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1981-03-17 第94回国会 衆議院 環境委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年三月十七日(火曜日)     午後一時二分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 中村正三郎君 理事 吹田  愰君    理事 水野  清君 理事 野口 幸一君    理事 馬場  昇君 理事 岡本 富夫君    理事 中井  洽君       天野 公義君    玉生 孝久君       畑 英次郎君    山本 政弘君       大野  潔君    木下敬之助君       藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君  出席政府委員         環境政務次官  福島 茂夫君         環境庁長官官房         長       北村 和男君         環境庁長官官房         審議官     石川  丘君         環境庁長官官房         会計課長    廣瀬  優君         環境庁企画調整         局長      藤森 昭一君         環境庁企画調整         局環境保健部長 七野  護君         環境庁自然保護         局長      正田 泰央君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         環境庁水質保全         局長      小野 重和君         通商産業大臣官         房審議官    植田 守昭君  委員外出席者         国土庁水資源局         水資源政策課長 高橋 俊見君         国土庁水資源局         水源地域対策課         長       藤重 邦夫君         外務省経済局国         際機関第二課長 大和田悳朗君         林野庁指導部治         山課長     松本 廣治君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     山本 雅司君         資源エネルギー         庁公益事業部火         力課長     廣瀬 定康君         自治大臣官房地         域政策課長   藤原 良一君         自治省財政局調         整室長     井下登喜男君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   天野 公義君     始関 伊平君   池田  淳君     足立 篤郎君   田原  隆君     倉成  正君   玉生 孝久君     瀬戸山三男君   畑 英次郎君     根本龍太郎君   土井たか子君     石橋 政嗣君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     土井たか子君 同月二十七日  辞任         補欠選任   土井たか子君     野坂 浩賢君   木下敬之助君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     土井たか子君   塚本 三郎君     木下敬之助君 三月二日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     石橋 政嗣君   土井たか子君     大出  俊君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     岩垂寿喜男君   大出  俊君     土井たか子君 同月三日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     阿部 助哉君   土井たか子君     山田 耻目君   木下敬之助君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   阿部 助哉君     岩垂寿喜男君   山田 耻目君     土井たか子君   塚本 三郎君     木下敬之助君 同月五日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     池田  淳君   倉成  正君     田原  隆君   始関 伊平君     天野 公義君   瀬戸山三男君     海部 俊樹君   根本龍太郎君     正示啓次郎君 同日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     玉生 孝久君   正示啓次郎君     畑 英次郎君     ――――――――――――― 三月二日  環境影響事前評価による開発事業規制に関す  る法律案土井たか子君外二名提出衆法第五  号)  水俣病問題総合調査法案馬場昇君外二名提出  、衆法第六号) 同月十四日  特定湖沼環境保全特別措置法案塩出啓典君外  一名提出参法第六号)(予) 二月二十四日  合成洗剤による環境汚染問題等追求及び情報  提供に関する請願市川雄一紹介)(第一三  〇〇号) 同月二十八日  合成洗剤による環境汚染問題等追求及び情報  提供に関する請願中路雅弘紹介)(第一四  〇〇号) 三月十六日  合成洗剤による環境汚染問題等追求及び情報  提供に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第二  〇二二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。畑英次郎君。
  3. 畑英次郎

    畑委員 私は、まず最初に、環境庁の今日置かれている立場といいますか、ちょうど環境庁が発足をいたしまして十周年というような今日の姿ではなかろうかというように考えております。そういう中で、環境庁存在価値といいますか、いろいろ問題が発生しました際にそのかなえの軽重を問われるというような意味合いでの要素が、残念ながら今日までの歩みの中におきましては多かったというように感じておる一員でございますけれども、幸い鯨岡長官におかれましてはとりわけ御熱心な行政に対するお取り組みをいただいておるわけでございまして、この辺につきましては深く敬意を表しておる次第でございます。  これは釈迦に説法でございますけれども、あらゆる分野におきまして、従来の後追い行政から予防という意味合いでの行政要素を非常に強く持っていくべき、持たざるを得ない現況であるというように私は考えておるわけでございますが、そういう中にございまして、何といってもただいま環境アセスメントの問題が、この法案をめぐりまして、今回第六回目というようなことで、各方面、国民各界各層方々それなりの重大な関心をお寄せになっていらっしゃる、かように理解をいたしておるわけでございます。  そういう中にございまして、ただいまこれはいろいろ自民党内における論議がされておるわけでございますが、まず最初に、現況に対します長官といたしましての考え方、あるいはまた、この法案成立に対する意気込みと申しますか、そういうものにつきましてお伺いをしたいと思います。
  4. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 アセスメント法案について御心配をいただいてはなはだ恐縮に思います。結論から申し上げますならば、私は、何としてもこの国会で委員の皆さんの御審議を願って、信頼と権威あるルールをつくりたいと考えております。そしてそのことは、いま御発言にありましたように、国民の大方の希望であることも私は信じて疑わないわけであります。  ただ、この制度ができると、いろいろいま当面問題になっている経済開発経済がちょっと落ち込んでいますから、そして油の問題などもありますから、その方に支障を来すのではないかというような心配も事実あるわけです。そういう心配が自由民主党の中にもありまして、これは議会政治ですから、御案内のとおり政調会長預かりになっていたものが外れまして、それで鋭意御検討いただいているわけであります。一日も早く御検討を終わらせていただいて、ここへ持ってきて、ここで先生方の御審議をいただきたい、もう日夜それを念願し、ただ念願しているだけでなしに、御案内かとも思いますが、私はあらゆる努力をいま尽くしているわけでございますので、願わくば委員方々の真剣な御協力をお願い申し上げる次第であります。
  5. 畑英次郎

    畑委員 長官それなり意気込みといいますか御熱意、そしてまた長官御就任以来の歩み、こういうものによりまして、私はそれなり評価をさしていただいておるわけでございますが、そういう中で、前回と今日の立場といいますか、あるいはまた一つの違いと申し上げますのは、私は、やはり何といっても東京都におきましてこの関係条例が施行された、これは一つの大きな要素を持っておるのではなかろうかというように考えるわけでございまして、そういう中で今日各自治体におかれましては、いささか、国のアセスメント法案に対する取り組みのもたつきといいますか、こういうものに対しまして、しびれを切らすといいますか、あるいはまた従来要綱その他でやっておりますものをはっきり条例でうたう、こういうような動きがあるやに私は伺っておるわけでございますが、そういうような、逆に言いますと各自治体における条例が先行するというようなことによります問題点、これはいろいろ考えられるわけでございます。この辺につきまして、具体的に環境庁さんのお立場では当然自治省とも御協議をなさっていらっしゃるというように考えますが、いわゆる自治体条例の先行しております姿、これを環境庁とされましてはどのように認識され、そしてまたどのような受けとめ方をされていらっしゃるか、この辺をまずお聞かせを願いたいと思います。
  6. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 具体的にどの自治体がどういうことをやっているかという問題については、後ほど局長から細かく御返答させます。  いま先生が、鯨岡それなりに一生懸命やっていると――私、それなり以上なんです。それなりどころじゃないのです。それなり以上に一生懸命やっているわけなんです。そしてこれに対して懸念を――反対とあえて言いませんが、懸念を抱いている人たちの中に、いま先生言われたような懸念条例法律との関係についてどうかというようなことの懸念を持っておられる方もあるのですが、これはお話にもありましたように自治省との間に十分詰めている。去年の五月二日に法案がまとまるまでにはかなりの長い期間詰めた。それでわれわれが考えているのは、これは世間がちょっと誤解をしているのですが、何でもかんでもやろうとしているのじゃないのです。大きな事業で国がやるような事業もしくはそれに準ずる――十二ばかり例示してあるのです。それをやるのですから、それについてのアセスメント手続を決めよう、こういうことなんでございまして、それ以外のものは条例でおやりになればいいというふうに考えておりますので、この点はちょっと考えていただければきわめて明瞭だと私は思うのですが、その点について懸念を抱く向きがあるのです。お話向きは必ずしもいまお答えしたことでなしに、地方ではどういう実情になっているかということのようでございますから、それは局長から返事をさせます。
  7. 藤森昭一

    藤森政府委員 都道府県制度化状況につきましてお答えを申し上げます。  現在、全国に都道府県政令指定市全体を合計しますと五十七ございますが、その五十七団体のうちすでに制度化している団体は、条例によるものが四団体要綱等によるものが十六団体で合計二十団体ございまして、これは全体の三割を超えております。特に、昨年十月東京都のアセス条例制定されました以後の動きとしまして、神奈川県が五十五年、昨年の十月に条例制定いたしておりますし、引き続きまして十二月に千葉県が要綱を、それから本年の二月に埼玉県が要綱を、それからこの三月滋賀県が要綱制定するというふうに、その制定動向は非常に急なものがあるというふうに見ております。このほかに制度化検討中の団体が三十二ございます。したがいまして、この制度化を終わった二十団体検討中の団体を加えますと全体の九割を超えるという状況でございまして、都道府県のうち制度化検討していない県は一県にすぎません。  それからまた、地方公共団体は国の早期制度化を非常に望んでおります。これまでのところ地方公共団体における制度化は、国の法制度化までは要綱で対処するなどというような、まあ情勢を見る動向が見出されたわけでございますけれども、最近の調査によりますと、国の法制度化を待って制度化を進めるという団体の数が次第に減少してまいりまして、他県などの動向を見きわめつつ制度化を進めるという団体が非常にふえておりますことからいたしまして、国の法制化がこれ以上おくれてまいりますと地方独自の制度化が進むことになるであろうというふうに私どもは見ておるわけでございまして、ただいま大臣から御答弁のございましたように、地方も望んでいるわけでございますので、できるだけ早く法制度化を実現いたしまして、国と地方整合性のとれたアセスメント制度の確立に努めたい、かように考えている次第でございます。
  8. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 ちょっとつけ加えておきますが、去年、知事会議がありましたときに、知事の代表の方から、われわれは早くこの法律をつくってもらいたいという話がありまして、総理大臣もそれに答えて、いっときも早くつくりたいという返事をいたしました。それから最近は、知事会の会長という肩書きで東京都の鈴木知事総理に会われてそういう要請をいたしたわけであります。
  9. 畑英次郎

    畑委員 いま局長お話にございましたように、地方自治体ではかなり早いテンポでこの問題の条例化をされつつある、かように私は認識をいたすわけでございます。これはいささか当たりさわりがあるかもしれませんけれども、自治体が先行しまして条例をつくります場合には、たとえば東京都の一つ条例ができた、そうしますと、正しいアセスメントというような意味合いのものは絶えず要求しなくてはなりませんけれども、東京よりもさらに上乗せといいますか、あるいは横出しといいますか、そういう要素を加味して次の道府県等におきましては条例制定をするということで、地方議会の方におきましてもそういうものを要求される。それによって、いびつなと申し上げではいささか当たりさわりがあるかもしれませんけれども、違った要素がその中にだんだん入ってくる心配もあるのじゃなかろうかというように考えるわけでございまして、具体的に申し上げれば、たとえば影響調査項目あるいは諸手続あるいは住民関与の範囲、こういうものに非常にばらつきが見えるといいますか、あるいは本来の法の目指しますものとは違った形のものができつつある。まあ、これが杞憂に終われば幸いでございますけれども、そういうことが心配されるのではなかろうかというようなことも実は私なりに考えるわけでございますが、この辺に対する局長のお考えお答えを願いたいと思います。
  10. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 私からお答えいたします。  いま局長が香ったように方々でもって待っているのですから、条例がどんどんできますと、われわれが対象としているたとえば新幹線高速道路という大きなものをずっとつくる場合に、ここに三つの県があるとすればどうなりますか。ここの条例とここの条例とこの条例とどれを使いますか。それで、それぞれ使わなければならぬということになれば、私は非常に混乱をするだろうと思うのです。ですから、どれもこれもやろうというんじゃないので、高速道路とか新幹線とかいう大きなものは国がやるのですから、もしくは公団がやるのですから、そういうものは指定しておいて、それは国で制度を決めよう、こういうことでございますので、いま先生言われたように、もし法律ができなければ非常な混乱をするだろう、こう思うわけであります。  もう一つは、地方自治体自分の独自の考え条例をつくることに何ら妨げはありません。ありませんが、かがみになるものが何か一つあって、それによってつくりたいという意思もあるやに私も思います。また、それは当然のことだと思うのであります。そういう意味東京都なども、条例をつくる前にせめて国に何かあればそれを基準としてつくりたいな、まあ法律条例関係はそんなものじゃないかとも思いますが、そういう要望のあったこともつけ加えておきたいと思います。
  11. 畑英次郎

    畑委員 たとえば東京都の条例を見ました場合に、先ほども申し上げましたような項目あるいは手続等、いま国でお考えになっていらっしゃるものといささか違った要素が入っておるように承知をいたしておるわけでございまして、さような意味合いにおきましても、ただいま申し上げますとおり、またいま長官がおっしゃったような一つ基準になりますもの、標準になりますもの、よりどころになりますものが一日も早く急がれるというように私は考えておるわけでございますが、他面この法案につきましては、経済界財界筋の方から、残念ながらいろいろ反対の意見が今日におきましても強く言われておる、そういう姿でございます。特に経済不況の中にございまして、先ほどお話がございましたけれども訴訟多発といいますか、こういうことが財界人指摘一つの事項に相なっておるわけでございますが、この辺に関しまして御見解を伺いたいと思います。
  12. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 これは時間の関係もありますから詳細に申し上げようとは思いませんが、私はかつて苦い経験をしたことがあるのです。その経験から、どんな事業でも大きな事業をやろうとするときには、小さくてもそうですが、地域住民関係した事業をやろうとするときには、その地域住民理解協力がなければできない。それで、もしその理解協力を得ないままに強行すればその仕事はまた稼働できない、仮に建物なんかができても稼働できない、そういう信念を私は持っているわけでございます。したがいまして、何としても地域住民理解協力を得るために努力しなければならぬ、そのためにも私はアセスメントを欲しいと思うのです。一部には訴訟が起こると言うのですけれども、これは法務省の方とも十分連絡をとってやった仕事でございますが、考えてみればこれは手続制度ですからだれに権利を与えるものでもないのです。ですから訴訟対象たり得ない。しかし、考えてみれば訴訟というのは何でもできますから、私は訴訟事件がふえるというふうに考えない、減るとも考えない、訴訟事件とは関係ない、そういうふうに考えているわけであります。
  13. 畑英次郎

    畑委員 さらにもう一点、この法令によりまして、従来、各省庁におかれまして要綱その他行政指導の中におきますアセスメントが行われておるわけでございます。今回の法によりまして規制が厳しくなる、上積みがされる。私、大分県が選挙区でございますが、新産都、そういう企業の方々の中におかれまして、ただいま申し上げました訴訟多発、そしてこれ以上に規制が厳しくされたのではかなわないというような意味合いで、私に対しましても、アセスメント法については慎重な取り組みをというお話が再三ございます。この規制上積みという点につきましてお考えを述べていただきたいと思います。
  14. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 われわれは経済開発その他で公害が起こってはならない、かつて苦い経験があるのですから過ちを二度と繰り返してはならないというふうに考えておりますから、必要とあらば規制も厳しくしなければならぬと思います。しかしながら、いまわれわれが考えていることは先生の言われている規制上積みにはならぬのです。現にいまアセスメントをやっているのですから、どこにも規制上積みということはありません。また、ばらばらで対応にちょっと困るということはありますけれども、それこそそれなりにやっているのですから、何もそれ以上の規制をしようというのではない、ただ整理をしようというわけです。どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  15. 畑英次郎

    畑委員 これは少し脱線したようなことになるかもしれませんが、新聞等で拝見いたしておりますと、長官それなりどころではない真剣なお取り組みをされておる。そういう中で、長官余り話がうま過ぎて、逆に言いますと調子がよ過ぎまして、どうもだまされているのではないか、丸め込まれているのではあるまいかという意味合いで、なかなか長官との話し合いに応じないというようなこともちらっと耳にいたしておるわけでございます。これは当然それだけ自信があって、また内容がそういうものでございますから長官自信を持っておやりになっていらっしゃる、かようにまともにとらえさせていただいておるわけでございます。なお、これまた当たりさわりがあるかもしれませんけれども、各省庁間での話し合いができました政府案というものが今日でき上がっておる、そういう実態にはございますけれども、各省から環境庁に対する問題点指摘、そして、言葉は悪いかもしれませんが抵抗といいますか、そういうものもあるのではなかろうかというようにも考えるわけでございます。あるいは発表しにくいかもしれませんけれども、その辺の局長段階におけるとらえ方をお答え願いたいと思います。
  16. 藤森昭一

    藤森政府委員 先生指摘のように、政府間における議論は、ただ単に事務当局調整のみならず、閣僚会議というものが開かれまして、その場におきまして政府案がまとまったわけでございます。したがいまして、現在において政府各省においてこの法案そのものについて御指摘のような異議はないというように私ども考えております。
  17. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 畑先生、話がうま過ぎる、こう言われたのでは一言なかるべからず。  これは、どういうふうに言ったらわかってもらえるかなと思ってさんざん苦労するのですよ。わかりやすく言うために話がうま過ぎると言われるのかもしれませんが、決してうま過ぎるのではないのです。事がきわめてあたりまえのことだからわかりやすく話ができるのです。むずかしく話をする必要がないのですよ。こんなわかりやすいことはないと私は思っております。現に、きょうも私のところに関西の経済団体からアセスメントについては反対であるという手紙が来ました。私はきょうじゅうに返事を書きます。この間、先生方のところにも行ったかもしれませんが、経済団体からこういう色刷りのきれいな反対のパンフレットが来ました。私は即座に自分でペンをとって一項目ずつ反論を書いて、それは何もけんか腰じゃないのです。理解してください、どうしてこれだけのことがわからないのですか。われわれの頭にあるのは、あの公害でひどい目に遭って命を失った人、いまだ苦しんでいる人、それが片時も忘れられないのです。だから、二度とこういうことを操り返してはならないという意味で、先生方の御審議をいただいて権威と信頼あるルールづくりをしたい、こういうことを言っているので、どうぞ話がうまいという話はお取り消しを願いたいと思います。  それから、各省抵抗はあろうはずがないのです。ところが、ちょこちょこ耳に入ってくるところを見ると必ずしもそうでない、先生の御心配のようなこともあるやに承るときがあるのですが、それはけしからぬことなんです、私のところへだれも各省から、あのときはいいと言ったけれどもあれはだめだと言ってきた人は一人もいないのですから。それであっちへ行ったりこっちへ行ったりして、そんなことはないと思いますが、何かおかしなことを言っているとすれば、それはけしからぬことなんです。あり得べからざることなんです。どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  18. 畑英次郎

    畑委員 私は、いわゆるアセスメントにつきましては、経済界の方もおっしゃいますように、開発という要素、これが非常に阻害されるというような意味合いの御指摘、さような立場に立っての御心配があるわけでございますが、率直に申し上げまして、日本の置かれております立場からしました場合には、今後におきましても、原子力の発電の問題あるいはまた開発行為の問題、これは積極的に展開をしていくべきだという立場をとっておる一員でございます。当然、環境を保持しながら国民生活を支えるためのさような開発等は今後とも必要なことは言うまでもございません。さような意味合いにおけるアセスメントであるという認識を持たせていただいておるわけでございますし、なおまた、私は田舎の市長もいたしておりました関係もございまして、実際現場で高速道路の問題あるいはダムの問題等々を経験させていただいておりますが、こういうものが一日も早く本当の意味制定されておりませんと、こういうことに対する国民一つの不信といいますか、行政に対する不信感、こういうものがだんだん高まるのじゃないかというように心配をいたしておるわけでございます。  そういうような意味合いのものを申し上げながら、これはいささか的外れな御質問になるかもしれませんけれども、先般、高知県の窪川町における町長に対するリコールの問題、これにつきましてそれぞれのお立場でいろいろ受けとめ方があったというように考えるわけでございますが、長官はこの窪川町のケース、どのようなお感じをお持ちになりましたかお漏らしを願えればありがたいと思います。
  19. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 最初にお断りしておきますが、先生御承知のとおり、あれは原子力の問題ですから、この原子力の問題はいきさつから言って環境庁対象とする問題でない、こういうことですから、私はあえていろいろ申し上げることは避けたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、どんな事業でも地域住民の正しい理解協力がなければできないのです。それを無理してやれば、今度は稼働ができないのです。またその稼働を無理してやってはいけないのです。そういう意味から、地域住民方々にどうぞ理解していただきたかった。そして、ずいぶん骨も折ったのでしょう。何でもそうですが、大きな事業というのは、必ずしもそこの住民が直接恩恵を受けることが少ないですから、遠い方の人が恩恵を受けたり、その地域は何も恩恵を受けないという場合だってありますから、それだけに骨を折って理解を求めなければならぬ。その理解を求めることが十分でなかった。大変な骨を折ったでしょうが、それでも十分でなかったというところに残念な、考えなければならぬところがあるな、こんなふうに思ったのです。
  20. 畑英次郎

    畑委員 いずれにしましても、このアセスメント法案につきましては、長官の持たれております情熱、これが実を結びますように引き続き御努力を賜りたい、かように考えるわけでございます。  次にお尋ねをしたいと思いますが、これは前に一度お尋ねしたことがございますけれども、環境保全行政の中にございまして水質の保全の問題、これにつきまして、従来から環境庁におかれましてもかなり御熱心に水質あるいは汚水の排水問題、こういったことに真剣にお取り組みをされておるわけでございますが、私は、水質保全といった場合には、その質の問題と水量、量の問題、この両面から問題をとらえていかなければ解決はつかないのじゃないかという立場をとるものでございまして、まずこの辺の質と量の関係、水質保全にかかわります質と量の関係について、残念ながら環境庁におかれましては量の問題にほとんどタッチをされていないのではなかろうかという心配を持っておりますけれども、御見解をお伺いいたします。
  21. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 水質保全のために、工場、事業場に対する排水規制とか下水道の整備等の発生源対策がきわめて重要であることは言うまでもないところでありますが、御指摘のように、河川であれば流量の問題、これが大事であることは私ども十分に理解しておるわけでございます。しかしながら、河川の流量の問題につきましては私ども直接所管官庁ではございません。ございませんが、流量問題につきましても水質保全の見地から十分に配慮するように、関係行政機関と連絡をとりながら対処してまいりたい、かように存じております。
  22. 畑英次郎

    畑委員 ただいま局長お話しのとおり、現行の制度ではいろいろむずかしい要素があることは承知をいたしておりますが、これはいま政治の分野でそういった問題をさらに取り上げていかなければならない、かようにも承知をいたしておるわけでございます。この点につきまして、長官、ひとつお考え、御意見をお答え願いたいと思います。質と量の問題、環境行政の絡み合いですね。
  23. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 これはまことに不勉強で、先生の御満足いただけるような答弁ができないことを残念に思います。なるほど承ればそのとおりだなと思いますので、勉強してみたいと思いますが、もちろん質が悪くなってくるのは量がふえればそれだけその悪いのは散りますから助かるのですが、なかなか水の量というのは容易でない。たとえば、私は東京ですが、東京だけのことを言ってみても、どこかにダムをつくらなければもう足らなくなってきている。このごろあの汚れた霞ケ浦からお願いして水をいただかなければ東京はやっていけないというようなことになっている。霞ケ浦自体が水の量がなくて困っている。ですから、十分に深い関係があると思いますが、いま局長が言ったように、量の問題は私の方の直接の担当でございません。しかし、質の問題と関連してお話のように十分関係がございますので、今後とも検討していきたい、このように考えます。
  24. 畑英次郎

    畑委員 きょう国土庁の方にお見えいただいておると思うのですが、よろしゅうございますか。  私は、いま申し上げましたように、現行制度あるいはまた守備範囲と申しますか、そういう中ではなかなか環境庁とされましてはむずかしい問題点があることは承知いたしておるわけでございますが、逆に申し上げれば、本当に行き届いた水質保全対策、これには量という問題がその守備範囲に入り得るような今後の取り組みといいますものは絶対に必要ではなかろうかと考えておるわけでございます。  そういう意味合いから、ひとつこの問題、国土庁の方にお尋ねしたいわけでございますが、量の確保、これにつきまして、ただいまのやりとりの中から国土庁のお立場ではどのようなお考えをお持ちになるか、まずお伺いしたいと思います。
  25. 高橋俊見

    ○高橋説明員 お答えいたします。  私どもは国土庁水資源局といたしまして水資源行政をやっておるわけでございますが、基本的には水を使うということは水を汚すことである。したがいまして、その量的な拡大と同時に、私どもは、一度使った水をもう一回使う、いわゆる水の循環利用という面も今後進めていかなければならないと考えております。したがいまして、水資源の開発と同時に、需要者、いわゆる使う側におきましても、水を汚さないということはもちろんでございますが、一度使った水をもう一回使う、そういう政策を進めてまいりたいというふうに考えております。
  26. 畑英次郎

    畑委員 私は、くどいようでございますけれども、ただいま長官指摘されましたとおり、水の絶対量がない場合には水質の保全ということは全くあり得ない、こういうふうに考えますし、なおまた従来、特に水はただという考え方、こういうような意味合いの中から、たとえば河川等につきましても、先般も申し上げたことがございますが、河川の水の全量を電力会社に売っておる、こういうことが現在あるわけでございます。そういう中における水質保全といいましても、これは環境行政をやろうったってできない、川の形がありまして水の量がないのですから。こういうことは非常に問題をはらんでおりますし、今日の時点で考えました場合にはあり得べからざることがあっておる、こういうような姿ではないかというように考えるわけでございまして、これは極端に申し上げれば、そのときの水に対する価値観が今日とは非常に違っておった。私は、近い将来水の一滴は石油の一滴にまさるというようなことを私なりの一つの信念とさせていただいておるわけでございますけれども、さような意味合いにおけるこれからの水資源の確保、これは即環境行政にはね返る、かようにも考えておるわけでございます。  そういう中で、先ほどお話がございましたように、やはりこれから先の健全な産業活動あるいは地域開発考えました場合には、水に対する需要、これが非常に速いテンポでだんだん進むことも言うまでもございませんし、あわせてそれに対するダムの建設等行われるわけでございますから、いわゆる水源地域における水特法等によりまして生活環境あるいは産業基盤といいますかそういうものに対する配慮がなされておるわけでございますが、自然環境に対する水源地域等に対する配慮、対策、これにつきまして、国土庁の方のお考えをお願いしたいと思います。
  27. 藤重邦夫

    藤重説明員 お答えいたします。  水源地域対策特別措置法は、先生御存じのように、ダムまたは湖沼水位調節施設の建設によりましてその基礎条件が著しく変化する地域につきまして、いま御指摘のように、生活環境、産業基盤等を整備して、あわせて湖沼の水質を保全するといったような目的で整備計画を策定する。この整備計画の内容といたしましては、生活環境の整備といたしまして、治山治水事業、道路事業、下水道事業、簡易水道事業、そのほかごみ処理、屎尿処理施設、そういったものも含んでまいります。また、産業基盤の整備といたしましては、土地改良、林道、造林、そういった事業もこの整備計画の内容に含んでおるわけでございます。こういったことで水源地域の振興をしているわけでございますが、これらの事業のうち、いま御指摘のような自然環境の整備についてはという観点で整理いたしますと、御存じのように、いまの事業の中でも治山治水事業、造林、下水道、ごみ処理、屎尿処理、こういった事業が該当するものではないかと考えております。  整備計画決定もうすでに三十ダムしておりますが、治山事業につきましてももうすでに十ダム、治水事業は二十一ダムについて、それから造林、下水処理、こういったようなものにつきましては四ダムといったふうに、相当な自然環境対策というものと考えてもいい整備事業が行われている、そう考えております。  また、霞ケ浦につきましても、下水道、ごみ、屎尿処理施設、畜産汚水処理施設など、整備事業のうち八割弱が水質対策というものに占められているという事実もあわせてお答えしたいと思っております。
  28. 畑英次郎

    畑委員 現在の水特法の関係でいま自然環境関連というようなお立場での話がされたわけでございますが、そういった一つ行政全般が自然環境関係があるといえば、やはりないものはないわけでございますから、さらに自然環境といいますものあるいは環境保全というものに的をしぼって水特法の改正を図る、こういうことも必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございますし、長官のお立場におかれましても、さような意味合いにおける環境行政の徹底を期する、かような面からの大臣としましてのお取り組みもお願いしたいというように考えます。  そしてまた、琵琶湖等が非常に汚染をされた、そういうような形の中におきまして、琵琶湖総合開発特別措置法でございますか、こういうものがございますし、そしてまた、地元におきましては、県条例等におきまして環境保全の問題がいろいろ真剣に展開をされつつあるわけでございます。私は、さような姿を見ました場合に、現在の水特法の改正、そういうことによって一部改善はできるかもしれませんけれども、さらに考え方を大きくしまして、琵琶湖の例にならってこれを全国的な視野に立ちまして、水源地域の総合開発特別措置法といったような構想、考え方、こういうような立場におきまして物を考える、こういうことも国土庁サイドにおきましてお願いしたい問題であると思いますし、あるいは政府全体としましても、水資源というような意味合いにおける大きな問題としましてお考えを煩わしたいというように考えるわけでございます。  まず、ただいま申し上げました内容につきまして、国土庁のお立場から御見解を伺いたいと思います。なんでしたら長官どうですか。
  29. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 私、余事を申し上げるようで恐縮ですが、環境庁仕事で、御承知のとおりことしの一月六日から十九日まで外国を歩いてまいりましたが、つくづく日本は水に恵まれているなと思いました。しかしながら、先生お話を聞いて、われわれが子供の時分から見ると水も油断がならないということになってきたことはお話のとおりであります。ですから、水の質について心配するならば、量についても心配しなければならぬ。だから、国土庁と十分関係がある。そういう面を除いて心配していることはちょっと間違いですよという御注意は十分承りました。きょうは国土庁長官来ておられませんが、先生の御注意を体して国土庁と十分打ち合わせてみたい、こう考えます。ありがとうございました。
  30. 藤重邦夫

    藤重説明員 お答えいたします。  先生指摘の水源地域の環境整備につきましても、水特法を少し改正するような意思はないかといったような御質問でございます。  私どもといたしましては、水源地域の環境整備につきましては、これは水源地域対策としていままでわれわれがやっている中で十分対処できるのではないかという考え方を持っております。と言いますのは、水源地域対策、これはいま現在、起業者による公共補償を主体とする補償、それから水特法に基づく整備事業、それからもう一つが水源地域対策基金によります、これは地域によってでございますが、基金の事業、この三つのやり方による三位一体の水源地域対策というものをやっております。この中で、先ほどお話し申し上げましたように、環境問題というような事業につきましても相当の事業がなされているわけでございまして、今後ともそういったことで十分に環境整備には努めていきたいと思っております。  また、整備計画の決定の場合には、環境庁の担当の方とも十分連絡会議を持ちまして協議の上つくり上げた、認可したといったような形で処理しておりますので、これらの対策を進めるために、今後とも上下流関係者あわせて地域一体となった水源基金の設立といったようなことに努め、先ほど申しました三位一体論で水源地域の環境整備にも努めていきたい、そう考えております。
  31. 畑英次郎

    畑委員 いささか正直申し上げまして隔靴掻痒の感があるわけでございまするけれども、話を先に進めさせていただきます。  私は、長官もおっしゃっていただきましたように、水資源の問題、渇水問題等が起きました場合には、非常に水問題そしてまたこれに伴います環境問題が論議をされまするけれども、飢饉の状態が遠のきました昨年のような冷夏、長雨といったような時期にはこういった問題がなおざりにされやすい、さような要素を持っていると考えるわけでございますし、なおまた、現在の水特法である程度のことはできる、そういう姿では、今後の本当の環境保全あるいはまた水資源の確保、こういうことがだんだんむずかしい今日の姿ではなかろうかというように考えます。  そういうことを申し上げながら一つお伺いしたいことは、現在の水特法等で、水源地域、こういうことに対する一つ考え方、基準といいますか、物差しといいますか、こういうものをひとつ具体的に、これは関係のある関連地域ということで抽象論で終わるかもしれませんけれども、何か具体的なものがございましたらお示しを願いたいと考えますし、なおまた、自然環境保全立場から申しまして、これまたいささか現在の環境庁がお取り組みになっておりますものとは度合いが違うかもしれませんけれども、私は、水の量とあわせまして、国土保全という立場から、森林、林業という問題、森林は緑のダムであるというようにも言われておるわけでありますし、あるいは森林の持っております公益性、そしてまた大気汚染の問題等々に関連します林業、森林地帯、これは最近の地球的な云々という中におきましてもいろいろ論議をされておるわけでございまするけれども、私は、地球的な規模で物を考えます前に、狭い国土の日本における森林の実態、こういうものを考えました場合には、やはり非常に問題がございますし、問題が大きくなりつつある、かような認識をいたすわけでございます。  さような意味合いにおきまして、一つの水源涵養林等を含めました保安林、こういった問題につきまして政府としまして積極的に進める必要がある。現在の保安林が全林野関係で三〇%程度というようなことも伺っておるわけでございますが、この保安林対策が環境保全とも非常な関連性があるというような意味合いから、今日の置かれております保安林行政の現状、あるいはこれからの展望、取り組み方、こういうことを、林野庁の方お見えでございましたら、お願いしたいと思います。後ほど国土庁の方もお願いしたい。
  32. 松本廣治

    ○松本説明員 お答え申し上げます。  いま先生指摘のとおり、森林は本来水源涵養機能を持っておるということで、各流域の重要な森林につきましては保安林に指定しまして水の涵養機能の維持向上を図っておるところでございます。また、保安林の指定だけでは不十分な場合がございますので、その場合には、荒廃地の復旧というようなことを含めまして治山事業で積極的に仕事をいたしまして、水の涵養機能の向上に努めているところでございます。  現在、治山事業では、特に昭和五十四年度から、利水ダムあるいはため池などの上流部の水源山地につきまして重要水源山地整備治山事業というのを設けまして、特別にその地区におきましては集中的に投資を行いまして、水源の涵養機能の向上を図っているところでございますが、御指摘のとおり、水源涵養保安林というのは全国の森林の約二〇%でございます。全体を合わせますと御指摘の三割になるわけでございますが、これは各流域の上流地帯の重要な山地につきましてはほとんど指定を終了いたしておりまして、今後は森林の機能向上を図るための事業を積極的にやってまいりたいというふうな現状でございます。今後とも保安林行政並びに治山事業を積極的に展開してまいりたいと林野庁といたしましては考えておりますので、よろしく御指導のほどをお願いしたいと思います。
  33. 藤重邦夫

    藤重説明員 先生指摘の水源地域の指定についての御質問でございますが、水源地域の指定につきましては、地元町村と協議の上知事の申し出によりまして認可するという手続をとってまいりまして、原則といたしましては、ダム等の建設が地域に与える影響を考慮いたしまして、大字を最小単位、市町村を最大単位として指定を行っているのが実情でございます。しかしながら、この区域を広げるということは現下の情勢におきましてそれなりのお金もかかることでございます。したがって、地域に与える影響を考慮したところで考えているわけでございます。  なお、先ほどお話し申し上げましたとおり、基金というものがございます。この基金におきましては、下流の受益市町村との協議が整いますれば、水源地域に指定されていなくても、その場合でもやっております。そういう事態で対処していきたいと考えております。
  34. 畑英次郎

    畑委員 私は、いま自然環境の保全という立場、あるいは関連性を持つ中におきます水資源の問題、あるいはまた林野庁所管の治山事業、林業振興の問題、こういったことにちょっと触れさせていただいたわけでございますが、先ほどお話がございますように、水資源の確保の問題につきまして、最近ようやく国土庁におかれましても、自然環境考えながら、あるいは建設省におかれましても、一面積極的に自然環境の保全を考えながらの河川整備あるいはダムの建設等が行われつつあるわけでございますが、ただいまお話の中にございましたような意味合いにおける水源地域に対する自然環境を含めました積極的な取り組み、これなくしては今後の水資源の確保はできないというような考え方に立つわけでございます。さような意味合いにおける下流地域と水源地域とのコミュニケーション、あるいは開発基金の積極的な設置、こういうことをお願い申し上げたいと考えますし、林野庁におかれましても、なおまた長官におかれましても、ただいま申し上げますような意味合いにおける林業関係の振興あるいはまた水資源対策、こういうことにも国務大臣というお立場でひとつ積極的な、従来にまさるお取り組みをお願い申し上げたいと考えるわけでございます。  時間がございませんから、私どもの勝手な言い分を申し上げながら、次に進めさせていただきたいというように考えるわけでございますが、ただいまの林業振興の問題、あるいは水資源の確保の問題、水源地域対策の問題、基金の問題、どうぞ引き続き御検討と積極的なお取り組みをお願いいたしておきます。  そういう中で、今日環境庁におきましては、いわゆるNO2あるいはNOxの問題、総量規制の問題がいろいろ論議を呼んでおるわけでございます。この問題は、従来のいきさつからしました場合には、当然六十年度を目標にそういうものが実現されるというような御期待を各界各層の方々持っていらっしゃるというように考えるわけでございます。しかしながら、この問題もやはり具体的な自動車の排気ガスあるいはまた固定の発生源対策等いろいろ問題が今日あるわけでございますが、この問題に対する長官のお考えあるいは見通し、こういうものにつきましてお伺いしたいと思います。
  35. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 細かくは局長から答弁させますが、五十三年の七月に、それまで〇・〇二だった基準を〇・〇四から〇・〇六という幅を持たせて落としたわけでございます。なぜ落とすのだというようなことでずいぶん非難もされたのですが、いろいろ調べた結果、そこまで落としても大丈夫ということで落とさせていただいたわけでございますが、その際に六十年までには〇・〇六以下のところはなくしますよということをお約束いたしましたし、その後は衆参両院で附帯決議などもありまして、それを間違いなくやれよということでございました。私どもは一生懸命になってそのつもりでやってまいったわけでありますが、六十年といったってそんなに遠い将来ではありません。いまになって、そのときに衆参両院でお約束したことが果たせるかなということでずいぶん検討いたしてみますと、どうも乗せそうもないところが東京を初めとして何県があるわけでございます。そこで、そこには特別に地域を指定して総量規制などをしなければならぬ、こういうふうにいま考えて鋭意作業を続行中でありますが、NOxといったって自動車から出るものもあるじゃないか、煙突から出るものもあるじゃないか、それから自動車の多いところもあるし煙突の多いところもあるじゃないか、一様でないじゃないか、もう少し検討してもらわなければ困るというような意見も、正直言って新聞なんかに御承知のとおりあるわけです。それは私よくわかっていますが、どんな事情があろうとも、昭和六十年までにはこれをやるということはお約束でございますから、衆参両院で約束したことは守らなければならぬとわれわれは考えて、その作業を鋭意進めているわけであります。
  36. 三浦大助

    ○三浦政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおり、この仕事は四十八年から始まっておるわけでございまして、固定発生源対策それから移動発生源対策と並行していままでやってまいっておるわけでございますが、固定発生源に対しましてはすでに第四次規制、これは五十七年から実施になりますし、自動車に対しましては、あと非常に大型のバスとかトラックの直接噴射式のディーゼル車を除いては、すでに全部この規制にこれから入ろうとしております。直接噴射式のディーゼル車につきましては、できるだけ早くやりたいということで、いま作業を進めておるわけでございます。  なお、それでもまだたとえば自動車が多くなるのではないだろうかという御議論もございますが、これにつきましては、仮に自動車が多くなりましても、これらの規制が効いてまいりまして、六十年には窒素酸化物量にいたしまして六割くらいになるのではないか。  なお、そのほかにもいろいろな発生源もございます。これらも含めてこれから知事さん方と相談しながら削減計画をつくっていこうということで、いまいろいろと準備をしておる段階でございまして、自動車の単体の規制のほかに、低公害車の普及促進だとか、あるいは代替交通機関の充実、あるいは都市総合交通規制の促進だとか、道路体系の整備だとか、流通体系の合理化、こういう面につきましても関係各省といまいろいろと御相談をしておる最中でございます。
  37. 畑英次郎

    畑委員 私は、当初申し上げましたように、これからの環境庁のお立場、あるいは環境行政に対する国民の期待、あるいはまたあるべき姿、こういうものは、十周年を迎えました今日洗い直しまして、さらに大きく前向き取り組みが展開され得るような法的な整備も必要でございましょうし、あるいは国民に対する啓蒙等も必要である、かように考えるわけでございますが、いささか今日長官の意に反してという言葉を使わしていただきますが、残念ながら環境庁に力と金がないと申し上げてはどうかと思いますが、やりたくてもなかなかできない、あるいはいろいろ問題点が多過ぎる、こういうような今日の姿じゃなかろうかと考えます。私は、国土庁が発足をされましたときに、国民各界各層方々から非常に大きな期待があった。しかし、きょうは国土庁の方がおられる前でどうかと思いますが、残念ながら、国土庁もいささかその存在価値が当初の期待のような姿ではないということもこれまた現実ではなかろうかというふうに考えます。極端な言い方をしますと、国土庁と環境庁は一緒になった方がいいのじゃないかという気持ちもせぬではありませんけれども、ともあれ、逆に申し上げれば、何といっても、国土庁、特に環境庁は、本当の意味で二十一世紀を目指しまして力強い行政の展開がなくてはならぬというふうに考えます。幸い、長官におかれましては、最近では湖沼に対する自然環境の保全の法案の問題等、いろいろ積極的な展開がなされておるわけでございますし、何といっても、六度目のアセスメント法案につきましては、これの成立を期しまして、従来にまさる真剣な御熱心なお取り組みを賜りますように、従来のお取り組みに敬意を表しながらお願い申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  38. 山崎平八郎

  39. 馬場昇

    馬場委員 長官、時の話題の環境アセスメントにつきましては、けさ読んだのですけれども、ある新聞によりますと、鯨岡長官のことをアセスメント長官と書いてございまして、反対する経済界、財界に対して撃ちてしやまんというかっこうで日夜がんばっておられるということを私も知っているのですが、利益の追求ばかり考えているああいう財界とか経済界とかいうのを説得するのは大変だろうと思いまして、この苦労には心から敬意を表するわけです。  しかし、いま長官が必死に努力なさっております財界とか経済界、こちらは実は公害を出す方でございますし、開発をして環境を破壊する方でございます。ところが、片一方、公害を受ける住民、開発によって自然環境の破壊を受ける住民、そちらに対する長官の御努力とかは残念ながら聞いていないのです。長官は、こういう問題のために本当に公平なルールづくりをしようとさっきも言っておられましたが、公害を受ける側、環境の破壊される側の住民と、財界、経済界といまやっているぐらいの熱意を持って話し合いをしないと、本当の公平なルールづくりにならぬ、私はこういうぐあいに思うのです。この問題については、実は私二時間、時間を持っていますから、最後の締めくくりのところで大臣の見解を大いに聞きたいと思っておりますが、その前に二、三の問題について御質問してみたいと思います。  大臣、この前の九十二臨時国会で、十一月十四日でございましたが、私はこの委員会長官に質問をいたしました。それは国立環境大学というものを設立すべきではないかという内容でございます。これに対して環境庁長官鯨岡さんは、環境問題は、このままやっていると地球は人間を殺してしまう、いや、人間を殺すというよりも地球が死ぬから人間も死ぬというような問題になる、だんだん地球的規模で物を考えなければならないように進展してきていると、全く私と同じような御見解を表明なさいまして、環境問題は人類のための学問として定着していかなければならない問題だ、こういうことも御答弁なさいました。さらに、環境問題を専門とする学問、それを専門とする学校、そのようなものが国の手によってできることは、時代の趨勢として当然起こり得る問題である、こういうような御答弁をなさいました。そして、その環境大学をつくるとするならば、世界の公害の原点と言われる水俣地域につくったらどうだという私の問いに対しまして、長官から、再び過ちは繰り返しませんという意味で、つくるとすれば水俣地域は有力だと考える、このようなお話がございまして、結論として、重要な参考として承った以上、前向きに文部省などとも考えてみたい、こういう答弁をいただいたわけでございますが、これは昨年の十一月十四日のことでございます。もう三月でございますが、現在この国立環境大学の設立という問題につきましてどのように検討なさっておるか、その状況をまず聞いておきたいと思います。
  40. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 馬場先生から、環境大学の問題、そして、それをつくるとすれば水俣につくった方がいいではないかというお話を承りました。あれは去年の十一月でございましたかね。実際に言って、あれから今日までそう長い年月がたったわけではございませんし、その間いろいろなことがありましたことは御承知のとおりでございますが、私どもの方で地球的規模の環境問題に関する懇談会の座長大来先生などとその問題について、会議ではありませんが、話題として話をしたことがあります。それから、これまた会議ではありませんが、文部省の関係の人とも話題として話したことがあります。なお、これは、私どもの方でどうこうしようと言っても、学校のことでございますから直接には文部省の関係にもなるので、しばらく時間をかしていただいて検討させていただきたい。忘れてはいませんし、全然何もしなかったわけではございません。  さらに申し上げておきます。先ほどお話がありましたが、環境庁と国土庁は一緒になっちゃったらいい、あってもなくてもどっちでも同じようなものだ、そうも承りませんが、見ようによってはそうだと思うのです。しかし、私の考えは間違っているでしょうかね。環境庁というのが世間からえらい注目を浴びるときはいいときじゃないですよ。私はここで所信の表明をしたときにも申し上げましたが、自動車で言えばブレーキみたいなものです。普通スムーズに走っているときはブレーキは要らないのです。アクセルだけあればいい。ところが、問題が起きるとブレーキを踏まなければならぬ。そうかといって、いま問題がないのだからブレーキは要らないよと言っても、ブレーキのない自動車なんか危なくて乗って歩けません。どうもこのごろはいろいろな問題が重なっていますから、ブレーキが邪魔だと考える人もないことはない。そしてそれはわかる。しかし、その考えは重大な間違いですよ。われわれがここにきちんとしていないと、まさかのときにとんでもないことになりますし、まさかのときに何にも役に立たなかったら将来また再び過ちを繰り返す。私は経済界の人の言うことだけ聞いているんじゃないです、先生。根本は、公害基本法にあるように、「事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずる」ということが公基法の基本ですから、これを頭に置いて、中にはこのことで死んだ人がいる、このことでいまだに悩んでいる、先生よく知っておる人がおられる、そういうことを二度と繰り返してはならぬということが下にあるのです。あるから、どんな人にでも、その考えは間違えておるじゃありませんかと言って説いて回っているので、何だ経済界とばかり話しているからこっちは忘れているじゃないかというのは、それは違います。どうぞひとつよろしくお願いいたします。
  41. 馬場昇

    馬場委員 アセスメントについては後でまた十分大臣の意見も聞きたいと思うのですが、私はいま国立環境大学の設立の問題を質問しているのです。  いま大臣は、大来さんなんかとも話題にした、あるいは文部省とも話はした、こういうことでございますが、まあ十一月からいまのことですからそう多くはできなかったと思うのですが、実は大臣、いま大臣はブレーキのようなものだとおっしゃいましたが、絶対に環境庁はそういうものであってはならぬわけでございまして、大臣も、ことしの二月二十四日のこの委員会で九十四国会に対する所信表明で、ブレーキじゃないことをはっきり言っておられるわけですね。たとえば、「環境問題は、私たちの子供や孫、ひいては人類の将来にもつながる重要な課題」であり、「二十一世紀のわれわれの生活とそのときの地球の環境をも展望し、予見的、総合的な取り組みを図っていく必要がある」、これはブレーキじゃないんですよ。本当に前向きなりっぱな所信をここで表明されました。私はこれを聞いて同感でございましたし、そしてその次に長官はまたこう言われたのですよ。「環境行政の推進に当たっては、その基礎となる科学的知見の集積が必要不可欠」である、こういうことをおっしゃいました。そうして、たとえば国立公害研究所なんかの機能を充実する、こういうことをおっしゃったんですが、さらにもう一つ、今度のこの場所での所信表明で、「環境問題の解決のためには、国民各層の理解協力が不可欠」であり、そのための環境教育や啓蒙普及活動に力を入れる。この前の九十二国会の所信表明には余りこういうことはなかった。ところが、今度の九十四国会では大分一生懸命がんばられた結果出てきたわけですし、私は、私が提唱した国立環境大学というものをやはり頭の中に一生懸命考えておられるなというようなことはこれを聞いて感じたんです。  そこで、国立環境大学というものはどういう構想であるべきかということについては、たまたまいま長官が読み上げられました。たとえば、環境庁の中で公害対策基本法というのがある、さらには自然環境保全法というのがある。公害対策基本法には、「大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害」や動植物等の生育環境問題の研究、こういうことをするということが公害対策基本法にきちんと出ておるわけですし、自然環境保全法にも、基礎調査や科学技術の振興としての試験研究体制の整備、研究開発の推進、さらに研究者の養成、教育活動や広報活動などを行う。まさに私が、つくってやらないか、二十一世紀に向けてやらないか、人類に向かってやらないか、子孫に向かってやらないかというのは、この公害対策基本法、自然環境保全法、いま私が読み上げたようなことを徹底的に研究をするし教育をするというような環境大学。ちょうどことしは環境庁ができて十年、この記念事業と言えば語弊がありますけれども、そういう記念すべきときにこういうことを企画をする、非常に重要な問題ではないか。そして、水俣に水俣病研究センターがありますが、あれはあのままいったら立ち消えになりますよ。こういうものも当面取り込む、さらには公害研究所もできれば取り込む、そういうことを含めて、そういうような構想に基づく国立環境大学、この学問の研究と教育をする大学というものをぜひつくってもらいたい。そういう構想で考えていただくかどうか。もう話題にされて腹にあるわけですからなにですけれども、もう一たび答弁を受けたいのです。
  42. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 いま一年間に約五%ぐらいの経済成長、またそれがなかったら失業者が出ちゃって、これまた大変なことになる。だから、どんなことがあっても五%ぐらいの経済成長は一面、私はその方の担当じゃありませんが、していかなければならぬ、国民としてそう思います。ところが、一年間に五%ずつ経済成長をしていくと、西暦二〇〇〇年になる前に日本の経済はいまの倍になってしまいます。この三十七万平方キロで二割そこそこしかないような可住面積の中で、いまだって大変だと思いますのに、一年間に二百万台ずつ自動車がふえて、それでこの倍の経済をどうやって支えていくのだろうか、そのときの環境はどうなるのだろうか、公害基本法に基づくようなことから見れば私は非常に恐ろしくなるような感じがいたします。  したがって、いま先生言われたように、ここまでくれば、この問題はひとつ学問として取り上げていかなければならぬし、そういう学問をする青年を養成して学者としてこれから対処していかなければならぬ、そんなふうに考えますので、私は先生のお考えに基本として賛成なんです。反対する理由はないし、何人もこれは必要だと思うだろうと思うのです。  そこで、しかし学校のことですから、私はその方の知識もありませんから、いろいろ関係方面の方に意見をたたいて御協力をいただかなければ、先生考えも実ってまいりませんので、ひとつ時間をかしていただきたい。そしてまた、委員会のときだけでなしにふだんもひとつ御激励を賜りたい、こういうふうに思うわけです。
  43. 馬場昇

    馬場委員 考え方は同じですから、あとはどうやって推進していくか、こういうことになると思うのですが、実は私、国際的な動きをちょっとよく知りませんけれども、伝えられる報道なんかによりますと、たとえば最近の新聞報道によりますと、非常に諸外国もこの研究と教育の充実に取り組んでいるようですね。取り組み始めたようでございます。たとえばアメリカの環境保護局、これはEPAというのですか、何か最近アメリカの国民の中から、汚染防止のために十分な基礎研究を進めていないじゃないか、こういう批判がEPAなんかに起こりまして、そういうために米国のイリノイ工科大学とノートルダム大学との間で、二つの大学から研究者なんか出して国立産業公害防止技術センターをつくるのだ、動き始めに百五十万ドルの補助金を国が出すんだ、こういう報道を見たのです。そして、その研究内容をよく見ましたら、最終目標は汚染物質の全面的な放出防止、汚染物質を全然出さないという全面的な放出防止策をこれで研究するのだ、こういうことを言っております。私は、日本も公害研究所なんかありますけれども、国立環境大学のようなりっぱなものをつくりまして、世界の公害の先進国ですから一番先につくるのが当然だと思いますし、つくって、大臣の言われるところの地球的規模で人類の将来に向かって、たとえばこういう外国のものとも共同研究して共同体の一員としてやっていこう、こういう連帯をするためにも必要じゃないかという点。  それからもう一つは、発展途上国に対して、いま日本の企業がどんどん進出していっておりまして、公害の輸出だと言われる面もいろいろあるわけです。また、われわれが公害を輸出するだけじゃなしに、その地域に公害があれば、日本の公害の進んだ研究、それで技術援助なんかもするということだって必要だし、また、公害をもし輸出しておれば、そういうことがあってはならないし、あるいはそういうところからたとえば青年、学生をこの環境大学に呼んで、そこで教育をし研究をさせて、それをまたその国に帰して、その国の公害問題に役立たせる、こういう国際的な――一番公害を輸出するのは日本ですから、環境大学へ途上国から留学生なんかをいっぱい入れてそれを帰してやる、こういうことをぜひこの大学ですべきだということで、くどいようですけれども、大臣、もう少し一歩進める意味で、これは文部省の大学局長とも私は話をしてみました。そして、それにはやはりこれの持ち出し、だれが言えるかというと、やはり環境庁長官が音頭をとって文部省にも言う、そしてできれば、水俣病問題で関係閣僚会議というのがあるわけですね、あるいは閣議でも結構でございます。いわゆる官僚の人たちに研究を任せることだって、官僚に済まぬですけれども、進まない。やはりそういう政策課題として閣議なりあるいは関係閣僚会議なりで研究してみようじゃないか、やろうじゃないかということを決めて、そして、たとえば関係各省集まって検討委員会でもつくって進めていく、そういうような段取りぐらいは大臣の力でひとつ回していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  44. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 御説ごもっともと承りました。特に日本は経済援助などをやりますが、日本は苦い経験がありますから、日本で再び同じようなことを繰り返していけないことは言うまでもないのですが、開発途上国が日本がかつて経験したようなことを今後やることを防がなければならぬ。そのために志のある青年をこちらに招いて、こちらで教育して、われわれの苦い経験を十分勉強していただいて、それでお国へ帰ってそういう方面に御活躍を願うというようなことはいいことではないかというのは全く私そのように思います。  それから、関係閣僚会議などでこの問題を取り上げて、もう少し前向きにやってみろという御激励に対してお礼を申します。心がけてやりたいと思います。
  45. 馬場昇

    馬場委員 大臣、これはまだあと非常に大きい問題も含んでおると思うのですが、やはりそういった関係閣僚会議とかで取り上げていただいて、そしてそこの中身は、前向き関係各省庁集めて検討委員会でも発足させようじゃないか、その辺まで踏み出してもらいたいのですが、どうですか。
  46. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 いまもう私申し上げるまでもなく、先生十分御承知のとおり、私の頭の中には当面いまやらなければならぬことがいっぱいありますのでなかなか大変でございますが、全くそのとおりに思いますので、ひとつしばらくの間時間をかしていただきたいと思います。
  47. 馬場昇

    馬場委員 もう一つ、この前質問申し上げたのですが、国際環境福祉都市とか、国際環境福祉地域、こういう言葉はいままでないわけですけれども、これを鯨岡長官の発想にしていただきたいと私は思いまして、非常に期待しておるわけですから、このことについても、国際環境福祉都市、地域、そういうものはいままでないのだけれども、たとえば日本にそれをつくってはどうかという提案を、これもこの前同じここで質問いたしました。これを質問した理由は、この前時間が余りありませんでしたので、唐突だ、初めて聞いたというふうなことをおっしゃいました。そのとおりでございましたが、たとえばこれを不知火海につくってくれとこの前言ったのですが、その理由は、広島とか長崎の原爆はピカドンといって一瞬にしてあんな生き地獄になったわけですけれども、世界の公害の原点と言われる水俣病は、あの不知火海沿岸には約三十万人の住民がおるのです。これは実にゆっくりとゆっくりと汚染されていったわけです。しかし、その悲惨さというのは原爆にも劣らない、人類が経験した最も悲惨な公害だということになっておりまして、この生き地獄のさまは現地で見て私もひとときも忘れることはできないのです。長い長いとちょっと言いましたけれども、昭和七年ですよ。チッソ水俣工場があそこでアセトアルデヒド合成酢酸設備を完成して水銀を流し始めたのは昭和七年なんです。そして昭和四十七年に熊大第二次研究班というのが研究しましたところが、その水俣病の患者の第一号発生は昭和十七年だと言われておるのです。そして公式に三十一年に水俣病が確認されまして、それから十年たった後ようやく水銀の流出をチッソはやめたのです。優に三十三、四年水銀を流し続けておって、そしてこれこそゆっくりとゆっくりとあのような悲惨な、三十万住民を汚染させたという状況になっておりまして、現在も水銀ヘドロがたまっておるのです。現在も少しずつは汚染をされて水俣病は発生しつつあると私は思います。こういう広さ、深さというものは、ピカドンと一瞬に遭った悲惨と同じように、ゆっくりゆっくりと原爆に匹敵するような被害があそこに出た。そういう意味で、あの地域を国際環境福祉都市、災いを転じて福となすということで、過ちは再び繰り返さない、そのあかしとしてあそこをそういうぐあいにしなさいということを私は言ったのですが、大臣は、広大な構想に敬意を表する、頭の中にまとまっていませんので十分関係者と前向き検討する、こういう答弁をなさいました。それから、この十二月の熊本県議会も、この構想を地域振興という立場を含めてやっていただきたいということを、県議会で公害特別委員長の報告としてこれを報告して認められておるのです。  そういうこともございまして、ちょっと申し忘れましたけれども、大臣、前の国立環境大学もあの水俣市議会、芦北町議会、あるいはあの地域の各市町村の議会、これではぜひ意見書として決議して国にお願いしたいという動きが現在出ております。署名運動も起ころうというような状況もあります。熊本県知事もこれには賛意を表しておるのです。  そういうこともございまして、先ほど国立環境大学で関係閣僚会議で話をして検討委員会をつくれという私の意見なんかも、それは同感だから努力するとおっしゃいましたが、このことについてもぜひ同じように並行して考えていただきたいということを申し上げるのですが、いかがでございましょうか。
  48. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 正直申しまして、その話を承った記憶はあります。記憶はきわめてよくありますが、そのときに私は、全然考えておらなかったことで頭の中にまとまりませんとお答えした記憶もあります。それから後これは環境大学のようなふうに方々に話をしたことはありません。いま先生お話しのようなことであれば、水俣病の関係などで知事さんや県議会の方々とお会いすることも多いので、どんなふうに考えておられるか私もよく承って構想をまとめてみたい、考えてみたい、こういうふうに思います。
  49. 馬場昇

    馬場委員 そこで、いま二つのことを申し上げたのですが、やはり悲惨悲惨とここで口で言いましても、実はこの前も言ったのですけれども、鯨岡長官先生ですか師ですか、三木長官なんか行かれて認識を新たにされました。それからその後また石原長官なんか行かれて認識を新たにされました。だから、いま二つの問題をここで提起をし、後でまた具体的に提起するのですけれども、それらを含めてやはり現実に行って、ぜひこういうことをさらに水俣病の具体的な、まだ未解決の問題等も含めて現地に行って、そして関係当局者あるいは住民、患者、そういう者とぜひ会っていろいろのことを懇談する機会を持つ、こういうものを推進する腹構えをさらに強めるという意味も含めて、ぜひ現地に行っていただきたいと思うのですが、これはいかがですか。
  50. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 私は環境庁長官になりまして、こういうところでそういう表現もどうかと思いますが、これが仮に会社だとしますと、水俣の問題はこの会社にとっては重要な問題ですよ。その重要なところへ社長に就任して行かないというのはおかしな話です。ですから、私は行ってみたい、こういうことを当時言いましたし、いまでもそのように思っております。しかし、先生、行く以上は何かいいことがなければだめですね。何かいいことというのは、俗におみやげとかなんとか言いますが、そういうのじゃなくても、行ってみて、やはりそのことについて直接にせよ間接にせよ何かいいことがなければならぬ。ところが、行く以上はいろんな方面に連絡をとってみますと、まだちょっとというような向きもありまして、なかなか私の思うようにいかない。いずれ先生に御相談いたしますから、私が行って役に立つような舞台づくりみたいなものをつくるために御協力いただきたいとむしろ申し上げます。何か奥歯に物がはさまったような言い方ですが、どうぞひとつ御賢察いただきたいと思います。
  51. 馬場昇

    馬場委員 ちょっと邪推かもしれませんが、長官が行くというのに、まだ時期じゃないとかどこかに壁があるなどということ自体が三十年も四十年も水俣病が解決しない原因になっているのです。だから、そういう考え方がそれこそ住民、患者と長官との壁になっているのです。だから、私もそういうことを今度お話をいたしますから、そういうことを言う人などともお話して、これはさっき言われたように、行かなければ絶対だめですから、ぜひそういうことをお願いしたいと思います。  それから今度は、具体的に水俣病の対策について質問したいのですけれども、昭和五十三年の六月二十日に「水俣病対策について」という閣議了解事項が決定されております。この内容はもう大臣も御存じのとおりでございますが、第一に認定業務を促進するのだ、第二にチッソ株式会社に対する金融支援措置を講ずる、第三に関係行政機関、業界等によるその他の支援措置を講ずる、第四に水俣芦北地域の振興、こういうことが昭和五十三年六月二十日の閣議了解事項になっております。そして、大臣に言いたいのは、これは大臣御存じですからもう念を押しただけですが、この閣議了解事項は、水俣病問題について関係閣僚会議が設けられて、「水俣病対策について」という了解事項が行われた、こういう背景は、二十年、三十年にもわたる患者、住民――行政というのは、言うならばちょっと抑えたかっこうですから、患者、住民の要求と運動、世論の高まりの中でこういうものが生まれました。  それから五十二年六月に、東京高等裁判所は川本事件の判決で、国も県も水俣病に対して責任がある、被害者の立場から言えば国家もまた加害者である、こういう判決が高等裁判所で出ましたのが五十二年六月、そういうのを受けた閣僚会議であったわけです。さらに認定制度は、五十一年十二月に、こんなに認定の滞留者があるということは行政の不作為違法だという確認の判決が出ました。そして熊本県知事は、もう認定制度は破綻しておるということをこの時期に言っております。それに加えて加害者企業チッソはもう経営危機に瀕して、患者の補償というのは滞りやしないかという心配があった時代でございます。こういう時代にこの四項目が決定しておるわけでございまして、私はこの閣議了解事項の重みというのは非常に重要なものだと思いますが、大臣、この間関係閣僚会議が三年ぶりに開かれましたね。大臣も出られたと思うのですよ。もう念を押すこともないと思いますけれども、この閣議了解事項の重みというものをぜひ十分理解していただいた上でひとつ答弁していただきたいと思うのですが、この閣議了解事項の重みというものについて大臣の見解を聞いておきたいと思うのです。
  52. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 細かい点はまた局長からお答えさせますが、先生言われたように、この問題について、私が就任してから一回、これは御承知のとおり主として県債の問題でございました。総じて五十三年六月の閣議了解事項は十分の重みを持って感じているわけであります。ですから、認定事業も、御期待に沿わないかもしれません、おしかりを受けるかもしれませんが、相当一生懸命やっているのですよ。ただ、この人が水俣病だという、いわゆる決まる患者が少なくなってくるということは、ずっと調べた後でございますから、だんだん少なくなってくるということはお許しいただかなければなりませんが、できるだけのことをやって、熊本県でもずいぶん骨を折ってくださってやっておるわけでございまして、どうぞひとつ御了承いただきたいと思います。  それから、何といっても原因者負担の原則というのは御承知のとおりありますから、チッソに金を出してもらわなければならぬ。ところがチッソは企業ですからなかなかそういうお金がいま出にくい。そうでなくてもチッソ自体、利益だってなかなか上げにくいという状態ですから、そこで県がえらい骨折るわけですよ。その県に対して国の方はいろいろお願いをしているわけですが、県でもなかなか容易でない。国はこうしてくれますか、ああしてくれますかというお話があることは御承知のとおりです。それに対してこの前関係閣僚会議を開いて、そして決めたことは御承知のとおりであります。  重みを感じているかというお話でございますが、重みは十分に感じてやっておりますから、どうぞひとつよろしく……。
  53. 馬場昇

    馬場委員 私は結論の方から申し上げておきますと、もう県債はことしまでだとなっているのです。ことしじゅうに次どうするかということを対策を立てるとなっているのです。だから、今後どうするのかということを私はきょう聞きたいので、前のことをいろいろ言って攻撃するとかなんとかという気はないのですけれども、前の決まったときの重みとか現状というのを大臣に――もう小さいことは聞かないのです。局長たちに聞きません。大臣にそれを認識してもらって、今後のことはまた具体的に聞きます。いま聞いておるのですが、一つ一つ私が申し上げますから、大まかに感想だけでいいですから。  たとえば、第一に決まっておりますのは認定業務の促進ですよ。これは不作為違法という判決が五十一年十二月末に出ております。あのときは三千五百人ぐらい滞留者が、申請してまだ審査されないのがあったのです。これは不作為違法じゃないかという訴えがありまして、不作為違法だという判決が出たのです。これは県知事に出ましたけれども、これは国の委任事務を県がやっているわけですから、国に出たのと同じでございます。不作為違法と判決が出たときは三千五百人くらいですよ。今日現在滞留者は幾らおるかと言いますと、四千八百八十人おるのです。滞留者はふえておるのです。改善なっただろうかどうか。  それから第二の問題、やはり同じ熊本県の審査会だけでは、どんどん来るからラッシュとなる、だからバイパスをつくろうという考え方で、旧法にかかわる者については、四十九年九月以前の者については臨時水俣病認定審査会、法律をつくって国で審査してあげましょうということになりました。これに対して、旧法適用者は七百六十二人。ところが何と環境庁の臨時審査会に申請した人は四十七人しかいない。それで五十四年十一月からは一人も申請しないのですよ。これはおかしいのじゃないか。たとえばこれは認定の問題、あるいは今度棄却されて不服審査を申し出た問題、公害健康被害補償不服審査について――大臣、これは具体的な答弁は求めません、感じだけですから。申請は二百五十五人ですよ。棄却されて不服審査申請した者二百五十五人。これが二月末日で三十五人しか処分ができていないのですよ。そういう行政の実態。  それに対して患者側はどう出ておるかというと、検診拒否という動きが現在ございます。これはなぜかというと、行政に対する不信で検診拒否をやっているのです。それからもう一つ、この検診拒否の中には、行政の怠慢という中で、病像解明の努力あるいは認定基準を改善するという努力、そういうものが行われていない。  そういうことを考えますと、この重大な重みを持つ認定促進という閣議了解事項が全然進んでいない、少しも改善されていない、こういう状況にいまなっておるということをひとつぜひ認識していただきたいと思うのです。これについては大臣、どうですか。
  54. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 細かい点は局長から答えてもらいますが、私は、どうして診察をしますというのに――先生はそれは行政に対する不信だ、こうおっしゃいますが、診察をした結果は、あなたは認定しますよ、あなたは水俣病だとは思えませんよという両方ありますね。両方あるからこの診断をしなければならぬ。しかし、どうしてここで拒否されるのか、私にはそれがどうしてもよくわからない。まことにそれは困っているわけなんでございますが、このことについて非常に詳しい馬場先生、そういう点についてもひとつ事細かに教えていただけたらありがたいと思いますが、実際やっております局長の方からひとつお答えをさせます。
  55. 馬場昇

    馬場委員 これは局長には後で具体的に今後の対策で聞くのですけれども、いま大臣は、なぜ検診拒否されるのかわからぬとおっしゃいました。そこが問題なんですね。結局、患者の心というもの、そこからじゃないと水俣病の対策は出てこないのですね。だから、それが踏みにじられておるという実態はたくさんございます。これは挙げればもう切りがありませんから申し上げませんけれども、いま私はここで、認定業務の促進というものは、数字の上から私が言ったのでも促進されていないということを言いました。  もう一つ、第二の問題は、大臣先ほど答えられましたが、この閣議の了解事項では、チッソ株式会社に対する金融支援措置が決まっているのですね。このチッソ株式会社、一株式会社、一民間企業に対して何で県債を起こして金を貸さなければならぬのかということについては、閣議了解事項は、チッソの経営基盤を強化すると。しかし、一民間会社などの経営基盤を強化するために何で県債を出さなければならぬのかということですけれども、その理由は、患者に対する補償金支払いに支障を生じてはならない。第二は、地域経済社会の安定に資するためだ。こういうために、異例であるけれどもチッソの経営基盤強化に県債を出すんだ、こう決まっておるわけでございます。そして事実、昭和五十三年十二月に三十三億五千万円を第一回として、現在第五回まで、去年の十二月までに総額百二十七億二千二百万円、これを県債で融資をしております。  ところが長官、実は経営基盤が強化されていないのです。チッソは経営危機だといって、五十三年に閣僚会議で決めたときのチッソの累積赤字は三百六十四億でした。ところが、五十五年の上期でチッソの累積赤字は何と五百三十億にふくれ上がっているのです。チッソの経営基盤は強化されていないのです。県債を発行する目的が行われていない。  それからもう一つ、経営基盤を強化しながら地域経済社会の安定に資するということで出したのですが、これも安定に資していない。チッソの従業員は、この閣議了解事項が決まった五十三年には千四十八名おりました。ところが現在は八百八十七名です。熊本県会も熊本県知事も地元の住民も、この地域経済社会の安定というのは雇用の確保が主たるものだと言っているのです。それなのにこんなにだんだんだんだん雇用の員数が下がっておる、そして現在に至るまで実はチッソはどうやって水俣工場をよくするかという計画を出していない。こういうことで、第二の問題のチッソに対する金融支援措置というのは全然効果を上げていない、こういう状況がございます。  さらに、熊本県はこの閣議了解事項に対して幾つかの要望事項をつけております。たとえば、これは緊急避難措置ですよと言って始めたのですが、三年も続いて果たしてこれが緊急避難措置だろうか、百二十七億も累積して県債を出して緊急避難措置だろうか。患者がいま三十一都道府県におるのです。三十一都道府県の患者に対するチッソの補償を、全部熊本県だけが県債を出してよその県民、住民の補償金に充てておるのです。何で鹿児島県の患者には鹿児島県が県債を出さないのか、大阪府民たる患者には何で大阪府が府債を出さないのか、こういうことをはっきりさせなさいと言っているけれどもはっきりしていない。PPPの原則もありますけれども、万一チッソに不測の事態が生じた場合には、国が県債を一〇〇%見ますか、これもはっきりしていない。チッソが再建計画を出せということも、水俣工場再建計画を出していない。そして、熊本県のいわゆる水俣病検診事務、国の委任事務に対して持ち出しの予算がある。これは国が十分見てくれるか、見ていない。企業その他政府を含めて、地域振興策というのも十分でない。こういうことになりますと、この閣議了解事項は物すごい重みを持っておりますけれども、認定業務が全然進んでいない、地域経済社会の安定に資していない、何であったかというと、チッソの経営基盤も強化されていないのですから、ただ熊本県が県債を出して患者に補償金をやるというだけのことです。  こういうことになりますと、PPPの原則というのはもう現在崩れておる、そうして将来崩れるということがわかってこれを続けておる。たった一つ残るのはそれだけですよ。そして、熊本県の県民の血税という形で県債が出ておる。こういう問題でございまして、実はこの閣議了解事項というのは行われていない。  いま私が言ったように、PPPの原則も崩れてしまってきたじゃないか、こういう状況が現在ありますよということにつきまして、私がいま説明したものに限って大臣の見解をまず聞いて、そして反省を聞いて、それから次にどうするかということについて質問いたしたいと思いますが、いままで私が申し上げましたことについての大臣の感想を聞きたいのです。
  56. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 馬場先生お話の中で、大概はそうだなあと正直思います。私は余り言いくるめることは上手じゃありませんから、また言いくるめることはいいことじゃないですから、そんなことはしません。ただ、それは承っていてそうだなあと思うことが多いのです。けれども、あれっちょっと違うなと思った点が一つあります。  それは、チッソが再建計画は何もない、こういうふうにおっしゃいましたが、記憶でちょっと正確ではないのですが、チッソは、六十億だか七十億だか、ここにお金があれば一応の再建計画を立てることができるんだ、こういうことで、チッソの関係者が私のところへ来てその説明をしていきました。それから、そのときに、チッソが多少でも利益を出すと、その利益は患者の補償の方に回せ、足らないものは仕方がないから県債の方で、こういうことになっているので、幾ら利益を上げてもチッソが新しい機械などを買おうとするときのお金にならないんだ。だから、自分のところで利益を上げたときには、その利益の分は新しい機械を買って経営基盤を確立するために使わせてもらいたい、こういう話がありました。  それから、いまの先生お話の中にもありましたが、一企業の経営の合理化という設備資金みたいなことになぜ県が金を出さなければならぬか。これはなるほど全くそのとおりで、それは幾らどんな事情があろうとも、何人も首肯するところじゃありません。そこで、これはチッソの方でそれぞれの金融機関にお願いをして、普通だったらちょっと借りられないでしょうけれども、それは金融機関の方が協力してくれているわけで、そこで私はその金融機関の頭取なんかにも会いまして、大変でしょうけれどもぜひひとつチッソ再建のためにお金を出してください、あなたの方のお金が補償金に行くわけじゃないんですからということを申し上げてお願いをいたしたことがありました。  その他は、たとえば検診なども、これはちょっと普通はわからないけれども、段々理由があるのでしょうが、検診をしますよと言っても検診に応じていただけないというようなことや、地域開発のために――いまどき一千名も二千名も抱えておるような工場ではなかなか利益を上げられない、なるべく人を少なくということでしょうが、ここで少なくされたんでは地域の振興ということになりませんから、何としても従業員を確保しておいてもらいたい。そういうことがあったりして、いろいろな問題が閣議了解の重みあるにかかわらず進んでおらないということは、私は先生お話をまるっきり否定しようとは思いません。けれども、先生、これは類例のない大きな問題が起こって、現在PPPの原則が崩れそうだというお話がありましたが、崩れたら大変なことになりますからこれを崩さないでやっていこうというところに大きな無理がありますから、いろいろな面で矛盾みたいなものが生じてくる。これは正直言ってなかなか容易なことでないのです。ですから、地域の選出の国会議員の先生方も、先生も含めて非常に心配なさって、これはどうしたらいいんだろう、どうしたらばこの問題の正当な解決になるだろうかということで骨を折っているわけでございます。いま私は、これをこうするということをとても言えませんけれども、全力を挙げて、熊本県にもお願いをし、このPPPの原則も崩すことを前提としてということでなしに対策を立てていきたい、こう考えております。
  57. 馬場昇

    馬場委員 最後の部分は、そういうことを崩さないようにして、こういうぐあいに対策立てなさいということを私がいまからお尋ねいたしますが、大臣、大部分は同感だったけれども一部違うと言うのですが、チッソは再建計画を立てていないのですよ。というのは、県に対しまして、こういう方向で考えておりますという文書は出てまいりました。これは私もここに持っているのです。たとえばいま九百人おる、しかし現在の塩ビをどうする、何をどうするこうする、こうこうこういうようなことをやれば七百人になります、しかしこれが軌道に乗りますとまた九百人ぐらいになします、こういうようなことを考えてはおるけれども、仰せいま言われましたように資金計画がないのだということで、こういうことを考えてますということをずっと言っておるだけです。具体的に何も計画としては出てこないのです。そしてその間に、大臣ごらんになるとわかりますように、従業員がこんなにずっと減っています。上のグラフは水俣市の人口なんです。チッソの従業員が減るたびに水俣市の人口は減って、現在すでに三万六千人になっているのです。チッソの従業員はこんなにして減っている。これは自然退職があっても補充しませんから、計画をつくらぬと、だんだんいってあそこが自然死する、そうなってしまうのですよ。その方針なるもの、考え方は出ましたけれども、計画としては出ていない。金の裏づけがないものだからし切らないのです。そういうことは、少しは大臣の言われた答弁も当たっていますけれども、正確に言うと出ておりません。  そこで、もう時間がありませんので、そのほかにたくさんございますが、まず認定促進について、これは局長に答弁してもらいたいのです。  いまから質問するのは、さっき言いましたように、いままでの認識の上に立って、「地方債の発行は、昭和五十六年度まで行うものとする。」そして「遅くとも昭和五十六年度中に事態の推移にてらし、その後の方針について検討する機会をもつこととする。」ということになっておりますから、そこで大まかなことを聞きます。では、その後の対策というのはいつまでにどのような機構でどのような手順で対策を立てられるのか、この手順を明らかにしていただきたい。
  58. 藤森昭一

    藤森政府委員 御指摘のとおり、県債発行は五十六年度まででございまして、遅くとも五十六年度中に事態の推移にかんがみて検討する機会を持つというふうにされております。私どもとしましては、五十七年度以降の県債発行は、五十三年六月に閣議了解に関連しまして関係省庁の次官の覚書で決められた方針に沿いまして、関係省庁の間で検討を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  いつまでにどういう機関でというお尋ねでございますが、関係次官間の覚書では、「遅くとも昭和五十六年度中に事態の推移にてらし、その後の方針について検討する機会をもつ」というふうにされておるわけでございますが、この問題は、先生の御指摘の中にもありましたけれども、関係省庁はもちろん、県にも関係することでございまして、現在あるチッソの金融支援のための各省協議の組織でいいのか悪いのか、それで十分なのかどうかということについても問題があろうかと思います。いずれにしましても、そういうような関係省庁及び県の入りました組織でなくてはならないであろうというふうに考えておりますし、また、時期の問題としましては、この金融支援につきましては、御指摘のとおり非常に重要であると同時に非常に困難な問題を含んでおりますので、私どもとしましては、時期を失してはならないと思っておりますが、五十六年度中、この時期を失することなく結論を得たいというふうに考えておるわけでございます。具体的に本年の何月ということまではちょっと現在はお答えできませんが、ただいまのような趣旨で検討を進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  59. 馬場昇

    馬場委員 念を押しますけれども、五十七年度以降については関係省庁、県も入った組織でまず検討するということを言われました。時期については当然五十六年度中に決めなければならぬことでございますが、時期を失しないということはそのことだろうと思うのです。この前はそういう関係省庁局長さんたち、県が集まって原案をつくって、環境庁が座長になって取りまとめられて、次官会議に持ち上げたり関係閣僚会議に持ち上げたりということで結局閣議了解事項になったわけですね。そしてまた、具体的には次官の覚書があるから、連絡会議局長クラスでできておるわけでございますから、そういうことで関係各省庁、県が入って原案をつくって関係閣僚会議に出して第二次の閣議了解事項に持っていこう、こういうお考えですか。
  60. 藤森昭一

    藤森政府委員 組織につきましては、御指摘のありましたように、関係する省庁も多うございますし、県にも関係があると思いますので、どの範囲かは別でございますが、まずそうした性格の協議の場がなくてはならないであろうというふうに思います。ここでどんな協議事項になるのか、それからまた、それをどういう形でまとめ上げるのかというようなことにつきましても、私どもとしましては、その機関でまずよく話をする、そしてその手順というようなものをはっきりさせゴールもはっきりさせて対処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  61. 馬場昇

    馬場委員 まだはっきり日程までお考えになっておらぬようでございますけれども、時期を失しないようにお願いしたいと思うのです。  そこで、まず認定促進については、現在三年前に決めたことが守られていないわけですから、今度決める場合には、たとえば申請後遅くとも一年以内に処分ができる――公害健康被害補償法の第一条の「目的」には、「健康被害に係る被害者の迅速」な救済、こういうことになっておるわけですし、この補償法の目的に「迅速」とある、これにかかわって不作為違法状態の判決が出ているわけでありますので、いま申請者がわかっているのですから、少なくとも申請してから一年以内には処分ができるようにする。そのためには、たとえば審査の機構をどうするのか、病像解明とか、認定基準をどういうふうに改善していくのか、患者との信頼関係をどういうぐあいにして回復するのか、そういうことを、一年以内で処分できるということを決めて、その中身をこうするのだということを具体的に出して、第二次の水俣病対策を決めていただきたいと思うのですが、これに対してはどうですか。
  62. 七野護

    ○七野政府委員 先生おっしゃいましたように、現在滞留者が四千九百数名おりますが、弁解がましいことを申し上げるようでまことに申しわけございませんけれども、五十三年度からの単年度の処分者数を見ますと、かなり改善してきておると私たちは考えております。ただ、まことに残念なことに、新たに申請される方がおられますので、総数におきまして滞留している未処分者の数が一向に減らないということは事実でございます。そこで、私たちは、いま熊本県が鋭意努力しております現在の百五十人検診、百三十人審査の体制を今後とも続けていくということで認定促進を図っていきたい、かように考えておりますが、いま先生が御提言になられました従来からの懸案事項がございます。たとえば認定審査に関する研究班をつくって検討するとかという点がございます。その中には、従来から懸案になっております小児水俣病の判断条件というものがあろうと思います。これについてはまことに弁解がましいことを申すようですが、私どもも専門家の先生方のお力を煩わしまして現在鋭意検討を進めております。できる限り近い時期にその判断条件を各県に示しまして、認定促進に一段と努力を払っていきたい、かように考えております。  いずれにいたしましても、私たちは現在できるだけの力を認定促進に注いでいるということで、ひとつ御理解を願いたいと思います。
  63. 馬場昇

    馬場委員 全然理解できません。百二十人体制が百三十人体制になっただけじゃないですか。バイパスをつくったけれども、それがいま通行どめになっているのでしょう。  では一つ聞きますけれども、申請して何年たったら処分が出ますか。
  64. 七野護

    ○七野政府委員 この五十六年の三月直前に処分を受けた方がいつ申請されたかということですが、たしか五十二年の九月から十一月ごろに申請をされた方というように承知しております。
  65. 馬場昇

    馬場委員 大臣、申請してから四年ぐらいで処分が出るのです。だから、その間にたくさん死んでいます。まず申請をする、検診を受けるか受けないか、判定が出るのは三年か四年後ですから、その間にたくさんの人が死んでいるのですよ。だから、私は、これを申請して一年以内ぐらいには結論が出るような審査体制にしなさい、そういうことを抜本的にやらなければ認定業務は進行しませんよ、こういうことを言っているのです。大臣、これについてはどうですか。迅速に救済せよというのに四年もかかっていいのですか。
  66. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 私の病気が水俣病であるかどうかわかりませんからひとつ診てくださいと言ってから四年もかからなければ診断してもらえない、こういうことですか。
  67. 馬場昇

    馬場委員 結論が出ないのです。
  68. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 結論がね……。四年というのはかなり長いですから、それでいいか悪いかといえば、いいと言えないな、それは。
  69. 馬場昇

    馬場委員 常識から言ってそうですよ。だから今度つくるときには、一年ぐらいで処分が出るような認定促進の内容を持った、具体性を持ったものをつくりなさいということをぜひ希望として申し上げておきますから、大臣、胸に置いておいていただきたいと思います。
  70. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 私は、四年もかかっていいとは思わない。思わないが、四年もかかるというのには何か事情があるのかなと思いますし、先生の御趣旨もわかりますから、よく検討してできるだけ善処するように心がけます。
  71. 馬場昇

    馬場委員 次に、金融支援の問題でございますが、まず、金融支援をする直接の原因はチッソの経営基盤の強化にあるわけで、経営基盤を強化して補償金の支払いに支障のないように、地域経済社会の安定に資するとなっているのですが、これはまず通産の方にお聞きをしますけれども、チッソの経営基盤の強化について再建計画が全然出ていないのです。だから、今度第二次の閣議了解事項で五十七年度以降の水俣病対策を決める場合には、これが決まらないと熊本県は多分県債は出さないと言うと思います。これは何回でも言っておりますけれども、水俣芦北地域の経済社会の安定、雇用の確保、この確保は千人体制だと私は言うのですが、この水俣工場をどうやって体質を強化していくのか、その新規事業は具体的にどういうものをやるのか、あるいは既存事業はどういうぐあいにして利益を出すようにするのか、そのための資金計画とはどういうものなのか。大臣、この資金計画は大臣にいまがんばっていただいておりますが、さっき言われましたように、チッソ全体で利益が出てもみんな補償金に行ってしまうのです。それだけ返済が減るわけですから、設備資金をチッソは持たない。ですから、私はここで提案もしておるのですけれども、チッソの水島とか五井とかは離して、水俣工場の再建資金を開発銀行などから政策資金として融資してやる。水俣の工場は利益を上げてもいいというようにして、そのために資本を投じる、そして雇用を安定していくよというようにする。熊本県の県民には、チッソが全体でどんどんもうけているのに県債を出すのはおかしいという議論はありますが、水俣工場に資金を出し利益を上げて県債を出すのには何もおかしいとは言わない。そういう意味で、資金を開発銀行が出してこういう設備をつくって、従業員は千人体制でもってこれだけの利益を上げてというような具体的な再建計画をはっきり示さなければ、今度の県債なんか熊本の皆さんは了解しないと思うのです。今度第二次計画をつくるときには、ぜひこの点は明らかにしていただきたい。通産、これはどうですか。
  72. 山本雅司

    山本説明員 ただいまの御指摘は全くおっしゃるとおりでございまして、再建計画がない全体の計画というのはあり得ないわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、五十七年度以降の問題といたしましては、当然それまでに再建計画をつくるべきだと考えております。ただ、問題は、五十七年度以降を待って入れるような事態にはなっておりません。実はもう一日でも早くそれをつくらなければならないということで鋭意企業にも勧奨しておる段階でございまして、先生もよく御承知のように、企業の内部ではいろいろ鋭意検討しておるわけでございまして、これが一日も早く資金計画の裏づけのある完全な計画ということになるように、全力を挙げて関係方面、県、あらゆるところと当たっていきたいというように考えております。
  73. 馬場昇

    馬場委員 これは山本さんにはいつも言っているのですけれども、千人体制をきちんと考えてやっていただきたいという希望を申し上げておきたいと思います。  自治省の方にお伺いしたいのですけれども、長官、いま百二十七億県債を出しています。ところが、県債はこれだけじゃないのです。ヘドロ処理が始まっておりますが、ヘドロ処理のチッソ負担分も県債で貸しているのです。そういうことにつきまして、実はこれが決まりましたときには、熊本のチッソヘドロ処理分の県債は百二十六億でございました。これが中断しておりまして最近始まったのですが、熊本県知事によりますと、今度は物価の値上がりでヘドロ処理計画は四百億から五百億要るんじゃないか、そういうことを熊本県知事も言っているのです。そうしたら、チッソの負担分は七割にいたしましても三百五十億円ですよ。この県債も実は熊本県が出すことになっているのです。そしてこれは五年据え置き、三十年償還という形になっているのですが、この補償金の返済とほとんど同じ条件ということでございます。そういたしますと、本当に五百億、六百億というようなかっこうにもう現在なってくるのです、熊本県債は。これは地財法に違反しないのかということを私はぜひ自治省に聞いておきたいと思うのです。そして、今度もしやるとするならば、これを私は続けられないと思うのです。続けるとするならば、きちんと返済計画とかこういう担保があるから心配要らぬとか、返済計画をきちんとした県債計画でなければならないと私は思うのですが、そういうことについての自治省の見解をお聞きしたい。
  74. 井下登喜男

    ○井下説明員 ヘドロ処理の分を含めましてチッソの県債というのが非常に多額になっているということは、先生指摘のとおりでございます。これが地財法違反ではないかという御指摘でございますが、まず補償金の方のチッソ県債につきましては、現在の地方財政法の五条の二号でございますが、出資金、貸付金を財源とする場合には、地方債をもってその財源とすることができるという規定がございます。もちろん、この規定の運用と申しますか、よって来るところ、その解釈と申しますかから申しまして、出資金、貸付金であれば何でも起債が発行できるというわけではございませんで、当然のことながら、一つにはその出資なり貸し付けなりの目的というものが公共的性格が非常に強いことというのが必要であろうかと思います。この辺につきましては閣議了解の中にもございますように、万一この起債を発行いたしません場合にはチッソが倒産する可能性が非常に強い。そうなりました場合に、もちろん地域経済に対する……(馬場委員「内容は知っていますから結論だけでいいです」と呼ぶ)それじゃ、簡単に申し上げます。  いま申しましたように、出資、貸し付けについては起債の対象になるということでございます。  また、ヘドロ処理に係りますチッソの負担分についての起債でございますが、これは現在単独事業債というかっこうで起債を許可しているわけでございますけれども、事柄の性質としましては、やはり水俣港のヘドロしゅんせつ事業に係る起債というふうに考えておりまして、現在の公害財特法の規定によりまして適債事業考えているわけでございます。  ついでに申し上げますと、この部分につきましては汚染者負担の原則があるではないかということでございますが、これは一応チッソからその償還財源は徴収するということになっておりますので、その汚染者負担の原則にも適合していると考えているわけでございます。
  75. 馬場昇

    馬場委員 えらい問題ないようなお話をされますけれども、ちょっとお聞きしたいのですけれども、たとえば私はこの次第二次計画をつくるときにどうだということを言っているのですよね。だからいま百二十七億です。年に二回ずつ大体三十億ぐらい出していくのですから、五十六年になりますと三百億近くになるのですよ。いま言っておるのは五十七年度からどうするのかというのだから、毎年二回、三十億ぐらいずつ県債を出していく、こういうことが果たして地財法に違反しないか、好ましいことか、この次、計画をつくるときにはそういうことをやってはいけないのじゃないか、それに対する自治省の見解はどうかということです。
  76. 井下登喜男

    ○井下説明員 ヘドロしゅんせつ……(馬場委員「ヘドロじゃなくていま言ったのは補償金」と呼ぶ)いわゆるチッソ県債につきまして、これは現在五十六年度までの措置ということになっていることは御指摘のとおりでございます。  今後どうするかという問題につきまして、これは五十六年度中に関係省庁検討するということになっておりますので、しかるべき結論が出されるものと期待しておりますが、これ自体が先ほど申しましたように地方財政法に直接違反するものではないと考えておりますが、全く問題がないかと言えば、これは相当に問題があると言わざるを得ないわけでございます。  と申しますのは、これはやはりいろいろ公共性なりあるいは償還財源の可能性があるということを申し上げましたけれども、臨時異例的な緊急避難的な措置であることには間違いございません。一企業のためにこういった措置をすることがいままで地方財政の上で例があったことでもございません。そういった意味で、これは当然熊本県なり熊本県議会なりも大変心配しておるところでございまして、私どももそういった懸念を多分に持っているわけでございます。問題はきわめて大きい問題だというふうに考えているわけでございます。
  77. 馬場昇

    馬場委員 まだ幾つかあるのですが、とにかく地方振興の問題等についても具体的な政策が出ていない。たとえば、地方に企業を持っていったときに補助金をどうするかとか、国の施設を地方につくるとか、他の業界がどういうぐあいに応援するとか、いろいろなことが決まっておるのですけれども、一つも行われていない。こういうこともはっきりさせなければならぬと思うのですが、長官、最後にこの問題について申し上げますけれども、認定促進、さっき私が言ったように、果たして環境庁が具体的なことをつくることができるか、はなはだ疑問を持っております。チッソの再建計画を熊本県民が納得できるようにやれるかどうか、通産にもはなはだ疑問を持っております。それからあと認定促進の環境庁にも疑問を持っております。いまチッソの県債の返還について物すごく心配がある。果たして返済計画ができるのかという問題がございます。これはまた自治省心配しておるところです。そして地方の地域振興にも問題があります。そこで実際は、それで一生懸命やってできれば結構ですが、できないとしたならば、この水俣病に対して特別立法というものを別に並行して考えなければ、本当の抜本的対策にならぬのじゃないかという意味で、私が言ったようなことを含めた第二次水俣病対策を閣僚会議で決めてもらいたいのです。  そのほかにもう一つ、抜本的な別の角度から特別立法という形でこれをどう対処するかということを研究しなければならぬ段階じゃないかと思うのですが、これについての長官のお考え方を聞きたい。
  78. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 きわめて簡単な問題ですが、対策は非常にむずかしい問題です。ですから、どれもこれも、先生が言われたように、地域振興だってむずかしいだろう、約束を守れないだろう、それから認定だってなかなかうまくいかないだろう、補償だってうまくいかないだろう、それから再建だってうまくいかないだろう、ヘドロのことを考えたらなおさらだろう。だから、自治省だって満足な答えができなかろう、通産省だって満足な答えができなかろう、環境庁もなおさらだろう、こういうことなんです。全く問題が大きくて大変なだけに、そういうふうにおっしゃられる気持はわかります。わかりますが、御承知のとおり、関係閣僚会議等を開いて、それまでには、先生指摘のように、課長会議局長会議、次官の会議をやって、それでやってまいりましていま全力を挙げてやっておるわけでございます。これからもこのやり方でしばらくやらしていただきたい、こう思っているわけです。
  79. 馬場昇

    馬場委員 さっき言ったように、本当に三年前の閣議了解事項も、一生懸命やってもらってこれならうまくいくと決まったのですけれども、うまくいっていない。今度もまた一生懸命やる、しばらくそれで任せてくれ。一生懸命やってもらいたいのですけれども、しかし別の角度から、発想を転換しながら特別立法という形を考える時期に来ているのじゃないか。それを全然無視したら、ああできませんでした、できたって何にも効果が上がらなかったということになってしまったら、たとえば県債をどんどん何百億と出していった場合、チッソが倒れる、返済ができないという場合には、この処理についても現行法では私は無理だと思う。たとえばそこに特別立法も要るのじゃないかということも考えられますし、ぜひ特別立法という角度の検討も庁内で始めてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  80. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 だんだん大きくなってきてしまって、チッソがつぶれてしまったらこの県債の始末はどうする、それは私の頭の中にあります。それは大変ですが、ここで特別立法をした方がいいだろうというお約束は私にはできません。先生がいま御質問なさったように、自治省も通産省もみんな関係しているわけですから、せっかくそういう御意見のあったことも十分強く申して、そして考えてみたいと思っています。
  81. 馬場昇

    馬場委員 五十六年度中に結論を出すという閣議了解事項になっているわけですから、全力を挙げてやっていただきたいと思います。  次に、今度は石炭火力の問題について質問をいたしたいと思います。  政府は、石油代替エネルギーとして当面石炭エネルギーを中枢の一つにしておることはそのとおりでございますが、ここでまず第一点お聞きしておきたいのは、石炭火力発電所で石炭中の水銀が気化して大気中に放出される問題について質問しておきたいと思います。  最近報道されるところによりますと、アメリカのイリノイ州のアルゴンヌ国立研究所の試算データが伝えられております。これによりますと、発電能力百万キロワット級の石炭火力の場合は、水銀が年間五トン大気中に放出される、こういう試算データが報告されております。  もう一つ同じアメリカのテネシー州のオークリッジ国立研究所の試算データも出ておりますが、これは発電能力百三十万キロワットの石炭火力の場合、粒子状とガス状の水銀が一年当たり一・四トン放出される。さらに脱硝、脱硫装置等は技術的に可能ですけれども、気化した水銀の除去方法というのはまだ技術的に開発されていない。水銀の拡散範囲というものが、たとえば〇・二キロでは一平方メートル当たりに一・七マイクログラム、七キロ地点では一マイクログラム、二十二キロ地点で〇・二マイクログラムというデータが出た。こういうぐあいに報告されておるのですが、以上の試算データについて資源エネルギー庁はどういう御見解をお持ちか。環境庁はどういう御見解をお持ちか。また、この試算データについてどういうぐあいにして検証しよう、あるいはこれが本当かうそか確かめようとしておるのか、資源エネルギー庁と環境庁から聞きたい。
  82. 廣瀬優

    廣瀬説明員 お答えいたします。  脱石油化の一環として石炭火力を促進していくということは重要な課題であるわけでございますが、石炭火力に使われます石炭は、一般的に言いまして土壌と大体同程度の微量な水銀が含まれております。その濃度は炭種によって違いがありますが、一般の土壌中の濃度と同程度のものであります。石炭火力において石炭を燃焼させた場合に排出される水銀の環境への影響については、燃焼により石炭中の水銀全量が蒸発して大気中に放出されるという仮定のもとに試算いたしましても、拡散により地表への着地濃度は、最大地点で考えましてわが国の大気中の平均水銀濃度に比べて十分小さいと試算されます。また、石炭の利用については、すでに内外における長い歴史もあることであり、現在まで石炭の燃焼に伴う水銀の健康被害といったことの事例はないということ等により、特段問題はないと考えておるのが私どもの立場でございます。  以上でございます。
  83. 三浦大助

    ○三浦政府委員 先生ただいま御指摘のテネシー州のオークリッジ国立研究所のデータはいま私の手元にございますが、これを見ますと、大気中に排出される水銀、ガス状のものですが、二百五十メートルとか七キロメートルとか二十二キロの地点でどうなるかというデータがございます。ただ、こういうデータは余り国内にないものですから、ここで確かなことは申し上げられませんけれども、たとえば日本産業衛生学会の「職場の環境気中の有害物質の許容濃度の勧告」というのがございますが、これは水銀は一立米当たり〇・〇五ミリグラムということになっております。これはアルキル水銀を除いております。それからあとWHOの環境保健クライテリアというのがございまして、これも約〇・〇一五ミリグラム・パー・立米、こういうことになっておるわけでありますが、いまテネシー州の大気中に排出される水銀の調査を見ますと、単位がマイクログラムでございます。ですから、約千分の一ぐらいの単位でかなり少ない量でございまして、これを見る限りそう問題ではないのではないかと考えております。ただ、これらの資料が余りございません。  これからどうするかということでございますが、環境庁といたしましては、水銀のほかに石炭利用に伴います大気環境への影響につきましてはいろいろなことが考えられるわけでございまして、五十五年度から本格的な調査を行っていきたい。四カ年計画でございますが、その中で水銀の大気環境に対する影響につきましても調査研究をやっていきたいということでございまして、石炭のいろいろな種別でどうなるか、あるいは業態別でどうなるか、あるいはそれらが大気環境に及ぼす影響、こういうものを早急に調査を行ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  84. 馬場昇

    馬場委員 資源エネルギー庁の方に申し上げたいのですけれども、あなたの方は、小さいとか、健康被害の報告がないとか言うが、水俣病だって昭和七年から水銀を流していますけれども、報告なんかといったって、国が認めたのは四十何年ですよ。被害が表に出てきたのが三十一年です。被害がないからといって、その前にないようにするのがあなた方の務めじゃないですか。それから、問題はないみたいなことを言われましたけれども、私が質問したのは、このデータについてどう検証するのか。このデータは全然信用ありませんとあなたは言うのか、あるいはまたこういうぐあいに検証いたしますというのか、あなたの方は全然問題にしない、検証もしない、勉強もしないというように聞こえたのですけれども、あなた方のどなたか知りませんが、ちゃんとある新聞には発表しておられますね。「これは問題提起として意味があり、検証するつもりはない。」これは資源エネルギー庁のお話だ。環境庁お話では、米国の試算自体は決して過大ではないということも言われているのですけれども、これについて資源エネルギー庁の見解を……。問題ないから調べないのか、調べるのか、どうです。
  85. 廣瀬優

    廣瀬説明員 先生指摘のイリノイ州アルゴンヌ国立研究所の件あるいはテネシー州のオークリッジの国立研究所の報告について一応読ましていただいております。勉強させていただいております。ただ、私どもといたしましては、私ども自身でも勉強いたしておるわけでございまして、その結果先ほどのような少し舌の足りない言い方を申し上げましたが、先ほど申し上げたことを申し上げますと、石炭中の水銀全量が蒸発して大気中に放出されるという仮定をいたしまして、しかも地表の最大着地濃度地点でどのくらいの水銀が拡散濃度としてあるだろうかと想定いたしました場合に、大体百億分の一グラム・パー・立米程度であろう。これはわが国の大気中の平均水銀濃度、大体数億ないし数千万分の一グラム・パー・ノルマル立米から比較いたしまして十分小さいではないかということでございます。以上でございます。
  86. 馬場昇

    馬場委員 ひとつも謙虚にいろいろなデータを勉強しようという気がないようですね。そういう姿勢こそ開発優先で、公害環境を破壊するもとだと私は思うのです。時間が余りございませんので、ぜひその点は……。  環境庁ではエネルギーと環境問題懇談会というのが発足いたしたのですか。
  87. 藤森昭一

    藤森政府委員 エネルギー転換に関連いたしまして、特に石炭火力のこれからの推進に関連しますいろいろな問題がございますので、御指摘の研究会をつくって検討いたしておる次第でございます。
  88. 馬場昇

    馬場委員 具体的な例で質問いたしたいのですが、熊本県の天草郡苓北火力発電所、これは七十万キロ二基、合計百四十万キロの石炭専焼の発電所でございますけれども、これがいま、きのうか何か漁業権放棄の投票があったと聞いておるのです。これについて具体的に環境アセスをやっているようでございますけれども、ここの九電がやりました環境アセスに水銀が入っているのかいないのか。  それから、水銀除去装置をここはつけるのかつけないのか。これは豪州炭を使うようでございますが、これは資源エネルギー庁ですか、聞きますが、豪州炭の水銀含有量はわかっているのですか。  さらに、つけなければならない脱硝装置もこの発電所はつけていないようでございますが、これはいかがでございますか。
  89. 廣瀬優

    廣瀬説明員 まず第一に、水銀の点について研究させていただきます。  苓北発電所の環境影響調査書には水銀に関する記述についてございませんが、発電所の立地に当たっては、私どもの五十二年七月の省議決定に基づき、電気事業者に環境影響調査を実施することとしておりますが、発電所の立地に伴い環境に及ぼす影響について十分に把握することにより発電所の周辺の環境の保全を図ることを目的としたものでございます。  火力発電所の水銀の排出については、一つといたしましては、先ほどの繰り返しになりますが、石炭中の濃度は一般の土壌中と同程度であるということ、それから大気中に放出されて拡散される水銀の濃度はきわめて小さいと想定されること、それから長い石炭利用の歴史の中で特段の事例を生じていないということ等にかんがみまして、水銀排出に係る予測評価というものは行わないとしても問題はないと考えております。  第二点の脱硝についてでございますが、苓北発電所につきましては、脱硝装置をつけなくても十分環境基準を維持できるということでございますので、その必要性はないのではないかと考えております。  以上でございます。
  90. 馬場昇

    馬場委員 これは環境庁の方にお尋ねいたしますけれども、相手は公害を出す方ですから、開発の方ですから、出させないようにするのは環境庁ですから、ぜひ今後、水銀問題も研究中ですが、いま言いましたのは、いままで大体五万とか十万キロとか、こういう小さい発電所ですが、これからは百万キロワットとか、何か大きい火力、石炭火力を出すわけですから、いままでの感覚ではいけないと思うのですよ。そういう意味で、環境庁は研究なさっておるようでございますが、水銀の問題も環境アセスに入れるとか、そういう除去装置とか、そういうものについてもぜひ研究の中で十分考えていただきたいと思うのです。  特にこの苓北というところは、第三水俣病で物すごく混乱したところですし、熊本県の中ですから、水銀というものについては物すごく住民は心配しているのです。こういう点も考えていただきたいのです。  環境庁にお尋ねしたいのですけれども、この苓北というところは、町の半分が雲仙天草国立公園に入っているのですよ。この発電所がつくところはちょっと外れになるのですけれども、国立公園のすぐ近所だ。一部と言ってよいところでございますし、そしてここは本当に日本でも数少ない、例の「藍より青し」というテレビドラマがございました、あそこなんです。非常にきれいな海でございますし、そして漁場としても非常にりっぱなところでございますし、だから、こういうところに何で発電所をつくらなければいかぬのか。いま通産とかエネルギー庁みたいに、何ら影響はないのだ、脱硝装置もつけなくてもいいのだ。問題にならなかったら、何もこんなへんぴなところに持ってくることない、全然環境に影響ないのだったら。ここから物すごい送電線を使わなければいかぬわけですよ。こんなに高く経費がつくところよりも、もっと大消費地のところにつくればいいようなものを、何でここに持ってきたか、非常にきれいですから、ある程度有害物資を出したって拡散してしまって基準値を上回らない、そういうところをねらってここに持ってきた。いま一つも煙突がないのですよ。私はそういう感じがしてならないのです。本当にその町の一部は国立公園です。海もきれい、漁業も盛ん、農業も盛ん、そして煙突も一つもない、空気もきれい。しかも、電力は天草全体で五万キロぐらいしか一年に使わないのです。それを百四十万キロのをつくる、そして送電線なんかもたくさん持っていかなくちゃならぬ。こういうところにはやはり立地を選ぶべきではないのじゃないか、環境を守る上から言ってあるいは漁業等を守る上から言って。私はそういうぐあいに思います。この点についての御見解を聞きたい。
  91. 藤森昭一

    藤森政府委員 苓北発電所の計画につきましては、現在経済企画庁の方から調整の依頼を受けまして、私の方において環境影響について審査中でございます。したがいまして、この場でこれに関する見解を述べるという段階には至っておりませんし、またそれは差し控えさせていただきたいと思いますが、先生からいろいろ御指摘がございました。これらの点を含めまして、今後私どもはさらに慎重に検討を行ってまいりたいというふうに考えております。
  92. 馬場昇

    馬場委員 時間が迫りましたので、アセスメントの問題について大臣に質問をいたしたいと思います。  先ほども御質問があったのですが、質問する前に、私は高知県の窪川町のリコール投票のことに対する大臣の感想を聞いておきたいと思うのです。五二%が解職賛成、四八%が反対で解職が成立したわけでございますが、これは感想というよりも大臣ここから何を学ぶかということがお答えやすいと思いますので、そのことを聞いておきたいと思うのですが、こう言っちゃなんですけれども、自民党から櫻内幹事長が行きました。中川科学技術庁長官も応援に行きました。そして、発言を聞いていまして、報道されるのを読んでいますと、何か札束のにおいというのがこういうときにぷんぷんするわけですよ。たとえば、原発建設に応ずると何十億という金が入りますよとか、多額の固定資産税が入りますよとか、赤字ローカル線は廃止しませんよとか、企業誘致には責任を持ちますよとか、こんなことがどんどん応援に行った人から言われた。何か金のにおいとか利益誘導とか、こういうようなことでの開発というのは私は非常におかしいと思います。だから、地域住民というのは原発推進の金による解決、これを拒否したのじゃないかと思いますし、さらに、最近は何か、いまの資源エネルギー庁じゃありませんけれども、電力業界が開発に対して物すごく高姿勢になっておりますね。力によって解決したいのだというような雰囲気が見えます。これは環境アセスに対する文句のつけ方も大体そこからきておるような感じもするのですけれども、こういう力でやろうとするものに対する批判だとか、やはり私はアメリカのスリーマイル島の原発事故以来いろいろ住民が不安を持っている、環境を見詰める目というものが非常に大きく変わってきておる、こういうものを軽視したことではないかと、いろいろ思うのです。  結論的に思いますのは、やはり開発という問題は政治の争いではない。冷静な科学的影響評価、この科学論争が問題であって、政治論争じゃないはずだ。こういうことに対する軽視、科学的な環境影響評価を軽視するという問題、理解を得ないという問題、住民の意見を聞くというルールが不十分だ。こういうことをやはり今度の問題で十分学び取らなければならないんじゃないかと私は思うのですけれども、大臣は窪川の問題から何を学ばれたかということについて感想を聞きたい。
  93. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 窪川の問題についていろいろ御感想をお述べでございますが、その中で、やはり安全の問題等に不安を抱いているのだから、科学的に安全なら安全というような論争、それからまたそれは不安だという論争であるべきだ、それから、地域の住民の意見を十分に聞くということでなければならぬというお話は、私全く同感だと思います。私は、先ほども申しましたが、地域住民理解協力、これがなければ事業はできるものではない、こう思っておりますので、まさにこの場合は環境庁仕事でないことは先生御承知のとおりですが、原子力の安全問題についてぜひ住民の方々理解をしてもらうという運動をもっと進めなければならぬ。それから、住民の意見を尊重する。よく、そこの地域の住民だけでなしに大ぜい方々からやってきて、何か主義、イデオロギーみたいなもので反対なさる人もいるのだ、こういうこともありますが、それはまた別の問題として、いま先生言われたように、あくまで科学的に安心してもらえるかどうか、その努力を積み重ねていかなければならぬということを感じます。
  94. 馬場昇

    馬場委員 大臣も御承知のことと思いますけれども、総理府の国政モニターが去年の十一月に全国調査をしました中で、開発事業に対する反対運動の原因は何だという調査をしましたところが、いま大臣と私が話し合いましたように、地域住民の意見を十分聞いていないというのが一番多いのですね、五八%。次に環境保全のため事前調査予測が不備だというのが五一%。いま最後のところで大臣が言われました、公の利益が軽視され住民エゴが強いからとか外部から来るからとか、そういうのは三〇%しかないのですよ。だから、私は、この反対運動というものを、外部から来るとかというのを一概に断るのはいけないと思う。たとえば、科学的論争をすると私は言いましたけれども、田舎の地域の人は科学的知識を持たないのですよ。そういうときに科学的知識を持っている人をほかから呼んでいろいろ意見を聞くということは、防衛手段として当然だし、そんなことは実は国でも住民側に立った科学的な調査なんかに意見とか教えとかをしなければならぬ。ところが、いま自分たちが専門家をよそから呼んで勉強して科学的に開発側と対決をするということもあるわけですから、よそから来るのを一概にはねるというのはおかしいと私は思うのですが、大臣の答弁と私の意見といまこのモニターのあれは全く一致しているのです。  そこで、最近世界各国で原発については住民投票、国民投票が行われていますね。こういうことは取り上げなければならぬ問題だろうと思いますが、これは環境庁のあれじゃありませんけれども、何としても今度のこの事件は、いま大臣も言われましたように、地域住民の意見を最大限に尊重しなさいという民主政治のイロハを教えてくれたと私は思います。そういう中で環境アセスメントについて実は質問をいたしたいわけでございます。  いろいろ経過はもう大臣十分御承知のとおりでございますので、そのものずばり聞きます。産業界とか経済界とか財界あるいは電力業界、これがいまあなた方が持っておられる法案を出すなという反対理由の根拠は何ですか。
  95. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 いろいろ機会あるごとに承りたいと思いまして努力もいたしました。その結果、承ることもできましたし、また今後も承っていきたいと考えておりますが、まあ大まかに言って、なかなか電源立地、これは何回も言うようですが、原子力発電所の方はこれは私の方に直接関係のあることじゃないのですが、しかしながら、その方から言いますと、工事に長い時間かかると言うのですよ。なるほど十六年ぐらいかかっているのもあるのです。十年ぐらいは普通みたいなんです。それが昭和六十五年までに油に依存するエネルギー、いま七〇%ちょっと超えているやつを五〇%にしようということは容易じゃない。それまでには五千万キロワットですかそのくらい原子力発電所から電気をとらなければならないが、いまのところ見込みのあるのは三千万キロワットで、あとの二千万キロワットは全然見込みがない。そういう際にはこんな十五年もかかるというようなことではとてもだめだ。そこで何とかしてこれを早くやりたいと思っているのに、アセスメントなんということが法制化されると遅くなる。これが一つです。  それから、遅くなる理由をしさいに分けて、なぜ遅くなるかといえば、訴訟や紛争がふえる、これが第二番目です。  それから第三番目には、条例などがある場合に、もしくはまたこれから条例をつくる場合でも、法律の上に条例が上乗せされてくるのじゃないかなということが、三番目といいますかその次にあります。  それから、さらに言えば、アセスメントをする場合には一番先に準備書といいますかそういうものをつくらなければなりません。こういう事業を起こせばこういう影響がありますという、一番先にそういう書類をつくらなければなりませんが、その書類をつくるときにはデータがなければだめです。そのデータのはっきりしたものがないじゃないか。十分信用の置ける、これで大丈夫というそういう物差し、データがないじゃないか。それなのに準備書をつくれといったってろくなものができるわけないじゃないか。だからだめだ。ざっと言って、以上のようなことではないかと思います。
  96. 馬場昇

    馬場委員 よくわかりました。  時間がかかるとか、あるいはその中で訴訟が起こるとか、何かまた、私の聞いたところによると反対運動に利用されるとか、いろいろそういう条例の上乗せとか、こういうことがあって反対しているというのはわかるのですが、これは私は、いまここの部分については長官が、そういうことじゃないんだということで、撃ちてしやまんという形でがんばっておられることには、全くその辺は同感です。そういうことではないと思うのです。  私は、たとえばおくれるからというのは、このアセスが出ればおくれるというような問題じゃなしに、たとえば本当に安全性の確保だとか、あるいは公害環境問題、やらねばならないような問題で、おくれようがおくれまいが、これはやらなければならぬ問題はやらなければならぬという点もありまして、だから、問題は、おくれるなんというのは、開発側が、たとえば札束でもって解決するとか高飛車で来るとか、さっき言ったように努力不足だとか、住民の切り崩しをやるとか、いろいろなことをやるというようなことで、おくれる理由というのは逆にアセスでなしに、さっきから言ったいろいろな、窪川の反対の教訓じゃないけれども、そういうところに私はおくれる理由はあると思うのです。だから、財界のそういうのは筋違いだと思うわけでございます。  しかし、私はさっき一番最初に言いましたように、財界側がいま皆さんの持っておられるのを反対と言いますか。それで、私は法律の中身について言いませんで、反対理由について、筋違いだから勇気を持ってやれと言ったのですが、やはり忘れてならないのは住民の側ですね。やはり皆さんが持っておられる法律に対しては住民側は不安を持っているのです。だから、これは被害を受ける方ですから、環境を破壊される方ですから、この皆さんの法律に対する住民側の不安というものをどう解消するかということをいま並行的にやらなければ、これが国会に出たときに混乱をするし、あるいはこれが実行されたって、反対のまま実行されたら実行段階で混乱をする。いわゆる大臣がせっかく考えられるルールづくりというのがルールにならない、逆に争いのもとにまた逆の方からなってくるということもあるわけでございます。  そういう中で、実はもう長官、これは出すなというのだったら、私たちは出していますから、それを上げようじゃありませんか。われわれ社会党が出しているアセスメントを上げれば一番早いですよ。それはぜひそのことをやってもらいたいと思うのですけれども。  最後に、このことだけは住民側の意見として聞いておって、これは解決しなければだめだということを聞いておきたいのですが、まず、私たちが出しておる案の基本方針というのは、たとえば住民の範囲ですね。住民の範囲というのは、関係地域だけではなしに、やはりさっき言いましたように、学者だとか環境保全に関心を持つ団体とか、そういうものに意見を有する人というのはやはり住民に入れておかなければいかぬというような問題、それから、説明会とか公聴会は必須条件として、各段階ごとに住民の参加や意見表明ができるようにしなければならぬという問題、環境アセスメントに関する情報や文書はすべて公開するというような問題、中正、公正な第三者の審議機関を設置するというような問題、それから、さっき言われたのですが、対象事業を限定せずに計画段階からアセスメントを実施するというような問題、訴訟と住民の異議申し立ての権利を十分保障する、これはもう憲法で保障されているのですから言わずもがなですけれども、そういう問題、それから、環境アセス制度に関する自治体の上乗せ、独自性、自主性というものは尊重する、こういうことどもについていま政府案に対して住民は物すごく不安を持っているのです。こういうことが解決せずして、住民側との話し合い、意見を調整せずしては、大臣が言われるルールづくりというのは私はできないと思う。そういう点をぜひ住民側と話をしていただきたい。これはいかがですか。
  97. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 お答えいたしますが、われわれの案は、先ほども御質問にお答えしたのですが、去年の五月にかなり慎重な討議を経てまとまった政府案でございます。そして、私は当然のことながらこれで十分だと考えておるわけであります。それに対して、経済界の方から――私は経済の発展というものもなければならぬと思いますよ。これは馬場先生だって同じだと思いますが、経済が発展しないでいいなんて考えられませんから、その方面から御心配があるわけで、それに対していままで一生懸命になって話し合いをしてきたことは、先生お認めいただいたとおりであります。ところが、私どもの案に対して、それじゃだめですよという話は実はまだないのですよ。実はどこからもまだない。それは当然これからあると思いますよ。ここへ出てくれば、先生方の方から、これはだめじゃないかというようなお話はあると思います。君が考えた案はまことに結構だとすぐにほめられると思っておりません。それはいろいろなことで、私は十分だと思っているのですが、こういう点はどうだ、ああいう点はどうだというお話があると思っているのですが、いままではないのですよ。いままであるのは、御承知のとおり、そんなものをやったらだめだという話ばかりで、それでいままだ努力しておりますので、どうぞひとつ御了解をいただきたいと思います。
  98. 馬場昇

    馬場委員 大臣、ちょっと認識不足もはなはだしいですよ。いまの案はだめだというのはだれも言ってこないなんと言って。あなたのところには、あの案ができる段階にまたできた段階に、たくさんの住民団体から反対の申し出があっているはずです。そして、かく言う日本社会党も、ちゃんと去年の三月にも、あれができてからも、あなたがなられてから一回、私があなたのところに持っていきました。その前、土屋環境庁長官の時代にも、まさに上がろうとするときに、そういうものではだめですよ、住民は納得しません、われわれは納得しませんよといって、去年の三月に土屋長官のところに持っていきました。ここに文書がございますが、詳しく書いてございます。だから、そういう点について住民側からもたくさん持ってきているはずです。  だから、私が言いたいのは、とにかく産業界がいまのに反対ですとあなたのところにいっていろいろやっておられるでしょう。住民側にもあなた方に反対ですとあるから、それと同等以上に、被害を受ける住民側と話をしなさい、だめですよ、それを言っているのですよ。たくさんそういう反対意見はありますよということを事実をもって示しました。
  99. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 どうも私の言葉が十分でありませんで申しわけありません。もっと正確に言いますと、前に臨時国会がありましたね。あれは臨時国会だから、やはりこの案を出すのには適当でないかなと多少私も思いました。先生方の顔色を見ても、お話になったわけではありませんが、臨時国会は仕方がないよというような顔色をしているように私には思えたので、あのころは言わなかったが、そのころはまた反対もなかったのですよ。それからこの通常国会に入るころになってきてからずっとありましたので、確かに書類や何かでいただいてはいます。けれども、こう執拗にやってくる――いま私どもの案を御審議いただかなければしようがないと思っているのですが、それが出せるか出せないかというような状態ですから、まず説得して御理解をいただいて、私どもが骨折ってつくってこれで十分だと私が考えているのをここへ出して、先生方の御審議をいただきながら、どうしてもだめだというなら別な案もまた審議をする。これは委員会の方で決めていただきたく、こういうふうにしていただきたい、こう思っているのです。まず御理解をいただいて、事、片方の方をひとつ説得しなければなりませんので、これがなかなか容易でないのにこっちから言われちゃったのでは、私もどうにもなりませんから、どうぞひとつよろしく。
  100. 馬場昇

    馬場委員 しかし、大臣、その大臣の努力はわかりますけれども、姿勢が私には全然納得できないのですよ。というのは、経済界を説得というのは、それは当然でしょう。ところが、逆に住民側というのは本当に反対の意見を持っておるし、この前の臨時国会で顔色でどうのこうのと言われたって困るわけですよ。私はきちんと文書でやるし、では、いまからしょっちゅう大臣のところに来てもいいですよ。そしてまた、関係の住民の団体大臣のところに来ると思いますが、住民側の意見というのを同等以上に聞かなければ、審議したってできたってだめ、これは混乱するということですから、ここではっきり申し上げておきますが、じゃ、住民側がいま産業界と同じように大臣のところへどんどん来る、それは向こうと同じように必死になってお会いしてお話し合いをしていただけるかどうかということと、もう一つ、一番手っ取り早いのは、私たちの案がもうここの委員会に出ているのですから、まず最初にそれを審議すればいいのです。  その前に、産業界以上に必ず住民側との話し合いをするということのお約束ができますか。
  101. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 それはもちろんですよ、先生。君たちの案はだめだよということを言ってくる人がいたら、私はどこへでも行きますよ、だれとでも会いますよ、時間の許す限りは。こういう態度ですから、何も産業界だけ、あの人たちだけを重要視してやっているわけではないのですから、どこへでも行きますが、ともかく私どもの政府案というのがもうまとまっているのですから、それをここへ出して国民の見ている前で、これは鯨岡だめだよ、この点はだめだよとか、この点はいいよとかということを言っていただいて、総合的にどうかひとつこれでやってみようかと言っていただきたいのですが、それはどうなるかわかりません。そこの方に進めていただかなければ――それもだめだと言っている人たちがいるので、その方をいま一生懸命やっていますから、順序立ててひとつよろしくお願いいたしたい、こう思っておるのです。  それから、私が残念だったなと思うのは、衆参両院予算委員会の総括は終わってしまったのですが、総理大臣以下ずっと並んでいるところでこのアセスメントは重要だ、なぜやらないんだということをよほどやられるかなと思って準備していったが、これが不思議と余りやられないのです。これはいかなる事情によるのかなと思って、これまたよく事情がわからないでとまどっているわけであります。しかし、これは終わっちゃったのですから言ったって始まりません。  重要な開発、特にエネルギー問題を解決しようと思っている人たちが、それがおくれるとかなんとかと言って心配しているのですから、私はそのエネルギー問題を解決しようとしている努力に対して敬意を表します。敬意を表しますが、もしそのことによって万一あの思い出したくもないような悲惨な状態というものが現出するようなことになったら大変ですから、ぜひこの国会でアセスメント法を出して御審議をいただきたい、このことを熱心にやりますから御協力を願いたいと思います。
  102. 馬場昇

    馬場委員 時間が来ましたので申し上げますが、産業界といま調整なさっていますが、私は、それと同等以上の力で住民の側の意見を皆さん方の案で聞きなさいということをまず申し上げます。長官はここで議論したいというのだったら、私どもの案が出ておりますから十分議論はできます。われわれがこの中で議論するのに、政府側からも意見があったらぜひ言っていただきたい。ここで議論したければ、私たちの案でひとつ議論していただきたいということを申し上げておきたいと思います。  時間が参りましたのでこれで終わります。
  103. 山崎平八郎

    山崎委員長 岡本宮夫君。
  104. 岡本富夫

    ○岡本委員 本論に入る前に、ただいまアセスメントの問題で大分出ておりましたので、最初に少し聞いておきたいと思うのです。  先ほど長官から、経済界反対しておるのは、非常におくれるあるいはまた訴訟が起こるのではないか、こういうような不安があるのだというお話でございましたね。そこで、おくれるのじゃないかという経済界の不安は、よく調べますと、各地方自治体でいま条例ができておる。それから国に今度法律ができる。国の法律でそれに向かって手続をちゃんとする。それに何年間かかかる。その後条例でまた同じようにかかる。これでは期間的に二重におくれるではないかというのが一つ反対の理由だと思うのです。こういったことに対して長官の方から、新聞なんか見ておりますと、説得について非常に精力的に動いていらっしゃることはわかるのですが、それに対して明確な答弁といいますか、こうなるのだから心配ないのだというようなことを一つ一つはっきりしないとなかなか、特に自民党さんの環境部会長さんというのは、話を聞くと企業寄りだということですから、そういったことを明確にしなければならぬと思うのですが、いかがでございますか。
  105. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 いま先生が言われたのは、一つのこういう事業をやろうとすると、国の法律ができるとこの法律に基づいたアセスをやらなければならぬ。一段落ついたところで、この土地には条例があるから今度条例でやらなければならぬ、そういう心配をしているのだろう。もしそういう心配だったら、これは御無用です。これこれの事業は国の法律でやるのですよという対象事業があるのですから、その対象事業は、今度もしここへ提案することができて先生方の御審議をいただいて信頼と権威あるルールができれば、その法律でもってアセスをやればいいので、条例はその場合には関係ありません、そう答えているのですが、なかなかわかってもらえない。それは条例法律関係できわめて簡単なことですからわからないはずはないと思うのです。そういうふうに答えているわけです。
  106. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、先ほども話がありましたが、聞くところによると、電源開発がおくれる、この場合国の法律アセスメントをきちっと行えば条例はそれでもう無視して――無視してというのはおかしいけれども、条例には関係ない、こういうことなんですか。
  107. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 法律の中に、これはこういう法律ではあるが、しかしながら地域によって条例でもって何々してもよろしいというようなことが書いてあれば別ですよ。しかしながらそういうことを書いてなければ、それは無視というのはおかしいですが、無視というのは当然注目しなければならぬのを払いのけるということですから無視ではないですけれども、当然のことながらその法律によるのであって、条例はその場合には関係はない、こういうことでございます。
  108. 岡本富夫

    ○岡本委員 この法律に、まだ出てこないからどういうものが出てくるか、不勉強で余りわからないのですが、横出し、上乗せというのですか、こういうものができるというような一項目もある。そうしますと、法律に基づいて全部手続が終わりましても、条例によって横出し、上乗せというのができておれば、また条例でひっかかるのじゃないですか。いかがですか。
  109. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 同じことを答えるようでまことに恐縮でございますが、たとえば新幹線だとか高速道路だとかいうようなものを十二ばかり対象事業を決めているのです、この法律は。その事業については先生方の御審議いただく権威と信頼ある法律による制度手続をやる、こう決めているのです。ですから、それ以外のものは、東京都なら東京都の条例、神奈川なら神奈川の条例によらなければならぬでしょう。これは上乗せも横出しもありはしません。これはその法律だけのことでございます。われわれの案はそういうふうになっております。
  110. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、電源立地は対象の中に入っているのですか。
  111. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 電源立地も発電所の一つでございますから当然入っておりますが、われわれの言うアセスメントの中に安全性の問題については入っておりません。それは別に安全性の問題としておやりになる。それはいまでも同じであります。
  112. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣は、安全性というのは原子力、放射能問題になると確かに公害対策基本法から抜かれておりますけれども、それは入ってないということですから、それはこの法律で、あなたの方から案を出してくる環境影響評価アセスメントですね、結局はその中に入ってないということなんですね。
  113. 藤森昭一

    藤森政府委員 多少細かい問題でございますので、私からお答えさせていただきます。  大臣先ほどお答えになりましたように、この取りまとめられておる政府案によりますと、政府法律によって環境アセスメント手続を定めようとしております事業は、国が直接行うかあるいは関与して行うような大規模で環境に対する影響が著しいというふうに思われるいわば大規模の開発事業でございます。したがいまして、それ以外の事業につきましては国の法律対象にしておりません。したがいまして、法律対象事業につきましてはこの法律で、その他の事業につきましては地方の自主性において条例その他で措置をする、こういうことになります。  そこで、環境影響評価と言っておりますこの制度の内容はどういう項目に着目して行うかと言いますと、公害の防止と環境の保全という二点に限られております。先生指摘の放射能の問題につきましては、御承知のように、公害対策基本法で放射性の物質によります大気の汚染とか水質の汚濁とかいうものがあるとすれば、それは公害対策基本法から除かれて別体系になっておりますので、その基本法の流れをくむ環境アセスメント法におきましては、やはり同様にそういうものは除外をしているわけでございます。立法政策として考えれば、またそういうものも環境に影響を与えるわけだから、広い意味では環境アセスメントの内容かと思いますが、現在の体制におきましては、いま申しましたようにこれはアセスメント対象から外れている、これが現状でございます。
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 こればかりやっていると遅くなりますので、次にもう一つ訴訟が起こされやすいというような問題の中で、こういうことを心配しておるのではないかと思われるのです。  一つは、今度のアセスの中に公聴会というのがありますね。公聴会を開催するについて、いま通産省主催の公聴会であれば、反対運動がたくさん起こったときに、この間の島根県のような警察力に守られながら公聴会を開く。しかし、会社すなわち企業で公聴会を開く場合はそういうことができないので、結局公聴会ができなくなる。公聴会を開くことになっておって公聴会が開けないと、そこに一つ手続の不備が起こる、それが訴訟の種になる、こういうようなことを言っておるのではないかと思うのですが、この点についてはいかがですか。
  115. 藤森昭一

    藤森政府委員 お答えを申し上げます。  先ほど申しましたように、この政府のまとめました法案でございますが、これによりますと、事業者が行うものは関係地域住民に対する説明会でございます。これは事業者の責任において行わなければなりませんが、いかに開こうと思ってもいろいろな事情でどうしても開けないという事態においてもなお開催を義務づけるということになりますと、先生指摘のようなことになりますが、事業者の責めに帰し得ないような事由によってどうしても説明会が開けないというときには、説明会は説明することが目的でございますので、いまのような事態になりました場合には、説明を別の方法で行わせるということで十分その趣旨が徹底するというふうに考えておりますので、御指摘のようなことはないと思います。  それから、この法案の中にも公聴会というものがございますが、この公聴会は、現在原発等に関しまして通産省あるいは原子力安全委員会が行っておりますような公聴会とは違いまして、事業者がつくりました環境影響評価準備書に対しまして、住民とはまた違った公益的な立場に立ちまして都道府県知事が意見を述べるという規定がございます。都道府県知事事業者のつくりました環境アセスメントの準備書に対して意見を述べようとする場合に、特に必要があると認めるときには、その都道府県知事が公聴会を行って、関係地域の住民の意見を集約して、これを参考にしながら述べる、こういう措置でございます。これは都道府県知事が特に必要があると認めるときは公聴会を開くことができるとなっておりますので、手続的に必須のものとは法律的には位置づけられておりません。したがいまして、そうした公聴会でございますので、これは訴訟対象にはならないというふうに環境庁考えております。
  116. 岡本富夫

    ○岡本委員 それだったら本当の骨抜きみたいなアセスメントですが、それでもこの当委員会に出てこなければ審議の方法がないわけですよ、たたき台がないとね。  そこで、報道によると、環境庁としては、この法案をつぶす気ならこちらにも方法はある、切り札を出すのだというような恐ろしいことが出ているわけですけれども、この切り札とは何ですか。
  117. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 別に私が切り札と言ったわけじゃありません。私の話の内容が切り札というように聞こえたのでそう書いたのでしょうが、まあそう言われてもいいでしょう。民衆の意思を離れて政治というものはない、これが私の考えの基本です。先ほど馬場先生からのお話にもありましたように、先般総理府でやった、政府でやったアンケートによりましても、アセスメントを要求しているわけですよ。ですから、いま政府の案もまとまって、それで先生方の御審議を願う前段になって何も大きな声で大々的に世間にこの必要を言う必要もないでしょうが、いよいよだれも見向きもしてくれないということになれば、世間に話をして、これは要らないのでしょうか要るのでしょうか、ひとつもう一遍皆様の御意見を聞きたいというような私のできる範囲でのそういうようなことをやる。これは別に切り札でも何でもない政治家として当然の姿勢だと思いますが、そんなことでございます。
  118. 岡本富夫

    ○岡本委員 世間に向かって長官は相当話をしておるんじゃないでしょうか。いままで全然してないんじゃないでしょう。世間では、アセスメントが出ない、どういうわけだ、いまの政府の姿勢に対して非常に厳しい批判があるわけですからね。  そこで一歩進めまして、この切り札というのは、通産、経企、建設など、電源開発関係する省庁の代表と学識経験者で構成されている電源開発調整審議会、すなわち電調審に出席しない、これが切り札だというように読み取れるのですが、いかがですか。言いにくいですかな。
  119. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 いろいろなことを考えますけれども、具体的にいま先生がおっしゃったようなことを考えているわけではありません。
  120. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、余り切り札にならぬようですね。たとえば、一般の住民のみなさんもアセスメントをやらなければいかぬ、同時にまた、いま何の開発をするについても必ずアセスメントは出しておりますね。そういうことは相当周知徹底しておるわけですが、ここに書いてあるような切り札でなかったら、ほかの切り札というのは、奥になおしておかないと、いまここで出してしまったら手が見えてどうもぐあいが悪いというのか。しかし、現在登坂さんですか、いろいろやってますね、商工部会等いろいろな反対があってなかなか出せないのだということで、非常に心配をしながらやっておるわけです。長官だけが一生懸命走っておるというわけですね。ところが一向に出てこない。このままいきますと、恐らく今国会危ないのじゃないでしょうか。そうすると七回目。仏の顔も三度と言いますけれども、六回目で七回目ですわね。しかも、優秀な鯨岡長官のときに出てこないということになると、これはかなえの軽重を問われますよ。もう一つほかにいい切り札があるのですか。
  121. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 私は、愚鈍ですから大した知恵もないのですが、努力だけは一生懸命やっているわけなんですが、これでこの国会に御提出して先生方の御審議がいただけないということになれば、私としては失敗ですね。失敗ですが、委員会としたって、天下これだけ要望しているものが審議できないということになれば、委員会先生方だって御落胆なさるに違いない、こういうふうに私は思いますので、委員長さんにもこの席からひとつお願いをいたしておきますが、ぜひ御審議がいただけるようにまた側面から御協力いただきたいと思います。  それから、経済界の方などは著名な方々が非常に多い、そして非常に経済開発心配なさっておられるわけでございますが、そういう方々がいろいろなことを言ってきた場合に、そうですか、仕方がありませんねといままで言いがちじゃありませんか。私はこの問題については言わないです。きょうも実はある方面から手紙が来ました。ここへ来る直前です。私はきょうじゅうに返事を書いて、書留速達でもって返事を出します。この間、経団連からパンフレットが出ました。私はそのパンフレットに対して、見たその日のうちに各項目に対して答えを書いて出しました。これがこの疑問に対する答えです、その私の答えに対してまた疑問があったらすぐ言ってきてくださいなんて手紙を出しました。これは、私の口から言ってはおかしいですが、なかなかいままでやらなかったことですよ。それが切り札と言えるかどうか、何だ、そのぐらいなことが切り札なものか、こう言われるかもしれませんけれども、かなり一生懸命になってやっておるわけですから、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  122. 岡本富夫

    ○岡本委員 話がもとへ戻りますけれども、そんなものじゃ本当の切り札ではなく、ここに報道されておるようなものが本当の切り札ではないか、こういうように思うのですが、まだそこまでいく気はない、要するに電調審なんかに参加することを拒否するところまではいかないというような考え方ですね。
  123. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 私は、アセスメントの重要性は本当に痛いほどわかって、これに対して御理解をいただくために努力しているのです。また、御理解いただきたい一つの面は、経済開発、それから油に依存しないで電気を起こすことにしようということの重要性もまた政治家としてわかっておるのです。これはどうでもいいということじゃないのです。だから、そういう会議に出ないで邪魔してやるぞ、そういうことを私は考えているわけでないことだけは御理解いただきたいと思います。
  124. 岡本富夫

    ○岡本委員 これ以上押してもなかなかいい答えが出ぬそうですから……。  そこで、けさほどちょっと出ておったようですが、NO2の総量規制、これについて兵庫県にも確かめました、なぜ環境庁の総量規制に参加しないんだと。ところが、問題は、固定発生源は寄与率は一五%から二〇%以内だというのですね。これはすでに相当抑えておる。ところが移動発生源、先ほど環境庁の答弁では、六十年に規制車が出回る、だから移動発生源からのNO2の発生量は相当減るんだというようなことがあったらしいのですが、自動車の台数を見ましても、ちょっと調べてこなかったけれども、規制車が出たからといって全部が全部一遍に規制された車が出回るのじゃない、中古車はずいぶんある。これはいままでの排ガス規制でもその問題がずいぶんあるわけです。この総量規制環境庁で本当にやるんだということになれば、この移動発生源の問題、要するに自動車の総量規制には、警察庁がずいぶん抵抗するらしい、東京都に聞きましても。これもなかなか前に行かない。だから、私は、こうしてこうしてこうすればできるんだという一つの指針と申しますか――ただ総量規制、総量規制という名前だけ挙げて後は適当にやれというのでは、またなかなか反対でできないのではないか、こう思うのですよ。衆参両院の附帯決議もありますけれども、もう少し、自動車の台数をどうするとかどれをこうするんだという細かい指示あるいはまた方法、これをやはり明示する必要があると私は思うのです。それがなければ、兵庫県もできなかった、今度はまた報道によると自民党さんの環境部会長が総量規制の実施には問題がある、環境部会長がこういうことを言っておるのでは、長官、相当説得力のある仕組み、そういうものを出さなければちょっと無理ではないか。これはまたアセスメントと同じように、環境行政がどんどん後退していきますよ。これについてどうでございましょうか。
  125. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 細かいことは局長をして答弁させますが、いま先生言われたようにアセスメントと同じことだ、これは全く私もそのように思います。ただ、結論から先に申し上げますが、〇・〇二だった基準を〇・〇四から〇・〇六の基準に落とした、〇・〇二では余りにきつい。専門家にいろいろ調べてもらったところが、公害基本法によるところの人間の生命、健康に支障を来さないということから言えば、〇・〇四から〇・〇六くらいに落としても大丈夫ということを言われたので落としたのですが、そのことはずいぶんおしかりを受けたことだった。しかし、まあそういうわけでお認めをいただいたそのときに、そのかわり六十年までには必ずどこの地域もこの中に押し込めるようにいたします、いまはまだだめでございますが、必ず押し込めるようにいたしますということを、われわれの方が積極的にお約束もいたしましたし、また衆参両院の先生方の方からも委員会の名において附帯決議などもせられた。ですから結論的に言えば、六十年までには、自動車が多いとか煙突が多いとかいろいろあろう、あろうけれども、どんな理由があるにせよ〇・〇六までには抑え込め、これがわれわれに課せられた至上命令であるとわれわれは受け取らざるを得ない。そういうことで一生懸命やってまいりました。ところが、日本じゅう見ると幾つかの地域は六十年までにどうしてもうまくいきそうにもない。  それで自動車の方ですが、自動車も二つに分けまして乗用車、乗用車はこれまた先生方の御協力によってずいぶんよくなりました。その結果、いま自動車問題なんて起こってくるくらいに日本の自動車、乗用車はよくなった。しかし、そういういい自動車ばかり走っているわけじゃないです。まだ先ほど先生が言われた古い自動車もありますが、六十年ごろまでにはいい自動車にずっと変わってくるから、台数はふえるだろうけれども乗用車の面は総量は大分落ちてくる、これ期待しているのです。これは数字上わかりますからね。これは後で局長から細かく数字の問題は答えさせます。  それからトラックの方は、あれは私どもが、私のところの次官なんか、きょうおいでですが、トラック会社に行きまして、むずかしいだろうけれども何としてもやってくれろ、五十八年までにできなかったら交通規制しますよとまで言って一生懸命いま勉強させているわけでございますが、どんな理由があるにせよ六十年までにだめだというものをわれわれは黙って見ているわけにいかないです。そこで、六十年までにだめだと言われる地域の知事さんに、神戸や東京のように自動車の方が多いところもあれば、神奈川なんかのように自動車よりも煙突の方が多いところもあれば、いろいろ違うのですから、その知事さんに計画を立てていただこう、そしてその計画を立てたことについてわれわれはできるだけの協力をしよう、どうしたらいいですか知事さんひとつその地域地域で計画を立ててみてください、こういうことを言おうとしている。その地域を政令で指定しようとしているわけでございます。これは法律じゃありませんから改めて国会の御審議をいただかなきゃならぬということではありませんけれども、やはり関係方面の理解と御協力をいただきたい、いま骨を折っているわけでございます。
  126. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはやっておると時間がありませんが、知事と相談するとかいや何がありましても、聞いてみるとなかなか大変なことを言っているわけです。しかも、特にあなたの方の部会の方では反対がありますから、これは相当細かいところまで目を配り、そしてこうだからこうなるんだという、先ほどの話じゃないけれども若干科学的なあれをして進めないとこれはできない、またアセスと同じようになってしまう、これをひとつ警告いたしておきます。  次に、三月十日の報道によると、環境庁長官がOECDの国際会議に相当意欲的だというような報道があります。あなたがことしの一月にOECDの本部を訪れて、鯨岡環境庁長官がその重要性を強調して委員会の開催が決まった。この開催に際して元外相の大来氏に出席をしてもらうというような報道がありますけれども、環境庁長官がその重要性を強調して委員会を開催することに決まったわけですから、これは長官、ぜひここへ行っていろいろとわが国の環境問題について話をしてきてもいいんじゃないか、こういうように考えるのですが、いかがですか。
  127. 鯨岡兵輔

    鯨岡国務大臣 お答えいたしますが、この四月一日から三日までパリでOECDの環境委員会が開かれるというのは、去る一月に私が参りましてOECDの関係者に会っていろいろ話をした結果開かれるものというのは必ずしも正しくないのです。それは、毎年やっている委員会でもありますし、この委員会が設立をしてから十周年を記念する特別の行事が予定されているわけでございます。ただ、私が今度行きまして、先生方にも御報告をいたしておりますが、長期的な環境問題、西暦二〇〇〇年の地球の環境はこのままでいけば穏やかではありませんぞ、そういうようなことをいろいろ言いまして、こういう問題についてOECDで研究なさったらいかがですかというようなことを、わが国ではこんなことを研究しております、こういう話をいたしましたら、非常に熱心に聞いてくれまして、その問題で記念講演みたいな、長期的な環境問題に対処するための八〇年代の政策とOECDというテーマでパネルディスカッションをやる、それでスピーカーとして日本からだれか派遣してくれないか、こういうことでございましたから、お忙しい中でございましたが、私が去年の九月から十二月までこの問題の懇談会を開きまして斯界の権威を集めた、その座長を務めていただいた大来先生に行っていただこう、こういうわけでございまして、私の方からも、私は国会開会中でもありますので大来先生に行っていただきますから、だれか派遣してこの問題について討議をしてきてもらいたい、こう思っているわけでございます。
  128. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、ずいぶん前ですけれども、私がOECDへ行ったときにも、日本は公害対策、環境保全、そういうものに対して緩やかで、公害をまき散らしながら非常にダンピングをしているというような意見がありまして、行った人がみんなそうではないと、一遍日本へ見に来い、そうしたら環境局長が来たことがあるのですよ。そして、ちょうど東京は晴れておりまして、あちこち見て、帰りの感想ではよくできておるなんて言って帰りましたけれども。  そこで、こういった会合に出て、日本の現在の公害に取り組んでいる姿、これはやはりECあるいはOECDあたりに対して、何といいますか輸出などしておりますから、認識もさせる必要もあると思うのです。  そこで、昨年の十一月三日から七日までOECDの有害廃棄物問題セミナー、これに出席されたと思うのですが、これは外務省の方ですか、このときの討議事項についてちょっとお聞きしたい。
  129. 大和田悳朗

    ○大和田説明員 外務省のOECD担当の課長でございますが、昨年十一月仰せのとおりOECDで有害廃棄物セミナーがございまして、当初セミナーには東京都の井原公害局長が出席されるというお話があって、われわれは非常に結構なことだと思って期待していたわけでございまして、実は、そういう直接問題を担当された方が実情を紹介されて国際的な意見交換をなさるということになりますと、広い意味での国際的な相互理解、ただいま先生お話もございましたが、そういう意味から外務省としても大いに歓迎をするということで出席の手続を進めていたのでございますが、残念ながら東京都の中の予算の都合等で御出席になれないということになりまして、現地の環境担当の書記官が出席いたしました。  これにつきましては実は英文の報告が来ているのでございますが、これは事務局がつくりましたが、まだ草案でございまして最終のものではございません。したがいまして、いまのところまだ公表はできないことになっておりますが、その概要を申し上げますと、大体三つぐらいの問題がございまして、有害廃棄物についての問題の起こっている地域の確認、これについては確認と同時にデータの収集それから規制の促進といったような問題が絡まっているわけでございます。それから二番目が、環境と人間への影響の評価評価に関する技術の検討といったような問題でございます。三番目でございますが、これは対策及び救済措置をどうするかということでございまして、たとえば土壌の封じ込めの技術、壁をつくりますとかそういう封じ込めの技術でございますとかいったことを含めました国際的な意見交換、国際協力の推進の必要性、そんなことが、これはまだ未公表でございますが英文の報告書に書いてございます。いずれにいたしましても、この報告書につきましては、各国の専門家の意見を聞いた上で、四月下旬に開かれます廃棄物管理政策グループ会合というのがございますが、それに提出されることになっております。
  130. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは去年の二月にOECDの特別顧問のロバート・ステファンさんという方が東京都においでになって、厚生省の案内で来られて、そして日本化工の六価クロムの処理、これを非常によく見て帰られて、ぜひひとつ来てもらいたい、今度OECDの会合にはおいでくださいというような案内があったというのです。そこで、いまあなたの方の外務省では、二月に東京都にステファンさんがおいでになって、そしていらっしゃいというようなことをお聞きになっていたのですか、どうですか。
  131. 大和田悳朗

    ○大和田説明員 OECDの顧問をしておりますステファンさんが二月に来られましたことは事実でございまして、そのときに外務省で関係省庁集まりまして会議をいたしまして、日本のそういう問題についていろいろ説明したわけでございますが、その後厚生省の御案内地方自治体、具体的には東京都庁でございますが回られまして、そこでいろいろ意見を交換されたというふうに伺っております。ただ、そのときにステファンさんが東京都からぜひ来てくださいということをおっしゃったということは、その時点ではわれわれ直接は聞いておりません。われわれ同道しておりませんでしたので直接には聞いておりませんでした。
  132. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちょっと、先ほどのあなたの答弁では、来てないのに東京都に対してあなたの方から通達は出してないはずです。こういうOECDの会合があるんだという通達はしてないはずなんです。これは十月の初めに東京都が厚生省に聞いた、こういうのがあるじゃないですか。厚生省も知らなかったというのですよ。そしてあなたの方に聞き合わせて初めてわかったというのです。そこで、済んだことを私はとやかく言うのではありませんけれども、今後こういったOECDの環境問題あるいはすべてのことについてそういう開催があるとかいろいろな場合は、自治省各省庁に速やかに連絡をして、そして東京都の場合は自治省から来るわけですからね。自治省、こういうこと聞いておりますか。
  133. 藤原良一

    ○藤原説明員 私どもの方は承知しておりませんでした。
  134. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうでしょう。外務省、各省は知らぬわけです。東京都から聞き合わせてまだ厚生省も知らなんだというくらい。このまま東京都からあなたの方に聞き合わせなかったらもうそのままおじゃん、結局約束したことが不履行になるわけです。ですから、今後各省庁に対して外務省からこういう重大な問題は全部通達する必要があると私は思うのですが、これをひとつはっきりさせてもらいたいと思うのです。
  135. 大和田悳朗

    ○大和田説明員 環境問題につきましては、従来とも、環境庁、厚生省あるいは通産省等関係省庁が幾つかございますが、そちらの方にOECDの方から報告等が参りますと直ちにその情報を流しておりまして、われわれの方といたしましては直接地方自治体と接触するということはしておりませんで、それは当該たとえば環境庁でございますとか厚生省がこの問題はどこに関係があるということを一番御存じなわけでございますから、そういう法律あるいは知識、そういった面からいたしましてもそういう専門の省庁にお願いした方がいいということで、従来からそういう省庁には直ちに情報を流してあるいは会議を招集する等して、常に情報の交換をいたしております。  なお、ただいま自治省の方から御答弁ございましたけれども、環境問題につきましては、地方自治体といいましても厚生省なり環境庁なりから御連絡いただくというケースが多いものでございますから、必ずしも自治省にすべて御連絡してないということでございますが、先生お話にありましたように、これから地方自治体は非常に重要な役割りを果たすわけでございますから、なるべくその連絡が密接にいくように大いに努力したいと思っております。
  136. 岡本富夫

    ○岡本委員 自治省、なぜかと言いますと、これから環境問題というのは地域別ないろいろな問題が出てくると思うのです。しかも、有害物質の問題でこういったことがOECDで開かれたというのはアメリカでも非常に問題になっておる。ラフ運河、ナイアガラのこういう産業廃棄物のことでいま相当いろいろな問題が起こってきております。こういうことで開かれたわけでありますから、これからもやはり地域的な問題が出てくるだろうと思うのです。  そこで、最後にちょっと環境庁に要望したいことは、農用地の土壌汚染の防止、この法律はカドミ問題からこういうものが起こったわけですけれども、市街地の地域の土壌汚染の防止法、これが抜けておるわけです。たとえば日本化工のように、六価クロムが工場の中に埋めてあった、そしてその工場を売却して普通の住宅地になった、これがあちらこちらにずいぶん出てくるだろうと思うのです。したがって、いま問題になっておりますのが六価クロム、水銀、銅、砒素、ニッケル、こういう市街地の土壌汚染の防止法、これをひとつつくらなければならぬと私は思うのですが、これについての御意見を承っておきたいと思うのです。
  137. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 市街地におきます廃棄物処分による土壌汚染の防止につきましては、現在、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、これによって対処しているわけでございます。この改正が五十一年にありまして、それ以前のものが問題でございますけれども、これはすでに個別に対策が進められておりますので、一律に汚染土壌処理の基準を設ける必要はないのではないかというふうに現在のところでは考えておりますけれども、私どもといたしましては、今後とも市街地土壌の汚染が環境に与える影響に関する調査を進めまして、科学的な知見の集積に努めてまいりたい、かように存じております。
  138. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間が参りましたからあれですが、あなた、各個別にやっておると言うのは、都道府県でやっておるわけですよ。ところが、都道府県ではそういった基準がありませんから非常に困っているわけです。たとえば農地のように、こうしてカドミがこうでこうでという基準が決まりましたね。それによって今度は各都道府県で対処していくというのであればできますけれども、いまのように市街地の土壌汚染の問題についてははっきりした基準を決めるべきだ、こういうように私は考えておみわけです。ひとつこれは早急に検討してやっていただきたい。どうですか。
  139. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 十分に調査いたしまして、そういう科学的知見を得たい、かように存じております。
  140. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。
  141. 山崎平八郎

    山崎委員長 次回は、来る二十日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十二分散会