉱害復旧法及び石炭鉱害賠償等臨時措置法の延長について貴審議会意見を求めます。」という諮問をさせていただいておるわけでございます。  現在その延長の可否についてどのようなことになっておるかということでございますが、現在までのところ、先ほどちょっと先生もお触れになりましたが、調査結果を踏まえて、さらにまた現地調査等の結果を踏まえて、いま問題点の摘出とそれについての考え方の整理をいたしていただいているわけでございます。まだもちろん審議会の御意見がまとまっているわけでもございませんので、延長がどうなるかということを私が軽々に申し上げるのはいかがかとは存じますが、委員の方々の方向としては一応延長はするという含みでいろいろ御論議が行われておると私ども承知をいたしております。
  66. 中西績介

    中西(績)委員 では終わりますが、最後大臣に、この全体的なものにつきましては先ほど岡田委員の方から答弁を求めたわけでありますけれども、特に私は一番最後の(13)のところ、離職者対策鉱害あるいは産炭地、こうしたものがここではきわめて抽象的にしか、まだ審議過程等もありまして、出ておりませんけれども、これがもたらす影響というのは大変なものでありますし、財源をどう求めていくかということとあわせまして、これから後に出てくるであろうこうした答申内容等をくんで、特にまた緊就、開就、特開等を含めて大変な問題がありますだけに、これから取り組む姿勢等についてお答えをいただきたいと思います。
  67. 田中六助

    田中(六)国務大臣 十三番目に重大な離職者対策鉱害その他を掲げておるわけで、私どもも、これは最後に一応考慮にあるぞという審議会意見がはっきりしておると思いますし、それぞれの部会の答申を得て、その結果を待つわけでございますが、中西委員御指摘のように、これらは三つとも非常に重大な、しかも内容が膨大な予算を伴う問題でございますし、それぞれ期限の延長は方向は決まっておりますけれども、何年にするか、あるいはまた予算の問題も大変でございますが、私ども一応一つの山はこの第七次答申で受けておると言いつつも、残りの諸問題につきましてはそれぞれ答申を得て、あるいはまた専門家の意見を聞いて実施しなければならない。問題は頭を出しておるだけで、後の胴体あるいはしっぽ、これも非常に重大な問題で、これから私どもも真剣にこれらの問題に取り組まねばならないという決意でございます。
  68. 中西績介

    中西(績)委員 終わります。
  69. 森中守義

  70. 鍛冶清

    鍛冶委員 いままでいろいろ質疑がございまして、私のお聞きしたいという問題もずいぶん出てまいりました。若干ダブる点があるかとも思いますが、そういった点をなるべく除きながら御質問を申し上げますので、よろしくお願いいたします。  最初に、今回の答申につきまして大臣からも力強い御決意のほども先ほど伺ったわけでございますが、ただいまも御答弁の中にございましたように、これを本当に行政のベースで実施していくということにつきましては、財政というもの、いわゆる財源という問題が裏づけになくてはとうていこれはやり得ません。これは現今の情勢の中では、財源確保、その財政的な裏づけをとっていくということは大変な厳しい状況の中にあると思いますが、これについてはどういう考え方でお取り組みになるか、お答えをいただきたいと思います。
  71. 福川伸次

    福川説明員 答申には、従来に引き続き石炭石油及び石油代替エネルギー特会を存続していくのが適当である、こういうふうになっております。したがいまして、引き続き原重油関税を財源といたしまして今後の石炭対策を続けていく、こういうことでございます。もちろん財政状態が大変厳しい中でございますので、財源確保を図っていくという点は大変むずかしい問題でございますし、先生御高承のとおりに、脱石油化が徐々にではございましょうが進んでおりまして、それがその財源にも響く、こういうことも最近影響が出てまいっておりますが、私どもといたしましては、この臨時行政調査会の答申にもございますように、事業の効率化を図ってできる限り節約を図りつつ、必要なものに予算を準備していく、こういうことでぜひ対応をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。もちろん、財政事情大変むずかしい制約がございますけれども、私どもとしてはできる限りの努力はいたしたいというふうに思っております。
  72. 鍛冶清

    鍛冶委員 石炭部長からも、先ほどの質疑の中で、今回の第七次石炭政策答申については六つの特徴というようなものがお答えがございました。これに伴って、これを大臣も正確に実現していきたいというふうな御答弁もあったわけですが、通産当局といたしましてこれまでの石炭政策、いわゆる取り組みと申しますかに、こういう特徴を踏まえながら新たに特に強調し、取り組みを以前と違ってやっていきたい、こういうふうな点が幾つか出てくるのではないかと思いますが、こういった点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  73. 福川伸次

    福川説明員 石炭をめぐります内外の環境、これはこの答申にも触れられておりますように、第六次答申のときとかなり変化しつつございます。また第六次政策過程におきまして、予期せざる円高が進む、あるいはまた内外の石炭価格差が、円高の影響もございましたが、予想以上に広がったというような思わざる事態がございまして、当初意図したところとは異なった事態をたどったわけでございます。  第七次政策におきましては、第二次オイルショックというものの影響を受けましてエネルギー構造が世界的に大きく変貌、変質しておるという状況の中で国内炭あり方位置づけ、そして将来の方向づけをしたという点で、私どもは非常に一つの大きな特色であろうというふうに思っておるわけでございます。  特に今回はかなり現実的な提案を多くちょうだいいたしておりまして、まず現存炭鉱現状程度生産維持を基調とするということでございますので、まず、この点につきまして従来に引き続いて合理化を行う、あるいは自然条件格差等がございますものにつきましては、安定補給金の傾斜配分といったようなかっこうで、現存炭鉱維持、これをなるべく長く安定的に維持していくことが、エネルギー政策の立場からも、あるいはまた地域社会の安定、地域経済の安定ということのためにも役立つということでございますので、これをいま申し上げましたような政策手段を活用いたしながら、できるだけ長く安定させていくという点に努力値いたしたいというふうに思っております。  なおまた、これとの絡みで申しますれば、引き取り体制あるいは価格の面、これも石炭鉱業自立のために、あるいは自立につながります安定のために非常に重要な問題でございますので、これにつきましても内容的に、第六次政策のときよりは、たとえばローリングプランを導入するとか、あるいは外貨割り当ての考え方がより明確になっておりますとか、あるいは国内炭炭価の設定につきましての考え方がかなり明確になっておるという点を階まえて、現存炭鉱の安定に努力をしてまいりたいというふうに思うのが第二点でございます。  さらに今後やや明るさ、あるいはほのかな明るさと言えるのかとは思いますけれども国内の資源の有効活用を図る、また石炭環境がある程度改善しておる、こういうことを踏まえまして、消滅鉱区の再開発等で資源の有効活用を図る、また将来におきましては、環境条件の成熟を待って新鉱開発に目をつけていく、そのためにも二十年程度前でございましょうか、昭和三十年以前に行っておりました埋蔵炭量調査というようなものをさらに発展させた形で、その可能性をつかんでいくような調査も行ってまいりたい、こういうふうな大変現実的な内容が盛られておるかと私ども理解しておりますので、いま申し上げましたような点、現存炭鉱維持、さらにはある程度の増産の可能性を探るということにつきまして、現実的な対応を図ってまいりたいということを考えております。
  74. 鍛冶清

    鍛冶委員 いままでも議論されてきた中にございましたが、六次答申のときも、二千万トン以上ということが言われながら一千八百万トン台でずっと終始してきたのでございますが、二千万トンに達することができずに、そういう形で維持せざるを得なかったその理由について、ここで改めてお聞きをいたしたいと思いますので、お答えをいただきたいと思います。
  75. 福川伸次

    福川説明員 ちょうど第六次答申をまとめました昭和五十年、それまでその作業をずっと行ってまいりましたが、昭和四十九年度の生産は約二千三十万トンであったわけでございます。したがいまして、そのときの答申におきまして、当時としての現状水準二千万トン以上ということを、歯どめをかけるという意味でそのような目標を掲げたわけでございます。  その後、第一次オイルショックの後の経済調整の過程で大変な不況に陥る。とりわけ原料炭が当時も中心になっておりまして、鉄鋼業が大変な不況に陥るというような事態がございまして需要が低迷する。さらにまた、予期せざる円高が進みまして内外炭の価格差が拡大したということのために、またその需要が減退をするというようなことで、不況とそれからそういった為替レートの変化といったようなことの競争条件需要の減退と競争条件の変化ということがあったわけでございます。  それにまた、大変不幸なことではございましたが、思わざる災害が起こったといったようなことで、その当初意図いたしました生産が千八百万トン台ということに推移をいたしたわけでございます。昭和五十四年度は千七百七十六万トンになりましたが、その後の特に一般炭中心にいたしました需要の増大を反映いたしまして、昭和五十五年度には、これまた大変不幸なことに一部に災害はございましたが、それでも出炭は千八百十万トンに回復をしてまいったわけでございます。  いま申し上げましたようなのが、第六次答申で二千万トン以上と言いながらも、大変残念ではございましたが千八百万トン前後に推移をした理由であろうと理解いたしております。
  76. 鍛冶清

    鍛冶委員 いま災害のお話も出たわけでございますが、これとともに、関連して労働力確保ということが非常に厳しい状態にあったのではないかというふうな気もいたしますが、災害といいましてもこれが人命に及んでおりまして、年々企業努力、また通産当局関係の方々の努力で、また働く皆さんの努力でその死亡というものも減ってきてはおりますけれども、私は、こういう死亡ということ、最近も赤平であったわけでございますけれども、これを踏まえながら掘らなければならないという宿命的なものに対しては心が大変痛むわけでございまして、やはりこの答申の中に出ております労働力確保保安の問題については、これは炭価の問題もございますが、特にこの二つについては強力な施策ないしは企業努力関係の方々の御努力が必要であろうかと思います。  そこで、特に今度も赤平のガス突出というようなことで事故が起こっておるわけでございますけれども、その前にもございました。そういったようなことを見てみまして、確かに答申の中にあるそういう災害をなくするための技術的なものを革新していくとか、そういう保安の対応といったようなものが本当にやられていかないと、労働力確保ということにも影響が出てくるのではないだろうか。高齢化社会というものが進んでくる中で暗い人たちが減ってまいりまして、特に言われておりますのは汚れ仕事を若い人たちがしなくなってきておる、こういう大きな流れがございますし、これは現実的に労働力確保する意味の上から、事故の問題と絡みましていままでより以上に大変大きな問題になってくるのではないか、私はこういうふうな気がいたしております。  こういう中で、本当にまず労働力確保ということでございますが、特に若年層の確保ということについて現実に手当てができるのかどうか、大変心配するのでございますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  77. 福川伸次

    福川説明員 いま災害、事故等の点にも触れられながら、労働力確保の必要性あるいはその実現に向けての施策あり方について御指摘をちょうだいいたしたわけでございます。もちろん、この答申にも触れられておりますように、保安確保というのが石炭生産のすべての基礎であるということでございます。もちろん、石炭鉱業が働きがいのある、展望のある職場であるということの前提に、保安というものが非常に重要な点であるということは御指摘のとおりでございます。それを踏まえながら、さらに労働力確保していくというためには、石炭鉱業の将来展望確立経営基盤の脆弱性の解消ということが企業サイドにおいては非常に重要なものでございます。  さらにまた、その生活環境ということから参ります諸整備、たとえば住宅あるいは医療等々の問題がございます。  さらにまた、労働そのものに関しまして、たとえば賃金あるいは労働条件等につきましても、これまた今後の改善が必要でございます。もとより、この点は、労使努力の成果を踏まえながら労使間の話し合いで決められるべきものでございますけれども、その場合に、その他の産業とのバランスを考慮しながら、地下資源産業にふさわしい適正な条件確保されるべきであるという御提案をいただいておりますが、この点につきましては、労使がそのような形で努力をしていかれるということを期待するわけでございます。  さらにまた、作業環境整備改善といったようなことも、冒頭申し上げました保安も含めまして非常に重要な問題になっているわけでございます。  さらにまた、教育問題というのが非常に重要な問題でございまして、鉱山保安センターの教育機能の充実といったようなことがございます。もちろん、福利厚生諸施設、生活環境改善というのは地方公共団体の御協力も非常に得なければならないわけで、それなりの施策を期待いたしますと同時に、また石炭鉱業に対する助成という意味からも、現在行っております無利子融資制度というようなものも引き続き講じていく、こういう考えでございます。  地方公共団体さらには労働省の諸施策ということとまちまして、また保安面の教育といったようなものも含めまして、いま申し上げましたような労働力確保の問題、その根底には石炭鉱業が働きがいのある、展望のある職場であるということを順次定着化していくということがいまの労働力確保の点でございまして、もちろん、労使努力中心にしながら、それぞれの立場立場におきまして、関係省庁ともども政府としても積極的な役割り、対応を果たしていくべきものと考えております。
  78. 鍛冶清

    鍛冶委員 そういったことがきちっとできればいくのかなという気もいたしますが、先日北海道に参りましたときにいろいろ陳情をなさっていただきました。そこでちょっと出た話は、もう五年、十年たつと働いている方々の平均年齢も恐らく相当高齢化するであろうというようなことを現実に現地の方が、これは本音のところでおっしゃっていたのでしょうか、言われていたようです。ですから、なおさらそこらあたりが心配になるわけでありまして、いままで御答弁をいただいたことは、これは本当に実現可能であるのかなというふうな思いもするわけでありますが、これに対しては本当に真剣に取り組む必要があろうかと思います。  いろいろいただいた資料の中にも、平均年齢については、昭和四十九年から五十五年のデータを見ますと、大体平均年齢四十二歳というのを確保しているということで、若い人も入ってきているという裏づけはあるのではあろうと思いますけれども、その反面、常用実働労務者数というものを見てまいりますと、昭和四十九年の二万三千三百十三名から五十五年には一万八千二百八十五名というふうに減ってきているわけですね。ということは、やはり高齢で退職される方が相当おありで減っていっているので、その中で若い人たちが入るのも少ないのではないか。そういうことで、高齢者の方々が退職されたその分が若返っているという形で、四十二歳平均というものを辛うじて保っているのかなというふうに、この数字の上から見て思うわけであります。  これは技術の革新ということと絡んでこれだけの人数でやれる、まだまだ合理化して人数が減っていくのかどうか、私はわかりませんけれども、減ることは好ましいことではございませんが、いまの体制で二千万トン目指してやるということについては、技術革新と相まってぎりぎりの最低の人員の線というものが出てくるであろうと思います。そうなりますと平均年齢がどんどん上がってくる。逆に言えば掘る若手の人たちが、また技術を引き継いでいく人がいなくなるというふうなおそれも十分ある。そういうことをおもんばかる余りに御質問申し上げているわけですから、これは言葉だけに終わらないように、答弁が活字に残るということだけに終わらないように、ひとつ真剣に取り組んでやっていただきたいと思います。  それから、先ほどちょっと申しましたガス突出の問題などは、これはいろいろ聞いてみますと技術的にも予知が非常にやりにくい、対応がしにくいというふうにもお聞きしておりますし、前回砂川か何かで起こったときにもいろいろと対策が練られたと思いますが、一番安心して掘っておると思われていた赤平でこういう事故が起こったということになりますと、私たち素人として考えて、こういう対策というものが本当にやり得るのだろうか。予知をして事故がないようにし、そして亡くなる方等が絶対ないような形をとっていくべきであろう、その中で当面一千八百万トン体制維持と二千万トンに向かっての増産、こういうことになると思いますが、こういったものは技術的にきちんとその対応ができるのであろうかというふうに思いますので、この点をひとつお答えいただきたいと思います。
  79. 檜山博昭

    ○檜山説明員 ただいまのガス突出災害について十分な対応ができるのかという御質問でございますけれども、赤平炭礦の災害の状況については私ども現在調査中でございまして、その調査結果が出ないと明確なことは申し上げられないのですが、いままでのところの感触でございますと、この対応について若干不十分な点があったのではないか、現在の技術あるいは対策でもってこの災害は防げたのではないかというふうな感触を持っているわけでございます。  この炭鉱につきましては現在なお対応策検討させておりますけれども、全般的に、これから炭鉱の深部化奥部化というのが進みまして、地圧だとかガス湧出量あるいは地温、そういったものがかなり上がっていく。そういう状況の中で、これまでも実はそういった問題に対して技術なりあるいはその体制面でいろいろと防止してきたわけですけれども、今後もさらにそういった状況の変化といいますか、厳しくなっていく状況を踏まえて、私どもとしては技術の研究、こういったものに力を入れていきたいというふうに考えております。
  80. 鍛冶清

    鍛冶委員 ちょっと不安も残る気はいたしますが、こういった点について対応がちょっとまずい点があったのじゃないかということになりますと人災ということにもなりかねませんが、そういうことが絶対にないようにひとつ力を合わせて、明るい職場ができるように、掘れる体制ができるように御努力はお願いしたいと御要望をいたしておきます。  それで、いよいよ時間が詰まりましたので答弁は簡単にお願いしたいのですが、産炭地関係でお尋ねをいたします。  臨調答申で補助金、特に産炭地関係の補助金の削減ということについては相当言われているようでありますけれども、われわれ地元がそういう形の中で大変な状況にございますので、補助金削減ということについてはこれは大変厳しいなという面もあるわけでありまして、通産当局としては、大蔵省の要望をはねつけたようなことで押し返したというふうに新聞報道があっておりましたが、こういった点についてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  81. 福川伸次

    福川説明員 産炭地域につきましてのお尋ねの補助金の取り扱い、恐らく御指摘の点は、臨調答申を受けました地域特例の補助率の問題であろうというふうに思います。臨調答申におきましても、財政再建期間中、地域特例の補助金を引き上げておりますその幅を引き下げをするようにという御提案があり、現在財政当局中心にそのようなことが進められておるわけでございます。もちろん、私どもも、産炭地域におきます社会的経済的な諸事情という点も十分理解をし、また法律の延長等の経緯も踏まえながら、また一方行政改革ということの大きな要請もございますので、そのような多くのそれぞれの問題、諸般の情勢を踏まえながら、私どもとしては慎重に対処をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  82. 鍛冶清

    鍛冶委員 最後になりますが、先ほどもちょっと質疑の中で出ておりました通産省の資源エネルギー庁が七月に全国鉱害調査の結果をまとめられているようでございますが、この内容について要点を簡単にお答えをいただきたいと思います。
  83. 福川伸次

    福川説明員 全国鉱害調査につきましては、昭和五十四年度の当初の時点で鉱害量の調査をいたしたわけでございます。それで、その後取りまとめ作業に時間を要しましたが、六月末にその概要を取りまとめて鉱害部会に御報告をして、御審議の参考に供しておる次第でございます。  五十四年度初めの全国鉱害量の調査結果によりますと、残存鉱害量は、農地等が二千八百四十億円程度、公共施設が六百八十億円程度、家屋が三千百五十億円程度、合計いたしまして六千六百七十億円程度という調査が一応取りまとめられております。その後五十四年度中、五十五年度ということで鉱害復旧作業がある程度進展をいたしております。また一方、その間に物価上昇等の点もございますので、推測でございますが、恐らく六千六百七十億円の数字はその後の復旧量に見合って減少していくということになってまいるわけでございますが、五十四年度初めでは六千六百七十億、これが当時の調査結果でございます。
  84. 鍛冶清

    鍛冶委員 この調査結果を概略お聞きしただけでも、前回調べられたときに比べまして相当いろいろ新しくふえてきておる分野もあるように思いますが、これを踏まえましても、先ほど御答弁の中で、審議会答申鉱害二法関係についての延長を踏まえながらどうも委員の方々は検討されているというふうにも御答弁を伺いました。残存鉱害をなくするのに、法の延長というものは一応どころではなくて、もう絶対やらなければ産炭地の復興はないというふうにも感じます。こういった点を踏まえまして、これは再度の大臣に対するお尋ねになりますが、鉱害二法関係、さらには第七次答申を踏まえまして、これに取り組んでやり抜くということにつきましての大臣の姿勢をお尋ねをして、御質問を終わりたいと思います。
  85. 田中六助

    田中(六)国務大臣 第七次答申につきましては、三本柱の一つに政府の今後の努力ということが大きな柱になっております。私どもはこの答申を一生懸命実現すべく、絵にかいたもちにしないように努力していくことを鍛冶委員にお約束申し上げたいと思います。
  86. 鍛冶清

    鍛冶委員 では終わります。ありがとうございました。
  87. 森中守義

  88. 小渕正義

    小渕(正)委員 第七次答申に対しましては、また別の機会に、いろいろとこれらの具体化についての行政当局考え方、その他いろいろとそういった面については質疑を交わす機会があろうかと思いますので、本日はとりあえずきょう説明を受けた中で二、三点にしぼりまして御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、石炭部長の方からも、先ほどの質問の中で触れられておりましたが、今次第七次答申の大きな特徴として六つくらい触れられておったわけであります。その中で私なりに要約してみますと、特に、従来斜陽化している石炭産業をどう食いとめていくかという意味では、どちらかというと後ろ向きの答申でありましたが、今回はこれからのそれぞれの努力によって増産体制への期待が非常に持たれるというような意味での前向きな提言になっているのが一つの特徴かと思います。  それからあと一つは、第七次答申が出されて報道関係が一斉に報じた中で見ますと、みんなほとんどの報道関係が取り上げたのは、石炭産業がいよいよ自立への道をこの機会に進め、この好機をとらえよ、または石炭産業自立は果たしてできるのか、こういったことが第七次答申の中での特徴というふうに実はとらえられているようであります。  日経の中での一つの記事を読み上げてみましても「同答申のうちいくつかの具体的政策提案の比重の置き方について、明確ではない点もあるが、手とり足とりの保護政策の補強という方向ではなく、国内石炭労使の自主的協力を柱とした石炭産業自立化への道を強く提唱した点は大いに評価できる。」これは一つのある新聞の見方でありますが、いずれにいたしましても、今度の第七次答申の特徴は、あと一面においては、石炭産業に対する自立をいかに進めていくかということが今回の答申の大きな特徴ではないかと思うわけでありますが、その点についてどのように判断されておるか、お伺いしたいと思います。
  89. 福川伸次

    福川説明員 従来第五次の政策までは、大変残念なことではございましたが、当時のエネルギー流体化傾向の影響を受けまして、縮少均衡という道をたどってまいったわけでございます。第六次の石炭政策におきまして、当時の生産水準であります二千三十万トン程度、この程度水準を何とか維持しようという意図を持ちまして二千万トン以上、こういうことでございました。その後現実に千八百万トン程度、こういうことでございまして、そういう意味では二千万トン程度という目標は、現状から出発いたします限り前向きのニュアンスであるという御指摘、御理解は、この答申はそのようなニュアンスであるという点は私も同感に受けとめたわけでございます。  確かに、いまの石炭鉱業をめぐります環境というのは、第五次以前あるいは六次に比べましてかなりよくなってきているという点は、答申現状認識の点で触れられておるところでございます。もちろん、従来も縮小均衡の道でありながら何とか自立させよう、競合エネルギーに対しての競争力を何とか回復させようという意図を持って、何とか自立の道を探ろうという意図があったことは、それぞれの答申もそうであっただろうと思います。  しかし、今回のこの答申は、そのような環境がある程度改善してきているという現実を踏まえまして、なお石炭鉱業労使自助努力自立への道の努力、これを中心に据えながら、とにかく石炭鉱業は貴重な国内資源を活用するということでございますから、需要業界協力とさらに政府支援、これを支えにいたしまして石炭鉱業自立をとにかく目指していこう、現在よくなってまいっておりますこの環境を何とか生かして自立の道をたどっていこうではないか、そういうものをもちろん労使に一番強く呼びかけておりますが、あわせ需要業界政府にも強く呼びかけておるというわけでございまして、その意味では経済性安定性ということの調和の中で自立の道を何とか見出すように、いまよくなってまいりました環境を何とかとらえていこう、こういう意欲があるように私どもも理解をいたしておるわけでございます。
  90. 小渕正義

    小渕(正)委員 いまの御答弁でもありましたが、要するに、そういう意味で第七次答申は、かなり労使の自主的努力を前提にしながら、それにそれぞれの関係先等を含めてより石炭産業自立化を目指してやらなければならないということを強く前面に出されたのが特徴だと思うわけであります。  そのように政府自身も受けとめるとするならば、いままでの石炭産業に対する政策とまた変わった方向といいますか、大きく変わるということはあり得ないとしても、重点の置き方、政策重点配分、そういうものが当然変わってこなければならないのじゃないか、そういう気もするわけであります。もちろん、今度の答申の中では、一部安定補給金などの傾斜配分という問題が触れられておりますが、通産当局としては、新しい第七次答申のそういったより自立化を目指すという方向性の中で、この政策をどのように今後していくのか、そういう意味で、私は、従来とまた一味違った一つのものが出されなければいけないのじゃないかという気がするわけでありますが、その点に対するお考えをお示しいただきたいと思います。
  91. 福川伸次

    福川説明員 石炭鉱業自立を目指すその三者の協力ということの上に立ちまして、この答申は、現存炭鉱の現在程度生産維持ということを基調にしよう、その上でさらに環境条件がよくなってくれば増産の可能性も探ろう、こういうことでございます。したがいまして、この現存炭鉱維持現存炭鉱現行程度生産水準維持ということにまず第一の力点を置いていこう、こういうことでございます。  そういう意味で、この合理化の仕方ということの中でも、従来のように合理化設備あるいは骨格構造の合理的な展開ということをまた中心にしながらも、なおさらに施設の共同利用とかそのほか共同化、協業化といったような、私企業体制をベースとしながら合理性を追求し得る、あるいは少なくとも効率性が高まるようなそういった合理化努力、提携、共同事業といったようなものも含めていこうという点が出てまいっておるわけでございます。  さらに、いま先生お触れになられましたように、格差是正のために安定補給金の傾斜配分をしていこうということでございますので、もちろん条件の悪い山がございます、それから、これから三年あるいは五年あるいは十年と掘ってまいりますによりまして、石炭条件はさらに悪化はしてまいるわけでございますが、一層の合理化努力でそれを吸収しながらも、そのようになおかつ吸収し得ない自然条件によります格差、これを安定補給金の傾斜配分を高めることによってこの現在の水準維持していこう、こういうことが一つの基調になるわけでございます。  そのために、なお需要業界協力を求めるということでございますので、引き取り問題あるいは価格問題ということについても、さらにこの答申の趣旨に沿って努力をしてまいらねばならないというふうに思っておるわけでございます。  さらにまた、条件が熟してまいりますれば増産の可能性も探るということの一環といたしまして、先ほども委員会でも御質疑がございましたように、消滅鉱区の再開発あるいは将来に備えましての新鉱開発助成措置の存続へあるいは炭量調査といったようなものを取り上げて、私どもとしても国内資源を有効に使う、既存炭鉱をできるだけ長く安定的に維持していくということを基調としながら、いま申し上げましたような増産の可能性も探っていく、こういうことで将来における二千万トン程度生産を目標に、もちろん労使努力していただき、需要業界協力していただきますが、政府もそれについての所要支援を行うていく、そういうところにこれからの政策重点というのがあるのではなかろうかというふうに考えております。
  92. 小渕正義

    小渕(正)委員 多岐にわたって触れられたのでありますが、要するに、いままで言われた中では、従来やられておったものを、どちらに重点的にやるかということにもなろうかと思いますが、やはり自立化をより促進させるという意味では、従来余り——たとえば合理化努力にいたしましても、各社の経営をいかに維持するかということも一つのあり方でありましょうが、より共同的な方式でいろいろなものを、もっと問題を詰めて考えていく、そういう政策的な転換ももう少し、そういう自立化の道の中では必要じゃないかと私は思うわけであります。そういう点では、先ほどの御答弁で若干触れられましたので、これらの質疑の審議はまた後日の機会に譲りたいと思います。とりあえずそういった意味から御意見をお聞きしたということでとどめておきたいと思います。  それから、ちょっと後に戻りますが、この答申の文章の中で、これは七ページで、もちろん企業自立という点で触れられて、現在の私企業体制維持するということが適切であるという点で触れられておるわけでありますが、文面の持つ意味についてちょっとお尋ねいたします。  これは七ページの4の中の上から六行から七行にかけてでありますが、「今後とも引き続き私企業体制維持することが適切である。企業の創意と活力を生かした自助努力を促し、その努力が報われる仕組みを維持することこそが石炭鉱業のより早い自立につながる道である。」このように記述されているわけであります。その言葉の意味でわかるような気もしますが、具体的にいま少し御説明いただきたいと思いますのは「その努力が報われる仕組みを維持することこそ」というこのことはどのような意味合いを持っているのか。言葉の使われている意味からいけば理解できるような感じもするのですが、もう少し、これが具体的なものとして、判断として受けとめていることもお聞きしたいと思います。
  93. 福川伸次

    福川説明員 この「企業の創意と活力を生かした自助努力を促し、その努力が報われる仕組みを維持することこそが石炭鉱業のより早い自立につながる道である。」こういうことでございます。これは後に格差是正といったような考え方が出てまいるわけでございますが、恐らくここで、私の想像いたしますところでは、もちろん、企業は経営者あるいは労働者、それなりにいろいろな努力をしておるわけでございます。その努力によりまして合理化効果が出、また収益が出、それがまた企業の収益としてつながる、あるいはまた労働者にそれが成果配分として回っていく、こういうことでございますので、そういった、それぞれ努力をしていった成果が企業に帰属し、経営あるいは労働者にこれの成果が回っていく、こういうことを考えておるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  したがいまして、これを、ひとつ収益が上がったところを、いろいろ石炭鉱業全体の安定ということの中で石炭鉱業全部まとめて一つで考えるという考え方も、一部議論の過程に出ておったわけでありますが、そういうことよりも、私企業体制を一応維持しながら、もちろんいろいろな助成策ということは考えていかなければいかぬけれども、いろいろ企業努力をして合理化する、あるいは資産処分をする、不良資産を切り捨てる、企業がいろいろ血のにじむような努力をなさるわけでございまして、そういった血のにじむような努力というものの成果がそれぞれ、労働者を含めまして企業内部に帰属をしていく、こういう仕組みをして努力を促していくということがいいのではないだろうかというふうに私は理解をいたしました。
  94. 小渕正義

    小渕(正)委員 要するに、それぞれ今日の石炭各社が今日持たれている個々の経営形態、それをそのまま維持しながらというふうに素直に受けとめていいのじゃないかという気がするのですが、そういうことで受けとめていいかどうかということですね。特にこれがここにはっきりこういう文章でうたわれたということは、何か背景にまた違った議論があったのかなという感じもいたしたものですからちょっとお聞きしておるわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  95. 福川伸次

    福川説明員 いま先生の御指摘のようなことであろうと思います。企業ごとでといって、もちろん今後企業企業間を含めまして、先ほど先生御指摘になられましたようないろいろな合理化努力はそれぞれ関係企業の間で共同化、協力等があろうかと思います。  いま、これにこういう表現が出てくる背景に何か議論があったのだろうかという御指摘でございます。  実は、当委員会の参考人の意見聴取のときにもその御議論がございましたが、先ほどお話のございました格差是正に絡みまして、収益を上げている企業が収益の出ない企業にその収益を出して、それで赤字になっている企業を補てんすることを考えているということが一部の参考人から御意見があったことは御記憶かと思います。しかし、それについてはまた別の面でいろいろ御異論がございまして、それぞれ労使努力したものを、それがそのまま別の人に収益が持ち出されて、別の方に回るというのはいかがなものであろうかという御意見、一方そういう反論も強い形で出てまいったわけでございます。  もちろん、石炭鉱業全体の安定を図るという意味でいろいろな施策は講じなければならないわけでございますが、そこにはおのずと限度があるのじゃないか。それでその努力が少なくとも報われなくなってしまうような仕組みであっては、さらには合理化という意欲が出てこないということでございます。恐らくこの考え方を前提にいたしまして、先ほど申しましたように、収益の上がっている企業が収益の上がっていない企業にその収益の一部を供出して配分していくという考え方をとるのではなくて、安定補給金の傾斜配分ということによってその自然条件格差を克服していく、こういう考え方をとろうということと結びついた考え方になっているのではないか、私は個人的にはそのように理解しております。
  96. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、あと一つですが、要するに企業がより自立を目指してそれぞれが労使双方で取り組めということが大きな流れにあるようでありますが、そういうふうな自立への道の中で、端的に申し上げますならば、それぞれが生産して生み出したそういった石炭というものがいかに買われていくか、要するに炭価決定がどうあるかによって、私は企業努力自立への道が大きく期待を持てるかどうかということになるんじゃないかと思います。要は、炭価をどういうふうな形で決めていくか、このことに尽きていくんじゃないかという気がするわけであります。  したがいまして、そういう意味で、果たして企業として次の再生産費まで十分賄い得るような中におけるふさわしい炭価であるのかどうか、そういう点では、今日それぞれの側にいろいろ言い分ありましょうけれども生産者側としてはかなりの不満をお持ちのわけであります。そういった点で、今回の第七次答申の中では、これらの国内炭価格あり方について触れられておるわけでありますが、大筋では現行制度維持することが適切だというふうに言われているわけであります。  しかしながら、その次の2をずっと読んでいき、次を読んでいきますと、何かまた少し現行とは変わった考え方が採用されるのではないかなという感じもするわけでありますが、この炭価決定のあり方についての答申は、やはり大筋では現行制度が望ましいということでありますので、これはもうこれからも大きく現行と変わりない、運用の中においても何ら変わりないということで理解していいのか。これは後の方をずっと読みますと、運用の中においていろいろな考慮が必要じゃないかというような意味を言われているような気もするわけでありますが、そこらあたりについて、当局としてはどのような御理解をされておるのか、その点をお尋ねいたします。
  97. 福川伸次

    福川説明員 制度といたしましては、現在合理化法に規定されております標準炭価制度、この制度維持するのが適当である。したがって、制度自身は変更しないことが適切である、こういうのが答申の御趣旨だと思います。しかし、その場合の考え方あるいはその運用の考え方というものを従来より一部変更して、より明確な形にしておるというのがこの答申の趣旨ではないだろうかというふうに考えております。  先ほども委員会で御質疑がございましたけれども、まず生産費、もちろんこの答申にございますように、国内炭の再生産維持するためには、企業の収支が健全化することが基礎であるということでございまして、このような観点からは、国内炭価格は合理的な生産費を反映したものであることが望ましいという考え方でございます。したがいまして、合理化努力を織り込んだ平均的な生産費基礎として考える、それに海外炭の動向を参酌して考える、こういうことでございます。  参酌すべき競合エネルギーというのは、従来は石油との競合ということを主として考えておりましたが、今後は石炭との競合を主として考えていくというのが現状では適切ではないか、こういうふうになっておるわけであります。  その場合に、国内炭輸入炭との対比をどこの時点でとるかというのが、これが技術的にも非常にむずかしい問題でございまして、最終的にはもちろん諸般の事情を考慮して総合的に、整合的に決めるということになるわけでございますが、輸入炭を対比してとる考え方といたしまして、一般的に通関CIFでよく輸入炭国内炭とを対比いたしますが、ここで答申で言われております趣旨は、その一般的、平均的な輸入通関価格、これと国内炭を比べるというのではなくて、もし仮に輸入炭国内炭を使っております消費者が国内炭供給がなくなったといたしますれば、これは輸入炭で対比するわけですが、その場合には、通常の場合でございますと平均的な価格で入手し得るというのではなくて、ある程度高いものを買ってこざるを得ない需給環境に当然なっておるわけでございますから、そのときには平均的な輸入価格では購入し得ない。そのときに新たに輸入炭を買う、こういうことになったときに払わなければならない値段を輸入炭価格として対比してはどうかということでございますから、一般的な状況、通常の状況でございますれば、特に現状のような状況で考えますれば、平均の輸入価格よりは高目のものでしか限界的な部分の輸入というのは入ってこない、そこを対比しろ、こういうことでございます。  これを簡単に一物二価と説明してよろしいかどうかは、これはまたいろいろ表現上の議論はあろうかとは思いますが、考え方といたしましては、先ほどの三本柱のところにもこの答申が記述しておられますように、国内炭の持つ安定性、安全保障機能を適正に評価した形での価格設定、引き取りを考えてくれというのが需要業界に対する要請でございます。  そういうことから考えれば、いま申し上げましたような輸入炭の対比の仕方というのはそれとの連関で考えて、それとさらに先ほどの繰り返しになって恐縮でございますが、合理化努力を織り込んだ平均的な生産費、これを基礎として、いま申し上げたような形での輸入炭を対比して決めていく、こういうことでございますから、制度自身は先生御指摘のように変化はございませんが、考え方としてはかなり内容的には明確にはなってきておるというふうに私どもは受けとめております。
  98. 小渕正義

    小渕(正)委員 最後に、これは御要望といいますか、ということになりましょうが、先ほどからも鉱害の問題がちょっと触れられておりましたが、この答申でも、現在鉱害部会で鉱害二法については検討が進められているということが触れられております。私は、今度ある調査で筑豊地区も参りましたし、その前にも所用で参りましたが、この残存鉱害に対してどうするかということは非常に大きな問題であります。  それと同時に、今日の鉱害事業団と、有資力、無資力で、有資力の場合にはそれぞれの企業で行われている、そういう中における鉱害復旧事業の一元化というのがかなり大きな一つの問題になっているような感じがいたしました。したがいまして、今日これらの鉱害をどうするかについては、そういった有資力の方では、石炭産業の中で、その経営の中でかなり大きな負担になっているということもあるわけでありますが、いずれにいたしましても、いまの二元化されたああいう鉱害復旧事業というものを一元化すべきじゃないかという市町村の要望も出ておったようであります。この点、これからの審議の中でも、そういった御意見も十分当局としては理解をしておいていただきたいということ。  あわせて、石炭産業の内部の保安の問題について、先ほど住友の事故の例が出ておりましたけれども、ガス突出事故、これが予見しがたい事故だったのかどうかということについては、行政当局としてはまだ検討中だけれども、若干問題がありそうな気がすると言われておりましたが、今日これだけ科学技術が発達した時代の中で、いかに条件が地下と言いながら、そういったガスの突出ということについてのもう少し予見、予防的な対策というものが果たしてできないのかどうか、私は、それぞれの技術を挙げてこの問題に取り組めば、何とかこういったことは解決可能ではないか。これは私見で、専門的でございませんけれども、これだけ科学技術が発達した時代の中で、いまだに旧態依然としてああいうものが起こるということだけは、やはりどうしても考えられないのじゃないかという気がいたします。  したがいまして、通産当局におかれては、坑内のそういった保全、保安という意味でかなりの力を注いでも、やはりこういった問題、少なくとも今日の科学の時代ではこの種事故はあってはならないというような、ひとつそういった対策というものを早急に確立してもらいたい。また私は、それは少なくとも今日の総合的な技術力の中では可能ではないかという気もいたしますので、その点、答弁要りませんけれども、これからの取り組みの中の要望意見として一応申し上げておきたいと思います。  以上です。
  99. 森中守義

  100. 小沢和秋

    小沢(和)委員 初めに、大臣に対して基本的な点を一言お尋ねをしておきたいと思います。  いまから約二十年前に、いわゆる炭鉱の閉山や首切りがあらしのように吹き荒れたときに、エネルギー革命ということを盛んに言われたわけでありますけれども、そういうものはない、要するにアメリカの言いなりになるエネルギー政策のために、国内石炭産業がこういう破滅させられるような状態になっているんだということを私たちの党は当時から一貫して指摘をして、国内石炭産業を守るべきだということを強く言ってきたわけであります。  今日振り返ってみても、わが党のその主張は正しかったということが証明されたのではないかと思っておりますけれども大臣にまずお尋ねしたいのは、今回のこの答申というのは、こういうようないままでの二十年間のやり方についての根本的な反省というのがなくて、要するに石油などが大幅に値上がりをした、国内炭も若干競争力を回復したりしたから、まあいままでに比べたら幾らかエネルギーとして重視するように手直しをしようじゃないか、私にはこの程度答申ではないかという感じがするのですけれども大臣自身としては、この二十年間の国内石炭産業に対する政策は正しかったというふうにお考えなのか、この機会に根本的なその認識、姿勢をお伺いしておきたいと思います。
  101. 田中六助

    田中(六)国務大臣 十数年間に七回の答申があったわけでございまして、その答申どおり施策を進めていったわけでございます。エネルギー革命というものは、大きな波、小さな波、いろいろあったわけでございますが、それによって一貫性がなかったから正しくなかった、あるいは正しかったという判断は私はできかねると思います。端的に申しまして、七回の答申どおり進めたことは正しくはなかったということの断定はできないと思います。
  102. 小沢和秋

    小沢(和)委員 正しくなかったという断定はできないというふうに言われるけれども、実際、世界的に見ましても、先進諸国の間で日本ほど石炭産業国内で粗末にした国はなかったんじゃないですか。もし本当に国内石炭を守ろうという立場でもっと努力をしてきておったら、その後のいわゆる石油危機に対するわが国の対応の仕方も、もっともっと変わり得たのではないかど私考えます。しかし、このことについては、また改めてもっと時間をかけて議論をしたいと思います。  この答申で、二千万トン程度を目指すということになっておりまして、先ほどからこのことについての議論もありますけれども、本当に国内炭をどれだけ重視する姿勢になりつつあるかということは、一番集中的には、新鉱の開発あるいは消滅鉱区の再開発についてどの程度具体的な積極策を国として持っておるかということが、その証明になるのではないかというふうに私は考えるのです。  私も、先日の石炭特別委員会の出張の折に若干残って、北海道を何カ所か回っていろいろな方の意見ども聞いてみたのですけれども、たとえば北炭の幌内などでは、もうここ四、五年のうちにも奔別の消滅鉱区の方に新たに伸びていくことができないならば、幌内の寿命そのものも尽きてしまうのではないかというようなことも現地の人は言っている。そうすると、この答申は五年間ということを対象にしているけれども、その間にもうすでにそういうことを具体的にやらなければならないような状態に直面している炭鉱が実際にあると思うのですよ。それでないと現状維持もできないということになるんじゃないかと思うのです。そういう点も含めて、具体的にどの程度の積極的な施策をお持ちか、お尋ねをしておきたいと思います。
  103. 福川伸次

    福川説明員 私どもも、この答申の趣旨を尊重いたしまして、これから第七次政策のより具体的な内容をつくっていくわけでございます。  いま幌内の例をお引きになりながら、その周辺鉱区の開発ということを言われたわけでございます。私どもも、幌内の今後の展開ということにつきましては、これまでも実施してまいりましたが、これからも、その周辺鉱区につきましては、試錐等をいたしまして、状況把握をいたしてまいるわけであります。その辺のことにつきましては、従来も実施しておりますが、周辺鉱区の調査等につきましては、さらに力を入れてこれからも実行してまいるというふうに考えております。  いま消滅鉱区開発と新鉱の点についてお触れになったわけであります。  まず消滅鉱区、これは、かつて合理化事業団が買い上げて消滅させた鉱区でございますので、非能率炭鉱の発生防止ということで、いままでも厳格な運用がなされ、これからも、その非能率炭鉱の発生の防止という考え方は引き続き維持はすべきだけれども現存炭鉱との一体的開発が著しく合理的である場合には再開発を認めていく。こういう原則維持しつつも、その活用ということはさらに一歩広げていってはどうかという御提案でございます。この答申にも一部書いてございますように、一体的な開発範囲の運用改善によって、いままでは同一市町村あるいは隣接市町村に限っておりましたものを、同一炭田内に拡大するということ。さらにまた、いま消滅鉱区等におきましては、前の採掘権者、廃止事業者と称しておりますが、その方たちが、再開発の禁止をされておりますが、これをある程度解除するといったような具体的な施策をこれから検討をして、必要がございますれば法律的な措置ということの進め方を考えてまいりたいと思っております。  それから、新規炭鉱開発でございますけれども、これにつきましても、具体的に数十万トン程度の大規模なものが五年以内に果たしてできるのかどうか、いますぐ確たる見通しはございません。また、出てくる可能性ももちろん否定はできないわけでございます。これは非常に、条件の成熟にまたざるを得ない。こういうことでございますが、そのための手段は、従来あります助成制度を十分残していこうということでございます。  さらにまた、これをより合理的に進めていくために、たとえば石炭企業の共同開発といったようなことも、諸条件の成熟を見ながら関係者検討しろといったような方向性が出されておるわけであります。  このような大規模な新鉱開発というのは、いま申し上げましたような問題がございますが、そのほか、露頭炭などで経済性が回復してきているものもございますので、これにつきましてはそれなりに今後その開発が進んでいく、こういうことで考えているわけでございます。  周辺鉱区の利用開発、さらに買い上げ鉱区の再開発、あるいは新規炭鉱開発という点につきまして簡単に御説明申し上げましたけれども、なおこれの具体化を、さらに予算措置あるいは法的な措置の中で、この答申の趣旨を体して検討してまいりたいと思っております。
  104. 小沢和秋

    小沢(和)委員 一生懸命耳をそばだてて聞いておりましたけれども、私は、具体的な計画なりを持っておるかというふうにお尋ねしたのですが、さっぱり具体的ではないですね。それは今後さらに見守っていくことにしたいと思うのです。  次にお尋ねをしたいのは、この答申では、石炭企業が私企業としての自助努力によって今後自立していけるようにすべきだということを第一に掲げているわけですけれども、私は、これは一般論としてはそうであろうと思うのですが、具体的には、こういうことが保安とか労働条件などにしわ寄せをするということに結びつくおそれが非常に大きいのじゃないかと思うのです。  そのことを象徴しておるのが、最近の一連の重大災害が次々起こっておるということではないかと思うんですね。一日の住友赤平のガス突出で、私が調べたところでは、すでにことしで二十七人亡くなっておられる。去年は一年間で二十二人でありますから、それと比較してみても、まだ半ばを過ぎたばかりというのに、すでに大きく上回っておる。これは、私は本当に重大なことではないかと思うのですけれども石炭見直しとか言われている中でこういう事態になっておるということは一体どういうことなのか、当局としての認識をお尋ねをしたいと思うのです。
  105. 檜山博昭

    ○檜山説明員 ただいまの御質問でございますけれども、御承知のように、炭鉱における保安確保という点につきましては、自主保安が前提でございまして、そして個々の炭鉱において労使一体になってこの保安確保努力しているわけでございます。国は、もちろんこの自主保安ということを基礎に監督指導の充実強化というのをいままで図ってきております。  その結果、御指摘のように、ことしに入りまして重大災害がちょっと続いておりますけれども、全般的に見まして、死亡者数あるいは災害率、これは長期的に見ますと減少の傾向をたどっておりまして、私ども改善が図られているというふうに考えております。  具体的にちょっと申し上げますと、ことしに入って、災害率をとってみますと、昨年は稼働延べ百万人当たりの災害率というのが百四十九ということでございますけれども、ことし一月から六月までをとってみますと百三十四、昨年は百四十九に対してことしは百三十四ということで、災害率が減少している。これはもっと長期をとってみてもこういった傾向が出ておるわけでございます。ただ、先ほどの死亡者を伴う重大災害、これが引き続いたということについては、私ども非常に重大な問題だというふうに考えております。  ただ、この重大災害につきましてもまだ調査段階でございまして、どういった点が問題であったかという点は、まだいまの段階で申し上げる段階にありませんけれども、それぞれ発生した要因というのを見ますと、いままでのところでは、どうも適切な対策とその実行という点で多少問題があったのではないか。それが十分であれば防げた災害じゃないかというふうに見られております。  そういうことで、私どもの方としましては、この災害を契機に、監督局を通じまして全炭鉱にいろいろ災害防止対策、特にガス突出がちょっと続きましたので、それの見直し点検、安全の確認というのを指示しております。
  106. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いまいろいろ言われたけれども、結局その中で、十分であればこの死亡災害の大部分は防げたのではないかというようにあなた御自身が言われたところに、私は、問題が集中的にあらわれているのじゃないかと思うんですよ。それじゃなぜそういう十分な対策が講じられなかったのか、コストなどの切り下げのために保安労働条件に対するしわ寄せというのが起こっているのじゃないかということを私は言っているわけです。  住友赤平の問題にしても、こんな優良鉱がこういう事故を起こしてとびっくりしているというようなお話なんですけれども、私どもが調べたところでは、去る六月二十四日にも、同鉱のマイナス六百九十メーターレベルの東部北十八号七番掘進現場で、やはりガス突出の事件が起こっているわけですね。このときは、たまたま発破直後であったために労働者が避難しておったから事故にならなかった。しかし、これだってかなり大きなガス突出じゃなかったんですか。こういうようなことについてあなた方がつかんでいなかったということも、私、一つの問題ではないかと思うのですが、会社もまた報告をしなかった。まあ重大災害になっていないからいいや、やはりこういうような姿勢も、私は大いに批判をされてしかるべきじゃないかと思うのです。私ども、このことについてはすでに問い合わせをしているのですけれども、どういうような処置がなされているか、ひとつ一言ずつでいいから、簡単におっしゃってください。
  107. 檜山博昭

    ○檜山説明員 いま先生御指摘のとおり、六月二十四日には赤平炭礦においてガス突出の事故がございまして、これにつきましては、監督局の方に報告をその時点でしなかったということでございます。現在、その事実関係調査中でございますが、もしもそれが事実であるとすれば、これは違反の疑いということになろうかと思います。  ただ、一つ申し上げたいのは、一般的に沿層で発破をした場合には相当ガスが出てくるということでございまして、今回のものが一体どうであったか、多少多い、あるいは突出物もある、こういうふうな状況であれば、これはガス突出として当然報告がなされなければならない問題ではないかというふうに思いますが、今後さらにこの事実関係を明確にした上で対処したいというふうに考えております。
  108. 小沢和秋

    小沢(和)委員 北炭の保安状態ということについては、私は、さらに重大じゃないかと思うんですよ。先日、私は北炭夕張新鉱の坑内を見せていただいたのです。恐らく私が見せていただいたのは一番いいところじゃないかと思うんですがね。それでも、私がいままで何回かあっちこっちの坑内を見たのと比較をすると、きわめて荒れている状態です。坑枠がひん曲がって折れかけているようなものも幾つもあるし、そのために天井に入れてある坑木、こういうものも落ちかかったりして、かさの骨が開いたみたいなかっこうになっているようなところもあっちこっちにあるし、鉱車の横をすれ違おうと思っても、その炭車の横が通れないぐらいに狭くなってしまっているというようなところが至るところにありました。今度大事故を起こしたらもうおしまいだというようなことが言われている中でこういうような状況だということは、非常に重大だと思うんですね。  しかも、上がってきてから労働者の皆さんの話を聞く機会があったのですけれども、ガスなどについても、警報器が鳴りっぱなしで鳴っているのに平気で仕事をさせるとか、あるいは坑内の温度が三十七、八度にもなっているところもある。熱中症になっても、いや、それはおまえの体質がそうだからだと言って労災にもしてくれない、こういうような声を私はいっぱい聞かされたわけですけれども、特にこういう、もうこの次事故を起こしたらおしまいだと言われるようなところがこういう状態だということについて、どういうような指導をなさっておられるのか、お尋ねしたい。  そして、通産省が承認した再建計画の中に人員の削減と適正配置というようなことも述べられているのですけれども、そのために、たとえば間接部門、坑道の維持などの要員が減らされるとでもいうようなことがあったら、私は、これはゆゆしいことじゃないかと思うのですが、そういうようなことはないのかどうか、ここではっきりさせておいていただきたいと思うのです。
  109. 檜山博昭

    ○檜山説明員 いまの御質問の北炭系の炭鉱の保安の問題でございますけれども、一般に北炭系の炭鉱の保安につきましては、自然条件が必ずしもよくないということで、もう一つ御指摘のように再建途上であるということから、監督局において重点炭鉱ということで取り上げまして、巡回頻度をふやすというようなことで厳重な監督をやってきておるわけです。  それで、ちょっと横道にそれますが、災害率について見ますと、この北炭系の炭鉱は全国に比べて非常に悪いのですが、ことしに入っていろいろと監督指導の強化あるいはその山の方の自助努力といいますか、四月ぐらいから家族ぐるみの保安運動といいますか、そういうふうな行動をやらせていまして、かなり最近においては改善されてきている。  それから、御指摘のように坑内の条件が非常に悪いわけですが、これも徐々に改善されてきているという状況でございまして、特に場内と場外と分けまして、場外の方は非常によくなってきている、もうちょっとというようなところにきておりまして、今後もこういった再建途上にある自然条件の悪い炭鉱について十分監督を強化していくというようなことで指導していきたいと思っております。  それから、温度の問題とかいろいろありますが、これも会社側としてはクーラーの設置、あるいは風量の確保、あるいは作業環境の面でもいろいろな施策を考えておりまして、今後とも改善に会社の方も私どもの方も努めていきたいというふうに考えております。
  110. 小沢和秋

    小沢(和)委員 保安とともに非常にしわ寄せを受けているのが賃金や退職金などの労働条件だと思うのですね。特に北炭の場合には一時金が二分の一になっておるということは大変有名なんです。  私が話を聞いたところによると、会社は、八月十日ごろ支給される今回の一時金から配分に新たに出動率というものを入れる、八五%以下になった場合には二〇%一時金の配分がカットされるということになるというのです。ところが、私が計算してみると、この八五%というのは、週一回定例の休みをとる、それ以外は一切休まぬということなんですね。それで、現地でも問題になっているのは、有給休暇とか忌引とか災害による休業などで休んでいるとか、こういうような場合でももうおかまいなしにとにかく八五%以下の場合はカットされる。こんなことは労働基準法などの立場から見ても許されないことではないかというふうに私は考えますし、八月十日ごろ支給されるのであれば、急いでこの点について改善をするように指導していただきたいと思うのですが、この点は労働省の見解をお尋ねしたいのです。  それから、もう一問労働省に対して引き続いてお尋ねしておきたいと思うのはじん肺の問題です。  これは北炭の幌内の労働者の方から言われたのですけれども、じん肺について問診もせずあるいは結果を本人にも通知しないというような、内容も不完全ならやり方も非常にいいかげん、私はこのこともまた許されないことじゃないかと思うのです。  定年後どうもおかしいというので診てもらったら、管理四ですぐ申請しなさいと言われて、早速申請をしたら認められたというような人がたくさん出ておるというのですね。会社は当然医師から診断の結果の連絡を受けているわけでしょうから、管理三になったら直ちにしかるべき措置をとるとかいうような責任があると思うのですね。ところが、そういうようなことをしないで、定年になっておかしいというのでやってみたらすぐ管理四だ、こういうような事態については私は会社に重大な責任があるのじゃないかと思うのですよ。この点、どういうふうに指導していただいているかもあわせてお尋ねをしておきたいと思うのです。
  111. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 賞与等の一時金を支給するとか支給の配分の基準につきましては、原則といたしまして使用者と労働組合等の労使の間で自主的な話し合いによって決めるべき性質のものでございます。  ただ、そういう中におきまして、いわゆる出動率の中に年次有給休暇を取ったために何らかの不利益が生ずるというような場合、これは直ちに労働基準法三十九条違反ということにはなりませんが、やはり年次有給休暇の取得を妨げるというような機能を持つわけでございまして、基準法三十九条の精神に照らしまして好ましくないとわれわれは考えております。したがいまして、私どもはそういうような配分の基準につきましてはよく考えるように行政指導を折に触れてやっているところでございます。  御指摘の北炭のケースでございますが、すでに労使の交渉の結果、配分基準が設定されております。私ども監督機関といたしましては、北炭に対しまして、そういう問題点があるから再考するようにというような指導をいたしているところでございます。
  112. 福渡靖

    ○福渡説明員 じん肺の問題についてお答えいたします。  じん肺法におきまして、じん肺に関する健康診断の規定がございますが、先生も御承知のように、ここには具体的な内容まで規定してございます。その規定どおり行われないということになりますと、これは私どもの方も十分に指導をするつもりでございます。  それから、事業者は、もちろんこの健康診断の結果異常所見があるとかいずれかの管理区分に該当するというふうに判断をいたしますと、これはそれぞれの都道府県の基準局長の方に申請をすることになるわけですし、また基準局長の方はこの申請に基づきましてじん肺の管理区分を決定し、その結果を事業者の方に通知をいたします。事業者の方は、この通知を受けた場合、一定の様式に従いましてじん肺管理区分を労働者に通知しなければならない、このようになっておるわけです。  それから……(小沢(和)委員「そういう一般的なことはいいのです。具体的にどうしたかと聞いている」と呼ぶ)御指摘の具体的な点については、私どもの方も、事実そういうことがあればそれに基づきまして指導をいたしますけれども、退職者については随時申請ができるという制度になっておりますのでいいと思いますが、仮にいま先生がおっしゃいましたような事実、これがどういうふうな条件のもとにそういうことになったのか、これについては私どもの方も十分詳しいことを調べたいと思いますが、法に従いまして、私どもの方は事業者責任を十分に果たすように常に指導監督をしておるところでございます。事実そういうことがあるとするなら、私どもの方は是正に努めてまいりたい、このように考えております。
  113. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それでは、時間が来たようですからあと一言だけ大臣にお尋ねをしておきたいと思うのです。  いま行革が大きな問題になっておりますが、その中で、ことしせっかく延長が決まったばかりの産振法のいわゆる地域特例ですね、これをもうやめてしまえとか再建期間中は翻れということがいま盛んに問題になっているわけです。これに手をつけられると、本当に産炭地はまともな仕事ができないような事態に追い込まれてしまうと思いますが、その点は産炭地出身の大臣はよく御存じのところだと思います。この機会に、この問題についての現状がどうなっているかということと、それから大臣として、私はこれを必ず守り抜くという決意をお持ちだと思うのですが、その点について一言決意も含めて御発言をお願いしたいということです。  以上です。
  114. 田中六助

    田中(六)国務大臣 この問題は臨調で指摘されている問題でございますし、御指摘のように産振法十年間の延長ということと相矛盾することで、これはローカル線の問題とまさしく同じようなケースでございまして、現在どのように対処するかということは、私どもとしてはその問題の整合性について悩んでおりまして、これをはっきり快刀乱麻を断つように決意を述べろということを申されましても、非常に困難なことで、ただ苦慮しておるということを申し上げておきます。
  115. 森中守義

    森中委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十一分散会