○
橋口政府委員 昭和五十五年における
公正取引委員会の業務について、その概略を御説明申し上げます。
昨年
わが国経済は、内外の厳しい状況下にありながら、健全な市場機能にも支えられ、第二次
石油危機を乗り切ることができたと思います。
公正取引委員会といたしましては、競争秩序の維持、
促進を通じまして、
わが国経済の健全な
発展を図るべく、独占
禁止政策の適正な運営に努めてまいったところであります。特に昨年は、引き続き改正独占
禁止法の適正かつ効率的な運用に努め、その定着化を図るとともに、近年
わが国経済に占める非製造業
分野の比重が増大していることにかんがみ、流通
分野における競争阻害要因の解明及びその是正等に努めてまいりました。
まず、独占
禁止法の運用状況について申し上げます。
昭和五十五年中に審査いたしました独占
禁止法違反被疑事件は百六十七件、同年中に審査を終了した事件は六十二件であり、このうち
法律の規定に基づき違反行為の排除等を勧告したものは十三件であります。また、昨年における課徴金納付命令事件は十二件であり、合計二百七十九名に対し、総額二十二億六千三百三十七万円の課徴金の納付を命じました。
次に、認可、届け出受理等に関する業務でありますが、合併及び営業譲り受け等につきましては、
昭和五十五年中にそれぞれ九百十四件、六百五十件、合わせて千五百六十四件の届け出がありました。また、合併等届け出事務の効率的な処理を
推進するため、「会社の合併等の審査に関する事務処理基準」を作成公表し、届け出事務処理の簡素化と重要案件の審査体制の整備を図りました。
事業者団体につきましては、
昭和五十五年中に成立届等千三百十二件の届け出がなされております。また、一昨年、「事業者団体の活動に関する独占
禁止法上の指針」を作成公表し、これと合わせて事前相談制度を発足させましたが、昨年中に同制度に基づき三件の相談があり、これらに対し速やかに回答しました。
国際契約等につきましては、
昭和五十五年中に六千二百九十七件の届け出があり、改良
技術に関する制限条項、競争品の取り扱い制限条項等を含む三百二十七件について、これを是正するよう指導いたしました。
独占的状態に対する
措置に関する業務といたしましては、ガイドラインの別表掲載の事業
分野について見直しを行い、
昭和五十五年九月に三業種を削除して十六業種とし、これら業種について実態の把握及び
関係企業の
動向の監視に努めました。
また、価格の同調的
引き上げにつきましては、対象品目は従来五十六品目でありましたが、
昭和五十五年九月に改定して六十七品目となっております。昨年中に価格
引き上げの理由の報告を求めたものは、自動車用タイヤ・チューブ、インスタントコーヒー、鋼材(七品目)等十六品目でありました。
次に、減産につきましては、粗鋼、小形棒鋼、エチレン、塩化ビニール樹脂及び紙の五業種における減産の実情等について
調査を実施しました。
独占
禁止法上の不況カルテルは鋼船について、
合理化カルテルは合成繊維用染料について、それぞれ一件認可いたしました。なお、独占
禁止法の適用除外を受けている共同行為の総計は、
昭和五十五年末現在で四百九十一件となっておりますが、その大半は
中小企業関係のものであります。
次に、流通
分野につきましては、自動車、出版物、百貨店、大型スーパー、冷凍水産物、
石油製品など十四業種について流通の実態
調査を行い、これらのうち、独占
禁止法上問題のある行為につきましては、その是正に努めました。また、非製造業
分野につきまして、医業その他の自由業の団体による新規開業規制等の問題にも積極的に取り組んだところであります。
政府規制及び独占
禁止法適用除外
分野につきましては、OECD
理事会勧告もあり、
わが国経済における
民間の
活力と効率性を維持
促進していく見地から、その見直しに着手しました。
わが国経済の
国際化、諸外国における独占
禁止法の制定、強化に伴い、海外独占
禁止法施行機関との連携に努めたほか、
昭和五十四年に開催したアジア・大洋州地域独占
禁止政策東京
会議に参加した十二カ国間の
情報交換を
促進するため、
公正取引委員会事務局内にアジア・大洋州独占
禁止政策情報センターを開設しました。
次に、下請代金支払遅延等防止法の運用状況について申し上げます。
下請代金の不当な値引き、買いたたき等の是正を
中心に法運用の強化を図り、一件の勧告を行い、九百六十四件について支払い改善等の
措置を指導いたしました。また、違反行為を未然に防止するため、親事業者団体に対して法遵守の要請を行い、引き続き下請事業者の保護に努めました。
最後に、不当景品類及び不当表示防止法の運用状況について申し上げます。
昭和五十五年中に
公正取引委員会が同法違反の疑いで
調査した事件は千七百十一件で、このうち排除命令を行いましたものは十八件、警告により是正させたものは七百二件でありました。
都道府県の行いました違反事件の処理件数は、昨年一月から九月末までで三千九百三十件となっており、今後とも都道府県との
協力を一層
推進してまいる
所存であります。
また、同法第三条及び第四条第三号の規定に基づく告示の制定につきましては、酒類業及びタイヤ業における景品類の提供を制限する告示並びに「消費者信用の融資費用に関する不当な表示」及び「不動産のおとり広告に関する表示」の合わせて四件の告示をそれぞれ制定いたしました。
公正競争規約につきましては、タイヤ業における景品類の提供の制限に関する規約など八件について認定し、
昭和五十五年末現在における公正競争規約の総数は九十件となっております。
以上簡単でございますが、業務の概略につきまして御説明申し上げました。今後ともよろしく御指導のほどお願いいたします。