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1981-04-08 第94回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月八日(水曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 野中 英二君    理事 梶山 静六君 理事 原田昇左右君    理事 渡部 恒三君 理事 後藤  茂君    理事 清水  勇君 理事 北側 義一君    理事 宮田 早苗君       天野 公義君    植竹 繁雄君       小川 平二君    奥田 幹生君       粕谷  茂君    近藤 鉄雄君       近藤 元次君    島村 宜伸君       田原  隆君    泰道 三八君       橋口  隆君    鳩山 邦夫君       浜田卓二郎君    林  義郎君       松永  光君    宮下 創平君       粟山  明君    渡辺 秀央君       上坂  昇君    城地 豊司君       永井 孝信君    水田  稔君       山本 幸一君    渡辺 三郎君       長田 武士君    武田 一夫君       横手 文雄君    小林 政子君       渡辺  貢君    依田  実君       阿部 昭吾君    菅  直人君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 六助君  出席政府委員         経済企画政務次         官       中島源太郎君         通商産業政務次         官       野田  毅君         通商産業大臣官         房長      杉山 和男君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         通商産業省機械         情報産業局次長 小長 啓一君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         中小企業庁長官 児玉 清隆君  委員外出席者         議     員 北側 義一君         経済企画庁調整         局審議官    小谷善四郎君         外務大臣官房外         務参事官    中村 順一君         大蔵省国際金融         局総務課長   大橋 宗夫君         文部省初等中等         教育局中学校教         育課長     垂木 祐三君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部国際教育文化         課長      福田 昭昌君         通商産業省通商         政策局経済協力         部長      田口健次郎君         通商産業省貿易         局輸出保険企画         課長      本郷 英一君         労働大臣官房国         際労働課長   平賀 俊行君         建設省計画局国         際課長     三谷  浩君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ————————————— 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     浜田卓二郎君   粕谷  茂君     近藤 鉄雄君   森   清君     近藤 元次君   城地 豊司君     永井 孝信君   伊藤 公介君     依田  実君   阿部 昭吾君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     粕谷  茂君   近藤 元次君     森   清君   浜田卓二郎君     浦野 烋興君   永井 孝信君     城地 豊司君   依田  実君     伊藤 公介君   菅  直人君     阿部 昭吾君     ————————————— 本日の会議に付した案件  輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第四一号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案北側義一君外二名提出衆法第一六号)  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四二号)  商工会の組織等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四三号)      ————◇—————
  2. 野中英二

    野中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤茂君。
  3. 後藤茂

    後藤委員 最初に、改正案中身について二、三御質問を申し上げまして、その後、プラント輸出、それから経済協力等に関しまして御質問を申し上げてみたいと思います。  まず最初に、法案の中身の問題でありますけれども一つは、複合的な技術提供契約に含まれる貨物船積み前のリスクカバーのための改正関係、第一条の二の二あるいは第三条、この辺について御質問をしたいわけです。  プラント類等輸出において本改正を行わなければならないその背景といいますか、現実にはどの程度のものがあるのか、これが一点です。  それからもう一点、複合的な輸出契約に含まれる設計費等技術または労務対価船積みリスクカバーについても要望があるように聞いているわけですけれども、今後輸出保険対象に加える方向検討する用意があるかどうか。  まず最初に、この二点をお伺いをしたいと思います。
  4. 古田徳昌

    古田政府委員 複合的な技術提供契約に含まれます輸出貨物に係る危険を普通輸出保険てん補する必要性につきましては、最近におきますプラント輸出において、単なるプラント機器輸出のみならず、プラントの据えつけ工事とかあるいは操業指導等技術部門わが国輸出者が一括して請け負うケース増大しているわけでございます。こうした複合的な契約のうちで技術部分が大半を占めます技術提供契約につきましては、現行の保険制度輸出代金保険てん補対象とはされておりますが、普通輸出保険てん補対象になっていないというのが現状でございます。  こういうことで、最近の複合的な技術提供契約の大型化なりそのケース増大ということに応じまして、この辺につきましての制度改善を図りたいというのが第一の御質問に対するお答えでございます。  それから、その中の技術自体についての船積み前のリスクについてはどうするかという問題でございますけれども技術または労務対価船積み前危険による損失につきましてはてん補することにはしていないわけでございますが、その理由は、技術等提供前の損失発生額につきましてこれを明確に決めるというのが非常にむずかしいという技術的な問題がございます。保険者としても適正な査定を行うことが非常にむずかしいということがございますので、諸外国におきましてもこういうふうな観点から、まだこの分野につきましては本格的に取り組んでいないというのが現状でございます。
  5. 後藤茂

    後藤委員 第四条、第五条の点ですけれども普通輸出保険輸出代金保険てん補率引き上げですが、これは非常危険についてのみ引き上げ理由、それから九五%、各国がそういうような方向になっているということでございますが、その九五%にする根拠、これが一点です。簡潔にお伺いしておきたいと思います。  それから、このてん補率引き上げに伴って保険料率見直しを行うのかどうか、こういう点も、これも簡単でいいですから、お答えをいただきたいと思います。
  6. 古田徳昌

    古田政府委員 普通輸出保険輸出代金保険におきますてん補率を九〇%から九五%に引き上げるということでございますが、他の欧米諸国におきましてはほとんどの国におきまして九五ないし一〇〇になっているということで、この際私どもも、最近の非常危険の増大に対応いたしまして、いわば西欧並みといいますか、九五%の水準にしたいということで考えているわけでございます。また、他国の例を見ましても、プラント輸出関連で非常危険と信用危険とではてん補率に差を設けている例が多いわけでございまして、私どもとしましては、この際、非常危険につきまして九五%にし、信用危険につきましては従来どおり九〇%ということで運用したいと考えているわけでございます。
  7. 後藤茂

  8. 古田徳昌

    古田政府委員 てん補率につきましてはただいま御説明しましたようなことで改正をお願いしたいと考えておりますが、これに伴いましての保険事故増大ということは予想されておりませんで、私どもとしましても、保険料率で対応できるというふうに考えております。
  9. 後藤茂

    後藤委員 これから、こうした保険機関相互間の大変複雑な利害関係というものが発生をしてくるだろうと思うのです。  そこで、私は、いままでは余りそういう経験というものがないというようにお聞きをいたしておりますけれども法律的な国際紛争といいますか、トラブルの解決等が起こってくるのではないか、かように考えますので、法律顧問のような制度を置く必要があるのではないだろうか、こういうように実は考えるわけです。これが一つ。  それから、共同受注あるいは共同保険増大等によりまして、これは大変未経験な分野に入るのだろうと思いますが、こういった業務が加わってまいりますと、それに円滑に対応していくための体制、これが現在十分でないのではないだろうか。したがって、こうした円滑に対応できる体制というものをどのように考えているか。  この二点について、これも簡潔で結構でございますから、お答えいただきたいと思います。
  10. 古田徳昌

    古田政府委員 輸出保険の運用につきましては、保険金支払い等に関しまして、日常多くの法律上の問題を処理することが必要となってくるわけでございますし、特に今回の改正によりまして、先生指摘のとおり、共同受注案件についての引き受けを行うということになりますと、国内的な被保険者との間の法律問題に加えまして、もっと複雑な国際的な法律問題を処理することが必要となるということでございます。そういうことで、先生指摘法律顧問の設置につきましても、私どもとしましては、今後の課題として積極的に検討したいというふうに考えているわけでございます。  なお、当面の体制整備といたしましては、七月以降、担当の課の中に共同保険担当の班を置いてこれに対処していきたいというふうに考えているわけでございます。
  11. 後藤茂

    後藤委員 共同受注増大をしてくるということになってまいりますと、新規バイヤー等との取引関係の増加に対応した信用調査、こういうものを充実していかなければならぬだろうと思うのですね。お聞きしますと、各国バイヤーが八万ぐらいとかというふうに聞いているのですが、こうした信用調査、これは一体どういうようにこれから対応していこうとお考えになっていらっしゃるのか。
  12. 古田徳昌

    古田政府委員 現在、私どもの方で、外国バイヤーにつきまして約九万の企業につきましてリストを整理しているわけでございまして、これにつきましては、常時新たな情報を入れまして、その内容についての改善を図りながら対応するという形になっております。今後とも新しいバイヤーというふうなことで関係がふえてくるかと思いますけれども、これにつきましても、外国信用調査機関等に対しましての委託調査等を行いながら、各バイヤーにつきましての最新時点での信用状況を的確に把握してまいりたいというふうに考えております。
  13. 後藤茂

    後藤委員 海外投資保険についてちょっとお伺いしたいのですが、債務保証形態による海外投資実績と今後の見通しはどういうように見ていらっしゃいますか。  それからもう一つ、これは簡単で結構ですけれども債務保証付保対象に加えたことによって海外投資保険保険契約増大することが見込まれるわけですね。その場合の海外投資保険引受限度額の拡充というものも検討する必要があるのじゃないだろうか。五十五年度、五十六年度の措置を見てみますと、五千五百億円で据え置かれているというように聞いているわけですけれども、これでいいのかどうか、この点。
  14. 古田徳昌

    古田政府委員 わが国企業による海外への投資活動多様化に対応して、資金供給形態といいますか投資形態多様化してきているわけでございまして、そういう意味で債務保証海外投資保険対象とするということで改正をお願いしているわけでございます。これにつきましては、諸外国等において、たとえばアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア等がすでに実施している制度でございまして、この際、私どもとしましても、制度改善を図りたいということで考えているわけでございます。  なお、今回債務保証海外投資保険付保対象に加わったことによりまして、海外投資保険保険契約増大すると思われますが、これに対しまして、引受限度額につきましては、先般成立しました昭和五十六年度の予算では、従来の保険引受実績の推移をベースにしまして、各保険種ごと引受見込み額を推定し、計算しております。今回の改正も勘案しまして若干の余裕を織り込んで予算に計上さしていただいているわけでございまして、現時点におきまして、当然のことながらこの改正によりまして保険契約増大ということはあるわけでございますが、私どもとしましては、限度額につきましては十分な対応をしているというふうに考えているわけであります。
  15. 後藤茂

    後藤委員 そうすると、五十五年度、五十六年度、若干の余裕を持って五千五百億の据え置きで大体対応できる、こういうように見ていらっしゃるわけですね。  次に、資源開発融資におけるいわゆるインフラ整備資金海外投資保険対象に加えられることになったわけですけれども政府インフラ整備事業範囲をどういうように定めていくつもりなのか、お伺いします。
  16. 古田徳昌

    古田政府委員 今回の法改正によりまして新たに加えられることとなりますインフラストラクチュアといいますか、関連施設としましては、現在、生産の基盤となる施設生産された貨物本邦に輸入するために必要となる施設等考えているわけでございまして、資源開発、輸入の円滑な促進のためには、この範囲につきまして資源生産事業との関連性専用性観点から、法律上許され、かつ支障のない限り広く定めることにしたいというふうに考えているわけでございます。  具体的には、今後部内で検討の上、通達により明確にしたいというふうに考えているわけでございますが、たとえば二、三事例として挙げますと、生産のための原材料または生産された貨物の運搬の用に供します道路鉄道港湾等施設等が典型的なケースとしてあるかと思います。そのほかに、生産に携わる労働者住宅施設等福利厚生施設等も含めて考える必要があるのではないかというふうに思うわけでございますが、いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、生産事業自体との関連性専用性との観点を踏まえまして具体的にこれを定めていきたいというように考えるわけでございます。
  17. 後藤茂

    後藤委員 いまちょっと、鉄道港湾道路ということに加えて、生産労働者福利厚生施設ということを言っておられたようにお聞きしたわけですけれども、そうすると学校だとか病院とか、そういった公共施設福利厚生施設というものをこのインフラストラクチュア整備事業の中に加えていくことを考えたい、つまり資源国からの要望ニーズにはそういったことも配慮しながらこたえていきたいというように考えているわけですか。そういうように承知しておいてよろしいですか。
  18. 古田徳昌

    古田政府委員 先生のおっしゃるとおり、相手国ニーズにこたえる必要があるかというふうに考えるわけでございますが、御指摘学校病院あるいは公共集会所等のいわゆる公共施設につきましても今後具体的に検討したいと思いますが、たとえば生産に従事する労働者利用して、生産活動の遂行上不可欠であるような場合につきましては、これらについても対象として考えたいと思います。  ただ、一般的な、たとえば直接この生産事業に携わる労働者利用にかかわりのない分野におきます学校とか公園というようなことにつきましては、どうしてもこれは対象外とならざるを得ないというように考えるわけでございます。
  19. 後藤茂

    後藤委員 その辺をいま私、ちょっとお聞きしたのは、確かにこういう保険審議の中での論議だと、いま局長が答えたような点から抜け出せないと思うのですが、これからの経済協力等考えていきますと、そうは言っておれないのではないだろうかと思うのです。  たとえば電源三法だって、やはり同じ面があるだろうと思うのです。国内で考えてみましても、電源立地を確保していく、あるいは公共施設を確保していくためには、直接それとは関係ないものに対しても、ある程度その周辺整備環境整備をしていかなきゃならぬということが現に起こっているわけでしょう。したがって、ただプラントなりあるいは資源確保のだめの資源開発、これが欲しいのであって、それに必要な道路港湾あるいは鉄道等だけあればいいのだ、こういうことでは私はこれから済まないだろうと思うのです。これは、大臣各国ずっと歩いてこられて、各国要望というものが非常に多岐多様にわたっているというのは現実に耳にしておられると思いますし、またそういう要望を聞いておられるだろうと思うのです。したがって、鉄道港湾道路、それに係る直接的なつまり資源開発、その安定確保のためのインフラストラクチュアだけでいいのだ、なるべくそのほかのものはよけいなものとしてやりたくない、こういう姿勢だと、私は余りうまくいかないのじゃないかというように考えますので、その点もうちょっと掘り下げてお答えをいただけませんか。
  20. 古田徳昌

    古田政府委員 今度の法律改正によりまして、「生産事業若しくは当該事業に附随して必要となる関連施設整備」というふうな表現にさせていただくことでお願いしているわけでございます。当該事業に付随して必要となる関連施設整備というものにつきまして、どの範囲まで織り込むかということが問題ではないかと思いますが、先ほど申し上げましたように、当該事業どの関連性なり専用性観点から、法律上許され、かつ支障のない限り広く定めることにしたいというふうに考えているわけでございます。  具体的に、先ほど私、道路鉄道港湾等施設ということを事例として挙げましたけれども、そのほかについて検討中の施設につきまして若干述べさせていただきたいと思いますが、たとえば生産の用に供する水、電気、ガス等供給施設、それから生産に伴って産出される排水、廃棄物処理施設、さらに生産された貨物保管に供する倉庫、冷凍庫等保管施設等々がございます。その他、一般的に言いまして貨物生産または生産された貨物本邦に輸入するため不可欠と考えられる施設というものも加えていきたいというふうに考えているわけでございます。  いずれにしましても、先ほどの法律上の表現との関連で、私どもとしましても、できるだけ相手国ニーズに対応しまして広く適用していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  21. 後藤茂

    後藤委員 いまの問題は、後で経済協力のところに入りましたら、また触れてみたいと思うのです。  次に、海外投資保険保険料率についても、国別地域別格差を設ける必要があるというような要請があるように聞いているわけですけれども、それを検討する用意があるのかどうか。普通輸出保険あるいは輸出代金保険等は、国別地域別保険をいまやっているのじゃないですか。この点はいかがでしょうか。
  22. 古田徳昌

    古田政府委員 現時点では格差は設けられていないわけでございますが、私どもとしましても、長期的な課題としては、この格差につきまして検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  23. 後藤茂

    後藤委員 輸出保険制度の運営の問題について、特に中小企業との関係で一点だけちょっとお伺いしておきたいと思うのですけれども、私どももこの法律を読ましていただきましても、どうも保険とかそれから外国為替といったようなものは非常に難解で、わかりにくくて困るわけです。特に中小企業者等においては、これはもっと大変だろうと思うのです、難解だし、複雑だし。そういうことで、この輸出保険制度というものを中小企業者に対してどのように普及あるいは啓蒙、宣伝をしていくか、そういった対策をどう考えているのか。制度の存在すら知らない中小企業者というものもいるやに聞いているわけですけれども、この点についてどういうようにお考えか、お伺いしておきたいと思います。
  24. 古田徳昌

    古田政府委員 中小企業者等輸出保険利用につきましては、私どもとしましても、できるだけ積極的なPRを図りたいというふうに考えております。従来から、財団法人輸出保険協会を通じまして解説書の出版あるいは講習会の開催等行いまして、その普及に努めてきたわけでございます。特に講習会につきましては、例年東京、大阪、名古屋で開催しまして、多数の受講者が出席し、好評を博しているというふうに承知しているわけでございます。さらに通産省におきましても、ただいま先生指摘のように非常にわかりにくい制度でもございますので、できるだけ概要のわかりやすい簡単なパンフレットにつきまして現在作成を行っているところでございまして、近く利用者に配付できる段階に立ち至っております。  また、中小企業利用比率の高い輸出手形保険や品目の制限を行うことなく輸出保険を実施しております普通輸出保険等につきましては、できる限り地方通産局に事務委譲しているところでございまして、銀行の窓口におきます相談も従来から活用されているわけでございます。
  25. 後藤茂

    後藤委員 次に、プラント関連について質問をしてみたいと思います。  プラント輸出というのは昨年特に低迷をしてきた、この原因が一体どこにあるのだろうか、最近の状況とあわせてまず最初に、これは機情局長でしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  26. 栗原昭平

    栗原政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、五十五年度のプラント輸出は、五十四年に比べてかなり減りそうでございます。三割ぐらい減りそうだという見通しでございます。  この原因でございますけれども、やはり一般的な原因としては、オイルショック以降の世界景気後退というようなこともございまして、特にまたその問題かブラント輸出相手先であります発展途上国に大きく響いておるというような問題がもちろんあるわけでございますが、これを個別に見てまいりますと、特に五十四、五十五年の対比で見てまいりますと、減っている先がやはり共産圏それから中近東といった地域で特に目立って減っておるという状況でございまして、これは個別に、たとえば中国の経済調整に基づく輸出の減というようなものは当然共産圏の中でございますし、あるいはソ連についてはアフガン問題に関連しての制裁問題との関連というような原因もございますし、また中近東におきましてはイラン・イラク問題というものの影響と、それぞれ個別の原因考えられるわけでございます。そういった全般的な景気後退の中において、特に政治経済情勢というものが不安定であるというようなものも加わりまして、プラントの需要全体が低迷しておるということかと思います。  そのほかに、たとえばわが国としては、昨年を通じましてやはり円安から円高へという問題もございますし、そういった為替リスクといったような問題もその間においてあったというような感じがいたしております。
  27. 後藤茂

    後藤委員 いまの局長お答えを聞いておりますと、どちらかというと外的要因が大変強いというように受け取れるわけですけれども、しかし、引き合いがあるけれどもその受注競争に敗れていっている面があるのではないだろうか、こういうケースが非常に多いのではないだろうか。先ほど局長が御指摘の場合だと、これはどなたがやりましてもこういう情勢であるから、したがって落ちざるを得ない、どうしても約三割ぐらい落ち込まざるを得ないということになるわけですけれども、もう少し内部的な要因がないのだろうかということを私は考えるわけです。  たとえばコンサルティングだとかコストの面、さらにはいろいろな金利等の面について劣っていはしないだろうかということを考えるわけです。全く同じベースの上で国際入札に入っている、しかし、いまおっしゃられたように中東の問題がある、あるいは中国のような共産圏の問題があるとかいうことでだめだったのだと言えない部分がなければ大変結構なんで、私は内部の問題としてあるように思うのです。この点はいかがでしょうか。
  28. 栗原昭平

    栗原政府委員 最近のわが国プラント輸出の競争力の問題でございますけれども、一般的に考えまして、それほど弱いものとは実は考えてはおらないわけでございますが、ただ、わが国プラント輸出におきますいろいろな問題というのはあろうかと思います。  先ほどもちょっと申し上げましたけれども為替リスクの問題、特に円高に伴う為替リスクの問題というのは、このリスクを大きく見込めば輸出価格をかなり上げて対応せざるを得ないということになりますので、これはやはり一つの価格競争力の問題とも関連してくるということにも相なります。その辺が一つ。  それから、いまお話にもございました日本のコンサルティング能力、エンジニアリング能力という問題については、これはハードよりもソフトの分野の方がどちらかといえば弱い、まだ経験が浅いという状況にもございますので、この辺についてはさらに経験を積みながら競争力を強化していく必要があるというふうにも考えます。  それから、諸外国との金利の関係その他金融条件等の関係があるわけでございますが、これは、先進国間では金利は一応統一するたてまえになっておりますけれども、しかし、国によりましては、その国の政府借款というようなものを弾力的に運用するというような形でそれぞれの国でプラントをさらっていくというケースもありますので、こういった問題につきましては、わが国といたしましても弾力的にうまく対応していく必要があるのではないか、こんな感じを持っております。
  29. 後藤茂

    後藤委員 エンジニアリングあるいはコンサルティング等々のソフト面のまだ経験不足あるいは弱さ、これはこれから経験を積んでいかなければならぬわけですけれども、いま私が指摘したような面が落ち込みの背景にあるように思いますので、ぜひひとつこれからの行政指導の中でこういった点を十分留意しながら進めていくべきではないか、かように考えております。  このプラント輸出の問題等に関連いたしまして、もう一つ私が気になりますのは、海外投資の場合の、いわゆるこちらから企業進出なり海外投資をしていく場合の企業あるいはそこに駐在をしていく技術者、労働者、こういった人々のつまり生活環境整備といいますか、こういうようなものが全く整っていないのではないかというふうに実は思えるわけです。  たとえば家族の医療だとか教育だとかあるいはそういう生活環境、こういうことが諸外国に比べて非常に劣悪であるというように私には思えるわけですけれども、これは局長、いかがでしょうか。こういったこともこれからのプラント輸出あるいは海外開発投資等に対して一つの阻害要因になっていはしないだろうかというように考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
  30. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 海外の日本人が働く場合の医療とかあるいは教育の生活環境問題がプラント輸出に直接つながっているかどうか、この点については幾つかの前提条件がございますので、私は、関連のある場合もありましようけれども関連のない場合もある、むしろ海外投資をする場合の海外企業活動を行う場合に相当関連が深いのではないかと申し上げたいと思います。御存じのように、海外で働く場合に、医療、教育、生活環境が外国と比べまして相当劣っておる。特に医療なんかでそういう医療施設のない場所がございますので、そういう場所で働く人にとっては非常に大きな問題であると私どもも痛感する次第でございます。  簡単に現状を申し上げますと、たとえば教育関係でございますけれども、文部省と外務省でこの仕事をやっていただいておりますが、全日制の日本人の学校は全世界で六十七校と言われております。日本人の子女が二万七千人と言われておりまして、その中で一万二千人がこの学校で教育を受けておる。しかし、まだ非常に足らないし、それから帰ってきてからの問題もあるというふうに言われております。  また、医療についてでございますけれども、数の多い日本人の長期滞留者に対しまして、外務省、厚生省でこの問題は扱っておられますけれども、外務省が持っております巡回医療サービス、これで医者が巡回して治療に当たっております。その予算が五十五年度で六千四百万円というふうに承っておりまして、先進国では比較的問題はないかと思うのでございますけれども発展途上国においては非常に問題が深刻であるというふうに考えております。私ども、現在、在外企業協会という社団法人がございますが、この団体が中心になりまして、たとえば邦人の医師による診療所を開設する、あるいはメディカルコンサルタントの制度を実施する、こういう趣旨で新しく海外邦人医療促進協議会というものをつくりたい、これに財界の資金をプールいたしまして必要なところの施設を進めてまいりたいという考えを持っているそうでございますけれども、こういった方向についてさらに私どもが努力するべき分野は非常に大きい、かように存じております。
  31. 後藤茂

    後藤委員 きのう、これは朝日新聞の夕刊の「今日の問題」なんですけれども、「片思われ」というコラムがあったんですね。これは大臣にちょっとお伺いしたいんですが、非常にいいコラム、ごらんになられましたでしょうか。見ていませんか。日豪関係です。  このコラムを読んでみますと、「「人口割りにして、日本語学習が世界でいちばん盛んな国はどこか」−答えは「オーストラリア」」、こういうふうに最初書き出しが出ているわけですけれども、この中でずっと書かれているその趣旨というのは「最近の日豪関係の発展があまりに「貿易主導型」なのは気になる。」「日本のイメージは明らかに「物とカネ」に偏りすぎている」、こういう趣旨のコラムなんですね。この中で「日本人がなぜ米国に好意をもっているかの一つ理由として「百年前、日米交流の初期に来日した米国人には、宣教師、学者、技術者など良質の文化人が多く、また電気、自動車から野球、ジャズ、映画など、さまざまな文化をもたらしたからだ」」、こういうようなことで日米関係、特にアメリカへの好意というものが出ている。  大臣各国を歩いてこられて、いろいろな協定を結ばれたりあるいは借款に対する努力をされてきているわけですけれども、私どもも数少ない各地歩いてみましても、ただ物と金だけを一生懸命売りまくっている。全く異文化に溶け込んでいくという姿勢が、いまの通産の政策にいたしましても、日本の国際協力にいたしましても、国際外交にいたしましてもないんじゃないだろうか。ですから、先ほど指摘をしましたように、たとえば現地法人にいたしましても、そこで働く労働者、さらにはまた技術者等の生活環境にいたしましても、その対策というものはほとんど放置されている。したがって海外のそれぞれのアタッシェにしてもそうでしょう、大体二年もしくは三年したら日本に帰れる、常に東京志向だと思うのですね。もう早いところ任務が終われば帰りたい。異文化に溶け込んでいく、その地域の開発に協力していく、その国の発展に日本の高度な先端技術をひとつ提供していく、あるいは技術移転に対して努力していく、こういう面が欠けていることで、私が先ほど御指摘をしましたように、たとえばプラント輸出等にいたしましても、あるいは海外資源の開発にいたしましても、大変むずかしい面があるのじゃないかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか、こういった物と金だけにどうも傾斜しておる政策ではないだろうか。もっとこういうものを、それこそこうしたインフラを充実強化していくことが、これから日本が軍国主義国家にならないで、そして持っている技術を十分に駆使をしていきながら世界各国の経済発展、生活向上に日本は日本として役割りを果たしていく、そのことによって国際協力がより高まっていき、日本の経済発展につながっていくというような物の考え方というものがこれから大切ではないだろうか、こういうように私は考えますが、大臣、どういうようにお考えになっていらっしゃいますか。
  32. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 後藤委員指摘のとおりでございまして、金と物だけで、その国の、あるいはその民族、人種、そういうもののすべてを買うことはできません。  私もASEAN諸国、総理もASEAN諸国を回ったのですが、そのときのテーマといいますかドクトリンといいますか、そういうものにつきましては、エネルギーの問題は取り上げましたけれども、日本の中小企業関連の伝統ある経験からそれを育成しよう、それから原材料だけの取引じゃなくて、それを製品化した輸入の拡大、それからもう一つは人づくりというようなことを提唱してまいったわけでございますが、日本の経験ある中小企業の育成とかあるいは人づくりというものは、まさしく後藤委員の御指摘の問題に関連があるわけでございまして、やはりその国の風俗、習慣、伝統、文化、そういうものを十分取り入れた、あるいはそれに援助をする、できるだけの手助けをするという考えでなければこれからの経済協力多様化しあるいは非常にいろいろな面にわたっておる経済協力は不可能であるというふうに思います。
  33. 後藤茂

    後藤委員 いま私がこの問題を提起いたしましたのは、実は昨年も私は中東を歩いてまいりまして、あのアラムコという世界一の石油精製、石油開発施設を見てきたわけですけれども、そこの所長と話をしておりまして、その所長がこういうふうに言っているのです。私の娘が大きくなって帰ってアメリカの大学を卒業した、その娘がまた砂漠の国へ帰ってくれた、大変喜んでいるわけです。それほど、つまり異文化の中に溶け込んでいってサウジアラビアの石油開発に精魂を打ち込んでいるという姿、こういうのが最近どうも海外進出なり経済協力なりの一つのポテンシャルとしてないような気がいたしますので、この点を御指摘をしてみたわけです。  ぜひひとつ、いま大臣お答えになりましたような角度で、こういった人材の育成なりあるいはその民族の習慣だとかあるいは歴史だとか文化とかいうものを大切にしていきながら、その国の発展のために協力していくという姿勢を持っていかないと、いわゆる物と金だけの尺度でとらえていこうといたしますと、先ほどの御答弁にもございましたけれども、どうも客観情勢がよろしくなかった、したがって国際入札等にも敗退をしたが、たとえば保険制度を充実をしていくとかあるいは経験を積んでいけば、また十分に国際競争に対応し得るのだというところに短絡してとらえられてしまうのではないかというように考えますので、いまの点を御指摘をしたわけです。  もう一つ、いまの問題と関連をいたしまして、さて、企業が仮に進出をしていく、その場合に一つの危惧を持ちますのは、その現地における部品調達が一体どういうようになっていくのだろうか、あるいはそこの労務管理をどういうようにしていけばいいのだろうか、あるいはまた、日本の労働者については長い労使関係の経験があるわけですけれども、世界各国の人々の労働に対する意識が一体どうなのか、こういうような点が、足踏みをしている大変大きな要因になっていると私は思うのですね。  特に各国から最近は日本の企業進出を歓迎をする——たとえばこの間も二月にECの議員と日本の国会議員との第四回EC・日本国会議会議が開かれたわけですけれども、私もそれに出席をしました。ECの議員の皆さん方が言うのは、たとえばいま問題になっております、これは機情局長も大変苦労をされておるようですが自動車摩擦の問題、要するにメード・イン・ジャパンの自動車がヨーロッパを席巻することはやめてもらいたい、われわれが競争し得る体制になるまでのゆとりを与えてもらいたい、できるならば技術を移転してもらって、そして日本の技術でヨーロッパ製の自動車がヨーロッパを走る、こういうようなことにすべきではないか、こういう指摘等もしているわけです。工場進出等に対する部品調達だとかあるいは労務管理だとか労働者に対する意識、こういった点についてもやはり政府は真剣に対応していく必要があるのではないかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  34. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 先生指摘のとおりだと私ども、思っております。  ただ、日本の海外進出が始まりまして、四十年代の後半あたりから急激に金額も数においてもふえてまいっておりまして、まだ経験の十分でない状態だと思います。そうは申しましても、いま御指摘のように、現地へ進出いたしまして現地の労働者を使わなければならないし、あるいは現地の部品を調達しなければならない、しかも本国からスペックその他を持って行っているわけでございますのでそれに適合させなければならない、いろいろな条件にぶつかるわけでございますけれども、先般来財界の五団体をもちまして海外に進出した場合の考え方について考えをまとめておりまして、特に発展途上国におきましては投資行動の指針というものを決めまして、これは大体各国共通でございますけれども、先ほど言われましたようなことを内容といたしまして、現地に本当に溶け込んでいく、こういうことをやっておる次第でございます。  現実には、私どもも側面からこれは支援いたしておりますけれども、先ほど申しました社団法人の日本在外企業協会というようなのが中心になってこれに当たっておる。特に発展途上国におきましては、バンコク、シンガポール、ジャカルタ、それにサンパウロでございますけれども、四カ所におきまして、こういう趣旨で、現地のジェトロとタイアップいたしまして共同施設を持っておりまして、いろいろな問題の相談に応じておる、こういう状態でございます。
  35. 後藤茂

    後藤委員 ちょっときょう持ってこなかったのですけれども、日経には、アメリカの各州の代表部が日本に駐在をして、そして日米の経済問題に対する窓口についてこれからよりスムーズに、円滑にこういった問題が解決するために努力していく、そしてビザの発給等々に対しましても、むしろそのアタッシェが、アメリカ政府に対してこういった制約要件を解除していくための努力をしていくというような報道等もあったわけですけれども、こういう努力がなされていって、その総合政策の上に立って初めてプラント輸出にいたしましてもあるいは資源の安定的確保にいたしましても確立できるのではないか、かように考えているわけです。  そういう意味では、機情局の局長の諮問機関でありますプラント輸出基本政策委員会のプラント輸出に対する総合政策、これが六日の日ですか提言をまとめているようですけれども、この中身を見ましても、局長、やはりどうも技術的な部面だけ、もちろんこれは技術の問題は大変大切ですけれども、その面だけに傾斜をしているような気がいたします。ただ、しかし、それにいたしましても、これがせっかく提案をされているわけですから、この提案の中で特にアンタイド化の見直しの問題が一つありますし、それからミックストクレジットの問題が提起をされておりますが、こういったことに対しましてこれから政府としてはどういうように考えていらっしゃるのか、この総合策の提言を受けてどういうように対応されようとしているのか、これは簡単でいいですからひとつお聞かせいただきたいと思います。
  36. 栗原昭平

    栗原政府委員 ただいま先生がお触れになりましたプラント輸出基本政策委員会という場で、実はプラント輸出の振興に関しましていろいろ議論をしていただくということで、過去数回もうやっておるわけでございますが、また明日この会議をやるという運びになっております。したがいまして、内容はその席でいろいろ御議論になるわけでございますけれども、促進策の中で、新聞にも一部触れられておりますけれども、私ども考えておりますのは、やはりプラント輸出に際しましてのいろいろな意味での輸出先における情報収集体制というような問題を考えなくてはいけないのではないかというようなこと、あるいは、これから非常にプラント輸出が大型化いたしますし、その際での国際的なリスクの分担というような点を考えますと、やはり国際的なコンソーシアムというものをこれから大いに手がけていかなければならないのではないかというような問題、あるいは保険制度関連いたしましての共同保険といったような制度関連の問題等々の問題のほかに、いまお触れになりましたミックストローンというような相手国とのマッチングベースと申しますか、相手がそういうことをやった場合には当方もそういうことを考えざるを得ないのではないかというような問題も含めまして御議論いただこうということを実は考えている段階でございます。
  37. 後藤茂

    後藤委員 時間が大分経過いたしましたので大臣にお伺いをしてみたいと思うのですが、今度の保険法を少し勉強さしていただいておりまして、いわゆるナショナルプロジェクトというのに私はぶつかったわけです。私は、このナショナルプロジェクトというのはそう深く実は考えていなかったのですけれども、一体ナショナルプロジェクトというのはどういうことなんだろうかという疑問を実は持ち始めたわけです。  これは大臣が官房長官の時代にイラン石化等の問題で大変御苦労なさったわけですし、このナショナルプロジェクトというのは政府の公用語なのかどうか、この辺もどうもはっきりしない。一体ナショナルプロジェクトというものはどういうように理解をしたらいいのだろうかということをお伺いをしたい。  実は、四月四日、これは読売新聞ですけれども、「サウジ石化 政府出資決まる 日本負担の半額 原油安定供給へ経済協力」というような記事が出ております。御丁寧にその隣に「ナショナル・プロジェクトに格上げ」という見出しもあるのですけれども、そのナショナルプロジェクトという言葉の説明がここに出ているのです。これは言葉の説明でありまして、ナショナルプロジェクトというものはどう一体理解したらいいのだろうか、これをまず大臣から御説明をいただきたいと思います。
  38. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 ナショナルプロジェクトというような慣用語と申しますか、そういうものはないと思います。ただ、中小企業白書とかいろんな白書にナショナルプロジェクトというような言葉を使っているし通産省も使っておりますので、いつの間にか慣用語みたいになっておるわけでございますけれども、やはりわが国相手国との間に非常に意義を持った海外協力というようなことで、しかも大規模で重大な経済協力案件であって、それに対しまして政府がある程度の責任を持つ、その責任を持つのは最終的まで持つわけじゃなくて、もちろん日本の場合民間企業に対して政府経済協力基金を出資するあるいは輸銀から融資するというようなことも含めまして支援体制をとる、しかも、それは一企業に対してではなく、その企業にまつわるグループ一そういう数多い企業が協力関係にあるというようなことが頭に浮かぶわけでございますが、そういうことでナショナルプロジェクトということをお考えいただければいいのじゃないかというふうに思います。
  39. 後藤茂

    後藤委員 いま、大臣、慣用語というような説明、あるいは大規模、重要な経済協力とか、あるいは一企業じゃなしに数企業なりグループであるとか、政府の出資あるいは輸銀の融資等々たくさんのものに支えられたのがつまり慣用語的にナショナルプロジェクト、こういうように御説明があったわけですけれども、しかし、ナショナルプロジェクトというのは、その言葉がいまのような理解を超えてひとり歩きをしていくのではないかというように私は思うわけです。もっと、いま大臣お答えになりました以上に重要な意味合いを持っているのじゃないかと思いますし、それからまた国民も、ナショナルプロジェクトというのはいわゆる出資に応じての責任、出資の持ち分の範囲内における責任程度を超えた、もっと非常に強い国家目的を持ったプロジェクトであるというように一般国民は理解をしているだろうと思うのですね。ですから、いまのような御説明、中身はそうでしょうけれども、もっとナショナルプロジェクトというものに対してきちっとした説明がなされるようにしなければならぬ段階に来ているのではないだろうか。これだけ国際協力なりあるいはプラント輸出等の問題に対しましても、先ほどから議論をいたしますように、非常に重要な課題を持っているその最も大きなプロジェクトというものに対しまして、いまのような理解だけでいいのだろうかという気がいたしてなりません。  たとえば一九七九年の「経済協力現状と問題点」というのをずっと見てみたわけです。そうしますと、たとえばアサハン・アルミニウム・プロジェクト、これはインドネシアですけれども、ここのくだりで、「政府支援によりナショナルプロジェクト化」——「化」という言葉か入っている。「化への諸条件を整える方向で動き始めた。」こういう説明がなされている。あるいはシンガポール石化につきましては、これはナショナルプロジェクトという言葉がございません。「政府機関から所要の援助を行うことを決定した」、これは関係大臣了解になっているわけですね。  さて、そのナショナルプロジェクトというのは、大臣、これは閣議決定でなされるのですか。それとも閣議了解でなされるのか。それとも、このシンガポールの石化に見られますように、関係大臣了解でナショナルプロジェクトというものはなされるのか。  あるいはこのサウジ石化、実は私も去年現地へ行ってみました、アル・ジュベールというところへ。これは三菱が行うわけですけれども、この「ナショナル・プロジェクトに格上げ」、これは、政府筋が三日明らかにしたところによると、三菱グループがサウジアラビアとの間で行っているサウジアラビア石油化学プロジェクトをナショナルプロジェクトに格上げと、こういうように説明がなされている。その「政府筋」という筋はどういう筋なのか。閣議決定、閣議了解あるいは関係大臣了解、一体どこでこのナショナルプロジェクトというものがつくられていくのか。事は、単に経済協力基金の出資あるいは輸銀の融資というものを超える問題を持っているだろう。きょうは私、中身について質問なり論議をする時間的ゆとりもございませんのでいたしませんけれども、もう少し言葉の定義というものを明確にしていく、その責任の範囲というものを明確にしていくという必要があるのではないかと思いますので、閣議決定、閣議了解、関係大臣了解というようなものの仕分けが一体ナショナルプロジェクトとどういうようになっているのか、その点をお聞きしたい。  なお、たとえばこの「経済協力現状と問題点」をずっと見てみますと、ウジミナスの場合はナショナルプロジェクトとは書いてないのですが、サウジは、先ほど言いました。それから、この前もこの委員会で議論になっておりましたが、三国協定を結びました「SRC−IIプロジェクトへの我が国の参加について」という、これは総合エネルギー調査会の基本問題懇談会の国際協力問題分科会の中間報告、五十四年十二月二十日に出ておりますけれども、この中間報告の中では「官民一致協力した、真のナショナル・プロジェクトにふさわしい参加体制」、「真のナショナル・プロジェクト」という言葉、それから「ふさわしい」とか、あるいは先ほど指摘をしましたように「ナショナルプロジェクト化」とか、まことに意味がきちっと正確に理解をされてない面があるように思いますので(大臣、この点をもう少しわかりやすく御説明をいただきたいと思います。
  40. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  大臣おっしゃられましたように、いわゆるナショナルプロジェクトと申します言葉は政府の公式な用語ではないわけでございまして、したがいまして、はっきりした定義があるわけではございませんけれども、一般的には、国と国との関係が非常に重要である、それから大規模な合弁事業である、通常、海外経済協力基金の出資等政府の金融的支援も巨額なものとなっているというようなプロジェクトでございます。  そういったことのために、特に手続面で制度化されておりますわけではございませんけれども、これまでのいわゆるナショナルプロジェクトと呼ばれておりますものにつきましては、政府支援につきまして閣議了解がされているわけでございます。  具体的にプロジェクトの名前を挙げますと、先生御存じかと思いますが、日本ウジミナス、それから日本とブラジルとの間の日伯紙パルプ資源開発、それから日本アサハン・アルミニウム、日本アマゾン・アルミニウム、イランの化学開発、以上でございます。その他の案件で、経済協力基金の出資が行われております案件、もちろんございますけれども、一体に、いま申し上げました閣議了解で決められたものに比べまして出資の規模等が小さいというようなことに相なっております。  なお、新聞記事でサウジ石化についていま御指摘がございましたけれども政府といたしましては、出資についてまだ何ら正式に決定を見ていないわけでございます。  なお、途中でナショプロに格上げというような事情ではございませんで、これはサウジと日本との関係の重要性から見まして、通産省としましても従来からこれは積極的に支援してきているプロジェクトでございます。
  41. 後藤茂

    後藤委員 まだよくわからないのですが、つまりここでは「政府筋」と……。私のお聞きしているのは、結局ナショナルプロジェクトというのは閣議了解によって決まるわけですか。私はもっと、ナショナルプロジェクトというのは、イラン石化の問題を考えてみましても、あれだけ世論を大きく刺激したといいますか、問題になったことを考えますと、あれがもしナショナルプロジェクトということでなければ私はそれほどでもないのじゃないだろうかという気もするわけでありますけれども、ナショナルプロジェクトというものは、いまのような御説明ではちょっと理解ができない。もっと、閣議了解という程度ではないのじゃないだろうかというように思うわけです。たとえば、いまの説明にないシンガポール石化は、これはナショナルプロジェクトではないのですか。
  42. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  先ほど申しましたように、政府といたしましてナショナルプロジェクトという言葉を定義いたしまして正式に採用しているわけではございませんものでございますから、どれがナショプロかナショプロでないかということは実は公式な基準がないわけでございます。  シンガポール石化につきましては、これは閣議了解という形ではなくて、関係各省の合意によって出資されておりますけれども、これは出資規模が相対的に小さいということからそういう取り扱いがなされたものということでございます。
  43. 後藤茂

    後藤委員 そうすると、だからいまのその定義の問題、たとえばウジミナスが出資資金三百四十二億のうち基金が百十六億とか、あるいはアマゾンアルミが百六十八億とか、さらにはバンダルホメイニ、いわゆるイラン石化が二百億とかいう中で、私がいまちょっと指摘したシンガポールの場合は基金三十億、つまり基金の額が少ないからこれは関係大臣了解、したがって俗にナショナルプロジェクトと言っているけれども、実はナショナルプロジェクトと言っても言わなくてもいいといりようなことになるのか。つまり、先ほどの御説明では、大型のプロジェクトで、参加企業数が多くて、しかも合弁企業で、政府が出資をし、輸銀が融資をしている、こういうようなのをナショナルプロジェクトと呼んでいる。  ところが、いまずっとお聞きしますと、ナショナルプロジェクトというのは勝手にだれかが言っているんで、これはもう全くないものなんだというふうに理解していいのでしょうか、もしそうだとすれば、私は、政府はちょっとこれはけしからぬと思うのです。こういうことは、みだりにナショナルプロジェクトというような言葉は使うべきじゃない。そういうものはどこにもありませんというようにしなければならぬ。ところが政府筋、どこの筋か知りませんけれども政府筋は堂々とナショナルプロジェクトという言葉を使っているわけでしょう。しかも、ナショナルプロジェクトというのはひとり歩きをいたしておりまして、これに対しては出資の持ち分に応じての範囲内における責任を超えていると思うのですね。これは、幾ら政府が言っても、相手国は、ナショナルプロジェクトというものはそうは理解しておりませんよ。全面的に政府が、国が責任を負っていくものがナショナルプロジェクトだというような理解をしているだろうと思うのです。  こう考えてみますと、いまのような御説明で、ナショナルプロジェクトというものは公用語ではもちろんないわけですし、政府のこれだって使っているのですよ、ナショナルプロジェクトという言葉を、こうあるわけですからね。その辺を明確にしておく必要があるだろうと思うのです。出資なり融資なりという問題もあるわけです。国民の理解というものは、これは相当国が責任を負っていくんだと。しかし、直接国が工場を経営するわけじゃないわけです。数社なり数グループが国際経済協力の上に立ってプロジェクトを組んでいるわけです。それは理解いたしておりますけれども、その担保というものを一体だれがどうしていくのか、もしその言葉が不明確であれば、私は、この言葉は明確にしておく必要があるだろうと思うのです。皆さん方が理解している以上に国民の理解というものはもっと重みを持っているものが、大変不用意に、しかもどこの筋かわからないようなところが勝手に出てきているということではちょっと困るのじやないかと思いますので、大臣、これはどうでしょうか。
  44. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 まず、政府筋ということを言っておきますけれども、実は、これは私が官房長官をやっておったときに経験していることなんですけれども、非公式に官房長官が記者会見をいたしましたときば新聞記者の人たちが政府筋という言葉を使ってリードに書いております。したがって、政府筋と言った場合は、大体官房長官が記者会見あるいは懇談会で非公式にいろいろしゃべっておるんだなあというふうにお思いになっていいんじゃないかと思います。したがって、ナショナルプロジェクトと政府筋というものは全然関係がないと見ていいと思います。  それから、ナショナルプロジェクトでございますが、先ほど申しましたように、非常に大規模で、非常に重要で、しかも一企業でなくて企業群と申しますかそういうものを加味して、しかもそれが政府出資と申しますからそういうようなことがいろいろ柱が立ててありますけれども、結論といたしましては、やはり日本の経済安全保障というものに非常に緊密に関係があるということがグローバルには言えると思います。そして、しかも相手国と親密の度合いが深くて、友好的であるということが言われなければならない。私どもは、普通ナショナルプロジェクトというもの、そのものに対しては閣議決定ということはほとんどやりませんけれども、閣議了解ということをはっきりしたのがナショナルプロジェクトというふうに私どもは見ております。そのほか、一部の閣僚でこれを了承したとかいうようなことはございます。  基本的にナショナルプロジェクトをもう一度整理いたして言いますと、つまり閣議了解、これはもうどうしても柱としてなければならない。しかもその上に、日本の経済安全保障につきましてやはり大きな関係がある。しかも、相手国わが国との間が緊密で、しかも非常に友好的であるということが大きな柱となると思います。  たとえばイランの石化問題を挙げますと、いまペンディングになって、向こうは戦争中でございますし、それの金利たな上げとか労働賃金を払わなくちゃいかぬから、政府資金の積み上げているのから出せとかあるいはそれをちょっと待てとかいうことを言っておりますけれども、これもやはりイランの国の政府と国民があのプロジェクトの完成を非常に望んでいるわけです。しかも、われわれがじっとながめたときに、あのプロジェクトを達成するかしないかはイラン一国が見ているわけじゃないのです。あのペルシャ湾の沿岸諸国の国々が、日本はどう出るか、日本の経済協力はどうなのかということを見ているわけです。そして私どもは何をながめておるかと言いますと、やはり何と申しましても石油、重油をあの沿岸諸国に日本が依存しているということでございます。したがって、これをどうするかということは、イランの国だけのことを考えておるだけではなくて、あの国々が、石油をたくさん持って日本が大きな依存をしている国々がこれをストップした場合、あるいはこれを継続した場合、どう見るだろうかというような、日本の経済安全保障という大きな観点からやはりこれをながめておるわけでございます。  くどく申し上げて恐縮でございますけれども、まず第一に閣議了解、これが少なくともなければならないと思います。それから日本の経済安全保障、相手国と非常に緊密の度合いが深いというようなことがグローバルに言えるのじゃないかと思います。
  45. 後藤茂

    後藤委員 いま大臣が、ナショナルプロジェクトというのは閣議了解であると。そういたしますと、関係大臣了解等は、俗に言っている人がいるけれども、それはナショナルプロジェクトではないというように理解していいのかどうか。  それから、いまの大臣の御説明で、閣議了解は第一に枠組みとしては必要であり、さらに経済の安全保障、相手国との友好関係、単に相手国だけではなしに、その周辺諸国も注視しているわけですから、こういったものがナショナルプロジェクトというものの枠組みの担保として大切な要件であるということだとすれば、これから仮にナショナルプロジェクトという言葉を使うとすれば、そういう要件をきちっと閣議でも十分に話し合って、そして一応の原則というものを確立しておいてほしいと私は思うのです。そうでないとこの言葉というものはひとり歩きをしまして、ナショナルプロジェクトという名前をつければ、先ほども言いましたように、出資の持ち分に応じての責任というものを超えている。私は、ナショナルプロジェクトと言う以上は超える性格を持っているだろうと思うのですね。超える性格を持ってまいりますと、すぐれて政治的な課題になってくるわけですから、政治的な課題政府の恣意的な考えで、いや出資をもう少しふやそうだとかいうようなことにはいかぬだろうと思うのです。そのリスクは一体だれが負担をしていくのかというと、国民が負担をすることになるわけです。  ですから、私は、このナショナルプロジェクトという言葉を使うなと申し上げるのじゃないし、また大いに使えということじゃないのですが、こういう言葉を政府の出しておる文書、これだけじゃないと思うのです、あちこちにそういうナショナルプロジェクトという言葉が使われながら、一体ナショナルプロジェクトとはどういうことかというその原則が明らかになっていない。これはぜひひとつ明らかにしておいて、そしてそのかわり、国が単に持ち分だけの問題ではなしに、その責任を相当持っていくんだという重みを持っていかなければならない。逆に言えば、そう簡単にナショナルプロジェクトというものは閣議了解もできにくい、そのかわりしていく以上はそういう責任を負っていくんだという考え方を持つべきではないかと思います。くどいようでございますけれども、この点に対しましてはひとつきちっと閣議で、ナショナルプロジェクトというものをこれから使っていく場合、あるいは新聞報道等でもナショナルプロジェクトに格上げをしていくとかいうような説明がなされておりますけれども、ナショナルプロジェクトと言う場合には、こうこうこういう要件を満たしておらなければならない、そのかわりこの要件を満たしておるものについては、これからはわが国としても積極的に対応していくんだ、こういうことを国民の前に明らかにしておく必要があるだろうと考えますので、大臣の所見を重ねて簡単にお伺いしておきたいと思います。
  46. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 先ほども申し上げましたように、第一義の要件としては閣議了解ということでございます。いま閣議了解の案件は五つございます。先ほど御指摘になったとおりでございまして、それ以外のことは閣議了解に準ずることでお考えいただいて、結局閣議了解をしていないものはナショナルプロジェクトに準ずるものというような解釈、ナショナルプロジェクトというものはあくまで閣議了解が第一義的だと思いますし、そのほかいろいろな附則的なものがついていけば、ナショナルプロジェクトに準ずるものというような御解釈を願えばいいんじゃないかと思います。
  47. 後藤茂

    後藤委員 くどいようで恐縮ですけれども、こういった言葉というものをひとり歩きさせないように明確にしておいていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  時間がございませんので最後に一点だけお聞きをしておきたいと思いますけれども、これは三月十七日の日経新聞です。その後どういうようになっているのか、私よく承知をいたしておりませんのでお伺いをしたいと思いますが、シベリア天然ガスパイプラインですね。  このプロジェクトは、パイプラインを敷きましてヨーロッパ八カ国に二十年間に年間四百億立方メートルの天然ガスを供給する、こういうプロジェクトですけれども、どうもこれはソビエトへの天然ガス、つまりエネルギーの依存率が高まっていくのでNATO体制考え合わせてみても好ましくない、こういうアメリカからの強い圧力がかかって、このプロジェクトの促進に待ったがかかっているようです。わが国政府としても、このヤンブルグ・プロジェクトでの日本輸出入銀行の対ソ信用供与については欧州と歩調を合わせることにしている、輸銀や大手商社関係者には慎重に対応するように求めていく、こういうような記事が出ているわけです。  つまり、私は、アメリカの対ソ制裁というものはわからぬでもないわけですけれども、しかしヨーロッパ、西欧全体でソビエトのこのプロジェクトが完成いたしました場合の天然ガス消費量が五%だ、こう言われているのですね。西ドイツ等は大分高いようですけれども、しかし全体には五%程度。私は、ソビエトとの関係は、経済の安全保障の観点からいきますと、そういう意味ではもっともっとコミットすべきだと思うのです。そうすると、こういったシベリア天然ガスパイプライン等は、アメリカのそういう圧力があってヨーロッパがこれに同調しようとしている、それに対して日本も同調していく、こういう自主性のなさというものは私は明らかに間違っていると思う。  こういったプロジェクトの問題というのは、単に日本の技術なり、あるいはソフト、ハードを含めてのそういう技術を売り込んでいくということを超えた国際的な経済安全保障、それはひいては全体の安全保障につながっていくわけですから、もっと自主的な判断をもって、ソビエトに対してもいたずらに脅威論を振り回すことでなくて経済協力を進めていく、そういう独自の判断がなされなければならないのではないかということを申し上げておきたいのですが、この問題ちょっと、どういうように対応されているか、簡単で結構ですから……。
  48. 真野温

    ○真野政府委員 ただいま後藤先生のお話しになりましたヤンブルグのパイプラインのプロジェクトについてでございますが、これは本質的に天然ガスをヨーロッパに供給する、こういうプロジェクトでございます。したがって、私どもは、そのプロジェクトについては単にパイプを売るかどうかということで関与しておるわけでございます。したがって、御指摘のように、このソビエトの天然ガスが世界のエネルギー事情の緩和に資するかどうか、あるいはヨーロッパのエネルギー事情の改善に資するかどうか、あるいは逆の観点から、伝えられるような安全保障上の問題として西欧諸国がこれを受け入れるか受け入れないか、この判断は挙げて西欧側の判断でございまして、私どもとしてはその西欧側の、このプロジェクトをやるかやらないか、こういうことによって決まってくる問題だと考えておりまして、あながちこの問題について、対ソ関係についての安全保障問題という観点からわれわれとして議論しておる状況でございません。むしろ具体的な商談の話として、向こうのプロジェクトのフィージビリティーが可能になれば、われわれとして必要な限り協力していく、こういう立場でございます。
  49. 後藤茂

    後藤委員 時間が参りましたが、確かにパイプを売るだけ、プロジェクトはヨーロッパなんです。それはもう承知しているのです。ただ、私は、物さえ売れば済むということではないのじゃないか、国際経済外交というものは、ほかの要因をもっとたくさん持っているのじゃないかと思うから指摘をしているわけです。ただ物を売ればいいということではないのじゃないか。だから、そういったインフラの面につきましても、その周辺をもっと大切にしなさいということを申し上げたわけですから、そういう角度から、こういったプラント輸出の問題にいたしましても、あるいは資源開発安定確保のための協力等についても、いまのような視点を明確にしていくことが大切ではないかということを最後に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  50. 野中英二

  51. 北側義一

    北側委員 輸出保険法の一部を改正する法律案質問に入るわけでありますが、大臣が十二時五分からのっぴきならない用事がある、このように言われておりますので、まず自動車貿易摩擦についてお伺いしてまいりたい、こう考えております。  御承知のとおり、レーガン大統領が狙撃されまして、鈴木総理が渡米なさるその前の決着、これがどうなるのか、こう実は私も心配いたしておりましたが、ホワイトハウスの見解といたしましては、日米首脳会談は予定どおり行う、このような報道がなされておるわけです。そういたしますと、田中通産大臣としては、鈴木総理の渡米前の決着、こういうお考えがもしあるようですと、規制のための輸出の配分、また自動車業界との話し合い、まことに多忙をきわめるようなことになるのではないか、このように私は考えておるわけでありますが、鈴木総理の渡米も五月の七日、八日、このようにお聞きしておるわけですが、そうしますと、あと一月しかないわけです。そうしますと、鈴木総理渡米前の決着ということならば、スケジュールというものは当然大臣のお考えの中にあるのではないか、私はこう考えるわけですが、一体どのようなスケジュールをお考えになっておるのか、まずこれをお聞きしたいと思います。
  52. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 さきの伊東外務大臣の訪米によりまして、伊東外務大臣とレーガン大統領、それからその他の首脳との会見で、レーガン大統領も実はそういう意向を漏らしたわけでございますけれども、日米自動車摩擦を解消したい、それには鈴木総理が訪米前、自分たちの首脳会議前にそれを決着をつけたいという意向を示しておるわけでございます。したがって、鈴木総理もそれを受けて、自分も首脳会議前にこれを一応目鼻をつけたい、両国のトップがそういう意向でございますので、私どももそれがいいだろうということで、大まかなスケジュールとしては、つまり鈴木総理とレーガン大統領の会談前にこの自動車の問題は片づけたいという大きな基本方針でございます。  現在、御承知のように、ランディという人を頭に置いてアメリカからチームが来ておりまして、これがきのう、きょう、あしたと三日間、向こうの意向を述べておると同時に、懸案のタスクフォースも、本人が持ってきまして、アメリカもきのうの日本時間の午前四時に発表ということで、アメリカの自動車問題の再建計画、それから現状、需要の状況というようなものを発表したわけでございます。私どもは、そういうことで、日米両国とも自由貿易を堅持しようというスケジュールをやっております。あしたの向こうの説明が終わって向こうが帰るわけでございまして、少なくともそれを私どもは十分、三日間の向こうの説明をさらに検討した上、私どもの態度を決めるわけでございますけれども、私の頭の中にあるのは、少なくとも向こうの意向を聞いたわけであるから、私自身が出かけなくとも、天谷審議官あるいはそれの下の方のレベルをアメリカに派遣して、アメリカの意向をさらに確かめるという段取りで、その結果によって私がどうするかというようなことを決めたいというふうに思っております。
  53. 北側義一

    北側委員 いまお話がありましたとおり、アメリカ政府の自動車問題の代表団がお見えになっておられるわけですが、この代表団は、いわゆるアメリカ政府の自動車問題特別作業班、この内容を報告する、そうしてレーガン政府の実施しようとしている国内自動車対策の内容説明、これが主である、こう私は聞いておるわけです。特に来日中の代表団は、自動車規制問題の規制数量やまた規制期間、これについては具体的に示唆はしない、こう聞いておるわけです。  しかし、日本側といたしまして一番問題になりますのは、この自動車貿易摩擦解決のために一体どれぐらい規制するのか、また規制期間は一体どれぐらいなのか、これは非常に重要な問題になってくるわけでありますが、ここらの問題につきまして日本側として、今回参っております代表団から何かとろうとしておるのかどうか、そこら非常に重要な問題ではないかと思うのですが、その点どうなんでしょうか。
  54. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 いまアメリカから来ておりますブリーフィングチームの説明があしたで終わるわけでございます。したがって、それを基本に再検討する、あるいは分析するわけでございますけれども、基本的な方針といたしましては、アメリカも、日本で自主的にやってくれというようなことでございます。私どもも、期間を長くとか、それから日本に非常に大きな損害を与えるとかいうようなことは、基本方針としてはとるべきじゃあるまい。むしろこれは緊急避難的なことで、そんな長期にわたってこういうものをすることはむしろ自由貿易主義に反するとアメリカは言っているわけですから、わが国ももちろん保護主義貿易を排し、自由主義貿易をこれからも提唱しなければなりませんし、そういう基本方針は私自身もでんと腹に据えておかなければならないというふうに考えております。  それから、いまどういう数字を云々ということでございますけれども、いまアメリカ側は数字を全然提示しておりませんし、そういうことはないと思います。私にいま数字を言えといってもちょっと御無理なことでございますし、それから私が数字があるのに言えないということでもないのです。私どもも、そんなきちっきちっとしたような数字を出したらいいのか、それを出さないのがいいのか、そういう判断も実は私自身はっきりしておりませんし、お許し願いたいというふうに思います。
  55. 北側義一

    北側委員 そこで、日本側としては、米側の要求である日本の手による自主規制、これは最終的には協力せざるを得ないような形になるのではないかと思うのです。  そこで、アメリカ議会の動き、特にダンフォース・ベンツェン法案、これのいわゆる審議の動き、どういうぐあいになっておるのか等、やはり頭に入れておかなければならない問題ではないか、このように私は考えておるわけですが、そこでアメリカ議会のこれらの法案の動き、これは一体どう見ておられるのでしょうか。
  56. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 ダンフォース、ベンツェン、二人の上院議員が主体となって出しております自動車の規制法案は、五月十五日から審議しようということを言っておるわけでございます。これは私に言わせれば、国会の議員の人たちの、それとなく日本の自動車の問題をながめつつ、これを牽制球と言ったら相手にどう響くか、大変かもわかりませんけれども、いずれにしても、おれたちはこうするんだぞという一つの国会のデモンストレーションであるかもわかりませんし、そうでもないかもわかりません。規定どおり日時の関係でやっているのかもわかりませんけれども、私どもに対するアメリカの国会はこういうふうだぞというようなことを何となく示唆している気もいたします。しかし、そういうことがございましても、私どもは、あくまで日本の国で自主的にやってくれという意向が強いわけでございますので、そういうものにかかわらず、業者の意向も十分参酌してこういう問題に対処していかなければならないというふうに思っております。
  57. 北側義一

    北側委員 そこで、日本側が自主規制するといたしますと、その規制手段というのはそう多くないと思うのです。たとえば行政指導による自主規制とか、輸出入取引法による規制とか、また輸出貿易管理令による規制、こうあるわけですね。日米双方の独占禁止法、これに触れずに、しかも自由貿易の原則、これを崩すことなくできる規制、これはどのようにお考えなんでしょうか。
  58. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 御指摘のように、行政指導あるいは輸取法、貿管令とか、そのほか考えれば出てくるかもわかりませんけれども、いろいろな方法があるわけでございます。しかし、私ども、いまどの方法をどうしようというようなことは決めておりませず、向こうの説明が終わって、それを分析して、それから総理が訪米する前までにどれかを——まあ、いろいろな、それは混合的にこの法律でいくのだとかこれ一つだというようなことではなくて、アメリカの今回のタスクフォースの内容も、これを見て四方八方から批判が出てくると思うのですが、これは何も内容がないじゃないかという人もおるでしょうし、これは勧進帳のようなもので、ないことがある。結局意味がなさそうで何か深い意味を持っているような気もしますし、そういうことが言えるわけで、私どももひとつこういうことに見習って、日本的な発想法で対処していかなければならないというふうに思っております。  それからもう一つ、独禁法の問題でございますけれども、タスクフォースの中で独禁法の緩和をうたっているわけです。日本もアメリカも、基本的には業者同士が話し合っていろいろするというようなことは、もう全く独禁法のど真ん中に当たるようなことでございますけれども、そういうふうなことについても、ある程度の緩和といいますか、アメリカはそういうことを今回のタスクフォースの中にうたっております。したがって、ある程度そういうことはアメリカも緩和しておりますし、私どもも行政指導という意味、内容の中には独禁法すれすれのこともありますけれども、やはり行政指導があってこそ日本のいろいろな産業界の育成——育成と言っては語弊がございますけれども、発展があるわけでございまして、独禁法も勘案して私どもは対処していこうというふうに思っております。
  59. 北側義一

    北側委員 この自動車産業というのは、御承知のとおり非常にすそ野の広い産業であるわけです。たとえば部品だけでも約千五百種あると言われるのですね。小さな部品まで入れると約二万点、こう私は聞いておるわけです。これらの部品の製造は下請企業に大部分が依存されております。完成車メカーの下請外注依存度、これが約七〇%、さらにその部品メーカーが再下請に約三〇%、このように重層下請構造でこの自動車産業は成り立っておるわけです。  このような状況から判断いたしますと、たとえば五十五年度の対米向け自動車輸出の通関実績、これの輸出額ですね、対米自動車輸出規制をたとえば五%行った場合、一〇%行った場合、一五%行った場合、二〇%行った場合、こうした場合に非常に影響力が大きいと思うのです。たとえば生産額の減少によりまして一体どれぐらいの金額の減少があるのか、また雇用問題として雇用力の低下というのはどれぐらいあるのか、この計算はなさっておられるでしょうか。
  60. 栗原昭平

    栗原政府委員 私どももこれまでに、通産省自体の計算ではございませんけれども、たとえば産業政策研究所、産業研究所というようなところに委託をいたしまして、そういう計算をしたこともございます。  ただ、この計算自体はある程度機械的にならざるを得ない面がございまして、たとえば生産が一割落ちれば雇用も一割減るというような機械的な計算にならざるを得ないわけでございまして、これは現実に必ずしもそぐわない。現実に超勤供出というようなことがありますればそういうバッファーもあるわけでございますし、また企業の社会的な慣行として、そう簡単にアメリカのようにレイオフするということもないわけでございますので、そういう意味で必ずしも実態を反映するような計算でもございませんし、それとやはりアメリカ向けにどれだけという話が仮にございましても、では国内は一体どうなんだ、あるいはアメリカ、ヨーロッパ以外の第三世界に対する輸出というものはどうなんだ、全体として一体自動車の生産が横ばいなのか、ふえるのか、減るのかというような問題も実はあるわけでございまして、この辺、余りアメリカだけに限った機械的な計算を申し上げるのもなんであるかなという感じを実は持っておりまして、もしなんでございましたら詳細は後ほど御説明させていただきたいと思いますが、とりあえずはそういうことで御勘弁をいただけないかということでございます。
  61. 北側義一

    北側委員 いま申し上げましたとおり、この自動車産業の影響力は下請関係が非常に大きいわけです。  そこで、これは実は日本興業銀行なんですが、輸出減少による影響額試算というのを出しておるわけですね。これを私はながめてみますと、たとえば生産額の減少、これが五%減の場合ですと、ここの試算ですから正しいかどうか私はわかりませんが、約六千五百五億円、一〇%減ですと一兆三千十億円、一五%減ですと一兆九千五百十五億円、二〇%減ですと二兆六千二十億円、こう出ておるわけです。雇用力の方の低下もここにいわゆる試算として出ておるわけですが、まことに私、見ますと、これは大きな影響が出てくるわけなんです。たとえば一〇%の場合ですとGNPの約〇・五%、こういうぐあいになってくるわけですね、計算しますと。  そうしますと、この自動車のいわゆる対米——対ECも恐らく入ってくると思うのですが、そうすると、相当な額のいわゆる生産額の減少が見られるのではないか。ということは、やはり下請企業あたりに対してかなり大きい影響を及ぼすのではないか、こういう見方ができるのではないかと思うのです。やはり、それにはそれだけの対応した行政指導なり何らかの形というものをつくらなければ私はいけないんじゃないか、こういう考えを持っておるのですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
  62. 栗原昭平

    栗原政府委員 先生指摘のように、日本の自動車産業は製造工業の一割を占めるという非常に大きなものになっております。しかも、その中身といたしまして、いわゆるアセンブルメーカーと部品とのウェートでございますけれども、むしろ部品の方が六、四ぐらいで大きいというウエートになっておりまして、そういう意味では、特にすそ野の広い中小企業を非常に多く含みます部品産業に対する影響というものは非常に大きいというふうに私ども考えております。  ただ、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、このアメリカ向けの輸出自体につきましても、私どもは余り大きな影響があるような形で解決したいというふうに考えておるわけではございませんし、また、国内も含めその他の地域輸出も含めて、全体の姿が一体どうなるかということもあるわけでございまして、そういったことも考えまして、私どもといたしましては、今回の問題の解決に当たりましても、十分そういった重要性というものを頭に置きまして今後の対応を考えてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  63. 北側義一

    北側委員 その点はぜひともよろしくお願いを申し上げます。  そのほか二まだ貿易摩擦問題ずいぶんあるのですが、ほかの質問の方もありますので、一応これでおいて、もし時間がありましたら後でやりたいと思います。  田中通産大臣は、就任なさって昨年の九月と十一月に二度にわたって東南アジア諸国を訪問されたわけです。また、総理である鈴木首相も、就任後真っ先にASEAN諸国を訪問されました。この鈴木総理や田中通産大臣のASEAN諸国や東南アジア訪問は、現在の日本にとってぜひ必要である、こういうお考えのもとに御訪問なさったと私は思うのです。たとえばエネルギー問題の解決とか中小企業の振興、人的資源の開発、製品輸出の拡大、いろいろあろうかと思うのですが、訪問なさった後において、どうなんでしょうか、大臣が思っておられたような成果があったのかどうか、また、これらのいわゆる近隣の諸国に対して、日本としてどのように対応していかれようと思っておられるのか、それをまずお伺いしたいと思うのです。
  64. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 ASEAN五カ国につきましては、いまエネルギー問題あるいは中小企業の育成、それから製品の輸入拡大、それから人づくり、総理はそれに農業問題のリードというようなことをつけ加えているわけでございますけれども、それなりの成果があったと思われるのは、私はそのほか十カ国を訪ねておりますけれども、ほとんどの国々の、カウンターパートと申しますか、向こうの商工大臣、工業大臣あるいはエネルギーに関する責任者が日本をその後訪ねてきております。そうして、エネルギーの問題につきましても非常に理解ある態度を示してくれておりますし、たまたまエネルギー問題が少し緩くなっておる現状でございますけれども、長期的に見ても中期的に見ても、まあまあエネルギー問題は大安心だというふうに大げさなことは言えませんけれども、需給関係が緩んだ点もございますけれども、エネルギーに対する懸念というものは非常に薄れたというふうなことが言えると思うのです。  そのほか、プラントの問題につきましても、向こう側からいろいろな要求もありますし、端的に言えば多少厚かましいなと思われる点もございますけれども発展途上国のことでもございますし、また、これらの国々が言っていることも十分理解することがアジアの安定あるいは世界の安定にもつながるというようなことを思えば、大なり小なり成果はあったのではないかというふうに考えております。
  65. 北側義一

    北側委員 もう大臣、結構です。  次に、プラント輸出の問題について少しお伺いしてまいりたいと思うのですが、プラン十輸出というのは、これは非常に貿易摩擦が少ないわけです。そこで当然プラント輸出の拡大策を考えなければいけないわけですが、今回の法改正も当然そこらを考えてなされたものである、こう考えておるわけです。  しかし、今回の法改正の内容は、これはもうすでに欧米諸国ではやっておりまして、新聞報道等を見ますと、業界ではこれは受注獲得の決め手にならない、こういう見方をしておる人もあるようでございます。それで、業界ではむしろ円借款の拡大を望んでいるような傾向があると思うのですが、この円借款について、一般アンタイド化を政府の基本方針として推進してこられたわけですが、プラント輸出の低迷と今後の中長期的な輸出の伸びを展望した場合に、アンタイド化の方針を見直すことも考えられるのかどうか。また、アンタイド化の基本方針を見直すことを考えているようであるならば、当然発展途上国から経済協力に対するわが国への批判も予想されるわけです。これらの点についてどのようにお考えになっておられるのか、これをお伺いしたいと思います。
  66. 田口健次郎

    ○田口説明員 お答え申し上げます。  先生御存じのとおり、わが国といたしましては、昭和五十三年度から円借款の調達の一般アンタイド化を基本方針ということで実施してまいっておるわけでございます。しかしながら、その具体的の実施のやり方に当たりましては、内外にわたります諸般の事情を考慮しつつ弾力的な配慮をするということに実はなっておるわけであります。  諸般の事情と申しましたけれども先生指摘の昨今におきますプラント輸出が非常に低迷しておるというようなこと、それからまた欧米諸国の動向、特に日本のアンタイド化の率が必ずしも欧米諸国と比較いたしまして低い、おくれておるという状況ではもうなくなってきているのではないかというようなことをも踏まえながらその運営に当たりたいというふうに考えております。
  67. 北側義一

    北側委員 この問題がやはりこれからプラント輸出にとって非常に大きな問題になってくるのではないかと思うのです。しかし、先ほど申しましたとおり、発展途上国等の関係等もありますし、先進工業国の形態等を見て、これはなさるべきではないか、こういう考えを私自身は持っておるわけです。  そこで、今回の法改正によって共同受注がなされるわけですが、わが国がサブインシュアラーとなってメーンコントラクターとバイヤーの双方のリスク輸出保険で担保するわけですが、この場合、信用調査をいかに充実させていくか、こういうことがこの運営にとりまして非常に重要ではないか、こう考えておるわけです。この信用調査の充実にどのように取り組んでいくのか、これをお伺いしたいと思うのです。
  68. 古田徳昌

    古田政府委員 先生指摘のとおり、この共同受注の活発化に対応いたしまして、わが方としましても信用調査を充実させる必要があるわけでございます。  現在、輸出保険において整備しております海外商社名簿には、昭和五十五年四月一日現在で約九万のバイヤーが登録されております。共同受注の拡大によりまして、わが国企業取引関係を有していなかった新規のバイヤーがかかわる案件が出てくるということが当然予想されるわけでございますが、件数的にはそれほど急激に増大するというものではないというふうに考えております。しかしながら、共同受注に係る案件のほとんどは非常な大型案件であるということが、予想されますので、慎重な信用調査を行うことが必要であるというふうに考える次第でございます。  信用調調査につきましては従来からその充実に努めておりますが、昭和五十三年度には一億五千六百万円でありました信用調査関係予算を、五十六年度には二億一千百万円ということで増額計上させていただいておりまして、こういうことで積極的な調査を進めていきたいというふうに考える次第でございます。  また、特に共同受注の拡大によります新規バイヤーにつきましての信用調査制度の活用といったことが非常に重要な事柄になってくるのではないかと考えるわけでございます。
  69. 北側義一

    北側委員 さらに、輸出相手国のカントリーリスクをどう評価するのか、こういう問題ですが、通産省のプラント輸出承認統計で輸出承認額の地域別のシェアを見ますと、中近東、アジア地域、共産地域、この三地区で五十年、五十二年、五十四年、五十五年も見ますと、大体皆六〇%以上超えておるわけです。このように、私たちの目から見ますと比較的政情不安定な発展途上国、そういう地域が非常に多いわけです。そうしますと、当然各種のリスクも予想されますし、またカントリーリスクの評価が一つの大きな課題になってくるのではないか、こう考えるわけですが、このカントリーリスクを逃れるためには、やはり輸出市場の分散化ということが非常に大事ではないか、こういう考えを持っておるわけですが、これについてどうお考えでしょうか。
  70. 栗原昭平

    栗原政府委員 先ほど先生がお述べになりましたように、最近時点におきましては、かなり市場の分散化というものが進んでおるわけでございますが、ひところ、特に昭和四十年代の前半ぐらいまでは、わが国輸出というのはほぼ東南アジア中心という形でございまして、大体プラント輸出の六割ぐらいが東南アジアに向けられておったという姿であったわけでございます。それが最近は、御指摘のように、中近東共産圏も含めましてほぼ三分の一ずつぐらいというような形にかなり平均化と申しますか、分散化が進んできたという姿になっておるわけでございますけれども、私どもといたしましても、余り特定の地域に偏るよりは、かなり分散した方がいいのではないかという感じも持っております。こういった形での分散化が傾向として、持続されることが望ましいというふうに考えておる次第でございます。
  71. 北側義一

    北側委員 それと実は契約の問題ですが、プラント輸出契約において欧米ではコスト・プラス・フィー契約が多いわけです。ところがわが国の場合はランプサム契約が非常に多いわけです。不測の事態が起こった場合を考えますと、利益確保にわが国のランプサム契約というものは不利ではないか、このように言われておるわけでありますが、これについてはどのようにお考えなのでしょうか。
  72. 栗原昭平

    栗原政府委員 プラント輸出契約形態といたしまして、いま先生からお話がございましたように、ランプサムという形の契約とコスト・プラス・フィーという形の契約と二種類あるわけでございまして、このランプサムという契約輸出者の方にそのプロジェクト全体の管理運営というものがゆだねられているという、受注者の自主性が大幅に認められているような形の契約でございます。こういった契約の中にもいろいろな形態がございますけれども、このランプサムは必ず輸出者にとってマイナスがあるかというと、必ずしもそうでもない。メリット、デメリット両方あるわけでございまして、これをうまくやれば利益の幅も大きくなるという形もありますし、逆にそれがうまくいかなければマイナスがふえる、こういう形でございます。私どもは、このランプサムの中でも、その後の物価上昇なりそういう変動を考慮したエスカレーションクローズのついたようなランプサムというのは特に安全ではないかという感じもいたしますけれども、いろいろな形態があるということでございます。  一方、コスト・プラス・フィーという形は、特定の人がいまのように全部大幅に運営管理をゆだねられるということではなしに、一定の部分についての適正なコスト見合いのフィーをもらうという形でございますので、かたいけれどもうまみがないという形の契約になるわけでございまして、一概にどちらがどうということは必ずしも言えない問題でございますし、欧米も従来の傾向からしてコスト・プラス・フィーの方が傾向として多いような気が私どもいたしますけれども、これは従来の慣行もございますし、相手との関係もございますので、私どもは、ランプサムであってもやりようによってはいい結果も得られるという感じもございますので、一概にはなかなか言い切れない問題であるというふうな感じを持っております。
  73. 北側義一

    北側委員 次に、アフガン問題で対ソ経済制裁という影響でソ連との貿易量が現在伸び悩んでおるわけです。ところが、欧州の英国、西独、フランス、これなんかは対前年比二〇%ないし三〇%近く貿易量が伸びておる、こう聞いておるわけですが、今回、非公式なソ連との折衝では日ソ貿易新協定が近く締結される、このようにお聞きしているわけです。  そこで、日本側としてはこの新協定をどのような方向に進めようとしておるのか、また、新協定の締結後さしあたり日ソ両国にとって輸出入されるものはどのようなものを考えておられるのか、また、アフガン侵攻による西側諸国との対ソ経済制裁との絡みが問題になってくるんじゃないかと思うのですが、そこらをどのようにお考えなのか。
  74. 真野温

    ○真野政府委員 ただいま北側先生の御質問は幾つかの点に分かれておると思いますが、まず第一に日ソ貿易支払い協定でございます。  御指摘のように近く協定交渉に入りますが、これは実はきわめて実務的、技術的な取り決めでございまして、たとえば支払い通貨を交換可能通貨にするとか、輸送とか輸出入について制限を設けないとか、そういうきわめて実務的な協定でございます。これが昨年末に一応期限が参りまして五年間の期間が切れましたので、改めて今後五年間の協定締結の実務的な話し合いをする、こういうことでございまして、基本的に日ソの貿易支払い関係を維持する、こういう仕組みのものでございます。  なお、これに基づいてどういうような今後の輸出入品目が予想されるかということでございますが、基本的に、いま日本とソ連との貿易関係につきましては、わが国からは機械とか鉄鋼とか、こういう工業製品の輸出が行われておりまして、ソ連の側から日本に対しましては資源関係、木材でありますとかチップでありますとかあるいは鉱物資源の関係等々が日本に入ってきている、こういう状況でございまして、基本的なパターンは今後も変わらないかと思います。  なお、最後に御指摘になりましたアフガン問題に絡みましての対ソ経済措置につきましては、私ども政府の基本的な立場は、アメリカを初め西欧諸国と協調いたしましてわが国として適時適切に対応していくということでございまして、具体的な問題があるときにはケース・バイ・ケースでその状況に応じて処理する、こういうことになっております。  なお、最初に御指摘になりました日本とソ連の貿易関係、最近の状況でございますが、必ずしも西欧諸国とさほど違った動向になっておりませんで、八〇年、昨年の暦年で申し上げますと、各国、日本も含めまして大体一割から二割の増ということで、通常の状況になっておるかと思います。
  75. 北側義一

    北側委員 私ら素人から見ますと、日本が減ってきており、欧州の英、西独、フランスが非常にふえておる、そこらが同じ西側諸国でもなぜこう違うのかなという感じを私自身は受けるわけです。  それから、海外の建設工事の受注について伺いたいのですが、海外建設工事協会がまとめられました受注状況の推移、これを見ますと、増加傾向にあったものが、五十五年四月から十二月の九カ月間で百四十九件、二千二百二十三億九百万、五十四年度四百六十件、五千三百六十九億四百万、このように、五十五年度と五十四年度を比べますと五十五年度が件数でも少ないんですが、金額が非常に減っおるわけです。こうしますと、あと十二月まで、対前年比で見てまいりますとかなり減少するのではないか、半分近くになるんじゃないか、こういう感じを受けるわけですが、その中でも特に中小企業の受注が減少している、こう聞いているわけです。これは何か大きな原因があるのかどうか、また今後の対策なり方針ですね、何かありましたらお伺いしたいと思うのです。
  76. 三谷浩

    ○三谷説明員 お答えいたします。  建設業の海外活動は近年急速に活発化しておりまして、昭和五十四年度には、建設省の調査でございますと五千六百九十三億円、これに海外法人の分を加えますと初めて六千億円台を突破したわけでございます。数年の傾向といたしましてアジアあるいは中近東、これが主力を占めておりまして約九割を占めております。昭和五十五年度の受注実績、いま先生指摘がございましたように、ここには海外建設工事協会の十二月分までが記載されておるわけでございますが、いわゆる昭和五十五年度分につきましては現在集計中でございますので確定したものはございませんが、昭和五十四年度に比べまして大体二割から三割ぐらい減少するのではないかというふうに見込んでおります。内容的には中近東での受注が大きく落ち込んでございまして、昨年勃発いたしましたイラン・イラク紛争が大きな影響を与えておるのではないかというふうに考えております。  これらの建設業の海外活動を促進するためには、情報の収集あるいは連絡体制あるいは海外用人材の養成あるいはコンサルタントの育成等多くの問題があるわけでございますが、私どもといたしましても、開発途上国に対しますアタッシェの派遣あるいは専門家等の派遣あるいは海外建設に関する調査等も行ってまいってきたわけでございます。  このほか、海外用の人材養成のための研修あるいは海外建設コンサルタントを育成するための租税特別措置あるいは研修等に努めてきたところでございますし、さらに海外建設に係る金融、保険、保証制度の拡充等にも努めているところでございまして、今後ともさらに海外建設の安定的な発展のためにこれらの施策を拡充してまいりたいというふうに考えております。
  77. 北側義一

    北側委員 時間がだんだん参りまして、政務次官もお見えですので政務次官にお伺いしたいと思うのです。  実はイラン石化の問題なんですが、日イ合弁の石油化学事業、これはいままでくるくるくるくる非常に変わってきているわけです。たとえば随伴ガスの使用をナフサに変更したとか、いまお話ありましたとおりイラン革命、イ・イ戦争、このように考えてまいりますと、こういう問題というのは恐らく予想されてなかったのではないか、こう私は考えておるわけであります。政府も一昨年、このイラン石化事業に関しまして総額二百億円の海外経済協力基金による出資を決められまして、そしてこれまで五十数億円出しておられるわけです。昨年秋以降イ・イ戦争によりましてこの出資が継続不可能、こういう態度を決定なさいまして、そうしてその後状況を見ておられるのでしょうが、このイラン石化事業の三井グループも、建設計画、採算など恐らく狂ってしまったのではないか、こう私は見ておるわけです。企業の論理からしますと、一日約一億円に達する金利、これをたな上げにして事業の休眠を図ろうとしておるわけです。ところがイラン側では、イラン議会は、先ほど大臣がどなたかの質問にたしか答弁なさっておられましたとおり、八一年度の予算配分は石化完成に最大の努力を払うべきだとして、そして日イ双方が今後も増資で必要資金を調達して工事を再開したい、このように考えておるわけですね。そうしますと、三井グループ、それから日本政府、イラン側、それらの各国各社の意思というものが、こう見ておりますと、どうもばらばらのような感じがしてならないのです。そこらを今後どのように対処なさっていかれるのか、これをまずお伺いしたいものです。
  78. 田口健次郎

    ○田口説明員 お答えさせていただきます。  イラン石化プロジェクトも大変重要な産油国との間のプロジェクトでございます。御指摘のように革命で中断、それから昨年の夏全面再開にスタートしようといたしたわけでございますが、九月に戦争ということで、いろいろ紆余曲折を経ておるわけでございます。日本、イラン双方の関係者間におきまして、本プロジェクトを継続して完成させたいという基本的な方針には何ら意見の相違はないというふうに考えております。もちろん向こう側は政府関係機関、公団でございますし、日本側は民間が主体ということでございます。政府と民間との立場の違いというようなことから、日イ相互間でさらに緊密な話し合いを続けていくということは必要かと思います。御存じのとおり、イラク軍の爆撃によりまして生じた被害の状況ということも詳しいことはまだまだわかっておりません。復旧及び完成までに要します工事量あるいは費用等々も今後把握していくことが必要でございますけれどもわが国政府といたしましては、本プロジェクトを継続支援していくという従来からの方針には全く変更がございません。
  79. 北側義一

    北側委員 この問題日本側は民間がタッチしている、こういうことですが、しかし、政府資金が出ておるわけですから、そうばかり言っておれないのじゃないかと思うのです。政府資金を出す以上は、そこに何らかの根拠があって出しておられると思うのですね。そして政策決定があったと思うのです。そこらは考えてやっていかなければならないのではないかと思うのですね。  ところが、最近の新聞報道等を見ておりますと、イラン石化の日本側の投資会社であるイラン化学開発、これはこの四月一日、最高意思決定機関である相談役会で、政府に対して経済協力基金の使用を再開するよう強く要請する、こう決めたらしいのです。そうしてイラン石化のイラン側の三十億円の送金要請は、経済協力基金の再開を待って送金しますとイラン側に伝えた、このように新聞報道ではされておるわけです。現在継続しておりますこのイ・イ戦争の停戦へのあっせん、これはたびたび行われておるわけでありますが、イランの態度というのは私、詳しくはわかりませんが、内部事情等考えますとなかなか停戦のめどが立たない、こういう実態ではないかと思うのです。  このように考えてまいりますと、イラン石化の今後の日本側のあり方というのは非常にむずかしいものになってくるのじゃないかと思うのですが、しかし、政府が出資なさって、そこで政策決定をなされた、そういういきさつもありますと、これは何らかの対応を迫られるのじゃないかという感じを私自身は持っておるわけなんです。そこらはどうお考えか。
  80. 田口健次郎

    ○田口説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、本件は政府出資を四割いたしました。国の政策の観点からも大変重要なプロジェクトであるということで支援を続けてきておるわけでございます。同時にまた、革命戦争を経まして現在イラン、イラクの間でも戦争が完全には終わっていない、こういう状況でございます。先ほど申しましたように、向こうが主として政府の立場、こちら側が民間、これに政府が支援している、こういう立場で、実は三月の末にもIJPCの役員会が日本で開かれる、一たんはそういう話になったわけでございますが、向こう側の都合もございまして四月に延びてきておるということで、イラン、日本両当事者の間でごく近いうちにまたいろいろな話し合いも行われる、こういう状況でもございますし、私ども、先ほど申しましたように大変重要なプロジェクトでございますので、これを政府として支援していくという考え方に全く変わりございませんけれども、いま申しました、近く行われる予定の日イ当事者間の話し合い等も見ながら、非常に重大な関心を持ちつつ、かつまた業界も内面指導するということもいたしたいと思います。そうして何とかこのプロジェクトをうまく達成したい、このように考えております。
  81. 北側義一

    北側委員 あといろいろ残っておるわけですが、これは次回に回すことにいたしまして、時間が参りましたので、これで終わらしていただきます。
  82. 野中英二

    野中委員長 午後零時五十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時二十九分開議
  83. 野中英二

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横手文雄君。
  84. 横手文雄

    ○横手委員 私は、まず大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。  政府はさきに総合経済対策、つまり第二次景気対策を確立をされたわけでございますが、そのときにプラント輸出の振興が盛られております。確かにプラント輸出の振興というものはその波及効果が大変大きく、景気浮揚への寄与はきわめて高いというぐあいに私は考えております。しかし、現在の厳しい国際情勢の中で輸出振興に期待をし過ぎるということについては問題があるのではないか、景気対策として国内における景気浮揚対策、いわゆる内需拡大等についてもっと積極的にこれを図っていくべきではないかというぐあいに考えておりますが、いかがですか。
  85. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 さきに発表いたしました第二次の経済対策でございますけれども、御指摘のように、私ども内需の拡大ということをうたっておりますし、一方、経済協力の推進ということもうたいまして、相矛盾することにもなりますけれども世界景気の不況ということもありまして、また日本の経済ももちろんそうでございますけれども、そういうことを対外的にも対内的にも踏まえまして、内需の拡大ということで国内の景気の刺激をうたうとともに、経済協力ということ、つまり対外的なプラント輸出などにおきますと、御承知のように一つプラント、たとえば一億円のプラント輸出が国内の景気の刺激に二億五千万ぐらいの波及効果があるというふうに言われておりますし、そういう点で私どもは、経済の刺激策として両方をうたうことが経済政策の根本の問題に触れるということで、そういう経済対策をとっておるわけでございます。
  86. 横手文雄

    ○横手委員 私は、そういったことで、景気対策として内需の拡大に対しても政府が積極的な手を打たれることを大きく御期待を申し上げるところであります。  次に、いま大臣の御答弁の中にもございましたように、今日の国際情勢の中で特にプラント輸出、これはわが国の貿易の高度化あるいは摩擦なき輸出、こういうことで非常に大きなウェートを占めておるわけでございますけれども、最近のプラント輸出をめぐる競争がきわめて厳しいということが言われておるわけでございますが、その状況について、あるいはわが国プラント輸出の国際的な地位、位置づけといいましょうか、そういったことについてどうなっておるのか、お答えいただきたいと思います。
  87. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 昭和五十四年度は海外プラント輸出が百十八億ドル程度でございましたけれども、五十五年度は約三〇%ぐらいダウンしておるわけでございます。これは全くいろいろな現象があるわけでございますけれども、五十四年度には大型プラント契約がいろいろございましたが、逆に五十五年度は御承知のように中国プラントの凍結あるいは破棄の問題イラン・イラク戦争によるIJPC初め、これはストップしているわけでございますけれども、その他イラン・イラク紛争の起こったその原因と結果というようなことで、プラント関係がストップしておる面もございますし、ひいては沿岸諸国に対するプラントの伸びが縮まっておるというようなこともございますし、またそのほか世界景気の不振というようなこともあってプラント輸出が延びておりますし、世界景気が不振であればまた競争も激しくなって、それだけ条件などによって日本が不利になるようなこともございまして、全体的に落ち込んでおる現実でございます。
  88. 横手文雄

    ○横手委員 おっしゃるように、そういった背景の中でわが国プラント輸出がきわめて停滞をしておる、あるいはダウンをしておるということでございます。私は、こういった状況を踏まえて、政府の対策というものが非常に重要であろうと思います。  たとえば、大型プロジェクトの受注等に当たりまして、諸外国では国の大統領、特にフランス大統領あたりはかなりはでに動いておられるようでございます。すなわち、国が当事者でないにしても、その国家として力を入れておる、こういうことが相手国に好感を呼び、ひいてはそれらの入札に当たってきわめていい雰囲気をつくっていくのではないかというぐあいに考えておるわけであります。  わが国においても、通産大臣は諸外国を回られて、そういったことで大変お働きになっておることを承知はいたしておりますけれども、しかし、特にわが国輸出によって景気を支えていかなければならない、こういう事実にかんがみ、もっと積極的な経済外交、こういったものを行うべきではないかというぐあいに考えておりますけれども、ひとつ政府の御見解をお願い申し上げます。
  89. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 御指摘のとおりに、非常に技術多様化し、それぞれの各国ニーズもまた多様化しておる。したがって、拱手傍観しておって、これはちょうど国内のそれぞれの小さな商売と同じように、じっとしておって売れるというような時期でもございませんし、ただ売ることが目的のときだけ動くというようなことではどうにもしようがない。日ごろの経済外交と申しますか、日ごろからのつき合いが大切でございます。したがって、私どももできるだけ国内を動くようにひとしく海外との交流を深めていって、向こうのそれぞれの国々との間で仲よくする、あるいは向こうの情勢を十分知り尽くすというようなことが必要だと思いますし、そういう点、各閣僚それから国会の方々にも大いに外国に出てもらって交流を深めていくことは大切だというふうに思っておりますし、私ども閣僚も経済外交ということを念頭に置いて対処していきたいと思います。
  90. 横手文雄

    ○横手委員 次に、私は、中小企業関連についてお伺いを申し上げます。  プラント輸出は、先ほども申し上げましたように、その波及効果というのは二五〇ないし三〇〇に広がっていく、こういうことが言われておるわけでございますが、その中における中小企業に対する需要喚起といいますか、そういったものは一体どのぐらいの効果を持っているものであろうか。さらにまた、そういうことで中小企業にも非常に大きな影響を持ってくるということになってくると、プラント輸出契約のキャンセル等によって、下請として反面非常に大きな痛手もこうむってくる、こういうことも予想されておるわけでございますけれども、それらの救済対策はどうなっておるのか。あるいは中小企業が下請でなくしてみずからが輸出者となる、こういうことで中小企業における輸出保険利用状況、この三点についてお伺いをいたします。
  91. 古田徳昌

    古田政府委員 先生質問の中で、まず第一の中小企業に対する需要喚起についての効果と、それから三番目に御指摘ございました中小企業輸出保険利用状況について、私からお答えさせていただきます。  まず第一の点でございますが、プラント輸出先生指摘のとおり非常にすそ野の広い産業でございますので、国内の生産活動に与える刺激も非常に大きいわけであります。たとえばプラント一億円の生産ということは、最終的には国内で約二・五億円の生産を誘発するという試算がございます。これは公共投資一億円の波及効果約二・一億円よりも大きな数字ということになっております。また、この生産波及額の中に占めます中小企業の割合も、プラントの場合は三四・七%ということになっておりまして、鉄鋼、一次産品の一一・二%あるいは自動車の二四・八%というような数字よりも大きなものというふうな試算結果が出ております。  それから、輸出保険中小企業におきます利用状況でございますが、製造業者におきましては資本金十億円以下のもの、商業者にありましては資本金三億円以下の中小規模の事業者につきまして調査いたしましたところ、普通輸出保険については引受件数で二二・四%、保険金額では五・六%、輸出代金保険については引受件数で五・四%、保険金額で二・七%でございますが、輸出手形保険になりますと、この比率が非常に高くなってまいりまして、引受件数で五三・一%、保険金額で二七・八%という数字になっております。さらに、中小企業利用率の高い輸出金融保険についてこれを見ますと、引受件数では九九・七%という数字になっております。保険金額では九九・九%ということでございます。さらに、海外投資保険につきましては引受件数で二三・一%、保険金額で五・六%ということでございまして、その他の保険も含めまして保険全体では、中小企業利用率は引受件数で二九・六%、約三〇%ということになっております。保険金額では六・七%、こういう調査結果が出ております。
  92. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 御質問の第二の点につきましてお答え申し上げます。  プラント輸出契約がキャンセル等されますと、これは下請中小企業に大変影響があるわけでございますが、発注後の発注取り消しが行われましたり、あるいは下請代金の支払いか遅延するというようなことが起こりますと、場合によりまして下請代金支払遅延等防止法に抵触することがございます。このような場合に、この法律に基づきますところの立入検査あるいは改善指導等所要の措置を講ずることにいたしております。先般、中国問題で一応こういったケースが懸念されましたので、二月二十四日付で中小企業庁長官及び関係原局の局長連名をもちまして、関連企業に対しまして注意を喚起いたしたところでございます。  なお、仕事のあっせん等でございますが、仕事につきましても対策を立てておく必要がございます。関連下請中小企業で悪影響が発生いたしませんよう、たとえば親企業におきまして他の手持ち案件の振りかえ発注を行うとかいうことによりまして、発注量の確保にできるだけ努めていただくということは当然でございますけれども関連の下請中小企業自身におきましても、各都道府県に設置されておりますところの下請企業の振興協会というものがございまして、ここの仕事のあっせん等を期待しております。  なお、金融面につきましては、中小企業の体質強化資金という制度がございますので、下請につきましてもし必要が起こりましたらこの体質強化資金融資制度を活用したい、このように対策面で考えております。
  93. 横手文雄

    ○横手委員 御説明ございましたように、中小企業の場合、特に下請の場合にはそれを当てにして仕事をしておるわけでございますので、ある日突然にそれがとだえるということになると、まさに命綱を切られることにつながるわけでございます。いま御説明のとおり、多くの対策がとられているようでございますが、万々遺憾なきょうその完璧を期していただきたいということをさらに御要望を申し上げる次第であります。  先ほど、中小企業輸出保険利用状況、その他の保険利用状況について御説明をいただいたわけでございますけれども、今日の日本の中小企業の中にも大変大きな力を持ってきた、そして勉強もし、あるいは外国の事情等についてもかなり研さんを積んでおられるところがあるわけでございます。したがって、私は、中小企業の中にももっと対外輸出の当事者になり得る、そういった人たちもこれから大きく期待ができるのではないかと思いますが、それにつけては、少しこの輸出保険制度そのもの等について中小企業に周知徹底していない面があるのではないかという気がいたします。その内容等について中小企業に、環境整備といいましょうか、こういった法律がある、そのためにはこのような手続をとればいいのだというような整備をしてあげる必要があるのではないかと思いますが、これについて政府の対策をお伺い申し上げます。
  94. 古田徳昌

    古田政府委員 確かに、輸出保険制度についての説明を十分いたしましてこの利用を積極的にしていただくというのは非常に重要な事柄でございまして、私どもとしましても、従来から財団法人輸出保険協会を通じまして、解説書の出版とかあるいは講習会の開催等を行っております。特に講習会につきましては、例年東京、大阪、名古屋で開催しておりまして、非常な好評を博しておりまして、それなりの効果が上がっているものというふうに考えているわけでございます。さらに通産省におきましても、輸出保険制度をできるだけわかりやすく説明いたしましたパンフレットの作成を考えておりまして、現在その作業中でございますが、近く利用者の方々に配布できる段階に立ち至っております。  また、中小企業利用比率の高い輸出手形保険や、それから品目の制限を行うことなく保険引き受けを実施している普通輸出保険等につきましては、できる限り地方通産局に事務委譲をしているところでございまして、さらに銀行の窓口における相談も従来から活用さしていただいているわけでございます。  いずれにしましても、今後とも輸出保険制度のPR等を含めまして、これらのルートを活用しまして輸出保険利用の促進を特に中小企業分野におきまして努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  95. 横手文雄

    ○横手委員 今回の法改正の中の一つとして、共同保険が導入をされるわけであります。この共同保険については、いわゆるイフ条項等が契約の前提になっておるわけでございまして、私は、この共同保険の導入は必要なことだというぐあいには思っておりますけれども、このイフ・アンド・ホエン条項があるその契約保険がかかるという、その理論的な根拠はどういう展開をされたのか、まずお伺いしたいと思います。
  96. 古田徳昌

    古田政府委員 共同保険の際のイフ・アンド・ホエン条項の意味についてでございますけれども、このイフ・アンド・ホエン条項といいますのは、元請でありますメーンコントラクターと、そのメーンコントラクターの下請になりますサブコントラクターの間の契約につけられます条項でございます。  内容は、バイヤーから、つまり輸入する側からこのメーンコントラクター、元請の方に代金の支払いがありました場合に、当該支払い日の一定期日後にこのメーンがサブの方にサブの分担部分の代金を支払うという趣旨の条項でございます。この条項が付されることによりまして、メーンとサブがそれぞれの分担部分に応じて、最終的なバイヤーの代金支払いに伴いますリスクを負担するということになるわけでございます。  これを保険でカバーする必要性につきましては、最近こういうふうな条項のつきました国際コンソーシアムの形成が非常にふえてきておるわけでございまして、しかしながら現在のわが国輸出保険法上では、このイフ・アンド・ホエン条項に伴いますバイヤーからの代金回収等の危険、リスクにつきましては、日本企業がサブになりました場合に保険てん補対象とされていないわけでございます。そういうことで、この問題を解消しましてコンソーシアムの形成を容易にするために、普通輸出保険及び輸出代金保険の現行制度改正しまして、このイフ・アンド・ホエン条項に係るリスク保険てん補対象に追加する必要がある、こういうことでございます。  この輸出契約にイフ・アンド・ホエン条項がつけられました場合に、その決済期限は最終バイヤーからの代金支払い日を基準として定められることになります。そういうことで、最終バイヤーの支払いの履行の遅滞等が発生したとしましても、たとえばわが国からの輸出者輸出契約上の履行遅滞ということを、それだけでは主張できないというような姿になっておりますので、輸出者としましては、貨物輸出することによりまして通常得られるはずの取引上の利益を失うことになるわけでございまして、この利益を保険対象の利益といいますか、被保険利益ということとしてとらえまして、この輸出保険によりてん補するということになるわけでございまして、これは取引の実態からしまして非常に妥当なやり方であるというふうに考えているわけでございます。
  97. 横手文雄

    ○横手委員 そういうことで、共同受注増大が今後は進んでくるのではないか、こういう気がするわけでございますが、そうなりますと、当然のこととして、新規バイヤーその他取引関係の増加に対応して、現在通産省がジェトロや海外調査機関に委託して実施しておられる信用調査をさらに拡充しておく必要があろうと思います。  さらにまた、共同保険の導入等によって、今後保険機関相互のトラブル等も予想されるわけでございますが、こういった国際的なトラブル等に備えて、通産省にも国際法等の専門のそういった顧問等を設置しておくような必要があると思いますけれども、どうですか。
  98. 古田徳昌

    古田政府委員 この共同保険制度の創設に関連しまして、先生指摘のとおり、業務も拡充してまいりますし、さらに信用調査の充実も必要になってくるわけでございます。そういう観点からしまして、私どもとしましても、七月から担当の課の中にこの共同保険業務を担当します班を設けたいというふうに考えておるわけでございますが、さらにつけ加えまして、先生指摘の顧問の雇用等につきましても今後の課題として積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  99. 横手文雄

    ○横手委員 さらに今回の法改正のもう一つとして、いわゆる融資買鉱等に関連するインフラストラクチュア整備資金がその保険対象ということに相なってきたわけでございますけれども、この範囲等についてこれからいろいろ問題が出てくるのではないか。その生産に伴う道路鉄道港湾、こういったことを指すのでございましょうけれども、しかしそれだけでは済まない問題が出てこようかと思うわけでございますが、こういった問題に対してその範囲をどの程度考えておられるのか、お伺い申し上げます。
  100. 古田徳昌

    古田政府委員 今回の法改正によりまして、生産事業に加えまして、当該事業に付随して必要となる関連施設整備ということが対象になってくるわけでございまして、これをインフラストラクチュア範囲にまで対象を広げるというふうに私ども言っておるわけでございますが、これにつきましては、現在、生産の基盤となります施設生産された貨物本邦に輸入するために必要となる施設等考えております。資源開発、輸入の円滑な促進のためには、先生もただいま御指摘になりましたように、この範囲につきましてある程度広く定める必要があるんじゃないかというふうに考えるわけでございますが、これにつきましては、法律上、先ほど御説明いたしましたように、当該事業に付随して必要となる関連施設整備という形になっておりますので、それとの関係考えながら、法律上許され、かつ支障のない限り資源生産事業との関連性専用性の枠内でこの範囲を定めていきたいというふうに考えるわけでございます。  二、三具体的な事例を御紹介したいと思いますが、これにつきましては、今後もちろん私どもといたしましてもなお十分検討した上で通達の形で明らかにしたいと考えておりますが、たとえば生産のための原材料または生産された貨物の運搬の用に供する道路鉄道港湾等施設といったふうなものが典型的な例ではなかろうかと思います。そのほかに、生産の用に供する水、電気、ガス等供給施設等がございますし、さらに、生産に携わる労働者の住宅施設福利厚生施設等もこの対象として検討していくということになろうかと考えております。
  101. 横手文雄

    ○横手委員 先ほど少し触れましたけれども、手形保険関係について。  この保険契約は、事故があってから一カ月以内に支払うという契約になっておるそうでございますけれども、現在その支払いまでに六カ月ほどかかっておる。したがって、特に中小企業関係ではその間の金利が大変大きくなってきてしまった、こういうことがよく聞かれるわけでございますけれども、なぜこの保険金の支払いが約束どおりの期日に支払われないのか、今後どうされるのか、この点についてお伺いをいたします。
  102. 古田徳昌

    古田政府委員 確かに輸出手形保険におきます保険金の査定業務がおくれがちでございまして、先生指摘のように保険金の支払いがおくれる傾向を示していることは事実でございます。  これにつきましては、実は五十三年度にトルコの外貨送金遅延による保険事故が大量に発生いたしまして、その処理のために業務量が一時的に急増したということの影響でございまして、たとえば保険金の支払い請求の動向を見ますと、このトルコの外貨送金遅延による事故の影響を受けまして、五十二年度の後半から急増しております。五十三年度だけで五百件近く通常の件数に上積みされたことになっておりまして、こういうことを理由としまして、五十二、五十三年度での保険金請求件数が通常の年の一・三倍あるいは一・五倍以上というふうになっておりまして、この処理のために非常に全体の業務が影響を受けたということでございます。  ただ、このトルコ向けの事故案件の処理につきましては、査定を行う職員を増員する等の措置を講じまして、現在までに終了しております。  そうして、その後の案件の事務処理も鋭意私どもとして促進に努めているわけでございますが、その結果、最近の保険金の支払い状況は、昭和五十四年度上下半期の支払い件数でいきますと、三百五十件平均でございましたが、五十五年度上半期で約三百件、下半期で約六百件ということで、支払い件数も非常に増加してきているわけでございまして、今後も私どもとしましては事故の審査なり査定事務の迅速化に一段と努力しまして、先生指摘のような業務の遅滞ということが起きないように努力していきたいと考えております。
  103. 横手文雄

    ○横手委員 そういうことで御努力をいただいておることは承知をいたしておりますけれども、先ほど指摘いたしましたように、約六カ月くらい保険金支払いまでかかっておるということでございます。そして、その間の金利がきわめて大きくなってきたという悩みをたくさん聞くわけですけれども、そういった点については通産省としても御承知なのでしょうか。それと、それらに対する具体的な処理等についてありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  104. 古田徳昌

    古田政府委員 確かに数カ月にわたりましておくれますと、その間の金利負担が大きくなるわけでございますが、一応そういう保険事故としまして私どもの方から保険金を支払いますと、その後、当該企業としましては相手側から債権の回収に努力するわけでございます。その債権の回収をいたしました場合に、その保険金の支払いがおくれた期間内の金利を差し引いて、その際に回収する、こういう形で実施していただいているわけでございます。
  105. 横手文雄

    ○横手委員 さらに、事故があって、後で取り立てが行われるわけでございますけれども、今回、非常危険等についてのてん補率が上がる、こういうことが予想されてこの法改正になっておるわけでございますが、そういう事態になりますと中小企業ではとても回収する力がない。回収義務を履行する場合、その交渉相手が政府あるいは政府機関ということになってきますと、力関係のアンバランスから回収義務の履行が困難をきわめる、こういうことが容易に予想されるわけでございますが、そういったケースに対する政府ベースでの応援体制、こういったものを迅速にとってあげることが非常に重要なことだというぐあいに思いますけれども、この点に対する政府の対応はいかがですか。
  106. 古田徳昌

    古田政府委員 現行の輸出保険制度におきましては、保険金を支払いました場合に、保険金を受け取った側、つまり被保険者に対しまして、相手側からの回収義務を課しているわけでございます。その回収金がありました場合に、まずその回収金から回収に要しました費用を控除しまして、その後、保険金を支払った割合に応じまして国庫に納付してもらう、こういうやり方をとっているわけでございます。  このような制度となっておりますのは、事故を起こしました相手側、つまり事故バイヤー取引関係を有しておりまして常時連絡をとり合ってきた輸出業者が回収作業を行うことが最も効果的だということでこういう回収方式をとっているわけでございますが、非常危険による保険事故のうち最も多い事故理由でございます相手国側の外貨事情による外貨送金遅延の問題につきましては、これは政府間で債務繰り延べ協定を締結するわけでございまして、債務繰り延べ協定を締結しまして、それに基づきまして確実な回収を確保するという形で、直接の回収義務は輸出業者にありますけれども、こういう形で政府としても全面的な支援を行うという方式になっております。  さらに、海外投資保険の場合につきますと、これで収用等の事故が起きましたときの回収につきましては、これも基本的にはやはり当事者間の交渉ということになりますけれども、こういう場合につきましては政府としても外交ルートを通じて、現地在外公館等が全面的に支援を行うという体制になっているわけでございます。
  107. 横手文雄

    ○横手委員 その点についてさらに万全の体制をとられるように強く要請を申し上げる次第であります。  次に、輸出保険の特別会計の関連につきまして、基金が六十億、それを含めて準備金が千三百億円、そして保証額、つまり引受額は十五兆円、こういうぐあいに聞いておりますし、その準備率はそうなりますと〇・八七%、こういうことになりますが、この数字に間違いございませんか。
  108. 古田徳昌

    古田政府委員 昭和五十四年度末におきます支払い準備金は千百八十三億円でございまして、同年度末の責任残高が十三兆五千二百二億円ということになっております。したがいまして、支払い準備率はただいま先生指摘のとおり〇・八七%ということでございます。昭和五十五年度の九月末現在におきます支払い準備金は千二百八十一億円でございまして、同時点の責任残高は十五兆八百八十七億円ということになっておりまして、支払い準備率も〇・八五%ということで、大体前年度末並みの水準を維持しているという形でございます。  この支払い準備率の引き上げにつきましては、昭和四十六年の輸出保険法の一部改正の際に、支払い準備率の引き上げに努めることという附帯決議を実はいただいておるわけでございまして、通産省としましても支払い準備の充実に努めてきたわけでございます。この結果、昭和四十六年度末の支払い準備率は実は〇・四五%であったわけですが、五十四年度末には先ほど御説明いたしましたように〇・八七%でございますので、比率としては約二倍ということになっておりまして、この間にかなりの改善を見たということは言えるかと思います。しかしながら、この支払い準備率につきましては、現状におきましても諸外国保険機関に比べて高い方ではないということでございまして、今後とも私どもとしましてはこの支払い準備の充実に努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  109. 横手文雄

    ○横手委員 申し上げたような数字がほぼ確認をされたわけでございますが、この種の保険業務の準備率、わが国の場合、いまおっしゃったように〇・八五という数字でございますけれども、常識的といいましょうか、通常どの程度が適切であるのか、その点についてお伺いをいたします。いま御答弁の中でわが国の場合は諸外国に比べて低い、こういう答弁をいただいたわけでございますが、どのぐらい低いのか、通常どの程度あればいいものなのか、それに近づくために具体的な努力をするという御答弁でございますけれども、具体的な施策、そういったものを明らかにしていただきたいと思います。それでなければ、この準備率が低いために保険の引き受けがどうしても厳しくなってしまうのではないか、それはさらに輸出振興に対して足を引っ張るようなことになりはしないか、先ほど大臣から、日本の景気浮揚のために輸出振興は欠くべからざるものなのだ、こういうことが披瀝をされたわけでございますけれども、そういった関連についてお伺いを申し上げたいと思います。
  110. 古田徳昌

    古田政府委員 諸外国輸出保険機関の支払い準備率につきましては、実は会計制度の違い等もありましてこういう支払い準備金というものを計上していない機関もあるわけでございまして、詳細は実は不明でございます。しかし、たとえばイギリスの輸出保険機関でありますECGDでは、支払い準備率の目標を二・五%に置いているということも聞いているわけでございますが、こういうふうなことからしまして、私の方としましては、先ほど言いましたように、諸外国に比べて高い方ではないという言い方をしたわけでございます。したがいまして、どの程度の支払い準備率が適正かということは非常にむずかしい問題でございまして、国際的にも決まった考え方というものはないわけでございますが、今後とも保険利用者の信認を得るということのためにも、私どもとしましては支払い準備率の引き上げのために努力していきたいというふうに考えているわけでございます。そのためには保険特別会計の健全な運営ということで、保険料の収入とそれから事故の発生によります保険金の支払いとの間の適正なバランスというものを常に維持するように心がけ、必要な準備金の積み立てを行っていくことに努力していきたいと考えるわけでございます。  さらに、準備金が低いために保険金の引き受けが厳しくなっているのではないかというお言葉がございましたが、わが国輸出保険は五十四年度の引受実績が十兆円を超えておりまして、これは国際的に見ても最大規模ということになっております。この規模からいきましても、諸外国輸出保険と比べて厳しい引き受けを行っているという姿ではないかと思っております。  支払い準備率につきましては先ほど御説明したとおりでございますが、この支払い準備の面からしまして保険引き受けについて制約を受けるということはない、また私どもはそういうふうな考えで個々の引き受けを行っているということではございません。現に五十四年度の輸出保険引受額は五十三年度に対しまして三三%増加しております。それから五十五年度上半期も対前年同期比で三〇%余の増加となっておりまして、これは輸出全体の伸び率との関係でいきますと決して低い数字ではないというふうには考えているわけでございます。
  111. 横手文雄

    ○横手委員 最後に、こういった輸出を活発にし、さらにその輸出代金の回収を安定させる、このことは大変大事なことだと思いますが、わが国では投資保証協定がエジプトと結ばれておるだけである。他の国々では、多くの国々とこういう協定が結ばれておるわけでございますが、貿易立国としてのわが国の立場からいって、もっともっとこういうものを広げていく必要があるのではないかというぐあいに考えておりますし、さらにまた、よくこのごろ話題になっております欧米のプラント輸出国が混合借款の導入によってさらに国際入札の競争力をつけてきた、こういうことが言われ、そのために日本が国際入札に敗れる、こういうこともあるというようなことが報道されておるわけでございます。こういった諸外国がOECDガイドラインに背くようなといいましょうか、それに抵触するような、背に腹かえられないというような態度を出してきておるやに見えるわけでございますが、これに対するわが国の態度、この二点を大臣の方に御質問申し上げて、終わりにいたします。
  112. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 わが国のミックストクレジットの方から申し上げますと、これはOECDの根本理念にももとりますし、避けるべきだという批判も日本側はしたこともございます。しかし、各国がそれをやっておる、日本も海外投資プラント輸出などがだんだん減っておる、そういうことを勘案しますと、いろいろな理由がございますけれども、国際競争の入札と申しますか、そういうときの条件がどうも悪い場合がある、そういうところでわが国も混合借款をやむを得ずしなければならない場合がある。そういうときにマッチングベース、つまりそれを見ておってそれにすりかえるというようなことは、不本意ではございますけれども、背に腹はかえられないということで、そういうことをわが国も一応考えておる次第でございます。  それから、投資保証協定の方でございますが、これは御指摘のようにエジプト一国であるということはきわめて情けない話で、アメリカや西ドイツと比べますと、これまた私ども十分考えなければいけないところでございます。海外投資そのものは世界で三位とか四位とか言われておりますけれども、そういう投資保証協定はたった一国しかないということではどうにもなりませんので、私どもASEAN諸国に行きましてもこの問題が指摘されたわけでございますが、これから大いに各国との投資保証協定を促進いたしまして、海外投資についての安心度と申しますか、余り気を使わなくても、心配しなくてもできるような環境づくりには私ども努力をしなければならないというふうに考えております。
  113. 横手文雄

    ○横手委員 ありがとうございました。
  114. 野中英二

    野中委員長 宮田早苗君。
  115. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣、何か用事があるようでございますので、一つだけお聞きをしまして、後中座されて結構でございます。  といいますのは、中国問題についてです。まず民間ベースによりますプラントの建設の一連の中止、延期ということを中国から言ってきておるわけです。もう一つは、円借款によります建設もまた延期ですか、そういう方向にあるようでございますので、一体こういう問題について政府自体といたしましてはどのような考え方を持っておいでになるのか、非常に抽象的ですけれどもね。同時にまた、非常に重要な国でございますだけに、今後どういう形で協力をしたらよろしいかということも反面考えておかなければならぬときが今日だと思いますので、そういう面について大臣のお考えを聞かせていただきたい、こう思います。
  116. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 御指摘のように、中国からプラントの問題について取りやめたいという空気、そういうような申し入れがあったことは事実でございます。つまり宝山の製鉄所の第二期工事、それから南京の石油化学プロジェクト、それから勝利の石油化学、それから北京東の石油化学のプラントでございます。  これらにつきましては、日中長期貿易取り決めということで日本と中国とが取り決めた八年間の契約でございましたが、その内容といたしましては、日本からはそういうプロジェクト、中国からは石油、石炭、エネルギーであったわけでございます。中国は、途中で経済調整という大きな政策転換のもとに日本にそういう断りの申し入れがあったわけでございます。その間、劉興華という人を中心とする向こうからの特派の人々、きょうはまた周建南という人の一行が日本に来て、さきに取りやめと言ったようなことは一応再検討をしたいということがこういう人たちが来た大きな原因でもあり、また結果でもあるわけでございます。したがって、いままで四つのプロジェクトをやめると言っていたのを多少整理をしようという方向にいま向いております。  わが国の方からも民間の方々がたくさん向こうに行って、いろいろ問題の整理をしておるわけでございます。と申しますのは、一度に四つのプロジェクトを破棄するようなことになりますと、長期貿易取り決めでやっておって、日本には非常にすそ野の広い中小企業者がたくさんおりましてこのプラントに関与しておりまして、品物を現地に送るというような体制、現地に送らなくても日本でそういうものをすでにつくっておるというようなこともございまして、多くの経済並びに関係者に与える打撃は大きいわけでございまして、いまこの問題を両国で整理をしようというようなことになっておりまして、目鼻がつきつつあるわけでございます。  もう少し時間をかしていただければはっきりしたことが言えると思いますけれども、いずれにしても、全面的にストップするということがそうではなくなりつつありますし、御指摘のように日中間は、過去もそうでございましたけれども、将来とも重大な国でございますし、日本の経済、中国の経済にとっても大切なことでございますので、私どもは、長期取り決めの線によってできるだけうまくいくように努力していきたいというように思っております。
  117. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣、何か用事があるようでございますから結構です。  それでは、ただいま申しました中国関係についてもう少し具体的に質問をするわけでございますが、いまも大臣から答弁ございました鉄鋼、石油化学のプラントの建設中止が相次いで通告されておるわけでございます。この中止、延期されましたプラントが大体どのくらいあるものか、できればプロジェクトごとあるいはプラントごとにお聞かせ願いたい、こう思います。
  118. 真野温

    ○真野政府委員 ただいままで中国の方から建設中止という通知のございましたプラントは、先生御承知のとおり、鉄については上海の宝山製鉄所の二期分でございます。それから、石油化学につきましては、南京、勝利、北京東方、この三つの石油化学プロジェクトでございます。  なお、これらのプロジェクトにつきましては、日本だけではなくて、西ドイツその他の西欧諸国の分といいますか、そういうところに発注したプラントその他等も含まれておりまして、全体の規模というのは、日本以外の西欧諸国の分とかあるいは中国みずから建設する分等もございまして、全体の資金規模は正確にはわかっておりません。ただ、わが方に通知ございましたプロジェクトについて大体どのくらいの契約金額かと申し上げますと、石油化学については約二千億円、それから鉄については約一千億円、大体このくらいとお考えいただいたらよろしいかと思います。
  119. 宮田早苗

    ○宮田委員 いま報告、説明をしていただきましたプラントの中止されたところのメーカー、商社あたりはわかっているのですか。どういうところが対象になっておりますか。
  120. 真野温

    ○真野政府委員 石油化学関係関連しまして、日本側の関連メーカー、商社と申しますと、必ずしも網羅的ではございませんが、東洋エンジニアリングでございますとか三井物産、伊藤忠、それから三井造船、三井石油化学、日本揮発油等々、相当な数のエンジニアリング会社及びいわゆるプラントメーカー、それから商社が関与しております。それから、鉄の方は、新日鉄、三菱重工、三井造船、そのくらいの比較的少数の企業が関与しております。
  121. 宮田早苗

    ○宮田委員 さきも大臣の方からちょっと答弁がなされたようですが、この中止されました契約の中に、工事中のものですか、あるいはまた国内で作業中のもの等々が大変たくさんあるやに聞いておるわけでございます。こういう工事中のものはそのままになさるものか、あるいはまた国内で作業中のものについてどういうふうに措置したらよろしいものか、おたくの方で考えておいでになるかどうか、お聞きしたいと思います。
  122. 真野温

    ○真野政府委員 先ほど申し上げましたいろいろなプロジェクトにつきまして、現在までのところ大体二割ぐらいのものが向こうにすでに船積みされておる分であり、八割ぐらいがまだ船積みされていない状況でございます。そのものについて国内でいろいろ発注その他行われておりますが、この辺は各社別に多少精粗、まちまちの数字でございまして、正確にお答え申し上げる数字はございません。ただ、先ほど大臣から申し上げましたように、当初、一月の終わりに、いま申し上げましたプロジェクトについて中止ということを向こうが申してきておったわけでございますが、その後、向こうの部内におきましていろいろ検討いたしまして、先般土光日中経済協会会長が行かれたとき、その他の機会に、これをもう一度考え直すやに動きが出ております。したがって、現在までのところ、従来の契約に基づいて日本側から船積みをするということについて向こう側からストップがかかっておりませんので、いまの状況では、基本的にはこれに対して直ちに日本側のコントラクター、メーカーが具体的にこれをやめるとか、これを保管するとか、あるいはストックをしておくというような措置までとる段階には至っていないと思います。  ただし、鉄の関係で新日鉄その他が受けました宝山製鉄所の第二期分につきましては、一応これは中止を日本側が基本的に了解するたてまえで応答しておるようでございますので、こちらの方についてはその範囲でそれぞれの各社が措置をとっておると思いますが、これはあくまで両当事者間のこれから具体的な話の中で決まってまいるかと思います。
  123. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つ、さきにも大臣に聞いたわけですが、円借款による建設もまた中止、延期という考え方が出ておるようでございます。大体こういう一連の中止、延期ということになりました原因は何であるかということ、これはまた向こうのことですからなかなかむずかしいとは思いますが、どう判断なされておるか、お考えがあればちょっと聞かしていただきたい、こう思います。
  124. 真野温

    ○真野政府委員 今回、日本とのいわゆるプロジェクトについて建設中止ということを中国側が考えました背景としましては、三つないし四つの理由があるかと思います。  基本的には、中国経済の調整ということを言われております。背景としまして、過去二、三年間中国の財政収支が相当大幅な赤字になっておりまして、そのために物価上昇が引き続いた。私どもの推定では、昨年七%ぐらいの物価上昇があった。御承知のような体制の国でありますから、物価上昇というのはなかなか大変なことになろうかと思います。したがって、こういうようなインフレといいますか、物価上昇を抑えるために財政収支の均衡を図るということを思い切ってやろうということが一つ理由であるかと思います。  それから、さらに、いま申し上げました財政収支の赤字というのは、一つには国内のエネルギー生産がこのところ数年停滞しておりまして、したがって、当然経済活動なり国家の財政収入にも影響を及ぼすという事態が出てきたこと。それに対応しまして、逆に各産業における原材料の不足でありますとか、地方企業への自主権付与という急激な経済の自由化によってやや混乱が生じたこと等が挙げられると思いますが、他方、こういうようなインフレの状態のもとにおきまして、農業生産の振興を図るために農産物価格の引き上げを行った、これが財政支出の面で大きい圧迫要因になりまして、したがって、全体としてこういうような支出面の増大、財政収入の不足ということから思い切って建設投資を縮小するということになった。そのために、先ほど挙げましたような日本のプロジェクトその他諸外国の分も含めまして建設中止に至らざるを得なかった、やむを得なかった、こういう事情が背景としてあるものだと思います。
  125. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つは円借款のことについてですが、五十四年度、五十五年度分合計で千六十億の円借款を供与されておるわけでございますか、一体これがどうなっておるものか、お聞かせ願いたいと思います。
  126. 田口健次郎

    ○田口説明員 中国向けの政府ベースの円借款の状況について御説明を申し上げます。  先生指摘のとおり、中国に対しまして七九年度五百億円、それから八〇年度五百六十億円、合わせまして一千六十億円の円借款の供与約束をいたしました。  プロジェクトは六つございます。項目だけ申し上げますと、石臼所港の建設計画、克州−石臼所間の鉄道建設計画、それから北京−秦皇島間鉄道拡充計画、それから大瑤山トンネルの計画、それから秦皇島港の拡充計画、それから五強渓と申します場所の水力発電所の建設計画、この六つのプロジェクトでございます。  ただ、現在まで中国側から私ども聴取しておりますところでは、政府ベースの円借款につきましてプロジェクトを中止するとかあるいは延期するという話はまだ出ておりません。私ども理解するところでは、政府ベースの円借プロジェクトにつきましては、中国側としては、一時的なおくれが生ずることはあっても、できる限り予定どおり完成させたいというのが向こうの意向であるというふうに承知しております。  供与いたしました借款の状況でございますけれども、昨年より資材、たとえばセメントとか木材等でございますけれども、資材についての入札が行われ、すでに一部は契約に至っているものもあるということを海外経済協力基金から聞いております。  また建設機械、船舶等価格の張るものにつきましても契約が成立しつつある、こういう現状でございます。
  127. 宮田早苗

    ○宮田委員 問題は、この円借款のプロジェクトに係っておりますわが国の業者に対して何らかの措置といいますか、政府として指導と申しますか、また小まめな説明と申しますか、何らかの措置をしなければ不安でしょうがないのじゃないかと思いますが、この措置はいまどういう形でなさっておりますか、その点をひとつ。
  128. 田口健次郎

    ○田口説明員 いま御説明申し上げましたとおり、政府ベースの円借款につきましては、これは中止してやめてしまうとか、ずっと先に延期するという話が中国側から実は出てきておらない状況でございます。できるだけ予定どおり向こうは完成させたいというふうに中国側が言っておりますので、したがいまして、円借に関する限り日本の企業に対する影響はないというふうに承知しておるわけでございます。
  129. 宮田早苗

    ○宮田委員 何しろ重要な国でございますだけに、いっときもおろそかにできないことは十分にわかっておるわけでございますが、やはり実態というものを十分に把握をし得なかったんじゃないかというような気持ちにもなるわけでございまして、したがって、今後の中国問題について、この前新聞を見ておりましたところが、日中経済協会といたしまして、いままでのようなプラント主体の協力を改める方向検討しなければならぬのじゃないか、政府としても同様というふうなことが言われているわけでございます。といいますのは、中国の実態に合ったところの協力といいますか、そういうものをこれから活発に行う必要があるのじゃないかと思います。たとえば資源開発とか、あるいはまた今日あります既存の設備を改善するとか、あるいはまた技術者をどういうふうな形で教育養成するかというようなことと思いますが、そういう点について、今後の中国問題について政府としてのお考えがありましたらお聞かせ願いたい、こう思います。
  130. 真野温

    ○真野政府委員 先生指摘のように、中国経済全体について、これからの中国経済がどうなるかということをよく見ながら経済協力を進めるべきである、御指摘はそのとおりだと思います。現実にこの前の経済調整政策以後、中国からのプラントの発注というのは非常に減ってきております。そういう情勢のもとにおきまして、やはりこれから中国の本当に必要とする経済協力を中心に考えていくべきだろうと思います。御指摘のように、一つは、既存の工場の近代化等を含む技術協力ということが大事になろうと思いますし、もう一つは、中国が現実に必要としているエネルギーの開発、石油の開発であるとか石炭という資源開発関連のもの、これは現在進んでおるプロジェクトについて向こう側も鋭意進めておる。中止その他の措置をとっていない分野でございますので、そういうところに重点を置き、また当然そういう方向に推移してまいるのではないかと思います。
  131. 宮田早苗

    ○宮田委員 中国問題、これでおくとしまして、輸出全般についてお伺いを申し上げますのは、政府の五十六年度の経済見通し輸出が前年比で一四%増、こうなっております。これは五十五年度実績の見込みの二七%増、これを考えますと大幅に下回るということが予想されるわけでございますが、これの原因は一体何であるかということをお聞きいたします。
  132. 古田徳昌

    古田政府委員 最近のわが国輸出動向を見ますと、昭和五十四年暦年でとらえてみますと、前年に対しまして五・六%の増ということで伸び率が落ち込んでおります。ただ、これは五十五年になりましてから回復を見せ始めておりまして、暦年で見ますと、前年比二六%増ということになっておりまして、年度で見ましても大体同じような伸び率になることになろうかと思います。  これに対しまして昭和五十六年度の伸び率につきましては、先生指摘のとおり若干低い伸び率ということで想定しているわけでございますけれども、これにつきましては最近のわが国の製品別の輸出動向につきまして、鉄鋼、化学製品、機械機器等の伸び率、さらに非価格競争力のある自動車、二輪自動車、テープレコーダー等が顕著でございますが、全体として世界景気の動向等を勘案いたしまして、御指摘のような数値で私どもとしては想定しているわけでございます。
  133. 宮田早苗

    ○宮田委員 五十五年度の輸出動向の中で、五十五年度は相当前年と比べて大きく伸びておるわけですが、この中にはプラントとしてはどの程度入っておるのですか。
  134. 古田徳昌

    古田政府委員 プラントにつきましては、通関統計としての把握ができておりません。計算できないわけでございますが、輸出承認実績としまして五十四暦年で百二十九億ドルになっておりますが、五十五暦年では八十八億八千百万ドルという数字になっております。
  135. 宮田早苗

    ○宮田委員 そこで、プラント輸出についてお伺いいたしますが、プラント輸出というのが大変重要なことは当然なことでございますが、いまおっしゃいましたように五十五年度は大幅に落ち込んでいるわけでございまして、その原因、一体何であるかということをお聞きいたします。
  136. 栗原昭平

    栗原政府委員 五十五年度におきまして、プラント輸出が前年に比べて特に落ち込んだ原因でございますけれども、景気全体が世界的に落ち込んだということがベースにあると思われます。  特に市場別に見てみますと、共産圏中近東、この辺が非常に落ち込んでおるわけでございます。これらの国につきましては、たとえば中近東ではイラン・イラク等の紛争の影響というのもございますし、それから共産圏につきましては、先ほど来のお話の中国の経済調整問題というものの影響もございますし、またソ連についてもアフガン以来の制裁問題等の関連というのもありますし、それぞれの国の政治情勢、経済情勢の不安定を反映したという面が当然にあるわけでございます。そういった問題、あるいは円高局面の中でプラント輸出についてなかなか採算的にリスクが大きいというような問題もあり得たかと思います。大体そういったものが昨年度における不振の原因ではなかろうかと考えております。
  137. 宮田早苗

    ○宮田委員 プラント輸出におきましては、従来から単なるプラント機器輸出だけでなしに、プラントの据えつけ工事、操作技術指導等の技術部分輸出業者が一括して請け負っておるケースが多いわけです。こうした複合的な契約のうちに、技術提供契約については現在まで輸出代金保険てん補対象になっておりますが、普通輸出保険てん補対象になっていなかったわけです。  そこで、まず第一にお聞きいたしますのは、過去の貨物輸出に伴う技術提供契約の実態はどうであったか、このことについてお伺いをいたします。
  138. 古田徳昌

    古田政府委員 最近の実績につきまして、昭和五十年から最近までの百万ドル以上の技術提供契約の中でその中に貨物部分を含むものを累計いたしますと、約五十億ドルということになっております。この五十億ドルの中に含まれます貨物部分は約十三億ドルということで、比率にいたしますと二六%に達しております。
  139. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、いままで貨物輸出技術等提供が複合された契約保険引き受けの上でどのように扱われてきたか、その点もお伺いいたします。
  140. 古田徳昌

    古田政府委員 複合的な契約につきましては、従来から貨物輸出を主目的とした契約輸出契約ということにしておりまして、技術等提供を主目的とした契約技術提供契約ということにしておりまして、そういう区分分けのもとで保険引き受けを行ってきておるわけでございます。  現在の法律上では、この普通輸出保険対象輸出契約だけに限られておりまして、技術提供契約とみなされた複合的な契約対象とされていないわけでございます。といいますのは、輸出代金保険につきましては輸出契約技術提供契約ともに従来から対象になっておりますが、いわゆる船積み前のリスクをカバーする普通輸出保険については、ただいま申し上げましたとおり技術提供契約対象となっていなかった、こういうことでございます。
  141. 宮田早苗

    ○宮田委員 今日、貿易摩擦が起きております製品に対する別な面での折衝というのが、貿易摩擦をどうして避けるかということで行われておるわけです。結果として、その産業を現地で興そうというようなことなんでございますが、いままでこういう関係について設立されました実績があればおっしゃっていただきたい。さらには、こういうことについて一応の計画がまた別な面であれば説明願いたいと思います。
  142. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 一般論としてお答えさしていただきます。  先生の御質問に対しては、私どもは、貿易摩擦が起きますと、それを乗り越えて日本の貿易あるいは生産が発展するためには現地生産がふえていくだろう、こういうふうに考えております。  御案内のように、日本の企業海外で直接投資を行いますところの誘因と申しますか、大きく言いまして資源エネルギーの確保とかあるいは第三国あるいは現地におけるマーケットの確保と申しますか、あるいは労働力の利用と申しますか、そういった原因があったかと存じます。ところが、御案内のように、日本で製造いたしまして外国輸出をする、だんだんと貿易摩擦が激しくなるということになった場合に、それを回避しながらさらに前進する方向として現地生産があるということでございまして、大分前でございますけれども、先般の日米の間におけるところのテレビジョンの輸出問題について貿易摩擦が起きた。この前後を契機といたしまして、わが国の主力メーカーがアメリカに現地生産を開始したというふうなことがございます。これは一つ、現地生産というのは当該国におきますところのブランドイメージを植える、あるいは受入国の雇用の拡大にも役立つ、あるいは地域開発にも貢献する、そういうふうなメリットもございますし、また企業によりますと引き続きマーケットを確保するということもございますので、私は、冒頭申しましたような可能性は十分あるんではないかと思います。  ただ、反面、カントリーリスクの問題あるいは労働力条件の内容の問題あるいはまた部品その他調達の難易の問題、企業としてはいろいろ判断すべき条件が多々あるかと存ずる次第でございます。
  143. 宮田早苗

    ○宮田委員 総体的にお伺いするわけでございますが、現在共同プロジェクトとして海外で合弁事業という形で行っております諸会社、大体どのくらいあるものですか。そして、それらの会社自体の経営状態が一般的にどういう傾向にあるかということを把握されておりましたならばお知らせ願いたい、こう思います。
  144. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 まず合弁事業の数でございますが、大蔵省の統計によりますと、わが国企業海外に直接投資をしております外国法人の新規の設立及び経営参加の件数は毎年八百件から九百件ございまして、累計といたしましては五十五年の三月末に一万二千件に達しております。これは証券取得とかあるいは債券取得とか、そういったことを一件ごとに計算した数でございまして、必ずしも合弁事業の数にぴたっと一致はいたしません。  ところで、当省におきまして五十四年度末に日本におきますところの新会社にアンケートを出しまして、これをベースに調査をした数字がございます。この調査は回収率が一〇〇%ではもちろんございませんで、金額的に言いますと大体八割くらいは占めておりますけれども、件数でいきますと中小企業の未回答数がかなりございますけれども、それによりますと、これらの会社が海外につくっております現地法人の数は三千三百六十九社ということになっておりまして、これに捕捉されておりません企業を足しますと、ラフに言って四千社くらいあるんではないかと私は存じます。それから、この規模は、国内企業との関係で申し上げますと、これらの企業の親会社の資本金の総額とこれらの三千三百六十九社の資本金の総額を比較いたしますと、国内の一二・四%に達しておる。こういうわけで、わが国海外事業活動もかなり大きくなってきておるということでございます。  第二点の、しからば現地法人の収益状況、経営状況はどうかということでございますが、現地法人をつくりまして数年間は一般的に申しましてなかなか収益が上がらない、その後徐々に上がってくるという傾向を持っておりまして、しかもわが国の現地法人の数がふえましたのが昭和四十七、八年度以降のことに属しておりますので、その途中に第一次以降のオイルショックがございまして、軒並みに経営の内容が悪化いたしました。自後回復には向かっておりますけれども、国内の企業と比較いたしますと依然として低位にあるということでございます。たまたまマクロの数字が一つだけでございまして、売上高利益率で見ますと、国内の企業でとりますと一・〇%ということでございますけれども、これらの海外企業では、現地法人では〇・六%になっておるという数字がございます。
  145. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお伺いいたしますのは、設備が完成をして、その設備を完全に稼働させなければならぬ。ところが、その国の産業構造の違いからなかなか完全に機能しない場合が往々にあるやに聞いておるわけでございますが、それに対する指導方法をどういうふうになさっておりますか、それもお聞かせ願いたいと思います。
  146. 栗原昭平

    栗原政府委員 プラント輸出などを行いまして、その設備ができて現地においてそれが稼動しないような状況が出るということは、これはそもそもプラント輸出が現地の経済発展に寄与するという意味合いで非常に重要だと思いますので、それが動かないということは決して好ましいことではないわけでございます。  ただ、その原因というのはやはりさまざまあろうかと思います。たとえば現地の需要にマッチしないような品物をたまたま輸出して、それができたというような場合には物が売れなくて動かないということもあろうかと思いますし、また、おっしゃるように現地に関連事業がなかなかないというようなことでうまく動かないということもあろうと思いますし、事情はさまざまであろうかと思います。  そういった意味合いにおきまして、やはり事前において、まずコンサルティングなり何なりというような段階におきまして現地のニーズなり実態というものを正確に把握いたしまして、そしてそれに基づいてそういったプラント輸出なり何なりを行うということがまず第一に重要であろうかと思います。その際、やはりこれはどうしても民間が中心になって行うべきことだと思いますけれども政府関係といたしましても、やはりジェトロその他いろいろな情報収集機関を活用するというようなことも当然必要であろうと思いますし、また経済協力なり技術協力なりというような事業を並行的に行いまして、それらの援助に役立つといったようなことを行うことも必要かと考えております。そういった方向で支援をしてまいりたいと考えております。
  147. 宮田早苗

    ○宮田委員 通産省として在外公館に専門家といいますか、そういう方々が駐在されておるのじゃないかと思いますが、おいでになればどの程度おいでになるか、その辺はどうですか。
  148. 真野温

    ○真野政府委員 ただいま私どもの方から在外公館に出向しております人員は六十二名でございます。この中にもちろん技術系、事務系、いろいろございます。それぞれの分野で可能な限り相手国における経済情報技術情報プラントの向こうの計画その他を把握して送るかっこうになっておりますが、このほかに私どものジェトロ、この中にかなりの数のプラントの専門家がおりまして、現地に駐在しております。在外公館とこういったジェトロ、さらには機械輸出組合等にも相当なスタッフが行っておりまして、それぞれ現地において連携をとりながら種々の情報、こちら側の情報を向こうへ伝達する、あるいは向こう側の情報をとるというようなことをいたしております。
  149. 宮田早苗

    ○宮田委員 これほど活発になりますと、労働省として当然に派遣されておると思うわけです。その国の雇用条件といいますか、労働組合があればその組合の組織事情といいますか国民性、やはりいろいろわが国と違った状況と思うわけでございますので、そういう雇用問題を専門に指導するあるいは扱うというのはちょっと言葉は悪いですけれども、そういうことから、労働担当官としても当然に必要じゃないかと思っております。聞きますと、何カ国かは行かれておるようですけれども、まだまだほんの少しだというふうに言われておるわけでございまして、そういう面について、労働省の方お見えになっておると思いますが一お聞きしたいと思います。
  150. 平賀俊行

    ○平賀説明員 労働省でございます。  現在、労働省から在外公館に労働担当官として十二名の職員を派遣しております。このうち、最近、特に四十年代の後半以降、開発途上国に日本の企業が進出する、あるいはそういった国々の産業構成の変化で労働組合の組織化が進んでくる、そういう情勢に対応して、主として開発途上国へ進出している企業の労働問題、雇用問題の相談等に当たるため新設をしているケースが多くなっております。  今後とも、こういった必要に応じまして関係各省とも協議をして充実を図っていきたい、こう考えております。
  151. 宮田早苗

    ○宮田委員 できれば、先進諸国に対しましての担当者ということよりは、これから開発される国々、またそういうプラントを熱心に受け入れられておる国々に対しましての担当者というのが特に必要じゃないか、こう思っておるところでございます。  余談でございますけれども、最近外国の識者がわが国に大変大ぜい調査にお見えになっておると聞いております。その一つの目的は労使関係を調査なさろうということのようでございまして、それだけ関心を持っておられるだけに、積極的に、プラント建設と並行してその面についての協力ということも必要じゃないかと思います。これは答弁をしていただく必要はないと思いますが、これからはそういう方面に極力担当者を派遣をしていただくように特にお願いを申し上げておくわけでございます。  そこで、さらに一つお聞き申し上げたいのは、資源開発の問題について、どうしても海外でのいろいろな投資が必要になってくる、これから特別にその感が強くなるのじゃないかというふうに思っておるところです。  たとえば石油にかわります代替エネルギー開発一つとりましても、わが国だけではとうていむずかしいわけでございまして、どうしても海外にということになるわけであります。幸い資源エネルギー庁長官がお見えでございますから、これら一連の資源開発に対しまするところの投資活動といいますか問題についてひとつお考えを聞かしていただきたい、こう思います。
  152. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 資源開発につきましての海外投資の促進につきましては全く宮田先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもはいわゆる資源小国でございます。国内の資源の有効活用を図ると同時に、どうしても海外での投資活動を積極化する必要があろうかと思っております。  そこで、御指摘のございました、たとえば石油について申し上げますと、従来やっておりました石油公団の例で申し上げますと、中国、インドネシア等のいわゆる極東あるいは東南アジア地域、さらにはアラブ首長国連邦等を中心にいたします中東地域、それからアフリカ地域、北米、中南米、こういった世界じゅうに資源を持っておるところと提携をしておるという関係がございます。  それから石炭につきましても、先生よく御承知のとおり、現在アメリカ、カナダ、豪州で開発プロジェクトを実施いたしておりますけれども、こういう面につきましてもさらに積極的に進めていく必要があろうかと思っております。  それから、非鉄金属関係につきましても、これは大変大事なことでございまして、現在カナダ、オーストラリアあるいはフィリピン、ペルー、マレーシア、パプアニューギニア等々で開発をやっておるわけでございますが、この面につきましても今後さらに提携を深めてまいりたい、かように考えております。  それから、先生の御指摘のございました代替エネルギーの関係につきましても、これは今後の海外との連携の大変重要な問題でございまして、たとえばIEA等におきましても国際協力というような問題の重要性の指摘がございます。私どももそういった線に沿いまして積極的にやってまいりたいというふうに考えておりますが、特に先般鈴木総理がASEAN諸国をお回りになりましたときに、インドネシア側からエネルギー委員会の設置のお申し出もございまして、これは特に代替エネルギーの関係につきましてしかるべき両国の関係を確立していこうという趣旨のものでございまして、こういった趣旨のいわゆる海外との提携関係が今後もますます活発になってくるのではないか、またそういうものを活発にしていく必要がある、こういうふうに認識をしておる次第でございます。
  153. 宮田早苗

    ○宮田委員 ひとつ要望しておきたいのは、資源を海外で共同して開発するということ、これは大変結構なことで、やってもらわなければいけませんが、特に石炭とか非鉄金属あたりの関係で、これのみに余り頼り過ぎるということになりますと国内の資源が切り捨てられるということとか、あるいはこれを輸入することによって国内でのいろいろなまた別の問題が起きてきそうな傾向が今日出ておるようでございますから、その辺は十分にひとつ御配慮をしていただかなければならぬのではないかと思いますので、その点はよろしくお願い申し上げておきたいと思います。  最後の質問でございますが、これだけ対外的にプラント輸出、またいろいろな開発というものが行われますと、自然とわが国からそれに派遣する人々も大ぜいになってくると思います。今日でもそうですが、一番お困りなのは子弟の教育問題についてでございまして、たとえば向こうで教育を受けて、また向こうでの教育機関そのものがなかなかむずかしいからということで、向こうでの教育機関に対する考え方、さらに国内にお帰りになったときにその子弟は即座に、たとえば高等学校なら高等学校に右から左に受け入れてくれないという非常にむずかしい面もあるわけでございますし、さらにこれらの方々がまた大学とかいうことになりますと非常にむずかしい面があるわけでございまして、向こうに行っておいでになる方、これはプラント関係だけでなしに外交官もしかると思いますけれども、こういう問題について何らかの特典といいますか措置を国内だけでもとってあげないと、これから先海外に行くのがちゅうちょされるのではないか。そうすると優秀な人材がなかなか見つけにくい、こういうような傾向にもなると思いますが、そういう面についてどのようにお考えになっておりますか、ちょっとお聞きをしたいと思います。
  154. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 御指摘のとおりに、日本の企業海外へ出てまいりますと、大ぜいの同胞が海外で活躍することになるわけでございます。現地が先進国でいろんな条件が整っておればよろしゅうございますが、そうでない国もたくさんございます。  そこで、御指摘の特に教育関係、これにつきましては先般来文部省、外務省でも意を払われまして、現在の段階では、海外における全日制の日本人学校が六十七校、ここに学んでおります子女が約一万二千というところまで来ておるわけでございますけれども、しかしながら、帰国後の問題もございますし、現地でもっと現地へ溶け込むような教育はどうかというふうなことがございまして、私どもの方も海外事業を行う企業を所管をいたしております立場から、社団法人日本在外企業協会などを通じまして、この方面についてさらに検討してまいりたいと存ずる次第でございます。
  155. 宮田早苗

    ○宮田委員 いまおっしゃいましたように、子弟の教育問題について特別にひとつ御配慮していただきたいということを要望して、もう時間が来ましたからこれで終わらせていただきます。
  156. 野中英二

    野中委員長 渡辺貢君。
  157. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 まず、田中通産大臣にお尋ねいたしたいと思います。  輸出保険法の一部改正が提案をされたときに、その趣旨説明の中におきましても、世界経済との調和発展を図りながらわが国の経済運営、対外政策を正しく遂行していかなければならない、そういう展望の中でこの一部改正を行っていく、そういう趣旨のお話がございました。  私も、日本の経済が今日世界経済の中でもGNPの一〇%を占め、大変国際社会の一員としての日本の地位が高いという事態の中で、とりわけ世界各国との正常な平等互恵の経済関係を確立していくというのはきわめて重大であるというふうに考えております。最近における典型的な自動車摩擦の問題などがございますけれども、同時に、この輸出保険法の中でとりわけ強調されている非常危険、カントリーリスクの問題など発展途上国に多いということであります。そういう点で、単にリスクが生じた場合に保険によっててん補すればいいというそういう狭義の考え方ではなくて、やはりリスクが起こらないようにわが国の対外経済政策を正しく進めていく、その中の一環としての保険法であるというふうに私は認識をしているわけであります。  そういう点で、基本的な認識についての大臣の御所見をまず承りたいと思います。
  158. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 わが国は資源も保有しておりませんし、どうしてもわが国の地勢上から申し上げまして貿易立国即技術立国ということになりかねないし、その方法としては、海外協力というものを進めていって、プロジェクトの輸出貿易、ひいては開放経済、自由主義経済、世界の経済が保護主義貿易にならないようにという考えを踏まえて常に対外政策を進めなければいけない、そういう基盤のもとに経済体制を組まなければならないという宿命を持っておると思います。  したがって、外国との信頼関係が基本になりますし、貿易立国、技術立国あるいは信頼関係、そういうものを全部考えますときに、やはりそこに日本の経済安全保障ということも踏まえていかなければなりません。ただ、信頼関係とかいろいろなことを申し上げましても、貿易というものについてはかなりの危険、カントリーリスクもあるでしょうし、いろいろな思わぬ破綻もあるわけでございますし、といって、これは相手側をそう疑ってばかりおってもできませんので、そういう点は、貿易立国、技術立国だけに、私ども政府関係者がこれらの民間の活動に対して環境づくりをしなければならないと思います。つまり、リスクに対してはある程度の保険あるいは投資保証協定とかいうようなものをつくっていかなければなりませんし、そういう観点から、今回の改正も、必ずしも法律だけに頼るということではありませんけれども、また貿易を促進するためにも、あるいは民間の企業の活動を活発化するためにも環境づくりが必要だということから、この改正案もお願いしているわけでございます。といって、先ほどから申しますように、法律だけに頼っていこうということではないという考えも持っております。
  159. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 経済安保の問題は後ほど触れたいと思うのですが、まず第一に、本法の改正の中で、法文の定義と申しましょうか、解釈の問題について三点についてお伺いをいたしたいと思います。  第一は、海外投資の問題であります。  この改正の中では、外国法人の株式取得に当たって当該外国法人に債務保証を与えると、こういうふうな改正が含められております。つまり、外国法人というのは当該国における日本の子会社あるいは現地の合弁会社を指すのではないかというふうに考えるわけですが、この点はいかがでしょうか。
  160. 古田徳昌

    古田政府委員 私どもとしましては、この点につきましての改正に当たりまして、現地合弁企業等の長期借り入れに対する債務保証形態増大という点を念頭に置いているわけでございます。
  161. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そうしますと、現地の合弁企業ということになるわけでありますが、それぞれの当該国においては、そうした合弁企業の場合に株式の取得について、先進国は余りないというふうに聞いておりますが、開発途上国の場合には株式の取得制限があるというふうに伺っております。たとえばどのくらいの国で、資本に対して大体どの程度までの取得制限があるのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  162. 神谷和男

    ○神谷政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、発展途上国におきましては一般的に外資の比率制限が行われておりますが、すべての発展途上国の全貌を把握しておるわけではございませんが、たとえばわが国企業の直接投資の累計額一億ドル以上の国について御説明させていただきますと、発展途上国、該当するもの十七カ国ございますが、そのうち十二カ国については何らかの形で外資の出資比率制限が行われておると承知いたしております。  この状況がどういうものであるかという点につきましては、国によってかなりばらついておりまして、一般的にはマジョリティーを現地でとるということでございますが、たとえば資源に関連したものはもう少しきつい形で外資の比率をしぼっておるとか、あるいは企業形態によって異なる等々ございますが、一般的にかなり多いものは、マジョリティーないしそれより外資の部分が少なく、現地資本の分が多くなるような形での制限でございます。
  163. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そういうことになりますと、その当該国では合弁会社についての株式の取得制限をある程度やっている、かなり大きな、十二カ国でそういういろいろな制限があるという御答弁でございましたけれども、そういうふうになりますと、今度の法改正で、現地の法人に対して当該の日本の、親会社と申しましょうか、あるいは銀行と申しましょうか、商社と申しましょうか、それが債務保証を与えていくというような政策が、そうした当該国の株式取得制限の政策と矛盾するのではないかというふうに考えるわけであります。  たとえば、それらの諸国の中では、投資は受け入れたい、しかし一方ではその投資増大によって経済支配が強まる、あるいは民族資本が圧迫される、あるいは経済的な打撃、国民の経済生活基盤の破壊、公害の発生等、そういう不安が外資に対して大変多い、あるいは経済活動基盤のおくれが、つまり、関連産業の未発達という関係でもいろいろ影響が出てくるのではないか、あるいは伝統的な慣習、価値感、宗教、生活感、そういうものが破壊されてしまうのじゃないか、主としてそういう点での批判が強いわけでありますが、この改正に当たってそういう点を十分に検討をされて改正をされたのかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  164. 古田徳昌

    古田政府委員 確かに、先生指摘のとおり、発展途上国におきましては、外国資本により自国経済が支配されるということを警戒いたしまして、外国側の出資割合を一定比率以下に抑えるというような政策をとっている場合も少なくないわけでございます。  しかし、これらの諸国におきますパートナーといいますか合弁事業の相手側といったものは、必ずしも資金力が豊かでないといったようなケースもあるわけでございまして、こういう事態に対処するために相手側の出資用の資金を供給せざるを得ないという場合も出てくるわけでございます。こうしたパートナーに対します出資用資金の融資につきましては、従来から海外投資保険におきましても保険の引き受けを行っていたわけでございまして、したがいまして、先生指摘のような点につきましては私どもとしましても十分考慮に入れた上で、さらに最近におきます資金調達形態の変化といいますか多様化に対応した形でこの保険制度改正をお願いしたいと考えているわけでございます。
  165. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 第二番目に、それとの関係で、最近の日商岩井の例でありますけれども、そうした本邦法人が実質的に支配をしている外国法人、日商岩井香港有限公司だと思うのですけれども、そうした外国法人に対して長期借入金に係る債務保証を行うというふうになっているわけですね。しかも、そうした外国法人が、後ほども触れますけれども、三国間貿易を進めていく、売り上げでも、最近は本国の伸びに対してかなり高い比率を占めているというふうに聞いております。しかも、そうした外国法人が多国籍企業化し、商行動の名のもとに、当該国の慣習なども無視してしまう、あるいは日商岩井の例でありますけれどもわが国では為替の現先の取引は禁止されているというふうに聞いているわけですが、そういうことも現地では行っている。そのことに対する具体的な統制というか、そういう国内法としての法的な措置もないのではないかと思うのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  166. 神谷和男

    ○神谷政府委員 日商岩井の御指摘の事件につきましては、現在関係方面でその事実関係についていろいろヒヤリングをいたしておるところでございますので、さらに解明された段階まで待ちたいと思いますが、一般的に申し上げますと、御指摘のようにわが国におきましては、為替は実需べースに基づいて行われるべきものでございますが、他の国においてそうなっておるかどうかは別問題でございますし、本邦の居住者と非居住者との間で外為法上問題になるような取引があったのかどうか、これは大蔵省と関係方面の事実解明に待つべき問題であろうかというふうに考えられます。基本的には、その外国法人の存在する地域の法令、慣習を遵守すべきものであり、この点において本件が問題があったかどうかは別問題であろうかと考えております。  しかし、一般的に商社につきましては、先生も御承知の総合商社の行動基準等ございまして、節度のある経営態度等がその中でうたわれております。行動基準のどの条項等に問題になるかということは、必ずしもこの条項に違反する行為であるということは申し上げられませんけれども、精神から言ってそれに適合したようなものとも考えられておりませんし、また社の方針にも必ずしも即していない、こういうふうに聞いておりますので、私どもとしましては、法的にはおのおのの法律に御指摘のように問題になるところがあるかどうかを検討すると同時に、一般的に行動基準の精神を体したような形で今後とも事業活動が行われるよう商社全般を通じて指導してまいりたいと考えております。
  167. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 それは当然これから厳しく調査をし、措置しなければならないと思うのですが、私が特に強調しておきたいと思いますのは、こういう外国法人が長期借入金を行う、それに対する保証債務がある、この保証債務に対して非常危険、リスクてん補する、こういうふうになるわけですね。つまり、国の政策として、そうしたきわめて不安定なときには基準から外れたような行動が起こる、そういうものに対する輸出保険法による保険てん補ということになると、かなり厳しく措置をしなければならないと考えるわけなんですが、簡単に一言だけ答弁いただきたいと思います。
  168. 古田徳昌

    古田政府委員 今回の債務保証に係る保険につきましての改正につきましては、私どもとしましては、先生指摘のようなケースは全く考えていないわけでございまして、わが国の市場開拓、資源確保経済協力等観点からしましての現地での合弁事業資金調達の円滑化という観点から考えているわけでございます。  さらに加えまして、このカバーする危険といいますのは、収用とか戦争とかということに伴いますいわゆる非常危険でございまして、先生指摘のような投機に伴いますような信用危険といいますか、そういう経営上の危険は一切対象としていないというわけでございます。  そういうことで、いま言いましたように、合弁企業や親企業のコントロールを超えた非常危険のみを事故事由とするということで、この運営につきましては、私どもは、今後のわが国海外投資の積極的な拡大につきまして効果的なやり方で進めていきたいと考えているわけでございます。
  169. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま答弁がありましたけれども、それは私も理解しております。ただ、指摘しておきたいのは、そういう一方では、非常に危険のリスクに対する保証があるというようなことで、商社の基準が外れてしまっては困るということなんですね。そういう点をひとつ法の運営の上で厳正にやっていただきたいということを指摘しておきたいと思います。  さらに、法文上の第三の問題でありますが、インフラストラクチュアの問題についてお尋ねをしたいと思います。  鉱物資源等の貨物生産事業に付随して必要となる関連施設整備というふうになっているわけでありますけれども、この関連施設整備という枠を現在どういうふうに考えているのか、その枠を何によって措置をしようとしているのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  170. 古田徳昌

    古田政府委員 今回の法改正によりまして新たに対象に加えられることとなります関連施設は、法文上では当該事業、つまり「生産事業若しくは当該事業に付随して必要となる関連施設整備」ということになっております。したがいまして、現在私どもとしましては、生産の基盤となる施設生産された貨物本邦に輸入するために必要となる施設等考えているわけでございます。  資源開発、輸入の円滑な促進のために、この範囲につきましては、先ほどの法律上の文言との関係も十分考えまして、資源生産事業との関連性専用性観点から法律上許され、かつ支障のない限り広く定めることとしたいと考えているわけでございます。  二、三具体的な事例を御紹介したいと思いますが、私どもとしましては、今後部内で十分検討の上で通達により明確にすることとしておりますが、たとえば、具体的に言いますと、生産のための原材料または生産された貨物の運搬の用に供される道路鉄道港湾等施設というようなものが典型的な例になろうかと思います。
  171. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 昨日、きょうの審議の中で、答弁の中でも触れられていたわけでありますけれども、その関連施設には住宅や福利厚生の施設学校病院等が入るんだという点についてはそのとおりでありますか。
  172. 古田徳昌

    古田政府委員 先ほど、道路鉄道港湾等事例を申し上げましたが、そのほかに、たとえば生産に携わる労働者の方々のための住宅施設等福利厚生施設というものも当然対象として取り上げていくことになろうかと思います。その際に、学校病院公共集会所等公共施設につきましても今後検討したいと思っておりますが、ただ、これにつきましても、最初に申し上げましたように、生産に従事する労働者が直接利用し、資源開発事業の遂行上不可欠であるということで検討していきたいと考えるわけでございます。全体としまして、先ほど言いましたように、法律で、一定の資源等の生産事業に付随して必要となる関連施設ということになっておりますので、そこでおのずから枠といいますか、歯どめがかかるということになっておるわけでございます。  私どもとしましては、法律上許される限り、かつ相手国側のニーズに応じまして広く考えざるを得ないというふうに思ってはおりますが、あくまで資源生産事業との関連性専用性の枠内にとどまるという、ことは指摘させていただきたいと思います。
  173. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いまの答弁で大分明らかだと思うのですけれども、つまり鉱物資源の生産用に必要な関連施設ということでありますが、この範囲を際限もなく広げていきますと、ある意味では、直接民生に関係するものにならざるを得ないのではないか。つまり一定の規模の工場、現場がつくられる、人口も集まってくる、町がつくられてくるというふうにならざるを得ないと思うのですね。そういった場合に、労働の再生産が必要であるという角度から住宅、病院と歯どめがなくなって、生産関係する施設と民生施設とが混合してしまうおそれが十分にあると思うのですね。経済援助では民生を重点に置いた施策があると思いますので、その点はひとつ厳密に措置をしていただく必要があろうかというふうに考えます。  質問の第二の問題は、経済協力の問題であります。わが国とASEAN、インドネシアとの尿素プラントに係る問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  今年の三月三十日に、このプロジェクトについての日本・インドネシア間の最終的な交換公文が締結をされたというふうに聞いておりますけれども、これはいつ、どういうふうにそういう措置がとられたのか、大臣、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  174. 田口健次郎

    ○田口説明員 ASEAN工業プロジェクトにつきまして御説明をさせていただきます。  ASEAN工業プロジェクトそれ自体は、先生御存じのとおり、昭和五十二年八月、当時の福田総理大臣がASEANの各国を歴訪されました際に、各国一つずつの工業プロジェクトに対する協力に同意され、総額で十億ドルの資金援助について好意的に配慮する旨の意思を表明されたものでございます。  御質問の本件インドネシア尿素プロジェクトでございますけれども、これは北スマトラのアチェというサイトにおきまして、アルン・ガス田から出てまいります天然ガスを原料といたしまして、一日当たりアンモニア一千トン、尿素一千七百二十五トンと申しますこれは非常に規模として大きいプロジェクトのようでございます。総所要資金四億一千万ドルの大型肥料プロジェクトをつくろう、こういう計画でございます。一九八四年一月に操業を開始する予定ということでございます。  いま御質問資金協力についてでございますが、先生ただいまおっしゃいましたとおり、本年三月三十日に追加資金供与につきまして、ENと申しますか、交換公文の締結をやったわけでございます。  これは経緯をちょっと振り返ってみますと、本プロジェクトに対しましては、わが国昭和五十四年の十月、総額で四百七十五億円、内容的には、うち円借款が三百三十億円、輸銀融資が百四十五億円でございますけれども、合計いたしまして四百七十五億円までの資金協力を行うことを決定いたしたわけでございます。その後昨年の九月に至りまして、インドネシア側から、九千万ドルがいわばコストオーバーとなったということで、追加融資を得たいということをわが方に要請をよこしたわけでございます。そういった経緯を踏まえまして、本年一月、鈴木総理がASEAN御訪問をなさいました際に、総額で百八十九億円、内訳が円借款が百三十二・三億円、輸銀融資が五十六・七億円でございますけれども、ここまでの範囲での資金協力を行うという旨、意図を表明されたものでございます。
  175. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 経過が若干いま触れられたわけでありますが、そうしますと、三月三十日に行われた交換公文の中身というのは、言うなれば第二次の追加であるということですね、九千万ドル。そうしますと、その第一次の問題としては、七九年の十月にこの問題で両国間の交換公文が締結をされて、総額三億一千三百万ドル、四百七十五億円の協力が明らかになった、こういう御説明だというふうに思います。  この七九年十月の交換公文の締結以前に、このプロジェクトに対してしかるべき調査が行われていると思うのですね。それは七八年の二月から約十カ月間ぐらいにわたってJICAで全面的な調査がやられていると思うのですが、そのJICAの全面的な調査によって三億一千三百万ドル、これによってこのプラントが建設可能であるという判断を下していると思うのです。その点について触れていただきたいと思います。
  176. 田口健次郎

    ○田口説明員 お答え申し上げます。  先生おっしゃられましたとおり、五十三年の二月から十一月にかけまして、JICAにおきまして本件のフィージビリティー調査を実施をいたしました。これに基づきまして、翌五十四年二月、インドネシア側から資金協力の要請があったものでございます。
  177. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 JICAのフィージビリティースタディーというのは、かなり権威のあるものですか。
  178. 田口健次郎

    ○田口説明員 JICAのフィージビリティースタディーは、国際的にも権威があるものだというふうに理解しております。
  179. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そうしますと、その国際的にも権威のあるJICAの結論に基づいて三億一千三百万ドルという大枠が決められて、そしてこの枠の中で入札が行われているわけですね。その入札はいつからいつにかけて行われて、どこが落札したのか、答弁いただきたいと思います。
  180. 田口健次郎

    ○田口説明員 お答え申し上げます。  いま御質問の点は、これはインドネシア側の問題だと理解いたしますが、一応昨年の五月ごろインドネシア側で入札を行ったというふうに聞いております。詳細は私ども承知いたしておりません。
  181. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 詳細は承知していない、これはインドネシア側の問題であるということでありますけれども、すでに報道されているいろいろの資料を集約してみますと、一昨年の暮れから昨年の五月ぐらいまでに入札が行われて、五月の時点で落札が決まった。八月ごろに発行されております八一年版のプラント輸出年鑑に、二番札ということで千代田化工、三菱商事ということが報道されているわけですね。一番札はどこにも書いてありませんが、最終的にこれをコントラクトした企業ですね、これはどこになっておりますか。
  182. 田口健次郎

    ○田口説明員 お答え申し上げます。  私ども政府の立場といたしましては、一応インドネシア側とコントラクターとの契約の問題でございますので、公式には知り得べき立場にはないわけでございますけれども、新聞報道その他では東洋エンジニアリングが落札したというふうに理解しております。
  183. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 公式的には知らないというお話でありますけれども、とにかく総額四億一千万ドル、大変な金額になるわけで、そういうふうな大変な協力、援助をやるのに、中身はほとんどわからないということでいいのかどうか、私は大変疑問でありますが、いまの御答弁によりますと東洋エンジニアリングということですね。  最終的にはそうなったということでありますけれども、一昨年の十月の交換公文のときの三億一千三百万ドルから、ことし三月三十日の四億一千万ドルに至る経過の中でひとつ明らかにしていただきたいと思うのですが、入札し落札するときには三億一千三百万ドルで、八二年に生産開始という枠組みの中で行われたわけですね。ところが、五月に落札が終わって、その後インドネシア側から、それだけでは足りないからさらに九千万ドル必要だ、こういう要求があったというふうに聞いておりますが、それは事実でしょうか。
  184. 田口健次郎

    ○田口説明員 お答え申し上げます。  先ほども御説明申し上げたと思いますが、昨年の九月になりまして、インドネシア政府側から、コストが約九千万ドル余分にかかると申しますかオーバーランするので、日本政府に対して融資の要請をしてまいりました。内容的にはいろいろございますけれども、基本は事業の着工が予定より約二年おくれるということでございます。その他品目のスペックが変わるというようなことも含まれておったわけでございます。
  185. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 その程度の説明だったのか、いろいろあるだろうと思うのですけれども、いずれにしても、九月になって九千万ドル不足であるという新しい提案があったということですね。  そうしますと、そういう九千万ドルという新しい提案、約二百億円でありますけれども、そういう提案があった中で、日本の政府としてはどういう措置をとられたのか。つまり、二年間完成がおくれる、九千万ドルが必要であるということを、たとえば改めてJICAに委託するなどして総合的な検討を行って一定の結論を出したのかどうか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  186. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  先ほど申しましたように、昨年九月、インドネシア側から九千万ドルの追加融資要請が参ったわけでございますけれども、私ども政府、事務当局といたしましては、できるだけの資料を集めまして、コストをできるだけ細かくチェックいたしたわけでございますが、その結果、さっき申しましたように、建設着工が二年おくれるということで約六千五百万ドル、それから仕様変更で、たとえば新しいバースを追加するとか、パイプのダイヤを太くするとか、その他いろいろございますけれども、そのような仕様の変更によりまして一千六百万ドル。この二つで資金額がふえるわけでございます。そういたしますと、追加借入分の金利がまたふえるということでございまして、金利がふえる分が九百万ドルということで、合わせて九千万ドルのコストオーバーランになるというのは数字として妥当であるというふうに私ども考えまして、供与に踏み切ったわけでございます。
  187. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 妥当であるという結論はいつ出されましたか。インドネシア側だけの資料に基づいて結論を出したのか、先ほど私も触れましたように、JICAなどに改めてフィージビリティーを委託して、そして結論を出したのか、その点ははっきりしていただきたいと思うのです。
  188. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  政府部内といたしまして九千万ドルの追加に踏み切りましたのは、総理がASEAN御訪問に出発される前、関係の省庁で踏み切ったわけでございます。  なお、今回、JICAに改めて委託するというようなことはやっておりませんけれども、本件はインドネシアの中でもいろいろ時間もかかるのみでなく、実はASEAN五カ国がそれぞれ寄り集まりまして、ほかの国の同意を得てこなければいけないというようなことで、非常に時間のかかる性格のものでございます。実はそういったことで九千万ドルの追加要請というものもおくれたのだと私、思いますけれども、要するに、インドネシア側も何とか早く本件プロジェクトを推進したいということで、先ほど申しましたように、私どもはあらゆるできる限りの資料を集めてコストを詰めた、こういうことでございます。
  189. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 ちょっとその辺が大変不明確だと思うのですけれども、インドネシア側が九千万ドルを改めて要望してきたのは九月ですね。落札が完了したのが五月ですから、三カ月か四カ月、わずかの期間なんですね。しかも日本で最大と言われている東洋エンジニアリングや千代田化工がその一番札、二番札に入っているということなんです。しかもそれは一九八二年生産開始ということで落札されているわけですね。それが突如として、二、三カ月たったらインドネシア側から、二年間工期が遅延せざるを得ないという申し入れがあり、しかもわが国のそうした大手の企業はその間全然わからない、あるいは当初の調査を行ったJICAもわからないということで、十二月の末に一定の見解が出ている。これはどうしても理解することができないわけです。  そこで、田中通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  田中通産大臣が、ちょうどこの問題があった直後でありますけれども、昨年の十一月の初旬にインドネシアを訪問されているわけですが、朝日新聞、日経、その他各新聞でも報道されております。スハルト大統領との会談も報道されております。この中で、いま御指摘をいたしました尿素プラントの問題についてインドネシア側から要望があって、通産大臣は、努力をしたい、こういうふうに追加援助に積極的な姿勢を示している、こういう各紙の報道が見られます。あるいは追加要請を基本的に受け入れる意向を表明したというふうになっているわけでありますが、これはまだ、インドネシア側から九千万ドルの追加要請があって事務当局でもやっと検討に入った段階だと思うのですね。そのときにすでにもう、追加要請を受けるというような趣旨の発言を通産大臣がされているというふうな報道でありますけれども、この点については田中通産大臣、どういうふうな見解ですか。
  190. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 私ども、よその国を訪ねる前に一応勉強するわけでございます。相手の国が何が懸案事項であるかということでございます。したがって、インドネシアを訪ねるときも、事前にこの尿素プラントのコストオーバーランの金額をどの程度要求しているかということも、向こうがすでに要求しているわけですから、こちらは十分勉強しておって、大蔵省とも通産省事務当局、いろいろ相談の結果、大体これを受け入れてもいいじゃないかという、まあ全面的な回答ではございませんけれども、そういう事務当局の結論に似たものを得て向こうに行って、向こうから相談を正式に受けましたので、もうそういう下地がございますので、それは積極的な方向に持っていきましょうということを言ったわけでございます。
  191. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そうしますと、ちょっと時間的に合わなくなるような感じがするわけですが、事務当局はまだ検討に入った段階、しかも十二月の下旬近くにほぼ結論が出されて、そして鈴木総理大臣の一月のASEAN訪問に間に合って、そして日本政府としての一定の結論が出されたというふうな経過が一方では述べられているわけなんですが、どうもその辺がはっきりしないわけです。
  192. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 時間的に合うとか合わぬとかいう問題は、あなたのいろいろ推測もあるでしょうけれども、私の言ったことに間違いありません。
  193. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 通産大臣が確信を持ってそういうふうに答弁されるわけでありますけれども、そうしますと、そういう通産大臣の、ある意味ではほぼ事務当局の検討に基づいて確定的なような御発言がインドネシアである。そうしますと、当然このプラントが動くというふうに考えられるわけなんですが、インドネシア側とASEAN側と東洋エンジニアリングとの間の契約は、そういう過程の中でいつやられたのであるか、その点について。
  194. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 一つ、いま私は途中で、座っておって思い出したのですが、そういう方向でやろうと言ったのですが、事務当局がもう少し具体的に詰めさせなければ、内容が向こうが何と何と何がプラスして九千万ドルになるのか、つかみ金で九千万ドルと言っているかもわからぬし、そういうところではどうにもならないということで、事務当局がもう少し詳細なことを出せということを向こうに要求して、それがなかなかもたもたして詳細な答えが出なかったということを、いま私は思い起こしております。
  195. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  日本側といたしましては、九千万ドルの追加融資を正式に向こうにプレッジいたしましたのはことしの一月になってからでございます。先ほど先生、JICAのスタディーのことをおっしゃられましたが、JICAのスタディーは、全体の所要コストの積算におきまして、五十三年初頭におきます価格を基準として五十七年の初頭に操業開始をするという前提で積算されたものでございます。その資料の中には、実は操業の開始が一年おくれるとどのくらい余分にかかるかというような計数もあるわけでございます。もちろん九月に田中大臣がインドネシアへいらっしゃいまして、その後事務ベースでもっと詳しい資料をインドネシアに要請したということで、かっちり詰めて結論を出しましたのは、先ほど申しましたように総理がアジアにいらっしゃる直前でございますけれども、私どももちろん勉強はしておりまして、そういった従来のJICAの資料その他を見ても、二年おくれるぐらいのことだと大体このぐらいの見当という程度のことは、昨年九月現在でも事務当局といたしまして感覚は持っていたわけでございますけれども、金額につきまして、確定的に九千万ドルということでプレッジしたのは本年になってからでございます。
  196. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 それはさっきからもう何遍も同じことを繰り返して答弁されて時間がたっているわけですけれども、お尋ねしているのは、最終的に一番札が東洋エンジニアリング、二番札が千代田化工であった、しかもその二番札の千代田化工の場合でも総額約七百億円、つまり三億一千三百万ドル前後に相応する番札であったわけですね。一番札は発表されておりませんからわかりませんけれども、しかし一番札はもっと低かったという推計は成り立つわけであります。そして最終的には東洋エンジニアリングが契約をした、それがいつなのかということをお尋ねしているわけです。
  197. 田口健次郎

    ○田口説明員 本件は、実は全額日本側が融資してこのプロジェクトをつくるという性格のものではございません。ASEANの五カ国がそれぞれに出資分担をいたしまして、資本金の一部を出し、全体として約三割でございますけれども、日本が円借款及び輸出信用で七割を出す、こういうことでございます。したがいまして、日本で融資をする金額とインドネシア側がいわば入札にかける金額とは一対一の関係になっていないわけでございまして、同時にまた、これはインドネシア政府と民間との関係の問題であるということで、先ほど申しましたように、私どもは公的に知り得べき立場にないわけでございます。したがいまして、むしろ民間の報道によるわけでございますけれども、昨年の五月に東洋エンジニアリングに落札したようだ、私どもはそのように承知しておる、こういうことでございます。
  198. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いつまでも同じような答弁を繰り返していらっしゃるわけなんですけれども、とにかく政府側は知る立場にはない、新聞の報道で東洋エンジニアリングが契約をした、日もわからないということですね。  そういうふうになりますと、確かにこのプロジェクトはインドネシア、ASEAN側が約三割、日本側が七割という、そういう経済援助でつくられるわけでありますけれども、しかし、日本側の資金の内容は、全体の資金の約七割が海外経済協力基金ですね、大体五年前後ぐらい据え置きで二十年ぐらいの長期の二、三%の延べ払いですね、あとは輸銀の資金である、しかも総額で約六百億前後になりますか、相当大きな額なんです。そういうものがよくわからない、どこの民間が契約したのかもわからない、そして、契約した民間の当事者が本当にその資金を使ってプロジェクトを完成させるわけでありますけれども、そういうこともわからないということであったのでは、やはり正常な経済協力という視点から見ても大変大きな疑義があるのではないかというふうに私は考えるわけです。また、−基金の運用やそういう点についても非常に不正常だという感じがいたします。どういうふうにお考えなのか、一言簡単にお答えいただきたい。
  199. 田口健次郎

    ○田口説明員 先生御承知のとおり、本件は政府ベースでの援助でございます。したがいまして、日本の政府からインドネシアの政府資金援助をいたすわけでございます。インドネシア側で全体のプロジェクトの発注とか工事をいたすわけでございます。そういったことで、私ども政府間ベースにおきまして、インドネシアが必要といたしますプロジェクトのための資金計画、そのための資料というものを持ち合わせて、かつ検討いたしたわけでございます。ただ、その全体の工事をどのように分けて、どのような入札の仕方をするかというのは、基本的にはインドネシア側の問題でございます。ということで、公的には知り得べき立場にはない、こう申し上げているわけでございます。
  200. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 どうも長く同じようなことになると思うのですけれども、最後にこの問題で通産大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、いずれにしても、海外経済協力基金を使い、日本とASEAN諸国との経済協力を深めていく、そういう性格を持っているわけです。しかもその資金の七割は日本側が負担をし、その大部分が基金である、つまり国民のお金です。国民のお金を使いながらそういうふうに経済協力体制をつくっていくというわけでありますから、当然最終的な交換公文が締結される場合には、そうした中身を十分に検討して、基金が必要であるのかどうか、そういう判断をするのは、インドネシア側ではなくて日本の政府が行うべきものである、当然そうだと思うのです。また、そういうふうに大蔵、外務、経企、通産四省庁間で合議の上で決定をしているというふうに思うわけですが、そうなると、いままでの答弁はきわめて不十分であり、やはり基金あるいは経済協力の正しい関係と発展という立場から見て、多くの問題点を残しているというふうに考えます。  そういう意味で、正常な経済協力と、また、日本の側としてもその経済協力に応ずる基本的な態度、基金の運用などを含めて、最後に通産大臣から一言御答弁を承りたいと思います。
  201. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 この問題につきましては、いま答弁をしておった中でも、私もはっきりしない部分がございますので、十分確かめてみたいというふうに思います。一般的な経済協力につきましては、民間に対して政府関係政府出資と申しますか、それから輸銀の金の協力というようなものが民間に付与されるわけでございますので、民間がすぐわかるのじゃないかと思いますけれども、こういう問題について政府間同士で後はどういうふうに具体的になっていくのか、私も実はあなたの質問があったので、そうだ、そういうことについてもう少し究明しなければならないと、非常に無責任なようでございますけれども、自分で反省した程度でございまして、私は、九千万ドルについては、これはうまくいったな、あとは総理が行った場合に行きやすいなという程度に考えておりまして、非常に申しわけなく思っておりますけれども、いずれにしてももう少し責任のある立場からこういう金についても究明しなければならないというふうに思います。
  202. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 通産大臣のそういう立場でひとつ御努力いただきたいと思うのですが、同僚の議員からもナショナルプロジェクトの問題について質問がございました。そういう意味で八〇年代はいろいろむずかしい課題を抱えていると思うのですけれども、ひとつ十分国民の納得のいくようなそういう対外経済政策を進めていただきたいということを指摘しておきたいと思います。  次に、第三番目に、わが国のとりわけ海外経済進出の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、一つは、今日まで直接的な海外投資の残がどのくらいに上っているか。アメリカ、西ドイツに次いで直接海外投資残はわが国が三番あるいは四番というふうにも言われておりますけれども、その件数や概要などを簡単に御説明いただきたいと思います。
  203. 神谷和男

    ○神谷政府委員 海外投資のうち、直接投資関連した部分でございますが、外国法人の新規設立及び外国法人に対する経営参加の件数は、最近五十年代に入りましてからは大体八百ないし九百件という規模で増加をいたしておりまして、五十五年三月末の累計で、件数で約一万二千件となっております。金額では百五十三億三千九百万ドルという状況でございます。
  204. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 その中で、特に製造業関係ではアジアが第一位である、しかも現地の人々を雇用する比率も非常に高いということでありますけれども、どの程度製造業が現地の方々を雇用しているか、その点について御説明いただきたい。
  205. 神谷和男

    ○神谷政府委員 先生指摘の製造業だけの数字というのがちょっと調査で仕分けをいたしておりませんので、わが国海外進出いたしております現地法人について、従業員の総数並びにそのうち現地従業員の数を説明させていただきます。  通産省で調査をいたしております海外事業活動動向調査で、三千三百六十九社の現地法人についての集計ができております。これは企業数としては少ないわけでございますが、規模といたしましては大体ほとんどのカバレージをいたしておりますので、その数字で申し上げますと、現地法人の従業員総数七十二万六千人、そのうち現地人の従業員の数が七十一万一千人という数字になっておりますので、ほとんどの部分現地の従業員を雇用しておる、こういう状況でございます。
  206. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 七〇年代から八〇年代へかけて海外直接投資が大変急速に伸びている、しかも製造業などかなりアジアを中心に拡大されているということでありますが、いまも答弁がありましたように、現地の雇用者も七十万人を超えているという状況ですね。これはある意味では開発途上国など現地生産が新しい角度から発展できるということで、私たちも大変喜ばしいし、所得の増大にそれぞれの開発途上国がつながっていくであろうというふうに直接的には考えられるわけであります。  同時に、一方では、わが国の国内にも約百三十万の失業者がいるというような現状もありますし、そういう海外直接投資、さらに製造業、それが国内にブーメラン効果という形でいろいろ製品の逆輸入あるいは雇用の問題にも関係をするという点なども、今後の海外投資に当たっては十分考えながら進めていく必要があるのではないかというふうに思います。  この点で、二番目ですけれども、商社の進出の状況について御説明いただきたいと思います。
  207. 神谷和男

    ○神谷政府委員 先ほどと同種の調査からの出典でございますが、三千二百六十企業のうち親会社が商業という形で回答を得ておりますのが千二百十二でございます。もちろんこれがすべていわゆる商社というわけではございませんが、この相当部分が商社というふうに考えられております。
  208. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 私も商社の進出がかなり著しいというふうに思います。とりわけそうした在外商社が果たしている商取引の規模でありますけれども、通産省からいただいた資料によりましても、昭和四十六年の三月現地の商社の行っている三国間貿易の状況を見ますと、五千四百三十七億円、五年たった五十一年三月を見ると、四兆四千四百八十三億円、五年間で約八倍取引額がふえている。その間のわが国の貿易の輸出全体を見ると、四十六年三月が六兆九千五百四十四億円、五十一年三月末が十九兆九千三百四十六億円で約三倍ですね。全体の貿易量は三倍だけれども、在外商社が三国間貿易をやっている比重というのは八倍にふえているという状況です。それだけに在外商社の果たしている貿易での役割りも大きいと思うのですが、同時に社会的な責任が、先ほどの日商岩井の問題でもそうでありますけれども増大をしているというふうに考えております。そうした点についての商社活動に対するお考えを承りたいと思います。
  209. 神谷和男

    ○神谷政府委員 基本的にかなりの経験の蓄積等を持っております日本の商社が、発展途上国のために三国間貿易あるいはその国と他の地域との関連の貿易を発展させるために貢献していくということは、これはわが国も含めて地域あるいは世界全体の発展にも貢献することになりますので、私どもとしては基本的に好ましいことであると考えます。しかし、もちろんそれらの活動を通じていろいろな問題を起こすという可能性も否定できません。  基本的には、商社も含めその他の現地法人すべて、その国の法規並びに商慣習といったものを遵守すべきことは当然でございますし、さらには日本におきます商社の先ほど申し上げましたような行動基準等あるべき姿、これも親会社として現地法人の活動の一つのモラル的な指針として適用されるべきものというふうに考えておりますので、この両側面から、すべての発展途上国から愛されるような商業活動が行われ得るような企業になるよう指導してまいりたいと思います。
  210. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 次に、プラント輸出の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  七〇年代の初頭から八〇年代にかけて、若干の起伏はありますけれども、全体としてはプラント輸出が伸びて、今日では自動車、鉄綱と並ぶ輸出の御三家であるというふうに言われておるわけであります。ただ、今度の法改正の中でも、最近伸びが鈍化してきている、そういう理由をいろいろの角度から挙げております。しかし、一方では、ヨーロッパ諸国などで指摘されておりますように、日本はプラント輸出などの場合に公的支持を伴う輸出信用の比重が非常に高いというようなお話もあるやに聞いているわけですが、わが国プラント輸出に当たって、たとえば輸銀等の使用は大体どういうふうになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  211. 古田徳昌

    古田政府委員 プラント輸出におきます輸銀の金融方式としましては、国内の輸出業者に対しましての延べ払い信用供与に必要な資金を貸しつけるいわゆるサプライヤーズクレジットと、外国の輸入業者または金融機関に対しまして直接信用供与しますいわゆるバイヤーズクレジット・バンクローンとがあるわけでございます。この両方の方式を合わせました融資承諾実績は、五十三年度に四千二十二億円となっております。五十四年度は三千八百十七億円となっております。五十五年度につきましては現在集計中でありまして最終的な計数はつかめておりませんが、おおよそ四千六百億円弱となった模様でございます。  なお、この輸銀の全体の融資承諾額に対します比率は、年度ごとにかなり変動しているわけでございますが、おおよそ五割から六割台程度ということになっております。
  212. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 資料でいろいろだと思うのですけれども、大蔵省の資料によりますと、昭和五十三年度、輸出に対して輸銀の貸し付けの総額が四千二百億円、そのうちの九十数%の三千八百七十億円がプラント輸出に充当されているというような調査も出されておりますし、五十四年度もほぼそういう推移で進んでおります。わが国全体のプラント輸出の中に占めるそうした輸銀の融資の比率というのが約三〇%くらいに相当するんではないか。そういう意味で、公的信用がとりわけプラント輸出では非常に高いというふうに私は考えるわけなんです。この点でたとえばヨーロッパ諸国を見ると、アメリカの場合に一五%前後、フランスの場合にやはり一五%前後、ドイツの場合には一二、三%というふうに一つの統計が出されておりますが、そういう欧米諸国に比べても公的信用の比重は高いというふうに私は認識をしております。その点についてはいかがでしょうか。
  213. 古田徳昌

    古田政府委員 各国別に金融方式が非常に違いますので、数字の直接的な比較はきわめて困難ではないかと思います。たとえば延べ払いにつきましての金融あるいはキャッシュ払いにつきましての金融、さらに先ほども言いました国別の金融方式の違いといったふうなことがありますので、先生指摘のような姿に直ちに結論的に言えるかどうかは、私どもとしても明確にはできません。
  214. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いろいろ通産省が発表される場合に、欧米諸国との比較などがよくやられますので、そういう意味では一定の基準というか、そういうもので対比される必要があろうかと思うのですけれども、いままで発表されている各種の資料を見ると、そういうふうに判断をすることができると思うのです。とりわけプラントなどこうした大型の輸出について、ある意味では金融的にはかなり十分と言われる施策がとられている。さらに今度の法改正においても、輸出代金保険は非常危険の場合には九〇%から九五%とてん補率が五%高まる、あるいは普通輸出保険の場合でも同様で、そういう非常危険のリスク保険によって十分担保することができる、こういう現状であります。全体として見るならば、六〇年代から七〇年代、八〇年代にかけて主として大企業や大手商社が海外に進出をし、そしてそこでの生産活動や商社活動を行ってきた、それはこうした金融的な支持に支えられ、あるいは国の政策に支えられて進出をしてきているというふうに私は考えるわけであります。同時に、これからのさまざまな経済摩擦を見た場合、さらにカントリーリスクなどを考えていった場合に、それだけではなくて、改めて開発途上国あるいはソ連など東欧共産圏との問題も考えていかなければならないというふうに私は考えるわけであります。  そこで第四番目に、最後でありますけれども、総合安全保障の問題とあわせて、とりわけ強調されております経済安保の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  先日、三月十九日に総合安保会議が開かれました。この中心的な議題は、伊東外務大臣の訪米を前にしていろいろの角度から防衛問題が経済問題も含めて検討されたということであります。通産大臣も構成員の一員として出席されているやに聞いております。  この総合安全保障会議の中では、アメリカのヘイグ国務長官が経済協力は防衛のかわりにはならない、こういう強い主張を最近されている、こういう問題をめぐっていろいろの御意見があったというふうに聞いております。こうした点について田中通産大臣考えをお聞かせいただきたいと思います。
  215. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 それぞれの国の方針あるいはそれぞれの政府観点によっていろいろ違うわけでございましょうが、私の考えは、東南アジア諸国、発展途上国というものを大きく抱えた日本といたしましては、総合安全保障というものは経済の安定が即民生の安定につながりますし、それが東南アジア諸国の平和の維持、ひいては世界の安全、平和につながるという観点を持っておりますので、これら発展途上国の経済の向上、そういうことは日本としては十分考えざるを得ません。軍備だけが安全保障というわけにはまいりませず、私どもは、経済協力を通じて発展途上国が経済成長をしていく方向に十分頭を使うことも大切ではないかという考えを持っておりますし、政府の一員としてそういうことを閣議でも私の考えを披瀝しております。そういう観点からこの総合安全保障会議というものにも出席しておるわけでございます。
  216. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 経済安保と軍事的な側面が強い軍事安保との関係になると、なかなかその整合性がむずかしいのではないかというふうに私は考えるわけなんです。たとえば、イラン問題を考えてみましても、日本としてはイランとの友好協力関係を強めていきたい。あるいは隣国であるイラクとも同様でありましょう。あるいはサウジアラビアとも同様でありましょう。あるいは社会主義圏であってもソ連や東欧圏とも同様の立場に立たなければならないし、当然、国際経済を俯瞰した場合に、そういう基本的な姿勢が前提であるというふうに考えます。  ところが、プラント輸出の問題でもそうでありましょうけれども、つまり外的な違った要因、主としてアメリカの意向によってそういうものが左右されてしまう。一時的には石油制裁という形で経済協力を切っていく。社会主義圏などとの関係もそうでありましょうし、イランとの問題でもそれが大きなペンディングになっておりました。そういう点で、総合安保という一つの軍事体制を前提にしたかさの中での経済安保ということになると、当然崩れざるを得ないのではないか。とりわけ八〇年代、これから開発途上国のさまざまな問題を抱えておりますし、そういう危惧をするわけです。  これは国連総会における表決でもそうでありますけれども、一九七四年十二月の第二十九国連総会におきましての権利義務憲章第二委の採決でも、わが国欧米諸国とともに棄権、米、西独などはこれに反対をする。さらに第二章の「経済的権利及び義務」という内容の中では、民間投資の問題、これは国有化の問題を若干含んでおりますけれども、そうした問題や、あるいは多国籍企業に対する制約の問題など、かなりの重要な経済問題、つまり対等、平等の経済関係を確立していく、民族主権、経済主権を前提にした正常な経済関係を確立していくという問題については、わが国は反対あるいは棄権という事態が非常に多いというのが特徴であります。そういう点で、八〇年代の対外経済政策を進めていく場合に、軍事的な安保、政治的なそういうものに制約されないと言ってしまえば語弊があると思うのですけれども、そういう立場から、軍事優先ではなく開発途上国との正常な関係発展、あるいは社会主義国に対しても率直に物を言っていく、そういう中で正常な経済関係を確立していく、そういう大きな展望を持って平和的な国際関係を進めていくというのがわが国にとっての進路であろうというふうに私は考えるわけであります。  最後に、その点通産大臣の御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  217. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 わが国は、石油の九九・八%を輸入しておりますし、大きなエネルギー問題も抱えておるわけでございます。貿易立国でもありますし、自由主義経済体制をしいて開放経済、つまり輸出も輸入もできるだけ開放していくということがわが国の国是ではないかと私は思います。あくまでそういう観点に立った経済協力体制あるいは世界貿易へ向かっていくことが日本の最も得策でもあるというふうに考えておりますし、一応どの国にでも市場を開放すると同時に、相手側にもそれを開放してもらう経済政策を行っていきたいというふうに考えます。
  218. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 終わります。
  219. 野中英二

    野中委員長 清水勇君。
  220. 清水勇

    ○清水委員 昨日来、各委員から輸出保険法改正にまつわる周辺問題を含めた質疑、そして政府側の答弁が重ねられているわけですから、大筋、問題点は出ていると思います。しかし、若干の確認をしておかなければならぬ点もあるように思いますので、以下御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、政府は三月半ばに総合経済対策を確立をされたわけですが、その中で特にプラント輸出の拡大を取り上げているわけであります。無論プラント輸出の持つ国内産業、中小企業等への需要効果あるいは波及効果、こういうことを考えてみれば、意味のある政策であるということを私も認めることにやぶさかじゃないのですが、問題は、今日のプラント輸出等をめぐる厳しい国際環境、そういう中でどれだけの具体的な展望をお持ちになってこの方針を示しているのか、まず承りたいと思います。
  221. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 御承知のように世界も非常な不況の波にありますし、国内の経済もそうでございます。したがって、私どもは、まず経済の不況から脱するということから、一応物価も安定の方向にありますので景気対策をということで、公定歩合の一%引き下げからその他の対策を打ち上げたわけでございまして、その中に経済協力プラント輸出の強化ということがあるわけでございます。日米間の自動車摩擦に見られますように、余り輸出を推進してもそういう反動がございますし、国内の需要の喚起ということでこれまた国内経済を刺激することも一つの方策でございます。といって、海外協力を含めるプラント輸出にそっぽを向くことも、これまた御承知のように、一億円のプラント輸出は国内に二億五千万の需要を喚起する。公共事業の一億投資の二・一倍に比べるとかなりの額でございますし、そういう観点から両方を踏まえた経済協力、余り摩擦を起こしてもいけないし、相手側のことも十分考えなければいけない。といって、これはほっておけないというような多少のジレンマはございますけれども、やはり日本が貿易立国といたしまして、そういうコンスタントに経済協力プラント輸出というものを念頭に置かなければなりませんし、私どもの今回の三次の経済対策につきましては、そういうことを十分考えつつこのプラント輸出経済協力というものを方針として打ち出したわけでございます。
  222. 清水勇

    ○清水委員 過去十年、七〇年代を振り返ってみると、確かにプラント輸出は七〇年代の初頭約十億ドルであったものが、十年間を経て百億ドルの大台に乗ったわけでありますから、まさに大変な成長であったと思います。しかし、私が申し上げるまでもなく、この数年来はその伸び率が鈍化をする。とりわけ八〇年代を迎えた昨年の場合には、きのうからたびたび出ているように受注が三〇%減というような失速状態を招いている。  そこで問題は、昨日来三〇%にも及ぶ大幅な受注減の原因として、イラン・イラク戦争であるとか中国の経済調整であるとか、さまざまな問題が提起をされてはおりますけれども、私はそれ以上に激烈な国際競争、特に世界不況の深刻化という状況の中で、従来わが国がもっぱらシェアとして確保し得た発展途上国等々これらに先発欧米諸国がシェアを求めて新たに進出をしてくる。そういう中で、現実の問題として総合的な競争力を欠くという立場で受注減を見たというケースというものがかなりあるのじゃないか。そうだとすると、具体的に今度の景気対策の一環として、そういう情勢の中でプラント輸出の拡大基調というものをどう確かなものにしていくのか、具体策がなければならぬと思っているわけですが、その辺の所信をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  223. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 経済対策の中の経済協力部門は、御承知のように、そう幅広く書かれているわけじゃないわけでございまして、大きな基本方針だけをうたっておるわけです。  しからばその具体策はどうかということになると思いますけれども、これにつきましては、先ほどからも指摘しておられますように、世界の不況ということがあるわけで、これに対しまして東南アジア、アフリカあたりの発展途上国における大きな市場というものに対して、アメリカ、西ドイツ、フランス、そういう先進国も加味して参加しておるわけで、不況のところに、つまり需要が少なくなっておるところに今度は多くの人が駆けつけていろいろなことをやるわけで、その条件の関係とかいろいろあるでしょう。したがって、私どもも、プラント輸出あるいは経済協力についても明らかに一種の国際競争というものがあるわけでございますので、条件の整備、つまりいままで日本は非常にタイド、つまりひもつきであったのをあるいはひもつきにしないという部門も出てくると同時に、長期低利の金あるいはローンにOECDの一つの枠はございますけれども、混合借款というようなことも考えたりいろいろな、いずれにしてもプラント輸出の条件の緩和あるいは相手側の国を十分知るための政治経済その他情報のキャッチ、そういうようなあらゆることを具体的にはやっていかなければならないというふうに思っております。
  224. 清水勇

    ○清水委員 いまOECDのことについても、あるいは混合借款といった問題についても、大臣からお答えの中で述べておられますが、これはこの後で少し具体的に私の方から触れさせてもらうつもりですから後に回します。競争力をつける意味でさまざまな条件整備が必要だと思っているのだ、こういうお話がありました。その一環として、今度とりわけカントリーリスク等に対するてん補率引き上げる、あるいは新しい共同保険などという保険制度整備をする、こういうことであろうかと思うのですが、私は、果たしてそういうてん補率引き上げ等でどれだけ競争力というものをつけることができるかどうか、こういう点で多少の疑念を持っております。  そこで、この際、最近一連のプラントの受注をめぐって欧米諸国との競争で敗退をしているというケースが目立っているわけなんですが、敗退をしている原因というものをどうとらえているか、具体的にお聞かせを願いたい。
  225. 栗原昭平

    栗原政府委員 私どもプラント輸出基本政策委員会という委員会を設けておりまして、その議論の過程で調査をいたした数字がございますが、敗退原因につきまして調査をいたしますと、やはり一番多いのが、円高基調の中で、円高リスクを価格に転嫁せざるを得ないというような意味を含めての価格の問題というのが一つございます。これが一番大きいように思います。  それから、金融条件というようなことが次にございまして、これはやはり狭い、需要のなくなったマーケットの中で、特にヨーロッパ勢もそこへ集中してくるというような、先ほど大臣からのお話もございますが、そういうような中でミックストローンの話などもありまして、そういう条件の関係で敗退をしたというのがその次にあろうかと思います。  主としてこの二つが大きな原因であろうかというふうに考えております。
  226. 清水勇

    ○清水委員 私も、いま挙げられた二つは大きな原因のうちに数えられるべきものだと思いますが、しかしそれ以上に、それ以上と言っては言い過ぎかもしれませんが、同等程度の原因が別にあるのじゃないか。たとえば最近プラントが大型化をする、あるいは高度化をする、そういう状況のもとで総合的なコンサルティングを行う、そういう意味での能力の問題、あるいは受注から建設に至るエンジニアリング能力といったような点、さらには優秀な下請業者等を現地で調達をするといったような能力、こういうような現地工事能力とでも言うのでしょうか、そういう点に、たとえば先発の欧米諸国と比較をすると、片方は歴史が長く豊富な経験を有する、そういうところからどうも力の面で明確に優劣の差があらわれているのじゃないか。たとえばコンサルティング等々を通しても、それがある面でコストを引き上げる、価格を押し上げる要因の一つにもなっているのじゃないかと私は思っているわけなんです。  つまり、ソフトの面というか、こういう点での弱さが指摘をされ、これを克服することが実は競争力を確保する重要な要素なのではないかと思うのですが、いま局長が触れられておらないことはちょっと不満なんですが、どうですか。
  227. 栗原昭平

    栗原政府委員 プラント輸出の国際競争力が一般的に言って劣っているというふうには考えておりませんけれども、ただ、その中でハードの方はかなり自信がある、しかしソフトの方は、いまおっしゃったようにコンサルティング能力あるいはエンジニアリング能力といった面で、どちらかといえばまだまだアメリカなり西ドイツなりに比べると劣るのじゃないかというのがどうも一般的な評価ではなかろうかと思います。  特に、先ほど御指摘がありました現地工事能力というような問題につきましても、たとえば東欧でありますとか中南米、要するに従来経験のないような地域におきましての工事は、経験がないわけでございますのでどうしてもリスクを大きく見積もって、価格としては高い価格を提示せざるを得ないというようなことにもなりますし、そういった意味で結局価格の競争力の面でどうも敗退する事例があるというようなこともございますし、そういった意味でこれから日本のエンジニアリング企業、コンサルティング企業もだんだんに経験を積みながらそういった力を育てていくというのが一つの方法であると思います。  幸いに日本のそういった企業はずいぶん活力も持っておりますし、それぞれ技術的な能力も積んできておりますので、そういったいい方向での活力を生かす方向で私ども、こういった能力を伸ばすような施策を考えていくべきじゃないかと考えておる次第でございます。
  228. 清水勇

    ○清水委員 そこで、いまのことにちょっと関連をしてお尋ねをしたいのです。  たとえばエンジニアリング振興協会の専務理事等が指摘をしている中に、こういうことがあるのですね。最近のわが国プラントの受注率が急激に低下している、引き合いは非常に多いのだけれども受注率がかなり下がってしまった、かつて引き合いに対し受注率が七〇%台であったものが最近では四〇%台に低下をしている。こういう報告があるわけなんでありますが、この原因をどういうふうに見ておりますか。
  229. 栗原昭平

    栗原政府委員 引き合いに対します受注の比率というのを数字的に一概になかなか比較し得ない面があろうと思いますけれども、最近の状況考えてみますと、全体に特に発展途上国を中心にマーケットが縮小しておるという需要の減少停滞傾向の中で、反面、競争が激化しておるということがございますので、そういった中での受注の比率の低下ということが一つ考えられるわけでございます。したがって、日本側の競争力、これはハードの競争力もございますしソフトの競争力もございますが、そちらの面が非常に条件が悪くて受注の率が落ちたというふうには私どもは必ずしも考えておらないわけでございまして、全般的にはそういうマーケット全体がやはり厳しい状態になってきたということではないかなという感じを持っている次第でございます。
  230. 清水勇

    ○清水委員 そういう局長お答えでありますから、この際、大臣にちょっと承りたいのでありますが、景気対策の立場でプラント輸出に力を入れる、それはそれでいいんですけれども、これまでの歴史的経過を振り返ってみると、プラント産業の場合、内需と外需との比率というのはほぼとんとんくらいなのではないか。おのおの前年度等あるいは七九年時点等で判断をすると、内需も外需もそれぞれ二兆円台というような規模なのではないか、こういうふうに見ているわけなんですが、仮にそうだとすればプラント輸出に力を入れる、しかし、同時に内需の振興に力を入れるということが重要な政策課題になるのじゃないか、こういうふうに見るわけですが、この点、大臣はどういうふうにごらんでしょうか。
  231. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 内需と外需どちらにウエートを置くかということでございますが、私どもは、現在国内の経済状態が、御承知のように三月の倒産件数などを見ましても千五百九十七件、これは三月では史上二番目でございますけれども、そういうふうに、在庫調整も進んでおりませず、景気は非常に冷え込んでいるわけでございます。公定歩合の一%の下げがこれからどのように機能するか、あるいはいま国会で成立しました予算をどういうふうにうまく運用していくか、あるいはそれがどの程度増幅していくかということにかかっていると思いますけれども、いずれにしても、いろいろな経済摩擦なども控えておりますし、できるだけ今回は内需に持っていこう、そして成長率五・三%を達成しようということを目標にしているわけでございます。  したがって、私どもは、このために個人消費あるいは住宅建設というようなことを考えておるわけでございますが、いずれにしても、こういうものを刺激するにいたしましてもいろいろな方法を講じなくてはいけませんし、内需ばかりに頼っておるわけにもこれまたまいりませず、と申しますのは、それでなくてもプラント輸出あるいは経済協力という観点から見ても日本が敗退しているケースが多く、内需にばかり目を向けておるとますます外の市場というものが、表現は悪いと思いますけれども、荒らされるというようなことなどを考えますときに、非常にむずかしいことではあるが、まあまあバランスをとった内需と外需、そういう政策をしていかなくてはならぬのじゃないかというふうに思っております。
  232. 清水勇

    ○清水委員 プラント輸出にある程度の期待をかける、これを私は否定をしているわけではないんですが、しかし、プラント産業がこれまで内需という面で一定の成長発展を遂げてきていることもまた事実なんですから、そういう点で内需という点についても十分な配慮と対応を払って並走していくことを注文をつけておきたいと思います。  さて、そこで経済協力との関係で若干お尋ねをしたいと思います。  プラント輸出について言えば、後発国であるわが国の場合、たとえば政情の面でも経済的にも安定をしていると見られるヨーロッパ等々の市場、こういうものに進出をしようとしても、これまでの経過が示しているようになかなかむずかしい。好むと好まざるとにかかわらず、勢い発展途上国わが国の主要なシェアに求めていかざるを得ない、こういう状況だと思うわけです。これからの先行きも大体そういう方向で展望せざるを得ないのじゃないか。  そうだとすると、今日、とりわけ非産油国である途上国等の場合、国際収支が次第に悪化を重ねる、これらを通じて、全体として債務累増というような苦悩に直面をしている。やむを得ず、一面では工業化を進めたいけれどもプラント等の輸入も規制をせざるを得ない、抑制をせざるを得ない、こういう状況に立ち至っているのだろうと思うのです。  そこで、わが国プラント輸出を順調に伸ばしていこうとする場合、どうしても、それがプラント輸出であれ、海外建設工事であれ、途上国の経済が安定的に発展をし得るような、そういうわが国経済協力の面での役割りというものがいままで以上に非常に求められるのではないか、こう見ているわけなんでありますが、その辺の所信を、大臣いかがでしょう、お聞かせを願えましょうか。
  233. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 経済協力の趣旨というものは、やはり相手の発展途上国をテークオフさせる、つまり中進国あるいは発展国にどんどん衣がえをさしていかなければならない、そして民生の安定、経済の安定が即政治の安定、それから世界の安定というふうにつながるという考え方。それにはどうしたらいいかということでございますが、貧乏な国に経済協力して、しかもそれが非常に高くつくようなことではそう成り立ちません。したがって、たとえば金を出すにしても物をつくるにいたしましても、長期低利な条件の金と物の援助、そして発展途上国を高度成長経済に持っていくということが趣旨であろうかと私は思います。したがって、プラント輸出にいたしましても、そういう非産油国でしかも発展途上国の国々に対しましては、同じプラントにいたしましても、金と物について条件を非常に緩やかなものにしなければならないのじゃないかというふうに考えます。
  234. 清水勇

    ○清水委員 経企庁の政務次官もお見えでありますから、ちょっとお尋ねをいたします。  一月の二十三日に経済企画庁がODA、政府開発援助の中期目標というものを示しているわけであります。これによると、GNP比率を思い切って改善を図る、こう言っておられるわけでありますが、まずその具体的な考え方をお示しを願いたい。
  235. 中島源太郎

    ○中島(源)政府委員 お尋ねのODAの中期目標でございますが、これは七〇年代の後半の援助額を八〇年代前半では倍増いたすということが大きい目標でございます。大体百七億ドル弱を二百十四億ドル程度以上にするというのが努力目標であります。それによりまして、いまお尋ねのGNP比率でございますが、当面先進諸国のGNP比率にできるだけ近づける、こういう努力をいたしてまいる、その一環としてこの援助額の倍増ということで実現をしてまいりたい、こういうことでございます。
  236. 清水勇

    ○清水委員 いまGNP比率の話が出たわけですが、現在のGNP比は何%であり、五年後はこれを何%にするという目標であるか。
  237. 小谷善四郎

    ○小谷説明員 昨年のわが国のODAのGNP比でございますけれども、〇・三二ないし三三ぐらいでございます。まだ最終的な計数はまとまっておりませんが、大体その辺でございます。  それから、今回の中期目標によって五年後にどれだけGNP比を高めるかという点につきましては、数字はつくってございません。GNP比を高めるという方向を明らかにしているわけでございまして、具体的に何%にするということにはなっておりません。
  238. 清水勇

    ○清水委員 これはおかしな話ですね。GNP比率を改善するということを大きな目標としてうたっておきながら、目標は定めていない、これはどういうことですか。
  239. 小谷善四郎

    ○小谷説明員 GNP比率につきましては、これからの日本経済の名目の成長率並びに円レートがどうなるかということによって影響を受けるものでございますから、具体的に将来五年後に何%にするという数字は決めていないということを申し上げたわけでございまして、GNP比を改善していくということは明らかにしているわけでございます。
  240. 清水勇

    ○清水委員 ちょっと納得ができないのですがね。  仮に、五年後どうなるかわからない、つまりGNPそのものがどのくらいの規模になるか、円レートがどのくらいの水準になるかわからない、それはあり得る話ですね。だがしかし、新経済社会七カ年計画等々を通じて一定の想定をされているのでしょう。そうだとすれば、現時点に立って判断をすれば、大体GNP比でこのくらいの比率に引き上げていきたいといった程度のものがなければ、風のまにまにたださまようというような話で、せっかくのこの中期目標なるものが一体どれほどの期待が持てるかということに疑いを持たれてしまうので、私は、経企庁がそんなことを考えているとは思わない、もっとしっかりした理念を持っておられると思うのだけれども、もう一回聞かしてください。
  241. 小谷善四郎

    ○小谷説明員 ちょっと繰り返しになって恐縮でございますけれども政府開発援助のうちで大きな割合を占めておりますのが、一つは借款でございますし、もう一つは国際機関に対する出資等でございます。それからもう一つは、借款につきましては援助受け入れ国の状況によっても影響を受けますし、その他の先進国の動向によっても左右される面がございますし、さらには国際金融機関につきましては、国際金融機関が将来どれだけの増資をするかということにつきましても実はまだ未確定でございます。そのようなことから非常に振れがございますので、目標年次において幾らにするということはなかなか困難でございます。したがって、GNP比を改善するということを明らかにし、あわせて二倍以上に援助を高めていくということでその目標を定めた、こういうことでございまして、今後ともGNP比の改善には努めてまいる、こういうことでございます。
  242. 清水勇

    ○清水委員 時間がありませんから、これ以上はいたしません。  そこで、これまでのわが国の援助の仕方に対してかねがね批判の向きがあることは、政府も御存じのとおりだと思います。たとえばDAC加盟国十七、そのうち援助の質という点について、グラントエレメントというのでしょうか、比較係数で見るとわが国は最下位であるというふうな指摘がございます。ですから、いま言われるように、量を倍増する、このことも無論重要なことでしょうが、同時に質を改善していくということが必要なのじゃないかと思うのですが、その辺はどんなふうなお考えでしょう。
  243. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 量で拡大をしておるばかりが能じゃないと思いますし、十分質的な改善を常に図っていかなければならないと思っております。
  244. 清水勇

    ○清水委員 そこで、政府はこれまで経済協力基金等について、いわゆるひもつきでない、アンタイドというのでしょうか、この率を高めようとしていると思います。ただ、この場合に、どこから調達をしてもいいよという一般アンタイド、これについて、実際に西ドイツ等で見ると、そういう一般アンタイドが九〇%くらいだと言われているのだけれども、結局はそのうちの約八〇%くらいが西ドイツ企業から物を調達するような結果になっている。ところが、わが国の場合はどうもこれが三〇%程度ではないか、こういう非常に低い水準だと伝えられているわけですけれども、この辺はどういうふうに見ておられますか。
  245. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 西独とか、アメリカもそうでしょうけれども、アンタイド、つまりひもつきではないということの経済協力プラン、いろいろなもので非常に評判が表向きはいいわけですね。  しかし、私は、これはかなり裏でいろいろなことがあるんじゃないかというふうに思っておりますし、悪く言えば奥深いずるさがあるような気がします。そういう点では、日本の商社とか日本のいろいろなそういうところはずるいずるいと言われるけれども、案外淡泊じゃないかというふうに思っておりますが、こういうことを外に公表しますと失言になりますのでこういうことは用心しなければいけませんけれども、やはり何かそこに古い、長い経験から編み出したものがあるかもわかりませんし、ただ、ほかのことで日本が低いというふうには思えませんし、そういう点があるんじゃないかというふうに思います。
  246. 清水勇

    ○清水委員 ところで、大臣が通産大臣に就任をされて以来、ASEAN諸国を歴訪される、あるいは一月に入って中南米を歴訪される、そうした際にブラジル等で円借款の約束などをされておいでになるわけですけれども、具体的にどういう内容について約束をされ、その約束をした内容についてその後これを具体化をするためにどういう作業が進められているのか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  247. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 ブラジルは行っておりませんけれども、それはどういうことでしょうか。
  248. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  ブラジルはいらっしゃっておらないわけでございますけれども、円借款関係では、実は、本年一月メキシコにいらっしゃいましたときに、田中通産大臣から、いわゆる円借款と輸出信用をまぜました全体の信用枠の供与をいたしました。円借款を三百億円、これと輸出信用を混合して使ってくださいということで、円借款と輸出信用との割合等についても原則を言っていただいたわけでございます。  これは、この一年来、特定のプロジェクトと申しますよりは、やはりメキシコの方から、産油国として油を売る場合には自分の工業化に協力した国に売りたいということで、したがいまして、そういう金融と油というものが絡んでまいっておるわけでございまして、これはむしろシーリングと申しますか枠として供与していただいた、こういうことでございます。
  249. 清水勇

    ○清水委員 そこで、先ほど大臣からOECDのガイドラインに関連をした御答弁がありましたから、この機会にちょっと尋ねておきたいと思います。  今度の景気対策、つまり三月十七日でしたかの景気対策の中で、たとえばプラント輸出に力を入れる、その際、競争相手国、競合国が低金利の融資というものを提示をした場合には、その対抗策として金利が安いというか低い円借款を提供できる、こういう制度を積極的に考えておられるようでありますが、そのこととOECDのガイドラインとの間には矛盾はありませんか。
  250. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 OECDのガイドラインとそういう混合借款の問題でございますけれども、御指摘のように、これは、全く矛盾しておるというふうにはとられないかもしれませんけれども、日本といたしましても、OECDのガイドラインを盾に混合借款というのはおかしいじゃないかということを日本自体が批判したこともございますし、余りいいことではございませんです。しかし、どの先進国もそういうミックストクレジットという一つの混合借款というものをやって低利長期のそういう借款を実現しておりますので、日本の場合もそういうことを一応頭に置いて、いつでもそれが実現できるような体制だけはとっておかなければそういう競争に負ける場合もございますので、必ずしもOECDの一つの精神には沿ってはおりませんけれども、そういうことも考えております。
  251. 清水勇

    ○清水委員 いまのお話ですと、確かにフランスだとか西ドイツでミックストクレジットを提供する、それを一つの要因としてわが方が敗退をした、こういうケースが出ている。つまり、よその国が混合借款をやる以上対抗上わが方もやらざるを得ない、好ましいとは思わないがやらざるを得ない、こういうふうに言われるわけでありますが、そういう発想で進むと、たとえば借款による低利分で輸銀や民間融資の高利分をカバーをするために、国民の税金である資金というものが民間企業の競争力をつけるために際限なく投入をされていくというようなことになりやしないか。仮にそういうことになるとすると、資本の論理としてはあるいは許されるのかもしれませんが、財政民主主義というような観点で見た場合に果たしてどうなのか、こういうことを感ぜざるを得ないのですが、いかがでしょう。
  252. 田口健次郎

    ○田口説明員 円借款の供与に当たりましては、先ほど大臣からもおっしゃられたことでございますが、受け入れ側の相手の発展途上国の経済、社会開発に資する、彼らが自分の足で立っていけるようにするというのが基本でございまして、これを支援するために相手の国の実際のニーズに即した援助を実施するというのがたてまえでございます。  いま先生指摘のミックストローンの関係でございますけれども、これも、残念なことではございますが、一部の先進諸国、特にヨーロッパ関係の諸国から混合借款等が非常に供与されておるということで、防衛的な意味で、マッチングベースで混合借款等を供与せざるを得ないという現状にあるかと思いますけれども、御指摘ございましたように円借款を際限なくどんどん使っていくということにはならないというふうに考えております。
  253. 清水勇

    ○清水委員 語尾がよくわからない。円借款を際限なく……
  254. 田口健次郎

    ○田口説明員 際限なく、無際限にどんどん円借款を、外国と競争する上でプラント輸出を伸ばすために使っていくという見通しにはならないと思います。それらの先進諸国も、それぞれ財政の限界がございますし、そういうことには相ならないと思います。
  255. 清水勇

    ○清水委員 いずれにしても、輸出保険法改正のねらいの一つに、今後はいわゆる共同受注といったようなものをかなり展望していかなければならないし、その立場から言えば共同保険というものが整備されなければならぬ、そういうねらいが示されておるわけですから、一面で言えば経済的にも国際協調という路線が一段と太く敷かれるような、そういう趨勢がうかがわれる。しかし、いま議論にありましたように、競争相手国が低利の融資を提供した場合にはわが方も対抗上というような発想で、仮に混合借款等をどんどん出していく、これは際限なくやることはないというふうなお話ですが、対抗上好ましくはないがやらざるを得ないという考えがあってある程度行われるというようなことになると、私は、一面では競争国との関係をゆがめたり、あるいは果てしなく国際信用競争というようなものが激化されるというようなことになることを大変心配をしているわけです。  今日、OECDのガイドラインを守ることをめぐって情勢が非常に厳しい、むずかしい事態にあることは私はよく承知をしておりますが、しかし、わが国とすれば、紳士協定とも言うべきこのガイドラインをできるだけ各国が共同して守っていく、こういう立場を引き続き堅持をすべきだというふうに思います。新聞報道等によりますと、五月の末にパリでガイドラインの見直し会議が開かれる、こういうことを聞いているわけでありますが、いま申し上げたような意味で、金利問題についてどういう認識を持っておられるか、お聞かせを願いたいと思います。
  256. 古田徳昌

    古田政府委員 OECDのガイドラインの見直しにつきましては、昨年のサミットにおきまして、昨年中に結論を出したいということが述べられていたわけでございますが、その結論が延び延びになっておりまして、先生指摘のとおり、五月の半ばでございますが、会議が開かれることになっております。その席で、日本のような低金利国とさらにその他の高金利国との利害関係の調整が必要になってくるわけでございますが、いずれにしましても、先生指摘のように、輸出信用面で過当競争が生じないように、国際協調が十分行われるような適切なガイドラインの設定のために、日本側としましても十分協力していきたいと考えておるわけでございます。
  257. 清水勇

    ○清水委員 そこで、六月でしたか、南北サミットが開催をされるというふうに承知をしておりますが、これには通産大臣、出席をされますか。されるとすれば、こうした問題がテーマになるのかならないのか、お聞かせを願いたい。
  258. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 総理が招待をされておりまして、その場合、総理は出席したいと言っております。私にはまだ招待状は来ませんし、だれもお呼びがないわけでございますので、いまのところ行く考えはございません。ただ、そのときにそういうOECDのガイドラインの正常を、過当競争のないような経済協力というような問題がテーマにならないかという問題でございますけれども、私は、この問題は議題になるというふうに思っております。
  259. 清水勇

    ○清水委員 議題になるという認識をお持ちならば、お呼びがないから私は行かぬなどということではなしに、むしろ、これだけ重要な問題になっているわけですから、通産大臣、大いに出席をして卓説を披瀝をされるべきじゃないか、こう思います。いかがでしょう。
  260. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 国際会議でございますので、インビテーションがないのにのこのこ出かけていくというのはちょっと考えものではありますが、精神状態は、いま清水委員がおっしゃるような気持ちでおりたいと思います。
  261. 清水勇

    ○清水委員 私どもにも応援ができれば幾らでもさしてもらいますから、そういう機会を得られることを期待をしておきたいと思います。  そこで、カントリーリスクに対するてん補率を今度九五%に上げる。その根拠についての質疑もあってある程度のお答えが出ておりますから、これは重ねてお聞きはいたしません。  ただ、ちょっと聞いておきたいのは、最近の年次における事故率、事故の発生状況と言ってもいいでしょうが、これはどんな状況でしょう。
  262. 古田徳昌

    古田政府委員 輸出保険制度創設以来昭和五十四年度末までの平均事故率は〇・二一九%となっております。過去におきます主要事故としましては、輸入国の外貨事情の悪化に基づく外貨送金遅延が最も多いわけでございます。  なお、ごく最近時点でこの事故率について数字を見ますと、普通輸出保険の事故率は、五十二−五十四年度で〇・〇五九%、輸出代金保険の事故率は〇・二六%という数字になっております。
  263. 清水勇

    ○清水委員 局長、この五十四年度末までの事故率〇・二一九%というのは、競合する欧米諸国と比較をして高いのですか、低いのですか。
  264. 古田徳昌

    古田政府委員 正確な数字はわかりませんが、実はわが国保険料は欧米諸国に比べますと三分の一ないし五分の一という非常に低い料率になっております。そういう料率のもとで輸出保険特別会計は健全に運営されているわけでございまして、そういう関係からいたしますと、わが国の事故率は相対的に見て低いのではないかと推測されるわけでございます。
  265. 清水勇

    ○清水委員 ところで、リスクの問題なんですけれども、先ほど来大臣からもお話があるわけでございますが、世界的に不況が深刻化をしておる、プラントの受注をめぐる競争もいよいよ激化を示しておる、こういう情勢なんでありますが、競争が激化すればするほど、ある面でしょい込むリスクが大きくならざるを得ないのじゃないか、こう私は思うわけです。また、一面では、産油国あるいは非産油国とを問わず、発展途上国の場合には共通的に政情不安というものが存在をする。タイなどという国は非常に安定的な国だと思っていたら、この間クーデターが起こる、こういうような話でありまして、どうもそうした面でのリスクが予知される。一面では、さっき申し上げた債務累増というような信用不安も増大をしている。  そこで問題は、保険契約等に当たってカントリーリスクをどう事前に予知するか。輸出業者は輸出業者でそれぞれの能力に応じてリスクを見抜くような努力をしているのでありましょうが、経済的な面についてはある程度予知ができるかもしれないが、政治面等の予知ということになると非常にむずかしいのじゃないか。しかし、そういう不確実性が強いような面であればなおのこと、保険制度というものをわが国政府が運営をしているわけなんですから、リスク予知方法といいましょうか、そういうものに十二分の手だてを講じなければならないと思っておるわけですが、どういうふうにやっておられますか。
  266. 古田徳昌

    古田政府委員 確かに輸出保険の運営につきまして、カントリーリスクの評価体制整備するということは最も重要な事柄であります。ことに、先生も御指摘になりましたように、オイルショック以降、非産油発展途上国を初めとして債務の累積、政情不安定といったものが進んでおりまして、外貨送金遅延等の非常危険による保険事故が逐次増大してきているのは事実でございます。私どもとしましては、カントリーリスクの評価体制を充実して的確な評価を実施していくことが必要であると考えているわけでございますが、そのためのやり方としましては、各方面から入手しますデータ、情報をもとにしまして、頻繁に輸出保険利用される国、八十五ないし九十カ国ということになっておりますが、それらの国につきまして原則年二回評価を行っております。基本的なやり方としましては、他の調査機関や銀行が行っているものとさほど異なったものではありませんが、情報の面ではベルンユニオンを通じます各国情報、これは国ごとの債権額とか引受額、支払い遅延状況、事故額及び引受方針等々があるわけですが、そのような情報利用可能なこと、それから通産省としまして、通産省自体の部局が持っております情報利用可能になってくるということがわが国輸出保険制度の特色ではないかと考えておるわけでございます。  さらに、これらのやり方に加えまして、現在、輸出保険におきましては、この方法をさらに合理化するために、電子計算機によるカントリーリスク管理システムの開発に努めております。昭和五十五年度には定量情報のデータベース化を行ったところでありますが、五十六年度には定量情報に基づく分析システムの確立を行うとともに、定性情報のデータベース化を行うこととしておりますが、政治問題等に関しましての情報、定性情報ということで考えるといたしますと、この方式の確立はかなりむずかしい点があるかと思いますけれども、いずれにしましても、そのような努力を続けまして、より迅速的確なリスク管理を行いたいと考えているわけでございます。
  267. 清水勇

    ○清水委員 そこで、ちょっと話題が飛んで恐縮なんですけれども、ポーランドの金融危機の問題についてちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。  最近の新聞報道などにもかなりショッキングな報道が続いているわけなんでありますが、いずれにしても、西側諸国の対ポーランドに対する融資総額は約二百四十億ドル、こういうふうに推定をしておりますが、そのうち一〇%、二十四億ドルくらいわが国が融資をしているのではないか、こういう見方がございます。また、その中では高性能電気炉用の電極の輸出に伴う融資だけで二千万ドルが融資をされているということなんでありますが、こうした点について輸出保険関係のある部分がありましたらひとつお答えを願いたい。また、いま私が申し上げたことについて通産でわからなかったら大蔵省筋でお答えをいただきたい、こう思います。
  268. 古田徳昌

    古田政府委員 輸出保険の点についてお答えさしていただきたいと思います。  ポーランド向けの輸出保険につきましては、政情の流動化、それから累積債務の増大等によりましてカントリーリスクが著しく高まっているわけでございますが、こういう観点からしまして、長期大型案件につきましては個別審査によりましてケース・バイ・ケースに引き受けを検討しているという現状でございます。  ただ、このポーランドに対しての輸出保険の残高はどうかという点につきましては、ある特定の国につきます引受金額あるいは責任残高ということにつきましては、当該国の信用力に関しますわが国政府としての評価を示すものと受け取られるおそれがあるわけでございまして、従来からこの数字の公表は差し控えさしていただいているところでございますが、このような取り扱い方は他の諸国においても同様でございます。
  269. 大橋宗夫

    ○大橋説明員 御説明いたします。  ただいま先生のおっしゃいました日本の債権額が二十四億ドルという数字でございますが、私どもの調べております限りでは約十億ドルというふうに承知しております。  それから、電極に関連した二千万ドルのシンジケートローンがあるということでございますが、これは個別の問題でございますので御容赦いただきたいのでございますが、日本の銀行も欧米の銀行と同様ポーランドに対しまして中長期の貸し付けを行っていることは事実でございます。
  270. 清水勇

    ○清水委員 これは微妙な問題のようでありますから、若干の意見はありますが、この際これ以上は割愛をいたします。  さて、そこで、今度の法改正を通じて普通輸出保険についての代金回収義務というものを負わせることになり、同時に、回収された代金を政府に納付の義務を負荷する、こういうことになっているわけですね。  さて、そこで、実際問題として、たとえばイランでホメイニ革命というのがございましたが、どういう形態の革命になるかということは別として、たとえば革命がある、あるいは政変が起こるといったような場合には、えてして、回収をすると言ってみても交渉相手は相手の政府ということになるケースが多くなるんじゃないかと思うのです。それで、最近中小企業海外進出が増大しているというふうに言われているわけでありますが、たとえば力の弱い中小企業が、そうした場合、法律に基づいて代金を回収せよと言われても、交渉当事者として果たして当事者能力を持ち得るかどうか。そうなると、回収の義務を背負ってはいてもこれが履行できない、こういうことにつながっていくと思うので、こういう場合は、たとえば政府が外交ルートを使うことなどを通じて回収をするといったようなことを予定されているのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  271. 古田徳昌

    古田政府委員 現行の輸出保険制度におきましても、事故が発生しまして保険金を支払った場合には、被保険者に対しまして回収義務を課しているわけでございます。回収金があった場合には、まず回収金から回収に要した費用を控除した後に、保険金を支払った割合に応じまして国庫に納付してもらうという仕組みになっているわけでございますが、このような仕組みとなっておりますのは、事故を起こしましたバイヤー、つまり輸出の相手方でございますが、それと取引関係を持っておりまして、常時連絡をとり合ってきた輸出業者が回収作業を行うことが最も効果的な回収方法であるということで、こういう方式をとっているわけでございます。  ただし、非常危険によります保険事故の場合、最も多い事故事由でございます外貨送金遅延につきましては、この場合は政府間で債務繰り延べ協定を締結するわけでございまして、この債務繰り延べ協定のもとに、確実な回収をスケジュールに応じまして確保していくということになるわけでございますので、そういう意味では政府も側面から支援を行っているわけでございます。  さらに、海外投資保険におきまして事故が発生するというようなことになりました場合には、これは当然のことながら回収義務自身は輸出者にありますけれども政府としましては外交ルートを通じまして、先方政府と外交的な折衝を続けるということになるわけでございます。
  272. 清水勇

    ○清水委員 次に、今度の法改正共同保険というものが導入される。相手国、つまりメーンのリスクと同時にバイヤーリスクをわが方、サブの側でカバーをするということになるのだろうと思うのですが、このようなリスクの大きいものについては保険料率を割り高にするのかどうか、これが一つ。  それから、メーンの保険契約が解約になったというような場合、サブの保険契約というものは一体どうなるのか、自動的に解約ということになるのかならないのか、その辺をちょっと確認をしておきたいと思います。
  273. 古田徳昌

    古田政府委員 共同保険におきましてイフ・アンド・ホエン条項つきのメーン・サブ方式の契約に伴う危険は、これをサブの立場から見ますと、先生指摘のとおり、第一に通常の輸出相手方に係る危険があるわけでございますが、それに加えましてバイヤー、つまり最終購入者に係る非常危険、信用危険も含んでいるわけでございます。そういう意味では、リスクが二重になるというわけでございます。したがいまして、今回の法改正によりまして、新たに法対象に追加されるイフ・アンド・ホエン条項つきのメーン・サブ方式のサブ部分につきましては、契約の相手方及びバイヤーに係る二重のリスクをカバーすることとなるために、私どもとしましても、二重のリスクに対応する割り増し料率を設定することが必要になるのではないかと考えております。ただ、具体的な率につきましては、過去における事故の発生状況等を勘案しまして、改正法の施行までの間に私どもとしても決定したいと考えております。  なお、メーンの契約が解除になった場合にはサブの契約はどうなるかというお尋ねでございますが、ヨーロッパの場合には、通常サブの契約も自動的に解約になるという方式が多いようでございますが、わが国の場合におきましては、メーンの契約が解除になった場合には、まず相手方と協議をするという形で処理したいと考えております。
  274. 清水勇

    ○清水委員 委員の皆さんもおそろいのようでありますから、最後に一言だけお尋ねをして終わることにいたしますが、中小企業関係できのう中澤次長の答弁を承っていると、海外投資が急増しておる、プラント輸出等もかなり件数が伸びておる、しかし事前の調査がどうも十分でなかったために、残念ながら成功例は二〇%程度にとどまっている、こういうことが言われているわけでありますが、もしそれが私の聞き違いでないとすると、これは大変なことだと思うのですね、成功例が二〇%でしかないということは。そういうこともあって今年度から海外投資アドバイザー制度、こういうものを設けようとされているのだと思いますし、これを通じてリスクを小さくしていこう、こういうふうにお考えなんでしょうが、いずれにしても大企業などと違って、現実の問題として情報収集にしても、あるいは事前の調査が云々と言われても、自前の力ではどうにもならない、どうしてもこの際は政府が積極的にそういう弱さをカバーするということがより積極的に行われなければならない、こういうふうに思っているわけでありますが、その点をお聞かせをいただきたいと思います。
  275. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 ただいま御指摘いただきましたまず最初の点でございますが、成功率二割というのは、これはどれが成功しているかというメルクマールが大変むずかしいわけでございますけれども、一応二〇%と押さえましたのは、海外投資によりましてこちらが利益を送金という形で収得しておりますのが、中小企業の場合は二割ということでございます。したがいまして、そのほかの八割につきましては、必ずしも全部が失敗というわけではございませんが、まだ利益を上げるところまでいっていないということでございます。  それから、そういう状態では、これから中小企業海外へ進出してまいります際に非常に問題であるという御指摘でございますけれども、この点につきましては、確かに情報不足ということが根源でございまして、その辺をカバーするということが中小企業政策として非常に重要でございます。これは中小企業が自力でやるべきだと言いましても、それだけの余力は中小企業にございませんので、これを今年度からいわゆる中小企業アドバイザー制度、あるいは情報のネットワークを張りまして、そして情報の蓄積システムを立てる、あるいは情報誌を発刊するということをまず手始めにいたしましてカバーをしていこう、政策的に支援していこうという体制固めをやろうとしております。これで十分かどうかという点につきましてはまだ問題がございますので、行く行く年度を追いまして拡充を図ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  276. 清水勇

    ○清水委員 終わります。(拍手)
  277. 野中英二

    野中委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  278. 野中英二

    野中委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。小林政子君。
  279. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、日本共産党を代表して、輸出保険法の一部改正案について反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、今回の改正点は中小企業者の要求を反映したものになっておらず、大企業本位の改正になっている点であります。  中小企業の場合、輸出保険料は輸出金額の一%であり、大企業は〇・八%未満となっています。資本力や経営力がまさる商社や大企業の方が保険料が低いという事態を改めることこそ中小企業者の切実な要求であります。今回の改正案は、こうした要求にこたえ得るものになっていないのであります。  第二の反対理由は、今回の改正案は、大手商社やプラント類の海外投資輸出の危険防止を一層手厚く担保する点であります。  わが国は財政困難に陥っているにもかかわらず、輸出保険利用している大手商社などに対して、税制面では海外投資損失準備金制度、大型経済協力プロジェクト準備委託制度などによる優遇、またプラント輸出の大部分が日本輸出入銀行の融資や延べ払いを使用し、いまやプラント輸出信用に占める公的支持による輸出信用の割合は、わが国が世界第一位になっています。さらに、今回てん補率の九五%にアップすることによってプラント類の輸出業者の輸出信用の負担を軽減させるものとなっています。  また、輸出代金保険海外投資保険改正に見られるように、プラント輸出業者や大商社のリスク防止の拡充が図られております。両保険とも使用件数で見れば、九〇%以上が十億円以上の大企業であります。最近の報道に見られる日商岩井香港の為替投機など一連の商社や大企業の反社会的行為に対する抜本的対策なしに、リスクだけは国が責任を持つというような輸出保険改正にわが党は反対であります。  第三の反対理由は、今回の改正案がアメリカの対外戦略を補強するための改正となっている点です。  政府は、総合安全保障政策として経済協力発展途上国の主権やその経済主権を認める方向ではなく、逆にわが国の国益を前面にした西側の一員と称して対米追随の立場からの海外経済協力を推し進めています。これはわが国海外投資プラント輸出先の大半を占める開発途上国の発展方向をゆがめるだけではなく、カントリーリスクという非常危険をさらに増大させることば明白であります。  以上の諸点について申し述べました理由から、私は本改正案に反対の態度を表明し、反対討論を終わります。(拍手)
  280. 野中英二

    野中委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  281. 野中英二

    野中委員長 これより採決に入ります。  輸出保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  282. 野中英二

    野中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  283. 野中英二

    野中委員長 この際、本案に対し、渡部恒三君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ及び社会民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。後藤茂君。
  284. 後藤茂

    後藤委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     輸出保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 投資保証協定は、海外投資を円滑化し、海外投資保険の引受けをも容易にするものであることにかんがみ、発展途上国を中心としてできる限り多くの国と協定を締結するよう努力すること。  二 中小企業海外投資の増加と海外投資保険利用の実情等にかんがみ、中小企業に対する輸出保険制度普及活動を積極的に展開するとともに、事務手続の一層の簡素化とサービスの向上に努め、その利用促進を図ること。 以上でございます。  附帯決議案の各項目の内容につきましては、審議の経過及び案文によりまして御理解をいただけるものと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
  285. 野中英二

    野中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  渡部恒三君外五名提出の動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  286. 野中英二

    野中委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。(拍手)     —————————————
  287. 野中英二

    野中委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 野中英二

    野中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  289. 野中英二

    野中委員長 この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田中通商産業大臣
  290. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、万全を期する所存でございます。(拍手)      ————◇—————
  291. 野中英二

    野中委員長 次に、北側義一君外二名提出下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。  提出者より趣旨の説明を聴取いたします。北側義一君。
  292. 北側義一

    北側議員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案についてその提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  本法は、取引関係で弱い立場にある下請事業者の利益の保護を図るため、下請代金の支払いの期間及び支払い条件等について基準を定めておりますが、実際には不況の深刻化等、経済変動の影響が下請事業者に著しくしわ寄せされ、親事業者から不当に不利な取引条件を押しつけられる場合が少なくないのであります。  たとえば不況により親事業者は減産に追い込まれると、下請事業者に対する発注量を大幅に減らすのみならず、自社の操業率の低下を食いとめるために、それまで外注に出していた仕事を社内生産に切りかえる内製化を進めることにより、下請事業者の一方的な切り捨て、あるいは自社生産の減少分をはるかに超える仕事量の削減を行うのであります。  さらに、親事業者は資金繰りが苦しくなると、下請代金の支払い条件についても現金比率を引き下げたり、納品から支払いまでの期間、さらには手形の決済期間を延長して下請事業者にその負担を転嫁することになります。  言うならば、親事業者は下請事業者を景気変動のクッションとして利用しており、景気がよいときは生産費の節減を図るために多くの外注を出す一方、不況時にはこれらを切り捨てて不況の影響を少しでもやわらげようとするのであります。  このように親事業者は下請事業者を利用して不況に対処することができますが、下請事業者にとっては自己防衛の手段は全くありませんので、その利益を保護するためには法的に十分な措置が必要なのであります。  この点から見ますと、現行法は一部にざる法とも言われるように、下請事業者の保護対策としてはきわめて不十分な内容であります。  そこで、本改正案は、下請事業者の置かれている現状にかんがみ、支払い条件について規制を強化して親事業者と下請事業者との公正な取引を確保し、もって下請事業者の経済的利益の保護を図ろうとするものであります。  次に、改正案の内容について御説明申し上げます。  第一は、下請代金の支払い期日を現行の六十日以内から四十五日以内に短縮することであります。  本来、下請代金は給付受領後遅滞なく支払うべきものであります。しかしながら、現実は不況となり資金繰りが苦しくなると代金の支払い期日を繰り延べる傾向が見られます。  この際、下請代金を速やかに支払い、下請事業者の保護を図るため、支払い期日を給付受領後四十五日以内に短縮することといたしております。  第二は、下請代金のうち、現金支払い部分の比率を新たに定めることであります。  親事業者は資金繰りが苦しくなると、下請代金について現金支払いの比率を下げる傾向が見られます。  手形の場合は金融機関で割り引くとき一定の割引料がかかりますし、また実際には金融機関により手形金額の百分の十ないし百分の二十を歩積みとして強制的に預金させる場合が少なくありません。  さらに、手形が不渡りになった場合には、下請事業者は金融機関からそれを買い戻さなければならず、それだけ危険負担を負うことになります。  このように、手形による支払いは下請事業者にとって相当不利な面がありますので、公正な取引を確保するため、親事業者は下請代金のうち親事業者の現金支払い比率の実態及び支払い能力を勘案して百分の五十以上を現金または小切手で支払うよう努めなければならないことといたします。  第三は、都道府県知事に中小企業庁長官と同様に本法違反事実に関する立入検査、報告の要求、公正取引委員会に対する措置の請求の権限を与えることであります。  現行法ではこれらの権限は都道府県知事に与えられておりませんが、膨大な下請取引の実態について十分に把握し、それに関して必要な措置を講じて下請事業者の保護に遺憾なきを期すためには、これらの権限を都道府県知事にも付与することが必要であります。  第四は、親事業者は下請事業者との継続的な取引関係を維持するように努めるべき旨の規定を新たに設けることであります。  これは、経済変動により親事業者の生産が縮小されると、外注部分を大幅に減らして一方的に下請事業者を切り捨ててしまう場合が少なくありませんので、下請事業者の立場を保護するために、親事業者は継続的な取引関係にある下請事業者に対しては引き続き、その取引を維持するよう努めるべきことといたしました。  以上が本法律案の提案理由及び要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  293. 野中英二

    野中委員長 次に、内閣提出商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案及び商工会の組織等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案の趣旨の説明を聴取いたします。田中通商産業大臣
  294. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  商工組合中央金庫は、いわゆる中小企業者の組合の系統金融機関として、中小企業の発展に大きな役割りを果たしてきております。  今後とも、中小企業の一層の発展を図っていくためには、商工組合中央金庫におきましては、中小企業者に対する資金の安定的供給を図るとともに、経営基盤の強化を図ることが必要であると考える次第であります。また、市街地再開発事業の円滑な推進を図るため、市街地再開発組合を同金庫の所属団体となることができる者として追加することが必要であると考える次第であります。  かかる趣旨にかんがみ、今般、商工組合中央金庫法改正を提案することとした次第であります。  次に、本法律案の要旨につきまして御説明申し上げます。  第一は、債券の発行限度額引き上げることであります。商工組合中央金庫の債券の発行限度額は、自己資本の二十倍と定められておりますが、その発行額は限度額に近づきつつあります。このため、今後の中小企業者資金需要の増大に安定的に対処する観点から、これを自己資本の三十倍に引き上げることとした次第であります。  第二は、一所属団体の出資口数の限度を引き上げることであります。現在、商工組合中央金庫の一所属団体が有することができる出資口数の限度は、原則として五万口となっておりますが、民間出資を増大し、自己資本の充実を図る観点から、これを所属団体の出資総口数の百分の一に引き上げることとした次第であります。  第三は、商工組合中央金庫の所属団体となることができる者を追加することであります。近年、各地で活発に行われている市街地の再開発事業は、中小商業者の店舗の近代化等に資することにかんがみ、都市再開発法に基づく市街地再開発組合を同金庫の所属団体となることができる者として追加することとした次第であります。  また、これらに加え、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。  次に、商工会の組織等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  商工会は、商工業者の自主的組織であり、これまで地域の商工業の総合的な改善発達に大きな役割りを果たしてまいりました。  商工会は、法制定後二十年を経た現在において、商工会自体の基盤強化を踏まえ、地域の商工業の一層の振興を図るとともに、地域社会の諸側面において重要な役割りを果たすことが期待されており、このため、商工会及び商工会連合会の事業活動をより一層促進することが必要となっております。  かかる趣旨にかんがみ、今般、商工会の組織等に関する法律改正を提案することとした次第であります。  次に、本法律案の要旨につきまして御説明申し上げます。  第一は、商工会の目的として、社会一般の福祉の増進に資することを追加することであります。  商工会が魅力ある地域づくりに多面的に寄与できるよう、商工会の目的として、「地区内における商工業の総合的な改善発達を図ること」に加えて、「あわせて社会一般の福祉の増進に資すること」を追加することとしております。  第二に、地域商工業の一層の振興を図るため、商工会の事業範囲に「商工業に関する調査研究を行うこと。」及び「商工業に関する施設を設置し、維持し、又は運用すること。」を追加するとともに、商工会の目的の改正に伴って「社会一般の福祉の増進に資する事業を行うこと。」を追加することとしております。  第三に、商工会の事業をより一層地域ニーズに適合したものにするため、商工業者以外の者が商工会に会員として加入できることを定款で定めることができることとしております。  第四に、事業規模の拡大に伴い、商工会及び商工会連合会の理事の定数を増加することとしております。  また、以上に加え所要の規定の整備を行うこととしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  295. 野中英二

    野中委員長 次回は、来る十五日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会      ————◇—————