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1981-02-27 第94回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月二十七日(金曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 野中 英二君    理事 梶山 静六君 理事 辻  英雄君    理事 原田昇左右君 理事 渡部 恒三君    理事 後藤  茂君 理事 清水  勇君    理事 北側 義一君 理事 宮田 早苗君       天野 公義君    植竹 繁雄君       浦野 烋興君    小川 平二君       奥田 幹生君    粕谷  茂君       島村 宜伸君    田原  隆君       泰道 三八君    橋口  隆君       鳩山 邦夫君    水平 豊彦君       森   清君    渡辺 秀央君       上坂  昇君    城地 豊司君       藤田 高敏君    水田  稔君       山本 幸一君    渡辺 三郎君       長田 武士君    小林 政子君       渡辺  貢君    伊藤 公介君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 六助君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 劒持 浩裕君         経済企画政務次         官       中島源太郎君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         環境庁企画調整         局長      藤森 昭一君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 幸治君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         通商産業大臣官         房審議官    柴田 益男君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省立地         公害局長    松村 克之君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         通商産業省生活         産業局長    若杉 和夫君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         資源エネルギー         庁公益事業部長 石井 賢吾君         中小企業庁長官 児玉 清隆君         中小企業庁計画         部長      木下 博生君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      行天 豊雄君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   武田 一夫君     矢野 絢也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 野中英二

    野中委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城地豊司君。
  3. 城地豊司

    城地委員 通産省関係並び経済企画庁関係で若干重複する部面もございますので、主として経済運営に関する事項さらには物価等々に関する事項、そして政府開発援助に関する事項につきましては経済企画庁の方からお答えをいただきたい、その他エネルギー等全般関係については通産省からお答えをいただきたいと思います。  最初に、経済運営全般に関することで質問をいたします。  河本経済企画庁長官のあいさつの中で、全体を流れる流れとしては、石油ショック等々いろいろな問題があったが、それらを克服して五十六年度はとにかく大分日の当たるいい方向に行くのじゃないかというような考え方が、この底を流れておるようでございます。しかし、五十六年度というのは、五十五年度があってその次に五十六年度があるということでありますので、昨年の九十三臨時国会のときに長官からいろいろ所信表明がありましたし、質問に対するお答えもありましたので、五十五年度に関する内容につきまして最初質問を申し上げたいと思います。  日本経済伸び関係につきましては、当初見通し四・八%ということでございまして、この中にも、おおむね四・八%は達成できる見込みであるというふうに申されております。四・八%の関係で言いますと、私どもがいろいろな専門家の話を聞きましても、四・八%の経済成長率は達成できるというように言われておりますが、問題は四・八%の内容であろうと思います。  当初、外需内需に大きく分けましても、内需を刺激して国内需要伸びなければ日本経済全体の伸びにならないということで、内需優先といいますかそういう方針で組まれたと思います。数字としては四・八%伸びましたが、現実きょう現在で把握しているところでは、どうも外需関係が約三分の二、三・二%程度内需関係が一・六%の伸びではないか、そしてそれら総合して四・八%の伸びであるというふうに言われているところであります。そういう意味で、当初予定と、数字としては四・八%の伸びになるが、そういう点での若干の見通しの誤りというと語弊がありますが、見込み違いがあったのではないかというように考えますが、その点について、まず第一点お伺いしたい。  それから、次に物価関係でございますが、昨年の九十三臨時国会のときも、年間六・四%に抑えるということはむずかしいのではないかという質問をいたしましたら、それに対しましては、何とかそういう方向努力をしたいということで努力をされたと思います。いろいろなアクシデントなどもあったようでございますけれども、ことしになって七%程度というふうに上方修正をされました。しかし、きょう現在でいろいろな専門家の見るところでは、どうも七%程度という程度そのものに幅があるようでありますけれども、七・五ではむずかしいんではないか、ある人なんかは八・一%になるんではないかというふうに言われているわけでございます。きょうが二月二十七日でありますから、三月末はあと一カ月あるので、これからも対策がいろいろ立てられる部面がありますから一概に断定するのは問題かもしれませんけれども、この物価上昇率、五十五年度果たして七・五になるのか八・一になるのか、その辺について経済企画庁長官の御答弁をいただきたいと思います。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 昭和五十五年度経済成長につきましては、ただいままで第二・四半期のいろいろな指標が判明をしておりますが、これを見ますと、おおむね四・八%見当は達成できるであろう、こういう見通しであります。なお、第三・四半期についての指標が近くまとまりますので、それを見れば、さらに見通し正確度がはっきりするであろう、こう思っております。  中身はどうかということでございますが、中身は御指摘のとおりでございまして、貿易依存型の経済である、こういうことが言えると思います。五十六年度内需依存型の経済運営に持っていきたい。もちろん貿易は重視をいたしますけれども内需を中心とした経済成長、このように考えております。  それから消費者物価。昨年の一月に六・四%という目標を立てましたが、その後これを七%程度というように上方修正をせざるを得なかったことは、まことに遺憾かつ残念に思っておりますが、現在の動きを見ますと、昨年の十二月は七・一%、それから一月は七・四%、それから二月は東京区部でありますが六・八%ということで、安定の方向に大体進んでおると思うのであります。  なお、最近卸売物価等も急速に鎮静化をしておりますので、この方面からくるよい影響も期待できますので、さらに引き続きまして年度末まで、政府目標が達成できますようにいろいろな努力を傾けていきたいと考えております。
  5. 城地豊司

    城地委員 五十五年度に対する考え方はわかりましたが、さらに五十六年度関係でお伺いをしたいと思います。  五十六年度は、経済成長率五・三%、物価上昇率五・五%というふうに組まれております。この五・三%の伸びでありますが、その伸び内容といたしましては、内需をやはり拡大する、これが日本経済を立ち直らせ、そして日本安定成長軌道に乗るためにはどうしてもそういうことが必要であって、この五・三%のうちで、四%は内需、一・三%は外需というおおむね方針でございます。しかし、これも断定的に申すことについてはいろいろ差しさわりもあるかもしれませんが、現状のままで本当に昨年の十二月にこの原案をつくった段階内需の四%の伸び外需一・三%という伸びが実際にはむずかしいのではないか、内需関係が特にむずかしいというふうに感じておりますが、それらについての見通しがあればお聞かせをいただきたいと思います。  また、物価上昇率消費者物価の五・五%の問題でございますが、最近安定傾向にあるということはそのとおりかもしれませんが、その安定の度合いが五・五というような数字で抑えられるような安定の度合いではないし、さらにいろいろな国内経済的な諸指標を見ましても、どうも五・五にはおさまらないのじゃないかという感じがいたしますが、それらについて長官の御所見を伺いたいと思います。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十六年度経済成長見通しでありますが、いまお話しの五・三%と考えております。そして、内需主導型の経済運営をしたいということは先ほど申し上げたとおりでございますが、このためにはやはり個人消費、それから民間設備投資政府計画どおり動くということが前提になりますが、何しろ世界全体が激動期でございますので、やはり激動期にはその情勢に応じまして機敏にいろいろな経済政策を進めていかなければならないと思います。ここがやはり経済運営の一番のキーポイントではないか、このように考えておりますが、そういうことを考えながら内需主導型の経済運営をすることによりまして政府目標を達成したいと考えております。  なお、五・五%という消費者物価目標はむずかしいのではないか、こういうお話でありますが、私は、昭和五十五年度よりも五十六年度の方が物価対策を進めるのは比較的やりやすい、こう思っております。  と申しますのは、先ほども少し触れましたが、卸売物価が急速に鎮静化方向に進んでおりまして、昨年の四月は年率に換算いたしまして二四%急上昇しておりますが、昨年の夏過ぎからだんだんと鎮静化方向にまいりまして、二月の上旬は三%台に落ちついております。したがいまして、年度間平均一四%ぐらいだと考えておりましたが、おおむねその見当卸売物価については達成できると思いまするし、同時に、五十六年度はほぼ四%見当と考えておりますが、現在の卸売物価動きから見ましてこれは十分可能であろう、民間などではもっと低い水準になるのではないかという見通しもありますが、政府見通しの四・一%見当数字は十分達成できるであろう、こう思いますが、卸売物価がこういう傾向ですと、数カ月たちますとだんだんと消費者物価にもいい影響が出てまいります。ここが五十五年度と違う一つの点だと思います。  それからまた、公共料金が非常に大きく消費者物価影響いたしますが、昨年は電力ガス料金大幅引き上げ等がございまして、公共料金消費者物価を二%以上も押し上げておりますが、ことしは電力ガスというような大口がございません。電力ガスだけでも一%以上消費者物価を押し上げたのでありますが、そういう大口のものがありませんので、この点も比較的やりやすい点だ、こう思っております。  また、昨年は石油価格が急上昇をいたしましたが、最近はある程度安定をしております。もっとも、この石油価格だけは、世界情勢の変化によりましてなお流動的な要素がございまするので確定的なことは申し上げかねますけれども、しかしながら大勢としては五十五年度よりもやりやすい条件である、こう思っております。  したがって、政府の五・五%という消費者物価見通しは達成できる、このように考えておりますし、物価政策というのはいま内閣にとりまして最大の一番大事な政策であろう、こう思っております。そういうことでございますので、これはぜひ達成するように全力を傾けたいと考えておるところでございます。
  7. 城地豊司

    城地委員 お答えいただきましたが、いわゆる成長率関係で、内需主導型の関係で、内需の非常に大きな部分を占めるものは、いま言われましたように個人消費民間設備投資等々でございます。そういう意味で考えますと、民間企業投資意欲といいますか、そういうものがなければ予算どおり民間企業投資はいかないわけであるし、個人消費も、自分のふところに入る金が多くならなければ伸びないというのが常識的な見方でございます。  そういう意味で、私どもは、政府の考えておりますような個人消費支出にはならないのじゃないかというふうな懸念をしておりますし、さらに、いろんな予算項目の中で言いましても、たとえば民間住宅というようなものを一つ取り上げてみましても、今年度は非常に意欲的な予算の組み方でございますが、民間住宅建設というようなものが伸びるということはほとんど不可能である、横ばいというよりもむしろ下降傾向にあるというように私どもは考えておるわけでございます。細かい経済的な指標は別にいたしましても、私どもの周囲にいますたくさんの人たち生活実感の中で、民間住宅というようなものはほとんど伸びないというように考えています。個人消費伸びない。民間住宅関係伸びない。そして民間企業設備関係におきましても大企業は若干伸び要素がある。その大企業であっても、産業別にかなりの格差があるということが考えられますし、中小企業はほとんど、設備投資意欲がわいて設備投資に踏み切るというような状態ではないというのが現状ではないかと思います。そういう状況の中で、なおかつ内需主導にした五・三%の伸びというものについては非常に懸念を持つわけでありますが、これについては再度長官の御見解を伺いたいと思います。  なお、物価関係につきましては、御説明がありましたように、五十五年度物価上昇各種の要因についてはわれわれも十分承知しております。しかし、五十六年度といえども、電気、ガスのような大型の公共料金値上げはないのですが、公共料金値上げもかなり予定されているという部面もあるし、また、最近の状況では、商業流通関係で、このような状況の中で値段を上げたことによって購買力が落ちる、そして、それによってまた自分自身が大変だということで値上げを抑えている傾向が非常に多いというふうに私どもは仄聞しておるわけであります。それらが若干でも目先が見えてくると、非常に大きな勢いで物価上昇になるという要素を最近の経済状態の中で感じているわけであります。それらも含め考えますと、どうも五・五%はむずかしいと思いますが、これについては見解の相違あるいは現実がそういうことであらわれてくるというように思いますので、お答えをいただかなくても結構でありますが、前段の成長率関係内需主導型の関係における消費支出民間住宅民間設備投資関係については、再度お答えをいただきたいと思います。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 内需のうちでは設備投資が非常に大きな役割りを果たすわけでありますが、いま御指摘がございましたが、大企業投資はまずまずおおむね順調にいっておる、こう思いますけれども中小企業関係投資が相当落ち込んでおると思います。やはり経済現状、それから何分にも現在の金利水準が非常に高くて投資はやれない、こういう背景もございます。したがいまして、中小企業投資ができるような客観条件をつくるのには一体どうしたらいいかということがこれからの非常に大きな課題だ、こう思っております。  それから、民間住宅につきましては、これはもう御指摘のとおりでございまして、いろいろな事情がございまして昨年五十五年度激減をいたしましたが、ことしもにわかに改善の方向にはいかない、こういう感じがいたします。どうすれば改善できるかということは別の問題でありますから申し上げませんが、ただ毎年の傾向を見ておりますと、住宅中身は少しずつよくなっておりますので、政府見通しも、建設の戸数は昨年落ち込んだまま横並び程度であろうと考えておりますが、中身がよくなった分だけはある程度見ていいのではないか、このように考えております。  それから個人消費でありますが、これは御案内のように、昭和五十三年度は六%台、昭和五十四年度は五%、最近は二%前後の水準で推移をしておりますが、五十六年度は四・九%、五十四年度水準に近づくであろう、こういう想定をいたしております。
  9. 城地豊司

    城地委員 その問題については、見通し問題等々ありますから見解の分かれるところであろうと思いますが、それら全体を総合いたしまして、いま日本経済の置かれている現況というようなものについては、長官が前に述べられましたような、ある意味ではバラ色のような状況ではなくて、非常に厳しい状況になってきている。最近の経済専門誌なんかでも、三月危機説であるとか、かなり危機という言葉が使われ出している。いろいろな数字を出して言われているわけであります。そういう意味で、危機と言うには当たらないと言われるかもしれませんが、かなりいろいろな数字がそういうものを示してきているんじゃないかと思います。  そういう中で、昨日、経済企画庁総合経済対策項目というものの原案を出された模様でございます。けさ新聞に一部報道されておりますが、きょうのこういう機会でございますから、それらの概況について長官からお話をいただきたいということでございます。  それと、直接関係ありませんが、経済企画庁に対する質問の最後でございますが、いわゆる政府開発援助中期目標関係について御質問を申し上げたいと思います。  前に鈴木総理が本会議で言われまして、今後五年間でこの政府開発援助を倍にするという表明をされましたし、ここに政府開発援助中期目標ということで、経済企画庁から出された資料がございます。五年間で倍以上にするということでございますし、私どもも、こういう政府開発援助が、諸外国からの批判なしに、諸外国並みにもしくはそれ以上にできるということは、日本の国が国際社会の中において地位をどんどん上げていく、地位を不動のものにしていくという意味で非常に必要なことであるし、このことについては十分理解をするつもりでございますけれども、この中期目標の中にはどういうような項目、どういう考え方でこの政府開発援助倍額にするのかということがないような気がいたします。言うなればビジョンがないといいますか、五カ年で倍にするというからには、とにかくこういうところに力を入れてこうやるんだというビジョンがなければならないんじゃないかと考えるわけであります。ただ単に、数字倍額にするからいいんだ、倍額にするぞということだけでなくて、その中にはある意味ではビジョンといいますか夢といいますか、こういうことでこうやっていく、結果についてはこうなるであろう、こういうことを期待するということまで述べていかなければ、ただ単に倍額にする、それじゃなぜ倍額にするのかという質問が返ってきて、それに対する答えがないという感じが率直にいたします。したがって、この五カ年で倍額にするというそのビジョンについて、考え方がありましたらお示しをいただきたいということでございます。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在の景気の状態は、一年前に比べますと相当落ち込んでおることは事実であります。産業操業率で見ますと、昨年の二月は九三%ぐらいでありましたが、現時点では八三、四%見当になって一〇%近く落ち込んでおりますから、非常に大きな落ち込みだと思います。ただ、詳細な経済指標がこの月末から来月初めに集まりますので、それを見た上で、関係各省の間で相談をして、一体どうしたらよいかということについて決めたいと考えております。したがいまして、その中身はまだ全然詰まっておりません。けさ新聞に何か出ておりましたが、実は私もああいうことは初耳でありまして全然関知をいたしておりませんが、いろいろな作業は関係各省の間である程度はやっておるんだと思いますが、まだまとまったものはでき上がっていない、指標を見た上で最終の判断ができ上がるであろう、このように考えております。  それから政府開発援助のことにつきましては、いまお述べになりましたような計画で一九八〇年代の前半を進めていきたいと考えておりますが、その中身は、一言で言いますと発展途上国国づくり、それから国民生活の安定、こういうことに対して日本として積極的に協力していこう、こういう考え方に立脚しておるということであります。
  11. 城地豊司

    城地委員 次に、通商産業者関係について質問を申し上げたいと思います。  通産大臣所信表明をされました内容の中で、一番最初に非常に大きな関係での問題点について御質問を申し上げます。  この十二ページから十三ページにかけまして中小企業関係中小企業に関する各種考え方が提起をされています。  この考え方について理解はできるわけでありますが、たとえば中小企業問題を考える場合に、昨年一年間中小企業倒産というようなものが、昭和五十二年度がいままでで倒産状況がトップ、昨年も一年間で、予想どおりと言っては失礼になりますが、十月、十一月段階でこうなるのではないかと思われました倒産件数が、年間で一万七千八百件程度、非常に大きな倒産状況になっているわけでございます。そういう意味でいきますと、この大臣所信表明の中に倒産という言葉がございませんが、今年、中小企業対策でこうやっていくとすれば、現実、五十五年度というか、暦年で昭和五十五年の倒産は大変な数に上っているし、そういう状況であるので、言うなれば倒産というものが非常に多く出ている。だから、そういうものについてはなくしていくのだというようなことが一言でも二言でも示されてしかるべきではないかというふうに考えるのですが、この中には倒産に対して積極的に対策をしていくという文字がほとんどありません。そういう意味では、倒産現況というものに対する認識が――経済の中で倒産というのは大変なことだし、それに対して事前対策できれば事前対策をするというのが経済運営基本ではないか、通商産業基本ではないかというように私どもは考えているわけであります。そういう意味では、非常に言葉はきれいに並べてありますが、現実を余り見ていない感じがいたします。なぜそういう倒産というようなものについて触れられていないのか、また倒産というのも、出た後に倒産対策を立てるというよりは、むしろ倒産のないようにするということが必要なのではないかというように考えますので、そういう点の考え方について伺いたいというように思います。  また、これは昨年一年間だけでなくて、ことしの一月の倒産件数は千三百件超えました。過去一月というのはわりあい倒産の出にくい月でありますけれども、過去の中で最高を示している。そして、さらにそれらの倒産の分析を見ますと、そのまま少なくなるのではなくて、二月から三月そして四月というように、中小企業倒産は激増するのではないかということが各種調査ではっきりと断言されている。そういう状況についてどのように考えておられるか、最初に伺いたいと思います。
  12. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 所信表明の中に倒産という言葉がないのじゃないかということでございますけれども、「活力ある中小企業の育成」というところに中小企業については述べておりまして、非常に不況下の中にあるということは明記しているわけでございます。また倒産件数などの具体的なことについては触れておりませんけれども、この対策についての私どもの考えは述べておるわけでございます。御指摘のように、五十五年の一月から十二月までは総倒産件数が一万七千八百八十四件、また御指摘のように、一月の倒産件数は千三百十三件という史上最高の倒産でございまして、私どもも頭を痛めておるわけでございます。  この中小企業対策につきましては、貸付資金の拡大、それから共済制度の実施、そのほか中小企業に対する保証制度の拡充、それから倒産防止特別相談室と申しますか、そういうものを、いま現実にありますのが百二十一件でありますけれども、これを百六十一件に拡大するというようなこと、それからまた中小企業体質強化資金制度というものの拡充などを図っておりますし、全体的な中小企業に対する予算も約二千五百億円くらいやっておりまして、そのほか財投が三兆五千億円くらいを計上しておるわけでございまして、いまの財政再建というさなかの予算の中ではかなりのウエートを占めておるわけでございます。  冷夏とか豪雪、予期せざることもございまして、中小企業は非常に困っております。それなりの対策をやっておるつもりでございますけれども倒産件数が如実にその数を示しておりますように並み大抵のことではないということから、これからでき得る対策も考えなければならないと思っておりますけれども、いまのところ、私どもとしてはベストを尽くしておる考えでございます。しかし、それでもまだ足りない点もございますので、十分御指摘の点を踏まえて対処していきたいというように思います。
  13. 城地豊司

    城地委員 質問の第二点の一月の状況、二月、三月、今後の状況についての見通しをぜひお聞かせいただきたいということでございます。  さらに質問を続けますが、倒産対策をいろいろ立てておられるということでございますが、私はもう少し具体的に、予算を増額された、それから融資の関係でやられたことは十分承知をしておりますが、たとえば融資の問題一つにいたしましても、金融が全体的に緩和されているが、中小企業に対する選別融資というのはなお一層厳しくなってきている。財政再建という関係考え方からいきますと、金をある意味では締める。そうすると大企業に流れていく金が多くて、中小企業に流れていく金が少ないというようなことがあるわけであって、そういう意味では、この際、一年間の実績を見てもそうだし、今後も日本経済状況の中でいろんなことが予想されるし、そうなまやさしい状況ではない。とすれば、国の政策の中でやはり倒産を起こさせない、そういう施策が必要であるとすれば、大きく英断を持って、先ほどの融資の関係をもう少し緩和するとか、駆け込んで状況を訴えられた、それを速断して即座に資金の融資をするとかいうような、いわゆる緊急対策というようなものが必要なんじゃないか。豪雪だとか、冷夏だとか起こった後に、とにかくいろいろ後追いでやるのが政策ではなくて、むしろ予想されるものを先取りをしてやるというのが政治のいいところであるし、またそれが経済政策、また通商産業省の役割りでもないかというように思いますので、そういう意味では、これだけ倒産が出る、これからも出る見込みであるという状況だとすれば、それに対して何か特効薬的に特別なことでこれをやるというような方策があれば、ぜひとも通産大臣の御所見を伺いたいと思います。  続いて中小企業倒産関係では、昨年の九十三臨時国会で私が質問をいたしました。大口倒産だけでなくて小口倒産の件についても、いまのままの状況ではなくて十分配慮してほしいという要望を申し上げましたが、政府部内でいろいろ検討されているやに聞いておりますが、検討の結果等がありますれば、それらについてもお答えをいただきたいということでございます。
  14. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 倒産件数現状から見て将来の展望を言えということでございますが、これは非常にむずかしいことでございまして、つい最近、私ども中小企業、中堅企業百社に対してアンケートをとりましたところが、やはり経営不振といいますか、なかなか売れないというようなこと、これは先ほど企画庁長官からも御説明がございましたけれども個人消費とかあるいは建設投資住宅投資あたりの低迷、むしろそれが非常に落ち込んでおるというようなことと関連がございますが、その下の底を洗いますと、やはりそういう個人消費伸びてない、住宅投資伸びてない、それから一方、倒産が多いということは、私は、一番下の底にある下敷きというものは不況、スタグフレーションということだと思います。  それから、先ほど申しました百社のアンケートの二番目は、価格の低迷ということがありますけれども、三番目にはやはり金利が高いということがかなりの答えとなって出ておりまして、この点も私ども、融資枠の拡大とか貸付条件の改善とか、それからいままで貸し付けておったものを延期するとかいうようなことも頭にありますけれども、窓口規制をもう少し緩めるというような具体的なことなども頭にありますし、それから下請に対しましては下請代金支払遅延等防止法に基づく措置なども考えておりますけれども現実に景気そのものを刺激しなければ全体的な活動、みずみずしい活動ができないというふうに思っておりますし、幸いに、いま審議していただいております来年度予算案の中にいろいろ具体的なことをやっておりますし、先ほど申しましたように、一般会計のトータルで約二千五百億程度の金を計上しております。これらがフルに活動し始めますと、やはりこれは暗い方向じゃなくて、明るい兆しが見え始めておるというふうにも思われます。  しかし、私どもがいまの現状に立ってみますと、在庫なども一-三月に終わる予定がどうしても四-六になる、四-六がさらに延びるというようなアンケート、あるいはいろんな経済指標見込みというようなことにもなっておりますし、これは並み大抵のことではないというふうに思っております。それだけに、これらの対策には万全を期していきたいと思います。  細かいことにつきましては、中小企業庁長官が参っておりますので、零細企業あるいはその他の企業に対する諸対策については答えさしていただきます。
  15. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 いま大臣お話の細かい点でございますが、特に小口倒産につきまして、昨年の十月二十一日の当商工委員会におきまして、先生から、小口倒産の実情把握についての努力を具体的にすべきじゃないかという強い御指摘を受けました。  私ども内部で早速検討をいたしまして、これを来年度予算に反映させるという意味におきまして、現在、先日御答弁申し上げましたように、百十一カ所の地点を調査をいたしておりますが、これによりますカバレージが四五%でございます。したがいまして、これを少しでも高めまして、一千万円以下の小口倒産の実態把握を緊急に拡充したいということで折衝をいたしました結果、現在の百十一カ所に加えまして百四カ所来年度追加いたすことにいたしました。それによりまして、カバレージが現在の四五%から六〇%まで拡大するというような努力でございます。したがいまして、来年度はこの予算をもとにいたしまして、小規模の倒産の実情把握について精力的に取り組みたい、このように考えております。
  16. 城地豊司

    城地委員 小口倒産現状について、要望いたしましたことを十分取り入れていただいて、前向きで対処していただいていることに対して感謝を申し上げますが、先ほど通産大臣からお答えがありました点で、金融の関係でも窓口規制やその他いろいろ考えられておられることについては理解をいたします。  しかし、後追いでなくて先取りだというふうに申し上げたのは、倒産が出ることが予想されるのですから、その場合に、なるほどこれはというような施策をやらないと、ただ窓口の規制を緩めるとかあるいは少し借りやすいことにするとか、枠を若干二百億くらいふやすということだけでは、この緊急事態は解消されないのじゃないかと思うのです。そういう意味ではぜひとも、それらの倒産防止というよりは、倒産防止ということになると、どうも倒産という字がついて余り感じがよくないということになるかもしれませんが、中小企業育成といいますか、助成といいますか、そういう形でもう少し積極的に、特にこれからますます金融が厳しくなるということも予想されるわけであって、そういう意味ではぜひともそれらの対策を立てていただきたいということを要望申し上げたいと思います。  続いて、この八ページから九ページにかけまして、「摩擦なき通商関係の確立と安定した相互依存関係の構築」ということが通産大臣考え方として述べられています。  最近、アメリカ、EC諸国との自動車摩擦、さらには電機産業関係でもVTRの関係は、摩擦とまではいきませんが、いろいろな意味での問題が提起されてきています。それらの関係で、新聞等の報道では五月に鈴木総理が渡米されて解決をする、その前段の対策として通産大臣が四月に渡米されるということも載っておりますし、ついこの間ECの関係の議員団が参りましたときにも、それらの要望がいろいろ出されている。そういう意味で、これら節度ある輸出等々についてどういうような考え方で対処されるおつもりか伺いたいということが第一点であります。  これらとの関連で第二点といたしましては、言葉の中に「投資交流」という言葉がございます。製品輸入の促進を図るために投資交流が必要だ、エネルギー資源保有国との間で投資交流が必要だというような言葉がございますが、この投資交流というのはどういうことを意味するのかということについて、第二点として伺いたいと思います。
  17. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 第一点の、アメリカ並びにECその他における国々との経済摩擦の問題でございますけれども、これは私どもが一番頭を痛めております現実の国際貿易の難問でございます。  と申しましても、わが国の自動車が安くて、よくて、燃料費がかからないということがやはり大きな原因で自動車が売れておるという判断は間違ってないと思うのです。したがって、そういうことは、国内的には額に汗を流して働いておる結果、合理化あるいは省力化、そういう点が十分あるわけでございまして、国民の皆様あるいは労使の人々にそういう方向である程度指導してきてもおりますし、それが非常にコストの安い車となってあらわれていることは疑いもない事実でございます。  しかし、相手のあることで、相手の車、向こうの国々の国産品が売れない。それはそれなりに理屈があることを言うわけで、失業の輸出だというふうに責められて、現実にレイオフなどが行われている事実はちゃんと数字にもあらわれておりますので、それを放置しておくことは、結局はそれぞれの国が保護貿易主義に転化して、私どもが望んでおります自由開放体制貿易、そういうものに大きく支障を来して日本自身が困ると同時に、世界のそういう自由貿易についての縮小ということにつながるわけで、結論は日本に戻ってくるわけでございます。したがって、そういう観点を考えますときに、私どもは、相手の国の立場に一応立ってこの問題を処理しなければならないというふうに思っております。  私の渡米はまだ決まっておるわけではございませんけれども、総理とお話しして、総理が向こうに行く前に自動車の問題は解決しておくようにという内示は受けておりますので、その点を十分考えて対処していきたいと思います。  対米の自動車摩擦、経済摩擦もさることながら、EC諸国も非常に共通の点を指摘しております。しかし、私に言わせますと、フランスなども日本車の輸入を三%に規制しておりますし、それから、やはりイタリアでも輸入車を規制しておるし、ベルギーなどもいろいろなことを言っておるわけで、こちらを責める前にそれぞれの国々の態度はどうかというような思いもありますけれども、これも、それならば輸入しないようになるぞということになると、これまた大変でございますので、私としては、アメリカの問題が片づくころにはEC諸国も一緒にこれらの問題を片づけたいというふうに思っております。  第二点の投資交流の点でございますが、これはもう御承知だと思いますけれども日本からたとえばイギリス、アメリカ、その他ドイツでもそうでございますけれども投資をすると同時に、合弁事業と申しますか、そういうものの拡大をする。向こうの方も日本に来る。たとえばIC工場などを見ますと、日本からアメリカに進出している企業よりも、アメリカが日本に来ておるIC関係企業が多いような現状でございまして、そういうことにすることによって両国の摩擦というものが緩和できるのではないか。あるいは第三国市場などもその例でございますけれども、製品を相互に輸出すると同時に、共通に第三国市場を求めていくというようなこと、これらもまた経済摩擦をなくする大きな要因でもあろうかと思いますし、いろいろなことを考えて、保護貿易主義が世界に蔓延しないように、自由貿易主義が縮小どころか、むしろ拡大するようなことを、いまもそして将来も考えなければならないということから、投資交流なども大きな一つの課題として私どもは持っておるわけでございます。
  18. 城地豊司

    城地委員 続いて、五ページのところにありますエネルギー関係で御質問をいたします。  この五ページのところに、「石油代替エネルギーの開発、導入の強力な推進」その他ということで、いろいろ述べられています。  昨年十月ですか、発足をした新エネルギー開発機構、これについて九十三臨時国会でも質問をいたしましたが、新しくそういう機構をつくる、国の施策としてとにかくこれだけ力を入れてやるのだということでスタートしたわけでありますから、当然この通産大臣所信表明の中には、それらをどういうふうに活用していくかとか、また、そういう意欲が十分盛られるのじゃないかというふうに期待しておりましたが、それらの問題についての言及がございません。ただ機構を生かしてどうこうというのでなくて、具体的な内容として太陽熱や原子力やというようなことで述べられているのかもしれませんが、この新エネルギー開発機構について、昨年も御答弁をいただきましたが、さらに五十六年度予算との関連でどういうふうにこれらを活用、拡大するおつもりか、お伺いをしたいというのが第一点でございます。  第二点は、原子力の関係で、今後十年間に現在の三倍強の五千万キロワットにまで拡大する必要について述べられています。  原子力政策、原子力発電の関係についてはいろいろ考え方もございますけれども、総理府が統計をとった意識調査の中でも、原子力でいくのもやむを得ないというような答えが大分多いとかいうようなことでもございますが、原子力の関係で一番問題なのは、やはり何といいましても安全性の問題だと思うのです。そういう点で、これだけ三倍強にするとすれば、いままでも原子力の中では、安全性の追求というようなことを関係者がそれぞれ努力をしてやっておられるということは十分承知をしておりますけれども、その安全性の追求ということに触れておられないという点では非常に不満を感ずるわけでございます。電源立地の問題云々、さらには地元住民との間断なき対話等々の言葉がございます。これらについては理解できますけれども、やはり地元の住民やそういう人たちがなぜその電源立地に反対したりするかというと、ある意味では安全性の問題があるのではないかと思います。ですから、そういう安全性の問題についてこの中で触れていられないのは何かお考えがあるのかどうか、また、安全性問題に対する考え方があれば、所信をお伺いをしたいというふうに考えております。  さらに、時間の関係がございますから一括して申し上げますが、三ページのところに、「エネルギー安全保障の確立」で、当面石油関係については供給面の不安はないというふうに言われています。しかし、中長期的に見ると需要の逼迫化傾向は避けられないというような見通しも立てられているのが、この三ページのところで言及されています。  中長期という言葉は非常にあいまいな言葉であって、当面は供給面の不安がないと言われたら、中期と長期を一緒にして中長期と言うのではなくて、むしろ中期的にはこういう問題がある、長期的にはこれがあるというふうに分解して言われるのが、理解をするためには必要なんじゃないかと思いますので、この石油関係については中長期ではなくて、中期的にはこう考える、長期的にはこうだということについて考え方をお聞かせをいただきたいというふうに思います。  最後に、十四ページのところに、「結び」でございますが、この一番最後の項に「国際社会の一員としての自覚を一層強く認識するとともに、平和を愛する国家、信頼し得るに足る国家としての評価を、国際的に確立することが重要であります。」というふうに述べられています。  平和を愛する国家、信頼し得るに足る国家としての評価を国際的に確立するために、たとえば国会でもついこの間も論議になりました武器輸出との関連でいきますと、平和を愛する国家は、戦争の道具の武器をどんどん輸出をするというようなことは精神的な面からいっても問題なのではないかというふうに考えるわけだし、信頼し得るに足る国家というのは、やはりこの国は十分信頼できる、いろいろな意味で頼れるということになるためにも、武器輸出をどんどんするような国であったのでは信頼し得るに足る国家にはならないと思いますし、それらが軍国主義国であるとか、あの国は好戦国であるというレッテルを張られることにつながるのではないかと思いますので、ここに「平和を愛する国家、信頼し得るに足る国家としての評価を、国際的に確立することが重要」であるというふうに述べられたことと武器輸出との関係について、これは精神的な関係で結構でございますが、所見を伺いたいということでございます。  以上です。
  19. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 第一点の、新エネルギー開発機構をうまく利用していないのじゃないかという点でございますけれども、私ども、この私の所信表明の中にも書いておりますように、石油代替エネルギーをどうするということについての問題点は、ほとんど新エネルギー開発機構で取り扱う問題でございまして、新エネルギー開発機構は十分これを活用して代替エネルギーの開発促進に資したいというふうに考えております。  第二点の原子力発電所を中心とする問題でございますけれども、いまわが国は二十一基稼働中でございまして、十一基が建設中、あと三基を計画準備中でございまして、全体で三十五基を予定しております。それは、御指摘のように、十年後に五千百万から五千三百万キロワットに達成すべき予定でございますけれども、なかなか電源立地との関係で問題を起こしている点が多うございますし、特に日本の実情から申しまして、アレルギーと言ったら語弊がございますけれども、何となくいろんな原因でこれを拒否するという空気もあることは事実で、遅延するおそれもあります。しかし、ついせんだっての内々の九電力の計算によりますと、五千万キロワットには達するのではないかという分析もございます。御指摘のように安全性の問題が一番大切でございますし、これは科学技術庁それから私ども通産省とダブルチェックの機構もございますし、より以上これからも安全性については配慮をしなければならないのじゃないかというふうに思います。  それから、需給暫定見通しの中に短期的なことはあっても中長期、そういうようなことについてははっきりしていないんじゃないかというお尋ねでございますけれども、これはあくまで長期計画でございまして、これを簡単に申しますと、油の依存率を五〇%まで落とす、つまりあとの半分は代替エネルギーで処置するということから、わりにきめの細かい措置を短期、中期、長期、それぞれ分けて私ども計画しておることはすでに発表されておりますし、いずれにしても石炭を石油換算にしますと私どもこれを一万二千三百・万キロリットルですか、そういうようなところでLNGを幾らにするという計画を立てておりまして、これが計画どおりいくかいかないかがやはり問題でございまして、いま申し上げましたように、原子力発電所についてはこれを目的達成しよう、何しろ原子力発電所はコストが他の発電所に比べまして半分近いものでございますので、その点は実現したい。ただいま申し上げましたように、安全性については特に留意してまいらねばならないというふうに思っております。  それから四番目の御質問の、日本は平和を愛しいろいろするのに、武器輸出の問題をもう少し積極的に取り組めということでございますが、私ども、いまの体制で通産省が申請してきたものを承認する、それから大蔵省の税関関係でこれをチェックする、それを聞かなければかなり強い罰則がありますので、これを適用する。この武器輸出法の法律につきましては、御承知のようにいま与野党で、きょうは二回目の会合をやって処理することになっておりますので、その結果を待った上、新しい措置などをやっていかなければならないというふうに考えております。
  20. 城地豊司

    城地委員 いろいろ御質問申し上げましたが、指摘もいたしましたように、この一年間経済運営いろいろ大変だと思います。そういう中で通商産業省の果たす役割り経済企画庁の果たす役割りは非常に重要なものがございます。大変であってもこれを避けて通るわけにいきませんし、先ほど具体的には中小企業倒産対策等で意見を申し上げましたが、その他の経済運営の施策でもたくさんございます。特に成長率を高めるための雇用者所得を伸ばすためにはどうするか、一人一人の働いている人の所得がふえなければ日本経済の安定的な成長はないということもこれははっきりしているわけであって、それやこれや問題がたくさんありますが、ぜひとも前向きで対処をしていただきたいことを要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  21. 野中英二

    野中委員長 藤田高敏君。
  22. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、いま日中間で大きな問題になっております中国の大型プラント問題、いわゆるプラントの建設中止問題と申しましょうか、中国で言えば経済調整の中でこの問題が大きくクローズアップされておりますが、このことを中心に質問をいたしたいと思います。  現在までに、もうすでに二月の十日ごろでございましたか、大来代表が中国を訪問いたしておりますし、かたがたいま中国から劉興華さんがお見えになって具体的な交渉をされておるようであります。後ほど個々の問題についてはもちろんお尋ねいたしますが、その前段として、政府なかんずく通産省あるいは経済企画庁といった日中閣僚会議のメンバーにかかわっております所管省の責任者の、この問題に対する基本的な認識についてまずお尋ねをいたしたいわけであります。  私は、この問題は、単なる商業ベースあるいは単なる一つの貿易問題という立場から対処するのではなくて、戦前戦時中から今日に至るまで、御承知のように日中共同声明が締結をされ、続いて日中平和友好条約が締結をされ、その基礎の上に日中長期貿易協定が締結をされてきた、こういう一連の歴史的な経過、さらには日中の将来展望という上に立って考えます場合に、これら一連の歴史的事実というものは、日中の友好関係というものを現在から長い将来、中国的な言い方をすれば子々孫々に至るまで友好的な立場で維持発展をさすのだ、こういう立場からこの問題についても対処していかなければならぬ、そういう立場を踏み外したのでは、この問題に対する対処の仕方として過ちを犯すのではないかと思うのですが、通産大臣、続いて経済企画庁長官、こういう私の認識、見解に対してどういうお考えを持っておるか、まずお尋ねをいたしたい。
  23. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 藤田委員指摘のように、日中関係というものは非常に古い国のつき合いでございますし、いろんな問題が歴史の上に、一つ一つ大洋の中の島のように浮かんでおるわけでございまして、したがって私どもは、ただこれを単に貿易とか商売をするとか、経済上の取引とかという観点からとらえるだけでは、御指摘のように済まないような気がしておるわけでございまして、したがって、私ども、今回の日中貿易長期取り決めというものは、御承知のように一九七八年から一九九〇年までの長期取り決めで、短期的な取り決めならば、むしろこれは中国のためにもならないことだと思いますし、長期的な取り決めをしたということは、民間ベースではありながらも、やはり民間の人も十分これを考えて、歴史的なことを十分考えた上で、いま長期に安定的な契約を結んでおった方が中国のためにもなるだろうという、言うと言わざるとにかかわらず、そういう腹づもりがあると思います。  したがって、今回、一方的な、これも私どもから言わせれば一方的なことでございますけれども、宝山製鉄所のプラントの工事中止、そのほか三つの石油化学のプラントの中断というようなこと、これは日本側の取り決めの主体が大きなプロジェクトの問題を中心としただけに、民間の人々は大きなダメージ並びに下請け業者もあって問題を起こすと私どもは思います。  中国側からは、これは原油の輸入と石炭の輸入でございまして、中国側としては石油国内的にたくさん要り始めた、それから石油そのものが予定したとおりに増産できない、そういう二つの理由から八百三十万トン、八一年、八二年はそういうように縮小しておるわけですが、これは何とか実現するようでございますが、いずれにしても、大幅に日本からもらおうとしておった計画も縮小しているわけでございます。  いま御指摘のように、劉さんという人が中心になって日本に来ておりますけれども、この人と民間企業の代表者との会見あるいは検討がいま行われつつありまして、まだ詰めの段階にはないというふうに聞いております。来月の、三月の十日ごろに、大体それらについての一巡した考えが詰められるんじゃないかということでございますので、御指摘の点を十分踏まえた上で、民間同士がこれをうまく解決するように祈っておりますし、それから、そのための環境づくり、政府がやるべきことは十分やらなければならないというふうに思っております。
  24. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般、大来政府代表が中国を訪問されまして、この問題について話し合いをされましたが、話し合いの最終段階で鄧小平副主席から、今回のプラントの問題は日本の協力が得られるならば継続したいんだ、こういう御趣旨の話があったようでありますが、これが果たして中国の正式提案なのか、あるいはその場における希望的な話なのか、そういうことがはっきりわかりませんので、わが国といたしましては、それに対する対応策は政府部内では相談はいたしておりません。  しかし、もし中国側からの正式提案である、こういうことであれば直ちに相談をしなければならぬと考えておりますが、対応策は、私はあると考えております。正式の提案ならば、日本としてどのようにこれを受け入れすることが可能であるかということについて具体的な相談に入りたい、こう思っておるところでございます。
  25. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 両大臣とも、私がこれから質問をしていこうと思う中身について、むしろ先行した形で御答弁がございましたが、私の一番聞きたかったことは、まず、具体的な問題もさることながら、いわゆるいま起こっておる問題に対して取り組む基本的姿勢として、これは言わずもがなと言えばそうかもわかりませんが、日中の友好ということを土台にして対処していくんだ、この基本的原則、基本的な精神だけはしっかり踏まえてやるのかどうかということの答弁を欲しかったわけですが、これは後ほどひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。  たまたま答弁に出てまいりましたから申し上げたいのですが、いま劉興華代表が参りまして、宝山製鉄所の問題その他について交渉をやっておるようでありますが、まず当面、いま中国側から正式にプラント問題の契約破棄といいますか、中止というか、そういう提案がなされておりますのは民間関係だけのものなのか、それとも一部政府借款、海外協力基金に基づく政府借款の分も起こり得る心配があるのかどうか。現在報じられておるところによると、邦貨にして約三千億程度のものがこのプラント関係として中止になる、こういうふうに言われておるわけですが、現状認識について、きわめて概括的でいいですから説明を願いたいと思います。
  26. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま対象になっております中には、政府借款の分は含まれておりません。
  27. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 若干、補足して御説明申し上げます。  いま経企庁長官からお話がございましたように、政府関係直接借款分についてはございません。  プラントの中で、いま先生お話しがございました約三千億円程度ということでございますが、要するに、中止につきまして民間企業の方に通知のございましたプロジェクトの契約総額といいますものが、石化プロジェクト関係で二千八十八億円、それから宝山製鉄所関係の熱間圧延と冷間圧延を合わせまして八百七十五億円、合わせまして二千九百六十四億円というのが関係の契約額でございます。これはあくまでも契約額でございまして、これをどうするかという中身につきましては、目下それぞれ話し合いをしておる、こういうことでございます。
  28. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いま経企庁長官から御答弁がありましたように、現段階では政府借款の分が含まれてない、こういうことですから、一応形の上としては民間契約に係る部分について問題が起こっておるのであるから、当面の対処の仕方としては、いわゆる民間の業界の問題としてこの問題を処理すべきでないか、こういう姿勢をとっておるようですけれども、しかし、先ほどはしなくも経企庁長官が触れられましたように、せんだって大来代表が北京を訪問したときに、谷牧副首相なりあるいは鄧小平副主席、こういった中国の政府要人から、いわば建設資金、なかんずくソフトな建設資金を得られるのであれば、いま御報告のあった、いわゆる民間関係のプラントの建設についてもすべて――すべてという言い方をしたと思うのですが、すべて継続して建設を続行したい、こういう意向がすでに表明されておるというふうにわれわれも聞いておるわけであります。  いまの長官の話を聞くと、これは中国の政府機関の正式な提案であるかどうか、こういうことは定かでないというわけですけれども民間関係だけに任しておけば、けさ新聞ではございませんけれども、この新聞記事によりますと、たとえば三菱関係の宝山製鉄所の中核をなすこのプラント問題については、契約履行の終結――終結という意味は中国式にどういうことなのか定かでありませんが、平たく言えば契約破棄、こういう方向に進みつつあるわけなんですね。これは、民間に任しておけばそういう方向に進んでいく。そうではなくて、この問題は、経済建設という中国の立場だけでなくて、この建設問題というものは、長い将来に向けて考えるときに、中国の経済、政治問題であると同時に、わが国にとってもきわめて重要な政治問題だと私は思うのですね。わが国自体の経済、政治問題じゃないか、こういうふうに考えるときに、民間レベルの問題として任すのではなくて、トータルとしてこの問題に対して政府としては最終的にはこういう方向で解決したい、こういう積極的な姿勢というものが今日段階においてもう提示されるべきではないか。そのことが現在を含めて将来の日中友好にも大きな貢献をするであろう、こういうふうに考えるのですが、いかがなものでございましょうか。
  29. 野中英二

    野中委員長 暫時休憩いたします。     午前十一時二十二分休憩      ――――◇―――――     午前十一時二十七分開議
  30. 野中英二

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  河本経企庁長官
  31. 河本敏夫

    河本国務大臣 中国政府から、このプラントの問題につきまして正式の提案があれば、日本政府といたしまして至急に相談をするつもりでございます。しかし、現在のところは、先ほどもちょっと申し上げましたように、大来政府代表はこれを正式の提案として受けておるかどうか、単なる希望的な意見ということで聞いて帰っておられまして、そういう報告を受けておりますので、政府としても、いまの段階は希望的な意見であるということで、これは正式提案としては受け取っておりませんので、そういう提案が正式にあれば至急に具体的に先方と相談を開始する、このように考えております。
  32. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、世間でいう審議中断のとめ男ではございませんから、その点は断っておきます。  これは半ば冗談といたしましても、私がいま質問いたしておりますことは、ある意味において私は外務大臣にも、否総理にもお聞きいたしたいところなんですけれども、率直に申し上げて、これは決してひやかしではございませんが、河本企画庁長官にしても総理の呼び声の高い政治家でございますし、また、田中通産大臣にしてもニューリーダーとして非常に株の高い大臣でございます。こういう両閣僚が、昨年の十二月であったかと思いますが、いわゆる日中閣僚として北京を訪問した。私にあえて言わしてもらえば、北京に行ったときに、単に向こうへ行って友好乾杯をやるだけでなくて、むしろこういう重大な問題が一月に入ったら表へ出てきたわけですから、その時点でこの種の問題を日中間の重要な政治問題として協議をしてくる、そうして帰ってくれば、六名か七名か知りませんけれども関係閣僚のところで、この種の問題に対する基本的な政府としての対応姿勢はどうあるべきか、こういうことをあなたらお二人が特に中心になって対応策というものを考えるべきじゃないか、こう思うわけであります。  と申しますのは、先ほども私は一つの材料を提供しましたが、新聞けさ報じておるようなことであるとすれば、これはもう最悪の方向にどんどん進んでいくと私は思うのです。この問題は中国の方から正式な提案がまだなされていない、民間レベルの問題だ、こう言いますけれども、しかし、民間レベルの問題として推移を放任するといいますか成り行きに任すということになれば、契約が破棄されていく、契約が破棄されればその損害賠償をどうするのだ。さらには、後でも触れたいと思いますが、通産大臣が二月五日の予算委員会で輸出保険の問題について触れておりますが、この輸出保険を適用するのかどうかというような、私に言わせたらきわめて末梢的な方向に、決して生産的でない、日中両国の現在及び将来のためにもならない方向に進んでいくのじゃないか。  こういうことを考えると、正式な提案でないとしても、少なくとも鄧小平副主席といえば日本側から見て、いろいろな批判があるにしても、今日中国を動かしている実質的な実力者だ。谷牧副首相、これまた経済通で名の売れた指導者だ。こういう中国の政府首脳が日本の大来代表に、先ほど言ったようなことを提案といいますか相談を持ちかけてきたということになれば、そこへ焦点を合わせて、日本政府は、たとえば海外協力基金に準じたようなソフトな資金を、それは三千億になるのか五千億になるのか知りませんけれども、そういうものによってプラントの契約破棄が救われるということであれば、積極的に政府方針を打ち出して、そういう方向で行くから民間の諸君もばたばたするな、こういう行政指導といいますか、業界に対する指導というものがあってしかるべきじゃないか、そうしなければ――悪い言い方ですけれども、国交が回復するまでは中国だなんていったってと、半ばしりを向けておったような業界筋もあったと思うのです。ところが、平和友好条約が締結されると、われもわれもと草木も北京になびく。こういう目先の商業ベースや利害関係だけで走る一部の業界に任しておけば、日中両国の友好という問題に対してまでひびが入ってくるのじゃないか。そういう諸君に、日中の国家関係にひびを入れるようなことをさせるわけにはいかないと私は思う。そういう観点からも、もう少し政治問題として次元の高い立場からこの問題に対する対応策というものを考えるべきじゃないか。  その具体的な一つとしては、輸銀が無理だというのであれば、海外協力基金を何らかの形で枠をふやしていく方法がないのかどうか。これはまた後ほど時間があれば触れたいと思いますが、対中国の資金協力体制として二十何社かの民間銀行が中心になりまして、長期、短期でかれこれ八十億ドルぐらいの資金をプールして資金的な協力体制もとられておるやに理解をいたしておりますが、こういう問題についても生きた資金運用、生きた金の使い方というものについて、政府はもっとリーダーシップを発揮すべきではないかと思うのですが、これはいずれも両大臣から見解を聞かしてもらいたい。  それと、このことに関連して申し上げておきますが、どうでしょうか、この種の問題についてお二人が先ほど休憩の時間をとって御相談されたことについては私も敬意を表しますが、やはり政府としての統一方針というものはもうこの段階でかちっとしたものをつくるべきじゃないでしょうか。まとめるべきじゃないでしょうか。どうでしょう。
  33. 河本敏夫

    河本国務大臣 中国が現在進めております経済調整は、これは突然起こったわけではありませんで、相当長期間かけまして、いろいろな段階の長い議論を経てだんだんと結論が出てきたと私どもは承知をしております。そして、その長い間の議論を通じての結論に従って、最近日本に対していろいろなことを申し出があった、このように理解をしておりますので、先般の大来代表の話も、先ほども申し上げましたように、正式の提案と大来代表は受け取って帰っていないんです。そして、先方からひとつこの案を出してください、こういうことを言って帰ってきておられますので、先ほども申し上げましたように、正式の提案があれば日本政府といたしましては、方法はいろいろあろうかと思います、至急相談をいたしますが、いままだ正式の提案がないのに政府関係閣僚会議を開いてその答えを用意する、それはいまそういう時期ではない、正式の申し出があれば直ちに結論を出すことは可能だ、こう思っております。
  34. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 ただいま河本長官お答えいたしましたように、通産省としても、正式な提案があればあり次第、経済関係の閣僚がそろってこれを検討しなければならないというふうに思います。
  35. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 大来代表が訪問をしたときの谷牧副総理との二回目の会談であったかと思いますが、そのときにむしろ大来代表の方から、この問題の解決に当たって、たとえば民間銀行からの借款をする考え方はないのですか、こういうふうにただすと、谷牧副総理は、民間銀行からの借款は金利が高い、いわゆる金利問題で難色を示した。そこで中国の意向としては、中国が自由に使えるいわゆる低利借款、そういう措置がもし日本の協力を得られてできるとするならば、そういうものによって現在中止しようとしておるプラント建設を継続していきたい、そして、これはなかなかむずかしいかもわからぬけれども新聞にも出ておりますが、合弁方式による建設続行の問題についても意見が出された、こういうふうにわれわれは情報を把握しておるわけですが、少なくとも日本の代表が行ってこれはどうだと意向打診をして、中国の側から、できればソフトな資金協力を得たい、その協力が得られるならば続いてやりたい、こういうことになれば、これは単なる大来という個人が行ったんではなくて、日本政府の実質的な代表として行っておるんでしょう。そうすれば当然のこととして、私が冒頭に言ったように、日中の友好を発展させるんだ、この問題は中国のためにもわが国の将来のためにもプラスになるんだということであれば、民間任せにしておくのではなくて、政府が先取りをしてこの解決方策を打ち出していく、そこにこそ本当の日中友好の発展というものがあるのではないかと思うのですが、重ねてその所信を伺いたい。  あえてこのことを私がしつこく聞くのは、いま言われておるような方向でこのままここ何日か時間がたてば、民間は個別的に折衝をして、ああそれはそうですが、そうしたらそれは破棄しましょう、損害賠償はどうしてくれるのですか。損害賠償は、中国はかつての大躍進時代のソ連の例もとりまして、非常に苦しかったときでも、国際関係の問題だけは迷惑をかけないように解決をしておるのだから、もしこの問題が仮に破棄するというようなことになれば、その損害補償については国際慣行に沿って責任をとりましょう、こう言っておるのだけれども、そういう方向に流れていくということは後ろ向きの対応じゃないかと私は思うのですよ。これは何と言ったって後ろ向きですよ。前向きに対応していく。日中友好というものを発展さす。日中両国の経済にとってもプラスになる方向を探求していくのだということになれば、ここでやはり急遽政府として相談をして、ソフトな資金についてはどういうものがあるだろうか、その協力できる限度は三千億なのか、五千億まではできるのか。仮に一兆だったとしても、わが国の公共事業の十分の一でしょう、一兆円の金を仮に出したといったって……。時間の関係もありますけれども現実的に東南アジアに政府が協力をしておる政府借款、海外協力基金の内容なりあるいは金利を含めた条件などというものを考えると、私がいま申し上げておるようなことについて、政府がこの問題に対してそういう積極的な姿勢をとることについては、余りむずかしい問題ではないと私は思うのですが、どうでしょうか。
  36. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど来繰り返して申し上げておりますように、一九七八年に日中平和友好条約ができまして、両国の基本的な関係はこれによって確立されておりますし、そしてその第三条に、この条約が締結されたのを機会に、今後両国の経済関係を大いに発展させていこう、こういうこともわざわざ明記してあります。その第三条に基づいて日本は長期貿易協定を結び、その一環としてプラント輸出契約ができた、こういうことでありますから、私どももその間の経緯は十分認識をしております。  で、中国側が、経済事情が変わったのでこのようにしてもらいたい、そういう正式提案があれば、日本政府としては直ちにそれを受けて相談をする用意がある、こういうことを申し上げておるわけであります。でありますから、いまのところは正式提案ということではないようにも思います。あるいは大来政府代表がそこで畳みかけて、いまおっしゃっておることは正式提案ですか、こう言って聞けばあるいははっきりしたかとも思いますけれども、そこまで話がいっておりませんから、したがいまして、正式の提案ということでそういう話があれば直ちに日本政府としては前向きに相談をする、こういうことを申し上げておるわけであります。
  37. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 長官のお考えは、正式な提案があればすぐそれに対応したい、ここはわかるのですよ。ここは決して否定しません。  しかし、私がいま一番心配をしておるのは、そこまで時間を待ちますと、一方では民間レベルで、中国の方は劉興華ですか、いま代表が来ておりますが、日本側は三菱だったら三菱あるいは東洋エンジニアリングですか、そういう契約を結んだ当事者間の折衝として進んでおるわけでしょう。そうすると、けさ新聞ではありませんが、契約が破棄される、破棄されれば損害賠償をどうするのだ、事と次第によったら輸出保険の適用をやらなければいかぬじゃないか、こういうことになってくると、これは決して両国のためにプラスにならないじゃないか、こういうわけです。ですから、私はあえて言えば、中国政府のそういうことになっていくことをとにかく防ぐためにも、一歩踏み込んで、どうですか、必ずしも政府の代表が北京まで行かなくても、いま谷牧副首相なりあるいは鄧小平副主席から話のあったソフトな資金があればということは、半ば中国政府の正式な提案として受け取ってもいいかどうかということを北京と直ちに交渉する用意がありますか。そういうように積極的に踏み込んでいくことは大事じゃないですか。中国が正式に提案してくるまでは待ちましょう、徳川家康方式じゃないけれども、そういうことでなくて、一歩進んで、先ほど長官がわざわざ条約の三条を引例されましたが、そういう趣旨に沿っても、そこまで踏み込んでいくことが大事じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。通産大臣でも経企庁長官でも、どちらでもいいですが……。
  38. 河本敏夫

    河本国務大臣 せっかくのお話でございますから、どうしたらいいかということについて相談をすることにいたします。
  39. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 さすが河本長官だと思いますが、私は、やはりそれが一つの政治決断だと思いますよ。いま当面出ておる三千億とか五千億とかというこの契約高を破棄するか破棄しないかという額の問題じゃないと思いますね。やはりこの問題は、中国の建設にとっても基礎的な非常に大事な建設計画ですから、これに対して協力をするかしないか、そのことが、いわば運命共同体ではないですけれども、わが国の将来の経済にとっても大変重要なことになるわけです。そういう意味で、一歩踏み込んだ折衝をおやりになるという点については、私、歓迎をするものです。  その点では、いま検討するというのは、政府部内で検討するということと、中国に対しても、これは半ば中国の政府の正式な見解として受けとめてもよろしいかどうか、そういうニュアンスを含めての交渉も政府としては直ちにおやりになる、こういうふうに理解してよろしいですね。
  40. 河本敏夫

    河本国務大臣 すべてを含めて政府部内で対応を相談いたします。
  41. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 ぜひそういう方向で御努力を願いたいというか、やるべきであるということを申し上げておきます。  そういうことになりますと、幾つかこの問題に関連して具体的な質問を用意しておったわけですが、大どころがそういう方向政府が積極的な姿勢を示すということになれば、あとの質問は省いてもよかろうかと思うのですが、念のために一つ私として要請をしておきたいのは、私の見解によれば、中国の意向は、大体民間銀行からの借款はむずかしい、合弁方式も半ばむずかしい、こういうことになれば、いわゆる海外協力資金的なものによって中国が自由に使える資金協力を日本側がやってくれれば、中国にとっては非常にありがたいというかしやすくなる、こういうことだろうと思うのですね。そういう場合に、これは両大臣には釈迦に説法かと思いますが、東南アジア諸国に対しての――ちょっと具体的な資料が見当たりませんが、いわゆるASEAN諸国に対する海外経済協力基金というものの適用については、その額においても相当なものを、これは当然のことですけれども、資金協力をしておる。こういう観点からも、いわゆる中国の自由に使える政府借款というものについて、海外協力資金的なものをぜひ用意をすべきでないかということが一つ。  それと、これは大蔵省にも聞きたいわけですが、中国に対する資金協力体制として、先ほどもちょっと触れましたが、民間銀行団として、中国向けの協調融資として、すでに昭和五十四年以来短期で六十億ドル、長期で二十億ドル程度のものを用意をして、この種のプラント建設その他含めて中国との経済協力に貢献をする、こういう体制がとられておるようですけれども、両方で約八十億ドルの資金はほとんど使われてないというふうに聞いておるのですが、現在そういうことなんでしょうか。これが一つ。  それと、この資金は金利はどの程度なのか。これが二つ。  三つ目は、私が前段質問をしましたが、こういう資金を生きた資金として運用するために、海外協力資金的なものに運用の内容を変えることができないのかどうか。この三点について。
  42. 行天豊雄

    行天説明員 ただいま先生御指摘のございました民間銀行からの融資につきましては、御承知のとおり、これは短期の貿易の決済のための金融ということで六十億ドル、そのうちの二十億ドルまでは必要に応じてこれを長期にすると、こういう話で、一昨年の八月に契約が結ばれたものでございます。  この金利でございますけれども、この両者の取り決めによりますと、短期の方は期限が六カ月で、これは市中銀行が海外で資金を調達するわけでございますけれども、この調達いたしました金利に四分の一%の手数料と申しますか利ざやを乗せて貸します、それから長期の方につきましては、同じく海外の調達金利に二分の一%の金利を乗せて貸す、こういう話でございます。  実は、最近国際的な金利が非常に高くなっておりますから、確かにこの方式によります貸出金利というのは相当高いものになるわけでございまして、そういうことも一つの原因かと思いますけれども、ただいままでのところ、中国側から、この取り決めに基づく金融を使いたいという話がないように聞いてございます。
  43. 井川博

    ○井川政府委員 海外経済協力基金の円借を現在の中国のこの問題にというふうなお話があったわけですけれども、これは御案内のように、すでに中国には六つのプロジェクトに対しまして借款を供与するということで、五十四年度分といたしまして五百億円、それから五十五年度分として五百六十億円、交換公文も結んで、出す用意をいたしておるわけでございます。先ほど河本長官から申し上げましたように、中国としては今回この案件については変更云々というふうな連絡は何もないわけでございまして、われわれとしては当然予定どおり進むものと、こういう予定をいたしておるわけでございます。  先生の話は、このほかに現在の問題に対して自由に使える円借をと、こういう話でございますけれども、すでに日本から出しております一国に対する供与としては非常に、最高に近い額を出しておりますこと、それから、自由に使えるということになりますと円借とはなかなかなじみにくい。もちろん商品借款という問題はございますが、商品借款というのは漸次これは減らしていっているというふうな状況、国別の状況等々、大変むずかしい問題があるわけでございます。かたがた、河本大臣から申し上げましたように、今回の問題については向こうから正式の提案というものもないし、しかもその場合に、現在問題になっているプロジェクトが一体どういうふうになるかということも全然わかりません。したがいまして、大臣の先ほどの言葉のように、これから相談ということでございますが、現段階われわれ事務当局といたしましては、従来の中国と約束しております六案件に基づく円借を今後進めてまいる、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  44. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いまの答弁を聞いておると、何だか長官の先ほどの答弁に水を差すような感じもするわけですが、そのことは私もよくわかっておるわけですよ。六つだったら六つのプロジェクトに対して五百六十億円の政府借款が出ておる。私が強調しておるのは、それとは別枠でと、そういう積極的な姿勢でおやりになるかどうかという意味のことを先ほど長官にただしたわけですから、その点は、責任者がそこまで積極的に中国との間にも、私が質問したような方向に沿って折衝をやると言っておるのに、これに水をぶっかけるようなことを役人が言うようなことは、これはけしからぬと思いますよ。これは内容説明であればそれなりに聞いておくが、それは政治的なことで、長官がどう言おうと事務レベルではそんなことはできませんよなんてブレーキを仮にかけるとしたら、これはきわめて不都合なことですよ。それはそういう意味じゃないでしょうね。
  45. 井川博

    ○井川政府委員 河本大臣が、今後政府部内で相談をすると言われましたが、その相談の中身ということになれば別問題でございます。私が申し上げましたのは、現在の円借というものがどういうものかということと、いまこれから相談するということを別にして、海外経済協力基金の金の使い方をということを言われるとすればこういう考え方でございますということを言ったわけでございます。で、ソフトローンというやり方もいろいろなやり方があると思います。これは円借だけではございません。したがって、そういう広い観点から先ほど河本大臣が検討ということを申し上げたわけでございまして、私がいま申し上げておりますのは、円借款、海外経済協力基金の金というのは現状こういう使われ方をいたしておりますと御説明申し上げたわけでございます。
  46. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 その点は確認できたと思いますが、いま円借款として計画をしておる一千六十億何がしはこういうものを対象にしておりますと、そういう説明だな。そういうことでいいと、そういうふうに限定してもらわないと、私が前段長時間かけてやったことに、それこそ水を差すようなことを言われたんでは、これはどうしようもないね。
  47. 井川博

    ○井川政府委員 六案件の中身を御説明申し上げますと同時に、海外経済協力基金の金というものがそれぞれ国別にどういう配分でやるかというふうなことを従来配慮されております。それから商品借款という問題について、これが商品借款になるかどうかというのもわかりません。わかりませんが、商品借款というのは毎年逐次そのシェアを狭めていくというふうなかっこうでやっておるということを申し上げたわけでございます。
  48. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 このことで時間をとることも、あと十分しかありませんが、いま言われるように政府借款は国別でやっておることも、いわゆるプロジェクト単位でやっておることももちろん承知の上ですよ。しかし、私が言っておるのは、たとえば東南アジアあたりにやっておる国別の融資条件からいっても、それはなるほど中国にいま用意しておるものもかなりなものであるだろうけれども、こういう半ば不測の事態が起こったことに対処していくためには別途考慮すべきじゃないかという点については、長官が先ほど政治的に前向きな答弁をされたわけですから、事務当局もそういう方向でぜひ協力すべきだということを、これは私の見解として要請をしておきます。  さて、この問題については、時間もありませんのでもうこのあたりで終わりたいと思いますが、強調してまいりましたように、中国に対しては、軍事的な問題を除く他の経済的な建設問題につきましては、どうか中国だけの問題として考えるのではなくて、将来わが国が日中協力関係を結んでいきます場合に、なるほど当面石油の採掘量についても一部変更が起こりつつあるようですけれども石油にしても食糧にしても、この希少金属関係にしても、対中国との関係は非常に大事な問題ですから、そういう点ではわが国の経済的な問題、また大きくはわが国の平和保障といいますか、アジアの平和保障という観点からも非常に大事なわけでありますので、そういう観点をもしっかりと踏まえて政府としては対処してもらいたい、このことを強く要請をいたしておきたいと思います。  次に、私、環境アセスメントの問題について触れたいと思います。  この問題は、ここ数年来、法案自体が二転、三転、また環境庁を中心に準備をいたしております法案も、世間で言われるように、大骨、小骨まで抜かれて、本来の環境アセスメントとしての性格が薄らいできたのではないか、いわゆるアセスの魂が抜かれてきたのではないか、こう言われておるわけですが、本来の十分な住民参加の機会を保障する、あるいは公開の原則で法律をつくっていくということで、この法案の整備をやっていかなければならぬと思うのです。  けさ新聞を見ましても、何でも与党自民党が、さらにこの国会でも法案を出すことができないような方向でブレーキをかけておるのではないか、それに一枚通産省も何だか、加わっておるとまでは言わぬけれども、この骨抜き法案には通産省も一枚かんでおるのではないか、こういう世間の批評が強いわけですが、このアセスメント法に対する通産大臣としての今日段階における見解というものを聞かしてもらいたい。これはもう経団連を中心として、昨年の末あたりから相当、内閣に対しあるいは環境庁長官等に対して、俗に言う圧力がかかっておりますが、そういうようなことも含めて、このアセスに対する現段階における通産大臣見解を聞かしてもらいたい。
  49. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 アセスメントの重要性というものは私ども痛感しておりまして、まあ発電所をつくる場合、いろいろな各種の発電所でございますけれども、そういうときには、アセスメントを電源立地との関係で十分調整しながらやっておるわけでございまして、したがって、私どもの認識は、環境保全というようなこと、環境評価ということは常に念頭にあるわけでございます。ただ、この法案につきまして私どもが拱手傍観しているというわけではなく、いま御承知のように自民党に預けておりまして、政調会で鋭意検討中でございますので、それを見守って対処したいという立場でございます。
  50. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 報道されておるところによりますと、きょうは具体的ないま準備されておる個々の内容にわたって質問する余裕がありませんが、たとえば、俗に言われておる、環境庁が準備をしておる法案は、一次、二次、三次というふうに分ければ三次の素案ができておるやに聞いておるわけです。もうこの素案でさえ、東京都の条例あるいは神奈川県の条例等に比較しますと、国がいま準備をしようとしておるその法案自体が、そういうものとの比較においてさえ相当後退しておる。ところが、その後退しておるものをさらに、たとえば電源立地、発電所の建設等に関するアセスはその対象にしないというような圧力なりそういう動きが、率直に言って、他党のことを言って失礼ですけれども、自民党を含めて与党内部、そうしてしかも、新聞の報ずるところによりましても、現閣僚の中にも二人までが、そういうものについては除外すべきだというような立場さえとっておるやに報道されております。そういうことになると、これは何のための法案かということになるのですが、まさか電源立地の条件まで、現在用意されておる法案から削除するというようなことは、通産省としてはお考えになっていないでしょうね。これが一つ。  それと、せっかく環境庁からお見えになっておりますのでお尋ねをするのだが、そういうような法案が後ろ向きに改悪をされたものになるということになれば、これは所管庁としては、そんな法律を出してみても本来のアセスとしての機能を発揮しないのじゃないかと思うのだが、そこらの環境庁としての正式な見解を聞かしてもらいたい。
  51. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 私どもは、通産省としては自民党の政調会の態度を見てそのとおりいく方針でございまして、通産省としての見解通産省としての法律、そういうものは別に提案しているわけではございませず、先ほどから申し上げますように、与党の重大な政調会で預かって検討すると言っておるわけでございまして、それを待っておる次第でございます。
  52. 藤森昭一

    ○藤森政府委員 お答えを申し上げます。  環境アセスメント法の政府の案は、昨年五月に関係省庁の慎重な調整、検討を経てまとまっておるわけでございます。私どもは、この法案によりまして、適切かつ円滑な環境影響評価ができるというふうに考えておるものでございます。  現在の扱いは、通産大臣お答えのとおり、自民党の政調会において検討されるという段階でございます。私ども、できるだけ速やかにその御了承を得て提案をしたい、かように考えている次第でございます。
  53. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 時間がありませんので、私の方から意見を提示して、この問題に対する質問を終わりたいと思うわけです。  たとえば東京都の条例と比較いたしましても、アセスメントの対象範囲を、現在環境庁が準備しつつあるものはいわゆる典型七公害と言われるものに限定されておりますけれども、東京都で言えば、日照、文化的な環境、電波障害、こういうようなところまで枠を広げておると思うのですが、本来のアセスの性格からいって、やはりその対象範囲というものはそういうふうに拡大することが必要ではないか。あるいは公聴会についても、いま政府の方で準備しつつあるものは、公聴会を開くということについて義務づけてはない。しかし、美濃部案よりも後退したという東京都の現条例でも、公聴会は必ず開かなければならぬ、こういうふうに半ば義務づけをいたしておりますし、あるいは意見書の提出の範囲についても、かなり広い範囲にわたっての意見提出ができる。あるいは審議会の設置についても、現在政府の方で準備しつつあるものは、学者、専門家を含めての審議会の設置というものが削除されておるやに私は理解しておるわけでありますが、こういうものは当然のこととして、法案を出す以上はそういう条件をきちっと入れて、整備した形で提案をされるべきではないか、私は、ぜひそうすべきだということを強く要望いたしておきたいと思います。  最後に一つだけ通産大臣に、これまた要望を申し上げてお答えをいただきたいのですが、いわゆる国鉄再建法、地域の赤字ローカル線の問題について、政府は、来月の三日ごろ閣議で政令を決定する、こういうふうに聞いておるのですが、これはもう下手に閣議決定をやって政令をつくると抜き差しならなくなるのではないか。産業政策の観点から言えば、産炭地等を中心にして地域経済に重大な影響を与えるようなことにもなる地域がたくさんあると思います。私どもかねがね承知いたしておる範囲では、やはり地域経済に及ぼす影響等を勘案して、いま一つの試案らしきものが出ておることに対しては、田中通産大臣はかなり批判的な立場で検討をされておるやに聞いておるのですけれども、余り拙速主義で、来月の三日だったら三日にそういう政令をつくるというようなことについてはブレーキをかけてもらいたい。むしろいま少し時間をかけて、地域のそれぞれの関係住民あるいは県段階においても納得し得るような政令をつくるべきではないかと思うのですが、そういう努力をされることを要望いたしまして、できれば大臣の所見を伺って、質問を終わりたいと思います。
  54. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 藤田委員指摘のように、この問題はやはり地方の公益経済と申しますか、あらゆる実情に沿った考えを基盤として決めるべきでございまして、たとえば産炭地の場合でも、産炭地振興法というのをいま十年延長をお願いしているわけでございます。振興法案は、やはり地方の実情に沿った振興をしなければいけません。その中で交通網、鉄道というのは大きな要素にもなりますし、私は、従来からそれぞれの地方の実情に応じた、実情に沿った判断並びに基準でやるべきだという考えでおりますし、現在もそうですし、将来もそのような希望には変わりなく、そういう観点からこの問題に取り組んでいきたいというふうに思っております。
  55. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 終わります。(拍手)
  56. 野中英二

    野中委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十四分開議
  57. 野中英二

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。北側義一君。
  58. 北側義一

    ○北側委員 私は、ただいまより、経済見通しの問題、それから中小企業対策、また貿易摩擦の問題、またイラン石化の問題等非常に数が多いわけでありますが、できるだけやってまいりたい、こう考えております。  まず河本経済企画庁長官にお尋ねいたしますが、先般の当商工委員会におきまして、昭和五十六年度経済運営基本的な態度について、物価の安定を図り、民間設備投資個人消費など民需を中心とした景気の着実な拡大を図っていく、このようにお述べになっておられるわけであります。経済成長は名目で九・一%程度、実質五・三%、卸売物価は四・一%程度消費者物価は五・五%程度、このような上昇を見込まれておられるわけであります。  私、これから後ずっと質問でお伺いしますが、その現実、非常にむずかしい面も多々あるのではないか、このように私は考えておるわけでありますが、この実現へ向けての長官の決意をお伺いしたいと思います。
  59. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十六年度経済見通しにつきましては、いまお述べになりました数字のとおりであります。現在の経済情勢は、それを実現するためにむずかしい条件のもとにあるのではないか、こういうお話であります。  いま世界経済全体が激動期でございますので、常に大きな変化がございますが、日本経済も、いまお述べになりましたように相当落ち込んでおります。したがいまして、このままほうっておけば、私は政府経済見通しを実現するのに相当むずかしい面も出てくるのではないか、こう思います。そういうことで、これからも経済の変化に即応いたしまして機動的な経済運営をしていくことが必要だ、こう思っておりますので、三月の上旬にはいろいろな経済指標が集まりますので、その指標を見た上で、関係各省とその対応策についてよく相談をしたい、機敏に対応できるような相談をしていきたい、こう思っております。
  60. 北側義一

    ○北側委員 私の知る範囲では、今回のいわゆる経済の成長五・三%のこの見通しについては、先般来ここで大臣が各委員とのやりとりの中で述べておられますとおり、民間需要の伸びに大きく期待をなさっておられるわけです。中でも、その寄与度二・五%と、約半分を占めるのは個人消費、また同じく寄与度一・三%の民間設備の投資、このようにいわゆる寄与度、個人消費民間設備投資、これで実現を図っていこう、このようなお考えのようでありますが、その期待する個人消費四・九%の伸びの根拠、これは名目個人消費支出伸び消費者物価鎮静化にあることは論を待つまでもないと私は思うのです。  そこで、先般の予算委員会で、あの総括質問の中でわが党の矢野書記長の質問にもありましたとおり、五十六年度消費者物価見通し五・五%の数字というのは、五十五年度消費者物価上昇率影響がこれを大きく左右するわけです。そこで、この経済見通しをつくられた時点での五十五年度消費者物価上昇率を何%で見ておられたのか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  61. 井川博

    ○井川政府委員 五十六年度経済見通しにつきましては、昨年の十二月に一応閣議了解というかっこうで予算の基礎としての数字を出したわけでございますが、最終的には一月に閣議決定をしているわけでございます。  この段階で、そのときの経済情勢全般をいろいろ検討した結果、五十五年度については四・八%、大体当初見通しでいけるし、それから来年度については五・三%、十二月に立てた計画のベースでいける、そして物価については七%程度、五十六年度については五・五%が実現できるという判断をいたしたわけでございまして、われわれといたしましては、そのときのいろいろな各種経済情勢は大きく変わった点はない。もちろん先ほど大臣から申し上げましたように、五・三%については努力をしてやっていくという面がいろいろあるわけでございますが、これは当然経済政策経済運営として考えるべき事項でございまして、われわれとしては現段階、それで大きく左右されることはないというふうに考えておるわけでございます。
  62. 北側義一

    ○北側委員 この経済見通しを作成されて閣議決定された、それが閣議決定された時点がたしか十二月の二十日、このように私は記憶しておるわけです。そうしますと、その前にすでにこの経済見通しというものはもうつくられておったものですね。閣議決定の直前に決めたというわけではないと思うのですよ。だから、その時点での消費者物価のこれからの動向というものが、いわゆる昭和五十六年度消費者物価の動向に影響してくるんではないか、このように私は見ておるわけなんです。  と申しますのは、やはり今回の実質成長五・三%というのは非常に民需に頼っておる、しかも個人消費にその半分近くを頼っておるということになりますと、これが達成されるされないということは、すなわち個人消費がどこまで伸びるか、こういう点で非常に大きな誤差が出てくるのではないか。そういう面で、私、ただいま数字をお聞きしたわけです。どうでしょうか。
  63. 井川博

    ○井川政府委員 おっしゃるように、十二月の二十日に閣議了解を出します以前に作業をいたしたということは事実でございます。その後、予算内容も明確になりますので、そういう内容を入れ、かつまたそのとき以降の状況の変化があるかどうか、それによって変更を加えるべきかどうかを検討した上、一月の二十六日に、少なくとも成長率ないし物価について、そのとおりでいいという判断から出したわけでございます。  それから、ただいまの先生のお話で、物価についてその後状況が違うのかというふうなお話がございました。七%についてはいろいろ議論のあるところでございますが、来年度はそれによって影響を受けるのかという問題があるわけでございます。恐らくそういう点について質問をされていると思うのでございますが、実はわれわれの経済計画におきましては、来年度における物価上昇率を幾らに見るかというのが五十六年度経済成長に非常に大きく影響してくる、その中で最も大きく物価上昇、特に消費者物価上昇影響を受けますのが個人消費ということでございます。  この五・五%につきましては、一月二十六日の閣議決定の段階でも現段階でも、五十六年度物価上昇率五・五%は可能である、こういう前提に立っているわけでございまして、われわれといたしましては、現段階でもその考え方は変わらないわけでございます。
  64. 北側義一

    ○北側委員 いまお答えがあったわけでありますが、河本長官も五十四年度並みの、いわゆる何といいましょうか、内需個人消費、これを期待したいというようなことを、先般ここで御答弁なさっておられたわけです。  私は、少し調べてみましたところが、やはり消費者物価の安定というのは、これは当然そういう安定があってこそ初めて購買力が出てきて、庶民の財布のひもが緩んでいく、そうしてそこで個人消費が出てくる。こういう状況から考えますと、大体昭和五十三年度消費者物価上昇率が三・四%、実質個人消費が五・六%増になっておるのです。そうして五十四年が消費者物価上昇率が四・八、実質個人消費が五・〇の増、こうなっておるわけですね。  このように見てまいりますと、この五十三年、五十四年にしましても、消費者物価が現在に比べますと三・四なり四・八と非常に安定しておるわけです。そうして実質消費が、五十三年が五・六とか五十四年が五・〇とか、こう増加してきておるわけです。このように消費者物価上昇が非常に抑えられて初めて実質個人消費が上がってきておる。五・五といういわゆる実質個人消費を出していこうとしますと、やはりかなり消費者物価上昇率を抑えなければならない、私はそう見るわけです。その点どうなのか。これが一つです。  それともう一つは、やはりこの五十三年、五十四年当時を考えてみますと、耐久消費財が買いかえの時期に来ておったのではないか、このように思われるわけです。それといま一つは、生産活動が非常に活発であった。なお、所定外労働収入、いわゆる残業時間が比較的回復しておって、それによって世帯の収入が非常にふえておった、こういう外的な要因もあるのではないか。それが五十三年なり五十四年の実態となって、数字となってあらわれてきておるのではないか。  そういう点を考えますと、今回どうなんだろうかというような、そういう不安感といいましょうか、それを私は持っておるわけなんですが、それに対してはどうでしょうか。
  65. 井川博

    ○井川政府委員 いまおっしゃいましたように、五十五年度は実質民間消費は二%と大変低くなっている。これに対しまして五十四年度は五%、それからさらにその前の五十三年度は六・二%と、非常に実質で高い伸びを示しているわけでございますが、五十六年度、来年度につきましては、これを、そこまでには至らないけれども、ほぼ近い数字としての四・九%を掲げているわけでございます。  いま先生は、そのときの物価上昇率、たとえば五十四年については四・八%という数字で初めて実質五%という消費ができたではないか、今度は五・五だからそこまで行けないのではないか、こういう理論かと思います。  しかし、実はもう一つそこに個人の消費性向という問題がございまして、御承知のように第一次オイルショックによって個人消費、消費性向というものがぐんと低くなっておったわけであります。これが順次年を経るに従いと申しますか、落ちついてくるに従って消費性向が上がっておった。それで五十四年につきましては、これはあくまでGNPベースの消費性向でございますが、これが八一・五まで上がったわけでございますけれども、この五十五年度物価が相当程度上がった、しかも四月から十二月までの間八%を超す物価上昇が続いたというふうなことがございまして、五十五年度につきましては消費性向が一ポイントほど落ちたというふうに考えられます。となりますと、八一・五が八〇・五に落ちるわけでございますが、これが、先ほど申しましたように、五十六年度物価が五・五%、少なくとも五%台になりますと個人の消費マインドというのは平生に返る、平生に返るとなりますと前々年の八一・五という消費性向も無理でない、こういう考え方を持っているわけでございます。  したがいまして、消費者物価上昇率によって影響は受けますが、四・八だから五にいった、五・五だと四・九は無理だ、そういうふうなきわめて一義的な考え方だけではなくて、そこには、上がっていたものが落ちついてきた、こういう考え方が消費者のマインドとして明るくなっていく、こういう面があるわけでございまして、われわれといたしましては、五十六年度民間消費四・九といいますものは、先ほど大臣から答えられました、要するに経済運営よろしきを得て明るい経済として上向いていく限り大丈夫である、こういうふうに考えているわけでございます。
  66. 北側義一

    ○北側委員 なるほど、おっしゃることもよくわかるわけです。よくわかるわけですが、この数字としては、私、一例として一応挙げたわけですが、これから先消費者マインドが必ずよくなるか、これは私としては、そう急激に庶民が財布のひもを緩めていくとはとれないんです。それは、後ずっといろいろな状況をまたやっていきますが、そういう点から申し上げたわけです。  それと、先ほど答弁なかったわけですが、たとえば所定外の労働時間、これがこの当時非常に多かった、このように私の調べではなっておるわけです。たとえば製造業の所定外労働時間は、五十三年度が七・四%増、五十四年度が一四・二%増、このように大幅にふえておるわけです。そういう点、残業時間、いわゆる所定外労働時間が多ければ収入がそれだけ多いわけですから、多ければそれだけ財布のひもが緩くなる、これは道理だろうと思うのですが、果たしてそういう所定外労働時間がこの昭和五十六年度出てくるだろうか、こういう疑問があるわけです。それについてはどういうふうにお考えですか。
  67. 井川博

    ○井川政府委員 結局、所定外労働時間ということになりますと、鉱工業生産が非常に活況を呈するということが前提になるわけでございます。先生おっしゃっておりますのは、現段階、非常に鉱工業生産がどちらかといえば渋みがちであるというふうな点が前提になっているわけでございます。  それで、きのう通産省から発表されました鉱工業生産、十二月が対前年同月比で三・九とわれわれは承知をしているわけでございますが、昨年の初めのころには一〇%を超えるほど好況を呈しておりましたのが、このところ非常に低い率になっている。  しかし、こういう状況で推移していっては困るわけでございまして、われわれといたしましては、もう少し活況を呈して、経済全体も安定成長路線に乗ることが必要である。四・八というGNPが五・三にならなくちゃいけないし、特に五十五年度が、どちらかといえば外需依存型でございましたのが来年は内需依存型でやらなくちゃならない、こういう考え方をとっているわけでございます。そして、その場合の鉱工業生産でございますけれども、五十五年につきましては年度前半である程度高かったわけでございますが、後半、先ほども申し述べたような現状非常に低いベースでございますので、対前年の伸び率が鉱工業生産は四・五でございますが、来年度見通しにおきましては、鉱工業生産の伸びを五・三と見ております。ことしの四・五というのも前半、特に春内が非常に高かったということが中に含まっての四・五でございまして、来年度はこれが五・三になるということになりますと、ことしよりは鉱工業生産は活況を呈するということを前提にいたしてございます。したがって、時間外がどれだけふえるかという計算は実はわれわれはいたしておりませんけれども、御案内のように、一人当たり雇用者所得といたしましては、五十五年度見込み七・三に対しまして来年度は七・五とふえていく、雇用者所得としてふえていく、こういう前提を置いているわけでございます。
  68. 北側義一

    ○北側委員 鉱工業生産においてそのような見方をなさっておられる、これは一つの見方であろうと思うのです。  私、それ以外にも、先ほど少し申しましたとおり耐久消費財、たとえば自動車を一例にとって調べてみたのです。そうしますと、自動車の新車規定届け出台数、これが昭和五十五年四月から十二月まで対前月比でずっと調べますと、九カ月間連続マイナスになっておるのですね。ところが、五十三年とか五十四年のこれを見ますと増になっておるのですね。そんなのがここへ来て急激にふえていくという考え方、どうもそういう工業生産等の数字で出されると、私もそっちの方は余り勉強しておりませんのでわかりませんが、しかし、私たち一般の者の考え方としては、なかなかおっしゃるようなぐあいにはいかないんじゃないか。というのは、こういうようないろいろな例をとって調べてみたところが、そのような結論が私の方には出てくるわけなんです。こういう論議をここでやってもいたし方ないかもわかりませんが、しかし、内需を一つの主要なテーマ、柱として景気回復、いわゆる五・三%の成長を図ろうという以上は、やはり確固たる自信がなければだめじゃないかと思うのです。その点で、これなんかどうお考えになりますか。
  69. 井川博

    ○井川政府委員 自動車の国内伸びでございますけれども、この点は専門家通産省、こちらにいらっしゃいますし、私も詳しく分析したわけではございません。先生御承知のように、われわれの来年度見通しというのはきわめてマクロ的な分析をするわけでございまして、個々のそういう品目、業種にわたってやるわけではございません。ただ自動車につきましては、実は販売登録台数は昨年、非常に前年に比べてマイナスがずっと続いてきた、かつまたそのマイナスの幅が一〇%を超すという月がこのところ続いている、こういう状況でございまして、自動車に関しましては、五十五年度新規登録台数という面から見ますと、国内は大変湿った状況で推移をしたということになっております。  ただ、伝え聞くところによりますと、その対前年のマイナスもこのところへ参りまして、たとえば十二月はマイナス六・五、一月はマイナス五・五、実はその前の十一月は一五・九、十月は一〇・八とマイナスがきわめて大きかったわけでございますが、マイナスが一けたになっている。そして、メーカーないしディーラーの言によりますと、国内についてはこのマイナスを逐次低くし、かつまたプラスにしていくというふうなかっこうで相当期待しているという声も聞いております。ただ、期待どおりいくかどうかというのは経済全体の明るさ、それから先ほど先生もおっしゃいましたような、それぞれの消費者が財布のひもをどの程度あけるか、こういう状況によるわけでございます。  それで、財布のひもの問題でございますけれども、やはり物価が八%台というのと五%台というのでは、相当程度違ってくる。現に先生も御承知のように、いろいろな新聞で、高くなった、それならば締めるか、賢明なる消費者の態度としてそういうやり方をとってきた、こういうことがよく言われることでございます。そういたしますと、高くなったが、物価鎮静化をしてくるということになれば正常な消費活動に返るというふうに考えていいのではないか、私たちはこう判断しておるわけでございます。
  70. 北側義一

    ○北側委員 この問題は、余り論議しておりますと時間がなくなりそうですから。しかし、たとえば製造業の所定外労働時間の問題にしましても、調べたら、五十五年六月から十二月までずっと連続七カ月間マイナスになっていますね。なるほど一時物価が上がって安定してきたので、そこで財布のひもが緩んで、少し消費の方向へ向いてくるだろう、そういう見方は確かにあるでしょうね。私もあると思います。しかし、こういう傾向を見ておりますと、国民が非常に賢明になってきておるということですね。そうして、そう簡単にはいままでのように、何でもかんでも物価が安定しているから買うかというと、私はそういう傾向にはないと思うのです。むしろ、どうしても必要なものだけ買っていくというような、そういう消費傾向になってきておるのではないか、こういう見方を私はしているわけなんです。そういう点で、いわゆる所定外労働時間とか、たとえば耐久消費財の消費の状況とか、私、調べてみたわけなんです。いま申し上げたようなことなんです。これはもうお答え結構です、これをやりますとまた時間がたちますので。  それと、個人消費が四・九%伸びるのには、当然そこで名目個人消費支出伸びなければならないと思うのですが、昭和五十一年度から五十五年度における実績及び実績見込みの名目個人消費支出伸び率、これを見てみますと、だんだん鈍化しておりますね。  たとえば名目GNPベースで対前年伸び率を見ますと、五十一年度民間最終消費支出が九十九兆七千億円、対前年比の伸び率が一三・二%、五十二年が百十兆二千億、対前年の伸びが一〇・五、五十三年が百二十一兆二千七百億、対前年比伸び率が一〇・一、五十四年の民間最終消費支出が百三十二兆二千億、対前年度伸び率が九・一、五十五年が百四十三兆一千億、対前年度伸び率が八・二、このように年々伸び率がずっと落ちてきているわけですよ。  このように見てまいりますと、五十五年から五十一年を見ますと、伸び率が約五%落ちておるのです。どうもこういう数字を見ますと、いわゆる個人消費それ自体が、私が先ほどちょっと申し上げましたとおり、だんだん飽和状態になってきておるのではないか、こういう見方もできるのではないか、私はこう見ておるわけなんです。その点どうなんでしょうか。
  71. 井川博

    ○井川政府委員 いま先生がお述べになりました数字は、コンマ以下が多少違っている点がございますが、大体そういう数字になっておるわけでございます。  ただ、この名目で議論をいたしますと、たとえば第一次石油ショック後の狂乱と言われた物価の時代でございますと、さらに伸び率は高うございまして、四十八年は二〇・四、四十九年は二二・三というようなべらぼうな数値を示すわけでございます。したがいまして、先ほどから先生もそういう議論をされておりますが、実質二%で、来年五十六年度が四・九、要するに物価上昇を差し引いた実質で議論をしていかなくちゃならない。と申しますのは、消費の実質の伸びとそれから物価というものを掛け合わせたものが名目になるわけでございますから、したがって、やはり物価を差し引いた実質で議論していただきますと、先ほども申し上げましたように、五十三年は実質で六・二、五十四年は五・〇、これに対してことしは物価上昇というふうなこともあって、消費者の財布のひもが締まって二%、ただし来年度経済全体を明るくしていく五・三%という前提をいたしますれば、四・九程度伸びは期待できる、こういう考え方をとっておるわけでございます。
  72. 北側義一

    ○北側委員 当然、名目的な数字ではそれはわからないでしょうが、一応の名目でも、年度別にずっと見てみますと、このような傾向になっておるということを私は申し上げたわけです。  そこで次に、いわゆる民間設備投資に対してもやはり大きく期待をなさっておられるわけであります。民間需要の一つの柱である政府見通し七・三%、このように見込まれておるわけですが、経済企画庁は、設備更新期であるから設備投資は安定しておる、このように先ほど来おっしゃっておるとよく似たようなことをおっしゃっておられるわけです。なるほど、設備をいままでしないでしんぼうしておった。ここへ来て設備の更新投資としてやら、省エネ対策やら、また技術革新投資、こういう動機は当然あろうと私は思うのです。あろうかと思うのですが、一方では御承知のとおり、法人税の税率の引き上げとか高金利、こういうぐあいに税制、金融両面からブレーキがかけられておるわけです。後から中小企業問題も触れてまいりますが、特に中小企業においては、最近の倒産件数等増加を見ておりますと、設備投資、果たしてそれだけの余力が中小企業にあるのかどうか、ここらも私、非常に疑問に思っておるのですが、これについてはどうでしょうか。
  73. 井川博

    ○井川政府委員 来年度設備投資につきましては実質七・三%、それから今年度の実績見込みは五・一%と見ております。  先ほどから個人消費で名目の話が出ておりますが、この場合の名目を申し上げますと、五十六年度が一〇・七、それから五十五年度が一〇・一、いわば名目でいいますと伸び率は余り変わらないわけでございます。しかし、実はその中身に少し相違がございまして、五十五年度につきましては、これは先生御承知のように、大企業設備投資意欲はきわめて強く、また現実にその投資をしてきている。対前年にいたしまして二〇%を超える投資をいたしておるわけでございますけれども中小企業につきましては、特に年度後半からは設備投資を対前年でマイナスというかっこうで推移をしておるという状況でございます。そういう状況から、大企業設備投資は高うございますけれども、名目で一〇・一、実質にいたしますと、物価関係があって五・一となったわけでございますが、来年度考え方といたしましては、大企業相変わらず投資意欲は強い。しかしながら、このところ非常に高い伸び率でまいっておりますので、来年度についても二〇%を超すというふうな伸び率は期待できない。それはある程度もう少し低い考え方をせざるを得ない。他面、中小企業につきましては、今年度特に後半、対前年マイナスというふうな状況でございますけれども、こういう状況を続けておっては、日本経済のバイタリティーの源泉でございますのでいけない。それで、経済政策運営よろしきを得て中小企業設備投資を平年並みぐらいに戻してくる、こういうことを考えざるを得ない。したがって、来年度については、今年度に対して設備投資伸び率をプラスで考えていく。その両面をあわせまして、結果的に、先ほど申し上げました名目では両年度一〇%台の伸びでございますけれども、実質に直しますと、五十五年度の五・一に対して七・三ということでございます。  中小企業でそんなに伸びるのかというお話がございます。これはまた後で通産省の方からのお答えもあろうかと思いますが、実は、先般、通産省中小企業庁の方で中小企業のアンケート調査をやっていただいたデータを拝見いたしまして、われわれ経済企画庁としても、ややほっとしている面があるわけでございます。何となれば、アンケートの中で、設備投資を現在見合わせているというのが四七%と聞いておるわけでございます。現在見合わせておるというのは、やりたいけれども理由があっていまはやめているんだ、こういうことでございまして、その次の調査項目に、それでは何で見合わせているのかというと、景気の先行き見通し難であるとかあるいは売り上げ不振もございますが、その中に、金利が高過ぎるというふうな面があるわけでございます。われわれは、五十六年度経済経済運営よろしきを得て明るくしていくというふうなことによって、中小企業設備投資は、意欲的にはあるわけでございますから、われわれの見通し程度の数値は十分可能性があるというふうに考えているわけでございます。
  74. 北側義一

    ○北側委員 ただいまの答弁で、私たち聞いておりますと、そんなに調子よくいくのかなという感じを受ける。見合わせておる四七%、こう言っておられますが、見合わすということは、四七まるまるやらないでも別におかしくないのですよね。だから、いま私がしている論議はこれは五十六年度に対しての論議ですから、二年先、三年先を考えておるのかもわかりませんし、それとまた、見合わすというのは、変な話になって恐縮なんですが、公定歩合が下がったときに、その時点で、次にいつ下げるとかこういうことは余り発言なさらぬ方がいいと思うのです。両大臣にこれはぜひともお願いしたいと思うのです。やはり中小企業の方は、私にこう言っております。まだ下がるからもうしばらく待とうか、こういう声が私に返ってくるのです。先生、いつごろ下がりましょうか。私にわかる道理がないのですがね。余りそういうことは言わない方がいいんじゃないかと思うのです。今度は早くやってもらいたいと思うのです。  そこで、いまいろいろお話があったわけですが、先ほどの同じ中小企業庁の調査でいろいろな答えが出てきたわけです。倒産件数は、御存じのとおり、この一月もかつてないような倒産件数を出しておりますし、また二月も恐らく五十二年度の千三百六十四件を上回るのではないかというような声も出ておるわけですね。また、この間の中小企業庁の調査では、この一-三月期は前期よりも売り上げ高が悪い、このように答えている人が全体の四三・七%、こう上っておるというのですね。そのほか、全国信用保証協会連合会の資料、これによりますと、信用保証協会が倒産などで返済できなくなった中小企業に肩がわりして支払ういわゆる代位弁済、この状況が昨年の一月から十月の十カ月間において、月平均の金額ベースで前年に比べて約七・二%ふえておる、こういう状況です。  このような状況を私ずっと見ておりますと、中小企業の経営状態というのは非常に悪いのじゃないか、悪いのが私たちの見た実態の姿ではなかろうか、このように考えておるのです。そういう中小企業に、果たしていまお述べになったような高い伸び率が出てくるのかどうか。中小企業設備投資が果たしてそれだけ出てくるかどうか。これはどうしても私、信じられないわけです。  それと、いま中小企業庁がお調べになった実態、そういう実態でございますので、中小企業現状から見て、私は、この三月の決算期、これが非常に倒産件数がふえてくるのではないか、こういう見方をしておるわけでありますが、それに対しての何らかの対策中小企業庁と通産省で考えておられるのかどうか、それをあわせてお伺いしたいと思うのです。
  75. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  先行きの見通しでございますが、中小企業は御存じのように大変景気に敏感でございまして、景況の先行きがいいとなりますと非常に小回りのきいた投資も行われるわけでございますが、いまのところは、先ほど来御議論がございましたように、大変気迷い状態でございます。特に昨今は、金利がいつ下がるだろうかという期待感がございまして低迷をいたしております。しかし、これも、ある局面で景気対策が打たれますと、それによりまして非常にはずみがついて、本来の潜在的な設備投資需要というものが強く出てくるということを私どもも期待しておるわけでございます。  それから第二の御指摘の点でございますが、いわゆる倒産対策でございます。これもいつも議論されることでございますが、倒産というものは、各企業経営にとりまして信用が一番生命線でございますので、事前にというのがなかなかこれが感知されないわけでございます。これに対する事前対策というのもまた、したがいまして非常にむずかしい対応になってまいります。したがいまして、一般的な対策といたしましては、金融を円滑に流していくあるいは信用保証の面でネックが出ないようにやっていくという総括的な対応をとっていくしか手がございません。たとえて申しますと、昭和五十五年度の第四・四半期、これは一-三月でございますが、これにつきましては、政府三機関の貸し出しを一兆一千二百三十億ということで、対前年度比で申しますと四〇%伸ばしておりまして、借り入れ申し込みが幾ら殺到しても、ほぼそれにこたえられるというような万全の体制をとっておる次第でございます。  そのほか、一番昨今精力的に活動しておりますのは倒産防止特別相談室というものでございますが、これにつきましても、看板が倒産対策となりますと、そこの門がなかなかくぐりにくいというような問題もございまして、なるべく看板を掲げないで実際の仕事をやるという配慮をいたしております。それによりますと、昨年の四月から十二月までの間の相談件数が千百件超しておりますけれども、その中でほぼ倒産せずに再建ができたと申しましょうか、一応倒産が回避されたと申しますのが七百件程度ございました。したがいまして、これも実効をある程度上げておりますけれども、やはりそういった倒産対策というところへ出入りすること自身が相当慎重にならざるを得ませんので、どうしても実際の倒産が発生するという件数がまだ鎮静をいたしておりません。したがいまして、当面の中小企業対策はいわゆる景気対策であるという考え方に立ちまして私どもは万全を期してまいりたい、このように考えております。
  76. 北側義一

    ○北側委員 ちょっとあれですが、融資等の話も出ましたので、小企業等経営改善資金、いわゆるマル経資金ですね、このマル経資金について最近商工会議所の調べによりますと、国民金融公庫に対して商工会議所、商工会からの推薦件数が昨年の十月から十二月まで八万五千百件、金額で千七百十九億五千万、これを対前年比で調べてみますと、金額で四七・三%増になっておる。これは一つはやはり金利が安いということ、借りやすいということ、そういう点からこの金額が非常に大幅に伸びた。また、時節柄先行き不安でやはり運転資金を確保しておきたい、こういう零細な企業の考えによってこのように大幅に伸びたと思うのですが、この五十六年度予算で、貸付規模は五十五年で五千百億ですか、五十六年で二百億増しの五千三百億、こうなっておりますね。こういう人気があるといいましょうか、非常に貸し付けの件数が大幅にふえておる、こういう中で果たしてこの二百億ぐらいの増額でいいんだろうか、果たしてこれでいけるんだろうかという心配をしているわけです。  それとあわせて、三百五十万なんですね。そうしますと、金額はふえるわけですから、当然件数が減ってきますね。これは金額ベースで先ほどのは言っておるわけですけれども、いずれにしても、金額ベースにしても四七・三%ふえたというのは相当大幅に件数がふえておる、こう見なければならないと思うのです。もし、これのマル経資金の問題で、途中でこの金額では足らないというときには手当てできるのでしょうか。その点どうでしょうか。
  77. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  マル経資金は、最近申し込みが非常に殺到いたしております。昨年の上期は消化率が八〇%前後でございましたが、下期に入りまして九〇%を超しておりまして、ことしの枠でございます五千百億は、ほぼ年度末までの間に九〇%以上消化されるだろうという見込みでございます。  その原因でございますが、いまお話の中にございましたように、その原因は、ただ一つ金利が安いということでございます。したがいまして、金利が安ければ設備投資も出てくるという一つの象徴でもあるわけでございますけれども、現在の金利格差は、マル経が七・二に対しまして、中小公庫あるいは国民金融公庫の一般貸し付けの基準金利が八・八でございます。八・八対七・二あるいは七・三といったバランスのもとで、水の流れが低い方へたくさん流れていっているということでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、景気対策の前提といたしまして金利の何らかの改善がもし図られるとするならば、それはある程度いまの八・八対七・二のバランスが改善される。したがいまして、本来の姿であります、ある程度大口設備投資資金は中小公庫あるいは国金の一般貸し付けの方に参るわけでございまして、そういったことも総合的に勘案いたしますと、来年度予算の五千三百億円、ことしに対しましていわゆる二百億円増しということでほぼしのげるのではなかろうかという希望を私どもは持っております。これが御指摘のようにもし年度途中で金利志向がございまして、マル経資金がパンクしそうな場合には十分適切な措置を講じたい、このように考えております。
  78. 北側義一

    ○北側委員 それと、ついでにこの問題もお聞きしたいと思うのですが、中小企業、先ほど来ずっとお答えになり、また私が申し上げておるわけですが、決して状況はよくないというのが私たちの考え方です。  そこで、中小企業倒産原因で一番大きいのは売り上げ不振、資金繰りの問題。先ほど申しましたとおり、三月期の決算を迎えるに当たりまして、中小企業庁が五十六年度からスタートされる予定にしております中小企業体質強化資金を活用した倒産防止融資制度、これの繰り上げ実施に対する考え方、これはいま大蔵と折衝なさっておられるとお聞きしておるのですが、どうなんでしょうか。
  79. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、現在景気対策の一環として折衝中でございます。
  80. 北側義一

    ○北側委員 できるだけ早く、通産大臣もこの点よろしくお願いを申し上げます。  次に、このような中小企業の経営体質、いま特にこういう景気のかげりが深刻になっておるときですから、いわゆる下請企業が親企業から、たとえば製品の価格や代金の支払い等について圧力が加えられておるような件を私はたまたま耳にするわけです。なるほど法律では下請代金支払遅延等防止法、こういうものがありましても、なかなかこの法律を使って申請するというようなことができないわけです。というのは、後々のことがありますし、どうしても控え目になってしまう。そうして泣き寝入りをしてしまう。このようなことが多いわけですが、こういう時期でございますので、その対策を明確に、いままでも実施なさっておられるでしょうが、それ以上にやっていただきたい。これは私の希望なんですが、それについてどうでしょうか。
  81. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  かねがね一番零細中小企業対策で問題になりますのは下請関係でございまして、手形のサイト、それから現金比率という問題が典型的な問題でございますが、これにつきましては十分ウォッチをしておりまして、現在のところ手形期間が百十八日でございます。これは私どもの指導が、繊維が九十日、そのほかのものは百二十日以内という指導をいたしておりますが、ここのところ、大体七、八カ月前も百十八日でございましたが、この手形期間が特に悪化しているという象徴は現在のところ見られません。それから現金比率につきましても、特に最近公共工事が停滞しておりますので、この辺の金の流れ方がどうもよくないというので、特に建設関係につきまして昨年の九月十九日、それから最近の時点におきまして建設省と一緒になりまして、現金を末端に流すようにということを通達を出しまして指導をいたしております。  そういうことはやっておりますが、実際には御指摘のようになかなか中小企業者として訴えにくい面がございますので、私どもは現在きめの細かい監視体制をしいておりまして、特に下請代金の規制の面につきましては公正取引委員会と二人三脚で実施しておりますが、ことしは四万件の調査をもとにいたしまして、その後悪質なものについての立入検査あるいは措置請求というものも数件出しております。来年度につきましてもこれをさらに拡充するということで、現在のところ四万四千件に調査対象を引き上げようというように考えております。
  82. 北側義一

    ○北側委員 ひとつよろしくお願い申し上げます。  次に、景気浮揚への影響が非常に大きい、すそ野が大きいと言われる住宅投資についても非常に落ち込んでおるわけです。  先般来この問題はずっと討議されておるわけでありますが、五十五年一年間の新設住宅着工戸数が百二十六万八千五百九十八戸、対前年比が一五%減、こうなっておるわけです。これは昭和四十三年以来の低い水準になっておるわけですが、当然この原因というのはいろいろあるわけです。たとえば、ローンの返済が非常に厳しいとか、地価、建設資材が非常に高くなっておる。大体私たちの見るところでは、首都圏とか大阪、こういうところでは地価が非常に上がっておりますので、一般の住宅金融公庫あたりの三百二、三十万のクラスの所得の年収、それくらいの方ではとてもじゃないがもう手が出せないところまでいっておるのではないか、こう私は見ておるわけです。  そこで、首都圏でいま販売されておりますマンション、これの売れ残りの戸数が最近非常に急激に増加しております。たとえば五十五年の三月末、売れ残りマンションが三千五百五十一戸だったのが、五十五年の十二月末には同じく売れ残りマンションが一万八百七十二戸、これは不動産経済研究所の調べです。このように大幅にいわゆる売れ残りマンションが出ておる。また、それだけではなくして、売れ残る一つの原因である価格の面を見てみますと、昭和五十二年代が首都圏のマンションで大体一千六百万円台、五十三年が一千七百万円台、五十四年が一千九百万円台、五十五年が二千四百万円台、五十六年がこの一月ですと二千七百万円台、これは地価の上昇建設資材の急騰で少し規模がふえたのじゃないか、こう見ておるわけです。  しかし、いずれにしましてもこの五十六年度住宅投資、これはやはりずっと下降する可能性があるのじゃないかと私は思うのです。これに伴う住宅関連業界というのは非常に多いわけです。たとえば大阪の泉州あたりでは、カーペットの業界が全日本の大体六〇%をここで生産しております。しかし、この大手が倒産しておる、こういう実態なんです。そういう実態から見まして、果たして五十六年度住宅伸び率はこれだけ伸びるのか、これは私は非常に疑問に思っておるのですが、それに対してどのようにお考えでしょうか。
  83. 井川博

    ○井川政府委員 住宅に関しましては、現状は確かに先生おっしゃるように、きわめて停滞的な推移を示しておるわけでございます。十二月の新設着工戸数が九万九千戸、十万戸にほぼ近いかっこうになりましたが、しかし、たとえ十万戸にいたしましても、年率にいたしますと百二十万戸ベース、これが五十四年ですと百四十八万戸、その前の五十三年ですと百四十九万戸、それからその前はたしか百五十二万戸であったと思いますが、百五十万戸ベースでまいっておりましたのが、五十五年度急にがくんと落ちてきているわけでございます。先生言われましたように、地価の高騰という面がございますのと、それからもう一つは、物価上昇によりまして所得の実質の減という状況が続いている、そして住宅価格は上がる、その間の乖離が生じているというふうなことが原因と考えられます。  さらに、基本的、構造的な原因としては、従来のような世帯の伸びがこのところ見られない、それから持ち家比率が高まってまいりまして空き家率というのが非常に多くなってきているというような構造的要因、こういう長期、短期の要因が絡まってきていると思うわけでございます。  実は、われわれの五十六年度住宅投資も、新設着工戸数としてはそう極端なものを見込んでございません。百三十万戸前後というふうなことで、今年度が百二十数万戸、あるいはうまくいけば百三十万戸と言われておりますが、いまのベースでいきますと、先ほど先生がおっしゃいましたように非常に厳しいということで、百二十万戸台になるのじゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、来年度についても着工戸数の大幅な伸びは期待できない。ただし、建築価格等々はやはり非常に下がってくるというふうな面、それからさらには住宅ローンのもう一段の下げ、これは一回下げてはおりますけれども、まだ八・五二というふうな高い水準でございます。したがって、意欲を持っておりましても住宅ローンはちょっと高いなという感じも一部あろうか。そういうことも考えて、しかも戸数としては百三十万戸ちょぼちょぼ程度しか期待できないのではないか。ただ、毎年三、四%質的な改善、端的に言いますと建てる家の住宅規模が、面積がそれだけ広くなっているということがございますので、そういう点を勘案し、かつまた住宅建設のデフレーターが低くなっているというようなことを計算いたしまして来年度の建築を出したわけでございまして、その結果、五十六年度については実質四・三%増程度は期待できるということでございます。
  84. 北側義一

    ○北側委員 言われることは間違ってはいないのですけれども、私は思いますのに、たとえばいまは局長がおっしゃるようなそんな甘い状況じゃないですよ。ということは、五十四、五十五ぐらいになりますと、価格の上がり方がひど過ぎるのです。五十四年で大体一千九百万台のマンションが、五十五年で二千四百万、五十六年一月で二千七百万です。ローンの少々、一%が影響がないとは言いませんよ。しかし、そんな見方では、私は非常に甘いと思いますね。  だから、私は、この問題につきましてはぜひとも両大臣に、まあこの問題は直接関係ないでしょうが、しかし、経済閣僚としての大御所であるお二人にぜひともお願い申し上げたいことは、やはりこれは国民生活の基盤でもありますし、また経済活動の基盤でもあるわけです。土地問題とかまた住宅建設、こういうものについて国土や建設だけに任せておいては、これはどうにもならない時期が来ておるのではないかと思うのです。この問題はぜひとも一遍政府で取り上げていただきたいと思うのです。そうして抜本的な、たとえば地価対策なり住宅建設の方法なり手段を講ずべきときが来ているのではないか、こういう考えを私は持っておるのです。これはやはり大きくすそ野が広い。住宅建設の場合ですと中小企業影響し、その中小企業倒産がいま一番多いわけです。そういう面から見ましても、両大臣にこの問題についてはひとつ政府内で何とか対処してもらいたい、こう私は考えておるのですが、お答えできたらひとつしていただきたいと思います。
  85. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまの景気の状態はある意味住宅不況だ、こういうことが言えると思います。一年の間に計画が三十万戸も落ち込むということはまさに恐慌的な状態である、こう私は認識をしております。住宅関連のいろいろな業界に聞いてみましても、大半の企業が経営不振に陥って非常に困った状態になっておる、こういうことがわかります。  原因は、御承知のように、背景にあります土地問題、それから住宅金利が非常に高いということ、それから所得の伸びが低いということ、それから建設費そのものも若干上がっておるのではないか、こう思いますが、いろいろな要素が背景にございまして現在のような恐慌状態になっておるわけでありますから、これはなかなか急には解決いたしません。やはりその背景にある原因を全部解きほぐしていきませんと解決できないのでございますが、特に土地問題につきましては、政府といたしましても抜本的に取り組んでいく必要があるのではないか、いまのような状態では経済運営に非常に支障を来しますので、私もこの点は非常に大きな関心を持っておりますので、政府全体として取り上げていくことが必要であろう、こう思います。
  86. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 ただいま企画庁の河本長官が答えたと全く同様でございます。中小企業倒産が多い、それの大きな分類をいたしますと、中小企業関係建設業者が非常に多いということも資料にあらわれております。したがって、これに関連する土地政策あるいは住宅建設のいろいろな諸要素につきまして十分対策を講じなければならないというふうに思っておりますし、来年度経済成長率五・三%を達成するためにも、日本の全体の製造業の半分ちょっと上を占めておる中小企業者の振興が行われてこそ成長率の目的も達成できるというふうに私は考えておりますので、関係閣僚相談して万全を期したいと思っております。
  87. 北側義一

    ○北側委員 この点、ぜひともよろしく閣僚間で、政府部内で解決のめどだけでも、足がかりだけでもひとつつくっていただきたいと思うのです。  それと、最後ですが、経済見通しで、きょうの新聞を見ますと、第二次総合経済対策原案経済企画庁の方でまとめられて発表されておるわけです。当然これは各方面とのこれからの調整が残されておるわけでありますが、その原案の骨子だけで結構ですから、それをお伺いしたいということ。  それといま一つは、たしか二月二十五日ごろの新聞だったと思うのですが、大蔵大臣が「まだ景気対策をやると決めたわけではない」、このようなことをおっしゃっておられるわけです。私は、いままでるる述べてまいりましたとおり、決して景気対策をやらないで、このままいって実質成長五・三%、これは絶対不可能だ、そう信じております。そのようなことで、私は当然景気対策はやるべきである、こういう考えを持っておるわけですが、これはどのように調整なさるのか、また原案の骨子だけで結構ですから、お伺いしたいと思います。
  88. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済状態が相当落ち込んでおりますので、何らかの対策は必要だ、こう考えております。ただ、いろいろな経済指標が三月の上旬に出てまいりますので、それを見た上で関係各省の間で具体的な案件について相談をしたい、こう思っております。  最近いろいろなことが伝えられておりますけれども、まだ具体的に固まったわけではございませんで、事務的にいろいろ事前の折衝をしておる、こういう段階でございます。
  89. 北側義一

    ○北側委員 この問題はまだ調整前ですから、ここでいろいろお答えになるわけにいかないので、私も引っ込んでおきましょう。  次に、時間がないので急いでまいりますが、自動車輸出問題についてまずお伺いしたいと思うのです。  けさほどの答弁を聞いておりますと、田中通産大臣鈴木総理から、総理が訪米なさるまでには日米自動車摩擦の問題については解決するように、このような内意を受けておる、このようなお話があったわけであります。当初この問題につきましては、たしか自動車摩擦は政治問題化させないという基本方針があったと思うのですが、最近の事情等を見ておりますと、だんだん政治問題化してきておるように受け取れるわけです。それで、これの解決についての通産大臣の頭の中に描いておられるスケジュールといいましょうか、もしありましたらひとつお答え願いたいと思うのです。
  90. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 経済摩擦、具体的には自動車、ほかの品目もございますけれども自動車が主として大きな原因になっているわけでございます。アメリカの例を引きますと、いずれにしても日本の自動車の輸出は年間百八十万台ぐらいあるわけでございまして、これを減らしてくれということが陰に陽にあるわけです。それから、アメリカの方ではダンフォース、ベンツェン上院議員やそういう人たちがいま上院に出して、自動車の摩擦を避けるためにこれを三年間、数も挙げてやっておるわけでございますけれども、私は、ちょっといま頭の中にくるくるとなっているのは、交渉前にいろいろなことを言ったらどうかということがございまして、どの程度どういうふうに言ったらいいかと思っておるわけでございますけれども、向こうがタスクフォース、それからその後の上院議員の提出しておる諸問題、そういうものがもうすぐ次々に出るわけでございます。したがって、それが出て日本側の態度を検討した方が、より具体的に分析できるというふうに思われますので、いま手のうちをいろいろ言った場合どうなるかというふうに思われますので、非常に恐縮でございますけれども、ただ言えることは、私ども昨年の暦年の第四・四半期においては四十六万台を一万台下げるというようなこと、それからことしの一-三月を四十五万台以下に抑えるというようなことをすでに発表してきておりますけれども、そういうふうにできるだけ輸出を抑えるという方針で取り組んでいこうというふうに思っております。
  91. 北側義一

    ○北側委員 大臣おっしゃるとおり、ここであけすけに全部おっしゃるというわけになかなかいかないと思うのです。  しかし、私としての意見をここで少し述べておきたいと思うのですが、そういう期間を区切って輸出を減らしていく、そういう方法で解決できたらこれは一番いいと思うのです。しかし、新聞報道等をいろいろ見ておりますと、なかなかそういう状況でもないようでございます。たとえば、やはりこれも新聞に報道されておったわけでありますが、ブロック通商代表が米議会の上下両院経済合同委員会で米自動車産業再建対策について答弁しておるのですが、それには、国内対策を補うため日本に相当程度の輸出自主規制を求めるつもりだ、これはもうこれでいいと思うのですね。大臣がいまお答えになったことと同じようなことじゃないかと思うのです。しかし、記者会見でこのようにおっしゃっているのですね。自主規制は法の裏づけが必要であること、自主規制が無理なら輸出秩序維持協定が次善の策としてあるのではないか、こういう言い方をなさっておるようなのです。そうなりますと、これは御存じのとおり、昨年十一月に米国際貿易委員会で、いわゆる日本車が急増したことがアメリカの自動車業界の苦況の主因であったのかどうか、こういうことで審議しまして、これはシロの判定が出ているわけですね。そうしますと、輸出秩序維持協定を結ぶこととこのシロという判定の関係はどうなるのか、ここらは一体どのようにお考えなんでしょうかね。
  92. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 お答えいたします。  ITCの発表では、委員が五人いまして、採決では三対二でこれを否決したことは御指摘のとおりで、それは自動車の輸入がアメリカの自動車業界の不振の原因ではないという結論を出して一応シロということになったわけでございますが、その後もいろいろ議会でも強い態度で出ておることは御指摘のとおりでございまして、せんだって天谷審議官が参りましたときブロックさんにもお会いしたのですが、非常に厳しいことを言っておるわけでございます。したがって、私どもも日米交渉にそういう甘い考えではなくて、何かITCが結論を出したことで実はほっとしたようなことが業界にも流れておる節もございますけれども、そういうものではないということが天谷審議官の報告にもございますし、アメリカといたしましても御承知のように二十万、三十万のレイオフ、失業者の輸入だという考え方を堅持しております。したがって、日本に迫っておるのは、どうしても秩序ある輸出と自粛というような二点を頭に置いてアメリカ側は非常に厳しい態度で臨んでおって、これが先ほどのITCの結論とちょっと矛盾しているのじゃないかという御指摘でございますけれども、これはITCの結論は一応シロとなったものの、やはり私は厳しい態度だというふうに受けとめて日米間の折衝に当たることの方が本当じゃないかと思いますし、それはアメリカの矛盾じゃなくて、つながっておる考え方だというふうに思います。
  93. 北側義一

    ○北側委員 時間がありませんのでもうこれ一問で終わりますが、アメリカとの自動車摩擦の解決、この解決につきましてECの外相理事会で、いわゆる自動車、カラーテレビ、工作機械、この三品目を監視制度のもとに置く、このようにやっておるわけですね。このECの問題と日米摩擦の問題、ここはやはり関連があろうと思うのです。ECの外相理事会の方でもこの自動車摩擦の解決の問題、これを非常に関心を持って見ておるのではないかと思うのです。当然輸出額とか輸入額、これはECとアメリカと違うでしょう。比重は違うかもわかりませんが、外交的に見まして、やはりECに対する折衝と、またアメリカの自動車摩擦に対する折衝と余り大きな違いが出てくるということになりますと、非常に問題が出てくるのではないかと思うのです。そういう点で、ぜひとも日米自動車摩擦の問題につきましては、そういうECの外相理事会が決めたような問題と絡み合わせてひとつ解決を図っていただきたい、私のこれは希望ですが、そのように思っておるわけです。それについてお答えがあったらお答え願います。
  94. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 私の頭の中も御指摘の御意見と全く同じで、日米関係を片づけるときはやはりタイムラグのないような片づけ方をして、ECも同様に自動車摩擦については結論を出さなくちゃいかぬのじゃないかという考え方でございます。
  95. 北側義一

    ○北側委員 これは一応御答弁結構ですが、いま一つ、中国の一連のプラント契約の破棄の問題、これがあるわけです。これにつきましては先ほど藤田委員が突っ込んだ質問をずっとなさっておられたわけでありますが、私は藤田委員のおっしゃっておられるように、この問題につきましても、中国側と契約を結んだいわゆる民間企業個々の話し合いでこのままずっといってしまうと、せっかくいままで築いてまいりました日中友好、この関係にひびが入るのではないか、そういう危惧を私自身も実は持っておるわけです。  御承知のとおり、日支事変以来、日中友好協定が結ばれた際の戦争賠償責任、これは中国側が放棄しておるわけです。そのようなことを考え合わせますと、非常にむずかしい問題がいろいろあろうかと思いますが、やはり日本政府としてこの問題で何らかの討議をなさり、そうして相手側の、先ほどの答弁ですと正式な話し合い、これをお待ちのようでございますが、この問題で日中関係がいままでの状況と異なって、そうした悪化するような状況にはぜひとも持っていっていただきたくない、そういう点でどうか、先ほど来答弁なさっておられたとおり、政府内においてこの問題についてはひとつ慎重に審議をしていただきたい、このことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  96. 野中英二

    野中委員長 宮田早苗君。
  97. 宮田早苗

    ○宮田委員 繰り返し繰り返し同じような質問最初いたすわけでございますが、お断りしておきますのは、何しろいまの時期、物価問題というのが非常に大きな関心を持たれておりますだけに、あえて、せっかく大臣お見えでございますのでお聞きしておきたいということでございますから、御了解願いたいと思います。  と申しますのは、ことしもまた労働組合と会社が交渉をする時期になっておるところでございまして、以前の労使の交渉とは今日の労使の交渉は、その内容におきましても、また交渉のやりとりの問題におきましても、相当に大きく変化をしておるわけでございまして、端的に言いますと、単なる労使の問題だけでなしに、特に、言葉の上であれですが、経済整合性というような言葉が出てまいりますように、経済全般にわたって、また社会的立場というものを十分に認識しながらその交渉というものが詰められておりますだけに、大変むずかしくなっておるところでございます。しかし、反面、こういう態度であるからこそ、わが国が世界各国から羨望の的で見られておりますような安定があるのではないか、ますます今日の状態を大事にする必要があろうかと、私はそう思っておるところであります。したがって、政府の立場、特に経済企画庁あるいは通産省のお考えになっておりますことが、直接、間接を問わず非常に大きな影響力を持っておるわけでございますので、その辺を十分に踏んまえてひとつ御答弁をしていただきたい、こう思うわけでございます。  まず、その意味でお聞き申し上げたいのは、昨年の春闘についてでございます。組合が妥結いたしますときには、もちろん大臣御承知のように、昨年の春闘も、波乱なくと言えば語弊がございましょうが、総体的には非常に円満に事がおさめられた。非常にむずかしい経済情勢の中で、それが一つの大きな原動力になってこの苦境を乗り切ったと言ってもいいと思っておるところでございまして、この妥結の際に一番大きく目安にいたしましたのは、当時出されておりました五十五年度物価上昇率でございます。六・四%ということでございましたし、労働組合側といたしましても、その点が妥結する場合の極端に言いますなら条件というようなことにもなったのじゃないかと思いますし、また受ける側の組合員も、それならばということで大体了解したような傾向にあるわけでございますが、しかし妥結してみますと、いろいろな要因がございましょうけれども、十二月に七%程度ということで修正をなさった。それでおさまるかに見えましたところ、最近ではまたそれ以上になりつつあるわけでございます。しかし、いま二月でございますからあと一カ月あるわけであります。この一カ月間に何らかの方策をひとつとっていただきたい。  といいますのは、物価上昇率の最終的な結果が、いま行おうとしております次の春闘に非常に大きな影響力があるものですから、この三月、たったの一カ月で大変むずかしいことと思いますが、何らかの方策を考えてほしい。その点を経済企画庁長官、ひとつ率直におっしゃっていただきたい、こう思っております。
  98. 河本敏夫

    河本国務大臣 物価問題につきましては、いま政府は、これを単なる経済問題としてではなく、重大な政治問題であると受けとめております。  昨年春の春闘が妥結するにつきましては、当時の政府見通し消費者物価六・四%という見通しがあったということが、いまお述べになりました比較的妥当な水準でベースアップが妥結したという背景でありますから、政府の方といたしましても、その後物価上方修正せざるを得なかったということに対しては非常に遺憾に思いますと同時に、残念にも考えております。  ただ最近になりまして、やや物価は鎮静の方向に向かっております。十二月は七・一%、一月は七・四%、二月は東京区部でありますけれども六・八%、こういう状態で、だんだん大勢としては落ちつきの方向にいっておりますが、本日、産労懇からも新しい提案がされておりますので、この提案も重大に受けとめまして、なお年度末まで若干の日時もございますから、最善の努力を続けてまいりたいと考えております。
  99. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つお伺い申し上げたいのは、物価調整のための五百億の金が用意してあるわけでございまして、もちろんその都度その都度この中で調整をなさったということについては承っておりますが、まだ相当これが余っておるというふうに聞いておるわけでございます。こういう点を、物価を押し上げる要因のそれぞれの品種に振り分けて小まめな施策というものができないものかどうか。そういうことを確実におやりになれば、私は予定どおりの目標におさまるのではないかと思いますが、この五百億の使途のお考えがあるかどうかということについて、もう一度お聞きいたします。
  100. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年の春、五十五年度予算を審議いたしました際に、四党の間で物価対策費として五百億を予備費から使う、こういうことの合意ができまして、昨年の十月と本年の二月に四党の御相談がありまして、若干の対策費を出すことにいたしました。合わせて四十数億円という金でありますので、なおこの五百億円は四百五十億円以上の資金が残っております。もちろんこれに対しましては、四党との間で話し合いをされまして、なお引き続いてこういうことに使えという御指示が出ますれば、政府の方ではすぐそれに対応するつもりでございます。先般、自由民主党の安倍政務調査会長から野党三党に対しまして、その趣旨のことも回答いたしております。
  101. 宮田早苗

    ○宮田委員 と申しますのは、いまから行わんとしております五十六年度の労使の交渉でございまして、春闘ということになるわけでございますが、政府物価に対する取り組みいかんがまたこの春闘を大きく左右するというほどの大きな影響力を持っておりますだけに、打ち出されております方針を何としても堅持するようにしていただかなければなりません。  と申しますのは、労働側が要求しておりますのは、御存じのように、消費者物価上昇率プラス生活向上分ということで一〇%程度が対象になっておるわけでございまして、具体的な交渉になりますと、これが交渉の中心的な課題として俎上にのせられるのじゃないかと思いますだけに、五・五%という方針を何としてもひとつ堅持をしていただかなければならぬわけでございますが、この点、五十五年度のようなことになりますと春闘自体がいままでのようなことにはいかない、なかなかむずかしゅうなるのではないか、こう思いますので、五十六年度物価上昇率に対しましてのお考えをもう一度、ひとつ決意を込めた形でおっしゃっていただければ幸いかと思います。
  102. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十六年度消費者物価目標は五・五%と想定をしておりますが、五十六年度物価政策は比較的やりやすい、こう思っております。  一つは、消費者物価の大きな背景をなしております卸売物価が急速に安定をしておるということであります。昨年の前半、一月から六月までは御案内のようにずっと二〇%前後で推移しておりまして、特に四月などは年率に直しますと二四%という高い水準でありましたが、二月の上旬は三%台に下がっております。そういうことで、五十五年度卸売物価の年平均は一四%ぐらいになろうかと思いますが、五十六年度政府見通しの四・一%程度は十分達成できるのではないか、こう考えておりまして、これから来る好影響も相当考えられます。  それから、同時に、五十五年度にありましたような電力ガスの料金値上げ、これは非常に大きく消費者物価を押し上げましたが、こういう大口が五十六年度はございません。それから、石油価格はなお流動的な要素もありますが、いまのところは大勢として安定の方向に行っておりますし、五十五年度はイラン・イラク戦争の勃発、こういうことが石油価格の思わざる急上昇になったということを考えますと、その点もむしろ五十五年度よりはやりやすい、こういういろいろな要素がありますので、五十六年度の五・五%という目標は、これは作業が比較的容易である、このように考えております。
  103. 宮田早苗

    ○宮田委員 この問題についてはこれで終わらしていただきますが、せっかく両大臣お見えでございますから、もう一言決意の表明をしていただきたいのは、最近諸外国の政労使ですか、その代表者が日本を盛んに訪れておいでになるわけでございまして、もう御存じのように、これは、何で日本世界に類を見ないほどの安定をしておるかということでありまして、それの一つの原因が労使関係ということは、もう大概の方は御承知のようでございまして、これを見、聞き、さらには勉強して帰ろうというようなことのようでございます。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕  そういうことからいたしますと、いまから行われんとしております春闘一つとりましても、また毎年行われます交渉、春闘にいたしましても、やはり政府の出されます諸施策が非常に大きな影響力を持つわけでございまして、いままでこの安定がございましたのも、政府の打ち出される諸施策が非常に確実性を持ったということも大きな原因じゃないかと思っておるところでございますが、それをさらに堅持をしていただかなければならぬということが最近非常に大きな問題になっておりますだけに、両大臣、せっかくこれから行わんとしております春闘ということを十分に前提にしながら、ひとつ決意のほどをお示し願えれば、労使関係に非常に大きな参考になるのじゃないかと思いますので、その点ひとつお願いいたします。
  104. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの経済運営基本的な戦略と申しますか、目標は、昭和六十年までの新七カ年計画、これを一刻も早く軌道に乗せるということだと思います。つまり、わが国経済を安定成長路線に定着させるということが一番大きな戦略だと考えております。そのためには、物価の安定、適度の成長、それぞれの目標を設定しておりますが、これが実現できるような経済運営をするということが一番大事な点であると心得まして、今後経済対策を進めてまいりたいと思います。
  105. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、経済成長関係についてでありますが、その中心的な原動力と思います設備投資について、政府予算が緊縮予算ということで、公共投資に余り期待が持てないという今日の状況でございますだけに、民間設備投資に大きな期待がかけられておるということでございます。  しかし、それぞれの立場の調査機関とか、また識者の方々から言わせますると、五十六年度政府見通し七・三%ということでございますが、一般的には民間投資に期待をしておられるだけに、甘いんじゃないかという説を唱えておられる方が非常に多いわけでございます。この点について政府考え方をもう一度ひとつお聞かせ願いたい、こう思います。
  106. 河本敏夫

    河本国務大臣 設備投資に対する意欲は、産業界全体を通じまして非常に旺盛だと思います。何分にも科学技術の方は日進月歩の勢いで進んでおりますし、その新しい技術を設備に取り入れませんと、たちまちのうちにして競争力をなくするわけでありますから、やはりそういう角度からの投資意欲、それから最近のエネルギー事情から来るところの省エネルギー対策投資、そういう全体としての投資意欲は非常に旺盛だと思います。したがいまして、現状は、大企業の方はおおむね政府見通しどおり順調に設備投資が続いております。  しかし、中小企業はやや停滞ぎみだと思うのです。なぜかといいますと、大企業の方は自己資金も相当ありますし、それから不足の分に対しては証券市場等から比較的有利な資金を調達することができる。そういうことで、計画を変更しなくてもやれますが、中小企業の方はそれだけの体力がありませんので、少し情勢が悪くなったり、あるいは金融情勢が窮屈になるとか金利が高くなるとかいうことになりますと、計画を延期したり変更したりするケースが非常に多いわけであります。特に現在の金融情勢は比較的窮屈でありますし、金利水準が非常に高い、こういうことから、いまの状態では設備投資すれば少し負担が重い、延期する、変更する、こういうケースが相当あろうかと思いますので、なぜ中小企業設備投資が停滞しておるかということに対しては、十分分析をいたしましてそれの対策が必要であろうかと考えております。
  107. 宮田早苗

    ○宮田委員 通産省の方にお伺いいたしますが、いま河本企画庁長官がおっしゃいましたように、産業別に相当にばらつきがあるようです。鉄鋼とか海運、石油あたりは相当に活発のようですが、反面、化学、食品、紙関係ですか、そういうところは非常に少ない、こういう傾向でありますので、できますならば、産業別にどの程度投資が行われるであろうかということがわかっておりましたならば御説明願いたい、こう思います。
  108. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 通産省では、現在、所管の主要業種の五十六年度におきますところの設備投資計画について調査中でございます。四月中には集計、公表の段取りになるかと存じます。したがいまして、現在の時点におきましては、昨年の九月に調査をいたしましたものが手元にございますので、それによって御報告申し上げます。  これは工事ベースになっておりまして、全産業では前年度に比べまして九・二%の増加となる。これを製造業と非製造業に分けますと、製造業は三・〇%、非製造業は一三・五%の増ということになっておりまして、九月の時点でございますので、五十六年度設備投資計画はまだ十分煮詰まっていない。したがいまして、ゼロを記入している回答がかなりございまして、どこまで本当の姿を伝えているか、こういう意味においては、例年のことではございますが問題がございますので、現在実施中のものがさらに正しいものになると思うわけでございます。  ただ、この数字によりまして業種別に若干申し上げますと、製造業の中では、たとえば鉄鋼でございますが、鉄鋼では前年度に比べまして二六%くらいふえる。それから自動車で一一%くらいふえる。他方、減る方の産業がございまして、ただいま御指摘の紙パルプは二七%減る。セメントが、設備投資が従来かなり進行いたしておりました関係か、四五%減る、また非製造業でも電力は依然として非常に力強うございまして、一五%ふえるというふうな見方をいたしておりますけれども、他方小売業は五%減る、こういうことでございまして、おっしゃるとおり業種別にはばらつきが多うございます。
  109. 宮田早苗

    ○宮田委員 通産大臣にお聞きをいたしますのは、新聞あたりでよく見受けるわけでございますが、アメリカにお行きになる、こう聞いておるわけでございます。もちろん大体推測は私どもできるわけでございますが、きょうはせっかくでございますので、どういう目的を持って向こうにお行きになるか非常に関心のあることでございますから、できればひとつお聞かせ願いたい、こう思います。
  110. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 私の渡米は正式に決まっておるわけではございませんけれども、行ったらどうかというようなこともあります。もし私が行くとすれば、ほかの人が行ってもでございますけれども、やはり経済摩擦をいかにするか、具体的には自動車の輸出をどの程度するかということでございます。この件につきましては、目下アメリカの上院でも近く結論が出るようですし、それからタスクフォースの関係も三月の中旬ごろまでには公表になるようでございますので、そういうものを見た上、そういうものを分析した上、私どもも腹づもりをある程度つくらなくちゃいかぬというようなことを考えております。
  111. 宮田早苗

    ○宮田委員 自動車問題、大変なことになりそうな傾向も出てまいりましたので、大臣に期待するところが非常に大きいのじゃないかと思います。できるならば、向こうに行かれてそういう関係の折衝をしていただきたいということも、私、希望として申し上げておきたいと思います。  さらに、これは十七日のことでございますが、記者会見で、今度予算委員会で問題になりました武器禁輸問題で、製造上の改善を含めた新措置の実施を検討するために武器輸出問題検討委員会を発足させるというような、こういうことが言われたわけでございますが、もしこういうことをおやりになる場合には、これの性格なりどういうことが検討なされるかということをおっしゃれればひとつ説明していただきたい、こう思います。
  112. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 お答えいたします。  去る二月十七日の日に、ただいま先生御指摘になりましたプロジェクトチームを省内に発足させることになりまして、現在すでに第一回、第二回を開きまして鋭意検討中でございます。これは、先般の予算委員長の御発言の御趣旨に沿いまして、役所としては制度上の改善と新たな実効ある措置というものを検討せよというお話に沿いまして検討を進めているものでございます。  この大体の方向といたしましては、たとえば現在の法令の解釈、運用といったような点で、いささかでもそごのないような関係機関の間での連絡体制を整備するとか、あるいは現在通産省が輸出の承認を行い、税関で確認を行っておるわけでございますけれども、特にその税関におきますいろいろな確認体制をどう強化していくかというような問題もございますし、また現在の輸出三原則なり統一見解の線に沿ったいろいろなこういった制度の内容につきまして、業界にも周知徹底をさせるというようなこともございますし、そういったことを含めまして現在鋭意検討を進めておるという状況でございます。
  113. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお伺いをいたしますのは、エネルギー問題についてでございます。  エネルギーの安全保障の確立は、わが国の経済成長国民生活の安定にとりまして重要な課題でありますことは申すまでもありません。しかしながら、わが国のエネルギー供給の大半を占めます石油は、昨年来のイラン・イラク紛争に対しまして国民の冷静な対応と政府の適切な指導によりまして混乱もなく過ぎてきてはおりますが、国際石油情勢の根底には楽観を許さない要因が非常に多く存在しておるわけであります。中長期的には大変むずかしい方向に向かっていることは明らか、こう思います。  一方、政府におきましては、昨年のベニス・サミットにおきまして、サミット国全体として今後十年間にエネルギー弾性値を〇・六に低減すること、一九九〇年までに石油依存度を四〇%に低減すること及び石油代替エネルギーの生産、利用を石油換算一日当たり千五百万から二千万バレルに増大することの三つの国際的約束について合意がされたわけです。国内的にも昭和六十五年度には、輸入石油依存度を五〇%に低減することを約束されたわけでございます。  しかし、この目標達成のためには、今後多くの試練を乗り越えていかなければ容易に達成できるものではないと思いますので、こうしたエネルギー危機の背景と政府見通しに対して、わが国の現状から見まして、省エネルギーのより一層の推進と、一方石油の安定的確保、石油代替エネルギーの開発促進の早急な対策が必要であることは言うまでもありません。  政府は、昨年石油代替エネルギー法の制定、財源の確保、特別会計の整備、推進母体としての新エネルギー総合開発機構の設立など、原子力以外の石油代替エネルギーの開発、導入の基盤は整ったに見えますが、当面代替エネルギーといたしまして原子力発電の開発が急務であると思いますのに、昨年度と本年度の現在に至りますまで、電源開発調整審議会では一基の原子力発電所も認められていないわけでございます。  そこでまず第一にお問いいたしますのは、今年度、あと一カ月しかございませんが、三月までに、いつごろ電源開発調整審議会が開かれるのか、また開かれるとするならば、その中で原子力はどの程度に織り込まれる見込みなのか、この点をまずお聞かせ願いたい、こう思います。
  114. 白井和徳

    ○白井政府委員 昭和五十五年度におきまして、現在まで電源開発調整審議会三回開催しております。次回の電源開発審議会に付議する予定の地点につきましては、現在関係省庁とその地点につきまして調整中でございます。この調整の整い次第電源開発審議会を開催いたしたいと考えております。  なお、原子力につきましては、三百万キロワット程度の地点につきまして関係省庁と鋭意調整中でございます。
  115. 宮田早苗

    ○宮田委員 昭和五十六年度の原子力開発の見通しはどの程度期待できるのですか、その辺をお願いします。
  116. 石井賢吾

    ○石井政府委員 五十六年度の原子力発電所立地計画その他電源開発計画につきましては、現在、五十六年度の施設計画、各電力会社からヒヤリング作業中でございます。現時点におきます地元調整の進捗状況あるいは漁業補償交渉の進展あるいは環境影響調査の進捗状況、こういった点を踏まえまして、この施設計画の確定を待って、五十六年度の具体的な立地地点及び規模につきまして確定をいたしたいというふうに思っております。
  117. 宮田早苗

    ○宮田委員 昨年の十一月の閣議で決定されました「石油代替エネルギーの供給目標」におきます原子力発電の目標は、昭和六十五年度で五千百万から五千三百万キロワットでございますが、このままで達成できるとお考えでございますかどうか、この点をひとつ説明願いたいと思います。
  118. 石井賢吾

    ○石井政府委員 昨年十一月閣議決定を見ました代替エネルギー供給目標におきまして、原子力発電を石油換算で約七千五百九十万キロリッターの石油をリプレースできるような原子力発電所の設置を一応の目標としておるわけでございまして、具体的には、六十五年度末電源能力としまして五千百万ないし五千三百万キロワットの電源開発を進めていくというのが当面の目標として設定されたわけでございます。  すでに御承知のように、現在運転中のものは二十一基、約千五百万キロワット弱ございます。さらに建設中のもの――中にはすでに試運転に入ったものもございますが、これらの建設中のもの全体で十一基、約一千万キロワット弱ございます。さらに、電源開発調整審議会を終えまして現在安全審査の過程にあるもの、あるいは着工準備中のもの、これが三基、約三百万キロワット強ございます。これら全体三十五基をもちまして約二千八百万キロワット弱の計画が具体化いたしておるわけでございますが、御指摘のように五千百万キロワットの目標達成のためには、さらに二千三百万キロワット強の電源開発、原子力発電所の立地を進めなくちゃいかぬということになっておるわけでございます。  これらにつきましては、官民挙げて最大の努力をしまして達成すべき目標として設定されたわけではございますが、私どもとしましては、先ほど申し上げました五十六年度の施設計画等具体的な計画を積み上げまして、その一つ一つの計画をできるだけ取りこぼしなく実現できるように、その目標達成に最大限の努力を尽くしていきたいというふうに思っております。
  119. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つお聞きいたしますのは、昨年の十二月四日ですか、柏崎で、また今年の一月二十八日には島根におきまして、政府としての原発公開ヒヤリングが行われておるわけでございますが、その成果をどのように評価なさっておられますか、その点をお聞きしたい、こう思います。
  120. 石井賢吾

    ○石井政府委員 原子力発電所の設置には、いまさら申すまでもなく地元の理解と協力が不可欠でございます。その趣旨から、通産省といたしましては、環境審査の過程におきまして第一次公開ヒヤリングを実施することといたしておるわけでございますが、過去二回実施いたしました公開ヒヤリングにおきましては、地元の皆様方の真摯な意見表明がございまして、私ども、現在これを環境審査あるいは安全審査等に十分参酌をさせていただくということで対処しておるわけでございます。  いま申し上げましたように、本来の趣旨が地元の理解と協力を深めるという趣旨でございますので、その趣旨にそぐうように今後とも公開ヒヤリングを運用してまいりたいというふうに思っております。
  121. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお伺いいたしますのは、石油代替エネルギーとしての第二に挙げられますのは石炭だと思うわけでございますので、国内炭は別にいたしまして、海外炭の開発、導入の促進が不可欠でございます。さらには、石炭の液化とかガス化の技術開発の加速的な促進も必要でございますが、予算委員会及び当商工委員会でたびたび質疑応答が繰り返されております、アメリカあるいは西独、日本の三国協定によります大型液化プロジェクト、SRCIIの今回のアメリカ側の出方は遺憾であると言わざるを得ませんが、たびたびの通産大臣の答弁のように、日本政府の強力な外交政策に期待をしたい、こう思うわけでございます。  しかしながら、石炭そのものの輸入が一般炭で六十年度で二千二百万トン、六十五年度で五千三百五十万トンという大きな地位を占めているとなりますと、その輸入先、受け入れ基地等も早急に整備していかなければ目標を達成できないと思うわけであります。  そこで二、三お伺いを申し上げたいのは、まず第一番に、海外一般炭の開発、導入の現状、これはどうなっておるものか、その辺をお伺いいたします。
  122. 福川伸次

    ○福川政府委員 御指摘のように、海外一般炭の開発、これをいかに円滑に進めていくかということは、エネルギーの安定的な供給を確保する上において重要な政策的な課題でございます。  現在、わが国企業が海外において参加をいたしております操業上のプロジェクトは現在原料炭で六つございまして、そのウエートは原料炭輸入量の三割程度に達しております。また一方、一般炭につきましては、現在開発に参加をいたしております山からまだ入ってくるのはございませんが、本年半ばにはそれが一基入ってまいります。現在開発中のものがそのほかもう一つございますので、現在は豪州におきまして二つの一般炭の開発、輸入を推進いたしております。そのほか開発準備中のもの、あるいは調査中のもの、あるいは交渉中のものを含めると、相当多数のプロジェクトがございます。  私どもとしましては、現在一般炭の輸入の大宗は豪州に依存をいたしておりますが、豪州のみならず、これを多角的に供給を分散化していくという意味で、カナダあるいはアメリカ等につきましても徐々にその開発、輸入の先を分散化していくという方向努力をしてまいりたいと思っております。  同時に、御指摘のように、これを日本に円滑に持ってまいりますには、産炭国の輸出港湾あるいは日本におきます受け入れ基地、さらに日本の内陸輸送といったようなものをシステム的に効率的に形成していかなければならないわけでございまして、それも私ども、最近資源エネルギー庁の諮問機関といたしまして海外炭問題懇談会をつくりまして、供給の分散化と、それからコールチェーンと称しておりますが、円滑な供給確保システムをつくるということで、民間の創意、英知を取り入れながら、また政策的な支援を図っていくという体制で努力をしてまいるつもりでおります。
  123. 宮田早苗

    ○宮田委員 いろいろ聞いてみますと、いまもおっしゃられました中での一般炭の不足が非常に深刻になっておるように聞いておるわけでございまして、特に五十五年度一般炭の輸入量が七百五十万トンでございますか、実績が非常に低いというふうに言われておるわけでございますが、どの程度年度入ってくるものかということ。入ってくるのが少ないということなんですが、何が原因でこのように少なくなるものか、ひとつお知らせ願いたいと思います。  さらに引き続いてでございますが、五十六年度の一般炭が一千万トンというふうに聞いております。こういった状態の中で、果たして一千万トンの輸入が確保できるかどうかというふうな懸念もあるわけでございますが、この点を含めておっしゃっていただきたい、こう思います。
  124. 福川伸次

    ○福川政府委員 五十五年度におきましての輸入の一般炭は、当初七百七十万トンという推定を立ててまいっております。現在、御指摘のように海外からの輸入がやや窮屈になってきております。  その理由は、一つにはポーランドの情勢関係をいたしておりまして、従来ポーランドからヨーロッパに輸出をいたしておりました一般炭が非常に急激に減少する。したがいまして、またヨーロッパがアメリカ、アフリカあるいは豪州等からの輸入ということにシフトをして、かなりの量を買い付けるということに相なってきております。そういう中で、それぞれ、特に豪州等を中心にいたしまして、産炭国の輸出のための港湾能力が限界に来ているというのが一つの原因でございます。そういうわけでございますから、今後この港湾の整備ということにつきましては、豪州初めカナダ、あるいはさらにできますればアメリカといったあたりのインフラの整備ということにつきましては、それぞれ民間ベースあるいは政府ベースでの働きかけを行い、日本の需要想定に理解を求めながらその整備を進めていくということで努力をいたしたいと考えております。  現在、五十五年度にどのくらい入ってくるかというお尋ねでございますが、当初見込みました数字よりはやや減少することになるのではなかろうかと思っておりますが、なお私どもも中国に対しまして引き取り量の増量を現在要請をいたしておりますと同時に、先ほど申しましたように、豪州以外の地域の輸入の増大ということに努力をしてまいりたいと思っております。  明年度の一般炭の輸入の見通しにつきましては、現在需要業界からヒヤリングをいたしまして集計をいたしている途中でございますが、今年度よりはかなり増加するものと思っております。いま申し上げましたようないろいろ供給の分散化、多角化を図るということで、その供給の確保には最大の努力をしてまいりたいと思っております。
  125. 宮田早苗

    ○宮田委員 関連をするわけでございますが、国内炭の問題について、実績としてどの程度いま掘られておるものか、それと貯炭が大分減っておるようでございますが、現在貯炭がどの程度になっておるか、もしそこでわかっておりますならばおっしゃっていただきたい、こう思います。
  126. 福川伸次

    ○福川政府委員 国内炭の生産につきましては、今年度当初千八百万トンという推定をいたしておりました。年度前半はややこの水準を下回るのではなかろうかという経過をたどってまいりましたが、最近は国内の炭鉱もかなり増産に努力をするということになってまいりまして、恐らく千八百万トン程度の生産は確保できるのではないかというふうに思っております。  それから貯炭でございますが、五十五年の四月には大体三百五十万トン程度の貯炭がございましたが、十二月末にはそれが二百二十六万九千トンに下がってまいりまして、従来やや過剰でございました貯炭が払い出されたという傾向でございます。このような傾向はまだしばらく続きまして、大体百五、六十万トン程度の在庫にことしの三月にはなるのではなかろうかと思っております。大体その辺の水準が、従来過剰でありました貯炭が整理されていった状態でございますが、国内的にはかなり需給が安定したと申しましょうか、やや逼迫ぎみになった状態にことしの三月にはなるのではなかろうかと思っております。
  127. 宮田早苗

    ○宮田委員 いずれにいたしましても、この石油代替エネルギーの最たるものは原子力であり、またいま申し上げます石炭であろう、こう思います。特に石炭に関しましては、現実の問題として大幅に外国炭に頼らざるを得ないという傾向になってきておりますのは、これは当然なことと思います。ところが、開発をし、また輸入をするといたしましても、置き場自体に大変な問題が起きるのではないかというふうに思っております。その手を早く打っておかなければならぬ、私はそう思っております。  そこで、コールセンターでございますが、この受け入れ基地の進展状況はどういうふうなことになっておるか。果たして計画どおり輸入炭を置くだけのセンターが確保されることになっておるものかどうか、この辺をひとつお聞きしたい、こう思います。
  128. 福川伸次

    ○福川政府委員 コールセンターにつきましては、現在セメント業の需要を中心といたしました小規模なコールセンターの建設が、北九州で一つ進められております。さらにまた、瀬戸内海で鉄鋼関係の基地に関連いたしましたコールセンターが一つ操業いたしております。  現在、御指摘のとおりに、これから一般炭の需要が電力業界あるいはセメント業界を中心にいたしまして相当増加してまいりますために、これの受け入れ基地、特に大量輸送に備えたような受け入れ基地というのが非常に重要な意味を持ってくるわけでございます。現在のところ、北海道の苫小牧の東部地区におきまして、電力業界の需要を中心といたしました大規模なコールセンターの建設計画が進められております。また同時に、長崎県の崎戸地区におきましても、同じように電力を中心にいたしました準備が進められておるわけでございます。これから特に八〇年代の後半に、電力を中心にいたしまして大量に一般炭の導入が始まってまいりますので、それにタイミングを合わせた形で、この大量の受け入れができるような形で建設を進めていくという計画でございます。
  129. 宮田早苗

    ○宮田委員 石油にかわるエネルギーということで、産業界もいろいろ工夫をしたりあるいは節約をしたりということでございますが、特にさっきも、不況業種ではありませんが、成長率がマイナスになりそうなセメントとか紙等、これは極端に石油にかわって石炭ということにしたわけでございまして、もしこの一般炭が順調に入らないということになると、せっかく政府の施策、また石油代替エネルギーに対して全面的な協力をした産業であるにもかかわらず、そのことによってさらに苦境に陥れられるということになりかねないわけでございますから、その点は十分な配慮をしていただきたいと思いますが、そういうことがないようにしていただきたい。その辺、何かそういうものがいまでも起こりつつあるのじゃないかという懸念もするわけでございますが、それは大丈夫ですか。大丈夫かどうかということをお聞きしたいと思います。
  130. 福川伸次

    ○福川政府委員 一般炭の増大いたします需要、これを確保いたしますためには海外炭の石炭鉱山の開発、さらに産炭国におきますインフラの整備、さらに輸送、国内というような、コールチェーンと私ども称しておりますが、これを本当にシステム的に展開してまいらねばならないというふうに思うわけでございます。非常に投資にも時間を要する、懐妊期間も長いプロジェクトでございますので、私どもも将来の展望を明確に持ち、また政府ベースあるいは民間ベースでのそれぞれの相手国との協力体制を積み上げていきながら、日本での石炭の消費の見通しに見合った形で持っていくようにということで、鋭意努力をしてまいっているわけでございます。  現在、国内の石炭につきましては、第七次の石炭政策を石炭鉱業審議会で御審議をいただいておりますし、また輸入の問題につきましても、先ほど申しましたように海外炭問題の懇談会をつくって、関係業界あるいは学識経験者を網羅した形で、そのあり方を検討いたしておるわけでございまして、国内あるいは海外ともその有機的な連携を図りながら、政策的にもこれが順調に入ってくるように、明確な展望を持ちながら、その施策の万全を期してまいりたいというふうに思っております。
  131. 宮田早苗

    ○宮田委員 さっき言いましたSRCIIやその他の石炭液化技術の開発促進も特に必要でございますが、それより先に現実問題としてCOMの技術開発が優先されるべきであると思いますが、現状見通しについてお伺いをいたします。
  132. 福川伸次

    ○福川政府委員 一般にCOMと略称いたしておりますが、コール・アンド・オイル・ミックスチャー、石炭と石油の混合燃料の技術の早期の実用化ということが期待されておるわけでございます。従来から私ども、短期あるいは中期的な重点課題としてその実用化に取り組んでまいったわけでございます。現在、技術的にはすでに製造、輸送、貯蔵、燃焼といった基本的な技術問題は一応解決したと思っております。  いま問題になっておりますのは、実際の操業規模での実証の段階に入っておるというのが現状でございます。電力でのCOMの実用化につきましては、石油火力のCOMの転換を目指したものは五十五年度から実施をいたしております。さらに、石炭だきの設計ボイラーの適用を目的といたしました実証試験につきましてはすでに実施に入っておりまして、五十六年度には一応終了するという予定で進んでおるわけでございます。石油だきのボイラーにつきましての実証試験は今年度から実施をいたしておりまして、五十八年度前後をめどにその実証を終了するということでいま鋭意進めているわけでございます。  また、一般産業での利用につきましては、五十三年度からまず製鉄用の高炉吹き込みの重油の節約を目的といたしましてパイロットプラントで実施をいたしておるわけでございます。また、五十五年度からはすでに稼働中の高炉で全量COMの吹き込みという実証試験に入っているわけでございます。  そういうわけで、現在電力業界あるいは鉄鋼業界でも、このCOMの利用ということにつきましては鋭意積極的な意欲を持っておりまして、技術的にも実証の段階に入ってきており、ここ二、三年あるいは数年うちにも実用化に入るというふうに私どもは期待を持っております。
  133. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお伺いを申し上げたいのは、石油需給の問題についてでございます。  まず、五十五年の石油輸入量は一日当たり五百万バレルから五百十万バレルとなっているので、今年度の輸入は石油供給計画で見込んでいた五百四十五万バレルより相当下回るのではないかと思われますが、現時点での見通しはどの程度と見込んでおられるか、お伺いをいたします。
  134. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  最初に、現在の石油製品に対する需要がどうなっているかということをちょっと触れさせていただきたいわけでございますが、五十五年の四月からことしの一月までの間におきまして、販売量ベースで申しまして石油製品の需要は前年に対しまして約一〇%低下をしております。  この要因といたしましてはいろいろな要因が考えられるわけでございますが、一つには脱石油あるいは省エネルギー、そういった要因がございます。そのほかに、景気回復の鈍化であるとかあるいは冷夏の影響、さらには出水率がよかった、いろいろな要因が絡んでこのように石油製品に対する需要が落ちついたものになっている、こういうふうに考えられるわけでございます。  一方、輸入でございますけれども、こういったような内需の動向あるいは昨年の特殊要因を考えてみますと、イランの船積み停止が四月二十一日以降行われたわけでございます。あるいは九月におきますイラン・イラク紛争の影響、こういった影響もあるわけでございまして、五十五年度石油の輸入は供給計画数字をある程度下回るだろうというふうに私ども見ております。ただ、年度途中のことでございますし、もう少し見きわめませんと、五十五年度石油の輸入がどのくらいになるかということはいまの段階では必ずしも明確に申し上げられない、こういう状況でございます。
  135. 宮田早苗

    ○宮田委員 ことし策定されます石油供給計画は、最終年次が六十年度になるはずと思います。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、長期エネルギー需給暫定見通しの一日当たり六百三十万バレル、三億六千六百万キロリットルとの差が出てくるんじゃないかと思うのですが、その場合の対処方針をお伺い申し上げたいということです。六十年度が五百六十万から五百七十万バレルになるのじゃないかと思っておりますし聞いてもおりますが、その点どうですか。
  136. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 ただいま先生御指摘のように、五十六年度石油の供給計画、これは五十六年度から五年間ということでございますから昭和六十年度計画対象期間に入ってまいります。  そこで、私ども現在、五十六年度石油供給計画の検討作業に入っておりますけれども、その前提といたしましては、先ほども申し上げたわけでございますが、五十五年度内需がどのくらいになるか、その内需にいろいろな特殊要因が入っているわけでございますが、そういった特殊要因がどの程度影響をしているだろうか、そういった検討作業、これがまず第一段階の作業になるわけでございます。その上で六十年度見通しを立てる、こういうことになってまいります。したがいまして、現段階におきまして昭和六十年度石油の輸入量について私どもまだ特別の判断をし得ない、下していない、そういう段階でございます。五十五年度数字あるいは特殊要因の評価、そういったものをやった上で検討してまいりたいと思っております。  ただ、もう一つ申し上げておきたいのは、六百三十万バレル・パー・デーと申しますのも、これは先生御案内のように、国際的な場において出てきた数字でございます。したがいまして、私どもは、六十年度見通しを考えていく場合にも、そういった国際的な問題というものもあわせ考えながら慎重に対応していくことが必要であろうと思っております。
  137. 宮田早苗

    ○宮田委員 わが国は世界第二の石油輸入国でございます。にもかかわらず、最近シンガポールとかタイ等に重油を輸出している、この事実ですね。行政指導の誤りでないかと思いますし、また重質油の余剰が出る現在の状況では、早急に重質油分解装置の完成を急ぐべきであると思いますが、通産省考え方はどうですか。
  138. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、ことしに入りまして現在までに約十八万五千キロリットルのC重油の輸出につきまして、輸出貿易管理令に基づく承認を行っております。仕向け地といたしましては、タイ、香港、フィリピン、そういった国になっております。  申し上げますが、このC重油につきましては、従来から、国内石油製品の需給に支障がない範囲で輸出を行ってきておるわけでございます。ただ、最近二年間は、イラン政変の影響によりまして国内石油製品の需給がタイト化したということもございまして、輸出承認申請が行われていなかったわけでございます。  一方、国内的には、先生御案内のように、C重油の需要分野におきまして、省エネルギーあるいは脱石油、そういった動きが特に大きく出てきたということもございまして、国内のC重油に対する需要が停滞してC重油の在庫、これはかなりの水準になっております。  また一方、海外を見てみますと、イラン・イラク紛争の結果、両国の製油所がかなり破壊をされておる。その結果、C重油の両国からの輸出がかなり少なくなったわけでございますね。そういうことで国際的にC重油の需給がタイト化している。  そういう国際的な状況を背景といたしまして、また日本の国内需給を反映いたしまして、最近日本に対して輸出の引き合いが出てまいりました。そういった輸出の引き合いに対しまして、現在の国内の需給状況からいうと支障がない、こういうことで輸出の承認を行ったわけでございます。  同時に、このC重油の輸出の意味づけでございますけれども、先生ただいま御指摘がございましたように、C重油ネックという問題がございます。これに対しては、あるいは原油生だきからC重油への転換であるとか、あるいは輸入C重油から国産C重油への切りかえであるとか、あるいは精製設備の運転条件を改善いたしましてC重油得率をできるだけ抑える、中間三品の得率を上げる、こういったような指導、いろいろ対策を講じてきておるわけでございます。そういった一連のC重油対策の一環としての意味づけということもできるのではないかというふうに思っております。  また、先生ただいま御指摘がございましたけれども、重質油の分解技術の開発が重要ではないかという御質問でございますけれども、まさにおっしゃるとおりでございます。最近の日本に入ってまいります油、これは逐次重質化してまいっております。平均の残渣得率で申しますと、五十二年が四六・九%であったわけでございますが、五十四年には四八・六%ということで約二ポイント上がっております。これはどういうことかと申しますと、同じ設備、同じ技術で精製をいたしますと重質油がたくさん取れる。逆に言うと軽いところ、中間三品であるとかそういった軽いところが相対的に少ししか取れない、こういうことになるわけでございます。  一方、需要の方を見ますと、御案内のように、一つには生活レベルが上がってくる。それに応じて需要自身が軽質化してくる。同時に、先ほども申し上げましたように重油部門で脱石油動きが大きく出てきているということで、需要が軽質化しておるわけです。供給と需要とのアンバランス、油種間のアンバランスというのが出てまいるわけでございます。これをうまくやってまいりませんと、石油製品の安定的な供給に支障が出てくるということになるわけでございます。  そこで、現在私どもといたしましては、いまあります重質油の分解設備と申しますのは、中間三品が余り取れないという技術でございます。むしろ、石油コークスであるとかそういったところがたくさん取れる、そういう技術でございまして、これでは対応し切れないということで、中間三品がたくさん取れる、そういう新しい重質油分解技術を開発する必要があるということで、五十四年度から研究組合をつくりまして、これに国から補助金を交付いたしまして、四年計画で技術開発に取り組んでいるところでございます。  私どもといたしましては、まさに先生御指摘のように、新しい重質油分解技術の開発というのは非常に急ぐということで、今後も引き続いて鋭意これの推進に努めてまいりたいというふうに思っております。
  139. 宮田早苗

    ○宮田委員 最近のエネルギーをめぐります国際情勢は、相次ぎますOPECの原油価格の引き上げ、また今回のSRCIIの技術協力の後退の兆し等、非常に目まぐるしく変化をしておるわけでございます。  そこで、ことしの七月にオタワで開かれますサミットは重要な意味を持つものと解釈いたしますが、今回の議題の中心は何になるか、政府のこれに臨む姿勢について今日お考えを述べられれば述べていただきたい、こう思います。
  140. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 オタワ・サミットが七月に開催される予定でございまして、この議題はもちろんエネルギー、南北問題あるいは通貨問題、経済協力、そういうような問題が主として議題になると思います。
  141. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、日韓大陸棚の共同開発についてでございます。  今日まで若干の試掘がなされておりますので、大体の見通しというものが、なかなかむずかしいとは思いますが、ある程度わかったのじゃないかと思うわけでございまして、そういう意味からすると、これを参考に今後この点はどのような傾向になっていくものであろうかということをお知らせ願えればお願いしたいと思います。
  142. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 日韓大陸棚の探鉱状況について御説明申し上げます。  日韓大陸棚の共同開発につきましては、一昨年の十月から第五、第七、第八小区域におきまして物理探査を行ったわけでございます。この結果を踏まえまして、昨年五月初旬から七月初旬まで第五小区域において試掘をいたしました。それから引き続いて第七小区域につきまして、昨年の七月初旬から十月下旬まで試掘を行ったわけでございます。ただ、この試掘の結果は、残念ながら商業生産可能であるほどの発見には至らなかったわけでございます。そこで、現在、関係企業におきましてこの試掘の結果を解析しておるわけでございます。この試掘結果の解析を踏まえまして、さらに今年度におきましてはもう一度、第五、第七小区域に物理探査をかけ直そうということになっておるわけでございます。そのいままでの試掘結果と今年度予定しております物理探査の結果を踏まえまして、今年度第五、第七小区域につきまして、それぞれ一坑ないし二坑の試掘をやる、こういう段取りになっているわけでございます。  そこで、いままでの結果で何がわかったか、こういうことでございますけれども、現在までのところはそういうことで試掘の結果が思わしくないということで、どの程度の油あるいはガスが賦存するかということについては必ずしも明確になっていない、こういう状況でございます。
  143. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つ、尖閣諸島の関係について、いままだ具体的にはなっておりませんが、日中共同で開発する考え方もあるようでございまして、こういう問題について政府が何らか対策をお考えになっておりますならば、ひとつおっしゃっていただきたい、こう思っておるところです。
  144. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  先生御案内のように、尖閣列島につきましては、領有権の問題、これは日本としては日本の領土であるというふうに当然考えておるわけでございますけれども、中国側は必ずしも同じ意見を持っていない、こういうことがあるわけでございます。また、もう一つは、大陸棚についての物の考え方というのも違うわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、この尖閣列島周辺海域の開発につきましては、尖閣列島の領土問題がございますから慎重に検討していくことが必要であろうというふうに考えておるわけでございます。
  145. 宮田早苗

    ○宮田委員 時間が来ましたからこれで終わりますが、最後に両大臣に要望をしておきますのは、このエネルギー問題については、私が申すまでもなく大変な問題でございましょう。原子力問題なり石炭の問題なり、いろいろたくさんのむずかしい問題がございますけれども、何としてもこれは代替エネルギーという形で実行していかなきゃならぬ問題だと私ども思っておるところでございますので、その辺は十分に所管庁として御配慮を願っておきたいということが一つ。  もう一つは、最初に御質問申し上げました春闘の問題について、いままでは通産省なり経済企画庁の方々というのは春闘に余り御関係というものが――まあ関係は十分ごさいましたものの、関心というものがそうまでというふうに思っておりました。しかし、最近は、もろに通産省あるいは経済企画庁にかかってきておる問題と私どもとらえておりますだけに、その辺を十分に御配慮願って、ぜひ春闘に注目をしていただきたいということを申し述べて、終わりたいと思います。よろしくお願いします。
  146. 野中英二

    野中委員長 小林政子君。
  147. 小林政子

    ○小林(政)委員 田中通産大臣にまずお伺いをいたしたいと思います。  最近、レーガン政権が、日本、アメリカ、西独の三国間による石炭液化共同事業、この問題について、いわゆるSRCIIの計画について、アメリカが政府の出資を中止するという方針を打ち出されましたけれども、これについて具体的に、経費についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  148. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 SRCIIの問題は、福田元首相とカーター大統領との間で話し合いがつきまして、昨年から発足しておるわけでございます。したがって、日本側は昨年約七十三億程度の金を計上し、本年度は百五十億円の金を計上しているわけでございまして、すでに取りかかっておる石炭液化問題でございまして、このたび新大統領になりましたレーガン大統領が一般教書並びに付属書の中で、SRCIIの問題は本予算から外して合成燃料公社に移管するというようなことを発表いたしまして、私どもはまだ正式にこれの通告は受けておりませんけれども、その程度のことは、教書でうたっておりますので存知しているわけでございます。
  149. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、その問題については正式な提案というものが具体的に出ているものでしょうか。  それからまた、通産大臣予算委員会の中で、これはまあ何とか継続をしたい、そのためにも交渉したい、こういう意味のことをおっしゃっていますけれども、具体的な内容についてお伺いをいたしたいと思います。
  150. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 SRCIIは国際的なアグリーメントでございまして、ドイツ、日本、アメリカが調印しているわけでございまして、すでに発足しておるわけでありますので、これを一方的にそういうふうに計画を変更すると申しましても、それはアメリカのことでございまして、わが方はこの液化プロジェクトを変える考えはなく、もしそれが事実進行するということになりますと、私どもは変更する考えはございませんし、折衝しなければならない。ただ、アメリカ側の教書の中にも、こういう案を出すが、アメリカ、日本、西ドイツがこの協定に基づいて協議した結果ということになっておりますので、もちろんこれは私どもも、そういうことになれば相談をしなければならないというふうに思っておるわけでございます。
  151. 小林政子

    ○小林(政)委員 その協議の決定ということになればということでございますけれども、具体的には、そうすると正式なその提案といいますか、そういうものも何もまだ来ているわけではないんですね。
  152. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 まだ向こうから正式の通告はありません。
  153. 小林政子

    ○小林(政)委員 しかし、具体的には恐らく変更になるであろう、こういう見通しですか。
  154. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 恐らくといえば、恐らく変更はないだろうと思います。
  155. 小林政子

    ○小林(政)委員 日本とアメリカ政府が八〇年七月三十一日にこの問題について協定を結んだわけでございますけれども、その協定の中の第六条で「この協定に基づく活動は、両国の法令及び予算に従うことを条件とする。」ということがうたわれておりますけれども、アメリカ政府として出資しないという態度を表明している以上、日本政府は、四条で規定されているように、SRCII計画の経費の二五%の出資の負担というものはもう義務がなくなるのではないか、このように思いますけれども、いかがですか。
  156. 福川伸次

    ○福川政府委員 SRCIIの日本とアメリカとの協定によりますと、第七条におきまして、この協定を変更する場合には両国政府の間で協議、合意が必要であるという条文がございます。  それで、先生御指摘のように、レーガン大統領は十八日に一般教書、それからその付属文書の中で、今後石油代替燃料公社の方にこれを移管するということを言っておりますが、また同時に、その付属文書の中で、これは日米両国間の国際協定であるので、その協議と合意が必要であるということを前提にいたしましたフットノートがつけられておるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、アメリカ政府側の一般教書の方針といたしましてそういうことが明らかにされましたが、しかし、アメリカ政府もみずから確認いたしておりますように、そのためには両国政府の間で協議をしようということに相なっているわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、このプロジェクトの重要性にかんがみまして、これをぜひ維持、継続をしたいという方針で協議に臨むことにいたしたいと思っております。恐らくやがて協議ということがそういう事情から行われるということになると思いますが、いまだいつ、どういう形で協議をするかというような具体的なスケジュール等はまだ決まっておりません。
  157. 小林政子

    ○小林(政)委員 昨年の七月三十一日に日本とアメリカ政府との間で調印し、発効したSRCII処理法による協定の実施機関というのはどこになっているのですか。
  158. 福川伸次

    ○福川政府委員 これは政府間の協定でございますので、アメリカのエネルギー省、これがこの協定を実施いたしますが、実際にこのプロジェクトを実施いたしますのは、昨年SRC・インターナショナル・インコーポレーティブというアメリカ、ドイツ、日本民間ベースの合弁会社が設立されておりまして、それが実施をするという体制になっております。それを管理いたしますために、政府ベースではスターリングコミッティーというのができておりまして、それが業務の施行を管理をする、こういう仕組みになっております。
  159. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、協定の実施機関というものも具体的には変わってしまう、こういうことになろうかと思います。また、共同プロジェクトのSRCIIについては、アメリカのエネルギー省から、先ほどからお話の出ております準政府機関と申しますか、いわゆる合成燃料開発公社、ここに移管をするというようなことも言われていますし、こうなってくると、協定の実施機関というものも変わるし、内容も変わっていくのではないか、このように考えられますけれども、性格そのものが変わったこういう協定というもの、これに基づいて日本政府はそれを容認をする態度をとろうとしているのか、あるいはまた協定そのものが変わった以上、こういう問題については国からの予算などについても検討するということになるのか、その点をはっきりとお答えをいただきたいと思います。
  160. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 いま、協定そのものが変わった以上と、変わったということが過去になっておりますけれども、私どもは正式の通知を受けて、それから多少それがはっきりしてくるならば協議をしなければなりませんが、別に変わったわけではございませんし、そういう場合でも私どもは既定方針どおり強くその遂行を迫ろうと思っております。
  161. 小林政子

    ○小林(政)委員 燃料公社に変わったとすると、これは当然政府の出資の中身も変わってくるだろうし、あるいはまた計画の変更ということが当然これを意味するものになるのではないか、このように思いますけれども、いかがですか。
  162. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 先ほどから申し上げておるとおりに、アメリカ、日本、西ドイツの協定事項でございまして、これは向こうの変更で、一方的にそういうことは許されないことですから、私どもは私どもの主張を言い張って、あとは協議だと思います。  それからもう一つは、アメリカの教書、御承知のようにアメリカの国会は十月からでございますし、その間の余裕もございます。また、議会でどういうふうになるかも方向はわかりませんし、私どもは、私どもがはっきり国際協定で協議、調印したことを主張していくことが正当かと思います。
  163. 小林政子

    ○小林(政)委員 いろいろと述べられていますけれども、アメリカが予算に計上しないということを発表いたしておりますだけに、私は計画そのものも事実上執行が不可能になるのではないか、このように思いますと同時に、したがって、いままでもいろいろとわが国燃料の自主開発ということが強く叫ばれておりますときに、実際問題としてこういうものにこのような、五十六年度百五十億円の予算というものをつけるということ――これはいままでにもいろいろと取りざたされてきたところでございます。新聞報道をごらんになっても、この問題はいろいろと疑問が投げかけられていることは御承知のとおりだと思います。  こういった問題を考えますときに、五十六年度予算の計上額百五十億円、これは私は削除すべきであるというふうに考えておりますし、また五十五年度予算の計上額約七十五億円ですか、これについても未執行の分についてはこれも見合わすべきである、このように思いますし、アメリカの会計年度が十月からだからこれからでよいということにはならないと思います。もしそうであるならば、補正予算だって間に合うじゃありませんか。こうした問題に本当に積極的に対応をすることを私は強く要望いたしますけれども大臣見解を伺いたいと思います。
  164. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 先ほどから申し上げておるとおりに、それはアメリカ側の意向でございまして、私どもは、これは国際協定に基づいた主張をすることが私どもの立場であり、また正しいと思っております。
  165. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題については、新聞報道などを見ましても、とかくいろいろと言われてきた問題でもございます。私は、本当の意味での日本の石炭液化開発というものは、もっと国内に重点を置いて実施をしていくべきが当然だろう、このように常々思ってまいりました。そういう立場からも、今回のようにアメリカが強く要求をして、そしてつくられてきたと言われております今回の政府の協定調印問題あるいは共同開発への日本の参加の問題、こうした問題を考えますときに、私は、いま大臣が言われたような立場だけでは解決できない、もっと本質的に、この問題については当面組んである予算を削除すべきである、そのように強く要求をいたしまして、次の質問に入ります。  経企庁長官、大変お急ぎということでもございますので、私は、物価のこれからの見通し問題について長官に御質問をいたしたいと思います。  五十五年度当初経済見通しでは物価は六・四%でございましたけれども、昨年十二月修正をして七%ということになりました。予算委員会で河本長官は、まあ八%超えるということはあり得ない、絶対にないという立場を表明されてまいりましたけれども、できるだけ七%に近づけたい、七%と八%の間であってもできるだけ七%に近づけるように努める、このように御答弁をされております。東京区部の消費者物価は、ことし一月の分を見てみますと、前月比一・一%と大幅な上昇でございますし、前年同月比六・八%の上昇ということになっています。これが二月、三月が一月と横ばいというような状況になりますと、五十五年度平均で前年比七・七%近くになるというような試算も行われておりますけれども、一つお伺いをいたしたいのは、河本長官が言われているように三月末に七%台ということにしようとするためには、二月、三月にこの上昇率をどのくらいで抑えなければならないということになるのでしょうか。まず、この点を第一点としてお伺いをいたします。
  166. 河本敏夫

    河本国務大臣 六・四%という当初の見通しを七%程度に修正せざるを得なくなったことに対しては、大変遺憾に存じております。幸いに、最近は比較的安定の方向に進んでおりまして、全国で見ますと十二月は七・一%、一月は七・四%、東京区部で見ますと十二月は六・八%、一月が六・九%、二月が六・八%、こういう水準で推移をしております。  なお、年度末までの間最大限の努力を重ねてまいりたいと思いますが、いまお尋ねの件につきましては政府委員から答弁をさせます。
  167. 廣江運弘

    廣江政府委員 全国の確報が出ておりますのは、まだ一月まででございます。二月は東京都区部が出たばかりでございまして、二月の全国確報がどうなりますかは、二月下旬の数値をも含めてこれからの推移ということもございます。それから、三月はもちろんこれからの問題でございまして、先生のいまの御質問お答えいたしますのには、いろいろかなりの前提を置かなければいけません。  そこで、直接のお答えにならないかも存じませんが、一月の確報をそのままにいたしまして、レベルが二月、三月と同じであった場合にどうなるかということを、これは見通しとか見込みという意味ではございませんが、そういう計算を単にいたしますと、これは七・七程度になります。それから二月は、先ほども申し上げましたようにまだ東京都区部、しかも速報の段階でございますので、これをもって云々することもいかがかと思いますが、仮に二月東京都区部並みに全国が推移するということを前提にいたしますと、そういう可能性もかなり少ないとも思いますが、そういうことで仮に前提いたしてやりますと、七・八程度になろうかと思います。
  168. 小林政子

    ○小林(政)委員 一月二十六日の閣議で「昭和五十六年度経済見通し経済運営基本的態度」をお決めになったわけでございますけれども、五十六年度は実質国民総生産五・三%、消費者物価は五・五%と発表をいたしております。実態は、五十五年度が七・七%から八%にどうも近づくのではないかというようなことも言われております中で、来年度物価見通しを、初めから修正を予定して決められたのかどうなのか、非常に疑問を持つわけでございます。この点についての長官の御答弁をお願いいたします。
  169. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十六年度消費者物価見通しは五・五%と想定をしておりますが、五十六年度物価政策は、私は比較的やりやすいと思っております。  その一つは、御案内のように、卸売物価は数カ月たちますと消費者物価影響してまいります。卸売物価が最近は非常に鎮静化しておりまして、昨年の四月は年率に直しまして二四%ぐらい急上昇しておりました。ずっと二〇%台が六月まで続いておったのであります。しかし、最近は、一月には六%台、二月上旬は三%台と急速に鎮静化をいたしておりまして、五十六年度卸売物価の平均はおおむね四%前後ではなかろうかと思っております。  そういう面からくるところのよい影響、それからまた五十五年度は、電力ガスという大口消費者物価への影響がございまして一%以上も消費者物価を押し上げておりますけれども、五十六年度はこういう大口がございません。また最近、石油価格も安定の方向に行っておりますので、五十五年度のようなイラン・イラク戦争によるような急上昇はまずないのではないか。これは国際的な情勢にもよりますので確定的には申し上げられませんが、大勢としては背景はだんだんと整いつつある、こういうことで五十六年度目標というものは達成できるであろう、このように考えております。
  170. 小林政子

    ○小林(政)委員 物価上昇という問題は、昨年は大変だったけれども五十六年度は何とか抑えることができるのではないかということが言われたわけですけれども、私は、五十五年度物価上昇傾向を、経企庁から予算委員会に提出されました資料をもとにして調べてみました。  そうすると、結局大企業性製品と中小企業性製品との物価上昇率というものを見てみますと、消費者物価では大企業製品が九・三%、それから中小企業製品が六・七%、総平均で八%上昇したと言われている中で、やはり消費者物価の面を見ても、大企業の製品が消費者物価に非常に大きな影響を与えているということがはっきりとされております。  また、大臣いま卸売物価の点についても触れましたけれども、結局は大企業製品が卸売物価で一五・三%、中小企業製品が一〇・七%となっておりますので、これも卸売物価の面から見ましても、大企業製品が中小企業製品を大幅に上回っている。  専門家の人の話などによりますと、こういうことは一九七五年以来五年ぶりの事態であるというようなことも言われておりますけれども、私は、昨年の物価を押し上げた主要な要因は、一つには、何と言っても卸売物価を中心とする大企業製品の物価値上げではないか、このように思いますけれども大臣、この事態をどのように認識をされますか。また、昨年来のこうした教訓というものをくみ取って、結局今年度はどうされようとしているのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  171. 廣江運弘

    廣江政府委員 大企業性製品と中小企業性製品についてその動向を見ますと、卸売物価消費者物価とも両製品はおおむね並行した動きを示しておりますが、中小企業生製品の方がやや上昇傾向が高い。しかし、ここ一年近くは、卸売物価消費者物価とも大企業性製品の上昇率が上回っております。  この理由を考えますのに、両製品の指数作成に採用されております品目を見ますと、大企業性製品では乗用車とか家電製品等、生産性上昇によるコストダウンが図られやすい品目が多いのに対しまして、中小企業性製品では食料品や繊維製品等比較的コストダウンが図りにくく、逆に人件費上昇によりますコスト圧力の強い品目が多い。このため、過去におきましては、中小企業性製品の上昇が大企業性製品をやや上回っていたものと考えられます。しかし、ここ一年近くは、大企業性製品である石油製品等が大幅に上昇したため、大企業性製品の上昇率中小企業性製品より高くなっておると思われます。ちなみに、消費者物価の大企業性製品から石油製品、それに広義の公共料金に入りますが、たばこというものを除いて上昇率を見ますと、最近時点におきましても中小企業性製品の上昇率の方が高くなっております。
  172. 小林政子

    ○小林(政)委員 いろいろといまおっしゃいましたけれども、具体的に政府から出された資料に基づいてこういう結果が出ているということを私は申し上げたわけでございまして、この事態について具体的にどのような認識をされるのかということは、やはり政府当局としても重要な問題だろうと思います。  またもう一つ、物価をつり上げている主要な原因は、やはりこれも昨年の問題と絡むわけでございますけれども公共料金値上げ、これが非常に大きな問題であったと思います。  まず最初に、お願いをしてございました五十三、五十四、五十五年の公共料金値上げ消費者物価への影響はどのような推移であったのか。また、五十五年の電気、ガス値上げ影響というものはどのような事態になっていたのか、お伺いをいたしたいと思います。
  173. 廣江運弘

    廣江政府委員 五十五年から申し上げますが、五十五年度公共料金消費者物価上昇率に占めます寄与度は、現在までの段階で二・二程度と考えております。そのうち電気、ガス関係がほぼ一・一%かと思います。  次に、五十六年度見込みはどうかということでございますが、五十六年度、いま政府予算におきまして考えております予算関連公共料金物価上昇に与えます寄与度は〇・三%程度でございます。
  174. 小林政子

    ○小林(政)委員 結局、いまの御説明ですと、五十五年度に限っての御説明でしたけれども、五十三年度物価への寄与度〇・九%、五十四年度は〇・八%、五十五年度が二・二%程度ということは、少なくとも五十四年度の〇・八%よりも五十五年度は二・五倍も影響があった、これは大変なことだったということが言えるのではないかと私は思います。こうした問題について、やはり政府は重大な責任をおとりになる必要があるのではないか。  公共料金の押し上げの目玉の一つは、電力料金、ガス料金の大きな値上げが押し上げてきている要因でもあったということが言えると思いますし、昨年五〇・八%値上げされた電力料金、あるいはまた平均四五・三%値上げをされました大手三社のガス料金、これが結局家計を圧迫し、全国勤労者世帯で見ると、家計消費支出の名目では光熱費だけが飛び抜けてこの時期高まっているのです。これは結局前年四月に値上げになりまして、大体二カ月というから六月を見てみますと、四二・四%家計支出がふえている。光熱費だけがふえているのです。十月を見ますと三五・三%。東京電力の有価証券報告書を見ますと、五十五年四月から九月期で、電灯の販売電力量は前の年に比べて逆に少なくなっているのです。それは、やはり主婦ができるだけ小まめにスイッチを切るというようなことの一つのあらわれであろうと思います。ところが、東電の電力料金の収入の面を見てみますと、今度は逆に三七・六%もふえているのです。こうした中で、電力九社のこの九月期の決算の利益、これも新聞で報道されておりますし、また有価証券報告書の中にもはっきりとあらわれておりますけれども、四千七百三十億円、前年比六・一倍の大もうけ。いま国民がこんなに生活が苦しいと言っているときに、ひとり電力会社がこのようなことが許されていいのでしょうか。毎日毎日スイッチを切るために努力をしているこういう主婦に対して、私は、こうした政府方針は、この時点では明らかに政府主導値上げであったと言わなければならないと思いますけれども通産大臣、この点について、所管大臣としてどのような見解をお持ちなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  175. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 私も、昨年の電気料金、ガス料金の改定作業に従事いたしました一人でございまして、現在もその職にあるわけでございますが、ただいま小林先生からお話のありました点につきましては、私どもはこういうふうに考えております。  昨年、電気料金、ガス料金を改定いたしました最大の理由は燃料費の高騰ということでございまして、その他もろもろの事情がございますけれども、何といいましても、一昨年の秋ごろから起こりましたイラン政変に伴います大幅な原油代金の値上げ、こういったものが公共事業にどういう影響を与えるかということを私どもは大変心配したわけでございます。  いわゆる電気料金、ガス料金といった公共料金につきましては、原価主義ということを法律上のたてまえにいたしておりまして、その時点におきます原価主義ということをベースにいたしますと、当然にあのような査定の結果になったわけでございます。たまたま電気、ガスともにほかの要素が働きまして、つまり電気で申し上げますと、たとえば大変な豊水であったという問題もございますし、あるいは原子力発電所の稼働率も上がった等々の理由が重なりまして、いまお示しのような数字が出たわけでございまして、これは一過性のものでございます。私どもといたしますと、あの料金の算定の結果、不当な利益が出たというような受け取り方をされますと大変困るわけでございます。そういった感じを持っておるわけでございますので、あくまでも原価主義にのっとってやったつもりでございますし、今後もそういった公共料金の取り扱いにつきましては同じような方針で臨みたいというふうに考えておる次第でございます。
  176. 小林政子

    ○小林(政)委員 通産省は、原油が値上げしたのだから、慎重な態度でやったけれどもやむを得なかった、これは一過性のものである、こういうようなことを言っていらっしゃるわけです。しかし、一過性であろうが何であろうが、これは本当に大きな負担で、どの地方自治体の人たちも、赤字の主要な原因はやはり電力料金の値上げにあったということを口をきわめて言っています。もちろんそれだけではないと思いますけれども、それが主要な原因であるということを言っておりますし、自治体財政が圧迫されてきているという点で大変苦しいということを訴えております。  通産省の査定は厳密に原価主義のもとにやったのだ、こういうことを言われています。私は、時間がないので中身をはしょりますけれども、為替レートの問題一つをとりましても、円高基調の中でいま相当為替差益が出ているものだと思いますけれども、実際にはどの程度の為替差益が出ているというふうに調査をされたのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  177. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 電力九社の中間決算によります利益の額は、先ほど先生がおっしゃいました約四千七百億でございますが、そのうち、いわゆる為替差益と思われておりますのは五百億というふうに私どもは把握いたしております。
  178. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、いま国民の立場から考えますと、自然に利益の中に上積みをされてきているこういう為替差益というものは、当然国民に還元をすべきではないか、このように思いますけれども、その点についてお伺いをいたしたいと思います。  また私は、今日の不況の原因というのは大企業製品の値上げにあったとか公共料金値上げにあったということを、いま具体的に資料に基づいて明らかにしてまいりましたけれども、やはり何といっても、こういった結果個人消費の落ち込みにあった、こういうことが言えると思います。  物価上昇が賃金の伸びを上回って、実質賃金が〇・九%も目減りをしている、こういうことは昭和二十七年の調査開始以来初めてということでございますけれども政府はこの問題等についても、国民の購買力を高めるという観点から、具体的には、課税最低限を引き上げるとか、あるいは物価を抑制する、あるいは為替差益を、還元をも含めて図っていくべきではないかというふうに考えますけれども、これらの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  179. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 最初に、先ほど御質問のございました差益を還元すべきじゃないかという問題につきましては、私どもは、還元の方法は幾つかあると思います。直接還元の方法もございましょうけれども、電気料金、ガス料金といった公共性の強い料金については、できるだけ長く据え置くということが一つの還元の方法でもなかろうかということでございまして、現時点におきましては後者の方の考え方をとっている次第でございます。
  180. 河本敏夫

    河本国務大臣 実質賃金が、先ほどお述べになりましたように、最近はマイナスになっております。最近の統計ではマイナス〇・九と、こういうことでありますが、これが景気の足を引っ張っておることは事実であります。個人消費が落ち込んでおる一つの大きな背景であろう、こう思っております。  そこで、いま政府の考えておりますことは、物価対策は単なる経済問題ではなく、当面最大の政治問題である、このように心得まして、物価対策には今後も引き続いて全力を挙げていきたい、このように考えております。
  181. 小林政子

    ○小林(政)委員 時間の関係がございますので、河本長官結構でございます。  次に、私は、中小企業倒産防止、この問題を含めてお伺いをいたしたいと思います。  中小企業の実態がいまどんなに深刻な事態にあるかということは、この委員会の中でも各委員とも述べてこられましたけれども、負債額が一千万以上で一万七千八百八十四件が昨年末倒産しているとか、あるいはまたこれは戦後第二の記録になっているとか、あるいはまた七五年九月以来五年五カ月、六十四カ月もこういう事態が続けられているとか、あるいは中小企業の経営基盤がいまどんなに揺らいでいるか、こういう深刻な事態がきょうもいろいろな人たちから述べられました。  私は、この中小企業の問題について予算面で見てみましたら、対前年比で二・六%の増加、一般会計歳出総額のわずか〇・五三%。こういうことで本当にいいんだろうか、このように思います。現在の中小企業関係の経営状態を打開するためにも、私は、抜本的な倒産防止対策も含めて新たな対策が必要なのではないかと、このように思いますけれども通産大臣見解を伺いたいと思います。
  182. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 中小企業倒産が非常に多い、これはまさしくそうでございます。私どももこの対策には頭を痛めているわけでございますけれども、新しい五十六年度予算におきましては、中小企業資金の拡大、それから中小企業共済制度の設置、あるいは中小企業倒産防止の相談室、それから保証制度の確立という、いろいろな手当てをやっておりますし、全体の予算も、中小企業予算は御承知のように二千五百億円程度計上しておりますし、財投がこれまた三兆五千億ぐらいあるわけでございますが、財投関係政府三機関の融資の拡大につながると同時に、これら条件を緩和するとかいう措置をとると同時に、中小企業の体質強化制度、そういうものも活用いたしまして、これが対策に万全を期さねばならないというふうに思っております。
  183. 小林政子

    ○小林(政)委員 中小企業体質強化資金助成制度というのがございますね。これは五十六年度から不況対策としてこの新たな項目が設けられて、三月期決算が大変だというような事態の中でだろうと思いますけれども、三月からの繰り上げ実施といいますか、本来であれば五十六年度予算は四月から発足をするわけですけれども、三月に繰り上げ実施をしてこれを実行に移したいというようなことが新聞にも報道されておりますし、私どもも、やはりすぐにこれはやらなければならないのじゃないか、このように考えておりますけれども、これは通産大臣中小企業庁長官お答えをいただきたいと思います。
  184. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、倒産防止第一でございますので、現在検討をいたしております景気対策の一環といたしまして、特別相談室で取り上げました案件で金融の手当てが必要なものというものを新たに体質強化資金の制度の適用対象にしようということでございます。これは、本来ですと五十六年度からそういう適用対象を広げるということでございますけれども、その適用対象を五十五年度の現時点におきまして繰り上げ実施を図ろうということについて検討をいたしております。
  185. 小林政子

    ○小林(政)委員 検討してくださるのは大変結構だと思いますけれども、検討の結果できなかったということのないように、むしろ中小企業庁が本当に本腰を入れてこの実現のために努力をすべきであると、このように思います。  それからもう一つ、中小企業庁がアンケート調査をされましたね。このアンケート調査を見てみますと、最近の国の金融政策及び金融機関の窓口の問題について問うているわけですけれども、金利の引き下げ幅や時期など、大半の企業が不満としているという数字が出ております。これは数は少ない調査だと言われておりますけれども、それでも、金融政策について不満とするものが九四%です。私は満足ですという人は六%にすぎません。また、金融機関の窓口での対応についても、厳しくなった、こういう人が五八%ですか、というふうに答えていますし、現在の金利水準についての見方も、引き下げるべきだ、こういう答えが九九%、そして、引き下げる必要がないというのは、どうして九九%なのにゼロということになるのかちょっとよくわかりませんけれども、このアンケートでは、引き下げるべきだというのが九九%で、引き下げる必要なしというのがゼロになっております。また、必要とする引き下げ幅ということで、一%から二%の間を八三%の人が希望している。こういうことを考えますと、やはり当面の問題は、一つには金利の引き下げ、ここにあるのではないか、このように思いますけれども中小企業庁、具体的に御答弁をいただきたいと思います。
  186. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 金利の引き下げが非常に強く、また中小企業救済の大きな糧になるというふうに思います。
  187. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 いま御指摘ございましたようなことにつきまして、そういう生の声を十分踏まえまして新しい事態の局面の展開を図るべきである。そういうことによりまして、中小企業の振興を図ることが当面の景気対策にもつながる問題でもございますし、私どもは、いまのようなデータが出てまいっておりますので、これを関係方面にもお伝えをいたしまして、適確なる対処をしていただきたい、このように思っております。
  188. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、金利問題で、昨年の十一月二十八日段階でございますけれども、中小公庫、国民金融公庫、商工中金の政府系三機関の現在の平均貸付金利、これが結局八・八%でしょう。全国銀行の昨年十二月の約定平均金利、これは総合で八・二七四ということになっています。政府系の三機関よりも具体的には〇・五%低くなっている。これでは、資金繰りが苦しい、あるいは銀行からなかなか相手にしてもらえない、こういう中小業者を本当に救済する三機関の役割り、こういうものが果たせるのかどうなのか、非常に疑問に思っているところでございますし、この三機関の対策などについてどのような見解をお持ちか、お伺いをいたしたいと思います。
  189. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答え申し上げます。  いまお話ございました全銀行ベースの約定金利の平均でございますが、これは恐らく残高ベースでございますので、過去の安いものも高いものも込みになっておりますので、八・二数%ということでございます。現在私どもが中小公庫あるいは国民金融公庫の基準金利としてとっております八・八%のものは、いわゆる新規の貸し出しにおきましてプライムレートと同一レベルということで八・八%を適用いたしておりまして、その趣旨は、やはり大企業でも借りられるような金利をぜひ中小企業においても実現したい、そういう趣旨で、プライムレート八・八%並みというのが現在の新規借り入れの金利レベルになっている次第でございます。
  190. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、やはりそういう思惑というものもあるのでしょうけれども、同じ政府系金融機関の輸銀だとか開発銀行だとか、こういうところの金利とも比較して、中小企業の三機関との比較もしてみますと、結局時間がないので中身には余り入れませんけれども、七九年の平均利回りを比較してみた場合、輸銀が六・一四%、開銀が七・二四%、中小公庫が七・三六%と、これもやはり中小公庫が高くなっているのです。  そして、結局これはどういうところに原因があるのかというと、良質なといいますか、一般財源、産投会計、こういうものが、額はちょっと時間の関係で言えませんけれども、相当注ぎ込まれているのです。この率によって金利が安く借りられるあるいは高くなる、こういうような事態が起こっているということは、やはりこうした中で、いまの時点で、むしろ出資をもっと大胆に、大幅に三金融機関に対してふやしていくべきではないか。このことなくして、本当の意味での金利の引き下げ、これを図るということはむずかしいと思います。  私は、昨年の委員会の中でも質問をいたしたのを記憶いたしておりますけれども、いまの政府のいわゆる運用部資金の貸し出しと三機関の一般の貸し出し、三機関金融公庫からの貸し出しの金利と比べてみますと、本当に差が一%以下なんですね。これでは、三機関の貸し出し金利をもっと下げろと言ったって無理なんです。優良な政府資金を三機関に注ぎ込むということが、金利を下げていく上では決定的に大事だろうというふうに思いますけれども、この点について最後にお伺いをいたしたいと思います。
  191. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 御承知のように、財投から出る三機関の金でございますので、一般会計からそれを注ぎ込んだり、新しくどういう方法で注ぎ込むのか具体的にはわかりませんけれども、私どもは、いまのシステムで十分だと思っておりますし、金利は別途またいろいろな点でバンクレートなどが下がってくれば、またこれに並行して下げざるを得ませんし、そういう金利の操作はしなければならないと思っております。
  192. 小林政子

    ○小林(政)委員 次に、私は、工技院の方にお伺いをいたしたいというふうに思います。  御承知のとおり、ことしは国際障害者年ということで、障害者の社会への全面参加、このことがそれぞれのところで強く取り組みがされてまいりました。私は、とりわけ身体障害者の働く場を確保する、こういうことが非常に大事になってきているというように思います。  こうした情勢の中で、この面を技術面でバックアップをするといいますか、こういうことで通産省工業技術院が作業用三次元の車いすの研究開発をされたということをお聞きいたしております。それは一体どのような機能を持つもので、どのような役割りを果たすものなのか、そしてまたいつごろに完成し、量産体制には具体的にいつごろ入るのか、またどのぐらいの価格で障害者が手に入れることができるのか、こうした総合的な問題について、大変明るいニュースでございますので、少しお話しを願いたいというふうに思います。
  193. 石坂誠一

    ○石坂政府委員 御指摘の三次元の車いすの研究開発につきましては、現在身体に障害を持っておられる方に生きがいのある就職の機会を創出しようということで、私どもとしては非常な熱意を持ってこれの開発に当たりたいということで今般の予算に計上しておるわけでございますが、実は下肢機能補助装置というテーマがございまして、その一部としてこれを考えておるわけでございます。  内容でございますが、交通事故だとか脳性麻痺等によります下肢の不自由な方の就業に当たりまして作業を容易にするということで、前後、左右、上下自由に移動することが可能なように、かつ正確に移動の動作をコントロールできるような、そういう三次元の車いすの研究開発をしようということでございます。この研究開発に当たりましては、私どもだけではなくて、厚生省とか労働省とかあるいは学識経験者とかユーザーの方々と密接に連携をとりまして進めさせていただきたいと思うわけでございます。一応いまのところ四年の歳月を予定しておりますが、できれば百万円ぐらいのもので仕上げていきたいというように考えております。
  194. 小林政子

    ○小林(政)委員 大変喜ばれている問題でもございますので、技術面から積極的にそういう取り組みを強めていくということが時宜にふさわしいものではないか、このように思っております。  時間の関係で、通産省、現在新庁舎の建設が進められておるようですけれども、これに対しても身障者への特別な配慮というようなことがされているのかどうか、この点についてもお伺いをいたしたいと思います。
  195. 柴田益男

    ○柴田(益)政府委員 お答えいたします。  現在新庁舎の建設に当たっておるわけでございますけれども建設省さんと相談いたしまして、スロープとかあるいは玄関の自動とびらあるいは身体障害者用便所等の設置につきまして十分配慮しているところでございます。
  196. 小林政子

    ○小林(政)委員 それでは先へ進みますけれども、同じ身障者の立場の問題でございますけれども、身障者雇用促進法というものに基づいて、民間企業の場合、身障者の法定雇用率というものは一・五%が適用されておりますけれども、千人以上の大企業の雇用率というのはきわめて低いというふうに言われております。これが〇・九四%であって、未達成の企業が八一・五%にも上るということが予算委員会の中でも問題になりました。私は、こうした中で、大企業に対しても、労働省任せということだけではなく、やはり積極的に取り組みができないものかどうかということと、とりわけ通産省が所管をいたしております公団だとか事業団あるいは特殊法人、こういったものが具体的にどのようになっているのか、こういう点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  197. 柴田益男

    ○柴田(益)政府委員 お答えいたします。  身体障害者の雇用状態につきましては、法律に基づきまして毎年六月、年一回労働大臣に報告しているところでございますが、昨年六月の報告によりますと、雇用率一・八%の対象になります当省所管の特殊法人は十一ございますが、昨年の秋二つ新しく発足いたしましたので、事実的には九つが対象になります。そのうち一・八%の雇用率を達成しているのが三法人でございまして、残り六はまだ未達成というのが現状でございます。
  198. 小林政子

    ○小林(政)委員 私も電話等を通じて幾つか聞いてみましたけれども中小企業信用保険公庫などはやはりこの達成をされているわけでございますけれども、比較的人員なども多い中小企業金融公庫などいまだに一・〇九%というようなことで、未達成というようなことなども明らかになってまいりました。要は、できるだけ早くこういう問題についても達成率を高めてもらいたい。こういうことが必要だろうと思います。  それからもう一つの問題は、これも通産省が直接の所管ではないけれども、公益事業であります電力会社、ガス会社、こういうところの実態はどうなっているのか、森山長官お答えをいただきたいと思います。
  199. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 大手ガス会社の実行状況を申し上げますと、五十五年六月時点におきまして〇・七一ということでございまして、残念ながら大変低い数字になっております。それから、九電力は、同じく五十五年六月時点におきまして一・二二という状況でございます。  ガスが特に低くなっております理由はいろいろございますけれども、一般事務関係で職場を与えるべきではないかという気持ちをやはり持っておりますので、私どももそういう観点でできるだけ懇請をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  200. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題も引き続いて努力をするようにしてもらいたいと思います。  私の調査によっても、具体的な五十五年十二月末の雇用率を調べてみますと、関西電力が〇・九、東京電力が一・〇三で、九電力の中で一・五%以下であるということがはっきりいたしておりますし、また法定雇用率一・五以上にするためには、九電力の場合には合計三百三十六人程度の人を雇用してもらえば達成するのではないか、こういうことも明らかになってまいりました。この点はぜひひとつ、公益事業でもございますので、取り組みを一段と強めて雇用率を高めるようにしてもらいたい、このように思います。  それからあともう一つ、先ほど最初に触れた問題でございますけれども、労働省の資料などによりますと、企業別に見ると、化学工業だとかあるいはまた石油化学だとか薬品だとかフィルムだとか、こういういわゆる大企業と言われるところが非常に少なくなっているわけです。これはそれぞれの企業にいろいろな事情はあるのかもしれません。だがしかし、こうした中で障害者の社会参加という課題について、とりわけ大企業の社会的責任が現在問われているという情勢の中から、通産大臣、労働省の管轄ではございましょうけれども、指導官庁である通産省も、この問題について労働省と一緒になって積極的な取り組みを強める、こういうことが必要ではないかと思いますけれども、決意のほどを伺って、私の質問を終わります。
  201. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 小林委員指摘のように、もちろん私どもも労働省と一緒になってこの問題に対処していきたいと思います。
  202. 野中英二

    野中委員長 伊藤公介君。
  203. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 すでにアメリカのレーガン政権がスタートされまして多少の時間が経過をしておるわけでございますが、大統領の経済演説もあり、日本とアメリカとの通商関係もいろいろな面から問題も出てきておりますけれども、カーター政権に対してレーガン政権の特に通商、経済姿勢について、日本側として田中通産大臣はどういう姿勢で今後日米関係の通商問題に取り組むか、まず御決意を伺いたいと思います。
  204. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 アメリカのレーガン新政権の経済政策いかんということでございますが、国際的な問題でございますし、日米間の貿易あるいは経済問題だけじゃなくて、アメリカの問題は即世界に響く問題でございます。しかし、アメリカも保護貿易主義はとらず開放経済、自由主義経済を標榜しておりますので、その点については前のカーター政権と変わりない経済政策をとっていくんじゃないかというふうに思います。
  205. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 当面最も問題になっておりますし、またアメリカにとってはかなり深刻な問題になっております日米の経済摩擦の中で、自動車の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  アメリカ側のブロック通商代表は、日本側との交渉の中で、アメリカの自動車産業が置かれている実情あるいは衰退をしてきた原因というものを述べられています。アメリカ側の生産性の低下という問題が国内産業問題に非常に重要な問題だ、自動車産業の衰退はアメリカの国家安全保障を脅かすもので、日本はその点に関心を持ってくれるはずだが、アメリカの自動車産業の立て直しのためには、労働者の欠勤日数の問題、政府の規制の撤廃、設備投資刺激のための税制措置などが必要で、まずその期間は五年はかかるであろうということを実は指摘をされているわけであります。  実はITCの表決の結果以来、いろいろ私どもアメリカの国内のこうした自動車産業を含めて経済状況を推察いたしますに、むしろ余り消極的ではなくて、アメリカ自身のある意味では経済的な反転攻勢の時期までいろいろな方策を考えて、保護貿易的な短絡的な方法をとらないという姿勢を貫いているようにうかがえます。そういう意味では、われわれの側でもそれにこたえなければいけないし、かなり多くの情報といろいろな折衝が日米間の中にあるやに伺っておりますし、そうした機会もずいぶん重ねられてきたと思いますけれども、しかし、どうも双方の中に大事なところで理解ができない、理解をし合えないでいる部分があるとすれば、これは長い日米関係あるいは特に通商関係においては非常に重要な問題になるのではないかと思っておりますが、アメリカの自動車産業の衰退の原因はどういうところに問題があると大臣はお考えになっていらっしゃるのか。いま大来代表がアメリカに滞在しておりまして日米の自動車問題を論議され、またこれから大臣も訪米をされ、総理も訪米をされて、これらの一連の問題をいろいろ相談をしていく上で支障にならない範囲内で、大臣はいまアメリカのこういう経済的な状況をどう認識をされているのか、ひとつお考えを伺いたいと思います。
  206. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 日米の貿易量から見まして、日本の対米輸出というものあるいは向こうからの輸入というのは、日本の総貿易量の四分の一あるいは三分の一近くあるわけでございまして、ここで摩擦が起こらない方が不思議なことでございまして、技術先端産業とかあるいは技術を競うとか、そういう一つの物を売ったり買ったりするわけでございますので、競争の論理がそこには発生し、どうしても摩擦が起こる。摩擦が全くないようになるということは、私は、努力はしても不可能じゃないかと思います。これは相互に信頼を持ち、相互に理解をする寛容の態度がまた必要じゃないか。過去の例を振り返りましても、繊維問題でも非常にもめましたけれども、結論を得て穏便にいく方向で済ませましたし、その後テレビの問題あるいは鉄鋼の問題、こういう問題も当面非常にシリアスな問題でありましたけれども、みごとに両国は克服してまいっております。この自動車の問題につきましても、非常にエキサイトした厳しい態勢あるいは厳しい状況ではございますけれども、私ども、日米関係が大きく政治問題に展開してひん曲がらないように十分気をつけて努力していくならば、この自動車問題も克服できると思いますし、まだ私の渡米というのは正式には決まっておりませんけれども、そういうことでアメリカに行かなければならない場合は、誠心誠意日本の立場も主張すると同時に、向こうの言い分も聞いて、何とかうまい解決法を見出すべく努力していきたいと思います。
  207. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 大来代表がいま訪米をされておりまして、きのうのニュースによりますと、はっきりした選択をアメリカが指示をしたわけではないと思いますが、少なくともどういう選択の方法があるか、日本側がどういう努力をしてくれるかという、かなりはっきりした選択の方法が示唆されてきているようにうかがえます。大来代表との会談の中では、保護貿易色の強い議員立法の成立というものはできるだけ避ける、政府間の交渉で、つまり政治的な決着をつけるということをほぼ合意をした、こう伝えられておりますが、事実はそうでしょうか。あるいは、どのように日本側としてはお考えになっているのでしょうか。
  208. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 大来代表が日本を立つ前に、私は委員会の合い間を見まして十分足らずお会いいたしましたが、本人は私には、向こうに行って情報を集めてきましょう、経済問題についてそうしましょうということで参りましたので、御承知のようにまだ日本には帰っておりませんので私も十分な報告は聞いておりませんけれども新聞で読む程度で、本人が帰ってきて具体的な話し合いの内容を聞いた上で、また手を打たなければならないならばそうしたいし、また、いますぐわれわれが活動することもどうかと思いますので、そういうものを材料に組み入れて対米自動車問題、対米経済問題を分析していきたいというふうに思います。
  209. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 大臣お話ですと、大来代表が出発される前に十分間お話をされたというお話でございましたけれども、何といってもいま自動車問題は非常に日米間にとっては大事な問題で、実は私、大変大事な予算委員会のさなかでありましたが、今月の初旬から二週間ほど、ワシントンを切り出しにアメリカのかなり奥地まで参りまして、クライスラーであるとかあるいはフォードの現地の工場も見学をさせていただいたり、関係者のいろいろなお話も伺ってまいりました。  これはもう単に自動車だけの問題ではなしに、先ほど申し上げましたように、やはり日米間の信頼関係にかかわる非常に大事な問題だというふうに思っているわけでありますが、大来代表が当然この時期にアメリカに行かれるということですから、この大きな政治問題を向こうに行ってお話をされるということも、そういう計画もあったのじゃないかと思いますが、何かお話を伺いますと、資料を集めてきてほしいという御指示をされて、向こうで正式なそういう政府代表等の会談をしてほしいとか、そういうことではどうも行かれたんじゃないというように伺っておりますが、これは外務省と通産省とのそういう打ち合わせは十分できていたんでしょうか。ちょっと伺いたいと思います。
  210. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 大来代表との話し合いは先ほど申し上げましたようなことで、大来代表は外務省に属して政府代表となっておりまして、中国にも十日から十二日まで行って、中国の状況を向こうの幹部の人たちと会って得てきた資料は、私どもも参考になっております。  米国に対しましても、やはり資料集めと簡単に申しましても、これは内容は向こうのブロックさんとかあるいはそういう輸出入関係の人、通商関係の人あるいはそういう自動車に直接かかわりある人々と会ってくるのは当然でございますし、資料を集めてくださいと言ったのも、つまり情報というものも含めてのことでございまして、向こうに行って向こうの関係者に会うのは当然じゃないかと思いますし、その点は大来代表の苦労をむしろ感ずるほどで、本人が帰ってきていろいろなことを聞いてみたいと思います。
  211. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 そうしますと、これから具体的な日米の交渉に当然入ることになると思うのです。アメリカ側の政府代表は明らかにされてきているようですけれども日本側の交渉は天谷審議官だというお話もあれば、大来代表がおやりになるというお話もありますけれども通産省としては、日本側の窓口はどなたが代表でこの交渉に当たられるのでしょうか。
  212. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 私の渡米も総理にサゼスチョンをされたわけで、できますならば国会で、予算委員会でも私、答弁申し上げましたが、総理や官房長官あるいは伊東外務大臣などとはっきりしたことは詰めてみたいというふうに思っております。
  213. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 これはもう皆さんでお話をしていただけばいいことですが、一言だけ蛇足でお聞きをしておきたいのですが、田中通産大臣としては、どなたが政府代表でおやりになるのが一番いいとお考えですか。
  214. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 自動車ということでございますので、関連の諸事項はすべて通産省が管理監督をしておりますし、私は通産省がメーンになって、いずれにしても国内の自動車業者に対しても常日ごろ接近してきておりますし、通産省から代表が出るということの方が得策だと思います。そうなれば、大臣である私がそうなるわけでございますけれども、いろいろな問題、外交ルートは外務省だというような見解もあるでしょうから、そういう点は話し合って、結論に対してお互いに何ら異論がないようなことで、一本にしぼりたいというふうに思っております。
  215. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 私は、どちらでもよく双方の意思を伝え合って、この問題が速やかにその壁を乗り越えて、双方の理解のもとに問題がいい方向に進むようにと思っております。  ただ懸念をしていることは、たまたま私、一年生議員でありましたときに逓信委員会におりまして、電電公社の門戸開放の問題をちょうど私ども議論をしておりました。そのときの経験から言いますと、やはり日本側のこうした交渉に対する交渉の仕方が、各省庁ときにはまちまちであったり、あるいはこちらの意思統一というものが十分できないために、もっとスムーズにいくべき問題が交渉の上で必ずしもプラスしないという経験もございますので、ぜひひとつ外務省との間では十分その辺を合意をしていただいて、日本を代表してアメリカに行かれるときには、きちっとそうした双方のいろいろな打ち合わせのもとでぜひ交渉に臨んでいただいて、日本側の意のあるところをアメリカに伝える、またアメリカの真に日本側に要求していることをやはり正しく認識をして対処していただきたいと思うのです。  そこで、大来代表の会談の中で明らかにされてきました日本側の今後の対策、対米輸出の自粛をいまより期間も台数も強める、これが一つ。二つ目には、貿易管理令など日本が自主規制をする。三番目には、輸出秩序維持協定を結ぶ。大体この三点が指摘をされて、そして日本側の自主的な選択をむしろアメリカ側は待つということになるのではないかと思いますが、これはもう双方の会談の中でかなり煮詰まってきていることですから、田中通産大臣としては、現状どういう形でこの問題に対処することが一番日本側としてはいいときょう現在はお考えになっていらっしゃるか、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  216. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 総理の渡米が五月の初めでございますので、時間がないようでかなりあると私は判断しております。特にアメリカはタスクフォースの発表が三月中旬と聞いております。それから、ダンフォース、ベンツェンの二人の上院議員が出しておる法案、これがやはりいま上院にかかっておる段階でございますので、そういうものがはっきりした段階、つまり、これもやはり情報の収集、分析をし得る時間がかなりございますので、そういう懸案のものが発表になってから、そういうものを織りまぜて私ども見解――それから、対アメリカだけではなく、これは私は、ECその他にも通用しなければならないというふうに思っております。  それからもう一つは、対外的なことをやるにいたしましても、国内の大メーカーが多くの車を出しておるわけでございますし、やはりこういう人たちの意見も十分聞いた上で、その結論の材料、資料にしなければなりませんし、そういう観点を考えますと、いま早急にじたばたするのはどうかと思いますし、そういう資料を得た上、そしてまた業界の意見、これもまた非常にむずかしいところで、変にしますと、国際的にも、アメリカは独禁法というものが日本よりよりシビアでございますし、日本におきましても、やはり私どもが行政指導という名のもとでいろいろやっておりますけれども、下手をすると独禁法のようなものにもかかるおそれもありますし、事態は簡単なようでいろいろな諸要素を持っておりますので、そこら辺は十分踏まえて、総理の行く前に、渡米する前に結論を得るような努力をしていきたいと思います。
  217. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 アメリカ側の姿勢は、ITCの決をとられたときの結果でも、われわれの方とすればほっとしたわけですけれども、むしろアメリカ側の姿勢というものを逆に評価をしたわけでありまして、今度も輸入制限立法というかなり強硬な手段もあるのではないかという非常な心配を持ってきましたし、なお微妙なところにいるわけですけれども、そういう強硬手段を避けてアメリカ側は――現実にアメリカの自動車産業が非常に窮地にあるということは間違いのないところでありまして、工場に訪ねてみれば、フォードの工場が閉鎖をしていたり、あるいはクライスラーの工場に行ってみれば自宅待機をしている労働者がいたり、あるいは末端労働者の中には、もうとにかくこの会社で働く意欲を半分失っているのではないかというような状況を見たり等々いたしますと、やはりアメリカの自動車産業というものは非常に深刻な問題を抱えている。にもかかわらず、日本に対してそうした強硬手段をとらないということをやはりわれわれは理解をして、それにはこたえなければいけないと実は思っているわけであります。最終的に何かもう金づちか何かでたたかれると、はっと気がつくようなところがどうも日本側はあるわけでありまして、そうしたことは、すでにいま申し上げたような項目がかなり煮詰まってきているわけですから、それに向けて、会談によってどうするということではなくて、いまの段階、アメリカ側のそうした努力にわれわれも直ちにできるだけこたえていくということが、長期的に見て日米関係の好転につながるというふうに考えておりますので、ぜひ大臣におかれましては、そうした御指示を御検討してお進めをいただきたいということをお願いしておきたいと思います。  それから、会談の中で、アメリカの自動車産業の衰退はアメリカの安全保障を脅かすものだという指摘をされているわけであります。これはもうおわかりのとおり、アメリカの自動車産業は、戦車であるとかアメリカの防衛装備の供給というようなそういう一翼を担っているということもあるわけでありますが、この点については、アメリカ側はそういう指摘もしているわけでありますけれども、天谷審議官あるいは大来代表はまだお帰りでありませんけれども、外務省もお見えのようでありますから、アメリカ側のこういう主張に対してはどういう認識で対処されるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  218. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 伝えられるところによりますと、いま先生のお示しのようなアメリカ側の防衛といいますか国防問題との関連もありというふうなことも、一応伝聞としては聞いておるわけでございます。また、自動車産業がそういう非常に広い意味合いでそういう関連があるということも否定することはできないとも思います。しかし、われわれとしては、自動車産業の問題、自動車産業貿易問題ということで処理するということがいいのだろうと思っております。防衛と関係あるものとして処理するのではなくて、自動車産業自体の摩擦問題、こういうことで処理するのが適当であろうかと思っております。
  219. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 それから、ちょっと大臣にお伺いしたいのですが、日米の賢人会議の報告書の中で、アメリカ側の主張なんですけれども、鈴木内閣への注文の中で、日本市場の開放性を高めよ、この点に関するアメリカ側の苦情を一手に処理する中央機関を設けるべきだという提案をしているわけであります。実は、賢人会議のときの苦情処理機関を設けよという提案は、特にアメリカ側の日本への農産物の輸出というようなことについての提案になっているわけでありますが、自動車の問題を含めて日米の間には、農産物だけでなしにさまざまなこういう通商の問題があるわけですので、せっかくの提案でありますから、こういう問題が起こったらすぐアメリカに飛んでいくというのではなくて、そういう機関をもっと楽な形でつくったらいいのじゃないか。どうも、アメリカという国はわれわれはもう何もかもわかっているのだという錯覚に陥りがちで、われわれがわかっているほどわかっていない部分がお互いにあるのではないかという大変私、懸念があるわけですけれども、こういう機関を設けて、もう少し事務レベルでもあるいはいろいろなレベルの情報を集める機関があったらいいのじゃないかと思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  220. 田中六助

    ○田中(六)国務大臣 日米賢人会の人々の提言は、非常に私は確度の高いものだというふうに思っております。したがって、その中の一つである苦情処理機関と申しますか、そういうようなことは当然あった方がいいのじゃないかという気もいたしますし、通産省でも外務省でも、相互にこの点の研究は事務当局でやってもらおうと思っております。日本はいま輸入残存品目二十七品目ございまして、二十品目が農産物でございます。したがって、こういう問題につきましても徐々に取っ払っていかなくちゃいかぬことではございますし、自分の国が他の国に自由開放を求めて自分のところがそういうことではやはり問題であろうと思いますので、そういう苦情処理機関というものを設けていくのは一つの方法ではないかと思います。
  221. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 いま大臣から御答弁申し上げましたように、諸問題を解決すべきハイレベルの機構あるいはいろいろな行政機構の基本的な枠組みとどう調和をするかということはございますが、検討に値する問題であろうかと存じます。  ただ、日米間におきましては、実は一九七七年に通商問題に関しますところの具体的な苦情処理機関として通商円滑化委員会、通称TFCと申しておりますが、それが設置されておりまして、現在まで二十件ばかりの苦情が取り上げられまして、十八件につきましては円滑な処理が行われているという実情がございます。この辺、問題の性質にもよろうかと思いますが、相当程度の問題はその辺で円滑に処理されているということを補足いたしておきたいと存じます。
  222. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 時間が参りましたので質問を終わりますが、せっかく外務省お見えいただきましたから。  先ほど大臣にも私申し上げましたが、実はきょうの新聞ですが、「政府内で主導権争い」、ずいぶん大きく出ているわけですね。これは外務省と通産省、外務省の方は大来代表が窓口になるのだ、通産省の方は大臣訪米でこの問題は決着をつける、こういうお話のようであります。外務省の皆さんのいろいろな御努力は私も重々承知の上で申し上げるわけでありますが、外国との交渉、会談に臨んでは、少なくともこちら側の双方の意思の疎通は十分して、そしてあくまでも情報収集は情報収集、窓口はどこを窓口にするということでお進めいただきたいと思いますが、外務省の方、一言お伺いして、終わりたいと思います。
  223. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えいたします。  先ほど田中大臣からもお話がありましたように、まず大来代表の訪米について申しますと、これは先方の考え方を聞きに行かれたわけでありまして、交渉をしに行かれたわけではないということがございます。それに対しましてアメリカ側も、輸入制限立法以外の方法がいいというような一般的な発言はございましたけれども、自動車問題に関してまだ方針を検討中であるからという発言がございまして、政府間交渉を始めようというような具体的な話し合いが出たわけではございません。したがいまして、わが方がどういうふうに対処するかということにつきましても、大来代表の帰国を待ちまして詳しい話を聞き、通産省ともよく協議をしまして、わが方の対策を詰めていかなければいけないと考えております。  いずれにいたしましても、今後の対策につきましては、先ほど田中大臣がおっしゃいましたとおり、総理を初め各省よく意見の調整を図りまして協力してまいりたい、このように考えております。
  224. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 終わります。
  225. 野中英二

    野中委員長 これにて通商産業大臣及び経済企画庁長官所信に対する質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十四分散会