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1981-04-07 第94回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月七日(火曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 野中 英二君    理事 梶山 静六君 理事 辻  英雄君    理事 原田昇左右君 理事 渡部 恒三君    理事 後藤  茂君 理事 清水  勇君    理事 北側 義一君 理事 宮田 早苗君       天野 公義君    植竹 繁雄君       小川 平二君    奥田 幹生君       粕谷  茂君    島村 宜伸君       田原  隆君    泰道 三八君       丹羽 雄哉君    橋口  隆君       鳩山 邦夫君    林  義郎君       宮下 創平君    粟山  明君       渡辺 秀央君    城地 豊司君       水田  稔君    山本 幸一君       渡辺 三郎君    長田 武士君       武田 一夫君    横手 文雄君       小林 政子君    渡辺  貢君       伊藤 公介君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 六助君  出席政府委員         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         中小企業庁次長 中澤 忠義君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    小谷善四郎君         外務省経済局国         際経済第二課長 増田 煕男君         大蔵省国際金融         局投資第三課長 田中 義具君         通商産業大臣官         房審議官    河野権一郎君         通商産業省通商         政策局経済協力         部長      田口健次郎君         通商産業省貿易         局輸出保険企画         課長      本郷 英一君         建設省計画局国         際課長     三谷  浩君         日本輸出入銀行         副総裁     中村  進君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ————————————— 委員の異動 四月一日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   依田  実君     伊藤 公介君 同月七日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     丹羽 雄哉君 同日  辞任         補欠選任   丹羽 雄哉君     浦野 烋興君     ————————————— 三月二十五日  液化石油ガス保安確保及び取引適正化に  関する法律ガス事業法整合に関する請願  (伊藤公介紹介)(第二一二二号)  同(柿澤弘治紹介)(第二一二三号)  同(天野公義紹介)(第二一九〇号) 四月一日  液化石油ガス保安確保及び取引適正化に  関する法律ガス事業法整合に関する請願  (三塚博紹介)(第二四三六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第四一号)      ————◇—————
  2. 野中英二

    野中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田原隆君。
  3. 田原隆

    田原委員 輸出保険法改正について若干お伺いしたいと思います。  無資源国であり、貿易立国であるわが国が、今後安定的な発展を維持していくためには、国際協調を図りながらわが国産業構造高度化し、発展途上国に対する経済協力を積極的に推進するとともに、資源安定的確保を図っていくことが必要であると思っております。  そこで、プラント輸出海外建設工事、それに海外投資の積極的な推進が一層重要となってくるわけでございますが、しかしながら、一方、プラント類輸出海外投資をめぐる環境は、国際競争の激化、カントリーリスクの深刻化等非常に厳しくなっております。これらを円滑に推進していくためには、輸出保険制度役割りとその拡充がきわめて重要となってまいるわけでございますが、私は、以上のような観点から、本改正案とそれに関する諸問題について幾つかの質問をしてみたいと思います。  まだ大臣がお見えでないので、通商政策に関する基本的な問題については後ほど大臣にお伺いすることとしまして、まず法律改正に関する諸問題について、事務当局からお話を伺いたいと思います。時間が余りありませんので、答弁は要点だけを簡単にお答えいただきたいと思います。  最初に、まずこの法律改正案提出に至る背景とか経緯とかいうものについてお伺いしたいと思います。特にこの制度改正ニーズといいますか、関係業界要望内容等についてお話をいただきたいと思います。
  4. 古田徳昌

    古田政府委員 プラント輸出海外建設工事海外投資活動につきましては、わが国産業貿易構造高度化経済協力推進といった観点から、今後ともその適正な伸長を図る必要があるわけでございます。  しかしながら、近年プラント輸出海外建設工事の伸びは鈍化しつつありますが、一方、個々の案件を見ますと、大型化の傾向があらわれているとともに、海外投資を含め、契約内容取引形態が多様化している状況にございます。このような実情を踏まえまして、現行制度実態との間のギャップを是正し、外国輸出保険制度並みわが国制度整備を図る必要があるため、このたびこの法律改正を御提案した次第でございます。  関係業界からは、上述のような実態を踏まえまして、今回提案させていただきました改正諸点につきまして従来から日常業務の中で制度改善の要請が出ておりましたが、本年三月に日本貿易会初め七団体がまとまりまして、輸出保険法の一部改正に関する要望関係省庁等に提出してまいった次第でございます。  私どもとしましては、本件に関しまして本年の一月と三月の二回にわたりまして、輸出保険審議会を開催し、制度改善の基本的な考え方及び法律案概要について了承を得ました上で、本年三月十三日に閣議決定の上国会に提案させていただいたものでございます。
  5. 田原隆

    田原委員 何か、いまのお話を聞きますと、日本は諸外国に比べて少しおくれておって、いま初めて取り上げたような感じがするのですが、その点はどうなんですか。
  6. 古田徳昌

    古田政府委員 先ほども御説明いたしましたように、プラント輸出なり海外建設工事形態が多様化してまいりまして、それに応じまして輸出保険制度に対してのニーズも変化してきたわけでございます。  具体的な内容といたしましては今回改正内容ということになってまいるわけでございますけれども、たとえば共同受注の問題とかあるいは技術提供契約内容につきましてのバックアップの問題とかいうふうなことがあるわけでございまして、これらの点につきましては諸外国等ではすでに行われている制度で、わが国におきましてはまだその整備が十分でないという点があったわけでございまして、こういう点につきましての改正をお願いしている次第でございます。
  7. 田原隆

    田原委員 次にお伺いしたいのですが、輸出保険制度は、欧米諸国では、貿易政策上の役割りを重視して非常に古くから発達してきているわけです。わが国でも対外取引増大に伴って次第に拡充されてきたわけですが、現時点で比較して、欧米諸国に対してわが国輸出保険制度がまさっている点あるいはおくれている点等があればお伺いしたいし、また基本的な相違点があるとすればどういうところか、お伺いしたいと思います。
  8. 古田徳昌

    古田政府委員 欧米諸国におきましては、主として第一次世界大戦後から、輸出信用保険または保証制度が発達してきております。わが国におきましては、昭和初年の輸出補償法制定を端緒といたしまして、戦後、昭和二十五年に輸出信用保険法制定を見まして、その後輸出保険法となりましてすでに三十年の歴史を有しているわけでございます。  諸外国の主要な輸出保険機関としましては、現在二十八カ国で三十六機関が活動している状況でございます。  これらの機関の中で、わが国を含めまして欧米主要機関輸出保険制度は、基本的には共通した点が多いわけでございますが、輸出面わが国独特の制度としましては、輸出組合単位抱括保険制度がございます。これによりまして、リスクの分散と低料率による付保が可能になっていると考えられているわけでございます。  それから、海外投資保険につきましては世界で十七機関が実施しておりますが、収用とか戦争あるいは送金の最大非常危険を中心とした制度となっているところは、各国ほぼ共通でございます。しかしながら、わが国は、このほか資源開発融資に対しまして信用危険のカバーも行っております。  今回御提案申し上げておる項目につきましては、それぞれ主要国においてはほぼ整備されているわけでございますが、わが国におきましては従来輸出保険制度に取り入れられていなかった点でございます。今回の改正は、この諸点を改善しまして、欧米諸国並みに条件を整備することによりましてわが国対外取引の適正なリスクカバーを図ろうとするものでございます。
  9. 田原隆

    田原委員 輸出保険利用状況についてお伺いしたいのですが、特に中小企業者利用状況についてお伺いしたいわけです。  現在、わが国の総輸出海外投資に占める輸出保険付保状況はどうなっておりますか。そして、そのうちで中小企業者利用状況はどの程度か、御説明いただきたいと思います。
  10. 古田徳昌

    古田政府委員 まず、わが国の総輸出に占めます輸出保険付保比率は、昭和五十四年度で三七%程度になっておるものと考えられます。また全体の海外投資に占めます海外投資保険付保状況は、わが国投資残高の約二〇%と考えられます。  中小企業者輸出保険利用状況につきましては、製造業者にありましては資本金十億円以下のもの、商業者にありましては資本金三億円以下の中小規模事業者につきまして調査したところによりますと、輸出保険全体では引受件数で二九・六%、約三〇%ということになっております。保険金額では六・七%が中小規模事業者利用という形になっております。また、これを海外投資保険に限って見ますと、引受件数で二三・一%、保険金額で五・六%という状況でございます。  なお、五十四年度の輸出保険全体の引受件数は五十九万千七百九十四件、約六十万件ということになっておりますが、保険金額では十兆九百四十五億円ということでございます。
  11. 田原隆

    田原委員 今後、海外投資保険中心にして中小企業者利用が非常に多くなってくると私は思うのですけれども中小企業者に対する普及PRというか、サービス体制とか、そういうものはどうなっておるのですか。私もこの保険法改正に当たってちょっと勉強してみたのですけれども、非常にわかりにくい法律であるような気がするのです。また、実際にそういう声が多いような気がしますが、余りにも内容が技術的であるということであろうかと思うのです。何か解説書を見ましても、えらく詳しいものが多いわけです。そこで、もうちょっと絵入りの、ポンチ絵みたいなものを入れて、簡単で取っつきやすいようなPR用の雑誌とか。パンフレット等をつくってやらないと非常に困る人が出るのではないかという気がするのですが、そういう点につきまして、中小企業の方々の利用増大するように図るということでそういうPR誌をつくったりするお考えがあるかどうか、お伺いしたいのです。
  12. 古田徳昌

    古田政府委員 中小企業者等輸出保険利用促進につきましては、従来から財団法人輸出保険協会を通じまして、解説書の出版とか講習会開催等を行いまして、輸出保険制度普及に努めてきているところでございます。特に講習会につきましては、例年、東京大阪名古屋で開催しまして、多数の受講者が出席し、好評を博しているところでございます。さらに通産省におきましても、ただいま先生の御指摘になりましたような、できるだけ簡単でわかりやすい輸出保険制度概要につきましてのパンフレットを現在作成を行っておるところでございまして、近く利用者に配付できるものと考えております。また、中小企業利用比率の高い輸出手形保険や品目の制限を行うことなく保険引き受けを実施しておる普通輸出保険等につきましては、できる限り地方通産局事務委譲をしておるところでございまして、銀行の窓口における相談も従来から活用されております。  今後とも輸出保険制度PR等を含めまして、これらのルートを活用して輸出保険利用促進に努めてまいりたいと考えておるところであります。
  13. 田原隆

    田原委員 次に、信用調査について、ちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、まず現在、信用調査対象になっておるバイヤーの数はどの程度になっておるわけでございますか。
  14. 古田徳昌

    古田政府委員 輸出保険協会におきまして整備しております海外商社名簿には、昭和五十五年四月一日現在で約九万の、バイヤーが登録されております。
  15. 田原隆

    田原委員 今後共同受注増大すると思うのですけれども、それで取引関係がふえて、信用調査対象が、新しいバイヤー調査しなければいかぬようになると思うのですが、それは将来大体どのぐらいふえると思っておられるか、特にどの地域が多いと思われるか、その点の見通しについて……。
  16. 古田徳昌

    古田政府委員 共同受注拡大によりまして、わが国企業取引関係を有していなかった新規未登録バイヤーにかかわる案件が出てくるものと考えられるわけでございますが、件数的にはそれほど増大するものとは考えられていません。しかし、共同受注にかかわる案件のほとんどは、当然のことながら非常に大型案件であるということでございますので、慎重な信用調査を行うことが必要であると考えております。さらに、地域的には中近東、アフリカといったところが予想されております。
  17. 田原隆

    田原委員 そういうことに対して通産省体制を整えつつあると思うのですけれども、従来信用調査をどういう方式でやっておられるか、その概要についてお話し願いたい。  それからまた、いわゆる共同受注の場合の相手となるメーンコントラクターに対して信用調査をやはりやられておるのか、今後やるのかどうか、その点についてもお聞きしたいと思います。
  18. 古田徳昌

    古田政府委員 先ほど御説明しました登録されておりますバイヤー等につきましての信用調査は、従来からベルンユニオン等を通じます情報交換等によりまして実施してきているわけでございますが、従来から信用調査の充実につきましては私どももいろいろな形で努力しているわけでございまして、昭和五十三年度には一億五千六百万円でございました信用調査関係予算は、昭和五十六年度には二億一千百万円を計上しております。これに基づきまして具体的なケースごと信用関係調査を実施しているわけでございます。また、保険責任残高の大きいバイヤーに対します特別調査予算も、一千七百万円を計上するというふうなことになっております。共同受注拡大によります新規バイヤーにつきましては、このような信用調査制度を十分活用して必要な信用調査を実施してまいりたいというふうに考えております。
  19. 田原隆

    田原委員 共同保険が導入されますと保険料率の見直しがなされるのかどうか、その点についてちょっとお聞かせ願いたいのです。今回の措置によってサブ保険機関になった場合に、メーンコントラクター国最終仕向け国両方リスクをてん補することになるわけですが、その場合の保険料率は割り増しして設定されることになるのかどうか、その点についてお答え願いたいと思います。
  20. 古田徳昌

    古田政府委員 サブ保険機関になった場合に、メーンコントラクター国最終仕向け国両方リスクをてん補することになるわけでございますが、この共同保険の場合に、いわゆるイフ・アンド・ホエン条項つきメーンサブ方式契約ということになりますと、それに伴います危険は、サブの立場から分析しますと、まず第一に、通常の輸出相手方、つまりメーンコントラクターということになりますが、これにつきましての危険——危険につきましては非常危険と信用危険と二つあるわけでございますが、その危険に加えまして、第二に、バイヤー、すなわち最終購入者ということになりますが、このバイヤーにかかわる非常危険、信用危険も含んでいることになるわけでございます。したがいまして、今回の法改正によりまして新たに付保対象に追加されるイフ・アンド・ホエン条項つきメーンサブ方式サブ部分につきましては、契約相手方、つまりメーンコントラクターということになりますが、それとバイヤーにかかわる二重のリスクカバーすることになるわけでございまして、この二重のリスクに対応する割り増し料率を設定することが必要になってくるわけでございます。具体的な率につきましては、いま述べましたような事由につきまして、過去における発生状況等を勘案しまして今後十分検討が必要になるかと思いますけれども、その検討も踏まえまして改正法施行までの間に決めていきたいというふうに考えております。
  21. 田原隆

    田原委員 次にお伺いしたいのですが、この保険業務通産省における処理体制についてお伺いしたいのです。  わが国輸出保険業務量というのは世界的に見てトップクラスと聞いておりますが、先ほど引受金額が十兆何がしというのが出ておりましたけれども、これらのものを処理するための組織体制というのは一体どうなっておるのか、人数はどのくらいでやっておるのか、また、その人数で十分なのかどうかというような点について、ちょっとお伺いしたいと思います。
  22. 古田徳昌

    古田政府委員 各国輸出保険機関運営状況につきましては、輸出保険機関の集まりでございますベルンユニオンで作成した資料がございます。この資料によりますと、一九七九年の運営状況につきまして、わが国輸出保険引受実績が約六百三十億スイスフラン世界最大ということになっております。ちなみに二位はイギリスで約五百三十五億スイスフランということになっております。  わが国輸出保険組織につきましては、職員昭和五十五年度末で百七十五名となっておりまして、このうち六十名が地方通商産業局における職員でございます。本省では輸出保険企画課等三課で業務を行っておりまして、七月一日からさらに体制を充実する予定でございます。地方では東京名古屋大阪を初めとする地方通産局通商事務所におきまして業務を担当しております。  保険業務の遂行につきましては電子計算機による効率化推進してきておりまして、職員一人当たり引受保険価額は、先ほど資料によるわけでございますが、三・六億スイスフランとなっておりまして、第二位のオーストリアの保険機関の一・二億スイスフランに比べますと三倍以上の金額ということになっておるわけでございまして、私どもとしましては、現在の機構でいわば世界の各保険機構の中でも最も効率的な運営が図られているというふうに考えているわけでございます。
  23. 田原隆

    田原委員 しかし、この法律改正によって未経験の分野を含めて業務量がふえてくると思うのですけれども、その対策はどういうふうに考えるか。業界から処理が遅いという声も出ている部分があると思うのですけれども、それらに対して今後どういうふうに考えておるか。あるいはベルンユニオンのあれを調べてみましても、完全に国がみずからやっているのは日本とその他数カ国で、あとは民間あるいは民間と国、あるいは民間だけと三様の形態があるわけですけれども、これはどういうことになるわけですか。将来やはりだんだんふえていくと考えられるのですけれども通産省としても、今後民間とタイアップしてやるとか、あるいは組織的に大きく考え方を変えて国がみずからやる部分とそうでない部分と分けて効率的にやるとか、行政改革が叫ばれておるわけですが、そういう観点から見てどういうふうにお考えになっておるのか、お答えいただきたいと思います。
  24. 古田徳昌

    古田政府委員 先ほども御説明いたしましたように、わが国輸出保険を諸外国と比較しますと、引受保険価額に比しまして職員の数が少ないということで、これは電子計算機導入等によります事務処理効率化、それから包括保険制度普及といったところによるものと考えております。業務体制につきましても、コンピューター化をかなり進めているなど、各国輸出保険機関の中でもかなり進んだ体制を確立しているものと考えているわけでございます。  また、今後の業務量増大に対しましては、必要となる要員の確保電子計算機処理推進事務簡素化等によりまして対処して業務処理に万全を期してまいりたいと考えておるわけでございます。  今回新たに共同保険関係の従来未経験な業務が追加されることになるわけでございますが、これにつきましては、パートナー国保険機関との連絡情報交換、打ち合わせといった新規業務増大してくるわけでございますけれども、この業務に対応するために長期輸出保険課内に本年七月から共同保険班を設け、これらの業務に当たることとしております。諸外国輸出保険機関との連絡等につきましては、日常業務について従来からテレックス網整備されておりますが、また重要事項につきましては相互の会議を持って処理しておりまして、この共同受注案件による新規業務につきましても支障のない体制は確立されていくものと考えております。  また、輸出保険民業に移す、あるいは民業とのタイアップをうまくやったらどうかというふうな点でございますけれども、現在輸出保険事業運営は国が特別会計によって行っているわけでございまして、たとえば民営等に移すということにつきましては、私どもとしましては、いろんな問題がありまして、むしろ保険サービスの低下につながるおそれもあるのではないかというふうに考えておりまして、適当ではないのではないかというふうに思うわけでございます。たとえばプラント輸出海外投資等引き受け当たりましては、これは事柄の性格上どうしても産業政策とかあるいは貿易政策とか経済協力政策等観点から総合的に判断して引き受けを行う必要があるわけでございますが、こうした政策判断のためにやはり国が直接維持するのが適当ではないかというふうに考えるわけでございます。  さらに、輸出保険運営上必要不可欠な海外諸国のいわゆるカントリーリスク情報につきましては、在外公館ジェトロ等を通じまして、また諸外国政府等から直接に通産省行政官庁として入手する情報に依存する度合いが非常に大きいわけでございますが、民営等形態ではこうした情報を十分収集することはむしろむずかしくなるのではないかというふうなおそれもあるわけでございます。  さらに、輸出保険引受審査等当たりましては、通産省関係課の、つまり保険を直接担当している課以外のところからの協力やそれとの連絡のもとで実施しているわけでございまして、民営に移行した場合にこのための体制整備が新たに必要になるということも考えられるわけでございます。  そういうことで、先ほどの御説明の一部繰り返しにもなりますけれども、現在通産省輸出保険事業は、職員一人当たり引受金額あるいは引受金額に対する事務経費比率等におきまして、欧米諸国に比べて数倍効率的な姿になっております。これを他の形態に移行すると、先ほど言いましたような諸事情から、たとえば情報収集費が増加するというふうなこと等がありまして、必要な経費の増加が免れないのではないかというふうな考え方をしているわけでございます。
  25. 田原隆

    田原委員 その問題については、またいつか機会がありましたら、もう少し勉強したいと思います。  次に進みますが、複合的な技術提供契約に含まれる貨物の船積み前のリスクカバーする措置が考えられておりますが、これはいままでに比べて一歩前進だと思いますけれども、ソフトの部分についていまだ保険対象にすることが見送られている、これはどういう理由かということをちょっとお伺いしたいのです。  また、今後通産省はどういう方針でソフト部分についてもさらに突っ込んで勉強をして何か考えていくのか。というのは、プラント輸出では日本はハードの部分は非常に評判がいいんですね。ところが、ソフトの部分、たとえば。プロジェクトの調査とか構想の取りまとめとかそういうソフトの部分については何となく弱い、必ずしも評判がよくない。しかし、ソフト部分というのは円高とかそういうものの影響を受けにくいという部分でありますし、現在、日本が自動車問題等の経済摩擦を起こしておりますけれどもプラント輸出というのはどっちかというと、援助的な性格もあるし、いろいろな面で今後日本が力を入れていかなければいけないその一つだと思うのです。そうすると、ソフトの開発というのは非常に大切であるとともに、それに伴う危険を保険カバーするという面が考えられていかなければいかぬと思うのですけれども、その点のお考えについてちょっとお伺いしたいと思います。
  26. 古田徳昌

    古田政府委員 プラント輸出等におきますソフト部分の重要性については、先生御指摘のとおりじゃないかと思います。ただ、技術や労務の対価の船積み前危険による損失につきましては、現在それをてん補することとしていないわけでございますが、その理由は、技術等の提供前の損失発生額につきまして輸出者が挙証すること、それから保険者として適正な査定を行うことが非常にむずかしいということであるわけでございます。さらに、事故が発生しまして損失が起きるということになりますと、当該損失は通常準備事務費等の諸経費でございまして、一般事務管理費等で負担し得る範囲のものであること等がございまして、そういうふうな観点から、先ほど言いましたように、船積み前リスクによります損失につきましてはてん補する形にしていないわけでございますが、このような扱い方は諸外国におきましても同じでございまして、まだこの分野につきましては本格的に各国とも取り組んでいないのが現状でございます。しかしながら、今後こうした技術等の提供前のリスクが増加するということでございますと、実際のニーズ、こうした技術等の損失の客観的な算定方法があり得るかどうか等につきましては、今後十分検討を行った上で、先生御指摘のような形でてん補の対象とすべきかどうかということについて、慎重な検討を進めてまいりたいと考えております。
  27. 田原隆

    田原委員 それから、てん補率の引き上げと、それに伴う保険料の見通しについてお伺いしたいのですが、普通輸出保険輸出代金保険のてん補率を非常危険について九〇%から九五%に引き上げるということになっておりますけれども保険料率の見直しは行うことになるのかどうか、その点。また、その保険収支が変わってくるのかどうか、そういう点。あるいは、輸出手形保険ではこういうてん補率の引き上げは行わないのか。  また、輸出手形保険では地方公共団体が追加保証するということになっておりますけれども、その追加保証の実態などについて、ごく簡単に御説明願いたいと思います。
  28. 古田徳昌

    古田政府委員 てん補率を非常危険の場合につきましては五%引き上げるということで御提案さしていただいているわけでございますが、それによります事業収支の影響につきましては、昭和五十四年度の普通輸出保険及び輸出代金保険の実績をベースに、非常危険の最近五年間の事故比率利用しまして試算してみたところ、現行の料率のままでほぼ均衡すると見込まれております。したがいまして、現在のところ、保険料率の見直しをする考えは私どもとしては持っておりません。  それから輸出手形保険につきましては、対象案件のほとんどが地方公共団体の追加保証の対象となっておりまして、また信用危険によります事故が多いために、現行のてん補率を変更する必要性は特にないというふうに見ているわけでございます。  この追加保証制度につきましては、輸出手形保険でてん補されない損失額の二〇%の銀行負担分につきまして、通常はこのうち七五%を限度としまして地方公共団体が追加的に保証する制度ということになっております。現在、東京都、大阪府を初め十四自治体におきまして実施されておりまして、五十四年度の保証金額は千七百二億円に達しております。保証契約方式輸出手形保険と大体同様でございまして、輸出手形保険に対する補完的な性格を持っているものでございます。
  29. 田原隆

    田原委員 次に、海外投資保険等の引受限度額についてお伺いしたいのです。  今回、債務保証が海外投資保険付保対象に加わったことによって海外投資保険保険契約増大すると思われますけれども、限度額は今後とも十分な額を計上してもらいたいし、これがある程度のレベルでないといかぬわけでございます。普通輸出保険輸出代金保険等についても同様であるのですが、私、調べてみますと、各種保険の引受限度額と引受実績が必ずしもバランスがとれてなくて、ひどいのになると二十六倍ぐらいになっておったり、また一番大事な普通輸出保険とか、そういうものは実績と限度額が一・八倍ぐらいである、こういう点はどうするのか、お考えを聞きたいと思います。
  30. 古田徳昌

    古田政府委員 今回御提案さしていただいております各改正項目は、現行の普通輸出保険それから輸出代金保険海外投資保険等の一部の手直しという形をとっているわけでございます。引受限度額につきましては、先般成立しました昭和五十六年度予算におきまして、従来の保険引受実績の推移をベースとしまして、各保険種ごとの引受見込みを推定し、今回の改正も勘案しまして、若干の余裕を織り込んで予算に計上してございますので、当面特に問題はないというふうに考えております。今後とも保険申し込みの需要を適切に把握しながら、この保険引受限度額につきましては各年度ごとに適正に設定するように努めてまいりたいと考えております。
  31. 田原隆

    田原委員 次に、インフラストラクチュア整備事業の範囲についてお伺いしたい。  海外投資保険の融資買鉱におけるインフラストラクチュア整備資金が今回保険対象になるわけですけれども、そこで、まずインフラストラクチュア整備事業の範囲をどの程度に設定するつもりか、通産省のお考えを聞かしていただきたい。  資源開発を円滑に推進していく観点から言えば、可能な限り広い範囲に定めていくことが必要と私は考えるのですけれども、その点、具体的にはどういうことを考えておられるのか、簡単に御説明願いたい。
  32. 古田徳昌

    古田政府委員 今回の法改正によりまして新たに対象に加えられることとねる関連施設としましては、現在、生産の基盤となる施設、それから生産された貨物を本邦に輸入するために必要となる施設等を考えております。  資源開発、輸入の円滑な促進のため、この範囲につきましては、資源生産事業との関連性、専用性の枠内で、法律で許され、かつ支障のない限り広く定めることとしたいと考えております。  具体的な対象範囲につきましては、今後部内で検討の上、通達により明確にすることとしておりますが、私どもとしましては、現在のところ次のような施設を考えております。  たとえば、生産のための原材料または生産された貨物の運搬の用に供する道路、鉄道、港湾等の施設、それから生産の用に供する水、電気、ガス等の供給施設、次に、生産に伴って産出される排水、廃棄物の処理施設、次に生産された貨物の保管に供する倉庫、冷凍庫等の保管施設、さらに生産に携わる労働者の住宅施設等の福利厚生施設、これらのほかは、貨物の生産また生産された貨物を本邦に輸入するために不可欠と考えられる施設を範囲として考えているわけでございます。
  33. 田原隆

    田原委員 そうしますと、職員の福祉という問題がありましたが、学校、病院、公共集会所等は当然入るわけですか。
  34. 古田徳昌

    古田政府委員 生産に携わる労働者の住宅施設等は非常にはっきりしているわけでございますが、その他、ただいま先生御指摘の学校とか病院あるいは公共集会所等の公共施設につきましても、今後検討を進めていきたいと考えておりますが、たとえば生産に従事する労働者が利用して、資源開発事業の遂行上不可欠であるような場合には対象とする方向で検討を進めてまいりたいと考えております。
  35. 田原隆

    田原委員 次に、投資保証協定の締結についてお伺いしたいのですけれども、投資保証協定は、私が調べたところ、米国が百十四カ国と最も多く、西独が四十九カ国、スイスが十六カ国と結んでおるわけですが、わが国はエジプトとのみ締結されているというふうに聞いております。わが国の投資保証協定の締結が少ない理由はどこにあるのか、御説明願いたい。  また、わが国世界第四位の投資国となっており、今後も中小企業海外投資中心にしてさらに増大することが見込まれるわけですが、締結促進を積極的に図っていくことが必要と思われるのですけれども、その点どうでございましょうか。
  36. 田中六助

    田中(六)国務大臣 まさしく御指摘のように、米国を初め先進国はもちろん、発展途上国の中にも保証協定を結んでいるところがあるのですけれどもわが国は御指摘のようにたった一カ国でございます。せんだって総理がASEAN諸国を回ったとき、あるいは私も回りましたが、投資保証協定の結んでない国々ばかりで、これらの投資を促進しようということの話し合いは進めてきましたけれどもわが国が近代国家になってまだ非常に日が浅いし、投資の実情は世界四番目でございますけれども、そういう風土と申しますか、土壌というものが十分日本にはなかった、余りにも近代化あるいは経済成長率が高過ぎて、端的に申し上げますと、そういう余裕もなければ、そういう風土としての土壌が肥えてなかったという点がございますけれども、現在のように投資が世界第四番目になった以上、あるいは経済協力を進めていく以上、事業の活動を考えますときに、この保証協定がないということは、いろいろな危機感も持つし不合理でございますので、これからは東南アジア、つまりASEAN諸国からいち早くこの協定を進めてまいりたいというふうに考えております。
  37. 田原隆

    田原委員 アメリカやら西ドイツは保険に付する場合の必要条件になっておるようですけれども日本も将来そういうことにするお考えがあるのかどうか。
  38. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、諸外国の中ではそういう制度をとっておる国もございますけれども日本においてはそういうことにはなっておりませんので、一応独立して保険は動き得るという状態でございますけれども、さらに投資保証という考えからその必要がございますと、こういう趣旨でございます。
  39. 田原隆

    田原委員 次に、支払い準備率についてお伺いしたいと思うのです。  現在、支払い準備率はどうなっておるわけですか、また、どの程度が適正とお考えになっておられるか、お伺いしたいのです。  保険利用者の信頼を得るためには、ある程度のレベルを確保しておらなければいかぬと思いますし、また、支払い準備金が不十分な場合には保険引き受けがどうしても消極的になるのではないかと心配されますが、その点はどうでしょうか。また、あわせて、諸外国の例はどうなっておるか。国際的に見てわが国の支払い準備率はどうなのかという点についてお伺いしたいと思います。
  40. 田中六助

    田中(六)国務大臣 支払準備率は多ければ多いほど、高ければ高いほど投資をする企業も安心がいくと思います。わが国も支払い準備率を高めなければいけませんけれども、現在は〇・八七%ですか、イギリスなどは二・五%を目標にこの支払い準備率を考えておるようですけれども、私どももできるだけこれを高く持っていきたいというふうに考えております。
  41. 田原隆

    田原委員 現在、いわゆる現金、預金の支払い準備金はどのくらいあるわけですか。もしこの保険支払いが急増してそれをオーバーした場合にはどういう措置をとるのか等について、ちょっとお伺いしたいと思います。
  42. 古田徳昌

    古田政府委員 昭和五十四年度末におきます支払い準備金は千百八十三億円となっております。これは同年度末の責任残高が十三兆五千二百二億円でございますので、支払い準備率は〇・八七%ということになるわけでございます。昭和五十五年九月末現在におきます支払い準備金は千二百八十二億円ということで、五十四年度末に比べまして増加しております。  さらに、御質問にございましたように、もし保険金支払いが急増して支払い準備で不足するというようなことになったときにはどういうふうなことになるのかということでございますが、現在輸出保険特別会計が大きな事故により支払い超過となるような事態が起きるということは、私どもは予想しておりません。ただ、保険事故が多発しまして多額の保険金を支払うような事態が起きました場合には、金額が大きいプラント等の延べ払い輸出案件や長期貸付債権に係る海外投資案件の事故の場合には、それぞれ代金の支払い期日や元本、利子の償還期日に従って保険金を支払う仕組みになっております。したがいまして、このような事故の場合には全保険金額を一時に支払うようなことにならないわけでございますので、各年度ごとに考えますと、負担はその分だけ軽減されるということになるわけでございます。  さらに、多額の保険金支払いによりまして輸出保険特別会計が赤字を生ずるというような事態になった場合、こういう事態は私どもはいまのところ、先ほど申し上げましたように予想してないわけでございますが、そういう場合の仕組みとしましては、借り入れとか出資とか保険料率の改定等の諸方策を検討するということによって対処していくことになるわけでございます。
  43. 田原隆

    田原委員 次に、大臣にお伺いしたいのですけれども、最近の貿易摩擦問題あるいはエネルギーの問題を踏まえて国際経済問題にどのように対処していかれるか、基本的なお考え、特に発展途上国に対するお考え——発展途上国といいましても、大きく分けて、中進的な国といいますか、メキシコ、ブラジル、韓国台湾、シンガポール、香港等のような国、それから産油国といいますか、石油資源があってお金をたくさん持っている国、あるいは資源がなくて累積赤字が非常に多い最貧国とでも言うべき国、それぞれニーズも違うし国情も違うわけでございますが、これらについてきめの細かい協力をしていかなければいかぬと思いますが、大臣の基本的なお考えを……。
  44. 田中六助

    田中(六)国務大臣 わが国の通商貿易の基本方針といたしましては、あくまで世界の保護主義貿易を排して、根本的には自由主義貿易の拡大、そういうものを心がけてまいらなければならないという基本方針でございます。したがって、こちら側から一方的に、たとえば自動車などにつきましても集中豪雨的に一つの市場に向けていくというのじゃなくて、やはり多角的に、それから自粛と申しますか、秩序ある輸出、そういうものを考えていかなければ、それぞれの国の事情もあることですし、保護主義貿易に転化するおそれもございますので、あくまで自由主義貿易を基幹とすることで秩序ある貿易関係を維持していかなければならないというふうに思っております。  それから、発展途上国、石油やいろいろエネルギーのあるところ、あるいはないところの発展途上国ということもございますが、鈴木総理もASEAN諸国を訪問したときに打ち出しましたように、四つか五つのドクトリンと申しますか、エネルギー問題の話し合いを進めていくということ、それから、日本中小企業の一番たくさんある国でもございますし、これらについての経験も豊富でございますので、こういうものについての発展誘導、それから製品、つまり発展途上国の多くは資源を持っておりますけれども、自然のそういう資源を製品化する産業の拡大促進というような点、それから、それに伴う人づくりというような点を考えつつ中進国向けにはそういうことをやると同時に、非産油国で発展途上国、つまりどちらかというと国民総生産も非常に低いレベルの国々に対しましては、それぞれの国の国情というものを十分分析し、先ほど申しました四つか五つのドクトリン、そういうものを十分勘案して、向こうからも人に来てもらうし、こちらからもそういう専門家の派遣というような人事交流もやり、学生あるいは訓練する多くの人々の誘導というようなことも考えつつ、発展途上国の産油国あるいは非産油国などについてもきめの細かい経済協力を進めたいと思います。
  45. 田原隆

    田原委員 次に、貿易摩擦、特に自動車の問題がアメリカやECと問題になっております。先般レーガン大統領が負傷されて現在入院されておるわけですが、特に日米首脳会談がそういう問題について行われるはずでございますけれども、その日程等について何か大きな支障があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  46. 田中六助

    田中(六)国務大臣 せんだって伊東外務大臣が訪米いたしまして、レーガン大統領初めヘイグ国務長官、その他ブロックさんなどにもお会いして、経済摩擦、特に自動車摩擦について話し合い、鈴木総理とレーガン大統領の会談が予定されております五月初旬前に片づけたい、政治問題とこういう経済問題は切り離したいということ、それからもう一つは、自由主義貿易はあくまで堅持しようというような基本方針が決まっておりますし、その下敷きにおいて私どもはこの自動車問題の解決をしていきたいと思っております。  レーガン大統領の狙撃によりまして総理との日程が違ってこないかという質問の二点目でございますが、これにつきましては、現在のところ、その予定についての変更というようなことをアメリカ政府からは言ってきておりませんし、私どもは、予定どおりの日にちを目標にして準備をしております。  それから、経済協力のその上に私どもがいまやっておることは、向こうからブリーフィングのスタッフが来ておりまして、きょうから三日間、アメリカの自動車問題についての説明を聞くことになっております。それから、ルイス運輸長官を座長としてのタスクフォース、これが日本時間のきょう午前四時に発表になりまして、その中にやはり自由主義貿易、それから米国の車についてどうする、独禁法についてもある程度の規制緩和をすると同時に、アメリカの自動車が売れるように、三十四の規制をしておったのを緩和しようというようなことがタスクフォースに書かれております。それは、アメリカの経済あるいは自動車産業の再建のための方途を書いておるわけでございますけれども、私どももそういうことを十分熟知して、対米経済摩擦、自動車摩擦の話し合いを進めて、円満に日米両国間の経済運営しなければならないというふうに思っております。
  47. 田原隆

    田原委員 次に、もう一度プラント輸出の問題についてお伺いしたいのですけれども先ほども申しましたように、プラント輸出日本経済の今後の貿易面での重点となる問題であると思いますが、これについて現在どういう状況になっておるわけですか。けさの日経なんか見ましても、五十四年は百十七億ドルぐらいあったものが五十五年度は九十億ドルか、それを割るであろうと言われておりますし、五十六年度見通しについては、一面回復するという説もありますが、横ばいとかもっと落ちるんじゃないかという説もありますし、その辺の見通しについてちょっとお伺いしたいと思います。
  48. 田中六助

    田中(六)国務大臣 経済協力は御指摘のように日本にとっては重大な問題でございますし、先ほどから申しますように自由主義貿易というものを日本は標榜して、これの拡大へ向かわなければなりません。しかし、日本の国内の不況、不景気もさることながら、全世界が大体不況の波の中にあるわけで、二度にわたるオイルショックを経てきておりますし、なかなか思うようにはまいりませず、大型プロジェクトも御指摘のような低下の傾向にございます。  しからば将来の展望はどうかということでございますが、まず、私ども日本経済発展が対外的に非常に摩擦を起こしておるところもありますし、先ほど指摘しましたように、世界経済の不況ということもあって、やはり国内の需要の喚起、内需ということをまず日本考えなくちゃいかぬ段階にありますので、経済協力のトータルの金額が現在よりも上向くことはあっても、それが大きくふくれ上がることは経済摩擦にもつながりますので、そこへの配慮はしなければなりませんが、ただ国内の発展状況それから日本産業構造、そういうようなものも考えまして、また、発展途上国の追い上げというようなこともありますし、また発展途上国と競合する産業についてはやはり遠慮する点もなければなりません。エレクトロニクスを初めいろいろな経済協力の面で日本のでき得ること、あるいは能力の高い面の協力というようなことも十分勘案しなければなりませんし、そういうことを総合的に考え日本の安全保障というようなことも経済的に見なければなりませんので、十分そういう点を考えていくわけでございます。  しかし、といって現在よりもこれが大きく引っ込むということは、私は余りそう悲観しておりませず、やはり経済協力というものは発展途上国にとっても重大な問題でございますし、あるいは先進国につきましても日本の技術というものの開発、導入というものも心がけなければなりませんし、そういう点を配慮しつつ通商経済というものを運営してまいりたいと思います。
  49. 田原隆

    田原委員 五十五年度に急減した原因は中国向けプラントの輸出問題にあるというふうに言っている新聞などもあるのですけれども、五十四年度の百十七億ドルのうち中国に二三%の約二十七億ドルあった、これらが行き詰まったこととかいう影響があると聞いておりますけれども、中国問題については中国政府と日本民間との間だけに任せておくつもりなのか、政治的決着を将来つける気なのか、これは日中友好の上から見ても非常に重要な問題でございますので、大臣のお考えをお聞きしたい。  それともう一つは、イラン石化。プロジェクトは現在どうなっておるか。これらいろいろのものが今回の輸出保険法改正等とも関連しまして、輸出保険との関係はどのような見通しになるのかというような点についてお伺いしたいと思います。
  50. 田中六助

    田中(六)国務大臣 中国のプラントの問題、それからイランの石油化学工場の問題二点についてまずお答えいたします。  中国のプラントは、日中長期経済の協定ということで私ども計画を進めておりましたところ、御承知のように宝山第二期工事、それから南京、北京東、それから勝利というようなところのプラントをストップするということを通告してきておりました。しかし、この日中経済の私どもの協定は、わが国はプラントが主眼でございまして、大きな眼目でございます。一方的にそうぽんと捨てられても、それぞれの計画があるわけでございますし、私どもはそれの一方的破棄についての考慮をどうかということを言っておりましたら、向こうから劉興華さん初め大ぜいの方が来ましたし、今度は周という人が来るわけでございますけれども、こちらからもそういう関連の民間の人も多数向こうに行っておりまして、話がストップの方向からだんだん多少緩んだ方向に来ておりますけれども、まだこれも定かではございませんけれども、できるだけ話し合いで、どの程度ストップするのか、あるいはどの程度この計画を進めていくのかということの話し合いは、今後のこともございますので、日中関係の将来も勘案して話し合いを進めていきたいというふうに思っております。  それから、イランの石化のプロジェクトの問題でございますけれども、これはいま御承知のように戦争中でございますので、空爆による石化のプラントの現状がどうだとかいうことの調べがつきません。したがって、できるだけ一日も早く戦争がストップしてこの被害の状況などを調査、審査したいわけでございます。私どもは、従来から申し上げていますように、このイランの石化プラントの問題を放棄するという考えはいまのところございませんし、向こうの政府もこれを非常に望んでおりますし、イランの国民も日本のこの工事の継続を期待しておりますし、そういうイラン政府、イラン国民の期待にこたえたいという意味で私どもはこの問題の処理を持っていきたいというふうに思っております。  それから、輸出保険の問題でございますが、御承知のように、この工場がどうなっているからこうなっているからということでその損害を支払うというような、普通の海上保険みたいなものとはこの輸出保険というものは違いますし、両国間の協定、それからこのプロジェクトの結論、そういうものがわかって私ども輸出保険の規則に基づいて処理する問題でございますし、いまのところ、そういうところまでは考慮にありませんし、まだまだ輸出保険をどうするというような考えはございません。
  51. 田原隆

    田原委員 まだいろいろ細かい点でお聞きしたい点があるのですが、時間がちょうど参りましたので、これで終わらしていただきます。
  52. 野中英二

  53. 城地豊司

    城地委員 今回提案されました輸出保険法改正につきましては、プラント類の輸出等の大型化や受注形態の多様化、海外投資としての債務保証の増大、複合的な技術提供契約に含まれる輸出貨物の問題、外国企業との共同受注の問題やてん補率の上限を先進諸国よりおくれているのを先進諸国並みにするなど、わが国輸出の裏づけになります輸出保険法改正でありますし、そういう意味では、これらの輸出保険法改正に十分なる理解をしているという立場で、その前段とも言うべきプラント輸出海外建設工事、さらに海外直接投資の問題について最初に質問をしたいと思います。     〔委員長退席、辻(英)委員長代理着席〕  まず、プラント輸出でありますが、昭和五十五年の一月から十二月を前年の五十四年の一月から十二月と比較すると、三〇%マイナスということになっております。五十六年の一月から三月、まだはっきりした数字は出ていないと思いますが、それらを類推して五十五年度としての予想ではどうなるのかということを最初に伺いたいと思います。  次に、プラント輸出の質問の第二点は、プラント輸出そのものの波及効果について説明がなされておりますが、一億が二億五千万円の波及効果があるというふうに述べられておりますが、それはどういう資料に基づくものなのか、伺いたいと思います。  さらに、このプラント輸出の波及効果の中で、中小企業に及ぼす影響が三四・七%であるというふうに述べられておりますが、その数字の根拠について伺いたいと思います。  さらに、プラント輸出のうちで、その承認額の資料が提示されておりますが、昭和四十八年及び昭和五十四年では、この資料に基づきますと「共産圏」という表示で、それぞれ四〇%、三六・六%というふうになっておりますが、それらの内訳の概況について御説明をいただきたいと思います。  さらに、このプラント輸出の国際比較の関係におきましては、OECDの統計でありますので若干期間的におくれるということがあるのはやむを得ないでしょうが、昭和五十二年度までの資料で、日本は順次シェアを拡大して一〇・二%のシェアということで資料が提供されています。五十三年度、五十四年度、五十五年度という最近のこの三年間の傾向を、OECDの統計そのものは出ていないでしょうが、通産省として把握しておられる資料があれば、予想も含めて御提示をいただきたいと思います。
  54. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 プラント輸出の関連の御質問でございますが、まず五十五年度のプラント輸出がどうなりそうであるかという見通しの問題でございます。  先ほど先生のお話がございましたように、五十五年の四月から五十六年、ことしの二月までの数字でございますが、これが八十億ドルということでございまして、前年よりも三割くらい減っておるということでございます。したがって、五十五年度を通じての数字というのは、三月の数字がどうかということでございますが、これは確定数字ではございませんけれども、私どもの感じでは、大体三月は五億ドル前後ではないかというふうに思っております。したがいまして、全体で八十五億ドル前後ということに相なりますが、これは昨年の百十八億ドルに比べてやはり三割くらいの減、こういう感じでございまして、原因は、先ほど来いろいろございますけれども、中国の関係あるいは中近東の関係といろいろあってそういうことに落ちついておるというのがことしの数字でございます。  それから、波及効果の点でございますが、お話のように二・五倍の波及効果があるというような計算だと思います。これの算定の根拠というのは、御承知のような産業連関表に基づいての計算というふうに考えております。実はその詳細がただいまちょっと手元にございませんので、後ほど御報告さしていただきたいというふうに思っております。  それから、OECDの試算によります世界の主要プラント輸出各国の中での日本のシェアという意味でのお尋ねでございますが、これは御指摘のように五十二年までしか数字が出ておりませんで、五十二年の数字が一〇・二%ということで、実は四十年代におきましてはこのシェアが五%前後であったわけでございますけれども、漸次日本プラント輸出拡大につれて五十二年には一〇%まで上がってきて、世界で第三位というところまで伸びてきたわけでございます。五十三、五十四年も、実は資料がございませんが、こういった状況が続いているのではないかというふうに考えております。
  55. 城地豊司

    城地委員 プラント輸出の波及効果の点では後ほど文書で報告されるということでありますが、よろしくお願いをしたいと思います。  次に、海外建設工事の関係について伺いたいと思います。  資料によりますと、昭和四十六年から五十四年までの九年間の実績でいきますと、やはり何といいましても、一般に言われておりますように、南東・南西アジアの関係及び中東・アラブの関係が非常に多いということでございます。それぞれ受注高は一兆円を超えておりますけれども、受注件数ということでいきますと、南東・南西アジアの関係は千七百件、中東・アラブの関係は四百五十件ということからして、金額が同じで件数がアジアの方が四倍くらいということからしまして、中東やアラブの関係が非常に大型の海外建設工事というふうに予想されますが、それらの内容について概況で結構ですからお知らせをいただきたいというふうに思います。  また、海外建設工事は、昭和五十五年度は、九カ月間の実績でありますが、二千二百億ということで、前年に比べて非常に少ない数字になっております。そのほか、五十六年一月、二月、三月を含めて、予想するところ、三カ月間で非常に大幅に上がるということはあり得ないと思いますので、やはり状況として前年度よりも非常にダウンするのじゃないかと思いますが、それらの関係を含め五十五年度全体の見通しはどうなのかということについて伺いたいと思います。
  56. 三谷浩

    ○三谷説明員 お答えをいたします。  御指摘の一番目の問題の、中近東地域とアジア地域におきます工事の一件当たりの平均単価、これにつきまして御指摘のとおり中近東の方がアジア地域の平均投資額に比べましてかなり大きくなっております。これは中近東地域におきましては、工事の発注の規模が他地域に比べまして非常に大きなものが多いわけでございます。例を挙げますと、昭和五十四年度にたとえばイラクでは総合住宅建設プロジェクト、これは七百五十億円のビッグプロジェクトでございますし、さらに高速道路六百五十億円、あるいはサウジアラビア等については淡水化プラント工事としてたとえば二百億円のビッグプロジェクトがある。こういうようなことからこういう結果になったかと思います。  さらに、五十五年度の海外建設工事の受注見込みにつきまして答えさせていただます。  建設業の海外活動というものはこの数年急速にふえてまいりまして、建設省で調べましたところによりますと、昭和五十四年度は五千六百九十三億円でございまして、これに海外法人分を加えますと六千億円を超えたところでございます。内容的に見ますと、御指摘のとおり東南アジアと中近東が約九割を占めております。しかしながら、昭和五十五年度の実績でございますが、現在集計中でございましてまだ確定しておりませんが、昭和五十四年度に比しまして二割から三割減少すると見込まれております。内訳を調べてみますと特に中近東での受注が大きく落ち込んでおりまして、昨年勃発しましたイラク・イラン紛争が大きく影響しているのではないか、こういうふうに考えております。
  57. 城地豊司

    城地委員 次に、海外直接投資について大蔵省に伺いたいと思います。  五十四年度は約五十億ドルと過去最高になっておりますけれども、五十五年度の見通しがどうなるかということが第一点でございます。  第二点は、昭和四十七年度から五十二年度までの六年間は、多少その年その年によっての凹凸はありますけれども、平均して三十億ドル前後であったのが、五十三年度は四十五億ドル、五十四年度は約五十億ドルというふうになってきておりますが、これらの直接的な原因をどういうふうに把握しておられるか、伺いたいと思います。
  58. 田中義具

    田中説明員 最初の五十五年度の投資見込み額ですが、現在まだ年度をわたっての数字の集計は行われておりませんが、これまでの傾向を見てみますと、五十五年度も五十四年度の水準にほぼ近い投資が行われてきております。したがって、五十五年度は、集計する段階では恐らく、ほぼ近いけれども、若干その数字を下回る、いまのところですと約一割程度の減少ですが、若干下回る程度で推移するということだと思います。  このように高い水準に直接投資がある原因としましては、一つは、わが国経済拡大基調にあり、企業の収益も増大していて、企業活動が非常に活発であること、それから第二の点としましては、円高傾向にあるために投資コストが圧縮されて投資がしやすくなっていること、それから貿易の面で貿易摩擦とか輸出競争力が相対的に低下してきているというようなことで、海外での現地生産を行うという企業戦略に沿って海外投資が行われている面があること、このような要因によって海外直接投資が非常に高い水準で推移しているということになっているものと考えております。
  59. 城地豊司

    城地委員 具体的な輸出保険の関係の質問に入りたいと思います。  まず最初に、この提供されました輸出保険の引受実績、参考資料二というところに載っておりますが、これの中には九種類の輸出保険がある。そして昭和五十四年度十兆円の引受実績があるわけでございます。にもかかわらず、ここには普通輸出保険輸出代金保険輸出手形保険海外投資保険の四つの保険が一つの区分として書かれ、その他五つの、海外広告保険や委託販売輸出保険等々の保険は「その他の保険」ということになって明示されています。その他の保険全部合わせても件数、金額とも少ないからやむを得ないという考え方もありますが、九つの保険があるのですから、今後資料として提起する場合には、幾ら少なくても九つ全部の保険を例示した資料を出していただきたいということを最初に要望しておきたいと思います。  なお、この九種類の保険のうち、輸出保険の引受実績によれば、普通輸出保険輸出代金保険輸出手形保険海外投資保険の四種類で九九%以上の金額を占めている、そういう意味から「その他の保険」とくくられたんでしょうが、その他の五種類の保険の実績はどういうふうになっているのか、明示をいただきたいと思います。
  60. 古田徳昌

    古田政府委員 普通輸出保険輸出代金保険輸出手形保険海外投資保険のほかに、先生御指摘のとおり五つの保険があるわけでございますが、そのそれぞれにつきまして引受実績を御報告させていただきたいと思います。  まず第一に、為替変動保険でございますが、昭和五十四年度におきましては、件数が七件でございまして金額が二百十九億円となっております。輸出金融保険につきましては、件数は九百五十九件でございまして金額は百二十三億円でございます。輸出保証保険につきましては、件数が四十三件で金額が二百五十五億円となっております。委託販売輸出保険につきましては、件数、金額ともゼロでございます。海外広告保険につきましては、件数が五件で金額は〇・一億円ということになっております。  ただいまの五つの保険の中で、委託販売輸出保険及び海外広告保険につきましては、実は昭和二十年代に創設された保険でございまして、当時、海外での委託販売や宣伝事業の強化を図るために利用されたわけでございますが、現在では情勢の変化によりまして利用が少なくなってきているというわけでございます。
  61. 城地豊司

    城地委員 いま、「その他の保険」で五つの保険内容について伺いましたが、私が聞いたところでは利用は七件、二百十九億あるというふうに言われております為替変動保険については、保険料率が年間一・五%である、そういう関係で、しかも為替の変動、円の値上がり、値下がり等との関係で、制度はつくったが非常に利用が少ないという話を聞いておりますが、その実態をどのように把握をしておられるか、質問をしたいと思います。
  62. 古田徳昌

    古田政府委員 為替変動保険昭和五十四年度の引受実績は、ただいま御報告申し上げましたとおり件数で七件、金額で二百十九億円となっております。この為替変動保険利用率が低いことは事実でございますが、これは輸出者が最近の円高基調の中で、将来さらにこれ以上に大幅な円高が生じるものと必ずしも予測していないこと、さらに円建ての輸出契約増大していること、商社等では輸出、輸入の両取引を行っているのが通常であり、これによりまして為替差損益を相殺していること等の理由によるものと考えられております。  なお、保険料率を引き下げてほしいという要望も承っておりまして内部で検討を行っておりますが、保険運営の健全性との関係もありまして、この点の実施につきましてはむずかしいというふうに考えております。
  63. 城地豊司

    城地委員 そう言われるのであれば、次に、こういう各種保険の料率を決める根拠、考え方の大綱について、大臣から直接伺いたいと思います。
  64. 田中六助

    田中(六)国務大臣 輸出保険の支払い準備率というのはどの程度あればいいかという問題にもつながろうかと思いますが、これはもちろん高ければ高いほどいいし、準備率が積み重なっておればそれだけ保険にかかる人も安心がいくわけで、いいわけでございます。日本の場合、昭和五十四年度を見ますと〇・八七%、昭和四十一年に〇・三%程度だったわけでございますけれども、それから見ればかなり上がっております。イギリスなどは二・五%を目標にいっておるわけでございます。国際的にどの程度の料率がいいかという取り決めとかあるいは目標というものはございませんけれども、やはり支払い準備あるいは投資の実情に沿うような率でなければ保険にかかる人も少なくなるだろうし、投資そのものがちゅうちょしなければならないと思います。したがって、私どももできるだけ経済あるいは情勢の許す限り、この準備率の高い方向に持っていきたいと思っております。
  65. 城地豊司

    城地委員 それとの関連で伺いますが、先ほど田原委員の質問とも若干関連をいたしますけれども、この輸出保険特別会計の場合に、いま大臣も言われましたが、現在の支払い準備率〇・八七%ということでございますが、昭和三十七年以前は一%以上の支払い準備率があった。確かに保険でありますから、準備率がどれぐらいあればいいということにはならないと思います。ある日、あるとき、突然いろいろな保険に関する事由が発生すれば、準備率がそんなものではおさまらないということも保険の通例でございますけれども、一応いろいろな意味での理論づけがあると思うのです。過去の実績から見ておおむねこのぐらいならばいいだろうとか、このぐらいはどうも必要だとかいうようなこともあるし、さらに各保険別の保険料率の決め方は、その保険その保険の危険度やその他のものを参酌して決めるわけでありますが、全体的に見てこの保険料率が高いんじゃないかという意見も聞いておるわけでございます。  それらの関係で、いま大臣が言われましたが、もう一歩突っ込んで、これは大臣でなくて結構ですが、これこれの保険はこういう考え方のもとに、おおむねこういう料率でいけばこうなるという考え方の概況で結構ですからお知らせをいただきたいということと、それから保険責任残高が十三兆五千二百億ある、支払い準備金が一千百八十二億あるということでは、若干これは足りないのじやないかという感じを率直に持っているのですが、それらの点についての御見解があれば承りたいと思います。
  66. 古田徳昌

    古田政府委員 わが国輸出保険は、特別会計を設けまして独立採算制を原則として運営を行っているわけでございます。この保険料率につきましては、先ほど大臣からのお答えにもございましたけれども、具体的に言いますと、輸出保険法の第一条の四におきまして、収入が支出を償うように定めることとされておりまして、この原則に基づきまして具体的に各保険種別に料率を定めているわけでございます。  この支払い準備率が低いのではないかという御指摘がございましたけれども、五十四年度末におきます支払い準備率は〇・八七%でございまして、昭和四十一年の〇・三%を底としまして徐々に改善されてきております。どの程度の支払い準備率が適正かということにつきましては非常にむずかしい問題でございまして、国際的にも決まった考え方というものは存在しないわけでございますが、たとえば諸外国輸出保険機関の支払い準備率について見ますと、会計制度の違い等もありまして、支払い準備金を計上していない機関もあります。そういうことで詳細が不明でございますが、たとえばイギリスの輸出保険機関でありますECGDでは、支払い準備率の目標を二・五%に置いているというふうに聞いております。ただ、実際どの程度になっているかということについては不明でございますが、目標値としてはそういう数値を掲げてございます。これとの関係で言いますと、わが国の支払い準備率が国際的に見ても決して高い方ではないということは言えるかと思います。そういうことで、私どもとしましても、保険利用者の信認を得るためにも、今後とも支払い準備率の引き上げを図るということが必要であるというふうに考えておりまして、そういう観点からしまして保険料率につきましても、保険事故の発生率との関係で適正な水準を維持していく必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  67. 城地豊司

    城地委員 次に、外務省の関係者に伺いたいと思いますが、海外投資保証協定の関係でございます。  この資料によりましても、海外投資保証協定、アメリカ百十四カ国、西ドイツ四十九カ国等々ありますが、日本の場合には一九七七年にエジプトと一カ国だけということでございます。少ない理由については、この資料でも「明確ではないが」という断り書きがしてありますが、明確ではないのでは困るので明確にしていただきたいということと、今後の方針としてはどういうふうに考えていかれるのか、投資保証協定をどんどん結んでいくというお考えなのかどうかについて質問をいたします。
  68. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御指摘のように、わが国の投資保証協定と申しますか保険のそういう協定ではエジプト一カ国でございまして、アメリカや西ドイツに比べるともう格段の差でございます。そのわりには、投資は世界の四番目というような大きな矛盾を抱えておるわけでございまして、これは日本海外投資が、日本が近代化してまだ日が浅い、それから経済が非常に膨張したのもついせんだってというようなことで、日本にそういう海外の投資関係の保険制度というものが育成されていなかった、そういう土壌でなかったということが第一だと思います。したがって、世界の投資の四番目に属している日本といたしましては、この点十分配慮して、速やかに投資保証協定というものを相手の国と結ばなければならない。そうしないと投資の安定ということができませず、日本がいま世界のエンジンカントリーズとしての経済協力を迫られておるわけでございまして、これからその点を十分配慮して協定の促進に邁進したいというふうに思っておりまして、これを現状のままでいいとかあるいは後退させようというような考えはないわけでございまして、自由主義貿易の拡大、貿易の均衡というようなことも踏まえて、私どもは、この投資保証協定の前途とそれから現状というものを考えておるわけでございます。
  69. 城地豊司

    城地委員 この海外投資の関係で、先ほど田原委員からの質問と若干重複しますが、中小企業海外投資が非常にふえてきている。しかし、金額的に見ると全体の八%、件数は五一%ということでありますが、中小企業も最近は東南アジアその他へ非常に投資をしている傾向が目立ってきている、私ども、そう思います。しかし、海外へ投資するんだが実際に投資保険は余り利用しないという向きが多いような話も聞いておるわけであります。そういう意味で、中小企業海外投資の現況と、さらにそれと海外投資保険利用状況について伺いたいと思います。
  70. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私ども、鈴木総理もそうでございますが、私も、まず例にとりますと、ASEAN諸国五カ国を回ったときにいろいろな提案をした中に、中小企業の育成ということがあるわけで、発展途上国あるいは中進国に対しまして、日本の経験豊富な中小企業、中堅企業の育成がどれほど経済協力になるかということは、私ども、これらの国々の実情を見ておってわかるわけでございます。ただ、これらの国々に照会し、あるいはこれらの国々に投資しておる中堅企業、中小企業が、投資保証協定というものがないためにこれは入らないというようなことになっておりまして、日本側から投資をしている中堅企業、中小企業の人々は、一日も早くこの投資保証協定あるいは保険のでき得る制度というものを結んでくれという要望は非常に強うございます。したがって、私どもも、これらの国々に投資保証協定と申しますか、そういうものの協定を一日も早くしてくれということは申し入れておりますし、相手国側もそれをいやだというふうにキャンセルする国はほとんどありませず、この協定の締結に向かって理解ある態度を示しておりますし、私ども、一日も早く多くの国々と投資保証協定ができ得るようにこれからも努力してまいりますし、現在もそういう方向で進んでおるわけでございます。
  71. 古田徳昌

    古田政府委員 先生の御質問にございました海外投資保険におきます中小企業利用状況でございますが、製造業者にありましては資本金十億円以下のもの、商業者にありましては資本金三億円以下のものを取り上げまして、つまり中小規模事業者ということでございますが、これにつきまして調査しましたところ、海外投資保険につきましては、引受件数で二三・一%、保険金額で五・六%となっております。なお、海外投資保険全体の昭和五十四年度の引受件数は三百三十四件、保険金額は約八百七十九億円となっております。
  72. 城地豊司

    城地委員 次に、輸出代金保険及び普通輸出保険のてん補率の引き上げの関係について伺いたいと思います。  この示されました参考資料の表から見ますと、他の国の場合、特に非常危険の場合には、これはサプライヤーズクレジットの方ではなくてむしろバイヤーズクレジットの方がそうなんですが、非常危険一〇〇%または九五%、相半ばしているのが先進国の実情のようにこの表ではうかがい知ることができるわけでありますが、今度の法改正で九〇%を九五%にするという提起でございます。追いつくのに九〇%の保証を九五%にするということについては理解できるにしても、近い将来、アメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリア、オーストリア等一〇〇%実施しているとすれば、日本の場合にも一〇〇%に向かって努力するのだという考え方があれば、二段階の方式をとらなくても、今回の場合に九〇%を一〇〇%にするという考え方も出てくるのではないかと思うのです。     〔辻(英)委員長代理退席、委員長着席〕 それらについてどう考えられるかということと、世界全体の趨勢からいきますとどうもそういう方向に行っている、さらには非常危険の場合でなくて信用危険の場合でも、一〇〇とか九五という方向にどんどん行っている感じがするわけでありますが、それらとの関係でどのように考えておられるか、伺いたいと思います。
  73. 古田徳昌

    古田政府委員 確かに先生御指摘のように、輸出代金保険バイヤーズクレジットにつきましては、幾つかの国で非常危険の場合に一〇〇%のてん補になっておるわけでございますが、私どもとしまして、現在てん補率を一〇〇%にするということを考えていない理由は、第一に、輸出者が輸出保険制度を悪用するのを排除したいというわけでございます。自発的に損失を軽減防止せしめる必要があるというわけでございまして、やはりオウンリスクといいますか、みずからのリスクでもって事業に対処するということを要請したいという考え方でございます。  第二に、コスト部分のみならず利益部分まで完全にカバーする必要性は必ずしもないのではないかというふうに考えるわけでございまして、一〇〇%といたしますと、当然その中にその輸出に伴います利益の部分まで含まれることになっているわけでございまして、この輸出保険の運用としまして、私どもとしましては、コスト部分を回収するというふうな形で考えて運用していきたいというふうに思っているわけでございます。  それから、第三に、輸出者によるバイヤー信用調査の実行、それから事故後の回収努力という点で、やはりオウンリスクの分をある程度置いておいた方が十分に行われるのではないか、つまり回収努力等の点でおろそかになるおそれがそれだけ少なくなるというわけでございまして、こういう見方からしまして、私どもとしましては、長期的な課題としては確かに先生御指摘のとおり一〇〇%という問題を検討していきたいと思っておりますけれども、当面九五%ということで運営させていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  74. 城地豊司

    城地委員 考え方はわかりましたけれども、いま言われました中に、悪用するのを排除する、一〇〇%になりますとコスト部分のみならず利益部分も含まれるので非常に悪用される危険性があるという話でありますが、保険の種類によって違いますが、必ずしも利益を含めないでコスト部分だけ保証するという保険と、利益を含めた契約金で保証するという保険とあると思うのです。そういう意味では、悪用するというようなことについても、コスト部分だけだとすれば、やはり一〇〇%保証してもその中には利益が含まれていないということになるので、そういうことにはならないのではないかと思いますので、そういう点との区分けをして、一〇〇%保険カバーするという考え方に立てないのかどうか、重ねて質問したいと思います。
  75. 古田徳昌

    古田政府委員 通常、輸出の場合に、契約金額の中には当然のことながらある割合での利益を含んだ形で決められることになっているわけでございまして、そういう意味で私どもとしましては、一応九五%という比率で実施したいと考えているわけでございますが、契約実態等にさらに検討を進めまして、先ほど申し上げましたように、長期的な課題ということで一〇〇%てん補率の問題についてはさらに検討を進めてまいりたいと思っております。
  76. 城地豊司

    城地委員 それはわかりました。  次に、共同保険の関係について質問をしたいと思います。  共同保険共同受注というようなことが非常に多くなってきているわけですが、これはベルギーとフランスと二国との取り決めだけということで現状は推移しているわけですが、今後どういうふうに考えておられるかということと、これは先ほどの質問にもありまして、田原委員と重複するかもしれませんが、共同受注共同保険増大に伴って輸出保険運営に新たな業務が加わる。日本輸出保険の件数、金額とも非常に多いということだけではなくて、質的にはかなりの問題点があるから今回こういうような改正をしなければならないという事態になっているわけですが、そういう点で保険機関相互間に非常に複雑な利害関係が生ずるので、専門職員の養成配置、さらに法律顧問の設置というようなことも課題として提起されています。そういう関係について、ただ単に課題ということではなくて、新たに実行するときにはそれに付随するそういう措置をとるのがあたりまえのことであって、そういう意味では、この専門職員の養成や法律顧問の設置というようなことについてはどのように考えておられるか、お伺いをしたいと思います。
  77. 古田徳昌

    古田政府委員 共同保険の締結状況と今後の締結方針についてでございますが、現在までには、先生御指摘のとおり、ベルギーとフランスの輸出保険機関との間で共同保険取り決めを締結しております。さらにこれに加えまして、現在イギリス、ドイツ、シンガポール等との間で取り決めの締結につきまして交渉を進めておりますが、今後とも他の国も含めまして鋭意共同保険取り決めの締結に努めまして、今回の法改正と相まちまして、共同保険推進に努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  さらに、共同受注案件増大等に伴います引受体制整備につきましては、共同受注案件引き受けによりまして、パートナー国保険機関との連絡情報交換、打ち合わせといった新規業務増大するわけでございますが、これに対応するために長期保険課内に本年七月から共同保険班というものを設けて、これらの業務に当たらせることにいたしたいと考えております。  諸外国輸出保険機関との連絡等につきましては、日常業務について従来からテレックス網整備されておりまして、必要に応じまして常時連絡をとっているわけでございますが、さらに重要事項につきましては相互の会議を持って処理しておりまして、共同受注案件によります新規業務につきましても、支障のない体制確保されておりますし、さらに今後ともそれを充実していきたいというふうに考えております。  さらに、これに関連しまして、職員につきましての訓練も十分進めていきたいと思っておりますし、御指摘の法律顧問の設置につきましても、これは若干将来の課題ということになるのではないかと思いますけれども、前向きに取り組んでまいりたいというふうに考えます。
  78. 城地豊司

    城地委員 先ほどの質問とこれも若干関連するのですが、海外投資保険の関係では、輸入される鉱物等の生産の事業に付随して必要となる関連施設ということで、道路、港湾、その他水道、電気、ガス、倉庫等々述べられましたが、この関連施設ということで先ほどちょっと聞き取れなかったのですが、学校、病院などは含まれていない、考えていないというようなことで言われたような記憶があるのです。再度で恐縮でございますが、海外投資保険対象として関連施設をもう少し明確にしていただきたいというふうに思います。
  79. 古田徳昌

    古田政府委員 今回の法改正によりまして新たに対象に加えられることとなります生産事業関連施設としましては、生産の基盤となる施設または生産された貨物を本邦に輸入するために必要となる施設を考えておるわけでございます。資源開発、輸入の円滑な促進のため、この範囲につきましては、資源の生産事業との関連性と専用性の枠内で広くこれを定めることとしたいというふうに考えております。  具体的な対象範囲につきましては、今後なお検討を進めてまいりたいと思っておりますけれども、現在のところ次のような施設を考えております。  第一には、生産のための原材料または生産された貨物の運搬の用に供する道路、鉄道、港湾等の施設。第二には、生産の用に供する水、電気、ガス等の供給施設。第三には、生産に伴って産出される排水、廃棄物の処理施設。第四には、生産された貨物の保管に供する倉庫、冷凍庫等の保管施設。第五には、生産に携わる労働者の住宅施設等の福利厚生施設。第六としまして、その他貨物の生産または生産された貨物を本邦に輸入するために不可欠と考えられる施設ということでございます。  御指摘の学校、病院等につきましては、ただいま申し上げました第五の、生産に携わる労働者等の住宅施設等の福利厚生施設ということの範囲に入ってくるわけでございますが、これにつきましては、最初に申し上げましたように、当該生産事業におきます労働者が直接利用し、専用するというふうな観点から、学校、病院等につきましても積極的に取り上げていきたいというふうに考えているわけでございます。
  80. 城地豊司

    城地委員 次に、新しい保険制度としてインフレ保険というようなものを考えておられるかどうか、質問したいと思います。  次の点としては、プロジェクトの大型化によりまして事前調査費が非常に巨額になるという方向になっています。そのリスクカバーとして事前調査費をこの保険対象にするお考えがあるかどうかについて伺いたいと思います。
  81. 古田徳昌

    古田政府委員 先生御指摘のインフレーション保険とは、輸出貨物の生産期間中にインフレーションがありました場合の生産コストの増加による損失をてん補する保険ということになるわけでございますが、本保険につきましては、次のような点から問題があるというふうに私ども考えているわけでございます。  したがいまして、現在のところ導入は検討していないわけでございますが、第一としまして、一定の物価上昇が起きるということになりますと、ほとんどの案件が一時に保険事故ということになるわけでございまして、危険の分散が非常にむずかしいということになります。それからさらに、もし導入するとしますれば大幅な赤字が発生する事態ということも、先ほど言いました第一の事情との関係で考えられないわけではないわけでございまして、この場合には、国際的に見ますと、いわば輸出補助金制度の一種、隠れた輸出補助金制度というような形で、国際的にも問題になる可能性があるというふうなことでございまして、先ほど申し上げましたように、私どもとしましては、現在のところ、導入につきましての考えはないわけでございます。  それから、プロジェクトの大型化に伴いまして、事前調査費等の増大に関連しまして船積み前のリスクカバーにおいてソフト部分対象とするかどうかというようなことでございます。  技術または労務の対価の船積み前の危険によります損失につきましてはてん補することとしていないわけでございますが、その理由としましては、技術等の提供前の損失発生額については輸出者が挙証することがむずかしい、それから保険者としましても、適正な査定を行うことが非常にむずかしということ等がございます。  さらに、当該損失は通常準備事務費等の諸経費でございまして、一般事務管理費等で負担し得る範囲のものであるというケースが非常に多いわけでございまして、こういう理由からてん補の対象としていないわけでございますが、このような事情は諸外国におきましても同じでございまして、各国ともまだこの分野には本格的に取り組んでいないのが現状でございます。  しかしながら、今後こうした技術等の提供前のリスクが増加するという実態の変化が生じてくるということでございますれば、実際のニーズあるいはこうした技術等の損失の客観的な算定方法等につきまして十分な検討を行った上で、てん補の対象とすべきかどうかということについてさらに今後検討を加えていきたいというふうに考えております。
  82. 城地豊司

    城地委員 最後に伺いたいのですが、先ほども支払い準備率の問題で、準備率現在〇・八七%、千百八十二億という話がございました。そして資料によりますと、輸出保険特別会計資本金昭和四十二年に三十億円から六十億円になったわけであります。これは当然千百八十二億の支払い準備金の中に含まれる金額だと思いますが、この六十億円という資本金でいいのかどうかということが一つでございます。  それと、準備率との直接的な関連はございませんが、てん補率を非常保険の場合に九〇から九五に引き上げるということになりますと、それに関連する保険料率を当然引き上げられるのじゃないかというように感じるわけですが、その保険料率をどういうようにされるお考えか。  さらには、このように保険の範囲を拡大していくという場合に、どうしても保険準備率が多くなければむずかしいというように感ずるのですが、それらの点について再度、総括してお考え方を伺いたいと思います。
  83. 古田徳昌

    古田政府委員 輸出保険特別会計におきます資本金は、確かに先生御指摘のとおり六十億円という金額でございますが、この資本金に加えまして輸出保険におきましては、保険金支払いに備えて支払い備金あるいは異常危険準備金等の形の積み立てを行ってきているわけでございます。この全体をひっくるめましていわば支払い準備金ということになろうかと思いますが、このような支払い準備のための現金預金が、昭和五十四年度末現在で千百八十三億円となっております。  実は、これにつきましては、先ほども御説明さしていただきましたように、国際的に見まして必ずしも高い水準ではないということが言えるかと思います。したがいまして、私どもとしましても、支払い準備をさらに一層充実させるために、一般論として言いますと、一般会計からの資本金の繰り入れとかあるいは異常危険準備金等の積み増しを行っていくということになるわけでございますが、当面の厳しい経済、財政状況等も考えまして、私どもとしましては、保険特別会計の健全な運営によりまして異常危険準備金等の積み増しをさらに積極的に進めるというような形で、この支払い準備の充実を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、てん補率の引き上げに伴いまして保険料率についてどうするかというお尋ねでございますが、てん補を非常危険の場合に五%引き上げることによります事業収支への影響につきまして、昭和五十四年度の普通輸出保険及び輸出代金保険の実績をベースにしまして、非常危険の最近五年間の事故比率利用しまして一応の試算をしてみたわけでございます。その試算の結果によりますと、現行の料率のままでほぼ均衡ないし若干の黒字の傾向が出るというふうなことが見込まれておりまして、現在のところ、てん補率の引き上げに伴いましての保険料率の見直しをする必要はないというふうに考えているわけでございます。
  84. 城地豊司

    城地委員 最後に、新しい制度をたくさん取り入れて行います輸出保険法改正の運用、それから、かなり先ほども質問いたしましたが、法律顧問とか専門の職員の問題とか、新たにいろいろチェックをする機関、機能、運営等々の問題でたくさんの問題があると思いますが、十分慎重に対処していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  85. 野中英二

    野中委員長 渡辺三郎君。——速記をとめて。     〔速記中止〕
  86. 野中英二

    野中委員長 速記を起こしてください。  渡辺三郎君。
  87. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 最初に、プラント輸出の伸びの問題について御質問をしてまいりたいと思います。  資料を見ますと、わが国プラント輸出承認額はここ数年間、プラントが大型化するにつれて年々大きくなってきているわけでありますけれども、五十四年度の百十七億八千万ドル、しかし五十五年度は資料によれば三〇%近くこれがダウンするのではないか、こういうふうに言われておるわけでありますけれども、このダウンの理由は、端的に言えばどういう事情によって五十五年度このようにダウンを見越されておるのか、この点を最初にお伺いしたいと思います。
  88. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 五十五年度のプラント輸出の実績といたしましては、一昨年に比べましてどうも三割ぐらい減りそうであるということでございますが、この原因でございますけれども、市場別に見まして、まずアフガン侵攻に関連いたしましての対ソ制裁問題ということに関連しての減というのが一つあろうと思います。また、中国の経済調整に関連しての中国向け輸出の減ということがあろうかと思いますし、さらに中東関係におきましては、イラン・イラク問題というものも影響いたしております。そういったような輸出先の事情に基づきます特殊な原因というものがございまして、市場的に見ますと共産圏向けあるいは中近東向けを中心にこういった減が見られたということかと存じております。
  89. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そこで、海外直接投資の問題とも関連をしてお聞きをしてまいりたいわけですが、政府の出された昭和五十二年度以降の状況をずっと見てまいりますと、これも着実な直接投資の伸びが見られるわけであります。五十五年の上半期の直接投資についてはこれまでの伸びの趨勢が続くだろう、こういうふうに分析しておられるわけでありますけれども、さらにまた直接投資の収支のバランス、これも四億ドル程度ではありますけれども大体黒字の基調が固まってきておる、このような見方をしておるようでありますが、直接投資についていま言ったような状況であるとすれば、これはプラント輸出の承認額の五十五年度の大幅な減、これとの関連でどのように解釈すればよろしいんですか。
  90. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 ただいま先生の御質問は、プラント輸出と直接投資との関連について、直接投資の方は順調に伸びておるけれどもプラント輸出の方は大幅に減少の傾向があるがこれはどういうふうに理解するか、こういう御質問かと存ずる次第でございます。  先ほども大蔵省の方から答弁ございましたように、五十五年度の海外直接投資につきましては大体前年度並みに推移するんではないか、少し少な目かもしれぬけれども、五十億ドルの昨年度の数字に少し足らないけれどもというふうな話がございました。業種別につきましてはそのときのいろいろな海外直接投資が伸びていく理由、たとえば製造業について必要性があるとかあるいは資源確保のために投資をしなければならぬとかいう傾向がいずれも続いておりますのでそういう傾向にあると思いますけれども、ただ、これが直接にはプラント輸出にはつながらない面もあろうかと思います。特にプラント輸出の場合においては、非常に大規模なプロジェクトが進行すると金額が非常にふえるという傾向もございますので、私は、この点につきましては、年々直ちにはリンクはしていないのではないか、こういうふうに感じておる次第でございます。
  91. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 直接リンクしてないという事情については私もわかりますけれども、海外の市場調査の関連でこれからお聞きをしてまいりたいと思いますが、確かに、先ほど局長がおっしゃいましたように、対イラン、イラクあるいは中国あるいはアフガン、こういったような国際的な大規模な紛争なりあるいは経済上のトラブルがありますから、これによって五十五年度は大幅にプラントの輸出は減る見込みだということは了解できます。  しかし、直接投資の方が伸びておるというのは、いま栗原局長が挙げられたような対象の地域、これとは全く海外投資の場合には違う地域に行われているのだというふうに解釈してよろしいのですか。
  92. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 日本の海外直接投資がどういう地域に向かっておるか、そういうことでございますと、たとえば最近の年度をとりますと、アジア、北米、それから中南米、これが大半でございまして、五十四年度について見ますとこの三地域の合計が七割強、こういうことになっております。
  93. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 バイヤーの海外実態調査といいますか、この問題についてちょっとお聞きをしておきたいと思います。これは通産省として海外調査の名簿を備えつけておかれていると思いますけれども、このバイヤーの格づけについて少し内容を細かに聞いてまいりたいと思うわけです。  調査して名簿に載っける、こういうふうな場合に、これはもちろん、海外投資をするとかあるいはプラントを輸出するとか、そういった国内の業者を保護するあるいはわが国海外投資プラント輸出に伴う危険をカバーする、こういう意味で相当厳密に調査が行われているというふうに思うのですけれども、どういう機関に委託をして行われているのか、あるいはランクづけはどのように行われているのか、この点を少し具体的に中身をお聞きしたいと思います。
  94. 古田徳昌

    古田政府委員 海外信用調査の具体的な内容でございますが、輸出保険のうち信用危険をてん補します保険につきましては、相手方バイヤーの信用力に応じまして保険引き受けの是非を判断する必要がどうしてもあるわけでございまして、そういうことで輸出保険業務の一番中心信用調査ということになってくるわけでございます。  これにつきましては、先生も御指摘いただきましたように、輸出保険当局におきまして整備しております海外商社名簿というのがあるわけでございまして、これは昭和五十五年四月一日現在で約九万のバイヤーが登録されております。これらのバイヤーにつきましては、海外の有力調査会社、これはアメリカ等の有力な調査会社に委託するわけでございますが、その会社の報告やあるいは輸出者の申告等によりまして、その財務状況取引状況等の最新の情報を入手して信用度の調査を行うとともに、これによりますバイヤーの格づけの決定を行っているわけでございます。その際に、もちろんベルンユニオンを通じましての他の保険機関との情報交換ということも一つの材料としているわけでございます。  バイヤーの格づけにつきましては、現在、信用度の良好なものから不良なもの、さらに保険の債権残高が非常に大きなもの等の基準によりまして五つの種類に分類しております。この分類によりまして、信用危険をカバーする保険引き受ける場合に、その引き受けを具体的にどういうふうに行うかということを決めておるわけでございます。
  95. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうしますと、いまお答えいただいたように五つの分類をする。その場合に保険対象がそれによって決まっていくと思うのですね。これは、具体的に言えば、名簿に載らなかった相手方バイヤーとか、あるいはその名簿の中でも、いまおっしゃいましたように五つのランクがある、その中で幾つかについては、わが国輸出保険を実行する場合に、保険対象としてこのバイヤーとの取引についてはできませんよ、対象になりませんよ、いわゆる承認から外れてしまう、こういうふうな状況になるのでしょうか。
  96. 古田徳昌

    古田政府委員 海外企業の信用状態につきまして、先ほど申し上げましたような調査を通じまして五つの区分分けにしているわけでございますが、この中でリストに載っていないものが出てまいりますと、それもさらにそれにつきましては新しく信用調査をしましてこのリストの中に載せるという作業が要るわけでございます。そういたしまして格づけをいたします。そういうことで、たとえば代金を支払わない危険がある非常に大きい業者あるいは破産その他これに準ずる状態にある業者といったふうなものがございますと、それは格づけの中で非常に低い方になっておりまして、保険関係は成立しない、つまり保険を私どもとしては引き受けないというふうな形になってくるわけでございまして、先ほど申し上げました現在持っておりますリストに加えまして新しいものが出てまいりましたならば、それは逐次、先ほど御説明しましたような調査によりまして追加しながら具体的な保険引き受けを実施していきたいというふうに考えているわけでございます。
  97. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 ちょっと細かいことで申しわけないのですけれども、そうしますと、そういう信用調査によってその結果名簿が備えつけられる。それはわが国取引業者が取引が円滑にできるかどうか判断する最も基礎的な資料になると思うのですけれども、たとえば、いまもちょっと例として出されましたように、相手方の代金支払いが遅延をしたとかあるいはバイヤーが破産をしたとか、そういったような状況になれば絶えず名簿というものが変更されなければならないと思いますね、たくさんの数が信用調査の名簿へ出ておるわけですから。これは何年に一回書きかえられるのですか。信用調査というのは毎年行われるのですか。
  98. 本郷英一

    ○本郷説明員 ただいま御質問のございました信用調査をどのくらいやっているかということでございますが、現在登録されております約九万のバイヤーにつきまして、実はこれは全数毎年調査することが最も望ましいわけでございますけれども、それが予算の制約上必ずしも全部実行できておりませんで、大体現在では年に三万数千件を調査をいたしております。
  99. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それから、これは当然それだけの膨大な対象があって調査をされておるわけでありますけれども外国機関に委託をするその調査の場合に、委託費というのが当然わが国としては準備をされなければならないと思いますが、この予算関係はどうなっていますか。
  100. 本郷英一

    ○本郷説明員 この信用調査予算につきましては、輸出保険特別会計予算の中で事務取扱費というのがございますが、その中に信用調査等委託費というものを計上しております。先般成立いたしました五十六年度予算におきましては、この委託費の合計が二億一千百万円でございます。
  101. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、日中プラントの問題について概括的で結構でございますが、若干お聞きをしたいと思います。  いま、日中間で問題になっております懸案の解決のために特に折衝が行われていると思いますが、五社の代表がきのうお帰りになったようであります。これは新聞報道を通じてわれわれは知るわけでありますけれども、一ころよりはこの話し合いが若干進展をした、こういうふうに見られておるようでありますが、これは後でお聞きをすることにいたしまして、今回の日中プラントの問題について、中国側のいわゆる財政経済にしぼって見た場合に、一口に言いまして次のようなことに解釈をしていいのかどうか。  第一は、中国の財政赤字、インフレの問題。それから第二は、エネルギーの不足あるいは国内のいろいろな面での資材、原材料の調達について十分な対応ができていない。三番目としては、そこで思い切った財政経済の立て直しを図らざるを得ない。とりわけ基本建設投資を縮小する、あるいは計画を大幅に延期をする、こういったような経済調整の結果、わが国との間で成約をされておるプラントの問題が出てきた。  私がいま申し上げているのは、政治的な課題は一切抜きにして、財政経済上の問題についてこのように見て間違いないのかどうか、これは田中通産大臣の方からお伺いをしたいと思うわけです。
  102. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私は、渡辺委員御指摘のとおりだと思います。と申しますのは、御承知のように日中間には日中長期経済取り決めというものがございまして、わが国はその取り決めの内容を主体といたしましたプラント輸出、向こうはエネルギーの供給というようなことがあったわけでございますが、まず第一に御指摘のインフレ、三番目の経済状態、これは二つとも絡んでいると思いますけれども、中国におきましても経済状態がインフレ化しておる。しかも、不況下のインフレ、つまりスタグフレーションが激しくなっておる。したがって、三番目の経済調整、いままで近代化ということでいろいろ計画を進めてきておりましたけれども、そこを調整しなければいけないということで経済調整が始まって、私どものプラントの輸出に対する再考慮、再配分が行われてきたと言えるのです。  二番目のエネルギーでございますけれども、石油の開発が予定よりも非常にうまくいかない。石炭の方は予定どおりのようでございますけれども、最初私ども約束した石油の量は大幅に減って、二年間、それぞれ一年間八百三十万トンですか、そういうふうになっておりまして、石油そのものが中国の国内でかなり使われるということもあり予定の計画どおりいかないということと、中国でも石油を使用するというような二つの要因で、エネルギー問題が計画どおりいかない、そういうようなペースで、したがって日本に対するプラントの計画、つまり御承知のように宝山の第二期計画、上海の石油プラント、北京東の石油プラント、勝利のプラントというものを一応見合わせるということを通告してきているわけでございます。
  103. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま大臣も述べられましたように、中国側の事情はそういう事情だと思います。この問題で、円満に解決されることをわれわれ強く望むわけでありますけれども日本側の反省あるいは今回のトラブルをめぐっての教訓といいますか、これをどのようにお考えになっておりますか。これはまあ本当は大臣がよろしいんだと思いますけれども局長でも結構です。御答弁いただきたい。
  104. 田中六助

    田中(六)国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、日中長期経済取り決めという一つの国際協定によって成立した案件で、わが国プラント輸出、向こうはエネルギーということであったわけでございますが、向こうの近代化と、それから現実の民生の経済安定ということがちぐはぐに計画がなっておるわけでございます。私どもは、一方的に近代化の一つの柱になるプラント輸出というものを押しつけたというわけではなく、あくまで合意にのっとってやったわけでございます。まあ日本側が見通しが悪かったと言われればそれまででございますけれども、こちらが強要したということはないわけで、向こう側もその後、劉興華さんを中心とする一行が日本にいろいろな事情を説明してきておりますし、この八日にはまた周建南という輸出入管理の副主任さんが参りまして、いろいろな事情を説明する。この間、わが国からも民間の人々が非常に足しげく行っておりまして、これがそのまま凍結あるいはストップ、断念されるという、必ずしもそういうことでもない点も見られてきつつありますし、今後の話し合いによってはある程度の、これが全部復活ということは経済調整ということをまた掲げておりますので不可能かとは思いますけれども、ある程度の話が進むんじゃないかという希望は多少持っておる段階でございます。
  105. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 もちろん、これはわが国が押しつけたというふうなものではないと思います。また、押しつけてこれだけの巨額のプラントの成約ができるものじゃありませんから、私もその点は別に違った考え方を持っておるわけではありません。ただ、冒頭お聞きしておりましたこの海外市場調査といいますか、そういう点で、やはりこれは見通しがなかなかむずかしいという事情はわかりますけれども、簡潔に言いますと、少し乗り過ぎたんじゃないかというふうな気がするわけであります。  幸い、後でお聞きをしますが、この輸出保険との関係でわが国が大変に支払わなければならないという事情になるとは思っておりません。思っておりませんけれども、何しろ大変な大型のプロジェクトであります。大型のプラント輸出でありますから、こういう問題についてはよほど慎重な対応が必要であろうかと思います。しかも、中国の場合には不幸な状態が長く続きましたから、国交正常化以前はもちろんこういった大型プラントの輸出というものはありませんでした。五十三年以降急速にこういう状態が出た全く新しい市場であります。こういう点に対するもっとシビアな、冷静な市場調査というものがどうしても必要なのではないか。これは、いまは中国の例でありますけれども、今後わが国は、一時的なダウンはあったにしても、今度の保険法改正が示しておりますように、さらに大型のプラントというものがどんどんふえていくであろう、またいかせなければならぬ、こういう状態でありますだけに、これらに対する信用調査というものあるいは海外の市場調査というものはもっと厳しくやる必要があるのではないか、そういう意味での教訓、まあ押しつけという意味ではなくて、そういうふうに私は感ずるわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  106. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私どもも、もちろんこれを一つの教訓にしなければなりませんし、海外投資という、あるいはプラントの輸出というものについて厳しく、慎重にある程度考えていかなければならないという反省はしております。
  107. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 この問題に関しては、最後に一つお聞きしますが、先ほど大臣の御答弁の中で若干触れられてはおりますけれども、折衝の現状、これは民間ベースでわが国の場合には主として詰められていると思いますけれども、この折衝の現状と今後の見通し、この見通しの問題は通産省としてどういうふうにこの問題が決着つくというふうにお見通しなのか、あるいはまだ皆目わかりませんとこういうことなのか、現状でのお考えを述べていただきたいと思います。
  108. 田中六助

    田中(六)国務大臣 全く将来はわかりませんということではないと思います。先ほども申し上げましたように、向こうから劉興華さん、あるいは今度、あしたですか、周建南さんですか、そういう人が来られますし、説明は十分しょうと思います。まあ一部、これも定かではございませんけれども、谷牧副首相も来られるという風聞もあります。向こうも真剣にある程度考えてみようという考え方が浮き彫りにされておると思います。ただ、これはあくまで日本側としては民間の態度、あるいは民間との協定でござますので、私どもはその環境づくりということについては強い関心と、またあるいはそういう一つの責務もございますけれども、あくまで民間が進めていることで、民間の人々もそれぞれ個別企業の人たちがどんどん中国に渡っております。それから、向こうから来られた人々にも十分な話し合いを進めておりますので、全部が全部だめだというようなことは言えないかもしれないし、ある程度の光明もあるような気がしますし、その点、まだ私ども実態を把握しておりませんので、責任のあることは申し上げられませんけれども、ただ、多少光が見えてきておるんじゃないかということは申し上げられる現状ではないかというふうに思います。
  109. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、輸出金融の問題について若干お聞きをしたいと思います。  先ほど来申し上げましたが、このプラントの輸出は逐年ずっと伸びてきておる、一時的な五十五年度のダウンはあったにしても、さらに今後大型化していくというふうな状況は変わりないと思うのであります。したがって、それに必要とされる資金の枠も比例的に当然拡大をしていくだろう、こういうふうに考えられます。  プラント輸出の場合に、輸出契約額のほぼ三分の一ぐらいは制度金融に頼っているといいますか、それを利用している、こういうふうにお聞きをしておるわけでありますけれども、仮に百二十億ドルといったような輸出であれば、三分の一ということにしますと四十億ドルというふうなかりこうになりますし、百億ドルということになれば三十三億ドル、大変な資金なわけでありまして、この資金の手当てというものが十分でないと、大型化するプラント輸出をさらに発展させようとしても、そこでふん詰まりになってしまうというふうな状況があるだろうと思います。  そこで、特にこの中心的な役割りを果たされておる輸銀の資金準備状況あるいは融資状況、これを最近の状況についてお伺いをしたと思います。
  110. 中村進

    ○中村説明員 プラント輸出に対する輸銀の金融でございますけれども、一ころは非常に伸びたのでございますが、このところやや停滞ぎみでございます。しかしながら、最近の情勢を見ますと、また少しずつふえてくるような感じがするわけでございます。  それで、数字にわたって恐縮でございますが、私どもプラント輸出に対する貸付額、これはサプライヤーズクレジットとそれからバイヤーズクレジット、バンクローン、両方含めたものでございますけれども、五十四年度の実績は四千億円をちょっと超えたという状況でございまして、五十五年度の実績は、これはまだ出ておりませんけれども、恐らく五十四年度を上回ったと思います。  問題は、今後、五十六年度がどうかということでございますけれども、私どもは、貸付計画の上におきまして、サプライヤーズクレジット及び、バンクローン、両方合計いたしまして、五十六年度には五千五百億円の貸し付けの計画を立てているわけでございます。これはかなりの金額でございますし、またこの貸付額で万一不足というようなことが生じました場合には、調整枠、これは予備費みたいなものでございますが、これが四百億円ございますので、それを使用いたしまして、プラント輸出に対する資金需要に対しては十分応ぜられるというふうに考えております。  なお、先生御指摘の輸出承認とそれから輸銀の融資の関係でございますが、確かに両者関係ございますが、ただ、これは時期的なずれもございますし、輸銀に資金需要として出てくるのはちょっとおくれるということもございます。それからまた、輸出承認の中には現金払いで決済される部分がございまして、この部分は輸銀の融資の対象となりませんので、そういう事情のあることも御承知おき願いたいと思います。  以上でございます。
  111. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま副総裁が答弁された、五十四年度四千億を超しておるというふうにお答えいただいたのですが、これは融資の承諾の額ではなくしていわゆる融資額ですか。承諾額として出されておるのは三千八百十七億、こういうふうに言われておりますが、これはもちろん、この中から船舶に対するものあるいはアンタイドローン、こういうものを除いたものというふうに資料では出ておりますが、その四千億を超したというのはどういう額ですか。
  112. 中村進

    ○中村説明員 先生御指摘のとおり、融資承諾額で見ますと三千八百億円程度でございますけれども先ほど私が申し上げましたのは貸し付けの実行額でございます。通常、融資承諾とそれから貸し付け実行の間には半年ないしは一年のずれがございますので、その点御承知おき願いたいと思います。
  113. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 もう一つ重要な融資の主体としては、基金があると思いますね、海外経済協力基金。これとそれから輸銀との関係といいましょうか、一応目的なりそれから性格なりが違うことはわかるのですけれども、実際の業務内容として同じように競合する面があるのではないかというふうに私は見るわけですけれども、その点はどのようにきちんと区分けされているのか、あるいは競合というものは事実上ないのかどうか、この辺は経済企画庁の方がいいと思いますが、御答弁願います。
  114. 小谷善四郎

    ○小谷説明員 先生御承知のように、基金と輸銀はそれぞれ目的なり役割りは若干異なっております。しかし、開発途上国政府に対してわが国政府が直接貸し付ける借款につきましては、輸銀でも基金でもできるという側面もございまして、若干わかりにくい面もございますので、昭和五十年に業務分野の調整を行いまして、政府直接借款は基金が行う、それから一般案件は輸銀が行うということを原則としてやろうということで、業務分担を明確化してございます。その後、これに沿いまして両者の業務は行われておりまして、さらにまた随時両者間で必要なことは協議を行っておりまして、したがって、そのようなことから融資先の競合ということは起こらないようになっているというふうに私ども考えております。
  115. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、先ほど同僚の城地委員からも質問があって、比較的はっきりした御答弁を政府は行ったわけでありますけれども、つまり、資源開発融資におけるインフラストラクチュア整備の問題、これは最近の実績としてプラント輸出全体に占めるこの部分比率というものはどのぐらいになっておりましょうか、もし資料が出ておればお答えいただきたいと思います。
  116. 古田徳昌

    古田政府委員 輸出保険観点からしますと、従来は生産に直接必要な設備ということで対象としてきておりましたので、輸出保険サイドからの数字は実は把握できていないわけでございますが、ただ具体的なケースとしまして、私どもとしましては、その生産設備に関連しまして、それに関連する生産事業関連施設といいますか、インフラストラクチュア関係についての要請が次第に強まってきているというふうに承知しているわけでございます。
  117. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 今度の法改正によって、当然この整備に要する資金も保険引き受け対象に加える、こういうふうになるわけでありますから、いままでのこの保険法の関係では直接は対象になっておりませんからお調べになってないと思いますが、最近のプラント輸出の傾向から見て、これはどのぐらいの全体的な率を占めるのだろうか。プラントの内容によってももちろん違うと思いますけれども、それを実はお聞きしたかったわけですが、これはまとまっていなければ仕方ありません。  先ほどの答弁の中で幾つかのケースについての御答弁がありまして、たしか第五項目ですか、よく言われますような学校、病院、これは労働者の生産活動に必要な住宅あるいは福利厚生施設の一環としてそれが不可欠のものであれば学校とか病院も今後積極的に考えていきたい、この趣旨の御答弁が城地委員に対してなされたようであります。この場合、学校、病院というふうな表現で固定をされておるのか。たとえばわが国が最近、環境整備というふうなことで、広い意味での工場敷地内などにいわゆる公園であるとか緑地帯であるとか、こういうふうなものまで含めて工場の建設が行われておるわけでありますけれども、この範囲がどうも境界が明確でないといいますか、その辺もう少し考え方が具体的におありであれば、もっと細かにお答えをいただきたいと思うのです。
  118. 古田徳昌

    古田政府委員 今度の法改正によりまして、私どもとしましては、生産事業関連施設としてその範囲を検討していきたいと考えているわけでございますが、それにつきましては直接の生産事業との関連性がどうか、それから専用性がどうかということで検討を進めたいと思っております。したがいまして、先ほども御説明いたしましたけれども、生産に携わる労働者の住宅施設等の福利厚生施設といった場合も、いわゆる町の中にあります普通の公園等ということになりますと、これはちょっと対象にしにくいのではないかと思いますが、工場敷地内で明らかに労働者が使うというような公園につきましては、もちろん対象として取り上げていくというふうなことになろうかと思います。
  119. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これは後で、ブーメラン効果の問題と関連して時間があれば御質問申し上げたいと思いますので、ちょっと保留をしておきたい、こういうふうに思います。  次に、中小企業海外投資が最近非常に増加をしておる。それからプラント輸出中小企業への波及効果、この問題を今度の法改正の趣旨説明の中では強調されておるわけであります。  お出しになった資料を見ますと、昭和五十三年度の海外投資、許可ベースでありますけれども中小企業関係では件数にしますと千二百十九件、五一%、それから金額では八%、額にしまして三億八千百万ドル、こういうふうに出ておるわけであります。プラント輸出の場合の中小企業への波及効果がいま言ったように非常に高いというふうに述べておりまして、たとえばプラント輸出一億円は国内生産二億五千万円を誘発する、そしてその中に占める中小企業の割合は三四・七%、このように資料では述べておられるわけでありますけれども、これはどういう方式でこの波及効果というものを測定なさっておるのか、その測定の方法をお聞きいたしたいと思います。
  120. 古田徳昌

    古田政府委員 この計算のベースとしましては、昭和五十二年三月に作成しました規模別産業連関表を用いて試算したものでございまして、これによりましてたとえば一般機械の誘発効果が中小企業自体にどの程度になるか、あるいは大企業に対してどの程度になるかということをそれぞれ試算しまして、先ほど先生からお示しいただきましたような数値を結果として得たわけでございます。
  121. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これは後で詳しく検討させていただきますが、ちょっとここで確認をしておきたいのですが、プラント輸出が仮に一億円、そうするとその波及効果によって国内生産は二億五千万円というふうになるのだ、この二億五千万円の国内生産の中で中小企業の占める割合が三四・七%、この説明はこういう意味でしょうか。ちょっとそこを教えていただきたいのです。
  122. 本郷英一

    ○本郷説明員 これはただいま貿易局長からお答えいたしましたように、産業連関表を用いて試算を内部でしてみた結果でございます。二・五倍というのは、一般機械の場合にプラント輸出を一やった場合に、国内でそのために必要な部品とか、さらにその部品をつくるために必要となる鉄鋼、金属製品あるいは化学製品、そういったものに次々と波及をいたしていきますので、その全部を産業連関表によって直接間接の効果をすべて足し合わせますと、二・五倍近くになるということでございます。それから、そのうち中小企業への誘発効果といいますのは、二・五倍近くのうちの三四・七%が中小企業へ行く、こういう試算の結果になっております。
  123. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それから、昭和五十六年度つまり今年度から、海外投資アドバイザー制度、これが発足をすることになりますけれども、この機構、それから業務内容、これによる効果といいますか、そういう点をどのようにお考えでしょうか。
  124. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 五十六年度予算におきまして発足いたします海外投資アドバイザー制度内容とその効果でございますけれども、五十六年度予算におきまして約五千八百万円の予算を組みまして、海外の事情に明るい方を三百六十名程度委嘱いたします。約十カ国を対象としておるわけでございますけれども中小企業事業団にそのような海外の事情に明るい専門家を委嘱いたしまして、中小企業者海外投資をしようとする場合にその投資先のアドバイザーにあらかじめ御相談をいたしまして、投資先の金融事情でありますとかあるいは投資環境、特に相手先のパートナーはどういう人を選んだらよろしいかとか等々もろもろの事情を十分に相談いたしまして、投資前の事前調査の完璧を期するということでございます。  先ほど先生御指摘のように、中小企業の投資は非常に伸びておりますけれども、その結果を見ますと、必ずしも大企業と比べましてその成功率はよくございません。完全に成功したというものは二〇%程度というふうにも統計では出ておりますので、その原因を探ってみますと、多くの場合、事前調査が不足しておったということによる場合が多いわけでございまして、何と申しましても、投資を決定する前にそのようなアドバイザーから十分に現地事情を聞いておくということが非常に大事だということでございます。  その結果、五十六年度からこの三百六十人のアドバイザーを委嘱して事業を進めようとしておるわけでございますけれども、その効果につきましては、もちろん今後の実績にまつわけでございますけれども、近年におきます中小企業者の海外進出の意欲というのは非常に多いという状況から見まして、すでに中小企業の団体あるいは中小企業者の中から、ぜひアドバイザーからのいろいろな情報を聞きたいという反応が出ておりまして、非常に大きな成果を上げるものというふうに私どもは期待しておるわけでございます。
  125. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それから、中小企業プラント輸出の場合、当然それに伴ってまいります現地の資金調達、これは各国ともなかなか大変なようだ、こういうふうな説明が一方においてあるわけですが、こういった現地金融、現地資金調達、これらに対するアドバイスは主としてどこでやられるのですか。
  126. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 先ほどの説明、若干言葉が足りなかったわけでございますけれども、アドバイザーの人をどういうふうにして選ぶかというのは、海外に現に長い間滞在した経験を持っていらっしゃる方から、当然のことでございますけれども選択するわけでございまして、一つのアドバイスといたしましては、長年の現地経験あるいは事業活動の経験を持っておられるアドバイザーから、現地の金融等はどのようにしていったらいいかということを教えていただくということが非常に大きな効果を持つと思います。  また、もう一つのルートといたしまして、現在諸外国から非常に熱心に日本中小企業の海外進出を求めてくる州あるいは政府機関がございます。そのような場合におきまして、私どもといたしましては、十分に相手国の政府の機関等から、その当該国におきます金融事情を調査あるいはヒヤリングをいたしまして、そのような情報につきましても詳細な情報ファイルをするということも五十六年度に事業としてスタートすることにしております。  したがいまして、もう一つのルートは、相手国の政府から具体的に金融事情の実態を聞き取りまして、それを中小企業者に流すということも考えておるわけでございます。
  127. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 先ほどの答弁の補足としてはわかりました。  現地の資金調達の問題、この問題をちょっと。
  128. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 海外へ進出しました日本の企業、あるいはまた現地におきまして合弁会社を設置する、これらの会社が現地でどのように資金を調達しているか、これは非常に多岐多様、いろいろなやり方があるだろうと思いますけれども、現地において信用力が十分でございますれば現地の資金を借り入れることもできましょうし、あるいはまた親元におきまして必要な資金量を調達して送金をするということもございましょうし、私どもは、国内、国外、非常に金融が国際的に動く世の中になっておりますので、適時適切に必要な資金量を調達できるような企業であってほしいということで考えております。
  129. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 信用があれば銀行は金を貸す、簡単に言えばこういうことなんでしょうけれども、たとえばジェトロで出されておる資料を見ましても、最近特に中進国でありますとかあるいは発展途上国、こういった国内の金融事情が非常に厳しくなっておる。したがって、そうした国における投資に対する資金的な手だて、こういうものが非常にむずかしいのじゃないか、こういうことが指摘をされておるわけですね。そういう意味で、とりわけわが国中小企業、これは会社そのものは非常に優秀であっても資金力から言えば非常に弱いわけでありますから、大企業とも違ってそういう中小企業の直接投資やプラント輸出、こういう問題についても、資金調達は一体どこで的確にその国の事情というものを説明をし、アドバイスするのか、そういう意味でお聞きしたわけであります。時間の関係もありますから、この点については結構です。  そこで、ブーメラン効果といいますか、ブーメラン現象の問題について若干お伺いをしたいと思います。  これは、わが国では繊維の経験があるわけですけれどもプラント輸出の振興あるいは特に大型化の中で、近い将来あるいはもう少し長期にわたって状況を見た場合には、ブーメラン現象というものは必ずあらわれてくるだろう。これがわが国へはね返りがあるということは言うまでもないわけでありますから、これらについての予測を政府はどのようにお立てになっておるでしょうか。これは産業別に違うと思いますけれども、どういうふうにお立てになっておるのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  130. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 ブーメラン現象についてどういうふうに予測をしておるかということでございますが、お答えの前に、そもそも海外投資をどういうふうに理解しておるかということをまず申し上げたいと思います。  当然、海外投資は企業の責任と判断で実行されるものでございまして、国内の側から見ますと、産業構造高度化の一環といたしまして海外に出ていくということもございましょうし、資源エネルギーの安定的な確保ということも必要でございますし、また、販売拠点の確保という意義も持っておる、こういうふうに理解しておりますが、同時に、投資先が発展途上国である場合におきましては、広義の経済協力と申しますか総合的経済協力と申しますか、そういう意味におきましては発展途上国経済発展にも役立つ、こういう意義を持っておると理解しておりまして、非常に積極的な意味があるのではないかと考えております。  ところで、現地法人をつくりまして製品を製造し始めますということになりますと、それが一部日本に輸入されまして日本の同業の国内企業を圧迫することがあるではないか、こういう議論があるわけでございますが、本質的には、日本産業構造発展途上国産業構造との間の大きなシフトの問題としてこれを理解する必要がある、同時に、日本の企業のそういう産業におきますところの国際競争力の問題として理解する必要があるのであって、逆輸入ということだけにのみこれを狭く解釈して判断すべきではないと私は考える次第でございます。  ところで、問題となっております私どもが過去において経験しました繊維産業についてでございますけれども、アジアにおける現地法人に範疇を限定いたしまして調べてみました。そうしますと、それらの企業が生産をしております大部分は現地のマーケットに販売いたしておりまして、当該国で六七%販売いたしておりまして、日本輸出いたしておりますのは全販売額の三%という数字が出ております。したがいまして、基本的には現地のマーケットを志向しておるのだというふうに理解されるのではないだろうか。  また、石油化学につきましても同様なことが一般的に言える次第でございまして、石油化学の場合にはそれまで投資が進んでおりません。しかしながら、結論的に申しますと、業種、業態によりまして、あるいは投資規模、そのスピード、こういうことによりますと、国内に入ってきますところの輸入品が国内の中小企業その他に影響を与えることもございますので、こういうことのないように事前にあるいはまた所要の指導をしてまいる必要がある、こういうふうに考えております。
  131. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そこでひとつお伺いをしたいのですが、これは紙パルプ産業の場合であります。  いま日本の紙パルプ産業が非常に深刻な状況に陥っているというふうによく言われるわけでありますけれども、これは原材料の確保の問題と油の値上がり、さらにまた重油燃料をどう転換していくのかという燃料転換の問題、こういう基本的な問題があると思いますけれども、まあそれはそれとして、次のような点についてはどうかということです。  つまり、単にパルプ材それからチップの輸入にとどまらないで、海外造林を積極的かつ計画的に推進していく、こういう形での開発、輸入が進められようとしている、あるいは進められつつある。さらに次には、パルプ輸入を志向する方向が推進されようとしている。また、紙、板紙製品の海外での生産、それを日本に逆輸入する、こういった方向の強化が現に進められつつあるのではないか。特にわが国の製紙メーカーの海外合弁生産の。プロジェクトは、対アメリカ、それからカナダ、ニュージランド、こういう計画が進んでいるというふうに思いますけれども、こうなってまいりますと、問題は、こうした中で日本における木材資源の造成の対策を一層消極化さしてしまう、いま言ったような状況から言うと。それから、中小紙パルプ企業が思い切って整理淘汰される、そういう形に連動していかざるを得ないのじやないかというふうな危惧の念を持つわけです。これは、日本の紙パルプ産業全体がだめになってしまうというふうに私は単純に考えませんけれども、しかし、いま言ったような方向がずっと進められていけば、勢い中小紙パルプメーカーというものはもう淘汰されざるを得ない、こういうふうな問題意識を深刻に持っている方がたくさんおるわけでありますけれども、こういう問題については一体いかがお考えで、またどのように対処をしておられるのでしょうか。
  132. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 紙パルプ産業につきまして御指摘の点は、まことにそのとおりだと私どもも同感いたす次第でございます。日本の基礎産業の一つとして紙パルプ産業が、海外からのチップの輸入あるいは燃料としての石油の高騰、原料問題その他におきまして非常にハンディキャップを生じておる。  そこで、先般、八〇年代の紙パルプ産業を一体どういう方向に再建すべきかということで産業構造審議会の答申がございました。この答申の中で一つ注目すべき点は、現在の紙の製品輸入の比率は大体二ないし三%になっております。これが十年後にどのぐらいになるか、そのときの答申には七%という数字が出ております。私どもは、現在いろいろな産業において国際貿易が自由でございますので、比較競争力の原理からいたしまして優越するものは輸入がふえてくるわけでございまして、物によりましてはもっともっと高い輸入比率のあるものもございますけれども、紙につきましては七%ぐらいでおさまるという感じを逆に持っておる次第でございます。  ということは、紙のように非常にバルキーなものでございますし、用途との間においてそれぞれの関連が深くございますような産業におきましては、今後とも原材料の輸入については非常に重点がございますけれども、製品については限度がある。ただ、一口に七%でございますけれども、紙の中の品種によりましては非常にばらつきがあるということは御案内のとおりでございます。したがいまして、ただいま御指摘のように、海外における造林をいたしまして安定的に、木材で輸入するかパルプで輸入するか、あるいは若干加工した形で輸入するか、それはそれぞれ判断がございましょうけれども、いずれにいたしましても資源の安定的輸入、さらには製品の多角的な国際貿易の発展ということを頭に入れまして、日本の紙パルプ産業というものがなお国内志向型で存立するために必要な諸条件というものを今後とも検討してまいる必要があると考えております。
  133. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 もう一つこの問題でお聞きをしておきたいと思います。  石油化学あるいはアルミ精錬、このわが国の代表的な基礎素材産業が、最近アメリカ、カナダからの輸入品の急増で深刻な状況に直面をしている、こういうふうに言われておりますが、特に通産省の産構審アルミ部会が設定をしておりました百十万トン体制、アルミ地金の国産の比率は最低五〇%を確保するという体制がいま崩れつつあるのではないか、こういうふうに危倶されております。一体これを修正するのかどうか。昭和五十五年、去年の暦年で見て一月から十二月までのアルミ地金の国内需要に占める輸入品のシェアが五〇%突破したというふうに言われているわけであります。この百十万トン体制というものが現実にはもう崩れつつある。この目標をはっきりと修正するのかどうか、修正するとすればどのような目標に変えようとしておるのか、この点は一つだけ具体的にお聞きをしておきたいと思います。
  134. 河野権一郎

    ○河野説明員 アルミ産業につきましては、現在、御承知のように、国内の製錬業者を中心といたしまして鋭意開発、輸入を進めております。昭和五十五年度で、これら開発、輸入による輸入量は約二十六万トン、国内消費の約一五%程度を占めております。それから、今後昭和六十年には、この開発、輸入のウエートをさらに高めて約八十万トン、国内供給の約四割近くを開発、輸入で賄うということになっております。  御承知のように、最近、こういった国内の製錬業者による開発、輸入に加えまして、アメリカあるいはカナダ等の低廉な電力ないしは原料を使ったアルミ地金がスポット輸入という形でかなり入ってきております。五十五年度で申し上げますと、国内需要約百八十万トンのうち半分の九十万トンが、その中には先ほど申しましたような約二十六万トンの開発、輸入が含まれておりますけれども日本に輸入されているような次第でございます。したがいまして、私どもの基礎産業局といたしましては、四月下旬から産業構造審議会のアルミ部会を開きまして、今後のアルミ産業のあり方並びにその対応について御答申をいただくという予定で、現在鋭意作業を進めている次第でございます。この中では、当然、今後の開発、輸入の規模をどの程度にすべきか、それから国内の製錬における製錬コストの引き下げ、これは電力の石炭転換等も含めましてどういう形で進めていくか、さらに先生いま御指摘のような国内の製錬規模、これは前回の五十三年度の答申では百十万トンということで、当時において約五十数万トンの設備廃棄を進めてまいったわけでございますが、それをさらに一層進めるべきかどうか、こういった点につきまして、現段階においては私どもとしては白紙でございますけれども、この産構審の審議を通じまして、今後のあるべきアルミ産業のビジョンについて御審議をいただくという予定になっております。
  135. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 ちょっと詳しく説明をされたので、関連して一つだけお聞きしておきますが、そうしますと、国内のアルミ製錬で企業によっていろいろ燃料の使用が違うようでありますけれども、これは主としていまのお話のように重油から石炭に切りかえる、こういう積極的な指導を通産がやられておるわけでしょうか。あるいはその企業の採算ベースによって企業自体が考えておるのか。もちろん、これは資金を伴う問題でありますから企業が決意しなければそうはならないわけでありますけれども、その指導方向というものを相当強く通産が出しておられるのかどうか。それから燃料転換、つまり重油から石炭に切りかえる場合の新たに出てくる公害対策の問題、こういう点についても相当きめ細かな指導なり基準なりというものを通産がお出しになっておるのかどうか。関連してそこだけちょっとお聞きしておきたいと思います。
  136. 河野権一郎

    ○河野説明員 国内のアルミ地金製錬のコストについて申し上げますと、現在一番低廉なコストであるのが水力を利用したアルミ製錬でございます。次いで石炭、それからその次に来るのが買電、それからさらに電力会社との間の重油を利用した共同火力、こういった順序になっております。したがいまして、今後国内の製錬コストを引き下げる場合には、水力につきましてはさらに開発地点等を今後探していきますとともに、最も有力な手段は、現在重油でやっております自家発電を石炭に転換をするということでございます。これにつきましては、先生御承知のように、昨年来石油代替エネルギーの確保という観点から各種の政策融資あるいは税制等いろいろございまして、私ども通産省としましては、こういった方向で業界が努力をしていくことにつきまして、いろいろ各種の助成あるいは行政指導を通じて極力指導をしてまいりたい、かように考えております。  それからなお、石炭転換に伴う公害対策につきましては、現在先生御承知のように、すでにアルミ製錬では石炭をベースとする自家発電を行っておる会社もございますけれども、これらの会社におきましては、十分国の環境基準を満たし得るような、現段階では最高の公害防除技術を使って現在自家発電を行っているわけでございます。したがいまして、今後これに後続するほかのアルミ産業も、こういった技術レベルを目指して公害防除施設を行っていくものというふうに私どもは期待をいたしております。
  137. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 この問題は輸出保険と直接かかわりがありませんから、またの機会に詳しくお聞きをしたいと思います。  最後に、経済協力全体に占める政府開発援助、この比率の問題について若干お伺いをしたいと思います。  わが国プラント輸出を文字どおりバックアップする、こういう意味での経済協力活動の現状は一体どうなっているのだろうか、この点は今後のプラント輸出についても非常に重要なかかわりを持つのではないか、こういうふうに思いますのでお聞きをするわけでありますけれども、まず、経済協力全体に占める政府援助の比率、これはどうなっているか、数字でお答えをいただきたい。
  138. 田口健次郎

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  わが国経済協力の全体、総額に占めます政府開発援助の比率でございますけれども、一九七八年の実績を見ますと二〇・七%、七九年、これは非常に上がりまして三四・九%というふうに推移しております。もう少し長く見ますと、七五年が三九・七%、七六年が二七・六%、七七年が二五・七%とこういうふうに揺れておりますけれども、特に七九年が非常に上がっております背景といたしましては、むしろ輸出信用を中心といたします民間の資金の流れが減少した、その反面、政府ベースの援助につきましては三年間倍増という計画の中途年次ということで非常にふえたということでそういう数字になっております。
  139. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 これはだめを押すようでありますけれども、そうすると、いまおっしゃいましたように、倍増計画というのは計画に沿って順調に進んできつつある、こういうふうに考えてよろしいですか。
  140. 田口健次郎

    ○田口説明員 お答え申し上げます。  政府といたしましては、七八年に、政府ベースの援助、いわゆるODAを八〇年までの三年間に倍増するという目標を設定いたしたわけでございます。昨年、これはその目標を上回る形で達成したということでございます。
  141. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 特に非産油国の発展途上国といいますか、こういうところはオイルショック以降、石油価格の上昇によって非常な外貨不足を来しておる、こういう点で日本その他先進諸国に対する援助要請、協力というものは一層これまでよりも強まっていると思うわけですね。したがって、政府が決められた一つの目標、これは確実に上回って達成をするぐらいの決意を一層強めていただきたい、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで、先ほど若干保留しておりましたインフラストラクチュアの問題との関連でいまの開発援助の問題でありますけれども、やはり生産に直接かかわりあるそういうインフラストラクチュアの整備については、これから新しく法改正によって保険対象にしていくのだというふうな説明が先ほど局長からも相当詳しくありました。その限りにおいては了解をするのでありますけれども、またそのことによってブーメラン現象の問題についてもいろいろ質問してまいりました。しかし、これは比率といいますか全体の状況から見ると、そう大した影響ではない、こういうふうに受け取れる総括的な答弁でございますが、とりわけ非産油国の発展途上国、開発途上国、こういったところに対しては単に生産活動に直結するというだけではなくして援助活動というもの、あるいは環境整備の援助をわが国は相当積極的にやっていくことが、それらの国々の信頼を高める上でも非常に重要な課題ではないのか、こういうふうに私は考えておるわけであります。  その辺に対して一体、まあ日本の財政事情も非常に厳しいということから何もかにもだめだ、縮小するんだということだけでは、今後長い目で見た場合、日本の将来について非常に問題を残す結果になると思いますから、この辺をどうお考えになっておるのか。これは大臣にお伺いした方がよろしいかと思いますので、お答えをいただきたいと思います。
  142. 田中六助

    田中(六)国務大臣 非産油国で、しかも発展途上国にある国を対象とした場合、私ども世界経済の安定あるいは世界の平和という観点から考えなければいけない。特に南北問題などには、それを包含した南北サミットなども開かれる予定でございますし、私どももそういう観点から自由経済拡大、均衡ということが日本経済発展でもあり、日本の将来の平和あるいは民生の安定にもつながるわけでございますので、その点は十分考えて、非産油国でしかも発展途上国にある国々に対しましては、発展途上国より以上の配慮をして対処していきたいというふうに思います。
  143. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 二、三分残っておりますけれども、終わります。
  144. 野中英二

    野中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十四分休憩      ————◇—————     午後四時三十四分開議
  145. 野中英二

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長田武士君。
  146. 長田武士

    ○長田委員 まず、通産大臣にちょっとお尋ねしたいのであります。  と申しますのは、アメリカの自動車問題特別委員会で報告書を昨日提出をしております。その内容は報道されておりますが、特に日本自動車の問題については触れてないようであります。自動車問題に触れておりますのは、公害問題、自動車の排ガス等の問題、安全規制の問題も多少緩やかになっておるということでありまして、私たち非常に心配しておったのでありますけれども、自動車問題特別委員会においては、日本自動車に対する注文はついていないということであります。そこで日本の対応ですけれども、だからといって決して楽観できないんじゃないか、そういう点を私は感ずるわけであります。むしろ責任が重いんじゃないかというような感じも実はするわけであります。  さらに、来月の十二日には、通産大臣御存じのとおり、上院でもって自動車の規制の法案、この問題をどうするかという取り扱いを決める、こういうことも報道されております。そういう意味で、業界等も、自動車問題についてはもちろん早期決着が望ましいけれども、余り急いで事をし損じてはうまくない、そういう要望もあるようでございます。そういう日本の立場を、国益を十分踏まえながらこの交渉に当たらなくてはならない、私はそういう感じがするわけですが、現状におけるところの通産大臣の御所見をお尋ねいたします。
  147. 田中六助

    田中(六)国務大臣 長田委員御指摘のとおりに、アメリカの運輸大臣が座長であるタスクフォース、これが日本時間のけさの四時に発表になりました。内容は、御指摘のように、一部の人がおもんぱかっていたようなことはなく、アメリカの所得税の減税についての措置が景気刺激になるだろう、これは一般教書にも出ておった額なんです。それから、いま御指摘の自動車の規制、これを三十四ぐらいを規制緩和、排ガス規制とか安全の問題の規制を緩和することによって、一般の自動車の消費者が九十億ドルぐらい助かるだろう。それからメーカーが十四億ドルぐらいとうたっておるわけです。その他のところでは、独禁法の緩和とか雇用の再調整。もう一つは、日本では公共事業の前倒しということがございますが、連邦政府が新しい車を買うのを一遍に早目にたくさん買ってそれに助成金を出すというようなことなんです。あとは、大きな網打ちとしては自由貿易を堅持していきたい。日本にはブリーフィングスタッフを送っている。きょう午前十時半から通産省で三日間行うわけでございますが、そういうのを日本に派遣して説明をやっているのだということなんです。  だから、一見、日本の車に対してどうというようなことは、ちょうどかつてのITCですか、ああいう国際貿易委員会が結論でシロを出したわけですが、そのときと同じような雰囲気なんですね。それで、弁慶の勧進帳みたいなもので、何もないということがかえって私どもには考えさせられるのです。何もないことはない。まあ、われわれにこう見せて、私どもはあくまで自由主義貿易の旗を振っているのですということなんですね。私どもも、一つ一つ項目を書いて発表になっていると、それを一つずつ検討しやすいのですけれども、それがないだけに考えざるを得ないのです。だから、かえって私はむずかしいような心境にあるのですけれども、長田議員はこれを慎重に延ばしたらどうかという意見もあるように私は伺っておりますが、そういう意見は前からもありますし、業界でもあるのです。  しかし、レーガン大統領は伊東外務大臣に対して、やはり首脳会議前に何とかしてほしいということを漏らしていますので、私どもも鈴木総理もそれを受けて、けさも私、閣議終了後ちょっと確かめてみたのです。そうしたら、総理もやはり、自分の渡米の首脳会談の前に片づけておきたいという意向ですので、私はこのタスクフォースの結果に基づいて、アメリカは自由主義貿易と言いつつ日本に具体的なことを触れずに回答を求めておることは、やはり日本が自分で決めてほしいという願いがこのタスクフォースの中に込められておると判断せざるを得ないのです。  したがって、いまアメリカから十人の人が来て通産省でやっておるブリーフィングを三日間じっくり検討してみて、それから今度は日本側が向こうに行くことになろうと思うのですが、それもちょうど向こう側から来た人のレベル、そういうようなところの人——しかし、これはローレベルで地位が低いからどうとかじゃなくて、非常に密度の高い本当に仕事をしている人たちが来ているわけですから、日本側も密度の高い、その地位とかそういうことが問題じゃなくて、一番知っているベテラン、そういう人たちを今度は向こうに行かしたいという気持ちもしておりますし、いま御指摘のこのタスクフォースの発表によって、まあ正直に申しまして、別にいままでの考えが変わってはいませんけれども、ますますアメリカが白紙を出して、あなたのところ、日本考えてくれぬかということを提示しているような気持ちがしておるいまでございます。
  148. 長田武士

    ○長田委員 事務レベルの交渉といいますか、いま日本側が説明を聞くという立場できょうから始まったわけでありますが、これからの政治日程としては、USTR代表が日本を訪れる、そこでがっちり政治レベルの決着をつけるということになるかと思いますが、その後通産大臣がアメリカに行かれる、そこで最終決着という政治日程だろうと思います。  そこで、大体アメリカの感触ですと、伝えられるところによりますと百六十万台、ここいらで抑えたいというような考え方であるようですね。しかし、日本のこの貿易の推移を見ましても、日本経済状態を見ましても、海外に依存する、いわゆる輸出に依存するという形態日本経済変わっておりませんから、ぜひ五十五年度の実績である百八十万台は確保しなくてはならぬ、このように私たちは考えるのですが、通産大臣のお考えはどうですか。
  149. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いま御質問に答えて台数を私がここで言うというわけにはいきませんけれども、長田委員御指摘のように、向こうが幾ら幾ら、こっちが幾ら幾らと言うことは控えさせていただきますけれども、私といたしましては、向こうが十九万から二十万の失業者が出てきたと言うならば、私は正直に言って、日本の車が向こうに失業者を起こしたとか思ってないのです。むしろ数を見ましても、日本からのつまり外車がふえたのは四十万台ぐらいで、向こうの自分自身の生産が減ったのは二百八十万台ぐらい減っているのです。だからそれから見ても、すべて外国からの輸入によってアメリカに失業が起こったのじゃなくて、やはりいろいろな、金利が高いとか雇用条件とか大型車とかいういろいろなファクターがあって、生産も減りいろいろ減っているわけですから、日本が一手に引き受けて何もかもというわけにもいきませず、また日本もよく考えてみましても、六十三万七千人というような十一社でいるわけですから、下請業者なども含めますと五百万人にも相当する雇用者もいるわけですから、向こうもいろんな事情があるでしょうけれども、こちらは一生懸命働いて安くて燃費のかからない車をつくり、よその国民の大衆消費者が好んでいるのですから、本当の理屈を冷静に分析していきますと、日本で自動車関係におる人はどこが悪いのだろうという素朴な疑問を持つと思うのです。そういう関係者だけでなくても、日本の多くの人たちがそう思うのは当然だと思いますし、そういう点も踏まえて、私は、この話し合いにはそういう考え当たりたいというふうに思っております。
  150. 長田武士

    ○長田委員 次に、輸出保険法の一部改正法案についてお尋ねをいたします。  法第一条の目的には、「輸出貿易その他の対外取引の健全な発達を図ることを目的とする。」と規定されておるわけであります。しかし、この目的にそぐわない対外取引輸出ども当然あるのじゃないかと私は思うのですね。そこで、どのような輸出対外取引を想定しておるのか、またその基準はどのように決められておるのか、さらに、その場合この保険制度が適用されるのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  151. 田中六助

    田中(六)国務大臣 正しい取引をするという精神でやらなければなりませんし、したがってOECDの決めておるガイドラインに乗ること、それからカントリーリスクを十分考えておかなければなりません。それから信用度というようなことも加味して考え、そういうものをひっくるめて私どもはこの輸出保険制度というものを頭に置いております。これはもちろん、一条の精神からは独立採算制ということも踏まえなければなりませんけれども、以上申し述べました三つの条件というものを頭に入れた制度ということでこれを進めていきたいというふうに思っております。
  152. 長田武士

    ○長田委員 現在、世界的なプラント輸出の不振が目立つわけですね。わが国においても御多分に漏れませんで、五十四年度の実績が約百二十億ドル、五十五年度は九十億ドルに実は落ち込んでおるのですね。これは世界の趨勢であろうと私は考えます。  したがって、今回の輸出保険法改正は、プラント輸出や対外経済協力なんかに非常にドライブがかかるのじゃないか、推進の大きな役割りになると私は考えるのです。しかし、その反面、今回予算委員会におきまして武器輸出や海外の軍事基地施設受注など、そのあり方についていろんな問題が提起されました。そこで、こうした武器輸出や海外の軍事施設工事などの受注に際しましても輸出保険制度が適用されるのかどうか、この点、通産大臣どうですか。
  153. 古田徳昌

    古田政府委員 武器輸出や軍事施設の工事請負等につきましては、武器輸出三原則、それから昭和五十一年二月の政府統一方針に基づきまして、厳格に対処されているわけでございます。  したがいまして、このような観点からの問題につきましては、輸出保険制度におきましては、この観点からします関係省庁の措置、指導を前提としまして、これらによるチェックを踏まえまして運営されておるわけでございまして、引き受けの際には、このような主務官庁におきます武器輸出三原則なり政府統一方針に基づきます判断を尊重して、慎重に行っておるわけでございます。今後とも関係省庁との連絡を密にして対処してまいりたいというように考えております。
  154. 長田武士

    ○長田委員 次に、今回の改正におきまして、海外投資保険資源開発融資のうちインフラストラクチュアの整備ですね、これに要する資金についても新たに保険対象に加えようということになっております。その相手国は、ほとんどが御存じのとおり発展途上国であります。こうした地域では、道路や港湾などの施設を軍と民間と共用している場合も数多く見られるのですね刀また、民間から軍事用に変更される可能性も十分考えられるわけであります。このような場合、この保険契約は有効なんでしょうか。
  155. 古田徳昌

    古田政府委員 今回対象となりますインフラ整備資金につきましては、法律で、一定の資源等の生産の事業に付随して必要となる関連施設に資金の使途を限定しているわけでございます。その範囲につきましては、生産の基盤となります施設、生産された貨物を本邦に輸入するために必要となる施設を考えているわけでございます。  先生御質問のございました、今回対象となる資源融資の生産事業に付随する関連インフラ施設が軍用に供されたりあるいは後で軍用に転用された場合の問題についてどうかという点でございますが、当初引き受けの段階で、この資金の使途が軍事的な用途であるということがはっきりしておりましたならば、それは当然のことながら、今回の改正で規定しております生産の事業に付随して必要となる関連施設というものには合致しないわけでございますので、その範囲に入らないということで保険引き受けは行えないし、また行わないことになるわけでございます。  しかしながら、もし、当初は生産の事業に付随して必要となる施設ということで保険に掛かった後で軍用に転用されるというふうなケースがあった場合の取り扱いにつきましては、幾つかのケースがあろうかと思います。たとえば、当初から軍港等軍用に使われる予定であるにもかかわらず被保険者、がそうでないというような虚偽の申告をしたといったときには、これは約款等によりまして告知義務違反ということで政府としてはてん補しないということになっております。それから、保険引き受け後に被保険投資に重大な内容の変更があった場合ということにつきましては、約款によりまして被保険者に通産大臣への通知義務がございます。その通知義務に基づきまして政府の承認にかかわらしめているわけでございます。したがいまして、当初は民間資源開発用ということで進められたものが、被保険者の意図によりまして途中から用途が変更されて軍用に使用されるということになりますと、事業内容の重大な変更が起こったということで、そういう場合には保険約款上被保険者より書面により通知を受けて通産大臣がチェックするということになっておりますが、この場合、政府は保険契約を解除することができるということになっております。
  156. 長田武士

    ○長田委員 具体的に申しますと、仮定の話でありますけれども、初めは民間の予定で、虚偽の申告といいますか、そういう形で保険契約を結んでしまった。しかし、実際でき上がってしまった後、軍に転換をしたとかそういうようなケースの場合、これはいまの答弁ですと保険契約は解除できますね。
  157. 古田徳昌

    古田政府委員 先ほど申し上げましたように、被保険者から書面による通知を受けましてこれをチェックすることになりますが、この場合、政府は、御指摘のような事例が仮にあるといたしましたならば保険契約の解除ができる、こういう形になっております。
  158. 長田武士

    ○長田委員 そうしますと、資源開発融資におけるインフラストラクチュア整備事業の範囲については、必要以上に限定しますと資源開発の推進に支障が起きないかという心配が私はあるのです。しかし、その反面、無原則に枠を広げてしまいますと、いま申し上げましたとおり、そういう問題が起きます。  そこで、この範囲についてどのような基準で決めておるか、この点どうでしょうか。
  159. 古田徳昌

    古田政府委員 今回の法改正によりまして新たに対象に加えられることとなります関連施設は、生産の事業に付随して必要となる関連施設ということになっているわけでございます。したがいまして、生産の基盤となる施設、生産された貨物を本邦に輸入するために必要となる施設等考えているわけでございまして、資源開発、輸入の円滑な促進のため、この範囲については、資源生産事業との関連がはっきりしなければいかぬ、それからその生産事業についての専用性もはっきりしなければいかぬというような考え方で、法律上許されかつ支障のない限り、範囲としては広く考えたいというふうに現在のところ考えているわけでございます。  具体的な対象範囲につきましては、今後なお検討を進めていきたいと思っておりますが、現在のところ、事例として挙げてみますと、次の幾つかのものが考えられております。  第一に、生産のための原材料または生産された貨物の運搬の用に供する道路、鉄道、港湾等の施設。それから第二に、生産の用に供する水、電気、ガス等の供給施設。それから第三に、生産に伴って産出されます排水、廃棄物の処理施設。それから第四に、生産された貨物の保管に供する倉庫、冷凍庫等の保管施設。それから第五に、生産に携わる労働者の住宅施設等の福利厚生施設。それから第六としまして、その他貨物の生産または生産された貨物を本邦に輸入するために不可欠と考えられる施設というようなことでございまして、いずれにしましても、生産事業との関連性、専用性という観点からこれを規定していきたいというふうに考えております。
  160. 長田武士

    ○長田委員 それでは、具体的な問題に移ります。  過日の予算委員会におきまして、わが党は、海外における軍事施設を国内の建設業者が受注している実態を示しました。政府の対応をただしたわけでありますが、そこで明らかにされたサウジアラビアのジェッダ軍港しゅんせつ工事について、建設省から御説明をいただきたいと思います。
  161. 三谷浩

    ○三谷説明員 お答えいたします。  サウジアラビアのジェッダ港のしゅんせつ工事の概要でございますが、この工事は、台湾の建設会社でございます栄民がサウジアラビア国防省、海軍から、ジェッダ港のしゅんせつ並びにヨットクラブハウスの建設及びヨット航路付帯設備工事を受注いたしまして、その下請としまして、わが国の東亜建設工業株式会社が昭和五十五年二月にこのうちのしゅんせつ工事について工事請負をしたものでございます。具体的には、ジェッダ港内のヨット航路の新設、それから既設航路の拡幅のための約百六十万立方メートルのしゅんせつ工事でございまして、工事金額は十二億円でございます。
  162. 長田武士

    ○長田委員 このジェッダ軍港しゅんせつ工事につきまして輸出保険が掛けられておると思いますが、この点はどうでしょうか。
  163. 古田徳昌

    古田政府委員 御指摘のジェッダ港の件につきましては、海外建設工事保険、これは法律的に言いますと輸出代金保険海外投資保険ということが内容になっておりますが、その引き受けを行っております。
  164. 長田武士

    ○長田委員 金額等はわかりませんか。
  165. 古田徳昌

    古田政府委員 保険の種類につきましてはただいま御説明したとおりでございますが、具体的な保険契約内容、すなわち金額や条件等につきましては、企業との間の私契約の問題でもございますし、一般的にいいまして私どもとしては公表を差し控えさせていただいているところでございます。
  166. 長田武士

    ○長田委員 このジェッダ港にはLST、上陸用舟艇が停泊しておるわけですね。したがって、軍港であることは明らかだろうと思います。したがいまして、この工事の受注それ自体が、国の方針である武器輸出三原則や五十一年二月二十七日、先ほどお話がありましたとおり政府の統一方針に反するんじゃないかという考え方を持っておるのです。ましてやこの工事に対しまして輸出保険が掛けられておるということは、もし何らかの事故があった場合、当然保険金が支払われるわけですね。このことが認められていいのかどうか、この点どうでしょうか。
  167. 古田徳昌

    古田政府委員 先ほども武器輸出との関係で御説明させていただきましたけれども輸出保険の運用につきましては、関係省庁におきまして必要とされる手続なりあるいはチェックを前提としまして、これを踏まえて運用しているわけでございます。御指摘のケースにつきましては、軍事施設等について関係省庁におきまして、武器輸出三原則と政府の統一方針の趣旨に沿って対処されているわけでございますが、本件につきましても、かかる観点から問題がないと判断されているというふうに承知しているわけでございまして、輸出保険につきましてはこれらの措置を前提としまして、いわばそのチェックを踏まえまして適用されているということでございます。
  168. 長田武士

    ○長田委員 そうしますと、このジェッダ港にはLST等が停泊しておるのですけれども、軍港ではないということなのですね。
  169. 三谷浩

    ○三谷説明員 私どもが聞いておりますところによりますと、ジェッダ港はサウジアラビアの首都リヤドに次ぎます第二の都市のジェッダを背景といたしまして、いろいろな機能を有しておる港湾かと存じます。商業港としての機能も果たしておりますが、この港の一部に石油精製施設が設置されておりますし、またこの近くにはLSTが停泊するということも聞いております。
  170. 長田武士

    ○長田委員 そうすると軍港なのですか、軍港じゃないのですか。
  171. 三谷浩

    ○三谷説明員 軍港かどうかという判断については非常にむずかしゅうございますが、いずれにいたしましても、先ほど御説明がございましたように、本工事につきましてはしゅんせつでございますので、私ども関係省庁等考え方によりまして、武器三原則並びに昭和五十一年の統一方針に反しないと考えております。
  172. 長田武士

    ○長田委員 いま申し上げましたのはほんの一例にしかすぎないわけであります。  通産大臣、現在、輸出保険の申請は年間約六十万件ありまして、一日に約二千件扱っているのです。二千件扱っているわけでありますけれども、それをわずか百十名でこなしているのです。その百十名の職員によって処理されているのが実態なのでありまして、こうした中で武器輸出等に関するチェックが——先ほど十分チェックしているということでありましたけれども、私はチェックできないのではないかと思いますが、通産大臣どうですか。
  173. 田中六助

    田中(六)国務大臣 職務ではありますけれども、具体的にはなかなかうまく機能しない公算があるというふうに思います。
  174. 長田武士

    ○長田委員 このチェックについて、武器輸出等については本来輸出貿易管理令、外国為替管理令などによってチェックされるのが当然であろう、私はそういうふうに考えておるのです。  しかし、私が申し上げたいことは、これらの法の網をくぐって今後輸出保険制度利用されるケースは十分考えられると見なくてはいけないと思います。こうした点については対応としてはどうでしょうか、もっと強化される考え方はないのでしょうか。
  175. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御承知のように、武器輸出は武器輸出の三原則、それから政府の方針、今回の国会の決議なども十分考えた上やらなければいけませんが、これは申請制度で通産大臣のもとで承認する、それから税関でチェックする、それに違反すれば罰則がつくというようなケースでございますけれども、それが七百万件以上あって、人数は七百人ぐらいがせいぜいだということでは、そういうしきたりはあったとしても本当に物理的にどうかということが考えられるわけでございますが、輸出保険制度につきましてもそれに似たようなことがあるわけで、いま、それならばこれをどうするかという御質問でございますけれども、私どもは現状で何とかこれを機能させていかなければならないということを考えておるわけで、行政整理それから財政再建というようなこともございまして、これは具体的に人間をふやすことが一番いいことでございましょうけれども、それぞれ予算との関係もあってどうにもならない点もございますし、現状をフルに活用、機能させる以外にいまのところないような気がしております。
  176. 長田武士

    ○長田委員 武器輸出問題等につきましては、去る三月二十日、衆議院本会議で決議が行われたわけであります。そこには「武器輸出について、厳正かつ慎重な態度をもつて対処すると共に制度上の改善を含め実効ある措置を講ずべきである。」このようにうたわれておるのですね。  そういう意味で、こういう点ではチェック機能も非常にあいまいですし、これではうまくないなという感じを私は強く抱いております。そういう意味で、どうか衆議院本会議での決議に従って実効ある措置をとっていただきたい、これを強く要望しておきます。  次に、これまでも論議があったわけでありますが、プラント輸出は八〇年代に入りまして円高や欧米企業の攻勢で伸び悩んでおるわけです。これはヨーロッパ各国に見られます混合借款の採用によりまして金利を実質的に低くしておる。日本の企業がどうしても競争に敗れてしまうのは、こういうことが原因のようであります。この点について通産大臣、対応策は何かお考えでしょうか。
  177. 古田徳昌

    古田政府委員 まず、フランス等が行っております混合借款について状況の御説明をさせていただきたいと思いますが、混合借款とは、通常の輸出信用に低利長期のODA、つまり政府開発援助を混合させたファイナンスを言うわけでございまして、プラント輸出競争において他国よりも有利な条件のファイナンスを供与するために用いられるものでございます。  この混合借款につきましては、OECD輸出信用のガイドラインの精神に照らしまして問題があるということで、一部の国の混合借款につきましては、わが国は従来から国際会議の場等でも、国際輸出信用競争を激化させるものだということで批判してきたわけでございます。しかし、先生御指摘のとおり、最近におきます世界的なプラント需要の低迷というような実情を反映しまして、一部の国の混合借款の弊害が大きくなってきておりますし、また他の先進諸国でも次々に混合借款対応策を講ずるに至っているわけでございます。  このため、わが国としましても、諸外国の混合借款に対応するための措置が必要となっているという状況でございまして、今後はマッチングベース、つまり日本が先頭に立ってそういうことをするというわけではございませんが、他の国が実施しました混合借款と同等の条件を出すいわゆるマッチングベースという形で、防衛的なやり方ということでこの供与をすることを考えているわけでございます。
  178. 長田武士

    ○長田委員 政府は、三月十七日に発表いたしました第二次総合経済対策の中で、「プラント輸出の健全な伸長」という一項目を設けていますね。そういう意味から、私は、いま申し上げましたとおり、混合借款を採用せざるを得ないのじゃないかという感じがいたしますが、通産大臣、簡単に答えてください。
  179. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほど局長が申し上げましたように、海外市場での入札とか競争がなかなか激しくて、混合借款というケースは本当は好ましくないわけでございますけれども外国が使う場合は、わが国としても用意しておいて、いつでもそれがすりかえられるということはしておかなければいけないという気持ちがしておりまして、好ましいことではないが、最後の競争に負けて残念がるよりも、そういうことを使ってもいたし方のないことではないかというふうに目下は考えております。
  180. 長田武士

    ○長田委員 輸出保険法改正によりまして共同保険の規定が整備されております。これに伴いまして共同受注の増加が予想されると思います。新規バイヤー取引もさらにふえるわけであります。これを踏まえましてバイヤー信用調査の充実がさらに要求されてまいります。  そこで、いま問題になっておりますカントリーリスクの評価についてのシステムを早急に検討する必要があると思いますが、この点どうでしょうか。
  181. 古田徳昌

    古田政府委員 輸出保険におきますカントリーリスクの評価体制の充実ということは、先生御指摘のとおり非常に重要な事柄ではないかと考えております。  このカントリーリスク概要としましては、各方面から入手しますデータ、情報をもとにしまして、頻繁に輸出保険利用されます八十五ないし九十カ国につきまして、原則年二回評価を行っております。基本的な方法は、他の調査機関や銀行が行っておるものとそう違うものではないわけでございますが、情報の面ではベルンユニオンを通じます各国情報利用可能なこと、それから通産省としては関係各部局の持っておる情報が直接利用可能なことが特徴ではないかというふうに考えております。  現在、輸出保険におきましては、評価方法をさらに合理化するために電子計算機によりますカントリーリスク管理システムの開発に努めているところでございまして、昭和五十五年度には定量情報のデータベース化を行ったところでございますが、昭和五十六年度には定量情報に基づきます分析システムの確立を行うとともに、さらに加えまして定性的な情報のデータベース化を行うこととしておるわけでございます。このシステム化が実現しますと、より迅速的確なカントリーリスクの管理が行われるものと考えております。
  182. 長田武士

    ○長田委員 輸出保険特別会計における五十四年度の支払い準備金は約一千百八十三億円でありますが、これは保険責任残高十三兆五千二百一億円に対しまして〇・八七%の比率になっております。しかし、この比率は諸外国の現状などに比べまして必ずしも十分じゃないのじゃないか、私はそういう感じがいたします。そういう点で適正水準といいますか、そういうものはどの程度考えていらっしゃいますか。
  183. 田中六助

    田中(六)国務大臣 輸出保険の金の準備率は幾らぐらいが適正かということなのでございますけれども、いま御指摘のように、五十四年度は〇・八七%の準備率でございます。イギリスなどは二・五%ということを一応目標にして努めておるようでございますが、現状でどの程度がどうだというような国際的な取り決めもなければ、日本でもそういうことを決めておりませんけれども、できるだけ高い準備率を設け、保険にかかっておる人が本当に安心して信用の置ける輸出保険制度というものを確立しなければならない、またそれを確立するためにも保険の準備率というものはできるだけ高い方向に持っていきたいというふうに考えます。
  184. 長田武士

    ○長田委員 海外投資の保護と促進のために、海外投資保証協定の締結を大いに推進すべきだと私は考えるのです。しかし、わが国は一九七七年にエジプトとの間で同協定を締結したにすぎないのですね。同協定については、アメリカが百十四カ国、西ドイツが四十九カ国、スイスが十六カ国、イギリスが六カ国と締結をいたしております。これと比べますと、わが国はこの点非常におくれているのじゃないかと思います。そこで、わが国がおくれている理由ですね、この点はどういう点にあるのでしょうか。
  185. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 近年に至るまで、私の感じでは、わが国の企業が海外に積極的に出て海外事業を活発に行うということにつきまして、比較的おくれておったということが事実上の問題としてあったかと思います。つまり、海外活動が相対的に低い水準にございましたので、したがいまして投資保証協定などの必要性も実感として薄かった。他方、通商航海条約などの二国間の条約の中に若干そういう規定のあるものもございまして、一応積極的に締結を推進する土壌がいままではなかったと思っております。  ただ、ここへ参りまして、御案内のように毎年相当の金額で伸びるように海外投資が伸長してまいりましたし、それから企業の海外における活動も投資環境を一層整備する必要が出てまいっております。したがいまして、お説のとおりに、投資保証協定を締結することが非常に重要な施策になってきておると、私どももそう存じております。
  186. 長田武士

    ○長田委員 海外投資保証協定は、今後における輸出保険引き受けを容易にするとともに、海外投資の安全確保という点でも私は大いに推進すべきだと考えるのです。したがいまして、私は、発展途上国中心といたしましてこの協定の締結に積極的に取り組んでいくべきだと思いますが、通産大臣、この点どうでしょうか。
  187. 田中六助

    田中(六)国務大臣 日本海外投資世界で第四位というようなことになっております。したがって、投資の安全性、それから信用度というようなことからも、海外投資保証協定と申しますのをエジプト一国というようなことは全く近代国家としてもおかしなことでございますし、大いにこれからも推進していかなければならないし、相手国にもそれを要請して、この投資保証協定というものを数多く実現したいというふうに思っております。
  188. 長田武士

    ○長田委員 時間が参りましたから、終わります。
  189. 野中英二

    野中委員長 次回は、明八日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会